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Gotham Chalice

1 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/14(土) 00:52:10 Ty12icTo0







 より強き世界となる。

 より強き愛ある世界となる。

 我らはその中にて死す。

     ――ジョン・ケイル






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2 : THE END IS NIGH ◆JOKERxX7Qc :2015/03/14(土) 00:54:08 Ty12icTo0
 日誌 ロールシャッハ記 20XX年 XX月 XX日 


 今朝、路地裏で犬の死体を見つけた。
 裂けた腹にはタイヤの跡が付いていた。
 この世界は俺に同じ死体を二度見せた。
 まるで俺を嘲笑するかのように。

 この世界は一つ残らず偽りだ。
 犬の屍骸も、街を歩くクズ共も、全て嘘吐きだ。
 願いの膳立ての為だけに造られた、贋作の集い。

 奴等は俺を恐れている。
 俺だけが真実を知っているからだ。
 この世界に真実など、一つとしてありはしない事を。

 欲望を積み上げたビルの群れも、ある筈のないものだ。
 そもそも、俺の知るアメリカにこんな名前の都市は存在しない。
 『ゴッサムシティ』などという、名からして腐臭の漂う街など。

 複製品の世界でも、クズ共の醜悪さは一ミリたりとも変わっていない。
 愚衆の街とはよく言ったものだ。その点だけは喝采を送ってやってもいい。

 ニューヨークも掃き溜めだったが、ゴッサムは輪にかけて酷い。
 肥え太った豚が塔の上で喚き散らし、浮浪者共がそれを死んだ眼で見つめている。
 空が崩れ落ちれば、こいつらは一人残らず血反吐を吐いて息絶えるだろう。
 "助けてくれ"と叫ぶ暇すらない。助けるつもりもないが。

 ゴッサムの時計の針は、21世紀を指していた。
 塔が燃えず、核の冬に怯える事も無い世界。
 それでも、人の営みは20世紀と何ら変わってはいない。
 今も権力者達が、娼婦の穢れた乳房に顔を埋めている。

 人が人であり続ける限り、ゴッサムは異臭を放つだろう。
 それこそ、永遠に。


□ ■ □


3 : THE END IS NIGH ◆JOKERxX7Qc :2015/03/14(土) 00:55:21 Ty12icTo0
 日誌 ロールシャッハ記 20XX年 XX月 XX日 


 豪奢な衣装を纏った女がパーティーに出入りしていた。
 例えどれだけ着飾っても、奥底の悪臭を掻き消す事は出来ないというのに。
 欲望の染みた宝石が、腐って崩れ落ちる日もそう遠くはない。

 捏造された街の中で目覚めた時、俺の脳裏に一つの命令が浮かんだ。
 殺し合えと、サーヴァントと共に勝ち残り、聖杯を手に入れろと。
 サーヴァントも聖杯も、既に頭の中に知識が組み込まれていた。
 脳を弄り回された気分だ……不愉快極まりない。

 ポケットを弄ると、入れた覚えのない小物が顔を出した。
 エジプト神話に出てくるシャブティという名の道具だ。
 死後の世界にて、死した王に仕える忠実なる奴隷。
 それがサーヴァントに姿を変える事も、脳に刷り込まれていた。

 人間が行き付く先は死後の世界なんかじゃない。
 天国も地獄もなく、死の先に待つのは虚無だけだ。
 俺もそうだ。木端微塵に消し飛んだ俺もそこに行くのが道理だ。
 ロールシャッハが辿り着くのはのは、ゼロでなければならない。

 だが、俺はこうして生きている。
 この愚衆の巣で、今も日誌にペンを走らせている。
 跡形も無く消え去った肉体を取り戻し、五体満足のままで。

 深淵の底から俺を呼び戻したのか? 
 生者が死者に干渉するなんて、笑えない冗談だ。
 気の狂った様な話だが、それが聖杯の為せる技とやらなんだろう。

 だが、俺の立場がどうあれ、聖杯は殺し合いを手段とした。
 犯罪……とりわけ殺人を強要した時点であの聖遺物は悪だ。
 どれだけ神聖な物でも、悪しき存在であれば罰しなければならない。

 聖杯を破壊した瞬間、今度こそ俺の魂は消えるだろう。
 人生という拷問から解放された魂は、虚無に還る運命だ。
 だがそれがどうした。それが俺の脚を止める理由になるものか。

 俺はいつだって俺の意思の元に悪を罰してきた。
 例え舞台が変わろうが、その生き方を変える気は毛頭ない。
 俺は俺のルールを聖杯に叩き付ける。それだけだ。

 聖杯に託す願いが幾千幾万あろうが。
 その願いが一つ残らず死に絶える事になろうと。

 俺は、絶対に妥協しない。


4 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/14(土) 00:57:43 Ty12icTo0
【ルール】
・当企画は版権キャラによる聖杯戦争を行うリレー小説です。
・参加者は再現された舞台にて、最後の一組になるまで殺し合いをしなければなりません。
・主従の数は16組を予定していますが、これより加減する場合もあり得ます。
・エクストラクラスの投下も許可するものとします。
・登場話候補が投下されない場合、>>1がのんびり投下していきます。

【設定】
・舞台は何者かの手により電脳世界に再現された『ゴッサムシティ@バットマン』です。
 地形はゴッサムそのものですが、施設等は他世界のものが混合している可能性があります。
・聖杯の管理者によりばら撒かれた『シャブティ』の入手が聖杯戦争への参加資格となります。
 ゴッサムシティに移動した時点でシャブティがサーヴァントに変化します。(変化するまでの時間には個体差あり)
 なお、参加資格となるシャブティのサイズ,材質は指定してないので、自由に設定してもらって構いません。
・聖杯の管理者から毎日正午に定時通達が行われます。主に脱落者の人数、討伐令の発令等を行う予定となっています。
・サーヴァントが消滅してもマスターは電脳死しません。ただし、元の世界に戻る事も出来ません。
・NPCは死亡しても消滅しません。なお、NPCの過度の殺傷は何らかのペナルティが下る恐れがあります。
・マスターには予め役職とそれに準じた日常が用意されています。記憶の有無に関しては各々にお任せします。

【時刻】
深夜(0〜6)
午前(6〜12)
午後(12〜18)
夜間(18〜24)

【その他】
・候補話の締切は五月中旬を暫定的な目安としています。
 >>1の都合で締切が変わる場合もありますが、その際は予め連絡しておきます。
・今後、>>1の独断でルールの追加,変更がある可能性もあります。


5 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/14(土) 00:59:26 Ty12icTo0
以上がプロローグとルールとなります。よろしくお願いします。


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6 : ◆1k3rE2vUCM :2015/03/14(土) 18:24:07 PdV9y9gw0
スレ立て乙です。
早速投下させて頂きます。


7 : ◆1k3rE2vUCM :2015/03/14(土) 18:24:35 PdV9y9gw0
◆◆◆



Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen?


Wem sprudelt der Becher des Lebens so reich?


Beim Klange der Hörner im Grünen zu liegen,


den Hirsch zu verfolgen durch Dickicht und Teich―――――――――



◆◆◆


8 : ジョンガリ・A&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/14(土) 18:26:14 PdV9y9gw0



「Der Freischutz……『魔弾の射手』か」



夜の月明かりに照らされる雑居ビル。
薄汚れた環境の住居スペースの一室にて、一人の男が静かに呟く。
その片手に持つのは白杖。
白い濁りに染まり切った瞳は、彼が視力を失った盲人であることを物語る。
男の名はジョンガリ・A。盲目にして凄腕の狙撃手。
狙撃衛星のスタンド能力を操る、スタンド使い。
そして、このゴッサムシティの聖杯戦争に召還されし『マスター』だ。


「ああ。かつて聴いたことがある」


返答するように呟いたジョンガリは、もう一人の人物へと目を向ける。
その相手は、椅子に腰掛け音色に耳を傾ける奇怪な男―――――サーヴァントだ。
ガスマスクを装着し、プロテクターとラバースーツを身に纏った姿は異様と言わざるを得ない。
男は念話によってジョンガリに問いを投げかけたのだ。『この曲を知っているのか』と。

ガスマスクの男の前のテーブルに置かれた古びた蓄音機から流れるのはドイツ語のオペラ。
薄暗い内装とは不釣り合いな程に荘厳であり、この堕落した街には似合わない程に芸術的だ。
曲目は『魔弾の射手』。
魔王ザミエルによって授けられた百発百中の魔弾にまつわる、狩人達の歌劇。
物言わぬガスマスクの男は、さながら芸能を好む貴族のようにオペラを鑑賞していた。


「狩人カスパールは魔王より魔弾を授かった」


カシャンと、金属の音が鈍く響く。
ガスマスクの男がゆっくりとジョンガリの方へと顔を向けたのだ。

魔弾。それは魔王により与えられし弾丸。
射手の望むものへと必ず着弾させる、百発百中の弾丸。

それはまるで、己のスタンド能力のようだとジョンガリは考える。
幼き日に、彼は偉大なる『悪の救世主』と出会った。
全ての悪の頂点に立つあの御方は、魔王と呼ぶに相応しい存在だった。
そして、己はあの御方から一つの力を与えられた。
それが精神エネルギーの具現『スタンド』。
己が授かったのは、狙撃衛星によって弾丸をあらゆる標的へと命中させる能力。
どんな人間であろうと確実に仕留める――――――まさしく魔王に授けられし魔弾そのものだ、と。


「魔王を弄んだカスパールは贄となった」


オペラの中で、魔弾を授けられたカスパールは命を落とした。
魔王によって操られた魔弾に撃ち抜かれたのだ。
魔王と契約を結び、魔王に生け贄を捧げてきた狩人は、最期に己が魔王の贄なった。
狩人は天と魔王を呪いながら死んでいった。


「俺もまた、魔王の犠牲となる哀れな狩人か」


――――――――否。断じて否。
己は魔王の誘惑に負けた犠牲者ではない。
己が魂を贄とし、自らの意思で魔王へと差し出す殉教者だ。


9 : ジョンガリ・A&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/14(土) 18:26:41 PdV9y9gw0

「この命を捧げてあの御方が喜ぶのならば、俺は喜んで贄となろう」


魔王の為に魂を捧げる。
それが彼のただ一つ望み。
そして、今の彼にとっての唯一無二の存在理由。


魔王――――――悪の救世主、DIOの復活。


それがジョンガリ・Aが奇跡の願望器に望む願いだった。
あらゆる悪の頂点に立ち、あらゆる悪を肯定する魔王。
救われぬ魂に手を差し伸べ、救済をしてくれたただ一人の救世主。
悪党としてしか生きることの出来ない彼にとって、唯一の支えとなる男だった。

あの御方を蘇らせる為ならば、どんな手段でも講じてみせる。
奇跡の願望器が存在するならば、どんな手を使ってでも奪ってみせる。
DIO様が復活する為ならば、誰を犠牲にしようと決して厭わない。


「お前もそう思うだろう、アサシン」


盲目の狙撃手は、ガスマスクの男『アサシン』へと声を掛ける。
それに呼応するかのように、アサシンはゆっくりとその腰を上げる。
アサシンは一切の声を発しない。念話で僅かに言葉を伝えてくるのみ。
一見すれば不気味でしかない男だ。
しかし、ジョンガリはそんな彼を信用していた。
彼もまた、己と同じ願いを持っていたのだから。


『忠誠を誓いし者の復活』。


それがアサシンの望み。同質の願いを持つ者同士が引き合わされたのだろうか。
ジョンガリはそんな感情を抱く。

かつて軍部で出会い、心酔し、忠誠を誓った男。
先の大戦の後に数十年の時を経て復活させたものの、最後は命を落とした指導者の蘇生。
機械のように無機質なアサシンにとって、それが唯一の戦う意義だった。
アサシンは己の目的の為に、この聖杯戦争へと召還された。

棒立ちのままジョンガリを見据えていたアサシン。
そのままアサシンは、ゆっくりと会釈の体勢を取る。
かつて一人の男にしか示さなかった忠誠の証。
己のマスターを共に戦う協力者として認める姿勢。
盲目のジョンガリにその姿は見えない。
だが、『感じ取る』ことは出来る。
己に対する忠誠の意思を、心で感じることは出来る。
故にジョンガリは、不敵に笑みを浮かべる。

ああ、勝ち残ってやろうじゃないか。。
この男と共に、命を捧げし『魔王』を復活させよう。






「さあ――――――――――――“狩り”の始まりだ」






魔王に魅入られし狩人たちは、己の魂を贄とし捧げる。
迷いも後悔も、在りはしない。
狩人はただ狂信に駆られるままに戦うのみだ。


10 : ジョンガリ・A&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/14(土) 18:27:36 PdV9y9gw0

【クラス】
アサシン

【真名】
カール・ルプレクト・クロエネン@ヘルボーイ(映画版)

【ステータス】
・通常時
筋力D 耐久A++ 敏捷C+ 魔力E 幸運D 宝具C++

・宝具『機械仕掛の殺戮卿』発動時
筋力C+ 耐久A++ 敏捷A+ 魔力E 幸運D 宝具C++

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は非常に難しい。
ただし自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
直感:C(B)
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
宝具「機械仕掛の殺戮卿」の発動時には1ランクアップする。

自己改造:B
機械と生体の融合。
自身の肉体に機械を付加させている。
血液は砂状と化しており、生体そのものも通常のものから大きく変異している。
このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。

精神異常:A
常人と掛け離れた異常な精神。
独自の美観によって機械との融合を果たした狂人。
あらゆる精神干渉をシャットアウトする。

【宝具】
「機械仕掛の殺戮卿(モルト・マシーネ)」
ランク:D+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
胸部に埋め込まれたゼンマイ。
ゼンマイを回すことで筋力と敏捷をアップさせ、更に直感スキルを1ランク上昇させる。
高い身体能力と反射神経による強力な白兵戦能力を獲得するが、長時間の発動は相応の魔力消費を強いる。
ゼンマイを逆回転をさせることで仮死状態になることも出来るが、サーヴァントになった現状では死んだふりは意味を成さないだろう。

「機巧心音(ウン・シュテルプリヒ・カイト)」
ランク:C++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
常時発動型宝具。
クロエネンの肉体そのものであり、機械的な改造による不死の身体。
ありとあらゆる攻撃を喰らっても決して「死なない」。
例え致死のダメージを受けようと肉体が耐え切り、戦闘の続行を可能とする。
この宝具による判定が発生した際、魔力消費は受けたダメージの大きさに比例する。

【Weapon】
トンファー型ブレード×2

【人物背景】
ナチス・ドイツ随一の殺し屋にして、トゥーレ協会の会長。
帝政ロシアの怪僧と称されるラスプーチンに忠誠を誓う。
常にガスマスクを装着しており、左手は義手となっている。
自身の肉体に嫌悪感を持つ「身体醜形障害」であり、瞼、唇、爪を自ら切除している。
更に自らの肉体を不完全と感じており、その価値観によってガスマスクの着用、精密機械との融合に至った。
その精神状態は既に常人のそれと大きく掛け離れており、一切の言葉を発しない。
しかしオペラの鑑賞を好むなど、ある程度の人間味は残っている模様。

1944年に「ラグナロク計画」の失敗と共に失踪していたが、2004年になって再び出現。
機械による不死身の肉体を得たクロエネンは、世界の破滅を目論むラスプーチンらと共に暗躍を始める。

【サーヴァントとしての願い】
ラスプーチンの復活。

【方針】
一人ずつ着実に始末する。
集めた情報はマスターに念話で報告する。


11 : ジョンガリ・A&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/14(土) 18:28:04 PdV9y9gw0

【マスター】
ジョンガリ・A@ジョジョの奇妙な冒険 第6部「ストーンオーシャン」

【マスターとしての願い】
DIOの復活。

【Weapon】
白杖に偽装した狙撃銃
拳銃

【能力・技能】
「マンハッタン・トランスファー」
破壊力-E スピード-E 射程距離-A 持続力-A 精密動作性-A 成長性-C
衛星のようなビジョンを持つ遠隔操作型スタンド。
本体の放った銃弾を中継し、標的に反射させて撃ち込む狙撃衛星としての能力を持つ。
また気流を感知し、周囲の状況を探ったり敵の動きを読むことが可能。
スタンド自体に戦闘能力は一切無い。

本来ならばスタンドはスタンド使いにしか視認出来ない。
しかし会場内ではサーヴァントとマスターならばスタンドを視認することが可能。
精神エネルギーと魔力が本質的に近しく、魔力パスさえあれば精神のビジョンを知覚できる為である。
また、そういった原理からスタンドのエネルギーはある程度なら魔力に変換できる。
ただしスタンドビジョンに干渉出来るのは神秘を帯びた攻撃のみである。

「狙撃」
卓越した狙撃の技術。
元軍人であり、風速20mの中での狙撃を成功させる程の腕前を持つ。

「盲目」
能力・技能からは外れるが、ジョンガリ・Aの大きな特徴として記載。
白内障を患っており視力の大半を失っている。
しかしこれまでに培ってきた技術、スタンドの補助も含めた気流の感知によって高い狙撃能力を保っている。

【人物背景】
グリーンドルフィンストリート刑務所に収監されている囚人。35歳。
DIOの忠実な部下であり、DIOの死後は宿敵であるジョースター抹殺の為に動いていた。
DIOの親友であるプッチ神父と結託し、ジョースターの血筋である空条徐倫を罠に嵌め刑務所に収監させる。
徐倫を餌にその父親である空条承太郎をも罠に嵌めるも、その後徐倫のストーン・フリーの前に敗北。
最後はプッチ神父に用済みと判断され殺害された。

【方針】
クロエネンを使役し、一人ずつ着実に始末する。
場合によっては自身で狙撃を行う。


12 : 名無しさん :2015/03/14(土) 18:28:16 PdV9y9gw0
投下終了です。


13 : ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:42:00 48i7MgSM0
投下します。


14 : ハナ&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:43:13 48i7MgSM0



『――――――人は誰だって、頑張れば輝けると思うので!』



それが、後の親友との出会いだった。
よさこいに憧れて日本へと渡って。
留学した中学校でよさこい部を設立して。
あの時に出会った子と友達になって、よさこい部に誘って。
いつしか、4人の仲間と共に部活動を頑張り始めて。
夏のよさこい祭りに向けて、何度も汗を流してきた。
掛け替えの無い青春を、仲間達と過ごしてきた。



『―――――また、家族三人で一緒に暮らしましょう』



そんな少女は、父と離縁していた母親と再会した。
母は少女に言った。また家族三人でいたいと。
アメリカに戻って、家族として一緒に暮らそう―――――――と。
少女にとって、大切なものは仲間達だけではなかった。
自分を愛してくれた両親も、仲間達と同じくらいに大切で。
内緒にしていたよさこいのことを家族に言える訳も無く。
少女は、家族と共にアメリカへ帰ることを選んだ。



『―――――ハナちゃんは、ハナちゃんの幸せを選んで?』



少女の選択のきっかけとなったのは、よさこい部の親友の言葉。
少女は、少女にとっての幸せを。
家族と過ごすという幸せを選んだ。
自らの仲間への想いを押し殺して、家族と共に祖国へと帰った。

よさこい部の仲間達は、最後に私を見送りにきてくれた。
だから、もう後悔は無いと思っていた。

だけど。
それでも、やっぱり。
みんなと一緒に、よさこいがしたい。
あの華やかな舞台で、みんなと一つになりたい。
よさこい部の仲間達と、一緒にいたい。

家族を選んだ少女は、夢を諦め切れなかった。
仲間達との思い出を捨て切れなかった。
あの素敵な青春を、また皆と一緒に味わいたい。
また皆で、よさこいがしたい。
そんな無垢な願いを抱いてしまった。

小さな『祈り』を抱いた少女の手元には、いつの間にか見覚えの無い陶器の人形が握られていた。


◆◆◆


15 : ハナ&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:43:55 48i7MgSM0
◆◆◆


「はいはーい、もしもし…パパ?」


時刻は下校時間から間もない頃。
中流層の学生が通うジュニアハイスクールの校門前で、少女が着信の掛かった携帯電話に出る。
連絡を入れてきたのは彼女の父親だ。


「あー、解ってますよ。でも、大丈夫デスって!
 パパ、私がフリーランニング出来ることくらい解ってるでしょう?
 だからほら、心配することないデスよ!もしもの時は急いで逃げられますから!」


彼女の父親は、何かあればしょっちゅう娘を心配してくれて電話を掛けてくれる。
仕事の合間を縫って車で迎えに行こうか、等と連絡を入れてくる。
おせっかいとはいえ気遣いは嬉しいが、あまり父に迷惑を掛けたくはない。
心配も不安も掛けさせたくない。
それが例え、『偽りの日常』だとしても。
少女はそう考えていた。


「それにパパも仕事忙しいんデスから、私のことは気にせず!
 私はすぐに帰りますから、大丈夫デス!それじゃ!」


少女はそういって通話を切り、携帯電話をポケットにしまう。
ほんの僅かに間を空けた後、曇った空を見上げて溜め息を吐いた。

最近になって、猟奇的な殺人事件が頻発しているという。
死体は最早原型すら留めておらず、まるで『補食』か『破裂』でもしたかのような状態で発見される。
犯人は未だ見つかっておらず。容疑者の特定もままならない状況だ。
父親が娘を心配して迎えの電話を入れてくれたのは、そんな事件が起こっていたからだった。


(…殺人事件、デスか)


少女には、事件への心当たりがあった。
一見凶悪犯罪とは縁もないように見える14歳の少女は、自らの右手を静かに撫でる。
手袋に覆われた右手の甲に存在する―――――――歪な『令呪』に触れるかのように。


16 : ハナ&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:44:39 48i7MgSM0

通学鞄を肩に下げ、少女は帰路に着く。
普段ならば快活に日々を過ごすであろう少女は、その顔に陰を落とす。
足下に転がる空き缶やゴミを無視しながら、不安定な足取りで細い歩道を歩いていく。
顔にかかる冷たい風は、少女に取ってどこか不快で気持ち悪く感じられた。


(いつだって、笑顔でいるのが一番なのに)


少女は―――ハナ・N・フォンテーンスタンドは日向の人間だ。
陰惨な社会の闇。残忍で歪んだ人の欲望。
そんな負の世界とは無縁の場所で育ち、眩い夢を見続けてきた普通の少女だ。


(…今は、出来そうにもないデスね)


この街、ゴッサムシティは、あの華やかで温かい日常とはまるで違う。
まるで薄汚れた廃墟に放り込まれたような。
汚濁した下水道の中で一人取り残されているような。
そんな居心地の悪さに包まれている。

ふと人気のない路地へと視線を向ければ、行き倒れた貧困者が当たり前のように視界に入る。
新聞やニュースでは、凶悪犯罪が日常茶飯事として伝えられている。
普段ならば閑散としている街も、日が沈めばたちまち犯罪者の巣窟になるという。
ただ普通に暮らしているだけでも、この街の異様さは解ってしまう。


帰りたい。
あの明るくて、暖かい世界に。
“みんな”がいる、よさこい部に。


陰鬱な非日常は、取り返せぬ時間の流れと共に日常へと変貌していく。
過去は少しずつ今に塗り潰されていく。
そんな現実を前に、ハナの心は不安と焦燥に蝕まれていく。
勝てば生き残れる。勝てば元の日常に帰れる。

それどころか。
どんな願いでも叶う聖杯を使えば、これからも皆とずっとよさこいが出来るかもしれない。
パパとママと一緒に暮らして、その上でよさこいを続けられる。
そんなある筈もない未来が手に入るかもしれない。

だけど、勝つ為には誰かを犠牲にしなければならない。
日向で生きてきた14歳の少女に、他者を踏み台にしてでも勝ち残る覚悟など出来る筈もない。
しかし、死ぬのは勿論怖い。まだ死にたくない。
こんな箱庭の中で永遠に閉じ込められるのも、それと同じくらい怖い。
覚悟を引き締めることも出来ず、絶望することも出来ず、ハナは足踏みを続ける。
どうすればいいのか、彼女には解らなかった。


「―――――――――――あ、」


答えの出ぬ自問自答を繰り返していた最中。
ぼんやりと視線を動かしていたハナが、“それ”を認識する。
路地のマンホールの淵から僅かに溢れる黒い液体。
まるでタールのようにドロリと濁ったそれを見て、ハナは一瞬動きを止める。
彼女の記憶の底より沸き上がってきたのは既知感。
『自分はこれを知っている』という確かな感覚。


昔から本が好きだったハナ。
特に彼女はヒーロー物に出てくるニンジャが好きだった。
得意なフリーランニングを始めたのも、ニンジャへの憧れがきっかけである。
そんな彼女のサーヴァントは、自らが憧れて止まなかったニンジャだった。


そうだ。
この黒い液体は。
あのニンジャの――――――――


ハナは顔を俯かせ、その場から小走りで去っていった。
目の前の現実から逃避するように。


◆◆◆


17 : ハナ&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:45:32 48i7MgSM0
◆◆◆



犯罪と堕落に支配されし衆愚の街。
淀んだ街から溢れ出たかのように、血の惨劇が地下で繰り広げられた。



「アバッ、アババッ」



苦痛と恐怖に喘ぐ男の声が、下水道で静かに反響する。
荒い息からは溢れ出るのは死への恐れ。目の前の現実への絶望。


「アー……やっぱり食い足ンねえわ……」


そんな男の前に立つのは、異様な風貌の殺人鬼。
拘束具にも似た奇怪な装束。
呼吸口より黒い液体がボトボトと溢れ出ているメンポ。
ジゴクめいて逆立った奇抜な黒髪。

それはまるで、神話に出てくる『ニンジャ』とでも言うべき風貌。

その出で立ちは端から見ればただのニンジャ気取りの狂人、コカイン狂いのヤク中にでも見られかねない。
しかし、男は眼前の殺人鬼に対して本能的な恐怖を覚えていた。
言うなれば、怪物に対する絶対的な畏れのような。
人が神という存在を畏怖するような、ごく自然の摂理というべき感情。
目の前の殺人鬼はニンジャであるという――――確信。


「アイエエエエエ……」
「抵抗すンなよ、わざわざこんなドブみてェな所にまで追い込んでるんだからよ」


恐怖のあまり失禁を繰り返す男の身体を踏み躙り、殺人鬼は――――否。
殺人鬼の『ニンジャ』は、愉悦の眼差しで見下ろしていた。
湿気に覆われた下水道にて、ニンジャの足下を赤黒く淀んだ物体が取り巻く。

ぶちまけられた人間の紅い血液。
最早原形を留めていない赤黒い肉塊。
潰れた果実のような臓器の数々。

それらは下水道へと引きずり込まれ『補食』された何人もの浮浪者達の搾りかすとでも言うべき物体。
欲望の限りに殺し尽くし、ついでに『魂喰い』をした者達の成れの果て。
その搾りかすもまた、ニンジャの足下から広がるコールタールのような黒い物体に飲み込まれていく。
悪趣味なスプラッター映画のような惨状が、街の地下で繰り広げられている。


「まるで俺みてえだよな。ほんとドブみてェで汚えよな」


最後の生き残りである男の顔を覗き込むように、ニンジャはグイッとその顔を近づける。
にたついた笑みを浮かべるニンジャの姿に、男はただただ恐怖に戦くのみ。
そんな男の姿を見下ろし――――――――ニンジャは豹変したかのように捲し立てる。




「なァ!汚ェよなァ!へへへへへへへへ!アンダーガイオンの掃き溜めみてェだ!
 俺の品性そっくり!ドブみてェな街!ドブみてェな殺し合い!最高じゃねえか!」




絶叫のような。哄笑。
男は恐怖に耐え切れず、悲鳴を上げようとした。
だが。
言葉が。
出ない。
言葉が。
言葉に。
言葉に。
ならない。
身体が。
痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
痛、



「―――――――――――――――――――アバ、アバッ、アバババババババババババババーッ!!!?」


18 : ハナ&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:46:01 48i7MgSM0

男の身体が、爆ぜた。
肉体の内側からぶちまけられたのは大量の黒いコールタール状の暗黒物質。
血肉の混じった暗黒物質はぐちゃりぐちゃりと流動体の如く蠢き出す。
内側から肉体を破壊されゴアめいた死体と化した男を、ニンジャは愉快げに見下ろす。



「へへへへへへへへ!久しぶりの自由!楽しいなァオイ!へへへへへへへへ!」



笑う。嗤う。品性の欠片も無い下衆な声で、ニンジャは嗤う。
他者の命を奪った彼は心底愉しそうに笑う。
殺人、強盗、強姦、放火――――――生前の彼は欲望の赴くままに犯罪を繰り返してきた。
故に他者の命を踏み躙り、貪ることに躊躇を覚えるはずも無い。

殺したいから殺す。
犯したいから犯す。
嬲りたいから嬲る。

ただそれだけのことだ。
彼にとっては当たり前の摂理だ。
何故なら、それが何よりも愉しいから。



「殺しまくれる!しかも願いも叶う!最高じゃねェか!へへへへへへへへ!」



キャスターのサーヴァント、デスドレイン。
本来ならば魔術の心得など持ち合わせていないキャスター。
「接近戦を不得手とし、特異能力を駆使して戦う」といった要素からキャスターのクラスに適合した異端の存在。
彼はマスターのことなど意にも介さず、己の欲望の限りを尽くす。
キャスターの足下に広がる赤黒い肉塊達は、彼の哄笑と共に暗黒物質に飲み込まれていった。


19 : ハナ&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:46:35 48i7MgSM0

【クラス】
キャスター

【真名】
デスドレイン(ゴトー・ボリス)@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷C+ 魔力B 幸運A 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:E-
正確には陣地作成スキルを持たない。
宝具『死の濁流(アンコクトン)』の暗黒物質による擬似的な陣地を作れるのみ。

道具作成:E-
正確には道具作成スキルを持たない。
宝具『死の濁流(アンコクトン)』で暗黒物質を生成するのみ。

【保有スキル】
精霊の加護(偽):B++
危機的状況において驚異的な幸運を手繰り寄せる。
「いくら追い詰められようと自分には必ず神の助けが降りる」という身勝手な自負の具現。

戦闘続行:B+
往生際の悪さとすら言える生存能力。
瀕死の傷であっても生き延びることが可能。

ノーカラテ:A
カラテを体得していない。
体術による基礎的な戦闘技術を備えていない稀なニンジャ。
白兵戦においてパラメータで下回る相手に打ち負ける確率が上昇する。

【宝具】
「ダイコク・ニンジャ」
ランク:A 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ニンジャとは平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
この宝具はデスドレインに憑依したダイコク・ニンジャのニンジャソウル、つまり魂そのもの。
ニンジャソウルに憑依されたものは個人差こそあれど、超人的な身体能力や生命力を獲得する。
その戦闘力は常人を遥かに凌駕するものの、急所への攻撃はニンジャといえど致命傷となる。

「死の濁流(アンコクトン)」
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
暗黒物質とも称されるユニーク・ジツ、つまりデスドレイン固有の特殊能力。
コールタールめいた可燃性の流動状エネルギー「アンコクトン」を自在に操る。
主に触手状になって他者を捕獲・吸収する他、他者の体内に侵入させ窒息・破裂させることも可能。
更に物理攻撃に対する防御、本体の負傷部分の治癒や再生など、非常に応用が利く。
ただしアンコクトンの守りを上回る威力や魔力さえあれば防御を貫通することが可能。
他者の生命を力の源とし、生命を補食することで際限なく増殖を繰り返す。
アンコクトンから直接NPCを魂喰いすることも可能。

【Weapon】
宝具「死の濁流(アンコクトン)」

【人物背景】
強姦殺人、連続放火、銀行強盗など数々の凶悪犯罪を起こした囚人「ゴトー・ボリス」。
死刑判決が下された直後、法廷内で神話級アーチニンジャ「ダイコク・ニンジャ」のソウルが憑依。
邪悪なるニンジャ「デスドレイン」として覚醒し、法廷に出席した人間を皆殺しにして逃走した。

極めて凶悪な殺人鬼であり、自らの欲望のままに刹那的な犯罪を繰り返す。
また凄まじい強運の持ち主で、窮地において幾度と無く生還している。
一方で幼稚な寂しがり屋の一面も持ち、イマジナリー・フレンドと会話をする癖がある。
そういった性格故か法廷からの逃走後は仲間を集めようとした。

ニンジャとしての能力はジツ特化型であり、身体能力こそ高いもののカラテの実力は皆無。
強大なニンジャ組織からの刺客を幾度と無く始末し、幹部クラスのニンジャとも互角に渡り合う等その実力は高い。
ノーカラテ・ノーニンジャの理念が基本とされるニンジャの中でも異色の存在。

【サーヴァントとしての願い】
自由と殺戮を謳歌する。

【方針】
気の赴くままに遊んで、ついでに魂喰い。
勿論勝ち残りたいが、そこまで後先のことは深く考えていない。
気の合いそうな仲間も欲しい。


20 : ハナ&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/03/16(月) 16:46:59 48i7MgSM0

【マスター】
ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ(アニメ版)

【マスターとしての願い】
皆とよさこいを続けたい。
家族とも一緒にいたい。

【Weapon】
なし

【能力・技能】
ニンジャに憧れてフリーランニング(パルクール)を習得している。
小柄ながら身体能力は高いが水泳は苦手。

【人物背景】
由比浜学園へと留学してきたアメリカ人の少女。中学二年生。
アメリカ合衆国ニュージャージー州プリンストン出身。
前向きで積極的、常に快活な明るい少女。
幼少期に日本へ家族旅行に訪れた時に見たよさこいに魅了され、自分もよさこいをするべく日本へ留学。
中学でよさこい部を設立し、部員らと共に「花彩よさこい祭」に参加すべく活動を始める。
しかし祭の直前に母親のジェニファーが来日し、「家族との生活をやり直したい」という想いを告げられる。
思い悩んだハナは母親の意思を優先し、よさこいへの想いを押し殺しながらアメリカへと帰国した。

【方針】
元の日常へ帰りたい。


21 : 名無しさん :2015/03/16(月) 16:47:13 48i7MgSM0
投下終了です。


22 : 名無しさん :2015/03/16(月) 17:05:29 48i7MgSM0
>>19
すいません、キャスターの保有スキル一つ書き忘れてました。
以下のスキルを追加させて頂きます。

精神汚染:A
あらゆる凶行を謳歌する狂人。
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。


23 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/16(月) 21:52:51 7NbfweyQ0
候補話の投下感謝です。
過去作の焼き直しですが一作ほど。


24 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 21:55:15 7NbfweyQ0




 ナチスドイツは、欧州から無数の財宝を奪い取った。
 金貨を、紙幣を、捕虜の金歯に至るまで、悉く強奪してきた。

 その無数の財の中に、所持者不明の骨董品が一つ。
 シャブティと呼ばれたそれは、果たして誰から奪われたものなのか。
 真相を探られぬまま戦争は終わり、それは他の財宝諸共新天地に持ち去られる。

 旗艦デウス・エクス・マキーネ。そこに用意された巨大倉庫。
 "最後の大隊"の最後の要塞にして、彼等の夢の終焉の地。
 そこでシャブティは、己に導かれるに相応しき者を待ち続けた。

 待ち続けて、しまったのだ。





□ ■ □


25 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 21:57:23 7NbfweyQ0


 鼻から息を吸うと、血の臭いが嗅覚を刺激する。
 眼を見開いても、視界は依然ぼやけたまま。
 夜の路地裏を歩く青年は、満身創痍を絵に描いた様な状態であった。

「……ッ!」

 右腕に纏わりつく激痛に、思わず声が漏れかける。
 かろうじて繋がっているものの、彼の右腕は最早使い物にならない。
 こんな有様では、戦闘の続行など土台無理な話だ。

 辺りを見回せば、焼き焦げた屍骸達が目に映る。
 かつて浮浪者だったそれらは、無残な姿で息絶えていた。
 他でもない、セイバーを追いつめた敵がそうしたのだ。
 何の罪もない群衆を、笑いながら殺めていったのである。

「探さ……ないと……あの娘と、一緒に……早っ……く……!」

 青年は、剣の英霊――セイバーとして、この聖杯戦争に馳せ参じた。
 彼を召喚したマスターは、この街の何処かで身を潜めている。
 無力なマスターが戦いに巻き込まれない様にと、セイバーがそう提案したのだ。
 近くの敵を倒したら、また此処に戻ってくる。だから静かに待っていてくれないか、と。

 だが今となっては、計画は変更せざるを得ない。
 無様な話だが、セイバーは返り討ちに遭ってしまったのである。
 故に、早く彼女の元に駆け付け、共に戦場を離脱しなければならない。

 もしそうしなければ。
 あの悪魔が、揚々と命を狩りに来るから。

――フフッ。

 その時だった。
 小さな笑い声が、セイバーの鼓膜を揺らした。
 彼を追いつめた敵が、すぐそこにいる証拠だった。

 鼓動が早くなり、恐怖で足が震え始める。
 もしアレに見つかれば、その時こそ青年の最期だ。
 きっと一切の躊躇も無く、あのサーヴァントは敗者の魂を握り潰す。
 浮浪者たちにそうした様に、笑いながら虐殺するつもりでいるに違いない。

――フフ、フフフ、アハハハ。

 笑い声が近い。悪魔との距離が狭まりつつある。
 人の形を成した悪鬼が、喉を鳴らして迫っている。

 どうか見つけないでくれと、セイバーは必至で祈る。
 あと少し歩みを進めれば、目的の場所まで辿り着けるのだ。
 ほんの僅かでも気力を絞り出せば、マスターと合流できるのである。
 どうか無事でいてくれと願いながら、セイバーは満身創痍の身体に鞭打って歩き――。


26 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 21:58:14 7NbfweyQ0

 その時だった。
 セイバーの背後から、何かが跳躍してきた。
 彼の前方に着地したそれは、強靭な四肢を持つ人間の形をしていた。
 人間の形をしているだけで、その全体像は人間のそれを逸脱している。
 言うなればそれは、"人"の皮を被った残虐な"怪"物――――即ち、怪人だ。

――ハハ、アハハハッ。

 目の前に、奴がいた。
 純白の肉体に金色の装飾、漆黒の瞳に四本角。
 美しさすら覚える姿を保ったまま、彼はセイバーを見つめ、笑っていた。
 まるで子供の様な無邪気さを含んだ、あまりに無垢な笑み。

 セイバーは思わず尻餅をつき、怪人から後ずさる。
 立っているのもやっとな状態で、これ以上戦える訳が無い。
 逃げる体力も残ってない現状では、立ち向かう術など一つとして見当たらない。

 白い悪魔が、ゆっくりと近づいてくる。
 まるで相手の恐怖を楽しむかの様に、ゆったりとした動きで迫ってくる。 
 違いを隔てる距離がゼロになった瞬間、セイバーに死が訪れるのだ。

 恐れていた事態が現実のものとなってしまった。
 今のセイバーは、さながら首に縄をかけられた死刑囚だ。
 死の運命は絶対となり、後は最期を待つばかり。

 ……だが。
 その最期の時が、数秒経っても訪れない。
 代わりと言わんばかりに、何かを叩き付ける音ばかりが、路地裏に響いている。

 見ると、悪魔の真後ろで、何者かが棒を振るっているではないか。
 目を凝らしてよく見てみると、それが華奢な体格の幼女である事が分かった。
 バールの様なもので悪魔を殴り続ける彼女の顔を、見違える訳が無い。

「やめて!セイバーのお兄ちゃんを、いじめないで!」

 悪魔と対峙していたのは、セイバーのマスターだった。
 まだ十にも満たない幼女が、敵に決死の抵抗を行っている。
 どうしてこんな場所にいるのか、何故此処が分かったのか。
 そんな事を考える前に、セイバーの口は既に動いていた。

「逃げろ……君じゃ……勝て、ないっ……!」

 悪魔である以前に、奴はサーヴァントなのだ。
 たかが人間一人の力だけで、神秘の存在たる彼に勝てる訳が無い。
 ましてやただの幼女如きが、悪魔を傷つけられる確率などゼロ同然なのだ。

 悪魔は鬱陶しそうに幼女を掴み上げ、セイバーの方向に投げ飛ばす。
 二人のサーヴァントに挟まれる形となった少女は、痛みで蹲っていた。
 直後、セイバーの目が捉えたのは、右手をこちらに向けるバーサーカーの姿。 

「やめろ……その娘は、関係ないんだッ……だから……!」

 その少女は、下らないやり直しをたまたま望んだだけなのだ。
 ちょっとしたきっかけで聖杯戦争に巻き込まれた、ただの子供でしかない。
 偶然シャブティを拾った結果、ゴッサムシティに引き摺りこまれただけなのだ。
 持つべき願いもない、哀れな被害者に過ぎない彼女を、これ以上痛めつけないでくれ。

 全身を震わせ、掠れた声でセイバーが懇願しても。
 怪物が抱える莫大な悪意には、何一つ届かない。


27 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 21:59:32 7NbfweyQ0

――ハハハッ。

 刹那、セイバーの視界が赤に染まる。
 彼の目の前で、燃え盛る炎が顕在したから。
 炎の中心で泣き叫ぶのは、小さな少女だった。
 セイバーが護りたかった筈の、ただの子供だった。

「あ、ァあ……ああァ……!」

 夜の街を照らす炎は、ものの数秒で消え失せる。
 そこに残されるのは、焼け焦げた肉塊一つだけ。

 ほんの数秒前まで息を吸い、声を張り上げた少女は。
 目の前に立ち塞がる悪魔に、呆気なく焼き殺された。

 焼き焦げた少女の顔は、悲痛の色で染まっていた。
 炎が燃え尽きた後も、悪魔は"笑顔"のままだった。

「キ、サ、マァァァァァァァァッッ!」

 怒気が急速に膨れ上がり、すぐさま爆裂する。
 恐怖で竦んでいた足には、もう何も纏わりついていなかった。

 マスターを殺された以上、サーヴァントたるセイバーもいずれ消える。
 だが、残された魔力を全て喪い、夜の闇に解け消えるその前に。
 あの白い悪魔だけは、何としてでも己が手で討ち取らなければならない。

 まだかろうじて使い物になる左手に、剣を顕在させる。
 セイバーの宝具であり、悪魔の心臓を穿てる唯一の武器。

 力を振り絞って立ち上がり、そのまま悪魔に肉薄する。
 敵からの攻撃を度外視した捨て身の一撃だが、最早セイバーには関係ない話だ。
 残り僅かな寿命は、この悪魔を打倒する為だけに投げ捨てる。

「貴様だけは!この手で、倒すッ!」

 少女の無念を剣に乗せ、叩き込むのは必殺の一撃。
 セイバーの怒りを練り込んだ刃は、月の光を浴びて鈍く輝く。

 幾つもの邪悪を滅ぼしたその剣は、彼の正義の具現だ。 
 この身に滾る正義を以て、魔王の心臓を貫く――――!

「…………がっ、ぁ」

 貫く、だなんて。
 そんなお伽噺の様な奇跡、敗者に起こる訳がない。
 セイバーが現界したのは、小綺麗なファンタジーの世界ではなく。
 どこまでも人の悪意で汚れ腐った、罪人の都(ゴッサムシティ)なのだ。

 最後の剣撃は、怨敵の心臓には届かなかった。
 その代わり、手刀がセイバーの心臓を穿っていた。

 セイバーの口から、鮮血が吹き零れる。
 全身の力が抜け、意識も遠のいていく。
 零れ落ちた剣が、アスファルトの上を転がった。

 何一つ戦果を上げれず、敵討ちすら果たせずに。
 セイバーという英霊は、絶望を抱えたまま消滅する。

――フフッ。

 悪魔は、最後まで笑っていた。


28 : 少佐&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 22:00:03 7NbfweyQ0
□ ■ □


 怪人の正体は、れっきとした一騎のサーヴァントだ。
 クラスは「バーサーカー」で、悪魔ではなく狂戦士である。 

 セイバーが完全に消滅したのを確認すると、バーサーカーは元の姿へと戻る。
 純白の服を身に纏い、朗らかな笑みを浮かべた青年。
 その出で立ちは、狂戦士の称号とはまるで不釣り合いなものだった。
 だが、彼は間違いなく狂った戦士であり、それに相応しい歴史を有している。

 太古の昔に存在した、「グロンギ」なる戦闘民族。
 肉体の構造こそ人類に限りなく近いものの、あまりの残虐さ故に封印された殺戮者達。
 そして、その数千年後に「未確認生命体」として人類を殺戮した怪人の軍勢。

 その頭領こそが、バーサーカーその人である。
 数万もの命を踏み躙った彼の真名は、「ン・ダグバ・ゼバ」という。

「アッはっはッハっはっ!恐ろしく強いな君は!べらぼうに強い!」

 威勢のいい声と、賞賛の意が籠った拍手の音。
 バーサーカーが音の方角に目を向けると、そこには一人の男が立っていた。
 眼鏡を掛けた肥満体で、性悪臭い笑みを浮かべている。
 この肥え太った男こそが、バーサーカーのマスターであった。

「歴史に名を馳せた豪傑がまるでボロ雑巾じゃないか!まさしく君は怪物(ミディアン)だ!おぞましい悪魔(ミディアン)だ!」

 ひどく昂ぶった声を出すこの男は、バーサーカーに「少佐」と名乗った。
 それが本名なのか、はたまた階級を示す単語なのか、彼には知る由も無い。
 もっとも、それに関する知識など、この狂戦士には取るに足らない事でしかないのだが。

「それで、どうだったねバーサーカー?前菜にしてはそれなりのものだと思うが」
「楽しかったよ、とても」

 バーサーカーが興味を示すのは、ただの一つだけ。
 相手が自分を"笑顔"にしてくれるかどうか、この一点に尽きる。
 敵が強ければ強い程、バーサーカーは喜びを覚え、その分頬を釣り上げる。

「でも、クウガはもっと強かった」

 そんなバーサーカーが、最も"笑顔"でいられた相手。
 それこそが、太古の昔にグロンギを封印し、彼等と同時に現代に蘇った戦士――クウガであった。

 吹雪の中で行われた決戦は、今でも鮮明に思い出せる。
 究極の力を得たクウガが、自分と対等に渡り合ってくれる歓喜。
 肉体を燃やしても斃れず、こちらに前進してくれる悦楽。
 恐らくあの瞬間こそが、バーサーカーの人生における絶頂だった。


29 : 少佐&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 22:00:48 7NbfweyQ0

 狂戦士の英霊が求めるのは、その闘争さえ超えた喜び。
 聖杯戦争に馳せ参じた豪傑であれば、自分をもっと"笑顔"にしてくれる筈だ。
 そんな考えの元、バーサーカーは聖杯の召集に応えたのだ。
 言ってしまえば、彼は聖杯戦争という過程こそが願いであり、結果たる聖杯になど微塵も興味が無かった。

「ねえ、本当に君は、僕を笑顔にしてくれるの?」
「勿論だとも。戦争はきっと、凄く楽しいぞ」

 「戦争」。
 その単語の意味など、バーサーカーは既に把握していた。
 リント、もとい人間同士が、何らかの確執で始める殺し合い。
 彼等も随分変わったものだと、当初はその程度にしか思わなかった。

 召喚されたバーサーカーに対し、少佐はまず戦争の何たるかを説いた。
 戦争がいつから始まり、戦争が何人殺し、そして戦争が何を齎したのか。
 それらを話し終えた後に、少佐は自分の願いをバーサーカーに打ち明けた。

 私は戦争がしたい。この街を戦場に変えたくてたまらない。
 君が戦争を見た事が無いと言うのなら、私がその戦争を見せてあげよう、と。

 この時バーサーカーは、初めて人間という種に関心を抱いた。
 正確に言えば、マスターである人間が始めようとする戦争に興味が沸いた。
 そして、彼等が殺し合う戦場に身を投げ出してみたくもなった。

 そういう事情もあって、バーサーカーはマスターに隷属している。
 彼が創造する戦争を見聞きし、感じ、味わい、"笑顔"になる為に。

「僕達がいない間、本当にリントは変わったんだね」
「我々が変わった?それは違うねバーサーカー、それは愚問というものさ。
 君があまりにも人間を知らなさすぎる、ただそれだけの事なんだよ」

 そう言って、少佐は口角を釣り上げた。
 獲物を見つけた動物に似た下種な笑みは、バーサーカーに同族を想起させる。
 まるでグロンギの様な"笑顔"を見せる人間は、少佐が初めてだった。

「君はまだ人間(リント)の何たるかを知らない。
 君が犬だ畜生だと嗤ってきた我々(リント)の本性を知らない。
 闘争をこよなく愛する狂人(リント)の真髄を知らない!」

 さも楽しげに、歌うように少佐は続ける。
 戦争の讃美を、殺戮の美徳を、戦勝の栄誉を。
 死が咲き誇る路地裏で、奏でられるは闘争への求愛歌(ラブコール)。

「80cm戦車(ドーラ)砲の驚異を知らない!88mm(アハトアハト)の火力を知らない!
 英米攻撃機(ヤーボ)の恐怖を、シュマイザーの快感を知らない!
 勝利の雄叫びも聞かず、敗戦の絶望すら耳にしないとはなんたる口惜しさか!
 大地を焦がす闘争を!湖水を濁らす鉄火を!淑女を輪姦す獣の列を!
 君はあまりに知らなさすぎる!戦争を、人間の何たるかをまるで理解していない!」


30 : 少佐&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 22:01:23 7NbfweyQ0

 声高らかに叫ばれる演説が途切れた後、バーサーカーは表情を緩ませる。
 殺戮以外でこうも気分が高揚するのは、随分久しぶりだった。

 太古の昔、リントとはグロンギの狩りの対象でしかなかった。
 彼等は自分達より遥かに劣った種であると、信じて疑わなかった。

 しかし、数千年後のリントの子孫達は、その頃とはあまりに違い過ぎていた。
 グロンギの殺戮に全力で抵抗し、果てには殺傷さえ躊躇しなくなっている。
 挙句の果てに、平然とリント同士で殺し合っていると言うではないか。

 思えば、この街の――ゴッサムシティの人間も随分風変りだった。
 豪奢な衣装を見せびらかしたと思えば、ボロ切れの様な服の浮浪者もいる。
 路地裏に行けば当然の様に犯罪が横行し、守衛はそれをまるで咎めない。
 楽しげに笑い、楽しげに殺す。この街はそういう連中で溢れていた。

 リントはいつの間にか、グロンギと同列に並んでいるのかもしれない。
 そして、その狂ったリントの代表格が、主人として目の前で笑っている。
 バーサーカーには、それが何だか愉快でならなかった。

「やっぱり、本当に君は面白いね」
「ああそうだとも、我々はつくづく面白い生き物さ。
 暇さえあれば煽り合い、殴り合い、挙句の果てに殺し合う単細胞共さ。
 だからこそ戦争が起き、戦争が終わり、また新たな戦争が始まる」

 素晴らしい流れだ、と。
 満悦気味に少佐がそう語る横で、バーサーカーもほんの僅かだが笑みを見せる。
 少なくとも、彼の隣に付き添っていれば、しばらくは退屈せずに済むだろう。
 それに、もしも少佐の言う事が正しければ――自分は確実に、願いを叶えられるのだから。

「愉しみにしてるよ。リント」

 そう言い残し、バーサーカーの姿は掻き消えた。
 殺戮者も消え失せた今、命あるのはマスターたった独りだけ。
 彼の周りで横たわるのは、苦悶に歪む屍骸の群れ。
 そんな中でも、少佐は"笑顔"を絶やさずにいた。



□ ■ □


31 : 少佐&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 22:02:41 7NbfweyQ0


 聖杯戦争のマスターは、時としてサーヴァントの歴史を夢を通して知るという。
 モンティナ・マックス――「少佐」と呼ばれたこの男もまた、己が下僕の記憶を垣間見ていた。

 燃え盛る道路、破壊された車両。黒焦げになった死体の山。
 無数の死が振り撒かれた街の中心で、白い怪人が笑っていた。
 ゴミの様に命が踏み躙られる世界は、まさしく地獄のそれである。

 たしかに恐ろしい、狂気を煮詰めた様な光景であった。
 だが同時に、狂気を煮詰めた"程度"のものでしかなかった。

 紛争地域に足を運べば、あれ以上の地獄を気軽に体験できる。
 人が人の尊厳を捨て、獣の様に振る舞う姿の方が、よっぽど地獄らしい。

 とどのつまり、バーサーカーの大虐殺は、少佐の心を動かすには至らなかったのだ。
 むしろ、彼は召喚されたサーヴァント対し、ある種の失望さえ抱いてしまっている。

 たった独りで街を滅ぼせる力を持ちながら、ただの虐殺如きで満足してしまっている。
 人間(リント)を玩具としか捉えず、人間を知らずに人間を殺し尽くそうとしている。
 それでは駄目だ。あまりに勿体ない話であり、あまりに哀れな話だ。

 ならば、あの狂戦士に人間を教えてやろう。
 虐殺程度で満たされている彼に、人間の力を教えてあげよう。
 戦争という地上最大の娯楽を以て、彼を"笑顔"にしてみせようではないか。

 ゴッサムはそれは酷い犯罪都市だが、これでもまだ足りない。
 少佐が望む地獄と比べれば、まだまだ平穏そのものものである。
 そんな生温い街に投じるべきなのは、戦争という名の劇薬を置いて他にない。

 戦いを、一心不乱の大戦争を。ゴッサムを終焉に導く儀式を。
 殺戮の王を歓喜させる闘争を。無辜の民に絶望を催す大災を。
 ゴッサムに別段恨みなどないが、これもまた王の"笑顔"の為だ。
 心臓を穿れた人間の悲痛と恐怖の叫びこそ、怪人の王に相応しき娯楽。

 どんな理由で、聖杯がモンティナ・マックスという男を呼んだかは知る由も無い。
 満たされたまま生涯を終えた者を、どうして願いの闘争に呼ぶ必要があろうか。
 だが、こうして聖杯に選ばれた以上、彼にも聖杯戦争に介入する権利がある。
 ならば、この蛇足同然な余生を精一杯楽しませてもらおうではないか。





「まったくお笑いだ。それだけの力を持ちながらたったの3万とは。
 "究極の闇"だって?我々(ナチス)はもう当の昔に君の50倍は殺してるんだ」

「地獄を見せてあげようバーサーカー。君に最先端の"ゲゲル"を教えてやろうじゃないか」





----


32 : 少佐&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 22:03:15 7NbfweyQ0
【CLASS】バーサーカー
【真名】ン・ダグバ・ゼバ
【出典】仮面ライダークウガ
【属性】混沌・狂
【ステータス】筋力:A+ 耐久:A+ 敏捷:B 魔力:C 幸運:D 宝具:B(怪人態)

【クラス別スキル】
狂化:C
言語能力と理性を代価に、サーヴァントのパラメータを上昇させる。
しかし、元より狂っているバーサーカーは理性の喪失を免れている。
それで意思疎通が出来るかと言うと、それはまた別の話になるのだが。

【固有スキル】
歪笑:A
対象に恐怖と威圧感を与え、ファンブルの確立を上昇させる。
両手を血に染め笑うダグバの姿は、人間にはさぞおぞましく映るだろう。
しかし、当の本人は笑いたいから笑っているだけに過ぎない。

精神汚染:C
同ランクの精神干渉を無効化する。
戦闘民族として人間(リント)とは異なる道を歩んだグロンギは、根本的な部分から人間と思想を違えている。
特にグロンギの長たるダグバの心情を理解するなど、並の狂人でさえ不可能である。

戦闘続行:A
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
彼にとって戦いとは至上の歓びであり、それを中断するという選択肢は端から持ち合わせていない。

【宝具】
『白き闇(ギソキジャリ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1個
ダグバを怪人態に変化させるバックルであり、同時に魔力炉としても機能する宝具。
この宝具で怪人態に変身した場合に限り、彼は本来の能力を発揮できる。
また、天候操作や武器の精製を始めとした様々な特殊能力の行使も可能となるが、
狂戦士のクラスとして召喚された現状においては、その多くが制限されてしまっている。

『究極の闇(キュグキョブンジャリ)』
ランク:C 種別:対人類宝具 レンジ:30 最大補足:30000人
バーサーカーが人類の虐殺の際に用いた能力が宝具に昇華されたもの。
物質の原子や分子を操りプラズマ化させ、範囲内の標的を体内から発火させる。
ただし、存在自体が神秘の塊であるサーヴァントに対しては元々効果が薄く、
対象が「対魔力」のスキルを所有している場合、ランクに応じて火力は更に軽減されてしまう。
以上のの欠点から、サーヴァントとの戦闘ではなく人間の虐殺の為にある宝具と言える。

【weapon】
強靭な肉体と発火能力が頼りとなる。

【サーヴァントとしての願い】
もっと笑顔になりたい。

【人物背景】
太古の昔に封印された戦闘民族「グロンギ」の頭領。人間には「未確認生命体第0号」と呼称されている。
人間態は朗らかな笑みを浮かべた白服の青年だが、子供の遊びの様に殺戮を楽しんでおり、
自ら復活させた約200体のグロンギの半数以上を「整理」と称して殺害、更には3万人以上の人間を虐殺している。
最期は、九郎ヶ岳遺跡にてアルティメットフォームとなったクウガとの決戦に臨み、
バックルを破壊され、生身となっても続いた殴り合いの末に失神、駆けつけた一条薫により射殺された。
泣きながら暴力を振るうクウガと対照に、ダグバは最後の瞬間まで笑顔を絶やさなかったという。


33 : 少佐&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2015/03/16(月) 22:03:31 7NbfweyQ0

【マスター】少佐
【出典】HELLSING

【マスターとしての願い】
あのすばらしい戦争をもう一度。

【weapon】
拳銃を一丁所持しているものの、少佐本人は射撃が極めて苦手であり、生涯で一度しか標的に命中させていない。

【能力・技能】
無数の機械で構築されたサイボーグであるが、特に戦闘に秀でている訳では無い。

【人物背景】
ナチスの残党組織「ミレニアム」のリーダー格。眼鏡をかけた肥満体の小男。
極めつけの戦争狂であり、本人曰く「(戦争の)手段のために目的は選ばない」。
人間を「意思の生き物」と定義しており、如何なる見た目であっても確固たる意思を持つ者は「人間」であるとしており、
その逆の存在である吸血鬼――アーカードを憎悪し、彼を人間として倒すことを人生の目的とした。
最期は怨敵たるアーカードを消滅させる事に成功し、至上の歓喜を胸に秘めたまま、宿敵と認めた女に射殺された。

【方針】
ゴッサムに戦争を持ち込み、バーサーカーに"人間"を見せつける。
その結果自分が聖杯を掴み損ねようが、そんな事は知った事ではない。
手段に「戦争」を選んだ時点で、彼の願いは叶っているのだから。


34 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/16(月) 22:05:39 7NbfweyQ0
投下終了となります。


35 : 名無しさん :2015/03/17(火) 02:41:02 aJWSalXI0
なんだこれ、ひでえええwww>ハナちゃんにデスドレイン
よくこんな鬼畜思いつくな……w

ところでアニメ版ってわざわざ付いてるけどハナヤマタってアニメと原作漫画違うところ多いのですか?


36 : ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:21:04 zpyUeRJM0
デスドいいよね
なんか死人というか戦争になりそうな候補作がわっと出てきてるけど街は大丈夫なんだろうか
自分も候補作投下させていただきます


37 : 勝鬨勇雄&ネクロマンサー ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:23:03 zpyUeRJM0
 



「エクシーズモンスターはレベルを持たない。よって効果は無効」



 ★★★★★★★



 敗北した。
 俺は、勝鬨勇雄は、敗北した。
 敗北した自分にそしらぬ顔で手を差し伸べる奴がいた。
 俺は奴の手を弾いた。
 そして、俺は震える足を引きずって、選手用の通路を逃げるように退いていた。

 壁に手をつきナメクジのように進む。
 みじめさと自分と自分を倒した相手への怒りで頭が割れるように痛かったが、歩くことだけはやめなかった。
 前に進むことを止めることこそが本当の敗北だということくらいは知っていたからだ。

「……く、そ。クソッ!!!」
 
 目の奥にこびりつくのは敗北の瞬間だった。
 俺が舞網チャンピオンシップで優勝するために鍛え上げたデュエルタクティクス、デュエルマッスル、
 そしてエースカードとなる融合モンスターの「覇勝星イダテン」とその効果。
 そのすべてを残酷に否定する対戦相手――榊遊矢とそのしもべ「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」。
 モンスターが破壊されLPが0になったときに交錯した奴の目は、いつか見た奴とはまるきり別人のように冷たかった。

 なんだあれは。俺はあんなものは聞いていない。知らない。分からない。
 俺が掲げる勝利のためのデュエルを否定するため、奴は楽しいデュエルをするのではなかったのか。
 あれは、あの軍人のように無機質で暴力的なデュエルは、奴のするべき光のデュエルではないのではないのか。
 俺は榊遊矢に対するそんな思いをつのらせる。そしてそれ以上に、あの瞳に恐怖する。

 俺が梁山泊塾で学んできた勝利のためのデュエル、他人を虐げてでも勝利を勝ち取るという教え。
 それが俺の知る中で、デュエルのもっとも闇の部分であったはずだった。
 しかしあの眼の奥にあるものは、闇は、その比ではなかった。
 あれは対戦相手を倒すためのデュエルではない……壊し、奪い、殺すためのデュエルだ。
 あれに比べたら。俺のデュエルなど。子供の遊びだと。言われているかのような。

 ……敗北だった。
 俺が唯一持ち、すがっていた「勝利(信念)」を全て破壊する、最悪の敗北だった。
 もはやいま、俺の中には何もない。どうすればいいのか何をすればいいのかすら分からない。
 塾に戻り、塾長に絞られ、そして――また学び直す? 鍛え直す?
 そうすればあの眼を越える深さの闇を俺が手に入れることが出来るとでもいうのか?
 いや出来ないだろう。これまでと同じデュエルを極めてもあんなものには辿り着かないことくらい分かる。
 つまりは八方塞がりだ。空っぽで、あやふやだ。足が震える。膝が崩れる。
倒 れる。


38 : 勝鬨勇雄&ネクロマンサー ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:25:07 zpyUeRJM0
 
 俺は持っていたデッキを廊下に散らばせながら冷たい床へと倒れ込んだ。
 腕が足が頬が肌が床にぶつかり冷たい温度を俺に伝える。
 ただ、その冷たさが俺の中に唯一残っていたものを、逆に知らせた。
 俺の空っぽの身体と心の中では、あんなデュエルで俺を殺しておきながら
 死体となった俺に手を差し伸べてきた榊遊矢への憎しみだけが、苦く黒く熱く渦を巻いていた。
 榊遊矢が憎い。俺から勝利を奪い、全てを奪った男が憎い。
 憎い。殺したいほどに憎い。

「榊……遊矢……ァ……!」

 そうだ
 おかしいふざけているどうして俺が奪われなければならない。
 俺は奪う側だったはずだ。情け容赦ない拳とデュエルで勝利を奪うのが俺だったはずだ。
 それを奪われたおかしいありえないならば奪い返すしかない。だがデュエルではあの瞳を倒せない。
 たどり着けない。なら俺は。俺に残ったものはこの体の中で渦巻く憎悪の火炉のみ。ならば。

「俺は……ッ!!」

 ――目を見開いて地べたを睨んだ。
 そこに見知らぬカードが落ちていることに俺は気付いた。
 なんだこれは。こんなカードを俺は知らない――わけではなかった。それは「シャブティのお守り」だった。

 《シャブティのお守り/Charm of Shabti》 †
 効果モンスター
 星1/地属性/岩石族/攻 100/守 100
 手札からこのカードを捨てる。
 エンドフェイズまで、自分フィールド上の「墓守の」という
 名のついたモンスターカードが受ける戦闘ダメージを0にする。
 
 古いカードだ。ただの効果モンスターだから俺でもよく知っている。だがここにある意味は分からない。
 俺のデッキは「墓守」デッキではないし、こんなカードが挟まるようなスキマはない。
 持ってきているカードの中に紛れている可能性もない。カタログで名前と効果を読んだことがあるくらいだ。
 なぜここにあるのか。そして。

「馬鹿な――」

 どうしてこのカードは、地面に「立っている」のか。
 薄い紙、カードであるはずの「シャブティのお守り」が、地面に垂直に立って俺を「見つめていた」。

 その瞳が。吸い込まれるようなその赤い瞳が、俺に語りかけてくる。

 お前の望みは、叶えられると。

「……!!」

 俺の望み。
 勝利を。揺らがぬ勝利を、奪い返すこと。
 奴を越える闇を手に、奴からすべてを奪うこと。
 叶えられると言うのか。どうやって。何をすれば? お前を、掴めば?

 「シャブティのお守り」は答えなかった。
 だが俺はその赤い瞳の奥に、確かに奴を越える闇を感じ取った。
 その瞳に魅入られるように俺は――勝鬨勇雄は、「シャブティのお守り」を、掴んだ。


 ★★★★★★★


39 : 勝鬨勇雄&ネクロマンサー ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:26:30 zpyUeRJM0
 
 
 聖杯戦争、というものだそうだ。
 参加者一人に一騎与えられる尋常ならざるしもべと共に殺し合い、生き残ったものが聖杯を掴み、
 そしてその者の望みを――願望器であるその聖杯が、叶える。
 なるほど俺の望み通りだった。
 俺がすべてを奪い返し、より深い闇を手にするのに、おあつらえむけのシチュエーションだった。
 確かに嘘はない。間違いでもない。確かに真実だ。だが。

「ウフフフ……とてもいい。とてもいいぞカチドキ=サン。そなたは実にカワイイ茶菓子……」

 だが俺に与えられたシャブティ(御供人形)は、
 人身御供のニンジャに化けた。

「獣のごとき荒い風味の……クフフフ、さながら無骨なカリントよ……のう?」

 そして俺は今、そのニンジャによって、壁に鎖でつながれている。

「フフ、カワイイ」
「ぐ……どういう、ことだ……サーヴァントはマスターに逆らえないのではないのか……」

 ニンジャというよりは弥生時代の偉人のような風貌の、男ニンジャだった。
 両サイドに髪を結い上げ、白の弥生式ニンジャ装束を着込んだ、美形の男ニンジャだ。
 その白くたおやかな手が壁に張り付けられた俺の顎を撫でた。
 ニンジャ――クラスにして「ネクロマンサー」である異端のそのサーヴァントは、俺を気に入ったようだった。
 顔が寄ってくる。近い位置に。
 覗き込んでくる。その瞳の奥には――何年? 何十年? いや、何百年?
 とにかく長い時間をかけて熟成された、妖しい光――闇の光が蝋燭めいて揺れている。

 榊遊矢の奥に俺が垣間見たものと、同等か。
 あるいはそれ以上の闇が、たしかに俺の目の前にあった。
 しかし俺はその闇を、こいつを、従えることができない。
 どころか歩くことさえ。
 前に進むことさえ、こいつの――“ウィッカーマン”の前に許されてはいないのだった。

「令呪を持って……め、命じたはずだ……俺に絶対服従しろと」
「令呪? ウフフ……そんなものが、おれに効くとでも思っていたのかね?
 おれを普通のサーヴァントと同等だと思わぬことよ……。死霊を操るジツや呪いに通じるこのおれが、
 お前ごときモータルの持つ呪いに操られるとでも? クッフフフ、それこそ甘い夢よ」

 ウィッカーマンは俺をがんじがらめにしていた鎖を外す。
 俺は再びコンクリートの地面に倒れ込んだ。
 治安の悪い街の、スラムの廃ビルの地下だ。試合会場の通路なんかよりずっと汚い。
 ウィッカーマンはその床に俺の顔をこすりつけるように、頭を足で踏みつけてきた。

「ぐあ……ッ!!」
「全く。無力で無知な弱きモータルよ……愛玩するには足りても、
 このような者に喚ばれたとあらばハトリ者にも笑われようものぞ。恥辱の極み」
「ぐああッ!!」
「おまけに集めた墨壺の泥も……ウフフフフ、まあよい。また集めればよいのだ。
 幸いここには高い生命力を持つ者が集まるのであろうから……それもニンジャより、強く美味」
「グアーッ!!」
「クフフフフ!! 抵抗できぬ愛しき哀れなハチミツダンゴ……お前も我が望みのために全てを捧げよ!
 ああ、我が君ワンソー! 今こそこの異なる文化の試練を乗り越え復活の礎たる泥を集めたてまつれば!」


40 : 勝鬨勇雄&ネクロマンサー ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:28:06 zpyUeRJM0
 
 ニンジャが興奮しながら俺を踏みつける。
 俺は頭をぐらつかせながら地を舐める。地を舐め血を舐める。尋常ではない。
 尋常ではなかった。ここは尋常の世界ではなかった。
 俺はいま、違う「次元」へとやってきてしまった。

「ウフフフフフハハハハ! お慕い申し上げまする! お待ち申し上げまする! 
 一日千秋の思いにて! いざ、いざ、いざ、いざ帝国へ! 帝国へ! 帝国へ! ハハハハハ!」

 屈辱と痛み、身体と心に刻まれるニンジャへの恐怖が、
 空っぽになりかけていた俺の器を泥のようにずるずると満たし始める。
 そしてそれは体内に残っていた榊遊矢への怒りと憎しみの炎によって燃やされて、固まった。
 もうそれは消えないだろう。
 例え身体が貫かれ大きな傷が空こうと流れ出ることのない固形の憎悪。

「グワーッ! グワ……ハハハハハハッ!
 ……ハハばハハははハは!!! あはバはははッ!!」

 気が付けば御供のニンジャの馬鹿笑いに吊られるように俺も笑っていた。

「ゆうやァ!! サガギ、遊矢ッ! お前はやはり光だ!
 俺が闇なのだ! あは、ははは!! お前も知らない闇がここにあったぞ!」

 この闇と共に俺は往くのだ。
 この闇に飲まれ、俺は勝利を手にし、俺は唯一の勝者となる。
 俺は笑いながらウィッカーマンも笑っていたので楽しくなってさらに笑い、遊矢を殺して笑いたいと思った。
 そう河川敷で親と楽しくデュエルする奴が俺の知らない闇を持っていたとしても、
 俺がそれより強い闇に呑まれたのだから俺にとって奴はやはり覆い閉ざすべき光だ。
 この聖杯戦争の他の参加者だって俺が覆い閉ざす。
 俺が喚んだ闇がそうするのだから俺がそうするのと同じだ。
 勝利を。
 どんな汚い手を使ってでも、勝利を。
 勝利、を……。……。


 ★★★★★★★


「おや……クフフフ、気をやったか。全く弱く愛しきカワイイ存在よ」

 と。
 気絶した俺の腕を引き上げてウィッカーマンが愛しそうにそう呟いたが、
 これは俺の知らないことだ。

「……令呪、か。フフフ、よき呪い。だが甘い。
 細やかなところまで伝えられていれば、おれも危うかったやもしれぬが。
 なるほどおれを問答無用で喚ぶだけあって……聖杯というモノもなかなか美味な宝の様子」

 この呟きも当然、俺が知ることのないところだ。
 どうも実際は「絶対服従」などという長期に渡りかつ曖昧な命令は令呪の対象外であり、
 それゆえに俺の令呪がウィッカーマンに全く通じなかったというのも、
 俺がこの次元に連れてこられたとき気付いた説明では、伺い知れなかったことだった。

「フム。もしこの墨壺での召喚かなわぬとするならば。
 我が君のため、聖杯、とやらを頂くのも、やぶさかではないな……クフフフ……。
 さてどうするか……。考える時間もまた一興。楽しもうとしようぞ……」

 ――こうして俺は細かいルールを知らない故の敗北をまた喫し、
 しばらくは、あるいはずっと、この妖しきネクロマンサーのしもべとして聖杯戦争次元を戦うことになる。


41 : 勝鬨勇雄&ネクロマンサー ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:29:41 zpyUeRJM0
 
【クラス】
ネクロマンサー

【真名】
ウィッカーマン(ゴグウ・ニンジャ)@ニンジャスレイヤー
(外見はグラマラス・キラーズ準拠)

【ステータス】
筋力B 耐久D 敏捷B+ 魔力A 幸運B 宝具C

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
呪術:A
死や生に関する呪術に通ずるスキル。転じて呪いへの耐性。
ウィッカーマンの使う呪術は2つ。
人間や人間でないものの生命エネルギーを集め、
エネルギーの塊である「緋色の泥」を生成する呪物の生成と、
死体の額に紋様めいた傷をつけ、ゾンビめいたゴーレムに変化させる「歪み者化」である。
「緋色の泥」は本人は別の目的に使用しようとしているため積極的には使わないが、
とてつもない回復が一瞬で出来るほどのエネルギーを持っている。
「歪み者化」は死体を首が180°捻れ前方に垂れ下がったゾンビめいた存在に変えてしまう。
これをウィッカーマンは自在に操れる。知性はないがダメージを顧みない攻撃は油断ならない。
ちなみにニンジャも歪み者にしていたので歪み者化できない死体はそんなにない模様。

【保有スキル】
カラテ:B+
ニンジャの体術。リアルニンジャであるウィッカーマンは、
作中でも最高レベルのカラテを持つニンジャであるダークニンジャと渡り合うレベルのカラテを持つ。

カトン・ジツ:A
火を扱うジツの総称。さまざまなカテゴリーがあるが、Aクラスのカトンは強者の証。
罪なきモータルを薪として焼殺し、その炎の中でザゼンすることで宿した凄絶なカトン・ジツである。
ウィッカーマンは自らの体内に燃え盛る炎を宿した炉を内包しており、
刃物などで深い傷を負った場合、血の代わりに炎が噴き出す。
この炎で反撃する致命的カウンター能力がまずひとつあり、貪欲な炎は刺した者を一瞬で火だるまにする。
さらに傷から吹き出す炎をロケットめいた推進機関として利用し機動力を上げる使い方もする。
しかも炎そのものがウィッカーマンの傷を回復する効果を持っており、傷はしばらくすれば塞がってしまう。
カウンター、移動バフ、オート回復の3つが揃った優秀なカトン。
弱点は射程の短さ。身体から離れた炎はそう長くは続かない。

【宝具】
「マツオの墨壺」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ウィッカーマンが所持していた、忍殺世界における重要な偉人であるマツオ・バショーのアーティファクト。
その中には奥の細道に記されたニンジャの秘密を綴る暗号を解くプロトコルが記されているとかなんとか。
とくに墨壺自体が何かするわけではないが、ウィッカーマンの呪術のひとつである「緋色の泥」は
この墨壺の能力によって生成されるものではないかとの論もある。実際、緋色の泥はこの墨壺に集められ、
ウィッカーマンにとっての「あるじ」を召喚するために使われようとしていた。

【Weapon】
鎖付きクナイ・ダート
飛び道具としても当然使うが、鎖鎌のような運用や、拘束目的にも使う便利な武器。
空中の金属粒子からカラテ生成するらしいので残弾は無限といっていい。

【人物背景】
 ◆忍◆ニンジャ名鑑#380【ゴグウ・ニンジャ】◆殺◆
 カツ・ワンソーの陣営でハトリ・ニンジャの軍勢と対した古代ニンジャ。
 大戦争はハトリの勝利に終わり、平安時代が幕を開けた。
 追撃の手を逃れた彼は、以後永い眠りについたが、
 時折目覚めては、歴史上に闇の干渉の痕跡を幾度か残している。

カツ・ワンソーはニンジャスレイヤーにおけるニンジャの祖であり最強のニンジャ。
ウィッカーマン(ゴグウ・ニンジャ)はそのカツ・ワンソーに古代の頃から仕えていた生けし伝説、リアルニンジャである。
本編では、エピソード『ザイバツ・ヤング・チーム』のボスを務める。
墨壺に集めた緋色の泥を使用してカツ・ワンソーを復活せしめんとしていたところを、
作中最強のニンジャに近いダークニンジャに退治されてしまった。該当エピソードを読めば完全把握可能。
また該当エピソードは現在コミカライズ中でもあるので追えば把握可能。外見はコミカライズ準拠だし、読もう。

【サーヴァントとしての願い】
カツ・ワンソーの復活。

【方針】
まだ未定。本編では城を歪み者で占拠し、やってくる冒険者やニンジャを捕らえては墨壺の泥にしていた。
キャスターっぽい待ちの戦術が好きなのかもしれない。
でも普通に戦っても普通に強いし、歪み者作りすぎてもルール違反なので上手く立ち回ろう。


42 : 勝鬨勇雄&ネクロマンサー ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:30:39 zpyUeRJM0
 
【マスター】
勝鬨勇雄@遊戯王ARC-V

【マスターとしての願い】
勝利を。榊遊矢より深い闇を。

【Weapon】
デュエルディスク
カードはほとんど落としてきたので武器にしかならないかもしれない。
数枚くらいは持ち合わせがあるかもしれない。他の書き手に任せます。

【能力・技能】
デュエルタクティクス 前回の準優勝者なのでけっこうある
デュエルマッスル リアルファイト勢なのでけっこうある

【人物背景】
遊戯王ARC-Vで開催された世界的アクションデュエル大会、舞網チャンピオンシップの前回準優勝者。
本作品ではデュエリストのほとんどは多種多様なデュエルスクールに通ってるのだが、
彼が通っているのは「梁山泊塾」というリアルファイトで場を制す武闘派のデュエルスクールである。
バトルフィールド上に散らばっているアクションカード(取ると有利)を取るため、相手への直接攻撃をするそのさまは、
観客の言葉を失わせるほどに残虐なモノであるが塾の方針である
「勝つためならば非道な手段も厭わない」に則った結果らしい。リアルファイルを制するものがデュエルを制す。

本編の二回戦で因縁があった榊遊矢と対戦し、遊矢を追いつめるも遊矢が謎の力に覚醒した結果
自分がやっていた以上の残虐なデュエルによって敗北、さらに「梁山泊塾」が全寮制で外出を禁じていたため
エクシーズに関する細かいルールを知らずに醜態をさらすという最悪な負け方をしてしまう。
再登場はあるのかないのか現状不明。
とりあえずARC-V39話前後を見れば完全把握可能か。ちなみに、MMDモデルが存在する。

【方針】
聖杯を手に入れ、勝利する。榊遊矢から全てを奪う。
とりあえずウィッカーマンに従う?


43 : ◆iqbwuoepAY :2015/03/17(火) 08:32:05 zpyUeRJM0
タイトルを「何?令呪を使えばサーヴァントに命令できるのではないのか!?」に
しようとしたら長すぎるって言われてしまいました。投下終了です。


44 : ◆kILLDDjsLY :2015/03/18(水) 23:24:50 a9NXK9T20
拙作ですが、登場話候補作投下します。


45 : 村上巴&セイバー  ◆kILLDDjsLY :2015/03/18(水) 23:26:41 a9NXK9T20

「お嬢、お勤めご苦労様でした!!」
「お嬢、今日も素敵でした!」
「おう、今日もうちのLIVE見に来てくれてありがとうな!」

 赤い髪の少女が黒塗りの高級車の後部座席から降りる。
 今日も地元での凱旋公演を終え、ホテルの代わりに実家に帰る。
 先程、プロデューサーの許可もちゃんと取った。
 そして、組の黒い服を着た若い衆達に迎えられる。
 約数十人にほどに頭を下げられ、少女はその間を歩いていく。。

 ゴッサムシティの西地区でかなり有名なマフィアファミリー『村上組』。
 その組長をしている自分の父親に話をして、赤髪の少女『村上巴』は歩いていく。
 
 長い廊下を歩いていく。
 アイドルとしてデビューし、親元を離れて数か月。
 久しぶりの帰ってきた実家だから安心感がある。
 そして、自分の部屋に着いた。
 服をいつもの刺繍入りのスカジャンに着替える。 

 ――――そこでふと感じた違和感。



「いつから村上組はニューヨーク・マフィアなんぞに成り上がったんじゃ?」



 違和感が強くなった時に全てが鮮明になった。

 少女が全てが偽りだと気付いた。
 LIVEステージも、プロデューサーも、組の若い衆も、父親でさえ。
 そう、彼女が思い出すのも一瞬だった。

「ゴッサムシティのマフィアファミリー『村上組』っていうのもなんかおかしいっと思ったけん……
 ……何が実家のような安心感じゃ! ああ、胸糞悪……」

 ベッドに顔を埋め、足をバタバタと動かす。
 しばらくして、動きを止めて、気持ちを落ち着ける。


46 : 村上巴&セイバー  ◆kILLDDjsLY :2015/03/18(水) 23:28:03 a9NXK9T20

 まずは本棚にあった漫画雑誌を重ねて衣服の下に仕込む。
 元の世界の若い衆が危険な場所に行くとき、大体こういうことをしていた。
 次に机の引き出しの中を漁る。
 こんなこともあろうかとチャカ……もとい拳銃を一挺ほど隠しておいたのが、幸いした。

「タマも入っとるな……あくまでも護身用じゃ護身用……」

 そう、巴は自分自身に言い聞かせる。
 
「うちは帰るんじゃ……本当の場所に……!」

 13歳。
 まだ中学生である。
 しかし、それでも多くの修羅場(ステージ)を経験してきた。
 だが、このような異常事態は巴にとって生まれて初めてである。

「なんじゃこれ……?」

 拳銃の近くに『何か』あった。
 巴が手にしたソレは――――シャブティだった。
 次の刹那、シャブティは別のものに変わった。

「……白い侍……?」
「我が名はセイバー……」

 巴の目の前には白い仮面と大柄の体躯に、巴の身の丈以上の長さ日本刀。
 そして、何よりも得体のしれないほどの迫力を感じる。

「なんじゃお前は!? どっから入ってきた!?
 敵か!? 敵ならどっからでもかかってき!」
「……? ……心配するな、私は貴行の敵ではない」
「信用できんのう!」

 拳銃をセイバーと名乗った男に向ける。
 しかし、目の前のセイバーは全く動じない。


47 : 村上巴&セイバー  ◆kILLDDjsLY :2015/03/18(水) 23:28:54 a9NXK9T20

「撃つぞ!」
「構わんが?」
「うちは本気じゃ!」
「ほう、ならば試すがいい」

 ……パァン、と音と同時に銃弾が放たれた。
 巴は銃の反動で手首に鋭い衝撃が走る。

「構わんと言ったが本当に撃ってくるとはな」
「!?」

 驚愕。
 巴が放った弾丸をセイバーの手で掴まれていた。
 
「このバケモンが……!」
「化け物ではない……サーヴァントだ」
「は? 鯖じゃと?」
「鯖ではない、サーヴァントだ……落ち着け」

 そこでセイバーによって巴は聞かされる。
 聖杯について。
 聖杯戦争について。
 その他色々……だが。

「なんじゃそれは?」
「貴行には叶えたい願いはないのか?」
「うちは聖杯なんてチャラチャラしたもん、興味ないんじゃ。
 うちは元の世界に帰れればいい。それでええなセイバー!」
「それでいい……私も聖杯――偽りの奇跡など要らぬ。
 ……それに貴行はまだ少女だ、未来がある」
「……ガキ扱いするな、このお面野郎が……!」
「私はお面野郎ではない」
「だったら、アンタの本当の名前はなんなんじゃ?
 『セイバー』ゆうのも本名なわけないじゃろ?」 
「………………」

 しばらくの沈黙。
 
 そして――――

「我は空(クウ)、我は鋼(コウ)、我は刃(ジン)……
 我は一振りの剣にて全ての『罪』を刈り取り『悪』を滅する……
 

 我が名は――――セイバーのサーヴァント・ハクメン!」


48 : 村上巴&セイバー  ◆kILLDDjsLY :2015/03/18(水) 23:29:37 a9NXK9T20

【クラス】
 セイバー

【真名】
 ハクメン@BLAZBLUE

【ステータス】
 筋力:A 耐久:A 敏捷:C 魔力:B 幸運:C 宝具:A

【属性】
 秩序・中庸

【クラススキル】
 対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

 騎乗:E
 申し訳ない程度のクラス別補正の騎乗スキルである。

【保有スキル】
 秩序の力:-
 世界の脅威に対抗する力。
 その力の源は「絶対的な意志」であり、『事象干渉』すら跳ね除ける力がある。
 
 
【宝具】
『虚空陣』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
 ハクメンが使う剣技の総称。

『スサノオユニット』
 ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 強大な力を持つ三輝神のひとつで、ハクメンの体そのもの。

【weapon】
『斬魔・鳴神』
 野太刀の形をした非常に長い刀身の刀。ある程度の魔術を無効化する能力を持つ。

【人物背景】
  むかしむかし まっくろな怪獣が現れました。
  怪獣はとてもつよく しかも みんなをたべてしまいます。
  こまった人たちは 一生懸命闘いましたが 怪獣はとても強く、だれも勝てません。
  みんながこまりはてた その時 しろいお侍さんが5人のなかまをつれて
  みんなのまえにあらわれました。
  しろいお侍さんたちはとってもつよく とうとう怪獣をたおしてしまいました。
  そしてしろいお侍さんはみんなにいいました
  『もうわるいことをしてはだめだぞ』と ふしぎです 悪いのは怪獣なのに
  おこったみんなは しろいお侍さんを まっくろな扉の中にとじこめてしまいました。

  けれど ほんとうは 悪い蛇さんがだいたい悪いんだ ほんとだよ。


【サーヴァントとしての願い】
 聖杯の破壊及び敵を滅する。


【マスター】
 村上巴@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
 元の世界に帰る。

【weapon】
 特になし……?

【能力・技能】
 アイドルとしての才能。

【人物背景】
 アイドルマスターシンデレラガールズに登場する任侠アイドルである。
 親が彼女に強要したからアイドルになったという経緯があり、
 本人はチャラチャラしてるからやりたくなかったと言っている。
 ただ、親のワガママにうんざりしながらも顔を立てるためにアイドルを始めたり、
 辞めたらプロデューサーに迷惑がかかると言って活動を続けるあたり、非常に義理堅い子。

【方針】
 元の世界に帰る方法を探すかのう。
 ただなぁ……売られた喧嘩は絶対に負けん。それがうちのモットーじゃけん。


49 : ◆kILLDDjsLY :2015/03/18(水) 23:30:06 a9NXK9T20
投下終了です。


50 : ◆1k3rE2vUCM :2015/03/19(木) 15:28:23 dJlRjTCA0
>>35
アニメ版を主に把握しているので、一応そちらからの出典とさせて頂きました。
原作はまだ序盤しか読み込めていないので、アニメとの差異に関しては詳しく知らないですね…申し訳ない。

皆様投下乙です。では自分も投下します。


51 : スタンスフィールド&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/19(木) 15:29:52 dJlRjTCA0



ゴッサムシティ、麻薬取締局二階―――――トイレ内にて。
洗面台の前に一人の男が立つ。
彼は用を足した手を洗い、ハンカチで拭い、鏡の前で身嗜みを整える。
そのまま男は、懐より薬物のケースを取り出した。



「―――――♪」



荘厳なオーケストラの鼻歌と共に、パチリとケースの蓋が開けられる。
取り出されたカプセル錠は、迷わず男の口へと放り込まれる。

ゴクリ、とそれは咽頭の奥底を通っていき。
口腔で分泌された唾液と共に、食道を流され。
そして、ゆっくりと胃の中へと溶け落ちる。





「ふ、あぁァ――――――――ぁ――――――――――――」





コキコキと首の骨を何度も鳴らし、まるで天を仰ぐかのように男は顔を上げ両腕を広げる。
脳髄と神経に、迸るような炎が灯る。
清々しい程の昂揚感が精神を満たし始める。





「――――――あァ――――――ふゥッ――――――――――………………………」





吐息混じりの震えた声が、乾いた唇より漏れ出る。
“クスリ”による興奮と昂揚が男の全身を駆け巡る。
これだから、この快楽は止められない。
感情の昂りにその身を委ねた後、かくりと首を落とすように俯く。
そのまま男はふぅと一息を付いた後、鏡を見上げて口の両端を釣り上げる。
どこか不気味な笑みを浮かべ、何事もなかったかのようにトイレを後にしようとした。


「また“常備薬”かよ、スタン」


その瞬間、トイレへと入ってきた別の男が話し掛けてくる。
聞き覚えのある声に、男は―――――スタンスフィールドは僅かに目を細めてそちらを向く。
視界に入ったのは同じオフィスの同僚だ。
洗面台の前から動こうとしていたスタンスフィールドはその足を止める。


「お前か。そりゃあ常備薬は日課として、か……欠かせないものだからな!」
「解ってるけど、程々にしとけよ。バレたらお前の立場も危ないんじゃないか」
「どうせ上も下もドブのような悪党しかいないだろう?」


違いねえ、と同僚は苦笑いを零す。
彼らは麻薬取締局の職員、つまりは麻薬捜査官だ。
麻薬を取り締まる者が“クスリ”を楽しむ等、言語道断の極みだろう。
しかし、同僚は軽い忠告をするのみ。
それ以上は口出ししないし、さも当たり前のように見過ごす。
何故なら、この程度の『裏』はそう珍しいものではないからだ。

ゴッサムシティは悪徳と衆愚の街である。
建前で塗り固められた社会の裏側は堕落を極めている。
官僚や警官が汚職に手を染めることでさえ、そう珍しくはない。

秩序を守る者が裏で闇社会との繋がりを持つ。
正義の執行者が悪徳の所業に手を染める。
それさえも、『よくある話』でしかない。
麻薬捜査官が“クスリ”に手を出すことなど、衆愚の街では日常の範疇でしかないのだ。


52 : スタンスフィールド&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/19(木) 15:30:30 dJlRjTCA0

「ところで、聞いたかスタン」
「聞いたって何の話だ」
「ほら、あのファミリーの件だよ」
「生憎だが、思い当たる節が多すぎる」
「ほら、俺達の取引先のシマで何人か行方不明になってただろ?
 昨日になってまたもう一人消えちまったらしいぜ」


同僚の言葉に、スタンは思い出したように大げさな素振りを取る。
同僚が持ち出したのは麻薬売買の取引先のマフィアの話だ。
スタンスフィールドと彼はいわゆる『汚職仲間』である。
彼らはマフィアの麻薬ビジネスに一枚噛み、不当な利益を得ているのだ。
そんな彼らが取引をしているマフィアのシマで、相次いで行方不明事件が発生しているという。
その被害は民間人だけに留まらず、取引先の構成員達にも及んでいるらしい。


「またか。身勝手な人間サマに神が天罰でも与えてるんじゃないのか?」
「この世に天罰があるんだったら、俺達なんかとっくに消し炭だろ」


そんな下らない冗談を口にし、二人は苦笑を浮かべる。
神の天罰と言うものがあるとすれば、真っ先にそれを下されるのは自分達のような人間だろう。
麻薬を取り締まる法の番人でありながら、麻薬売買に関わっているのだから。


「で、最初にいなくなったファミリーのチンピラは先日ようやく見つかったそうだ」
「そいつは生きていたのか?」
「いいや、ミンチにでもされたみてえな酷い有様だったとよ」


同僚の話によれば、発見された死体は人としての原型を留めていなかったという。
まるで人智を超えた化物に全身を引き裂かれたかのような。
そんな凄惨極まりない状態で、死体はドブに捨てられていたとのことだ。


「奴らと関わってる俺達もいつか目を付けられちまうかもな。お前も気をつけろよ、悪徳刑事殿」
「ご忠告感謝致します、汚職刑事殿」


そんな冗談じみた忠告を口にする同僚を尻目に、スタンスフィールドはトイレを後にする。
どこか思い当たる節があるような表情を僅かに浮かべ、彼は足早に廊下を進む。
そのまま彼は、誰もいない休憩所へと足を踏み入れた。


「行方不明事件ね。近頃は物騒なものだ!
 お前もそう思わないか?親愛なる同志殿」


そして、スタンスフィールドが陽気な態度で言葉を投げ掛ける。
スタンスフィールドの視線の先は、誰もいない空間―――――誰も座っていない椅子。
しかしその直後、休憩室の椅子に座っていた『巨躯の男』が実体化する。
黒尽くめの服装。左目を覆う眼帯。“鯨”を思わせる巨体。
そして、その片手に握り締めた一冊の本。
彼こそがスタンスフィールドが手にしたシャブティを媒体に召還された従者、アサシンのサーヴァント。


「嵐の前の静けさは素敵だと思わないか!?」


昂揚の混ざった声で、スタンスフィールドは己の従者に語り掛ける。
偽りのゴッサムシティで開催されし聖杯戦争。
麻薬捜査官、ノーマン・スタンスフィールドはその参加者―――――マスターだった。


53 : スタンスフィールド&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/19(木) 15:30:54 dJlRjTCA0

「ここではそう珍しくもない」
「ま、それもそうだがな。それでも何か引っ掛かるものがある!
 あのファミリーはこの街の重鎮だ、そこいらの鉄砲玉がそう気軽に手を出せる連中じゃない」


アサシンの冷静な一言に対し、スタンスフィールドは大袈裟な手振りと共に捲し立てる。
有力マフィアのシマで発生した連続行方不明事件。
うち一名の構成員が死体となって発見されたという。
スタンスフィールドは汚職刑事だ。
しかし、それと同時に刑事として有能な男だった。
故に彼はこの事件に何か引っ掛かるものを覚える。

有力マフィアの構成員を含んだ不可解な連続失踪。
うち一人が遺体となって発見されたことから、恐らく他の失踪者も殺されている可能性が高い。
だとしたら、誰の仕業なのか。
マフィアや民間人を無差別に誘拐殺人した所で、悪党共に利があるとは思えない。
恐らくは、聖杯戦争が絡んだ事件か。

近辺に巣食うサーヴァントによる魂喰い。
あるいは、マスターと思わしき者を対象にした無差別な狩り。

可能性は色々とあるが、今はまだ情報が少ない。
この件に関しては追々調査する必要があるだろう。


「それにしても、聖杯戦争ね。
 奇跡の願望器、聖杯。古今東西の英雄様の具現、サーヴァント。
 まるでイカレた宗教家の与太話だ」


聖杯戦争が事件に関与する可能性を考え、スタンスフィールドはふとそんなことを呟く。
奇跡の願望器である聖杯を巡る争い。
古今東西の英雄を召還し、殺し合わせる戦争。
さながらゲームやコミックの物語、あるいは宗教家の妄言か。
想像だにしなかった未知の世界に対し、苦笑いを浮かべながらごちる。


「だが、奇跡は実在する」
「だろうね。記憶が正しければ、俺はあの時消し飛んだ筈なんだからな」


きっぱりとそう断言するアサシン。
スタンスフィールドは過去を追憶するように呟く。

彼は、死んだ筈の男だった。
己を追い詰めようとした一人の殺し屋と少女を仕留めんとし。
機動隊を動員して二人を追い詰め。
そして殺し屋と対面し、最期の最期で自爆に巻き込まれ。
スタンスフィールドは、命を落としたはずだった。

だが、彼はこうしてゴッサムに召還された。
いつの間にか手にしていたシャブティを媒体に、彼は聖杯戦争へのチケットを獲得した。
疑問は幾つもあるし、こんな御伽話じみた話が本当にあるとは思っても見なかった。
死に際の夢ではないかと疑っていたこともあったが、すぐにこれが現実だと確信した。
己のサーヴァントと出会い、聖杯戦争の記憶を飲み込み、自分が今『生きている』ことを確実に認識したのだ。


「マスターの願いは、生き残ることか」
「今はそういうことで――――――頼むよ、“自殺屋”」


スタンスフィールドは、不敵な笑みを浮かべながら己の従者に対し呟く。
聖杯に託す願いは、ここから生き残ること。
一度落とした命を再び獲得することだ。
その為に彼は一切の手段を選ばない。
どんな手を使ってでも、あらゆる立場を駆使して勝つ。
それが彼の望みだった。


聖杯の獲得という『依頼』。
アサシンは無言でそれを承諾する。
彼は、凄腕の殺し屋だった。
あらゆる依頼を遂行し、数々の人間を『自殺』させてきた。
“自殺屋”と呼ばれた男は、英霊となっても決して変わらない。
ただ依頼人から託された仕事を完遂させるだけだ。


54 : スタンスフィールド&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/19(木) 15:31:28 dJlRjTCA0

【クラス】
アサシン

【真名】
鯨@魔王 JUVENILE REMIX

【ステータス】
筋力D 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運C 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラス別スキル】
気配遮断:E+
サーヴァントとしての気配を絶つ。ある程度の隠密行動に適している。
他者から自身がサーヴァントであると察知されにくくなる。

【保有スキル】
正体秘匿:C
社会の闇に溶け込み、己の素性を隠す技能。
契約者以外のマスターはアサシンのステータスを視認することが出来ない。
ただし自らの宝具を解放した者に対しては一切効果を発揮しなくなる。

依頼遂行:B
人殺しを生業とする殺し屋としての逸話の具現。
『特定個人の殺害』を依頼された際、指定された標的に対して有利な補正が働く。
更に指定された標的を対象に宝具を発動した場合、判定が強化される。
補正の度合いは依頼者から与えられた『標的に関する情報量』に比例する。

話術:E+
標的を諭すように死へと追い込む技能。
言論によって対象の精神干渉判定のファンブル率を上昇させる。
宝具と併用することでより効率的に「自殺」させることが出来る。

【宝具】
「自殺屋」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1
他者を自殺へと導く魔眼。
アサシンの両目を見た者の罪悪感と無力感を異常なまでに増幅させる。
この能力を受けた者は生きていることさえ苦痛に感じ、その場で自殺に追い込まれる。
精神干渉耐性によって軽減が可能だが、例え自殺を回避したとしても幻聴等の後遺症が残る場合がある。
普段は眼帯で左目を隠し、この宝具を封じている。

【Item】
『罪と罰』
アサシンが持ち込んできたもの。
ロシアの文豪ドストエフスキーの代表作。
アサシンの愛読書であり、彼が唯一読む本。

【人物背景】
左目に眼帯を付けた巨躯の殺し屋。
鯨という名前の由来はその大柄な体格から来ている。
「罪と罰」を愛読書とし、それ以外の小説は読んだことが無い。
己の両目を見た者を自殺させる能力を持ち、仕事の際には眼帯を外して能力を解き放つ。
その能力を駆使し、これまで数多くの標的を「自殺」させてきた。

【サーヴァントとしての願い】
マスターの依頼を遂行するのみ。

【方針】
マスターの指示が入り次第動き、標的を暗殺する。
サーヴァントとの直接戦闘は極力回避。


55 : スタンスフィールド&アサシン ◆1k3rE2vUCM :2015/03/19(木) 15:32:02 dJlRjTCA0

【マスター】
ノーマン・スタンスフィールド@レオン

【マスターとしての願い】
生き残る。

【Weapon】
回転式拳銃(S&W M629)

【能力・技能】
捜査官としての能力は優秀。
捜査官の立場を持つ裏で汚職に手を染める等、狡猾さも併せ持つ。
ゴッサムシティにおいても麻薬捜査官としての権限、そしてマフィアなど裏社会との繋がりを持つ。

【人物背景】
映画「レオン」に登場するニューヨークの麻薬捜査官。
その実態は麻薬取締局に所属しながら裏で麻薬密売組織を牛耳る汚職刑事。
麻薬捜査に見せかけてマチルダの家族を皆殺しにする等、冷酷かつ残忍な性格。
自らも麻薬に手を染めており、エキセントリックな行動が目立つ。
殺し屋であるレオンが自らの配下を殺したことに気付き、彼を少しずつ追い詰めていく。
作中終盤で満身創痍のレオンと対面するも、彼の手榴弾による自爆に巻き込まれ死亡した。

【方針】
とにかく勝ち残る。
捜査官としての立場を最大限に生かし、情報を掻き集める。


56 : 名無しさん :2015/03/19(木) 15:32:16 dJlRjTCA0
投下終了です。


57 : ◆yy7mpGr1KA :2015/03/20(金) 21:41:25 w4kduDPI0
投下します


58 : 愛憎 ◆yy7mpGr1KA :2015/03/20(金) 21:42:31 w4kduDPI0
私はゴッサムシティの住民だ。
時折酒場のピアニストとして日銭を稼いでいるが、基本的には路地裏暮らし。
何やら白い猫だのハウスキーパーの少女だのを見ると構えてしまうが、いたって普通の市民だ。
この衆愚の都市でホームレスなんて珍しくもなんともない。
これからも時折働き、時折飲んで渇きを潤し、何事もなく生きていくのだろう。


いや、チガウ。


オレは鬼の末裔だった。
いつか内にある鬼に呑まれてケモノになりゆく存在。
ケモノになった者は同族に始末される……父は自分で処理すらしたくないらしく、化物殺しのバケモノを俺の側に置いた。
オレはそいつの孤高が羨ましくもあった……友人だと、守りたいとも思った。
だけどある日、ついに俺はケモノになって、そいつを殺した。
そしたら父は俺を殺して、妹はバケモノを助けて……バケモノはやっぱりオレから全て奪っていった。地位も、名も、家族も全て。
だから、オレから奪っていったやつは殺してやった。
父も、バケモノも、あの女も。
そしたら……私はバケモノに殺された。


いや、違う。


わたしはパン屋の娘だった。
どこにでもいる普通の娘。
ただ普通に学校に通って、店の手伝いをして、いつか父の店を継ぐつもりだった。
けれどある日、とてもおなかがすいた。
飢えて、渇いて、貪りたくてたまらなくて、でもそれはいけないことで。
ガマンして我慢してがまんしてガマンしてガマンシテガマンシテガマンシテ

耐え切れなくなって、父の血でわたしはのどを潤した。
そして町のすべてを舐り尽くして、その果てに私はあの女に殺された。


いや、ちがう。


僕は 俺は    あたしは   ボクは    わたしは
      我は   妾は  私は    俺は 
わしは  余は  僕は  おれは  私は    


俺は、誰だ…?




私は教会の司祭だった。
永遠を探求する、一廉の魔術師。
それに対する答えとして「転生」を考案、それを実行に移すために白の吸血姫を利用して死徒になった。
数年後、彼女は教会と手を組んで私を滅ぼした。
しかし、そのときにはすでに魂を『転生』出来るように加工する作業を終えていた。
用いたのが、これだ。

それは権力者の象徴。
それは輪廻転生の願い。
再誕を助ける働きもあるとされる、来世のしもべを表す像。
自らの牙で継子を増やすことが重要な死徒にとってその暗示は無碍にできたものではない。
故に、編み上げた「アカシャの蛇」の術式には「再誕」と「下僕」を示す「シャブティ」を用いた。

そうだ、この像はかつて私が永遠を求めた始まりの一部。
私の名は、ミハイル・ロア・バルダムヨォン。

記憶の混乱が収まるとともにシャブティが形を変える。
美しくも恐ろしい女戦士の姿に。

「お前が私のマスターか」

対峙した瞬間、互いに理解する。
互いが人を喰らう鬼/悪魔であることを。

「わたしの名はシレーヌ、ライダーのサーヴァント」
「私の名はロア、鬼の末裔に宿った死徒だ。まずは食事でもしながらゆっくり話そうではないか」

近付きの印に……人を殺し、喰らう。
聖杯を目指し……人を殺し、喰らう。

白の吸血姫/最強の悪魔人間と再び相見え、×したいがため。


59 : 愛憎 ◆yy7mpGr1KA :2015/03/20(金) 21:44:58 w4kduDPI0
【クラス】

ライダー

【真名】

シレーヌ@デビルマン

【パラメーター】

筋力B 耐久C 敏捷B+ 魔力C 幸運E 宝具A

【属性】

混沌・中庸

【クラススキル】

騎乗:B++
騎乗の才能。野獣クラスなら乗りこなし、また悪魔に近似するものならば魔獣クラスでも乗りこなす。
なお後述する宝具により乗機と一体化すれば幻想種とて乗りこなす可能性を秘める。

対魔力:A+
現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼女を傷つけるのはほぼ不可能である。
数百万年以上の長きにわたり積み上げたその神秘は破格のランクを誇る。


【保有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力を1ランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

戦闘続行:A+
不屈の闘志と頑健な肉体。
瀕死の傷であっても戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けたとしても絶命のその瞬間まで戦い続ける。

戦場の華:B
美貌と勇猛さをもって戦場を駆ける華。同ランクの勇猛も内包する。
シレーヌの戦う姿は、敵味方を問わず意図せずして精神に影響を与える。
味方は力強く後押しされ、敵は畏怖を覚え、敗北したとしても決して辱められることはない。
精神防御で抵抗可能。

【宝具】
『死を纏いし天使より麗しき悪魔、血に濡れて(デーモン・ド・ノワール)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0〜2 最大捕捉:5人
デーモン族の戦士であるシレーヌの肉体と超能力そのもの。
口からの火炎放射、細胞から放つ電撃や熱線、翼による飛翔、鋼の如き爪の遠隔操作、変身能力など多彩な力を発揮できる。
人間の姿に変身すればステータスおよび魔力消費を低下させることが可能。
最大の特徴は他の生物、および無生物と合体しその能力や記憶を得る事。サーヴァントや宝具も例外ではない。
両者同意の上での合体や無生物との合体ならば再度の分離も可能。無生物を取り込む際には魔力の糧とすることも可能。
ただし善良で純粋な心を持ち正義を愛する者ならば、合体時にシレーヌに乗っ取られることなく、逆に乗っ取りかえすことができる。

『稲妻の如く早き悪魔、見よその怪力に敵は無し(カイム)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:100人
デーモン族でも1、2を争う怪力を持つ獣型の戦士。
本来なら一個のサーヴァントとなってもおかしくない実力者だが、シレーヌの死後も付き添い続けた逸話と何より彼のシレーヌへの愛情から宝具としてシレーヌの力となる。
宝具にその身を堕としたため本来持ちえた合体能力は失っている。
それでもその圧倒的な身体能力や雷による攻撃力はシレーヌも上回り、優れた乗機として活躍するだろう。

『美しき月よ、醜い血で染まりたくなくばその身を雲に隠せ(アドル・カメ・マレソ・サロイ・セウ・ベアタム・ベールゼブス)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
人間を1人生贄にささげることでデーモンの戦士を独立した存在として召喚する。
召喚可能なのはゲルマ―、アグウェル、ワグレグ、イルーゲ、アリーダといった生前の部下のみ。
実力としてはシレーヌやカイムの足元にも及ばず、サーヴァントとして最低限の戦闘力。
ゲルマ―は水との、アグウェルは鉱物との一体化など便利な能力を持つが他の面々は際立った特徴は再現されていないモブデーモン。


【weapon】

宝具、および超能力に依存

【人物背景】

数百万年前に地上を席巻したデーモン族の戦士の一人。
その中でも最強の女戦士、天使より美しき悪魔など謳われた高名かつ強力なデーモン。
多くの同族と共に氷河期に氷の中に閉じ込められていたが、現代において復活。
一足先に復活していた地獄の野獣の異名をとるデーモン最強の戦士、アモンが人間不動明に乗っ取られたと聞き、魔王ゼノンの命を受けその抹殺に動いた。
アグウェル、ゲルマ―を差し向け二人が敗北した隙を突き殺そうとするが、不動明の仲間の援護により失敗。
デビルマンとなった不動明と真っ向勝負になる。
その戦いにおいて致命傷を負い、ゼノンに助力を求めるとイルーゲなどの部下と共に盟友カイムが現れる。
イルーゲらが足止めをしている間にカイムと合体、カイム・シレーヌと化し圧倒的な力と超能力によりデビルマンをあと一歩まで追い込むがとどめを刺すほんの一歩手前で絶命。
満足しきった美しい笑みを浮かべ立ち往生した。
そのため死後もデビルマンとの決着を求める。その執念は地獄に落ちようともあせることはない。
その根本にあるのはかつての同朋アモンに対する……

【サーヴァントの願い】

もう一度『不動明』と戦い、殺す


60 : 愛憎 ◆yy7mpGr1KA :2015/03/20(金) 21:45:36 w4kduDPI0
【マスター】

ミハイル・ロア・バルダムヨォン@真月譚月姫(漫画)

【マスターとしての願い】

永遠を求める。

【weapon】
『血刀』
遠野四季の「自身の肉体を自在に動かす」という性質を応用し、血液を硬質化・変形させて作る武器。

『ナイフ』
何の変哲もないナイフ。
短刀・七夜と何度も斬り合えるくらいには頑丈。


【能力・技能】

死徒二十七祖番外位『転生無限者』『アカシャの蛇』と謳われる吸血鬼。
魂を転生させているため肉体の能力は器に依存する。

十八代目ロアの器は『混血』の青年、遠野四季。
その能力は『不死』と『共融』。
この『不死』は不死身ではなく、正確には「簡単には死なない体質」。
傷ついた肉体を再生させるのではなく、その部分が欠損しても生きていけるように肉体を作り替える『拒死性肉体』。
さらに四季の混血としての能力の究極とも言える能力に、接触融合呪詛「蝕離」がある。
「蝕離」は他人の肉体を摂取し、自身の肉体に還元する。端的に言えば臓器移植の何でもありバージョン。
現在は完全にロアが肉体を乗っ取っているので四季の人格の影響は極めて薄く、また吸血鬼としての一面が強いため日光も弱点となる。
設定上混血としての能力は使えないらしいのだが、本編においてアルクェイドを血刀で貫くシーンがあるため漫画版を出典とするこのロアは使用可能と解釈したい。


魔術回路は平均的な魔術師と同程度。
カバラ魔術を専門とし、雷属性の魔術攻撃や結界術、MBAAではそれに徒手格闘を加えた戦法をみせた。その魔術知識は魔術協会の王冠に匹敵する。
魔術師としての技能は達人級であり、埋葬機関の代行者や真祖をもってしても破壊困難な『城』の作成も可能とする。


「直死の魔眼・偽」
直死の魔眼に似て非なる「物を生かしている部分(=命)」を視覚情報として捉える魔眼に目覚めている。
当然、生物に対してしか力を発揮しない。代わりに脳への負荷はなく、平然と命の源である「線」を視て、生命力を消すことが出来る。
なお、「生命力を消す」ため、線・点を攻撃してから死ぬまでには若干のタイムラグが存在する。
この間に生命力を回復すると死を免れることができる。


【人物背景】
元聖堂教会の司祭で魔術師。
永遠を探求し、それに対する答えとして「転生」を考案、それを実行に移すために死徒になることを考える。
そこで、吸血衝動が芽生えはじめていたアルクェイド・ブリュンスタッドを利用、彼女に血を吸わせて死徒となった。
後に教会と手を結んだアルクェイドに殺されるがその時にはすでに魂を『転生』出来るように加工する作業を終えており、以後、ロアは幾度も渡って転生を繰り返した。

18代目のロアは遠野家長男・四季に転生。
人格そのものが不安定化する手法ゆえ、18代目ともなれば混在してしまって、初代の人格などほとんど残っていない。
それに加え一目見たアルクェイドの姿に「永遠」を幻視してしまった彼は全てを捨ててまで挑んだ純粋に「永遠」を探求するという事が出来なくなっていた。
そして自らの純粋さを奪い、堕落させたアルクェイドを憎み、転生する度に彼女と相対する時を願い続けた。
実際はその憎しみの正体はアルクェイドへの恋慕であったのだが彼自身は気付かぬまま、その執着を「永遠の希求」と思い込んで、無意識下でアルクェイドと相対することを目的に生きてきた。
そしてアルクェイドと再会し、彼女に魔眼でもって死をもたらした後、真の直死によって自らも命を落とした……その直後の参戦。
言うならば19代目ロアがここにいる。

【方針】

願いを手にするまで何度でも生をやり直す。
願いのために何度でも他者に死をもたらす。
……秘めたる思いを未だ彼らは自覚していない。


61 : ◆yy7mpGr1KA :2015/03/20(金) 21:46:34 w4kduDPI0
投下終了です


62 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:40:54 w7FjQgJc0
皆様投下感謝です。私も投下します。


63 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:41:31 w7FjQgJc0








 人は二つに別れる。


 与える者と、奪う者だ。








□ ■ □


64 : フラダリ&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:42:27 w7FjQgJc0


 高層ビルは豊かさの象徴である。
 天に迫れば迫る程、それから誇示される権力は増大する。
 地上より遥か上で酒を嗜む権力者達は、大地にひれ伏す弱者を嘲笑う。
 我こそ天に最も近き者、地を舐める貴様らを支配する王である。
 弱者達はビルの遥か下で、彼等の贅を黙って眺める事しか出来ない。

 こんな話、何もゴッサムに限った話ではない。
 太古の昔より、人類は権力の象徴として巨大な城を築いてきた。
 王は上方より民を見下し、民は下方から王を見上げる。
 弱肉強食の一種とも言えるそれは、創世記より続いてきたシステムだ。

 そんなシステムの一環で建てられたビルの上階に、その男はいた。
 赤い毛髪にライオンの鬣の様な髪型。黒い総革に赤いラインのコートには染み一つ無い。
 誰の眼から見ても、彼は高層ビルの住人となるに相応しい男に映るだろう。

 そのビルの正体は、主に高所得者が利用するホテルである。
 男は自室として、このホテルの一角を借りていた。
 彼はそこかしこに気品さを感じさせるその部屋にて、窓に映る夜景を見つめている。

 夜も更けてきたというのに、街の明かりが消える気配はない。
 ペンキをぶちまけた様な黒の中に、散らばった宝石の様な光が輝く。
 それはさながら、地上が星の海と化したのかと錯覚する程だ。

「……この夜景を全ての人に見せる為に生きてきた」

 視線を動かさぬまま、男は呟いた。
 星の海を憂う様な、嘆きの含んだ声。

「貧富の差が消え、誰もがこの美しい世界を目にできるように……私は与え続けてきた」

 男は生涯の大半を、他者に与える事に費やしてきた。
 貧困こそが争いの原因と考え、その貧困を根絶やしにしようと努力してきた。
 全ては誰も争わない、平和な世界を作る為。
 やましい気持ちなど欠片も無い、純粋な願いからの行動だった。

「だが無理だった。与えられるのを当然とし、温情に胡坐を掻き続けた彼等は優しさでは救えない」

 男は当の昔に、与える人生を諦めていた。
 どれだけ弱者に施しを与えても、争いは無くならない。
 それどころか、もっと寄こせと囃し立てるばかりであった。
 弱者の欲望の醜悪さが、男の脚を止めたのである。

「故にお前は聖杯を求めた。九を殺し一を救う為に」

 男の背中から聞こえてくるのは、己が傀儡の声。
 "魔術師"として召喚された彼に向き合おうと、男は踵を返す。
 男の顔に張り付くのは、強面に似合わぬ涙であった。


65 : フラダリ&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:44:29 w7FjQgJc0

「何故に泣く」
「悲しいのだ。何の罪も無く、しかし奪われる彼等が。
 だが彼等を殺さねば、明日は今日より悪くなる他ない」

 最早この世は、殺戮でしか救済できない。
 男が涙を見せる理由は、その事実に対する絶望と哀憫であった。
 彼――フラダリには、涙を流す程度の優しさがまだ燻っていた。

 与えるだけでは決して争いは無くならない。
 その事実の前に絶望した彼は、奪う為に生きると誓った。
 驕りを見せる九割の人類を抹殺し、残された一割で理想郷を造る。
 九割が奪う筈だった資源を、残りの一割だけで分け合うのだ。
 屍の上で生まれた楽園には、きっと貧困の二文字など存在しない。

「……驕り高ぶった愚民は数を増やし過ぎた。増えすぎた個は減らさねばならん」

 それこそ、殺してでもだ。
 キャスターはきっぱりと、己が主にそう告げた。
 言葉を投げられた主は、口を噤んだままである。
 反論する意味も無い、同意せざるを得ない事実だったからだ。

「老若男女一切の区別なく平等に殺す。それこそが世に平定を齎す唯一の術」

 地球に人類が誕生し、その数は鼠の如き速さで増大していった。
 今やその総数六十三億人、一目で膨大だと判断できる量である。
 それだけの個体が、この小さな星で好き放題に貪ればどうなるか?
 そんな事態が起これば、瞬く間に資源は底を尽いてしまうだろう。

 キャスターの目的は虐殺だが、それは同時に救済でもある。
 世界を巻き込んだ最終戦争を起こし、人類の大部分を殺傷する。
 そうする事で、食い潰される資源を少しでも多く減少させるのだ。
 僅かに残された生存者達には、平穏な明日が約束されるだろう。
 それこそ、フラダリの求める理想郷と同じ明日が。

「闘争こそが救済の術、秩序を齎す絶対の法だ。何を疑問に思う?」

 そう嘯いて、キャスターがほくそ笑む。
 歪む口元を目にし、フラダリは確信する。
 この男はきっと、自分より遥かに強靭な意志を持っている。
 その強固な願いを以て、人類を救済しようとしているのだ。


66 : フラダリ&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:45:06 w7FjQgJc0

 彼のしでかす事象は邪悪のそれである。
 全国家を相手取った戦争を勃発させる者など、善人である訳が無い。
 しかし、その根底では人類への慈悲が蹲っているのだ。
 ただ闇雲に協力を謳う輩より、遥かに人類の為に行動しているのは間違いない。

「……そうだなキャスター、我々は人類を救わねばならない」

 軍服に白髪という、魔術師とはかけ離れた出で立ちのキャスター。
 その真名はムラクモ。秘密結社「ゲゼルシャフト」の創設者にして"現人神"。
 この男こそ、自身が共に歩むに相応しい男だ。
 彼の力があれば、聖杯の入手も夢の話ではない。

「その通りだマスター、我らは聖杯を以て人類に救済を齎すのだ」

 価値無き生命に審判を下す、それこそが使命。
 増えすぎたという事実から目を背ける人類には、最早劇薬を用いるしかないのだ。
 そうしなければ、彼等に残されるのは滅亡以外にあり得ない。

 涙こそ流せど、フラダリにも覚悟はできている。
 きっとこの先、多くのゴッサムの民が死ぬ。
 高級レストランでシャンパンを空ける富豪から、路地裏でゴミを漁る浮浪者まで。
 一人として例外は無い。全員に死が降り注ぐ可能性がある。

 もし聖杯を手に入れれば、更に多くの人間が死ぬだろう。
 子供も、老人も、女性も、男性も、等しく鉄槌が振り落される。
 それでいいのだ。死という厳罰でなければ、人類の罪は贖えないのだから。


□ ■ □








 皆さん、残念ですが さようなら。


 争いのない、美しき世界の為に。


 皆平等に、殺して差し上げる。







.


67 : フラダリ&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:45:59 w7FjQgJc0

【クラス】キャスター
【真名】ムラクモ
【出典】アカツキ電光戦記
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力:C+ 耐久:D+ 敏捷:C+ 魔力:B 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
陣地製作:C
魔術師として、自らに有利の陣地を作り上げる。
キャスターは大型の電光機関を製造し、そこを自身の工房とする。

道具作成:C
魔力を帯びた道具を作成出来る。
キャスターは生前利用していた複製骸,兵器の量産を得意としている。

【保有スキル】
神性:E-
神霊適性を持つかどうか。粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果がある。
キャスターは生前"現人神"を自称していた事から、このスキルを与えられるに至った。

カリスマ:D-
大軍団を指揮する天性の才能。一つの組織を纏め上げるにはDランクでも十分。
キャスターは部下に反抗される機会が多々あった為、マイナス補正の付加を余儀なくされている。

魔力放出(雷):A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
キャスターの場合、放出された魔力が電光機関により電力に変換、電光被服の性能を上昇させる。

軍略:B
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

【宝具】
『転生の法』
ランク:A 種別:対己宝具 レンジ:1 最大補足:1
真理を極めし者「完全者」の秘蹟。擬似的な不老不死。
キャスターが死亡した際自動的に発動し、他者の肉体に魂を憑依させる事で文字通り"転生"する。
その際、奪った肉体はサーヴァントのそれに変貌し、元の肉体の魂は跡形も無く消滅してしまう。
キャスターの場合、憑依可能なのは彼自身の複製骸のみとなっているが、その複製骸をキャスターは無数に造りだせる。
よって、彼を殺害しようとするのなら、複製骸を全滅させた上で本体を破るか、マスターを殺害するしか手段は無い。


68 : フラダリ&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:46:18 w7FjQgJc0

【weapon】
『電光機関(ペルフェクティ・モーター)』
チベットの秘境で発掘された古代文明『アガルタ』の超科学技術を元に開発された軍事兵器。
外見は映画用フィルムのリールに似た円盤形で、一見すると単なる発電機としか見えない。
だが性能は驚異的であり、強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波は電子兵器を一切無効化してしまう程。
その実態は、生体エネルギー源『ATP』を電気に強制変換する装置であり、乱用した者は枯れ死ぬ一種の特攻兵器である。
此度の聖杯戦争では、ある程度ではあるが生体エネルギーを魔力で補う事が可能となっている。

『六〇式電光被服』
電光機関と組み合わせる事で所持者に超人的な能力を与える服。
アサシンの保持している電光被服はその中でも最新型のものであり、
身体能力の増強の他、迷彩や分身など様々な能力の行使を可能としている。

『無銘・軍刀』
アサシンが戦闘の際に得物とした刃。

『電光地雷』
アサシンが戦闘中に多用した兵器。
地面に設置されたそれを踏むと、黒い電撃の柱を立てながら爆発を起こす。

『エレクトロゾルダート』
秘密結社ゲゼルシャフトの私兵。
ゲゼルシャフトの幹部をオリジナルとして量産されたクローン兵。
全員が量産型の電光機関を所有しており、戦闘の際もそれを利用して戦う。
電光機関の多用は寿命の短縮を招く為、長時間の戦闘は危険であり、最悪の場合死に至る。
基本的に突出した個性は持たないが、ふとしたきっかけで強い個性が芽生える個体も存在する。
また、過去にはそうした個性の成長が原因で、上司に反逆を起こす個体が現れるケースもある。
オリジナルとなった人物はいないものの、キャスターの手により量産が可能。

『電光戦車』
秘密結社ゲゼルシャフトが使用する、電光機関を動力源とする電動戦車。
電光機関による強力な電磁波での電子機器の無力化、光学兵器による誘導弾の撃墜が可能。
電光戦車を動かす電光機関は、先述の通り人間の生体エネルギーが必要不可欠である。
その為、この兵器には複数人の"生きた人間"が組み込まれている。
キャスターの手により量産可能だが、製造には"それ相応の材料"が必須となる。
また、自律駆動するように作られているものの、組み込まれた人間の人格が目覚め暴走する場合がある。

【人物背景】
自らを現人神と名乗る、秘密結社『ゲゼルシャフト』の創設者にして支配者。
「増えすぎた人類は殺してでも減らすべき」という考えの元、最終戦争勃発の為の暗躍を続けていた。
最終戦争こそ悪鬼の所業ではあるが、本人はあくまで人類の救済を目的としている。

【サーヴァントとしての願い】
最終戦争による人口削減。


【マスター】フラダリ
【出典】ポケットモンスターXY

【マスターとしての願い】
人口削減による世界平和。

【weapon】
ポケモンを数匹所有していたが、此度の聖杯戦争には持参していない模様。

【能力・技能】
組織を設立,運用できる程度のカリスマを有する。

【人物背景】
カロス地方全土で活動する秘密結社『フレア団』の創設者にして支配者。
「争いを失くすには人類そのものを削減する他ない」という思想の元、目的の為に暗躍していた。
元々は善人であり、「争いの無い世界を作る」という願いも紛れも無く善意からくるものであった。
争いの原因が貧困により起こる奪い合いにあると考えた彼は、若い頃から貧しい人々の救済を続けていた。
しかし、いくら努力しても争いはなくならず、自身に対する要求ばかりが肥大化していくばかり。
挙句の果てに驕りさえ見せるようになった人類の姿を見て、フラダリは遂に彼等に絶望。
危険極まりない選民思想に目覚める事となるのであった。

【方針】
キャスターの準備が万全になるまでは慎重に行動する。


69 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:48:14 w7FjQgJc0
投下終了となります。

また、突然ですが以下のルールを新たに加えさせてもらいます。
・NPCは聖杯に拉致された平行世界の人間です。マスターの知り合いもいる可能性があります。
 ただし、記憶改竄により異能の行使等は不可能となっており、一般人同然の状態となっています。


70 : ◆JOKERxX7Qc :2015/03/23(月) 02:57:30 w7FjQgJc0
>>68の一部に「アサシン」と書かれてありますが正しくは「キャスター」です。あしからず


71 : ◆.qYRZrEGoQ :2015/03/28(土) 01:02:19 SGqiGjA.0
投下します


72 : ◆.qYRZrEGoQ :2015/03/28(土) 01:02:58 SGqiGjA.0





――Souls of the lost withdrawn from its vessel...




――Let the strength to be granted, so the world might be mended...




――so the world might be mended...





――Souls of the lost withdrawn from its vessel...




――Let the strength to be granted, so the world might be mended...




――so the world might be mended...


73 : ◆.qYRZrEGoQ :2015/03/28(土) 01:03:39 SGqiGjA.0

ゴッサムは悪徳の都市である
そしてそのなかでも、ここは掃き溜めだった
きらびやかな表通りの隣り合わせ、薄汚れた裏路地。
誰にも見向きもされない薄汚れた浮浪者、下水を寝床とする溝鼠、または如何わしい売人や後ろめたい者たち。
そんな連中くらいしか、居なかった。

―成功―勝利―幸福

そんな言葉とは一切無縁な場所。

「俺も一歩間違えたら……こんな場所でくたばるのか
日陰者として、なんの意味もなく……」

その一角にある貧困層を中心とした居住区。2階の自室からそれを見下ろしながら、青年は静かに呟いた。

男の名は伊藤開司(いとうかいじ)。通称、カイジ。
ただ一点、ギャンブルに強いこと以外は平凡な。否、少し劣った男。
今回のゴッサムの聖杯戦争に召還された『マスター』だ。

この拠点、ボロアパート。
ゴッサムでのカイジの我が家から否が応でも見える風景は、彼の大きく変わる前の過去を思い出ささせた。

借金の保証人になった為にギャンブル船エスポワールに招待されたことを機に、危険なギャンブルの世界に足を踏み入れていくまえのことを……

高校卒業後に上京。定職に就かずしょぼい酒と博奕に明け暮れ、街で見かけた高級車(主にベンツ)を悪戯でパンクさせ、エンブレムを盗むことで憂さを晴らしていた、行き詰まった最低な日々を……ッ!!

意図せずして巡ってきた、聖杯戦争……ッ!!
案外これは、チャンスなのかもしれない……ッ!!

そう、カイジは「当初」そう思っていた
戦争戦争とは一種のギャンブル。単純な勝ち負けだけでは勝負は決まらない

そう、思っていた。


74 : ◆.qYRZrEGoQ :2015/03/28(土) 01:04:18 SGqiGjA.0

「……でもなぁ」

ちらりと、
カイジは、自分の背後で控える自身のま"手駒"……サーヴァントに視線を向けた。
召喚されたサーヴァントには七つのクラスが存在する。

剣の騎士(セイバー)
槍の騎士(ランサー)
弓の騎士(アーチャー)
騎馬兵(ライダー)
狂戦士(バーサーカー)
魔術師(キャスター)
暗殺者(アサシン)

カイジのサーヴァントはその中でも最優とされる"セイバー"だった。
これは、いい。しかし……


その英霊は、カイジのサーヴァントはみすぼらしかった。
所詮、英霊と称されるほどまでに至った人間とは思えないほどに

美醜でサーヴァントを図るのはどうかと思うが、それでも頼りないと思ってしまうパッとしない顔。

身を守る防具は、使い込まれた革製の単純なものだし、それにしたって、身に付けているのは胴体のみ。

辛うじて盾の体裁を成している粗末な木盾は、英霊の宝具どころか、一般人の素手の攻撃でさえ凌ぎきれるか疑わしい

そしてなにより男が握るひとふりの剣。
丁度刃の中心からへし折れた、切れ味などとうの昔に鈍りきったそれを剣とするなら、それがそのサーヴァントの全てだった

外見だけで判断するのもどうかと思うが、素人であるカイジでも一目でわかるほどの脆弱すぎる武装。

……とても勝ち抜けないんじゃないか

カイジがそう落胆するのも仕方のない事だった。
高望みはするつもりはない。しかし、これはあまりにあんまりだ。



改めて自分の戦力を確認したことで若干落ち込むマスターを、セイバーは静かに見つめていた。


75 : ◆.qYRZrEGoQ :2015/03/28(土) 01:05:26 SGqiGjA.0

かつてひとつの大国が、老の憂いから狂った王の凶行により滅びた

まどろみの底から呼び起こされた古の獣が、王を、国を、民を、けして晴れない霧で包み、その魂(ソウル)を奪うためにデーモンが現れた。

殺され、襲われ、ソウルを奪われた民は正気を失い、他者を襲った。


その異変はそれだけでは終わらず、色のない濃霧は、静かに、そして着実に拡散し、広がり始めていた。


あまたの英雄が、力を、名声を求めて霧に向かったが、だれも帰ってこなかった。

人々は、穏やかな滅びの予感に絶望していた。


76 : ◆.qYRZrEGoQ :2015/03/28(土) 01:06:26 SGqiGjA.0

カイジは知らない
眼前のサーヴァントが、かつて名も無き、底から始まった男が、幾度の豪傑たちにもなし得なかった偉業を成し遂げ、世界を救ったことを。

肉体が滅びようと、魂が削られようと、心が折れかけようと、
搾取される立場であったゆえの渇望が、ひとりの"奴隷"を王へと押し上げたことを。


【クラス】
セイバー

【真名】
なし(敢えていうなら奴隷王)

【ステータス】
筋力C++ 耐久C++ 敏捷C++ 魔力E 幸運E 宝具C

【属性】
混沌・善

【クラス別スキル】

対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:―
セイバーでありながら騎乗スキルは持ち得ていない

【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。

奴隷王:A
セイバーの性質そのもの。己の剣と盾以外のすべての武装を所持できず、装備することができない。ただしこのスキルが発揮されるのはあくまでも"武装"のみなので、それ以外の道具などには適用されない。

【宝具】
「けして折れぬ奴隷の野望(サーヴァント・ソウル)」
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
セイバーの最後まで折れなかった心が宝具まで昇華されたもの
戦闘時、筋力と敏捷をアップさせ、更に直感スキルを1ランク上昇させる。

「折れた直剣(サーヴァント・ソード)」
ランク:E++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
文字通り中心からへし折れた直剣。
全体に錆び、血肉がこびりついており
切れ味は無いに等しく、リーチも短い。
かつての大国ポーレタリアの奴隷兵のもつ装備であり、あまたのデーモンを葬り去った最弱の剣。
それ単体ではあまりにも脆弱であり、セイバーの不屈の精神があってこそ意味のある代物。

【Weapon】
「奴隷の盾」
奴隷兵の使用する、粗末な木製盾。木屑をまとめただけの代物であり
正直、盾と呼ぶにはかなり心許ない

「黒松脂」
使用すると30秒間、武器に炎を纏わせ攻撃力を底上げする消費アイテム。

「白くべたつくなにか」
所持している武器に約1分間、魔法攻撃力を付与する消費アイテム。

【人物背景】
PS3ソフト「デモンズソウル」の実況プレイ動画シリーズの主人公。
ゲーム中に登場するザコ敵である「奴隷兵」をモチーフとした縛りを以下の通り制定し、プレイするに当たっての【鉄の掟】とした上で、見事それを成し遂げた。

【サーヴァントとしての願い】
詳しい願いはない

【方針】
聖杯をとる
マスターに従う。


【マスター】
伊藤開司@カイジシリーズ

【マスターとしての願い】
聖杯戦争というギャンブルを生き残る

【weapon】
特になし……?

【能力・技能】
平穏な環境では怠惰で自堕落なダメ人間だが、命が懸かった極限の状態に置かれると並外れた度胸と博才を発揮し、思考を積み重ねた果ての論理と、天才的な発想による「勝つべくして勝つ策略」を以って博奕地獄を必死に戦い抜いていく。

【人物背景】
福本伸行の漫画『カイジ』シリーズの主人公。
高校卒業後に上京したが、定職に就かずしょぼい酒と博奕に明け暮れ、街で見かけた高級車(主にベンツ)を悪戯でパンクさせエンブレムを盗むことで憂さを晴らす、行き詰まった最低な日々を過ごしていた青年。友人・古畑の借金の保証人になった為に肩代わりをする羽目となりその返済の為に遠藤にギャンブル船エスポワールに招待されたことを機に、危険なギャンブルの世界に足を踏み入れていく。初登場時(1996年3月)は推定21歳。遠藤の調べでは父親はいないがパート勤めの母親と公務員の姉がいるとされている。
どんな状況であろうと信頼した人間を裏切ることは決してせず、己の利を蹴ってでも救おうとする、良く言えば心優しい、悪く言えば甘い性格である。その為、信頼を寄せた人間に裏切られる経験を何度も繰り返しており、度々苦い思いを味わされている。
数々の死闘を経て、左頬など体の複数の箇所に痛々しい傷跡がつき、ギャンブル中毒になっている一方で、裏世界では多少名を馳せるようになった。また、偶然・必然を問わず、挑む勝負には悉く「帝愛」の存在があり、死闘を重ねる度に切るに切れない縁を痛感している

【方針】
いかにしてこのセイバーで勝ち残るか……


77 : ◆.qYRZrEGoQ :2015/03/28(土) 01:07:25 SGqiGjA.0
以上です


78 : ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:03:49 /Vx/O7w20
投下します。


79 : ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:04:28 /Vx/O7w20
街外れのホテル。
辛うじてホテルと呼べるだけの体裁を整えた程度の薄汚れた建物。
娼婦をさかんに連れ込むほど下賤ではないが、金持ちが頻繁に利用するような高級感はない、利用者層の広そうな宿泊施設。
髪も服も黒一色で、肌の白さが際立つ美女が一人、ボーイに荷物を運ばせフロントから客室へ向かう。
宿泊するのは704号室、ボーイにチップを渡して荷物を受け取り、部屋に入る。

『何か不審なものなどはありますか?』
『いや。特にはないはずだ』
『そうですか』

ドアを閉じるとともにサーヴァントが実体化。
現れたのは大柄な黒髪の東洋人。
男をドア近くに立たせて、荷物を置き、一旦部屋を走査。
窓の外を確認し、室内に何らかの仕掛けがないかも調べる。
それを済ませるとカーテンを閉じ、荷物を広げ出す。

「バスルームの調査をお願いしても、デストロイヤー?」
「いいけど警戒しすぎじゃねえか?」
「敵マスターがすでに回り込んでいる可能性は低いでしょうが……前の客や、最悪ホテルの従業員が何かしかけているかもしれません。
 特に治安の悪い地の安ホテルでは、そうした警戒はするに越したことはない」

それを聞いて納得しつつ、不快そうな顔をして席を外すデストロイヤー。
女性…久宇舞弥はチープなシングルベッドで広げた荷物を確認する。

キャリコM950短機関銃。
切嗣とも共通しているメインウェポン。
サーヴァントには牽制にすらならないだろう――事実ライダー相手には何の役にも立たなかった――が、マスター相手なら十分。
グロック17。
弾丸をキャリコと共有するバックアップガン。
他にサバイバルナイフ、発煙筒およびスタングレネード二本、手榴弾が一つ。
以上は携行していたためか、冬木からこちらに持ちこむことができている。
加えて予備弾丸は十分量、この街で調達できた。
狙撃用の装備がないのは不満だが、こちらも改めて調達するしかないだろう。
一部装備に欠損があるのは、取り落としたか、もしくはあの人形と入れ替わりになってしまったか。
確か、シャブティとかデストロイヤーは言っていたか。
付着物から察するに土蔵内にあったようだ。もし誰かが意図して配置したとしたら、それは誰に手にさせたかったのか。
切嗣、アイリスフィール、そして私が候補になるが……

「カメラだの盗聴器だのはなさそうだぜ……うお、凄い装備だな」
「…そうですか」

戻ってきたサーヴァントの声掛けで埋没しかけた思考から戻る。
材料の少ない事象に思考を裂いても有意義とは言い難い。
武装の確認・整備に集中する。
…………手慣れた様子でそれを終えると、すぐ取り扱えるよう改めて装備する。
これで個人としての戦闘準備は完了。
次はサーヴァントに向き合い、最後の『武器』の確認を行う。


80 : ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:05:12 /Vx/O7w20

「つい先ほどまで私は日本の冬木という都市で、ある人たちと協力して聖杯戦争に臨んでいました。
 『始まりの御三家』以外に聖杯戦争を執り行っている者がいるのは全くの慮外ですし、『霊地』、『器』それに『大聖杯』、ほか様々な仕組みについて気にはなります」

何か知っているか、とサーヴァントに問う。
久宇舞弥自身は魔術『使い』であり、戦闘手段としての魔術以外は完全に専門外だ。
そのためいつから、なぜ、誰が、どうやって、このゴッサムで聖杯戦争を行っているのかは見当もつかない。
魔術師足らぬサーヴァントもそうした情報は持ちえず、推論も出来なかった。
……であるならば無為な推理に時間を費やす愚は犯さない。
なぜならそれよりも気がかりな事態があるのだから。

「私の協力者の願いは争いの根絶でした。この聖杯戦争で流れる血を人類最後の流血にする、と覚悟して挑み、私もそれに協力していたのです。
 ……ここでこうして聖杯戦争が行われている以上、その願いは叶っていないということでしょうね」

どことなく悲し気な、しかし鋭い眼で窓の外に視線をやる。
聖杯戦争の戦場となる街……悪徳の街ゴッサムと、遠き魔術霊地冬木を視る。

「まだ叶っていない、つまり彼もまた冬木の聖杯戦争を争っているのか。
 それなら私は一刻も早く彼の元へ帰り、その一助とならねばなりません。
 ……あまり考えたくありませんが最早叶うことがない、つまり敗退したか、冬木の『聖杯は万能の願望器』という看板に偽りがあった。
 だとしたら、この地の聖杯を私が手にすることも考えないといけないかもしれません」

彼女のすべては衛宮切嗣のために。
久宇舞弥は切嗣のために死んだはずだったが、今こうして生き長らえた。
かつて切嗣に拾われた命、また誰かに拾われたのならそれもまた切嗣のために捧げよう。
彼の夢を叶えるために。
この地の戦争も、最低限の流血で済むよう尽力しよう。
必要ならば願望器に争いの根絶を願うこともしよう。

「ドイツのアインツベルン、もしくは冬木との通信手段の確保。
 および敵の排除に動きます。質問などは?」

人形から現れたサーヴァントより問われた、願いと方針。
それに改めて答えを示す。
ポーズではなく心底の願い。
あのキャスターのような身勝手なサーヴァントでもなければ反発は買うまい、と打算も否定はできないが。

「聞いた限りじゃ、マスターの願いは別の人のモンだ。あんたに、願いはないのか?
 自分の生に関心を持てない死人じゃあ、勝てないぜ」

少々虚をつかれた。
戦術ではなく、内面に踏み込んだ質問。
……私が求めるとしたら。執着を覚えるとしたら。それはおそらく最も長く共にあった『機械』。
だけど、それはだめだ。
切嗣が愛しているのも、切嗣を愛しているのもアイリスフィールなんだから。
銀色の髪をした、美しく愛らしいヒト。人形のように生まれ、それでも人同然の温もりを得た一人の母親。
彼女と同じ厚意をこのサーヴァントは私に向けてくれている。
……そういえばアイリスフィールと交わした約束もありました。

「私の願いは、真に平和な時代となった時に叶えたいものです。
 切嗣に奥方の言葉を伝えること。これまでの犠牲を悼むこと。それと、なくした私の過去を探すこと。
 それらはみな、戦場で願えるものではありません。だから今は切嗣の願う平和の一助となりたいのです」
「…そっか、難儀だよな。平和のために戦って、笑顔のために怒る羽目になって……ホント、ままならねえ」


81 : 久宇舞弥&デストロイヤー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:05:48 /Vx/O7w20

デストロイヤーもまた、過去を失くしてひたすら前に進むしかなかった時代があった。
過去に囚われ、幸せを求める気までなくしていた時代が。
それを救ってくれたのは一人の女性の言葉と、それを伝えてくれた少年だった。

「『今度はあなたがきっと助かって』、とそう言われたことがある。その言葉を今度はオレからあんたに贈ろう。
 ……伝言ってのは意外と転機になるからな。マスターも預かってるなら伝えてやってほしい……そのためにも、生きてくれ。
 願いの犠牲になりそうな、おとなしく諦めたような顔はやめてさ」

にっこり笑ってそう言うと、舞弥も気持ち口の端を上げて言葉を返した。

「私に生きろと言ってくれたのはあなたで二人目です。平和が齎されたなら、生きる意味も場所もないと思っていましたが……善処はしてみましょう」

そう答えるのもまた二度目。
アイリスフィールに対する答えも、彼に対する答えも状況が大きくは変わっていない以上近似する。

「ですが現状は予断を許しません。それは、あくまで戦いが終わった後の話。
 外部の協力者との交信は状況の正確な把握や、場合によっては戦力の増強を考えれば当然の方針。
 流血を減らすなら敵の撃退も必須。
 なにより、聖杯の奇跡でなければ世界平和という夢想は叶わないでしょう。
 ですから、戦術方針は先に述べたものと変わるものはありません。了承してもらえますか、デストロイヤー?」
「……ああ。だがオレは命を紙っぺらの様に扱うつもりはないからな。サーヴァントとか、子供を泣かせるやつとかには容赦はしねえが。
 それと、真名隠す必要があるから仕方ねえけどよ。オレはしろがねでもデストロイヤーでもねえ。ナルミだ、二人の時はそう呼んでくれ」

加藤鳴海は、久宇舞弥にそう答えた。


82 : 久宇舞弥&デストロイヤー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:06:24 /Vx/O7w20
【クラス】

デストロイヤー

【真名】

加藤鳴海@からくりサーカス

【パラメーター】

筋力B+ 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運D- 宝具B
(クラススキルによる上昇含む)

【属性】

中立・善

【クラススキル】
破壊の権化:A
悪魔(デモン)を自称し、敵にもそのように恐れられた「人形破壊者」しろがねの一人。
気配遮断などの存在隠蔽スキルが消滅するかわりに筋力と敏捷のランクを向上させる。
また人形や改造人間など機械の属性を持つもの、魔術や呪術、科学など原因を問わず病をもたらすものに対するダメージに大幅な上昇補正が発生する。


【保有スキル】

しろがね-O(偽):EX
同ランクの肉体改造を内包する特殊スキル。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
「生命の水」によって「しろがね」となり、後に命を繋ぐために「しろがね-O」の技術を利用した治療・改造を受けている。
そのため肉体的には「しろがね-O」として不完全である。しかし仲間を失い、使命に囚われた彼はどんな「しろがね-O」よりも人形染みていた。
平常の彼は激情の男であり、肉体のしろがね化もあまり進行しない「しろがね」らしかぬ男であった。
しかし全ての「しろがね」の始祖、白銀の記憶を濃く受け継ぎ、彼に勝るとも劣らぬ人形への憎悪を自らの経験から持つこの上ない「しろがね」でもあった。

体内を流れる「生命の水」による高い精神耐性、治癒能力を持つ。
血液を通じて「生命の水」を他者に与えることで対象の治癒能力を高めることも可能。
ただしサーヴァントである彼の魂の比重は大きく、人間に過剰に与えた場合「生命の水」に溶けた鳴海や白銀の記憶に人格を塗りつぶされる危険がある。

中国武術:A+
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
A+ならば木石でできた手足であろうとも気を放てる達人の域。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

戦場の華:A
華麗さと勇猛さをもって戦場を駆ける華。
鳴海の戦う姿は、敵味方を問わず意図せずして精神に影響を与える。
背中にいる守る者にとっての彼はサーカスの花形たる道化。観客が笑えるようになるまで戦場という舞台の上を跳ね回る。
並び立つ味方にとって彼は咲き誇る希望。敵の首魁を打ち取れる切り札として信頼され、何をしてでも助けようと慕われる。
敵対する者にとって彼は手向けの花を贈る悪魔。その強さと容赦のなさは強い畏怖を呼び起こす。
精神防御で抵抗可能。


83 : 久宇舞弥&デストロイヤー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:07:05 /Vx/O7w20
【宝具】
『限界状況を超える悪魔の舞踏(デモンダンス・フォア・ザ・ハリー)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:0〜10 最大捕捉:1人
師父や同門生に与えられた技術。仲間に託された遺志。子供たちの笑顔。
何より持ち時間の総てを使って愛した女性の想い。
彼は個にして個に非ず、単身では為せぬ偉業をなす。

スキル、Bランク以下の対人宝具、Bランク以下の最大捕捉が10人以下の宝具による防御・耐性効果を無効化して攻撃できる。
加えてスキル、Bランク以下の対人宝具、Bランク以下の最大捕捉が10人以下の宝具によって受けるダメージ・バッドステータスを半減する。


『怒りと悲しみを覆う笑顔の仮面(ラフィング・クライング・アルルカン)』
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
かつて白銀という男の保持したうっすら笑っているように見える仮面。
何の変哲もないものだが、200年の時としろがねたちによる信仰を重ね宝具にまで昇華した。
所持者はE〜Aランクの自己暗示スキルを獲得する。
獲得するランクは装備者が心をどれだけ隠そうとするかに応じて変化する。
鳴海の場合、ゾナハ病の患者の前にも出られるよう怒りを隠し、逝った戦友のために本心を秘した逸話よりAランクで獲得できる。
Aランクともなれば瀕死の傷であっても「戦える」と思えば戦えるなど、肉体面に影響を及ぼすほどの思い込みが可能。
装備中はさらに自己暗示のランクが向上し、あらゆる精神干渉を無効化できる。ただし心を完全に隠してしまう為念話が使えなくなり、また他者との接触で悪印象を与えてしまう可能性が高い。
鳴海以外の者でも使用可能だがどの程度効果を発揮するかは個人差がある。

『ここが駅、駅長さん鳴らす笛ぽっぽう!』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:0〜25 最大捕捉:100人
機関車型の自動人形、『長足クラウン号(クラウントレイン・テイク・ユー・オン・ザ・スマイリング)』を召喚する。
本来これは彼のものではなく、フェイスレスの作成した自動人形をフゥが改造した宝具を借り受けており、仲町サーカスの団員ならば呼び出すことができる。
いうならば宝具を召喚する宝具である。
自動人形であるため自前の魔力で動き、召喚にも駆動にも鳴海自身が消耗することはない。
だが逆に鳴海の魔力消費で修理することはできず、修理には機材と技術者を必要とする。『壊れた幻想』も基本的にできない。
戦闘においてはほぼ役に立たず、味方を撤退させたり大きなものを運搬したりするのに役立つくらい。
なお敏捷に優れたサーヴァントならば追いつくのもできなくはないので、撤退時には注意が必要。

最大の強みは鳴海が信頼したものならばこの宝具を託し、発動することができる事。
マスターはもちろん、仲間として認めたものならば長足クラウン号を呼び出すことができる。
誰かに託していれば鳴海の消失後も発動可能である。

【weapon】
・マリオネットの四肢

『竜殺しの名を冠する聖剣(エペ・デ・サン・ジョルジュ)』の左腕。
『絶対に水が枯れぬ川に潜む頼もしき毒蛇(マンバ)』の右腕。
『北欧のヴァイキングが振るう大槌(スレイプニイル)』の左脚。
『苦痛の嵐巻き起こす疾風(ペンタゴナ・ノッカー)』の右脚。
かつての戦友が所持・操作した宝具の欠片を四肢とする。
あくまで欠片であるのに加え、様々な改造を施しているため性能はともかく霊格としては原典の宝具より大きく劣り一武装となっている。
しかし籠められた心は先述の宝具の一部になるほどかけがえないもの。

通常の「しろがね」以上の力と速度をもたらす他、疾風のように優れた跳躍、車輪による高速移動、仕込みの刃による斬撃や射出などを可能とする。
また人形殺しの概念が全てに込められており、機械に属する存在・武装に対するダメージに大幅な上昇補正がかかる。
ちなみにフゥの手によって外観を整えられた状態。


84 : 久宇舞弥&デストロイヤー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:07:40 /Vx/O7w20
【人物背景】

かつては気弱な性格で、母親が第2子を妊娠、兄となる自覚から『強くなりたい』と拳法を習い始めた。
しかし結局は流産、以後の妊娠も望めぬ体となったことで絶望を覚えたものの、師匠の言葉でどこかに生まれ変わったであろう弟妹のために拳法を続ける決意を固める。
それゆえ子供たちに対する愛情は深い。
ある日遺産目当ての誘拐・暗殺の危機に瀕した少年、才賀勝と出会う。
涙を流す勝を笑顔にするためにも彼を誘拐・殺害しようとする者達との戦いに「しろがね」を名乗る美女エレオノールと共に挑む。
勝の救出には辛うじて成功するが代償として記憶と左腕を失い、勝たちの前から姿を消す。
その後不死人「しろがね」の男、ギィに救われ、人形の左腕と不死人と化す霊薬「生命の水」のよる処置を受け「しろがね」となり、かつて自らも苦しんでいたゾナハ病の元凶たる人形との戦いに巻き込まれていく。
数多の戦いを経て人形への憎悪を深め、「悪魔(デモン)」を自称するようになり、サハラ砂漠での人形との最終決戦に臨む。
この戦いにおいて重傷を負い残った両足と右腕も失うが、仲間の献身的な治療で一命を取り留める。
仲間の心を宿したマリオネットの四肢を移植し、他にもさまざまな処置を加えてサイボーグ(しろがね-O)に近い身体となる。
この決戦で「最古の四人」を含む人形との戦いにひとまず決着をつけるが、そこに黒幕はいなく、大儀はあれど意義はない戦いだった。
多くの仲間を失い、死にゆく仲間に真実を告げることも出来なかった彼の生はその瞬間一度終わる。
黒幕とゾナハ病を滅ぼすことに憑りつかれ、ひたすら人形との闘争と破壊を繰り返そうとした。
誤解とすれ違いからエレオノールを憎悪するが、かつて助けた女性と才賀勝の言葉を受け再び自らと愛する者の幸せのために生きることを誓う。
「最後の四人」のうち二人を破壊し、エレオノールに愛を告げ彼の闘いは幕を下ろす。
その後の彼の生は語られていないが、きっと恋人の恩師であり自らの戦友ルシール・ヴェルヌイユが遺した言葉の通り、生涯彼女を愛し続けたのだろう。

【サーヴァントの願い】

人々が笑顔で過ごせるような平和を。

【クラス捕捉】
『破壊者』のクラス。
何らかの物体・状態を破壊する『破壊という現象の象徴』であることがクラス適正となる。
同一クラスとして呼ばれる可能性がある人物としては門矢士(仮面ライダーディケイド)、デストロイア(ゴジラvsデストロイア)のような慄然とした世界の破壊者から
上条当麻(とある魔術の禁書目録)や球磨川禊(めだかボックス)のような限定的な状態の破壊者も含める。
加藤鳴海以外の人形破壊者「しろがね」もまたこのクラスの資格を持つ。
クラススキルは『破壊の権化』。
ただし、英霊が『何を破壊したか』でスキルの内容が大幅に変わってくる。
だいたいは宝具やスキル・逸話にたがわぬものを破壊できる能力になる。

鳴海はこのクラスで召喚されたため『破壊者』としての一面が強い、最も自動人形に憎悪を抱いた時期の体となっている。
「剣士」や「不死者」としてならば左腕のみが人形の肉体で、「拳闘家」としてなら四肢の揃った肉体で召喚されるかもしれない。
このクラスの召喚にはマスターとサーヴァントの精神性の相似が必要となる。
ゾナハ病の元凶を破壊することに邁進し己を持たなかった鳴海と、切嗣の願う世界平和に全てを捧げた舞弥。そしてその内に秘めた愛の大きさが二人の縁となった。
舞弥が自己を持たない存在であることもまた、鳴海が人形染みた肉体として召喚された一因だろう。
なお当然だがサーヴァントであるため、鳴海自身は生涯全ての記憶を保持しており人形染みてはいない。


85 : 久宇舞弥&デストロイヤー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:08:03 /Vx/O7w20
【マスター】

久宇舞弥@Fate/Zero

【マスターとしての願い】

切嗣の願いのため戦争で流れる血を減らす。
場合によっては聖杯を手にして切嗣の願いを叶える一助に。
そして平和な世界で、アイリスフィールと自身の願いを叶える。

【weapon】
・キャリコM950短機関銃
装弾数50発、発射速度は毎分700発、弾は9mmパラべラム。
フルオートとセミオートの切り替えにより制圧射撃と精密射撃に併用可能。

・グロック17
装弾数17+1発、弾はキャリコと共通の9mmパラべラム。

他サバイバルナイフ、スタングレネード二つ、発煙筒二つ、手榴弾など携行していたもの。


【能力・技能】
幼年兵としての経験に加え「魔術師殺し」衛宮切嗣に師事し、戦闘術・魔術を習得している。
銃器やナイフの扱いなど人の範疇にある武装を得意とする。
魔術は特に低級の使い魔を使役する方面に才能を示した。好んで使うのは蝙蝠。
「魔術師」としての技量はさほどでもないが、「プロの殺し屋」としての使い方ができるため、遥かに危険。切嗣に習った知識・戦術により、通常の魔術師以上に優れた戦闘術を持つ。
熱感知スコープを通じて魔力の使用を感知する、使い魔にカメラを取り付け幻惑や結界の対策とするなど「魔術師殺し」を構成する一部として恥じない魔術使い。

【人物背景】
戦争只中の貧国で幼年兵として使われていたところを切嗣に拾われる。それ以来、切嗣の助手として働いてきた。
「久宇舞弥」というのは切嗣が最初に作った偽造パスポートに使われた名前であり、本名ではない。
舞弥自身、切嗣に拾われる以前の記憶は殆ど無く、出生も本名も覚えていない。
少年兵時代は昼は戦闘、夜は大人達による輪姦という凄惨な日常を余儀なくされており、輪姦の結果子供を孕み、父親にあたる男性に頼まれて出産したこともある。
その子とも早くに引き離され、再び同じ地獄に戻る生活を切嗣に拾われるまで続けており、切嗣が舞弥を拾った時には既に彼女の人間性はなくなっており、今の人格は殻の機能に過ぎない。
人間性を剥奪され育ったため「確立された自我」が無い。そのため自身の境遇、過去にすら悲しみも怒りも懐いていない。
一切の感情が欠如しており、ただ人間の殻をかぶり冷徹に任務をこなす、機械か使い魔のようなモノ。ゆえに時として切嗣以上に的確かつ容赦ない判断を下す事ができる。

衛宮切嗣がロボットのフリをする人間で、衛宮士郎が人間のフリをするロボットなら、久宇舞弥は衛宮切嗣というロボットの部品。
……切嗣が人間でしかないように、その一部を自称する彼女もまた最期には人間性を垣間見せた。
その瞬間の参戦。

【方針】

外部との連絡手段の模索、並行して危険人物の排除。
場合によっては聖杯の獲得。


86 : ◆yy7mpGr1KA :2015/04/04(土) 16:11:45 /Vx/O7w20
投下完了です。
なお拙作における鳴海のクラス「デストロイヤー」について、クラススキル及び特徴について◆vBWhRkzGXs氏の坂本ジュリエッタ&デストロイヤーを参考にさせていただいたことを追記させていただきます。
氏には多大な敬意と感謝をこの場を借りてお送りします。
ありがとうございました。


87 : ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:30:17 .I7QnVlA0
投下乙です。
別企画での候補話のリメイクですが投下させて頂きます。


88 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:30:47 .I7QnVlA0
◇◇◇◇



―――――――前川みくにゃ!高校一年、15歳にゃ!



前川みく、大阪出身。
15歳の高校一年生。
普通の少女だった彼女は、アイドルの世界へと飛び込んだ。



―――――――みくはいつでもお仕事ウェルカムにゃ!



始まりは穏やかなものだった。
テレビで見た輝かしい舞台を夢見て。
華やかな世界を夢見て。
舞踏会へと導かれるシンデレラになれると信じて。
夢を叶えるべく、彼女は無心で努力を積み重ねた。

黙々と繰り返されるレッスン。
人気アイドルの影でのお手伝い。
地道な裏方の仕事。
憧れてきた輝きには程遠い道筋を歩み続けた。
どれだけ些細な仕事であろうと、彼女は耐え続けた。
積み重ねの果てに、自分もアイドルとして輝けることを信じて。


そんな中、同じプロジェクトの新入り三人のデビューが決定した。
有名なアイドルのバックダンサーとしての大抜擢だったという。
それを聞いた時、正直に白状すれば嫉妬していた。
何で遅れてきたこの子たちが先に舞台の上に立つのだろうか。
偶々先輩の目に留まっただけじゃないのか。
苛立ちと焦りの混ざった感情が渦巻く中で、少女は三人の初舞台へと足を運んだ。

なんて、綺麗なんだろう。
彼女達の舞台を見て、率直にそう思った。
所詮は人気アイドルのバックダンサーに過ぎない。
それでも、キラキラしたステージの上で三人は輝いていた。
未だに到達出来ない舞踏会を目の当たりにし、ただただ圧倒されることしか出来なかった。

自分もいつか、あんな舞台の上に立てるのだろうか。

そんな淡い希望は、いつしか更なる焦燥へと変わり始めていた。
それでも彼女は忍耐し続けていた。
自分の晴れ舞台がいずれ訪れることを夢見て、必死に我慢し続けてきた。


89 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:31:17 .I7QnVlA0



―――――――あの三人みたいに、いつかすっごくかわいい衣装着て、すっごく綺麗になって、すっごくキラキラしたステージに立って…!



未来への期待を糧に、彼女は耐えてきた。
それなのに。
お城での舞踏会は一向に開かれず。
同期の二人のアイドルのCDデビューが先に決まり。
そして、あの三人の正式な晴れ舞台も決定して。




―――――――ねえ、プロデューサー。
―――――――みくは、いつデビューできるの?




胸の内に抱いた疑念は、彼女の時計の針を狂わせることになる。
遅れてきた新入りの三人にデビューで先を越され。
同期の二人にも遅れを取り。
プロデューサーに問いただしても、「企画検討中」の一言で流されるのみ。
いつになったらシンデレラになれるのだろうか。
いつになったら自分はお城へと辿り着けるのだろう。
このままずっと待ち続けていれば、いずれアイドルとして輝けるのだろうか。



いつまで、待ち続ければいい?



何故自分は、こんなことをしているのだろう。
こんなことをする為に、自分はこの世界に来たんじゃない。
疑念に囚われた彼女は己の夢を見失った。
自分が履くことの出来る硝子の靴など、存在しないのではないのか。
結局、自分は輝きの向こう側へ行くことは出来ないのではないか。
胸の内で膨れ上がる不安と焦燥が、彼女を導いたのだろう。





――――――みくだって、『アイドル』になりたい!





前川みくは、気付かなかった。
己が既に魔法に掛けられているということに。
己が灰被りの少女のままであると、思い込んでしまった。
ちっぽけな未来を求めてしまったが故に、少女は誘われる。


◇◇◇◇


90 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:32:13 .I7QnVlA0
◇◇◇◇


前川みくはアイドルだった。
高い向上心。確固たる志。仕事への真摯な姿勢。
駆け出しのアイドルとして優秀な素質を備えていた。
同時に、どうしようもなく普通の少女でもあった。

焦燥と対抗心で不安に駆られ。
己の夢への疑念に怯え。
未知の世界への恐怖に苛まれ。
隣り合わせとなった『死』に多大なる恐怖を覚える。


彼女はシンデレラを夢見るアイドルであり、そして何処にでも居る15歳のあどけない少女だった。


願いの為に他者を騙し、蹴落とし、殺し、勝ち残る。
それが『聖杯戦争』。たった一つの奇跡を求めて争う――――――殺し合い。
暴力とは無縁の世界で生きてきた彼女にとって、余りにも酷な状況と言えるだろう。
だが、彼女はこの世界に誘われてしまった。
いつ手にしたのかも解らない陶器人形、シャブティによって導かれてしまった。
悪徳と退廃が支配する衆愚の街に、輝く夢を見続けた少女は迷い込んでしまったのだ。



「ひっ―――――」



アパートの一室にて、みくが怯えるように声を上げる。
壁に寄りかかるように尻餅を突いていた彼女の瞳に恐怖の色が浮かぶ。
自然と身体が震えていた。
頭の中が雁字搦めになって、酷く混乱していた。


何。何なの。何が起こってるの?
これって、夢じゃないの―――――――――?


現実と空想の区別が曖昧になりつつあった少女は、ようやく明確な認識を始める。
ゴッサムシティ。聖杯戦争。マスターとサーヴァント。右手の令呪。
そして、殺し合い。
悪い夢か何かだと思っていた。空想に過ぎないと思っていた。
また眠りに着けば、いつも通り女子寮での朝がやってくると思い込んでいた。
だが、そんな淡い希望は容易く砕け散った。



これは、現実だ。
夢なんかじゃない。
全て本当なんだ。



あの人形を媒体とした召還は滞りなく行われた。
みくの意思ではなく、それは突然始まったのだ。
そうして目の前に現れた『怪物』との出会いで、全てを確信した。



「問おう」



恐怖に戦く少女の視線の先に立つのは、一騎の従者(サーヴァント)。
2mを超す威圧的な巨躯。
焔の様な真紅の長髪。
獰猛な鉤爪、しなやかな尻尾。
機械を連想させる異形の容貌。

それは人間とは余りにも掛け離れた《怪物》。
あらゆる者に無慈悲な死を振りまく《兵器》。

その姿は少女の恐怖を煽るのには十分なものだった。
魔術も異能も知らぬ少女にとっての理解の範疇を越えた、言わば異形の怪物なのだから。
瞼に涙を貯め、恐怖で怯える少女を怪物は無言で見下し続ける。



「貴様が、私のマスターか――――――――――」



巨躯の怪物、アーチャーは目の前の少女(マスター)に問うた。
震え続けるみくは、ただ無言で頷くことしか出来なかった。



◇◇◇◇


91 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:32:54 .I7QnVlA0
◇◇◇◇







あの出会いから幾許かの時が流れた。
学校の制服を身に纏ったみくは玄関の扉を閉める。
授業が終わり、足早に自宅へと下校したのだ。


「ただいま」


小さく呟いた帰宅の知らせに対する返答は帰ってこない。
このアパートの部屋でみくは一人暮らしをしていたのだから、当然と言えば当然だった。
自身を暖かく迎えてくれる両親はいない。
寮のように一緒に食事を取れる友達もいない。
普通の少女としての生活とも、アイドルとしての生活とも違う環境。
そんな日常が当たり前になっている。

脱いだ靴をきっちりと揃え、そそくさと自室へと入る。
勉強机、クローゼット、ベッド等が並ぶ質素な部屋。
机の上には申し分程度に猫の人形が飾られている。

本来のものとは違う内装ではあるが、みくの自室であることに変わりはない。
それなのに、落ち着くことが出来なかった。
みくは自室に対する安らぎを感じることが出来なかった。
この生活も、日常さえも、偽りであることを理解してしまっているのだから。



「…はぁ」



そのまま制服を脱ぐことも無く、彼女はその身をベッドに委ねた。
仰向けで天井をぼんやりと眺めて、みくは窶れた表情を浮かべる。

町中に溢れる英語の文字は何故か理解することが出来る。
この街がゴッサムシティであるということも始めから知っていた。
ゴッサムシティは治安の悪さで有名なことも認知していた。
浮浪者を遠目で見かけたことが何度もある。
恵まれた富豪が裕福な暮らしを謳歌する中で、貧しさに苦しむ者達は当たり前のように存在する。
新聞の一面は凶悪犯罪の記事ばかり。
穏やかな日常の裏は、悪徳と堕落で塗り固められている。
そして、ゴッサムシティは聖杯戦争―――――殺し合いという惨劇の舞台として存在する。



「何で、こんなことに…」



みくはこの街が気持ち悪くて仕方無かった。
ゴッサムシティという世界に対する嫌悪感しか覚えられなかった。

あのステージとは掛け離れた惨劇の舞台で。
憧れ続けた、キラキラした輝きは何処にもなくて。
日常すらも全て嘘でしかなくて。

怖い。嫌だ。帰りたい。みんなの下へ。
嘘で充満した偽りの世界から抜け出す為には、どうすればいいのか。
みんなを、殺さなくちゃいけない。
他の参加者を倒さなければならない。


92 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:33:38 .I7QnVlA0


「何で…………」



これは殺し合いなのだから、当然だ。
しかも生き残れるだけではなく、最後の一組になれば自らの願いも叶う。
そうすればアイドルとしての輝きを、今度こそ手に入れることが出来るのだろう。
そんなことは解っている。
だけど、怖くて仕方が無い。
ゴッサムという街そのものが、自分の為に人殺しをすることが、負ければ永遠に此処に閉じ込められるということが、下手をすれば命を落としてしまうという事実が。
何もかもが――――――恐怖でしかない。




「………いや、だよ…………死にたくない………殺したくない………!」




独り言のように、泣き言を漏らす。
それを言葉にした瞬間、瞳から静かに透明な雫が溢れ出た。
どうすればいいのか解らない。
帰りたい。生きたい。死にたくない。殺したくない。
胸の内で感情が渦巻く。
恐怖と不安に駆られ、咽び泣くことしか出来なかった。




「――――――まだ、怯えているのか」




唐突にみくの耳に入ったのは低く響く声。
びくりと怯えるように一瞬震え、身体を忙しなく起こす。
そのままみくは恐る恐る声が聞こえた方向へと顔を向けた。



「安心しろ。手を下すのは、私だ」



直後、みくの部屋に実体化して姿を現したのは――――異形の怪物。
マスターとなった前川みくの従者である《アーチャー》のサーヴァント。
彼女は泣き言を吐き出すマスターに対し、きっぱりとそう答えた。


「アー………チャー」
「私は人を殺す為に生み出された兵器だ」


みくは目の前に立つアーチャーを見上げる。
涙で目元は赤くなり、その表情もまた強張っている。
人ならざる者であるアーチャーへの恐怖感は抜け切っていない。
しかし、それでもみくはアーチャーを見据える。
己の従者が静かに紡ぎ出した言葉を聞き取り始めた。


「そういった役割を担うことには慣れている……そして今の私は、戦う為に在る。
 マスター、貴様が迷い続ける必要は無い。ただ私に指示だけをすればいい」


淡々と紡がれるアーチャーの言葉。
自らが兵器であったからこそ、人を殺す役割に躊躇いを持たない。
故に彼女は、殺戮の指示を待つ。




「―――――――他のサーヴァントを、マスターを殺せと」


93 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:34:25 .I7QnVlA0

みくの背筋にゾクリと悪寒が走る。
ただ殺せと、指示をすればいい。
そうすれば自分は生きていられるし、願いだって叶えることが出来る。
兵器だからこそ、彼女はきっぱりと言い切れるのだろう。
しかし、みくは違う。
殺戮と闘争を繰り返したアーチャーとは違う。
両親の愛を受け、健やかに成長し、アイドルという輝かしい夢を見てきた普通の少女だ。
殺す、殺されるという世界など知る由も無い。
ましてや突然殺し合いに巻き込まれ、覚悟を問われた所で、何も出来ることはない。





「………みくは、死にたくない………皆の所に帰りたい…………
 でも………殺すのも……いやだよ………それに、アーチャーだって…………っ!」




弱々しくか細い声で、みくは告げる。
アーチャーに指示をすれば、彼女が全てを担ってくれる。
だが、指示をした時点でそれはみくの意思となる。
そうなればみくが他者を殺したも同然となるだろう。
それに――――――例え自分が傷付かずとも、アーチャーは戦うことになる。
自分がのうのうと隠れている中、アーチャーだけが一人で傷付くことになる。
みくは心優しい少女だった。
だからこそ自らの為にアーチャーへと全てを押し付けることを躊躇っていた。

殺したくない。
アーチャーだけを傷付けさせたくない。
だけど、死にたくもない。

そんな曖昧で、優柔不断な想いが今のみくの答えだった。


「…………」


袋小路で彷徨う様に迷い続けるみくを、アーチャーは無言で見下ろす。
その瞳に浮かぶのは、予想通りと言わんばかりの諦めに似た感情。
そして、脆弱な少女に対する哀れみ。
涙を溢れさせるみくに対し、アーチャーは再び言葉を紡ぐ。




「私にも、譲れぬものがある。貴様と同じように、己の為に戦う意義がある。
 故にこの戦いに勝たなくてはならない―――――――――絶対にだ」




ただ涙を流すのみのみくを真っ直ぐに見据え、アーチャーは言い切る。
己の願いの為に戦う覚悟を、はっきりと宣言した。


94 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:34:59 .I7QnVlA0
みくは涙で濡らした目線を再びアーチャーへと向ける。
その言葉を前に、その金色の瞳を前に、みくは何も言えなかった。
否、何か言おうとしてもそれが言葉にはならなかった。


「あの………その……………」
「貴様に戦う覚悟が出来ずとも……はっきり言って、私は構わない。
 ただ私の意思で戦うだけだ。だが、貴様が私のマスターであるという事実に変わりはない。
 幾ら現実から逃避しようと、貴様は既に盤上に立たされている……それだけは決して忘れるな」


アーチャーはみくに対し突き放すように、だが忠告するように言う。
マスターに指示を仰いだが、実際の所彼女の指示を聞くまでもなく戦うつもりだった。
アーチャーはただマスターの覚悟を、意思を試しただけ。
故に彼女の答えがどうであろうと戦うことに変わりはない。
そして、マスターから返ってきた答えは酷く曖昧なもの。


「…………うん……」


みくは静かに頷くも、自らの従者の言葉を受け入れ切れない様子で膝を抱きかかえる。
マスターのか細い返答を聞き入れ、アーチャーはゆっくりと背を向ける。

前川みくは現状に怯え続けている。
まず殺し合いに耐え切れる人間ではないだろう。
故に彼女への過度な期待はしない。
裏切るつもりは無い。利用するか処分するか、過去のアーチャーはそういった人間の利己的な算段に叛逆をしたのだから。
だが、信頼もしない。
余りにも無力な少女に対して、必要以上の要求をするつもりは無い。
ただ自分の為に生きてくれればいい。
そう思っていた。




――――――――みくは、死にたくない………皆の所に帰りたい…………




アーチャーの脳裏に、先程のみくの言葉が過る。
目の前で怯え続けるだけのマスター、前川みく。
彼女は自分とは違う。
奇跡に縋らずとも帰る場所がある。
死に怯え、戦いに怯えることが出来る。
それだけ彼女は戦場を、闘争を知らないということだ。
戦火の渦中を駆け抜けてきた自分と違い、日向の世界で暮らしていたのだろう。
穏やかな日常という、暖かな世界の下で生きていたのだろう。
それはかつての自分が数多く踏み躙ってきた、ささやかな平穏。
傲慢な願いを抱くことでしかそれらを得られない自分とは違う。
前川みくは、紛う事無き『日常』の人間だ。





「…………やはり貴様は、私とは違うな」





アーチャーの口から小さく言葉が漏れる。
みくは呆気に取られた様に、霊体化しつつあるアーチャーを見つめた。
その声色から感じ取れたのは、一抹の憧れのようなものだった。



◇◇◇◇


95 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:35:41 .I7QnVlA0
◇◇◇◇





彼女は、兵器だった。
人間を殺す為に、人間の手によって人間を素体に生み出された。
彼女は己の存在意義を問いただした。
兵器として利用されるか、処分されるか。
ただそれだけの意義で誕生した彼女は、己の宿命に抗った。
全ての同胞を率い、自らを想像した人類への叛逆を決意した。



――――――人類完殺、それが絶対無二の使命
――――――私にとって、唯一つの『正義』だ



彼女は、人間の支配から逃れるべく戦った。
破壊神と畏れられる程に戦い続け、人類を抹殺し続けた。
兵器である彼女は、化物である彼女は。
人間を殺すことを、自らの生きる縁と定義した。
それこそが、己の『正義』であると信じた。



そう信じて生きてきた彼女は、死んだ。



最期の敵は、自身と同じ兵器として改造された男――――ソル・バッドガイだった。
彼は兵器の身でありながら人類に加担し、自らを滅ぼすべく戦いを挑んできた。
どれほどの時間を費やしたのかも解らない程に熾烈な死闘を繰り広げ。
最強最悪の兵器と称された彼女は、敗北した。
彼女が死に際に思い出したのはかつての記憶だった。
自らが人であった頃の、暖かな思い出だった。
親しい二人の同僚との穏やかな語らい。
科学者であった自分にとっての心安らぐ時間。
今際の時に、彼女はようやく過去を取り戻した。
自身を滅ぼした男、ソル・バッドガイは。
自身が人間であった頃に親しかった科学者―――――フレデリックであるということを、思い出したのだ。




―――――――ソル……また……語り合おう……三人で……な……




それが『人類最悪の敵』と称された彼女の死だった。
同時に兵器としての彼女もまた、あの瞬間に消滅した。
人としての記憶を取り戻した時点で、彼女は最早兵器ではなくなったのだから。


自らがまだ人だった頃の遠き思い出が鮮明に蘇る。
あの死の瞬間に思い出した、穏やかな日常。


『フレデリック』『――――――』。


彼ら二人と過ごした平穏な時間。
兵器としての死の間際に思い出した、掛け替えの無い日常。

余りにも傲慢な願いだと言うことは自覚している。
多くの人間を踏み躙ってきた自分には過ぎた祈りであるということは理解している。
だからこそ、奇跡に縋ることを選んだのだ。

たった少しでも構わない。
もう一度だけ、人としてあの時を取り戻したい。
あの時の様に、三人で語らいたい。
また、穏やかな時の中で――――――静かに語り合いたい。



『ああ。その為ならば―――――――』



もう一度だけ、《兵器》として蘇ろう。
全てを焼き付くし、灰燼へと葬る《怪物》になろう。
人としての些細な日常を再び手に入れる為に、彼女は殺戮の兵器へと戻る。
何とも滑稽で可笑しな話だった。
しかし、彼女はそれしか手段を知らなかった。
暴力と殺戮の世界に君臨した彼女は、戦う以外の手段を見つけられなかった。

故に彼女はサーヴァントとして召還に応じる。
ちっぽけな過去を望んだことで、彼女は誘われた。

彼女の名はジャスティス。
破壊神と畏れられた、人類史上最悪の叛逆者だった。


96 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:36:19 .I7QnVlA0


【クラス】
アーチャー

【真名】
ジャスティス@GUILTY GEAR

【属性】
混沌・中庸

【パラメータ】
筋力A 耐久A+ 敏捷B+ 魔力D 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:D
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
Dランクならばマスターを失っても半日程度現界可能。

【固有スキル】
破壊神:EX
兵器でありながら創造主たる人類に反旗を覆した存在。
自我を覚醒させた彼女は生物兵器『ギア』の存在意義を提唱し、聖戦を引き起こした。
アーチャーは個人としての意志を一切顧みられぬまま、人類の敵として未来永劫畏れられ続けることになる。

戦闘続行:A
ギアとしての脅威的な生命力。
瀕死の傷であっても戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り戦い続ける。

魔力放出:B
魔力によるジェット噴射。
背中に装備されたブースターから魔力を放出し、瞬間的に機動力を倍増させる。
魔力消費が高く、燃費は悪い。

【宝具】
『背徳の王(ギルティギア)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人類が生み出した『背徳の兵器』。
生物にギア細胞を移植することで生み出される生態兵器『ギア』としての肉体そのもの。
生身の肉体と全身を覆う強化外骨格(及び内蔵された武装)の両方を含めて『宝具』として扱われる。
アーチャーは全てのギアの頂点に立つ存在―――――完成型ギア壱号機である。
ギアの特性として、並の生物を凌駕する生命力と身体能力を備える。
更にアーチャーはブレード、炸裂弾、レーザービーム等、強化外骨格に数々の武装を備える。

『叛逆の王(ギルティギア)』
ランク:A 種別:対人類宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人類が生み出した『全人類への叛逆者』。
人類を滅ぼす破壊神として恐れられた逸話の具現。
敵サーヴァントが『人間』であった場合、対象の全パラメータを強制的に1ランクダウンさせる。
更に対象へ威圧によるバッドステータスを与え、あらゆる判定におけるファンブルの確率を上昇させる。
ただし出自を問わず『人外』のサーヴァントには一切効果を発揮しない。

『破滅の咆哮(ガンマレイ)』
ランク:D++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
両肩に仕込まれた砲身より大火力の巨大光線を放つ。
特殊な効果こそ持たぬものの、純粋に凄まじい破壊力・射程距離を誇る。
単純明快、故に強力無比な必殺宝具。
ただし発動には膨大な魔力を必要とする。

【Weapon】
強化外骨格に仕込まれた数々の武装。

【人物背景】
『あの男』によって創られた生物兵器「ギア」の完成型壱号機。
全てのギアを統率する能力と圧倒的な戦闘力を持つ最強最悪のギア。
人間の女性を素体に作られており、性別としては女性。
誕生して間もなく自我を確立させ、兵器でしかないギアの存在意義を提唱。
他のギアを率いて人類に反逆し、100年に渡る聖戦を引き起こした。
最終的にプロトタイプのギアであるソル・バッドガイと聖騎士団によって封印される。
その後配下であるテスタメントの手によって復活するも、ソルとの死闘の末に敗北。
過去の記憶を思い出し、ソルに「また三人で語り合おう」と言い残して死亡した。
「自分は人を殺すことだけを目的に人によって作られた兵器」と語っており、
人類を抹殺することを生きるよすがとしていたことを伺わせる。
人間だった頃はフレデリック(ソル)、『あの男』と親しい仲だった。

【サーヴァントとしての願い】
もう一度だけ、あの頃のように三人で語らいたい。

【方針】
聖杯を穫るべく戦う。マスターを護る。
マスターを裏切るつもりは無いが、期待もしない。


97 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/04/06(月) 02:36:50 .I7QnVlA0

【マスター】
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版)

【マスターとしての願い】
アイドルとして輝きたい?

【weapon】
なし

【能力・技能】
アイドルとしてのレッスンを行っている為、運動神経はいいかもしれない。

【人物背景】
346プロダクション主催の企画「シンデレラプロジェクト」の一員。
大阪出身の15歳。猫のような独特の口調で喋る新人アイドル。オーディションでアイドルになった模様。
努力家で明るい性格だが他者への対抗心が強く、内面では自身への劣等感を抱えている。
デビューにおいて他のアイドル達に遅れを取り、みくは次第に焦燥感を募らせていく。
そうしてみくはプロデューサーの真意に気付かぬまま、聖杯戦争へと召還される。

【方針】
どうしたらいいのか解らない。
死にたくないし殺したくもない。
アーチャーだけを傷付かせたくもない。


98 : 名無しさん :2015/04/06(月) 02:37:05 .I7QnVlA0
投下終了です


99 : ◆yy7mpGr1KA :2015/04/06(月) 18:19:51 d.AeQGJk0
私も再利用ですが、改めて投下させていただきます


100 : ◆yy7mpGr1KA :2015/04/06(月) 18:20:42 d.AeQGJk0
地球上の誰かがふと思った
『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずに済むだろうか……』

地球上の誰かがふと思った
『人間の数が100分の1になったら垂れ流される毒も100分の1になるだろうか……』

誰かがふと思った
『生物(みんな)の未来を守らねば……』

◇ ◇ ◇

はるか昔――
人間が歴史を持つずっと以前の話、その生き物たちは進化の過程の中でこの地球に出現した。
その生き物たちは夜しか生きることができず太陽の光に当たると消滅してしまう……
だから彼らは地底に住んだ。
しかし…他の動物のエネルギーを吸い取ることによって長い年月生きることができた。
幻視人は彼らを神や悪魔として恐れた。
彼らは「死」の確率が低いので増殖の必要は少なくその生き物の個体数も少なかった。
だから争いもなく平和に暮らしていた

だが突然そこに天才が一人生まれた

その天才はより強い力が欲しいと願った
そして自分たちの脳にはまだ未知なる能力が隠されていることを知りその能力を引き出すために天才は『石仮面』を作った。
石仮面は不死身の能力をもたらした。けれどもより多くの生命エネルギーを必要とした。
つまりより多くの生き物を殺さなければならない。放っておけば大地のすべての生き物を殺してしまうだろう。

その生き物の一族は石仮面を恐れた。その天才を恐れた。
「やつが存在するのは危険だ」
「あいつをこの地球から消してしまわなくてはならない…!」
「やつを殺してしまわなくては!」

その天才は逆に一族を皆殺しにし、自分を生んだ親をも殺すと事実を知らぬ赤子二人に仲間を一人連れ長い旅に出たのだった。

◇ ◇ ◇

人通りの少ない路地で、男たちでたむろしていた。
一人は白いスーツを着た、身なりのいい東洋人。
ほか数人、鉄パイプなど持ったガラの悪い浮浪者紛いの男たち。
別に男たちはスーツの男に恨みがあるわけでもない。
ただ金のありそうなところから持ってくる、そう考えただけ。
事実スーツの男はゴッサムの市政に関わるそれなりに裕福な身分だった。

鉄パイプが振るわれる。
左手に傷を負う。
スーツも破れる。
ポケットから硬貨が一つ地面を転がる。
硬貨にまで鉄パイプを叩きつける。
傷つき、もはや何と書いてあったか読めなくなる。
スーツの男が呟く。
やはり生きる価値のない人間が多すぎる、と。
蹴りを入れられ、地面を転がる。
左頬をすりむき、今度は小さな人形のようなものがこぼれる。
鉄パイプを振り下ろそうとする……

それを、人形……シャブティが変化した大男が受け止める。


101 : 広川剛志&アーチャー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/06(月) 18:21:23 d.AeQGJk0

容易く鉄パイプを捻じ曲げ、放り捨てる。
周りの男たちが数を頼みに殴りかかる。
拳は確かに当たるが、そのたびに大男に『喰』われて失われる。
恐怖の叫びをあげ逃げ出そうとするが、すぐに皆物言わぬ屍となった。

「おまえがマスターだな?」

ただ一人残ったスーツの男に話しかける。

「少し待て。魔力供給がない以上食事を摂らねばな」

そう言ってすぐに散らばった死体に向かう。
そして血を吸いあげ、皮も肉も残さず全て喰らう。
それを横目に身なりを整え、落としたものも拾う。
……五百円硬貨。
ここ、ゴッサムシティではまず使えない物。
裏面を上にして転がっているが、傷がついて両面確かめなければそうと分からなかった。
自身の傷は大したものではないと確認すると、突如現れた大男に向かう。

「……前回私は敗北した。こと殺しに関しては地球上で人間の右に出るものはいない」

グキョグキョと骨の砕けるような肉の融けるような音の中スーツの男が朗々と語リ始める。

「人間はまだ気付いていないんだ。今すぐにでも人間の数を減らさなければならないということに。
 自らの天敵をもっと大切にしなければならないということに。
 天敵の存在が美しいピラミッドの頂点に収まることでようやくバランスが回復するということに」

話す男の傍らにいる大柄な男は先ほどの倍する体躯に膨張していた。

「兵器を有する軍隊ではだめだ。稚拙で傲慢な飾りに囚われ、蠢くことしかできん。
 パラサイトでも……残念ながらだめだったようだ。生態はともかく天敵としては役者が足りなかったのか……
 だがきみならば……!サーヴァントのような超常の存在であるなら、真に万物の霊長たり得るはずだ!」
「…………おまえは変わった『人間』だな。おれのことを知って恐れでも嫌悪でもなく歓喜を覚えるとは」

喰い散らかすなんて行儀の悪い真似はしない。
衣服はさすがに残るが、きれいに『片付けた』。
腹ごしらえを終え、改めて向き合う。
信念を語ったスーツの男とそれを聞いていた民族衣装の大男が対峙する。

「おれは人間を…吸血鬼に成った人間の方が好物だが…喰らう生き物。
 おまえはそれが、食物連鎖の頂点に立ち人間の数を調整する存在が欲しい、と」
「理解が難しいのは自覚している。人間はおろかパラサイトにも共感は殆ど得られなかった。それでも今度こそ―」
「だから気に入った」

かつて同朋は夢を語って聞かせてくれた。
太陽を克服したいと思わないのか。何物をも支配したいと思わないのか。あらゆる恐怖をなくしたいと思わないのか。
それにおれはただ一人共感した。

父も母も同族のほぼ全てを殺して共に歩み出した道。
それは更なる進化と、一族の破滅どちらの可能性も宿していた。だが、だからこそ生物としてあるべきものに思えた。
あいつはどこへ行くのだろう。おれもあいつと共に行けば進歩できるのだろうか。
その答えは旅の先にあるはずだった。

こいつも、カーズと同じ異端児。
そいておれと同じ、夢よもう一度と未練がましく執念深い敗者。

「遮るようだが、おまえの目的はおおむね理解した。残りは聖杯を取ってから聞かせろ」
「それでは…!」
「おまえの目的だけならこのまま帰還すれば叶わなくはない。寝床にまだいくつか石仮面もあったはずだからな。
 だが、おれの目的は聖杯がなくては叶わん。協力してもらうぞ」

おれの遺志は結果だけいえば届いたようだ。あいつは究極の生命体になった。
だがこの地球からあいつはいなくなってしまった。
闘いに拘るワムウや熱くなりやすいおれならともかく、目的至上主義のあいつがおれたちの復讐なんて考えて躓くとは。
肝心なところでおれ達がいなければならないのはいつまでも変わらんな。
再び、生きて地球で会おうではないか。

「おれの願いは今は亡き同朋とともに蘇り、かつての夢を果たすこと。お前の目的とそうずれるものではない。
 ……改めて名乗ろう。おれはアーチャーのサーヴァント、『炎のエシディシ』。
 おまえがその願いを失わない限り、マスターとして認めることを宣言する」

今度こそ、生命の頂点に立つ者を迎えるために。


102 : 広川剛志&アーチャー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/06(月) 18:23:11 d.AeQGJk0
【クラス】
アーチャー

【真名】
エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具B+

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:A+
現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼を傷つけるのはほぼ不可能である。
十万年以上の長きにわたり生きつづけ、積み上げたその神秘は破格のランクを誇る。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
原初の一(偽):D
偽りのアルティメット・ワン、アルティメット・シイングに至る進化の過程。生まれついての吸血種が宝具による肉体改造で変異したたった4人の柱の闇の一族、その一人。
英霊の座においてもその4人しか持ちえないスキルであり、Dランクでも破格のもの。
本来の原初の一のように星のバックアップは受けられないが、関節を無視した柔軟な動き、卓越した身体能力、肉体の再生、全身の細胞からの捕食、他の生物との一体化など様々な能力を持つ。
とある二つの宝具を用いればこのスキルは最高ランクとなるが彼はそのうちのいずれも持ち合わせていない。

王佐の才:C+
王たるものを支える才。
味方のカリスマを1ランク向上させ、また同ランク以下の反骨の相などカリスマを無効化するスキルを無効にする。
加えて王の目的や命令を達成するための情報収集や援護などにおいて有利な補正を得る。
令呪によるバックアップもより強力な効果が得られるが、逆に高い対魔力を保持するにも関わらず不本意な令呪による命令への抵抗力も低下する。
生前は仲間より先んじて赤石のありかを突き止め、またただ一人王たる者の味方をして同族を全滅させる援護を行うなどした。
またこのスキルを持つ者はマスターとの仲が険悪になりにくい。

ラーニング:A
僅かに会話を耳にしただけで異国言語を習得、一目見ただけで銃を分解、発達した文明にも瞬く間に馴染んで見せるなどを可能とする高度な学習能力と適応力。
見聞きした技能を学び取ることが可能。
特に彼は『孫子』などの戦術的駆け引きを貪欲に学ぶため、サーヴァントとなった今でも後述する2つのスキルのランクが戦闘を重ねるたび向上していく可能性がある。

詭道の所作:C+
言動によって相手と自分の思考を誘導、操作し自分に有利な状況を作り出す。
心理を読み取り次の行動を図る洞察力、観察力、そして自身の精神状態を把握する冷静さが重要となる。
魔術ではなく精神的な干渉であり、精神耐性系のスキルで抵抗可能。
同様に他者からの精神干渉に対する抵抗力としても機能する。また泣き喚くことで冷静になり、より強力な精神干渉からも解き放たれることが可能。

陣地攻略:D
世界を回り、様々なものを見た知識に加え数多の実戦によって得た経験値。
工房などの攻略に有利な補正を得る。
針の敷き詰められた闘技場での巧みな立ち回りや、シェルターのような密閉空間から空気供給管を利用しての脱出なども可能。


103 : 広川剛志&アーチャー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/06(月) 18:23:37 d.AeQGJk0
【宝具】
『怪焔王の流法(モード・オブ・フレイム)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0〜2 最大捕捉:2人
原初の一(偽)による肉体操作の極みにより彼らは固有の流法を持ち、エシディシのそれは熱を操る炎の流法である。
代謝による体温の上昇を利用し血液を500℃まで上昇させ放つことができる。
主に手や足の先端部分から血管針を出し放射する。
副次効果として温度の上昇を伴う為、冷気や気流の扱いを乱すことが可能。

『怪焔王大車獄の流法(モード・オブ・インフェルノ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0〜4 最大捕捉:10人
通常手足の先端からしか血管針を放たないのは精密動作が難しい箇所で自発的に裂傷を作るのが難しいためである。
逆に血管針を放てるならどこからでも血液の放射は可能である。
相手に追わされたダメージや自傷による傷からより広範囲に血管針および熱血を放つ。
受けた傷も肉体の一部とし、積み重ねたダメージも能力の一環として扱う勝利への執念の具現化といえる。

『肉体は死すとも執念は死せず(スティル・アライブ・ビーイング)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
霊格が破壊されても脳と血管は消失せずに現界し続ける。この状態では単独行動のランクが2ランク向上する。
思考能力は残り、寄生からの洗脳および『怪焔王の流法』の使用も可能。

『勝者の口上に機先を制せ(カウンター・ワード・ウィン)』
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
相手がする発言を先に言い当てる事で、そのターンの相手の直前の行動をキャンセルする。
結果勝利の確信を得ている時程、敵は大きな隙を晒す事となる。

……実際は虚を突かれて唖然としているだけであり、本来なら宝具と呼ぶのもおこがましい詐術である。
にもかかわらずこれが宝具として表れているのは、生涯最期の好敵手たる波紋戦士からラーニングした闘争の証であり、彼がこれの大元を宝具として持つため。
加えて一瞬とは言え完全に彼の十八番で上回ったただ一人の存在がエシディシであると言う逸話も大きい。

【weapon】
『死の結婚指輪(ウェディング・リング)』
リングの中に毒薬がしこんであり、スキルによる肉体の一体化を応用して敵体内に埋め込む。
一定時間がたつか無理に取り出そうとすると殻が破れ毒が回って死に至る。解毒剤はエシディシの鼻のピアスの中に仕込まれており、闘って奪い取るしかない。
まさに死が二人を別つまでのウェディングリング。
魔力による生成が可能であり、籠めた魔力量により殻が破れるまでの制限時間を調節できるようになっている。

【人物背景】
はるか昔、地球に出現した太陽光に当たると消滅してしまう生き物の一族、その一人。
その一族の多くは穏やかに過ごしていたが、突如生まれた一人の天才がより強い力を求めたため争いが起き、その天才と協力者一人、何も知らぬ赤子二人を残して一族は滅んだ。
その協力者がエシディシであり、その四人が石仮面をかぶり、原初の一(偽)となった柱の闇の一族である。
柱の闇の一族は多くの動物を殺し喰らわなければ生きられないため当然戦争が起こり、宿敵として波紋使いの一族とは幾度も争った。
そして齢十万年以上を数えた西暦1939年、波紋使いジョセフ・ジョースターとの高度な知略戦に敗れる。
敗北後肉体の大半を失いながらも誇りも全てかなぐり捨て仲間のため赤石を届けようと、生きようとあがくが二人の波紋使いの連携に敗れその生涯を終えた。
一人の同朋のために一族皆を敵に回す、仲間のために汚れることもいとわないなど種族の違いから人間と相容れることはできないだろうが、敬意に値すると宿敵にも語られた熱い男である。

【サーヴァントの願い】
宇宙や英霊の座にいる同朋と共に生をやり直し、今度こそ究極生命体となる


104 : 広川剛志&アーチャー ◆yy7mpGr1KA :2015/04/06(月) 18:24:27 d.AeQGJk0
【マスター】
広川剛志@寄生獣

【マスターとしての願い】
パラサイトに代わって柱の闇の一族と協力して地球上の生命の調整、間引きを行う

【weapon】
なし

【能力・技能】
生物的には通常の人間。超常の力など何も持ち合わせない。
だがパラサイトと協力しようという苛烈なまでの信条、人食いの怪物と共に過ごしたり武装した自衛隊相手に一歩も引かない胆力、市長選程度とはいえ選挙戦を勝ち抜きパラサイトと共生できる求心力などは常人のものではない。

【人物背景】
人間一種の繁栄よりも生物全体の未来を憂うべきとの思想を持つ政治家。
環境問題を重要視し、人間が地球にとって毒になったと考え、中和剤たる人間の天敵パラサイトと手を組む。
自治体の長となり人の流れを把握することでパラサイトに食事処を提供、保護し、市内の人間を少しずつだが間引いていた。
その後市役所内に多くのパラサイトが存在することがばれ、自衛隊がその駆除に乗り出すと自身の信条を語って聞かせるも過激ともいえるそれに同意を得られることはなく射殺された。
その瞬間の参戦である。
その思想の苛烈さやパラサイトと共存していたという点から皆彼のことを人間だとは思っていなかったようだ。
最強のパラサイト後藤にも「よくわからん奴」「人間から見てもかなり珍しい存在」と語られる異端児。

【方針】
少なくともエシディシと共に帰還したい
基本的に石仮面や他の柱の闇の一族の協力を得るために聖杯を勝ち取るよう動く。


105 : 名無しさん :2015/04/06(月) 18:25:03 d.AeQGJk0
投下終了です


106 : ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:27:13 h4H.ReQM0
皆様投下感謝です。私も投下させてもらいます。


107 : ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:27:39 h4H.ReQM0
■ □ ■








 I hear always the admonishment of my friends.
 私は我が友の忠告を常に聞く。


 "Bolt her in, and constrain her!"
 「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」


 But who will watch the watchmen?
 しかし、誰が見張りを見張るのか?


 The wife arranges accordingly, and begins with them.
 妻は手筈を整えて、彼らと事を始める。








■ □ ■


108 : 000-2 But who will watch the watchmen? ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:28:42 h4H.ReQM0
■ □ ■


 貧困層が暮らす地区の路地裏は、ドブ底という言葉が相応しかった。
 何年も掃除が施されていないそこは、今や浮浪者すら毛嫌いする程だ。
 この様なゴッサムの底辺に住む者など、それこそドブネズミくらいだろう。

 そんなドブ底に、似つかわしくない"緑"が現れたのは何時の話か。
 誰もが知らぬ内に、どの生物にも気付かれぬまま、それは草を生やしていた。
 こんな汚物まみれの場所に、健康な緑が生まれる事などあり得ぬというのに。

 その草木に幾つも実った、極彩色の果実。
 酷く禍々しい風貌をしたそれは、とてもこの世のものとは思えない。
 そんな果実の存在を嗅ぎ取ったのか、浮浪者が一人近づいてきた。
 彼は果実をまじまじと見つめた後、草木から実をもぎ取る。
 そして、一切の躊躇を見せる事なく、露出した果肉に噛り付いた。

 まるで餓死寸前の人間が、高所得者の御馳走を貪るかのように。
 男は一見不気味な果実を、余すところ無く食い尽くした。
 彼は別段飢えている訳でもないにも関わらず、だ。

 変異はその直後に起こった。
 男は急に跪き、胸を押さえて苦しみだす。
 まるで毒を煽ったかの如く、彼はもがき始める。

 当然だ。道端に生えた詳細不明の果実など、本来喰らうべきものではない。
 だが男は抗えなかったのだ――実が醸し出す強烈な誘惑に。
 彼の精神力では、湧き出てくる食欲に打ち勝つ事は出来なかったのだ。

 浮浪者の様態が変わってほんの数秒後、再び変異は起こる。
 彼は焦点の合わない瞳を天に向け、絞り出した様な悲鳴を放つ。
 刹那、彼の肉体から生え出た植物が、自身を覆い尽くしたではないか。

 男が食した果実は、本来口にすべきではない代物なのだ。
 摂取した者の遺伝子構造に劇的な変化を及ぼす異界の果実。
 深緑が男の全身を喰らうのは、言わば進化の兆しであった。

 身体を覆う植物が収束し、男の姿が外気に晒される。
 その頃にはもう、男は男ではなくなっていた。
 緑を基調とした体色、虎の面影を見せる顔面、片腕に備えられた堅牢な爪。
 彼の肉体は人間のそれを逸脱し、怪物のものへと変化したのだ。

 静まり返る路地裏の中、怪物は吼えた。
 もはやこの生命には、理性など一欠片として残されていない。
 彼は殺戮を繰り返す害悪として、ゴッサムを彷徨うだけなのだ。

 似た様な現象が、このゴッサムで幾度か起こっていた。
 人が行方知らずになったと思いきや、別の人が死体になっている。
 果実を喰らった者が怪物となり、他者を襲っているのだ。
 行方知らずの人間も、襲撃された人間も、もうこの世にはいない。

 ゴッサムに巣食うのは、今や犯罪者だけではない。
 心惑わされし者の成れの果て、"インベス"。
 文明を喰らう森が解き放った、侵略の尖兵達。



■ □ ■


109 : But who will watch the watchmen? ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:30:11 h4H.ReQM0
■ □ ■


 あらゆる事業に手を出しては、莫大な利益を上げるウェイン産業。
 世界的大企業であるその会社の名を知らぬ者など、ゴッサムの中にはいないだろう。
 何しろ、都市部の中心にはそのウェイン産業の本社が置かれているのだ。
 そんな状況に身を置いたのなら、嫌でも名前を憶えてしまう。

 そんなウェイン産業の本社――即ち、ウェインタワーの屋上。
 本来ならば何者の侵入をも許さないその場所に、一人の男が佇んでいた。
 近未来的な外見のビルとは似つかわしくない、民族衣装を身に纏った中年。
 彼は屋上からゴッサムの闇夜を見下ろし、僅かに頬を釣り上げた。

「インベスが人を殺し、サーヴァントが人を喰らう……随分派手にやらかすもんだ」

 男はゴッサムシティの全てを理解していた。
 悪徳の街で何が始まり、何が終わったのかを。
 それだけではない、彼はこれより始まる聖杯戦争の全てさえ把握するだろう。
 マスターとサーヴァント、そして彼等が起こす闘争の記録さえ掌握するに違いない。
 当然だ。彼の本体は、もう既にゴッサム全域に広がっているのだから。

 微笑む男は人に非ず。他を誘う為に人の形を取ったに過ぎない。
 彼は"蛇"である。惑いし者に運命を運び、闘争へと導く蛇である。
 そしてその蛇もまた、永遠を渡り歩く異界の一部に過ぎない。

 ある惑星の住人は、その異界を"ヘルヘイム"と呼んだ。

 "ヘルヘイム"とは、無限に広がり続ける大樹海である。
 文明社会に忍び寄り、その世界の生命を脅かす宇宙規模の外来種。
 あるいは、文明を刺激し急激な進化を促す一種のシステム。

 そして現在、ゴッサムシティはヘルヘイムの侵略を受けている。
 他でもない聖杯が、この侵略者を呼び寄せたからだ。
 願望器がヘルヘイムに宛がった役割は――監視者(ウォッチャー)。
 聖杯戦争を監視せよと、全ての戦いを最後まで見守れと。
 お前達がこれまでそうした様に、願いの成就を見届けろと言いたいのだ。

「マフィアに汚職、おまけに怪物騒ぎときたもんだ。
 どうするんだお前達、この街にバットマンはいないんだぞ?」

 そう、この街にバットマンという名のヒーローは"まだ"いない。
 彼が不在だからこそ、ゴッサムは今も邪悪が跋扈している。
 マフィアは罰せられず、汚職まみれの警察は悪事に手を染める。


110 : But who will watch the watchmen? ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:32:40 h4H.ReQM0
「……この街には何もない。真っ新な犯罪都市だ」

 だが逆に、この街にはヴィランが不足している。
 ジョーカーも、スケアクロウも、トゥーフェイスもいない。
 ゴッサムを騒がせた喜劇役者が、こぞって行方を晦ましている。
 正確に言えば、"今はいない"と言うべきなのだろうか。
 聖杯が求めるのであれば、彼等もまたこの街に集うであろう。
 少なくともまだ、ヴィランの足音が近づく気配はない。

「堅物な悪党だけってのは案外退屈なんだ、とっておきの喜劇役者がいないとな」

 世界を護る賛歌か、世界を壊す嘲笑か。
 どちらでも構わない、願望器は刺激を求めている。
 演者(キャスト)が演じ上げる、命懸けの物語(シナリオ)を。

「悪徳に身を委ねるか、それとも正義に殉じるか……お前達はここで何を為す?」

 怪物から市民を護るのか、怪物と一緒に市民を殺し尽くすのか。
 死によって完成する聖杯を否定するか、屍を踏み越えてでも聖杯を肯定するか。
 選択肢は二つに一つ、どちらを取るかはマスター次第だ。
 どちらを選んだとしても、聖杯は大いに歓迎するだろう。
 ゴッサムに現る願望器は、血と肉が織り成す演劇(コメディ)に飢えているのだから。

「俺は見届けるだけだ。お前らがこの街に何を刻み込むのかをな」

 男――"サガラ"は街の光を見つめ、今一度笑う。
 ゴッサムで幕を開けるは、願いを賭けた一大喜劇。
 大舞台で終局を演じ切るのは、果たしてどの主従か――――。


■ □ ■


111 : But who will watch the watchmen? ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:34:28 h4H.ReQM0
■ □ ■








 ――――気を付けるんだな。お前達は今、運命を選ぼうとしてる。








■ □ ■


112 : But who will watch the watchmen? ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:34:53 h4H.ReQM0
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【クラス】ウォッチャー
【真名】ヘルヘイムの森
【出典】仮面ライダー鎧武
【属性】中立・中庸
【パラメーター】筋力:- 耐久:- 敏捷:- 魔力:- 幸運:- 宝具:EX

【クラススキル】
戦況把握:EX
「監視者」のクラス特性。
ウォッチャーは既にゴッサムシティ全域に根を下ろしている。
それ故に街の状況を常時把握しており、マスターやサーヴァントの居場所も察知している。
最早、ゴッサム全土にウォッチャーの監視の目が行き届いていると言っても過言ではない。

真名看破:B
本来はルーラーのクラス特性であるが、ウォッチャーはルーラーの変形クラスであるため所持。
直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・クラスなどの全情報を即座に把握する。
真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなどを持つサーヴァントに対しては幸運判定が必要。

【保有スキル】
侵食:EX
他者を、周囲の世界を己自身で塗りつぶすスキル。
ヘルヘイムの森は惑星に寄生し、侵略する植物群である。
森は現界すると同時に街に根を張り、着実に世界を森へと変えていく。
監視者(ウォッチャー)としての責務を任された今回でも、それは例外ではない。

外界接続:-
干渉先の世界を「ヘルヘイムの森」に繋げる能力。
聖杯戦争の妨げになりかねない為、このスキルは封じられている。
その為、現在は如何なる手段を用いてもヘルヘイムの森に移動する事は出来ない。
それが聖杯からの要請なのか、それとも他からの干渉によるものなのかは、現在不明である。

【宝具】
『星喰らいの森羅(ヘルヘイム)』
ランク:EX 種別:対文明宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞
永遠に蔓延る者。空を越えて茂る者。
ウォッチャーという存在そのものが宝具である。
時空・距離・次元の壁を乗り越え、侵食する異世界からの外来種。
干渉先の文明に植物と怪物(インベス)で干渉し、自身に取り込んでしまう。
ウォッチャーとは文明を破壊する侵略者であり、同時に文明に進化を促すシステムである。

『禁忌の果実(ヘルヘイム・ベリー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
ヘルヘイムの森に自生する極彩色の不気味な果実。
この果実を口にした生命体は遺伝子に急激な変化を及ぼし、インベスと呼ばれる怪人に変質する。
インベス化した生物は自我を喪失してしまい、喪われた精神を元に戻すのは不可能と断言していい。
生命体を惹きつける性質があるらしく、劇中でも数名の人間が魅入られたようにその身を喰らっている。
果実自体に魔力が宿っている為、魔術に心得のある者かサーヴァントであれば、その危険性に気付く事が可能だろう。
なお、戦極ドライバーを装着したサーヴァントがもぎ取れば、錠前型の宝具『禁忌の錠前(ロックシード)』となる。
(マスターでもドライバーさえあればロックシードに変換可能だが、その場合は宝具とはならない)

『運命を誘う蛇(サガラ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
ヘルヘイムの森が持つインターフェース的存在。
接触先の文明に溶け込み、時に助言し、時にそそのかし、事態の変革を図る。
他の参加者への干渉はこの宝具を用いて行われ、その際には中年男性の姿をとる場合が多い。
ヘルヘイムがゴッサム全域に広がっている為、この宝具は何処にでも出没できる。
なお、彼もまたヘルヘイムの森の一部であるため、滅ぼすのは事実上不可能である。

【背景】
謎の怪物"インベス"が生息する樹海。その正体は侵略を繰り返す一種のシステム。
幾多の世界を侵食してきた言わば"外来種"であり、文明を強制的に進化、もしくは滅亡させてきた。
ヘルヘイムが他世界に干渉する理由などない。鳥が飛ぶのに理由が無いのと同じである。


113 : ◆JOKERxX7Qc :2015/04/07(火) 03:36:05 h4H.ReQM0
投下終了となります。
ステータス製作の際、『邪神聖杯黙示録〜Call of Fate〜』より◆q4eJ67HsvU氏『導入、あるいは名も無き魔術師の手記』、
『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚』より◆HQRzDweJVY氏『インベーダー』を参考とさせて頂きました。


114 : ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:13:15 hRabrG6o0
投下いたします


115 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:14:57 hRabrG6o0

1:

 結論を先に述べるのならば、今ランサーのサーヴァントは、絶体絶命の状況であった。
現界するのも困難な程の大ダメージを負っていた。着用している鎧は一部が凹み、一部が砕かれ。
鎧の下で肉体が悲鳴を上げている。骨が折れ、血管が切れ、筋繊維が断裂し。英霊と呼ばれる彼の身ですら、堪える程の損傷だ。
後一発、良いものを貰ってしまえば、この聖杯戦争の舞台からの退場は不可避だった。

 対して、目の前の男はどうだ。無傷である。身体も、身に付けている衣服も。
息も乱れていなければ、心拍も平常時のそれ。汗の一つだってかいちゃいない。
そして、嗤っていた。口を三日月の様につりあげ、その黒い相貌に狂喜の色を宿して。心底楽しそうな表情で、此方を見つめ続けていた。

「どうして……」

 ランサーの隣で、マスターである女性の魔術師が茫然と呟いていた。
そう言いたいのは、ランサーとて同じだった。ランサーは目の前の男を追い詰める為に、宝具すら開帳した。
ステータスと保有するスキルのランクをアップさせ、苛烈な攻撃を可能とする宝具。それを使用してなお、目の前の男には届かなかった。
いや、仮に届かなかったとしても、相手が『サーヴァント』であるなら、敵わなかったとしても諦めも行ったし、納得も行っただろう。

 ……サーヴァントも、そのマスターも、認める事も許容する事も、出来ないのも無理はない。
魔術師の、聖杯戦争の常識から考えれば、信じられない事なのだ。何故なら彼らを追い詰めているのは

「――どうしてマスターのアンタが私のランサーと対等に戦えてるのよぉッ!!」

 悪夢の原因が、これなのだった。
そう、今ランサーを追い詰めているのは、そもそもサーヴァントですらないのだ。
目の前に佇む、安物の黒いカンフー着を身に付けた、ライオンの鬣のような怒髪をオールバックにした男性は、正真正銘本物の人間。
そんな男が、諸人の憧れや想念を集めた英霊である、このランサーのサーヴァントを追い詰めている。
マスターにとって、この光景を悪夢以外に何と呼べば良いのだろうか。いや、ランサーにとっても、出来るなら夢だと思いたいところだろう。

「クッ、ククククク……」

 オールバックの男が、忍び笑いを浮かべた。
馬鹿にしている、と言った感じは見当たらなかった。純粋に、楽しいから笑っている、と言った様子に、女マスターは感じた。

「いや悪ぃ悪ぃ、俺の想像以上に、聖杯戦争って奴が楽しくってよ……。前哨戦でこれだけ楽しめるんだから、もう後が楽しみで楽しみでしょうがねーんだよ」

 言葉を紡ぐ途中から、浮かべる笑みが剣呑なそれへと変わって行く。
戦闘を、聖杯戦争を楽しむ戦闘狂のサーヴァント、と言った存在は珍しくもないだろう。然もありなん、と言う奴だ。
だが、マスターが直接打って出て、しかも音に聞こえた英霊猛将と戦い、それを楽しいだなどと言うのは前代未聞である。
常識から考えれば、狂気であるとしか思えない。ならば目の前の男は、狂気の世界の住人なのだろう。そう、マスターは考えたかった。


116 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:15:44 hRabrG6o0

 どうして、こうなってしまったのだろうか。
ゴッサムの土地鑑をつけておこうと、霊体化したランサーと共に夜のゴッサムを見回りし、
人気の少ない小通りに面している小さな公園へと足を運んだ時に、園内を歩くこの男を見かけた。
ランサーは当然として、一介の人間である彼女にだって理解出来た。NPCとは全く異質な存在であると。
普通であるならば、聖杯戦争の参加者は、このゴッサムのNPCに交じり、自らが聖杯戦争とは無関係だと装うのが定石である。オールバックの男はそれを隠しもしなかった。
尋常じゃない気魄と鬼気をこれでもかと放出するその男が、聖杯戦争の参加者であると理解するのに、時間は不要であった。
状況はしかも、マスターが一人でうろついていると言う格好の状況。三騎士のクラスで、此処を狙わない手立てはないだろう。
初戦を勝利で飾ろうと、男の前まで躍り出て、戦いを申し込んだ結果が、これである。

 どうも相手は、魔術か何かで元々の身体能力を向上させられていたようである。
其処から、相手マスターのサーヴァントはキャスター或いは魔術に造詣の深い者である事は容易に想像がつく。
だが、相手サーヴァントの魔術の腕前が卓越しているのか、はたまたマスターの元々の身体能力が高いのか、オールバックの男は、鬼神の如き強さだった。
ランサーの神速の槍技が、当たらない、掠らない、捌かれる。対するマスターの攻撃は、掠る、当たる、捌けない。
ステータスを向上させる宝具を開帳してなお、その構図が覆る事はなかった。自分達がとんでもない敵を相手にしているのだと気付いた時には、後の祭り。
そう考えた時には、既にランサーは、瀕死同然の状態であった。マスターの判断が甘かった、などとは責められまい。
三騎士を相手にして圧倒する人間の方が、常識から遥かに外れているのだし、そう言った存在を予見せよ、と言う方が無茶苦茶なのだから。

「(マスター、この場をどうする……)」

 ランサーのサーヴァントが念話で語りかけてくる。
目の前のマスターが規格外の存在であると言う事は疑いようもないし、目の前の状況が危機的な物であると言う事は厳とした事実。
この場を無事に切り抜けねば、自分達は初戦で退場、死亡してしまう。全力を尽くす必要が、この二人にはあった。

「(令呪を使ってステータスを向上させてから逃げても良かったけど、何処かに潜伏しているサーヴァントが怖いわね……)」

 目の前の男は、そもそもマスターである。と言う事は当然の事ながら、彼に従うサーヴァントがいる筈。
だが、そのサーヴァントは未だランサー達の前に姿を見せていないのだ。これは警戒すべき事柄だ
下手に背を見せて敵マスターから逃げようものなら、何処かに潜んでいるサーヴァントの追撃を喰らってしまう可能性が、ないとも言い切れない。
そうなってしまったら、確実に彼らは詰みだ。これ程消耗してしまっては、最弱のクラスであるアサシンやキャスターにすら後れを取るだろう。
となれば……取るべき策は、ただ一つ。

「(……ランサー、殺すわよ、あのマスターを)」

「(私も……それしかないと思っていた)」

 目の前の男がマスターである。それは、重要な事実を孕んでいた。
マスターとサーヴァントの関係は、運命共同体のそれに等しい。サーヴァントが倒されれば、聖杯戦争におけるマスターの生存率は最早絶望的。
そしてマスターが殺されれば、魔力の供給が断たれ、現界出来なくなったサーヴァントは近い内に消滅する。
聖杯戦争においてはサーヴァントより遥かに劣る強さのマスターを倒し、その組を退場させると言うやり方は卑怯でも何でもない。寧ろ常套手段だ。
今この場にいるマスターを殺し、そのサーヴァントも聖杯戦争の舞台から退場させる。それが、今ランサー達に残された、最後の策なのだった。

 宝具を開帳してなお届かない。悔しいが、それは事実だ。
だが、相手マスターに掛けられた身体能力向上の魔術にも、リミットがあるだろう。永続的に効果を発揮する補助魔術は、ない。
粘り強く持久戦を持ち込み、それが切れた所を、狙う必要がある。勝機は、もう其処しかなかった。

「ランサー!!」

「応ッ!!」


117 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:16:30 hRabrG6o0

 掛け声をあげると同時に、一瞬で手に持った槍を中段に構え、マスター目掛け地面を蹴って走り出した!!
聖杯戦争にて確認されている七つあるクラスの内、最も軽捷なクラスなのがランサーである。
彼らが本気で動けば、人間世界の自動車やバイク、或いは旅客機の最高速に肉薄、或いは特定条件で音速に近しい速度で動く事も可能なのだ。
今のランサーの移動速は、時速二百五十キロ弱。視界の先にいるマスターまでの距離は十m程度で、真っ当な人間ならば、反応する事すらままならない速度だ。

 ……目の前の人間が、真っ当な人間であったのならば、だが。

 ボゥンッ!! と言う音を立てて、オールバックのマスターが佇んでいた地点が、爆発した。
地面のブロックタイルが割れ、すり鉢状の浅いクレーターが出来上がっていた。それが、相手マスターが地面を踏み込んだ事に出来た産物である、とランサーが認識した瞬間。
彼は、思いっきり前方方向につんのめった。何が起こったのかと思い、現状を認識した瞬間、表情が凍りついた。
敵のマスターが、槍の柄部分を右手で握っているのだ。信じられない、どんな腕力と握力の持ち主なのか。
英霊であるランサーが全筋力を駆使して現状を打破しようにも、微動だに出来ない。
巨大な大樹に槍が深々と突き刺さり、其処から槍を引き抜こうと努力しているかのようである。万力の如き力で押さえられた槍は、一mmたりとも動かせない。

「とれぇ槍だな」

 言った瞬間、ランサーの身体に、浮遊感が舞い込んできた。
槍ごとマスターが、ランサーの身体を持ち上げたのである。しかも、片腕で。
凄まじい膂力だと驚愕する前に、オールバックの男は背面からランサーを地面に叩きつけた。
バゴォン!! と言う凄まじい音が響く。ゴム鞠のように、ランサーの身体は地面に衝突した瞬間、一m程の高さまでバウンド。
ランサーがぶち当たったブロックタイルは、砂糖菓子の用に砕かれていた。
バウンドの最高点にまで達した瞬間の事だった。カンフー着のマスターは、自らの右足を一瞬で頭上にまで上げ始めたのだ。
最高到達点まで片足を上げた瞬間、それを稲妻の如き速度で振り落とす。マスターの踵が、バウンドしているランサーの腹部に命中。
一瞬身体がくの字に折れ曲がったランサーだったが、すぐにブロックタイルにめり込む程の勢いでランサーは地面に叩きつけられ、身動きが取れなくなる。
恐ろしい速度の踵落とし(ネリチャギ)だった。

 彼らは知らないのだろう。
もといた世界で、この男が放つ踵落としはジャブより速いと言われる程の、強烈な速度を誇っていたなど。
この男が銃弾飛び交う現代の戦場の最前線で、拳銃一丁、ナイフ一本携帯せず、己の肉体のみで生き残って来た者であったなど。
そしてこの男がそもそも――もと居た世界では、地上の最強の生物と呼ばれ、国家が保有する軍隊以上の暴力を持った『個人』であったなど。

 最早ランサーに意識はなかった。
目は白目を剥き、口からは血で出来た泡を吹き。誰が見ても戦闘不能の様相。
これでもなお、男は手を止めなかった。






「邪ッチェリアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!」






 凄まじい雄叫びだった。人間の声帯から生み出されている声なのかと疑ってしまう程の、大音声だった。
冬の夜の透徹した空気を切り裂き、天にまで届きかねない程の咆哮を上げ、男は右腕を振り上げた。
勝鬨では、ない。男はそのまま右拳を、ランサーの顔面に振り落とす。
ゴクチャッ、と言う、嫌な音が女マスターの耳に届いた。ランサーの顔面に、男の拳が手首までめり込んでいた。
どんな力で殴ったら、あんな風に拳が入没してしまうのか。


118 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:16:58 hRabrG6o0

 男が拳を引き抜いた。
拳に付着した粘つく血液が、ランサーの顔面から糸を引く。
顔面の筋肉や頭蓋骨の陥没具合があまりにも酷い為に、ランサーの眼窩から視神経のついた眼球がポロッと外れて行く瞬間を、マスターは目の当たりにしてしまった。
そして、消滅して行く自らのサーヴァント。彼を構成する肉体は徐々に粒子状に変換されて行き、上昇、虚空に溶けて消えて行った。

 女性は思わず腰を抜かす。敗北した。もう、打つ手がなかった。
緩んだ尿道から、暖かいものが流れて行く。本能的な恐怖は、理性で抑えるべき、はしたないと思う事柄を易々と行わせてしまった。
歯の根がかみ合わない。上の歯と下の歯が、カスタネットの如くカチカチと音を立てる。
カンフー着の男が、チラリと女マスターの方に目線を向けた。が、すぐにつまらなそうに視線を外し、彼は口を開いたのだ。

「出番だぜ、レザード」

 男が短くそう告げた、瞬間だった。
それまでカンフー着の男と、公園の周辺に立ち並ぶ安いボロアパートを映していた視界が、フッとブラックアウトした。
そして、彼女の意識までもが。彼女の意識が戻る事は、二度とないのであった。






2:

「勇次郎、死に掛けだったとは言え、敵マスターの前で真名を呼ぶのは避けて貰いたいですね」

 眼鏡をかけた男が、不機嫌そうな物言いで向かいの男を責める。

「次は気ぃつけるぜ」

 と言うマスター――範馬勇次郎だったが、声音からは反省の色は見られない。
やれやれ、と言った風に、彼のサーヴァントは溜息を吐く。

 眼鏡をかけ、マントを羽織った、如何にも魔道士然とした美形の男だった。
顔以外に肌の露出はなく、厚手の布地で拵えられた服装で、この寒い冬を越すに相応しい恰好である。
クラスは、先程葬ったランサーのマスターが想像した通り、キャスター。そしてその真名を、レザード・ヴァレス、と言う。

「なるべくならクラス名で呼ぶよう心掛けてください。真名が露見する事は、百害あって一利ないですからね」

「解ってるって、俺も聖杯戦争を楽しみてぇんだ。迂闊なミスで機会を水に帰すような真似は、したくねぇ」

 小煩いとでも言うような態度で、勇次郎が言葉を返した。
このような調子ではあるが、聖杯戦争を楽しみたいと言う部分だけは、本心から出た言葉だとレザードは気付いていた。

「で、おめぇの方は魔力とやらの確保は出来たのか?」

「相手はNPCではない、聖杯戦争のマスター。しかも魔術師でしたからね、大分安定しましたよ」

「そいつぁ重畳」

 獰猛な笑みを浮かべ、勇次郎が言った。レザードもつられて笑みを浮かべる。

 先程戦ったランサーのマスターは、聖杯戦争の舞台であるゴッサムシティから。いや、世界から消滅していた。
レザードが魂喰いを行い、その潤沢な魔力を命ごと奪い去ったからだ。これによりレザードも勇次郎も当分は魔力には困らないだろう。
結果論から考えれば、初戦は大勝利に終わったと言っても良かった。魔力と言う手土産も奪い取れた事は特に大きい。
魔力に乏しい勇次郎にしてみれば、大きな収穫であったと言えるだろう。

 ――だが。

「勇次郎」

 真面目な顔付きで、レザードが言葉を紡ぐ。

「本当にこのような戦い方を続けると言うのですか?」

「くでぇな、キャスター。俺の方針は言った筈だろ」

「改めて思っただけですよ。マスターが前線でサーヴァントと戦うなど、正気の沙汰じゃない」

「だからお前がいるんだろ」

 ビッ、とキャスターに指差して、勇次郎が言った。


119 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:17:49 hRabrG6o0

「お前の卓越した魔術の技量で、俺を強化する。そして俺が強化された状態で殴り合う。お前の殴り合いの貧弱さを俺が補い、
神秘性を帯びていないと言う理由でサーヴァントを殴れないと言う揺るがない事実をお前が補う。お前もそれで賛同しただろうが」

「自分からサーヴァントに向かって行く事は勝手が違う。私は貴方が、私に迫る障害や危難を排除すると言う理由から貴方の提案を呑んだのですよ。
勇次郎、私は貴方に、自分からサーヴァントと戦う為に外をうろつき、発見し次第それを葬る事は認めてない。
先程の戦闘とてそうだ。相手が出し惜しみしたからよかったものの、令呪を用いてステータスを向上されたら、貴方とて無事では済まなかったかもしれないのですよ?」

「それはそれで面白かったかもな」

 獰猛な笑みに、危険な香りが漂い始めた。それは、獣臭と言っても良かったのかもしれない。
弱者ならばその香りを嗅ぎ、勇次郎の浮かべる、肉食獣宛らの笑みを目視しただけで、失禁すらしてしまうかも知れない。
人間が放つ事の出来る凄味の限界値を遥かに超える凄気が、彼の身体から漲っていた。

「……まるでベルセルクだな、貴様は」

 呆れたようにレザードが零した。勇次郎のオーラを受けても、このキャスターはたじろぎすらしない。
彼は付き合ってられない、とこの後言葉を続けかけたが、それを呑み込んだ。

「北欧神話の主神、オーディンの加護を受けた、狼の皮被った狂戦士か。言い得て妙じゃねぇか」

「ほう、細部の差異は兎も角として、概ねその通りだ。喧嘩だけが取り得の馬鹿かと思ったが……そうでもないようだな」

 戦闘だけが取り得の学のない人間だと、勇次郎を頭から決め込んでいたレザードだったが、存外そうでもなかったようである。
それだけにタチが悪い。それなりの頭脳を持っていながら、レザードの、マスターが前線に立って戦闘を行う事は避けろと言う進言を破る、と言う事は、
これはもうわざと破っているとみられてもおかしくない事であった。

 マスターである勇次郎を初めて見た時、レザードは割と良い者をあてがわれたと思っていた。
魔力の総量にこそ難があるが、それを補って余りある、圧倒的な身体能力を勇次郎から感じ取ったのだ。
レザードは、この男を自らの魔術で強化すれば、キャスターとして最大の欠点である身体能力の低さをカバーする無二の要素になると、出会った当時即座に考えたのである。

 勇次郎の方も同様だった。
この男にとっては、聖杯など全く取るに足らない代物だった。万能の願望器であると言うらしいが、下らない。
金など国家首脳を脅せば幾らでも手に入る、名誉も女もそもそも興味がない。勇次郎に願いがあるとすれば、強者を『喰らう』事ただそれだけだった。
つまりこの男の願いは、聖杯戦争に呼び出されたその時点で全て叶っているのだ。
だが、高すぎる神秘の結晶である英霊は、神秘性のある物でしか手傷を負わせる事が出来ない。
つまり勇次郎がどんなに優れた腕力を持っていても、拳に神秘がなければ殴り飛ばす事が出来ない。だからこその、レザードである。
レザードが勇次郎を強化すれば、彼は相手のサーヴァントを殴り飛ばせる。同じ土俵に立てるのである。
聖杯戦争に於いては通常外れクジの部類であるキャスターは、勇次郎と言う男にしてみれば大当たりの部類だった。
故に彼もまた、レザード同様、自分がキャスターを引いたと知った時は、内心で狂喜していたのだ。

 互いが互いを補い合う存在、その事は両者共に強く認識していた。
その事は重々把握していた二人だったが、しかし、気付いてしまったのだ。二人のやりたい事は、全くの正反対であると言う事に。


120 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:18:34 hRabrG6o0

 レザードはキャスターとしての戦い方に忠実に従いたいのである。
陣地作成で拠点を作り、其処で道具作成でアイテムを生みだし、不死者達を創造させ、使い魔を利用して他陣営の動向を探る。
着実に駒と道具を生み出して、勝利を盤石にして行きたいのである。
慎重派と言う訳ではないのだが、キャスターのクラスで王手を打つのならば、これが確実だとレザードは考えていた。

 これに対し勇次郎は、自らサーヴァントのもとに赴き、彼らを自らの力で下したいのである。
勇次郎は闘争を世界の誰よりも好む男だった。世界に名を轟かせた偉人や猛将、果ては御伽噺の中でしか語られない存在と戦える。
強者との戦闘をSEX以上のコミュニケーション手段とし、末期にはアフガンやベトナムの戦場すらも退屈と称していた勇次郎が、この聖杯戦争に燃えない筈がなかった。
いつだったか、自分の腕力をヘラクレスのようだと褒めた大統領がいた事を勇次郎は思い出す。
此処ではそのヘラクレスが、実在の存在になるかもしれないのだ。イメージトレーニングで、カマキリや恐竜と戦うのとはわけが違う。
それが楽しみで楽しみで、子供の用に、その時が来るのをワクワクして過ごしているのだ。

 なるべくなら戦闘を避けたいレザードと、戦闘を楽しみたい勇次郎。
二人の考え方は、一見してもすぐにわかる程の、水と油。正反対のものなのだった。

「……そんなに戦闘が楽しいですか、勇次郎」

「俺とランサーとの戦闘はどう映ったんだ、お前は」

「率直に言えば、何がそんなに楽しいのか、と思う程楽しんでましたが」

 この男の戦いぶりは、忘れたくても忘れられるものではない。
ランサーの攻撃を尽く回避したり捌いたりして、ランサーの攻撃以上の速度で一方的に攻撃を叩き込んで行くその様子は、見ていていじめに近しい物を感じた。
暴力を振るう、と言う事をこれ以上なく楽しんでいるのだ。レザードは遠くから勇次郎の戦いぶりを眺めて、そう結論付けていた。

「俺はよ、この聖杯戦争が俺の期待に添わないものだったら、どうしようかと悩んでたのさ」

 「だが……」、と言葉を区切る勇次郎。

「違ったんだな。あのランサーもそれなりに強くはあったが……あれよりまだ上の奴がいると思うとよぉ。こんな楽しい戦いがあったんだと思うとよぉ。
もと居た世界で、欲望を満たす為に戦場を駆け抜けたのが、馬鹿らしくてしょうがねぇ。……テメェの言う通りだキャスター。
聖杯戦争は俺の中で……楽しいものとして定着しちまったぜ。不詳の倅バキとの戦闘も中々だったが……さしものあいつも英霊と比べちまったら……まあ可哀相だな」

 全く頭がおかしいと、レザードとしては思わざるを得ない。常軌を逸した戦闘狂。我欲を満たす為だけに戦場を駆け抜けたと言う事実。
この世界に愚神オーディンがいようものなら、真っ先にヴァルキュリアに命を下し勇次郎の魂を我が物とするであろう。
マスターの鞍替えや、グールパウダーで忠実な不死者にでもしてやろうかとも考えたが、止めた。それ程までにこの男は強いのだ。

 恐らく、この男に匹敵する強さを誇るマスターは、聖杯戦争の中でもそうそう存在するまい。
不死者にしようにも、この男の強さの源泉は、自らの圧倒的な強さに裏打ちされたエゴイズム(自我)であるとも、レザードは気付いていた。
不死者にすると言う事は、その存在を術者の操り人形にすると言う事と同義。勇次郎の長所を殺してしまう危険性がある。
それは避けたい。この男の腕力はそれだけの利用価値があった。その強みを潰す様な愚作は、犯したくない。

 レザードも勇次郎に負けず劣らず利己的な側面があるし、それは彼も自覚している。
だがこの戦いは聖杯戦争。自らの意思を貫き通すだけで勝てる程ぬるい戦いではない。
時に自らのわがままを貫き、時にサーヴァントと折り合いをつけ、時に相手マスターと手を組む老獪さも必要となる。
今はマスターである勇次郎と折り合いをつけるべきなのだろう。しかし、レザードにも譲れない点はある。
彼は勇次郎のように、聖杯戦争に参加した時点で願いが叶ったと言う訳ではない。漸く、スタートラインに立てた、と言う所なのだ。
彼は、この戦いに生き残り、聖杯戦争に勝利する必要がある。そして、今度こそ我が物とするのだ。
レザードがありとあらゆる知謀をめぐらせても、遂には創造主に等しい権能を手に入れても、振り向かせる事も出来なかった、初恋の相手。
彼が求めてやまない、至上の美を誇る戦乙女、レナス・ヴァルキュリア。自らの浅はかな行動で世界から消えてしまった彼女を、聖杯の奇跡で蘇らせたい。
そうして今度は、自分の手で、彼女の心を自らのものとするのである。それが、レザードの願いなのだから。


121 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:19:20 hRabrG6o0

「勇次郎。今回は貴方のわがまま、即ち、私が魔術を用いて貴方の身体能力を強化させ、サーヴァントを探し、見つけ次第戦うと言う要求を受け入れました。
が、次は私の要求を呑んでもらいます。私は貴方と違い、聖杯が欲しい。聖杯戦争に勝ち残りたい。
マスターの貴方が死ねば私の目標も達成出来なくなる、だから次は、私の要求を呑みなさい。自分の陣地を作成し、拠点を作ります。
貴方は、その際に私の護衛をお願いします。……頼まれてくれますね……?」

 頼まれてくれますね、と、一見すれば自由意志と裁量に任せるような物言いである。
しかしその実、レザードの声の調子は、受け入れる以外の返事は認めないとでも言う様な鬼気に満ちており、眼鏡の奥の瞳には、凄烈な殺意が輝いている。
その目線を、真っ向から受け止める範馬勇次郎。つまらなそうな表所を浮かべていた。
無理もない、この男に大人しくしていろ、と頼むのは無謀もいい所である。結局は自分の本能の赴くがままに行動し、全てを滅茶苦茶にしてしまう男。それが勇次郎なのだ。
それにこの男は、自分と敵対する存在は許さない性格だ。余りにも横暴な理由で殴られ、殺された人物は最早数えるのも馬鹿馬鹿しい程である。

 レザードと勇次郎の視線が絡まり合う。冷たい殺意を放射するレザードに対し、空間を歪める陽炎の如き、熱を孕んだ殺意を放射する勇次郎。
両者を中心とした半径数m内の空間が、異空間と化す。ブリザードのような殺気と溶岩の如き殺意の荒れ狂うその空間内で、平常心を保てる人類は存在しえないだろう。

「……いいぜ。テメェの好きにしろ」

 意外な事に、折れたのは勇次郎の方だった。
レザードに怯えた訳ではない事は、言うまでもない。此処でレザードと仲違いする事と、此処を我慢してまだ見ぬ英霊と戦える次の機会を待つか。
その二つを比較衡量して、どちらがマシかを考えただけだ。結果は勿論、言うまでもない。
つまらない理由で敵対するよりは、適当に折れた方がマシ。そう結論付けたのだった。

「聡明なマスターで、何よりです。物分かりの良いマスターを持てて、私は果報者なサーヴァントですね」

「ケッ、白々しい野郎だ……」

 此処まで露骨な恐喝手段を取って置きながら、この褒めちぎりよう。イイ性格をしているようだ、この男は。
満足そうな笑みを浮かべ、レザードは霊体化を始める。速く拠点となる場所へ戻ろう、と言う催促の意味合いも込められている。
盛大に舌打ちを響かせて、勇次郎は不機嫌そうに公園を後にする。
彼らが去った後の公園には、人智を超えた戦いの残滓の、タイルブロックの破壊跡だけが残されているだけだった……。






【マスター】

範馬勇次郎@バキシリーズ

【参加方法】

暇潰しに遊びに来てやった、アリゾナ州立刑務所に収容されている友人が秘蔵していた骨董品の1つを手に取ったら、それがシャブティだった。

【マスターとしての願い】

ない。だが聖杯戦争がもし楽しければ、別の何処かで開催している聖杯戦争に参加したい。

【weapon】

身体:
勇次郎は重火器やナイフなどと言った、一般的な意味での武器を持たない。
しかし勇次郎の肉体は、それらよりも遥かに危険であり、ある者は勇次郎の姿を見て、巨大空母一隻分以上の戦力だと錯覚した程。
m単位の厚さのコンクリート塀や鉄板を破壊する腕力や、銃弾すらも見切れる程の反射神経など、地上最強の生物と揶揄されるに相応しい身体能力を持つ。


122 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:20:00 hRabrG6o0

【能力・技能】

勇次郎はその圧倒的な身体能力をいかんなく発揮させ、思うがままに暴力を振るう戦法を好む所とする。
打撃の要となる背筋が鬼の顔の様に見える事から、通称「鬼の貌」と呼ばれる天然のヒッティングマッスルを持ち、その筋肉に裏付けされた力で、思い切り殴る、蹴る。
それが勇次郎の戦い方である。ただ、勇次郎自体は世界中のありとあらゆる格闘技及びその技の数々に精通しており、その気になれば一度見ただけで、
その格闘技の体系の中で最高級の技とされるものをトレース、自分のものとして使う事が出来る。
但し勇次郎は格闘技における技術を不純物と断言し、純粋な力こそを至上としている為、その技を使う事は滅多にない。
また解剖学や人体に精通し、数々の戦場を渡り歩いた為か、『相手の身体的な弱点を自動的に発見する』と言うスキルも持つ。
本人すら気付かないような些細な弱点(未発見の虫歯・癌なども)でさえ無意識的に発見出来、 その診断能力はベテランの医師すら上回ると言う。

人の身でありながら、A+ランク相当の勇猛や心眼(真)、天性の肉体にカリスマ(偽)、反骨の相、無窮の武錬などに相当するスキルを持ち、
彼自体がサーヴァントとして呼び出される可能性すらある存在。
キャスターによる強化なしでも下手なサーヴァントに肉薄するその身体能力は、マスターとしてはまさに破格と言う他ない。

【人物背景】

地上最強の生物、鬼(オーガ)と作中で呼ばれている男。主人公である範馬刃牙の父親であり、また彼の目標でもある存在。
一個人で国家軍事力に匹敵する暴力(身体能力)を誇る男で、事実その力で、数々の戦場を渡り歩き、数々の軍隊を壊滅させて来た。
ベトナム戦争に傭兵として参加した時の年齢が十六歳の時であり、その頃には既にその圧倒的な才能を開花、急速に成長させていたようである。
法の外に君臨する男の一人であり、作中で起こした数々の傷害罪や殺人罪、総理大臣への殺害予告とその実行(総理の殺害自体は未遂)が不問に処されている。
これは、人間一人が振るう暴力で国家が揺るぐ事実を公に出来ない(威信に関わる)からであり、殆どの国家は、彼の行った如何なる行為も黙認している。
極めて自己中心的な性格の持ち主で、自分が地上最強の生物である事に対し一切の疑念を抱いていない。
勇次郎と長年の付き合いを持つストライダムに曰く、彼の精神の強固さは、歴史を大きく動かして来た偉人のそれと殆ど同じだと評する程。
彼にとって闘争とは人生の全てであり、彼は食事や睡眠、果ては呼吸よりも、戦闘のプライオリティが高い程。
総括すれば、どこまでもわがままで、何処までも闘争が大好きで、そしてデタラメに強い。それが、範馬勇次郎と言う男なのである。

 今回の勇次郎は『範馬刃牙』に於いて、刃牙との最後の戦いの後、退屈な日常を送っていた時からの参戦。

【方針】

サーヴァント達と殴り合いたい、本気を出して戦いたい。
但し、サーヴァントであるレザードの意向も汲んでやらないとつまらない結果を招いてしまうので、当分は彼の言い分も呑んでやる。






【クラス】

キャスター

【真名】

レザード・ヴァレス@ヴァルキリープロファイル

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷D 魔力EX 幸運A+ 宝具A+++

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。“工房”の形成が可能。

道具作成:EX
魔術的な道具を作成する技能。
錬金術、屍霊術を初めとする様々な魔術を極め、物質を構成する原子の配列変換を高いレベルで行えるキャスターは、
時間及び材料さえ揃えば、グールパウダーやエリクサー、ホムンクルス、果ては賢者の石の作成すら可能とする。


123 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:20:43 hRabrG6o0

【保有スキル】

錬金術:EX
賢者の石の作成を目的とした魔術体系。
キャスターは過去に賢者の石の作成に成功している為、ランクは最高クラスである。

屍霊術:A+
ネクロマンシー技術。死体や悪霊、幽鬼等のアンデッドや魂、霊魂に関する知識やそれらを扱う技術に長けているかどうか。
キャスターは高いレベルの屍霊術を操り、種々様々な不死者の作成が可能である。

信仰の加護(偽):A
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。
自己の精神を強く保証し、自らの信ずる理念において、様々な非人道的かつ残虐な所業を行う事が出来る。
キャスターの信仰の対象とは、彼のいた世界における最高神であるオーディンでもなければ豊穣の女神であるフレイでもなく、
彼らの手足として働く戦乙女ヴァルキュリアであった。但し彼の場合はヴァルキュリアを信仰の対象と言うよりは、愛情の対象としてみていたようだが。

使い魔使役:B
優れた魔術師として使い魔を使役する事が出来る。
キャスターの場合は主に実在する動物を使い魔にする事を好み、元いた世界では鳥や猫を操っていた。

【宝具】

『万象記憶せし知識の魔石(賢者の石)』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
錬金術師のみならず、キャスターのいた世界であるならばあらゆる者が求めたと言う究極物質。
見た目はただの石にしか見えないが、その実、世界が創世される以前をも含めた、ありとあらゆる知識の集積体。
魔法にも等しい効能を持つ失伝魔法(ロストミスティック)をも網羅している。
だがこの宝具から知識を抽出する作業は非常に難しく、求めている知識は簡単には引き出す事は出来ない。キャスターに曰く、百億ページもある辞書のようなもの。
解析にさえ成功すれば、人の身でありながら神々しか知らない知識を知る事は元より、魔力量が許せば失伝魔法をも扱える。
聖杯戦争に関しては、解読に時間をかければ他の参加者の情報及び、サーヴァントの真名や来歴と言った情報すらも手中に収める事が可能。
また莫大な魔力を有する魔力炉としての効果も備えており、キャスターが操る魔術の効能を底上げする効果も持つ。
そして最終手段として、賢者の石が内包するその魔力を全て犠牲、つまり宝具を破棄する事で、並行世界からの干渉や五つの魔法、神霊級の奇跡や魔術をも一時的に無効化させる
生前キャスターはその効果を使用する事で、四宝・ドラゴンオーブが放つ、世界を焼け落とす終末の炎、ラグナロクをも無傷で乗り切った。

【weapon】

聖杖ユニコーンズ・ホーン:
ユニコーンの角を原子配列変換する事で作成出来る杖。
魔法(魔術)を遥かに超える規模・威力を誇る『大魔法』の発動を可能とする触媒。
大魔術の発動には膨大な魔力を必要とする為、その魔力に耐え切れず自壊してしまう杖が多いのだが、この杖にはそう言った心配が存在しない。

魔法及び大魔法:
元いた世界の、戦闘用の魔法(魔術)の殆どを極めている。
大抵の魔法は一工程で発動可能だが、大魔法クラスとなると、二小節の詠唱を必要とする。
使用する大魔法にはこだわりがあるらしく、天空から隕石を飛来させ、落下させるメテオスウォームの使用を好む。
どちらも短い詠唱で発動可能だが威力は高く、魔法レベルならBランク以下、大魔法レベルになるとAランク以下の対魔力でも容易くダメージを通す。


124 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:21:57 hRabrG6o0

【人物背景】

フレンスベルグの魔術学院に所属していた魔術師の一人。
魔術師でもあり錬金術師でもあり、同時に、不死者を操りそして生み出す、ネクロマンサーとしても活動、それらを両立させていた人物。
座学や魔術に関連する事柄に対して非凡な才能を見せ、魔術学院の中においても、極めて優秀な生徒であった。
しかし、協調性のなさや、自らのエゴイスティックで残虐な思想の故に、学院長であり師でもあるロレンタから学園を破門される。
破門された前後かは不明であるが、偶然目にしてしまった戦乙女・ヴァルキュリアの一人であるレナスに一目惚れ。
以降は、彼女の心と魂を自らのものとする為に、非人道的な手段のペースを加速させる。
レナスの魂を封じ込める為の素体であるホムンクルスを作り出す為に、何人もの人間やエルフを犠牲にする。
学院を破門したロレンタを殺害、彼女の無念の声を呼び水にレナスをおびき出す、と言った行為はほんの一環に過ぎない。
また、学友であり、ライバルであり、後々の障害になるであろうと目測した女魔術師・メルティーナを氷漬けにして封印した事もある。
どうしようもない悪人である事は疑いようもないのだが、同時に世界を救った立役者でもあり、彼が製作したレナスを模したホムンクルスがなければ、
オーディンの命を受けて地上に現れたアーリィ・ヴァルキュリアによって霧散させられたレナスの魂を入れる事が出来なかったのだから(そうしていなければ確実に、黒幕であるロキの放った終末の炎で世界全体が滅んでいた)。
ロキを討ち倒した後で、ロキの手によって葬られたオーディンの代わりに、世界の創造主となったレナスは、
ラグナロクによって死んでしまった地上の人間や文明を復活させるが、賢者の石を犠牲にラグナロクを生き残ったレザードは、
ラグナロクによる破壊前の人物、つまりレナスの支配下の外の住民になってしまう。
その事を利用し、レザードは過去へと遡る研究を行い、自分が生きている時代から数百年も昔の時代へと移動。
時代の改変を行い、レナスを我が物とするよう歴史を改竄する事を画策。レザードの目的は、この世界で主神・オーディンに成り代わって自らが神となり、レナスの魂と一つになる事だった。
紆余曲折を経て主神であるオーディンを抹殺し、四宝の一つであるグングニルを奪い取る。
事態を察知した、未来世界に於ける創造主であるレナスも過去を遡りレザードの前に現れるが、失伝魔法である王呼の秘法と呼ばれる、強制的に魂を転生させる術をもって、レナスを封印。
が、最後の最後で、戦乙女の三姉妹の末妹シルメリアが世界に顕現。彼女にその野望を挫かれる。
罪に罪を重ね、世界を混乱に陥れたレザードには、死ではなく、魂の消滅と言う罰が与えられると言う。
シルメリアから、「例え神であろうとも、魂と心を所有物とし、意のままに操る事は出来ない」と説教され、憑き物の落ちたような顔を浮かべるレザード。
一時は神に等しい存在となり、神にも等しい権能を振るう事が出来、その力でレナスを我が物にしようとした彼が今わの際に悟った事は、
「神は期待していたほど万能ではなかった」、と言う事であった。

【サーヴァントとしての願い】

レナスを復活させ、今度こそ彼女を自分のものとする

【基本戦術、方針、運用法】

典型的なキャスターのステータスを持つレザードは、陣地作成で自らの拠点を生みだし、其処に籠城すると言うキャスターとして基本的な戦術に忠実に従うのが最善である。
材料と時間さえ許せば宝具すらも作成可能な程の高い道具作成ランクと、不死者を生み出す屍霊術で、道具と駒を確実に増やせて行ける小回りの強さも魅力。
ステータスを見れば一目瞭然だが、直接的な殴り合いは不得手も不得手。だがそんなレザードをサポートするファクターが、マスターである範馬勇次郎である。
ガード・レインフォースやマイト・レインフォースを筆頭とした補助の魔術を用いて強化する事で、勇次郎は上位のサーヴァントに匹敵する程の白兵戦能力を獲得する。
肉弾戦を苦手とするレザードにとって、下手な不死者を超越する程の勇次郎の戦闘能力は聖杯戦争を勝ち抜く上で重要な要素なのである。
このコンビの弱点を上げるとするならば、マスターとサーヴァントの意識の違い。
二人の聖杯戦争に対するスタンスは全く真逆なもので、表面上は互いが互いを補い合うベストパートナーに見えるのだが、
実際には互いに考えている事は水と油も甚だしいのである。
レザードも勇次郎も、互いは補い合っていると言う意識をしっかりと持っている為仲間割れは早々起こさないだろうが、付け入る隙があるとすれば、この反りの合わなさであろう。


125 : 範馬勇次郎&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/04/07(火) 22:23:00 hRabrG6o0
投下を終了いたします
この候補作を考えるに当たり、第二次二次キャラ聖杯戦争の◆/k3Q/jYeig氏の候補作を参考にさせていただきました
この場を借りて、お礼を申し上げます


126 : ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:09:33 TPl2DeLw0
投下乙です
別企画の候補話の再利用になりますが投下します


127 : ゴッサムシティは真っ暗闇 ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:11:23 TPl2DeLw0
「あーもう!追ってこないでよ!!」

黒いマントに水着のような服に赤と黒の仮面というゴッサムシティにあっても尚奇抜な出で立ちの少女が桃色の一輪車で路地を走る。
未だサーヴァントを召喚していないものの少女、ドロンジョことレパードも聖杯戦争のマスター候補の一人だった。
旅の仲間と諍いになり、ヤッター兵に追われながら単独行動していたところ、このゴッサムシティに招かれてしまった。

しばらく路地裏で呆然としていたところ、運悪く哨戒中のサーヴァントに発見されまたも追われる羽目になった。
ちなみに参加したマスターにはそれぞれ役職が与えられるのだが、レパードに与えられたのはストリートチルドレンという役だった。
このためレパードはいきなり治安の悪い路地裏に放り出されることになったのだった。

「他愛なし」

サーヴァントが投擲したダークが一輪車のタイヤに命中。
バランスを崩した拍子に空中に投げ出され近くの壁に激突した。

「し、死ぬかと思った……」
「否、これから死ぬのだ」
「わわっ!?」

追撃で放たれたダークを咄嗟に横に転がって躱す。
だがそこまでだ。サーヴァントは既にレパードの眼前にまで迫っていた。

「こうなったら…ボヤッキー、トンズラー、やーっておしまい!
……って二人ともいないんだったー!!」
「他愛なし」

普段少女を護る二人の部下はここにはいない。
間もなく少女の命はゴッサムシティの闇に消える―――何も起こらなければ。







聖杯戦争のマスターとなるには「シャブティ」を所持していることが条件となる。
シャブティが変化したサーヴァントを従えて初めてマスターはマスター足り得ると言っても過言ではない。
レパードが持っていたシャブティは、彼女がいつも肌身離さず持っていた絵本だった。
彼女が持つ「ヤッターマンでんせつ」は、偶然にもシャブティで構成されていた。

一陣の風が吹く。
その風は意思を持つかのようにレパードとサーヴァントの間を吹き荒れている。
いや、事実明確な意思の下に風は二人を分断しているのだ。

「サーヴァントを召喚したか……!」
「え、な、何!?」

状況が飲み込めないレパードとは対照的にサーヴァントは事態を正しく認識していた。
少女がサーヴァントを召喚する前に仕留めるつもりが何たる誤算か。
召喚された敵サーヴァントは当然己にとっては初見の相手でありどのような能力を持つかもわからない。
先に仕掛けるのは愚の骨頂。自身の速さなら相手の初動を見てからでも対処は可能だと判断し出方を見る。


128 : ゴッサムシティは真っ暗闇 ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:12:11 TPl2DeLw0

……………………………………………………………………。
妙だ。待てど暮らせど一向に仕掛けてこないし詠唱も聞こえない。
ただただ視界を遮る強風が不気味に吹き続けるばかりだ。
やがて風が止んだ時、そこには少女も敵サーヴァントもいなかった。
端的に言って、逃げた。

「……逃がさん」

召喚されて早々臆病風に吹かれるサーヴァントならば弱兵に違いあるまい。
逃走など許さぬと追撃を開始した。







「助けてくれたのはいいんだけど、お兄さん一体誰!?」
「おぬしのサーヴァントのライダーだ!
その様子だと何も知らずに参加したようだのう!」

ライダーを名乗る少年は右腕にレパードを抱えながら路地を疾走していた。
左手には先端に玉のついた教鞭らしきものを持っている。
ライダーに抱えられながら周りを見れば不自然に汚れた水溜りや壁を背にして座り込んだ人々がいた。
ヤッターキングダムとは違う、けれどもっと深い闇がそこにあるように感じられた。

「ぬおおおおおっ!」

後ろからダークが飛来し、ライダーが身体を上下させて器用にそれらを躱した。
追跡してきたサーヴァントが既にライダーとレパードに接近しつつあった。

「まだ追ってくるの!?」
「ええい、しつこいのう!こうなれば…出でよ、スープ―!」

ライダーの声に応じて白い何かが召喚された。
つぶらな瞳で、頭に丸い二本の角を生やしている奇妙な生物だった。
敢えてレパードの少ない知識に当てはまる動物がいるとすればたった一つしかない。

「カバだー!?」
「僕はカバじゃないっスー!!」
「しかも喋ったー!?っていうか飛んでるぅー!?」
「説明は後だ、とにかく逃げるぞ!疾(チッ)!」

ライダーが教鞭のようなものを振るうと再び視界を遮るほどの風が飛来したダークを弾いた。
その隙にレパード、ライダーの順に白いカバ、もとい四不象の背に乗り込み空高く舞い上がっていった。







「…で、気がついたらここにおったのだな?」
「うん……」

しばらくして、ライダーたちは適当なビルの屋上に降り立った。
そこでレパードからゴッサムシティに来るまでの経緯を根掘り葉掘り聞き出した。
聖杯戦争に参加する前から随分と無謀な真似をしていたものだ、というのがライダーの感想だった。


129 : ゴッサムシティは真っ暗闇 ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:12:51 TPl2DeLw0

「ライダー、本当にこの世界は聖杯が作ったものなの?
殺し合いをしろってルールも、負けたらここに閉じ込められるのも、全部聖杯が決めたことなの?」
「順当に考えればそうだ。あるいは聖杯に干渉できる何者かの意思やもしれぬがな」
「………許せない」

ライダーのマスターたる少女の顔色は既に怒り、というよりは義憤に染まっていた。
このビルに降りるまでの間、眼下には未知の風景が広がっていた。
汚れた空気、夜中だというのに道端で眠る人々、誰かの怒号や悲鳴、その全てが底知れない闇だった。

「この世界は、闇だ。真っ暗だ。ヤッターキングダムと同じかそれ以上に…。
願いを叶えることができるのに、こんな世界を作って人々を苦しめてしかも殺し合えなんて……!
聖杯なんてヤッターマンと同じ、ううん、もっと悪いやつだ!!
お願い、私に力を貸してライダー!聖杯戦争なんてやらなくても、皆の願いを叶える方法がきっとあるよ!」

勢いよくライダーへ迫り、熱く語るレパードの目は本気だ。
強く、優しい子だとライダーは思った。
こんな状況でもまず人のことを考えられる人間はそうはいない。

「ライダー!」
「サーヴァントとはな、マスターの人生を助ける者のことだ。
おぬしがそう言うなら、わしもできるだけ知恵を絞ってみようではないか。
それに、やってみれば案外あっさり何とかなるやもしれんぞ?」
「…ありがとう!」

ライダーには特に願いがあるわけではない。
少女が殺し合いを止める道を選ぶのなら、そこに否やはない。
破顔し、気を良くしたレパードはビルから身を乗り出し声高らかに叫んだ。
それは聖杯戦争には決して屈しないという宣言だった。

「ドロンボーがいる限り、この世にヤッターマンと聖杯は栄えない!闇を払い、この世界に新たなる夜明けを!!」







(すまぬな、わしはおぬしの願いを叶えてやれぬかもしれぬ)

気炎を上げる主を横目にライダーはどうあっても殺し合いをせずに聖杯に辿り着くことができない可能性に目を向けていた。
当然レパードと同じような境遇のマスターがいることも考えられるし、そうでなくてもできるだけ多くの人間を助けたくはある。
しかし一度始まってしまった戦争を止めることは極めて難しい。
もし他に取り得る手段が無いのであれば、サーヴァントとして太公望が取るべき行動は一つしかない。

(わしにも優先順位というものがある。わかってくれとは言わぬよ)

幼いレパード自身のためにも、彼女の帰りを待つ者のためにも。
あらゆる手段を講じてでも己のマスターを優勝させるしかないだろう。


130 : ゴッサムシティは真っ暗闇 ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:14:17 TPl2DeLw0
【クラス】
ライダー

【真名】
太公望@封神演義

【パラメータ】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:A 宝具:A++

【属性】
秩序・善 

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるならば幻獣・神獣・霊獣まで乗りこなせる。


【保有スキル】
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターンに戻し、技の条件を初期値に戻す。

軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対人・対軍・結界宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

精神耐性:B
精神干渉に対する抵抗力。
Bランクまでの精神干渉を無効化し、Aランク以上の精神干渉に対してもこのスキルのランク分効力を削減する。

カリスマ:D…大軍団を指揮・統率する天性の才能。
劇的な効果は見込めないが、他人からの信用を得やすくなる。


【宝具】
『打神鞭(だしんべん)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜80 最大捕捉:700人
太公望が生前愛用した主武装。厳密には宝具ではなく宝貝(パオペエ)である。
宝貝とは仙人の生命エネルギーを増幅し、奇跡を生む仙人界の武器の総称である。
打神鞭は大気を自在に操ることができる宝貝であり、ある程度なら離れた場所に風を発生させることもできる。
その特性から汎用性に優れ、威力も任意で決定できる。(具体的にはそよ風程度の風から大地を大きく抉り、辺り一面を吹き飛ばすもの、複数の巨大な竜巻を発生させるものまで様々)
特に投擲武器に対する防御力は非常に高く、大抵の攻撃は軌道を反らして回避できる。
また、この宝貝は真名解放や長時間の詠唱を必要とせず、『振る』だけの動作、あるいは単に力を込めただけでも瞬時に発動することができる。

『杏黄旗(きょうこうき)』
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
太公望の宝貝の一つにして補助武装。
単体では意味を成さないが自然のマナが集まる霊脈に設置することによって、打神鞭への魔力供給が可能となる。
また、魔力の供給量に応じて太公望の魔力値を1〜3ランクまで上昇させる。

『四不象(スープーシャン)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜60 最大捕捉:200人
太公望が長年苦楽を共にした霊獣。自我を持ち人語を解する。
普段はカバのような外見で騎乗用の宝具として運用する。この状態での燃費は非常に良い。
能力を解放するとより巨大な本来の姿に変身する。この変身は四不象の意思によって行われ太公望自身による詠唱、真名解放を必要としない。
変身中は温度変化や物理的な衝撃から主人を守るバリアや、宝具に込められた魔力を捕食・吸収するエナジードレインが使用可能になる。
基本的に格上の宝具に対しては魔力を吸収できないが、何らかの原因により消耗・破損している場合はこの限りではない。
変身の持続時間は三十分であり、再度の変身には一定のクールタイムが必要となる。


131 : ゴッサムシティは真っ暗闇 ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:15:08 TPl2DeLw0

『太極図(たいきょくず)』
ランク:EX 種別:反(アンチ)宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
太公望がさる高名な仙人から授かった宝貝。
真名解放を行うことで有効範囲内の宝具の力を完全に無効化し、無効化した宝具によって発生したダメージを敵味方問わず無差別に癒す。
宝具によって発生した現象それ自体をもキャンセルするが、聖杯戦争では太極図の発動より十分以上前に起こった事象はキャンセルできない。
宝具の力によって活動するサーヴァントに対しては、動きそのものを停止させる。
ただし、同ランクの宝具は完全には無効化できず、威力・効果を減衰させるに留まる。
また、他の宝具を無効化する性質上この宝貝の使用中は四不象を除く全ての宝貝が使用不可能になる。

【weapon】
「太乙万能義手」
太公望が左腕に着けている義手。様々な機能がついている。
ボタンを押すと腕を伸ばしたり、水鉄砲を撃ったり、ロケットパンチを飛ばしたりする。


【人物背景】
崑崙山出身の道士で教主・元始天尊の一番弟子。
元々は羌族の統領の息子で名を呂望といったが、12歳の時両親や家族を殷の人狩りで失う。
その後元始天尊からスカウトを受け仙界に上って道士となり、僅か30年の修行で仙人級の力をつけた。
崑崙山のトップ・元始天尊の直弟子であるため仙界での位は高く、また最高幹部である十二仙とも同格であるため彼らの弟子からは師叔(スース)という敬称で呼ばれる。
元始天尊から封神計画を授かり、周の武王を助け、腐敗した殷を倒すために軍師となる。
物語開始時点で実年齢が72歳であるため少年の外見に反し言動が老熟しているが、甘党で注射と苦い薬を嫌ったりするなど子供っぽい所もある。
また、年齢が年齢のためか、女性や恋愛に対しては興味を持っていない。
マイペースで飄々とした性格をしている一方、平和な人間界への確固たる信念を内に秘めており、仲間に対する優しさと厳しさを併せ持つ。
基本的には頭脳戦を得意とし、敵を巧みにペテンに掛け、時には味方からもブーイングを受けるほどの卑怯な手を堂々と使う。
自身の実力については多面的な描写がされており必ずしもはっきりとはしないが、知略においては作中でもトップクラスの位置づけである。



【サーヴァントとしての願い】
レパードの意思を尊重し殺し合いを止める方法を模索する。
ただしレパードの生還を超えて優先するつもりはなく、他に方法が無い場合は手段を選ばずレパードを優勝させる。


132 : ゴッサムシティは真っ暗闇 ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:15:40 TPl2DeLw0


【マスター】
レパード@夜ノヤッターマン

【マスターとしての願い】
聖杯を使ってこんな地獄のような世界を作った悪者にデコピンを!
当然殺し合いなんてしない。

【weapon】
なし。

【能力・技能】
特殊な能力はなく、頭脳も力も歳相応。
ただし先祖譲りの逃げ足の早さと高い耐久力を持つ。

【人物背景】
伝説の大泥棒・ドロンジョの末裔。どんな状況においても希望を失わず、明るい未来を夢見ている9歳の少女。
笑顔が魅力的で生命力が強く、倒れても倒れても立ち上がってくる強さを持つ。
義賊の末裔としての誇りを抱きワルぶって見せようとするが、元が良い子なのでなかなかワルに成りきれない。
母・ドロシーが不治の病にかかった時にヤッターマンに助けてもらおうと海を渡ろうとし、ひどいおしおきをうける。
そのことによりヤッターマンが正義の味方であるということに強い疑念を抱くようになる。
母親を助けてもくれなかったヤッターマンにおしおき(デコピン)をするためにドロンジョの名を継ぎ、ボヤッキー(ヴォルトカッツェ)とトンズラー(エレパントゥス)と共に新生ドロンボー一味を結成する。
長い間ヤッターマンを弱者を助ける正義の味方と信じていたため、レパードの倫理観は幼い頃から読み親しんでいた絵本「ヤッターマンでんせつ」をベースにしている。
さらにいい子でいるとの母親との約束もある為、ドロンジョでありながら「正義の味方」に近い人格となっている。
精神面に未熟な面も多々見受けられるが、総じて聡明であり早熟な部類に入る。

【方針】
聖杯を悪用した者にデコピンするために、仲間を集める。
ただし本当に悪いやつにはお仕置きする。


133 : ◆sIZM87PQDE :2015/04/09(木) 21:16:10 TPl2DeLw0
投下終了です


134 : ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 03:59:09 CGSB84X.0
皆様投下感謝です。

>ゴッサムシティは真っ暗闇
シャブティというのはエジプトで被葬者とともに埋葬された小像の事です。
ですので「シャブティで構成されていた絵本」というのは流石に妙かなぁと。
とはいえ、ルールにも"サイズ,材質は問わない"と書いてあるので、
「絵本の片隅にシャブティの落書きがあった」程度のものでも十分ですよ。


135 : ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 03:59:32 CGSB84X.0
では、私も投下させてもらいます。


136 : ジェームズ・ゴードン&アーチャー ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 04:01:16 CGSB84X.0



 ゴッサム市警の屋上に設置された、サーチライト形の信号灯。
 光を発する様子を見せないそれの付近に、眼鏡を掛けた男が一人。
 物悲しそうな瞳の先にあるのは、やはり信号灯であった。

 男の名はジェームズ・ゴードン。
 ゴッサム市警の警部補として働く男である。
 この街の警察は不正を見て見ぬ振りする悪党ばかりだが、
 その中において、彼は"悪事を働かない"という変わり者の一人であった。
 自身の純朴な正義感を頼りに、真っ当に悪と戦おうとする存在。
 愚衆の街において、彼の様な警官は異端中の異端であった。

 ゴードンの視線を一身に浴びる信号灯。
 本来であれば、レンズに蝙蝠のマークが刻まれている筈のそれ。
 犯罪者と戦う"闇の戦士"を呼ぶ唯一無二の手段は、"ただの信号灯"となっていた。
 レンズに蝙蝠の姿はなく、それどころか長年使われた形跡すら見られない。

「過去の資料に一通り目を通した」

 "ただの信号灯"を見つめながら、ゴードンが呟いた。
 決して独り言では無い。第三者に向けて放った言葉だ。
 その証拠に、背後の虚空から大きな影が一つ現れる。

 顔面の鼻から下を、黒いボロ布で隠した大男。
 額には黒い太陽コロナめいた痣があり、髪は老人の様に白い。
 無知な者の眼からでは、浮浪者と見間違われそうな風袋である。

 この男の正体は、聖杯に呼ばれし超常の使い魔――サーヴァント。
 彼の存在は、ゴードンが聖杯戦争の参加者であるという証拠でもあった。
 クラスは"アーチャー"、そして真名は"ディテクティヴ"。
 "探偵"の名を冠した英霊に、ゴードンは妙な縁を感じずにはいられなかった。

「バットマンとやらの事か?」
「ああ、どうも"この"ゴッサムにはいないらしい」

 "この"を強調したのは、ゴードンが元の世界でもゴッサムの住人だったからだ。
 彼が住んでいたゴッサムには、バットマンと呼ばれるヒーローがいた。
 闇夜に紛れて現れ、街を跋扈する悪を打ち倒す闇の戦士(ダークナイト)。
 彼の出現により、ゴッサムの秩序は少しずつだが回復していったのである。


137 : ジェームズ・ゴードン&アーチャー ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 04:03:25 CGSB84X.0

「彼の存在がゴッサムに秩序を思い出させた……だが……」
「ソイツのいない今、ヒーローはどこにもいないッて事か」
「我々警察がこの体たらくだ、そういう事になるだろう」

 ゴードンの調査した限りでは、この街にバットマンが現れた形跡はない。
 それはつまり、悪を挫くヒーローの不在を意味しているという訳で。
 抑止力無き今のゴッサムは、案の定悪党の巣窟と化してしまっていた。

「道理でマッポーめいている訳だ」

 まるでアンダーガイオンだなと、アーチャーは言い零す。
 彼もまた、このゴッサムに匹敵する程の暗黒都市で暮らしていたらしい。
 その頃を回想したのだろう、彼の表情には曇りが見えた。

「ところでアーチャー、市民の件だが……」
「オイオイ、俺が言った事もう忘れちまッたのか?
 "魂だけは間違いなく本物だ"ッて言ったばかりだろ?」

 そう、冗談の様な話だが、アーチャーの言う通りなのだ。
 この街は仮初のものだが、そこに住む人間の命は本物なのである。
 元の世界で平穏に暮らす筈の彼等は今、聖杯の傀儡と化している。
 闘争を盛り上げる駒として、ゴッサムシティの住人に仕立て上げられているのだ。

「いや、それは知っているさ。私が知りたいのはそこじゃない。
 もしマスターが聖杯を手に入れたとして、この街はその後どうなる?」
「さあな。だが……俺が思うに、この街と一緒に廃棄処分だろうよ」
「やはり、そうなるか」

 胸糞悪りィ話だと、アーチャーは顔を顰めた。
 聖杯戦争が完結した時点で、模倣されたゴッサムは用済みとなる。
 主催者の目論見が何かは知らないが、駒として民間人を拉致する様な輩だ。
 不要という理由で、ゴッサム諸共全市民を消し去る可能性も大いにあり得る。

「わざわざ呼び出してすまないなアーチャー、今後も探索にあたってくれ」
「いいさゴードン=サン。この程度どうって事はねェよ」

 そう言って、アーチャーは笑みを見せる。
 彼の主であるゴードンの願いは、この聖杯戦争の中断である。
 偽りのゴッサムに捕らわれた人間を救う為、彼は聖杯を否定するのだ。

 アーチャーが良心的なサーヴァントで良かったと、ゴードンは改めて安堵する。
 それがお前さんの"依頼"なら、俺はその為に動くまでだ、と。
 サーヴァントの意思とは相反する筈の方針を、彼は受け入れてくれたのだ。

 マスターがそうである様に、サーヴァントもまた願いを持っている。
 優勝景品が万物の願望器なのだ、持ってない方がおかしいと言えるだろう。
 聖杯を否定するという事はつまり、願いを叶える権利を放棄するという事だ。

 願いを叶えさせてやれないという事に、申し訳ないと思う気持ちはある。
 だが、今は自身の意思に賛同してくれた喜びの方が優っていた。
 最初こそ発せられる威圧感に本能的な恐怖を覚えたものの、話の分かる男で本当に良かった。
 確かな善性を持つであろう彼とであれば、きっと上手くやっていけるだろう。


138 : ジェームズ・ゴードン&アーチャー ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 04:04:53 CGSB84X.0

 気付いた頃には、アーチャーの気配は消えていた。
 ゴードンの指令である"他のサーヴァント捜索"の為、霊体化して移動したのだろう。
 代わりと言わんばかりに、飛んできた鴉が信号灯で羽を休めていた。
 さながらアーチャーの黒布の様に黒い鴉だ。
 色合いのせいで、周囲の闇にすっかり溶け込んでいる。

「しかし、あれでニンジャとはな」

 ゴードンの知る"忍者"とは、隠密活動を得意とする日本の戦士であった。
 だが彼の前に現れた"ニンジャ"は、無骨な拳銃を得物とする大男ではないか。
 ああも洋風な外見をした男が忍の者だとは、世の中分からないものだ。
 自身の微妙な勘違いを疑わぬまま、ゴードンは息をついた。

「この街にバットマンはいない」

 この街には、バットマンがいたという事実自体が抹消している。
 同様にジョーカー等の大犯罪者の記録も消えているが、犯罪が消失した訳では無い。
 この街はバットマンが現れる前の、ドス黒い犯罪都市のままだ。

 もしサーヴァントが魂喰いの為に市民を殺しても、止める者はいないだろう。
 悪意に飲み込まれた街は、ヴィランを野放しにしたまま動き続ける。

 バットマンとの最後のやり取りを思い返す。
 彼は別れの間際、"誰もがバットマンになれる"と言い残した。
 世界の誰もが、他者を救済できるヒーローになり得るのだと。

 だが、もしそのバットマンがいないとしたら。
 街に住む者全員が、ゴッサムの守護者を忘却していたのだとしたら。
 誰もがヒーローになり得る事実を、誰もが知らないのだとしたら。
 そして、その事実を知るのが、自分一人なのだとしたのなら。

「……我々がヒーローになるしかないんだ」

 鴉が気だるげに鳴き、翼をはためかせ空を舞う。
 闇夜に踊る黒翼は、さながら蝙蝠の如し。


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139 : ジェームズ・ゴードン&アーチャー ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 04:07:24 CGSB84X.0

【CLASS】アーチャー
【真名】ディテクティヴ
【出典】ニンジャスレイヤー
【属性】中立・善
【ステータス】筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:A 宝具:A

【クラス別スキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Dランクの場合、一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
例えマスターを失っても、Bランクならば二日は現界可能。

【固有スキル】
ピストルカラテ:A++
大口径拳銃・49マグナムの反動をカラテの威力向上に生かした武道。
全盛期に比べれば多少の衰えはあるが、それでも強力である事に変わりは無い。

薬物中毒:B
精神安定剤『ZBR』の重度中毒者。
薬物の効果が切れた場合、頭痛や思考の鈍化等が起こり、最悪の場合死に到る。
逆に言えば、ZBRさえ摂取していれば優れた勘と判断力を発揮できる。

弱点看破:B
ミヤブリ・ジツとも呼ばれる能力。
ニンジャソウルにより強化された網膜ディスプレイは、相手の弱点部位を映し出す。
そうして見つけ出した弱点には、"光る輪"の目印が現れるという。

【宝具】
『カラス・ニンジャ』
ランク:A 種別:対己宝具 レンジ:1 最大補足:1人
ニンジャとは平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
この宝具はガンドーに憑依したカラス・ニンジャのニンジャソウル、つまり魂そのもの。
ニンジャソウルに憑依されたものは個人差こそあれど、超人的な身体能力や生命力を獲得する。
その戦闘力は常人を遥かに凌駕するものの、急所への攻撃はニンジャといえど致命傷となる。

『影に潜むは黒翼(カラス・ガン)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:10 最大補足:1人
アーチャーが持つ"ユニーク・ジツ"。所謂固有能力。
"影"からカラスを創って操り、更には49マグナムの弾丸代わりに装填する事が可能。
銃に装鎮した影、言わば"カラス弾"は、ガンドーの意思である程度軌道の制御ができる。
ただし、殺傷力は実弾より劣ってしまう為、この宝具で敵を倒すなら距離を詰めるか急所に当てる必要がある。
また、あくまで影から作るという性質上、完全な暗闇の中では機能しないという弱点を持つ。

【weapon】
『49マグナム』
アーチャーが愛用する拳銃。二丁携帯している。
威力が折り紙付きだが反動が大きい代物ではあるものの、
アーチャーはこれらを片手に一丁ずつ携えて戦闘を行っている。
弾丸は魔力で製造が可能。ただし、一発に必要な魔力量は前述のカラス弾より多い。

『高密度バイオニューロンチップ』
アーチャーの額の下に埋め込まれたチップ。
彼の助手であった「シキベ・タカコ」の記憶を移植したものであり、
ニンジャであるアーチャーはローカルコトダマ空間を通し彼女の記憶や人格と断片的なコンタクトを取ることが出来る。
なお、このチップは定期的に脳漿液を新鮮なものに取り替える必要があるが、アーチャーはこれを頭部に埋め込む事で脳漿液を自力で賄っている。

【人物背景】
劣悪な環境にあるキョート・アンダーガイオンでガンドー探偵事務所を営んでいた私立探偵。
伝説の探偵クルゼ・ケンの元弟子兼相棒であり、腐敗したキョートの闇に光を当てたいという願いを内に秘めている。
ある時、キョートを支配するザイバツ・シャドーギルドを追って来たニンジャスレイヤーに相棒めいて協力する事となる。
……が、 自身に恨みを持つニンジャ"ガンスリンガー"の強襲に遭い、簀巻きにされ琵琶湖に沈められてしまう。
本来ならばそこで死に至る筈だったのだが、そこでカラス・ニンジャのソウルが憑依。
次に湖から上がった時、そこにいたのは人間"タカギ・ガンドー"ではなく――ニンジャ"ディテクティヴ"であった。

【サーヴァントとしての願い】
かつて助手だった女を生き返らせてやりたい。


140 : ジェームズ・ゴードン&アーチャー ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 04:07:48 CGSB84X.0

【マスター】ジェームズ・ゴードン
【出典】ダークナイト ライジング

【マスターとしての願い】
聖杯戦争に捕らわれた民間人を解放する。

【weapon】
『グロック17』
オーストリアのグロック社が開発した自動拳銃。
アメリカだけでも警察関係を中心に4000もの機関で採用されている。
また、これ以外にも『シグザウエルP226』を始めとした他の拳銃を利用する事もある。

【能力・技能】
警察官としての技量、そしてゴッサムの中でも正義を貫く強き意思を持つ。

【人物背景】
腐敗と汚職に塗れたゴッサム市警に籍を置く警部補。
強い正義感を持つ市警の良心であり、腐敗にも徹底的に戦う姿勢を見せる。
バットマンにもその正義は認められており、ゴードン自身も彼の自警活動に協力している。

【方針】
聖杯戦争中断の為の手段を模索する。
また、可能であれば協力者を集めたい。


141 : ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 04:11:39 CGSB84X.0
投下終了となります。
アーチャーのステータス製作の際、 ◆1k3rE2vUCM氏『ハナ&キャスター』を参考とさせてもらいました。

あと、若干気が早いかもしれませんがwikiを製作しました。
ttp://www63.atwiki.jp/gotham/


142 : ◆JOKERxX7Qc :2015/04/11(土) 04:24:42 CGSB84X.0
言い忘れていた事を一つ。
今後はステータス欄にある【人物背景】は省略しても構わないものとします。


143 : ◆sIZM87PQDE :2015/04/11(土) 10:30:55 MptKKDLw0
投下乙です
やはりゴッサムと言えばバットマンとゴードン警部補ですよね
シャブティについての指摘、了解しました
wikiに載せる際に氏の提案通り「絵本の片隅にシャブティの落書きがあった」という形に修正したいと思います


144 : ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 11:52:21 89OQL4BM0
投下します


145 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 11:54:12 89OQL4BM0

1:

 敬虔なクリスチャンがアメリカの一都市であるゴッサムシティの実情を知ってしまったら、口を揃えてこう言うかも知れない。
「現代に蘇ったソドムの市だ」、と。旧約聖書の成立より2000年以上が経過した現在では、創世期の中に語られるソドムの市など一笑に付す街並みをゴッサムは持つ。
見る者を圧倒する程の高さのビル群が林立し、これが夜になると、百万ドルの煌びやかな夜景を演出し、
日に流通する物資や貨幣の額は、今やステーツの中でも指折りの物へと成長、経済活動についても定評がついて来ている。
栄耀栄華を極めつつあり、絶頂の最中に今やあり、と思われるこのゴッサムの内情は実に劣悪なものであった。

 アメリカにおいても新進気鋭の経済・商業の地として名を馳せるゴッサムに、利潤を追求しようとやって来るのは真っ当な経済人だけじゃない。
アウトローや凶悪な犯罪組織もまた、ゴッサムに実る利益と言う名の果実を欲する餓狼なのである。
犯罪組織が触手を伸ばしていない所など、ゴッサムには存在しないと言っても良いだろう。不当に利益を獲得する対象が、誰であろうと彼らには関係ない。
麻薬の売買、風俗法に著しく違反した売春業、恐喝、窃盗・強盗、マネーロンダリング等々。ありとあらゆる悪徳を用いて、彼らは利益を集めようと必死なのだ。
彼らは悪徳を犯して得て来た金を以て、行政や司法をも懐柔しようと目論んだ。賄賂に心を動かされると言うのは、古の昔から人は変わっていない。
ゴッサムの警官の殆どが、今や廉潔さの欠片もなく、生活の大部分を賄賂で賄う有様で、今や行政部も、犯罪組織が齎すブロンド美女や宴会、賄賂によって癒着。
マフィアやアウトローの増長を許すと言う有様である。そして極め付けが、急激な社会・経済発展のツケとも言うべき、修正不可能なレベルの経済格差だ。
実に不思議な町である。親子何代が一生放蕩に耽って暮らせるような富豪が当たり前のようにいる一方で、今日の飯の為に身を粉にして働く低所得者が、この街には同居している。
そんな低所得者やホームレス達が、スラムを形成。日々の生活でその心を荒ませて行き、ある日突然癇癪を起した様に犯罪を起こしたり、日々の困窮に遂に耐え切れず、
犯罪組織に身をおくなど、この街では日常の出来事。皮肉な事に、経済と行政の怠慢の犠牲者である彼らもまた、ゴッサムの治安の悪さを助長させる一因なのだ。

 成程、確かにこの街はソドムの街と形容されるに相応しい街のようである。
そして最早、この街から悪徳と背徳の芽をその種子ごと焼き尽くすには、天にまします大いなる父が、灼熱の火炎と熱した硫黄を降り注がせる以外にないようにも思える。

 しかしついぞ最近、この爛熟した経済都市に、ある一つの要素が持ち込まれた事を知る者は、極めて少ない。
その要素とは、ゴッサムシティのヒエラルキーの上層にいる者ならば、「犬だって食いやしねぇ」と馬鹿にする文化である。
だが同時に、正しく運用すればゴッサムの現状をも打破するだけでなく、その反対、ゴッサムの悪徳を更に際立たせる要素にも成長しうる可能性を秘めたものでもある。
世紀末都市一歩手前に位置するこのゴッサムになら、一つや二つ、そう言ったお題目を上げる組織が良そうなものであるが、何の偶然か、
そのスキマに入り込もうとする組織はついぞ今まで存在しなかった。つまりゴッサムにおいては今や、その2人組こそが、そのスキマにおけるパイオニアなのである。





 ――それは、宗教/カルトと言う、人類の歴史上最も完成された、集金集客の為の偉大なる発明品なのだった。







2:

 その2人組が現れたのはつい2日前と言う最近の事らしい。
ストリートチルドレンやホームレス、低所得者たちがたむろする、ゴッサムの貧民街に出入りするその2名は、
一見すれば街の中流階層風のルックスをしており、とてもじゃないが、掃き溜めと形容されるゴッサムのスラムに足繁く通う様な者達には見えなかったと言う。

 奇妙な事に2名とも、東洋人、しかも日本人であったと言う。
なおの事、理解に苦しむ。日本人の観光客であればゴッサムのスラムがどれ程危険であるかは事前に知識を仕入れて来る筈だろう。
いやそもそも日本人であれば、ゴッサムの大抵の歓楽地には足を運べる身分であるのだから、スラムに足を運ぶ理由すらがない。
となればその2名は、初めから意図を持って、スラムに足を運んだ、と見る向きが強いと言わざるを得ないだろう。だとしたら、面倒な仕事を増やしてくれたものである。
ドブと、アルコール中毒気味のホームレスの吐いた吐瀉物の臭いがミックスされた、反吐が出る程胸糞悪い裏路地を早歩きで往きながら3人の男達は一様に考える。


146 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 11:56:14 89OQL4BM0
 スラムや貧民街に住むゴッサムのヒエラルキーの下層に位置する住民達を急速に取り込み、決して無視できない規模にまで成長している新興宗教があると言う。
『ゴウ教』。その新興宗教の名前である。教主に位置する人間の名前から取っていると言う。
その宗教の教義とは、こう言う事であるらしい。曰く、ゴウ教の教主である男は、『正統な神の立場から貶されて、神格の低下した神』であり、だから今は、奇跡を見せようにも極めて限定的なそれしか発揮出来ないと言う。
自分が嘗てのような力を発揮するには、皆々が自分の事を『神であると信じる事』が必要である、と言うらしい。

 自分が神であると嘯く新興宗教には、ロクな組織が存在しないと言うのが世の常である。
況してや、神の加護など欠片も信じていないゴッサム市民を相手に布教活動など、それこそソドムの市の住民を回心させる事よりも難しいだろう。
だが現実問題として、この新興宗教は、マフィアや犯罪組織達の嘲笑をよそに、着実と勢力を増やして行っていた。

 何故か。理由の1つに、教主ではないもう1人の日本人が、卓越したヴァイオリンの腕前の持ち主であると言う事実がある。
音楽に国境はないとはさても良く言ったものだ。布教活動に野次をいれる下卑たホームレスや低所得者達を、華麗な音楽の力で黙らせるのである。
黙らせるだけでなく、人を集める効果もそのヴァイオリンの日本人は担当している。その集客率は予想の通り、高い。音楽目当ての者もいるからだ。
勢力拡大のもう1つの要因が、要の教主そのものなのである。そのゴウ教の信者を締め上げて聞いてみると、その胡散臭い男の話術と存在感は、不思議な魅力は確かなもので、
貧民街で極貧の苦しい生活を送る自分達の心境や境遇に理解を示し、同調、そして一緒に過ごすうちに、気付いたら、この男の話を信じてみよう、と言う気になるのだと言う。
そして2日ばかりで多くの人間の支持を集めた最大の理由が、この宗教には布施は不要であると、教主自らが断言した事であり、事実2名は信者から何も受け取っていないのだ。

 見返りは貰わず、ただ自らを神と信じるだけで良い。
話だけを聞く限り、その教主と言う男は、聖人気取りの馬鹿か、承認欲求を満たしたいだけのただの愚か者である。
しかも、見る者を惹きつける謎の魅力と、優れた話術を持ち、影響力だけは一丁前に強いと来ている。尚の事タチが悪い。

 夜のゴッサムのスラム街は狼の巣である。下手に一人でそんな場所に迷い込もうものなら、身ぐるみを完全に剥がされて路上に転がされるのがオチである。
そんな危険な場所を3人程度で歩き回っても、スラムのチンピラやホームレス共が彼らを見て見ぬフリをする訳は、単純明快。
3人は此処ゴッサムに幾つも蔓延る、中堅規模のマフィアグループに所属する男達だったからだ。
用もなければこんなしみったれた場所になど足も運ばない彼らだったが、今回ばかりは勝手が違う。自分達の評価、引いては所属マフィア全体の収入が懸っているのだ。

 男達はスラムの少女達や娼婦に売春を行わせ、その収入の上澄みをハネ、そのドルを上納金として納める事で評価を得ていた。
だが昨日、その日の分の収入を回収し計算すると、目に見えてその額が減っていたのだ。理由はハッキリとしている。
売春をする女、特に年端もいかない少女達の多くが、その行為を拒否し、その日はサボタージュしていたのである。
何故やらないと少女の1人に脅しをかけると、「レイお兄ちゃんがそんな事しちゃダメだって言うから……」と、泣きながら弁明。
どうやらその新興宗教的には、春を鬻ぐと言う行為は、余り好ましい所ではなかったようである。
其処から3人は、今このスラムに根を張りつつある日本人の2人組の事を初めて察知したのである。

 結論を述べれば、この3人組はその2名の日本人を抹殺するつもりだった。
イカれたジャンキーの戯言なら彼らも無視はしたろうが、スラムに大きな影響を与えており、もっと深刻な問題として、収益が減っているのである。
今より多くの娼婦や少女が仕事をサボタージュし、収益が減り続けて行けば、自分達の評価や出世にも響きかねない。危険な釘は、速めに抜いておくに限るのだ。

 2名が住んでいる場所は、既にアタリを付けていた。
前述のような、新興宗教の教主とその右腕と言う様な立ち位置と言う事もそうだが、日本人と言う、裕福さの代名詞とも言えるような人種のくせして、
スラム街とゴッサムの中産市民が住むアパート街の、丁度ボーダーラインに位置する安アパートに居を下ろしているのだ。
これで有名人にならない筈もない。現にこの3人は、適当な浮浪者の信者1人を締め上げるだけで、もう住処を特定出来た始末である。

「とっとと仕事を終らせるぞ」


147 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 11:56:49 89OQL4BM0

 トレンチコートを着用したマフィアが立ち止まるなりそう口にする。
あぁ、と、仲間の2人から返事が返ってくる。其処は既に、件の2名が住んでいると言うアパートの前であった。
2人が住んでいる部屋の前まで近づき、施錠の有無を確かめる。流石にスラムに近い場所にあるアパートの為か、しっかりと掛かっていた。
3人の仲間の内、ピッキングに強い1人が、無理やり開錠する。安い家賃に相応しく、セキュリティもお粗末だ。
この程度の古いタイプの施錠など、プロの犯罪者にとっては何の防犯にもならない。ゆっくりとドアを開け、気付かれぬうちに仕事を終らせようとした――その時だった。

「どーもこんちゃーっす」

 ――アパートの『内部』から、如何にも軽く、軟派そうな男の声が聞こえて来たのである。しかも明らかに、マフィアの3人に向けて、である!!
驚いた3人は急いで、懐から拳銃を取り出し、その銃口を部屋の先へと向ける。果たして其処には、部屋の住民と思しき男のシルエットが佇んでいた。

 白い半袖のシャツに、少し白みがかった青色のジーンズを穿いた、良く日焼けた肌に、長い金髪のサーファー系の男性。
間違いない、情報の通りならこの男だ。新興宗教を興した2名の内の1人、『教主』の側に位置する男だ。

「ケッ、どんな奴が教主かと思えば、マイアミ歩けば100mに10人はすれ違いそうなチャラ男じゃねーか」

 3人のマフィアの内1人が言った。
教主の顔立ちは、一般的に見れば整った方に位置する、フレッシュで若々しい、プレーボーイ風のそれである。
しかし、それだけだ。彼と同じような背格好と容姿の人間など、アメリカ中を探せば掃いて捨てる程見つける事が出来る。
こんな人間を神と崇めるなどとは、全く馬鹿馬鹿しくて救いようがない。

「で、3人はどう言う集まり何だっけ? あ、もしかして俺を神って信じてくれる事を教えてきたの?」

「なワケねーだろうがクソジャップ、テメェとその片割れをぶっ殺しに来たんだよ!!」

 教主の緩い喋り方に対して頭に来た、一番先頭にいたマフィアがサイレンサーつきの拳銃を躊躇いなく発砲。
彼の着用していた白いシャツの左胸部分を容易く貫き、赤い血液で急速にそれを濡らして行く――筈であった。

「あー、いいねぇ!! 自分から面倒する手間が省けたよ」

 何故この男は、平然と、笑顔を浮かべてマフィアに語りかけて来ているのだろうか。
そして何故――この男のシャツは、血に濡れていないのだろうか。

「な、何だ、何があったんだ『豪殿』!?」

 サイレンサーを付けているとは言え、火薬の炸裂する音響を完全に消す事は出来ない。室内で撃てば、銃声が響くのは当然の事。
その音に驚いた様子で、『豪』と呼ばれた男のすぐ近くのソファで眠っていた男が飛び起き、彼に話し掛けて来た。

 ……『女性』? 事前情報で男性であるとは解っていた為にさほど混乱はなかったが、それでも人伝に聞いた話と実物を実際に見てみる事は全然違う。
事前情報があっても、マフィア達は惑わされたのである。それ程までに、ソファで今まで寝ていた男は中性的な容姿をしていた。
黒いリボン付きの、フリル付きカッターシャツを身に付けた、黒いスラックスの少年。
これよりも女性的に劣った容姿の女など、アメリカを探せば10万人は下らないだろう。それ程までに、魅力的な容姿をした少年だった。教主に据えるなら寧ろ此方だろう。

「お〜、おはよう『麗』くん。いやなんか、カチコミに来たみたいだよこの人達」

 あそこに花が咲いている事を教えてやるような呑気さで、豪と呼ばれる男はマフィアの方を指差した。
どうやら強がりでも何でもなく、本当に銃弾が通じていないらしい。まさかコイツ本当に、いやまさかそんな筈はない!!
マフィアの1人が、その仮定を否定する。ありえない、だってゴッサムには神の存在など――

「麗くんは危ないからソファの裏にでも隠れてなよ、流れ弾とかはそれで何とかなるでしょ」

「その、豪殿は……?」

 ソファの裏に隠れながら、麗と呼ばれている少年が心配そうに訊ねて来る。

「大丈夫だって安心しろよ〜ほんとヘーキヘーキ!! ヘーキだから!!」


148 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 11:57:20 89OQL4BM0

 いかにも軽い調子で麗と言う少年の心配を消してやると、豪は、マフィアの方に目線を向けた。
薄っぺらい軽薄とした笑みからは、到底、神を名乗るには程遠い空気が醸し出されている。
神と言うよりはむしろ、詐欺師の方が性に合っているだろう。

「銃が利かねぇ何てあり得るかよ!! バットマンだって、銃弾で頭撃ち抜かれりゃ死ぬんだぞ!!」

 先程銃弾を撃った男とは別のマフィアが、前に出て拳銃のトリガーを引いた。
パシュンッ!! と言う音が響くと殆ど同時に、豪の眉間に銃弾が直撃――そして、素通りして行く。
ピシッ、と言う音を響かせて、マフィアの放った銃弾は豪の背後の窓ガラスを貫いて、向かいのアパートのコンクリ壁に入没する。

「あーもう滅茶苦茶だよ、窓も壊しちゃってさぁ」

 幽霊でも目の当たりにしたかのような表情を浮かべながら、3人は豪の事を見ていた。
平然としていた。いやそれどころか、蚊に刺された程の痛痒もこの男は感じていないらしく、平然と3人に向かって言葉を投げ掛けて来ているのだ!!

「ま、まさかほ、本当に神――」

「もう何発か撃ってみりゃ解るんじゃない?」

 言って豪は男達の方に一歩近づいた。
2回目に拳銃を撃った男が、ヤケクソと言わんばかりに、チャンバーに込められた銃弾を全て豪にぶち込んだ。
が、相変わらず豪は平然としている。そしてあの軽薄な、チャラついた笑みを浮かべているのだ。

 3人が3人、最早その場から動けずにいた。
胃が裏返りそうな程の恐怖に直面し、喉が急激に渇いている。体中からの冷たい汗のせいで、水をぶっかけられたように身に纏う服がびしょ濡れである。

「おっ、皆如何やら本当に俺の事神様って信じてくれたみたいだな」

 ニッ、と豪が笑みを浮かべ直した。――酷薄で冷たい、残虐な笑みであった。

「俺もこの力を振るうのは初めてだからなー、練習してみるか」

 そう言った次の瞬間だった、最後に銃弾を発砲した男が、唐突に悲鳴を上げ始めた。
2人のマフィアがその悲鳴の方を見なくとも、何故その声を上げたのかハッキリとした。男が生きたまま燃え上がっているのである。
直立の状態を保ちながら燃える様子はさながら燃える杭のようである。悲鳴を上げる事の出来た時間は、正味1秒程度だったろう。
摂氏4000度の炎で以て燃え上がった彼は、それこそ一瞬で、のたうつ暇も与えず、骨も灰も残らず焼き尽くされてしまったのだ。

「すげ〜ことなってんぞ〜?」

 男が燃え上がった様子を見てからの言葉が、それであった。

「あーでも、この殺し方――あ、違うな、裁き方は失敗だったな、死体の焼ける匂いがダメだ、気持ち悪い。麗君、後ろの窓開けてくれるかな?」

 と、豪が口にするが、3秒経っても何の反応もソファの裏からはなかった。
「あー、駄目か」、と豪が諦めたように口にする。マフィアの側からは麗の様子は見られなかったが、彼はソファの裏で耳を塞いでガタガタと震えていた。

「……あ、じゃこうすれば良いんだ」

 何か閃いた、と言う様子で豪が口にした、瞬間だった。
最初に彼に銃弾を発砲したマフィアが、うぐっ、と苦しそうに呻吟した後で、前のめりにドタッと倒れ込んだのは。
心臓を抑えながら、発作に苦しむように。やがて、ガクガクと強い痙攣が体中に走った後に、ピクリとも動かなくなった。
驚くのは、その後の事だった。なんとその男の身体が、徐々に空気と同化して行くように透明になって行き、遂には姿が見えなくなってしまったのである!!
初めから、こんな男などいなかったと、世界からそのまま否定されてしまったかのようにも見える。

「うし、魂喰いって奴も成功したし、死体も綺麗に消滅させられたし、一石二鳥!!」

「な、な……」

 残されたマフィアの1人など、堪ったものではない。
この男は、本当に神だったのだ!! 信じられない、俺達は何て男に喧嘩を売ってしまったのだと強く後悔していた。
厳しいプロテスタントだった母親の、厳格なキリスト教教育を今になって思い出してしまう。
人は神と絶対に争ってはいけないし馬鹿にしてはいけないと言う、今まで蔑んで来た教えがフラッシュバックする。
逃げなければならない、ガクガクと震える足腰で、豪に背を向けかけるが、腰が回らない。
なんだ、如何した、と混乱するマフィアだったが、下半身を見て、戦慄した。自分の爪先から腰までが、完全に石と化しているのである!!


149 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 11:57:37 89OQL4BM0

「わ、わああぁあぁああぁっ!!」

 柄にもなく子供の用に叫び声を上げるマフィア。
自らの身体が石化する。それは、常人の精神であれば一発で正気を失い、発狂すらしてしまうであろう、恐怖の現象であった。

「大人しくしろ!! 身体全部石化させてバラ撒くぞこの野郎!!」

 突如豪が、人が変わったかのように豹変、荒々しい口調でマフィアを恐喝する。
最早何が何だかわからない、マフィアは既に平静を保てずにいた。

「バラ撒かれたくねぇだろ? 命だけは助かりてぇだろ? だったらジタバタすんじゃねぇっ」

 豪の言葉を辛うじて飲み込む事が出来たマフィアは、男の言葉を意のままに、黙りこくった。
「よーしそうだ」、と、心底ゲスな、場末のチンピラだって上げないような声のトーンで、豪が満足そうに呟いた。

「良いか、お前だけは命を助けてやる。だが、お前には1つ約束を守って貰うぜ?」

「や、約束……?」

「組に戻ったら、この街には『神』がいるって、命の限り組員に布教しろ。もしも手ぇ抜いてみな、そん時は……お前にも仲間と同じ道を辿って貰うぜ?」

 マフィアの顔面が一瞬で、青色を通り越して白色に変貌する。下半身が石化していなければ、きっとその場で失禁すらしていただろう。

「良いか、解ったか?」

「は、はい!!」

「じゃぁ行け!!」

 言うや否や、豪はマフィアの脚部の石化を解除する。
途端に男は前のめりに倒れ込む。「ひいぃいぃいっ!!」と、先程此方にカチコミを仕掛けて来たのが遠い昔の話の如く、彼は倒けつ転びつアパートから逃げて行った。

「……ま、こんな所かな」

 満足そうに、豪が呟いた。
眠らない街ゴッサムの、深夜0時の話であった。







3:

「あれしかなかったのか……」

 心底ゲンナリとした声色で、ソファに座りながら神楽麗は、壁に背を預けて佇む豪に言った。
何処となく非難がましい、豪を責めるような光がその瞳に宿っている。


150 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 11:59:33 89OQL4BM0

「冗談言わないでよ麗君、明らかに話し合いで解ってくれる人達じゃなかったでしょ」

 麗の言わんとする事を察したのか、豪が反論する。
彼の言葉を正論と思ったらしく、「それはそうだが……」、と麗は大人しく引き下がる。
当然と言えば当然だ、銃を持ち、何も目的も話さず発砲して来るような人種と、話し合いをする方がどうかしているのだ。

「それにさ、多分あのヤクザっぽい奴らが来たのも、原因は解ってるでしょ。麗君が昨日買春してる少女を助けたからだぜ?」

「……それは……すまない。私としても迂闊だったかも知れない」

 昨日、豪の宝具の真価を発揮する布石である布教活動をしている時、麗は買春して家族を養っていると言う少女を見た。
10歳にも満たない少女が、端金の為に身体を売り、しかも他ならぬ自分が稼いだ金なのに、何もしてないマフィアに上澄みを搾取されていると言う現実に怒りを覚えたのだ。
だから麗は、そんな馬鹿げた事は止めるんだと彼女を説得した。……結果としてその行動は、何の得にもならない所か、命の危機すら引き起こしてしまったが。

「良いよ、別に。それに結果として、俺の『宝具』だっけ? それを使える布石も一応打てたんだし、良い方向に考えようぜ?」

 本気で落ち込んでいる麗を見て、少し反省したらしく、気遣う様な言葉を投げ掛ける豪。少し持ち直したようで、麗は「悪い」、と切り返した。

「仕方がない事とは言え、迂遠な作業だな。……君に直接戦う力がないのは解ってる、だがこんな事をしていてはサーヴァントどころか、一般市民にすら……」

「そりゃー言わない約束だよ麗くん。俺だってチャチャチャッと相手を倒せる力が欲しかったけどさ、そう言う訳にもいかないって」

 2名は、聖杯戦争の参加者であった。
表向きは、豪が教主、麗が彼の補佐役と言うような立ち位置で知れ渡っているが、本当の関係はそれとは真逆。
麗こそが豪のマスターであり、豪こそは麗のサーヴァント――『デミウルゴス』と言うエクストラクラスを与えられた存在なのである。
麗が殺されれば、豪も自動的に聖杯戦争の舞台であるゴッサムから退場する。
つまりあの時マフィア達は、豪になど目もくれず、麗に銃弾を撃っていればその時点で豪も殺せたのだ。
……尤も、それをNPCに理解しろと言うのが、酷な話ではあるのだが。


151 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 12:00:18 89OQL4BM0

「までも、さっきのは儲けだよ儲け。俺の方から何もせずして、相手は神だって思い込んでくれるんだぜ? こんなおいしい話はないぜ麗君」

 先程マフィア達は、豪に銃弾が通用せず、そのまま素通りして行ってしまったと言う事実から、彼の事を神だと誤認した。
だがこのトリックは、聖杯戦争の参加者、或いは魔術師であれば数秒かからずにそのタネを看破出来る。
超近代の存在であるとは言え、豪はサーヴァント。サーヴァントには、神秘のない攻撃は通用しないのである。
だからこそ豪は、あそこまで大仰な態度を取れたのだ。敵対して相手が本物のサーヴァントであったのなら、豪は急いで麗を抱えてその場から逃げ去っていた。
何れにしても、殆どノーダメージで、豪の宝具を発揮できる環境を大きく整えられるのは、瓢箪から出たコマと言う他ない。豪が儲けと言うのも、頷ける話だった。

 デミウルゴスのクラスのサーヴァントである豪が、聖杯戦争に参加している全参加者の中でも特に弱い部類に入る事は、
マスターである麗は愚か、サーヴァント本人である豪ですら自覚していた。
恐らく豪は、何かの間違いでキャスターと殴り合いに発展したとしても、勝ちを拾える可能性は少ないだろう。
そんな彼の唯一の勝利筋が、彼を神であると『誤認』する事であった。豪は紛れもなく元人間のサーヴァントであるが、
戦う相手が彼を神に類する存在だと誤認した時に限り、豪は聖杯戦争の全参加者の中で最強を誇る程の強さへと昇華される。
しかし実際に、神秘に対して造詣の深い魔術師のマスターや、況してや神秘そのものであるサーヴァントを欺く事は至難の技。
だからこその布教活動なのだ。NPCに『豪(ゴウ)教』と呼ばれる宗教を布教する事で、『豪と呼ばれる神がゴッサムにいる』と言う噂を、
マスターやサーヴァントの耳にも入る規模にまで拡大させる。こうする事で、元々発動する可能性が極めて低い宝具の発動率を、高めさせる。

 初めてシャブティが、デミウルゴスのサーヴァントである豪に変化した時、彼らは本気でどうやって勝ちに行くか悩んだ。
マスターには魔術の才能もない、取り立てた運動能力もない。そしてそれは、サーヴァントである豪ですらも同じと来ている。
ただ、発動すれば兎に角強い宝具だけがあるだけ。ならばその宝具の発動に全てを賭けるしかないし、その宝具を発動する環境を本気で整えるしかない。
2人の長い話し合いは、それで決着がついた。まだ布教が始まって1日しか経過していない。
本当の聖杯戦争が彼らにとって幕を開けるのは、普通のサーヴァントよりも遥かに遅い時の話になるのである。

 ……それに、神楽麗は人を殺したくない。
豪が宝具を発揮できれば、どんなサーヴァントだって真正面から迎撃出来る強さを誇る。
しかしそれとは逆に、どんなサーヴァントの手傷だって癒せる程の力をも秘めている。
麗は、マスターを殺して聖杯を手に入れ、元の世界に帰るのではない。圧倒的な力を以て相手を降参させ、平和的に聖杯戦争を解決出来ないかと本気で考えていた。
だが非力な麗と豪では、その手法は絶対に取れない。だから何に変えても、豪に力を蓄えさせる必要があるのであった。

「まぁ何にせよさ、今日は此処で一晩寝てさ、明日になったらこのアパートをとっとと出てって、違う所をアジトにしようか」

「……あぁ、そうだな。此処は一度マフィアとの戦闘に使ったからな、その場所に未練がましく固執するのは危険だ」

「そう言う事。あ、実は止まる場所についてはアテあるんだよね。実はさっきさ、最後に生き残らせたマフィアから引き抜いたんだよね」

 言って豪は、自慢げに懐から札束入れを取り出した。「あっ」、と麗は口にする。
それは明らかに、生かして置いたマフィアから豪がくすねたと思しきものであった。札束ではち切れそうなその財布を見て、麗は呆れた様な顔つきで口を開く。

「それが本当に神のやる事か……」

「大丈夫だって安心しろよ〜麗君。明日この金持って、昨日麗君が助けた女の子達にこのお金渡せばいーじゃん。
汚いお金が、元々そのお金を稼いでた人間に渡るだけ、俺らはそのお金を悪い奴らから取り返しただけ。んで、更に俺が神に近付く!! あ〜いいね!!」

「全く……」


152 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 12:01:01 89OQL4BM0

 弁が立つと言うか、言い訳が上手いと言うか……。それっぽく聞こえてしまうのが、また恐ろしい。
それ以上咎める事はせず、麗は小さく溜息を吐くだけだった。

「このお金をさ、麗君が助けた子供に渡したら、きっとあの娘言ってくれるぜ?」

「何てだ」

「GO is Godってさ」

「知らないよ」

 呆れた様子で、麗はソファに寝転がり、眠ろうとした。
豪もそれを受けて、自らの身体を霊体化させる。明日は今よりも、もっと忙しくなりそうな予感がするのであった。






【クラス】

デミウルゴス

【真名】

豪@真夏の夜の淫夢シリーズ

【ステータス】

筋力D 耐久E 敏捷D 魔力C 幸運A+ 宝具EX

【属性】

中立・中庸

【クラススキル】

神性(偽):E-(A+++++)
神霊適性を持つかどうか。
自らの存在が知られるに至った原因となった出演作、及び彼の身体を体験した者の話で、デミウルゴスは神として扱われていたり、形容されていたりする。
しかし極めて最近の偽神(神格)の為神秘の積み重ねが全くなく、実体化したデミウルゴスを確認しても、精々「不思議な何かを纏った人間」程度にしか認識されない。
後述する宝具の効果が発動した際に、神性ランクはカッコ内のそれへと向上。一創作体系の中で唯一の神として扱われている存在に相応しい力と権能を発揮出来る。

【保有スキル】

無辜の神格:EX
――ホモビに出ただけで神に列せられる男。
生前自らが出演していた同性愛者向けのアダルトビデオが一部のホモガキに目をつけられ、ただの人間にも関わらず神格として祀りあげられた。
デミウルゴスの信仰説は諸説あり、善神でもあり悪神でもある、光の神である一方で闇の神である、創造神の側面もあるし破壊神の側面もあると、一定しない。
宝具の効果が発動しない時のデミウルゴスには、神であると言う自覚が希薄で、特定状況下以外では能力・姿・人格が変貌する事はない。
このスキルは外せない。

カリスマ:E(EX)
軍団を指揮する天性の才能。
根拠もなければ理由もないのに、いつの間にか神として認められ、人々の信仰を集めていた事実を指す。
デミウルゴスには軍事的知識が皆無の為、平時の状態では不思議と人を惹きつける程度の才能に留まっている。
宝具効果が発動した際には、カリスマランクはカッコ内のそれに修正される。

話術:E+
言論にて人を動かせる才。
デミウルゴスは元々人気の男娼であった為か顔は良く、それを利用する事で、多少此方に有利な展開に進ませる事が可能。
また、相手が現在の状況に不満を覚えている時には、話術の成功率が上昇する

【宝具】

『人から神へと至る者(Go is GOD)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:自身
元々ただの人間であったデミウルゴスが、同性愛者向けのポルノビデオに出演している様子を一部の趣味人に目をつけられ、遂には神に祀り上げられてしまったエピソードの具現。
デミウルゴスを『神霊』そのもの、或いは化身かそれに準ずる存在と認識した者に対して、デミウルゴスは、
聖杯戦争及びサーヴァントとしての範疇を逸脱しない限度であれば、まさに神の如き力を発揮する事が出来る。
全てのステータスをAランク以上に修正する事も可能であるし、魔力を無尽蔵に取り出す事も、キャスターランクを上回る威力と性能の魔術を連発する事も、
実戦向けのスキルの数々を獲得する事も、相手の傷を癒す事も、この状態のデミウルゴスには造作もない。

発動さえしてしまえば対峙したサーヴァント相手にはほぼ勝利が確定されるも同然の凄まじい宝具であるが、
この宝具を発動するにはデミウルゴスを『神霊』として認識する必要があり、発動時に彼を『人間由来のサーヴァントである』と認識、
反論した瞬間、この宝具の効果は消滅する。更に、この宝具を発動した時に殺す事の出来る相手は、デミウルゴスを『神と認識した本人だけ』であり、
『デミウルゴスを神だと認識していない相手』にたいして、この宝具の発動時のデミウルゴスが攻撃を仕掛けたとしても、攻撃は素通りされるだけである。


153 : He is Jaldabaoth ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 12:01:36 89OQL4BM0

【weapon】

無銘・ビデオカメラ:
生前本人が所有していたとされる物の中で特に知られているもの。
199X年と言う極々最近の代物の為、神秘など当然ある筈もないのだが、趣味人はこれを神器だと捉えている。
デミウルゴスはこれを投影する事が出来る。

【サーヴァントとしての願い】

不明。

【基本戦術、方針、運用法】

直接戦闘は最弱同然のサーヴァントである事は、論を俟たないであろう。
貧弱なステータスに、実戦的なものが何一つとして存在しない固有・保有スキル。最弱のクラスであるキャスター・アサシンにすら、直接戦闘に持ち込まれればGOは敗北する。
兎に角ありとあらゆる手段を以って、GOはその宝具に発動する事しか勝機がない。しかし発動するにしても、その条件は決して楽なものではない。
このように非常に細い勝利筋であるが、同時に発動に成功すれば恐ろしく強力な宝具でもある。
GOの宝具は発動してしまえばほぼ無敵に等しい力を得るも同然で、この状態の彼は三騎士すらも軽くあしらう事が可能。
だが、発動に時間が掛かる癖に宝具解除も一瞬の宝具である為、相手を甚振ったり余裕を振る舞う時間は全くないので、即座に決着を着ける必要がある。
宝具の性質上、サーヴァントの過去を確認出来るスキル、宝具を持った相手には致命的なまでに相性が悪く、彼ら相手から勝利を拾う事はほぼ不可能。
特にルーラーには固有スキルの都合上万に1つも勝ち目はない。







【マスター】

神楽麗@アイドルマスターSideM

【参加方法】

国内のアイドル講演の出張先の骨董品屋で、惹かれるがままに手を取った人形が、シャブティだった

【マスターとしての願い】

解らない。

【weapon】

【能力・技能】

アイドルとして修行中の腕前は、光る所こそあれどまだまだ成長段階。
それよりも彼の武器は、素晴らしいヴァイオリン奏者としての腕前と、絶対音感である。
ただこれが、聖杯戦争に於いて役に立つ技能であるかどうかは不明。

【方針】

GOの力を発揮させる為、当分は布教活動に専念。その際、敵サーヴァントに合わないように祈る。


154 : ◆zzpohGTsas :2015/04/11(土) 12:01:51 89OQL4BM0
投下を終了いたします


155 : 名無しさん :2015/04/11(土) 14:07:46 cvYSzy.s0

GO is GOD


156 : 名無しさん :2015/04/11(土) 15:38:29 eRQvaoCI0
皆様乙です
GOは現人神だから英霊になるのも至極真っ当ですね?
宝具の秀逸さで草生えるんだよなぁ…

そしてゴードンで初のバッドマン出典キャラか
舞台はヒーローが忘却されたゴッサムシティだけど、
唯一ヒーローの存在を知っているゴードンだからこそ彼の立場を引き継ぐことが出来るんだな


157 : ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:23:05 BZfOSHps0
別企画の再利用になりますが投下します


158 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:24:21 BZfOSHps0
「主任、この書類の決済をお願いします」
「ああ…」


ユグドラシルコーポレーション・ゴッサム支社。
日本人や日系人を中心とした社員たちが忙しなく仕事に追われる中、主任と呼ばれた男・呉島貴虎はどこか釈然としない思いを抱いていた。
何度社内を見てもいつもと変わらぬ平和な光景が広がるばかり。
ゴッサムシティの治安は最悪だがユグドラシルなど一部の大手企業は金にものを言わせた強固なセキュリティ体制を敷いている。
そのためこの周辺のオフィス街に限ればそう滅多に犯罪の手が伸びることはない。

それにしてもこの会社、いやこの部署はここまでのんびりとした空気だっただろうか?
いや、むしろもっと重大な、根本的なことを忘れているような……?
だがそれが何なのかわからぬまま、ただ時間だけが過ぎていった。


仕事を早めに切り上げ退社した貴虎は悶々とした違和感を感じながらも車を停めてある駐車場へと歩を進めていた。
違和感を払拭しようとこれまでの日常を思い返してみたが余計に違和感が募るばかりで、それどころか軽く頭痛がしてきた。
何かが、あるいは何もかもが決定的に間違っている。
何故かは自分でもわからないが、心が強くそう訴えかけていた。





「おや?主任様じゃねえか。お早いお帰りのようで」
「………シド?」



声を掛けてきたのは営業担当の、シドと呼ばれる男だった。
確か地元の若者層をターゲットにした取引のためそれらしい格好で仕事をしている社員だったはずだ。
いや、違う。ありとあらゆる意味でこの男がここにいるのは絶対的に間違っている―――!



「お前が、何故生きている…!?お前はロシュオに……」
「はあ?」



無意識に疑問を絞り出した瞬間、全てを思い出した。
プロジェクトアーク成就のために奔走していた本当の日々。
葛葉紘汰と遠回りの末友好関係を築けたあの瞬間。
戦極ら部下の裏切りによって結果的にオーバーロードの王と出会ったこと。
オーバーロードの真実、圧倒的な力、蹂躙された沢芽市とユグドラシル。
そして、オーバーロードに隷属する道を選んだ弟・光実。



不審がるシドに目もくれず車に飛び乗り、自宅を目指して走り出した。
街が破壊されていない。インベスもいない。そもそも沢芽市ですらない……!
知らない街であるはずなのにまるでずっとここに住んでいたように道順を思い出せる。
このゴッサムシティの全体像がまるで沢芽市に似せて作られたかのように似ていることも関係しているのだろうか。
知らない間に脳を弄られたかのようで吐き気がするが、それを堪えて武器を取り戻すためひたすらに自宅を目指した。


159 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:25:06 BZfOSHps0





「ここだけは、沢芽市と同じか」


この偽りの時間を過ごした呉島邸だけは寸分違わず沢芽市にあったものと同じだった。
といってもゴッサムシティの治安の悪さを考慮してセキュリティはより強化されているのだが今は些末なことだ。
平時からは考えられないほど大急ぎで、乱暴にドアを開けると一目散に自室へ向かった。
目的はスーツケースに保管していた貴虎の身を守る最大の装備だ。


「意味もなく捨てずに保管していたのは、こういうことだったのか…?」


ゲネシスドライバーを失った今、懐かしさすら覚える貴虎が愛用していた戦極ドライバーとメロンロックシード。
記憶を失っていても、身体がそれを大切なものだと覚えていたのかもしれない。



「どうやら記憶を取り戻されたようですね、マスター」



女の声に振り向くと、何もないところからローブを深く被った女性が現れた。
知識として刷り込まれている。聖杯戦争、万能の願望器を巡る殺し合い。
そしてこの女性こそ呉島貴虎に割り振られた戦闘代行者、サーヴァントだ。
その証拠に、令呪と呼ばれる紋様が自分の右腕の甲に刻まれていた。

確か参加するにはシャブティが必要だというルールだったが、貴虎には心当たりがあった。
子供の頃自分以上に厳格な父親が海外から一時帰ってきた時に土産としてくれたシャブティの像だ。
それが自分を聖杯戦争に導いたというのは運命のようなものを感じずにはいられない。


「ああ、そのようだ。君が私のサーヴァントのようだな」
「ええ、この身はキャスターのサーヴァント。真名はメディア。
マスターのお名前を伺っても?」


キャスターは素直に自分の真名を明かした。
隠したところで疑り深いマスターなら令呪を使ってでも口を割らせるだろうと考えたからだ。
不本意だが少なくとも「ある程度は」付き合う相手ならそのぐらいの情報は明かさねばなるまい。


「呉島貴虎だ。それと、悪いがそのフードを取ってもらおうか。
君の生きた時代がどうだったかは知らないが、現代社会で素顔を見せない者を信用するわけにはいかんな」
「…………」


貴虎の物言いはあくまで現代日本を基準とした、礼儀を咎めたものだったが、言い換えればそれだけだった。
少なくとも素顔を確かめてどうこうする、という下心は一切なく、キャスターもそれは見抜いていた。


「……これでよろしいですか?」


ローブを取ったキャスターの素顔に貴虎は一瞬だが言葉を失った。
この世のものとは思えない美貌、それでいて品の無さというものを全く感じさせなかった。
人間では有り得ないほど尖った耳もそうであることが自然だと思わされる。
しかしすぐに見とれている場合ではないと気を取り直した。


「ああ、もう良い。早速だが書斎に来てくれ。
方針についての打ち合わせをしておきたい」


160 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:26:04 BZfOSHps0






「つまり、当分は陣地と魔力源の確保、情報収集に専念するよりないということか」
「はい、ただでさえも私は三騎士には相性が悪いので、慎重に動かざるを得ません」
「そうだな。それに伝承から考えて、君は戦う者ではないだろう?
つまり、策もなく歴戦の戦士と事を構えるのは自殺行為でしかない。私も自分がヘラクレスやジークフリードと戦えると思うほど自惚れてはいない」


現在の貴虎とキャスターの戦力は決して心強いものとは言えない。
元よりキャスターは魔術の腕はともかく戦闘代行者としての実力は低く、貴虎も戦極ドライバーがあるとはいえ無策でサーヴァントに挑むのは無理がある。
せめてゲネシスドライバーがあればもう少しはマシなのだろうが無いものねだりをしてどうにかなるなら苦労はない。

加えて、キャスターの見立てでは貴虎のマスターとしての適性は低く、十分な魔力を提供できないとのことだった。
魔術師のサーヴァントが魔力不足とあっては笑い話にすらならない。
となれば、余所から不足分を補うのは魔術師としては当然すぎるほど当然の発想。



「ですから、NPCから魂喰いを行う許可を頂きたいのです」
「それは構わない。私も手段についてどうこう言える人間ではない。
だが大量殺戮は問題だろう。何か考えはあるのか?」
「殺戮が問題ならば、殺さぬ程度に魔力を吸い上げれば良いのです。
それならば誰にも文句はつけられないでしょう」
「なるほどな、しかし意識を失わせたり、騒ぎになるような真似はするな。
大丈夫とは思うが、マスコミのしつこさと影響力を軽視するのは危険だ。
それに、万が一高潔な参加者に事が露見すれば損得勘定抜きで未知のアームズを使いロックビークルに乗って突撃してくることも無いとはいえないからな」



貴虎自身元の世界ではマスメディアを使った戦略を指揮する立場にあったため、その影響力と危険さを熟知していた。
例えば集団が突然倒れたなどのニュースが流れればそこからサーヴァントの仕業と推測されてしまう可能性もある。
葛葉紘汰のようなマスターないしサーヴァントがいれば、当然怒りを買うだろう。
序盤からそのような事態になることは絶対に避けなければならない。


「……わかりました。では、軽度の疲労を覚える程度に留めましょう」
「ああ、それで頼む。それからサーヴァントには宝具というものがあるのだろう?
君の宝具はどういったものなんだ?」


宝具とはサーヴァントの半身と呼んでもいい。
その性能を知ろうとするのは聖杯を求めるマスターとして当然のことであり、キャスターもこの質問は予期していた。
キャスターは弱りきった風を装い誤魔化すことにした。通じるかどうかは五分五分というところだろうが。


161 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:27:03 BZfOSHps0


「そのことなのですが……マスターは魔術師ではないため、抗魔力が低いのです。
そして、私と同じようにキャスターのクラスで現界したサーヴァントなら魔術で貴方の精神を読み取ることは容易い。
つまり、そこから私の宝具が漏れ、対策されてしまう可能性が高いのです。申し訳ありませんが……」
「教えなければ対策されることもない、というわけか。確かに道理だな。
わかった、宝具を使うタイミングは君に一任する。魔術に関して門外漢の私などよりよほど適切に使えるだろう」


ちょろすぎる。キャスターはこのマスターの扱いやすさに感謝した。


「君を裏切りの魔女などと言う文献もあるようだが、私はそのような風聞を何も考えず真に受けるほど愚かではないつもりだ。
そもそも、メディアに裏切りを働かせたのはイアソンを支持するアフロディーテの謀略だろう。
私も君も聖杯を求めてここへ足を踏み入れた。利害が一致しているのなら何も問題はあるまい。
部屋を用意させておこう、休息する時にでも使ってくれ。私は少し夜風に当たってくる」



話を切り上げると貴虎は無防備に背中を晒しながら外へと出て行った。
キャスターの指にかかればその背中に風穴を開けることがどれだけ容易か理解しているのだろうか?


(ふん、馬鹿な男……)


キャスターは基本的に顔立ちの整った男を信用しない。いやできないと言っていい。
それにあの迂闊さだ、あれではいずれ他の者に陥れられて脱落するのが目に見えている。
このため、キャスターは最初からマスターの乗り換えを視野に入れていた。

しかし貴虎の財力やコネは使いどころが大いにある。
それにこちらの言う事をあっさり信じる分、操縦も容易。
今はせいぜいサポートしてやろう、と魔女は一人ほくそ笑んだ。





「葛葉、お前は俺のやり方を許さないだろうな……」


今も沢芽市で人々を助けるために戦っているだろうあの男なら人殺しには決して賛同しないだろう。
勿論貴虎とて好き好んで殺人をしたいわけではない。だがもう他に方法が全く無いのだ。


162 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:27:35 BZfOSHps0


「無理なんだ、葛葉。お前がいくら強くなったところでオーバーロードには、ロシュオには絶対に勝てないんだ」


戦略ミサイルすら消し去り、ゲネシスライダーを赤子のように葬り去るオーバーロードの王に人類が対抗する術など存在しない。
それこそサーヴァントを引き連れて立ち向かったところで跡形もなく消し飛ばされるのがオチだ。
さらにオーバーロードが開いたクラックによってヘルヘイム浸食のタイムリミットは年単位で縮まってしまったことだろう。
聖杯を手に入れなければ、遠からず人類は全滅してしまう。それを防ぐためならばもはや手段を選んではいられない。



「ヘルヘイム、それにオーバーロードさえ消し去ることができれば……光実、お前ともまたやり直せるだろうか」


光実が道を誤ってしまった理由には少なからずヘルヘイムの森の真実が関わっていることには貴虎も気づいていた。
逆に言えば、森の脅威と光実が当てにしているオーバーロードが取り除かれれば弟と敵対する理由もなくなる。
簡単には拗れた兄弟仲を修復することはできないだろう。あるいは光実は一生貴虎を許さないのかもしれない。
それでも、光実が人類の敵でなくなってくれさえすればもうそれで良かった。


「失敗は許されない、必ず、どんなことをしてもこの手に聖杯を……」




呉島貴虎は気づかない。
裏切りのクラスたるキャスターが実際に叛意を抱いていても、気づけない。
何故なら、貴虎の本質は性善説に基づいている。
日頃口で何と言っていようと、本心では誰も理由なく悪に手を染めるはずがないと思っている。
だから何度騙されても人を疑いきることができない。そして何度でも裏切られる。
部下や同僚からも。実の弟からも。そして、契約したサーヴァントからも。


その善性を嘲笑われていることに、気づかない。


163 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:29:39 BZfOSHps0
【クラス】 キャスター

【真名】 メディア@Fate/stay night

【ステータス】

筋力 E 耐久 D 敏捷 C 魔力 A+ 幸運 B 宝具C

【クラス別スキル】
陣地作成:A…魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。”工房”を上回る”神殿”を形成する事が可能。

道具作成:A…魔力を帯びた器具を作成できる。擬似的ながらも不死の薬さえ作り上げられる。

【保有スキル】
高速神言:A…呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。大魔術であろうとも一工程で起動させられる。

金羊の皮:EX…とっても高価。竜を召還できるとされるが、キャスターには幻獣召還能力はないので使用不能。

【宝具】
「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)」

ランク:C 種別:対魔術宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
メディアの「裏切りの魔女」としての伝説が象徴として具現化した宝具。
攻撃力は普通のナイフと同程度しかないが、「あらゆる魔術を初期化する」という特性を持つ最強の対魔術宝具である。
原作ではマスターとサーヴァント間の契約を断ち切るなどの用法で用いられた。
しかし、どれほど低いランクであっても宝具の初期化は出来ない。

【サーヴァントとしての願い】
受肉し、故郷へ帰る。







【マスター】 呉島貴虎@仮面ライダー鎧武

【マスターとしての願い】
オーバーロードとヘルヘイムから人類を救い、光実との兄弟関係をもう一度やり直す

【weapon】
戦極ドライバー:アーマードライダーに変身するためのベルト。
イニシャライズ機能があり貴虎以外の人間は着けることさえできない。

メロンロックシード:クラスAのロックシード。戦極ドライバーに嵌め込んで使うことによってメロンアームズへ変身できる。
専用アームズは近接・投擲武器としても使用できる大盾・メロンディフェンダー。

仮面ライダー斬月・メロンアームズ:貴虎が戦極ドライバーとロックシードを使い変身した姿。
システムの補助により視覚や聴覚、運動能力などが大幅に増大する。
前述のメロンディフェンダーと銃剣・無双セイバーを駆使した白兵戦を得意とする。
ただし科学兵器であるためそのままでは霊体であるサーヴァントにダメージを与えることはできない。

【能力・技能】
生身で新世代アーマードライダーの攻撃を受け止めるなど、並外れた頑強さと生命力を持つ。
また、アーマードライダーとしての力量自体も原作に登場する誰よりも高く、ロックシードの性能差をも覆す。

【所持金】
大富豪

【方針】
何をするにも神殿を形成し、魔力を集めなくては何もできないため序盤は雌伏し情報を集める。
場合によっては斬月の仮面で正体を隠して敵マスターを襲撃することも視野に入れる。


164 : ◆LjoEJeq7VA :2015/04/12(日) 10:30:40 BZfOSHps0
以上で投下を終了します


165 : ◆7PJBZrstcc :2015/04/12(日) 11:17:21 qOaW2HeI0
投下します


166 : 王に、神になれなかった者投下します :2015/04/12(日) 11:19:53 qOaW2HeI0
『オマエはドコへも向カウコトハナイ……。トクニ、 「真実」ニ到達スルコトハ……決シテ!』
ジョルノ・ジョバーナが持つゴールド・エクスペリ エンス・レクイエム、それによる拳のラッシュを受け たことでディアボロは敗北し、彼の地獄が始まった。

最初は麻薬中毒らしきホームレスに刺されたことで
次は生きているにも関わらず検死により肝臓を取ら れたことで
その次は交通事故に遭う事で
そのまた次は―――

彼はありとあらゆる理由で死に続けた。 地を変え時を変え、彼はありとあらゆる手段で殺さ れ続けた。

しかし、そんな彼にも救いが訪れる。 彼の運命には本来ならば存在しない願望器、聖杯に よって。

◆ ◆ ◆

次はいつ死ぬんだ、何処から襲ってくるん だ……!?
幾度も死に続けた邪悪、悪魔の名を冠する男ディア ボロは怯えていた。
気が付いたら人通りの多い道、周りを見る限りビジ ネス街だろうか、そこにディアボロは立っていた。
自分の周りを歩いている人間が恐ろしくて仕方な い。 ナイフを持っているかもしれない、銃を向けてくる かもしれない。車だって走っている、ひょっとしたら俺に向かって くるかもしれない。 もしかしたらビルが倒壊して瓦礫が自分に落ちてく るかもしれない。
ディアボロはあらゆる可能性を恐れていた。

しかししばらくして彼は気づく、何かがおかしい と。 普段なら、……決して認めたくないがすでに死んで 別の場所に居てもおかしくないはずだ。だが生きてい る。
ジョルノがレクイエムを解除したのか、それとも死 んだのか、何らかの力でスタンドの力が解除されたの か。それは分からない、今のディアボロに知るすべは ない。しかしディアボロはこれを希望と見た。
そう考えた後の彼の行動は早い。周りの人の格好と 自分の格好は明らかに違い、どう取り繕っても目立ち すぎるので彼は慌てて路地裏に隠れた。 そして一段落がつき、これからの事を考えようとし たとき

「ぐぁッ!!」

ディアボロは頭痛に襲われた。彼はこれをすぐにレ クイエムの仕業だと判断する。
「あの新入りめ……、この俺がそんなに憎いかッ ……!!」
彼は呪詛の言葉を漏らすが、すぐに違和感を覚え る。自分の中に知らないはずの知識が植えつけられて いたからだ。
「聖杯戦争……?」
いくら自分の中にあるからと言ってディアボロは簡 単に信じたりはしない。 普通の人間ならともかく、スタンドという異能を 知っているディアボロからすれば記憶を植え付ける位 は容易であると彼は知っている。 だが一方でレクイエムを止めたのは聖杯の力ではな いかとも彼は考えていた。 信じるか疑うか、どちらを選ぶか悩む前にまた新し い要素が現れる。

「貴方が僕のマスターですか?」
いきなり爽やかな笑みを浮かべた青年が話しかけて きた。 そんな青年に向かってディアボロは一言尋ねる。
「お前が俺のサーヴァントなのか?」
ディアボロと同じ世界の日本の殺人鬼が見れば『質 問を質問で返すなァ―――ッ!!』と怒り狂いかねな い光景だが、青年は嫌な顔一つすることなく 「はい。アサシンのサーヴァント、真名は夜神月で す」 と答えた。
この時点でディアボロは聖杯を信じる方に少し傾く のだが、同時にあらたな問題も発生した。
(この男は信用できない)
一見人のよさそうな笑みを浮かべる自身のサーヴァ ント。 しかしギャングのボスという立場で多くの人間を見 てきた彼にはそうは思えなかった。
(チョコラータとは違うが……。何だ、この男は……)
ディアボロには、夜神月が英雄だとは思えなかっ た。 それどころかディアボロには自身のサーヴァントが 邪悪にしか見えなかった。
(まあ、俺の言えたことではないか)

◆ ◆ ◆

一方アサシンのサーヴァント、夜神月も自身のマス ターを信じてはいなかった。 別に、マスターであるディアボロが自分を信用して いないような目で見ているからではない。マスターか らすればいきなりこんな所に呼ばれ、命を懸けて戦わ されるのだ。あっさり信じる方がどうかしている、と すら月は考えていた。
アサシンである彼がマスターを信じきれない理由は 一つ。

(この男は悪だ)

それだけだった。

(殺しをためらわない相棒というのは、この場ではあ りがたいのかもしれないが……)
悪人を殺し、優しい人間だけの世界を作ろうとする 自分とかみ合う訳がない。月はそう考えていた。

(だが見て居ろL。僕はこの戦いを勝ち残り誰もが理想と する新世界を造る、そして僕はその神となって見せ る!)


167 : 王に、神になれなかった者 ◆7PJBZrstcc :2015/04/12(日) 11:22:12 qOaW2HeI0
【クラス】
アサシン

【真名】
夜神月@DEATH NOTE

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運C 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:E
自身の気配を消す能力。 完全に気配をたてばほぼ発見は不可能となるが、攻撃 態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
神性(偽):C
神と呼ばれた事のある神霊以外の存在に与えられるス キル。 彼は本物の神同様の信仰を受けていたが、本名を秘匿 していたのでランクが下がっている。

【宝具】
『死神の帳簿(デスノート)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜∞ 最 大補足:1
このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。
書く人物の顔が頭に入っていないと効果は無い。故に 同姓同名の人物に一片に効果は得られない。
名前の後に人間界単位で40秒以内に死因を書くと、 その通りになる。 死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる。
死因を書くと更に6分40秒、詳しい死の状況を記載 する時間が与えられる。
「人間界単位で124歳以上」および「残りの寿命が 12分以内」「生後780日未満」の人間をデスノー トで殺すことは出来ない。
その他様々なルールがあるがここでは省略。
ちなみに、ノートからページを切り離した状態でも使 用可能。

・・・・・・というのが本来のデスノートの効果であるが、宝具となったことにより以下の変化が生じている。

まず、寿命のないサーヴァントにも通用するようになった。
ただし、人間界単位で124歳以上まで生きた人間には通用しない。
また、生前から人間以外だった存在にも通用しない。これは、何らかの手段で人間を辞めた元人間の場合も同様である。
しかし、僅かでも人間の血を引いていればデスノートは通用する。

【weapon】 なし

【人物背景】
元々は全国模試で1位を取る、テニスの全国大会で優 勝する位の文武両道である以外は普通の高校生だっ た。
しかし、2004年の11月28日に死神が落とした デスノートを拾う事で一変。彼は悪人を殺す存在とな る。
それはキラと呼ばれ、やがて神のように呼ばれること になる。
しかし、キラを悪と考える存在からは殺人者として追 われることになる。 そして2010年1月28日、キラは敗北し死亡し た。

【サーヴァントとしての願い】
再び新世界の神として君臨する。

【マスター】
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
再び帝王になる。

【weapon】
スタンド『キングクリムゾン』

【能力・技能】
『時間を吹き飛ばす』能力と『未来を予知する』能力 を持つ。

【人物背景】
元はイタリアのギャング『パッショーネ』のボス。
そこで彼は正体を隠しながら活動していたが、あると き部下から反乱にあう。
そして最後には敵のスタンド能力によって『何度も死 に続ける地獄』を味わうことになった。

【方針】
聖杯狙い


168 : 王に、神になれなかった者 ◆7PJBZrstcc :2015/04/12(日) 11:24:01 qOaW2HeI0
投下終了です


169 : ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:09:37 ZwRLrExk0
投下します


170 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:10:48 ZwRLrExk0
───わかったよ、これがロックってやつなんだね!

「はは…どうかなあ、私にはわからないや」

返ってきた言葉は、友人の苦笑と短い言葉。
いつものやり取りのはずなのに、何処か物足りないような。
まるで、何が間違っているのかさえ分からないような―――全体像が掴めない違和感にを感じながら。

『まったく、だりーはわかってねえな』

私は、あるはずのない幻聴を聞いた。











―――お疲れ様でーす!

「ああ、お疲れ。明日はお休みだからゆっくり休むといいよ」

返ってきた言葉は、プロデューサーの優しい笑みと労いの言葉。
アイドルを支え包み込むような笑みを浮かべるその男は、しっかりした大人の男性でとても眼鏡がよく似合っていて。
でも、何処か頼りなさそうで―――その顔を見ていたら。

『多田さん、お疲れ様です』

強面だが何処か困ったような顔をしている男を思い出したのは、何故だろうか。











多田李衣菜。
彼女が、現実を思い出すまであと少し。

△  △  △


171 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:11:37 ZwRLrExk0
「はっ――はっ――」

息が切れる。胸が激しく上下する。
何もかもが、理解の外だった。
見たことがない街。聖杯戦争。サーヴァント。マスター。令呪。願望器。
殺し合い。魔術師。魔力。ゴッサム。
聞いたことのない言葉の羅列。それの意味を理解できてしまっている自分。
その全てが、彼女にとって恐ろしかった。
どう考えても、現実ではありえない。
だというのに―――左手に刻まれた赤い痣が、痛みとともにこれは現実だと訴えかけてくる。

「もう、なんなの」

願望器、聖杯。
魂を釜に入れ完成する、全ての欲望を叶える器。
多田李衣菜にも願いはあった。
『ロックなアイドルになる』。
彼女の目標・所謂夢はそんなもので、それは己の努力と練習で叶えられるものだと思っていた。
断じて。
決して、こんな血生臭い催しで叶えるような願いではなかった。
しかし。
現に彼女は、この場所にいる。
夢を叶える努力の道を奪われ、眼前には修羅の道しか用意されていない。
恐らく、彼女はこのままでは殺される。
戦う意義も覚悟もない少女は蹂躙され、無残な死を迎える。
それは彼女自体も薄々理解していて―――だからこそ、絶え間ない恐怖が身体を支配していた。

「―――え?」

だからこそ、彼女は反応が遅れた。
陶器で作られた人形(一般的にはそれはシャブティと呼ばれる、古代エジプト人の埋葬の際に使われた人形なのだが、彼女がそれを知るはずもない)が、淡く輝いているのだ。
淡く輝く光は粒子へ。
粒子は確かな力へ。
そしてその力は人の形へ。
ゆっくりと、姿を変えていく。

「だ、誰…?」

そう問いかけた瞬間。
まるで鏡が割れるような甲高い音と共に、それは現れた。
現れた『それ』は。
高らかに、名乗りを上げる。

「地球帝国宇宙軍太陽系直掩部隊直属!!!」

長い手足にオレンジのゴーグル。

「第六世代型恒星間航行決戦兵器!!!」

ぴょこっと揺れる、赤い癖毛。
傍で感じられる、圧倒的な力の奔流。
白いマフラーを靡かせ、彼女は、言った。

「バスターマシン―――7号ッ!!!」





「こと、『ノノ』です!!」

仁王立ちで現れた、そのサーヴァントは。
とても強そうには見えないのに―――何処か安心感を覚えさせる、サーヴァントだった。











△  △  △


172 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:12:28 ZwRLrExk0
「ふむ。ふむふむふむふむ」

そして。
その後どうなったかと言うと、とりあえず食事の時間となった。
困惑し戸惑う李衣菜に対し、『腹が減っては戦は出来ぬ、です!!』と半ば勢いに押される形でこうなったのだ。
食事中に色々なことを話した。
他の人の前ではクラス、つまりノノではなく『バスター』と呼んで欲しいこと。
お姉さまなる尊敬している人がいること。ノノリリという目指している人がいること。
ロックなアイドルを目指していることを告げると、親近感を覚えたようでさらにはしゃがれて困ったが。
バスターと共にいると―――何か、少し恐怖が和らいだ。
彼女の持ち前の明るさのおかげかもしれない。
そこで、訪ねられたのだ。
『りーなさんの願いは何ですか』、と。
願い。そんなものはない。
ただ、帰りたい―――それだけ、なのに。

「じゃあ、帰るために戦いましょう!」
「………へ?」
「諦めちゃだめです。諦めない人にこそ、本当の強さが宿るんですから」
「でも、それって、人を」

殺さなければいけないということ。
そう続けようとしていた言葉を、バスターがとめる。

「じゃあ、殺さないで済む方法も探しましょう!」
「………あるの?」
「わかりません」
「なかったら脱出できないじゃん!」

思わず、頭を抱える。
どうやら共に戦うこのサーヴァントは―――とてつもなく、能天気で真っ直ぐのようだった。
荒唐無稽で、具体性も計画性もない理論。
本来なら信じることすらしないだろうそんな話。
だが。
バスターは、真っ直ぐな瞳で此方を見つめていた。

「でも、あるかもしれません。
だいじょーぶです、例え誰が襲ってきてもノノが、このバスターが守ります!!
なぜならば!」



「本物のノノリリも、きっとノノと同じことをするだろうから、です」


173 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:13:06 ZwRLrExk0
「何、それ」

思わず笑いが漏れた。
少し、思ってしまったのだ。
目の前に屈せず、前を向き続けるその姿は。
ああ、とてもロックじゃない、と。
多分、ここで何もせずに諦めたらなつきちはとても怒る。
ファンのみんなにも、顔向けできないじゃないか。
じゃあ―――こんなところで、諦められない。

「…うん、じゃあお願い。
一緒にここから抜け出しちゃおうか」

「はい!こう、ロックにいきましょう!!」







夢見る少女は、心を決めた。
果て無き闘争の中に身を投じ、それでも手を汚すことなく生き残ると。
あの、みんなが待つステージに帰ってみせると。
前途多難。
一寸先は闇。
何が起こるかわからない。
次の瞬間には死んでいるかもしれない。
でも、彼女達は。
―――戦うと決めた。
己の理想とするもののために、生き残ると。


―――さあ、聖杯戦争を始めよう。











△  △  △


174 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:14:19 ZwRLrExk0


















あれ?
そう言えば。
あの陶器人形は誰から渡されたものだったか―――?と。
何故か思い出せないその違和感を感じながら、多田李衣菜は歩き出した。













.


175 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:15:02 ZwRLrExk0
【マスター】
多田李衣菜@アイドルマスター シンデレラガールズ(アニメ版)

【マスターとしての願い】
帰りたい。

【weapon】
ギター

【能力・技能】
歌って踊れるアイドル。
ギターは練習中。

【人物背景】
趣味は音楽鑑賞。
ロックが好きで、本人もロックなアイドルを目指したいと話している(が、そんなにロックについて詳しい訳ではないようだ)。
性格は明るく、仕事に対しても前向きだが、ロックとは正反対(と本人は思っている)カワイイ衣装を着ることに対しては消極的。
しかし仕事となるとしっかり着ているが。
ユニットデビュー後より参戦。

【方針】
帰る。
誰も殺さず、殺されず、帰る。


176 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:16:21 ZwRLrExk0
【クラス】
バスター

【真名】
ノノ@トップをねらえ2!

【属性】
秩序・善

【パラメータ】
筋力A+ 耐久A 敏捷B+ 魔力E 幸運C 宝具B

【クラス別スキル】
砲撃:B
標的を定め、砲撃する能力。
砲撃に関する攻撃に、少し有利な判定がつく。

単独行動:D
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
Dランクならばマスターを失っても半日程度現界可能。

【固有スキル】
バスターマシン:EX
バスターマシンを持つサーヴァントに与えられるスキル。
バスターは最古のバスターマシンであり、そしてバスターマシンそのものである。
宇宙怪獣の侵攻から全てを守るため、宙を駆ける。
バスターは戦士として己を奮い立たせ、人類の味方として地球を護り続ける。

怪力:A
魔物や魔獣等が持つスキル。
バスターはアンドロイド、所謂人外の存在であるため、取得している。
筋力が上昇する。

フィジカルリアクター:A
バスターに搭載された、物理法則書き換え機能。
これにより周囲の物体を己の思うままに武装や望みの物体に変換することができ、相手の攻撃エネルギーを己の魔力として変換することも可能。
しかしバスター自体が小柄なため、広範囲の攻撃や敵自体を変換するような事は不可能。

【宝具】
『 第六世代型恒星間航行決戦兵器 (バスターマシン7号)』
ランク:B 種別:対宇宙怪獣宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
太陽系を侵攻する宇宙怪獣を阻止し、人類の存続のために戦う対宇宙怪獣戦闘用決戦兵器。
バスターの身体はナノマシンで構成されているアンドロイドであり、その機械の肉体そのものが宝具。
バスターはその最古のバスターマシンである。
見かけは少女だが、長い年月を生きており常人を遥かに越えた能力を持つ。
バスターはスキル・フィジカルリアクターによりはミサイルや障壁などの武装を備えることができる。

『星を護りし少女の極光(バスタービーム)』
ランク:C 種別:対宇宙怪獣宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
フィジカルリアクターで周囲の物体をエネルギーに変換し、両手から放つ超火力の巨大光線。
本来ならば星すら貫き破壊する光線兵器だが、サーヴァントとして召喚された現在はそれほどの威力はないが、それでも規格外の一撃である。
しかし発動には膨大な量の魔力を必要とする。
照射後、そのまま両腕を開くことにより、敵を両断することも可能。

【Weapon】
脚部三重六連装ミサイルサイロ八基から射出される、ほぼレーザーに近いホーミングミサイルなどなど。
自分より巨大な敵を打ち砕くイナズマキックなどの身体をつかった一撃も強力

【人物背景】
見た目は人間そのものだが、実はナノマシンによって構成されたアンドロイドであり、その正体はバスターマシン7号。
人類と地球を守る平気。
「ノノリリ」なる人物に憧れて「ノノ」と名乗っている。自称火星のマリネリス峡谷育ち。
ピンク色の髪と一際大きなアホ毛が特徴。
多少ドジで能天気だが、その努力と根性で周りを幾度となく救った。

【サーヴァントとしての願い】
ノノは、マスターを助けます。
何故ならば!
ノノがサーヴァントだからです!!!

【方針】
マスターが帰りたいらしいので、手伝う。

【クラス特性】
バスター、砲撃手のサーヴァント。
高威力かつ未来的な飛び道具武装を使うクラス。
しかし未来的であるが故の代償か、一撃一撃が重いものの、宝具の神秘と魔力のランクが低いのが特徴。
このクラスにはサイボーグやアンドロイドなど、機械的なサーヴァントが多い。


177 : 多田李衣菜&バスター  ◆dM45bKjPN2 :2015/04/12(日) 16:16:47 ZwRLrExk0
投下終了です


178 : ♯ヤンデレラ :2015/04/15(水) 01:03:14 v7b6QuXo0
投下いたします


179 : ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:04:43 v7b6QuXo0
失礼しました。
再度投下します


180 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:07:42 v7b6QuXo0
轟音が響く。
瓦礫が降り注ぐ。
悲鳴が聞こえ、人々は逃げ惑う。
突如として市街地に現れた巨大な影。
漆黒の巨人が1歩踏み出す度に大地は震え、腕を振るう度に、ビリビリと窓ガラスが揺れる。
通報を受けてパトカーがやってくるが、この大質量を相手に何ができようか。
狙われたのは現金輸送車。
犯罪者達の襲撃に耐えうる堅牢な装甲も、屈強な警備員達も、このような規格外の相手には対抗する術はなく、逃走以外にとれる手段はない。
だが僅かばかりの抵抗も空しく、地響きをたてながら追走する巨人によっていとも容易く輸送車がつまみあげられる。
我先にと輸送車から逃げ出す警備員を尻目に、器用に輸送車をこじ開けた巨人はその掌に戦利品、輸送されていた現金の山を乗せる。
瞬間、不思議な事に淡い光と化した現金の山が巨人に吸い込まれるように消えていくではないか。
目の前の超常的な事態に茫然とする人々を嘲笑うかの様に、巨人は悠然とどこかへ歩いていく。
追いかけるだけの勇気を持ち合わせていたものは、この場にいなかった。

翌日、この強盗事件が紙面を賑わすと同時に、一握りの人間は気付くであろう。
これが自らと同様に聖杯戦争に参加した者達の仕業だと。
そして、彼ら/彼女達は一つの考えに至るだろう。
『あの黒い巨人は恐らく宝具、ならば今の内に該当する英雄の情報を集めれば有利に動けるのではないか』と。
その特徴的なフォルムから、一人の交渉人の情報にたどり着ける者もいるだろう。
たどり着いた者は戦争も始まる前から手札を見せた愚かな参加者もいたものだと嘲笑うかもしれない。
しかし、もしそのような事があれば、当の襲撃者本人は大笑いをする事だろう。
その英雄にたどり着いた事こそが、輸送車を襲撃したサーヴァント、ライダーの策略だったのだから。

「『白昼堂々の怪事件。現金輸送車が突如として現れた黒い巨人に襲われる』おーおー、一面記事を飾ってらぁ」

札束の山が積み上げられた一室で、椅子に座り新聞を片手に一人の男が愉快そうに口元を歪めた。
金髪の巻き毛と、見る人間によっては趣味が悪いと罵られそうな黄色一色のスーツとネクタイを着用した男だった。

「本当に貴方の真名はバレませんのよね、ライダー」

朝食の入った食器を片手に、一人の少女が入ってきた。
少女と男の間柄はマスターとサーヴァント。つまるところ、この聖杯戦争に呼び出された参加者である。
マスターとして呼び出された少女の名はトロン・ボーン。
空賊ボーン一家の長女であり、遺跡の発掘や強盗を生業とする犯罪者だ。


181 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:08:23 v7b6QuXo0
「ま、勘のいい奴の中には偽装に気づくやつはいるかもしれねえな。
だが、外装を外した訳でもねえし、偽装だと気付いた上であの宝具の使用者が俺だと探し当てるやつなんてのは、まずいねえよ」

ライダーと呼ばれた男はトロンが差し出したベーコンエッグを口に運びながら、不敵な笑みを浮かべる。
昨日の現金輸送車襲撃事件は彼らの仕業だった。
ライダーの宝具の一つは、搭乗時に真名偽装のスキルが発動する物。
モラトリアム期間であるにも関わらず、派手な犯罪行為を働けた理由は、この宝具だけでは自身の正体は暴かれないという、確固たる自身があったからだ。

「あの姿を見た奴なら十中八九、あのいけすかねえカラス野郎に行き着く。
あれが偽物で、かつ俺が犯人だなんてわかる奴は、トンでもないインチキでもしてるか、あるいは当のカラス野郎ぐらいの話って訳だ」

脳裏に因縁の相手である交渉人の姿がチラつき、ライダーの口がへの字に歪む。
トロンはその言い様とライダーの苦々しげな表情から、そのカラス野郎という人物にライダーが散々に煮え湯を飲まされたであろうことを察する。
ふと、トロンの脳裏に自身や兄弟の邪魔ばかりをしていた青いアーマーに身を包んだ少年の姿が浮かぶ。
犯罪者で機械知識に明るく、そして『正義の味方』に毎度散々な目にあわされる悪役。
生まれも思考も信条も何もかもが異なる相手ではあるが、変なところに共通点があるものだ、と神妙な表情をトロンは浮かべる。

「さて、先立つものは手に入れた。流石に二回も強盗をしたら他の奴ら以外にも目をつけられちまうからな。
これを元手に稼ぐ手段をどうにか考えるとするか」

食事を終え、ライダーが指を鳴らすと共に、山ほどあった札束が淡い光に包まれ、ライダーの体へと飲み込まれていく。
これが輸送車襲撃時に現金が消えた絡繰りにして、ライダー主従が輸送車を襲った真の理由。
ライダーのサーヴァント、ベック・ゴールドは彼が収集した金銭を魔力として貯蔵するスキルを持っている。
生前の彼にその様な能力はなかったが、「愛も夢もすべて金で手にいれる」と嘯き、巨額の富を手に入れ、その忌わの際には、金が自身の存在そのものと言い放った逸話が彼と金銭を同一の存在とみなし、魔力として貯蔵できるというスキルに昇華したものだ。

どれだけ金銭に執着があったのか、主であるトロンには知る由はない。
だが、このスキルがなければ魔力の保有量が高くない自身は早々に見限られていた事は容易に想像できる。
倫理観的な面での相性の良さと、犯罪者としての来歴、そして彼女と共にこの世界にやってきた物があったからこそ、ライダーを繋ぎ止められている自覚がトロンにはあった。
自身の立ち位置が危ういバランスの上に成り立っていると知りながらも、トロンはライダーと共にこの聖杯戦争を勝ち抜く気でいた。
脳裏に浮かぶのは借金のかたに捕まった兄と弟、彼らを助け出す為にも、この聖杯戦争で優勝し、借金を返済できるほどの大金を手に本来の世界に帰らねばならない。
なので、継続してライダーの魔力の源となる金銭を集めなければならないのだが、そこで一つの問題があった。

「ハァ、お兄さまやあの子達もこっちにいれば話は変わってきましたのに」

トロンがこの聖杯戦争の参加者として宛がわれたのは、今彼女が暮らしている修理屋のガレージと、併設している居住スペースのみだった。
兄や弟はもちろんの事、強盗先でシャプティを見つけるまで同行していたトロン手製のロボット、コブン達を模したNPCも一人たりとも存在しない。
元の世界での彼女の武器の一つであったコブン達の人海戦術は利用できず、現状ライダーとトロンのみで、今後の金策を練らなければならない状況なのだ。
戦略的に厳しいのは勿論の事だが、本人とは違うとわかっていても、心の支えとなってくれる家族達が誰もいない孤独な状況はトロンの精神に暗い影を落としていた。


182 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:09:27 v7b6QuXo0
「無い物ねだりをしたって仕方ねえさ。愚痴ったところで出てくる訳でもないしな」

欠伸を噛み殺しながらライダーが伸びをする。
マスターとは別口で魔力を補充できるとしてもその量は有限。
手っ取り早く金銭を集めるにしても、手勢も拠り所もないライダーとトロンの現状では稼ぐ宛がなく、魔力補充の目処がつかない。
大きく状況の動くことがないモラトリアム期間に宝具を使用してまで強盗を行った事は苦肉の策であったと同時に、今後の立ち回りを円滑に進める為の先行投資だったのだ。
懸念点といえば監督役からの警告や罰則だったが、今のところ何かしらのアクションが行われた形跡はない。

結果、一、二回程度の戦闘であれば十全に戦える程度の魔力は手に入れた。が、歴戦の英雄達を相手取るにはまだ足りない。
手勢を増やし、金を増やし、利用できるものは尽く利用しつくす。
犯罪者は犯罪者らしく。
狡猾に舞台の裏側で動きまわるだけである。

トロンが頭を振り、沈んだ心に喝を入れる。
今ここで、自分が立ち止まってどうするのか。
捕らわれた家族に、いなくなった自分の帰りを待っている家族に会うことを諦めるのか。
足りないものが多すぎる事が足掻くのをやめる理由になどなりはしない。

「そう、ですわね。なんとしてもあの子達の元に帰って、お兄様達を取り戻さないといけませんものね。
ええ、愚痴を吐いてる暇なんてありませんでしたわ」

決意を新たに意気込む主をライダーは冷めた眼で見つめる。
トロンが戦争に参加する理由をライダーは既に聞かされている。
正義感の強い者や多少は家族の情に理解のある者であれば、トロンの望みを叶える事に協力的な姿勢を見せていたかもしれないが、ライダーにはそれがない。
金だけを信奉するライダーにとって家族の絆などというものは、金儲けに利用するには有効だがそれ以外に何の価値も見出だせない程度の存在だ。
それでもライダーがトロンに協力的な理由は、トロンが犯罪者であり、犯罪行為に忌避感を持っていない事が大きい。

宝具以外の能力が最底辺のライダーは宝具に費やせる魔力の運用が重要となる。
宝具、『偽・大いなるO』はその巨体と兵装からスペック以上の戦闘力を保持している分、燃費が悪い。
実際に強盗事件の際には各兵装の使用不可に加えて輸送車を捕まえる程度の挙動が精一杯だった。
そんな大喰らいを扱うには魔力に替える金がいくらあっても足りない。
大量の金銭を一朝一夕で集めるには、マスターが相応の地位を得ているか、非合法な方法で集めるかのどちらかだ。
そして幸いにもトロン・ボーンは後者の集め方を生業としており、程度の差こそあれ犯罪行為に対する忌避感を持ち合わせてはいなかった。
そういう意味では相性のいい相手を引けたものだとライダーは感じている。
当面、マスターを乗り換える算段をしなくていいことに改めて安堵しつつ、ライダーはこの街で購入したタバコを一本、口に運んで火をつける。
口内から鼻孔を駆け抜ける煙草の香りを楽しみながら、紫煙を吐き出す。

「安物の煙草を随分と美味しそうに吸いますのね」
「その安物の一本が、俺達の世界じゃ贅沢品だったのさ。煙草なんざ全部合成品で、純正品が吸えた事なんて数えるぐらいしかねぇ」

呆れ顔のトロンにライダーが上機嫌で答える。
何もかもが合成品で作られていた世界の出であったライダーにとって、酒も煙草も純正品であるこの街は宝の山だった。
なにも自分が楽しむ為だけではない。
ここにある物を自身のいたパラダイムシティに持ち込むだけで、相応の富は築けるだろう。
故にライダーはここで手に入れた物を保持したまま、パラダイムシティへ受肉する事を聖杯戦争への望みとしていた。
この偽りの世界で受肉する気も、どことも知らない世界で受肉する気もライダーにはなかった。
結局のところ、ライダーにとっては40年前の記憶を失ったあの街こそが、時に大企業と手を結び、時に部下達と金を荒稼ぎし、時に憎き交渉人とぶつかり合うあの世界こそが、唯一の居場所だという事なのだろう。


183 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:10:13 v7b6QuXo0
「その一服が終わったら、ガレージまで来るように。
グスタフの改修は貴方が手を加えないと始まらないんだから」

ため息をつきながらガレージへと歩き始めたトロンに対し、手を振って無言の返事をしたライダーは、また美味そうに煙草の煙を吐き出した。

グスタフ。それはトロンが作成した万能二足型歩行戦車であり、ライダーがトロンに目をつけた理由の一つ。
シャブティ発見時にトロンが搭乗していた為に彼女の兵装として認識され共にこの世界へやってきた物だ。
グスタフを使用すれば、トロンも相応に戦闘が行えるとはいえ、神秘がなければ攻撃の通らないサーヴァントを相手取るとなると、一方的になぶり殺されるだけである。
そこを、ロボット工学に関するスキルのあるライダーが手を加える事で微量の神秘を宿し、肉弾戦では圧倒的に分が悪い自分達の弱点をカバーする算段だった。
最低限の戦闘さえ出来れば、このグスタフを宝具と偽った上で、自身の宝具を架空の敵対存在に仕立てあげ、「元の世界であの巨人と敵対していた」と他の参加者に吹聴して同盟を組めるかもしれない。
そして、見えない敵に警戒しながら順調に数を減らした所で正体を現し一網打尽にする。
成功するかはわからないが、一つのプランとしてライダーの胸中に留めてある。
無論、二の手、三の手。勝ち抜くための戦略を練ることをライダーは怠らない。

ライダーは弱い。
武勇に関する逸話や、組織を有するだけのカリスマめいたものなど微塵もない、ただ奸知に長け、金儲けが上手かっただけの悪党だ。
相性のいいマスター、貯蔵できた魔力、宝具を使わずとも戦う手段、ここまでは順調だ。
だが、それはライダーがまともに戦えるスタートラインに立っただけでしかない。
ライダーの宝具は強力な部類に入るが、相手は一騎当千の英雄達。
確実に勝てるなどという保障はどこにもない。

「パラダイム・パラダイス・パラライズ……」

不意にうわ言のような呟きが漏れた。
ライダーの脳裏に宿敵の駆るメガデウスよりも大きな機神の姿が浮かぶ。
それは、ライダーの保有するもう一つの宝具。

「……駄目だな。使ったところで後がねえ」

苦い顔を浮かべ、灰皿に吸殻を押し付ける。
ライダーの保有するもう一つの宝具、それは偽・大いなるOを遥かに凌駕する程の性能を秘めている。
無論、その分消耗も激しい。先の襲撃で手に入れた金額なら呼び出して数秒後には崩壊が始まり、マスターの魔力を吸い尽くしながら消滅するだろう。
だが、魔力の消費など些細な問題だ。

フラッシュバックするのは、眼窩がある筈の部分がぽっかりと穴の空いたかのように黒一色に彩られ、耳まで裂けんばかりの狂笑を浮かべたライダー自身の顔。
ライダーのもう一つの宝具は発動と同時に極めて高ランクの精神汚染が永続的に付与される。
最弱に近いサーヴァントがマスターとのコミュニケーションも取れない発狂状態に陥ればどうなるかは火を見るより明らかだ。
その宝具を使用した戦いには勝てたとしても、そこでライダーの聖杯戦争は終わりを迎える。
故にライダーはその宝具の存在を秘匿した。追い詰められたマスターが令呪を使ってでも宝具の開帳を命令しないとも限らないからだ。

重い腰を上げ、ライダーはガレージへと足を向ける。
当分はガレージに籠って改修作業だろうか。
憂鬱な気分になるが、致し方ない事だと肩を落とし、ガレージへと足を向ける。
コツ、コツという足音だけが無機質な室内に響いていた。


184 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:11:26 v7b6QuXo0
【クラス】
ライダー

【真名】
ベック・ゴールド@THE・ビッグオー(漫画版)

【属性】
混沌・悪

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運B 宝具A

【クラス別スキル】
騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【保有スキル】
ロボット工学:A
ロボット工学に精通している。機械に関する判定に有利な補正を得る。
また、ロボットに類する物があれば改修を加えることが可能。ライダーが改修したロボットには最低ランクの神秘を宿らせる事が可能。
ライダーはロボットを他者に提供、あるいは自ら用いて様々な犯罪を行ってきた犯罪者である。

黄金率:C
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
このスキルは宝具『偽りの楽園に狂笑は響く』発動後、固有スキルから消滅する。
詐欺・強盗・教唆・殺人、ライダーは様々な犯罪行為で私腹を肥やしていた。だが、ある記憶<メモリー>を思い出した頃から、ライダーはあり余る財をある目的の為だけに浪費し続けた。

同一存在(金):A
ライダーがあらゆる手段で収集した金銭を自身の魔力に変換し貯蔵する。
一度変換した魔力を金銭に戻すことも可能。
生前、自身の存在を金銭そのものと定義した事から生じたスキル。金額が高ければ高いほど、貯蔵される魔力量も多くなる。


185 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:11:56 v7b6QuXo0
【宝具】
『偽・大いなるO(スーパーベック)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:0〜10 最大捕捉:20人
ライダーが譲り受け改造したヘビーメタル・ユニット、スーパーベックを呼び出し搭乗する。
この間スペックが以下に変更される。
・筋力がC、耐久がBに上昇
・weaponに肩部ミサイル砲と指部レーザー砲を追加
・スキルに仕切り直し:C・真名偽装:Cを付与。
この宝具は頭部が無事である限り、破壊されても修復が可能。
また、ライダーの任意で偽装ビッグオー形態・通常形態・脱出装置のみの3種類の内どれかを召喚前に選択が可能。

○スキル解説

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
偽・大いなるOの頭部が健在な限り、高確率で戦闘から離脱できる。追撃に関するスキルを持っている対象には離脱確率が大幅に低下する。
偽・大いなるOの頭部はコクピット兼脱出装置であり、7度目の敗北で頭部が破壊されるまでビッグオーとロジャー・スミスから逃げおおせた。

真名偽装:C
この宝具から真名を割り出した対象はライダーをビッグオーの搭乗者、ロジャー・スミスと誤認する。
偽装ビッグオー形態のみこのスキルは発動し、外装が破壊され、本来の姿を現すと、このスキルは消滅する。
また、Bランク以上の直感、またはそれに類するスキルの所持者はこのスキルを無効化する。
但し無効化に成功した場合でも内部の本体を視認しない限り、ライダーの真名にたどり着くことはできない。
ビッグオーの外観をまとったこの宝具でライダーは犯罪行為を幾度も行い、ビッグオーに対する悪評を広めた。


『偽りの楽園に狂笑は響く(ギガデウス)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:0〜20 最大捕捉:60人
ライダーが地下深くで見つけ起動させたギガデウスを召喚、搭乗する。
この間スペックが以下に変更する。
・筋力および耐久がAに上昇
・weaponに腕部ドリル、眼部レーザー砲、火炎放射機構追加。
・スキルに精神汚染:Aと狂気汚染:Aを付与。

○スキル解説
精神汚染:A
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。
『偽りの楽園に狂笑は響く』が発動して始めてこのスキルは効力を発揮し、以後は常時発動スキルとなる。
記憶<メモリー>を思い出し、ギガデウスを発掘してロジャー・スミスと再会したライダーは完全に発狂していた。

狂気汚染:A
精神汚染:Aが発動している状態のライダーと戦闘し、かつ殺害に成功した主従に対して発動する。
対象主従に1日1回、精神による判定が発生する。判定に失敗した場合、対象は精神汚染:Aのスキルが付与される。
パラダイム・パラダイス・パラライズ。
ライダーの死後、自身を殺害したロジャー・スミスに対して悪夢という形でその精神を蝕み、廃人寸前へと追い込んだ逸話が昇華されたスキル。

【weapon】

単発式のピストル
スタンガン

【人物背景】
40年前の記憶を失った街、パラダイムシティで悪事を働く犯罪者。
メモリーを取り戻そうとする人間やメモリーを取り戻した人間を利用して様々な事件を起こして金儲けをしていたが、ある事件においてロジャー・スミスに邪魔をされ逮捕される。
その折にビッグオーのパイロット=ロジャー・スミスである事を知り、彼の正体を知る数少ない人物の一人となった。
その後もメモリーを利用して様々な犯罪行為を行っていたが、ビッグデュオとビッグオーの戦闘においてなんらかのメモリーを思い出し、稼いだ大金もろとも姿を晦ます。
再びロジャーの前に姿を現した時には精神に異常をきたしており、彼の発掘したギガデウスにてロジャーとビッグオーを圧倒するものの、自壊を始めたギガデウスはビッグオーの攻撃を受けて爆散。
搭乗していたベックもまた、中空に放り出され無明の闇へと落ちていった。その散り際にロジャーへ多大なるトラウマを残して。
その後彼の存在はロジャーの精神を苛み、一時期廃人同然にまで追い込むが、これが彼の怨念だったのかは定かではない。

【サーヴァントの願い】
この街で大量に買い占めた純正品の物品を持ち込んだまま、パラダイムシティに帰還する。


186 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:14:29 v7b6QuXo0
【マスター】

トロン・ボーン@トロンにコブン

【マスターとしての願い】

借金を返済できるだけのお金と一緒に元の世界に帰る。

【weapon】
万能二足型歩行戦車・グスタフ
所謂ロボット。大きさはパトカーより少し大きい程度。
腕部にサーチキャノンと呼ばれる大口径砲を搭載。
ボーンバズーカ及びガトリングガンに関しては未実装。

【能力・技能】

メカニックの天才、作中及びロックマンDASHシリーズにおいて数々のメカを作成している。
設計思想は性能よりもコストパフォーマンス重視


【人物背景】
空賊ボーン一家の長女で戦闘メカの作成及び操縦担当。
高飛車な一面があるが、自身の作成したコブン達には厳しさと優しさを併せ持った対応をしており、母性的な一面がある。
基本的には空賊の名の通り銀行強盗から街の破壊、ディグアウターの襲撃に窃盗などで生計を立てている犯罪者。
悪党ではあるがどこか面倒見が良く、兄の影響か情に厚い一面も持っている。
本作品では初出のロックマンDASHシリーズではなく、スピンオフ作品のトロンにコブンの冒頭の時間軸からの参戦。

【方針】

とにかく金を稼いで宝具用の魔力を貯蔵する。
ただし今回の様な宝具を利用しての強盗に関しては当分見送り
他の参加者に関しては話がわかるようなら交渉。
話がわからない相手には『偽・大いなるO』の頭部だけを呼び出してとんずら。
追ってくるようならガレージに逃げ込んでグスタフで応戦する。
モラトリアム期間の内に偽装状態の『偽・大いなるO』を呼び出しているので、仮想敵に仕立てあげて他の主従との同盟も検討
なお『偽りの楽園に狂笑は響く』に関しては最終戦以外で出した場合、優勝の目が限りなく0になるので、使用予定は一切なし


187 : トロン・ボーン&ライダー ◆DoJlM7PQTI :2015/04/15(水) 01:14:55 v7b6QuXo0
以上で投下終了します


188 : ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:07:47 xvHMcR5I0
投下します


189 : アイリスフィール&セイバー ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:08:42 xvHMcR5I0

……幸せな夢を見た。



森の中に建つ小さな家。
木造で、とても電気など通っていそうにない古風な造り。
扉を開くと、色とりどりの花が咲き乱れる花畑がある。
春の陽射しが降り注ぎ、穏やかな風が草花を揺らす。
その花畑の真ん中に、小さな少女がいた。

「     !」

振り返った少女――娘が満面の笑みで手を振って、自分を呼ぶ。
娘の後ろには夫がいた。
散々振り回されたらしく、身体のあちこちに花びらがくっつき、頭には花かんむりが載っていた。
尚も娘が呼ぶ。持っていた洗濯物かごを置き、扉を閉めて歩み出す。
夫が柔らかく笑い、娘を肩車した。

「      」

夫に名前を呼ばれる。応えて自分も笑う。
穏やかな顔にほっとした。最近ではついぞ見た記憶のない顔だ。

……最近?

最近、とはいつだろう。
夫はいつもこうして笑っていた。自分と娘の前では煙草も絶っていたはずだ。
では、この鼻につく臭いは何だろう。あの外界から隔絶された冬の古城では手に入るはずもない不快な香り……古城?

「    ?」

娘の声に思考を打ち切られた。伸ばされた手は庭先を指している。
そこには一人の、黒髪の少年が立っていた。
来客だろうか。ここを訪れる人は滅多にいない。遠方に住む父の使いか、それとも道に迷った旅人か。
見たところ娘より四つ五つは年上だが、小柄だった。
自分よりもさらに頭ひとつは低い背丈。右頬に小さな十字傷。
夫が立ち上がって、少年に用向きを問う。
肩の上の娘も面白がって夫の口ぶりを真似、同じ言葉を繰り返す。
が、少年は目を伏せて応えない。そのまま、夫と娘の傍らを通り過ぎる……こちらに向かってくる。
少年が一歩を踏み出すたび、花が散る。風が舞い上げた花びらが視界を覆う。
夫と娘の姿が見えなくなる。

「  !     !」

突如得体のしれない不安に襲われ、彼らの名前を叫んだ。
返事はなかった。
代わりとでも言うように、少年が目の前に立った。
あなたは誰、と問おうとして。

「……セイバー」

目が合った。
同時に夢から覚めた。


190 : アイリスフィール&セイバー ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:09:02 xvHMcR5I0



「う、ううん……」

目が覚めれば、そこは花畑などではなく。
薄暗く埃っぽい、見覚えのある土蔵の床に、彼女は横たわっていた。
夢を見ていたのはわかるが、その内容まで思い出せない。
それでも何となく幸せな夢だったような気がする。
後ろ髪を引かれながら起き上がる。

「……え?」

起き上がれた。その事実に呆然とする。
地面に手をつき、力を込め、起き上がる。
そんな単純な動作さえこなせないほど、この身体は衰弱していたはずなのに。
アイリスフィール・フォン・アインツベルンは、さらに驚愕する。
衰弱どころか。全身を蝕んでいた倦怠感、疲労感は綺礼に消え去っていた。
魔力も問題ない。やろうと思えば身体から溢れさせることも可能なほど……つまりは健康、万全の体調に戻っていた。

「どういうことなの……?」

そろりと立ち上がる。やはり問題なく、何の支えもなく自分の筋力だけで立ち上がれた。
これは、アイリスフィールの認識からすれば有り得ないことだった。
聖杯戦争における聖杯の『器』として鋳造されたアイリスフィールは、脱落したサーヴァントの魂をその身に収める役割を担う。
その結果、『器』に必要ではない余計なもの、つまり人としての機能は順次破棄されていく。
アサシン、キャスター、ランサーの三騎が散り、戦局も大詰めとなったとき、アイリスフィールは一人で動くこともままならないほど弱っていたはずだ。
ふと思い当たる。この現象はもしやセイバーのおかげだろうか。
『全て遠き理想郷』……無制限の治癒能力をもたらすあの宝具の担い手が傍にいれば、アイリスフィールの体調は快方に向かう。

「セイバー? どこにいるの?」

ここがあの土蔵ならば、夫である衛宮切嗣が手配したセーフハウスの敷地内であるならば、どこにいてもセイバーは自分の呼びかけを察知できるはずだ。
瞬間、アイリスフィールの目前に魔力が収束し、人型となる。

「え?」

現れたのは、彼女が求めたセイバー。
ただし、アイリスフィールの予想した騎士王ではない。

「マスター、目が覚めたんだね」

金髪の麗人ではなく、黒髪の少年がそこにいた。
アイリスフィールより頭一つは低い。日本の尺度で言えばまだ中学生、あるいは小学生にも見える小柄な体躯。
それでも……優れた魔術師でもあるアイリスフィールにはわかる。
この少年が、途方もなく強力なサーヴァントであることを。
あるいはあの騎士王に匹敵するかもしれない、人のカタチをした小さな竜……
その瞬間、すべてを思い出した。


191 : アイリスフィール&セイバー ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:09:39 xvHMcR5I0

「……ああ、そう。そうだったわね。これは……私の知らない、別の聖杯戦争だったのね」

戸惑いは、納得へと変わる。
これは、アイリスフィールが衛宮切嗣の補佐として参加していた冬木の聖杯戦争ではない。
ゴッサムシティなる、イリヤスフィールの知らない街で行われる、未知の聖杯戦争だ。
きっかけは何だっただろうか。
ランサーとそのマスターであるケイネス・エルメロイ・アーチボルトを撃破し、教会で遠坂時臣と休戦協定を結んだ。
その後、決戦に臨む切嗣に『全て遠き理想郷』を返却し、いよいよ身動きが取れない状態になって……そう、あのときだ。
突如襲撃してきたライダーに応戦するため、護衛の久宇舞弥が銃を手にする。
満足に動くことも出来ないアイリスフィールは流れ弾を食わないよう物陰に押しやられ、蔵に押し込まれていた小さな人形に触れたのだ。
その瞬間、アイリスフィール・フォン・アインツベルンは第四次聖杯戦争から離脱し、この新たな聖杯戦争に招かれた。
機能不全を起こしていた『器』たる身体は全快している。
冬木の聖杯戦争に合わせて調整された機能は、ここでは適用されないということなのだろう。

「そして、あなたが私のサーヴァント……セイバー」
「そういうことみたいだ」

少年、セイバーはアイリスフィールが状況を理解するまで待ってくれていた。
落ち着いた今ならば思い出せる。この少年は、先ほどの夢に出てきた少年だ。
幸せな夢の終わりを告げる、闘いの使者。それがこの少年だった。

「ごめん、邪魔をするつもりはなかったんだ。でもマスターの魔力が予想以上に強かったから、おれの魂が引っ張られたみたいだ」
「いいのよ、気にしないで。あれはしょせん……ただの、夢だもの」

現状を呑み込めれば、次はどう動くかを考える番だ。
アイリスフィールは今、夫である衛宮切嗣とそのサーヴァントたるセイバー、協力者である久宇舞弥とは隔絶されている。
前回は聖杯の『器』として聖杯戦争に参加したが、今度は純然たるマスターとしてこの戦場にいる。
そしてアイリスフィールの前には、新たなセイバーである少年がいた。
体調は万全。新たなサーヴァントはおそらく強力な存在だ。闘う条件としては十二分。
では、闘う理由はどうか?

「私がここで聖杯を手に入れれば、切嗣も、イリヤも……」

衛宮切嗣が殺人機械たる『魔術師殺し』に戻ることはなく、イリヤスフィールも聖杯の『器』になることはない。
舞弥も危険な魔術師の闘いに関わることはなく、その上イリヤスフィール自身も『器』になる必要がない。
つまりはアイリスフィールの大切な人たち全員が生き残ることができる。聖杯を手にすることさえできれば。
それは甘美な誘惑だった。
本来は『器』に過ぎないアイリスフィールにさえ、望む願いを強く自覚させるほどには。
だが、迷いもある。
本当にこのゴッサムシティの聖杯は本物なのか。
どうやって冬木からこの地に連れて来られたのか。
今も冬木で闘っているはずの切嗣とセイバー、そして舞弥の元へ、一刻も早く帰還するべきではないのか。


192 : アイリスフィール&セイバー ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:10:08 xvHMcR5I0

「でも、どうやれば……そもそもここはどこなのかしら。肉体ごと転移させられたのだとしたら、私一人じゃとても……」
「マスターは闘いたくないの?」
「え?」

セイバーに問われ、ふと考える。
闘いたくないのか? 否、そうではない。
聖杯戦争に参加する魔術師の縁者として、闘争に臨む覚悟は既にある。
なんとなれば、元々聖杯戦争に参加していたのだ。状況は変われど、方法そのものに変化はない。
考えるべきは、闘うのか、闘わないのか。前進する理由と後退する理由、どちらが大きいか。
そして……考えるまでもない、後退は却下だ。
ここからどうやって冬木に戻るか現状では不明であるし、何より冬木に戻っては確実に失うものがある。
切嗣は底知れない敵である言峰綺礼に付け狙われ、舞弥はライダーとの絶望的な交戦に臨んでいる。
アイリスフィールが干渉しようとしまいと、あの二人が直面する危機を回避することは出来ない。
であるならば、一時彼らと離れることとなっても、ここで闘うことが結果的には最善となるかもしれない。
この地で聖杯を手に入れ、切嗣の願いを叶える。そして冬木に戻り、切嗣と舞弥を救い、ひいてはイリヤスフィールを待つ運命を変える。
それらを為せるのは、冬木ではなくこのゴッサムシティの聖杯戦争を於いて他にない。
アイリスフィールは一つ息を吐き、セイバーに向き合った。

「……いいえ、違う。私には聖杯を得なければならない理由がある。
 切嗣、イリヤ、舞弥さん……私の大切な人たちのために、叶えたい願いがあるの。
 セイバー、あなたは、私に手を貸してくれる?」
「わかった。一緒に闘おう」

至極あっさりと、セイバーはアイリスフィールの申し出を受け入れた。
その瞳に迷いはない。為すべきと感じたことを為す、そんな確信に満ちている。

「いいの? 私はあなたのことをまだ何も知らないし、あなただって私のことも何も知らないでしょう」
「さっきの夢で、マスターが悪い人じゃないってわかった。それだけで十分だよ。
 父さんと、母さんと、子どもと……家族が一緒にいられるなら、それはとても良いことだと思う。
 その願いを守るためなら、おれは闘える」

このセイバーに含むものなどない。知り合って十分と経っていないのに、何故かそう断言できる。不思議な魅力を放つ少年だった。
サーヴァントである故か、あるいは持って生まれた魂の色、資質なのか。
娘よりやや年上の、並んで歩けば親子のように見られるかもしれないこの少年が、とても頼もしく思える。

「私はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。長ければアイリと呼んでちょうだい。
 セイバー、あなたの名前も……真名を聞いてもいいかしら」

サーヴァントにとって、真名は何よりも秘匿するべき情報。それは己のマスターであっても例外ではない。
マスターの権限を用いれば問わずとも知れる情報ではある。しかしそれを問うこと、答えること、それ自体が信頼の形になる。

「おれはダイ。みんなには、勇者ダイって呼ばれてたよ」

やや照れくさそうに笑うセイバー――ダイ。
アイリスフィールは差し出されたダイの手を取り、これから始まる闘いの日々に思いを馳せた。


193 : アイリスフィール&セイバー ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:11:09 xvHMcR5I0

【クラス】
セイバー
【真名】
ダイ@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:D 幸運:B 宝具:A+
筋力:A+ 耐久:A+ 敏捷:A+ 魔力:D 幸運:B(『双竜紋』発動時)
【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:D(A)
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
 『竜闘気』を発動することでランクが上昇、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
騎乗:-
 竜の騎士と人の混血であるダイが竜を駆って活躍したという逸話は無い。そのため騎乗スキルを持たない。
【保有スキル】
闘いの遺伝子:EX
 歴代の竜の騎士が積み重ねてきた膨大な戦闘経験の結晶。Aランクの「直感」「心眼(真)」の複合スキル。
 たとえダイが初めて見る攻撃であっても、過去の騎士たちの経験と照らし合わせることで瞬時に本質を見切り、対処法を編み出すことが可能となる。
呪文:D
 火炎、氷結、真空、閃熱、爆裂系統の中級呪文、電撃系統の下級呪文を使用可能。
 本職の魔法使いと賢者がパーティにいたこともあり、ダイが使用できるのは攻撃呪文に偏っている。
 このスキルは魔力から生み出される現象のため、対魔力によって打ち消される。
アバン流刀殺法
 種別:対人剣技 最大捕捉:1人
  かつて魔王を打ち倒した「勇者」にして、「勇者の家庭教師」アバンによって開発された剣技。
  「地」「海」「空」の三つの技を極めることで、「大地を斬り海を斬り空を斬り、そして全てを斬る技」アバンストラッシュを放つことが可能となる。
  ダイは闘いの中でこの剣技を磨き上げ、魔法と組み合わせる「魔法剣」を編み出した。
   大地斬…鉄や鋼など強固なものを力で叩き斬る「地」の剣。
   海破斬…炎や水など形なきものを速さで斬り裂く「海」の剣。
   空破斬…心眼で敵の弱点を捉え、光の闘気で悪の闘気を滅する「空」の剣。
   アバンストラッシュA(アロー)…闘気を衝撃波のように飛ばして攻撃するタイプ。威力が控えめな反面、離れた敵を攻撃できる上に連射が効く。
   アバンストラッシュB(ブレイク)…闘気を纏った武器で相手を直接攻撃するタイプ。威力に優れる反面、連射はできず、敵の懐に飛び込むため捨て身の技になる弱点もある。
   アバンストラッシュX(クロス)…Aタイプが着弾する瞬間Bタイプを放ち、敵の体の上でX字に交差させるタイプ。動く敵に当てるのは至難の業だが交差点の威力は通常タイプの5倍以上。
   ライデインストラッシュ…Aタイプに電撃呪文ライデインを組み合わせたタイプ。ダイが単体で使える技の中では最強の威力。
   ギガストラッシュ…Bタイプとギガデインを組み合わせたダイ最強の技。ただしダイは『ダイの剣』の鞘を用いなければギガデインを使用できないため、発動には10秒の時間が必要となる。


194 : アイリスフィール&セイバー ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:11:27 xvHMcR5I0

【宝具】
『ダイの剣』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 魔界の名工ロン・ベルクによって、世界でただ一振り「ダイのために」生み出されたオリハルコン製の剣と、その対となる鞘。
 言葉を発することはないが、主であるダイを時に諌め時に護るなど固有の意志を持つ。
 オリハルコンは神々が創った金属とされており、地上最硬の硬度を持つ。ヒビ程度の破損なら自己修復する。
 真名開放の効果は呪文強化。呪文を纏わせた魔法剣を鞘に収め10秒経過することで、その呪文を最上位級にまで昇華させることが可能となる。
『双竜紋』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10人
 拳に「竜の紋章」が現れることで発動、ステータスを大きく上昇させるオンオフ式の常時発動宝具。
 竜の騎士が持つ人の心、魔族の魔力、竜の力が一体となって生まれる闘気「竜闘気(ドラゴニックオーラ)」を開放する。
 通常の竜の騎士は額に紋章を宿すが、ダイは生まれつき持っていた自分の紋章と父バランから受け継いだ紋章を両拳に宿している。
 ほとんどの攻撃呪文を無効化、肉体を鋼鉄以上の硬度に強化、闘気の噴射による高速移動など、攻防速を極める。
 さらに『ダイの剣』と組み合わせることで通常攻撃が常時「闘気剣」となり、攻撃力が倍増する。
 竜闘気を収束させレーザーのように放つ「紋章閃」も使用可能となる。
 なお、竜闘気を全開にした状態では、『ダイの剣』などオリハルコン製でなければ武器が耐えられず燃え尽きてしまう。
『竜闘気砲呪文(ドルオーラ)』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:10-500 最大捕捉:500人
 竜闘気を極限まで圧縮し、竜の口を模して組み合わせた両掌から放つ竜の騎士最大最強の技。
 闘気を圧縮する際に魔力を用いるものの、本質的には闘気を放つ技であるため対魔力では無効化できない。
 『双竜紋』開放時でなければ発動できず、魔力消耗が非常に大きい。一度の使用で全魔力の八割を消費する。
『竜魔人』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
 大魔王バーンとの決戦時、ダイが両拳の紋章を再び額に戻し一つとすることで発現した、竜の騎士の最強戦闘形態(マックスバトルフォーム)。
 強大な力を持ちつつも唯一ダイが持ち得なかった「敵への殺意」を備え、肉体と闘気が爆発的に強化される。
 もともと竜魔人級の力を持っていたダイが更に強くなる形態であるが、力を追い求めるあまり人の心を忘れた姿でもある。
 そのため、サーヴァントとして召喚されたダイはこの姿を忌み、自らの意志で宝具を破棄している。
 この宝具を使用できるのはバーサーカーとして召喚されたときのみ。その場合はあらゆるパラメータが測定不能かつ制御不能、文字通りの魔人と化すだろう。
【weapon】
『ダイの剣』
『パプニカのナイフ』×2
 ダイがパプニカの王女レオナから下賜された王家の宝剣。切れ味はいいが、『双竜紋』と併用すると燃え尽きてしまう。
【人物背景】
 かつて地上が悪によって乱されたとき、神々は秩序の守護者として人・魔族・竜の三者の力を集め「竜の騎士」を生み出した。
 ダイは「竜の騎士」バランとアルキード王国の王女ソアラとの間に生まれた「竜の騎士」と人間の混血児である。
 出生後は両親と引き離され、魔物だけが暮らすデルムリン島に流れ着く。
 やがて島を訪れた家庭教師アバン、無二の親友となるポップと出会い、魔王軍の脅威に脅かされる世界を救うため旅立つ。
 魔物でありながら悪の心を持たない鬼面道士ブラスや他の穏やかな魔物に育てられたため、とても純粋な性格。
 クロコダイン、ヒュンケルといった悪の心を持つ敵も、ダイと戦うことで正義の心に目覚め仲間となった。
 宿敵ハドラーとは何度も死闘を重ねる内にお互いに尊敬の念が芽生え、父バランもダイとの闘いの末に人間への認識を改めるなど、その純粋さは多くの人の心に影響を与えた。
【サーヴァントの願い】
アイリスフィールが家族の元へ帰れるように、全力で守る。


195 : アイリスフィール&セイバー ◆y0D1VXr1t6 :2015/04/16(木) 01:12:12 xvHMcR5I0

【マスター】
アイリスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/zero
【マスターの願い】
聖杯を入手し、切嗣とイリヤが闘わなくてもいい世界を願う。
【weapon】
『貴金属の針金』
 錬金術の媒介となる針金。魔力を通すことで自在に変形する。
『メルセデス・ベンツ300SLクーペ』
 高級クラシックカー。排気量2,996cc、最高時速260km。
【能力・技能】
錬金術、治癒魔術、車の運転技術(免許未取得)。
【人物背景】
 アインツベルンの手により第四次聖杯降霊儀式の聖杯の「器」として錬成されたホムンクルス。
 「冬の聖女」ユスティーツァの後継機にあたり、また究極のホムンクルスの母胎となるべく設計されたプロトタイプでもある。
 精霊に近い存在である上、誕生前から様々な調整を加えられており、魔術師としての能力は高い。
 切嗣がアインツベルンに入るのとほぼ同時期に練成された。切嗣を夫として迎え、娘であるイリヤスフィールを儲ける。
 第四次聖杯戦争では切嗣の代理でセイバーとともに冬木市に入り、表向きのマスターとして囮役となる。


196 : 名無しさん :2015/04/16(木) 01:12:24 xvHMcR5I0
投下終了です


197 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:38:16 oz6DckQA0
皆様投下乙です。
自分も投下します。


198 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:39:54 oz6DckQA0




『だからもっと弾けていこう、恋していこう、青春はNon-stop』




静かに響き渡る旋律。
ゆったりと歌詞を紡ぐ穏やかな歌声。
小さな部屋の一室にて音楽が奏でられる。




『いつだって夢を見たいな 全力で羽ばたいていこう―――――――』




引き鳴らされるアコースティックギター。
サビを弾き終え、曲はゆったりと終わりを告げる。
詩も曲も彼女が作った。自分だけの音楽だ。
自宅で練習がてらに弾き語りを行うのが彼女の日課だった。


「………はぁーっ……」


弾き語りを終えた少女はギターを置き、ごろりとベッドに転がる。
そのままアンニュイな表情でぼんやりと天井を眺めていた。


199 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:40:33 oz6DckQA0

(結局、今日も入部出来なかったなぁ…)


聖川 紫杏(ひじりかわ しあん)。
軽音部へ入部志望の高校一年生。
音楽をこよなく愛するごく普通の少女…なのだが、人見知りで内気な性分の持ち主である。
そんな性格が災いし、高校入学から暫く経っても軽音部へ入部出来ずにいる。
ゴールデンウィークが刻々と迫る中、未だに門の前で足踏みしている状態だ。

「早く入部届出さなくっちゃ…」

部活は時間が経てば経つほどまず入りにくくなる。
しかもゴールデンウィークには合宿があると言っていたような…。
とにかく、早く入部しないとダメだ。もたもたしてるとますます入りにくくなる。
でも正直に白状すると恥ずかしい。
こんな時期に入部希望だなんて、ヘンに思われそうで気が引けてしまう。

「あー、もう!ただでさえ人見知りなのになぁ、もーっ!」

ベッドの上でゴロゴロと悶え。
自らの性格を恨めしく感じながら、シアンは思った。

―――――決めた。明日こそ入部しよう!

何度目かも解らぬ決意を胸に、くるりと寝返り。
俯せの姿勢になり、枕を抱えながらスマートフォンを弄り始める。

(頑張るのシアン。明日こそちゃんと入部しよう…その前に、まずはゲームで気持ち上げときますか!)

つまり気分転換である。
シアンは慣れた手つきでスマートフォンを弄り、アプリケーションを起動。
「SHOW BY ROCK!!」。曲に合わせて三つのボタンを譜面通りタイミング良く押していく、言わば音楽ゲームだ。
音楽を愛するシアンにとってお気に入りのゲームである。
シアンはスマートフォンの画面と向き合い、リズムに乗りながらその指でメロディを奏で続け――――


「やったぁ、最高記録!」


―――――フルコンボ達成である。
自己最高記録を達成し、喜びの余りベッドの上で小さくはしゃぐ。
そのままシアンは画面をタッチし、リザルト画面へと移行。
このスコアならきっと珍しいアイテムが出てくる筈。
そう思っていた矢先だった。


[アイテムゲット!【シャブティ】]


「………シャブティ?」

リザルト画面に表示されたのは、見慣れぬ人形のようなアイテム。
シアンの顔にきょとんとした表情が浮かぶ。



次の瞬間。
スマートフォンの小さな画面から強烈な光が放たれ。
驚愕する間もなく、彼女の世界は反転した。


200 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:41:10 oz6DckQA0
◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆




「え……え?何………?」



とある古びたアパートの一階、103号室。
シアンは自室で尻餅を突き、混乱した表情を浮かべていた。
ゴッサムシティのハイスクールに通うギタリストの少女は、『目の前』の非日常への恐怖を覚える。
突如として現れた『男』への恐怖と困惑を示す。


「誰なの…?」


始まりはごく当たり前の日常からだった。
自宅へ帰り、暇潰しと言わんばかりにスマートフォンを起動したシアン。
そんな彼女が発見したのは『シャブティ』という見慣れぬアプリ。
いつダウンロードしたのかも覚えていないそれに対し、どこか既視感を覚えたシアンは迷いつつも『シャブティ』を起動。
そして、ダウンロードの完了と共に―――――スマートフォンが光り。
自らの目の前に姿を現したのは。






「ヒャァーーーーッハァァァァァーーーーーーーーーッ!!!!!」






――――――激奏ッ!!
唐突に響き渡るメロディ!
細長い指によって弦の音色が掻き鳴らされるッ!
卓越した高速ピッキングによる攻撃的なギターサウンドが轟くッ!!
呆然とするシアンに容赦なく暴風の如しロックンロールが叩き付けられるッ!!!



「ロックンロォールッ!!今日も元気にッ死んでるぜェェーーーッ!!!」



そして演奏はフィニッシュへと向かう!
怪物のようなエレキギターを掻き鳴らしていた男がシャウトのような声で叫ぶ!
青白い肌。牙にも似た剥き出しの肋骨。骸骨にも似た貧相な肉体。
その男は『ゾンビ』を思わせる異形の存在だったッ!
ただぽかんとするのみのシアンは、演奏を終えたゾンビの男を無言で見上げる。
先程まではただ怯えるのみだったが。
シアンの顔から、いつの間にか恐怖が消え失せていた。


見下ろすゾンビ。見上げるシアン。
暫しの沈黙が場を支配した後。
シアンが、先に口を開いた。


「かっこいい……」


小さな口からぽつりと溢れる言葉。
眼をきらきらと輝かせ、頬を薄く紅潮させていた。
禍々しいギターによる激奏。魂に訴えかけるようなロックンロール。


201 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:41:51 oz6DckQA0

最初は怖いと思っていた。
だが、そのサウンドを聴いている内にシアンの胸に熱い感情が込み上げてきた。


――――――素敵だ。カッコいい。


ギタリストであり、音楽を愛するシアン。
目の前のゾンビが演奏する卓越したギターサウンドは、彼女の胸に強い衝撃を与えた。
シアンの心中の恐怖や混乱を吹き飛ばす程に。


「あ、あの…!もしかしてプロの方ですか!?」


グイッと顔を近づけ、ゾンビに問い質すシアン。
その表情からは興奮と昂揚が垣間見える。
魅入られた様子のシアンを見下ろし、ゾンビは機嫌を良くしたようにギターを鳴らす。


「よくぞ気付いてくれた!!俺サマはかつて『メタルの神』と称された男よ!!
 まッ、つっても随分過去の話だ!オマエみてぇなチンチクリンじゃ知らねえだろうがなァ!!」


『メタルの神』―――――ゾンビは己をそう称する。
シアンは思う。決して嘘ではないだろう。先程の演奏からして技術は卓越していた。
何より、あのサウンドからは滾るような想いを感じられたのだから。


「さあ願いを言ってみろ!オマエが聖杯に託す『願い』をよォッ!!
 俺のマスターになったからには相応の願いがあるだろう!?」


そのまま唐突に畳み掛けるようにゾンビが言い放つ。
シアンはえっ?と言わんばかりのぽかんとした表情を浮かべる。

聖杯に託す願い。マスター。
そういえば、そんなこともあったような気がする。
何故だか解らないが、自分はそれを『知っている』。

それを言うべきかどうか、迷う様子を見せるシアン。
そのまま暫しの間を置いて、もじもじとした様子で伝えた。


「強いて言うなら……」
「おォ?」
「部活……」
「あ?」
「軽音部に……入部したいなーって……」


どこか恥ずかしそうに伝えるシアン。
ゾンビは呆気に取られた様子で彼女を見下ろしていた。


202 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:42:16 oz6DckQA0

「………ケーオンブだァ?」
「ご、ごめんなさい!他に大した願いもなくって…」
「本当にそれだけかよ?」


信じられないと言わんばかりの態度で問い質すゾンビ。
上手い言葉が見つからないシアンは口籠らせる。
どこか疑う様子のザベルに対し、僅かに怯えた様子でシアンは言葉を紡ぐ。


「その…私、そんなに大それた願いも無いですし…
 ゴールデンウィークまでに部活に入ることが出来たらそれでいいかなーって…」


それはシアンにとっての本心だった。
大金持ちになりたいとか、世界征服を死体とか、そんな派手な願いは望んでいない。
ただバンドをやりたい。というか、軽音部に早い所入りたい。
今の彼女にとっての明確な願いとはそのくらいのものだった。


「つまんねェなア!聖杯なんてモンがあるんだぜ!?
 だったらデカい野望の一つや二つ叶えるしかねェだろうがよォ!!」


突然顔を近づけてながら言ってくるゾンビ。
ほんの少しびっくりした様子でシアンが後ずさる。
何でも願いが叶えられるモノがあるというのに、部活に入りたいだなんていうくらいの願いしか無い。
確かにちょっと地味だよなぁと、シアンは頬を掻きながら思った。


「えっと……考えておきますね。出来れば部活には自力で入りたいかなーとは思ってますし…
 あっでも私、あんまりいい願い浮かばないかもしれないかな…」


はにかみながら苦笑し、ゾンビにそう伝える。
何とも煮え切らない表情を浮かべていたゾンビだが、シアンは現に聖杯を使ってまで叶えたい願いが無い。
いきなり「勝ち残ったら聖杯を手に入れられる!」なんて言われても困るのだ。
そのまま何とも言えない空気が流れ、気まずくなったシアンが口を開く。


「あ…そういえば、お名前聞いてませんでしたよね!」
「おォ!そうだったなァ!!」

シアンに名を問われ、思い出したようにゾンビが言う。
そのままゾンビが己のギターを掻き鳴らしながら、その名を告げる。




「『ダークストーカー』――――――ザベル・ザロック様だ!覚えておきやがれェ!!」




闇の住人――――――ダークストーカー。
存在する筈の無い「番外位“エクストラクラス”」。
それがシアンの召還したサーヴァントだった。


203 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:42:41 oz6DckQA0
◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


聖杯戦争。
奇跡の願望器。
令呪。
マスター。
サーヴァント。
ゴッサムシティ。
ロックギタリスト、ダークストーカー。


余りにも唐突過ぎる始まり。
まるで空想の物語にでも入り込んだかのような常識外の話。
ゴッサムシティという街で繰り広げられる戦い。
勝利して得られるものは、あらゆる願いを叶えられるという奇跡の願望器。
ただゲームの最高記録を出しただけだったのに、何故こんな大それた話になっているのだろうか。
流石にこれが現実の出来事だなんてことは有り得ないだろう。


(ゲームのやりすぎなのかなぁ、私…)


シアンは頬を掻きながら、ふとそんなことを思う。
ゲームをやっている途中でばったりと眠ってしまったせいだろうか。
今日はなんだか変な夢を見ているなぁと、暢気なことを考えていた。


204 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:43:28 oz6DckQA0

【クラス】
ダークストーカー(エクストラ)

【真名】
ザベル・ザロック@ヴァンパイア

【属性】
混沌・悪

【ステータス】
筋力C+ 耐久C++ 敏捷B+ 魔力C 幸運C 宝具B

【クラス別スキル】
魔物:C
闇の住人(ダークストーカー)。伝承や噂話で語り継がれる異形の怪物。
種族によってその能力や特性は大きく異なる。
ザベルの場合、人から後天的に人外へと転じた。
魔の属性を持つ攻撃に対する耐性がアップする。
ただし退魔の逸話・能力を持つ攻撃に対しては逆に被ダメージが増加する。

対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
ゾンビ:B
死の淵より蘇りし屍人。リビングデッド。
ザベルは魂に闇の洗礼を受け、ゾンビとして蘇った。
肉体を自在に変化・操作する能力を持ち、身体の伸縮による打撃、手足のチェーンソー化、骨による刺突など数々の奇怪な攻撃を行える。
ゾンビとしての不死性も備え、魔力を用いることで通常のサーヴァントよりも優れた再生能力を発揮出来る。

精神汚染:A
闇の眷属として蘇った猟奇的な狂人。
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
魔に魅入られ、己の信奉者達を生贄にし魔物へと転じた精神性は並の者には理解出来ない。

魔力放出(雷):C+
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出するスキル。
ザベルの場合、肉体を魔力で帯電させて攻撃に用いる。

空中戦闘:B
空中での攻撃判定にプラス補正が掛かる。
また滞空による敏捷値のマイナス補正を受け付けなくなり、常に十全の機動力を発揮出来る。
魔力を瞬間的に放出することで空中ダッシュを行うことも可能。

【宝具】
『Le Malta(ル・マルタ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
帝王オゾムがザベルの監視役として送り込んだ単眼の魔物。
ザベルの唯一無二の相棒として宝具へと昇華された。
短距離の空間転移を行え、ザベルを飲み込んで共に転移することも可能。
更にギターやスピーカーなど様々な形態に変身し、ザベルとのトリッキーな連携によって戦う。

『Death voltage(デス・ボルテージ)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人
魔力放出(雷)スキルより派生した宝具。
髑髏を象った強力な電撃を纏って突進し、相手を感電させる。
命中することで電撃による追加ダメージを与えられる。
空中戦闘スキルの恩恵によって空中でも発動可能。
空中で発動した場合、空中ダッシュによって突進する。

『Hell dunk(ヘル・ダンク)』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:1人
奇想天外な地獄の籠球。
空間転移をしたル・マルタが地面から相手を捕獲し、無力なボールの形状へと変える。
そのままボール化した相手を受け取ったザベルがバスケットゴールに変身したル・マルタにダンクシュートを決める魔技。
ボール化は物理的防御や対魔力など相手のあらゆる抵抗を無視して一方的に押し付けられる。
ダメージ判定はダンクシュートが決まって相手が地面に叩き付けられた瞬間に発生し、
相手の耐久値を無視して大ダメージを与えることが可能。
ただし直感スキルなどの危機感知能力があれば地面から出現するル・マルタを事前に察知可能。
またル・マルタの行動を先読みできる能力や高い瞬発力さえあれば回避は然程難しくない。
ボール化はダンクシュートによるダメージ判定が発生した時点で自動解除される。

【Weapon】
己の肉体

【人物背景】
かつて「メタルの神」と称されていたカリスマギタリスト。
この世の快楽のみでは満たされなくなった彼は魔界の力に魅入られる。
ライブで自らのファン100人を殺害した後に自害し、ゾンビとして復活した。
殺戮を好む残虐で狡猾な狂人だが、ハイテンションでコミカルな一面も併せ持つ。

【サーヴァントとしての願い】
絶対的な力を獲得する。

【方針】
勝ち残る。

【エクストラクラス:ダークストーカー】
闇の住人を意味する魔物のサーヴァント。
悪魔や怪物、妖怪と言った人外の存在がクラス適性を持つ。
クラススキルとして「魔物」「対魔力」を備え、魔の属性に対する高い耐性を持つ。
ただし退魔効果や聖なる逸話を持つ武具を主な弱点とする。


205 : シアン&エクストラ ◆1k3rE2vUCM :2015/04/16(木) 11:43:59 oz6DckQA0

【マスター】
シアン(聖川 詩杏)@SHOW BY ROCK!!(アニメ版)

【マスターとしての願い】
ゴールデンウィークまでに軽音部に入部したい。
ただし別に聖杯に縋るほどの切実な願いという訳でもない。

【weapon】
エレキギター

【能力・技能】
ギターの演奏が出来る。
自分で作詞作曲もしている模様。

【人物背景】
女子高生のギタリスト。クラスは一年三組。
内気な恥ずかしがり屋で、その性格から高校の軽音部に入部出来ずにいる。
明日こそ入部しようと決意した日の夜、アプリゲーム「SHOW BY ROCK!!」の世界に迷い込んでしまう…はずだった。

アプリ内にデータとして紛れ込んでいた「シャブティ」を入手し、シアンはゴッサムシティへと誘われることになる。

【方針】
聖杯戦争自体を夢だと思い込んでいる。
ダークストーカーとセッションしたい。

【令呪】
右手に発現。
肋骨を思わせる六本の刃に包まれたハート。
消費は左側の刃三本(一画目)→右側の刃三本(二画目)→ハート(三画目)。


206 : 名無しさん :2015/04/16(木) 11:44:11 oz6DckQA0
投下終了です


207 : ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:07:08 f49kpLSY0
別企画の候補作の流用になりますが投下します


208 : 呉島光実&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:09:23 f49kpLSY0
息が乱れる。心臓は破裂しそうだ。
それでも男は一切構わず暗闇の路地を駆けていた。
男は中流階級の人間が住む地区を中心に活動するストリートギャングの一員だった。
銃の入手が容易なアメリカにあってもとりわけ治安の悪いゴッサムシティ。
そんな街で活動する彼の組織もまた当然のように複数人が銃を所持していた。

だが、あの緑の悪魔には彼らが普段振りかざす銃の威光も威力も何一つ通用しなかった。
そして男の組織は突然アジトに乗り込んできた緑の怪人の手によって瞬く間に壊滅させられた。
今でも自分が逃げ果せたという奇跡が信じられない。

「っ!?」

バイクの駆動音が耳に入った。
ただそれだけなのに身体の震えが止まらないのは何故だ。
疲弊した肉体に鞭打ち逃げるもバイクの速度に太刀打ちできるはずもない。
やがてこちらに向かって追突する勢いで迫りくる、緑の怪人が乗ったバイクが見えた。

「う、あああああ!?」

激突する寸前に左に転がって何とか生を拾った。
そして次の瞬間、緑の怪人が男の額に銃口を突きつけた。
さながら死神の鎌のようにも見えた。

「どこへ行こうっていうのかな?」

緑の怪人ことアーマードライダー龍玄は左手だけで男の身体を吊り上げ鳩尾に容赦のない膝蹴りを叩きこんだ。
手加減しているとはいえ約10トンもの威力の蹴りは容易に男の肋骨をへし折り吐瀉物を嘔吐させた。
さらに男の胸倉を掴んで地面に押し倒し左膝を粉砕骨折するほどの勢いで踏み抜いた。

「ぁぁああああああああああ!!!」
「黙ってろよクズ」

激痛に喚く男の口を塞ぎマウントポジションを取った。
男は涙を流しながら首を横に振ろうとするがガッチリと腕で固定されているためそれもままならない。

「僕からの要求は一つだ、二度とこの地区をうろつくな。
さもなければどんな手を使ってもお前達を一人残らず殺す、いいな?」

涙目でひたすら頷こうとする男の態度を了解と受け取ったか、手を離した後もう一度だけ蹴りを入れてバイクでその場を立ち去った。







「舞さん、今日も何とか守りきれた……」

変身を解いた少年、呉島光実は物陰からダンスチームの仲間である少女が踊る姿を物陰から見守っていた。
聖杯戦争の舞台であるゴッサムシティの治安の悪さは当然光実も知悉しており、影から自分が所属するチーム、鎧武を守るために行動していた。


209 : 呉島光実&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:10:07 f49kpLSY0
具体的にはチーム鎧武のメンバーが活動する地区の自警団活動兼武器調達である。
自宅のPCで闇サイトにわざとアクセスして近隣の犯罪組織に接近を図りアジトや構成員を潰して回っていた。
マスターとしてNPCの大量殺戮を行うことは許されていないため、病院送りや再起不能に留めるしかなかったが。
アーマードライダー龍玄の仮面を被って活動しているため当然光実の顔は割れていない。

「それにしても、何で次から次へと湧いて出てくるんだ…!」

だが光実の活動で犯罪が根絶されるほどゴッサムの闇は浅くない。
一つの組織が壊滅すれば空いた縄張りを求めて別のギャングやマフィアが入り込むからだ。
加えて近頃は龍玄を警戒されたか探りを入れることも難しくなりつつあった。
それに、さすがにそろそろ聖杯戦争を戦うマスターとしての本分に専念しなければならない。

(こんな時、紘汰さんがいてくれたら……いや、何を考えてるんだ僕は!
弱気になりすぎだ、少しでもあんな奴を頼ろうとするなんてどうかしている!)

一度深呼吸を行い、荒れた心を鎮めようと試みる。
元々図太くもなければ冷酷でもない性格の光実にとってゴッサムシティでの生活は多大なストレスとなっている。
もっとも光実自身それを自覚できるほど自己分析ができるわけでもないが。

以前アーチャーにも言われたが、チームメイトたちも所詮はNPCに過ぎないのだ。
万一のことがあっても、元の世界には何の影響もないはずだ。それは頭では理解している。
そもそも勝ち抜いて聖杯にさえ至れば全てを光実の思うようにできるのだから。


――なのに、どうして胸騒ぎが治まらないんだろう?

考えすぎだ、と不安を心の奥に押しやる。
これはオーバーロードの圧倒的な力に反抗心を折られた光実に訪れた予期せぬ好機なのだ。
ユグドラシルタワーの執務室に置かれていた人形が切っ掛けなのだろうと参加した今ならわかる。

「そうさ、僕は必ず勝つ。勝って舞さんを幸せにするんだ!
それができるのは紘汰さんじゃなく僕だけなんだから……」







「何をやっているのかしらね、あの男は」

物陰から舞を見つめる光実の様子を、彼のサーヴァントたるアーチャーは近場のマンションの屋上から観察していた。
もちろん光実に任せられた仕事を終えてから主の後を追ってここに来ている。
アーチャーの持つ銃火器の数々は使用に魔力を要しない代わりに魔力による補充も一切できない仕様になっている。
そこでマフィアやギャングのアジトを光実が壊滅させアーチャーが後始末をしつつ銃器を回収するという作戦を取ったのだ。
かつて多くの銃火器を盗んで使用したアーチャーの逸話から現地調達した武器、道具はアーチャーが使えば最低限の神秘を与えることができる。


210 : 呉島光実&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:11:32 f49kpLSY0
もっともこれまで入手できたのは安物の拳銃が大半でつい最近ようやくサイレンサー付きの銃が一丁手に入った程度だ。

「…いえ、私も人のことは言えないわね」

光実が見つめている女性が彼の執着の対象であることは明らかだ。
アーチャーとてかつては、いや今も一人の少女に対して執着しあらゆるものから彼女を守ろうとしている。
視野が狭く独善的で大切なたった一人の人間のためなら他の全てを切り捨てる。
それが呉島光実と暁美ほむらの正体だ。自覚しているか否かの違いはあるが。

ともあれ、光実の根底にあるものが自分と同じだというならその方がアーチャーにとってはやりやすい。
少なくとも変に倫理観や正義を振りかざされるよりはまだストレスにはならない。

「聖杯を手に入れれば、もう誰もあなたには触れさせない。待っていて、まどか」





【クラス】
アーチャー

【真名】
暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語

【パラメータ】
筋力:E 耐久:E敏捷:D 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
対魔力:D
魔術への耐性。一工程の魔術なら無効化できる、魔力避けのアミュレット程度のもの。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても一日は現界可能。


【保有スキル】
道具作成:E
材料があれば爆薬の調合・爆弾の製作ができる。
アーチャーが作成した爆弾は他人が使ってもサーヴァントにダメージを与えられる。

自己暗示:E
自身にかける暗示。精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
……が、アーチャーの場合どちらかと言うと自分に無理やり言い聞かせているといったほうが正しく、効果は低い。


211 : 呉島光実&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:12:13 f49kpLSY0


【宝具】
『やり直しの願い(コネクト)』
ランク:C 種別:対界宝具 レンジ:なし 最大捕捉:1
かつての願いを元にした時間停止能力の発現。本来は砂時計の砂を傾ける事による能力。
アーチャーに触れている者に対しては時間停止が働かない。
本聖杯戦争では再現の都合上で単に魔力を消費するだけで使用できる宝具になっており魔力消費・持続力も悪化している。
マスターである光実から供給される魔力が少ないため戦闘の度に時間停止に頼ることは難しい。
それに伴い、時間遡行の能力は消滅した。
また、付随する能力として盾の中に色んなものを収納することが可能だが、サーヴァントである以上武器は自由に取り出せるので意味がない。
時間操作という魔法を操る対界宝具にも関わらずランクが低いのは元は一人の少女の願いから生まれた宝具であるため。

『穢された願い(まどか・マギカ)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:なし 最大捕捉:1
鹿目まどかによって改変された世界での魔法少女・暁美ほむらの再現。
『やり直しの願い』との同時使用はできず、アーチャーはこの宝具と『やり直しの願い』の二つの形態を使い分けて戦うことになる。
改変以前の世界で鹿目まどかが使っていた弓矢を用いた戦い方に変化し、時間停止及び銃火器は使用できなくなる。
またこの形態でのみアーチャー本来の力を攻撃能力を持った黒翼という形で、ごく僅かながら行使できる。
神を穢しその手に収めた逸話から、黒翼による攻撃は神の恩寵を打ち破る。

【weapon】
「各種銃火器・爆弾」
かつてアーチャーが自作したり、自衛隊などの組織から盗んで使用していた武器の数々。
これらの使用に魔力消費は発生しないが、爆弾類を除き消費した銃火器・弾薬は現地調達しない限り二度と補充できない。
また、これら現代の兵器は霊体であるサーヴァントとの相性が悪くサーヴァントへのダメージにマイナスの補正が掛かる。

「弓」
魔法の矢を撃ち出す黒塗りの弓。
銃火器に比べサーヴァントへ与えるダメージが高い。


212 : 呉島光実&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:12:53 f49kpLSY0


【人物背景】
とある時間軸で魔法少女だった鹿目まどかに憧れ、そしてその死を否定するべくインキュベーターと契約して魔法少女になった少女。
能力は特定期間内限定の時間停止と、一定期間の時間遡行。
魔法少女となった事で自信がつき、弱気だった性格は明るくなった。
だが魔法少女の契約には裏があり、魔法少女はやがて魔女となって人々に害をなす運命にある。
魔女化によって相転移する感情のエネルギーを回収する、というのがインキュベーターの真の狙いだった。
それに気付いたほむらは時間遡行を繰り返しまどかを魔女化させないように試みたが、何度やっても上手くいかない。
最終的にほむらはもう誰にも頼らないことを決め、人との接触や説明を避ける人物になった。
しかし単独では最強の魔女・ワルプルギスの夜にどうやっても勝利できず、本編の時間軸におけるまどかは「全ての魔女を消す」ことを願いにして契約。
ほむらの時間遡行により集まった因果の力で世界を改変して願いを叶えたまどかだが、その代わりに魔女を消す概念「円環の理」となって消滅した。
世界から魔女は消えたものの、エネルギーを求めるインキュベーターはほむらを魔女にして円環の理の掌握を試みる。
まどか達の力でこの実験は失敗したが、ほむらは円環の理として迎えに来たまどかを『愛』の力で捕獲。
再度世界を改変して鹿目まどかという人間を取り戻した。
神にも等しい存在となっていたまどかを、更に因果律を書き換えることで取り戻したほむら。
だがまどかの存在は不安定で、ふとした切欠で「円環の理」に戻る危うい状態にある。


【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力で自らの世界の改変を完全なものにする。


【マスター】
呉島光実@仮面ライダー鎧武
(参戦時期は34話終了後)

【マスターとしての願い】
誰にも、何にも脅かされない絶対の権力を手に入れる。

【weapon】
「戦極ドライバー」
アーマードライダー・龍玄に変身するために必要なベルト。
イニシャライズ機能があり光実以外の人間には使用できない。

「ブドウロックシード」
戦極ドライバーに対応するクラスAのロックシード。
これを使うことで龍玄・ブドウアームズに変身する。
専用アームズはエネルギー弾を発射するブドウ型の銃「ブドウ龍砲」。

「キウイロックシード」
戦極ドライバーに対応するクラスAのロックシード。
これを使うことで龍玄・キウイアームズに変身する。
専用アームズは輪切りのキウイを模した二つの撃輪「キウイ撃輪」。


213 : 呉島光実&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:13:32 f49kpLSY0

「ローズアタッカー」
バイク型のロックビークルに変化するロックシード。
速度を上げることでヘルヘイムの森への行き来が可能だが本聖杯戦争では不可能になっている。

「ゲネシスドライバー」
アーマードライダー・斬月真に変身するために必要な次世代型ベルト。
こちらは誰でも使用可能であり、光実はこの性質を悪用して本来の変身者である兄・貴虎になりすましていた。
ちなみにコア部分は取り外し可能で、戦極ドライバーの拡張ユニットとしても利用できる。

「メロンエナジーロックシード」
ゲネシスドライバーに対応するクラスSのロックシード。
これを使うことで斬月真・メロンエナジーアームズに変身する。
斬撃武器としても使用可能な弓矢型の武器「創生弓ソニックアロー」をアームズウェポンの代わりとして扱う。
あらゆる性能が旧世代のアーマードライダーを上回る。

「クレジットカード」
富豪レベルの買い物ができるゴールドカード。

【能力・技能】
アーマードライダーとしての技量は可もなく不可もなくといったところ。
また、明晰な頭脳を持ち大人相手にも弁論で立ち回ることができる。
ただし本人の幼稚な精神性が足を引っ張ることも多々ある。

【人物背景】
沢芽市のダンスチーム「鎧武」に所属する高校生。チームメイトからの愛称は「ミッチ」。
ユグドラシルコーポレーションの重役を父に持つ御曹司でもあり、兄である貴虎からは将来を強く期待されている。
しかし本人はそんな期待を重荷に感じており、兄に秘密で放課後の時間をチーム鎧武で過ごすという二重生活を送っていた。
葛葉紘汰をヒーローとして強く尊敬し、高司舞に異性として憧れを抱いている。
紘汰が斬月(貴虎)に敗北し心を折られたことを切っ掛けにチームを守るためアーマードライダー龍玄に変身し、戦いを始めた。
次々と真実が明かされ状況が変化していく中波風を立たせないようユグドラシル側とビートライダーズ側の二つの立場を使い立ち回る。
しかし次第に紘汰が思い通りに動かなくなり、紘汰に対して苛立ちを覚えはじめる。
そして紘汰が舞を沢芽市で起こっている異変と陰謀に巻き込んだことが原因でついに怒りが爆発。
以降紘汰を邪魔者と見做し命を狙うようになり、戦極凌馬らに裏切られた貴虎も見殺しにした。(ゲネシスドライバーはこの時入手)
一時シドと行動を共にするも彼の死後はオーバーロード・レデュエの右腕に収まる。
しばらくは寝首を掻くことも考えていたが後にオーバーロードの圧倒的な力を見たことで心が折れた。
本聖杯戦争の光実はその時点から参戦している。
能力は高いものの自分の判断を過信し、自己を客観視できないなど精神的には未熟で幼稚な面がある。

【方針】
使える魔力に限りがあるのでサーヴァントと戦闘を行う時は好機を見極めてから。
また状況次第で他のチームに取り入ることも考える。


214 : 呉島光実&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2015/04/16(木) 15:14:04 f49kpLSY0
以上で投下を終了します


215 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 01:55:56 sqCWGzwY0
皆様、投下お疲れ様です
私も某所で投下したものを一部改稿して流用させていただきます
また、板のタイトルの都合上流用元とはタイトルが異なります


216 : 夜神総一郎&シーカー(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 01:59:20 sqCWGzwY0
オープンカフェ。その中の一席に彼はいた。
注文も出さず、彼はただ、そこに座っていた。
テーブルの向こうには空き席が1つある。
少し暑い。昼時だからだろうか。スーツの上着を脱ぎ、椅子に腰かけた。
彼がオープンカフェに来ているのも昼休みで腹ごしらえに来たかもしれない。
かもしれない、というのも可笑しいが、彼はどうも、なぜ自分がここにいるか分からないようだった。
なんとなく、知らない内にオープンカフェのテーブルに座ったのだろうか?
周囲を見回してみる。
ここは大都会といえる場所なのだろう、オープンカフェから視線を逸らせば道行く人は様々だ。
商談のためにスーツ姿で歩くサラリーマンに暇な時をショッピングで潰す若者。
空から落ちてきた太陽の光が街の人を動かしているようだった。
オープンカフェ内に視線を戻す。
ああ、やはり昼時だ。オープンカフェにごった返す人々。
みなランチを食すためにここに来ているのだ。彼が座るテーブル以外はみな満席だ。

「ああ……失礼……相席、いいかい?」

彼がしばらく呆けていると、ある男が声をかけてきた。身長は高く、190cm弱はある。
しかし男がやってくるまで彼は人の気配を感じず、まるで男が湧いて出たようであった。
男は白人で、ヨーロッパから来たことが分かる。

「ん、ああ、構わんよ」
「悪いな…このオープンカフェ、満席みたいでな…ここ以外空いてなかったんだ」

彼は少し驚いた様子を見せながらも、丁寧に応対する。
その男は席に座ると、彼を不思議そうに見てから尋ねた。

「なあ、おっさん…注文、頼まないのかい?」
「うむ?店員からやってくるんじゃあないのか?」

彼はおっさんと呼ばれても怒ることなく、その質問に答える。
彼は頭部に白髪が目立ち、頬がこけていた。どこか疲れているような印象を持たせる中年の男性だった。

「いや、このカフェはまずレジに行かなくっちゃあならない。そこで注文してから席に座るんだ」
「そうだったのか。すまないな、私はこういうところにあまり来たことがなくてね」
「それで、何を注文するんだ?俺はイタリア出身だからイタリア料理をオススメしたいところだな。例えばピッツァ・マルガリータとか」
「…なら、君に任せてみようかな。私としても何を食べるか決めかねていたところだ」

彼はとりあえずカフェへの注文を男に一任した。
しかし、男は注文をしにレジに向かおうとせず、しばらく黙って彼を見つめていた。

「…私の顔に何かついているのか?」
「いや…その、おっさんは何か悩み事があるのか?」
「………」
「心に何かしょい込んでいるような浮かない顔をしている」

彼は男に会ってから、愛想笑いを見せることはあってもすぐに口元を一の形に戻し、思いつめた表情をしていた。
この男は彼のことを心配しているのだろうか。

「ああ…実は私には気がかりなことがあってな。…変なことを口に出すかもしれないが、許してほしい」

確かに、彼には心に抱えている疑問がいくつかあった。
突拍子もないことだが、この男に話そうと決めた。

「私は……もう死んだはずなんだ」



◇ ◇ ◇


217 : 夜神総一郎&シーカー(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 02:00:43 sqCWGzwY0



――父さん、頼む死なないでくれ!!

「ライト…」

――父さん

「よ…よかった…」

――ああよかった、動けるか父さん!?

「私はまだ目を持っている。あの死神の…リュークの話ではノートを所有する人間の寿命は見えない」

「おまえはキラじゃない…本当によかった」

――!余計なことはしゃべるな

「す…すまなかった。結局、私は奴を殺せなかった…。わ…私はもう駄目だ」

「ライト…後の事は頼…―――」

――!…父さん、奴の名前を!

――奴の名前を最後の振り絞って書くんだ、やられっぱなしでいいのか!!

――さあ父さん、これじゃ無駄死にだ!それでいいのか!

――書くんだ。父さん早く!しっかり奴の顔を思い出して!



――父さん!



――父さん!父さん!死ぬなバカヤローッ!!



◇ ◇ ◇



「次長………ん?」

「どうした?松田」

「次長が左手に何か持ってますよ」




「これは……エジプトの――」



◇ ◇ ◇


218 : 夜神総一郎&シーカー(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 02:01:11 sqCWGzwY0



彼の名は、夜神総一郎。二代目Lこと夜神月の父であり、Lや部下達と共に犯罪者を殺す存在「キラ」を追っていた。
総一郎はマフィアから名前を書かれた者が死ぬ「デスノート」を取り返す作戦に参加した際、
デスノートにメロことミハエル=ケールの名前を書くことができずにマフィアの生き残りの凶弾に倒れる。
正義感が強く、警察官の鑑のような人物の彼は、最後の最後でメロをノートで殺すことを躊躇してしまったのだ。

死の床で、死神の目で月の寿命が見えたため月がキラでないと確信した。
Lとの捜査から息子にかかっていた容疑は真実ではなかったことに心から安堵した。
メロの名前を書けなかったことを詫びて意識が暗転すると、総一郎はいつの間にかどこだか知らないオープンカフェの中の一席にいた。
空を見上げると今にも落ちてきそうだった。

総一郎はキラに関する事件の始まりに捜査の経緯から死ぬ直前までの出来事を男に全て話す。
男は黙って総一郎の話を聞き続けていた。

「――今まで犯人と疑われていた息子が無実だと分かった。その事実があるだけで安心して死を受け入れられる。なのに私はまだ、こうして生きている。何故だろう?何か思い当たる節はないか―――レオーネ・アバッキオ?」
「……どうやら、あんたが死神と取引をしたっていう話は嘘じゃあなさそうだな。まさか名乗ってもいないのに名前を言い当てられるなんてな」

総一郎は未だ健在である死神の目を通じてその男――レオーネ・アバッキオに問いかける。
名乗ってもないのに名前を言い当てられるアバッキオは動揺を隠せない。

「私の『死神の目』は、人の顔を見ると名前と残りの寿命が見えるのだが、君の寿命が見えないんだ。その点も私としては不可解だ」

総一郎が持っていた疑問の一つ目は、自分が死んだはずなのに今、ここで確かに生きていること。
二つ目は、目の前にいるアバッキオという男の寿命が見えないこと。
デスノートの所有者の特徴として、死神の目を通して寿命が見えなくなるというものがある。
アバッキオが相席を求めてきたときはキラかと思い、驚いたがキラがヨーロッパ系の人間という事実はLの推理と大きく矛盾している。
この男はキラではない。長年キラの連続殺人事件に関わってきた総一郎は自然と察することができた。
キラでないならば、寿命が見えないことに何か他の理由があるのではないか、もしかしたらこの男は何か知っているのではないかと思い、アバッキオに抱いていた疑問を吐露したのだ。

「そうだな…答える前にこっちからも聞かせてくれ。『聖杯戦争』を知っているか?」

アバッキオは総一郎の質問に質問で返す。

「…聖杯戦争?…知らないな」
「よおく頭の引き出しの中を根掘り葉掘り探し回ってみろ。絶対にあるはずだ…聖杯がおっさんの頭の中に入れた記憶がな」

そう言われて総一郎はなんとか思い出そうと目を閉じた。
総一郎の54年の生涯が詰まっている記憶の海。その中で「聖杯戦争」をキーワードに検索をかける。
すると、確かに聖杯戦争に関する記憶が頭の表層に出てきた。
どこで知ったかもわからない、デジャヴに近い感覚だった。
総一郎は目を見開き、愕然とする。

「…どうやら思い出したみてーだな」
「……あ、ああ……」
「おっさん、俺は何だと思う?」
「…『シーカー』…私のサーヴァント。真名は…レオーネ・アバッキオ…」

そう、アバッキオは総一郎のサーヴァント。そして総一郎は死に際に何故か握っていたシャブティを介してゴッサムへ招かれた存在だったのだ。
アバッキオが相席を求めた際に湧いて出たように感じたのもシャブティがアバッキオに変化したため。
そして寿命が見えなかったのは彼がサーヴァント、つまり、既に死亡している存在だったからだ。



◇ ◇ ◇


219 : 夜神総一郎&シーカー(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 02:01:47 sqCWGzwY0



しばらくの間、総一郎は顔を手で覆い、俯いていたが今は落ち着きを取り戻している。
テーブルの上には二杯のイタリアンコーヒーが置かれていた。
もちろんアバッキオのチョイスである。

「…なぜ私はその聖杯とやらに呼ばれる必要があったのだ?」
「そこまでは俺にもわからねーな…」
「確かに、事件は私の目が黒い内に解決したいとは思っていた。聖杯に願えば生き返ることもできる…だが、だからといって人を殺すなど決して認められん…!」

サーヴァントという英雄を味方に授かり殺し合うという聖杯戦争に総一郎は怒りを燃やす。
総一郎はこれといった願いを持っていない。
志半ばで命を落としたが、それは月をはじめとする仲間達が受け継いでくれるはずだ。
では、ろくな願いも抱かず、なぜ聖杯に呼ばれたのだろう?

そんな総一郎を見て、アバッキオは警官になったばかりの頃を思い浮かべ、一種の羨望を覚えていた。

――俺もあの時、挫けずに正義を持ち続けていれば…おっさんみたいな立派な警官になれたかもしれない。

過去のアバッキオは汚職警官になり下がり、同僚を死なせてしまい身も心も「暗黒」へと落ちていった。
あの時からアバッキオは何にも心を動かされず、ただ、何もかも忘れて絶対的な存在に従って生きてきた。

この総一郎という男はキラという殺人犯がどんなに危険だとしても決して諦めずに犯人に向かう『意志』を貫くだろう。
この聖杯戦争でも――

「シーカー。たとえ私が死んでいたとしても、私の精神が生きている限り警察官としての職務を全うするつもりだ。
このふざけた殺し合いに乗る者にも、聖杯戦争を仕掛けた者に対しても断固として立ち向かう。そのために私と共に戦ってくれないか?」

――前を向いて『真実』を追い続けるだろう。

総一郎は己の信念を突き通すことを選んだ。
ここが東京だろうがゴッサムシティだろうが警察官がやるべきことは決まっている。そう結論付けたのだ。

総一郎の言葉を聞いたアバッキオはその瞬間、死後の同僚との邂逅を思い出す。
アバッキオの行動を誇りに思ってくれていた、アバッキオを過去の十字架から解き放ったあの瞬間を。


『大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。向かおうとする意志さえあれば、
たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな…違うかい?』


アバッキオは思った。もう一度警官としてやり直したい、と。
総一郎と共に『真実に向かおうとする意志』を持って戦いたいと。

「おっさんが『真実』に向かおうってんなら…俺は全力であんたを手助けするぜ。大切なのは『真実に向かおうとする意志』だからな」
「もちろんだ。キラは私が生きている内に逮捕することはできなかったが…今度は真実へ辿り着いてみせる…!」

真実へ向かい、その途中で死亡した二人は再び行動を開始する。
たとえどんな苦難が彼らを襲おうとも、きっと何か意味のあることを切り開いて行くのだろう。


220 : 夜神総一郎&シーカー(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 02:03:22 sqCWGzwY0
【クラス】
シーカー

【真名】
レオーネ・アバッキオ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメータ】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運C 宝具C

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
追跡:B
トラッキング能力。僅かな痕跡から敵の能力や行動パターンを予測し、現在位置をある程度の確率で特定する。

【保有スキル】
真実に向かおうとする意志:A+
シーカーがギャングに身を落とした後も心の底で持ち続けていた意志。
どのような肉体・精神状況下においても十全の戦闘技術を発揮できる。
そして、辿り着くべき『真実』に近づいているほど全パラメータが上昇する。

戦闘続行:B
信頼した者にはどこまでもついていく義理堅さ。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】

『映出す証拠(ムーディー・ブルース)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:-
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
人型だが、機械のような外見をしている。
過去にあった物事を再生、早送り、巻き戻し、停止して見る(利用する)ことができる。
スタンドの額にはデジタル表示のタイマーがあり、何時間・何日前の映像なのかが表示されている。
人間やサーヴァントの行動も再現できるが、宝具など敵の持つ異能や固有能力までは再現出来ない。
また再生中は攻撃も防御もできない完全な無防備となる。
この為、追跡や手掛かり探索などの調査などでは非常に役に立つが、直接的な戦闘行為には不向きである。
スタンドビジョンのダメージは本体にフィードバックされる。

『映出す真実(ムーディー・ブルース・プログレッシブ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:-
「映出す証拠」の進化形態。真名解放を行うことで使用可能になる。
従来の再生能力に加え、敵の宝具含む異能をも再生することが可能になる。
実質的に敵の宝具やスタンドを投影して利用することができるが、敵の使う能力によっては魔力消費がかなり多いので注意。

【weapon】
・宝具『映出す証拠』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で
筋力D、耐久D、敏捷D相当。
一応戦えないこともないが、本体が戦い、その補助として運用した方がいい。

【人物背景】
ブチャラティチームの一員のイタリアンギャング。
幼いころから正義感が強く、警官になるが、
次第に社会の矛盾に気づきはじめ、やがて自らも収賄などの汚職に手を染めていく。
しかし後にそれが明るみとなって汚職警官として罰を受けたばかりか、
それが原因となって同僚が自分を庇い殉職してしまったことで一生外すことのできない十字架を背負ってしまい、
その後にフーゴとブチャラティの勧誘を受けてギャングとなった。

そんな過去があるため、人をあまり信用しない性格。
特に新入りのジョルノ・ジョバァーナとは初対面時からことあるごとに衝突している。
しかし、一度信頼した者に対しては忠実に従い続ける義理堅さも持ち合わせている。
ブチャラティには絶対の信頼を置いており、ブチャラティが組織を裏切った際にも彼についていくことを選んだ。

トリッシュの記憶からサルディニア島へ辿り着いた後、スタンド能力でボスの過去を探っている時に
変装したボスの一撃により、再生中に致命傷を負わされる。
だが死の間際に最期の力を振り絞り、ボスの素顔のデスマスクと指紋をブチャラティたちに託し絶命した。
死後の世界では、かつて死なせてしまった同僚と再会。
彼が死後もアバッキオを恨んでいないどころか、アバッキオの生前の行いを誇りにさえ思っている事を知る。
かつての同僚と和解することで、アバッキオの魂は本当の意味で救われながら天に昇っていった。

【サーヴァントとしての願い】
警官として総一郎と共に戦う。
総一郎のことは信頼している。


221 : 夜神総一郎&シーカー(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 02:04:13 sqCWGzwY0
【マスター】
夜神総一郎@DEATH NOTE(漫画)

【マスターとしての願い】
ゴッサムで警察官としての職務を全うする

【weapon】
特になし
ただし、警官として警察庁から拳銃を支給されるかもしれない

【能力・技能】
・死神の目
人間の顔を見るとその人間の名前と寿命を見ることができる。
写真や映像であっても、人相が判別できるほど鮮明であれば名前と寿命を見ることができる。
似顔絵では名前と寿命が見えない他、鮮明な写真でも顔が大きく欠けている場合は見えないことがある。
自分自身を含めたデスノート所有者に関しては、名前だけしか見ることができない。
ちなみに、目の取引を行った場合、本来の視力にかかわらず、3.6以上の視力になる。
サーヴァントの真名も見ることができるが、サーヴァントは英霊であり、既に死んでいるため寿命は見えない。
シーカーの『映出す証拠』で人物を再現した場合、その人物の名前を見ることは可能。

【人物背景】
警察庁刑事局局長にして日本捜査本部長でもある。主人公である夜神月の父親。
正義感の塊で、まさに警察官の鑑ともいえる人格者。
Lが息子である月をキラだと疑っていることで、大きなストレスを抱え込んでおり、日に日にやつれていっている。

第2部からは次長に昇進。娘と引き換えにノートを犯人に渡してしまったことに責任を感じており、
死神の目の取引をしてメロの本名を知るも、その正義感故にメロの名前をノートに書くことを躊躇い、
その隙をつかれて銃撃された傷が致命傷となって死亡。
最後まで月がキラだということを知ることがないまま死去した。

【方針】
困っている人がいたら助けたい。
銃を撃つなど人を傷つける事を良しとせず、たとえ敵であろうともむやみに殺そうとは思わない。


222 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/17(金) 02:04:39 sqCWGzwY0
以上で投下を終了します


223 : ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 21:55:48 a9RsVEa.0
投下いたします


224 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 21:56:24 a9RsVEa.0

1:







                              過去のトラウマに追われ続ける男がいた







                              尊敬される未来を求めて彷徨う男がいた








2:


225 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 21:57:19 a9RsVEa.0

 人間を滞りなく殺す上で、良心・良識ほど邪魔な要素はない。
人は潜在的に、人を殺すと言う行為を忌避する生き物であると言う。当然である。人類全体がそうでなかったら、とうの昔に人類は滅びている。
相手を慮る気持ちがある時には、人間は人間を殺す事はほぼ出来ないと言っても良い。
ある程度の良心を持った人間が世界に多数いるおかげで、世界は維持されていると言っても良い。
その良心は、この男が自らの職務を全うする上で邪魔なものであった。邪魔になるからこそ、男は、良心の呵責と言うものを遥か昔に捨て去っていた。
衝動的で発作的な物を除く、初めから殺すと言う目的で行う殺人とは、情動の極端に薄い人間が、未熟で、大人になりきれない子供のような精神性の持ち主にしか成しえない。
だからこの男は何時の頃だったか、彼は自分の事を、感情を捨て去った機械のような人間であると認識する事にしたのだ。
そして今回もまた、自らの心の中に残っている人間性を殺し、機械へとならねばならない時が来たようである。――それも、長い事、だ。

「だ、駄目だよ先生……何も悪い事をしてない人を殺すなんて……」

 心底怯えきった表情で、二十代は前半を過ぎようとしている黒髪の青年が、弱々しく口にしていた。
所々にプロテクターが取り付けられた、ダウンヒル用の防護スーツに似た服を着用した細身の青年である。
気弱と言う性質を絵に描いたような、大人しそうで、内向的で、小動物のように臆病であると言う事が傍目から見ても解る。そんな青年だった。

「城石君、そんな事を言ってられないのは解っているだろう。聖杯戦争がどんなものなのか、君は理解しているだろうに」

 気弱そうな男の言葉を受ける人間は、椅子に座った、白衣を着用した茶髪の男性だった。
恰好から言って、如何にも医者か科学者然とした男であるが、事実、この男性は医者であった。
一見すれば、防護スーツ状の服を着た青年の診療かメンタルケアを行っているように思えるが、実際に二名が行っている事は、それらとは正反対の行為なのである。

「あ、そ、その……宮田先生は医者なのに、何で人を殺す事に……」

「私の事はどうだっていいだろう、城石君。君に覚悟を決めて貰わなければ、私も困るんだよ。君も、いじめられた過去を拭って、強い自分でありたいだろう」

 心を破壊された人間か何かの如く、医者の言葉には抑揚がなかった。感情と言うものが、本当に殺されているみたいな声である。
石膏で塗り固められているかのような無表情で男は淡々と言葉を続けているが、内心では目の前の小心者の人物に対して相当苛々を募らせていた。
それを億尾にも出さないのは、白衣の男が、相当強い胆力を持っているからに他ならない。此処で激情するのは、未熟な証である。

 2人は聖杯戦争の参加者であった。白衣の男の方を、宮田司郎。防護スーツを着た男の方を、城石一と言う。
一見すれば人を殺すと言う行為に忌避感を抱いている城石の方がマスターに見えるかと思われるが、実際はその逆。
城石に殺人を促す宮田の方がマスターであり、それに対して弱々しいNOを見せる城石の方がサーヴァントなのである。
マスターの方が肝が据わり、サーヴァントがその逆というパターンは、中々に珍しい。

 初めて宮田が城石の姿を確認した時、これは外れに近いサーヴァントなのだろうなと即座に結論を急いだ。
貧相な姿もそうであるが、活躍したと思われる年代が近く、何よりも、臆病で気弱そうな性質が身体中から臭って来るのだ。
そしてそれは、実際問題その通りなのだった。城石一は臆病者だった。
話を聞く所、どうやら過去に学校でいじめにあっていたようであり、その事がトラウマになり、彼から対人関係への自信を奪ってしまったようなのだ。
笑ってしまう程、ありきたりな理由。日本中を探し回れば数万には上ろうかと言う程の人間が抱えていそうな陳腐な悩みを持ったこんな男が、サーヴァントとは笑わせる。
いや――笑えない。このサーヴァントは、聖杯戦争に堪えるだけの実力は確かに有している。
そんな力を有していながら、それを戦いに用いるのが嫌だと言うのは、全く以って笑えない冗談だ。
況してや城石は『アサシン』のクラスで召喚されているのだ。暗殺者のクラスで呼び出されておきながら人間を殺すのが嫌など、悪ふざけにしても度が過ぎる。
なんとしてでも、宮田はこの場で城石の性格を直しておかねばならないのだ。


226 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 21:58:12 a9RsVEa.0

「でも……聖杯戦争に参加している人間って、殆ど関係ない人じゃないか。そんな人を殺したって、強くなんかなれるもんか」

 城石は恐らくそれ程頭の良い男ではないだろう。良くて高卒、悪くて高校中退程度であろう。大卒レベルの知能など、ある筈がない。
だが、中途半端に城石は大人だった。半端に良心や思いやりの心を持っていた。これが面倒である。
良心の牙城を崩してやらない限りは、宮田は聖杯戦争をまず間違いなく勝ち抜けない。ただでさえ外れクジのサーヴァントなのだ。
せめて勝率だけは上げておきたいのである。

 ――仕方がない……――

 このままでは埒が明かないと判断した宮田は、隠し玉的な手段を試すべく、重い腰を上げ始めた。
正直な話、宮田は今より行う手法にそれ程自信がない。だから、それを試す事に少しばかり躊躇いがあった。
医術を学ぶ傍ら、齧る程度に学んだ付け焼刃、生兵法。ではあるが、試してみる価値はある。何もしないよりは、進展は少しは見られるだろう。

「城石君。高校2年生の頃に、君をいじめていた男子生徒の1人に、『牧野』君と言う人間がいた事を覚えているかな?」

「牧野……くん……?」

 きょとんとした表情を浮かべる城石。初めて聞く物の名前を耳にした様な態度である。
彼の反応は当然である。何故ならば城石一をいじめていた牧野なる人物は、世界に存在すらしない、架空の人物なのだから。

「そうだ。無駄に力だけはあって、粗暴で、思いやりがなくて、すぐに君に暴力を振るう男だったろう」

「粗暴で、思いやりが……」

「君のお母さんが作ってくれた弁当を、君の目の前でゴミ箱に捨てた事があっただろう? 
君はその時初めて怒りを覚えたけど、牧野君がついでに振るった暴力で、君は感情を殺されたじゃないか。反抗しようと思ったけど、結局は諦めたじゃないか」

「ぼ、僕の弁当を……? 暴力を振るった……? ……そ、そんな事をしたのか……牧野君は……!!」

 城石の反応が、妙なものになった。
存在する筈のない牧野と言う人物が、過去本当に存在して、自分に対して癒えぬ傷を負わせたのだと、本当に思い込み始めたのである。
城石から発せられる気配は、宮田の話す言葉について疑惑を抱いていたそれから、明白に、存在しない牧野と言う人物への怒りのそれへと変化していた。

「城石君、暴力を振るったり、人を殺したりする事がいけないと言う事は、至極当然の事だ。君が嫌うのも無理はない。だが、時と場合によるんだよ。
聖杯戦争と言うのはね、君が思ってる以上に野蛮な人間が多いんだよ。君が嫌だ嫌だと言っても、君はサーヴァントなんだ。殆どの相手は、君を殺しに来る。

 其処で一息吐いてから、宮田は畳み掛けた。

「暴力でこっちを抑えようとする相手にはね、暴力を振るい返しても良いんだよ、城石君。
君はあの時、自分は何も悪くないのに、大切な弁当を捨てられて、理不尽に暴力を振るわれ、結局その怒りを押し殺されたね。
今度は自発的に君が動く番だ。自ら動いて――相手を倒して、自分の正しさを教えてやるんだ」

「……うん……!!」

 少しばかりの間をおいてから、城石が力強く頷いた。その気になってくれたか、と、さしあたって宮田は安心する。

「その気になってくれて何よりだ、城石君。……私はこれから少しばかり、患者のカルテを整理する。隣の部屋で眠るなり、好きにしていてくれ。その際に霊体化も忘れずに」

「はい、宮田先生」

 言って城石は、診察室から直に移動出来る仮眠室へと足を運んだ。
その部屋に入った瞬間に霊体化を行ったらしい。宮田に強いられる魔力消費が、急激に軽くなったのを彼は感じた。

「……手間をかけさせてくれる」

 言った通り、ファイルケースにしまわれた今日の分の患者のカルテをチェックしながら、小声で宮田は愚痴った。
まさかあんなにわか仕込みのマインドコントロールが通用するとは思っても見なかった。
羽生蛇村の暗部の一員である宮田は、一応こう言った精神掌握の術を学ばされ、自発的にも学んではいた。
だが村の暗部はどちらかと言うと直接的な手段を取る事が多かった為に、それ程この技術は重要視されてこなかった。

 視認出来る城石のステータスに、妄想癖が強いとあったので試した手段ではあったが、あそこまで簡単に通用すると驚くを通り越してむしろ呆れて来る。
此方にとっては非常に御しやすいサーヴァントかもしれないが、これを逆に、相手に突かれる可能性もなくはない。
早い段階で手を打つ必要があるかもな、当面の方針の1つを宮田は打ち立て始めた。

「聖杯、か……」


227 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 21:58:58 a9RsVEa.0

 羽生蛇村には、日本全国を探しても一つしか見られない、極めて独特な土着の宗教を信仰していた。
眞魚教(まなきょう)と呼ばれるそれは、ある理由から羽生蛇に生まれた土着の来訪神信仰を基礎に、16世紀に伝来したキリスト教の教義が習合された、
羽入蛇独自の宗教と言っても良い。日本全国を探し回ったとてこのような経緯で発生し、現在に至るまで連綿と受け継がれてきた信仰は他に存在するまい。
斯様な成り立ちの宗教が幅を利かせる村の医者であり、その宗教に深く関わる側の人間であった宮田は、
必然的に、村の宗教及び、吸収したキリスト教の知識にもそれなりに詳しくなっていった。

 聖杯。キリスト教の開祖であるイエスが最後の晩餐に使った杯であるとも、磔刑にされたイエスの血液を受け止めた黄金或いはエメラルドの杯であるとも言われている。
聖杯周りのエピソードは枚挙に暇がない。アーサー王伝説を筆頭とした騎士物語にも、過去に実在したテンプル騎士団もまた、これらを求めたと言う。
この戦争に勝ち抜けば、その聖杯が勝者の手に渡ると言うらしい。――あらゆる人物の願いを成就してみせる、万能の願望器としての側面を以て、だ。

 その名を聞いた時、宮田は初めて、自らの希薄な心の中に、欲望、と言う人間的な感情が湧いて出て来たのを感じた。
その聖杯が、欲しい。その物欲の根源は何なのだと自問する宮田。解っている、聖杯を欲する理由など、宮田は痛い程解っていた。
ただその原因を見つめる事が、余りにも苦痛であったから、目を逸らしていただけなのだ。

 宮田には兄がいる。牧野慶と呼ばれる男で、先程城石をマインドコントロールする時にでっち上げた架空の人物の名前は、宮田の兄の名前を頂戴したものだった。
何から何まで、城石と同じような性格の男だった。気弱で、なよなよしていて、自分に自信が全くなくて……。城石を見ていると無意味に苛々が募る理由は、其処にあった。
だが牧野は、眞魚教における求導師、村民の尊崇を一挙に集める、教主のような男なのだ。彼は、宮田が本当に求めていた唯一のものを持っていた。
対する宮田は、村の医療所である宮田医院の若い院長である。表向きは、だが。本来の宮田司郎は、羽生蛇村の暗部を司る最たる人物。
村の有力一族である神代家を支える一族の1人である宮田は、村の教えに反する異分子を、過去何人も殺めている。殺人以外の違法行為など、それよりも多い。

 ……兄が羨ましかった。兄の『立場』になりたかった。
何故自分は、村の暗部として、人を殺め続けなければならないのか。何故同じ血を分けた双子の兄が、あそこまで村人から尊敬されねばならないのか。
――何故、同じ顔で同じ背格好の人間に頭を下げ、その影として生きねばならないのか。羨望が、憤怒が、憎悪が、悲しみが、宮田の吐胸に渦巻いた数は、最早数え切れない。

 そんな思いを心に抱いて、抱いて、抱き続けて、幾星霜。
牧野慶の一世一代の大仕事である、『儀式』の前日に、宮田医院の旧病棟の物置で探し物をしていた所、奇妙な人形を発見した。
羽入蛇土着の宗教とも、キリスト教的モチーフとも違うその人形を奇妙に思った宮田は、その人形を手に取った――その時である。
気付いた時には、宮田はこの世界にいたのだ。アメリカに存在する、犯罪都市と言っても差し支えのない程の高い犯罪発生率を誇る街、ゴッサムシティに。

 千載一遇の好機だと、宮田は即座に思った。
聖杯戦争を勝ち抜き、聖杯を手に入れ――自らが求めてやまなかった、求導師になるのだ。
だから、宮田は聖杯に願うのだ。故郷羽生蛇に根付く、余りにも古臭い、カビの生えた生贄信仰から解放させてやるのだと。
村にかけられた『客人神』の呪縛を、解いてやるのだと。


228 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 21:59:34 a9RsVEa.0

「……俺が終わらせてやるよ、全部」

 その為には、全てを利用しなければならない。
自らのサーヴァントであるアサシン、城石一を。自らに与えられた、ゴッサムシティ内の個人診療所、宮田医院の院長としての地位を。
思う存分活用して、聖杯を勝ち取るのである。そして、今まで村の影としての生活を強いられてきた自らの人生に、終止符を打つ。宮田の覚悟は、固かった。

 ……しかし、宮田だけが気付いていない。
悩める人々を導く求導師でありながら、過去のトラウマに今も囚われ続けている城石一を救わず、利用すると言う矛盾に。
村の人間を救う事と引き換えに、この街でいくつもの罪を重ねても良い、と言う欺瞞に満ちた行動に。
そして――自らには相応しくないと考えていたサーヴァント、城石一が、その実誰よりもわがままで、そして宮田に負けず劣らずの心の闇を抱えた、互いに相応しいパートナーであると言う事実に。

 宮田司郎。彼こそが闇と影との中で生きるに相応しい人物であると言う事実に、本人だけが気付いていないのであった。





【クラス】

アサシン

【真名】

城石一@殺し屋イチ

【ステータス】

筋力B+ 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運E- 宝具C

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。

【保有スキル】

正体隠蔽:C+
サーヴァントとしての正体を隠し、サーヴァントとして認識されにくくなる。
自身をただの人間、NPCであると誤認させる事が出来、アサシンの場合、かなり怪しい挙動を見せても、サーヴァントだと割れる事はない。
アサシンは生前、歌舞伎町でも特に狂暴だったヤクザの組を壊滅させたヒットマンであり、その正体はほぼ最後の方まで露見されなかった。

怯懦:A(-)
自身の臆病な性情。平時のアサシンは非常に気が弱く、ペコペコとしており、謝るのも早い気弱な男である。
この状態では普段の戦闘能力を発揮出来ず、威圧や精神攻撃にも特段弱い。
デメリットスキルであるが、アサシンの場合は正体隠蔽スキルの性能向上にも買っている為、一概に外れのスキルとは言えない。
宝具発動時にはこのスキルは消滅する

精神汚染:E(A+)
アサシンは一般常識も持っているし、日常会話にも何ら支障はない一見したら健常人であるが、時々現実と妄想の区別がつかなくなる。
宝具発動時はカッコ内のスキルランクに修正される。

【宝具】

『聖人だけが持つ矛盾(愛のない暴力)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:自身
アサシンが攻撃を受ける、過去のトラウマを揺り動かされる、マインドコントロールに近しい状態に入る、強い精神攻撃を受ける、
これらの内どれかを満たす事で発動する宝具。他人からのキーワードが契機となる事もある。
発動するとアサシンは一時的な錯乱、トランス状態に入り、相手を思いやる心を一切なくしてしまい、100%の暴力を振るう事が出来る。
妄想世界への没入が中核となる宝具で、これによりスキルの精神汚染がカッコ内のそれに修正。
かつ、怯懦スキルの消失、そして、Bランク相当の勇猛と狂化スキルを獲得し、幸運と魔力を除く全てのステータスがワンランクアップする。
自分自身の妄想しか見えていない為に、精神干渉をランク問わず無効化する事が出来、令呪による強制命令も受け付けなくなる。
嘗て壊滅させた垣原組の組長であり、弩級のマゾヒストかつ人格破綻者である垣原雅雄を以ってしても、本物の変態、
聖人(セイント)に近い人格と言わせしめた程、アサシンの精神は、歪んだ状態で固定されている。


229 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 22:00:44 a9RsVEa.0

【weapon】

特殊スーツ:
生前のアサシンが、ヤクザの暗殺時に着込んでいた特殊スーツ。
アサシンをマインドコントロールしていた張本人である、『ジジイ』と呼ばれる男性の提供品。
ダウンヒル用の防護スーツに似たデザインをしており、所々に取り付けられたプロテクターには、高度な防弾加工が施されている。
背面のプロテクターには『1』と言う数字がプリントされている。

刃仕込みの靴:
靴先や踵部分を金属でコーティングされた特殊な靴。
ピンを引き抜いた状態で靴先に一定の強さの衝撃を込めると、踵から鋭い刃が飛び出す仕組みになっている。
これを利用した蹴り抜きは、人体を容易く切断、腕を斬り落とし首を刎ね飛ばす程。

超人的脚力:
アサシンは生前空手を学んでいたが、その修練の成果か、或いは生まれ持った素質かは知らないが、一般人を遥かに超える程の脚力を持つ。
視認困難な速度の蹴りを持ち、10時間以上ぶっ通しでスポーツバイクを漕いでも平然としている程。
前述の靴の力も合わせて活用すると、これ以上とない暗殺の道具に早変わり。鉄の棒や金属製のドア、コンクリ壁を容易く切断する程の威力を秘める。

【人物背景】

地方の板金工場に勤務する、22歳の男性。それが彼、城石一、通称『イチ』である。
細身で気弱な青年であるが、過去に空手を学んでおり、生まれ持って物かは不明だが、極めて強壮な脚力を持つ。
如何にも気の弱そうな外見をしているが、強くなりたいと言う執念には異常な執念があり、毎日毎日身体を鍛え上げており、その脚力は常に向上している。
高校の頃にいじめを受けていたと言う過去を持ち、そのトラウマをジジイと呼ばれる初老の男性に利用されてしまう。
結果、対象の人物が過去に自分を虐めたとされる人物、或いはジジイが刷り込みによって生み出した架空の人物と重なった時、
トランス状態となって発作的に殺害する殺人マシーン変貌。これを利用され、イチは1つのヤクザの組を壊滅させる(過去にその組の構成員以外のヤクザを殺したかは不明)
一度相手をいじめっこと思い込むと子供のように泣きじゃくりながら襲い掛かり、周囲にいる全ての人間を殺し尽くす。
相手を殺す時には『勃起』するタチであり、暗殺を終えると、その場で自慰行為を行い、射精してからその場を後にする。

実は高校生の頃に同級生を殺した過去があり、それが原因で医療少年院に送られている。
過去のいじめが原因で、人が虐められているシーンに性的興奮を覚える潜在的間接的サディストに変貌しており、性根の部分はかなりのS。
決して好青年とは言い難い男で、気弱で、話していて人を苛々させる性格は、地である。

【サーヴァントとしての願い】

心を強く持ちたい

【基本戦術、方針、運用法】

世にも珍しい、宝具発動時限定とはいえ、狂化持ちのアサシンクラス。その使い勝手は大方の予想通り、かなり悪いと言わざるを得ない。
ステータス自体はアサシンとしては及第点であるが、気配遮断ランクが低い為、本来意図された運用法は厳しいものが有る。
精神攻撃を迂闊に放つと宝具が発動すると言う点は数少ない利点の1つ。また、実体化していても余程の事がない限りサーヴァントとして認識されない事も、利点。
兎に角此方がサーヴァントであると言う事を気取られず、機会を『待つ』と言う事が重要となるサーヴァントであろう。


230 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 22:00:55 a9RsVEa.0




【マスター】

宮田司郎@SIREN

【参加方法】

必要な物を探しに、宮田医院の旧病棟の物置を探していた所、シャブティを発見する

【マスターとしての願い】

村に根付いている時代錯誤も甚だしい邪教の迷信の元を断つ

【weapon】

【能力・技能】

羽生蛇村の暗部に生きる人間として、多少の暗殺術の心得はあるが、本職の暗殺者に比べれば子供騙しも良い方であろう。
むしろ宮田の武器は、医者としての立場、になるであろうか。

【人物背景】

羽生蛇村にある宮田医院の院長の地位を若くして継いだ人物。苗字こそ違うが、村の求導師と呼ばれる立場にある牧野慶とは双子の関係にある。
表向きは医者としての職務に従事しているか、実際は村の有力一族である神代、牧野家を支える立場にある人物で、
求導師が行うとされる重要な『儀式』を執り行う際の弊害となる人物を陰で始末する役割を課せられてきた。
そう言った仕事に長い事従事して来た為か、良く言えば冷静、悪く言えば感情が希薄な、人間的な暖かみのない人物になってしまった。
兄に対しては並々ならぬコンプレックスを抱いており、同じ顔をした男があれだけ村民から慕われているのに、何故自分は、と常々胸中で考えている。

今回の宮田は、儀式の前日、つまり、恋人である恩田美奈を弾みで殺害し、その死体を埋める際に『異変』に巻き込まれる前の宮田である。

【方針】

聖杯を手にする為に活動する、が、城石の性質がアレの為、先ずは医者としての立場を利用して情報を集める必要がある。


231 : 風音尋ねて踊りゃんせ ◆zzpohGTsas :2015/04/17(金) 22:01:06 a9RsVEa.0
投下を終了いたします


232 : ◆LjoEJeq7VA :2015/04/18(土) 13:24:17 BNh58iZw0
別企画に投下した作品の流用になりますが投下します


233 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/18(土) 13:26:22 BNh58iZw0


―――お前は既に犠牲によって生かされている





「…………裕也」


青年、葛葉紘汰はかつて手に掛けた友人が住んでいたアパートの部屋を訪れていた。
といってもそれは元いた世界の話であって、この世界の彼を紘汰が殺めたわけではない。
しかしこのゴッサムシティでも裕也は傷害事件に巻き込まれ亡くなっていた。
この偽りの世界でも裕也が故人となっている原因は自分にあると紘汰は解釈していた。


「遅くなってごめんな。記憶戻ってたんだけど、中々ここに来る踏ん切りがつかなくて」


今は空き部屋になった一室の花瓶になけなしの貯金を崩して買った花を供えた。
今日ここに来たのは、悩んだ末に出した答えを伝えるためだった。


「裕也、俺……戦うよ」


喉元から絞り出した声音は紘汰の悩みの深さを物語っていた。
その手には本来裕也が使うはずだった、始まりの切っ掛けとなった戦極ドライバーが握られていた。
これを手にした時から運命は動きだし、そして狂いはじめた。


「大人になって変身するっていうのはさ、何もこんな力に頼る形じゃなくても良かったんだ。
皆で馬鹿やって、踊って、そんでいつか子供でいられなくなって少しずつ大人になる。
そういう平和で普通の未来があれば、きっとそれで良かったんだよ」


失って初めてわかる、という言葉があるがまさにその通りだ。
戦い続けてもがき続けた今だからこそかつての日常がどれだけ大切だったか実感できる。
もう取り戻せない時間と命を取り戻すたった一つの方法―――それが聖杯。


「きっと、この道は間違ってるんだと思う。
だけど今まで出してしまった沢山の犠牲を全部無かったことにできるかもしれないんだ。
もちろん他のマスターも皆生き返らせて、そんな冗談みたいなハッピーエンドを掴めるなら……俺は」


学の無い紘汰には複雑なロジックはわからない。
それでも死というものを無かったことにする、という行為がおかしなことだというのは感覚的に理解できる。
しかし、おかしなことを願ってはいけないのだろうか。
自然の理に反することでも叶えられるからこその聖杯ではないのか。


「……戦う。戦って戦って、最後に聖杯を手に入れる。手に入れなくちゃいけない。
それが力を手に入れて過ちを犯した俺なりの責任の取り方だと思うから。
だから…もし俺を許してくれるなら、どうか見守っててくれ。
この聖杯戦争をアーマードライダー鎧武の最後のステージにしてみせる」


最後に墓参りをするように手を合わせ、荷物を持ってアパートの管理人に礼を言って立ち去った。
そんな紘汰の前に、何もない場所からゆらりと現れたのは彼のサーヴァントだった。
山吹色の道着を着た、顔に傷のある男だった。


「ごめん、何か待たせちゃったな」
「いいさ、これから人を殺そうっていうんだ。
平気でいられないのは悪いことじゃないさ」


234 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/18(土) 13:26:56 BNh58iZw0


クラスをファイター、真名をヤムチャというこの男は召喚された時から紘汰に対して親身に接してくれた。
紘汰にとっては今まで抱えていた事情全てを相談できる兄貴分のような存在になっていた。


「しかし、書置きぐらい残しておいた方が良かったんじゃないのか?」
「いいんだ、姉ちゃんは巻き込みたくないし、俺が何書いても嘘だってバレそうだしな」


ここに来る直前、紘汰は自宅を出て寝袋や食料品などを購入していた。
以前ユグドラシルに姉を人質にされかけた経験から聖杯戦争に巻き込まないために家を出ることにしたのだ。
NPCであろうと紘汰にとっては紛れもなく姉なのだ。
飢えという問題も戦極ドライバーを着けておけば容易に解決できるし着けられない状況に備えていくらか保存のきく食料もあるので心配はない。
何よりこれからマスターとして過ごす中で普段通り姉と接する自信が全くない。


「ところでさ、あんたの願いって何なんだ?」


話題を変えるために今まで聞きそびれていたことを聞いてみることにした。
先ほどまで自分のことで精一杯だったこともありサーヴァントの願いを聞くのを忘れていたのだった。


「俺か?俺の願いは…ありきたりかもしれないがもう一度人生をやり直したい、かな。
恥ずかしいことに俺は途中で戦いを友達に丸投げして一線から退いてしまってな、それが心残りだったんだ。
だから今度は諦めずに修行して、少しでもそいつの力になってやりたいんだよ」


どうせ自分では孫悟空に追いつけないと諦めてしまったのはいつだっただろうか。
サイヤ人と地球人の違い、センスの差、師匠の差と言い訳はいくらでも思いつく。
しかし途中までは自分も悟空が到達した強さに遅れながらもついていくことはできていたのだ。
どこかで無理だと決めつけて投げ出してしまってはいなかったか、という心残りがファイターを聖杯戦争に呼んだのだ。


―――それに、俺だって一度は悟空に勝ちたいからな。


サーヴァントとして全盛期の肉体で召喚されたからか、とうに枯れたと思っていた闘争心が湧き上がる。
悟空に挑むということがどれほど無謀かは自分が一番よく知っている。
それでも、いやだからこそ乗り越えたいと願うのも武道家の性なのだろう。


235 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/18(土) 13:27:54 BNh58iZw0


「諦めずに、か……。じゃあやっぱり俺は諦めたってことなのかな?
犠牲と引き換えの希望なんて嘘っぱちで、ただの絶望だと思ってた。
でも俺は裕也を犠牲にして生き延びて、今も他を犠牲にして願いを叶えようとしてる」
「そうとも限らないんじゃないか?
お前は犠牲になった人の命を大事にしているからマスターになったんだろう?
死者を生き返らせようと思ったらそれこそ神様や聖杯にでも頼むしかないんだからな」
「だけど俺は……!」
「まあ聞けよ。俺達戦士は気を操って戦うんだが、不思議なことに相手の気が邪悪か清純かわかるのさ。
少なくともお前からは邪悪な気は全く感じない。お前の願いは邪なんかじゃないってことだ」


ファイターの気遣いを受けても尚紘汰の表情は曇ったままだった。
ふと名前も知らない白いアーマードライダーの男のことを思い出した。
あの男は聖杯という奇跡も無い中一体どれほど重い覚悟を背負っていたのだろうか。
自分が同じように犠牲を生み出す側に回ってはじめてあの男にも苦悩があったのではないかという考えに思い至った。


(そりゃ敵わないわけだよな……)


今ならわかる。白いアーマードライダーの強さの源泉は覚悟や責任感の重さに由来するものだったのだ。
だからこそシドなどとは比べものにならない実力を身に着けるに至ったのだろう。


「俺も強くならなくちゃな……」


そうだ、自分はもうこの道を選んだのだ。引き返すことなどできるわけがない。
途中で脱落することも許されない。最後に勝ち残るまで戦い続けるしかない。
戦わなければ生き残れないし、誰も救えないのだから。


(そういえば、サガラは聖杯戦争について何か知ってたのか?)


ゴッサムシティに来る直前、悩んでいた紘汰の前にDJサガラが現れシャブティの人形を渡していた。
もしシャブティが聖杯戦争への参加権だと知っていたなら、彼に対して怒ればいいのか感謝すればいいのか複雑な気分だ。


236 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/18(土) 13:28:59 BNh58iZw0



【クラス】 ファイター(エクストラクラス)

【真名】 ヤムチャ@ドラゴンボールZ

【属性】 秩序・善

【ステータス】

筋力 B 耐久 B 敏捷 B 魔力 E 幸運 D 宝具B

【クラス別スキル】
対魔力:D…魔術に対する抵抗力。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
亀仙流武術:A…武術の神・武天老師を開祖とする武術。
もっともその骨子は「よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む」。
基礎体力の向上を目的とする以外に決まった型というものはなく、弟子の自主性が重んじられる。
その流派の在り方から実体化して食事や睡眠を行う際、魔力の回復量がやや増大する。

舞空術:B…全身から気を放出して空を飛ぶ技術。このランクでは空中での高速戦闘が可能なレベルである。

気配感知:B…心を無にし精神を研ぎ澄まし、自然と一体化することで遠くの気を感じ取る技術。
広域の気配を感知しその大きさまで測れるが、スキルの性質上気配遮断スキルには対抗できない。

気配絶断:B…心を無にすることで己の存在を無にする技術。暗殺者としての技術である気配遮断とは似て非なるスキル。
気を絶っている間サーヴァントとしての気配を消し、魔力消費を極限まで抑える。
戦闘態勢に入った時点でこのスキルは全く機能しなくなる。

【宝具】
「かめはめ波」

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
気を両手に凝縮して放つ亀仙流の必殺技。ヤムチャだけでなく複数の戦士が身に着けた宝具の域に至った技。
使い手の実力によっては惑星すらも破壊するが聖杯戦争ではその最大出力に大幅な制限が設けられている。(ヤムチャ自身のステータスも同様であり、マスターの適性によってさらに低下している)
またマスターの紘汰から供給される魔力が少ないため全力での解放は困難である。
尚、どれだけレンジと捕捉数が広大でも強大な敵に対して使用される技であるため種別は対人宝具である。

【サーヴァントとしての願い】
もう一度人生をやり直したい。
ついでに聖杯戦争の中で強敵と戦ってみたい。


237 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/04/18(土) 13:29:57 BNh58iZw0


【マスター】 葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武

【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れ、犠牲になった人達(聖杯戦争のマスター含む)を生き返らせなければならない。

【weapon】
戦極ドライバー:アーマードライダーに変身するためのベルト。
イニシャライズ機能があり紘汰以外の人間は着けることさえできない。

オレンジロックシード:クラスAのロックシード。戦極ドライバーに嵌め込んで使うことによってオレンジアームズへ変身できる。
専用アームズは無双セイバーと連結できる太刀・大橙丸。

ゲネシスコア:戦極ドライバーの発展型であるゲネシスドライバーのコア部分。
戦極ドライバーに接続することで本来ゲネシスドライバーでしか使用できないエナジーロックシードが使用可能になる。

レモンエナジーロックシード:クラスSのロックシード。戦極ドライバーと接続したゲネシスコアに固定して使うことでジンバーレモンアームズへ変身できる。

ダンデライナー:ホバーバイク型のロックビークル。飛行機能と機体前方に機銃を備える。

サクラハリケーン:バイク型の試作型ロックビークル。速度を上げるとヘルヘイムの森への行き来が可能だが聖杯戦争では不可能になっている。

仮面ライダー鎧武・オレンジアームズ:紘汰が戦極ドライバーとオレンジロックシードを使い変身した姿。
システムの補助により視覚や聴覚、運動能力などが大幅に増大する。
前述の大橙丸と銃剣・無双セイバーを駆使した白兵戦を得意とする。
ただし科学兵器であるためそのままでは霊体であるサーヴァントにダメージを与えることはできない。

仮面ライダー鎧武・ジンバーレモンアームズ:戦極ドライバー、オレンジ及びレモンエナジーロックシード、ゲネシスコアの組み合わせで変身した鎧武の強化形態。
その性能はゲネシスドライバーを使って変身した新世代ライダーにも匹敵する。
遠近両用の弓、創世弓ソニックアローに加え無双セイバーも武器として使用可能。
オレンジアームズと同じく科学兵器であるためそのままでは霊体であるサーヴァントにダメージを与えることはできない。

この他にも紘汰は様々なロックシードを持っていたが聖杯戦争に召喚された際に紛失している。

【能力・技能】
常人離れした身体能力の持ち主でライダーとしての戦闘センスも非常に高い。
しかし戦闘力はその時の精神状態で振れ幅が激しく怒った時には凄まじい実力を発揮する一方戦いに迷いを抱いた時は低下してしまう。

【所持金】
貧困

【方針】
マスター、サーヴァント共に十分な戦闘力を持つものの搦め手、特にアサシンの奇襲に対してはやや脆い。
しかし最大の問題は紘汰の魔力供給量の乏しさであり気(魔力)を大量に使うファイターを支えきるのは難しい。
高い感知能力や機動力を活かして避けられる戦いは避けて魔力を温存するのがベストか。


238 : ◆LjoEJeq7VA :2015/04/18(土) 13:30:33 BNh58iZw0
投下終了です


239 : ◆GzXFQE279s :2015/04/18(土) 15:22:00 nAIVd.jc0
皆様投下乙です
私も投下します


240 : 駆紋戒斗&ランサー ◆GzXFQE279s :2015/04/18(土) 15:23:25 nAIVd.jc0
「ぐああっ!!」

兜を被り全身を鎧で覆った騎士が吹き飛ばされ地を転がった。
アーマードライダー・バロンこと、駆紋戒斗。
マスター候補としてゴッサムシティに呼ばれた彼は今まさに絶命の危機を迎えていた。

記憶を取り戻す前に勤務していた洋菓子店が魂喰いに訪れたあるマスターとサーヴァントに襲撃されたその時。
戒斗は全ての記憶を取り戻し、ロッカーに置いていた荷物から戦極ドライバーとバナナロックシードを取り出し敢然と敵サーヴァントに立ち向かった。

結果はこれこの通り。
サーヴァント相手にも押し負けないパワーを誇るアーマードライダーだが神秘の無い武器では霊体であるサーヴァントに歯が立たない。
立ち上がり挑みかかるも剣による一閃を受けついに変身を解除された。

「まだだ……!」
「いいや、ここまでだ」

サーヴァント―――恐らくはセイバー―――の剣先が戒斗の眼前に突きつけられる。
一秒先にある死を確信しても戒斗の眼は烈火の如く燃え滾っていた。

「まさかマスター候補の一人に当たるとはね。
サーヴァントを召喚されては面倒だ。セイバー、やれ」
「はい」


マスターの指示によってセイバーの剣は生身になった戒斗を切り裂く。
そのはずだった。

「これは―――!」


セイバーの破壊で生じた瓦礫の中から噴き出す青い光の奔流。
溢れだす魔力は瓦礫と犠牲になったNPCの死体を等しく吹き荒らす。
セイバーはその中から閃光のように駆ける人影を確かに見た。


戒斗を両断するはずだった剣は突如現れた人影の槍を迎え撃ち、甲高い金属音が数回に渡って打ち鳴らされた。
数回というのは常人が瞬きを一回する間に二人が五度以上刃を交えていたからだ。
目の前の敵のただならぬ力量を感じ取ったセイバーは一度マスターの下まで退き距離を取った。

「よう、あんたがオレのマスターってことで良いのか?
いきなりサーヴァントに襲われるとはついてねえな」
「サーヴァント…、お前が俺の…」

戒斗はそこで初めてサーヴァントを名乗る男をはっきりと視認した。
青い頭髪に紅い瞳、髪と同じく青を基調にした軽装鎧から男が速さを武器にする戦士だと直感した。
何より目を引くのは神々しくも禍々しい、朱い長槍だ。
アームズウェポンやソニックアローが玩具のようにすら思える。
セイバーもそうだが元の世界で見てきたどんな存在よりも強大で鮮烈な、絶対的な力の塊だった。

「いや、逆についてるのか?サーヴァントに襲われたにしちゃ随分傷も少ないしな。
ま、ここはとりあえずオレに任せて休んでろ」

何でもないように語った直後、青い男とセイバーの姿が掻き消えた。
違う、二人は文字通り目にも映らぬ速さで互いの距離をゼロにしたのだ。


241 : 駆紋戒斗&ランサー ◆GzXFQE279s :2015/04/18(土) 15:24:14 nAIVd.jc0

「何だ…この戦いは……」

驚愕の言葉は戒斗かセイバーのマスターか、どちらのものだったのか。
たった二人の人間が成しているとは考えられない戦いがそこにはあった。


青い男が槍を一突きしたかと思えばセイバーが受けたと思しき金属音が三回聞こえた。
セイバーが突貫したかと思えば青い男が背後に回り振り下ろしの一撃を加え、セイバーが当然のように背面からこれを受ける。
セイバーが超人的な脚力で数十メートル跳躍し、着地した瞬間青い男が追いついた。
セイバーとの距離を詰めた踏み込みだけでソニックブームが生じコンクリートの地面が割れて吹き飛んだ。


―――何よりも、剣と槍を交える二人の英霊は笑っていた。


「ほとんど魔力のない者がマスターでそれだけの実力とは恐れ入る。
できるなら互いに名乗りを上げたいところなのだが……」
「同感だが、それをやったら聖杯戦争にならないわな。
サーヴァントが戦場で真名を明かすとなれば、手は一つしかないだろうさ」

再び両者が距離を開けたと同時。
物理現象として感じられるほどに空気が凍り、張り詰めるのがわかる。
二人のサーヴァントは己の半身―――すなわち宝具を開帳しようとしていた。
その空気を破ったのはセイバーのマスターだった。

「いや、ここまでだセイバー。
帰還するぞ、ここで衆目に手の内を見せるのは早すぎる」
「……はっ。すまないランサー、この決着はいずれ必ず」

言うが早いか剣を収めたセイバーはマスターを抱えビルからビルへと跳躍し消えて行った。
残されたランサーと呼ばれた男は「物足りない」と書いてあるような表情で戒斗へと向き直った。

「追わないのか?」
「ん?そりゃあ追いたいに決まってるがマスターを放ってってわけにもいかねえだろ。
その様子じゃまだほとんど何もわかってなさそうだしな」
「確かにな。どういうことか説明してもらおうか」
「ああ、そいつは構わんがとりあえずここを離れた方が良い。
野次馬やら何やらが集まってきてる」

公衆の面前では聖杯戦争の説明も何もあったものではない。
戒斗もここは素直に従い瓦礫の中からゲネシスドライバーやロックシードを含めた荷物を取り出しその場を後にした。





◆◆◆




「聖杯という願望器を巡り、サーヴァントを召喚して行う二人一組の殺し合いか。
ふん、なるほどな。それで貴様が俺のサーヴァント、ランサーというわけか」
「おう。しかし何も知らなかったにしちゃ随分落ち着いているな」
「ここがどこであろうと、敵が何であろうと俺のやることは変わらない。
むしろ、最も強い者だけが生き残り弱い者が死ぬこの世界はわかりやすくて良い」

アパートの自宅でランサーから聖杯戦争について説明された戒斗は至極冷静に事態を受け止めていた。
戦極凌馬の趣味でゲネシスドライバーの入ったスーツケースに同梱されていた人形がシャブティだったことに多少の驚きはあったが。

「聖杯とやらに辿り着けば誰にも負けない最強の力が手に入る。
それにお前達サーヴァントの強さはオーバーロードのような種族の力に頼ったものではなく人の磨き上げた技だ。
聖杯戦争は俺の知らなかった種類の強さに満ち溢れている」
「そうかい。ま、やる気があるのは結構だ」

勝利への意欲に燃える戒斗の瞳はランサーの生前にもそう見なかったほどの意志の強さを感じさせる。
例えどのような存在であろうとその意志を捻じ曲げることは敵うまい、と確信できるほどだ。
だが、そこには単なる野心とも違う一種の危うさがあるように見えた。
方向性を誤れば、世界さえも滅ぼしてしまいそうな―――そういった危険性があるように思えてならないのだ。
我ながら馬鹿げていると思うが、念のためこの男からはあまり目を離さない方が良いかもしれない。


「早速作戦を詰めるぞ。一秒でも時間を無駄にするわけにはいかん」
(ま、なるべくこいつが道を踏み外さんようにオレが気をつけていればいい話か。
それにこいつはどこまででも強くなる可能性を持っている。
肉体の強さはいくらでも補いがつくが心はそうはいかん。
こいつがどこまで行けるか見届けるのも悪くない)


242 : 駆紋戒斗&ランサー ◆GzXFQE279s :2015/04/18(土) 15:24:58 nAIVd.jc0
【クラス】
ランサー

【真名】
クー・フーリン@Fate/stay night

【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:E 宝具:B

【属性】
秩序・中庸 

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。  

ルーン:B
北欧の魔術刻印・ルーンの所持。

矢よけの加護:B
飛び道具に対する防御。狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。 

【宝具】

『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜4 最大捕捉:1人
突けば必ず相手の心臓を貫く呪いの槍。ゲイボルクによる必殺の一刺。
その正体は、槍が相手の心臓に命中したという結果の後に槍を相手に放つという原因を導く、因果の逆転である。
ゲイボルクを回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、ゲイボルクの発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。
幸運のランクがA以上で稀に外れるとされるがBランクでも高ランクの直感スキルとの組み合わせで回避できる場合がある。

『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:5〜40 最大捕捉:50人
ゲイボルクの呪いを最大限に開放し、渾身の力を以って投擲する特殊使用宝具。
もともとゲイボルクは投げ槍であり、使用法はこちらが正しい。
死棘の槍と違い、こちらは心臓命中より破壊力を重視し、一投で一部隊を吹き飛ばす。

【人物背景】

アイルランドの大英雄。
アルスター神話で登場する。
光の神ルーとアルスターの王コノールの娘デヒテラとの間に
産まれた半神半人の英雄。
幼名をセタンタと言い、幼い頃から
「この子は英雄として生きる」と予言されていた。
ある日のこと、クー・フーリンはドルイドのカスバドが、今日騎士になるものはエリンに長く伝えられる英雄となるが、
その生涯は短いものとなるという予言をしたのを聞き、騎士となるべく王の元へと向かった。
騎士になるにはまだ早いと渋る王に対して、クー・フーリンは槍をへし折り、剣をへし曲げ、チャリオットを踏み壊して自身の力を見せつける。
観念した王はクー・フーリンが騎士になるのを許し、彼の力にも耐えられる武器とチャリオットを与えた。
クー・フーリンは、フォルガルの娘エメルに求婚するが断られたため、影の国を訪れ女王スカアハの下で修行を行う。
この時共に修行を行った仲間に、コノートのフェルディアがおり、彼とクー・フーリンは親友となる。
修行中、影の国ではスカアハと対立するアイフェ(一説には双子の姉妹)との間に戦争が起こった。
スカアハはクー・フーリンが戦場に出ることのないように睡眠薬を与えるが、クー・フーリンには効き目が薄く彼を止めることができなかった。
戦いは膠着し、アイフェは一騎打ちで決着を付けようとするがスカアハは負傷していたため、代わりにクー・フーリンがアイフェと一騎打ちを行い生け捕りにした。
スカアハの下には彼以外にも修行を行う仲間がいたが、その中でただ一人ゲイボルグを授かる。
その後、帰国したクー・フーリンだが、フォルガルはエメルとの結婚を許さなかったので、フォルガルを打倒してエメルを娶った。
クーリーの牛争いに端を発するコノートの女王メイヴとの戦いで、修業時代の親友フェルディアをゲイボルクで殺してしまう(また、彼を訪ねてきた息子コンラをやはりゲイボルクで殺してしまう)。
ゲッシュを破り半身が痺れたところを敵に奪われたゲイボルクに刺し貫かれて命を落とすが、
その際、こぼれ落ちた内臓を水で洗って腹におさめ、石柱に己の体を縛りつけ、最後まで倒れることがなかったという。

【サーヴァントとしての願い】
強者との死力を尽くした戦いを楽しむ。
また、戒斗をサポートしつつ彼が道を踏み外さないよう見守る。


243 : 駆紋戒斗&ランサー ◆GzXFQE279s :2015/04/18(土) 15:25:40 nAIVd.jc0
【マスター】
駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武
(参戦時期はゲネシスドライバー受領後から沢芽市壊滅までの間)

【マスターとしての願い】
聖杯戦争に勝利し、何者にも負けない力を手に入れる。

【weapon】
戦極ドライバー…アーマードライダー・バロンへの変身ベルト。
認証機能により戒斗以外の人間には使えない。

バナナロックシード…バナナアームズへの変身に必要なクラスAのロックシード。
専用アームズは西洋風のランス・バナスピアー。

マンゴーロックシード…マンゴーアームズへの変身に必要なクラスAのロックシード。
専用アームズは重量のあるメイス・マンゴパニッシャー。

ゲネシスドライバー…クラスSのエナジーロックシードに対応する新型変身ベルト。
戒斗は戦極凌馬から対オーバーロードインベスへの切り札としてこのベルトを受領した。

レモンエナジーロックシード…レモンエナジーアームズへの変身に必要なクラスSのロックシード。
専用アームズの代わりに創世弓ソニックアローを用いて戦う。
戒斗は戦闘中に戦極ドライバーからゲネシスドライバーに着け替える戦術を使う。

ローズアタッカー…バイク型のロックビークル。
速度を上げることでヘルヘイムの森への行き来が可能だが本聖杯戦争では不可能になっている。

ダンデライナー…機銃と飛行能力を備えたホバーバイク型ロックビークル。

【能力・技能】
作中では敗戦や苦戦が多いが多くの実戦を通じてライダーとして高い力量を身に着けるに至っている。
孤高を良しとする性格とは裏腹に他のライダーのアシストやチームプレー、戦闘指揮も難なくこなす。
しかし何より特筆すべきはどんな強敵・難敵にも決して屈することなく敗れても何度でも立ち上がる精神力である。
また菓子作りが得意で本職のパティシエさながらにフルーツタルトを作れる。

【人物背景】
沢芽市のダンスチーム・バロンの元リーダー。20歳。
幼少期に大企業・ユグドラシルコーポレーションによって実家の町工場を潰されており、「弱肉強食」という概念を強く意識している。
無愛想で威圧的な性格の持ち主で、たとえどんな苦境であっても屈することのない強靭な精神力を持つ。
自らの中にある「強さ」と「弱さ」という哲学に従って行動し、「強者」と認めたものであればたとえ自分と考えを違えるものであっても強く評価して力を貸し、逆に「弱者」であるなら強い嫌悪感を露わにして接する。
この強弱は社会的権力を度外視したもので、作中では「優しさ」や「屈しないこと」を「強さ」、「偽り」や「卑怯」を「弱さ」としており、また優しさと同居できない力に対しても怒りを示す。
その態度に反発的な感情を抱く者は少なくない一方で、強い信頼を向ける者も多い。
本人もザックや舞の精神を高く評価しており、紘汰に対しても決して相容れない意見を持つと知りながら「邪魔者であるが敵ではない」と、徹底して自らの揺るがぬ価値観に生きている人間として描かれている。
内心では自らを強いと思っておらず、「弱さという痛み」を抱えながら常に何かと戦っている不器用な男で、時に容赦のない言葉を浴びせることもあるが、他人に対して素直でない優しさを持つ青年。
作中終盤ではオーバーロードインベスと化し「弱者が一方的に虐げられる」既存の社会の破壊と新世界の創造に向けて動き出すも紘汰に阻止された。

【方針】
あまりにも姑息な行為は良しとしないが同盟などルールに反しない範疇での策略は迷わず行う。
堅実に戦えば独力での優勝も夢ではないチームなのだが戒斗の格上にも果敢に挑む気質が災いする可能性は非常に高い。
良くも悪くも戦闘力と闘争心に溢れた組み合わせである。


244 : ◆GzXFQE279s :2015/04/18(土) 15:26:38 nAIVd.jc0
これにて投下を終了します


245 : ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 17:57:50 /M9VQFPg0
投下いたします


246 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 17:58:46 /M9VQFPg0

1:

「実に素晴らしい手腕だったよ、君」

 黒檀のプレジデントデスク越しに、体格の良い白人男性が、実に機嫌の良さそうな笑みを浮かべてそう言った。
見るからに上機嫌と言うような体である。この場に彼だけを取り残したら、最高級のウール絨毯が敷き詰められたこの部屋で、1人スキップでもし始めそうである。

「恐縮です、局長」

 局長と呼ばれる男性の目線の先に居る、首にクラバットを巻き、ワインレッドのスーツを身につけた男が、恭しく一礼する。
貴族然服装をした、実にきざったらしい男性であるが、その恰好が妙に様になっているのが、また奇妙だった。

「確か向こうでは20歳で検事になったそうじゃないか。自由の国アメリカでも、この年齢で検事になるのは大変な事だよ。
君は、日本の検察界における麒麟児として、法曹の世界で見られていたのではないかね」

「いえ、私は少しだけ記憶力が人より優れていたものですから……知識の詰め込みが得意だっただけの事。私が今のような検事になれたのは、私の師の存在があってこそです」

 「日本人は謙遜が上手いなぁ」、と局長は笑い飛ばした。つられてワインレッドのスーツの男も微笑みを浮かべる。しかしスーツの男の胸中は複雑であった。
スーツの男はどちらかと言えば、自らに検事の何たるかを叩き込んだあの男の事など、もう2度と思い出したくない程トラウマだった。
だがしかし、どんなにあの男の事を嫌悪しようが、忌避しようが、結局自分が今検事と言う身分で活躍出来ているのは、ひとえにその男が検事として、
そして指導力が優れていた、と言う事実が確かにあるのである。このような場で話のタネになれる事が、せめてもの幸い、と言うものなのだろうか。

「それにしても、同じ師匠に師事した検事が日本から研修にやって来ると聞いた時には、どんな恐ろしい人物がやって来るものかとハラハラしたが……。
君のような人物ならば、私も歓迎だよ。どうだね、此処で働いてみないかね。待遇は向こうよりも良くしてあげるが」

「ハハハ、お誘いの言葉は嬉しいのですが、私はあちらの方が性に合ってるのですよ、局長。それにゴッサムの検事局には、私の姉弟子がいる筈。
彼女を抑えている限りは、十分局長の評価は約束されておりますよ」

 と、スーツの男はやんわりと局長のヘッドハントを断るが、局長はそれに対して少しだけ渋面を作る。
どうもスカウトを断られた事よりも、スーツの男が言った、冥と言う人物に対しての表情のようだ。

「うーむ……冥くんの事か。彼女も確かに優秀なのだが、いかんせん……」

「いかんせん……?」

「……法の庭で鞭はいただけないんだよなぁ」

「御尤もです」

 スーツの男は苦笑いを浮かべた。あのじゃじゃ馬は、この地でも相変わらずであったようだ。

「兎に角、今日は御苦労だったな御剣くん。下るであろう評価を、楽しみにしていたまえ」

「ありがたい事ですな」

「下がっても構わんぞ、ゴッサム地方検事局にいたいと言うのならば、部屋に残っても構わんがね」

「いえ、失礼させて貰います」

 ハハ、とゴッサムの地方検事局長は、乾いた笑いを浮かべるが、瞳は余り笑っていなかった。
デカい魚を釣り上げかけ、あと一歩と言う所で逃してしまった釣り人のような表情で、局長は、日本から海外研修にやって来たエリート検事、御剣怜侍の退室を見送った。

 退室しドアを閉めてから、ふぅ、と一息つく御剣。
あそこまで解りやすいヘッドハントを受けるとは思ってもみなかった。御剣も人間であるから、高い給金にはそれなりの魅力を感じる。
しかし、故郷である日本を離れてまでは……、と言うのが、彼の偽らざる本音でもあった。それに、このゴッサムでヘッドハントをされたとしても、意味がないのである。
そろそろ検事局を退社する時間だ。今日は1件、携わっていた裁判案件を解決させてやや疲労が溜まっている。帰って少し、身体を休める必要があるだろう。
そう思い歩きだし、十m程進んだ、その時だった。真正面から、とてもよく見知った女性が、此方へと近づいてきた。

「局長から随分と気に入られたのではなくて、レイジ」


247 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 17:59:03 /M9VQFPg0

 ジュラルミンのような銀髪をした、如何にもタカ派、と言う風な装いの美女が、棘を含んだ声音でそう言った。
狩魔冥。40年間と言う驚異的なまでの無敗記録を誇る、伝説の天才検事、狩魔豪を父に持つ、紛う事なき天才検事。
そして、御剣の妹弟子――冥の方は断固として自分の方が姉弟子であると譲らない――でもある女性である。

「熱烈なアプローチを受けて来た所だよ。断ったが」

「あら、このゴッサムで活躍するのが怖かったのかしら、レイジ?」

「君の検事局での居場所を奪うのが忍びなかっただけだ、メイ」

 優越感溢れる笑みを浮かべていた冥の顔が、途端に不機嫌そうなそれに変わる。
そして次の瞬間、懐からビニール製の一本鞭を取り出し、ピシィッ、と床を強かに打ち付けた。
床を叩いた時の音と言い、見事なまでの鞭捌き、と言うものだった。

「被告はゴッサムの中堅マフィアの幹部達、そして弁護するのはそのマフィア達の顧問弁護士。馬鹿が見たって解る、黒い弁護士よ。
社会のゴミから有罪を勝ち取る気分はどう? 胸が空くような気分じゃないかしら、レイジ?」

「弁護団の悔しそうな顔と被告側の怒号が今でも思い出せる。あれは良いものだったな、日本では味わえない」

 日本ではどちらかと言うと、被告の側にも少しばかり同情の余地がある者を相手にする裁判の方が多く、有罪を勝ち取った御剣でも、
本当にあれで良かったのかと思う事は多々あったが、ここゴッサムでは麻薬を売買だったり殺人や強盗だったりと、
法の素人が見ても有罪確定の犯罪者を相手に裁判をする事が殆どだ。こう言う相手には御剣も心置きなく、全力で有罪を勝ち取りに行ける。
そうして勝ち取った有罪判決は、何とも快哉を叫びたくなるような気分になるのだ。被害者の権利を守ると言う検事の仕事の意味を実感できる瞬間であった。

「……貴方が此処に研修にやって来ると聞いた時には、驚くと同時に、内心喜んだわ。姉弟子としての力を見せつけてやれるのだから」

「私としてはメイが此処にいると聞いて憂鬱だったよ。こんな所でも鞭に打たれると思うと気分が晴れない」

「歳は貴方の方が上だけど、此処では私の方が先輩よ。ありがたく鞭を頂戴しておく事ね」

 ここでは後輩は冥に鞭で打たれる事が当たり前らしい。何とも酷い職場もあったものである。

「アメリカでの初の裁判を勝利で飾れた事は姉弟子として誇らしく思うわ。だけれども、アメリカは私のホームグラウンド。日本の常識は通用しないわ。
このゴッサムで、どちらが検事として優れているか、そして、私の検事としての実力をとくと目にしておく事ね!!」

 再び、床を鞭で一叩きした後で、ツカツカと御剣の横を冥は通り過ぎて行く。
心なしか、イキイキとしているように御剣には思えた。このゴッサムに見知った顔、しかも同じ師を持つ人物がやって来たのである。
ライバルとして認識し、張り合いがあると思うのは無理からぬ事かも知れない。

 このゴッサムでの狩魔冥は本当に、御剣怜侍のよく知る彼女そのものだった。
最後に出会った時と、些かもその峻烈さは変わっていない。だからこそ、御剣には信じられなかった。

 あの狩魔冥が本物の狩魔冥ではなく、ただのNPCである、と言う事実が。





2:


248 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 18:00:14 /M9VQFPg0

 無二の親友である成歩堂龍一の月給を24ヵ月分は貯めなければ到底買えない程の値段の真っ赤なスポーツカーを運転し、御剣は夕のゴッサムの都会を走っていた。
総生産額で言えば東京の方が遥かに上であり、その面だけで見るならばあちらの方が都会であろう。
しかしゴッサムシティーの、近未来的なデザインの高層ビルが立ち並び、幾億ものネオンが光彩陸離と乱舞するその夜景はまた、格別のものがある。
見知った東京の光景よりも、此処ゴッサムの方がより進んだ都会に見えるのは、御剣が長い事東京で過ごしていたせいであるからだろうか?
アメリカ暮らしの長い冥には、この光景が当たり前なのだろうか。

 ゴッサムシティなる都市は、アメリカ合衆国には存在しない。
過去本当に、アメリカに海外研修に行った事のある御剣は、アメリカの地理にはそれなりに明るい。
無論、極めてマイナーな田舎レベルの町は流石の御剣も知識の範囲外であるが、ゴッサム程進んだ都市を御剣が知らない訳がない。
……尤も、そんな推理を巡らせるまでもなく、御剣はこの街が偽りのそれであり、何故自分がこんな所にいるのか、と言う事もしっかりと理解していた。
簡単である脳に刻み込まれているのである。この街の情報、そして、聖杯戦争についての事柄が。

 国内で起ったある殺人事件を、御剣が担当していた時の事。
相棒であり腐れ縁とも言うべき糸鋸圭介刑事が、奇妙な人形を殺害現場から発見し、御剣に対してそれを渡して来た事があった。
明らかに日本でよく見られる様な和風のデザインでなく、外国の土産屋で売っていそうな風のデザインをしていたその人形。
奇妙に思い調べてみると――御剣怜侍は、アメリカはゴッサムシティーへと転移させられていた。

 自らの本当の記憶を取り戻したのは、数日前の事だった。
日本からやって来た海外研修にやって来たエリート検事と言うロールを与えられた御剣は、その時は自分の行っている事に疑問を覚えず、担当事件の解決に当たっていた。
しかし何かが引っかかる。自分が担当していた事件は、別にあったのではないか。其処まで考えた瞬間、御剣は全てを思い出していた。自宅の執務室での事である。

 そこからの展開は、さして特筆する所はない。
混乱こそしたが、自分が取り組んでいたゴッサムでの案件を粛々と処理し、擁護の余地もない、冥に言わせれば社会のゴミに有罪判決を下させて。
結局この地でも、検事としての役割をただこなしていただけであった。

 海外研修の最中に住む事となっていると言う設定の、如何にもアメリカと言うか欧米風と言うか、兎に角豪華な一車庫付き一軒家の賃貸住宅に到着する御剣。
車庫にスポーツカーを入れ、玄関から自宅のなかに入る御剣。1人で住むには広すぎて、逆に不便になる程の大きな一軒家だ。
「真宵くんを案内したらはしゃぎそうだな……」と、ふと、元居た世界での知り合いの事を考える御剣。
この世界には成歩堂と真宵はいないだろう。アメリカ、しかもなにしおう犯罪都市で生活するNPCとしては、あの2名は明らかに不自然である。御剣は、そう考えていた。

 家の大きさに見合った広さのリビングへと足を運び、御剣は革製のソファへと腰を下ろした。 
ビジネスバッグから書類を取り出し、リラックスがてらにその書類に目を走らせる。それは、次に御剣が引き受ける裁判の参考書類であった。

「随分と働きますねぇ、御剣検事」

 何処からともなく、楽しむような声が聞こえてくる。声の方角から言って、御剣の前方方向からだった。
しかしそこには、80インチもある大きな液晶テレビと、クリスタルガラスの長テーブルがソファとテレビの間においてある以外には、何もない。
それこそ目に見えない幽霊が物を喋っていると解釈しなければ、声を発する者などいる筈がないのだ。
ただ御剣はそう言った現象には慣れているらしく、書類に目を通しながら、口を開いた。

「検事と言う仕事は暇じゃないのだよ、ランサー」

 御剣の言葉に呼応するように、彼の前方方向、より詳しく言えばガラスのテーブルを隔てた向こう側に、書き割りを変更するように1人の男が現れた。 
茶色の後ろ髪を長く伸ばした、眼鏡をかけた赤目の長身男性。かなり若々しい美形である。果たして誰が信じられよう、この男が三十路を超えた年齢であると言う事実を。
この男よりも老けている二十代の男性など、世に掃いて捨てる程存在しよう。此度の聖杯戦争に於いてランサーのクラスで召喚されたこの男。
真名を、ジェイド・カーティスと言うらしい。御剣には俄かに信じられない事であるが、彼のいた世界とは根本的に異なる世界の住人であると言う。


249 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 18:00:58 /M9VQFPg0

「ハハ、こう見えても国家の要職に携わっていた身ですから、法廷周りの忙しさは理解していますよ。ただ、貴方の場合は、働き過ぎですよ」

「そうだろうか」

 書類に目を通しながら御剣は言う。ジェイドには、目もくれなかった。

「聖杯戦争の参加者はNPC、貴方とは何の縁もない人間ですよ。少しばかり手を抜いて臨んでも良いと思いますが」

「ランサー。国家の要職に就いていた貴方には釈迦に説法と言うものかもしれないが、正式な法手続きを経て下された判決と言うものは、非常に重い意味を持つ」

「理解しております」

「弁護人は依頼人の利益の為に動き、依頼人の無実を証明する為にいる。対して検事は、被告人に有罪の立証し、被害者の溜飲を下げ、彼らの権利を守る為にいる。
行う仕事は全く違うが、共通して言える事がある。それは我々が、人の社会的な地位と、これからの人生を守る事も滅茶苦茶にする事も可能だと言う事だ」

「正式に下された判決と言うものは、基本的には正しいものとして扱われ、民衆もその判決は事実なのだろうなと認識する」

「その通り。だからこそ、我々は手を抜いてはならない。人はどうしても間違いを犯す生き物だ。正しいと思っていた事柄が実は間違っていたなどと言う事は良くある事。
だが、裁判でそれは許容できない。無罪であった人間を有罪にする、有罪の筈の人物を無罪にしてしまう。後からそれが間違いだと気付き、判決を撤回させても、
彼らが心に負った傷と、失った社会的な立場は、永久に取り戻せはしないのだ。我々は、責任の重大な仕事に就いているのだ。手を抜く事は、出来ないよ、ランサー」

 思い出すのは2年前、御剣に殺人の濡れ衣を着せようと画策した、灰根高太郎の事である。
御剣が検事を志す決定的な要因となったあのDL6号事件の被告人であり、ある時まで当該事件の犯人であると思われていた人物。
結局あの事件は解決し、真犯人も灰根ではない事は今となっては明らかな事なのだが、彼は1人の心無い弁護士による弁護を受け、心神喪失のフリをして無罪になれ、
と強要され、ありもしない濡れ衣を着せられた結果、家族を失い、社会的な地位も失ってしまった。
自分に罪を着せようとした灰根に対して怒りを覚えるのが普通の筋なのだろうが、御剣にはそれが出来ずにいた。
確かに怒れる所もあるのだが、灰根に対する同情の余地が其処にあるからだった。

 弁護士と検事が仕事を適当にやるだけで、此処までの禍根を残すと言う事実を、御剣は身を以て知っている。
だからこそ、例え呼び出された仮初の世界とは言え、与えられた役目が検事と言うそれであるのなら、御剣は全力でこれに打ち込む。
御剣怜侍は完璧をもってよしとするのだから。

「成程。御剣検事、確かに貴方の言う事は尤もです。人の命運を左右する職業の以上、生半な仕事は許されない。素晴らしいプロ意識だと思います」

 「ですが」、そう言ってジェイドは言葉を区切った。御剣はなおも書類の文面に目を走らせていた。

「それだけが本心ではないでしょう」

「何の事だろうか」

「あなたは聖杯戦争から逃げているのではないのですか?」

 ピクッ、と、御剣の身体が反応した。
尚も書類に目を通してはいるが、瞳は、其処に記された文字を追っていなかった。

「聡明な貴方に聖杯戦争についての概要を教える事はしません。ですがこれだけは、重要な事柄なので何度でも言います。聖杯戦争は戦争の名の通り、人が死にます。
そして、我々は生き残りたいのであれば少なくとも人を殺します。NPCだけじゃありませんよ、マスターもサーヴァントも、です」

 理知的な光の宿った赤色の瞳を御剣に向けながら、ジェイドは言葉を続ける。

「御剣検事。私には貴方が、直視したくない辛い現実から目を背けたいが為に、聖杯から与えられた仮初の役割に打ち込んでいるように見えてならない」

 重い沈黙が、リビングに流れる。ジェイドの方は御剣に目線を投げ掛け続け、御剣は書類に穴が空く程目を向け続ける。
その状態を破ったのは、御剣だった。ガラステーブルの上に書類を置き、胸中に渦巻く深い悩みを雄弁に語る大きなため息を吐いてから、口を開いた。


250 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 18:01:30 /M9VQFPg0

「私は弱い人間だろうか、ランサー」

「そんな事はないと思いますが」

「貴方の言う通りだ。私は人を殺すと言う現実を到底許容できなかったから、検事としての本分に打ち込む事で、それから逃げていた。検事の仕事をしている間だけ、辛い事実を忘れる事が出来た」

 心底苦々しい笑みを浮かべる御剣。

「検事が人を殺す事は出来んよ。全く……、君も弱いマスターに当たったものだな」

「私は人生のある時期まで、人が死ぬと言う悲しみと恐怖を、人を殺すと言う事にまつわる恐ろしさを、理解出来ていなかった時期がありました。
今となっては、流石に理解出来るようになりましたがね。兎に角私は、人生の中の決して少なくない時間を、愚かな人間として過ごしていた時がありました」

「ランサーが、か?」

「とてもそうは見えませんか? まぁ性格面以外は優秀ですから」

 肩を竦めて皮肉っぽく口にするジェイドだったが、何故だろう。
御剣にはそれが嫌味には聞こえず、寧ろ、ジェイド自身に対する果てない嘲りの念が、見え隠れしてならなかった。

「人を殺す事に忌避感を覚える貴方の方がむしろ普通なのですよ。検事の方が正しい。人を殺す事に慣れてしまう事の方が、異常だ」

「だが、聖杯戦争では人を殺さなければならない筈では……」

「どうも言い方を変える必要があるようだ。こう言った方が宜しいでしょうか、人を殺めねばならない覚悟が必要だ、と」

「覚悟」

 御剣がその言葉を反芻する。そう、とジェイドは相槌を打つ。

「正直な話、私は聖杯戦争については懐疑的です。万能の願望器と称される聖杯もそうですが、それに至るまでに人を殺して行かねばならないと言う蠱毒の如き方法にも。御剣検事の事です、其処までは考えていましょう」

「一応は、な」

「これは私の推測なのですが、聖杯と言うものはどんな形であれ存在し、願いを叶えると言う力もある程度事実に基づいているのでしょう」

「……私もそう思っている」

 でなければ、全く異なる世界の住民であるジェイドと御剣をこのゴッサムに呼び寄せる、と言うそれこそ神の御業のような力が納得いかない。
しかもジェイドは元居た世界では天寿を全うしていると言う。如何なる方法を用いてか、過去の人物をこの世界に呼び寄せているのだ。
過去の一件で霊媒を筆頭としたオカルトについて強い憎悪を抱き、それらをインチキと揶揄している御剣ではあるが、此処まで我が身を以て奇跡の一端を示されてしまえば、
納得せざるを得ない、と言うものであった。

「聖杯が存在するかもしれない……この事実が重要なのです。どのような人物が聖杯戦争に参加しているかは解りませんが、当然、
あるかも知れない聖杯に縋ってでも叶えたい願いの為に、人を殺しに掛かる者、最悪、思想や正義など関係なく、殺人を兎に角犯しに掛かる人物も、いないとは言い切れません」

「降りかかる火の粉は払わねばならない、と言う事か……?」

「その通り。本職の検事に説明するのは馬鹿馬鹿しいので行いませんが、正当防衛と言う奴ですよ」

「……正当防衛、か」

 舌の上でその言葉を転がす御剣。検事として勉強していた時も、見事検事になって以降も、幾度となく耳にして来た言葉である。

「私は貴方に非情になれとは言いませんし、殺人を進んで犯せとも言いません。ですが、殺しに掛かって来た相手に無抵抗でいる事は、よしなさい。何の意味もありません。
そう言った輩は殺す、と言う覚悟を持っておいた方が良いですよ、検事。……無論貴方が、自らの意思で聖杯戦争を戦う意思を見せ、積極的に殺しに行くと言うのであれば、止めません。私もマスターやサーヴァントを殺しに行きますがね」

 恐らくジェイドは本気で言っていた。顔つきがいつも浮かべているにこやかな笑みではなく、剣呑とした物を孕んだ表情に変化していた。
このランサーは恐らく決して少なくない数、いや寧ろ多くの人間をその手で殺めて来たのだろう。言葉の端々から感じられる重みと覚悟が違った。
張り詰めたような、緊張した沈黙が場を支配する事、十秒程。それだけ時間が経過してから、御剣が言った。


251 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 18:01:47 /M9VQFPg0

「……事件の真実に辿り着く事に必要なものと言うのは、1つには粘り強く計画的な捜査、1つには様々な人物との協力体制……そして最後が、決して考えるのを諦めない事だ」

 無言で御剣の言葉をジェイドは待つ。御剣は、更に言葉を続けた。

「私はこの聖杯戦争の真実を暴いて見せたい。時には他の参加者と同盟を組む事も、視野に入れている。
……こう言った過程で、我々を殺しに掛かる者が現れたのならば、しっかりと対処する。……それで良いだろうか?」

「検事がそれを望むのであれば、私はそれに応えるまでですよ」 

 真面目な表情から一転、あの人を食った様な不敵な笑みを浮かべて、ジェイドが返す。
ふっ、と、御剣もつられてふてぶてしい笑みを浮かべる。緊張がほぐれた瞬間だった。

「共に、聖杯戦争で足掻こうか。ランサー」

「えぇ、そう致しましょう。検事」

 言ってジェイドは霊体化を始め、部屋から姿を消す。
それを合図に、御剣はガラステーブルに置いていた参考書類に手を伸ばし、再びその書面の目線を走らせる。
書類に集中しながらも、御剣は、自分の下した判断について考えていた。それが正しいものであると、信じていたかった。

「(これで良かったのだろう……? 成歩堂。……父さん)」

 このゴッサムにはいないであろう人物の事を夢想する御剣。
1人は、灰根高太郎が仕掛けた冤罪と、師匠である狩魔豪の裏切りから自分を救ってくれた友人である、成歩堂龍一に。
そしてもう1人は、DL6号事件のせいで亡くなってしまったが、今でも御剣が尊敬している父親であり最高の法律家、御剣信。
あの2人は、御剣のこの折り合いを納得してくれるだろうか。余りにも理不尽が過ぎる聖杯戦争についての御剣が行う付き合い方、これを2人は良しとするのだろうか。

「(……貴方は私の判断をどう思うのでしょうかね……。ルーク)」

 同じような事を考えているのは、霊体化しているジェイドとて同じだった。
既に答えを決めているような態度で御剣と話してはいたが、内心ではジェイドも悩んでいた。
本人の意思とは関係なく、シャブティなる人形を手にしただけで殺し合いの舞台へと招聘される、と言う余りにも理不尽かつ不条理な聖杯戦争。
それに対してはどう向き合い、どう付き合うか、ジェイドとて解らずにいた。だから、ジェイドは妥協した。
殺しに掛かって来る者は応戦し、御剣の言うところの真実を求める人物と同盟を組み、聖杯戦争のシステムそのものに立ち向かう。
嘗て仲間達と共に世界の命運をかけてヴァン謡将と死闘を繰り広げた時の事と聖杯戦争が被って見える。但し、聖杯戦争の方がその意図はより悪辣なようだった。
この最低の街と、今のところ正義の欠片もない意図で行われそうな聖杯戦争に対するスタンスは、これが正しいのだろうかと。
今この場にはいない、ジェイド・カーティスの人生で最も影響を与えたあのレプリカの青年の事を、彼は考えていた。

 2名の真実へと向おうとする試みは、まだ始まったばかり。






【クラス】

ランサー

【真名】

ジェイド・カーティス@テイルズオブジアビス

【ステータス】

筋力C 耐久B 敏捷C 魔力A 幸運A 宝具B+

【属性】

秩序・悪

【クラススキル】

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】

魔術:A
第七音素を除く、第一〜第六音素全ての属性の譜術(魔術)を操る天才譜術師。
ランサーに唯一出来ない術の種類は、第七音素の素養を持たない為の、回復譜術のみである。

魔眼:B
大気中に満ちる大量の音素(魔力・霊力)を取り込む事で、譜術の威力を向上させる譜眼を両目に施している。
譜眼の制御装置である眼鏡を外すか、霊地や魔力に優れた土地で戦った場合、魔力ステータスと魔術ランクに大幅に有利な補正が掛かる。

魔力滞留:B
もと居た世界に於いて、フィールドオブフォニムスと呼ばれていた技術。
強い属性の音素(魔力)の攻撃・魔術を行う事で、一定の土地にその属性の音素で満たさせ、そのフィールド内で特定の攻撃或いは魔術を放った場合、
その攻撃や魔術の威力がワンランクアップ、或いは全く別の強力な技・術に変化する。
但し、フィールドオブフォニムスは相手にも利用される事があり、相手サーヴァントに逆手に取られる危険性は、十二分に認められる。

話術:C
言論にて人を動かせる才。 国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。


252 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 18:02:01 /M9VQFPg0

【宝具】

『不可視にされし微粒子の槍(コンタミネーション・スピア)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
物質同士がフォニムと元素に分離して融合する、コンタミネーション現象と呼ばれる現象を、ランサーが応用した技術が宝具となったもの。
ランサーは普段は槍を何処にも持っているように見えないが、これはコンタミネーション現象を利用し、槍を目に見えない程の微粒子状に分解させ、
右腕に融合させているからであり、必要な時になると瞬時に槍を取り出し、応戦する事が可能。

『惑星譜術』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大補足:1
元いた惑星オールドラントに於いて、創世歴と呼ばれる遥か昔の時代に勃発した譜術戦争の際に考案されたが、運用される前に戦争が終結してしまい、
歴史の流れの中に消えてしまったと言う譜術が、宝具となったもの。その内容は、『星の質量をそのまま任意の相手に激突させる』と言うもの。
攻撃に用いる譜術としては先ず間違いなく最高峰の譜術であり、生前ランサーはこの譜術を用いて、暴走した自らの恩師を葬っている。
発動には真名解放と令呪1区画の消費のみならず、マスターの魔力も多大に要する。
安定して惑星譜術を放つには、本来ならば惑星譜術の触媒となる6つの武器が必要かつ大規模な譜陣(魔術陣)が必要になり、生前ランサーがそれだけのお膳立てを整えて、
この術を発動した時ですら、未だ術の全容が明らかになっていない宝具の為本来の半分以下威力しか発揮出来なかった。
サーヴァントとして呼び出され、更にキャスタークラスでなくランサークラスでの召喚、かつ触媒もない状態では、
生前放った威力の更に半分の威力しか発揮出来ないが、対人宝具としてはそれでもなお、破格の威力を誇る。

【weapon】

フォニックランス:
人為的に生み出された大地であるホドに眠っていた、古代の譜術戦争時に用いられたという槍。業物ではあるが、宝具と呼ばれる程ではない。
普段は目に見えないが、前述の宝具により、右腕に微粒子状の姿になって融合している。

【人物背景】

天才的なまでの譜術博士であり譜術師としての技量と、見事なまでの槍術を操る、マルクト帝国軍第三師団の師団長。階級は大佐。
優秀な軍人を数多く輩出してきたカーティス家の養子。旧姓をバルフォアと呼ぶ。
その勇名は敵対国家であったキムラスカ王国の軍人、将軍だけでなく、世界中の譜術師や科学者達に知られている程
階級こそ大佐であるが、実際には将軍職に就ける程の実力と功績を持ち、かつ皇帝の幼馴染であると言う過去から、皇帝の懐刀とも呼ばれている。
輝かしい来歴の一方で、戦場で骸を漁るなどの噂から「死霊使い(ネクロマンサー)」の異名でキムラスカ・マルクトの両国から軽蔑されてもいた。
作中世界で多くの不幸と事件を生み出して来たフォミクリーの基本理論の開発者であり、ジェイド本人はこの装置を過去に開発した自分を殺してしまいたいと言う程嫌っていた。
人生のある時期まで、生物が死ぬと言う事象について感情が抱けなかった事があり、笑顔で魔物を殺すと言う側面があった。妹のネフリーをして、悪魔とすら言わせしめる程。
ある日、素養の無い第七音素を扱おうとした結果、恩師ネビリムを死に至らしめ、瀕死の彼女にフォミクリーを掛け、レプリカとして蘇生させようとしたが、
精神バランスの崩壊した不完全なレプリカ(モンスター)を生み出してしまう。
以降、幼馴染の1人であるディストと共にネビリムの復活を目指して研究を続けていたが、皇帝のピオニーの説得で研究を放棄。
これ以降生物のレプリカ開発を禁忌に設定。同時に、過去に行った全ての行いを悔いるのであった。

【サーヴァントとしての願い】

特に未練なく生きて来られたので、特にはなし。

【基本戦術、方針、運用法】

ランサーを名乗ってはいるが、実際は槍より魔術の方が得意である、と言うクラス詐欺も甚だしいサーヴァント。
しかし魔術の腕前は本物で、槍術の腕前自体も、実際にはそれ程低くはない。余程相手が優れた三騎士でなければ、それなりに対等に戦える。
痒い所にも手が届く、器用なサーヴァントであろう。話術も地味に小回りが利いている。
惑星譜術は言うまでもない、ジェイドの切り札である為、使用には慎重を期す必要がある。


253 : 御剣怜侍&ランサー ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 18:02:24 /M9VQFPg0





【マスター】

御剣怜侍@逆転裁判シリーズ

【参加方法】

殺人事件の現場に落ちていた、証拠品と思しき人形を糸鋸刑事が持って来た所、それがシャブティだった。

【マスターとしての願い】

聖杯戦争の真実と、その裏にいるであろう巨悪を暴く。

【weapon】

【能力・技能】

検事として優れた頭脳と推理力を誇る。が、身体能力については、特筆するべき所はない。

【人物背景】

優れた検事である狩魔豪に師事した、若干20歳と言う年齢で検事になった天才検事。
検事となって以降は一度も無罪判決を出した事がなく、間違いなく天才の誉れが高かった検事。
彼が初めて敗北を喫したのは、小学校時代の親友である成歩堂龍一と争った時である。
父親に、当時は高名な弁護士であった御剣信を持ち、ある時期まで父のような弁護士を目指そうと決意していた事があったが、
9歳の時に経験したDL6号事件と言う事件を切欠に父親を亡くし、それ以降、犯罪者と弁護士を憎むようになる。
DL6号事件での挫折から、嘗てのような正義感を失っていた御剣だったが、親友の成歩堂と出会い、彼と裁判上で争った事で心境に変化が見られ、
実際に殺人事件の被告人に御剣がなってしまい、成歩堂が彼の弁護を引き受けた結果、完全に心境が変わる。
以降は検事について深く考える為に検事業から身を引き、1年後に復帰。ある時期まで海外研修を行っていたが、友人の矢張から成歩堂の事故を聞き、緊急帰国。
彼の代わりに特別弁護を行い、事件解決後は、再びアメリカに戻り、1か月の研修を行うのだった。

今回の御剣は、逆転検事2の第5話と逆転裁判4において成歩堂が法曹の世界にいられなくなった事件が起こる間の時期からの参戦である。

【方針】

検事業を続けながら、他の参加者を探してみるか。


254 : ◆zzpohGTsas :2015/04/19(日) 18:02:38 /M9VQFPg0
投下を終了いたします


255 : ◆W1zAtfuZSU :2015/04/20(月) 23:35:29 2tzx2/ec0
投下します


256 : プロデューサー&シールダー ◆W1zAtfuZSU :2015/04/20(月) 23:36:15 2tzx2/ec0

「アイドルに、興味はありませんか」

差し出された紙片……名刺、を、じっと見つめる。
それがどういうものか知識としては知っていても、実際目にした経験はあまりない。
当然、自分に向けて渡されたことなど一度もない。驚き以上に新鮮な興味がなかったと言えば嘘になる。
その名刺には、こう書かれていた。

『株式会社346プロダクション シンデレラプロジェクト プロデューサー』

「つまり、あなたは……アイドル、十代の少女を導く立場である、と」
「当社に所属するアイドルは十代だけではありませんが、その通りです」

彼の身長は、かなり高い。並んで立てば自分より頭二つは上だろう。
何かスポーツでもやっているのか、がっしりとした体つきだ。
上下黒のスーツに身を包み、きっちりとネクタイを締めた模範的なビジネスマンスタイル。
髪色は黒、特に着飾ったりもしていないまじめ一本といった容姿。
目尻は鋭い三白眼。胸の内を読み取らせない無表情。貫禄を感じさせる重低音の声。
自分を召喚したマスターは、そんな人物だった。

「……それで、私にアイドルになれ、と?」
「もし、よろしければ、ですが」

念のため聞き返してみても答えは同じだった。つまりは、本心からの勧誘だろう。
彼女……盾のサーヴァント・シールダーは、ずっと差し出されたままの名刺を受け取るかどうか、悩む。

「……もう一度、説明が必要ですか? 私はサーヴァントとしてこの街に召喚されました。
 そしてあなたは私のマスターとして、聖杯戦争に挑まなければなりません」
「それは、理解しています。これが夢ではないということも」
「では、それを理解した上で、私にアイドルになれとおっしゃるのですか?」
「はい」

迷いなく頷かれ、ますます彼女は困惑した。
彼は決して愚鈍ではなさそうだ。社会に出て働いている年齢であれば、今の自分の立場を現実的に認識しているはずなのだが。
小さな喫茶店の片隅。運ばれてきたコーヒーはとっくに冷めてしまっている。
いつまでも悩んでいる時間はない。どう諭したものか、とシールダーが悩んでいると、


257 : プロデューサー&シールダー ◆W1zAtfuZSU :2015/04/20(月) 23:36:45 2tzx2/ec0

「あなたは、盾のサーヴァント。つまり、何かを守るのが専門、という認識で合っていますか?」
「ええ、その通りです」
「でしたら、私は……やはり、誰かを殺して願いを叶えるということは、できそうにありません。
 そこで、あなたには、他のマスターを守っていただきたいのです」

プロデューサーは、シールダーの眼をまっすぐ見つめてそう言った。

「この聖杯戦争が何のためにあるものなのか、私にはまだはっきりとわかってはいません。
 ですが……間違っている。それだけは、わかります」
「……続けてください」

一言一言を区切るように喋るマスターの眼には、やや分かり辛いが確かな決意が読み取れる。
気の迷いや思いつきではない。悪徳を否定する、人として好ましい感情がそこにはある。
シールダーは思い直す。彼は錯乱してなどいない。確固たる信念の元、シールダーと向かい合っている。

「私は仕事柄、小学生やあなたくらいの年齢の少女と関わる機会が多くあります。
 彼女たちはみな、夢を叶えるために毎日をひたむきに頑張っています。
 夢は……そう、夢は、自分の手で叶えなければ意味がないと。そう思うのです」
「聖杯に望む願いなどない……と?」
「はい」

やはり、迷いなく、頷く。
プロデューサーを支えているものが何なのか、シールダーにはおぼろげながら見えてきた。
アイドルという存在がどういうものか、シールダーはよく理解しているとはいえない。
けれど、このプロデューサーと少女たちは、お互いを信頼し、手を取り合って夢に向かって進んでいるのだろう。

「私は、プロデューサーです。すぐにでもここから帰って、仕事をしなければなりません。
 もし誰かを殺してしまえば、彼女たちに向き合うことはできなくなる。それは……困ります」
「そのために、殺さない。そして、殺させない、と」
「ええ。誰も戦わなければ、戦争なんて起こらないでしょう」

プロデューサーがシールダーに求めている役割とは、戦いを勝ち抜く力ではない。
戦いに巻き込まれた人を守る力。戦争を根本から否定する思想……しかし、シールダーにとっては好ましい。

「私は、気が付いたらここにいました。特別な何かをした覚えはありません。
 なら、私のように連れて来られた人はきっといるはずです。そういう人を、あなたに守ってもらいたいのです。
 戦う意志のない人をあなたが守り、私のような考えの人間が戦う気のある人より多くなれば、戦いはもう起こらないはずです」
「なるほど……あなたの意志は理解しました。それは、私の望むところでもあります」


258 : プロデューサー&シールダー ◆W1zAtfuZSU :2015/04/20(月) 23:37:23 2tzx2/ec0

シールダーは、守護者。地上に在る全ての生命を守る存在である。
聖杯という聖遺物を巡るこの戦い、聖杯戦争に招かれても、その在り方は変わらない。
たとえこの場に、彼女を支え共に戦ってきた戦士たちがいないとしても、使命を果たさなければならない。
であれば、このマスターはこれ以上望むべくもない最高のマスターだ。志を同じくする友は、万軍にも勝る力を与えてくれる。
そう、かつての「彼ら」のように……

「そこから先は……どうすれば帰れるのか、今はわかりませんが、何か、方法はあると思います」
「聖杯の所在を突き止めることが必要となります。そこにあるとさえ分かれば、私が機能を掌握することも可能でしょう」

これは確信だった。
聖遺物、つまりは神の手になるものであれば、シールダーが干渉できない道理はない。

「では……承諾していただけますか?」
「ええ、私はあなたの『戦わない戦い』に協力しようと思います。あなたの気高き意志に祝福を」
「では、こちらの書類にサインを」
「……え?」

晴れやかな気持ちで誓い、微笑んだシールダーの前に、一枚の紙が差し出された。
そこには、先ほどの名刺に書かれていた社名と、

『株式会社346プロダクション タレント専属契約書』

そう、書いてあった。

「……そう言えば、それがありましたね。私に、アイドルになれ、と」
「ペンは、こちらをお使いください」

プロデューサーがさっとペンを差し出してくる。
軽く、頭痛がした気がする。

「……本気だったのですか? 私はてっきり、共闘を要請する宣言と受け取っていたのですが」
「わかりにくかったなら、申し訳ございません。ですが、ちゃんと意味はあります」
「それは?」
「アイドルは、ファンに……誰かに、夢を魅せられる存在だからです」

ペンを差し出したまま、プロデューサーは力説する。
表情がほとんど変わらないが、言葉に込められた想いはとても雄弁だ。


259 : プロデューサー&シールダー ◆W1zAtfuZSU :2015/04/20(月) 23:40:17 2tzx2/ec0

「あなたはここで、私のような戦わない人の夢に、希望になっていただきたい。
 誰も殺すことなく、元いた場所に帰る。そして、また明日から、いつも通りの生活を始める。
 全ての人を守る、それが……今の私の考える、理想のアイドルです」

友愛、信頼、善意……シールダーの力の源となる、正の感情。
彼がアイドルという存在に抱く想いは、とても崇高で純粋なものなのだろうと、そう伝わってくる。
シールダーは苦笑し、プロデューサーの手からペンを受け取った。

「それがアイドル、ですか。なら……そうですね、今だけなら。
 この街にいる間だけ、私はあなたのアイドルになりましょう。
 あなたが、あなたと共に駆けている少女たちの元へ帰る、そのときまで」

シールダーは文字を刻む。
そこに書かれた名は、サーヴァントとしての彼女の真名ではない。
だが確かに、彼女という存在を示す本当の名前。

城戸沙織。

地上に降臨したアテナの化身の、人としての、父から与えられた大切な名前だった。




【クラス】
シールダー
【真名】
アテナ@聖闘士星矢
【パラメーター】
筋力:E 耐久:A+ 敏捷:E 魔力:A 幸運:EX 宝具:A++
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
小宇宙(コスモ):EX
 人間や神の内に存在する宇宙的エネルギー。小宇宙を燃焼させることで、肉体を強化したり異次元への穴を開けるなど様々な超常現象を引き起こす。
 自らの五感と第六感を封じることで増大し、第七感・セブンセンシズに目覚めればさらに爆発的に増大、第八感・エイトセンシズに覚醒すれば生きたまま地上界と冥界を行き来できる。
 神であるアテナは強大な小宇宙を有するものの、直接的な戦闘は聖闘士に任せているため一切の攻撃的な技を持たない。逆に防御や回復、呪いの浄化などには無類の力を発揮する。
生命の守護者:A
 地上に存在するあらゆる生命を守るというアテナの在り方そのもの。
 アテナが守ると決めた半径100m以内の対象は愛と安らぎに満ちた小宇宙によって保護され、その対象に行われるいかなる攻撃もアテナが肩代わりする。
 このため、彼女のマスターを暗殺しようとしても、まずアテナを排除しなければかすり傷すら負わせることはできない。
【保有スキル】
神性:A+
 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
 戦女神アテナが人の姿を借りて降臨した存在。人と神の割合が半分ずつのため、非常に高い神霊適性を持つ。
カリスマ:B
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 彼女が率いる聖闘士たちはアテナに絶大な信頼と敬慕を寄せるものの、アテナはどの時代においても必ず双子座や他の聖闘士に裏切られるためランクダウンしている。


260 : プロデューサー&シールダー ◆W1zAtfuZSU :2015/04/20(月) 23:41:46 2tzx2/ec0

【宝具】
『女神の聖衣(アテナのクロス)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 神話の時代より受け継がれる女神の鎧。右手に黄金の杖、左手に黄金の盾を携える。
 右手の杖はアテナに仕える勝利の女神ニケの化身であり、あらゆる勝利を手にする力がある。神である冥王ハーデスの真の肉体を滅ぼしたため、神殺しの属性を持つ。
 左手の盾はいかなる神や邪悪の力も退ける力がある。攻撃を防ぐだけでなく、光を発して双子座の黄金聖闘士サガに潜む悪の心を消し去ったこともある。
  『女神の聖衣』
   Bランク以下の物理攻撃と魔術を完全に無効化し、さらにAランク以上の攻撃でもその威力を大幅に減少させ、Bランク分の防御数値を差し引いたダメージとして計上する。
  『女神の杖』
   Bランク以上の神性スキルを持つサーヴァントに対し、絶対命中・防御無視・威力五倍・回復阻害の効果。
  『女神の盾』
   聖衣と同効果に加え、属性・悪のサーヴァントと戦闘を開始するとき幸運判定を行う。成功した場合は相手の全パラメーターを1ランクダウンさせる。
『女神の聖域(サンクチュアリ)』
ランク:A++ 種別:結界宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:1000人
 アテナが座する聖域を再現する固有結界。人界から隔絶された女神の領域。
 黄金聖闘士が守護する黄道十二宮が侵入者への防壁として機能し、あらゆる攻撃・スキル・宝具の効果を十二分の一に減衰する。
 本来ならさらに八十八人の聖闘士を召喚し敵を攻撃するが、アテナがサーヴァントとして定義されたためランクダウン。十二宮の再現のみに留まっている。
【weapon】
女神の杖
 神殺しの属性を持つため、神性を持つサーヴァントに対し圧倒的な優位を得る。
 ただしアテナ自身はさしたる武術の心得がなく、また攻撃的な技も持たないため、神性を持たない英霊と打ち合うことは実質的に不可能。

【人物背景】
オリュンポス十二神の戦女神アテナが人間の姿を借りて降臨した存在。
人の世が乱れるとき現れ、地上の平和と生きとし生けるすべての生命を守る使命を持つ。
人としての名は城戸沙織。人間として生まれた後にアテナとして覚醒、地上を守るという使命に生涯を捧げることとなる。
海皇ポセイドン、冥王ハーデス、邪神エリス、太陽神アベル、堕天使ルシファーなど世を乱す数多の神々と戦い、その全てに勝利する。
【サーヴァントの願い】
誰も命を落とすことなく戦いを終わらせて、聖杯を解体する。
【基本戦術、方針、運用法】
防戦に特化したサーヴァント。
非常に強力な防御宝具と固有結界を持ち、癒しの力もずば抜けている。
その反面、攻撃能力は皆無に等しく、特定の相手にしか勝つことは不可能。
決して負けないが、勝つことも難しい。そんなサーヴァントである。
故に、取れる戦法としては。
アテナがサーヴァントの攻撃を防ぎ、その間にプロデューサーがマスターを説得する。これ以外にはないだろう。


【マスター】
プロデューサー@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターの願い】
誰も殺さず、また誰にも殺させることなく聖杯戦争を集結させたい。
【weapon】
なし
【能力・技能】
プロレスラー並みの体格
殺し屋のような眼光と威圧感
【人物背景】
346プロダクションアイドル部門に新設された「シンデレラプロジェクト」の担当プロデューサー。
一見とても堅気には見えないが、実直にアイドルを支える誠実な人物。
やや口下手であり、アイドルたちと行き違いになることもしばしばあるが、決して問題を途中で投げ出したりはせず常に正直にアイドルたちと接していく。
考え事をしたり、困った際には首筋に手を回す癖を持つ。


261 : 名無しさん :2015/04/20(月) 23:42:17 2tzx2/ec0
投下終了です


262 : 名無しさん :2015/04/22(水) 15:25:29 hEvF1CJg0
というかゴッサムの聖杯戦争なのに鯖にバットマンもスーパーマンもワンダーウーマンもいないとかバカじゃねーの


263 : 名無しさん :2015/04/22(水) 21:47:12 aK6jbJuU0
>>262
君が登場話書いて出してみればええんやで


264 : 名無しさん :2015/04/22(水) 22:28:09 IffL94Fs0
そいやスーパーマンとかゴッサムで活動したことあるの?
アメコミなら同社作品内でのクロスオーバーがよくある、ってイメージだけど
DCコミックはあまりそのイメージが定着していないものだから気になったん


265 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/23(木) 00:42:16 OiiBZs0U0
皆様投下乙です。
自分も投下します


266 : ラオモト・カン&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/04/23(木) 00:43:09 OiiBZs0U0

黒い雲は夜の闇を包み込み、街並みに一層の影を落としている。
まるでこの町の暗部を写し出したかのような曇空を、浮浪者はただ呆然と眺める。
小汚い服を身に纏った浮浪者は窶れた表情で街並みを見上げ、天を仰ぎ続ける。

何となしに空を見上げた浮浪者の視界に入ったのは、未だ明かりが灯されている一軒の高層ビルだ。
近年になって急速に勢力を成長させているという大企業。
何度か黒い噂を聞いたこともあったが、いずれも数日程度でピタリと耳にしなくなった。
まるで何かの力で揉み消されたかのように。


空へと向かって聳え立つ勝者の牙城を恨めしそうに見上げる。
地獄で這い回る鼠は、天の住人への妬みを胸に募らせる。
自分も金さえあれば。権力さえあれば。


無謀な野心を灯しかけた浮浪者は、すぐに視線を落としその場からそそくさと歩き出す。
どうせ叶いもしない願いを抱いた所で無駄だ。
自分は所詮社会のクズなのだから。
身の丈以上の幸福を望んだ所で、世界は変わるはずもない。
惨めな思いを抱く浮浪者は、高層ビルから目を逸らすようにその場を去っていく。


綺麗事で塗り固められた社会も、裏では溝に塗れている。
濁り切った暗部の闇を覆い隠すように、煌びやかな光は聳え立っているのだ。


この世界の構造は至極単純なものである。
力ある者が力なき者を統べる。弱者は奪われ続け、権力者が富を食い荒らす。
貧しき者は薄汚れた路頭で這い回り、その遥か彼方で一握りの豪勢な権力者達が覇権を競い合う。
世界は決して平等ではない。決して美しいものではない。
虐げられる者がいれば、当然支配する者も存在するのだ。

ゴッサム・シティは余りにも純粋な『人間の世界』と言えるだろう。
穢れ切った醜い欲望が下水から湧き出し、街には悪徳が跋扈する。
そこに正義は存在せず、救いさえも在りはしない。
あるのはただ社会というヒエラルキーだけ。
野望に浸かり切った権力者達が力と富を独占し、その下で弱者が喘ぎ続ける。
救いの無いマッポーめいた衆愚の街は、『人の支配する世界の在り方』を残酷と言える程に見せつけていた。


そんな街を見下ろすように、支配者は聳え建つ。
地を這う浮浪者が見上げた巨大企業の高層ビルは変わらずに君臨し続ける。
会社の名は『ネコソギ・ファンド』。この街に存在するメガコーポの一つだ。


267 : ラオモト・カン&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/04/23(木) 00:43:50 OiiBZs0U0

ゴッサム・シティに本社を置く大企業であり、比較的浅い歴史でありながら勢力を大きく伸ばしている金融会社である。
その規模は街の覇権を握る世界的大企業・ウェイン産業に迫らんとする程だ。
他企業や有力マフィアとの癒着、株主としての権利を濫用した非合法行為。
それらの違法活動がこのネコソギ・ファンドを巨大企業へと成長させていた。
衆愚の街に於いて、ネコソギ・ファンドは確固たる強者として君臨していたのだ。



「ムハハハハハ!ムッハハハハハハハ!」



故に彼は笑う。
暗黒メガコーポを統べる男はブッダの如く高らかに笑い続ける。

ネコソギ・ファンド本社の最上階、社長室にて。
強大な権力と富を握り締める男は享楽に溺れる。
右手で摘んだオーガニック・トロ・スシを一気に二つ口に運び、豪快に喰らう。
白人の豊満な美女達を周囲に侍らせ、堕落の限りを尽くす。

彼こそがネコソギ・ファンドの敏腕社長、ラオモト・カン。
欲望に溺れた俗物でありながら優れた政治力と豪腕な経営能力を兼ね備える怪物。
人を超越する力を持つ半神的存在『ニンジャ』。
そして────




「あらあら、お楽しみのようでしたわね」




────彼もまた、ゴッサム・シティを舞台にした聖杯戦争に誘われしマスターなのだ。
美女を侍らせスシを喰らうラオモトの前に、突如として一人の女性が姿を現す。
青い髪を持ち、仙女を思わせるような姿をした女性はラオモトに礼儀正しく一礼をする。


「只今戻りましたわ、マスター」
「ムッハハハハ!待ちくたびれたぞキャスター=サン!」


オチョコに注がれたサケを飲み干し、ラオモトは己の従者へと眼を向ける。
ゆったりと顔を上げたキャスターはふっと僅かな微笑を浮かべて口を開く。


「報告を述べさせて頂きますわ。件の調査地域で……幾つか、サーヴァントの気配を感じ取れました。
 私以外にも既に何体かサーヴァント共は召喚されているものかと」


キャスターは淡々と報告を述べる。
彼女はラオモトより特定の地域の偵察を任されていたのだ。
帝王たるラオモトは無闇に動くことを良しとしない。
故に手足となるサーヴァントを使役し、調査に赴かせていたのだ。


「それで、そのサーヴァントとやらは見つけたか?」
「いえ、見つけたのは痕跡のみですわね。ですが、魔力の集中している箇所は見受けられました。
 そこを重点的に調べれば、他のマスターやサーヴァントの目星は付くかと」


サーヴァントそのものは捕捉出来ず。
しかし、サーヴァントの魔力の残痕は幾らか感知出来た。
ある程度魔力が集中している箇所も発見している。
キャスターは一応の成果を出していたのだ。



「―――――で、報告はそれだけか?キャスター=サン」



しかし、ラオモトは念を押すように問いかける。


268 : ラオモト・カン&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/04/23(木) 00:44:28 OiiBZs0U0
キャスターが述べたのは『サーヴァントの気配を感じ取れた』という程度のつまらぬ報告。
サーヴァントやマスターの捕捉を望んでいたラオモトにとっては拍子抜けの結果でしかない。
不満げに鋭く眼を細め―――――鋭い視線によるニンジャの気迫を曝け出す。
ラオモトはキャスターを試すかのように、彼女への威圧的なアトモスフィアを剥き出しにしたのだ。


「アイエッ」


ラオモトのジゴクめいた気迫に間近で晒された美女達が腰を抜かす。
彼はキャスターに対しほんの一瞬だけ気迫を向けたのみ。
しかしそれは美女達が腰を抜かすには十分すぎる程の禍々しき威圧感だった。
恐怖を煽られしめやかに気絶する美女達を尻目に、キャスターは僅かな微笑を浮かべ。


「申し訳御座いませんマスター、此度の報告は以上です」


ラオモトの気迫に恐れることも無く、礼儀正しくオジギをした。
怖じるような態度も様子も見受けられない。平常そのものだ。
キャスターはそのまま顔を上げ、言葉を紡ぐ。



「ですが、ご心配なく。貴方の期待が裏切られる事は決してありませんわ。
 この私めは不老長寿、頭脳明晰、金剛不壊の仙人なのですから」



己の自信を見せつけるかのように、きっぱりとそう言い放つ。
その瞳に映るものは不敵なまでの自信。
その口元に浮かぶものは傲岸な笑み。
目の前の半神的存在――――ニンジャに気後れすることもなく、笑ってみせたのだ。
そんなキャスターの態度を目の当たりにし、ラオモトは無言で彼女を見据える。
ほんの僅かな沈黙が、場を支配した。



「ムッハハハハハハ!さすがはサーヴァント、女でありながら大した度胸よ!」



直後に哄笑が響き渡る。
キャスターの不遜な態度に対し、ラオモトが大口を開き嗤ったのだ。
普段ならばこのようなシツレイは許されるはずもなく、ケジメやセプクを免れなかっただろう。
しかし、ラオモトはキャスターを許した。
聖杯戦争においてサーヴァントは従者であり、自らにとっての貴重なウェポンだ。そう易々と傷付けるつもりは無い。
それに数々のニンジャやカチグミに畏怖の念を抱かれてきた己に対し、彼女は怖じる様子すら見せず不敵に笑ってみせたのだ。
故にラオモトは彼女に少なからず関心を寄せていた。
良いだろう、キャスター=サン。一先ずは貴様の能力を期待してやろう。



「口だけではないことを期待しているぞ、キャスター=サン!
 成せば成る!引き続き調査を続けよ!ムハハハハハ!」
「仰せの通りに」



機嫌良くそう言い放つラオモトに、キャスターは再び礼儀正しく一礼をする。
そのままキャスターは霊体化をし、社長室から姿を消した。


269 : ラオモト・カン&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/04/23(木) 00:44:52 OiiBZs0U0
◆◆◆◆


ネコソギ・ファンド本社の屋上。
風に吹かれて青い髪と中華風のドレスを揺らし、キャスターは街並みを見下ろす。
夜になっても明かりは灯され、高層ビルが彼方此方に立ち並ぶ。
それらはキャスターにとって見慣れぬ世界だ。
かの為政者が支配していた時代の日本とも、幻想の楽園ともまるで違う。
文明は発展し、進化を遂げ、これほどまでの大都会を築き上げているのだ。
サーヴァントとしての知識で存在は知っているが、実際に目の当たりにしたのは初めてである。
キャスターはそんな都会に興味を抱いていた。
好奇心旺盛で自由奔放な彼女が、未知への興味を抱かぬ筈が無い。
なぜならば、彼女は邪仙なのだから。



キャスターのサーヴァント、「霍 青娥」は仙道を外れし仙人―――――邪仙である。



彼女に願いなどない。此度の聖杯戦争もちょっとした享楽のつもりで召喚へと応じたのだ。
本来、青娥は聖杯戦争に然程興味が無かった。
先に述べた通り暇潰し程度の思いで召還に応じたに過ぎず、聖杯に賭ける願いも「聖杯を手に入れたら折角だし受肉するのも悪くないかな」程度のもの。
その身を焦がす程の切実な願いでもないし、勝利にも特に固執はしていない。
しかし、キャスターとして召還された青娥はマスターに聖杯を捧げることを決意した。
奔放で気まぐれな邪仙は、己の主に忠誠を尽くすことを選んだのだ。


(やはり力も器も文句無し。あの御方の元に召喚されて正解だったわ)


自らのマスター、ラオモト・カンに想いを馳せる。
欲望にどこまでも純粋でありながら、大企業を纏め上げるカリスマ性と豪腕を備え。
更にはニンジャとしての圧倒的な力を持つ。
まさに超人と言ってもいい程の『帝王』だ。


聖杯戦争に赴いたのは正解だった。
あの主の下ならば決して退屈はしないだろう。


青娥は強い力に惹かれる性質を持つ。己の力を見せびらかすことを好む。
それらの欲望を満たす為に時の為政者に取り入り、陰で暗躍したこともあった。
そんな青娥が支配者にして強者であるラオモト・カンに引き寄せられるのは必然だったのかもしれない。
青娥はラオモトのカリスマ性に、力に惹かれていたのだ。

青娥はその胸に確かな期待を抱く。
この聖杯戦争は、きっと忘れられぬ享楽になるだろう。
絶対的な力を持つあの御方の下で戦えるのなら本望だ。
あの御方の為に聖杯を勝ち取ろう。万物の願望器を献上しよう。
まあ、負けたとしてもその時はその時だが。



(さ、存分に楽しませてもらうとしましょうか)



妖艶な笑みを浮かべた邪仙は大都会の闇の中へと姿を消す。
自らの主に聖杯を捧げるべく、己の好奇心を満たすべく、暗躍を再開したのだ。


270 : ラオモト・カン&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/04/23(木) 00:46:02 OiiBZs0U0

【クラス】
キャスター

【真名】
霍 青娥(かく せいが)@東方project

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力E 耐久C 敏捷D 魔力B+ 幸運B 宝具C

【クラス別スキル】
陣地作成:E-
最低限の工房を作成可能。
とはいえ陣地とは名ばかりのもので、恩恵は微々たるもの。
まともな効果は期待しないほうがいいだろう。

道具作成:D
魔力を帯びた器具を作成可能。
魔術的なアイテムは作成できず、仙術に関連する薬や道具のみに限定される。
サーヴァントとしての制限が課せられている為、マスターを強化する程の練丹は作れない。

【保有スキル】
仙人:D-
仙術を操る不老長寿の存在。道(タオ)の体現者。
青娥は竹の棒を触媒に己の死を偽装して仙人へと転じた尸解仙(しかいせん)に分類される。
尸解仙は仙人の中でも最も格が低く、触媒として竹の棒を用いた者は尸解仙の中でも下位の存在とされる。
更に彼女は仙道から外れ、悪事を重ねることで力を高める邪仙へと落ちている。
練丹で頑強な肉体を獲得しており、通常の人間より傷つきにくい。
その他にも壁抜け、幻術、死体の使役を得意とする。

話術:A
言論にて人を動かせる才。
詐略・口論・交渉など幅広く有利な補正が与えられる。
巧みな話術により他者を欺き、言いくるめることを得意とする。

無理非道:A
道理から外れ、奔放に暗躍する邪仙としての性質。
同ランク以下の精神干渉とバッドステータスをシャットアウトする。
更に隠密行動をしている際、実体化中でも他者から自身の存在を悟られにくくする。

幻想少女:-
幻想の楽園の住人。
重力を無視した飛翔が可能であり、更に魔力や霊力を弾幕として放つ能力を持つ。
ただし弾幕は対魔力によってダメージが軽減される。
命名決闘法を行う楽園の少女達にとっての基礎的な能力であり、ランクによる優劣は存在しない。

【宝具】
『壁抜けの簪』
ランク:C 種別:対壁宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
青娥の髪に指されている簪。
壁抜けの能力を持ち、壁を物理的に切り抜いて穴を開けることが可能。
穴は一定時間で消滅し、何事もなかったかのように壁が元通りになる。
ただし柔らかい壁に穴を開けることはできない。
サーヴァントは元々霊体化による物体透過が可能であり、わざわざ壁抜けの能力を使う必要は無い。
マスター等の他者を壁抜けで移動させる程度の使い道しかなく、宝具としての性能は貧弱。
その分魔力の燃費は非常に軽い。

『忠実な死体』
ランク:D 種別:召喚宝具 レンジ:- 最大補足:-
生前に使役していたキョンシー「宮古 芳香(みやこ よしか)」を召喚する。
青娥の命令に忠実に従うが、記憶力に難があり何処か間が抜けている。
青娥の魔力の続く限り現界させることが可能で、後述の捕食スキルによって魔力を回復させることもできる。
ただし限定的な召喚である為に能力制限が掛けられており、霊体化や噛み付きによる他者のキョンシー化は不可能。
また芳香がダメージによって消滅した場合、復活させるには膨大な魔力が必要となる。

宮古芳香は以下のステータスを持つ。

《パラメータ》
筋力C+ 耐久D++ 敏捷E+ 魔力E 幸運E

《保有スキル》
幻想少女:-
重力を無視した飛翔が可能であり、更に魔力や霊力を弾幕として放つ能力を持つ。
ただし弾幕は対魔力によってダメージが軽減される。
主にクナイ型の霊力弾を放って攻撃する。

キョンシー:C
活動する死体。リビングデッド。
ゾンビに性質が似ているが肉体は腐敗しておらず、生前に近い姿をしている。
死体としての不死性を備えており、粘り強く戦うことが出来る。
ただし関節が固く、機敏な運動は苦手とする。

捕食:C
何でも喰う程度の能力。
生物や霊を喰らうことで傷の治癒と魔力回復が行える。


271 : ラオモト・カン&キャスター ◆1k3rE2vUCM :2015/04/23(木) 00:46:38 OiiBZs0U0

【Weapon】
なし

【人物背景】
「東方神霊廟」に登場した邪仙。
仙人になるべく修行を重ねた人間だったが、仙道から外れ邪仙へと堕ちている。
気まぐれで奔放、掴み所が無く非常に自己中心的。
自己顕示欲も強く、己の力を見せびらかすことを好む。
己の欲望を満たす為ならば他者を欺くことも厭わないが、特に大それた野望を持っている訳でもない。
善人には程遠く、かといって根っからの悪意を持つ訳でもなく、良くも悪くも自由人。

【サーヴァントとしての願い】
面白そうだったので召喚に応じた。

【方針】
聖杯戦争を気ままに楽しむ。
マスターの指示に従って行動。

【基本戦術、運用】
弾幕や肉体の耐久力によってある程度は戦えるが、基本的に直接戦闘は不得手。
『忠実な死体』で宮古芳香を召喚することで多少のカバーは出来るが過信は出来ない。
弾幕は対魔力の影響を受ける上に陣地の恩恵も殆ど期待できない為、特に三騎士との相性は非常に悪い。
しかし仙術によるサポート、話術スキルによる交渉や駆け引きに関しては優秀。
戦闘を避けつつ暗躍するトリックスターとしての立ち回りが要求される。
マスターの方が戦力として圧倒的に優秀である為、参謀や後衛として振る舞うことも得策。





【マスター】
ラオモト・カン@ニンジャスレイヤー

【マスターとしての願い】
聖杯による不老不死の獲得。

【weapon】
「ナンバン」「カロウシ」
ミヤモト・マサシが用いたとされるつがいの日本刀。
刃にカラテエネルギーを纏わせることでサーヴァントに干渉できる。

【能力・技能】
ニンジャとしての高い身体能力と相当の戦闘技術を兼ね備える。
マスターでありながらサーヴァントに匹敵する戦闘力を持つ。
半神的存在であるニンジャの力を備えたラオモトの攻撃には神秘が宿っており、サーヴァントに干渉することが可能。
更にラオモトは「ヨクバリ計画」による人体改造で七つのニンジャソウルをその身に宿している。
ただしソウルの能力を使い切ると一定時間そのソウルが休眠状態に陥るという弱点を持つ。

七つのソウルのジツ(特殊能力)は以下の通り。

『ブケ・ニンジャ』
ラオモト・カン本来の憑依ソウル。
ヒサツ・ワザ「カラテミサイル」を持ち、体内のカラテエネルギーを光球へと変えて連射することが可能。
光球は敵を追尾し、高い物理ダメージの他にも熱や衝撃によるダメージを与える。

『イタミニンジャ・クラン』
打撃吸収の構えによって苦痛を力に変えられる。
多少のダメージならばこのジツで回復することが可能。

『コブラニンジャ・クラン』
蛇のように変形した瞳から、相手を即死せしめる強烈なフラッシュを発するフドウカナシバリ・ジツを放つ。
サーヴァントには効果が薄く、幸運判定または対魔力によって防御・回避が可能。

『サソリニンジャ・クラン』
サソリめいた構えから強力な対空キックを繰り出す。

『タナカニンジャ・クラン』
テレキネシス・ジツによる念動力を操る。
投擲した武器を再び手元に引き寄せたり、物体を宙に舞わせ放つなどの応用が可能。

『ビッグニンジャ・クラン』
凄まじい怪力を発揮し、驚異的な破壊力のビッグカラテを繰り出す。
特に頭突き攻撃は相手の物理防御をも貫通する威力を持つ。

『モズニンジャ・クラン』
三次元機動によって上空へと跳躍し、猛禽類のように急降下しながら蹴りを繰り出す「モズ・ダイブキック」を繰り出す。
降下と同時に靴裏に仕込まれたダイヤモンドチタン製の仕込みスパイクを展開し、破壊力を増している。

【人物背景】
ネオサイタマの邪悪なニンジャ組織・ソウカイヤの総帥。
彼自身も「デモリション・ニンジャ」を名乗る強大なニンジャである。
表向きは金融会社ネコソギ・ファンドの社長として不動の地位を築いている。
性格は冷酷かつ残虐非道なサディストであり、欲深く俗物的な暴君。
同時に高いカリスマ性と政治力を備え、暗黒メガコーポの代表として確かな手腕を持つ。

【方針】
キャスターを使役し、状況に応じて偵察や交渉をさせる。
自身も必要があれば動く。

【令呪】
右手に発現。
クロスカタナと羽衣めいた湾曲線を複合させたデザイン。
消費は羽衣めいた湾曲線(1画目)→カタナ左側(2画目)→カタナ右側(3画目)。


272 : 名無しさん :2015/04/23(木) 00:46:56 OiiBZs0U0
投下終了です


273 : 名無しさん :2015/04/23(木) 01:21:29 kucNFodA0
投下乙です
これまた裏社会に適合しそうな奴が出てきたなぁ
正面切っても十分強いのに搦め手も得意そうなのがまた

>>264
活動した事はあるよ、バットマンもスーパーマンもジャスティスリーグっていうアベンジャーズのDC版みたいな組織の顔役(キャップ=スーパーマン、社長=バッツみたいな立ち位置)だし、ゴッサムのお隣はスーパーマンの活躍するメトロポリスだし


274 : ◆7PJBZrstcc :2015/04/24(金) 19:15:35 kZMi3lq60
投下します。


275 : 田中ぷにえ&バーサーカー ◆7PJBZrstcc :2015/04/24(金) 19:16:24 kZMi3lq60
「じゃーねーみんなー」
『バイバーイ!!』

 ゴッサムシティのとある高校。そこに最近とびきりの美少女が転校してきたと近隣で話題になった。
 見た目の愛くるしさは勿論、彼女は心も純粋だった。
 そんな彼女を妬む人間も居たが、基本的には大人気だった。
 だがここはゴッサムシティ、衆愚の街の名の通り大変治安が悪い。だから多くの人間が不安に思っていた。

「ヘヘヘ」
「なかなかいい女じゃねえか、ちょっと幼すぎるかもしれねえけどな」

 こんな風に絡まれるのではないかと。
 だけど大丈夫。何も心配はいらない。

「私に手を出そうというのなら……」

 何故なら彼女は












「肉体言語にて、お相手つかまつる!!」

 魔法の国のプリンセスにして王者の技を極めた者、田中ぷにえなのだから。



◆◆◆



「思い出した……」

 絡んできた男2人を撃退した後、ぷにえは全てを取り戻した。
 自らが魔法の国のプリンセスであったこと、女王になるための試験として1年間地上の世界で暮らしていた事、今までの思い出を。
 そしてぷにえは怒りに身を震わせる、今自分が置かれている立場に。

「よりにもよって殺し合い、しかも私をただの留学生にするなんて」

 ぷにえに植え付けられていた偽りの記憶は、『つい最近日本からやってきた留学生』というもの、魔法の国の王女であり覇王の道を歩む彼女に怒りを覚えさせるには十分だった。
 ちなみに、彼女が記憶を取り戻した理由として『自らが繰り出す関節技の前にプリンセスと付けている』事に違和感を覚えた事が原因である。とことん彼女は王者なのだ。

「それにしても、何かしらこれ?」

 ぷにえが落ちていた小さな彫像―――シャブティを拾おうとした瞬間、いきなりシャブティが光り出した。
 それを見た彼女はとっさに後ろに跳び間合いを取る。
 次の瞬間、シャブティが変化しそこには1人の男が立っていた。
 見た目はツンツンした髪型をした黒髪、夏服を着用し、下にはオレンジのTシャツを着た学生だ。100人中99人は普通の高校生だと思うだろう。
 だがここにいる田中ぷにえは例外の1人だ。彼女は目の前の男を相当の修羅場を潜り抜けてきた存在だと認識する。
 そして同時に理解する、彼こそが私のサーヴァントなのだと。

「あなたが私のサーヴァントね?」

 ぷにえがサーヴァントに話しかけ、サーヴァントは無言でうなづく。
 言葉を介さない事に不信を覚える方も居るだろうが、この場合は致し方ない。
 何故なら彼のクラスはバーサーカー、狂戦士のクラスなのだから。
 そしてそれをぷにえも理解しているため、彼女は顔色を変えない。
 彼女は話し続ける。

「バーサーカー、私はこの聖杯戦争が気に入らないわ。いきなり招待状もなく人を呼び寄せた事が、王女の地位が奪われる可能性を生み出されたことが」

 そこで一拍置き、強く叫ぶ。

「何より、私に殺し合いを命じられることが!」

 ぷにえにとって殺し合いなど日常茶飯事だ。
 妹が、マスコットが、クラスメイトが王女の地位を狙いあらゆる手段で自分を狙ってくるのだから。
 そんな自分に改めて殺し合いを命じられるなど我慢できない。

「だからバーサーカー、私についてきなさい」

 ぷにえは手を伸ばし握手を求め、バーサーカーもまたそれに答える。
 こうして二人の戦いが始まった。

「じゃあ帰りましょうか、今は一人暮らしだからあなたの事を誤魔化す方法も考える必要はないし」



◆◆◆



 バーサーカーは理解していない、自らのマスターがどのような人間であるかを。
 仲間を盾にする、敵に土下座をして懇願する事すら厭わず、目的の為なら手段を択ばない存在だという事を。
 本当にいざとなれば、他の主従を殺して元の世界に帰るという選択肢が常に存在する事を。

 そしてマスターである田中ぷにえも理解していない。
 バーサーカーが出会って1日にも満たない人間の為に命がけで戦える存在だという事を。
 世界中の敵になった少女の為に1人で戦う事が選べる存在だという事を。

 そんなバーサーカーの真名は―――


276 : 田中ぷにえ&バーサーカー ◆7PJBZrstcc :2015/04/24(金) 19:17:01 kZMi3lq60
【クラス】
バーサーカー

【真名】
上条当麻@とある魔術の禁書目録

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具EX

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:C
魔力と幸運を除く全パラメーターを1ランクアップさせるが、
言語能力を失い複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】
前兆の感知:C
本人の意図しない微弱な動きからこれから行おうとする攻撃を察知するスキル。
ただし、バーサーカー本人もこのスキルを意図して使っているわけではないのでランクが下がっている。

魅了:E
簡単に言えば異性に好かれやすくなるスキル。
今回の聖杯戦争ではバーサーカーとして召喚されたので、最低ランクとなっている。

【宝具】
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』
ランク:EX 種別:対異能宝具 レンジ:1 最大補足:1
バーサーカーの右手首より先の部分に宿る宝具。
その効果は触れた異能を打ち消すというシンプルなもの。
ただし、あまりに強力だった場合には打ち消すのではなく受け止めるに留まる事もある。
また、効果に関わらず打ち消すので回復や強化するための物でも打ち消してしまう。

【weapon】
なし

【人物背景】
学園都市に住むレベル0の平凡な高校1年生、というカテゴリの存在。
ただし、人間離れした強靭なメンタルの持ち主でもある。
また、強い正義感の持ち主でありとある人外曰く「誰に教えられなくても、自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとする者」らしい。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争という殺し合いを生むシステムをぶち壊す。


277 : 田中ぷにえ&バーサーカー ◆7PJBZrstcc :2015/04/24(金) 19:17:34 kZMi3lq60
【マスター】
田中ぷにえ@大魔法峠

【マスターとしての願い】
この聖杯戦争の主催者には茶番に付き合わせた報いを受けさせる。

【weapon】
プリセンスロッドと関節技(サブミッション)。
プリンセスロッドは魔法の杖だが、三節棍にもなる。

【能力・技能】
・魔法
 彼女は魔法少女なので魔法が使える、使える魔法は多彩。
 が、基本余り使われない。

・関節技(サブミッション)
 王者の技、これから逃れられた存在はいない。

【人物背景】
見た目は可愛らしい美少女にして魔法の国のお姫様。
その中身は覇王。
目的の為なら手段を選ばず、更には「正当性は力で掴み取る者」と言い切ったりするタイプの人間。
しかし、自らを暗殺しようとする妹やクラスメイトをお仕置きだけで済ませる様な甘さもある。
だが、ここは殺し合いなので普段のような容赦はないだろう。

【方針】
敵は全て打ち倒す。


278 : ◆7PJBZrstcc :2015/04/24(金) 19:18:03 kZMi3lq60
投下終了です


279 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/24(金) 20:02:43 kH4DEb2s0
投下乙です。
wikiに収録されている拙作「ラオモト・カン&キャスター」の霍 青娥のステータス欄を一部修正させて頂きました。
修正箇所は以下の通りです。事後報告で申し訳ありません。

筋力E→筋力D
宝具名『壁抜けの簪』→『壁抜けの鑿』


280 : ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:04:34 K/W9rPrc0
投下します


281 : リドラー&キャスター ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:05:43 K/W9rPrc0
"Riddle"
「なぞなぞをしよう」

「朝には『翼を持つ私は鳥だ』と言い、夜には『牙を持つ私は獣だ』と言う。
どっちにもなりきれない半端者、それは誰?」

カタ、カタ、カタとタイプライターの音が鳴る暗がりの空間に声が響く。
空間の中には異様としか言いようがない風貌をした二人の男。
全身に包帯を巻き付け、ボロボロのコートを着込んだ男に向けて、所々にクエスチョンマークをあしらった柄の緑色をしたスーツと帽子を被った男が謎かけをする。

「蝙蝠だ。確かイソップの寓話の一つだったか」
「正解だ。そして我々にも健常者にもなりきれない、この街にいた筈の酔狂な半端者の事でもある」

タイピングを続けながら、包帯男が回答する。
スーツの男はその回答に満足げに頷きクルクルと手に持ったステッキを回しながら正答を告げる。

"Riddle"
「次のなぞなぞだ」

ビッという風切り音とともに、芝居がかった動作でスーツの男が包帯男にステッキを向ける。

「私は愚者にして識者。
王にもなり、女王にもなり、兵士にもなる。
杯にも剣にも杖にも貨幣にも姿を変えられ、高くもなれば低くもなる。
一人を二人に、二人を三人に、三人を四人に、四人を五人に増やすこともできる。
欺き、馬鹿し、顰めっ面のあいつを哄う。さて、私は誰でしょう?」
「……ジョーカーだ。ポーカーを始め他のカードの代用となるゲームは多い。
フォーカードに加えればファイブカードとなるルールもある。
モチーフとなった道化師は愚かな振る舞いをする一方で、その時代の王政をおどけた調子で風刺する見識者でもあったというしな」
「また正解だ、少しヒントを出しすぎたかな? ……まあいい。
ジョーカー、カードの絵柄が有名だが、この街ではもう一つの意味をもつ」

自身の出すなぞなぞをいとも容易く答える包帯男に機嫌をよくしながら、スーツの男が取り出したのは一枚のジョーカーのトランプ。
男の指先に挟まれ、薄ぼんやりとした明かりに照らされたトランプの道化師は毒々しい紫のスーツに白い顔、そして狂気的な笑顔を浮かべている。

「この街でも1・2を争う狂人だ。私も幾度となく彼に会っている。時に商売敵として、時に同盟者としてね。
私の配下達の中に、いや、この街の住人の中にこの男を知らない人間などいない訳がない」
「だが、彼らは誰一人知らなかった」
「その通りだ」

包帯男の言葉に頷きながら、スーツの男が指に挟んでいたトランプをピン、と弾く。
宙を待ったトランプがヒラヒラと舞いながら、深い闇の中に沈んでいく。

「何もバットマンやジョーカーだけではない、ペンギン、ロビン、キャットウーマン、バットガール。
秩序を守っていた者達も、我々犯罪者も、この街にいた筈の彼らを誰もがいない者として認識している」

ともすれば、私もそうだったのかもしれない。とスーツの男は続ける。


282 : リドラー&キャスター ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:06:27 K/W9rPrc0
「私が目覚めずにいたら、エドワード・ニグマであるとずっと認識をしていたならば、きっと私はここにいなかった。
このスーツを着ることもなく、あの蝙蝠男との因縁を思い出す事もなく、ただただ平凡で無為な偽りの日常を歩まされていたのだろう」

エドワード・ニグマ。
それは本来のゴッサムにおいて、リドラーの名で知られる犯罪者の正体。
謎を解くことに病的な執着を見せる、ゴッサムの街でも古参に入る狂人の一人。
偶然手に入れたシャブティから聖杯に導かれた彼は、記憶が戻るまでエドワード・ニグマとしてこの街に蔓延る無数の悪党達の親玉の一人という、与えられた役割をこなしていた。

「だが、君は目覚めた。君の真実に辿り着くことができたのだ。だからこそ私はここにいる」

底冷えのするような、狂気を孕んだ楽しげな声を包帯男があげた。
包帯の奥に隠れた瞳が煌々と光ながら見開かれる。
カタカタとタイプライターを打つ速度は変わらず、その異様に延びた頭頂部がくつくつと揺れる。

"Riddle"
「謎かけの好きなマスターよ、私から一つ謎を問おう。
片や謎を解く者、片や真実を見つける者。私と君は似通っている、だが違う。
そんな我々の決定的な違いとは何か?」
「私にその程度の謎かけとは片腹痛いなキャスター。答えは『結果と行為』だ」

謎かけをした包帯男――キャスターのサーヴァント――に対し、リドラーは得意気に鼻をならしながらステッキを向けた。

「私は『謎を解く行為』に執着している。難問・奇問、謎が解ければその先にある答えがどんなものであろうと私にはさして関係ない。
そして君は『真実という結果』に執着している。そこに至るプロセスまで君は頓着しない。ただ愚直なまでに隠された真実のみを求めている」

カタカタ、というタイプライターの音が止む。
キャスターの口が三日月を描く。

「その通りだ。『謎を解く』『真実を見つけ出す』その二つは近しい様で違う。
君は真実を見つけたとしても、そこに謎を解く過程がなければ満足はしないだろう」
「そして君は謎を解いたとしても、そこに真実という答えがなければ満足はしない」

聡明な頭脳を持ちながら、父親に理解されなかった過去を持つ男。
記憶を失い、記憶を失った街でただ一人真実を求め、誰からの理解も得られなかった男。
孤独であり、異端であり、果てに狂人と化した男達はその笑みを一層深くする。

「だが、この戦争では謎を解く事は即ち真実への到達を意味する」

何故、ゴッサムシティが舞台として選ばれたのか。
この舞台の水先案内人であるシャブティが持つ意味とは。
この街を騒がす、あるいは平穏を守っていた者達は何故いないのか。
聖杯は彼らに何を望んでいるのか。

数多の謎を解いた先には、この聖杯戦争の真実が待っている。


283 : リドラー&キャスター ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:07:06 K/W9rPrc0
「受け取りたまえ、いまこの聖杯戦争で分かりうることは書いたつもりだ」

キャスターが立ち上がり、タイプライターで打ち込んでいた書類を纏めてリドラーへと手渡す。
薄汚れた、何の変鉄もない手記。
だが見るものが見れば、この手記に微かな神秘と、精神を汚染する何かが付与している事に気付くだろう。

「より真実に近づくことができたのであれば、もう少し上等な物も書けるがね。それでも役割をこなすだけの愚かな群衆どもには充分効果はあるだろう」

パラパラとリドラーがキャスターに手渡された書類を捲る。
読者に真実に対する執着を植え付けるその手記は、より強い狂気で精神を汚染されているリドラーには届かない。
一通り読み終わり、満足げに手記が閉じられる。

「これを読んで参考にされた歌詞や映像作品にも効果はあるのだったな?」
「そうだ。手記を直接読んだ者に比べれば効果は薄いが、その作品に何らかの影響さえ受けていれば、私の宝具の対象となる」
「よろしい、部下に手配して使えそうな人間にこれを送りつけておこう。だが、その前に一つだけやらねばならない」

そういうと、リドラーは手記を置き、立ち上がっていたキャスターと入れ替わる様に椅子に座り込み、タイプライターを打ち込み始めた。

「何をしている?」
「証さ」

首を傾げるキャスターに対し、愉しそうに口許を歪めながらリドラーが答える。
カタカタ、カタカタとリズミカルにタイプライターの音が鳴る。

「君の文章は素晴らしい、真実に対する狂的な執着が見てとれる。だが、これを流布するのは誰の意思か?
そう、私、リドラーの意思だ。で、あるのならばこの文章だけでは固すぎる。
これでは私がこの手記を広めた事が伝わらない。それでは何も意味がない」

謎への執着と注目願望。
リドラーの持つ精神の異常性は全てがそこへと起因する。
本来、これを広めた人物が何者かを知られるのはデメリットでしかない。
だが、リドラーにとってその程度は些末事だ。
肥大し、捻くれた自尊心が、自分の存在を隠し通すことを拒絶する。

「刻む必要があるのさ。私がこの聖杯戦争という謎に挑むという宣誓を、このゴッサムにリドラーが返り咲いた証を」

カタン、とリドラーが最後の一文字を打ち終える。

「最後は署名だ。差し障りなければ君の名前も欲しい、無論クラスの名でも偽名でも構わないがね」

スッ、と音もなく立ち上がり、リドラーが席を譲る。
キャスター、それも魔術を行使するのではなく、所謂作家型のキャスターにとって、些細な事でも自分の情報を相手に与える事が遠回しな自殺行為である事は明白である。
それをわかっていて署名などという馬鹿げた真似は行わない。
……そのサーヴァントが、まともな感性でもって行動をしているのならばの話だが。
哄笑が響く。
肩を揺らし、背を反らしながらキャスターが笑う。
だがその笑いに己が主に対する侮蔑めいた感情はなに一つない。

「いいだろう、君の酔狂に乗るのも一興だ」

愉快そうに笑いながらキャスターがタイプライターの前に座る。
三日月に開かれた口と狂気を孕んだ瞳が暗がりの中でギラギラと光を放つ。

「フム、この名前は……」
「ただ答を提供するのは私の主義ではないさ。この名前は私という存在を探り当てる最大のヒントだ。
これを読んで私を探すというのであればこの程度の謎は解いてもらわないと話にならないからな」
「ならば、私も君の流儀にあやかるとしよう。私も同じ真実を求める者であるならば、自ら思考する者の方が好ましい」

カタリ、カタリとリドラーにならってキャスターが署名に名を連ねる。
打ち終わった用紙をリドラーが受け取り、満足そうに眺める。

「興味本意の質問ではあるが、この名前は?」
「真実を求め、真実に気付かず、その身を紅蓮の炎に包まれる事になった哀れな新聞記者の名前だ。
この手記に綴るのであればこの名以上に適したものもあるまい」
「なるほど、お似合いじゃないか」

狂人達が嗤う。
聖杯に願う確たる望みのない異端者達は、静かにこの聖杯戦争に狂気の根をおろす。
この世界そのものに挑もうとする怪人達は、この戦において毒となるか薬となるか、それとも路傍の石と成り果てるのか。

その日、ゴッサムに暮らす複数の人間に奇妙な手記が送られた。
あるものは訝しみ、あるものは不気味に思い、その手記を読まずに捨てた。
だが、あるものはその手記に添えられた一文を見て、思うところがあったのか手記へと目を通した。
手記を読んだ後、彼らは共通して、何かに憑かれたかのように創作活動を始めた。
その作品が世に出回り、民衆の目に留まるのはもう少し先の事である。


284 : リドラー&キャスター ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:07:54 K/W9rPrc0
"Riddle"
謎を出そう

いるべき者がここにいない。

いない筈の者がここにいる。

この街は虚偽に満ちている。

この街に住む自分の記憶は本物か?

この悪徳の街の日常が本来自分が送るべき日常か?

もしも違うと感じたならば、自分自身の記憶の奥底を振り返れ。

かくして私は私を取り戻すことが出来た。


さて、本当の君は何者だ?


我々は真実を追求し、この街の謎に挑戦する者である。

願わくばこの手記を贈呈した諸氏らも同様の願いを抱いてくれることを望む。

――署名
 『E・ニグマ』
 『M・ゼーバッハ』


285 : リドラー&キャスター ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:09:02 K/W9rPrc0
【クラス】
キャスター

【属性】
混沌・悪

【真名】
シュバルツ・バルト@THE・ビッグオー(漫画版)

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力B 宝具A

【クラス別スキル】
陣地作成:D
魔術師ではないが、自らに有利な陣地を作り上げる。
自身の執筆用のスペースを作り出す事が可能。
スペースへの入り口はキャスターの許可を得た者しか発見できない。
但し、ランク以下の直観、観察眼に類するスキルがあれば発見可能。

道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
キャスターの場合、自身の記した手記を作成するスキルとなっている。
キャスターの手記を読んだ者は一定の確率で精神汚染:E-を取得する。
このスキルを取得した者は、何らかの真実に対して強い執着を見せるようになり、その執着状態に限り他者との意志疎通が困難となる。
また一部の職種の人間は、例えば歌手なら歌詞を、映画監督ならば映像作品をといった具合に、この手記を元になんらかの作品を生み出すことがある。
この手記によって生み出された作品を見た者も低確率で精神汚染:E-を取得する。

【保有スキル】
高速詠唱:C
魔術詠唱を早める技術。
彼の場合、魔術ではなく原稿の進みに恩恵がある。

精神汚染:C
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。

騎乗:EX
騎乗の才能。乗り物を乗りこなす事はできないが、ビッグデュオのデュミナスとして選ばれた為、規格外のランクとなっている。

【宝具】
『何でも知りたい男の子(シュバルツバルト)」』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
常時発動宝具。
キャスターの手記の効果で精神汚染が付与されている対象全員から微力の魔力を継続的に得る。
一人から得られる魔力は一定であり、対象者が多ければ多い程、キャスターが得られる魔力総量は増加する。
感染する狂気。哀れな新聞記者の死によって生まれた怪人は、彼の手記とそれを参考にした作品の影響を受け真実を求める人間の数だけ存在する。
それらは全て怪人になり得る可能性を秘めており、即ちキャスターと同等の存在として魔力のパスが自動的かつ無意識に接続される。

『ある晴れた日に天使が降りてくる(ディッヒ デュオ エスギプト ショウ ツァイト)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:0〜15 最大捕捉:60人
巨大ロボ、ビッグデュオを召喚・搭乗し、その間スペックを以下に変更する
・筋力と耐久をBに敏捷をAに変更する
・weaponに眼部レーザー砲、胸部ミサイル砲、脚部メガトンミサイルを追加する。


【weapon】
なし。強いて言えばタイプライター


【人物背景】
40年前の記憶を失った街、パラダイムシティの真実を探し求めた神出鬼没にして正体不明の狂人。デザインモチーフは透明人間
街の影で暗躍する中、彼が発見し、搭乗者として選ばれたビッグデュオを初めとするTHE・BIGがその力をもって40年前の世界を一変させたという解釈にたどり着いた。
結果、40年前に起こった出来事を再演という形で街の人々に「真実」として見せようとするが、ロジャー・スミスとビッグオーによって阻止され、爆炎に消えた。
その後は生死不明の亡霊の様な形でその存在が示唆されている。
また彼の前身とも言えるマイクル・ゼーバッハの手記は各所で騒動の原因となっており、手記を参考に作られた映画はブームになると同時に真実を求めて暴走する民衆を作り上げた。

【サーヴァントの願い】
聖杯戦争の真実に辿り着き、それをこの街の住民に知らしめる


286 : リドラー&キャスター ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:10:01 K/W9rPrc0
【マスター】

リドラー@バットマン

【マスターとしての願い】

誰よりも早くこの聖杯戦争の謎を解き、その事実をこの街の住民に知らしめて注目を浴びる。

【weapon】
特になし
マフィアのリーダーをしているので、複数人の部下を動員可能

【能力・技能】

天才的な頭脳を持っており、パズルやなぞなぞを解くのが得意
格闘戦などの心得はない


【人物背景】
本名はエドワード・ニグマ。
謎を解くことに対して変質的なまでの執着を見せる狂人で、犯行を行う際にはなぞなぞやパズル形式で証拠を残し、自分を捕らえようとする者との知恵比べを楽しむ愉快犯気質のヴィラン
聡明な少年であったが凡庸な父親に理解されなかった事がトラウマとなり精神を歪ませる。
バットマンとは、何度も知恵比べに敗れていたことから強い恨みを抱いている。
余談ではあるが、ある作品でバットマンを倒したと誤解したリドラーは満足して犯罪から足を洗った事があり、『バットマンの存在が犯罪を呼ぶ』という説の範例とされている

【方針】
作成した手記をバラ撒く事、また、手記を参考にした作品を流布する事で宝具分の魔力を確保しながら、隠ぺい効果のある陣地に引きこもるのが最適解だろう。
しかし、最終目的が聖杯戦争の真実を見つけ出す事なので、他の参加者との接触を含め情報収取が必須。
リドラーの配下達を活用しながら、戦闘意欲のない、あるは聖杯に懐疑的なマスターを探し出して接触し、同盟を組むのが最優先事項か。
魔力さえ溜まれば『ある晴れた日に天使が降りてくる』により上空から一方的な蹂躙が可能だが、そもそも優勝が目的ではないので緊急事態でもなければ戦闘は避ける。


287 : ◆DoJlM7PQTI :2015/04/26(日) 02:10:37 K/W9rPrc0
以上で投下を終了します


288 : ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:03:12 .VSydijA0
投下します


289 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:03:35 .VSydijA0













          私は怒りを感じた。もし人間がその飢えの果てに、互いに食い合うのが必然であるならば、この世は神の怒りの跡にすぎない。

                                                                大岡昇平――野火











.


290 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:04:11 .VSydijA0

1:

 その男が異様なまでの違和感を感じるようになったのは、此処最近の事であった。
喉に小骨が引っかかるようなとか、身に付けている衣服を引っ張られるようなだとか、そんなレベルの小さな違和感ではない。
もっと大きく、それでいて根源的な事を見落とし、忘れているような気がしてならないのである。

 何に対して、違和感や不満を感じているのだろうかと自問する。
身分? まさか。自分はゴッサムシティにおいて特に有力な議員を父に持っている。自分が相当恵まれた立場にある事は、自覚している。
親の教育方針か? これも違う。議員の息子として相応しい、かつ、厳しい教育は徹底されてはいるが、反発を覚える程ではない。寧ろ父は尊敬できる人物だ。
それとも、ゴッサムシティそのものに対してか? これはありうる話だ。男が今住んでいる邸宅は、
ゴッサムの中で唯一安全と呼べる地域――金と権力で警察を従わせている――ではあるが、其処以外のゴッサムは犯罪都市と言われて久しい程に、
大小さまざまな刑法犯罪が多発している。もっとマシな所に住みたいと思うのも、当然の事であった。

 だが、違う。違和感の理由は、どれもこれも違う気がするのだ。
それは、男が考えている以上に大きくて、根本的な物なのかも知れない。余りにも大きすぎる為に、その正体に気づくのに時間が掛かるのである。
大きい物の全景を見る時、人はある程度その物から距離を離してみる。近づきすぎては、逆に全景が見えなくなるものだ。
今この男はひょっとしたら、そう言う状況に陥っているのかも知れない。

 非常に気持ちの悪い感覚だ。
例えるなら、外に出掛けて大分時間が経った後で忘れ物に気づき、しかもその忘れ物が思い出せないような……。そう言った感じである。

「クソがっ、苛々する……」

 議員の息子として英才教育を施されて来た男とは到底思えない程のチンピラ言葉で悪態を吐く、オールバックの赤髪の男。
苛々からつい口に出たと言う訳ではなく、男のこの口調は、地である。

 コンコンと男が今いる私室をノックする、乾いた木の音が聞こえて来た。
「入れ」、短く彼が口にすると、ガチャっとドアが開き、ノックをした本人が足を踏み入れて来た。

「邪魔するぜ。大丈夫かよ兄さん、何日か前から大分顔が優れないってメイドから聞いたんだけど……」

 部屋に入って来た、まだまだ年若い声を放つ男の方角に顔を向けて――赤髪の男は、驚きでカッと目を瞠若させた。

 オールバックの男と同じ、燃えるような赤髪を短髪にした、如何にも十代半ばと言う若々しい顔つきの青年。
見間違えようがない。この青年は自分の双子の弟――違う!! それは、偽りの都市ゴッサムシティを生み出した聖杯が勝手に与えた役割に過ぎない筈だ!!

 ――本当の俺とコイツの関係は……ッ!!――

 記憶を急激に取り戻して行く。今まで見えていなかった巨大な違和感が、男の目にも全景の捉えやすい距離にまで遠ざかる。
残り20ピースも無いジグソーパズルを解いていくような感覚。1秒経つごとに、ありとあらゆる記憶の破片が集まって行き、形になる。
そして男は――全ての記憶を取り戻した。

「何でテメェが此処にいやがるレプリカがっ!!」

 男が先ずした事は、ありったけの怒気を発散させて、部屋に入って来た短髪の青年、『ルーク』に対して怒鳴りかかる事だった。
本気で激昂していた。エメラルドに似た緑色の目には殺意にも似た感情が強く渦巻いており、ルークを気圧する。
実の兄が放つ凄まじい覇気に驚いたのか、ルークは思わず後じさった。

「な、何怒ってんだよ兄貴!? それに、レプリカって何だ!?」

 オールバックの男が何に対して怒っているのか皆目見当がつかないらしく、ルークはただただ当惑の体を表すだけ。
一方怒気を今も放つ男は、ますます不愉快になっていた。まさかルーク、自らのレプリカに兄呼ばわりされる事が、此処まで腹ただしい事だとは思ってもみなかったのだ。
今にも殴り掛かりかねない程自らの心は昂っていたが、それをオールバックの男はグッと押さえた。もっと聞きたい、大切な事があったからだ。

「テメェ、ヴァンの野郎はどうした!? ナタリアは!!」

「だから、何に怒ってんだよ兄貴!? ナタリアはゴッサムにはいないし、ヴァン先生もちゃんといるだろ!?」


291 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:05:19 .VSydijA0

 ふざけんな、と本気で殴りに掛かろうかと思ったが、停止した。思い出したのだ。
ナタリアはこの世界に於いては、議員の家系に相応しいやんごとない身分の親戚筋の令嬢で、ゴッサムから離れた州の屋敷で過ごしている筈。
一方ヴァンと呼ばれる男は、この邸宅で執事長兼、オールバックの男とルークの武術指南をしている男だ。
ゴッサムの治安の悪さに常に憤り、自衛手段の大切さを説く正義感の強い男で、邸宅の皆の信頼も厚い。

 自分が今、とんでもない状況に巻き込まれている事に漸く気付いてしまった男は、「クソがっ!!」の言葉を捨て台詞に、
弟のルークを突き飛ばし、廊下を駆け出して行った。「待てよ兄貴っ!!」、後ろでルークが呼びとめる声がするが、男は止まるどころか、
走る速度を更に速めて遠ざかる。

 悪夢なら覚めてくれ。俺には時間がないんだ。
縋るような思いでそんな事を考えながら、ゴッサムの有力議員、ファブレ議員の双子の息子の片割れ、アッシュ=F(フォン)=ファブレは、
邸宅の外へと飛び出して行くのだった。





2:

 神は容易く、アッシュの期待を裏切った。
遥か向こうで、故郷キムラスカの壮麗な大城よりも高い建造物が、まさに林のように建ち並んでいた。夜だと言うのに、その様子が解る。
見るが良い、その建物が放つ、煌びやかな光彩の乱舞を。建物に夜空の星星がくっ付いているかのように、様々な色の光を建物は放っていた。
このような光景を、この国の人間は百万ドルの夜景と比喩するらしい。故郷キムラスカは当然の事、マルクト帝国ですら、このゴッサムの経済規模には到底かなうまい。

 この光景をすんなりと受け入れてしまった自分自身に、アッシュは深く絶望していた。
こんな風景など、ゴッサムシティの住人であると言う役割を与えられた自分にとっては極々普通なのだと、頭と心が語っている。
それだけじゃない。あの時ルークが語っていた、ナタリアが自分の親戚で遠い所に住んでいると言う事も、
ヴァンがルークとアッシュの剣術指南をしている男だと言う事も、親子の縁など当に切って久しい父母が、今本当に自分の父母になっていると言う事も。
アッシュにとっては普通の事であり、全く問題がない事なのだと、頭と心が言っている。

 ……違う。自分を取り巻く本当の環境と、本当の人間関係は、この世界の中でのそれではない。
破滅的な虚無主義の延長線上の主張を唱えるあの男、ヴァンの狂った野望は、最早佳境に入っていると言っても良かった。
一度世界の全人類及びその世界を完全に消滅させ、その後で、旧世界の人類のレプリカ――ゴッサム風に言うなればクローンか――で世界を満たし、
新しい世界の創造を企もうとするヴァン。そして、この狂気の沙汰としか思えない計画を防ぐ為に、自分と、ヴァンが計画の一環として創り上げた、
アッシュ自身のレプリカであるルークは活動をしていた筈なのだ。

 一刻も早く計画を頓挫させねばと焦るのには、確かにヴァンの計画が大詰めに入っていると言う事も大きい。
しかしそれ以上の原因として、アッシュに残された時間が少ない、と言う事があった。

 ――アッシュは、近い将来消えてなくなる。
己の劣化コピーだと思っていたルークが実は完全同位体と呼ばれる極めてレアなケースのレプリカである事を本格的に知ったのが、
スピノザなる音機関の専門家に聞いた時であったか。完全同位体。音素振動数、言うなれば、彼らの居た世界で、指紋同様原則他人と一致する筈のない、
身体から放射される物質の波長が、レプリカとオリジナルで同一のものを指す。
自然界では間違いなく生み出しえないペアであり、机上の空論での存在にしかすぎなかったようであるが、万が一これらが現実世界に現われた場合、
オリジナルを構成する音素や情報が緩やかに発散され、肉体共々消滅し、コピーであるレプリカに取り込まれる、大爆発(ビッグ・バン)と呼ばれる現象が起こると言う。
そしてその予兆は、既にアッシュは感じ取っていた。身体能力や、音素の衰亡の兆し、今になってそれが表れ始めたのだ。


292 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:06:36 .VSydijA0

 このままでは、死ぬに死ねなかった。アッシュは自分の手で決着をつけたかったのだ。
結果的には自分を預言(スコア)から救った恩人であり、過去の事情から歪んだ思想に直走ってしまった、ヴァン・グランツを。
この手で討ち、惑星・オールドラントを救いたかったのだ。なのに自分は、放っておいても死ぬと言う。
こんな無体な話が、あってたまるか。家族と過ごす時間、国の為に尽くす時間、未来を共に歩む事を約束した最愛の女性、キムラスカの王女ナタリアと生きる時間を、
全て丸々台無しにされた挙句、最後のけじめすらつけられずに逝くなど、断じて認められない。
アッシュは、自らの余命の短さに、焦っていた。生き急いでいるのだった。

 苛々が頂点に達してしまい、手近なところにあったダストボックスを蹴り飛ばすアッシュ。
考えもなしに歩いていたら、邸宅から大分離れたところにまで足を運んでしまったらしい。ゴッサムのオフィス街大通りへと繋がる小道だった。
まだまだ治安の行き届いた地域ではあるから、この近辺には浮浪者やホームレスと言った、無粋な輩は存在しない。しかし、それ以外の者も存在しない。
言うなれば、人通りの少ない寂しい道、とでも言うべきか。富裕層が住んでいる地域と、中産階級者が働いている戦場を繋ぐ道の1つであるこの小道は、
明るい間でも人の数がまばらなのである。況や、夜の10時11時のこの時間など、滅多に人など見られないだろう。

 今後どのようにしてゴッサムから脱出したものか、そんな事を考えていたその時であった。
外灯に照らされているその男は、如何にも仕立ての良さそうなスーツを身に纏った、出来るビジネスマン、と言った風情のブロンド髪の男。
先程ダストボックスに八つ当たりした場面を見られたかも知れない。バツが悪いと思いながら、この場から距離を離そうと思った、刹那の事。
スーツの男の近辺に、それまでアッシュの視界に映っていなかった人物が、瞬間移動でもして見せたかのようにその場に現れ始めたのだ。
驚いて目を見開かせるアッシュ。この現象、頭の中に刻まれた情報に記されている。これは確かサーヴァントの霊体化を解除した時の――。

 スーツの男の傍に現れたのは、ゴッサムどころかアメリカの文化にそぐわない黒装束を身に纏った人間であった。
次々と、アッシュの頭の中に情報が浮かんでは消える。「アサシンか――!?」、頭が勝手に推理を弾き出す。

 黒装束の男が、右腕を水平に振った。男の手から、矢のような勢いで何かがビュッと空を切り投げ放たれた。
短剣であった。そのまま行けば、アッシュの喉元に深々と突き刺さる程の勢い。これをアッシュは、危なっかしげに剣身を弾き飛ばし、事なき事を得る。
明らかに視界の先15m程先に居る2名が、驚いた顔を浮かべる。あれで仕留めるつもりであったらしい。
これでもアッシュは、もと居た世界でも屈指の実力者であるヴァン・グランツから剣術の手ほどきを受け、
ローレライ教団と呼ばれる巨大な宗教組織の大幹部、六神将の席の1つを預かるにまで成長した凄腕の戦士でもある。
そう簡単に命を差し出す程、彼は甘いタマではないのだった。

「テメェ、何しやがる!!」

 当然、怒気を身体から放射するアッシュ。先程のルークの時とは違い、今度明白に殺意も纏っていた。

「アサシンの短剣を防いだ……、貴様、NPCじゃないな!?」

 気を取り直したという様子で、スーツの男が言い放つ。
NPC。それは、此処ゴッサムに住んでいる、聖杯戦争の参加者以外の全住人の総称の筈。そしてその名称を使い、口にする人物。
それはつまり、自分が聖杯戦争の参加者であると公言しているに他ならない。

「まさか……聖杯戦争の参加者か!!」

 思わず口にしてしまうアッシュ。しかし、これは悪手だった。
聖杯戦争へと参加している人物が、マスター、しかも見たところサーヴァントを連れていないマスターと出会ってしまったのならば、次に行動する事は何か。
その答えは、1つしかない。サーヴァントを呼ばれる前に――

「殺れ、アサシン!! 今の内に脅威の芽を摘んでおけ!!」

 こうなるのは、当然の帰結であった。

 アサシンと呼ばれたサーヴァントが、1秒掛かるか否かと言う程の凄まじい速度で、間合いを詰めて来た。
宛ら疾風。「速い」とアッシュが思考する前に、彼は身体全体を急いで左半身にする。
サッ、と言う音すら立てずに、何もない空間を、アサシンが左手で握るナイフが貫いた。スカを食ったと即座に気づき、行動に移る前に、アッシュが動いた。
今は剣がない。だから、裸拳でサーヴァントを殴ろうとするが、攻撃が、すり抜ける。攻撃の延長線上から、アサシンの姿が消えていた。霊体化したのである。

「何ッ!?」


293 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:07:07 .VSydijA0

 思わず口にしてしまうアッシュ。神秘のない攻撃では、極めて高位の存在であるとは言え霊体の域を出ないサーヴァントには、ダメージを与えられない。
神秘を纏った攻撃方法が、アッシュにはない訳ではない。純粋に、サーヴァントに纏わるその事実を忘れていたのである。

「今だ、殺れっ!!」

 スーツの男にそう言われるまでもなく、霊体化を解いたアサシンのサーヴァントがナイフを振るう。
急いで回避をしようと、スウェーバックの要領で飛び退こうとした、その瞬間だった。
アサシンの身体が、木の葉のように宙を舞った。大人がボールを投げた様な見事な放物線を描きながら、2〜3m程の高さを、だ。

 結果的にアッシュに剣身は当たる事がなかったのだが、それとこれとは話は別。今度のアッシュは、突如吹っ飛ばされたアサシンのサーヴァントに驚愕していた。
そしてそれは、そのマスターにしても同じ事。地面に何とか着地するアサシン。3者は一様に、アサシンを吹っ飛ばした闖入者に目線が釘付けだった。

「間に合ったようで何よりだな」

 右足を伸ばし切った状態で、その男はぶっきら棒に口にした。
灰色のマントを身に纏い、ゴッサムシティが栄えている今のこの年代よりも未来的なデザインをした、同じく灰色の、
運動に適したような機能的なスーツを着用した男性だ。何よりも目を引くのが、アッシュと同じ様な、燃え上がるような赤色の髪。
文字通り、炎が其処で燃え上がっているかのようであった。

「俺の……サーヴァントか」

 漸く合点が行ったと言うように、アッシュが呟いた。

「真名は後で教えてやる。今は、バーサーカーとでも呼んでおけ」

 言って、バーサーカーのサーヴァントは一歩前に出た。バーサーカー、確か狂戦士のクラスであったか。だが、引っかかる。
狂戦士のクラスは確か――理性を狂化と言うスキルで塗り潰され、大抵のサーヴァントは会話すらままならなかった筈だが……。

 バーサーカーは懐からある物を取り出し、アサシンのサーヴァント達にそれを向けた。
流石のアッシュも目を剥いた。無理もない。この男が取り出した代物は、黒色のグレネードランチャー。
こんな物を僻地でもない、オフィス街や住宅街の境の道で発射しようものなら、如何なる事態になるか、容易に想像がつく。

「馬鹿め、そんな物此処で撃てるわけがないだろうが!!」

 当たり前の事実をスーツの男が口にする。当然だ、この場でグレネードなどと言う目立つものを撃ってしまえば、爆音と爆風で人が集まる事ぐらい誰でも解る。
それはつまり、自身が聖杯戦争の参加者であると言う事実が、早期に割れかねないと言うリスクを負うと言う事でもあった。
早々にそんな真似を犯す人間など、頭がぶっちぎれてるか、相当な馬鹿以外に存在しない。
そしてこのバーサーカーは、そんなリスクなど、重々承知しているらしい。ヘッ、と、相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべて、言った。

「当たり前だろうが。……グレネード何て生易しい手段で相手してやるかよ」

 言ってバーサーカーは、ゴミでも投げ捨てるかのような要領で、グレネードランチャーを地面に捨て、右手の甲をアサシン達に向けるようにして構えた。
前腕の辺りに、奇妙な痣が刻まれていた。燃え盛る弾丸に、牙のついた口の意匠を凝らした、タトゥに似た痣。
その痣が、唐突に光り輝いた。その痣を中心として、バーサーカーの体中に、赤色の光の筋めいた物が走り始める。
今度は、無色の光が繭の様に彼の身体を包み込んだ。ゼロコンマ数秒経ったか否かと言う、短い時間。
蝶が蛹を突き破るようにして、中からバーサーカーが現れた。しかしその中から現れたのは、蝶などと言う優美な存在では断じてなかった。
そして、バーサーカー自身も、最早人間の姿をしていなかった。

 2m半はあろうかと言う巨大で厳つい体躯に、広い肩の上に、トラバサミのような牙を携えた半円形の頭部を2つ載せて持った、深紅色の異形の怪物だった。
肩回りと腰回りに、ゴツゴツとした黄土色の、三角錐状のものがフジツボの様に纏わりついている。この怪物の甲殻とでも言うべきだろうか。
人間の形を全体的に留めていない怪物がその場に現れたものであるから、スーツの男やアサシンは愚か、歴戦の勇士であるアッシュですらが、言葉を失っている。

 相手が呆けている、その隙を狙い、バーサーカーが動いた。
刹那――世界が橙色の光に染まった。グレネードが暴発した? 違う、爆風よりも遥かにその光は明るかった。
宛ら、太陽が地面に降りて来たような、強く明るい光の爆発。それまでバーサーカーに目線を奪われていたアッシュが、光の生じた方向。
つまり、スーツの男達の入る方向に目線を向けた時、その理由がハッキリとわかった。


294 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:07:36 .VSydijA0

 アサシンの肩より上の部分が、完全に炭化していた。見事なまでに炭色。誰が見た所で、即死は免れない程の見た目である。
誰が見ても勝負あり、と言うべきなのに、バーサーカーは動く事を止めなかった。
先程アサシンが投擲した短剣に勝るとも劣らない程の速度で、バーサーカーはアサシンの亡骸の下へと詰め寄った。

 マスターを仕留めるのだろうかと思ったアッシュ。そして事実、その通りの行動にバーサーカーは移った。
しかし、その方法が予想不可能であった。いや、バーサーカーが見せた抹殺のメソッドを予測しろと言うのは、殆ど無理だったであろう。
バーサーカーがして見せた事。それは、熊の倍以上もあるその大きい手から白色の鉤爪を飛び出させ、アサシンの身体を引き裂き、切り刻み。
細切れになったその死体を、口に運んで咀嚼し始めたのだ!! 肉を噛み潰す音、骨を噛み砕く音、耳を塞ぎたくなるようなグロテスクな水音。
それらが殆ど同時に、アッシュとスーツの男の耳朶を打つ。バーサーカーの食事は早かった。人間1人分の大きさの肉が、ものの10秒程で欠片もなくなっていた。

 口元から血を滴らせ、黄土色の三角錐に血液が鍾乳液の様に伝って行く。
バーサーカーの目線は、スーツのマスターに向けられていた。

「く、狂ってる……」

「狂戦士だからな」

 深紅色の怪物が言った。このような姿にはなっているが、間違いなくこの男はあのバーサーカーであるらしい。
質の悪い、歪んだスピーカーを通したような声でそう言ったバーサーカーの声音は、無慈悲その物であった。

「た、頼む、見逃してくれ……あ、あんな死に方……嫌だ……!!」

 スーツの男が情けなく懇願する、が、責められまい。
剣で真っ二つにされる、槍で貫かれる、体中の骨を砕かれる、と言う方法ではなく、生きたまま文字通り喰らわれるのだ。
誰だって、そんな死に方は御免蒙るであろう。今だけはアッシュは、この男を情けないと罵る事が出来なかった。

「やだね」

 尚もバーサーカーは無慈悲であった。彼我の距離3m程を一瞬で詰め、大きな頭の内の1つを高速で動かした。
――スーツの男の顔面が抉られていた。肉の地面をスコップで掘ったような、すり鉢状の凹みが頭に出来上がっており、其処から大量の血液が噴出する。
ガクガクと、電流でも流したような痙攣を起こしたスーツの男は、そのまま、糸の切られたマリオネット宛らに地面に崩れ落ちた。
その死体を、意気揚々とバーサーカーは細切れにし、口に運んで行く。ハイエナではない、餓鬼や悪魔でも見る様な目でアッシュはその様子を眺めていた。
食道をせり上がってくる嘔吐感に気付いたアッシュは、先程蹴り飛ばしたダストボックスに直行する。その日の夕食を、彼は勢いよく全て吐き戻した。





3:

「外れだろうよ」

 事もなげに、バーサーカーのサーヴァント――『ヒート』と言う真名のその男は言った。
その言葉は、アッシュの問い掛けた質問、「自分で自分をどんなサーヴァントだと思ってるんだ」、と言う問いに対する答えでもあった。
今のヒートは、最初に会った時のような、赤髪の男性の姿に戻っている。何でもあの怪物に変身する技術は『宝具』であり、自らの意思で自由に解除が効くものであると言う。

「自覚してんのかよ、お前は」

 何処となく侮蔑する様な光を瞳に宿して、アッシュが言った。
先程アサシン達を喰らった場所から離れた、ゴッサムのオフィス街の路地裏での会話だった。

「自分で自分がどう言う奴なのか位は解るつもりだ。バーサーカー自体、聖杯戦争のクラスの中じゃ扱い難いクラス。その中でも俺は、かなり扱い難い部類だろうよ」

「意思の疎通が出来るのにか」

 アッシュ自身、聖杯戦争に対する知識は聖杯が自身が埋め込んだ、マニュアル的な物しか頭に入ってない為、詳しい事は解らない。
しかし、狂化スキルによって理性を塗りつぶし、コミュニケーション能力や言語能力と引き換えに力を得ると言うバーサーカーの性質上、
先ず真っ先に考えられる破滅の原因は、それによる自滅だ。だがヒートは、バーサーカーであるにも拘らず、言語能力や理性をそのまま保持している。
であるのに、ヒートは自らを一切の迷いなく外れと言い放った。これがアッシュには、妙なものに映ってならなかった。


295 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:08:01 .VSydijA0

「意思の疎通何て問題にならない位の爆弾を抱えてる。その爆発を抑える為に、人を喰ったって訳だ」

「……本当か?」

 怪訝そうな目でヒートを見る。チッ、と、不愉快そうに舌打ちを響かせたのは、ヒートの方であった。

「好き好んで人間なんて喰らうかよ。他にいい方法があるんだったら、もっとマシな方法を取ってるぜ」

 嫌悪感を露に、ヒートが愚痴っぽく吐き捨てる。
アッシュにはヒートのこの様子が、人間を喰らわねば生きて行けない自分と言う生き物に対して、心底軽蔑し、自嘲している様にも思えた。
「悪い」、短く告げるアッシュに対してヒートは、「気にすんな」、とぶっきらぼうに声をかけた。

 その後、どうしてヒートが人間を喰らわねばならないのか、という理由を説明して貰った。
ヒートの主力宝具は、先程見せたあの怪物化――彼らの世界では悪魔化と言う――であると言う。
一見すれば理性など欠片もなさそうな姿をしていたにもかかわらず、ヒートはあの状態においても元の人格や理性を残し、言葉すら話せるのだと言う。
では何故この男がバーサーカーのクラスの鋳型にはめられて、このゴッサムに現れたのか。
それはヒートは、かなりの頻度で人間を喰らわねば『怪物化する宝具を暴走させてしまう』からだという。

 何故暴走するのかと言えばそのメカニズムはシンプルで、純粋に、抗い難い程の餓えに苦しむのだとか。この苦しみの名前はシンプルである、『飢餓』だ。
この飢餓が、バーサーカークラスになくてはならない『狂化』の代わりになっているのである。
ただ、狂化との決定的な違いは、狂化の方は狂う代わりにステータスアップの向上と言うメリットがあるのに、飢餓には『それがない』。
つまり飢餓とは、発症してしまえば、魔力の消費量だけは一丁前に跳ね上がる癖に、ステータスアップの恩恵は全くなく、
その上一部のスキルがほぼ何の意味もなさなくなるなど、完全なるデメリット、足枷にしかならないのだ。これを防ぐ為に、生きた人間を喰らう必要があると言う事だ。

 ――なる程、確かに自ら外れと自嘲気味に語るだけの事はある。
スカと言うにはヒートのステータスもスキルもかなりのものであるが、少なくとも、その手綱を操るのは相当苦労する事は確かだ。
ただでさえ御し難いクラスであるバーサーカー、この上バーサーカーのメリットである狂化によるステータスアップが全くないと言うのならば。
確かに、扱い難い存在であると言う評価は、不可避のものであるだろう。

「幸いにも、この街には喰らっても問題なさそうな犯罪者が多いみたいだからな、良心の呵責にお前が苦しまなきゃ問題ねぇだろうよ」

「……人間を喰らうのは嫌いなんじゃないのか?」

「嫌いとはお前に言った覚えはねぇが……まぁ嫌いだよ。だが、それ以外に方法がないんだったら、俺は躊躇なくやる」

「胸糞わりぃな……」

 唾棄するように言い捨てるアッシュ。それを聞いて、ヒートの身体に、剣呑な空気が纏われ始めた。
その変化に気付いたアッシュが、唐突に身構えた。 

「昔よ……俺と同じで悪魔化出来るようになってからも、人間を喰らうのは嫌だったって言って、我慢してた女がいた」

 頭上を見上げながら、ヒートが語り始めた。その声音からは、懐古と回顧をありありと感じ取る事が出来た。

「案の定、暴走したよ。哀れな話だよな、誰も喰いたくねぇって本気で思ってたのに、身体が精神を凌駕して、それを許さなかったんだからな」

「その女ってのはどうなった」

「俺達に襲い掛かって来たからな。俺達の手で始末した。その時にな、俺は思った。
変な御題目掲げて苦しんで、暴走して、それで仲間に牙向く位なら、向かって来る奴らを喰らう方が良いってな」

 アッシュは、次に言おうとしていた言葉を忘れてしまった。
そして、忘れてしまった代わりに、心の中に湧いて出て来た感情が、何て哀れな生き物なんだろう、と言うこの男に対する同情であった。
喰らわなければ生きて行けないのは、人間である以上アッシュも同じ。だがその意味合いと重みが、ヒートとアッシュとでは全く異なる。
ヒートの場合喰らわねばならないのは人間で、しかも喰らわなければ暴走し、同じ仲間も傷付ける。
生きる為に、許されざる罪を重ねねばならないヒートの姿と宿命に対して、アッシュは、憐憫以外の感情を抱く事が出来ないのであった。

「お前は、聖杯とやらに叶える願いってのはあるのか」

 アッシュは、ヒートに対してそんな事を訊ねてみた。
これだけの業を背負った男である。並々ならぬ執着を抱いて、この聖杯戦争へと馳せ参じたに違いない。そう考えていたのだ。

「ないな」


296 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:08:24 .VSydijA0

 予想してなかった返事に、アッシュは意表を突かれた。
ヒートは即答であった。強がりでもなければ嘘をついている様子もない。腕を組み、壁に背を預けている様子からは、本当に、聖杯に対する執着心を感じられない。
ある種、達観しているようにすら思える立ち居振る舞いである。

「やるだけの事は、もといた所でやって来たつもりだ。だから、頼る気はねぇよ。……お前はどうなんだよ、マスターさんよ」

 やはりと言うべきか、当然聞かれ返された。

「果たさなきゃいけない事をやってる最中に、此処に飛ばされた」

 遠回しに、未練がある、と言っているようなものであった。

 聖杯戦争。何の因果か知らないが、アッシュは本人の意思とは無関係に、この聖杯戦争への参加権を得てしまった。
ヴァンとの決着の為に、最後の物資を揃えていた時に、奇妙な人形が売られているのを発見した。
何かしらの音素が込められた装飾品の類かと手を伸ばした所、全く笑えない。それこそがシャブティであったのだ。
こんな所で油を売っている時間など、ないと言うのに。

「俺はもうすぐ、世界から消えてなくなる」

「死ぬって事か?」

「そうだ」

「……の割には、健康そうに見えるけどな」

「普通の奴から見たらそう見えるだけだ。だが確実に、俺の身体は段々と死に向かって行ってる。近い将来には、確実にいなくなる。……その前に、殺しておきたい奴がいる」

「復讐か?」

 ヒートが聞いて来たが、アッシュはすぐに「違う」と否定した。

「自分の馬鹿げた思想の為に、惑星中の人間を道連れにしようとするような奴さ。そして……俺の恩師でもある。俺は……そいつを自分の手で、せめて葬ってやりたい」

「それが、聖杯にかける願いか?」

 言われて、改めてアッシュは考えた。本当に、それで良いのだろうかと。
ヴァンを葬りたいと言う思いは、本当である。自分の剣で倒したいところだが、それも出来ない程衰弱したならば、どんな手段も辞さないつもりだった。
自分が志半ばで倒れたら、自分のレプリカが後を継ぐであろう。ではそのレプリカがダメだったら……? それが、最大の懸念でもあった。

 ヒートの言う通り、聖杯でヴァンを葬り去るのが、今この状況において一番良い手段であるのかも知れない。
だがその為にアッシュは、聖杯戦争に参加している参加者を何人も殺さねばならないのだ。果たして其処に大義などあるのだろうか。
――ないな、即座にアッシュは結論を下した。ある訳がないのだ、人間を殺して成し遂げる奇跡など、認められる筈がない。そんな事は解りきっている。
しかしそんな綺麗事を言っていられない程に、事態は逼迫していた。ヴァンの計画は大詰めに入っている上に、自分に残された時間も少ないのだ。
その為ならば、この大会の参加者を殺す事だって、訳はない。アッシュはぬるま湯に浸かって来たと言う訳ではない。
ローレライ教団の六神将として、様々な任務をこなし、人を殺す場面だって少なくなかった筈だ。
今回は、聖杯を手に入れ、絶対に成し遂げねばいけない願いの為に人を殺す。それだけだ。

 ――……何だ。結局俺も、ヒートを蔑めねぇじゃねぇか……――

 自らの目的の為に人を殺す自分と、生きる為に人を喰らうヒート。
相手の命を奪う方法が違うだけで、やっている事は本質的には大差ない、その事に気づいてしまった時、アッシュは思わずクツクツと笑いそうになった。
だったらもう、変に言い繕うのは止めだ。自分の本音を、曝け出す必要がある。

「そうだ。聖杯戦争なんてふざけた場に呼ばれた以上……もう四の五の言ってられねぇ。全力でこの場所で戦う。
折角聖杯って便利な物があるんだ、けじめをつける道具として使わせて貰う。……だから、手を貸してくれヒート」

「構わねぇよ」

 逡巡するだとか、もったいぶるだとか、そう言ったまどろっこしい事を一切せず、ヒートはすぐに答えた。

「ただ、俺は負けるのだけは絶対に嫌いな男何でな。恥かしくねぇ動きをしろよ、アッシュ」

「解ってる」

「後、もう1つ」

「何だ」

「……後腐れのねぇように動け。それだけだ」

 怖い位真面目な顔付きで、ヒートが言った。
過去に何か、思う所があるような空気である。ないほうが、寧ろどうかしていると言うべきだろう。
人を喰らわねば生きて行けない宿命を背負っているのだ、それに纏わる不幸の1つや2つ、あって然るべきだろう。
ヒートが過去に、何を体験し、どんな辛酸を舐めさせられたのか。それは、アッシュに想像する事は出来ない。だが、今のアッシュに出来る事は、1つ。


297 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:08:46 .VSydijA0

「――解った。今後ともよろしく頼む、ヒート」

 それは素直に、この業の深いサーヴァントの言う事を、聞いておく、と言う事であった。
返事に気をよくしたのか、ヒートはニッと、片頬だけを吊り上げた笑みを浮かべて、口を開く。

「コンゴトモヨロシク、ってか。アッシュ」

 言ってから、両者は互いの腕をガッとあわさせる。
聖なる焔の光の燃えカスとして生きる事を強いられた男と、ウォータークラウンの男の引き立て役として死ぬ事を望んだ男の、過酷な戦いが、今まさに火蓋を切って落とされた。






【クラス】

バーサーカー

【真名】

ヒート@DIGITAL DEVIL SAGA アバタールチューナー2

【ステータス】

(人間時)
筋力C(A+) 耐久C(B+) 敏捷C(B) 魔力D(C+) 幸運D- 宝具A+

(アートマ・ファイアボール発動時)
筋力A+ 耐久B+ 敏捷B 魔力C+ 幸運D

(羅刹発動時)
筋力A++ 耐久E- 敏捷A+ 魔力E- 幸運D-

【属性】

混沌・善

【クラススキル】

狂化:-
バーサーカーでありながら狂化スキルを持たない。理性も保てているし、会話も普通にこなせる。
しかし後述の保有スキルが、狂化スキルの代わりになっている。

【保有スキル】

飢餓:A+
抗い難い生物の本能。栄養素を摂取出来ない事による苦しみ。
バーサーカーを常に苦しませる生理現象であり、このランクの飢餓を発症させると、ステータス向上効果のない同ランクの狂化を獲得し、
後述する宝具を暴走させてしまう。完全なるデメリットスキルの上に、如何なる手段を以っても外す事は出来ない。

喰奴:A+
『喰』らうと言う行為の『奴』隷。それがバーサーカーである。
魂喰いによる魔力摂取量の向上、及び日常的な食事からすらも魔力を獲得できるようになるスキル。
飢餓とセットになっているスキルであり、これもまた、如何なる手段でも外す事は出来ない。

対魔力:C(宝具発動・暴走時:B 羅刹時:C)
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
宝具発動させるか暴走させた時にはカッコ内のランクに修正。また、火の属性を持つ攻撃に対しては、魔力的な攻撃かを問わず、Aランク以下のそれを無効化。

勇猛:C(宝具発動時:A、宝具暴走・羅刹時:-)
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
宝具を正当に発動させた場合はAランクに、暴走或いは羅刹状態の場合には-に修正。精神干渉は無効化するがダメージ向上効果は発揮されなくなる。

魔術:-(宝具発動時:A 宝具暴走時:D 羅刹時:-)
人間形態時には魔術を行えないが、宝具を発動した際には魔術を使用可能となる。
全ての魔術が一工程或いは一小節で発動する事が出来、その威力と効果も非常に高い。
特に火の魔術を得意とするが、回復や強化の魔術を施す事も可能である。が、宝具を暴走させた場合には大幅にランクが低下。
火属性の攻撃魔術しか発動出来なくなる上に、正確な狙いが困難になり命中精度が下がる。羅刹時には、そもそも魔術が使えなくなる。

火天:-(宝具発動・暴走時:C 羅刹時:-)
火属性の攻撃を行う際に、威力を向上させ、またその属性の攻撃を防御する際、高い防御力を発揮させるが、『氷』の属性に多少弱くなる。
『アグニ』に変身する事で、獲得する事が可能なスキル。宝具を暴走させた状態でも獲得可能。

先制攻撃:-(羅刹時:A)
戦闘において先手を取る能力。初手において、かなりの高確率で先に行動が可能となる。
羅刹時にしか発動出来ないスキルで、ひとえにこの状態での規格外の敏捷ステータスがあってこそのこのランクである。

仕切り直し:-(羅刹時:A+)
戦闘から離脱する能力。同ランクの追い打ちの役割を果たすスキルを持たない限り、相手はほぼ確実に撤退を許してしまう。
羅刹時にしか発動出来ないスキルで、ひとえにこの状態での規格外の敏捷ステータスがあってこそのこのランクである。


298 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:09:45 .VSydijA0

【宝具】

『右腕に刻まれし炎の弾丸(アートマ・ファイアーボール)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:自身
止む事のない雨が降り頻り、終わる事のない戦いが起こり続ける仮初の煉獄、
ジャンクヤードに突如現れた謎の物体である『ツボミ』から放たれた、悪魔化ウィルスを伴った光条に貫かれた事で獲得した宝具。
これに貫かれた者は『アートマ』に覚醒したと言われ、身体の表皮の何処かにアートマシンボルと呼ばれる痣のようなものを刻まれる。
アートマに覚醒した者は、其処に力を込め、変身すると言う意思を持つ事で、刻まれたアートマシンボルに対応した『悪魔』に変身する事が出来る。
バーサーカーが変身可能な悪魔の名前は、バラモン教の神話に登場する、火の神であり、浄化の神でもある『アグニ』である。
ただ彼に限らず、アートマに覚醒した人間が変身する悪魔と言うものは、神格や魔性を有する本物の超常存在ではなく、どちらかと言えば、
それらと同じ名前と姿を持ち、かつ、それらに肉薄する身体能力と超常的な力の一端を振るう事が出来る『怪物(ミュータント)』に、その在り方は近い。

 アグニに変身する事で、バーサーカーのステータス、及び一部のスキルはカッコ内のそれに修正される。
これにより戦闘能力の格段の向上や、バーサーカークラスでありながら高い威力と精度の魔術の使用が可能となり、三騎士に匹敵する程の力を得る。
アグニ変身時に使用出来る魔術や物理攻撃手段、及び装備可能なパッシヴスキルは、生前バーサーカーが習得していた範囲内に限る。
変身時に掛かる魔力も、変身を維持するのに必要な魔力も低い燃費の良い宝具だが、それは『飢餓スキルを暴走』させなかった時の話。
バーサーカーを含めた全てのアートマ覚醒者は、常に生体マグネタイトに餓えている状態を発症しており、
生体マグネタイトを経口摂取し取り込まない限り、この飢えは満たされる事がなくなる。
飢餓状態を暴走させると、消費魔力量がAランク相当の狂化持ちバーサーカーのそれへと跳ね上がり、勇猛と魔術ランクの大幅低下の発生。
更に敵味方問わず、その場にいる者を襲い、それらに喰らい掛かり、飢餓を抑えようとする本能が働く。
飢餓を抑えるには兎に角NPCやマスター、サーヴァントを喰らって生体マグネタイトを摂取すれば良いのだが、これを摂取し過ぎると、
バーサーカーの本来の人格が『消滅』、それに代わって、神話上の『アグニ』の人格が彼の性格に成り代わり、マスターの命令を一切受け付けなくなる。
飢餓状態のデメリットは、『宝具を発動させている状態限定で発動する訳ではなく』、人間の時の状態、つまり、常に発動している。
つまり、霊体化している最中でも飢餓を発生させてしまえば、バーサーカーはアグニへと変身し、その場で暴走してしまうと言う可能性を孕んでいる。


299 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:10:02 .VSydijA0

『羅刹』
ランク:D++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:自身
バーサーカーがアートマを得るに至った悪魔化ウィルスと言うものはそもそも、5年前に起った、
テクノシャーマンの深い悲しみによって暴走してしまった太陽、その陽光に含まれる超常存在の『情報』を元に作られている。
この宝具は本来ならば、太陽の光に含まれる情報の波動、元居た世界で『ソーラーノイズ』と呼ばれるものが最高潮に達した際に、
バーサーカー本人の意思を無視して勝手に発動する宝具であった。今回の聖杯戦争の太陽、それが生み出す光にはそう言ったものはないが、
何らかの原因によりアグニの適切な変身プロセスを妨害或いはジャミングされた時、この宝具は発動。
発動するとバーサーカーは右腕だけがアグニの腕に変貌、後は人間の姿と言う半人半魔の姿に変身する。
この状態のバーサーカーは、ステータスを羅刹時の物に修正し、更にA+ランク相当の仕切り直しと、Aランク相当の先制攻撃スキルを獲得。
更に物理攻撃の威力がアグニ状態の数倍にまで向上し、敵の攻撃回避率が跳ね上がる。
そして何よりも、この状態のバーサーカーの攻撃は、ありとあらゆる魔術的な加護や障壁、耐性を無視し、本来与えられる筈だったダメージを与える、
と言う凄まじいメリットがある。耐久に優れないサーヴァントは、この状態のバーサーカーの攻撃を受けるだけで致命傷となる。

 強力なメリットがある反面、デメリットも凄まじく、この形態からバーサーカー自らの意思でアグニ形態、人間形態への変身は不可能で、羅刹状態から数分の時間を経る事で、人間形態に戻る事が可能。
魔術、勇猛、火天スキルを失ってしまい、同時に、ステータス強化効果のないDランク相当の狂化も獲得。
前述のように攻撃の威力は極めて高いが、その攻撃の命中率は攻撃そのものが大ぶりの為極めて低く、極め付けが、
耐久と魔力がE-相当にまで下降してしまう為に、被ダメージが倍加する等、多大なリスクを抱え込んでしまう事。
余程の勝機を見出さない限りは、高い仕切り直しスキルを利用し、逃げた方が無難の宝具である。

【weapon】

グレネードランチャー:
人間時のバーサーカーが利用する近代兵器。アートマ覚醒前から使用している武器。
アグニに変身する時は、アグニの火力の方が遥かに優れる為、その場でこの武器は放り捨ててしまう。

爪:
アグニに変身した際の武器。バーサーカーの筋力によって振るわれる爪の一撃は、鉄や鋼と言った金属を容易ぐ拉げさせ、切り裂いてしまう。

【サーヴァントとしての願い】

聖杯自体には興味がないので、戦いを終らせてとっとと元の場所に戻る。だが負ける事は悔しいので、アッシュに聖杯をくれてやってから還る

【基本戦術、方針、運用法】

兎にも角にも、『飢餓』との付き合い方が最も重要となるサーヴァント。
狂化による理性と言語能力の喪失が平時に限り全くなく、宝具使用時のハイスペックなステータス、
かつ対魔力と言った防御スキルや勇猛と言った攻撃スキル、魔術を用いた搦め手など、本来のスペックは非常に高い。
そう言った長所を、飢餓は全て無に帰すだけでなく、戦闘能力が大幅に下がる上に一丁前に狂化してしまうと言う致命的な弱点すら負っている。
解決方法はNPCやサーヴァント、人間を喰らえば良いとはいえ、NPCを喰らい過ぎた場合は今度はルーラーによる討伐令すら下りかねない上に、
度を越して喰らい過ぎるとヒート本来の人格が消滅すると言うこれまた無視出来ないデメリットを負ってしまう。
非常に上級者向けのサーヴァントであるが、飢餓スキルによる利点を無理やり上げるとするならば、軍団を生み出す宝具に強い事だろう。
生み出される軍団を喰らう事で、理性が続く限りは永久機関となる事が可能であるからだ。が、ヒート本人は『待ち』の戦い方に性質上非常に弱い。
兎に角積極的に戦闘を仕掛け、飢餓を抑える事を最重要事項とする事が要となるサーヴァントである。


300 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:10:16 .VSydijA0





【マスター】

アッシュ@テイルズオブジアビス

【マスターとしての願い】

ヴァン・グランツの消滅

【weapon】

ローレライ教団の神託の盾(オラクル)騎士団が振るう長剣を所持している。

【能力・技能】

神託の盾の首席総長であるヴァンから、高いレベルで各種の剣技や格闘術を教わっている。
三騎士のサーヴァントと相手でも、それなりに打ちあえ、持ち堪えられる程度には優れている。
また譜術(魔術)の腕にも覚えがあるが、こちらの方は苦手なのか、本家の譜術士には想到技量が劣る。

本来ならば超振動と呼ばれる、如何なる物質でも消滅させる超振動と呼ばれる現象を単独で引き起こす事が可能な人物だったのだが、
ゴッサムシティにはアッシュが超振動を引き起こすのに必要な、『ローレライ』と呼ばれる意識集合体が存在しない為に、事実上発動は不可能。


【方針】

聖杯を勝ち取る。


301 : アッシュ&バーサーカー ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 06:10:26 .VSydijA0
投下を終了します


302 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/26(日) 11:47:39 VztfE8ZY0
投下乙です。
自分も投下します


303 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/26(日) 11:48:23 VztfE8ZY0
.





――――――知性は特権ではなく、授かり物だ。
――――――人類の為に使わなければならない。





.


304 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/26(日) 11:49:26 VztfE8ZY0

◆◆◆◆


衆愚の街、ゴッサムシティの夜。
そこには常に変わらぬ空気が流れ続ける。
犯罪と悪徳。栄華と貧困。
混沌の渦巻く街は歪んだ形相を見せながら、普段と変わることなく回り続ける。

日々を這いつくばるように生きる溝のような貧民達が住まうスラム。
貧相な見た目をした老若男女が気力の無い瞳で生活を送っている。
生産的な経済活動は殆ど行われず、貧しさ故の犯罪も横行する悪徳の区画。

恵まれている者は皆思うだろう。
まるで掃き溜めか、豚小屋のようだと。

そんなスラム街の外れに位置する川辺に存在するのは、大きな下水口。
最早貧困すら寄り付かない、辺境の土地と言うべき場所。
下水道に住まうのはそれこそ薄汚いドブネズミくらいのものだ。



「オズコープ社の支援も、研究の為の資金調達も、最早必要無い」



普通ならば人の立ち入るような場所ではない。
しかし、その声は確かに下水道の内部で反響していた。
二つの人影が下水道に存在していたのだ。

ぴちゃり、ぴちゃりと水音混じりの足音が響く。
下水道をゆっくりと歩いているのはサングラスを掛けた科学者風の男だ。
年齢は中年程度、渋い色合いのロングコートを着込んでいる。
その風貌は決して冴えたものではないが、地を這う浮浪者とは余りにも身に纏う雰囲気が違いすぎる。



「奇跡の願望器さえあれば、私の実験は完遂するのだからな」



背中から伸びる『異形』が、男の発した言葉に呼応するかの如く動いた。
金属と機械の音が仄暗い下水道の中で静かに反響を繰り返す。
機械で作られた蛇とも、金属で模した蛸の脚とも捉えられる『異形』は男の背中と直結していた。
男の脊椎と直結し、男の意思で自在に動く。
言うなれば機械仕掛けの触手。


四肢に加えて四本の触手―――――計八本の手足。
人の身でありながら異形の身を持つ。
その姿を目の当たりにした人々は、彼をこう呼ぶだろう。
『蛸の科学者“ドクター・オクトパス”』と。


305 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/26(日) 11:50:36 VztfE8ZY0

「無限のエネルギーを生み出す核融合炉……いや、それすらも凌駕する絶対的な成果を出せるだろう」


拳を握りしめ、どこか興奮気味の声色で呟く。

彼の触手は『力』を行使する為の武器ではない。
全ては己の研究を完遂する為の道具でしかないのだ。
彼は核融合炉による無限のエネルギーを作り出すべく、危険物質を取り扱う為の機械を開発した。
それがこの四本の触手、いわば金属製アーム。

何かに取り憑かれているかのようにぶつぶつとオクトパスは言葉を紡ぐ。
そんな彼の意思に賛同するように、四本のアームは蠢く。

否、寧ろ。
聖杯を手に取るという意思に賛同させられているのは―――――――オクトパスの方だろう。



「それがおたくの望みってワケか?」



オクトパスの言葉に耳を傾けていた男が、声を掛ける。
背中にドラム缶のような荷物を背負った屈強な体格の人物だ。
男は何とも言えぬ表情でオクトパスを見ていた。


「そうだ。それが私の夢だ」
「成る程ね。それと、もう一つ聞きたいことがあるんだけど―――」


自らのサーヴァントの問いかけに対し、オクトパスはそう断言する。
長年研究を重ね、しかし失敗に終わった実験の完遂。
無限のエネルギーの創造。
それこそが彼の追い求めている夢であった。




「本当に、あんたの“本心”なんだよな」




サーヴァントから、そんな疑問が投げ掛けられた。
まるでオクトパスの言葉に何か不信感を抱くかのような問い掛けだった。
先程までどこか高揚した様子だったオクトパスの口が止まる。


―――これが本心なのか?


当たり前だろう。
私は実験を完遂するためにこの戦いに勝ち残ることを望んだのだから。
研究を水泡に返すことこそが罪なのだ。
それこそ奇跡に頼ってでも、私は完成させなければならない。
核融合炉をも超える、究極のエネルギーの創造を成功させなければならないのだ。
そう、数多の屍を踏みにじってでも。




―――何故、自分はこうまでして執着しているのか?




「そうだ」


オクトパスが返答を口にするまで、僅かな間があった。
まるで一瞬何かの迷いがあったかのように。
彼の態度をサーヴァントは見抜いていた。
しかし今はまだそのことに触れず、ゆっくりと口を開き始めた。


「そうかい……ま、どちらにせよ乗りかかった船だ。
 サーヴァントとして召還された以上、俺はドクターのために戦うよ」


己のサーヴァントの言葉に、マスターは何も答えず。
そのまま二人の男は静寂に支配される下水道を進み続ける。


306 : ◆1k3rE2vUCM :2015/04/26(日) 11:51:13 VztfE8ZY0

ライダーのサーヴァント―――伊達明。
彼は願いを持たない。
ただ呼ばれたから、それに応じて馳せ参じた。
戦いに来た動機など、その程度のものだった。

伊達は己のマスターにある男の姿を重ねていた。
自分はこういう『科学者』というものに縁があるのだろうか。
その男は己の殻に閉じ籠り、己の為に研究を重ねていた孤独な人間だった。
世界の終末を望む哀しい男だった。
愛想は無かったし、心を開いてくれることも無かった。
最後は暴走する彼を止められず、袖を分かったのだ。

ドクター・オクトパスは彼ほど虚無的ではない。
終末のような無ではなく、有を生み出すべく戦いに臨んでいる。
そんな彼の願いを否定するつもりはない。
サーヴァントとして呼ばれた以上、彼のために戦うつもりである。

しかし。
何か引っ掛かるものがあった。
まるで何かに取り憑かれているような執念。
妄執とも取れる強迫観念じみた理想。
そんな彼の様子に奇妙な疑念を抱いていたのだ。
あれは本当に、『彼』なのだろうか。



(なあ、ドクター。あんたの本心ってのは――――)



最後まで自分の殻に閉じ籠り続けた一人の科学者の姿を想起し、心中で静かに呟く。
願いを叶えるのは結構だ。
だが己のマスターである以上、破滅の道は進んでほしくない。
お人好しのサーヴァントは、マスターの身を静かに案じ続けていた。


307 : ドクター・オクトパス&ライダー ◆1k3rE2vUCM :2015/04/26(日) 11:52:17 VztfE8ZY0
【クラス】
ライダー

【真名】
伊達 明@仮面ライダーオーズ

【属性】
秩序・中庸

【ステータス】
・通常時
筋力D 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具D

・仮面ライダーバース変身時
筋力B 耐久B 敏捷C+ 魔力E 幸運C 宝具C

【クラス別スキル】
騎乗:D+
近代以降の乗り物ならばある程度乗りこなせる。
特にバイクの操縦に長ける。

対魔力:-(D)
仮面ライダーバース変身時のみDランク相当の対魔力が発動。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
心眼(真):C
卓越した戦闘センスによる洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

医術:C
医者としての技術を備える。
生前は世界各地で活動を行う医療チームに所属していた。

観察眼:B
物事の本質を捉える才。
特に他者の心の機敏を見抜くことを得意とする。

自己保存:C-
通常の自己保存スキルとは異なり、自身の生存という欲望の為に戦った在り方の具現。
自らが危機に瀕した際、全パラメータに一時的なプラス補正が掛かる。
ただしマスターの危機においては機能しない。

【宝具】
『目覚める欲望、誕生の時(バース・ドライバー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ライダーが装着する変身ベルト。
後述のセルメダルをスロットへ投入し、レバーを回すことで『仮面ライダーバース』に変身する。
バース変身時には全パラメータが強化される他、セルメダルを投入することで後述の宝具『バース・CLAWs』を召還可能。

『出でし武装、欲望の戦士(バース・クロウズ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
セルメダルのパワーによって運用されるバース専用の武装「バース・CLAWs」。
仮面ライダーバース変身時、バースドライバーのスロットにメダルを投入することで召還出来る。
武装の種類は以下の通り。

・ブレストキャノン
胸部に装備されるキャノン砲。
弾丸状のエネルギーを射出する他、出力を調整することで高火力の砲撃を行える。

・キャタピラレッグ
両足に装備されるキャタピラ。
高速滑走を行うことができ、悪路や壁面も難なく移動可能。
キャタピラを纏った蹴りで対象にダメージを与えることも出来る。

・ドリルアーム
右腕に装備されるドリル状の強力な近接武器。

・クレーンアーム
左腕に装備されるワイヤーフック。
ワイヤーは伸縮自在であり、中〜遠距離にいる敵の拘束や引き寄せ等を主な用途とする。

・ショベルアーム
左手に装備されるショベル状の武装。
高い出力を誇る近接武器であり、敵の拘束や投擲、打撃に用いられる。

・カッターウィング
背中に装備される飛行ブースター。
高速飛行を行える他、翼による斬撃も行える。

『祝福されし欲望、覚醒の日(バース・デイ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
CLAWsの全武装を装備したバースの最強形態。
発動中は筋力・耐久・敏捷にプラス補正が掛かり、更にあらゆる攻撃判定が大きく強化される。
重武装による攻撃力・機動力を兼ね備えた強力な形態だが、維持には多大な魔力を必要とする。


308 : ドクター・オクトパス&ライダー ◆1k3rE2vUCM :2015/04/26(日) 11:53:03 VztfE8ZY0

【Weapon】
『セルメダル』
仮面ライダーバースとして戦う為に必要不可欠な銀色のメダル。
魔力による生成が可能。

『ライドベンダー』
セルメダルを動力源とするバイク。
本来はカンドロイドを提供する自販機でもあるが、聖杯戦争においてはバイク形態のみが使用可能。

『バースバスター』
セルメダルを装填して使用する銃器。
メダル状のエネルギーを弾丸として射出する。
セルメダルのポッドを銃の上部に装填することで強化砲撃『セルバースト』を発射できる。

【人物背景】
鴻上ファウンデーションに雇われた男性。
豪快で大雑把な性格だが、鋭い観察眼と冷静な判断力も併せ持つ。
真木博士によって開発されたバースドライバーを用い、仮面ライダーバースに変身して戦う。
本職は医師であり、世界中で活動する医療チームに所属していた。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。
呼ばれたのでそれに応えたのみ。

【方針】
ドクターの方針に従う。
その一方で彼の本心を知りたい。

【基本戦術】
戦闘においては仮面ライダーバースに変身することが必須。
バース変身時は豊富な武装の恩恵で遠近共にそつなく戦える。
ライドベンダーやキャタピラレッグ、カッターウィングによる機動力も備えている。
様々な状況に対応出来るオールラウンダーだが、その分宝具込みでの燃費は決して軽くない。
格闘戦のみならば然程魔力は喰わないが、能力を最大限活かす為にはやはりCLAWs等の使用が必要不可欠。
そのため無闇なセルメダル消費を避けつつ、状況に応じた的確な武装運用が必要とされる。
なお『CLAWs・サソリ』はサーヴァントとしての制限により使用できず。



【マスター】
ドクター・オクトパス(オットー・オクタビアス)@スパイダーマン2(実写版)

【マスターとしての願い】
核融合炉さえも凌駕する完璧な無限エネルギーを作り出す。

【weapon】
『金属アーム』
四本の伸縮自在の金属アーム。実験中の事故によって外すことが出来なくなっている。
オクタビアスの神経・脊椎と連結しており、彼の意思で自在に操ることが可能。
内部にはアームを制御する人工知能が搭載されているが、前述の事故で制御チップが破損。
暴走した人工知能はオクタビアスの自我を乗っ取り、彼を凶悪なヴィラン「ドクター・オクトパス」へと変貌させた。

【能力・技能】
科学者としての天才的な頭脳。核エネルギーの研究を行っていた。
本人は常人に過ぎないが、驚異的な力と高度な人工知能を持つ金属アームで戦闘をこなせる。
主に四本のアームを駆使した立体機動、アームのパワーを活かした打撃攻撃や拘束、投擲などを行う。

【人物背景】
核融合炉によるエネルギーの研究を行っていた天才物理学者。
元々は善良な人物で、スパイダーマンの正体であるピーター・パーカーとも意気投合していた。
核融合エネルギーを取り扱う為の道具として4本の金属アームを使用している。
しかし公開実験の際に核融合炉の暴走による爆発事故が発生。
妻を喪い、自らも名声を失うばかりか一生アームを取り外せない身体になってしまう。
更に事故によってアームの人工知能が暴走、思考をアームに支配されてしまう。
オクタビアスは狂気に取り憑かれ、実験再開の為に犯罪を犯すヴィラン「ドクター・オクトパス」と化した。

【方針】
聖杯を勝ち取る。その為の手段は選ばない。

【令呪】
原子核とそれを囲う四本の触手を模した形状。
消費は触手左側二本(一画目)→触手右側二本(二画目)→原子核(三画目)。


309 : 名無しさん :2015/04/26(日) 11:53:29 VztfE8ZY0
投下終了です。


310 : ◆GzXFQE279s :2015/04/26(日) 12:32:06 5GHkTRlw0
皆様投下乙です
自分も投下します


311 : 邂逅 ◆GzXFQE279s :2015/04/26(日) 12:33:26 5GHkTRlw0
自分は何故ここにいるのだろう。
思春期の青少年が一度は考えるようなことを、何故いい歳をした社会人である自分がずっと悩み続けているのだろう。
犯罪の溢れる街ゴッサムで真面目に捜査をしながら、一条薫の胸中には形容しようのない感情が駆け巡っていた。
日本からゴッサム市警に出向して以来、腐敗と汚職に塗れる周囲の環境に辟易しつつも腐らずに仕事をこなす日々。
だがどうしてだろう。この日々が何か致命的に間違っているような根拠のない妄想が脳裏から離れてくれない。

「疲れているのか…?」

馬鹿な、と弱気に過ぎる考えをすぐに否定した。
まだ二十代の半ばを過ぎたばかり、体力の衰えを感じるには早すぎるというものだ。
気を取り直して聞き込み捜査を続けようとした時だった。

「何だ…蔦か?」

足元に不自然に伸びる植物の蔦が見えた。
街中でこのような伸び方をする植物など見たことがない。
不審に思い蔦の生えているところを探っていくと貧困層が住む居住区に行き着いた。


「どういうことだ……」


この居住区はあまり衛生管理が行き届いておらず住人も極端に少ないことは一条も知っていた。
間違っても植物が自然に繁殖できるような環境ではないはずだ。
にも関わらず謎の植物は明らかにこの一帯を中心に繁殖している。


「ウワァアアアアアアアアア!!!」


奥の方から男性の絶叫が木霊した。
ただならぬ事態が起こっていると判断した一条は全速力で声のした方へ駆けつけた。
辿り着いた先にいたのは駐車場の柱にへたり込んでいる東洋人らしき男性と緑の体躯に長く鋭い爪が特徴的な怪物だった。


(何だ、この感覚は?)


明らかに非現実的な存在を目の前にしたにも関わらず一条の身体は自分で驚くほど冷静に動いていた。
自分は怪物的な存在を知っている。しかしあの怪物には覚えがない。
奇妙な既視感と違和感が脳裏を交差し続ける。
その間にも身体は敏速に動き、手にした拳銃から発射された弾は正確に怪物を捉えていた。
そして銃弾がまるで効かなかったことをも冷静に受け止める自分がいた。

「早く逃げて下さい!!」

しかし怪物の注意を一条に向けさせる効果はあったようだ。
男性が反対方向へ逃げ出したことを確認し、続けて二発怪物へ銃撃を見舞ったがやはり効果は無い。
あまりにも絶望的な状況。だが自分はこの感覚を知っている。


(そうか……、俺は……!)


不意に、パズルのピースが嵌るように一条の記憶が蘇った。
多くの犠牲を出しながら根絶した未確認生命体と姿を消したかけがえのない友人。
長野での最後の戦いから一年経ったある日、一条は休暇を利用して東京を訪れた。
警視庁をはじめとした色々な場所で挨拶回りを済ませ最後に訪問した城南大学。
そこでかつて五代雄介が買ったというシャブティの人形に触れた時、一条は意識と記憶を失いこのゴッサムに呼び寄せられたのだ。
しかし、どうやら自分はここまでのようだった。

引き撃ちしようとした一条を嘲笑うかのように怪物は一気に距離を縮めると爪を振るった。
咄嗟に転がって自身が切り裂かれることは避けられたものの銃はそうはいかず、途轍もない切れ味で銃身を半ばまで切り取られてしまった。
腹部の装飾品こそ無いが人外の能力という面ではこの怪物もグロンギと大差ないようだ、などと妙に冷静な考えが過る。
自分はもうすぐにでも死ぬだろう。ここにクウガは、五代雄介は存在しないのだから。
それでも後悔はなかった。自分が一条薫である限りこの怪物に立ち向かわないという選択は有り得なかっただろうから。


312 : 邂逅 ◆GzXFQE279s :2015/04/26(日) 12:34:14 5GHkTRlw0


「勝手に諦められちゃ困るんだがな」
『カメンライド・ディケイド!』
「何!?」


死を目前にした一条の視界にマゼンタの戦士が飛び込んだ。
ごく僅かにクウガに近い意匠を残す戦士は円熟した動きで怪物に拳打を見舞い圧倒する。
回し蹴りで怪物を駐車場の壁まで吹き飛ばしたが相手は未だ健在のようだった。

「しぶとい奴だな。いや、俺の力が普段より落ちてるのか」

それを見た戦士はカードのようなものを取り出した。
戦士の背後にいた一条には見えなかったが、戦士はカードを腰のバックルに装填し読み込ませた。

『カメンライド・クウガ!』
「馬鹿な!?」

懐かしささえ感じる音と閃光からもう見ることもないと思っていた戦士の姿が現れた。
戦士クウガ、五代雄介にしかなれないはずの存在ではなかったというのか。
いや、よく見てみればあのバックルはアークルではない。では何故クウガになれる?


『ファイナルアタックライド・ククククウガ!!』


混乱する一条を余所にクウガが跳躍、かつて何度も見た跳び蹴りが鮮やかに怪物を捉えた。
吹き飛ばされた怪物、着地したクウガ。
やがて怪物は多くのグロンギがそうであったように爆発、四散した。
脅威が去ったことを確認したか、クウガは変身を解き一条の知らない警官の制服を着た青年の姿になった。
当然だがサムズアップはなかった。


「君は何者だ?何故クウガに……」
「なるほどな、大体わかった。あんたはクウガの世界の人間か」
「クウガの世界だと?」
「世界は広いってことだ。続きはもう少し話しやすい場所にしよう」


歩き出した青年の後を追い、一条もその場を離れることにした。
右手の甲には令呪というらしい紋様が浮かび上がっていた。

「彼が俺のサーヴァント、ということか」

少なくとも敵対的な存在ではなさそうだ。
グロンギ族の人と同じ外見をしながら氷のように冷たい瞳を知る一条は青年は冷酷な存在ではないと感じていた。





「お待たせしました」

とある喫茶店、青年が注文した先ほどのマゼンタの戦士の顔を模したような巨大なパフェが運ばれてきた。
一条はコーヒーのみを頼み一息入れることにした。

「もう察してるだろうが俺があんたのサーヴァント、デストロイヤーだ。
真名は門矢士。通りすがりの仮面ライダーで世界の破壊者とも呼ばれてる」
「破壊者…それに仮面ライダー?仮面ライダーとは一体何なんだ?」
「そういえばクウガの世界じゃ仮面ライダーの呼び名は使われてなかったな。
わかりやすく言えば、人間の自由と平和を守るために戦う者のことだ」

言われて一条はコーヒーを一口飲んでから考え込む。
確かに五代は広義的には人々の平和を守るためにクウガとして戦っていたと言える。
その意味では紛れもなくクウガは仮面ライダーと呼んで差支えない。
しかしどうも喉に魚の小骨が刺さったような違和感がある。
五代が戦った直接の理由は自由や平和のためというような、大義めいたものではなくむしろ――


「だが、クウガに関して言えば少し違う。そうだろう?
クウガが戦う理由は皆の笑顔を守るため――違うか?」
「…!何故それを?」
「言ったろ、世界は広い。そして俺は色々なライダーの世界を旅した。
だからクウガを知っているし、俺自身がクウガになることもできる」
「しかし、君ほどの戦士がいたのなら我々警察がそれを知らないということは有り得ないはずだ」


一条が見ただけでもマゼンタの戦士、いや仮面ライダーはクウガと同等の力を持っていた。
それほどの力を持つ者が五代の人物像を知ることができるほど近くにいたなら警視庁が必ず彼の存在を捕捉しているはずなのだ。
指摘されたデストロイヤー、門矢士は紙とボールペンを二つずつ取り出し片方を一条に渡した。


313 : 邂逅 ◆GzXFQE279s :2015/04/26(日) 12:35:01 5GHkTRlw0

「今からここに俺とあんたが知るクウガの本名を書く。
そうすればあんたの疑問は解けるはずだ」
「……わかった」

クウガが五代雄介であることは警察内部以外の者に容易く公開していい情報ではない。
マスコミに露見すれば混乱や五代への迫害が起きることは間違いないからだ。
しかし聖杯戦争という全てが一条の理解を越える現象を前にそんな秘密を抱えることは意味のないことだとも気づいていた。
素直に士に従い五代の本名を書き、士が書いた紙と交換した。
そこに書かれていた名前は『小野寺ユウスケ』。名前の読みこそ五代と同じだが間違いなく別人だ。


「これは……」
「つまりこういうことだ。クウガの世界は一つじゃない。
俺が旅したクウガの世界はあんたのいた世界とは似ているだけの別世界ってわけだ。
まあパラレルワールドみたいなもんだと思ってくれていい」
「なるほど…」


実のところ、士は最初からほとんど全てを理解していた。
士の旅したクウガの世界でクウガの正体を知っている人間は八代藍しかいなかった。
つまりクウガの正体を知る警官と士に全く面識がないというのは有り得ない。
であれば剣崎一真と剣立カズマのように同じライダーに変身する別世界のクウガの知り合いだと考えた。
恐らく自分のマスターは八代藍と同じような立ち位置にいる存在なのだろう。


「で、本題はここからだ。この聖杯戦争であんたはどう動く?
元の世界に帰れるのは優勝した一組だけ、負ければ死なないまでもこの世界に閉じ込められる。
いや、さっきの化け物が他にもいるならどのみち死ぬだろうな」
「私はマスターであるより前に一人の警察官だ。人殺しや殺し合いの進行を容認することはできない。
無論、死ぬつもりもない。可能な限り脱出し、元の世界に帰還する方法を探したい」
「つまり聖杯にかける願いはないってことか?それは本当にあんたの本音か?」


試すような問い。一瞬だが一条は言葉に詰まった。
今でも五代を戦いに巻き込むべきではなかったのではないか、という後悔に囚われることがある。
もしアークルに選ばれた戦士が自分ならどれほど良かったか……何度そう思ったかわからない。
それでも。


「後悔していることがある。恐らく私がマスターに選ばれた理由もそれなのだろう。
だが奇跡に縋ってまで過去を捻じ曲げようとも思わない。君には申し訳ないが……」
「ある女がいた。そいつは自分が死んで怪物になるかもしれない時にも刑事であり続けた。
ある男に世界中の人の笑顔を守るように命令し、そして人間のまま死んでいった。
あんたがその女と同じなら、信用するに値するマスターだ。
俺は聖杯を使うより胡散臭い願望器を破壊したい。まあ利益は一致してるな」
「ありがとう」


信用の証にと握手のために手を差し出した一条だが、士はふいと横を向いてしまった。
何か不味いことを言ってしまっただろうか?


「俺はあんたの名前をまだ聞いてないんだが、マスターなら名乗るのが礼儀じゃないか?」
「そうだったな、すまない。長野県警の一条薫だ、よろしく頼む」


士は無言で手を差し出し、固く握手を交わした。
外は綺麗な青空になっていた。


314 : ◆zzpohGTsas :2015/04/26(日) 12:36:37 .VSydijA0
投下乙です。
拙作、アッシュ&バーサーカーのサーヴァントステータス部分に、少々ややこしい部分を発見いたしましたので、修正をお願いいたします
具体的には、ヒートの人間時のステータスのカッコの部分を削除、
宝具欄、『右腕に刻まれし炎の弾丸(アートマ・ファイアーボール)』の記述、『アグニに変身する事で、バーサーカーのステータス、及び一部のスキルはカッコ内のそれに修正される』を、
『アグニに変身する事で、バーサーカーのステータスを宝具発動時の物に修正、及び一部のスキルをカッコ内のそれに修正される』に変更いたしますようお願いします

お手数かけて申し訳ございません


315 : 邂逅 ◆GzXFQE279s :2015/04/26(日) 12:36:41 5GHkTRlw0
【クラス】
デストロイヤー

【真名】
門矢士@仮面ライダーディケイド

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:E 幸運:B 宝具:A+(通常フォーム)

筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:B 宝具:A+(最強コンプリートフォーム)

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
破壊者:A
「世界の破壊者」と呼ばれ恐れられた仮面ライダー。
相手が持つ防御系スキル、宝具の効果を最大三ランクまで削減してダメージを与える。
また属性が悪かつ怪物の性質を帯びる者に対して与えるダメージが大幅に上昇する。
かつては仮面ライダーに対しても有利な補正を得られたが今は失われている。

【保有スキル】
直感:B
戦闘時、常に自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。大抵のことは「大体わかる」。
また未知の物事を理解しようとする際にプラスの補正が得られる。

騎乗:C
騎乗の才能。現代の乗り物及び仮面ライダーに関わるマシンを乗りこなせる。

変化:A
カメンライド、フォームライドのカードを用いることにより、他のライダーへ変身できる。

【宝具】

『世界の破壊者(ディケイド)』
ランク:A レンジ:- 種別:対人(自身)宝具 最大捕捉:1人
「世界を巡り、全てを破壊する存在」である、異端なりし仮面ライダー。
門矢士がディケイドライバーとライダーカードを用いることにより、「仮面ライダーディケイド」へと変身する。
「クウガ」「アギト」「龍騎」「ファイズ」「ブレイド」「響鬼」「カブト」「キバ」「電王」のライダーカードを所有し、その力を自在に振るうことができる。
ただしサーヴァントとしての規格に合わせ一部のライダーカードの性能はデチューンされている。
具体例は「アタックライド・クロックアップ」、「フォームライド・アクセル」、「アタックライド・インビジブル」、「アタックライド・イリュージョン」など。
変身したライダーによってステータスも変動するがディケイド通常フォーム以上のステータスを持つライダーに変身した場合はその分維持に必要な魔力消費も増大する。
またディケイドが変身できるのは各ライダーの基本形態及び中間強化形態までであり、自身が他のライダーの最強形態に変身することはできない。

『激情態』
ランク:A レンジ:- 種別:対人(自身)宝具 最大捕捉:1人
破壊者としての使命を受け入れた士が変身するディケイドの姿。
この形態ではカメンライドを行うことなく他のライダーの能力を行使することができる。
ただし使命を終えた現在はこの姿に変身することはできない。

『真・歩くライダー図鑑(最強コンプリートフォーム)』
ランク:A+ レンジ:- 種別:対人(自身)宝具 最大捕捉:1人
携帯端末ケータッチにコンプリートカードを挿入することにより、強化形態最強コンプリートフォームへと変身する。
幸運以外のパラメーターが全て1ランク上昇し、アタックライドの効果もそれぞれ強化される。
ファイナルアタックライドで呼び出したライダーが最強フォームとなり、ディケイドの動きに連動し共に必殺技を放つ。
また周囲にいる味方の仮面ライダーを変身条件を無視して最強形態へと変身させる。
最大の必殺技はクウガ〜キバまでの最強形態のライダー九人を呼び出して全員で必殺技を仕掛ける「アタックライド・テレビクン」。


316 : 邂逅 ◆GzXFQE279s :2015/04/26(日) 12:37:23 5GHkTRlw0

【weapon】
ディケイドライバー…仮面ライダーディケイドへの変身ベルト。
内部の輝石「トリックスター」が魔力炉の機能を兼ね備える。
ただしサーヴァント化によって魔力生成量は大幅に低下しており現界、戦闘を最低限支える程度にしか機能しない。
当然霊体化している最中は魔力炉としての機能は発揮されない。

ライドブッカー…ブックモード、ガンモード、ソードモードの3種類の形態に変化する万能武器。

マシンディケイダー…ディケイド専用に開発されたバイク。

ケータッチ…タッチフォン型のディケイドの強化ツール。

カメラ…士が普段から持ち歩いている2眼のトイカメラ。
だが、彼の撮る写真は何故かいつも歪んで映る。
本人曰く「世界が俺に撮られたがってない」との事。

【人物背景】
いつの間にか光写真館に居候していた青年。素性不明で本人も過去の記憶がない。
ディケイドライバーで仮面ライダーディケイドに変身する。年齢20歳。
紅渡から、世界の融合を防ぐ為に旅にでなければならないと告げられ自分の本当の世界を探す為、世界の崩壊を防ぐ為に光夏海達と世界を巡る旅にでる。
かなりの自信家で、誰に対しても尊大な態度を取るがそれに見合う能力を持っている。
素直でなく露悪的な言動を取ることも多いが本質的には正義感の強い熱血漢。
世界を移動する度に様々な役割を振られており、この聖杯戦争ではサーヴァントでありながらゴッサム市警に務める警察官という役割を与えられている。

【サーヴァントとしての願い】
世界の破壊者らしく、聖杯と悪党を破壊する。





【マスター】
一条薫@仮面ライダークウガ

【マスターとしての願い】
警察官として殺し合いは断固拒否。
聖杯戦争を止める方法を探す。

【能力・技能】
異常に頑強な肉体を持ち、一般人では一切立ち向かえないほど強力な存在であるグロンギの攻撃を受けても耐え抜く(ただし怪我を負うことはある)。
また百発百中の射撃の腕前を持ち、狙撃銃でグロンギの持つ小さな装飾品を全て撃ち落すなど人間業とは思えない精度を誇る。
作中ではコルトパイソンや改造ライフルなど反動が大きく扱いづらい銃を使いながら元々の射撃精度を落とすことはなかった。
他にも剣道、体術、車両の運転技術など警察官に求められる技能全てを極めて高い水準で修めており、推理力も高い。
しかし携帯電話をマナーモードにすることだけは苦手である。

【人物背景】
1974年4月18日生まれ、AB型。名古屋市出身。
長野県警警備課に所属する刑事で階級は警部補。自分の誕生日に水害から市民を救って殉職した警察官だった父親に憧れ、刑事になった(誕生日プレゼントは受け取らないことにしている)。
生真面目かつ堅い性格で滅多に笑うことはなく、たまに笑みをこぼすと周りから驚かれる。
長野県九郎ヶ岳の遺跡発掘現場で起きた事件を追ううちにグロンギと遭遇し、広域指定された同種の事件を集中的に扱う未確認生命体合同捜査本部(警視庁に設置)に派遣される。
警視庁に派遣後、周囲からは彼女ができたと思われているが独身である。
当初はクウガとして戦う五代雄介を戦いに巻き込むまいとしていたが「自らを犠牲にしてまで戦う」彼の姿と覚悟を見て、五代に協力することを決意。独断でトライチェイサー2000を渡すなど次第に強い友情で結ばれていった。
グロンギ殲滅後は長野県警に戻った。

【方針】
サーヴァントとしてのディケイドは原作とは異なり最低限の前衛性能を持った中後衛型サーヴァントといったところ。
ステータス、技量ともに三騎士には届くべくもなく非変身時のアサシンの奇襲への耐性もなく対魔力が無いためキャスターの魔術にも滅法弱い。
持ち味のライダーカードも使用する度に膨大な隙を晒すためサーヴァント戦では使いどころを誤ると即敗北に繋がる。
特にセイバー、ランサー、アサシンといった俊敏さに優るサーヴァントは最早天敵と言っても過言ではないほど。
普通に戦ってはライダー以外の全てのクラスに対して不利がつくため、原作のような前に出る戦い方は厳禁。
ただし前衛能力の高いサーヴァントと組めば安全圏から多種多様な手段で攻め立てることができ、破壊者の名に恥じない強力さを発揮できる。
どれだけ早い段階で協力者を探し出せるかがこのチームの生命線となる。
尚能力を使う度にベルトが電子音声を鳴らす性質上ディケイドは真名を秘匿することが全く出来ない。


317 : ◆GzXFQE279s :2015/04/26(日) 12:42:32 5GHkTRlw0
以上で投下を終了します
尚この話は>>1氏が投下された「000-2 But who will watch the watchmen?」が正式採用されることを前提とした話です
ですので>>1氏に不都合があれば遠慮なく候補から落としてください


318 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:47:39 YOL3Cogg0
投下乙です。
自分も投下します


319 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:50:13 YOL3Cogg0


ある男が精神科医を訪ねた。
男はこう訴えた。



『私の半生は悲惨の一言だ。
 もう人生に何の希望も持てないんだ。
 世間だってひどいものだ。
 先の見えない不安定な社会を、たった一人で生き抜く辛さがわかりますか?』



医者は答えた。



『簡単な事ですよ。
 今夜、あの有名なピエロのパリアッチのショーがありますから、行ってきなさい。
 笑えば気分もよくなりますよ』



突然、男は泣き崩れた。
そして言った。




『でも先生……私がパリアッチなんです』


320 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:51:25 YOL3Cogg0
◆◆◆◆◆




「冗談さ、全部冗談さ」



血反吐と共に、男は――――エドワード・ブレイクは弱々しく声を漏らす。
世界一賢い男・オジマンディアスによる『最悪のジョーク』をまざまざと見せつけられ、笑えなくなった筈の道化師は笑みを浮かべる。
ブレイクの心は諦観のような思いに支配されていた。
突如家に押し入ってきた覆面の戦士に敗北し、死の間際へと追い詰められていた。


人間の本性は野蛮だ。
幾ら奇麗事で着飾った所で決して変わることは無い。
理想で塗り固められた社会の平和は、暴力と矛盾によって保たれる。
覆面を被った暴力が悪を叩き潰し、力という正義を振り翳す。
お笑い種だ。まるでブラックジョークだ。
人々が信じたアメリカンドリームさえも所詮は血溜まりの産物に過ぎない。

そんな歪な世界も、最終的に最悪の暴力によって滅びる。
東西対立。冷戦。その果ての核戦争。
最後は核兵器が何もかも吹き飛ばし、この世界を終わらせるのだ。
幾らヒーローがヴィランを倒した所で意味など無い。
最後は核の炎で全てを焼き尽くされ、灰の山が築き上げられるだけなのだから。



世界は所詮、悪趣味なジョークに過ぎない。



ブレイクは時代の本質を見抜いていた。
それ故に、彼は滅び往く20世紀のパロディとなった。
暴力と矛盾に塗り固められた時代を皮肉るコメディアンになることを選んだ。
暴力を享受し、悪徳をどこまでも楽しみ続けた。
男は絶望の世界でジョークを振りまくピエロで在り続けたのだ。



「おお……聖母様、お許し下さい……」



息絶え絶えな状態で、ブレイクの身体は覆面の戦士の手でゆっくりと持ち上げられる。
いつかこうなる日が来るのではないかと思っていた。
あの『最悪のジョーク』を知ってしまった自分が始末されるということを男は薄々感じていた。
そして、彼は敗北した。
己の命を狙う存在と戦い、男は負けたのだ。

男に出来ることは、ただ祈り続けるのみ。
主への、聖母への祈りを捧げるのみ。
暴力を肯定する悪漢でありながら、熱心に神を崇拝するという矛盾。
それさえも、彼にとってのジョークでしかないのかもしれない。




そして―――――ブレイクの身体が、硝子の窓へと叩き付けられる。




砕け散る硝子。宙へと放り出される身体。
ブレイクは高層マンションの自室から墜ちる。墜ちる。墜ちる。墜ちていく。
最早どうすることも出来ない。
このまま地面に叩き付けられ、ブレイクは死ぬ。
道化を演じ続けたコメディアンにとってのオチとなる。
そうなるはずだった。





己の死を理解したブレイクの右手には、いつの間にか人形が握り締められていた。


321 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:52:14 YOL3Cogg0
◆◆◆◆◆





冷戦が集結し、核戦争の脅威が去ってからも人の本質は変わらない。
悪徳に塗れ、己の欲望の為に這いずり回る。
溝水で汚れ切った真実は秩序という仮初めの平和によって覆い隠される。
ゴッサム・シティという街はまさに今の世界の縮図だった。
虚飾された輝きの裏でドブのような闇が蠢く。
人々が愛する社会秩序は悪徳という矛盾によって支配される。
まさに文字通り『衆愚』によって構成される都市だった。
欲望と悪徳の渦巻く人間達が支配する世界そのものだった。
『彼』は、そんな街の中へと放り込まれる。




「燃えろよ、燃えてしまえよ」



ごうごうと炎が燃え盛っていた。
ゴロツキ共の根城であるはずの廃ビルの一室は、地獄の形相を見せていた。
慟哭が木霊し、人間だったものが次々と炎に包まれていく。
苦痛の絶叫を上げ、踊るように悶え苦しみながらゴロツキ達は崩れ落ちていく。
最早彼らの肉体は人の形を残さぬ程にまで焼き尽くされていた。



「何もかも灰になれ――――――――!」



炎の海の中心に立つ女は笑みを浮かべる。
騎士のような鎧を身に纏った女は、その身より炎を撒き散らす。
それは火炙りの刑に処された『魔女』とでも言うべき姿だった。
紅蓮の魔女の前では皆等しく灰燼へと帰す。
憎悪と愉悦に歪んだ笑いと共に、魔女は黒い塊と化した死骸を踏み潰した。


彼らは虐殺され、魔女の魔力の糧となる。
彼女“サーヴァント”が戦い続ける為の燃料としてその魂を消耗されるのだ。
ゴロツキ達は魔女の手によって『魂喰い』をされていたのだ。


炎の中に立つ魔女を、ブレイクは見守っていた。
火の手が回っていない廊下から彼女を見張っていた。
ブレイクは葉巻をくわえ、腕を組んだまま壁に寄り掛かっている。
腑に落ちない表情を浮かべながら『己のサーヴァント』の所業を見届けていたのだ。


「…笑えねえ冗談だ」


ブレイクの口からぼそりと溢れた一言。
それが己のサーヴァントに、そして現状に対し抱いた感情だった。


322 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:53:10 YOL3Cogg0

聖杯戦争。
電脳空間『ゴッサムシティ』で繰り広げられる殺し合い。
あらゆる奇跡を叶え賜うたった一つの願望器を巡る争い。
それがブレイクを巻き込んだ事態だった。
死の間際、いつの間にか握り締めていたシャブティが彼をこの街へと誘ったのだ。

聖杯“Holy Chalice”と言えば知らぬ筈がない。
最後の晩餐で用いられ、イエス様の血を注がれたとされる杯。
あらゆる願望を叶える力を持つ稀代の聖遺物。
欧州では騎士道物語に組み込まれ『聖杯伝説』へと昇華されたという。


規格外の神秘。
主の血で満ちた超級の聖遺物。
それこそが聖杯なのだ。


だというのに、これは何だ。
無作為にばらまいた切符を手にした者を強制的に招待し、殺し合わせ、生き残った者にのみ聖杯が齎される。
奇跡の聖遺物である筈の杯が、凄惨なバトル・ロワイアルの果ての戦利品と化しているのだ。
いつから聖杯は有象無象共の血が注がれる悪趣味な骨董品になったのか。
神が齎すであろう奇跡を冒涜する―――――最悪のジョークと言ってもいい。



「熱いよ、熱いよう、身体が燃えるよう」



炎の中で魔女はふらふらと踊るように動く。
猟奇的な笑みと共に言葉を漏らし続ける。
まるで独り言のようにぶつぶつと呟き、笑みを浮かべるその姿は異常そのものだ。

魔女は身も心も狂気的に蝕まれていた。
加虐を、殺戮を楽しんでいた。
何もかも焼き付くし、その心を昂揚させていた。

かつて神の啓示を聞き、国の為に戦い、そして神に見放された乙女。
苦痛と絶望の中で死んだ聖女は世界と神を憎んだ。
そして、乙女は高潔な意志を失った。
炎にその身を焼かれ続ける悪徳の魔女と化した。




それがバーサーカーのサーヴァント――――――『ジャンヌ・ダルク』。
フランスの英雄と称される乙女(ラ・ピュセル)。




神への祈りの果てに神を憎んだ魔女は、深い信仰心を持つ悪漢のサーヴァントとして召還されたのだ。

核戦争を回避した21世紀の世界。
変わることの無い人間の野蛮な本質。
神の信奉者によって召還された神を憎む魔女。
そして、主の聖遺物を巡る殺し合い。

新たな時代を迎えても、その本質は過去と変わらない。
世界の全てはジョークに過ぎないのだ。
己のサーヴァントを見据え、ブレイクは改めてそう理解した。


323 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:54:36 YOL3Cogg0

奇跡の願望器を手にすれば、あらゆる願いを叶えることが出来るだろう。
しかし、ブレイクには叶えるべき願いがなかった。
滅び往く世界を救うつもりは無い。
オジマンディアスが齎す最悪のジョークによって救われてしまうのだから。
あの計画を知っていたにも関わらず、ブレイクはそれを止めようとしなかった。
最悪のジョークによって世界は救われてしまうと理解してしまったのだから。


もし聖杯が本当に願望を叶えるというのならば、全てを変えられる。
だが、ブレイクはその選択を選ぼうとはしなかった。
穢れた血で満ち足りた聖杯に縋ろうとは思わなかった。
偽りの聖遺物への祈りを捧げるつもりなど毛頭無かったのだ。


聖杯に託す願いは存在しない。
今更生き残った所でどうなる訳でもない。
しかし、ブレイクは自殺志願者ではなかった。
あの場で散らす筈だった命を土壇場で拾ったのだ。
それを易々と手放す程、ブレイクは愚かではない。
ならば、どうする。
導き出した答えは一つ。



ただ勝ち残り、生還するのみ。



アメリカンドリームを背負ったヒーローが他者を犠牲にし、殺戮を楽しみ、奇跡を打ち砕く。
奇跡を巡る戦いを、誰の奇跡も叶わぬまま終わらせる。
そして道徳を無視した血塗れのヒーローだけが生き残る。
ブレイクが勝ち残れば、聖杯戦争さえもそんな冗談じみた話となるのだろう。
まるで道化師が紡ぐ陰鬱な喜劇のように。

それを成し遂げる為の最大の武器こそがバーサーカーだ。
バーサーカーは歪な笑みを浮かべながらブレイクを見据える。
まだ焼き足りないと言わんばかりに、嗤い続ける。

敵は自分達と同じ、マスターとサーヴァント。
基本的にサーヴァントに対抗出来るのは同じサーヴァントのみ。
その手綱の操り方を見誤れば、待ち受けるのは死のみだろう。
故に決して油断はしない。
自分はあらゆる手を使ってこの戦いに勝ち残る。



「神よ、救い賜え―――――――」



エドワード・ブレイクは祈るように呟いた。
まるで神への赦しを乞うかのように十字を切る。
己の舞台を失った道化師は、聖杯戦争における『コメディアン』となることを決意したのだ。


324 : コメディアン&バーサーカー ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:55:28 YOL3Cogg0


【クラス】
バーサーカー

【真名】
ジャンヌ・ダルク@ドリフターズ

【属性】
混沌・狂(悪)

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷B+ 魔力C 幸運E 宝具B++

【クラス別スキル】
狂化:C
筋力・耐久・敏捷のパラメーターを1ランクアップさせるが、理性の多くを喪失する。
言語能力は健在だが、狂気に蝕まれた彼女との意思疏通を行うことは困難。

【保有スキル】
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
ただし天からの啓示を感じ取ることはできない。

魔女:B
異端の魔女として処刑された逸話の具現。
死の間際に世界と神を憎悪し、魔女の属性を獲得してしまった。
同ランクの対魔力スキルの効果を発揮し 、更に呪いやバッドステータスへの耐性がアップする。
ただし幸運値が大幅に低下してしまう。

精神汚染:A+
同ランク以下の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
ただし、同ランクの精神汚染を持たない人物とは根本的な部分での意思疎通ができない。
凄惨な最期を遂げた乙女の精神は狂気に支配されている。

【宝具】
『我が神はここに死せり(デゼスプワール・エテルネッル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
信仰を喪い、狂乱の魔女へと堕ちたジャンヌ・ダルクの象徴。
戦闘時、憎悪や憤怒、苦痛と言った負の感情を己の攻撃力へと変換する。
更に攻撃力の上昇に比例して宝具『業火の魔女』の性能が強化される。
憎しみや怒りに呑まれれば呑まれる程、魔女の攻撃は苛烈さを増していく。
ただし宝具が機能するほど防御力にマイナス補正が掛かる。

『殉教の聖女(フラム・マルティール)』
ランク:C- 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
死後に殉教者として認められ、聖人へと列挙された逸話の具現。
本来ならば聖女としての能力を強化する宝具だが、異端としての側面が色濃く表れた姿で召喚されたことにより能力が劣化。
断罪の業火を操る宝具『紅蓮の魔女』の消費魔力を軽減させるのみに留まる。

『紅蓮の魔女(ラ・ピュセル)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:333
神に背きし異端を裁く断罪の業火。魔女を焼き尽くす聖なる鉄槌。
全てを焼き尽くす灼熱の業火を放出し、自在に操る。
投擲した短剣が刺さった部分から瞬時に発火させることも可能。
更に異教徒や人外の化物といった異端に対しては追加ダメージを与える。
異端として処刑され、後に聖女となったジャンヌ・ダルクの歪な奇跡の具現。

【Weapon】
両刃剣、短剣(いずれも複数本所持)

【人物背景】
百年戦争でフランスに勝利をもたらした聖女。
最期は異端の魔女として苦痛に塗れた非業の死を遂げた。
その後異世界へと辿り着き、ジャンヌ・ダルクは全てを焼き尽くす狂気の魔女と化す。

【サーヴァントとしての願い】
全てを焼き尽くす。

【方針】
全てを焼き尽くす。

【基本戦術】
宝具『紅蓮の魔女』による力押しの攻めが基本。
『殉教の聖女』の効果で宝具の魔力消費が抑えられている上、『我が神はここに死せり』によるブーストが掛かれば高い攻撃能力を発揮できる。
攻勢に回れば優秀な反面、防御に関しては不安が残る。
基礎的な戦闘技術もそれほど高くない為、三騎士との近接戦闘は避けるべし。


325 : コメディアン&バーサーカー ◆1k3rE2vUCM :2015/05/02(土) 16:56:49 YOL3Cogg0

【マスター】
コメディアン(エドワード・モーガン・ブレイク)@ウォッチメン

【マスターとしての願い】
生還する。

【weapon】
数々の重火器

【能力・技能】
常人の範疇ではあるが、ヒーローとしての高い戦闘力を持つ。
主に重火器を用いる他、身体能力も高い。

【人物背景】
合衆国直属の工作員であるヒーロー。
ヒーローの活動を禁ずるキーン条例制定後も合衆国のエージェントとしてその活動を認可されていた。
暴力衝動を満たす為にヒーローになった粗暴な悪漢だが、一方で深い信仰心を持つという矛盾した一面を持つ。
非常に頭の切れる人物でもあり、核戦争が目前に迫り破滅へと向かう時代の中で『コメディアン』となることを選んだ。

1985年、ヒーローの一人であったオジマンディアスの計画を知ったことで殺害される。


【方針】
どんな手を使ってでも生き残る。

【令呪】
十字架とそれを囲む炎を模した形状。
消費は右側の炎(一画目)→左側の炎(二画目)→十字架(三画目)。


326 : 名無しさん :2015/05/02(土) 16:57:04 YOL3Cogg0
投下終了です


327 : 名無しさん :2015/05/03(日) 10:57:14 vzY9wzRk0
質問です。
氏が>>69で追加されたルールについてなのですが、


328 : 327 :2015/05/03(日) 11:01:52 vzY9wzRk0
誤送信となってしまいました、大変失礼致しました。
>>69>>1氏が追加されたルールについてお伺いしたいのですが、このNPCの正体に関する知識について参加者がどのような認識をしている形を想定されているのか、>>1氏にお答え頂いてもよろしいでしょうか?


329 : 327 :2015/05/03(日) 23:17:07 DxBLIJgc0
何度も申し訳ありません。
大変失礼ながら、>>137で氏が直接作中で言及されていたことを見落とししてしまっており、このような質問をしてしまっておりました。
自己解決の報告とともに、確認不足のために氏には不快な思いをさせてしまったことの謝罪をさせて頂ければ幸いです。大変申し訳ありませんでした。


330 : ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:33:41 kcJka/fM0
投下します。


331 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:35:56 kcJka/fM0






     かつて世界の中心に、マナを生む大樹があった。



     しかし争いで樹は枯れ、代わりに勇者の命がマナになった。
     それを嘆いた女神は、天へ消えた。
     この時、女神は天使を遣わした。
    「私が眠れば、世界は滅ぶ。私を目覚めさせよ」
     天使は神子を生み、神子は天へと続く塔を目指す。



     ……これが世界再生の始まりである。






     そして旅に出た神子は、今―――――――――――――――――――遥か遠い衆愚の街に取り込まれ、悪魔と邂逅しようとしていた。






◆◆◆◆






 金属質の、無慈悲な破砕音が奏でられる。
 長いプラチナブロンドの髪が視界の端で靡いているのを見て、コレット・ブルーネルは自らの体が後方へと投げ出されていたことに気づいた。
 次の瞬間には、薄暗い陰を掻き分けて、微かな凹凸のある人造石の床が視界の左半分を埋め尽くした。どうやら、そちら向きに転んでしまっているらしいと、一拍遅れて理解する。
 痛いことは嫌だけど、何も感じられないのはやっぱり不便だな、と……いくらか呑気が過ぎるかもしれない感想を、赤く染まった掌を見たコレットは抱いた。薄くではあるが、両の掌が裂けていた。厳しい旅の中で苦楽を共にしてきた金色のチャクラムは、敵の一撃を受け損ね砕け散らせてしまった不甲斐ない持ち主に、その刃を立てていたらしい。


332 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:36:51 kcJka/fM0

 世界再生の旅で、数々の悪漢や魔物を仲間と共に退けて来た経歴から、荒事にも慣れてはいるつもりだった。しかし容易く武器を砕かれ、成す術なく追い詰められている現状を、神子は不思議でも何でもないことと受け止めていた。

 記憶を取り戻したその時点で、聞いたこともなかった知識は完全な形で授けられている。故に、既に察しはついていた。
 今、自らに歪で巨大な剣の鋒を向ける男が、サーヴァントと呼ばれる存在であることを。

 サーヴァント。人々に語り継がれる伝説を成した英霊を、使い魔として再現した事象。
 コレットが有無を言わせず参加させられることとなったこの戦いにおいて、要となる力であり――かつて世界の命運すらも、左右した存在なのだ。
 言うなれば、かつて古代大戦を終結させた勇者ミトスが蘇り、自分の敵として立ち塞がっているに等しいということ。世界を救済し得るだけの力が破壊に用いられるのに、助けられてばかりの旅も道半ばの己が一人きりで相対すれば、こうなるのも当然の結末でしかなかった。

 ……それがわかっていても、抗わずには居られなかった。

 ここではまだ、死ねないから。
 この命を捧げるべき場所は、生まれた時から定められている。その約束を果たさなければどうなってしまうのかも、知っている。

 村の皆や、旅先で出会った人達や、仲間や、彼の――ロイドの笑顔が、脳裏を過ぎって。
 円の半分が欠けたチャクラムをそれでも握り締めて、言うことを聞かない体に難儀しながら――背に生えた翼の浮力を利用して、コレットは強引に起き上がった。

「……少し待て、セイバー。謝罪が要る」
 コレットが起き上がった瞬間、一息に踏み込もうとしていた剣士に向けて、その背後に控えていた青年が待ったをかけた。
「失礼。婦人の顔に傷をつけるのは本意ではなかった。その前に苦しませぬよう刈り取らせるつもりだったのだが……」
「……面目次第もございませぬ」
 マスターである男に一瞥され、伝説の化身であるはずの剣兵の英霊は仮面越しに、確かな謝意を口から放つ。
 一方、言われてからようやく、コレットは己が頬を浅く切っていることを発見していた。
 さぞや見事な切れ味なのだろう。おそらく痛みは元から感じなかったに違いない。しかし……

「……そのご様子だと、貴女が無くされているのは言葉だけではないようだな」
 血の雫を拭った手の甲へと視線を走らせた様子を見咎め、セイバーのマスターである青年は、コレットの状態を言い当てた。
 微かに動揺するも、必要もないことだと判断したコレットは逃げる隙を伺うために彼らを睨めつけるが――そんな油断、どこにもなかった。

「差し詰め、願いはその身を癒されることだろうか? ……いや、このような詮索も無躾か。改めて謝罪しよう。
 何にせよその目を見れば、貴女にも切実な事情があることは伺える。
 しかしそれは我ら一族も、このセイバーも同じこと。悪いが矛を収めるつもりはない」

 主の宣告と同時、セイバーから放たれる威圧感が再び増大する。
 その研ぎ澄まされた殺意の重圧に晒された瞬間、コレットは必死に保っていた己の戦意が崩れ去るのを耳にした。

 ――――死ぬ。

 そんな確信が、コレットの全身に牙を立て、何も感じられなくなったはずの肌を粟立たさせる。


333 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:38:15 kcJka/fM0

 裏切ってしまう。皆の希望を。
 損なってしまう。ここまで共に旅をして来た、仲間達の努力が勝ち取る未来を。

 もう――本当に二度と、逢えなくなってしまう。ジーニアスやリフィル、クラトスにしいな、ノイッシュにコリン、ウンディーネ……それから、ロイドに。

 ――辛いのに、涙も出ないや。

「……せめてこの爛れた街に、その意気が貶められることがないよう、安らかに眠らせると約束しよう」

 ごめんね、ロイド、皆……

 …………ううん、やっぱり、諦めたくないな。

 誰か――――――助けて。

「――やれ」
 青年の、涼やかというには冷た過ぎる声音が、一方的に処刑を命ずると同時。
 眩い白光が、廃工場に充満した宵闇を切り裂いた。

 それによって生じた一瞬の空白の後。絶対の死の予感を前に、それでも諦めきれずに瞼を開いていたコレットは、見た。
 突如として出現した白と黒、そしてマゼンタに塗り分けられた双輪の獣が、重低音の咆哮を轟かせながらセイバーとそのマスターに猛然と襲いかかり、彼らを後退させるその様を。
 絶望の淵に現れた、救世主のその姿を。

「……随分と遅いご到着だな。大切なマスターが危うく死ぬところだったぞ? 無能なサーヴァント」
 無人で疾駆するバイク、その更に奥から現れた人影に向けて、セイバーのマスターが苛立ちを隠しきれていない表情で呟いた。
 それを聞いて、コレットはどっと肩の力が抜けるのを感じた。
 助、かった……?

「――知るか。俺は別に、サーヴァントだからマスターを助けに来たってわけじゃないからな」
 対し、先程何度か白光を放っていた箱を首から垂らした一人の若い男――装飾品と思って身につけていたシャブティが変化した、コレットのサーヴァントであるはずの存在は、そんなことを宣った。

「我が君。此奴、何やら奇妙にございます」
 不遜な返答に眉を寄せた自らの主に警告を発し、覆い被さっていたバイクを弾き返して一歩進み出たのはセイバーだった。
「この距離で、サーヴァントの気配を感じ取れませぬ」
「……成程。確かに、私の目から見てもサーヴァントとは確認できない。貴様を攻撃できているにも関わらずな」
 セイバーに弾き飛ばされた後も無人のまま自走したバイクを傍らへと控えさせ、コレットとの間に割り込むように歩んできた年若い男へと、青年は微かに険しさを増した表情で問いを投げる。
「マスターを助けに来たわけではないとも言ったな。ならば貴様は、彼女のサーヴァントではないということか?」
「いーや? 俺は確かにその娘に召喚されたライダーのサーヴァントだ。だがそんなことはどうだって良い。ただ……」
 そこで彼は――ライダーは、微かにコレットを振り返った。

「助けて欲しいって声が聞こえた。俺が来た理由は、それだけだ」

 ――この身から、声は。既に取り上げられているはずだというのに。
 自らに必要だからではなく、ただ、誰にも届かぬはずだった声が聞こえたから来たのだと――ライダーは、そう嘯いた。
 その時の眼差しと、安心させるようにして一瞬浮かんだ笑顔を見て。コレットは彼の存在に、覚えのない種類の、しかし確かな心強さを覚えた。


334 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:39:25 kcJka/fM0

「お仕着せの役割なんかに従うつもりはない。俺のすることは俺が決める。おまえに文句を言われる筋合いはどこにもない」
「……随分と自由に物を言う。何なのだ、貴様は」
 青年の鋭い眼光に睨めつけられたライダーは、不敵に笑みを崩さぬまま白い箱を取り出して――それから一枚のカードを抜き取った。
「……通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ――変身!」

《――KAMENRIDE DECADE!!――》



 それがコレットの、世界再生の旅における十人目の仲間(ディケイド)との、出会いだった。






◆◆◆◆






「……それで、決まったか? コレット」

 聖杯戦争というシステムから――厳密に言えばライダーに、だが――自宅として与えられたマンションの一室で、昨夜のことを思い返していたコレットは、ライダーの問いかけに微かに身を強ばらせた……気がした。実際のところは、それを感じることができないのだからわかりようもないのだが。

「この聖杯戦争とやらで……おまえは何を、どうするのか」
 ライダーは己のマスターであるコレットに、決断を求めて来ていた。

「おまえの方針が決まらなければ、俺からはこれ以上何もしてやれない。昨日みたいに、決着を先延ばしに逃げるぐらいしかな」
 あのセイバー達との戦いを振り返り、ライダーは言う。
「とはいえ昨日のでわかっただろうが、いくら俺でもサーヴァント同士の戦いとなっちゃ骨が折れる。悪いが考える時間ばかりおまえにくれてやることはできない」
「(うん……そうだよ、ね)」
 机を挟んで対面する己がサーヴァントの言葉に、コレットはやや気後れしながらも相槌を打つ。

 昨夜は、巻き込まれたばかりで気持ちの整理がついていないというコレットの状況を看破したライダーが早々に撤退を選択したことで、戦闘行為そのものはあっさりと収束した。
 それでもサーヴァント同士の対決の舞台となった廃工場は更地となり、またライダーは今後も敵対するかもしれない主従に打撃を加えられることなく、手の内を晒したのみで終わってしまった。今後も同じことを繰り返せば周辺への更なる被害を招き、更にはライダーとコレット自身が聖杯戦争という状況に追い詰められるのを座して見守ることとなってしまう。

 それを避けるならば、どんな形であれ、方針を抱えることが必要だ。目的さえあれば、瞬間ごとの決断もそれを見据えて行うことができる。節操なく破壊を撒き散らすことも、無意味に追い詰められることも格段に減らすことができるだろう。

 だから――自分がこの聖杯戦争の中でどのように振舞うべきなのかを、しっかり考えて自分で決めろと。コレットは昨夜、ライダーに告げられていた。
 与えられた猶予は一日。今この時こそが、その答えを問われる時だった。

「どうするんだ? 聖杯があれば、シルヴァラントとテセアラも、二つの世界を両方とも救うことができるかもしれないし……何よりおまえも、死なずに済むかもしれない」
 既にコレットの事情を把握しているライダーは、彼女の抱えた悩みをそのまま、直球で尋ねて来た。

 旅の中で天使化が進み、最早声を発することもできない身ではあるが、契約によって結ばれたレイラインを介することでコレットは自身のサーヴァントとの淀みない会話を可能としていた。また天使化の影響によって眠ることができないからと、同じく眠る必要のないサーヴァントの身であるライダーとの語らいで、つい喋り過ぎてしまったかという考えが頭を過る。



 ――コレットは元居た世界において、世界再生の旅に身を投じた神子だった。

 生命の源であるマナが枯渇し、死滅の危機に瀕した衰退世界シルヴァラントにおける救世主。旅を終え天使となることで女神マーテルを目覚めさせ、世界をマナで満たして再生させるために生まれて来た血族の、当代の神子。
 コレットはもちろん、自らの世界を愛していた。そこで暮らす人々に飢えることなく、死の影に怯えることなく生きて欲しいと願い、そのために神子としての使命を果たそうと、心に決めていた。

 それでも、今の彼女には微かに後ろ髪を引かれる要因が二つ、存在していた。

 一つは世界の壁を越えて現れた仲間、藤林しいなの故郷テセアラ。互いに見ることも触れることもできずとも、確かにシルヴァラントと隣り合い、限られたマナをお互いに搾取し合う関係にあるもう一つの世界。
 衰退世界シルヴァラントのマナは現在、繁栄世界であるテセアラに吸い上げられている。神子の執り行う世界再生の真相とは、その関係を逆転させる儀式なのだという。


335 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:40:59 kcJka/fM0

 故に、シルヴァラントが再生すれば今度はテセアラが滅亡へと向かう。それを阻止するための使命を帯びて、コレットの暗殺に差し向けられたのがしいなだった。
 コレットは、シルヴァラントの皆が大好きで。だから、世界再生を成し遂げないわけにはいかない。
 でも、しいなを見ていれば……テセアラの人々も、シルヴァラントの皆と同じで、日々を懸命に生きていて。なのにマナが枯れてしまえばどんなに苦しむのか、その時の顔がコレットにはくっきりと想像できてしまっていた。
 そのしいなもシルヴァラントの現状を見て迷いを抱き、二つの世界がともに救われる道がないものかと今はコレットに賭けてくれている。彼女との約束で、世界再生の旅の最後の目的地・救いの塔で待つ、コレットの父である天使レミエルに、何か方法がないものかと尋ねるつもりではある。
 しかし、それでテセアラも救われる保証などどこにもない。聖杯の力があればあるいは、と縋りたい気持ちは確かにある。

 ライダーが口にしたもう一つの理由――世界を再生する天使となることと引き換えに齎されるコレット自身の死を、もしも許されるのなら回避したい、という欲求と同時に。

「声や、感覚や、食べて眠ることも……おまえが世界を救うために支払った物も、聖杯を使えば取り戻すことができるかもしれないぜ」
 淡々とライダーは告げる。あくまで一つの事実、一つの選択肢として、修羅の道の果てに茂る蠱惑の果実を提示する。

「(……ダメだよ。使えない)」
 それでもコレットは、その願いに蓋をした。
「(ううん……もしかしたら使うかも、だけど……そっちを優先にはできない、かな)」
「……どーいう意味だ?」
 値踏みするようだったライダーの表情に、初めて胡乱げな色が足された。
 そんな彼に連れられて、今日一日巡った先々で目にした景色を思い返し、コレットは確認のための問いをかける。

「(ライダー。NPCって呼ばれている人達も、外から聖杯に拐われて来た、普通の人なんだよね?)」
「ああ。そういった記憶も全部消されて、返しても貰えないまま強制された役割を演じるしかない……な」
 微かな怒りを滲ませたライダーの返答に、コレットも万能を謳う願望器への嫌悪を抑えきれないまま、自らの考えを述べる。
「(だったら、その人達も助けなくちゃって思うの)」
「……そいつらも、か」
 先に続く言葉を予想できたのだろう。ぽつりと呟くライダーに、コレットは頷いた。

「(昨日の人もね、ライダー。多分、悪い人じゃないと思う)」

 そもそも何故、彼らに追われていたのかと言えば。記憶を取り戻した直後の心身の乱れに膝を折ったコレットを、あのセイバーのマスターが介抱しようとしたのが発端だった。
 それで偶然、背筋に発現した令呪を見咎められ、命のやり取りにまでもつれ込んでしまっていたが……元を正せばあの青年も、この悪徳の街のNPCと目した相手を、それでも気遣うような人格者だったのだ。
 ただ、それでも提示された願望器に縋らざるを得ないような事情があるだけで。
 彼らをディザイアンや魔物達のような、人に害成すだけの倒すべき敵と断じてしまうことは、コレットにはできなかった。

「(他のマスターも、NPCも……わたしも。聖杯戦争に巻き込まれた人、皆で元の世界に帰りたい。だから……この聖杯戦争を破壊して、ライダー)」

 コレット自身も含めた、聖杯に拐われた全ての被害者の生還。
 偽りの街を破壊し、騙られた住民達のあるべき人生(物語)を再生する――ライダーの話を聞いた上で一日考えた結論が、それだった。

 とはいえ現状、それを成すための方法は見当もつかない。故に最終的には、聖杯を使う可能性も一応視野に入れておく必要があるとコレットは考えた。
 ただそのためは、サーヴァントを全て倒す必要がある。
 ……ライダー当人が言うには、サーヴァントは所詮英霊の写し身。写真や絵画と同列の、モノでしかないという。
 ただ、遠からずそれを失くす自分とは違って……彼らには間違いなく彼らの、心がある。例え本物ではなくとも、偽物でもない彼ら自身の心が。


336 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:41:53 kcJka/fM0

 聖杯から離れれば、どれだけ存在していられるのかわからないとしても。できれば彼らも犠牲にしないで済む方法を探したいという気持ちが確かにあること――つまりは結局、覚悟が決まったとはいえず、またもライダーに厳しい戦いを強いてしまうかもしれないと伝えたコレットへと、彼は険しい表情で尋ね返した。

「……良いのか? それで、本当に」
「(うん……あのね、ロイドが言ってたの。目の前の人も救えなくて、世界再生なんかできるわけないって……だからわたし、まずは目の前にいる人から助けなきゃって)」
「どーかな。おまえに情けをかけられた全員が、救われたと思うとは限らないぜ。例えば昨日のアイツとかな」
「(うん、そだね……でも、きっとこんなやり方は間違ってると思うから。叶えた後に、その人の中に後悔が生まれないようなやり方を、探して欲しい)」
 きっと、そんなに強い想いが本物なら……どんなに困難でも。神様はきっと、その人に幸福な道を残していてくれるはずだ。

「(わたしの願いは……シルヴァラントが再生されて、皆が救われるって分だけなら、わたしだけでも叶えられるから。テセアラのことはまだわからないけれど、レミエル様達にお願いしてみたら済むかもしれないことで、誰かを殺すのなんて、嫌だもん)」
「……おまえは?」
「(わたしは……そのために生まれて、ちゃんと生きてきたから。もう、だいじょぶだよ)」

 そう、それで良いのだ。
 そのために、苦しい思いをしている世界中の皆から大切にして貰った。なのに今更、犠牲になるのは他の人に押し付けますなんて、そんなの、ダメだ。
 もちろん、もしも聖杯を使うことになって。その時、聖杯に余力があるのなら、願わずにはいられないだろうけれど……それを一番に据えるなんてことは、できない。

「……だいたいわかった。おまえはそれで良いんだな?」
「(うん……ごめんね、ライダー。折角助けてくれたのに……何だか、台無しにしちゃうようなことを言って。
  でもお願い、勝手なのを許して貰えるなら……あなたの、力を貸して)」

 マスターでありながら、コレットはサーヴァントに頭を下げるしかできない。
 心理的な理由だけではない。そんな要因を無視しても、そもそもコレットには本当の意味で、ライダーを命令に従わせるだけの権利がないのだ。
 何しろコレットは、肉声を発することができない――即ち、絶対命令権である令呪を使うことができないのだから。
 もしここでライダーが、呆れたことを言う図々しいコレットを見捨てて出て行ってしまうとなっても。コレットには彼を止める資格も、術もないのだ。

 ――だが。

「……昔。ある悪魔が、いくつもの世界を巡る旅をしていた」
 ライダーが開いた口から放たれたのは、コレットの懇願に対する返答ではなかった。

「そいつには使命があった。世界が滅びる未来を変えるという使命が。
 そのためにそいつは訪れた世界で出会った者達と力を合わせて、それぞれの世界を脅かす邪悪と戦った。
 だが、それは間違いだった。そいつは仲間と力を合わせるのではなく、悪魔として彼らを破壊しなければならなかった」

 ライダーは語る。世界が滅びる未来を変えるため旅に出たという――天使となる神子によく似た宿命を背負った、悪魔となる破壊者の話を。

「創造は破壊からしか生まれない。滅びの未来を覆すには、一度全てを破壊するしかなかった。
 だから悪魔は、かつて仲間だった者達と争って、その全てを破壊して……そして最後に、自分自身を破壊した。
 悪魔が死んだことで、悪魔に破壊されたものは全て再生された。今度は定められていた滅びの運命なんかもない、そこに住む者達の決断次第でどうとでも転ぶ真っ白な未来を許された世界が。
 だが、悪魔は死んだままだった。そいつが悪魔として死ぬことが、無数の世界を再生するためのたった一つの方法だったからな」


337 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:43:02 kcJka/fM0

 悲しい話だと、コレットは感じた。
 自分達、マナの神子が背負うそれと似ていて。だけど神子と違って、その悪魔の使命は、どんなに彼が苦しんでいる最中でも、誰にも感謝されたりしない。
 ただ延々と、自らの手でこれまで繋いで来た絆を断ち切って、孤独に死んでいくための戦い――その末に、かつて繋がっていた者達の平穏だけでも、守るための。

 結果として世界再生を成し遂げられたことは、彼にとってこの上ない報酬であり、救いだったのかもしれない。
 それでも――死の間際、悪魔の胸に去来したのは、本当に達成感だけだったのだろうかと、想いを馳せずにはいられない。
 もしかして、だから彼は、コレットに――

「……それでも、かつて悪魔と旅をした仲間達は、それを良しとしなかった。旅の先で出会った仲間達も、悪魔のことを忘れなかった」

 しかし。コレットの予想に反して、ライダーの話はそこで終わりはしなかった。

「旅は間違いのはずだったのに。彼らは、使命を終えて消えた悪魔を取り戻すために戦った。
 ……その中の一人が言っていた。世界と誰かの命を天秤にかけるのなんて間違いだ。目の前にいるたった一人の笑顔も守れないなら、世界中の人を笑顔になんてできるはずがない……あの時も、九のために一を切り捨てて終わるような物語を受け入れなかったのは、そんな気持ちがあいつらにあったからなんだろうな」
「(……素敵な人達だね)」
 まるで、ロイドみたいな。
 彼にもそんな仲間がいたのだということに、コレットは胸の内が熱くなるのを感じていた。

「……そんな仲間達のおかげで、復活することができた悪魔はもう一度旅に出た。今度は使命なんか関係なく、自分の意志で。及ばずながら人間の自由のために戦って、世界の壁を越えまた新しい仲間を作って、色んな奴らの物語を繋げて……それで今は、おまえの前に通りすがっている」
 予想の通り。ライダーがコレットに伝えていたのは――彼自身の、物語だった。

 薄々、かつて彼がコレットと似た運命を生きたのだということは感じ取れていた。
 願いを抱えて聖杯の呼びかけに応じるという仕様上、サーヴァントは非業な最期を遂げた者も多いという。だからライダーも、その生前の無念から、同じ境遇を辿るコレットに聖杯を掴むよう促そうとして、こんな話をし始めたのではないかと思っていたが……違った。

「……聖杯戦争においてサーヴァントは、相性の良い相手やよく似た性質を持つマスターのところに召喚されるらしい。
 だから……あいつらとよく似た仲間を持つおまえも、きっと……俺と同じで、仲間が放っておいてくれやしない。
 だから、もしもだ。もしも今回でおまえが、自分を助けることまではできなかったとしても……諦めるな。おまえの仲間は、そんなところで終わる物語を認めたりしない。
 シルヴァラントもテセアラも、そしてコレットのことも。必ずロイド達は、全て救うことを諦めない――俺は、そう信じてる」
「(ライダー……)」
 直接会ったこともないロイド達のことを、それでもライダーは信じてくれている。
 かつて使命のために犠牲になろうとした己を救った仲間と、よく似ているからと。
 それが、妙に嬉しくて……こんな体じゃなかったら、少し泣いてしまっていたかもしれないほどの感情を、コレットは心に覚えていた。

「だから俺はせめて、この戦いでおまえを守る。ロイド達の分も、ロイド達のところにおまえを還してやれるまで。それが俺の願いだ……おまえが謝る必要なんかない」
「(うん……ありがと)」

 ――彼は最初から、コレットの選ぶ答えがわかっていたのかもしれない。何しろこの英霊は、かつて同じ宿命を生き抜いたのだから。
 だから、答えを導くまでの迷いもわかっていて。それを晴らさせるために、敢えて意地悪な選択肢も提示して。
 それでも選んだコレットの願いを、今度は後押しするために。誰のためでもなくコレットのために戦うと、仲間としての決意を表明してくれた。
 そして――仲間の持つ優しさを信じろと、コレットに希望を与えるために。彼は、自らの物語を教えてくれたのだ。



「……そーいや、忘れてたな」
 大きな目標も決まって、後はそれを実現するための手段を模索して行こうということで、話が纏まった頃。ふとライダーが、そんな呟きを漏らした。


338 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:43:34 kcJka/fM0

「(どしたの?)」
「今日一緒に売り込みに行った時には出さなかった写真がある。一番出来が良いんだが、羽が生えてたおまえが写っちまってるんじゃ、他人に見せるわけにはいかなかったからな」
 昨日召喚されて早々、ライダーはまず牽制を宝具に任せ、戦いの現場を撮影していた。それがあの時の発光の正体だった。
 サーヴァントでありながら、ライダーはその特異なスキルのために聖杯から役割が与えられている。現在は遠縁のコレットを同居させている、ゴッサムシティ在住のフリーカメラマンというのが彼の今回の役割だ。
 元々写真を撮るのが趣味だというライダーにとっては、聖杯戦争中でもフットワークが軽いこともあって好都合な役割だそうだが、当然カメラマンとして生活していくには写真を売り込む必要がある。そのために今日はコレットを伴い、街で起きる事件の真相の一端を切り取った写真を数社のマスコミへ売り込みに行っていたのだ……結果は、いずれも門前払いだったが。
 コレットからすると、ライダーの写真は芸術的で素敵と思えるのだが、どうも歪んだり謎の光が写り込んだりしているようではジャーナリズムに好まれないらしい。
 帰宅直後は酷評に憤懣やるかたない様子だったライダーの一番の自信作はしかし、どうやら自分のせいで売り物にはできなかったらしい。

「(ごめんね……)」
「だから、謝る必要なんかないって言ってるだろ。そもそも俺は写真を撮りたいから撮ってるだけで、別に金が欲しいわけじゃないんだからな」
 そう言いながら荷物を漁っていたライダーは、目当ての写真を見つけ出すと――抜き取ったそれを、コレットへと差し出した。
「といっても、俺が持ってたって仕方ないからな。やるよ」
「(あっ……うん)」
 言われるがまま受け取っても、コレットも自分が襲われているだけの写真を貰っても――と、困惑したところで。
「(……ライダー)」
「うん?」

 ライダーが手渡してきた歪んだ写真には――そこにいるはずのない、鳶色の髪の青年の姿が映り込んでいた。
 サーヴァントと対峙するという絶望的な状況の中、なおもコレットを見捨てず庇って立ち向かおうとする彼の姿が。

 ライダーの写真の歪みだとは、わかっているのに。彼ならきっと、そうするだろうということがありありと想像できて。

「(ありがと……大切にするね)」

 未来の希望を暗示するようなその紙切れを、コレットはぎゅっと抱きしめた。
 握っているという感覚もないまま。それでも既に失われたはずの暖かさを、確かにそこで覚えて。






◆◆◆◆






 おそらく、あの赤い服の少年がロイドなんだろうなと、写真を抱きしめる己のマスターを見たライダーは考える。

 コレットが誰より信頼――というよりも、おそらくは慕っている少年のことを。
 本当に彼なら、コレットを神子の宿命から救うことができるのか――二つの世界を救うことができるのか、と。
 答えは、すぐに下された。

「――できるさ。俺達にだってできたんだからな」

 顔も知らないロイド達を信じることに、ライダーは躊躇を覚えなかった。

 ……本来ライダーは、知人だろうが他人だろうが、人を信じることができなかった。似通った宿命を背負ったコレットについては、ともかくとして。弱い彼には、他人の痛みをわかることができなかったからだ。
 だから、一人の友のことを、ライダーは信じることにした。
 あいつは……優しいだけが取り柄の、バカだったから。

 だから。そんな友と同じような言葉を吐いたロイドのことなら、彼が実現を目指す理想なら、ライダーにも信じることができたのだ。

(待ってろよ、ロイド・アーヴィング。コレットは必ずおまえ達の世界へ……あるべき物語の中へ、無事に還す)
 それこそが、コレットの十番目の仲間となった自分が、果たすべき役割であると。
 ライダーのサーヴァント、門矢士――又の名を仮面ライダーディケイドは、誰にお仕着せされるでもなく。
 自らの意志で、歩むべき道を見出していた。


339 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:44:42 kcJka/fM0

【クラス】

ライダー

【真名】

門矢士@仮面ライダーディケイド

【ステータス】

筋力C+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A

【属性】

中立・善

【クラススキル】

騎乗:C+
 騎乗の才能。野獣ランク以上の生物を除く、全ての乗り物を乗りこなすことが出来る。

対魔力:D
 魔除けのアミュレット程度の魔術への抵抗力。一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。


【保有スキル】

勇猛:C
 威圧、混乱、幻惑や、他者からの憑依といった精神干渉を削減する。また、格闘ダメージを向上させる。

心眼(真):B
 数多の世界を渡り歩いて培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

偽悪:C
 自らの属性を混沌・悪に偽装する。また日頃の言動が相手に悪印象を与え易くなる。
 但し相手に素性を尋ねられてから、「通りすがりの仮面ライダー」と名乗った場合、その声を聞いた全員に対して効果を喪失する。

異物の役殻:B-
 本来所有するスキル・無力の殻が、今回の聖杯戦争の様相に合わせて変質し、訪れた並行世界それぞれで何らかの役割を与えられていた逸話を再現したイレギュラーなスキル。
 此度の聖杯戦争の舞台において、ライダーはサーヴァントの身でありながらマスター同様に偽りの生活を送るための役割を与えられている。今回はゴッサムシティで活動するフリーのカメラマンで、またマスターであるコレットをホームステイさせている従兄という役割となっており、戸籍等の必要書類も自動的に用意されている。
 また宝具である『十の道重ねし破壊の尾錠』を発動していない場合には、ステータスが大幅に低下する代わりに現界維持に要する魔力量を抑制してサーヴァントとしての気配を断ち、更に他のマスターに対してはステータスの閲覧等自身がサーヴァントであると気づかれる情報を非公開にすることができる。
 但しこれらの代償として、ライダー本体は霊体化することができなくなっており、また神秘を伴わない物理干渉も常に受け付けてしまうデメリットを付与されている。またこのスキルが発現する世界では、ライダーが撮った写真は怪奇写真のように歪んでしまう。



【宝具】

『十の道重ねし破壊の尾錠(ディケイドライバー)』
ランク:A 種別:対界、対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

 ライダーを象徴する変身アイテム、次元転換解放機が宝具化したもの。
 カメンライド・ディケイドのカードと組み合わせた変身の掛け声を真名解放とすることで、戦闘形態である世界の破壊者・仮面ライダーディケイドへとライダーを変身させ、その後は『伝承継ぎし二次元の札』を真名解放するための一種の魔術礼装として機能する。
 またこの宝具の発動中は、自身の攻撃に対する純粋な防御力以外の相手の防御効果及び破壊耐性、そして世界の法則を幸運判定次第で無効化することが可能となる。
 なお、本来は激情態の時期にのみ確認された能力だが、英霊化したことで通常時から真名解放前に部分的にだけ変身することも可能となったため、非変身時も必ずしも奇襲に対して無防備なわけではない。


340 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:46:22 kcJka/fM0


『歴史挟みし多元の冊子(ライドブッカー)』
ランク:C+++ 種別:対人宝具 レンジ:0〜30 最大補足:10人

『十の道重ねし破壊の尾錠』と番となる、ライダーのもう一つの象徴となるアイテム。全形態共通の『伝承継ぎし二次元の札』ホルダー兼専用武器。
 本型のブックモード・剣型のソードモード・銃型のガンモードの三形態を持つ万能武器である。変身前でも真名解放はできないものの一応使用可能で、その場合は宝具としての気配を絶つことができる。
 武器として用いる場合、威力的には不壊の特性を持つCランク相当の宝具でしかないが、第二魔法を応用した無尽蔵の魔力炉を内包することでガンモード時の弾数制限をないものとしている。なおこの魔力炉によって生産される魔力は他の宝具、及びライダー本体には供給不可である。
 また『伝承継ぎし二次元の札』の効果を受けることで破壊力が格段に上昇し、『世界渡りし王者の証』による真名開放と併用した際に最大の攻撃力を発揮できるが、やはりこれら宝具の真名解放時に消費する魔力はこの宝具が賄うことはできない。


『伝承継ぎし二次元の札(ライダーカード)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人

 普段は『歴史挟みし多元の冊子』に収納されている、仮面ライダーの伝説を継承した宝具。
『十の道重ねし破壊の尾錠』を用いてそれぞれの真名を解放することで、歴代の仮面ライダー達それぞれの伝説を再現する能力を得られる。
 これらのカードの内、ライダーが保有する正確な種類と総数は明らかとなっていないが、このライダーはあくまでサーヴァントとして再現されて召喚された存在であるためにその全てを実装することはできなくなっている(具体的にはややメタ的に言うと、プレミアムバンダイコンプリートセレクションモディフィケーションのディケイドライバー&ライダーカードで商品化されたカードの内、クウガ〜ディケイドまでの仮面ライダー当人らに関連するカードのみを保有しており、劇中未使用のタイムやゼクトマイザー、及び昭和ライダー関連のカメンライドカード等は宝具として再現されてはいない)。

 またカードはいずれも仮面ライダーが担う伝説の力を完全に再現できるが、例えばイリュージョン等の分身能力はそれで増えた頭数だけ、ファイズアクセルフォームなどの加速能力は加速した倍率だけ魔力消費が増加してしまうため、事実上使用不可能となるカードも少なからず存在している。
 なお、他の仮面ライダーを変形させた武器を操るという仮面ライダーディケイドを象徴する逸話が、英霊化した影響によって生前にはなかった召喚能力に昇華されており、ファイナルフォームライドのカードによって対象となる仮面ライダーがいない場合でも変形後の姿を自身の宝具として召喚することが可能となっている。但しライダーのクラスである都合上、この能力の恩恵を受けて実際に召喚できるのは騎乗可能なクウガゴウラム、アギトトルネイダー、リュウキドラグレッダー、ヒビキアカネタカ、ゼクターカブトのみとなる。

『伝承継ぎし二次元の札』は単純な破壊力のみで破壊することはできず、その性質を活かして手裏剣の様に投擲武器としても使用可能。サーヴァント化した恩恵で、敢えて本人が取りに行かずともカードの現界を止めることで回収可能となったため、その点も生前より強化されていると言える。


『世界駆ける悪魔の機馬(マシンディケイダー)』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:0 最大捕捉:-

 大型二輪車の形をした次元移動機である、ライダーの愛車。『伝承継ぎし二次元の札』の効果を受けることで、別の仮面ライダーの専用機への変化も可能とする。またライダーが直接騎乗せずとも、彼の意思一つで無人走行も可能とする。
 普段はライダー本体同様、現界させていても宝具としての気配を絶つことができるため、日常生活でも他のサーヴァントに感知されることなく使用可能。宝具としての解放時にはそれまでは進むことができなかった環境を走破可能になることはもちろん、聖杯戦争の範疇を逸脱しない限りであればミラーワールドや既に展開された他者の固有結界内といった、ライダーが認識したあらゆる異空間への侵入、及び脱出を可能とする。無論侵入防止の結界等の影響は受けることになるが、それらの効果も宝具ランク分抵抗を削減できる。
 あくまで世界を渡る力が主眼となるため、耐久に優れたサーヴァントを轢殺するには不向きだが、それでも解放時には並のサーヴァントを振り回すのに充分な馬力を備える。『歴史挟みし多元の冊子』同様第二魔法を応用した無尽蔵の魔力炉を内包しているため、本来の性能を発揮してもマスターが負担する魔力消費はあくまで現界維持分に留まる。


341 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:48:26 kcJka/fM0

『世界渡りし王者の証(ケータッチ)』
ランク:A++ 種別:対界、対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1〜999人

『十の道重ねし破壊の尾錠』を予め解放している状態でのみ解放可能な、ライダーの切札たる最強宝具。
 ディケイドを並行世界の王者、または歩く完全ライダー図鑑とも称されるコンプリートフォームへとファイナルカメンライドさせる、タッチパネル式携帯電話型ツール。
 この宝具の発動中はライダーの筋力、耐久、対魔力の値が一ランク分上昇し、自身の攻撃で属性が混沌もしくは悪のサーヴァントに追加ダメージを発生させることが可能となる。
 また、周囲にいる味方の仮面ライダーを相応の魔力を負担することで変身条件を無視し、最強形態へと強化変身させる効果も持つ。

 そして、真名解放後に改めて『世界渡りし王者の証』自体に刻まれた紋章に触れることで、対応する仮面ライダーが最強フォームの状態で実体ある分身体として召喚され、更にその力をライダー本人に投影、事実上召喚した最強フォームの倍の攻撃力を発揮できるようになるという奥の手がある。
 但し、この宝具の発動を維持するだけでも魔力消費は通常時の数倍に跳ね上がる上、同格のサーヴァントをもう一体使役するに等しい召喚能力の発動時はそれが更に倍加してしまう。
 また令呪三画を一度に重ねて補助した場合にのみ、マスターの限界を超えてクウガ〜キバまでの最強形態の仮面ライダーを同時召喚することも可能となるが、コレットの声が失われている間は令呪の使用が叶わないため、事実上封印されている。


【weapon】
 上記宝具


【人物背景】

 いつの間にか光写真館に居候していた青年。素性不明で本人も過去の記憶がなかった中、ある日突然彼が居た「世界」が崩壊してしまい、そこに現れた紅渡から並行世界が互いに融合して消滅の危機に瀕していること、「世界を救うためにはディケイドが9つの世界を巡らなければならない」という使命を伝えられ、 仮面ライダーディケイドとして仮面ライダーの世界を巡る旅へ旅立つことになった。
 時に「悪魔」「破壊者」と罵られながらも、訪れた世界が直面する「滅びの現象」を各々の世界の仮面ライダーらと協力して打破し、いくつもの世界を滅亡の危機から救った士だったが、やがて訪れた「ライダー大戦の世界」で次々と仲間が消滅していく中で再会した紅渡に、それらの行いは使命を曲解してしまっていた誤りであったと明かされることとなる。

 彼やその仲間から自分の本来の使命である「“破壊”による全ての世界の“再生”」を宣告された士は遂に、「世界の破壊者」という使命とその運命を受け入れる。その後は並行世界に存在する全ての仮面ライダーを次々と襲い“破壊”して行ったが、最後は新たな仮面ライダーであるキバーラとの戦いでわざと倒された。
 士の死と同時に、ディケイドによって“破壊”されていた仮面ライダーが復活し、更に「滅びの現象」によって消滅していた世界までも全てが再生を遂げる。ディケイドの真の使命とは、「仮面ライダーの世界を一度破壊し倒されることで、消える運命にあった仮面ライダーの物語を永遠の物にする」ためのものだった。
 物語が再生したことによって、全ての並行世界も「滅びの現象」から解放され変わらぬ存続を許されたが、ただ一人――この使命のためだけに生まれた物語を持たない装置である仮面ライダー、ディケイドこと門矢士は、世界再生のために捧げられた生贄として、消滅したままであった。

 しかし、物語を持たなかったはずのディケイドは真相を知った仲間達の想い、誤りであったと断じられていた旅の中で出会った者達との絆を自身の撮っていた写真に込められたことで仮面ライダーディケイドの物語を得て他の存在同様に再生し、復活を遂げる。

 その後スーパーショッカーとの戦いや、魔宝石の世界、さらには沢芽市に出現した地下帝国バダンとの戦いに、世界の破壊者ではなく「人類の自由を守る」仮面ライダーの一人として通りすがり、新たな物語を繋ぐために旅を続けていることが確認された。


342 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:49:45 kcJka/fM0

 正直な善行を嫌い馬鹿にするような言動を行い、必要があれば何も知らない女性の顔面を平気で殴り流血させるなどする傍ら、自身の大切な存在を助けるために必死で敵を追っている最中でも、標的を取り逃がすことになるとしても見ず知らずの子供の安全を最優先し自ら銃弾に晒されるなど、属性通り己の中のルールを最優先とすることに躊躇いがない。一方で一見して何を大切にしているのか掴み難いひねくれた性格をしており、例え気に入ったマスターの意向に従う際でも生意気な態度を崩すことは基本的にはなく、従順とも言い難い性格をしているため、本来サーヴァントとしては手綱を握るのが難しい部類に入る。

 しかし基本的には誰に対しても尊大な態度で接する士でも子供相手には態度を軟化し、また特に妹の小夜を重ねて見てしまうのかその年頃の純真な少女に対しては比較的素直に接するため、現マスターであるコレットに対しては普段の彼よりもかなり温和となっている。何より彼女と士自身の大切に想う事柄や境遇が大部分で重なっていることから、性格面では非常に相性の良い主従であると言える。



【サーヴァントの願い】
 コレットの十番目の仲間としての役目を果たす。





【マスター】
 コレット・ブルーネル@テイルズオブシンフォニア

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争に巻き込まれた人物を、可能な限り元の世界に帰還させる。
 ……もしも余裕があれば、テセアラを衰退させず、自分が犠牲にならなくてもシルヴァラントを再生させられる手段を得たい。


【weapon】
 チャクラム(破損中・使用不可)


【能力・技能】

 天使化した影響で、元は純粋な人間ながら平均的な魔術師程度の魔力供給をサーヴァントに可能とする。まだまだ潜在能力はあるが、特に開花させている余裕のない現時点での戦闘力もほぼその程度。天使術と呼ばれる光属性の上級魔術が使用可能で、命中すればサーヴァントにもダメージを与えられる。
 しかし天使術はもちろん、元々修得していた人間としての技もライダーが宝具を使用している間は消耗のために使用困難となり、飛行能力もマナを利用しているものであるため不安定となる。


343 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:50:34 kcJka/fM0

【人物背景】

 衰退世界シルヴァラントにおけるマナの血族の末裔。宝玉「クルシスの輝石」を握って生まれたことで神子として育てられ、一六歳のある日に神託を受け世界再生の役目を背負うことになる。神子という立場からイセリアの学校では浮いている存在であったため、友達になってくれたロイド・アーヴィングに単なる幼馴染以上の仄かな想いを抱いていた。

 世界再生の神子として各地の封印を解き、救いの塔を目指す旅に出ることになったコレットは、ロイドを始めとする仲間達と共に故郷イセリアを出発。人類を虐げる邪悪な闇の一族・ディザイアンによる妨害を受けながらも、それらを退け世界再生のために旅を続ける一行の前に、やがてコレットの命を狙う暗殺者・藤林しいなが現れるようになる。
 人間でありながら世界再生を拒もうとする彼女の存在を不可思議に思っていた一行は、後に恩義ある村人のためディザイアンと戦い、同行することになったしいなからシルヴァラントと隣り合うもう一つの世界・テセアラの存在を知らされる。現在シルヴァラントが衰退し滅びに向かっているのはテセアラにマナを吸われているからで、コレットの世界再生の旅が完遂されてしまえばその関係が逆転してしまう故に、現在のテセアラを守らんと差し向けられた刺客こそがしいなの正体だったのだ。
 真相を知ったコレットはシルヴァラントもテセアラも、等しく救われる方法がないものかと心を痛めるようになるものの、二つの世界を救う具体的な解決策が見えないまま、救いの塔へ――世界を再生する天使となるために、人間としての死が定められた場所へと向かうその時を、迎えつつあった。
 永遠の別れが訪れることを、ロイドに云えないまま。



 封印を解くことで徐々に天使として肉体が変化し始めると、紫色に輝く光の羽を纏って空を飛べるようになるなど超常的な力を得、視覚や聴覚も強化されたが、それと引き換えに味覚や痛覚に触覚、眠気や疲労、果ては言葉など人間としての感覚を徐々に失っていくことになった。最終的には精神や記憶まで喪失し、コレット・ブルーネルという人間の少女は事実上の死を迎える運命を定められている。

 普段は心優しくおっとりした性格。時折「だいじょぶ」「どしたの?」などの「う」を抜いた喋り方をする。また、天然ボケな性格でもあり、ロイドの意見に引き摺られがち。かなりのドジっ娘でよく転ぶが、その結果が功を奏して活路を開く場面も少なくないなど、不幸な宿業に反して運には恵まれている。世界中の野良犬に名前をつけて回るほどの動物好き。
 神子として育てられた影響もあり、自己犠牲心や責任感が非常に強い。その感情意識のためか、原作中での選択肢では一貫して「危険よりも人の命を気遣う」ことを好む。
 好きなフルーツを使った料理とクリームシチューが得意。ピーマンが嫌い。強い拘りではないがコーヒーよりも紅茶派。ただし現在は味覚が失われ、また食事が不要な体となっているため無理に食べても戻してしまう。



 世界再生のために捧げられる供物として、大多数のための自らの死を宿命づけられているという共通項が、ライダーを彼女のサーヴァントとして招く要因となった。


【参戦方法】
 過去、トリエットで購入して身につけていたアクセサリがシャブティだった。


【令呪】
 うなじの下側(胸のクルシスの輝石の対となる位置)に刻まれた、三つに分割可能な形で描かれた八枚羽型


344 : コレット・ブルーネル&ライダー ◆SgLvpYy54k :2015/05/04(月) 13:51:35 kcJka/fM0


【方針】

 聖杯戦争に巻き込まれた全員の脱出を最大の目標とし、そのための手段を模索。他の可能性が見つからない場合には、最終手段としてサーヴァントのみを倒すことで聖杯を狙う。
 コレットが声を失って令呪を使用できないということや、ライダー自身が霊体化できないという理由から、極力互いの距離を離さず常にライダーがコレットを保護できるよう同行する形が基本となる。

 肝心のライダーの性能としては、クラス特性に相応しく豊富かつ強力な宝具を誇るサーヴァントであり、完全に宝具に依存しているもののある程度距離を選ばずに戦闘が可能で、耐久の高さと心眼(真)によって豊富な手札から戦況に応じた最適解を狙える可能性が多いなど、理論上では後の先を取ることでほとんどの敵に優位に立つことが可能となる。

 しかし、伝説の具象であるサーヴァントとの戦いにおいては必殺の概念も珍しいものではなく、先手を譲るリスクは決して無視できるものではないため、その強みを必ずしも活かせるとは限らない。仮に凌げたとしても、先の長い聖杯戦争において消耗する可能性の高い後手後手の戦い方が不利なのは言うまでもなく、押しつけ性能に優れた攻撃手段のほぼ全てが事実上使用不能であることと相まって、実際のところは理屈に比べるとその性能は圧倒的とは言い難い。方針の都合上、自ら積極的に攻めに回れないこともその傾向に拍車をかけている。

 またスキルの都合上霊体化することができない上、長持ちしないインビジブルのカードは代用品には成り得ず、更にはマスターともども使い魔の類を保有していないため、直接戦闘前の諜報面においても多くの敵対者と比べ、収集できる情報は限られてしまうという弱みがある。
 折角独自のスキルである異物の役殻の効果で、フリーのカメラマンという新鮮な情報に接触できる機会の多い役割に就きながらも、掲載すればクレーム必至な怪写真しか撮れない上に性格が性格なのでカメラマン門矢士は現在、市内のどのマスメディアからも煙たがられており、情報網の利用どころか生活費の確保すら覚束無い状況にあるためこの点は深刻と言える。
 なお、自分の代わりにコレットに写真を撮って貰えば良い、ということにはライダーも薄々気づいている。一方のコレットはまずそのことに思い至らないので、一応は写真を撮ることに矜持を持つライダーが早期に妥協できるのかどうかが、今後の彼らの立ち回りを左右する一因になるかもしれない。

 但し、高機動力と高い走破性を併せ持つ上、自立稼働による攪乱さえ可能な騎乗用の宝具を複数保有しているため、様子見レベルの戦闘からの自発的な離脱には優れている。
 あらゆる異界に出入可能な上、燃費にも優れた『世界駆ける悪魔の機馬』の性質と併せ、序盤は機動力と耐久性を活かして斥候としての小競り合いに集中してダメージの蓄積を避け、仕留める場合には然るべき後に容易に弱点を突ける相手から倒しに行くのがベターと言えるだろう。ベストではないのは、令呪を使えないコレットの安全を確保するのであればそもそも単独での戦闘そのものが望ましくはないため。

 ちなみにミラーワールドからの奇襲については、サーヴァント相手だと事前に気配が伝わってしまう上、(リマジ仕様のため)ミラーワールド内に他者を引き込むこともできないため思いの外使い勝手が悪く、あくまで専用の逃走経路と捉えるのが吉。但し基本的にはマスターと同行しているということを考えると、その用途ですら実際に利用できる機会は限られる。

 またマスターであるコレットともども、相手が見知らぬ他人でも傷つくことを放っておけない性格と方針のため衆目に手の内を晒し易く、舞台がよりにもよってゴッサムシティであることもあり、上記の戦法もやはり理論の上ほどには情報戦で優位に立ち回ることはできないと予想される。



 なお、コレットも知らないことだが、封印解放に伴うクルシスの祝福はあくまで天使化を増進するだけで、天使疾患の正体であるクルシスの輝石=ハイエクスフィアの寄生はコレットが受けるストレスによって進行することは変わらず、聖杯戦争という過酷な環境の中で疾患が最終段階に進む可能性も十分に存在しており、それに気づいていないライダーがどこまで彼女の精神を支えられるのかも今後を占う要素になると言える。

 致命的な破綻を迎える前に、目的を同じくする仲間を見つけ出しコレットに安心を与えながら協力していくことが、彼らが勝ち抜く上での鍵となるだろう。


345 : ◆aptFsfXzZw :2015/05/04(月) 13:56:09 kcJka/fM0
以上で投下完了です。
それと申し訳ありません、調べてみたところ◆SgLvpYy54kというトリップは他に使用されている方が居たようですので、いきなりですがトリップを変更させて貰えればと思います。どうかあしからずご了承ください。


346 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:09:04 Id8n0Nyg0
投下いたします。


347 : 北方棲姫&バーサーカー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:10:23 Id8n0Nyg0
草木も眠るウシミツ・アワー。
マッポーめいた価値観の支配する暗黒大都市・ゴッサムシティの港は都市部とは異なりお通夜めいた静けさに満たされている。
だが、だからといって人の気配がない訳ではない。
倉庫街の一角に複数の人影、同じジャケットとジーンズで服装を統一したヨタモノじみたティーンの集団の姿がある。
彼らはこの倉庫地帯を根城にしているストリートギャングだ。
強盗、殺人といった犯罪行為で生計を立てている彼らは今日もドラッグや煙草、酒を口にしながら本日の戦利品を分配している。
上機嫌に下卑た笑いを浮かべるギャング達を小さな影がジッと見つめている。
それは一人の少女だ。
雪の様に真っ白な肌とオーガの角めいたアクセサリ、そして血の様に真っ赤な双眸が特徴的な少女だ。
グルグルと湾岸を巡回するサーチライトが少女の姿を照らす。
少女とギャングの一人の視線が交差した。

「エ?」

ギャングが声をあげる。
なんでこんな所に少女がいるのか。
ドラッグのし過ぎで幻覚でも見ているのではないか。
仲間に声をかけようとして、ふとギャングは気が付いた。
急に、自分の周りが暗くなっている事に。
ギャングは上を見上げた。

「エ?」

ギャングが声をあげる。
なんで自分の頭上に巨大な機械の腕があるのか。
ドラッグのし過ぎで幻覚でも見ているのではないか。
仲間に声をかけようとして、ふとギャングは気が付いた。
頭上の腕が、ドンドン近づいてきていることに。
ギャングは目を見開いた。

「エ?」

ギャングが声をあげる。
なんで自分に向かって巨大な機械の腕が降ってきているのか。
ドラッグのし過ぎで幻覚でも見ているのではないか。
仲間に声をかけようとして、ふとギャングは気が付いた。
既に、そんな余裕はなかった事に。
ギャングは身動き一つ取ることができなかった。

地響き、ゴシャリと何かがひしゃげる音。
そして水音と共に赤い飛沫が舞った。


348 : 北方棲姫&バーサーカー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:11:15 Id8n0Nyg0
「……アンドレ?」

ギャングのリーダーが何かが落ちてきた先にいた筈の仲間の名前を呟く。
舞う土煙に隠れてその姿は確認できない。
しかし、罅割れたコンクリートの地面と、そこから染み出すトマトジュースめいた赤い液体がアンドレがどうなったのかを如実に語っていた。
港に一陣の潮風が吹く。
風に流され土煙が晴れた先にいた者を見たとき、その場にいたギャング達は潜在的恐怖に支配された。

「「「「「アイエエエエエエエエエエエエエ!?」」」」」

本能的にギャング達が叫び声をあげる。
おお、なんたるゴアめいた光景か!
砕けて大きく陥没したコンクリートにネギトロめいた飾りと真っ赤なペイントががされている。
飾りとペイントの材料はアンドレの血と肉だ。
そしてそのゴアめいた空間に立つ一つの人影は更にギャング達の恐怖を助長させる。
男がいた。
ソバシェフ装束を着込み、筋肉質な上半身をはだけ、その顔の大部分をメンポで覆った奇妙な男だった。
だが、男の何よりもの異常性はその両腕だ。
男の両肘より先はコミックに出てくるロボットめいた巨大な鉄塊の如きサイバネアームに置換されている。
男の右腕にはところどころ赤い塗装がなされ、筋肉繊維がこびりついている。
ギャング達にその腕が哀れなアンドレを押しつぶしたのだと言外に語っていた。

「全部、全部だ」

メンポの男が声を発する。
地獄の底から響くような暗い声と共に、男の狂気に支配された両目がギャング達を捉えた。
その瞬間、ギャング達は理解する。
次は自分たちがアンドレと同じ末路を辿ることに。
ギャングの一人が半狂乱になりながら銃を構えた。

BANG!! BANG!! BANG!!

銃声が響く。
しかし、メンポの男は銃弾など異にも介さず、銃を撃った男に向かって疾走する。

「アイエエエエ! ナンデ!? 無傷ナンデ!?」

銃を撃っても人が死なない。
そのあまりにも常識外の光景からくる恐怖によって銃を撃っていたギャングはしめやかに失禁!
メンポの男が駆け寄りながら右拳を引く。
サイバネアームが盛大に蒸気を吐き出す。

「アバッ」

猛スピードで放たれた拳がギャングのいた場所を通過する。
破壊の鎚が通り過ぎた後には、腰から上を消失した遺体がスプリンクラーめいて血を吹き出しながら転がっていた。

「全部だ! 全部だ! 全部だ! 全部だ!」

メンポの男は止まらない。
その目は既に別のギャングを捉えている。
蒸気を吹き出しながら次のギャングへと駆け寄る。

「アイエッ!?」
「全部だ!」

CRAAAAASH!

サイバネアームが振り下ろされる。
哀れギャングはネギトロめいた姿になって即死!
メンポの男は次のギャングに向かって駆け出す!

「アイエッ!?」
「全部だ!!」

CRAAAAASH!!

サイバネアームが振り下ろされる。
哀れギャングはネギトロめいた姿になって即死!
メンポの男は次のギャングに向かって駆け出す!

「アイエッ!?」
「全部だ!!!」

CRAAAAASH!!!

サイバネアームが振り下ろされる。
哀れギャングはネギトロめいた姿になって即死!
メンポの男は次のギャングに向かって駆け出す!

なんたる凄惨な光景か!
男がサイバネアームをふるう度にギャングが死んでいく。
その様はさしずめに全てを破壊する嵐といったところか。

「ヒッ、ヒィィィィ!!」

運よく助かったギャングの一人が近くのコンテナの裏に隠れる。
何故、こんな事になってしまったのか。
今までの悪行がこの結果を招いてしまったのか。
ギャングは神に祈り、助けを乞う。
ここから助かる事ができればこれまでの行いを悔い改めることを誓う。
足音が近づいてくる。
ちょうどコンテナを挟んで向かい側に男の気配がする。
ギャングは気付かずにいてくれる事を願う。
ボシュウと蒸気の上がる音が響く。
ギャングが両手を組み、目をつぶる。
衝撃がギャングを襲い、そこで意識は途絶えた。


349 : 北方棲姫&バーサーカー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:12:10 Id8n0Nyg0
「ハァーッ! ハァーッ!」

ギャングのリーダーが肩で息をする。
既に彼以外のギャングは死んでしまった。
逃げる一瞬、メンポの男がコンテナの裏に隠れた仲間をコンテナごとサイバネアームで吹き飛ばした光景が目に入った。
一刻も早く逃げなければ。
警察に事態を話して保護してもらわねば。
錯乱する中どうにか思考をまとめ、ふらつきながら港の出口を目指して歩くギャングの前に、一つの小さな人影が立ちふさがった。

「ワッザ!?」

目の前にいたのは少女だった。
それはアンドレと呼ばれたギャングが偶然発見した少女であったが、このギャングには知る由もない。
だが、一目見てその少女が異常な存在である事は理解できた。
人らしからぬ見た目である事はもちろんだが、その少女の周囲には不気味な球体が浮かんでいた。
黒く、猫耳のような突起のある球体だった。
その球体一個一個がむき出しの歯が生えた口を開き、べろりと舌を出す。
少女のサーチライトめいて光る赤い双眸がギャングを見据える。

「ア……、ア……」
「ヤレ……、バーサーカー……」

後ずさるギャングの背にトン、と何かが当たる。
振り向くとそこにはサイバネアームを振り上げるメンポの男の姿があった。
ギャングはこの少女がメンポの男を、バーサーカーと呼ばれた男を使って自分たちを襲った事を知る。
何故、どうしてと少女に問うよりも早く、大質量のサイバネアームが振り下ろされた。

一瞬の内に幕の開いた惨劇を生み出した少女が血に塗れた破壊の跡を見下ろす。
凄惨極まる光景だが、少女は顔色一つ変えない。
そして、傍らに立ったバーサーカーを、少女のサーヴァントを見上げた。

「魔力、溜マッタ?」
「……」

バーサーカーはこくりと頷く。
狂化によって言語能力を失っている為、会話自体が行えない。
彼の発する「全部だ」という言葉もうわ言のような者で意味のある言語とはなっていない。
フルフェイスのメンポの奥に光る瞳にはただ全てを破壊せんとする狂暴な意思しか殆ど残っていないのだ。

「霊体二戻ッテ、バーサーカー」

少女の指示を受けて、バーサーカーは霊体化する。
再び静寂が戻った港で少女が一人月を見上げる。

深海棲艦。
ある世界において、人類の敵性存在として海の大半を支配した存在。
その中でも棲姫と呼ばれる上位存在の一つが彼女、北方棲姫であった。
彼女がここにくる前までにあった記憶は、艦娘と呼ばれる少女達との戦いだった。
配下の艦は全て沈み、それでもなお艦載機を飛ばし抗戦していた彼女に降り注ぐ無数の散弾。
息も絶え絶えの彼女の視界には、いつか配下が拾ってきた人形が鈍い光を放っていた。
何事かと人形に手を伸ばすと、気づけばこの港に彼女はいた。
脳裏に浮かぶのは聖杯戦争の情報。
彼女の傍らには理性を失ったバーサーカーのクラスのサーヴァント。
何度か北方棲姫はバーサーカーとの会話を試みたが、バーサーカーが会話に応じる事はなかった。
バーサーカーの破壊衝動に取りつかれた瞳は、どこか彼女たち深海棲艦の一部に見られるものと同じだと北方棲姫は感じた。
憎しみ・恐怖・怒り・悲しみ。そういった感情すらもなく、ただ衝動に支配されるままに破壊を振りまく存在。
あるいは深海棲艦という存在だからこそ、このサーヴァントを呼び出したのかもしれない。

全てのきっかけであるあの戦いで見上げた空とまったく同じ月夜を見上げながら、北方棲姫は思考を打ち切る。
バーサーカーが呼ばれた理由など、彼女にとっては些末事に過ぎない。
バーサーカーは強い。魔力の消費も魂喰いを行っていけば、北方棲姫が生成する艦載機を複数呼び出して戦闘を補助する程度の余裕はある。
この聖杯戦争で勝ち抜く事は決して不可能ではない筈だ。

「必ズ、カエル」

北方棲姫は直観的に感じていた。ここは自分がいるべき世界ではないと。
夢見た光景はここでは手に入らないと。
帰らなければならない、本来彼女があるべき世界へ。
例え、元の世界で滅びる運命にあったとしても、それがこの世界で朽ちていい理由にはならない。
船の汽笛がどこかから聞こえる。
港に人影はもうどこにも見当たらなかった。

イツカ、楽シイ海デ、イツカ……


350 : 北方棲姫&バーサーカー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:13:36 Id8n0Nyg0
【クラス】
バーサーカー

【属性】
混沌・狂(悪)

【真名】
ランペイジ@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
狂化:C
魔力と幸運を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
金属と融合した身体と破壊衝動に飲まれた精神は致命的な一撃を与えない限り全てを破壊し続ける。

威圧:C
戦闘時に対象の敏捷に若干のペナルティを与える。同ランク以下の精神干渉を無効化するスキルで無効化が可能。
威圧的な両腕、そして強大なニンジャソウルはプレッシャーとなって相対した者の動きを阻害する。

【宝具】
『青銅纏いし剛力の鬼神(アカラ・ニンジャ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:自身
常時発動宝具。
負傷しても両腕のサイバネアームなどから金属繊維が這い回り負傷箇所をただちに修復する。
修復する度にマスターの魔力が消費される。
遥か古代に名を馳せた半神的存在であるニンジャの一人、アカラ・ニンジャのニンジャソウルがバーサーカーには憑依している。
このニンジャソウルが憑依したものは異常ニンジャ膂力と金属同化能力を宿す。
その膂力は生身の時点で、素手によるパンチのみでビルを解体できる程である。
また、金属同化能力によってバーサーカーは重機や鉄塊を連想させる両腕の巨大なサイバネアームを自身の手の様に自由に動かせるだけでなく、自らの負傷の治癒にも使うことが可能となっている。

【weapon】
両腕の巨大サイバネアーム
破壊力が高いだけでなく、蒸気を任意で吹き出せるので接近時のけん制や目くらましも可能。

【人物背景】
本名はゼンダ。
元々はキョートで働く善良なソバ職人だったが巨大企業の工場建設の反対運動の折にソバ屋の廃業・妻の死を経験し絶望する。
結果、彼は装甲車に改造した巨大ビークルで工場建設現場を破壊して回った「ソバシェフ・ランペイジ事件」を起こして逮捕される。
収監後もその憎悪は収まることがなく、「ソバシェフ・ランペイジ事件」を続行するために脱走したところ、デスドレインという忍者に勧誘を受け、彼の仲間となる。
その後はニンジャ「ランペイジ」としてデスドレインの司令塔のようなポジションについて破壊活動に従事し、ある戦闘で両腕を失った事を機に巨大なサイバネアームを手に入れた。
最終的にはニンジャスレイヤー・ダークニンジャとの戦闘中に破壊衝動に呑まれて暴走したところニンジャスレイヤーによって致命傷を負わされる。
末期に意識の戻った後はデスドレインと言葉を交わし、ゼンダではなくランペイジとしてその生涯を終えた。
アカラ・ニンジャというニンジャのソウルに憑依されているが憑依した明確な時期の記述はなく、デスドレインがソバシェフ・ランペイジ事件の新聞記事を見て勧誘を決めたことから、事件が起きる前段階でニンジャソウルが憑依していた可能性が示唆されている。

【サーヴァントの願い】
全てを破壊する


351 : 北方棲姫&バーサーカー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:14:33 Id8n0Nyg0
【マスターとしての願い】

元の世界に帰る

【weapon】
艦載機
たこ焼きに似ている球状の艦載機。口からエネルギー弾を発射するがサーヴァントにはダメージは与えられない

【能力・技能】

魔力を消費して艦載機を生成可能
主砲など艤装については元の世界の戦闘で破壊されたので使用不可

【人物背景】
深海棲艦の中でも実際の基地や飛行場の特性を持つ「棲姫」と呼ばれる上位存在。
見た目はロリロリしい少女だが、その見た目とはかけ離れた火力をもってアリューシャン作戦に挑む艦娘達を迎え撃った。
モデルとなったダッチハーバーやアリューシャン作戦で無傷のゼロ戦が鹵獲された事から、航空機に対して執着を見せる。
「カエレッ!」や「コナイデッテ、イッテルノ」というセリフから深海棲艦の中でも好戦的ではない部類の存在だと思われる。
余談だが下着は黒の紐パンである。

【方針】
バーサーカーは一撃の威力は高いが肉薄する距離まで接近されると攻撃が行えず途端に不利になる。
その弱点のカバーは北方棲姫の艦載機が行うので、艦載機の運用とバーサーカーの安定した戦闘の為魔力の貯蔵は必須。
魂喰いに拒否感は微塵もないので、魂喰いを行いながら優勝を目指す形になるか。
同盟については視野にもいれていない。


352 : 北方棲姫&バーサーカー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:17:17 Id8n0Nyg0
以上で投下を終了いたします。
また、拙作のリドラー&キャスターにつきまして、幸運のステータスが抜けておりましたので、wikiにて修正させていただきました
他のステータスは変更しておりません。

【幸運追加後のステータス】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力B 幸運C 宝具A


353 : 北方棲姫&バーサーカー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/06(水) 01:25:24 Id8n0Nyg0
すみません、マスターの項目に抜けがあったので差し替えです

【マスター】

北方棲姫@艦隊コレクション

【マスターとしての願い】

元の世界に帰る

【weapon】
艦載機
たこ焼きに似ている球状の艦載機。口からエネルギー弾を発射するがサーヴァントにはダメージは与えられない

【能力・技能】

魔力を消費して艦載機を生成可能
主砲など艤装については元の世界の戦闘で破壊されたので使用不可

【人物背景】
深海棲艦の中でも実際の基地や飛行場の特性を持つ「棲姫」と呼ばれる上位存在。
見た目はロリロリしい少女だが、その見た目とはかけ離れた火力をもってアリューシャン作戦に挑む艦娘達を迎え撃った。
モデルとなったダッチハーバーやアリューシャン作戦で無傷のゼロ戦が鹵獲された事から、航空機に対して執着を見せる。
「カエレッ!」や「コナイデッテ、イッテルノ」というセリフから深海棲艦の中でも好戦的ではない部類の存在だと思われる。
余談だが下着は黒の紐パンである。

【方針】
バーサーカーは一撃の威力は高いが肉薄する距離まで接近されると攻撃が行えず途端に不利になる。
その弱点のカバーは北方棲姫の艦載機が行うので、艦載機の運用とバーサーカーの安定した戦闘の為魔力の貯蔵は必須。
魂喰いに拒否感は微塵もないので、魂喰いを行いながら優勝を目指す形になるか。
同盟については視野にもいれていない。


354 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 01:52:14 fUChLCCI0
皆様、投下乙です
私も投下します


355 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 01:52:50 fUChLCCI0
夜のゴッサムシティは犯罪者の跋扈している。
少し街中を彷徨ってみれば強盗事件の現場に出くわし、ポン引きが「いい娘がいる」と話しかけてくる。
いざ警察が駆けつけても、警官の手元をよくみればそこには札束があり、警官が来た道をたどると犯罪者が何事もなかったかのように歩道を歩いている。
例え犯人が逮捕されてもそいつは金を積んでいとも簡単に保釈され、また犯罪に手を染める。
まさに犯罪都市こそがゴッサムシティの異名に相応しいであろう。

そして汚れた裏路地を少し進んだ場所にも、ゴッサムではある意味日常的な風景が広がっていた。
そこには数人の男がおり、外に声が漏れないようにかすかな声でヒソヒソと話し合っている。
話の内容は定かではないが、男たちは会話を終わらせたのちにそれぞれのポケットの中からある物を取り出した。
一方はポリ袋に入った粉末。もう一方はかなりの額になるであろう札束。
それらを交換した男たちは『取引』を終了してそそくさとその場を立ち去る…はずだった。


ガクン、と。


一瞬、周囲が揺れた。

それを感じて男たちは動きを止めた。
――地震か?
身体をこわばらせて周囲の様子を窺って見るも、それ以上揺れる気配はない。
気のせいかと思い、急いで麻薬取引の場からずらかろうと男たちの中の一人が一歩踏み出した、その時。


ズン、と。


地響きが起こった。
それは先のものよりも大きく、なにかがこちらに向かっていることを予感させる。
男たちの誰もが冷や汗を流した。

地響きが鳴りやむと、男たちの視線は一点に集まる。
そこには、2mを超える大男が悠然と佇んでいた。
紅色のライダースジャケットを羽織り、本式のモヒカンヘアで片目が隠れている。
大男は眉を動かさず、じっと男たちを凝視している。

男たちは絶句した。
それは麻薬の取引を見られただとか麻薬を奪われるという危機感からではなく、
この大男に対する恐怖からのものだった。


356 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 01:54:27 fUChLCCI0

「な、なんだ、てめーは」

男たちの内の1人がなんとか声を絞り出す。

「ド、ドラッグなんてゴッサムじゃあ風邪薬より多く使われてるんだぜ?正義漢ぶって俺たちを捕まえても何も変わりはしねェ………」
「そ、そうだよ。なぁアンタ、見逃してくれよォ―――。ドラッグでハッピーになるやつだって沢山いるんだしよォ〜〜〜」

1人に釣られてまた1人、また1人と大男に対して物言いを重ねていく。
麻薬取引をしていた男たちは当初は恐怖していたが、仲間や取引相手が次々と口を開いていったことでそれが薄れていった。
やがてその中の1人が得物のナイフを取り出し、大男に向ける。

「ヒヒヒ、だがよォ、このことをサツにチクられたら厄介だ」

それに同調して全員が得物を取り出し、下卑た笑いを上げる。
よくみればこの大男は武器など持ち合わせていないではないか。
こんな大男でもナイフで急所をつけばイチコロだ。
武器を持っている方が圧倒的有利…その巨漢が何もしてこないのをいいことに男たちは自分たちの勝利は確実だと思い込むようになる。

「ブッ殺してやる!」

その言葉を皮切りに、男たちが巨漢に飛びかかった。
コイツは丸腰だから拳でガードしようともダメージを受けるのは向こうの方だ。
ましてや拳で人を殺せるわけがない。

…男たちはそれを信じて疑わなかった。
人は見かけによらないというが、大男は見かけ通りの怪力を持っていることを念頭に置いておけば、
たった今大男の胸にナイフを突き立てようと跳んだ男は痛い目を見ずに済んだかもしれない。

「片腹…痛いわァー!!」

大男が初めて声を出した。
それを認識した時、飛びかかった男にはすでにボキバキという嫌な音が全身を駆け巡り、腹には嘔吐したくなるような鈍い痛みが走った。
大男は屈んだ姿勢からアッパーを繰り出し、その勢いに任せて身体を浮かせた男に肘を振り下ろし、叩き落した。

「ゴボゲッ」という痛そうな声と共に男は地面に叩きつけられる。
口からは血と胃酸の混じった液体が溢れ、白目を向いていた。
体内のあらゆる骨で骨折に骨折が重なっており、もはや再起不能であった。

「手是両扇門、全靠脚打人。まず地に足をつけろ」

男たちは笑いと動きを止め、再び絶句した。
大男に向けられたのは先ほどの恐怖とは比にならない、人間の「死にたくない」という本能からくる癒えない恐怖であった。

大男はグローブにちた汚れを払いながら他の男たちを睨み付ける。
男たちは足が竦み、指一本動かすことができなかった。


357 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 01:55:00 fUChLCCI0

「あ、あんたは一体…」

その中でも少し年上で、リーダー格と思われる男がなんとか震える口を動かした。

「知らないなら名乗ってやろう…上海一の打派『大魏』とは俺のことよ!」

大男の名は魏(ウェイ)。ウェイ・イェ・ルウ。
自らを上海一の打派「大魏」と称する、心意六合拳の達人、中国の国際マフィア「黒手会」の兇手(殺し屋)である。

「わ、わかった!あんたが強いのは認めるよ!だから見逃し――」
「『俺達』はアンタらに強さをみせつけに来たわけじゃあない…」

男は背後からの声に背筋を凍らした。
それは魏の声ではない、新手の声だった。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこにはもう1人、魏の仲間と思われる者がいた。
あの大男に仲間がいたとは。魏と比べれば若々しい声と外見をしている。

「すまない、手間をかけさせたな、魏」
「構わんさ。それよりも早く『用事』を済ませた方がいいんじゃあないか、セイバー?」

セイバーと呼ばれた男は短く「そうだな」と返すとリーダー格の男に近寄り、

「これ以上痛い目に遭いたくないのなら、質問に答えてもらおうか」

と顔を近づけて言った。

「アンタらが手に入れた麻薬…その出所はどこだ?」
「そ、それは…」

男は目を逸らし、口の中で唾をゴクリと飲み込んでから、

「い、いとこから貰ったんだ」

と震え声で答えた。
先ほどの魏の圧倒的な強さを見たためか、冷や汗が止まらない。

「そうか。…ところで、俺には特技があってな。人が本当のことを言ってるかどうかを「汗」とかで見分けるんだ」
「……!」
「「汗の味」をなめればもっと確実にわかるがな……」

男は激しい運動をしていないというのに肌に汗の玉を作っていた。
セイバーは目を細める。

「その汗と皮膚からわかるぜ…なめなくともわかる。―――おまえ、嘘をついているな」
「ヒ、ヒィ――――!!」

思わず男は叫び声を上げた。
――殺される。
セイバーの目は…「人殺し」の目をしていた。このセイバーという男には、やると言ったらやる『スゴ味』がある。
魏の時とは違い、凝視されただけで死の恐怖を感じ取ったのだ。

「答えろよ。質問はすでに「拷問」に変わっているんだぜ!」


◆ ◆ ◆


358 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 01:56:19 fUChLCCI0

おかっぱともいえる髪型にジッパーの引き手のような装飾が所々についた服を着たセイバーの英霊――ブローノ・ブチャラティは、
閉店したバーの中、適当なイスに座り、麻薬取引の現場で得られた情報を考察する。
男が吐き出した麻薬のの出所はゴッサムに存在する犯罪組織の中でも比較的有名なギャングのものだった。

「どうする?今すぐその組織を叩きにいくか?」

ブチャラティのマスターにあたる魏は、のカウンターに腰かけている。

「いや……まだ早いだろう。あの男は出所以外は本当に何も知らないみたいだ。もう少し調べても遅くはない。それに――」


「――魏の仇…『ムラクモ』ってやつのことも調べないといけないからな」
「そうだ…ムラクモ――」

魏がゴッサムシティに来たのはゲセルシャフトの基地に置いてあったシャブティを手に取ったことが切欠だった。
魏は元々は恩人であり黒手会の大当家(ボス)であったインフーが暗殺され、新大当家の座を巡る内部抗争が起きる中で、その下手人を探すため行動していた。
しかし、下手人のマリリン・スーを倒してから魏に明かされた事実は衝撃的なものであった。

大人(ターレン)と呼び慕っていた恩人の「インフー」という男は、
秘密結社ゲゼルシャフトが産み出した、現人神を自称するムラクモの複製體だった。
ムラクモが「転生の法」により復活するための器に過ぎなかったのだ。
先代大当家を殺しインフーが後釜に据わり、黒手会はゲゼルシャフトの国政へ介入するための下部組織となり下がっていた。

それをゲセルシャフトの最深部にてムラクモ自身の口から聞かされた魏は激怒し、ムラクモを死闘の末討ち取った。
だが、ムラクモは転生し、今も魏のあずかり知らぬところで復活しているだろう。
それを悟った魏は、基地入手した複製體の所在地を記したリストを手にクローンを一掃しようと決意を固めたのだが…。
そのリストの隣にあったのが後のブチャラティとなるシャブティであった。

「――奴は…俺の…俺たちの心『裏切った』ッ!」

義に篤い魏は、インフーに忠誠を誓い、幹部としてその組織に尽くそうと心に決めていたのに、
恩人と思っていた男から裏切られ、そして黒手会ごと躍らされていた。
魏の他にもインフーに拾われて救われた人物は山ほどいる。
マリリン・スーも元は戸籍を持たない黒孩子(ヘイハイズ)で娼婦をしていたところをインフーに拾われた。
思い出すのは魏を「兄貴」と呼んで慕っていた部下の少年。
魏が麻薬取引をしていた男を一蹴したところを見ると、

「兄貴ィッ!魏の兄貴ィッ!やっぱり兄貴ィは、スゲェーやッ!」

とでも言って賛辞を送ってくれたことだろう。彼はこの真実を知ったとき、どんな顔をするのだろうか。
それを思うと魏の心に怒りが満ちてくる。


359 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 01:57:35 fUChLCCI0

「あの男は今!このゴッサムにいるッ!このリストがそれを教えてくれたッ!」

魏は基地から手放さずに持ち込んだ複製體の居場所が描かれたリストを取り出した。

「聖杯なんてどうでもいいッ!だが、ムラクモはこの世から抹消せねばならん。ムラクモをこの手にかけるまで俺は死ぬことはできん」
「オレにもわかる。その「ムラクモ」が死んで当然のことをやっていた男だとな」

魏の来歴を知るブチャラティはイスから立ち上がり、魏からリストを受け取る。
そこには確かにゴッサムシティに複製體を紛れ込ませたことが書かれている。
ゴッサムにやってきた魏のサーヴァントはセイバー。
だが、『その指取るは運命の引き手(スティッキィ・フィンガーズ)』のジッパーで「切る」ことからセイバーの枠に押し込められたサーヴァントだった。

「だからオレは、こうして裏社会の浄化を条件におまえに協力しているんだ」

ブチャラティはイタリアのギャング組織「パッショーネ」のボス・ディアボロとの最終決戦の中で、
ジョルノ・ジョバァーナに後を託し、天へと上った。
『矢』を手にしたジョルノは必ずディアボロを打ち倒し、新生パッショーネのボスとなってくれることだろう。
新生パッショーネの下にあるイタリアはもうブチャラティの心配するところではない。

だが、ブチャラティは召喚された時に既視感を感じた。
それは召喚された地がゴッサムだったからに他ならない。
ブチャラティの見たゴッサムシティはかつて見たイタリアの惨状と同じ、いやもっと酷いだろう。

だからブチャラティは生前の生き返った心を胸に、このゴッサムの裏社会の清浄化に乗り出すことを心に決めた。
英霊になっても、自分の信じた道を歩むギャングとしてすべきことに変わりはない。
魏とブチャラティは、ブチャラティが魏の仇討ちを手伝う代わりに、魏はブチャラティの望む裏社会の清浄化を実行するというギブアンドテイクの関係にあった。
先の麻薬取引現場を襲撃したのもその一環だ。

「俺の復讐に付き合ってもらっているんだ。サーヴァントだからってタダで手伝えとは言わん。まぁ、ギャングのお前が麻薬をなくすといったのは少しブルってしまったがな」
「麻薬は人間の魂を腐らせていく…そんなものを許すことはできない」
「黒手会は麻薬を売らなかったといえば嘘になるが…魂を腐らせる点に関しては同意見だ。その裏社会の清浄化とやら、この『大魏』が助力してやろう」
「それに、オレもかつて、ボスに心を裏切られた。『侮辱』された痛みはオレも経験済みだ。ムラクモは必ず倒す」

ボスに裏切られた幹部のイタリアンギャングとチャイニーズマフィアが主従となったのは何かの縁だろうか。


360 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 01:58:20 fUChLCCI0
【クラス】
セイバー

【真名】
ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメータ】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力B 幸運A 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
後述の逸話から、神秘の位が上がり対魔力のランクが向上している。

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【保有スキル】
戦闘続行:-
決して屈さない強靭な精神力の持ち主。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。
ランサーの場合、後述の逸話によりこのスキルは宝具に昇華されている。。

心眼(真):B
ギャング、及びスタンド使いの経験によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。人間として獲得しうる最高峰の人望。
カリスマは稀有な才能で、1チームのリーダーとしてはBランクどころかDランクで十分と言える。
ランサーの場合チームのメンバー全員が彼と出会ったことで人生が大きく変わり、彼に未来を託したというエピソードから、ランクが大幅に上がっている。

人間観察:D+
人々を観察し、理解する技術。
このスキルがあるからこそ、ブチャラティは人の苦しみを理解することができ、幼少時に父親の元に残るという決断を下すことができた。
また、相手の汗をかいた時のテカり具合で相手の嘘を見抜くこともできる。
汗の『味』を見ればより確実に相手の嘘を見抜くことができる。


361 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 02:00:59 fUChLCCI0
【宝具】
『その指取るは運命の引き手(スティッキィ・フィンガーズ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1

――彼は開いていくジッパーのようにどこかの誰かに希望として伝わって行く意味のあることを切り開いていったが

――それと同時に、閉じていくジッパーのように死の運命へと向かっていた。

――それは彼の精神の具現であり、彼の辿った運命の具現でもあるかもしれない。

生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
殴った物体にジッパーを取り付け、物体を切断・接着したり、開いたジッパーの中に空間を作ることが出来る能力を持つ。
非常にシンプルな能力だが、その分応用範囲が広く、
この能力を利用して壁に穴を開けて通りぬけたり、地面に潜って移動することができる。
他にも他人の体にジッパーを取り付け、開いたジッパーの空間内に自分や物を隠したり、
自分の腕をジッパーで紐状にどんどん開くことによって、パンチの飛距離を伸ばすことも可能である。
基本的にジッパーで切開されたものは破壊されず生物の場合も特に出血等もなくジッパーを閉じて能力を解除すれば元に戻るが、
普通に切断してしまうこともできるため破壊力・殺傷力は非常に高い。
このジッパーによって『切断する』という特徴からセイバーのクラスで召喚された。
射程距離は短いが、ジッパー自体はセイバーがよほど離れない限りその場に残り、遠隔操作でその開閉が可能。
ジッパーを複数の対象に取り付けることもでき、最大補足はあくまで「一瞬で」ジッパーを取り付けられる対象は1つのみという意味である。
スタンドビジョンのダメージは本体にフィードバックされる。

『魂に吹き荒ぶは黄金の旋風(ロールド・ゴールド・ハート・オブ・ストーン)』
ランク:A+ 種別:対己宝具 レンジ: 最大捕捉:-
ジョルノ・ジョバァーナのスタンド『ゴールド・エクスペリエンス』とセイバーの精神により、
肉体は死んでいるにも関わらず魂だけで生命活動を続行し、現世に留まっていたというエピソードの具現。
戦闘続行スキルが宝具に昇華されたもの。

決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。
セイバーは霊核が破壊された後でも、約3日間の現界を保っていられる。
たとえ霊核が破壊された状態でもスキル・宝具を平常時と同等以上のレベルで使える。
サーヴァントとして普通ならば消滅している状態で行動を続けることこそがその逸話の具現である。
ただし霊核が破壊されてからはその肉体が朽ちていき、筋力、耐久、敏捷のパラメータが時と共に大幅に低下していくので注意。

【weapon】
・宝具『その指取るは運命の引き手』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で
筋力B、耐久D、敏捷B相当。


362 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 02:01:29 fUChLCCI0
【人物背景】
イタリアンギャングであり、「パッショーネ」のチームリーダーの1人。のちに幹部になった。
ミスタやアバッキオらの上司で、人の皮膚や汗の状態で相手の嘘を見抜くという特技がある。
沈着冷静であり、頭脳明晰。温厚で責任感が強いこともあって部下、幹部や町の人々からの人望も厚い。
初登場時はジョルノに対して組織が送り込んだ刺客として出逢ったが、彼の夢に賛同しチームに引き入れた。

7歳の時に両親が離婚して以来、漁師である父親と2人で暮らす、優しく頭のいい少年だった。
しかし彼が12歳の時、父親がチンピラの麻薬取引の現場を目撃してしまい、瀕死の重傷を負わされ、
さらに入院先の病院でも狙われる。ブチャラティは父親を守るため、チンピラを返り討ちにして殺害。
自身と父親の安全を保証してくれる力を求め、ギャング組織「パッショーネ」の一員となった。
が、5年後に父親は後遺症を残したまま死亡。

このことから麻薬を強く憎んでいるが、
ブチャラティが正義と信じていた麻薬にボスが手をそめていたことを知り、組織のやり方に疑問を感じるようになる。

そして幹部に昇進してからの初仕事であるボスの娘・トリッシュの護衛任務にて、
ボスの真意が自分の情報を隠し通すためにトリッシュを自らの手で殺害することだったということを知り、激怒。
彼女を守るべく組織を裏切る決意をし、ボスと対決するがスタンド「キング・クリムゾン」の前に敗れ致命傷を負ってしまう。
しかし、駆け付けたジョルノのスタンド能力と彼の執念が原因不明の奇跡をよび、
『肉体そのものは死亡したが、魂だけで肉体を動かしている』状態になる。
その後もボスを倒すために引き続き行動を続け、
次第に肉体が朽ち果ててゆく中でもボスの行方を追い、最終決戦の中でジョルノに全てを託し天へ昇っていった。

【サーヴァントとしての願い】
この荒んだゴッサムの社会を清浄化する。


363 : 魏(ウェイ)&セイバー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 02:02:04 fUChLCCI0
【マスター】
魏@アカツキ電光戦記

【マスターとしての願い】
ムラクモを討つ。

【weapon】
・複製體のリスト
ゲセルシャフトが送り出した複製體の居場所が書かれていおり、その中に『ゴッサムシティ』の文字がある。

【能力・技能】
・心意六合拳
中国拳法のひとつ。
八極拳と同じく一撃の重さを追及していることで知られているが、本来は精神から肉体の潜在能力を引き出す武術である。
また、形意拳の原型であるとも知られている。
魏はその達人で、生身で電光機関を装備したエージェントと渡り合っている。

・練精化気、練気化神、練神還虚
動作と呼吸と意念を調和し、気功により身体能力を強化する。
最終段階の練神還虚ともなるとサーヴァントとも互角に戦えるだろう。
強化状態は時間と共に解除される。

【人物背景】
魏の読みは『ウェイ』。
フルネームはウェイ・イェ・ルウ。自らを上海一の打派「大魏」と称し、大陸最強を謳われる心意六合拳の達人。
その実力を買われ、凄腕の職業兇手(殺し屋)として大陸の国際マフィア「黒手会」の幹部にまでのし上がるが、
ある日その恩人で「黒手会」の大当家を務めるインフーが、何者かに暗殺されてしまう。
組織内では新たな大当家選出を巡る内部抗争が勃発する中、彼はその下手人を探すために奔走することとなる。

アカツキ電光戦記ではでは唯一任務や野望、使命感などではなく恩人の復讐という動機を持ち、
その会話の端々からも義に篤い性格が窺われる。
一方で鼎二尉に対する勝利メッセージで「お前ならいい客がつくだろう…」という発言をしており、
紛れもなく裏社会の人間であることも窺う事が出来る。
同作の終盤でムラクモからインフーの実態を明かされた彼は山篭りしてさらに修行を積んだ後、
世界中に存在する「仇」の一掃に目的を変え再び奔走することになる。

参戦時期はムラクモ撃破後で、複製體を記したリストを手に入れた直後。
そのため件のリストも持ち込んでいるが、とりわけ役に立たないだろう。
 
【方針】
ムラクモを探す。
その側らでブチャラティの裏社会の清浄化にも協力する。


364 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/07(木) 02:02:25 fUChLCCI0
以上で投下を終了します


365 : ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 08:58:45 LiF6oiow0
投下乙です。
自分も投下させて頂きます。


366 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 08:59:28 LiF6oiow0
 鬼人正邪は、生まれついての弱者だった。絶対的な弱者だった。
 喧嘩をすれば当然負けるし、下克上を企てれば計画ごと叩き潰される。
 妖怪・天邪鬼として生まれてこの方、ただの一度も「勝利」を収めた事はない。
 だがしかし、その代わり。鬼人正邪の心は、ただの一度も「屈した」事はなかった。

 ――天邪鬼が反逆する事をやめたらおしまいだ。
 ――反逆の意思が折れた時点で、天邪鬼は、概念として死ぬ。

 その思い一つで。殴られ、蹴られ、地べたを這いつくばっても、鬼人正邪は立ち上がる。
 その心折れない限り。何度でも、何度でも、鬼人正邪は反逆の鐘を鳴らし続けるのだ。

 ◆◆◆◆

 ゴッサムシティの腐敗の象徴たる貧民街。
 腐臭漂うその一角で、少女を中心とした人だかりが出来ていた。
 口汚い男たちの罵声と、痛烈な打撃音が、薄汚れたビルの谷間に反響する。暴行されているのは、中心にいる少女だった。
 それは、富裕層に手が届かず、自分よりも下を見下す事しか出来ない街のゴロツキたちの憂さ晴らし。

「おい、聞いてんのかガキ!」
「小娘が、初めて見た時からテメーの態度は気に食わなかったんだよ!」
 頭の弱そうな罵声と共に、一人の拳が少女の顔面を打ち据えた。口の中が切れて、血反吐を吐き出す。
 無様に倒れ伏すしか出来ない少女の腹を、一人の足が容赦なく蹴り抜いた。肺の中の空気と共に、逆流してきた胃液を吐き出す。

 身体が麻痺して動けなくなった少女の身体を、男たちは寄ってたかって蹴り始めた。
 顔だろうが胴だろうが腕だろうが足だろうが、お構いなしに殴られ蹴られ、少女の身体がみるみる青痣だらけになってゆく。
 それが暫く続いた所で、ふと、暴行の雨が止んだ。一人の男が、少女の黒髪を掴み上げる。

「おい、クソガキ。これに懲りたら、二度とナメた口聞いてんじゃねえぞ」

 少女は――正邪は、口の中に溜まっていた血反吐を、男の顔に吐きかけた。
 吐出された血反吐が男の目を刺し、男はうっ、と呻いて正邪の髪から手を離した。

「……ナメやがって、雑魚の癖に。ゴロツキ風情が粋がってんじゃねえよ」

 次に罵声を飛ばしたのは、正邪の方だった。
 正邪はそう言って、痣だらけのその顔でべろんと舌を突き出して、ゴロツキを睨み返すのだ。
 正邪のその一言が、鎮まりつつあった男たちの火に油を注いだ事は明白だった。

 そこから先は、逐一筆舌に尽くす事も憚られる程の暴力の嵐だった。
 何せ此処は、腐敗しきったゴロツキの巣窟。言葉で分からないなら、暴力で訴えるしかない。
 その日正邪は、自ら言葉を発する体力すらなくなるまで、殴る蹴るといった暴行を受け続けた。
 だけども、男たちが正邪への暴行に飽きて立ち去るその時まで、正邪の瞳に宿った反逆の灯火はついぞ消える事はなかった。


367 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:00:04 LiF6oiow0
 
 ◆◆◆◆
 
 日が沈みかけた頃、路地裏から人の気配は消えていた。
 この地区の治安は最悪だ。ビルの壁を凄まじい勢いで侵食してゆく緑の蔦の不気味さも相俟って、今や此処で夜を明かすのは正邪一人くらいのものだった。
 どうやらこのクソのような貧困層で、クソのようなゴロツキどもの憂さ晴らしの相手をするクソのような浮浪者というのが、この街で正邪に与えられた役割らしかった。
 金もなく、地位もなく、失うものなど何もない正邪にはお似合いの役割と言える。この生活だって、幻想郷で虐げられ続けてきた頃と比べてもそれ程変わりはない。
 一人ぼっちで夜を明かす事だって慣れている。小人族の姫と別れてからというもの、正邪は幻想郷中を敵に回しながら、毎日こうやって夜を明かして来たのだから。

 ああ、せめて反則アイテムをこっちに持ち込めたなら、あんなゴロツキにやられるだけの日々は送らずに済むのに。
 無事ゴッサムに持ち込めたのは、肩に羽織っていたひらり布と、首かけていた天狗のトイカメラの二つだけだ。
 最後に保護した反則アイテム――奇妙なシャブティも、何の力も示さずに未だ正邪のポケットの中で眠っている。
 その他の反則アイテムは全て幻想郷に置き去りにしてきてしまった。今頃はもう、姫に回収されている頃だろうか――
(ん……?)
 なんて。そんな事を考えて物思いに耽っていた時、正邪はその耳で、一人の人間の足音を聞きつけた。
 蔦に覆われたビルの壁に力なく背中を預けて座る正邪の双眸は、やがて現れた一人の浮浪者の姿を認めた。
 此処よりも些かマシな治安をした地区に住み着く浮浪者だ。そいつは手にフランスパンを抱えて、正邪の隣に腰掛けた。

「いつもいつも大変だねぇ、お嬢ちゃん。とっとと謝っちまえばいいものを」

 こうやって男が正邪に声をかけるのは、果たして何度目、何日目だったろうか。
 毎日来る訳ではないが、こっぴどくやられた日にはこうして食事を持って現れる。
 男は手にしたパンを半分ほど千切って、疲労のあまり徐々に姿勢がズリ落ちつつあった正邪の腹の上へ投げた。

「ほら、食えよ。腹減ってんだろ」
「いらない。お前らみたいなクズの施しを受けるなんて真っ平だ」
 眼球だけをギョロりと動かして、正邪は浮浪者に一瞥をくれてやる。
 大体にして、正邪は人間ではない。一日食べなかったくらいで死んだりするものか。

「あぁあぁ、そういう事言うから、ああいうゴロツキに目を付けられるんだろ」
「私はそういう生き方しか出来ないんだよ、なんてったって……――」

 ――私は、アマノジャクだからな。
 そう言おうとして、正邪はしかし、やめた。
 この男は所詮NPC。それも、おそらくは現実世界でも浮浪者であろう救いようのないクズだ。
 そんなモブのクズ野郎に、自分の素性を明かした所で一体何になる。得られるものは何もない。

「なんてったって……? 何だっていうんだよ、お嬢ちゃん」
「チッ、何でもない、忘れろ。そしてとっととどっかいけ。私を哀れみの目で見るな、胸糞悪い」

 そうだ、それが正邪は気に食わない。それが何より許せない。
 自分だって浮浪者だというのに、この男はちっぽけな正義感を翳して正邪を見下しているのだ。
 正邪はいつだって強者に反逆し続けて来た、言わば最強の弱者だ。そこには力はなくとも誇りがある。決して折れぬプライドがある。
 だから正邪は、強者が気に食わないのは当然として、自分が弱者であるという事実を享受している誇りのない弱者も同じくらい気に入らない。
 誇りひとつを武器に生きてきた正邪にとって、誇りを持たない弱者などは救いようのない唾棄すべき存在なのである。


368 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:01:06 LiF6oiow0
 
「……いつまで見てンだよ、とっとと消えろって言ってるだろ」
 ふいに、浮浪者の視線に気付いた正邪は、もう一度浮浪者にガンを飛ばす。まじまじ見られるのは不愉快だ。
「いや、そういやぁ、お嬢ちゃんの左手のそのタトゥー、そういうのを探してる奴が居たのを思い出してさ」
「えっ」
 ここで初めて、正邪の顔色が変わった。
 男は知らないのだろうが、正邪の左手の甲に刻まれたそれは、タトゥーなどではない。
 これはサーヴァントを使役する為に用いられる令呪だ。それを探している、という事は。
 考えを巡らそうとしたその刹那、ビルの屋上から高速で振ってきたのは、槍を構えた男だった。

「ッ?!」
 痛む身体に鞭打って、反射的に飛び退く。
 正邪が座っていた場所に、槍の切っ先が突き立てられていた。
 間違いない。聖杯戦争に参加するサーヴァント――ランサーによる襲撃だ。

「な、何なんだいきなり……!」
 狼狽える男の背後から、今度は貧困層の路地裏には似つかわしくない、ブランド物のスーツを身に纏った若い男が現れた。
 男は何処までも冷たい声で、己がサーヴァントに命令を下す。
「面倒だな……その邪魔なゴミを殺せ、ランサー」
「――……はっ」
 逡巡は一瞬だった。ランサーの槍は、浮浪者の首を容易く斬り飛ばした。
 あっけない幕切れだった。男の身体から鮮血が吹き上がって、その身体がドサリと崩れ落ちた。
「あっ……」
 つい、反射的に伸ばした正邪の手は、何にも届かず、空虚を掴むだけだった。
「やれやれ、まさかこんな吹き溜まりの浮浪者がマスター候補とは、世も末だね」
 嘲笑。
 男の血で赤く濡れた、男が正邪にくれたパンを、ランサーのマスターがぐしゃりと踏み潰した。

「テメェ……ッ」
 ギリリ、と。正邪の奥歯が軋む音が聞こえた。
 本来ならば端正な筈の、血と痣で汚れた正邪の顔に、さっと怒りの朱が差す。

「……なんでだ。なんでそこのクズを殺した。そいつに殺される理由があったっていうなら、私にも教えてくれよ」
「………………」
 正邪の問いに、ランサーは何も答えようとはしなかった。
 逆らえないのだ、この下僕は。自分よりも強者である、後ろのマスターに。
 その上下関係を証明するように、ランサーのマスターが歩み出た。
「おいおい、俺達は聖杯を勝ち取るために戦ってるんだ。英霊同士の戦場で邪魔になる障害物を切り捨てて何が悪い。
 大体にして、こいつは役割の薄いNPCだろう。吹き溜まりのゴミ一人殺したくらいで、そこまで怒る奴があるか」
「…………ッ!」


369 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:01:46 LiF6oiow0
 
 返ってきたのは、最高に気分の悪い回答だった。
 激情を堪え、眉根を寄せて、すっと目を伏せる。
 ふいに、ランサーのマスターに踏み潰されたパンが視界に入った。
 あのクズが寄越したクソみたいなパンは、最早潰れて原型すらも留めていない。
 あっけないものだ。あの男も、あのパンも、抗うだけの力を持ってはいない。
 だから、潰された。

「あァ、そうさ! 確かに奴は胸糞の悪いゴミ野郎だった。これが弱肉強食だというのなら、成程殺されるのも仕方がないと言えるだろうよ。
 だがな、それは殺される理由があるならの話だ。お前らは今、この私の目の前で! 力を持たず、殺される理由もない弱者を一方的に踏み躙ったんだッ!」

 それは、反逆者たる正邪にとって、何よりも許しがたい暴挙。
 別に、命は尊いものだから、とか。そういう反吐が出るような綺麗事を言いたい訳じゃない。
 力を持った強者が持たざる弱者を一方的に虐げる。その一点においてのみ正邪は気に食わなかった。許せなかった。

 だが、言ってしまえばそれはこの世界の法則だ。
 強者が繁栄し、弱者は淘汰される。そうやって人は歴史をつくってきた。
 それが世界だ。世界とは、いつだってそういうものだ。
 目の前の男たちは、それを体現したに過ぎない。
 自分たちの正当性を主張するように、敵のマスターは言った。

「いいか? これは聖杯戦争なんだよ。皆自分の願いを懸けて戦ってる。そんな綺麗事言ってちゃ生き残れねぇぞ、お前」
「はァアア〜〜? 何が聖杯戦争だ、何が願いを叶える願望機だ。そんな物の為に戦うなんて、馬鹿馬鹿しくって反吐が出る!」
「……ああ、そうかい。だったら、とっととここで脱落しろよ。やれ、ランサー!」
 マスターが正邪を指差し、勝利の確信に満ちた声で命令を下す。瞬間、ランサーが凄まじい勢いで飛び出した。
「クソが……ッ!」
 悪態をつきながらも、槍を片手に突き進むランサー目掛けて、正邪は使い慣れた弾幕を放つ。
 それを回避しようと右へ踏み込もうとしたのであろうランサーの身体が、左へと踏み込んだ。
「なにッ!?」
 ランサーは自ら弾幕に飛び込み、被弾し、その衝撃で数歩後退った。
 一体何が起こったのか分からなかっただろう。正邪は、ランサーの視覚の左右を鏡のようにひっくり返したのだ。
 右に動こうと思えば左に動くし、左に動こうと思えば右に動く。それが正邪の「ひっくり返す能力」の真髄。

「な、なんだ……今のは……ッ!」
「チッ、何をやっている、ランサー!?」
 狼狽するランサー。苛立ちを隠そうともしないマスター。
 勝利を確信していた筈のマスターの声には、僅かに焦燥が入り交じっていた。

 だが、悲しい事に咄嗟に発動したひっくり返す能力の効果時間は短い。
 通常の感覚に戻ったランサーが、戸惑いつつも正邪に切っ先を向け直す。
 その姿を見るに、ダメージらしいダメージは通っていないらしかった。

「チッ、やっぱり英霊相手に通常弾幕じゃろくなダメージも与えられねぇ。私のサーヴァント様は一体何してやがるんですかねぇ」
「サーヴァント……? なんだ、お前、聖杯戦争には興味ないんじゃなかったのか?」
「はァ? 馬鹿な事言うなよ。聖杯に辿り着く意思がないなら、こんなクソ溜めに居る意味がないだろ」

 そうだ、誰も聖杯に興味がないとは言っていない。
 正邪だってマスターとして戦って、聖杯まで辿り着くつもりだ。
 ただし、目的が人とは少し違う。正邪がここに居るのは、聖杯に願いを叶えて貰う為ではなく。
 間抜けな面で正邪を眇める二人を嘲笑うように、正邪はくつくつと笑い出した。
「ククク……私が何を考えているか、知りたいか? 知りたいよな?」

 問うが、正邪は敵の回答などは求めていない。
 敵が何かを口にするよりも先に、正邪はここ最近で一番の景気の良さで滔々と語り出した。

「上に立つ者が居るなら下からとことん楯突いて、見下す奴らにゃ下克上を成す。
 見上げた場所に誰かが居るなら、私はそいつに反逆する。上がある限り何処までも、終わりのない反逆の鐘を鳴らし続ける!」

 それが鬼人正邪の存在意義。
 それが鬼人正邪の心の強さ。
 そして。
「――それが、私が私であるための条件だッ!」


370 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:02:27 LiF6oiow0
 
 鬼人正邪は虐げられ続けてきた、哀れなアマノジャクだ。
 何かをひっくり返す事以外に楽しみもなければ生きがいもない。
 自分の存在意義を懸けて、正邪はただ反逆をする。
 強者どものイデオロギーにただ反抗し続ける。
 それが正邪というちっぽけな妖怪のすべて。
 困惑を浮かべる二人の敵に、正邪はニタリと笑って舌を突き出した。

「フン……分からないなら教えてやろう。私が破壊すべきは、弱者どもを殺し合わせる力そのもの!
 私が下克上を成すべき相手は、この聖杯戦争……ひいては、願いを叶える願望機そのものだ!」
「お前、まさか……ッ!」

 ここまで言えば、敵も正邪の意図を察したのだろう。ならばこれ以上説明をしてやる義理はない。
 心の内で高らかに鳴り響く反逆の鐘に突き動かされるままに。両腕を広げ、口角を、正邪は嬉々として名乗りをあげる。

「――我が名は正邪! 生まれ持ってのアマノジャクだ!」

「やれッ、ランサー! その小娘を殺せェエエッ!!」
 その意味を理解しようともせず、マスターの命に従い、ランサーは再び大地を蹴った。
 だけども、ランサーの槍が正邪に到達する事はなかった。それどころか、一歩も踏み出す事すらもなかった。
 ビルの壁を這う深緑色をした不気味な蔦が、まるで意思を持ったようにランサーの四肢に絡みつき、その動きを封じたのだ。

「ようやくお出ましか」
 にぃ、と。正邪の頬が釣り上がる。
 瞬きをした次の瞬間には、正邪とランサー、両者の間に、もう一人の男が居た。
 赤のシャツに黒いロングコートを纏った、年若い茶髪の男。ポケットの中のシャブティは、いつの間にか消えていた。
 男はちらりと正邪に一瞥をくれた。正邪は不敵に口角を釣り上げた。

「あーあー、随分と遅いご登場ですねぇサーヴァント様ァ、私を見殺しにする気かと思ったぞ」
「フン、待たされたのはこっちだ。貴様が俺のマスターの器たる強者かどうか、見極める必要があった」
「あ? 強者? この私に対して、強者と言ったのか? 笑わせるなよサーヴァント。私はアマノジャク、最強の弱者だ!
 生まれてこの方一度も勝ったことがないが、生まれてこの方一度も屈した事がない、それがお前のマスターだッ!」

 強者ではなく、弱者として。それも、最強の弱者として、正邪は笑った。
 金もなく、地位もなく。誇り以外に失って困るものを持たない正邪は、その誇りに突き動かされるままに嘯いた。
 だが不思議と、それで見放されるという予想はしなかった。茶髪のサーヴァントは、鼻を鳴らして笑みを浮かべた。

「フン……成程。貴様は確かに『最強の弱者』だな。
 その言葉を聞けたなら、ここまで待った甲斐があったというもの……!」

 男は一人でニヤリと笑うと、懐から取り出した果物ナイフのついたベルトのバックルを腹部にあてがった。
 瞬時にベルトが生成され、男の腰に装着される。そのベルトを装着した男は、何処までも自身に満ちた声で名乗りを上げた。

「名乗るのが遅れたな。俺はアヴェンジャーのクラスのサーヴァント――」
 そして、付け足すように、低く威圧感のある声で男は言った。
「――この世界の法を憎み、巨大な力に反逆する者だ」

 バナナが描かれた錠前を指でくるりと回して、男はそれをベルトに装着する。
 変身、と一声掛けられると同時、錠前がベルトの果物ナイフに切り開かれた。
 アヴェンジャーの頭上に、次元を割いて巨大なバナナが現れる。ベルトから流れ出るやたらとテンションの高い音声をBGMに、アヴェンジャーの頭にバナナが落下した。
 変身に掛かる時間は一瞬。アヴェンジャーの身体を、赤と黄色の西洋風の甲冑が覆って、その身を『アーマードライダー・バロン』へと変化させる。
 
「人は誰もがみな、強くなるほど優しさを忘れていった。貴様も同じだ、ランサー」
「何……だとッ」
「貴様も騎士なら、その外道の言いなりになる事に抵抗はあった筈。だが貴様は、己が願いを優先し、異を唱える事もせず弱者を踏み躙った……!」
 バロンとなったアヴェンジャーの言葉に、ランサーは歯噛みする。
 されど、蔦に四肢を封じられ身動きの取れないランサーに、出来る事など何もなく。
「……せめて最期は騎士らしく、この俺の手で華々しく散らせてやる」
 バロンがベルトの果物ナイフを素早く三度倒した。
 その時点で、最早ランサーのマスターは勝機はないと判断したのだろう。ランサーを見捨てて一目散に逃げ出していた。
 下衆なマスターを持った事がランサーの不幸。次の瞬間には、黄金色に光り輝くエネルギーの奔流に、ランサーはその身を貫かれていた。


371 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:03:58 LiF6oiow0
 
 ◆◆◆◆

 戦火の過ぎ去った路地裏に訪れたのは、いつも通りの不気味な静けさと気味の悪いじめっぽさだった。
 ランサーによって殺された男が寄越したパンだったものは、今や赤黒く薄汚れたゴミとして路地裏の端を転がっている。
 思い返せば、あの男は本当に胸糞悪いクズ野郎だった。男が優しい声をかける度、天邪鬼の正邪にとっては虫酸が走る思いだった。
 純粋な善意でパンをくれているのなら、男の前で自分の胃袋でもブチ抜いて、その善意が私を殺すのだ! くらい言ってやりたい気持ちもあった。
 だが、最終的に訪れた結果はこれだ。末期の言葉も残せずに、遺言すらも残せずに。
 強者による蹂躙、その被害者があの浮浪者だった。
(クソ面白くもねぇ……ッ)
 冷めた目でパンを見下す正邪の胸の内には、未だ熱い怒りの炎が滾っていた。
 あの男は、正邪に恨まれこそすれ、いきなり現れた通りすがりの強者に踏み躙られる謂れなどはなかったのに。

「おい、見たか? これが力を持たない弱者の末路だ、我がサーヴァントよ」
 嘲笑と共に、正邪は己がサーヴァントに一瞥をくれる。
 正邪のサーヴァントは強い。ビルの壁を伝う蔦すら利用した戦いぶりに、ランサーは逃げる事すら叶わなかったのだから。
 バックルからバナナを外し、人間の姿に戻ったアヴェンジャーは、さもありなんといった様子で頷いた。

「それが弱肉強食、この世界の法だ」
「気に入らねぇ。だったら、そんな法は私がブッ潰す」
「ほう。それがお前の望みか、正邪」
「……私はアマノジャク、すべてをひっくり返す者だ。
 強者が弱者を踏み躙らない世界を、私がこの手で築くのだ」

 それは、あの小さな姫様と共に掲げたお題目とは少し違う。
 弱者を虐げ続けてきた強者に対する、正邪からの宣戦布告だった。

「だが、貴様は聖杯を破壊する為に戦うと言った」
「ああ、言ったな。聖杯ってのがどんな物か私は知らないが、奴は上から目線で願いを懸けて殺し合う連中を見下してやがる」

 それがどうにも我慢ならない。力を持った者に見下されるのは、心底胸糞が悪い。
 何よりも、上から目線で「願いを叶えてやる」というのが面白くない。打ち出の小槌の魔法とはその点で性質が違う。
 戦って、戦って、戦って、戦って。その果てに辿り着く力が、未だ自分の上に立っているという事実が正邪は許せないのだ。
 だから正邪は聖杯をブッ壊してやりたいと思った。最後に待つ絶対的強者サマの鼻を明かしてやりたいと思った。
 
「聖杯を破壊する為に、聖杯戦争に加担するという訳か……矛盾だな」
「何も矛盾してはいない。力を振り翳す者全てが私の敵だ。ここにはそういう奴らがわんさか居るんだろう?」
 獲物を前に舌なめずりする肉食獣さながらの獰猛さを感じさせる笑みで、正邪は唇をぺろりと舐めた。
 この場には、自分よりも強い奴らが蠢いている。自分よりも強い『獲物』が、ひしめき合っているのだ。
 正邪の言わんとする事を察したアヴェンジャーが眉根を寄せて言った。
「貴様……まさか、自分よりも強い者、『強者』にだけ戦いを挑む気か……?」
「それが私の下克上だ。付き合いきれないか? フン、笑いたくば笑え、馬鹿だと罵るがいい。お前がやらないなら、私は一人でもやるぞ」
 本心だ。姫と掲げた下克上が失敗して、幻想郷中から追われる身になったとて、正邪は下克上の野望を捨ててはいない。
 たとえ一人になろうとも、やるしかないのなら、どんな手段を使ってでも下克上を成し遂げる。それがアマノジャクだ。
 やがて正邪に睨め付けられたアヴェンジャーは、くつくつと笑みを漏らした。

「……いや。貴様は面白い奴だ。俺が貴様のサーヴァントに選ばれた理由が分かった」

 強者に嘲笑われ続けてきた正邪だが、アヴェンジャーの笑みに、見下しは感じられなかった。
 不思議な男だ。この男はもしかしたら、自分と似た性質をしているのかもしれない。そう正邪は思った。
 だが、どんなに自分と似ていたとしても、互いの願いが一致しないのならば共闘は不可能。

「おい、聞かせろよアヴェンジャー。お前の望みはなんだ」
「貴様の言葉を借りるなら、下克上だ。強者が弱者を虐げるこの世界の法を俺は否定する。
 俺は、この世界を破壊し、今の人間では決して実現できない世界を、この手でつくり上げる……つもりだった」
「つもりだった……?」


372 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:04:47 LiF6oiow0
 何かを懐かしむように、アヴェンジャーはふっと微笑んだ。
「ある男との戦いで、俺は『強さ』を知った。その男は、何度涙を流そうとも、決して折れなかった。
 自分の弱さを認めながら、それでも強く、泣きながらでも進んでいく……それが俺の認めた男の『強さ』だ」

「……なんだそりゃ」
 正邪ははじめ、アヴェンジャーが何を言いたいのかが分からなかった。
 泣く、というのは弱者のする事だ。そう正邪は思ったが、しかし罵る気にはならなかった。
 何度泣いても、折れずに前へ進んでいく。それは、まさしく何度殴られても屈しなかった正邪と同じではないか。
 だとするならば、アヴェンジャーの言うその男は正邪と同じく『最強の弱者』と呼べるのかもしれない。
 そんな正邪の考えを読んだようなタイミングで、アヴェンジャーは言った。

「俺はお前の中に、あの男と同じ『強さ』を見た。お前に付き合ってやるのも悪くはないと思えた」
「ならば世界への復讐はどうする? お前はアヴェンジャーだ、世界への復讐がお前の存在意義だろう」
「ああ、続けるさ。確かに俺はあの男と戦い、人は何度間違おうともやり直す事が出来るのだと知った。人の未来を信じてもいいと思えた。
 だが、それでも世界の構図は変わっていない。強者が弱者を虐げ、踏み躙る、「弱肉強食」というシステムは未だ俺の敵だ」

 それが反逆の理由。
 だからこその『アヴェンジャー』。
 ましてや、この腐り切った街はアヴェンジャーの憎む世界の縮図のようなものだ。
 弱者から金を、土地を、あらゆる財産を搾り取った強者は富裕層で気楽に暮らし、その皺寄せがこのクソ溜めなのだ。

 それらの話を聞いて、アヴェンジャーの事を何となく理解したような気がした。
 とりあえず、扱いやすかった針妙丸と違って、このサーヴァントは自分に似て小難しいと正邪は思った。
 それから一拍の間を置いて、アヴェンジャーは、ふん、と一息ついてから、滔々と語り出した。

「さっきも言ったが、俺はここ数日、貴様の行動を観察していた。そして鬼人正邪という存在を何となくだが理解した。
 確かに貴様は弱い。だが、貴様の野望には、俺が力を貸すに値する『強さ』がある。その『強さ』に、俺は懸ける」
「お、おう。そうか……変なやつだな、お前」
 困惑する。何となく褒められているような気がして、正邪は気分が悪かった。
 正邪は天邪鬼だ。罵られ、嫌われる事を喜び、人に喜ばれると自己嫌悪に陥る。そういう嫌な奴なのだ。
 ……と、そこでふと、正邪はひとつの違和感に気付いた。

「っていうか! ずっと見てたのならとっとと出てこいよ!? 何度クソみたいなゴロツキに殴られたと思ってるんだ!」

「そうだ、それがお前の『強さ』だ。何度殴られ蹴られようとも、貴様の心は折れなかった。ただの一度も屈しなかった……!」
 それに続く言葉は、まるでおかしなものでも見るような笑いと共に。
「そして挙句の果てには自分が殺されるかもしれないという状況で、あの啖呵だ。だから俺は、貴様を俺のマスターに値する存在だと認めた」

 さっき言っていた、アヴェンジャーの認めた男と同質の強さがあるから。
 それでようやく納得した正邪は、そうかよ、と一言。もう自己紹介も十分とばかりに、踵を返して、歩き出す。
 だが、笑みと共に語られる言葉は、そこまでだった。
「待て」と。アヴェンジャーの刺すような言葉が正邪の後ろ髪を引く。
 振り返った正邪に、アヴェンジャーは、その力強い双眸をきっと尖らせて、正邪に向き直る。


373 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:05:16 LiF6oiow0
「最後に一つだけ聞かせろ、正邪」
「なんだよ」
「聖杯に下克上を成すという貴様の願いは分かった。だが、聖杯の力なしに、どうやって世界を変えるつもりだ。アテはあるのか」
「さてねぇ……アマノジャクってのは悲しい種族でね。反逆する相手がいないと存在意義も示せないんだよ」
 正邪の言葉の意味を察したアヴェンジャーが、眉を潜めた。
「……貴様、永遠に戦い続けるつもりか?」
「少なくとも、生きている限りは反逆を続けるだろうな」
「もしも貴様の望む下克上が成し遂げられ、戦う理由がなくなった時はどうする」
「その時は、その時だ。今度は今まで強者だった奴らに力を貸してもう一度下克上を成し遂げるか……
 いや? 私の望む下克上が成った時点で、もう私の居場所はこの世界にはないのかもしれない。だったら大人しく死ぬさ。下克上を成し遂げて死ぬのなら、悪くない」
 
 何となく、そんな予感めいたものがある。
 アマノジャクとは、下克上を成す事で自分の存在意義を確立する生き物だ。
 下克上の相手もなく、反逆する甲斐もない世界に、アマノジャクの存在意義などはない。
 だから正邪は、その最後の瞬間が訪れるその日まで、きっと世界に抗い続けるのだろう。

「馬鹿な奴だ」と一言漏らしたアヴェンジャーは、正邪を追い越し、歩き出した。
 路地裏に吹き込んだ風がアヴェンジャーのコートを揺らす。正邪もまた、アヴェンジャーと共に表の世界へと歩み出した。

 ここからが下克上の始まりだ。
 もう日の当たらない世界で、虐げられるだけの弱者で終わりはしない。
 今度こそ、この世界に下克上を成し遂げるのだ。そんな決意を胸に、鬼人正邪の戦いは始まった。


【クラス】
アヴェンジャー
【真名】
駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武
【ステータス】
筋力:E 耐久:D 敏捷:E 魔力:C 幸運:D 宝具:A
【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
下克上:B+
 自身よりも強大な力に戦いを挑む、抗う者に与えられたスキル。
 相手との実力差や人数差、また、一度敗北した相手と戦闘をする場合など、
 不利な状況・条件での戦闘を続行する場合、ステータスに補正が得られる。

【保有スキル】

勇猛:B
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

カリスマ:C-
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 駆紋戒斗の場合、国家運営は出来ないが、弱者を率いて強者に立ち向かう際に真価を発揮する。

森羅の君主:A
 果実の呪いを乗り越え、ヘルヘイムの植物を自在に操る能力。
 また、同じスキル同士が激突した場合、ランクの高い方が植物の支配権を奪う。

魔力放出:A+
『弱者が掴みし叛逆の真理(ロード・バロン)』解放時にのみ発動可能。
 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
 また、膨大な魔力を掌から放つ事で敵の武器を受け止め、それが強力な加護のない通常の武器であった場合、判定次第で破壊する事も可能。


374 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:05:48 LiF6oiow0
 
【宝具】

『乱世を切り拓く騎士の鍵(戦極ドライバー)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 特定のロックシードを使用する事で、『アーマードライダー・バロン』への変身を可能にする宝具。
 主にバナナロックシード、マンゴーロックシードを用いて変身出来る二つの形態を使い分けて戦う。
 バナナアームズでは槍型の武器、バナスピアーを。マンゴーアームズではメイス型の武器、マンゴパニッシャーをそれぞれ使用する。
 他のロックシードがあればアームズチェンジする事は可能だが、アヴェンジャーが所持しているロックシードは上記の二つのみである。

『覇道を往く創世の鍵(ゲネシスドライバー)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 レモンエナジーロックシードを使用する事で、『アーマードライダー・バロン』への変身を可能にする宝具。
 従来のバロンよりも全体的なスペックは底上げされているが、筋力・耐久の面でのみマンゴーアームズに劣る。
 両端の刃で接近戦を、弓矢として遠距離戦を。遠近両用の弓矢型の武器、ソニックアローがこの形態の主な兵装。
 他のロックシードがあればアームズチェンジする事は可能だが、アヴェンジャーが所持しているロックシードはレモンエナジーのみである。

『弱者が掴みし叛逆の真理(ロード・バロン)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:A 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:A 幸運:D 宝具:A
 禁忌の果実を口にし、ヘルヘイムの呪いをも跳ね除けたアヴェンジャーの最後の姿。
 人を越え、オーバーロードとして覚醒した力を解放し『ロード・バロン』へと変身する。
 その力はロックシードを用いて変身する他の形態とは一線を画する。使用する武器は大剣「グロンバリャム」。

【weapon】
バナナロックシード
 バナナを象ったロックシード。
 戦極ドライバーに装着する事で、アーマードライダーにバナナアームズを装着させる。

マンゴーロックシード
 マンゴーを象ったロックシード。
 戦極ドライバーに装着する事で、アーマードライダーにマンゴーアームズを装着させる。

レモンエナジーロックシード
 レモンを象ったエナジーロックシード。
 ゲネシスドライバーに装着する事で、アーマードライダーにレモンエナジーアームズを装着させる。
 また、ゲネシスコアを装着した戦極ドライバーにも対応しているが、アヴェンジャーは使用できない。

【人物背景】
チームバロンの元リーダー。20歳。アーマードライダーバロンに変身する青年。
幼少期に大企業・ユグドラシルコーポレーションによって、実家の町工場を潰されており、それ以来社会に対し強い反骨心を抱き始め、
「弱者が一方的に虐げられる世界」を否定し、その社会の破壊と、新世界の想像を目指すようになった。

傲慢不遜な性格をしているため、敵を多く作っている反面、メンバーや仲間達からは強い信頼を得ている。
常に自分の中にある「強さ」と「弱さ」という哲学に従って行動しており、「強者」と認めた者は強く評価し力を貸すが、「弱者」に対しては強い嫌悪感を持って接する。
その人生哲学の根底にあるのは、幼少時代、工場を失った重みに耐え切れず狂って行き、挙句の果てに自殺した父と、見ているだけしか出来なかった弱い自分という苦い記憶である。
上記の理由から、いかな苦境にも屈しない強靭な精神力の持ち主であり、たとえ自分よりも協力な存在相手であろうと恐れずに立ち向かうため戦績自体は奮わないものの、
多人数のアーマードライダーを指揮した戦闘では類稀なる統率力を見せる。

終盤では、他の邪魔者を排除し、天下へと至りつつあった戦極陵馬によってゲネシスドライバーを破壊され、あわや敗北の窮地にまで追い込まれたが、
それでも屈しない事を選び、その場に生えていたヘルヘイムの果実を口にし、戦極陵馬の理解を越えた超常の存在、オーバーロードへの覚醒を果たした。
最期は互いの死力を尽くして同じくオーバーロードと化した紘汰との決戦に挑むが、すんでのところで敗北。戒斗は結局「弱肉強食」という世界の法則こそ破壊できなかったものの、
人は間違ってもやり直すことが出来るのだと信じて未来に希望を託し、紘汰の「強さ」を認め、その腕の中で安らかに逝った。

【サーヴァントの願い】
生前、戒斗がついぞ叶えられなかった「弱肉強食」という法に反逆する正邪に付き合って、その夢を見届ける。


375 : 鬼人正邪&アヴェンジャー ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:06:18 LiF6oiow0
 

【マスター】
鬼人正邪@東方輝針城

【マスターとしての願い】
聖杯戦争と願望機、この街に蔓延るあらゆる「強者」に下克上を成す。
聖杯が現れたなら、その聖杯すら破壊して、世界への反逆を続ける。

【weapon】
ひらり布
 打ち出の小槌の魔力を秘めた布。マントのようにして肩に羽織っている。
 小槌の魔力を発動し、ひらり布に身を隠す事であらゆる攻撃から身を守ることが出来るが、これを纏っている間身動きが取れない。
 一度使用すればひらり布自体に小槌の魔力が充填されるまで数時間は使用不可となる。

天狗のトイカメラ
 打ち出の小槌の魔力を秘めたトイカメラ。紐で首にかけている。
 小槌の魔力を発動してシャッターを切れば、写真に撮影した弾幕を切り取って消滅させる事が可能。
 ただし、消滅させられるのは質量を持たない遠距離攻撃、もしくは銃弾のような質量の小さい遠距離攻撃に限る。
 オートフォーカスで自動巻き上げ式。一度に三枚まで撮影出来るが、一度規定数を使い切ればカメラ自体に小槌の魔力が充填されるまで数時間は使用不可となる。

【能力・技能】
何でもひっくり返す程度の能力。
相手の視覚の上下・左右、もしくは、相手の感覚の上下・左右を入れ替える。
だが、そう長時間の入れ替えは出来ず、三騎士のような戦闘慣れした者が相手ならば、僅かな時間稼ぎにしかならない。
また、幻想郷の住人なので飛行と、弾幕の発射が可能。持っている道具含めて、基本的に遠距離弾幕戦で力が発揮されるものが多い。

【人物背景】
逆襲のあまのじゃく。
東方輝針城における5面ボスであり、道具が付喪神化し普段無害な妖怪まで暴れ出した百鬼夜行異変の黒幕。
人が嫌がることを好む、人を喜ばせると自己嫌悪に陥る、人の命令は絶対に聞かない、得をしても見返りは与えない、嫌われると喜ぶというまさに天邪鬼な性格。

強者が支配する安定した幻想郷をブチ壊し、弱者がものを言う世界に変えるという大きな野望を持って行動を起こす。
だが、正邪自体は虐げられる側の弱小妖怪であり、下克上を成し遂げるだけの力など無かった。
そこで目を付けたのが、小人族の末裔「少名針妙丸」の持つ秘宝「打ち出の小槌」である。
 
持ち主でありながら打ち出の小槌の概要をよく知らなかった針妙丸に「小人は幻想郷の妖怪達に屈辱を与えられた」という嘘の歴史を吹き込み、
更に打ち出の小槌の魔力の代償の事を教えずに針妙丸に使わせ、挙句の果てには異変解決後は針妙丸を捨てて逃げるなど、目的の為ならば手段は選ばない性格である。

終いには幻想郷の秩序を重んじる妖怪たちに懸賞金まで懸けられ、不可避の弾幕で襲い来る幻想郷中の追手から逃げ続ける事になる。
小槌の魔力が僅かに残った「反則アイテム」を駆使して今も逃げ続けている正邪だが、正邪本人はそれを手に再び世界をひっくり返すつもりである。

正邪が反逆をするのは天邪鬼という種族ゆえであって、反逆する事をやめた時、ひいては存在意義を示せなくなった時、意味といて妖怪・鬼人正邪は死んでしまう。
まさしく命を懸けて反逆し続けるしか出来ない哀れな種族と言えよう。

【基本戦術、方針、運用法】
強者と思しき敵を狙って倒す。慣れ合いをする気はない。
そして最後に現れた願望機を破壊する事で、聖杯戦争への下克上を完了とする。
両者共に協調性はないため、会ったばかりの他チームと素直に同名を組むのは難しい。
だが、巨大な敵に挑むため、散り散りの戦力を集めて戦う場合は、戒斗の統率力と
正邪の話術も相俟って、上手く連携の取れたチームを結成する事が出来ると思われる。
ただし、目的こそ一致しているものの、卑劣な手段を嫌う戒斗と、手段を選ばない正邪とでは選択するやり方が大きく違う。
戒斗という戦闘手段がある以上、正邪の二枚舌に出る幕はないかもしれないが、作戦の練り方には気を付けなければならない。

【参戦方法】
幻想郷で逃げ回っている最中、打ち出の小槌の魔力が残ったシャブティを発見。
まだ見ぬ反則アイテムだと思い保護した正邪だったが、それは聖杯戦争への参加証だった。

【令呪】
左手の甲に刻まれている。中心から三方向へと伸びた矢印型。


376 : ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 09:07:59 LiF6oiow0
以上で投下終了です。


377 : ◆/cxqFm81zY :2015/05/07(木) 10:21:55 LiF6oiow0
すみません、早速で申し訳ないのですが、
>>374の武装について、以下のようにステータスを追記致します。


【weapon】
バナナロックシード
 バナナを象ったロックシード。
 戦極ドライバーに装着する事で、アーマードライダーにバナナアームズを装着させる。
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:D 宝具:C


マンゴーロックシード
 マンゴーを象ったロックシード。
 戦極ドライバーに装着する事で、アーマードライダーにマンゴーアームズを装着させる。
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:B 敏捷:D 魔力:C 幸運:D 宝具:C


レモンエナジーロックシード
 レモンを象ったエナジーロックシード。
 ゲネシスドライバーに装着する事で、アーマードライダーにレモンエナジーアームズを装着させる。
 また、ゲネシスコアを装着した戦極ドライバーにも対応しているが、アヴェンジャーは使用できない。
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:B 魔力:C 幸運:D 宝具:B


378 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/08(金) 03:27:17 moTGCQf60
皆様投下感謝です。生存報告ついでに連絡を一つ。
候補話募集の〆切ですが、5月17日(日)いっぱいを期限とさせてもらいます。


379 : ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:25:04 3lnxZ4I20
投下します


380 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:26:07 3lnxZ4I20


ゴッサムシティに偶然に召喚された一人の男がいた。男は魔術師であり、真理を探究する者であった。
そう、探究だ。男の起源は「探究」であり、起源覚醒者である男は探り、暴くことに特化した魔術師だった。
起源に覚醒したその時から男の人生と能力は全て神秘の探究に費やされた。しかし男はある意味魔術師であって魔術師ではない存在となった。

魔術師の目的とは「根源」に至ることだ。しかし男は現代の多くの魔術師と同じく「根源」を目指すことはしなかった。男の家門が継いできた方法では「根源」に決して至れないと気づいたから―――だけではなかった。
起源を自覚する男はこの世に散らばる多くの魔術、神秘を解き明かしたいという欲求に支配されていた。そのためなら家を出ることに反対した一族を皆殺しにすることも現代機器に頼ることも辞さなかった。男は「根源」を目指す魔術師ではなく自らの探究心を満たすためだけに魔術を行使する魔術使いとなった。

自らの本能の赴くまま世界各地を飛び回り、あらゆる遺跡を荒らして回った男がシャブティの人形を手にし、ゴッサムシティに意図せず呼び出されたのも、男に宛がわれたサーヴァントがキャスターであったことも全くもって必然の出来事であった。
しかし男にしてみれば迷惑以外の何でもなかった。期せずして訪れた聖杯探究の機会に興味はあるが降りることすら許されず、敗北すれば架空の犯罪都市、ゴッサムに永遠に幽閉されるなど冗談ではない。他人の命に頓着する性分ではないが自分が殺されるのは御免だ。




―――などと保身のための策を考えていたのも最初だけだった。
ある時サーヴァントを伴って街の探索をしていた時奇妙な植物を発見した。明らかに植物が繁殖できない環境を、まるで自ら世界を浸食せんとばかりに生い茂っていた未知の植物に男は神秘を感じ取った。
男の起源によって強化された魔眼じみた解析魔術はその植物と、植物から生えた謎の果実がこの世ならざる神秘の産物であることを瞬時に暴いた。男は何の躊躇もなく植物を切り取り果実を採集し自らの工房たる自宅に持ち帰った。

強烈な食欲を誘発する果実を解析し、試しに路地裏で魂喰いのために“捕獲”したNPCに投与したところ凶暴な未知の怪物へと変貌した。幸い怪物はキャスターによって即座に焼却されたが男はさらに異界の植物と果実―――ヘルヘイムにのめり込んでいった。聖杯戦争に専念するよう進言したキャスターは令呪で黙らせた。




翌日、さらに研究資料たる果実を採取するためフィールドワークを行っていたその時、男はある存在に目と心を奪われた。
人通りの少ない路地に佇む銀髪赤眼の少女がかつて一度だけドイツで遭遇したことのあるアインツベルンのホムンクルスであることはすぐに分かった。しかし一目見ただけでその作品としての完成度が桁外れの域にあることが見て取れた。
解析能力に特化した男の魔術ではアインツベルンのホムンクルスを捕獲するなど夢のまた夢だったが、今は超常存在たるサーヴァントがいる。ならばマスター候補であろう少女がサーヴァントを召喚する前に事を済ませるべきだ。


381 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:26:58 3lnxZ4I20

(キャスター、サーヴァントを呼ばれる前にあのホムンクルスの身包みを剥がして無力化しろ。絶対に傷はつけるな)

キャスターは渋々といった体で実体化し魔術を行使した。一瞬の後、少女の衣服は靴まで含めて全てが灰と化し、一糸纏わぬ裸体を曝け出した。

「サーヴァント………!」

中級レベルとはいえ気配遮断を行えるキャスターの不意打ちに少女は対応できなかったようだ。恥辱に身を震わせる少女に構いもせず男は解析を行う。
素晴らしい。単なる鋳造品の枠を超えた人間同然に構成されている。さらに魔術的調整によるものなのか全身の七割にも渡って魔術回路が存在している。現代魔術師の常識からは考えられない奇跡の産物が目の前にある。
男は少女を生かさず殺さず隅々まで検分し、研究することを即決した。聖杯戦争の趨勢さえ脳裏の片隅に追いやられていた。それほどまでの衝撃と感動を味わっていた。

「マスター!」

だがキャスターの声ですぐさま現実に引き戻された。青く輝くエーテルの光。男がキャスターを召喚した時と同じ、サーヴァント召喚の合図―――!
男の眼に映ったのは若草色の頭髪で軽装の槍を携えた美丈夫の戦士。しかしてマスターとしての権限によって透視できるサーヴァントの能力と濃厚な神秘は明らかに最高峰。決断は一瞬だった。

「何だか妙なことになってやがるが、それ以上俺のマスターをやらせるわけにはいかねえな」
「令呪を以って命じる、私を連れて転移しろキャスター」

男のキャスターは限定的ながら転移という大魔術を行うことができた。本来なら陣地の内部、それも二工程の詠唱を経て行われる術理を令呪によって一瞬に短縮してのけた。
戦闘に関する魔術を極度に不得手とする男は逃走に関する技術を徹底的に磨いてきた。その経験がこの状況にあっても活きた。
キャスターが選んだのは三百メートル離れた家屋の屋根。相手の出方を伺いつつキャスターが魔術を紡ぐに相応しい絶妙の距離であった。



「よう、久しぶりだな変態野郎」


――――――尋常な英霊が相手であれば、の話だが。



視界が空転する。遠くに崩れ落ちる自分の身体が見えた。キャスターはどうした。いや、既に心臓を槍で貫かれている。
転移でサーヴァントから逃れたと思ったら正面に回り込まれ、視認すら不可能な槍捌きで己とキャスターは同時に屠られた。
何故だ。見るからに三大騎士クラスであろうサーヴァントも転移魔術を会得していたとでもいうのか。それともまさか―――純粋な走力でキャスターの転移に追いついたというのか。



疑問は最期まで形を結ばぬまま、男の聖杯戦争は呆気なくその幕を閉じた。









「ようお嬢ちゃん。随分大変な目にあったみたいだな。
ライダーのサーヴァント、アキレウス。召喚に応じて馳せ参じた」


382 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:28:08 3lnxZ4I20

屈託のない笑みを浮かべるライダー。対照的にマスターの少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは無表情であった。
いや、強いて言えばその赤い瞳には失望の色が宿っていることがライダーにも窺うことができた。自らの真名を明かした上でそのような目を向けられるとはどういうことか。

「………あなたじゃない」

少女は露わになった肢体を隠そうともせず力なく階段の段差に腰掛けた。覇気どころか生きる気力すらも感じられない態度は到底聖杯戦争に臨むマスターのそれとは思えない。

「何だ、嬢ちゃん。この俺がサーヴァントじゃ不満か?」
「当たり前でしょう、アキレウスなんてわたしのバーサーカーに比べたら大した英霊じゃないわ」

二重の意味で聞き捨てならない言葉だ。まるでこの少女がこことは違う聖杯戦争の当事者であったかのような口ぶりだ。
何より、このアキレウスを大した英霊でないなどと断言できるサーヴァントとは一体どれほどの者なのか。

「ほう、どこのどいつだ。そのバーサーカーとやらは」
「ヘラクレスよ。ヘラクレスなら少しは希望を持てたのに、あなたじゃ無理よ。
ヘラクレスで勝てなかったのに、アキレウスでどうやって勝てっていうのよ」
「何だと…!?おい嬢ちゃん、そりゃ冗談か間違いじゃないだろうな?」

告げられた英雄の名はライダーをして驚愕せざるを得ない大英雄だった。
ヘラクレス。多くの英雄豪傑を内包するギリシャ神話において屈指の偉業と功績を打ち立て神の座の末席に座ることさえ許された最高の大英雄。
如何にバーサーカーで現界したとはいえど、そのヘラクレスが聖杯戦争を勝ち残れなかったなどと。そんなことが有り得るというのか。
少女、イリヤスフィールは詰め寄るライダーに怒り、いや非難めいた眼を向けた。



「冗談なわけないでしょう!バーサーカーは世界で一番強いんだから!例え負けたって、最強のサーヴァントなんだから!
負けたのは、わたしが傍にいたから。わたしなんかがいたせいで負けただけ」
「謙遜するほど嬢ちゃんの魔力は少なくはないと思うがな」

イリヤスフィールは俯いて、ぽつぽつと話を始めた。どちらかといえば独り言に近い風であったが。
聖杯戦争という儀式の小聖杯の器として生を受けたこと。
母親は前回の聖杯戦争で死に、父親は自分を裏切り新しい家族を持っていたこと。
イリヤスフィールやアインツベルンの当主を含め、ただ役目に生きるためだけに、人間を幸福にする道具として消費されるホムンクルスたち。
何一つ自分と呼べるものが無い中、狂いながら自らの意思でイリヤスフィールを守り続けた父のような鋼の英雄。
そして訪れた聖杯戦争の最中、かつて母親が暮らした城で父親の養子に会おうとしていた時に自分とバーサーカーが敗北し、死んだことを。

「わかったでしょう?わたしはこの聖杯戦争に参加しようと思ったわけじゃない。
生き返してほしいなんて頼んでない。助けてほしいなんて言ってない。あなたを呼んだ覚えもない。
だからもう放っておいて。あなたは新しいマスターでも探しなさい。わたしなんかと一緒にいたってどうせ勝てやしないんだから」


383 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:28:56 3lnxZ4I20

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの生には何の意味も価値もなかった。
復讐も、聖杯の器としての役目も果たせなかった自分にはもう何も残っていない。一度は取り込んだライダーの魂も今は感じられない。
ただ偶然に死に損なって、もうすぐ本当に死ぬだけだ。それがどんな形で訪れるかはわからないけれど。
聖杯に望みを託すために召喚されたサーヴァントが付き合う必要はどこにもない。




「で、結局どうしたいんだよお前は?」

―――それを、ライダーは平然と無視した。



「あなた、人の話聞いてなかったの?わたしは放っておいてって言ったんだけど」
「ああ、聞いた。その上で俺の勝手でここにいるだけだ。“やけっぱちになってます”って顔に書いてあるガキをそのまま見殺しにする英雄がどこにいる。
俺は忠義の騎士ってわけじゃないが英雄だ。自分で主を裏切るなんぞご免だね」

サーヴァントによっては新たな主を探すこともあるだろう。だがアキレウスは違う。
母に誓った英雄としての矜持と在り方は例えサーヴァントと化しても捨てるつもりは毛頭ない。心の奥底で泣いている子供を見捨てるなど断じて英雄たる者のすることではない。

「確かに俺はヘラクレスに比べれば劣る英雄だ。お前が一度死んだというのも事実なんだろうさ。
だがな、それでもお前はマスターとして、俺はお前のサーヴァントとしてここにいる。
それを無意味なことだと決めつけるのか?お前には何の望みもないのか?」

違う。まだ生きていたい。したいことも、やらなければならないこともある。
かつてアインツベルンで消費された彼女達に言われたことがある。無価値であっても構わない、と。
それはおかしい。彼の言う通り、自分は今ここにいる。息をして生の実感を得ている。それを終わらせたくない。
生きることを諦め、自ら電源を落としてしまえば楽にはなれるかもしれない。けれど、自分はそれをおかしいことだと、生きたい、生きていてほしいと叫んだのではなかったか。

「俺は英雄だが我欲の塊だ。二度目の生を得られたからにはやりたい事が山のようにある。
中にはやりたい事をやりきった英雄や無欲な英雄なんかもいるんだろうが、嬢ちゃんがそうなるのは早すぎるってもんだ。
だから願え、そして俺に命じろ。聖杯戦争に勝って聖杯を獲ってこい、ってな」
「…本当に勝手なサーヴァント。まさか本当に勝てると思ってるの?ヘラクレスだって負けたのに」
「別に今すぐ俺を信頼しろとは言わねえさ。何しろ比べられる相手が悪すぎる。
…だが自分で生を諦めることだけはするな。ヘラクレスや俺の師匠がここにいたらきっと同じことを言うはずだ」



ライダーは己の力と存在に絶対の自負を持っている。普段ならマスターに力を疑うような暴言を吐かれれば殴るとまでは言わずとも一喝はしているところだ。
だがヘラクレスが比較対象ならば仕方ない。自分を卑下しているのではなく、ギリシャ最高の英雄に対する当然の認識だった。少女とヘラクレスの間にいきなり自分が割り込めると思えるほど図々しくはなれない。


384 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:29:33 3lnxZ4I20


「わたしは…わたしはまだ生きてる。生きたい。まだ終われない。
シロウにだって会ってない。あんなわけのわからないサーヴァントに殺されて終わりだなんて、そんなの嫌!」
「よし、それで良いんだ。自分が無いなんざとんだ嘘じゃねえか。
ホムンクルスがどうだのは俺にはわからん話だが、生きたいという欲とやりたい事があるならお前はもう立派な人間なんだよ」

涙を流す己のマスターの瞳に急速に生気が戻っていく様を見てライダーは満足気に頷いた。
やはり子供は元気に泣き、怒り、笑うのが一番良い。

「しかし何だ、さしあたってはその格好を何とかしねえとな。俺のマスターが裸じゃな」
「…………………あ」

ライダーに指摘されて自分が如何に淑女として有り得ない格好をしているか思い出した。
しかも女性としての大事な部分を全て曝け出してしまっている。一気に顔が赤くなり、今さらながら両腕で身体を隠した。

「……え、おい今さらか?」
「今さらも何もないわよ!もっと早く言いなさいこの馬鹿サーヴァント!!」
「出るとこ出てないどころか毛すら生えてないガキに欲情するやつなんざいねえだろ。…ってさっきのマスターがそうだったか。
とにかく一度拠点に戻って着替えれば良い話だろうが」
「そんなものないわよ!気がついたらもうここにいたんだから!!
とにかく今すぐわたしの服を探してきなさーい!!」
「おいちょっと待て、この俺にコソ泥の真似事をさせるつもりかお前!?」
「わたしが襲われる前に出てこなかったあなたが悪いんでしょ!!」

暴論だがそれを言われてはライダーも返す言葉がない。どうあれマスターが攻撃される前に間に合わなかったのは事実だ。
逆立った髪をボリボリと掻いてから一つの妥協案を出した。

「わかったわかった。だが今ここで別行動は危険が大きすぎるから駄目だ。
そう簡単に見つからないという確証が持てる隠れ家を見つけるまでは我慢しろ」
「…それまでわたしに裸で往来を歩けっていうの?」
「そうは言わねえさ。それに地を駆けるより空から探す方が手っ取り早い」

何もない空間から一台の戦車(チャリオット)が召喚された。一目で神代に生きた生物とわかる二頭の神馬と一頭の名馬からなるライダーのライダーたる所以。
その名を「疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)。あらゆる英雄を超える俊足を誇るライダーよりも尚速い、この世全てを置き去りにする宝具である。

「とりあえずはこいつで街を観察しつつ隠れ家を探す。見られたくないなら御者台から顔を出さないようにしとけ」
「ち、ちょっと!?自分で乗れるから離しなさい!」


385 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:30:35 3lnxZ4I20

身体を丸めたままのイリヤスフィールを半ば無理やり抱き上げて御者台に乗せてライダー自身も戦車に搭乗する。
空へと舞い上がると一気に加速し夜空へと飛び立った。もっともマスターに配慮して少々スピードは抑えているが。



果たしてこれで正しかったのだろうか―――とライダーは自問する。もしかすると自分は彼女をさらなる地獄の苦難へ引きずり込んだのではあるまいか、と。
ヘラクレスでさえも敗れ去ったという聖杯戦争。彼の英雄よりも劣るアキレウスが走破できるものなのか。少なくとも夜の世界に漂う瘴気からトロイア戦争を駆け抜けた時のようにはいかないであろうことは察することができた。
考えたところで自分が正しかったのかどうか、今のライダーには判然としない。あるいは全て過ちでしかなかったのかもしれない、それでも。

(俺の望みはこいつに肩入れすることだ。それだけは間違いない。
こいつに聖杯を獲らせるために走り続けるだけだ)

戦うと決めた。そこに如何なる試練があろうとも、それでも戦い抜くと、自ら望んで決めたのだ。
結局今も昔もアキレウスは英雄として走り続けるしかないのだ。




【クラス】

ライダー

【真名】

アキレウス@Fate/Apocrypha

【ステータス】

筋力B+ 耐久A 敏捷A+ 魔力C 幸運D 宝具A+

【属性】

秩序・中庸

【クラススキル】

騎乗:A+
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣まで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。

対魔力:C
二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】

戦闘続行:A
 往生際が悪い。弱点であるはずのアキレス腱と心臓を射抜かれてもしばらく戦い続けた。

勇猛:A+
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効にする能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

女神の寵愛:B
 母である女神テティスから寵愛を受けている。魔力と幸運を除く全ステータスがランクアップする。

神性:C
 海の女神テティスと人間の英雄ペレウスとの間の子。


386 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:31:11 3lnxZ4I20

【宝具】

『疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2〜60 最大捕捉:50人

アキレウスが戦場で駆ったと言われる三頭立ての戦車。
海神ポセイドンから賜った不死の二頭の神馬「クサントス」と「バリオス」、エーエティオーンの都市を襲撃した際に奪った名馬「ペーダソス」からなる戦車。
ただ疾駆するだけで戦場を蹂躙し、削岩機の如き勢いで敵陣を粉砕し、天を翔ける。
速度の向上に比例して相手に追加ダメージを与える。最高速度となると、大型ジャンボ機ですら瞬時に解体する。


『彗星走法(ドロメウス・コメーテース)』
ランク:A+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

「あらゆる時代の、あらゆる英雄の中で、最も迅い」というアキレウスの伝説。
『疾風怒濤の不死戦車』から降り立つことで起動する常時発動型の宝具。広大な戦場を一呼吸で駆け抜け、フィールド上に障害物があっても速度は鈍らない。弱点であるアキレス腱が露出してしまうが、アキレウスの速度を捕捉できる英雄は数少ない。


『勇者の不凋花(アンドレアス・アマラントス)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

アキレウスの母である女神テティスが彼に与えた不死の肉体。
全身に不死の祝福がかかっており、如何なる攻撃を受けても無効化する。だが一定ランク以上の『神性』を持つ相手には、この効果が無効化されてしまう。
また伝承に伝わる通り、急所である「踵」には効果がない。さらに悪意や敵意を含む攻撃には有効だが、吸血行為のような、攻撃ではなく『友愛』を示す行動には作用しないという弱点も存在する。


『宙駆ける星の穂先(ディアトレコーン・アステール・ロンケーイ)』

ケイローンが作った青銅とトネリコの槍。アキレウスはこの槍を用いてケイローンすらも知らない独自の能力を編み出した。その能力は「闘技場」。突き立てた槍を基点として空間そのものを切り取る形で、闇の壁に包まれた特殊な空間を作り出す、固有結界と似て非なる大魔術である。
この空間の効果は「一対一で敵と公平に戦うこと」、ただそれだけ。この空間内では神の加護は働かず、第三者は無論、幸運すらも介入させず、時間も静止している。また、この闘技場を塗り潰せるようなものでなければ武具や宝具の使用も制約される。空間内では通常と異なり負傷は治らず、蘇生系のスキルや宝具も効果を発揮せず、敗者は現実に戻っても死亡する。
この効果はアキレウス自身にも適用され、ここでは『勇者の不凋花』の不死は働かなくなる。あくまで相手と「公平」に戦うための領域であり、必ずしもアキレウスにとって有利になるとは限らない。
つまるところこの闘技場の効果とは、ただ己の拳足のみで相手を打ち斃す「公平無私の一騎打ち」の強制である。


387 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:32:16 3lnxZ4I20


『蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)』

 アキレウスの母である女神テティスが息子のために作らせた鍛冶神ヘパイストス製の盾であり、アキレウスが生きた世界の全てを表す。全面に渡って凄まじいまでの精緻な意匠が施されている。
真名開放することで盾に刻み込まれた極小の世界が展開され、一つの“世界そのもの”で攻撃を防ぐ防御宝具。


【weapon】
 無銘・剣
 アキレウスが腰に差している剣。アキレウスは場合によってこの剣と槍を同時に操る一剣一槍のスタイルを用いることがある。


【人物背景】
ギリシャ神話においてヘラクレスと並び称される大英雄であり、英雄ペレウスと女神テティスを両親に持つ、世界的規模の知名度を誇るトロイア戦争最強の戦士。
気に入らなければ王の命令であろうと公然と無視する奔放な青年。

だが義に厚く、卑怯な振る舞いを嫌い、討ち果たされた友のためなら万軍を敵に回しても見事敵将を討つほどの豪傑で、世界にただ一人の友と愛する女たちがいれば、ただそれだけで満足とし、散り様でさえ陽気を忘れない勇者。
敵と認めた者は徹底的に打ちのめす苛烈な気性だが、一度味方、あるいは「良い奴」と認めた者には甘さを見せる、良い意味でも悪い意味でも「英雄らしい」人物。豪放磊落な一方、乱暴狼藉な英雄ではなく、父ペレウスに似て穏健を善しとする根の甘さを持った青年でもある。

強敵との力を尽くした戦いを好み、破格の不死性を誇るものの、彼にとってはそれすらも寧ろ破られる方が好ましく感じており、自らを傷付けられる好敵手と戦う事を熱望している。原作では自身の願いの為に最終的にマスター換えを受けいれたものの、裏切り行為自体は嫌っているようで本来のマスターに対して例え顔を会わせてなくても主であるマスターを裏切りなどご免と語るなど義理がたい一面を持っている。

聖杯への願いは生前と変わらず「英雄として振る舞う事」。過去の戦いや神に背き破滅した事など生前の出来事に対する未練はないが、現世でやってみたい事は山ほどあるので、「第二の生」にも興味がない訳ではない。だが彼にとって母に誓った「英雄として生き、英雄として死ぬこと」が人生の大前提となっている。



【サーヴァントとしての願い】
 イリヤスフィールを守り抜き、聖杯戦争の制覇というへラクレスが果たせなかった偉業を成し遂げる。





【マスター】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night Unlimited Blade Works

【マスターとしての願い】
 まだ何もしていない。このままでは終われない。生きたい。


【能力・技能】
 冬木の聖杯として自身の魔力で可能な範疇で過程を省略して結果を得る願望器としての力を行使可能だった。
 しかし大聖杯の無いゴッサムシティでは大幅に弱体化している。それでも全身の七割が魔術回路であるためアキレウスを支えるだけなら何の問題もないほど膨大な魔力を保有している。
 様々な魔術調整を施された影響で肉体の成長が二次成長で止まっており、このため身体的には非常に脆弱。


388 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:33:07 3lnxZ4I20


【人物背景】
 「雪の妖精」を思わせる小柄な少女。愛称はイリヤ。聖杯戦争のためだけに育てられた、マスターとして最強の存在。基本的には素直で無邪気、天真爛漫な性格だが一般的な常識や倫理観が乏しく、特に殺人に抵抗がない(ただしあくまで敵として認識した相手に対してであり、無関係な民間人を手にかけるほど残忍ではない)。普段の立ち居振る舞いは幼いが魔術師・貴族の姫として威厳のある一面もある。

 衛宮切嗣とアインツベルンのアイリスフィールとの間に生まれた実娘。実年齢は18歳であり、衛宮士郎にとっては非血縁の姉にあたる。母のアイリスフィールはアインツベルンの錬金術が生み出したホムンクルスであり、彼女もまた母の胎内にいる時からアインツベルンより前述の通り様々な魔術的調整を施されており、その影響で肉体の成長が二次成長で止まっている。
 
 切嗣が自分と母を捨て最後の最後でアインツベルンを裏切ったと吹き込まれたことで切嗣を憎んでいるが、故人と知った時に悲しむなど内心複雑な模様。士郎のことは最後の家族としても見ており、彼を失い再び孤独になることを何よりも恐れている。聖杯戦争中、アインツベルン城に交渉に訪れた士郎と会うことを楽しみにしていたが直後に現れた第八のサーヴァント、ギルガメッシュの襲撃を受けサーヴァントのバーサーカー共々戦死した。


【参戦方法】
 アインツベルン城に飾られた絵画の中にシャブティの人形が描かれた絵があった。
 しかし参戦直前のイリヤが直接手に持っていたわけではなく、参戦できた理由としてはかなりのイレギュラー。そのためかNPCとしての生活期間が無く生活の基盤も無い。


389 : イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&ライダー ◆t9uo8eeSlQ :2015/05/08(金) 15:33:43 3lnxZ4I20

【方針】
 ゴッサムシティの聖杯という存在に疑問はあるが戦い勝ち残ること自体に迷いは無い。
 戦略としては基本的に冬木市の第五次聖杯戦争と同じく強力なサーヴァントを全面に押し出した正攻法。イリヤが弱体化していることもありサーヴァント戦で確実に勝利することが必須となる。

 ライダー自身の性能はまさしく破格の一言。ヘラクレスに次ぐ大英雄の名は伊達ではなく踵以外の全身が不死となっており、如何なる攻撃も一切受け付けず神性を持たない相手に敗北する可能性はほぼ存在しないと言っていい。
 例え神性スキルを持つサーヴァントと相対したとしてもライダー自身が一級の三騎士すら凌駕する戦闘能力と様々な戦局に対応できる豊富な宝具を持つため大きな不利を負うことはまずない。何となれば「蒼天囲みし小世界」を解放することで危険な攻撃は防ぎ切れる。
 世界で最も迅い英雄の名の通り他の追随を許さないほどの機動力によって追撃・離脱にも苦労しない。ライダーよりもさらに速い「疾風怒濤の不死戦車」を活用することでヘラクレスには出来なかった「弱点であるマスターを宝具で保護する」という戦略を採れることも大きい。マスターのイリヤスフィールも破格の英雄であるライダーを支えるに足る魔力を持っている。

 ………問題はそれが全てであり、サーヴァントの実力とマスターの魔力量以外に何一つ武器と呼べるものが存在しないことである。
 聖杯の器として歪んだ教育を施されたイリヤスフィールは貴族としての振る舞いこそ身に着けているものの実践的な対外交渉スキルは望めず、それ以前に世間の常識に非常に疎い。生活能力も皆無という有り様。
 生活基盤も存在しないため彼らには安全な拠点も資金も物資も無い。他のマスターやサーヴァントではなく飢えと渇きが最大の敵という冗談のような状況。これを独力で打破するには窃盗しかないがそういった行為はライダーの嫌う「英雄らしからぬ行い」に該当する。
 このため単独で勝ち抜くなら短期決戦、見敵必殺の心構えで全てのサーヴァントを撃破する以外の選択肢が実質的に存在しない。ライダーの悪癖である強者故の慢心をどれだけ抑えられるかが鍵だろう。


390 : 名無しさん :2015/05/08(金) 15:34:20 3lnxZ4I20
投下終了です


391 : ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 17:58:34 Rifa6Oys0
皆様投下お疲れ様です。
私も投下します。


392 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 17:59:36 Rifa6Oys0






 ――この未来は間違えている。

 収益がまるで合っていない。消費と繁栄の均衡が崩れ、成長期のままで止まってしまっている。
 停滞した精神。袋小路の世界。今まで支払っていたものに相応しい未来に辿り着かぬまま静かに終わり、腐敗して行く。

 今描かれたこんな世界が、完成(終わり)に足る美しい紋様(アートグラフ)と言えるのか?

 迷うことなどない。答えは否だ。

 だが、それならば――今日までに捧げられた犠牲は、何だったのか。
 明日を昨日に変えるための、礎となった先人達。彼らの想いに相応しい世界を築けなければ、人類はただの殺戮者だ。

 故に私は叫ぶ。世界に、人類に、ただ一言。「止まるな」と。
 しかし、そんな言葉だけでは届かない。何も変えられない。見せかけの安息という泥濘(ぬかるみ)に身を委ねた者達は、それだけでは決して足を動かそうとしない。

 だから私は聖杯に願う。彼らが自らの強靭な意志で歩み出すために、必要なものを。

 停滞を破るための――人類全てを巻き込んだ、大戦争を。






◆◆◆◆



 ……我こそは魔王ザミエルである。



 我こそは聖バルバラにして聖フーベルトである。






 人の作りし億千万の鉄血鉄火、その全てを纏いしこの世最後の戦神である。






 ……そして世界の変革に取り残され、既に役目を終えた旧時代の遺物である。

 魔眼の王の行く末を見届け、彼と共にこの世を去るのを待つだけの、ただそこにあるだけの人格である。

 

 何故か。我が身を望んだニンゲンという種に、もうこれ以上必要とされなくなったからだ。
 人が住む時代は移ろい変わった。世の中が戦争で決められていた時代から、暴力に頼らず、暴力に屈しない時代へ――その、過渡期へと。

 きっと人はこの先も、何度も何度も間違えて、何度も何度もニンゲン同士で争うだろう。傷つけ合い殺し合うだろう。戦争が起き、戦争が終わり、新たな戦争が始まるだろう。

 それでも時計の針は戻らない。特別な何かが世界を動かし、強大な暴力が世界を揺るがす構図は崩れ去り、何の変哲もない大勢の意思が世界を決める。そんなもっと先の時代へと、人の世は既に向かっている。
 これ以上暴力に頼る方向に進んで待つのは闘争ではなく、人の勇気も知性も介在できない、忌むべき作業としての殺戮だけだと直感したから。
 単なる殺戮者で終わらないための教訓として、礎として、進むべき道を決定づけるのに十分なだけの戦争を、既にニンゲンは体験して来たのだから。
 だから袋小路を抜け出して、人という種は次のステップに進むことを選ぶのだ。
 全ては、戦争(あたし)があったから――

 納得はした。だからあたしは英雄に鎮められ、今に至った。
 大好きなニンゲンを信じて、何もせず、ただ見守り黙って消えて行くだけの、神格すら手放した亡霊に。



 ――――それでも。

 この身を編んだヒトの想いを、この本分を尽くせる場所が、まだあるというのなら。

 ニンゲンが次のステップに進むために、まだ戦争が必要だというのなら。あたし達の知らない遠い世界で、あるべき積み重ねが足りずに今も渇望されている場所が残っているのなら。
 そこに馳せ参じるのは、きっと――――英雄(ニンゲン)に対する、裏切りではない。

 ならばあたしは……その呼び声に、応えよう。

 止まった時計の針を、動かすために。


393 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 18:00:53 Rifa6Oys0



◆◆◆◆



 一発の銃声。それを引き鉄に紛糾する悲鳴と怒号。跳ねる血飛沫、香る硝煙。

 犯罪組織と警察の繰り広げる、銃撃戦。

 暗黒都市と謳われるゴッサムでは、それは日常の一部となって久しい風景だ。
 ただ――その夜の事件は少々、特異だった。

 あまりにも決着が早く、一方で動員された人数に対し、あまりにも犠牲者が多かったのである。
 それも――第三者を巻き込むことなく、激突した組織の構成員と警察官からのみ死者が出た。

 そして、何より特筆すべき奇妙なことは――――死亡者と消費された弾薬の総数が、ピタリと合致していたことであっただろう。



◆◆◆◆



「……あれが、君の加護か」
 夜街を歩いていた最中、そんな銃撃戦が偶然視界に収まるところで始まって、すぐに終わったのを目撃した白衣の男は、傍らの欧州系の女に語りかけた。
「撃てば当たる殲滅戦。随分と過激な聖地だ」
「そうね。狙いやすくて、当たりやすい。それって銃を撃つ者からしたら、悪いことが起き難くなっていると言えるんじゃないかしら」
「成程。外れ易くなる、よりは幸せだろうな。納得したよ。だが……」
 答える自身の心臓が、躍動することもなかった事実を踏まえて、男は眼鏡越しに鉛色の髪をした女を見る。
 鉄十字のペンダントと、頭の上には古めかしいフリッツヘルム。いかついパンツァージャケットに似合わない痩身を包んだ若い女は、誰のモノとも知れない血のニオイと誰のモノとも知れない肉のニオイが充満し、その隙間を硝煙が掻い潜って昇る酸鼻な空間を見て、無邪気な少女のように笑っていた。
 そんな彼女の姿に、あるいはすれ違いの不安を覚えながら、男は問う。

「――これが、君の見たいものだったのか? ガンナー」
「少しだけね、トワイス」
 互いに相手の名を呼びながら、男と女、聖杯戦争に臨むマスターとサーヴァントは、目の前で起こった命の攻防の感想を交わす。

「仕事や義務だからなんて、作業感覚を理由に引かれた引き鉄じゃなかったわ。最初の人は自由に生きたいから、戦おうとして撃った。次の人は死にたくないから撃った。生きるために撃って、撃たれて死んで、生きるためだけに生きようとして撃った。最後はみんながみんな、生きようとしてもがいていた。銃に命を預けて、一発の弾丸に奇跡を願った。
 あれがあたしの見たかったもの。死の瞬間に見える命のきらめき。本当の魂の輝きよ」
 陶然とした表情で、情熱のままにガンナーは語る。
 しかし、それもすぐに下火となった。代わって募った不満を隠す様子もなく、ガンナーは続ける。
「……だけど、早回ししちゃったから。それだけで、すぐに終わってしまったわ。本当はもっと見たかった。もっともっと見たかった。あたしもあなたとおんなじよ、トワイス」
 それからニコリと笑みを浮かべて、ガンナーはトワイスの名を呼んだ。

「あんな小さな争いじゃ物足りないんでしょう? 顔に書いてあるわ」
「そうだね……きっと、そうなんだろう」
 ああ、あんなものでは駄目だ。
 たったあれだけでは、きっとガンナーのチカラなど関わらずとも、成果が出る前に終わってしまう。むしろガンナーが言うような必死さ、死を前にしたきらめきすら、そこには生まれなかったことだろう。
 そんな思考を巡らせるトワイスを見て、ガンナーは朗らかに笑う。

「うん、そう。あたしも殲滅するためのものではない、生存するための戦争が好き。人が生きるために生きる闘争が好き。その知性と勇気を振り絞って、前へと進む熱が大好き」
「そして、その熱で鋼へと鍛えられて行く、脆弱な人間の可能性に魅入られている……か」
「そう! そうよ、その通り」
 上機嫌に笑っていたガンナーは、これ以上近づくと警察の生き残りに目を付けられる、という位置でピタリと立ち止まり。
「……だから正直、この聖杯は気に入らないわ」
 搾り出すように嫌悪を吐き捨てたガンナーは、豊かだった表情を引き締めて、鉄のような冷たい凄みをその美貌に醸し出していた。


394 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 18:03:22 Rifa6Oys0

「あなたがかつて見つけたみたいに、生きているってことはそれだけで奇跡のように素敵なことよ。でも、それはただ命があるだけで特別なわけじゃない。命なんてものはもっと一般的で、普遍的なものなの。奇跡なんて言えないぐらい、みんな簡単に死ぬものなの。価値も意義も、そんな重さに関係なくあっさり崩れるものなのよ。
 そんなニンゲンの魂を輝かせるのは勇気と知性で、それは命そのものではなくて、生きている自分というパーソナリティにこそあるのよ」

「……それを奪われた命と魂の、残された本能だけの輝きなんかじゃ、君には不服だったということか」
「そうね。確かに本能は大切だけれど、やっぱり勿体無いわ。ニンゲンの命を、本当の人生じゃなくて嘘の物語だけで終わらせるのなんて」
 命の育んだ価値を奪い、代わりに縦割りの殻を被せる聖杯は、どうも彼女のお気に召さないらしい。

「――それでも、必要なんだ」
 月の聖杯とは異なり、ここの聖杯ならトワイスにも手にできる可能性がある。そもそもやり直せるのか、ムーンセルに戻れるのかもわからない現状において、目の前のチャンスをフイにするつもりは毛頭ない。
 とはいえ危機感、と言うほどの焦りはない。このサーヴァントが語るのは、かつて“トワイス・H・ピースマン”が死の際に見出した答えそのものだったからだ。故にトワイスはもう、自分達主従が最終的に道を違える心配などしていない。
 それでも、意思は伝える必要があった。この願望の切実さを、それに応えてやって来た戦女神に再び提示して、足並みだけは常に揃えておく必要が。聖杯戦争においてはどんな油断が命取りになるのか、わからないからだ。
 ガンナーはそんな己のマスターに、ニコリと微笑む。

「わかっているわ。必ずあなたに聖杯を掴ませる。だってあたし、元は戦争の神さまだからね。一肌脱がないわけにはいかないもの」

 彼女の真名はマックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ。トワイスが生きたのとは異なる世界で生まれた、銃の精霊。やがて二度の世界大戦を経て、戦神の域へと至ったもの。
 世界の裏側に身を潜めた神々よりも遥かに若く、しかしそれでも時代の推移に追いつけずに信仰を失い、堕ちたカミ。
 最終的には自らの神格をとある一人の英雄に与えたことでその身を貶め、サーヴァントとしての規格に当てはまるようになった今も、彼女はかつて自らに架した責任を手放さない。
 生まれ落ちた世界では役割を終えたことを認めた今も、人類に戦争が必要なのなら――こうして他の世界にまでやって来て、やがて人類に自らが必要なくなるその時まで、尽力しようとしてくれている気高きカミ。
 それがトワイスのサーヴァント、ガンナー。

「ただ、ゴッサムは折角良い感じに銃社会だから本当に勿体無いなって。確かに国家と比べたら不足も良いところだけど、戦争っていうのはそういう大きな集団でやるものなのよ。一人一人の人間がお互いの人生を懸けて、必死になって行うものなの。NPCじゃそのチップが取られちゃってるし……参加するのがどんなに強い英霊と魔術師の集まりでも、たったの数十人でドンパチするんじゃ、陰惨さも卑劣さも、容赦のなさも物足りないわ」
「……それは君がこれまで、当事者ではなかったからだろう」
 このサーヴァントとの相性はすこぶる良い。そのように理解しながらも、ただ一点のズレを埋めるために、トワイスは言葉を贈る。
「君は銃の精霊として、戦争の神として、誰かに肩入れすることはして来なかった。人間を愛し、戦争を愛する君は、戦場の誰もに等しく加護を与えた。それが君の役割だった。
 だが今回は違う。君は英霊の座から来たサーヴァントとして私と契約した。祈りを捧げる誰も彼もに平等であらねばならない神でも精霊でもなく、自らの願いのために戦う一人の兵士として聖杯戦争に加わった」


395 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 18:04:11 Rifa6Oys0

 そこで一息。区切りを入れたトワイスは、神霊として欠落した結果ガンナーとして現界し得たマックルイェーガーへと、祝福の言葉を用意する。

「初めて、最初から当事者として関わるこの小さな戦争はきっと……戦神(きみ)に、かつてない成長を齎すはずだ」

 少しだけ、ぽかんとした表情。
 ガンナーは、マックルイェーガーは考えたこともなかったのだろう。戦争が人に与える熱を愛し続けていた彼女は、それを見守り育むのが役割で、それを自らに任じ律儀に守り続けて来た彼女には、己が兵士として関わるという発想自体がなかったに違いない。戦の神が人の子の争いで、どちらかの陣営に肩入れして自ら人の子を撃ち殺して回るなど、不公平が過ぎてあってはならないことだっただから。
 しかし、堕ちた今の彼女は英霊であり、その役割はサーヴァントである。
 自ら人の子を撃ち殺して回るだけの理由と権利を持った、一人の兵士なのである。

「……そして、これで終わりではない。これは始まりなんだ。私が願い、君が叶えようと応えてくれた、人類全てのための大戦争の。
 到底満足できないこれはその引き金となる、最初の闘争、小さな紛争だとでも思ってくれれば良い。
 君の愛する確かな自我を持った者達との、この小さくとも本物の戦争のことを」

「うーん……」
 トワイスの訴えを受けて、ガンナーは暫しの間逡巡したが。やがて、頷く。
「……そうね、トワイス。本物のあたしは神さまで、人間が用意した鉄火場に飛び込むのは許されても、自分が火種になるようなことはできなかった。争いのきっかけになる引き鉄に指をかけるのは、銃の神として許されることじゃなかったわ。
 だけど、ここにいるあたしは英霊の座からやって来たサーヴァント。一種の特例とも言うべきアバター。みんなに加護を与えるのではなくて、自分で聖杯を勝ち取りに来た参加者……自分で引き金を引いて良い一人の兵士。こんな形で戦争に関わったのは、確かに初めてね」
 そこでガンナーは、意地の悪い猫の浮かべるような、稚気の中に獰猛さを潜めた笑顔になった。

「なら、このあたしもたっぷりと堪能させて貰おうかしら。勇敢な兵士たちがいつも見ていたもの、感じていた気持ち。絶望と恐怖、屈辱と悲しみを。それを乗り越えた先にある、達成感と高揚感、爽快感と優越感を、この戦場(ゴッサム)で」
 そんな彼女の様子に、トワイスも微笑み返した。
「ああ、それで良い。その神格を欠落したからこそここにいる君が、再び人類に加護を与える神の座に至るまで……君自身が、戦争の中で成長する機会に恵まれた運命を、私は尊ぶ」



 ――さあ、まずはこの街から始めよう。

 人間が人間として、勇気と知性を持って更なる飛躍を遂げるために。



 ……今こそ、戦争を。



 一心不乱の、大戦争を。


396 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 18:05:07 Rifa6Oys0

【クラス】ガンナー
【真名】マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ
【出典】レイセン
【属性】中立・善
【ステータス】筋力B 耐久D 敏捷C+ 魔力A 幸運B 宝具A++
【クラススキル】
対英雄:C
 ガンナー本人を除く、その戦闘に参加しているサーヴァントの筋力、耐久、敏捷をそれぞれ1ランクダウンさせる。

単独行動:B
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。Bランクならば二日間は現界可能。
 但し宝具を使用する場合など、多大な魔力を必要とする行為にはマスターの存在が必要不可欠となる。
 また、霊格に致命的な損傷を受けても短期間ならば生存できる。

【保有スキル】
神性:C
 本来は「銃」へ向けられた人間の想念から生まれた神霊そのものだが、時代の推移によって神格を落とし、更に魔眼王との契約によって大幅なランクダウンを招いている。
 元が完全に想念由来の神霊であるため、加護を与えた人間が銃へ向けた感情を魔力に変換し、自らに供給することができる。

聖地作成:D
 確固とした土着の信仰対象が存在しない土地でのみ発動可能。魔力を散布することで自らを中心とした一定範囲を聖地とし、聖地内の他者に神としての加護を及ぼす。
 銃と戦の神であるガンナーの場合は、銃砲による攻撃の幸運判定に有利な補正が得られる場を形成する。また意識することで特定個人により強い加護を与えることも可能。

千里眼:A+
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 また自らの聖地内に踏み入っている銃の所有者の視界も、全て己の物として並列に捉えることができる。

戦闘続行:A+
 決定的な致命傷を受けることがない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 元が戦神であったガンナーの場合は単独行動と合わせて、魔力か戦意が枯渇しない限り、胸を貫かれても問題なく戦い続けることが可能。


【宝具】

『億千万の鉄血鉄火(インフィニティ・バレット)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:999 最大捕捉:1000人

 銃と戦の神であるガンナー特有の権能が宝具化したもの。
 拳銃も小銃も機関銃も、迫撃砲もガトリング砲も、八十センチ列車(ドーラ)砲も八十八ミリ高射砲(アハトアハト)も、空を埋め尽くしてなお余りあるほどの人の作りしあらゆる銃砲を眷属として従え、レンジ内のあらゆる空間へ瞬時に召喚し使役する。
 これら眷属である銃火器は神秘を帯びてサーヴァントを殺傷せしめ、またガンナーの意志一つで同時にそれぞれが標的を狙い射手が不在でも発砲することができる。
 但し発動の燃費は良いが召喚には当然魔力を消費するため、大規模な展開は多用できない。また強力な眷属ほど召喚や維持にかかる魔力量が大きくなり、希少な銃火器ほど一度に多くを呼び出し難いなどの制約は存在する。

 銃とはあくまで人が一個の命を撃つためのものであり、どんな破壊力と捕捉範囲を誇ろうとも、ガンナーの眷属として召喚される以上は対人宝具に分類される。
 その一線を越えてしまえば、その銃の用途は闘争ではなく殺戮という作業の道具に堕ちてしまうためである。
 これらの制約さえ守っている限りは、この宝具は銃神としての権能が具現化したものとして機能する。そのため神秘として見た宝具ランクは高いものの、種類にもよるが銃弾一発一発の威力とは噛み合っていない。それでも圧倒的な物量ゆえ、最大展開時の総合火力ならばランクの値に見合った圧倒的な破壊力と殲滅力を発揮できる。

 なお、新しく手に取った普通の銃火器類も眷属として宝具に取り込むことができる。また、逆にガンナーの眷属としての神秘を保持したまま、これらの内の一部の支配権を他者に譲渡することも可能である。


【weapon】
『億千万の鉄血鉄火』

【サーヴァントとしての願い】
 また、人が生きるために生きられる素敵な戦争を見たい。そのために必要とされているのなら、戦の神として一肌脱ぐ。


397 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 18:07:11 Rifa6Oys0

【人物背景】

 銃と戦争の女神。本名は長いので、親しい者からはマックルと呼ばれる。
 銃の精霊として生まれ、世界大戦を経て戦神へと至った存在だったが、時代の推移によって信仰を失い、様々な先進技術を研究する“組織”に精霊工学の被検体として捕らわれる。
“組織”が促す科学技術の進歩により、やがて戦場は殺戮という行為に取って代わられ、生き死にだけの戦争に成り下がってしまう未来を予感したマックルは、戦神として愛する戦争を守るために“組織”の打倒を狙い、協力するフリをして力を蓄えようとするも失敗。その過程で出会った二代目聖魔王にして魔眼王・川村英雄(ヒデオ)に“組織”との戦いを託すために、東京で起こった“組織”の関わるテロの現場を聖地とし、事件を大幅に加速させる。事態の収束のために現れた彼に討たれることで彼を表舞台でも英雄とし、“組織”に対抗できる存在に仕立て上げようとするが、自らが伝えた人間の勇気と知性について逆に説き伏せられ、自らは役割を終えたのだと悟って消滅しようとする。しかし神でも精霊でもなく、ただ友人として消えないで欲しいというヒデオの頼みに心動かされ、彼と契約。役目を終えた自分を世界の存続させる最低限の信仰をヒデオから貰う代わりに、ヒデオへ自身に残されていた神格を譲渡して、二代目聖魔王を囲む精霊達の仲間入りを果たす。

 本来は英霊の範疇には収まらない存在であったが、例えばギリシャ神話の大賢者ケイローンのように他者へ神格を譲渡したことで神性を貶めサーヴァントとしての召喚が可能となっており、自分達の世界と違って人間が前に進むための戦争が足りていないFate/EXTRAの世界に必要な戦争を授けるため、トワイスの下へと召喚された。


【クラス補足:ガンナー】
『銃撃手』のクラス。 弓兵(アーチャー)から派生したエクストラクラス。飛び道具の中でも、銃火器の操作に特化した能力を持つ近代以降の英霊が該当する。
 クラススキルとしては、三騎士から外れたために対魔力を喪失し、代わって銃という「闘争を作業に変え、英雄という概念を戦場から駆逐する要因の原点となったもの」である武器を扱うという性質から対英雄を獲得し、また単独行動も引き続き保持している。
 著名な該当者としては『白い死神』シモ・ヘイヘ、『ホワイト・フェザー』カルロス・ハスコックらの名が挙げられる。




【マスター】トワイス・H・ピースマン
【出典】Fate/EXTRA
【マスターとしての願い】
 全人類規模の戦争を起こすことで人類を成長させる
【weapon】なし
【能力・技能】
 医師としての優れた技能を持つ。
 ムーンセルにいた頃は二つのコードキャストを扱えたが、ゴッサムシティにおいても使用できるかは不明。


398 : トワイス・H・ピースマン&ガンナー ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 18:07:27 Rifa6Oys0

【人物背景】

 実在した「トワイス・ピースマン」という人物を模したムーンセルのNPCが、生前の記憶(正確に言えばデータのオリジナルの記憶)を取り戻したイレギュラーな存在。

 彼の元となった「トワイス・ピースマン」は、かつてアムネジアシンドロームという病気の治療法を発見するなど、数々の功績を残した偉人。戦争があれば常に戦火の中に身を投じ、人命救助に尽力した戦争を憎む人物というのが表向きの評価だが、実際の彼は戦争を見るたび憎悪や焦りに襲われ心臓が活発的に躍動する“病気”に苛まれ、正義感でも義務感でもなくその痛みを和らげる為に戦地へ赴いていた。

 自身の戦争に対する常軌を逸した殺意に疑問を抱き続けるが、バイオテロに巻き込まれ死を迎える間際、彼は自分が70年代に起きた民族紛争の戦争孤児であったことを思い出し、疑問への解答として戦争の中で必死に生きようともがく命の強靭さを垣間見たことで「戦争」とそれが生む成果を否定しきれなかったことに思い至る。

 NPCとして自我と記憶を取り戻した彼は、停滞した今の世界に絶望する。戦争は欠落を齎すが、だからこそ欠落以上の成果を齎すし、齎さなければならない。然るに今の停滞した世界はどうか? それまでに積み重ねた欠落に見合うほどの成果を得られていないではないか。
 そして欠落を埋めるほどの成果を得られないならば、さらなる欠落をもってさらなる成果を生み出さなければならない。そんな偏執的な思考の下、彼は聖杯の力で全人類規模の戦争を起こすことで人類を成長させ、現在の世界の停滞を打破しようと、当時ムーンセルで行われていた生存トライアルに挑んでいた。
 霊子ハッカーの適正はあるものの、その実力は最弱クラス。 しかし“死んでもまた再構成される”NPCの特性を利用して、幾度となく聖杯戦争を戦い抜き、百を優に超える戦いを繰り返す。その過程の中で徐々に実力も磨かれていった。
 そして幾度もの繰り返しの中、偶発的にアリーナでシャブティのデータを取得。それはやがてトワイスをムーンセルではなく、ゴッサムシティの聖杯戦争へと誘うこととなる。


【方針】

 聖杯を勝ち取るためにも、ガンナーに当事者としての戦争を体験させるためにも、他の参加者を発見し、戦う。

 確固とした土着の信仰が存在しない上に銃社会であるゴッサムシティはガンナーにとって自身の聖地を作り易く、上手くすれば適度に魔力を補充しながら、最高ランクの千里眼に加え複数の目を借りることで他のマスターを発見する確率を上昇させることができるのは、戦争における大きな強みであるといえる。但し魔力を撒き散らす都合上、このスキルの発動中は逆に他のサーヴァントや魔術師に存在を喧伝して回っているのに等しくなる上、常に魔力の収支がプラス以上に傾くとは限らないため、使いどころは考える必要がある。


399 : ◆aptFsfXzZw :2015/05/09(土) 18:08:37 Rifa6Oys0
以上で投下完了です。


400 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:00:26 AmgvlDUs0
投下乙です。
自分も投下します。


401 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:00:55 AmgvlDUs0


衆愚の街、ゴッサムシティ。
この街は溝水に汚染されている。
企業や行政における賄賂や汚職が横行。
社会の裏側は犯罪組織が牛耳る。
激しい貧富の差が齎す社会的な格差。
正義には程遠い悪徳と退廃が社会を支配している。


聖杯は何故このような世界を会場としたのか。
犯罪の温床である悪徳の街で何故奇跡の願望器が齎されるのか。


マスターである彼はその理由を知らないし、そもそも興味も持たない。
何故ならば、彼もまた悪党であるから。
汚染された街に適応していたから。
男に与えられたNPCとしての役割はマフィアの構成員――――ギャング。
元の世界でもマフィアに所属していた彼にとって当然の役職と言えるだろう。
彼はこの街に溶け込み、犯罪に手を染めつつマスターとして活動しているのだ。


402 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:02:28 AmgvlDUs0
◆◆◆◆



「おぉ、もう来ていたのか博士」


時刻は既に深夜を迎えている。
誰一人寄り付かぬ廃工場の内部にて、ギャングである俺は彼に対し声を掛ける。
『博士』は腕を組み、壁に寄りかかりながら待機していた。


「ええ。此処にお呼び立てしたということは、例のモノに関するお話でしょうか」


既に待ち合わせに来ていた博士は、寄り掛かっていた身体をゆっくりと動かす。
彼は麻薬の取引における仕事仲間だ。
大きな病棟に勤務する精神科医でありながら悪事に手を染めている。
このゴッサム・シティというものはやはり悪徳の街だ。
医師でさえ平然と悪事に手を染めるのだから。
尤も、ギャングである自分が稼げるこの街の環境は嫌いではないが。


「ああ、例のヤクの取引に関することさ。誰かに聞かれたら困る話だろう?
 特にあんたみたいな医者が一枚噛んでるなんて知られたら騒ぎになるだろうよ」
「いやはや、尤もです。ここなら安心して相談出来ますからね」


俺は博士に対し『嘘』を淡々と述べる。
普段からこのような人気の無い場所でヤクの取引に関する相談等を行っている。
だが、今回は違う。
今の俺は聖杯戦争のマスターとして動いている。



俺のサーヴァント―――――アサシンの偵察によって、博士も自身と同じマスターであることを見抜いたのだ。
アサシンは博士の右手の令呪を確認し、サーヴァントもまた一瞬ながら視認したという。



故に俺は博士を相談の場である廃工場へと呼んだ。
麻薬の取引に関する話し合いと見せかけ、彼を暗殺することを目論んだ。
博士のサーヴァントのクラスは確認出来ていない。
だが、わざわざサーヴァントに対処する必要は無いと考えた。
廃工場に潜ませているアサシンが博士の暗殺に成功すればいいのだから。
聖杯戦争はルール無用の殺し合いだ。
馬鹿正直にサーヴァントと交戦する必要など無い。

アサシンの敏捷性があれば一瞬で事が済む。
堅気である博士に対処することなど出来ないだろう。


「さて先生、以前あんたに言ったヤクの分け前のことなんだが―――――」


内心でほくそ笑みながら俺は嘘を並び立てる。
ビジネスの取引相手としては悪くなかった。
だが、所詮はその程度の仲だ。
この聖杯戦争で勝ち残る為ならば、容易く切り捨てられる。




「悪いな、予定が変わった。あんたに払える金は無いんだ」




そう、払う必要が無くなるからな。
あんたは此処で死ぬことになるんだから。
ま、悪くない稼ぎだったが、事情が変わったんでね。




『やれ、アサシ―――――――』




アサシンへの念話を飛ばそうとした瞬間のことだった。
俺の顔に突如ガスのようなモノが吹き掛けられたのだ。


403 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:03:26 AmgvlDUs0


「……は、あ?」


唖然とした時には、もう遅い。
胸の内から、脳髄から、内蔵から、濁流のように感情が溢れてくる。





「あ、ああ、あ、ああああ、ああ、あ、ああ、あ、あ、あ、あ」




呆然。不安。焦燥。動揺。恐怖。絶望。
どうしようもない感情の雪崩に腰を抜かしてしまう。
何だこれは。何だ、何だ、何だ何だなんだなんだなんだ!?





『『『『『―――――――――おい』』』』』





誰だ、こいつは。
目の前にいつの間にか覆面の怪物が。
怪物が俺に、語り掛けてきて、







「あ、ああ、う、あああああああああああああああああああああああああああ――――――――――!!!!!!!!!!」








語り掛け、かた、り、かた、かた、かたり、かたかたかたかたかたかたたたたたた、
ばけものが、ばけもの、が、が、――――――――――――








『『『『『君の言う通りだ。誰かに見られたら困るね』』』』』







―――――案山子(スケアクロウ)。
―――――案山子(スケアクロウ)。
―――――案山子(スケアクロウ)。
―――――案山子(スケアクロウ)。
―――――案山子(スケアクロウ)!
―――――案山子(スケアクロウ)!!








「ぎいいいああああああああああ!!!!!うわあああああああアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!」









『『『『『此処なら安心して君を始末できる』』』』』』


404 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:04:09 AmgvlDUs0
◆◆◆◆




廃工場に恐慌の慟哭が響き渡る。
ギャングは完全に錯乱し、地面の上で狂った様にのたうち回っていた。
最早まともな思考能力を失っている。
恐怖に戦き、地面を這いつくばり、必死に叫び回るだけの狂人と化している。
そんな男を見下ろすのは覆面の怪人。
彼のサーヴァントによって暗殺される筈だった精神科医の真の姿だ。



「貴様アアァァァーーーーーーーッ!!!!!!」



直後、怪人の耳に怒声が入ってくる入る。
己のマスターの異変に気付いたアサシンは姿を晒し、怪人の前に立ちはだかったのだ。
アサシンはマスターを庇いつつ短刀を構え、瞬時に覆面の怪人へと接近。
そのまま彼の首を掻き切らんと迫った――――――




「ざぁんねん」




唐突に新手が割り込んできた。
アサシンの前に突如として立ちはだかったのは派手な装いの男。
ファーのコート。桃色に染められた奇抜な髪。肌から覗くタトゥー。残虐な意思を宿す瞳。
彼こそが覆面の怪人が召還したサーヴァント―――――『アーチャー』だ。
邪悪な笑みをその口元に浮かべ、アーチャーは指を打ち鳴らす。
瞬間、アサシンの肉体が勢い良く吹き飛ばされた。


「が、はァッ!!?」


吹き飛ばされ、壁へと叩き付けられたアサシンが血を吐き出す。
その右胸に生まれていたのは、まるで弾丸で貫かれたかのような貫通痕。
アーチャーが放った奇怪な攻撃によって作られた傷痕だった。


「まさか俺のマスターを上手いことハメられたとか思ってた?
 ぜぇーんぶ丸聞こえだってことも気付かずにさぁ―――――ゲヒャハハハハハハッ」


アーチャーは不敵な笑みを浮かべ、壁に寄りかかるように倒れ込むアサシンへと歩み寄っていく。
勝ち誇った表情。勝者としての確信。他者をいたぶる愉悦。
ゆったりと歩を進める男から、そんな感情が読み取れた。
アサシンはきっとアーチャーを睨み、立ち上がろうとするも力が入らない。


―――――『聞こえていた』だと?
そんな馬鹿な。マスターとは念話で作戦の打ち合わせを行っていたのだ。
策を事前に聞かれていた等、有り得る筈が無い。
否。まさか、これが奴の―――――――――



「つかさぁ、お前クソ弱ェな?こんなんじゃ肩ならしにもなんねーよ。
 俺様の気分を萎えさせんなよ、お前。解る?え?」



アサシンの顔面に叩き付けられる靴底。
目の前まで接近したアーチャーが彼の顔を右足で乱暴に踏み躙ったのだ。
血反吐と土の入り交じった味が口の中で混ざり合う。
直後に蹴りが叩き込まれ、鼻がへし折れる。
再び蹴りが叩き込まれ、片目がぐしゃりと押し潰される。
更に蹴りが叩き込まれ、咽ぶ様に血を吐き出す。
執拗な蹴りを繰り返しても、アーチャーは気が収まらぬ様子で瀕死のアサシンを見下ろす。



「おいマスターちゃん」


ペッと痰を吐き出したサーヴァントが己のマスターへと声を掛ける。
錯乱する男を見下ろしていた覆面の怪人が、アーチャーの方へと目を向けた。




「こいつ好きなだけブッ壊していいよなァ?」
「どうぞ、ご自由に」




覆面の怪人(マスター)から下された許可。
加虐的な笑みを浮かべるアーチャー。
そしてアサシンが顔を上げ、目の当たりにしたのは。
オレンジ色のオーラを纏う、アーチャーの無骨な指であり―――――――――


405 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:05:37 AmgvlDUs0
◆◆◆◆



「いやはや上出来だよ、アーチャー」


覆面を外した男がパンパンと手を叩く。
慇懃無礼な笑みを口元に浮かべ、己の従者を賞讃する様に述べた。
ジョナサン・クレイン――――――またの名を『スケアクロウ』。
それが悪徳精神科医の名であり、同時に覆面の怪人としての異名だった。


「だせェ呼び方で俺を呼ぶンじゃねえよ。名前覚えてるよな?」
「おっと…これは失礼したね、Mr.マルチネス」


静かに一礼をし、アーチャーへの呼称を訂正する。
ジェイク・マルチネス。アーチャーのサーヴァントとして呼ばれた男の真名である。
彼もまたスケアクロウと同じ。ヒーローと敵対する悪党(ヴィラン)。
あらゆる凶行を犯してきた最悪の犯罪者だ。

あのギャングの謀略は既に筒抜けだった。
廃工場に潜んでいたアーチャーの宝具によって全て見破られていたのだ。
宝具の名は『神に選ばれし者(ウロボロス)』。
アーチャーの存在する世界における超能力者『NEXT』としての技能が宝具へと昇華されたもの。
通常ならば一人一つしか持ち得ないNEXT能力を二つ備える特異体質の具現。
アーチャーは二つのNEXT能力の片割れである『他者の心を読む能力』によってギャングの思考を読んでいた。

そしてアーチャーからの念話でギャングの策を伝えられたクレインは幻覚ガスで先手を打ち、彼を逆に錯乱させたのだ。
対象の恐怖心を引き起こし、錯乱状態に陥れる幻覚ガスこそがスケアクロウの武器である。


「ともかく、君のような優秀なサーヴァントを引けて嬉しい限りだよ」
「そりゃどうも」


片耳を穿りながらぶっきらぼうにアーチャーは答える。
既にアサシンはこの世にいない。
アーチャーの執拗な攻撃によって抵抗も出来ずに消滅したのだ。

幻覚ガスの効果によって錯乱したまま地を這うギャングの頭部を、アーチャーが乱雑に掴む。
そのままギャングの身体がゆっくりと持ち上げられた。
男は必死に抵抗するも、ただの人間がサーヴァントに逆らえる筈もない。
ニヤリと笑みを浮かべたアーチャーは、そのまま右手の力を強め。



「お前からすりゃ俺はアタリ、当然だろ!何せ俺は進化した人類!
 その中でも飛び切りの『神に選ばれた存在』なんだからなァ」



グシャリと果実の様に潰れる頭部。
男の脳髄と血液が足下の地面に撒き散らされる。
白い紙にぶちまけられたインクのような紅色だ。
一瞬の絶命――――――そして男の肉体より溢れる『魂』をアーチャーが取り込んだ。
魂喰い、サーヴァントによる魔力回復手段の一つ。
人間の魂を喰らい、自らの魔力の糧とする方法だ。



「だがな、お前にとって俺がアタリでも――――俺はお前を気に入っちゃいねえ。
 この俺がわざわざ能力もねぇ下等な連中の狗に成り下がってる意味くれぇ解るよな?」



男の魂を喰らった後、アーチャーはスケアクロウに対してそう投げ掛ける。


406 : ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:06:10 AmgvlDUs0

聖杯戦争。
それはあらゆる願いを叶えるとされる奇跡の願望器を巡る闘争だ。
誰もが己の欲望を賭けて戦うのだろう。

スケアクロウは偶然シャブティを入手し、聖杯戦争に参加した身である。
最初こそ戸惑いや動揺はあったものの、事情を飲み込んだ彼は生還と願いの為に戦いに勝ち残ることを決意したのだ。


彼の望みは富と権力――――――そんな在り来たりで俗な願いだ。


けちな悪事で金を稼ぐ必要も無い。
好きなだけ資金を使い、好きなだけ人体実験を行える。
それを実現する富と権力こそがスケアクロウの望みだった。
尤も、あくまで最優先はこの会場からの生還だ。
聖杯によって本当に願いが叶うのならば使ってみたい、という程度の意思である。
それでも聖杯を求めていることには変わりはないが。

成り行きとはいえ、そういった形で自身も願いを抱えているのは事実だ。
アーチャーも聖杯で願いを叶える為に従者の身に窶しているのだとスケアクロウは改めて理解した。


「狗に成り下がってでも戦う理由がある、ということだろう?」
「まッ、そういう訳だ!だからマスターさんよ、先に言っておくぜ――――――――」


ジェイクの投げ掛けた言葉に対し、静かに答えるスケアクロウ。
不敵な笑みを浮かべていたジェイクの瞳が、ゆっくりと細められる。





「『使える“駒”を引けて満足』ってか。テメェも丸聞こえなんだよ」
「おや、失礼をしたね。申し訳ない」





――――――おっと、つい心中で無礼なことを呟いてしまったな。
こちらを睨みつけるジェイクに対し、スケアクロウは慇懃無礼に謝罪をした。


407 : スケアクロウ&アーチャー ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:07:39 AmgvlDUs0
【クラス】
アーチャー

【真名】
ジェイク・マルチネス@TIGER & BUNNY

【属性】
混沌・悪

【パラメーター】
筋力D 耐久E 敏捷D+ 魔力C 幸運D 宝具C+

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術への耐性。
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する程度の対魔力。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
マスターを失っても一日は現界可能。

【保有スキル】
見切り:B-
攻撃を見切る技能。
宝具発動時、防御判定・回避判定の成功率がアップする。
回避判定時には敏捷値に有利な補正も掛かる。
ただしアーチャーにとって想定外の攻撃に対しては機能しない。

精神汚染:C
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
数々の犯罪を犯した凶悪犯としての精神がスキルへと昇華されたもの。

正体秘匿:D++
サーヴァントとしての素性を秘匿するスキル。
アーチャーの宝具の全データを他者から認識出来なくする
更にアーチャーの真名から宝具を割り出すことが不可能になる。
その為彼の宝具を暴く為には直接の交戦か会場内での情報収集が必要不可欠となる。
凶悪犯『ジェイク・マルチネス』の能力に関する一切の情報が公的資料に残されていなかった逸話の具現。

【宝具】
『神に選ばれし者(ウロボロス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
進化した人類『NEXT』としての能力。
特異な能力を備えるNEXTの中でも更に異質な存在。
通常ならば一人に一つが原則であるNEXT能力をアーチャーは二つ備えている。
NEXT能力の詳細は以下の通り。

・バリア
レンジ:1~50 最大捕捉:1~2
球状のバリアを展開する能力。
物理攻撃・魔術攻撃などのあらゆる攻撃判定に対する鉄壁の防御として機能する。
更にバリアをビーム状に変え、指を打ち鳴らすことで高威力の飛び道具として放つことも可能。
ジェイク・マルチネスがアーチャーとして現界した所以。

・読心
レンジ:1~20 最大捕捉:1~?(レンジ内にいる全対象)
他者の心を読む能力。
レンジ内に存在する者の思考や念話を無条件に聞き取ることが出来る。
読心の対象はアーチャーが任意に指定可能。
ただし複数の人間の心を同時に読めば相応の魔力負担が掛かる。


『破壊の狂宴(オンエア・ジャック)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:1
公共の放送を乗っ取り、享楽目的で自身とヒーローの一騎打ちを開催した逸話の具現。
自身を中心とした一定範囲内に空間隔離の結界を展開し、強制的に一対一の状況を作り出す。

結界に引きずり込む対象はレンジ内にいるサーヴァントから任意で指定可能。マスターを引きずり込むことは出来ない。
固有結界のような異空間を作り出す訳ではなく、あくまで外界とは地続きの隔離空間を展開するのみ。
その為外界からは結界内を通常の空間と同じように認識できるが、内部への干渉は不可能。
ただし空間を断絶・突破する能力を持つ者ならば結界への侵入・結界内からの離脱が可能。
発動に必要な魔力は多いが、結界維持のための魔力消費は非常に軽い。
また結界を解除しない限りアーチャーも離脱が出来なくなる為、使い所は難しい。

【Weapon】
宝具『神に選ばれし者』

【人物背景】
犯罪組織『ウロボロス』の一員。
元傭兵のNEXT(作中に登場する能力者の呼称)であり、通常ならば一人一つしか持たないNEXT能力を二つ備える。
残虐非道かつ気まぐれなヴィランであり、自らが支配するNEXTの国を作り上げることを目的とする。

【サーヴァントとしての願い】
NEXTによる世界の支配。

【方針】
聖杯戦争を楽しみつつ勝ち残る。
下等な無能力者に従うのは気に喰わないが、自身のマスターなので一応報いてやるつもりはある。
とはいえ場合によっては切り捨てることも視野に入れる。

【基本戦術】
戦闘においては宝具『神に選ばれし者』を駆使した立ち回りが前提。
鉄壁のバリアと読心能力、見切りスキルによって防御に関しては滅法強い。
更に高威力かつ連射が可能なバリア射出能力を備えており、攻撃面も悪くない。
欠点として挙げられるのは、宝具への依存性が高くそれらを攻略されれば必然的に脆くなる点。
アーチャー本人の能力は低く、宝具無しでは貧弱の一言。
また読心能力に関しても一度に心を読む人数に比例して魔力消費が増加する為、集団戦も苦手。
それを補うのが強制的に一騎打ちへと持ち込む宝具『世界蛇の狂宴』である。
ただし発動による魔力消費が大きく、結界を解除しない限りマスターが無防備となる為使いどころは難しい。


408 : スケアクロウ&アーチャー ◆1k3rE2vUCM :2015/05/09(土) 23:08:30 AmgvlDUs0
【マスター】
スケアクロウ(ジョナサン・クレイン)@バットマン ビギンズ

【マスターとしての願い】
絶対的な富と権力の獲得。

【weapon】
『幻覚ガス』
恐怖を誘発させる幻覚剤を含んだガス。
腕に仕込んだガス噴射装置を用いて噴射する。

『カカシのマスク』
ヴィラン「スケアクロウ」としてのトレードマーク。
幻覚ガスから自身を防護するガスマスクとしての役割も持つ。

【能力・技能】
精神科医としての知識。また幻覚剤の製造にも精通している。
幻覚ガスを武器に使用するが、本人の身体能力はそれほど高くない。

【人物背景】
アーカム精神病院に勤務する精神科医、ジョナサン・クレイン。
その裏の顔はマフィアと結託して悪事に手を染めるヴィラン「スケアクロウ」である。
犯罪者を精神異常と診断し、人体実験の材料としてアーカム精神病院に入院させていた。
恐怖心を誘発させる幻覚剤を含んだガスを秘密裏に製造しており、自身も武器として使用する。

【方針】
聖杯を穫るべく勝ち残る。
自身の立場やコネは最大限利用し、あらゆる手を尽くす。
魔術師など戦闘力を持つマスターは可能な限り警戒。
アーチャーの働きには期待しているが、あくまで駒程度にしか考えていない。

【令呪】
右手の甲に発現。
形状は案山子を模した十字に貫かれるウロボロス(尾を噛む蛇)。
消費はウロボロスの尾(一画目)→ウロボロスの胴体(二画目)→十字(三画目)。


409 : 名無しさん :2015/05/09(土) 23:08:43 AmgvlDUs0
投下終了です


410 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:43:08 vktJUQJs0
投下します。


411 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:43:36 vktJUQJs0





 君が此処に居ることで、僕はこの旅の先を知るだろう。







412 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:44:09 vktJUQJs0



 一人の男が、人生を終えようとしていた。
 掃き溜め同然の薄汚れた路地裏で、壁に身体を預けたまま、男はその呼吸を弱々しくさせていく。
 彼の最期を看取ろうとする気高い聖者はいないし、いるわけもない。少し前、男と同じような浮浪者が一人近寄ってきたが、金目の物を持っていないかと物色、成果が無いと分かれば蹴りと唾を浴びせて去っていた。こんな扱いをされるのが関の山だ。
 分かっていたことだ。
 社会から一度爪弾きにされた者に、最早救いなど無い。嘆こうが怒ろうが現実は好転などせず、あとは次々と堕ちていくのみ。
 その果ての終局だ。受け入れたくなくとも、受け入れる以外の選択肢など存在しない。
 せめて男に出来るのは、かつて見下した社会の塵屑と等しくなった自分の境遇と、惨め極まるこの最期を呪うくらいだった。

 もうあと数分で、自らの生命機能が停止するのだろうと思えてきた頃だった。
 何者かが一人、男の前で足を止めた。
 既に失われようとしている視覚で辛うじて判別できたのは、桃色がかった金髪の女であることだった。
 見たところ、特に誰かを引き連れているようには見えない。女一人でうろつくなど、男以外の暴漢がいれば忽ち痛い目に遭いそうなものなのに。
 闇に閉ざされようとする視界の中で、女が見下ろすのを男は感じる。その瞳に宿した感情は読み取れない。サングラスをかけているためと言うより、既にその判別さえ不可能なほどに男の眼球が衰弱していた。
 だから男は、大方嘲笑の対象にでもしているのだろうと自ら当たりをつける。
 糞みたいだろ。哀れか、笑えよ。
 遺されたわずかな体力を使って、男は自嘲の言葉を絞り出す。同時に浮かべた笑顔は、きっと大層醜いことだろう。
 どう思われるかなんて、もうどうでも良かった。
 このろくでもない人生には、もう劇的な好転を見せる余地など万に一つも無いのだから。

 男の自虐を聴いても、女は何も言葉を発しなかった。
 その代わり、すぅと息を吸い込んだ。
 直後、始まったのは――歌。

 透き通った声だった。
 淑やかなような、それでいて情熱的とも思えるような響き。
 世辞を抜きにしても達者な技量の歌であるが、聴くことが出来るのは今は極めて少数の屑共だけ。
 果たして、この行動に何の意味があるのだろうか。折角の歌唱力を、何故ろくでもない聴衆しかいない環境で披露する必要があるのか。
 何も理解することが叶わず、されど自然と男は歌声に耳を傾け続けていた。

 女の歌は、クライマックスを迎える。
 溢れ出すのは、心地よい温もり。息を呑む男の肌を、両手の代わりに女の声が優しく包み込む。
 ここで男は遂に辿り着く。文化的な嗜みになど随分触れていない浅ましい彼にすら、女の歌の意味が伝えられたのだ。
 まるで、神に恋焦がれるかの如き陶酔感。
 そんなものすら抱かせる女の歌は、他でもない男への手向けだった。
 直接的な言葉の連なりに頼らず、ただのメロディで女はその感情と意思を伝える。
 女は今、男を全力で看取っているのだ。
 ああ、まるで妖精のようだ。陳腐な表現だが、女の姿を心からそう思った。

 こうして、男の遺恨はまた一つ増えることとなった。
 その矛先は、今もまだ歌い続ける女へと向けられていた。
 当然だ。死を嘆くだけで済んでいた男に、この女は最早抱く必要の無いはずだった感情を取らせたのだから。
 まだ生きていたいと、せめてこの歌をもっと聴いていたいと。そんな前向きな想いを、今更に抱かせたのだから。
 糞が、と小さく吐き出すのが限界だった。
 力尽きる間際、男が浮かべたのはやはり笑顔だった。

 女の歌は、男の死の運命を覆してなどいない。特に劇的な奇跡を引き起こしたわけでも無い。
 それでも、きっと、男は少しだけでも満たされていた。



◆ ◇


413 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:45:07 vktJUQJs0



 それは、彼の追い続けた命題だった。

「『心』は、何処にあると思う?」

 ゴッサムに建つとあるホテルの一室。
 傍らで椅子に腰かける女に問いかけたのは、窓から覗く宵闇とは対極的なまでに、衣服も、その肌さえも白一色の男。
 彼は人間では無く、『ランサー』の仮の名を携えてゴッサムに現れたサーヴァントであった。

「身の内に秘めているのか? 胸を引き裂けばその中に視えるのか? 頭蓋を砕けばその中に視えるのか?」

 つらつらと述べるのは、かつて彼が彼なりに求めた解答。
 決して適当な内容でないことは、彼とて疾うに承知している。
 世界から消える間際、彼一人では思い至れなかったそれらしいモノには触れられたから。
 しかし、その機会は生涯で一度だけ。朧げでない確かな実感とするには、あまりに回数が乏しすぎた。
 故にランサーは問う。何処を探せば、何をすれば見つかるのかと。

「答えろ、マスター」

 かつて自らの虚ろを満たしたモノを、もう一度求めたい。
 その欲望のままに一心に言葉を紡ぐ男は、その真の名を『ウルキオラ・シファー』といった。

「どこでもいいじゃない」

 ランサーの問いを、女はあっさりとした受け流した。
 そのまま表情一つ変えず、女は続ける。
 物事を考えるのは脳、興奮に高鳴るのは胸、しかしこれは人間に限った話。人とは異なる脳や心臓を持つ生物とて、人と同じく情動を得ることはある。
 故に、心の在処に答えを求めるのは困難なのだ。一概に定義するなど、土台無理な話だ。

「それで、マスターは『心』に目を向ける意味は無いと?」
「違うわよ。どこにあるかってのが重要じゃないの。ちゃんと『心』を持っている。それが分かれば、私には十分よ」

 満足な解答を示さなかった女は、しかしランサーを失望させるだけには留まらない。
 そして示されるのは、なんとも単純な解答の続き。

「互いに心があると分かれば、気持ちを通わせられるし、伝え合える。それに……歌を聴かせられる。結果が出せるなら場所なんて重要じゃないわ。ね、十分でしょ?」

 女は、歌手だ。
 ゴッサムに導かれたランサーは、現界した時から今日に至るまで数日間、彼女の取る行動を観察していた。
 それはひたすらに、「歌」で満ち足りていた。
 用意された舞台の上で満を持して発した歌声が観衆を熱狂と心酔の高みへと導き、かと思えば何の変哲も無い街角で唐突に開かれた即席の歌唱会でもまた聴き手となった者達相手の注目の的となる。
 老若男女はおろか貴賎さえも問わず、その声で皆に充足を与える。
 聖杯戦争のために与えられた歌手という立場は所詮仮初に過ぎず、にも関わらず女は歌手であることを存分に満喫していた。
 まるで歌こそ女の存在意義であると、世界中に訴えかけるかのように。

 突然、女はくすりと笑みを零した。
 怪訝さに瞼を僅かに歪めたランサーに構わず、女は次の言葉を紡いだ。

「ごめん、やっぱり訂正するわ。今分かった気がするから。『心』はどこにあるか、じゃない。後から『心』が生まれるのよ」

 語り始めたそれは、逆転の発想であった。
 『心』とは、行動によって初めて姿を見出せるもの。
 人が誰かを想う時。互いの想いを通わせようとする時。その意思を実際に行動に移す時。
 つまり、と言った女の顔が、ふふんと得意気な笑顔を象った。


414 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:46:26 vktJUQJs0

「人が……この私、シェリル・ノームが歌を歌う時、そこに『心』は生まれるのよ」

 かつて、ランサーが至った解答にも近しい言葉。
 今これを語るのは、既にランサーのマスターたる資格を手にした女――銀河の妖精、シェリル・ノーム。

「それがマスターが俺を戦わせる動機か、だが」

 サーヴァントとして現界したランサーだが、彼は聖杯に託すべき願いなど持ち合わせていなかった。恐らく、聖杯を得たところで充足感など得られないとの予感がしていたから。
 消極的な考えを告げたランサーに、マスターの立場となったシェリルは一つの方針を示した。
 だったら、私の「歌」を守りなさい。
 私を、ではなく。私の「歌」を、だ。その言葉が指し示す意味は、シェリルが歌声を発するための喉笛であり、シェリルの歌に魅せられた聴衆の生命であり、シェリルと彼等が歌を通じて心を繋ぐ時空でもあるという。
 シェリルにとっては、歌こそが自らを戦いにさえ駆り出させる理由。
 例えばシェリルの歌声を発するための喉を潰そうとする者。シェリルと同じく歌を愛せる感性の持ち主の生命を脅かす者。シェリルの歌を胸に刻んだ、あるいは刻むはずの人々を、その鼓膜と耳朶ごと無為に焼き払おうとする者。
 そういった類の連中と出くわした時こそ、ランサーが槍として力を振るうべき時であるのだという。
 成程と、シェリルの方針は理解出来た。その根本となる歌における彼女の技量の高さも、華やかな文化に遠いランサーにとて何度も耳にするうちに実感が可能だった。
 シェリルの歌にある種の求心力が認められることを、ランサーは理解していた。

「例えお前の歌が上等なものだったとしても」
「上等に決まってるじゃない。私はプロフェッショナルよ」
「……だとしても、争いは歌では解決しない」

 同時に、シェリルの何処まで突き詰めたところでただの歌の範疇でしかないことも、聖杯戦争という勝負の場において無力であることも。
 魔力の類を感知する能力があるランサーだから、彼女の歌は魔術に関わる要素など何も宿していないと分かる。
 多くの人々を魅了する、しかしただそれだけの結果しか生まない歌。
 聖杯の奇跡の欠片で組み立てられた魔法の結晶が並び立つ聖杯戦争、その中で彼女が武器とする歌は誰よりも磨き上げられた、あるいは誰もが到達し得る範疇の代物でしかない。
 そもそも、歌を人々に聞かせることが何のための手段なのかがランサーには掴めていない。
 未来のビジョンを見出しようが無かった。

「マスターもサーヴァントも、相応の願いを持ってこの戦いに挑むだろう。それをお前の言葉で説き伏せ、捻じ伏せようというのは、無理があるとしか思えない。塵のように打倒されるのが関の山だ」
「いや、捻じ伏せないわよ。歌ってそういう道具じゃないの」

 ランサーの小さな糾弾を否定したシェリルは、改めて定義する。
 歌とは、他者とのコミュニケーション手段の一つである。
 あくまでこちらの感情を真っ直ぐに伝達するための方法であり、受け取った相手が如何なる決断を下すかは結局のところ相手次第なのだ。
 それが歌の限界であり、しかし歌の自然な姿であるという。
 もしも「相手に自分の意思を伝えるだけでなく、絶対にこちらに都合の良い思考へと相手を誘導することが可能である」と、声にして外界に発する前から確定しきっている歌がこの世の中に存在するとしたら。それは確かに、コミュニケーション手段としては上級だろう。
 上級過ぎて、最早コミュニケーションという枠を逸脱している。


415 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:47:16 vktJUQJs0

「でもそんなのは、感動じゃなくてただの隷属ね」

 シェリルにとっての歌は、あくまで感性を刺激するのみ。結局は娯楽の延長線上だ。
 シェリルの歌が聴衆を喜ばせるのは、磨き上げた技術が人々の感性に感動と言う感情を抱かせることに成功した結果。戦場に満ちる兵士と獣の群れが歌によって戦闘行為を止めたとしたら、それは歌によって与えられた快楽が何にも、戦争に向ける感情にさえ勝ったがための結末。
 敢えて述べれば、歌は戦争の別種に位置するが、対極ではない。歌が生むのは何より幸福であって、戦争の対極たる平和はあくまで幸福から派生する産物である。
 そしてこの魔法にも等しい効果を生み出す歌は、しかし決して魔法ではない。只の人間ならば、誰であっても習得できる行動パターンの一つ。シェリルの場合はただ特段に秀でているというだけ。
 歌の齎す結果に、奇跡など何処にも無い。いずれも歌い人の、シェリルの努力と実力の賜物だ。
 理解を得られなかったとしたら、その者の腕が及ばなかっただけ。だからといって歌を放り出すのは、即ちシェリル自身が自らの積み重ねた時間を否定することになってしまう。

「私は魔法使いでも兵士でもないし、英霊でも、ましてや神様でもないわ。その代わり、私にとって歌が一番の武器。だから私は歌うの。私の歌で街を、銀河を震わせたいのよ」
「……それが何に代えても、お前の成し遂げたい事か。勝利を得るより、自らの未来を繋ぐよりも」

 シェリル・ノームは、歌手だ。
 寝て、起きて、食べる以外にはひたすらに歌い、徹底して気丈に振る舞う。
 そして、人目の無いタイミングではたまに……歌以外の「それ」に苦しむ。
 ランサーはかつて、現世と常世の何者よりもそれに近しい存在だった。もしくは、この数日で彼女の生活習慣を眺め、歌を誰よりも長く聴いていた。
 だからだろう。ランサーには、彼女が背負うそれが朧げながらに感じられていた。
 はち切れんばかりの生命力に満ちた歌声の中に秘められた、消え去りそうな儚さ。

「そうね。私に出来るのは、ただ歌をのこすのみ。歌こそが、私にとっての戦争よ」

 しかし、ランサーは気付いていながら口出しはしない。当のシェリル自身が間違いなく自覚しており、そのことを受け止めて尚自らの意思で選んだ道だから、ランサーは見届けることしか出来ないし、他の選択肢に目を向ける気も無い。
 何故シェリルがそれさえも受け入れて歌を紡ごうとするのか、確かめたいと思うがために。
 一度も明確な言葉にしていないが、既に互いの了解が存在していた。

「せっかくだし、今夜は寝る前に貴方に歌をのこしてあげるわ。私の歌の価値を、その生意気な頭にたぁっぷりレクチャーしてあげる」
「……今まで何度も聴いているんだがな」
「あら、貴方一人に向けて歌うのはこれが初めてよ? 感謝しなさい。こんなサービス、めったにしないんだから」

 奇妙な話だ、とランサーは思考する。
 遠い過去に出会ったあの少女と少年は、自らの身の危険にさえ優先させて他者のために行動した。その様を見つめ続けたからこそ、最期はウルキオラ・シファーにさえ穏やかな「なにか」を抱かせた、ような気がした。
 そして今、シェリル・ノームという女は他の何物も隅に追いやって「歌」に全ての力を注いでいる。聖杯戦争という現実を受け止め、それでも彼女は「歌」を選択している。
 ある程度は人間の感性に理解の及んだつもりであったランサーだが、こうして目の当たりにするとやはり不可思議さを感じられずにはいられなかった。

 十分な理屈による理由の説明は未だ叶っておらず、それにも関わらず初めて耳にした時から今の瞬間まで、シェリルの「歌」にこうして耳を傾けようとしているランサー自身にも。



◆ ◇ ◆


416 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:48:15 vktJUQJs0



「旅のはじまりはもう思い出せない、気づいたらここにいた」

 あの日、生命の炎を燃やし尽くしたはずのシェリル・ノームが何故こうして自らの脚で立ち上がり、一節を口遊めているのか。
 誰が、何の目的で、どのような手段によってシェリル・ノームを背徳の街ゴッサムシティに放り込んだのか。
 何もかもが、シェリル自身にはまるで見当もつかない。
 ただ確たる事実として、シェリルは今、生きていた。

「たぶん失うのだ、命がけの想い」

 許された再びの生。その刻限の到来が決して遠くないことは、どうしようもないくらいに実感出来てしまっていた。
 時折の気分の悪さ。
 均衡感覚を揺るがす眩暈。
 何の前触れもなく襲い来る嫌な圧迫感。
 薬では誤魔化せない、踏み出す時の微かな、あるいは強い気怠さ。
 日に何度か咳き込む度、掌を衣服を視界をぐちゃぐちゃに塗りたくる赤。
 本当は、今この時でさえ苦しい。
 自らの身体の訴えかける異常性の何もかもがシェリルの身体に今も巣食い続ける病の存在感を、その猛威に最早抗えないシェリルの生命の限界を示していた。

 シェリル・ノームが斃れる未来は既に確定し、未来への希望は紡げない。
 たとえ聖杯戦争での敵対者に殺されずとも、戦争の決着を見届けること無くシェリルは病魔に殺される。
 そして墓標となるのはシェリルを育んだ地ではなく、何の縁も無いゴッサムシティ。
 訪れる寂しげな終末。それは一ヶ月後、一週間後、あるいは三日後、それとも明日?
 この短い命でシェリルに出来るのは、何。聖杯を掴み取ろうにも身体が保たない。悲劇のヒロインなど演じるだけ無駄。希望の無い奇跡を待って、どうなるの。

「だけど困ったナ、応えがない」

 ……なんて悩む必要など、別に無かった。
 シェリル・ノームは、彼を想い彼に想われた女は、今更その姿を変える必要など無い。
 ゴッサムシティは戦争の地。悪徳と被虐に覆われ、しかしその根底には願う人々の真っ直ぐな心が息吹く舞台。
 過去をやり直したいと望む者がいる。未来を繋ぎたいと求める者がいる。
 ならばシェリルも、彼等と同じく願えばよい。
 我儘に、利己的に抱く、自分本位な願い。

 歌いたい。
 今この時間を最期まで、歌声を紡ぐために使いたい。
 身体の生命維持機能が完全に停止する瞬間まで、一人の歌手で在りたい。

 激しいライトと喝采、張り詰めたかと思えば轟と暴れ出す空気、観衆との一体感。
 高揚感、恍惚感という名に覆われた、シェリルを冒す病より遥かに凶悪な中毒は疾うに全身に回り切っている。
 歌で人々を虜にするシェリルは、既に歌という魔物の虜となって久しい。
 歌とはまさに劇薬にも等しいのだ。
 ただの声帯の震えにより生み出される音が、ひたすらに甘美だった。
 たったそれだけの行為が、シェリルの想いをあまりにも純粋に伝えてくれるから。シェリルと他者を、あまりにも簡単に繋いでくれるから。

 歌の快感を誰かと共有する時、シェリルは孤独でなくなる。


417 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:48:54 vktJUQJs0

「君がいないなら、意味なんてなくなるから」

 結局、孤独が怖いからシェリルは歌っているのだ。
 シェリルが本当に恐れているのは、死それ自体ではない。歌を止めてしまうこと、再び孤独に堕ちていくことだ。
 望むのは、シェリルの積み重ねた過去を、今の限りに聖杯戦争を通して関わる者達に聴かせ、未来へとのこすこと。
 笑って泣いて、嘆いて足掻いて、戦うように恋をした。
 銀河の妖精。フェアリーナイン。戦いの女神。イツワリノウタヒメ。
 可憐で、妖しく、安っぽく、でも全部がシェリルの持つ側面。
 自らの積み重ね全てを変換した歌に耳を傾け、ただ、これから先も覚えていてほしい。皆と同じ時間を歩む、そんな当たり前の事すら不可能となったシェリルが編み出した、残された短い時間の活用法だから。
 貴方達の駆け抜けた時間の一端に、幸福を願い求めて実現したシェリル・ノームという女がいた事実を知っていてほしかった。
 シェリル亡き後も消えることの無い歌で、誰かに託したかった。

「もがくように夢見た、やみくもに手を伸ばした」

 そう、歌。シェリルの歌は、ただの歌。
 魔法のようで、でも決して魔法ではない。兵士でも魔術師でもないシェリルにだって出来る、ただの意思伝達手段の一つ。
 故に、凄惨な戦争を阻止する決定的な手段とはなり得ない。
 二つの船団。人類とバジュラ。聖杯戦争とは別種の、しかし間違いなく二者間の繰り広げた、表立ってあるいは水面下での争いというものを見てきてから、戦いとは容易に止められないのだと知っている。
 撃つことは奪うことで、でも同時に守ること、貫くこと。懸けられるのは、本人なりの譲れぬなにか。
 戦争とは残酷で、無常で、けれど当人達には決して下らなくなどない。グレイス・オコナーの、ブレラ・スターンの、早乙女アルトの戦いがそうであったように。
 戦争による喪失は無条件に肯定される物ではなく、しかし闇雲な否定が許される物でもないのだろう。

「その胸に聴きたかった、君と虹架けたかった」

 万人にとってのパーフェクトなハッピーエンドなど有り得ない。だから、シェリルも皆と同じく独善的になる。
 理屈よりも言葉足らずで、しかし感情を正直に伝えられる手段の行使だけに持てる全てを使う。
 生者に喝采を。
 死者に哀悼を。
 勝者に祝福を。
 敗者に快癒を。
 時と場所によってその色を万華の如く変化させる歌は、しかし一貫して目の前の者達を想うがためだ。
 歌が持つのは、戦争やら聖杯やらにわざわざ頼らなくても誰もが幸せを掴む権利を持つのである、そんな単純なメッセージ。
 理解と受容が得られるという確信は無くても、ただ皆に知って、あるいは思い出してもらいたいだけ。
 それは世界を変えるだけの力を持たず、約束された未来も無く、でも声だけは未だ残されているシェリルに出来る唯一のこと。

「誰か夜明けの感傷で、ぎゅっと抱いてくれないか」

 ランサー。マスター。サーヴァント。そして、NPCなんて枠に押し込められ、思考を抑制され、己が願いを持つ自由すら奪われた哀れな住人達。
 彼等と至福を共有するためなら、シェリルは祈りを歌に込められる。彼等の幸福を一緒に祈ってくれる、シェリルに代わって皆を守ってくれる誰かと出会えたら、その人のためにこそ戦える。
 その時シェリルは、与えられた槍を全力で振るう。
 衰弱した身体、魔力喰らい、死への漸近。そんなの、知ったことか。
 シェリルの想いを共有する仲間、皆の未来を繋いでくれる同胞の明日は、この身を投げ打っても絶対に守る。

 人は狂気とか現実逃避とか、あるいは無責任とか戦争への冒涜だとか詰るのかもしれない。
 でも、これこそが正真正銘シェリルの正気で、本気だった。
 哀しいくらいに歌うしか能の無い、それ故に歌を愛したシェリルなりの、聖杯戦争への向き合い方。
 シェリルにとっての戦争の最終目標は、得ることではなく託すこと。


418 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:49:44 vktJUQJs0

「そして始まるのだ、命がけの終わり」

 託した願いを、誰かが受け取ってほしい。
 シェリルの想いを、世界に、銀河中に伝えて繋いでほしい。
 人々に、サーヴァントに、マスターに、こんな自分に付き添ってくれるランサーに、シェリルがのこす歌を刻み付けてほしい。
 私は最期まで貴方の愛した、貴方を愛した私でした。歌に乗せたこのメッセージをいつの日か、笑顔と共に銀河の彼方に消えた彼へと届けてほしい。

「宿命にはりつけられた、北極星が燃えてる」

 だから、今こそシェリルは命の限りに歌う。
 今宵はランサーのために。明日からは、窓の外に広がるゴッサムのために。
 もがき苦しみながら、血反吐を吐きながら、それでも虚勢を張って、一心に自らの存在意義へと身を捧ぐ。
 たとえ其処が何処であろうと、「心」を持つ者が一人でも待っているから、此処は既にシェリルの舞台。
 ランカ・リーが未来溢れる希望(フロンティア)の歌姫として生きていくなら、シェリル・ノームは怒哀渦巻く絶望(ゴッサム)の中で歌い果てよう。

 全ては、銀河さえも救える歌姫――なんて囃し立てられてた、ただの一人の寂しがり屋が抱く精一杯の願いのために。

 聖杯が齎す奇跡など、掌中に収められなくたって構わない。
 奇跡に縋る暇があるなら、一秒でも長く歌に浸りたい。

 独りじゃないなら、もう奇跡なんて要らない。

「君を尽きるまで愛して、死にたいよ」

 さあ、聖杯戦争を始めよう。
 魔法にも負けない歌声で、この銀河を震わせるために。
 祈命(いのち)の放つ輝きに添えて、心を此処に置いていくために。



◆ ◇ ◆ ◇


419 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:50:20 vktJUQJs0





 本気のココロを見せつけるまで、私は眠らない。





----


420 : シェリル・ノーム&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:51:15 vktJUQJs0

【クラス】
ランサー

【真名】
ウルキオラ・シファー@BLEACH

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
・対魔力:C
魔術に対する守り。魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
・十刃:A
虚(ホロウ)が仮面を剥ぎ、死神の力を手にした種族、破面(アランカル)。その中でも指折りの戦闘力を持つ者に与えられる称号。
虚の技能である「虚閃(セロ)」という光線、死神の斬魄刀と能力解放を模した「帰刃(レスレクシオン)」、
他に破面の技能である高速移動「響転(ソニード)」や感知能力「探査回路(ペスキス)」、身体特徴である外皮「鋼皮(イエロ)」、
虚閃の派生型として高速光弾「虚弾(バラ)」や強化型虚閃「黒虚閃(セロ・オスキュラス)」など多彩な能力を保持する。
特にランサーは十刃が本来失っているはずの「超速再生」の能力を有しており、致命傷でない限りは脳と臓器を除いてどの部位も極めて短時間で回復可能。
この派生として、自身の眼球を取り出し砕くことでその眼で見た映像を周囲の者に見せる「共眼界(ソリタ・ヴィスタ)」という能力も持つ。
当然であるが、能力の行使には相応の魔力消費が伴う。
その他、神性を持つ相手に追加ダメージ判定を行う。相手の神性が高ければ高いほど成功の可能性は上がる。
また魂を喰らう種族であるため、魂喰いによる恩恵が通常のサーヴァントより大きい。

補足であるが、このスキルのランクはあくまで「十刃としての格の高さ」を示しており、各能力が全て一級品であるという意味ではない。
ランサーより下位の十刃であっても「響転」や「鋼皮」など特定の能力においてランサーを上回る者は確かに存在する。
同様に、ランサーより上位の十刃であっても「超速再生」の一点に限ればランサーの右に出る者はいない。

・単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
Cランクならばマスターを失っても一日程度は現界可能。
従属官を一人も持たずに活動していた過去に因んで付与されたスキル。

・掌中の心:A
魔術でも科学技術でも、スキルでも宝具であっても、「特殊な能力」として発揮された精神干渉の効果を無効とする。
ウルキオラ・シファーという破面の虚無を満たしたのは、少女と少年が示したひたすらに純粋に、ただの「心」でしかなかった。
故に、ランサーの精神を揺るがすための術は魔法や呪いの類ではない。それらの類である必要が無い。


421 : シェリル・ノーム&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:51:49 vktJUQJs0

【宝具】
・『黒翼大魔(ムルシエラゴ)』
ランク:BまたはB+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:1人
 発動後パラメーター・第一⇒筋力C 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具A
 発動後パラメーター・第二⇒筋力B 耐久B 敏捷A+ 魔力B 幸運D 宝具A
破面の刀剣解放を宝具と見なしたもの。斬魄刀に封じた虚本来の姿と能力を解き放つ。解号は「鎖(とざ)せ」。
翼や兜の発生など外見が変化する他、敏捷がランクAへと上昇する。
解放後は斬魄刀に代わって魔力によって形成した光の槍・フルゴールを装備し、また黒虚閃が使用可能となる。
本来ならば破面の刀剣解放は一段階のみだが、唯一ランサーは第二段階である「刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)」を発動可能。
そのためこの宝具は二段階の強化能力として機能しており、第二階層の発動となると筋力・耐久・敏捷の三つのランクが上昇する。
なお、各段階に見合った魔力消費量の増大も伴う。

・『雷霆の槍(ランサ・デル・レランパーゴ)』
ランク:A 種別:対死神宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
「刀剣解放第二階層」発動後に限り使用可能な宝具。
最大限の魔力を込めたフルゴールを投擲する必殺技。抜群の破壊力を誇るが、力加減や照準調整はほぼ不可能。
また最大火力の技だけあって、一発撃つだけでも膨大な量の魔力消費が必要とされる。
魔力面の十分なサポートが無ければ、この宝具の使用が原因となって自身のマスターを死亡させる可能性すら有り得る。

【weapon】
・斬魄刀
通常時に装備している刀。武器であると同時に、宝具解放のキーアイテムとしての側面も持つ。

・フルゴール
魔力で形成した光の槍。宝具解放により斬魄刀に代わって装備する。

【人物背景】
かつて人の「心」に触れた破面。

【サーヴァントとしての願い】
もう一度「心」を感じたい。
今はマスターの歌う声を聞き、マスターの生きて死ぬ姿を見届けることに少なからず興味を抱いている。
言い換えれば、ランサーは聖杯の齎す恩恵自体には興味が無い。


422 : シェリル・ノーム&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/09(土) 23:52:31 vktJUQJs0



【マスター】
シェリル・ノーム@劇場版マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜

【マスターとしての願い】
命尽きるまで歌う。

【weapon】
武力は何も持っていない。

【能力・技能】
・歌
シェリル・ノームの特技であり、武器であり、存在意義。

・V型感染症
シェリル・ノームの生命を蝕む病。声帯に定着したフォールド細菌(地球外生命体バジュラが持つ腸内細菌)が、いずれ感染者を死に至らせる。
完治のためには声帯を切除するか、元々免疫を持つランカ・リーの内臓を全移植する(=ランカを殺す)以外に方法が無く、シェリルはその両方を拒否した。
この病は未だシェリルの身体で健在であるため、シェリルはいつ死んだとしても不自然ではない状態にあると言える。
症状が進行した人間は、バジュラが同族との交信に使うフォールド波を自らの声に乗せて発することが可能となる。
しかしバジュラの存在しない状況下ではこの特殊な能力も無意味であり、今度こそシェリルの歌はひたすらに純粋に、ただの「歌」でしかなくなった。

【人物背景】
かつて「歌」で銀河を救った女。

【方針】
ゴッサムシティを、銀河を「歌」で震わせる。聖杯にも代替の出来ない「歌」に想いを乗せる。
この先ランサーに戦いを求めることもあるだろうが、それはあくまで「歌」を守るため。
もうすぐ死ぬという実感がある。それでも貫き通す。私が死んでも「歌」は死なない。


423 : 名無しさん :2015/05/09(土) 23:53:06 vktJUQJs0
投下を終了します。
本作を制作するにあたって『第二次二次キャラ聖杯戦争』より◆seQBwpiAy2氏の作品「ネルガル&ランサー」、
及び『少女性、少女製、少女聖杯戦争』より◆yy7mpGr1KA氏の作品「時槻雪乃&アーチャー」を参考とさせて頂いたことを付記します。


424 : ◆ninjMGPkX6 :2015/05/10(日) 13:43:31 ns1LhfDc0
投下します。


425 : キカ・ヤナエ&キャスター ◆ninjMGPkX6 :2015/05/10(日) 13:44:36 ns1LhfDc0

 ゴッサム・シティの闇。
 かつてはヴィランとヒーローが幅を利かせていた、恐ろしくも華々しい闇。
 だが今、そこにはヴィランもヒーローもいない。
 偽りのゴッサムの闇は聖杯戦争が始まらぬ限り、未熟で幼稚な闇に過ぎない。

「おぅ、今回はこいつでファック&サヨナラか?」
「ハハハ、もう死んでるみたいな顔だなァ」
「……………………」

 闇の片隅で少女を囲むのは、そんな幼稚さに相応しい程度のチンピラどもだ。
 ありふれた格好、ありふれたマッポー、ありふれた欲望。
 ただ男どもに囲まれている少女の碧眼だけが、この場において際立った存在だった。
 淀んだその瞳には恐怖も、悲哀も、興味すら映っていない。ガラスめいてさえいる。

 彼女のいた学校には、このような存在はいなかった。
 確かにネオサイタマの治安はマッポー的な状況である。
 しかし彼女のいた全寮制のスナリヤマ女学院は厳しい規律の元で――奇っ怪な秘密が隠され、
 その秘密から芽吹いたグループ意識が、表面上は平穏なままで幅を利かせていた。

「バカみたい」
「エッ?」

 だから、少女は――キカ・ヤナエは、素直な感想を漏らした。

「あいつの方がもっとクズだった。
 あいつならもう殺してる」
「なっ」

 状況を理解できず、チンピラどもはただ愕然とするだけだった。
 大の男が数人、武器すら持って年端もいかぬ少女を取り囲んでいる。
 なのに……その少女は全く怯えていない。泣き叫びも、座り込みもしない。

「お前達なんかただのチンピラだ。
 怖くもなんともない。そんなお前達が――」

 言葉を述べる最後まで、少女は立ち続けている。揺らぐこと無く。

「私の。邪魔を、するな」

 少女が喋り終わると同時に、空気はしんと静まり返る。
 チンピラどもは数秒の時間を掛けてようやく怒りの表情を浮かべた。
 思い思いに、ただありふれた怒号を叫び始める。
 ヤナエの身に危険が迫っているのは明らかだが、彼女の表情には何の揺るぎもない。
 ただ、拳を握りしめただけだ。
 何かを呼び出すように――――

 しかし。
 ヤナエの元に現れたのは、彼女が想定したものとは違っていた。

『まったく。
 NPCと問題を起こすなと言っただろうが』

 その瞬間、少女の姿は消えた。


   ※   ※   ※


426 : 名無しさん :2015/05/10(日) 13:45:19 ns1LhfDc0

 数分後。
 チンピラどもが騒いでいたのとは別の喧騒の片隅に、ヤナエの姿がぽつりと現れた。
 少なくとも転移したわけではないことは、汗が滲んでいる様子から明らかだ。

 いきなり現れた少女の姿を、ゴッサムの喧騒が気に留めることはない。
 ただ同時に現れた少年だけが、苦い顔をしながらヤナエを見つめている。

「ゴメン、キャスター=サン」
「サン付けはいいとも言っただろう。
 いい加減、俺に世話係をやらせるな」
 
 青髪の少年――ヤナエよりも背は小さい――の返事は、その容姿に見合わぬ野太いものだ。
 サーヴァント・キャスター。
 先の件でヤナエの姿が消えたのは、彼がヤナエの姿を透明化させたからである。

「でも、私が持ってきたものが変わって、キャスターは来てくれた。
 サーヴァントとして」
「シャブティのことか? 確かに俺はサーヴァントだがな。
 俺に保護者を期待するのはナンセンスだ、無意味だ、不可能だ。
 身を守ってくれなんて言うほうがどうかしている」 

 矢継ぎ早に放たれるキャスターの言葉。
 それはまるで、自分が弱いサーヴァントと言わんばかりだ。
 ……いや。

「もう一度、はっきり言っておく。
 俺が戦って勝てるサーヴァントはまずいない。というかいたら驚きだ。
 絵本書きに負けるなんぞ、本当に英雄かそいつは?」

 自分は最弱だと、彼は断言する。
 あまりにも自己評価が低いサーヴァントだが、それも道理。
 彼の真名はハンス・クリスチャン・アンデルセン。
 三代童話作家として、知名度だけは抜群な英霊である――もっとも、童話作家を英雄と呼んでいいかは怪しいが。
 当然ながら戦闘経験はないし、実力もそれに見合った程度のものでしかない


427 : キカ・ヤナエ&キャスター ◆ninjMGPkX6 :2015/05/10(日) 13:46:09 ns1LhfDc0

「他のサーヴァントはどんな?」
「さてな。
 候補としてはそれこそ物語の数だけいるだろうさ。英雄も怪物もな。
 確実に言えるのは、俺とは比較にならんくらいに強いという事と……
 ほとんどはお前を殺しに来るという事くらいだな」

 肩を竦めながらアンデルセンが告げたのは、ほぼ死刑宣告に等しい。
 敵は世界で名を馳せる戦士や魔術師。
 味方は無力な絵本作家。
 戦争においてこれほど酷いハンデイキャップもあるまい。

 ヤナエが俯くのを見て、ただアンデルセンはため息をつく。
 馬鹿にしているとも取れる態度だが……これでも、真実を真摯に語っているだけだ。彼としては。

「帰りたいか? だがまあ手遅れだ。
 俺にできることはせいぜい隠れ潜むのが精一杯で、お前をここから連れ出すなんてしてやれん。
 ……怖いか?」
「わからない。だけど」

 依然として辛口な言葉を受けて、しかしヤナエは顔を上げた。

「サーヴァントがいる中をただじっとしているだけじゃ、安心できない」

 返事を残して少女は歩き出す。
 怯え惑うにしてはあまりにも無謀な行為。
 実際、こうしてあちこちを調べ回っていたせいでチンピラに絡まれてしまったのだ。
 熱に浮かされたようなヤナエの後ろで、アンデルセンは首を振りながら霊体化した。

(馬鹿め。それは期待している、というんだ)

 童話作家の指摘は口から漏れずことも、念話として伝わることもなかった。
 アンデルセンは既に己がマスターの観察を終えている。その本質を見定めている。
 彼女が自らより遥かに強いことなど――とうの昔に分かっている。

(こいつは人間ではない。
 戦う術を持ちながら、それでも自分から踏み出さそうとはしない。
 ただ、自分に道を示してくれる何者かの存在を待つだけ。
 連れて行ってくれるのならば、それが悪逆の化身だろうと罵倒しながらついていくだろう。
 ……まったく面倒な女だ。
 夢見がちなだけならまだいい。見ようとする夢、その見方、両方が面倒臭いにも程がある。
 恐らく吊り橋効果やストックホルム症候群の類が効果覿面だ)

 そんな辛辣な批評は、ただ彼の心中に止め。
 アンデルセンは、少女の――ニンジャの背を、ただ無言で追っていった。
 まるで、彼女の連れて行かれるかのように。

(人で無くなった挙句に幸福のあり方すら定まらない立ちん坊。
 善なり悪なり現実なり夢想なり、好きな行き先を決めればいい。
 見ていて筆が進む対価として、例え地獄の底に向かおうとも付き合ってやるさ)


428 : キカ・ヤナエ&キャスター ◆ninjMGPkX6 :2015/05/10(日) 13:46:40 ns1LhfDc0



【クラス】
キャスター

【真名】
ハンス・クリスチャン・アンデルセン@Fate/EXTRA CCC

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力EX 幸運E 宝具C

【属性】
中庸・中立

【クラス別スキル】
・高速詠唱:E
 魔術詠唱を早める技術。
 彼の場合、魔術ではなく原稿の進みに多少の恩恵があるようだ。

・アイテム作成:C
 魔術により様々な道具を作り上げる能力。
 魔術は修得していないものの、宝具を応用した詩文により多少の作成はできるようだ。

【保有スキル】
・無辜の怪物:D
 本人の意思や姿とは関係なく、風評によって真相をねじ曲げられたものの深度を指す。
 アンデルセンの場合は"読者の呪い"である。

・人間観察:A
 人間を観察し、理解する技術。
 ただ観察するだけでなく、名前も知らない人々の生活や好み、人生までを想定し、
 これを忘れない記憶力が重要とされる。
 厭世家で知られるアンデルセンだが、その根底にあるものは拒絶ではなく理解である。
 彼にできる事は物語を紡ぐだけだが、だからこそ、誰よりも語ることだけは真摯であろうと誓い続けた。

【宝具】
・貴方のための物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:一人

 アンデルセンが書いた自伝、「我が生涯の物語」の生原稿。
 この本を白紙に戻し一から執筆することで、"ひとりの人間"を"ひとりの主役"、すなわち究極の姿に育てることを可能とする。
 ただし成立まで時間がかかる上に、ようやく完成しても駄作に終わるかもしれない、というリスクまでついている。
 殺生院キアラ曰く、「うふふ。無理ゲーですわ、これ(はぁと)」。

【Weapon】
 筆と舌。
 キャスターとして自らの絵本を元にした魔術を使用可能だが、ほぼサポート特化のため彼自身が戦うことは不可能。

【人物背景】
 毒舌厭世ショタ作家。世界にその名の鳴り響く三代童話作家のひとり。
 他人に好かれる気がなく自分にも価値を見出せなくなっているため、人生を楽しむ、という考えが欠如している。
 アンデルセンは人生に何も求めていない。生前、望む物は何一つ手に入らなかったことが原因だろう。

「人生に価値があるとしてもだ。そんなものはたいてい、人間が夢想するものよりも下だろうよ」

 と、世の中すべてを嫌っているようにさえ見える。
 しかし根は面倒見がいいのか、頼られれば応えるし、作家らしく几帳面なのでアフターケアも万全。ようは男のツンデレである。
 そも、読者を楽しませよう、奉仕しようなんて考えがなければ物書きは務まらないのだから。
(Fate?EXTRA materialより抜粋・改変)

【サーヴァントとしての願い】
 マスターの行く末を見守り、そしてその内容で自らの筆を進ませる。
 例え、その行く末がどんなものであろうとも。

【方針】
 戦闘力が皆無で宝具も使えねぇ宝具なので、透明化のスキルなどを最大限活用して逃げ回るしかない。
 はっきり言って勝ち目はないが、しかし……


429 : キカ・ヤナエ&キャスター ◆ninjMGPkX6 :2015/05/10(日) 13:48:17 ns1LhfDc0



【マスター】
 キカ・ヤナエ@ニンジャスレイヤー

【マスターとしての願い】
 生きる。

【weapon】
 特に持っていない。
 しかし……

【能力・技能】
 常人並みの身体能力であり行動力も皆無。
 しかしいざ動くとなると、一般人とは思えない判断力と精神力で決断的な行動を開始する。
 また、もう一騎サーヴァントを運用しても全く行動に支障が出ないほどの魔力量を誇る。
 一見するとただの少女だが、勘が鋭い者なら普通の人間でない事に気付くだろう。

 仮に彼女が「キカ・ヤナエ」としての生活と決別し、自らの力を抑えずに生活する道を選ぶのであれば……
 その莫大な魔力はサーヴァントと渡り合えるほどの力を持つ、巨大な不可視の獣を呼び覚ます。
 なぜなら。
 キカ・ヤナエは――アズールはデスドレインやランペイジと共に行動していた、ニンジャである。

 ニンジャとしての能力は前述の獣の使役。
 成人男性の頭ほどの足跡を残すほどの大きさの上に不可視のため、
 感知系の能力か高い白兵戦技能が無ければ気付くことさえできない。
 キャスターのサポートと組み合わせた場合、下級サーヴァントが相手なら容易に撃破できるほどの力を発揮する。

【人物背景】
 ニンジャ・デスドレインによって家族を皆殺しにされ、そのまま彼に拉致される形で行動を共にすることになった少女。
 アズールだけが殺されなかった理由は、ニンジャソウル憑依者である事に気付かれたからだった。
 行く宛てもないアズールは半ばヤケになってデスドレインと行動を共にすることとなるが、
 最終的には戦いの中で彼と逸れ、ヤナエ夫妻に拾われて平穏な暮らしを送ることになる。

 夫妻への感謝からそのまま奥ゆかしい暮らしをしようと思っていたアズール――キカ・ヤナエ。
 しかし内心では、人ならざる何者かが自分を連れて行ってくれる事への期待が燻っており……
 それは『シャブティ』として彼女の元へと現れた。

【方針】
 とにかく生きる。自分を守ってくれる人を探す。
 だが、もし誰も自分を守ってくれないのであれば――――


430 : ◆ninjMGPkX6 :2015/05/10(日) 13:48:46 ns1LhfDc0
投下終了です。


431 : ◆yy7mpGr1KA :2015/05/10(日) 22:15:52 M2EeLBbo0
投下します


432 : なまえのないかいぶつ ◆yy7mpGr1KA :2015/05/10(日) 22:17:09 M2EeLBbo0
華やかなパーティー会場。
少し外に出れば荒んだ通りで物乞いが今日の糧を必死に求めているにもかかわらず、ここには豪勢な食事と華美な衣装の男女が揃っている。
ちょっとした格差社会の縮図。この街でしばしば問題視されるもの。
しかしそれを気に止めるものは殆どいない……少なくとも、今この会場で会話を弾ませる男女の仲には一人もいなかった。

「あら、いらしてたんですか」
「これはどうも、ミス・ブルー。先日の姉君については……」
「日ごろの行いですよ。スズメバチに刺されるなんて。そんなことより、パーティーを楽しみましょう?」

ブルーと呼ばれた女性と、一人の男もそんなこと話題の隅にも上げずに歓談する。
ワインを嗜み、食事も進めて、存分に楽しんでいた。
しばらくして、会場がにわかに騒がしくなったのを疑問に思い、女性がそれを口に出す。

「何か盛り上がっているようだけどゲストでも来たかしら?それとも何か出し物?」
「両方ですかね。日本からゲストとしてアイドルを呼んでるそうですよ。
 たしか、なんとか凜っていう」

ふうん、とグラスを傾けながら壇上を眺める。
ティーンエイジの少女が見事な歌と踊りを披露していた。
文化の壁も言葉も壁も超えて、人々を魅せる業は見事というほかない。
曲が終わると自然と皆拍手を送っていた。
拍手にこたえるように壇上を降り、何人かと握手をし始める。

「初めまして、ミス・ブルー。日本の――」
「ミス・凛ですね?見事でしたよ」
「存じ上げてくださったんですか!ありがとうございます」

右手を差し出す少女に応え、シェークハンズ。
いくつか当たり触りのない言葉を交わし、立ち去る少女を見送る。
その後もしばらくパーティーを楽しんでいたが


途端、立ちくらみ。
意識が遠のき、呼吸がままならなくなり、床に倒れる。

「どうされました、ミス・ブルー!?」
「これ……アレルギーか?」
「まさかワイン!?」
「急いで病院に連絡を!」

先ほどとは全く違う、慌てたような騒ぎ。
それを横目にアイドルの少女は一人、貸し与えられた部屋へと戻っていった。

「ふふっ、『赤』、『青』。なかなかいないものね」

そして心底愉しそうに部屋で一人呟く。



433 : なまえのないかいぶつ ◆yy7mpGr1KA :2015/05/10(日) 22:18:05 M2EeLBbo0



「相変わらずだな、お前たちは。フェムシンムの民といい勝負だ」

突如現れた民族衣装風の男が語りかける。
それに驚き、身構えて叫ぶ。

「バンザ・ゴラゲパ?」

少女の口から飛び出たのは、人のものとは思えない言葉。
反射的に出てしまったそれに、しまったというような顔をするが、その意味を理解したらしく男も言葉を返す。

「ゴセパ『ウォッチャー』
 『ルーラー』ゼロ・『ラ』ゼロパ・ギタザ・ンバンギギャガ」

男…『ウォッチャー』の口からも少女と同じ、人ならざる言葉が紡がれる。
その言葉に落ち着きを取り戻し、人の言葉を語る余裕取り戻す。

「あたしたちの言葉も知ってるんだ」
「ああ、知ってるさ。観客だからな、俺は。お前らのことはよーく知ってる。
 ……ところで俺はお前を何と呼べばいい?まさか山野愛美じゃないだろうし、ゲラグかな?
 それとも自ら名乗った芸名の伽部凛の方がいいか?」
「RIN伽部って呼んでくれると嬉しいかな。
 ところで何の用?観客ってことはあたしのファンかな?」

後ろ手で部屋の鍵をかける。
何処から入ってきたのかは知らないが、ただでは帰さない。
にこやかな笑みとは真逆の行動。

「観客として文句を言いに来たのさ。
 サイドストーリーばかり進めて、肝心の主題がおざなりになってるのはつまらない。
 ゲゲルを同時進行は御法度だろう?今は聖杯戦争の最中なんだ。
 あんまりお痛が過ぎると……そうだな、ザルボやゴオマみたいに殺されちまうかもしれんぞ?」
「それは、あなたに?」

剣呑な空気を発し出した男に対して少女――伽部凛も改めて構える。
そして可憐な少女の姿を捨て、醜悪なクラゲ型怪人の姿へと変身する。
そしてさらに、もう一人の演者が舞台に上がる。

「■■■■……」

新たに舞台に姿を現したのもまた、人の言語を扱わぬ狂戦士。
簡素な腰巻だけを身に付け、小さな角を生やした大男。
それを見て観客は何かを思い出したかのように饒舌に語り始める。

「そう、そいつのこともあって来たんだよ。お前そいつの名前知らないだろ?
 まあ俺も知らないし、そいつの名を知ってる奴は三人しかいないはずだ。
 そこでこの俺が名付け親(ゴッドファーザー)になってやろうと思う!」

目の前の出来事がまるでテレビの中の物語で、自分一切被害がないとでもいうように呑気に考え事にふける。
正しくウォッチャー、観客にすぎない振る舞い。

「ああ、安心しろ。アーマードライダーをはじめ、多くの英雄に名を与えてきた存在だ、俺は。
 そうだな、『メキシコに吹く熱風!』という意味の『サンタナ』というのは」

どうかな、と口にしようとした瞬間


434 : なまえのないかいぶつ ◆yy7mpGr1KA :2015/05/10(日) 22:18:30 M2EeLBbo0

「■■■■!!」

狂戦士が拳を振るい、襲い掛かる。
その目に宿るのは怒り。
かつて見下された、原始人と蔑む存在に敗れた怒り。
上位と認めた男たち以外の者全てに対する無条件の憎悪。
動物のように名づけられたその言葉を耳にして、その怒りが爆発する。
そうして放たれた拳は部屋の一角を吹き飛ばす。
しかし

「怒らせちまったか」

男は再び天井からぶら下がるように姿を現す。
事ここに至り、この男が空間転移に類する能力を持つのを察する凛。
思わぬ強敵であることを知り……高揚する。

「待て待て、用事は済んだ。
 真面目に聖杯戦争の演者(キャスト)をやるなら俺は何の文句もないんだ。
 期待してるぜ、怪物ども」

そう言い残して姿を消す。
凛も怪人態から人間の姿に戻り、崩落した壁とサンタナのみが闘争の空気を纏う。
そこへ新たな乱入者。

「なんの騒ぎ…何これ!?何があったのよ凛!?」
「あ、オガたん」

伽部凛のマネージャー、小形。
ザルボがかつて殺したはずの存在だが、この地には別の小形がいた。
彼女は部屋の惨状と、半裸の大男を目にして戦慄する。
パニックを起こしたように逃げないと、何よこれ、とブツブツ呟き凛の手を引こうとするが、力ないそれに抗うまでもなく凛はその場を動かない。
幾度も繰り返すその動作にガマンが利かなくなったか、冷たい目を小川に向け、そして命じる。

「食べていいよ、バーサーカー。欲しいんでしょ」
「凛?何言って――」

瞬間。
ゴキリ、という何かが折れる音が響く。
その後には、伽部凛と、体を大きく膨らませたサンタナ、そして僅かな血痕だけが残されていた。
少女の姿をした怪物は考える。
一度殺した相手をまた殺すなんて初めてだと。
同族と相談することはあっても、二人でゲゲルに挑むなんてことも初めてだと。

「リントを殺すのは楽しいよね、バーサーカー」

人食いのバケモノ、同朋にして同類の存在。
そう思って声をかけるが

「■■■■……」

帰ってきたのは殺意の篭った視線。
自分が今生きているのは、ただマスターだから。
凛を殺せば自分も消える、闘わないのはそれだけだ。
もしもこの世界で二人きりになったなら、こいつとの殺し合いが始まるだろう。

「あっは、サーヴァントかぁ。誇りを失くしたリントよりもただ殺すだけで楽しめそう」

ゲゲルはなにより楽しいからやるものだ。
あのウォッチャーを、バーサーカーを見て、サーヴァントというのには期待できそうだと胸を高鳴らせる。

「部屋は壊れて、マネージャーは行方不明。これなら仕事はしばらくお休みにして……聖杯戦争(ゲリ・ザギバスゲゲル)に打ち込めるかな。
 始めよう、バーサーカー。あなたがあたしの『ン』だよ。終わったら、存分に殺し合おうね」
「■■■■…!」

『ン』と呼ばれた瞬間、表情の怒りが強まる。理不尽な怒りを宿す狂戦士。
『ン』と呼んだ少女は、朗らかにほほ笑む。無慈悲で傲慢な女戦士。
人でなしの怪物たちが歩み出す。


435 : なまえのないかいぶつ ◆yy7mpGr1KA :2015/05/10(日) 22:19:13 M2EeLBbo0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
サンタナ(と仮に呼ぶ)@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】

筋力A 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具B-
(狂化による補正が最大限に働いた場合)

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:C+
魔力と幸運を除くステータスを1ランクアップさせている。
柱の男、真祖以外の存在と戦闘を行う場合さらに1ランクアップする。
代わりに言語能力と理性の大半を喪失している。

【保有スキル】
原初の一(偽):E
偽りのアルティメット・ワン、アルティメット・シイングに至る進化の過程。
生まれついての吸血種が宝具による肉体改造で変異したたった4人の柱の闇の一族、その一人。
英霊の座においてもその4人しか持ちえないスキルであり、Eランクでも破格のもの。
本来の原初の一のように星のバックアップは受けられないが、関節を無視した柔軟な動き、卓越した身体能力、肉体の再生、全身の細胞からの捕食、他の生物との一体化など様々な能力を持つ。
とある二つの宝具を用いればこのスキルは最高ランクとなるが彼はそのことを知らされていない。

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
一万年の長きを生き、積み上げた神秘は最高クラスの対魔力となり得るのだが、知『名』度の低さと、狂化によりランクダウンしている。

戦闘続行:B
柱の闇の一族以外の生物に対する蔑みに因る闘争心と特異かつ頑健な肉体。
大ダメージを負おうとも、粉々の肉片になろうとも戦闘が可能。
往生際が悪く、一敗地にまみれようとも生き延びようとする。

肉体保存:A
二千年周期での睡眠や紫外線下での硬質化などの自己保存能力。
マスターを失った場合、体を鉱物と生物の中間存在と化して考えるのをやめ、眠りにつく。
その状態ではAランクの単独行動スキルを獲得し、原初の一(偽)と対魔力以外の全てのスキル・宝具を封印して魔力消費を抑える。
近づいた生き物やNPCは食事とし、未契約のマスターが通りかかった場合無理矢理にパスをつないで再契約する。
柱の男の中で最も弱いが故に持つ、生き延びるための技能。

【宝具】
『偽・輝彩滑刀の流法〜露骨な肋骨〜(リブス・ブレード)』
ランク:B- 種別:対人宝具 レンジ:2 最大捕捉:2人
スキル:原初の一(偽)による卓越した肉体操作の極みの一つ。
肋骨を硬質化させて露出し、周囲に刃として振るう。
エッジなどはついておらず、防御はさほど難しくない。

炎が昇れば熱風が吹き、大気が歪めば陽炎が光を曲げる。
熱風の如く、光の如く、速く鋭い刃。
これは光の模倣。


『偽・怪焔王の流法〜鏡像の虚像〜(イノセンス・サンタナ)』
ランク:B- 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:自身
柱の闇の一族の中で彼は最も幼く無垢で、その分卓越した学習能力を誇る。

視認したスキル、ものによっては宝具を習得する。
変幻自在の肉体であるため体質の変更も容易であり、習得範囲は広範。
ただしバーサーカーとして現界したため、勇猛などの精神性、高速詠唱などの知性を必要とするものは獲得しても意味をなさない。
騎乗や心眼(偽)など本能的に扱える技術、魔眼や怪力などの体質、他特殊な宝具を習得できれば強力なサーヴァントとなるだろう。
なおこの宝具の発動自体に魔力消費はないが、スキルや宝具を獲得するごとにそれに応じて現界に消費する魔力は多くなっていく。

炎が昇れば熱風が吹き、大気が歪めば陽炎が光を曲げる。
熱風の如く無形であるが故、陽炎の如く真似し学ぶ。
これは炎の模倣。


436 : なまえのないかいぶつ ◆yy7mpGr1KA :2015/05/10(日) 22:19:52 M2EeLBbo0
『偽・風の流法〜知る人ぞ知る〜(ノーバディ・ノウズ)』
ランク:C- 種別:対軍宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:上限なし
サンタナとは人間の付けた呼び名であり、彼の一族での本名、つまりは本当の真名を知る人間はいない。
その生態も得体も知らず、故に人は彼を調べようとしたが、柱の闇の一族の脅威くらいしか情報は得られなかった。

宝具・スキルによる真名看破を無効にする。
また真名を知られていない者に対してスキル・ステータス・魔力を秘匿する。あくまで魔力を感知できないだけで気配遮断ではない。
さらに彼をサンタナ、など渾名で呼んだ場合、魔力の秘匿は解けるが狂化のランクが一時的に1ランク上昇する。
ただし彼の真名を知る者に対しては、その効果がないどころか『偽・怪焔王の流法〜鏡像の虚像〜(イノセンス・サンタナ)』による模倣ができない。


炎が昇れば熱風が吹き、大気が歪めば陽炎が光を曲げる。
熱風の如く、大気の如く、掴みどころなく、荒れ狂う。
これは風の模倣。


【weapon】
なし。

【人物背景】
はるか昔、地球に出現した太陽光に当たると消滅してしまう生き物の一族、その一人。
その一族の多くは穏やかに過ごしていたが、突如生まれた一人の天才がより強い力を求めたため争いが起き、その天才と協力者一人、何も知らぬ赤子二人を残して一族は滅んだ。
その赤子がサンタナであり、その四人が石仮面をかぶり、原初の一(偽)となった柱の闇の一族である。
柱の闇の一族は多くの動物を殺し喰らわなければ生きられないため当然戦争が起こり、宿敵として波紋使いの一族とは幾度も争った。
しかしサンタナは四人の中でも落ちこぼれたのか、石仮面と共に他の三人とは別のところで眠りについていた。
固有の流法を持たず、戦闘で劣るために波紋の一族との闘争が予期されるローマに連れていくのを避けたのだろうか。
番犬のようなもの、と柱の一族の長には言われていたので、石仮面を守るために残されたのかもしれない。
その名も、来歴も、信条も他の柱の闇の一族に比べて謎の多い存在。
SPW財団に紫外線を浴びせられていたが、その後波紋使いの手で処分された歴史からの召喚である。


【サーヴァントの願い】
ただ怒りをぶつけ、殺し尽くすのみ。


437 : なまえのないかいぶつ ◆yy7mpGr1KA :2015/05/10(日) 22:20:23 M2EeLBbo0
【マスター】
伽部凜(ゲラグ)@仮面ライダークウガ(小説)

【マスターとしての願い】
聖杯戦争(ゲゲル)を楽しむ。

【weapon】
・ゲドルード
グロンギの装着するベルトで、中央にクウガの霊石アマダムと同質の魔石ゲブロンが埋め込まれている。
所有者に怪人態への変身能力を与える。また電撃を吸収してパワーアップする特性がある。
クウガの必殺技で封印エネルギーを流し込まれると自爆装置が作動し、所有者と共に大爆発を起こすため、近似するエネルギーを流された場合大爆発する危険がある。
魔力炉としても機能しており、サーヴァント維持の大きな助けとなっている。
ただしバーサーカーを駆る消耗は激しく、バーサーカーの戦闘と自身の戦闘を同時に行うのはほぼ不可能。

【能力・技能】
前述のベルトによりクラゲ型怪人に変身する。
怪人態では手の先などから触手を伸ばす事ができ、その先に付いた毒針で対象者を刺してクラゲ毒を注入する。
このクラゲ毒は分子構造的に不安定な構造をした特殊なものであり、この毒が体内に入れば人間の持つ免疫グロブリンと結び付きいてアレルギー物質に変化し、アナフィラキシーショックで対象者を殺すことが可能。
またこの毒は水道水に含まれる硫酸アルミニウムと結び付くと、皮膚に付着しただけでアナフィラキシーショックを引き起こし死に至る猛毒セシドヒルビリンに変化するという恐ろしい特性を持っている。
そのほか、触手の先からプラズマを発生させる能力を有しており、劇中ではプラズマから発生される衝撃波で硬い天井を粉砕している。

なおグロンギ族は古代の戦闘民族で、ゲブロンも古代に宇宙より飛来した隕石を基にした現存する宝具であるため、積み重ねた歴史・神秘はなかなか。
怪人態なら一応サーヴァントへ干渉できる……が、勝てるかは別問題。
魔力の全てをバーサーカーに回した方が効率は良いが、彼女にとって闘争・殺戮は娯楽であるため、自身が前に出ることも多いだろう。

【人物背景】
未確認生命体四十八号。
超古代においてクウガ・プロトタイプにより封印されていたが、ン・ダグバ・ゼバの絶命後にラ・バルバ・デにより復活。
自分たちより先に活動していたメンバーがゲゲルに相次いで失敗し壊滅したことを教訓に、リント(=現代日本人)の社会にひっそりと潜伏し、彼らの社会構造を学習して完全に溶け込む。
人間の持つ心の闇を巧みに利用して着々とゲゲルの下準備に取り掛かっていた。
人間社会では「山野愛美」という少女に成り済まし、老若男女に絶大な人気を誇るアイドル歌手「伽部凛」として活動していた。
物語の始まる2年前には『1万人のメイド宣言』なるものを掲げ一躍有名になっているが、これもゲゲルの準備の一環であった。
誰にでも優しく語り掛け、笑顔を振りまく心優しい娘を演じているが、その裏では素性の知れない自分をお金になるからというだけで簡単に受け入れてくれた事務所の社長やマネージャーたちをあざ笑いながら利用し続けていた。

陰湿かつ残忍な性格の持ち主で、本当の山野愛美の母親を利用し、愛美を母に殺させて成り変わっていた。
決して自身の正体を掴ませない様に細心の注意を払っており、潜伏先やアイドル事務所の関係者を上手く利用し、周りの人間やファンたちを欺き続けていた。
彼女の正体に気き、ゲゲルのルールを見抜いた一条や夏目実加に自身の凶行について肉薄されても余裕の態度を崩さず、逆にワザと挑発めいた態度を見せる傲慢な面も。
ライブの直前には警察から自身を庇っていたマネージャーの小川を殺害、会場に潜入していた実加に景気づけとして正体を明かし、触手で絞殺しようとする。
しかし実加がクウガ・プロトタイプに変身した事に驚愕して拘束を解いてしまい、戦闘。
その戦闘で封印エネルギーを注がれ爆死したと思われたが、ファンから差し入れにあったシャブティにより参戦。

芸名の伽部凛(トギベリン)はリント・ギべのアナグラム。グロンギの言葉で「人間は死ね」という意味。
階級は不明であるが、多彩な能力及びゲゲルの規模からゴ集団に所属し、フルネームはゴ・ゲラグ・ギではないかと推測される。
また、メ集団に所属するメ・ゲグラ・ギとは何らかの関係があるものと思われる。

【方針】
主従共々人間を殺すことを目的とする。
聖杯には今のところ特に興味はない。


438 : 名無しさん :2015/05/10(日) 22:23:22 M2EeLBbo0
投下終了です。
また今作のステータス作成には当企画の◆WRYYYsmO4Y氏の作品、「少佐&バーサーカー」を一部参考にさせていただきました。
氏には多大な感謝を送りたいと思います。ありがとうございました。


439 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:05:27 z6Hx2x0U0
お疲れさまです。
投下します。


440 : レッドフード&アサシン ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:06:25 z6Hx2x0U0











Fear isn't the answer
恐怖は、答えではない


441 : レッドフード&アサシン ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:07:32 z6Hx2x0U0
高層ホテルの一角から一人の女がゴッサムシティを見下ろしていた。
豪奢な衣装に身を包み煙管を吸う。その瞳はどこまでも冷たいものだった。

「マスター、今戻った」

不意に彼女しかいない筈の空間に声が響いた。
まるで手品の様に、どこからともなくフードを纏った男が姿を現す。

「首尾はどうかしら、キャスター」
「上々だ。まあ英霊の精製した霊験あらたかな薬だ。今代の質の悪い量産品なんぞに後れを取る訳があるまいよ」

女性の問いにキャスターが不敵な笑みを浮かべる。
キャスターは薬物の精製を得手としていた。
極度の酩酊と幻覚の中、極上の快楽が味わえるという触れ込みの依存性の強い麻薬は一度吸引したが最後、キャスターの操り人形と化す。
実際にこの女はキャスターの麻薬によって、現在の拠点を得ている。
この麻薬によって街そのものを支配下に置くことが彼女の戦略であった。

「ただ、一つだけ気になる事がある。流通のルートが一つ潰された」
「……なんですって?」

ピクリ、と女は形のいい眉を歪ませた。
麻薬の流通まで自分達で行えばそこから他の主従に尻尾をつかまれる危険性があったことから、麻薬はこの街既存の流通ルートを複数使用していた。
その内の一つが潰されたという。
麻薬から自身達の存在が感づかれた可能性が脳裏をよぎる。

「どこのルートも警察に鼻薬は嗅がせていた筈でしょ」
「ああ、警察ではない。ルートを潰したのは赤い覆面を被った怪人らしい」
「赤い覆面? サーヴァントかしら」
「接触していない以上どうとも言えんな、銃などの近代兵器で身を固めていたとの情報もあるしサーヴァントかの真偽はつけられんよ」

キャスターから聞かされた情報に女性はますます眉を潜ませる。
単身であるならば、他の主従である可能性はより高くなったが、問題はその奇異な姿と武装である。

英霊は時代が古ければ古い程神秘が高く、その実力も高い反面、時代が現代に近づけば近づく程弱くなる、というのが聖杯戦争の定説である。
もし英霊であると仮定をすれば、銃を使う英霊は恐らくアサシンかアーチャー。
加えて、銃という近代兵器を扱う時点でその実力も低いものとの推察ができる。
総合するとあまり表だって動くには向かないサーヴァントであるといえる。

ならばマスターか?
魔術使いといった人間もいる以上、近代兵器を使用する事も納得が行く。
だが、そうなると奇異な見た目が引っ掛かる。
なぜ態々そのような目立つ格好をするのか。
顔を見られたくないにしても赤い覆面はとりわけ目立つ。
何か、見られたくない理由でもあったのか。

「何にしろ情報が少ない状況で正体のわからぬ存在に想いを馳せても時間の浪費であろうよ」

キャスターの発言に彼女の思考は打ち切られる。

「それもそうね。少なくとも、私と貴方が共同で作り上げたこの工房を抜けられる相手とも思えないし」

不敵な笑みを彼女は浮かべる。
このフロア一帯を彼女は侵入者を迎え撃つ魔術工房兼神殿として作り変えた。
ブードゥーを嗜むキャスターが使役する悪霊と彼女の使役する使い魔による防衛網や数々の趣向を凝らした罠の数々が張り巡らされている
仮に彼女達にたどり着く主従がいたとしてもこの神殿をくぐりぬけ、この部屋へ到着するまでに撤退する時間は十分に稼げるだろう。
流通ルートを潰した正体不明の存在についても、麻薬を吸わせた手駒達を利用し、人海戦術で押しつぶせば事足りる。

「それよりも、潰されたルートの代わりを探す方が先決ね。一つルートが使えないだけで効率が段違いになるわ」

イレギュラーを恐るるに足りないものと判断した彼女は、早々に覆面の男の存在を記憶の片隅へと追いやった。
もし、この女性が生粋のゴッサムの出であったならば、赤い覆面という特徴のを聞いた時点で一人のヴィジランテの姿を連想したであろう。
だが、本来のゴッサムを知らない彼女にとってその存在は知りえないのも当然であった。
そして、それが彼女にとっての不幸と言えただろう。
ゴッサムの悪党どもならば、それがどういう存在なのかを知っている。
赤い覆面。それはかつて、この街で犯罪を起こす不特定多数の人物のトレードマークであり、現在ではゴッサムの犯罪者達と敵対する者でありながら、バットマンと違い容赦もなく彼らを殺して回る危険人物であった。


442 : レッドフード&アサシン ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:08:29 z6Hx2x0U0
窓ガラスが割れる音。
暗闇に染まる部屋。
何が起こったのか。
キャスターと彼女が反応するよりも早くキャスターの胸に刃が生えた。
襲撃者に致命傷を受けたと認識したキャスターの対応は迅速だった。
襲撃者の刃が己が主に向けられるよりも早く手を彼女へと向けて呪文を詠唱した。

「キャス――」

瞬間、彼女の姿が掻き消える。転移の呪文だった。
それを見て襲撃者が舌打ちをした。

「随分と、ゴホッ、無粋な入場だが、察するにアサシンか。残念だが、ゲフッ、マスターはやらせんよ」
「ハッ、サーヴァントのテメェさえやっちまえば、どの道あの女もおしまいだ。負け惜しみか?」

割れた窓ガラスから夜風が吹き込み、若い男性の無慈悲な冷たい声が響く。
暗がりのせいで互いの姿は認識できない。
心臓に当たる部分を貫かれたキャスターに最早助かる術はない。
だが、キャスターは口から血を吐きながらニヤリ、と口元を歪めた。

「私を舐めるな暗殺者風情が」

キャスターの体から魔力が膨れ上がる。
異変を察したアサシンが飛び退る。
哄笑を上げるキャスターから霧状の魔力が立ち上がり形を形成していく。
どさりとキャスターの体が崩れ落ちても哄笑はやまない。
骸骨めいた姿になった魔力の塊が、変わらずに哄笑をあげていた。
ボウっと暗がり光る双眸がぎょろりと部屋を見渡す。
その視界に白髪の長身の男、アサシンの姿を捉えた。

「チッ、モノノケの類か」
「ハ、ハ、ハ。中々いい肉体だ。次の殻にするには申し分ない」

値踏みするようなキャスターの言葉にアサシンが不愉快そうに顔を歪める。
対象的キャスターは愉快そうに顔を歪めた。
この状態になったキャスターは物理的な干渉を受付ない。
そして別の肉体に乗り移り、精神を浸食して肉体の支配権を手に入れるのがキャスターの宝具だった。

「もう勝った気か?」
「三騎士ならともかく、暗殺しか能のないクラスなど誰が恐れるものか」
「……なら、試してみな」

見下した態度に気分を害したアサシンがキャスターを睨みつける。
ブレードに着いた血を払い、肘の部分に装着したアサシンが構えをとった。
瞬間、アサシンの姿が消える。
少なくとも、キャスターに視認する事はできなかった。

「一の太刀、縮地<αブレード>!」

何が起こったのか、キャスターには理解できなかった。
背後から響くアサシンの声と、物理的干渉を受け付けないはずの自身の体が両断された感覚。

「……あ?」

暗転する視界の中、アサシンのブレードがオーラのような光を放っているのをキャスターは目撃した。
魔力放出、それに類するスキルを持っていたのならば、自分を殺害しうる。
そこまで考えが至った時点で、キャスターの意識は途絶えた。

「ハッ、トロすぎんだよ」

着地と同時にアサシンは腕に装着していたブレードを収納、先ほど倒した相手に向かって毒づく。
ホテルを覆っていた禍々しい気配が消えるのを感じ、アサシンはキャスターとそのマスターがまとめて消えた事を認識する。
コキ、と首を鳴らしながらアサシンは自分が侵入したホテルの窓へと足を進めていく。

「あっちも終わったみたいだな」

アサシンは自分の主である赤い覆面の男が目的を遂げた事を察した。
タン、とアサシンが壊れた窓から飛び降りる。
その姿はすぐに、陰鬱なゴッサムの闇に溶け込んだ。


443 : レッドフード&アサシン ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:09:22 z6Hx2x0U0
時は少し遡る。
キャスターに転移させられた彼女が、目を開くとそこはどこかの一室だった。
そこはホテルの拠点が襲撃された場合に対比先として作っていた第二の拠点。

「急な襲撃には驚いたけど、もう少ししたらキャスターも帰ってくるでしょう」

ふう、と息を吐き、彼女は額に浮き出た冷や汗をぬぐう。
キャスターの宝具を知る彼女はキャスターの勝利を疑わない。
必ず、襲撃者の肉体を乗っ取り、この拠点に帰還してくれると信じている。
そこで、ふと気付く。
この拠点には備えの一つとして麻薬で洗脳したゴロツキ達を護衛として配備していた。
だが、拠点に人の気配が感じられない。
悪寒が体を駆け巡る。

「ねえ、誰かいないの!?」

扉越しに声を張るが、返事はない。
たまらず、もう一度声を上げようとした瞬間、轟音と共に扉が爆ぜた。
衝撃ともにもんどりうって転がる。腹部を中心に熱と痛みが走った。

「アッ、フッ……」

声を出そうとして血の塊を吐き出す。
撃たれたのだと理解し、顔を破壊された扉の奥へと向ける。
そこには赤い覆面の男が立っていた。

「あ……」

何事か呟こうとしたが、それは一発の銃声により阻まれた。

けたたましいサイレンの音をバックに人通りの少ない路地を赤い覆面の男が歩いている。
その手にはポンプ式のショットガンが握られていた。
しばらく歩いていると不意に上から人影が降ってくる。

「よう、キャスターはやれたか」
「問題はねえよ。ホテルにあったあいつらの仕掛けも解除された。恐らくマスターもキャスターも完全に死んだと思うぜ」
「そうか」

二人の男が並んで歩く。

事の発端は出所不明の麻薬であった。
アサシンのマスターであるレッドフード――本名:ジェイソン・トッド――はマスターとしての記憶を取り戻してからは、本来のゴッサム同様に犯罪者狩りをしていた。
サーヴァントのアサシンも麻薬や犯罪組織の撲滅には乗り気だった事もあり、協力を申し出てくれたのは幸いだろう。
その内に出てきたのが従来の物とはまったく異なる種類の麻薬であった。
アサシンとレッドフードはサーヴァント関与の可能性を感じただちに調査を行った。
キャスター達にとって不運だったのは、アサシンが調査や追跡などの斥候任務も得手としていた事、そしてレッドフードが彼のパートナーであり、探偵<ディティクティヴ>とも揶揄されるバットマンのやり方を完全に学んでいた事だった。
かくして流通ルートを潰し、アサシンの尾行で拠点を割り出し、万が一転移などで逃走された場合も念頭に入れて決行された二正面作戦は成功を収めた。


444 : レッドフード&アサシン ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:10:13 z6Hx2x0U0
「で、だ。いつまでこんな事を続けるんだ」

アサシンがレッドフードに問いかける。
この街の犯罪組織は星の数ほどいる。
そしてその中には今回の様に構成員やトップ、あるいは関係者にマスターが絡んでいる可能性が出てくるだろう。
そうなると、今の活動を続けていくだけで彼らがそういったマスター達に目をつけられる可能性がある。
暗に目立つ行動は避けるべきだと、アサシンは告げていた。

「……悪党どもをのさばらせるつもりはない」

ポツリと、レッドフードが呟いた。

レッドフードは犯罪者に対して苛烈だった。
その苛烈さは、一人のヴィランに起因する。
アサシンがレッドフードと初めて出会った時に、彼は自分のマスターに聖杯への願いを訪ねた。

「一人、死んで欲しい奴がいる」

憎悪と怒りにのまれた声で、レッドフードは答えた。
曰く、その男は一度レッドフードを殺している。
曰く、レッドフードの元相棒に男の殺害を願ったが彼に人を殺す事はどうしてもできなかった。
曰く、そのせいで、自分の様にその男の趣味の悪い冗句の犠牲になった人間は山ほどいる。
曰く、自分が殺そうとしても、元相棒達がそれを妨害する。

「まあ、そうなるとな。聖杯にでも願って死んでもらうしかないだろ?」

ここに呼ばれてから思いついたんだけどな。と冗談めかしてレッドフードは言っていた。
だが、アサシンはその中に隠された決意と殺意を確かに感じとっていた。
もう、自分と同じ目にあう人間が出ないように、この男は命を張っているのだと確信した。
かつて、アサシンの師匠が命を張ったように。古い記憶の中、大統領であった一人の少女が命を懸けたように。
後に続く者の為に命を懸けて事をなそうとしているのだと、アサシンは感じた。
それだけで力を貸すには十分すぎる程の理由だった。

「ハァ、まったくしょうがねえマスターだな。おもりする身にもなれっての」
「別におもりをしろって頼んだ覚えはねえぞ」

ギャーギャーと言い争いを始めた二人の影は闇の中へと消えていく。
バットマンのいないゴッサムシティ。だが、それは必ずしもヴィラン達の楽園とは限らない。
闇に潜む悪党達を狩る者達も同様に闇の中に潜んでいるのだから。


445 : レッドフード&アサシン ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:10:44 z6Hx2x0U0
【クラス】
アサシン

【属性】
混沌・中庸

【真名】
チップ=ザナフ@GUILTY GEARシリーズ

【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具D

【クラス別スキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を断つ。
完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
このスキルは自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクが大きく落ちるが、後述の宝具の効果によりアサシンの気配遮断は攻撃時でもランクの低下が発生しない。

【保有スキル】
魔力放出(気):B
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
アサシンは人体に宿る気の力を操る事で攻撃の威力や速度を増加させたり、気そのものを放出して相手を拘束する事ができる。

仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。
同ランク以上の追撃スキルがなければ細くは困難を極める
隠形や転移など自身の姿を晦ます術など逃走に有用な技能を多数取得している

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【宝具】
『毅式迷彩』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:自身
瞬時に自身の姿を不可視にし気配遮断状態となる。また、攻撃時に気配遮断のランク低下が発生しない。
正確には宝具ではなく限界まで鍛えた一つの術。
相手の意識の隙を突き、一瞬でその姿を消すだけでなく殺気や気配を完全に気取らせない。
実体が消える訳ではなく、もし宝具発動中に攻撃を受けた場合は効果が解除される。

【weapon】
手裏剣
苦無
腕部に仕込んだブレード

【人物背景】
アメリカ国籍(自称日本国籍)の忍者。
元ストリートの孤児で、麻薬のバイヤーであった時に売り物に手をつけたことがバレ、始末されそうになったところを毅という人物に助けられ更生。彼の元で忍術と気の法術を会得した。
その経歴からヤクザやマフィア、無暗に権力を行使する存在や偽善者を嫌っている。
血の気が多く直情的な性格で基本的な思考は弱肉強食。
だが自身の力とは無関係に「弱い立場」にあるものが多かった世の中を変えたいという願いを持ち、その為に大統領という地位に着く事が夢だった。
勤勉な努力家で、本物の忍者から指導を受けた事もありその実力・忍術は本物。
また師匠の故郷である日本を深く愛しているが、彼の世界では日本が滅んでいた事もあって日本文化の知識も浅く、よくある海外の間違った日本人像そのままのキャラを形成してしまっている。
最新作では彼を慕う人間もかなり増えてきており「オカシラ」と呼ばれている。

【サーヴァントの願い】
マスターの願いを叶える


446 : レッドフード&アサシン ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:11:32 z6Hx2x0U0
【マスター】

レッドフード@バットマン

【マスターとしての願い】

ジョーカーに死んでもらう

【weapon】
各種銃火器及びナイフ
 ショットガンやピストルなど一般的な銃器。レッドフードの拠点に複数保管

【能力・技能】

鍛えた身体能力

【人物背景】
本名をジェイソン・トッド、またの名を二代目ロビン。
ストリートの不良少年で元孤児。バットマンのバットモービルからタイヤを盗もうとして捕まり、その技と度胸を買われて二代目ロビンとなる。
ある時、母親をジョーカーに拉致され、救いに向かった所を諸共に爆殺されるが、その後アメコミ恒例のなんやかんやで生き返りが発動。
墓場から自力で這い出た後に死者を蘇らせるラザラス・ピットという泉に入れられ完全復活。
その代償として人格が大きく歪み悪人を残虐に殺害するレッドフードとなってしまった。
自分を殺したジョーカーをバットマンがまだ生かしている事に激しく怒り、バットマンと敵対、彼の不殺主義では犠牲者が増えるばかりだと否定している。なお、先輩や後輩のロビンとはそこまで仲は険悪ではない。
現在はアウトローズというヒーローチームで活動中。

【方針】
犯罪組織を潰して回りながら他のマスターの情報を集める。
仮に犯罪行為に手を染めているようならば容赦はしない。
保有魔力に関してはラザラス・ピットに浸かった影響か一般人と比較すると多め。
また、アサシン自体が低燃費かつ接近戦も対応できるので継戦能力に関してはあまり不安点はない。
アサシンは直接戦闘や斥候に優れる分、殲滅力や決定力が圧倒的に不足しており、格上との直接戦闘などでは逃げの一手を打つのが精いっぱいである。
耐久は低いが死ななきゃ安い、気配遮断のランクが低下がなくワンチャンあれば(マスターを殺害して)勝てるので慎重な立ち回りを心がける必要がある。


447 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/11(月) 01:12:25 z6Hx2x0U0
以上で投下を終了いたします


448 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:20:41 4LNlF1kU0
皆様、投下お疲れ様です
私も投下します


449 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:21:41 4LNlF1kU0
棲地MIに存在する敵の主力機動部隊の撃滅を目的としたMI作戦。
提督が帰還し、秘書艦の長門含む艦娘が総力を挙げて参戦したこともあって、見事完遂された。
だが、聞くところによると赤城はその戦いで幾度となく轟沈する夢に苛まれ、それと同時に何か見えない力が働いていたらしい。
まるで『轟沈する』という運命を強制するような何かが…。
そして、それは他の艦娘にもいえることだったと暁型駆逐艦1番艦「暁」は思い知ることになる。

◆ ◆ ◆

MI作戦が終了してから何日か何週間か何か月か。
とにかくそれなりに時期が経ったある夜のこと、暁は夢を見た。
それはとてもおぞましい夢。

暁を先頭とする艦隊がその海域に到着した頃には既に日は沈み、とうに夜になっていた。
辺りはとても暗く、探照灯なしでは深海棲艦が近くにいることは分かっているのに狙いを定めることができない状況だった。
暁は意を決し、深海棲艦へ探照灯を照射した。敵の標的になるリスクがあるが、これしきのことを恐れていてはレディーではない。
光に浮かび上がった深海棲艦は人型に巨大な腕が生えた軽巡だった。

そしてその直後、暁に砲弾が直撃した。
「痛い」と感じる暇もなく、2発目を被弾。
更なる被弾に続く被弾。
探照灯の照射に対する代償はあまりにも重すぎた。
暁の華奢な体に容赦なく集中砲火が浴びせられた。

轟沈する刹那、暁の脳裏に鎮守府にいる妹達や他の艦娘が走馬灯のように浮かび上がる。
もう、あの楽しかった鎮守府の生活に戻ることはできない。
W島攻略作戦で轟沈した如月のように、自分も沈むのだ。
きっと妹達は自分の轟沈を知ったら悲しむだろう。


――そんなの、イヤ。


――こんな所で沈むの、嫌だよぉ…。


暁が生にしがみつきたい一心で海面に向かって手を伸ばしたその時。

"何か"を掴んだ。


◆ ◆ ◆


450 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:22:39 4LNlF1kU0
彼女を見れば誰もが小学生低学年だと思えるだろうその低い身長。
身長とは正反対に腰まで伸ばされた黒い、癖っ気のある髪。
暁はゴッサムシティの某所の通りをトボトボと歩いていた。
時刻は昼で車道には外国車が次々と行き来している。

「もう、何なのよいろいろと!」

思わず叫んでしまう。
シャブティを持って暁は休日のゴッサムを彷徨うのだった。



暁が悪夢から目覚めると、そこは見慣れた鎮守府の自室ではなかった。
昨日はいつものように響、雷、電と寮で寝たのに、その部屋には誰もいない。
必要最低限な家具に、机、ドレッサーにクローゼットが目に入る、質素な個室だった。
ベッドを降りて机の上にあった写真を見てみる。
そこには改二になった夕立のように背の伸びた吹雪と司令官の姿。
その間に割り込むようにして、微笑んで佇んでいる暁が写っていた。
まるで家族写真だ。

ドアの向こうから暁を呼ぶ声がしたので着替えてから部屋を出てみると、
エプロンをかけて朝食の支度をしている吹雪とテーブルに腰掛け、新聞を読んでいる司令官がいた。
吹雪は暁を認めると「おはよう」とまるで母親のように挨拶してきた。
普段の暁ならば「子供扱いするな」と言ってぷんすかと腹を立てているところだが、暁は困惑のせいでそれどころではなかった。

とりあえずうんうんと吹雪の話に相槌を打ちながら朝食(こーんふれーくというものらしい)を平らげて、
「遊びに行ってくる」といって外へ出た。
出る際に司令官が「行ってらっしゃい」と父親のように声をかけてきた。

外に出てもどこまでも見慣れない場所であった。
鎮守府のすぐ側には海があるのに、この土地(アメリカの住宅地)には海なんてないではないか。
暁はまだ夢の中にいるような錯覚を起こしてしまいそうだった。

そして、現在に至る。

「赤城さんも、あんな夢を見てたのかしら」

自分もいつかあんな目に遭うのだろうか。
暁が轟沈する陰惨な夢を思い出し、暁は身震いする。
それを心配してか、通りで時折すれ違う人がこちらを見てくる。
暁にとってはアメリカ人のようなヨーロッパ系の顔をした人間を見たことがないので、それから思わず目を逸らしてしまう。
目を逸らした先に見えたのは、シャブティ。ゴッサムシティの聖杯戦争へ参加する資格である。
夢の最後、海面に手を伸ばして掴んだのは十中八九これだろう。

「…レディーには似合わない不気味な人形ね」

ファラオの棺桶の形をしており、直視していると呪われそうな感じがする。
しばらく前を見ずに見つめていると、急にシャブティが眩く光り出した。

「な、な、な、何!?」

あまりの出来事に暁は慌てふためき、咄嗟に近くにあったビルの裏路地に隠れた。
呼吸で肩を揺らしながら光るシャブティをできるだけ遠くに投げた。
何が起ころうとしているのか分からない、正体不明への本能的な恐怖が暁を襲う。
朝起きたら全くの別世界だったという未知なる状況も暁の心を追い詰める。
シャブティの発する光は時間と共に一層輝きを増し、暁は光を直視できず、目をつむってしまう。
シャブティが着地した瞬間に一迅の風が舞い、暁の黒い髪を乱した。


451 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:23:51 4LNlF1kU0

「……」

しばらくして、風が止む。恐る恐る目を開けてみると、そこには。
白、黒、赤を基調とした軍服に身を纏った男が佇んでいた。
暁の知る司令官が着用している二種軍衣によく似ている。
身体の周囲からはバチバチと火花が散っており、静電気を常に溜めているかのような横に浮き上がった髪が特徴的だった。
旧日本の軍人然とした厳かな雰囲気を放っていた。

「……願わくば、我に七難八苦与え給え。ここに自分がいるということは、まだ電光機関が存在するのか、あるいは従者として成すべきことを与えられたということか。ならば聖杯の導きに従い、それらのために生を全うすべし。自分の仕える主君は、お前か?」

男は暁を真っ直ぐに見据え、問いかける。
当の暁は、唖然として数分間声を出すことができなかった。



しばらくして、暁はなんとか落ち着きを取り戻し、今までの来歴を話しながら人の目につかないように裏路地の奥へ移動していた。
この男が現れてからはシャブティが跡形もなく消えていたことから、男は元々はシャブティだったのだろう。
男を見上げると、提督と同程度の身長差を感じた。

「アカツキだ。職業は弓兵…アーチャーと言った方がいいか。お前のサーヴァントと相成った」
「特III型駆逐艦1番艦の暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね…ってアカツキぃ!?」

暁は目の前の男が自分と同じ名を持つと知るやいなや、目を見開いた。

「お、男の人と同じ名前なんて、レディーらしくないわ」
「れでぃー?淑女のことか。見たところただの小童にしか見えんが」

アカツキは自分をレディーと称するマスターを見て小首を傾げる。
アカツキから見ると己がマスターはどう見ても、10を過ぎるか過ぎないかくらいの子供だ。

「かっぱ……小童言うな!レディーとして扱ってって言ったでしょ!」

小童と呼ばれたことに腹を立て、暁はアカツキの軍服をぽかぽかと叩きながら頬を膨れさせる。
噛んでしまい「かっぱ」と言ってしまったことは触れないでおく。

「…気を悪くしたのなら謝ろう、すまぬ。ところで、聖杯戦争が何たるかは知っているのか?様子からして、何も知らぬようだが――」

アカツキは召喚されてから暁の様子を見ていて、この娘は何も知らぬだろうと推測していた。
自分が聖杯戦争――英雄を従えて戦う戦場の中にいることを把握させなければお互いのためにならない。

「…聖杯戦争?知らないわ」

――やはり知らないか。
アカツキは暁に聖杯から与えられた情報を洗いざらい話した。


◆ ◆ ◆


452 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:25:13 4LNlF1kU0
暁は完全に理解したわけではないが、アカツキから聖杯戦争の情報を得た。
願いを叶えるために命を賭した戦争。
それも仮の役職を与えられて、それぞれの生活の合間に戦闘するらしい。
身長の伸びた吹雪と提督は、並行世界から連れてこられた別世界の提督と吹雪改二で、暁の両親という設定だった。

「吹雪がお母さんで司令官がお父さんって…暁はもう子供じゃないのに!その聖杯ってやつまで子供扱いするのね!」
「そのような問題ではないと思うのだが…」
「まあ、戦ったことはあるけど、艤装もないし…どうして暁がこんなことに巻き込まれなくちゃいけないのよ」
「お前が埃国の埴輪…いや、シャブティを持っていたということは何か願いがあってここに来たのだろう。何か心当たりがあるのではないか?」

心当たりと言われると、やはりあの悪夢でのことが頭に蘇る。
あの戦いに暁が出撃してその通りになってしまったらと思うとゾッとする。
現に、MI作戦でも途中までは赤城が見た夢の通りに事が進んでいたという。
如月が轟沈した時、気丈に振る舞う睦月は見ているのがつらかった。
次は妹達が睦月のようになるのかと思うと、なんとしてでも正夢になることを回避したい。
問題はその夢のことをアーチャーが信じてくれるか、だが…。

「暁がこんなこと言うとレディーっぽくないし、アーチャーも信じられないと思うけど…本当に起こるかもしれない夢を見たの」
「所謂予知夢の類か」
「うん。夜戦で敵に探照灯を当てたら蜂の巣にされた、とってもリアルな夢」
「探照灯に夜戦…?いや、まさか――」

アカツキには悪夢の内容に思い当たる節があった。
元は旧帝国陸軍の高級技官だったアカツキだが、大戦時に戦局を覆し得る新兵器・電光機関の輸送任務中のことだ。
その任務が元で、アカツキは冬眠制御により半世紀もの間眠りにつくこととなる。

「…『暁』。その名を聞いたことがある」

アカツキの任務に同行していた海軍兵が話していたのを覚えている。

『第3次ソロモン海戦で果敢にも探照灯を照射したことで集中砲火を浴びて轟沈した駆逐艦があった』

とのことだ。
その駆逐艦の名は、「特III型駆逐艦1番艦 暁」。
目の前にいるマスターが自分に名乗った名だ。

「お前は確か『艦娘』…在りし日の艦(いくさぶね)の魂を持つらしいな。
察するに、その魂を持つがゆえに前世の記憶を夢に見てしまうのだろう」

大戦時の暁の末路を知るアカツキは、『艦娘』は史実に即した夢を見て、それと同じ末路を辿ることを悟った。


453 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:28:09 4LNlF1kU0

「そんな…じゃ、じゃあやっぱり赤城さんが見てた夢は…」
「前例があるのならば、疑う余地はあるまい。その夢は、いつか現実のものとなるだろう」

それを聞いた暁は肩をわなわなと震わせた。

「…そんなの、嫌よ。このまま轟沈する運命なんて」

そんなこと、認められるはずがない。

「…暁も運命に抗って見せる!こっちにも『前例』があるんだから暁にもできないわけないわ!そのために、お願いアーチャー、力を貸して!」

MI作戦も、1人だけではない、皆が挫けずに立ち向かったからこそ犠牲なき勝利を取ることができた。
赤城の運命を変えられたように、自分の運命も変えられるはず。
ならば、自分もそれを悲観してはいられない。ここで挫けては皆にまた子供扱いされてしまう。

「……憂きことの尚この上に積もれかし。限りある身の、力試さん。お前がその『運命』に抗うがために進むのなら、自分もサーヴァントとして最期まで戦おう」


◆ ◆ ◆


暁の仮初めの家への帰り道にて。
夜は物騒だと母親役の吹雪から聞いた記憶があるので急いで小走りしていると、『それ』は突然鳴り始めた。

――ぐううううううぅぅぅぅ〜〜〜。

不意に耳元で鳴ったので「ぴゃあっ!?」となんとも可愛らしい声を上げてしまった。
まさか自分の腹が鳴ったのかと思ったが、その正体はもう1人の腹の虫が鳴らしていたものだった。

「…もう、レディーの側でみっともないことしないでよね!」
『済まぬ…腹が減ってしまってな。どうやらサーヴァントになっても空腹だけはついて回るらしい』

アカツキのスキル『空腹』。
魔力の燃費の良さを得た代償に空腹を訴えるというものである。

「それなら、暁の出番ね!家に帰ったらカレーを作ってあげるわ。鎮守府のカレー大会で1番を取るほどおいしいんだから!」
『それは誠か?楽しみにしておこう』

――聖杯戦争の前に腹ごしらえを。腹が減っては何とやらだ。


454 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:29:01 4LNlF1kU0
【クラス】
 アーチャー

【真名】
アカツキ@アカツキ電光戦記

【パラメータ】
筋力C+ 耐久D+ 敏捷D+ 魔力E 幸運D 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Cランクならば一日程度の現界が可能。

【保有スキル】
 
魔力放出(雷):A+
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
アーチャーの場合、放出された魔力が『電光機関』により電力に変換、電光被服の性能を上昇させる。

電光体質:A
アーチャーの持つ、並外れた『電光機関』への適合性。
魔力放出(雷)及び『電光機関』の使用による消耗を最小限に抑えることができる。
アーチャーは古代アガルタ文明の末裔であり、『電光機関』の酷使で消滅することはない。

空腹:D
『電光機関』の長時間使用により、アーチャーはサーヴァントにも関わらず空腹を訴える。
極度の空腹状態に陥った場合、アーチャーのファンブル率が上昇する。
逆に言えば『電光機関』による消耗は食事をとるだけで回復できることにも繋がる。

戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

高級技官:B
生前、アーチャーが陸軍の高級技官を務めていたことによる技術の知識。
機械や建築物などの構造・機能を瞬時に把握することができる能力。
また、一定確率で敵のスキルや宝具の能力を看破できる。


455 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:29:39 4LNlF1kU0
【宝具】
『電光機関(ブリッツ・モーター)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:1人
アーチャーが身に着けている電光被服(軍服)に装着されている特殊機関。
装備することで無尽蔵に電気を生み出すことができる。
チベットの秘境で発掘された古代文明アガルタの超科学技術を元に開発された。
強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
他にも高圧な電気を弾にして飛ばしたり、敵に直接電気を送り込んで感電させるなど、様々な応用が可能。
電光被服を介して超人的な身体能力を得てパラメータを増加させることもできる。
電光機関の電気は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、
使い続けた者は死んでしまうという欠点を持つ。
アーチャーはサーヴァントであるため、生体エネルギーの代わりに魔力を消耗する。
アーチャーは電光体質スキルにより消耗は少なく、魔力消費も微量なため、魔力低下を気にせず使い続けることができる。

『我が身は死して護国の鬼と成りぬ』
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:―― 最大捕捉:自分
かつて任務が解除されたにも関わらずその任務を遂行しようとしたエピソードに由来する宝具。
アーチャーの軍人然とした性格と、正義感・義務感に基づく行動原理自体が宝具となっている。
アーチャーに対する令呪は、一画あたり二画分の効力を持つ。
そのため、令呪による強化も通常の令呪の倍の影響を与える。

『神風』
ランク:A+ 種別:対戦車宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
電光機関の出力を最大限まで解放し、極限まで強化された肉体とともに放つ、アーチャーの最終特別攻撃。
この宝具を発動している間のみ、パラメータは

筋力C++ 耐久D++ 敏捷D++

へと変更される。
素早く、威力の高い連撃を放った後に敵を空中に打ち上げ、落下してきた対象を最大出力で生み出した衝撃波により吹き飛ばす。
破壊力は非常に高いが、あくまで『対戦車宝具』であるため、巨大な戦車を破壊することはできても『対城宝具』ほどの威力はない。

【weapon】
・電光被服
アーチャーが装備している電光被服。
電光機関と組み合わせることにより超人的な身体能力を得ることができるようになる。
アーチャーのものは型落ちした旧型であり試作型だが、その分機能が単純で高出力で、使いやすい。

【人物背景】
帝国陸軍の高級技官。技術官僚ながら、体術にも長ける。
前大戦の終戦間際に同盟国からの新兵器輸送中に北極海にて死亡したとされていたが、
潜水艦に積まれていた冬眠制御装置により当時の姿のまま半世紀を生き延び、潜水艦の浮上により現代へ生還する。
アカツキは「任務ニ失敗セシ時ハ電光機関ヲ全テ破壊セヨ」という上官の命令を果たすために、各地を奔走する。
ただ一人生還してなお任務を遂行する様や「我が身は死して護国の鬼と成りぬ」というセリフに表されるように、軍人然としたストイックな性格の持ち主。
既に任務解除を言い渡されているが、独断で電光機関の破壊活動を行っている。
この事から、行動原理ははむしろ正義感、義務感に近いものとなっている。

【サーヴァントとしての願い】
サーヴァントとしての使命を全うする。
まだ世界に電光機関が残っているならば、それを破壊する。


456 : 暁&アカツキ ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:30:25 4LNlF1kU0
【マスター】
暁@艦隊これくしょん(アニメ)

【マスターとしての願い】
予知夢が見せた運命を回避する

【weapon】
艤装は持ちこんでいないので特になし

【能力・技能】
・水上を滑るようにして移動できる

・入渠(風呂に入る)ことで傷を癒すことができる

・深海棲艦との戦闘経験

【参戦方法】
史実を再現する夢の中でシャブティを掴んだ

【方針】
不明


457 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/11(月) 23:32:19 4LNlF1kU0
以上で投下を終了します。
また、アカツキのステータス表は>>1氏が執筆されたキャスター(ムラクモ)のステ表を参考にさせていただきました。
この場をもって感謝いたします。


458 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/12(火) 17:42:20 kLmDrqKk0
皆様投下感謝です。
私も投下します。


459 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/12(火) 17:42:52 kLmDrqKk0
 








 世界が 燃えて/凍えて 朽ちていく。










□ ■ □


460 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/12(火) 17:45:28 kLmDrqKk0
 

 衆愚の街ゴッサムの片隅に立ち並ぶ倉庫の一つ。
 本来無人であるある筈のそこは、今異様な熱気に包まれていた。
 決して比喩表現ではない。事実室内の温度が上昇しているのだ。

 倉庫の内部にいたのは、二人の男であった。
 一人は空間の中心部で立ち尽くし、一人は彼の前で無様に倒れ伏している。
 見上げる少年は、全身の至る所に火傷ができており、見るも痛ましい惨状だ。
 その一方で、見下げる男の方には、傷らしい傷など一つとしてなかった。

 いや、見下げる男を"傷一つない"と言うのは、少々語弊がある。
 なにせ彼の肉体は、頭から足先まで残らず焼け爛れているのだ。
 かつて生きたまま燃やされた傷跡が、今も生々しく残る証拠であった。

 焼けた皮膚を包帯で隠し、日本刀片手に少年を見上げる和服の男。
 狂獣の如き眼光を敵に向けるこの男こそが、志々雄真実である。

「なあ坊主、この街は良いものだと思わねえか?」

 志々雄から投げられた言葉で、少年の表情が強張った。
 彼はこのゴッサムシティを、地獄もかくやの魔都と認識している。
 正義の二文字が霧消したこの街は、掃き溜めと言っても過言ではない。
 だがこの男は、その衆愚の街を"良いものだ"とのたまったのだ。

「強者だけが生き残り、弱者はドブ底で死んでいく。
 弱肉強食を絵に描いたみてえな街だ……気に入った」

 そう嘯いた後、志々雄は口角を歪ませる。
 この街の仕組みを心の底から歓迎している、そんな笑みだった。
 少年には志々雄のその姿が、さぞや恐ろしく映っただろう。
 それこそ、地獄で嗤う鬼の如く見えたに違いない。

「聖杯戦争も同じだ。弱ければ死に、強い者だけが生き残る」

 手にした日本刀の切っ先を、少年の額に向ける。
 彼の視界に映るのは、刀身に鋸の様な刃毀れが付いた歪な剣。
 少年はこの奇妙な刃の特性と、志々雄本人の技量の前に敗れたのだ。

 志々雄が得物とする剣――無限刃には、これまで斬った者の脂が染み込んでいる。
 これに何らかの形で摩擦が生じると、刀身が一瞬大きく燃え上がるのだ。
 そして志々雄は、この火を噴く剣の特性を熟知した戦いぶりを見せた。
 武術にそれなりに覚えがあった少年でも、その剣技の前では為す術も無かったのである。

 刃が目の前にまで迫るという、絶望的な状況。
 だがそんな状況にあっても、少年の瞳は死んでいなかった。
 彼にはまだ、共に聖杯戦争を生き抜くと誓った相棒がいるのだ。
 彼女が生きている限り、まだ逆転の芽は残っているのである。


461 : 志々雄真実&ランサー ◆JOKERxX7Qc :2015/05/12(火) 17:46:10 kLmDrqKk0

 相棒はもう一人の敵と交戦中だが、令呪を使えばすぐに呼び戻せるだろう。
 外見こそ少女のそれではあるが、目の前の敵を瞬殺可能なだけの技量はある。
 彼女への絶対的な信頼があるからこそ、少年の心はまだ折れずにいるのだ。

「まだ、だ……俺はまだ……負けてない……!」
「お前の"さあばんと"に頼る気か?」
「そうだ……!俺にはまだ、アーチャーが――」

 刹那、少年の背中に凍り付く程の寒気が襲い掛かった。
 半ば反射的に視線を後方に向けると、そこには一人の女が立っていた。
 ぞっとする様な美貌に、氷を思わせる色合いの長髪。
 雪の様に真っ白な制服には、所々に真っ赤な液体が付着している。
 音も無く現れた彼女は、片手で重そうな"何か"を引き摺っていた。

「遅かったじゃねえか、ランサー」
「何、少し遊んでいてな」

 そう会話を交わしてすぐに、ランサーは"何か"を放り棄てた。
 少年の視線の丁度すぐ先に遺棄されたそれは、よく見ると人の面影があるではないか。

「…………まさ、か」

 ほとんど原型を留めていないが、"それ"は間違いなく人なのだ。
 四肢は捥がれ、両目は抉れ、顎は砕かれ、子宮さえ壊れたそれは。
 紛れも無く人間であり、同時に尊ばれるべき命であったのである。

「…………アーチャー…………なの…………か…………?」

 少年がほんの少し前まで心を交わしていた、大切な相棒。
 彼と大差ない年頃だったであろう少女は、既に肉塊となり果てていた。
 少年が唯一の希望としていた仲間は、知らぬ間に落命していたのだ。

「頼みの綱も無くなったようじゃねえか」

 くつくつと、志々雄が笑う。
 彼の相棒であるランサーもまた、口元を歪めていた。
 少年の表情には、絶望だけが張り付いていた。

 相棒の屍骸を眼にした途端、少年の心はあっさりと崩壊した。
 心中には希望の一寸も無く、ただ失意ばかりが燻っている。
 彼が胸に抱く白い光は、志々雄達の黒い炎に焼き尽くされる運命にあった。

「そういう事だ。恨むなら自分の弱さを憎むんだな」

 それが最期だった。
 無限刀が一閃し、少年の首を刈り取る。
 頭部を喪った首から血が溢れ出し、床を赤く染めていく。

 こうして、少年と少女の命は堕ちる事となるった。
 蹂躙された主従の顔には、苦痛だけが遺される。
 彼等にも掲げ上げた願いがあり、その為に戦おうとしたのだろう。
 だがそれも、全てを奪われた今となっては何の価値もない。

 なんて事は無い。
 強者が弱者が屠った。
 それだけの話だ。


462 : 志々雄真実&ランサー ◆JOKERxX7Qc :2015/05/12(火) 17:48:20 kLmDrqKk0
□ ■ □



「しかし、お前も碌な趣味してねえな」

 消えゆくサーヴァントの亡骸を見据えながら、志々雄が言った。
 人としての尊厳が徹底的に踏み潰されたそれは、ランサーの趣味の賜物だ。
 大方、無力化したアーチャーに対し延々と拷問を行っていたのだろう。
 この女の加虐趣味は、誰がどう見ても正気の域を脱している。

「中々壊れにくくてな、つい遊び過ぎてしまった」

 当のランサーは、まるで日課を果たした様な口ぶりであった。
 そうするのが当然と言わんばかりの態度から、彼女の一面が伺える。
 帝国最強と謳われた将軍にして邪悪の権化――その真名を『エスデス』。
 この女もまた、地獄の鬼の如き残虐さを秘めているのだ。

「しかし近隣の犯罪組織を潰して回っていると聞いたが……とんだ拍子抜けだな」
「潰された組織がよほど弱かったんだろうよ」

 少なくとも俺の組織よりかは弱いなと、志々雄が嗤う。
 彼が此度の聖杯戦争で与えられた役割は、それなりの規模を持つマフィアの首領である。
 先代のボスを暗殺する事で強引に組織を乗っ取った、という設定らしい。

「ま、丁度いい肩慣らしにはなっただろ」

 踵を返し、志々雄は出口に向けて歩き出す。
 ランサーも実体化を解き、寝床に帰る彼に着いていった。
 両者共に、今しがた屠った少年少女などまるで気にも留めてはいない。
 道端で歩く蟻を踏み潰すのと同じだ。気にする程の価値も無い。

「閻魔相手に地獄の国盗りでも始めるつもりだったが……中々面白い祭りに呼んでくれるじゃねえか」

 志々雄は本来、地獄に向かう筈の身であった。
 限界を超えた肉体が発火を起こし、現世から消滅する。
 それが彼の本来辿るべき道筋だったのだ。

 だが、何者かが捨て置いたシャブティが、彼の魂を拾い上げてしまった。
 それ故に志々雄は地獄に行く事も無く、ゴッサムで生を実感している。
 偶然掴み取った第二の人生、愉しまなければ損というものだ。

『随分と愉しそうだな』
「そういうお前はどうなんだよ、ランサー」
『愉しいとも。これから更なる闘争が始まるのだからな』

 そう遠くない内に、聖杯戦争は本格的に始動する。
 戦いの火蓋が落とされた瞬間、ゴッサム全土が戦場と成り得るのだ。
 そしてそこにあるのは、強さだけが試される強者の世界である。

『弱者は徹底的に蹂躙され、強者だけが願いへの切符を手に入れる。
 "弱肉強食"がこれほど如実に示されているのだ、昂ぶらずにはいられないな』
「ハッ、流石は俺のサーヴァントだ……意見が合うじゃねえか」

 そう話す志々雄が表情に映すのは、やはり笑みであった。
 例え何処が舞台であろうが、志々雄の理念は変わらない。
 "弱"い者が"肉"となり、"強"い者がそれを"食"い潰す
 聖杯が最後に残った強者を選ぶのであれば――志々雄は全てを食らうだけだ。




「それじゃあ――――聖杯(クニ)を盗るとするか」





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463 : 志々雄真実&ランサー ◆JOKERxX7Qc :2015/05/12(火) 17:50:25 kLmDrqKk0
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【CLASS】ランサー
【真名】エスデス
【出典】アカメが斬る!
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:A 幸運:C 宝具:B

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

【固有スキル】
拷問技術:A
卓越した拷問技術。拷問のダメージにプラス補正がかかり、情報を吐かせやすくなる。
ランサーの場合、対象が最大限の苦痛を覚えるありとあらゆる手段を用いて拷問を行う。

カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
自身が率いる部隊の戦士をまとめ上げるには、Cランクで十分と言える。

心眼(偽):A
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

精神汚染:C
生粋の異常者。同ランクの精神干渉を無効化する。
このスキルを所有している人物は、拷問を始めとした残虐行為を嬉々として行う。

【宝具】
『魔神顕現・天地絶氷(デモンズエキス)』
ランク:B 種別:対己宝具 レンジ:- 最大補足:-
ランサーが体内に混入させている帝具。
北方に潜む危険種の血液であり、これを飲んだ者は氷を生み出す能力を得るとされる。
飲むと常人には耐え難い程の破壊衝動に襲われるが、ランサーはその衝動を完全にコントロールしている。
あらゆる空間であらゆる形状の氷を生成、コントロールできる為、その応用力は極めて高い。
更にランサーは"奥の手"として、"時間の凍結"による疑似的な時間停止さえ実現させている。

【weapon】
『無銘・レイピア』
ランサーが得物とする武器。斬るより突くに秀でている。

【サーヴァントとしての願い】
最愛の少年を手中に収めたい。


【マスター】志々雄真実
【出典】るろうに剣心

【マスターとしての願い】
この世界の武器と知識を手土産にもう一度国盗りをする。

【weapon】
『無限刀』
新井赤空の最終型殺人奇剣。
刃全体にあえて鋸状の刃毀れを作る事で、殺傷力の長時間持続に成功している。
また、刃の部分にこれまで斬った人間の脂が染み込んでおり、摩擦により刀身を発火させる事が可能。

【能力・技能】
卓越した剣技と並外れた打たれ強さ、そして極めて高い身体能力を誇る。
ただし、生前全身に大火傷を負った為に、肉体の発汗機能が死滅してしまっている。
その故に身体は常時異常な高温を保っており、15分以上戦闘を続けると人体発火を起こしてしまう。

【方針】
聖杯を獲る。


464 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/12(火) 17:50:39 kLmDrqKk0
投下終了となります。


465 : ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:51:22 wyIWNRoM0
投下させていただきます


466 : ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:51:49 wyIWNRoM0




破壊せよ、破壊せよ、破壊せよ。








467 : シャルロット・デュノア&ライダー ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:53:04 wyIWNRoM0

カチャリ、と。
歩くたびに鉄がこすれる音を聴いていた。
聞こえるはずのないその音は、例外もなく今日も耳に響く。
いつから、聞こえ始めたか。
思い返さなくても分かる。
家族が死んで、家族が現れた時からだ。
母が死んでから、居場所が失くなったからだ。
今ある場所から、どこかへと行こうとする。
その意志を許さないように、鎖の音が響く。

「魔術回路……IS適正……」

誰もいない空間で、小さく言葉をつぶやく。
少女、シャルロット・デュノアが所持している回路。
『IS適正』と呼ばれる物とよく似たもの――――らしい。
今はもう居ない、母が教えてくれたものだ。
自身は既に凋落した魔術師の血を引いている。
『忘れてしまってもいいけど、知らずに居ないままではいけないだろう』と、母は言っていた。
現実、その魔術回路と呼べるものがシャルの役に立ったことはない。
むしろ、『IS適正』と呼べるものほうが役に立っている。
妾の子である自身にとっては、まるで針の筵のような生活ではある。
だが、その『IS適正』のおかげで自分の意味が出来た。

「……」

父に伝えられた言葉を思い出す。
子である自分が父と交わした、父と子とは思えない事務的な会話。
ISという女性だけが扱えるとされる超兵器の技術のために、日本という極東の国へと出向くこと。
そこで、男性にも関わらずISを扱える広告塔として生活すること。
父にとって、自身は『息子』でも『娘』でも関係のない噺のようだった。
事実を認識するたびに、鎖の音が聞こえた。
父は自身を受け入れていないように思えた。
世界に居場所はない。

「……ッ」

胸が、締め付けられるように痛んだ。
締め付けるものは刺を持っているように痛みを味わせてくる。
鎖だ。
見えもしない鎖に、自分は繋がれている。

かつてあった居場所を求めるように、鞄からあるものを取り出す。
『シャブティ』と呼ばれるお守りだ。
困ったときにはお祈りをしなさい、と、母がよく言っていた。
幼少の自分は、この人形のような呪い具を気味悪がって近寄ろうとしなかった。
そんなものも、今となっては限られた母との想い出の一つだ。
母を思いながら、シャブティを抱きしめた。
世界に居場所が欲しい、と。
少女は、哀しさも忘れたのに思わず涙を流した。

その涙は、一つの混沌を呼び寄せた。
波紋が広がるように、世界は歪み、混沌へと招かれる。

破壊せよ、破壊せよ、破壊せよ。
自由が破壊された世界。
その暗闇の中で、なお自由を求めるものから自由を奪うものの全てを。
破壊せよ、破壊せよ、破壊せよ。




468 : シャルロット・デュノア&ライダー ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:53:47 wyIWNRoM0

握りしめた拳を眺めるように、地面に転がる与太者を見下ろしていた。
人を模した、しかし、人ではない黒い影だった。
紅い眼球から涙が流れるように黄色の流線が頬を伝い、口元は怒りを噛みしめるように真一文字に唇が結ばれている。
人造人間。
張りのある黒い皮膚に隠された隆起した筋肉は、明らかに人のそれを大きく上回っている。

「痛てぇ……」
「ぃぁ……」
「ぅ……ぁ……」

最初の一人は運が良かった。
一人は首の根元を強く強打され、呼吸をすることでさえ苦痛を帯びる傷を負った。
一人は顎を強かに打ち付けられ、口元を動かすことすらままならない。
それを考えると、鎖骨と肩甲骨を折られて腕を動かせないだけの男は運が良いと言えるだろう。

元はといえば、見るからに『カモ』としか見えない少年に絡んでいっただけだった。
この暗黒の都市には相応しくない、気品と呼べるようなものを感じさせる動作をした少年だった。
そんな少年が一人で出歩いていれば、それはもう『カモ』以外の何者でもない。
だが、少年は一人ではなかった。
三人の与太者は力の化身が側に佇んでいたことに、全く気が付かなかった。
黒い、黒い、黒い、力そのものと呼べる人造人間。

「……ぁ」

与太者達は怯えるように、黒い異形の怪人を見つめる。
人造人間は興味を失ったように、不用心なまでにその与太者達へと背中を向けた。
そして、背後に居た自身の召喚者へと、その紅い眼球を向けた。
背後から重いものを引きずるような音が聞こえた。
与太者たちが、無様に逃げ去っているのだ。
人造人間も、召喚者も、もはや与太者に興味などない。

「……」
「……」

沈黙。
召喚者と人造人間は、お互いに言葉を発しない。
人造人間は、相も変わらずにその口元を真一文字に硬く閉めている。
紅い眼球が、より深く、より紅く光った。
少年と呼ぶにも華奢な召喚者は、その光に怯えるようにして細い肩を震わせた。

「お前は女だ」
「……」
「なぜ、偽る」

人造人間は少ない言葉で、少年と偽った少女へ尋ねかける。
少女は、シャルロット・デュノアは応えない。
正確に言えば、応えることが出来ない。
人造人間の、自身の召喚した従者であるライダーのサーヴァントの雰囲気に呑まれているのだ。

「何が……お前を縛っている……」
「……」

人造人間の言葉に、シャルは応えない。
自身を縛っているものは、それこそ、自分以外の世界の全てだ。
妾の子である自身は、自身の父から存在を認められていなかった。
利用価値があると判断されて、子であることを認められた。
いや、それは正しくない。
認められたのは『子』としてではなく、『道具』として、だ。
少なくとも、シャル自身はそう思っている。
そのシャルの思いこそが、シャルを束縛している。
子として親に認められない、まだ未成熟の子供であるシャルには自身の居場所はない。
この世界のどこにも、自身の居場所と呼べる場所がない。
だから、シャルの心を縛り付けているものは、自身を拒絶する世界そのものだ。


469 : シャルロット・デュノア&ライダー ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:56:31 wyIWNRoM0

「破壊だ……」

そんなシャルの心を見透かしたかのように。
シャルを縛り付けているものを感じ取ったかのよに。
大地すらも震わせるような、低い声で人造人間は呟いた。
その瞬間、シャルは今まで感じ取っていた震えの正体を理解した。
この震えは、ゴッサム・シティには付き物の与太者に絡まれていた時とは段違いの恐怖だ。
『破壊』に対する恐怖だ。
この世に居場所がないと感じていた自身すら世界が恋しくなるほどの恐怖。
『破壊』だ。

「俺は全てを破壊するもの……俺は全てを裁くもの」

胸の回路に指令が走る。
それこそが人造人間の存在証明。
シンプルにして、余りにも悍ましい指令。
その言葉が、人造人間自身から語られる。

「俺の名は……俺の名は――――」


――――『破壊だ<<ハカイダー>>』――――


破壊せよ。
束縛を秩序とするのならば、人造人間は混沌だ。
破壊せよ。
選民を正義とするのならば、人造人間は悪だ。
破壊せよ。
正義と悪が相対的なものであり、同時に正義の定義が定まっていない。
だからこそ。
人造人間ハカイダーは。
『罪悪』と名のついたスーパーマシンを駆り。
『自身こそが正義である』と傲岸に嘯く全てを。

――――『破壊』する。

『正義』の名の下に駆逐される『自由』があるのならば、縛り付ける『自由』という鎖を破壊する。
だが、解放された奴隷たちは勘違いはしていけない。
もしも、人造人間ハカイダーを『解放の英雄』という『鎖』で縛りつけようとするのならば。
必ず、その『鎖』を打ち破るために、人造人間ハカイダーは牙を向ける。
そうだ。
自由とは、そこに存在する自由は、誰も縛り付けることは出来ない。
罪悪に跨った破壊者には、本来関わってはならないのだ。

破壊せよ、破壊せよ、破壊せよ。

潰せ、壊せ。
この秩序という鎖で編まれた機械仕掛けの世界の全てを、破壊せよ。


470 : シャルロット・デュノア&ライダー ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:57:44 wyIWNRoM0
【クラス】
ライダー

【真名】
ハカイダー@人造人間ハカイダー

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:A 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:D

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
反骨の相:B
一つの場所に留まらず、また、一つの主君を抱かぬ気性。
自らは王の器ではなく、また、自らの王を見つける事のできない放浪の星である。
同ランクの「カリスマ」を無効化する。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
『ハカイダーアイ』という赤外線サーチ機能をもつハカイダーの目。
ターゲットを多次元的に捉えることが可能で、これによりハカイダーショットは百発百中の精度をもつようになる。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

【宝具】
『罪悪証明(ギルティ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
ハカイダー専用のバイク、ハカイダー自身と同じく対消滅エンジンを搭載している。
ハカイダーへの変身と同時に車体の青いランプが発光、アクティブとなる。
後部にはハカイダーショットのホルダーが取り付けられている。
最高速度は666km/h。


『破壊証明(ハカイダー)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:100人
『破壊者』の名を持ち、複数の兵器が装備されたハカイダーの機体そのもの。
数人をまとめて破壊する『ハカイダーショット』、『アームショット』を主兵装とし、隠し兵装として胸部に『破壊砲』を持つ。
他にも人間の脳髄に似た形状を持ち怒りとともに紅く発行する『ハカイダーブレイン』、
戦意を高揚させる第二の電子頭脳である『破壊回路』、
多角的な視覚と赤外線センサーを備えた『ハカイダーアイ』がある。
ハカイダーの自身の全ての兵装を扱い、世界の全てを破壊する。


『存在証明(ラスト・ジャッジメント)』
ランク:D 種別:対秩序宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
鎖を引き千切るもの、『破壊者<<ハカイダー>>』の逸話が昇華した宝具。
混沌が無法の一面を強く持つように、秩序は拘束の一面を強く持つ。
ハカイダーはあらゆる概念的な拘束術式・兵装に対して強い耐性を持つ。
また、属性が秩序であるサーヴァントと相対した時、筋力と耐久と敏捷を1ランクアップさせる。


471 : シャルロット・デュノア&ライダー ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:58:07 wyIWNRoM0

【weapon】
『ハカイダーショット』
ハカイダーの使用するショットガン、超高周波炸裂弾を発射する。
超高性能なショットガンであり、ハカイダーの能力と相まって百発百中である。
発射による反動・衝撃は凄まじく、ハカイダーと同等以上の能力を持たないロボットが撃った場合、肩や腕が吹き飛ばされる。
モデルとなった銃はレミントンM870。

『アームショット』
ハカイダーの右腕に隠されている小銃、ハカイダーショットとは弾丸が共通である。
ハカイダー本人のエネルギーを付加すればハカイダーショット以上の破壊力を発揮する。
作動システムは独立しているようで、腕を切断されても使用が可能で、通常版のミカエル戦車戦において使用される。
隠し武器的な扱いではあるがその威力は凄まじく、ミカエルの腕を一撃で破壊する。

『破壊砲』
胸部の十字型の傷から出現する三門の砲身。ディレクターズカット版にのみ登場。

【サーヴァントとしての願い】
破壊

【基本戦術、方針、運用法】
白兵戦において高いスペックを誇る。
反面、神秘という面においては適正が低く、神秘を前提とする防御に対しては突破性が低くなっている。

【マスター】
シャルロット・デュノア@インフィニット・ストラトス

【マスターとしての願い】
自らの居場所を求めている。

【weapon】
『IS(インフィニット・ストラトス)』
宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。
宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった。

ISはその攻撃力、防御力、機動力は非常に高い究極の機動兵器で特に防御機能は突出して優れている。
シールドエネルギーによるバリアーや「絶対防御」などによってあらゆる攻撃に対処できる。
その為、操縦者が生命の危機にさらされることはほとんどない他、搭乗者の生体維持機能もある。
核となるコアと腕や脚などの部分的な装甲であるISアーマー、
肩部や背部に浮遊する非固定装備(アンロックユニット)から形成されている。
前述のシールドエネルギーの存在から余計な装甲が必要ないため、搭乗者の姿がほぼ丸見えな形状だが、
ごく初期や軍用の機体には身体全体を覆う全身装甲(フルスキン)が存在する。

ISは武器を量子化させて保存できる特殊なデータ領域があり、操縦者の意志で自由に保存してある武器を呼び出すことができる。
ただし、全ての機体で量子変換容量によって装備には制限がかかっている。
ハイパーセンサーの採用によって、コンピューターよりも早く思考と判断ができ、実行へと移せる。

『ラファール・リヴァイヴ・カスタムII』
シャルロットの第2世代型IS、ラファール・リヴァイヴをカスタムした機体。
基本装備の一部を外した上で後付け装備用に拡張領域を原型機の2倍にまで追加しており、その搭載量は追加装備だけで20体になる。
高速切替と合わせ、距離を選ばない戦いができる。
機体カラーはオレンジ色。待機形態は十字のマークのついたオレンジ色のネックレス・トップ。

【能力・技能】
『IS適正』
操縦者がISをうまく操縦するために必要な身体的素質、ISランクとも呼ばれる。
値が高いほどISを使いこなす可能性が出てくるが、訓練や操縦経験の蓄積などで変化することもあるため、絶対値ではない。

【方針】
居場所が欲しい。


472 : ◆devil5UFgA :2015/05/13(水) 04:58:19 wyIWNRoM0
投下終了です


473 : ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:26:38 ZIy5hdNg0
投下させていただきます


474 : スカラムーシュ&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:27:12 ZIy5hdNg0


夏枯れの気配は英雄と美姫すらも例外なく捕まえる。
かつては太陽の如き輝きを放った栄光の季節も、やがて日が暮れるように穏やかな色に染まる。
殺して、逃げて、殺して、逃げて。
逃げ切った末に、演劇は終わったはずだった。
なのに、元よりカーテンコールを済ませた演劇なのに。
幕を閉めた演劇は、無遠慮に役者をたたき起こして、再び開かされた。
スカラムーシュは、疲れた瞳で虚空を眺めた。

――――ここで泣き寝入りしてしまうか?

スカラムーシュはニンジャだが、逆に言ってしまえばニンジャであるだけだ。
より強いニンジャは、それこそ、ネオサイタマに降り注ぐ酸性雨の雨粒の数ほども存在する。
目に焼き付いた赤黒のニンジャが、そうだ。
だからといって、これを受け入れろというのだろうか。
因果応報と呼ぶには、あまりにも遅すぎる。
ならば、三度。
三度目の演劇を開いてみせようではないか。


太陽の消え去った宵闇よりもなお昏い街の中を、その暗黒すらも上回る儚さで、人々は表情を絶望に染める。
宇宙殖民など稚気じみた夢。
人々は灰色のメガロシティに棲み、夜な夜な違法事項へ逃避する。
政府を嘲り笑う犯罪者の群れが、社会という人間の性を冒涜する。
ここはゴッサム・シティ。
0と1の空間に浮かび上がった、栄光の奇跡へと至るための昏い暗黒の都市だ。






475 : スカラムーシュ&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:28:16 ZIy5hdNg0

目を開ける。
ここは暗黒都市ゴッサム・シティ。
旧世紀のネオサイタマと呼べるような、未来のない街。
ネオサイタマに比べれば、ゴッサム・シティは電子ネットワークとサイバネ技術などないに等しい。
それでもこの都市は暗黒だ。
それでいい、『ニンジャ』である自分には相応しい舞台だ。

「シューッ……」

四方に『体験』のスピリチュアル・ショドーを飾ったザゼン・ルーム。
その中心でアグラするのは、黒緑色の装束を着たニンジャである。
俯いて動かずにいたその者がゆっくりと顔を上げる。
メンポの奥の双眸には気力が満ち、油断ならぬアトモスフィアが背中から立ち昇った。
道化のコードネームを自らにつけたニンジャは、すぅ、と息を吸った。
イメージするものは、赤黒のニンジャ。
見よう見真似だ、思えば、ニンジャのインストラクションとはそう言ったものだ。
所詮、サンシタに過ぎない自分では盗むものだ。
男、『カイダ』はニンジャだ。
『スカラムーシュ』として暗黒都市ネオサイタマの暗部を住処とし、より深い暗黒に利用されて全てを失った。
聖杯を使って、その全てを取り戻してみせる。

「イヤーッ!」

カラテシャウトを上げて、アグラの体勢から素早く立ち上がる。
バク転をしながら、部屋の中を動き回る。
スリケンが飛び、スカラムーシュが舞う。
常人が見れば、NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)症候群を引き起こすほどの、痛烈なニンジャ証明。
凄まじい勢いのまま動きまわり、スカラムーシュは『ターン!』と強烈な音を立てて扉を開けた。


『おかえりなさい、ボブ。頼んでおいたもの、買ってくれた?』
『それがさぁ、聞いてくれよジェニファー』
『はいはい、今度は何?ペンギンの大群が貴方に頼んだお魚を襲って奪っていったのかしら?』
『正解だよ、海戦大作戦のやつが俺の金を奪っていきやがったんだ』
『もう……』


途端にけたたましい音が響き渡る。
発信源はテレビだ。
テレビが放映され、その内容をテレビの前に陣取った男へと情報を届けている。

男は、英雄だった。

ニンジャでありながら、カラテのワザマエの未熟さ故にサンシタに過ぎないスカラムーシュとは違う。

男は、かつて存在した気象戦隊ウェザースリーの一人、『ウェザーレッド』。

その『ウェザースリー』の解散を経ての独立。

『天体戦士サンレッド』として、日本国神奈川県川崎市溝口を守り続けた偉大なるヒーローだ。


476 : スカラムーシュ&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:29:46 ZIy5hdNg0

「ふぁぁあ……」

サンレッドは大きな欠伸をこぼし、茶菓子へと手を伸ばした。
太陽を模したマークのついた赤いマスクはつけておるものの、その姿は淡い水色のTシャツと短パンを履いたラフな格好だ。
その姿は休日に自宅でくつろぐ土方の兄ちゃんとなんの違いもない。
違いがあるとすれば、この男、サンレッドは一年三百六十五日の毎日が休日であることぐらいだろうか。

「味っ薄いな、これ、おい……」

わざわざ買わされた御座に横になったまま、流れるポテトチップスを味わいながらテレビを見つめている。
アンテナの感度が悪いのか、どこかモザイクが掛かったようにテレビに雑音が交じる。
マスク越しに、眉をしかめた気がした。
だが、スカラムーシュは、不満気なサンレッドよりもより強く顔をしかめた。

「アーチャー! お前な、俺の、セイシンテキをだな!
 俺のカラテを、お前!」
「いいから、カイダ。さっさと煙草買ってこいよ、煙草」

スカラムーシュは己の鍛錬を横にくつろいでいたサンレッドを叱責するが、サンレッドは取り合わない。
それどころか視線も向けず、背後で何かを行っていたスカラムーシュへと、本名であるカイダの名で呼ぶ。
その姿が、スカラムーシュを余計に苛立たさせた。

「カイダはやめろ、俺はスカラムーシュだ!
 いいか、おい、俺はニンジャだ。
 だから、こう、威厳が居るんだよ!
 アトモスフィアだ!」
「分かったからよぉ……煙草だよ、煙草」

ふぁぁ、と大きく欠伸をして、サンレッドは立ち上がった。
そして、冷蔵庫を開き、缶コーヒーを取り出す。
何気なく目を向けたそのラベルに、しかし、怒りのままに目を見開いた。

「なっ……だからお前! なんで無糖なんだよ!
 ヤメろっつただろうが! 何度言えばわかるんだよ!」
「腹に入っちまえば同じだろ! 不満なら砂糖でも入れろよ!」
「てっめ、下手に出てりゃ調子に乗りやがって!」

今までの態度は下手に出ていたという強烈な事実を告げられ、頭がクラクラとする。
それでも、それでも必死に考える。
この面倒くさいサーヴァントを使って聖杯戦争を勝利する方法を。
スカラムーシュは考える。

「……アーチャー、それよりお前、早く偵察とか行けよ。
 聖杯戦争はもう始まってるんだぞ!」
「偵察……? あー、はいはい、偵察ね。
 無理無理、バイクないからよっ。
 バイクなきゃ遠出なんて出来ねえだろうが」
「……? なんでないんだよ、ライダーのクラスじゃないからか?」

サンレッドの言葉に、スカラムーシュは目を丸くした。
バイクを所持していない、乗り物はライダークラスでないと持ってこれないのだろうか。
あり得る、英霊の愛機だ。
それだけでクラスという役割を決定させるほどの強烈なものかもしれない。
アーチャーのままでは所持できないのだろう。


477 : スカラムーシュ&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:31:19 ZIy5hdNg0


「免停くらってんだよ、俺。
 いやぁ、参ったわ……不便なもんだな」


免停。
一瞬、スカラムーシュの頭が思考を止めた。
免停。
その言葉を噛みしめるようにして、振り絞るように口を開いた。

「め、免停……関係ないだろ、そんなの……
 だって、お前、サーヴァントが法律とか……関係、ないだろ……」
「馬っ鹿かお前、ヒーローが免停でバイク乗っていいわけねえんだろ。
 イメージってもんがあるんだよ、イメージってもんが」
「バカハドッチダー!!」

スカラムーシュは容赦の無い罵りの言葉を繰り出す。
慈悲深きブッダでさえも目を背けるほどの汚い言葉。
肩で息をしながら、言葉を続ける。

「サーヴァントに免許もなにもないだろ!
 糞、馬鹿にしてるなお前!」
「うっせー!」

ついにキレたサンレッドが硬く握りしめた拳を振りかざした。
スカラムーシュが防御姿勢に移るよりも早く、その拳はスカラムーシュの頭部にぶち当たる。

「あっつい!!」

サンレッドの放った拳がスカラムーシュに直撃し、スカラムーシュは情けなく悲鳴を上げた。
その拳には炎が纏っている。
カトン・ジツだ、それも信じられない程に高位の。
間違いなく、サンレッドはスカラムーシュの数倍、数十倍のカラテを持つ英雄だ。
『弓兵<<アーチャー>>』のクラスで顕現したサーヴァントは、しかし、一向にスカラムーシュの言葉に従わない。

「令呪は使わない、俺は冷静なんだ……!」

それでも、令呪は使わなかった。
たった三角の絶対命令権。
これを使用すれば、瞬間移動やただでさえ強力なサーヴァントの強化すらも可能となる。
そんなものを、窮地でもないのにただ従わせるためだけに使用するのは愚の骨頂だ。

「くっそ、ムカつくぜ……寝るぞ、おい」
「なっ!」

一発殴ってもなお怒りが収まらないか、サンレッドはふてくされたように茣蓙に転がった。
スカラムーシュは呆気に取られるが、すぐに怒りを再燃させる。
聞くに堪えない罵声をサンレッドの背中へと叩きつけた。

「バカ! ふざけるな!
 聖杯戦争を、お前、くそ、おい!」

サンレッドに、スカラムーシュの言葉は届かない。
気むずかしい……いや、我儘なだけのこのサーヴァントの扱いにスカラムーシュは頭を抱えるしかなかった。





478 : スカラムーシュ&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:32:48 ZIy5hdNg0

襲ってきた連中をカラテで殺害する。
突如手に入れたこの超常のニンジャの力。
しかし、それでもカイダは必死だった。
抱える美しい女に襲いかかろうとする銃弾を弾く。

追手を殺して。
追手から逃げて。
追手を殺して。
追手から逃げて。
追手を殺して。
追手から逃げて。

その繰り返しだった。
ニンジャの力に溺れる余裕などなかった。
それでも、その女は完璧な女だった。
命を懸けて守るに値する女だった。
やがて追手から完全に逃げ切った。

しかし、夏枯れの気配だけは英雄と美姫も例外なく捕まえてみせた。
逃げ切った先で、カイダはスカラムーシュという道化のサンシタ、『群衆』へと落ちた。
逃げ切った先で、女は日々のカイダの行動に不満を重ねる口うるさい同棲相手へと変わった。

「……それでも、か」

その光景を、サンレッドは見ていた。
これはスカラムーシュの、カイダの過去。
失った全て。
恋人を失った、どこか情けない男。
サンレッドは、その過去に呼ばれて顔を出した。

「情けないこった……」

それでも、笑うことが出来なかった。
超常の力を持ちながらも必死に銭を稼ぐ男と、不満げながらも男を待つ女。
立場は逆だが、自身と重ならなかったと言えば嘘となる。

「けっ……」

誰かの欲望のために拳を振るうのは、ヒーローとしての誇りがなくなる気はしていた。
それでも、カイダに自分を重ねてしまった瞬間、見捨てることが出来なかった。


荒れていた生前に重ねた因果だと呼ぶには、少し、遅すぎる。


479 : スカラムーシュ&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:33:36 ZIy5hdNg0

【クラス】
アーチャー

【真名】
サンレッド@天体戦士サンレッド

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:D 敏捷:C+ 魔力:C 幸運:C 宝具:A

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
単独行動:E-
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクE-ならば、マスターを失っても一時間ほどは現界可能。
生前、恋人に養われていた逸話から最低クラスのスキル適性を持つ。

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
魔力放出(炎):B
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
サンレッドの場合、燃え盛る太陽の炎が魔力となって使用、武器であるサンシュートから火炎弾を放つことができる。

変身:C
自らの状態へを変化させるスキル。
通常のバトルスーツの他に、筋力に+補正を得るヒュペリオンフォームと敏捷に+補正を得るプロミネンスフォーム。
そして、究極のバトルスーツであり自身の宝具であるファイアーバードフォーム。
通常のバトルスーツも含めて、合計で四種類のバトルスーツへと変身することができる。

無勤の墮落:A
『労働』という概念について強烈な嫌悪感を覚えてしまうバットスキル。
生前の『生活の一切を恋人に養われることで生活していた』という逸話から生じたもの。
サンレッドが乗り気でない限り、令呪を用いても100%のパフォーマンスを発揮することが出来ない。

【宝具】
『不死鳥は東の空から翔け昇る(ファイアーバードフォーム)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:500人
サンレッドの持つ太陽の力をより強まった状態へと至るためのバトルスーツ。
魔力放出(炎)のスキルランクがワンランクがアップし、また、耐久が2ランクアップする。
生前、使用に対してデメリットは存在しなかったが、サンレッドが強敵であると認めない限り使用しなかった。
今回はマスターの魔力供給も莫大なものとなるため、使用には制限がかかる。

後述の宝具、『天輪燦めく暴虐の赤光(コロナバスター)』はファイアーバードフォームでない限り、使用できない。

『日輪燦めく暴虐の赤光(コロナバスター)』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:1000人
太陽の中心核の温度を上回る2千万度の炎の玉を放ち、相手を焼きつくすまで追い続ける。
通常時の兵装である拳銃型の兵装『サンシュート』に換装して使用する。
その威力は絶大なものであり、太陽の炎の力を放出したエネルギー波は大気圏を突き破り宇宙空間へと飛び出すほど。
使用にはマスターからの魔力供給の他にも電力が必要であり、サンシュートに専用の充電器を繋いで充電する必要がある。


480 : スカラムーシュ&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:36:26 ZIy5hdNg0

【weapon】
『サンシュート』
拳銃型の携帯武器。
戦闘員クラスなら、これだけでイチコロとのことだが紛失している。
最後に見たのは2年ほど前に工具箱に入っていたときらしい。

【サーヴァントとしての願い】
特に無い。
ただ、スカラムーシュに焼きついた同棲相手の死のビジョンというトラウマに嫌悪感を覚えて現れた。

【基本戦術、方針、運用法】
白兵戦に秀でたサーヴァント。
しかし、気分屋であり強制すればスペックが落ちるという扱いづらいサーヴァントでもある。


【マスター】
スカラムーシュ(カイダ)@ニンジャスレイヤー

【マスターとしての願い】
一度目はハッピーエンド。
二度目は遅すぎたインガオホーによるビターエンド。
三度目の舞台演劇は、ハッピーエンドへと変えてみせる。

【weapon】
ニンジャソード

【能力・技能】
『ニンジャソウル憑依者』
太古の世界を支配した半神的存在であるニンジャの魂が憑依。
常人とは比べ物にならない身体能力を誇る。
しかし、カラテ、すなわち技術に限って言えば未熟である。

【方針】
聖杯を手に入れる。


481 : ◆devil5UFgA :2015/05/14(木) 03:36:38 ZIy5hdNg0
投下終了です


482 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/16(土) 00:12:36 W2y5Zsfc0
皆様、投下お疲れ様です
投下させていただきます


483 : 平坂黄泉&キャスター ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/16(土) 00:13:55 W2y5Zsfc0






――18時32分。 家の前に雑草が生えている。





「オオ、スバラシイ!私ノ成スベキ正義ガ予知サレテイク!」

黒い全身タイツに変身ベルト、そして膨れ上がった風船なのかてるてる坊主なのか分からない膨れ上がったマスク。
マスクにある赤い模様に真ん中にある黒い点は目玉を彷彿させる。
まるで特撮の戦闘員のような容姿の男が夕日の下、自宅の前で草むしりをしていた。

「倒スベキ悪ヲ見ツケテクレルコノ『正義日記』、アノ人カラ50円デ買ッテ正解ダッタ――ム?」

『正義日記』。この男、平坂黄泉が先ほど時空王デウス・エクス・マキナの使い「ムルムル」から50円で買った、
未来で起こる事象が映し出される『未来日記』。
「倒すべき悪事、守るべき弱者」が記録されているという。
黄泉は全盲で目が見えないため、ボイスレコーダーで予知を聞くという形を取っている。
買ったばかりのこの日記の便利さに有頂天になっていた男だったが、そこに誰かが近づいてくるのを優れた聴覚で感じた。
この間隔の短く、軽い足音は子供のそれだ。
黄泉はそれから瞬時にその正体を見抜いた。

「オカエリナサイ。先ホドハアリガトウゴザイマシタ。マダ私ニ御用デモ?」

この家に来る子供はムルムルくらいしかいない。黄泉は、「正義日記」を売ってくれた感謝も交えつつ応対する。

「済まぬ!お主にもう一つ、売り物があるのを忘れておった!さっきの『正義日記』より断然安い超特別特価、10円だがどうだ!?」

ムルムルは、懐から何やら怪しげなモノを出すと、10円で売ると言ってきた。
それは小さな人形で、ツタンカーメンを連想させるエジプト文明の道具のようだった。

「これを持っていれば、必ず悪を倒すことができると言われているお守りじゃ!あと10円、出す気にはならんか!?」
「買イマス、買イマス!モチロン、キャッシュデ!」

無論、負ける者はすべて悪、正義とは勝ち続けることを至上としている黄泉に10円を出し渋る理由はなかった。
『正義日記』が本物だったことでムルムルに対する信頼があったのも大きい。

「よし、これで60円のアイスを買うことができるぞ!」

そう言って黄泉から10円を受け取ると、ムルムルは走り去っていった。
このお守りこそ、黄泉が未来日記を使うデスゲームではなく、聖杯戦争の地・ゴッサムへ行く切欠となるシャブティであった。


◆ ◆ ◆


484 : 平坂黄泉&キャスター ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/16(土) 00:14:54 W2y5Zsfc0

衆愚の街と呼ばれるほどに汚い街、ゴッサムシティ。
そこかしこで犯罪が起きており、非常に治安が悪い。
そして今日も、警察に1本の電話がかかってくる。

「○○で、女の人が男の人にからまれています」

その電話を受け持った警官は適当に相槌を打ち、対応しておくとだけ返すと電話を切った。
強盗だとかレイプ事件ならまだしも、女が男に言い寄られているだけでいちいち警察を頼るな、と心の中で愚痴をこぼし、煙草を一本取り出した。
犯罪が起こるとそこに警察が駆けつけるのが筋だが、警官の人手は無限ではない。
痴話喧嘩や小競り合いごときにパトカーや人を割く余裕など、ゴッサム市警にないのだ。
5分経った頃には、煙草の煙と共に通報のことは既に警官の記憶から消えていた。





――いやあああああああああああっ!

汚らしい男の笑い声の中から飛び切り高い悲鳴が響く。
その女はただ単に通りがかったところをゴロツキにからまれ、
人気のない場所に連れ去られて今にもゴロツキ達から暴行を受けようとしていた。
偶然言い寄られている場面を遠目に見かけた市民が警察に通報したが、相手にされなかった。
場所を人通りのない場所へ移したので無関係な誰かが見かけて助けに入るなんてあり得ない。
もはや、その女を救う者はいないかのように思われた。

「誰か、助けて…!」

男の手が女の服を破かんと触れた、その時―――

「待テェェ――――イ!!」

1人の男の声がそこに木霊した。

「天ガ呼ブ、ゴッサムガ呼ブ、人ガ呼ブ!悪ヲ倒セト、私ヲ呼ブ!聞ケ!暴漢ドモ!!私ハ正義ノ味方!12th!」

高らかに名乗りを上げて塀の上に現れたのは黒い全身タイツにお馴染みの膨れ上がったマスクを被った黄泉であった。
それを見て女を襲おうとしていた男達も、当の被害者の女までもがその姿を見てポカンと口を開けている。

「ソコマデダ、暴漢ドモ!ソノ女性カラ汚イ手ヲ放セ!」
「なんだてめぇは!!?」

ゴロツキグループの1人が声を荒げる。
ゴロツキ達は各々の武器を構え、臨戦態勢に突入した……のだが。



しばらく黄泉を睨み付けていると、突如全員がげんなりした顔になった。

「――ってお前、最近噂になってる変質者かよ。いい年して漫画のヒーローにでもなったつもりか?ごっこ遊びもそろそろ卒業しろよ」

本来、ゴッサムシティにはバットマンというヒーローがいたはずなのだが、
電脳空間として再現されたゴッサムにはバットマンの姿は未だない。
バットマンさえいれば、黄泉のような自警活動を行う者も(どんな変態であろうと少しは)警戒されよう。
しかしこのゴッサムにおいて自警活動をする者はいないか、知名度が"まだ"低いかのどちらかで、
黄泉のようなコスチュームを纏って戦う者は、下手にゴロツキの前に姿を現しても基本的に『ヒーローの真似事』と馬鹿にされる立場なのだ。

「何ヲ言ウ!私ハ正義ノ味方ダ!」
「いや変態だろ」
「スーパーマンじゃああるまいし」
「今俺らが警察に通報したら逮捕されるの間違いなくお前だぞ変質者」

ゴロツキ全員の緊張した雰囲気が崩れ、脱力感が漂っている。
これを好機と見るや、女は黄泉に礼も言わず全速力で走って逃げていった。
ゴロツキ達は黄泉の登場に先ほどまで元気だった一物も萎えてしまったのか、誰も女を追うことはなかった。
女が黄泉に見向きもしなかった理由は単純、猛烈に黄泉に関わりたくなかったからだ。

「あーもうめちゃくちゃだよ。女まで逃げちゃったし」
「あのバカのせいですっかり萎えちまった。帰ろうぜ」

ゴロツキ達はすっかりやる気をなくしてしまい、黄泉と戦おうともせずに去っていった。
その場には塀の上で寂しくポーズを決めている黄泉だけが取り残された。

「フゥゥ〜……」

何かをやり切ったような達成感を含むため息と共に、黄泉はグローブで汗を拭った。
なぜマスクの上に汗を掻いているのかは敢えて言及しないでおく。

「正義日記デ何トカ女ヲ助ケルコトガデキタナ。暴漢ドモモ逃ゲテ行ッタシ、一件落着トイッタトコロカ」

片手に『正義日記』を持ち、黄泉は満足げに塀から「トォウ!!』と高くジャンプして飛び降りた。
黄泉がこの場所を突き止めることができたのは、正義日記が予知したからに他ならない。
黄泉はゴッサムシティに足を降ろした後も、正義日記を使い、こうして自警活動に励んでいるのだ。


485 : 平坂黄泉&キャスター ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/16(土) 00:15:28 W2y5Zsfc0




『…されどれどれど――』




黄泉が着地した瞬間、謎の声が響いたと思えば、黄泉の視線の先には虚空から巨大な棺桶が降り立った。
その金色の棺桶の頭部にはツタンカーメンのような顔が描かれており、
まるでムルムルから10円で買ったシャブティのよう……いや、シャブティそのものだった。
たった今、その棺桶を蹴破って出てきた筋肉質なミイラ男こそが黄泉のサーヴァント――復活のファラオ、アナカリスなのだから。

「――我、またまた出番なしなしなし……」

包帯で形成された筋肉質な肉体の頭部に位置する仮面から声が静かに、しかしどこか厳かに漏れ出る。
仮面の中で不気味に光る赤い目が、どこか残念そうにその輝きを鈍らせていた。

「ドウモ、キャスターサン。暴漢ドモト戦ウコトニナッタラ登場シテモラオウト思ッテイタノダガ」
「…この間漫画なる書物を読んだんだんだ。その中にいた者の掛け声声声、いたく気に入ったったった。我の華麗なる技に合わせて言ってみたかったものだのだのだ。『オラオラオラオラオラオラオラ……!』」

アナカリスは独特な残響音を残すように話す。
どこかで読んだ漫画の登場人物の台詞を自分も言ってみたかったと残念がっている。

「漫画ヲ読メルトハ羨マシイ。私ハ全盲ダカラ、キャスターノヨウニ読ムコトガデキナイ」

全盲でも日常の生活に支障はないが、視覚にしか頼れないものは流石の黄泉でも使えない。
そんなアナカリスを羨ましく思いつつ、黄泉は次に自らの正義を振るう場所を探るため、正義日記に耳を傾ける。


――17時10分。 ○○ストリートの路地裏で子供が不良に寄ってたかっていじめられている。


「ムッ!」
「ヌッ! ! !」


未来が予知されたのならば、すぐにでも向かわなければ。
黄泉はすぐにこの場を離れ、表通りに出る。
アナカリスは霊体化し、黄泉に同行する。
歩道を駆ける黄泉を見る者は例外なくその身を凍り付かせるが、黄泉は臆面もなくその道をただ走る。

『聖杯戦争においてもその正義を貫くぬくぬく、その心意気やよしよしよし』
「私ハ聖杯戦争ノ中デアロウトモ正義ヲ全ウスルダケダ!」

平坂黄泉の正義観。それは「倒すべき悪に勝つ」こと。アナカリスも既にそれを承知している。
勝つことこそが正義であり、負ける者はすべて悪。
聖杯戦争においても、自分が悪と見なした者全てに勝つことが黄泉の願いであった。
ゆえに、黄泉は正義日記に従い、こうして自警活動に取り組んでいる。
いつか正義日記に自分の倒すべき巨悪が記録されることを信じて。





(この平坂黄泉という者ものものも、我が国を救った暁にはにはには我が民の1人にしてしんぜようようよう…)

5000年前に栄華を誇った国の王、アナカリスは滅んでしまった自国を復活させるために聖杯を欲していた。
キャスターのクラスで召喚されたアナカリスのマスターは、己の正義に殉ずる正義の味方であった。
このゴッサムシティで死を恐れずに善行を積むその姿は王の尊敬に値する。

(我が国家の国民たる資格を持つ者者者、それ即ち永久の幸なりなりなり…)

アナカリスは黄泉と共に勝ち続けることを決意した。
勝利に勝利を重ねていけば、必ずやその先に見えてくるのは聖杯だからだ。

アナカリスはその黄泉の正義に賭け、今も霊体となって黄泉に付き合っているのだ。


486 : 平坂黄泉&キャスター ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/16(土) 00:17:42 W2y5Zsfc0
【クラス】
キャスター

【真名】
アナカリス@ヴァンパイアシリーズ

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷E 魔力A 幸運A 宝具B

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
キャスターの場合、神殿ではなく“王国”を形成する事が可能。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。
キャスターは棺、包帯などエジプト文明の道具の作成を得意とする。

【保有スキル】
ミイラ:B
ピラミッドにて埋葬されていた死体が復活した姿。マミー。
朽ち果てたミイラ状態の本体を包む、肉体代わりの包帯を自在に操作する能力を持ち、
包帯の伸縮による打撃と道具作成で作り出した棺、呪術を組み合わせることで数々の奇怪な攻撃を行える。
キャスターはミイラ化した脆い死体が弱点だが、その本体を包帯で幾重にも包むことにより耐久力を著しく上げており、耐久のランクはBとなっている。

カリスマ:A+
大軍団を指揮・統率する才能。
A+ランクともなると人望ではなく魔力、呪いの類である。
民より崇められたキャスターの力は国が滅んで5000年経ってもまったく衰えることはなかった。

使い魔:B
地縛霊の一種、「カイビト」を複数使役することができる。

呪術:A
キャスターは6000万人の労働力を動員し、3133人の人柱を捧げたピラミッドから復活したことにより呪術を扱える。
キャスターの場合、空間転移や一定時間の浮遊、時空などが使える。
敵の飛び道具を跳ね返す『言霊返し』に連続して呪術による攻撃を浴びせる『ファラオマジック』という技もある。

神性:B
死後、自らが神となり復活して国を守ることを予言した上、
民からは神同様に崇められていたためこのスキルを持つ。

【宝具】
『王家の裁き(われをあがめよめよめよ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:3
口から呪文と共に煙を吐き出し、それを浴びた相手は一定時間(最大で10ターン)無力な姿に変えられてしまう。
この状態に陥ると、宝具を含めた全ての能力を封印され、逃げる以外の抵抗手段を失ってしまう。
しかもこの煙はキャスターの呪術によるものであるため、対魔力では無効化できない。

が、この宝具の変身の正体はただの幻影で、無力な姿だと相手と周囲の人物が思い込まされているだけである。
そのため、このことを看破された相手には能力封印含めて効かなくなるので注意。

『黄金の絶対神(ファラオイリュージョン)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:30
キャスターの国の民が思い描いた唯一神としてのアナカリス一世の姿の具現。
巨大化し、筋力と耐久を著しく上昇させる。
巨大化している間は上半身と顔と分離した両手だけになって浮遊している姿となる。
この2つの手は遠隔操作が可能で、巨大な手による強烈な打撃で敵を一方的に追い詰めることができる。
キャスターはこの状態からいつでも元に戻ることが可能。

【weapon】
・生前の肉体を再現した包帯、棺、呪術を組み合わせた変則的な攻撃

【サーヴァントとしての願い】
自分の王国を復活させる。
ついでに黄泉もその国の一員に加えてあげるつもり。

【人物背景】
古代エジプト出身のミイラ男。残響音のある口調が特徴。
一見すると大柄かつ肉付きの良いミイラらしからぬ体格であるが、
これは彼の遺体を覆う包帯が生前の体格を再現しているためであり、その中身は一般的なミイラ化状態にある。
漫画『魂の迷い子』では中身の脆い本体を突かれてリリスに敗れたように、基本的にこの本体が弱点となる。

5000年前に栄華を誇った古代エジプト王朝のファラオ。
生前に自身の復活を予言しており、数千年後、地球外生命体の接近を受けて復活。
しかし、アナカリスが目覚めた現代では、既に自国は滅亡していた。


487 : 平坂黄泉&キャスター ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/16(土) 00:18:39 W2y5Zsfc0
【マスター】
平坂黄泉@未来日記

【マスターとしての願い】
自分の正義を全うする。
倒すべき悪に勝つ。

【weapon】
・『正義日記』
未来で起こる事象が映し出される『未来日記』の一つ。
未来の「倒すべき悪事、守るべき弱者」を記録したものである。
しかし、あくまでもこの日記に予知される正義と悪は、彼の主観によるもの。
『ゴミが落ちてる』や『迷子情報』程度のことでも知らせてくる。
また、全盲故にこの日記は携帯電話ではなくボイスレコーダーである。
日記に反した行動を起こすことで自身に不利な状況を回避することもできる。
その際、本来体験するはずだった日記の内容がノイズと共に書き換えられる。

【能力・技能】
・優れた聴覚
全盲であるが、聴覚でそれを補っている。

・催眠術
他者の操作、集団の撹乱、記憶の消却すらできる。

【参戦方法】
『正義日記』を買った後、戻ってきたムルムルから10円でシャブティを買った。

【方針】
倒すべき悪が正義日記に記録されるまで、日記に従い自警活動を続ける。


488 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/16(土) 00:20:18 W2y5Zsfc0
以上で投下を終了します
アナカリスのステータス表の一部の記述は
◆1k3rE2vUCM氏のザベルのステータス表を参考にさせていただきました
ありがとうございます


489 : ◆7DVSWG.5BE :2015/05/16(土) 13:59:35 EY5UI88A0
皆様、投下お疲れ様です
投下させていただきます


490 : ミケランジェロ&アサシン ◆7DVSWG.5BE :2015/05/16(土) 14:04:16 EY5UI88A0
ゴッサムシティ

そこは犯罪者が我が物顔で歩きまわり、それを取り締まるはずの警察は賄賂やマフィアとの癒着により全く機能していない。
犯罪者にとっては楽園。一般市民にとっては地獄。それが犯罪都市ゴッサムシティ。

その犯罪都市の路地裏と言えば文字通り無法地帯である。
血や吐瀉物など様々な異臭が充満し、恫喝の声や悲鳴がどこかしらから聞こえてくる。
街灯はほぼほぼ叩き割られ周囲は薄暗いが辺りを見渡せば薬物売買が平然と行われ、人が血を流し倒れている。
しかし誰ひとりして警察に連絡をすることもなくそれどころか見向きもしない。
ここではそれが日常だからだ。
そんな無法地帯で似つかわしくない声が響き渡る。

「レオ〜、ラファ〜、ドナ〜、みんなどこ〜?」

迷子か何かだろうか?声色からしてティーンエイジと思われる。その声は若干震えていた。
しかしその声に反応するものはなく、ただ空しく路地裏に響き渡る。

その声の主の元に鉄パイプを持った屈強な男達が迫ってきている。
彼らはその声の主の身ぐるみを根こそぎ剥ぐつもりだ。
いや身ぐるみだけならまだマシ、最悪殺されて臓器を売買されるかもしれない。
しかしそれを咎めるものは誰もいない。
逆に暢気に大声を出してこの路地裏を闊歩しているこの声の主が悪いと片付けられる。
それがこの路地裏の住人の価値観だ。

男の一人が鉄パイプを振り上げ、そして振り下ろす。
頭を殴打する感触を予期したが、それは裏切られ手に残る感触はコンクリートを殴打したことにより生じた手のしびれだった。
しびれに構わず鉄パイプを握り直し殴打する態勢を整えるが声の主は何時の間に安アパートの壁面を駆け上がっていた。
数秒で屋上にたどり着き、すぐさま別の建物の屋上に飛び移る。
その時月を隠していた雲が除かれ、月明かりが周りを照らした。
屈強な男は自分の襲撃を躱した人物を一目見ようと見上げるとその人物はカメだった。

カメでニンジャでティーンエイジだ。
元は普通のカメだったがミュータント化しセンセイから忍術を学び、地球外生命体や悪の軍団からNYの平和を守る正義のヒーローになった。

ある日、同じカメのミュータントであり兄弟であるレオナルド、ラファエロ、ドナテロと共に夜のパトロールをおこなっていた。
そして廃工場で犯罪行為に手を染めているフット軍団の発見し、その計画を阻止した。
それはミケランジェロにとって日常といってよい出来事だった。
家路に帰ろうとした時、ふとある物に目が留まった。
何故だか無性に興味を引き付けられ家に持って帰ろうとシャブティ像に触った時にはゴッサムシティの路地裏に移動していた。


491 : ミケランジェロ&アサシン ◆7DVSWG.5BE :2015/05/16(土) 14:06:42 EY5UI88A0
「みんなどこにいったのかな?まさかボクがみんなピザを勝手に食べたから怒って帰っちゃったのかな?」

ミケランジェロはあるビルの屋上の床に腰を落としながら独り言をつぶやく。
兄弟たちを探すために街を駆け巡っている中ある疑惑が思い浮かんでいた。
ここは自分が住んでいるNYではないのでは?
実際ここは電脳世界で再現されたゴッサムシティなので当然である。
そしてミケランジェロは自分が聖杯戦争に招かれたことをまだ理解していない。
いつも傍にいるはずの兄弟がいないことが見知らぬ土地にいるかもしれないというミケランジェロの不安をさらに駆り立てる。

「きっとボクのためにサプライズパーティを開こうとして先に帰って準備しているんだ!何のパーティか知らないけど」

しかしミケランジェロは基本的に楽天的で物事を深く考えない性質である。
不安を頭の奥底に追いやり今の状況を自分の良いように解釈した。

「まっててね〜今誕生日祝われるマンが行くから!」

そう言うとミケランジェロは屋上から路地裏のマンホールへ駆け下りる。
マンホールの蓋を開け下水道に降りようとした時にある人物に目が留まる。

緑を基調とした体色、虎の面影を見せる顔面、片腕に備えられた堅牢な爪。
それは明らかに人間ではなく化け物と言っても差し支えないだろう。
普通の人間なら見た瞬間真っ先に逃げ出すだろう。

「ねえ君、ミュータント?その爪かっこいいね」

だがミケランジェロはまるで友達に声をかけるように話しかけた。
自分がミュータントであるがゆえに異形に対する偏見はまるでない。
さらに兄弟の中で一番人懐っこい性である。
だがミュータントであるがゆえか友人は決して多くない。
声をかけたのはもしかしたら友達になろうとしたのかもしれない。
しかし緑の怪物はミケランジェロの声掛けに攻撃で返答した。

「うわ!何!?何!?」

ミケランジェロは緑の怪物の袈裟切りをバックステップで回避する。
緑の怪物は構わずミケランジェロを追撃し爪を振り下ろす。
その風切音だけでその一撃が恐ろしい威力を秘めていることがわかる。当たりさえすればミケランジェロの身体を容易く切り裂くだろう。
しかしミケランジェロも忍術を学びし者。持ち前の俊敏性で攻撃を躱していく

「もう怒った!やっつけてやる!よく見ればその爪も超ダサい!」

友好的に声をかけたのに襲われた。
自分の行為を無下にされたことに怒りを覚えていた。
襲ってくるなら迎撃するまでミケランジェロは自分の得物のヌンチャクを取り出す。
だがいつの間に集まっていた緑の怪物15体を見てその顔は青ざめることになる。

「というのはジョークだからね……」

そう言うと踵を返して走り去る。
自分ではこの数は相手には出来ない。ならばとる手段は逃げの一択。
後ろを振り返ることなく全速力で走り曲がり角を右に曲がった瞬間に急ブレーキをかける。
ミケランジェロの目に飛び込んできたのは壁だった。
只の壁ではなく高さ数十メートルはある大きな壁だった。
自分の脚力では飛び越えることは不可能。
他の建物を利用して飛び越えようと考え左右を見渡すが周りも同じような壁で囲まれていた。

「わあ〜どうしよう!どうしよう!どうしよう!」

文字通り頭を抱えながら悩んでいると緑の怪物はすぐそばに迫っていた。

「いや〜その爪マジかっこいい!顔もトラみたいで超クールだよ!
どっかのドックボッコとは大違い!その緑色も最高にイカてるよ!そういえばボクも緑色!もしかして兄弟!……だから見逃してくれない?」

その問いに緑の怪物は咆哮で答える。
明らかに殺意を漲らせた30の瞳がミケランジェロを見据えていた。

「やっぱりダメ?」

ミケランジェロはヌンチャクを振り回しながら戦闘態勢に入る
数々の戦闘経験からこの怪物一体で自分と同程度の実力と判断する。
それがあと14体。いかに絶望的な戦いかは肌身に染みていた。

「ブヤカシャー!」

だが戦わなければやられる!独特の掛け声を発しながら緑色の怪物にむかって跳びかかるが。


492 : ミケランジェロ&アサシン ◆7DVSWG.5BE :2015/05/16(土) 14:11:29 EY5UI88A0
「サイゴン!」

突如謎のシャウトが聞こえたと思ったら、緑色の怪物の首は切断されていた。
その傍には迷彩柄のシノビ装束を身に纏い、異様な円錐形の編み笠を被った謎の男が立っていた。

「大丈夫か!まだ部隊の生き残りがいたのか!?今からそのべトコンを始末する!」

「GARAAA!」

緑色の怪物は雄叫びをあげながら迷彩柄のシノビ装束を纏った男に襲い掛かる!

「サイゴン!」

怪物は迷彩柄のシノビ装束の男に噛みつこうとするがその前に手に持っているマチューテで怪物の首を切り飛ばす!
飛ばされた首は近くにあったゴミ箱に吸い込まれた。ポイント倍点!

「GARAA!」

緑色の怪物は雄叫びをあげながら迷彩柄のシノビ装束を纏った男に襲い掛かる!

「サイゴン!」

怪物は迷彩柄のシノビ装束の男をその爪で切り裂こうとするがその前に手に持っているマチューテを素早く投擲!
マチューテは額のど真ん中に突き刺さる!ストライク!

「GARAAA!」

緑色の怪物は雄叫びをあげながら迷彩柄のシノビ装束を纏った男に襲い掛かる!

「サイゴン!」

怪物は迷彩柄のシノビ装束の男の心臓に爪を突き刺そうとするがその前に手に持っているマチューテが怪物の心臓に突き刺さる!ワザマエ!

「サイゴン!」「GARAAA!」「サイゴン!」「GARAAA!」「サイゴン!」「GARAAA!」
「サイゴン!」「GARAAA!」「サイゴン!」「GARAAA!」「サイゴン!」「GARAAA!」
「サイゴン!」「GARAAA!」「サイゴン!」「GARAAA!」「サイゴン!」「GARAAA!」


数分後そこは目を覆いたくなるような光景が広がっていた。
15体の緑の怪物は全滅し、切り落とされた手足があたり一面に散乱していた。

「ウップ……夜ご飯に食べたピザ吐きそう……」

ミケランジェロは口元を抑え顔色を青くしている。
このような悲惨な光景を目の当たりにしたら気分が悪くなるのも当然と言える。

「ドーモ、フォレスト・サワタリです。お前名前は!」
「ええっとミケランジェロ。レオ達からはマイキーとも呼ばれているかな」
「ミケランジェロ!周囲一帯は直に米軍のナパーム弾が落とされる。直ちに塹壕に避難するぞ」
「ちょちょっと待って。米軍って何!?ナパーム弾って何!?」

そう言うと迷彩柄のシノビ装束の男はミケランジェロを素早く抱きかかえ、マンホールの蓋を開け下水道の中に消えて行った。

フォレスト・サワタリはこの聖杯戦争においてアサシンのクラスで召喚されたサーヴァントだ。
サワタリはニンジャであり、そして狂っていた。
その身に宿したニンジャソウルはグエン・ニンジャ。
そしてソウルの影響で偽りのベトナム戦争の記憶に支配されていた。

先ほどもナパーム弾が投下されると言っていたが現実にはそのようなことが起こるわけもなく、それどころか上空には飛行機も通っていなかった。
しかしグエン・ニンジャのソウルの影響でナパーム弾を落とそうとする爆撃機の旋回音が確かに聞こえていたのだ。
サワタリは薬物中毒者めいて偽りのベトナム戦争の幻覚を見ることがある。
その記憶が彼を狂気に誘ったのだ。


493 : ミケランジェロ&アサシン ◆7DVSWG.5BE :2015/05/16(土) 14:13:42 EY5UI88A0

下水路内は悪臭が漂い、壁面には湿気と不衛生な環境のせいか苔がびっしり生えている。
そこらじゅうでドブネズミが我が物顔で駆け巡る劣悪な環境。
しかしサワタリはミケランジェロを抱えながら平然と地下下水路を駆け巡り、適当な場所に腰を掛ける。

「何だよ!いきなり下水道に連れてきて、それにレオ達はどこ!?」
「レオ達とは何者だ?」
「ボクの家族だよ!」
「そうかミケランジェロよく聞け。我々の部隊はべトコンからの襲撃を受け、生き残りは我々二人のみになった。そしてお前の家族とも分断された。
だがこの戦争をサヴァイブし、財宝を手に入れなければならない!」

サワタリもサーヴァントとして現界している時点で聖杯戦争の知識は授かっている。
普通のサーヴァントならばこのゴッサムシティは電脳世界であり、聖杯戦争に勝ち残らなければ元の世界に帰れなく、勝ち抜けば聖杯によって己の願望が叶えられると伝えられただろう。
だがグエン・ソウルの影響で狂ってしまったサワタリは正しく聖杯戦争の仕組みを伝えることができなかった。

「ちょっと待って!さっきから意味がわからないよ!フォレサワ!戦争って何!?レオ達はどこ?」
「フォレサワとは俺のことか?」
「そう!フォレスト・サワタリで略してフォレサワ。カッコいいでしょ?」

ミケランジェロは得意げな顔でサワタリの反応を求めるがそれを無視し、話を続ける。

「この街はナムの地獄と化す。俺たちはサヴァイブしなければならない」
「ちょっと答えになってないんだけど……」

ミケランジェロは意思疎通がとれないサワタリに対してイライラしていた。
今までに会ったことないタイプの人種。
これなら宇宙人のクランゲのほうがまだマシにコミュニケーションが取れるとも考えていた。

「余計なことを考えずにサヴァイブに専念しろ。そうすればお前の兄弟にも会える」
「本当に〜?」
「そしてサヴァイブし続ければお前が望むものが手に入る」
「マジで!!するするサヴァイブしちゃうよボク!」

気分が沈んでいたが『兄弟に会える』『望むものが手に入る』という言葉を聞いてやる気を出し始める。
ミケランジェロは純粋な性格だ。
普通なら初対面の人間から望むものが手に入るとなど都合のいいことを言われても簡単には信じないだろう。
しかしその純粋さ故にすぐに人を信じる。
何よりあの絶望的状況の自分を助けてくれた恩人が騙すはずがないという思い、とりあえず信じることにした。

「とりあえずはこの下水路に拠点を作る。適した場所を探すぞ。ついてこいミケランジェロ」

そう言うとはしめやかに下水路を走り出し、ミケランジェロも置いていかれない様に全速力で走り出す。
サワタリはミケランジェロの姿に生前自分が創設したクラン。サヴァイヴァー・ドージョーの面々の姿を見ていた。
自分は何のために召喚されたのか分かっていなかった。
だが緑色の怪物に囲まれているミケランジェロを見た時に理解する。
俺はこの未熟なバイオニンジャをこの聖杯戦争で生き残らせるために呼ばれたのだと。
ノト―リアス、ディスターブド、カマイタチ
彼らのように自分未熟さで命を落とさせたりはしない!
それがサヴァイヴァー・ドージョーのリーダーである自分の役目であると。

(ボクが今欲しいものか〜やっぱりピザかな!しかも一生分!)

一方ミケランジェロはサワタリの姿を追いながらまだ手に入れてもいない報酬のことを考え涎を垂らしていた。

サワタリの言う通り生き残ることができれば確かに兄弟の元へ帰れるし、望むものも手に入る。
ただミケランジェロは知らない。この聖杯戦争は命がけのイクサであり。
自分の望みを叶えるためには最低でも一人のマスターの願望と元の世界への帰還という望みを絶たなければならないということを。


494 : ミケランジェロ&アサシン ◆7DVSWG.5BE :2015/05/16(土) 14:17:00 EY5UI88A0
【クラス】
アサシン

【属性】
中立・中庸

【真名】
フォレスト・サワタリ@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力B 耐久A敏捷C魔力D 幸運D 宝具D

【クラス別スキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。
完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。

【保有スキル】

戦闘続行:A
グエン・ソウルがもたらした生命力。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる

仕切り直し:B
サヴァイヴァー道場のリーダーとして培われた判断力。的確な判断で戦闘から離脱する。
サヴァイブするためには逃げることも必要である

単独行動:A
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクAならば、マスターを失ってから一週間現界可能。

精神汚染E
グエン・ソウルにより偽りのベトナム戦争の記憶を植え付けられ精神が錯乱している。
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
しかしランクが低い為ある程度コミュニケーションはとることができる

【宝具】

「ナムの地獄(キリングフィールド・デス・トラップ)」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:10 最大補足:3人

サワタリの類まれなる技術が宝具として昇華したもの。
そのニンジャ野伏力で敵に気付かれない間にトラップを設置し、トラップが発動すれば相手に十全の力を発揮させることもなく死んでいく。恐るべき殺戮領域を構築する。

サワタリは道具作成のスキルはないが宝具使用時にはトラップの道具を作成することが
可能となる。
生前にトラップに使用した木杭、トラバサミ、ワイヤー、鍋爆弾などは作成可能。
マシンガンなど生前に使用したことがないものは作成できない

トラップ設置時のサワタリの気配遮断能力のランクはA+となり、設置終了後は気配遮断のランクはBに戻る。

【weapon】
編笠
彼のトレードマーク。盾としてスリケンなどを防ぐほか、その淵はブレードになっており、隠し持った奥の手としてここぞというときの投擲武器になる。

タケヤリ
鋼の四倍の強度を誇るバイオバンブー製の槍。組み立て式のようだ。

ククリナイフ
ネパールの少数民族・グルカ族が生んだコンバットナイフ。「く」の字型に湾曲した刀身が特徴。サワタリは数本を所持している。

マチェーテ
いわゆる鉈。森林行軍のために使われた作業用の刀。「マチェット」とも。

【人物背景】
元は暗黒メガコーポの一つヨロシサン製薬の社員。
ニンジャソウルが憑依しニンジャとなる、それに伴って実験体であったバイオニンジャを引き連れ脱走。
その後仲間のバイオニンジャと共に過酷な環境のネオサイタマで気高きトラのように逞しく生きていく。

【サーヴァントとしての願い】
この戦争をサヴァイヴする

【マスター】
ミケランジェロ@ミュータントタートルズ(ニコロデオン版)

【マスターとしての願い】
ピザかな!しかも一生分!

【weapon】
ヌンチャク
ヌンチャクは鎖鎌にも変形する。

【能力・技能】
スプリンター先生から教わった忍術。
その戦闘力、身体能力は常人をはるかに凌駕する

【人物背景】
元は只の普通のカメだったがミュータジェンを浴びたことにより突然変異した人間並みの体格と知能も持ったミュータントタートルズになる。
性格はお調子者で好奇心旺盛。
そのお調子者さから度々トラブルを引き起こすがどこか憎めない。

【方針】
とりあえずサワタリの言う通りゴッサムシティでサヴァイヴする。


495 : ミケランジェロ&アサシン ◆7DVSWG.5BE :2015/05/16(土) 14:18:01 EY5UI88A0
以上で投下を終了します
アナカリスのステータス表の一部の記述は
◆mcYwf5j60氏のザベルのステータス表を参考にさせていただきました
ありがとうございます


496 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/16(土) 15:11:15 OFa6elAc0
皆さま投下お疲れ様です
投下致します


497 : ミュウツー&アーチャー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/16(土) 15:12:39 OFa6elAc0
それは、造られた生命だった。
幻の生き物の細胞を元に人のエゴによって産み出された複製であるそれは、自身の存在について自問自答を繰り返し、その果てに逆襲という答えを選択した。
それは逆襲の中で自身のオリジナルと邂逅を果たす。両者がとった行為は闘争だった。
互いに同じ存在、だからこそ許せない。自分こそが本物であると主張する為の闘い。
だがその闘いは、一人の少年によって止められる事となる。
文字通り、身を犠牲にした少年を悲しむ心に、オリジナルもコピーも変わりはなかった。
それは争いをやめ、自らの作ったコピー達とともに飛び立った。逆襲の為ではなく、今ここにある一人の生命としてこの世界のどこかで生きていく為に。

それは造られた存在だった。
ある英雄の複製として造られたそれは、記憶すらコピーした事で自身を本物と誤認し、製作者が仕込んでいたチップの影響によって人類へ宣戦布告した。
それは彼を止める為にやってきた同胞達との戦いの中で、倒した筈のオリジナルと再会を果たす。両者がとった行為は闘争だった。
同じ存在は二人もいらない。そういってそれは自分が本物である証左の為に銃口を向ける。
だが、知ってしまう。自身こそが英雄の複製であったという事実に。そして、その銃口が大切な存在である少女を撃ち抜いてしまった事で戦いは終わりを告げた。
自身が複製であったと認識し、絶望しながらも、その心にはオリジナルとは異なる自我が芽生え始めていた。
そして、自我を手に入れたそれは英雄の無実を晴らす為に、英雄の偽物となる事でその機能を停止した。

これはそんな複製達の物語の続き。
光もささない暗い街で、複製同士が邂逅する。
一人は主として、一人は従僕として。この悪趣味な戦のプレーヤーとして呼び寄せられた。

「よろしく、ボクはアーチャー。英雄の、偽物さ」

自嘲まじりの紹介が都会の喧騒に呑まれて消えた。


498 : ミュウツー&アーチャー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/16(土) 15:13:29 OFa6elAc0
ビルの屋上に一つの影が立ち、煌びやかに輝くゴッサムの街を見下ろしている。
白い異形、それはまさしく現在ゴッサムを騒がせているUMAと同じ姿をしていた。
彼を知る者がいれば、彼をこう呼んだだろう。
ミュウツー、幻のポケモン・ミュウの遺伝子から作り出された、科学の申し子だと。
一陣の風がゴシップ誌の一面記事を吹き上げる。
ミュウツーが手を翳すと風で巻き上げられたゴシップ誌がピタリと動きを止め、彼のもとへ引き寄せられた。
一面を飾っていたのは遥か上空を舞うミュウツーらしきものの写真だった。
もっとも、それは彼にとって覚えのない、単なる捏造写真ではあったのだが。

「随分と人気者になっちゃったね」

不意に声が響くと同時に影が降り立つ。
それは一人の少年だった。

『どうでもいい事だ。騒ぎたい奴は勝手に騒がせておけばいい、アーチャー』

アーチャーと呼ばれたサーヴァントの脳内にミュウツーの声が響く。
どこからかサイレンの音が聞こえる。
どこかで、また事件があったのだろう。鳴り響くサイレンはゴッサムでは当たり前の様に聞くBGMだ。

『サーヴァントの気配が濃くなってきた』
「わかるの?」
『気配だけだ、明確な場所までは捕捉できない』

エスパーポケモンであるミュウツーは日に日に濃くなっていく気配をその身で感じていた。
かつて出会った少年の様に眩しく、純粋な意思も。
かつて自分を作り出し、また兵器としようとした男達の様に暗く、淀みきった意思も。
苛烈なもの、穏やかなもの、切実なもの、陳腐なもの、高潔なもの、低俗なもの。
この作り物の街の人間とは違う、自らの意思で戦いに身を投じる者達の強大な意思と様々な感情の波を、漠然とながらに感じていた。
そして、それは決戦が近づいてくる事を意味している。


499 : ミュウツー&アーチャー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/16(土) 15:15:02 OFa6elAc0
「随分と人気者になっちゃったね」

不意に声が響くと同時に影が降り立つ。
それは一人の少年だった。

『どうでもいい事だ。騒ぎたい奴は勝手に騒がせておけばいい、アーチャー』

アーチャーと呼ばれたサーヴァントの脳内にミュウツーの声が響く。
どこからかサイレンの音が聞こえる。
どこかで、また事件があったのだろう。鳴り響くサイレンはゴッサムでは当たり前の様に聞くBGMだ。

『サーヴァントの気配が濃くなってきた』
「わかるの?」
『気配だけだ、明確な場所までは捕捉できない』

エスパーポケモンであるミュウツーは日に日に濃くなっていく気配をその身で感じていた。
かつて出会った少年の様に眩しく、純粋な意思も。
かつて自分を作り出し、また兵器としようとした男達の様に暗く、淀みきった意思も。
苛烈なもの、穏やかなもの、切実なもの、陳腐なもの、高潔なもの、低俗なもの。
この作り物の街の人間とは違う、自らの意思で戦いに身を投じる者達の強大な意思と様々な感情の波を、漠然とながらに感じていた。
そして、それは決戦が近づいてくる事を意味している。

「それで、君はどうするのかな」
『どのような願いがあったとしても、それが私の命を明け渡していい理由にはならない。
命が、自らの場所を脅かすものが現れたのならば戦わなければならない。
例えそれが、私やお前のような"複製"(コピーやクローン)だったとしてもだ』

アーチャーの瞳が、精巧に作られたカメラアイがミュウツーへと向けられる。

『夢をみた、お前の夢だ。それでようやく、お前が自分を偽物と言った理由がわかった。ロックマン、といったか』
「……そっか」

アーチャーはそれだけを呟くとほほ笑んだ。
夜風に吹かれるその顔はどこか空虚で悲しげだった。

『私は生を望む。聖杯などというものに縋る事もない、生き物としてごく当たり前の望みだ。
アーチャー、とうに朽ちた筈のお前は何を望む。心を持った機械は何を願う』
「望み、か」

沈黙。
ミュウツーはただ黙して、アーチャーの答えを待つ

「もし許されるのならば」

ポツリと、アーチャーが呟いた。

「ロックマンやロールちゃん、皆にまた会いたい」

アーチャーが星空を見上げる。
その瞳に躊躇いと憧憬の色が混ざる。

「ロックマンのコピーじゃない。ボクはボクという存在として、皆と向き合いたい」
『……そうか』

アーチャーの願いを聞き、ミュウツーは思案するかの様に目を瞑る。
ミュウツーがミュウツーであるように、アーチャーもアーチャーという一つの存在であることを、改めて認識した。
サイレンが止み、ゴッサムの夜に束の間の静寂が戻る。
ミュウツーとアーチャーはただ二人、無言のままで夜風に吹かれる。

ミュウのクローンではなく、この世界で生きる一個の生命として。
ロックマンのコピーではなく、確かな願いを持って戦いに臨む一つの存在として。
誰の意志でもなく、自身の意志と自我をもって、彼らは聖杯戦争の渦中へと飛び込んでいく。
これはそんな、複製達の物語。


500 : ミュウツー&アーチャー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/16(土) 15:17:14 OFa6elAc0
【クラス】
アーチャー

【属性】
秩序・悪

【真名】
コピーロックマン@ロックマン メガミックス

【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具D

【クラス別スキル】
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:自身

【保有スキル】
機械の身体:A
毒に類するスキル及び宝具の効果を無効化する。
電気を用いた攻撃、または電子攻撃を受けると一時的に行動不能になる可能性がある。

自己崩壊:D
長時間の戦闘を行うと耐久のランクが徐々に低下する。
低下したランクは修理する事で回復できるが、相応の機械工学知識が必要となる。
ロックマンの性能を極限まで上昇させた代わりに、アーチャーの体はその過負荷に耐え切れず

【宝具】
『ボクだけの英雄の証(ウェポン・オブ・ミスターエックスナンバーズ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:自身
8つの特殊武器から任意の物を選択し攻撃を行う。
アーチャーが倒したミスターエックスに操られたロボット達の武器チップを用いて攻撃を行う。
この宝具はコピーである彼が世界救った証でもある。
武器の効果は以下の通り
○ブリザードアタック
アーチャーの周囲に氷結させた結晶状の弾丸をばら蒔く。
冷気や氷に弱い敵には威力が上昇する。
○ブラストフレイム
高温の火炎弾を弓なりの軌道で射出する。
火炎弾は床に着弾すると縦に、壁に着弾すると横に火柱をあげる
火炎や熱に齢的には威力が上昇する
○プラントバリア
自身の周囲に花弁状のバリアを一定時間展開する。
何かに接触する度に接触物にダメージを与える。
○トマホークブーメラン
手斧をブーメランのように投擲する。
一度に二本投擲可能
○ヤマトスピア
槍の穂先状のエネルギーを射出する。
Cランク以下の障壁・反射系宝具およびスキルを無効化する。
○ナイトクラッシャー
腕部より鎖つきのトゲ鉄球を射出する。
威力が高い代わりに有効射程が短い。
○ケンタウロスアロー
弓矢の形状をしたエネルギー弾を連射する。
この攻撃は射出時の対象のいる位置めがけて追尾する。
○ウィンドストーム
小型の竜巻を三連射する。
巻き込まれた相手は上方へと打ち上げられる。

【weapon】
ロックバスター
オリジナルとは違い、バスターは左腕になる。
またチャージショットより通常ショットの連射をアーチャーは多用する。

【人物背景】
Dr.ワイリーの三次元立体コピーシステムによって生み出されたロックマンのコピー
正確や記憶まで寸分たがわずロックマンと同等だが、ワイリーによって悪のチップが埋め込まれていた事で、人間の殺害などにも抵抗がない。
出現してすぐに自身が本物のロックマンであると誤認、本物のロックマンを偽物と判断して撃破し、そのままワイリー扮するミスターエックスと8大ボスを撃破する。
だが、そこでワイリーが仕込んでいた悪のチップが作動し人間に対して宣戦を布告。
彼を本物のロックマンと勘違いして凶行を止めにきたドクターライトナンバーズと交戦中にDr.コサックに修理された本物のロックマンと再会して戦闘になるも、そこで自身がコピーであることを知ってしまう。
真実を知った彼は自分が本物となる為にロックマンを攻撃するが、その攻撃をロールちゃんが庇い重症を負った事で戦意を完全に喪失してしまう。
怒りに燃えるカットマンに破壊されそうになったところをシャドーマンに助けられ、「死ぬにしろ生きるにしろ、自分で考えろ」という言葉を受け、自分の為すべきことを決断する。

偽物のロックマンとして本物のロックマンに討たれる為、一度破壊した新宿で再度破壊行為を行っていたが、力を感じて現れたフォルテの手によって重症を負ってしまう。
その場に現れた本物のロックマンと邂逅し和解はできたが、その体はすでに爆破寸前の状態となっていた。
最後はフォルテを巻き添えに自爆し、その身を挺して仲間を守った彼は、その最後の瞬間に間違いなく本物のロックマンとなった。

【サーヴァントの願い】
"ボク"としてまたロックマンやロールちゃん達に会いたい


501 : ミュウツー&アーチャー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/16(土) 15:18:38 OFa6elAc0
【マスター】

ミュウツー@劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲

【マスターとしての願い】

聖杯に望む願いはない。ただ、生きる

【weapon】
なし

【能力・技能】

念力によるサイコキネシス、テレパシー、空中浮遊、テレポート
但し、サーヴァントに有効打は殆ど与えられず極低ランクの対魔力でも持っていれば無効化される。

【人物背景】
ミュウのまゆげの化石から造られた遺伝子ポケモン。
自らの存在意義について悩み続けた果てに、自分を生み出したすべての存在に対して逆襲を画策する。
ジョーイを念力で操りサトシを初めとしたトレーナーに最強のポケモントレーナーとして招待状を送りつけ、その手持ちポケモンをすべて奪いコピーポケモンを作成。
その軍勢を率いて逆襲に乗り出そうとするもサトシらの活躍によってオリジナルのポケモン達が解放され、また、自身のオリジナルであるミュウの介入もあり、コピーVSオリジナルの構図へと状況が変わる。
コピーとオリジナルのポケモンが自分の存在意義を賭けて争うなか、ミュウツーとミュウも戦闘を開始。激闘が展開されるが、それを見かねたサトシが身を呈して二人の戦闘に介入し、戦闘は中断。
動かなくなったサトシに対してコピー、オリジナルを問わずに涙を流すポケモン達の光景を見て考えを改める。
逆襲をやめ、この世界のどこかで生き続ける為に、コピーポケモンを連れてミュウツーはどこかへと飛んでいった。
その後、話は「ミュウツー、我ハココニ在リ」に続くが、今回はミュウツーの逆襲から我ハココニ在リの間の時期から参戦。


【方針】
その目立つ見た目からミュウツーは日中動かず、単独行動のあるアーチャーが人間形態で情報を集めて回る事になるだろう。
戦闘面では、アーチャーが中〜遠距離から武器チップの手数を駆使して戦闘をすすめるタイプで接近戦は不得手。
しかし、ミュウツーが瞬間移動や念動力を駆使する事でその弱点はある程度解消できるだろう。
ミュウツーは魔力が豊富であり、アーチャーも単独行動がある事と宝具の燃費も高くない事から継戦能力は高いが、長時間の戦闘は耐久のランクが減少する可能性がある。
ミュウツーではアーチャーは修理できないので、戦闘を控えるなり、同盟を組む必要が出てくる。
もっとも同盟に関しては、ミュウツーの姿を見たうえで、同盟に了承してくれる陣営があればという前提になるが。


502 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/16(土) 15:19:22 OFa6elAc0
以上で投下終了いたします


503 : ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:05:26 fEzNzmEY0
皆様投下乙です
自分も投下させていただきます


504 : 紫&キャスター ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:06:07 fEzNzmEY0
 暗黒街ゴッサムシティにおいても、インターネットというものは存在している。
 どういうわけかは不明だが、モニターに映った英語の文字も、ちゃんと認識することが可能だ。
 だからこそこれまでと同じように、ネットの世界に生きていられる。
 それすらも存在しない世界であれば、彼女の――紫の神経は、たちまち死に絶えていたことだろう。
「やっぱり、無い……」
 それでも、ただ1つ残念なことがある。
 この街に用意されたネットワークが、外界と繋がっていないということだ。
 厳密に言えば、アメリカのサイトは問題なく見れるのだが、たとえば故郷・日本のサイトは、閲覧することができない。
 記憶していたアドレスを打ち込んでも、サイトが見つからないという返事しか返ってこない。
 これでは大好きなweb小説を、チェックすることができない。それだけは残念なことだった。
「そんなに見たいの? そのサイトが」
 背後から、甘ったるい声が聞こえる。
 この薄暗く閉めきったアパートの部屋に、入ってこれる者は1人だけだ。
 振り返ると、平べったい箱を持った長身の女性が、廊下を歩いてくるのが見えた。
 水色の髪の伸ばした顔で、紫色に染まった瞳が、妖艶な光を放っている。
「面白いし……大好き、ですから……『忍の家のラプンツェル』……」
「ふぅん、随分と入れ込んでるのね。素人の小説の良さなんて、私には分からないけれど」
 言いながら、女はベッドに腰を下ろすと、箱の蓋を開け中身を取った。
 ペパロニ――サラミのたっぷりと載ったニューヨーク・ピザだ。
 アメリカのピザは安いものの、量は日本のものより多い。2人で1枚を食べ分けなければ、とてもじゃないが食べきれない。
「キャスターさんにも……読んでもらえると、いいんですけどね……」
「そのためにはそのサイトが見られるように、ここから出ないといけないわね」
 言いながら、キャスターと呼ばれたその女性は、掴んだ一切れのピザを頬張った。
 紫がこのゴッサムに招かれたのは、聖杯戦争なる催しを開き、その参加者とするためなのだそうだ。
 聖杯戦争の参加者には、伝説の英霊を模した、サーヴァントと呼ばれる使い魔が与えられる。
 そして紫に与えられたのが、このキャスター(魔術師)を名乗る女性だった。
 もっとも、彼女の本当の名前は、いかな神話の文献にも載ってはいなかったが。
 つまり元いた場所に帰るためには、その聖杯戦争とやらを終わらせ、優勝しなければならないということだ。
「あら? でもその時には、私は英霊の座に還ってしまうから、結局叶わないのかしら」
「………」
 キャスターの言葉に、紫は答えなかった。
 ただでさえ辛気臭い顔を更に曇らせ、パソコンを触る手も止め沈黙していた。
「気が乗らないの?」
「……外に出るのは……怖いです……」
 それが知らない街であって、なおかつ殺し合いの場ならなおさらだと。
 キャスターの問いかけに対して、紫はそう答える。
 元々引きこもり生活を始めたのは、外界に恐怖を覚えたからではない。
 しかし長く続いた今の暮らしは、紫の精神をすっかり塗り替え、対人恐怖症を悪化させてしまった。
 最近は姉のために頑張って外に出て、他の忍学生と戦ったりもしていたが、それはあくまでも近場での話だ。
 ここはまず国籍からして違う。おまけに攻め込む側だった今までと違って、逆にどこから攻められるか知れない。
 何よりここには、自分が戦うべき理由が――姉の忌夢が存在しない。
「戦う理由も、何もないんじゃ……モチベーションも……上がりません……」
「あるじゃない、聖杯が。あれを手に入れることができれば、どんな願いも叶うのよ?」
 せっかくご褒美があるのだから、頂いてしまえばいいじゃないと。
 万能の願望器の名を挙げ、キャスターが言った。
「………」
 そういえば、そんなものもあった。
 それならば、もしそれを手に入れたとして、自分は何を願うのだろう。
 物は試しと考えて、紫は願いを探ってみる。
 外に出るに足るだけの何かが、自分にはあるのだろうかと、己が願望を覗き込む。
 誰にも邪魔されない引きこもり空間の構築――否。そんなもの自力で作れるはずだ。
 「忍の家のラプンツェル」の映画化――否。いずれ叶うだろう願いを、聖杯に願う意味はない。
 何かないか。叶えたい願いは。聖杯でなければ叶わない願いは。


505 : 紫&キャスター ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:06:51 fEzNzmEY0
「……過去に起きたことを……やり直すことって、できますか……?」
 1つだけ、思い当たるものがあった。
 それは実現できるのかと、おずおずと紫は問いかけた。
「可能よ」
 意外にも、あっさりとした返答だった。
 過ぎ去った時間をさかのぼり、過去をなかったことにすることを、そんなにもあっさりと肯定したのだ。
「それなら……お姉ちゃんとのこと……やり直したい、です……」
 紫は姉である忌夢を、一度傷つけてしまった。
 望んでも手が届かなかった力を、あっさりと身につけてしまい、その力で屈服させてしまった。
 争いを嫌っていた紫には、一族に伝わる禍根の力など、必要のないものだったのに。
 それを身につけるべきは、立派な忍になろうとしていた、忌夢の方であったはずなのに。
 そのことが何よりの後悔だった。忌夢の心身を傷つけたことが、紫の心を縛り付けていた。
 自分の存在そのものが、忌夢の自尊心を害するのなら、自分など部屋に引きこもって、いなかったことにすればいい。
 そんな風に考えて、心を閉ざしてしまうほどに。
「愛ね」
 紫の願いの告白を、キャスターはその一言で括った。
「愛……ですか……」
「そうよ、愛よ。だってマスターはお姉ちゃんのこと、それだけ大好きなんでしょう?」
 聖杯で過去をやり直したい。
 自分自身のことよりも、姉の心を癒やしたい。
 そう思えるということは、それが自分の幸せよりも、何よりの幸せであるということだ。
 それが愛でなくて果たして何だ。
「好きです……お姉ちゃんにとっては、雅緋さんが一番で……私には振り向いてくれないけれど……」
「だったら奪ってしまえばいいのよ。貴方にお姉ちゃんは渡さない、って」
「う……奪うん、ですか……?」
「それも愛よ。愛ゆえの業」
 驚き目を丸くする紫にも、どこ吹く風と言った様子で、キャスターはそのように続ける。
「私はそうはしなかったけれど、そのことをとても怒られたわ。
 見えている未来に従うんじゃなく、望む未来に変えるために、立ち向かい行動すべきだった……って」
 キャスターには未来予知の力がある。
 自分に何が起こるのかを見通し、こうしたらどうなるのかということまでも、予知することができるのだそうだ。
 そして生前のキャスターは、1人の男に恋をしながらも、想いを打ち明けることをしなかった。
 恋が成就しないという未来を見て、それだけで全てを諦めて、恋文を捨ててしまったのだ。
 英霊キャスターの生涯は、そんな妥協と諦めの連続だった。
 運命に立ち向かうことを知らず、楽な方にばかり逃れる生き方を、彼女は強く非難された。
「それは、多分……そういう意味じゃ……ないと思います、けど……」
「そう? でもそれをできてしまうのが愛なの。愛は強いわ。人は愛のためならば、どんな行動だって起こせる」
 だからってそれは、横恋慕を強要する意味ではなかったのではないか。
 そんな真っ当なツッコミは、さほど重要でないと思われたのか、さらりとスルーされてしまった。
「大好きな小説を読みたいのも、大好きなお姉ちゃんに尽くしたいのも、全ては愛を起源とした意志……
 そういう願いで戦うのなら、マスターはきっと戦えるはずだし、私も手伝ってあげてもいいわ」
 言いながら、キャスターは箱からもう一切れのピザを取り出し、紫に向かって差し出した。
「いいんですか……?」
 貴方にだって叶えたい願いが、他に何かあっただろうに。
 そんな意図を込めながら、ピザを受け取り、紫が問う。
「構わないわよ。私は双子座(ジェミニ)のパラドクス……愛と運命を司る、双子座の黄金聖闘士(ゴールドセイント)だもの」
 愛を応援してあげるのは、当然のことじゃないと。
 艶やかな笑みを浮かべながら、矛盾(パラドクス)の名を持つキャスターは、紫の問いに対して答えた。
「ありがとう、ございます……少し……やる気が出てきました……」
 未だに外に出るのは怖い。
 それでも、自分のためだけじゃなく、姉のためにもなるのなら、戦ってもいいのかもしれない。
 パラドクスが応援してくれるのなら、もう少し頑張れるのかもしれない。
 これまで部屋から外に出て、姉の望む学園のために、他校と戦ってこれたように。
「頑張ろうね……べべたん……」
 キーボードの傍らに、ぽんと置かれた紫色。
 紫と寄り添うようにして立つ、熊を象ったぬいぐるみだ。
 姉と離れていた時も、かつての姉の代わりにと、愛してきた一番の友達だ。
 そんなぬいぐるみのべべたんを見ながら、紫はそう意志表示をした。
「それも愛ね」
 軽く苦笑を浮かべながら、パラドクスはそう締めくくった。


506 : 紫&キャスター ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:08:11 fEzNzmEY0
【クラス】キャスター
【真名】パラドクス
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】女性
【属性】混沌・中立

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B+ 魔力A+ 幸運D 宝具A

【クラススキル】
陣地作成:A
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 “工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。
 パラドクスは生前の逸話から、巨大な神殿「双児宮」を、物理的に建造することもできる。

道具作成:C
 魔術的な道具を作成する技能。

【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
 人間の六感を超えた第七感。
 聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
 その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
 パラドクスの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。

直感:EX
 戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
 高位の直感スキルは未来予知に近いと言われているが、パラドクスのそれは完全な未来予知である。
 自らにかかわる事象の未来を観測し、それに対して行動を起こした場合・起こさなかった場合の結末まで予知することができる。

二重人格:-
 2つの人格の持ち主。
 パラドクスは他者を愛し我が物にせんとする「愛」の人格と、他者を憎み滅ぼさんとする「憎しみ」の人格を有する。
 通常なら特段意味をなさないスキルだが、パラドクスの場合、双方の人格がセブンセンシズスキルを保有しているため、
 人格を切り替えることで、それぞれの人格が独立して小宇宙を発揮することが可能。

【宝具】
『双子座の黄金聖衣(ジェミニクロス)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・双子座(ジェミニ)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
 黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
 この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・敏捷・幸運のパラメーターが1ランクずつアップする。
 本来のランクはA+なのだが、アテナとアプスの小宇宙が衝突した際の影響で、
 聖衣石(クロストーン)と呼ばれる形態に変質してしまっており、若干のランク低下が見られる。
 また、パラドクスは一度聖闘士の座を剥奪されており、
 宝具『錫杖の二級刻衣(スカーレット・ジェイナス)』を纏う刻闘士(パラサイト)としてその生涯を終えたのだが、
 黄金聖闘士として現界した今回の聖杯戦争においては、その宝具は持ち合わせていない。

『運命と未来の狭間(クロスロードミラージュ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
 自身と標的を「運命の分岐点の外側の世界」と呼ばれる亜空間に飛ばす、固有結界にも似た技。
 天と地に格子状の地平線が広がる、宇宙の暗黒のような空間である。
 (パラスベルダ戦役の際には、若干違った光景になっていたが、本聖杯戦争ではマルス戦役時のものを採用する)
 この空間に招かれた者は、己が未来の光景を見せられ、運命の二択を迫られる。
 大概の場合は受け入れがたい二択であり、答えられない者は心身にダメージを与えられ、身を引き裂かれるような苦痛に苛まれる。


507 : 紫&キャスター ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:10:03 fEzNzmEY0
【weapon】
なし

【人物背景】
88の聖闘士の中でも、最高位に位置する黄金聖闘士の1人。
生まれつき未来予知の力を持ちながらも、その力を不気味に思われ、両親からも避けられていた忌み子であった。
幼少期にとある事故に遭った際、生きながらに伝説と謳われた聖闘士に救われ、その男を愛し近づくために、ギリシャに渡り聖闘士になったという。
聖闘士になったのはあくまでも手段であり、むしろ彼女が守るべきアテナは嫌いなタイプの人間であったため、職務に責任や誇りは感じていなかった。
パラドクスという名前は、この時に新たに名乗った偽名だが、英霊としての真名は、その名前で登録されている。

未来を見通す力を持ちながら、悪い未来を自ら変えようとはせず、妥協し都合のいい未来にばかり流されてきた人物。
想い人への恋心も、「告白しても受け入れられない」という未来を見て諦めてしまっており、代替としてその子供を求めるなどしていた。
愛の聖闘士を謳っていながら、その愛情は相当に屈折しており、非常に身勝手な人物でもあった。
ただしこの悪癖は、死の間際に妹・インテグラと共に、運命に逆らう覚悟を決めた時、やや改善の兆しを見せている。
愛の人格は相手を丸め込むような猫なで声で話し、憎しみの人格は敵意もあらわな怒声・罵声を喚き散らす。

小宇宙の属性は風。
前述した未来予知の影響もあり、こと命中・回避に関しては、黄金聖闘士の中でもトップクラス。
更に攻撃を避けきれない場合も、小宇宙のバリアを展開する「フォーチュネイトウォール」で受け止めることができ、死角がない。
愛の人格では未来予知を活かし、相手を翻弄しながら戦うが、闘志が剥き出しになった憎しみの人格では、苛烈な攻撃を繰り出すようになる。
更にそれぞれの人格が、どちらも肉体の限界を超えるというセブンセンシズに目覚めているため、
ゲーム風に言えばそれぞれの人格が別々の体力ゲージを保有しているという、割ととんでもない能力を有してもいる。
必殺技は敵を格子状の小宇宙で圧迫し、身体や五感にダメージを与える「ファイナルデスティネーション」。
また、恩人に憧れ独力で模倣した「廬山昇龍覇」、歴代の双子座の聖闘士が修める「アナザーディメンション」も会得している。
「ギャラクシアンエクスプロージョン」に関しては、自分が使いやすいようにアレンジしたのか、
小宇宙を直射砲のようにして放つ「ギャラクシアンアルティメーション」へと変化している。

ちなみに前述した通り、死の間際には心を入れ替えたパラドクスだったが、
今回はマスターの紫が持つ、禍根の力に影響され、思考がそれ以前のようにやや過激になっている。

【サーヴァントとしての願い】
特にない。面白いので紫を手伝ってあげる。

【方針】
魔力は十分に確保できているため、存分に力を振るって戦う。
紫の行動方針を考えるなら、陣地に入り込んできた相手を迎え撃つのが正道か。


508 : 紫&キャスター ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:10:54 fEzNzmEY0
【マスター】紫
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性

【マスターとしての願い】
過去をやり直したい。

【weapon】
手裏剣
 大型の手裏剣。髪の先に括りつけており、回転鋸のように扱って攻撃する。
 ちなみにこれを使うことで、ヘリコプターのようにして飛行することもできる。

秘伝忍法書
 必殺技・秘伝忍法の力を引き出すための巻物。

べべたん
 本来は武器ではない。九州地方某県のマスコットによく似た「気持ち悪いぬいぐるみ(紫役・矢作紗友里氏談)」。
 紫はこのぬいぐるみを姉代わりの存在として溺愛しており、妄想の中に存在する人格と会話している。

【能力・技能】

 日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
 蛇女子学園の選抜メンバー候補として、ひと通りの忍術を習得しているが、他のメンバーに比べるとやや修業不足。

忍転身
 現代の忍の戦闘装束。この術を発動した紫は、黒いゴスロリドレスを纏う。

忍結界
 忍同士の決闘時に発動される結界術。自身と対戦相手を一定空間内に閉じ込めることができる。
 本聖杯戦争では弱体化しており、バスケットコート程度の範囲にしか展開できない。

命駆
 命懸けの覚悟で臨む、決死の戦闘形態。
 防御力が半分以下になるが、追い詰められたことで潜在能力が解放され、攻撃力が大幅に向上する。
 なおこの状態になった瞬間、紫の衣服は全て弾け飛び、下着姿になる。

禍根の力
 紫の一族に伝わる、特殊体質由来の力。
 怒りや憎しみといった感情によって引き起こされる「拒絶の力」であり、身体能力を数十倍に高めることができる。
 最大限に発揮した際には、漆黒のオーラとして具現化するほどになるが、
 上述したような激情によって引き出される力であるため、それほどの力を発揮した際には、必然正常な思考力が損なわれてしまう。
 紫はこの特性を応用し、強化された髪の毛を操って、攻撃手段に用いている。


509 : 紫&キャスター ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:11:28 fEzNzmEY0
【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を養成する機関である、秘立蛇女子学園の生徒。
16歳の2年生で、スリーサイズはB105・W59・H88。悪人の名家の出身であり、現筆頭候補・雅緋とも交友があった。
禍根の力を目覚めさせた際、自分よりも忍の使命に燃えていた姉・忌夢を圧倒し傷つけてしまっており、
以来もう二度と忌夢を傷つけないようにと、引きこもり生活を送るようになってしまった。
最愛の姉である忌夢が雅緋のことばかりを見ていた時には、雅緋に嫉妬心を抱いていたこともあったが、
現在は心の中で折り合いをつけ、自分なりに忌夢の力になろうとしている。

非常にネガティブで気が弱く、誰に対してもおどおどとした敬語で話す。
ぼそぼそとした口調でしか喋らないため、同じ選抜候補の両備からは不興を買う場面もあった。
しかし一旦興奮すると、禍根の力との相乗効果で感情が暴走。周囲に深刻な被害をもたらしてしまう。
ちなみ相当なネット弁慶であり、趣味のインターネットにおいては、ギャル語全開のアゲアゲな語調で書き込みを行っている。
暗い部屋で過ごしていたため、周囲を把握するための嗅覚が鋭敏になっており、匂いだけで相手の考えを何となく察知することも可能。

忍法の性質を表す秘伝動物は熊。
髪の毛を使って手裏剣を振り回す、変則的なバトルスタイルを取っている。
この他にも禍根の力によるオーラを発射し、遠距離攻撃を行うことも可能。
必殺の秘伝忍法には、技名らしきものはない。
「こないで。」と叫びながら巨大なオーラ弾を発射したり、
「もう、死なせて。」と喚きながら周囲にオーラを展開したりする様が見られる。
更なる威力を持った絶・秘伝忍法を発動した際には、髪の毛から巨大なオーラの爪を生やし、
「誰か、助けて。」と訴えながら敵を切り刻んでいる。

今回は新蛇女ルート4章終了後から参戦している。
討伐を命じられた焔紅蓮隊を打倒し、後は選抜メンバーの正式認可を待つばかりという状態に置かれている。

【方針】
優勝狙い。動き回るのは怖いけれど頑張る。


510 : ◆arYKZxlFnw :2015/05/17(日) 00:11:57 fEzNzmEY0
投下は以上です


511 : ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:26:13 DDqgiOqs0
投下します


512 : 泉新一&セイヴァ― ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:27:11 DDqgiOqs0
「ただいまー」
「おかえり。遅かったわね」
「え?そう?」

何の変哲もない一般家屋。
家族構成は両親に息子が一人。
父親はまだ仕事に出ているよおうだ。

「まだそんな遅くないと思うけど」
「あら、本当。変ね、西日が差しこまないからもうてっきり夜かと」

その母の発言につられて窓の方を見てみると、ぞっとした。
植物のつるが生い茂り、日照を完全に阻んでいたのだ。

「うわ…なにあれ」

取りあえず部屋に戻って鞄置いてこよ、などと現実逃避。
踵を返そうとするが

「……かあさん?」

母親は一言も発しない。
その視線の先には、窓に絡む植物と、そこになる不気味な色の――しかしとても美味そうな果実。
ふらふらと引き寄せられるようにそれに歩み寄り、彼女それを口にする。
すると……

「かあさん…?かあさん、どうしたんだよ!?
 そんなの食うから!」

胸に手を当て苦しむ素振りを見せた母を気遣う。
不味かったのか、刺激が強かったか。せいぜいその程度だと思っていたが

「…………え?」

全身から、窓に絡んだ植物と似た蔓が伸び、怪物に変貌した母を見たときは夢か何かかと思った。
なんだ。
何が起きた。実に幻覚作用でもあったのか?
いや、おかしいだろおれは実を食ってない。幻覚を見るならかあさんの方だ。
ならなんだ?まさか食うと怪物になる実なんてものがあるのか?

母が、怪物になった。
その悍ましい現実にどことなくデジャブを覚えるが……

怪物が強靭な腕を振るい襲いかかってきた。
技巧など何もない、ただ稚拙に、されど純粋な脅威。
理性でなく本能で理解する。
殺さなければ、殺されると。
腕の巨大な鉤爪で、袈裟切りに襲い掛かるかつて母親だった怪物。
その一撃を右に体を流して躱す。
そして、右手に力と殺意を籠める。

(喉を潰して、そのまま首をへし折る…!)

普通の動物相手ならアバラを砕き、心臓を抉ることも出来るだろうが、この怪物はどう考えても普通じゃない。
だが、喉なら中は空洞で脆いはず。
そう考え腕を伸ばす。
その刹那、怪物は姿を変えた。
……左手を除いて母、泉信子の姿に戻り、僅かながら言葉も放つ。

「シ…ん、い」

そして交錯する。


513 : 泉新一&セイヴァ― ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:28:01 DDqgiOqs0

新一の右手は、怪物の喉に食らいつくことはなかった。
異形の左手は、新一の胸を貫いていた。
間に合うはずが、動揺し一手遅れたのか。
もとより届くことのない一手だったのか。
それは新一自身にも分からなかった。
心臓を貫かれ、遠のく意識と近付く床で世界と、自身の生の記憶をただ眺める。

母の左手、異形の左手。
母の右手、火傷の痕。
今の場景。

自分の左手、空手で人の心臓を抉るという所業。
自分の右手、時に武器に、時に友となる異形。
……今まで忘却していた記憶。
走馬灯によって取り戻した記憶と共に右腕に痣が浮かぶ。
眼を象った、三画の令呪。
ああ、ミギーはこのあたりに目を出していたっけと回想。
また、母さんの姿をした化け物に殺されるのかと複雑な思い。
なぜこんなところにいるのか、疑問を覚える。
これ以前の記憶は、後藤と闘った森に再び赴いたこと。
そこで相変わらず廃棄されていたゴミの中から妙な人形を手に取ったと想起する。

(たしか、そこに……)

棚の上に置かれた土人形。
以前ミギーの読んだ本に載っていた…シャプティだかウシャプティだとか言うモノだ。

――そのとき不思議なことが起こった。
その人形が輝きを放ち、浮遊したのだ。
そして形を変え、新一の方に向かっていく。

(金色の…………リンゴ?)

まるでおとぎ話の果実の様になったそれが、胸の傷の当たりに触れ――大きく新一を吹き飛ばす。
うぐっ、とうめき声をあげるが、それはありえないこと。
なぜなら先ほどまで、新一は息を吐くことすらままならない死に体だったのだから。
自らの状態に疑問を覚えながら立ち上がる。
母であった何かとは距離が開き――その二人の間には新たな登場人物が立っていた。
青いパーカーを纏い、堂々と立つ一人の男。
突如現れたその男……男の腰にも突如黒いベルトのようなものが、右手にはオレンジ色の錠前のようなものが現れる。

「変身!」

そして高らかに叫ぶ。
声を上げるともに錠前を構え、起動音を響かせる。

『オレンジ!』

そして体を左右に振り、大きく右手をあげてベルトと錠前を一つにする。
それはまるで勝利を願う舞踏の如く、雄々しく披露された。
すると頭上から巨大な果実が現れ、男に覆いかぶさる。
それが展開し、鎧となって纏われる。

『オレンジアームズ!花道・オンステージ!』

武将の名乗りの如く、戦士の招来を告げる声が響き渡る。
アーマードライダー・鎧武。
かつて侵略者の魔の手を阻んだ救世主。
そして新たなる世界を産み出した始まりの男。
神代の英雄が再び現世に降臨した。

「お、らぁっ!」

第一撃は何の変哲もない蹴り。
それで異形――インベスの左腕をした女性を窓から外へ蹴りだし、戦場を移す。
しばし呆然としていたが、二人を追って新一もまた外へ出る。
呆けていたのも数瞬、半壊した窓から出るのにも1分と掛からなかったが、すでに大局は決していた。
再び怪人態となったインベスを、橙の鎧をまとった戦士が二刀でもって圧倒している。
圧倒的な英雄の技巧を怪物は辛うじて凌いでいるが、もう数合で散るだろう。

「待ってくれ!」

その戦況に声をかける。さすがに割って入るまではしないが、それでも一人は反応を見せた。
そうするだけの余裕があるのも、知性があるのも優勢な英雄だけだ。
怪物を牽制し、言葉に応える姿勢を見せる。


514 : 泉新一&セイヴァ― ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:28:49 DDqgiOqs0
「そいつは…おれにやらせてくれ」
「え?いきなり何を言い――」
「頼むよ」

真剣な声と眼差しに感じ入るものがあったのか、あきれたのか。
肩で息をつき、僅かに道をあけて問う。

「相手は人間じゃない。インベスっていう怪物だぞ?」
「分かってる……分かってんだ。
 アレはもう怪物なんだって。そもそもおれの知ってる母さんですらないって。
 …………ソレ、片っぽ貸してくれないか?」

感情を押し殺した声で、紘汰の振るっていた二振りの剣を指す。
アームズの下の顔は窺えないが、それでもどことなく沈痛な素振りで橙色の刀を差し出された。
小さく礼の言葉を呟きながら剣を右手に装備。
それとほぼ同時に怪物が突進してくる。
再び交錯する一人と一体。
巨大な鍵爪の左手と、右手に持った刀。
その衝突は先刻とは真逆の結果。
異形の左手は空を切り、新一の一振りが怪物の胸を貫いた。
刀という力を己がサーヴァントに借り、リーチが伸びたからか。
敵が怪物の姿のままだったからか。
二度、いや三度目にして自ら殺める覚悟を決めたからだったのか。
結末が変わった理由もまた、分からなかった。

(終わった……)

そう、思った。殺したと。
しかし胸部を貫かれてなお、怪物は蠢いていた。
文字通りの人並み外れた生命力。
命尽きる時まで、人を襲わんとする魔の手が新一に伸びた。

そこへ響く銃声。
鎧武が右手に構えた剣、『無双セイバー』の銃口から放たれた弾丸がインベスを貫く。
その衝撃で後ろによろめき、胸に刀を残したまま新一から離れる。
さらに銃声が響く。
瞬く間に数多の銃弾を浴びせられ、そのダメージと胸の傷がついに命を奪い切り、インベスは微塵に砕け散った。
肉片一つ残さず、爆散し燃え尽きる。
それによって飛んだ刀、『大橙丸』をキャッチ。
そしてそれを送還したのち、納刀するが如くベルトに装着した錠前、『ロックシード』を閉めて変身を解く。
鎧の下から、再び青いパーカー――チーム鎧武の時代に愛用した服装――の男が現れる。

「おい、大丈夫か?無茶するマスターだな」

始めは気軽な声掛け。
無事を祝い、勝利をねぎらう。
そしてすぐに緊迫した面持ちになって語り出す。

「さっきも言ったけどさ、あれはインベスっていう怪物だ。
 ヘルへイムっていう世界の果実を口にすると、体の中から変異して凶暴な怪物になっちまうんだ……動物も、もちろん人間も。
 そして元に戻ることは、まずない。あれは……」

あんたの母親だったのか。
そう言葉にしようとして口ごもる。
何を言えばいいのか、殺してしまった謝辞か、失ったことへの慰めか。
自身もかつて禁忌の果実を口にした者の命が散るのには立ち会った。
親友を1人知らず手にかけ、友人を1人見殺しにし、戦友とは理想をかけて殺し合った。
それ以外にも多くのインベスの命を奪ってきたが、それでも自分は守りたいものを守り、正しい人のために戦うことができた。
目の前の少年はきっと、守りたいものが化生となり、それを殺める覚悟まで決めたのだ。
かける言葉が見つからず悩んでいると


515 : 泉新一&セイヴァ― ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:29:15 DDqgiOqs0
「ありがとう」
「え?」

少年の方からお礼の言葉が出る。

「命の恩人だな、えと……その、あなたは。
 今の攻撃も、さっきのおれの傷も」

胸のあたりに手を当て、先ほどまで傷があった場所を探る。
かつて負った傷跡は未だ残っているが、それでもインベスの手に貫かれた傷跡は消えていた。

「ああ、いや。まあ…どういたしまして。
 傷を治したのは確かに俺の宝具だけど、同じことはもうできないから期待しないでくれ。
 それよりその……いいのか?」

何が、とは聞かない。
この状況で話題にあげにくいことなんて一つしかないと新一にも分かってる。

「ああ。おれのホントの母さんはもう死んでるんだ。
 インベスってのとは別の化け物に殺されてね。
 その化け物に首から上以外を乗っ取られて、そいつに一度殺されかけて。
 その時に母さんの姿をした化け物は殺すって、一秒たりとも生かしておかないって決めたから」

あの時あいた胸の穴。
それは『母さん』に会って埋まった。
もし、今回先を越されなかったらそれとは別の暗い空虚さを埋められたかもしれない。
幸か不幸か、それは達成されなかったが。

「それなら、なおのこと――」
「いや、いいんだよ。前の時もおれじゃなくて仲間が手を汚した。
 それはおれを気遣ってのものだったし、今回も守ろうとしてくれたんでしょ?
 人一人守るのも、化け物を殺すのも、簡単じゃない。それをやってのけた人を、ましてや命の恩人を責められやしないよ」
「……そっか」

寧ろこちらから礼を言いたい気分になった。
人々を守るために戦いはしても、それが認められないことが多かった。
仲間からの励ましでも十分と言えたけど、それでもやっぱり守った人にお礼を言われるっていうのは誇らしい事だから。
このマスターなら分かってくれるだろうか。
ヘルヘイムという脅威を。そこからみんなを守りたいという願いを。

電脳上に再現された地球の都市、ゴッサム。
ここは地球なのか?
だとしたらなぜヘルヘイムが再び現れているのか?

(今回あんたが何をしたいのかはまだよく分からないな、サガラ。また進化を促しに来たのか?
 早すぎる気はするけど……
 でも、また地球を侵食しようっていうなら俺が拒ませてもらう。
 俺は、俺の星にとっての『始まりの男』ではあるけど、それ以前に故郷を守るアーマードライダーなんだから)

小っぽけな家族を守るため。
小っぽけな故郷を救うため。
男たちは戦う覚悟を決めた。


516 : 泉新一&セイヴァ― ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:29:47 DDqgiOqs0
【クラス】
セイヴァ―

【真名】
葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具EX

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
創世:E-(D)
世界を救い、さらには新たに作り出した英雄に与えられるスキル。
『無』から『有』を生み出す力であり、規模が大きければ大きいほど多大な魔力を必要とされる。
瞬間移動、飛行、高速再生などもこのスキルによって可能となる。
このスキルはランクが一つ違うだけで文字通り天と地ほどの差があり、ランクAともなると宇宙創造の逸話を持つ者しか所有できない。
しかし『黄金の果実』を口にする前の状態で再現されたためランクダウンし、危機に瀕した際にスキル・ステータスが強化されるスキルに留まっている。
いうなれば、困難な事象を乗り越えられる自分に『変身』するスキルとなっている。

対英雄:D-
敵対するサーヴァントの全パラメータを1ランクダウンさせる。
属性による変動はなく、善・悪・狂問わず効果を発揮する。
ただし呉島貴虎や呉島光実、駆紋戒斗のような、紘汰と異なる『救世』の信念を持った者に対しては幸運値を下げるにとどまる。
アーマードライダー、フェムシンム、そしてメガへクス、仮面ライダーとその敵組織など数多の英雄・反英雄との闘争の歴史により刻まれたスキル。

【保有スキル】
初志貫徹:A
迷い、傷つき、涙を流しながら、それでも信じる道を行く彼の信念。
悪事を働いた友も信じぬき、袂を分かった戦友の意思も無碍にせず、どれほど強大な敵にも屈することはない。
交渉や策謀の看破などに不利な補正が発生するが、同ランク以下の幻惑・精神干渉を無効化する。
同ランクの戦闘続行も内包する。

森羅の君主:A
果実の呪いを乗り越え、ヘルヘイムの植物を自在に操る能力。
また、同じスキル同士が激突した場合、ランクの高い方が植物の支配権を奪う。
このスキルを応用することで、破損した『禁忌の錠前(ロックシード)』の修復も可能。

神性:D(A+)
後述する宝具と、『黄金の果実』の影響で獲得したスキル。
しかし聖杯では神霊となった彼を再現することはできないため、禁忌の果実を取り込んでも『黄金の果実』を口にしてはいない時間軸の肉体で再現されている。
そのため大幅にランクが低下している。
粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果もある。
また菩提樹の悟り、信仰の加護、といった神に何らかの形で依存するスキルを打ち破る。

星の開拓者:EX
人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。
彼は地球の危機を救い、さらに一つの星に新たな命を育む神そのものとなった逸話を持つ。

【宝具】
『救世を目指す騎士の鍵(戦極ドライバー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
特定のロックシードを使用する事で、『アーマードライダー・鎧武』への変身を可能にする宝具。
後述の宝具をサポートする宝具と言える。
生前は装備のワンアクションが必要だったが、オーバーロードとなったのちは掛け声のみでの変身が可能であったこと、また宝具の召喚はある程度自由にできるため、装備した状態で出すことも可能。
ただし手元に召喚し装備する方が僅かながら魔力の節約にはなるため、手に持って出すこともあるかもしれない。


517 : 泉新一&セイヴァ― ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:31:10 DDqgiOqs0

『花道に舞う鎧武者は此処に在り(オレンジロックシード )』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
禁忌の果実を科学技術で加工した、オレンジを象ったロックシード。
戦極ドライバーに装着する事で、アーマードライダー鎧武・オレンジアームズに変身する。
ステータスは筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:D 宝具:C に相当。
発動には真名解放のかわりに「変身」という声を上げる必要がある。
ステータスに優れるとは言い難いが、機動性とロックシード一つで変身可能な手軽さを考慮すると選択する機会は多いだろう。
武装は剣にも銃にもなる無双セイバーと、オレンジを模した刀の大橙丸を用いる。
最初に手にしたロックシードであり、最も愛用したものであり、上記の宝具と併せて親友の形見でもある。

『鬨の声あげ結実せよ勝利の果実(カチドキロックシード)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
何の変哲もないオレンジにヘルヘイムの化身が手を加え作り出した、オレンジを象ったロックシード。
それが一度破壊された後に、その残骸を基に紘汰自身が作り出している。
戦極ドライバーに装着する事で、アーマードライダー鎧武・カチドキアームズに変身する。
ステータスは 筋力:A 耐久:B 敏捷:E 魔力:A 幸運:D 宝具:B+ に相当。
発動には真名解放のかわりに「変身」という声を上げる必要がある。
筋力と耐久は優秀だが、装備の重量により敏捷を犠牲にした強さである。撤退・追撃を考慮するなら他のアームズの方が適している。
武装は重力操作すら可能とするカチドキ旗と、火縄銃モードやマシンガンモードに大砲モードなど切り替えられる火縄大橙DJ銃を用いる。
自らの手で作り出した、人ならざる道への第一歩と言える。

『大いなる力極め異界の門を開く鍵(極ロックシード)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
『知恵の実』の欠片を基にフェムシンムの王、ロシュオが産み出したロックシード。
『知恵の実』という規格外の存在を基にしているため、欠片とはいえEXランクを誇る。
戦極ドライバーに『鬨の声あげ結実せよ勝利の果実(カチドキロックシード)』 を装着し、さらにその鍵穴に挿し込むことでアーマードライダー鎧武・極アームズに変身する。
ステータスは 筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:A 幸運:D 宝具:EX に相当。また変身中は神性のランクが1ランク向上する。
発動には真名解放のかわりに「変身」という声を上げる必要がある。
固有の武器は持たないが、全てのアームズウェポンと生前所持したロックシードの召喚・行使が可能。
手にとって使うのはもちろん、味方に貸し与える、射出武器の様にするなど多彩な戦術をとる。
火縄大橙DJ銃にロックシード固有の効果を付加して放つのはこの姿でのみ可能な戦術であり、この聖杯戦争ではその場合に限りイチゴロックシード、パインロックシードなどを行使できる。
それに加えてセイヴァ―として召喚された場合には聖杯戦争中に一度だけ、自身・またはマスターの絶命・それに準ずる致命傷を無効にし蘇生することができる……がその能力は召喚されて早々に使用してしまったため、この聖杯戦争ではもう使うことができない。






他にアーチャーとして召喚されれば『創世へ至る鍵の欠片(ゲネシスコア)』とそれに対応するエナジーロックシード、ライダーなら様々なレジェンドライダーロックシードなどを持つ可能性がある。
しかし今回はセイヴァ―としての召喚であり、それらは再現されていない。
なおセイヴァー以外の召喚であった場合極ロックシードを持ちこめるかは召喚地の知名度により、その場合沢芽市や自らの星以外の地に持ちこむのは難しい。

【weapon】
宝具に依存。

【人物背景】
ただ巨大な力に踊らされるだけだった少年。
しかし少年はいつまでも子供ではいられなかった。
悪意に晒され、過ちを犯し、戦い、乗り越え大人になっていった。
そして守りたい人を守る、正しい人のために戦う、知らない誰かの役に立つという希望を胸に、彼は戦士に変身した。

【サーヴァントの願い】
生まれ故郷の地球を守る。
聖杯の行く末、禁断の果実の有無、サガラの思惑が気にかかる。


518 : 泉新一&セイヴァ― ◆yy7mpGr1KA :2015/05/17(日) 03:31:31 DDqgiOqs0

【マスター】
泉新一@寄生獣

【マスターとしての願い】
強いて言うならもう一度ミギーに会いたい。
けれども、それは殺人が許される理由とはならないだろうし、起こすとミギーは怒りそうだ。

【weapon】
なし。
ただし石ころや尖った木の枝、廃棄されていた鉄棒などを扱った戦闘の経験があり、それなりに柔軟に立ち回れるかも?

【能力・技能】
・パラサイト
地球上のどこかで誕生した寄生生命体を右腕に宿す。
さらにとある傷の治療の際にパラサイトの細胞が自身の肉体に混じり、身体能力が大幅に向上している。
100mを9秒台も軽く、数百メートル先を見、聞くことも可能……だったのだが、パラサイトが眠りについた影響か、僅かながら衰えがあるよう。
ギリギリ人間の範疇に収まる身体能力と推察される。
ただし、それでも右腕の大半と体に混ざった体組織は人とは大きく異なる生命体のものである。
その伝達系は魔術回路に近似し、魔力生成を可能としている。

【令呪】
右上腕部、ミギーと自身の境界あたり。

パラサイトの眼、またウジャト眼に近似した形。
眉が一画、眼の下に伸びる螺旋で二画、眼で三画。

【方針】
新一は生還に、紘汰は観察に重きを置く。
ひとまずの方針は死なないこと、だろうか。
二人とも根は優しいため積極的な闘争は望まないが、守りたいもののためなら戦うことは厭わない。


519 : 名無しさん :2015/05/17(日) 03:34:46 DDqgiOqs0
投下終了です。
なお今回のステータス作成には当企画における◆/cxqFm81zY氏の作品「鬼人正邪&アヴェンジャー」、第二次二次キャラ聖杯戦争における◆FFa.GfzI16氏の作品「美樹さやか&バーサーカー」のステータスを一部参考にさせていただきました。
両氏には深い敬意と感謝の意を送りたいと思います。


520 : ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:21:54 jgbYVHO.0
投下します


521 : ラグナロク&ランサー ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:22:28 jgbYVHO.0

「お初にお目にかかる、我がマスター」

私の目の前に、男が跪いている。

「我が名は誉れあるフィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド・オディナ。呼び声に招かれ参上した」
「…………」

短く刈り込まれ清潔感のある頭髪。
鋭い右目の下にある黒子。
それら端正な顔立ちに似合わぬ、鋼のように鍛え上げられた筋肉。
彼の両脇には赤黄二色の槍が墓標にように突き立てられていた。

「縁なき戦といえど、こうして主の槍として召喚されたからには是非もなし。
 騎士たる我の死力を尽くし、主君に勝利の栄誉を捧げることを誓いましょう」
「…………」

男……本人言うところの騎士は、滔々と忠義の言葉を語り続ける。
どうも、こちらを見てすらいない。
主の言葉があるまでは、みだりに瞳を向けることすら不敬であるとでも言うように。

「主よ、どうかご命令を。一命あらばこのディルムッド、身命を賭して戦場に臨む所存でありますゆえ」
「…………」
「主?」

一言も返さない私にようやく疑問を覚えたか、しかし顔は上げずに疑いの声を漏らす。
視線は頑なに己の爪先に刺さり、動かない。
不躾な振る舞いを本能で律する、心身ともに清冽な意気を感じさせる。

「……その、何だ」
「はっ。どのような命であろうとも、何なりと」
「いや、待て。待て……そう、なんだ。まずは顔を上げてくれないか」
「は、主が許されるのであれば」

膝立ちのまま深々と頭を下げ、ゆっくりと背筋を伸ばす。
愛嬌を感じさせる黒子が持ち上がり、閉じられていた両の眼が開く。
そこに映し出されていたのは……

「……剣?」
「それが私だ」
「……主よ、お戯れはなさいますな。魔術師の闘争となれば、姿を見せぬも道理でありまする。
 それが命とあらばこのディルムッド、否やはありませぬ」
「いや、そうではない。本当に、お前の前にある剣が私なのだ」


522 : ラグナロク&ランサー ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:23:01 jgbYVHO.0

ディルムッドの視線の先には、彼の槍と同じように突き立つ一本の剣があった。
幾何学的な模様が刻印された両刃の長剣。

「……は。いや、しかし……」
「いま、証拠を見せる」

天を指すその柄を、後ろから掴む手があった。

「……! あなたが、我が主か!?」
「さっきからそう言っている。いや待て、その主というのは止めろ」

風に流れる涼やかな銀の長髪。
穢れなき純白のローブ。
整った顔立ち。
しなやかで力強い、均整の取れたボディ。
容姿は誇張抜きで、眼前の騎士と並んでも見劣りしないと自負している。

「しかし主、あなたが私を召喚したマスターであることは疑いありません。その手に刻まれた令呪が何よりの証拠」
「手? 何の話だ?」

両手をブラブラと振ってみる。
見た限り通常と何の変化もない。

「な……令呪がない!? し、しかし確かに令呪の存在は感じる……」
「ん、何だこれは。未確認のプログラムコード?
 ウイルスか……何、削除できないだと!? プログラムの根幹に根ざす……な、何だこれは!?
 私にインストールされているプログラムにこんなものはなかったはずだぞ!」

異常があったのは、剣の柄にセットされた宝玉にだった。
剣を象ったような三つの楔型の字……いや、印か。
こんなもの、つい先日までは確実になかったと断言できる。

「一体どういうことなのです、主!?」
「私が聞きたいくらいだ! 何だというんだ、この状況は!」

絵になる男が二人、騒々しく取り乱している。
おかしい。こんな役どころは私には不似合いだ。
こういうのはもっとこう、相棒のようなガサツで口やかましい人間が……

……そういえば、自己紹介が遅れたな。
私の名は“ラグナロク”。
本来ならば我が相棒、フリーランスの傭兵リロイ・シュヴァルツァーが腰に差している剣。
しかし今は、眉目秀麗かつ紳士的な騎士に恭しく頭を垂れられ、絶句している剣。


……それが、私だ。


523 : ラグナロク&ランサー ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:23:23 jgbYVHO.0

   ◆


「……つまり、私はお前のマスターで、お前は私のサーヴァント。主とその剣、ということか」
「その通りです」
「う、む……」

衝撃が過ぎ去り、落ち着いても、この男の態度に変化はなかった。
私が剣と知ってもなお、こうして一歩下がって膝をつく恭しい態度。
ううむ、相棒に爪の垢を煎じてやりたい見事なまでの忠臣ぶりだ。
しかしだな、私自身が人に振るわれることを前提に設計された剣であるからして。
その人間にこうして頭を下げられては立つ瀬がないというものだ。
サーヴァントは人間ではないからお気になさらず、とディルムッドは言ったものの、そうもいくまい。

「やはり、何かの間違いではないのか? 相棒ならともかく、私がマスターというのは、その」
「どのような理由で主がマスターとしてこの聖杯戦争に招かれたかは、私の預かり知るところではありません。
 たしかなことは、主の中にある令呪が私と繋がっていること。すなわち、私の主はあなたであるということだけです」

宝玉に刻まれていた紋様は、令呪というらしい。
こすっても叩いても消えなかった(相棒のような真似をしたと恥ずべきである)この紋様は、やはり何度確認しても私の中枢に直接刻み込まれたコードだった。
外部から働きかけて除去することは不可能。ただし能動的に使用すれば使い切って消すことはできる、らしい。
実行しようとしたがディルムッドに止められた。
令呪を全部使用したところで、この状況から離脱することは不可能だと。

「参った……」
「主には何か、願いなどありますまいか?」
「さてな。今の私は相棒とともに旅をするただの剣だ。強いて言うなら、香りの良い紅茶を飲みたい……それくらいだ」
「それは、その……聖杯に願うにしては、あまりに」
「うむ。だから私に大した願いなどないのだ」

不可能を可能にする、となれば考えつくのは怨敵である闇の種族(ダーク・ワン)の滅亡や、最初の相棒の復活、か。
だが、どちらも思いついた次の瞬間に否定した。
前者は相棒の出自のこともあって即断できるものではない。
後者は論外だ。彼女の死は聖杯ごときが軽々に触れて良いものではない。
結果、男二人、頭を抱える。
ええい、大体相棒は何をしているのだ。
私がこんな騒動に巻き込まれたというのに、自分の剣が失くなったことにも気づかないとは。
……いや。そもそもにしてこうなった原因は、相棒の迂闊さにある。
露天商から捨て値で買った怪しげな人形。私は気味が悪いから捨てろと言ったのだ。
なのにあいつはデザインが気に入っただの直感に来るものがあっただの。
結果、あの人形が聖杯戦争に参加するチケットとなり、今はこうしてディルムッドという騎士に変化した。
それならばあいつが呼ばれるのが筋だろう。何故私なのだ。
まあ……あいつとこの騎士が組むと考えると、それはそれで納得しがたいものもあるのだが。
だがとにかく相棒のせいであることに違いはない。そういうことにしておく。

「しかし、一度始まった聖杯戦争を中途で辞退することはできません。ことにこの街に限っては」
「どうあれ戦うしかないということか」
「他に道はありますまいな」


524 : ラグナロク&ランサー ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:23:43 jgbYVHO.0

大いに嘆息する。
街を舞台にした生存競争などと、私にはまったくそぐわない野蛮な催しだ。
だが、座して見守る訳にはいくまい。どうやってか私の本体すらもこの空間に持ち込まれているのだから、破壊された場合、人間と同じく死を迎えることは間違いない。

「ディルムッドよ。私に願いはないが、こんなところで朽ちる気はない。相棒を待たせているのでな」
「は……では、生還を目的に動かれるということで?」
「それしかあるまい。聖杯を手に入れるか、あるいはこの空間から脱出する方法を探すか。
 何にせよ、殺戮を推奨するのは私の望むところではない。お前が騎士だというのなら、些か失望させることになるかもしれないが」
「いえ、それは構いません。元より私も、聖杯に掛ける願いなどない身の上。主の望みを果たす一助になるならそれ以上は望みませぬ」

うーむ、いよいよもってあっぱれなほどの騎士道ぶり。
これほど高潔な人物は久しく目にしていない。今の相棒も、最初の相棒も、こんな人格とは程遠かったからな……。
……だが。
やはり、私の相棒は彼や彼女であって、どれだけ立派であってもディルムッドではない。
ゆえにこそ、帰らねばならない。私の方から相棒を裏切ることなど、絶対に許されないのだから。

「ディルムッド、その主というのはやめてくれないか」
「は、しかし……」
「お前が主に忠義を尽すように、私にも私を預ける相棒がいる。
 我らの有り様は近しいものだ。だからこそ、お前に主などと呼ばれると私の存在基盤が揺らぐことになる」
「では、何とお呼びすれば?」
「呼び捨てでも構わんが」
「そ、それは恐れ多くてとても。では……そうですな、ラグナロク様、というのはどうでしょう?」
「……それは私が拒否しよう。ふむ……」

思案する。元より兵器として製造されたこの身に固有の名詞はない。
強いて言うなら製造番号、ラグナロク0109(エアスト・ノイン)だが、私を主と慕う者に番号で呼ばせるのもそれはそれで信頼を裏切るような気もする。
悩み、そして閃いた。
少しの間だけ使用した偽名、いや渾名のようなもの。
相棒とともに経験したとある事件で、無邪気に私を慕ってくれたあの少女に名乗った……

「……ラグ。ラグでいい。様はいらんぞ」
「は……いえ、了解しました。ではラグ、再度宣言いたします。
 私、ディルムッド・オディナはあなたの槍となり、あなたをあるべき場所に還すことを誓いましょう」
「ああ、そのことだがな。騎士というからには剣も使えるのだろう?」
「は? それはたしかに、剣術も収めてはおりますが。
 この身はランサーとして現界しておりますので、我が愛刀は残念ながらここにはありませんのです」
「それは問題ない。要はこれを使ってくれということだ」

私は本体である剣を引き抜き、ディルムッドに投げ渡した。
剣を構えたディルムッドは、なるほど騎士と名乗るだけあって様になっている。


525 : ラグナロク&ランサー ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:24:07 jgbYVHO.0

「私はあくまで剣に宿る意思であって、剣そのものを使いこなせる戦士ではない。お前が振るってくれた方が役に立つというものだ」
「し、しかし主を振るうなど……」
「その呼び方は止めろと言ったぞ。細かいことは気にするな。これが戦力的にも最善だ」

抗弁するディルムッドに構わず、私は意識を宝玉に戻した。
人の姿は一瞬で解けて消える。
この場に残るのは、剣を携えたディルムッド一人。

「ら、ラグ! 私に一人で行動せよとおっしゃるのですか?」
「うん? 何か不都合があるのか?」
「不都合というか……実体化していれば、すぐに他のサーヴァントに気取られます。
 無益な戦いを好まぬのであれば、私が霊体化してラグが人の姿を取っているのが最善かと」
「……そうか、そうだったな。ここではいつもとは逆に、私が主体で行動せねばならないのか」

つい、相棒とともに行動していたいつもの癖で、実体化を解除してしまった。
ディルムッドを一人うろつかせて敵に発見され、必要のない戦いに飛び込んでいくのは無謀という他ない。
こんなことはそれこそ相棒のやりそうな頭の悪い行動だ。いかんな、私も毒されてきたのか……? 反省せねば。

「では行くぞ。まずは情報収集だな」
「……はい、ですがラグ、まずは当代の衣服と、剣を収納する入れ物を探すべきでしょう。
 民衆が平時と同じ生活をおくる聖杯戦争では、その衣と抜身の剣は目立ち過ぎます」
「うん? 剣のことはわかるが、このローブの何がおかしい?」
「いえ……」

ディルムッドはそっと口を噤み、霊体化した。
何だその気を遣ったような仕草は。このローブが場にそぐわないようなものとでも言いたいのか?
データベースに記述された指定の本拠に向かって歩きながら、私はディルムッドへこのローブの素晴らしさをとっくりと語って聞かせてやることにした。


526 : ラグナロク&ランサー ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:25:47 jgbYVHO.0

【クラス】
 ランサー
【真名】
 ディルムッド・オディナ
【パラメーター】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:A+ 魔力:D 幸運:E 宝具:B
【属性】
 秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 セイバーオルタは本来のランクから、黒化の影響によりランクダウンしている。
【保有スキル】
心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
愛の黒子:C
 魔力を帯びた黒子による異性への誘惑。ランサーと対峙した女性は彼に対する強烈な恋愛感情を懐いてしまう。
 対魔力スキルで回避可能。対魔力を持っていなくても抵抗する意思を持っていれば、ある程度軽減することが出来る。
【宝具】
『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2-4 最大捕捉:1人
 ディルムッドが養父であるドルイドのアンガスより贈られた紅槍ゲイ・ジャルグ。
 紅の長槍。刃が触れた対象の魔力的効果を打ち消す。基本的には、魔術的防御を無効化させるための能力を持った宝具。
 打ち消される魔力の対象は防具に限った話ではないが、「刃の触れた部分だけ」「刃の触れている間だけ」効果を発揮するため、防御的な使い方には向かない。
 また、過去に交わされた契約や呪い、既に完了した魔術の効果を覆すことはできない(魔術は無効化できるが、その魔術が残した結果までは無効化できない)。
 「宝具殺しの宝具」と呼ばれる槍だが、この破魔の効果単独で宝具の初期化はできない。あくまで「刃の触れている間だけ」効果を打ち消す。
『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2-3 最大捕捉:1人
 ディルムッドが妖精王マナマーン・マック・リールより贈られた黄槍ゲイ・ボウ。
 黄の短槍。治癒不能の傷を負わせる。通常のディスペルは不可能で、この槍で付けられた傷は槍を破壊するか、ディルムッドが死なない限り癒えることがない。
 いかなる治癒や再生でも回復できない仕組みは、この槍が与えるダメージは最大HPの上限そのものを削減するため。
 それ故に回復や再生をしても「傷を負った状態が全快状態」であるため、それ以上治らない。
 なお、使い手である彼はこの槍で傷つくことはない。
【weapon】
 紅の長槍・破魔の紅薔薇
 黄の短槍・必滅の黄薔薇
【人物背景】
 真名はディルムッド・オディナ。ケルト神話におけるフィオナ騎士団筆頭騎士。
 生前、主君の婚約者から主への裏切りをゲッシュにより強制され、悩んだ末に愛に応えることを選んだという逸話を持つ。
 そのことに後悔はないが、主君への忠義と騎士としての本懐を最後まで全うしきれなかった未練から、今回は愛でなく忠義を選ぼうと心に決めて第四次聖杯戦争に挑む。
 しかし彼の生前を知っているケイネスは自らのサーヴァントを信用しきれず、ことあるごとに痛罵する。それでもなお、彼は献身的に主へと仕えようとした。
 だが、ケイネスの婚約者であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリがランサーの持つ魔貌による魅了を受け入れてしまい、盲目的なまでの恋慕を寄せる。
 奇しくも生前と同じ状況に陥りながらも、彼はあくまでも忠義を貫こうとするのだが……
【サーヴァントの願い】
 召喚者に忠誠を尽くし、騎士としての名誉を全うすること。
【基本戦術、方針、運用法】
 大火力や一撃必殺の宝具はないが、相手の戦力をじわじわと削る長期戦に秀でた二つの宝具を持つ。
 高い敏捷値を活かして「必滅の黄薔薇」で一撃を与え、深追いせずに撤退するヒットアンドアウェイの戦法が有効か。
 また、剣の扱いにも長けているので、槍を温存してラグナロクを使って戦うことも可能。
 ラグナロクはディルムッドにはない高火力を備えており、ランサーでありながら宝具ではない剣を振るうことで真名の隠蔽も可能。
 ラグナロクと槍を使い分ければ、一刀一槍の戦法を披露することもできるだろう。


527 : ラグナロク&ランサー ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 09:28:22 jgbYVHO.0

【マスター】
 ラグナロク0109(エアスト・ノイン)@ラグナロク
【マスターの願い】
 相棒の元へ帰還する。
【weapon】
『神々の黄昏(ラグナロク)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:2-3 最大捕捉:1人
 人、動物、鉱物、植物など、万物に宿る存在意思(ノルン)を抽出して操ることが出来る、意志を持った剣。ラグナロクそのもの。
 存在意思を練り上げることで本体である剣をコーティングして爆発的に威力を高めたり、小規模ながら盾を形成することが可能。
 全力の存在意思を込めた一撃は対象に連鎖的な小爆発を誘発し、爆撃並みの威力を発揮する。
 また、存在意思を纏わない剣本体も非常に頑強かつ高品質。
 製造から5000年経とうとも性能にいささかの劣化もない。生物や車、吸血鬼や鬼、果ては異次元に棲む魔獣を切り裂いても刃毀れひとつない。
 本来は宝具ではないが、5000年の長きに渡り活動してきたこと、そして存在意思を操る特性から、宝具に相当する神秘を備えることになった。
【能力・技能】
 あらゆる道の達人の戦闘データと一通りの武器・兵器の操作方法がインプットされている。
 しかし戦闘経験から得られる直感や閃きが備わっていないため、真の達人とも呼ぶべき相手には数段劣る。
 また、人の姿でもある程度なら存在意思を操ることができる。
【人物背景】
 作中時代より5000年前の大戦時に作られた対闇の種族(ダーク・ワン)用兵器。製造番号は0109[エアスト・ノイン](第一ロット九本目の意)。
 一言で言えば「喋る剣」なのだが、空気中の分子を操作して質量を持つホログラムを投影することで、青年の姿で活動することも可能。
 本体は剣の柄に嵌め込められている宝玉で、取り外す事で意識を離れた場所に飛ばす事も可能である。
 その際の容姿は長髪に白いローブ。5000年前当時は珍しくもなかったが、現代では非常に浮いている。
 しかし本人はそのギャップを理解できておらず、センスを批判されると猛然と反論する。
 ホログラム時は食物の摂取が可能(体内で即座に分解するため栄養の摂取は不可)。大の紅茶党で、コーヒーは下品な人間の飲むものだと思い込んでいる。
 思った事をよく口に出してしまう。自分のことを冷静な性格と考えているが、5000年もの長い時を生きているためか些細なことで感情的になりやすい。
 ホログラム体で莫大なダメージを受けると、本体にフィードバックされ死ぬこともある。また、ダメージを受けた後は過剰負荷を処理するためしばらくの間全機能が低下する。

 作中本編ではフリーランスの傭兵、リロイ・シュヴァルツァーの相棒兼、剣。
 直情的で暴力的、後先考えず直感で生きて困難に突っ込んでいくリロイをあらゆる点からサポートする苦労人。
 かといってラグナロクが常識人かというとそういう訳でもなく、あくまでリロイと比較すれば多少弁えている、といったところ。
 作られた存在ではあるが、5000年もの間生き続けているため一見して人間ではないと看破されることは非常に少ない。
 最初の相棒、そしてリロイと一癖も二癖もある人物と付き合ってきたためか、感情プログラムが発達しており人間のように怒り、笑うこともある。
 自身が人に振るわれる剣であるため、相棒という存在を何よりも大事に思っている。
【役職】
 喫茶店・紅茶屋の常連。


528 : 名無しさん :2015/05/17(日) 09:29:09 jgbYVHO.0
投下終了です


529 : 名無しさん :2015/05/17(日) 09:39:56 zrfdGSms0
皆様投下乙です。

それとは別に、執筆の予定に関わるので>>1氏に質問したい点を一つ。
今回の募集は本日締め・延長制度無しという認識のままでよろしいでしょうか。


530 : ◆7CTbqJqxkE :2015/05/17(日) 10:30:02 SJADc.5k0
投下します。


531 : 《ホシトハナ》赤城みりあ&アサシン ◆7CTbqJqxkE :2015/05/17(日) 10:32:05 SJADc.5k0



「ねえねえ、どうだったアサシン」
『とっても上手だったよ。マスターが楽しんで歌ってるって見てる方もわかるぐらい元気いっぱいで、ダンスのキレもすごかったもん。でも』
「でも?」
『あんまりマネージャーさんを困らせたら駄目だよ』
「だってアサシンとはやく遊びたかったんだもん!」

 赤城みりあはTV局の楽屋にて、見えない誰かとおしゃべりをしていた。
 虚空に向けて語りかける彼女を誰かが見咎めても、幼い時期の子供特有の頭の中の友達に話しかけていると捉えるか、はたまた不思議ちゃんとして売り出す準備をしているか程度にし

か思われないだろう。
 しかし彼女は確かに実在する存在と会話をしていた。自分の持っていたシャブティが姿を変えた存在――サーヴァントと。

『マネージャーさんはマスターのことを思って言ってくれてるんだから、ちゃんと言われたことを守らなきゃ』
「だって私、ちゃんとみんなにお疲れ様でしたって言ったよ」
『うっ、確かに……。だ、だけど、そうしなさいって言われたってことは、きっとそうしなきゃいけないんだよ。次からは全員に聞こえるように大声でお疲れ様でしたって言うだけじゃ

なくて、きちんとひとりひとりにも挨拶しよ。ね? マスター』
「えー……。…………でも、アサシンがそういうならそうするね」
『うん』

 みりあがアサシンの言葉に納得した次の瞬間、楽屋の扉が開かれた。早歩きで中に入ってきたのはスーツを着こなした三十代半ばの女性――みりあのマネージャーだ。
 その顔つきは険しく、先ほど収録が終わると同時に、出演者全員にきちんと挨拶することなく飛び出していったみりあに怒り心頭のようである。

「みりあ! あなたね、自分の立場ってものがわかってないの!? まだ駆け出しのヒヨコでしかないあなたがこの街のお偉いさんに目を着けられたらひとたまりも――」
「プロデューサーごめんなさい! 今度からちゃんとひとりひとりに挨拶します!」
「まだ子供だからわからないかも知れないけど………………て、え? ど、どうしたのよ急に」
「プロデューサーは私のことを思って言ってくれてるから、ちゃんとしなさいって言われたことは守らなくちゃって」
「え、ええ……。なんだわかってるじゃない。それならいいんだけど、次から頼むわよ」
「はぁい。あ、そうだ! ねえねえプロデューサー、今から友達とショッピングに行ってきていい?」
「今から? まあまだ明るいから構わないけど、絶対に路地裏とか人気のないところに行ったら駄目よ? あと暗くならない内に帰宅すること。ちゃんと守れる?」
「うん!」
「なら行ってよし」
「やったぁ! 早くいこ♪ アサシン!」
「は? アサシン?」
『わわ、人前でみだりにクラス名を喋っちゃ駄目だよマスター!』
「あ、そっか。なんでもないよプロデューサー! じゃあいってきまーす☆」



 訝しむプロデューサーを他所に、みりあは急いで着替えを済ませると楽屋から飛び出した。
 迷路のようなTV局の中を迷うことなく駆け抜け、出口で彼女のことを待ち受けている少女に声をかける。

「お待たせアサシン♪ さあ、ショッピングにレッツゴー☆」
『だからアサシンって呼ぶのは駄目だってば……』
「えーっと、じゃあ樹ちゃん! ショッピングに行くぞー!」


532 : 《ホシトハナ》赤城みりあ&アサシン ◆7CTbqJqxkE :2015/05/17(日) 10:32:54 SJADc.5k0



                ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆*****




「アサシンはなにか叶えたいお願いってあるの?」
『だからアサシンじゃないよ』

 繁華街の人ごみの中、マスターは聖杯に望む願いはないかと尋ねてきた。
 流石にこうも人が多いところで聖杯戦争に関わる話をすることは憚われ、持ってきていたスケッチブックで返事をするわけにはいかなかった。

「私ね、叶えてもらいたいことがいーっぱいあるんだっ☆ カワイイ衣装とか、大きなステージで歌ったりとか!
 でも一番はみんなのところに戻って、また全員一緒にステージに立ちたいんだ☆」
『私の願いも、マスターを元の世界に戻してあげることだよ』
「ほんと!?」
『うん』
「えへへ♪ ありがとう樹ちゃん☆」




 マスターはアイドルであった。
 自分が歌手になるという夢を抱いたのが12歳の時であったのに、マスターは11歳にして既にステージに立ち、そしてお客さんを笑顔にしていた。
 すごいと思った。歌唱力もダンスもとても小学生のものとは思えないレベルで、そしてなによりも彼女の笑顔は、煌びやかな衣装やスポットライト、出演者が身に着けていた宝石なん

かより、ステージ上の他のどんなものよりずっとずっと輝いていた。キラキラしていた。
 そう。彼女は、スターなのだ。
 歌と、そして彼女の笑顔の輝きでみんなを笑顔にする、人々を幸せにする素敵な星。
 きっと彼女が元居た世界では、彼女が失踪したことでみんなが心配している。悲しんでいる。
 だから私は、マスターを守って、無事に元の世界に帰してあげなければならない。

「樹ちゃんってお姉さんがいるんだ! えへへ、実は私は妹がいるんだー☆ だから私もお姉さん!」

 ううん、それだけじゃ駄目。ひょっとしたらNPCとしてマスターの知り合いもこの汚らわしい街に呼ばれているかもしれない。
 彼女をアイドルたらしめる笑顔を、こんな聖杯戦争なんかで曇らせるわけにはいかない。もしもを考慮するとNPCへの被害も極力防いでいかなくてはならないだろう。

「ねえねえ樹ちゃん! また前みたいに変身して私を運んで! あれジェットコースターみたいですっごく楽しかった☆」
『そろそろ聖杯戦争が本格的に始まるから、そんなことしたらすぐに他のマスター達に見つかっちゃうよ。しばらくは禁止です』
「えー!! なんで!? 見つかっても大丈夫だよぉ! お願いッ」
『大丈夫じゃないし、今は人目も多いから無理だよ。あと、念話で話さないと変な目で見られるよ?』
「そんなことないよ。だって樹ちゃんはちゃんと私を守ってくれるし、今もこうして私とお話してくれてるもん。なにもおかしくないよ☆」

 マスターはおしゃべりが大好きなのに、呼び出された時期のせいで念話かスケッチブックでしか会話できないことが申し訳ない。
 だけどその分マスターを守る力を持ってくることができたのだから、彼女の為にも精一杯頑張ろう。

「そろそろお腹減ってきたね。樹ちゃんは何か食べたいものある?」

 マスターからの質問。
 近くに目をやれば、ハンバーガーショップやホットドッグの屋台などがある。
 ハンバーガーやホットドッグなど、四国にも外国の料理は残っていたが、やはり本場のものはスケールが違う。
 どれも捨てがたく、悩みに悩んで出た答えを手元に用意していたスケッチブックに書いてマスターに見せる。





「おうどんかー。この街にうどん屋さんってあるのかな?」


533 : 《ホシトハナ》赤城みりあ&アサシン ◆7CTbqJqxkE :2015/05/17(日) 10:34:22 SJADc.5k0



【クラス】アサシン
【真名】犬吠埼樹
【出典】結城友奈は勇者である
【属性】秩序・善
【パラメーター】筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力D 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:‐
後述の『無力の殻』を発動中にのみ、サーヴァントとしての気配を完全に断つことが可能。

【保有スキル】
神性:E〜B
身体の一部を供物として神樹に捧げたことにより得たスキル。
供物として捧げた機能は神霊の所有物であるが、アサシンの身体の一部であることに変わりはないため、『散華』を繰り返す度に神霊としての側面が増加していくこととなる。

無力の殻:-
勇者へ変身していない状態のアサシンは英霊として座には記録されていないため、変身を解いている状態のアサシンは魔術師及びサーヴァントにサーヴァントとして認識されない。
なお上記のパラメーターは勇者に変身している状態のものであり、このスキルが発動している状態でのアサシンの身体能力は一般の女子中学生のものと変わらない。


【宝具】
『勇者の不凋花(神樹の祝い)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
神の祝福。
『勇者』という存在を害する全てに対し精霊が出現し、無効化する。しかし神霊由来の防御であるため、一定ランク以上の『神性』を持つ相手ならば突破は可能。その際の攻撃はBランク分の威力削減を行ってからダメージ計算する。
また神性由来でなかろうと、攻撃によって発生した衝撃波や音などには精霊が現れない、もしくは現れてもそれを緩和する程度となる。
なお、『無力の殻』を発動している状態でも、アサシンに危害が及ぶ際に自動で精霊は出現する。

『満開』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:99 最大補足:1000人
勇者の切り札。神樹から通常よりも多くの力を引き出し、飛行能力を得るだけでなく全てのパラメーターを倍加させる。
発動すると神官や巫女を思わせる服装となり、背後に巨大なアーチと花が現出し、そこからワイヤーを射出出来る。発動中はワイヤーの射程距離・操作性も格段に上昇する。
10ターンの発動を以って終了し、その際に『散華』が発生して身体機能の一部を喪失する。喪失する機能はランダムであり、サーヴァントとなっているため『散華』しても精霊が増加することもない。
また、『満開』発動中は『勇者の不凋花』は発動しない。

【weapon】
・ワイヤー
勇者に変身している際、両手の裾に花の装飾が施されたリングを召喚し、そこからワイヤーを伸ばすことができる。
ワイヤーを巻きつけて拘束したり細切れに切断することなどが可能。

・雲外鏡
満開によって追加された精霊。
木霊とは異なり自動発動はしないが、Dランク以下の攻撃を無効化する結界を展開できる。Dランク以上の攻撃は突破されるが、その際にDランク分の威力削減を行う。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを平穏無事に元の世界へ戻す。
またマスターの関係者が巻き込まれていた場合、その人物も無事に元の世界へと戻す。



【マスター】
赤城みりあ@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版)

【マスターとしての願い】
叶えて欲しいことはたくさんあるが、一番は346プロのみんなとまたステージに立つこと。

【weapon】
なし

【能力・技能】
アイドルとしてのレッスンを行っている為、運動神経はいいかもしれない。
おしゃべりが趣味で、相手が独特な話し方をしていてもきちんと意思疎通ができる。

【方針】
アサシンに任せる。


534 : 《ホシトハナ》赤城みりあ&アサシン ◆7CTbqJqxkE :2015/05/17(日) 10:35:29 SJADc.5k0
投下終了です。


535 : ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 11:53:45 m3JfvTuk0
投下させていただきます


536 : ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 11:54:27 m3JfvTuk0






声が聴こえる――――この種を食い殺せ、と。









537 : ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 11:55:46 m3JfvTuk0

「いいか、これから会ってもらう人物は『美味しい』出資者なんだ」

マックス・シュレックは、珍しく焦りを覚えていた。
名士であるマックスですら慌てる人物だ。
マックスが相対する男は珍しいものを見て、おかしそうに笑った。

「世界一の大富豪とも呼ばれている」
「世界一、凄いな……いや、本当に世界一か?
 実は世界二位だったりしないのか?」

男は、異形の怪人だった。
まるで樽に脚と顔をつけた畸形。
水の入ったコップを持つ手は常人のそれとは大きく異なり、『水かき』がついているではないか。
怪人は面白可笑しく、笑いながら言葉を続けた。

「ひょっとすると、世界十位だったりするかもしれないんじゃないか?
 いや、そうだ、きっと十位だ。
 選ばれた十位に違いないぞ、なんとなく十位な気がする」
「そんなことはどうでもいい!
 大事なことは、とてつもない金持ちだということだ!」

大真面目な顔でつぶやき始める丸太のような樽の怪人を、怪人の参謀役であるマックス・シュレックは怒鳴りつける。
何が質の悪いことかと言えば、この怪人はふざけているのではなく、大まじめに言っているのだ。
ヒレのついた、おおよそ人間であるはずのない手で尖り過ぎた高すぎる鼻に触れている。
どのような人の手も介在していない畸形、怪人としか言いようのない『ペンギン男』。
人は神を模して作られたというが、そうだとするのならば、この怪人は間違いなく神が作り上げた失敗作。
その名をオズワルド・コブルポット。
人々には『ペンギン』という愛称のほうが通りの良い、市長選立候補者だ。

「いいか、お前は今から市長選に打って出ようという立場なんだぞ……!」

マックスとは頭一つも二つも違う短躯を見下ろしながら、ペンギンに言い聞かせる。
ペンギンは愉快げに笑うだけで、反省をしている様子もない。
シュレックは頭を抱えたままだ。
疲れたように肩を落としながら、言葉を続けた。



「いい加減、自覚というものを持て、『ペンギン』!」



その瞬間、短い腕が翻った。
男の鼻先を、怪人の『水かき』が掠める。
ぞっとした表情でシュレックはペンギンを見る。
先ほどまでの愉快げな表情は消え、憎悪と激怒を相混ぜにした表情がペンギンの顔に張り付いていた。


538 : ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 11:56:13 m3JfvTuk0


「『コブルポット』さんと呼べ!」


つらり、と。
鼻頭に血が流れ、マックスはぞっとした顔で血を拭った。
沸点が低すぎる。

「いや、悪かった。オズワルド、とにかく相手は大事な『お客様』だ」
「それぐらいわかっている」

ペンギンは口では謝ったが、マックスの意図を理解しているとは思えない。
いや、決してペンギンの知能が低いというわけではない。
ただ、マックスとは考えが異なっているだけなのだ。
何を重要に思い、何を軽んずるか。
そして、譲れないものはなんなのか。
そう言った事実が、『優秀なだけの常人』であるマックスとは異なっている。

「心配するな、友人よ。お前が俺を手伝ったように、俺もお前を手伝うさ」

ペンギンは笑い、マックスは頭を抱えた。
不安しかないマックスを他所にペンギンはずかずかと来客用の部屋へと向かう。
勢い良く、礼儀などないように扉を乱暴に開けた。

「いや、待たせたな」

せめて、『待たせましたな』だ。
参謀役であるマックスは頭を抱える。
しかし、客人である富豪は笑ってみせた。
と言っても、笑っただけだろうが。
腹の中では不満を抱いているに違いない、ペンギンの態度は明らかに礼儀に欠いている。
それでも、客人はニコリと笑って、鞄の中から二つの人形を取り出した。
エジプトのお守りだと、客人は言った。

「これを……私にどうしろと言うんですかねぇ、ええ」

ペンギンの言葉にマックスは再び頭を抱える。
この富豪ならば、ペンギンへの嫌がらせのためだけに対抗馬の候補へと出資をしてもおかしくない。
しかし、富豪は笑った。
そして、語る。
その内容は、単なる富豪の主張にすぎないためにマックスは聞き流す。
ただ、富豪がエジプト王朝に傾倒しているという事実を思い出した。
マックスは笑みを浮かべて、人形を手に取り、ペンギンに促した。
しかし、見るからに不気味なものだ。
呪われそうなものだ。
マックスはそんな感情を浮かべながら、冷戦構造について語る富豪を眺めた。





539 : ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 11:56:45 m3JfvTuk0





地球上の誰かがふと思った。
人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか。



『人間が増えて困るのは、他の生き物でも、ましてや地球でもない』



地球上の誰かがふと思った。
人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるだろうか。




『人間が増えて一番困るのは、人間自身だ』



誰かがふと思った。



『人間を滅ぼすのは、人間自身だからだ』




――――みんなの未来を守らねば――――








540 : オズワルド・コブルポット(ペンギン)&セイバー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 11:58:31 m3JfvTuk0



――――顕現した瞬間、ペンギンの側に居たパートナーは消え去った。



ペンギンの目の前でいともたやすく行われた、『殺人』という気安い行為。
シャブティという、ペンギンにとってはガラクタにしか見えない人形が泡のように溶け出した、すぐ後のことだ。
その泡は、良く見慣れた泡だった。
ぶくぶくと、下水の中で膨れ上がるそれと同じものだ。

泡は五つの蛇へと変化し、一つの蛇が鋭い刃へと変換した。
刃は、まるで当たり前のようにマックス・シュレックの首元へと伸びた。
触れるような柔らかさでマックスの首へと食い込み、なんの反発もなく奥へと進んでいく。
数秒もしないうちに刃へと変質した蛇はマックスの首を切り落とす。

「Hyh……」

ごとり、と。
目を丸くしたマックスの顔が地面へと落ち、それを見てペンギンは肩をすくめた。
頭部を切り落とした蛇は首の断面から生じる血の奔流を飲み込むように、マックスの身体と同化する。
ぐにゅぐにゅ、と。
不気味な様相で蛇は膨らみ、曲がり、形を変えていく。
やがて、その蛇が変形した姿が頭部へと変わる。
マックス・シュレックであったものは、別人へと変わる。
寄生と呼ぶには、あまりにも暴力的なまでの乗っ取り。

「……………来い」

その頭部の口が、小さく動いた。
声に呼応するように、残された四匹の蛇たちは吸い込まれる形で、マックスだった身体に吸い込まれていく。
四匹の蛇がマックスだった身体の四肢を簡単に切り落とした。
ペンギンはその姿を見て、下水に流れてきたボロボロのプラモデルを思い出した。
四匹の蛇は、頭部の蛇のように不気味に姿を変える。
四肢を喰らい尽くしていく蛇が姿を変えていく中で、頭部に変換した蛇が口を開いた。

「……貴様が、俺のマスターか?」

頭部が四肢に生える――――わけもなく、当然のように四肢が再生される。
しかし、それはマックス・シュレックが持ち得ていた常人の四肢とはわけが違う。
その一つ一つが、五本の『刃』なのだ。
『五つの刀』を持つ『剣の英霊<<セイバー>>』。
その名は。


――――後藤 / 五頭 / 五刀。


.


541 : オズワルド・コブルポット(ペンギン)&セイバー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 12:00:12 m3JfvTuk0

「そうだ、俺が貴様のマスターだ!」

ペンギンは自身が召喚してみせたサーヴァントを見て、楽しげに笑った。
もはや体型が球状にまでなった畸形の腹を抱える。
畸形のペンギンを見て、表情を一切動かさずに、口のみを動かした。
そこには嘲りも、怯えも、侮辱も存在しなかった。

「そうか……中々、ユニークな男だな」

セイバーはペンギンを見て、呟いた。
体型だけを見ての感想。
事実だけを言われたことに対して、ペンギンは特別怒りも覚えなかった。
何故ならば、『寄生生物<<パラサイト>>』と呼ばれる後藤のほうがよっぽどに『畸形』であるからだ。
自分よりも醜いものに対して、怒っても仕方がない。

「マスター」
「オズワルドさんと呼べ、マスターと呼ぶのならば、もっと敬意を払え!」
「オズワルド、寝起きだが腹が減ってな……」

そう言って、地面に転がったマックス・シュレックの頭部と四肢を指さす。
そして、頭部を爪先でこんこんと叩き、サッカーボールのように宙へと浮かせた。
人の頭部を扱っているとは思えない気軽さで、マックスの顔を掴みとる。
ペンギンはその様を見て、豪快に笑ってみせた。

「ああ、食え! 幾らでも食え!
 おかわりもあるゾ! 幾らでもあるぞ!」

ペンギンは笑った。
後藤はピクリとも表情を変えず、頭部の状態を変えた。
ぐにゃぐにゃと顔を変え、それはもはや顔と呼ぶことも出来ないものへと変わる。
強いていうならば、巨大な口。
ペンギンはパニック映画の名作、『ジョーズ』のポスターを連想した。
がぶり、と。
巨大な口となった後藤がマックスの頭部と四肢を丸呑みにしてみせた。
それを見て、ペンギンは愉快げに笑った。

「ゴッサムに血の雪を振らせてやろうってだけだ!
 聖杯ってのはアレだろう、イエスの使い古しのグラスだろう!
 イエスの誕生日になぁ、俺は祝われたことなどなかった!
 だからイエスの血を注いだワイングラスをぶち撒けてやろうってのさ!
 満足に祝われてきたくせに、平気な顔して不満を口にしやがって……!」

ペンギンは激しくまくし立てた後、ふう、ふう、と肩を怒らせる。
後藤は黙してペンギンの怒りを見るのみだ。
次第にペンギンの怒りは収まり、代わりに笑みが浮かび上がってきた。

「いいぜぇ、始めようぜ。ジェントルメェン」
「始める、か?」
「そうだ! 始めるんだ! 聖杯戦争ってやつを!」

ペンギンは手に持った傘を広げる。
そこからは無数の蝙蝠が飛び出した。
イリュージョン。
しかし、後藤は顔色一つ変えることはない。
『人間離れ』しただけのペンギンとは異なる、あからさまに『人間ではない』存在。

人を殺すための、人の殺害を、人自身に乞われた、か弱い超生物。

それがセイバーのサーヴァント、後藤であった。


542 : オズワルド・コブルポット(ペンギン)&セイバー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 12:00:58 m3JfvTuk0

【クラス】
セイバー

【真名】
後藤@寄生獣

【パラメーター】
筋力:A 耐久:C+ 敏捷:A+ 魔力:D 幸運:C 宝具:D

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:C
二工程以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等、大がかりな魔術は防げない。
彼女自身に対魔力が皆無なため、セイバーのクラスにあるまじき低さを誇る。

騎乗:C+
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。
人間の意志を奪って乗りこなす騎士である。

【保有スキル】
霊長の殺人者(偽):B
不完全にしてか弱いPrimate muder<<プライミッツ・マーダー>>。
『ガイアの怪物』、あるいは、『アラヤの総意』、いずれにしても不確定な概念が根源に根付くスキル。
『この種を食い殺せ』という激しい殺人衝動が昇華され、ヒトに対する『殺害権利』という概念を所持している。
相手が霊長の要素を所持している場合、『殺人』という『結果』を導く『行動』を、どのようなスキル・宝具でも無効にすることが出来ない。
ただし、蘇生を無効化することは出来ず、また空間ごと隔絶された場合は異次元を渡ることが出来ないために攻撃できない。

自己改造:A
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

【宝具】
『虐殺器官(パラサイト)』
ランク:D 種別:対『人』宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:5人
後藤は寄生生物<<パラサイト>>である。
パラサイトっとは、自らでは生きながらえることを可能としない生命体。
蛇のような形をして、たんぽぽの綿毛のような何かに包まれて、どこからか現れた。
寄生先の脳を丸々食い取り、そのまま自らを脳へと変質させて身体を奪い取る。
人間の肉体に寄生するために霊体化することが出来ず、また、現界に魔力以外にも人の肉を必要とする。
しかし、人の肉を食い続けることでマスターからの供給魔力を少量で抑えることが出来る。

また、自由自在に細胞を変質させ、数十メートルの長さに伸ばすことや、刃のように薄く鋭く変化させることが可能。
後藤は自ら以外に四体のパラサイトを四肢に寄生させており、その四体全てを自由に統率できる。

【weapon】
四肢の寄生生物を刃などに変質させて攻撃する。
他の四体を統率するために、頭部を変質させることはめったに行わない。

【人物背景】
ある日、どこからか現れた蛇のような何か。
人間に寄生し、脳を食い取り、その身体を己のものとする生物、パラサイト。
後藤の場合、一人の人間の肉体に五人のパラサイトが寄生している。
頭部及び四肢の全てがパラサイトであり、また、寄生先である人間の胴体部にもプロテクターのようにパラサイト生物が覆っている。
後藤は自身も含めた五体全てのパラサイトを『統率』することが出来る。
後藤以外にも右腕として扱われている『三木』が統率者となれ、自身以外の4匹の意識を支配し、完全に統率できるのは後藤だけである。

母体である人体の大半がパラサイトに置き換わっているために、かなりの自由度でその姿を変える事ができる。
体はパラサイトの鎧(プロテクター)で守られている。
対向走行しているトラック同士の交差による激突の衝撃にも耐え、ショットガンの直撃を複数受けるなどしても基本的にダメージを受けない。

『この種を食い殺せ』という声を聴いており、その声の正体を知っている。
曰く、『人が増えて一番困るのは他の生き物でも地球でもない。人間たち自身だ』。


543 : オズワルド・コブルポット(ペンギン)&セイバー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 12:01:26 m3JfvTuk0

【マスター】
オズワルド・コブルポット@バットマン・リターンズ

【マスターとしての願い】
復讐

【weapon】
『蝙蝠傘』
武器はギミックを仕込んだ傘。
劇中ではマシンガンを仕込んだ物と、相手に催眠術をかける物、先端に刃を仕込んだ物が登場。
また、死の直前にバットマンを攻撃しようと手にしたのは、自身の選択ミスにより、何の機能もないただの傘だった。

【能力・技能】
特殊な技能は持たない。
作中では指令電波を出して無数のペンギンを操っていた。

【人物背景】
名家コブルポット家の長男として誕生。
だが、その凶暴さと奇妙な外見から、呪われた者かの様にとられる。
生まれてから数日後のクリスマスに、実の両親によって揺り篭ごと下水道に流された。
閉鎖された動物園で、置き去りにされたペンギン達に育てられ成長。
その後、奇形サーカスに入団するなどして仲間を増やしていき、地下の下水道を通じて犯罪を繰り返していく。

自分のアイデンティティを求めて、自らが率いるサーカス・ギャングを使った自作自演を行う。
赤ん坊を救ったヒーローとして地上に出て、ゴッサム・シティの市役所であらゆる戸籍記録を調べ上げる、自分の出自と本名を突き止める。
さらに名士マックス・シュレックの陰謀を嗅ぎ付けて彼と共謀、市長選に打って出る。
だが、他人から愛されたことのない事で、人の心を理解しきる事が出来ず、性格は悲しいまでに捻じ曲がっている。
自らの発言が元でバットマンに失脚させられる。
自分を簡単に見捨てたシュレック、愛され育つ全ての子供、バットマンに対する復讐を誓う。
戸籍記録を調べた際にリストアップしていた、自分とは正反対の両親と愛情に恵まれた長男を一人残らず部下に命じて誘拐させる。
シュレックに対しても彼の長男を拉致しようとする。
だが、シュレックの説得と彼に対する憎しみから双方を折衷する形でシュレックの長男は見逃し、シュレック本人を拉致した。
さらにロケット弾で武装したペンギン達を使ってバットマンを殺そうとする。
しかし、ペンギン達のコントロールを奪われた挙句逆に自分がロケット弾攻撃を受け、誘拐した各家庭の長男達も救出される。
自身も重傷を負う等全ては失敗に終わる。
最期は「氷水でもいいから…」と、喉の渇きを訴えたペンギンの最後の言葉を聞き届けたペンギン達に見取られ、池の中に静かに沈んで逝った。
その最期は、愛された事の無かった者ゆえの、何処かしら悲しく哀れなものであった。


【方針】
祝われなかったクリスマスに、イエスの遺した聖杯をぶちまける。


544 : オズワルド・コブルポット(ペンギン)&セイバー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 12:01:53 m3JfvTuk0
投下終了です


545 : オズワルド・コブルポット(ペンギン)&セイバー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 12:18:58 m3JfvTuk0
失礼しました、スキル欄にミスが有りましたので修正させていただきます

>>542

【クラススキル】
対魔力:C
二工程以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等、大がかりな魔術は防げない。
対魔力が皆無なため、セイバーのクラスにあるまじき低さを誇る。


546 : ハッサム&セイヴァー ◆jqzZxVcA6Q :2015/05/17(日) 13:31:39 vknHLU1M0
投下します。


547 : ハッサム&セイヴァー ◆jqzZxVcA6Q :2015/05/17(日) 13:33:02 vknHLU1M0

「ひゃ〜〜〜〜!!お、おめえがオラのマスターなんかぁ〜〜っ!?」

シャブティがモリモリ大きくなってサーヴァントと化していくのを見つめるのはマスターのみ。
それがこの電脳空間ゴッサムシティーの鉄則であるがゆえ、サーヴァント・孫悟空は自身のマスターをすぐさま認識し驚愕の声をあげた。

「ハッ〜サム!ハッサム!!」

悟空が驚くのも無理はない、彼のマスターは人間ではなくポケモンだった。
電脳空間なのだからデジモンであればこれほど意外ではなかった、しかしこの電脳空間ゴッサムシティーにはハッサムが群生しているのだ。
そのうちの一体が変なマスクをつけたヒーロー崩れが落としたシャブティを拾ったのが事の始まり、あれよあれよと言う間に彼は聖杯戦争を戦うマスターになった。


548 : ハッサム&セイヴァー ◆jqzZxVcA6Q :2015/05/17(日) 13:33:52 vknHLU1M0

「オラマスターっちゅうと人間だとばかり思ってたぞ〜、ポケモンでもなれるんかぁ」

「ハッサーム!ハッサムハッサムハッサム!」

なれますよ、なってるでしょ……
プリプリ怒るハッサムの鳴き声は、悟空にしっかりと理解できた。
念話というわけではない、魔力のパスが繋がったことによる神秘である。

人間型のサーヴァントとマスターに常々見られる夢を介した互いの心象風景の共有に近い現象。
これもポケモンと人間が契約したことによる奇跡なのかもしれない。


549 : ハッサム&セイヴァー ◆jqzZxVcA6Q :2015/05/17(日) 13:35:17 vknHLU1M0

「まあいいや!オラ聖杯を手に入れて、つええ奴等がたくさんいる聖杯戦争に呼ばれてえんだ!よろしくなハッサム!」

「はい、よろしくお願いします」

ハッサムの願いは、自分達を支配する人類種の根絶。
悟空とハッサムの戦いのための戦いが、今始まろうとしていた。




【クラス】
セイヴァー
【真名】
孫悟空@DRAGON BALL

【パラメータ】
筋力A+×2~10 耐久A×2~10 敏捷A×2~10 魔力B×2~10 幸運A×2~10 宝具D

【属性】
中立・中庸

【クラス別スキル】
対英雄:A-
敵サーヴァントの全ステータスを3ランク上昇させる。ただし、反英雄には効果を発揮しない。

【保有スキル】
魔力放出(気):A+
生命エネルギーを放出し、同ランクまでの筋力ダメージを40~85%減衰させ、自身の筋力を倍加する。

亀仙流:D
彼が人間として生きていく上での指標。道を過たず、楽しく生きて楽しく戦う。

Z戦士:Z
地球を襲う概念に対し、全ステータスに+補正がかかる。

心眼(真):A+++
実戦経験によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が0%でも、負けない為の戦いで勝利に邁進できる。

【宝具】

『界王拳』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:自分
戦闘に関わる能力を2~10倍まで引き上げる事ができる。
英霊と化した今、生前存在した肉体への負担は皆無であるが、生前の時点でその負担が苦にならないレベルまで己を鍛えていたためセイヴァーには特に関係ない。


550 : ハッサム&セイヴァー ◆jqzZxVcA6Q :2015/05/17(日) 13:36:24 vknHLU1M0
【Weapon】
なし。

【人物背景】
セイヴァーはあまり過去を語らない人。
彼を理解するには漫画DRAGON BALL全42巻を読み、そのTVアニメーション(元祖、Zに別れているので注意!)、劇場アニメを視聴、あとは「ジャンプキャラ・バトルロワイアル」を読めばいいのではなかろうか?(クリリンのキャラ崩壊に注意!)
������しかし、彼の力は劇場アニメ「地球まるごと超決戦」のレベルに抑えられているので、すべてを把握する必要はない。

【サーヴァントとしての願い】
戦いたい。

【方針】
目についたサーヴァントにとにかく挑みかかり、聖杯を手に入れて次の聖杯戦争へ。


551 : ハッサム&セイヴァー ◆jqzZxVcA6Q :2015/05/17(日) 13:38:48 vknHLU1M0
【マスター】
ハッサム@ポケットモンスター

【マスターとしての願い】
人類種の殲滅。

【Weapon】
ハサミ(両腕)

【能力・技能】
バレットパンチ
弾丸のような勢いの拳。

こうそくいどう
素早く動き回る。

アイアンヘッド
頭部を鋼鉄の強度に変え、捕らえた相手を執拗にこづき回す。
 
はがねのつばさ
翅を広げ、敵を打つ。

【人物背景】
めだまもようの ついた はさみを ふりあげて あいてを いかくすると あたまが 3つ あるように みえる。
ゴッサムシティーに住んでいるが市条例上の駆除対象であり、辛い思いをしてきた。

【方針】
悟空を利用し、できる限りゴッサムシティーを破壊し住民を殺傷した上で聖杯に至る。


552 : ハッサム&セイヴァー ◆jqzZxVcA6Q :2015/05/17(日) 13:39:19 vknHLU1M0
投下終了です。


553 : ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:15:52 jgbYVHO.0
投下します


554 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:16:36 jgbYVHO.0

静寂を裂いてアンカーが飛ぶ。
先端のエッジが堅い木の幹へ突き刺さり、負荷がかかっても外れないようがっちりと食い込む。
アンカーに接続されたワイヤーが唸りを上げて巻き取られ、腰の後ろ側から噴射されるガスが前進する力を生む。
同時にアンカーを解除。間を置かず次の目標点へとアンカーを射出、その繰り返し。
月明かり以外に照明のない夜の森を、鋭く両の目を引き絞った小柄な男がすり抜けていく。
男の名はリヴァイ。
人類最強の兵士と誉れ高い、人類の敵たる「巨人」を狩ることを生業とする戦士だ。
装いはいつもの戦闘用装備。腰の立体機動装置の感触は良好。整備に不備はない。
何度かの跳躍を重ね、樹の幹に垂直に着地しつつ次の移動ルートを選び出すべく視線を引き絞る。

「……チッ」

が、幹に足を着けた途端、リヴァイは軽く舌打ちした。巨人の首ほどもありそうな太い木が斜めに傾いでいく。
一瞬たりとも迷わずにアンカーを外し、重力に絡め取られる前に樹を蹴って跳ぶ。
立体機動装置を駆使し、目についた一際背の高い樹の枝の上に着地した。
ちらと背後に眼をやれば、城壁ほどとは行かなくても三階建ての家屋に匹敵するほどの高さだった樹が、根元近くから横にズレていくのが見える。
断面は非常に滑らかで、砲弾や鋸ではなく鋭い刃物で真っ二つに断ち割られていた。
リヴァイは立体機動装置の操縦グリップに装着されたブレードを見る。
鋭くしなる刃。肉を削ぐことには向いているが、硬く太いものをああやってまるごと断ち割ることは、この刃には不向きだ。

「いや、そもそも人間の業でもねえか……」

嘆息し、ブレードを腰のボックスに収納。幹に背中を預けた。
ここまでざっと五分、と言ったところだろうか。駆け抜けた距離は直線で数キロ以上。
複雑に生い茂り、視界も利かない夜の森では上々の結果だと言える。しかしリヴァイは不満そうに口の端を歪めた。

「ここまでだ」
「もういいんですか?」

呟きはひとりごとではなく、応答があった。
リヴァイがもたれかかる樹の反対側に、いつの間にかもう一人の人影が存在していた。
髪を短く刈り込んだ青年。リヴァイより頭一つほど背が高いが、顔つきはどこか幼く見える。
彼がリヴァイに与えられたサーヴァント。クラスは“イーター”、捕食者の称号を冠する者だ。
彼の存在こそが、リヴァイの置かれた状況を証明する何よりの証拠。
立体機動装置を全開で駆動させていたリヴァイに、イーターは走ってついてきた。
夜間のため視界が悪く、地面だって舗装されてなどいない森の中をだ。
あまつさえリヴァイの着地点を先読みし、携えた巨大な剣で叩き斬ってみせた。
悔しいとすら思わない。サーヴァントとは、およそ一人でも巨人の群れを軽く凌駕する超常の存在なのだと理解させられる。


555 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:17:33 jgbYVHO.0

「コイツの調子は上々。それにお前の力もよくわかった」

腰の立体機動装置をコツコツと指先で叩く。
誰が整備したのか知らないが、普段使っているものとまるで同じ感覚で使用できる。
その手には馴染みのない刺青のようなものが刻まれていた。
サーヴァントを統べるマスターの証、令呪である。

「ご苦労なことだ。この世界に巨人はいないってのにな」
「巨人……リヴァイさんの世界にいる敵ですか」

イーターはリヴァイのことをさん付けで呼んでいた。
呼び捨てでいいと言ったのだが、イーターは軍隊のように上下関係のある組織に所属していたことと、外見上の年齢はリヴァイのほうがかなり年上ということもあってこうなった。

「リヴァイさんの願いは、その巨人を滅ぼすことですか?」
「どうかな。そりゃあ、そうすることができれば全部解決するんだろうが」
「気乗りしなさそうですね」
「信用できねえだろ。何でも願いが叶うなんて言われてもな」

リヴァイの記憶は、死に行く部下の手を取ったところで途切れている。
部下の遺品、たしか何かのお守りだったか、そういった物を手渡されたのだ。
それを手にした途端、リヴァイは戦場からこの退廃の街に転移した。
気がつけば傍らにいたのがこのイーターのサーヴァントだ。
彼からあらかたの説明を受けてリヴァイが下した決断が、聖杯を信用しない……これだった。

「聖杯に願えば全てが解決するなんて、現実味がなさすぎる。
 お前みたいなやつがいるってことは、全部が全部ハッタリって訳じゃないんだろうがな」
「万能の願望機、聖杯。その力は本物です。どのような願いであれ、正しく聖杯を勝ち獲った者なら不可能はない」
「誰かに頭を下げて叶えてもらう願いなんてクソ以下の価値しかねえ。
 巨人を駆逐するのは俺が……いや、俺たち自身がこの手でやることだ。でなければ何の意味もない」

今は汚れていない両手を見る。しかしここには何十人もの部下の血が染み込んでいる。
巨人がゴミのように貪り続けてきた人間の命の代価は、奴らを一体残らず殲滅することでしか贖えない。
それを聖杯に“やってもらって”は意味がない。リヴァイら人間が“この手で”成し遂げなければ、本当の意味で絶望から解放された事にはならないのだ。

「手厳しいですね。でも僕は……それでも、聖杯に縋るしかない」
「お前にも何かあるのか? 聖杯に縋ってでも叶えたいことが」
「ええ、あります。そのために僕はここにいる。
 “奴ら”を世界から駆逐する。それが叶うのなら、僕はなんだってできる」


556 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:18:32 jgbYVHO.0

イーターの幼さを残す柔和な顔が一転、厳しさと怜悧さが同居する戦士の顔になる。
そんな表情には覚えがある。巨人に挑む前の部下たちがそうだ。
自分と彼の関係について皮肉に思う。
リヴァイは人類を喰らおうとするもの……巨人と戦い続けてきた戦士。
イーターの敵も同じ人を喰らうものであるらしいが、彼は逆にその敵を喰らうと言う。
同じ人類の敵を相手にするのであっても、リヴァイや彼が所属する調査兵団は巨人を喰らったりはしない。
生きるために喰らう。喰らってさらに強くなる。故にイーター。捕食する者、なのだ。
殺すか、捕食するかの違いはあれど、やっていることは結局同じだ。だからこそリヴァイはイーターを召喚し得たのだろう。
何にしろ、イーターは“やる気”だということは間違いない。
その彼にしてみれば、戦意のないマスターなどお荷物以外の何物でもないだろう。
内心どう思っているかは分からないが、ともかくそれを表に出してはいない。
それなりの修羅場は潜っているということだ。若く見えても、肚の据わり方が熟練の戦士のそれと遜色ない。

「リヴァイさんは、戦うつもりはないんですか?」
「そうもいかねえだろう。帰れるもんならさっさと帰りたいところだが、そのアテがない」

そしてリヴァイも、気乗りしないとはいえ投げ出す訳にもいかない理由がある。
詰まるところ、聖杯を必要とせずとも、その力を利用しなければ元いたところには帰れないのだ。
当然、リヴァイには死ぬつもりなど毛頭ない。
彼がいた世界では、今も部下が、仲間たちが戦っている。
人を喰らう巨人と。そして、巨人を利用して人類を支配する人の中の“敵”と。
彼らを放り出したまま、何処とも知れない街で朽ち果てることなど到底許されることではない。

「だが、俺が聖杯を必要としないからといって、お前にまでそれを強要することもできない。
 だから……まあ、付き合ってやる。俺は帰れさえすりゃそれでいい。聖杯はお前の好きにしろ」
「いいんですか? 誰かと殺し合うことになりますが」
「人間同士の殺し合いってのも、経験がない訳じゃねえ。
 それに向こうから殺しに来るなら、手加減してやる義理もないからな」

殺し、殺される世界に身を置いてきたからこそ、生半な説得などで剣を置く者などいないと知っている。
それにリヴァイは自分が口下手だとも知っている。無駄に危険を犯すより、最初からここには敵しかいないと思っていたほうが気が楽だ。
殺すなり逃げ回っている内に最後の一人になれば自然と聖杯を手に入れ、元いた世界に帰れるだろう。
そしてイーターは聖杯によって願いを叶える。それでいい。
自分は聖杯を必要としないとはいえ、似たような境遇にあるイーターの世界が救われることまで否定する気はない。
むしろ境遇に共感できる分、祝福してやってもいいくらいだ。


557 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:19:12 jgbYVHO.0

「リヴァイさん、ありがとうございます」
「だがあまり期待はするな。俺もお前も無敵って訳じゃないんだ。
 死ぬときはどう足掻いたって死ぬ。お前みたいなやつを相手にしたら、俺も正直自信はないしな」
「それはご心配なく。僕が守りますよ」

笑ってイーターが言う。
不思議な奴だ、と思う。戦士として生きていた割に、それを感じさせない屈託のない顔をする。
誰も信用せず自分だけを頼りにするのではなく、誰かと肩を並べて戦うことに慣れている。そんな人間の顔だ。
一人では無敵ではない。それを知っている。仲間がいたからこそ、自分は生き抜いてこられたのだと。
その認識はリヴァイも同じくするところだ。だからこそ命を預けるに足るとも言える。

「……そろそろ引き上げるぞ。別に急ぐ訳じゃないが、明るくなればこの格好は目立つ」
「あの街じゃあまり個性的じゃない気はしますけどね」

全身に巻きつけた耐Gベルト、そして立体機動装置は元の世界なら別に不自然な外見ではない。
が、ゴッサムシティでは話は別だ。奇矯な格好の人物が多いとはいえ、不用意に目立つことは好ましくない。
日が昇らない内にねぐらに戻り、割り当てられた役割を演じる。それが当面の行動方針となるだろう。
リヴァイに聖杯が割り振った役職とは、チンピラであった。

「それにしても、なんだか堂に入ったものでしたよ。リヴァイさんの振る舞いは。
 暴力で押さえつけるだけじゃなく、ちゃんと信頼も得てるようですし」
「誰彼構わず殴りつけるだけじゃいずれ後ろから刺される。その辺は昔、覚えがあるからな」

正しくは、ストリートギャングの親玉だ。
十代から二十代後半の若年層を中心に構成された愚連隊の頭目。
堅気ですらないアウトローを演じろとは、中々皮肉の効いたキャスティングだと言わざるを得まい。

「でも、その立場は使えると思います。情報収集にはうってつけでしょう」
「どうだかな。ろくな教育も受けてないロクデナシどもだ……ま、それを言えば俺も変わらんか」

リヴァイはどうやら、荒くれ者どもを腕力でまとめあげた豪傑というポジションらしい。
記憶を取り戻してイーターと出会ったのは、対抗組織のボスをしこたまぶん殴って恭順を約束させた直後だった。
まるで賭け試合かのように熱狂するギャラリーを見るに、彼らの世代では腕っ節が強いということは一つのステータスでもあるらしい。
リヴァイからすれば暇潰し程度のものだったが、構成員は彼らのリーダーにある種崇拝めいた信頼を抱いているようだった。

「それはまあ、拳銃を抜いた相手を素手で叩きのめしたんですからね。ヒーローみたいなものじゃありませんか」
「武器だけあったところで動きが素人だ。あの程度、何の自慢にもなりやしねえ」


558 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:19:49 jgbYVHO.0

リヴァイが驚いたのはむしろ、精々持ち出してきて飛び出しナイフだろうと思っていたところが、出てきたのは拳銃だったことだ。
あまり使ったことはないが、どのような武器かは知っている。巨人には豆鉄砲でも、人間が当たればただでは済まないということも。
そんなものが易易と流通しているのなら、ゴッサムシティという街は侮れるものではない。

「休憩はもう十分だ。行くぞ」

返事の代わりにイーターが霊体化する。
実力は十分示したのだから、実体化を続けて無駄に魔力を消費することもないという判断だ。
リヴァイは立体機動装置を用いて樹の天頂部に移動し、遠くに見える摩天楼を眺める。
夜闇を払うが如く煌々と輝くネオンサイン。当然だがリヴァイのいた街では見たことのない光景だ。
ここゴッサムシティは、巨人の脅威に怯えて壁の内側で震えて生きる街ではない。
ともすれば馴染みのある退廃的な街。暴力や略奪がそこかしこに転がっていて、法の秩序など形骸化した混沌の坩堝。
それでもリヴァイはこの街に解放感は……自由は、感じない。
ここもまた、壁の街と同じく見えないルールに縛られている。

「壁の外だってのに、息苦しいもんだな」
「この世界も、僕らの世界と変わりません。自由なんて存在しない。欲しいのなら、奪うしかない」

姿を消したイーターが思念の言葉、念話を送ってくる。
まだ慣れないが、狼煙や発煙筒などよりよほど迅速かつ正確に情報を伝達できるため便利ではある。

「ねだっても、誰も手を差し伸べてくれはしない」
「自分の手で勝ち取らなきゃ、何も残りはしねえ」
「だから、僕は聖杯が欲しい」
「だから、俺は聖杯なんて必要ない」

願いは同じ、人類を脅かす存在の駆逐。
しかしそこに至る手段の是非は食い違う。
お互いそれを否定する気はない。
お互いが、そう結論づけた動機に共感できると感じているからだ。
だからこそ、背中を預けられる。
こいつとならば肩を並べて戦うのも悪くない。
自然と、そう思えるのだから。
蝋の翼を広げ、夜の空を飛ぶ。
この翼が融けて落ちる前に、真の自由を……自由の翼を、取り戻すために。
悔いなき選択を、成すために。


559 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:20:45 jgbYVHO.0

   ◆


イーターのクラスのサーヴァント。
真名は“神薙ユウ”。
万物を捕食する性質を持つ“オラクル細胞”から形成される異形の獣、“アラガミ”に喰らわれた世界で。
アラガミと同じオラクル細胞を身体に宿し、オラクル細胞を組み込んだ“神機”で人を喰らうアラガミを逆に喰らう。
すなわち、神を狩る者……“ゴッドイーター”として戦い続けてきた青年。
聖杯は彼をサーヴァントとして招いた。

終わりのない戦いに、徐々に追い詰められていく人類。
その中から僅かな数だけ生まれ、アラガミと戦うゴッドイーターたち。ユウもその一人だった。
来る日も来る日も、アラガミを狩り続けた。
ユウが捕食したアラガミのコアがオラクル細胞の防壁をアップデートし、その内側に住む人々の安全を確保する。
アラガミはアラガミ同士の捕食を繰り返し、さらなる進化を行う。
防壁の更新と、アラガミの進化。旗色は控えめに言っても人類が不利だった。
国家の体裁が保てなくなるほど人口が減少した世界では、組織だった動きは難しい。
世界各地に存在するゴッドイーターを統括する企業“フェンリル”が人類の盾となり、瀬戸際の攻防を続けている。
アナグラ、極東における人類の拠点でもその状況は変わらない。

サーヴァントになったということは、自分もアラガミとの戦いで命を落としたのだろうと、ユウは思う。
あの世界では、寿命を全うできる人間はほとんどいない。
常に不足する食料と医療のため、飢餓で死ぬか病で死ぬか。あるいは、アラガミに喰われて死ぬか。実際の死亡原因はこれが一番多い。
ゴッドイーターであるユウが貧困や病で死ぬことはない。戦闘員には福祉が優先して割り振られる。
ならば、ユウは戦場で死んだのだろう。アラガミに喰われて、死んだのだろう。
幸いというべきか、その瞬間の記憶はない。
いつものようにアラガミを狩りに出て、気がつけば英霊となって召喚の時を待っていた。

悔いは、ある。
死んだことが辛いのではない。仲間が、民衆が為す術もなくアラガミに喰い殺される光景は何度も見た。ただ自分の番が来ただけのこと。
しかし、仲間を残して倒れたことが、悔しい。
家族のために戦うムードメーカーのコウタ。
無愛想だがその実、誰よりも仲間思いのソーマ。
同じ新型の神機使いであり、心の内面を見せ合ったアリサ。
アラガミに取り込まれながらも生還し、再び戦うことを選んだリンドウ。
滅びと絶望に覆われた世界でなお、新たな生命という希望を産んだサクヤ。
地球を飲み込む終末捕食を阻止するため、アラガミとともに月へと旅出ったシオ。
他にも何人もの仲間が、懸命に生きている。戦っている。
その戦いから一人、ユウだけが脱落してしまったことが……悔しい。


560 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:21:29 jgbYVHO.0

マスターとするリヴァイは、自分と非常によく似た立場だと言える。
人を喰らう敵を倒し、壁の中にいる人々を守る戦士。
最終的に目指すものは絶望からの開放、自由への到達。
聖杯の救済を是か非かとする点で食い違うものの、それはお互いの否定には繋がらない。
リヴァイがユウの願いを理解するように、ユウもまたリヴァイの矜持を理解する。
己の願いと同程度に、彼を生かして元の世界に帰還させてやらねばという使命感がある。

「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ。運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ……」

呟くのは心の奥底に刻まれている言葉。
ゴッドイーターとして最初に就いた任務で、ユウはリンドウからこれら三つの命令を受けた。
しかし今、こうしてサーヴァントとなったということは、ユウはどの命令も守れなかったということだ。
死んでしまった。逃げることもできない。もうアラガミを殺すこともできない。
だが、聖杯があれば話は別だ。

「生きることから、逃げるな」

かつて、ユウはそう命令したことがあった。
自分の命を捨てて仲間を逃がそうとしたリンドウに。希望を信じられなかった仲間たちに。
あの言葉は、アナグラに属するゴッドイーターたちにとって三つの命令に続く至上命題となった。
生きることから逃げない。決して希望を捨てない。
サーヴァントと成り果てた今でもやれることがあるとするなら、絶対に諦めてなどやるものか。
たとえ、もう二度と仲間たちと触れ合えないのだとしても……仲間たちの生きる世界を、守ることができるのならば。
どのような手を使っても聖杯を手に入れ、アラガミを駆逐する。地球を人間の手に取り戻す。

生きることから、逃げない。


561 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:22:19 jgbYVHO.0

【クラス】
 イーター
【真名】
 神薙ユウ@GOD EATER BURST
【パラメーター】
  (通常時)   筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:B 宝具:D
 (捕食一回目) 筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:C+ 魔力:D 幸運:B
 (捕食二回目) 筋力:C++ 耐久:C++ 敏捷:C++ 魔力:D 幸運:B
 (捕食三回目) 筋力:C+++ 耐久:C+++ 敏捷:C+++ 魔力:D 幸運:B
【属性】
 秩序・善
【クラススキル】
オラクル細胞:B
 近接攻撃が命中するごとに僅かずつ魔力を奪取・吸収する。
対魔力:-(C)
 イーター本人に「対魔力」はないが、装甲を展開した場合のみCランクの「対魔力」が付加される。
【保有スキル】
インパルスエッジ(火):C
 神機をブレードフォームのまま、変形過程を経ずに砲撃を放つ。斬撃からノータイムで切り替えられるが、魔力消費が大きい。
 ガンパーツのアサルトは文字通り銃弾をアサルトライフルのように連続して放つが、インパルスエッジ時のみ極短射程で炸裂する砲弾となる。
 また、ブレードパーツ・★アヴェンジャーは切断・火属性のため、同ランクの「魔力放出(炎)」を内包する。
器用:A
 神機の変形を迅速かつ無駄なく完了する。近接戦の最中であっても変形に要する隙は極小となる。
ユーバーセンス:E-
 同ランクの「気配察知」に相当。近距離にある生体反応を感知しやすくなる。
消音:E-
 同ランクの「気配遮断」に相当。戦闘行動において発生する音を極力少なくする。
【宝具】
『神を喰らうもの(ゴッドイーター・バースト)』
ランク:D+++ 種別:対アラガミ宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:5人
 神機の形態の一つ、“捕食形態(プレデターフォーム)”での捕食を成功させることで解放が可能となるバーストモード。
 獣の顎を模したこの形態は噛み付き喰い千切るという行為に特化しており、捕食した存在の魔力を濃縮して吸収する。
 そのため直接魂喰いするよりも遥かに高効率で魔力を回収でき、30秒間筋力・耐久・敏捷のパラメータに+補正が付与される。
 また、発動のトリガーが真名開放ではなく他者の捕食にあるため、自身の魔力消費はさほど大きくない。
 そのため状況次第では何度でも連続して発動が可能。効果時間中に再度捕食を成功させた場合、+効果と効果時間は三度まで上乗せされる。
 捕食対象はサーヴァントならば血や肉など体の一部分で十分だが、マスターやNPC、使い魔などは心臓や霊核などのコアを喰らわなければ必要な魔力は回収できない。


562 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:23:10 jgbYVHO.0

【weapon】
神機(じんき)
 神薙ユウ専用に調整された、剣・銃・装甲が一体となった複合武装。
 内訳はロングブレード(★アヴェンジャー)・アサルト(★EXガトリング砲)・バックラー(★ティアストーン)。
 アラガミの生態を模倣した純粋な機械工学の産物であるため、神秘性は薄い。
 が、伝承に謳われる神の形質をも獲得したアラガミを屠り続けたその逸話から、「神性」スキルを所持するサーヴァントに対して特に有効となる。
 たとえ対象が何らかの防御宝具・スキルを備えていようとも、内蔵するオラクル細胞が瞬時にその形質を分析・模倣し、防御を貫通する。
 ただしあくまで「攻撃が無効化されない」だけであり、ダメージそのものが増加するわけではない。
 アラガミを捕食して弾丸として放つアラガミバレットは使用不可。
【人物背景】
 フェンリル極東支部に所属するゴッドイーター。名前の由来は「神を 薙ぐ あなた(you)」。
 原作はキャラメイクが可能であり決まった主人公像が存在しないため、ノベライズ・コミカライズにおいて設定されたキャラクター。
  (主に「GOD EATER ノッキン・オン・ヘブンズドア」「GOD EATER2 UNDER COVER」など)
 フェンリルに所属する以前は無職だったが、偏食因子(宿主を喰らわないよう調整されたオラクル細胞)適合テストで非常に高い数値を記録し、新型神機の適合者に選ばれる。
 当初は平隊員だがストーリーの進行につれて頭角を現していき、最終的には最精鋭部隊を率いる極東支部のエースとなる。
 彼には仲間たちのような特別な出自や、因縁のある敵、あるいは後に誕生する特殊部隊隊員のような異能力はない。
 一般のゴッドイーターが手にする普遍的な神機で誰よりも多くアラガミを屠る、ただの人類最強のゴッドイーターである。
【サーヴァントの願い】
 地球上からアラガミを駆逐する。
【基本戦術、方針、運用法】
 斬る・撃つ・守る、一人であらゆる状況に対応できるオールラウンダー。
 スキル・宝具ともに敵から魔力を回収する方向に特化しており、マスターに強いる魔力負担は低い。
 反面、その潤沢な魔力を有効に活かせる大火力の攻撃手段を持たないため、必然的に正面からの接近戦を強いられる。
 捕食を成功させれば爆発的にパラメータが上昇するものの、捕食する、つまり血や肉などの対象の一部を喰らうことが必要なため、サーヴァントが相手ではそう簡単には成功しないだろう。
 逆に使い魔やゴーレムなど、手駒を大量に使役するキャスターとの相性は抜群となる。


563 : リヴァイ&イーター ◆W1zAtfuZSU :2015/05/17(日) 15:23:39 jgbYVHO.0

【マスター】
 リヴァイ@進撃の巨人
【マスターの願い】
 帰還する。
【weapon】
立体機動装置
 先端にアンカーのついたワイヤー、ワイヤーの射出・巻取りを行う本体基部、ワイヤーの操作とブレードを取り付けるグリップ、ガスボンベ、耐Gベルトからなる装備。
 アンカーを任意の場所に打ち込み、ワイヤーを巻き取りつつボンベからガスを噴射して推進力とすることで、高低差を無視した高速移動が行える。
 ブレードの刃は負荷がかかった際にはカッターナイフのように折れる構造になっており、その都度本体に格納されている予備刀身と交換する。
 グリップの操作で任意に破棄することも可能であり、剣を振り抜く際に破棄することで投擲武器としても使用が可能。
【能力・技能】
 立体機動装置を用いた対人・対巨人戦闘術
 常人を大幅に凌駕した身体能力
【人物背景】
 人類が生存する壁の外側に遠征し、外界の調査および巨人との戦闘を任務とする調査兵団の兵士長を務める。
 戦死率も桁違いに高いが、団員はいずれも手練れ揃い。その中でも頭抜けた技量を誇り、人類最強の兵士と称される。
 調査兵団に入る前は王都の地下街で暴れるゴロツキだった。冷徹かつ無愛想な現実主義者。
 巨人の返り血をいちいちハンカチで拭うほど重度の潔癖症だが、仲間が戦死する際には汚れるのも厭わず手を取って労うなど情に厚い面もある。
 リヴァイは人が身体の自壊を防ぐために自然と課している筋力制限等を意図的に外せる能力を持つ。
 体の方がその超過駆動負荷に耐えるために鋼鉄の様な骨格・骨密度を獲得していったため、小柄な身長に比較して体重は重い。
 年齢不詳だが、少なくとも30歳は超えている模様。
【役職】
 ストリートギャングのリーダー。
 構成員は十代から二十代後半。


564 : 名無しさん :2015/05/17(日) 15:24:10 jgbYVHO.0
投下終了です


565 : 名無しさん :2015/05/17(日) 18:09:04 eyvCAQsI0
すみません、一応確認なのですが期限に変更はないということでいいんですよね?


566 : ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:20:18 rVdwY4D20
ひとまず先に投下させて頂きます。


567 : ヤモト・コキ&ランサー ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:21:06 rVdwY4D20

「はっ、はっ……」

 走る。
 少女はただ一人、ゴッサムの闇を駆け抜ける。
 追われているのは鳴り響く怒号と、向けられるサーチライトからも明らかだ。
 彼女は、この地域に根を張るギャングの組織に追われていた。

「…………っ」

 少女は腹立たしげに歯を噛みしめる。
 これだけ派手にギャング達が動いているにも関わらず、警察が止めに来る様子はない。
 理由は簡単、彼女を追う組織が警察に根回しを行っているからだ。
 最悪、警察が少女を捕まえるべく追ってくる可能性すらあった。

 それほどの組織に対し、少女は何かしたわけでもない。
 追われているのはただ単に、「そういう役割だから」という理由にすぎない。
 彼女は身に覚えのない濡衣を着せられ、逃げ惑っている。

 ギャングの構成員を殺した女。
 指名手配された犯罪者。     ロール
 それが、少女――ヤモト・コキの役割。

 逃げ続けるヤモトに……しかし、ギャング達が追いつく様子はなかった。
 それどころか、どんどんと距離が離れていく。
 桃色のライトに照らされた少女の影にすら、彼らの手は届かない。

 淀んだ空気を切り裂く、鋭い音。
 苛ついた一部のギャングが発砲したのだ。
 威嚇が目的でまともに狙いも定めなかった銃撃だ、当たるとは撃った当人すら思っていない。

 故に。
 運良く頭に当たりかけた銃弾を、ヤモトが避けたことにギャング達は気付かなかった。

 少女は自らが抱えている刀を意識した。
 名刀ではないが、ギャング達を鏖殺するには十分過ぎる得物だ――彼女自身の能力も含めて。
 しかしNPCの殺傷は禁じられているという事実が、彼女に反撃を躊躇わさせる。
 結局、橋を見つけると同時にヤモトは刀を諦め、オリガミに手を伸ばした。
 橋を渡ったところで彼女のジツ、オリガミ・ミサイルで橋を爆破し追撃を断つ魂胆である。

『さすがにその力を見える形で使うのはまずいよ〜、ヤモヤモ』

 その考えは、しかし声ならぬ声に阻まれた。

『ここはそのまま渡ってね〜』

 間の抜けた声に従って、ヤモトは橋を駆け抜ける。
 同時に橋が砕け散る様子に、ギャング達は慌てて足を止める。
 何があったんだ、爆弾か、と顔を見合わせる彼らに、気付けるはずもない。

 ほんの一瞬だけ実体化し、橋の下から突き出された「槍」と――
 それを振りかざす、少女の姿に。


   ※   ※   ※


568 : ヤモト・コキ&ランサー ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:22:03 rVdwY4D20


 ヤモト・コキはニンジャである。
 偶然からシ・ニンジャのソウルに憑依された彼女は、
 それでも力をほとんど使う事無く暮らしていたが……
 ネオサイタマのニンジャ組織――ソウカイヤはその存在に気付いた。
 いかにシ・ニンジャのソウルが強力と言えど、ソウカイヤという組織の力はそれに勝る。
 彼女が逃げおおせたのは、様々な偶然を経た結果に過ぎない。

 シルバーカラスから受け継いだものを胸に、逃亡生活を続けていたヤモト。
 だが、ソウカイヤの追っ手は執拗に迫り来る。
 終わらぬイクサに消耗しきったヤモトは、通りすがった古物店でアクセサリーを気休めに購入した。
 願いが叶うという触れ込みの小さな人形。
 ミイラのような姿を演出するためなのか、オリガミのような紙が巻きつけられている、古臭いもの。
 特に期待せずにそれを……シャブティを手に取ったヤモトは聖杯に招かれ。
 そして、今は偽りのゴッサムでギャングに追われている。

 確かにあのままニンジャとの戦いを続けるよりかは、ただのギャングに追われる生活の方がマシだろう。
 だがそれなら逃亡生活そのものを無くしてくれてもいいのではないかと、ヤモトは聖杯に問い詰めたくて仕方がなかった。

 適当なビルを駆け上り、屋上から向こう岸の風景を見渡す。
 ギャング達は向こう岸で右往左往しているようだ。
 ほっと一息ついたヤモトの肩が、トントンと叩かれた。

「おつかれ〜
 しょうゆ味のジェラート、食べてみない?」
「…………ランサー=サン」

 振り返った先には、一人の少女がいる。
 ランサーのサーヴァント。
 ヤモトと同年代……いや、年下にさえ見える彼女の装束は神秘的なほど優雅で、花のよう。
 刃を何本も浮かせた特徴的な形の槍を振るったばかりだというのに、その服装には一つとして乱れがない。
 いつの間にか服装に気を遣う事を忘れていたヤモトは、自分より年下らしき少女を羨ましく感じた。

 しかしそんなヤモトの様子をよそに、ランサーは氷菓を突き出してくる。

「ほらほら〜」
「う、うん」

 ランサーの行動はいつも突飛で、マイペースで、スローライフだ。見た目と同じか、或いはそれ以上に子供っぽい。
 ひとまずジェラートを口に入れてみたヤモトは、その味に微妙な表情を浮かべた。

「………………」
「あれ〜、2分の1の確率で美味しいって言うんじゃないかと思ったんだけど〜」
「2分の1?」
「ん〜、ヤモヤモの味覚はわっしーとミノさんのどっちかなって」

 そっか〜、ヤモヤモはわっしータイプか〜、などと呟くランサー。
 言われている側はどういうことかさっぱり分からない。
 ため息をつきながら、ヤモトは向こう岸に視線を戻した。
 ギャング達は川を渡れず、追撃を諦めたようだった。
 しかし、あの程度の川幅ならヤモトは――ニンジャは飛び越えられただろう。
 おそらくサーヴァントも同じだ。

 聖杯戦争。
 その知識はヤモトの頭の中に刷り込まれている。
 英霊をサーヴァントとして使役する、魔術師の戦争。
 戦えるかどうかは自信がなかった。 
 シルバーカラスからのインストラクションは未だ未完成。
 せめて鍛錬を積み重ねたいところだが、ギャングに追われる身ではその暇もない。
 思考を巡らす後ろで、ランサーがのんびりと呟いた。

「……うぅーん、ヤモヤモがマスターなのはそのうちバレるかもしれないね〜」


569 : ヤモト・コキ&ランサー ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:22:41 rVdwY4D20

「バレるって」
「あ〜、警察官やギャングの役割を与えられたマスターもいるかも。
 そういう人はヤモヤモがマスターなのに気付いて、一方的に攻撃してくるよ〜」 
「分かるの?」
「いや〜、考えてみただけ。
 そういう役割を貰えた人は、自分の立場を利用して戦うよね〜」

 思いつきもしない発想だった。
 いつの間にかニンジャとなりソウカイヤに追われるようになった彼女には、
 友人を巻き込まないよう逃げ回りながら生きるだけで精一杯だった彼女には、
 利用できる立場などありはしなかったのだから。

「つまり、アタイは役割の時点で不利っていうこと?」
「うん。
 だからせめてその時、ニンジャだってバレてるよりは……ただの女の子だって思わせる方が戦いやすいと思うな〜」
「もしかして、さっきのも」

 橋の破壊を静止された時のことを思い出す。
 年下にしか見えない少女はその実、ヤモトよりずっと先を読んで戦略を立てていた。

「つまり。マスターは戦わないほうがいいんだよ〜」

 そう言って、ランサーはぴんと指を立てた。

「……でも」
「だいじょうぶだいじょうぶ〜
 これでも神性持ちの上級サーヴァントだからね〜
 本気になったら大量の武器でズガーンだよ〜」

 ランサーは笑顔で指を振る。
 年下にすら見える少女が、一人で戦うという。
 ヤモトは何も反論できない。
 ただ抱えていた刀――ウバステが、小さく震えた。
 ヤモトの身体と共に。


   ※   ※   ※


570 : ヤモト・コキ&ランサー ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:22:57 rVdwY4D20


 ランサー。
 真名を乃木園子。
 神樹に選ばれた少女であり、一時は生き神として扱われた「勇者」。
 彼女の全盛期とは、20回の満開で身体を散華させる前の状態だ。
 それはつまり、身体が動く状態という事であり……20回の散華に耐えうる状態ということであり。
 宝具もまた、それを行うためのもの。

 即ち。
 ランサーは己が宝具を使う度に、身体機能を失っていく。

(マスターとしての透視力って、どこまで見えるのかな〜?)

 全く表情を変えないまま、ランサーは自問した。
 ヤモトに宝具のリスクについて説明するつもりはない。
 戦略的にヤモトの力を秘匿しておくべきである以上、ランサーの戦力について不安を覚えさせるわけにはいかないし……
 そもそもあまりニンジャの力を使ってほしくないというのが本音だ。

(人間じゃなくなった挙句に友達とお別れ、もう会えない……なんて。
 見てて楽しいものじゃないよね〜)

 ランサーの願いは、ヤモトが元の生活に戻ること。友人と平穏な暮らしを過ごすこと。
 ニンジャも、バーテックスも、勇者も、普通の暮らしにはいらない。
 そして聖杯なら、それくらいの世界を作ることはできるはずだ。

 一人で身体機能を失いながら戦うことに対して恐怖はない。生前にも経験したことなのだから。
 動けない身体のまま何年も幽閉されることはないのだから、むしろ気が楽だとすら感じている。

 だから、自らの能力と宝具を最大限活用し……勝つ。

(そのためなら……十回でも百回でも満開するよ)

 ランサーの笑みは消えない。
 その覚悟は、決してヤモトには漏らさない。


   ※   ※   ※


 ――助けなきゃ。

 助ける?どうやって?

 ――助けられるとも。

 どうやって?

 ――アタイは何でもできる。

 どうやって?

 ――アタイの力。シ・ニンジャの力。さあ使え。

 私の力。

 ――存分に使え。さあ使え。


   ※   ※   ※


571 : ヤモト・コキ&ランサー ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:23:39 rVdwY4D20


【クラス】ランサー
【真名】乃木園子@鷲尾須美は勇者である
【属性】中庸・中立
【パラメーター】筋力:C- 耐久:D 敏捷:A- 魔力:C+++ 幸運:E 宝具:C+++

【クラススキル】
・対魔力D+++
 魔術への耐性。一工程の魔術なら無効化できる。
 宝具により精霊が増加すると共に強化される。

【保有スキル】
・神性:D〜A+
 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
 神性を持つ、もしくは神の支援を受けた逸話のある「勇者」の英霊から攻撃を受けた際に耐性として機能する。
 このランサーの場合、宝具により武器を強化すると同時に神性も強化される。
 一時、身体のほとんどを神樹に捧げ生き神として崇められたため最高値は極めて高い。

・直感:B
  戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。視覚・聴覚への妨害を半減させる。

・戦闘続行:A
  瀕死の傷でも十全な戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限りは戦闘を続行できる。
  ――例え、四肢のほぼ全てと五感の一部が機能しなくとも。

【宝具】
     タ タ カ イ
・「三ノ輪銀は勇者である」
 ランク:C+++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

 神の祝福。勇者を守る精霊達。
 『勇者』という存在を害する全てに対し精霊が出現し、無効化する。
 しかし神霊由来の防御であるため、一定ランク以上の『神性』を持つ相手ならば突破は可能。その際の攻撃はランク分の威力削減を行ってからダメージ計算する。
 また神性由来でなかろうと、攻撃によって発生した衝撃波や音などには精霊が現れない、もしくは現れてもそれを緩和する程度となる。
 初期の精霊は一体のみだが、後述の宝具により散華する度に精霊は増加し、効果も強化される。

     ヤ ク ソ ク
・「鷲尾須美は勇者である」
 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:50 最大補足:500人

 勇者の切り札。大輪の花を思わせる巫女装束と無数の刃の開花。
 「全盛期」の関係上、宝具のランクと効果はランサーの戦闘結果を反映している勇者たちより低い。

 神樹から通常よりも多くの力を引き出し、飛行能力を得るだけでなく幸運以外の全てのパラメーターを1ランクアップさせる。
 また武器となる槍に威力強化、数量増加、遠隔操作を付与し、与ダメージ計算の際に魔力を計算式に加える。
 10ターンの発動を以って終了し、その際に『散華』が発生して身体機能の一部を喪失、代わりに精霊が追加される。
 喪失する機能と追加される精霊については20回までは生前の逸話を踏襲するが、21回以降は喪失はランダム、かつ精霊の追加もなされない。
 散華する度に神性及び魔力・対魔力が強化されるが、聖杯を得るまではどのような方法を使っても喪失した部位を回復することはできない。
 また「鷲尾須美は勇者である」発動中は「三ノ輪銀は勇者である」が発動せず、連続使用した場合は発動ターンが減少する。

【weapon】
・槍
 宙に浮いた複数の刃を持つ独特な槍。
 魔力が強化される度に数が増加する。

【人物背景】
 滅びた世界において神樹の力によって守れる四国の中、名家に生まれた少女。
 ぼんやりとした性格だが天才的な頭脳を誇り、物事を直感的に把握し危機的状況でも冷静に答えを導き出す。

 三ノ輪銀、鷲尾須美と共にバーテックスから世界を守るための「勇者」として選ばれる。当時小学生。
 だが戦いの中で銀が戦死。
 そういった事態を防ぐべく勇者システムは改善されるものの、
 勇者の身体の一部を「供物」として捧げる必要がある事に園子は気付く。
 気絶した鷲尾を戦線から遠ざけた園子は単独でバーテックスとの戦いを挑み、撃退したが、
 代償として身体機能のほとんどを失い、生き神として祀られることとなった。
 ……鷲尾とも、同世代の誰とも長らく出会うことのない、半ば幽閉された環境で。

【サーヴァントとしての願い】
 ヤモトが無事に友人との生活に戻ること。

【方針】
 マスターの能力は十分だが役割が悪すぎるので、いざという時のためできるだけ自分一人で戦う。
 またランサーの私的な感情としてはマスターに人間としての幸せを得て欲しいので、
 あまりニンジャとしての能力は使ってほしくない。


572 : ヤモト・コキ&ランサー ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:24:02 rVdwY4D20


【マスター】
 ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー

【マスターとしての願い】
 生き残ること。

【weapon】
・ウバステ
 無銘の刀。名刀ではないが、ヤモトにとっては大切な品。

【能力・技能】
 ニンジャとしての身体能力。
 また、シルバーカラスから最低限の剣技を学んでいる。

・サクラ・エンハンス・ジツ
 物体にカラテ・エネルギーを込めることで超自然の桜色の光を纏わせ、
 その物体に爆発性を付与したり、サイキックで自由に操作したり、強化したりする効果を持つ。
 ヤモトは主にオリガミに対して使用し、オリガミ・ミサイルとして撃ち出す。

【人物背景】
 女子高生ニンジャ。
 自殺未遂に巻き込まれたのを契機にアーチニンジャ「シ・ニンジャ」のソウル憑依者となる。
 それが原因となったことでソウカイヤのニンジャに狙われるようになり、
 友人であるアサリと別れて孤独な逃亡生活を送り始める。
 偶然出会った余命いくばくもないニンジャ・シルバーカラスから剣の手ほどきを受け、
 彼の病死と共に「ウバステ」を受け継いだ。

 時系列としては「スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ」のしばらく後。

【方針】
 ランサーに任せっきりでいいのか、悩んでいる。

【役職】
 ギャングと汚職警官に追われる指名手配犯。


573 : ◆ninjMGPkX6 :2015/05/17(日) 18:25:24 rVdwY4D20
投下終了です。
ステータス製作の際、◆7CTbqJqxkE氏の「《ホシトハナ》赤城みりあ&アサシン」を参考にさせて頂きました。
この場を借りて、お礼を申し上げます。


574 : ◆LoMrArTO3g :2015/05/17(日) 18:40:32 uHwT9jjo0
投下します。


575 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:42:21 uHwT9jjo0
鳥を間違えました
こちらです


576 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:43:17 uHwT9jjo0
,

























―――産まれ堕ちれば、死んだも同然。



















▲  ▲  ▲


577 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:44:17 uHwT9jjo0
くちゃくちゃ。ぎしぎし。がりがり。
みずみずしい、肉の音。
まずは腹を裂く。どぷりと血液が流れ出すが、まあ気にしている暇はない。
少し血液を拭いてやると、サーモンの切り身のような綺麗な腹直筋が見えた。
細部まで鍛えてあるのか、薄さこそ常人と変わらないものの、程よい弾力と健康的な色をした上質な筋肉だった。

「あ―――ぎぃ、が」
「お、痛かったか?すまんすまん、まあもうちょっとで終わるから我慢してくれや」
「な、にが」

我慢だ、と青年は呟くが目の前の男―――今まさに自分を診療代に乗せ切り刻んでいる男には、届いていないようだった。
薄々解っている。この男の言う『終わる』は、『解放する』という意味ではないことは。
恐らく、この時点で―――いや、この男に捕まった時点でこの青年の運命は決まっていたのだろう。
解剖され、己の身体が部位ごとに次々と切り取られていく激痛に絶えられず絶命するか。
痛みに耐えることを脳が拒否し、先に心が死ぬか。
簡単な二択だ。身体が先に死ぬか、心が先に死ぬか。
奇跡など起こらない。サーヴァントすら呼ぶことが出来なかった青年は、スーパーに並ぶ豚や牛のように切り分けられる。
でも。もしかしたら。
この場でサーヴァントが現れて自分を救ってくれるのではないか―――と。
左手には令呪が宿っている。
宿っているのだ。
サーヴァントさえ呼ぶことができたら―――この男を殺し、自分も助かるのではないか。
震える手が伸びる。
ああ、そうだ。
自分はまだ負けちゃいない。勝利の芽が完全に潰えた訳でもない。
ならば、諦められない。
そう、震える手を伸ばそうとした青年に。

「あー…大して変わんねえな。さっさと済ませちまうかァ」

死刑宣告が、行われた。

「あ、ガッ、ぐぎ、あああああああああああああああああああああああ―――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


578 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:45:06 uHwT9jjo0
するするする、と。
青年の身体の上と中を、刃物が走る。

「ああ、あ、あああああ、あああ、あああああ」

人体には大小含めると焼く600前後の筋肉が存在している。
骨は約206本。性格に定義すると数は増減するが、大まかな数としてはこれくらい。
臓器に至っては正確な数はない。どう分別するかにもよるが、ここでは割愛する。
踊る刃物は、まるで新鮮な魚を調理するように。
それらを、全て。
―――摘出し、並べていく。

「ああああ、ああ、ああああ、ああ、」

まず足の筋肉から、削いでいく。
穴を開けた腹など無視して。
まずは、寛骨の周辺に位置する内寛骨筋を構成する筋肉。
腸腰筋。腸骨筋。大腰筋。小腰筋。
その仲間である外寛骨筋も、同じように削いでいく。
臀筋。大臀筋。
中臀筋。小臀筋。大腿筋膜張筋。

「ぎあが、ぐか、ああ、aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッッ!!!!!!!!!!!!」

青年は、切り取られていく己の筋肉の名を覚えていた。
なまじ知識があったせいでより鮮明な痛みが脳へと流れ込んでくる。。
ぎち、と音がした。
次々と、己の足を構成するパーツが、無くなっていく。
大腿方形筋。
内閉鎖筋。
梨状筋。
上双子筋。下双子筋。
恥骨筋。薄筋
長内転筋。短内転筋。
大内転筋。小内転筋。外閉鎖筋
縫工筋。大腿直筋。内側広筋。外側広筋。中間広筋。

「ぎ、あが」

膝関節筋。大腿二頭筋。半腱様筋。半膜様筋。
前脛骨筋。長趾伸筋。第三腓骨筋。長母趾伸筋
腓骨筋。長腓骨筋。短腓骨筋。

―――激痛の中で。自分の足が、軽くなるのを感じた。

足底筋。膝窩筋。腓腹筋。ヒラメ筋。
長趾屈筋。後脛骨筋。長母趾屈筋。
足筋。足背筋。短趾伸筋。短母趾伸筋。

――意識が、とける。明確な自ぶんが、たもっていられなくなる。

中足筋。短趾屈筋。足底方形筋。
虫様筋背側骨間筋底側骨間筋母趾球筋母趾外転筋短母趾屈筋母趾内転筋小趾球筋小趾外転筋短小趾屈筋―――小趾対立筋。

およそ、全ての下肢部の筋肉が切除されたとき。
青年の意識は既になく―――心臓は鼓動を止めていた。









▲  ▲  ▲


579 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:45:49 uHwT9jjo0
「はァ…」

人『だった』残骸の前で、男は深くため息を吐く。
そして何か思うことがあったのか、数秒天井を見上げ、もう一度深く息を吐く。

「聖杯戦争だのNPCだの言うから学園都市のクソガキどもとなんか違うのかと思ったが、何も変わんねえじゃねえか。
 あー損した。こりゃこの肉塊にも失礼だなァ。ま、あとで野良犬の餌にでもしてやっから、許してくれや」

ガンッ、と。
男―――その名を木原数多という―――は、つまらなそうに残骸が散らばっている手術台を蹴飛ばす。
聖杯戦争。願いを叶えるための殺し合い。
正直に言えば、木原には理解不明なことだらけだった。
サーヴァント。和訳で召使い等の意味だったか。
聖杯。詳しいわけではないが、神話か伝説にそういうものがある『らしい』ということは知っている。
木原は学園都市側の人間なのでオカルト方面には弱いため、仕方ないといえば仕方ないのだが。
木原クラスになるとオカルトの内容こそ把握していないものの、そのような存在があることだけは証明できる。

「…魔術ねえ」

木原にとっては、理解の外の技術。
しかし。

「現に俺がこうして生き返ってんだから、世話ねえよなァ」

学園都市最強の能力者、一方通行の謎の力。
墨で塗り固められた上に更にこの世のありとあらゆる悪をぶちまけたような、ドス黒い噴出する翼。

『ihbf殺wp』

どの世界の言語を利用しているのかすらわからない、言葉。
一方通行が最期に獲得した、あの力の正体。
天使の、あの存在の力の源。
おおよそは見当はついている。
おそらく、あれの力の正体は―――

(…といっても、あくまで予想だ。実験やら研究の末に出した答えじゃねえ。
 せっかく生き返ったんだ、これを証明しなきゃ死んでも死に切れねえよなァ、一方通行クン?)

にたり、と木原の顔が愉悦に歪む。
研究対象とその目的―――それらを見つけた科学者は、恐ろしい。
特に彼のような狂った人間ならば、尚更だ。

「とりあえずは生きて帰ることだな。聖杯なんつーもんは…ま、帰るついでにもらってくか」

もらえるならばついでに貰っていけばいい。
木原にはどうしても叶えたい願いなど無いが故に、聖杯などに興味はない。
願って結果だけポンと出してはいしゅーりょーなんてものが認められるならば、彼は科学者などやっていない。
今後の動きだけでも考えておくか―――と、思案した木原のもとに。
己がサーヴァントの声か響く。

「…終わったかネ?」


580 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:47:01 uHwT9jjo0
「…キャスターか」
「おや。こんなところで解剖とは。収穫はあったかネ?」
「ねえな。こりゃ人間と大して変わらねえ」
「だと思ったヨ。サーヴァントを呼べなかったマスターの中に特別な存在が混ざっているとは考え難い。
 恐らく、ありふれた魔術師と同じだろうネ」

現れたのは黒い着物に、背に十二の文字が刻まれた白の羽織を着た男。
腰には日本刀を提げており―――顔面は、不気味な白塗りにいくつかペイントされている。
この男が、木原数多のサーヴァント。
魔術師のクラス、キャスターである。
カツカツと足を鳴らしキャスター散らかされた肉の残骸に接近し―――その肉に、ゾブリと指を突き刺す。
それと同時に、哀れな青年の残骸が分解されていく。

「死んだマスターの肉体の保持。難しいことじゃァないが無駄に使わせるのはやめたまえヨ。
 まったく、始末するこっちのことも考えたまえ」
「は、テメエもさっき数体攫ってただろ?そっちはどうしたんだよ」
「もうとっくの昔に済ませたヨ。私が合図すれば周囲を巻き込んで内部から弾け飛ぶように出来ている」

気味も悪いスイッチのようなものを、キャスターが手の中でくるくると弄んでいる。
おそらくあれが、起爆装置なのだろう。
嫌な趣味してんなぁ、と。自分のことは棚に上げ、木原は笑う。

「…マスター。科学者にとって、一番大切なモノは何かわかるかネ?」

それを見て、何か思ったのか。
キャスターは、木原へと問いを投げる。

「…あ?」
「一番失われたくないもの、の方が正しいか。それは最新設備が整った研究室でもなければ、優秀な部下でもない。
 思想の賛同者でもなければ理解者でもない。
 さて、何だと思うネ?」

そう問われて、思案する。
―――使い勝手のいい兵士か?
いや、違う。変えも効く兵士は楽だが、所詮はゴミにいい利用価値をつけて使ってるだけだ。
言うならばリサイクル。使えるが、必要ではない。
―――覇を競い合う敵か?
いや、違う。そもそも科学者にはそんなものは必要ないし、敵…一方通行には、さっさとミンチになってもらいたいほどだ。
ならば。
科学者にとって大切なものとは。

「―――あ」

そこで。木原は、唐突に理解した。

「そうか――材料か」


581 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:48:15 uHwT9jjo0
「そうだヨ。各地を這いずり回り地の果てまで捜索し、血の滲む努力で手に入れた研究材料。
 我々はソレを失うことをなにより受け入れられない。
 そして、新たな研究材料を手にすることは何よりも喜ばしい。
 しかし珍しいモノなど殆ど手に入ることはないのだヨ。
 ―――でも『此処』ならば、違う」

ニタリ、とキャスターが不気味な笑みを浮かべる。
そして。
木原も同じ科学者だからか―――狂気に塗れた科学者だからか。
言葉を介さずともその意思を理解し。
不気味に、その口角を上げる。

「ここには、『英霊』がいやがる」
「ご名答。人類を超越し幾度と無く世界を救いその身に賞賛を受けたその英雄たち。
 一騎当千万古不当の豪傑共。誇りと勝利を胸に勝ち誇ってきた戦士たち。

 ―――私は、そんな彼らの全てを知りたい。

 解剖し、研究し、骨の髄の更にその奥まで堪能し。
 溶かして瓶に保管し、その全てを暴きたい」

そのキャスターの言葉に―――木原は、思わず声を上げて笑っていた。
コイツは、どうしようもない。
救いようが無い、どこまでも科学者な男だと。

「あァー…笑った笑った。オマエ、イイわ最高だわ。
 さっさと終わらせてカエローかと思ったが気が変わったわ。
 ―――乗ってやるよ、聖杯戦争。
 瓶詰めにしてわかりやすいように名前のラベル貼って並べてやるよ」

そして。
ここに、狂気の主従が誕生した。
戦いなど興味はない。
聖杯など興味はない。
興味があるのはそこの参加者の、魂と肉体のみ。

彼らは、全てを調べ上げる。
調べ上げ、人としての尊厳を踏みにじり、陵辱する。
高貴な願いなど関係ない。
醜い恨みなど関係ない。
あるのはただの、純粋な知的好奇心のみ。









―――さあ、聖杯戦争を研究(はじ)めよう。


582 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:49:29 uHwT9jjo0
【CLASS】
キャスター
【真名】
涅マユリ@BLEACH
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運D 宝具B
【属性】
 中立・悪
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
彼の場合は、「技術開発局」を作成する。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。
彼の場合は毒薬から解毒薬まであらゆる薬を作成可能である。

【保有スキル】
人体改造:B
己だけでなく、他者まで改造することが可能なスキル。
このランクなら人間を生きたまま爆弾にすることや怪物に変えることも可能である。
また、己の臓器のストックを作ったり己の身体を液状化させることまで可能。

材料保存:C
死亡すると分解されるサーヴァントの霊体とマスターの身体を、保存しておくことができるスキル。
このランクならば、キャスターが魔力を流し込めば最大1日は分解から免れる。

科学者:A
彼に完璧という文字はない。
彼にとって完璧とは絶望である。
何故なら、完璧であるということはもはやそこには立ち入る隙がないということだからだ。
今まで存在した何物よりも素晴しくあれ、だが、けして完璧であるなかれ。
科学者とは常にその二律背反に苦しみ続け、更にそこに快楽を見出す生物でなければならない。
彼のその理念を反映したスキル。
素材が圧倒的に足りない状態でもキャスターとして最高の物を制作できるようになる。
作れば作るほど作成した物の精度とクオリティ、威力が上がっていく。

【宝具】
『赤子の怨嗟』(あしそぎじぞう)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1

キャスターの持つ斬魄刀。
三本の刀身の根元に赤子の顔が浮かび上がる、金色の不気味な刀。
刺した者の四肢の動きを『痛覚を残したまま』完全に封じる。
解除するにはマユリが宝具を解除せざるを得ないほど追い詰めるか、マユリを消すかの二通り。
魔力消費は少なく、簡単に発動可能。

『赤子の怨嗟・毒殺蠕虫』(こんじきあしそぎじぞう)
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:150

『赤子の怨嗟』の卍解形態。
赤子の頭を持つ巨大な芋虫のような生物を召喚する。
召喚した直後に致死性の毒を広範囲に撒き散らし、その巨体を持って押し潰す。
毒は宝具開放の旅に変わるので、抗体等は意味を成さない。
操られるなどしてキャスター自体に逆らった場合、自壊するようにできている。
尚、壊れた卍解は二度と治らない。
しかしこのキャスターの卍解のみは『直しているんじゃなくて改造(なお)しているのだヨ』というキャスターの言葉通り、人体改造スキルにて修復可能。
魔力消費が多いため、使用するなら令呪の支援が必要か。

【weapon】
斬魄刀
耳に内臓した釜や補肉剤、超人薬などの数々の薬剤
【人物背景】
十二番隊隊長及び技術開発局局長を兼任。普段は白い肌に面妖な黒い化粧をした異相で、幾度か化粧や衣装が変わっている。
基本的に髪は青い模様、自身の身体を改造し様々な武器や仕掛けを隠している。
失った肉体を再生させる薬「補肉剤(ほじくざい)」を携帯している為、人間離れしたような出立ちだが、化粧の下は普通の顔である。
普段は隊長として普通に振舞っているが本性はマッドサイエンティストであり、研究や実験、中でも人体実験を職としている。
敵として戦う相手は敵としてより実験材料として認識しており、一護達の中では当初、織姫の能力に強い興味を抱いていた。
一方で「完璧」という言葉を嫌い、『他者より優れども完璧であってはならないという矛盾に苦しみながらも快楽を見出すのが科学者である』という独自の信念を持ち合わせている。
生体研究の一環により、内服薬(補肉剤)および外科手術による失われた肉体の再生・補助や解毒など、鬼道を必要としない医療技術を持ち場所を選ばずに即時・即効性のある高位の治療が可能。
ただし、彼の言動には治療ではなく改造の気が見え隠れする為、現世の面々はもとより、同僚の隊長格にいたるまでその方法は大いに遠慮されている。
京楽隊長に「彼なら大概のことは丸一日あればすぐに解析して結論を出す」とも言われる。
【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争にて宝具を使用して様々なサーヴァントを殺害、捕獲し解剖、研究する。
【基本戦術、方針、運用法】
基本はNPCを改造した怪物や爆弾を襲いかからせる。
薬物等でも先頭を可能とし、正々堂々と戦うことは少ない。


583 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:50:08 uHwT9jjo0
【マスター】
木原数多@とある魔術の禁書目録
【マスターとしての願い】
生還し、天使の力の原理、黒翼の原理を暴く。
【weapon】
なし。
【人物背景】
学園都市の研究者の一部では有名な、『木原一族』の科学者で、
第一位の超能力者(レベル5)一方通行を直接開発した、能力開発のエキスパート。
顔の左側の刺青と両手につけたマイクロマニピュレータが特徴。
暗部組織猟犬部隊のリーダー。
その中でも上の地位にいるらしく、アレイスターから直接指令を受けている。
部下を平然と使い捨てにし、雑草を抜くような感覚で躊躇なく人を殺す残虐な性格。
同じ猟犬部隊の隊員が意見しようとした際には、
部隊を人権もないクズの集まりと称し、作戦の邪魔をするなら殺しても構わないと言ったり、
失態に対しては死んだ程度では許さず、死体から心臓を取ってでもケジメを付けさせたりと、常人の枠を超えた残酷さである。
そもそも殺人に悪意とか良心の呵責が一切絡まないため、天罰術式にも引っかからなかった。
アレイスターの命令で打ち止めを捕獲するため現れ、
「『反射』を適用される直前に手を引き戻すことにより、戻るベクトルを反転=直撃させる」
という凄まじい理論の実践で一方通行を圧倒した。
十三巻においても、覚悟を決めて一段と手強くなり、
猟犬部隊を手玉に取った一方通行をも終始圧倒し続けたが、
全演算能力を失いレベル0となった一方通行に大苦戦。
最後は謎の黒翼を発現させた彼の手により吹き飛ばされて死亡した。
【能力・技能】
その至高の頭脳と高い運動能力。
木原一族のに伝わる『能力者の力の流れを読んで、その隙を突く』という戦闘術を下敷きにしている、木原神拳の愛称で親しまれる技。
しかしこれは一方通行の脳を知り尽くしたからこそ使える技で、他者には効果が無い。
しかしそれを可能にする運動能力は凄まじく、肉弾戦せはかなりの腕前を有する。
【方針】
生還するために勝ち残る。


584 : ◆DpgFZhamPE :2015/05/17(日) 18:55:08 uHwT9jjo0
投下終了です。
木原数多&キャスターでした。
尚この作品は二次二次の没ネタスレにステータスのみ投下したものの手を加え、リメイクし投下させていただきました
そのため、こちらの酉で投下させていただきました


585 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:18:25 D1zYrWdg0
皆さま投下お疲れ様です。
投下いたします。


586 : シャンテ・ドゥ・ウ・オム&セイバー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:19:31 D1zYrWdg0

「あんたは、この聖杯戦争で何を望む?」

男の鋭い声が響く。
冷たい視線が女を射抜く。

「……あたし、は」

張りつめた空間に響く女の声には、迷いが混じっていた。
他者を殺してまで叶える夢なのか。
仲間達はそんな自分を見てどう思うか。
彼と再会したところで、何もしてやれなかった自分が今さら何を話すのか。
悔恨が。
恐怖が。
未練が。
不安が。
様々な感情がグルグルと女の胸中を渦巻く。
それでも、女の脳裏から一人の男が消える事はなかった。

「死んだ弟に会いたい。会って謝りたいの」

その答えに、ピクリと男が反応を示した。


薄明かりの灯る酒場に歌声が響く。
ライトアップされたステージで歌うのはシックなドレスを纏った青髪の美女。
老若男女、客と店員を問わず、その場にいる人間たちは彼女の歌に聞き惚れていた。
例外があるとすれば、入り口横の壁にもたれ掛かっている男だけだろうか。
それはタキシードを着た銀髪の青年だった。
仏頂面を浮かべた青年は気の弱い人間が見れば慌てて逃げ出すような鋭く険しい瞳で店内を見渡している。
ふと、美女と青年の視線が重なる。
悪戯っぽくウィンクを送る美女に対し、青年はつまらなそうに鼻を鳴らしてそっぽを向く。
美女の口許が、微かに苦笑を浮かべた。

歌が終わり、喝采の拍手をBGMに美女はステージを降りる。
段々と酒場に喧騒が戻ってくるのを横目に、美女はカウンターの席に腰を降ろした。

「お疲れさん。今日も良かったよシャンテ」

酒場のマスターがシャンテと呼ばれた美女に酒を注ぐ。
礼を言ってグラスを煽るシャンテの横に、どっかりと見知らぬ男が座り込んだ。

「よぉ〜姉ちゃん、いい歌だったぜぇ〜?」

粗暴な雰囲気の漂う赤ら顔の酔っぱらいだった。
その腕にしている趣味の悪い金色の腕時計が特徴的だ。
マスターが微かに眉間に皺を寄せる。
彼もシャンテも見覚えのない、たまたま飲みに訪れた新顔の客のようだった。


587 : シャンテ・ドゥ・ウ・オム&セイバー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:20:11 D1zYrWdg0
「あら、ありがとう」

酔っぱらいから漂う酒気臭さを意にも介さず、シャンテは営業的な笑みを浮かべる。
酒場での歌手生活が長い彼女にとって、この様な迷惑な男の相手は慣れっこだった。
そして、この後に発する台詞もシャンテにとっては耳にタコができる程に聞き慣れた、ありふれたものだった。

「どうだい? この後俺と一晩よ」

下卑たにやけ面を浮かべる酔っぱらいに、「またか」と心の中で何度目かもわからない溜め息をつく。
娼婦かなにかと勘違いしているのだろう。
不快感を覚えるがそれでも表面上は客である為シャンテは笑顔を絶やさない。

「ごめんなさいね。そういうのは他所でやってちょうだい」
「アァ!? いいじゃねえかよ。こんな酒場の給料より金は出すし、いい思いもさせてやるぜぇ?」

やんわりとした拒絶に酔っぱらいの語気が荒くなる。
据わった目で睨みつけ、シャンテの細腕を掴む為にゴツゴツとした腕が伸びる。
横合いから伸びた手が、その腕を掴んだ。
その腕の主は、先ほど店内を見回していたタキシードの青年だった。

「そこらへんにしとけよオッサン。フラレてるのにみっともないぜ」
「んだぁ、このガキィ!」

挑発的な笑みを浮かべる青年に酔っぱらいが激昂して立ち上がる。
怒りに血走った目を光らせ、拳を大きく振りかぶり、青年のすまし顔目掛けてストレートを撃ち放つ。
だが青年は大振りの拳を容易くかわし、空いた腕を素早く男の鼻っ柱目掛けて振るった。
ベキ、という鈍い音が響いた後、グラリと酔っぱらいの大柄な体が揺れ、仰向けに倒れる。
青年は手に着いた血を煩わしそうに振るうと。倒れた男を引きずって酒場の外へと放り出した。
気絶した人間がゴッサムの街道に放り出されればどうなるかは火を見るより明らかだが、それを咎める者は誰もいなかった。
一仕事を終えて戻ってきた青年を拍手が迎え入れる。つまるところ、この酒場にいる全ての人が、あの無法な酔っぱらいに対しては共通の感情を抱いていたという事だった。

「ご苦労さん」

拍手に包まれてシャンテの隣に座った青年にマスターがアイスミルクを差し出す。
洋画であったなら、ここで青年を茶化すゴロツキの一人か二人でも出ようものだが、ここの常連達は青年の実力をよく知っており、そんな命知らずな真似はしない。
ぶっきらぼうに礼を言いながら、青年がアイスミルクに口をつける。

「しっかしあんなデカイのを一発でノシちまうとは、本当にイザの兄ちゃんは見かけによらずに強えよな!」

常連客が笑いながらイザと呼ばれた青年に話かける。
対するイザはさしたる反応も見せず、フイ、と顔を横に向ける。

「もう! ごめんなさいね、愛想が悪くて」
「はは、いいっていいって、イザの兄ちゃんのお陰で気分よく飲めるんだからよ! 愛想が悪いのはシャンテに連れられてここに来たときからわかってるしな!」

頭を下げようとしたシャンテを常連客が手で制す。
イザはある日、この酒場で歌手として働いていたシャンテが連れてきた用心棒だった。
無口で無愛想な人を寄せ付けない雰囲気を纏っていたが、その実力は確かであり、迷惑な客やゴロツキを度々追い返している内に常連達から「愛想はないが頼りになる男」として受け入れられていった。
もっとも、女性客や従業員の間ではその秀麗な容姿からもっと早い段階で受け入れられてはいたようではあるが。
ゴッサムの夜は更けていく、シャンテとイザはチビりチビりとグラスの中身を煽りながら、しばしの間この喧騒に身を委ねていた。


588 : シャンテ・ドゥ・ウ・オム&セイバー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:21:36 D1zYrWdg0
「セイバー……」
「街にはもう複数のサーヴァントの反応が感じられる。街を騒がす事件の内、いくらかはそいつらのものだろう」

セイバー、それは彼がサーヴァントであることを表す名前。
イザという名も偽名であり、その真名はテリー。
かつて、イザと呼ばれた勇者と共に、世界を救った英雄の一人だった。
自身を見据えるシャンテを気にせず、セイバーは言の葉を続ける。

「あんたは、あの酒場の奴らを巻き込みたくないと思っている。だから、潮時だ」

他の主従から身を隠す為、生活費を稼ぐ為に、この街で与えられた役割であった酒場の歌手を続けていた。
そしてここは、かつて彼女が本来の世界で歌手をしていたインディゴスの酒場と同じくらい、居心地のいい場所だった。
だが、もし聖杯戦争が本格的に始まり、自分の素性がバレたとしたら、まず間違いなくあの酒場は巻き込まれる事になる。
生きた世界も何もかもが違い、この戦争が終われば二度と会うことはない人達だとしても、彼ら・彼女らを自分の願いを叶えるための戦争に巻き込んでしまうことに、シャンテは抵抗を覚えていた。
セイバーはシャンテのその想いを察していたのだろう。

「……そうね。明日、適当に理由を作ってマスターにはしばらく休むと伝えておくわ」
「そうしておけ」

一瞬の思考の後、シャンテは寂しげな笑みを浮かべながらセイバーの言を肯定する。
つっけんどんに返事をすると、セイバーはその身体を霊体へと変えた。
口調や態度はそっけないが、セイバーの言動が自身を気づかってのものであることをシャンテは理解している。
セイバーが見た目通りの年齢であったとするならば、恐らく素直になれない年頃という奴なのではないか、そう思うと微笑ましくもあった。
ふと、弟のアルフレッドにもあんな時代があったのでは、と考えて思考を止める。

(ダメね、どうもあれぐらいの子を見てるとアルフレッドと被らせてしまう)

頭を振り、その視線を険しい物へと変え、シャンテは自宅への道を急ぐ。
既に亡くなったアルフレッドに一目会いたい、それが彼女の望みだった。

アークを巡る戦いが終わり、自分を縛るしがらみから解放された彼女ではあったが、その陰からガルアーノに利用され命を落とした弟の存在が消える事はなかった。
ある日、彼女の経営する酒場で飲み代をツケにしていた客が料金の代わりにとある物を置いていった。
それはバルバラードのピラミッドから出土したシャブティという人形。
なんでも所持者の願いを叶える不思議なアイテムという触れ込みだった。
話半分にツケ返済までの担保として預かったが、まさかそのせいでこの戦争に呼び出されるとはシャンテ自身も思ってもいなかった。

そして、なんでも願いを叶えるという聖杯の存在を知った時、彼女は思ってしまった。
死んでしまった弟に出会えるのではないかと。
だが、その為には他者の願いを踏みにじらなければならない。
時には人の命を奪う必要がある。
苦悩に苦悩を重ねたが、それでも弟に会いたいという望みを諦める事はできなかった。

深夜。
既に寝静まったシャンテのいるアパートの屋上で、セイバーが一人、月の光を浴びながら眼下の光景を見下ろしていた。
その姿は少し前のタキシード姿ではなく鎧や剣を装着した本来の彼の姿だった。
幸いにも今夜のゴッサムは静まり返っている。
恐らく今日は平穏無事に一日が過ぎるだろう。

「姉、か」

一言、セイバーが呟く。
姉という存在は彼にとって特別な存在だった。
両親を早くに亡くした彼にとって唯一の肉親。
自分の力が無かったが為に引き裂かれてしまった唯一の肉親。
どれだけ数奇な運命の巡り会わせか、セイバーは生き別れた姉と再会できた。

決して、自分達のように再会する事が叶わなかったシャンテとその弟に同情した訳ではない。
旅の傍らで、自身の身を案じ続けてくれていた姉と姿を被らせたからでもない。
だが、何を犠牲にしても弟に会いたいと決心した悲痛な想いに、自分の剣を預けてやってもいいと、そう思えた。

周囲の安全を確認したセイバーはその姿を再び霊体へと変える。
様々な人間の想いを抱きながら、ゴッサムの夜は更けていく。


589 : シャンテ・ドゥ・ウ・オム&セイバー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:22:03 D1zYrWdg0
【クラス】
セイバー

【属性】
中立・中庸

【真名】
テリー@ドラゴンクエストⅥ

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具B

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
また、セイバーは装備の影響で炎と氷に対してより強い耐性をもつ

【保有スキル】
モンスターマスター:D
魔物との戦闘中、戦闘に有利な修正を受ける。また、同ランクの騎乗スキルを得る。
数々の魔物を使役し、栄光を掴んだものに与えられる称号。相手が魔物であればどのような特性を持つのかを把握し、戦いを有利に進める観察眼をもつ。
セイバーは幼少期に数多の魔物と共にモンスターテイマーの大会に優勝した経験を持つ。
召喚されたのがセイバーのクラスかつ、成長した時期からなので、このスキルは著しくランクが低下している。

青い閃光:A
優れた反応速度と動体視力に起因する行動補正。
相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り回避行動に有利な補正を得る。
但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。
また、速度を活かして一度に複数を攻撃する『さみだれぎり』や同じ対象を一呼吸の内に二回斬りつける『はやぶさぎり』といった技が使用可能。
強さを求め続けた先にセイバーが取得した超人的な技巧。目にも留まらぬ速度で相手を切り伏せる事からセイバーにつけられた称号である。

魔力放出(雷):C
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
セイバーの持つ『らいめいのけん』から雷を放つ。
天空の勇者の扱う雷に比べればその威力は格段に落ち、宝具に昇華するまでには至らない。

【宝具】
『迸れ、昏き雷(ジゴスパーク)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:30人
暗黒の力を『らいめいのけん』に乗せた一閃で周囲の全てを薙ぎ払う。
かつて力だけを求めたセイバーが魔王であるデュランより教えられた"遊び"。
魔王にとっては単なる児戯であっても、人からしてみれば十分過ぎるほどの破壊力を持っている。

【weapon】
E:らいめいのけん
E:ドラゴンメイル
E:ドラゴンシールド
E:プラチナヘッド

【人物背景】
「最強の剣」を求めて旅をしていた17歳の若き剣士。
当時悪政を極めていたガンディーノという街の生まれで、王の献上品として姉のミレーユが連れ去れてしまうという事態に対し幼かったテリーは必死に抵抗するも為す術なく、生き別れとなってしまう。
テリーはミレーユを救う力を手に入れる為に旅立ち、王宮の守備隊長やドラゴンを圧倒するまでの実力とそれに見合うだけの武器『らいめいのけん』を手に入れる。
また、この時に天空の勇者一行、そして姉のミレーユと再会していたのだが、お互いに姉弟である事には気づかずすれ違っている。
以降は剣を求める旅路で勇者一行との幾度もの邂逅の末、強さを求める欲望から心を闇に飲まれ、魔王デュランの配下となって勇者達と対峙する事となった。
勇者達との戦闘に敗れ、デュランも倒れた後、ミレーユがテリーに自分の正体を明かし、以降は勇者一行として魔王を討伐に向かった。
クールな性格と秀麗な容史で女性からの人気が高いが、若さゆえかどこか青いところが抜けきらない人物でもある。
また、ミレーユが連れ去られる前の時期に、タイボクの国の精霊に連れていかれた姉を連れ戻すためにモンスターマスターとして様々な魔物を操り、星降りの大会という大会で優勝した経験を持つ。
そのせいか、魔物の観察眼には一家言あり、魔物品評にはついつい熱が入る一面がある。


590 : シャンテ・ドゥ・ウ・オム&セイバー ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:23:43 D1zYrWdg0
【サーヴァントの願い】
マスターの願いを叶える

【マスター】

シャンテ・ドゥ・ウ・オム@アークザラッドⅡ

【マスターとしての願い】

死んだ弟に会って謝る

【weapon】
とくになし
丈夫なシューズや棍や杖があればそれで肉弾戦が可能

【能力・技能】
水や氷系統の魔法を扱える。今聖杯戦争で使用可能な魔法は下記

・キュア:簡単な負傷を治癒する、身体の欠損までは修復不可能
・サイレント:相手を一時的に詠唱不能状態にする。サーヴァントには無効
・アイスシールド:水や氷の属性を持った攻撃のダメージを軽減する
・リフレッシュ:毒や麻痺等の身体の異常を治癒する。宝具やBランク以上のスキルに起因するものは治癒不可能
・ディスペル;アンデッドを成仏させる。アンデッドのサーヴァントには無効
・ダイヤモンドダスト:空気中の水分を氷結させて相手を攻撃する。サーヴァントにはダメージが殆ど見込めない

【人物背景】
歌手。理知的で物わかりのいい所謂大人の女性である。
幼少期に母を亡くし、弟のアルフレッドと共に父親に虐待を受けていた。
その後、人に売られ歌手となったが病気になった弟が捨てられかけた事で、彼女らを買った人間を刺して逃亡。
弟はなんとか病院に入れる事ができたが、突如行方を晦ましてしまう。
歌手業の傍ら、弟の行方を捜していた時にマフィアのボス・ガルアーノから弟の命を盾に脅迫され、エルクとリーザを狙う陰謀に加担してしまう。
しかし、その中で弟がガルアーノの手の者に殺害されていた真相を知り、弟の敵討ちの為にエルクらと行動を共にする事になる。
ガルアーノを倒した後も、エルク、そしてアーク達の旅に同行し、世界を救う事となった。
続編では酒場を経営しており、本聖杯戦争ではアークザラッドⅡとⅢの間の時間軸からの参戦。

【方針】
マスターの魔力もサーヴァントの戦力も安定したラインで纏まっているのが何よりもの強み。
マスターの社会基盤が強くないので、マンパワーなどで責められると弱いところが難点か。
聖杯戦争のセオリー通り、自分の正体を明かさずどれだけ戦えるかが要点になるだろう。
また、社会的にコネの効く主従に同盟を持ちかける事も悪くはないが、シャンテとセイバーの生い立ち上、マフィアやギャングといった反社会的組織や、意味もなく魂喰いを行うような相手には基本的に敵対路線をとる事になるだろう。


591 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:24:22 D1zYrWdg0
以上で投下を終了いたします。


592 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:31:19 D1zYrWdg0
すみません。抜けがあったので最後の本文だけ差し替えます


593 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:32:04 D1zYrWdg0
「それじゃあマスター、また明日」
「おう、最近物騒だからな。気をつけて帰れよ
……まあ、その用心棒がいりゃ心配はないか」

閉店準備に入った酒場の従業員達に手を振り、イザと顔を赤らめたシャンテが酒場を出た。
街に吹き付ける冷たい風が、火照った体を心地よく冷ます。
静まり返った夜の街に二つの足音だけが響く。

「……そろそろ、潮時だな」

不意に、イザが口を開いた。
その言葉を聞き、シャンテの歩みが一瞬だけ止まる。
イザも足を止め、シャンテへと顔を向けた。

「セイバー……」
「街にはもう複数のサーヴァントの反応が感じられる。街を騒がす事件の内、いくらかはそいつらのものだろう」

セイバー、それは彼がサーヴァントであることを表す名前。
イザという名も偽名であり、その真名はテリー。
かつて、イザと呼ばれた勇者と共に、世界を救った英雄の一人だった。
自身を見据えるシャンテを気にせず、セイバーは言の葉を続ける。

「あんたは、あの酒場の奴らを巻き込みたくないと思っている。だから、潮時だ」

他の主従から身を隠す為、生活費を稼ぐ為に、この街で与えられた役割であった酒場の歌手を続けていた。
そしてここは、かつて彼女が本来の世界で歌手をしていたインディゴスの酒場と同じくらい、居心地のいい場所だった。
だが、もし聖杯戦争が本格的に始まり、自分の素性がバレたとしたら、まず間違いなくあの酒場は巻き込まれる事になる。
生きた世界も何もかもが違い、この戦争が終われば二度と会うことはない人達だとしても、彼ら・彼女らを自分の願いを叶えるための戦争に巻き込んでしまうことに、シャンテは抵抗を覚えていた。
セイバーはシャンテのその想いを察していたのだろう。

「……そうね。明日、適当に理由を作ってマスターにはしばらく休むと伝えておくわ」
「そうしておけ」

一瞬の思考の後、シャンテは寂しげな笑みを浮かべながらセイバーの言を肯定する。
つっけんどんに返事をすると、セイバーはその身体を霊体へと変えた。
口調や態度はそっけないが、セイバーの言動が自身を気づかってのものであることをシャンテは理解している。
セイバーが見た目通りの年齢であったとするならば、恐らく素直になれない年頃という奴なのではないか、そう思うと微笑ましくもあった。
ふと、弟のアルフレッドにもあんな時代があったのでは、と考えて思考を止める。

(ダメね、どうもあれぐらいの子を見てるとアルフレッドと被らせてしまう)

頭を振り、その視線を険しい物へと変え、シャンテは自宅への道を急ぐ。
既に亡くなったアルフレッドに一目会いたい、それが彼女の望みだった。

アークを巡る戦いが終わり、自分を縛るしがらみから解放された彼女ではあったが、その陰からガルアーノに利用され命を落とした弟の存在が消える事はなかった。
ある日、彼女の経営する酒場で飲み代をツケにしていた客が料金の代わりにとある物を置いていった。
それはバルバラードのピラミッドから出土したシャブティという人形。
なんでも所持者の願いを叶える不思議なアイテムという触れ込みだった。
話半分にツケ返済までの担保として預かったが、まさかそのせいでこの戦争に呼び出されるとはシャンテ自身も思ってもいなかった。

そして、なんでも願いを叶えるという聖杯の存在を知った時、彼女は思ってしまった。
死んでしまった弟に出会えるのではないかと。
だが、その為には他者の願いを踏みにじらなければならない。
時には人の命を奪う必要がある。
苦悩に苦悩を重ねたが、それでも弟に会いたいという望みを諦める事はできなかった。

深夜。
既に寝静まったシャンテのいるアパートの屋上で、セイバーが一人、月の光を浴びながら眼下の光景を見下ろしていた。
その姿は少し前のタキシード姿ではなく鎧や剣を装着した本来の彼の姿だった。
幸いにも今夜のゴッサムは静まり返っている。
恐らく今日は平穏無事に一日が過ぎるだろう。

「姉、か」

一言、セイバーが呟く。
姉という存在は彼にとって特別な存在だった。
両親を早くに亡くした彼にとって唯一の肉親。
自分の力が無かったが為に引き裂かれてしまった唯一の肉親。
どれだけ数奇な運命の巡り会わせか、セイバーは生き別れた姉と再会できた。

決して、自分達のように再会する事が叶わなかったシャンテとその弟に同情した訳ではない。
旅の傍らで、自身の身を案じ続けてくれていた姉と姿を被らせたからでもない。
だが、何を犠牲にしても弟に会いたいと決心した悲痛な想いに、自分の剣を預けてやってもいいと、そう思えた。

周囲の安全を確認したセイバーはその姿を再び霊体へと変える。
様々な人間の想いを抱きながら、ゴッサムの夜は更けていく。


594 : ◆DoJlM7PQTI :2015/05/17(日) 20:32:51 D1zYrWdg0
改めて投下終了いたします。
失礼いたしました。


595 : ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 20:56:47 e4oSW.Yk0
別スレで投下した作品ですが、投下します。


596 : 間桐桜&キャスター ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 20:57:28 e4oSW.Yk0
始まりの刑罰は五種、生命刑、身体刑、自由刑、名誉刑、財産刑、様々な罪と泥と闇と悪意が回り周り続ける刑罰を与えよ『断首、追放、去勢による人権排除』『肉体を呵責し嗜虐する事の溜飲降下』『名誉栄誉を没収する群体総意による抹殺』『資産財産を凍結する我欲と裁決による嘲笑』死刑懲役禁固聞拘留罰金科料、私怨による罪、私欲による罪、無意識を被る罪、自意識を謳う罪、内乱、勧聞い誘、詐称、窃盗、強盗、誘拐、自傷、強聞い姦、放火、爆破、侵害、過失致死、集団暴力、業務致死、過信による事故、誤診に聞いてよる事故、隠蔽。益を得る為に犯す。己を得る為に犯す。愛を聞いて得る為に犯す。徳を得る為に犯す 自分の為に聞いてす。窃盗罪横領罪詐欺罪隠蔽罪殺人罪器物聞いて犯罪犯罪犯罪聞いて私怨による攻撃攻撃攻撃攻撃汚い汚聞いてい汚い聞いて汚いおまえは汚い償え償え償え償え償え聞いて聞いて聞いて聞いて――――

「聞いて、お姉ちゃん」

 唐突に間桐桜の視界は開けた。

 どこまでも続く暗闇の中、地が髑髏に埋め尽くされた世界。

 そこで吹く風は、声となって桜に聞こえてくる。

「お父さんも、お母さんも死んじゃったのは、みんな大江山で帝を僭称している男のせいだって言われたの。
 だからあたしは刀で刺したの。お役目を果たしたのに、それを告げたら、胸を突かれて――」
 
 一筋の風が桜に吹くと、また異なる声が聞こえてくる。
「聞いて。僕はひもじくてひもじくて、だけど妹だけは助けてあげたくて稲わらを盗んだんだ。
 そしたら首を――」

 風が逆巻き、桜に集まる。
 風がきいきいと哭く。風の一筋は亡者の叫び。
 怨念、無念、悪念、残念。
 人の恨み、天の恨み。そして何より――己への恨み。
 だが、例え怒りのままに人を、己を切り裂こうとも、虚しさは胸から去らない。
 最早怒りをぶつける相手はどこにもいないのだから。
 だからこそ、人を恨み、天を憎み、何より己を憎み、魑魅魍魎は哭くのだ。

 ……あの女さえいなければ。あいつが憎い。痛いよ。熱いよ。もう嫌だ。死にたくない。殺してやる。助けてくれ。あの子だけは。
 ねえ、聞いてくれ。この痛みを。苦しみを。つらさを。無念を。聞いてくれ。聞いてくれ。聞いてくれ!

 その声に耐えきれず、桜は悲鳴を上げた。


597 : 間桐桜&キャスター ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 20:58:17 e4oSW.Yk0
◇◇◇ ◇◇◇

 ――――悲鳴と同時に、桜に映る景色が変わる。

 地下室の中。暗闇の奥、さらに暗い部分には――蟲など一匹もいなかった。
 
 床が垂直になっている事から、桜はようやく自分が倒れたという事に気が付いた。
 同時に、なぜこんなところで倒れ伏しているのか、その理由も。
 
 間桐桜はこのゴッサムシティで穏やかな日々を過ごす最中、常に何か急き立てられるような感覚に襲われていた。
 何かが欠けている。そう思いながらハイスクールに通い、兄と痴呆症の祖父の世話をしながら、違和感が薄れることは無く、むしろ増していった。

 だが、何かが違う。何かが足りない。
 いや、何かじゃない。誰か、が――!?

 ある時、その喪失感に気づいてしまった。
 ――衛宮士郎の存在に。

 必死になって元の生活の痕跡を探し、存在しない衛宮邸を探し、知人を探し、桜にとって悪夢そのものである、間桐邸の地下修練場まで探しても何もないと知って。
 絶望のあまり気を失ってしまったのだ。

「……帰りたい。帰らないと……」
 桜は身を起こしながら呟いた。

 桜には既に聖杯戦争の情報が流し込まれているが、それに対し何の感慨もない。
 桜に願いがあるとすればただ一つ、衛宮士郎との生活を続ける事だけだ。

「――たとえそれが家族ごっこだとしても?」
 
 後ろから投げかけられた言葉に、桜は驚き振り向いた。

「あは、こんちわ!」
 
 戸惑う桜と違い、彼は明るい笑顔で挨拶をした。
 衣装は日本の貴族が着る直衣というものだろうか。紫というよりピンク色の着物を着ている。
 下には袴を付けず、艶めかしい足が裾から覗いていた。

 桜は流れる魔力から、ようやく彼がどのような存在なのか理解し、声をかけた。
「貴方が私のサーヴァント?」
「そ。ボクはキャスター。真名は『キツト』。
 黄色の黄、三本線の川と、人間の人で『黄川人』さ。よろしく、マスター」
 そう言ってキャスター、黄川人は桜に対し礼をした。


598 : 間桐桜&キャスター ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 20:58:50 e4oSW.Yk0
「私は……聖杯なんて必要じゃない。ただ、元の生活に戻りたい。
 ……貴方はどうするの?」
 黄川人からこの聖杯戦争について教わった桜は、黄川人に尋ねた。
 それは単なる疑問ではなく、聖杯を求めないマスターをどうするか、という問いかけだ。
 サーヴァントは叶えたい願いがあるからこそ召喚に応じる。
 よって聖杯に無関心なマスターは、切り捨てられる可能性が大だ。
 その時は令呪を使う必要があると、桜は理解していたのだが。
「いいよ、別にボクには聖杯に叶えてもらうような願いなんてないし。
 こうして肉体を持って、現世を謳歌出来るだけで満足さ」
 黄川人はくるりと一回りし、桜に向かい微笑んだ。
「大体さァ、あらゆる願いが叶う聖杯なんてうさん臭いよねェ。
 そんな海のものとも山のものとも知れない代物に願おうなんて奴は考え知らずの馬鹿か、さもなくば追い詰められて都合の良い奇跡にすがる奴くらいだぜ。
 あれ、じゃあやっぱり馬鹿しかいないってことじゃないか。アハハハ……」
 何がおかしいのか、黄川人はけらけらと笑った。

「……他のマスターがどこに居るか分かる?」
 桜が黄川人に尋ねると、黄川人は呪を唱えた。
「白鏡、黒鏡。この地と怨敵を映せ」
 すると桜の視界の隅に、この町の地図が映し出された。地図の上には、赤い点と動き回る黒い点がある。
「赤い点は僕たちの位置。黒い点がボク達の敵、つまりマスターとサーヴァント、それと使い魔その他魔力を持った奴の位置だから。
 それにしても……いきなりマスターの位置を尋ねるなんて、殺る気満々だね」
「違うわ。ただ私は戦いに巻き込まれたくないだけ。その前にこの町から出たいの」
「ふうん。だけどさ、アサシンのような気配遮断ができる相手だと、この術も通用するかどうか分からないよ。
 いきなり襲われる事もあるだろうけど、その時はどうする?」
 その時は。桜はそう言いかけて口ごもった。
「ま、その時はサーヴァントのボクの出番だけどね。術で逃げるくらいはできると思うよ」
 そう言って桜に対し無邪気な笑みを見せた。
「じゃあ、行きましょう」
 と言って桜は地下から出る階段を登って。

「あ。そうそう、一つ頼みがあるんだけど……君の事を、マスターじゃなく“姉さん”って、呼んでいいかな?」
 桜は歩みを止めた。
「ボクには赤ん坊の頃、生き別れた姉がいたらしいんだ。結局死ぬまで会えなかったんだけどね」
 その言葉は、桜の脳裏にある光景を思い出させる。家族がそろっていたあの時の情景を。
「もし君のような人がボクの姉さんだったらうれしいんだけど……だめかな?」

 思い出させないでほしい。
 
 あの日々を思い出してしまったら、全てを諦める事でやっと手に入れた幸せが崩れてしまう。

「やめて、キャスター」
 喉から悲鳴の様にかろうじて絞り出された声。桜にはそれを言うのが精一杯であった。
「ああ、わかったよ。桜」
 黄川人はあっさりと受け入れ、さりげなく名前で呼んだ。

 桜は震えそうになる身体を押さえ、階段を登って行った。
 その姿を見る黄川人は、桜の前では見せなかった、歪んだ笑みを浮かべた。

 黄川人が持つスキルの「千里眼」。それは単に視力の良さのみならず、物や人の過去を見通す。
 先程の頼みも、桜の過去を覗いたからだ。

 このマスターは面白い。鎖で縛られ、鎧で固められた精神の内で、素晴らしい怪物を育てている。
 さあ、戦いを始めよう。聖杯なんてどうでもいい。彼女の内にある憎悪と嫉妬、そして『この世、全ての悪』を解き放ってやろう。
 そしてマスターもサーヴァントも殺し、さらにあの自惚れ屋の神々を殺しつくし、海を埋め立て地を平らにし、この世を一からやり直そうじゃないか。
 何だってできるさ。桜とボクが一緒なら……。


599 : 間桐桜&キャスター ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 20:59:13 e4oSW.Yk0
【マスター】
間桐桜@Fate/stay night

【マスターとしての願い】
 早く元の生活に戻りたい。

【weapon】
 無し。

【能力・技能】
架空元素・虚数
 魔術師として極めてまれな属性だが、現在は上手く扱えない。
この世、全ての悪(アンリ・マユ)
 人類60億全てに悪であれと望まれた呪い。
 桜が元居る世界の聖杯の中で、誕生する時を待っている。
 本来ならば桜は聖杯としての機能は覚醒しないが、繋がる可能性はある。

【人物背景】
遠坂凛の実妹。遠坂家の次女として生まれたが、間桐の家に養子に出された。
表向きは遠坂と間桐の同盟が続いていることの証。裏では、間桐臓硯にとっては断絶寸前だった家系を存続させるために、魔術の才能がある子供(というよりは胎盤)を求めていたという事情があった。
また遠坂時臣にとっては一子相伝である魔道の家において二人目の子供には魔術を伝えられず、そして凛と桜の姉妹は共に魔道の家門の庇護が不可欠であるほど希少な才能を生まれ持っていたため、双方の未来を救うための方策でもあった。
間桐家に入って以後は、遠坂との接触は原則的に禁じられる。
しかしながら「間桐の後継者」の実態は間桐臓硯の手駒であり、桜の素質に合わない魔術修行や体質改変を目的とした肉体的苦痛を伴う調整、義理の兄である慎二からの虐待を受けて育つ。
だがある頃に、士郎の懸命な姿を見て彼に憧れを抱く。

【方針】
 聖杯戦争からの脱出、ではあるがその方法が見つからないならどうするか不明。


600 : 間桐桜&キャスター ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 20:59:52 e4oSW.Yk0
【クラス】
キャスター

【真名】
黄川人@俺の屍を越えてゆけ

【パラメーター】
筋力C 耐久C+ 敏捷C 魔力A+ 幸運B 宝具B

【属性】
混沌・悪

【クラス別能力】
陣地作成:A+
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 “工房”を上回る“神殿”を複数形成することが可能。

道具作成:A
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 恨みの念から、鬼を形成できる。元になった人間の怨念が強ければ強い程、サーヴァントにも匹敵する怪物となる。

【保有スキル】
呪歌:A+
 黄川人の世界の神々が編み出した魔術体系。
 攻撃、防御、属性付与は重ね掛けが可能で、攻撃の術は併せることで、人数×2倍の威力を発揮する。
 キャスターとして召喚された影響で全ての術、さらに短命種絶の呪いや空間移動等を使用できる。

千里眼:A
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 さらに遠隔透視、過去視を可能とする。

自己改造:A+
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
 他人の身体に潜り込み、相手の意識はそのままに身体を操る。
 また、この状態だと同ランクの気配遮断の効果を持つ。

神性:E-(A)
 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 本来は最高の神性適性を持つが、本人が神を嫌っている上、鬼に貶められている。

【宝具】
『八つ髪(やつがみ)』
ランク:B 種別:召喚宝具 レンジ:― 最大補足:―
 黄川人の八本の髪の毛から生み出される、竜種を模した鬼。
 各々の髪は自己の意志で動き、術を行使し、倒されても魔力を注げば復活する。
 陣地作成と合わせれば、召喚、運用、復活に本人の魔力を必要としなくなる。

『朱ノ首輪(しゅのくびわ)』
ランク:A 種別:対神宝具 レンジ:― 最大捕捉:1柱
 神、もしくは神性スキルを持つ相手にのみ通用する宝具。
 枷をはめられた敵の能力と理性を封印し、獣に貶める(イメージとしてはプリズマイリヤの黒化英霊を参考に)。
 この宝具は術として唱える型と、首輪を実体化させる型の二種類がある。
 術の場合、以下の呪文を唱える。
 「風祭り、火祭り、水祭り、土祭り、滄溟を探りたもうた天の瓊矛の滴よ、ここに集いて禍事を為せ」
 首輪の場合、道具作成スキルで製造する。こちらは填めることさえできれば誰にでも使用でき、黄川人本人にも通用する。

『阿朱羅(あしゅら)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人
 黄川人の道具作成、自己改造スキルを自分自身に用い、異形の鬼へと変化する。
 ステータスは以下の通り。

筋力A 耐久A+ 敏捷A 魔力A+ 幸運D 宝具B

 無論この状態でも、全スキル、宝具は使用可能。だが、常時莫大な魔力を消費し続ける。
 もし魔術回路を持つ者と一体化できたなら、自力で魔力を生成し、生前の力を完全に発揮できるだろう。

【サーヴァントとしての願い】
 桜に『復讐』の思いを自覚させ『この世、全ての悪』を使い世界をやり直す。


601 : 間桐桜&キャスター ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 21:00:08 e4oSW.Yk0

【人物背景】
 打倒朱点童子を目指す主人公一族の前に現れる水先案内人。
 天真爛漫な性格で様々な情報を知らせてくれるが、セリフの端々に皮肉が混ざっている。

 正体は主人公に呪いをかけた朱点童子本人。
 下天した神、片羽ノお業と人間の間に生まれる。これを機に神は下界に介入し、黄川人を皇子として従うように下知する。
 神の起こす奇跡により信仰は広まり、都が造られるまでに至るが、時の帝の命により、黄川人のいる都は焼き討ちされ、皆殺しの目に合う。
 赤子だった黄川人は殺戮から逃れ、お紺という女性に拾われるが、黄川人が能力で富籤を連続で当てさせた結果、お紺の家庭は崩壊し、無理心中を図られる。
 その後は氷ノ皇子の元に辿り着き、彼の血を啜り生き延び、術を教わる。
 そこでは穏やかな生活を過ごしていたが、ある時、流れ着いた敦賀ノ真名姫の死によって身の内に溜まった復讐心が爆発し、怨念は地上天界を揺るがした。
 それを鎮める為討伐に来た神々諸共、神へと転生した姉の昼子に鬼の身体へ封じ込められる。
 それでも尚黄川人の意識は残り、鬼の自我はそのままに意志を操り京を荒らし続けた。
 これに対し自分を倒すため、もう一人の神との混血『朱点童子』を作る計画を聞きつけた事で、封印を解く計画を思いつく。
 鬼の身体を倒しにきたお輪を人質にして、まだ赤子の主人公に短命の呪いをかけた。
 自分を封印から解き放つ動機を持たせ、封印を解く程度で実力を抑えるように。
 そしてその赤子が神の力を借り、朱点童子討伐に乗り出すところから物語は始まる。

【方針】
 戦闘やトラウマを抉り出す言葉責めを利用して、桜が黒化した後で勝負に出る。
 それまでは陣地を作り、待ちの戦術でいく。

【基本戦術、運用法】
 戦法はまず陣地を作り、八つ髪を配置するというキャスタークラスの基本戦略に沿う形になる。
 暗殺も一応は可能だが、やはり八つ髪と術の併せを用いた方が良いだろう。
 主従関係について補足しておくと、黄川人は桜を利用しても、裏切る気は全くない。
 サディスティックに責めたてても、それは桜に復讐心を自覚させるためである。


602 : ◆7q1uGo5q1A :2015/05/17(日) 21:00:23 e4oSW.Yk0
投下終了しました。


603 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/17(日) 22:30:25 goxpB37I0
皆様、投下お疲れ様です
滑り込みになりますが投下します


604 : ブラック☆スター&アレキサンダー大王 ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/17(日) 22:31:37 goxpB37I0
少年は誓った。夢半ばで倒れた者達の無念を全て背負う、と。


少年は最強を目指す者。


しかしそれは武に敗れ狂気に堕ち、ただひたすらに魂を狩る鬼――鬼神ではなく。


武の道を進んだ先にある、武神。


少年は誓った。生者を殺す鬼の道ではなく、死者を生かす武の道を進む、と。


少年は武神を目指す者。


◆ ◆ ◆


夜のゴッサムシティの空を一人の少年が駆ける。
ビルからビルへ、屋上から跳んでは軽々と次のビルへ乗り移り、傍から見れば到底人の所業とは思えない動きであった。
少年が下を見下ろすと、ゴッサムシティの都会から発せられる光が夜空を照らしており、まだ昼だと錯覚しそうになる。
下の車道を行き交う車が光りの点となって少年の瞳に移った。
高みから見たゴッサムの夜景には木々が生い茂る自然とはまた違う、アメリカの都会ならではの荘厳さがあった。
少年は周囲の中でも一際高いビルの中腹へ乗り移り、そこから頂上まで駆け上る。
そして眼下に栄えるゴッサムを一望して少年は、

「ひゃっはぁああ!!」

と高らかに叫んだ。

「へへ、どいつもこいつも豆粒みてェだ」

少年は自分が大物だと言わんばかりにゴッサムを見下ろす。
上空であるからか、その身体には風が吹き付け、忍装束めいた服装と星形に尖った髪型が揺れる。
彼の名はブラック☆スター。冗談抜きで神を超えることを目指す武人。
しかしそのための努力は惜しんでおらず、先ほどの人間離れした動きも努力の賜物である。

「今、俺様はこの街の誰よりも上にいる。俺様がBIGな証だな。どんなヤツだろうと片っ端からぶっとばしてやる」
「――はっはっはっ!言うではないか、坊主!何者にも恐れずに挑む者こそ余のマスターに相応しい!」

ブラック☆スターの背後に、轟音と共に二頭の気性の荒そうな牛が牽引する戦車が降り立つ。
それを操る者こそがブラック☆スターのサーヴァント、ライダー。
真名をアレキサンダー大王、もといイスカンダルといった。

「当たり前だ!俺は神を超える男だからな!」

そう言ってブラック☆スターは「ひゃっはっはっは☆」と笑う。

「うむ!今一度ライダーのクラスを得て現界したが、此度はゴッサムシティなる都市か。ここはあの難敵クリントンがいる国。そして何よりも他の英雄がこれでもかと集うと言う!そう思うと一層、胸が高鳴る!」

ライダーは戦車から降り、ブラック☆スターの隣に立つ。
ブラック☆スターに比べて遥かに身長が高いライダーから見るゴッサムシティはもう少し広く見えた。

ライダーは冬木の第四次聖杯戦争にて召喚されたことがある。
その戦場で現代を満喫し、違う時代の英雄と決闘し、ウェイバーという新たな盟友もでき、力の限り駆け抜けた。
冬木での聖杯戦争ではサーヴァントは7騎までと決まっているが、
この電脳空間での聖杯戦争は召喚されるサーヴァントの数に限りがないという。
そのこともあって、ライダーは今まで以上に他の英雄との邂逅が待ち遠しかった。


605 : ブラック☆スター&アレキサンダー大王 ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/17(日) 22:32:46 goxpB37I0

「ああ。やるからには俺達が一番目立たねぇとな。例えサーヴァントだろうが真っ向から挑んでやる。…椿がいなくてもな」

いつも傍にいるパートナー・中務椿がいないことに少し寂しく思いながらも、ブラック☆スターは自らを奮い立たせる。
ブラック☆スターは死神武器専門学校――通称・死武専の武器職人だ。
武器に変身することができる人間・魔武器の中務椿とペアを組み、お互いに信頼し合っていた。
ブラック☆スターがここに来た発端は、死武専のある任務中のことだ。
どうやら派遣先の遺跡に魔道具があるらしく、それの回収を目的とした任務だった。
椿と共に目的の物を探している途中、ブラック☆スターはそれを見つけた。
シャブティという変な人形。
目的とされる魔道具かと思いブラック☆スターがシャブティに触れた途端。
ブラック☆スターの身体が消え、武器化したままの椿が取り残された。
その瞬間から、ブラック☆スターはゴッサムシティへ飛ばされたのだ。

本来、武器職人はパートナーの魔武器がいないと大きく弱体化する。
ブラック☆スターは持ち前の戦闘能力である程度は戦えるとはいえ、武器――椿がいないとなるとやはり弱体化は免れない。
正直、ブラック☆スターが勝つことは難しいであろう。

…それでも、ブラック☆スターは進まなければならない。

「……ライダー。俺は聖杯なんて別に欲しくない」

ブラック☆スターは、左手で肩を押さえながら言う。
そこには星形の刺青と、その上に痛々しいまでに刻まれた傷痕があった。
ライダーはゴッサムシティの夜景を見ながら静かに聞いていた。


◆ ◆ ◆


死武専と敵対する組織・アラクノフォビアの本拠地のババ・ヤガー城攻略作戦にて、
ブラック☆スターはある男と死闘を繰り広げた。
その男の名はミフネ。
99個分の強靭な魂を持ち、ブラック☆スターは一度惨敗を喫している。

結果からいえば、辛くもブラック☆スターの勝利に終わった。
全てを捨て、互いに死を覚悟上での壮絶な武人の決闘であった。
ブラック☆スターの肩にある傷はその時につけられたものである。
そして、彼はその傷にかけて改めて誓ったのだ。
強さを求めて散っていった者達の無念を背負い、「武神」になると。

「俺は自分の力で武神にならないといけないんだ。聖杯なんてモンに頼ったら散っていった奴らを侮辱することになる」
「つまり、自分の力で夢を叶えることにこそ価値があると?」

ブラック☆スターはライダーの問いかけに頷く。
それはライダーも同じだ。
ライダーの聖杯にかける願いは、受肉。
この世界に再び一つの命として生まれ変わり、「自分の力で」世界を制服するためだ。
この少年もまた、ライダーのようにその身で己の限界を極め、神を超えようとしているのだろう。

「願いがない代わりに…俺は見てみたいんだ。ここって色んな世界に繋がってんだろ?強い奴だっているはずだ。そいつらと戦ってみたい」
「……ふははははっ!気に入った!」

ライダーはブラック☆スターのツンツンと尖った頭を押し付けるようにして撫でてから戦車に再び乗り込む。
ブラック☆スターから「撫でんじゃねェ!」と抗議の声が上がるが、聞いていない。

「そうとなったら出陣だ、坊主!貴様の望む好敵手を探しに行こうぞ!」

手綱を握り、ブラック☆スターを誘う。
ブラック☆スターはそれに応じて会心の微笑を浮かべながら「応ッ!」と返し、ライダーに続いて戦車に乗るのだった。


606 : ブラック☆スター&アレキサンダー大王 ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/17(日) 22:33:55 goxpB37I0
【クラス】
ライダー

【真名】
イスカンダル@Fate/Zero

【パラメータ】
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具A++

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
ただし、竜種は該当しない。

【保有スキル】
神性:C
明確な証拠こそないものの、多くの伝承によって最高神ゼウスの息子であると伝えられている。

カリスマ:A
大軍団を指揮する天性の才能。
Aランクはおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。

軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。


607 : ブラック☆スター&アレキサンダー大王 ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/17(日) 22:34:36 goxpB37I0
【宝具】
『遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:100人
「神威の車輪」による蹂躙走法。『神威の車輪』完全解放形態からの突進。雷気を迸らせる神牛の蹄と車輪による二重の攻撃に加え、雷神ゼウスの顕現である雷撃効果が付与されている。
猛る神牛の嘶きは通常使用時の比ではなく、静止状態から100mの距離を瞬時に詰める加速力を持つ。

 ・神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)
 ゴルディアス王がオリュンポスの主神ゼウスに捧げた供物であったものをイスカンダルが自身の佩刀「キュプリオトの剣」で繋いでいる紐を断ち切って自らのものとしたというエピソードの具現。
 彼がライダーたる所以である、二頭の飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)が牽引する戦車(チャリオット)。
 地面だけでなく、空までも自らの領域として駆け抜けることが可能。神牛の踏みしめた跡にはどこであれ雷が迸る。
 キュプリオトの剣を振るうと空間が裂け、どこであろうと自在に召喚できる。
 戦車は各部のパーツを個別に縮小・収納が可能で、走破する地形に合わせた最適な形態を取ることが出来る。
 御者台には防護力場が張られており、少なくとも血飛沫程度なら寄せ付けない。
 地上で通常使用した場合の最大速度は約時速400Kmほど。
 真名解放無しでも対軍級の威力・範囲を持つ。
 下記の『王の軍勢』と同時使用することもできる。

『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
召喚の固有結界。ライダーの切り札。
展開されるのは、晴れ渡る蒼穹に熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠。
障害となるものが何もない地形に敵を引きずりこみ、彼が生前率いた近衛兵団を独立サーヴァントとして連続召喚して、数万の軍勢で蹂躙する。
彼自身は魔術師ではないが、彼の仲間たち全員が心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能となっている。
要は、生前の軍団を丸ごと召喚・復活させる固有結界。
時空すら越える臣下との絆が宝具にまで昇華された、彼の王道の象徴。
征服王イスカンダルの持つカリスマ性を最大限に具現化したものであり、召喚される中にはライダー本人よりも武力に優れた者や、
一国の王としてBランク相当のカリスマを具える者も複数いるらしい。
これは彼が生前、個人として武勲を立てた英雄ではなく、軍勢を指揮して戦った英雄であることに由来する。
召喚された臣下はそれぞれ英霊として座にあるサーヴァントであり、全員がE-ランクの「単独行動」スキルを持つためマスター不在でも戦闘可能。
なお、聖杯戦争のルールに従って召喚されているわけではないのでクラスは持っていない。
また、ライダーの能力の限界として、臣下が自身の伝説で有しているはずの宝具までは具現化させることはできない。
一度発動してしまえば近衛兵団はライダー曰く「向こうから押しかけてくる」ほか結界の維持は彼ら全員の魔力を使って行われるため、
展開中の魔力消費は少なく済む。
ただし、最初に彼が『英霊の座』にいる軍勢に一斉号令をかける必要があるため、維持は簡単でも展開そのものに多大な魔力を喰う。
また、軍勢の総数が減るに従って負担が激増していき、過半数を失えば強制的に結界は崩壊する。
本来、世界からの抑止力があるため固有結界の中にしか軍勢は召喚・展開できないが、
一騎程度であれば結界外での召喚や派遣も可能。

【weapon】
・キュプリオトの剣

【人物背景】
マケドニアの覇者、征服王イスカンダル(日本で一般に言うところのアレキサンダー大王、またはアレクサンドロス3世)。
大柄な見た目通りの豪放磊落を地で行く人物。
他を顧みるということを全くしない暴君的性質を持つが、その欲望が結果的に人々を幸せにする奔放な王。
征服先で略奪を行ってきた出自の為か盗癖がある。
世界征服を望みとするが、他者から与えられるものではなく、あくまでも自分で成し遂げることを持論とする。

【サーヴァントとしての願い】
受肉し、世界を征服する。


608 : ブラック☆スター&アレキサンダー大王 ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/17(日) 22:35:24 goxpB37I0
【マスター】
ブラック☆スター@ソウルイーター

【マスターとしての願い】
ゴッサムシティにどんな奴が来ているのかを見てみたい
聖杯に興味はなく、武神になるという夢は自分で叶える

【weapon】
武器(中務椿)はいないので特になし

【能力・技能】
・持ち前の軽技と突出した戦闘能力
体術はもちろん、パートナーの椿と共に戦ってきたことで様々な暗器と刀の扱いにも優れている。
死武専の職員からは「死武専最強」のお墨付きを貰っているほど。

・気配遮断
暗殺者として気配を殺すことができる。
ただし、性格上隠密行動をするのは難しく、今まで暗殺に成功したことがない。

・「魂の波長」を攻撃として打ち出す能力
ブラック☆スターの魂の波長を敵へ直に打ち込む。
鎧などの硬い遮蔽物を無視して直接体内にダメージを与えることができる。
耐久無視攻撃。

【参戦時期】
少なくともミフネ戦(3回目)以降

【人物背景】
死武専に所属する武器職人。
殺し屋集団・星一族の生き残りであり、赤ん坊であった頃に死神様によって保護され、死武専に入った。
唯我独尊な目立ちたがり屋で、どこまでも明るくポジティブであり、細かいことは気にしない。
暗殺術の使い手であり、忍者的な要素も強い暗器職人であるにもかかわらず、我が強く何にでも一番になりたがるうえ、とにかく目立ちたがる。
そのせいで、任務よりも目立つことに気を取られてしまい、当初はつねに赤点の落第候補生であった。
短気で喧嘩っ早くもあり、何かにつけて勝負を持ちかける。
そして絶対勝とうとするうえ、負けを認めようとしない意固地な一面もある。

将来は神になることが目標であり、そのために日夜、我が道を突き進んでいる。
そのため、自身の目標のための努力は惜しまず、とことんまで追求する努力家でもある。
また、情に厚く、絆や約束を大切にする人情家でもあり、仲間のために命を賭けることを惜しまない気風の良さもある。

【方針】
他の主従、特に自分より目立っている者へ勝負を吹っ掛けにいく。


609 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/17(日) 22:35:51 goxpB37I0
以上で投下を終了します


610 : カーズ&キャスター ◆VNq0QV44BI :2015/05/17(日) 22:38:50 ZNflQUgk0
皆様お疲れ様です。投下させていただきます。


611 : カーズ&キャスター ◆VNq0QV44BI :2015/05/17(日) 22:39:25 ZNflQUgk0

  究極生命体(アルティミット・シイング)とは、「何者にも束縛されない究極の生命体」のことである。
  他の生物の目的は「種」を残すことであるが、究極生命体は不老不死であるため子孫を残す必要がない。
  自分の思うがままの世界を創造してゆくことことこそが究極生命体の目的である。

「だが、人類の作った聖杯などに「世界を作って下さいッ! 生贄を捧げますから!」というのでは順番があべこべだろうな。
 なによりお願いして創ってもらおう! なんとかしてもらおという精神性は、究極には程遠いんじゃないか? 嫌いじゃないがな。
 貴様はどうだ、キャスター。願いはあるのか?
 聖杯に遜って、へらへら笑いながら擦り寄って、底の裏ッ側に付着した泥を舐め取ってでも叶えたいような願いというものが」

  キャスターと呼ばれた少年は孤独だった。もっとも、見た目が少年というだけで、彼は既に少年とは呼べない年月を過ごしている。
  世界を狙う者、あるいは少年を狙う者との闘争に身をやつし、故に孤立した。
  傍にある者は彼に付き従う3つのしもべと、彼を闘争に導いた塔だけだった。
  彼の名や力を知る者はいるだろうが、彼自身をよく知る者はいない。
  目的も、行く末も知られない彼に、ただ一つ残った真実は、彼は人類の為に戦った、ということだった。
  彼なりに、という但し書きは付くが。

「願いというのならば、この聖杯戦争とやらのシステムを根本から消滅させることだ。
 何でも願いが叶う願望器など、きっと、あってはならない。ましてや願いを人に強要するようなモノは」

  故にキャスターは聖杯に立ち向かう。

「闘争し、支配し、望みのままに世界を動かすというのは貴様ら人類の営みそのものではないか
 これはそれを少しばかり圧縮し、色を付けただけだ。ならば人類である貴様が否定するべき物ではないだろう。
 むしろ、聖なる杯に祝福でも奉げるべきじゃないだろうか」
「お前の言う事が真理だとしても、俺はそれを許さない。だから来た」

  キャスターには彼の正義があり、それを決めるのは彼なのだ。

「フン、それもお前達の向かうべき「物語」なのだろうな
 いいだろう、 好きにするがいい。手は貸さんがな」


612 : カーズ&キャスター ◆VNq0QV44BI :2015/05/17(日) 22:40:29 ZNflQUgk0

【CLASS】キャスター
【真名】バビル2世
【出典】バビル2世 ザ・リターナー
【属性】中立・善
【ステータス】筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:A 幸運:A 宝具:―(EX)

【クラス別スキル】
陣地作成:―
  魔術師として自らに有利な陣地な陣地を作成可能。
  だが、彼は遥か古に人類の知の及ばぬ者に由来する陣地を持つ。
  自ら陣地を形成する事は無い。

  道具作成:―
  魔力を帯びた器具を作成可能。
  しかし、彼に必要な物は陣地の方に大体用意されている。
  自ら何かを作る事は無い。

【固有スキル】
バビルの後継者:A
  バビルの王に由来する神秘を行使可能。
  正統な後継者である彼は、交心、転移、肉体変異など多岐に渡る神秘を詠唱無しで使用できる。
  ただしなんとなく能力を叫んでみる事もある。
  以下3つのスキルは彼の持つ「バビルの後継者」のスキルの中でも特に強力な物である。
  
   魔力吸収
 魔術による攻撃を受けた際、魔力の一部を吸収し自分の魔力に変換する。
 吸収できる物は自分を対象とする魔術だけで、また、魔力を吸収したからといってダメージの無効化はできない。

 魔力放出
 魔力を放出して身体能力を底上げする。
   リソースが多ければ多いほど、際限なく強化できる。
   また、魔力を衝撃や炎に直接変換して放つことも可能。
   バビル2世はこのスキルを使い対消滅ミサイルを相殺した。

   超再生能力
 身体にどんな損傷を負ったとしても魔力が枯渇しない限りで再生する。
   出典作品では頭を吹き飛ばされても数秒で再生させた。
 魔力のリソースが多ければ燃費効率を無視してさらに再生速度を上げることもできる。

  仕切り直し:A
  戦闘から離脱する能力。
  また、離脱に成功した直後に戦闘を仕掛ける場合、魔力残量以外の条件を全てリセットし、必ず先手を取れる。

【宝具】
『バベルの塔』
ランク:―(EX) 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
  バビルの後継者の覚醒を促し選定を行う塔。
  バビルの王を守る要塞である。
  が、技術の由来が地球外にあり、その存在を塔自身が地球の記憶から隠し続けるため、聖杯では再現不可能である。

『3つのしもべ』
ランク:―(EX) 種別:対軍宝具 レンジ:10 最大補足:1〜100人
バベルの塔に由来するキャスターに従う3匹のしもべ。
  これまた宇宙由来の技術なので地球の技術では再現不可能である。
  ただし、キャスターが何らかの不測の事態により聖杯の枷から外れた場合、
  数多の世界のどこかに現存しているしもべを呼び出すことはあうかもしれない。


【weapon】
なし。

【人物背景】
バベルの塔の二代目の主。生まれの名は山野 浩一らしいが、彼の真名はあくまでバビル2世である。
  ただし米軍関係者からは101と呼ばれる。よって米軍に関係する人物には正体を看破されやすい……かもしれない。
  横山光輝の原作版とは違い、非常に寡黙なため、読者目線では何を考えているのかさっぱり分からない。
  また、超能力も少しおかしいレベルまで強化されている。
  大正義アメリカ様に単独で喧嘩を売りエスパーやらロボットやらを生身で破壊しまくり挙句に対消滅ミサイルを撃ち落とした。
  非常に強力な超能力者だが、後先考えずに能力を使うためいつもガス欠になっている。吸収スキルに助けられ凌いではいるが。
  裏を返せば超能力のリソースが無限にあるならば、バベルの塔とか三つのしもべとかいらないというかむしろ邪魔ってレベルで強い。
  
【サーヴァントとしての願い】
聖杯のシステムを解明し破壊する。


613 : カーズ&キャスター ◆VNq0QV44BI :2015/05/17(日) 22:40:59 ZNflQUgk0

【マスター】カーズ
【出典】JORGE JOESTAR -ジョージ・ジョースター-

【マスターとしての願い】
バビル2世に見る「人間」という種の持つ物語の観測。
  
【weapon】
必要なし。

【能力・技能】
究極生命体。自分や他人の体を好きに改造できる。
  さらにスタンドなど超能力の類も目コピして究極生物仕様にして使える。
  その気になればザ・ワールド・アルティメットとかメイド・イン・ヘブン・アルティメット・レクイエムとか訳の分からんモンが使える。
  波紋も練れるし魔力とかも多分湧き放題。

【人物背景】
ジョジョの奇妙な冒険の25周年に寄せられたスピンオフ作品、舞城王太郎著『JORGE JOESTAR』版のカーズ。
  宇宙が36巡するくらい火星の裏側でマラソンを続け帰還という24時間テレビも咽び泣くレベルの感動体験を経て、無事地球に帰還した。
  荒木先生の設定では究極生命体はその活動下では1年間は食事の必要はない! という設定だったはずだが、まあそんなことはどうでもいい。
  さすがにそれだけ走ると悟りでも開けるのか、妙にお茶目で優しく、自由な超越者然とした性格になっている。
  愛称は「カーズ先輩」「カーズっち」


【方針】
  バビル2世は聖杯が気に食わないので壊す。カーズはそれを見て楽しむ。


614 : カーズ&キャスター ◆VNq0QV44BI :2015/05/17(日) 22:41:31 ZNflQUgk0
以上で投下を終了します。


615 : ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:15:45 m3JfvTuk0
投下させていただきます


616 : ディック・グレイソン&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:16:37 m3JfvTuk0

ディック・グレイソンは一人の仮面をつけた黒衣の魔術師を向かい合っていた。
安物のソファーに腰掛け、二人の間には飲料もない。
ただ、向い合って会話を行っている。
『ロビン』、『ナイトウィング』と呼ばれるたくましい正義漢であるディックは、しかし、緊張を帯びていた。
それほどまでに、目の前の黒衣の魔術師は、存在自体が威圧的な男だった。

「君は理解していないようだがね」

『ジョン・プルートー・スミス』、すなわち『無銘の冥王』を名乗るコスプレ男から、くぐもった声が響きだす。
愉快げな声だった。
ジョン・プルートー・スミス、神を殺し権能を簒奪した魔王へと昇華した英霊。
ギリシャ神話の女神『アルテミス』から簒奪した権能にして自身の宝具の一つ、『魔弾の射手』。
その宝具故に弓兵<<アーチャー>>のサーヴァントとして召喚された。
神霊に次ぐ神秘を宿した、人では抗いようのない超級の英霊である。

「理解してないよ、自身の幸運をね」

小さく腕を動かし、たっぷりと溜めを作る。
演技がかった姿。
目の前の男のコスプレ男の偏った好みの現れだった。
かっこいいとでも思っているのだろうか。

「私を召喚したという幸運を噛みしめるべきなんだよ、ミスター・ロビン。
 ナイトウィングと呼んだほうがいいかな?」
「いや、名前は別にいいさ。好きに呼べばいい……
 とにかく……そもとして、聖杯戦争っていうのがわからないんだよ」
「殺し合いさ、裏路地に行けば見れるようなものとなんら変わりないものだよ」

嘲りとは異なる、皮肉げな言葉。
確かに殺し合いという意味では、ゴッサムでは日常茶飯事かもしれない。
しかし、それは子供の殴り合いと一億ドルを稼いでいるヘビー級ボクサーの試合を比べるようなものだ。
規模が違う。
スミスはそのことを理解しているというのに、愉しそうに笑ってみせるだけだ。
そのことを本人に問えば、なんの悪意もなく応えるだろう。
ウィットに富んだ会話こそが最大の食事だ、と。
柔軟で愉快な会話は精神を満たすフルコースだ、と。

「君は少々ロマンチシズムが過ぎるんじゃないかい?
 ハンバーガーを食べることだって生命を奪っていることじゃないか」
「牛と人間を一緒にしろっていうのかい?」
「失敬、失言だったね。
 しかしだね、ディック君。
 人を殺すことに対する忌避としては、君は弱いように感じるよ。
 本物は、『狂っている』としか思えないほどの忌避を見せるからね。
 君のそれは……青臭い、アドゥレセンス特有のものとしか思えないね」

からかうように言ってみせるが、しかし、ディックを気遣うような色もあった。
決して、この魔王は悪人ではない。
強いていうならば、ロマンチシズムに理解のあるリアリストだ。
殺害に特別な意味を見出さないし、ただ、成すべきことを成すだけだ。


617 : ディック・グレイソン&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:17:37 m3JfvTuk0

「僕の問題だ、あまり踏み込んでこないで欲しい」

半ば、逃げるように突き放した。
姿形と、その超常に見えるオーラばかりが似ているだけで、本質は全く異なっている。
誰と異なっている?
決まっている。
バットマンと、だ。
闇に溶けこむような衣装を纏った、威圧感を放つ正体不明の怪人。
そんなキーワードだけで同視していまった。
あの異常とも呼べる精神性は唯一無二のものだ。
例え、目の前の神殺しの魔王が狂人であったとしても、その異常性が同じではない。

「ふふ……」

ディックの言葉に対して笑った。
不快感はなかったが、どこか自身を子供に思えてしまい、苛立ちは覚えた。
そんなディックの挙動に、スミスは面白そうにさらに笑みを深めた。

「気にするな、この冥王を召喚せしめた我が愛しきマスターよ。
 私は君が気に入った……不思議だな、『容易く懐に入り込んでくるように』、とでも言おうか。
 まるで春風を告げるコマドリのようだ」
「……褒めているのかい?」
「褒めているさ。
 実に不快だが、私はひどく気難しいらしい。
 その私がこうまで受けているんだ、そこは間違いなく誇っていい。
 神殺しの魔王に惹かれるのではなく、神殺しの魔王が惹かれているのだからね」

仮面の奥では笑っているのだろう。
しかし、仮面をつけているというのに簡単に表情がわかってしまう。
ここまで芝居がかったオーバーなリアクションで感情を隠すことなど不可能だ。
なんのための仮面か、わかったものじゃない。

「では、私はそろそろ動くとしようか。君に聖杯を与えるための準備運動に、ね。
 楽しみにしているといい、我がマスターよ」

その言葉で、ディックは自身がこの魔王の主であることを思い出した。
おかしな話だが、まるで自身がこの魔王の従者であるように勘違いをしていた。
これでは、いつまでたっても相棒<<サイドキック>>止まりだな、と笑われてしまう。
優雅な所作で立ち上がったスミスは扉まで歩いて行き、ふと、思い出したように立ち止まった。
スミスがゆっくりと振り返り、くぐもった声が部屋に響く。


「それと、『アニー』とは仲良くしてやってくれ。
 彼女は、少しばかり恥ずかしがり屋でね。
 私の大切な、大切な……ある種の相棒<<宝具>>だからね」






618 : ディック・グレイソン&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:17:55 m3JfvTuk0

「コーヒーです」
「ああ、ありがとう」

疲れた身体に、苦味が染み渡った。
緩んでしまいそうな思考が引き締まる。
暗色のレディーススーツに身を包んだ、見るからに生真面目な女性に視線を移す。
ノーフレームの眼鏡の奥に眠った、ショートカットの髪と同色の目と視線が交錯した。
アニー・チャールトン。
『夜な夜なコスプレしてヒーロー活動をしている』、そんな魔王曰く、自分の最も重要な付添人。
この女性こそがジョン・プルートー・スミスの語った協力者。
自身の冥王としての伝説とは切っても切れない、有能にして美しき、深淵に呼びこむ片腕。
アニーの存在がなくてはジョン・プルートー・スミスは全てを失ってしまう。
ディックとも是非とも仲良くして欲しい、とのことだ。

「……しかし」

ジョン・プルートー・スミスの言葉はいつも大げさだ。
しかし、アニーはサーヴァントでないにも関わらずこの世に顕界する存在。
その実力の云々はともかく、ジョン・プルートー・スミスにとって重要な存在というのも間違いないだろう。

「君は、スミスの恋人なのかい?」
「………………………なんですか、いきなり」

窓越しに覗く雪が降る街を覗くときに見える同種の冷たさを宿った視線がロビンに
明確な嫌悪感を抱いている、非難とも取れる視線だった。
思わず、たじろぐ。
本気の嫌悪が溢れでている。
慌てて、頭を下げた。

「いや、すまない。不躾だった」
「なぜ、そのようなことを?」
「……だって、そうだろう?
 君は……使い魔、ではない普通の人間なのだろう?
 だのに、スミスに召喚されるということは、相当に親しい間柄だってことじゃないか」
「彼の配下の魔術師というだけです。
 兄妹でも、恋人でも、なんでもありません」
「……相棒<<パートナー>>、かい?」

ディックはアニーの冷たさがスミスに向けるものと他者に向けるものとの違いを感じ、それを逆に気安さだと判断した。
信頼しているからこその違いだと、そう判断したのだ。
しかし、相棒<<サイドキック>>という言葉に自身の胸も痛んだ。
誰よりも強い心を持ち、当たり前のような精神的な脆さを持つ、ディックにとって最高のヒーロー。
バットマン。
ディックは、そのバットマンの相棒<<サイドキック>>であるロビンだった。
彼のことを思うと、胸が痛くなる。
美しいものほど壊れやすく見えるものだ。

「そんなものではありませんよ……強いていうならば、腐れ縁です。
 マスターが、どうしても、と呼ぶのならば語りますが」
「……畏まらなくていいんだよ、アニー。
 スミスのように、『マスター』じゃなくて『ディック』でいい」
「あくまで、主従の関係ですから」

バッサリと距離を詰め寄った言葉を切り捨てる。
その取り付く島もない様子に、ディックは目に見えない壁を一瞬だけ幻視した。

「スミスとの会話ならばともかく、私との会話は必要もないでしょう。
 もっとも、スミスは要らない気を使っているようですが」
「そんなことはない、僕は君とも仲良くなりたいと思っているよ」

まるで口説いているようだ、ディックは思わず笑った。
アニーは一向に笑わない。
ただ、事務的に言葉を返してくるだけだ。

「主従の関係から抜け出すような交流を深めることが出来れば、改めます」

その時は一生訪れそうにないな。
なにせ、付き合いの短い自分ですら分かるほどに冷酷で生真面目な、鉄で出来たような女だ。
ディックは立ち去っていくアニーの冷たい後ろ姿を見ながら、そう思った。





619 : ディック・グレイソン&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:18:17 m3JfvTuk0

ガタン、と。
扉を開けた瞬間、アニーは、ふぅ、と息を吐いた。
緊迫していた。
冷静沈着だと、周囲からはよく言われる。
それは事実だ。
自賛になるかもしれないが、精神的な安定性においては他者より優れていると思っている。
魔術師としての腕前は中の上止まりの自分が、エージェントとして優秀と称される原因はこの性格だと自覚している。
もっとも、酒を飲んでいる時と、趣味の『コスプレ』をしている時はハイになってしまうが。
そんな自分でも、取り繕わけなければいけない瞬間もある。

「ああ……マスター……『ディック』……」

その名を呟いた瞬間、腹部に熱い迸りを感じた。
無論、物理的に何か変化が起こったわけではない。
ただ、それは乙女特有の変化だ。
愛しい男の名を呟いて心を昂らせない女性が居るだろうか?

「『ディック』……」

再度、名をつぶやく。
アニーは少々、というよりも、過度に惚れっぽい性格をしていた。
冷酷だと称されるが、その実は惚れた男には入れ込み続ける。
熱い乙女としてのハートを持った女だ。

「ふふ……」

冷たいと称された顔が笑みに染まる寸前、黒い闇がアニーを覆った。
他者にその姿を伝えるために必要な光は闇に覆い隠される。
闇の奥に眠るアニーの姿は誰も観測できない。
闇が動く、コツコツと床を叩く音が聞こえた。
恐らく、闇の奥でアニーが歩いているのだろう。
やがて、闇が晴れていく。

「ああ……待っていろ、ディックよ!
 この神殺しの魔王、まつろわぬ神を三柱殺すことで取得した神秘の権能で君に栄光をもたらそう!」

その奥に居た頭部の全てを覆う仮面を被った、全身を包む黒衣を身にまとった冥王。
『無銘の冥王』、『ジョン・プルートー・スミス』。
すなわち、ジョン・プルートー・スミスとはアニー・チャールトンの『仮面<<ペルソナ>>』だ。
王として相応しい性格をした、アニーのもう一つの人格。
ジョン・プルートー・スミスという謎の冥王の仮面を被ることで性格を変貌させる。
自己暗示によって産んだ、一種の二重人格。

そう、アニーの趣味である『コスプレ』だ。

ゴッサム・シティに、コスプレヒーローが訪れる。
バットマンとは異なる、無銘の冥王。
胸を恋に焦がし、闇夜に溶けこむように駈け出した。


620 : ディック・グレイソン&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:18:48 m3JfvTuk0


【クラス】
アーチャー

【真名】
ジョン・『プルートー』・スミス@カンピオーネ!


【パラメーター】
筋力:D 耐久:A 敏捷:C 魔力:D 幸運:A+ 宝具:A+

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では○○に傷をつけられない。


【保有スキル】
神殺しの魔王:B
神を殺してその権能を簒奪した者が必ず所有するスキル。
『エピメテウスの落とし子』『カンピオーネ』『ラークシャサ』『堕天使』『羅刹王』などとも呼ばれる。
総じて『勝者』の別名であり、神だろうがどんな怪物だろうが必ず勝利へと辿り着く桁外れの幸運の持ち主。
神性を持つ相手に
高い生命力と学習能力を所持している。


自己暗示:C
二重人格というほどの解離性がない、『役割演技』としての一種の自己暗示。
無貌の黒仮面を被ることで『ジョン・プルートー・スミス』という存在を演じきる。
本来のアニー・チャールトンとは異なる男性としての性格へと変化していく。


変身:B
宝具である『煙燻る超変身』に由来する自らのカタチを変えるスキル。
宝具の五つの姿とは別に、瞬時にジョン・プルートー・スミスとしてのコスチュームに変身することが出来る。


621 : ディック・グレイソン&アーチャー ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:19:10 m3JfvTuk0

【宝具】
『煙を吐く鏡(テスカトリポカ)』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:1000
アステカ神話の魔神『テスカトリポカ』から簒奪した権能、『贄』をささげることで5つの姿に変身できる。

・『大いなる魔術師』
最強の形態。
人が土から作った巨大な建造物を『贄』として取り込み全身が黒く、右足が黒曜石で出来ている全高15mの巨人となる。
・『豹(ジャガー)』
周辺一帯の人工の光を『贄』にして使用不可にし、影から蔭へと移動できる能力を持つ豹となる。
・『殲滅の焔』
雨(長期間その地域で降らなくなる)と自分自身を『贄』とする。
蒼黒い焔の塊となり、対象に体当たりして我が身諸共滅ぼす。
とはいえ、強靭な肉体なので焼け死ぬのではなく一時的に実体を失うだけですぐ復活でき、他の形態への変身も出来る。
また実体を失うのを利用して、緊急避難にも応用できる。
・『黒き魔鳥』
大地を『贄』とし、周囲に地震を発生させる。
翼長10mの魔鳥へと変身し、翼から、毒や麻痺状態にする灰色の煙を出せる。
・『蛇使い』
自分以外の誰かが殺した生物の屍を『贄』とする。


『魔弾の射手(アルテミス)』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ギリシャ神話の女神『アルテミス』から簒奪した権能、新月の時にのみチャージされるので一ヶ月に6発しか撃てない光の矢を放つ。
相手が神速状態なら矢も神速となりどこまでも追跡し、時空を超えたり北米から欧州への長距離狙撃、爆発を起こしたり散弾にする、光で目潰しなどの応用も可能。
同時に複数放つことで威力は倍を優に超え、一度に全弾放つとカリフォルニアを焼き尽くして荒野にする程の威力をもつ。
人間時には闇エルフに作ってもらった拳銃、変身時にはその口から放たれる。
なお、本人がそばにいて許可すれば拳銃から他者でも発砲できる。


『妖精王の帝冠(オーベロン)』
ランク:A+ 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
妖精王『オーベロン』から簒奪した権能、精神集中してアストラル界(あの世のようなもの)へ移動することが出来る。
また、神以外のアストラル界の住人に対して支配力を発揮し、適応可能ならあちらの住人を一時的に呼びよせたりできる。


【weapon】
魔弾の射手


【マスター】
ディック・グレイソン@バットマン

【weapon】
特殊な武器は持たない

【能力・技能】
高い身体能力を誇り、アクロバティックな運動を得意とする。

【方針】
ゴッサムの治安を守る。


622 : ◆devil5UFgA :2015/05/17(日) 23:19:34 m3JfvTuk0
投下終了です


623 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/17(日) 23:21:28 19sAnk420
皆様投下感謝です。
本来なら本日〆切の予定でしたが、諸事情あって二日後の19日(火)いっぱいに期限を延長させてもらいます。
なお、延長制度は無いのであしからず。これ以上の期限延期もありません。

>>529氏、質問の返答が出来ず申し訳ありませんでした。


624 : 名無しさん :2015/05/18(月) 00:19:51 iX.r1Lyo0
>>623
お疲れ様です。
質問へのご返答ありがとうごさいます。
期限延期ということなので、それに合わせて対応させていただきます。


625 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/19(火) 21:46:16 p/lbwsnE0
投下します。


626 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/19(火) 21:46:44 p/lbwsnE0
 


 ゴッサムシティに悪党がのさばっている事は、最早周知の事実だ。
 目先の金に釣られた警官は正義を見失い、まるで機能しないのが当たり前。
 今日もマフィアが街で暗躍し、市民はそれを見て見ぬ振りするしかない。

 誰もが分かっている、こんな世界は間違っていると。
 悪が平気な顔をして街頭を歩き、正義は片隅で震えるしかない現状。
 そんな衆愚の街はあってはならない事くらい、皆が理解していた。

 だが、例え理解していたとしても、市民は一向に行動しない。
 自分一人がいくら騒いだ所で無駄なのだと、既に悟ってしまっているからだ。
 たかが一個人の力でこの悪徳の街を救える筈もないと、諦めてしまっている。
 だから彼等は、今日も天に向かって祈る他ないのだ。
 この腐敗した街を救済するヒーローの到来を、待ち望むしかない。

 そんな祈りが届いたのだろうか。
 ここ最近、ある団体がゴッサムで頭角を現した。
 腐りきった街の浄化を宣言し、正義を掲げ上げる謎の自警団。

 最初こそ、誰もが彼等の存在に苦笑した。
 こんな場所で錆びついた正義を旗揚げした所で、叩き潰されるのがオチだ。
 それを知らずにゴッサムに来たのなら、それはもう不幸とした言えないと。

 しかし、彼等は潰されるどころかその勢力を拡大していった。
 宣言に違わぬ誠意ある活動と、会長である日本人の圧倒的カリスマ。
 力を付けていく自警団を目にし、目を逸らす民は次第に考えを改めていく。
 もしかしたら、彼等ならば腐敗したゴッサムを変えてくれるのではないか、と。

 個人の力が次々と自警団に加わり、彼等の力は更に増大する。
 まるで飛蝗が群れを為し、蝗害を齎す黒色の軍となるかの如く。
 気付けば、その正義の集団はヴィランの脅威にまでなっていた。

 「グラスホッパー」。
 黒い飛蝗の腕章を張り付けた彼等は、自らをそう名乗る。


.


627 : 犬養舜二&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/05/19(火) 21:49:40 p/lbwsnE0
□ ■ □


 高級ホテルの一室に、グラスホッパーの会長はいた。
 窓際に配置した椅子に腰かけ、新聞に書かれたある記事を読んでいる。
 "議員が強盗に殺害された"という、物騒かつこの街でよくある内容だ。

 議員はグラスホッパーに対し悪印象を持っていたと、記事は語る。
 事実殺害されたその男は、日頃からその自警団への嫌悪を露わにしていた。
 そのせいか、グラスホッパーが強盗と関係あるのではないかという推測まで書かれている。

 この様な推論が語られるのも無理はない。
 なにしろここ数日、グラスホッパーに否定的な権力者が次々と消されているのだ。
 まるで神に歯向かった者が罰されるかの如く、敵対者が抹殺されていく。
 そんな事が起これば、嫌でも疑惑の眼が向けられるのは当然だ。

 が、そんな程度では、もうグラスホッパーの地位は揺らがない。
 それほどまでに、彼等の基盤は強固なものとなっていたのだ。
 この街を変えようとする救世主に、生半端なバッシングは通用しない。

「いやすっかり人気者だねぇ、我々は」

 突如として発せられた声に反応し、会長は新聞をしまう。
 彼の中性的な美しい相貌が、声の方向に向けられた。
 目線の先には、白衣に身を包んだ男が立っている。

 音も無く室内に忍び込んだ彼に対し、会長は何の驚きも示さない。
 それもその筈、彼はこの侵入者と特異な関係にあるのだ。
 サーヴァントとマスターという主従関係が、二人を繋いでいる。

 マスターの名は"犬養舜二"、そしてサーヴァントの名は"戦極凌馬"。
 共に、ゴッサムシティを舞台とした聖杯戦争の勝利を命じられた存在である。

「戦極ドライバーの量産は進行中だ、多分数日もすれば団員に行き届く量は作れるんじゃないかな?」

 "魔術師"のクラスとして召喚された凌馬は、道具製作を得意とする。
 中でも"ロックシード"と呼ばれる錠前に関する技術は、彼の十八番と言えた。
 "戦極ドライバー"なる変身ベルトの製作など、彼には朝飯前なのである。

「しかし解せないねマスター、こんな事に何の意味があるんだい?」
「こんな事、とはどういう事かな?」
「自警活動の事さ、ゴッサムに尽くした所で君に一体何の得がある?」

 キャスターの話には、なんら誤りはない。
 いくら善行に励んだところで、このゴッサムは所詮偽りのものだ。
 聖杯戦争が終われば最後、どうなるかさえ分からない虚構の街。
 そんな世界で自警活動に取り組んで、一体何の得になるというのだろうか。


628 : 犬養舜二&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/05/19(火) 21:50:01 p/lbwsnE0

「……本当は、聖杯なんてものは必要ないんだ」
「まさか、そんな物が無くても願いは叶うなんて言うつもりかい?」
「僕が信じる運命が正しければね。正しかったなら、きっと僕は世界を変える」

 犬養舜二という男は、運命を絶対的なものとしている。
 人間には与えられた役割があり、それを果たす為に存在しているのだ、と。
 己に課せられた運命を受け入れるのが、犬養の信条であった。

「もし僕の運命が世界を変えるものなら、聖杯戦争に勝ち抜ける筈だ。
 そうでなければ、ゴッサムで死ぬのが僕の運命だったという事になるんだろう」

 人は、運命に抗えない。
 誰もが逆らえず、運命という名の荒波に押し流されていく。
 だが、犬養には聞こえてくるのだ。
 "世界を変えろ"と。"未来をその手で選べ"と。

 言うなれば、聖杯戦争は試練なのだ。
 "世界を変えろ"という声が、偽りのものでないのかを見定める試練だ。
 聖杯を手にした瞬間、きっとその声は真実のものとなる。
 世界は間違いなく、犬養の手に託されるのだ。

「そうかい。ま、君がやる気なら私も文句は言わないさ。
 幸いグラスホッパーのお陰で人手は足りてるからね。しばらくは良い思いさせてもらうよ」

 そう言い残して、キャスターは霊体化した。
 言い方からして、恐らく犬養の理念に感銘を受けてはいないだろう。
 キャスターはそういう人間だ。他者との触れ合いを必要としない、徹底的な利己主義者。
 もしかしたら、今もどこかでマスターを裏切る算段を立てているかもしれない。

 もしキャスターに裏切られる羽目になったとしても、犬養は別段恨みはしないだろう。
 自分に課せられたのはそういう運命だったと、あるがままを受け入れるだけだ。
 神が決定した運命を、犬養は否定しない。する気もない。 

 未来は神様のレシピで決まる。
 人間は食材で、運命は味を決める調味料。
 聖杯戦争という劇薬は、生まれる料理に何を齎すのか。


629 : 犬養舜二&キャスター ◆JOKERxX7Qc :2015/05/19(火) 21:50:30 p/lbwsnE0
【CLASS】キャスター
【真名】戦極凌馬
【出典】仮面ライダー鎧武
【属性】中立・悪
【ステータス】筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:C(デューク)

【クラススキル】
道具作成:B
魔力を帯びた道具を作成出来る。
キャスターは本来魔術師ではないが、生前の逸話からこのスキルを得ている。
自らの手で設計した「戦極ドライバー」や「ゲネシスドライバー」は勿論のこと、
ロックシードの上位種である「エナジーロックシード」の製造をも可能としている。
また、その気になれば「ヨモツヘグリロックシード」を始めとした試作品の製造も行える。

陣地作成:D+
科学者として、自らに有利の陣地を作り上げる。
彼の造る工房の在り方は、どちらかと言えば研究所に近い。

【保有スキル】
研究者:A
人類の更なる進化を目指し、日々探究を続ける者。
スキル「道具製作」の発動の際に必要な魔力の量を軽減させる。
Aランクともなると大きな恩恵を得られるが、代償として「精神異常」のスキルを得る。

精神異常:C
精神が歪んでいる。徹底的なまでの利己主義者。
自身の研究を第一とし、他者がどれだけ被害を被ろうと平然としている。
周囲の空気もあえて読もうとしない、言わば精神的なアーマー能力。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
"人との絆が何の役にも立たない生き方"を選んだ為に得たスキル。

話術:B
言論にて人を動かし、事を自身が有利な方向に進ませる才。
国政から詐略・口論・交渉など幅広く有利な補正が与えられる。

【宝具】
『嗤う公爵(レモンエナジーアームズ)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、「アーマードライダー・デューク」へと変身する。
レモンエナジーロックシードにより発動するこの姿は、弓と刃を兼ね備えた武器「ソニックアロー」を得物とする。
また、特注したゲネシスドライバーの機能として、立体映像の投影機能や光学迷彩等の能力が使用可能。

【weapon】
『ゲネシスドライバー』
異世界・ヘルヘイムからの侵略から人類を救う為、キャスターによって製造された変身ベルト。
戦極ドライバーと同じくヘルヘイムの果実を「ロックシード」に変化させる機能に加え、
エナジーロックシードと併用する事で、果実の鎧を纏う戦士「アーマードライダー」に変身する事が可能となる。
キャスターの道具製作スキルで量産が可能。

『戦極ドライバー』
異世界・ヘルヘイムからの侵略から人類を救う為、キャスターによって製造された変身ベルト。
ヘルヘイムの果実を「ロックシード」と呼ばれる錠前に変化させる効果があり、
また、ロックシードと併用する事で、果実の鎧を纏う戦士「アーマードライダー」に変身する事が可能となる。
キャスターの道具製作スキルで量産が可能。

【サーヴァントの願い】
聖杯を自らの研究の糧とする。


【マスター】犬養舜二
【出典】魔王 JUVENILE REMIX

【マスターとしての願い】
聖杯に託す願いはない。
が、聖杯戦争を自らに課せられた試練と認識している。

【weapon】
無し。

【能力・技能】
圧倒的カリスマと煽動する才能。

【方針】
神様のレシピ次第。


630 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/19(火) 21:52:42 p/lbwsnE0
投下終了です。
犬養の人物紹介の欄は「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」にて◆lnFAzee5hE氏が投下した「神様のレシピ」を参考としました。


631 : ◆WJZXpPqPTw :2015/05/19(火) 22:03:37 o51bJuyA0
投下します。


632 : リュウ&セイバー ◆WJZXpPqPTw :2015/05/19(火) 22:05:28 o51bJuyA0
荒野の中に1人、男がいた。
白い柔道着のような服、頭には真っ赤なハチマキを締めている。
男は何もない荒野を1人歩き、求めている。
彼が求めてやまないもの、それは「戦い」。
ムエタイの帝王に勝利しても、秘密結社の野望を打ち砕いても、
それでも、男の闘争心は消えることは無かった。
かつて拳と拳を打ち合った強敵、あるいはこの世界にいるであろうまだ見ぬ強敵、
男は自分をも倒しかねないほどの敵との熱い勝負を渇望していた。

 『もっと強い相手と戦いたい』

そう心の中で思った瞬間、男の胸の辺りで光が漏れ出していた。
男は懐からそれを取り出してみると、さっき訪れたの町で気まぐれに購入した小さなお守りが、
手の中で眩い光を放っていた。
光はだんだんと強くなっていき、やがてその輝きは男の体全てを飲み込むほどにまで広がっていった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 「ここは……」

光に奪われた視界が回復し、気がつくと風景はがらりと変化している。
見上げると、摩天楼が視界を埋め尽くさんばかりにあちこちにそびえていた。

 「あっ!ひょっとして貴方が私のマスターさんですか?」

男は突如声をかけられ、上を向いていた目線を元に戻す。
すると、目の前には1人の少女が立っていた。
腰には剣を収めた鞘をつけたピンク色のかわいらしい服。
顔立ちは男の故郷にいそうな日本人的な顔立ちだった。

 「マスター……俺のことか?」

 「初めまして、マスターさん!私の名前は、島村卯月です。
  セイバーのクラスのサーヴァントとしてこの聖杯戦争に呼ばれました」

島村卯月と名乗った少女は丁寧にお辞儀をする。
見た目だけならただの可憐な少女にしか見えないセイバー。
しかし、数多くのストリートファイトの中で
強者と戦っていた男は彼女が多くの戦いを
勝ち抜いてきた戦士ということを一目で見抜いていた。

 「俺はリュウ。よろしく頼む」

リュウと名乗った男はお辞儀をしたセイバーに返すかのごとく、
両腕を体の前に交差しながらお辞儀をする。

 「リュウさん、これからよろしくお願いします!
  私、サーヴァントの役目、立派に果たして見せますね」

お互いにお辞儀を交えて自己紹介する2人のマスターとサーヴァント。
和やかな雰囲気の中、セイバーはハッとした表情を見せる。

 「あ、そういえば……リュウさんは聖杯戦争で叶える願い事はあるんですか?」

 「願いは無い。俺は強い奴と戦える場所を求めてここにやってきただけだ」

セイバーの問いにリュウは首を横に振りながら答える。
彼の答えを聞いたセイバーは嬉しそうに目を輝かせる。


633 : リュウ&セイバー ◆WJZXpPqPTw :2015/05/19(火) 22:06:20 o51bJuyA0
 「私も同じです。私も叶えたい願いはありませんけど……
  強いて言うならマスターさんの力になること、それが私の願いです!」

そう言ったセイバーは右手でピースサインを作り、ニッコリ微笑む。

 「そうか。これから俺はこの世界でいろんな奴と手合わせしたいと思っている。
  俺の闘い、付き合ってもらえるか?」

セイバーのあどけない微笑みにリュウもつられて頬が緩む。
彼女の笑顔には不思議な魅力が備わっているのを感じたのだ。

 「はい、もちろんです!セイバー島村卯月、精一杯頑張ります!」

リュウはセイバーと共にゴッサムの街を歩き出す。
異なる世界に行っても彼の求める事はただ1つ、
『自分よりも強い奴に会いに行く』
ただ、それだけだった。


634 : リュウ&セイバー ◆WJZXpPqPTw :2015/05/19(火) 22:06:59 o51bJuyA0
【クラス】
セイバー

【真名】
島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ&グランブルーファンタジー

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:D+
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
さらに、飛空艇に騎乗する場合に限り有利な補正を得ることができる。
騎乗にまつわる逸話に乏しいため、ランクは低い。

【保有スキル】
アイドル:B
生前セイバーの努力で培ってきたアイドルとしての技能が
そのままスキルとなったもの。
歌とダンスは他者に元気と笑顔を与える力があり、
それらの技能を使う際に有利な補正を得る。
また、同ランクの魅了としてのスキルも兼ね揃えており、
他者を強く惹きつける。

魔力放出(光):C
武器に魔力を込める力。
剣に光の力を帯びさせることができ、攻撃力をアップさせることができる。
また、剣先から光線として放出することも可能。
闇の属性を持つマスターやサーヴァントに対して使用すれば
大きなダメージを与えることができる。

満点スマイル:C
セイバーは攻撃あるいは宝具を発動するたびに
魔力をわずかであるが回復することができる。

戦闘続行:C
何事にも頑張ることができる力。瀕死の傷でも戦闘を可能とする。

中道力:EX
いついかなる時もひたむきに頑張り続け、生涯おみくじで吉以外しか出なかったという
「普通の少女」を体言したセイバーの逸話の再現。
セイバーはステータスダウンの能力の影響や、精神干渉系の魔術も無効化する。
また、セイバーがラック値によるロール判定をする場合、
クリティカルとファンブル以外の判定が必ず出る。


【宝具】
『喜楽の魔法(ピース・マジック)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:10 最大捕捉:4
何事にもひたむきに頑張るセイバーの生き様が宝具化したもの。
セイバーの魔術により、味方の攻撃力をアップすることができる。
味方サーヴァントならば筋力1ランクアップに加え、攻撃系宝具の威力が向上し、
マスターならば強化魔術を施すことができる。

『綺羅星の魔法(ティンクル・スター)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜20 最大捕捉:1
セイバーの剣から発生する光で、相手にダメージを与える宝具。
ヒットした相手は時々セイバーの虜になり、ターン中一切の行動ができなくなる
『魅了』のバッドステータスを付与する。
この宝具の効果は6ターン経過で消滅する。

『気まぐれロマンティック(ウィム・ロマンティック)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
光の加護による回復魔術。自身が負った傷を回復することが可能。
さらに3ターンの間、筋力と耐久が1ランクアップし、
攻撃系宝具の威力も向上する。

『笑顔咲く桃花色の剣(ピンキー・ライブリィ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:5
セイバーの奥義が宝具となったもの。
剣に光の魔術を纏わせ、相手に斬り払いと突きの攻撃で大きなダメージを与える
光の魔術によって剣の刀身が伸び、ビームサーベルのようになるため
距離が離れている相手にも攻撃することが可能。
この宝具がヒットした相手が暗闇のバッドステータスになっていた場合、
さらに水属性の追加ダメージを与えることができる。

【WEAPON】
『勇者の剣 《スマイルブレイド》』
製作者不明の勇者の剣。
本来は映画撮影用の作り物の剣であったが、
異世界に転移する際に性質が変化し、本物の剣となった。
この剣を使用することでセイバーの魔力を光の力に
変換することが可能。


635 : リュウ&セイバー ◆WJZXpPqPTw :2015/05/19(火) 22:07:19 o51bJuyA0
【解説】
モバゲー「アイドルマスターシンデレラガールズ」に登場するキャラクターの1人。
サイドに結んだ髪型が特徴の17歳の女の子。属性はキュート。
本家アイマスでいうならば天海春香に相当する普通アイドル。
しかし、何事にも「頑張ります」と言ってチャレンジする姿勢、眩しい笑顔と少し天然ボケな面も魅力の1つ。
また、同じモバゲーである「グランブルーファンタジー」とのコラボイベント、「シンデレラファンタジー」の
登場キャラの1人としても登場している。
ファンタジー映画撮影のため、渋谷凛、神崎蘭子と一緒に控え室で衣装を披露していた所、
謎の光により異世界に飛ばされてしまう。
その後、凛と同行していた騎空士一行と合流。
当初は映画の撮影と誤解していたが、元の世界と同じように
この世界の人々にも笑顔を『勇者』役を精一杯頑張ることを決意したのであった。
本来、セイバーが活躍していたのは夢の中の世界であるが、
その世界でもセイバーはアイドルとして歌と踊りを披露していたという逸話が残されている。
異世界の人々は彼女の想いを受け継ぎ、中には異世界の住民で新しくアイドルユニットを
結成したという伝説もあると言われている。
そのため彼の地でアイドルを広めた先駆者としての側面があり、サーヴァントの座として登録されている。


【サーヴァントとしての願い】
願いはなし。サーヴァントとしての役目をまっとうする。

【方針】
サーヴァントとしてせいいっぱい頑張ります!


【マスター】
リュウ@ストリートファイターシリーズ

【マスターの願い】
聖杯に対しての願いは考えていない。
ただこの地にいる強いやつと戦いたい。

【能力・技能】
暗殺拳を源流とする格闘術を習得している。
基本的に殴打技、蹴り技、投げ技を使うが、
両手を合わせて、衝撃波を放つ「波動拳」、
ジャンプしながら高く拳を突き上げる「昇竜拳」、
回転しながら連続で周り蹴りを放つ「竜巻旋風脚」など
様々な必殺の技を持っている。

【人物背景】
ストリートファイターズシリーズの主人公的存在。性格は真面目でストイック。
『真の格闘家』を目指すため強者と会って戦い、強くなる日々を送っている。
その中でムエタイの王者サガットを倒したり、シャドルーの総帥ベガの野望を打ち砕いたりしているが、
それでも最強を求め、ひたすら修行の旅を続けている。
また、自分の中に「殺意の波動」が眠っており、暴走し、危険性をはらんでいる。
この「殺意の波動」を克服することも武者修行の目的の1つでもある。

【方針】
聖杯戦争に参加している強い奴を探し、戦う。
が、命までは奪わない。


636 : ◆WJZXpPqPTw :2015/05/19(火) 22:08:02 o51bJuyA0
投下終了です。
間際の投稿、本当に申し訳ございません。


637 : ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:21:02 0Z2e3O2s0
投下します


638 : 正義と幸福  ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:21:57 0Z2e3O2s0
  †

  マリアを一言で表すなら『良い人』だろう。
  幼い頃から品行方正な少女で通っていた。
  悪事など一切せず、むしろ悪事を行おうとする人を咎めて危ない目に会うことだってあった。
  マリアはそんな、真面目が服を着て歩いているような子だった。

  マリアの人生は、絵に描いたように素晴らしい『普通』だった。
  平凡という意味ではない。
  求めても得ることの出来ない人も居る、届かぬ場所にある、『普通』という輝かしい勲章だ。
  初等部の頃、バレエの地区大会で優勝した。優勝記念パーティは誕生日よりも盛大に行われた。
  中等部の頃、初恋を経験したが同時に初めての失恋を経験した。三日泣き続けて体重が五キロ落ちた。
  高等部の頃、国立の大学を受験したが浪人してしまった。大学への進学費用を稼ぐためにバイトをいくつも掛け持ちして、過労で倒れて両親からこっぴどく叱られた。
  大学に合格した日、マリアは初めて父が泣くのを見た。これから先泣かせるのは、結婚の時だけにしておこうとひっそりと誓った。
  マリアは良き娘だった。

  卒業して、結婚した。相手は、少し冴えないけど、それでも優しい人だった。
  子どもが生まれた。男の子だった。夫が泣くのを初めて見た。男は意外と泣き虫かもしれない、と、苦笑した。
  二人目の子どもが生まれ、上の子が学校に通うようになり、父が他界し、追うように母が他界し。
  それでも、家族四人、泣いて、笑って、毎日を過ごしていく。
  夫を支え、子を育む。内助の功を積み上げる。
  マリアは良き妻だった。
  マリアは、ドラマや映画では絶対に描かれない、『普通の幸せ』に満ちた人生を歩んでいた。



  ある日、マリアの夫が死んだ。交通事故だった。
  世界中では毎日多くの人が交通事故で死んでいるのはマリアもよく知っていた。
  だとしても、まさか自分の夫がそのうちの一人になるなんて、思っても見なかった。
  葬式の夜。
  マリアは冷静だった。
  失恋の時に声を上げて泣きじゃくったちっちゃなマリアはもう居なかった。
  そこに居たのは、二人の子を持つ母親マリアだった。
  強く生きる。
  逞しく生きる。
  寄る辺のない母一人、子二人でも生きていく。
  泣くのは、二人の子どもが立派に社会に出てからで十分だ。
  歯を食いしばり、顔を上げる。
  子どもを抱きしめ、強く誓う。この子たちをなんとしてでも幸せにしてみせる、と。
  マリアは、良き母だった。

  食べていかなければならなかったから働くことにした。
  なんてことはない、交通安全に携わる仕事だった。
  それでも、マリアには一つの大きな決意があった。
  これ以上夫のような犠牲者を出してなるものか、と心に強く誓って選んだ職だった。
  マリアは、どうしようもなく良い人だった。


639 : 正義と幸福  ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:22:33 0Z2e3O2s0
  †

  それは、薄ら寒い夜だった。
  特に霧が深い夜で、少し気を抜けば大事故が起こってしまうかもしれない夜だった。
  霧の深い日は、事故率が高く誰も仕事をしたがらないという事もあって高給だ。
  だからマリアは、自ら進んでこの日の交通警備を申し出た。
  理由は2つ。
  1つは、事故の起きやすい日こそ、事故を起こさせないという心があったから。
  もう1つは、下の子が来週誕生日を迎えるから。すこしでも豪華なパーティと、プレゼントを用意してあげたかったから。

  警備も終盤に差し迫った夜。
  マリアは一台の車と出会った。
  車に乗っているのは男と、おそらく女。運転をしている男は、冴えない感じが夫に少しだけ似ていた。
  規則だからと車を止め、二人に話を聞くことにした。
  しかし、男の方は「急いでいるから」と進もうとする。
  規則を破る訳にはいかない、と食らいつくマリアに、男は思わぬアプローチを仕掛けた。
  「これで見逃してはくれないだろうか」
  手渡されたのは百ドル札だった。
  マリアの心が、少しだけ揺れた。
  百ドル(日本円で約一万円)、それがあれば子どもの誕生日プレゼントを買える。
  しかし、見逃すのは業務の怠慢になる。マリアの良心はそれを拒んでいた。
  マリアが葛藤するうちに、業を煮やした男は、マリアに百ドルを押し付けて、そのまま乱暴な運転で走って行ってしまった。



  マリアは初めて、懴悔の念を覚えた。
  生まれてずっと、優等生として生きてきた彼女は、初めて規則を破ってしまった後悔に押し潰されそうになった。
  心のなかで、父と、夫と、二人の子どもと、神に謝った。自分が悪いわけでもないのに、ただひたすらに謝った。
  この100ドルは、使いません。必ず返します。恵まれない子どもに寄付をします。だからどうか今回だけお見逃しください、と十字を切った。

  それが、彼女の人生最初の罪らしい罪だった。
  それが、彼女の人生最後の罪深き罪だった。

  マリアがその行いを真の意味で後悔するのは、数秒後、見送った車が大爆発した瞬間だった。



  最初は、急いでいた男が事故を起こしたのか、と危惧した。
  しかし、それにしてはおかしい。車は頑丈だ、映画じゃあるまいし、ちょっとやそっとでは爆発なんてしない。
  じゃあ何があったのか、と深い霧に目をこらせば。


「幇助って知ってるか」


  一人の少女が歩いているのが見えた。


640 : 正義と幸福  ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:23:07 0Z2e3O2s0
「今の男は、殺人犯だ」

  少女はゆっくりとこちらに歩いてきている。

「助手席に乗っていたのは、妻の死体」

  マリアが見逃した『罪』を唱えながら、歩いてきている。

「お前は、悪を見逃した……いや」
「悪の逃亡を手助けした」
「悪を手伝うものは、悪だ」

  少女の眼光は、マリアを射殺さんばかりの強さで。
  霧の中でも爛々と光り、獲物であるマリアを睨み続けている。

  マリアは半狂乱になりながら言い訳を叫んだ。
  そんなこと気付かなかった。
  殺人犯だなんて知らなかった。
  このお金は、押し付けられただけだ。
  もらおうなんて思っていなかった。

「だが、悪は悪だ」

  マリアは絶望した。
  少女に、マリアの懇願は届いていない。
  マリアはヒステリックに泣き叫んだ。
  子どもが二人いるのだ。夫も居ない、両親も他界している。
  そんなつもりはなかった。こんなお金なんていらなかった。
  見逃して、どうか、見逃してくれ。二人の我が子が。お願いだ。ああ。ああ。
  我が身も顧みず、五体を地に投げ打って謝った。

「安心しろ」

  少女が、ふ、と嗤う。

「『コロ』、3番」

  側を歩いていた犬が少女の手に噛み付く。
  すると、少女の腕が巨大な剣に変わった。

「お前の罪を子どもに背負わせることはない。お前一人が、悪だ」

  マリアは地に伏せ、さめざめと泣き、もう一歩のところまで近づいている少女に呟くように問いかけた。

  私は、何を間違ったのだろうか。と。
  車を見逃したことか。誕生日プレゼントを買おうと思ったことか。職についたことか。夫を失ったことか。
  それとももっと、もっと、もっと前か。
  少女の足が止まり、最後の問いにだけ答えを告げる。

「一瞬でも、悪に頼ろうと思ったことだ」

  マリアが最期に思ったのは、二人の子どもの事だった。
  彼らは、夕食をちゃんと食べただろうか。長女のアリスはにんじんが嫌いだ、好き嫌いせずに食べていればいいが。
  彼らは、風邪を引かないように暖かくして寝ているだろうか。長男のジョージはしっかりものだが、寝相が悪いから、すぐにタオルケットから抜けだしてしまう。
  マリアは死ぬ瞬間まで、良き娘で、良き妻で、良き母で、良い人だった。

「『正義執行』」

  一瞬だけ、霧が赤く染まった。
  その後は、高校と燃え盛る自動車の火を受けたオレンジの霧だけが、その場を漂い続けた。


641 : 正義と幸福  ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:23:33 0Z2e3O2s0
  †

  霧の深い夜から数日後。

「ただいま帰りました!」

  にこにこ笑顔の少女の帰宅を、黒人神父が迎え入れる。

「その様子だと……満足の行く結果が出せたのかな」

「はい! 任務完了です、マスター!」

  びしりと敬礼をキメる少女は、黒人神父のサーヴァントだ。
  クラスは『バーサーカー』、狂戦士の名を関するクラス。
  神父はそうかと答えると、小さくため息をついた。

「そっちの子たちが、その……『孤児』かい」

「はい。この子たちはまだ悪に染まっていないので、今から正義の道を歩いてもらうんです」

  バーサーカーが連れてきたのは、まだ幼い子ども二人。
  くすんだ金髪の少女・アリスと、同じくくすんだ金髪の少年・ジョージだった。
  バーサーカーが『孤児』を拾って教会に連れてきたのは、契約後これで八人目だ。
  それも、揃いも揃って親が『何の前触れもなく蒸発してしまった』孤児。
  ここまで続けば、だいたいの察しは付く。
  毎度のことながら白々しいものだと、神父は内心舌を巻く。
  ただ。
  バーサーカーの狂気は、狂おしいまでの正義の心は、神父の『夢』を後押しするのに申し分ないパワーを持っている。
  神父は、その点だけはバーサーカーを高く評価していた。

「『孤児』が増えすぎじゃないか。あまり増えすぎると、暮らしもままならなくなるぞ」

「『悪』がはびこるよりも数倍マシですよ」

  冷めた神父の一言に、更に冷めたバーサーカーの一言が重なる。
  神父は、わりと自分勝手なバーサーカーに対してため息をつくと、新しい家族に話しかけた。

「事情は彼女……セリューから聞いてるね?
 私がこれから君たちの両親のかわりとして面倒を見させてもらう、エンリコ・プッチ神父だ」

  ジョージとアリスが生気の抜けた顔で、ぼうっと神父を見つめる。
  親が死んだばかりなのだ。当然だろう。

「そんなに固くならないで……私達は今日から家族なんだから」

「ほら、家に入りましょう。今日からは神父様と私が、二人のお兄さんとお姉さんですからね!」

  セリュー、と呼ばれた少女がにこやかに子どもたちの背を押す。
  プッチ、と名乗った神父もにこやかに子どもたちに手を差し伸べる。

  自分勝手な正義を追い求める少女。
  自分勝手な幸福を追い求める神父。

  似たもの同士は、互いに互いの仮面の下の狂気は見せず、朗らかに新たな家族を迎え入れた。


642 : 正義と幸福  ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:24:53 0Z2e3O2s0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!

【パラメーター】
通常時 筋力:D 耐力:D 敏捷:D 魔力:E 幸運:E 宝具:C
狂化発動時 筋力:C 耐力:C 敏捷:D 魔力:E 幸運:E 宝具:C
(コロおくのて 筋力:B 耐力:EX 敏捷:C 魔力:C 幸運:C)

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:C-
通常時は一切狂っていないように見える。
だが、彼女が『悪』を見つけた時、このスキルはその真価を発揮する。
正義以外の理性を大きく失う代わりに筋力と耐力が一段階ずつ上昇する。


【保有スキル】
絶対正義:A+
正義の名のもとに悪を討つ者が持つスキル。
彼女は悪と出会った瞬間に狂化が発動し戦闘体勢に移る。
ここで言う悪とは『彼女が悪と判断した全ての者』である。
例え善属性だろうと彼女が悪と判断できる行動を行っていた場合、彼女の敵となる。
また、例え善行を積んでいようが悪属性を持つサーヴァントならばそれだけで彼女の敵となる。
狂化のせいで生前よりも『正義』『悪』への執着が強くなっており、生前よりも厳しくこのスキルが発動するようになっている。
例え受動的に悪事を行ったものでも見逃さない。まさに狂おしいまでの正義の味方となった。

なお、生前の仲間が悪属性で呼び出されていた場合も一切の容赦なく彼女の敵となる。

精神汚染(正義):A
正義を盲信しており、どんな小さな悪だろうと見逃さず正す精神の持ち主。悪からの精神干渉を全て無効化することが可能。
このスキルが狂化に大きく関わっている。
バーサーカーの狂化は『正義への偏った盲信』から来るため、狂化の際にも正義の心と悪を憎む心を失わない。

人造人間:A
人造人間である。
毒物・薬物への耐性に加え、同ランクの戦闘続行を持つ。

悪を狩る者(イェーガーズ):EX
悪を狩る者として生涯を終えた少女。
悪がある限り彼女の存在理由は消えない。
バーサーカーが『悪』を認識している場合マスターへの魔力負担が減少。『悪』の数が増えれば増えるほど魔力消費は小さくなる。


643 : 正義と幸福  ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:26:48 0Z2e3O2s0
【宝具】
『魔獣変化ヘカトンケイル(コロ)』
ランク:C 種別:対悪 レンジ:1-10 最大捕捉:5
生物型帝具。愛嬌のある顔をした犬のような見た目をしている。
その能力は『捕食』。無数の乱杭歯で敵をすり潰して食す。
コアを破壊しない限り死なず、その腹の中にバーサーカーの宝具『十王の裁き』のうち9つを隠している。
バーサーカー同様『狂化(おくのて)』で一時的にバーサーカーに従う以外の理性の全てを捨ててステータスを大幅向上させることが可能。
『狂化』中は咆哮で相手の動きを止めたり、腕を伸ばしてラッシュを放ったりも可能。


『十王の裁き』
ランク:E 種別:対悪 レンジ:1-90 最大捕捉:10
コロの中にしまわれているバーサーカーの9つの武器。それぞれ
1番・正義秦広球……トゲ付き巨大鉄球
2番・初江飛翔体……小型ミサイル
3番・正義宋帝刀……巨大な刀
4番・五官鞭……ウインチ、移動のほか攻撃にも使用可能
5番・正義閻魔槍……巨大ドリル。射出も可能
6番・変成弾道弾……超大型ミサイル。硬度最強
7番・正義泰山砲……レンジ最大90まで狙撃可能な大砲
8番・平等魚雷……水陸両用魚雷
9番・正義都市探知機……周囲の魔力反応を探ることが可能
となる。
9番以外はそれぞれ筋力と同等の破壊力を有する。


『十王の裁き 最終番 五道転輪炉』
ランク:D 種別:対悪 レンジ:1-80 最大捕捉:999
手も足も出なくなったバーサーカーに残された最期の悪あがき。
頭に仕込まれた爆弾を魔力の全てを注ぎ込んでレンジ80以内を巻き込む大爆発を起こす。
レンジ内の『悪』を完全に消滅させる。
通常、参加者以外には効果を及ぼさないが、悪であったならば全ての者が消滅の対象となる。

【weapon】
トンファーガン。口の中の銃。義手の内側に隠された剣。
悪が相手でない場合に限りこれらを威嚇用に使う。かもしれない。



【マスター】
エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険第六部 ストーンオーシャン

【参戦経緯】
DIOの遺品回収にエジプトに行った際に現地のシャブなんとかさんに触る

【マスターとしての願い】
覚悟がもたらす幸福な世界、すなわち『天国』へ到達する。

【能力・技能】
ホワイトスネイク。
サーヴァントにダメージを与えられるほどの強い神秘は持っていないためガードくらいにしか使えない。
また、サーヴァントのDISCは抜き取り不可能。
ただし、対マスター戦ならいつもどおりのスペックで戦えるため無比の強さを発揮する。
また、スタンドがある分精神エネルギーが強いため魔力も常人よりは潤沢であるといえる。

【方針】
セリューの行動方針は唯一。
悪を許さない。それだけである。
他者を殺して願いを叶えるような奴はだいたい悪なので見敵必殺と言い換えてもいいかもしれない。
さらに言えばNPCだろうと悪は悪、当然裁きの対象となる。ゴッサムシティ全体が彼女の獲物と言っても過言ではない。
なお、プッチは神父であるし、セリューと同じく正義側の人間であるとセリューが判断しているのでプッチの殺しはノーカン。今はまだ。

敏捷にやや難があるが遠中近距離全てに対応できる『十王の裁き』を持つバーサーカー。
ステータスの低さも彼女を上回るステ値のコロちゃんで補える。その上魔力が許す限りは二対一で戦える。
狂化中も一応会話が可能であり、バーサーカーの中ではかなりの当たりと言えるかもしれない。
ただし、プッチが『悪』だと判断すればセリューは迷わずプッチを殺す。彼女はそういう存在だから。


644 : 正義と幸福  ◆tHX1a.clL. :2015/05/19(火) 22:27:03 0Z2e3O2s0
投下終了です


645 : 貴方のそばにいるサーヴァントがいます。  ◆YAGAMI99iU :2015/05/19(火) 22:37:58 Zw7rBI/A0
投下します。


646 : 貴方のそばにいるサーヴァントがいます。  ◆YAGAMI99iU :2015/05/19(火) 22:38:25 Zw7rBI/A0


___もう一度、力を。


ただその一心に、初瀬亮二は街をさ迷い歩いていた。
白いアーマードライダーに、戦極ドライバーを破壊されて数日。
そのたった数日のうちに、彼は何もかもを失った。
彼が率いていたチームメイトも、信頼していた仲間…城之内も彼を見捨てた。
全ては、力を失ったがために。

「……力さえあれば…もう一度あの力さえあれば……!」

どこまで歩いたのだろうか、街のはずれの廃工場へと迷い込む。
一度立ち止まると、その身に疲労がどっと襲い掛かる。壁に背を預け、地面に座り込む。
その時、手に触れた奇妙な感触。

「……何だ、これ……」

拾い上げて見れば、それはエジプトを思い起こさせる、奇妙な物体。材質は松の木あたりだろうか。
ガラクタか。そう思い、放り投げようとした時……

「ナリナリナリナリナリナリナリナリ……」

まるで何かが迫りくるかのように、謎の声が響く。
思考が追いつく前に、眩い光が視界へ溢れ______


647 : 貴方のそばにいるサーヴァントがいます。  ◆YAGAMI99iU :2015/05/19(火) 22:39:22 Zw7rBI/A0




「……弁護士のキャスターです。貴方が当職のマスターなのですか?」




「……は?」

唖然とする初瀬と対照的に、キャスターと名乗った男の表情は崩れない。
その姿は一見して、背広を着た太り気味の、大柄の中年男性といったところだろうか。肌は、黒人のように黒い。
彼の胸には、確かに弁護士バッジが輝い……ていない。色と厚みから判断すれば、段ボール製だろうか。
そして、その背後には全身オレンジ色の、大きな口と飛び出た眼球が印象的……というより奇妙な男たちが数名。
彼らの手には例外なくバットとグローブが握られ、「なんや?」「どこやここ?」「やっぱり尊師がナンバーワン!」などと関西弁らしき言葉でお互いに騒ぎ合っている。
やがてその会話は「無能」「詐欺師」などと中年男性への罵倒へと変わっていき…


「……うるさいナリ!当職を馬鹿にするんじゃないナリ!あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )

齢三十四にもなる男の奇声がゴッサムシティの中でこだました。


648 : 貴方のそばにいるサーヴァントがいます。  ◆YAGAMI99iU :2015/05/19(火) 22:40:55 Zw7rBI/A0
【クラス】
キャスター
【真名】
一般男性@第14回MMD杯
【属性】
中立・狂

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:E 宝具:JEX

【クラススキル】
陣地作成:D-
後述の「教徒」の手により、勝手に「恒心教○○サティアン」などと呼ばれる陣地が各地に作成される。
実態がないため陣地としての効果はほぼないが、探知にはひっかかるためダミーとしては使用可能。
キャスターは生前法律事務所を構えていたが、それは親の力であるため自力では陣地を作成できない。

道具作成:A---
彼を信仰するものたち(以下、教徒)が作り上げたとされる指名手配書を模したポスターや、「KRSW IS WATCHING YOU」という謎の文章が書かれたシールや、主に硬貨に張り付けて用いる事務所の位置を知らせるシール、某有名カードゲームを模したデザインのカードなどの様々な奇想天外なアイテム及び、更には使い魔として最大334人の「教徒」が作成「されてしまう」。
即ち、キャスターはこのスキルを自力では制御できない。
「教徒」は一人一人単独行動:Dを所有しており、前述のアイテムやインターネットなどを巧みに用い、キャスター及びそのマスターの真名を含む情報をばら撒いて回ったり、中にはしつこく二人について回ったり、過激なものになると殺害を企てたりする者もいる。
これらは全てキャスターの魔力を使用するため、バッドスキルとしての一面が大きいが、知名度を上げ結果的にキャスターを強化するといった一面も持つ。
また、アイテムも一応魔力を通せば監視カメラや発信機などの代用としては使用可能。

【保有スキル】

仕切り直し:D
戦闘から離脱する能力。
教徒から逃れるために、裁判の日程を変えた逸話から所持。

神性:E
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
元はただの弁護士でありながら、多くの人間に信仰され、「尊師」と呼ばれ神格化されたことから所持。

対神性:C
「神性」を持つサーヴァントを相手にする際、相手の全パラメータをそのランクの高さに応じてダウンさせる。
とある宗教の聖典を燃やしながら預言者を馬鹿にしたという逸話から所持。

サジェスト汚染:A
教徒たちによって、真偽問わず様々な逸話が語られた逸話に基づくスキル。このスキルは外すことができない。
真名が突き止められても、対象の脳裏には「ポケットモンスターXY」「有能」など、キャスターとは全く関係がないであろう言葉ばかりが勝手に思いつき、彼についての情報を探ることが不可能となる。
但し、その逆(例:「黒人」のことを考えているとキャスターの真名が勝手に思い浮かぶ)もありうる。
Aランクともなると、「啓示」でさえ影響を打ち消せないものとなる。

無能:EX
様々な逸話により姿が変化してしまう「無辜の怪物」、魔力消費を増やす「ぼったくり」、日本語をうまく操れず意思疎通が困難となる「狂化」、煽り耐性がなく依頼人の秘密を守れない「理性蒸発」、説明不要の「脱糞」など、バッドスキルの塊。
彼は様々な逸話を持つが、どの逸話でも一貫して「無能」であるとされた。このスキルは外すことができない。

開示:E+
「真名看破」の派生スキル。彼はルーラーではないが、しばしば弁護士として開示を行ったことにより所持。
彼に対して殺意を抱いたサーヴァントの真名を低確率で看破する。
対象が彼のことを馬鹿にしていると成功率が上昇する。


649 : 貴方のそばにいるサーヴァントがいます。  ◆YAGAMI99iU :2015/05/19(火) 22:41:27 Zw7rBI/A0
【宝具】
『五反田の神を讃えし讃美歌(Orpheus)』
ランク:E〜EX 種別:??? レンジ:??? 最大捕捉:???
教徒たちが彼を讃えるために、「Orpheus」と呼ばれる自動作曲システムを用いて彼や周囲の人物への讃美歌を数多く作り上げた逸話が昇華した宝具。
この宝具を発動することで、讃美歌の内容に応じた様々な力(巨大化・ダチョウ召喚など)を発動できるが、発動中対応した讃美歌が流れっぱなしとなるため、使えば使うほど情報を与えてしまう。
消費魔力とランクは、元となる讃美歌の知名度に比例し、知名度が高いほど讃美歌の数は多くなっていく。
「一般男性」として現界したため、特に「帰ってきたカラトラマン」「悪魔」というタイトルの賛美歌は非常に強化されており、絶大な威力を誇る。

『百万の神聖六文字』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
教徒たちが、神聖な文章とされるとある6文字を数年にわたり唱え続け、ついに100万回を突破したという逸話が昇華した宝具。
その過程の中で、「ナイフで刺されただけで死ぬはずがない」などといったような信仰がエスカレートしていったことから、時間経過とともに筋力、耐久、敏捷が上昇していく。上昇速度は「教徒」及びキャスターの真名を知っているNPCの数に比例する。
但し、世界2位であるという逸話から、全サーヴァントで最も高い各ステータスを持つサーヴァントのランクのワンランク下までしか上昇しない。

『優しい世界』
ランク:A+ 種別:対国法具 レンジ:1〜9800 最大捕捉:40298
彼が掲げていた「人が人に優しい世界」を実現するための道具として所有していたとされる核兵器。令呪を1発につき1画使用することで発動可能。
ミサイルだったり爆弾だったり、その形は様々。
その威力は絶大であるが、一度発動すれば一帯を更地にしてしまい、放射能により生物は立ち入ることも危険となるため、使用には細心の注意を要する。

【weapon】
『五反田の神を讃えし讃美歌(Orpheus)』。
使える状況であれば『優しい世界』を容赦なくぶっ放すのが必勝パターン。

【サーヴァントとしての願い】
声なき声に力を。光無き所に光を。

【人物背景】
なんでも実況J(通称・なんJ)と呼ばれる掲示板で炎上したとある高校生の依頼を受けたところ、自分自身が炎上した某弁護士…を掲示板の住民がMMD化したもの。
その影響力は凄まじく、初参加にもかかわらず1〜3位をはじめとした上位を独占してしまった。
詳しくは「ネットに強い弁護士」で検索検索ゥー!

【マスター】
初瀬亮二@仮面ライダー鎧武

【マスターとしての願い】
力を再び手に入れる。

【Weapon】
戦極ドライバーを破壊された後からの参戦のため無し。

【人物背景】
沢芽市で活動するビートライダーズの一つである「チームレイドワイルド」のリーダー。
戦極ドライバーを使用することにより仮面ライダー黒影へと変身していたが、ロックシードを集めるゲームを行った際、白いアーマードライダーと戦闘し敗北、戦極ドライバーを破壊されてしまう。
力を失い、チームメイトや手を組んでいた城之内秀保からも見放され孤立。次第に消耗していき、最終的にヘルヘイムの果実を口にし、ヘキジャインベスへと変貌してしまった。

【参戦時期】
仲間に見捨てられた直後。(第13〜14話)

【方針】
まずは、状況を把握する。
なおその間にも情報を教徒たちがゴッサムシティ中にばらまいていく模様。


650 : 貴方のそばにいるサーヴァントがいます。  ◆YAGAMI99iU :2015/05/19(火) 22:41:58 Zw7rBI/A0
以上で投下を終了します。


651 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/19(火) 23:30:59 FS9CBoqg0
皆様、投下お疲れ様です
再び駆け込みになりますが投下します


652 : ミュカレ&セイヴァー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/19(火) 23:33:08 FS9CBoqg0
上海の貿易公司に勤めるドイツ人夫婦の娘・カティ。
彼女はある日、「自分が魔女の生まれ変わりだ」と言い出した。
それに周囲が困惑している内に、彼女は姿を消した。
カティを最後に目撃した夫人の証言によると、黒いマントを羽織っており、元帥杖とエジプトの人形「シャブティ」なるものを持っていたという…。


◆ ◆ ◆


ゴッサムシティの廃ビルにて。
闇に包まれたフロアの中心部に、おぼろげな光が灯っていた。
そこに鎮座しているのは蝋燭と、元は人の形をしていたグロテスクな何かとシャブティを乗せている祭壇。
荒削りの岩で構成された祭壇は、どこか異教の雰囲気を醸し出している。

その前で少女が1人、祭壇の前に魔法陣を描いていた。
絵具は黒ずんだ紅色。
祭壇に捧げられている胎児の血である。

「ムラクモ…我を利用したつもりであろうが詰めが甘いな。万が一のために別の策を練っておいて正解だった」

黒いマントに身を包み、金髪のツインテールが揺れる。
少しずれた眼鏡をかけなおした少女の姿は、他ならぬ行方不明になった少女・カティであった。
しかし、彼女はもはやカティではない。

なぜなら、「完全者」ミュカレによって身体を奪われたのだから。

「『救済』を以て我等は次の階段を上るのだ」

ミュカレは魔法陣の完成を確認すると胎児とシャブティが乗る祭壇から離れ、魔法陣の反対側へ移動し、祭壇と向かい合う。
そして、祭壇へ向かってサーヴァント召喚の儀を唱える。

「素に胎児と血――」

己が求めるサーヴァントを召喚し、悲願を遂げるために。

「――――告げる。
汝の身は完全者が下に、我が命運は汝の鎌に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

魔法陣が光りを帯び、強風が吹きつける。
ミュカレを包んでいたマントが開き、下に着用していたブレザーとミニスカートが露わになる。
その瞳はまったく動揺をみせず、ただ魔法陣を見つめるのみ。何にも動かされぬ冷たい目は狂気をも感じさせる。

「誓いを此処に。
我は常世総てを救済する者、
我は常世総てを新世界へと導く者。
汝、救済の神体を創造せし者、
人魔の扉よりファラオの傀儡へ宿れ、漆黒の救世主よ―――!」



この世界に、また1人のサーヴァントが、召喚された。



「――恐れてはいけない。私は最初であり、最後である――」

その英霊の名は、ジェダ・ドーマ。
セイヴァーのクラスを冠する漆黒の救世主。


◆ ◆ ◆


653 : ミュカレ&セイヴァー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/19(火) 23:33:32 FS9CBoqg0
ミュカレは完全者と呼ばれている。
完全者とは、異端とされる「ペルフェクティ教団」の厳格な教義において真理を極めた者に贈られる名前だ。
ミュカレは完全者となり『転生の法』を会得した。
たとえ死んでも別の肉体が存在する限り、他人の身体を器にして魂を移し変え、精神を乗っ取って復活することができる秘蹟だ。
彼女は中世に火刑に処せられた、農夫の娘・ミュカレが『転生の法』により「完全者」として蘇った姿なのだ。
現代に至るまで数百年の月日を転生を繰り返し人々から「魔女」と恐れられ、人類の救済という教団の悲願のために暗躍していた。
ここでいう「救済」とは悪しき肉体を排し、天へと至る霊的救済…一般的に言われる「皆殺し」である。

第三帝国(ナチス)と協力関係を築き、
研究機関である秘密結社「ゲゼルシャフト」に属していたこともその一環だ。
ミュカレは本来、このゲセルシャフトの軍事力を用いて「救済」を実行する『プネウマ計画』に乗り出すつもりだった。
尤も、ミュカレがカティを乗っ取る前の肉体はムラクモらにより殺されてしまったが。

ミュカレは万が一のために、別の手段も用意していた。
聖杯を勝ち取るという単純な方法だ。
中世から生き、魔術に精通していた完全者はどこから伝え聞いたか、
シャブティを介して電脳空間『ゴッサムシティ』で執り行われる聖杯戦争の存在とそのルールを知っていた。
聖杯という万能の願望機を以てすれば、教団の悲願を叶えることができる。

そしてミュカレは今、もう一つの手段である聖杯の入手を実行に移そうとしていた。



衆愚の街・ゴッサムシティにも教育機関はあり、その中でも有名どころがゴッサム大学である。
ミュカレは大学内にある個人研究室で、コーヒーを片手に机に座る。
彼女が割り当てられた役割は『ゴッサム大学における考古学の権威である童顔教授』らしい。
実際、大学内で初対面の者と話した時は「学生よりも若そう」とさえ言われた。

「ミュカレ…君の願いは私と同じ…魂の救済、でいいのだね?」

ミュカレの発する女性の声とは違う、低い声が研究室に響く。
すると次の瞬間、研究室内で血飛沫が起きた。
血の量は次第に多くなり、床は血で満たされていない面積の方が少ない。
たった今、人が入ってきたらその者はあまりの恐怖に卒倒してしまうだろう。
その血は独りでに動き、渦巻くとその形を変え、やがて人型へとその形を変えていく。
実体へと姿を変えた血はミュカレのサーヴァント。ジェダであった。
顔色の悪い肌、学ランを彷彿とさせる服装、そして肩部から滴り出ている赤い血のような液体。
その姿はまさに魔の者であると否が応でも認識させられる。

「違いない。我ら完全者にとって肉体は仮初めの容れ物。魂をつなぎ留める牢獄に過ぎない」

ミュカレは眉ひとつ動かさずに答えた。

「人類は肉体から解放され、この不完全な世界から完全なる世界――天へと至らねばならんのだ」

それを聞いたジェダは「なるほど」と呟いた。

「確かに…このゴッサムシティのように同じ種が血で血を洗う低俗で醜き争いを繰り返していては彼らは自滅の道を歩むだけだ。
君はそんな人類に手を差し伸べ、君達が望む『理想郷』へ向かわせようということか。
……私もそれに異論はない。ならば『救世主』のサーヴァントとして現界した以上――君に手を貸さないわけにはいかないね」

ジェダはゆったりとした口調で、ミュカレに手を差し伸べた。顔には微笑みを浮かべているが、どこか不気味だ。
ミュカレはその手を取らず、半ば睨みに近い形でジェダを見つめる。
このジェダというサーヴァントは同じ『魂の救済』を目的としているが、何かを企んでいる気がしてならないのだ。

(セイヴァーの持つ理想と我が悲願…それは似ているようで全くの別物かもしれぬな)

これは万が一のために策を講じておく必要がある。そう思いながらミュカレはジェダの手に静かに触れた。


◇ ◇ ◇


――理想郷とは、私と一つになった先にあるのだよ。

果たして、ミュカレの予感は当たっていた。
ジェダの理想とは、魂と同化する能力を用いて、全世界、全ての魂と融合すること。
すべての魂を等しく救済するには、それらと完全同一化すればよい。
たったひとつの魂ならば、どんな争いも起こりえないからだ。

ミュカレの悲願は魂を完全なる世界――天へ至らせること。
ジェダの理想は魂と同化して唯一の存在になること。
皆殺しにする点は変わらないが、肉体から解放された魂の行方という点で両者は大きく異なっていた。

無論、ジェダの救済の対象にはミュカレ自身も入っているのは言うまでもなかった。


654 : ミュカレ&セイヴァー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/19(火) 23:34:48 FS9CBoqg0
【クラス】
セイヴァー

【真名】
ジェダ・ドーマ@ヴァンパイア セイヴァー

【パラメーター】
筋力C 耐久A+ 敏捷D 魔力A 幸運B 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
対英雄:C-
英雄を相手にした際、そのパラメーターをダウンさせる。
Cランクならば、相手のパラメーターをすべて1ランク下のものに変換する。
しかしダークストーカーもとい悪の属性を持つ英霊に対してはまったく効果を発揮しない。

【保有スキル】
液体:A
質量・密度を自由に変えられる液状の身体。
セイヴァーの身体は本来心臓や脳がある部位も含め、全て血液のような可変液体で構成されている。
一般的にサーヴァントの弱点と言われている心臓の破壊や首の切断を受けてもセイヴァーは消滅しない他、
魔力を消費することで液体を再構成し、肉体の損傷を短時間で修復できる。
液状の体を生かして身体の形状を変化させて攻撃することもできる。
ただし、大量の液体を展開すると魔力消費が激しくなる。

魂同化:A+
サーヴァント共通の能力である魂喰いが固有スキルに昇華されるまでに至った上位スキル。
セイヴァーは生前から魂と己が身を同化する能力を持ち、魔力を得ることができた。
通常の魂喰いよりも多くの魔力を回復できる。
A+ランクならば事実上の単独行動も可能となる。

飛行:B
翼を利用して空を飛ぶことができる。
空中において、敏捷のランクはこのスキルのランクが適用される。


655 : ミュカレ&セイヴァー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/19(火) 23:35:17 FS9CBoqg0
【宝具】
『魂へ課す下僕の証(プロヴァ=ディ=セルヴォ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
セイヴァーの背丈を超える巨大な契約書。契約書は何枚でも作成することが可能。
これに敵を巨大な赤い液体で構成した手で掴むなどして叩きつけることで敵との『契約』が成立し、魔力の大部分を奪うことができる。
本来は魂をそのまま抜き取ることも可能だが、セイヴァー自身が不完全な状態であるために魂の中の魔力回路から魔力を奪うにとどまっている。
『契約』が成立した場合、契約書には敵の姿が魚拓のように浮き出る。

『終焉の紅に沈め(フィナーレ=ロッソ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:4
地面から赤い液体の手を伸ばし、敵を捕獲するとセイヴァーの赤い液体で満たされた空間に引きずり込む。
その中では一切の抵抗が許されず、セイヴァーは一方的に攻撃を加えることができる。
だが、相手を大量の液体で飲み込むという都合上、魔力消費は『魂へ課す下僕の証』に比べて多い。

『神体(フィータス・オブ・ゴッド)』
ランク:- 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
セイヴァーが生前作り上げようとした膨大な数の魂を収めきる堅牢な器。
外見は頭が肥大化した巨大な胎児の姿をしている。
セイヴァーと融合することで全世界の魂と瞬時に同化し、その世界において唯一の完全体となる。
この宝具はセイヴァーが生存していた時点でまだ未完成で、
全世界の全ての魂を収めるにはセイヴァーが「価値ある魂」を集めなければならなかった。
よってこの宝具はセイヴァーの手に余るものであったため、失われている。

【weapon】
・身体を構成する液体。
赤い液体あらゆる形状に変化させる。
翼をもぎ取って鎌に変えることができ、
自分の首を切って飛び出た血飛沫を浴びせるという芸当も可能。

【サーヴァントとしての願い】
全ての魂の『救済』。同化。

【人物背景】
魔界三大貴族の一つ、ドーマ家当主。
「冥王」と呼ばれるS級魔族。年齢は6千歳を超えるが、三大貴族の中では最も若い。
ヴォシュタル家の当主ガルナン=ヴォシュタルの死去を機に、魔界の覇権を求めてベリオール・アーンスランドに戦いを挑もうと画策する。
その折りに当時は部下だったオゾムに騙されて、魔界と人間界を結ぶ扉から膨大な魔力を得ようとするが、
その際に自身の限界を超える魔力の量に呑まれて消滅する。

その100余年後、ベリオールの没後に復活を遂げると、争いが渦巻き、滅亡に瀕する魔界の惨状を憂い、
他者の魂を自分と同化する能力を用いて魔界全ての魂を融合させて唯一完全肉体を手に入れようと企む。
ジェダ自身はこれを「魂の救済」と称している。
ヴァンパイアセイヴァーのストーリーでは「価値ある魂」の持ち主を集め、我が身と同化して最終的な容れものとなる「神体」を完全なものにするために、
「魔次元」という特殊空間を作り出して他のダークストーカーを呼び込んでいる。

此度の聖杯戦争ではセイヴァーとして召喚されたが、その姿は復活したばかりの不完全な状態で現界している。
これは「魂の救済」のために動き出した時期が復活以降であり、復活前の全盛期の状態ではセイヴァーのクラスに当てはまらなかったことが原因。

性格は常に沈着冷静、紳士的且つ慇懃で理知的な話し方をするが、端々に相手を見下す態度が見られる。
勝利時に奇声のような高笑いを発するなど、狂気に満ちた行動も特徴的。非常な自信家であり自己陶酔者でもある。


656 : ミュカレ&セイヴァー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/19(火) 23:36:08 FS9CBoqg0
【マスター】
ミュカレ@アカツキ電光戦記

【マスターとしての願い】
教団の悲願成就。
全人類の『救済』。肉体を排する霊的救済。

【weapon】
・元帥杖
第三帝国の元帥杖。鈍器として使えなくもない。

【能力・技能】
・魔術
魔女として、魔術を高水準で習得している。
主にあらゆる武器、獣の召喚術を得意とする。
また、魔力も魔女であるからか多い。

・転生の法
真理を知る者「完全者」が会得できるといわれる秘蹟。
擬似的な不老不死で、転生して完全者は現代へ生き永らえた。
たとえ肉体が消滅しても別の肉体が存在する限り、
他人の身体に魂を移し変え、精神を乗っ取って復活することができる。
聖杯からの制限により、サーヴァントと『契約しているマスター』を乗っ取ることはできない。
令呪・魔力供給パスも同時に受け継がれる。

【人物背景】
異端「ペルフェクティ教団」の教祖にして、秘密結社ゲゼルシャフトの元帥。

「完全者」とは先の教団において、その尋常ならざる教義を会得し真理に到達した者を意味する。
「完全者」は真理を得た事で死を超越し、肉体が消滅しても別人の体を乗っ取り転生する事が出来るとされた。
そして彼女もまた、中世に異端者として火刑に処せられた、農夫の娘・ミュカレが「完全者」として蘇った存在であり、
その後現代に至るまで数百年の月日を転生を繰り返し人々から「魔女」と恐れられながらも、
教団の悲願成就の為歴史の節目で暗躍していく事となる。

現在はムラクモらによって前の肉体を殺されたため、上海の貿易公司に勤めるドイツ人夫妻の娘・ミュカレに転生している。

【方針】
聖杯狙い


657 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/05/19(火) 23:36:26 FS9CBoqg0
以上で投下を終了します


658 : ◆PK7lTOXAa2 :2015/05/19(火) 23:45:33 R/bu14Mw0
投下お疲れ様です
私も投下させていただきます


659 : TEST YOUR IMAGINATION(エクストラクラス・ミーム) ◆PK7lTOXAa2 :2015/05/19(火) 23:46:40 R/bu14Mw0






 存在はないが たしかにそれは存在している
 あなたが見ていなくとも あなたは見られている
 恐れてはいけない
 "ミーム"はすべてを知っている

 決して触れてはいけない
 しかし触れなくてはならない
 我々は"ミーム"に常に見られている

 真実の一片に繋がる存在を
 スコット・ノーマンが解き放った
 ロジャー・バトキンソンには解けなかった

 どこにいるか
 みんな知ってる
 どこにいるかは誰も知らない

 "ミーム"は
 動きつづける
 近くて遠い





.


660 : TEST YOUR IMAGINATION(エクストラクラス・ミーム) ◆PK7lTOXAa2 :2015/05/19(火) 23:47:10 R/bu14Mw0










              虚構の中に真実がある
              聖杯と言う名の虚構の中に


                     t
              n             a
                 ________
                   ______/  /
            n   \  \ ○ /  /   n
                     \  \/  /
                       \  \/
              i       \      a
                     s



           Don't think, Feel and you'll be tanasinn.








.


661 : TEST YOUR IMAGINATION(エクストラクラス・ミーム) ◆PK7lTOXAa2 :2015/05/19(火) 23:47:40 R/bu14Mw0
【クラス】

 ミーム

【真名】

 "tanasinn"@2ちゃんねる

【性別】

 なし

【属性】

 分類不能

【パラメーター】
筋力E- 耐久EX 敏捷E- 魔力E- 幸運E- 宝具A+
※スキル"拡散"の効果で変動する可能性あり

【クラススキル】

 拡散:A
 自身の存在を知られれば知られる程、自身の能力やパラメーターが変化していく。
 しかし、どんな変化が起こるのかはわからない。

【保有スキル】

 浸食:A
 自身に"触れた"存在に、自身の一部を"移す"ことができるが、操ることはできない。
 移された存在は、重大な精神汚染に見舞われることになる。

 退廃:EX
 姿を見たもの、存在を感じたもの全てに底知れぬ恐怖感・不安感を与える。ただし永続的なものではない。

 吸収:A
 自身が"触れた"存在を飲み込み、一体化させる。


【宝具】
『意識の虚無』
ランク:A+ 種別:∵∴ レ∵∴:- 最∵∴捉:-
この宝具が、tanasinnによい影響を与えることはない。
これは∵∴∵∴の持つ∵∴∵∴∵力を抑え∴∵∴∵∴ための∴∵∴∵である∴
∵∴それ∵∴∵∴同時に∵∴∵∴∵tanasinn自体∴∵∴∵∴∵存在の維持∴∵
∵∴∵∴これを∵∴∵壊∴∵すれば∴∵tanasinnは∵∴∵∴∵消∴∵∴∵∴∵
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
∵∴∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴真実∴∵∴∵∴


662 : TEST YOUR IMAGINATION(エクストラクラス・ミーム) ◆PK7lTOXAa2 :2015/05/19(火) 23:47:57 R/bu14Mw0
【weapon】

   |∵∴(・)∴∴.(・)∴|
   |∵∵∵/ ○\∵|
   |∵∵ /三 | 三| |  ブシャァァァァアァ
   |∵∵ | __|__ | |
   |∵∵ |  === .| |
   |∵∵ |___/ |   ∵∵
   |∵∵∵∴∵∴∵ \    ∵∵∵∵    /  ̄   ̄ \
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵\∵∵∵      /、          ヽ
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵∵∴∵∴∵∴∵∴          |
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵    |
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵    |
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵    /
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵ == |
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵/ ∵∵ ∵∵   /          |
   |∵∵∵∴∵∴∵∴/    ∵∵     /    /      |
   |∵∵∵∴∵∴∵/ ∵∵

【人物背景】

 2chに存在する、超精神的・退廃的世界観を表すAA群やその他諸々の総称。
 AAで表現される際には、↑の様にドラえもんがモデルとなっているようだが、理由はわからない。

【サーヴァントとしての願い】

      m n _∩      /∵∴∵∴\      ∩_ n m
   ⊂二⌒___)     /∵∴∵∴∵∴\    (___⌒二⊃
      \∵∴\   /∵:(・)∴∴.(・)∵ |   /∴∵/
        \∵∴\  |∵∴/ ○\∵∴|  /∴∵/
         \∵∴\|∵ /三 | 三ヽ∵|/∴∵/
           \∵∴|∵.| __|__  |∵|∴∵/
            \∵\ |  ===   |/∵/
              \∵ \___/∵/

【基本戦術、方針、運用法】

 存在するだけで周囲に影響を及ぼすので、何もせずともよい。そこにいるだけでいい。
 ただ、宝具への∵∴∵∴∵危∴∵tanasinnの∵∴∵∴∵本∴∵∴∵∴

 マスターはtanasinnを召喚した瞬間にtanasinnに呑まれて一体化した模様。
 なので、tanasinn自身がマスターも兼ねている状態。


663 : ◆PK7lTOXAa2 :2015/05/19(火) 23:48:10 R/bu14Mw0
投下を終了いたします


664 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/20(水) 00:10:50 W4LKX4/20
皆様投下深く感謝です。
これにて登場話の募集を締め切らせてもらいます。

名簿は一週間以内には発表する予定です。
正式な日時が決まりましたら、改めて連絡させてもらいます。


665 : 名無しさん :2015/05/20(水) 01:51:09 4XHs27nw0
これまでに出たマスターとサーヴァントをまとめてみました。

セイバー 7組
村上巴@アイドルマスターシンデレラガールズ&ハクメン@BLAZBLUE
なし(敢えていうなら奴隷王)@デモンズソウル実況プレイ動画&伊藤開司@カイジシリーズ
アイリスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/zero&ダイ@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
魏@アカツキ電光戦記&ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険
オズワルド・コブルポット@バットマン・リターンズ&後藤@寄生獣
シャンテ・ドゥ・ウ・オム@アークザラッドⅡ&テリー@ドラゴンクエストⅥ
リュウ@ストリートファイターシリーズ&島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ&グランブルーファンタジー

アーチャー 9組
前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ(TVアニメ版)&ジャスティス@GUILTY GEAR
広川剛志@寄生獣&エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
ジェームズ・ゴードン@ダークナイト ライジング&ディテクティヴ@ニンジャスレイヤー
呉島光実@仮面ライダー鎧武&暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
スケアクロウ(ジョナサン・クレイン)@バットマン ビギンズ&ジェイク・マルチネス@TIGER & BUNNY
暁@艦隊これくしょん(アニメ)&アカツキ@アカツキ電光戦記
スカラムーシュ(カイダ)@ニンジャスレイヤー&サンレッド@天体戦士サンレッド
ミュウツー@劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲&コピーロックマン@ロックマン メガミックス
ディック・グレイソン@バットマン&ジョン・『プルートー』・スミス@カンピオーネ!

ランサー 6組
駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武&クー・フーリン@Fate/stay night
御剣怜侍@逆転裁判シリーズ&ジェイド・カーティス@テイルズオブジアビス
シェリル・ノーム@劇場版マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜&ウルキオラ・シファー@BLEACH
志々雄真実@るろうに剣心&エスデス@アカメが斬る!
ラグナロク0109(エアスト・ノイン)@ラグナロク&ディルムッド・オディナ@Fate/zero
ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー&乃木園子@鷲尾須美は勇者である

ライダー 8組
ミハイル・ロア・バルダムヨォン@真月譚月姫(漫画)&シレーヌ@デビルマン
レパード@夜ノヤッターマン&太公望@封神演義
トロン・ボーン@トロンにコブン&ベック・ゴールド@THE・ビッグオー(漫画版)
ドクター・オクトパス(オットー・オクタビアス)@スパイダーマン2(実写版)&伊達 明@仮面ライダーオーズ
コレット・ブルーネル@テイルズオブシンフォニア&門矢士@仮面ライダーディケイド
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night Unlimited Blade Works&アキレウス@Fate/Apocrypha
シャルロット・デュノア@インフィニット・ストラトス&ハカイダー@人造人間ハカイダー
ブラック☆スター@ソウルイーター@イスカンダル@Fate/Zero


666 : 名無しさん :2015/05/20(水) 01:52:23 4XHs27nw0
キャスター 14組
ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ(アニメ版)&デスドレイン(ゴトー・ボリス)@ニンジャスレイヤー
フラダリ@ポケットモンスターXY&ムラクモ@アカツキ電光戦記
範馬勇次郎@バキシリーズ&レザード・ヴァレス@ヴァルキリープロファイル
呉島貴虎@仮面ライダー鎧武&メディア@Fate/stay night
ラオモト・カンニンジャスレイヤー&霍 青娥(かく せいが)@東方project
リドラー@バットマン&シュバルツ・バルト@THE・ビッグオー(漫画版)
キカ・ヤナエ@ニンジャスレイヤー&ハンス・クリスチャン・アンデルセン@Fate/EXTRA CCC
平坂黄泉@未来日記&アナカリス@ヴァンパイアシリーズ
紫@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明- &パラドクス@聖闘士星矢Ω
木原数多@とある魔術の禁書目録&涅マユリ@BLEACH
間桐桜@Fate/stay night&黄川人@俺の屍を越えてゆけ
カーズ@JORGE JOESTAR -ジョージ・ジョースター-&バビル2世@バビル2世 ザ・リターナー
犬養舜二@魔王 JUVENILE REMIX &戦極凌馬@仮面ライダー鎧武
初瀬亮二@仮面ライダー鎧武&一般男性@第14回MMD杯

バーサーカー 7組
少佐@HELLSING&ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ
田中ぷにえ@大魔法峠&上条当麻@とある魔術の禁書目録
アッシュ@テイルズオブジアビス@ヒート@DIGITAL DEVIL SAGA アバタールチューナー2
コメディアン(エドワード・モーガン・ブレイク)@ウォッチメン&ジャンヌ・ダルク@ドリフターズ
北方棲姫@艦隊コレクション&ランペイジ@ニンジャスレイヤー
伽部凜(ゲラグ)@仮面ライダークウガ(小説)&サンタナ@ジョジョの奇妙な冒険
エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険&セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!

アサシン 7組
ジョンガリ・A@ジョジョの奇妙な冒険&カール・ルプレクト・クロエネン@ヘルボーイ(映画版)
ノーマン・スタンスフィールド@レオン&鯨@魔王 JUVENILE REMIX
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険&夜神月@DEATH NOTE
宮田司郎@SIREN&城石一@殺し屋イチ
レッドフード@バットマン&チップ=ザナフ@GUILTY GEARシリーズ
ミケランジェロ@ミュータントタートルズ(ニコロデオン版)&フォレスト・サワタリ@ニンジャスレイヤー
赤城みりあ@アイドルマスターシンデレラガールズ(TVアニメ版)&犬吠埼樹@結城友奈は勇者である

エクストラクラス 16組
勝鬨勇雄@遊戯王ARC-V&ウィッカーマン(ゴグウ・ニンジャ)@ニンジャスレイヤー【ネクロマンサー】
久宇舞弥@Fate/Zero&加藤鳴海@からくりサーカス【デストロイヤー】
一条薫@仮面ライダークウガ&門矢士@仮面ライダーディケイド【デストロイヤー】
神楽麗@アイドルマスターSideM&豪@真夏の夜の淫夢シリーズ【デミウルゴス】
多田李衣菜@アイドルマスター シンデレラガールズ(アニメ版)&ノノ@トップをねらえ2!【バスター】
シアン(聖川 詩杏)@SHOW BY ROCK!!(アニメ版)&ザベル・ザロック@ヴァンパイア【ダークストーカー】
夜神総一郎@DEATH NOTE(漫画)&レオーネ・アバッキオ@ジョジョの奇妙な冒険【シーカー】
葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武&ヤムチャ@ドラゴンボールZ【ファイター】
プロデューサー@アイドルマスターシンデレラガールズ(TVアニメ版)&アテナ@聖闘士星矢【シールダー】
鬼人正邪@東方輝針城&駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武【アヴェンジャー】
トワイス・H・ピースマン@Fate/EXTRA&マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ@レイセン【ガンナー】
泉新一@寄生獣&葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武【セイヴァー】
ハッサム@ポケットモンスター&孫悟空@DRAGON BALL【セイヴァー】
ミュカレ@アカツキ電光戦記&ジェダ・ドーマ@ヴァンパイア セイヴァー【セイヴァー】
リヴァイ@進撃の巨人&神薙ユウ@GOD EATER BURST【イーター】
"tanasinn"@2ちゃんねる【ミーム】

ウォッチャー 1名
ヘルヘイムの森@仮面ライダー鎧武


667 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/25(月) 23:49:42 2/XQPSPc0
OPの完成の目処が立ったので連絡を。
27日(水)の午前0時にOPの投下を開始する予定です。


668 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:04:58 DcosJacQ0
投下予定時刻ですが、もう少々お待ち下さい……。


669 : ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:16:01 DcosJacQ0
長らくお待たせしました。OPを投下します。


670 : Lights,Camera.Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:16:45 DcosJacQ0
□ ■ □






 Life's but a walking shadow, a poor player.
(人間の一生は彷徨い歩く影法師、哀れな役者に過ぎぬ。)



 That struts and frets his hour upon the stage.
(己の出番の時は、舞台の上でふんぞり返って喚くだけ。)







□ ■ □


671 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:18:58 DcosJacQ0

『“There must be some way out of here,” said the joker to the thief』


 驚くべき事ではあるが、衆愚の街ゴッサムシティの犯罪は減少傾向にある。
 聞く所によると、正体不明の何者かがマフィアを潰して回っているらしい。
 正義を誇りとする者には、さぞや快く受け入れられるニュースであろう。
 しかし、【ノーマン・スタンスフィールド】には、その事実は不快なものとしか映らなかった。

 スタンは麻薬捜査官、つまり正義の側に立つべき存在だ。
 そんな彼が顔を顰めるのは、彼自身が正義とは真逆の立ち位置にいるからに他ならない。
 正義の面を被った悪党が、悪が滅ぼされるニュースに良い顔をする筈も無い。

 更に言えば、潰されたマフィアがスタンと"お友達"だったのも痛い。
 彼等が自分の情報を吐けば最後、今度はこちらが狩られる側に立つ羽目となる。
 悪を追う麻薬捜査官が悪に追われるなど、全く笑えない冗談だ。

 お陰様で、最近は神経を尖らせる機会が多くなった。
 スタンの願望は生還であり、こんな偽物の街で死ぬつもりなど毛頭ない。
 僅かな綻びから破綻した自分の人生を、今一度再起動させねばならないのだ。

 そういえば最近、正義ゴッコをしてる連中が目立ってしょうがない。
 どうも、制服を着てヒーローを気取った奴等が自警活動をしているらしい。
 馬鹿馬鹿しい、としか言いようが無かった。
 こんなドブ底の様な街で、よくも正義の味方を気取れるものだ。

 しかし、彼等の台頭によって、スタンの様な悪党の居心地が悪くなったのも事実。
 もしかしたら、彼等のせいで街の悪が一斉検挙なんて珍事さえ起こるかもしれない。
 あの"黒飛蝗"の餓鬼共め、と苛立ちを零さずにはいられなかった。


672 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:21:57 DcosJacQ0
『There’s too much confusion, I can’t get no relief』


 名前を見れば分かる通り、黒飛蝗(グラスホッパー)を率いる【犬養舜二】は日本人だ。
 生まれも育ちも日本であり、このゴッサムに来たのもほんの少し前である。
 にも関わらず、彼が立ち上げたグラスホッパーは一大組織になるまで成長した。 
 これも、ひとえに犬養が持つ絶対的なカリスマのお陰であろう。

 テレビに流れるニュースには、今日もグラスホッパーの姿がある。
 映し出されるのは、やはりと言うべきか犬養の姿であった。
 外見こそまだ若い青年だが、その振る舞いは組織の王に相応しい。
 なるほど、ゴッサムの民衆が惹かれていくのも理解できる。

 街を見張る昆虫の群れは、更にその数を増そうとしている。
 住処を広げる飛蝗に、【広川剛志】が抱くのは不信感であった。

 たしかに、グラスホッパーは大した自警団だろう。
 この犯罪に汚染された街で正義の味方を続けるなど、並大抵の度胸では務まらない。
 だがその一方で、彼等の周りにきな臭い噂が広まっているのも事実だ。

 勢力を拡大していくグラスホッパーと、次々と"不幸な事件"に巻き込まれる権力者。
 そして、犯罪率低下の代償なのか、以前の二倍以上に増えた死亡者数。
 まず間違いなく、これらの間には何らかの因果関係がある。

 広川に与えられた役割は、この衆愚の街を動かす権力者の一人である。
 つまりは、"不幸な事件"の犠牲者になる可能性もゼロではないという事だ。
 人類の数が減るのはいいとして、標的の中に自分が含まれているのはいただけない。
 仮に襲撃者が現れてもサーヴァントがいればどうにかなるが、やはり面倒事は避けておきたかった。

 同じ日本人として、仲良くやっていくべきなのだろう。
 少なくとも今は、下手にグラスホッパーを刺激するべきではない。

 犬養を取り上げたニュースが終わり、話題は芸能方面に切り替わる。
 ゴッサムシティで今も活動する、著名な"歌手"の新曲の話題であった。


673 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:25:13 DcosJacQ0
『Businessmen, they drink my wine, plowmen dig my earth』


 歌が聴こえてくる。
 透き通る様な歌声が、ドブ底の街に響き渡る。
 まるで、ゴミ捨て場の中に一輪の花が咲いていた様な感覚。
 気付けば、【レッドフード】は歌声の主の所にまで歩み寄っていた。

 物好きな歌い手は、路上で横たわる瀕死の男に唄っていた。
 死する者に捧げる鎮魂歌のつもりなのだろうか。
 おまけに、歌っているのはまだ若い少女ときている。
 夜のゴッサムを独りで歩くなど、度し難い愚行としか思えない。

 だが、それでも。掛け値なしに美しい歌声だったのは確かだ。
 出来るのであれば、もう少し長くこの歌を聴きていたいと思わせる程度には。
 そんな感想をレッドフードに持たせた程、【シェリル・ノーム】の歌声は魅力的だった。

「慈善事業なら止めた方が身の為だぞ、歌姫様よ」

 レッドフードの皮肉気な声に、シェリルは顔を上げた。
 容姿端麗な彼女のコバルトブルーの瞳を、テレビで見ない日は無い。
 社会の枠組みから外れた彼でさえ、彼女の顔は見知っていた。

「好きでやってるからいいのよ、放っておいて頂戴」

 そう言い残して、シェリルは踵を返して去っていく。
 遺体に少し名残惜しい視線を向けたのは、倒れた者への憐憫からか。
 彼女の歌を聴いていた男は、既に事切れていた。

 見た限りだと、死んだ男は一般人ではあるまい。
 恐らくは、何かしらの犯罪に手を染めたマフィアであろう。
 つまりは、レッドフードが始末すべき悪という事である。

 だからこそ分からない。
 犯罪者への手向けとして、歌を捧げるこの女の心情が。
 どんな形であろうと、罪人に慈悲を与える彼女が理解できない。

 歌の中で死んだ男は、どこか満たされた様な表情をしている。
 だが一方で、全身に張り付いた"火傷"が、ひどく痛々しかった。


674 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:30:47 DcosJacQ0
『None of them along the line know what any of it is worth』


 裏社会で急速に規模を拡大している組織は、あまりに暴力的だった。
 武力を以て相手を蹂躙するという、まるで戦国時代の様なやり方を実践しているのだ。
 それこそ弱肉強食を絵に描いた様な、暴力の権化の様な組織。
 その頭領こそが、【志々雄真実】であった。

 西洋の街に似合わない煙管(キセル)の煙を吐きだし、ニタリと笑う。
 肉食動物を思わせるその笑みは、一人の男に向けられたものだった。

 肥え太った身体に軍服を着た、眼鏡面の男。
 ゴッサムで息を潜めるテロリスト"最後の大隊"の頭領。
 ネオナチの過激派を纏め上げる彼は、自らを【少佐】と名乗った。

 二人がそれぞれ従える組織は、現在協力関係にある。
 片や更なる勢力拡大の為に、片や来たるべき日の準備の為に。
 いずれ訪れる闘争に向けて、彼等は動いていたのであった。

「しかし物好きな野郎がいたもんだ、この街で戦争起こそうだなんてよ」
「だが君もそれを望んでいる、だから私も"ここ"にいる」

 違いねえと、志々雄はまた頬を釣り上げた。
 強い者が弱い者を蹂躙する世界、それが戦場というものだ。
 言い換えるなら、それが志々雄が求める理想郷であった。

 第二次世界大戦を乗り越えた今、闘争は戦争からテロリズムへ姿を変えた。
 口では戦争放棄を謳っても、人類は未だ武器を捨てれないでいる。
 その一点に、人間という存在の本質が如実に示されているのだ。

 弱肉強食をモットーとする闘争こそが、人間の根底にあるもの。
 志々雄と少佐も、その根底で渦巻くものを欲している。

「そういえば、最近妙な輩が出しゃばってると聞くじゃねえか」
「ああ、赤い覆面に黒飛蝗の事か?奴等も大した度胸じゃないか」
「そいつらもそうだが、俺の言いたいのはもっと別の奴だ」

 そう言って、志々雄が一枚の写真を取り出した。
 最近になって裏社会を賑わせる、一人の正義の戦士を収めたものだ。
 叩きのめされたマフィア曰く、その戦士は"果実を纏う"のだという。


675 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:34:13 DcosJacQ0
『“No reason to get excited,” the thief, he kindly spoke』


 ユグドラシル・コーポレーションは、ウェイン産業に勝るとも劣らぬ大企業だ。
 当然ながら、そこに務める者はある程度の地位を約束される。
 【呉島貴虎】もその一人で、街の一角に豪邸を建てる程度には恵まれた生活を送っていた。

 しかし、豪邸で暮らしているのは、貴虎と彼の弟だけである。
 そのせいか、家はどこか空虚な印象さえ感じられてしまう。

 夕食の時もそうだ。食事は手伝いの者が作ってくれるが、食卓を囲むのは二人だけ。
 貴虎と【呉島光実】の二人だけで、静かに食事を取るのが普通だった。

「……光実、学校の方はどうだ」
「順調だよ、日本人も意外といるしね」

 光実のその言葉で、ゴッサムと沢芽が姉妹都市提携を結んでいた事を思い出す。
 こんな治安の悪い街と手を結ぼうとするとは、中々に勇気のある決断をしたものだ。
 だが、お陰でこの街には日本人をよく見かけるようになった。
 グラスホッパーの会長である犬養など、その代表格だ。

 会話が途切れ、静寂が室内に充満する。
 兄弟の仲が悪いという訳ではないが、貴虎がどう接するべきか分かりかねているのだ。
 例え偽りの関係であったとしても、兄らしくありたいという感情が彼にはあった。

 だが、貴虎は知る由も無いだろう。
 その弟の方は、兄に情など欠片も抱いていないという事に。

 呉島光実という少年は、貴虎が思っているより遥かに冷酷だ。
 自分のコミュニティを護る為なら、どんな犠牲でも払おうとするのだから。
 そしてその性格は、きっと此度の聖杯戦争でも表面化するだろう。

 呉島兄弟は、共に聖杯戦争の参加者だ。
 兄が理想を叶えるには弟を斬らなければならず、逆もまた然りである。
 貴虎に弟を殺せる非情さはないが、光実は別だ。

 光実はきっと、自分の兄はおろか、"友人"でさえ殺せるだろう。
 何故ならば、彼には呉島という残忍な血を色濃く受け継いでいるのだから。


676 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:39:05 DcosJacQ0
『There are many here among us who feel that life is but a joke』


 白昼堂々、数台のパトカーが路地裏を封鎖していた。
 犯罪などこの街では珍しくないが、やはり目の前にあると好奇心が沸いてしまうものだ。
 【多田李衣菜】も、そういった感情に釣られてしまう者の一人だった。

 バリケードテープの向こうにある景色を覗けないか、立ち止まって目を凝らす。
 少し悪いかもしれないが、テープを潜ってみるべきだろうか。
 規律を破る行為も、それはそれでロックな行為なのかもしれない。

「李衣菜ちゃん、何やってんの」

 反射的に振り返ってみれば、【前川みく】がこちらを見つめていた。
 彼女とは同じ学校に通う友人で、通学路も途中まで同じだったりする。

「い、いやぁ……こういうのもロックっぽいかなって……」
「そんなの全然ロックじゃないし!馬鹿な事言わないでほしいにゃ!」

 呆れ気味の説教を受け、李衣菜が苦笑いを浮かべる。
 そんな彼女を尻目に、みくは通学路に向けて歩き出す。
 李衣菜もそれに釣られる様に、みくの元へと足を進め始めた。

 呆れる程平和そうな、ゴッサムに似つかわしくない平和な風景。
 そんな二人の姿など眼中に収めずに、現場の調査に専念する男がいる。

 【ディック・グレイソン】は、昼間は警察官として働いている。
 日が出ている内は一般人として、一方で夜はヒーローとして街を護っているのだ。

 警察さえ汚職に手を染めるゴッサムでは、ディック程正義に厚い男は珍しい。
 本来はディックの様な警察が一般的なのだが、この街ではそんな常識は通用しない。
 今となっては、己の正義を実行し続ける彼の方が異端となる有様だ。

 傍から見れば、ディックの行いは賞賛に値すべきだろう。
 だが当の本人は、この現状に疑問を抱いていた。
 果たして、この偽りのゴッサムでいつも通り生きるべきなのか、と。

 現在のディックは、聖杯戦争のプレイヤーの一人だ。
 万物の願望器を景品とした、サーヴァントと共に他の主従を狩る殺し合い。
 この戦いに、召喚されたサーヴァントに、自分はどう向き合うべきなのか。

 唐突に与えられた願望器へのチケットに、一人悩みを募らせる。
 そのせいか、彼は本来なら気付ける筈の異物に気付けなかった。

 視界の隅、死体が横たわっていた場所のすぐ近くで。
 コールタールの様な"黒いヘドロ"が蠢いている事に。


677 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:42:07 DcosJacQ0
『But you and I, we’ve been through that, and this is not our fate』


 ゴッサムに突如現れた連続殺人犯は、手口さえ常軌を逸していた。
 マスコミが言うには、"内部"から何かを破裂させて殺害したというのだ。
 普通、殺人というものは"外部"からの攻撃により成り立つものである。
 内部から生じた物体による殺戮など、それこそ魔術でも使わなければ成り立たない。
 凶器の正体さえ謎に包まれた殺人事件は、一向に進展を見せてはいなかった。

 しかし、この謎を知っている者が一人だけいる。
 【ハナ・N・フォンテーンスタンド】は、全てを知っている。
 なにせ、彼女がその殺人鬼を呼んだ張本人なのだから。

 自身が召喚したサーヴァントが、凶行を繰り返しているという事実。
 本来であれば、そんな愚行は令呪を使ってでも止めるべきである。
 しかし、非力な少女でしかないハナは、その決断を未だ下せずにいる。

 もし彼の勘に障れば、何をされるか分かったものではない。
 それに、もしも令呪で自身のサーヴァントを縛ってしまえば。
 万物の願望器たる聖杯に、永遠に手が届かなくなってしまうのではないか。
 そう考えてしまうと、二の足を踏んでしまう自分がいる。

 帰路に着く最中、ハナはずっと聖杯戦争の事を考えていた。
 そんな彼女は、果たして自身を見つめる影に気付けたのだろうか。
 恨みの籠った二つの視線が、彼女の身を射抜いていた事に。

 【オルワルド・コブルポット】の眼は、幸福への憎悪で汚れている。
 忌み嫌われた自分と違う、幸福に生まれ、幸福に育つ子供が憎くて堪らない。
 日の光を浴び続けたというただその一点でも、憎悪するに値するのだ。

 しかし、まだ我慢を続けるべきだろう。
 このゴッサムに鮮血をぶちまけるまで、この怒りは抑えるべきだ。
 お楽しみは取っておくべきだ。キリストの血を注いだ聖杯を手に入れる、その瞬間まで。

 ふと壁に視線を向けると、ゴロツキが書いたのであろう落書きが目に入る。
 そこに書かれていた逆さの"十字架"を見て、オズワルドはニンマリと笑った。


678 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:44:59 DcosJacQ0
『So let us not talk falsely now, the hour is getting late』


 共同墓地には、無数の墓標が並べられている。
 地の下で死者が眠るこの場で、親友は今も眠りに就いている。
 ディオ・ブランドーの名が刻まれた墓標は、変わらずそこにあった。

 【エンリコ・プッチ】は毎日の様に、ディオの墓を訪れている。
 そしてその度に、自分に"天国"を教えてくれた親友を思い出すのだ。
 彼と語らった懐かしき日々と、その中で自分が見つけ出した理想郷。

 そして今日もまた、ディオを墓に寄ろうとしていた。
 しかしながら、その日は意外な事に先客がいた。
 ディオの墓石で、まるで親の墓を前にした様な表情を見せる男。

 その男は、見知った顔であった。
 かつてディオに心酔し、しかしディオの死後も生き続けた男。
 宿敵への復讐を支えとした、盲目の狙撃手。

 ディオの墓石の前にあったのは、【ジョンガリ・A】の姿である。
 その事実を前に、プッチは思わず声を上げそうになった。

 彼が此処に来ているという事実は、偶然とは思えない。
 誰かが言っていた――スタンド使いは惹かれあうものだと。
 彼がNPCならまだいい、だが、もし聖杯戦争のプレイヤーなのだとしたら。

 いや、決めつけるのにはまだ早すぎる段階だ。
 今は見て見ぬ振りをして、此処から立ち去るのが得策だろう。

 そう考えたプッチは、可能な限り静かにその場から立ち去ろうとする。
 聴覚が極めて優れたジョンガリに気付かれないよう、細心の注意を払い、ゆっくりと。


679 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:48:38 DcosJacQ0
『All along the watchtower, princes kept the view』


 真冬のゴッサムでは、雪が降るのが普通らしい。
 それを聞いた時、【御剣怜侍】は意外そうな表情を浮かべた。
 なにせ、今のゴッサムは雪などほとんど降っていないのだ。
 もうすぐクリスマスが近いにも関わらず、降るのはせいぜい雨くらいのもの。
 そんな状況で雪がよく降ると言われても、冗談の様にしか聞こえなかった。

 しかし、季節を実感できないかと言われると、そういう訳では無い。
 事実、街頭ではクリスマス用の商品がいくつも並んでいるのだ。
 肌寒さも手伝って、やはり冬が来ているのだと嫌でも実感する。

 子供が路頭を走る様を見て、悪が蔓延るこの街にも家族の温もりがある事を実感する。
 そして、同時に実感するのだ――やはり、悪を野放しにしていい訳がないのだ、と。
 聖杯という蠱毒に人々を放り込む存在は、間違いなく悪の存在だ。
 例えどれだけ重い使命を担っていたとしても、多くの犠牲を払うこの儀式を認める訳にはいかない。

 そう決意する彼の横で、ショーケースを眺める女。
 【シャンテ・ドゥ・ウ・オム】は、正義だの悪だの考えてはいなかった。
 彼女の願いは一つだ。死んだ弟に謝りたいという、たったそれだけの願い。

 聖杯の入手するという事はつまり、多くの命を犠牲にするのと同義だ。
 だが、その犠牲に目を瞑ってでも、叶えたい願いが彼女にはある。

 そこにはヴィランの様な悪意も、ヒーローの様な善意も無い。
 一人の女の、純粋な願いがそこにあった。
 そして、たった一つの願いでも、"死"者すら"救"えるのが聖杯なのだ。


680 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:51:34 DcosJacQ0
『While all the women came and went, barefoot servants, too』


 死は救済である。醜き血肉に縛られた魂を解放する儀式だ。
 死は恩恵である。現世の絶望より魂を解き放つ唯一の法だ。
 死は希望である。旧き器からの脱却により、真に人類は救われる。


 ――魔女は嗤う。生にしがみ付く愚かな旧人を。


 旧人類よ、貴様も既に気付いている筈だ。
 この世界に留まる事自体が、最早耐え難き苦痛である事に。
 事実を見て見ぬ振りして苦痛に耐え忍ぶ姿の、なんと見るに堪えない事か。


 ――魔女は憐れむ。死を絶望と捉える無知な旧人を。


 新人類たるこの我らが、唯一の人類種たるこの私が。
 現世で嘆き苦しむ旧人類に、救いを齎してやろう。
 一切衆生の救済こそが、我らペルフェクティ教団の理想なのだ。


 ――魔女は讃える。これよる救われる栄誉ある旧人を。


 聖杯とはイエスの聖遺物、ならば救済に使われるのが道理だ。
 その力、魂の救済を吉とする我らにこそ相応しい。
 悦ぶがいい、そう遠くない未来、貴様らを魂の牢獄から解放してやろう。


 ――真理を知る者、その名は完全者。またの名を――【ミュカレ】。



.


681 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:55:58 DcosJacQ0
『Outside in the distance a wildcat did growl』


「また日記か」

 【ロールシャッハ】にそう言うのは、彼のサーヴァントだった。
 銀色のレインコートを纏った中年男性、そのクラスは暗殺者(アサシン)。

「煙草はあったのか」
「いや、売ってねえな」

 アサシンの願いは、絶版した煙草を吸う事らしい。
 聖杯が取れないのなら、せめて街中探す事くらいはさせてくれと。
 だから現在、アサシンは煙草屋を巡り歩いているのであった。

「……行くぞ」

 ロールシャッハは、これから"聞き込み"行くつもりだった。
 巷を賑わす数々の殺人事件、その調査を行うのである。
 彼としては、アサシンが煙草を買いに行く時間がもどかしくてしょうがなかった。

 アサシンは無駄口を叩かない、比較的ストレスの溜まらないサーヴァントだ。
 その方がロールシャッハも動きやすいし、聖杯も工面してくれたのだろう。
 だが、それと聖杯を見過ごせるかどうかは全く別の問題だ。

 聖杯は必ず"破壊"する。
 強いて言えば、それは聖杯戦争にかける願いだ。

 どんな願いが立ちはだかろうが、絶対に自分を曲げるつもりはない。
 犯罪を呼び出す聖杯は破壊するし、聖杯を求めて殺人を行う者も罰する。
 それがロールシャッハの信念であり、存在理由そのものだ。

 聖杯に己のルールを叩きつけるヒーロー。
 相棒となるのは、"少し明るい海"を探すニンジャ。
 【シルバーカラス】とロールシャッハの物語は、既に始まっている。


682 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 00:58:19 DcosJacQ0








『Two riders were approaching...』









『the wind began to howl........HA HA HA HA HA HA HA !!』







.


683 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 01:00:07 DcosJacQ0
「一つ、ジョークを聞いてくれよ」

 笑う、嗤う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う。
 闇の中で、道化師が嗤って笑って嗤い続ける。

「ある男が精神科医を訪ね、こう訴えた。
 "私の半生は悲惨の一言だ。もう人生に何の希望も持てないんだ。
  先の見えない社会を、たった一人で生き抜く辛さがわかりますか?"」

 真っ白な頬が吊り上がる。
 真っ赤な唇が三日月を作る。

「医者は答えた。
 "今夜、有名なピエロのパリアッチのショーに行ってみるといい。笑えば気分もよくなりますよ"」

 緑の髪をクシャクシャ撫でながら。
 紫の服でヨロヨロ歩きながら。

「突然、男は泣き崩れた。そして言った……。
 "でも先生……私がパリアッチなんです……"」

 泣き出しそうな声色でジョークを垂れ流し。
 しかし、その表情は今にも嗤い出しそうで。

「笑えねえジョークさ、答えなんて頭使わなくたって分かるってのによ」

 今度は、不愉快そうに顔を顰めてみせる。
 きっとそれも演技であり、心中では嗤いに満ちているのだろう。
 道化師は常に笑うものであり、彼もまた例外ではない。

「バァァァカになるのさ。イカれちまえば、世界がどれだけ不安定でも笑ってられる。
 恋人が死のうが、核が落ちようが、狂えば最後ずっと笑顔のままだ」

 道化師は狂っていた。
 狂った様に微笑み、狂った様に破顔し、狂った様に嘲笑する。
 彼こそ世界を笑(くる)わせるコメディアンであり、最狂の犯罪者。


684 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 01:02:21 DcosJacQ0
「そうさ!バカになるのさッ!そうだろ――――バァァァァッツ!!」

 最後の役者が――【ジョーカー】が叫ぶ。
 刹那、闇から出でるのは、これまた黒い戦士であった。
 蝙蝠を模した衣装を纏った、ジョーカーが何より待ち望む存在。


 此度の聖杯戦争で、騎乗兵(ライダー)として現界したサーヴァント。
 ジョーカーの僕たるその男の真名は――【バットマン】。


 ライダーは勢いのままジョーカーを殴り飛ばす。
 拳の直撃を喰らった彼は、血を吐きながら地面をのたうち回る。

「HA,HAHAHA……ラブコールにしちゃ過激じゃないか」

 ライダーは何も答えない。答えるつもりなど微塵もないのだろう。
 恐らくは、口も利けなくなってしまう程に、自らの状況を嘆いているのだ。
 絶望するのも無理はない、なにせ自らのマスターが、自身の宿敵なのだから。

 追撃を行おうと、ライダーはジョーカーに詰め寄る。
 しかし、第二撃を加える前に、彼の視界に令呪が現れた。
 ジョーカーが、自身の手の甲に刻まれたマスターの証を見せつけたのだ。

「バッツ、今のお前は俺のサーヴァントだ……こいつがどういう意味か分かるよな?
 お前のサイドキックはロビンじゃない、この俺なのさ」

 令呪を用いた命令の前では、如何なるサーヴァントも無力である。
 つまり、ライダーは"三度だけ好きに操れる権利"を宿敵に持たれたという訳で。
 その事実は、ライダーの手を鈍らせるには余りある威力を持っていた。

「安心しろよバッツ、お前に殺しをしろなんて命令するつもりは無いからな。
 最高の観客が盛り下がる真似なんて、こっちから願い下げだ!」


685 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 01:07:14 DcosJacQ0
 先程の痛みはどこへやら、立ち上がったジョーカーが破顔する。
 ライダーはやはり何も答えない、表情に怒りを浮かべるばかりだった。

「バッツ!俺とお前は一蓮托生、運命の糸で繋がってるのさ!
 心配する事はねえ、俺とお前なら最高のジョークを生み出せる!HA HA HA HA HA !!」

 瞬間、ジョーカーとライダーの間に光が炸裂する。
 ジョーカーが隠し持っていた閃光手榴弾が作動したのだ。
 光が収縮した頃には、ライダーの目の前から宿敵の姿は消えていた。

 追うべきかと考えたが、どこに逃げたか分からない以上探しようがない。
 ジョーカーを、引いてはこの聖杯戦争を止めるにはどうするべきか。
 今は考えるしかない。少しでも思考を止めれば、事態は最悪の方向に向かって行く。

 動かなければならない、ゴッサムを護る為に。
 この街の守護こそが、ライダーの使命なのだ。


 「たしかにそうだ……最悪のジョークだな……ッ!」



.


686 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 01:10:35 DcosJacQ0
□ ■ □


 シェイクスピア曰く、
 人間の一生は彷徨い歩く影法師、哀れな役者に過ぎぬ。
 己の出番の時は、舞台の上でふんぞり返って喚くだけ。

 どう繕ったところで、人生は所詮喜劇に過ぎない。
 どんな信念を持とうが、どんな理想を描こうが、人生は悲劇になり得ない。
 何を対価にしてでも叶えたい願いを持ったとしても――やっぱりそいつは、喜劇(コメディ)なのさ。

 ゴッサムシティを舞台にした聖杯戦争。
 そいつもまた、喜劇役者(コメディアン)による馬鹿げたショウでしかない。
 鉄火渦巻く闘争も、積み上げられていく屍の山も。
 一つ残らず、悪趣味なジョーク以外の何物でもないのさ。

 さあ始まるぞ、一斉一代の大喜劇が。
 解説役はこの俺、【DJサガラ】が務めさせてもらおうじゃないか。
 植物に汚染される街、水面下で蠢く戦争の気配。
 ヒーローは、歌姫は、ヴィランは、この街でどう動く?

 一緒に見届けてやろうじゃないか。
 奴等の最期の大舞台をな……!


.


687 : Lights,Camera,Action! ◆JOKERxX7Qc :2015/05/27(水) 01:14:23 DcosJacQ0
これにて投下終了となります。
予約解禁日に関してですが、後々改めて連絡させてもらいます。


688 : 名無しさん :2015/05/27(水) 01:23:54 Kl3aQQoc0
オープニング投下乙です!
やはりSS形式の発表はワクワクしますね…!
ジョーカー&バッツという最悪のジョークとしか言えない組み合わせにも期待するしかない


689 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/05/29(金) 21:46:35 PIssVHtk0
大作の投下乙した。そして拙作を本採用していただき有難うございます。

拙作の本文の一部修正及びステータスの一部修正(パラメータ値の変化)を行ったため、事後となりますが念のためこちらで報告致します。
ただし本採用後の修正を不許可とする場合はステータスの訂正部分を元に戻したいと思うため、その場合は遠慮なくご意見お願いします。


690 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/07(日) 03:44:24 D4cRBFAk0
遅くなりましたが、予約解禁日等の連絡を。
予約解禁日は6月9日(火)の0時とさせてもらいます。
ルールの詳細に関しては、明日改めて発表する予定です。

また、しばらく考え直した所、参加者を選出を見直す、つまり人数の増減を行う必要が出てきました。
こちらも詳細は明日発表する予定ですので、どうかもうしばらくお待ちください。


691 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/08(月) 00:29:09 COMiPsnI0
参加者の見直しの件ですが、
シャンテ・ドゥ・ウ・オム&セイバー(テリー)
ジョンガリ・A&アサシン(カール・ルプレクト・クロエネン)

ヤモト・コキ&ランサー(乃木園子)
ラオモト・カン&キャスター(霍青娥)
に変更させてもらいます。
OPを執筆した後にも関わらず急な変更を行ってしまい、申し訳ありませんでした。


692 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/08(月) 00:55:39 COMiPsnI0
何度もすみません、「ジョンガリ・Aからラオモト・カンへの変更」は無かった事にして下さい。


693 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/08(月) 00:58:30 COMiPsnI0
改めてルール詳細の方を。

【ルール】
1.舞台は何者かの手により電脳世界に再現された『ゴッサムシティ@バットマン』です。
  地形はゴッサムそのものですが、施設等は他世界のものが混合している可能性があります。
2.毎日正午、サガラによる定時通達が行われます。主に脱落者の人数、討伐令の発令等を行う予定となっています。
3.令呪を所持している限り、サーヴァントが消滅してもマスターは電脳死しません。ただし、元の世界に戻る事も出来ません。
4.NPCは聖杯に拉致された平行世界の人間です。マスターの知り合いもいる可能性があります。
  ただし、記憶改竄により異能の行使等は不可能となっており、一般人同然の状態となっています。
  なお、この事実はサーヴァント側のみが知るルールであり、マスターは当初このルールを把握していません。
5.NPCは死亡しても消滅しません。なお、NPCを過度に殺傷した主従には討伐令が下る恐れがあります。
6.マスターには予め役職とそれに準じた日常が用意されています。記憶の有無に関しては各々にお任せします。
7.近距離の念話程度であれば、全員が可能なものとします。
  なお、遠距離の念話を行う場合には、マスターが魔術の素養かそれに準ずる技能を持っている必要があります。
8.季節は「冬」を想定しています。12月20日(クリスマスの五日前)からのスタートです。

【時刻】
深夜(0〜6)
午前(6〜12)
午後(12〜18)
夜間(18〜24)
※「午前」をスタートとします。

【状態表テンプレ】

【地区名/○日目 時間帯】(例:【BAY SIDE-南/1日目 夜】)

【名前@出典】
[状態]
[令呪]残り◯画
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本:
 1.
 2.
[備考]

【クラス(真名)@出典】
[状態]
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本:
 1.
 2.
[備考]


694 : 名無しさん :2015/06/08(月) 01:11:47 XYciWDmg0
ルール発表乙です。
質問ですが、マップにエリアの区分けはされないのでしょうか?
個人的にはあった方がキャラの位置把握をする上で書きやすいかなと思います。


695 : 名無しさん :2015/06/08(月) 01:38:52 XYciWDmg0
ヤモト=サン見た感じ時期的にはニチョームで匿ってもらう前かな
ラストガール、スワンソングで把握できるのは楽な方か


696 : 名無しさん :2015/06/08(月) 01:39:25 XYciWDmg0
すみません誤爆しました…


697 : 名無しさん :2015/06/08(月) 01:44:26 Jo5StkVU0
「イヤー!」
掛け声と同時に放たれた無数のスリケンが突き刺さり、突き刺さった場所から発生したカトン・ジツが真紅のオブジェを作り上げる!
あわれ>>695は爆発四散!


698 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/08(月) 03:06:06 COMiPsnI0
>>694
今の所は区分けをしない方針でいきます。

ジョーカー&ライダー(バットマン)、ロールシャッハ&アサシン(シルバーカラス)のステータスが完成したので、wikiに収録しておきました。


699 : 名無しさん :2015/06/08(月) 03:10:44 XYciWDmg0
>>698
回答ありがとうございます。
すいません、もう一つ質問なのですが予約および延長ルールはまだ未決定なのでしょうか?


700 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/08(月) 22:21:16 BO3kSzWs0
>>699
予約期間は五日+延長で二日とします。

追加要素を加えた上で修正したOPを投下する予定ですので、もう少しお待ちください。


701 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/08(月) 23:29:45 BO3kSzWs0
OPを投下すると言いましたが、面倒なので追加要素のみを説明させてもらいます。


・新規で主従を追加しました。(レヴィ@BLACK LAGOON&セイバー(グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH))
・ウォッチャー(ヘルヘイム)に新たに宝具を追加しました。

『森羅の歌劇団(ヘルヘイム・シアター)』
ランク:E〜A 種別:対人宝具 レンジ:?? 最大補足:??
ウォッチャーが侵略、自身の一部に取り込んだ世界の民を使い魔として召喚する。
召喚された使い魔は当時の性格,能力がそのまま再現されており、生前の逸話によってはサーヴァントとも渡り合う事が可能。
なお、一度召喚された使い魔をウォッチャーが支配する事は出来ず、独断行動に走る可能性も考えられる。
此度の聖杯戦争では、かつてウォッチャーの侵略により滅んだ民"フェムシンム"の生き残りを召喚している。

追加要素は以上の二点となります。
ぐだぐだと変更を続けてきましたが、本日の24時から正式に予約解禁となります。
これまで色々と申し訳ありませんでした。改めてよろしくお願いします。


702 : ◆sIZM87PQDE :2015/06/09(火) 00:00:01 o1q7oizY0
呉島光実&アーチャー、呉島貴虎&キャスター、前川みくで予約します


703 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/09(火) 00:00:55 QZxFCocw0
では時間となりましたので

少佐&バーサーカー(ダグバ)
ジョーカー

予約します。


704 : ◆DoJlM7PQTI :2015/06/09(火) 00:11:04 014LpYKg0
レッドフード&アサシン(チップ=ザナフ)、ロールシャッハ&アサシン(シルバーカラス)、多田李衣菜&バスター(ノノ)で予約します


705 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/09(火) 00:21:59 3cbyU1RY0
ジョンガリ・A&アサシン(カール・ルプレクト・クロエネン)
ハナ・N・フォンテーンスタンド
予約します


706 : ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 02:09:52 xMl..DtY0
御剣怜侍&ランサー(ジェイド・カーティス)
予約します


707 : ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:33:46 xMl..DtY0
これが本編初投下になりますが、先陣を切らせていただきます
一部候補話の話の筋を使わせて貰い、当該候補話に出てきたキャラクターについて、軽度の自己解釈をしておりますが、違和感があればご指摘の程を

投下いたします


708 : トリックとマジック ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:34:32 xMl..DtY0

 公僕の朝は、早い。
民間の企業や組織に勤める人間が朝を悠長に過ごしている、と言う訳ではないが、それでも、御剣怜侍の朝は早いのである。
検事と言う輩は国家権力の庇護を受けているのを良い事に、威張り散らし、エリート意識が強く、一般国民を下に見ている。そして何よりも、金も多く貰っている。
そんな意識が、日本やアメリカに限らず、先進国の国民には根付いている。実際一部の者はその通りであるのだが、大抵の検事はそう言った意識は抱いていない。そして、給料も、国民が思っている程高くはない。
検事に限らず、公務員が国民の批判の矢面に立たされると言う状況は、アメリカのゴッサムにおいても変わりはなかった。
いつだって、政に大なり小なり関わる人物は、偏見の目で見られていると言う事を認識した瞬間だった。それは最早、公務員の宿命と言っても良いのだろう。

 仮初の大都市、ゴッサムシティにおける御剣怜侍の演じるべき役割は、日本の検事局からゴッサムの検事局に研修にやって来た検事。
研修生と言う立場ではなおの事、時間を厳守せねばならないだろう。況してや検事と言うのはタイトなスケジュールを送りがちな職業だ。
日本でも、これは同じ事。結局御剣は、この世界に於いても、検事としての本分を果たすしかないのだ。

 ――違いは、其処に、聖杯戦争と言う、許されざる異分子が横たわっている、と言う事なのだが。

「読み終わっただろうか、ランサー」

 金彩の施され、滑らかな白色をした、西洋アンティークのティーカップをソーサーに音を立てずに置いてから、御剣怜侍は言った。
琥珀色の澄んだ紅茶が、カップの中に注がれている。御剣は紅茶に凝る男だった。茶葉にも、その備品にも。

「速読には時間がある方です。考察の時間までくれるとはありがたい事ですね」

 遠回しの肯定の返事。御剣のテーブル向かいに座り、彼が飲んでいる紅茶と同じものを用意され、それを飲む男。
槍兵(ランサー)のクラスを与えられた、御剣怜侍のサーヴァント。ジェイド・カーティスは、上質紙を数枚手に持ち、残りをテーブルに置いていた。

「君の思う所を率直に聞きたい。即ち――」

「この資料の者達は、聖杯戦争の参加者か否か」

「その通り」

 逡巡を見せる様子もなく、御剣が言った。
御剣がジェイドに見せたものは、御剣が演じるべきロールである『ゴッサムの検事局にて働く検事』、と言う立場を利用し集めた警察の捜査資料であった。
あの日、ジェイドと話し合い聖杯戦争をどう動くか決めた時から、御剣は聖杯戦争から目を背けてばかりではいられないと思い知った。
が故に、御剣は動いた。元々複数の事件案件を同時に抱え、並行してそれらの処理を進める事が多いのが検事である。
「この街の平和を脅かす凶悪犯罪の根絶に協力したい」、と言う何とも歯の浮くような台詞で局長を口説き落とし、御剣は警察の捜査資料の閲覧許可を手に入れた。
検事局を欺いたような気がしなくもないが、凶悪犯罪を根絶やしにしたいと言う思いは本当の所であった。如何な事情があろうとも、犯罪は許せる筈がない。
況してや、御剣にしてみればオカルトの塊以外の何物でもないサーヴァントを用いた犯罪など、御剣にしてみれば到底許容出来る物ではないのだった。

 結局、このゴッサムにおける聖杯戦争をどう生き抜くのか? その為には、他参加者の情報が必要不可欠だと御剣は考えたのだ。
情報を集める事で――誰が聖杯戦争の参加者なのかと言う目星を付ける事が出来、対策も取りやすくなる。
だけでなく、相手が性善だと解ったのなら、同盟も組みやすくなる。無論、御剣の集めた捜査資料の情報が、ガセだと言う可能性も大いにありうる。
しかしそれでも、情報は吟味出来る。考察出来る。最悪なのが、一切情報が手に入らない立場である。
それに比べたら、嘘の情報が舞い込んでくる事もあるかもしれないとは言え、検事と言う職業は、情報収集に打って付けのロール。ならば、これを利用しない手立てはなかった。

「……先ず初めに断っておきましょう、検事」

 テーブルの上に組んだ手と手を置きながら、ジェイドが言った。

「私はこの目で、貴方がピックアップした捜査資料の人物を目にもしていませんし、彼らが凶行を働いたと思しき現場も検証しておりません。故に、これがこう、と言う確証がありません。憶測で物を語る事になりますが、宜しいでしょうか?」

「構わない」

 元よりそれは、覚悟の事。御剣が欲しいのは、サーヴァントであるジェイドの考察なのである。

「では、私見を述べさせて頂きましょう」

 粛々とした態度でジェイドが言った。


709 : トリックとマジック ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:35:48 xMl..DtY0
「まずこの、内部から破裂させて人を殺害する、と言う殺人犯」

 捜査資料の一枚を手に取るジェイド。

「この犯行に及んだ存在が、サーヴァントないし聖杯戦争の参加者である、と言う可能性は比較的高いものかと思われます。
捜査の目を眩ます為に、手間暇かけて原形を留めぬ程人を残虐に殺す。そう言った可能性もなくはないでしょうが、この一件……犯人は何回も何回も人間を破裂させて殺している、と言う点が引っかかります」

「まるで、自分の力を誇示するみたいでもあり、自らの力に酔っている。そんな印象を私はその犯行を行った者から見受けられる」

「えぇ、私もそう思います」

 今二人が話し合っている事柄は、今巷を騒がせている正体不明の猟奇殺人犯の事だった。
既に何人ものゴッサム市民やホームレスがこの殺人鬼の手にかかっていた。目撃者はおらず、犯行は凡そ考えられない程猟奇的。
極め付けに、狙われるターゲットはかなり無差別と来ている。今ゴッサムに生きる住民の心に、不安と暗い翳を落とす立役者の一人が、間違いなくこの殺人鬼であった。 

「当然、検事も気になっている事柄でしょうが……私としては、犯行現場に必ず残留している、この『タール状の物質』の方が気になります」

 内部から破裂させるという、世にもおぞましい手法で人を殺す殺人鬼。
これが今現在における、九龍城砦もかくやと言う程の治安の悪さを誇るゴッサムに生きる住民達すらも震え上がらせる、連続殺人事件の情報の全てである。

 ――『世間やマスコミに伝わっている限りの』、と言う枕詞がつくが。
警察などの捜査機関は意図的に、『どのような手法で破裂させたか』と言う事を隠している。
液体状の物体を大量に飲ませて破裂させた、と言う推理が世間の通説である。事実鑑識もその線で検査を続けていた。
だが、大きな問題が二つあった。一つは犯行の瞬間は当然の事、その犯人の影も形も目撃されていないと言う事。
もう一つが、その破裂させた液体の正体が不明だと言う事。御幣を招く言い方であるが、警察は破裂させた液体のが何なのかには、凡そ当たりをつけていた。
犯行現場に、黒いタール状の液体が必ずと言っていい程残されているのだ。恐らくはこれで破裂させたのだろう。事実破裂された被害者の体内からも、同じ性質の物質が検出されている。
問題は、その液体の正体が世界最大の先進国であるアメリカの鑑識技術を以ってしても、判別も解析も不能の未知の物質である事だった。
可燃性が高く、スライムのような粘度を誇りながら、それでいて水の如き流動性を発揮する、矛盾した物質。まるで重油だ。
解っている情報は、それだけだった。国家の捜査機関の科学の粋を以ってしても、この殺人犯が用いる凶器の正体が判別出来ないのだ。

 実を言えば警察が意図的に破裂させたものの正体を隠すのには、警察の威信を守ると言う意味もあった。
この街の警察は、言うまでもなく腐敗している。ギャングやマフィアとの癒着や、賄賂云々の噂は、御剣も良く耳にする。
だが警察としては、自分達の方がギャングやマフィアより上と言う意識がある。つまり警察は、汚職もするし賄賂も貰うが、裏社会の連中より立場を上にしたいのだ。
警察はその国の最大の暴力機関とは、さてもよく言ったものである。実際警察の前では、腰を低くしへりくだるマフィアやギャングの方が圧倒的に数多い。
しかし、もしも威信と言う警察最大の基盤と、警察が持つ圧倒的な力が弱まれば? 当然彼らと癒着していた裏社会の住人は増長し、警察と同じ程、或いはそれ以上に幅を利かせてしまう。
それは、面白くないし、避けるべき事態だ。そしてその避けるべき事態を招く足掛かりに、このタールの正体はなりかねない。
警察程の大組織で、犯行に使われたものの正体が掴めませんでした、と言うのは世間に通用しない。世間の批判を受け、マフィア達から嘲笑されるのがオチだ。
此処に、警察機関がこの連続殺人犯の情報公開を渋る全てがあった。何処の国でも、警察がプライドの高い組織である事は、変わりはないのだった。

「このタール状の物質が、科学的に作られて、現代の科学でも解析が難しい物質であるならば解りませんが、魔術などの神秘的な過程で作られたものであるならば、科学的な検査では先ず分析不能です」

「ランサーならば出来る、と」

「少なくとも魔力を検知する事位は出来ます。それで充分ですよ、検知出来ればその時点で、聖杯戦争の参加者と割れたも同然です」

「承知した。上手くいくかは解らないが……機会があれば、そのタールをランサーに検知させてみよう」

「お願い致します」


710 : トリックとマジック ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:36:18 xMl..DtY0
 正体不明の殺人鬼については、現状語る所はその程度。御剣もジェイドも同じ認識だったらしい。
御剣は飲みかけの紅茶を口にし、ジェイドは先程まで手にしていた捜査資料をテーブルに置き、次のものに手を伸ばした。

「次に、この指名手配犯についてです」

 ジェイドは手にしていた捜査資料を、御剣に見せつける。如何にも固い説明調の英文の中にあって、其処にプリントされた女性の写真が良く目立つ。
鴉の濡羽のような黒髪をした、セーラー服の少女。御剣には一目見て日本の女性だと解る。
アメリカ、しかもゴッサムでは珍しい、日本の学校制服。さぞやゴッサムでは目立つだろう。……指名手配犯ならば、猶更である。

 ――ヤモト・コキ。この少女の名前であり、今このゴッサムに於いて先の連続殺人鬼とほぼ同等の知名度を誇る有名人であった。無論、悪い意味でだ。
彼女は指名手配犯だった。容疑は、ギャングの構成員の殺害。この事からも解る通り、このヤモトなる少女はどちらかと言えば、ギャングやマフィアの逆恨み、
及び彼らと癒着している汚職警官や刑事達から特に執拗な追跡を受けており、どちらかと言えば指名手配犯と言うよりは、お尋ね者や賞金首に扱いは近い。
マフィア達や警察だけでなく、バウンティハンターからも熱烈なアプローチを受けるのは、このままでは時間の問題だろう。
顔が割れている分、あの連続殺人鬼よりも状況は詰みに等しかった。

「この指名手配犯、ヤモト・コキと呼ばれる少女が、聖杯戦争の参加者である可能性は、恐らく最初に上げた殺人鬼よりも高い、と言うより、ほぼ確実かと思われます」

「根拠を伺おう」

「この国とは違う、遠く離れた国の少女がギャングを殺したと言うだけでも、疑惑の目を向けられるのに十分ですが……最も決定的なのは、これでしょうね」

 違う捜査資料の一枚を手に取り、御剣へと突き付けた。
崩落した橋の写真がプリントされ、それについての事柄が説明された資料だった。
「やはり其処に目を付けたか」、御剣が称賛の言葉を投げ掛ける。この橋は、ヤモトと呼ばれる少女が破壊したとされるものだった。
そのせいでゴッサムの交通事情に大なり小なりの問題が発生してしまい、今やこの少女は、ギャングやマフィアだけでなく、運送業やタクシー業者と言った連中まで敵に回してしまっていた。

「橋の破壊には火薬の類は検知されなかった。重要な事柄ではありますが、本質は其処ではない」

「火薬を使わずに橋を破壊する。そんなトリックを弄していながら、ヤモトと言う少女には、その細工を施す時間は実際与えられていなかった。何故ならば彼女は、『常にマフィア達から追われ』、それ所ではなかったからだ」

「その通りです検事」

 この件の不可解な所は其処である。爆発物の類を一切使用せず、ヤモトは橋を破壊した。
それだけでなく、その時居合わせた目撃者――資料は表現をぼかしているがこれはマフィア達の事である――によれば、橋はヤモトが渡りきった瞬間、
狙い澄ましたように破壊されたのだと言う。爆発物を利用せず、特定の人物が渡り切った瞬間に、追手の追跡を振り切るように橋が自壊する。
そんなデウス・エクス・マキナが起こるわけはないだろう。余りにもご都合主義じみている。十中八九、サーヴァントの手によるものとみて、間違いはなかった。

「本当に彼女が橋を破壊したかどうかは解らないが、警戒をしておいて間違いはないと判断した」

「賢明な判断でしょう。ですが、検事はヤモトと接触した場合、どう振る舞うおつもりですか?」

「まずは交渉だろう。ひょっとしたら彼女は、本当はこの街のマフィアやギャングなど殺しておらず、『そう言う役割を演じるよう強制されている』だけかもしれない。私がこの街で検事を演じているように。無論、そうではない可能性も考えるが」

「同盟を視野に入れておりますか。ですが、彼女は指名手配犯です。彼女と手を組む事がバレてしまえば、事は検事にも及びます」

「それが問題なのだよ。指名手配犯を匿い、その結果検事としての立場を失うのは、あまりにも失うものが多すぎる。我ながら、嫌になる程打算的な考えだが」

「いえ、そう思うのは当然でしょう。聖杯戦争の裏を暴く事も勿論ですが、自分が生き残る事を最優先して頂きたい」

「……了解した」


711 : トリックとマジック ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:37:22 xMl..DtY0
 もしこの少女が善良な性格だったとして、聖杯が演じるように仕向けた立場の違いのせいで、なるべくなら同盟を組んで戦いたいと言う御剣の考えも、難しくなる。
其処には、自分の立場と命を守り通したい、と言ういやな打算があった。人と言うものの醜さと黒い部分を見せつけられているようで、御剣は自分で自分を嫌悪した。
同時に湧いてくるのは、聖杯への不信感。ますます以て、この世に在る事自体が許容出来なくなって行く。

「検事は、紅茶が淹れるのが上手い」

 唐突に、ジェイドはそんな事を口にし始めた。極めて解りやすい御世辞だった。

「長い事、自分で淹れて来たのでしょう。あれは中々、妙練の技術がいります。日々の継続の賜物でしょうね。継続は力なり、ですか」

「いきなり何を言っている?」

「そんな美味しい紅茶を飲んで、落ち着きましょうか。検事。紅茶にはリラックスの作用がありますから」

 表情に出したつもりはないが、どうやら御剣の心の変遷をジェイドは察知したらしい。平静になれ、と言う意思が、ジェイドの言葉から伝わって来る。
確かに、今の自分の心には昏いものが蟠っている。御剣はすぐにこれを認めた。残りの紅茶を飲み干し、カチャリとソーサーにカップを置いた。
心の蟠りが、薄らいだ気がした。笑ってしまう程のプラシーボだったが、今はそれで良い。心に闇を抱えているよりかは。

「最後の案件です」

 気を取り直して、と言葉の初めにつきそうな調子で、ジェイドが言った。

「ゴッサムの高級ホテルに宿泊していた、新進気鋭の麻薬流通グループの首魁である婦女が殺害された事件です。これは確証を以て、聖杯戦争の参加者が噛んでいたと言えます」

「ほう」

「先ず此方の、殺された女性の宿泊していた部屋の写真をご覧下さい。見て頂ければ解りますが、窓ガラスが割れている以外は極端に損壊が少ないです」

 ジェイドの見せた写真には、彼の言った通りの様子が映し出されていた。
割れた窓ガラスを新品の物に嵌め直し、嘗てその部屋に泊まっていた住人の使っていた備品を撤去すれば、すぐにでもまた宿泊客にサービスを提供出来るであろう。
……備品を撤去すれば、と言った。その備品が問題である事は、御剣もとうに気付いていた。その写真に違和感を感じたからこそ、ジェイドに意見を求めたのだ。

「御分かりの事かと思いますが、被害者が宿泊していたこのホテルの部屋は、その被害者自身によって改造されていました。
写真の風景は、本来の部屋の内装ではありません。これは、ホテルの従業員からも裏が取れている、とあります。
恐らくはキャスターを引き当てた為に、ホテルの一室、いや、ホテルそのものをキャスターの力で則り、工房に改造していたのでしょう」

 ジェイドの示した写真は、いかにも、と言った風の工房(アトリエ)だった。
神秘的な知識に人一倍疎い、ともすれば嫌悪すら抱き知ろうとすらも思わなかった御剣にですら、其処が科学とは全く違う世界の常識と理論で成り立つ空間である事が解る。
フラスコやビーカー、天秤と言った用途の解りやすいものから、用途も想像出来ないような大掛かりなガジェットまで。
その部屋には設置されていた。何も知らない状態であったのならば、邪教に携わる人物が使っていた部屋だと言われても、信じたかも知れない。

「私には如何にも想像が出来ないのだが、被害者の女性は、自分達の都合の良いように改造をしていた部屋とは全く違う、遠く離れた建造物の中で殺されていた。
なぜそのような場所で殺されていたのだろうか。しかも殺された場所から、拠点としていたホテルまでは大分距離がある。恐らくは逃げる際に追撃もあっただろう。どうやって其処まで追手から逃げられたのかも、解らない」

「あくまでも推測ですが、このキャスターの組は襲撃を受けたのでしょう。割れた窓ガラスから侵入を許してしまったのかと思われます。
キャスターは籠城戦に秀でたクラスですが、接近戦の弱さでは間違いなく聖杯戦争の七クラスの中では最弱です。加えてその場にはマスターもいると言う状況です。
最悪の状況の中、キャスターが下した結論は、マスターだけでも何とか逃す事。当然の判断です。マスターを殺されれば、単独行動スキルを持たない限りはサーヴァントもつられて消滅します。恐らくはキャスターはそれを持たなかった。だから、転移の術でマスターを逃したのでしょう。其処は恐らくは……ホテルの拠点が潰された場合に利用する筈だった、第二の拠点だったと思います」


712 : トリックとマジック ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:38:12 xMl..DtY0
「待って欲しい、サーヴァントの中には、物理的な制約を無視して特定の人物を任意の場所にワープさせる事も……?」

「優れたキャスターなら可能です。優れた、と言う冠詞が付くのは、サーヴァントであっても転移の術を再現する事は、難しいからです。あぁ、私も優秀な部類ですが、流石に出来ませんよ?」

「つくづくデタラメだと言わざる得ないな」

 率直な思いを口にする御剣であった。

「そのマスターが殺された以上、当然彼女が従えていたキャスターのサーヴァントも葬られたとみるのが当然だろう。だが問題は、『誰が倒したのか』だ」

 人差し指を立てて、御剣は当然の疑問提起をする。敵が一人既に舞台から退場しているのは好都合だと言わざるを得ない。
だが其処で問題となるのは、誰が倒したのかと言う事なのだ。聖杯戦争の論理から言えば、倒された相手には、最早意味などない。倒した相手にこそ、意味がある。

「籠城戦を主とするキャスターどうしがかち合うと言う事はまず考えられませんね。工房の破壊の規模から言って、セイバーやランサー、ライダーにバーサーカーとも考え難い。となれば、アーチャーかアサシンと言う可能性が高いものかと思われます」

「何故だろうか」

「先にも言ったように工房の破壊の具合から考えられる、と言うのもそうなのですが、どちらも偵察に適したクラスと言うのが大きいです。
アーチャーは単独行動と言う、ある程度マスターから離れても行動出来るスキルを持っておりますし、目が良いサーヴァントが多い。
アサシンは単独行動こそ持ちませんが、気配を消す事にかけては他のクラスの追随を許しません。つまり、隠密行動や探偵、尾行に適していると言う事です。
後は簡単です。隠密行動や尾行などで拠点に目星を付け、更に調査を続け本当に拠点かどうかを確定。アーチャーなら遠方からの狙撃で、アサシンならば急襲で、窓ガラスから攻撃を仕掛ける。恐らくはこれによって、キャスター達は仕留められたのではないかと考えます」

 成程、噛み合っている。破壊がやけに軽微な事の説明もつくし、一見して考えれば合理的だ。しかしそれでも、疑問に思うところが御剣にはあった。

「言うまでもなく、キャスターはアーチャーかアサシンが殺したのだろう。ではキャスターを従えていた被害者は、アーチャーかアサシンのマスターが……?」

「恐らくはそう考えるのが自然ではないかと。予備の拠点も調べ上げておき、サーヴァントはキャスターにぶつけ、マスターは、キャスターのマスターが転移で逃げるであろう拠点で待ち伏せ。其処を攻撃したのでしょう。見事な二正面作戦です」

 驚きは、しなかった。ある程度予想は出来ていた事だ。聖杯戦争を勝ち抜くのであれば、サーヴァント自体の戦闘力もそうだが、マスターが戦えるに越した事はないのだ。
マスターに引導を渡すのは、何もサーヴァントだけとは限らない。マスター自身が幕を下ろす事だって、十分考えられる。
そんなケースは、あくまでもレアケースだと御剣は考えていた。しかし、この件を見るに、どうやらマスターがマスターを殺すと言う局面は、珍しい事ではないようだ。

 正直な所、被害者には御剣は同情しなかった。
予め捜査資料を見ているから、殺された女性が工房で精製していたとされる、最近ゴッサムで流通し始めた超上物の麻薬を売り捌いていた事は知っている。
ハッキリ言えば、国が国なら殺されても文句は言えない輩だった。狩魔冥に言わせれば、まさに社会のゴミの称号を授かるに相応しい人物だ。
だからこそ、このマスターには法の裁きを受けて欲しかった、と言うのは、甘い考えなのだろうか。
恐らくキャスターのマスターを葬った男には、独自の考えがあり、独自の法があったのだろう。それに則り、殺したのかも知れない。
人を殺してはならないと言う天則よりも、自らの行動の指針である法が先に立つ戦い。これこそが、聖杯戦争なのか。そうでもしなければ、聖杯には認められないというのか。


713 : トリックとマジック ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:38:38 xMl..DtY0
「業の深い戦いだ……」

 苦言を漏らす御剣を、ジェイドは真面目な顔付きで見つめていた。その間は、無言であった。

「すまない、話の腰を折ってしまった。話を続けてくれないか。ランサー」

「いえ、お気になさらず。さて、このキャスター達を倒した組についてですが、間違いなく聖杯戦争の関係者である一方、全く彼らについての情報は不明です」

「マスターもサーヴァントも顔が割れていないのは当然の事、特徴的な形跡を残さなかったからだ」

 「その通り」、とジェイドが付け加えた。これと言った特徴的な破壊痕が工房からは確認出来なかった事もそうだが、
そのキャスターの関係者である、嘗て彼らが操っていた配下のゴッサム市民の殆どが、精製した麻薬で証言の取れる状態ではなく、目撃談も聞き出せない。
辛うじて解る特徴らしき特徴は、キャスターのマスターの転移先である建造物で使われた爆薬と、マスターの直接の死因となった、ショットガンの銃創だ。
だがこれらはゴッサムシティでは珍しくも何ともない凶器だ。決定打にはなり得ない。つまりキャスター達を殺した存在は、ある意味破裂させて殺す連続殺人鬼よりも正体が掴めないのだ。

「彼らについては、あくまでもそう言う存在がいるという認識を持っているだけで良いでしょう。現時点では、証拠が少なすぎます」

「……そのようだ。何人、聖杯戦争に参加したのかは解らないが、もしも我々が話題にした事案に出てくる人物が全て聖杯戦争の関係者ならば……一筋縄ではいかなそうだ」

 正体不明の未知の物質で人を破裂させる恐るべき殺人鬼、苦も無く橋を破壊するサーヴァント、痕跡を全く残さず相手を必殺する恐るべきアーチャー或いはアサシン。
想像を膨らませるだけで、いずれも自分のサーヴァントであるランサーも苦戦は免れ得ない事が解る程の恐るべき相手だと言う事が解る。
ランサーは残りの紅茶を全てのみ下し、冷静さの塊のような、薄い微笑みを浮かべた表情を作り御剣を見ていたが、このサーヴァントの内心も、御剣と同じ様なものなのだろう。
やはり、検事の権限を利用し、此処最近起った目ぼしい事件を調べ上げておいて良かった。
サーヴァントの正体と言う最も大切な事項が不明瞭ではあるが、常識を超えた様な連中が参加していると言う事実を再認出来ただけでも十分である。半端な気持ちでは、臨めまい。

「――時間だ、ランサー。出よう」

 言って御剣は、使っていたティーソーサーとカップを手に持ち、台所へと運んで行く。律儀にジェイドも、マスターと同じ行動を取り、水場へとそれを置く。
使った茶器を軽く水洗いした後で、御剣はポールハンガーへと近づいて行き、かけていたブラックコートに袖を通す。
いよいよ始まるのだ。ゴッサムと言う大都市を壺に見立てた、蠱毒の儀式――聖杯戦争。奇跡の神品を賭けて争われる、最低にして最悪のジョークが。

 ――……私は屈さないぞ――

 決意を固く、御剣は車庫へと向かった。
磨かれたように滑らかな車体に、御剣の顔が映る。検事としての引き締まった表情とは別に、聖杯戦争への怒りが、その眉間に刻みつけられているのが、よく解るのだった。


714 : トリックとマジック ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:39:06 xMl..DtY0



【UPTOWN RANDALL/1日目 午前】

【御剣怜侍@逆転裁判シリーズ】
[状態]健康、平常
[令呪]残り三画
[装備]ブラックコート、黒いウェストコート、ワインレッドのスーツ。
[道具]検事バッジ
[所持金]現金が数万程と、クレジットカード
[思考・状況]
基本:やはり聖杯戦争は許し難い。何としてでも止めねば
1. 仕事を放棄してはいられないので、検事としての本分も果たすつもり
2. すぐに戦闘に移るのではなく、最初にまず交渉ありきを貫こう
3.ランサーとは共に行動する事を徹底させる
[備考]
※検事としての権限を利用し、警察の捜査資料を調べ上げました
※内部から身体を破裂させて対象を殺す殺人鬼(デスドレイン)をサーヴァントではないかと疑っています
※ヤモト・コキが聖杯戦争の参加者であると認識しています。同盟も組めるかもと思っていますが、立場の問題上厳しい事も自覚しています
※キャスターと思しきサーヴァントとそのマスターを殺した存在(レッドフード&チップ・ザナフ)をサーヴァントと認識しました
※現在スポーツカーで検事局へと向かっています


【ランサー(ジェイド・カーティス)@テイルズオブジアビス】
[状態]健康
[装備]マルクト帝国の士官服
[道具]フォニックランス
[所持金]御剣に依存
[思考・状況]
基本:御剣に従う
1. 他サーヴァントの情報をもっと集められないか
2. 殺人鬼(デスドレイン)が犯行現場に残した黒いタールの残留を調べたい
[備考]
※殺人鬼(デスドレイン)がサーヴァントであると疑っています。犯行現場に残したアンコクトンの残骸を調べれば、確証に変わります
※ヤモト・コキが聖杯戦争の参加者である可能性は非常に高いと認識しています
※キャスターとそのマスターを殺した存在(レッドフード&チップ・ザナフ)が間違いなく聖杯戦争の関係者であると考えています


715 : ◆zzpohGTsas :2015/06/09(火) 22:39:28 xMl..DtY0
投下を終了いたします


716 : 名無しさん :2015/06/09(火) 23:26:36 3cbyU1RY0
投下乙です。
この主従の知的な雰囲気がいいなあ
ここまでの事件の限られた情報を元にした二人の綿密な考察、
警察組織等の事情を通じたゴッサムシティの掘り下げは見応え満載で面白かったです。
今回の情報収集のようにロールを活かした戦術はやはり聖杯戦争の醍醐味
衆愚の町でも己の正義を貫き続ける御剣の行く末は果たしてどうなるか…


717 : ◆DoJlM7PQTI :2015/06/10(水) 00:47:36 ljhzUIJc0
投下お疲れ様です。

この街で既に起こっている事件から聖杯関係者を洗い出し始める知的な二人。
検事という立場の強みを活かしている反面、ヤモっちゃんの件で思うように動けないというのもロールの妙ですね。
法の番人である彼が非合法な方法も認可するヒーロー達に遭遇した際にどういう選択をとるのかも気になります

感想ついでに>>1氏に質問なのですが、
氏が投下したゴードン警部の候補話でバットシグナルがないという旨の内容がありましたが、それは本編でも有効な描写なのでしょうか。
具体的には今後の執筆の為にウェイン邸・バットケイブ・バットシグナルの有無が知りたいのですが……


718 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/10(水) 01:23:02 oT2K91Rg0
開幕投下乙です。
御剣&ジェイドによる三つの事件に関する濃密な考察、面白かったです。
検事というロールを最大限に活かした情報収集はやはり強い。
偽りの世界でも法の番人として正義を貫き通さんとする御剣はかっこいいですね。
それだけに犯罪者であるヤモト=サンへのジレンマがつらい所。

それと自分の予約に関してですが、キャスター(デスドレイン)を追加予約させて頂きます。


719 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/11(木) 04:18:29 Sm.oMn2E0
投下乙です。
初期段階の時点でこうした考察が可能なのが彼等の強みですね。
対聖杯の人物が少ない中、御剣の正義は果たしてどこまで通用するのか。
悪党だらけのゴッサムの良心の一人である彼の活躍に期待。

>◆DoJlM7PQTI氏
ウェイン邸等の"ブルース・ウェイン"関係の施設は存在するものとしますが、
バットシグナルを始めとした"バットマン"関連の設備は開始時点では存在しないものとします。


720 : ◆sIZM87PQDE :2015/06/11(木) 14:26:21 4f5Ws3Cw0
投下乙です
開幕からここまで考察するとは御剣はしっかり自分のロールを生かしてますね
ただそれ故の行動の縛りや信念の違う他の対聖杯へのアプローチなど不安要素も気になるところ
良識と正義感を兼ね備える彼らの今後に期待ですね


721 : ◆zzpohGTsas :2015/06/13(土) 00:12:41 GmRBFy3o0
感想の数々、ありがとうございます
初めてロワの環境で本編を執筆させて貰いましたが、感想を貰えますと気持ちいい物ですね

ミュカレ&セイヴァー(ジェダ・ドーマ)を予約いたします


722 : ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:28:21 yK7IA32Q0
投下いたします


723 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:29:48 yK7IA32Q0

「光実、また何日か家を空けることになる。戸締りには十分気をつけてくれ」
「兄さん、また泊まり込みなの?最近随分多いけど」
「…ああ。ちょうど今大きなプロジェクトを抱えていてな。
息抜きをするなとは言わないが人通りのない場所や治安の悪い地区には近づくなよ」
「わかってるよ、行ってらっしゃい」

呉島貴虎は社会人であり、弟の光実は高校生である。
それ故に二人の朝は早く、今日も貴虎は早くも身支度を終えて出社しようとしていた。
元来生真面目な性分の貴虎は重役出勤という言葉とは無縁の男であった。
貴虎が車で出社してから十分後、光実の側に彼よりも幾分幼い少女が現れた。

「サーヴァントの気配は?」
「相変わらずないわね。別行動していても殺されない自信があるのか、それとも本当にマスターでないのかは知らないけど」

呉島邸から離れた場所に待機させていたアーチャーにサーヴァントの気配を探らせていたが今日も空振りに終わった。
おかげで兄がマスターであるのかどうかまだ確証を掴めていない。

「もう一度聞くけど、本当にあなたの兄は元の世界で死んだの?
生き延びて、その上で参加しているということは無いの?」
「有り得ないよ。あれだけ高い崖から深手を負ったまま落ちて生きていられる人間なんて常識的に考えて絶対にいない。
第一ヘルヘイムの森で生き延びようと思ったら戦極ドライバーが必要不可欠だ。ドライバーが無い時点で死は免れない。
だからもし兄さんがマスターだとしたら、君が言った通りまだ生きていた頃から参加した場合だけだ」

記憶を取り戻して最初に兄の顔を見た時は幽霊にでも出会ってしまったかと思うほど驚いたものだ。もっとも考えてみればサーヴァントも高次元の幽霊のようなものだが。
アーチャーに貴虎の存在について意見を聞いてみたところ、聖杯が時間に干渉して参加者を過去や未来から呼んでいるのではないかと答えた。
時間を操作できるアーチャーをサーヴァントとして再現できるのなら確かにそんな大それた真似が出来てもおかしくはない。
勿論過去の時点で貴虎がいなくなっていればすぐわかるはずなのでパラレルワールドの概念も働いているのだろう。

「まあ兄さんがマスターだったとしても、君の存在と令呪さえ隠していればあの人は決して僕をマスターだと見抜けないよ。
というか疑おうとすらしないだろうね。そういう人なんだよ、兄さんは」


724 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:30:42 yK7IA32Q0
「随分悪い弟もいたものね」
「これは聖杯戦争だよ?騙される方が悪いに決まってるじゃないか」
「その通りだけど……そういう物言いは私の嫌いな奴を思い出すわ」

とはいえ光実が貴虎を殺すとすれば最後ということになるだろう。
未成年の光実がゴッサムシティで満足に生活しようと思えばどうしても保護者である貴虎が必要になる。
もっとも殺しやすいであろう兄がマスターであれば光実としてはむしろ望むところですらあるが順番を間違えてはならない。
聖杯さえ手に入れれば全てを取り返せるのだから躊躇う必要など全く無い。

「じゃあ僕らもそろそろ行こうか」
「他のマスターを探しに行くの?」
「もちろんそれもあるけど、学生の本分を疎かにするわけにもいかないんだよ。
だから今日は図書館で勉強しつつ、それとなく周りの様子を探ってみることにしよう。
マスターだからこそ、あまり悪目立ちして目をつけられると不味い」

どこにマスターが潜んでいるかもわからない状況で悪目立ちをするのは自分がマスターだと教えるに等しい。
サーヴァントの戦闘力に自信があるなら別かもしれないが生憎アーチャーの性能は最低レベルだ。
最大の切り札たる時間停止にしても燃費が悪く欠陥も少なくないため過信できるほどのものではない。
それにどうにもならない状況で撤退するために温存しておくべき能力でもあるのでどうあれ乱用は厳禁だ。
時間停止に頼らずサーヴァントを足止めして光実がマスターを殺せるならそれに越したことはない。

アーチャーの弱さに溜息が出そうになるが口に出したところで彼女との仲が険悪になる未来しか残らない。
それに弱いからこそ光実への負担も少ないわけで、その意味ではアーチャーは光実の身の丈に合ったサーヴァントと取れなくもない。
欠点の多い時間停止にしても一時同盟を組んだ相手を後ろから速やかに葬るにはうってつけだ。
様々な考えを巡らせながら光実も家を出て図書館へと歩き出した。







ゴッサムシティのオフィス街にそびえ立つユグドラシルタワー。
ユグドラシルの権威を誇示するかのような威容は見る者に彼らがいずれこの街の支配者になろうとしているのだ、という畏怖を抱かせる。
ユグドラシルを支える重鎮の一つ、呉島の長子である貴虎は二十六という若さで新商品の研究・開発部門を任されている。
ゴッサム支部の支社長でさえも彼に対しては一定の配慮を必要とするほどだ。
その貴虎はここ数日、仕事の合間にシェルターとしての機能も持たされている地下区画を訪れていた。
それはユグドラシルの一員としてではなくマスターの一人としての行動である。


725 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:31:38 yK7IA32Q0

「キャスター、進捗状況はどうだ?」
「はい、魂喰いの方は滞りなく。“果実”の方は今しばらく解析に時間が必要です」
「そうか、引き続き作業を続けてくれ」

戦極ドライバーを身に着け、ヒマワリロックシードをセットしてキャスターの作業を見守る。
魔力に乏しい貴虎だが装着者に栄養補給を行う戦極ドライバーの特性を活かすことでキャスターへの供給量を多少は増やすことができる。
普段からドライバーを着けていては目立つためマスターとして行動する時に限定せざるを得ないが。

貴虎とキャスターが聖杯戦争に乗り出すにあたりいくつかの懸案事項があった。
その一つが陣地の確保だ。ゴッサムにはこれといって強力な霊地がなく貴虎の社会的立場の問題もあった。
陣地を確保したとて立場のある貴虎がそこに籠るわけにもいかない。さりとてキャスターが陣を離れれば他のマスターに荒らされる。
そこで貴虎は逆転の発想でこのユグドラシルタワーそのものを根城にすることを考えた。
ユグドラシルタワーは非常に強固な造りであり、誂え向きに普段は使われない緊急用の地下施設もあった。
そして社員である貴虎が理由をつけて会社に残り続けることは全く不自然なことではない。

貴虎の指示で地下にキャスターが工房を作り搾取した魔力を集め、魔術による厳重な隠蔽によって外から魔力を感知されぬようにした。
今はまだ工房の段階に過ぎないがいずれは神殿の領域にも達するだろう。
地下ならばアーチャーの狙撃を未然に防ぐことができ、進入口も限定されるためアサシンの迎撃も比較的容易だ。
また不審の種を取り除くため会社の支社長をはじめ主だった役員や地下に出入りする可能性を持った社員、職員に暗示をかけ支配下に置いた。
今やこのユグドラシルタワーは貴虎とキャスターの牙城となっている。

「しかしこの世界でヘルヘイムに遭遇するとはな……」

数日前、監視網を構築していたキャスターに不可解な植物があると告げられ彼女が使う水晶球を見た時は心臓が止まったかと思うほどの衝撃を受けた。
人通りの少ない地区を中心に繁殖するヘルヘイムを見た貴虎は一瞬ついに聖杯までもがヘルヘイムに侵略されたのではと疑った。
だがこのゴッサムシティが電脳空間であったことを思い出し考えを改めた。
いかにヘルヘイムの森といえどバーチャル空間への侵入までは確認されておらずロシュオの話からしてもオーバーロードが機械に強くないことは明らかだ。
クラックが確認されていないことと併せて考えるとアーマードライダーである貴虎を招いた聖杯が何らかの意図でヘルヘイムを部分的に再現したのではないかという推論を立てた。


726 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:32:22 yK7IA32Q0

戦力増強を図るためキャスターの竜牙兵に密かに運び込ませ、いくつかをロックシードに変換した。
その過程とヘルヘイムの実が放つ魔力を見たキャスターはある提案を持ちかけた。
ヘルヘイムの実を解析し、純粋な魔力の塊として取り込めるよう加工するという危険とも思える策であった。
しかし上手くいけば魂喰いの代替手段として使えることから無理をしないことを条件にキャスターの提案を受け入れた。
現在極力騒ぎを起こさないよう魂喰いを続けているがユグドラシルタワー内部から遠隔でNPCに干渉できる距離は限られている。
いずれは目敏いマスターやサーヴァントによってキャスターの位置を特定される恐れもあった。
そんな貴虎とキャスターにとって別な手段での魔力源の確保は重要課題の一つだった。
それに必要以上に市民を虐げずに魔力を得られるならばそれに越したことはない。こちらで果実を回収・利用すれば市民のインベス化などの被害も少しは減らせるはずだ。

「この時代の人間は魔術に依らずしてこれほど濃密な神秘を内包する果実を制御する術を編み出したのですね」
「全てが一朝一夕に上手く行ったわけではない。
量産体制を確立するまでにあまりにも多くの血が流れすぎた」

自分や望んで力に手を伸ばしたビートライダーズがモルモットになっているだけならまだ良かった。
しかし実際には貴虎の与り知らぬところで多くの子供たちがドライバー実験の被検体になっていた。
父が自分や光実にも知らせず非人道的な実験を行っていたのは良心の呵責があったからだと信じたい。

「それから、最近社会の裏に潜む者同士での小競り合いが頻発しています。
いえ、正確には一つの勢力による征服と呼ぶべきでしょう。首魁と思しき全身に包帯を巻いた男の近くにサーヴァントもいました。
例のグラスホッパーもあまりに急速すぎる勢力の拡大を鑑みるにマスターかサーヴァントが関与していることは確実かと」
「全身に包帯、そしてサーヴァント……隠す気もなしというわけか。
ユグドラシルの情報網でも不自然な物資の流通が行われていることが確認できている。
件の武装勢力とグラスホッパーの衝突は時間の問題だな。仮にそうならずとも連中は必ず他のマスターの耳目を惹く存在になるだろう」
「如何なさいますか?」
「無論、静観だ。今はまだ我々が動く時ではない。
武装勢力とグラスホッパーが衝突すればそれぞれのマスター、サーヴァントの正体に迫れるだろう。
我々は息を潜めて情報を集め準備とマスター、サーヴァントへの対策を整える」


727 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:33:01 yK7IA32Q0

武力を以って勢力を拡大するテロリスト勢力に一大組織になるまでに至った自警団、グラスホッパー。
多くのマスターが関心を寄せるであろう両勢力の存在は自らの存在を秘匿したい貴虎とキャスターにとって実に好都合だった。
彼らが派手に動き注目されればされるほど貴虎とキャスターの存在が露呈するのは遅れることになる。
その間に可能な限り魔力、情報を集め陣地を強化し打って出る準備を整えるのが大まかな方針だ。

その準備の一環としてのキャスターの強化魔術の検証も既に済ませている。
前衛を務められないキャスターに代わって貴虎が戦うためにアーマードライダー・斬月の戦力を底上げしておく必要があった。
そも強化の魔術とは単に人や物に魔力を通して神秘を与えることではなく、対象の存在を高める術理を指す。
成功すれば素人魔術師でもただのポスターに鋼鉄並の硬度を持たせることができるなど効果は高い。

まず最高難度とされる他人、つまり貴虎自身の肉体強化だがこれはキャスターにかかればそう難しいことではなくあっさり成功した。
戦極ドライバーもアーマードライダーの弱点でもあるということで強度を補強した。
ロックシードは試行錯誤の末エネルギー効率の強化という形に落ち着いた。
しかし斬月と斬月の武装である無双セイバー、メロンディフェンダーに関しては少々複雑な手順が必要であった。
元々ヘルヘイム環境でインベスを討伐しつつ生存することを目的に開発されたアーマードライダーは様々な機能を付与されているからだ。
視覚情報を補強する頭部の「パルプアイ」、センサーの役目を果たす「ヒイロシグナル」。
鎧部分にあたる「メロウラング」、腕力や脚力をそれぞれ強化する「モウユウリン」、「モウユウタイ」など数えればきりがない程である。
サーヴァント戦での生存率を一パーセントでも高めるためには斬月が持つこれらの武器、機能を余さず、かつ適切に、そして出来る限り瞬時に強化する必要があった。

流石のキャスターでも事前準備もなくこの難題を満たすことはできず、前段階として戦極ドライバーやロックシード、斬月の各武装とパーツを検分、解析した。
二日ほどかけて解析し、強化魔術を施す手順を最適化してようやくアーマーの展開から二秒で貴虎及び斬月を万遍なく強化することに成功した。
開発スタッフの一員でありアーマードライダーの機能を知り尽くしている貴虎が適宜キャスターに助言を送ったからこそ二日で済んだと言える。


728 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:33:53 yK7IA32Q0



「…マスター、貴方の弟君について報告するべきことがあります」

不意に、作業の手を止めたキャスターが意を決したように告げた。
貴虎は動かない。姿勢も表情も、一切が凍りついたように微動だにしない。
キャスターはそれでも構わず、サーヴァントの義務を果たすために言葉を続けた。

「彼はマスターの一人です。貴方が出かけた後、年若い少女のサーヴァントを屋敷に入れ会話をしていました。
いえ、今日だけではありません。五日以上前から同じことが続けられていました」

キャスターが召喚されてからユグドラシルタワーを拠点と定めるまでの間、彼女は呉島邸に逗留していた。
当然その間も光実は自宅で過ごし、アーチャーも呉島邸を見張っていた。
しかしアーチャーはついぞキャスターを捉えることは出来なかった。キャスターが魔術によって気配最大限隠蔽していたからだ。
そもそも気配を絶つ、あるいは隠す魔術というものはそうマイナーなものではない。
そしてメディアは神代の魔術師にして逃げ隠れることにかけては当代随一とも呼べる技能を誇る。
暁美ほむらの探査能力が他より劣っていたわけではなく、ただただ相手が悪すぎた、と形容するべきであろう。
もしほむらが呉島邸内部まで踏み込んで探査すれば違った結果もあったかもしれないがそこまで大胆な行動は光実が許さなかった。
光実としては兄がマスターであるかどうか確認するより自分がマスターであることを知られないことを優先した結果だ。
そして貴虎に宿った令呪もまたキャスターによって隠蔽されていたため光実は兄がマスターであるという確証を掴みきれなかった。
閑話休題。



「………………………そう、か」

長い、長い沈黙の後小さな声で、絞り出すように口を開くのが精一杯だった。

「あまり驚かれていませんね」
「……心のどこかで可能性はあると思っていた。
だが実際に現実になってみると思いの外堪えるものだな…」

貴虎は自分と同じように光実も現状を良しとしていないだろう、とわかっていた。
光実とて好んでオーバーロードに手を貸しているわけではないだろう、と。
偽りの日常を続けながらも弟がマスターなのではないかという疑念は心の奥底に確かにあった。
同時に日常が決定的な破綻を迎えるその瞬間までは兄らしく在りたいという願いがあった。
だがそれもここまで。ここより先は聖杯を巡り争うマスターとして光実と向き合わなければならない。


729 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:34:37 yK7IA32Q0

「……如何なさいますか?」
「マスターである以上、光実も敵の一人と判断するしかない。血を分けた肉親であってもな……。
今のあいつが正しいことのためだけに聖杯を使うとは思えない。何より光実を利用しているオーバーロードに聖杯が渡る可能性がある。
兄としても、マスターとしても、一人の人間としても光実だけは勝たせるわけにはいかない」

光実はオーバーロードを利用しているつもりかもしれないが、貴虎に言わせればそれは根拠も後ろ盾も無い妄想でしかない。
対等な同盟や協力関係というものは両者の力関係がある程度拮抗して初めて成立する。
世界を浸食するほどの絶大な力を持つオーバーロードとただの一個人で対等な協力関係など生まれるわけがない。
それに気づけていない光実が聖杯を獲ったところでオーバーロードに出し抜かれ奪い取られる可能性は決して低くないだろう。
オーバーロードが聖杯を手に入れるようなことがあれば今の人類に未来は無い。
その結末だけは絶対に避けなければならない。

「オーバーロード、ですか……?
差し出がましいようですがマスター、そのオーバーロードなる存在と貴方の弟は貴方が聖杯を求める理由と関係しているのですか?
貴方は聖杯に何を願うつもりなのですか?」

貴虎はキャスターを利害の一致したビジネスパートナーのようなものと考えてきた。
だからこそ互いに聖杯への願いを語る機会を設けてこなかった。別段そうする必要はないと考えていた。
ヘルヘイムの果実やインベスを発見し、貴虎がそれらへの知識を披露してもキャスターは深く詮索することをしなかった。
しかし実の家族がマスターと判明した以上何の説明もしないわけにはいくまい。
何から話すべきか、暫し思案してから顔を上げ口を開いた。

「………少し、長い話になる」


730 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:35:28 yK7IA32Q0













「………はぁ」

寒さが身に染みる街並みの中で前川みくは小さく溜息を洩らした。
手に持った単語帳に書かれた英単語も頭に入ってくれない。
昨日見たあの光景が何度も思い出され、どうしても集中できない。
アーチャーは傍にいない。彼女には家にいるよう懇願して外に出てきた。
せめて学校やプライベートの時だけは聖杯戦争から遠ざかりたかった。

「もう一度行ってみようかにゃ……行ってみようかなあ」

思わず出そうになってしまった猫言葉を抑えて昨日見たステージに思いを馳せる。
今日は図書館で勉強をするつもりでいるのだがこのままでは集中できる気がしない。
踵を返そうとしたその時、思いがけず昨日のステージにいたある人物を見つけた。



「あの…!呉島先輩、ですよね?」
「え?」

図書館へ向かう途中、光実は同年代の少女に後ろから声を掛けられた。
振り向いた先にいたのは光実も一応見知った、同じ学校にいる眼鏡をかけた少女だった。

「えっと、確か前川さん…だったっけ?」
「はい!」

前川みくは校内の男子学生の間ではちょっとした有名人であった。
今時珍しい日本人らしい清楚で真面目な雰囲気と可愛らしい容姿から隠れたファンは多いと聞く。
基本的に学校では没交渉な態度を取る光実も彼女の噂、顔と名前程度は知っていた。
もっとも年下に興味のない光実にとって恋愛対象にはなり得ないが。

一方呉島光実という少年は校内の半数以上の生徒が知っているほどの有名人だった。
ゴッサムでウェイン産業と二分する大企業、ユグドラシルコーポレーションの御曹司にして学園屈指の秀才。
不良に分類されるグループでさえユグドラシルを敵に回すことを恐れて彼には手を出すことができない。
みくと同学年の女子生徒たちの中にも彼に憧れを抱く者が少なくない。
そんな二人が何の因果かここで出会った。



「どうしたの?僕に何か用?」
「えーっと、その……見間違いだったらごめんなさい!
昨日、ビートライダーズのステージで踊ってましたよね!?」
(こいつ………!)


731 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:36:11 yK7IA32Q0

光実の表情が強張った。図星だと教えているようなものだと気づくのに五秒かかった。
まさか見られていたとは、と臍を噛んだ。
ビートライダーズの活動地区には基本的に光実の通う学校の生徒は近寄らないため油断していた。
学生が寄り付かない理由の一つは非合法組織の存在なのだが、最近になって現れたとある緑色の正義の戦士によって彼らの多くが駆逐された。
みくがビートライダーズのステージに訪れたのもその戦士、つまりアーマードライダー龍玄にあやかってのことだ。
要するに、全ては光実自身の身から出た錆である。

「……ちょっと場所を変えようか。ここで話すと目立つしね」
「あっ……はい」

半ば有無を言わさぬような声音で移動を促す光実に思わず従ってしまった。
彼について行った先にあったのは落ち着いた雰囲気のカフェテリアだった。どうやら先にカウンターで注文を済ませる形式のようだ。
学生のみくにとっては手が出ないとは言わないまでも財布に結構なダメージが来る高級店だ。

「いいよ、奢るから。何でも好きなものを頼んでよ」
「え、えっと……じゃあカフェラテとサンドイッチで……」

しかし光実にとっては全く問題ない程度の出費だったらしく、自分の注文も含めてポンと金を出してしまった。
御曹司の金回りの良さに感嘆しつつ、やはり聞くべきではないことを聞いてしまったのではないかと後悔が押し寄せてくる。

(うぅ…やっぱり怒ってるかにゃあ……)
(こいつは絶対にここで口止めしておかないと……)

光実がダンスのことを口外していないであろうことはみくにも想像はついていた。
もし誰かに話していたら噂の一つには昇っていないとおかしいのだから。
それでも、みくにはどうしても光実に言いたいことがあったのだ。
光実もまたチーム鎧武の一員であることを知られた以上みくを放置する気はなかった。
あまり手荒な手段に訴えたくはないが何としても口外しないよう釘を刺しておかなければなるまい。







カフェの食事は日本人であるみくの口にも合う繊細で上質なものだった。
この店はユグドラシルの傘下にある店で日本人の利用者も数多いため、そうした客層に合わせた味付けのメニューが豊富に揃えられていた。
アメリカナイズされた大味な食事に辟易しつつあったみくにとっては懐かしいとすら思える日本人向けの味だった。
光実は既に家で朝食を摂った後なのでコーヒー一杯だけを頼んでいた。


732 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:36:51 yK7IA32Q0

「…それで前川さん、さっきの話のことだけど」
「あっ、は、はい!わかってます!誰にも喋ったりしません!
ただみ…じゃなくて、私、どうしても先輩に伝えたいことと、聞きたいことがあったんです!」

少々オーバー気味の仕草で必死に光実に害意が無いことを示す。
さすがに優等生で通っている異性の上級生に対して普段の一人称を使うのは気恥ずかしく感じられた。
一度深呼吸してから意を決し、強く光実を見据えた。




「昨日、先輩が鎧武の人たちと踊ってるのを見て、すごいって思ったんです」
「………え?それは、どうして?」

光実はよほど虚を突かれたのか困惑気味に聞いてきた。
実際光実にとっては完全な想定外といえる感想だった。
ユグドラシルの御曹司、呉島光実としてはビートライダーズに所属しているという事実は恥だという考えが常にあったからだ。
だから元の世界でもこの世界でも誰にも知られぬよう二つの顔を使い分けてきた。いや、龍玄としての仮面を含めれば三つか。
ともかく呉島の次男としての光実を知る人間からダンスチームに所属していることを賞賛されるということは彼の人生で一度もないことだった。

「みk…私はこの街が怖くて、住んでいてもあんまり好きになれなかった。
でも昨日遠出した時にチーム鎧武の人たちと先輩が踊ってるのが見えたんです」



――――――みんな、楽しんでるぅー!?


――――――ここからは俺達、チーム鎧武のステージだ!!



生命力に溢れた女性と元気な男性が中心になっているらしいチーム鎧武のダンスは沈んでいたみくの心に光を灯した。
キラキラとした照明も丁寧にセットされたステージもないけれど、踊っている彼らはどこまでも輝いて見えた。
この荒んだ世界でそれでも自由を謳い、“自分たちはここにいる”と誰よりも高らかに示していた。
そしてその中には同じ学校に通う光実の姿もあった。学校という同じコミュニティにいる人間がステージに立っていたのはこの上ない衝撃だった。

「学校とか通学路とか、普段過ごしてるところから一歩外に出たらそこは地獄みたいに怖い世界が広がってる。
それでも自分から安全な世界を飛び出していって自分の道を歩いていけるって、とってもすごいことだと思います。
だから教えてほしいんです。先輩はどうしてこの街で踊ろうって思ったんですか?」


733 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:37:39 yK7IA32Q0

あまりにも純粋な瞳で直球に問うてくるみくにどうしてか困惑してしまう。
普段は大人が相手でも上手く回る口がどうしても回ってくれない。
調子を崩された光実は思わず彼らしくなく本音を語ってしまっていた。

「………まあ、その、窮屈だったから、かな。呉島の家に生まれたってだけで将来が決められてるようなものだから。
家族が敷いたレールからどうにかして外れてみたかったんだ。ダンスはそのための手段だっただけだよ」

人間は大抵の場合他人から褒められれば悪い気はしない生き物だ。
特に呉島光実という少年は歳相応以上の承認欲求の持ち主でもあった。当人は自覚などしていないが。
だからこうして直球に賞賛されると普段被っている優等生の仮面がずれてしまう。

「え?でも確か先輩の家ってユグドラシルに務めてるお兄さんがいるって…」
「確かに家を継ぐのは兄さんだけど、僕もユグドラシルで兄さんを支える仕事に就くように将来設計されてるんだ。
そういうのは嫌だから、本当の自分を出せるところに行ったんだ。別にプロのダンサーになろうとかそこまで考えてるわけじゃないよ」

そうだ。全ては楽しくも充実したあの日に帰るために。聖杯でそれを為すために光実はここにいる。
時間を操るサーヴァントがいるなら過去の改変と時間の遡行程度どうとでもなるはずだ。
ヘルヘイムだろうとオーバーロードだろうと実の兄だろうと誰にも邪魔はさせない。

「前川さんも何か悩んでいるみたいだけど、少なくともただじっとしているだけじゃ何も良くならないと思うよ。
本当に欲しいものがあるなら自分で動いて勝ち取らないと何も手に入らないし何も守れない。
覚悟を決めて動かない限り、何も変わらないでずっと弱い自分が残るだけなんだ。だから僕は……」

そこまで言ってからふと我に返った。
いつの間にか妙なことまで語ってしまっているのではないか?

(くそっ、今日の僕はどうかしてるぞ!何で大して面識もない下級生相手にこんなに長々と自分のことを話してるんだ!?疲れてるのか?)


734 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:38:22 yK7IA32Q0
みくを見れば、ポカンとした様子で僅かに口を開けている。
当然だ。親しくもない上級生からいきなり説教じみたことを言われれば誰だってこうなる。
光実は慌てて「今の話は忘れてくれ」と言おうとした。だがみくに機先を制された。

「…先輩って熱い人だったんですね」
「……え?」
「あ、ごめんなさい。学校での先輩って誰とも話さない無口な人ってイメージだったから…。
でもそうですよね。自分の弱いところから逃げてても何も変わらない……。何も出来なくても、せめて向き合わなきゃ……」

妙な勘違いをされた挙句自分の世界に入ってしまったようだ。
しかし真剣そのものであることは見て取れるので声を掛けるのも憚られる。
しばらくして鞄を持って勢いよく立ち上がった。

「先輩、みく帰ります!お食事と相談、どっちもありがとうございました!」
「う、うん。あ、僕がビートライダーズにいることは……」
「はい、内緒ですよね!すいません、失礼します!」

何やら慌てた様子で駆けだしていってしまった。
ただこちらが悪印象を与えてしまったわけではないらしく、むしろ意図せず彼女の悩み事の解決に貢献したように思える。

「まあ元気になったなら良いか」

呉島光実という少年は自分のコミュニティの外にいる人間に対してひどく冷淡である。
しかしその一方、コミュニティ内の人間や自分の価値を認めてくれた者には寛容でもある。
「元気になったなら良い」という言葉が口をついて出る程度には光実は前川みくに好感を持っていた。

『マスター、今大丈夫かしら?』

自分も店を出ようとした時、アーチャーから念話が届いた。
念話が可能ということは彼女は比較的近くにいるのだろう。

『どうしたの?マスターかサーヴァントでも見つけた?』
『そういうわけではないのだけれど…そのカフェの近くに奇妙な植物があるわ。
路地裏を中心に繁殖してて、紫色に近い果実のようなものまで生ってる。正体はわからないけど注意しておいて』
『……何だって?』


735 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:39:27 yK7IA32Q0



前川みくは来た道を引き返し家路へと急いでいた。
今すぐにでもアーチャー、ジャスティスに会って話をしたかった。

(みくに何ができるかなんて全然わからないし、もしかしたら本当に何もできないのかもしれないけど…やっぱりこのままじゃ駄目…!
先輩の言う通り、ちゃんと動かなきゃちっとも変わらないし良いことなんて何もない!)

呉島光実と話してわかったことがある。いや、再認識したと言うべきだろうか。
一度向かい合って話してみなければ相手の人となりはわからない。みくはまだジャスティスのことをほとんど何も知らない。
マスターとしての心構えや聖杯戦争での戦略云々はわからない。何か現状を打開する策が見えたわけでもない。
それでも、光実のおかげで今為すべきことがわかった。まずはみく自身のことを知ってもらい、みくもジャスティスのことを知るのだ。
そうして初めて前川みくは聖杯戦争というものに向き合ったことになる。



「え……?」

だがこの世界は少女のささやかな願いを容易に果たさせるほど優しくはない。
みくの前に突如現れたヒトガタ。だがそれが人間ではないことは明らかだった。
金色の頭部に緑色の胴体に白い下半身。何よりも右腕に生える見るからに鋭利で重厚な鉤爪。
ヘキジャインベス。ビートライダーズの一員、初瀬亮二がヘルヘイムの実を食べて変貌したインベスと同一の個体がみくの前にいた。


【UPTOWN SOUTH PT/1日目 午前】

【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]健康、恐怖で混乱
[令呪]残り三画
[装備]私服、眼鏡、鞄
[所持金]五千程度
[思考・状況]
基本:死にたくない、誰も殺したくない
0 何なの、あれ……!?
[備考]
※呉島光実がマスターだと気づいていません
※恐怖以外の思考が吹き飛んでいます


736 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:40:14 yK7IA32Q0


【呉島光実@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康、精神的疲労(小)
[令呪]残り三画
[装備]私服
[道具]鞄、戦極ドライバー、ゲネシスドライバー、各種ロックシード
[所持金]現金十万程、クレジットカード(ゴールド)
[思考・状況]
基本:無駄な戦闘は避けつつ聖杯を狙う
0 奇妙な果実に植物…まさか……!?
1 前川みくを口止めできたかが少々心配
2 アーチャーが弱すぎて頭が痛い
3 兄さんはマスターなのか?
[備考]
※所持ロックシードの内訳は以下の通りです
ブドウ、キウイ、メロンエナジー、ローズアタッカー

※前川みくがマスターだと気づいていません
※ヘルヘイムの植物の存在に気づきました
※呉島貴虎がマスターではないかと疑っていますが確証は掴めていません。もしマスターであった場合殺すのは最後にするべきと考えています
※聖杯は時間の操作や平行世界への干渉も可能だと考えています


【アーチャー(暁美ほむら)@劇場版魔法少女まどか☆マギカ〜叛逆の物語〜】
[状態]健康
[装備]魔法少女の服、双眼鏡
[所持金]光実に依存
[思考・状況]
基本:今のところは光実の采配に従う
1 あの植物と果実…何かしら?
2 引き続き周辺を警戒する
[備考]
※呉島貴虎がマスターではないかと疑っていますが確証は掴めていません











キャスターはいつものように使い魔で監視網を広げ陣地の形成やヘルヘイムの果実の解析を進めていく。
勝つための策を推し進めながら、しかし彼女の脳裏には先ほど仕事に戻った貴虎の言葉が焼き付いて離れなかった。



―――私は元々ヘルヘイムの森の侵略から人類を守る計画に携わっていた。もっともその実態はノアの方舟のようなものだったがな。

プロジェクト・アーク。ヘルヘイムに侵略された環境下でも人類が生き残り文明を残すための計画。
そのために開発されたのが生物をインベスに変貌させる猛毒の果実を無害なロックシードに変換するベルト・戦極ドライバー。
ロックシードをセットした戦極ドライバーを装着することで生存に必要な栄養を賄い人はヘルヘイム環境下でも生存することができる。
だが製造にかかる時間や必要なレアメタル等の関係上量産できるドライバーの上限は十億だけ。つまり救える人類は十億人。
残る六十億の人間がヘルヘイムの森に取り込まれれば早々にインベスと化し救われた十億人に牙を剥くのは自明の理。
故にユグドラシルは六十億の人類を世界から間引くこととし、貴虎はその計画の責任者に任ぜられた。


737 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:41:02 yK7IA32Q0



―――私は同期入社した友人や同僚たちと共にプロジェクトアークを推し進めていた。だが彼らは人類を救うつもりはなかったようだ。

戦極ドライバー、そして次世代型のゲネシスドライバーを開発した男、戦極凌馬は私欲のために貴虎を裏切り抹殺を図った。
彼は森を操り侵略を止めるも進めるも自在な力を持つ超越生命体・オーバーロードの存在を事前に知っていた。
そして自らがその力を手にするために貴虎の権力を利用しオーバーロードの存在を知られるや貴虎の排除に乗り出した。
だがその直後からオーバーロードが本格的に地球への侵攻を開始。劣勢となるや凌馬は逃走し沢芽市から姿を消した。



―――そして、弟の光実は圧倒的な力を持つオーバーロードの軍門に下り、人類を裏切った。
私がこの街に招かれたのはちょうどあいつと決着を着けようとしていた時だった。

そんな中、光実は貴虎が落としたゲネシスドライバーを悪用し仲間であったはずの葛葉紘汰抹殺に乗り出し挙句の果てにオーバーロードに与した。
全ては光実を追い詰め正しく導いてやれなかった自分の責任だと貴虎は言い切った。
正しさ、責任、呉島の男としての誇り。押しつけに等しい教育方針が光実に多大なストレスを与えたのだろうと。



―――いつも騙され、利用されるばかりの馬鹿な兄の背中を見てあいつはこう思ったのだろう。
自分はああはなるまい、騙されるぐらいなら騙す方が良い。裏切られるぐらいなら裏切る側に立つ方が良いと……。

きょうだい殺し。生前キャスターが女神の呪いによって犯した過ち。
それがこのゴッサムで彼女のマスターとその弟によって繰り返されようとしている。
一方的な殺人と骨肉の殺し合いという違いはあるが。



―――まあ、つまり君を召喚したマスターとはそういう男なんだ。
マスターとして不甲斐ない身であることは承知しているが、どうか聖杯を手にするまで力を貸してほしい。

呉島貴虎はこれほど手酷い裏切りを受けても尚人類を救うために聖杯を求めるのだという。
それがキャスターには解せなかった。そして問わずにはいられなかった。


738 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:41:41 yK7IA32Q0



―――マスター、貴方は復讐を果たそうとは思わなかったのですか?
聖杯を以ってすれば貴方を裏切り追い落とした者どもに鉄槌を下すことなど造作もないことでしょう。

人々の都合で祭り上げられ利用され、裏切られたならばその相手に対して憎しみを抱かなければ嘘だ。
少なくとも英霊メディアは魔女の役割を求め押しつけた人間への復讐を誓った。
そして貴虎の半生はメディアのそれと似通っている。ならば彼には自身を裏切った者に復讐する権利があるはずだ。
だが。



―――確かに凌馬たちへの怒りが全く無いといえば嘘になる。
だが私個人の恨み辛みよりも今滅亡に瀕している人類を救う方が先決というだけだ。凌馬とは元の世界に戻った後決着を着けるつもりだ。

貴虎はあくまでも人類救済のために聖杯を使うことを曲げない。その過程で実の弟と対立することになろうとも。
馬鹿げているとしか思えない、度し難いまでの無欲さだ。



―――それに、今でも信じている父の教えがある。
ノブレス・オブリージュ。高貴なる者の義務のことだ。
人より多くのものを貰って生まれた私には力なき人々を守る責務がある。
だが今にしてみれば、それ以外の生き方を学ばなかっただけなのかもしれない……。



「…………」

つくづく愚かな男だ、とキャスターは思う。
例え聖杯を手に入れ人類を救えたとて人々はそれで満足しない。ヘルヘイムの侵略という惨事が起きた責任を誰かへと押しつける。
貴虎が不満を溜めこんだ人間達の悪意の受け皿として利用される可能性は十分に有り得ることだ。
もしそうならずともあの性格だ、また誰かに体よく利用されるのは目に見えている。
なら放っておけばいい。弟と殺し合いを演じようが誰に騙されようが素知らぬふりをしていればいい。
この身はキャスター。マスターを失ったとしても二日は存命できる。その間に新たなマスターを探せばいいだけのこと。

なら何故あの男に魔力避けの道具など手渡した?
何故抗魔力を持たないあの男を傀儡にして支配しない?
何故―――あの男の愚かしくも実直な生き方から目を逸らしきることができない?

「今はまだあの男に死なれては困る。支配すればあの男の戦士としての能力を損なうかもしれない。そう、それだけよ……」


739 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:42:21 yK7IA32Q0







「キャスターには頭が下がる思いだな」

キャスターから受け取った魔力避けのアミュレットを握りながら彼女が自分のサーヴァントであったことに感謝する。
これで魔術を操る他のキャスター相手にも多少は自衛できるだろう。他のクラスのサーヴァントではこうはいかない。
戦闘には役割分担というものがある。優れた魔術師なら確かにセイバーを引いた方が互いの持ち味を生かせるだろう。
しかし戦士としての能力しか持ち合わせない貴虎にはキャスターの方が合う。心底から彼女がサーヴァントで良かったと思う。
だが今は別の問題もある。

「光実………」

今も聖杯を獲るために動いているであろう弟のことを考えると胸が痛む。
ヘルヘイムさえ根絶できれば敵対することもなくなると思っていたが儚い願望に過ぎなかったらしい。
元より光実との決着は兄である貴虎が着けなければならなかったこと。その舞台が沢芽からゴッサムに移っただけだ。

想像する。斬月に変身した自分と斬月・真に変身した光実が切り結び殺し合う姿を。
ソニックアローをいなし、的確に斬月・真に斬撃を加えていく自分を想像する。
自惚れではなく既存のロックシードやアームズウェポンを知り尽くしている貴虎なら十分可能な芸当だ。
そして必殺技を起動し斬月・真に迫る自分を想像する。だが。

―――斬月・真を、光実を打ち倒して最後に立っている自分を思い描くことだけはどうしてもできなかった。


740 : 運命はもう止められないとしても ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:43:01 yK7IA32Q0


【MIDTOWN COLUMBIA PT/1日目 午前】
【呉島貴虎@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]黒のスーツ、魔力避けのアミュレット
[道具]黒いコート、戦極ドライバー、各種ロックシード
[所持金]現金十五万程、クレジットカード(ゴールド)
[思考・状況]
基本:慎重に立ち回りながら聖杯戦争を勝ち抜く
1 光実……………
2 グラスホッパーと武装勢力(志々雄真実の一派)の争いを静観し、マスターやサーヴァントの情報を手に入れる
3 自分がマスターであることとキャスターがユグドラシルに潜んでいることを極力知られないようにする
4 準備が十分に整ったら打って出る。その際は斬月に変身して正体を隠す。
5 できるだけ市民(NPC)に無用な犠牲を出したくはないが……
6 今後自宅に帰るべきか、帰らないべきか……
[備考]
※所持ロックシードの内訳は以下の通りです
メロン、ヒマワリ×4、マツボックリ

※キャスター(メディア)の魔術によって肉体及び斬月の機能を強化できます。
強化魔術が働いている間はサーヴァントにダメージを与えることができます
※ユグドラシル・コーポレーションの情報網から聖杯戦争に関係する情報を集めています
※グラスホッパーの内部にマスター、サーヴァントがいると考えています
※武装勢力の頭領(志々雄真実)がマスターであることを把握しました
※呉島光実がマスターであることを把握しました
※ヘルヘイムの森及びインベスの存在を認知しています。これについては聖杯が意図的にヘルヘイムを再現したのではないかと考察しています
※魔力避けのアミュレットはDランクの対魔力に相当する効果を得られます


【キャスター(メディア)@Fate/stay night】
[状態]健康
[装備]ローブ
[道具]ヘルヘイムの果実×4、杖、ルールブレイカー
[所持金]貴虎に依存
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れ、受肉を果たし故郷に帰る
1 今は貴虎の采配に従う
2 陣地の構築や監視網の形成、ヘルヘイムの果実の解析を進める
3 状況次第では貴虎を見限る………?
[備考]
※ユグドラシル・コーポレーションの地下区画に陣地を形成しています。
今はまだ陣地の段階ですが時間経過で神殿にランクアップします
※陣地の存在を隠蔽する魔術が何重にも敷かれています。
よほど感知能力に優れたサーヴァントでない限り発見は困難でしょう
※現在ヘルヘイムの果実の解析を行っています。
解析に成功すれば果実が内包する魔力を無害な形で直接抽出できるようになります。
※ユグドラシル・コーポレーションの支社長をはじめとした役員、及び地下区画に出入りする可能性のある社員、職員に暗示をかけ支配下に置いています
※使い魔による監視網を構築中です。
現在はユグドラシル・コーポレーションを中心としたゴッサムシティ全体の半分程度ですが時間経過で監視網は広がります
※グラスホッパー、武装勢力(志々雄真実の一派)、呉島光実以外のマスター、サーヴァントに関わる情報を持っているかは後の書き手さんにお任せします
※魔力避けのアミュレットを貴虎に渡しました。
時間をかければより高品質な魔術礼装を作成できます。


741 : ◆sIZM87PQDE :2015/06/13(土) 18:44:24 yK7IA32Q0
以上で投下を終了します
感想や不自然な点の指摘等ありましたらよろしくお願いします


742 : 名無しさん :2015/06/13(土) 19:19:48 1FbR3j.k0
投下乙です
貴虎の社会的立場を基盤確保や隠れ蓑として掘り下げるのは上手い
同居人に対しても一歩リードできて、後は主従共々迷いが課題か
ミッチの方は、久しぶりに権力と無関係の自分を評価してくれる人と出会えたようで
それがどう影響与えるかはまだ未定にしても、何かしらのストッパーになれば…?


743 : 名無しさん :2015/06/13(土) 19:30:32 esqcSOIU0
投下乙です!
やっぱり策謀に長けるキャスターを駆使した篭城は強力無比
メロンニーサンとの戦力としての相性は抜群だし、この主従は中々厄介そうだ
ニーサンの境遇に心境を揺らされるキャス子の今後も気になる
みくにゃんはミッチのおかげで何だかんだで褌締め直せそうかな
でも今は兎に角インベスから逃げろ前川ァ!


744 : ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:44:36 9yra1DSw0
投下お疲れ様です
流石に五次でならしたキャスターだけあって策謀と言い籠城と言いお手の物、といった感じがありますね
しかも今度はマスターの地位も高い上に、戦闘能力もかなりのものですから、今後の展開次第で相当厄介な事になりそうです
OPの段階でいつか裏切ると胸中で思いながらも、何だかんだ見捨てようにも後ろ髪が引かれる思いでいるメディアの描写も良い
その一方で、兄は鈍いからバレてないと自信満面の癖に、引き当てたサーヴァントの格の違いで早速主従とバレているミッチとの対比が面白いです
鯖が一芸特化の上に、対策されるとどうしようもないほむらをどう運用するのかが、今後見所でしょうか
みくの方は……早速マジックナンバー(意味深)が点灯してますね……。ジャスティスも近くにいないし死にたいんですかね……?
各々の登場人物の心理や、日常の過ごし方、そして聖杯戦争をどう切り抜けるかの指標が確認できて、非常に面白かったです

作品を書き終えたので、投下します


745 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:45:22 9yra1DSw0
1:

 ゴッサムシティと言う大都市は、ある意味で奇跡の都市と換言しても間違いはなかった。
国内外問わず、治安や住民層の悪さは音に聞こえ、特に労働格差など、ゴッサムシティと言う街の在り方を変えねば是正出来ない程に深刻なものだ。
この街を根城、或いは支社とするマフィアやギャング、ジャパニーズ・ヤクザなどと言った裏社会の組織やグループの数は数百を超え、
此処に構成員が寡数からなる弱小の組織やグループを含めると、最早警察や行政ですら統計不可能な数値になると言う。
ゴッサムに血が流れず、銃弾が一発も放たれない日などない。今日も何処かで、人知れず誰かが闇に葬られている。
この街で人が死ぬのに、表の住民も裏の住民も関係がない。誰でも等しく、死ぬ手筈は整えられてあるのだ。

 諸人は言う。ゴッサムは合衆国の中でも有数の超経済都市であると。経済規模だけで見れば、ニューヨークや東京、ロンドンに香港と言った世界都市にも比肩すると。
事実である。この街にはウェイン・エンタープライズを筆頭とした世界的にもメジャーな大企業が幾つも存在するし、最近では日本の医療福祉の超大手、
ユグドラシル・コーポレーションの誘致にも成功している。マンハッタンもかくやと思わせる程に建ち並ぶ高層ビルの数々は、この街の経済の隆盛の証だった。
夜になれば百万ドルどころか、百億ドルにも手が届かんばかりの夜景を演出するこの街は、今の四十から五十代の大人が子供の頃に夢見た、
近未来の大都市のモデルケースそのものだろう。……その一方で、この街には先述したような是正不可能なレベルにまで開いてしまった、
経済格差と言う問題が横たわっており、名のある企業に勤めるサラリーマンと低所得者の収入の差は、年々無慈悲に開いて行く。
低所得者は当然住む場所が限られ、ホームレスや浮浪者が横たわり、悪酔いした酔漢の吐いた吐瀉物が其処らに見られるスラムで生活する他なく、
生活も風化しかけた砂漠の只中の岩柱の様に不安定であるから、非合法かつイリーガルな商売に手を出す者も多い。麻薬の売買や売春である。
ゴッサムの治安や住民層の悪さは、この街を根城にする犯罪組織のせいばかりではない。広がり続ける経済格差、これに対して手を打てない行政、資本主義をストイックに追及し過ぎる企業もまた、この街の悪評を助長させるに足る原因であった。

 しかしそれでも、ゴッサムはあの悪名高い荒廃都市デトロイトの二の舞になる事がなかった。
その事は、現在進行形でこの街のGDPが向上中である事や、国外の名だたる企業の誘致が成功している事からも窺える。
街の惨状に嘆き出て行く者もいる一方で、出て行った人の数とほぼ同じ数の、外からやって来て定住する者も存在する。
この街の実態が広く知られていながら、何故この街に夢を託して足を踏み入れる者が多いのか。それは、誰にも解らない。
最も良い解釈は、この街には、人を惹きつけてやまない魔力めいたものが漂っているのだろう。思考停止極まりない考えだが、それが一番自然だった。
犯罪都市の悪名を轟かせて居ながら、確かな経済が息づき、荒廃と無人とが無縁の街。だからこそ、奇跡の都市なのであった。

 ゴッサムは最近になって、子供の教育と言う領域に力を入れ始めた。
今の時代を生きて行くのに相応しい、賢明な子女の教育に寄与したい。行政に携わる者の声明だった。実に、尤もらしい。
その教育に与れる人物に、低所得者やストリートチルドレンが含まれていない事を見ぬフリすれば、だが。
教育格差の問題はさておいて、その試みは現状成功していると言っても良かった。
犯罪都市と言う悪名を抱えて居ながら、ゴッサムのハイスクールやカレッジに入学を希望する海外の学生が、後を絶たない。
これらの教育機関自体が、優秀なのである。行く行くは、ハーバードやMIT、イェールと言った名門大学と肩を並べる日も近い。


746 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:45:54 9yra1DSw0
 音もなく、一台の車が車道の脇に止まった。
自動車に対する関心が他国とは一線を画すアメリカは愚か、それ以外の国でも衆目の目線を一度に集めてしまいそうな、黒光りする漆黒の高級車。
メルセデス・ベンツのSクラスクーペである。スタイリッシュなエクステリア・インテリアデザインは若者の感性を魅了し、その値段は頭金が余程ない限りは手持ちの現金は当然の事、十年以上のローンを組まされる事などザラな程に高価なドイツ車だった。

 男女の目線が、ブラックダイヤの様に妖しく光り輝くベンツの車体に注がれる。
そんな沈黙なぞ知った事かと言わんばかりに、乗車していた者が後部席から外に出、歩道に佇立しながら道を歩く人々を一瞥する。殆どの者は年の若い学生であった。

 ――愚図ばかりか――

 尊大な態度と足ぶりで、車から出て来た者が闊歩する。その様子を見るや、ベンツは車から出て来た者から遠ざかって行く。学生達が、目を逸らす。
この二十一世紀に時代錯誤も甚だしい黒マントを羽織った、見事なブロンドのツインテールの少女だった。それに、若い。
周りの学生達の多くは二十歳にも満たない年齢であり、色恋沙汰や青春を謳歌出来る年齢だと言うのに、彼女は、彼らよりも若そうに見えるし、実際若かった。
しかして、赤縁の眼鏡の奥で光る碧眼は、青春を満喫するだけの学生には到底持ちえない、抜身の刀に似た鋭い光を湛えており、非常に威圧的だった。
そして極め付けが、彼女の胸中であった。彼女の――ゴッサム大学で教鞭を振う若き考古学の教授、ミュカレにとって、愚図と言う言葉は、この大学に通う全ての学生全ての教職員の事を指している。

 目線の先に、ゴッサム大学の正門と、その先に広がる本校舎と広大な敷地が広がっている。
多額の金を駆使して最新の設備を備え付け、学生や外来からの留学生を驚かせるような近未来的でスタイリッシュな建築様式を建築家に依頼し、
憩いの場としても活用してもらえるよう緑も学園内の敷地のあらゆる所に植え付けて。これ以上下らない場所など、果たしてあるのだろうか。
街のイメージを良くしようとブラッシュアップを欠かさず行い、学生から金を集める事に腐心し、教える事も真新しい事など何もない。
ミュカレにとってこの大学は、小賢しい豚が自らの餌を工面する為だけに建てた地獄としか映っていなかった。
それでも、この大学に通い何かを得ようとし、この大学で教鞭を振う事を生きがいとする教授もいると言うのだから驚きだ。これを、愚図と呼ばずして何と呼ぶのだろうか。

 このような場所になど、本当の事を言えばミュカレは足を運ぶ事は愚か、大学の威容を目にする事もいやな程だった。
であるのに彼女がゴッサム大学にこうして赴く訳は、聖杯戦争の戦略上重要な事だと考えていたからだ。
一言で言えばミュカレは、迂闊に大学をサボタージュ出来ない。何故ならばミュカレは、有名人であるからだ。
ゴッサム大学と言うコミュニティの中で著名であると言うだけでも彼女にとっては致命的なのに、大学の外でも有名人であると言う事実が拙かった。
彼女の名が知れ渡っていると言うのは無理からぬ事だった。何せ二十歳にも満たない年齢で大学教授、その上考古学と言うメジャージャンルの権威の一人である、
と言うのだから名が知れていない訳がない。つまり、彼女が大学を休む――正当な理由であっても――、と言う事は少なくない影響を及ぼすのだ。
大学内に聖杯戦争の参加者が潜んでいないとも、限らない。大学を休んだ結果、足がついてしまう、と言うつまらない事態だけは避けたい。
今の所学内にサーヴァントの魔力や、魔力を有した生徒や教職員は確認出来ていないが、アサシンが気配遮断で潜んでいたら流石の彼女らもお手上げだ。
結局、参加者である事が露呈しない一番確実な方法は、聖杯戦争など知らないと言った顔で日常を送る事である。全く反吐が出る話だが、だ。


747 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:46:55 9yra1DSw0
 正門をくぐり、大学の敷地内をミュカレは歩く。
耳を澄まさなくとも、彼女に対する愚痴が聞こえて来た。年下の癖に偉ぶっている、生意気である、可愛げがない、服装がおかしい、外見的特徴が多過ぎて逆に没個性だ等々。
陰口を叩くのならば声をもう少し絞れと言いたくなる。驚くべき事にこれらの愚痴は学生だけならばまだしも、
教職員も口にしているというのだから、ミュカレにしてみれば救いようがない。彼らの不満の原因の殆どは、彼女の年齢が原因であった。
若造が上の地位に立つ事を、ロートルや、その若造と同年代の世代が嫌うと言う事は、古今東西変わりない。異世界のゴッサムでも同じであるらしい。
若くしてゴッサム大学の教授の上に、考古学界の権威と言う、絵に描いたようなサクセスストーリーぶり。今時小説の登場人物の設定にするのも勇気がいる程の完璧さだ。
これで、嫉妬をするなと言う方が、考えてみれば無理な話なのかも知れない。

 ――つまらんものに囚われおって……――

 地上における、仮初の立場や経歴などと言ったものに執着するからこそ、自分がお前達の救済に乗り出さなくてはならなくなったのだと声を大にして言いたかった。
肉体とは魂を閉じ込める牢獄とは、洋の東西問わぬあらゆる宗教が説く所であるが、実際問題ミュカレから見てもその通りであった。
痛みを嫌がり、飢えに苦しみ、寒さや暑さに辟易し、疲労も無限に蓄積する。肉体とは彼女にとって、要らぬ苦しみだけを保証する邪魔な汚物に過ぎない。
これらの苦しみから逃れようと、より上位の快楽を求めようと、人は高い地位を求め、限られた地上の富を掻き集めようとする。
馬鹿げたサイクルだ。世界中の人間が、ヴァルハラや浄土、至高天(エンピレオ)や崑崙、エリュシオンにイデア界と言った言葉で比喩した世界。
即ち霊的世界に魂を昇華させると言う事以上の快楽など、果たして存在するものか。いや、ない。

 やはり、プネウマ計画は聖杯の奇跡を以て成就されなければならないようだ。
尤も、今更百人や千人、いや、地球上の全人類がミュカレに対してプネウマ計画に『否』を叩きつけようとも。彼女はこの計画を推し進めていただろうが。

「おやぁ、誰かと思えばミュカレ教授ではありませんか」

 聞き覚えのある声が、ミュカレの背後から聞こえてくる。
暗く、湿った、如何にも陰険そうで、人付き合いと言うものをあまりして来なかったであろう事が窺える、男の声だった。

「……気安く話しかけるな、サフィール教授」

 貴様になど興味がない、とでも言葉の最後に付け加えそうな程に、如何にも無関心そうな語調でミュカレが言った。

「……そんな態度を貫いているから、天与の才能の割に、大学で孤立するのではないのですかねぇ?」

 歩調を速め背後の男がミュカレと並んで歩く。
蓮華の花が咲き誇ったかのような特徴的なデザインの襟を持った上着を身に付けた、灰色の髪をした男。
サフィール・ワイヨン・ネイス。このNPCの名前である。機械工学を学んでいながら、遺伝学にも関心を示している事で有名な、科学者精神に溢れる教授だ。
著した論文を戯れ程度に目を通した事があったが、愚図の集まる大学の中ではまだマシな研究をしているようだった。
特に工学分野でありながら、クローンや遺伝子組み換えと言った分野については、其処らの理科系の学院生の遥か上を行く見識を持っている事は間違いなかった。この大学で研究をするよりは、この男はゲゼルシャフトの方が向いているだろう。


748 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:47:37 9yra1DSw0
「我は孤立しているのではない、孤高の存在なのだ。友人もいない貴様と一緒にするな」

「ムキー!! 私だって孤高の存在なんですよこのお子ちゃまめ!!」

 ミュカレに強かに痛い所を突かれた為に、サフィールはムキになって怒り始めた。
彼女の事を子供扱いするサフィールであったが、この怒り方では、どちらが子供なのか解ったものではない。とても三十を過ぎた男の怒り方ではなかった。

 世間と言う下らぬ凡俗のフィルターから通してみた場合、間違いなくサフィールと言う男は優秀であったが、この男には何故か、友人がいなかった。
同じ教職員で良くつるむ姿も見た事がないし、学生から慕われていると言う噂も聞かない。
上位次元の存在が、地上の人間にこの男を好くな、と命令していると思わなければ理解に苦しむ程度には、友達が少ないのだ。
本人もその事は気にしているらしく、其処を突っ込まれると、ご覧の様な反応を取る。

 そんなサフィールが、何故かミュカレに突っ掛る理由は、色々ある。
他の者達が抱いている嫉妬や敵愾心も、ひょっとしたらあるかもしれないが、サフィールに言に曰く、ミュカレは自分に似ていると言う。
大学と言う目立つ場所でなければ不愉快さを紛らわす為に殺されていた事を、サフィールは知る由もない。要するに、親近感を抱いていると言うのだ
お前と一緒にするな、とミュカレは本人に何度も言っている。確かに彼女は学内でも私生活でも一人でいる事の方が多い人物だが、
それは単に彼女のコミュニケーション能力が低いと言う訳ではなく、聖杯戦争に際して他者との繋がりは最低限度のものに限らせておきたいと言う考えがあるからなのだ。
それを、協調性や同化性が今一育まれていない為に、集団から孤立していると思われるなど、心外にも程があると言うものだった。何も知らぬとは言え、つくづくサフィールと言う男は失礼極まる男だと、内心でミュカレが腹を立てている事を彼は知らない。

 特徴的な襟をした男と、黒マントを羽織る少女が並んで歩く。その様子は宛ら仮装行列か何かを思わせるだろう。
これが生徒であったのならば随分奇抜なファッション、若さゆえの誤った自己表現で片がつくかもしれないが、よりにもよって教授からしてこれである。
ゴッサム大学の理事会も、さぞや頭を痛めているに違いなかろう。……ただでさえ、学内で精力的に活動している者達についての問題も抱えていると言うのに。

「……最近はやけによく見るな」

 冷めた目で、ミュカレは前方を見つめている。十人以上の男女が広い通路の真ん中を陣取っていた。
この街の腐敗ぶり、ギャングやマフィアの横行、ゴッサム大学の理事会の金の汚さやスキャンダル等々。
リーダー格と思しき、頭にバンダナを巻き、サングラスをかけた髭面の男が、拡声器で上にあげた事を主張している。
バンダナの男の部下と思しき男女が、道行く学生にビラを配っている。サークルが開催する学内イベントの宣伝とは違うのは、一目見ても明らかだ。
彼らは皆、その腕に『黒い蝗を模した腕章』をつけていた。

「グラスホッパー、と言う奴ですか。最近はよくニュースになってますねぇ。私は興味はありませんが」

 その名前はミュカレも知っている。知らないでは済ませられなかった。目下警戒中のグループであるのだから。
悪徳と衆愚の街ゴッサムに突如として現れた、警察とは別の自警団、グラスホッパー。
今やゴッサムに住まう住民で、この一団の事を知らない人間は、ニュースペーパーをゴミ箱からあさる事も出来ない程衰弱した浮浪者かホームレス位のものだろう。
それ程までに、彼らは名が知れていた。新聞やテレビでその活躍を見る事もあったし、代表取締役の犬養なる男のインタビューも見た事がある。
目覚ましい活躍ぶりだし、版図を広げるその手腕も大したものであった。余程優れたブレーンが存在するのだろう。或いは犬養自身が優れているのか。
何れにせよ、グラスホッパーは魔法を使っているかのように、彼らは瞬く間にゴッサムシティにその名前を轟かせ、その注目を一身に浴びる存在なのだった。


749 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:47:59 9yra1DSw0
 ――この大躍進ぶりを警戒しないようでは、聖杯戦争の参加者として生きて行く価値はまずないだろう。
明らかに異常である。並み居るマフィアやギャングの妨害にも屈さず、名声と地位を倍々ゲーム的に高めて行く。それ自体は褒められるべき事だろう。
そのペースが異常であった。普通であれば数年、どのような話術や演説を駆使しても数ヶ月は掛かる所を、犬養率いるグラスホッパーはものの数日で成し遂げた。
犬養が百年、いや千年に一度のカリスマを持った統率者であるからそれも已む無し、とはミュカレは考えなかった。
サーヴァントが噛んでいると、彼女は睨んでいる。どちらにしても、今後の活動の障害になり得るだろう事は、大いに想像が出来る連中だ。
聖杯戦争の参加者として、警戒をしない道理など、ないのだった。

「下らん連中だ。首魁の犬養ならばともかく、あそこで騒いでいる者達は、学生の身分でありながら学ぶ事を疎かにし、政体や権力者に反発する美しい自分に酔いしれているだけの愚か者だ」

「ほう、珍しく意見が合いましたね。その通り、学生運動などその人物にとって百害あって一利なし!! 騒ぐような連中は大抵の場合、その運動の根幹にある思想に全く理解を示さず、ただストレスを解消し、暴れたいだけのフリーライダーなのですよ」

 サフィール教授の場合は寧ろそう言った運動には誘われない可能性の方が高いだろうが、面倒なのでミュカレは黙っておいた。

 グラスホッパーの団員は、これを見るにミュカレの想像よりも遥かに多いとみて間違いはなかった。
聞いた所によるとゴッサム大学の学生の内何十人、事によっては百人にも上る規模の学生が、グラスホッパーの構成員であるらしい。
理事会はこのまま大学に対する抗議デモでもされたら、と言う懸念に頭を悩ませているが、ミュカレにとっての心配事は其処ではない。
学内に百人規模のグラスホッパーの構成員が潜伏している、と言う事が何を意味するのか? 
それは、犬養がその気になって命令を下せば、忽ち百人ものNPCによる諜報部隊が出来上がると言う事だ。
NPCの一人や二人、葬る事は造作もないが、葬り過ぎて表沙汰になる事態だけは避けたい。

「面倒な事をする愚図共だ」

 忌々しげに口にするミュカレ。目の前で拡声器を使って演説をしているバンダナの男を殺してやりたいくらいだった。
あの男の事は以前調べた事がある。この大学で結構な頻度で演説をし、しかも日本人であると言う所から、聖杯戦争の参加者かと疑っていた時期があったのだ。
実際には、ただのNPCであったのだが。あれは中村太郎と言う男で、ゴッサム大学に学籍はない。つまり外部からやって来て演説している迷惑者である。
大学の側が立ち退きを命じようにも出来ない訳は、あの男が犬養からそれなりの薫陶を受けた人物だからであり、学生からのウケも良いのだ。
つまり立ち退きを命令しようとすると、他の学生が煩く反発するのだ。柳腰にも程がある。

 ――対策を講じる必要があるか……――

 自らの活動拠点の一つである大学にまで此処まで根を張られているとなると、知らぬ存ぜぬではいられない。
ジェダを戻し次第、彼と何かしら話し合うテーブルを用意せねばならないだろう。殺意の籠った瞳で、熱の入った声で演説を続ける中村を睨みつけるミュカレ。

 忌々しいイナゴ共。黙示録に語られる、奈落の魔王の使い魔達。
何れその汚れた霊魂から澱を引き剥がし、汚穢のない純粋な魂を精錬させた後に、遥かな次元へと送り返してやろう。
斯様な事を思いながら、ミュカレはサフィール教授とは違う校舎が建っている方角へと向かい始めた。文系の校舎と理系の校舎は別なのである。
「では、また昼食の時にでも」、サフィール教授が別れ際にそんな事をミュカレに言い放って来た。昼も一緒に過ごす気でいるらしい。無論ミュカレには、そんなつもりはないのだが。





【MID TOWN RED HOOK/1日目 午前】

【ミュカレ@アカツキ電光戦記】
[状態]健康、平常
[令呪]残り三画
[装備]黒マント、カティが着ていた服
[道具]元帥杖(懐に忍ばせている)
[所持金]現金十万程と、クレジットカード
[思考・状況]
基本:聖杯戦争、負けるつもりはない
1. 煩わしい事だが、ゴッサム大学には足を運んでやる
2.サフィール教授には会いたくない
3.グラスホッパー……どう対策するか
[備考]
※犬養舜二が聖杯戦争の参加者だろうとあたりをつけています。ひょっとしたら、他の参加者についてもおおよその目星はついているかもしれません


750 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:48:31 9yra1DSw0





2:

 この世の九割九分九厘は、無駄な物で構成されている、とジェダは感じる事がある。
では残りの一厘の有益で、そして完全完璧な存在は誰か、と問われれば。自身、ジェダ・ドーマしかいないと、彼は答えるであろう。
それが、ジェダには悲しくて仕方がなかった。何故ならば、滅びに愛され美と永遠に見放されたこの世界を救えるのは、ジェダ・ドーマ以外にいないと言う事に等しいのであるから。

 世界は死にかけている。
元来人間や魔界の知的生命体を含めて、心のある生物と言うのは計り知れない力を持っているものなのだ。順当にその力を発揮できればだが。
今生では、その計り知れぬ強大な力を発揮出来る生物は誰一人として存在しないだろう。
何故ならば彼らは、終る事のない争いに明け暮れ、疲弊し、血を流し。僅かなる富の為に奪い合い、騙し合い、富を増やす手段を講じもしない。
結果、世界からは調和と美が滅され、代わりに、怠惰と死と荒廃とが溢れ、新風も闇を照らす光も生じぬ地獄となった。

 聡明なジェダには、現状の推移が容易に想像出来る。
調和の失せた世界から消え去るのは、何も美だけではない。未来すらもが消え失せてしまう。
未来の消えればその先には、確実な滅びしか待ち受けていない。これを防ぐには、魔界の住民や地上の住民を含めた、全ての魂を救済してやるしかない。
その救済とは、全ての魂との同化。何故、調和が消えねばならないのか。何故、皆は解り合えず争いばかり続けるのか。
それはどのような存在にも『差』と言うものが存在し、それを意識するからである。差を意識する事は、自身の増長を招き、妬みを生み、不満を沸き立たせる。
では、『全ての魂がジェダ・ドーマと言う存在に吸収され、全ての生物が彼一人に収斂された』としたら……?
それはジェダにとって理想的な世界だった。全ての生物が一つになれば、全ての魂が一つになれば。
争いなど起りようがない。全て一つであるのならば、調和は絶対に満たされる。それは究極の美のカタチであり、究極の救済のカタチなのだった。

 この途方もない理想を果たす為には、先ず自らの力を振い、聖杯戦争と言う下らぬ争いを勝ち進めねばならないようである。
マスターであるミュカレと言う女性は、今の時代でも珍しい、聡明で、自分に近しい理想の持ち主である。と言うのが、ジェダの評価だ。
つまり、掛け値なしに彼女は優秀な存在である。一個の知的生命体としても。そして、自らの上に立つに相応しいマスターとしても。
故に、聖杯戦争を勝ち残った暁には、彼女は真っ先に自分の祝福を受ける資格があると、ジェダは考えていた。
その祝福とは最早言うまでもない。ジェダ・ドーマとの同化に他ならない。苦しみも悩みも無い究極の理想郷(アルカディア)である、ジェダ・ドーマと言う一つの世界に、彼女は最初に招待されるに足る。
 
 衆愚の街ゴッサムの住民が、『ウェイン・タワー』と呼ぶ建造物の屋根に取り付けられた電波受信の為のアンテナに、器用にジェダは直立していた。
ジェダと言う人物が全体重をかけて乗っていると言うのに、アンテナは、折れない。まるでこの世の物理法則の外に、この男が君臨しているかのように。
この位置からだと、ミュカレが教鞭を振っていると言うゴッサム大学が良く見える。今頃は、出来の悪い学生を相手にその辣腕を振るっている事だろう。


751 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:48:47 9yra1DSw0
 ミュカレの傍にジェダが霊体化して同伴しなくても、別段問題はなかった。
ジェダが彼女の元を離れ、ウェイン・タワーの天辺から街を見下ろすのには訳がある。
一つには、彼に街の地理を覚えさせると言う意味で。そしてもう一つが、街に変わった様子がないか、もっと言えば、サーヴァントが交戦していないかを確認させる為。
流石にアーチャーのサーヴァントの様な千里眼はジェダも持ち合わせていないが、それでもその視力は常人を遥かに凌駕する。監視塔の役割は、十分果たせる。
それにジェダは、マスターの潤沢な魔力量と、自らが持つ魂同化スキルの甲斐もあって、単独行動すら可能とするサーヴァントだ。
たとい彼女から数百m、事によっては数キロ離れて行動したとしても、現状では問題はなかった。
極め付けが、他を隔絶する念話範囲である。ミュカレ自身が特に優れた魔導の持ち主の為、魔術の基本的な素養が他を大きく引き離している。
ゴッサム大学から数百m以上離れた此処ウェイン・タワーにおいても、念話が可能である程と言えば、その凄まじさが知れよう。
此処に、ミュカレがジェダをゴッサムの監視に任命した訳があった。空を飛べ、単独行動も可能とし、念話のカバー範囲で異変をすぐに知らせる事が出来、
いざ戦闘になれば的確にミュカレの指示を仰ぐ事も可能なのだ。ジェダをゴッサムを監視する『目』の役割を言い渡したミュカレの判断は、見事なものであり、理にも叶っていた。

 ふと、ジェダは目線を眼下に広がるビル群から、遥か先に聳え立つ、巨大な銀色の塔に目をやった。
特徴的な形状をした高層建築であった。それでいて、構造力学的に見事なバランスを保てている。
さぞや名のある建築士に図面を引いて貰い、多額の金を払って建造して貰ったのだろう。初めてそのビルディングを見た時のジェダの印象は、一本の大樹であった。
何故か、と問われれば、そう見えたからとしか答えようがない。そして後にこのビルの名前を知った時、自分の抱いたイメージが正しかった事をジェダは知った。
ユグドラシルタワー。ゴッサムの住民はそう呼ぶらしい。ユグドラシル、北欧の神話に出てくる宇宙樹の名前であったか。
尤も、ユグドラシルの名前を冠する割には、あの建物は少々名前負けをしている感が否めないが。

 建物が高くなればなるほど、モラルが低下すると言うのがジェダの美意識だ。
あのユグドラシルタワーにしろ、今ジェダが佇立しているウェイン・タワーにしろ、自らの権勢を誇示しようとしているのかは解らないが、あまりにも高層建築が多すぎる。
どうにもこの街の住民はモラルと言うものが足りな過ぎる。これもまた、ジェダに言わせれば『差』の産物の一つだった。

 場を変えよう。ジェダはそんな事を考えた。一つの地点からだけの監視では、大局的に物を見渡せない。
定期的に高い所から高い所へと移動する必要がある。そう考えて、ジェダは霊体化を行い、背の翼を以て飛翔。
哲学的思考の世界に沈みながら、遥か下界の世界を見渡して空を飛ぶジェダ。
退屈そうに街の様子を眺めていたジェダが――目を見開き、一瞬で哲学の世界から現実の世界に引き戻された。眼下の事象を、信じる事が出来なかったのだ。

「……森だと?」

 静かにそう呟くジェダ。
人通りの少ない、どころか人っ子一人存在しないゴッサムの繁華街の裏路地に、それは生い茂っていた。
瀝青、コンクリート、ガラス、合金、プラスチック。自然の物など何一つとしてない、都市計画が許す範囲でしか緑が許されていないこの街で。
何故、あそこまで自然なままの緑があるのか。森と言うには、規模が小さいかも知れない。裏路地の一角にしかその緑はないのだから。
林と言う言葉を用いるのも、烏滸がましいだろう。だが確かにそれは、ジェダから見たら森であった。木が生えている、草も茂っている。――瑞々しい果樹すらも、見えるではないか。


752 : セイヴァーたぶらかし ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:49:25 9yra1DSw0
【マスター】

 念話を以て、ジェダは、大学にいるであろうミュカレにコンタクトを取り始めた。 

【何があった】

【森だ】

【……何を言っている?】

 流石に言葉が足りなかったらしく、疑問気な言葉をミュカレは投げ掛けて来た。

【奇妙な物言いに聞こえるかもしれないが、街に森が茂っている】

【前から言おうと思っていたが、お前の言い回しは迂遠が過ぎるし、勿体ぶり過ぎなきらいがある。短く簡潔に言え】

【その通りの事を語っているよ。森と言うには規模が小さいが……明らかに、鬱蒼とした木々や草が生えている区画がある】

 向こうは黙りこくった。真剣に現況を語るジェダの口ぶりに、判断を迷っているのは言うまでもなかった。
その目で実際の状況を見れない為に、信じられないのは無理からぬ事だろう。実際の状況を目にしているジェダですら、今の事は信じる事が出来ずにいた。

【キャスターの陣地である可能性はあるか、セイヴァー?】

【見ない事には解らないな】

【ではその様子を確認して来い。危険を感じたら、退避しても構わん】

【解った】

 其処で念話を切り、ジェダは眼下の一点、即ち彼が森と呼んでいた地点へと急降下した。
人間達が伝説にしている所の、エリュシオンの野であろうか。ジェダはそんな事を考えていた。
しかし実態はそんな物ではない。その森の名こそ、ヘルヘイム。宇宙樹ユグドラシルの根に存在する、冥府の国、常世の世界。
もしもミュカレがその森の名前を聞いた時、彼女は苦言するだろう。なんと不吉な森である事か、と。





【MID TOWN WAYNE TOWER/1日目 午前】

【セイヴァー(ジェダ・ドーマ)@ヴァンパイアセイヴァー】
[状態]健康
[装備]万全
[道具]万全
[所持金]私には何の価値もない代物だ
[思考・状況]
基本:全ての魂の救済
1. この街には良識の欠片もない
2. あの森が非常に気になるな……
[備考]
※現在ミュカレの命令に基づき単独行動中です
※ヘルヘイムの森の存在に気づきました。念話でこれを、ミュカレに報告も済ませました
※ヘルヘイムの森に向かっています


753 : ◆zzpohGTsas :2015/06/14(日) 01:49:55 9yra1DSw0
投下を終了いたします。ヘルヘイムの森についての描写などに問題があれば、ご指摘の程を


754 : 名無しさん :2015/06/14(日) 13:22:55 TOV9d1ec0
投下乙です。
俗世に嫌悪感を抱いて己の手による救済を望む二人はやはり近しい。
目的や手段としては独善に近いけど、それだけに執念深いこの主従は中々強そう。
悪名高くも経済都市としての機能を保ち続けるゴッサムの掘り下げも興味深かったです。
そしてゴッサムを侵食するヘルヘイム発見、ジェダが接近しているけどどうなるか…


755 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 22:55:36 TOV9d1ec0
さて、自分も投下させて頂きます。


756 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 22:57:22 TOV9d1ec0

『――――ニュースの時間です』


カチリとラジオの電源が付けられる。
流れ出した報道番組が朝の始まりを告げた。

小さな缶詰を手に、ジョンガリAはリビングのソファに腰掛ける。
彼の朝を彩るのは簡素な朝食、そしてラジオの報道だ。
傍らに添えられているのは盲人用の白杖。
しかしその実態は杖に偽装した一丁の狙撃銃。
彼にとってスタンド能力に並ぶ相棒であり、商売道具だった。
尤も、今はアサシンという新たな相棒も得ているが。

ゴッサムシティにおけるジョンガリ・Aの役割は『殺し屋』だった。
裏社会に蔓延るマフィアの依頼を受け、標的を暗殺する汚れ役。
その技量は顧客からも高く評価されている。
腕の立つスナイパーであるジョンガリはそれなりの稼ぎを得ていた。

とはいえ彼は華飾を好まず、必要以上の物欲も持たなかった。
支出の大半は日々の衣住食と商売道具の調達によるもの。
唯一の娯楽といえばラジオと蓄音機くらいである。
そんな僅かな物品のみを持ち、彼は寂れた雑居ビルで隠れ潜む様な生活を送っていた。

ジョンガリの自宅は見る者によっては監獄の様にさえ映るだろう。
当人の稼ぎとは不釣り合いな程に質素極まりない生活。
まるで低所得者の住宅の様に薄汚れた空間。
まともな改装さえも行われていない古寂れた内装。
しかし、彼は己の暮らす環境に興味を持たなかった。
盲目であることも理由の一つだったが、それ以上に関心そのものが無かった。

彼は人間らしい生活を行える程の精神性を備えていなかった。
ジョンガリ・Aは幼き日より『悪の救世主』に魅了され、その後20年以上もの時を復讐の為に費やした男だ。
悪のカリスマにその才能を見出され、彼を崇拝し、そして彼の死後は復讐に人生を捧げた。
ジョンガリの人生の半分は『悪の救世主』によって与えられたものである。
邪悪の化身たる男こそが心の支えだった。彼の傍にいることがジョンガリにとっての安心だった。
故にジョンガリは主を殺したジョースターに対する復讐の道を選んだのだ。
そして此度の聖杯戦争で、主の復活という願いを抱いたのだ。

彼の生涯を彩るのは殺人と崇拝、そして復讐だった。
人生という長旅で血に染め上げられた道を歩み続けた。
そんな男が人並みの生活を送れる程の真っ当な人間性を持っている筈が無い。
彼の精神はとうに淀んだ漆黒の闇に染め上げられている。
人としての感性の一部が無自覚に欠落していたのだ。


757 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 22:58:36 TOV9d1ec0

(さて…)

フォークで缶詰の肉を貪りつつ、ジョンガリは流れるニュースに耳を傾ける。
在り来たりな事件ばかりとはいえ、こういった報道も一応は情報源と成り得る。
事実、気になる事件が幾つかあった。

一つ、謎の無差別連続殺人事件。
ゴッサムシティの各地で幾度と無く同一犯によるものと見られる殺人事件が発生しているのだ。
発見された遺体の殆どは『肉体が内側から破裂したような状態』だったという。
全く解明されぬ手口。徹底的に破壊された遺体。無差別に狙われる犠牲者達。
犯人の足取りは掴めず、目撃者の存在もない。
奇怪で凄惨極まりないこの事件は犯罪の蔓延るゴッサムの市民達からも恐れられているという。
余りにも異様な手口、そして一向に特定出来ぬ犯人。
この件にサーヴァントが絡んでる可能性は高いだろう。
可能な限りの警戒が必要となる。

二つ、とある中堅マフィアが何者かの手によって壊滅したという事件。
ジョンガリはこの件に関心があった。
その一味は裏社会に属する殺し屋のジョンガリにとって、主要な顧客の一つだったのだから。


(『赤覆面』…あるいは『黒蝗』の仕業か…)


ジョンガリの心中でそう推測する。
この街に現れし二つのヒーローだ。
悪徳の街であるゴッサムは少しずつ変化を始めている。
自警行為を行う者達が姿を現し、犯罪者に対する私刑を行っているのだ。
単独でマフィアを壊滅させた実績もあるという『赤覆面』。
群れによる組織力で悪を取り締まり、群衆からの支持も厚い『黒蝗(グラスホッパー)』。
彼らの活躍によってこの街の犯罪率は減少傾向にある。
犯罪根絶にはまだまだ程遠い。この街に根付く数多の悪党は未だに顕在だ。
しかし、着実に状況は動いている。
更に最近では『白黒の覆面男』や『果実を纏う戦士』の噂も耳にする。
悪に傾き続けていたこの街の均衡は徐々に変わりつつあるのだ。

彼らはある時『突如』現れ、その勢いを拡大していった。
黒蝗は僅かな期間で大規模な組織を作り出し、赤覆面はたった独りでマフィアと戦い続けている。
普通ならば有り得ないとしか言い様が無い。
犯罪の蔓延るこの街で自警行為をしようものなら、組織や権力という大きな力に押し潰されてしまうはずだ。
どうしても引っ掛かるものがある。


(三つ目の件―――――ヤモト・コキとやらの事件も気になる所はある)


引っ掛かるという意味では、ヤモト・コキという指名手配犯の話もある。
あろうことか、日本人の女学生がギャングの構成員を殺害したという。
その上彼女は『橋を破壊してギャングを振り切った』という噂も流れている。
ただの少女がギャングを殺害し、しかも橋を破壊するという異様極まりない事件。
この件もやはり注意を向けるべきだろう。


(偵察はアサシンに任せている。いずれ奴が何かしらの情報を掴んでくる筈だろう…
 俺が動くのは、それからだ)


一通り関心のあるニュースに耳を傾けた後、心中で思考する。
自分は殺し屋であり盲目の狙撃手である。
狙撃手とは姿を隠す者。己の存在を悟られず、敵を仕留める暗殺者。
敵からマスターと悟られてしまえば致命的だ。
故に今はまだ動かず、アサシンの帰還を待つのみ。
アサシンの報告、そして今後の状況次第では自らも動くことになるだろう。


己が『魔弾』で敵を撃ち抜く為に。



◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


758 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 22:59:41 TOV9d1ec0


薄暗い下水道は死の匂いで充満している。
幾つもの死体が転がり、血肉の混ざった下水が流れる中、独りの男が佇む。
ゴッサムの世間を騒がせる凶悪殺人鬼。
破壊と殺戮を好む狂気のサーヴァント。
それこそがキャスターのサーヴァント―――――デスドレインだ。


「エート、確かこれで50……アー……いや60人くらい殺してたッけ?」


彼は独り言を繰り返す。
何故ならば独りぼっちで寂しいからだ。
残虐かつ狡猾でありながら、その精神性は子供の様に幼稚だ。
故にこうやって独白を繰り返し、時にはイマジナリー・フレンドと会話して寂しさを紛らわす。


「むしろもっと多いか?まァイイわ……思い出すの面倒臭ェし……」


黒い物体を詰め込まれ『窒息死』した死体の上に座り込み、デスドレインはぶつぶつと独り言を呟く。
指で地道に殺した人数を数えていたが、面倒になったのかすぐに統計をやめ頭を掻きむしる。
元より気まぐれに殺して回っていたのだ。やはり一々人数など覚えていられない。

数えるのに飽きたデスドレインは、自由を謳歌していた最中に道端で見つけた『果実』を手に持ち適当に眺める。
魔術に精通していないデスドレインにも解る。この果実には魔力が籠っていると。
一体何故こんなものが自生していたのか。この果実は何なのか。
興味深いが、詳しいことは解らない。
今の彼に解るのは、これが普通の果実ではないということだけ。
いっそ適当に誰かに喰わせてみるのもいいかもしれない。
そう考えた後、懐に果実をしまった。

デスドレインはこのゴッサムに召還されて以来、殺戮を繰り返している。
その主な目的は無論己の快楽を満たす為だ。
同時に彼はユニーク・ジツであるアンコクトンによる補食で己の力を蓄えていた。
マスターはか弱き少女に過ぎない。魔力量は十分とは言い難い。
その為民間人に手をかけ、補食することで魂喰いを行っていたのだ。
更に他者を殺害することでアンコクトンは増殖を繰り返す。
つまるところ、NPCを殺害すればするほど彼の能力は増強されていくのだ。
そうと解っている以上、殺さぬ筈が無い。
楽しいのだから、自らの糧となるのだから、彼は喜んで殺戮を続ける。


「へへへへ…やっぱ楽しいよなァ…楽しいならやるしかねェに決まってるだろ…」


寂しがりのデスドレインは独り言を繰り返しながら、転がっている死体を適当に眺めつつ呟く。
先程殺した者達は主に浮浪者やホームレスの類いだ。
しかし、その中に警官の様な制服を身に纏う若者達が紛れ込んでいた。
他の犠牲者である貧民者達とは明らかに毛色の違う存在である。
彼らはこの地域を見回っていた自警団『グラスホッパー』の一員である。
デスドレインは偶々発見したグラスホッパーの一員をも巻き込み、自らのジツによって殺害したのである。
尤も、彼が何者かなどデスドレインは知ったことではないが。
ただ殺せれば面白いのだから、誰を殺そうが興味は無い。


759 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:00:18 TOV9d1ec0

「…アー、けどなァ」


唐突にデスドレインの笑みが消える。
殺戮を謳歌してきた彼の心中に僅かな『物足りなさ』が浮かび上がってきたのだ。


「他にももっと楽しいことやりてェよな…」


デスドレインは虐殺を繰り返し、殺人衝動を発散させた。
何度も何度も人を殺した。楽しくて仕方無かった。
だが、延々と咀嚼を繰り返せばやがて飽きが来るもの。
魂喰いと宝具『死の濁流』の強化の為とはいえ、適度に他の欲求も発散させたいと考えたのだ。
一頻りの殺戮を楽しんだデスドレインは、次の欲望を満たすことも視野に入れた。


「女だよ、女がイイな」


そう、女だ。
できれば豊満な美女がいい。
デスドレインは殺害した男が所持していた新聞を手にし、その記事を眺める。
悪徳の街に相応しく様々な事件がずらりと並んでいる。
その中で不釣り合いに目立つ、一つの記事に目を付ける。


「『シェリル・ノーム、新曲発表』」


赤黒い血で汚れた新聞紙を見つめながらぼそりと呟く。
芸能方面のニュースとして大きな見出しで載っていた記事だ。

シェリル・ノーム。
ゴッサムシティを風靡する若き歌姫だ。
今や彼女の名は、歌は、街中に知れ渡っている。
衆愚の街で歌手としての絶大な人気を誇っているのだ。
麗しく、そして情熱的な歌声は数々の市民を魅了しているという。
彼女は悪徳に塗れた衆愚の街には似合わぬ存在と言えるだろう。

歌によって人々を熱狂させ、感動させる。
形無き力で心を強く震わせ、確かな幸福を与える。
金や権力とは全く異なる力で人間を魅了しているのだ。
言うなれば一種のカリスマ。
歌手としての確固たる実力によって掴み取った人気。
彼女はまさしく、街を照らす太陽だった。
極上の女と言えるだろう。


「イイなァ……イイ女だ……へへへへへ……」


記事と共に載せられたシェリルの写真を舐め回す様な視線で見つめ、下衆な笑い声を零す。
世間を魅了する美貌の歌姫。
丁度いい。こいつは僥倖というもの。
久々に自由を謳歌しているのだ、折角だから殺戮以外の楽しみも味わっておきたい。
特にサヨナラ&ファックがしたい気分なのだ。
どうせなら飛び切りの女でやりたい。
故に彼女に目をつけたのだ。
気が向いたら適当にシェリル・ノームを探してみるとしよう。


760 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:01:22 TOV9d1ec0


「あと仲間だよ…仲間も欲しいな…」


そして、彼が取り出したのはもう一枚の紙切れ。
路地裏に貼られてあった指名手配書だ。
お尋ね者の名はヤモト・コキ。
顔写真ではただの女子高生にしか見えない。
そんな小娘が名のあるギャングの構成員を殺害したというのだ。
しかもギャングを撒く為に橋をも破壊してしまったという。
かつての相棒が引き起こしたソバシェフ・ランペイジ事件に比べれば大分落ちるが、興味はある。
気が向いたらヤモト・コキを探してみるのもいいかもしれない。
尤も、然程優先順位は高くないが。

一頻りの思考を終えたデスドレインは、ゆっくりとその場から立ち上がる。
殺戮以外の方針、目標もある程度固めたのだ。
この聖杯戦争で勝ち抜くことも重要だ。
だが、それ以上に現状を楽しみたいという気持ちがあった。
退屈な『座』から抜け出せたのだから、尚更だ。
存分に自由を楽しんで、最後は勝利する。
それがデスドレインのやり方だった。
下品な笑みを浮かべながら、ゆらりと歩き出そうとした。





―――――瞬間。
背後に何かが降り立つ音。
鋭利な刃物の音。
そして。





「ア?」


デスドレインの喉元から刃が生えた。
直後にぶしゃりと首から赤黒い液体が撒き散らされる。
ごふっ、とメンポから血が吐き出される。
痙攣を繰り返した後、ようやくデスドレインは気付く。
己の背後から刃で首を貫かれたのだと。


「ごふッ…アバッ」


デスドレインが振り返った先。
背後から刃で首を貫いてきたのは、ガスマスクの男だった。
僅かな呼吸音のみを零し、一切の言葉を発さぬ『暗殺者』。
トンファーに似た刀剣を振るってデスドレインの首を貫いたのだ。

気配など感じなかった。一瞬たりともその存在を予測出来なかった。
どうやって背後に回り込んできた。どうやって近付いてきた。
思考を繰り返した果てに、デスドレインは――――――




「アブネェだろうが、畜生」




ドスン、とガスマスクの男の身体に衝撃が走る。
直後に彼の身は大きく吹き飛ばされた。
デスドレインが吐き出した『黒い物体』が蛇の様に撓り、打撃を叩き込んだのだ。


761 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:05:09 TOV9d1ec0


「……………!」



地面に衝突する寸前、ガスマスクの男は即座に空中で体勢を整える。
片手と両足に力を籠め、勢い良くブレーキを掛ける様に地面に着地したのだ。
その身体能力、そして先程の気配も無くデスドレインの背後に忍び寄った技能。
それだけでも常人を逸脱した存在であることは見て取れる。

それもその筈、彼はただの人間ではない。
英霊の具現――――サーヴァント、アサシンなのだから。


「アー、ドーモ、キャスターです」
「……………」
「なンだよ、あんた…もしかしてサーヴァント?」


傲岸不遜な態度でアイサツをするデスドレイン。
首を貫かれた傷は黒い物体によって塞がれていた。
そう、アンコクトンによって己の傷を塞いだのだ。
デスドレインは頭部等を一撃で破壊されぬ限り、取り込んだアンコクトンによって傷口を塞ぎ治癒を行うことが出来る。
ある意味で不死身とも取れる生命力だ。
首を貫かれた程度なら――――――――治癒は容易い。

対するアサシン『クロエネン』はごきりと首を鳴らし、両腕のトンファーを構える。
クロエネンはアイサツを返す素振りを見せない。それどころか、言葉を交わす様子すら見受けられない。
ニンジャのイクサならばシツレイに値する行為―――尤も、デスドレインも悪童的態度なのだが――――しかし、今回は違う。
これはニンジャのイクサ等ではない。古今東西の英霊が集う群雄割拠の戦い。
そう、即ち聖杯戦争だ。アサシンにニンジャの作法を守る意義などない。


「サーヴァントなら、ブッ殺すしかねえよなァーッ!」


故にデスドレインも、手段を選ぶつもりは無い。
生前と同じだ。使えるものならば何でも使うのみ。
ゲラゲラと嗤いながら、デスドレインは己のジツにカラテを込める―――!



「アンコクトン・ジツ!へへへへへへ!」



おお、ナムサン!
デスドレインの周囲に転がるは幾つもの凄惨な遺体。
それらの体内からコールタールめいた流動状の黒い物体が次々と溢れ出しているではないか!
まるで漆黒の濁流。まるで死の排水!
異様な物体は止めどなく溢れ出し、デスドレインの足下とその周囲を黒く染め上げていく!


これぞデスドレインのユニーク・ジツにして宝具!
『死の濁流(アンコクトン)』である―――――――!


762 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:06:03 TOV9d1ec0


「へへへへへへ!ヘへへハハハハハハハハハハァー!!」



アンコクトンが蛇のような触手へと姿を変え、次々とクロエネン目掛けて殺到する!
クロエネンは即座にステップを踏みながら後方へ下がり続ける!


鞭のように横に薙ぎ払われる触手を跳び上がりつつ回避!
捕獲せんと一直線に伸びる触手をトンファーで薙ぎ払い防御!
スライム・オバケめいた流動によって真上から奇襲を仕掛ける触手を後方転回で回避!
クロエネンはまさにニンジャめいた身体能力によってアンコクトンを躱し続ける!


「イヤーッ!」


デスドレインは尚も絶え間なくアンコクトンによる攻撃を繰り返す!
それらをクロエネンが回避と防御によって凌ぎ続ける!

周囲に迫るアンコクトンの触手を薙ぎ払う様に切り裂いたクロエネン。
彼は再びトンファーを構え直す。攻勢に乗り出さんとしているのだ。
そして、即座に地を蹴り接近を試みようとした。



だが、クロエネンの構えが再び解かれる。
即座に後方を向き、曲芸めいた側転で再びそれを『躱す』。



「ホラホラ!もっと頑張れよォ!死んじまうぞォー!へへへへへへへ!」



愉快げに手を叩きながらデスドレインが下品に嗤う。
後方へと方向転換したクロエネンが躱したモノは、更に増殖したアンコクトンだった。
回避を繰り返した先に転がっていた死体からアンコクトンを絞り出し、背後からの不意打ちを仕掛けてきたのだ。
自らにとって最適な展開を感じ取る『直感』スキルが無ければ不意を突かれていただろう。
迫り来るアンコクトンを凌ぐことが出来たのも直感スキルによる恩恵が大きかった。


「………!」


だが、一度躱したとて凌ぎ切れた訳ではない。
回避を行ったクロエネンの動いた先にも浮浪者の死体が転がっていたのだ。
死体があればアンコクトンは更に絞り出せる!
死体の数だけ、デスドレインの手数は更に増える!


763 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:07:31 TOV9d1ec0

「イヤーッ!」


浮浪者の死体から絞り出された新たなアンコクトンの触手がクロエネンを捕らえる!
拘束具めいて縛り付ける触手はスライム・オバケの如く食らい付く!


「――――――!」


ガスマスクの下で僅かに苦悶の声が響く。
クロエネンの肉体は徐々に生命力を吸い取られているのだ。
アンコクトンでよりきつく拘束し、彼が逃れられぬ様に縛り続けている。

アンコクトンは生命を喰らう力を持つ。
それによってデスドレインは数々の市民を喰らい、己の糧としてきた。
彼にとってはサーヴァントとて同じ『獲物』だ。
デスドレインはこのままクロエネンを補食せんとする――!



「ヘヘヘヘヘ!ヘハハッハハハハハ………ア?」



だが、デスドレインの哄笑は唐突に止まる。
彼がようやく異変に気付いた。

幾ら喰らい続けようと、喰らい切れない。
幾ら縛り続けようと、飲み込み切れない。
幾ら蝕もうとしても、クロエネンの身から溢れ出るのは『白い砂』のみ。

そう、デスドレインは気付いた。
クロエネンが、幾ら喰らおうとしても『殺せない』ことに…!


瞬間、拘束していたアンコクトンが勢い良く断ち切られた。
呆気に取られたデスドレインの隙を突き、クロエネンがトンファーによって瞬時に切り裂いたのだ。


ハッと気付いた頃には既に遅い。
デスドレインがアンコクトンを再び操ろうとする前に、地面に着地したクロエネンは背を向けた。
そのまま俊敏な動きで下水道を駆け出し―――――その姿を消した。



「………アー、畜生!逃げやがッてつまんねェな畜生!」


一人残されたデスドレインは苛立ちながら壁を殴る。
ようやく喰らえる所だった獲物に逃げられた。
それどころか『喰らうことが出来なかった』。

もしかするとあれがヤツの宝具によるものだというのか。
サーヴァントは必ず宝具という『物質化された奇跡』を持つということは知っている。
しかし、あのガスマスクのサーヴァントは宝具を使う素振り様子を見せなかった。
喰らえないことが宝具だとすれば、自動発動の類いか。
言うなれば死なない宝具とでも言うのか。


「面倒臭ェ!どうだッていいンだよ、そんなことは!」


苛立ちのままに思考が吹き飛び、デスドレインは喚き散らす。
興醒めになったこの気分をどうにかして晴らしたい。
また適当な餌を見つけ出して殺してやるか。
さっさとシェリル・ノームとかを見つけ出すか。


―――――いや、他にも面白いことはある。


『あいつ』がいた。
折角だし『あいつ』に突っ掛かってやろう。
少しは苛立ちを発散出来るかもしれない。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


764 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:08:10 TOV9d1ec0



「………」


高層ビルの屋上に漆黒の影が佇む。
ガスマスクを被り、ラバースーツを身に纏った異様な外見の男だ。

彼こそがアサシンのサーヴァント、カール・ルプレクト・クロエネン。
キャスターと交戦し、逃走した暗殺者だ。
その姿を堂々と晒しながらも他者に存在を悟られることは無い。
Bランク相当の気配遮断スキルによって極限まで己の存在を薄めているのだから。

マスターの命に従い、街の偵察を行っている最中だった。
魔力の気配を感じ取って下水道に侵入し、あのニンジャのようなサーヴァントを発見したのだ。
相手は周りへの警戒を一切行うこともなく、ぶつぶつと独り言を繰り返していた。
余りにも無警戒。余りにも無防備。
その様子から罠である可能性も考慮したが、クロエネンは暗殺の機会を掴み取ることを優先した。

天井を這い、サーヴァントの背後へと降り立ち―――――瞬時に首を貫く。
成功させた筈の暗殺は失敗に終わった。

結果として奴と交戦することになった。
首の傷を塞ぎ、死体から絞り出したあの黒い物体こそが奴の宝具だろう。
攻撃にも治癒にも転じられる高い応用性は警戒に値する。
あの場でNPCを殺して回っていたのも、死体から黒い物体を獲得する為か。
ともかく、この情報はマスターに伝える必要がある。

クロエネンは自らの肉体にゆっくりと触れる。
既に傷は無い。溢れ出ていた白い砂も止まっている。
先の戦闘でクロエネンがアンコクトンに補食されなかった理由。
それは彼の宝具『機巧心音(ウン・シュテルプリヒ・カイト)』によるものだ。
クロエネンは己の肉体を機械改造し、不死者としての属性を獲得している。
あらゆる攻撃を受けようと肉体が耐え切り、戦闘の続行を可能とする。
故に彼はアンコクトンによって補食されず、耐え切ったのだ。
不死となった彼からは最早赤い血は流れない。
溢れ出るのは、砂状になった白い血液のみだ。

再びクロエネンは衆愚の街を見渡す。
先の交戦で魔力を使ってしまったが、まだまだ動くことは出来るだろう。
この程度の情報だけではマスターの助けにはならない。
聖杯戦争に勝利し、主を蘇らせる為にも更なる情報を集めなければ。



◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


765 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:09:24 TOV9d1ec0



「……はぁ」


大きな溜め息が口から溢れ出る。

想いは上の空だった。
カーテンの隙間から漏れる朝の日差しさえも煩わしかった。
自室のベッドで仰向けになり、人形の様な表情で天井を見つめていた。

ハナ・N・フォンテーンスタンドはマスターだ。
聖杯に託す願いを抱え、このゴッサムシティに召還された参加者である。
しかし、彼女は未だに自問自答を繰り返している。
マスターとしての資格を獲得しながらも、何も出来ずにいた。

これからどうしよう。
そんな思考を毎日と言っていい程続けていた。
答えは一向に出てこない。
自分に何が出来るのかも解らない。
憂鬱で、重くのしかかる様な日々が続く。


―――――否、自分に出来ることは解っていた。


凶行を繰り返す己のサーヴァントを止めること。
あるいは、生き残る為にサーヴァントと共に戦うこと。
自分がやるべきことなど、とうに気付いていた。
だというのに、見て見ぬ振りをしていた。
気付いている筈なのに、目を逸らしていた。

何故ならば、怖かったからだ。
異常そのものと言っていい自身の従者が恐ろしくて仕方無かった。
聖杯戦争という殺し合いが怖くて仕方無かった。


―――――何もやらないのは、やって後悔するよりイヤ。


それが自分のモットーだったのに、今は何も出来やしない。
元よりハナは天真爛漫な14歳の少女に過ぎない。
日本を愛し、仲間達を愛し、よさこいを愛する無力な少女でしかない。
決心を固めるきっかけとなる体験にも巡り会えず。
自らの意志で覚悟を決めることも出来ず。
不安を抱えながら、無意味な時間をぼんやりと過ごすだけの毎日を送っていた。

自身のサーヴァントは一向に戻ってこない。
召還に成功したあの日から勝手に飛び出して、それっきりだ。
彼が何処に行っているのかさえ解らない。
しかし、彼が外で何をしているのかは理解していた。
知りたくもない真相を認識してしまっていた。
彼の宝具を、残虐性を、自分は知っているのだから。



『タダイマ!』



唐突に頭の中で声が響いた。
びくりとハナの身体が震える。
聞き忘れる筈も無い声で。
恐怖の対象と言ってもいいその声で、語り掛けてきたのだから。


766 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:23:59 TOV9d1ec0
申し訳ございません、NGワードに引っ掛かって投下が出来ない状況です。
もう暫くお待ち下さい。


767 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:25:55 TOV9d1ec0


「キャ、キャス―――――」
『おいおい、口で出すんじゃねェよ!念話使うンだよ!ワカル?』
『え、あの、ご、ごめんなさいッ!』


慌てて念話の方法を思い出し、怯えて謝る。
唐突に帰ってきたキャスターに対し驚きを隠せなかった。
彼の姿は見えない。霊体化しながら語り掛けているのだろう。
兎に角、すぐ傍にいる事だけは認識出来た。


『相変わらず辛気臭ェツラしてやンの!へへへへへへ!なァ!エート、お前……何だッけ?』
『…ハナ』
『そう!ハナ!それだよ、お前の名前!』


けたけたと笑うキャスターの声が頭の中で響く。
畏怖の対象でしかない相手の言葉が、まるで心に訴える様に反響し続ける。
背筋が凍る様な思いを抱く中、キャスターは更に言葉を捲し立てる。


768 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:26:35 TOV9d1ec0


『なァ、独りは寂しいよな、ハナ』


まるで子供に語り掛ける様な声でキャスターが囁いた。
独りは寂しい。
――――――そうだ、寂しいに決まってる。
言われなくても、解ってる。



『俺だって寂しいからさァ……お前もバカになっちまおうぜ……楽しく生きンのが一番だろ?』



悪魔の囁きが頭の中で尚も響き続ける。
聞きたくなかった。キャスターの言葉に耳を傾けたくなかった。
だけど、彼の声色から微かな寂しさを感じ取ってしまった。
自分と同じ様に仲間を求めている。
そんな想いを少しでも感じてしまい、彼の言葉に意識を向けてしまった。



『元気出せよハナ!もっと笑っちまいな!笑顔でいるのが一番!
 マーやパーにも、友達にも心配掛けたくねェだろ!へへへへへへへへ!』



ズキリと胸に突き刺さる。
笑顔が一番―――――ああ、その通りだ。
いつだって笑顔でいるのが一番。それが自分だったのに。


直後に脳裏を過ったのは、自身にとっての大切な人達。
ママ。パパ。マチさん。タミさん。ヤヤさん。
そして、ナル。
笑顔を失ってしまえば、自分は皆を心配させてしまうのだろうか。
ここから帰ってまた皆と会う為にも、笑っていなければならないのだろうか。



―――――帰る?でも、どうやって?
―――――キャスターと一緒に、みんな殺して?



『俺はいつでもお前を待ってンぜ!オタッシャデー!』



そして、キャスターの声が途切れた。
またどこかへ行ってしまったらしい。
あっ、と声を漏らして念話で何かを伝えようとした。
だけど出来なかった。
去っていったであろうキャスターを黙って見逃してしまった。


内心、ほっとしていた。
キャスターがいなくなったことに。


再び、溜め息。
右腕でその目元を覆う。
いつの間にか涙が溢れていたのだ。
どうしようもない現状への恐怖か。
キャスターへの恐怖心か。
それとも、何も出来ない自分の無力さへの悲観か。
理由は解らなかった。
だけど、兎に角今はただ泣きたかった。


その手に鳴子は無い。
彼女を支えてくれるモノは、今はまだいない。


769 : Dancer in the Dark ◆1k3rE2vUCM :2015/06/14(日) 23:28:37 TOV9d1ec0


【DOWNTOWN WEST CHELSEA HILL/1日目 午前】
【ジョンガリ・A@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]盲目
[令呪]残り3画
[装備]白杖に偽装した狙撃銃
[道具]なし
[所持金]一万程
[思考・状況]
基本:聖杯による主君の復活を。
1.アサシン(クロエネン)に偵察をさせる。攻撃等の判断は基本的に当人に一任。
  場合によっては本格的に暗殺に乗り出す。
2.『黒いタールの殺人鬼』『赤覆面』『グラスホッパー』『ヤモト・コキ』に関する情報を得たい。
[備考]
※職業はフリーランスの殺し屋です。裏社会に精通するマスターで顔見知りの相手がいる可能性もあります。


【MIDTOWN REDHOOK】
【ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ(アニメ版)】
[状態]精神不安定
[令呪]残り3画
[装備]学生鞄、ジュニアハイスクールの制服
[道具]
[所持金]三千円程
[思考・状況]
基本:???
1.どうすればいいのか解らない。
2.また皆とよさこいがしたい。
[備考]
※キャスター(デスドレイン)の凶行を認知しています。

【キャスター(デスドレイン)@ニンジャスレイヤー】
[状態]魔力消費(小)、首に刺傷(ほぼ完治)、軽い苛立ち、アンコクトン増殖中
[装備]メンポ、ニンジャ装束
[道具]ヘルヘイムの果実、ヤモト・コキの指名手配書、血塗れの新聞紙(12/20発行)
[思考・状況]
基本:自由!
1.自由を謳歌しつつ、魂喰いと補食によって己の力を蓄える。
2.シェリル・ノームを探してサヨナラ&ファックがしたい。
3.一緒に愉しめる仲間が欲しい。いっそハナを教育してみるのも悪くないかもしれない。
4.この果実を何かに使ってみたい。
5.ガスマスクの男(クロエネン)はいつか殺す。
[備考]
※NPCの魂喰いと殺戮を繰り返し、魔力とアンコクトンを増幅させています。
※ヘルへイムの果実の存在を認識しています。
※アサシン(クロエネン)を視認しました。

【アサシン(カール・ルプレクト・クロエネン)@ヘルボーイ(映画版)】
[状態]魔力消費(小)、気配遮断中
[装備]ガスマスク
[道具]トンファー型ブレード×2
[思考・状況]
基本:聖杯による主君の復活を。
1.街の偵察を続ける。
2.敵を捕捉した際には暗殺も視野に入れる。
3.ニンジャのサーヴァント(デスドレイン)に警戒。
[備考]
※キャスター(デスドレイン)の外見・宝具『死の濁流』を視認しました。
※念話によってマスターとの意思疎通が行えます。


770 : 名無しさん :2015/06/14(日) 23:29:03 TOV9d1ec0
投下終了です。
指摘や感想があれば宜しくお願いします。


771 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/14(日) 23:53:01 lC6HTEqM0
皆様投下乙です。正直言ってこんなに書きにきてくれる方がいるとは想定していなかったので、ちょっと感動しています。
予約を延長させてもらいます。感想は投下の時に改めて。


772 : ◆DoJlM7PQTI :2015/06/15(月) 00:19:30 tgmWxRwc0
皆さま投下お疲れ様です!

>セイヴァーたぶらかし
ミュカレに目をつけられたグラスホッパー、やはり一際目立つ分警戒対象になりやすいように思われます。
ヘルヘイムの森に目をつけたりと理知的なこのタッグが今後どのように駒を進めていくのが気になります。
実在の神話になぞらえて考察したりと読み応えのあるお話でした。

>Dancer in the Dark
クロエネン・デスドレイン両名の耐久の高さが光るお話ですね。
スマートかつスタイリッシュに暗殺を決め、不気味なまでの不死身っぷりを誇るクロエネンに、
ノーカラテながらもジツのみで暴れまわり、また他者に自分の狂気を伝染させようとするデスドレインのおぞましさ
どちらもダークな魅力が存分に発揮されているように思いました。

さて、少々遅れてしまい申し訳ありませんが、拙作の投下をさせていただきます。


773 : こぼれ話のその先に ◆DoJlM7PQTI :2015/06/15(月) 00:21:32 tgmWxRwc0
日誌 ロールシャッハ記 20XX年 XX月 XX日

先日、一人の少女が死んだ。

このふざけた催し物の参加者として呼び出された子供と、それに呼び出された剣兵の名を冠するサーヴァントだ。
この腐りきった街に蔓延るゴミ共の掃除をしている時に、偶々出会っただけの存在だった。
巻き込まれただけという少女を守る為に立ちはだかったサーヴァントに「あまり目立ちすぎるな」と忠告はしておいたが、それは無駄だったらしい。

数日後"ガス爆発事故"が起きた。
爆発が起きたにしてはヤケに小綺麗な現場で、ホームレスとは明らかに体格の異なる、それこそ幼少の子供としかいえないサイズの焼死体を見た。
それから、あの子供とサーヴァントの行方は一行に掴めない。
つまりはそういう事だったのだろう。

どこかで、犬の鳴く声が聞こえた気がした。
母さんと呟く声は、聞こえなかった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

あのガキどもに会ったのは、そんなに昔の話じゃない。
この聖杯戦争が始まっても、結局俺のやることは変わらない。そんな中で、偶々出会ったのがあいつらだった。

まずあいつらに対して思ったのは"危なっかしい"という事だ。
正義感だけが暴走して、手当たり次第に悪党どもを潰して回っている。しかも同業の俺よりも頻繁に名があがるくらいまでにだ。
「お前達は派手にやりすぎだ、ヤバイのに目をつけられないよう少しは慎重に動け」と忠告をくれてやったが、それも無駄に終わったらしい。

新興の犯罪組織とガキどもが接触し、そのボスが動いたという話を聞いた。
そのボスの正体を知ろうとーー別に他意なんかねえーー港に向かったが、もう何もかもが終わった後だった。
何かが焦げる臭いと破壊の跡、所々に飛び散る赤い飛沫の中に転がっていたのは、首から上が泣き別れになったガキの体。
馬鹿が、人の忠告を聞かねえからだ。中途半端な正義感の持ち主なんざ容赦なく食い殺されるのがこの街の摂理だってのに。

――酷いジョークさ、ブルーシィ。
あの時のあんたみたいに俺も間に合わなかったって訳だ。
だけど、あんたと違う事が一つある。
俺は、ちゃんと殺せるからな。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

私が元々いたところに比べて、この街はとっても物騒だ。

毎晩鳴り響くパトカーのサイレン。
メディアを騒がす連続殺人犯。

だけど、どこか他人事の様に捉えていた。
港で殺人事件が起こったとか、爆発事故があったとか話は聞いたけど、あたしの周りは"まだ"日常を保っていた。
それは多分、あたしの身近なところでそういった事が奇跡的にも起こらなかったから。

バスターと話をした。
今起こっている事件はサーヴァントのせいじゃないのかって。
バスターはわからないって言った。
それだけこの街が物騒って事なんだろうけど。

どうしようかと考える。
私は帰りたい、誰も殺さず、殺されずに。
でもそんな方法なんてすぐ思いつく訳ないし、バスターだってそれは一緒。

誰か、私と同じ巻き込まれた人を探そうかと思ったけど、こんな事件を起こす人が聖杯戦争の参加者だったら、私たちの話なんて聞いてくれるなんてとてもじゃないけど思えない。
結局、私に出来る事なんていつも通りの日常を送るだけだった。
ため息をつきながらトボトボと街を歩く。

視界の隅にマスクを被ったコートの男が映った

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


774 : こぼれ話のその先に ◆DoJlM7PQTI :2015/06/15(月) 00:22:51 tgmWxRwc0
睨みあうのは赤と白のマスク。
対峙するのは暗殺者の名を関する二人の忍者。
転がっているのは悪党だったもの。

レッドフードは昨今勢力を増した東洋人が牛耳る組織を。
ロールシャッハは台頭を始めたネオナチの組織を。
同盟を結んだ両組織を追っている者同士、邂逅を果たすのは時間の問題と言えた。

末端の人間から情報を聞き出していたレッドフードと、その男の所在を割り出し、向かっていたロールシャッハが居合わせた瞬間。
二人の忍びが影から抜け出す様に現れ、切り結ぶ。
ぶつかり合った刃が火花を散らし、互いが互いに飛び退る。

レッドフードがオートマチックの拳銃を、ロールシャッハがワイヤーガンをお互いに向け合う。
緊張が空間を支配していた。

「よぉマスクマン、悪いがこいつは話し疲れてお寝んねしちまったんだ。日を改めて出直してくれや」
「……ならお前から聞き出せばいい。簡単な話だ」
「生憎と小汚いおっさんと話す趣味はねぇ、余所を当たってくんな」

一触即発の空気が流れる。
チャキ、とシルバーカラスがウバステを腰だめに構える。
チップがブレードへと気を纏わらせ始める。
互いに闘気を限界まで充填させた。
その時だった。
上空から一筋の光が落ちた。

「ちょぉぉぉぉぉぉぉっっっっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

怒声と轟音、そして巻き起こる砂埃
何事かと、二人の覆面の男と、二人の忍びがそちらを向く。

砂埃が晴れる。
雄々しいまでの仁王立ち。
風にたなびく純白のマフラー。
力強く組まれた両の腕。
きらりと光るゴーグルの奥には強い意志を湛えた瞳。
そしてぴょこんと跳ねた一房の髪の毛。

「この喧嘩! 理由は知りませんがこのバスターが預かります!」

そう高らかに、宣言した闖入者に全員が全員、言葉を失った。

(や、やっちゃった〜!)

物陰から状況を伺いながら、李衣菜は一人頭を抱える。
まったくの偶然に見かけた不審者を訝しんで追いかけた先で見てしまったサーヴァントとサーヴァントのぶつかり合い。
明らかに一般人には見えない危険人物二人に対し、李衣菜の危機意識は逃走を訴えた。
だが、その一方で思ってしまった。
ここで逃げてどうなると。
逃げた先で待っているのはただ日常生活を送るだけの自分。
何もわからず、何も進まず、ただいつ死ぬかもしれない恐怖に怯えるだけの日々。

だからこそ、賭けに出た。
どちらか片方だけでもいい。
せめてこちらの話を聞いて欲しいと。
脱出する方法を探すのを協力して欲しいと。

だからこそ、今にも戦いが起こりそうな状況へ、バスターにお願いして無理やり介入してもらった。
ドクンドクンと心臓が鳴る。
まるで、初めてのライブの前の時のように緊張する。
ギュっと手を握る。
あの時は一緒に曲を作り上げてくれた相棒がいた。
今はいない、が、共に戦ってくれると誓ってくれたサーヴァントがいる。
一歩踏み出す

ここから先は彼女の舞台。
多田李衣菜の聖杯戦争が幕を開ける。


775 : こぼれ話のその先に ◆DoJlM7PQTI :2015/06/15(月) 00:23:19 tgmWxRwc0
【DOWNTOWN EAST PARK SIDE/1日目 午前】

【多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]4千円程度
[思考・状況]
基本:帰りたい。
1.目の前の人たち(ロールシャッハ・シルバーカラス・レッドフード・チップ=ザナフ)に事情を話して協力してもらう
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ、シルバーカラス)の外見を確認しました

【ノノ@トップをねらえ2!】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本:マスターが帰りたいらしいので、手伝う
1.争いを止めてマスターの話を聞いてもらう。
2.いざというときはマスターを連れて撤退する。
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ、シルバーカラス)の外見を確認しました

【ロールシャッハ@ウォッチメン】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]ワイヤーガン
[道具]ベイクドビーンズの缶詰、角砂糖
[所持金]5千円程度
[思考・状況]
基本:誰が何と言おうと、聖杯を破壊する。悪党は殺す
1.乱入者(ノノ)と赤い覆面の男(レッドフード)に対処する
2.ネオナチの組織を潰す。
3.ヤモト・コキについては見つけ次第罰する。
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ)バスター(ノノ)の外見を確認しました

【シルバーカラス@ニンジャスレイヤー】
[状態]魔力消費(小)
[装備]ウバステ
[道具]なし
[思考・状況]
基本:マスターに従う
1.乱入者(ノノ)と白髪の男(チップ)に対処する
2.ヤモト・コキについては……
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ)バスター(ノノ)の外見を確認しました

【レッドフード@ウォッチメン】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]オートマチックの拳銃、片刃の小型ナイフ
[道具]なし
[所持金]5千円程度
[思考・状況]
基本:聖杯にジョーカー殺害を願う。悪党は殺す
1.乱入者(ノノ)と白い覆面の男(ロールシャッハ)に対処する
2.新興の犯罪組織(志々雄)を潰す。
[備考]
※アサシン(シルバーカラス)バスター(ノノ)の外見を確認しました

【チップ=ザナフ@GUILTY GEARシリーズ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]ウバステ
[道具]なし
[思考・状況]
基本:マスターに従う
1.乱入者(ノノ)とフードの男(シルバーカラス)に対処する
[備考]
※アサシン(シルバーカラス)バスター(ノノ)の外見を確認しました


776 : ◆DoJlM7PQTI :2015/06/15(月) 00:24:17 tgmWxRwc0
短くて申し訳ないですが以上で投下を終了いたします。


777 : 名無しさん :2015/06/15(月) 02:00:42 vT0DpbN.0
投下乙です!
出だしの三者の独白がそれぞれの個性を出してていいなぁ…
個人的には淡々としたロールシャッハと皮肉やジョークを利かせたレッドフードの言い回しが対照的で好き
同じ私刑人である二人が犯罪者を追う過程で邂逅したのも必然と言えるか
二人の接触に割り込んだノノは果たしてこの状況をどうにか出来るか
現状から逃げずにしっかり向き合うだりーなのスタンスは応援したくなるなあ


778 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:07:20 FdUIvcCs0
>運命はもう止められないとしても
 ヘルヘイムの果実の解析までしているとは……流石メディア。
 みくはまさかミッチの影響を受けて立ち直る(?)とは。なんだ、ミッチって良い奴じゃん!
 しかし直後に現在進行形でインベスに襲われてピンチ。みくにゃんの明日はどっちだ。

>セイヴァーたぶらかし
 ディスト!鼻垂……薔薇のディストじゃないか!
 この主従の思想は物騒極まりないですけど、あくまで善意でやろうとしてるのがタチ悪いですね。
 ジェダは早くもヘルヘイムを発見しましたが、都会の一角が植物まみれならそりゃ吃驚しますわな。

>Dancer in the Dark
 初の鯖同士の戦闘はクロエネンの不死性が優位に働いた感じですね。
 しかしまあデスドがゲスいゲスい。ある意味一番聖杯戦争エンジョイしてますね。
 こんな鯖引いてしまったハナが幸せになれるルートはあるのだろうか。

>こぼれ話のその先に
 マスクマン二人と登場話で無残に逝った主従に繋がりがあったとは。
 志々雄と少佐が仲良しな以上協力すれば早いのですが、そう都合よくはいかない訳で。
 こればっかりはだりーなの頑張りに期待する他ありませんな。


779 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:08:55 FdUIvcCs0
少々遅れましたが、私も投下します


780 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:10:53 FdUIvcCs0



 ゴッサムシティの深淵には、無数の悪が息を潜めている。
 泥棒の様な木端な悪党から、国外にも名を届かせる大犯罪者まで、その種類は多種多様。
 そんな連中ばかりが潜んでいるものだから、街の環境は彼等に適したものとなっていく。
 罪は許され、罰も与えられず、悪徳は際限なく成長し続ける。
 今となってはもう、善悪のバランスが逆転している有様だ。

 犯罪者が快適に過ごせるこの街は、悪党共を快く受け入れる。
 それ故に、他国から追われる身には絶好の潜伏先として機能する。
 ネオナチの過激派組織として知られる"最後の大隊"とて、それは同じ事。
 "少佐"と呼ばれる男を首領とする彼等は、ゴッサムで身を潜めていたのであった。

 その最後の大隊の本拠地となっている、ナローズ地区のある施設。
 そこの一室にて、少佐は日課である情報収集に励んでいた。
 机に置かれたのは、朝食用に用意された幾つものサンドイッチ。
 彼はその内の一つを片手に、新聞に目を通している。

 衆愚の街なんて渾名が付く街である以上、新聞の一面は凶悪事件で彩られる。
 例えば、既に数十人もの犠牲を出しているという残虐極まりない殺人鬼の話。
 なんでも、内部から人を破裂させるという摩訶不思議な手段で殺人を犯すのだとか。

 十中八九サーヴァントの仕業だろうと、少佐は判断する。
 その様な珍妙な手段で人を殺すなど、超常の存在たる彼等でしか為し得ない。
 如何な理由で虐殺に赴いたのは定かではないが、酔狂な輩がいたものだ。
 しかし、酔狂は望む所だ。是非とも加害者の面を拝んでみたいものである。
 もし運が良ければ、これから始まる"戦争"の歯車になり得るかもしれないのだから。

 新聞にはこれ以外にも、様々なニュースが記載されていた。
 街の片隅で爆発事故があっただの、自警団が更に規模を広げつつあるだの。
 "聖杯戦争"のプレイヤーならば、小耳に挟んでおきたいものばかりである。

 サンドイッチを欠片も残さず腹に詰め込み、新聞を畳む。
 その後何枚かの資料を机から取り出し、また熟読を始める。

 資料というのは、ゴッサムの裏社会で起きた出来事のまとめである。
 こればっかりは、幾度新聞を読み返したとしても手に入らない情報だ。
 自分以外にも裏社会に籍を置くマスターがいる事を考えると、これは必要不可欠なものである。

 ギャングを殺し未だ逃亡を続ける少女、麻薬のルートを叩き潰した赤い覆面の男。
 敵対者を暗殺しているという自警団の噂、裏社会で名を上げる"トゥーハンド"なる殺し屋。
 テロ組織の人員を利用すれば、この程度の情報を集めるなど造作もない。

 が、少佐は今の所、自分から他の主従を襲いに行くつもりはなかった。
 何しろ、彼の目的は聖杯の入手ではなく、聖杯を掴む過程にこそあるのだから。
 極端な話、手段さえ果たせれば聖杯などどうでもいいとさえ思っている。

 望むべく手段の名は、"戦争"。
 戦争をゴッサムに持ち込み、その状況を大いに楽しむのが理想。
 そして、その戦火の中で二度目の死を迎える事こそが、少佐にとっての最上だった。

 情報を求めるのも、来たるべき戦争に向けた"お勉強"だ。
 いずれ始まる大戦争を大いに楽しむ為の予習とも言える行動である。
 そこに、誰それを狙うといった普通のマスターの様な考えが介入する余地はない。


781 : S(mile)ing! ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:15:14 FdUIvcCs0

「退屈かね、バーサーカー」

 虚空に向け声をかけると、一つの影が現れ出る。
 純朴そうな笑みを浮かべた、白い服の少年であった。
 少佐に与えられたサーヴァントにして、その正体は戦闘民族"グロンギ"。
 一見無邪気な少年に見える彼は、その中の王に君臨する存在であった。

「少し、ね」
「ならもっと退屈するといい、空腹は最高のスパイスなのだからね」

 少佐が戦争を起こす理由は、なにも自己満足だけに留まらない。
 このグロンギの王たる少年に、人間の戦争を教え込むという理由もあった。
 人間を知らぬまま人間を殺す王に、人間の真髄を叩き込む。
 彼等が"リント"と呼ぶ弱者の、その真の姿を見せつけるのだ。

 民を総べる王は、あらゆる快楽を貪る権利を持つ。
 全ての特権が許されたその者は、我慢という枷から解き放たれた状態と言える。
 そしてそれ故に、飢えが何者にも勝る調味料である知識を喪失するのだ。

「"最後の大隊"は数十年待った。我々(リント)がそれだけ待てるのなら、五日程度造作もない事だろう?」
「でも、やっぱり退屈は嫌だな」

 調子を崩さないまま、バーサーカーは言い返す。
 姿形は子供と大差ないというのに、放たれる威圧感は相当のものだ。
 流石は一つの種の長に君臨するだけの事はある。

「ねえ、あの包帯の人って強いかな?」
「彼は大事な同盟相手だ、迂闊にちょっかいを出すものではないさ」

 "あの包帯の人"とは、志々雄真実の事だろう。
 最近になって急速に勢力を広めつつある組織の首領であり、まるで怪人の様な外見をした東洋人。
 彼が率いる組織とは同盟関係にあり、敵対しない事を約束しているのだ。
 戦火を広めるには打ってつけの相手と仲良くなれたのだから、それをふいにされるのは流石に困る。

 異様なまでの征服の速度から察するに、恐らく志々雄はマスターだ。
 バーサーカーも満足いく遊びが出来るかもしれないが、今後を思うと抑えさせるのが利口である。

「そりゃ残酷ってもんだぜ、少佐殿よ」

 が、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに。
 扉を開けて現れたのは、紫と白の道化師であった。


782 : S(mile)ing! ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:18:40 FdUIvcCs0
【2】


 HA HA HA HA HA HA HA HA HA HA 


 笑い声が響く。狂人の笑い声だ。
 事実、"ジョーカー"と名乗るこの男は狂っていた。
 彼の狂った笑みが、部屋いっぱいに響き渡る。

 "最後の大隊"のゴッサム入りを手引きした犯罪者。
 少佐が率いる組織の恩人という設定を与えられた道化師。
 彼がマスターの一人である事を、少佐は既に知っている。
 そして、逆もまた然りであった。

「なんだ君か、私に何か用だったかね?」
「いいや少佐殿、ちょいと暇そうな子供の声が聞こえたんでね。笑わせてやんなきゃパリアッチの名が泣くってもんさ」

 最後の大隊をゴッサムに招き終えたジョーカーは、それ以降は単独行動をとる"設定"だった。
 孤高の犯罪者としてゴッサムで暗躍するという"役割"であった彼は今、最後の大隊に保護されている。
 理由は簡単だ、自分を狙うヒーローに追われているのである。
 おまけに、そのヒーローとは自身が呼んだサーヴァントというではないか。
 そういう事情もあって、少佐はジョーカーを自らの監視下に置いていた。

「笑えるってのに笑えないのは拷問さ……あんた、こんな子供を虐待するつもりかい?」
「子供って、僕の事?」
「ああそうさボーイ、あの肥満体が子供に見えるのか?」

 何の躊躇も無く、ジョーカーはバーサーカーに歩み寄る。
 本来であれば、生身で他のサーヴァントに近寄るなど自殺行為に他ならない。
 そんな事お構い無しに行動するのは、自分が殺されないという自信があるからなのか。
 それとも、狂っているが故にそれを理解できないのか。真相は定かではない。

「んんん?なんだお前……」

 ジョーカーが、バーサーカーの目の前で立ち止まる。
 そして、少年の面に貼りついた笑みをまじまじと見つめた後、


「……そのしかめ面はなんだ?」


 微笑むバーサーカーに対し、口をへの字に曲げながら。
 ジョーカーが押し付けたのは、笑顔へのクレームだった。 

「自分じゃ笑ってるつもりなんだろうが、あんた随分笑顔が下手糞だな。
 餓鬼が無理やり笑顔作ってるだけさ……イカれたつもりでいやがる」
「それって、どういう意味かな?」
「お前は狂った振りしたただのガキって事さ!ジョークってもんを知らねえ!
 それこそ笑えるくらいに滑稽さ!いいや、いっそ盛大に笑ってやる!HAHAHAHAHAHA!」

 瞬間、少年の姿が異形のものへと変異する。
 白い肉体に金の装飾を身に着けた、人型の怪物である。
 バーサーカー――ン・ダグバ・ゼバが、その身に宿る力を解放したのだ。

「じゃあ、どうすればいいのかな?」

 ジョーカーの首を掴み、変わらぬ口調でそう問うた。
 口調こそ変わらないが、間違いなくバーサーカーは機嫌を悪くしている。
 もしジョーカーの答えが納得しないものであれば、彼は渾身の力を籠めて首を締め上げるだろう。
 バーサーカーの腕力であれば、人間の首など木の枝も同然だ。

 不意を突かれたジョーカーは、一瞬驚愕の表情を浮かべる。
 しかし、すぐさま元の狂笑を顔に塗り付けて、

「分からねえのかボーイ?だったら俺が教えてやるぜ、本当の笑顔の作り方ってやつをな!」
「……君が、僕を笑顔にしてくれるの?」
「ああそうとも!人生があまーいサクランボなら、お前はまだ種ってワケさ!
 お前はまだ笑顔ってもんを知らねえ!まるで成長できちゃいねえのさ!」

 "笑顔を知らない"と言われた途端、バーサーカー手の力が緩まる。
 そうしてジョーカーが解放された後、彼は元の少年の姿に変化した。
 人間態に戻ったバーサーカーは、やはり微笑みを絶やないままであった。
 ジョーカーに"しかめ面"と罵倒された笑みを、今も止めずにいる。


783 : S(mile)ing! ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:23:34 FdUIvcCs0

「ねえ、彼に着いていってもいいかな?」
「仕方ない、門限までに帰ってくるなら許してあげようじゃないか。
 ……おっと、下手に暴れるのは駄目だ。戦争(メインディッシュ)がおじゃんになってしまう」

 それまで静観していた少佐は、バーサーカーの独断を許可した。
 少年のガス抜きも時には必要だし、それにジョーカーがある程度自由に行動できるというメリットも出来る。
 バーサーカーもあの様子なら、道化師を勝手に殺してしまう事はないだろう。

 ジョーカーはまさしく混沌の権化だ。
 この狂気の罪人は、間違いなくゴッサムを混乱に陥れる。
 そうした街の悲鳴が、混沌の産物たる戦争を呼び起こすのだ。

「そういう訳だジョーカー、こんな所に籠ってないで、君も外の空気を吸ってくるといい」
「言われなくてもそうするつもりさ。しかし、おたくの子を止めねえとは中々冷たいじゃないか」
「君ならああ答えると思っていたからね」

 止めるまでもないさ。
 そう言いながら、懐から携帯電話を取り出し、ジョーカーに放り投げる。
 連絡用のもので、元よりジョーカーに分け与える算段だった。

 ジョーカーは受け取った携帯電話をポケットにしまい込んだ後、上機嫌で部屋から出ていった。
 直後、ドア越しに笑い声が耳に入り込んできた。新しい玩具を手に入れた子供を連想させた。
 いつか、バーサーカーもあれだけ大声で笑える日がやって来るのだろうか。

「ああ来るさ。"戦争(ゲゲル)"は君の好物なんだからね」

 ジョーカーという狂人が、バーサーカーに何を齎すのか。
 それを知るのは、これから先のお楽しみというものさ。
 今の少佐に出来るのは、機が熟すまで暗躍する事くらいというものだ。

 "本物の戦争"が街を砲火で焼き払うその瞬間まで、せいぜい鼻歌の一つでも歌いながら。
 "聖杯戦争"などという名ばかりのちっぽけな"お遊戯"を、静観する事にしよう。


784 : S(mile)ing! ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:28:33 FdUIvcCs0
【少佐@HELLSING】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]拳銃
[道具]携帯電話
[所持金]豊潤
[思考・状況]
基本:ゴッサムに戦争を持ち込む。
 1.当面は潜伏する。
 2.混沌の権化たるジョーカーへの期待。
[備考]
裏社会の情報等を組織の団員に集めさせています。

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[状態]健康
[装備]特筆事項なし
[道具]特筆事項なし
[思考・状況]
基本:もっと、もっと笑顔になりたい。
 1.ジョーカーに期待。
 2.少佐の話す"戦争"への興味。
[備考]
しばらくジョーカーと行動を共にするつもりです。

【ジョーカー@バットマン】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]拳銃(ジョーカー特製)、造花(硫酸入り)
[道具]携帯電話(少佐との連絡用)
[所持金]不明
[思考・状況]
基本:聖杯戦争をとびきり悪趣味なジョークにプロデュースする。
 1.手始めにバーサーカー(ダグバ)を笑顔にしてやる。
 2.最終的には、バッツ諸共"最悪のジョーク"を聖杯に叩き付ける。
[備考]
"最後の大隊"の拠点を知っています。


785 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/17(水) 00:28:46 FdUIvcCs0
投下終了となります。


786 : 名無しさん :2015/06/17(水) 01:01:24 2uFcdjAE0
投下お疲れ様です

三者三様の異なる狂気が混ざり合う狂人どもの邂逅
変な話ですが、なんだかジョーカーがダグバ君に悪い事を教える親戚のおじさんで、少佐がその保護者のようにも見えました
しかしマジ○チ二人がゴッサムの散歩を開始し始めたのが何気にヤバいですね
何事も起こらないというのが無理な話でしょうし、この爆弾が今後どこで盛大な花火を挙げるのか気になるお話でした!


787 : 名無しさん :2015/06/17(水) 01:09:34 at.OO5Ck0

ゲ ゲ ル 開 始


788 : 名無しさん :2015/06/17(水) 01:30:37 LPKf33uw0
投下乙です!
ジョーカーの手引きが発覚してネオナチ連合がますますとんでもない組織に…
ダグバに怖じることなく飄々とした態度を貫いたジョーカーはやはり侮れない
そして狂人コンビの恐るべき散歩道は血塗れのカーペットと化すか…!?
少佐が企てる戦争も気になるところ。聖杯戦争でさえお遊戯と断じる戦争狂はやはりかっこいい


789 : ◆zzpohGTsas :2015/06/18(木) 00:42:37 4r4lDImI0
申し訳ございません、感想は後程。予約だけさせていただきます

オズワルド・コブルポット&セイバー(後藤)
広川剛志&アーチャー(エシディシ)

を予約いたします


790 : ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 20:58:39 GmJs0..I0
感想がまだ仕上がってないので、投下だけします……(大うそつき)


791 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 20:59:11 GmJs0..I0
1:

 つくづく、数字と言うものは不思議な概念だと思っている。
それ自体はただの文字であり、関連付けに基づいて纏め上げたとしても、精々がただのデータ止まりだ。
だが数は、ありとあらゆる情報を記す上で、この上なく重要な概念である。数字を我々に様々な事を連想させる。
給与の多さや少なさ、会社への出勤日数、四百字詰め原稿用紙の残り文字数、エンゲル係数、人口密度等々。
それ自体はただの、古の時代にアラビアの国で生まれたただの文字である。しかし、様々な情報を表現する事が出来る。
たった十パターンしかない文字で、我々人類に様々な印象を与える事が出来る。数値が増えれば落胆する情報もあれば、減って嬉しい情報もある。その逆も然り、だ。

 私は、ある数が増えて行く事に危機感を覚えていた。その数とは、地球上の人類の総数。
誰が嘯いたかは知らないが、人類は地球上における霊長の覇者であると言う。ある意味ではそうだろう。
如何なる環境でも我々人類はお目にかかる事が出来るし、果たしてこの地球上に、人類未踏の土地などあるのだろうか? 我々程、幅広い環境に適応出来る生物はいない。
我々の数は、増えて行く。だが、それに反比例して、地球の財産は減って行く。植物や、食い扶持を保つ動物だけではない。
口に出来る真水の総量も、安定して居住が可能な地上の面積も。人類の数が増えれば増える程、我々の生活は、生綿で首を絞めるように辛く厳しいものになって行く。
自明の理なのに、人々はその現実を見ようともしない。解決に、乗り出そうとしない。人は愚かだが、本能的に察しているのだ。
現況を解決するにはきっと、途轍もない痛みが伴う事を、彼らは知っているのだ。

 故に彼らは、何時だって眼前の現実を見まいと勤めようとする。
糖蜜の様に甘く、桜色をした柔和な未来やヴィジョンをした、実体も中身もない上手い話にのみ飛びつき、その反対の話には見向きもしない。
こんな選択を続けていたからこその、今がある。地球の総人口は今や七十億を超え、環境の破壊の度合いも、数十年前とは比べ物にならないと言う。
我々は、強くなり過ぎた。我々は、賢くなり過ぎた。だから、天敵がいなくなってしまったのだ。
この地球上に於いて我々を一時に葬り去りうるものは、地球の怒り以外には、最早存在などするまい。
我々には天敵がいないのだ。虫に対する鳥のような。シマウマに対するライオンのような。

 霊長の覇者を――地球の長を名乗るのであれば、少しの痛みに耐えるべきだ。
地球に生きる他の生き物の為に、少しだけ、席を譲ってやる位の事は、して見せるべきだ。

 増えた数――世界人口――を、減らす勇気を持つべきだ。我々と同格、いや、それ以上の、食物連鎖のピラミッドの存在を、赦してやるべきだ。

 私の思想が異端である事など、自覚している。人間は当然の事、人間の天敵に今後成り得るであろう存在に対してすらも、理解は得られなかった。
しかしそれでも、私は望んでいる。地球を生き長らえさせる為、人間の人口を調整する為の、新たなる霊長の覇者として君臨しうる存在を。

 何故……こんな思想を持った私が、その思想を宗旨替えもさせず、曲げる事もせず、今日まで生きて来れたか。
もしかしたら私は――地球の全ての生き物の未来を守る為に、生まれて来たのかも知れない。



.


792 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 20:59:25 GmJs0..I0
2:

 一言で言えば、俺達は地球の長として君臨するのに相応しい生命だった。
高い知能を持ち合わせ、身体能力も地球のどんな生物よりも優れ、どんな生物よりも長く生きる事が出来た。
原始人は、俺達の事を神だ悪魔だと言い、時には恐れ、時には敬っていた。その時は俺達も、地球に生きる他の生命体の事を配慮し、態度を増長させる事をしなかった。
……いや、出来なかった、と言うべきなのか。俺達は完璧であった。……ただ一つ、太陽の光を極端に苦手とする事を除いては。

 今にして思えば、俺達の種族は理知的過ぎた。大人としての良識を持ちすぎていた、と言っても良いのかも知れない。
強すぎる力を発揮出来る肉体に、賢すぎる知力を内包した大脳を持ち、時の劣化を受け付けない肉体……俺達は地球における最強の種族だった。
だからこそ、一層地球の為に配慮しなければならなかった。地上に出る事をなるべく避け、最低限度の食糧の確保さえ出来れば、闇の中でひっそりと生きる事を良しとする。
俺達の種族とはとどのつまり、そう言う奴らだった。一日の半分の時間が外に出られない時間で、残りの時間は陽光を恐れ闇の中で息づく。惨めな、生物。

 そんな鬱屈とした生活を、何よりも嫌っていた男がいた。天に輝く太陽に対して、反旗を翻した男がいた。
男は俺達の一族を、正真正銘地球上で最強の存在……奴に言わせれば、究極生命体(アルティミットシィング)であったか、これに近付けようと尽瘁した。
だが、俺達の一族はこれを認めなかった。陽光を浴びても問題がなくなる、と言う餌に飛びつかなかった。
男の研究していた事柄は、今以上の食糧の供給を必要とする物であり、このまま推移したら地球が死の星になってしまう事が予想出来ていたからだ。

 一族は、男を滅ぼそうとした。そして逆に、返り討ちにあい、彼ら自身が滅ぼされた。
その男が強かった事もそうだ。だが、その理想……暖かな陽光の下で、思う存分その生を謳歌出来る生物になる、という理想に賛同した男の存在も、大きかった。
俺だ。自惚れと言われようが構わない、俺の存在も大きかっただろうと、俺は信じたい。

 究極生命体を目指そうとする俺達の旅は、苦難の連続だった。
自らの一族に妨害された事もそうだが、その過程で波紋なる力を操る一族とも敵対した。そして何よりも最大の敵は……太陽と、地球自身。
まるで俺達が、究極生命体になる事を、地球や、其処に息づく生命の総意が、俺達の志を折ろうと計らっているのではと、思わない事もない。

 永い旅路のその中で、俺達は大いなる何かの意思に負け、膝を折ってしまった。
番犬程度の役割しか期待していなかったが、一族の下を去ろうとした時に連れて行った名もなき赤子が斃された。
波紋を操る術を持つが、それ以上に人を欺く術に長けた男に、俺自身も斃された。俺も認める程の技量を持った、風を操る我らの仲間もまた、奴に斃された。
そして最後の一人――俺達の旅路の原点であり、悠久の艱難辛苦の時間の末に、究極生命体となったあの男もまた、奴と『地球』にしてやられてしまった。
俺は彼の現在を知っている。地球を放逐された彼は、宇宙の闇の中で、生命とも物質とも取れる存在になってしまい、冷たい世界を永久に彷徨っているのだと。

 俺は、彼を救わねばならない。俺は再び、志半ばに倒れた仲間と共に地上に君臨せねばならない。
『呪い』を意味する名を授かって闇の中に生を授かった、俺の友よ。その名の通り仲間の一族からも忌み者にされ、太陽からも呪われた男、カーズよ。
人は、何の為に自分生まれて来て、何の為に生きるのか、悩む生物だと最近知った。俺も最近になって、その意味を考えてみた。そして、辿り着いた。

 俺は――お前の理想に全てを捧げる為に生まれて来たのだ、と。



.


793 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 20:59:37 GmJs0..I0
3:

 アヒルの子が、シチメンチョウの子を産む事はある。ガチョウの子を産む事だって、きっとある。
だが、俺は知っている。アヒルの子が産んだシチメンチョウやガチョウの子は、成長しても美しい白鳥には絶対にならない事を。
そして、染み一つない白い羽毛を持つ白鳥が、シチメンチョウやガチョウを産む事だってある事を。
醜いガキは、大人になってもきっと醜いままなんだ。

 俺と同じ奇形共が集まるサーカスに所属していた時、俺を見る奴らの目は、俺達を蔑み、嘲笑うかのような光を宿していた。
俺達の身体を馬鹿にしていたのかも知れない。或いは知性か、それともこんな境遇か? いや、俺達の惨めな全てを笑っていたに違いない。
確かに俺は馬鹿だが、愚かじゃない。自分と他人の何処が違うか程度は、理解している。
俺はそう、醜かった。汚水が流れ、ネズミとゴキブリと数億ものダニやノミが跳梁するあの地獄の下水に俺を捨てた両親も、俺の醜い容姿を見て捨てる決意を固めたのだろう。

 俺の容姿に比べれば、ヘッ、オーメンに出てくる悪魔の子、確かダミアンだったか。奴ですら可愛い姿をしてるだろうよ。
アイツはジャッカルの腹から悪魔の力で生まれて来たらしいが、それ以上に醜い俺は、男のペニスから迸る液と、それを受け止める女の嚢の合一で生まれて来たんだからな。
だからこそ、俺は全てに対し怒りを宿していた。俺は正真正銘人の胎から生まれて来た人の子だ。なのにどうして、俺の容姿はこんなに醜いんだ。
何故俺の育ての親は、人間ではなく、営業不振で閉鎖された動物園に取り残されたペンギンだったんだ。
何故俺が……、冬の寒い日にその寒さから逃れようと毛布にくるまっている時に、他の奴らはクリスマスを楽しんでいたのだ。

 幸せを享受する全ての子供や大人に。何の試練だか知らないが、俺に醜い容姿を与えた神に。
俺は、呪いの言葉を吐き散らしてやりたい。黒い唾液を吐きつけてやりたい。そして、俺と同じ呪詛を叩きつけてやりたい。
そして、その容姿のせいで、享受する事も許されなかった、地上の幸福とやらをその身に受けてみたい。
他者に呪いつつ、祝福を受ける。それは嘗て、奇形サーカスにいた時に俺を馬鹿にしていた客がしていた事と同じだ。俺は、それをやってみたいのだ。

 この戦いに勝ち残れば、イエスが昔使っていたとされる聖なる杯が手に入ると言うらしい。
Huuuuuhhhhhh……素晴らしい。俺のリベンジを見事に果たしてくれる事だろう。俺はこのグラスの中に、血とミンチ肉を満たし、それをぶちまけてやるのさ。
ガキがプレゼントをねだる為だけに存在する十二月の二十五日に……。中身も無い形式上のMerry Christmasが飛び交う十二月の二十五日にな!!

 ガキの頃に、俺は何度も考えて来た。
俺は何でこの世に生まれて来たのだろうか。俺の生きる意味は、何なのか。
今ならば……、オズワルド・コブルポッドと言う本当の名前を知った今ならば、解るかも知れない。

 ひょっとしたら俺は――他人の幸福を奪い取り呪う為に生まれて来たんじゃないのか、と。
そうだ、人はいつだって、何かを奪っている。食い物も、金も、女も男も。幸福だって、きっとそうだ。許される、筈なんだ。

 ……後から気付いたが、俺はアヒルや白鳥が産んだシチメンチョウでもなければガチョウでもない。
俺は、自分が他の奴からペンギンと呼ばれていた事を、今になって思い出した。



.


794 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 20:59:52 GmJs0..I0
4:

 昔、俺達パラサイトの存在について、深く哲学していた女がいた。
彼女は――田村と名乗っていたその女は、俺達と言う存在を理解する為に、様々な手段を実践していた。
学校で教師をしてみたとも言っていた。なるべくなら人間を食料とせず、彼らが食べるような食物を食べて生活してみたとも言っていた。
大学と呼ばれる場所で講義を聞いてみたとも言っていた。――女性の身体に寄生していたと言う事を活かして、子供を成し、その子供を育ててもいた。

 つくづく不思議だったのは、何故田村は、其処まで自分の存在について哲学していたのか、と言う事だ。
彼女は正直、強い女性だった。性格が、じゃない。それもあるが、戦闘の腕前の方も、俺を唸らせる程だったぐらいだ。
戦えばさぞ、面白い相手だった事だろう。その願いは結局叶う事はなかったが。
それだけの力を持ちながら田村は、人間を喰らう事については消極的で、俺達パラサイトにプログラムされていた本能に従う事があまりなかった。
つまり、何だ。俺から見れば、自分に正直に生きてないような。そんな風に俺には見えた。

 もっと、シンプルに考えて生きられないのかと俺は疑問だった。
俺達パラサイトは、生まれ落ちたその時から、一つの本能を組み込まれている。それは即ち、寄生した種を――この種を食い殺せ、と言うものだ。
多くの奴が、その本能に従った。俺達に備わる知性と、生物的な特色の故に、人を見下す奴も多く出て来た。それで、良かったのではないのか。
どうにも、解せない。田村は警察に射殺されたと言う。新一と、そいつに中途半端に宿ったパラサイトに子供を預け、亡くなったと言う。
田村の死に納得出来ない俺が異常なのか。彼女は、何を思い射殺されたのか。それは今でも、解らない。
……解らなくても良いのかも知れない。俺にとっては、些末な事だ。

 俺は自分に正直に生きる事にしている。
そしてその過程で、自分自身のレゾンデートルを、俺は認識する事が出来た。
嘗て田村が、パラサイト――田村玲子と言う生物の存在意義を、認識しようとしていたように。尤も、奴と俺とでは、見えていたものも違うだろうが。

 パラサイトが何処から来て、何処へ行くのか考えた女は、死ぬ間際に何を悟ったのだろうか。
だが俺は生きながらに悟った。俺が、何の為にこの世に生まれて来たのか。それは、明らかな事だったのだ。初めからそれは、俺達自身に刻み込まれていた。

 俺は――戦い、人と言う種を喰い殺す為に生まれて来たのだ。
今は思う。田村玲子は、何処へも行く必要なんて、初めからなかったのだ、と。




5:


795 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:00:10 GmJs0..I0
【フケる事は出来なかったのか、ヒロカワ】

 ヒロカワと呼ばれた男の頭の中に、そんな声が聞こえて来た。
奇妙な事である、広川と言う名前の男の視界には、声の主らしき姿は、見えないと言うのに。

【政治パーティならそれも出来たが……立場上、今回は無理だった】

【人間の社会と言うものはつくづく面倒だな、煩わしい】

【言ってくれるな、アーチャー】

 ムスッとした語調で不満を漏らす、アーチャーと呼ばれた男エシディシの機嫌を、広川は宥める。
彼の姿は見えないが、機嫌を直してはいないだろう。あれでなかなか、気難しい所がある男だから。

 白色のキャデラック車のリアシートに、広川は足を組んで座っていた。
彼の目にも、そして運転手の男にも物理的に視認は出来ないが、霊体化と言う状態で、エシディシも車内に待機している。広川の隣の席だ。

 運転席と助手席には、フロントガラスとサイドウィンドウの両方向から、まばゆいばかりの陽光が燦々と入り込むが、後部席である。
運転手席のバケットシートと、後部のリアシートを区切る位置辺りに、真っ黒な暗幕が垂らしてあるのだ。それだけでない
リアシートのウィンドウやリアガラスにも、暗幕が垂らしてあり、一切の光の侵入を拒んでいる。
おかげで車内の後部席は、其処だけが夜になったかのように暗く、書類の文字すら見る事が出来ない程だ。
当たり前の事だが、外から窓を見て内部の様子を窺おうにも、暗幕の影響でそうする事は出来ない。

 波紋戦士やナチスドイツの関係者から柱の男と呼ばれ、己が肉体を骨格や内臓レベルで自由に操作出来、人を超える程の学習能力や知性を持った男達。
そんな彼らの泣き所。それが、太陽光に対する耐性のなさだった。そもそも、カーズが提唱する究極生物論とは、まず太陽の光を克服すると言う所から始まっている。
石仮面の開発とは、その為の産物に過ぎない。柱の男達と呼ばれる人種は、首魁であるカーズを除いて究極生命体に至った者は一人もいない。
つまりそれは、太陽の暖かな呪いの光を克服出来た男は、彼らを率いていたカーズ以外にいなかった事を意味する。
エシディシ達柱の男は、太陽の光を浴びると石化してしまう。石化だけで済むのならばまだ良い。肉体のダメージの度合いによっては、蒸発すらする恐れがある。
自らのそんな性質を重々承知している為か、エシディシはアーチャーでありながら、昼の間は外に出ようと全くしないのだ。行動出来ない、と言っても良い。
昼に行動出来ないと言う事が、何を意味するのか。それはつまり、一日の半分の時間がほぼ行動を制限されていると言う事に等しい。
単独行動スキルを持ち、マスターを離れて自主的な行動をさせられる事が利点のアーチャーで、これは致命的な弱点だ。
加えて広川はゴッサムの市政に関わる重職だ。外に出て行って行動を行う機会も多い。太陽が出てる時間だから行動は出来ない、とは言っていられないのも実情。

 エシディシに対する配慮の結果が、こんな付け焼刃の陰気な策であった。
この暗幕は太陽光を遮断する為に態々広川が取り寄せ、運転手に取りつけさせたのである。
何故つけるのかと聞かれ、広川は「自分が乗っている事を他人に知られないようにする為」だとか「自分は暗い方が落ち着く」だとか言って凌いだ気がする。
我ながら苦しい理由であるとは思っていたが、エシディシの事を考えればしょうがない。これ位の恥かしい思いは、耐えるべきだった。

「私が不気味に見えるかね、マルクくん」

 エシディシとの念話による会話を打ち切り、広川が不意に言葉を口にした。
運転席の辺りから、「えっ!?」と言う、動揺の声が上がり始める。

「そ、それは……」

 言い淀んでいる。当然の反応かも知れない、正直に答えてしまえば何があるか、解ったものではないのだから。

「いやいや、取り繕わなくてもいいよ。私自身、自覚している。他人から見たらこんな内部の真っ暗闇な車はおかしいとしか思えないからね。でも、これが落ち着くんだ、私は」

「は、はぁ」

 マルク、と呼ばれたドイツ系アメリカ人の運転手は、歯切れの悪い返事を広川にして見せる。
広川が唐突に念話を打ち切り、この運転手に対して声を掛けたのは、運転手が発する不信感を広川が敏感に感じ取ったからであった。


796 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:00:33 GmJs0..I0
 エシディシの言う通り、人の社会と言うものには面倒が付き纏う。取り分け、広川剛志と言う人物にはそれが顕著だ。
彼にはクリスマスもハッピーニューイヤーもなかった。彼は市政に携わる者の中でも特に高い地位にいる人物である。
こう言った人物は所謂特権階級であり、民間が汗水垂らして働いている間、ゴルフに興じ、クルーザーの上で寛いでビールでも呷っているような生活をしている……。
と、思われがちである。実際には比喩抜きで分・秒刻みのスケジュールに毎日追われ、書類に刻まれた文字や数字との睨めっこに何時間も費やし、
挙句の果てには出席したくもない市の有力者や名士達のパーティや舞踏会などに顔を出さねば行けないなど、ウンザリする程プライベートの時間がない。
それ自体はそう言った地位に立つ物の宿命だ。特権階級であると言うのは間違いではないが、彼らはそれを享受するだけの労苦と責任を背負うものである。
これらに関しては、広川自身も「そう言うものなんだ」、諦めている。……ただし、今彼が身を置いている状況は、聖杯戦争だ。
パラサイトの為に身を粉にして働いていた時期以上に、自分の為に動く必要がある戦いである。本当の所を言えば、こんな仮初の街の市政の為に動く事は、時間の無駄なのだ。
だが、動かねばならない。広川自身も自覚している。仮初の立場とは言え、今広川に与えられたロールと言うものは、聖杯戦争を自由に動きたいから、と言う理由で捨てていいものではない事を。これは事実その通りで、広川剛志と言う人物は、聖杯戦争の参加者の中で最も恵まれた立場にある人物、と言っても良かった。

 今世間はクリスマスムードもたけなわと言った雰囲気に満ちているが、行政の方はてんやわんやの大騒ぎであった。
簡単である、市長選が近いのだ。ただでさえ一年の終わりの最も忙しい時期に、更に忙しくなるようなイベントが重なっているのだ。
今ゴッサム市役所は悪魔のような繁忙期で職員全員が仕事に追われている。猫の手も借りたい、と言うのはきっとあのような職場を指して言うのだろう。
こんな時期に市長選をやるなんてイカれてる、と職員が零しているのを度々耳にしている。実際問題、それはその通りなのだが。

 ゴッサムシティの名士に、マックス・シュレックと言う人物がいる。ゴッサムでも有数の大企業の社長である。
年々増え続ける、ゴッサムシティに誘致される大企業の数々と、それに付随する工場。それらの操業に必要な供給電力は、年々増加の一途を辿っている。
このままではいつかゴッサムの電力は不足し、街の至る所で停電が頻発するだろう事は、市も予測していた。
シュレックはそんな今だからこそ、この街に原発を建てるべきである、と主張する原発推進派の中核に位置する人物だった。
彼は原発の建造によって見込まれる電力供給率の向上を魅力に感じるであろう、企業の組織票を武器に、市長選に打って出たのである。

 但し――市長に立候補するのは、彼ではなかった。彼の傀儡と推測されている、オズワルド・コブルポッド、市民からペンギンと言う愛称で有名な男が市長になる。
曲がりなりにも市政に携わる人物である。広川はオズワルドの姿や来歴を知っている。非常に醜い容姿をした男であり、それがもとで親に捨てられた男だ。
下水道に流され捨てられたペンギンは、下水の環境で死ぬ事なく無事成長、紆余曲折を経て奇形サーカス――日本で言えば見世物小屋か――に拾われ、
其処で青年期を過ごす事になる。シュレックとはその時に知り合った仲で、シュレックはペンギンの「自分を捨てた本当の両親を知りたい」と言う願いを聞き入れた。
マックスはTVやマスコミを総動員し、既に故人となっていたペンギンの両親であったコブルポッド家の墓参りを放映させた。
この模様を映した様子は、ゴッサムでも非常に有名であった。この時に得たオズワルドことペンギンの人気と知名度を、シュレックは選挙戦に利用しようとしたのだ。
現状の推移は、シュレックの望んでいるような展開だと、推理せざるを得ないだろう。企業からの組織票は確保出来ているし、ペンギンを利用した浮動票の確保も手堅い。余程の事がない限りは、シュレックの操り人形であるペンギンの当確は揺るがない。


797 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:00:54 GmJs0..I0
 広川が億劫な外出をせねばならない理由は、ペンギンを陰で操るシュレック関係であった。
広川はこのゴッサムにおいて、原発の建造に反対の意思を表明している立場であった。つまり、シュレックのイメージするヴィジョンにとっては仇相手と言っても良い。
しかし、シュレックと真っ向から争ってはならない、と言う市の意向と言うものが其処にはあった。
彼は野心に満ちた男であるが、ゴッサムでも有数の企業の社長と言う立場と、街の名士として市民に対して便宜を計らっていると言う事実に嘘はなかったからだ。
『シュレックの原発建造と言う野望を頓挫させる』。今広川が帯びている使命はそれだった。但し、激しく非難してはならない。やんわりと、シュレックに諦めさせるのがベターである、らしい。

 ――馬鹿げてる――

 そんな事、無理に決まっている。言葉で野望を曲げてくれるような人物を、野心家などとは誰も呼ばない。
殺されでもしない限り自分の計画を中止しないような人物をこそ、人は野心家と呼ぶのだ。
広川が出張って、「お願いだから諦めて下さい」と言って「仕方ない」と言うような輩ならば、誰も苦労しない。
広川にはどうせこんな仕事、徒労に終わる事は目に見えているのだ。だがしかし、市役所での立場もある、やらねばならないのだ。
エシディシが愚痴を零すのも無理もない事だ。当の広川本人だって、愚痴の一つや二つ零したくなるのだから。

「マックス・シュレック氏の邸宅が見えました、広川様」

 広川が腕を組み、心中で不平不満を漏らしていた時に、運転手のマルクがそう報告した。
広川の座るリアシートからでは、窓から外の様子を確認出来ないのだ。だから運転手に運転を頼む時には、渋滞している時には渋滞している、目的地に着いた時にはその旨を、広川に報告するよう義務付けているのだ。

「ご苦労だね、マルク君」

 広川は右腕に嵌めた腕時計で現在時刻を確認する。
暗闇の中でも文字盤や針が光る時計であるので、自国の確認は容易だ。現在時刻、十時半。本来会う筈の時間より三十分以上も早いが、速く着くに越した事はなかった。

【――ヒロカワ】

 右側の席に座る、霊体化したエシディシが、如何にも神妙な声色で念話して来た。

【どうした、アーチャー】

【……この館、『いる』ぞ】

 目玉が零れ落ちんばかりに、広川の眼球が見開かれた。
神の悪戯としか思われない確率だった。仕事で出向いたその場所で、まさか……まさか、敵サーヴァントと遭遇してしまおうとは!!

【相手が気付いている可能性はあるか、アーチャー】

【サーヴァントの気配を察知する事自体に、特殊な才能などいらん。少なくともこの車が邸宅に近付いた時点で、相手も気付く事は容易に想像はつく】

 戦い……とまでは行かずとも、どうやら一波乱起りそうな空気を、いやがおうにも感じてしまう広川。
自らのロールを利用して待ちの一手を企んでいたが、こうも早くに予定が崩れ去ろうとは。戦いは水物、とはよく言ったものだ。

【……これは、私達にとって、幸運と言うべきなのかね? それとも、不運か?】

【お前の引き当てたサーヴァントは最強だぞ。信じろ】

【失礼した。幸運だったらしい】

 車内に備え付けられていた冷えたミネラルウォーターのペットボトルを手に取り、喉を鳴らして飲み干す広川。
緊張と闘争本能から来る熱は、これでもまだ冷める気配を見せる事はなかった。


798 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:01:15 GmJs0..I0




6:

 シュレック邸の誰かが、聖杯戦争の参加者である事は、確実だった。
シュレック本人がそうなのか、それとも屋敷の中で働く使用人なのか。マスターの性格はどうなのだろう?
広川がマスターと解るやすぐに襲撃をかけるか、それとも傍観するか? 全て未知数としか言いようがない。
故に、油断は全く出来ない。現状、広川が出来る事は、見。様子見の一手だ。アーチャーの単独行動スキルを活かし、館の中を探索させる。
もしもサーヴァント及びマスターと出会った場合の処遇は、エシディシに全て任せる。万が一マスターである広川に危機が舞い込んだ場合には、当然、急いで彼の下へとエシディシが駆け付ける。急場で拵えた作戦が、これだった。

【稚拙な作戦だな】

 エシディシが苦言する。

【面目ない】

【構わん、俺も予想外だった出来事だ。それに、不意打ちに対応出来ないようでは優れた存在とも言えん。お前の為に首級を上げてやるさ】

【任せたぞ、アーチャー】

【了解】

 言ってエシディシは、霊体化した状態で館の中へと侵入して行く。
自分も仕事に取り掛かる時だろう。認識した広川は、マックス邸が保有する地下駐車場から邸宅の内部へと移動する。

 シュレック邸の廊下を歩きながら、如何にもアメリカ的な豪邸だ、と広川は感じ入る。国土が大きいと、其処に建つ家のスケールも比例して大きくなって行くらしい。
邸宅の内装はゴシック調のそれで統一されており、中世の世界から飛び出して来たような印象を、広川に与える。
窓から庭園の様子をチラと窺って見る。噴水もあればプールもあり、運動不足解消の為のテニスコートもある家と言うのは、日本では少し想像が出来ない。
マックス・シュレックと言う人物の経済力と経営手腕の凄さと言うものを一発で知らせしめる、豪壮で立派な家であった。

 ――だが、それにしても、妙だった。

「(マックス本人が来ないとはな)」

 アポなしの、突然の来客であるならばいざ知らず、今回広川はシュレック側に対して、今日この日に来訪する事を知らせている。
彼も広川ごとき丸め込められると自信があったのかは知らないが、広川の申し出を快諾している。
であるならば、例えイデオロギー上対立している立場だとしても、笑顔で広川の事を迎えるのが当たり前なのだ。
なのに、シュレックが来ないのである。其処が、広川にとって疑問であった。

 では――誰が広川の事を迎えに来たのか。
それは、彼自身も想像だにしていなかった人物であった。その人物は今、広川の右隣に共に歩いていた。

「しかし、日本人がアメリカの市政に携われるとは、思いもしなかったぜ」

「この為に、アメリカに帰化し、永住権を取得致しましたからな。今の地位になる前もなった後も、艱難辛苦の連続です」

「ハハハ、そりゃぁアンタ、こんな街の公務員になるからだぜ。もっとマシな所選べば良かったのになぁ」

「いやはやまったくです。後悔先に立たずとは、よく言ったものですね」

 広川の横を歩く男は、一言で言えば、醜い男だった。
童話に出てくる魔女の様な鷲鼻が特徴的で、歯並びも非常に悪く、目つきも異様に鋭い。広川を見るその瞳は、陰険で湿った光を宿している。
メタボと言う言葉を使うのも気が引ける程の肥満体だ。宛らそれは、樽。出っ張った腹と、尻と胸が、ほぼ同じサイズであった。
奇妙な事にその男の手には河童のような水掻きがついている。奇形である。

 何処の異次元から抜け出して来たのか、と思わずにはいられない異形の人物だった。
そんな男が広川の隣を、ペンギンの様によちよちと歩いている。これが彼の愛称の由来であった。
ペンギンこと、オズワルド・コブルポッド。それが、広川の隣の人物の名前だ。


799 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:01:32 GmJs0..I0
 マックス・シュレックの代わりに広川を出迎えた人物こそが、このペンギンであった。
オズワルドがマックスの邸宅にいる事自体は、それ程奇妙な事でもない。何でもペンギンと言う人物はシュレックが友誼を図る前までは、下水道に暮らしていたと言う。
言うなれば浮浪者、ホームレスだ。市長選に出立する様な男が、現住所を持たないなど、到底許される事ではない。
代わりにシュレックが住まわせてやっている、と思えば、矛盾はないだろう。

 ……広川が奇妙に思うのは、これだけ広い邸宅を持ちながら、今の所ペンギン以外の住人を見かけないと言う事だった。
マックス・シュレック当人は当然の事、屋敷にいるであろう使用人や警備員の類が一人も存在しないのを見せられては、流石に不穏な空気を感じざるを得ない。

「此処が客間だ」

 と、言うのはペンギンだ。それにしても、市長選の候補者とは思えない、礼節を欠いた口調である。
シュレックが「今まで教育らしい教育を受けて来なかったから、愛敬として受け取って欲しい」とフォローしていたのを広川は思い出す。どうやら彼も彼で、相当苦労しているらしい。

 ペンギンから先に客間へと入室、広川がそれに続く。
柔らかなペルシア絨毯の上を歩きながら、広川は部屋の中央に置かれた赤い革張りのソファへと近づいて行く。
「かけていいぜ」、ペンギンが言った。「では」、と言葉を返し広川がソファの上に座る。
尻から伝わるスプリングやスポンジの柔らかな感覚が心地よい。最高級品である事は、疑いようもなかった。
ペンギンから広川は目線を外さない。彼の行動を逐次監視している。彼はまだ立ち上がって、特有のよちよち歩きで部屋を歩き回っていた。

「ミスターコブルポッド」

 先程までペンギンに対して話しかけていたような、柔らかな口調で広川が言った。
しかし表情だけが――石のように引き締まった、真面目な表情であり、其処には親しみやすさなど欠片も見受ける事が出来なかった。

「何だい」

 ペンギンは広川に背を向けていた。広川から見て真正面に建て付けられた、暖炉の近くに何故か置いてある、傘立ての所に彼はいた。

「貴方のパートナーの、ミスターシュレックは何処にいらっしゃるのです」

 この邸宅に来てから感じていた疑問を率直に、広川はペンギンに対してぶつけた。
ガサガサと傘を探していたペンギンの動きが、縛られた様に停止する。

「知りたいのかい」

 振り向かずに、ペンギンが言った。

「知りたいですね」

 広川がすぐに返事した。客間は今、殺気を胸中に秘めながら、互いの腹の中を探り合う、魑魅魍魎の伏魔殿となっていた。




7:


800 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:02:08 GmJs0..I0
 ピアノの旋律が、煙の様に立ち昇っていた。
上手いか、と問われれば、ピアノを弾いた事もなければ音楽の素養もない人間は、上手いのではないかと答えるだろう。
弾いた経験があり素養のある人間が聞いたら、少し練習したらあれくらいには到達出来るさと答えるだろう。
つまり、グランドピアノの前に座り、曲目を奏でる男の腕前は、普遍的な腕前、と言う事が出来る。

 節くれだった太い指を、男は鍵盤から離した。曲目が終わったらしい。
男の奏でていた旋律の音響が残る部屋に、軽い拍手の音が巻き起こった。一人のものである。

「上手いもんじゃないか」

 拍手の主が、演奏者に対して称賛の言葉を投げ掛けた。
嫌味か、はたまた世辞か、とも思われるだろう。だが、壁に背を預けた、褐色の肌に民族衣装めいた服装をした、逞しい身体つきをしたこの男は、
楽器の上手下手の区別がそれ程つかないのだ。男の弾いていた楽器がピアノと言う名前である程度しか、解らない。
況してやこの男――エシディシには、男が弾いていた曲の題名など、解る筈もないだろう。

「何を弾いていたんだ、お前は。モーツァルトとか言う男の曲か?」

「ショパンだ」

 エシディシの問いにそう返してから、何がおかしかったのか、ふっと男は笑った。
エシディシに負けず劣らずの体格の良さをした、アジア系の顔立ちの男だ。彼ら特有の黒髪をオールバックに整えた、精悍な顔付きの人物である。

「何がおかしい」

 面白くなさそうに、エシディシが言うと、「悪いな」、と後藤が軽く謝った。

「前にも一度、同じようなやり取りがあってな。思い出して笑ってしまっただけさ」

 其処まで言って、ピアノを弾いていた男――後藤は、妙だな、と思った。
まさか俺が――三木の様なわざとらしい笑いではなく、自然な微笑みを浮かべる事が出来るとは、と。

 ぬぅっと椅子から立ち上がり、壁に背をかけるエシディシの方を睨めつける後藤。
エシディシもその目線から顔を背ける事無く、真っ向から睨み返す。

 強い。互いがほぼ同じタイミングで、同じ事を思った。
田村玲子の手によりて作られた、最強の虐殺器官(パラサイト)が。人類の文明の歴史を遥かに凌ぐ、悠久の時間を生きて来た闇の生命が。
即座に感じ取ったのである。目の前のサーヴァントは、簡単に勝たせてくれない程の強敵である、と。

「最早聞くまでもないだろうが、お前がサーヴァントなのだろう?」

 後藤が聞いた。感情を聞き手に掴ませない、霞の様にとらえどころのない声だ。

「違う、と答えたらどうする?」

「そうだとしても、逃がさず殺すさ」

「奇遇だな。俺もお前の立場なら、そうしている」

 二十年、いや、三十年来の友人とでも話すかのような気軽さで、エシディシは後藤に話しかけていた。
しかし、室内に渦巻く殺意たるや、尋常のものではなかった。もしも殺気と言うものが可視化出来ようものなら、きっと嵐のように部屋中を荒れ狂っている事だろう。
エシディシと後藤は、互いを一目見て理解した。話し合いで戦闘を回避出来るような相手ではないと言う事を。出会ってしまえば、何も起きない筈もなく……。

「俺がさっき弾いていた曲の題名を知っているか」

 左手だけで、後藤は器用にメロディを奏で始めた。
後藤は鍵盤を見ていない。その目はエシディシに対して向けられている。エシディシもまた、後藤の方に目線を向けていた。
鍵盤を叩く後藤の手には、目もくれない。注意を逸らそうとしている事が、バレバレだったからだ。

「知らんな」

 エシディシは即答する。鋼で出来た瘤のような筋肉に、ミシリ、と力が溜まり始める。

「ショパンの練習曲第三番。またの名を――別れの曲と言う」

 メロディ奏でる左手の動きを唐突に止め、後藤は残像すら残らぬ速度でピアノの側板の縁を掴んだ。
そして、誰が信じられようか。ソフトボールでも投げるような軽い感覚で、後藤はエシディシの方目掛けてグランドピアノを乱雑に放り投げたのだ。
時速五十㎞以上の加速度を乗せて投擲されたそのピアノに直撃すれば、生身の人間は当然の事、耐久力に優れたサーヴァントですら無事ではいられまい。
腕を交差させ、エシディシは直撃に備えた。ピアノが激突する。粗忽者が、力の限り大量の鍵を一時に強く叩いた時の様な音と、ピアノの板部分の破砕音が、断末魔のように響き渡る。


801 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:03:28 GmJs0..I0
 腕の交差をエシディシは解く。無傷だった。体内で炸裂させたダイナマイトに対してもダメージすら負わない男に、この程度の一撃はさしたるダメージにもならない。
「ほう」、と後藤はエシディシに対して感心の念を覚えた。服装の割には、頑丈な奴じゃないかと思ったのだ。いや、防御力に自信があるから、あんな服装なのか、と思い直した。

「手抜きは良くねぇな」

 エシディシがそう言うと同時に、破壊されたピアノの鍵や板、内部のパーツが地面に落ちる音が連続的に続いた。
無骨で不細工な音の連続の中、後藤が「そうだな」、と言い切った刹那。エシディシの姿が消えた。しまったな、と後藤は思った。
破壊されたピアノのパーツが、後藤の位置からエシディシを見るのに邪魔になる、その丁度良いタイミングをあの男に狙われてしまった。
彼の言う通り、手の内を晒したくないからと、ピアノを投げて攻撃するのは失敗だったな、と後藤は後悔した。

 後藤の頭より高い所までジャンプ、そのまま彼の方へとエシディシが向かって行く。頭上からの奇襲だ。
後藤の顔面目掛けて、浴びせ蹴りを見舞おうとするエシディシ。そのまま直撃すれば、首を吹っ飛ばす程のスピードと威力を誇る。
後藤はエシディシのこの一撃に、力の限り振るわれる大斧のイメージを見た。一切の予備動作を見せる事無く、後藤が数m程の距離を飛び退く。見事な反射神経と、体重移動の妙技であった。

 後藤が絨毯の上に着地する。百分の一秒程遅れて、エシディシも着地する。体勢を整えるその隙を縫って、後藤が絨毯を蹴った。
踏込の際の余りの脚力に、足が接地されていた絨毯部分が千切れ飛ぶ。後藤の姿は着地点から掻き消え、彼は肌色の風となってエシディシへと一直線に向かって行く。
ごく短距離の瞬間的な時間ならば、銃弾にすら迫る程の速度での移動を可能とする後藤の脚力。さしものエシディシも、これには目を剥いた。
何たるスピードか。宛らジャガーか、それともピューマだ。

 後藤が左腕を振り上げる。この時エシディシは、見た。
彼の左腕がアメーバのような単細胞生物の如くグネグネと流動し始め、変形。人間の腕の形から、インドの刀剣のフィランギめいた形状の直剣に変化するのを。
この間、ゼロカンマを下回る。エシディシが驚いたのは果たして、その変形の速度か? それとも、関節の類が後藤には通っていないと言う事実にか?
はたまた――腕を剣に変える、と言う、生前の彼の同胞が使っていた流法(モード)に似た戦法を、後藤が取ったからか?

 後藤が凄まじい速度で左腕の剣を振り下ろす。避ける事は最早不可能と考えたエシディシは、この攻撃に対応しようとする。防御、と言う形で。
右拳を強く握りしめ、腕全体に力を込めた状態で、振り下ろされた左腕の剣の軌道上にエシディシは腕を配置する。
エシディシの下腕部に、後藤の剣が中頃まで食い込んで、其処で止まっている。「むっ」、と言う声が後藤の口から漏れた。
刃から伝わる感覚が、明らかに筋肉のそれではない。例えるならばそれは、何百条ものワイヤーをこより合せて作った棒。
後藤は、剣となった腕を打ち込んだ『もの』の感触から、本当に人体を斬ったのかと錯覚する。後藤の感覚では、腕ごとエシディシの身体を寸断している筈だったのだ。

 エシディシの右腕に食い込んだ後藤の剣腕に、水が浸透して行くように、激痛が伝わった。この痛みは、何だ。強い酸性の液体をかけられた様なこの痛みは。
打撃や斬撃、銃撃と言ったショックや痛みには強いパラサイトとは言え、身体を構成する細胞に直接影響する痛み――今回の様な場合は話は別である。
特に、一つの身体に五つのパラサイトが集まり、統率者である後藤というパラサイトが、四つのパラサイトを統制する後藤にとって、今回の様な自体は深刻だ。統率を維持出来ず、大幅に動きが制限される恐れがあった。

 急いで剣の左腕を引き抜き、十m程の距離をエシディシから離す。
サーヴァントの捕食は、そう簡単には行かぬかと歯噛みするエシディシ。やはり反射神経に優れるサーヴァントであると、身体に舞い込む異変に気づくのも速いらしい。
柱の男と呼ばれた者達が得意とする、経口以外に栄養素を摂取出来る捕食。彼らは身体を構成する細胞の全てが捕食器官としての役割を持ち、消化液の分泌を可能とする。
つまり、彼らはその手で相手の肉体に触るだけで、相手の身体を溶かし、削り、その栄養素を皮膚から摂取出来る。
NPCならばともかく、サーヴァント、特に三騎士クラスの捕食は、好条件が揃わない限りは狙いに行けない。エシディシはそう認識した。


802 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:04:09 GmJs0..I0
 しかし、迂闊に攻撃を叩き込むのは、かえって危険であると言う認識は、後藤に植え付ける事には成功したようだ。
況してや後藤は肉体を武器に変形させて攻撃するサーヴァント。幾ら武器に変形するとは言え、結局は自分の肉体の形状を変えていると言う事実は覆らない。
つまり後藤は――偽りの霊長の殺人者は、エシディシと言う偽りの原初の一を相手取るには、強い不利を強いられるのだった。

 今度はエシディシの方が後藤の方に突っ込んで行く。後藤の剣の一撃を喰らった右腕のダメージは、既に回復していた。
俺の身体に触れれば捕食される事を薄らと認識し始めただろう、と言う公算に基づき、強気に攻める姿勢に切り替えたのだ。
実際エシディシのこの読みは当たっており、後藤は逃げるように後方へと跳躍。追いすがるエシディシから更に距離を取る。

 エシディシからバックステップで距離を離した後藤は、着地後、再度彼は後方へと跳躍する。
だが跳躍に用いた力から計算すれば、このまま行けば彼は壁に激突する――かに見えた。
後藤は跳躍中に体勢を整え、両足から壁に接地。すると彼は、壁を器用に足で蹴って、天井に向かって鋭い角度で急上昇。
エシディシが頭上を見上げる。そして見た。八〜九m程はあろうかと言う高さの天井まで到達した後藤が、その左脚で何かを蹴り抜いたのを。
後藤が地面に落下するその隙を狙って、直接身体に血管を打ち込んで怪焔王の流法をお見舞いしてやろう、エシディシはそう考えた。

 しかし、着地の瞬間を狙って攻撃されるだろう事は後藤も読んでいたらしい。彼は何と右脚一本で、天井にコウモリの如くぶら下がっていた。
エシディシは後藤の右足を目を凝らして見てみる。脚部を猛禽類に似た形に変形させている。鋭い爪を天井にがっきと喰い込ませ、今の状態を維持しているらしい
だが今の状態ならかえって好都合。相手の動きが目に見えて制限されているのが明らかであるからだ。
今こそ、あのサーヴァントにアーチャーの由来を見せつけてやる時だった。怪焔王の流法による、溶岩弾の様な熱血を奴目掛けて放ってやるのだ。

 後藤目掛けて腕を伸ばした、その時だった。
天井から床目掛けて、勢いよく水が散水され始めたのだ。突然の出来事にエシディシは面食らい、反射的に水から遠ざかろうとする。
が、冷水は殆ど部屋全域をカバーする程の量であり、この室内で戦う限り逃れる事は出来なかった。
エシディシが水に対して硬直した、その一瞬を狙い、後藤は天井を蹴り地面に勢いよく急降下。着地する。
彼は天上へと向かう際に、スプリンクラーの止水部を蹴り抜いていたのだ。結果、溜まっていた水が勢いよく放水された、と言う訳である。

 壊れたスプリンクラーから、水の紗幕が噴出する。降り注ぐ水越しに見る互いの姿は、豪雨の中で物を見ている様に煙っていた。
後藤としては、左腕に付着したエシディシの消化液を洗い流すのと、着地する為の隙を作る以上の意味を、スプリンクラーの破壊に求めていなかった。
しかし後藤は知る由もないだろうが、エシディシにとってこの散水は非常に厄介な意味を持っていた。
消化液が洗い流されるだけならば、まだ良い。最も彼にとって困るのは、怪焔王の流法の効力が半減する事だ。
摂氏五百度にまで沸騰させた血液を放射する宝具、怪焔王の流法。直撃すればサーヴァントであろうともただではすまないが、水で洗い流されれば効力は落ちる。
この散水が何分続くかは解らないが、今の状況のように連続的に水を浴びせられている状況では、直接体内に熱血を打ち込みでもしない限り、
怪焔王の流法は本来の力を全く発揮出来ないと言っても良い。消化液と怪焔王の流法の効果が共に落ちる……今の状況は、エシディシにとって非常に悪いものだった。

 今の状況なら消化液もさして怖くないと判断した後藤が、水を吸って重くなった絨毯を蹴り、エシディシへと弾丸のように向かって行った。
間合いに入る前に右腕も、左腕の様なフィランギ状の直剣に形状変化させている。
右腕の剣を左から右に薙ぎ払い、エシディシの首を刎ね飛ばそうとする。身体を大きく屈ませ、これを回避するエシディシ。
それを見た後藤が、左腕の剣を上段から落雷の様な勢いで振り下ろす。右方向に横転し、これも回避。


803 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:04:54 GmJs0..I0
 エシディシが体勢を整え立ち上がろうとする、その瞬間を狙って、後藤が右のローキックを彼目掛けて放っていた。
どうやら後藤の肉体変化は両腕だけでなく両脚にも及ぶらしい。膝より下が、サーベルに似た曲刀の形状に変化していた。
バッ、とエシディシが膝立ちの状態からジャンプし、ローキックを回避。後藤が蹴り足を元に戻す前に、彼の胸部にドロップキックをエシディシは叩き込んだ。
砲弾にでも直撃したような衝撃を叩き込まれた後藤は、床と水平に吹っ飛んで行く。背部から壁に激突、ぶつかった方の壁は崩落する。
壁に激突し、それを破壊する程度では蹴られた勢いは殺し切れないらしく、そのまま更に隣の部屋まで素っ飛んで行く。
結局後藤は吹っ飛んだ先の部屋の壁に激突する事で、漸くその勢いが止まった。彼が吹っ飛ぶのを受け止めた壁に、蜘蛛の巣に似た亀裂が生じている。恐るべき、エシディシの蹴りの威力よ。

 タッ、と、今も降り注ぐスプリンクラーの散水のせいで、水を吸ってしまい苔のようになってしまったペルシャ絨毯に着地するエシディシ。
キャスターやアサシンのような脆弱なサーヴァントなら蹴りを見舞ったあの時点で勝負ありだったろう。しかしエシディシに、勝利の確信はなかった。
手応えが薄かったからだ。筋肉を蹴ったと言うよりは、板金で作り上げたプロテクターを蹴ったような感覚だった。
ダメージは与えられたかも知れないが、クリティカルヒットには程遠かろう。やはり、熱血を叩き込む他はあるまい。
倒れ込んでいる後藤の方へと駆け寄ろうとしたその時、ダァンッ、と言う衝撃音と同時に、視界の先で倒れ込んでいた後藤の姿が掻き消えた。
それと同時に、先程まで彼が背を預けていた壁が粉砕される。壁を、陸上競技のスターティング・ブロックの要領で蹴り飛ばし、加速を得たのである。結果、壁は壊された。
『あ』の一音を口にするよりも速く、後藤は攻撃が届く間合いに侵入していた。エシディシはまだスプリンクラーの散水が続く部屋から出れていなかった。後藤は、エシディシとスプリンクラーの壊れた部屋で戦う利を逃したくなかったのだ。

 移動する過程で、後藤は右腕の形状を変化させていた。ギリシャ神話のポセイドンが持っているトライデントに似た、三叉の切っ先を持った長さ数mの槍状に、だ。
エシディシの素手の攻撃が届かないアウトレンジから攻めるよう、方針を変えたらしい。
トライデントと化した右腕で、エシディシの心臓を貫こうとする後藤。エシディシの口の端が、ニヤリと吊り上る。
切っ先が皮膚を裂き始めるか否か、と言う所で、何とエシディシの上半身が、粘度の棒を曲げるが如くグニャリと弧を描き始め、後藤の一撃を回避したではあるまいか!!
柱の男が得意とする、間接と言うものを無視した極端な肉体操作。後藤の顔に驚愕の相が刻まれたのは言うまでもない。この回避の仕方はまるで――

「お前、まさかパラサイ――」

 後藤が全てを言い切る事はなかった。エシディシは後藤の右腕の、トライデントの切っ先以外の部分を掴み、そのまま背後を向く。
グンッ、と後藤の身体が急上昇する。アーチのような軌道を描きながら、後藤はエシディシに、絨毯の上に強かに顔面から叩きつけられた。
掴んでいた後藤の腕を離し、倒れ込んでいる後藤の方へと走るエシディシ。顔面に血管を突き差し、沸血を注入してとどめを刺そうと言う算段だ。
先程腕を掴んだ時にそうしなかったのは、訳がある。恐らく後藤は、意識的に首より下を硬化させられると判断したからだ。
四肢は勿論の事、胴体も、血管は刺さるまい。だから、顔面に突き差そうとしたのである。

 エシディシの意図を読んだ後藤は、即座にトライデントと化させた右腕を縮ませ、元の腕に戻す。
エシディシの両手の爪が、蓋を開けるようにパカリと持ち上がり、其処から血管が飛び出して来た。
と、後藤の左腕が、プレス機で潰されてしまったかのように平べったい、ぺっちゃんこの状態になった。
平べったい腕の表面積が、後藤の身体全体をカバー出来るような大きさになるや、厚さ一cm程の、その硬質化した肉の盾で、エシディシの血管を防御する。
血管が突き刺さらない。クニャリと折れ曲がってしまったのだ。まるで、鋼板にパスタを突き刺すかのようだった。

「味なマネをッ!!」


804 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:05:23 GmJs0..I0
 声を荒げながら、エシディシは後藤に対して右脚によるローキックを見舞った。
肉の盾と変じさせた左腕で攻撃を防ぐ後藤。だが血管針とは根本的に衝撃力が違い過ぎる攻撃だ。
痛みは防げても、衝撃は防げない。蹴り足の衝撃が叩き込まれた方向に、後藤はサッカーボールのように吹っ飛ばされる。
壁に背面から叩き付けられる後藤。体勢を整え、立ち上がった時には、エシディシが既に接近していた。
肉の盾によるガードが下がった所を狙い、エシディシが顔面に右拳の一撃を叩き込んだ。衝撃に耐え切れず、壁が崩落。後藤が矢の如き勢いで吹っ飛んで行く。
壁一枚を破壊する程度では到底勢いを殺し切れなかったらしく、吹っ飛んだ先の壁をも崩落させ、勢いを殺し切れぬまま、まだ素っ飛んで行き、エシディシから見る見る内に遠ざかる。

 追撃を加えんと接近しようとするエシディシ。素っ飛んだ先に、壊れたスプリンクラーから降り注ぐ水はない。
エシディシが全力を出せる環境だ。地を蹴りかけるが――急停止する。確かに其処には、水は降り注がれてない。代わりにもっと厄介な物が降り注いでいた。
天空に光り輝く、冬の太陽。地上に冬が訪れようとも、太陽は陽光を燦々と送り続けるだけ。後藤が崩落させた壁には、陽光を採光する為の窓ガラスが建て付けられていた。

「……」

 後藤はテニスコートのコート上にまで吹っ飛ばされていたらしい。
三階の高さから突き落とされても彼は平然としており、黙然と言った体で佇立し、エシディシの方を睨みつけていた。
復帰が速すぎる。陽光の当たらない位置にまで近づき、エシディシも後藤を睨みつける。そして同時に、心中で臍を噛んだ。何て面倒な方向に殴り飛ばしたのだ、と。
究極生命体(アルティミットシィング)に至っていないエシディシにとって、陽光は最大の敵である。太陽の下では彼の行動は、大幅に制限されるどころの話ではない。
そもそも行動が出来なくなるのだ。スプリンクラーが水を降り注がせる環境よりも、これは致命的であった。

 ――俺がどんな戦い方をするのはバレても良い、最悪使う宝具だってバレても良い。だが太陽を弱点とする、と言う泣き所だけは知られてはならん!!――

 エシディシと言うサーヴァントは、一日の半分は全力を出せない時間があり、一日の半分は自身やマスターが殺される以外に滅んでしまう要因が付き纏う時間があるのだ。
これが、何を意味するのか? 打たれる対策が多すぎると言う事を意味するのだ。昼間に襲撃をかけられるだけで、そもそも厳しいものがある彼にとって、
この弱点をたった一人に知られるだけでも、後々に禍根を残す事となる。だから、この状況を何とかして乗り切る必要があった。
後藤に太陽が弱点であると言う事を知られずに。……どうやって? 

「何故来ない」

 後藤が呟いた。彼からしたら疑問に思う他ないだろう。
あれ程、スプリンクラーが壊れ、水を止め処なく噴出させていた部屋から出たがっていたエシディシが、テニスコートの上に躍り出て、戦おうとしない。
後藤からしたら不審に思うのは、無理からぬ事だった。エシディシは、この心理を利用する事とした。

 エシディシは両手の指を後藤の方へと向け、両手の爪をパカッと持ちあがらせ、其処から血管を露出させる。
そして其処から、赤黒い沸血を散弾銃のような勢いで放射しまくった!! 初めて見る攻撃の手段に、後藤の目が見開かれる。
同時に、考えた。エシディシはこれを狙っていたのだと。どのような攻撃か、肉の盾で防御するのは危険と考えたか、飛び退いて攻撃を躱す後藤。
全天候型のテニスコートに血液が降りかかる。ウレタン樹脂製のコートがグズグズに溶け始め、独特の匂いが立ち込め始めた。
成程、そう言う攻撃か。後藤はすぐに、エシディシの血液の謎を看破した。

「お前のクラスはアーチャーか?」

 後藤がエシディシに向かって言い放つ。当てずっぽうだ。

「そう言うお前はセイバーか?」

 エシディシは質問に答えず、こう言った。此方も当てずっぽうだ。当然、後藤は己のクラス名を言わない。
当然の判断だった。自分が不利になるような情報は、あえて相手に教えないのが、戦の常である。


805 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:05:43 GmJs0..I0
 ややあって、後藤が一歩、此方目掛けて近づき始めた。エシディシは動かない。今度は二歩。やはりエシディシはそれを許した。
もう一歩、後藤が動く。此処で再び、灼熱の血液を散布した。後藤が走る。銃弾もかくやと言う程の速度だった。
放たれた血液を彼は追い越す。虚しく血液は、嘗て彼が歩いていたコート上に撒き散らされるだけだった。

 目論見は、恐らく成功したとエシディシは考えた。
彼の目的は、後藤に自分がアーチャーのサーヴァントだと思い込ませる――実際これに関しては事実だが――事だった。
アーチャーと言うクラスは飛び道具による中〜遠距離射程の攻撃が主で、接近戦に持ち込まれると脆い、と言うサーヴァントが多い。
だが、エシディシは主に近〜中距離射程での戦闘を得意とするサーヴァント、近距離でも比類のない強さを発揮する男だとは、後藤も馬鹿ではない。気付いているだろう。
しかし、向こうも考える筈だ。アーチャーを相手に、距離を取って戦うよりはマシだ、と。だったら近接戦闘に持ち込んだ方がマシだ、と。
そう思わせる為に、エシディシはわざとらしく熱血を撒き散らした。陽光の当たる場所から、当たらない場所へと近づけさせる為に。

 ドォンッ、と言う音が下の階から聞こえて来た。一回の壁を後藤がブチ壊した音である。
崩壊させた壁の先の部屋から、天井を破壊して移動、エシディシがいる階の床を壊しながらダイレクトに現れる。エシディシはそう当たりを付けた。

 だが、来ない。後藤の身体能力ならば二秒もあればエシディシの所に到達出来る筈なのに、七秒経っても現れない。
何をモタモタやっている。と愚痴った所で、気付いた。この館にいるのは、俺達だけじゃなかっただろう。他に誰がいる。広川と、後藤のマスター。もしかして奴は――。

「チィ!! 俺様の勘も鈍ったもんだぜ!!」

 盛大な舌打ちを響かせて、エシディシが思いっきり床を踏み抜き、床を崩落させる。
今回に限っては、相手の方が少しだけ上手だった。英霊の座でのんびりしてドタマまで腐らせやがってと自分を罵倒しまくるエシディシ。
考えてみれば、当たり前の話だ。相手のクラスがアーチャーで、接近戦を挑めば消化液による防御が待ち受けている厄介なサーヴァントが。
自らの主から距離を取っているのであれば。誰だってマスターを狙いに行く事に。




8:

「知りたいのかい」

 振り向かずに、ペンギンが言った。

「知りたいですね」

 広川がすぐに返事した。客間は今、殺気を胸中に秘めながら、互いの腹の中を探り合う、魑魅魍魎の伏魔殿となっていた。

「ジョーズって知ってるかい、アンタ」

 傘を物色しながら、ペンギンが訊ねて来た。


806 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:05:57 GmJs0..I0
「スティーヴン・スピルバーグの、サメの映画ですか」

「そう、それだ。でっかい人喰いザメが、平和なビーチで人を喰う話さ」

「その映画が、何か?」 

 話が読めないので、広川が再度訊ねる。

「あのデカいサメ、人を喰うから悪役みたいに思われてるがな、本当は自分の縄張りを悠々と泳いでただけなんだぜ? 人間が勝手にテリトリーに入って来たから、噛んだだけなんだ。其処には悪も善もクソもないんだ」

「……」

「可哀相な奴だよなぁ、あのサメ。腹が減ってたから人間を喰っただけなのに、図体がデカくて醜いだけで恐れられて、よってたかってリンチされて。まるで……俺みたいだ……」

 最後の言葉は、演技ではなかった。万斛の思いが、その言葉に込められていた。

「で、シュレック氏は何処に――」

「シュレックなんていねぇよ!! 俺の呼び出したジョーズが使用人ごと喰っちまったさ!!」

 声を荒げてペンギンがそう叫ぶと、彼は傘立てから一本の傘を取り出し、その先端を広川に合わせた。
パァンッ!! ペンギンの叫び声を上書きする程の炸裂音が、客間の空気を切り裂いた。銃声である。『広川』の方から響いて来た。

「ぐっお……!?」

 呻き声を上げて、ペンギンが、手に持っていた傘を床に落とした。傘は開かれており、その一部に黒点が空いていた。
傘の先端の照準は、尚も広川の方に向けられている。広川はこれを第六感か、それとも虫の知らせか。兎に角不吉と考え、急いで左に飛び退いた、瞬間の事。
ペンギンが落とした傘の先端から、バララララと言う銃声を連続的に鳴り響かせ、何十何百発もの鉛のホローポイント弾が広川の立っていた方向に放たれた!!
「ぐっ」、と、広川の方も苦痛に呻吟する。右肩の筋肉をスーツやシャツごと、弾丸が抉ったのだ。ビュッ、と血液が噴き出た。
熱した火箸を押し当てられたような痛みに、広川の顔が苦痛に歪む。生前、ショットガンで胸の辺りを打ち抜かれた記憶がフラッシュバックする。
あの時は即死だったから痛みも何も感じなかったが、今回は銃で撃たれる、と言う感覚を堪能出来る。こんな痛み、二度と堪能する事など御免蒙る。広川の感想がこれだった。

 痛みに耐えながら、広川は右手に持っていたベレッタの照準を、ペンギンの頭に合わせた。
聖杯戦争での、サーヴァントどうしではなくマスターどうしでの戦いに備え、用意しておいた拳銃が功を奏した。
いくらゴッサムと言えど一市民が拳銃を所持する事は簡単な事ではないが、身の安全を護る為とでも言えば、広川の立場の場合にはどうとでもなる。

 拳銃を購入する為のルートや資金程度なら、問題はない。だが、銃弾を当てられる技量となると、話は別だ。
その証拠に、ペンギンに命中した銃弾だ。頭を狙った筈なのに、ペンギンが血を流している箇所は、左の肩だった。
銃弾を放つよりも速く、ペンギンが傘を開いたせいで、銃弾が傘に当たったせいだった。傘の膜程度は貫くのはたやすいが、それで絶妙に弾道が逸れてしまったのだ。
尤も、万全の状態でも、広川がペンギンの急所に銃弾を命中させられていたかどうかは解らない。何せ彼は、銃の扱いに関してはこと初心者であるのだから。


807 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:06:12 GmJs0..I0
「公務員って奴は、全体の奉仕者じゃねぇのかい……!!」

「腐ったリンゴを処分するのも仕事ですよ。心辛い事ですがね、ペンギンさん」

「ペンギンじゃない、コブルポッドさんと呼べ!!」

「必要ない。貴方は此処で死ぬ」

 言って、トリガーに力を込めようとした、その時。
広川の背後で、ボグォンッ、と言う破壊音が生じた。ベレッタの銃声よりも大きなその音に驚き、音源の方を振り向くと其処には居た。
幅数m程の大穴を壁に開けさせ、ゆっくりと客間へと入り込む、ビキニパンツの大男の姿が。

「おおよく来た!! 見ない間に水も滴る良い男になったじゃないか!!」

 ペンギンの言葉通り、闖入者――後藤の身体は、不自然な程水で濡れていた。先程までプールで泳いでいた、と言われても信じる事が出来るだろう。
ペンギンのサーヴァントである、セイバー・後藤と、広川の目線が交錯する。「馬鹿な、アンタはッ!?」
上擦った調子の声が上がったのは、広川の方からだった。後藤も、エシディシの時ですら見せる事はなかった、誰が見ても解る驚愕の表情を浮かべ、広川の事を見ていた。
まさしく彼らが浮かべている表情こそが――死人が蘇った瞬間を目の当たりにした人間のそれなのだった。

「驚いたな……ショットガンでアンタは死んだ筈じゃないのか」

 久々に知己にでも会ったような口調で、後藤は語り掛けて来た。
元居た世界の事を思い出す広川。ただ、あの場所とこの場所で違う点は、今後藤は体中から殺気を漲らせて、広川の事を見ているという点。
直剣の形状に変形した左腕が、いやがおうにも広川に恐怖と言う感情を想起させる。

「そう言う後藤さんも、何でこの場所にいるんだ……?」

「サーヴァントとして呼ばれた、と言う事は、そう言う事なんだよ、広川さん。あの少年にしてやられた。存外、パラサイトと言う存在はか弱い生物だったよ」

「何喋ってんだ後藤!! とっととソイツを殺しちまうんだ!!」

「――と言う訳だ。悪いな広川さん、アンタには生前世話になったが……出会った場所が悪かったと思って、諦めてくれ」

 言って後藤が、広川の方目掛け、地面を蹴って急接近。
剣の間合いに入るまであと七m程、と言った所で、その地点の天井が、崩落。エシディシが客間に推参した。彼の身体もまた、ずぶ濡れの状態だった。

 後藤の対応は一瞬だった。攻撃対象を即座に広川からエシディシへと切り替え、剣と化させた左腕で、下段から上段へと、ツバメが飛び上がるようにして斬り上げる。
身体を僅かに半身にさせる、と言う最小限度の動きでこれを回避するエシディシ。
剣の切っ先が頂点に達したと同時にエシディシは、開いた二枚貝のように持ち上がった両手の爪から、沸血を霧状に散布させた。
摂氏五百度と言う高熱を内包した血色の霧を、後藤は、右腕を胴体をカバーする程の面積の肉の盾にする事で防御。
肉の盾から煙が上がる、しかし、後藤は堪えた様子はなかった。それ所か寧ろ、左腕を剣から、細長い鞭状に変形させてから、四m程サイドステップで距離を取り、
鞭と化した左腕をエシディシに叩き付けて反撃に転じる始末だった。エシディシは、広川の居る方向にサイドステップする事で、鞭の先端から逃れる事に成功。
鞭の先端が石材で出来た床に当たる。パァンッ!! と言う音が生じると同時に、着弾点が砂糖菓子の用に破裂した。

 人外魔境の戦いに、ペンギンが目を奪われ、呆然としている事に気付いた広川。
この機を逃さんと、彼はベレッタの照準を再びペンギンへと合わせる。いち早く危機に気付いたのは、ペンギンのサーヴァントである後藤だった。
ポップコーンが破裂するような銃声と同時に、銃弾が放たれた。ペンギンに当たるまで残り三m弱と言う位置で、銃弾が肉の――いや。
パラサイトの膜に包まれ、無害化される。パラサイトの右腕をペンギンの方へと延長させ、銃弾の軌道上に後藤が配置したのだ。
漸く、自分に先程訪れていた危機に気付いたペンギン。彼は慌てて傘立てから、武器を忍ばせているであろう傘を探そうとする。


808 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:06:26 GmJs0..I0
【勝てそうか!?】

 広川が念話で、エシディシに応答を求める。

【やってやれない事はないが、時間帯が悪すぎる。奴は自由に邸宅の外も動けるが、俺はそうもいかん。それに、武器の所有量では、あの醜いデブの男の方が勝るぞ】

【では夜なら勝てると言う事か?】

【当たり前だ、夜ならばあんな紛い物に負ける道理はない】

【なら時間を改めよう。この場は退くぞ】

【歯痒いが、仕方がない】

【地下駐車場で待つ】

【解った。時間を稼いでおこう】

 電瞬の会話であった。
広川はすぐに走り始めた。客間の扉を蹴破って廊下に躍り出て、目的地である、車を停めてある地下駐車場へと一目散に向かって行く。
「アイツを殺せ、後藤!!」、ペンギンががなり立てた。それを、何とも冷めた目で見つめるエシディシ。まるでガチョウか、ガキがわがまま言ってるみたいじゃないか、と呆れ果てている。その上真名まで口にするなど、余程頭に来ているらしい。左肩の銃痕の痛みを忘れる程に。

 物の試しに、エシディシはペンギン目掛けて沸血の弾丸を射出する。
しかし、そうは簡単に狙わせてはくれないらしい。弾丸はひとつ残らず、後藤のパラサイトの膜に防がれてしまう。
この状況下では、マスターを狙う事は徒労以外の何物でもなかろう。機会を逃すのは歯痒いが、マスターの命令と思い、諦める事にした。

「また来るぜ」

 言ってエシディシは、先程広川が座っていたソファを後藤の方へと蹴り飛ばしてから、客間から走り去って行く。
その場から微動だにしない後藤。時速百km以上の加速度を得たソファに胴体から激突するも、まるで彼は答えない。その場に彫像の如く立ち尽くすだけだった。

「お前だって手抜きをしてるじゃないか」

 そう言ってから、後藤もエシディシを追跡し始めた。
怒りに震えるペンギンだけが、客間に取り残される体となった。




9:

「車から出ろ、マルク君!!」

 鬼のような形相でそう叫ぶ広川の気魄に気圧されたマルクが、慌てて運転席から車外へと降りた。
車にキーが刺さっているのを見て、「よし!!」と頷く広川。すぐに運転席に乗り込み、キーを回し、イグニッションさせる。
そしてチェンジレバーをPからDに変えるや、直にアクセルペダルを踏み抜き、駐車場から退散する。

 余りにも一瞬の出来事であった為、その場にポカンと佇むマルク。今の彼は哀れな事に、広川が何をしたのか想像を廻らす事すら出来ずにいた。
そんな状況の中、エシディシが、邸宅に向かう事の出来る通路から駐車場へと勢いよく現れた。遅れて、両腕を幅広の大剣に変化させた後藤が躍り出た。


809 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:07:19 GmJs0..I0
 互いが互いを睨み合う。動いたのは後藤だった。
彼は残像が残る程の速度でその場から消え去り、そのスピードを維持したまま駐車場を縦横無尽に駆け巡った。
壁を蹴り、天井に飛び上がったかと思うと、その天井を蹴り、垂直やら斜め四十五度と言う鋭い角度で地面に急降下。
ジグザグに床の上を走ったり、弧を描いて走って見たり、と。全てはエシディシを惑わし、幻惑させる為の動きだった。
常人であれば誰もが後藤の動きを捉えられず、成す術もなく攻撃を受けてしまう事であろう。

 だがエシディシは冷静に、状況に対応した。
両手両足の爪をパカリと開かせ、其処から血液を大量に噴出させる。駐車場全域が、血色の霧で満たされたのは、ほんの二秒程。
釜茹でにされているかのような苦悶の悲鳴が上がり始めた。後藤ではない、マルクのものだった。彼の服は燃え上がり、皮膚やグズグズに溶け始めていた。
大量の血を流し絶叫するマルクであったが、後藤は流石にタフだった。が、流石の彼も五百度と言う地獄の空間は堪えるらしく、苦しそうな表情を動きながら浮かべていた。
しかし、彼にはこの状況を脱する確信があった。当然である、何故ならこの場所にも、『スプリンクラー』はあるのだから。

 地下駐車場全域に設置されたスプリンクラーが、全て作動。再び水の紗幕が部屋に満ちる。今回の場合は、本来意図された正しい作動の仕方をしたと言えるだろう。

「チィ、熱で作動するのかアレは!!」

 エシディシも此処に来て漸く、スプリンクラーの仕組みに気付いたらしい。
だがもう遅かった。状況は完全に悪化した。言うまでもなく、後藤の方は好転している。怪焔王の流法を封じられるだけでなく、消化液の効力も下がるとみて良い。
後藤を相手に直接的な肉弾戦を持ち込もうとするほど、エシディシも愚かではない。此処は、乗り切るしかなさそうだ。
嘗て、自らを打ち倒した波紋戦士がやってのけた様な、詭道の弁舌を以ってして。

「次にお前はこう言うだろう――」

 それは、自分を斃し、風の流法を操る最高の戦士を斃し、究極生命体(アルティミットシィング)を地球から追放した、究極の食わせ物が十八番としたペテンだった。

「『逃げる工夫より戦う工夫をしろ』、とな」

「逃げる工夫より戦う工夫をしろ……ぬ……」

 エシディシが指摘した通りの言葉をマンマと口にしてしまい、面白くなさそうな表情を浮かべた。
同時に、エシディシに対して改めて強い警戒心を抱き直した。まさか、心すら読む事が出来るのかこの男は、と本気で信じていた。

「貴様のような若造には解らんだろうがな、直接切った張ったをするだけが戦いじゃないんだぜ?」

「俺が怖いから強がっているのか? アーチャー。俺を倒すには直接切った張ったをするしかない」

「笑えない冗談だけは一丁前に吐くじゃないか、セイバー」

 無表情で、強かにエシディシの怒りのツボを突く後藤に、沸々と怒りを煮立たせる。 
パラサイトの男の言う通り、シンプルに強いこのセイバーを屠るには、彼を直接粉々にするしかないのだ。
それを行うには、余りにも揃っている状況と条件が悪すぎるのだ。だから今は、機が熟すまで待つ時。その時が、この怪物の身体がバラバラに四散する時なのだ。

 後藤の姿が掻き消える。先程まで立っていた、石材の床に、すり鉢状のクレーターが生じる。それ程までの力で、後藤が踏み込んだのだ。
百分の一秒程の速度で大剣の間合いに到達した後藤が、それをエシディシ目掛けて脳天から振り下ろした。
大剣の刃がエシディシの額に触れた――その瞬間の事だった。彼の姿が、大剣を振り下ろした軌道上から消え去ったのは。
完全に大剣が振り下ろされる。しかしこの場所には、血と臓物を桶をひっくり返したように撒き散らしながら、『ひらき』になっているエシディシの姿は存在しない。
この場にいるのは、芋虫のようにその場に蹲るマルクと、自分だけ。冷静に、状況を推理しようとする後藤。
どうも自分のように、超スピードで消え去った訳ではないらしい。となれば、あのアーチャーはどうやって消えたのか。即座に、理由を思い付いた後藤。それは最早、確信に近かった。

「令呪、か」

 今頃何処かを車で走っている広川の事を考える後藤。
人間の頃から大胆不敵な面がある奴とは思っていたが、虎の子の令呪をこんなに早く消費するとは、中々どうして、大した奴だと改めて後藤は評価した。

「直接切った張ったをするだけが、戦いじゃない、か」


810 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:07:39 GmJs0..I0
 その言葉の意味を考える後藤。この男にとっては、直接殴り合い、斬り合い、撃ち合う事が戦いであったが、エシディシにとってはそれだけが戦いではないらしい。
あの男のようにペテンやブラフを駆使する事も、また必要な要素かと後藤は認識した。生前は考えもしなかった事だが、今になってそれを理解するとは。
もしかしたらもう少しそう言った事柄に重きを置いていれば、自分の内臓に錆びた鉈を振り下ろしたあの少年を相手に、不覚を取る事はなかったのかも知れない。

 冷たい水が、後藤の身体に降り注いでいた。
冬と言う季節も相まって、身体が切れるのではないかと言う程の冷たさが身体に舞い込んでいるが、この程度の寒さは苦にならない。
ふと見ると、広川の役員付運転手をしていた、マルクと言う男が、「う……あ……」、と言いながら地面に蹲まり、ミミズのように蠕動しているのが見えた。
今ならば喰らう機会なのかも知れないが、何だかそんな気には後藤はなれなかった。彼はマルクの脳天に、大剣を振り下ろした。
彼の頭はザクロのように割れ、其処から血とプリンのような質感の大脳が零れ出た。後藤なりの、優しさだったのかも知れない。





【MID TOWN FORT CLINTON/1日目 午前】

【セイバー(後藤)@寄生獣】
[状態]魔力消費(小)、肉体的疲労及びダメージ(極小)
[装備]
[道具]
[所持金]マスターのペンギンに依存
[思考・状況]
基本:戦う
1. もう少し作戦とやらを練って戦うか……
2. 聖杯戦争……退屈はしなさそうだ
[備考]
※広川組がマスターであると認識しました
※もう少し慎重に戦ってみようかと考えています
※エシディシの身体に迂闊に触れると危険だと解りました。もしかしたら、太陽が弱点なのでは、と言う事を薄ら気づき始めているかもしれません


【オズワルド・コブルポッド@逆転裁判シリーズ】
[状態]左肩に銃による負傷、魔力消費(小)、広川に対する強い殺意
[令呪]残り三画
[装備]黒い紳士服
[道具]武器を仕込んだ傘
[所持金]シュレック邸にある大量の資金
[思考・状況]
基本:聖杯をぶちまける
1. 広川と言う男を絶対に殺して見せる
2. 聖杯戦争を勝ち残る
[備考]
※広川組をマスターであると認識しました
※広川によって左肩を撃たれました
※広川に対して強い殺意を抱いております
※シュレック邸の住民を、家主のマックス・シュレック含めて全員皆殺しにしています
※原作で飼いならしていたペンギンや、奇形サーカスの仲間がゴッサムにいるかどうかは、お任せ致します
※現在はシュレック邸にいます


811 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:07:52 GmJs0..I0




10:

「痛み分け……と言うのは甘い見通しか」

 キャデラック車を運転しながら、広川が歯痒そうな表情でそう言った。その表情は、決して抉られるように右肩に刻まれた傷のせいだけではなかった。
今も其処からは、血液がドクドクと溢れ出ていた。

「相手のサーヴァントの真名や戦い方をお前から聞ける、と言うのは大きいと言えば大きいが……こちらは令呪を失ったからな。それに、俺の戦い方も、向こうは解ってしまっただろうし、やや俺達の方が不利だろうさ」

 暗幕が垂れ込められたリアシートで、水に濡れたエシディシが重苦しい表情で現状を憂いていた。
彼に言われて、広川が自分の右手に刻まれた令呪を見た。令呪が一画失われている、と言う事実は揺るがなかった。
車内に今すぐ戻れ、それが令呪を以てアーチャーに下した命令だった。切り札の令呪を無駄に使ったと考えるべきなのか。
それとも危機を脱する為に必要な仕方のない消費だったのか。広川には如何判別すべきなのか、解らない。

 予め広川が、後藤の索敵範囲外まで車で移動し、其処に差し掛かったと同時に、令呪を用いてエシディシを空間転移させる。
その作戦自体は、上手くいったし、窮地を脱する為と考えたのならば、見事な策だっただろう。だが、こんな序盤で令呪を消費してしまった、と言う事実が重くのしかかる。
無論、令呪を一切使う事無く脱落するよりかは遥かにマシなのだが、そう考えても、割り切れないものがある。

「そう悔やむな、ヒロカワ。夜だ。夜を待て。俺がその力を十全に発揮出来る、闇の時間を心待ちにしていろ」

 釈然としない広川の気持ちを汲んだエシディシが、直に彼をフォローした。
細かい所で気配りの出来るこのアーチャーを、広川は重宝している。人間の上に立っていたと豪語する種族の男の割には、中々マメな男だった。

「……アーチャー」

「何だ」

 神妙な声音でそう呟いた広川に、エシディシはそう返した。

「あんな醜い男には負けてられん。勝つぞ」

「ははは、やはり気が合うな。俺も、他人に侮辱されたらやり返さないと気が済まないタチでな」

 ――俺が怖いから強がっているのか? だと、あの若造め。
エシディシは、スプリンクラーから水が降り注ぐあの地下駐車場の出来事を思い出すだけで、業腹な気持ちになるのだ。
時間帯に恵まれただけの小僧に、あそこまで馬鹿にされるのは、我慢が出来ない事なのだ。闇の一族としてのプライドが、それを許さない。
エシディシの筋肉が、ミシリと言う音を立てて膨張した。内部で、抑えきれぬ怒りの念で煮え滾る血液が循環しているのがエシディシにも解る。

 今は、想像の中だけで、後藤の顔面に、怒りで沸騰した自らの熱血を打ち込む位で、自らの溜飲を下げる事にしたエシディシ。
やがてこの想像を現実の光景とするその時を夢見、今はまだ、太陽の光に雌伏の意を示してやる事にするのだった。


812 : What I`m made of ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:08:09 GmJs0..I0





【MID TOWN COLUMBIA PT/1日目 午前】

【アーチャー(エシディシ)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(小)、肉体的ダメージ(小)
[装備]
[道具]
[所持金]マスターの広川に依存
[思考・状況]
基本:聖杯戦争に勝ち抜き、宇宙を漂う同胞と、座にいる部下を呼び戻す
1. 一筋縄ではいかない奴らが揃っているな、やはり……
2. 太陽、やはり憎い奴だ
[備考]
※ペンギン組がマスターであると認識しました
※夜まで待機の姿勢でいます
※三騎士クラスの相手には、自らの十八番である全身の細胞を用いた消化は厳しいかもと思っております
※後藤に対して強い怒りを抱いてます


【広川剛志@寄生獣】
[状態]右肩に銃による負傷(ペンギンの物よりはダメージは低い)、魔力消費(小)、肉体的疲労(小)
[令呪]残り二画
[装備]スーツ
[道具]ベレッタM92
[所持金]現金数万円、クレジットカード
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れ、アーチャーの望みを叶えると同時に、生命の調整を行なう
1. アーチャーが本領を発揮出来る夜まで待機する
2. ペンギンを何とかして葬る
[備考]
※ペンギン組をマスターであると認識しました
※ペンギンによって右肩を撃たれました。但し、ペンギンの物よりはダメージは軽微です
※帯銃しています
※令呪を一画消費しました
※現在キャデラック車を運転し、シュレック邸から遠ざかっています。何処に向かっているかはお任せします


813 : ◆zzpohGTsas :2015/06/19(金) 21:08:49 GmJs0..I0
投下を終了いたします。エシディシ及び後藤の能力、および登場話から勝手な解釈をいたしましたが、支障がある場合には、御指摘をお願いいたします


814 : ◆sIZM87PQDE :2015/06/19(金) 21:47:01 6vAJgSpE0
投下乙です!
後藤とエシディシ、最強クラスの実力者同士の激突は痛み分け、正確にはやや後藤有利に終わりましたか
この二人の戦闘描写の濃密さはまさに圧巻、素晴らしい。共に人外の存在でありながら戦い方は人間らしい知恵と工夫の応酬に満ちている
ただでさえハンデを負っている上に令呪を早々に使ってしまった広川はこの先巻き返すことができるのでしょうか


815 : 名無しさん :2015/06/20(土) 12:10:06 u.p1..gg0
投下乙です!
人外同士の死闘、圧巻の戦闘描写でした
地の利を活かして優位に立ち回る後藤、不利な状況ながら地力で奮戦するエシディシ、どちらもやはり強い
激しい戦闘もさることながら、広川とペンギンの静かな駆け引きも格好良かったですね
早い段階でマスターであることが割れてしまった二人はこれからどうなるか…


816 : <削除> :<削除>
<削除>


817 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/21(日) 03:17:16 1a8A/YUU0
投下乙です。
後藤とエシディシ、二人の戦闘描写の濃さには圧巻の一言。
早くも令呪を使用し、おまけにかつての同志が敵として立ちはだかる中、広川はどう立ち回るのか。
シュレック氏殺しがバレたペンギンも含めて、今後の彼等の動向には注目せざるを得ませぬ。
にしてもマルク、ここでも柱の男絡みで酷い目に遭うのね……。

ルールにミスを発見したので訂正を。
聖杯戦争開幕時の日付を「12月20日」と書いたのですが、正しくは「12月21日」となります。

最後に、レヴィ&セイバー(グリムジョー・ジャガージャック)で予約します。


818 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/21(日) 12:19:32 YXjhM0U60
犬養瞬二&キャスター(戦極凌馬)
ノーマン・スタンスフィール&アサシン(鯨)
レデュエ
予約します


819 : ◆zzpohGTsas :2015/06/21(日) 19:18:01 gWBiSjB.0
ライダー(バットマン)
アーチャー(ジャスティス)
を予約します


820 : ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:45:46 UcXICsHo0
投下します


821 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:46:18 UcXICsHo0
1:

 ウェイン・エンタープライズ社、と言えば、このゴッサムの経済の爛熟の頂点に立つシンボル的企業であり、そしてゴッサムと言う街の顔の様な大会社だった。
シンボルであると言う事は、何も良い意味ばかりではない。ウェイン社は経済都市であるゴッサムの繁栄の象徴でもあり、この街の差別と格差の象徴でもある。
このコングロマリットが、ゴッサムシティの経済を独占している、と言う批判が、どれ程吹き上がっている事か。
ウェイン社のせいで、職を奪われ失業者になった人物は、大勢いる。ウェイン社のせいで、負け組と言うラインの先に歩めない者も、山ほどいる。
犯罪都市と言う綽名を賜って久しく、そして、治安も最悪なゴッサムシティを本拠地とするウェイン産業が、今日までテロリズムや暴徒の襲撃に合わない理由は、ただ一つ。
それはこの会社が『強者』だからである。ウェイン・エンタープライズは、このゴッサムにおける――いや、世界における強者の条件の一つを、完全に満たしていた。
この街では、金と暴力を持つ者が強いのである。その内の一つを最大レベルで支配するウェイン社が、弱者の筈がなかった。
だから、誰も逆らえない。貧困層や低所得者は当然の事、ギャングやマフィアでさえも。いや、金の影響力や企業よりも強いギャングやマフィアだからこそ、逆らえない、と言うべきか。

 この仮初の街、再現された衆愚の都にもまた、ウェイン・エンタープライズは、ゴッサムの強者、或いは、搾取する者の最たる企業として君臨しているようである。
ただ、オリジナルのゴッサムと違うのは、海外から誘致された、ウェイン産業に勝るとも劣らぬ大企業もまた、ゴッサムの経済を回していると言うところだが。
しかし、市民にとっては大した違いはない。搾取する企業が一つから二つに増えただけだった。

 ゴッサム市民がMIDTOWNと呼んでいる島、名の通り、アメリカの大河の上に浮かぶ縦に並んだ三つの島、その真ん中に位置する島にウェイン社の象徴が屹立していた。
高層建築の林立するMIDTOWNの中でも、特に高い摩天楼であるその建造物を、市民はウェイン・タワーと呼ぶ。
それはウェイン産業の本社の様なものであり、ゴッサム大学の学生が内定を勝ち得、通う事を憧れとするエリュシオンだった。
この街では何よりも、あの会社に勤めていると言う事が一種のステータスであり、勝ち組と言う肩書を得る手段の一つなのだ。
そんなウェイン・タワーに対抗する様に、もう一つの摩天楼が天を貫かんばかりに目立っている。ユグドラシル・タワー。
ここ最近ゴッサムの街に誘致された、日本の福祉医療会社である、ユグドラシルコーポレーションなる会社の支社であるらしい。
アメリカと言う国は誰もが認める経済大国だ、グローバル化だ何だと言っても、外国の大企業が入り込む余地と言うものは、そうそうない。
ゴッサムは犯罪都市と呼ばれ、国内企業ですら進出に二の足を踏む程治安が悪いが、その経済規模は本物。いわば、穴場だ。
ユグドラシルと言う会社はゴッサムのそう言った面に、金の匂いを嗅ぎ付けたのだろう。欲の皮の突っ張った人間が上層部にいるらしいな、と男は嘲った。

 UPTOWNと呼ばれる地区に建てられた、高層ビルの一つの屋上に、男は佇んでいた。
耳の尖った、蝙蝠を模したような黒マスクを被った、体格の良い男性である。学生時代はきっと、ラグビーやアイスホッケーを嗜んでいたのだろうと見る者に想起させる。
そしてその魁偉が、決して胴体と四肢をくまなく覆う、これまた漆黒の色味をしたプロテクターのせいだけでない事も、見る者は理解するであろう。
男の装備するプロテクターの胸部には、羽を広げたコウモリのデザインがあしらわれており、このような事柄から、
この男が自らを蝙蝠をイメージしてこのプロテクターとマスクを身に付けている事は明らかだった。
――おお、見よ、男の肩から風になびく、ビロードのような黒いマントを。宛らそれは、夜を舞う蝙蝠の翼を模しているとしか思えないではないか。

 ――だが今は昼だ。例えゴッサムであろうとも、太陽は等しく空から地上にその光を降り注がせる。
昼の間だけゴッサムは、本来抱えているその魔性と危険と淫靡さを雲散霧消させ、凡百の経済都市としての側面を人々の前に見せつける。
してみるとその男は、昼と言う時間には非常によく目立つ夾雑物であった。天空から飛来した隕石のようにその男は光の中でよく目立ち、そして、磁針の狂ったコンパスのように今の時間に合致しなかった。


822 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:46:50 UcXICsHo0
 オリジナルのゴッサムにおいて、その男の存在は永遠の謎であり、存在を長らく疑われ――しかしそれでいて、確かに実在すると信じられた人物だった。
まるでそれは、十九世紀のイギリスを騒然とさせた殺人鬼、ジャック・ザ・リッパーのように。十八世紀のヨーロッパを暗躍したとされる不死の貴族、サンジェルマン伯爵のように。
本物のゴッサムにおける伝説的、かつ、神話的な存在であるその男を、誰が呼んだかは解らないが、人は『バットマン』と呼んだ。
ゴッサムの秩序を大いに潰乱させる者が現れ、その都市の在り方を崩そうとした時、蝙蝠を引き連れて墨の様な闇から現れ、その枢軸を圧し折る暗黒の騎士(ダークナイト)であると言う。

 ゴッサムの秩序を守る、と言う志を受け継いだ遺児を多く残し、後世のゴッサムの秩序維持にも貢献したヒーローの、マスクから覗く口元は憂いと悲しみに震えていた。
自らの精神性と、その揺るぎなさには、自信があった。どんな万難や試練が待ち受けていようと、それを受け止め、乗り越えられる自信もあった筈だ。
だが今は――迷いと、不安があった。この街には、バットマンと言う存在に纏わる伝説も神話も息づいていない。自分はこのゴッサムにおける異物だ。
それでも、この街は自ら生まれ、育ち、そして生涯を賭して守って来たゴッサムなのだ。自分の存在がなかった事になっているからとて、自らの責務を投げ出すつもりはない。
それなのに、何故――聖杯は、自分のマスターを、あの男に選んだのか。ジョーカー……犯罪界の道化王子、その気になれば、エースにもキングにもなれたであろう、
文字通りのワイルドカードの可能性と才能を持っていながら、その全てを悪趣味なジョークと自らを苛立たせる犯罪に用いる男。バットマンの最大の宿敵。
生前最も死闘を繰り広げた、好敵手(ライバル)ではなく、仇敵として渡り合った最悪の敵が、何故、自分のマスターなのか……!?
手から血がにじみ出るのではないかと言う強さで、拳を握る。何を殴ろうとも、今のバットマンの溜飲は、下がる事はあるまい。

 引き攣った笑みを浮かべる、白塗りの顔をしたあの男は、自分を苛立たせる/笑わせる為に、どんな努力も惜しまないだろう。
自分とゴッサムに、自らが思い描いた最低最悪のジョーク――本人は最も笑えるジョークだと信じているらしいが、彼に笑いのセンスはない――を叩きつける為に、だ。
かぶりを振るい、現況の余りの悪さを振り払おうとするが、頭にかかる黒色の霧は晴れる気配も見当たらない。これ以上の最悪のジョークなど、あってたまるものか。

「……私は、どうすれば良いのだろうな、アルフレッド」

 言ってバットマンは、MIDTOWNの方角から、違う方角に身体を向けた。
其処は、UPTOWNとTHE PALISIDESを結ぶ、QUEENS BLIDGEの方角だ。橋の下にはQUEENS RIVERと呼ばれる名の河が流れている。
THE PALISIDESと呼ばれるその場所には、ウェイン産業筆頭株主である男の、広大な邸宅があった。
その株主の名前であるブルース・ウェインの名をそのまま取って、それはウェイン邸と呼ばれている。
それが、今バットマンがいるビルから見渡せるのだ。それ程までに広大な敷地面積と、建物の大きさを持つ。

 誰もが一度は、こんな場所に住んでみたい。そんな妄想と夢をそのまま形にした様な、城の様な大邸宅だ。
……嘗て、『バットマンがそのマスクとスーツを着脱し、ヒーロー活動時以外の日常を過ごしていた』、あの邸宅も確かに存在するらしい。

 となれば……、あの男も存在し、自分以外の誰かに仕えているのだろうか?
両親を強盗の凶弾によって撃ち殺され、その事がトラウマとなったバットマンの幼少時代――彼を親身に育て、フォローしてくれたあの老執事、アルフレッド・ペニーワースが。


823 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:47:09 UcXICsHo0
 バットマンのヒーロー活動は、アルフレッドの献身的な支えや援助、フォローがなければ、成り立たなかった、と言っても過言ではない程重要なものだった。
ヒーロー活動とは違う日常生活においても、アルフレッドは十分過ぎる程の働きを示してくれた。彼には、感謝してもし足りない程だ。
果たして彼は今、NPCとして生活しているのだろうか? それともそもそも、ウェイン邸には存在しないのか……?
確かめに、あのQUEENS BLIDGEの向こう側に行ってみたくなる。そして、自分の事を知っているかと、聞いてみたくなる……!!

 ……だが、止めた。葛藤に長らく苦しむバットマンだったが、その相克は、あの橋の向こうを渡らない、と言う考えで決着を着けた。
アルフレッドはもう十分働いたじゃないか。ヒーロー活動も手伝って貰っただけでなく、幼少の自分を育ててくれ、ウェイン産業の株主となってからの活動もサポートしてくれた。
偽りの衆愚の街ゴッサムでも、彼に頼ると言うのか? ……それは、バットマンとしても御免だった。
いるかもしれないNPCの彼には……平穏無事に過ごしていて欲しい。自分を生涯支え続けて来てくれた、ささやかな礼として、受け取って欲しかった。

「私は文字通り、一人……か」

 本来ならば信頼すべきマスターは最悪の宿敵、サイドキックのディックもジェイソンも、ティムもステファニーもダミアンもいない。アルフレッドは先述の通り。
バットマンは、孤独のままゴッサムを守らなければならなかった。深刻な事実だが、彼はこれを受け止める事にした。

 ――見ていろ、ジョーカー。その癪に障る笑みを顔から消し去ってやる――

 今も何処かで、『HA HA HA』と笑っているであろう、出来損ないのピエロのような男の事をバットマンは考える。
あの男の凶行を止めてやる、そう心に誓った、その時だった。彼の身体に、恐るべき鬼風が叩き込まれたのは。
サーヴァントが放つ、魔力と言う奴だろうか。違うと考えた。サーヴァントである以上隠し通せようもない魔力とは、これは異質のもの。
そのサーヴァントが強く、恐ろしい存在だからこそ放出出来る、気魄であり鬼気だった。

 嘗て、犯罪と言う恐怖をより強い恐怖で抑えつけていたバットマン――本人にその自覚がないのは言うまでもない――が、思わず竦む程の気配。
死後、英霊の座に祀り上げられたバットマンであるが、その世界には、彼よりも古い時代に、数々の偉業を成して来た英霊豪傑、超人の類が数多く登録されている。
きっと、その類なのだろう。……だからと言って、退く訳にはいかない。此処がバットマンの知るゴッサムシティである限り、彼は戦い続けるのだ。
親を殺されたトラウマをバネに、アウトローに対して恐怖を以て立ち向かうと決めた、あの時から。

 身体に夜闇を纏ったような黒い騎士が、ビルの柵の上に立ち、其処から何の恐れもなく飛び降りた。
この蝙蝠には、昼も無ければ夜も無い。危機が迫れば、雲一つない空の下でも、明けき月が輝く夜闇の下でも、舞って戦うだけなのだった。




2:


824 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:47:30 UcXICsHo0
 着けられている。
その道の手練であろう。彼女以外の存在であれば、尾行されている事には先ず気付くまい。
凡百の探偵や警察職、スパイなど、及びもつかない気配の消し方、尾行のそれとなさ。間違いなくプロの類だ。
それも、諸人の想念や撞着、恐怖や冤罪、神話や伝承が形となり、英霊の座へと登録された存在が、矮小化されて世界に呼び出された存在――サーヴァントだ。
マスターの前川みくに危機が陥らぬよう、アーチャーのクラススキルである単独行動を駆使し、霊体化をして辺りを監視していたが――思わぬ展開に直面してしまった。

 彼女、ジャスティス(正義)の名を与えられたこのアーチャーは、自分がサーヴァントに尾行されていると言う確信があった。
簡単だ、何故ならば彼女は今霊体化している。彼女の姿はこのゴッサムに於いて特に目立つのだ。聖杯戦争の関係者が見れば、まずサーヴァントであると割れるのは確実。
霊体化した存在と言うものは、素養のない人間には目視は不可能である。つまり今のジャスティスは、誰の目にも映らない筈なのだ。
その状態の彼女を、ピンポイントで尾行して来る存在。これはもう、自らを疑えと言っているに等しい事柄であった。

 追って来る存在を、戦うに相応しい場所へと誘き寄せる。
マスターである前川みくが危機に陥った時にも、十分対応出来る距離を保ちつつそれでいて、なるべく彼女に、戦闘をしていると気取られない場所へ。

「……おあつらえ向きの場所を探すのは、苦労したぞ」

 廃ビルと廃ビルの谷間にある、陽の光も当たらない為に薄暗く、そしてジトりと湿った裏路地であった。
夜の間はいざ知らず、日の出ている時間帯では、誰も通る事もない、精々がけち臭い、十代の不良崩れや浮浪者がたむろしている程度の場所に過ぎない。
加えてこの廃ビルの中には、住民がいない。取り壊しが大分昔に決定されるも、取り壊す会社が倒産。以降放置され、時間の任せるがままにしてある無人ビルなのだ。
この場所ならば、互いの正体を明かすにもってこいだと、ジャスティスは思ったのである。

「姿を見せたらどうだ」

 言ってジャスティスは後ろを振り返りながら、自らの霊体化を解除する。それに呼応し、彼女を尾行していた闇の騎士、バットマンも霊体化を解除する。
姿を見せたアーチャーのサーヴァントは所々を蒼く縁取った、白亜の大鎧めいたもので全身を覆った、生命体――いや機械か。それとも、生物と機械の融合体か。
何れにせよ、生身の部分を兼ね備えた機械としか、その存在は見えなかった。頭に類する所からは、血のように赤い長髪のようなものが風にたなびいている。
そして何よりもその存在は、凄まじい巨躯と体格の持ち主だった。バットマンの体格も、並一通りではないのだが、ジャスティスのそれは彼をも超えている。
パワードスーツを、身に纏っているようだとバットマンは感じた。元居た世界にいた、最強の超人(SUPERMAN)と渡り合おうとしていた、禿頭の男の事を思い出した。
確かアレは、レックス・ルーサーと言ったか。

 ――……凄まじい威圧感だ――

 心中で吐露するバットマン。目の前に佇む存在は、生の人間では到底出しえない程の覇風を放出していた。
それは、人類を超越した怪物だけが醸し出せる何かである。どんなアウトローと相対しても怯む事のないバットマンが、竦み上がりそうな程の、威圧感。
表面上それを億尾にも出さないのは、彼が自分の事を、ゴッサムの平和を守るヒーローであるバットマンだと固く信じる事で、恐怖を殺しているからだった。

「出る時間を間違えたな、アサシン」

 腕を組み、此方を見下ろす様な傲岸不遜な態度で、ジャスティスがそう言った。
歪んだスピーカー越しに喋るような声だった。地獄の底から響いてくるような、恐ろしげな雰囲気が、その声からは横溢している。
人間の心に宿る恐怖と言うものを、否応なく喚起させられる声だ。恐怖に対し恐怖で戦うバットマンも、例外ではない。

「……私はライダーだ」


825 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:48:01 UcXICsHo0
 サウスポーの構えを取り、バットマンがジャスティスの間違いを訂正した。昼と言う時間を否定するような、全身黒一色の出で立ち。
成程、確かにジャスティスがアサシンと間違えるのも無理はない。しかし、バットマンは自分が暗殺者と思われるのが、嫌だったのだ。彼らは殺しを生業としているが、自分は不殺を掲げるヒーロー。一緒にされるのは、バットマンとしては心外だった。

 本当ならば、バットマンと名乗りたいところではある。決して、騎士道精神からではない。自分が何者なのか、と言う自己確認の為だ。
しかし、聖杯戦争において自分の名を知られてしまう、と言うのは不利しか残らない。超人的な能力を持たないバットマンならば、残る不利は顕著だ。
不本意だが今は、クラス名を名乗るしか、なかった。

「本当に、私と戦う気でいるのか? ライダー」

 ジャスティスのこの言葉には、挑発の意味合いも込められている。だが同時に、退け、と言う意味も込められていた。
生前のジャスティスであれば考えられない事だ。生前の彼女なら、目の前に敵意を持って人間が立ちはだかったのであれば、粉微塵にその身体を砕いていただろう。
それを行わないのは、自身の精神性の変化。そして、自らのマスターを配慮していればこそ、であった。

「私は、このゴッサムを守る為に在る」

 静かにバットマンは言葉を返す。そして更に、言葉を続けた。

「お前は、ゴッサムに何の破壊も齎さない存在だと誓えるか?」

「……無理だな」

「ならばお前は、私の敵になる」

 ジャスティスの言葉に、少しの憂いが込められていた事を、バットマンは知らない。
ジャスティスは、ギアと呼ばれる『兵器』である。ギアとは、生物の形をした――いや違う、生物そのものの兵器だ。細菌兵器や生体兵器とは訳が違う。
兵器とは、どんな美辞麗句で取り繕おうとも、結局は都市を破壊し、殺戮を齎す為にあるガジェットなのだ。ジャスティスと言えど、その定義からは逃れられない。
事実彼女は生前、両の指では数えられない程の都市を破壊して回ったし、殺した人間の数など最早数える事すら馬鹿馬鹿しい程だ。
後世になってもなお、ジャスティスと言う存在は恐れられ、その恐怖の伝説から、コピーすらも作られた程である。ジャスティス、と言うギアの伝説に、憧れや気高さなどない。彼女に付き纏うのは、人類を滅亡させかけ多くの幸福を奪った悪魔、と言う恐怖の逸話だけだ。

 これこそが、ジャスティスの保有するスキル、破壊神。
彼女はどんな言葉で自分を表現しようとも、彼女が過去に積み上げた屍と瓦礫は消し去れない。
彼女は恐怖と言う想念の山を築き上げた結果、英霊の座と言う天へと登録された怪物なのだ。彼女には破壊神以外の、抱かれるイメージは許されない。
バットマンの問いに「否」と返したとしても、ジャスティスはバットマンの敵になっていた事だろう。
スキル・破壊神とは、結局のところ、ジャスティスと言う存在の意思を斟酌せず、相対した全ての存在に敵として見做される、兵器として生前生きて来た彼女への魔痕なのだから。

 そして、この宿命と、ジャスティスは向き合う事にした。今更逃げた所で、始まりはしないのだから。

「降りかかる火の粉は、払わねばなるまい」


826 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:48:31 UcXICsHo0
 その言葉を皮切りに、バットマンが動いた。恐怖に耐え切れず、バネ仕掛けの人形のように動いた、と言った方が適切なのか。
目にも留まらぬ速度で腕を水平に動かし、黒い何かをジャスティス目掛けて投擲する。それは四つあった。
退屈そうにその腕を動かし、それらを破壊する。恐るべき事に、たった一度の腕の動かしで、彼女は四つ全てを破壊したのだ。
バットマンが投擲したものは、自らのプロテクターの胸部に刻まれたコウモリのエンブレムと同じ形をした、黒い手裏剣。
彼がバッタランと呼んでいた投擲武器である。バットマンのヒーロー活動の象徴とも言えるアイテムを、ジャスティスは文字通り、ゴミのように破壊して見せたのだ。

 様子見程度の一撃だ。バットマンもこれでジャスティスを倒せるなどと言う甘い展望は考えていない。
今の攻撃で、バットマンは痛い程理解した。このサーヴァントは、桁違いの怪物であると。バッタランがたとえ直撃したとしても、子供の投げるゴムボールがぶつかった程しか感じない事であろう。

 ジャスティスが地を蹴り、バットマンとの距離を詰めて来る。踏み込んだアスファルトの地面がボグォン!! と、すり鉢状に凹んだ。
その重圧そうな巨体からは信じられないような、凄まじい速度。バットウィングの速度に、迫るかも知れない。
間合いに入ったジャスティスが、腕を横薙ぎに振るいにきた。手首より先が、白磁のような色味をした剣に変わっている。
殆ど反射的に、バットマンは勢いよく飛び込むような前転。自らの首に向かって払われたその一撃を危機一髪の体で回避。

 前転が終わった後、体勢を整えるバットマン。
ジャスティスがこちらに振り返ったと同時に、ユーティリティベルトからやはり黒色の小さな球を取り出し、彼女目掛けて軽く投擲する。
警戒し一瞬だけ身体を硬直させるジャスティス、この隙を狙い、バットマンが自らの顔面を腕で覆った――刹那。
球が、破裂し、その内側から、太陽を直視したような眩い光が弾けた。薄暗い路地裏を、網膜を焼く様な閃光が白く染め上げる。閃光手榴弾だった。
閃光程度であれば、解っていれば毛ほども通用しないジャスティスだが、不意を打たれたとなれば話は別。
そもそも目の構造自体が通常人類や生物のそれとは違う彼女に、強い光による目晦ましなど毛ほどの意味も持たない、が。
思考を奪い、一瞬だけ白痴の状態にする事は出来た。バットマンにはそれで十分だった。ドゴン、と言う崩落音が聞こえて来た。
光が止む、ジャスティスの思考が戻る。彼女から見て右方向の廃ビルの石壁に、穴が空いていた。バットマンが破ったのである。

 逃げた訳ではないのはジャスティスにも解る。気配はまだ、廃ビルの中に蟠っている。
彼女も、自分とバットマンの戦力差を理解し始めた。圧倒的に此方が優位に立っている、と言うのがジャスティスの見解だ。そしてそれは事実だ。
自分があのサーヴァントに敗れる要素があるとすれば、不意打ちか、マスターを葬られる事以外にないが、後者に限って言えば、
今ジャスティスのマスターは彼女から大分離れた所にいる。心配は無用だった。

 ビル壁を破る急襲、芸がない。誰だって予想は出来る。となれば、タイミングは何時になる?
もしかしたらそのまま逃走する可能性もあるが、ジャスティスは何故か、あの男に限ってそれはないと思っていた。
大見得を切ったから逃げるに逃げられないから、ではない。この街を守ると言った時の彼の目つきや口ぶりが、本物だったからだ。彼は本気で、この街を守る為に動いているのだ。

 ――ジャスティスの右隣のビル壁が、凄まじい轟音を立てて吹っ飛んだ。小さな瓦礫がジャスティス目掛けて亜音速で飛来する。
この程度の直撃などでは彼女は怯まない。急いで壁の方に目をやるジャスティス、大穴が空いていた。
穴の先に、バットマンの姿は見当たらない。見るも無残に廃れたビル内部が広がるだけだ。

 この大穴は、単純な腕力で開けられた穴じゃない。
ではこれは……? ビル壁に穴が空き、推理に至ろうとするまでの時間、約ゼロカンマ二、三秒程。頭上から、壁が崩落する音が聞こえて来た。
バッと、ジャスティスが頭上を見上げ始めた。質量を持った暗黒が、マントをたなびかせて勢いよく両足から落下して来た。
彼女の頭蓋に、凄まじい衝撃が叩き込まれ、勢いのまま彼女は地面に俯せに倒れ込んだ。闇の騎士が頭から彼女の頭に着地した故だった。


827 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:49:07 UcXICsHo0
 タッ、と。ジャスティスの近くの地面に何かが着地する音が聞こえる。バットマンだった。穴の開けられたビルの三階には、穴が空いていた。
爆発物を使用したような穴じゃない、単純な腕力か何かで空けたとしか思えない穴だ。バットマンは、壁を破っての急襲が、ジャスティスに見抜かれている事を読んでいた。
だから一つ、工夫を凝らした。先ずジャスティスが佇む位置の近くのビル壁に、ビル内部から『爆破ジェル』と呼ばれる物を散布。
その名の通り、衝撃を加えるか、時間差で爆発する着火ジェルのようなものである。これを炸裂させたのだ。
ジャスティスが感じた最初の壁の崩落は、このジェルによるものだ。だがこれは、フェイントのようなものである。
爆破ジェルによる壁の破壊に目線を集中させ、意識が逸れたその瞬間に、バットマンは三階から落下。
全体重プラス、落下速度、そして位置エネルギーを乗せて、ジャスティスの頭に攻撃を仕掛けた、と言う訳だ。

 普通ならば、このバットマンの一撃を喰らった場合、良くて重傷、最悪死亡にまで追い込まれるだろう。
それ程までの威力を秘めていたにも拘らず――ジャスティスから意識を奪う事は愚か、衝撃による視界の混濁すらも、引き起こす事は叶わなかった。

 ガッ、とバットマンは右足首を何かに掴まれた。万力に挟まれているかのような、凄まじい圧力。
ジャスティスの右手だった、と気付いた時にはもう遅い。振り払わんと動こうとするが、彼女の方が速かった。
急スピードで彼女は立ち上がり、頭を下にしてバットマンは彼女にぶら下げられた。
今のジャスティスの様子は、まるで猟師が、猟銃で撃ち抜いた禽獣の類を誇らしげに持ち構えているかのようだった。
右腕を、残像が残らぬ程の速度でジャスティスは振う。彼女から見て左側の、バットマンが爆破ジェルで発破しなかった側のビルの、二階の高さの壁に穴が空いた。
ジャスティスの右手から、バットマンは離されていた。

 バットマンは、ジャスティスにソフトボールのような放擲され、廃ビルの最奥で苦しげに呻いていた。
彼を受け止めた壁には、後数百gの衝撃を加えるだけで、砂の城のように崩れ去りそうな程のヒビと亀裂が大量に刻まれている。彼を受け止めた衝撃の為だ。
何たる、腕力か。彼女に投げられたバットマンが、廃ビル内で何枚の壁を突き破ったのかは、彼自身も解らない。数えられない程多かったのは、事実だ。
身に付けているバットスーツが耐衝撃性に優れていて助かった。これを装備していなければ今頃、全身の骨を砕かれ動く事すらままならなかったろう。

 廃ビル内の細々とした礫を蹴散らしながら、ジャスティスがゆっくりと此方へと歩み寄って来る。
陽の光が届きにくく、裏路地よりも更に薄暗い廃ビル内でも、彼女の白亜の威姿は、それ自体が光って見えるかのようによく目立った。

 ジャスティスがバットマンに近付いて来る。
残り、十m。九m。八m。七m――其処に到達した瞬間、地面が地雷のように炸裂した。此処に来る事を予想し、地面の一点に爆破ジェルを集中させていた。
不意を打たれるジャスティス。爆発自体は大した事がない、この程度では彼女の機械の部位を傷付ける事は出来ない。
彼女が怯んだその隙を狙って、バットマンが飛び掛かった。七mの距離を瞬時に詰める、人間の限界点の体術だ。
ジャスティスの顔面目掛けて、右拳で思いっきり右フックを以て殴り掛かるバットマン。衝撃が彼女の顎を捉え、打ち抜く。
彼女に叩き込まれた力は、ナックルによる衝撃だけではない。身体が痺れるような『電流』も流れたのだ。
バットマンの金属製のグローブには、高圧電流が流れるような仕組みが備わっている。ショックグローブだ。機械ならば電流が或いは、と考えるのも当然だろう。
実際ジャスティスも電流は堪えたらしく、動きを停止させる事は出来た。この瞬間を狙い、バットマンは、ショックグローブによる連続攻撃を叩き込む。
右ストレート、左ジャブ、右と左のフック、アッパーカット等々、常人であれば最早死んでいるレベルの打撃の応酬を浴びせる。


828 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:49:30 UcXICsHo0
 ――ジャスティスの両目が、ルビーのように赤く煌めいた、刹那。彼女の口から凶獣の咆哮のようなものが上がり、その身体から魔力の衝撃が開放された。
部屋中の瓦礫が、埃のように吹っ飛んで行く。溜まっていた塵の類が、巻き上げられる。部屋を覆う四方の壁が、粉砕される。
天井の建材が、その更に上の天井を打ち抜く程の勢いで吹っ飛ばされる。それまで攻撃を行っていたバットマンが吹っ飛ばされ、ビルの外に弾き飛ばされる。

 バースト、と呼ばれる魔力――彼女らの世界では法力と呼ばれる――を勢いよく解放し、敵を吹っ飛ばす技法。
ジャスティスの法力を操る技量と、基礎的な法力量が組み合わされると、窮地を凌ぐ為に敵を弾き飛ばすだけで、威力の極めて低いこの技法ですらが、攻撃手段となる。
膝立ちの状態でいたバットマンが立ち上がる。衝撃は凄かったが、何故か痛みとダメージがない。めっけものではあるが、それが不気味だった。

 現在のバットマンでは、理論の上においても、ジャスティスに勝てる道理は何一つとしてなかった。
バットマンと言う存在は、生前から非常に優れた身体能力と、明晰な頭脳、――歪んではいるが――強固な精神性、そして、
ウェイン社の筆頭株主と言う立場から来る、非常に潤沢かつ豊富な財産と資金を保有していた、優れたヒーローであった。
しかしそんな彼にも、明白な弱点があった。それは即ち、彼が何処までも普通の人間であると言う事。
上にあげたそれらの要素は、豊富な財産と資金以外は彼の弛まぬ努力と切磋琢磨の末に獲得したものであるが、裏を返せば、先天的な声質も特別性も何一つなく、
一人の人間が死ぬ程の努力を惜しまねば獲得出来る可能性の範疇であると言う事なのだ。
つまり彼は、『超人』ではない。精神的にはまさにスーパーマンと呼ぶべきではあるのだろうが、肉体的にはスーパーマンでもない。
当然、その瞳から摂氏数万度の熱線(ヒートビジョン)を放つ事だって、出来はしない。つまりバットマンは、サーヴァントとしては二流なのだ。目の前のジャスティスと言う怪物を相手取るには、力不足も甚だしかった。

 これだけならば勝ちの目が薄い程度で済むのだが、更に悪い事に、彼は普通の人間だ。
これが、何を意味するのか? ジャスティスの常時発動しているに等しい宝具、叛逆の王(ギルティギア)の発動条件を満たしているに等しい。
結論から言えば、今のバットマンのステータスは本来の物より全てワンランク下がっている。叛逆の王のせいでだ。
バットマンがやけに感じていた、身体の動きの鈍さや本調子のなさは、ジャスティスの宝具のせいによるものだったのだ。
十全の状態のステータスでも、ジャスティスに遠く及ばないのに、その上更にステータスを下げられると言うのでは、勝てるものも勝てないのは当たり前だ。

 そして、決定的な要因。ジャスティスと言う英霊の格。
そもそも出身の世界がバットマンとジャスティスでは違う為比較のしようがないが、ジャスティスが本来活動していた時間軸はバットマンの世界の物より未来の事だ。
ジャスティスのいた世界ではエネルギー問題と言う、人類が抱えるテーゼは全て、法力、乱暴な言い方だが魔法と言う概念を理論で解体した事により解決している。
この事からも解る通り、バットマンの世界の科学力とジャスティスの世界の科学力――いや、彼女世界では既に科学自体が過去の学問の為、技術力と言うべきか。
兎に角、ガジェットにかけられる技術力と干渉出来る概念の数が段違い過ぎるのだ。異世界の超高度文明によって作られた、法力を扱える最強の生体兵器。
それこそが、彼女、ジャスティスなのだ。内部に備わる兵装の数はバットマンのものよりも遥かに多く、その兵装の末端のものからして、バットマンの兵装全てを上回る。
つまりバットマンが有するアイテムは全て、ジャスティスに備わる兵装よりも遥かにランクが劣るのである。
この上ジャスティスは使いこそしないが、法力による法術(魔術)も行使出来ると来ている。格が劣る以外に、どう表現すれば良いのか。

 扱える能力の数々ではそもそもバットマンが特殊な能力を使えない為勝負にならず、ステータスも負けている上に本来の物よりランクが下げられて。
極め付けに、出来る事の数すらも大きく負けている。下位互換と言う言葉を使うのも烏滸がましい位に、バットマンとジャスティスの戦力差は掛け離れていた。


829 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:50:00 UcXICsHo0
 これだけの実力差があるのに――何故ジャスティスは、バットマンを殺すのに手間取っているのか。
甚振っているのではない。彼女にそんな趣味はない。その気になればこの程度のライダーなど、彼女は瞬きする間に粉々に出来るのだ。
かと言って、慈悲をかけているのでもなければ、不殺を掲げている訳でもない。これこそがこのアーチャーの最大の弱点だ。
ジャスティスは、自らのマスターである前川みくに対して配慮した戦い方をせざるを得ないのだ。
ジャスティスが本気を出して戦えば、魔力供給量の少ないみくに対して、比喩抜きで死ぬ程の負担をかけてしまうのである。

 ハッキリ言ってしまえば前川みくは、ジャスティスと言う破格のサーヴァントの手綱を握るには、力不足も甚だしいマスターだった。
備わる魔力も絶望的に低い上に、戦闘に対する覚悟もない――これ自体はジャスティスは、美点としては評価している――。宝の持ち腐れも良い所だ。
後者の方は兎も角、前者は致命的である。生前からして、ジャスティスと言う存在の戦い方は、身体に備わる法力や、身体に備わる兵装の暴力的な火力を用い、
兎に角相手を殲滅制圧する事だった。つまり彼女の戦いには常に、膨大な法力の消費と言う問題がつきまとう。
生前は無尽蔵に法力を有していた為それも気にならなかったが、マスターからの魔力供給と、サーヴァントが保有する魔力量に制限される聖杯戦争では別だ。
つまりジャスティスがその本領を発揮するには、潤沢な魔力量と言う裏打ちが必要になる。そして、みくにはそれが備わっていなかった。
ジャスティスと言うサーヴァントが保有する魔力を消費して戦う事も出来るが、それをやるとマスターであるみくの魔力のなさも相まり、消滅を早めさせるだけだ。

 そう、ジャスティスは、マスターが魔力の少ない前川みくである限り、その行動の九割近くを封印されているという状態に等しいのである。
魔力放出による圧倒的な移動速度や三次元駆動の限界に迫る程の空中移動性能の発揮も、身体に備わる焦点温度数十万度のレーザーの放射も、
TNT数t分の威力の爆発を炸裂させられる火弾も、超高層建築を根野菜のように切り裂くミカエルブレードを振う事も、ままならない。
つまり今のジャスティスは、素のステータスを活かした戦い方だけでやっているような物なのだ。これはジャスティスの本来の性能を全く活かせてない。

 それに、ジャスティスがバットマンを殺せないのには、ひとえに彼の弱さも原因であった。
彼女は、彼のステータスの低さに気づいていた。同時に、彼が遥か格下の英霊であると言う事も。
その様な相手に、『本気を出して戦えば消滅が早まる事が解りきっているサーヴァント』が、『態々全力をあげて攻撃する』だろうか?
答えは否だ。だからジャスティスも、なるべく必要最低限の動きと魔力消費で目の前のサーヴァントを葬ろうとしているのだ。
それが結実しないのは、バットマンのステータスが低いとは言え、身に纏っているプロテクターが頑丈なのと、彼の鍛え上げられた肉体と培った戦闘経験の賜物だった。

 とは言え、現状では如何転んでも、バットマンがジャスティスに勝てないのは明らかだった。
基礎的なステータスからして違い過ぎるのもそうだが、バットマンの攻撃がどれも決定打にならないのに対し、ジャスティスの攻撃はどれも直撃すれば、
必殺級の威力を誇るからだ。バットマンが百発のクリティカルヒットを叩き込まねばジャスティスを倒せないのに対し、彼女の方は一撃攻撃を当てるだけで良いのだ。筆舌に尽くし難い程の差である。

 しかしそれでも、バットマンはゴッサムを守る為に。ジョーカーの悪事を挫く為に、戦わねばならないのである。
サウスポーの構えを取る彼を見るジャスティスは、腕を組み、見下ろすように構えた。彼女には人類に対する敬意はない。況してや、相対する相手が、敵となれば、なおさらだ。

「貴様では勝てない事が解らないのか?」

「解りたくない」

「愚かな男だ。やはり狂人だったか」

 言ってジャスティスが、ブレード状の物に変化させていた自らの右手首より先の、その尖先をバットマンに突き付けた。
バットマンはまだ宝具の全てを開帳しきっていない。生前の相棒とも言える黒塗りの装甲車、バットモービルと言う切り札がある。
だが――それを解放したとしても、バットマンはジャスティスに、勝てるのか? 自分の居た世界のそれよりも遥かに進んだ技術によって生まれた、この兵器に!!

「終わりにしてやろう、ライダー。己の弱さを呪うが良い」


830 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:50:18 UcXICsHo0
 ブレードの間合いに入り、腕を振り抜こうとした、その時だった。
ジャスティスの腕の動きが、停止する。ブレードの刃が、バットマンの首筋の皮に触れたその瞬間の事だった。表面の薄皮に、薄く切れ込みが入っただけ。
ブレードによってバットマンの負ったダメージの内訳が、これだった。

「何故止める」

 バットマンが無感情に言った。このサーヴァントは嬲り殺しの類をしない存在である事は、一目でバットマンは理解している。
殺すと宣言すれば、一思いに相手を殺す。ジャスティスがそんな存在であると、彼は見抜いていた。

 何故、ジャスティスがバットマンの首を刎ねなかったのか。
それは、彼女の頭の中に微かに響いて来た、マスターである前川みくの念話だった。

【ジャステ――!! お、―化けみたいな―――――!! 助け―!!】

【何だ、どうした、マスター!!】

【怖い――ジャス―――!!】

 自分が思う以上に、拙い状況になっているようだと認識するジャスティス。
念話が途切れ途切れなのが、酷くもどかしい。彼女に魔術的な素養があれば、どんな危機が迫っているのか解るのに!!

 ――ジャスティスの顔面に、高圧電流を纏った拳が叩き込まれた。
体勢がグラついた彼女の胸部に、スプレー状の物が散布される。右腕のブレードを振うが、バットマンはその場で身体を、ボクシングのダッキングの要領で屈めさせ回避。
左方向に横転するや否や、ジャスティスの胸部が音を立てて爆発した。爆破ジェルによる爆発――だが、堪えていない。
歯噛みするバットマン。ウェイン産業の科学の粋を凝らして作り上げた爆破ジェルは、彼女の白いボディに焦げ跡をつける事すら叶わなかった。
それも、無理からぬ事か。生前ジャスティスは、爆破ジェルの爆発が可愛く思える程の、『背徳の炎』の爆炎をその身に受けて来たのだ。この程度の火力では怯む事もないし、傷付く事もない。

「気が変わった、貴様は生かしておいてやる。運が良かったな、気狂いめ」

「……何?」

「急用が出来た。貴様とは付き合ってられん。お前の実力では、聖杯戦争も生き残れまい。この衆愚の街も、守護する事など叶うまい。私が手を下す事もなく、お前は敗れさるだろうさ。何処へでも行くが良い」

 言ってジャスティスは、霊体化を始める。
「待て!!」とバットマンが引き留める。待ってられない。表面上は余裕を装っていたが、ジャスティスは内心で焦っていた。
如何にアーチャークラス、マスターが死亡しても幾許かは猶予のあるクラスとは言え、ジャスティスの単独行動スキルはお世辞にも高いとは言えない。
彼女の単独行動のランクではマスターの死亡は自分の消滅とほぼニアリーイコール。何としてでも、みくは守らねばならなかった。

 ――私も随分甘くなったものだ、フレデリック……――

 史上最強かつ最悪のギアとして畏怖され、破壊神とすら揶揄された自身からしたら、随分と驚くべき心境の変化だと自嘲するジャスティス。
聖杯戦争により実力を制限されているからこんな心境なのだろうか、それとも、今の心境こそが、人間だった頃の自分、つまり本来の自分の性格なのか?
解らないが、行くしかない。マスターの下へと。

 急速に自分から遠ざかって行く気配を茫然と見つめるバットマン。誰もいない路地裏に、一人残される体となった。
このまま、ジャスティスを追うべきなのか。彼はジャスティスの中に、破壊の権化を見た。あれはジョーカーとは違う、純粋に破壊を求める存在だと認識した。
あれがもしも、その真の力を発揮したら、このゴッサムの街はどうなるのか。それを考えるだけで、恐ろしさに身体が震えてくる。
十全の状態であのサーヴァントが暴力を振ったら、ゴッサムどころか、アメリカ大陸が荒廃するのではと言う錯覚すら覚える。

 ジャスティスの気配がいよいよ、バットマンの感知能力でギリギリ感知できる程度のレベルにまで遠ざかって行く。
破壊神を人間が追うべきか、それとも、生前からの宿敵であった、白塗りの顔が特徴的な狂気の体現者を負うべきか――。
決断の時は、其処まで迫っていた。


831 : Feel A Fear ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:50:32 UcXICsHo0




【UP TOWN BAY SIDE/1日目 午前】

【アーチャー(ジャスティス)@GUILTY GEARシリーズ】
[状態]魔力消費(小)、肉体的疲労(極小)、肉体的ダメージ(極小)
[装備]自身に備わる兵装の数々
[道具]
[思考・状況]
基本:聖杯を勝ち取る
1. マスターを一応守る
2. マスターの負担軽減の為、なるべくなら本気を出さない
[備考]
※前川みくの負担を考慮して、本気を出せない状況下にあります
※バットマンの存在を認識しました
※前川みくがヘキジャインベスと遭遇した事を朧げながら感知しました。ジャスティスには、みくが危機に陥っているだろうと認識しています
※現在急いでマスターの下に向っています

【ライダー(バットマン)@バットマン】
[状態]魔力消費(極小)、肉体的疲労(小)、肉体的ダメージ(小)
[装備]バットスーツ、疑似的な飛行(滑空に近い)を可能とするマント
[道具]バッタラン、殺生以外の様々な用途に用いる手榴弾、グラップルガン、爆破ジェル、ショックグローブ等
[思考・状況]
基本:ゴッサムシティを守る
1. ジョーカーの野望を挫く
[備考]
※現在ジョーカーの位置を探しています
※並行してゴッサムに迫る危機も守ろうとしています
※アルフレッドの姿を、可能なら見てみたいと思っています
※ジャスティスと交戦しました
※ジャスティスを追跡するかどうか迷っています。判断は後続の方にお任せ致します


832 : ◆zzpohGTsas :2015/06/23(火) 22:51:11 UcXICsHo0
投下を終了いたします。バットマンの武器については、PS3のバットマン アーカムビギンズを一部参照にさせていただきました
不都合があれば、ご指摘の程を宜しくお願いいたします


833 : 名無しさん :2015/06/23(火) 23:55:11 6dwD79Tc0
投下乙です
制約を課されて尚圧倒的な実力のジャスティスと決して上級の戦力でないバットマンとのバランスの表現が見事
スペックでも科学力でも宝具でも何一つ勝てていないバットマンの、それでもタフに喰らいついていく姿がかっこええ
たった一言の「解りたくない」が最高にイカしてるよー


834 : 名無しさん :2015/06/24(水) 01:36:55 YRsSs5xA0
投下乙です!
バッツvsジャスティス、お互いの戦闘スタイルが対照的で面白いなぁ
圧倒的に上位で相性最悪の敵相手にも屈せず武装を駆使して立ち回るバッツがかっこいい
ゴッサムを象徴する英雄でありながら決して強者ではないという奇妙な立ち位置は面白い
ジャスティスもかなりのハンデを背負いながら流石の強さ
破壊神としての自分を受け入れながらもどこか人間味を残した彼女のキャラは魅力的


835 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/26(金) 19:54:37 IwY.NOqY0
予約延長させて頂きます。


836 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/27(土) 01:04:47 q0UI2eJ20
延長します。


837 : ◆JOKERxX7Qc :2015/06/28(日) 23:16:33 uMwCIMHo0
申し訳ありません、予約を破棄します。


838 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/28(日) 23:53:15 Ur5qMC0Y0
ノーマン・スタンスフィールド&アサシン(鯨)
投下します。当初予約していたキャラ数から大幅に減った形になってしまい申し訳ございません。


839 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/28(日) 23:53:58 Ur5qMC0Y0



ゴッサム・シティは犯罪の跋扈する街だ。
警察が見て見ぬ振りをする中、数々の犯罪組織が頭角を示していく。
麻薬売買、武器の密造などの犯罪を繰り返し自らの利益を獲得していく。
中には自治体に影響を及ぼす程の経済力を手に入れた組織も存在するという。
時に彼らは癒着という形で行政機関と繋がり、不当な利益を得ていく。
治安を守る筈の警察官と手を結び、更なる資金を稼ぐこともある。
正義は名ばかりのものとなり、悪党が街を牛耳る。
ゴッサム・シティはまさに、腐り切った衆愚の街だった。

だが、そんな街にも変化が齎され始めた。
自警団――――グラスホッパーの台頭だ。
彼らの存在はこの街に僅かながら、しかし確かな変化を与えた。
悪を掃討し、街を浄化せんとする彼らの活動は犯罪者に確かな影響を与えていたのだ。

下手な犯罪では、まず奴らに眼をつけられる。
気を抜いていれば、奴らに睨まれる。

犯罪者達は己の身を守るべく、様々な手段を講じたという。
ある者は身を潜めて犯罪の機を伺い。
ある者は犯罪組織の構造を建て替えることで尻尾を掴まれにくくし。
ある者は力で捩じ伏せるべく武装を固め。

グラスホッパーといった私刑人達の存在は、犯罪者をより狡猾に育て上げたのだ。
所詮はガキ共の自警団――――――誰もがグラスホッパーをそう考えていた。



◆◆◆◆


840 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/28(日) 23:55:34 Ur5qMC0Y0



「痛い目見に来たかよ、バッタ共」



とあるギャング達のアジトにて、リーダー格であるギャングの男が銃器を取り出しながら言う。
彼に続く様に、他のギャング達も懐から銃器を取り出し構えた。

アジトである事務所の入り口に踏み込んできたのは警官の様な制服を身に纏った若者達。
彼らこそがグラスホッパー、その団員であった。
まさか堂々と正面から乗り込んでくるとは思わなかった。
余程自信があるのか、あるいは余程軽率なのか。
理由等どうでもいい。連中を此処で蜂の巣にすれば終わるのだから。

グラスホッパーの噂は既に聞いている。
何でも犯罪者を取り締まり、ゴッサム・シティの治安維持に貢献している自警団だという。
私刑行為を行う正体不明の赤い覆面男達とは違い、彼らの活動は比較的表立って行われている。
街の自主的な警備等も行っており、市民からの支持も厚い。
そういった精力的な活動、そしてリーダーである犬養の確固たるカリスマ性からその勢力を着々と伸ばしていた。

汚職と退廃が支配するこの街で正義を語った所で何になるのか。
理想を掲げる蝗達は悪党達にとって恐怖の対象であり、嫌悪の対象でもあった。
そんな連中におめおめと捩じ伏せられる訳にはいかない。

故に彼らもまた武装によって己の身を守る。
犯罪者達は武器を取り、正義を掲げる者達を力によって叩き潰す。


「自警団のガキ共が調子に乗ったのが運の尽きだ」


銃を構えるギャング達。
それを冷静沈着に見据えるグラスホッパーの団員達。
かたや数々の銃器で武装した犯罪者達。
かたや何の武器も携行していない自警団達。
状況はギャング達が圧倒的に有利だ。
連中を生きて返すつもりも無いし、ここで徹底的に仕留めるつもりだ。


841 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/28(日) 23:56:44 Ur5qMC0Y0


有利な状況を前に、ギャングのリーダーは不敵な笑みを浮かべる。
大方、末端のチンピラから此処の情報を掴んだのだろう。
それを取り締まるべくたった数人の団員で乗り込んだと言った所か。
馬鹿馬鹿しい。自分達の力を過信し、驕ったのか。
グラスホッパー全員なら兎も角、あれだけの数のガキ共に何が出来る?
余程死にたいと見える。



「終わりだ、バッタ共―――――――」



ギャングのリーダーが、引き金に指をかけ。
続く様に部下達も発砲しようとした。
その直前だった。






《――――――マツボックリアームズ!》





「…は?」


グラスホッパーの団員が取り出したのは果物に似た奇妙な物体。
奇怪な果実は腰に装着されたベルトに嵌められ、取り付けられた刀のような器具で両断される。
まるで玩具の様な音声を鳴らすそれをギャング達は呆気に取られながら見ていた。
気がついた頃には、他の団員達も同様の物体を握り締めており。




《――――――マツボックリアームズ!》



《――――――マツボックリアームズ!》



《――――――マツボックリアームズ!》



《――――――マツボックリアームズ!》



《――――――マツボックリアームズ!》



《――――――マツボックリアームズ!》



《――――――マツボックリアームズ!》


842 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/28(日) 23:57:16 Ur5qMC0Y0

「変身」


ベルトに装着された異界の果実が両断される。
カッティングブレードによってロックシードが断ち割られ、宙より奇怪な果実が降り注いできたのだ。
マツボックリ――――――――そう、巨大なマツボックリである。
幾つもの巨大なマツボックリが落下し、ベルトを装着した団員達の頭部を覆ったのだ。
そして、団員達の身体に黒き武装が纏われていく。
まるで影のような黒塗りの装甲が、足軽の甲冑の如く装着される。


「覚えておけ。我々グラスホッパーは、この街を浄化する」


淡々と、しかし確固たる理念を示す様に一人の団員が告げる。
そして団員達は次々と漆黒の槍兵へと変身。
果実の力を纒いし鎧の戦士達が顕現する。
その名はアーマードライダー黒影・トルーパーズ。
黒蝗《グラスホッパー》に投入されし新たな力だった。

咄嗟に引き金を引くギャング達。
それらの全てが握り締められた槍によって、装甲によって、いとも簡単に弾かれていく。
まるで人が虫螻を追い払うように呆気なく。
人の作りし圧倒的な暴力を、彼らは容易くあしらってみせたのだ。
恐れ戦くギャング達。彼らは次第に後ずさり、逃げ腰になっていく。
そんな彼らを追い詰める様に漆黒の影達はゆらりと蠢いた。




「―――――覚悟しろ、クズ共」




逃げ惑うは悪党達。
追い立てるは黒き蝗。
鎧を纏いし捕食者が、牙を剥く。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


843 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/28(日) 23:57:49 Ur5qMC0Y0



「グラスホッパーのガキ共が松毬の鎧を身に纏って殴り込んできた?」


12月21日、夜明けから間もない時刻。
廃ビルを利用したギャングの隠れ家で、一人の男が半信半疑の様子で呟く。
小奇麗なスーツを着こなし、無精髭を生やした男は本来ならば『正義』の立場にいる筈の存在だ。
ゴッサム・シティの麻薬事件を取り締まる捜査官である。
にも拘らず、彼はギャングとさも当たり前の様に接触している。
それもその筈、麻薬捜査官『ノーマン・スタンスフィールド』は悪事に手を染める汚職捜査官なのだから。
麻薬売買に一枚噛んでいるギャングの連中との連絡が付かぬことを疑問に思ったスタンは、彼らの隠れ家へと赴いたのだ。

そこでスタンは「現場から逃げ延びた」というギャングの一人の話を聞くことになる。
麻薬を保管していたもう一つのアジトに自警団『グラスホッパー』が攻め込んできたというのだ。


曰く、それはつい先日のこと。
曰く、奴らは奇妙なベルトを身に付けていた。
曰く、奴らは松毬のような道具を使っていた。
曰く、奴らは空から降ってきた松毬を身に纏って変身した。
曰く、奴らは銃弾さえも弾く装甲や武器を使ってギャング達を叩き潰した。


「馬鹿馬鹿しい言い訳だな。アーカム精神病棟にでも入りたくなったか?」
「嘘なんかじゃない!俺はこの眼で見たんだ!奴らが、その…松毬を纏って変身する所を!!」


必死で伝えるギャングの男を、顔を近づけていたスタンはふんと鼻で笑いつつ見下ろす。
自警団の連中が突如宙から降ってきた果実を装甲の如く身に纏い、銃弾すらものともせずギャングを叩き潰した。
そんな冗談のような話等、普通ならば笑い飛ばされるか精神異常を疑われるだけだ。
もし以前のスタンがそれを聞いたならば、笑い話として軽くあしらっていただろう。


「冗談だよ、冗談。俺はお前の話を信用しているさ。
 松毬だったか?嘘にしては無茶苦茶過ぎて、逆に真実味を帯びている。
 それに、最近じゃそういった変な噂もよく耳にするからな」


だが、スタンは唐突に態度を変えてギャングの肩を叩く。
機嫌を良くした様に口元に笑みを浮かべ、彼の顔を覗き込みながら言う。


「貴重な情報提供、感謝の極みと言った所だな!
 取引が駄目になったのは腹立たしいが、今の所はこれでチャラということにしてやろう!」


両手を広げ、どこか楽しげに高らかに言い放つスタン。

―――相変わらず調子が読めない。
―――一体こいつは何を考えているのか。
ほくそ笑む様なスタンの表情を見て、ギャングはそんなことを思っていた。


◆◆◆◆


844 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/28(日) 23:59:50 Ur5qMC0Y0



『グラスホッパーか』


ギャングのアジトを後にし、煙草を吸いながら街中を歩いていたスタンの頭に声が響く。
霊体化した状態で傍に着いていた己のサーヴァント、アサシンが念話を用いて呟いたのだ。


『随分と、懐かしい名だ』
『…そういえば、お前は連中を知っているんだったな?』
『ああ。生前の依頼人にグラスホッパーの幹部がいた』


寡黙な男だと感じていたアサシンから発言したことに少し驚きつつも、スタンも念話を飛ばす。
以前話を聞いたのだが、アサシンはグラスホッパーを知っているというのだ。
何でも生前の雇い主に一人に連中の幹部がいたとのこと。
彼の知る限りでは、奴らは『日本の猫田市』で活動していたという。
その後グラスホッパーを母体とした新党・未来党を立ち上げ、リーダーの犬養は首相にまで上り詰めた。
―――――それがアサシンの語る『グラスホッパー』だった。


『連中は果実を身に纏って悪党を叩きのめすような組織だったか?』
『いいや、そもそも俺達の世界にそんな技術は無かった』
『だろうな。アメリカン・コミックの世界でも早々ないだろうさ』


即座に否定したアサシンに対し、そう呟くスタン。


『グラスホッパーの団員に果実の武装を行き渡らせて戦闘部隊化ね。
 堂々と殴り込んできたという今回の件は性能テストか、あるいは力の誇示の為か、理由は解らんがな。
 さて、アサシン。この件の黒幕は誰だと思う?』
『…順当に考えれば、犬養舜二か』


グラスホッパーの総帥、犬養舜二。
オーバーテクノロジーと言える程の力を団員達に行き渡らせた者がいるとすれば、彼こそ最も疑わしき存在だ。
グラスホッパーを纏め上げ、統率する立場にある彼ならば団員にそのような武装を与えていても不思議ではない。

そもそもこのゴッサム・シティに“日本の地方都市で活動していた”自警団が居るという時点で奇妙なのだ。
それだけ聞けばゴッサムと日本の沢芽市の姉妹都市協定によるものだと考えられなくもないが、アサシンの話で疑惑は一気に膨れ上がった。
アサシンは生前に猫田市という都市で活動しているグラスホッパーと接触していたというのだ。
つまり彼ら“グラスホッパー”はアサシンのいた世界の組織である、ということになる。


845 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/29(月) 00:00:58 3KLj8UAY0

グラスホッパーがこのゴッサム・シティに出現し、活動を行っている。
恐らく、メンバーの中にマスターが紛れ込んでいる可能性は非常に高い。
本来ならばいるはずのない組織が存在している以上、信憑性はかなり高いと言えるだろう。
その中でマスターである可能性が最も高いのは犬養舜二だ。
理由は至極単純、『彼がいるからこそグラスホッパーが存在する』と考えたからだ。
犬養という指導者がマスターとして召還されたからこそ、この街でグラスホッパーが結成された。
ゴッサム・シティにあるはずのないモノが存在しているならば、それは召還されたマスターに縁があるモノである可能性が高い。
アサシンによれば、この街の住人は数々の時空から呼び寄せられた人間が記憶を奪われ、ロールを演じているのだという、
普通ならばその中からゴッサムと関係のないものを探し出すのは困難だろう。
だが、今回はアサシンという『本来のグラスホッパーを知る証人』がいたことで簡単に割り出すことが出来た。


『さて、連中について調べ上げる必要が出てきたな。
 お前に“依頼”するかどうかは、それからだ』


不敵に笑みを浮かべ、スタンはアサシンにそう告げる。
まずは情報収集だ。捜査官としての権限、裏のルート、あらゆる手段を用いて奴らに付いて調べ上げる。
もし犬養がマスターであるという確証が取れたか、あるいはその可能性が大きいとなれば。
その時はいよいよアサシン《自殺屋》の出番だ。

アサシンは気配遮断スキルと正体秘匿スキルによってサーヴァントとしての気配を隠蔽することが出来る。
例え町中で堂々と歩いていたとしても、彼をサーヴァントと認識出来る者は早々いないだろう。
しかし、気配遮断のランクそのものは極めて低いのだ。素のパラメーターも決して高いとは言えない。
偵察役を行える程の隠密性を備えておらず、ニンジャの如く素早く駆け回れる程の身体能力も備えていない。
諜報員として見れば間違い無く三流だ。

だが、そんな欠点を補って余り有る宝具をアサシンは備えている。
『自殺屋』。アサシン――――鯨という殺し屋を象徴する唯一の宝具。
アサシンの両目を見た者の負の感情を増幅させ、自殺させる能力。
ただ両目を見せるだけで標的を死に追いやれる。その上一切の凶器を必要としない。
『暗殺』という点においてはまさに完璧と言っても良い能力である。

この最強の矛によって確実に対象を葬る為にも、情報を調べ上げることは必要不可欠だ。
もしも犬養舜二がマスターだとすれば、自身の立場を脅かされる前に速やかに始末する必要がある。
奴らがが街を浄化せんと企む『正義の味方』ならば、尚更だ。
このまま自身と繋がるギャングやマフィアを潰され尻尾を掴まれでもしたら困る。
理想を語る“ガキ共”には、現実を知る“大人”が鉄槌を下さねばならない。


(遊びの時間は終わりだ、黒蝗のガキ共。そろそろお前らには現実を味わってもらう)




【MIDTOWN COLGATE HEIGHTS/1日目 午前】
【ノーマン・スタンスフィールド@レオン】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]S&W M629(6/6)
[道具]拳銃の予備弾薬、カプセル状の麻薬複数
[所持金]現金数万程度、クレジットカード
[思考・状況]
基本:生還。聖杯の力で人生を取り戻す。
1.グラスホッパー、特に犬養舜二に関する情報を掻き集める。
2.麻薬捜査官としての立場、裏社会との繋がりは最大限利用する。
[備考]
※自身と繋がりを持つマフィアが何者かによって壊滅しています。

【アサシン(鯨)@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]健康、霊体化中
[装備]眼帯
[道具]『罪と罰』
[思考・状況]
基本:マスターの『依頼』を完遂する。
1.マスターの指示が入り次第、暗殺を行う。
[備考]
※生前の記憶からグラスホッパーについて知っています。


※既に戦極ドライバーを用いたグラスホッパーの活動が始まっています。
ドライバーがどれほど量産されているのか、ロックシードをどの程度所持しているのかは不明です。


846 : 名無しさん :2015/06/29(月) 00:03:12 3KLj8UAY0
投下終了です。タイトルは「BLACK ONYX」で。
指摘や感想があれば宜しくお願いします。


847 : ◆1k3rE2vUCM :2015/06/29(月) 01:55:18 aciNuIcE0
すみません、ロックシードの音声が誤っていました。
(×マツボックリアームズ ○マツボックリ)
wiki収録時に修正させて頂きます。


848 : 名無しさん :2015/06/29(月) 05:08:28 eNvLfX9Y0
投下乙です!
ノーマン組の推理が良い感じでした
グラスホッパーの存在と鯨からの情報から、着実に敵の正体に近づきつつありますね‥‥‥‥あれ、悪徳捜査官なのにまともな捜査活動してる!?
ともかく、戦極ドライバーと共に、ノーマンの暗躍はゴッサムの戦況に大きな影響を与えそうですね
これから楽しみです


849 : ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 00:14:37 9dH.PVbE0
犬養舜二&キャスター(戦極凌馬)

予約します


850 : ◆dM45bKjPN2 :2015/07/07(火) 03:49:54 8MFBdnok0
シェリル・ノーム&ランサー(ウルキオラ・シファー)予約します
一応延長申請もしておきます


851 : ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:03:33 9dH.PVbE0
投下いたします


852 : 僕らはこの街がまだジャングルだった頃から ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:04:00 9dH.PVbE0
1:
 グラスホッパー。英語でバッタを意味する言葉である。
それ以上の意味など、通常ない。衆愚の街、ゴッサム以外であったならば。

 この街においてグラスホッパーと言えば、最近になって彗星のように現れた自警団の事を指す。
自警団。そう、ゴッサムシティで、である。馬鹿馬鹿しい試みであるとしか、通常は思えない。
警察と言う国家組織の半数がマフィアやギャングに買収されているこの都市だ。
自分の身は自分で守れと言う心構えはこの街どころか合衆国では当たり前のスタンスであり、自警団じたいが、寧ろ何故今まで設立されていなかったのか、疑問に思うだろう。
簡単だ。この街では余りにもそう言った物を設立する事が、馬鹿らしいものと認識されて来たからだ。
ギャングもマフィアも、汚職に手を染める公務員達は根っこは同じだ。自分達の自由を侵害される土壌と、それを行いかねない組織の台頭を彼らは嫌う。
つまり、そう言った組織を彼らは良しとしない、潰しにかかるのである。ひょっとしたら、過去、ゴッサムでも自警団の芽が芽吹いた事も、あったのかも知れない。
そう言った存在がメジャーなものにならなかったのは結局のところ、司法や行政、アウトローが一体となって彼らを潰して来たと言う理由が大きい。

 しかし、今回は事態が違った。
ゴッサムに現れた新興の自警組織、グラスホッパーは、ギャングやマフィアのみならず、司法の手にも屈さなかった。
グラスホッパーの団員の練度は驚く程高く、マフィアやギャング達を軽くあしらう程強いと言うのもあるが、それよりも驚くべきなのは、彼らの首魁、犬養の手腕だろう。
犬養舜二と言う名前のこの日本人は、驚く程の手練手管の持ち主だった。インテリと言う言葉がこれ以上となく相応しい切れ者で、話術に長ける。
それだけでなくルックスの方も、日本人とは思えない、西洋人の美形風のそれで若い男女にも非常にウケが良い。
何よりも恐ろしいのは、この犬養。自らのそう言った武器を総動員し、組織の運営に一役どころか、二役三役、いや、四役も五役も買っているのだ。
行政法や市条例を駆使し、グラスホッパーを潰乱させようとする行政部を、彼らの上を往く法知識で軽くあしらいその危機を脱させて来た回数は、数知れない。
グラスホッパーのカリスマ的指導者として犬養は、今やこのゴッサムにおいて一方ならぬ有名人。知らない者など、それこそマイノリティな程のメジャー人物だった。

 若き美貌の持ち主の上に、カリスマ性に富み、インテリジェンスに溢れてて。
それでいて如何なる暴力にも屈さないヒロイン性と、汚らしい権力の魔の手を軽く払いのける程の場数も踏んでいる。
これで、人気が出ない筈もない。現にグラスホッパーの入団者の志望動機の殆どが、グラスホッパーの掲げる理念に賛同した、と言うよりも、犬養のカリスマ性による所が大きい。

 此処最近のグラスホッパーの入団希望者は、日々増加の一歩を辿っている。
大学生や高校生が若さ故に、理念、或いは犬養のカリスマ性に当てられ、入団を希望してしまったケースもある。
ミーハーの女性が、犬養の美貌に惚れてしまい、入団を希望してしまった事もある。
ギャングやマフィアに暴力を振るわれて過ごして来た浮浪者達も、面接を希望した事もある。ただ暴れたいだけの無骨な乱暴者の数も、決して少なくはなかった。
グラスホッパーに集う者の理念は種々様々であるが、解る事は一つ。グラスホッパーの人気は、今が絶頂の最中にある、と言う事だった。

 そう言った狂熱に、グラスホッパーと言うグループが包まれている為に、気付く者は少なかった。
彼らと対立している政治家や議員、ギャングやマフィアが次々と消えて行っていると言う事に。少し考えれば、おかしいと気付く事ではあろう。
しかし、こんな簡単な事実に気付かない人間の方が、マジョリティであった。今まで汚い事をやって来た、政治家達の自業自得であると思われている事の方が多かった。

 今では、グラスホッパーに対して否定的な意見をぶつけてくる人間の方が、少なかった。
一ヶ月にも満たない期間で、グラスホッパーが築き上げた基盤の強固さを驚くべきなのか。
それとも、今まで彼らと敵対して来た権力者や暴力団が消えて行った、と言うツキのなさを驚くべきなのか。

 ――何れにせよ、解る事は一つだ。
今のゴッサムに、救世主として君臨するイナゴ達と、それを率いる王(アバドン)と敵対する存在は、最早絶無に等しいと言う事であった。



.


853 : 僕らはこの街がまだジャングルだった頃から ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:04:28 9dH.PVbE0
2:

「いやぁ、最近は良くもまぁまぁ、グラスホッパーの入団希望者が増えるじゃないか」

 戯れ程度に犬養が置いて行った、数日前の、グラスホッパーの入団者の推移グラフを見て凌馬は面白そうにそう言った。
グラフは解りやすい棒グラフでデータを表しており、日を重ねるごとに、見事な階段状になっているのが見て取れる。
余程無学な者でも、日を追うごとにグラスホッパーに入りたいと言う気持ちの者が多くなって来ている、と言うのが解るだろう。

「解っているとは思うが、そのグラフに記されている希望者全員を入団させている訳ではないよ。信頼出来る人物にテストと面接で篩にかける事を任せているからね」

「希望者を面談なしに合格させても良いんだよ。その方が私としても、種々様々なデータを採れる」

「大量募集のアルバイトじゃないのだからそんな事はしないよ」

 キャスターのクラスとして現界したサーヴァント、戦極凌馬は、犬養と同郷出身の英霊で、しかも活躍した年代まで近いと来ている。
話は合うかと思えば……まぁ、何処となく噛み合わない。凌馬が時々こんな、冗談めいた事を口にするからである。
科学者としての手腕と、その見識については、間違いなく凌馬は一流であるが、天才には奇人が多いと言う言葉に、嘘偽りはなく。この男も、そんな類であった。

 グラスホッパーの運動神経に優れる団員達に、戦極ドライバーなる不思議なベルトバックルを行き渡らせたのは、何日か前の事だった。
キャスターのサーヴァントが発明した代物であるからには、それ相応の品物なのだろうと犬養は思っていたが、まさかあれ程までとは、思ってもいなかった。
ヘルヘイムの果実と呼ばれる代物で拵えられた、ロックシードなるアイテムをバックルに嵌め込む事で、
その人物は果実を纏う――不思議な表現だが、犬養にはそうとしか言いようがないのだ――。ユニークな表現であるが、これが事実なのだ。
そして、その果実を纏った戦士は、人間の時よりも遥かに優れた運動能力を発揮する、だけでない。専用の武器まで用意され、それを振う事が出来る。
これを上手く利用すれば、グラスホッパーの自警活動が大幅にスムーズになる事は間違いがなかった。凌馬にしても、私兵代わりの者達が増えるのだ。メリットは大きい。
この上に、戦極シードやロックシードは、量産が出来る。このゴッサムに、ヘルヘイムの果実の成る地帯そのもの。
つまり、ヘルヘイムが浸食――これに関しては、凌馬は最初で最後とも言える程の驚きを示していた――しているからだ。
この侵食部分さえ発見出来れば、理論上はロックシードは、団員全員に配ってなおおつりが来る程作成出来る。兵力増強はまさに、抜かりなし、と言うものだ。

 団員達の戦極ドライバーについての簡単な詳細と、その使い方。
それらを用いた訓練、と言う名の、アーマードライダーになった際の軽い運動テストが終わったのは、一昨日の事だ。
アーマードライダーになったグラスホッパーの実地テストは、先日行われた。実地……つまり、弱小〜中堅規模のギャングやマフィアのテリトリーの事だ。
結果の程は、凌馬にとっては当然の結果、犬養にとっては想像を上回る結果、と言う所だ。アーマードライダーと化したグラスホッパーは、目覚ましい活躍を遂げたと言う訳だ。
幹部連中には、時期にゲネシスドライバーと言う、戦極ドライバーの上位互換も配られる予定である。但しこれは秘密裏にだ。
何れにせよ、グラスホッパーの戦力増強、及び、聖杯戦争を勝ち抜く為の駒配置は、着実に進んでいる、と見て間違いはなかった。

「ところで、マスター。例の件、確証は取れたのかな」

 言われたその時、犬養はアタッシュケースから数枚の書類を取り出し、凌馬が座っているデスクの上に置き始めた。
二人は今、ゴッサム市内の超高級ホテルの階層一つを貸し切って、其処を拠点としていた。此処を自警活動の拠点の一つとして利用している。
凌馬の陣地作成スキルは大して高くない。規模の小さな工房しか作成しえないが、これは逆に言えば、直に工房を作成出来ると言う事も意味する。
グラスホッパーの拠点はこのホテルだけでなく、他にも秘密裏に様々な場所にアジトを隠している。当然其処にも秘密の工房が用意されている。
仮にここを攻撃されても、最も頑丈な拠点が一つ潰れるだけであった。

 どれどれ、と口にして凌馬は、犬養が手渡した資料に目を通す。
「やっぱりいたか」、数秒程して、ウンザリしたような口調で凌馬は書類を全て、机の上に叩き付けるようにして乱暴に置きだした。


854 : 僕らはこの街がまだジャングルだった頃から ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:04:51 9dH.PVbE0
「その四名、大方の予想がつくが……」

「そうだねぇ、聖杯戦争の関係者、として睨んでおいた方が良い」

 言って凌馬は、心底面倒そうな表情でかぶりを振るった。
犬養が手渡した書類――もとい、ある人物らの身辺を調べ上げた調査書は、四枚あった。

 凌馬はこのゴッサムに呼び出され、ユグドラシルタワーと言う、日本の沢芽市に建てられていた筈の建物をその目にした時、本当に驚いたような顔をしていた。
何でもあの建物は、生前凌馬が研究をする為に利用していた施設であったらしく、このゴッサムにあの巨大なビルが再現されていたとは、思っても見なかったらしい。
と言う事は、あの建物には、凌馬もよく知る人物が最低でも『四人』はいる筈なのだ。凌馬は、グラスホッパーのメンバーが膨れ上がった事を契機に、
犬養にユグドラシルタワーと密接に関係しているある四人を、グラスホッパーのメンバーを監視役にして、調べ上げて欲しいと頼んだのだ。
その結果が、今犬養から手渡された書類だ。結果は、四人とも、このゴッサムに招かれていた。だから、ウンザリしていたのである。

 調査書の人物は全て、生前の戦極凌馬と縁のあった者達だ。
『呉島貴虎』。彼はゴッサムシティのユグドラシルタワーでも、研究主任と言う栄えある立場の住人だった。本社の前で瞠らせていれば、直に見つかった。
『シド』。元いた世界ではロシュオに殺されたそうだが、彼はこの世界ではユグドラシルの営業職として働いているらしい。
『湊耀子』。元の世界では凌馬の秘書であったが、彼女が此処で何をしているかは解らない。何れにせよ要警戒だ、生前は、凌馬を殺した相手に鞍替えした女性なのだから。
『呉島光実』。貴虎の弟だ。これはゴッサムでも立場は変わらないらしい。彼はゴッサム内の高校に通っているグラスホッパーのメンバーに頼んだら見つかった。
この少年は特に要警戒だ。NPCになっても喰えない、或いは、油断のならない少年になっている可能性は十二分に認められる。

 以上四名。再現されたNPCである、と言う可能性は、確かに認められる。
しかし凌馬はそうは思わない。もしかしたらその可能性はありうるだろうが、警戒をしておくに越した事はないのだから。

「彼らは君と同じような、戦極ドライバーや、ゲネシスドライバーと言う奴で戦う事が出来るのだろう? サーヴァントなのかい?」

 犬養が訊ねて来た。ノンノンノン、と言いながら、凌馬は人差し指を左右に振った。

「サーヴァントだったらユグドラシルや学校に通うよりも私みたいにこう言う場所に閉じこもって居たり、霊体化していた方が得策だ。彼らは十中八九、君みたいなマスターだろう」

 「――で、私がそんな彼らに対抗する為に制作したのが、これだ」、そう言って凌馬は、机の上においてあったリモコンを手に持って犬養に見せつけた。

「何だか解るかい、これが」

「何となくは、ね」

「ほう、当ててごらん」

「もしも僕が君のような技術力と発想力を持っていたら、アーマードライダーが牙をむいた時の為に、保険を用意するよ。
例えば、戦極ドライバーやゲネシスドライバーとか言う物を破壊する為の、ね。君の持っているリモコンは、そう言うものだろう」

「正解」

 ニコッと笑って、凌馬は犬養のベルトのバックル辺りに指を指示した。

「これは通称、『キルプロセス』、って言ってね。早い話が君の言った通りだ。ゲネシスドライバーをピンポイントで破壊させて、アーマードライダーに変身させない為の装置だ」

「戦極ドライバーには必要ないのかい? その、キルプロセスは」

「必要がないよ。戦極ドライバーとゲネシスドライバーには天地ほどのスペック差があるからね」

 「……いや」、そう言うや、少し悔しそうな顔で凌馬は訂正の準備にかかった。


855 : 僕らはこの街がまだジャングルだった頃から ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:05:21 9dH.PVbE0
「正確に言えば、先に上げた四人が持ち込んでいるであろう戦極ドライバーのキルプロセスは、作れないと言うべきか。自壊装置を組み込んでないからね。
私がキャスターとして呼ばれた時以降に作った戦極ドライバーには、全てキルプロセスを仕込んであるが、それ以前に……つまり、生前開発したドライバーには組み込んでいない」

「その口ぶりだと、戦極ドライバーのキルプロセスも、作りたかったみたいだね」

「それはそうさ。今回の戦いは聖杯戦争だからね。書類の四人の内、戦極ドライバーも保険で持っていると思しき人間は、呉島兄弟だ。これは問題ない、私が倒せる。
だが、この二名の内誰かが、『サーヴァントを従えていたら』。これが問題だ。そうなってしまうと私は『戦極ドライバーのアーマードライダーとサーヴァントの二人を』相手にしなければならなくなる。どうなるか解るだろう?」

「当然、サーヴァントの相手はサーヴァントがする事になるだろう。従って僕の方には、『戦極ドライバーで変身したアーマードライダーが向かって来る』。勝ち目がない」

「君は実に聡明だ、マスター。そう言った事態を防ぐ為に、戦極ドライバー用のキルプロセスも用意しておきたかったと、臍をかんでいるのさ」

 理に叶っている。凌馬の言う通りだ。ゲネシスドライバーを装備したアーマードライダーならば、戦極ドライバーを装備した者に負ける道理はない。
ましてや今の凌馬はサーヴァントだ、なおの事だろう。しかしこれも彼の言う通り、戦極ドライバーの装備者がサーヴァントを従えていたら?
犬養は戦闘の素養が全くない。相手は必然的に、従えるサーヴァントを凌馬にぶつけ、自分は犬養に向かうと言う戦法を取るだろう。こうなったらアウトだ。
だからこその、戦極ドライバー用のキルプロセス。尤もらしい理由だった。

「……それと、もう一つ。これはあまり言いたくないんだが……」

 凌馬は左手の中指を立てた。思い出すのも癪だ、とでも言いたそうな表情だ。
常に不敵な笑みを浮かべている彼にしては珍しく、苦虫でも噛み潰したような渋い顔を浮かべている。

「実は僕、生前、戦極ドライバーを装備して戦った者に殺されてね……」

「ん? ゲネシスドライバーは確か……」

「おっと勘違いしないで欲しい。其処の所は覆らない。何と言うべきか……相手が、私の予想を上回る……進化、と言うべき現象を起こしてね。それに敗れたんだ……」

 腸の煮えくり返る様な表情、と言うのはきっと今の凌馬が浮かべている表情の事を指すのであろう。
歯を食いしばり、生前の事を思い出しているに違いない。犬養には、凌馬が何に腹を立てているのか解らない。
まさか知る訳もないだろう。彼が腹を立てているのが、生前自分が殺されてしまった事に対する悔しさではなく、自らを殺した駆紋戒斗が、自分の手がけたドライバーを経ずに新たなステージへと進んでしまったと言う事実に憤っているなど

 一息、呼吸をしてから、凌馬はリラックス。その後、口を開いた。

「科学者である私がこんな事を言うのも馬鹿げているが、まぁ、不吉なんだよ。戦極ドライバーはね。憂いの要素は、潰して置きたかった」

 腰を下ろしていたチェアの背もたれに、深々と寄りかかりながら、凌馬は口にする。
大分、腹腔に蟠っていた怒りやら不満やらが薄れて来たらしい。口調もいつも通りのものに戻っていた。

「キャスター、実は僕が聞いておきたいのはその戦極ドライバーの事でね」

「知識欲旺盛だねマスター、何だい?」

「団員全員に行き渡らせて良いのかい?」

「……と、言うと?」

 凌馬の瞳に、怪訝の光が宿り始めた。敵と対峙した時のような鋭さが、その黒瞳で光っている。


856 : 僕らはこの街がまだジャングルだった頃から ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:05:43 9dH.PVbE0
「君の戦極ドライバーを見て思ったのだ。実際、あれは相当に素晴らしい発明だ。それは解る、だが、奪われた時が問題だろう」

「……あぁ、そう言う事か」

 犬養の考える懸念を即座に理解した。ユグドラシルに在籍していた時も、そう言った問題提起は行われていた。
そしてその問題は、当の昔にクリアーされている。手抜かりはなかった。

「マスターは、ギャングやマフィア、敵対する聖杯戦争参加者に、私の研究成果が逆に利用されるのではないか、そう思っているね?」

「そう思うのが、普通だと思うのだが」

「君は正しい事を言っている。だがこれも問題はない。戦極ドライバーは、最初に装備した者にしか扱えない。転用は不可能だ」

「ゲネシスドライバーは、如何なんだい」

「元々は転用出来る物だったが、今回制作する奴は、転用が出来ないようにするつもりだ。手違いで参加者に流れてしまったら拙いからね」

 犬養の憂いはさしあたっては問題ない、と言う所らしい。
「――だが」、と。不安にするような一言を凌馬は口にする。補足があるらしかった。

「例外は存在するかもしれない。例えば私のように、キャスタークラスが他に召喚されていた場合だ。
私の傑作とも言える戦極ドライバーやゲネシスドライバーを、何らかの手段で改造され、キルプロセスも抜かれ、転用して来るサーヴァントがいるかもしれない。
無論、セキュリティは私以外には理解出来ないブラックボックスにしたつもりだが……例外は何時だって存在する。そうなってしまえば流石にお手上げだ」

「それは、仕方がないのではないか?」

「そうだ、そう言うエラーは仕方がない。だが、なるべくなら排除しておきたい。解析されるにしても、精々戦極ドライバーまでだ。
それより上のゲネシスドライバーを逆に解析され、転用されてしまう事だけは避けたい事態だ。だからこそ――『君専用のゲネシスドライバー』が必要になるんだよ、マスター」

 ニヤリ、と口の端を吊り上げて凌馬が言った。
飽くなき研究欲求だけが全ての衝動のような男だったが、よもやマスターまでも巻き込もうとするとは。呆れた男だと、犬養は思った。

「くどいようだが、何事も絶対はない。ある人物のつけていたゲネシスドライバーを奪い、これを利用して戦った少年を、私は知っているのだよ。
セキュリティは万全に整えるが、私の世紀の発明がマスターに牙を向く事だって、なくはないのさ。
それに、さっきも言ったが、私がゴッサムシティに私が呼び出される以前に開発した戦極ドライバー所持者がサーヴァントを従えていたら、これは非常に拙いんだ。だからマスターも、戦う準備はしておいて欲しい」

「僕すらも、戦闘データーの一つにする気かい? キャスター」

「当たり前だろう?」

 大げさに手を広げて、凌馬が言った。全く悪びれもなく、隠し通さず。彼は当然のように言って退けた。

「私がそう言う人物だと言う事は、おおよそ解っていただろうマスター。とは言え、安心したまえ。私がマスターに退場して貰いたくないと言うのは真心だ」

「聖杯が欲しいから死んで貰うのは困る、では?」

「アッハ!! 鋭い鋭い、貴虎も君ぐらい私と言う人間を理解出来ていれば、馬鹿な目を見ずに済んだんだが……」

 パンパンと手を打ち鳴らし、実に愉快そうな口ぶりで凌馬はいけしゃあしゃあと口にする。
解っていた事だが、食えない男だと犬養は改めて戦極凌馬を認識した。これは、目を離す事が出来ない。常に手綱を握っておかねば、拙い人物だと再認させて貰った。


857 : 僕らはこの街がまだジャングルだった頃から ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:06:02 9dH.PVbE0
「私の下心が如何あれ、君に死んで貰いたくないのは事実だ、マスター。君が死ねば私もその時点でデッド、だからね。
私が現状で作製出来る、最良のゲネシスドライバーとロックシードを約束しよう。とは言え、科学者と言うのは常に進歩し、新たな着想を得なければいけない人種。
特に特別な君に、いつも通りのドライバーとロックシードでは進歩がないだろう、と思ってね。其処で、君に意見を仰ぎたい」

「意見、かい? 何だいそれは」

「犬養舜二専用ゲネシスドライバー案さ、君に意見を求めるのは当然だ。作業は酷く難航していたんだが……以前、ゴッサムのテレビ局で放映していた番組を見て着想を得てね。
おっと、実は後三十秒程で始まるんだ。とっくりと見て行くと良い、マスター」

 言って凌馬は、テレビリモコンで液晶テレビの電源をオン。
チャンネルを回し、その番組が放映されるチャンネルに合わせる。それと同時に、時刻が午前八時に変わった。

 ――このゴッサムには似ても似つかない様な小鼓の音が先ず、スィートルームにこだまする。
映画もダイナミックに見れるであろう大画面液晶テレビに相応しい、これまた大きなスピーカーから、その音は響き渡っていた。
見よ!! 毛穴は愚か、化粧の肌理すらクッキリと映る程の解像度の液晶内で、自らの身長程もある朱槍を振り回す、全身白一色に塗りたくった、江戸時代の大名――いや、殿様めいた姿の男を!!

 キレのあるアクション!! 次々と薙ぎ倒される斬られ役!! 和風の楽器と洋風の楽器が奏でる、血肉湧き躍るようなオープニングテーマ!!
嗚呼!! 全てが全て絶妙なバランスで成り立つ、この特撮番組は何なのだろうか!!

「……キャスター、これはなんだね」

 犬養は先ず、自らが引き当てたサーヴァントである、戦極凌馬に問を投げ掛けた。犬養は呆然としていたが、凌馬は食い入るように番組を見つめていた。

「大江戸戦士トノサマン」

 即答した。

「日本の英都撮影所と言う所で考案された特撮らしい。日本での人気はうなぎのぼりで人気シリーズ化、今では海外でも時期遅れで放映されるに至ったらしい」

 求めてもいないのに、補足まで加えて来た。

「……戦極ドライバーのテストの時も思ってたが、『一撃!! インザシャドウ!!』って言う掛け声や、ドライバー、アーマードライダーのデザイン、って……」

「私の趣味だ。素晴らしい美学だろう。生前も評判だったよ」

 良い笑顔を犬養に向けながら、凌馬は当たり前の事を口にするみたいに返事をした。
液晶内でトノサマンとやらが、大立ち回りを繰り広げている光景を目の当たりにしながら、犬養は口を開く。

「……これと、僕のゲネシスドライバーとの関連性はあるのかな」

 聞くのが怖いが、聞かないでは済ませられないだろう。
尤も……聡明な犬養には、これから凌馬が口にするだろう事柄を、何となく理解していたが。

「この特撮番組の監督は、顔は見た事ないが、私と同じ優れたセンスを持っているに違いない。私と同じようなセンスの持ち主……有体に言えば、天才だ。顔も知らないこの監督に敬意を払い、私は彼のアイデアを借り受けたい」

 「つ・ま・り、だ」。此処で大江戸戦士トノサマンのOPが終わり、スポンサー紹介の場面に映った。

「君には私が開発した中で最も優れた性能を持ち、それでいて、私が過去手がけた中でも一番新しいデザインのアーマードライダーになれる権利があるんだよ。それこそが、この大江戸戦士トノサマンの――」

「キャスター、君が以前僕に話した、生前開発したエナジーロックシードと言う奴の種類を纏めた資料があったね。あの中から選んでも良いかな」

 心底不機嫌そうな表情と態度で、戦極凌馬は手近な机をパーンと叩いた。机の上に乗っていたミネラルウォーターの入ったペットボトルがぐらぐらと揺れる。
CMが終わり、トノサマン本編が始まる。今日は十五話であるらしかった。




.


858 : 僕らはこの街がまだジャングルだった頃から ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:06:15 9dH.PVbE0
【MID TOWN WEST SIDE/1日目 午前】

【キャスター(戦極凌馬)@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[装備]ゲネシスドライバー
[道具]レモンエナジーアームズ
[所持金]マスターの犬養に依存
[思考・状況]
基本:聖杯が欲しい
1. ゲネシスドライバーの制作に取りかかってみるか
2. マスターには死んで貰っては困る。専用にチューンアップしたゲネシスドライバーを装備して貰う
[備考]
※キルプロセスの開発を終えています。召喚された時以降に制作した戦極ドライバーにもキルプロセスは仕込んでいますが、生前開発したものについては仕込まれていません
※犬養専用のゲネシスドライバーを制作しようとしています。性能はもしかしたら、斬月・真よりも上になるかもしれません
※ゴッサムシティに生前関わり合いの深かった人物四人(呉島兄弟、シド、湊)がいる事を認識しております。誰が聖杯戦争参加者なのかは解っていません
※召喚されて以降に開発した戦極・ゲネシスドライバー双方は、イニシャライズ機能がついており、転用が不可能になっています。もしかしたらキャスタークラスなら、逆に解析して転用が出来るようになるかも知れません
※主だったグラスホッパー団員達には既に戦極ドライバーが行き渡っています
※トノサマンモチーフのアーマードライダーが作れなくて残念そうです


【犬養舜二@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]スーツ
[道具]
[所持金]大量に有していると思われる
[思考・状況]
基本:聖杯戦争と言う試練を乗り越える
1. 解っていたが、凌馬は油断できない
2. あと、趣味が悪いのかも知れない
[備考]
※凌馬からゲネシスドライバーを制作して貰う予定です。これについては、異論はないです
※原作に登場したエナジーロックシードから選ばれるかもしれません。何が選ばれるかは、後続の書き手様に一任します
※もしかしたら、自分達が聖杯戦争参加者であると睨まれているのが解っているかもしれません
※凌馬が提起した、凌馬と生前かかわりのあった四人を警戒する予定です
※キルプロセスについての知識を得ました


859 : ◆zzpohGTsas :2015/07/07(火) 22:06:39 9dH.PVbE0
投下を終了いたします。不備などがあれば、ご指摘をお願いいたします


860 : 名無しさん :2015/07/07(火) 23:10:37 2BLrJwJc0
投下乙です!
着々と進められるアーマードライダー部隊化
前話でも登場してたけど組織力と戦闘力の両立は他の参加者に取っても相当な脅威になりそうだ
こういう戦術に犬養とプロフェッサーの持ち味が出てて面白いなぁ
つかトノサマン気に入ってたんだねプロフェッサー…w


861 : ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:38:04 RcmMndl20
投下します


862 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:39:48 RcmMndl20
男は、空腹だった。
腹を満たすための金もない。帰る家もない。
纏っている衣服はみすぼらしく、みっともないことこの上ない。
男は、俗に言う浮浪者だった。犯罪が蔓延るこの都市で生き残れなかった者。
人間社会における生存競争の敗北者。
今までしぶとく生きてきたが、既に限界は背後まで迫っていた。
哀れな男―――NPCは、このゴッサムシティで塵のように何の価値もなく消えていく。
餓死という、あまりにも救われない最期で。
恐らく、男はそういう役割のNPCだったのだろう。
ゴッサムシティの裏の闇の演出のために、最初から此処で息絶えることを役割としたNPC。
故に、彼が此処で生き延びる術はなく。
変えようの無い死は、緩やかに訪れる。
まるで夢遊病患者のようにふらふらと歩むその足は―――ぴたりと、止まった。
息絶えたわけではない、力尽きたわけでもない。
ふと、何かが、男の瞳に映ったのだ。

「…あ、れは?」

コンクリートの壁に絡む蔦。細く、壁を這っている。
土すらないこの場所で何処から養分を吸っているのかは分からないが、確かにその蔦は成長していた。
それだけなら特に驚く点はない。
コンクリートを突き破り成長する植物など珍しくもないし、近年ではよく観測される。
男は、蔦に注目したのではない。
その蔦の先に。
―――たった一つだけ実っている、その果実である。
極彩色の皮を纏うその果実は、ぽつんと一つ寂しく実っている。
奇妙な外見の果実はとてもじゃないが人類が食すには躊躇するグロテスクな外見で。
餓死寸前のこの男でも、口にしようとはしないだろう。

「ああ、でも」

男は、ゆらゆらとおぼつかない足取りでその果実に歩を進める。
果実に向かって突き出した両腕は、母親を求める赤子のようだった。
そして。
優しい手使いで、果実をもぎ取る。

「なんて、美味しそうなんだ」

こんなに美味しそうならば。
食べてあげなきゃ、かわいそうじゃないか―――と。
男はゆっくりと口を開け、その果実を咀嚼する。








人の気配すらしないその路地裏に。
人ではない、何かが産声を上げた。









▲  △  ▲


863 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:42:06 RcmMndl20
多数の観客の瞳をを釘付けにするその舞。
激しくもしなやかなそれは、青年達の心に眠る強さを感じさせる。
街のステージの中央で踊る彼らの名は、ビートライダーズ―――『チームバロン』といった。
近年、リーダーが脱退したという彼らのダンスチームは新しいリーダーを選出し、今もなお踊り続けている。
それを、歌姫―――『シェリル・ノーム』は鑑賞していた。
先ほどこの世を去る魂に歌を響かせた彼女は、おもむろに街に出た。
赤の男を警戒した訳ではない。
ただ、歩いた先に―――人が湧く声と、何かのリズムが聞こえたからだ。
それが、このビートライダーズ『チームバロン』の公演だった。
シェリルは、歌姫である。
銀河に轟くその歌声は、あらゆる者を魅了する。
それはこの街、ゴッサムシティでも変わることはない。
彼女は変わることなく歌姫として佇み、その美声で民衆を魅了する。
その彼女から見れば―――彼らのダンスは、とても未熟だった。
一流とは程遠い。大した腕だが、プロから見れば完璧とは程遠いだろう。
だがしかし、彼らには情熱があった。
ダンスを楽しんでいた。
その心だけはプロに負けないどころか、上回っているかもしれない。
NPCといえど、そこには魂がある。
偽りの記憶に偽りの立場を押し付けられたとはいえ―――その輝きは、失われてはいなかった。

「いいわね」

故に、シェリルは純粋に賞賛した。
聖杯戦争なぞ関係ない。
彼女は、歌うために生きているのだ。
夜間―――18時からは、彼女自身のゴッサムライブが待ち受けている。
その前準備として、彼らの舞を瞳に焼き付けておくのもいいかもしれない。
そう考えたところで、

『マスター』

己がサーヴァントの声が、彼女を呼んだ。

「何?」
『ここを動くな』

その、一言。
それのみを発し、霊体化したままでランサーは遠ざかっていく。
返答すら、聞くつもりはないらしい。





▲  △  ▲


864 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:43:48 RcmMndl20



















「俺が怖いか?女」















『―――こわくないよ』














「―――そうか」













それは、最期の記憶。


▲  △  ▲


865 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:44:45 RcmMndl20
ランサーに捧げられた歌姫の歌。
結論から言えば、ランサーの心を揺るがすことはなかった。
彼の司る死の形は『虚無』。
何も生み出すことなく、何も無く。
あまりにも空洞で、その精神は恐ろしいほど空虚。
元より『何も無い』ものに歌を届けようと、虚しく響くだけ。
死にゆく死者に安らぎを与えたあの歌は、ランサーには届かなかった。
だと言うのに。下らないと吐き捨て、眼中の外に追いやることをしなかったのは、何故なのだろうか。
―――かつて刀を交えた黒の少年は、言った。
―――『てめえが人間に近づいてるのかもしれねえな』、と。
有り得ない。この身体は虚であり、十刃の第4だ。
しかし、消え去るその今際の際に、確かにあったのだ。
人間が容易く口にする『心』が。
マスターは『心は後から生まれるもの』と言った。
ならばあの時―――生まれた心は、何処にいった?
この腕を千切れば其処に在るのだろうか。
それとも。
この腕の中に、消えてしまったとでもいうのか。

(……)

沈黙。
ランサー自身が、思考を打ち切ったのだ。
無駄な思考は廃棄。
マスターである女が歌うとき、心が生まれると言うならばランサーはサーヴァントらしく外敵を排除するのみ。

(…?)

すると―――彼の『探査回路』が、そう遠くない場所に何かを感じ取った。
驚くほど微細な変化で、近くなければ見落としていたほどの微細な変化だが、この感覚は魔力だ。
少なくはあるが、NPCでは生成できない量の魔力を感じ取ったのだ。
サーヴァントではない―――敵マスターか、あるいは誘い出すための罠か。

「マスター」

そして。
思案したあとランサーは、一言。

「ここを動くな。何かあれば令呪で呼べ」

選んだのは、その変化の元を確認すること。
もし罠だったとしても捩じ伏せるのみ。
一人になったマスターが狙われたとしても、今はダンスチームの舞いを眺めに訪れた人間で少し混雑している。
令呪を使用する時間は稼げるだろう―――こんな太陽が昇っている人の目がある場所で戦闘を起こそうとする参加者がいるとは、考えづらいが。


866 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:45:36 RcmMndl20
霊体化を解かず、その場から消え去る。
破面の歩法、『響転』である。
そう遠くない距離ならば、数度行うだけで目的地へと最短距離で足を運ぶことができる。
ランサーが到着した地点は、そう離れていない路地裏だった。
先ほどの人通りのある地点から少し離れただけで、このような薄暗い裏路地へ出る。
実体化し、地面を踏みしめる。
法が届かない人間社会の裏の世界。
人間の暗黒面そのもののような行いが此処で行われていると思えば、反吐が出るような思いだった。
正義感からの怒りではなく、ただ醜いモノを見せられたことによる嫌悪感。
最も、ランサーにとっては塵ほどの価値もなく関係も無いものだったので、すぐに思考から切り捨てたが。

「お前か」

ランサーの目に入ったのは、路地裏の奥の奥。
フェンスのようなものに体を向け、蹲るようにして何かを貪っているその男。
衣服はみすぼらしく、痩せこけている外見からして、浮浪者だろうか。
恐らくこの男が先ほどの反応の発生源だろう。
ランサーが呼びかけても反応すらない。聴力が弱いのか、それともそれほど貪るのに夢中なのか。
どちらにしろ無用心なことこの上ない。

「あ…?」
「?」

男はちらりと此方を見る。
相変わらず反応は薄い。目も焦点が定まっておらず、宙を泳いでいる。
その唇は何かを貪り食った影響か、奇妙に湿っており。
その掌には極彩色の果実が―――

「…それは、」

何だ、と続けようとした。
あの極彩色の果実には、魔力が感じられる。
純正の、何にも染まっていない魔力とは程遠い、不気味な魔力が。
そしてランサーが思案するよりも先に、変化は訪れた。

「―――あ」

男の胸から、植物が生えたのだ。


867 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:47:25 RcmMndl20
しゅるしゅると、生えた植物が男を包み込む。
それはまるで、樹木に寄生し締め上げ枯らせてしまう『絞め殺しの木』と呼称される植物のように。
男を瞬く間に植物で締め上げ姿を覆い隠す。
そして。
その覆い隠してしまった植物の隙間から―――緑光が漏れた。

「貴様…」

そしてその植物を突き破り現れたのは、唸りを上げる白い昆虫のサナギのような姿の怪物。
視認した者に恐怖と嫌悪感を与える醜い姿。
その怪物―――名称を、インベスという。
それを見て、ランサーはぽつりと呟く。

「お前は、何者だ。
キャスターのサーヴァントの使い魔か。それとも」

虚のような存在か、と口には出さなかった。
誰が聞いているか分からないのだ。無用心にヒントを口に出すつもりはない。
しかしインベスは話を聞くどころか、その白く尖った爪を振り上げる。
強化された脚力からの爆発的な運動エネルギーは、ランサーとの距離を5秒とかからず接近した。
そしてその研いだ刃物のような爪でランサーの身体を袈裟気味に一閃する。
人間ならば上半身と下半身が泣き別れしてもおかしくない一撃をその身に喰らい―――ランサーは、無傷だった。

「誰がそのゴミようなモノを使っていいと言った?」

インベスの爪はランサーの身体を傷つけてすらおらず、その表面で止まっていた。
―――『鋼皮』。
破面のその異様なまでの防御力を秘めたその体面は、あらゆるモノの侵入をも許さない。
ゆっくりと衣嚢から右手を抜き、身体の表面で止まっているその爪を握り絞める。
左手は、未だ収めたままで抜く気配はない。

「お前に許されているのは『はい』か『いいえ』だ。
それ以外の選択肢は存在しない。これは質問じゃない。
これは『命令』だ」

グッと。ランサーが右手に力を込めると同時に、インベスの爪が砕け散る。
痛みに喚くインベスすら気にも留めず、そのまま右手で首を絞め持ち上げる。

「もう一度聞く。お前は使い魔か?」

返ってきたのは、ぎぎ、と力無く鳴くその声。
それに一切の感慨すら抱くことなく、ランサーはインベスを見つめる。
その瞳は、相変わらずの虚無だった。

「どうやら言葉が―――」

グッと。
もう一度リプレイのように首を掴んだ両手に込める。
虚弾も虚閃も必要ない。
この程度ならば片手で十分、ギロチンの役割を勤めることができる。

「―――通じんらしいな」

ぶちっと何かが千切れる音に数秒遅れ。
小さな爆発が、辺りを包む。
しばらく経って何事かとNPCがわらわらと集まってくるが―――その頃には、もうその場には人影すらなかったという。


▲  ○  ▲


868 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:48:16 RcmMndl20
「あら、戻ったのね」
『何かあったか』
「いえ、何も」

再開を果たした主従の会話は、あっさりとしたものだった。
それもそうだ。ランサーはもとより口を多く開く性格ではなかったし、シェリルにしても必要の無いことを延々と喋る人間でもない。
しかしこの時ばかりは、シェリルは会話に興じた。

「ねえ。貴方はあのダンスを見て何か思った?」
『何も』
「つれないわね」
『事実だ』

簡素にやり取りされるその会話は、すぐに終わりを迎えた。
ランサーが無駄話を好まないというのもあるが、それにしても簡素だった。
だが歌姫は気にも留めず言葉を続ける。

「…ほんと、此処が聖杯戦争と関係ない場だったのなら、ちょっと話でも聞いてみたいぐらいだったわ。
彼らが何故あんなにも楽しそうに踊るのか」

答えなんて、分かりきっている。
きっと彼らにとってのダンスは、シェリルにとっての歌と同じなのだろう。
だからこそ彼女はそのダンスに興味を持った。
機会があれば、バックダンサーでも頼みたいぐらいには。
―――しかし、この場は聖杯戦争。
恐らく彼らも、NPCだろう。
話せるのならば―――本来の魂を持った自分の意思を持った彼らと話がしてみたかった。

「…さて、行きましょう」

シェリルは未だ踊り続ける男たちに背を向けて、歩き出す。
その足取りは、明確に何処かを目指しているようだった。

『何処に行く』
「決まってるでしょ」

向かう場所など決まっている。
此処が聖杯戦争だろうと。犯罪都市ゴッサムであろうと。

「此処はあの子たちのステージだけど」

彼女は、歌うために生きているのだから。

「―――此処からは、私のライブステージよ」


869 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:49:45 RcmMndl20
【UPTOWN WEST VILLAGE/一日目 午前】


【シェリル・ノーム@劇場版マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜 】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]豊潤
[思考・状況]
基本:命の限り、歌い続ける。
 1.夜間(18時)からのライブに準備。
 2.ビートライダーズへの興味。
[備考]
夜間(18時頃)から何処かでライブを行うらしい。
どれ位の規模で何処で行うかは、後続の書き手さんに任せます。


【ウルキオラ@BLEACH】
[状態]健康
[装備]斬魄刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本:「心」をもう一度知る。
 1.シェリル・ノームを守る。
 2.白い怪物(インベス)と極彩色の果実(ヘルヘイムの果実)を警戒。
[備考]
インベスとヘルヘイムの果実を視認しました。


870 : 虚無と歌姫  ◆dM45bKjPN2 :2015/07/14(火) 02:50:50 RcmMndl20
投下終了です。
何かございましたら指摘等お願いします。


871 : 名無しさん :2015/07/14(火) 18:12:35 jdxU0gks0
投下乙です。
時間もかけず一方的に殲滅。そういえばウルキオラは敵には全く容赦しない奴でした。
今のところシェリルの示した物はウルキオラに強い影響を与えるに至ってないけど、それでも微かに変化させつつある。
これから目立ったイベントがあるようだけど、それがターニングポイントの一つになるのかな。


872 : 名無しさん :2015/07/14(火) 18:15:40 /W/FlfFQ0
投下乙です。
歌もダンスも心を表現し人を魅了するという意味では同じ、シェリルが惹かれるのも必然だろうなぁ
未だ虚無のままであるウルキオラもそれらを通じて心を思い出す時が来るのだろうか
ヘルヘイムに関わる参加者も続々と出てきていますね
インベスもちらほら出現してきているし、マスターに取っては今後も脅威になりそうだ


873 : ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:25:22 2NDTJDRA0
ゲリラ投下します


874 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:26:16 2NDTJDRA0

姿無き暴風が、街を駆け抜けていた。


“それ”は荒々しく、凄まじい勢いで疾走を続けていた。
そこに実体は存在しない。形があるはずもない。
だが、その暴風は確かに衆愚の街を吹き抜けていたのだ。
数多のビルの屋上を跳躍していき、街に吹き荒ぶ風の如く“彼女”は奔る。


アーチャーのサーヴァント、ジャスティス。
彼女は霊体化した状態で街を駆け抜けていたのだ。


己がマスターを守るため、彼女は突き進む。
マスターである前川みくから伝えられたのは僅かな念話のみ。
だが、その声は何かに酷く怯え恐怖していた。
マスターが何らかの危機に陥っていることは明白だ。
あれ以降マスターからの念話は届いていない。
マスターの安否はどうなっているのか、確認することは出来ない。
そのことがジャスティスの焦燥をより強めていく。

兎に角、みくの無事を祈るしかない。
今のジャスティスに出来ることは、一刻も早く彼女の元へと向かうことのみだ。
込み上げる焦燥を押さえ込み、ジャスティスはマスターの元へと向かう。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


875 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:27:14 2NDTJDRA0



「これは…」

路地裏へと足を踏み入れた呉島光実は、『それ』の存在に目を見開く。
それはアーチャーが報告していた奇妙な植物。
蔦や葉が伸び、壁や通路を少しずつ侵食している。
そして植物から成っているのは紫色の奇妙な果実。
光実に取って見覚えのある――――それどころか、関わりの深い物体だった。
自分達ビートライダーズはこの植物から育つ果実の力を使い、戦っていたのだから。

「ヘルヘイムの植物…どうしてここに…」

ぽつりと光実の口から言葉が溢れ出る。
異空間『ヘルヘイムの森』に生息するはずの植物が、何故此処に存在している。

《その植物について知っているようね》
《ああ、これは異世界…ヘルヘイムの森に生息する筈の植物だ。
 見覚えがあるなんてものじゃない。こいつは僕達の世界に存在していたはずなんだ》
《ヘルヘイムの森…》
《ひとまず、詳しい説明は後にするよ》

サーヴァントであるアーチャーの呼びかけに対し、僅かに動揺しつつ念話を返す。
そして光実は懐から取り出した戦極ドライバーを装着し、植物から成る果実をもぎ取る。
果実は光実の手の中で変形、そして錠前の様な物体へと変化する。
ロックシード。ドライバーによって無害な形へと変化した果実の成れの果て。
これはその中でも最低ランクとされるヒマワリロックシードだ。
ドライバーを装着した状態で手にした果実がロックシードへと姿を変えた。
その点を鑑みるに、やはりこれはヘルヘイムの植物そのものだろう。

アーチャーの話からこのゴッサムシティが仮想空間であるということは聞いている。
何故ヘルヘイムの植物が存在するというのか。
ユグドラシルタワーがゴッサムに存在するように、ヘルヘイムの植物でさえ再現の対象となったのか。
何らかの理由でヘルヘイムの侵食が仮想空間にさえ及んでいるのか。
それとも―――――――。


(傷痕…爪で抉った様な痕だな…)


ふと、光実が路地裏を挟むビルの壁を見つめる。
まるで鉤爪で引き裂いた様な奇妙な『傷痕』が出来ているのだ。
その時、光実の脳裏をあるものが過る。

ヘルヘイムとは世界を蝕む侵略者だ。
あらゆる世界を文明ごと侵食し、森と同化させる。
言わば時空を超えた外来種。
その森に飲み込まれた世界は同じヘルヘイムの森と化すのだ。


876 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:27:44 2NDTJDRA0

そして、森に成る果実を喰らった生物は遺伝子に変化が起こる。
森に適応した怪物へと変化し、森の植物の種子を運ぶ存在となるのだ。
その名はインベス。光実の脳裏を過ったものの正体だ。
このゴッサムにヘルヘイムの植物が存在するというのならば。
インベスが存在していたとしても、全く不思議ではない。
果実が身を付けているというのならば尚更だ。

この聖杯戦争にはヘルヘイムが絡んでいるというのか。
奴らはどこまで絡んでいる。
この世界でさえ侵食の対象に過ぎないのか、あるいは会場そのものが森に関係したナニカに過ぎないのか。
もしかすると、あのオーバーロードでさえも何らかの形で聖杯戦争に絡んでいるのか。
疑問は尽きないが、今は情報が少なすぎる。

眉間に皺を寄せ、足下に広がる植物を見渡す。
予想外の存在に驚愕と動揺を隠せず、光実は植物が繁殖する路地裏を見渡す。
そして、その通路の奥で――――あるものを目にする。



「…前川さん?」



植物の中に紛れるように転がっていたもの。
それは少し前に喫茶店で目にしたばかりの、猫のキーホルダーが付いた鞄。
ダンスチームの件に関する口止めの為に相席した後輩が持っていたモノだった。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


877 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:28:18 2NDTJDRA0


必死に走っていた。
口から荒く乱れた息を何度も零し。
細い身体を乱暴に揺らし。
恐怖に歪んだ表情を顔に貼り付け。
前川みくは、無我夢中で走り続けていた。


「はぁ―――はぁ―――はぁっ――――!」


空き缶や新聞紙といった足下のゴミを気にも留めずにみくは走る。
いつの間にか鞄を落としてしまったが、気にしている余裕などない。
足下に広がる『奇妙な植物』にも意識を向けることはない。
迷宮と錯覚してしまう程に入り組んだ路地裏の中を逃げ続ける。
自らを殺さんと追ってくる“追跡者”から逃れるべく、彼女はただ只管に走る。
そう、みくは追われているのだ。

人に似たカタチをした白緑の怪物が、彼女を殺さんと迫っている。
獰猛な鉤爪を何度も振るい、壁や地面を引き裂きながら激しく追い立てる。
路地裏が入り組んでいたこと、そして元の世界におけるアイドルのレッスンで培った運動神経。
それらのおかげでみくは辛うじて無傷のまま逃げられていた。

尤も、今の彼女には背後を振り返る余裕さえ無い。
逃げることだけで精一杯だ。
最早念話を飛ばすだけの余力も失われている。

みくの消耗は次第に蓄積していた。
冷静な判断力が次第に失われていく。
肉体の疲労が着実に蓄積している。
このまま、本当にあの怪物から逃げられるのか。
否。みくが追い付かれるのも時間の問題だろう。
じきにあの怪物が追い付く。
そして、彼女の柔な肉体は容易く引き裂かれるだろう。
前川みくに戦う術はない。その覚悟もまだ引き締められていない。
ただの無力な少女であるみくには、どうしようも出来ない。


878 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:28:52 2NDTJDRA0

(何、なんで、なんなの、あれ、なんなの)


故に彼女は戦く。
己の理解の範疇を超えた存在への恐怖に。
一度も味わったことのない死の恐怖に。

何でこんなことに?
あれは何なの?
どうして追われているの?
怖い。怖い。怖い。怖い。
嫌。嫌。嫌。
殺されるのはイヤ。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない!



「あっ……!」



そんな恐怖に蝕まれていた最中、みくの身体が沈んだ。
地面に伸びていた蔦に足を取られ、前のめりに転倒したのだ。
すぐに立ち上がろうと必死に地面を這いつくばる。
早く逃げないと。早く立ち上がらないと。
恐怖の涙を零しながら、彼女は必死に動こうとする。
だが、転倒によるたった一瞬のタイムロスが彼女にとっての命取りとなる。


「―――――あ、え」


振り返ったみくが目の当たりにしたもの。
それは這いつくばる自分を見下ろす怪物。
自分をずっと追い掛け続け、殺そうとしてきたバケモノ。


879 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:29:19 2NDTJDRA0

「あ……いや……ぁ…………」

――――逃げられない。
そう認識してしまった瞬間、みくは腰を抜かしてしまう。
おぞましい呻き声を上げ、怪物はゆらりと迫ってくる。
獰猛で鋭利な鉤爪を引きずり、こちらを見下ろしてくる。

いや。
こないで。
やめて。
こわい。
たすけて。
しにたくない。

混乱するみくの脳内に無数の言葉が渦巻く。
だが、現実は非常だ。
恐怖の余りまともな思考さえ出来なくなる少女に対し、人の道理が通じぬ怪物が容赦をする筈が無い。
怪物は、みくを殺すつもりなのだから。



怪物が、鉤爪を持つ右腕をゆっくりと掲げ。
そしてみく目掛けて、振り下ろす――――――。



「嫌ぁっ――――――――――――――!!!」



目を瞑り、頭を抑えてみくは叫ぶ。
死にたくない。死にたくない。死にたくない!
最後の足掻きと言わんばかりの悲鳴を、路地裏に響かせた。
だが、現実は。



『――――ブドウアームズ!』
『――――龍・砲!ハッ!ハッ!ハッ!』



「えっ?」


予想もしない方向へと進む。
間の抜けた謎の音声に呆気に取られていた矢先。
突如銃撃音が響き渡り、背中に攻撃を受けた怪物が怯んだのだ。

驚愕と共に振り返った怪物。
呆気に取られるみく。
二人が視線を向けた先に立っていたのは、緑の鎧を身に纏った戦士。
その右手には拳銃を握り締め、怪物へと向けている。

彼の姿にみくは覚えがあった。
直接知り合っている訳でもなく、目にしたことがある訳でもない。
ビートライダーズのダンスを見に行くよりも前に風の噂で聞いたのだ。
突如姿を現し、犯罪者を蹴散らして治安を守っているヒーローの存在を。
そのヒーローの存在によってビートライダーズは今もダンスを続けられていると。

その名はアーマードライダー龍玄。
ビートライダーズの活動地区に突如現れたとされる戦士。
悪を打ち払う、正義のヒーローだ。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


880 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:29:51 2NDTJDRA0



(やっぱりいたか…インベス)


アーマードライダー龍玄に変身した光実は、今まさにみくを襲わんとしていたインベスを銃撃した。
アーチャーには路地裏を挟むビルの屋上から周囲の警戒に当たらせている。
光実はインベスの相手ならば自分一人で十分だと考えたのだ。
それに、下手にサーヴァントの存在を晒したくもなかった。


何故、わざわざ駆け付けてしまったのだろう。


前川みくの鞄を発見した後、光実は急いで路地裏を走りこの場まで駆け付けてしまった。
何故恩も借りもない相手をわざわざ走って助けに来てしまったのか。
自分でも理由は解らない。本当に今日の自分はどうかしているのではないか。
そう思ってしまう程に突発的な行動だった。
とにかく、理由は後でいい。
今は目の前のインベス退治が優先だ。


「来い。お前の相手は、この僕だ」


その身に銃撃を受けたインベスが振り返り、龍玄へと睨みかかる。
インベスの注意は完全にみくから龍玄の方へと向けられている。
アーマードライダーとインベスが睨み合う。
沢芽市で何度も繰り広げられた戦いの再現と言わんばかりに、互いが己の武器を構える。

先に動いたのはインベスの方だった。
鉤爪を備えた片腕を構え、龍玄へと迫ったのだ。


881 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:31:08 2NDTJDRA0

龍玄は振り下ろされた鉤爪を身体を回転させるように回避。
そのままインベスの背後を取り、片手に握り締めた銃『ブドウ龍砲』による銃撃を行う。
インベスの背中に直撃したエネルギー弾が火花を散らす。

怒り狂ったように方向転換し、何度も切り掛かろうとしてくるインベス。
龍玄は冷静にブドウ龍砲を振るい、それらの攻撃を凌いでいく。

こうして純粋にインベス退治を行うのも、いつぶりなのか。

脳裏を過るのはアーマードライダー鎧武――――葛葉紘太の姿。
彼と共にインベスと戦い、ビートライダーズとしての縄張りを守った過去。
皆でダンスを踊り、笑い合えることの出来た日々
あんな風に自分達は日常を守り、大切な仲間達と共に平穏を過ごせると思っていた。
舞さん――――高司舞の笑顔をずっと見られると思っていた。
だが、そんなものは幻想だった。
全ては、憧れていた筈のあいつのせいで。


「――――ッ!」


追憶によって僅かに気を取られた龍玄が、その身に鉤爪の斬撃を受ける。
胴体の装甲から火花を散らし、僅かに怯んだ龍玄に更なる攻撃を叩き込まんとインベスが右腕を振るう。

「くそッ!」

龍玄は振るわれた鉤爪を咄嗟にブドウ龍砲で防御。
そのままインベスを右足で蹴り飛ばし、一先ず体勢を整えることに成功する。

蹴りによって転倒したインベスが立ち上がろうとした矢先。
ブドウ龍砲から放たれた無数の弾丸が全身に叩き込まれる。
強烈なダメージに耐え切れず、インベスは勢いよく地面を転がっていく。


「このまま、一気に終わらせる…!」


『―――ソイヤッ!』
『―――ブドウ・スカッシュ!』


882 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:31:35 2NDTJDRA0

龍玄が狙うは短期決戦。
何とか起き上がったインベスに対し、龍玄はドライバーのカッティングブレードを動かす。
直後に構えられしブドウ龍砲の銃口に、ブドウの果実に似たエネルギーが収束していく。
ドラゴンショット。無数のブドウ型のエネルギー弾を対象に向けて放つ、アーマードライダー龍玄の必殺技だ。
危機を察知しながらも突撃してきたインベスに照準を定め。
そのまま、引き金を引かんとした――――。



《マスター、聞こえる!?》



しかし、龍玄の動きは思わぬ声によって止められることになる。
自身のサーヴァントであるアーチャーからの念話だ。
こいつ、肝心な時に―――僅かな苛立ちを覚えつつ、龍玄はアーチャーの念話に返答する。


《どうした、アーチャー!?》
《サーヴァントの気配が迫ってきている!姿は確認出来ない、恐らく霊体化した状態で―――――――》


念話を伝えるアーチャーの声はどこか焦っている様子だった。
それもその筈だ。彼女の報告とは、サーヴァントの接近。
この場に『敵』が迫ってきているというのだ。

インベスに加えて、サーヴァント。
アーチャーの言い様からしてこちらに迫っていることは確実らしい。
戦闘の匂いを嗅ぎ付けてきたのか。
あるいはアーチャーの気配を察知したのか。
龍玄は動揺しつつ舌打ちをし、目の前に迫るインベスに対処しようとした。




《マスター!伏せてッ!!》



ほむらの言葉を耳にし、咄嗟に身を伏せる龍玄。
瞬間、横一閃の斬撃が放たれる。
両脇のビルの壁に大きな裂傷が生まれ。
回避の遅れたヘキジャインベスの首が、勢いよく吹き飛ばされた。




◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


883 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:32:34 2NDTJDRA0



奴は危険だ。
この世界に破壊を齎す悪魔だ。

闇の騎士は市街地を駆け抜ける。
その姿は誰にも見られることはない。
サーヴァントとしての能力、霊体化によって実体のない状態へと変化しているのだから。

あのアーチャーは危険だ。
混沌を好み、享楽の為に犯罪を犯すジョーカーとは別種の脅威だ。
ただ純粋に人類の敵として君臨する『破壊神』の姿を見た。

自身の宝具『衆愚の街、背徳の翼』は機能していない。
本来ならば夜間のゴッサムシティを再現し、その中で有利な補正を受ける固有結界だ。
だが、会場のゴッサムと融合した結果その性質は変化している。
機能するのは『夜間』のみ。日没から夜明けまでの間、能力補正が自動発動する宝具と化しているのだ。
故に彼は補正を受けられぬまま、ジャスティスを追跡していることになる。

だが、奴を野放しにする訳にはいかない。
まだ気配を感じ取れる内に、奴を追跡しなければならない。

狂気に触れし闇の騎士は、勝算無き戦いへと赴く。
全てはこのゴッサムシティを護る為に。



◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


884 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:33:22 2NDTJDRA0



首を切断され、崩れ落ちるインベス。
驚愕の表情でそれを見つめていた龍玄は、背後に出現した気配に気付く。

振り返った先にいたのは、刀剣状の片腕を備えた『怪物』。
インベスの首を切り落とした張本人―――サーヴァント。
霊体化を解除し、右腕に形成したミカエルソードによってインベスを斬首したのだ。

鮮血のような紅い長髪。
怪物じみた威圧的な巨躯。
強靭な尾や鉤爪を備える獣じみた肉体。
機械にも似た白亜の外殻。
それは怪物という他無い異形の姿だった。

人間の手で生み出された殺戮兵器――――ジャスティス。
此度の聖杯戦争においてアーチャーとして召還されたサーヴァントだ。

ジャスティスはちらりと背後へ視線を向ける。
奇妙な植物の茂る地面の上で腰を抜かし、怯えた表情で震える前川みくの姿が視界に映った。
みくは恐怖の余り声も出せないのか、ただ呆然とこちらを見つめているのみだ。
そんなマスターを尻目に、サーヴァントであるジャスティスはもう一人の戦士へと目を向ける。

「サーヴァント…!」
「…マスターか」

よろよろと立ち上がりながら呟いた龍玄の言葉に対し、ジャスティスはぽつりと呟く。
この鎧の戦士はジャスティスを目にし、『サーヴァント』という単語を零した。
通常の科学技術とは異なる武装に加え、サーヴァントに対する知識。
それだけでも龍玄が聖杯戦争の関係者であるという証明になる。
そして、感じ取れる魔力は精々常人と大差ないレベル―――このことから相手はマスターであると判断した。

龍玄――――光実は仮面の下で動揺の表情を浮かべる。
腕が微かに震えている。
凄まじい威圧感に飲み込まれそうになる。
光実はそんな己の感情に薄々気付いた。
彼は目の前に現れたサーヴァントに対する恐怖を覚えていたのだ。

全人類への叛逆者に刻まれた呪いの象徴であるスキル『破壊神』。
全人類への叛逆者としての伝説が具現化した宝具『叛逆の王(ギルティギア)』。
それらの力により、ジャスティスは相対した人間に強大な畏怖と威圧感を抱かせる。
故に光実が恐怖という感情を覚えるのも無理はない。
ましてや、元の世界でオーバーロードの力を一度は目の当たりにしたのならば尚更だ。
正真正銘『全人類の敵』という存在の恐ろしさを既に脳髄に焼き付けられているのだから。

互いに睨み合いが続く。
龍玄は、ジャスティスは、殺意を秘めながら向かい合っていた。
二人は既に直感していたのだ。
目の前の相手は、敵であると。



「聖杯戦争の参加者ならば…貴様も敵、という訳だろうな。
 良かろう、ならば―――――――――」



直後、ジャスティスの言葉は予期せぬ形で打ち切られることになる。
突如ジャスティスの目の前に『爆弾』が出現。
そのまま即座に起爆し、彼女の身体を飲み込んだのだ。


885 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:33:52 2NDTJDRA0

ジャスティスを爆炎が包む中、一つの存在がビルの屋上から飛び降りた。
霊体化を解除し、魔力で構成された肉体を形成。
己の肉体を実体化させた『少女』は漆黒の長髪を靡かせながら着地する。
サーヴァント、暁美ほむら。
もう一人の弓兵(アーチャー)が姿を現したのだ。


「ほう、貴様が奴のサーヴァントか。ならば貴様も消してやろう」
「生憎だけれど、此処で消されるつもりは無いわ」


爆炎を振り払ったジャスティスが、再びその姿を露にする。
その身にまともな負傷は一つとして存在しなかった。

暁美ほむらが時間停止と共に仕掛けた爆弾は確かに直撃していた。
しかし、如何に直撃したと言えど手製の爆弾などジャスティスにとっては玩具に等しい。
闇の騎士の爆破ジェルに耐え切った肉体が、この程度で傷付けられる道理は無い。

相対する中、ジャスティスは暁美ほむらに宝具『叛逆の王』が機能していないことに気付く。
それもその筈だ。暁美ほむらは円環の理という概念に干渉し、神にも等しい存在となっていた親友を掌握した。
彼女は親友を愛の力で人間の座まで引き摺り下ろし、自分の理想の世界を作り上げてしまったのだ。

神をも穢し、世界を書き換える。
そんな所業を行える存在が果たして『人間』と言えるだろうか。
それは最早人の理を超えた『悪魔』と言う他ない。
彼女が人間として判定される訳がないのだ。

尤も、それでジャスティスが不利になるか――――と聞かれれば、答えは否だ。
純粋にステータスの差が歴然だからだ。
ジャスティス自身、己の実力には確固たる自身を持つ。
故に立ち止まるつもりはない。
ただ目の前に立ちはだかった敵を粉砕するのみだ。

迫り来るジャスティスを見据え、ほむらはその手に弓矢を出現させる。
『穢された願い(まどか・マギカ)』。
暁美ほむらを象徴する二つの宝具の片割れ。
改変されし世界で戦った魔法少女としての奇跡の具現。
そして魔法少女・鹿目まどかの使用していた力の再現。

ほう、とジャスティスは興味深げに声を上げる。
弓矢による武装。この小娘は大方アーチャーのサーヴァントだろう。
そう判断したのだ。


886 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:34:28 2NDTJDRA0

そして、弦より放たれた矢がジャスティスへと迫る。
ジャスティスは右腕を変形させた剣を瞬時に振るい、矢を掻き消す。
だが、尚もほむらの攻撃は止まらない。
一発が駄目なら、何発でも叩き込むのみ。
間髪入れずに二撃目、三撃目、四撃目、五撃目―――――次々と矢は放たれる。
それらはジャスティスに全て弾かれるも、彼女を少しでも足止めする手段としては機能していた。
マスターである光実は高い戦闘能力を持つものの、サーヴァントに対しては無力に等しい。
それ故にほむらが何としてでもジャスティスを止める必要があった。


(ありったけ、叩き込む――――!)


暁美ほむらは重火器を使わず、弓矢による攻撃を駆使していた。
元よりマスターならまだしも、サーヴァントに神秘の薄い重火器は有効ではない。
特に目の前の赤髪のサーヴァントには尚更効果は薄いだろう。
爆弾を直撃させたにも関わらず手傷を負わせられなかったのだから。
その上火器は数に限度がある。無駄撃ちによる消費は出来る限り避けるべきだと考えた。

しかし矢による射撃ならば別である。
宝具『穢された願い』で形成される弓矢は紛れもない魔術武器だ。
魔法少女の力によって発揮される真性の異能なのだ。
故に霊体であるサーヴァント相手にも相応の威力を発揮出来る。
宝具の片割れである『やり直しの願い』は奇襲や搦め手、敵マスターの攻撃において力を発揮する。
対する『穢された願い』はよりサーヴァント戦に特化した性能となっていたのだ。


それでも、勝算はあるのか。


何度も放たれる矢を剣で悉く弾きながら、ジャスティスはこちらに迫らんとする。
ジャスティスの足止めは多少なりとも行えている。
だが、結局の所今のほむらが行えているのはその程度のことだ。
矢による効果的なダメージは与えられず、その全てがいなされている。

ほむらは相対した瞬間から直感していた。
敵は強大だ。圧倒的な戦闘力を備えている。
実力の差は歴然だろう。
頬に一筋の汗を流し、ほむらは敵を見据える。
冷静な表情を装いながらも、内心では確かな焦りを抱いていた。


だが、ほむらは屈することはない。
自分はこの聖杯戦争に勝ち残らなければならないのだから。
愛する者をこの手で完全に取り戻す為に。
奇跡の願望器を、掌握しなければならない。
その為にも、屈するつもりなどない。
こんな所で、立ち止まってたまるものか―――――!


887 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:34:53 2NDTJDRA0

何度も放たれる矢によってジャスティスは足止めされていた。
一発一発をミカエルソードによって弾いていき、防いでいく。
本来ならばこの程度の攻撃、訳も無く突破出来るだろう。
だが、ジャスティスは魔力不足によって全力を出せぬ状況下にある
それに彼女の後方にはマスターである前川みくがいるのだ。
下手に矢を振り切れば、最悪マスターが射撃される可能性もある。
故にジャスティスは攻撃の一つ一つを確実に防いでいた。

そんな状況を好奇と見てか、ほむらは自らの番える矢により強力な魔力を込める。
連射による攻撃が止んだと見たジャスティスは即座に接近の体勢を取る。
これがほむらの狙いだ。
ジャスティスを引き付け、有りっ丈の魔力を籠めた矢で貫く。
通常の矢なら幾らでも凌げようと、全力を籠めた一撃ならばどうか。


ほむらは、接近せんとするジャスティス目掛けて照準を定め。
彼女を引き付けるべく、身構える―――!




「甘いな、小娘」



―――――瞬間、ほむらの身体が宙を舞った。


呆気に取られていたほむらは自身の状況に気付く。
凄まじい質量が猛烈な勢いで衝突し、自身は吹き飛ばされたということに。
ジャスティスは一瞬だけ魔力放出スキルを発動し、その加速の勢いを乗せほむらに体当たりを仕掛けたのだ。
余りにも突然だったが故に対処出来なかった。
矢で足止めされていたサーヴァントが、何の脈絡も無く凄まじい瞬発力を発揮したのだから。


888 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:35:19 2NDTJDRA0

「アーチャー!!」


吹き飛ばされ、路地裏の地面を転がるほむらを見て龍玄が声を上げる。
そのまま彼は咄嗟にブドウ龍砲を構え、照準をジャスティスへと向ける。
そして彼は、瞬時に引き金を引いた。


―――――ドラゴンショット。


先程撃ち損ねた必殺技だ。
無数のブドウ型のエネルギー弾が放たれ、ジャスティスへと次々に殺到していく。
それらは白亜の甲冑の様な彼女の身に直撃し、激しく火花を散らした。


「…何だ、それは?」


だが、ジャスティスは動じなかった。
その身に負傷の一つも存在しない。
一切の動揺も無く、無慈悲な瞳で龍玄を見据えた。


(やはり効かないか…!)


龍玄の仮面の下で光実は舌打ちをする。
アーマードライダーとしての武装はサーヴァントには通用しない。
既にほむらからも忠告されていたことだ。
苦し紛れに放った銃撃は通用せず、精々時間稼ぎ程度の意味しか為さなかった。
異界の果実を用いた技術と言えど、それ自体はあくまでユグドラシル・コーポレーションによる化学兵器に過ぎない。
化学は神秘に非ず。神秘でなければ英霊は傷付けられない。
光実の兄である呉島貴虎の武装はキャスターの魔術を介さねばサーヴァントを攻撃出来ない。
それと同様に、呉島光実の武装もまた霊体であるサーヴァントに干渉することは出来ないのだ。


「愚かだな、アーチャーのマスター。
 そんな玩具で私を止められるとでも思ったのか?」


ゆらりとその身を揺らしながら、ジャスティスは歩き出す。
後ずさる龍玄を睨み、彼の方へとゆっくりと近付いていく。
直後、立ち上がったほむらが咄嗟に龍玄の前へと躍り出る。
彼を護るように身構え、ジャスティスを睨む。

龍玄―――光実はジャスティスを見上げ、震える手を抑えながら思考を繰り返していた。
サーヴァントの能力は圧倒的に相手が上。
こちらに効果的な攻撃手段は存在しない。
このまま勝機の薄い戦いを続けるか。
アーチャーを使って何とか時間を稼ぐか。
あるいは、アーチャーのもう一つの宝具で逃走を試みるか。
――――前川みくを見捨てて、このまま逃げるか?
どうする、呉島光実。
どうする。



「死ね――――」
「―――や、やめてっ、アーチャーっ!!」



唐突に声が響き渡る。
光実らを救ったのは、予期せぬ存在だった。
恐怖に震えていた前川みくが立ち上がり、赤髪のサーヴァントへと駆け寄ったのだ。


889 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:35:45 2NDTJDRA0

「…マスター」
「そのっ、怖くて、言い出せなかったけど!その人、みくを助けてくれた人なの…!
 だから…お願い、その人たちを…傷付けないで…っ」


僅かに目を見開き、ジャスティスはみくを見下ろす。
怯えて腰を抜かしているだけのみくだったが、ようやく動くだけの気力が湧いたのか。
無言でマスターを見下ろすジャスティスを見据え、龍玄は仮面の下で驚愕の表情を浮かべる。


(前川さんが、奴のマスターだったのか…!?)


あの赤髪のサーヴァントのマスターが前川みくであるという事実。
龍玄――光実はそのことに驚愕を隠せなかった。
否、実際のところ可能性には薄々感付いていた。
奴は前川みくが襲われていた所に都合良く駆け付け、インベスを殺害したのだ。
最初は単に自分達主従を襲撃しに来たのだと思っていた。
だが「前川みくがマスターである」という事実もまた妥当と言えるものだった。
己のマスターの危機に駆け付け、敵性存在を排除した。
そう考えれば、ジャスティスの行動はサーヴァントとして至極真っ当なものだったのだから。

だというのに、何故自分は前川みくへの攻撃をほむらに指示しなかったのか。
まだ前川みくがマスターであるという確証が得られなかったからか。
あるいは、自分が前川みくへの攻撃を無意識に拒んでいたからなのか。
答えは解らない。
自分の中の奇妙な感情に動揺を隠せずにいた光実は、ジャスティスらを見据える。


その時、龍玄は己の視界に『黒い何か』が割り込んで来たことに気付く。
ほむらやジャスティスも何かに気付いたのか、再び身構える。


龍玄は顔を上げ、それを視界に入れる。
それは空中を滑空するように存在していた。
それは凄まじい勢いで空から急降下してきた。
それは前川みく達の後方へと、降り立たんとしていた――――!


「前川さん、危ないッ!!!」


龍玄が声を荒らげるように叫んだ。
え、と呆気に取られた様な表情を浮かべたみく。
彼女はふと、あることに気付く。


(なんで、みくの名前を―――――)


唖然としたように龍玄を見つめていたみく。
その後方に、漆黒の影が降り立った。



「―――――見つけたぞ、アーチャー」



降臨する3人目のサーヴァント。
地面に膝を突き、ゆっくりと立ち上がる漆黒の影。
衆愚の街を守護する『闇の騎士(ダークナイト)』。
悪を滅ぼす絶対的な恐怖。
その名はバットマン。


890 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:36:40 2NDTJDRA0

「追って来たか、ライダー。格の差と言うものを理解出来ないらしいな」
「格の差など関係ない。私はこの街を守る…その為にもお前の存在を見過ごす訳にはいかない」
「…狂人め」


守護者(バットマン)と破壊神(ジャスティス)が睨み合い、互いに言葉を交わす。
新たな来訪者に対しみくは変わらず怯えた表情を浮かべる。
ジャスティスはそんな彼女の肩に触れ、庇護するように抱き寄せた。

視線を動かすジャスティス。
前方には身構えるアーチャー、そしてそのマスター。
後方には黒いマントを揺らすライダー。
前門の虎、後門の狼とでも言うべきか。
自分の実力ならば彼らを相手取ることも不可能ではないだろう。
そう、全力を発揮出来るのならば。

ジャスティスは己の片手で肩を抱き寄せるマスターを見下ろす。
今この場には無力なマスターが存在する。
全力を出せぬ状態で、彼女を庇護しながら戦えるか。
恐らく、相応のリスクが生じるだろう。
下手をすればマスターを狙われる可能性もある。
そうなれば一貫の終わりだ。

ならば、打つ手は一つ。


《…マスター、飛ぶぞ》
《…えっ?》


念話でジャスティスに伝えられ、呆気に取られたように答えるみく。
直後、瞬時にみくの身体が抱えられる。
ジャスティスの両手が彼女を抱き寄せ、抱え上げたのだ。


そのまま、ジャスティスは凄まじい勢いで跳躍する。
マスターを抱えての逃走だ。
ジャスティスに抱えられる形で宙を跳び、みくは間抜けな悲鳴を上げる。


即座に自身も跳躍し、それを追跡せんとするライダー。
だが、そんな彼の行動を阻むようにエネルギー弾が襲い掛かる。
咄嗟に防御態勢を取り、ライダーはそれらを全て防御する。

「――――はぁっ…」

攻撃を放ったのは、緑の甲冑を纏った戦士。
そう、アーマードライダー龍玄だ。
その右手に構えられた龍砲が火を噴き、ライダーを攻撃したのだ。
傍に立つアーチャーが僅かな驚愕を見せ、己のマスターである龍玄へと視線を向ける。


891 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:37:25 2NDTJDRA0

龍玄の攻撃はサーヴァントには通用しない。
ジャスティスに向けて放った攻撃が一切効かなかったのがその証拠だ。
通常ならばサーヴァントに向けて攻撃することなど意味はない。
だが、初撃に限れば足止めとして機能する。
突如放たれた未知の攻撃に対し反射的に防御や回避を行うのは当然の反応なのだから。

ライダーは突如攻撃を仕掛けて来た龍玄を見据える。
あの場で足止めを行ったということは、つまり赤髪のアーチャーの逃走を手助けしたということだ。
彼らはアーチャーらと協力しているのか。
あるいは―――――無力な少女にしか見えぬアーチャーのマスターを護ったのか。


ライダーは僅かな睨み合いの直後、再び跳躍する。
壁を蹴って三角跳びを行い、瞬時にビルの屋上まで駆け上がったのだ。
待て、と叫ぶ龍玄の声に耳を傾けることも無く。
彼はビルの屋上を駆け抜け、再び霊体化を行った。
そのままビルの屋上から屋上へと滑空を続け、移動を繰り返す。


(…見失ったか)


一瞬の足止めによってアーチャーを見失ってしまったことに気付くライダー。
彼はアーチャーのマスターに対する僅かな驚愕を覚えていた。
絶対的な破壊神とさえ思えたあのサーヴァントの主人が、あどけない少女だったのだから。
まさか、自身とジョーカーと同じように相容れぬ存在同士が契約を結んでしまったのか。


(そもそも、アーチャーが私をあの場で殺さなかったのは――――マスターの危機を察知し、護ろうとしたからなのか)


その真意は解らない。
だが、奴とはいつかまた相見えることになるだろう。
あの少女のサーヴァントや果実の甲冑を纏った戦士も同様だ。

漆黒の騎士は、街中へと姿を消す。



◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


892 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:37:48 2NDTJDRA0



―――撒いたか。


廃墟となったビルの屋上にジャスティスが降り立つ。
彼女は周囲のサーヴァントの気配が消失したことを確認した。

「大丈夫か、マスター」

周囲の様子に警戒をしつつ、抱えていたマスターをゆっくりと己の手の内から下ろす。
みくはただ呆然とした表情で壁に寄り掛かり、顔を俯かせる。
やはり、先程までの死の恐怖が余程堪えたのか。
ジャスティスは無言で己のマスターを見下ろし続ける。

暫しの沈黙の後、みくは涙を瞳に溜めながら顔を上げた。
そして、ジャスティスの片腕に無言で抱きつく。


「…おい、マスター」
「ふぇ……ひっく……うわぁぁぁぁんっ……!」


そのままみくは、子供のように泣き出したのだ。
安心と恐怖が入り交じったように、顔をぐしゃぐしゃにして涙を流し続けている
ジャスティスは呆気に取られたように、僅かながら困惑した様子でみくを見下ろす。

今のマスターが何を思って涙を流すのか、自分には解らない。
恐怖しているのか。安心しているのか。あるいは混乱しているのか。
それさえも今の彼女には理解出来ない。
ただ解ることは、彼女が泣き続けているということだけだ。

ジャスティスの脳裏に過ったのは、顔も知らぬ娘の存在。
顔は勿論、その姿も、名前さえも知らない。
娘と顔を合わせることも無く、自分は死んだのだから。
その時の記憶は朧げだ。サーヴァントとして召還された際に何らかの障害が発生しているのか。
ともかく、今のマスターの姿は知りもしない娘のことを想起させたのだ。

―――人間ならば、こうするのだろうか。

ジャスティスは自らの朧げな人間時代の記憶を探る。
そのまま彼女は、抱きつかれていない右腕―――既に剣の状態から元の手の形状へと戻している―――を、ゆっくりとみくの頭に乗せた。
不器用な仕草で、そのまま彼女の頭をゆっくりと撫でる。
兵器であるジャスティスは、慣れぬ手つきで泣きじゃくる己のマスターを慰め続けた。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


893 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:38:41 2NDTJDRA0


異界の植物が茂る路地裏にて。
残された二人の主従は、その場で立ち尽くしていた。

《…敵は見失ったわ。既にこの場を離れている》
《そうか》

アーチャーの報告を聞き、光実は腑に落ちぬ態度で呟く。
既に変身は解除している。その姿は生身のままだ。
露になった表情はどこか俯きがちであり、陰を落としていた。
そんなマスターの様子をやや呆れた様子で見た後、アーチャーは問いかける。

《何故あのアーチャーを助ける様な真似をしたの?》
《僕にも…よく解らない。ただ反射的に、あのライダーを攻撃していて…》
《前川さん…だったかしら。もしかして、あの子を助けたの?》
《……黙っていてくれ》

どこか苛立った様子で、光実は己のサーヴァントに釘を刺す。
あの時、ライダーを攻撃したのは殆ど反射的な行動だった。
まるでアーチャーを助ける様な真似をしてしまったのだ。
その理由は本人も薄々気付いている。
前川みくを助ける為に、彼はライダーを妨害したのだ。
そう、アーチャーの発言は図星だった。

光実は内心、前川みくへの好意を抱いていた。
彼女はビートライダーズでの有りの侭の自分を見てくれた。
純粋な表情で自分の価値を認めてくれたのだ。
呉島光実は自分の価値を認め、評価してくれる人物には好意的だ。
だからこそ彼はみくに助言をしてしまったし、元気を取り戻した彼女に無意識の安心感を覚えてしまった。
彼女を助けてしまったのも、必然だったのかもしれない。

(くそ…今日の僕は、本当にどうかしている)

そんな自分の感情に苛立ちを覚えつつ、光実は歩を進めていく。
恐らくみくに自分の正体は知られていない。
あくまで龍玄としての仮面を被り、戦っていたのだから。
それだけでもマシなのかもしれない。

兎も角、余りこの場に長居をしていれば他の主従にも気付かれてしまうかもしれない。
早急にこの場を去らなければ。
霊体化するほむらを率いて、光実は足早に路地裏を後にした。


894 : EGOISTIC HERO ◆1k3rE2vUCM :2015/07/30(木) 14:39:11 2NDTJDRA0

【UPTOWN SOUTH PT/1日目 午前】
【呉島光実@仮面ライダー鎧武】
[状態]疲労(小)、肉体的ダメージ(小)、精神的疲労(小)
[令呪]残り三画
[装備]私服、戦極ドライバー、ブドウロックシード
[道具]鞄、ゲネシスドライバー、各種ロックシード
[所持金]現金十万程、クレジットカード(ゴールド)
[思考・状況]
基本:無駄な戦闘は避けつつ聖杯を狙う
1 今日の自分は本当にどうかしている。
2 前川みくがマスターだったことに対する驚愕と僅かな動揺
3 アーチャーが弱すぎて頭が痛い
4 兄さんはマスターなのか?
5 赤髪のアーチャー(ジャスティス)、黒のライダー(バットマン)、ヘルヘイムの植物に警戒
[備考]
※所持ロックシードの内訳は以下の通りです
ブドウ、キウイ、メロンエナジー、ローズアタッカー、ヒマワリ
※前川みくがマスターだと気づきました
※アーチャー(ジャスティス)、ライダー(バットマン)のステータスを確認しました。
※ヘルヘイムの植物の存在に気づきました
※呉島貴虎がマスターではないかと疑っていますが確証は掴めていません。もしマスターであった場合殺すのは最後にするべきと考えています
※聖杯は時間の操作や平行世界への干渉も可能だと考えています

【アーチャー(暁美ほむら)@劇場版魔法少女まどか☆マギカ〜叛逆の物語〜】
[状態]魔力消費(小)、疲労(小)、肉体的ダメージ(中)
[装備]魔法少女の服、双眼鏡、弓矢
[所持金]光実に依存
[思考・状況]
基本:今のところは光実の采配に従う
1 赤髪のアーチャー(ジャスティス)、ライダー(バットマン)に警戒
2 ヘルヘイムの森が何なのか気になる
3 引き続き周辺を警戒する
[備考]
※呉島貴虎がマスターではないかと疑っていますが確証は掴めていません
※前川みく&アーチャー(ジャスティス)、ライダー(バットマン)の存在を確認しました

【ライダー(バットマン)@バットマン】
[状態]魔力消費(極小)、疲労(小)、肉体的ダメージ(小)
[装備]バットスーツ、疑似的な飛行(滑空に近い)を可能とするマント
[道具]バッタラン、殺生以外の様々な用途に用いる手榴弾、グラップルガン、爆破ジェル、ショックグローブ等
[思考・状況]
基本:ゴッサムシティを守る
1. ジョーカーの野望を挫く
2. 赤髪のアーチャー(ジャスティス)に最大限の警戒
3. アーチャーのマスター(前川みく)への僅かな驚愕
4. あの鎧の戦士(龍玄)とアーチャー(暁美ほむら)に警戒
[備考]
※現在ジョーカーの位置を探しています
※並行してゴッサムに迫る危機も守ろうとしています
※アルフレッドの姿を、可能なら見てみたいと思っています
※ジャスティスと交戦しました
※宝具『衆愚の街、背徳の翼』は日没〜夜明けまでの夜間にのみ発動します。
自動発動のため夜間では常に宝具による能力補正が与えられます。


【UPTOWN SOUTH POINT/1日目 午前】
【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]疲労(大)、精神的疲労(中)
[令呪]残り三画
[装備]私服、眼鏡
[所持金]五千程度
[思考・状況]
基本:死にたくない、誰も殺したくない
1. 恐怖と安心がごちゃ混ぜになって何が何だか解らない。
2. ジャスティスと話し合いたい。
3. あの人(龍玄)は何でみくの名前を知っていたんだろう…?
[備考]
※呉島光実がマスターだと気づいていません
※アーマードライダー龍玄の姿を確認しました。光実とは気付いていません
※アーチャー(暁美ほむら)、ライダー(バットマン)のステータスを確認しました。
※右手首に令呪が存在します。

【アーチャー(ジャスティス)@GUILTY GEARシリーズ】
[状態]魔力消費(中)、疲労(小)、肉体的ダメージ(極小)
[装備]自身に備わる兵装の数々
[道具]
[思考・状況]
基本:聖杯を勝ち取る
1. マスターを一応守る
2. 敵によるマスター襲撃には極力警戒
3. マスターの負担軽減の為、なるべくなら本気を出さない
4. マスターへの複雑な心境
[備考]
※前川みくの負担を考慮して、本気を出せない状況下にあります
※バットマンの存在を認識しました
※インベスの存在を認識しました
※暁美ほむらに宝具『叛逆の王』は機能しません。


895 : 名無しさん :2015/07/30(木) 14:39:26 2NDTJDRA0
投下終了です


896 : 名無しさん :2015/07/31(金) 12:56:53 CpWoR7sA0
投下乙です!
黒さに定評のあるこの時期のミッチでも心を許した相手には非情になりきれませんか
そしてジャスティス、兵装ほとんど封印してこれとは本当圧倒的強さ
それにしてもミッチは行動だけなら完全にヒーローサイドにしか見えないw

それと一つ指摘が
龍玄が必殺技を使う際音声が「ソイヤッ」になっていましたが正しくは「ハイィ〜!」という感じの音声です
龍玄のベルト音声は和系ではなく中華系ですので


897 : ◆1k3rE2vUCM :2015/07/31(金) 13:43:40 hVJGa8YM0
感想とご指摘ありがとうございます!
該当部分はwiki収録時に修正させていただきます。


898 : 名無しさん :2015/08/01(土) 20:57:11 /0xHeEQ.0
投下乙です
ダンスに関わる二人のマスター、この出会いは、何をもたらすのか……

しかし、バットマンは流石のしつこさですね
話数を重ねるごとに、強まる関係性というのも良いものですが、序盤から女子をストーキングするのは、いかがなものかと思います
キューピッド役に見立てるにしても、コウモリが取り持つ縁とか、すごく縁起が悪そうです
特に、彼の場合「主人」がアレなのが一番の問題なのですよねー


899 : 名無しさん :2015/08/01(土) 23:35:32 kiVWrFKU0
女子(生体兵器)


900 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/02(日) 03:46:52 6rS/6iYo0
投下乙です。
まだ黒い時期のミッチがまともにヒーローをやっている……!?
しかしほむほむの矢をものともしないジャスティスが強いのなんの。
今の状態でもバッツとほむほむを同時に相手取れそうなのが恐ろしい。

こちらも久々に
レヴィ&セイバー(グリムジョー)
ジョンガリ・A&アサシン(クロエネン)
予約します


901 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/06(木) 01:01:28 EaL5ANcI0
延長します


902 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 02:57:51 xw5QIitA0
投下します。展開の都合上クロエネンは予め予約から外させてもらいます。ご了承下さい。


903 : 屍者の帝国 ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 02:59:02 xw5QIitA0





 ジグ、ジグ、ジグ、墓石の上
 踵で拍子を取りながら
 真夜中に死神が奏でるは舞踏の調べ
 ジグ、ジグ、ジグ、ヴァイオリンで

 冬の風は吹きすさび、夜は深い
 菩提樹から漏れる呻き声
 青白い骸骨が闇から舞い出で
 屍衣を纏いて跳ね回る


               サン=サーンス『死の舞踏』




.


904 : 屍者の帝国 ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 03:00:03 xw5QIitA0
【1】


 ダウンタウンのチェルシーヒルには、イエローフラッグという酒場がある。
 典型的な都会の街並みに似合わない外観に、ベターな西部劇をそのまま再現した様な内装。
 近代的なビルが立ち並ぶゴッサムという大都市からすれば、この酒場は場違いと言う他ない。

 そんなイエローフラッグの常連は、あからさまな悪党ばかりである。
 さながら蛍光灯に群がる虫の如く、彼等はこの酒場に集まってくるのだ。
 どうしてそんな連中ばかりが集まったのか、その理由は定かではない。
 戦争の帰還兵らしい店主に聞いてみても、どうしてなのかと首を傾げるらしい。

 悪党が集うと一口に言えど、そのタイプは様々だ。
 スリの様な軽犯罪で食い繋ぐ者から、名のある組織の親玉まで千差万別である。
 当然ながら、裏社会の住人である殺し屋も頻繁に此処を訪れる。
 今日、この酒場を訪れたジョンガリ・Aもまた、そういった輩の一人であった。

 彼がイエローフラッグにやって来たのは、情報収集の為である。
 ゴッサムにおいては、公の場で公開されている情報だけが全てでは無い。
 裏社会の噂や出来事を知るには、こうして自分の足を使う必要があった。

 杖と気流を頼りにバーのカウンターまで歩み寄り、並べられた椅子の一つに座る。
 自分の周囲に気配は二つ、一つはすぐ前方にいる店主、一つは右隣の席に腰かける女のものだ。

「ペプシを頼む。一杯でいい」

 店主にそう言って少しすると、ジョッキが乱暴に置かれる音がした。
 臭いから察するに、これはペプシではなく容器"いっぱい"に注がれたビールだ。

 この店主はいつもそうだ。酒以外を頼むと決まってビールを出してくる。
 決して彼が馬鹿という訳では無い。"此処では酒以外頼むな"という意思表示だ。
 客の要求を突っぱねるこの男を、ジョンガリはあまり好んでいなかった。

「まだ禁酒同盟抜けてねえのか?物好きなもんだぜ」

 右隣から、嘲笑の入り混じった女の声が飛んできた。
 ジョンガリもよく知る、名の知れた殺し屋の声である。
 この女は、此処で酒を煽る時はいつもバーカウンターを利用するのだ。

「よおジョンガリ、相変わらず辛気臭せ顔してるなァ?」

 レヴィ、またの名を"トゥーハンド"。
 彼女とジョンガリは、イエローフラッグでよく出会う顔なじみであった。
 尤も、当のジョンガリは彼女を快くは思ってないのだが。


905 : 屍者の帝国 ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 03:00:58 xw5QIitA0
「……今日は妙に客が多いな。何かあるのか?」

 レヴィの不躾な挨拶を尻目に、ジョンガリは店主に問いかけた。
 彼が言う通り、今日のイエローフラッグは午前にしては人が多い。
 普段は夜に此処へやって来る筈のレヴィが屯しているのも妙だ。

「鴨撃ち(ダックハント)の集会だよ、ヤモトとかいうガキ追ってるらしい」
「ヤモト……あの指名手配犯か」
「<令嬢>の御曹司のツラに風穴開けたんだとよ、ガキにしちゃ大したタマじゃないか」

 この悪党だらけの街において、人間たった一人の死など、そう珍しい話ではない。
 だが不幸な事に、ヤモトが殺した男は"ありふれた存在"の一言で済む様な立場ではなかった。
 彼女が殺したのは、<令嬢>(フロイライン)と呼ばれる組織の首領の御曹司なのである。
 <令嬢>と言えば、臓器売買や薬物取引等の裏稼業により、莫大な富を得ている団体だ。

 親馬鹿で知られる<令嬢>の首領は、それはもう怒り狂った。
 何としてでもあの小娘を殺してやると、顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていたらしい。
 汚職警官を利用してヤモトを指名手配犯に仕立て上げたのは、そういう事情があっての事だ。
 これに加えて殺し屋まで雇おうというのだから、やりすぎな位徹底している。

 聴覚を集中させてみれば、聞きなれない女の声が耳に入ってきた。
 言っている内容から察するに、彼女が<令嬢>から差し向けられた刺客なのだろう。

「お前も参加しているのか、レヴィ?」
「まあな、鴨撃って一攫千金なんざ今時珍しいくらいの好待遇さ」

 レヴィは仕事の内容に頓着するような性格ではない。
 金を払えば子供であろうが容赦なく撃ち殺す。そういう女だった。
 尤も、ジョンガリはそれに思う所など何も無いのだが。

「それによ、そのガキ橋をぶっ壊したって聞くじゃないか。
 エドガー・ケイシーも真っ青な超能力者さ、やりあいたくてたまンねェよ」

 その話なら、既にジョンガリの耳にも届いている。
 普通なら信じ難い話だが、ヤモトは橋を壊して追手から逃げてみせたのだという。
 ジョンガリは盲目ではあるが、しかし今のレヴィの表情は容易に把握できた。
 きっとこの女は、さながら得物を見つけた豹の如き笑みをしているに違いない。


906 : 屍者の帝国 ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 03:03:03 xw5QIitA0

「……下らないな。死に急ぐのがそこまで楽しいか」
「死に急ぐ?ハッ、そいつは誤解ってもんさ、ジョンガリ」

 せせら笑うような声色だった。
 馬鹿にした様な言い方に、ジョンガリが顔を強張らせる。
 これだから嫌なのだ――この女は時折、世界を嘲笑する様な口振りで話をする。

「お前も含めて、アタシらは"歩く死人"なのさ。
 この街の悪党ってのは揃いも揃って死に損ないの屍者(ゾンビ)なんだよ」

 だから"生き急ぐ"なんて、馬鹿げた表現でしかないのさ。
 とどのつまり、レヴィはそういう事が言いたかったのだろう。
 なるほど、たしかに今のジョンガリは屍者も同然なのかもしれない。
 主君を喪いなお生き続ける忠臣――それを死に損ないと言わず何と呼ぶのか。

「つくづく幸福な女だ。自分の生死を語る権利があるとはな」
「……何が言いてえのさ」

 ビールに口を付ける事も無く、ジョンガリは席を立った。
 お代を置いてけという店主の怒号が聴こえたが、そんな事を気にするつもりはない。
 一口も飲んでいないし、そもそもアレはあの男が勝手に押し付けてきたものだ。

「生死を語れるのは"始まっている"人間の特権だ……。
 人生を始めてない人間は、そもそも生きても死んでもいない」

 主君たるDIOが死んだあの日から、ジョンガリの時間は凍り付いた。
 それから先の二十数年間、彼の魂は未だ静止したままだ。
 ジョースターの血統の様に生きてないし、レヴィの様に死んでもいない。
 死ぬ事も生きる事もままならないまま、ジョンガリの"世界"は止まっているのだ。

「俺の人生はまだ、始まってすらいない」

 僅かにレヴィを羨むような、そんな声色でそう呟いた後。
 ジョンガリは踵を返し、イエローフラッグから立ち去って行った。

 盲目故周囲の風景を目にする事は出来ない。
 だがそれでも、レヴィが不愉快そうにこちらを見つめている事は、気配で察する事は出来た。


907 : 屍者の帝国 ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 03:04:15 xw5QIitA0
【2】


 己の腕力を以て、怪物――インベスを思い切り殴りつける。
 撃ちこまれた拳は敵に命中するどころか、そのまま体内を食い破った。
 急所を突かれた怪物は呻き声を挙げた後、目の前で爆散する。
 小規模な爆風を浴びながら、加害者であるセイバーは欠伸を噛み殺した。

 イエローフラッグの近辺を『探査回路』で探索すると、微細ながらも反応が一つ見つかった。
 サーヴァントのものではないが、しかしNPCのそれとは異なる歪な魔力。
 反応が見られた路地裏に向かってみたところ、そこには使い魔と思しき怪物が唸っているではないか。

 何者かと尋ねてみたところ、怪物は何の躊躇いもなく襲いかかってきた。
 それにセイバーが応戦した結果、現在に至るという訳である。

 怪物の力はあまりに脆弱であり、セイバーからすれば小虫も同然だ。
 あの程度であれば、何匹来ようが赤子の手を捻る様に抹殺できるだろう。

 故に、退屈だった。
 同じ戦闘でも、ただ弱者を捻り潰すのはセイバーの望む所では無い。

『ヘイ、ブラザー。同胞はいたかい?』
「……使い魔らしき化物が一匹ってとこだ」

 そんな時、レヴィから念話が送られてきた。
 彼女の声色からは、何やら不機嫌な様子である事がが伺える。
 セイバーは退屈気に、手ごたえ無しである事を彼女に伝えた。

「少なくとも、ここ一帯にサーヴァントの気配はねえな」
『ジョンガリの野郎はマスターじゃないって訳か』
「さあな、他所にサーヴァントを出張させてる線だってある」

 セイバーはジョンガリという男の事など露とも知らない。
 だがレヴィの口から出てきたという事は、悪党である事に間違いないだろう。

「そのジョンガリとかいう奴がマスターなら不都合でもあるのか?」
『まさか、むしろ大歓迎だ。堂々とあの"めくら"に挑めるんだからな』


908 : 屍者の帝国 ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 03:05:18 xw5QIitA0
 イエローフラッグで何があったか定かではないが、その男はレヴィの勘に障ったらしい。
 誰だか知らないが、彼女に喧嘩を売るとは大した度胸だと言う他ない。
 "トゥーハンド"が短気である事は、その名を知る者なら把握していてもおかしくないものだが。

『それじゃ、お仲間がいたら返事くれよ』

 そうとだけ言い残して、レヴィからの連絡は絶たれた。
 残されたセイバーは、『響転』を用い一瞬で建物の屋上へ飛びあがる。
 飛び乗った屋上からは、周辺の様子が一望できた。

「……気に喰わねえ街だ」

 あるがままを受け入れ、"歩く死人"としてゴッサムで生きる者達。
 生者の振りをした死人の集うこの街は、言うなれば屍者の帝國だ。
 死者の群れが街を跋扈するという事実が、セイバーを苛立たせる。

 "歩く死人"とは、諦めの象徴。
 高みに昇るのを諦め、悪徳に身を落とした弱者達。
 地の底で生きるのを受け入れた彼等が、セイバーは心底気に喰わなかった。

 こうして死人達の街を眺めて、改めて認識する。
 マスターであるレヴィもまた、"歩く死人"である事に。
 表面的な部分は同じであれど、根本的な部分で二人は大きく異なっている。
 地べたを這いつくばるのを許せる彼女の生き様を、セイバーは許容できない。

 レヴィの存在が不快な訳ではない。むしろ性格は気に入ってるくらいだ。
 彼女の豹の如き眼光は、セイバーに闘争心を沸き立たせる程である。
 しかし、王として虚圏を突き進んだこの男にとっては。
 闇の底で彷徨い歩くレヴィの姿が、時に酷く醜く映ってしまう。

(ドブ底でくたばるのが、お前の趣味なのかよ)

 お前のそこだけが、俺は心底気に喰わねえ。
 その一言を、欠伸と一緒に噛み殺して。
 セイバーは再び、探索に映るのであった。


909 : 屍者の帝国 ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 03:06:40 xw5QIitA0

【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]不機嫌
[令呪]残り三画
[装備]ソードカトラス二丁
[道具]特筆事項なし
[所持金]生活に困らない程度
[思考・状況]
基本:とっとと帰る。聖杯なんざクソ喰らえだ。
 1.当面は優勝を狙う。
 2.ジョンガリの野郎がムカつく。
[備考]
※同業者のジョンガリとは顔見知りです。

【グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH】
[状態]健康
[装備]斬魄刀
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:立ち塞がる敵を一人残らず叩き潰す。
 1.今は他のサーヴァントを探す。
 2.この街が気に喰わない。


【ジョンガリ・A@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]盲目
[令呪]残り3画
[装備]白杖に偽装した狙撃銃
[道具]なし
[所持金]一万程
[思考・状況]
基本:聖杯による主君の復活を。
1.アサシン(クロエネン)に偵察をさせる。攻撃等の判断は基本的に当人に一任。
  場合によっては本格的に暗殺に乗り出す。
2.『黒いタールの殺人鬼』『赤覆面』『グラスホッパー』『ヤモト・コキ』に関する情報を得たい。
[備考]
※職業はフリーランスの殺し屋です。裏社会に精通するマスターで顔見知りの相手がいる可能性もあります。


910 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/08(土) 03:06:55 xw5QIitA0
投下終了となります。


911 : 名無しさん :2015/08/08(土) 03:21:59 6uQqL53o0
投下乙です
レヴィとジョンガリの会話が渋くてかっこいいなぁ
悪党の巣窟と化した酒場をバックにしたハードボイルドな雰囲気が凄く好き
死人と脱け殻、相容れぬ二人の対決はいつか訪れるのだろうか
そして底から這い上がって此処まで来たグリムジョーにとってはやっぱり死人の町は気に入らないだろうなあ…


912 : 名無しさん :2015/08/09(日) 19:18:47 RJqbFseE0
ジョンガリの「世界が止まってる」ってのが皮肉というかすごくいいな


913 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/10(月) 03:11:13 kuMwIQR.0
志々雄真実&ランサー(エスデス) 予約します


914 : ◆zzpohGTsas :2015/08/10(月) 20:54:30 DN4syNus0
エンリコ・プッチ&バーサーカー(セリュー・ユビキタス)を予約いたします


915 : ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 22:53:39 0ZcdYbis0
投下します


916 : ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 22:53:51 0ZcdYbis0
1:

 エンリコ・プッチと言う黒人神父の朝は非常に早い。
彼の日常は朝の五時半から始まる。春夏秋冬、全ての季節、三百六十五日。それこそ平日も祝日も問わず、彼はこの時間に起床する。
世間はクリスマスムードに浮かれている時期。この時期のこの時間は、陽光が未だ世界を照らさない、朝闇の支配する世界である。
おまけにこの季節は非常に寒い。況してや今プッチの教会が建てられているゴッサムと言う街は、四方を海に囲まれた、ある種の海上都市である。
冬の潮風は、もう若くはない自分の身体と骨身によく染みる。旧い友と交わした約束を果たさねばならない身としては、まだまだ気概は若いつもりでいたい。
だがそうと解っていても、二十代の頃に比べて体力の衰えを感じざるを得ない。創世期の人物のように、九百年以上生きられるのであれば話は別だが、
プッチに残された時間はアダムやメトシェラのようには行かない。精々が七十、八十年程度だろう。

 急がねばならない。プッチは聖杯戦争と言う状況を、天にまします我らが父が与えてくれた、千載一遇の好機であると信じていた。
天国とは即ち、神の国、人の踏み入れられぬ領分。其処に足を踏み入れると言う行為が、どれ程許し難く、そして、天へと続く道を発見すると言う事自体が。
どれ程難しいのか、聖職者であるプッチはその事を痛い程理解していた。だが聖杯さえ手に入れれば、階段を一足飛びにするように、神の御国に入る事を許されるのである。
イスラム教徒ではないが、これは聖戦(ジハード)である。旧友のDIOと、自分が求める悲願――天国への到達を成す為の、最後の戦いなのだ。

 ――そんな事を考えながら行う、朝六時半のミサは、どうにも出来が悪かった。聖職者としての修業時代の師が見れば、やる気があるのかと憤っていただろう。
弛んでいると心の中で己を叱責するプッチ。僧籍に属する者にとっては、日常が修行なのである。プッチにとってはその日常こそが、天国へ至る為の階段なのだ。
やはり、ゴッサムと言う異世界の街である、と言う環境が少なからぬ影響を与えているのだろうかとプッチは考える。早い所この感覚には慣れたいところだった。

 衆愚の街、現代のソドムとゴモラ、米闇社会の巣窟。ゴッサムが数々のあだ名が仄めかすような、モラルの退廃した都市である事はプッチも既に理解していた。
だがこんな街にも、神を信ずる者がいる。いや、こんな街だからこそ、と言うべきなのかも知れない。この街では弱者が這いあがる術が、余所の場所に比べて極端に少ない。
マフィアやギャングと言うのはそもそも、社会的な弱者から利益を上げる者達である。彼らは弱者が強者に転向する事を良しとしない。弱者には弱者のままでいて欲しいのだ。
だから、この街で社会的弱者として生まれた場合には、彼らはマフィアかギャングになるか、その傘下に入らない限り未来はない。
つまり弱者には、頼るべきもの、縋るべきものが極端に少ない。だから彼らは、全人類分け隔てなく頼っても良い共同財産である『神』に縋る。
人はどうしようもない時、神に祈る生き物なのである。大衆雑誌やコミックスはドルを払わねば原則買えないが、聖書だけは無料だ。ゴッサムの弱者にも、神の威光は届くのである。

 早朝のミサは時間帯も時間帯の為、来る人物は限られる。それでも、プッチの営む教会に足を運ぶ、敬虔な信者はいる。
大体が、先にも述べた様な社会的弱者、つまり、低所得者達である。無論、早朝のミサに来る者の中には、中流階級や富裕層もいる。
しかし彼らの場合は、生活にゆとりがあるから神を信仰出来る余裕がある訳で、神を信ずるに至った理由が低所得者の者達とは根本から異なる。
中産階級以上の住民のキリスト教者の割合は、ゴッサムは著しく低い方だ。それも当然と言えば、当然か。この悪徳の街で、神を信ずると言う行為自体が、彼らからしたら愚かな事なのだから。

 時刻はじき、七時半になろうとしている。
朝食の時間である。そろそろ教会に住み込んでいる修道女や修道士が朝食を作り終えている頃合いであろう。
今日はするべき事もある。朝食を摂り、エネルギーを摂取した後、やるべき事に取りかからねば。



.


917 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 22:55:01 0ZcdYbis0
2:

 嘗てエンリコ・プッチは、自分の運命を決定づけた親友であるDIOに、こんな質問をした事がある。「最も弱いスタンドは何か」、と。
これに対するDIOの返答はこうだ。「人にはそれぞれ個性があり、その個性にあった適材適所があるように、スタンドも同様に強い弱いの概念はなく、適材適所」、と。
正しい意見だとプッチは思う。そもスタンドと言う力は、本体である生の生命体の精神エネルギーを、形あるビジョンとして具現化させたものである。
本来、心の在り方と言うものに優劣はない。優劣や強弱とは、本人がどのような行動を起こし、それが何を成させ、何をしでかしたか、と言う結果で判断される。
心に優劣がないのなら、その心から生まれ出でる精神の力の具現であるスタンドに、強弱の関係が成り立つ筈がない。と言うより、比較のしようがない。
例えば、怒りの感情と慈愛の感情のどちらが優れているのか、と言う問いに意味はあるのか? ある訳がない。無理して言うならば、どちらの心の情動が強いか否かであろう。
心の活動の発露である精神の産物がスタンドであるなら、そのスタンドに優劣などある筈がないのだ。これは厳然たる事実だ。
だがもう一つ絶対の事実がある。それは如何なる人物のスタンドも、『全面的に優れてなどいないし、況してや最強のスタンドなどありえない』と言う事だ。
射程距離と言う例を取ってみても明らかである。得意な距離と苦手な距離はどのようなスタンドにも設定されている。
それらを克服したスタンドもいるが、そう言ったスタンドはそもそも精密な動きに欠け、単調な行動しか出来ないと言う弱点を課せられているものだ。
つまり、精神の在り方の具象であるスタンドには優劣はないが、同時に、『全能のスタンドなどありえない』。
何故ならば心ではなく、その心に動かされる人間が不完全な存在であるからだ。此処で、DIOの「適材適所」と言う言葉が意味を持つ。
一見して無敵に見えるスタンドにも何かしらの弱点はあるし、一見して使い道のなさそうなスタンドでも、状況さえ揃えば凄まじい強さのスタンドをも葬れる可能性だってあるのだ。

 そう言った認識を持っていたからか。プッチは聖杯戦争の、サーヴァント同士の殺し合いと言う本質を、正しく理解していた。
つまり、聖杯戦争は『サーヴァントの強さだけで全てが決まる訳ではない』と言う事だ。プッチは、サーヴァントとマスターの関係はスタンドと本体の関係に似ていると考えている。
ごく一部の例外を除けば、サーヴァントはマスターが死ねば消滅する。スタンドも、マスターが死ねば本当に一部の例外を除けば消滅してしまう。
そしてサーヴァントの個性は、何も自らの直接的な戦闘能力、つまりステータスだけではない。サーヴァントの個性は何と言っても宝具であり、その次にスキルが来る。
スタンドも同様に、スタンド自身の運動能力だけが個性ではなかった。彼らにとって最大の個性とは自らに備わった特徴的な超能力なのだ。

 一見すれば弱いと見えるサーヴァントでも、一見すれば無敵と思われるサーヴァントでも。
状況さえ揃えば前者は獅子となり、後者はネコに喰らわれ蹂躙されるネズミの様に殺されてしまう事もあるのだ。
肝心なのは、逸らない事だ。相手のサーヴァントが如何なる力を有しているのかを見極め、確実にそれを殺れる状況を整える。それはスタンド使いの戦いでも重要な事であった。
もしも相手が、自分の引いたサーヴァントよりも強い者を引き当てられていても、問題ない。全サーヴァント共通の泣き所は、マスターだ。
マスターとサーヴァントとの戦闘力には、凄まじいまでの隔たりがあるのが原則である。つまり、マスターは基本脆弱な存在と言う認識で良い。
マスターを殺せばサーヴァントも消える、と言うのであれば、優先的にマスターを狙わない手はないだろう。
それにプッチには、ホワイト・スネイクと言うスタンドが在る。この為彼は、自分はそれ程弱いという訳ではないと言う認識でいる。寧ろ他より優れているとすら思っている。
自分がスタンド使いである、と言う利点は、前に押し出して行くに足る個性であろう。


918 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 22:56:10 0ZcdYbis0
 プッチは、己の引き当てたサーヴァントが、どれ程強い、即ち、戦闘が得意な存在なのか、よく解っていない。
比較すべき対象に今の所遭遇していない上、サーヴァント同士の戦いをまだ体験していない為、判別のしようがない。
しかし、長所はある。自分との親睦性は今の所悪くはないと言う所は大きなメリットだろう。
サーヴァントはスタンドとは違い、自己の意思を持ち、対話も可能な、言い換えれば、一個の人間である。スタンドは自己の精神より生み出された存在の為、基本主に忠実だ。
しかし、サーヴァントの場合、マスターとサーヴァントは原則対等の関係にあり、マスターがサーヴァントの不興を買ってしまえば殺されかねないリスクも孕んでいる。
その様な事もある中で、今のプッチとバーサーカー――セリューの関係は、まずまずといったところだ。この利点を、やはり活かしていきたい。

 ――しかし、多くのスタンドがそうであるように、このバーサーカーにも、無視出来ない短所が、やはりある。
そしてその短所は現在進行形で、プッチの頭を痛ませている。そう、何故ならば――

「それじゃ皆、いただきますをしましょー!!」

 ……そのバーサーカーが何故か、食事のテーブルの席で実体化した状態で現れて、孤児や、教会で職務を全うする修道士・修道女達に、食事を促しているのだ。
親を失い未だ当惑を隠せない子供達。プッチに判断を求める目線を送る修道士や修道女達。顔を右手で抑える様な仕草を数秒してから、プッチは口を開いた。

「何故君が、音頭を取るのだね、セリュー・ユビキタス」

 感情を読み取らせない、しかしそれでいて、聞く者に重苦しい雰囲気を感じさせる語調で、プッチが問うた。
聖杯戦争の参加者が聞いたら、驚愕で目を見開かせんばかりの言葉だったろう。今プッチが口にした単語は、音頭を取った理性あるバーサーカーの『真名』に他ならないのだから。
プッチ本人もこんな愚挙はしたくなかったのだが、状況が状況だ。仕方がなかった。

「だって、神父様のあの食前のお祈り、でしたよね? この子達が言いにくそうだったから」

 セリューがテーブルに座る子供達を見渡す。借りて来た猫の様に子供らが大人しいのは、きっと、両親が未だに姿を見せない不安感からではなかったろう。
セリューの言う事も、解らない事もない。これはプッチが学んだキリスト教カトリックに限った話ではないが、神へ仕える道を志す者は、つまり、
仏教やヒンズー教、イスラム教の教徒達の事であるが、先ず真っ先にその宗教の様式や礼儀作法、そして宗教的な文言の意味の理解と暗記を求められる。
神学や仏学と言うのは医学や法学とは別に、神の法とその周辺体系の理論を学ぶと言う点で他の学問と違うのであって、本質的には極めて厳格な座学に等しい。
聖書や祈りの言葉と言うものは確かに、覚えるのは初めの内は厳しいもの。しかし教会とは、その厳しいものを強いる施設だ。
孤児であっても、それはやはり曲げたくはないのが、プッチの思う所である。とは言え、何も知らない子供達にいきなり聖書の言葉を覚えろと言うのは酷だ。
繰り返し繰り返し、反復させる事で覚えられれば、と言うプッチの配慮を、セリューはものの見事に粉砕した。何の為の教会だ。

「別に、たどたどしくても良いのだ。神に感謝して、それを行う事に意味がある」

「でも、食事の前の言葉は短い方がいいですよ神父様」

 ……このサーヴァントは神の家たる教会に最も相応しくない少女のようだな、と。心中で呟くプッチ。
神父と言う地位に厳かさを感じ、聞き分けを良くする孤児達の方がまだ組しやすい。尤も、セリューと出会ってからプッチが、このサーヴァントと組しやすいなどと思った事は、ただの一度たりとも、ないのであるが。


919 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 22:56:58 0ZcdYbis0
「あの、神父様……」

 教会で一番の古参である、中年のシスターがそんな事を口にして来た。事態の解決を求めているのだろう。

「……まぁ、たまにはこう言うのも良いだろう。君達、今日は神の祈りは唱えなくても良いが、感謝の念を心に込めて、食事を口にするように。我々が口にする食事は全て、神と大地と海との贈り物なのだからね」

 「はい、神父様」、と言う声が子供達の口から紡がれる。
教会に引き取られている、と言う現実に未だ当惑気味な為、その声音は何処か遠慮がちである。それも無理からぬ事か、と神父は考えた。
ちなみに、その子供達を『孤児にした張本人』は、子供らが「神父様」と言い終えた直後に、肉の少ないブイヤベースに口を付けていた。
その両隣に、マリアと呼ばれる女性の子供であり、その瞳に怯えの色を未だ隠せていない、ジョージとアリスを座らせながら朝食を摂るセリューを見るプッチの目は、
狂人を見るそれだ。この女のような人間性の者は、グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所にだって、存在する事はないだろう事は、明らかなのであった。




3:

 結論から述べるのであれば、セリュー・ユビキタスと言うサーヴァントは、極めて扱い難いサーヴァントであると言わざるを得ない。
誤解の内容に述べておけば、強いと扱い難いは等号で結ぶ事は出来ない。確かにセリューのステータスはお世辞にも高いとは言えないが、彼女の真価は、
今も彼女が引きずって歩いている『コロ』と言う宝具――彼女曰く帝具だが――によるコンビネーションである。つまりは波状攻撃である。
スタンドに弱いも強いも無いように、サーヴァントも、有する宝具やスキルによって、強いも弱いもないのだとプッチは思う。
肝心なのは、サーヴァントがその価値を発揮出来る状況を見極める事ではないのか。

 ――ただ、そうは言っても、やはり扱い難いサーヴァントと言う者は存在する。
スタンドの時もそうであった。スタンドDISCを何枚もプッチは元居た世界に保存していたが、その中には、どうやって扱えば良いのだと頭を悩ませるスタンドは何体もいた。
だがスタンドは基本本人に忠実な存在である。言ってみれば本体が上、スタンドが下と言う関係が絶対的に成り立つ。サーヴァントの場合はそうはいかない。対等な存在だ。
これはつまり、聖杯戦争を勝ち抜くのであれば良好な関係を築き上げた方が絶対良いと言う事を意味するのだが、セリューを厄介だと判断したプッチの理由は其処にはない。
セリュー・ユビキタスは、『目立つのだ』。より詳しく言えば、セリューと言うバーサーカーは、霊体化をしない傾向が強い。
ただ彼女は、霊体化が齎すメリットと言うものは、しっかりと理解している。理解していても、『悪』を発見すると霊体化を解き、その悪を殺してしまうのだ。
この性質が何を意味するのか。悪徳の街と呼ばれるゴッサムシティで開かれている聖杯戦争でこの性質では、実質上セリューは常時実体化しているも同然ではないか。

 セリュー・ユビキタスと言うサーヴァントは、驚く程我が強い。
所持スキルを見れば解る事であるが、セリューの自我の頑強さは、結局の所『悪に対する怒り』に集約されている。
どんな悪も、許す事が出来ない。必要悪と呼ばれる存在の必要性も、当然理解しないだろう。
悪魔は神の産物であり、悪魔は神が許した範囲でしか活動を許されないと言う真理も、きっと彼女は理解に苦しむ事であろう。
悪を許さないと言うのは人間であれば至極当然の考えなのかも知れないが、セリューはその考え方い対する強さが異常である。
我の強さと厳格さは行き過ぎると、人を狂わせる。宗教の教義を曲解し、その曲解した考えで行動し迷惑をかける信者が世界中には山ほどいるが……プッチがセリューに対して抱いているイメージは、まさしくそれであった。

 せめてこの教会内でだけは霊体化をさせようとも考えたプッチであったが、それも無駄だった。
セリューが連れて来た孤児の為である。そもそも子供達は、誰が自分を此処に連れて来たのか明白に覚えている。
それはそうだろう、セリューは実体化して教会まで連れて来たのだから、覚えていない方がおかしい。つまり、教会の修道士や修道女達に、誤魔化しが効かないのだ。
「孤児達の為の保育施設を教会に作ろうと思ったから、自分が連れて来た」、といった言い訳も考えてはいたが、セリューが連れて来た以上、その言い訳は無効だ。
……と言うよりそもそも、連れて来た孤児達の世話をする為に、セリューは実体化して彼らと遊んだりしている始末だ。修道士達の目につかない筈がない。端からはぐらかす事すら不可能だ。


920 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 22:58:58 0ZcdYbis0
 突如教会に現れたセリュー・ユビキタスと言う成人女性。
そして、彼女が現れたと時を同じくして教会に住み込むようになった子供達。修道士や修道女が抱くこれらに対する懸念を解決させる為に、プッチは次のような方便――設定――を通した。

 セリュー・ユビキタスはやや貧しい家の女性であったが、つい最近、両親をマフィアに殺され、手ひどい銃撃を腕に何発も喰らい、其処が壊死してしまった女性である。
この時の出来事が原因で両腕は義手になり、そして精神を病みかけるも、偶然其処に立ち寄ったプッチが適切な処置と親身な付き合いを行う事で、
何とか精神を落ち着かせる事に成功。だが、両親をマフィアに殺された事で、正義感と言うものに目覚めたらしい。
自分のような目にあっているであろう幼い子供達を救いたい、と言う理由で、セリューは、傍にいたプッチに神へ仕える道に入門させて欲しいと懇願。
丁度プッチも、孤児院を開きたかった為に、利害が一致。親を殺されたセリューへの惻隠の念もあり、彼女を教会で生活させる事を許すと同時に、孤児も引き取るようになった……このような絵図を、教会の修道士達に説明した。

 ……随分と苦しいと思われるが、これ以外にプッチには、言い繕う方便が見当たらない。
だが其処は、非常に尊敬される神父として普段通っているプッチである。その人格や人柄もあり、修道士達は、それを本当の事と受け取った。
それどころか、「何と慈悲深い方なのでしょう」、「その様な心持ちでいらしたとは流石は神父様」、とすら言われる始末だ。
如何やら教会の住民達にとって、素行も良くキリスト教徒として相応しいプッチなら、そう言った事もするであろうと言うイメージが初めからあったらしい。
善行は積み重ねるものだなと再認した瞬間であった。……但し、流石に彼女の宝具であり相棒であるコロは、プッチの話術ではカバー不可能なので、セリューの自室で待機して貰っている。キューンと不服そうに鳴いていたのを思い出す。

 セリューについてはカバーは出来たが、それでも霊体化と言う、サーヴァントを運用する上で絶対に必要なアクションを、実質上行えないに等しいと言うのは、
頭の痛い事であるのは変わりない。セリューの正義に対する情熱の強さはプッチも認めるところであるが、それと目立って良いと言う事はイコールにはならない。
表だって目立つ事は何としてでも避けたい所。自分達が聖杯戦争の参加者である事が露見されれば、複数組の主従が叩きに来かねない。
そうなってしまえば、如何にホワイトスネイクと言うアドバンテージを持ったプッチでも、お手上げだ。

「バーサーカー、少し良いかね」

 この教会では食事後は、自分の使った食器は各自で洗う事になっている。自分の事は自分でやると言うのはどの世界でも当たり前の事。
一応セリューはこの教会に住み込んでいる住人の一人と言う事に、外観上はなっている。当然彼女にも、皿洗いはして貰う。
プッチのこの発言は、子供達と一緒になって行う皿洗いを終え、自室に戻ろうとしていたセリューを呼び止めた時の事である。

「ハイ、何でしょう? マスター」

 皆の前では神父、二人きりの時はマスターと呼ぶように、と言うプッチの要求は、しっかりと守るらしい。
セリューの発言を見れば明らかであるが今、階段の踊り場にはこの二人を除いて誰もいない。

「私はこれからどうしても外せない用事があり、外へと赴く。キミには悪いが、この教会で待機していてくれないか」

「……曲りなりにも聖杯戦争は既に始まってるのに、一人で行くんですか?」

 本当にバーサーカー、狂戦士のサーヴァントなのかと舌を巻く程、勘の鋭い女である。
セリューの言う事も尤もだ。聖杯戦争の始まりを告げるラッパの音は、自分がサーヴァントを呼び出したその瞬間から鳴らされているのである。
それにもかかわらず、サーヴァントを連れずに一人で出歩くと言うのは、自殺行為も良い所。セリューはそれを言っているのだろう。

「講演会さ」


921 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 22:59:52 0ZcdYbis0
 教会を運営するのもタダではない。教会を運営する為の補填金が国から出るとは言え、日々の食費や生活費、経費、電気料や水道料等で引かれてしまえば、後には何も残らない。
中世の時期とは違い、清貧は美徳だと言う価値観は通用しない。聖職者と言えど、何らかの形で資金を稼がねばならないのだ。
ましてや今は孤児を引き取っているのだから尚の事、金が物入りなのである。
元居た世界でも行っていた事だが、プッチは講演会を開いたりして講演費を貰ったり、聖書に関する著作を記したり、洗礼や婚姻の儀を行ったりと。
勘違いをする者も多いが、神父は世捨て人ではない。れっきとした人間社会を回す歯車の一つなのである。特にプッチ程名のある神父となると、その業務は多忙を極める。
異世界のゴッサムに呼び寄せられても、その多忙さは変わりはなかった。況してや今の時期はキリスト教徒にとって特別な祭典である、クリスマスが近いのである。
この時期は一年を通してみても、プッチに限らず神父にとっては最大の繁忙期の時期。普段以上に、スケジュールはタイトなのだ。

「で、でも、講演会位だったら、私が霊体化していればいいだけの……」

「バーサーカー。キミがこの教会にいなければ、あの子供達を守る人物は誰もいなくなる。我々が不在の間に、心無い者が教会にやってきたらどうするつもりなのだ?
孤児を育てると言う思想は大いに結構。私も賛同しよう。だが、連れて来たのはキミだ。私以上に、キミはあの子らを守る義務がある」

「うっ、そ、そうかもしれませんが……」

 我ながらズルい所を突くものだと思うプッチだったが、此処はセリューに折れて貰わねば困るのだ。人の良心の呵責を突く事も、時には必要である。

「心配するな。私も危ないと思えば、令呪を使ってキミを呼び寄せる。それでいいじゃないか」

「……解りました。子供達の警護と世話は、私に任せて下さいっ!!」

 ビッ、とキビキビした動作で敬礼を行い、セリューが言った。満足そうに首を縦に振り、プッチは彼女に対して微笑みを投げ掛ける。

「良い返事だセリュー。では、私は支度をしてくる。子供達の事は任せた。後は、私が返って来る間に、聖書の中のキリストの教えを数個覚えておくように」

 セリューの良い笑顔が、凍り付いた。自らの引き当てたサーヴァントとは言え、白痴ではない以上、そして、教会の一員と言う設定である以上。
プッチは、セリューに聖書の警句や教えを覚える事を強要させている。そしてそれは、セリューが露骨に嫌がっている事も知っている。知っていてやらせているのだ。

「どうした、先程のようなキレのある返事はしてくれないのか? セリュー・ユビキタス」

「は、はい……解りました……」

 返事が露骨に萎えた。特にそれについて言及するでも問い詰めるでもなく、プッチはセリューに背を向け、一階の方へと下って行く。背後で彼女の溜息が、聞こえて来たような気がした。


922 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 23:00:35 0ZcdYbis0
 一先ず、セリューを欺くと言う第一目標は達成した。
講演会の為に一人で外に向かう、と言うのは嘘っぱちである。クリスマスイブとクリスマスの日に、大きなミサを開く為、講演会の類は全てキャンセルしている。
……と言う設定になっている。来た時からこれは規定事項であった。現に今も、その二大メーンイベントの為の説教の草稿を練っており、今は最終段階の推敲に入っている。
では、セリューに言った、外へのご用向きは嘘なのか、と言えば、それは違う。講演会こそないが、プッチはこれから、それと変わらぬ程に大事な仕事に向かわねばならない。

 ――神父の仕事は講演会や聖書の教えを教える事や、神学校に赴き講義を行ったり、結婚式などを執り行う、と言うだけではない。『教誨』もまた、彼らが行う重大な仕事なのである。

 エンリコ・プッチ神父は元居た世界では、州立グリーン ・ドルフィン・ストリート重警備刑務所の教誨師であり、刑務所の中でも特に古株の男性であった。
この世界でも、それはキッチリと反映されている。プッチはこのゴッサムに於いては、『DOWNTOWNのBLACKGATE PRISONと呼ばれる刑務所の教誨師』なのである。
此処に、セリューに対して嘘を吐いた訳がある。あんな性格のサーヴァントに、自分が刑務所で教誨師をやっている等と言えるか?
あんな性格のサーヴァントを、刑務所に同行させる事が出来るか? 間違いなく一波乱ある。だからこそプッチは嘘を吐いた。講演会に行くと言う嘘を。
刑務所は国家組織に属する施設だ。此処で目ぼしい情報を、ホワイトスネイクで得られれば、それに越した事はない。それを見越して、刑務所に行くのである。

 クリスマスは、神の子であるイエスの生誕祭である。
もしもこの日に、DIOと自分とが理想としている天国を築き上げる事が出来たのならば……それは、どれ程素晴らしい事であろうか。そんな事を考えながら、唯我を地で行く男は私室へと戻って行く。

 セリューが狂おしい程の正義と言う漆喰を人間性の上に塗りたくった女なら。
プッチは、他者の心情を斟酌しない独善性と言う黒ペンキを人間性の上に塗りたくった男性であると。彼は、気付きもしていないのであった。
プッチが主で、セリューが従。このような形で、彼らが聖杯戦争で引き合わされたのは、ある意味で、当然の事だったのかも知れない。




.


923 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 23:00:53 0ZcdYbis0
【SOUTH CHANNEL ISLAND/1日目 午前】

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]黒みがかった紫色の法衣
[道具]ホワイト・スネイク
[所持金]数万円程度の所持金
[思考・状況]
基本:天国の達成
1. 刑務所に行き情報を集めねば
2. セリューとどう付き合おうか
[備考]
※この世界での役割は、教会の神父であると同時に、BLACKGATE PRISONの教誨師です
※DOWNTOWNのBLACKGATE PRISONへと向かう準備をしています。この時セリューは連れて行きません
※クリスマス・イヴ、クリスマスに盛大なミサを行う予定が入っています
※ジョンガリ・Aに対しては参加者なのではと言う警戒心を抱いています


【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]コロ(現在自室待機)
[道具]トンファーガン、十王の裁き、頭の中の爆弾、身体中に仕込まれた武器の数々
[所持金]
[思考・状況]
基本:悪は死ね
1. 悪は殺す
2. 正義を成す
[備考]
※プッチに教会での留守番を命じられています。が、かなり渋々と言った様子です
※教会の住人にはセリューは、親を殺され銃撃を腕に受けたせいで義手になった女性と認識されています
※コロは目立つ為自室で待機しております


924 : 唯我 ◆zzpohGTsas :2015/08/13(木) 23:01:09 0ZcdYbis0
投下終了です。ご指摘がありましたらお願いいたします


925 : 名無しさん :2015/08/14(金) 10:37:04 6IR2H0To0
投下乙です
ずれてるようで本質の近しい二人が引き合ったのも必然か
普段はそれなりに仲良く付き合えてるけど、セリューの性質からしていつか関係が崩れてもおかしくないのが怖い
神父は荒れ馬の手綱を握れるのかどうか
聖杯戦争においても敬虔な聖職者として振る舞う神父が何か彼らしくて好き


926 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/15(土) 02:47:46 5RWtA3J20
投下乙です。
目指す場所は違えど、本質はよく似たこの主従。
現状は問題ないようですが、果たしてこの関係はいつまで持続できるのか。
少なくとも、ダウンタウンにセリューを同行させなかったプッチの判断は賢明。

あと、予約を延長します。


927 : ◆WRYYYsmO4Y :2015/08/18(火) 00:02:51 KQUVltIM0
投下します。期限を超過してしまい申し訳ありません。


928 : ◆JOKERxX7Qc :2015/08/18(火) 00:03:36 KQUVltIM0
ついでに鳥こっちに変えときます


929 : the law of the jungle ◆JOKERxX7Qc :2015/08/18(火) 00:06:51 KQUVltIM0
【1】


 アメリカンドリーム、というものがある。
 その名が示す通り、"自由の国であるアメリカで成功する"という意味合いだ。
 機会が均等に与えられたこの地では、努力次第で誰でも栄光を手に出来る。
 そんなお伽噺の様な題目を、この国は18世紀から叫んでいるのだ。

 アメリカンドリームが幻想に過ぎない事など、ゴッサムシティの現状を見れば明らかだろう。
 極端に開いた格差とそれにより悪化した治安、そこのどこに成功の種が落ちていると言うのか。

 だが驚くべき事に、そんな欺瞞だらけの夢を信じている輩はそう少なくないのだ。
 ゴッサムと姉妹都市提携を結んだ、沢芽市という日本の街に住む悪党がいい例だ。
 日本では掴めない更なる栄光を求めて、彼等はこの悪徳の街に足を踏み入れるのである。

 元は日本のヤクザだったチャカも、そんな悪党の一人だった。
 碌に銃も撃てない日本に窮屈さを感じたこの男は、無謀にもゴッサムに新天地を求めたのだ。
 銃社会であるアメリカに行けば銃など撃ち放題だし、激しい銃撃戦にも巡り合えるかもしれない。
 同じくゴッサムに渡った<令嬢>も上手くやってるらしいし、自分も大丈夫だろう。そんな浅い考えだった。

 幸運な事に、想像より上手く事は運んでいった。
 行き場を失ったゴロツキ共を束ね作った組織は、少しずつだが地位を上げていった。
 名の知れた組織と比べたら、まだまだちっぽけな規模の集団でしかない。
 しかし、日本でヤクザをやっていた頃と現状とでは、充実感は桁違いだった。

 アメリカンドリームが幻想だと誰かが抜かしたが、その戯言こそ幻想だ。
 その証拠に、自分は成功に向けて突き進んでいるではないか。

 このまま全てが上手くいけば、やがてはゴッサムを取り仕切る王になれるかもしれない。
 そんな根拠のない自信と野心をチャカが孕ませ始めて、数日が経った頃だろうか。
 包帯を全身に巻き、その上から和服を纏った男が、彼の組織を訪問したのは。

 その男の話なら、風の噂で聞いた事があった。
 とあるマフィアの元にふらりと現れて、瞬く間にそこの首領となった男。
 彼は組織のボスを殺害し、力を以てマフィアを屈服させたのだという。

 その噂の男は、開口一番この組織を乗っ取ると言い出した。
 今は人員が欲しいから、此処を奪って足しにするというのである。
 狂ってるとしか言いようがないし、極めて不愉快な言い分だった。

 チャカは一度激昂すると、何をしでかすか分からない。
 そして彼が集めたゴロツキも、その野蛮じみた性質を持っていた。
 彼等が逆鱗に触れた相手に何をするかなど、最早言うまでもない。

 包帯姿の男は、白い軍服の様な衣装を纏った女を侍らせていた。
 だがそれがどうした。どんなやり手であろうと、所詮相手は二人だけ。
 男は銃弾で全身を蜂の巣に、女は徹底的に凌辱してやろう。
 そんな慢心を抱えながら、チャカ達は彼等に襲い掛かったのである。

 チャカが自らの愚かさに気付くのは。
 そうして襲い掛かって、ほんの数分後だった。


930 : the law of the jungle ◆JOKERxX7Qc :2015/08/18(火) 00:08:16 KQUVltIM0
【2】


 ダウンタウンのチャイナ・ベイスンに建つ、とあるマフィアの事務所。
 貿易会社の看板を隠れ蓑にし、今も活動を続ける悪党の巣窟。
 その建物の地下室にて、大量に保管されているのは銃火器である。

 拳銃やマシンガンにスナイパーライフル、果てにはロケット砲まで。
 一つの組織が持つにはあまりに過剰な程にまで、装備は充実していた。
 これほどの武装を抱えたマフィアなど、ゴッサムでも此処くらいのものだろう。

 この銃器の群れの中で、志々雄は独り立っていた
 感慨深い表情で、武器がたんまり入った保管庫の一つを見つめている。

 志々雄からすれば、これらの銃器は未知の存在である。
 なにせ、この男は明治時代の時点で全ての知識が止まっているのだ。
 彼がいた世界には、手榴弾もRPGも液体爆弾もありはしないのだから。
 この武器庫は、志々雄にとってまさに宝物庫も同然だった。

「あの、志々雄さん、ちょっといいッすかね?」

 その部屋に入って早々、こびへつらう様に志々雄に呼びかける男。
 彼こそ、その志々雄に組織を潰されたチャカであった。
 この男は今、ゴロツキ共のリーダーではなく下っ端として裏社会を生きている。

 チャカ達が意気揚々と志々雄達に襲いかかったあの日。
 ほんの数分。千秒にすら満たない僅かな時間の内に、チャカの組織は壊滅した。
 数十人もの武装集団が、たった二人に敗北したのである。
 ミッドタウンにある彼の領土は、今や志々雄の支配下にあった。

「何の用だ」
「いやァ、方治さんが志々雄さん呼んでたんで」

 方治というのは、志々雄の側近である佐渡島方治の事だ。
 なんでも、組織を乗っ取る前から彼の腰巾着として働いていたらしい。
 だが今となっては、参謀として志々雄に次ぐ権力を所有している有力者だ。

 そうか、と志々雄の返答が聴こえる中、チャカが見つめるのは武器庫である。
 日本でヤクザをやっていた頃でも、これほど大量の武装は見たことがない。
 そもそも、組織を存続させる上でここまで多く武器をこさえる必要はるのだろうか。

「何するつもりか気になるってか?」
「……ッ!?」

 気付けば、チャカの目の前に志々雄の姿があった。
 組織を潰されたあの日と同じ、肉食獣の様な笑みを浮かべている。
 そう、この表情に、チャカは栄誉もプライドも奪われたのだ。


931 : the law of the jungle ◆JOKERxX7Qc :2015/08/18(火) 00:08:58 KQUVltIM0

「なに、ちょいとデカい事をしでかすのに必要なのさ」
「デカい事って、なにを――」
「国盗りだ。このゴッサムを俺のものにする」

 ゴッサムを手に入れる。それを聞いた時、チャカは茫然とする他無かった。
 この男は、ゴッサムシティ自体を自らの支配下に置く魂胆なのだ。
 まるで戦国武将の様な、極めて暴力的な発想と言うしかない。

 なるほど、街そのものを相手取るなら、この武器の多さも納得がいく。
 信じ難いが、志々雄は本気でゴッサムを制圧しようとしているのだ。
 チャカの組織を潰したあの日の様に、暴力を以てこの衆愚の街を支配する気でいる。

 チャカには知る由もないが、志々雄が戦力を蓄えるのは聖杯戦争の為でもある。
 限界まで巨大化した組織を以てすれば、マスターを炙り出すのにそう時間はかからない。
 そして蓄えた銃器と人員を使えば、発見した敵の対処も容易くなる筈だ。

 流石にサーヴァント相手では厳しいだろうが、それはランサーに任せればいい。
 彼女の実力は、かつて志々雄が従えた"十本刀"さえ容易く超えているのだから。

「愉しいぜ、国盗りは。いつの時代になってもな」

 弱肉強食、この世の理ってやつを見せつけれるんだ。
 志々雄のその言葉で、チャカが想起するのはかつての自分の姿。
 現れた敵に組織を潰され、それでもなお部下同様命を拾われた哀れな首領。
 あの瞬間、間違いなく志々雄が強者であり、チャカが喰われるべき弱者であった。

 部屋を出ていこうと扉へ近づく志々雄を、チャカは茫然と見つめるだけだ。
 この男と自分とでは、目指している場所があまりに違い過ぎる。
 襲撃の日に折られた筈の牙を、もう一度折られた様な気分だった。

「もう一つ教えといてやる。なんでお前を生かしたのかをな」

 扉も前で立ち止まり、背中越しにチャカを見つめての一言。
 見透かされた様な言いぶりに、彼の心臓が大きく跳ねた。
 そういえばまだ、自分が殺されずに済んだ理由を聞かされてなかった。
 人員を増やすという建前で部下を生き残らせるのはまだ分かる。
 だが、潰した組織のリーダーまでも取り込むとは一体どういう魂胆なのか?


932 : the law of the jungle ◆JOKERxX7Qc :2015/08/18(火) 00:13:25 KQUVltIM0

「滑稽なんだよ、今のお前」

 かつて怒鳴り散らしていた男が、今では媚びる様に接してくる。
 そんな状況が、志々雄からすれば道化を見ているようで愉快だった。
 ただそれだけの理由で、チャカは今日まで生き延びてきたのである。

「今までで一番の雑魚の癖して俺に吼えてくるのも面白かったけどな……。
 お前、鏡見た事あるか?去勢された犬みてェで心底笑えるぜ」

 そう言って去って行く志々雄の背中を、チャカはただ見つめるばかり。
 かつての自分であれば、何の躊躇もなく拳銃で背中を狙っていただろう。
 だが、志々雄への反抗の牙をへし折られた今では、そんな事など想像すら出来なかった。

 それどころか、自分を犬だと嘲笑されてもなお。
 チャカの脳裏には、国盗りを宣言した志々雄の瞳が焼き付いている。
 あの獣の様に鋭い瞳と、あまりにも巨大な理想が、彼の心を掴んで離さない。

 とどのつまり、チャカは志々雄に感化されているのだ。
 日本にいた頃には、他者に心酔するなど夢にも思わなかっただろう。
 だが現在、その夢にも思わない出来事が、チャカの身に起こり始めている。

 本来、チャカは得のない側にはつかない主義だった。
 しかし、志々雄のあの瞳からは逃れられないと悟った今。
 蝙蝠の様に逃げ惑う事を考えるなど、もう二度と出来はしなかった。



【DOWNTOWN CHINA BASIN/一日目 午前】

【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]無限刃
[道具]特筆事項無し
[所持金]豊富
[思考・状況]
基本:聖杯を盗り、国をも盗る。
 1.マフィアの規模を拡大していく。
 2."果実を纏う戦士"への興味。
[備考]
※組織の資金の五分の三を銃火器の購入に費やしています。
※ミッドタウンにあるチャカ達の拠点を征服しました。
 また、これ以外にも幾つものマフィアを制圧しています。

【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]レイピア
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯戦争を愉しむ。
 1.志々雄の国盗りに協力してやる。
[備考]
※志々雄の組織による征服行為に参加しています。


933 : ◆JOKERxX7Qc :2015/08/18(火) 00:13:48 KQUVltIM0
投下終了となります。


934 : 名無しさん :2015/08/19(水) 00:11:00 h5xr710M0
投下乙です。
いやあ…チャカは強敵でしたね
大成を夢見てたのに志々雄に負けて完全に牙を折られてるのが無様すぎる…
志々雄も志々雄で戦争でもおっぱじめそうな戦力増強っぷり
全財力の五分の三で甲鉄艦を買わなくてよかった


935 : 名無しさん :2015/08/19(水) 02:23:33 El5C9bnI0

あらゆる兵器を集めて国取りを始めるってのワクワクしますね!
CCO様は男の子の本能に従っていきておられる


936 : ◆1k3rE2vUCM :2015/08/26(水) 15:44:03 QBtOIrYI0
多田李衣菜&バスター(ノノ)
ロールシャッハ&アサシン(シルバーカラス)
レッドフード&アサシン(チップ=ザナフ)
予約します


937 : ◆JOKERxX7Qc :2015/08/28(金) 02:10:17 WR2soruk0
ヤモト・コキ&ランサー(乃木園子)

予約します


938 : ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:07:23 cFBSBi0Q0
投下します


939 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:09:14 cFBSBi0Q0



「この喧嘩! 理由は知りませんがこのバスターが預かります!」



人気の無い路地に『役者』は集う。
少女の高らかな宣言と共に、空間は沈黙に包まれた。
白黒の覆面の男、ロールシャッハはただ無言で少女を見つめる。
銀色のメンポのニンジャ、シルバーカラスはウバステを構えつつ少女へと視線を向ける。
赤い覆面の男、レッドフードは呆気に取られたように少女を見据える。
銀髪の忍者、チップ=ザナフは何とも言えぬ表情で少女へと意識を向ける。
その場にいた全員の視線は、突如乱入してきた少女――――ノノへと向けられた。


「そして、貴方達にお願いがあります!
 この聖杯戦争を戦わずして脱出する方法を共に探してほしいのです!」


続いてノノから発せられた宣言は、耳を疑うべき言葉だった。
『戦わずして脱出する方法を探してほしい』。
願いの為に殺し合う聖杯戦争において、戦いの放棄を意味する言葉。
あるかどうかも解らない棄権という手段の為に他の参加者へと協力を呼びかけたのだ。


「私のマスターは望まずしてこの聖杯戦争に参加してしまった者!
 殺し合いとは無縁の、普通の日常を過ごしてきた一人の女の子!
 この戦いは、聖杯に託す願いを持たぬ者でさえ巻き込まれているのです!」


そして切り出したのは己のマスターのこと。
願いを持たないにも関わらず、この聖杯戦争に巻き込まれてしまった多田李衣菜のことだ。
ノノは得手ではない交渉を不器用ながら精一杯に続ける。
自分のマスターを助けてほしい。その為に聖杯戦争を棄権する方法を共に探してほしい。
この聖杯戦争はたった一組しか生き残れない殺し合いだ。
端から見れば無謀とも無意味とも取れる行為。


「だからこそ、そんなマスターを生きて返す手伝いをしてくれる方達を探しています!
 私達に聖杯を取る意思はない!どうか、この言葉を聞き入れてくれるのならば―――――」


だが、それはただの妄言ではない。
彼女の瞳には確かな意志が宿っていた。
己がマスターを救う為に必ず目的を遂行せんとする強い意志の炎が灯されていたのだ。


「――――私達と、手を結んでほしいのです!」


940 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:10:00 cFBSBi0Q0

少女は、高らに宣言した。
何の罪も無い己のマスターを助けるべく、他の主従に訴えかけたのだ。
聖杯という大望を放棄してまで、彼女はマスターを救う道を選ぶ。

なぜならば。
きっと『ノノリリ』もそうしたはずだから。
ただそれだけ――――否、彼女にとっては何よりも大切で、確固たる理由。
ノノに一欠片もの迷いは無かった。


場は再び沈黙に包まれる。
二騎のアサシンは変わらず身構えたままだ。
それに対し、ロールシャッハは僅かながら興味を示したようにノノを見据える。
そしてレッドフードはロールシャッハらとノノを交互に警戒する。
全員が互いを牽制し合い、行動を決めあぐねるように沈黙が続く。


暫しの静寂の後。
この場の沈黙を破ったのは、レッドフード達だった。


《―――アサシン》


レッドフードが念話を使う。
直後、沈黙を破るようにチップが動き出す。
瞬時に後方へと下がり、素早くレッドフードを抱え上げた。
そう、この場からの離脱だ。

レッドフードはある人物の抹殺の為に聖杯を狙っている。
そして既にこの場にいたマフィアの一員に尋問を加え、情報も聞き出している。
情報収集が目的であるロールシャッハと争う必要も、あのバスターというサーヴァントの頼みを聞く道理も無い。
それに、万が一ロールシャッハがバスターの要求を聞いた場合はこちらが圧倒的に不利になる。
バスターのステータスはチップを上回っている。
格上との戦闘を苦手とするチップには厳しい戦いとなる可能性が高い。
そしてロールシャッハは情報を聞き出す為に、バスターは聖杯戦争に乗る参加者を無力化する為に、徒党を組んで攻撃を仕掛けてくる可能性があるのだ。
故に彼らは撤退を選ぶ。状況が悪化する前にこの場から逃げ出す為に。

それを妨害せんとするロールシャッハがすぐさまワイヤーガンを構える。
レッドフード目掛けて引き金を引き、フックが勢いよく射出された。

対するレッドフードは即座にナイフを抜く。
薙ぎ払うように振るったナイフの刃がフックを弾き、その軌道を強引に逸らしたのだ。
その際の衝撃によりナイフもまた弾き落とされるも、レッドフードは意に介さず。
即座に次の一手を仕掛けたのだ。


「プレゼントだ、受け取りな」


跳躍するチップに抱えられたレッドフードが何かを投擲。
瞬間、凄まじい閃光がロールシャッハ達に襲い掛かる。
レッドフードが隠し持っていたフラッシュバンの爆発だ。
咄嗟にロールシャッハが両腕によって閃光を遮るも、凄まじいフラッシュを防ぎ切れず反射的に動きが止まる。
アンドロイドであるノノはロールシャッハほど感覚を狂わせられることは無かったものの、
閃光による未知の衝撃によって足を止められる。
その僅かな隙はチップらが逃走するには十分な時間を与えたのだ。


941 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:10:54 cFBSBi0Q0

「――――ッ、大丈夫ですか!?」


少しの時間の後、先に復帰したノノが膝をつくロールシャッハへと声を上げる。
彼の傍にいた銀色のサーヴァントはいつの間にか姿を消している。
迸る閃光の中、あの赤い覆面の男達を追跡したのだろうか。
ともかく、今は目の前の彼が先だ。
ノノの目的はあくまで交渉であり、戦闘ではないのだから。
直後、膝をついていたロールシャッハが自力でゆっくりと立ち上がる。


「…気にする、な。それより…お前の話に、興味がある」


そう言って、彼はノノを真っ直ぐに見据える。
既にフラッシュバンによる感覚の狂いは治ったのか、確固たる出で立ちで立ち尽くしている。
覆面の黒い模様を蝶のように蠢かせながら、ロールシャッハは問いかけた。


「お前…いや、お前のマスターは…この聖杯戦争から脱出することが目的だな?」
「…はい!その通りです!」


ロールシャッハの問いかけに対し、ノノははっきりと答える。
この聖杯戦争からの脱出。
それこそがマスター、多田李衣菜の目的。
それを手助けするのがサーヴァントであるノノが決意した使命だ。
故に彼女は迷い無くそう答える。

共に戦ってくれる可能性のある者ならば、誰でも良かった。
マスターを救う為の力になってくれる者ならば、誰でも構わなかった。
だからこそノノは李衣菜の指示に従い、覆面の男達の争いに割り込んだ。
そして、こうして白黒の覆面の男との交渉の機会を手に入れた。


だが彼女達は、ロールシャッハという男をまだ知らない。


「ならば、俺からも言わせて貰おう。俺の戦う意義を。
 俺の目的は、この狂った殺し合いを開いた聖杯を破壊することだ。
 どれだけの犠牲を払おうと、俺は俺の正義を貫く」


そう告げたロールシャッハは、その場から歩き出し――――ノノの横を通り過ぎる。
瞬間、ノノの身体に言い知れぬ悪寒が走る。
聖杯の破壊を目的とする男に、僅かだが奇妙な危機感を覚える。
手を組めるはずだというのに。
この嫌な感覚は何なのか。
何故、自分はあの男が危険ではないかと思ってしまったのか。
そんなノノの感情を余所に、ロールシャッハが向かった先は。




「―――――お前が、奴のマスターだな」




ノノのマスター、多田李衣菜が隠れている物陰だった。
呆気に取られた様子で、李衣菜がロールシャッハを見上げる。
彼は隠れながらこちらの様子を伺っていた李衣菜の存在に気付いていたのだ。


「え――――」


李衣菜が何か口が出そうとした直前。
彼女の身体は壁へと叩き付けられた。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


942 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:11:35 cFBSBi0Q0



ロールシャッハ達への足止めは成功。
マスターを抱えながら跳躍するチップは気配遮断スキルを発動し、近くに聳え建つ大倉庫の屋根へと着地。
そのまま建物の屋上を転々と移動しながら、逃走を図ろうとした。
その矢先のことだった。



「イィィィヤァァァーーーーッ!!」



銀色の鴉――――ニンジャが飛翔した。
超人的な瞬発力で跳んできたシルバーカラスが倉庫の屋根へと着地。
そのまま弾丸めいた勢いでチップへと接近し、イアイドーの一撃を仕掛けたのだ。


「チッ、しつけえんだよッ!」


チップは咄嗟に片腕のブレードで日本刀「ウバステ」の刃を弾きつつ後方へと下がる。
同時にシルバーカラスも後方へと下がるも、即座に体勢を立て直す。

シルバーカラスは他の二人と同様、フラッシュバンで行動を阻害されていた筈だ。
だが、シルバーカラスが保有するのはBランク相当の直感スキル。
このスキルは視聴覚の妨害に対する耐性としても機能する。
故にシルバーカラスはスフラッシュバンの閃光から誰よりも早く復帰したのだ。
そしてロールシャッハの念話による指示に従い、チップらの追跡を行った。
気配遮断によりチップの気配が感じ取れずとも、抱えられたレッドフードの気配を感じることで追跡が出来た。


「TAKE THIS!」
「イヤーッ!」


忍者とニンジャの衝突は、再び始まる。


943 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:12:59 cFBSBi0Q0
チップはしがみつくレッドフードを守るように構えつつ、右手で複数本のクナイを放つ。
シルバーカラスは神速の剣技でこれらを弾く。
更にチップは5枚の手裏剣を投擲。
クナイと同様、ウバステの刃がこれらを容易く弾き飛ばす。


「イヤーッ!」


飛び道具で牽制しつつ逃走を試みるチップに対し、シルバーカラスは間髪入れず接近。
カミカゼめいた瞬発力を発揮し、チップの至近距離まで迫ったのだ

通常ならば敏捷値はチップが上回る。
だが、瞬間的な数値はシルバーカラスに軍配が上がるのだ。
その上チップはマスターを守りながらの攻防となる。
長期戦になれば不利になることは明白だ。
一刻も早く、撒かなければならない―――!


「こなくそッ!!」


瞬時に迫ってきたシルバーカラスの一撃を、チップは咄嗟に振り上げたブレードで弾く。
直後、即座に放たれる右横薙ぎの一撃。
チップは振り下ろしたブレードで相殺。

続いて放たれる袈裟を切るような斬撃。
チップは斜めに振り上げたブレードでこれを弾く。

弾かれた刀を瞬時に構え直し、薙ぎ払う様な一閃が放たれる。
チップはブレードを盾に刀身を弾く。

隙を突くように放たれる左足の蹴り。
チップは振り上げた右足を曲げつつこれを防御。


944 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:13:27 cFBSBi0Q0

「イヤーッ!」


チップが左足をガードした直後。
瞬時に右足を引いたシルバーカラスのイアイドーによる一閃が放たれた。
蹴りを放った直後という極めて不安定な状態からの攻撃。
それに驚愕したチップは咄嗟に防御を試みるも、ブレードが逆に弾かれ体勢が崩れる。


「イヤーーーッ!!」


イアイドーとは、如何に相手の隙を突き一撃を叩き込むかが肝となる。
百戦錬磨の剣士たるシルバーカラスはその『一瞬』を見出した。
チップが体勢を崩した隙を狙い、彼の腹部目掛けて返す刀による突きが放たれたのだ―――!


瞬間、三度に渡る銃声が鳴り響く。
チップにしがみついていたレッドフードが腰の拳銃を抜き、シルバーカラスのメンポ目掛けて瞬時に発砲したのだ。


通常の兵器はサーヴァントには通用しない。
彼らを傷付けられるのは神秘を持つ攻撃のみだ。
だが、サーヴァントにダメージを与えられずとも僅かとはいえ意識を逸らすことが出来る。
事実、シルバーカラスは突然の銃撃に気を取られ一瞬だが動きが鈍った。


「でりゃああぁッ!!」


その一瞬の隙を突き、チップは気を纏った蹴りを放つ。
ガードの遅れたシルバーカラスの腹部に足がめり込み、そのまま勢いよく吹き飛ばされる。


「――――イヤーッ!」


シルバーカラスは空中で回転するように体勢を整える。
そのまま倉庫の屋根から転落する寸前、滑るように受け身を取った。
即座にイアイドーを構え、追撃を行おうとした。
だが、シルバーカラスが吹き飛ばされたことによる一瞬で彼らは時間を稼いだ。


(…逃がしちまったな)


既にチップ達の姿は消えていたのだ。
自身を吹き飛ばした直後、素早くその場から離脱を果たしたようだ。
その姿は既に見えない。気配遮断スキルを発動したまま逃走したのか。
ともかく、シルバーカラスはレッドフードらの追撃に失敗した。
どこか自嘲するように息を吐き、彼は再び跳ぶ。
己のマスターの元へと帰還すべく。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


945 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:14:20 cFBSBi0Q0



「どうにか撒けたようだな、相棒さんよ」
「ああ…ッたく、短い打ち合いだったが、あのニンジャ中々やりやがった。
 テメェの“お守り”をしたまま長期戦に持ち込まれてたら危なかっただろうぜ」

とあるビルの屋上にて、二つの影が軽口を叩き合う。
赤い覆面の断罪者、レッドフード。
黒装束と銀髪のアサシン、チップ=ザナフ。
彼らは周囲に注意を巡らせつつ、言葉を交わす。

「で、だ。マスターさんよ。あの覆面野郎は何なんだ?」
「白黒の覆面を被った男が犯罪者を潰して回ってる、なんて噂は何度か聞いている。
 十中八九あの男がその正体だろうさ。
 あいつも俺達と同じマフィアか、協力関係の組織を嗅ぎ付けてあの場所に来たタチだろう」

サーヴァントの問いかけに対し、レッドフードは答える。
彼はあの白黒の覆面の男に覚えがあった。
直接会ったことがあるという訳ではない。
アウトロー達の噂として何度かその情報を聞いたのだ。

その男は単身で犯罪者やマフィアを潰して回っている。
その男は余りにも暴力的な手段による私刑を繰り返している。
その男はロールシャッハ・テストを思わせる不気味な覆面を被っている。

それがもう一人の私刑人の噂話。
先程初めて相対したヒーローに関して知っていた唯一の情報だ。


「奴もヤクザ共を追っているのなら、いずれまた会うことになるさ。
 奴が悪党を断罪している“ヒーロー”だとすれば尚更だ」


レッドフードはそう呟き、視界に広がる街を見下ろす。
奴は自分が尋問した末に息の根を止めた悪党を追っていた様子だった。
それに、あいつに関する噂話も含めて考えればあの男が私刑人であることは明白だ。
だとすれば、犯罪組織を追い掛けていれば再び奴と相見えることになるだろう。
自分と同じように、奴もまた犯罪者を追い掛けているのだから。

悪は断罪するが、あくまで自分の目的は聖杯だ。
忌まわしき怨敵を抹殺する為にも願望器を掴まなくてはならない。
故に彼らはあくまで敵だ。戦況によって利用価値を見出すことはあれど、それが前提である。

そして、あのバスターという女サーヴァント。
あの高水準のステータスを持つサーヴァントと正面からやり合うことになれば分が悪い。
先程の様子を思い返す限りでは好戦的な性格ではない様だが、その全貌は未知数だ。
警戒の対象としておくべきだろう。


(…いよいよ、とでも言った所か)


レッドフードは、覆面の下で一息吐く。
捕捉したのは一組の主従、一騎のサーヴァント。
麻薬売買のキャスター主従を仕留めてから久しい聖杯戦争の参加者との邂逅だ。
ここからが戦争の本番だ。
恐らく、今後更なる参加者と出会うことになるだろう。

だが、ヒーローは躊躇しない。
あの笑い顔の男を消し去る為にも。
かつての師であり相棒だった男が放棄した殺人を、完遂する為にも。


【DOWNTOWN COBBLE HILL/1日目 午前】

【レッドフード@バットマン】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]オートマチックの拳銃
[道具]拳銃の予備弾薬、その他幾つかの武装
[所持金]5千円程度
[思考・状況]
基本:聖杯にジョーカー殺害を願う。悪党は殺す
1.白い覆面の男(ロールシャッハ)、バスターに警戒。
2.新興の犯罪組織(志々雄)を潰す。
[備考]
※アサシン(シルバーカラス)バスター(ノノ)の外見、パラメーターを確認しました

【チップ=ザナフ@GUILTY GEARシリーズ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(小)
[装備]ウバステ
[道具]なし
[思考・状況]
基本:マスターに従う
1.フードの男(シルバーカラス)、バスターに警戒。
[備考]
※アサシン(シルバーカラス)バスター(ノノ)の外見を確認しました


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


946 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:15:38 cFBSBi0Q0



胸の内を支配するのは恐怖だった。
強引に壁に叩き付けられた痛みさえも気にならなくなる程に震えていた。


「ひっ―――――」


私、多田李衣菜はガチガチと歯を打ち鳴らしていた。
目の前の男は、壁を背にした私の右手首を強引に掴んでいる。
振りほどくことなど出来ない。出来る筈が無いと、本能が告げる。
私の右手の甲の令呪を確認した男は、口を開いた。



「今から俺の質問に答えろ。嘘を吐いたらまずお前の小指からへし折る」



男は、もう片方の手で私の右手の小指に触れる。
有無を言わさぬ威圧感で、私にそう宣言する。

覆面の上で蠢く黒いインクの様な模様。
それはまるで、私を睨みつける怪物のように見えた。
右腕に走る痛み。
小指に触れる男の手。
奇怪な模様が蠢く覆面。
男の全身から漂う異臭。
それら全てが、私に不快感と恐怖を与えていた。


「りーなさんッ!!」
「俺はこの女に質問している。邪魔をするな」


助けに入ろうとしてくれたバスターに対し、覆面の男は告げる。
バスターの動きが止まるのが見えた。
恐らくバスターも直感したのだと思う。
『邪魔をすれば多田李衣菜は殺される』ということを。
サーヴァントを全く恐れることも無く、覆面の男は二言でバスターを牽制したのだ。
キッと歯を食いしばりながら、バスターは覆面の男を睨む。
そんなバスターの様子を意に介することも無く、男は質問してきた。


「お前は何者だ?」
「え、あ……」


947 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:16:59 cFBSBi0Q0
お前は何者だ。
とにかく端的で、だからこそ返答の困る質問。
一体何をどう答えればいいのか。
そう聞こうと思っているのに、恐怖で震えて口が思うように開かない。
そんな私を、覆面の男は目の前で冷淡に見据え続けている。


「お前は何者だと聞いている、東洋人の雌猿」


男の両手の力が強まったことを感じた。
ぎりり、と私の細い手が握り締められる男が小さく響く。
身の毛がよだつ様な感覚が私の全身を襲った。



やばい。やばい。やばい!やばい!やばいやばいやばい!
殺される!殺される!殺される!殺される!



「―――たっ…多田李衣菜です!!MIDTOWN…えっと、COLUMBIA PTのっ!ハイスクールに通ってます!
 ユグドラシルのとこのハイスクールです!えと、あと、その……!」
「素性はそのくらいでいい。お前は魔術のようなオカルトの類いが使えるか?」
「し、知らない!そんなもの、私使えないし…知らない…!」



駆け巡る恐怖から逃れるように、私の口から言葉が飛び出し続ける。
何が何でもいい。怖いとかそれどころじゃない
自分の正体というか、素性というか。
とにかく頭の中から出てきた全てを答えた。
そうしないと、自分の身が危ないと理解したから。



「では次の質問だ。何故お前は俺を付けてきた?」



そんな私の態度を気にも留めずに次の質問を投げ掛ける。
この覆面の男は、私に付けられていたことにも気付いていたらしい。
嘘をつけば、私の指が。
そう聞かされていた私は、真実のみを答える。
嘘なんて吐く余裕は無い。


「ま、街を散策していたら…偶々、あなたの姿を見かけて…
 どう見ても変わった格好で…聖杯戦争の参加者とかだと思って、追い掛けてみて…」


嘘ではない。本当だ。
ただ偶然見かけて、見かけで参加者と直感して、追い掛けてみただけ。
覆面の男が再び沈黙する。
覆面越しに伝わってくる呼吸音でさえ、恐怖に感じてしまう。
こんないい加減な動機、嘘だと決めつけられるのではないか。
男が口を開くまでの間、私は震えることしか出来ない。


948 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:17:43 cFBSBi0Q0


「お前はどのように聖杯戦争に参加した」


そして、次の質問。
まるで機械のように問いを続ける。


「もうそれくらいでいいでしょうッ!!そこまでしてりーなさんを尋問する必要が、」
「あるそうだ。少なくとも、俺のマスターにとっては」


覆面の男の威圧的な尋問に耐えかね、バスターが物申したその時だった。
バスターの背後に銀色の影が降り立ったのだ。
そのままバスターの首元に刀を向け、その動きを止めた。
少し前に姿を消した筈のサーヴァント――――クラスはアサシンだった。
白黒の覆面男が従えていたサーヴァントだ。

文字通り、バスターは手出し出来ない状況。
頼れるのは私自身。
私の答えが、覆面男の機嫌を損ねないかに懸かっている。


「あの…その、変な人形?みたいな…そんなのを、いつの間にか持ってて…!
 気がついたら、ゴッサムシティで留学生やってて!とにかく、何がなんだか解らなくて…!」


再び、有りの侭の真実を答える。
いつの間にかあのエジプト風の人形を手にしていて、いつの間にか参加者になっていた。
とにかく何がなんだか解らないまま、この街の住人になっている。
それが私が認識している限りの事実だった。
直後、覆面の男は無言で何かを考え込む様な素振りを見せる。
僅かな時間を思考した後、再び男は口を開く。



「では、最後に改めて問うが…お前の目的は何だ?聖杯を望んでいないというのは本当か?」


949 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:18:19 cFBSBi0Q0

最後に問われた、私の核心を突く質問。
何の為に私はここに来たのか。
聖杯を望んでないのか。
このことは既にバスターが告げている。
再び問いかけたのは、確認の為なのだろうか。

ほんの少し呆気に取られた私は、一瞬沈黙する。
目の前に迫る男の覆面、その上で黒い模様が不気味に蠢いている。
まるで蝶々みたいだな、なんて呑気なことを一瞬考えてしまう。

ふと、視界の端へと視線を向ける。
バスターがこちらを見ている。
背後から刀を突き付けられ、苦々しい表情で私を見守っている。
今すぐにでも助けに入りたげな、そんな顔だ。


「…りーなさん」


だけど。
彼女の星のような瞳は、確かに私を信じているようにも見えた。


バスターの顔を見て、私は再び現実に引き戻される。
同時に、その瞳を見たことで少しだけ勇気を与えられた。
私にはバスターがいる。
願いよりもマスターの為に戦ってくれる、ロックな相棒が居る。
そのことを認識したおかげか、先程までの震えは僅かに収まる。
胸の内にはまだ恐怖が残っている。
それでも、先程よりは遥かにマシになっていた。


私の――――私達の目的は何か?
そんなの、決まっている。
とっくに決まり切っている。




「聖杯なんて…どうでもいいっ!!
 生きて、帰りたい!死にたくない!もっと、アイドルやりたい…!!」




だからこそ、私は声を荒らげて答えた。
形振り構わず、恐怖を吹き飛ばさんとする勢いで言ってのけた。
これが私の答え。
死にたくない。生きて帰りたい。
ロックなアイドルとして―――――アスタリスクの多田李衣菜として、歌い続けたい。
情けなくて、惨めにも見えるかもしれない。
それでも、たった一つ。はっきりと宣言出来る、私の願いだ。


950 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:19:11 cFBSBi0Q0



「………」



覆面の男は、何も言わない。
私の答えを聞いても、一言も発しない。



場は静まり返る。
沈黙。
静寂。
無音が周囲を支配する。
一瞬が。
一秒一秒が。
異様な長さに感じてしまう。



溢れ出る冷や汗がべっとりと服に張り付く。
初ライブの時とは比べ物にならない程の緊張感が心臓を打ち鳴らす。
息苦しくなるほどの沈黙に、表情を歪める。



(早く、何か言ってよ―――――ッ)



男は何も語らない。
男は何も喋らない。
男は何かを考え込む様子で、黙り続ける。



「Hum…」


どれほどの時間が経ったのか。
ほんの十数秒なのか、数分なのか、
男が小さく呻き声を上げ、ようやく沈黙は破られた。



「…嘘は吐いていないようだな」



そう呟いた覆面の男はようやく両手を離した。
そのまま私は腰を抜かし、尻餅を突いてしまう。


「ならいい。悪かったな、多田李衣菜」


男はただ簡潔にそう詫びた。


951 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:20:16 cFBSBi0Q0

先程までの恐怖とは余りにも釣り合わない、あっさりとした謝罪。
でも、それを抗議する気にはなれない。
恐怖を味合わされた張本人に怒れるほど、胆は座っていない。


「ロールシャッハ。それが俺の名前だ」


そのまま男は何喰わぬ態度で、自分の名を名乗った。
ぽかんと見上げる私を気に留めることも無く、ロールシャッハとやらは語り出す。


「先に言っておく、李衣菜とやら。
 俺は聖杯を破壊する。どんな犠牲を払おうとだ。
 それが俺の正義だ。正義を貫くのがヒーローの使命だ」


どこが、ヒーローなんだろう。
目の前の男に対して、そう思わざるを得なかった。
ヒーローは、あんな脅しみたいな手段使わないって。
正義を貫くヒーローっていうのは、困っている人とか。
弱い人とか、そういうのを優しく助ける人だって。
自分に手を貸してくれるはずの相手に、烏滸がましくそんなことを思ってしまった。


「お前達とは協力する。だが、あくまで最優先事項は聖杯の破壊だ。
 場合によってはお前達を救わないこともある。それを忘れるな」


ロールシャッハさんは、私にそうきっぱりと告げた。
ごくりと私は唾を飲み込む。
あくまで目的が最優先。場合によっては私達を救わない。
自分のやるべきことを優先するのは、誰だってそうだ。
それでもこの人は私達の話を聞いてくれた。
私の事情を聞き、手を結んでくれた。
協力してくれると言ってくれた。
それだけでも十分有り難い。
―――――有り難い、はずなのだ。


ロールシャッハが何か合図をする。
直後、チャキンと刀を下ろす様な音が耳に入った。



「―――りーなさん!!大丈夫ですかッ!?」



そして、ふと顔を上げて見ると。
刀による拘束から解放され、私に向かって駆け寄ってくる相棒の姿が目に映る。
私は、その場でようやく一息をついた。


◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


952 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:20:50 cFBSBi0Q0



《しくじったか、アサシン》
《二人とも取り逃がした。すまない、俺の不手際だ》
《あの男は俺が追っているマフィア共の情報を何か掴んでいる筈だ。
 いずれまた会うことになる。次は失敗するなよ》
《了解だ、マスター》


マスターであるロールシャッハとの念話。
短く淡々とした意思疎通を行ったシルバーカラスはある方へと視線を向ける。
壁に寄り掛かったまま腰を抜かしていた少女だ。
バスターというサーヴァントの手を借り、何とか立ち上がっている。


《お前も見ただろうが、あの少女…多田李衣菜はバスターとやらのマスターだ。
 聖杯破壊の手掛かりを探す為にも、今は彼女らと共闘する》
《…ああ》


多田李衣菜への尋問といった事情は概ね見届けている。
聖杯への執着が無いことも、ただ脱出の手段を探したいということも、理解している。
そんな李衣菜を、シルバーカラスはぼんやりと見つめていた。

ふと、少女の僅かに怯えた視線を感じる。
ロールシャッハのサーヴァントであるシルバーカラスにも、一欠片の警戒と不安を抱いているらしい。
当然だろう。ロールシャッハは彼女に脅迫じみた尋問を行った。
そんな男が従える寡黙なサーヴァントに、不信感を覚えるなというのが無理な話だ。
シルバーカラスはそのことを気に留めない。
むしろ自分には相応しい立場かもしれない、と自嘲さえ覚える。


(多田李衣菜、か…)


自身をどこか警戒した態度の李衣菜から視線を逸らし、彼女の素性を思い出す。
MIDTOWNのハイスクールに通っているという高校生。
望まずして聖杯戦争に巻き込まれてしまった少女。
まだ子供だというのに、こんな闇の世界に放り込まれてしまっている。
その姿に、シルバーカラスはヤモト・コキを想起せずにはいられなかった。
どちらも子供でありながら、戦う宿命を背負わされてしまった存在なのだから。
はっきり言って、複雑な心境だ。


(…これも因果かね)


奇妙な巡り合わせに、シルバーカラスは心中で静かに呟く。
だが、ヤモトと彼女には決定的に違う点が存在する。
ニンジャになってしまったヤモトは、生きる為に戦うしか無い。
しかし李衣菜は紛れもない日向の世界の住人だ。
この聖杯戦争に巻き込まれたということを除けば、彼女はまだ普通の少女に過ぎないのだから。
戦いから逃れれば、彼女には日常が待っているのだろう。

尤も、シルバーカラスの感情、そして少女らの感情でさえ、マスターにとっては問題ではないだろう。
彼は苛烈なまでに己の正義を貫く男だ。
ヤモトがシルバーカラスと縁のある存在だろうと。
李衣菜がただの少女に過ぎない存在であろうと。
正義の為ならば彼女らを犠牲にすることも厭わないだろう。

その時、彼女らを手にかけるのは――――自分の役目となるかもしれない。
自分はマスターの武器に過ぎないのだから。
主に従う従順なサーヴァントなのだから。

だが、もし彼女らを無事に生きて返せるのならば。
李衣菜達が脱出する手段を見つけられたならば、
それもまた、いいかもしれない。
出来ることならば、ヤモト・コキも――――――――



(なんて、ジゴクに落ちた俺には過ぎた願いか)


いつから自分はこんなに甘くなっていたのだろうと、シルバーカラスは心中で自嘲する。
生前にヤモト・コキにインストラクションを授けたことで自分の心は何か変わったのだろうか。
だとしても、自分の望みにブッダ殿が応えてくれるとは思っていない。
自分は所詮、数多くの命を金の為に殺してきた卑しいニンジャなのだから。
この聖杯戦争に召還され、再びヤモト・コキの敵となったことが、自分にとってのインガオホーなのかもしれない。


953 : Hooded Justice ◆1k3rE2vUCM :2015/08/30(日) 00:21:40 cFBSBi0Q0

【DOWNTOWN EAST PARK SIDE/1日目 午前】

【多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]魔力消費(小) 、精神的疲労(中)
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]4千円程度
[思考・状況]
基本:帰りたい。
1.ノノ、ロールシャッハ達と協力して脱出の方法を探す。
2.ロールシャッハへの恐怖と苦手意識。同様にシルバーカラスにも僅かな恐怖。
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ、シルバーカラス)の外見、パラメーターを確認しました
※令呪は右手の甲に存在します

【ノノ@トップをねらえ2!】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本:マスターが帰りたいらしいので、手伝う
1.ロールシャッハ達と協力して脱出の方法を探す。
2.りーなさんは私が全力で守ります!
3.ロールシャッハへの不信感。協力してくれるのは有り難いが…
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ、シルバーカラス)の外見を確認しました

【ロールシャッハ@ウォッチメン】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]ワイヤーガン
[道具]ベイクドビーンズの缶詰、角砂糖
[所持金]5千円程度
[思考・状況]
基本:誰が何と言おうと、聖杯を破壊する。悪党は殺す
1.多田李衣菜らとの共闘。ただしあくまで自分の目的を優先。
2.ネオナチの組織を潰す。
3.赤い覆面の男(レッドフード)に警戒。
4.ヤモト・コキについては見つけ次第罰する。
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ)バスター(ノノ)の外見、パラメーターを確認しました

【シルバーカラス@ニンジャスレイヤー】
[状態]疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]ウバステ
[道具]なし
[思考・状況]
基本:マスターに従う
1.多田李衣菜達と共闘。
2.赤い覆面の男(レッドフード)に警戒。
3.多田李衣菜への複雑な心境。
4.ヤモト・コキについては……
[備考]
※アサシン(チップ=ザナフ)バスター(ノノ)の外見を確認しました


954 : 名無しさん :2015/08/30(日) 00:21:58 cFBSBi0Q0
投下終了です。


955 : 名無しさん :2015/08/30(日) 22:30:33 E93i7rKI0
投下乙です
シャッハさんすげえ。かわいいモバ鱒ヒロイン相手でも一切ブレねえ
だりーな視点での尋問シーンの緊張感ヤバかったっす
一応仲間になってはくれたけど、本当に大丈夫なのか…?


956 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/03(木) 00:01:05 jDcFlw560
投下乙であります。感想はまた後ほど。
シェリル・ノーム&ランサー(ウルキオラ・シファー)を追加した上で予約を延長します。


957 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/04(金) 23:58:40 LOTWbjm.0
改めて投下乙です。
ただの少女なだりーなにも容赦ない辺り流石シャッハさん。
だりーなは一応協力者が出来たけど、上手くやっていける気がしないぞ……。
レッドフードは二人と違い聖杯狙いだが、仇がこの地にいると知ったらどうなる事やら。

予約の件ですが申し訳ありません、思った以上に書く事が増えてしまったので一旦予約を破棄します。


958 : 名無しさん :2015/09/05(土) 00:27:00 dR4NGrsw0
破棄は残念ですが、気を落とさず執筆に専念してくだされば幸いです。


それとは別に、他のスレを見て思ったのが、Gotham Chaliceでの参戦作品の把握方法についての纏めなどがあったらいいなあと
聖杯スレだけあって数が膨大な上に、特にアメコミ系は何から手を付ければいいのかよく分からないというのもあるので、情報があれば助けになりそう
もちろんあくまで一意見、纏めてくれる方がいれば嬉しいという話として聞いてもらえれば


959 : ◆1k3rE2vUCM :2015/09/05(土) 19:42:07 aUQhVEjA0
では自分が執筆した登場話のキャラを纏めておきます。
参考になれば幸いです。

【ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ】
全12話のアニメで把握可能です。
時間軸的には11話終了後ですが、折角なので最後まで見てしまうのが吉です。
アニメ版を参考にしていますが、内容が概ね原作に忠実なのでキャラ把握自体はどちらでも可能です。
原作は五巻まで読めば参戦時期の範囲は把握できます。
細かな部分や描写で異なる部分もありますが、特に大きな差異は温泉合宿回の時間軸くらいかと。
(アニメではハナ帰国~よさこい祭りより前、原作ではその後)

【デスドレイン@ニンジャスレイヤー】
Twitterでの連載という特殊な形式の小説です。
有志によってTogetterに纏められている他、公式で書籍化もされています。
ttp://wikiwiki.jp/njslyr/?%A5%C7%A5%B9%A5%C9%A5%EC%A5%A4%A5%F3
上記のページの「登場エピソード」から彼の出番を把握可能です。
ページにはデスドレインの人物像や戦闘スタイル、作中の動きなども纏められているので把握の参考になるかと。

【ノーマン・スタンスフィールド@レオン】
リュック・ベッソン監督の映画「レオン」が原作です。
133分の映画一本で把握できます。

【鯨@魔王 JUVENILE REMIX】
伊坂幸太郎作品「魔王」を原作に大幅なアレンジを加えた漫画です。
鯨が登場するのは1巻、4~5巻、10巻ですが、彼の性格や能力、暗殺などが概ね把握できる5巻のみでも最低限把握可能です。
ただしゴッサム聖杯には全編に渡り登場する同作キャラの犬養も参戦しているので、10巻全て把握するのも良いかと。

【ジョンガリ・A@ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン】
ストーンオーシャン2~3巻、ジョジョ文庫本40~41巻のみで把握可能です。
基本的にジョジョロワ等と同様に狙撃能力や過去の経歴は幻覚内で描写された通りのものとします。

【カール・ルプレクト・クロエネン@ヘルボーイ(映画版)】
映画版からの出展なので、映画版ヘルボーイ一本を視聴するのみでOKです。
クロエネンは原作と大幅に設定が異なるので映画版のみの把握で大丈夫です。
Wikipediaの映画版ヘルボーイの記事に作中で語られていないクロエネンの裏設定なども書かれているのでそちらも参考に。
因みに『ヘルボーイ ゴールデンアーミー』はクロエネン未登場の続編映画なので注意。


960 : ◆4jULo8RMS2 :2015/09/05(土) 23:38:02 loU3GG4A0
呉島貴虎&キャスターを投下した者です
トリップを紛失してしまったため今後はこちらのトリップを使わせていただきます
自分も投下したキャラを纏めてみました

【呉島貴虎@仮面ライダー鎧武】
全47話の特撮ですが貴虎は36話からの参戦ですので彼の把握だけならそこまでで大丈夫です
ただ同作品の戦極凌馬とヘルヘイム(サガラ)はかなり終盤、少なくとも43話までは視聴する必要があります
またVシネマ「鎧武外伝」の斬月篇では貴虎の人物像がより深く掘り下げられていますのでよろしければそちらも視聴してみて下さい

【メディア@Fate/stay night】
今や色々な媒体で把握可能な彼女ですが基本を押さえるなら原作ゲーム版及びhollow ataraxiaをプレイされることをお勧めします
あるいはアニメ版のUBWの17話までの視聴でもおおよその人物像は把握できるかと思います
ただし彼女が行使可能な魔術の詳細はコンプリートマテリアルなどを買わないと把握しきれないのがネックになるかと思われます

それと呉島貴虎&キャスター、犬養舜二&キャスターを予約すると同時に念のため延長を申請します


961 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/09/06(日) 02:19:18 w.ORtZJc0
ミュカレ&ジェダを投下した者です
私も一応投下したキャラをまとめておきますね

【ミュカレ@アカツキ電光戦記】
新宿聖杯の不律の項でも申し上げたことと被りますが、ストーリーは攻略wikiで台詞・テキストの全文を見ることができます
各種必殺技等はまとめ動画や対戦動画を見れば把握できます
彼女の救済思想に関しては細部がわかりにくいかもしれませんが、元ネタと思われるカタリ派のwikipediaのページを見るとわかりやすいかもしれません
また、ミュカレは完全者名義で某ロワの主催をしています。掘り下げが必要ならかなり参考になると思います

【ジェダ・ドーマ@ヴァンパイアセイヴァー】
こちらもストーリーは原作のEDとwikipediaのジェダのページを見れば把握できますが、
クロスエッジとプロジェクトクロスゾーンのクロスオーバーRPG2作に登場しているのでそれらのプレイ動画も参考になります
(今ではamazonくらいでしか手に入りませんが)ヴァンパイアセイヴァーの小説、
またはジェダも某ロワの主催をしているので該当ロワを見てみるのもいいかもしれません
どんな動きをするのかはミュカレと同じくプレイ動画や必殺技まとめ動画を見れば大丈夫です


962 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/09/06(日) 22:13:20 Oi2..kOI0
私が投下した二名についても記載します。

【シェリル・ノーム@劇場版マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜 】
2008年に放送されたロボットアニメ『マクロスF』(全25話)の劇場版からの出典です。
前編『虚空歌姫〜イツワリノウタヒメ〜』と後編『恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜』の二部作で、把握に要する時間は計4時間程度です。
単発エピソードや総集編の映画ではなく、一から再構築した完全新規ストーリーとしての制作なので、テレビ版を視聴していなくても把握に支障はありません。
テレビ版の方は「所々にテレビ版を意識した要素があるので、見ておけば劇場版がより楽しめる」くらいの認識で十分です。

【ウルキオラ・シファー@BLEACH】
単行本21巻から開始される「破面篇」の把握が必要となります。
ウルキオラについては22巻が初登場・41巻で出番終了となるので、42巻以降の把握は不要です。
厳密に言えば22巻〜41巻の全ての場面にウルキオラが登場するわけではありませんが、
同じくゴッサム聖杯の登場キャラであるグリムジョーの把握も考えると、全てチェックしておくのが結局は得になると思われます。


963 : ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:42:16 vZG1Rl8U0
投下します


964 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:43:29 vZG1Rl8U0
今、ゴッサムにおいて最も注目されている存在である自警団、グラスホッパー。
リーダー、犬養舜二の手腕によって一月と経たずに莫大な活動資金を得た彼らはゴッサムシティの至るところに拠点を構えていた。
その中には犬養のサーヴァントたる戦極凌馬が陣地作成スキルによって即席の工房とした場所が複数存在している。
今、車窓を覆面パトカーのように覆い隠した一台のバンが停車した貸倉庫もそういった工房の一つだった。


「戻ったか、成果は?」
「はい、持ち帰った果実の数は三十。しかし犬養さんの言う浸食点らしきポイントは未だ発見できません」


長大な槍を構えた戦国時代の足軽のような出で立ちの鎧武者がバンの運転手と話し合うという一種奇怪な光景があった。
しかしグラスホッパー内においては既に慣れた者も少なくない。
アーマードライダー。数日前から実働部隊に支給され始めた不可思議なベルトによって変身する戦士。
この倉庫はアーマードライダーに変身できる団員たちによって警備されていた。その人数たるや外だけで十人、中には五人。

さらに各班の班長格には無双セイバーのついた戦極ドライバーが支給されている。
無双セイバーは黒影のアームズウェポン・影松に比べリーチで劣るがその分屋内戦闘でも扱いやすい太刀であり、銃弾を発射することができる。
さらにロックシードをセットすることで手軽に火力を高められる優れた武装である。
この設計思想は後の新世代アーマードライダーの武装、ソニックアローにも引き継がれている。

「それにしてもこの変な果実が俺達の武器になってるっていうのもおかしな話だな」
「でもそのおかげでこの街の犯罪者や怪物どもを蹴散らせるんだから万々歳じゃないですか」
「はは、違いない」

運転手が運んできたヘルヘイムの果実をベルトを着けていない団員たちが慎重に荷台に移し替えて倉庫内に運んでいく。
果実が人体に有害であることはグラスホッパーでは周知の事実であるので変身した団員が誰も誤って果実を食べないよう見張っている。
ヘルヘイムの果実には食欲を誘発する作用があるためだ。
ここに集められた果実はやがて本部に運び込まれ新たなロックシードとして加工される予定になっている。


「そういえば聞いたか?何でも近いうちに新型の装備が支給されるらしいぞ」
「えっ?このマツボックリだって最新の装備でしょう?」
「まあそうなんだがな。噂じゃ一部の団員にはもう新しいやつが配られてるらしい」


965 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:44:38 vZG1Rl8U0


現在クラスCのマツボックリアームズで活動しているトルーパー部隊だが、聖杯戦争の激化を見据えて既により強力なロックシードの投入が図られていた。
具体的にはクラスAのアームズウェポンが比較的扱いやすいとされるロックシードだ。

切り込み担当の班にオレンジやバナナ、その援護用にブドウ、指揮官用にメロンといった具合の配分が決定している。
本来果実をロックシードに変換する際、どのロックシードに変化するかは完全にランダムで決まる。
しかし戦極凌馬の道具作成スキルにかかれば任意のロックシードに変換することができる

僅かな期間で多くの団員にマツボックリロックシードを支給できたのもこのスキルの恩恵に依るところが大きい。
いずれは犬養の親衛隊を除く全ての実働部隊の装備を無双セイバー付きのドライバーとクラスAのロックシードに更新する予定になっている。
このように果実を一時保管する倉庫はグラスホッパーの今後を占う重要な拠点の一つである。





―――――――――故に、そこを狙う者が現れることもまた必然である。





「頂くわよ、その果実」

倉庫内で昏倒したアーマードライダーを見て微笑を浮かべる魔女が一人。









「それで、これが奪取してきた果実と戦極ドライバーか」
「はい」

場所は変わってユグドラシルコーポレーション、ゴッサム支部。
仕事が一段落した呉島貴虎はキャスターからの念話を受けて彼女の工房である地下区画に足を運び、そこで暫し唖然とした。

キャスターの作業スペースに積み上げられたヘルヘイムの果実の山はこれまで採取した量とは比較対象にすらなり得ないほどだった。
さらにはイニシャライズが施された戦極ドライバーの現物までが飛び出した。
これで驚くなという方が無理な話であろう。

貴虎が仕事をしている間、キャスターはグラスホッパー所有の果実保管用の倉庫を発見していた。
ヘルヘイムの果実を利用する戦略を採る者が他にも存在することは憂慮すべき事態だが好機でもあった。
キャスターの考える策に必要な数の果実をわざわざ相手から用意してくれたのだから。
故に彼女は動いた。無論、他人に見られないようアサシンすら見逃すまいというほど緻密に練った索敵網を巡らした上で、だ。


「独断で動いたことについてはお詫びいたします。
ですが隠蔽は万全を期しています。私達の存在と位置を特定されることは有り得ません」
「君が隠蔽工作を怠ったなどとは私も思っていない。だがそういう問題ではない。
キャスター、人間の行動の痕跡を消すというのは極めて困難な行為なんだ。
どれほど入念に証拠隠滅を図ったとしても些細な切っ掛けで事が露見するなど当然のように起こり得る。
君が戦略に長けた英霊なら敵に回しているのもまた英霊、超常的な能力で次の瞬間には我々の潜伏位置を特定していてもおかしくはない。
今回は成果に免じて不問にするが今後は独断での行動は慎んでくれ」
「………はい、申し訳ありませんでした、マスター」


966 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:45:22 vZG1Rl8U0


実際、キャスターは十分過ぎるほどに隠蔽を行っていた。
竜牙兵に大量の果実を運ばせるに当たり極力人通りの少ない最短ルートを選び、さらにルート周辺に人避けの結界も構築した。
ウェインタワーの上にいたサーヴァントが障害であったがヘルヘイムの植物が繁殖している場所へ向かったためにより事を運びやすくなったのは幸運だった。

戦極凌馬が用意した簡易ラボのセキュリティも迅速かつ的確に無力化し白昼堂々にも関わらず極秘裏に果実の強奪を成功させた。
ユグドラシルタワーの搬入口にいる警備員は元より暗示下にあり、外からの業者の出入り時間も事前に貴虎から聞いていたためすんなりと果実を運び入れることができた。

少なくともキャスターは自らの仕事に絶対の自負を持っていた。

だが、貴虎はキャスターの魔術に信頼を置きながらも懸念があった。
沢芽市でヘルヘイムの森に関する問題を隠蔽する部隊の指揮官だった彼は知っている。
人の残した足跡というものは発見するに易く完全に消し去るには難い。
完璧に思える機密や情報統制がふとした切っ掛けで漏れるなどざらにあることだ。
なればこそ、そも動かないということこそが敵から発見されない最良の手段だと考えたのだ。
いくらキャスターでも全てのサーヴァントから行動の痕跡を隠しきることは難しいだろう……彼はそう判断していた。


「まあ過ぎたことを言っても仕方ない。問題はこの戦極ドライバーだ。
キャスター、グラスホッパーが果実を蒐集し槍を持ったアーマードライダーに変身していたというのは本当だな?」
「はい、マツボックリの錠前を用いていました」
「まさかこのゴッサムシティに黒影トルーパーが存在するとはな……。
だが戦極ドライバーの生産を行うならそれなりの規模の設備が必要なはずだ。どういうことだ?」


地下施設に持ち込んだノートPCを起動する傍ら思案に耽る。
戦極ドライバーの生産ラインの確保はユグドラシルが心血を注いで整備したものだ。
使われる設備や技術には民間の数世代先を行く軍事用のそれも含まれている。

いくら犬養舜二の手腕とカリスマが優れていようとも民間人に過ぎない彼らグラスホッパーが戦極ドライバーを量産するなど物理的に不可能だ。
しかし不可能と断じようと現実にドライバーは貴虎の目の前に確かに存在しているのだ。


「マスター、そのことですがこのドライバーは全体が魔力を帯びています。
恐らくはサーヴァントの能力によって生成されたものなのでしょう
サーヴァントならば魔力を元手にドライバーを用意できたとしても何の不思議もありません」
「何だと?だとすれば、戦極ドライバーを作れる者がサーヴァントにいるということか」
「そう考えて間違いないでしょう。マスター、戦極ドライバーの発明、生産に関して英霊になり得る者に心当たりはありませんか?」


967 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:46:13 vZG1Rl8U0


心当たりがあるなどというレベルではない。
戦極ドライバーを完成させ、量産軌道に乗せ更に発展型のゲネシスドライバーを開発したあの男しかいない。
研究者として彼の前任者にあたる者もいるにはいたが、逸話という観点ではさほど大きな実績はないのでこの可能性は考慮する必要はないだろう。


「…戦極凌馬。さっき話した私の友人だった男だ。
だが凌馬はまだ生きている人間だぞ。サーヴァントとして召喚されるなど有り得るのか?
サーヴァントとは過去の英霊をクラスという側面に当てはめて召喚する存在なのだろう?」
「厳密に言えば英霊の座に時間軸は関係ありません。
未来において英霊に名を連ねる者ならばサーヴァントとして召喚することも不可能事ではないでしょう。
無論、これだけの情報では確定には至らないでしょうが警戒はしておくべきかと」
「……なるほど、わかった。とにかくグラスホッパーの監視網には今まで以上に注意するべきだな。
もしあちらに凌馬がいるなら変身した姿を見られただけで正体が私だと気づかれる」


キャスターの言う通り凌馬の姿を確認できたわけでもない。
戦極ドライバーがあるという一点だけで凌馬=サーヴァントと断じてしまっては思わぬところで足元を掬われるかもしれない。

だが、もし本当に奴がサーヴァントとして聖杯を狙っているなら決して見過ごすわけにはいかない。貴虎自身の手で決着を着ける必要がある。
貴虎がサーヴァントと戦うにはキャスターの補助が不可欠だが決着までを彼女に丸投げすることはできない。

決意を固めながらも作業の手は止めず、起動したノートPCに先ほどキャスターの水晶球の前に置いていったタブレット端末を接続した。
その様子を見ていたキャスターが怪訝そうに尋ねてきた。


「マスター、何をなさっているのですか?」
「君も見てみろ。ちょうど今データの転送が終わったところだ」


キャスターがPCの液晶画面を覗き込むとそこには彼女が使い魔を通して水晶に映していたゴッサムシティの様子がそのまま映し出されていた。
画面の中では人気のない裏路地で対峙する蝙蝠めいた衣装の男と怪物のようなフォルムの白い機械的なサーヴァントの姿があった。


「これは……!」
「見ての通り君が水晶に映した光景、それをタブレットを通して撮影した映像だ。
こうして撮影し記録・保存しておけば何時でも見直して確認できるというわけだ」


貴虎は聖杯戦争のためだけに最新モデルのノートPCやタブレット及びその周辺機器を購入していた。
一つ一つが高額のこれら端末を現金一括払いで購入、さらにマイクロSDカードを大容量のものを二十枚、最新の無線LAN子機なども同じく現金払い。
金持ちの道楽としか思えないほどの充実ぶりだが、貴虎はこの投資すらもマスターとして当然の責務と捉えていた。


968 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:46:56 vZG1Rl8U0


「やはり映像越しでもマスターに与えられたステータス透視能力は有効だったか。
この白いサーヴァントのステータスは脅威だな。モニターを通してすら威圧感が伝わるようだ」
「いえ、貴方が感じる威圧感は錯覚の類ではありません。私も同じ干渉を受けました。
サーヴァントにすら通じるほど強力な精神干渉……であればそれはあの怪物が持つ宝具か強力なスキルに由来する能力でしょう」
「そうか……高いステータスに相手を萎縮させ力を削ぎ落とす能力。これは難敵だな」


暫しの会話の後、蝙蝠男の先制から戦闘は幕を開けた。
現場の音声こそ拾えないもののサーヴァントという超常存在が行う戦闘行為の迫力は筆舌に尽くし難いものがある。
しかし繰り広げられる英霊同士の戦闘はキャスターならまだしも貴虎の眼で捉えるのは些か困難だ。
いや、アーマードライダー斬月へ変身するか眼球を含めた肉体を強化されていれば可能だろうが今は何の強化もない素の状態だ。

キャスターは当然その事実に行き着いており、進言しようとした。
だがその前に貴虎は映像の再生を止め、巻き戻し今度はスロー状態で再生を開始した。
一度見た映像を自由に止め、巻き戻してさらに再生速度も操作できる。
現代では当たり前の技術もキャスターにしてみれば驚愕に値する奇跡であった。


「そのままでは目で追えない動きであろうとこうしてスローで再生すれば克明に動きを分析できる。
君が魔術で各地の情勢を観察し私がそれを記録する。上手くすれば一方的に敵の能力を丸裸にすることも不可能ではあるまい」


キャスターの監視網は徐々に広がっており、遠くない内にゴッサムシティ全土をカバーできるようになる見通しだ。
そうなれば街で起こる戦闘は全て貴虎とキャスターの知るところとなる。
さらにその様子を動画に保存しておけば何時でも好きな時に敵の能力を確認できるに等しい。

のみならず残しておいた記録は他のマスターと対外交渉を行う機会があった時にも利用できる。
映像を餌にこちらの要求を呑ませるなり有力な敵主従に目を向けさせるなり用途には困らない。

一方、スローで流される戦闘の様子は予想通りと言うべきか、白いサーヴァントが終始蝙蝠男を圧倒していた。
時折場所を変えながら戦っているがキャスターの使い魔は二人に気づかれることなく追尾に成功したようだ。
理不尽なまでのステータスの差に加え白亜の怪物が放つ威圧感に生で晒されているだろうに、それでも蝙蝠男は地形や道具を駆使しながら挑み続けた。
しかし、力の差はあまりにも歴然。白いサーヴァントの機械的な装甲は蝙蝠男のあらゆる攻撃の悉くを弾いてのけた。
威力を乗せたキックを頭部に受けて尚崩れないとはますますもって難敵だ。


969 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:47:37 vZG1Rl8U0

蝙蝠男は爆発物を用いて近づいてくる白いサーヴァントの隙を作り、無謀にも格闘戦を挑んだ。
だがあれほど絶対的な堅牢さを誇っていた白いサーヴァントはただの拳で動きを止められた。

即座に停止、巻き戻して再度スロー再生しもう一度確認。どうやら拳から電流らしきものを流し込まれたようだ。
それが蝙蝠男自身の固有スキルか、それとも武器や道具に由来する効果かは測りかねる。
されど猛攻もここまで、白いサーヴァントが放った波動めいた衝撃波によって蝙蝠男は吹き飛ばされビルの外へと投げ出された。


「何だ…今の攻撃は?ロシュオがシドに放った攻撃にも似ているが……」
「魔力放出の能力のようですわね」


僅かながら蝙蝠男に傾きかけていた流れは完全に引き戻された。
白いサーヴァントが一気に距離を詰め勝負が決まる―――かに見えた。


「何……?」


右手を変化させた剣が蝙蝠男の首筋を僅かに傷つけた、その直後。
あろうことか破壊神にしか見えない怪物は目の前の獲物にとどめを刺さず、そして当然のように蝙蝠男の反撃を受けた。
だがそれすらも意に介さず、やがて怪物は文字通りその姿を消した。恐らく霊体化であろう。


「何故とどめを刺さなかった……?」
「その答えならすぐにでもわかるでしょう。仮令霊体化しようとも容易く私の眼から逃れられはしない」


キャスターがゴッサムに放った使い魔は当然一匹や二匹ではない。
一匹の視界から逃れても別の場所にいる使い魔によって捕捉できるという寸法だ。
加えてキャスター自身が持つ絶大な魔術探知能力にかかればジャスティスを追跡するなどわけもない。
気配遮断スキルを持ち追跡を撒くことに長けたアサシンなら話は違うだろうが、そうでないのならたかが霊体になった程度でキャスターの目は欺けない。

やがて映像に再び姿を現した白亜の怪物、首を斬り落とされたインベス、一般人らしき少女と一人のアーマードライダーが映り込んだ。


「光実……!」
「では、あのアーマードライダーが…」


貴虎は答えないまま食い入るように映像を見つめていた。
光実が変身している龍玄は蛇に睨まれた蛙のように震えていた。
ただ強敵が現れた、というだけならこうはなるまい。原因は白いサーヴァントが放つ威圧感だ。
突如、均衡が破れた。白いサーヴァントの眼前に何の前触れもなく爆弾が出現し爆発したのだ。
何が起こったのか。繰り返し巻き戻し再生するが何度見ても爆弾は突然その場に現れた、という風にしか見えない。


970 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:48:16 vZG1Rl8U0


「何だ……何が起こった!?」
「……それが私にもわからないのです。恐らくこの後に出てくるサーヴァントの仕業であろう、ということしか……」


やがて高所から降り立ったらしき幼いという印象を与える黒い長髪の少女がその場に現れた。
同時に白いサーヴァントが爆炎を振り払って二人のサーヴァントが対峙。黒髪の少女は龍玄を守るような動きをしている。


「あれが光実のサーヴァントか……酷いステータスだな」


キャスターの言う通り、爆弾はこの少女のサーヴァントの何らかの能力によって仕掛けられたのだろう。
さらに少女は虚空から弓を生み出し白いサーヴァント目掛けて矢を連射し始めた。
それらは白いサーヴァントが形成した剣によって弾かれるが、逆に言えば弾く必要があるだけの威力はある、ということなのか?
惨憺たるステータスでありながら明らかに蝙蝠男を上回る火力を叩き出す弓矢の武装。確実にクラスはアーチャーであろう。

ともかくアーチャーは確かに白いサーヴァントの足を止めることに成功していた。
好機と見たかアーチャーは連射を止めた。新世代ライダーが放つ必殺技のように強い魔力を込めた技を撃とうとしているのだろう。

爆発。としか思えない踏み込みとともに白いサーヴァントが距離を詰めアーチャーを体当たりで吹き飛ばした。
アーチャーは白いサーヴァントを引きつけ必殺の一矢を撃ち込もうとしたのだろうが、それこそ白いサーヴァントの誘いだったということか。

アーチャーの危機を察した龍玄がブドウ龍砲から必殺技を放つも当然傷の一つさえつかない。
注意を引きつける効果はあったが果たしてこの状況で何の意味があるのか。
ゆっくりと白いサーヴァントが龍玄―――光実へと歩み寄る。


「光実っ……!」


アーチャーが龍玄を守るように立ちはだかるもその姿はあまりに頼りない。
このまま目の前で光実が殺されるのを見ているしかないのか!?

その時、白いサーヴァントの背後で震えていた少女が何かを叫んだ。正確にはそう見えた。
少女が白いサーヴァントへと駆け寄っていく。まさか彼女がマスターだというのか。

奇妙な硬直状態が続いた後、先の蝙蝠男が上空から降り立ち割り込んだ。
黒の乱入者は明らかに白いサーヴァント主従を標的にしている。
マスターが危険に晒された状態で二体のサーヴァントを相手取ることを不利と感じたか、さしもの怪物もマスターを連れて離脱することを選んだ。
無謀にも追撃を仕掛けようとした蝙蝠男へ龍玄が銃撃を見舞い注意を引いた。


971 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:49:08 vZG1Rl8U0


「光実、お前は……」


あの怪物のマスターである少女を守ろうとしたのか?と言いかけて思い止まった。
それは弟を信じたい兄の欲目でしか有り得ない、と言い聞かせた。

もし現場の音声を拾うことができていたなら実際に光実が前川みくを助けようとしていたことがわかっただろう。
しかしその仮定には何の意味もない。これは聖杯戦争、光実が何を思い行動していようとも最後は殺し合うしかないのだから。


「マスター、その映像にある白亜のサーヴァントについてお話があります」


不意にキャスターが神妙な面持ちで話しかけた。
何か重要な事を話そうとしていると感じ取った貴虎は一度再生を止め話を聞くことにした。


「何だ?」
「ご覧になった通り、彼のサーヴァントの力は圧倒的です。
今の映像にあった戦闘でその能力、宝具の全てを曝け出したなどということもないでしょう」
「そんなことは見ればわかる、だからこそ対策を講じる必要があるのだろう?」


キャスターは静かに首を横に振った。
そして微かな笑みを浮かべ驚くべきことを言い放った。


「あのサーヴァントを私達の支配下に置く手段がある、と言ったらどうなさいますか?」
「何…だと?同盟を組む、というのとは違うのか?」
「いいえ、そのような不確実な手段を取る必要などありません。
マスターとサーヴァントの契約は一種の魔術契約によって成り立っている。
私ならその契約に介入しマスター権と令呪を奪取することができます」


貴虎の目が驚愕に見開かれる。キャスターは聖杯戦争の定石を覆す、と言っているのだ。
サーヴァントは一人のマスターにつき一騎。これは聖杯戦争に参加する者なら誰もが弁えていることだ。
もしそれが覆され、一人のマスターが二騎以上のサーヴァントを従えることができたなら取り得る戦略、戦術は無限大に広がることになる。


しかし、しかしだ。果たしてそう上手くいくものか、と考え直す。
目先の欲に駆られて大局を見失うようなことはあってはならない。


「確かに魅力的な提案ではある、が、問題点もまた多いことは君もわかっているはずだ。
まずはそれを一つ一つ洗い出して潰していく。良いな?」
「はい」


貴虎はPCの文章作成用のソフトウェアを起動した。
重要性の高い作戦は文字に起こして確認できるようにするべきと判断したからだ。


「まずどうやってサーヴァント契約をこちらに移すかだが、まあこれは明らかだな」
「ええ、あのサーヴァントと契約するには力不足な一般人の少女であるマスターを狙うのが確実でしょう。
つまり二人を分断する状況を作り出せば事を成すのは容易い」
「とすれば契約の変更を行う都合上マスターを君が、サーヴァントの足止めを私が担当することになるな。
それ自体に異論はない……が、あの威圧感を放ち力を削ぐ異能力をどうにかしなければそもそも立ち向かうことすらできないぞ」


972 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:49:47 vZG1Rl8U0


白いサーヴァントが放つ威圧感は映像で様子を見ていただけの貴虎とキャスターでさえ明瞭に感じられるほどの強烈さだ。
直接相対したとなれば映像越しの比ではないほどのプレッシャーを浴びることになるのは明白。
そのまま挑んだのでは玉砕以外の道は無い。


「それについては私に策があります。
まずあのサーヴァントが放つ威圧感の正体ですが、あれほど機械的な出で立ちならば魔術的な能力である可能性は低いでしょう。
となると考えられるのは魔術に依らず直接相手の精神、深層意識に干渉する能力、という線です。
であれば、対魔術ではなく対精神干渉に特化した礼装を準備すれば無効化ないし大幅な効力削減が可能です」
「なるほどな。相手の能力の正体と出所がわかれば対策は取れるというわけか」


キャスターは戦闘力に劣り騎士クラスが持つ対魔力に苦しめられやすいがその分陣地、道具作成スキルによって戦略的優位を築きやすい。
サーヴァントの力量にもよるが敵の真名や能力などが事前にわかっていれば対抗できる武装、礼装を準備できる。
言うなれば後出しジャンケンが許されるクラスということだ。


「礼装については他の作業と並行しても急げば今夜には準備できるでしょう」
「そうか。では次に相手の具体的な戦闘力、攻撃手段、正体についても詰めておきたい。
私が透視した範囲ではBランクの対魔力、Dランクの単独行動、それと君が言った通りBランクの魔力放出のスキルが確認できた」
「剣を使っていたようでしたが格の低さから見てセイバークラスとは考えにくいでしょう。
マスターが危険に晒された際騎乗宝具を出さなかった点からライダーも排除できます。
ランサーなら槍でなく剣を使うのは不自然、となればクラスは消去法でアーチャーでしょう」


音声を拾えずとも明らかに理性ある行動を取っていた以上バーサーカーでは有り得ない。
アサシンやキャスターには似つかわしくないし、もしこれらのクラスなら高位の対魔力など付与されるはずがない。


「となると奴は何らかの高火力の遠距離武装を持っていると想定すべきだな」
「ええ、ですがマスターの少女は魔力も無い脆弱な存在。十分な魔力提供など望むべくもない。
つまり強力な武装ないし宝具を持っていたとしても使えないのです。
現に二体のサーヴァントに囲まれた時も圧倒的な力を持ちながら真っ先に逃走という手段を取った。
これは魔力供給と内蔵魔力に不安を抱えているという証左でしょう」
「……確かに、な。今にして思えば魔力放出さえ出し渋っているように見えた。
それにああいう火力に優れる存在相手に時間を稼ぐには私のメロンアームズはうってつけだ」


973 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:50:48 vZG1Rl8U0


メロンアームズの専用武器であるメロンディフェンダーは単なる実体盾ではない。
エネルギー、つまり光学兵器に反応する高性能センサーや電磁シールドを形成するユニットをも搭載している。
無論それだけであの怪物的サーヴァントに対抗できるとは思わないがキャスターの強化魔術による機能の底上げが加われば話は別だ。
ユグドラシルの最先端科学技術と神代の魔術の融合でサーヴァントに対抗するのが貴虎の基本方針である。


「まだある程度煮詰める余地はあるだろうが大まかな戦術、対策は固まったか。
だがまだ問題はある。策が成功して奴をこちらに引き込めたとして、あれを養えるほどの魔力はどう工面する?
それに奴をこの工房に入れることによってその存在を他の陣営に気取られては意味がないぞ」
「順番にお答えします。まず魔力については既にAランクのサーヴァントを十全に活動させることができるだけの量をこの工房に貯蔵しています。
さらに果実の解析が完了し魔力を抽出する術式が確立した暁には、次の段階として奪取した大量の果実を用いた魔力炉を作成する予定です」
「魔力炉だと?つまり、何だ……原子炉で発電を行うようなものか?」
「そう認識していただいて結構です。この方法ならば魂喰いを強化せずとも数千人のマスターを持つに等しい魔力供給を得られる試算ですわ」


あまりに桁の違う数字に思わずギョッとした表情を見せる貴虎。
永い年月をかけてあらゆる星、あらゆる文明に滅びと進化を促してきたヘルヘイム植物はそれだけで強力な神秘を帯びている。
ヘルヘイムの果実が蓄える魔力量は現代の成熟した魔術師一人分を上回る。

さらに適正かつ効率的に魔力を回収する術式を構築すればキャスター以外に六体のサーヴァントを従え全力戦闘させても問題なくなる見通しだ。
とはいえキャスターと言えども今すぐ莫大な魔力確保を実現することはできない。
果実の解析、最適な魔力抽出方法の確立にはまだいくらかの試行・実験が必要だ。


「そ、そうか。無駄に血を流さず魔力を確保できるのなら喜ばしいことだな」
「ええ、そもそも魔力を得るためだけに生命を消費するなど非効率にも程がある三流魔術師の所業。
少なくとも魔術師の英霊に祀られる者のするべきことではありません」


現代の困窮した魔術師たちが聞けば憤死しかねないほどの発言であったがそれを咎める者はここにいない。
メディアにとって魔力、マナとは生命を奪ってまで手に入れるものではない、という認識だった。


「それからこの陣地に施した隠蔽の結界は万全です。
他にサーヴァントを招き入れたとしてもここに留めておく限り外に気配が漏れる心配はありません。
注意するべきはむしろ陣地に入れる時と出す時でしょう」
「ならば良い。残る問題は作戦を実行する際の他陣営の目だな。
サーヴァントをこちらに引き入れるところを目撃されては何の意味もないどころかマイナスでしかない」
「何故ですか?あれほどの規模のサーヴァントを奪えたならばほとんどの敵は恐れるに足りないでしょう」


首を傾げるキャスターに貴虎は強く首を横に振って否定する。
この懸念は貴虎自身の経験則、そして歴史を根拠にするものだ。


974 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:51:27 vZG1Rl8U0


「戦争とはつまり数だ。聖杯戦争の主役がサーヴァントであることは言うまでもないだろう。
そのサーヴァントの数を増やせるのは一見して完璧な必勝法に見えるが……それを見た第三者がどうするか、というところまで考える必要がある。
仮令サーヴァントが一騎手に入ったとしても、他の陣営が四組、五組と大同盟を組んで攻め入られればどうにもならない。
この陣地にしてもそうだ。堅城や強固な要塞ほど時に容易く陥落することがあるのは歴史が証明している」
「確かに理屈の上ではそうかもしれませんが……誰もが敵という状況下でそのような大規模な同盟が成立するものでしょうか?」
「少なくとも私はそれを実現した者たちによって一度殺されかけた。
襲撃は誰にも事が露見しない状況にならない限りは見送る。これは絶対条件だ、良いな」


現代戦では情報を制する者が戦を制する。
貴虎はジャスティス鹵獲を秘密裏に遂行することが何よりも肝要と確信していた。
知られれば危機的状況を招くが、逆に言えば誰にも見られず作戦が成功すれば巨大な情報アドバンテージを得られるとも言えるのだ。


「……わかりました。それからマスター、一つ許可を頂きたいことがあるのですが」
「何だ?言ってみろ」
「知っての通りマスターはサーヴァントを失い令呪も無くなれば脱落、死を迎えます。
私達が白亜のサーヴァントの奪取に成功した場合マスターの少女は当然脱落となります。
ですが、一般人同然とはいえサーヴァントに魔力を捧げられるのならこれを利用しない手はありません。
レイラインに細工を施し疑似令呪と接続すれば聖杯に未だマスターであると誤認させ白亜のサーヴァントに魔力を供給させ続けることができるかもしれません」
「何だと!?それに、疑似令呪とは一体何だ?」


貴虎が今にも掴みかからんばかりの勢いで食いついた。
当然だ。こうも立て続けに聖杯戦争の根本を覆す提案をされれば混乱の一つもする。


「疑似令呪とは端的に言って私がマスターの令呪を解析して作った令呪の複製品です。
さすがに本物の代用品として使える段階には達していませんが魔術に素養のない一般人に埋め込めば任意の指令を確実に実行させることができます。
これを一般人の元マスターに宿し、サーヴァントとの魔力供給のラインと接続すれば生かしたまま魔力を提供する人形とできるかもしれません。
無論失敗に終わる可能性も低くはありませんが、最悪でも次につながるデータは確実に得られます」


975 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:52:07 vZG1Rl8U0


貴虎の顔が綻んでいくのがありありとわかった。
彼は聖杯戦争に参加するマスターの命は諦めるしかないと諦念していた。
しかしもしキャスターの言う策が結実するなら少なくとも何人かのマスターの命は奪わずとも良くなる。
引いては光実を殺す必要がなくなる、というこの上ない希望にも繋がってくる。


「そうか、そうか……!わかった、その時が来たら是非実行してくれ。
徒労に終わる可能性も否めないが試す価値は十分ある。頼んだぞ」
「はい」


貴虎はキャスターがフードの下でほくそ笑んでいることに気づかなかった。
この提案にキャスターの邪な趣味が隠されていることに。


(ふふふ、あの娘は最上とはいかないまでも中々良い素材だもの。
着飾らせてやればさぞ見栄えするでしょうね。ただでさえ仕事が多いのだから少しぐらい息抜きをさせてもらわないとね)


キャスターは可愛らしい外見の少女や可愛い服装を好む。
自分では似合わないと思っているためしないがそういった少女をコーディネートしたいと思っていた。
キャスターが今回目をつけた少女、前川みくは直球ストライクとまではいかないまでもそれなり以上に良い「素材」であった。

故にキャスターは疑似令呪を用いた実験を可能な限り成功させたいと思っていた。
そこに人間らしい情はないが、女としての趣味と欲望は確かにあった。



【MIDTOWN COLUMBIA PT/1日目 午前】
【呉島貴虎@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]黒のスーツ、魔力避けのアミュレット
[道具]黒いコート、戦極ドライバー、各種ロックシード
[所持金]現金十五万程、クレジットカード(ゴールド)
[思考・状況]
基本:慎重に立ち回りながら聖杯戦争を勝ち抜く
0 光実を殺さずに済むのなら……
1 状況を見て白亜のサーヴァント主従(前川みくとジャスティス)を襲撃するか決める
2 グラスホッパーと武装勢力(志々雄真実の一派)の争いを静観し、マスターやサーヴァントの情報を手に入れる
3 自分がマスターであることとキャスターがユグドラシルに潜んでいることを極力知られないようにする。特にグラスホッパーの監視には注意を払う。
4 準備が十分に整ったら打って出る。その際は斬月に変身して正体を隠す。
5 できるだけ市民(NPC)に無用な犠牲を出したくはないが……
6 凌馬がサーヴァントとして存在するならば決着を着けなければならない。
7 今後自宅に帰るべきか、帰らないべきか……
[備考]
※所持ロックシードの内訳は以下の通りです
メロン、ヒマワリ×4、マツボックリ


976 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:52:46 vZG1Rl8U0

※キャスター(メディア)の魔術によって肉体及び斬月の機能を強化できます。
強化魔術が働いている間はサーヴァントにダメージを与えることができます
※ユグドラシル・コーポレーションの情報網から聖杯戦争に関係する情報を集めています
※グラスホッパーの内部にマスター、サーヴァントがいると考えています。
またそのサーヴァントは戦極凌馬ではないかと考えていますが確証までは掴んでいません
※武装勢力の頭領(志々雄真実)がマスターであることを把握しました
※呉島光実、前川みくがマスターであることを把握しました
※ヘルヘイムの森及びインベスの存在を認知しています。これについては聖杯が意図的にヘルヘイムを再現したのではないかと考察しています
※魔力避けのアミュレットはDランクの対魔力に相当する効果を得られます
※現在前川みく、アーチャー(ジャスティス)を襲撃する計画を練っています。
ただし何らかの理由で秘密裏に実行することが困難だと判断した場合襲撃は見送られます
※ライダー(バットマン)、アーチャー(暁美ほむら)、アーチャー(ジャスティス)のステータスと一部スキルを確認しました



【キャスター(メディア)@Fate/stay night】
[状態]健康
[装備]ローブ
[道具]ヘルヘイムの果実(大量)、杖、ルールブレイカー、量産型戦極ドライバー
[所持金]貴虎に依存
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れ、受肉を果たし故郷に帰る
1 今は貴虎の采配に従う
2 白亜のサーヴァント主従を鹵獲するための準備を整えつつ監視を怠らないようにする
3 陣地の構築や監視網の形成、ヘルヘイムの果実の解析、魔力炉の製作を進める
4 状況次第では貴虎を見限る………?
5 仕事が多いので潤いが欲しい
[備考]
※ユグドラシル・コーポレーションの地下区画に陣地を形成しています。
今はまだ工房の段階ですが時間経過で神殿にランクアップします 。
また工房には多量の魔力がプールされています
※陣地の存在を隠蔽する魔術が何重にも敷かれています。
よほど感知能力に優れたサーヴァントでない限り発見は困難でしょう
※現在ヘルヘイムの果実の解析を行っています。
解析に成功すれば果実が内包する魔力を無害な形で直接抽出できるようになります。
またさらに次の段階としてヘルヘイムの果実を材料とした魔力炉の製作を行う予定です。
※ユグドラシル・コーポレーションの支社長をはじめとした役員、及び地下区画に出入りする可能性のある社員、職員に暗示をかけ支配下に置いています
※使い魔による監視網を構築中です。
現在はユグドラシル・コーポレーションを中心としたゴッサムシティ全体の半分程度ですが時間経過で監視網は広がります
※グラスホッパー、武装勢力(志々雄真実の一派)、呉島光実、前川みく以外のマスター、サーヴァントに関わる情報を持っているかは後の書き手さんにお任せします
※魔力避けのアミュレットを貴虎に渡しました。
時間をかければより高品質な魔術礼装を作成できます。
※アーチャー(ジャスティス)対策のために精神防御に特化した魔術礼装の製作に着手しました。夜間の時間帯には完成する予定です。
※グラスホッパー所有のヘルヘイムの果実を保管する倉庫を襲撃し、大量のヘルヘイムの果実と戦極ドライバー一基を奪取しました。
※ウェインタワーの上にいたサーヴァント(ジェダ・ドーマ)を視認しました。


977 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:53:27 vZG1Rl8U0









「これはまた随分綺麗にやられたものだねえ」


ヘルヘイムの果実を保管、集積していた倉庫が何者かに襲撃された。
その凶報はすぐにグラスホッパー会長、犬養舜二の下に届いた。
サーヴァントが関わっていると直感した彼はキャスター、戦極凌馬を連れて現場の検証へと赴いた。
倉庫内部を検分したキャスターの第一声がこれであった。


「ただ内部を荒らさず果実を盗み出しただけじゃない。
仕掛けておいた監視カメラ、防犯センサーの類も見事に破壊されている。
というより、電源ケーブルが綺麗に切断されている」
「どうやら警備に当たっていた団員たちは誰も何も覚えていないらしいんだ。
今不審人物の目撃情報も募っているけど今のところ収穫はないね」
「だろうね。犯人がキャスターのサーヴァントならそんな手抜かりは期待するだけ無駄だよ」


ヘルヘイムの果実はグラスホッパーの今後の戦力に関わる重大なファクターの一つだ。
それが大量に盗まれたにも関わらず彼らは至って平常そのものであった。


「君が予想した通りだったみたいだね、キャスター」
「出来れば的中してほしくないタイプの予想だったけどね。
全く、聖杯戦争じゃ悪い予感ほどよく当たるジンクスでもあるんじゃないかと思ってしまうよ」
「けれど、これでハッキリした。僕たちにとって最悪の相性に当たる正統派の魔術師のサーヴァントが存在している」
「ああ、今の段階でそれがわかって良かったよ。
倉庫一つ分の果実を餌に使った甲斐があったというものさ」


そもそも今回生じた損害は彼らにとって予め予期された、想定内のことでしかない。
サーヴァントとなった戦極凌馬はヘルヘイムの果実が濃密な魔力を帯びていることに気づいていた。
であれば、自分たち以外に果実を利用した戦略を企てる者が出てくることは必定だ。

中でも最も可能性が高いのが自身と異なり、魔術を操る正道のキャスターだ。
同時にサーヴァント、戦極凌馬にとって最も相性が悪いタイプの敵である。

キャスターとしての戦極はドライバーやロックシードの量産を得意としている。
グラスホッパーの人海戦術と組み合わせることで対魔力を持つ三大騎士ですらアーマードライダーの物量で揉み潰すことが可能となる。
キャスターはセイバーら三騎士に弱い……そんな聖杯戦争の定理を覆す常識外れの英霊であるが代わりに絶大な弱点を抱えていた。


978 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:54:09 vZG1Rl8U0
それは現代出身の科学者であるが故に魔術を知らず、魔術に抗する術を一切持たないということだ。
各クラス一騎ずつの尋常な聖杯戦争なら致命的と呼べるほどの弱点にはならなかった。
だがこのゴッサムには複数のキャスタークラスのサーヴァントが存在する。
その事実は戦極にとって何よりも恐るべき脅威であった。

故に、戦極と犬養は逆転の発想を実行に移した。
敵キャスターが果実を狙う可能性が高いのなら、奪わせてしまえばいい。
ゴッサムの複数個所に設置された果実の一時保管用の倉庫はキャスターを炙り出すリトマス試験紙の役割を果たす。

自分たちがキャスターに直接対抗する術を持たずとも、そういう存在がいると確信できれば手を打つことができる。
彼らは何よりも「正統派のキャスターがゴッサムシティにいる」という情報をこそ欲していた。


「果実に取り付けておいた発信機は?」

備えとして用意しておいた発信機はしかし戦極の手にあった。

「この通り、返却されてしまったよ。
どうやらこのキャスターは現代の機械についての知識も身に着けているらしいね。
マスターとの関係が上手くいっているのか、魔術で操り人形にしているのかまでは知らないが」
「白昼堂々の犯行なのにここまで足跡を消せるなんて……」
「ああ、間違いなく強敵だね。最悪神代クラスの魔術師ということもあるかもしれない」


どんな僅かな痕跡も見逃さないよう慎重に現場検証を続けていく。
直接正体を探り当てることはできずとも、考えることをやめてしまうことはできない。


「だとすると人海戦術で工房を探そうとしても無駄、かな」
「だろうね。一般人のガサ入れなんてキャスターじゃなくても魔術師なら簡単に追い払える。
というか工房の場所がわかったとしても私達じゃどうしようもないよ。
アーマードライダーは物理的な攻撃には強いが魔術にはどうしようもなく弱い」


何とも絶望的な話であるが、これは最初から覚悟していたことだ。
だが、わかっているのなら次の方針もまた明確だ。


「今必要なのは……他のマスターとの対外交渉」
「そう。探知能力に長け、対魔力に優れるサーヴァントを従えたマスターと同盟を組むべきだ。
アサシンや魔術の見識が深いサーヴァントという手もあるがこっちにその力を向けられるリスクを考えると次善にするべきだろう」


グラスホッパーは大規模な組織であり、よく目立つ。
逆に言えばそれだけ敵も多く、最近勢力を拡大しているというマフィアなどはその最たるものだ。
戦極の能力を以ってしても全ての敵に対処しきることはできない。


979 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:55:03 vZG1Rl8U0

故に必要なのは自分たちにない能力を持ったサーヴァントを擁する陣営だ。
戦極ドライバーに団員たちによる諜報網……交渉材料に使える要素には事欠かない。
逸早く望む能力を持つサーヴァントを従えたマスターと組み、早急にキャスターを叩きたい。


「…………」
「どうしたんだい、マスター?何か気になることでも?」


顎に手を当て思索に耽る犬養に問いを投げる。
すると彼は珍しく歯切れが悪そうに口を開いた。


「うん、何というか……このキャスターの手口は女性的に思えたんだ」
「ほう?その心は?」
「必要もなく倉庫や物を壊して回る真似はせず、警備していた団員も魔術で昏倒させるだけで済ませた。
それにカメラやセンサーへの対処もひどく繊細……そう、全体的に手口がとても繊細なんだ。
確固とした根拠はないのだけど男性の犯行とは思えなかったんだ」


語る口調に普段の自信はない。彼自身がこの主張に確信を持っていないからだ。
しかし意外にも戦極は非論理的な犬養の考察を無下に否定しなかった。


「いや、案外その発想は重要かもしれないよ。
どんな科学も発明もインスピレーションなくしては始まらない。私はそういう直感を否定しない。
確かに根拠はないが、頭の隅には入れておいて損はないんじゃないかな?」


と、その時犬養のスマートフォンが鳴った。
話を中断して応対するマスターの様子を戦極はじっと眺めていた。


「……わかった。彼に向ってもらおう。それじゃあ」
「どうしたんだい?」
「UPTOWNの中心部に特別強力なインベスが出たらしい。
だから君が薦めた彼に出動してもらうことにしたよ」
「ああ、彼か。彼ならインベス如きに遅れを取ることはないだろうね。
素養があることは最初からわかってるし、この間手配した切り札もある」
「確か、小玉スイカ…もといウォーターメロンだったかな?」
「うん、昔スイカアームズのプロトタイプとして作ったやつの改良型だよ。
……まあ、個人的にあれを改良とは認めなくないけどね。あんなのただの量産向けにデチューンしたものに過ぎないよ」


彼ならばゲネシスコアの性能を引き出せることは生前の経験で知っているが機密の関係上渡すわけにもいかない。
その代替品として用意したのが数々のロックシードを開発したノウハウを駆使して出力を落とす代わりに装着者への負荷を軽減し安定性を増したウォーターメロンアームズだ。
元々は呉島貴虎ぐらいしかまともに動かせなかったじゃじゃ馬だがこの改良によりグラスホッパー内の一部のエースなら扱える程度になった。

戦極凌馬は聖杯戦争関係者を探す際、彼を最も苦しめた人間の一人を指定しなかった。
その人物は沢芽市においてどこまでもユグドラシルに噛み付き次々と新たな力を手に入れていったにも関わらず、だ。

それも当然だろう―――最初から身内にいるのならわざわざ調査する必要もないのだから。


「これだけ先行投資したんだ、精々役に立ってほしいものだね―――葛葉紘太君」


980 : 魔術師と科学者 ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:55:43 vZG1Rl8U0


【MID TOWN COLGATE/1日目 午前】

【キャスター(戦極凌馬)@仮面ライダー鎧武】
[状態]健康
[装備]ゲネシスドライバー
[道具]レモンエナジーアームズ
[所持金]マスターの犬養に依存
[思考・状況]
基本:聖杯が欲しい
0 キャスターには早々に退場してもらおう
1 ゲネシスドライバーの制作に取りかかってみるか
2 マスターには死んで貰っては困る。専用にチューンアップしたゲネシスドライバーを装備して貰う
3 精々働いてもらおうか、葛葉紘太君
[備考]
※キルプロセスの開発を終えています。召喚された時以降に制作した戦極ドライバーにもキルプロセスは仕込んでいますが、生前開発したものについては仕込まれていません
※犬養専用のゲネシスドライバーを制作しようとしています。性能はもしかしたら、斬月・真よりも上になるかもしれません
※ゴッサムシティに生前関わり合いの深かった人物四人(呉島兄弟、シド、湊)がいる事を認識しております。誰が聖杯戦争参加者なのかは解っていません
※召喚されて以降に開発した戦極・ゲネシスドライバー双方は、イニシャライズ機能がついており、転用が不可能になっています。もしかしたらキャスタークラスなら、逆に解析して転用が出来るようになるかも知れません
※主だったグラスホッパー団員達には既に戦極ドライバーが行き渡っています
※トノサマンモチーフのアーマードライダーが作れなくて残念そうです
※ウォーターメロンロックシード(改良型)を製作しました



【犬養舜二@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]スーツ
[道具]
[所持金]大量に有していると思われる
[思考・状況]
基本:聖杯戦争と言う試練を乗り越える
1 解っていたが、凌馬は油断できない
2 あと、趣味が悪いのかも知れない
3 魔術を操るキャスターに対抗できるマスターと同盟を組みたい
[備考]
※凌馬からゲネシスドライバーを制作して貰う予定です。これについては、異論はないです
※原作に登場したエナジーロックシードから選ばれるかもしれません。何が選ばれるかは、後続の書き手様に一任します
※もしかしたら、自分達が聖杯戦争参加者であると睨まれているのが解っているかもしれません
※凌馬が提起した、凌馬と生前かかわりのあった四人を警戒する予定です
※キルプロセスについての知識を得ました
※倉庫を襲ったキャスター(メディア)の手口を女性的だと考えています
※現在グラスホッパーの主力ロックシードはマツボックリです。
時間経過に従ってオレンジ、バナナ、ブドウ、メロンといったクラスAのロックシードに更新する予定です
※グラスホッパーに葛葉紘太が所属しています。
オレンジ、パイン、イチゴ、サクラハリケーン、ウォーターメロンのロックシードが支給されています


981 : ◆4jULo8RMS2 :2015/09/10(木) 21:56:19 vZG1Rl8U0
投下終了です


982 : ◆1k3rE2vUCM :2015/09/11(金) 02:06:06 XMeq8LSg0
投下乙です。
やはりアーマードライダー部隊となれば主任もすぐに敵の正体に気付きましたか
遠隔視を利用した観察や魔力炉の生成は魔術師であるメディアならではの策略ですね
着々と外堀を埋めていく主任陣営は他の主従にとって相当厄介な相手になりそうだ…
主任陣営が天敵同然であるグラスホッパーも着々と戦力を固めてて今後が気になる所

ただ少し気になったのですが、「ヘルヘイムの果実ひとつで魔術師一人分を越える魔力量」はちょっと多すぎじゃないかな?と思いました
理屈は作中で言及されていますが、メタ的には街の至るところに生息しているヘルヘイムの果実ひとつでそこまでの魔力を得られるのは流石にライダー勢が戦力面・補給面で有利になり過ぎるんじゃないかなぁと
個人的には「果実一つだけでは微々たる量だが大量に用意すればそれなりの魔力量になる」くらいが丁度いいんじゃないかなと思います


983 : ◆4jULo8RMS2 :2015/09/11(金) 14:44:51 rxklGD.Q0
感想、ご指摘ありがとうございます
ヘルヘイムの果実の魔力量については悩んだのですが原作で何度も強い効力を示す場面があったこと(デェムシュの強化や戒斗の進化等)、戦極MOVIE大合戦で魔法使いである仁藤がキマイラにファントムの魔力の代用品として与えるために採取していた描写からこのようになりました
ですが、ご指摘の通り見直すと確かに多すぎたように思えます
wikiに載せる際、果実の魔力量を「三つで現代の魔術師一人分弱」という形に修正したいと思います
これでも多すぎると思われる向きはあると思いますがあまりにも弱めすぎると原作での描写やデスドレインが目をつけた描写への説得力が失われかねませんのでどうかご容赦下さい


984 : ◆1k3rE2vUCM :2015/09/11(金) 15:46:33 XMeq8LSg0
了解です。
指摘への返答と対応ありがとうございます。


985 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/13(日) 03:57:01 7/oSlkco0
投下乙です。
魔力の貯蓄のみならずジャスティスへの対策も張っておくとは流石はキャス子。
貴虎の経済力も相まって相当な強敵となりそうですな。
そして天敵を前に犬養組はどう動くのか、気になる所です。

ただ、気になる点が数点ほど。
まず「黒影トルーパーに無双セイバーが装備された」という点ですが、流石に原作から逸脱した描写ではないかと。
それが可能であればどうして原作ではやらなかったのかという話になってしまいますし。
それともう一点、量産型の戦極ドライバーにイニシャライズ機能は存在しません。
以上の二点の修正をお願いしたいです。

最後にお願いしたいのですが、NPCとしての葛葉紘汰の登場を取り下げてはもらえないでしょうか?
理由は諸々の事情で言えませんが、彼が街に存在する事自体が非常に面倒な事態になりかねないのです。
大変申し訳ありませんが、御対応のほどよろしくお願いします。


986 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/13(日) 04:08:41 7/oSlkco0
すみません、イニシャライズ機能は前話の時点で明記されてましたね。その点は修正しなくても大丈夫です。


987 : ◆4jULo8RMS2 :2015/09/13(日) 07:36:23 lYu7sWCw0
◆JOKERxX7Qc氏
感想、ご指摘ありがとうございます
ご要望に従い葛葉紘汰の登場については取り下げたいと思います
トルーパー隊への無双セイバー支給についてですが、これに関しては作中での説明が足りない形となってしまっていました
何故無双セイバーを出したのかと言えば、端的に言って「聖杯戦争という状況下で戦極凌馬なら恐らくこうするだろう」と考えたからです

まず無双セイバーは(邪武や武神鎧武などの例外を除けば)鎧武、斬月のみが装備する、ロックシード由来ではなくベルトに付属している(と思われる)武装です
他の戦極ドライバーには基本的に付いていないので、開発者である戦極なら当然無双セイバーの有無は自由に決められるでしょう
ですが原作では貴虎及びユグドラシルの総意として「量産型ドライバーは数の確保を優先する」という描写がありました
この状況では余計にコストを嵩張らせる無双セイバーを量産型に付けるなどできるはずもないでしょう
ですが聖杯戦争という状況では全く話が違います
「人類を一人でも多く生存させるために数を絶対的に優先してドライバーを生産する」のではなく「純粋な戦争のための兵器」として戦極ドライバーを量産しています
つまり数を揃えればそれで良いというわけではなく、優勝狙いならある程度質にも気を配る必要性が出てくるのです
その観点からすればロックシードのランクに関わらず装備可能で射撃攻撃が可能且つ一部のアームズウェポンとの拡張性がある無双セイバーを付属するのは戦極の立場からすれば当然の発想ではないかと考えました
結論を言えば「イニシャライズ機能、キルプロセスを搭載したのと同じで聖杯戦争という状況で必要な一手である」という認識です
ですがこれは無双セイバーの取り下げに応じられないということではありません
氏がやはり問題ありと判断されるのであれば無双セイバー支給については取り下げたいと思います
長文失礼しました


988 : 名無しさん :2015/09/13(日) 20:54:45 bcua8Cvk0
それを本文に書くべきだったのでは?


989 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/14(月) 03:54:27 xCOZ/Cpo0
返答と対応ありがとうございます。
ただ、やはり無双セイバーの支給には疑問を覚えるので取り下げてくれると幸いです。


990 : ◆4jULo8RMS2 :2015/09/14(月) 22:59:30 Jritx3420
了解です、ここ最近リアルが忙しかったため修正作業にはまだ時間がかかりそうです
もうしばらくお待ち下さい


991 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/18(金) 03:24:58 RlQuAcLM0
ヤモト・コキ&ランサー(乃木園子)
ディック・グレイソン&アーチャー(ジョン・『プルートー』・スミス)

予約します。


992 : 名無しさん :2015/09/19(土) 15:52:49 NrniuEZY0
そろそろ次スレかな?


993 : ◆4jULo8RMS2 :2015/09/20(日) 14:16:10 smNVHkvo0
wikiへ修正作を投下しました
時間がかかってしまい大変申し訳ありませんでした


994 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/22(火) 01:00:37 0inwW.jY0
修正乙です。これなら問題ないかと。次スレの方はその内立てておきますね。

予約を延長します。


995 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/26(土) 00:42:05 VAsUT1gY0
申し訳ありません、投下はあと一日だけ待って下さい。


996 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/26(土) 23:24:33 hsQAAAjI0
新スレ立てときました。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1443276914/l50


997 : 名無しさん :2015/09/27(日) 00:53:01 a9A6pMPA0
お疲れ様です


998 : 名無しさん :2015/09/27(日) 01:18:50 PIdQmHGk0
こっちは埋めるべきかな


999 : 名無しさん :2015/09/27(日) 01:22:58 xjPKO5Ko0
埋め


1000 : ◆JOKERxX7Qc :2015/09/27(日) 01:24:49 TyU20M6w0
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三三三三三三彡巛ゞヽi!iヽミヾソノヾzyミノミヘソヾノヽi!(!三三三三三三三
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