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夢現聖杯儀典:re

1 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:19:26 jP62e8CQ0
             
       








――やり直したい過去、ありますか?


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2 : Epilogue-できない■■が、くり返す- ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:21:05 jP62e8CQ0
青空。炎。粉塵。真実。願い。最後。破壊。世界。人形。管理。崩壊。終了。聖杯。
聖杯戦争は、最後の勝者が残ったことを確認すると共に終わりを告げた。
後は、勝者に聖杯の祝福が授けられるのみ。
勝者は、薄汚れた願い事を携え、黄金の螺旋階段を登っていく。
一歩、一歩。噛みしめるように、ゆっくりと足を階段へと落とす。
ふと、視界を下に向けると、総てが崩壊した街並みが広がっている。
悲鳴と怨嗟の声が耳に響く。頬を撫でる風が、肌をざわつかせ、焼け焦げた肉の臭いが生の実感を感じさせる。
それとは裏腹に、見上げた空は何処までも広く、青かった。
叶うなら、この空の向こうまで飛んでいきたいとさえ思ってしまう程に、綺麗だ。

綺麗過ぎて、涙が出た。

此処に辿り着くまで喪ったものは多かった。
この街は優しさも甘えも簡単に奪い去る狂気の戦場だ。
培ってきた常識も、築いた信頼も、現実を蝕んでいく。
それでも、勝者として君臨した彼/彼女は抗うことをやめなかった。
「戦わずとも願いは叶うかもしれない」といった甘く蕩けた言葉を退廃した世界でも声を大にして叫ぶのだ。
夢や理想、想いこそが尊ばれる王道の御伽話。
そんな、未来を夢見て戦った。
抱いた想いは簡素なれど、真っ直ぐだった。絶対に護りたいと焦がれた輝きだった。
客観的な視点、理想と現実の溝に生まれた齟齬を前にしても、曲げれぬ約束が今も胸で煌めいている。
それは、残酷な現実に身を浸しても、変わらないはずだった。
綺麗なままで前へと進み、純白な願いに殉じたい。
けれど、聖杯戦争はそれを許さない。
埋められない溝があることを、理解せざるを得なかった。

戦わなければ、生き残れない。

彼/彼女も最初こそ過去の残滓を捨て切れずに、理想と夢を追い続けていた。
一週間。彼/彼女がこの世界で戦った日数だ。
長いか、短いか。人によってその判断は分かれるが、彼/彼女にとっては永遠の刹那にも感じられるひとときだった。
出会って、育んで、別れて。そして、また出会う。
幾つもの出会いと別れを乗り越えて、走り続けたこの時間は何にも替え難い。
信じた想いに嘘はない。駆けた刹那は、胸に強く刻まれている。

例え、最後に残ったのが自分だけであろうとも。

思いは届かない。永遠は続かない。
正義の味方といった王道のヒーローに、彼/彼女は相応しくなかった。
淘汰され、絶望に濡れた過去は甘さを捻じ曲げる。

無くした、愛しい甘さ。

意地っ張りで負けず嫌いな彼/彼女は、それでもと足掻き、悶え苦しみながらもそのままで貫こうとしたが――叶うことは終ぞなかった。
そもそも、当然の話だ。最後の一人になるまで願いは叶わない。
参加する者は大なり小なり願いを抱えて運命の夜へと飛び込んできたのだ。
確実な未来が見えている道を取るか、それとも果てが見えぬ不明瞭な道を選ぶか。
どちらが好まれるかなんて、わかりきった答えだ。
けれど、自分を曲げるといったことだけはどうしてもできなかった。
せめて、この思いだけは誰にも譲らない。不退転の想いを胸に、彼/彼女は階段を登り続けた。
凝り固まった悔恨と願いに囚われた彼/彼女は、振り返る気力が湧かない程、視界を失っていた。
現実は苦く、恐怖感を煽り、熱を帯びた頬が痛い。


3 : Epilogue-できない■■が、くり返す- ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:22:24 jP62e8CQ0

一日。二日。三日。四日。五日。六日。七日。日が経つに連れて、彼女の傍からは人がいなくなっていった。

七曜の総てを巡り終える頃、世界はヒビ割れていた。
欲しかったのはハッピーエンドだ。ほろ苦い諦めなど、願い下げだった。
足掻いて、否定する。誰もが認めるハッピーエンドを勝ち取り、輝かしい未来をこの手で勝ち取ってこそ、価値がある。

不屈の意志が、理想を削っていくのも知らずに。

どれだけ想いを突き詰めようとも、人にできることは限られている。
命は簡単に霞み、追い詰められた心は脆くも粉々になっていく。
数多くいた仲間達とたった一人の“自分”。
結局、最後は一人だ。定められたルールには抗えず、運命は勝者を選定する。
それを考えると、乾いた笑い声が口から漏れ出した。

何が出来た? 過ぎた理想を抱いて、意地を張って――意味はあったのか?

陥った自責の念に、彼/彼女はほんの少しだけ足を止めてしまった。
小さな綻びであったけれど、一瞬だけ思慮してしまう。
諦めてしまえ、と。
甘えに揺らいでしまえ、と。
もう、終わりにしてしまえ、と。
真っ直ぐな願いを無理に貫こうとしなくてもいいではないか。
ほんの少しだけ、“妥協”を覚えたら、今の苦境も解決だ。

けれど、彼/彼女が引いた境界線はその選択肢を通さなかった。

理屈ではわかっているし、今の自分が抱いているのが未練がましい感情論だということも承知の上だ。
全てを救える力なんて無いし、護り切れたものなんて数少ない。
一人の人間としてどうしようもなく、彼/彼女は愚直に過ぎたのだ。
拭えなかった後悔がある。踏み出した勇気がある。
いつか夢見た世界に辿り着く時まで。

階段を登り切り、聖杯へと手を伸ばす。

結局の所、彼/彼女は喪ったものの大きさ、耐え切れないだけだった。
意地を張り続ける理由など、知れたことだ。
もう一度――貫きたい。
きっと、その結末は変わらないかもしれない。
最後まで抗って、戦って、その果てで見つかるものが、正しいのか。
その答えが見つからないからこそ、彼/彼女は納得できるまで、何度でも繰り返す。
故に、聖杯に願った。

「やり直したい」

世界は流転し、再び始まりの時へと巻き戻る。


4 : Epilogue-できない■■が、くり返す- ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:23:13 jP62e8CQ0









         












さあ、聖杯戦争をまた一から始めよう。












5 : Epilogue-できない■■が、くり返す- ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:25:08 jP62e8CQ0
【ルール】

・版権キャラによる聖杯戦争を行うリレー小説です。

・参加者は【一週間】という期限の中で、【偽りの世界】で最後の一組になるまで殺し合います。

・期限が過ぎると、【偽りの世界】は参加者を巻き込んで滅びます。

・ある程度のモラトリアム期間(数日)が終わった後、各参加者に告げられる開催のアナウンスと同時に期限のカウントダウンは開始されます。

・上記の通り、その間に何をしてるかなどといった細々設定は登場話候補に盛り込んでもオッケーです。

・記憶操作についてはまあ、個々人バラバラでいい設定です。

・主従の数は大体20程度を想定しています。

・基本的にクラスの偏りは気にしていません。バッチコイ、エクストラクラスってノリです。

・登場話候補が投下されない場合、のんべんだらりと私がバコバコ投下します。

【設定】

・舞台は聖杯が【誰か】の願いを叶えた【偽りの冬木市】です。

・此度の聖杯戦争の根幹には【やり直し】が関わっていますが、参加者が深くやり直しを望んでなくても大丈夫な感じです。

・聖杯から毎日深夜の0時に【カウントダウン】が行われます。

【時刻設定】

午前(6〜12)
午後(12〜18)
夜(18〜0)
夜(0〜6)


【簡素な質問と回答】

・登場話候補の募集についていつまでよ? 好きなキャラだったら何でもいいの?

とりあえず、4月の始まり〜中旬までを予定してます。
締め切りを早めるとしても、数日前に連絡します。
投下する主従は、自由です。
書きたいものを書けばいいというスタンスでいきます。

・本編書きたくなったんだけど、予約期限は? 自己リレーとかは?

予約期限は10日+延長4日、自己リレーはどうぞどうぞという感じです。
細々とやってくことになると思うので、遠慮はいらないと思います。

・その他の設定やどんな女の子男の子が好きだったりなどといった質問があればお気軽にどうぞ。


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6 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:28:23 jP62e8CQ0
早速ですが、一例として登場話候補的なやつを投下します。


7 : 水本ゆかり&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:30:59 jP62e8CQ0
アイドルという夢よりも、綺麗な音を響かせ世界を魅了するよりも。
大切なものができてしまった。

「きっと、初恋でした」

水本ゆかりは【恋をした】。
相手は、自分を輝きの舞台へと引き上げてくれたプロデューサー。
屈託なく笑う彼の笑顔が、好きだった。

「どうしようもなく、私は彼のことが好きだったんです」

彼はゆかりにたくさんの幸せをくれた。
幼少から音楽に携わっていたが、彼のお陰で新たな世界を見出すことが出来た。
光り輝く舞台の上で、人達に笑顔を届ける。
数年前の自分では想像もできない楽しいこともあったし、可愛い衣装をたくさん着ることもできた。
それも全て、彼がいてくれたから。
彼が自分の手を引いて一緒に歩いてくれたから。

「傍にいてくれるだけでよかった。
 アイドルとしてだけではなく、【水本ゆかり】を見てくれたあの人に私は心を奪われていたんです」

季節が変わっても、彼との関係は変わらなかった。
アイドルとプロデューサー。それ以上でもそれ以下でもない。
ゆかり自身、ここから先に進みたいという気持ちもあったが、自制した。
彼はプロデューサー、責任の重い立場だ。
自分が恋慕し、彼を困らせることはあってはならない。
だから、何も言わずにいた。胸に秘めた想いに封をして、そのままを維持しようと決めた。

「ずっと、ずっとずっと一緒にいたかった。この先もあの人は私の手を引いてくれると思っていた」

時間が止まってしまえばいいのに。
この一時が永遠になればいいのにとすら感じた。
あの【事故】さえなければ、幸福な刹那が今もしれない。

「プロデューサーさんが守ってくれなければ、私は今もこうして生きていなかった」

ありふれた話だ。
いつもはタクシーなどを利用して仕事から帰るが、たまには二人で歩いて帰ろうとゆかりが提案したのが間違いだった。
彼もゆかりも、最近面白かった出来事、何処其処の喫茶店のケーキが美味しいといった世間話に花を咲かせていた。
そして、【たまたま】飲酒運転の車が突っ込んで来て――。

「私の過ちをやり直したい」

宙を舞う彼の身体。
飛び散った血飛沫とひしゃげた足。
弱々しく震わせ、徐々に動かなくなっていく恐怖。

――彼は、ゆかりを庇って車に跳ね飛ばされた。

血塗れの手を握り締め、何度も呼びかける。
けれども、彼は握り返してくれなかった。

「護ってくれると言ったあの人を、信頼に報いてくれたあの人を――今度は私が救う」

もう彼を救うには奇跡に縋るしかない。


8 : 水本ゆかり&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:32:28 jP62e8CQ0

「だから、力を貸して下さい。アサシン」

ゆかりの視線の先にいるのは、皺くちゃな顔をした老人だった。
何処にでもいる普通の人間に見える彼だが、サーヴァントとして呼ばれたからには当然常人ではない。

「……一つだけ、問いたいことがある」

アサシン――シルベストリ。
彼はそもそも人間ではなかった。
自動人形と呼ばれる機械仕掛けの操り人形は、依然として態度を変えずにただ言葉を続ける。

「【アイドル】という職業は人を笑顔にするものだと記憶しているが、笑顔の成す意味とは何だ」

笑顔を研究し、人間を知りたがった彼は此度の戦で呼ばれたことに不満はない。
仕える主こそ違うが、剣を振るおう。

「ミズモトユカリと言ったな。私を満足させる答えを、君は持っているのか」

弱く浅ましい存在である人間は、どれだけ強くなれるのか。
そして、人々を笑顔にする偶像の職業に就いてる彼女はどれだけ【寄り添う】ことの大切さを感じているのか。
シルベストリは、それが知りたかった。

「笑顔は、大切な人と過ごす時に自然と浮かぶんです。
 好きな人といる時なんかは、蕩けるような感じだったり、ですね」

眼前の彼女は、自分に対して怯えこそすれど退くことはしない。
自分が投げかけた問いかけにも頭を必死にこねくり回して答えようとしている。

「それぐらい、大切なんですよ」

少しはにかむように答えた彼女の横顔は、いつの日かみたスズランの少女のように見えて。

「…………そうか」

満足のいく解答とは言えなかったが、何故か脳裏に強く刻まれたのだ。


9 : 水本ゆかり&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:33:17 jP62e8CQ0


【クラス】
アサシン

【真名】
シルベストリ@からくりサーカス

【パラメーター】
筋力B 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具E

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】

気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。

【保有スキル】
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

戦闘続行:A+
自動人形は身体を壊されようとも、最後まで戦い続ける。
シルベストリは答えを得るまでは止まれない。

心眼(真):B
 自動人形でありながらも得ている戦闘論理。窮地において活路を導きだす。
 また、視覚に頼らずとも空間の把握がある程度は可能となる。

【宝具】

『Empty Blade』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

体内に内蔵された超絶技巧の剣技に耐え抜く剣の数々。

【weapon】
左手及び、身体に内蔵された剣。

【人物背景】
老人の姿をした自動人形。居合を得意とし、自動人形の中では伝説となる程の剣の使い手。
人間社会の中で「笑い」を研究し、考察している。
彼は常に答えを求めている。人間とは、笑顔とは、寄り添い生きる意味とは。
総ての答えを得た時、彼は心から【笑える】のかもしれない。

【サーヴァントの願い】
答えを得る。ゆかりを見届けることで、何かが理解できるかもしれない。


【マスター】
水本ゆかり@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
大切な人との日常をやり直す。

【能力・技能】
なし。強いて言えば、フルートが弾ける。

【人物背景】
彼女はアイドルとして輝きの向こう側へと踏み込んだが、あくまで【普通】の少女だ。
これはもしも、彼女が大切に想っているプロデューサーを無くしたらというIFである。
絆を取り戻す為ならば、彼女は前へ進むだろう。
例え、清純なる輝きが穢れても、ただ一人――大切な人の笑顔をもう一度見れるなら。

【方針】
やり直す、日常を。


10 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/14(土) 23:34:25 jP62e8CQ0
投下終了です。
このような感じで進めて参ります。


11 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/15(日) 14:39:45 mpaLdTLE0
投下します。


12 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/15(日) 14:40:09 mpaLdTLE0
街並みが一望できる高台に青年と少女が佇んでいた。
木の柵に手を下ろし、ぼんやりと下界を見る青年と、欠伸を噛み殺しながら空を見上げる少女。
傍から見ると、緊張感など皆無に見えるが、彼らの内面に渦巻く感情はそんな一言で片付けられるものではなかった。

「なぁ、アーチャー。俺さ、譲れない願いがあるんだ」

青年――スタンは誰よりも強くなりたかった。
どうしようもなく弱い自分に嫌気が差して、膝を抱えて俯いて。
それでも、なお――手を伸ばした。
大切な人を、アリーザを護れる強さを掴む為に、スタンは剣を握った。
いつの時か来る危難に立ち向かえるように。

「ふーん、それで? そもそも、聖杯戦争に参加してるんだしそんなの当たり前だと思うけど?」
「茶化すなよ。最後までちゃんと話すさ、ゆっくり聞いてくれよ」

弱々しい自分と違い武道の才があるのか、アリーザは自分より強い。
きっと、自分の助けなど必要ない程に遥か上の領域にいるだろう。
其処に、スタンがいる意味はあるのか? スタンでなくともいいのではないか?
心の片隅に黒い淀みが生まれ、甘い声で囁かれた一言が耳に響く。

意味などない、と。

否、否だと叫びたかった。
きっと、自分にできることがあるはずだとスタンは迷いを振り切った。
未熟なれど、彼女の為にスタンが横に仕える意味が、あると信じていた。
いざという時には壁役として彼女を命を懸けてお護りできれば本望だ。

「……その口ぶりからすると、護れなかったんだ」
「あぁ。俺は何も出来なかった。星晶獣っつー化物に攫われるお嬢様を前に――俺は何一つできなかった」

そんな矢先に、アリーザが星晶獣に連れ去られる事件が発生した。
星晶獣は人間の枠組みからすると、立ち向かえない災害のようで。
スタンにとっては相対するだけでも恐怖心が煽られ、一歩も動けないレベルにまで身体が固まるものだった。
結局、スタンは護れなかった。
剣を取り、戦うことすら敵わず、主である少女を星晶獣に連れ去られてしまう。


13 : スタン&アーチャー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/15(日) 14:40:24 mpaLdTLE0
街並みが一望できる高台に青年と少女が佇んでいた。
木の柵に手を下ろし、ぼんやりと下界を見る青年と、欠伸を噛み殺しながら空を見上げる少女。
傍から見ると、緊張感など皆無に見えるが、彼らの内面に渦巻く感情はそんな一言で片付けられるものではなかった。

「なぁ、アーチャー。俺さ、譲れない願いがあるんだ」

青年――スタンは誰よりも強くなりたかった。
どうしようもなく弱い自分に嫌気が差して、膝を抱えて俯いて。
それでも、なお――手を伸ばした。
大切な人を、アリーザを護れる強さを掴む為に、スタンは剣を握った。
いつの時か来る危難に立ち向かえるように。

「ふーん、それで? そもそも、聖杯戦争に参加してるんだしそんなの当たり前だと思うけど?」
「茶化すなよ。最後までちゃんと話すさ、ゆっくり聞いてくれよ」

弱々しい自分と違い武道の才があるのか、アリーザは自分より強い。
きっと、自分の助けなど必要ない程に遥か上の領域にいるだろう。
其処に、スタンがいる意味はあるのか? スタンでなくともいいのではないか?
心の片隅に黒い淀みが生まれ、甘い声で囁かれた一言が耳に響く。

意味などない、と。

否、否だと叫びたかった。
きっと、自分にできることがあるはずだとスタンは迷いを振り切った。
未熟なれど、彼女の為にスタンが横に仕える意味が、あると信じていた。
いざという時には壁役として彼女を命を懸けてお護りできれば本望だ。

「……その口ぶりからすると、護れなかったんだ」
「あぁ。俺は何も出来なかった。星晶獣っつー化物に攫われるお嬢様を前に――俺は何一つできなかった」

そんな矢先に、アリーザが星晶獣に連れ去られる事件が発生した。
星晶獣は人間の枠組みからすると、立ち向かえない災害のようで。
スタンにとっては相対するだけでも恐怖心が煽られ、一歩も動けないレベルにまで身体が固まるものだった。
結局、スタンは護れなかった。
剣を取り、戦うことすら敵わず、主である少女を星晶獣に連れ去られてしまう。


14 : スタン&アーチャー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/15(日) 14:41:01 mpaLdTLE0

「何が目的かは知らないけど、アリーザはもう……」

残されたスタンにできることなんてなかった。
取り戻す? 自分一人で星晶獣を倒してアリーザを救出するなど無理に決まっている。
諦める? それこそ、論外だ。連れ去られた彼女を忘れ、引き篭もっているなどまっぴらゴメンだ。

「そんな時だったんだ。俺を呼ぶ声が聞こえてさ。その声に誘われるがままにふらふら前に進んだら――此処にいた」
「随分と大雑把ね」
「仕方ないだろ、俺だってまだ何が何だかわかってないんだ。聖杯戦争、ルールは叩き込まれているけどさ。
 俺は自分の願いの為に誰かを蹴落とすつもりなんて、なかった」

スタンは悲しげに笑い、これから始まる戦いに身震いする。
正真正銘の殺し合い。星晶獣討伐ならまだしも、この聖杯戦争は人の倫理観に大きく食い込んでくる。

「でもさ、俺は戦うよ」

弱々しげながらもどこか強い決意を秘めた双眸を、此処で初めて少女――アーチャーへと向ける。
数秒間、世界が止まる。互いに何も言わず、ただただ視線を交わし合う。

「つまり、マスターさんが願うのは、強くなりたいってこと?」
「…………違う。それは、駄目なんだ。きっと、俺が強くなったとしても……アリーザを護れるとは思えない」

訝しげに問いかけるアーチャーに、スタンは表情を変えず淡々と自分の思いを告げる。

「いくら強くなった所で、俺にはその資格が無いよ。どれだけ強くなろうとも、俺の性根は弱いままだと思うから」
「そういうものなのかなぁ」
「そうさ。俺なんかじゃない、もっと強い奴がアリーザの傍にいるべきだった」

御伽話に出てくる勇者様ならば。誰かを思いやれて、迷いなく前へと進める者ならば。
きっと、彼女の道を照らしてくれると思うから。

「だから、やり直したい。俺ではない誰かが、お嬢様を護れるぐらい強い誰かが、その御身を支えてくれたら、いいなって」

ならば、自分は最後の奉公を勤め上げよう。
その願いが達成されるまで、何度も迷って後悔するかもしれないが、今度こそ前へと進みたい。

「それが――俺にできる最後の役目だ」
「…………んー、マスターさんの願い事はわかったけどさ。一つだけ言いたいこと、言っていいかな?」
「何だよ? 今更後戻りして逃げろとでも言いたいのか」

もしも、アーチャーがこの願いを否定するならば、令呪を以ってしてでも従わせる。
スタンは刻まれた令呪に力を込めて、いつでも発動できるように頭を切り替えた。


15 : スタン&アーチャー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/15(日) 14:41:40 mpaLdTLE0

「その願いを遂げた後、マスターさんはどうする訳? 最初から自分のことを諦めてるって感じだけどさ」

しかし、アーチャーの口から飛び出した言葉は予想外にも【終わった後】のことだった。
素っ気ない素振りからして、自分のことを魔力補給の為の肉人形程度にしか思ってないと想定していたスタンにとってその質問は目を丸くせざるを得ない。

「そういうの、私嫌いなんだよね。やり直したいのは結構。私もその点に関しては同じだから。
 過去の戦で喪った総てを今度こそ護る。当時は未熟者だったからさ、護ろうとしたモノ……全部失くして、私も死んでさ」

滑った口から吐き出されるのはスタンと同じくやり直しに直結した後悔だ。
世界を二分する大戦にて次々と【轟沈】していく先輩に、姉。
深い海の底へと消えた彼女達の分まで、自分が戦おうと生前の彼女は誓う。
一心不乱の修練を積み、護国を成さんとし、自分もまた沈む瞬間まで戦い続けた。

「まぁ、負けちゃったことはどうしようもないし、どんなに後悔しても結果は覆らない。
 そんな理屈、絶対に認めてたまるものか」

沈む最中、彼女は――【艦娘】として変遷し、願う。

「奇跡を起こさない限り、世界は揺るがない。ならば、その機会を寄越せってね」

陰鬱な過去をやり直す機会が得れるなら、自分は何にだって尻尾を振ろう。
魂さえも質にかけよう。
されど、この原初の願いだけは誰にも穢させない。

「私は奇跡を奪いに往くわ。自らの終わりも含めて、やり直す。当然、自分の幸福も兼ねた願いってことってね」

そして、怨念とも呼べる魂の叫びを、聖なる杯が聞き届けた。
聖杯戦争には、自分を含めて幸せになる願いが現実になる可能性が秘められている。
彼女にとってそれだけで戦うに値する。

「だから、マスターさんも最後とか言うのはやめて欲しい。というか、諦めるな!
 そういう勝手に手放して諦めるの、すっごいムカつくんだからね!」

故に、マスターとして充てがわれたスタンが、自分の幸福を度外視していることにすごく腹が立った。
聖杯は万能であり、矮小なものではない。
勝手に自分の願いを狭めて、孤独に消えるクソッタレな態度を彼女は許さない。
どうせ、貫くならどこまでも。
そう、【鶴翼】が羽撃ける遥か彼方まで。
彼女の名は【瑞鶴】。意地とプライドを糧に轟沈する終ぞの時まで咆哮を上げた空母である。

「宣誓する。此度の戦、我が真名において、マスターさんにも幸運を運ぶことを約束するわ」

さぁ。奇跡を以って、軌跡を消しにいこう。


16 : スタン&アーチャー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/15(日) 14:42:09 mpaLdTLE0


【クラス】
アーチャー

【真名】
瑞鶴@艦隊これくしょん

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷D 魔力E 幸運A 宝具C

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
 神秘度の低い近代の軍艦ゆえ最低限の対魔力しか保有していない。魔除けの護符程度。

単独行動:B
 マスターを失っても数日間は現界可能。

【保有スキル】
水上戦闘:B
 元が軍艦の英霊のため水上での戦闘にステータスの上方修正が加わる。

最後の生き残り:C
彼女は真珠湾攻撃に参加した空母の中でも最後の生き残りであり、幾多もの戦を潜り抜けてきた。
その異名から、戦闘続行に関しては高いスキルを持ち、致命傷を負わない限りは戦い続けることができるだろう。

幸運:B
常に最前線を転戦し続けながらも、生き残り続けた逸話が由来のスキル。
彼女の幸運は誰かの幸運を吸い取ったものなのか、それとも本来持つものなのか。


【宝具】
『鶴翼の一撃』
ランク:E 種別:対艦宝具 レンジ:1〜60 最大捕捉:6
搭載した艦載機でアウトレンジ戦法を取り、敵を討つ。
それは一方的に相手を攻撃できるメリットの代わりに艦載機の消耗が激しくなるデメリットを抱えた諸刃の剣であった。


『鶴翼の絆』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
度重なる戦で傷ついた瑞鶴が、更なる飛躍を遂げる為に近代化改修をした姿。
マスターと瑞鶴の想いが重なった時、その真価を発揮する。
迷彩柄により、相手からの認識がされにくくなるスキルが加算され、ステータスも上方修正される。

【weapon】
艦載機

【人物背景】
かつて、世界を二分する戦があった。
軍艦であった瑞鶴は、どのような苦境であっても戦い続けた。
その身が朽ち果てる終ぞの時まで。
敗北を知った彼女は願う。
やり直したい。姉や先輩を護れる強さを身に付けた今なら、奇跡を獲れると信じて。

【サーヴァントとしての願い】
過去の敗戦をやり直したい。



マスター】
スタン@グランブルーファンタジー

【マスターとしての願い】
アリーザを護れる強さを持つ誰かが、彼女を幸せにしてくれることを望む。

【weapon】
剣。

【能力・技能】
剣技。未熟なれど、伸びしろはある。

【人物背景】
バルツ公国のとある良家でアリーザの護衛を務める少年。
大言壮語を吐く割に尻すぼみになる性格であり、優柔不断で決定力に欠けるヘタレ。
感情の振れ幅が大きく、よく半泣きになる。
お家騒動に巻き込まれるアリーザの力になりたいとは思っているが、あくまで使用人の自分は一歩引いた立場でいるべきなのではないかと悩んでいる。

【方針】
迷いはあるが、負けられない。
一人の幸福の為に、不特定多数の幸福を奪う覚悟。


17 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/15(日) 14:43:08 mpaLdTLE0
最初の部分を多重投下しましたが投下終了です。


18 : ◆yy7mpGr1KA :2015/02/15(日) 17:08:45 EthQBJyk0
新企画立て、および投下乙です。
私も投下さていただきます。


19 : 人類種の天敵 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/15(日) 17:10:28 EthQBJyk0
地球上の誰かがふと思った
『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずに済むだろうか……』

地球上の誰かがふと思った
『人間の数が100分の1になったら垂れ流される毒も100分の1になるだろうか……』

誰かがふと思った
『生物(みんな)の未来を守らねば……』

◇ ◇ ◇

はるか昔――
人間が歴史を持つずっと以前の話、その生き物たちは進化の過程の中でこの地球に出現した。
その生き物たちは夜しか生きることができず太陽の光に当たると消滅してしまう……
だから彼らは地底に住んだ。
しかし…他の動物のエネルギーを吸い取ることによって長い年月生きることができた。
幻視人は彼らを神や悪魔として恐れた。
彼らは「死」の確率が低いので増殖の必要は少なくその生き物の個体数も少なかった。
だから争いもなく平和に暮らしていた

だが突然そこに天才が一人生まれた

その天才はより強い力が欲しいと願った
そして自分たちの脳にはまだ未知なる能力が隠されていることを知りその能力を引き出すために天才は『石仮面』を作った。
石仮面は不死身の能力をもたらした。けれどもより多くの生命エネルギーを必要とした。
つまりより多くの生き物を殺さなければならない。放っておけば大地のすべての生き物を殺してしまうだろう。

その生き物の一族は石仮面を恐れた。その天才を恐れた。
「やつが存在するのは危険だ」
「あいつをこの地球から消してしまわなくてはならない…!」
「やつを殺してしまわなくては!」

その天才は逆に一族を皆殺しにし、自分を生んだ親をも殺すと事実を知らぬ赤子二人に仲間を一人連れ長い旅に出たのだった。

◇ ◇ ◇


20 : 人類種の天敵 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/15(日) 17:11:45 EthQBJyk0

「前回私たちは敗北した。こと殺しに関しては地球上で人間の右に出るものはいない」

グキョグキョと骨の砕けるような肉の融けるような音の中男が朗々と語る。

「人間はまだ気付いていないんだ。今すぐにでも人間の数を減らさなければならないということに。
 自らの天敵をもっと大切にしなければならないということに。
 天敵の存在が美しいピラミッドの頂点に収まることでようやくバランスが回復するということに」

話す男の傍らにいる大柄な男は先ほどの倍する体躯に膨張していた。

「兵器を有する軍隊ではだめだ。稚拙で傲慢な飾りに囚われ、蠢くことしかできん。
 パラサイトでも……残念ながらだめだったようだ。生態はともかく天敵としては役者が足りなかったのか……
 だがきみたちならば……究極の生命体であるきみたちならば!真に万物の霊長たり得るはずだ!」
「…………おまえは変わった『人間』だな。おれたちのことを知って恐れでも嫌悪でもなく歓喜を覚えるとは」

腹ごしらえを終え、改めて向き合う。
信念を語ったスーツの男とそれを聞いていた民族衣装の大男が対峙する。

「おれは人間を…吸血鬼に成った人間の方が好物だが…喰らう生き物。
 おまえはそれが、食物連鎖の頂点に立ち人間の数を調整する存在が欲しい。
 そのために、おれたちと石仮面の協力を得るためにおれと共に聖杯を目指すというわけか」
「理解が難しいのは自覚している。人間はおろかパラサイトにも共感は殆ど得られなかった。それでも今度こそ―」
「だから気に入った」

かつて同朋は夢を語って聞かせてくれた。
太陽を克服したいと思わないのか。何物をも支配したいと思わないのか。あらゆる恐怖をなくしたいと思わないのか。
それにおれはただ一人共感した。

父も母も同族のほぼ全てを殺して共に歩み出した道。
それは更なる進化と、一族の破滅どちらの可能性も宿していた。だが、だからこそ生物としてあるべきものに思えた。
あいつはどこへ行くのだろう。おれもあいつと共に行けば進歩できるのだろうか。
その答えは旅の先にあるはずだった。

こいつも、カーズと同じ異端児。
そいておれと同じ、夢よもう一度と未練がましく執念深い敗者。

「遮るようだが、おまえの目的はおおむね理解した。残りは聖杯を取ってから聞かせろ」
「それでは…!」
「おまえの目的だけならこのまま帰還すれば叶わなくはない。寝床にまだいくつか石仮面もあったはずだからな。
 だが、おれの目的は聖杯がなくては叶わん。協力してもらうぞ」

おれの遺志は結果だけいえば届いたようだ。あいつは究極の生命体になった。
だがこの地球からあいつはいなくなってしまった。
闘いに拘るワムウや熱くなりやすいおれならともかく、目的至上主義のあいつがおれたちの復讐なんて考えて躓くとは。
肝心なところでおれ達がいなければならないのはいつまでも変わらんな。
再び、生きて地球で会おうではないか。

「改めて名乗ろう。おれはアーチャーのサーヴァント、『炎のエシディシ』。
 おまえがその願いを失わない限り、マスターとして認めることを宣言する」

今度こそ、生命の頂点に立つ者を迎えるために。


21 : 人類種の天敵 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/15(日) 17:13:02 EthQBJyk0

【クラス】

アーチャー

【真名】

エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】

筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具B+

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:A+
現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼を傷つけるのはほぼ不可能である。
十万年以上の長きにわたり生きつづけ、積み上げたその神秘は破格のランクを誇る。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
原初の一(偽):D
偽りのアルティメット・ワン、アルティメット・シイングに至る進化の過程。生まれついての吸血種が宝具による肉体改造で変異したたった4人の柱の闇の一族、その一人。
英霊の座においてもその4人しか持ちえないスキルであり、Dランクでも破格のもの。
本来の原初の一のように星のバックアップは受けられないが、関節を無視した柔軟な動き、卓越した身体能力、肉体の再生、全身の細胞からの捕食、他の生物との一体化など様々な能力を持つ。
とある二つの宝具を用いればこのスキルは最高ランクとなるが彼はそのうちのいずれも持ち合わせていない。

王佐の才:C+
王たるものを支える才。
味方のカリスマを1ランク向上させ、また同ランク以下の反骨の相などカリスマを無効化するスキルを無効にする。
加えて王の目的や命令を達成するための情報収集や援護などにおいて有利な補正を得る。
令呪によるバックアップもより強力な効果が得られるが、逆に高い対魔力を保持するにも関わらず不本意な令呪による命令への抵抗力も低下する。
生前は仲間より先んじて赤石のありかを突き止め、またただ一人王たる者の味方をして同族を全滅させる援護を行うなどした。
またこのスキルを持つ者はマスターとの仲が険悪になりにくい。

ラーニング:A
僅かに会話を耳にしただけで異国言語を習得、一目見ただけで銃を分解、発達した文明にも瞬く間に馴染んで見せるなどを可能とする高度な学習能力と適応力。
見聞きした技能を学び取ることが可能。
特に彼は『孫子』などの戦術的駆け引きを貪欲に学ぶため、サーヴァントとなった今でも後述するスキルのランクが戦闘を重ねるたび向上していく可能性がある。

詭道の所作:C+
言動によって相手と自分の思考を誘導、操作し自分に有利な状況を作り出す。
心理を読み取り次の行動を図る洞察力、観察力、そして自身の精神状態を把握する冷静さが重要となる。
魔術ではなく精神的な干渉であり、精神耐性系のスキルで抵抗可能。
同様に他者からの精神干渉に対する抵抗力としても機能する。また泣き喚くことで冷静になり、より強力な精神干渉からも解き放たれることが可能。

陣地攻略:D
世界を回り、様々なものを見た知識に加え数多の実戦によって得た経験値。
工房などの攻略に有利な補正を得る。
針の敷き詰められた闘技場での巧みな立ち回りや、シェルターのような密閉空間から空気供給管を利用しての脱出なども可能。


22 : 人類種の天敵 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/15(日) 17:14:03 EthQBJyk0
【宝具】
『怪焔王の流法(モード・オブ・フレイム)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0〜2 最大捕捉:2人
原初の一(偽)による肉体操作の極みにより彼らは固有の流法を持ち、エシディシのそれは熱を操る炎の流法である。
代謝による体温の上昇を利用し血液を500℃まで上昇させ放つことができる。
主に手や足の先端部分から血管針を出し放射する。
副次効果として温度の上昇を伴う為、冷気や気流の扱いを乱すことが可能。

『怪焔王大車獄の流法(モード・オブ・インフェルノ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0〜4 最大捕捉:10人
通常手足の先端からしか血管針を放たないのは精密動作が難しい箇所で自発的に裂傷を作るのが難しいためである。
逆に血管針を放てるならどこからでも血液の放射は可能である。
相手に追わされたダメージや自傷による傷からより広範囲に血管針および熱血を放つ。
受けた傷も肉体の一部とし、積み重ねたダメージも能力の一環として扱う勝利への執念の具現化といえる。

『肉体は死すとも執念は死せず(スティル・アライブ・ビーイング)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
霊格が破壊されても脳と血管は消失せずに現界し続ける。この状態では単独行動のランクが2ランク向上する。
思考能力は残り、寄生からの洗脳および『怪焔王の流法』の使用も可能。

『勝者の口上に機先を制せ(カウンター・ワード・ウィン)』
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
相手がする発言を先に言い当てる事で、そのターンの相手の直前の行動をキャンセルする。
結果勝利の確信を得ている時程、敵は大きな隙を晒す事となる。

……実際は虚を突かれて唖然としているだけであり、本来なら宝具と呼ぶのもおこがましい詐術である。
にもかかわらずこれが宝具として表れているのは、生涯最期の好敵手たる波紋戦士からラーニングした闘争の証であり、彼がこれの大元を宝具として持つため。
加えて一瞬とは言え完全に彼の十八番で上回ったただ一人の存在がエシディシであると言う逸話も大きい。

【weapon】
『死の結婚指輪(ウェディング・リング)』
リングの中に毒薬がしこんであり、スキルによる肉体の一体化を応用して敵体内に埋め込む。
一定時間がたつか無理に取り出そうとすると殻が破れ毒が回って死に至る。解毒剤はエシディシの鼻のピアスの中に仕込まれており、闘って奪い取るしかない。
まさに死が二人を別つまでのウェディングリング。
魔力による生成が可能であり、籠めた魔力量により殻が破れるまでの制限時間を調節できるようになっている。

【人物背景】
はるか昔、地球に出現した太陽光に当たると消滅してしまう生き物の一族、その一人。
その一族の多くは穏やかに過ごしていたが、突如生まれた一人の天才がより強い力を求めたため争いが起き、その天才と協力者一人、何も知らぬ赤子二人を残して一族は滅んだ。
その協力者がエシディシであり、その四人が石仮面をかぶり、原初の一(偽)となった柱の闇の一族である。
柱の闇の一族は多くの動物を殺し喰らわなければ生きられないため当然戦争が起こり、宿敵として波紋使いの一族とは幾度も争った。
そして齢十万年以上を数えた西暦1939年、波紋使いジョセフ・ジョースターとの高度な知略戦に敗れる。
敗北後肉体の大半を失いながらも誇りも全てかなぐり捨て仲間のため赤石を届けようと、生きようとあがくが二人の波紋使いの連携に敗れその生涯を終えた。
一人の同朋のために一族皆を敵に回す、仲間のために汚れることもいとわないなど種族の違いから人間と相容れることはできないだろうが、敬意に値すると宿敵にも語られた熱い男である。

【サーヴァントの願い】

宇宙や英霊の座にいる同朋と共に生をやり直し、今度こそ究極生命体となる


23 : 人類種の天敵 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/15(日) 17:14:39 EthQBJyk0
【マスター】

広川剛志@寄生獣

【マスターとしての願い】

パラサイトに代わって柱の闇の一族と協力して地球上の生命の調整、間引きを行う

【weapon】

なし

【能力・技能】

生物的には通常の人間。超常の力など何も持ち合わせない。
だがパラサイトと協力しようという苛烈なまでの信条、人食いの怪物と共に過ごしたり武装した自衛隊相手に一歩も引かない胆力、市長選程度とはいえ選挙戦を勝ち抜きパラサイトと共生できる求心力などは常人のものではない。

【人物背景】

人間一種の繁栄よりも生物全体の未来を憂うべきとの思想を持つ政治家。
環境問題を重要視し、人間が地球にとって毒になったと考え、中和剤たる人間の天敵パラサイトと手を組む。
自治体の長となり人の流れを把握することでパラサイトに食事処を提供、保護し、市内の人間を少しずつだが間引いていた。
その後市役所内に多くのパラサイトが存在することがばれ、自衛隊がその駆除に乗り出すと自身の信条を語って聞かせるも過激ともいえるそれに同意を得られることはなく射殺された。
その瞬間の参戦である。
その思想の苛烈さやパラサイトと共存していたという点から皆彼のことを人間だとは思っていなかったようだ。
最強のパラサイト後藤にも「よくわからん奴」「人間から見てもかなり珍しい存在」と語られる異端児。

【方針】

少なくともエシディシと共に帰還したい
基本的には石仮面や他の柱の闇の一族の協力を得るために聖杯を勝ち取るよう動く。


24 : 人類種の天敵 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/15(日) 17:15:47 EthQBJyk0
投下完了です。
何か指摘等あればなるべく対応したいと思いますのでよろしくお願いします。


25 : 名無しさん :2015/02/16(月) 23:04:34 9KXJHsFc0
質問なんですが、参加方法、資格は他の聖杯系と違いはっきり明記してませんがどのように書いてもいいのでしょうか。


26 : 名無しさん :2015/02/16(月) 23:37:08 DRKYI5V60
グラブルとは思わぬところから来たな!
広川はマスターになったら中々面白そうと思っていたがついにきたか!


27 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/17(火) 00:26:17 vEi/hEBk0
皆様、投下お疲れ様です
私も投下させていただきます


28 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/17(火) 00:27:42 vEi/hEBk0

…………ガシュン…………ガシュン…………ガシュン…………。

夜の廃工場に無機質な音だけが木霊する。

ピピピピピピピピピピピ…………。

何かを探しているのだろうか。キャタピラ音と共に車体の頂上部にある髑髏が周囲を見回している。
灰色を基調としたボディに、前輪後輪に分かれたキャタピラ、そして殺戮を象徴するかのような頭部の髑髏。
そう、『それ』は戦車だった。その名も『電光戦車』。

月明かりだけが頼りになるような暗さにも関わらず、電光戦車は器用に障害物を避けて廃工場を進む。
ただ、何とはなしにここへ来たわけではない。ある任務を遂行するためだ。
もちろん、電光戦車は意思を持っていない。ゆえに電光戦車は与えられた任務なしには行動しない。
その任務とはいたって単純、「対象の抹殺」である。

「あ……ああ……」

その対象は人間の男であった。鉄橋の残骸の山に隠れており、恐れからか自然と吐息に震え声が混じってしまう。
男は残骸の隙間から様子を窺う。恐怖の象徴となる電光戦車がもうすぐで通り過ぎようとしているところだ。
頼む、このまま気付かないでくれ…!そんな思いも空しく、頭部の髑髏がこちらを見たときに、視線が合ってしまう。
するとどうだろう、無機質であった電光戦車の髑髏の目の部分が突如光り出した。殲滅対象を捕捉したのだ。

「う、うわあああああ!!!」

男は居ても立ってもいられず、残骸を押しのけて電光戦車から少しでも遠ざかろうと走り出す。
しかし、電光戦車はそこから1センチも動くことなく髑髏の目から光線を発射。
人間が足で逃げようとも電光戦車の兵器から逃れられるなど不可能だからだ。
自律駆動で動く電光戦車はそれを理解し、自我を持たないながらも戦闘や破壊行動においては適切な判断を下していた。
男はレーザーに背中から胸部を貫かれ、倒れる。それから二度と動くことはなかった。

『キュラキュラキュラ…………』

電光戦車は周囲の生命反応がなくなったことを確認し、主の元へ帰るため、踵もといキャタピラを返す。


◆ ◆ ◆


「……おい、戦車。遅ぇんだよ。たかがNPC1人狩るのにどんだけ時間食ってんだよ?ああ?」
『………………………』

廃工場を出ると、そこに待っていたのは電光戦車の、電光戦車達のマスター。
任務から帰還して早々に吐かれた言葉に対し、電光戦車は何も反応しない。
マスターの傍らには他の電光戦車2体が待機しており、マスターはその内の一体に腕を組みながらもたれている。
長く降ろした白めの金髪や白い肌に白一色の服装。白で固めた容姿が特徴的なマスターであった。
――彼の名は斎祀(さいき)。人外種族『遥けし彼の地より出ずる者達』のリーダーである。


29 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/17(火) 00:29:14 vEi/hEBk0
電光戦車が複数体いるのには斎祀のサーヴァントの宝具が関係している。
『電光戦車師団』。電光戦車を無尽蔵に作り出す宝具。
ただでさえ強力な能力を持つ自律駆動の電光戦車を量産できる強力なものだ。
現在は3体存在し、その内の一体が先ほどのNPCの抹殺に駆り出された。
もっとも、斎祀が『俺の顔をジロジロと見てきやがったから』という理不尽な理由により命じたものだが。

「はぁ…お前って本当にポンコツなのな」
『…………』
「いざ『殺れ』って命令したらトロいキャタピラであのカスNPCを追うわ、コイツ含めお前らが出す音はうるせーわ…」
『…………』

斎祀は自らが背を預けている電光戦車を親指で指しながら戦車を罵倒し、
それを戦車達は無言で聞き続ける。

「…ポンコツっつーか、ゴミだな。いや、ゴミの人間共に作られたんだろうからお前らゴミ以下だ」

戦車達は自我を持たず、反発しないのをいいことに、斎祀は自分の気分を晴らすためだけに戦車達を貶す。

「…なぁ、そこの戦車。……自爆しろよ」
『……………』
「聞こえなかったか?自爆しろっつったんだよ。てめぇら1体いなくなったってどうってこたぁねぇからよ。ゴミ以下でも俺のサーヴァントなんだからそんくらいできんだろ?」

任務を終えて帰還した電光戦車に下される、無慈悲な命令。
…しかし。『それ』は十数メートル下がり――

『ピ……ピピピピピピピピピピピ………』

それを実行に移す。自我や感情を持ち合わせていない戦車達にとって、斎祀の命令は絶対。――故に。
自害の指示ですら令呪なしで従ってしまうのだ。

『ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ…』

けたたましい機械音の後に、轟音と共に電光戦車は爆発した。
自爆の前に斎祀に爆発が及ばぬよう後退したのはマスターに従い、守ることを最優先とする自律駆動機能が下した判断だろうか。

「…最期までうるせェんだな、こいつら。まぁ、自爆して特攻できたり何でも言うこと聞く分、無界みたいな無能なヤツらよりはマシか。ゴミ以下なのは変わりねぇがな」


◆ ◆ ◆ 


――――正体不明の種族、『遥けし彼の地より出ずる者達』。
彼らは完璧な人外であると共に、人智を超える能力を持っていた。
斎祀は自らの種族が人間を支配し、全生物の頂点にあるべきことを信じて疑わなかった。
しかし、稀有な惑星配置状況を利用した時間跳躍現象により過去から現代に降り立った彼が見たのは、人間の影から隠れてひっそりと生きる、落ちぶれた同族の姿だった。

こんな歴史は間違っている。自分が頂点たる玉座に座していない未来など。
きっと未来に至る過程で同族が些細なミスを積み重ねたに違いない。
もう一度過去に戻り、歴史をやり直さねばならない。

そう考えた斎祀は格闘技大会・KOFを利用し、地球意思・オロチを復活させ、
その力で時空の扉を開いて過去へ戻り、未来を自由自在に作り変えようとしたのだが……。


30 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/17(火) 00:30:49 vEi/hEBk0
気が付けば聖杯に招かれ、偽りの冬木市にいた。
斎祀の記憶が一部欠落した状態で。
記憶がどうも曖昧なのだ。斎祀はその企みを実行に移そうとしたのは覚えているが、それがどんな結果になったのかは全くの不明瞭。
成功したかもしれないし、失敗したかもしれない。
KOFが順調に進んでいたかどうかも覚えていない。

だが、確実なことが1つある。

(人間の虫ケラ共がまだ這いずり回ってやがる)

それは未だに未来を作り変えることは叶っていないということだ。
しかも、時空の扉はこの世界にはなく、悲願を遂げるためには聖杯を手にするしかないという。
斎祀は内心で舌打ちをしながらも、焦ることはなかった。
聖杯をこの手で勝ち取ればいい。
参加者も大抵は人間だろう。仮にオロチ四天王のような人外がいたとしても――

(そんな人間と変わらない連中がこの俺に敵うわけがない)

――そんな斎祀に与えられたサーヴァントは、量産できる戦車だった。
ライダークラスのサーヴァントらしい。操縦士はいないようだが、そんなことなど斎祀はどうでもよかった。

無駄な意思がなく、何でも言うことを聞いて、おまけに量産できる。

――本当に使えそうな駒だ。そのことだけが斎祀にとって重要だった。


◆ ◆ ◆


……


…………


……………………


………………………………


…………………………――ナイ。


………………………――クナイ。


……………………シニタク………ナイ。


電光戦車。かつて秘密結社ゲセルシャフトで量産された『それ』は生きた人間…それも負傷して戦えなくなった兵を材料として開発されていた。
電光機関の電力源にするために四肢を、内臓を。自律駆動を実現するために脳を。
禁断の決戦兵器・電光戦車を製造するために幾千もの人がその犠牲となった。

ある者は家族との再会を願い。ある者は神による救済を願い。
ある者は材料にされることに憤り。ある者は耐えがたい激痛に嘆いた。

自分たちを駒としか思わない傲慢な斎祀に召喚されたサーヴァント・ライダー。

その正体は電光戦車などではない。

その幾千人の負の感情―――嘆き、悲しみ、憎しみ、絶望―――それ自体がライダーというサーヴァントなのだ。

誰もライダーの正体を知ることはない。電光戦車の自我が目覚めるその時まで―――。


31 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/17(火) 00:31:28 vEi/hEBk0
【クラス】
ライダー

【真名】
???@アカツキ電光戦記

【パラメータ】
筋力- 耐久- 敏捷- 魔力B 幸運E 宝具A

【属性】
秩序・悪(暴走によって変動する可能性有り)

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

騎乗:-
ライダークラスにあるまじきことだが騎乗スキルを所有しない。
厳密にはライダーは乗っているというよりも『組み込まれている』からである。

【保有スキル】
 
攻性防禦:B-
敵の攻撃を無効化できる技術。
身体の周囲へ『電光機関』からの電磁波と電気による衝撃波を瞬時に放つことで、敵の攻撃と相殺させる。
うまくいけば敵の隙を作ることができるが、タイミングを外せば自分が隙を晒すことになるので注意。

無我:A
ライダーは自我を持たず、マスターの指示に疑問を抱かずただ従う。
言葉すら発することはなく、聞くことができるのは『電光戦車』の駆動音だけである。
Aランクならば令呪なしでNPCの殺害や自害を実行してしまう。
また、あらゆる精神干渉を完全に無効化する。
しかし、自我に目覚める例が多数報告されており、その場合このスキルは失われる。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。ランクBならば二日程度活動可能。

【宝具】

『電光機関』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:1人
電光戦車に組み込まれている特殊機関。
装備することで無尽蔵に電気を生み出すことができる。
チベットの秘境で発掘された古代文明アガルタの超科学技術を元に開発された。
強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
他にも高圧な電気をレーザー状に放ったり、機体の周囲に電気を放電するなど、様々な応用が可能。
電光機関の電気は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、
使い続けた者は死んでしまうという欠点を持つ。
いわば人間爆弾、つまり一種の特攻兵器であり、動物兵器であるといえる。

『電光戦車師団』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜50人
「禁断の決戦兵器」の異名を持つ自律駆動の戦車『電光戦車』。電光機関を動力源とする。
ゲセルシャフトで量産され、世界侵攻の切り札として運用されたそれらの存在自体が宝具となったもの。
魔力が許す限りマスターの意思で量産することができるが、
数が多すぎると魔力が行き届かず、パラメータの低下は免れない。
電光戦車が一体でも残っている限り、ライダーが消滅したことにはならない。
電光機関による強力な電磁波での電子機器の無力化、光学兵器での誘導弾の撃墜が可能であり、
戦争形態を戦車が最強であった第一次世界大戦前後まで逆行させる事ができる兵器である。

以下のパラメータを持つ。
筋力A 耐久A 敏捷E

電光機関の動力源は生物の生体エネルギーである。自立駆動で動く戦車へのエネルギー源は電光機関の電気を生み出す『人間』でなければならない。
……そう、電光戦車は生きた人間を材料にして開発されていたのだ。
戦争で負傷した兵が主に材料に使われており、1機体につき数人の人間が電光戦車に組み込まれている。
自律駆動のために脳までもが材料にされている。
前述のように材料の人間達の人格が暴走し、自我を持つことがあるが、複数人の人格が混濁した状態で、理性を保っているとは言い難い。
ゲセルシャフトで量産される以前に大戦末期に軍の研究機関によって開発・製作されていたが、暴走が相次いだため、その不安定さから本格生産を前に破棄される。

電光戦車はあくまで宝具であり、ライダーというサーヴァントは別にいる。
ライダーの正体。それは電光戦車という『宝具』ではなく、電光戦車の材料にされた人間の負の感情がサーヴァントになった存在なのだ。


32 : 斎祀&ライダー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/17(火) 00:33:56 vEi/hEBk0
【weapon】
・電光機関を動力源とした武装
機関銃、火炎放射といった対人武装から、絶大な威力を誇るレーザー砲まで幅広く搭載している。
前輪のキャタピラで人を轢いたり頭部の骸骨で頭突きといった直接攻撃も可能。

【人物背景】
電光戦車の材料にされた負傷兵の無念、怨念といった感情がサーヴァントとなったもの。
その有り様が『電光戦車に乗っている』と曲解され、ライダークラスとして召喚された。
本体は電光戦車の各機体に内蔵されている人間(だったもの)。
肉体を持たないため、筋力、耐久、敏捷のパラメータは存在しない。電光戦車の機体が肉体の代わりとなる。
実質的に電光戦車と同化しているため、誰もが電光戦車をサーヴァントと信じて疑わないだろう。
彼らの悲痛な叫びは誰にも聞こえることはない。
――彼らが覚醒し、暴走しない限り。

【サーヴァントとしての願い】
……………………………………………………。

【マスター】
斎祀@THE KING OF FIGHTERS XIII

【マスターとしての願い】
過去に戻り、自分に都合のいいように未来を作り変える。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
・テレポート
一瞬で別の場所に移動できる。
ただし、移動できる距離は短い。

・黒い炎を操る能力
禍々しい色をしたドス黒い炎。相手を燃やすのが主な用途。
飛び道具として飛ばすこともできる。

・変身
元々のアッシュ・クリムゾンに似た姿から真の姿へと変身する。
容姿は赤黒い肌をした全裸の巨人で、手足や顔を黒い炎で纏っている。
本来の実力が出せる。黒い炎で相手を拘束することも可能となる。
他に、敵から魔力を吸収することができる。
この姿で無界から力を吸い取り、ミイラのような状態にして殺害した。

【人物背景】
「遥けし彼の地より出ずる者達」の一人であり、彼らのリーダー格。
見た目は色白で細面の男性。
顔立ちや服装は主人公のアッシュ・クリムゾンに瓜二つ。

本編の三年前、過去から未来にやって来た斎祀は、人間を支配した同属の上に君臨することを期待していたが、
実際の未来では人間が幅を利かせ、同属は絶滅寸前にまで追い込まれていた。
同属の零落を「些細なミスの積み重ね」と考えた斎祀はオロチの力を利用し、
時空の扉を開いて元の過去に帰還し未来を思いのままに作りかえようとした。

非常に傲慢な性格で、味方ですら「無能」「虫ケラ」呼ばわりするように、自分以外の全てを見下している。
口調も全体的に乱暴で、気遣って進言した無界を「命令に従わなかった」という難癖を付けて殺害するほどの短気でもある。
 
【方針】
聖杯狙い。
まずは手駒の電光戦車を利用し、他の主従の戦力を削る。


33 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/17(火) 00:34:34 vEi/hEBk0
以上で投下を終了します。


34 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/17(火) 01:26:52 bjMsk.Yo0
>>24

人類の天敵と人類が手を組む。
広川の思想とエシディシのやり直しが相まってですね。
互いに非情な判断ができる者故に凄みが伝わってきました。

>>25
参加方法、資格は【願い事を願ったら】いつのまにかに参加していたぐらいの感覚で書いています。
ルールにも書いてある通り、やり直しに固執しなくても構いません。
例えば、

「あっ、今日スーパーに行ったのに玉ねぎ買い逃したな。あの時に戻ってやり直してぇ〜」

瞬間、世界が変わった。

「聖杯戦争……?」

ぐらいのノリで大丈夫です。
なにか特別な手順を踏まないと参加できないとかありません。

>>27

身勝手なまでの暴虐さと追従する電光戦車。
キュラキュラ動きながら敵を殺す姿はなんとも言えない恐怖感。
それをいいように使う斎祀の外道っぷりが面白いですね。


35 : ◆YCEVNgTRAI :2015/02/17(火) 03:21:07 EtuJKQSo0
私も投下させていただきます!


36 : ◆YCEVNgTRAI :2015/02/17(火) 03:22:11 EtuJKQSo0





20XX年、都市は鉄道警備組織『レイヴン』の制圧下にあった。







37 : ◆YCEVNgTRAI :2015/02/17(火) 03:23:22 EtuJKQSo0

結局、『最終痴漢電車』など、与太話に過ぎなかった。
迅はそう結論づけ、今日もまた当てもないまま、渇いた心とともに、ただ、息をしていた。


『貴方は最終痴漢電車に辿りつけなかった』


今日は雪の降るホワイトクリスマス。
いつものように孤独な足取りで街を歩く迅の前に、いつものように双子が現れた。
目も眩むほどの美少女と美少年。

「最終痴漢電車……与太話だろう、アレは」
『何度めともなる繰り返し、哀しいことだね』
『そして、最終痴漢電車もまた『与太話』として作られようとしている。
 許されることではないよ』

訳の分からないことをつぶやき続ける双子を前にして、鷹鳥迅は頭に痛みを感じた。
頭を抑え、壁に手をつく。
瞬間、不思議なことが起こった。
雪の降る街、しかし、歩く人々の姿が異様になる。
同じ人物が二人居たり、女と女が手を組んでいたり、男と男が肩を寄せあっている。
既視感<<デジャ・ブー>>のようなものだった。
現在の光景と、あるはずのない記憶が混同しているのだ。

『君はまだ、真の力にも目覚めていない』
『アプローチを変えよう』

何を言っている。
その肉食獣のような瞳を浴びせながら、女を震わせる低い声でそう言おうとした。
しかし、目の前に光が走った。

『君もまた、願っているはずだ』
『幾度と無く繰り返し、君は答えに近づいている』
『でも、まだ遠い』
『だから、少しの間だけお別れだよ』

双子の声が歪に響く。
頭に異様な痛みが走る。


――――最終痴漢電車で、会おう。


視界がブラックアウトした。







38 : ◆YCEVNgTRAI :2015/02/17(火) 03:25:13 EtuJKQSo0

「モレスター<<痴漢者>>のサーヴァント、遠山万寿夫。
 人は私を痴漢者トーマスと呼んだ」

仮面をつけた、赤いタキシードを着た男が迅へと語り続ける。
男の名は、遠山万寿夫。
クラスはモレスター、痴漢者のサーヴァント。
多くの痴漢者は、彼のことを敬意を込めて『痴漢者トーマス』と呼んだ。
最も宇宙の真理へと近づいた痴漢者だ。
電車はまだ、来ない。
迅はその黒いコートを風に棚引かせながら、自身のサーヴァントの語りに耳を傾ける。

「職はない……必要ないからな」
「道理だ」
「俺は痴漢だ、語る言葉もない」
「俺も、同じだ」
「聖杯というものにもわからない、俺は聖職者ではなく、魔術師ではなく、痴漢だからだ」
「……」

トーマスは言葉を続ける。
ふと、指先を見た。
惚れ惚れするほどの理想的な痴漢の指だった。
その指を見ているだけで、迅は痴漢者トーマスが痴漢してきた女達の痴態を幻視した。

「しかし、痴漢の根源にはたどり着きたい。
 英霊となっても尚尽きない……痴漢への想い」
「そうか」

扉が開いた。
迅はその鉄籠の中へと足を踏み入れた。

「俺も同じだ……生まれてから、ずっと渇きを感じていた」
「痴漢者の宿命だ……我々は『逸脱者』なのだ」
「満たされる瞬間は、この無粋な鉄籠の中にだけある。
 子供みたいだ、まるで」

だから、最終痴漢電車などというものを求めた。
痴漢でしか自身を満たされない『逸脱者』である自分。
それを応える痴漢でしか満たされない『逸脱者』である女。
その二人にとっての楽園は、バカみたいに求めた。

「……俺たちはこの中でしか生きられない」
「特別ではないんだな、お前も、俺も」
「そうだ、俺たちは――――」

他者にとっては単なる一歩だが、迅とモレスターにとっては大いなる意味を持つ。
この鉄籠が多くの人間にとっては単なる移動機関に過ぎない。
しかし、二人にとってはこの鉄籠こそが宇宙だった。
痴漢者トーマスの宝具とは、その宇宙を冠していた。


「ただの痴漢さ」



――俺たちは鉄籠に永遠を願った<<エターナル・モレスター>>――


39 : 鷹鳥迅&モレスター ◆YCEVNgTRAI :2015/02/17(火) 03:26:33 EtuJKQSo0
【クラス】
モレスター

【真名】
遠山万寿夫@痴漢者トーマスⅡ

【パラメーター】
筋力E+++ 耐久E+++ 敏捷D+++ 魔力D+++ 幸運A+ 宝具-
(プラス補正は痴漢時にのみ発動する)

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
痴漢道:A++
『悶気』は、全ての生命・宇宙に流れるものであり、痴漢者はそれを自在に操れることが出来る。
その『悶気』がどれほど操れるかを示すランクであり、Aランクでようやく『修めた』と呼ぶことが出来るスキル。
宇宙を構成する流体を操るため、感覚操作や時間操作、空間操作も可能とする。
痴漢技を極めたトーマスは最高ランクのスキルランクを誇る。

【保有スキル】
直感(痴):A
痴漢中の『自分にとっての最適の行動』を瞬時に悟る能力。
トーマスは天性の才能によって、もはや未来予測に等しい痴漢を行う。

魔力放出(指):A
魔力を自身の武器や肉体に帯びさせることで強化させる。
トーマスの常時の痴漢行動は魔力を帯びない純粋な痴漢技である。
トーマスが魔力放出スキルを使用すれば、単なる接触でも時空を歪めるほどの絶大な威力を有する痴漢技となる。

カリスマ:B-
特定の空間内の人々を導く才能。
ランクBならば痴漢としては規格外のランク。


【宝具】
『人の心の宇宙、破裂する超新星(モレスター・ノヴァ)』
ランク:- 種別:対人魔技 レンジ:1 最大捕捉:3,500,000,000
厳密に言えば宝具ではない、『技術のみで神秘の域に達した痴漢技』。
人の中の宇宙を爆発させることで、相手を究極の絶頂へと導く。
そのために、相手の全身を同時に愛撫する。
本来存在するはずのない指が『同時』に『複数』存在する矛盾は、まさしく『魔法』である。
エターナル・モレスターとは対となる痴漢技である。

『俺たちは鉄籠に永遠を願った(エターナル・モレスター)』
ランク:- 種別:対人魔技 レンジ:1 最大捕捉:3,500,000,000
厳密に言えば宝具ではない、『技術のみで神秘の域に達した痴漢技』。
時間を破壊して永遠時間の痴漢によって、相手を究極の絶頂へと導く。
そのために、地軸を操作して一種のブラックホール的な無限重力の空間を生みだす。
本来儚く消えるはずの『一瞬』を『永遠』へと引き伸ばす奇跡は、まさしく『魔法』である。
モレスター・ノヴァとは対となる痴漢技である。

【weapon】
・モレスターチェーン
長さ10メートルにも及ぶ投げ縄。
モレスターの頂点とも言えるトーマスはこれを自在に操ることが出来る。

【人物背景】
トーマスはかつて一人の就職活動中の若者であり、痴漢は単なる心の休まる瞬間に過ぎなかった。
しかし、彼は『痴漢』という魔性の概念に取り憑かれ、『痴漢』という概念もまた彼を愛した。
彼は痴漢として多くの女性を冒涜し、多くの若者を痴漢の醜悪な美に引きずり込んだ。
その悶気が正しく扱われていれば、恐らく世界はすでに約束の時を迎えていたであろう。
伝説の痴漢となった彼は、ごく限定的な英霊として昇華された。
恐らく、鷹鳥迅のようなはみ出し者の中でも侮蔑されるような存在でなければ召喚できない英霊。

なお、モレスターのクラス適正を持つ英霊は、『闘馬筋雄』『志岐匠』『天野哲夫』『石堂竜平』。
そして、マスターである『鷹鳥迅』などが存在する。

【サーヴァントとしての願い】
痴漢の根源へと至る。

【基本戦術、方針、運用法】
痴漢が戦えるわけ無い。


40 : 鷹鳥迅&モレスター ◆YCEVNgTRAI :2015/02/17(火) 03:26:47 EtuJKQSo0

【マスター】
鷹鳥迅@最終痴漢電車3

【参加方法】
最終痴漢電車に至れなかったことによる後悔と、『双子』のアプローチの変化

【マスターとしての願い】
渇き?困難?……上等だ、今まで生きてきて、それを感じなかった日などない。
求めることもなく、ただ安穏と満たされるだけの日々に、何の価値があるというんだ?


癒しを求め、足掻き、もがき続けることこそ――――この俺の、存在理由。すべてだッ!


【weapon】

【能力・技能】
鷹鳥迅は痴漢として無限の可能性を持っており、下記の痴漢技を持っている。
『閃光の指<<ライトニングチャージ>>』
『肉欲の牢獄<<ギルティ・プリズン>>』
『導き手<<マインド・バースト>>』
『共有する迷宮<<ラビリンス>>』
そして、迅の二つの名の由来となる痴漢技『悪魔の手<<デモンズ・ハンド>>』がある。
(と言っても、特別な能力が存在するわけでもなく、迅が積み重ねた基礎的な痴漢技の究極に過ぎない。)


そして、迅が未だに身につけていない二つの技。

・『渇いた海<<ヘブンズ・ドア>>』
渇きを満たすことを求める痴漢者<<モレスター>>だけが開くことが出来る真理の扉。
その向こう側から膨大と呼ぶのも馬鹿らしい無限のエネルギーを引き出す痴漢技。

・『操り人形の夜<<デッドマンズ・ビジョン>>』
死ぬ間際の走馬灯――――時間を遅く感じる超感覚を身につける痴漢技。
この技を身につけた迅は、時間から切り離された存在となる。



【人物背景】
都市は鉄道警備組織『レイヴン』の制圧下にあった。
年々増加傾向にある痴漢犯罪に対抗すべく設立された、女性だけで構成された鉄道警備隊『レイヴン』。
卑劣な痴漢犯罪者たちを容赦なく取り締まる彼女たちは人々から英雄視されていたが、
その一方で取り締まりの域を超えた私刑的行為などが問題視されていた。
物語の主人公、鷹取迅(たかとりじん)は凄腕の痴漢として名を知られていた。
日常生活の中では己の欲望を満たすことができない迅は、自分と同じ『逸脱者』の素質を持った女を求めて痴漢行為を繰り返す。
だが、とあるミスから『レイヴン』の手に落ち、痴漢に関する能力を全て奪われてしまう。

何者かの助けにより『レイヴン』の手を逃れた迅は『最終痴漢電車』の噂を知り、そこに自分の求める欲望の答えがあると確信する。
自分と同じ『逸脱者』の素質を持った女を見つけ、最高の『牝』に仕上げ『最終痴漢電車』のゲストにする。
迅はこの新たな目標に向けて、再び痴漢として活動を開始するのだった。


――――鷹鳥迅は、そう言った時間を幾度と無くループして繰り返している。

『痴漢者トーマス』の肩書を持つ者を打倒できる、数少ない痴漢者<<モレスター>>。


【方針】
彼らは、侮蔑されるべき、ただの痴漢だ。


41 : 鷹鳥迅&モレスター ◆YCEVNgTRAI :2015/02/17(火) 03:27:35 EtuJKQSo0
投下終了です


42 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/17(火) 03:30:41 xffaLlhc0
投下乙です
続けて投下します


43 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/17(火) 03:32:16 xffaLlhc0

「……つまり、その聖杯とやらを使えば何でも願いが叶う……と。そういうことでいいのだな?」

薄暗いバーで、男は酒を傾けながら問う。
彼の名はルドル・フォン・シュトロハイム。誇り高きドイツ軍人である。
シュトロハイムの目線は隣に座る人物に注がれている。シュトロハイムよりやや小柄な、しかしよく鍛えられた引き締まった身体の男。

「…………」

その男はわずかに首肯し、自らも酒を呷る。
彼がまとう衣服にはシュトロハイムも覚えがある。その素性もおおよそ知れる。
問題は、彼がイカれたサイコ野郎などではなく、大マジメに与太話を語って聞かせてくることなのだ。

「ふぅーーーーむ、ニワカには信じがたい。が、おれが今こんなところにいるということはまあ、そういうことなのだろうか……」

シュトロハイムに下された任務は、古代より生き長らえる超生物・柱の男の調査だ。
祖国がメキシコの遺跡から発見した柱の男のオブジェはただの柱などではなく、生きている生物だった。
古来より柱の男と戦い続けてきた戦士たち――波紋使いの一人、ジョセフ・ジョースターと共闘し、柱の男達を追い詰めていたはずなのだが――

「いかんな、記憶がどうも曖昧だ。ジョジョのやつはどうなったのだ? おれはもしや殺されたのか……」

たしか柱の男たちの首魁であるカーズと戦っていたはずだが、気がついたらこの街にいた。
東洋、祖国ドイツの同盟国である日本。そのある街の寂れたバーで、シュトロハイムは現実の再認識を行っていた。


44 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/17(火) 03:32:43 xffaLlhc0

「……だがどうあれ、その聖杯とやらは見過ごせん。万能の願望機、眉唾だが本物なら我が国にとって、柱の男に勝るとも劣らん脅威となろう。
 何としてでも回収し、祖国へと持ち帰らねばならん」

聖杯が本物ならば、手に入れれば祖国はさらなる発展を迎えるだろう。柱の男とて容易に排除できる。
偽物であったとしても、どのみち勝ち残らなければこの街――いや、この世界から抜け出すことはできないと、隣に座る男に告げられていた。
彼、シュトロハイムに与えられた力、サーヴァント。
波紋使いでも吸血鬼でも柱の男でもない、だがある意味では彼らに匹敵あるいは凌駕するかもしれない強大な力を秘めた男だ。
シュトロハイムは己の手の甲を見る。機械化された義手に刻まれた誓約の印、令呪を。
どうあれ他にやる気のやつがいたら戦いは避けられまい。シュトロハイムは相手が誰であろうと大人しく降伏する気など持ちあわせてはいない。
力加減を間違え、ヒビを入れてしまったグラスをサーヴァントへと差し出した。

「同盟国の軍人たらば、おれも無碍にはできん。マスターとサーヴァントという関係ではあるが、貴様とおれは肩を並べる戦友だ。
 我が祖国と貴様の祖国に、永久なる繁栄と栄光をともに勝ち取ろうではないか」

シュトロハイムの宣言に、サーヴァントは己のグラスをかち合わせることで応えた。
サーヴァントの名は歴史に無い。
彼はただ、こう呼ばれていた。

――司令官、あるいは提督――と。


45 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/17(火) 03:33:20 xffaLlhc0

【マスター】
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 戦闘潮流

【マスターの願い】
聖杯を獲得し、祖国に持ち帰る。

【weapon】
サイボーグボディの怪力・耐久力
1分間に600発の鉄甲弾を発射可能な重機関砲
右目の紫外線照射装置

【能力・技能】
軍人としての戦闘技能

【人物背景】
ナチスドイツの軍人。階級は少佐。祖国に忠誠を誓い、人間を超越した強大な敵にも臆せず立ち向かう誇り高き軍人。
全身を半機械化したサイボーグであり、身体のいたるところに武器を仕込んでいる。
ジョジョとともに超生物である柱の男たちと激闘を繰り広げ、最期はスターリングラードにて名誉の戦死を遂げた。


46 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/17(火) 03:33:52 xffaLlhc0
【クラス】
アドミラル
【真名】
提督@艦隊これくしょん

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:EX 宝具:B
【属性】
中立・善

【クラススキル】
鎮守府作成:B
 魔力を費やすことで陣地及び武装や戦闘に役立つ道具を作成する。陣地内では下記の「建造」時にかかるコストと時間が軽減される。
建造:A
 魔力を費やすことで艦娘を建造し、ストックする。Aランクともなれば駆逐艦から戦艦、空母まで全ての艦娘を建造できる。
 建造した艦娘は単独行動出来ず、提督の指示によって戦闘時のみ実体化する。一度に使役できるのは1艦隊(6隻)が上限。
※燃料・弾薬・鋼材・ボーキサイトを適量用意すれば、魔力を消費せず上記二つのスキルが使用できる。
【保有スキル】
遠征:C
 建造した艦娘1艦隊にDランク相当の『単独行動』を付加し、本体から離れて自由に動かすことが可能になる。
羅針盤の加護:EX
 妖精からの祝福によって、危機的な局面において幸運あるいは不運を呼び寄せる能力。
 戦闘開始時、確率によってE-〜A+まで幸運値が変動する。

【宝具】
『艦隊これくしょん』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 「鎮守府作成」で自身の領地とした領域内でのみ発動可能な固有結界。
 結界内では建造した全ての艦娘のパラメータが1ランク上昇する。
 また、負傷した艦娘の即時修理や補給が可能となり、また戦闘中の艦隊を瞬時に別の艦隊に入れ替えることが可能となる。

【weapon】
なし。

【人物背景】
第二次世界大戦中に活躍した日本海軍の艦艇の魂を宿す少女たち――「艦娘」を統帥し、人類にとって未知の敵である深海棲艦を戦う将校。
艦娘の建造から改装、部隊編成、戦闘の指揮に至るまで全ての業務を一手に引き受ける辣腕の軍人。
戦闘はすべて艦娘が行うため、彼自身は訓練された一般の軍人と同じ程度の戦闘力しかない。
歴史に埋もれた無名の英雄のため、名前は後世には伝えられていない。


47 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/17(火) 03:34:25 xffaLlhc0
投下終了です


48 : ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:27:25 2JSK8FJ60
皆様投下乙です。
自分も投下させて頂きます。


49 : 霜月美佳&アサシン ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:28:31 2JSK8FJ60




―――――――私/お前は、何色だ。


50 : 霜月美佳&アサシン ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:29:14 2JSK8FJ60
深夜、とあるマンションの一室。
複数の部屋に加え、リビングやキッチン等の整った快適な環境。
それなりの裕福さを感じさせる内装だ。
そんな一室の、月明かりの射すリビングにて。
テーブルを前に置かれた椅子に、黒いスーツを身に纏う女性が腰掛けていた。
顔を俯かせており、その表情は僅かな影を落としている。

公安局刑事課一係所属の監視官。
それが彼女の本来の肩書き。
『霜月美佳』は、マスターとしてこの冬木の地に召還されていた。


「腹括ったかよ、相棒」
「…………」


唐突に美佳の耳に入ってくる低い声。
そこにいなかったはずの男が、魔力の気配と共に姿を現す。
威圧的なヘルメットの仮面。スパイクの付いた衣服。屈強な体格。
一目で理解出来る程に異様極まりない外見だ。
この男こそが古今東西の英霊の化身、サーヴァント。
霜月美佳が召還した従者―――――アサシン“暗殺者”。

秩序の狗、霜月美佳。
混沌の狂犬、アサシン。
本来組む筈のない相容れぬ存在同士が、聖杯戦争における主従となったのだ。

「今でも、夢じゃないかって疑ってる」
「だろうな。だが、あるんだよ。万物の願望を叶える奇跡の器ってのは」
「…でしょうね」

ぽつりとぼやく美佳。
一体どこから自分の歯車は狂ったのだろう。
監視官としての素質を見出された時からか。
一係に配属された時からか。
東金財閥の秘密を探ってしまった時からか。
兎に角、自分は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのだ。
その結果、何の罪もない常守監視官の祖母が死んだ。
民間人が、自分のせいで犠牲になった。
そして。
自分の色相が、濁り始めた。

「私は、やり直したい」

故に彼女は願った。
己が黒に染まらない為に、無意識に祈った。
奇跡の願望器に縋った。
それが彼女が冬木に召還されるきっかけ。


51 : 霜月美佳&アサシン ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:30:03 2JSK8FJ60
「ククク……同感だよ相棒。俺もおまえと同じさ。
 行く道を間違えて、クソッタレな人生へと転げ落ちちまった」

仮面の下で不気味な笑みを浮かべる男。
それをよそに、美佳はテーブルの上に置かれる拳銃に似た装置へと目を向ける。

携帯型心理診断鎮圧執行システム――――――通称ドミネーター。

美佳の監視官としての唯一の武装。
この冬木に召還される際、そのまま持ち込んできたものである。
シビュラシステムと接続し、対象の犯罪係数を計測する装置。
潜在犯と認定された者を排除する為の処刑器具。
社会不適合者に対する、究極にして無二の武器。

(ドミネーターは、使えない)

だが、この世界を統制するのはヒトだ。
シビュラシステムの存在しない社会において、ドミネーターは無用の長物でしかない。
シビュラに接続出来ない以上、ドミネーターは機能しない。
執行どころか、色相の判定さえも出来ないただの置物に成り下がっている。
つまり、今の美佳は丸腰も同然だ。

「だが、まぁ…丸腰じゃ心許ねぇ。喜べよ、俺様からのプレゼントだ」

そんな美佳の現状を察してか、アサシンはのらりくらりとした態度でそう言い。
テーブルの上に『あるモノ』を置く。
それを目にして―――――――美佳は顔を引き攣らせた。


「もしもの時はこいつを使いやがれ。使い方くれぇ解るよな?
 ぶっ殺すのか、ぶっ殺さねえのか、それを決めんのはおまえだ」


それはジャギが持ち込んできた複数の弾丸、そして一丁のショットガン。
今や目にすることも稀な、実弾を用いる銃。
法による執行ではない、意思による殺人の為の兵器。
美佳の心中に言い知れない不快感と嫌悪感が押し寄せる。

「肝っ玉の小せえ女だな、オイ」

美佳の表情に気付いてか、アサシンが呆れたように呟く。
従者でありながら口答えをする男に対し、僅かに睨むような視線を返した。


52 : 霜月美佳&アサシン ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:30:40 2JSK8FJ60
内心、美佳に現状への恐怖が無いかと言えば嘘になる。
むしろ胸の内では不安と焦燥が渦巻いているのだ。
聖杯戦争―――――――つまり、たった一つの戦利品を賭けた殺し合い。
勝ち残れば、自分はやり直せる。
あの過ちをリセット出来る。
黒く染まりつつある色をクリアに出来る。
だが、勝ち残った果てに自分は正気を保てるのか。
屍の山を踏み越えた末に、己の色相を守れるのか。
本当に、全てをやり直せるのか。
いや、それこそ聖杯の力で―――――――

「もたもたして全部失っちまった時にゃもうおしまいなんだよ。解るか、おい?」

そんな美佳の不安を突くように、アサシンが言葉を投げかける。
身を屈め、俯く美佳の表情をヘルメットに覆われたアサシンの顔が覗き込む。
そして、アサシンはにやりと醜悪な笑みを浮かべた。


「ビクビクしてんじゃねえ、とっととドス黒く染まっちまえよ。
 そうすりゃ何奪ったって楽になれる。何を踏み躙ったって心が痛まなくなる」


びくりと美佳の身体が震える。
耳元でそう囁く男の言葉は、余りにも淀んでいた。
美佳の心中で、疑心が確信へと変わる。


こいつは、濁り切った――――――『漆黒』だ。


自らの従者への嫌悪感が押し寄せ、彼をキッと睨む。
対するアサシンは顔を遠ざけ、のらりくらりとした態度で笑みを浮かべるのみ。
そんな彼を前にし、美佳は苛立ちと疑念を募らせるばかり。

何でこんな男が自分のサーヴァントになったのか。
自分を守る為に聖杯へと縋ったのに、何故ここまで来て追い詰められなければならないのか。
いいや、むしろ。
これが道を誤った私への罰なのだろうか。

兎に角、今言い切れることは二つ。
自らが犯した過ちを取り消す為に、聖杯戦争に勝ち残らなければならない。
そして――――――――


(……絶対に、濁るもんか)


霜月美佳は、決意するように心中で呟いた。


53 : 霜月美佳&アサシン ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:31:00 2JSK8FJ60
◇◇◇◇

(アンナ)

仮面の下の醜悪な素顔。
その更なる深層の心中にて、アサシンは静かに呟く。


『助けてくれぇぇアンナあ〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜………お願いだぁ
 教えてくれよォオォオしえてぇぇ………オレは……』


瞳を閉じ、脳裏に浮かぶのは―――――頭部を押さえながら喚き散らす哀れな男の姿。
それは生前のアサシンの最期。
自嘲してしまいたくなる程に無様な、一人の悪党の末路。


『オレは……いつ……ドコで……!間違えたんだァああぁあ!!!!!!!』


回想の中で、男は醜く慟哭する。
こんな死に際に、ようやく全てを悟ってしまったのだ。
自分はどこで間違えたのか。
何故あんな運命を辿ってしまったのか。
答えは既に出ている。

(ああ、やってやるよ。何が何でも勝ち残ってやる。
 アンナを捨てちまった過去をやり直す為なら、俺はどんな卑怯な手でも使ってやる)

自分の支えとなってくれた、たった一人の少女。
自分を認めてくれた、唯一人の存在。
アンナを失ってしまった。
アンナを捨ててしまった。
それが自分の運命を、完全に変えてしまった。
故に彼は、それをやり直す為に戦うのだ。

(だからよ、せいぜい期待を裏切るなよ相棒?
 おまえは黒く染まりゃいい。勝つ為に悪魔になりゃいいんだ)

仮面の下で浮かべるのは、悪魔の笑み。
これが純粋な努力家だった者の末路。
透明な白だった少年は、憎悪と嫉妬、喪失の果てに漆黒へと染まった。
今のアサシンは文字通り悪鬼と化していた。
彼は自らのマスターにもそれを求める。
どんな手を使ってでも勝てばいい。
マスターも勝利の為にそうするべきだ、と。

彼は聖杯を求める。
全てをやり直す為に奇跡へと縋る。
決して手段は選ばない。
どんな卑劣な手を用いてでも、高みへと上ってみせる。
そしてクズの連中共に思い知らせてやる。
今は、悪魔が微笑む時代なのだということを。



(聖杯を手にするのは、このジャギ様だ)



――――――――――極悪の華が、咲く。


54 : 霜月美佳&アサシン ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:31:34 2JSK8FJ60

【クラス】
アサシン

【真名】
ジャギ@極悪ノ華 北斗の拳ジャギ外伝

【ステータス】
筋力B 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具C+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:D+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
ただしジャギの場合、闇討ちを仕掛ける際に限りランクが低下しない。

【保有スキル】
北斗神拳:C
千八百年に渡って受け継がれている一子相伝の暗殺拳。このランクは一定の技術を備えていることを示す。
矢などの飛び道具や様々な武器に対する返し技、ある程度の自然治癒なども備えている。
サーヴァントが秘孔を突かれた際、秘孔を解く技術が無ければ判定は対魔力によって決まる。
ジャギは伝承者候補だったものの、その技量においては稀代の才を持つ兄弟達に大きく水を開けられていた。
更に武器の使用さえ厭わぬ卑劣な戦法によって拳を歪めており、暗殺拳としての格を下げている。

欺瞞の梟雄:E-
憎悪する弟に成り済まし、悪評を広めた逸話が元になったスキル。
自らの胸の七つの傷を見せた者に対し、低確率で真名を誤認させる。
ただしジャギの真名を知った者には一切の効果を発揮しない。

カリスマ:E
軍団を指揮する才能。
賊徒や無法者の統率に長ける程度の能力。

【宝具】
「北斗羅漢撃」
ランク:C- 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:1
育ての親にして師父であるリュウケンより伝授された北斗神拳奥義。
両掌を突き出した構えから変幻自在の連続突きを繰り出す。
憎しみや恨みといった負の感情を捨てた者のみ極められる技。
本来はBランク相当の宝具だが、ジャギが負の感情に囚われ外道へと墜ちたことでランクが低下している。

「北斗千手殺」
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:100
ジャギが独自に編み出した奥義。
跳躍しながら相手に無数の突きを放つ。
数十の人間を一瞬で虐殺する程の威力を持つ。
北斗神拳の正当な技ではなく、神秘のランクは極めて低い。

「極悪ノ華」
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
拳法家としての道を踏み外し、悪逆の外道として突き進んだ生き様の具現。
不意打ちや闇討ち等のあらゆる卑怯な戦法を用いた際、ダメージ判定・命中判定において有利な補正が与えられる。
更にジャギが扱える凶器足り得る道具を「サーヴァントに通用する武器」として使用できる。
例え何ら変哲のない鉄棒だろうと、ガソリンに引火させたマッチの炎だろうと、ジャギが用いることでサーヴァントにダメージを与えることが可能。
ただし宝具にはならず、あくまで低ランクの神秘を帯びた道具へと昇華させるに留まる。
そしてあくまで「ジャギが用いること」が条件。ジャギが用いたものをマスターに譲渡しても効果は発揮しない。

【Weapon】
「含み針」
口の中に仕込んだ針。
威力は低く、専ら不意打ちや急所を狙う攻撃として使用する。
「極悪ノ華」の効果に関係なく、最初から低ランクの神秘を帯びた武器。

【人物背景】
一子相伝の暗殺拳である「北斗神拳」の伝承者候補、北斗四兄弟の三兄。
幼少期に火災で両親を失っていた所をリュウケンに拾われる。
当初は息子として育てられていたが、ジャギ本人の強い要望によって伝承者候補入りを果たす。
伝承者候補として拳法の腕を磨き、修行の最中で暴走族の少女であるアンナとも交流を深める。
しかし兄弟の中では最も素質が低く、実力に於いて弟であるケンシロウにさえ水を開けられることとなる。
自らの実力への劣等感と焦りによって、ジャギは次第に苛烈な性格へと変貌していく。
やがて核戦争が勃発。混乱の最中、暴徒達にアンナを陵辱の末に殺されてしまう。
この一件でジャギの心は完全に悪へと墜ち、更に伝承者争いに敗北した彼の歪みは加速。
賊徒の親玉として祭り上げられ、憎悪するケンシロウの名を騙り暴虐を繰り返す破壊者と化した。
最終的にケンシロウと交戦するも、強敵との死闘の果てに非情さを得ていた彼の前に敗北。
走馬灯の中、「アンナを捨てた」という過ちに気付きながら絶命した。

稀代の才を持つ兄弟と比較するとその能力は大きく劣る。
しかし複数の賊徒を一瞬で虐殺する、独自の北斗神拳奥義を考案し体得する等、拳法家としては既に常人を凌駕する域に至っている。

【サーヴァントとしての願い】
アンナを捨ててしまった過去をやり直す。


55 : 霜月美佳&アサシン ◆zhWNl6EmXM :2015/02/17(火) 15:32:02 2JSK8FJ60

【マスター】
霜月 美佳(しもつき みか)@PSYCHO-PASS 2

【マスターとしての願い】
過ちから逃れる為にやり直す。

【weapon】
「ドミネーター」
対象の犯罪係数を計測し、潜在犯と認定された者を執行する機器。
大柄な拳銃のような形状をしている。
尤もシビュラシステムの存在しない冬木では機能せず、無用の長物も同然である。

「ショットガン」
水平二連式のソードオフ・ショットガン。
「極悪ノ華」の効果に関係なく、最初から低ランクの神秘を帯びた武器。
本来はジャギが持ち込んだ武装だが、弾薬と共に霜月美佳に譲渡された。

【能力・技能】
公安局の監視官であり、身体能力や判断力は常人より優れている。
また学生時代から直感が鋭い。

【人物背景】
公安局刑事課一係に所属する監視官。
正義感が強いものの高圧的であり、潜在犯に対しても差別的な視点が多い。
自分の能力に自信を持っている素振りを見せるが、大事に陥った際は自らの責任を回避しようとする傾向が見られる。
公安局のセオリーから外れて捜査する傾向の多い常守朱に強い反発を抱く。
作中で「カムイ」の事件と東金財団の関連性に気付き、禾生局長に調査結果を報告するが
資料に含まれた機密情報に接触してしまったため「シビュラシステム」の真相を知らされてしまう。
以降はシビュラの犬である東金朔夜の指示に従う立場となり、自分が情報を渡したことで朱の祖母が死亡したことに強いショックを受ける。
愕然とする美佳は自らの色相を保つべく、東金を潜在犯として執行しようとしたが…。

【方針】
自分を濁らせる全てを排除する為に戦う。
しかし、心の奥底では僅かに迷いもある。


56 : 名無しさん :2015/02/17(火) 15:32:13 2JSK8FJ60
投下終了です。


57 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/17(火) 16:58:42 t.UtO1fU0
投下します。


58 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/17(火) 16:59:37 t.UtO1fU0
『オマエはドコへも向カウコトハナイ……。トクニ、「真実」ニ到達スルコトハ……決シテ!』
 ジョルノ・ジョバーナが持つゴールド・エクスペリエンス・レクイエム、それによる拳のラッシュを受けたことでディアボロは敗北し、彼の地獄が始まった。

 最初は麻薬中毒らしきホームレスに刺されたことで
 次は生きているにも関わらず検死により肝臓を取られたことで
 その次は交通事故に遭う事で
 そのまた次は―――

 彼はありとあらゆる理由で死に続けた。
 地を変え時を変え、彼はありとあらゆる手段で殺され続けた。

 しかし、そんな彼にも救いが訪れる。
 彼の運命には本来ならば存在しない願望器、聖杯によって。



 ◆  ◆  ◆


59 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/17(火) 17:00:23 t.UtO1fU0



 次はいつ死ぬんだ、何処から襲ってくるんだ……!?
 幾度も死に続けた邪悪、悪魔の名を冠する男ディアボロは怯えていた。
 気が付いたら人通りの多い道、周りを見る限りビジネス街だろうか、そこにディアボロは立っていた。
 自分の周りを歩いている人間が恐ろしくて仕方ない。
 ナイフを持っているかもしれない、銃を向けてくるかもしれない。
 車だって走っている、ひょっとしたら俺に向かってくるかもしれない。
 もしかしたらビルが倒壊して瓦礫が自分に落ちてくるかもしれない。
 ディアボロはあらゆる可能性を恐れていた。

 しかししばらくして彼は気づく、何かがおかしいと。
 普段なら、……決して認めたくないがすでに死んで別の場所に居てもおかしくないはずだ。だが生きている。
 ジョルノがレクイエムを解除したのか、それとも死んだのか、何らかの力でスタンドの力が解除されたのか。それは分からない、今のディアボロに知るすべはない。しかしディアボロはこれを希望と見た。
 そう考えた後の彼の行動は早い。周りの人の格好と自分の格好は明らかに違い、どう取り繕っても目立ちすぎるので彼は慌てて路地裏に隠れた。
 そして一段落がつき、これからの事を考えようとしたとき

「ぐぁッ!!」

 ディアボロは頭痛に襲われた。彼はこれをすぐにレクイエムの仕業だと判断する。
「あの新入りめ……、この俺がそんなに憎いかッ……!!」
 彼は呪詛の言葉を漏らすが、すぐに違和感を覚える。自分の中に知らないはずの知識が植えつけられていたからだ。
「聖杯戦争……?」
 いくら自分の中にあるからと言ってディアボロは簡単に信じたりはしない。
 普通の人間ならともかく、スタンドという異能を知っているディアボロからすれば記憶を植え付ける位は容易であると彼は知っている。
 だが一方でレクイエムを止めたのは聖杯の力ではないかとも彼は考えていた。
 信じるか疑うか、どちらを選ぶか悩む前にまた新しい要素が現れる。

「貴方が僕のマスターですか?」
 いきなり爽やかな笑みを浮かべた青年が話しかけてきた。
 そんな青年に向かってディアボロは一言尋ねる。
「お前が俺のサーヴァントなのか?」
 ディアボロと同じ世界の日本の殺人鬼が見れば『質問を質問で返すなァ―――ッ!!』と怒り狂いかねない光景だが、青年は嫌な顔一つすることなく
「はい。アサシンのサーヴァント、真名は夜神月です」
 と答えた。
 この時点でディアボロは聖杯を信じる方に少し傾くのだが、同時にあらたな問題も発生した。
(この男は信用できない)
 一見人のよさそうな笑みを浮かべる自身のサーヴァント。
 しかしギャングのボスという立場で多くの人間を見てきた彼にはそうは思えなかった。
(チョコラータとは違うが……。何だ、この男は……)
 ディアボロには、夜神月が英雄だとは思えなかった。
 それどころかディアボロには自身のサーヴァントが邪悪にしか見えなかった。
(まあ、俺の言えたことではないか)



 ◆  ◆  ◆


60 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/17(火) 17:00:58 t.UtO1fU0



 一方アサシンのサーヴァント、夜神月も自身のマスターを信じてはいなかった。
 別に、マスターであるディアボロが自分を信用していないような目で見ているからではない。マスターからすればいきなりこんな所に呼ばれ、命を懸けて戦わされるのだ。あっさり信じる方がどうかしている、とすら月は考えていた。
 アサシンである彼がマスターを信じきれない理由は一つ。

(この男は悪だ)

 それだけだった。

(殺しをためらわない相棒というのは、この場ではありがたいのかもしれないが……)
 悪人を殺し、優しい人間だけの世界を作ろうとする自分とかみ合う訳がない。月はそう考えていた。


(見て居ろL。僕はこの戦いを勝ち残り誰もが理想とする新世界を造る、そして僕はその神となって見せる!)


61 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/17(火) 17:01:30 t.UtO1fU0
【クラス】
アサシン

【真名】
夜神月@DEATH NOTE

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運C 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:E
自身の気配を消す能力。
完全に気配をたてばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
神性(偽):C
神と呼ばれた事のある神霊以外の存在に与えられるスキル。
彼は本物の神同様の信仰を受けていたが、本名を秘匿していたのでランクが下がっている。

【宝具】
『死神の帳簿(デスノート)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜∞ 最大補足:1
このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。
書く人物の顔が頭に入っていないと効果は無い。故に同姓同名の人物に一片に効果は得られない。
名前の後に人間界単位で40秒以内に死因を書くと、その通りになる。
死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる。
死因を書くと更に6分40秒、詳しい死の状況を記載する時間が与えられる。
「人間界単位で124歳以上」および「残りの寿命が12分以内」「生後780日未満」の人間をデスノートで殺すことは出来ない。
その他様々なルールがあるがここでは省略。
ちなみに、ノートからページを切り離した状態でも使用可能。

【weapon】
なし

【人物背景】
元々は全国模試で1位を取る、テニスの全国大会で優勝する位の文武両道である以外は普通の高校生だった。
しかし、2004年の11月28日に死神が落としたデスノートを拾う事で一変。彼は悪人を殺す存在となる。
それはキラと呼ばれ、やがて神のように呼ばれることになる。
しかし、キラを悪と考える存在からは殺人者として追われることになる。
そして2010年1月28日、キラは敗北し死亡した。

【サーヴァントとしての願い】
やり直す。再び新世界の神として君臨する。


62 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/17(火) 17:02:03 t.UtO1fU0
【マスター】
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
やり直す。再び帝王になる。

【weapon】
スタンド『キングクリムゾン』
ただし弱体化している。

【能力・技能】
『時間を吹き飛ばす』能力と『未来を予知する』能力を持つ。
ただしスタンドが弱体化しているので使用可能かどうかは不明。

【人物背景】
元はイタリアのギャング『パッショーネ』のボス。
そこで彼は正体を隠しながら活動していたが、あるとき部下から反乱にあう。
そして最後には敵のスタンド能力によって『何度も死に続ける地獄』を味わうことになった。

【方針】
聖杯狙い


63 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/17(火) 17:02:26 t.UtO1fU0
投下終了です


64 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 02:56:54 E.knX2qo0
>>35
痴漢英雄の共演、原作をやっている身としては感慨深いですね。
どこか物悲しさを感じつつも、痴漢を通して女性を昇華させることに力を注いだ彼らは紛れも無く痴漢ですが、かっこいいんですよね。
星を掴むかのような険しき道でも諦めないその姿勢がふんだんに詰め込まれている投下で心が踊りました。

>>42
日独同盟コンビは渋く、落ち着きがありますね。
サーヴァントである提督も多種多様な戦法がとれて強い。
ゲームの設定をうまくスキルに組み込んでいて、ワクワクしますね。

>>48
漆黒を前にして濁るもんかと決意しているけれども、もう濁ってる感ありますね。
濁りを排除する為に濁りを深めていく霜月さん、本当に道化で笑えますね。
我欲を貫けば、黒になってもおかしくないのに。

>>57
変わり種のアサシンと、弱々しいボス。
どう見てもボスの方が強そうなのに、何故か強そうに見えない不思議。
凸凹コンビに見えて、どちらも願いの為なら外道なことをできる強みが素敵ですね。

では、投下いたします。


65 : シン・アスカ&バーサーカー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 03:00:41 E.knX2qo0
見上げた空に堕ちていく。
茜色が広がる天空は、元いた世界と変わらず――シン・アスカを包み込む。
けれど、この世界は総て偽りだ。
何もかもが嘘で、誰が死のうと現実は揺らがない。
言うなれば、夢の中だ。これは現実から逃げ、理不尽を許容できない胡蝶の夢。
下らない、とシンは呟いた。
そして、そんな夢のような泡沫を信じて、飛び込んだ自分自身が一番下らない、と蔑んだ。

(何が何でも、最後まで生き残ればいい、わかりやすいルールだ)

聖杯戦争。その名の通り、戦争だ。
譲れぬ願いの為に、見知らぬ誰かを殺す。
その中には、戦いを為す覚悟もない一般人もいるかもしれない。
知った事か、と割り切れる程シンは大人ではないが、引き金は既に引かれてしまった。
最後まで生き残らなければ、無意味に死ぬ。

(ハッ、結局、俺は殺戮者でしかないんだ)

無駄死したくなければ、戦うしかない。顔を破顔してしまうくらいに単純な理屈だ。
願いを叶えるには、敵を討つ。今まで通りではないか。
今更、正義の味方を気取るなんて遅すぎる。
縋れる人も、【シン・アスカ】がいることを許される居場所も――ない。
脱走したとはいえ、かつての上司と大切な仲間の妹を殺したのだ、どんな顔で戻ればいい。

「聖杯は、俺が手に入れる。誰が相手でも戦ってやる」

そして、戦場から基地へと戻る最中――シンは、強く願った。
もうこれ以上戦わなくてもいい世界を。
もうこれ以上失わなくてもいい世界を。

「それができるだけの力は、この手にある」

想いの煌きが最高潮に輝いた時、聖杯はシンの願いに応えたのだろう。
一瞬前までコクピットに座っていたのに、気づいたら偽りの街でシンは一人立っていた。
舞台として用意されたのは戦火に晒されることのない平和な世界。
思わず、笑ってしまった。
此処に来る前と比べて、随分と優しいものではないか。
とてもではないが戦場となる世界とは思えない。
だが、脳内に刻まれたルールは間違いなく此処を命を懸けた殺し合いの舞台と叫んでいる。
願いをかけた戦争の場だと、シンの拙い頭でも理解させられる。


66 : シン・アスカ&バーサーカー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 03:01:12 E.knX2qo0
     
「力を貸せよ、バーサーカー。アンタの力で、俺は総てを焼き払う」

傍らに立つ銀髪の剣士は、言葉を返すこともなく、ただ唸り声だけを上げている。
憎悪。世界、自分、人、何もかもが憎くて仕方がない歪んだ表情を浮かべ、シンの声に呼応した。

(【デスピサロ】か……名前の通り、総てを死に還すってことかよ)

このサーヴァントさえいれば、自分は戦い続けることができる。
無論、魔力消費や理性がないといった問題もあるが、その部分は何とかカバーするしかない。

(戦争のない世界を創る為に、俺は戦うと決めた)

聖杯に懸ける願いは、戦争のない世界の実現。
これ以上、自分のような存在を産まない為にも、これを最後の犠牲とする。
拳を、握りしめる。血が滲むぐらい、強く。
護るべき人達を、護る為に殺す矛盾。
血塗れで錆び付いている理想は、既に粉々に砕け散っている。
だが、シンは今更だと目を背けた。
たった少しの犠牲を払うだけで、世界は救われるかもしれない。
それならば――迷うはずがない。そう、思っていた。
しかし、心の片隅にある【シン・アスカ】が望む願いは少しだけ違っていた。
戦争のない世界は大切だ。
その実現の為に今まで戦ってきたことは間違いなんかじゃない。

「父さん、母さん、マユ、ステラ。こんなこと、願っちゃ駄目なのかもしれい。でも、俺はもう一度だけ――」

けれど、シンはもう疲れてしまった。
何が正しくて、何が間違いなのか。
誰も彼もが違ったことを言い、自分の考えが正常なのかすら定かではない。

「皆の笑顔が、見たいよ」

――――あの戦火が降り注ぐ前に戻れたらいいのに。

小さな声で吐かれた弱音は、夕焼けの赤に溶けていった。


67 : シン・アスカ&バーサーカー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 03:02:03 E.knX2qo0


【クラス】
バーサーカー

【真名】
デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

【パラメーター】
筋力A+ 耐久B+ 敏捷A+ 魔力B+ 幸運D 宝具EX

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:A
進化の秘法に身を窶したデスピサロは、憎悪だけを糧に剣を振るう。
大切な女を失った彼を止めれる者は誰もいない。
全てのパラメータが1ランクアップ。

【保有スキル】

進化の秘法:B
その秘術は聡明な魔族の王を一匹の化物に変えるぐらいに、醜悪なものだった。
化物に成り果てた彼は、攻撃を受けようが痛みを感じない。
再生、進化、高速詠唱。意志を無くした代わりに得たものは、本当に欲しかったものなのか。

【宝具】
『魔界武具』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:10
彼が振るう剣、鎧、盾、兜のセット。
剣は、相手を斬りつけることで、自分の体力を回復。
鎧は、呪文攻撃を軽減。
盾は、炎や吹雪を軽減。
兜は眠りや麻痺、即死呪文の耐性をつける。

『夢喪転生』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
進化の秘法により、現状の人間体から更なる進化、ステータスの上昇を可能にする。
しかし、その代償は大きく、宝具発動には多大な【魔力】を捧げる必要があるだろう。

【weapon】
魔界武具。

【人物背景】
主人公が住む世界の魔族の王であり、家族同然だった村の人々を殺した仇。
世界を魔族のものとすべく、人間を滅ぼす決意を固める。
けれど、その結末は、愛する人を喪い、失意のまま自我や記憶を喪い力を求める【化物】となって勇者に討たれるものだった。

【サーヴァントとしての願い】
――――。


【マスター】
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEEDDESTINY

【マスターとしての願い】
戦争のない世界を創る/家族やステラが死ぬ前まで時を巻き戻し、やり直して救いたい?

【能力・技能】
軍人なので肉弾戦、パイロットの技術が優秀。

SEED(火事場の馬鹿力、判断力の上昇)の覚醒。

【人物背景】
かつては、平穏な日々を送っていた少年であり、心持ちも穏やかであった。
しかし、戦火に巻き込まれ、家族を失ってからは己の無力さを憎み、軍人の門戸を叩く。
そして、【力】を手に入れた彼は各地の戦場を転戦する。
その最中に出会った天真爛漫な少女、憎まれ口を叩きながらも心の奥底では認めていた上司などといった彼と関係を深くした人達がいたが――。

【方針】
戦う。


68 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 03:03:03 E.knX2qo0
投下終了です。


69 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:19:35 SDHJXcpw0
皆様投下乙です。
自分も投下します。


70 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:20:48 SDHJXcpw0
『貴子の言う通りだと思う。だからオレ、強くなる』

 雨に濡れて涙を流したあの日、誰より尊敬する彼女に強くなると誓ったことを覚えている。

『ありがとう。あなたがそう言ってくれることが、あたしの"誇り"だったわ……』

 何もかもが間に合わず、彼女がただ腕の中で息絶えるのを見ることしかできなかったことを覚えている。

『杉村君がねっ……優しい人ですごく救われた―――っ』

 流浪の果てにようやく見つけ出した想い人の言葉を覚えている。

 これは過去。オレの記憶、過去の記憶。強くなると誓い、絶対に守ると誓い、しかしそれさえ叶わなかったオレの記憶の断片。
 守りたいと思った人たちの体が目の前に横たわっている。慶時も、千草も、豊も、三村も。オレが大切に思っていた彼らは皆オレの腕をすり抜けていく。
 そして。

『あたしも杉村君のことっ
 ―――好きだよおっ……』

 それが、想い人の遺した最期の言葉だった。
 正義に力はなく、誓いは意味を持たず、伸ばした手は何にも届かない。

 そこで杉村の意識は終わっていた。脳裏にはただ、彼女の泣き笑いだけが残っていた。

◇ ◇ ◇

―――騎士、黒沢祐一は……

 これは過去。俺の記憶、彼女の記憶。忘れかけていた記憶の断片。

―――騎士、黒沢祐一は……世界で、一番きれいなもののために戦って……

 舞い散る桜の下、彼女と二人で過ごした時間を覚えている。
 それは誓い、騎士の誓い。世界がなくなっても、人が滅びても、それでも守らなければならないものがあると彼女は言った。

『あるか? そんなもの』
『……ない、かな?』

 彼女の言葉は予想以上に気恥ずかしいもので、しかし不思議と心に残るものだった。
 だから照れ隠しでそんなことを言ってしまったが、そのせいで彼女の顔は寂しげなものに変わってしまって。

『……いや』

 だから。彼女を見つめる目を細め、その頬へと手を伸ばした。
 頬を撫でる柔らかな風の感触も、木々の隙間から差し込む日の光も、全ては遠い過去のものだけれど。

『あるかもしれないな、そういうの』

 それでも。
 それでも確かに―――彼女は笑っていた。

◇ ◇ ◇


71 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:21:02 SDHJXcpw0
『貴子の言う通りだと思う。だからオレ、強くなる』

 雨に濡れて涙を流したあの日、誰より尊敬する彼女に強くなると誓ったことを覚えている。

『ありがとう。あなたがそう言ってくれることが、あたしの"誇り"だったわ……』

 何もかもが間に合わず、彼女がただ腕の中で息絶えるのを見ることしかできなかったことを覚えている。

『杉村君がねっ……優しい人ですごく救われた―――っ』

 流浪の果てにようやく見つけ出した想い人の言葉を覚えている。

 これは過去。オレの記憶、過去の記憶。強くなると誓い、絶対に守ると誓い、しかしそれさえ叶わなかったオレの記憶の断片。
 守りたいと思った人たちの体が目の前に横たわっている。慶時も、千草も、豊も、三村も。オレが大切に思っていた彼らは皆オレの腕をすり抜けていく。
 そして。

『あたしも杉村君のことっ
 ―――好きだよおっ……』

 それが、想い人の遺した最期の言葉だった。
 正義に力はなく、誓いは意味を持たず、伸ばした手は何にも届かない。

 そこで杉村の意識は終わっていた。脳裏にはただ、彼女の泣き笑いだけが残っていた。

◇ ◇ ◇

―――騎士、黒沢祐一は……

 これは過去。俺の記憶、彼女の記憶。忘れかけていた記憶の断片。

―――騎士、黒沢祐一は……世界で、一番きれいなもののために戦って……

 舞い散る桜の下、彼女と二人で過ごした時間を覚えている。
 それは誓い、騎士の誓い。世界がなくなっても、人が滅びても、それでも守らなければならないものがあると彼女は言った。

『あるか? そんなもの』
『……ない、かな?』

 彼女の言葉は予想以上に気恥ずかしいもので、しかし不思議と心に残るものだった。
 だから照れ隠しでそんなことを言ってしまったが、そのせいで彼女の顔は寂しげなものに変わってしまって。

『……いや』

 だから。彼女を見つめる目を細め、その頬へと手を伸ばした。
 頬を撫でる柔らかな風の感触も、木々の隙間から差し込む日の光も、全ては遠い過去のものだけれど。

『あるかもしれないな、そういうの』

 それでも。
 それでも確かに―――彼女は笑っていた。

◇ ◇ ◇


72 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:21:56 SDHJXcpw0
 夕日が差し込む教室に、二つの影があった。
 少年と、男だった。窓枠に手をかけ遠くを見ている学生服の少年と、壁にもたれかかり腕を組んでいる黒服の男。
 少年はともかく男のほうは中学校の教室という場所に不釣合いであったが、既に放課後を迎え人の気配が無くなったこの教室で、それを指摘する者は誰もいなかった。

「えっと。その話は、本当なのか……?」

 少年―――杉村弘樹は窓枠にかけていた手を離すと、未だ壁にもたれかかった姿勢のサーヴァント―――セイバーに問いかける。
 問いを受け、セイバーはそこで初めて視線を杉村へと向け、静かに首肯した。

 聖杯戦争。にわかには信じがたい話だ。しかし杉村は、そんな与太話にも近い言を否定しきれずにいた。
 何故なら、つい先ほどまで当たり前のように過ごしていたこの日常は、「プログラム」によって破壊されていたはずなのだから。
 そして杉村自身、桐山和雄と戦い、敗れ、誰より好きだった彼女を守りきれず死んでしまったことを覚えている。
 死んだはずの人間が生きている。それが聖杯によるものだとすれば、話の筋は合う。

「それで、君は何を願う?」

 目を伏せていた杉村に、セイバーがそう声をかけた。
 願い。この戦争を勝ち抜き、聖杯に託す願いが何であるのか。

「君が"ここ"にいるということは、つまり君が何らかの願いを抱いたという証左だ。君がそのために戦うというなら、俺は最後まで共に戦おう。
 しかし、少しでも迷いがあるというのなら。悪いことは言わない、君はマスターの座を降りるべきだ」

 一見突き放したようなセイバーの言葉。しかしそれは冷徹さの現れではなく気遣いの類であることは杉村にも察することができた。
 迷いを抱いたまま勝ち抜けるほど聖杯戦争は甘くない。道半ばで無残に殺されるくらいならば、最初から戦わないほうがいいとセイバーは言っているのだ。

「……オレは、みんなと一緒に過ごした時間を取り戻したい」

 無意識にそんな言葉が溢れていた。
 それを受けてセイバーは、そうか、と短く頷いた。セイバーは既に杉村からプログラムの説明を受けている。なのでおおよその見当はついていたのだろう。

「死者の復活……いや、察するに君の巻き込まれた殺し合い自体を無かったことにするのが君の願いか」
「それだけじゃない。プログラムなんて最初から無かったことにして、オレ達よりも前に巻き込まれた人たちも全員助けたい」

 つまるところは歴史の改竄。日本という国そのもののやり直し。
 なるほど、聖杯を用いてまで叶える願いとしては至って順当なものだろう。


73 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:24:01 SDHJXcpw0
「その願いに迷いがないというのならば、俺はこの身が尽きるまで戦うと誓おう」

 すなわち、他の全てのマスターと全てのサーヴァントの鏖殺。サーヴァントとして喚ばれた以上はその行為に異を唱えるつもりなどない。
 だが、未だ幼いマスターから返ってきたのは、それとは少々趣の違う言葉だった。

「いや、ちょっと待ってくれ。オレは覚悟を持って戦うつもりだけど、でも他の参加者を殺してまわるつもりはない」
「……それはつまり漁夫の利を狙っていくということか?」

 杉村の言葉に、セイバーは多少面食らいながらも問い返す。
 しかし当の杉村は毅然とした態度でセイバーに向かい合っており、どうにもそのような姑息めいた戦法に胸を張っているようには見えない。

「いいや違う。願いは叶えたい、でもその前に争いを止めたいんだ」
「……それは」

 杉村の口から出たのはそんな言葉だった。
 セイバーはやや目を見開き、その顔は驚愕に染まっている。無理もないだろう。他者を切り捨てるでもなく、自分からマスターを降りるでもなく、聖杯戦争そのものを否定しながらも願いだけは叶えたい。
 傲慢、その一言に尽きる。端的に言って現実が見えていない。齢10にも満たない子供だってこれよりは利口なことを口にするだろう。

「それは、不可能だ。これは君が体験したプログラムのような強制された殺し合いじゃない。誰もが願いを抱き他者を踏みにじる決意を持って足を踏み入れた"戦争"だ。言葉や想いだけで止まるほど、戦争とは簡単なものではない」
「それでも可能性は0じゃないはずだ」

 セイバーの言に、しかし杉村は臆面もなく答える。

「本当に、それができると思っているのか?」
「力の有無とか、できるかどうかじゃないんだ。大切なのは自分が今何をするべきなのかを知ることで、オレは"こうすること"がオレのするべきことだと思ってる」

 だから、と杉村は言葉を続けた。

「どうかオレに力を貸して欲しい、セイバー。
「……」

 沈黙。杉村の言葉を受け、セイバーは黙したまま動かない。
 やはり断られるか。そう思いかけて心細くなりそうになる気持ちを、しかしそれでも奮い立てる。
 自分で決めた道は決して曲げはしない。それが例え自分のサーヴァントに反旗を翻されたとしても。
 そんな風に一人で悲壮な覚悟すら決めようとしていた杉村に、幾ばくかの無言の後にセイバーが声を発した。


74 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:25:32 SDHJXcpw0
「……いいだろう、マスター。俺は君の考えに従おう」
「! いいのか、セイバー!」

 泣きそうにも見えた杉村の顔が、一気に満面の笑みへと変わる。
 あまりにも素直に喜びの感情を見せる杉村に、セイバーは少々頬を緩めながら答えた。

「以前に一度、君と似た少年と会ったことがある。その時のように君に賭けてみたくなった、それだけだ」
「ありがとうセイバー! ……あ、だがそれだとセイバーの願いは……」

 心の底から嬉しそうにセイバーの手を握り感謝する杉村は、しかし一転してあたふたと申し訳なさそうにセイバーを伺っている。
 そんな杉村の様子に苦笑しながら、セイバーは答えた。

「それは気にしなくていい。俺も聖杯にかける願いを持ち合わせてはいるが、何より優先すべきとまでは思っていない」
「……そうか。何から何まで本当にありがとう、セイバー」

 ―――つくづくオレは縁に恵まれているな。

 この頼りがいのあるサーヴァントを前に、杉村はそう述懐する。
 思えば自分の周りには何にも代えがたい凄い人達がたくさんいた。それは友人だったり、師であったり、想いを寄せる人であったりと様々だが、共通するのは杉村をして尊敬できる者ばかりだということだ。
 そして今、また一人信頼できる凄い仲間を手に入れることができた。

「……そういえば、まだ真名で名乗っていなかったな」

 ふと、セイバーがそんなことを言って。確かに言われてみればこの黒衣の騎士の名前を、自分はずっとセイバーとだけ呼んでいたことを思い出した。

「元シティ神戸自治軍『天樹機関』少佐、黒沢祐一だ。よろしく頼む、マスター」

「ああ。こちらこそよろしくな、祐一さん」

 そうして彼らは一歩、足を踏み出した。
 願いの矛盾に目を逸らさず、己の弱さに目を背けず。
 この世に死があることを知り、悲しみがあることを知り、絶望があることを知り。
 それでも、明日を夢見ることを諦めずに歩き続けるという、果てしない戦いへと向けて。


75 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:26:35 SDHJXcpw0
【クラス】
セイバー

【真名】
黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン

【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷B(A〜A++) 魔力E 幸運C 宝具D

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
セイバーにあるまじき低さであるが、未来の英霊故の神秘性の薄さからこのランクとなっている。

騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。現代の乗り物であるなら大抵は乗りこなせる。

【保有スキル】
I-ブレイン:A
脳に埋め込まれた生体量子コンピュータ。演算により物理法則をも捻じ曲げる力を持つ。
セイバーのそれは自身の肉体の制御に特化しており、身体能力制御・情報解体の2つのスキルを使用可能。
また、I-ブレイン自体が100万ピット量子CPUの数千倍〜数万倍近い演算速度を持ちナノ単位での思考が可能。Aランク相当の高速思考・分割思考に匹敵する。
身体能力制御:A
自身の肉体に限定した物理法則の改竄。身体能力及び知覚速度を大幅に上昇させる。騎士剣・紅蓮、もしくは森羅が手元にない状況では性能が著しく低下する。
強化されるのはあくまで速度のみであり、筋力といった他のパロメータに一切変動はない。
  
情報解体:B
自身と接触した物体の存在情報へとハッキングし存在情報を消去することで物理的には分子・原子単位まで分解する。単純に物質を破壊するだけではなく、空気を解体して真空の盾を作る・歪んだ空間を解体して元に戻すといった応用が効く。
ただし情報面における強度の高い物体(つまり思考速度の速い物体)である生物やサーヴァント、高度AIの類は解体不可能。
 宝具を解体することも不可能。宝具によって生み出された物理的な作用を一時的に打ち消すことは可能。

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

【宝具】
『自己領域(パーフェクト・ワールド)』
 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2
 光速度・万有引力定数・プランク定数を改変し、自身の周囲1mほどの空間を「自分にとって都合のいい時間や重力が支配する空間」に書き換える。
 重力操作による飛行、及びこの領域と一緒に移動することで亜光速による移動が可能。使い方によっては擬似的な空間転移すらできる。
 欠点としては、騎士剣・紅蓮が失われたら発動できないこと、自己領域展開中は身体能力制御及び情報解体が使用できないこと、領域内に他者が侵入した場合はその人物も同一条件下で動けること、壁などといった膨大な体積を持つ物体と接触した場合は領域面に矛盾が生じ自動的に解除されてしまうことが挙げられる。


76 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:27:22 SDHJXcpw0
『狂神二式改・森羅(万象之剣)』
 ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1 最大捕捉:1000
 かつてセイバーが握るはずだった騎士剣。透き通った緑色の大剣であり、その中枢に搭載された機能こそがこの宝具である。なんらかの形で騎士剣・紅蓮が失われた状態でのみ発動可能。
 敵の数や動き、周囲の地形などの要素から最適運動曲線、つまり「最も効率良く殲滅を行うことが出来る仮想上の曲線」を導き出し、それを現実に当てはめての戦闘を可能とする。相手の物理的な弱点箇所を看破し攻撃するためクリティカル補正が付属する。
 発動中はI-ブレインにより肉体が完全に支配され自動的に戦闘行動を行う。眼前の敵を殲滅するまで自分の意志で止めることは不可能。また、発動中はI-ブレインにより仮想骨格を形成され、I-ブレインの存在する脳髄を除くあらゆる欠損を仮想的に補うことが可能。
 ただしこの宝具の使用中は加速度的にマスターの魔力を消費し、セイバーのI-ブレインひいては霊核そのものに多大な負荷をかけ続けるので長期の戦闘に陥った場合は自滅の恐れがある。
 また、この宝具はあくまで殲滅のための機能であるため防御・回避は一切考慮されず、無防備なまま相手の攻撃を受けることとなる。宝具発動中は仮想骨格により半不死となるも、致命傷を負った状態で宝具を解除すれば待つのは死のみである。
 敵か己を殺すまで決して止まることができない狂した神の剣。

【weapon】
 騎士剣・紅蓮
 セイバーが持つ真紅の大剣。I-ブレインの演算処理を補助する外部デバイスだが、騎士の本領である近接戦闘を想定し剣の形を取っている。
 銀の不安定同素体であるミスリルで構成されており非常に頑強。セイバーのスキルである身体能力制御及び情報解体の性能を大幅に底上げする効果を持つ。

【人物背景】
 かつてシティ神戸に所属していた軍人であり、22世紀末の世界大戦で活躍した英雄。「騎士」のカテゴリに属する魔法士であり、紅蓮の魔女と謳われた七瀬雪を除けば世界最強の騎士と名高い。
 恋人であり戦友でもあった七瀬雪がマザーコアとなってシティ神戸を生き永らえさせてからは世界を転々としていたが、雪の次代を担うはずのマザーコア(ヒロイン)が主人公に奪取された現場に居合わせたことをきっかけに10年ぶりに神戸へと帰還し主人公と敵対する。
 一人の犠牲の上に100万の人々を支えるマザーシステムを根底では間違っていると思いながらも、雪が死んだことの意味を失くさないためにシティを守っていた。神戸の事件が終結した後に主人公と和解し、その後は再び世界を放浪することになる。

【サーヴァントとしての願い】
 大気制御衛星の暴走事故そのものを無かったことにするのではなく、灰色の雲の下に生きる人と魔法士が足掻いた結果として『青空』を取り戻す。
 ただし聖杯に固執するほど強く願っているわけではないため、今はマスターの意志を最優先。




【マスター】
 杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画)

【マスターとしての願い】
 プログラムを無かったことにして皆のいる日常を取り戻す。ただし、できるだけ人が傷つかない方法で。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 拳法を習っており、神童と呼ばれるほどの腕を持つ。漫画の終盤では世界との合一化まで果たした。

【人物背景】
 かつてプログラム(クラスメイト同士の殺し合い)に巻き込まれ、そこで死亡した中学生。長身・強面・無愛想の三拍子が揃っているため怖く見られがちだが実際は心優しくシャイな好青年。
 元々は気弱な性格故にいじめに遭っていたが、幼馴染の千草の叱咤を受けて強くなると決意し拳法を習い始めた。
 プログラムにおいては幼馴染である千草貴子と片思いの相手だった琴弾加代子の捜索を最優先に動いており、千草との別れ・親友である七原との遭遇を経てついに琴弾を発見・保護することに成功する。
 しかし直後に桐山の襲撃を受け、善戦するも一歩及ばず敗北、琴弾と共に死亡する。

【方針】
 争いを止めた上で願いを叶える方法を探る。しかし危険人物と遭遇した場合は躊躇はしない。


77 : 杉村弘樹&セイバー ◆GO82qGZUNE :2015/02/18(水) 04:28:15 SDHJXcpw0
投下終了です


78 : ◆sIZM87PQDE :2015/02/18(水) 20:16:03 T3zrvkzM0
自分も投下させていただきます


79 : 極限Survivor ◆sIZM87PQDE :2015/02/18(水) 20:17:23 T3zrvkzM0
彼女は後悔していた。

――ヤッターマンにデコピンするのは、とりあえず諦めませんか?

わかっていた。彼らが悪意を持ってそんなことを言うはずがないと。

――落ち着け。危険すぎるんだ、レパード!

単に、怪我をした自分を心配して言っただけだったのだ。
それなのに怒りに任せて飛び出してしまった。
一人で出歩けば余計に心配させるだけだとわかっていたのに。

――もういい!!私一人でやる!!追ってこないでよ!

あんなこと、言わなければ良かった。
ヤッター兵から逃げ回る中、ふとそんな後悔が頭を過った。







「で、気がついたらここに来てしまったのだな?」
「うん……」

円蔵山の川べりで火を囲む少年と少女。
少年の姿をしたサーヴァント・ライダーはマスターになった少女から自己紹介がてら根掘り葉掘り事情を聞いていた。
少女、レパードは露出の多い街中を歩くには危険な服装な上に無一文、おまけに血色もあまり良くなかった。
そこでライダーは急遽川へ釣りに行き魚を釣ってきたのだった。

「本当なの?…最後の一人にならなきゃ帰れないって」
「残念ながら、な。どんなに理不尽でも一度聖杯戦争に参加してしまえば元の世界とは切り離される。
極端な話、最後の一組になるまで逃げ回れば殺し合いをせずとも優勝はできるが…まあそれは難しいであろうな。
…と、焼けたぞ。とりあえず食え。腹が減っていては何もできんぞ」

焼けた魚をレパードに手渡し食べるように促す。
レパードは一瞬チラリとライダーの様子を伺ったが食欲に負けたようで勢いよくかぶりついた。

「美味しい!」
「そうか、慌てて骨を飲み込むでないぞ」

ライダー自身は特に手をつけることなくレパードが食べる様子を見守っている。
まさか生前、友人がくれたものではない方の釣り針がまた役に立つ時が来るとは。

(まあ、今回ぐらいは良かろう?普賢)
「…食べないの?」
「ああ、わしはいらん。仙道は生ものを食べてはいかんのだ」
「じゃあ、私のために?」
「別に気にせんで良いぞ。わしが好きでやっておるだけだしな」


80 : 極限Survivor ◆sIZM87PQDE :2015/02/18(水) 20:18:04 T3zrvkzM0







魚を食べ終えても、未だ火は消さないままレパードの様子を見守っていた。
先ほどまで体が冷えていたようだったので、なるべく暖をとっておいた方が良いだろうと判断したからだ。

「どうして、殺し合わなきゃいけないの?」
「それはわからん。殺し合いを行う理由に関してはわしらサーヴァントにも何も知らされてはおらんのでな」

だんだんとレパードの表情が変わっているのがわかった。
その顔には「義憤」の二文字が書かれているのが見えるようだった。

「そんなのおかしい。…絶対におかしい!願いを叶えることができるなら最初から皆の願いを叶えれば良いのに!
誰だって死ぬかもしれないのに、殺し合いなんてやりたくてやる人なんかいないよ!
聖杯なんてヤッターマンと同じ、ううん、もっと悪いやつだ!!
お願い、私に力を貸してライダー!聖杯戦争なんてやらなくても、皆の願いを叶える方法がきっとあるよ!」

勢いよくライダーへ迫り、熱く語るレパードの目は本気だ。
強く、優しい子だとライダーは思った。
こんな状況でもまず人のことを考えられる人間はそうはいない。

「ライダー!」
「サーヴァントとはな、マスターの人生を助ける者のことだ。
おぬしがそう言うなら、わしもできるだけ知恵を絞ってみようではないか。
それに、やってみれば案外あっさり何とかなるやもしれんぞ?」
「…ありがとう!」

ライダーには特に願いがあるわけではない。
少女が殺し合いを止める道を選ぶのなら、そこに否やはない。







(すまぬな、わしはおぬしの願いを叶えてやれぬかもしれぬ)

だが同時に、どうあっても殺し合いをせずに聖杯に辿り着くことができない可能性にも目を向けていた。
もちろんレパードと同じような境遇のマスターがいることも考えられるし、そうでなくてもできるだけ多くの人間を助けたくはある。
しかし一度始まってしまった戦争を止めることは極めて難しい。
もし他に取り得る手段が無いのであれば、サーヴァントとして太公望が取るべき行動は一つしかない。

(わしにも優先順位というものがある。わかってくれとは言わぬよ)

幼いレパード自身のためにも、彼女の帰りを待つ者のためにも。
あらゆる手段を講じてでも己のマスターを優勝させるしかないだろう。


81 : 極限Survivor ◆sIZM87PQDE :2015/02/18(水) 20:19:19 T3zrvkzM0
【クラス】
ライダー

【真名】
太公望@封神演義

【パラメータ】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:A 宝具:A++

【属性】
秩序・善 

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるならば幻獣・神獣・霊獣まで乗りこなせる。


【保有スキル】
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターンに戻し、技の条件を初期値に戻す。

軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対人・対軍・結界宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

精神耐性:B
精神干渉に対する抵抗力。
Bランクまでの精神干渉を無効化し、Aランク以上の精神干渉に対してもこのスキルのランク分効力を削減する。

カリスマ:D…大軍団を指揮・統率する天性の才能。
劇的な効果は見込めないが、他人からの信用を得やすくなる。


【宝具】
『打神鞭(だしんべん)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜80 最大捕捉:700人
太公望が生前愛用した主武装。厳密には宝具ではなく宝貝(パオペエ)である。
宝貝とは仙人の生命エネルギーを増幅し、奇跡を生む仙人界の武器の総称である。
打神鞭は大気を自在に操ることができる宝貝であり、ある程度なら離れた場所に風を発生させることもできる。
その特性から汎用性に優れ、威力も任意で決定できる。(具体的にはそよ風程度の風から大地を大きく抉り、辺り一面を吹き飛ばすもの、複数の巨大な竜巻を発生させるものまで様々)
特に投擲武器に対する防御力は非常に高く、大抵の攻撃は軌道を反らして回避できる。
また、この宝貝は真名解放や長時間の詠唱を必要とせず、『振る』だけの動作、あるいは単に力を込めただけでも瞬時に発動することができる。

『杏黄旗(きょうこうき)』
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
太公望の宝貝の一つにして補助武装。
単体では意味を成さないが自然のマナが集まる霊脈に設置することによって、打神鞭への魔力供給が可能となる。
また、魔力の供給量に応じて太公望の魔力値を1〜3ランクまで上昇させる。


82 : 極限Survivor ◆sIZM87PQDE :2015/02/18(水) 20:19:52 T3zrvkzM0
『四不象(スープーシャン)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜60 最大捕捉:200人
太公望が長年苦楽を共にした霊獣。自我を持ち人語を解する。
普段はカバのような外見で騎乗用の宝具として運用する。この状態での燃費は非常に良い。
能力を解放するとより巨大な本来の姿に変身する。この変身は四不象の意思によって行われ太公望自身による詠唱、真名解放を必要としない。
変身中は温度変化や物理的な衝撃から主人を守るバリアや、宝具に込められた魔力を捕食・吸収するエナジードレインが使用可能になる。
基本的に格上の宝具に対しては魔力を吸収できないが、何らかの原因により消耗・破損している場合はこの限りではない。
変身の持続時間は三十分であり、再度の変身には一定のクールタイムが必要となる。

『太極図(たいきょくず)』
ランク:EX 種別:反(アンチ)宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
太公望がさる高名な仙人から授かった宝貝。
真名解放を行うことで有効範囲内の宝具の力を完全に無効化し、無効化した宝具によって発生したダメージを敵味方問わず無差別に癒す。
宝具によって発生した現象それ自体をもキャンセルするが、聖杯戦争では太極図の発動より十分以上前に起こった事象はキャンセルできない。
宝具の力によって活動するサーヴァントに対しては、動きそのものを停止させる。
ただし、同ランクの宝具は完全には無効化できず、威力・効果を減衰させるに留まる。
また、他の宝具を無効化する性質上この宝貝の使用中は四不象を除く全ての宝貝が使用不可能になる。

【weapon】
「太乙万能義手」
太公望が左腕に着けている義手。様々な機能がついている。
ボタンを押すと腕を伸ばしたり、水鉄砲を撃ったり、ロケットパンチを飛ばしたりする。


【人物背景】
崑崙山出身の道士で教主・元始天尊の一番弟子。
元々は羌族の統領の息子で名を呂望といったが、12歳の時両親や家族を殷の人狩りで失う。
その後元始天尊からスカウトを受け仙界に上って道士となり、僅か30年の修行で仙人級の力をつけた。
崑崙山のトップ・元始天尊の直弟子であるため仙界での位は高く、また最高幹部である十二仙とも同格であるため彼らの弟子からは師叔(スース)という敬称で呼ばれる。
元始天尊から封神計画を授かり、周の武王を助け、腐敗した殷を倒すために軍師となる。
物語開始時点で実年齢が72歳であるため少年の外見に反し言動が老熟しているが、甘党で注射と苦い薬を嫌ったりするなど子供っぽい所もある。
また、年齢が年齢のためか、女性や恋愛に対しては興味を持っていない。
マイペースで飄々とした性格をしている一方、平和な人間界への確固たる信念を内に秘めており、仲間に対する優しさと厳しさを併せ持つ。
基本的には頭脳戦を得意とし、敵を巧みにペテンに掛け、時には味方からもブーイングを受けるほどの卑怯な手を堂々と使う。
自身の実力については多面的な描写がされており必ずしもはっきりとはしないが、知略においては作中でもトップクラスの位置づけである。


83 : 極限Survivor ◆sIZM87PQDE :2015/02/18(水) 20:20:49 T3zrvkzM0


【サーヴァントとしての願い】
レパードの意思を尊重し殺し合いを止める方法を模索する。
ただしレパードの生還を超えて優先するつもりはなく、他に方法が無い場合は手段を選ばずレパードを優勝させる。


【マスター】
レパード@夜ノヤッターマン

【マスターとしての願い】
皆を幸せにできるのに殺し合いをさせる聖杯にデコピンを!

【weapon】
「ヤッターマンでんせつ」
レパードが常に持ち歩いている絵本。

【能力・技能】
特殊な能力はなく、頭脳も力も歳相応。
ただし先祖譲りの逃げ足の早さと高い耐久力を持つ。

【人物背景】
伝説の大泥棒・ドロンジョの末裔。どんな状況においても希望を失わず、明るい未来を夢見ている9歳の少女。
笑顔が魅力的で生命力が強く、倒れても倒れても立ち上がってくる強さを持つ。
義賊の末裔としての誇りを抱きワルぶって見せようとするが、元が良い子なのでなかなかワルに成りきれない。
母・ドロシーが不治の病にかかった時にヤッターマンに助けてもらおうと海を渡ろうとし、ひどいおしおきをうける。
そのことによりヤッターマンが正義の味方であるということに強い疑念を抱くようになる。
母親を助けてもくれなかったヤッターマンにおしおき(デコピン)をするためにドロンジョの名を継ぎ、ボヤッキー(ヴォルトカッツェ)とトンズラー(エレパントゥス)と共に新生ドロンボー一味を結成する。
長い間ヤッターマンを弱者を助ける正義の味方と信じていたため、レパードの倫理観は幼い頃から読み親しんでいた絵本「ヤッターマンでんせつ」をベースにしている。
さらにいい子でいるとの母親との約束もある為、ドロンジョでありながら「正義の味方」に近い人格となっている。
精神面に未熟な面も多々見受けられるが、総じて聡明であり早熟な部類に入る。

【方針】
聖杯にデコピンするために、仲間を集める。
ただし本当に悪いやつにはお仕置きする。


84 : ◆sIZM87PQDE :2015/02/18(水) 20:21:38 T3zrvkzM0
投下終了です


85 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 21:42:21 E.knX2qo0
>>77
いやはや、このコンビが来るとは思ってもいなかったので読んでいて驚きました。
確かに、愛する人を護れなかったという共通点はありますね。
祐一も原作では、幼い少年少女を見守るポジションですし、杉村も色々と助かるのではないでしょうか。


>>84
いいですよね、レパードちゃん。
意地っ張りで真っ直ぐな歳相応の幼さが色々とそそります。
太公望みたいな冷静な視点を持っているサーヴァントに巡り会えた分、行動にもいきあたりばったりがなくなりますね。

それでは投下します。


86 : 比良平ちさき&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 21:44:10 E.knX2qo0
海と陸。
海中で暮らす人々と陸で暮らす人々。
それぞれがお互いいがみ合い、わかりあえない過去があった。
どうせ、溝は埋まらないし、住んでいる世界も違う。
そう、思っていた。
けれど、状況が変わったのだ。
海中に暮らす人々の人口減少、学校の廃校といった様々な要因が重なって、地上に出ることになってしまった。
比良平ちさきもその煽りを受けた一人だった。
それは、良くも悪くも――今までではいられない変化の兆しだ。

「陸に出なければ、私達はそのままでいられたのに」

もっとも、それも今は過去の話。
過去に思いを馳せても意味が無いことに、ちさきは気づいてた。
所詮は弱々しい戯言のようなもの。考えた所で、現状が打開されるはずもない。

(ねぇ、光。私は、どうしたらいいのかな?)

視界の先にある蒼海は、元いた世界と変わらず青く輝いている。
聞こえてくる呪いのさざなみが、比良平ちさきの表情を強張らせた。
おふねひきの日。
帰る場所がなくなったあの日。
自分以外の海の住民が【冬眠】してしまった孤独の始まり。
海流の異常現象が原因で故郷に帰ることすら敵わず、ちさきは地上で暮らさなくてはいけなかった。
残された自分は前に進まなければならない。
彼らを置き去りにして、【一人】で歳を取らなければならない。
これを絶望と呼ばずして何と言う。

「要、まなか、光ぃ……」

幼馴染達が、【冬眠】してしまった時からちさきは一歩も進めていない。
身体ばかりが成長し、心は今もあの日のまま――立ち止まっている。
たった一人だけ、【日常】を享受している。
見ている世界は、夢か。それとも現か。
ちさきには、もう何もわからなかった。


87 : 比良平ちさき&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 21:44:39 E.knX2qo0
     
「――おい、小娘」

背後からかけられた声に、ちさきはゆっくりと振り返る。

「雪姫さん」
「……ちゃんとキャスターと呼べ」

欠伸を噛み殺しながら、ゆったりとした姿勢で肩を回す妙齢の女性がそっと横に並ぶ。
長い手足に豊満な胸。きりっとした碧眼にサラサラの白金色の長髪。
同性であるちさきから見ても見惚れる容姿だ。

「ふん、その様子だと相変わらず覚悟が定まらんようだな」
「ごめんなさい……」
「別に謝ることではないさ。ただ、。覚悟は早めにしておいた方がいい。私が言いたいのはそれだけさ」

シニカルに笑う彼女は、これから始まる戦争を前にしても冷静そのもので。
同年代とは思えない悠然とした姿に、ちさきは目を背けることしかできなかった。

「キャスターさんは、どうしたら良いと思いますか?」
「……他者に決意を委ねるのは感心しないんだがな。まぁ、君の好きなようにすればいい。
 私は聖杯に懸ける程、強い願いを持ち合わせていないんだ」

問いかける言葉にも力はない。
彼女は決して、答えを返してくれないことも知っている。
自分と違い、確固たる意志を彼女は持っている。

「わからないんです、私には」

あやふやで今にも消えてしまいそうな決意。
そんなちっぽけなものしか持っていない自分が、嫌いだ。

「皆、海の底にいなくなっちゃって。私だけが年をとって、変わっちゃって」

自分以外の海に暮らしていた人々は全員【冬眠】してしまった。
ちさき一人が、地上に取り残され、時の流れに押し流されていく。


88 : 比良平ちさき&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 21:45:31 E.knX2qo0

「そんなの、嫌だ! もう一度、やり直したい……っ、あの頃に戻って! 誰一人欠けていない日常を過ごすだけでいいから!」

ちさきは耐え切れなかった。
徐々に増していく不安に心が張り裂けそうだ。

「…………私は、ずっと一緒にいたいって思っただけなのに」

立ち止まることを許さないこの世界で、ちさきは縋れる【何か】が欲しかった。
木原紡でもいい、先島あかりでもいい。
誰か自分の知っている人がいれば、きっと――その人を護る為に戦う、と決めれたのに。

「【ずっと】なんて、この世界にはないんだよ。人との別れなど星の数だけ存在する。
 置いていかれる悲しみなど――直に慣れる」

もはや残された道は唯一つ。
比良平ちさきのエゴで、他者を蹴落とし、聖杯に頭を垂れるしか道はない。

「……雪姫さんは、変えたくないんですか。置いていかれる悲しみを消し去ろうと思ったことは?」
「最初の頃はともかく、今は思わんさ。思うはずもない」

けれど、雪姫はちさきのか細い願いを否定する。

「悲しみすらも愛おしいんだよ、小娘にはまだわからんかもしれんがな」

くつくつと笑う彼女の表情に、後悔はない。
途方も無い苦難を重ねた経験からくる余裕か、それとも虚勢を張っているだけなのか。
どちらにせよ、ちさきとは違い、真っ直ぐな思いが言葉から伝わってくる。

「……全く、問題児をこれ以上抱えるのは勘弁願いたいんだがな」
「雪姫さん、教師でもやっていたんですか?」
「まあな。長い人生だ、多種多様に経験しないと損だろう?」

自分もこんな風に真っ直ぐと生きれたらいいのに。
雪姫の目を、ちさきは真正面から見つめ返すことができなかった。


89 : 比良平ちさき&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 21:47:14 E.knX2qo0
【クラス】
キャスター

【真名】
雪姫(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)@UQ HOLDER!

【パラメーター】
筋力D 耐久A 敏捷C 魔力A 幸運D 宝具E

【属性】
混沌・悪


【クラススキル】
陣地作成:A
「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作成可能。

道具作成:A
【氷】と【闇】の属性を付与した魔術的な道具を作成可能。


【保有スキル】
魔術:A

西洋魔術に精通し、特に【氷】と【闇】属性の魔術を得意とする。
他にも使用可能な魔術は多岐に渡るが、書き連ねると長くなるので割愛。

吸血鬼:A

中世生まれの吸血鬼の真祖である彼女は刺されようが焼かれようが斬られようが死なない。
だが、マスターであるちさきの魔力不足によりこのスキルは十全には発揮しない。

体術:B
合気柔術と合気鉄扇術を極め、達人級。
純粋な技術からなるスキル。

女子供不殺:C

彼女のポリシーである。上記の相手が立ち塞がると、パラメーターが下がる。

【宝具】

『年齢詐称薬』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

その名の通り、年齢を詐称できる薬。
中学生の姿や、二十代半ばの姿だったりと年齢操作はこれでバッチリ。

【weapon】
なし。

【人物背景】
とある村の学校の一教師、【雪姫】が表の顔ではあるが、その正体は不老不死の吸血鬼の真祖「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」。
性格は豪胆で、常に余裕ありげな態度を取っている。
私生活はずぼらであり、とある事件がきっかけで、一緒に暮らすことになった少年に任せっきりである。
作者の別作品、【魔法先生ネギま!】にも出演している。

【サーヴァントとしての願い】
表面上では、叶えたい願いはないと語ってはいるが――。

【マスター】
比良平ちさき@凪のあすから

【マスターとしての願い】
【冬眠】した彼らとの日常をやり直し、永遠にしたい。

【能力・技能】
水中内を息継ぎなしで潜り続けることができる。

【人物背景】
比良平ちさきは海の村に住む少女だった。
幼馴染グループの姉的存在であり、先島光が好き【だった】。
最初こそ、普段とは違う陸の生活に戸惑っていたが、徐々に慣れていく。
そして、幼馴染と一緒に日常を謳歌し、大人になっていくはずだったが――。

【方針】
願いはあるが、戦う覚悟は定まらない。


90 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/18(水) 21:47:36 E.knX2qo0
投下終了です。


91 : ◆4oYTACNEQs :2015/02/18(水) 23:39:33 wCOdRJAA0
投下お疲れ様です。

投下させていただきます。


92 : 伊佐木要&セイバー ◆4oYTACNEQs :2015/02/18(水) 23:40:48 wCOdRJAA0

荒れ狂う嵐の中、彼が最後に見たのは大切な存在。
その大切な存在が別の男《友人》を抱いている姿だった。

気付いていた。彼女がその友人を好いていたことを。
知っていたんだ。自分ではなくてその男が好きだってことを。
解っていた。でも、その現実を受け止めたくないから目を逸らしていた。
認めたくなかったんだ。だから、かっこつけて一歩引いて、気取って。

強引に思いを伝えた。自分のことしか見てない。彼女の心に歩み寄ろうとしなかった。
焦っていた。海を出て、地上で出会ったあの男に惹かれている彼女を見ていたから。
もうあの頃には戻れない。気持ちも想いも。全てが過去の出来事になってしまった。

好きな想いと日常を望む気持ち。
そんなことを考えながら、冷たくも暖かい海の底に堕ちていった。








「それがマスターの過去ってことなんだね」

やり直しの願いを望む彼が招かれた最後の希望、その名は聖杯戦争。
彼に言葉を投げたのは参加者のシルシでもあるサーヴァントだ。

「ちょっと自分でも面倒なことやって……結局は目の前で失うのが怖かったんだ」

「うーん、僕もその気持は解るよ。好きな人も、友達も大切だからね」

友情は紡ぐのは難しい。些細な事で簡単に崩れ去るから。
しかし人は時に大きく一歩を踏み出す事がある。
それが青春、少年少女は夢に生きて、憧れを追い続ける。
例え傷付こうが、涙を流そうが彼らは人生の物語を彩っていく。

過去の恥ずかしい体験も、失敗も、後悔も。
その全てがアルバムの一ページとなり、未来の笑い話に花を咲かせるのだ。

「僕ならそんな時は……ってやめとく。マスターにはマスターのやり方があるもんね」

「はは、こんな時は真剣に相談に乗ってくれるのが理想じゃない?」

「マスターが望むなら、ね。僕には慰めて欲しいように見えなかったけど?」

サーヴァントは笑顔を絶やさない。しかし巫山戯ている訳ではないのだ。
マスターの心情を彼なりに読み取り、同世代の存在らしく語りかけ、話に付き合い、前を向かせる。
彼が望んでいることは慰めではない。求めているのは勇気と後押し。
聖杯戦争の現実を受け入れるための覚悟が必要なのだ。


93 : 伊佐木要&セイバー ◆4oYTACNEQs :2015/02/18(水) 23:42:02 wCOdRJAA0

「セイバー……人を殺してまで叶えたい願いなんて」

「うん」

「……」

その先の言葉を紡いで貰うのが理想だった。
やり直したい。戻れるならば、戻りたい。あの頃に、心に嘘を築かないで笑っていたあの頃に。
でも、それは殺しをしてまで……誰かを不幸にしてまで叶えたい願いなのか。
他人は他人、関係ない。そう決め込めばどれだけ楽になるだろう。
簡単に割り切れる程、人間は出来ていなく、責任を負ってもらえるなら発言を。
しかしセイバーは黙る、マスターの心を理解しているのだ。

此処で甘やかし自分が肯定すればマスターは願いのために他者を殺すかもしれない。
それは望んでいることではなく、願いへ続く長く険しい道の過程だ。
例え絶望したとしても《セイバーがあの時言ったから、他人を殺した》責任逃れの小道が出来てしまう。
故にセイバーは黙る。選択は己の手で選ぶものだから。

「……」

「願いなんて……そこから?」

やり直したい……違う。
同じ状況に戻ったとしても、自分が変わらなければ結果は変わらない。
変わったとしても。それはズルだ。自分だけ選択肢の結果を知っているから。

その先に求める光景が存在するのか。
彼女はソレを赦してくれるのか。
そもそも彼女は振り向いてくれるのか。

「こっちの方が先に好きだったのに、後から出て来た奴に盗られるのが嫌だった」

出てくる言葉は先の言葉と繋がらない孤独で独りな独白。

「でもさ、好きな人が彼女にも居たんだ、それで……知っていたんだ。解りやすいんだ、見てると」

だから自分の心を隠し続けて、想いを伝えて日常が壊れるのを恐れていた。
あの笑顔が二度と見れなくなるのは――嫌だから。

「一歩引いて、気取って……馬鹿だよね。それで自分が苦しんでいる。
 動いた時には遅かったさ。火に油、でも止めれなかった……ッ」

自分で話しているのに続きを聞きたくない。
でも、抑えられない。

「あの頃に戻りたい……でも――それで誰かを殺すなんて絶対に駄目だ。
 戻っても変わっていなくちゃ繰り返すだけだ……それに


 人を殺した僕を、ちさきが……みんながっ……それじゃ駄目なんだ、意味が無いんだ」


94 : 伊佐木要&セイバー ◆4oYTACNEQs :2015/02/18(水) 23:44:07 wCOdRJAA0

叶えたい願いは在る。
求めている、海の底から天高く輝く光を見るように切なく、淡く。
だがそれを叶えるために他人を殺す道は最初から存在しない。
理由にならないのだ、願いのために他人を殺すなんて方程式は存在しない。
戻ったとしても、あの頃《思い出》の再現は不可能だろう。

ならば聖杯に懸ける願いはやり直しではない。
やり直しに含まれるが直接的なことではなく、自分自身を見つめ直すこと。

「マスターの気持ちは解った、言ってくれてありがとう。
 なら僕はマスターの力になるさ、マスターが青春に戻るために全力を尽くす」

サーヴァントは従者だ。主に尽くす召使。
だがこのセイバーはそんな様式だけの形に囚われる男ではない。
聖杯戦争なんて関係ない、目の前で困っている人間を助けるために、救うために。
その身、銀河の果てまで輝かせてあげようじゃないか。

「ありがとう……戻れたらもう少し素直になってみるよ」

「そうだね、そのためにも絶対に戻ろうよマスター。
 マスターの物語はまだ続く、青春なんて全部が良い思い出だけじゃないよ。此処で終わっちゃいけないんだ。
 足りない、マスターはこれからたくさん思い出を創ろう、最後に笑っていればそれで充分さ」

見上げた空に馳せるは広がる夢。
心を閉ざさないで、現実から視線を逸らさずに。

綺麗事だけでは終われない、でも血で汚すつもりもない。
その男、銀河美少年。周りの人間を自然に導く光り輝く銀河からの使者。
暗い暗い海の其処だろうと照らし、人々を笑顔にさせる輝きの指揮者《タクト》。

「マスターを元の世界に還す……その願い、僕が引き受けた!
 さぁ、行こうじゃないか! 僕達の青春《物語》はまだ終わっちゃいない!」




【マスター】
伊佐木要@凪のあすから

【マスターとしての願い】
元の居場所に戻りたい、やり直しではなく、前に進みたい。

【能力・技能】
水中内を息継ぎなしで潜り続けることができる。
また、他人の恋事情には敏感だが自分の事に関しては鈍感である。

【人物背景】
元々は幼馴染達と一緒に海の村で過ごしていた。
時が流れ陸の学校に通い始めた時、彼らの時間は大きく動いていく。
最初は海出身、という理由だけでクラスから浮き物になっていたが徐々に仲を育んでいく。
やがて大人達と衝突しながらも海と地上の人間が協力して行うおふねひきを実現させる。
しかしそれが原因で彼らの関係と思い出は全て海の中へ消えてしまった。

【方針】
元の世界に還ること。他人を殺すつもりはない。


95 : 伊佐木要&セイバー ◆4oYTACNEQs :2015/02/18(水) 23:45:35 wCOdRJAA0


【クラス】セイバー


【真名】ツナシ・タクト@STAR DRIVER 輝きのタクト


【パラメータ】
 筋力B 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A


【属性】秩序・善


【クラススキル】
 対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

 騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。


【保有スキル】
 
 直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

 第一フェーズ:EX
 シルシを持つ者が所有する超能力のようなもの。
 ツナシ・タクトの能力は明かされていないが一説は《出会った人を笑顔にする力》と言われている。 

 夢追い人:A
 どんなに馬鹿にされようが、笑われようが、自分を見失わず貫き通す。


【宝具】
『颯爽登場! 銀河美少年!』
 ランク:A種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:4
 胸に刻まれたタウのシルシを光らせ、銀河美少年とタウバーンはアプリボワゼ(関係)する。
 姿も変わり、彼自身の戦闘スタイルとなる。
 主な武器は対のスターソードによる近接戦。ビームやミサイルでの遠距離戦もこなす。
 また、バイルを展開させることにより幅広い戦闘も行える。副産物として停止している時の中でも行動可能。


【Weapon】
 スターソードを始めとするタウバーンの武装。


【人物背景】
 青春を謳歌するために南十字島という南の孤島まで泳いで渡ってきた少年。
 明るく、誰とでも仲良く接せる彼は学園の人気者になっていき幅広い交友関係を持つようになる。
 彼が島にやって来たこと影響から島の物語は大きな変貌を遂げることとなる。
 彼は父親、友人、青春――色々なモノを背負い、銀河美少年となりて世界を輝かせる存在になっていく。


【サーヴァントとしての願い】
 マスターの願いを叶えること。


【基本戦術、方針、運用法】
 セイバーらしくスターソードを主に使い戦闘を行う。
 遠距離攻撃も可能だが近接共に決定打に欠けてしまう。
 タウバーンが呼べれば話は別だがセイバーとして現界しているため、難しいモノとなっている。


96 : ◆4oYTACNEQs :2015/02/18(水) 23:47:10 wCOdRJAA0
投下終了です。
凪あすに惹かれました


97 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/19(木) 02:38:18 T4WfTDB20
>>96
青春を奪われた者と青春を謳歌した者。
対称的な二人ですが、どこか心の奥底では繋がっている。
やり直すではなく、前へ進むと決めた要もかっこいいですね。

それでは投下します。


98 : 雷小龍&ヴァンパイア ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/19(木) 02:38:52 T4WfTDB20
かけがえのない楽園があった。
先を導いてくれる仲間達がいた。
自分達のことを偏見なく見てくれる赤の男がいた。
そして、護らなくちゃいけない少女がいた。

「死んだと思ったら実は生き返ったなんて、よくわからないんだよな」

もう終わったはずだった。
崩れ落ちる【島】に一人残った少年は、静かに死を受け入れた。
少年――雷小龍の生きた証は、芳美に渡した指輪に込めた。
悔いはない。そう言ってしまえば嘘にはなるが、不思議と心中はすっきりとしていた。

「だから、いきなり聖杯だなんて言われても、わからないんだ」

五体満足で生きている今も、あの時見送った芳美の背中がまだ脳裏に散らついているのも――全部は泡沫。
今感じてる生の実感も、取るに足らない夢なのかもしれない。
それでも、小龍がここにいることは紛れもない事実だ。
息をして、目を見開いて、手足を動かして、生きているのだ。

「もう一度メイに会いたい。その願いは本物だ。だけど、おれは――」

一度は失ったものの、与えられた生命だ。
無為にするつもりもないし、見知らぬ誰かにくれてやるなんてまっぴらゴメンである。
ならば、勝ち残ればいい。
聖杯戦争に呼ばれた奴等を全て殺して、自分が最後の一人となる。
そうすれば、また芳美に会える。
彼女の流す涙を拭ってやることができるのだから。

「――その願いの為に、ひとを殺してもいいのか?」

しかし、小龍の中にあるちっぽけな意地は、人を殺めることに迷いをもたらした。
血に濡れた姿で、芳美は笑顔で迎えてくれるのか。
そんな弱々しい疑問が、心の片隅で蹲っている。


99 : 雷小龍&ヴァンパイア ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/19(木) 02:39:40 T4WfTDB20

「さぁねぇ。でも、生きたいって願う気持ちに嘘も真もありはしないんだ。人間である以上、他者を殺してでも生き残るって当然の欲求だと僕は思うけど?」

だが、小龍の悩みを吹き飛ばすかのように、眼前にいるサーヴァントは何の事もないように殺すことを肯定した。

「少なくとも、僕は肯定するよ」

にこりと笑顔で囁いた彼は、一見サーヴァントには見えないNPCのような外見だった。
手入れのされていないぼさぼさの黒髪によれよれの服装。
月島亮史。それが彼の名前だった。
開口一番に、君を見届けたいと言った胡散臭い男だ。
小龍からすると、こんな奴を頼りにしていいのかと疑問視するサーヴァントである。

「…………それでも、おれの中にある迷いは消えない」

如何にもやる気なさげな彼を尻目に、小龍はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「勿論、ただで死ぬつもりはない。襲い掛かってくるなら、戦う」
「今はそれでいいさ。けれど」
「わかっている。だからこそ、後悔のないようにおれは生きたいんだ。
 じっくり考えて、選びたい。そうしてこそ、メイに胸を張って会える気がするから」

希望は待っていても手に入らないし、与えられるものでもない。
小龍は改めて自分が本当に貫きたい願いについてじっくりと考える。
閉じた箱庭で、戦うことしか知らなかった過去がある。
何度も何度も繰り返し、自分達の肉体すらも捨て駒にして生きることに執着したのは間違いなんかじゃない。
最後まで抗って、戦って、その果てで見つかるものが、正しいのか。
小龍は納得できる選択肢を選ばなくてはならない。

「力、貸してもらうぞ。ヴァンパイア」
「ああ、心得た。マイマスター」

諦めるよりも貫くことを良しとした決意を誇りたいからこそ――見果てぬ願いを、小龍は追い続ける。
そんな彼の姿を亮史は目に焼き付けていた。

――小龍くんと共にいることで、人間について深く知る、これって僕の願いに直結するよね。

人間に憧憬の思いを持っているからこそ、人間を知らなくてはならない。
聖杯戦争という極限状態では、きっと人間の業が深くにじみ出てくるだろう。
そうして、【人間】を学べば、感情とは何か知ることができると信じて。


100 : 雷小龍&ヴァンパイア ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/19(木) 02:41:04 T4WfTDB20
【クラス】
ヴァンパイア

【真名】
月島亮史@吸血鬼のおしごと

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具C

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
吸血鬼:A
その名の通り吸血鬼であることの証明。
蝙蝠、狼、霧に姿を変えることが可能であり、身体能力も抜群。
ただし、流水が渡れない、十字架が駄目、日光を浴びたり、心臓を貫かれると灰になる。
霊体にでもならない限りは、適用されることだろう。

【保有スキル】

破壊衝動:A
戦闘が長期的になると、残虐性が増していく。
例え、相手が誰であろうとも塵へと還すだろう。

再生:B
身体が傷つこうとも、再生する。
それは、人間とはかけ離れており、人間になりたいと願う亮史に取っては無用の長物だった。

【宝具】

『隷属の血脈』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

吸血することで、相手を強制的に隷属させる。
意志がどれだけ強くても、【従者】は【主人】には逆らえない。
また、【従者】となった人間はそれなりに身体能力が強化される。

『隷属の使い魔』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

動物は【契約】をすることで、不老となり、動物特有の能力が強化され、高い知能を持つようになる。
また、人語も話せるようになり、寂しい時には便利。

【weapon】
なし。

【人物背景】
永きを生きる吸血鬼であり、人間になりたいと願っている男。
それは、吸血鬼としては異端であり、到底受け入れられるものではなかった。
普段のものぐさでのんびり屋な態度とは裏腹に、大切な人を傷つけられると苛烈な表情を見せ、まるで別人のように変貌する。

【サーヴァントとしての願い】
雷小龍を観察する。人間の中に眠る感情や熱を知りたい。


【マスター】
雷小龍@ウィザーズブレイン

【マスターとしての願い】
芳美にもう一度会いたい。

【能力・技能】

龍使い――右腕を異形の鋏へと変形させ、戦うことができる。
ただし、代償は大きく、何の処置もなく使い続けると【暴走】し、自我が崩壊する恐れがある。

【人物背景】
とある【島】に隔離された生き残りの内の一人。
来たるべく騎士との戦いに備え、戦闘訓練を行っていた。
大戦――世界を揺るがす戦へと投入される為に。
もっとも、大戦などとっくに終わり、彼らは世界の真実に気づかず、【島】に閉じ込められたままである。

【方針】
願いの為に人を殺す覚悟はある。だが、そんな自分を芳美は笑顔で迎えてくれるのか?


101 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/19(木) 02:41:19 T4WfTDB20
投下終了です。


102 : ◆zhWNl6EmXM :2015/02/19(木) 18:42:16 WDc3kkOQ0
皆様投下乙です。
投下します。


103 : 第XX話「英霊召還じゃんよ」 ◆zhWNl6EmXM :2015/02/19(木) 18:44:08 WDc3kkOQ0
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆






スペース☆ダンディは宇宙のダンディである。
彼は銀河を駆ける宇宙人ハンターである。
未知の異星人を求めて新たな惑星への冒険の旅。
これは、そんな宇宙人ハンターの壮大な物語である。






☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆


104 : 第XX話「英霊召還じゃんよ」 ◆zhWNl6EmXM :2015/02/19(木) 18:45:05 WDc3kkOQ0




「私は聖杯を破壊する」
「はぁ」



天狗の突拍子も無い発言に、リーゼントの男『ダンディ』はなんとも言えぬ反応を返す。
こじんまりとした部屋で二人の男が向かい合って座っていた。
胡座を掻いて座るのは、スカジャンとリーゼントが特徴的な男。
正座の姿勢で座るのは、黒いヤクザスーツを身に纏った――――――――テング・オメーンの男。
そう、天狗の面を被っているのだ。
彼がダンディのサーヴァント、バーサーカー。
理性と言語能力を備えた、世にも珍しい狂戦士。


「私は再び罪を犯した。聖杯によってジゴクの門を開き、この世界にニンジャソウルを解き放ってしまったのだ…」
(何言ってんだこいつ…?)


重く声を震わせる天狗に対し、ダンディはぽかんとした表情を浮かべている。
ダンディはバカである。
しかし、バカだから天狗の言葉を理解出来ないのではない。


「ゆえに私は贖罪のため、全ての英霊“ニンジャ”を救済しなければならん。
 この地に解き放たれた全ての英霊をジゴクへと送り返す。
 そして、聖杯の破壊を持ってジゴクの門を封じる」


天狗の男が、狂っているのだ。
彼の理念は、思想は、常人のそれとは大きく異なる。
彼は狂気に呑まれている。
常人には理解出来ない行動原理で動いている。
彼の言動は冷静沈着にして、常軌を逸している。

故にダンディにその言動を理解する事は叶わない。
尤も、ダンディはバカなのでそれを察する事も出来ないが。


「さて、お前の願いを言ってみろ」
「あぁ、まあ、ブービーズのクーポンを期限切れ前に使いたいっつーか」


唐突に話題を振ってきた天狗に対し、ダンディは頬を掻きながらそう答える。
事の発端、それはダンディが持っていたブービーズの半額クーポンだ。
巨乳の女性ばかりが集う飲食店(ブレストラン)「ブービーズ」。
宇宙をさすらうダンディの行きつけの店であり、彼にとっての楽園のようなものだ。
ダンディはブービーズのクーポンを持っていたというのに、期限切れによって使い損ねてしまった。
それに気付いたダンディは消沈し、ふと思ったのだ。
『いっそ過去に戻ってやり直してえな、ちゃんと半額で得したいじゃんよ』と。
そんなダンディの下らない想いが、彼を冬木へと誘ったのだ。


105 : 第XX話「英霊召還じゃんよ」 ◆zhWNl6EmXM :2015/02/19(木) 18:45:30 WDc3kkOQ0

「そうか……すまんな、本当にすまん。お前の願いは叶わない。
 私は聖杯を破壊し、今度こそ贖罪を果たさねばならないのだ…」


そんな願いを聞いても、天狗は嘲笑う事も侮蔑する事も無く。
ただそう言って、申し訳なさそうに頭を下げた。
演技ではない―――――本心からの謝罪。
誠意を見せる天狗を、ダンディはばつが悪そうに見つめるのみ。


「私が全てを終わらせる。だが、危機が迫った時は時は私を呼べ。
 すぐに駆けつけニンジャを浄化する。お前をニンジャの悪夢から解き放ってやろう」


一頻りの会話を終え、天狗は立ち上がる。
彼の警告のような言葉をダンディは「はぁ」と何とも言えぬ返事で答える。
偵察か、戦闘か。
どちらかは解らないが、兎に角天狗はどこかへと向かうのだろう。
ダンディは彼を止めるつもりは無い。
というのも、止める理由が特に無いのである。


「ただし、もしお前が私の目的に反する命令を令呪で発した時は」
「……時は?」
「お前を天狗の国へと連れていく」


脅しを掛ける様にそう言った天狗に、ダンディが表情を歪めて怯む。
目の前の男に対し、初めて危機感を感じたのだ。
そんなダンディの様子をいざ知らず、天狗はその身体を魔力へと変え――――。



「では、また会おう!サラバ!」



天狗は霊体化し、その姿を消した。
部屋に取り残されたダンディは、呆気に取られたままその場に固まっていた。
暫しの沈黙の後、ふぅと溜め息を吐く。

(聖杯戦争、ねぇ…)

彼は―――――スペース☆ダンディは元より殺し合いに興味は無い。
別に皆殺しにしてまでクーポンを使いたいか、というとそんな事は無い。
だが、かといって死にたい訳も無い。
どうにかしてこの街から抜け出したいが、聖杯を破壊するとか言ってる天狗男がそれを許すかどうかも解らない。
結局の所、生きて帰る為の確実な道は優勝しかないのだ。

(ま、成り行きに任せりゃなんとかなるじゃんよ)

尤も、ダンディは楽観していた。
どうやって此処から抜け出すかはまだ保留だ。
安全に脱出できる手段があればそれでいいし、勝ち残るしかないのなら別にそれでもいい。
今はまだ謎も多いが、成り行きに任せていればいつか何とかなるだろう―――――と。
端的に言えば、ダンディは聖杯戦争をナメていた。


――――――スペース☆ダンディ 第XX話「英霊召還じゃんよ」


106 : 第XX話「英霊召還じゃんよ」 ◆zhWNl6EmXM :2015/02/19(木) 18:46:12 WDc3kkOQ0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
ヤクザ天狗@ニンジャスレイヤー

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷D+ 魔力E 幸運C 宝具C

【クラス別スキル】
狂化:D
筋力、耐久が1ランクアップする。
元より狂気に犯されているヤクザ天狗には狂化による言語能力・思考能力の劣化が機能していない。
ただし精神の汚染は更に加速しており、自分以外の全サーヴァントを「救済すべきニンジャ」と錯覚している。

【固有スキル】
精神汚染:A
彼は狂っていた。
同ランク以下の精神干渉系魔術をシャットアウトする。
他者の本質を見抜く才を持つ者、同ランクの精神汚染スキルを持つ者でなければ
その行動原理を理解することはできない。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

サイバネ:C
四肢を始めとする肉体の一部に施された機械化改造。
サイバーアイに基づく精密かつ迅速な射撃能力、スキャンによる空間分析能力、
敵の行動予測パターン構築能力、正確な立体機動能力といった数々の機能を実現している。

【宝具】
『贖罪と赦免の執行者(リデンプション・アンド・アブソリューション)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:2~30 最大捕捉:2
二丁の赤漆塗りのオートマチック・ヤクザガン。ヤクザ天狗のメインウェポンである大口径拳銃。
宝具としてのランクこそ低いものの、放たれる重金属弾はサーヴァントに対しても高い威力を発揮する。
半神的存在であるニンジャを葬り続けてきた逸話から、神性を持つ者に対しては威力が多少増加する。
弾薬は魔力によって生成が可能。

『天より咎人は来たりて(テング・アンブッシュ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:ー
無慈悲なアンブッシュによって数多のニンジャを葬ってきた逸話が宝具として昇華されたもの。
端的に言えば「先制攻撃の威力・命中率を大幅に上昇させる宝具」。
ヤクザ天狗が先制攻撃を行った際、命中判定の成功率が倍増。
相手の回避・防御・反撃行動に対しても優位な補正が与えられる。
更に先制攻撃が対象に命中した場合、強制的にクリティカルヒットを発動させる。

【Weapon】
『背負式小型ジェットエンジン』
バーサーカーが背負うジェットパック。
戦闘の際には常に使用しており、ジェット噴射による三次元的な立体機動を行う。

『ドス・ダガー』
使い込まれたダガー。
唯一の近接武器だが、あくまで緊急用の装備。

『仕込み弾丸』
テング・オメーンの鼻に仕込まれた一発限りの弾丸。
追い詰められた際に使う奥の手であり、サーヴァントにも通用する威力を持つ。

『聖水』
自らの小便とスピリタスを秘密の配合で混ぜたフラスコ詰めの聖水。
これを用いてサーヴァントの肉体を焼却することが可能。
尤も、基本的に死体に施すまじないとして使用しているので戦闘に用いることは殆ど無いだろう。

【人物背景】
非ニンジャ。素性、来歴の一切が謎に包まれた孤高のニンジャハンター。
黒いヤクザスーツ、テング・オメーン(天狗のお面)が象徴。肉体の一部に機械化を施している。
現代に解き放たれたニンジャソウルを「自分が解放してしまった」と思い込んでおり、
贖罪の為にニンジャを殺害することでソウルをジゴクに送り返さんとしている。
その精神は完全に狂気に蝕まれており、狂人めいた言動や行動が目立つ。
しかしニンジャハンターとしては一流で、驚く程に堅実かつ冷静な判断力を備える。
合理的で手段を選ばぬ戦闘論理を駆使し、身体能力で大きく劣る常人の身でありながら数多くのニンジャを葬ってきた。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争によって解き放たれたニンジャソウル(サーヴァント)を救済し、聖杯の破壊を以てジゴクの門を閉ざす。


107 : 第XX話「英霊召還じゃんよ」 ◆zhWNl6EmXM :2015/02/19(木) 18:46:48 WDc3kkOQ0
【マスター】
ダンディ@スペース☆ダンディ

【マスターとしての願い】
過去に戻ってブービーズの半額クーポンを使いたい。
とはいえ別に殺し合いしてまで叶えたい訳でもない。

【weapon】
「光線銃」
充電式の拳銃型光線銃。
その名の通り光線を撃てるが、ダンディは射撃がヘタクソである。

【能力・技能】
体術も射撃もからっきしだが、ここぞという時の運動神経は優れている。
ロボットの操縦テクニックやサーフィンの腕前も中々のもの。

【人物背景】
宇宙を股にかける宇宙人ハンター。
スカジャンとリーゼントがトレードマーク。口癖は「〜じゃんよ」。
陽気で能天気な性格であり、気取っているがどこか抜けている。
危機に陥ればすぐに自己保身に走るろくでなしだが、時に他人の為の尽力するお人好しな一面を見せることも。
女好きであり、巨乳の店員が集う飲食店「ブービーズ」へと通うのが日課。

【方針】
とりあえず成り行き任せ。
脱出できればそれでいいし、勝ち残るしかないのならそうする。


108 : 名無しさん :2015/02/19(木) 18:47:01 WDc3kkOQ0
投下終了です。


109 : ◆GO82qGZUNE :2015/02/19(木) 18:54:26 NNz.TzlM0
投下乙です。私も投下させていただきます


110 : 音無結弦&アサシン ◆GO82qGZUNE :2015/02/19(木) 18:55:17 NNz.TzlM0
 思えば、俺はここに来る理由なんてものはないんじゃないか、と考えていた。
 俺は最期には報われた人生を送ることができて、何の間違いか迷い込んでしまったあの世界でも報われた人生の気持ちを知ることができた。
 そこには何の未練もなく、皆と笑いあいながら消えることができたはずだ。新しい人生を歩むはずだった。
 だが、それでも。俺は最後の最後で初めて後悔というものを覚えて。
 そして俺は―――

◇ ◇ ◇

 視界に映る光景は実像を伴って眼球に飛び込んでくる。だがそれは実体を持ちながらもどこか空虚さに満ちており、もしかするとこれは夢なのではないかとさえ思えるほどに現実感が欠けていた。
 その理由が何なのか、鬼気迫る勢いで階段を駆け下りる少年は知っている。
 偽りの世界、聖杯戦争。漫然と授業を受けていた最中に突如として流れ込んできた記憶の奔流に喘ぎながら、少年はかつての記憶と新たな知識を獲得していた。
 ならば突如として教室を飛び出し、必死の形相で駆けるのは何故か。戦争というものに巻き込まれたが故の恐怖か、来る戦いに向けての高揚か。はたまた錯乱した故の狂気か。
 いずれでもない。彼にあるのは後悔と渇望のみ。
 
「ハァッ……ハァッ……間違いない、あそこに……!」

 息を切らせ少年が向かうのは、学校の敷地内にある中庭だ。
 緑が茂り、授業中である現在は誰もいないはずの場所。常であるなら到底立ち入る理由もない場所。そこに自分のサーヴァントがいるのだと何故か強い確信を持って断言できる。
 そして、そこに。
 そこに、その少女は立っていた。

 凛、と澄んだ透明な詩声。
 薫る緑を風に乗せて、臙脂色の服と長い黒髪をたなびかせ、その少女は歌っていた。
 綺麗な少女だった。元の場所でも整った顔立ちの少女に囲まれていた少年でさえ、一瞬我を忘れて見惚れるほどに、その光景は現実と乖離した美しさを持っていた。
 そこには少女の声以外、全ての音が存在しなかった。比喩でもなんでもなく無音の空間に少女の詩声だけが響いている。近くの校庭では今まさに体育の授業が行われているというのに、掛け声のひとつも聞こえてはこない。
 現実感を持たない偽りの世界の中にあってなお現実感のない風景。それは異界の美しさだった。

 古風な響きで綴られた詩は、しかし少年が中庭に入った瞬間に途切れてしまった。見れば、少女はこちらの存在に気付きじっと見つめている。
 少年ははっ、と我にかえり、こちらに視線を向ける少女へと向き直る。
 少女は、ひどく驚いているようだった。

「私が……視えるの?」
「……ああ、見えるよ」

 無音の空間に小さな声が響く。詩声と同じく、少女の声はとても綺麗なものだった。

 もしもこの場に他の誰かがいたならば、このやり取りを不審に思うだろう。
 それは会話の意図が分からないとか文脈がどうこうとか、そういう次元の話ではない。"誰もいないところに向かって独り言をする"など、到底常人のすることではないということだ。


111 : 音無結弦&アサシン ◆GO82qGZUNE :2015/02/19(木) 18:55:52 NNz.TzlM0
「……だめ」

 しばしの沈黙。少女は悲しげな目をすると、少年にそう呟いた。

「私と関わっては……だめ……見なかったことにして。今ならまだ間に合うから、その手の印を捨てて」

 少女は笑う。それはとても儚げで、とても幼い少女がしていい類のものではなかった。
 あまりにも哀しい、生きる喜びなど遥か彼方に忘れ去ったような微笑み。それは酷く疲れた、消え入りそうな老人のものだ。
 だが、少女のせめてもの懇願に、少年が応じることはできない。

「いや、それだけは聞けない」
「え……?」

 きっぱりと、少年は少女の願いを切り捨てる。
 胸に抱く願いを叶えるために、それはどうしたって聞けない話だった。

「頼む。俺と一緒に来て欲しい」
「だめ……」

 少女が一歩、足を引く。それは明確な拒絶だった。

「だめ……そんなのだめ……それだとあなたは帰れなくなってしまう……堕ちて、しまう……」

 目を閉じ、かぶりを振る少女。

「私は……あなたの力にはなれない……」

 少女の肩を、少年の手が掴む。びくり、と少女の体が震えた。

「それでも―――俺は■■が欲しいんだ」

 瞬間、世界に音が戻った。
 少女の体から力が抜け落ちた瞬間、それまでは耳が痛くなるほどに無音だった中庭に、風や校庭の掛け声と言った雑音が一気に飛び込んできた。
 異質なものへと成り代わっていた世界が、今まさに正常に戻ったかのように。まるで夢から醒めるように。

「……ごめんなさい」

 ふと、泣きそうな声が聞こえた。
 それは眼前の少女から発せられたものだ。その言葉の意味するところは拒絶ではなく、謝罪。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 ひたすらに繰り返す少女を見つめながら、少年は何の言葉も返すことはなかった。
 今更止まることなんてできない。だって俺はこんなにも―――奏のことが好きだから。
 わかっている。これはとても醜いことだ。かつての仲間への冒涜であり、かつての想いへの陵辱であり、何よりも奏自身を穢すことだと誰よりも分っている。
 でも、それでも。
 それでも俺は、奏と一緒に生きていたいんだ。


112 : 音無結弦&アサシン ◆GO82qGZUNE :2015/02/19(木) 18:56:44 NNz.TzlM0
【クラス】
アサシン

【真名】
あやめ@missing

【属性】
秩序・中庸

【ステータス】
筋力E-- 耐久E-- 敏捷E-- 魔力EX 幸運E 宝具A

【クラススキル】
気配遮断:EX
アサシンのマスターもしくは隠蔽無効化スキルを保有したサーヴァント以外の人物は、決してアサシンの存在を認識できない。
ただし、アサシンを認識できる者からの『紹介』を受けた場合のみ、他者はアサシンの存在を認識できる。また、一度でも認識された場合は以降その人物に対して気配遮断スキルは一切機能しない。
気配遮断というよりは認識阻害に近い。

【保有スキル】
高速詠唱:E
魔術の詠唱を高速化するスキル。
アサシンの場合は詩の技術としてこのスキルが発現している。

童話知識:C
童話や民謡に関する造詣が深い。

神性:E
山の神の眷属であり隠し神と呼称されているが、元は人である上に一般に人が想像する神とは乖離した異質な存在であるため最低のランクとなっている。

【宝具】
『常世の詩』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
隠し神としての力。アサシンが詩を歌っている間に限定して、任意の人物に自身のものと同等の気配遮断スキルを付与する。
ただしこの宝具の対象となれるのはアサシンを認識している者のみである。

『神隠しの物語』
ランク:A 種別:侵食宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
隠し神としての力。アサシンを認識した者を異界へと呑みこむ。異界に呑みこまれた者は肉体と精神が変容し消滅するが、稀に『できそこない』となって存在を保ったままの状態になる者もいる。
常時発動型の宝具であり、アサシンの意思で止めることは不可能。アサシンのマスターですら例外なくこの宝具の対象となる。
アサシンを認識してから異界に呑みこまれるまでには一定の猶予時間があり、アサシンと触れ合った時間が長いほど猶予時間は短くなる。
この宝具から逃れる術は二つ。一つ目は猶予時間内にアサシンを消滅させること。二つ目はアサシンをできるだけ多くの他者に紹介すること。アサシンと紹介者への認識と記憶が楔となることで紹介者の存在は現実世界に繋ぎとめられることになる。
ただしアサシンを紹介された者も例外なく時間と共に異界に呑みこまれるので、紹介者は定期的に新たにアサシンを誰かに紹介し続けなければならない。紹介される側の人物はNPCでも構わない。

【weapon】
なし

【人物背景】
かつて山の神への慰撫として生贄に捧げられた少女。首を括られ土に埋められたが、その体が異界へと流れ着いたが故に隠し神と成り果てた。
外見や性格は生前のままだがこの世ならざる異質な存在であることに変わりは無い。彼女の意思とは無関係に彼女と触れ合ったものを異界へと飲み込んでいくため、永遠の孤独を宿命付けられている。
性格はいたって善良であり、非常に気弱で人見知り。中々に可愛い。可愛い。

【サーヴァントとしての願い】
人になりたい。


113 : 音無結弦&アサシン ◆GO82qGZUNE :2015/02/19(木) 18:58:03 NNz.TzlM0
【マスター】
音無結弦@Angel Beats!

【マスターとしての願い】
もう一度奏に会いたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
銃の取り扱いはかなり上手い。不死性は失われている。

【人物背景】
記憶のないままいつの間にか死後の世界にいて、半ば強制的にSSS(死んだ世界戦線)に入隊させられた少年。SSSには安全確保と記憶を取り戻すために入隊しており当初は消極的だったが、ある時を境に積極的に関わっていくことになる。
元々は両親がおらず病弱な妹を抱える苦学生であった。妹の病死をきっかけに医療の道を志すも電車事故で崩落したトンネル内に閉じ込められ乗客たちと一致団結するも救助隊が来る直前に死亡した。
記憶を取り戻した後は生前の後悔や未練を綺麗さっぱり無くすことで死後の世界から卒業することを目指し活動するも、最後にほんの少しの迷いが生じてしまう。

【方針】
聖杯狙い


114 : 音無結弦&アサシン ◆GO82qGZUNE :2015/02/19(木) 18:58:53 NNz.TzlM0
投下終了です


115 : 音無結弦&アサシン ◆GO82qGZUNE :2015/02/19(木) 21:53:48 JznVanX20
すいません、宝具の記述を若干修正します。

『神隠しの物語』
ランク:A 種別:侵食宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
隠し神としての力。アサシンを認識した者を異界へと呑みこむ。異界に呑みこまれた者は肉体と精神が変容し消滅するが、稀に『できそこない』となって存在を保ったままの状態になる者もいる。
常時発動型の宝具であり、アサシンの意思で止めることは不可能。アサシンのマスターですら例外なくこの宝具の対象となる。
アサシンを認識してから異界に呑みこまれるまでには一定の猶予時間があり、アサシンと触れ合った時間が長いほど猶予時間は短くなる。
この宝具から逃れる術は二つ。一つ目は猶予時間内にアサシンを消滅させること。二つ目はアサシンをできるだけ多くの他者に紹介すること。アサシンと紹介者への認識と記憶が楔となることで紹介者の存在は現実世界に繋ぎとめられることになる。
ただしアサシンを紹介された者も例外なく時間と共に異界に呑みこまれるので、紹介者は定期的に新たにアサシンを誰かに紹介し続けなければならない。紹介される側の人物はNPCでも構わない。
また、アサシンが消滅する際に周囲一帯を一時的に異界に塗り替え、範囲内に存在する全てのマスターとサーヴァントに肉体・精神の変容判定を発生させる。NPCは問答無用で消滅する。


116 : ◆Q47.dLD/uw :2015/02/20(金) 16:51:54 vhJ4OODc0
投下します


117 : 佐野満&アサシン ◆Q47.dLD/uw :2015/02/20(金) 16:52:28 vhJ4OODc0
ガラス、水、鏡、光を反射し映し出す鏡面世界の中には異質の怪物達が潜んでいた。
人を食らうその怪物達と契約を交わした者は強大な力を手に入れる事が出来る。
彼はその力を金儲けの役に立つと考え承諾して力を手にした。

だけどもうお金を心配する必要は無くなった。
父親の遺産である会社を継いだ彼は社長になり裕福な生活が約束された。
だから契約は破棄して戦いを降りたかった。
なのにどうして?なんでダメなんだ?
願いが叶ったんだから願いの為に戦う必要なんて無いんだ。
こんな事になるなら契約なんてしなければよかった。


――――契約者になる前の頃に戻りたい――――


その瞬間、世界は反転して意識が闇の中へと沈んだ。


安アパートの一室で彼は目を覚ました。
安物の家具、玄関傍にあるゴミ袋、無造作に置かれた雑誌、ペットの文鳥、自宅と何一つ変わらない光景だった。
意識を失っている間に家に送ってもらったのか?……違う、そうじゃない。
見た目は全く同じだが、ここは自分が住んでいる場所とは違う。

「痛っ!?……何だこれ?」

右手の甲に激痛が走り痣が浮かび上がると、頭の中に新しい情報が滝のように流れ込んだ。
……令呪……サーヴァント……そして聖杯戦争。
自分の意思とは裏腹に、この世界のルールが記憶として脳内に焼き付いていく。
彼は理解した『やり直したい』という意思が自分をこの場に引き寄せられたのだと。


118 : 佐野満&アサシン ◆Q47.dLD/uw :2015/02/20(金) 16:53:17 vhJ4OODc0
ルールを一通り記憶した直後、目の前で金色の光が現れる。
光の中から少女が現れると自分の方を向いて―――微笑んだ。

「貴方が私のマスターね」

一目見て理解した、彼女はサーヴァントだ
クラスはアサシン、こんな無垢な見た目をしているが生前で人を殺し続けたのだろうか?
彼女は自分のパートナーになる相手だ。
とにかく仲良くしていこう。
名刺を用意しながら仕事がら身についた営業スマイルで取り入らなければ。

「よろしくお願いします!!俺こういう者です。
 いや〜こんな可愛くて素敵な女の子が俺のサーヴァントだなんて凄く幸せだな〜」
「そ、そんな……いきなり可愛いだなんて……」
「謙遜しないでください!しかも可愛いだけじゃなくて
 清くて優しい心を持った気品を持っている事も一目で分かりますもの」
「……ありがとう。マスター」

アサシンは顔を赤くしながらうつむいた。
照れているのだろう、おだてられて喜ばない女性はいない。
ファーストコンタクトは大成功のようだ。

「私、マスターの為だったら何だって頑張るから……その、マスターのこと……」
「どうしたの?」
「マスターのこと……『お兄ちゃん』と呼んでもいいかな?」

もじもじしながらアサシンの出した告白に一瞬ドキリとした。
一人っ子である自分は何度か弟や妹が欲しいと思った事もある。
こんなかわいい娘が妹になるなら男として悪い気になるはずが無かった。
うん、とうなづくとアサシンは、ぱあっと笑顔になり俺の胸に向かって抱き着いた。

「ありがとうお兄ちゃん!ずっと一緒にいようね、約束だよ」
「あ、ああよろしく頼むよ」
「そうだ。お兄ちゃんお腹空いてるでしょ?ご飯作ってあげる」

そう言うとアサシンはエプロンを付けて台所へと向かった。


119 : 佐野満&アサシン ◆Q47.dLD/uw :2015/02/20(金) 16:53:53 vhJ4OODc0
彼が一息付こうとする間もなく、キィーン……キィーン……と鏡の中から金切り音が響く。
鏡の中の世界、ミラーワールドからモンスターが近づいた時の音だ。
ズボンのポケットの中を調べると契約の証であるデッキが入ってる。
この聖杯戦争の舞台においても契約は解除されていないらしい。
まるで呪縛のようにゼール達も彼を追って聖杯戦争に引き寄せられたのだ。

鏡の中から次々と映りだすゼール達がぐるるる……と唸り声をあげている。
仕草からして明らかに敵意を表している。

「待て!待ってくれ!餌なら後で――」
「あんた達……だれ?もしかして私のお兄ちゃんを奪おうとしてるのかな?」
「あ、アサ……!?」

彼は静止の言葉を投げかけようとするがアサシンの顔を見て思わず言葉を失う。
アサシンの瞳は血のように真っ赤に染まり、殺意と狂気をむき出しにしていた。
ゼール達もまた、アサシンに睨みつけられ怯えていた。

「私とお兄ちゃんの仲を邪魔するなら例え相手が神でも殺してみせるんだから……ね!!」

アサシンは手に持つ包丁を鏡に向かって振り下ろして突き刺した。
鏡に亀裂が走るのと同時にゼール達は悲鳴をあげながら一目散に逃げ出した。

「えへへ、これでお兄ちゃんを脅かす怪物はいなくなったよ」
「ああ……ありがとね……」

彼に笑顔を向けるアサシンは既に狂気が消えており普段の調子に戻っていた。
きっとマスターである自分を守ろうと必死になってくれたのだろう。
忠義に厚く信頼できるサーヴァントで良かった。

でもゼール達は聖杯戦争では貴重な戦力になるから
あとでアサシンにミラーモンスターの事を教えてあげないと……と思うのであった。





彼の前に現れたゼール達は餌をねだりに来たのではなかった。
野生の怪物である彼らは本能でアサシンの危険性を理解して契約者に知らせようとしていたのだ。
ライダーバトルをやめる為に別の戦いに身を投じる事となったアサシンのマスター 佐野 満
本人の望みとは裏腹に更なる戦火に巻き込まれるのであった。


120 : 佐野満&アサシン ◆Q47.dLD/uw :2015/02/20(金) 16:55:54 vhJ4OODc0
【クラス】
アサシン

【真名】
野々原渚@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD

【パラメーター】
筋力D++ 耐久E 敏捷D++ 魔力E 幸運D 宝具D

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

気配遮断:A
自身の気配を消す能力。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】

精神異常:A++
精神を病んでいる。
バーサーカー化による狂化ではなく、周囲の空気を読めなくなる精神的なスーパーアーマー。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失ってから二日間現界可能。

陣地作成:E
密室を作り上げ、愛しい人間を監禁する。
その部屋から逃げ出す事も外部から見つける事も非常に困難である。


【宝具】
『嫉憎紅眼』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:1人
大切な人を奪おうとする者への憎しみから魔眼へと昇華した宝具。
視界に映った対象の人物に呪いをかけ、幸運を2ランクダウンさせる。
同時に複数の人間を対象に出来ないが、効果の続く限り戦線を離れていても対象の位置が把握可能となる。
憎しみの上昇に応じて効力を増し、自力による解除が困難となる。

【weapon】
「包丁」
一般家庭に置いてあるごく普通の包丁だったが誤った用途として使い続けられた為に
人を切り殺す為の凶器として効力を発揮するようになった。

【人物背景】
ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDに登場するヤンデレの女の子
お兄ちゃんを愛するが故に恋敵の命を奪うだけでなく
愛するお兄ちゃんを自分の物にしようと監禁するなど
アサシンだけでなくバーサーカーの適性も持っている。

【サーヴァントとしての願い】
お兄ちゃん(佐野 満)とずっと一緒にいたい


121 : 佐野満&アサシン ◆Q47.dLD/uw :2015/02/20(金) 16:56:34 vhJ4OODc0
【マスター】
佐野 満@仮面ライダー龍騎

【マスターとしての願い】
ライダーとして契約する前の時間に戻りたい。

【能力・技能】
仮面ライダーインペラーに変身出来る。
多数のモンスターを使っての策略。

【人物背景】
大企業の御曹司だったが勘当されてから駐車場の警備員をしながら一人暮らしをしている。
金儲けをして楽に生活するために契約をして仮面ライダーになった。
報酬目的で他のライダーと手を組むが、都合が悪くなる度に鞍替えする佐野は信用を失い孤立していく。
その後、父の死亡により、莫大な遺産を手にした佐野はライダーの契約の破棄を求めるが
一度ライダーになった人間の途中棄権を認められず、自らが生き残る為に戦うことになる。

【方針】
強者のマスターに取り入って生き残る。


122 : 佐野満&アサシン ◆Q47.dLD/uw :2015/02/20(金) 16:57:05 vhJ4OODc0
投下終了です


123 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/20(金) 21:43:51 b/B7O8.E0
投下します


124 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/20(金) 21:44:26 b/B7O8.E0
『お前はもう28歳って事だよ』
『う、嘘でしょ!? 僕もう28歳!?』
 ギャグ漫画のノリで自らが暮らす世界をサザエさん時空だと勘違いしていたピヨ彦こと酒留清彦。
 だがそれは勘違いだと、お前と俺は出会って10年経っているぞという事実を突き付けたのは同居人のジャガー。
 ピヨ彦は思った、この就職氷河期にこれからどうしようと。
 ピヨ彦は思った、ギタリストになるなんて言ってられないんじゃないかと。
 ピヨ彦は思った


―――18歳の頃に戻ってやり直したいと―――



◆ ◆ ◆



 ピヨ彦はアパートの部屋の中で目を覚ました。最初は余りのショックに気絶したのかと思わず自分に呆れたが、その後違和感を覚えた。
「せ、聖杯戦争……?」
 自分の中に知らない記憶が紛れ込んでいるのである。だがピヨ彦は慌てない、いや正確にはそれほど慌てていない。ピヨ彦はこう考えた。
「そ、そふとくり〜むの仕業かな?」
 しかしピヨ彦は自分でこの考えを否定する、何故ならさっきまでそふとくり〜むの創始者と一緒に居たのだから、もうメンバーなんて残ってないはずだから。でもピヨ彦はこんな事が出来る存在を知らない。そんな風に思い悩んでいると
「安心しろピヨ彦、これはそふとくり〜む関係ないぞ」
 声をかけてきた存在が居た。
 さっきまで自分一人だったはず、なんて疑念をピヨ彦は抱かない。何故なら自分は声の主を知っているから。
「ジャガーさん!」
 そう、声をかけてきたのはさっきまで一緒に居たジャガーだった。知っている人、それも頼りになる存在のジャガーと合流できたことはピヨ彦の中で大きな安心となった。
「良かった! ジャガーさんも居たんだ!!」
「ハハハ、相変わらず情けないなピヨ彦は」
「ひ、酷いなジャガーさん!」
「「ハハハハハハハハ!!」」
「しかしピヨ彦か……。でも安心しろ、お前は俺が守ってやるぜ!!」
 そのジャガーの発言にピヨ彦は思わず凍りついた。何かが、何かが致命的にずれている。とピヨ彦は感じた。
「あ、あのさジャガーさん?」
「何だピヨ彦」
「確認なんだけどさ、ジャガーさんってマスター?」
 ピヨ彦の確認、それは彼からすれば当たり前の事のはずだった。しかし、ジャガーの発言でそれは一気に覆る。



「いや、俺サーヴァントだけど?」
「え、ええ――――――――――――――――!!!?」
 ジャガーの返答に思わず吠えるピヨ彦。
 ピヨ彦はジャガーがサーヴァントという事実を受け入れきれず叫ぶ。
「サーヴァントって死んだ英雄がなるものなんでしょ!?」
「ピヨ彦が来たときには生きてるけど、俺だって生命なんだからいずれ死ぬし……」
「そ、それはそうだけど……」
 未来からの召喚。
 そんな聖杯戦争を知る魔術師なら驚愕しそうな事実に、ピヨ彦もまた別の理由で驚愕していた。
 無理もないだろう、さっきまで喋っていた10年来の付き合いの人間が未来では英雄です、などと言われてあっさり受け入れられるわけがない。
「ひょっとして俺が戦えないと思ってるな?
 これでも俺はジャンプアルティメットスターズでバトルキャラをやった男だぜ。心配は無用さ」
「や、やめようよそういう世界観を揺るがしそうな発言は」
 そこまで聞いてピヨ彦は肝心なことを聞いていないと気づく。
「ところでクラスは? キャスターとか?」
「ランサー」
「槍は!?」
「如意笛」
「あれ槍だったの!?」


125 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/20(金) 21:45:20 b/B7O8.E0
【クラス】
ランサー

【真名】
ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運A 宝具E

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
獣人:E
人間以外の獣の血を引く存在が持つスキル。ランクが高い程獣に近い。
彼は20歳の誕生日に自身が猿の血を引く存在だと告げられるまで知らない位なので、最低ランクである。

楽器演奏:A++
演奏者に与えられるスキル、ランクが高い程腕前が高い。
ちなみに、ランサーは笛が有名だがギターもうまい。

【宝具】
『珍笛』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1
伸縮自在な如意笛、おもちゃっぽいひずみ8号などの変わった笛の事を言う。
サーヴァントとなった彼はどこからともなくこれらを取り出すことができる。
ちなみに珍笛という名前になっているが、それだけでなく普通の笛、それから何故かラーメンの入った器も取り出せる。

『私は笛の演奏者(パイプパフォーマー)』
ランク:- 種別:対人魔技 レンジ:??? 最大補足:???
これは宝具ではない、技術のみで神秘の域に達した演奏技術である。
彼の演奏は曲の情景を鮮明なイメージとして見せる、ギターのような音色を出す、更には守護霊のようなものまで出すことができる。
無から有を生み出すその演奏はまさしく魔法である。

【weapon】


【人物背景】
謎の笛吹き男で傍若無人。しかし人脈は広い。
笛の腕前は天才的なスター養成学校ガリクソンプロのふえ科講師。
しかしその正体は、悪の組織『そふとくり〜む』の創始者の息子であり喋る猿の血を引く男だった。

【サーヴァントとしての願い】
笛を世界一の楽器にする



【マスター】
酒留清彦@ピューと吹く!ジャガー

【マスターとしての願い】
青春時代をやり直したい

【weapon】
なし

【能力・技能】
ギターがそこそこ上手い。
珍笛作りに関して天才的な才能を持っている。

【人物背景】
元はギタリストを目指すただの若者だった。
しかしそんなある日、謎の笛吹き男のジャガーに気に入られてしまう。その日から彼の振り回される日々が始まった。
ジャガーやその仲間たちと振り回されながら騒がしい日々を過ごす清彦。
しかし、彼は気づかない内に10年という歳月を過ごしてしまう。
彼は17歳の若者から28歳という中年一歩手前の存在になってしまったのだった。

【方針】
やり直したいとは思うけど流石に人殺しは嫌だ


126 : ◆7PJBZrstcc :2015/02/20(金) 21:46:43 b/B7O8.E0
投下終了です。
後入れ忘れましたがタイトルは「如意笛のおかげでランサーになれました! お求めの方はピヨ彦堂まで!!」です。


127 : ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:32:46 xU2v/5gg0
そぉい!

透過します


128 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:34:05 xU2v/5gg0

目指していた。憧れていたんだ。ひたすらに追い続けていた。
精一杯輝ける星に憧れて、一生懸命運命の扉を開けようとしていた。

でも、簡単に開くなら誰も苦労することなんてなくて。
毎日毎日レッスンをこなす。汗を流して、怒られて、疲れての繰り返し。
本当にアイドルになれるのかな、夜になると独り何時も不安になっていた。
テレビに出ているアイドルは何時も笑顔で、私はそれが印象に残っていて、憧れたんだ。

明るい笑顔。誰でも出来る簡単なことなんだけど、とっても惹かれたんだ。

「……笑顔、だよね」

シンデレラプロジェクト――私が第一歩を踏み出す運命の扉の名前。
何人もの応募があったんだけど、私は選ばれた。ううん、選んでもらった。
落ちた人もいるし受かった人もいる。だから私は落ちた人たちの分も頑張ろうって思って。
どんな時でも笑顔だけは、私が暗い顔していたら落ちた人に申し訳ないから。
理由はそれが全てではないけど、みんなにも輝いてほしいから笑顔だけはどんな時でもしよう。そう思ってた。


『ねぇねぇプロデューサー! この本田未央を選んだ理由聞かせてよー」


『……《笑顔》です」


『やっぱりー? いやー、アイドルって言ったら笑顔だよねー!』


努力していた甲斐があったかな、なんてちょっと思ってさ。
笑顔は努力何てしなくても出来る、私はそう思ってたし友達からも笑顔が似合うってよく言われてた。
当たり前の事で選んでもらったのは嬉しいのか嬉しくないのか……嬉しいのは当然なんだけど。

笑顔は特別じゃなくて、だから理由が笑顔だけだと少し寂しい感じがしたんだ。
でもそれを表に出したらいけない。だってアイドルになるんだもん。
私の笑顔で誰かが笑顔になってくれるなら、私は何時だって笑顔を崩さない。


『城ヶ崎美嘉の――バックダンサー!?』


『えぇ!? ほ、本当ですか!?』


『はい。あなた達三人にお願いします』


『……嘘みたい』


シンデレラプロジェクトに選ばれてから次はカリスマアイドルのバックダンサーに抜擢。
正直思っちゃったよ。《私は特別なのかな》って。今思うと馬鹿みたいだけど。


私、本田未央のシンデレラストーリーが始まった、なんて思って独りで笑ってた。
まだ思ってなかった、ガラスの靴にはもうヒビが入っていたなんて、ね。


129 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:36:51 xU2v/5gg0


初のライブは楽しみだった。不安もあるけど、それよりも楽しみが強かった。
レッスンは何時もよりも辛くて、たくさん怒られて。でも挫けることはなかったよ!
しまむーとしぶりん……私は一人じゃないもん。一緒に頑張る仲間がいたから。


『納得いかないにゃ―! みくと勝負にゃー!!』


シンデレラと同じなのかな。登場人物全員が魔法に掛かるわけじゃないよね。
選ばれなかった人は当然納得いかないと思うし私達を妬む気持ちだって解る。
それに私達は遅れてプロジェクトに合流したんだもん。私がみくにゃんと同じ立場なら……。


『その勝負乗った―!!』


辛いよね、きっと。
だから私はみくにゃんを適当に流さないで真剣に相手をする。
それでも暗い雰囲気にしたくないから、笑顔で。でも、ふざけないで。
ごめんね。選ばれたのは私達だから、努力しているのはみんな同じだから、ごめんね。


「一回負けちゃったにゃー……はは」


みくにゃんはしつこかったよ、ちょっとヒドイ言い方だけど。
でもそれだけ強い気持ちを持っているんだよね。次はみくにゃんが輝ける番だよ。
私何かと違って堕ちてももう一回上がれるお星様みたいに、さ。


志が違ったかもしれない。私は夢しか見れてなくて。なのにチャンスだけは回ってきて。
もし私が不遇のアイドルで念願のライブ――そんな風だったら今もみんなと一緒に……。


美嘉ねえのバックダンサーをやる時、本番が近付てくれば来る程不安になった。
あれだけ一番騒いで、明るい笑顔だってしまむーとしぶりんには勝っていた。


「あの時はごめんね……特にしぶりん」


私ビビってさ……声一つ出せなかった。
本当は不安がってるみんなを励まそうとしていたのに……その役はしぶりんに押し付けた。
結局私が励まされて……本当に私って馬鹿、っつーか弱い?
ライブ前にやっと本当に直前で復活して。迷惑かけてごめんね。今もあの時も。


ライブの瞬間は最高に輝いていた。私が言うんだから間違いない。


バックダンサーだけどまるで自分が主役のように踊ってた。
笑顔、みんなが私のために集まってくれてる。だからそれに答えるために私は最高の笑顔で舞台に立つ。
練習は嘘をつかない……本当だった。頑張って良かった、心から思った。


それがいけなかったんだ。悪いことじゃないけど、私が勘違いしたんだ。


130 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:38:59 xU2v/5gg0


それから有頂天だった。あの時のことを絶対に忘れないで、ヘラヘラしてて。
勝手に偉くなった気分でさ。ドヤ顔も多かった。何かある度にライブの話を持ち出して。
みんなそれを笑って聞いてた。でも、しつこいとか想われてたよね。解る、だって私、うざいもん。
ごめんね、本当にごめん……ごめん。


「う……っ……っぁ」


なんで、私はなんで……本当に迷惑しか掛けない。
ライブの余韻に浸ったまま私達はCDデビューが決まった。しかもミニライブまで。


《ミニ》だけど《主役は私》達、《初の主役》に《私》達はなるんだって。
他のメンバーには少し申し訳ない気持ちもあった。でも自分のことを考えるとそんな余裕はない。
だって、《私》達のライブにお客さんがたくさん来るんだよ? しかも《私》《が》《リーダー》。
《私》の《輝き》がステージに広がるんだもん……他の人ことなんて考えていなかった。


衣装を決める時も、レッスンの時も、何もかも。
毎日が輝いていて充実していてそれはもう最高だった。
周りなんて本当に見れていなかった。他のユニットも全然気にしていなかった。


だから他の人の意見は全部妬みに思ってた。
《選ばれた私》と《その他》……思ってないけどそう《なっていた》と思う。
思ってない、絶対に思ってない。でも、比べるとやっぱ……ごめん。


「ごめん……みんな、ごめんよぅ……っ」


ミニライブ当日、私にとって最悪の一日だった。
違うよ、話と違う。なにこれ、小さい、ミニって聞いてたけど全然違う。
小さい子供みたいだった。誰も前のライブと一緒なんて一言も言ってない。
私が勝手に前のライブと同じ規模で、《私が主役》になる番だって勝手に思ってた。


無意識で私は逃げ出した。


131 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:40:46 xU2v/5gg0


お客さんは笑顔だった。


拍手もくれた。


でも。


でも、でも。


私が独りで勝手に舞い上がってる状況が恥ずかしくて、情けなくて、惨めで。


大切にしていた笑顔も忘れて私は逃げ出した。


消えたかった。でも、助けてもらいたかった。
面倒な女だよ私は。自分から弱音は吐きたくない、でも救って欲しい。
だから最初に声を掛けてくれたプロデューサーに強く当たった。
自分が悲劇のヒロインを演出するように……でも言葉は慰めじゃなかった。
どうかと思う、私が悪いのは解るけど……大人何だから。


「今日も着信来てる……」


けれど私が電話に出ることはない。メールも返さない。
しまむーも無視した。体調を崩したらしいけど確実に私が原因だ。
勝手に恥をかいた私はあの日からずっと部屋に引き篭もってた。
ニートだよ……笑い話にもならない。
それから時間が過ぎるのが遅く感じた。ライブは一瞬だけど。
心が段々重くなって私は笑顔なんて完全に忘れていた。


「あ……十二時……今日が終わる」


このまま今日じゃなくて世界が終われば。どれだけ幸せだろうか。
学校にも行かない、誰とも会わない、アイドルも諦めた私に何が残っているんだろう。
何処で間違ったのかな。ライブ……最初から間違っていたのかも。
私の笑顔じゃ他人を幸せにすることなんて出来ないことが解ったんだ。この結果は最初から決まっていた。
だからやり直すなら最初から、アイドルを目指さないことにしたい。






「そんなこと……思えるわけないよ……っ。やり直したい……私、みんなと……っぁぁ」






聖杯戦争。
本田未央が少しでも願ったやり直しの機会は偶然にも、必然かもしれない。
言えることは唯一つ、彼女は奇跡を手にする権利を与えられた。
条件は最後の一組になることであり、それ以外に存在しない。


132 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:43:19 xU2v/5gg0


「私……また、もう一度夢を見たい……」


「……」


この想いは本物だ。彼女の真の叫びであり本来の姿である。
歳相応の叫び。アイドル《偶像》ではなく本物《女の子》の叫びだ。


「もう一度夢を追いかけたい……だから力を貸して……」


その言葉は小さく今にも途切れそうな程にか弱い。
しかし込められた意思は本物であり、これを笑う人間などいるだろうか。
いない、目の前のサーヴァントを含めて彼女を笑う人間など存在は許されない。


「でもよぉ、それは他の奴らを殺すことになるんだぜ」


男は放つ、夢だけ見つめている少女に辛い現実を放つ。
願いを叶える奇跡には相応の代償が必要となる、それが他社の脱落。
必ずしも殺す必要はないが全員生き残る、何て話は有り得ない。
本来、人生において過去に戻る何て事は存在しなく、開けてはならないパンドラの匣だ。
それに触れようとしている、謂わば運命の扉を無理やり抉じ開けようよとしているのと変わりない。


「い、嫌に決まってる……そんなの嫌だよ……」


133 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:45:05 xU2v/5gg0


少女は俯く。その言葉は弱い。
本田未央はアイドルだ、しかし彼女は高校一年生、殺しの覚悟がなど持ち併せていない。
しかし男は聞く。覚悟は、ある、のか、と。


「嫌だよ……言わなくても解るよね……それでも聞きたいなら、れ、令呪を使って……」


辛い思いはもうしたくない。
無理矢理理由を吐かせるつもりならマスターの証である令呪を使う。
自分のサーヴァントを殺すつもりはないけど痛い目を見てもらう。
最後の奇跡を無駄にしたくないから。




でも男が取った行動は予想外で、本田未央の頭の上に手を置いて優しい笑顔で語りかけた。




「邪魔な奴は俺が片付ける。マスターは殺さない、倒すのは俺たちサーヴァントだけだ」




その笑顔は見ているだけで安心させ、嘘の欠片も感じられないほど和やかであった。
彼は弟と出会えなかった。生まれることがなくその生命は照らされる前に沈んでしまった。
男は誓った、その弟の分も生きる、強くなる、と。日々を鍛錬に費やした強さは本物。
その力は人間を超えた人形をも破壊する絶対にして唯一の武器と誇りと意地を形成していた。


力は牙無き人のために――子供の笑顔を守るため、男は悪魔にだって変貌する覚悟がある。


「なんで……なんでそんなこと言えるのッ!?
 私は自分のためだけに願いを叶えようとしているんだよ、いるんだよ……。
 またみんなに、色んな人に迷惑を掛けるかもしれないのになんで……どうして!」


「笑顔――忘れてるぜ?」


「……なにそれ……意味解かんないよ……っ……解かんないよぉ……」


誰か私を救って。私はもう一度やり直したい。
もう一度、輝く星になりたいから。独りじゃなくて、みんなと。


だから――力を貸して。


私にもう一度、夢を見させて。


笑顔の――魔法を。



【マスター】
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)

【マスターとしての願い】
もう一度輝く星になりたい。

【能力・技能】
明るさと笑顔が彼女にとっての特徴であり象徴。
しかし現在は曇っている。

【人物背景】
シンデレラプロジェクトの最終メンバーとして合流した高校一年生。
その笑顔と明るさで大勢の友達がおりリーダーとして輪の中心にいた。
カリスマアイドルのバックダンサーを経験した後、自分達のライブが決まって有頂天になっていた。
全てを都合よく解釈しありもしない楽園を彼女は勝手に想像していた。
来る日、彼女の中にある夢は砕け散り輝きを失う。
彼女はその時期から聖杯に招かれた。

【方針】
やり直す、私はもう一度やり直したい。


134 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:49:47 xU2v/5gg0


嫌な時にワケなんて言う必要はない。
男は泣いているマスターを見て深追いはしない、する必要がない。


少女に人を殺させるなど外道が行う悪趣味な遊戯だ。
ましてや今まで血の匂いすらしない地域で育った少女ならばなおさらである。
誰にだって失敗はある。その先が大事であり腐っていれば一生腐っているままで終わる。
聖杯戦争。本来起きるはずのない絶対にして唯一の奇跡が目の前に広がっているのだ。
ならばサーヴァントとして召された男は少女のために戦う。


今宵、男は独りの少女のために悪魔の面を被るだろう。


人間は殺さない、殺すことなど許されない。
狙いはサーヴァントだ。一度死んだ霊体の身だ。もう一度死んだって問題はない。
泣いている少女を救うために泥を浴びる――言葉にすれば響きは最高だ、至高に値する。
しかしこれから幕開けされる舞台は血で血を洗う聖杯戦争だ、夢物語ではない。


ある者は笑い、ある者は涙を流す。
ある者は他人を愛し、ある者は他人を破壊する。
ある者は願いを叶え、ある者は死ぬ。


弱い者が死に強き者が生き残る殺し合い――それが聖杯戦争。


招かれた人間は何かしらの願い、意思を持って参加している。
個人差は在れど、簡単に諦めきれる問題ではない。
ならば、信用するのは己が力。


笑うのは悪魔か外道が死神か。


それとも一人の少女なのか。


加藤鳴海――総てはお前の拳に託された。


135 : 本田未央&しろがね ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:51:43 xU2v/5gg0


【クラス】
 しろがね


【真名】
 加藤鳴海


【パラメーター】
 筋力A 耐久B+ 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具E


【属性】
 混沌・善 


【クラススキル】
 
 不死の身体:C
 しろがねとは生命の水を体内に取り込んだ自動人形の破壊者を表わす。
 彼らは不死の身体となり、己の生に満足するか大量に血を失うことでしか死なない。
 戦闘を続行させる力に長け、魔術も正面から立ち向かっていけるが対魔力の力はない。
 加藤鳴海はしろがねでありながら、人間を貫き多くのしろがねに影響を与えたためランクが下がっている。


【保有スキル】

 武道の極み:B
 各分野における武道を極めた証であり信念。
 しろがねの中国武術は生前多くの自動人形を破壊したことから由来する。
 気を掴めば魔力を突破できる可能性を秘めている。

 直感:B
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

 悪魔降臨:EX
 生前に敵である自動人形に例えられた悪魔《デモン》が由来。
 他者を守る時、彼の感情に触れてしまった時に己の感情を爆発させステータス以上の力を発揮する。
 狂化ではなく、意思は存在しており、狂う訳でもなくしろがねは敵を破壊する。


【宝具】
『聖・ジョージの剣』
 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:3
 左腕に仕込まれた刃。
 しろがねの左腕は生身ではなく人形の物を移植している。
 彼は生前己の武術と組み合わせ多くの自動人形を破壊してきた。


【weapon】
 己


【人物背景】
 元々は弱い男だったが生まれてこなかった弟のために強くなる決意をした男。
 極めた武術は多くの自動人形を破壊し悪魔と恐れられてきた。
 彼は生前、一人の子供を救うために左腕と記憶を亡くしてしまう。
 その後は左腕を移植し、新たな戦いに身を投げ込む。
 その旅で彼は多くの子どもたちが苦しんでいることを知り、自動人形を破壊する決意を決めた。
 来るサハラの決戦では多くの仲間を失い、己も四肢を失うが敵の親玉を破壊した。
 しかしそれは偽物であり、死んでいった仲間の無念も晴らせず彼は生き残ってしまう。
 その後も真の親玉を破壊するため彼は悪魔となりて戦場に多くの血を流し続けた。
 そして人類の最後の希望を乗せた列車に乗り込み彼は過去から続く絡まった因縁に終止符を打つため最後の――。


【サーヴァントとしての願い】
 少女の笑顔を取り戻す。


【基本戦術、方針、運用法】
 サーヴァントを狙い、マスターのために戦う。
 彼の身体は左腕のみが機械であり、他は生身である。


136 : ◆4oYTACNEQs :2015/02/21(土) 02:53:14 xU2v/5gg0
投下を終了します。

アニメを見終わったら自然と書いていました。


137 : ◆yy7mpGr1KA :2015/02/21(土) 15:02:39 /zH/puUY0
投下乙です
ミンハイで先を越された悔しさを噛みしめつつ私も投下します


138 : 悪【たのしみ】 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/21(土) 15:04:48 /zH/puUY0
そのサーヴァントは白と黄金で彩られている……しかしその実態はこの上ない暗黒。
そのサーヴァントが手をかざせば炎が辺りを照らす……それは光のようで、決して交わらない闇。

対峙するサーヴァントもステータスはそう低いものではない。
火達磨になりながらも白いサーヴァントに切りかかる。
しかしそれを容易く腕から伸びる刃で受け止めると反撃の拳で彼方へと剣士を吹き飛ばす。

「どうしたの?もっと強くなって、もっと僕を笑顔にしてよ」

その言葉と共に距離を置いて見守っていたマスターも発火する。
髪の焦げる臭い。肉の焼ける臭い。
炭化した骨が自重を支えられず崩れる音。焼け焦げた声帯から響く断末魔。
己と同じ炎でマスターが焼かれている。苦汁をなめるよりもなお辛い。

五感のすべてで危機を感じ取り全能力を持って剣を振るわんとするが

「……あれ?」

その決死の一撃が届く前にサーヴァントは消滅してしまった。
発火させられたマスターもすでにこと切れ、肉とも炭ともつかない何かになってしまっている。

「火火火(ヒヒヒ)……そりゃそうだよ。マスターが死んだらサーヴァントも消えるんだろ?」

その言葉を聞くと白い異形のサーヴァントは真っ白な服を着た少年へと姿を変えた。
その表情はかつての成功と同じようにやったのにうまくいかなかった、とすねている子供のようで……だからこそ悍ましく見えた。

「ケツに火がつきゃどんな駄馬でも走り出すがよ、その状態で最後っ屁なんざ期待したら今みたいに燃え尽きちまうぜ?」
「残念だな。ゴオマなんかよりはよっぽど楽しめそうだったんだけど」

戦士以外はやめた方がいいのかな、と呟く。

「マスター殺った方が手早いだろうに」
「それじゃ面白くない。僕は強い戦士に僕を笑顔にしてほしいんだ。弱いのを殺したら強い戦士まで消えるなんてもったいないよ。
 ……僕もグロンギだからね。久しぶりにゲゲルを楽しんでみたいと思うんだ」

その眼はとても純粋だった。純粋な悪。
人間から進化した『新しい血族』とは根本が異なる戦闘民族グロンギ。
その悍ましさに久方ぶりに冷たい汗が背を流れた。

「一度クウガに負けたから『ゴ』のゲリ・ザギバスゲゲルをやろうか。七日以内にマスターは殺さずサーヴァントを全滅させる、なんてどうかな?
 バグンダダがないからただの遊戯にすぎないけど、ゲームは楽しい方がいい」
「……聖杯欲しさで来たわけじゃないんだな。改めて思うが碌でもねえ」

やっぱりコイツはシックスに似ている。
あの方にとって人間は気まぐれに壊すオモチャで、こいつにとって人間はゲームのスコアボードでしかない。
シックスに並ぶコイツが凄まじいのか、やはりと言うべきか人外になっていたあのお方がとんでもないのやら。

「君も似たようなものじゃないか。バルバはリントが僕たちグロンギに近づいたと言っていたけど……
 今殺して見せたのに特に反応もない。むしろ燃える亡骸を見て舌なめずりをしている。聖杯にもそんなに興味なさそうだし彼女の言葉は的を射ていたね」

見透かしたような発言。
当然と言えば当然だ。
謙虚な日本人らしく大層な願いなんざ持ち合わせてないし、高級ステーキよりも焼死体の方が見た数は多い。見慣れても燃えた脂肪のせいで唇がべたついて気持ち悪いんだよ。
まあ強いて言うなら

「長生きしたいね。願いなんざそれくらいだ」
「僕は戦いたい。それだけなんだ。ここならまたクウガや、もしかしたらガミオにも会えるかもしれない。楽しみで愉しみで今から笑えてくるよ。
 ……そうだ、聖杯にまた聖杯戦争を開いてくれなんて願うのも面白いかもしれないね」


139 : 悪【たのしみ】 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/21(土) 15:05:17 /zH/puUY0

そう言って歩み出す背中を眺める。

……俺も燃え尽きたと思った。バックドラフトで崩れる瓦礫の中最期に一服できれば上々くらいに思っていた。
魔人の最期を見届けられないのは惜しいし、当たりの出ねえパチンコ屋焼いときゃよかったとか考えもしたが未練てほどでもねえ。
ただまた犯(や)りてえな、なんて思ったらここにいた。
訳のわからんルールを刻まれ、とんでもねえサーヴァントを宛がわれこれじゃあ命がいくつあっても足りやしない。
一度は死ぬと思ったが生きてる以上まだ生きたいと思うのは普通だろ。

右手の、人差し指。覚えのない火傷のような「火」の文字。令呪ってヤツだろう。
この文字がこの指に宿るってのには思うところあるがそれはどうでもいい。
これを使えばあいつに命令を下せる。
生き残るために下すべき命令は……




「ねえ、葛西。君が僕に令呪を使うのと僕が君を殺すの、どちらが早いと思う?」




瞬間、目の前に先を歩んでいたはずのダグバがいた。
催眠術でも瞬間移動でもない純絶たる超スピード。風圧と轟音がそれを語る。
超能力じゃないなら大したものじゃない?
バカ言え、超能力なんて小細工を使うダニとただのライオンどっちが怖い。
俺は強化細胞だの能力だのを使うDR(ダニ)よりそんなモノなしのダグバ(ライオン)の方が怖い。

「うん。やっぱりバルバの言う通りだ。君はむしろリントよりグロンギに近いよ。
 君もいつかクウガのように強くなれるかもしれないね。そうなれば僕の次くらいには長生きできるはずさ」



だから、君も強くなって僕を笑顔にしてよ


140 : 悪【たのしみ】 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/21(土) 15:06:24 /zH/puUY0
【クラス】

バーサーカー

【真名】

ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ

【パラメーター】

筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運D 宝具A
(狂化および宝具による上昇含む)

【属性】

混沌・狂

【クラススキル】

狂化:D
理性と引き換えにパラメータを上昇させるスキル。
これにより筋力と耐久の値を上昇させているが、もとより闘争と狂気に取り付かれたダグバに理性などあってないようなものである。
通常時と変わらない意思疎通を可能とする……彼とのそれを意思疎通とするなら、だが。

【保有スキル】

狂喜:A
戦場における異常なまでの精神高揚。
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する。また痛覚などのバッドステータスによる行動制限も無効化する。
思考能力の低下等は無いものの、思考はほぼ固定される。
聖杯戦争という戦場に身を置いているためこのスキルは常時効果を発揮しており、サーヴァントとして与えられた狂化以上の狂喜で思考を塗りつぶしている。

戦闘続行:A
不屈の闘志と頑健な肉体。
瀕死の傷であっても戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り戦い続ける。

環境適応:D-
異なる言語を数日耳にした程度で習得するなどの卓越した学習能力。
グロンギは総じて適応能力が高く、人間の文化に興味を示すものや社会の仕組みを理解する者も存在した。
バイクやトラックなど短時間で乗りこなし、時間をかければ人間のフリをして会社の重役やアイドル、政治家などもこなせる。
学習したスキル・技能を獲得し、文明や環境を即座に理解・適応する。

原子操作:E
後述の宝具によって得た能力。
本来ならばAランクで保持し、天候の操作や瞬間移動、多彩な武器の作成など可能なのだがバーサーカーとして現界したことで大きく制限されている。
残されたのは肉体の操作による治癒、食事やマナの操作による効率的な魔力回復、そして最も悍ましい後述の宝具である。

【宝具】

『全能たる黄金の魔石(ゲブロン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
古代、グロンギ族が隕石を加工して作った霊石。
取り込んだものを動物や植物の特徴を持つ異形の怪人へと変身させる。
ダグバの持つ黄金のベルトは最高級のもの。
モーフィンパワーによる原子操作能力を獲得する。またクワガタ型の怪人へと変身した場合、ステータスが上昇。
欠片でも取り込んだものは大きくステータスを上昇させることができる。
欠損などした場合究極体には変身できなくなり、当然不完全態や人間の姿ではステータスも低下する。
なお電撃を取り込み強化される特性がある。

『究極の闇を齎す者(キュグキョブン・ジャリ・ゾ・ロダサグ・ロボ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:30000人
スキル:原子操作の極み、原子を操作・分解することで物質をプラズマ化させあらゆるものを内部から発火させる。
本来ならスキルに過ぎない一技能だが、僅かの時間で三万もの人間を虐殺した所業とそれがグロンギ族の目標『究極の闇』であることから宝具にまで昇華した。

『狂戦士の起源(ゴ・クウガ・バ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
古代、平和を愛するリントの民に戦士を意味する単語はなく、グロンギの「ダグバ」と言う文字をもとに「戦士(クウガ)」と言う文字を生み出した。そして究極の闇をもたらすとされる「黒い戦士」を表すリント文字は完全に「ダグバ」と同一である。
「クウガ」の宿す霊石アマダムはグロンギの用いる魔石ゲブロンと同質のものであり、リントの戦士はグロンギから生まれたと言っても過言ではない。
ダグバと対を成す『究極の闇』には人間をグロンギ=狂戦士へと変える能力者もおり、全能の霊石を持つ彼も同様のことが可能であったと思われる。
さらにダグバは対峙した二人のクウガを共に「凄まじき戦士」へ覚醒させた、現世に蘇った際に200体を超えるグロンギの封印を解いたなど狂戦士の始まりとなる多数の逸話を持つ。

ダグバと戦闘した人間、または人間を起源とする者はAランクの狂化を獲得することがある。
ただしその際に聖なる泉が枯れていない=優しさを見失っていなければ理性を失うことなく狂化のステータス上昇の恩恵のみを得ることができる。


141 : 悪【たのしみ】 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/21(土) 15:06:43 /zH/puUY0

『白き闇の遊戯(ザギバスゲゲル)』
ランク:D++ 種別:対人宝具 レンジ:0〜5 最大捕捉:3人
ダグバが封印された地にして最期に踏んだ地、吹雪と寒風吹き荒ぶ九郎ヶ岳を固有結界として再現する。
敵サーヴァントと敵マスターの二人を引き込み、サーヴァントと一対一の闘いを繰り広げる。
この結界の中では直接攻撃以外による干渉はスキル宝具問わず一切無効化される。
いかなる魔術も能力もお互いに放てず、『究極の闇を齎す者』も発動できない。
武器の使用は可能だが、魔術的な追加効果など神秘を伴うものはその効果を発揮しない。
またこの地でリントの戦士に打ち倒された逸話から結界内では神秘を持たない武装であってもダグバへダメージを与えることが可能。

【weapon】

モーフィングパワーを応用した、万物の原子レベルの分解と万能の再構築。
150km以上離れた位置であっても、息を吐くように移動する瞬間移動。
成層圏にすら干渉し、望むまま天地をかき回す天候操作。
クウガの四種四形態の能力と武器を極限まで強化したそれを同時に備える万能性。
霊石・魔石の能力であれば封印・吸収・コピー自在という反則規格。

全てバーサーカーとして召喚されたため制限されている。

しかしこれら全ての能力を蛇足として切り捨てて尚使われる最強の武器、純粋な肉体の力は保持している。
サーヴァントとして再現された存在である以上限度はあるが、上記の凄まじき能力の数々が役立たずと化すほどに常識を超越した肉体のスペックを武器とする。

【人物背景】

古代リント(人類の祖先)を虐殺していた戦闘民族グロンギの長にして最強の戦士。
『ダグバ』は個人名。
『バ』は変身する形態の特徴を表し、彼は昆虫態であることを意味する。
そして『ン』は『Ω』、ひいては頂点であることを表し、『ゼ』は『全能』、『最高』を意味する。

その名に恥じぬ戦闘力と多芸さを持ち、かつての闘争ではリントの戦士『クウガ』が自らを究極の闇に落とすことで漸く配下のグロンギと共に封印した。
しかし封印していた遺跡を現代の調査隊が暴いてしまったことにより復活、変身アイテムであるベルトが損傷していた為不完全な状態ながらも調査隊を皆殺しにしグロンギ族を蘇らせて現代での殺戮ゲーム(ゲゲル)を開始した。
ゲゲルが進行すると弱小グロンギ200人を整理と称して粛清、さらに進むと三万人を超える人を虐殺するなど常軌を逸した残虐さと強さを持つ。
なお粛清は自身のバックルを取り戻すために、虐殺はクウガを黒い戦士に覚醒させるために行なったことであり、その気になればこれ以上のことも出来たかもしれない。

それにより自身は完全な力を取り戻し、クウガは黒い戦士として覚醒。
古代においてクウガに封印された地、そして全てが始まった地において現代のクウガと決着をつけた。
暴力や争いを嫌い、泣きながら戦うクウガと、暴力や戦いを楽しみ、笑いながら戦うダグバ。
その戦いでクウガの友たるリントの戦士に特殊な銃弾を受け敗北、死亡した。

【サーヴァントの願い】

笑顔になるため自らを脅かす存在と戦いたい。


142 : 悪【たのしみ】 ◆yy7mpGr1KA :2015/02/21(土) 15:07:31 /zH/puUY0
【マスター】

葛西善次郎@魔人探偵ネウロ

【マスターとしての願い】

謙虚なので願いなど大それたものはない。
ただ長生きしたいし、犯(や)りたいように犯(や)る。
犯(や)りなおしたいなんて誰だって思うだろう?

【weapon】

手に仕込んだ火炎放射器。
また火の達人である葛西にとってはマッチも煙草もライターも火種と言う武器になり得る。
ヘビースモーカーである彼は多くの煙草とマッチを携帯している。

【能力・技能】

悪意の定向進化をした『新しい血族』の幹部、五本指の一人で火の扱いに長ける。
古代より火を扱った一族の末裔であり、サーヴァントになれば神性スキルを持つかもしれない。
『新しいの血族』の長シックス曰く「神など我々の一族の職業の一つに過ぎない」。
その知識と悪意は人間ではまず持ちえないもの。
人間であることに拘り人外の力を扱うことをも拒み続け、持ち前の知識とトリックのみで悪行を行う美学の持ち主。
……しかし血族の一員である彼は新種の人類とまではいかないまでも、幸か不幸か魔術回路を宿していた。

【人物背景】

年齢/41歳
身長/179cm
体重/88kg
1日で吸うタバコの本数/8箱(約160本)
「火」にかけたオヤジギャグのレパートリーの数/1000以上。
生まれついての犯罪者として唯一後悔している事/「バブルの輪の中に入れなかった事」

全国指名手配中の放火魔で脱獄含め前科1342犯の伝説級の犯罪者。
パチンコとタバコを嗜む。
元来のサイコパス気質で、かつては派手に生きて派手に死ぬ事を人生の目標とし犯罪者としての死に場所を求めていたが、「シックス」との出会いをきっかけにして「最高最後の犯罪者である『シックス』よりも長く生きる」事を人生の目標とする。
「人間の限界を超えない事」を美学としており、五本指で唯一強化細胞は移植しておらず、血族としての新しい名前も名乗っていない。
ピンで「火」の字が描かれた帽子を常に被っており、額の左上から頭部にかけて「シックス」に出会った時に付けられた漢字の「火」を模した火傷の跡がある。
「火火火(ヒヒヒ)…」と笑い、「火ッ(カッ)となった」「火(日)を改めるか」など、言葉の端々に「火」にかけたギャグを使う。
性格は意外と常識人で、物事に対して一歩引いた目線からツッコミをすることが多い。
炎を自在に操る事ができ、ビルの壁面を軽々登っていくなど身体能力も常人離れしているが、先述のように強化細胞は移植しておらず、炎自体も小細工(トリック)を用いて操っている。

複数の高層ビルを一瞬で同時に燃やし尽くし倒壊させるという他の血族同様「人間」には不可能なテロ犯罪を起こしネウロを誘き寄せようとする。
しかし笛吹達警察の執念と精密な捜査、ネウロからのヒントによってトリックを見破られ、ビル内で追い詰められる。
得意の火を扱った戦術も対策されており、ビルの頂上に追い詰められ銃弾の一斉射撃を食らい動けなくなるが、事前に仕掛けておいたトリックでバックドラフトを引き起こし自爆。
その瞬間の参戦。

【方針】

葛西はやりたいようにやるし、ダグバは笑顔を求めて戦い、殺す。
掲げたゲゲルの目標通りに動くかは現在は不明。

【令呪】

漢字の「火」のような形。
火傷の痕のように濃く右手人差し指に刻まれている。


143 : ◆yy7mpGr1KA :2015/02/21(土) 15:08:12 /zH/puUY0
投下完了です


144 : ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:17:35 PhiTSASo0
投下乙です
自分も投下します


145 : ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:20:06 PhiTSASo0
―――齢千余年 小生は やっと寂しい気持ちから はなれます
        はかなくとも はかなくとも


■   ■    ■    ■

「万能の願望器『聖杯』に、それを巡る殺し合いか……魔界の王を決める戦いに似てるな」

とうに陽は落ち、人気の無くなった公園のベンチに学生服を着た黒髪の少年、高嶺清麿はいた。

夜空を彩る月は雲で隠れ、見えない。

彼の背後の木の上から微かにペラペラと本のページをめくる音がする。
それ以外の音は無く、とても静かだ。
その音に耳を傾けながら清麿は振り返らずに語りかける。

「セイバー、俺とお前はこれからパートナーになって、その戦いに参加しなきゃいけない
……なら、どうしてもお前に聞いておきたいことがある」
「それはまた如何なることか?」

渋みを帯びた声で問われると、清麿は一瞬の逡巡を見せるが、直に迷いなく口を開いた。

「お前が聖杯に何を願うかを知りたい、それをまず知らなければ、俺はきっと……お前と一緒に戦えない」

願いを叶えるために戦うことは高嶺清麿も否定しない。
彼も「王を決める闘い」では『やさしい王様』になりたいと目指す盟友と共に多くの強敵達と戦い、勝利を掴んだのだから。

しかし、彼が経験した戦いは他者の命を奪う事を前提としたものではなかった。
闘いである以上、死の危険もあり、事実彼も一度死の淵に立つ経験をしたが、
あくまで命を奪う事が目的の闘争では無かった。


146 : ワガママを一つ聞いてくれ ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:21:42 PhiTSASo0
「……」

背後のサーヴァントは答えない。
またページをめくる音が公園の唯一の音となる。
その沈黙は清麿に緊張を抱かせるに十分な物だった。

「……俺は、確かに願ったさ、遠い所に行っちまった友達と暮らしてた頃が懐かしい
 あの頃に戻りたいってな、でもそれじゃダメなんだ、他人の命を犠牲にしてまでアイツに――ガッシュに会ってもアイツは決して喜ばない!!」

緊張に耐えかねたのか、それとも先に自分の手札を全て見せる覚悟をしたのか
清麿は沈黙を破り、先ほどよりも熱を帯びた様子で言葉を紡いでいく。

願いが希薄だった故か、少年の神の如き賢は眠りに付き、未だ目覚めない。
その声色は僅かの困惑と強き決意が入り混じっていた。

「……俺は死にたくない、せっかくガッシュにもらった『財産』を無駄にしたくない
大人になれない子どもの我儘だって事は解ってるさ、だがそれを承知で頼む、ここからの脱出に力を貸してくれ、セイバー!」

それは、聖杯を渇望するサーヴァントならば叛意を抱くに十分な危険な発言だっただろう。

静寂を裂くように、一陣の風が吹く。

「成程、それがお前さんが決めた進むべき道か、ならば小生が呼ばれたのも、また必然」
           「!?」

風が止み、
パタンと本を閉じる音がしたかと思うと清麿の眼前に人よりも幾分小さな影が現れる。
その影の主は、二足で立ち、見事に和服を着こなし、キセルを咥えた―――ネコマタ。

「……必然、とはどう言う事だ、セイバー」

自身のサーヴァントの姿に多少面喰いながらも、彼がこれまで出会ってきた魔物の子を想いだし、直に平静に戻り発言の真意を探ろうとした。


147 : ワガママを一つ聞いてくれ ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:23:38 PhiTSASo0
「小生も、千年間悔やみ、できることならばやり直しを求めたことがある故
 聖杯に対する願いが無いといえば嘘になります」

その言葉に清麿の体が硬直する。
そんな彼に、サーヴァントは予想外の言霊を放った。

「しかし、この不肖の身にも千年という長き股旅の果てに、
過ごした時間は短くとも全てを託し信じられる友人ができました。
その友人ならば小生が終ぞ叶えられなかった願いも『なんとかなる』そう確信しています」

「なんとか、なる……」

予想外の答えを返されただその言葉を反芻する清麿。
それを見たマタムネは相変わらず落ち着き払った様子で、しかしどこか笑みを浮かべながら語りかける。

「そう、聖杯無くとも、『なんとかなる』なれば――小生残念ながら今は聖杯に対する執着と言う物は持ち合わせておりません」

『なんとかなる』、その言葉は清麿の心にも力を与える、不思議な力を持っていた。

「じゃあ……力を貸してくれるのか?」

「いかにも、この身未だ不肖なれど、小生、お前さんの守を務めま……」

そこまで言葉に出してマタムネはハッと固まる。
そして向き直り、改めて清麿と対峙した。

「や、失礼、ついうっかりしていたものでしたからに」

その刹那再び風がふき、空を覆う雲を払う。

「申し遅れた。小生、平安の世から陰陽に通づる麻倉家に仕えて1000年、猫又のマタムネと申すもの」

     「好きな物はマタタビ、以後お見知り置きを」

「…ああ!よろしく頼む、セイバー、俺のことは清麿って呼んでくれ」

そう答える清麿の声に困惑の色はもう無かった。
彼の心に築かれた財産は、躓いた時も、転んだ時も彼の人生を支えていく。
たとえ聖杯戦争に巻き込まれようと、それだけは変わらない。


―――雲から抜け出た『金色』の月が彼らを笑っていた。


148 : ワガママを一つ聞いてくれ ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:25:30 PhiTSASo0
■      ■        ■      ■

千年に一度行われるたった一人の魔界の王を決める闘い。

全ての魂が生まれ、全ての魂が還る場所。グレートスピリッツを巡る戦いシャーマンファイト。


どこか聖杯戦争に似た戦いを経験した両者の契約はこうして果たされた。
これから彼らを待ち受けるモノは苛烈にして凄惨な闘争だ、だが恐れることは無い。
彼らにはそれぞれの友人から譲り受けた強き心の力があるのだから。

■     ■      ■      ■

俺は生きる。生きて皆のいる世界に帰って見せる
『答えを出す者』は今も発動しない、でも『なんとかなる』
セイバーと共になんとかしてみせる。

他にも俺のように巻き込まれた人が居るのなら、その人達もきっと助けてみせる。

聖杯なんかに頼らずお前に会えた時は、ここで起こった事もきっと話すよ。
それだけじゃない、話したいことはまだまだ山ほどあるんだ。
なぁガッシュ、だから、

だから、いつか必ず――――――!!


149 : ワガママを一つ聞いてくれ ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:28:52 PhiTSASo0
【クラス】
セイバー

【真名】
マタムネ@シャーマンキング

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具C++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
単独行動:A
主人亡き後1000年間現界し続けた逸話からのスキル。
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

陰陽道:B
『超・占事略決』としてまとめられ、千年後の世にも通じる数々の強力な巫術の数々。


150 : ワガママを一つ聞いてくれ ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:31:18 PhiTSASo0
【宝具】

『憑依合体』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:マスター 最大捕捉:1
令呪で繋がったマスターをシャーマンに見立て、セイバーがマスターに憑依する宝具。
憑依されたマスターはセイバーの技、能力がトレースされるため戦闘能力が著しく向上する。
通常の憑依とは違い、その間のマスターの意識は保ったままである。
この宝具は魔力の消費自体は少ないが本来シャーマンでもないマスターに憑依するため解除後にマスター精神力をかなり消費し、多用し過ぎるとそのマスターは最悪の場合死に至る。
また、当然マスターが前線で戦うため、危険度も飛躍的に上昇する。

『O.S鬼殺し』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1
超・占事略決の陰陽術「巫門御霊会」によりキセルを媒介に鬼、悪霊や妖に威力を持つ
巨大な刀「鬼殺し」を生み出し、霊場恐山が生み出した大鬼すら切り伏せる事が可能。
前述の憑依合体時にはマタムネ自身が鬼殺しと化すためオートで発動する。
その際の鬼殺しの強度、サイズなどはマスターの精神力と魔力、イメージ力に依存する。


『超・占事略決 三日月ノ祓』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1
前述の鬼殺しに同等のランクCまでのスキルの強制解除・無効化の力を篭めるマタムネのとっておきの技。
しかしBランクからのスキルは無効化できず、最高でも2ランク下げるのに留まる。
どれほどランクが下がるかは相手サーヴァントの対魔力による。

【weapon】
熊の爪の首飾り
麻倉葉王が彼に与えた現界用の媒介
膨大な魔力が込められている

キセル
鬼殺し使用時に媒介となる。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを信じ、元の世界へ送り届ける。

【人物背景】
麻倉葉王に拾われ、死後も麻倉家に千年間仕え続けたネコマタ
500年前のシャーマンファイトでは鬼に心を喰われ、人を滅ぼそうとした葉王を信じきることができず、その手にかけてしまった。
その後500年その事を悔やみ続けたが、葉王の子孫である麻倉葉に出会い
その彼の許嫁であり、かつての葉王のような境遇に陥っていた恐山アンナを救うため
恐山にて大鬼と戦い、その結果葉にアンナと葉王の事を託す決意をし、大鬼を倒した後成仏した。
今回は英霊として召喚されているため、宝具である憑依合体解除後も成仏せず、再び猫の姿に戻れる


151 : ワガママを一つ聞いてくれ ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:33:24 PhiTSASo0
【マスター】
 高嶺清麿@金色のガッシュ!!

【マスターとしての願い】
冬木からの脱出

【weapon】
魔界の王を決める戦いで培った魔力と経験、ついでにしぶとさ。
そしてそのずば抜けた頭脳。

【能力・技能】
「答えを出す者」

全ての問いに過程をすっ飛ばして答えを出す能力。
答えが無い問いだったり、意識が飛んだ時や睡眠時の様な思考できない時には発動できない
聖杯の仕業か、現在は発動が確認できない。

【人物背景】
元ひきこもりのクールな天才中学生(登場人物紹介より)
赤い本を持った子供ガッシュ・ベルと出会い、百人の魔物の子供達の王を決める戦いに参加し、見事優勝した。
原作終了後より参戦。


【方針】
自分のように巻き込まれた人物がいれば協力し、脱出の道を探す。


152 : ◆dnGE/gWSKs :2015/02/21(土) 16:34:46 PhiTSASo0
投下終了です


153 : ◆zhWNl6EmXM :2015/02/21(土) 21:31:52 Kk/gawyk0
皆様投下乙です。
投下します。


154 : 本居小鈴&セイバー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/21(土) 21:33:11 Kk/gawyk0



本居小鈴は、本の虫だ。
幻想郷の人里に存在する貸本屋「鈴奈庵」の娘である小鈴は、本に囲まれて育った。
彼女が特に好む本は二つ。
古の妖怪が記したとされる「妖魔本」。
幻想郷の外から流れ着いた「外来本」。
幻想郷の人間では読めぬ文字で書かれていようと、彼女はそれを『読む』ことが出来る。
書物という形で収められた未知の世界を理解する事が出来る。
故に彼女は、それらの本を好んでいた。

「変わった外来本ね……異国の書物かしら」

それはある日のこと。
両親から「珍しい本を仕入れた」と聞いた小鈴は、その本を自室に持ち出したのだ。
何とも古めかしい装飾に彩られた分厚い書物だ。
表紙の題名は見慣れぬ文字で書かれており、それが幻想郷の書物でない事は見て取れる。
物珍しげな外来本をまじまじと見つめた小鈴は、表紙に手を翳す。
その本を『解読』すべく、能力を行使する。


「――――――『聖杯戦争』?」


その本を読むことが、事の始まりとなるとは知らずに。



◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇


155 : 本居小鈴&セイバー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/21(土) 21:35:03 Kk/gawyk0
◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇



「私に願いなんてないですよ」


こじんまりとした和風の書斎。
椅子に座り、古書を手に取った少女『本居小鈴』が答える。

「この外来本を読んでいて、気が付いたら此処に来てました。
 本当に何も知らないうちにこの冬木の地に招かれていたんです。
 だから、私には戦う理由も目的も無いというか……」

そう語る小鈴は、手元の分厚い古書を捲る。
――――それは、聖杯戦争について記された書物である。
鈴奈庵に仕入れされたばかりの外来本だ。
内装には摩訶不思議な文字や奇妙な魔術の絵図がずらりと並んでいる。
元々鈴奈庵に外来本として流れ着いたものを、この冬木まで持ち込んでしまったのだ。
小鈴は外国の言語で記された文字に手を翳し、その内容を『解読』する。
彼女の能力は端的に言えば解読だ。
妖怪の文字。異文化の文字。通常ならば読むことが叶わないそれらを解読する能力を持つ。
彼女が手を翳す事で、それを理解することが出来る。
故に彼女は英語で記されたこの書物を何ら問題なく読み漁ることが出来たのだ。

「へぇ、そりゃ災難なこった」

少女の傍に立っていた男は、ぶっきらぼうにそう答える。
ボサボサの黒髪。南国風の装い。背負った刀。
どこか柄の悪そうな風貌をした若い男だ。
この男こそが、少女の従者(サーヴァント)だった。
セイバーのクラスとして召還された英霊――――――――彼はサムライだった。

「あの、セイバーさんは願いがあって此処に来たんですよね?」
「俺ぁ聖杯なんざ興味ねえ。ガキのお守りも出来りゃ御免だが、今はそうも言ってられねぇ」

あっさりとそう答えたセイバーを、小鈴はきょとんとした表情で見つめる。
聖杯戦争は願いを叶える為の戦いである、ということは小鈴も理解していた。
しかし、目の前のセイバーは何の願いもないと言い張る。
態々召還に応じたというのに、そんなことが有り得るのだろうか。
願いが無いという意味だけでは一応小鈴自身もそうなのだが。

「じゃあ、どうして聖杯戦争に?」
「強ェ奴と戦いたかったから、それだけだよ」


156 : 本居小鈴&セイバー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/21(土) 21:35:36 Kk/gawyk0
男の答えは、至極単純なもの。
戦う為に来た。強い者と死合う為に来た。
そんなシンプルで、余りにも純粋な願望。
小鈴は僅かに面食らった様な表情を浮かべていたが、セイバーは続けて問いを投げかける。

「てめぇこそどうなんだ。願いが無いまま野垂れ死ぬとか言うんじゃねえぞ」
「そりゃ、死にたくないですけど。生きる為には勝たなきゃいけないんですよね?」
「そういうこった。全員ぶっ倒しゃ終わる」

戦わなければ生き残れない。
この世界における掟を確認した小鈴は、顔を俯かせる。
そして、僅かな沈黙の後に小鈴が口を開いた。

「その…セイバーさん。何の願いもない私が、生きる為に戦うなんていいのかなって」
「生きてぇなら、好きに足掻きゃいいだろ」

小鈴の疑問に対し、きっぱりとセイバーは断じる。
顔を俯かせていた小鈴が、ふっとセイバーを見つめた。



「てめぇの為に戦うことの何が悪ィんだよ。
 てめぇが生きてえ、だから戦う。それで十分だろうが」



セイバーは、さも当たり前の如く言い切る。
生きる為に戦う。己の為に戦う。それの何が悪い。
侍として数多の死線を潜り抜けてきた男は、そう断じる。
戦いに御託や理屈はいらない。
自分はただ強い奴と戦いたいから。理由なんてそれだけで十分だ。
故に、小鈴に対してもそう答える。
生きることを目標とすることを、是とする。

「……ですよね」

セイバーの言葉に対し、小鈴は小さく呟く。
相手から返ってきたのは、先程と動揺に余りにも単純明快な答え。
自分はこの戦いに巻き込まれた。
そして、聖杯戦争には数多くのマスターが参加している。
彼らと違って、自分は願いを持たない。
しかし、願いを持つマスターの為に自分を犠牲にしろと言われて納得できるだろうか。
できる訳が無い。自分にだって命があるし、生きたいという意思だってある。


157 : 本居小鈴&セイバー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/21(土) 21:36:20 Kk/gawyk0

「で、マスターさんよ。どうすんだ」
「それは……」

真っ直ぐにこちらを見据えてくるセイバーの問いに、小鈴は口籠る。
自分はこれから、どうするのか。
願いを持たない自分は、生き残りの席を別の誰かに譲るのか。

そんなこと、出来る筈が無い。
私だって死にたくないのだから。
願いはただ、生きたいということだけ。

小鈴の脳裏に過るのは幻想郷での記憶。
まだ読んでいない数々の本。
私の力になってくれる、あの常連のお客様。
私の店に度々顔を出してくれる霊夢さん、魔理沙さん。
気の置けない親友である阿求。
そして、私の肉親。
思い残していることは沢山ある。
あの日常を簡単に捨てて、割り切って死ぬことなんて出来ない。
故に小鈴は、真っ直ぐにセイバーの顔を見つめて答える。


「……勿論、生きて帰りたいです!まだまだやり残したことも沢山ありますし…」


そして、僅かに口籠らせた後。
小鈴は再び、言葉を発した。


「だけど、それ以前にこの聖杯戦争が何なのかも気になるんですよ!
 きっと私は、あの外来本を手にしたことが此処に召還されるきっかけになった。
 聖杯とは何なのか、この戦いにどんな意味があるのか、私はそれが知りたいです!」


彼女が選んだのは、ただ生きる為の戦いだけではない。
外来本が発端となって誘われた、聖杯戦争の真相を知ること。
願いの為に犠牲を強いる戦いの意味を調査すること。
何故自分のような願いの無い参加者が存在するのか――――――それらの真実を知ること。
それが小鈴の選んだ道だった。

「へぇ……ま、いいんじゃねえの?だがよ、先に一つ言っとくぜ。
 何があっても、俺に『戦うな』とは命令するんじゃねえぞ」
「大丈夫です!だって―――――――」

念を押す様に言うセイバーに対し、小鈴はあっさりと答える
そのまま、にこりと顔を綻ばせた。



「もしもの時は、セイバーさんに守って頂きますから!」



天真爛漫な笑顔と共に、きっぱりとそう言った。
まるで向日葵のような、そんなにこやかな笑顔。
そんな表情のまま見つめられるセイバーは、僅かに口をぽかんと開く。
暫しの沈黙の後、何ともやりづらそうに顔を背け。


「……あいよ」


やれやれと言わんばかりに溜め息を吐いた。

―――――――女子供のお守りをするのは、いつぶりだろうか。

セイバーのサーヴァント、『ムゲン』はふと生前の旅を思い返していた。
たった三人で長崎まで向かったあの旅のことを。
ごく短い間の出来事、しかし鮮烈に記憶に焼き付けられている長旅のことを。


158 : 本居小鈴&セイバー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/21(土) 21:36:50 Kk/gawyk0

【クラス】
セイバー

【真名】
ムゲン@サムライチャンプルー

【属性】
中立・中庸

【パラメータ】
筋力B+ 耐久D 敏捷B+ 魔力E 幸運C 宝具E++

【クラス別スキル】
対魔力:E-
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を僅かに軽減する。

騎乗:E-
乗り物を乗りこなす能力。
馬や単車程度なら勘で乗れるかどうかというレベル。

【保有スキル】
心眼(偽):B+
直感による危険回避。天性の才能による危機予知。
敵の攻撃への防御判定・回避判定に有利な補正が掛かる。

我流の心得:A
同じ相手に何度同じ技を使用しても命中精度が下がらない特殊な技法。
変幻自在の軌道によって攻撃を見切られなくなる。

勇猛:B+
威圧・混乱・幻惑などの精神干渉を妨げる。
また、格闘ダメージを向上させる。

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
戦いの中で培ってきた剣士としての直感。

【宝具】
『無幻滾魂(バトルクライ)』
ランク:E++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
死闘に魂を燃やす侍としての生き様を具現化した宝具。
戦闘時、敵が強敵であればあるほどセイバーの筋力・耐久・敏捷と保有スキルにプラス補正が掛かる。
セイバーの血潮が滾る度にその剣技は強くなり、その体術は鋭くなり、その感覚は研澄まされる。

『無幻無双(サムライチャンプルー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
宝具とはサーヴァントの象徴にして半身。
侍にとって戦う術こそが己の宝具だった。
舞踏の如し動きと共に繰り出される我流の戦闘術。
ブレイクダンスのような体術を取り入れた変幻自在の剣技を繰り出す。
この宝具に特殊な能力はなく、単にセイバーの戦闘スタイルが象徴として宝具に昇華されたもの。
セイバーの肉体に刻み込まれた天性の技術であり、あらゆる宝具・スキルを以てしても無効化することは出来ない。

【Weapon】
『刀』
神秘を帯びた刀。鞘に小刀を仕込んでいる。

【人物背景】
琉球出身の侍。女好きで柄が悪く、傍若無人な言動が目立つ。
しかし剣士としては達人の域に達しており、身体能力と直感に優れている。
相手が強いほど燃える好戦的なタイプ。自分の直感のみを信じ、只管強さを求め続けている。
幼少期、多くの者から迫害と虐待を受け続けた過去を持つ。

【サーヴァントとしての願い】
戦う為に来た。聖杯はどうでもいい。

【方針】
強い奴と戦いたい。ついでにマスターを守る。


159 : 本居小鈴&セイバー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/21(土) 21:37:11 Kk/gawyk0

【マスター】
本居小鈴@東方鈴奈庵

【マスターとしての願い】
特に無いが、聖杯戦争について気になる。

【道具】
『聖杯戦争の書物』
冬木に召還される際に持ち出してきたもの。
幻想郷で入手した外来本(外の世界から流れ着いた書物)。
恐らく魔術師によって書かれた書物であり、聖杯戦争のルールや概要等が記されている。

【能力・技能】
ページに手を翳す事で本に記された文字を解読する能力を持つ。
基本的には妖魔本(昔の妖怪が記した本)に用いられるが、英語と言った異文化の言語を解読することも可能。
妖魔本の影響か、本の持つ妖気を認識する場面も見られる。
戦闘能力は皆無。

【人物背景】
東方projectの公式コミカライズ作品「東方鈴奈庵」の主人公。
人里で数多くの書物を所有する貸本屋「鈴奈庵」の娘。種族は人間。
天真爛漫で好奇心旺盛、愛想のいい性格。
一方、向こう見ずで危機意識が薄く、時に騒動を引き起こすトラブルメーカーとなることも。
他者には基本的に敬語口調だが、親しい相手との会話や独白の際には砕けた口調になる。
外来本などの本を読むことを好む読書家で、特に妖怪について記された妖魔本に興味を示す。
妖魔本は本来人間には解読出来ない本だが、小鈴は自らの能力で読むことが出来る。

【方針】
とりあえず生きたい。聖杯戦争の真相を知りたい。


160 : 名無しさん :2015/02/21(土) 21:37:25 Kk/gawyk0
投下終了です。


161 : 名無しさん :2015/02/22(日) 01:13:23 ZMt90gUk0
投下作品まとめ

【セイバー】4
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
伊佐木要@凪のあすから & ツナシ・タクト@STAR DRIVER 輝きのタクト
高嶺清麿@金色のガッシュ!! & マタムネ@シャーマンキング
本居小鈴@東方鈴奈庵 & ムゲン@サムライチャンプルー

【アーチャー】2
スタン@グランブルーファンタジー & 瑞鶴@艦隊これくしょん
広川剛志@寄生獣 &エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険

【ランサー】1
酒留清彦@ピューと吹く!ジャガー & ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー

【ライダー】2
斉祀@THE KING OF FIGHTERS XIII & ???@アカツキ電光戦記
レパード@夜ノヤッターマン & 太公望@封神演義

【キャスター】1
比良平ちさき@凪のあすから & 雪姫(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)@UQ HOLDER!

【アサシン】5
水本ゆかり@アイドルマスター シンデレラガールズ & シルベストリ@からくりサーカス
霜月美佳@PSYCHO-PASS 2 & ジャギ@極悪ノ華 北斗の拳ジャギ外伝
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 & 夜神月@デスノート
音無結弦@Angel Beats! & あやめ@missing
佐野 満@仮面ライダー龍騎 & 野々原渚@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD

【バーサーカー】3
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEEDDESTINY & デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
ダンディ@スペース☆ダンディ & ヤクザ天狗@ニンジャスレイヤー
葛西善次郎@魔人探偵ネウロ & ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ

【エクストラ】4
〈モレスター〉
鷹鳥迅@最終痴漢電車3 & 遠山万寿夫@痴漢者トーマス2

〈アドミラル〉
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & 提督@艦隊これくしょん

〈ヴァンパイア〉
雷小龍@ウィザーズブレイン & 月島亮史@吸血鬼のおしごと

〈しろがね〉
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ) & 加藤鳴海@からくりサーカス


162 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:25:41 qc3el7IE0
投下します


163 : 碇シンジ&セイバー ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:26:19 qc3el7IE0

――碇君と一緒にいるとポカポカする

助けたいと思った。
助けられると思った。
守りたかった。
失いたくなかった。
死なせたくなかった。


――行きなさい、シンジ君! 誰かの為じゃない、あなた自身の願いの為に!

誰かに命令されたからじゃない。
父さんに命令されたからじゃない。
僕が、僕の意志で、綾波を助けたいと思った。
だから、行った。


そして、すべてを失った。


――余計なことするんじゃないわよ! ガキシンジ!

やり直したいと思った。
やり直せると思った。
取り戻したかった。
生きていて欲しかった。
なかったことにしたかった。


――そんな顔をしないで。また会えるよ、シンジ君

誰かに命令されたからじゃない。
父さんに命令されたからじゃない。
僕が、僕の意志で、世界を救いたいと思った。
だから、行った。


そして、またすべてを失った。


164 : 碇シンジ&セイバー ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:26:59 qc3el7IE0

「どうすればよかったんだよ……」

子供が、一人。膝を抱えて泣いていた。
泣き腫らし、涙枯れ果て、人形のように虚ろな顔に、どうしようもなく胸が痛む。
年の頃は14、5か。息子よりかなり年上だが、どうにも弱々しい印象を覚える。

「僕のせいだっていうの、カヲルくん……僕が全部悪いって、僕がいなきゃ良かったんだって、そういうことなの、アスカ」

ぶつぶつと言葉を零す少年は、目の前まで近寄っても顔を上げようとしない。
いつまで待ってもそのままだ。

「……何か、辛いことでもあったのか」

意を決して、「彼」――セイバーは問い掛ける。
鍛え抜かれた肉体を誇る、壮年の男性だ。
少年の細腕とは比較にもならない、鉄線を束ねたしなやかな鋼のような腕を、少年の肩へと置いた。
びくっ、と少年の身体が震える。熱いものに触られたような過敏な反応。
それは現実の痛みではなく、他人に触れられたことに恐怖を覚えたかのようで。

「すまない、不躾であったな。だが少年よ、良ければわしの話を聞いてくれんか」

しかし少年は、頑なにこちらを見ようとはしない。意識してそうしている、無気力ゆえの無抵抗だ。
とても見ていられない。セイバーは少年の横に腰を下ろし、ゆっくりと語り始めた。

「まずは自己紹介をしておこう。わしの名はパパス。君のサーヴァント、セイバーということになる。
 わしには息子がいてな。君よりはだいぶ幼いが……いや、立派に育ってくれたのだがな。どうもわしの中では、あれはいつまでも子供のままだ」

息子がいるということは、翻ってセイバーは父となる。
興味を惹かれたか、少年がほんの少しだけ顔を上げてセイバーを見る。目が合い、セイバーはにこやかに微笑んだ。
セイバーが少年から感じたものは、深い絶望だ。どうしようもなくそこにある、決して拭い去れない心の傷を負っている。
そして、だからこそこの聖杯戦争に招かれたのだろう。

「わしが父としてあの子にしてやれたことは少なくてな。男手一つで育てたものだから、色々と至らぬこともあったろう……」

そうして、ぽつぽつと語る。
世界を放浪して息子を育てたこと。サンタローズという街に腰を落ち着け、市井で生きたこと。
息子に友達ができたこと。息子より少し年上でやんちゃな少女は、いずれ息子の妻となったのだが……それはまた別の話。
魔物の幼子を連れてきた時は驚いたものだ。しかし、確かに妻の血を引いているのだと嬉しくもなった。
思い出を語り終える頃、いつしか少年は完全にセイバーへと向き直っていた。

「長くなってしまったな。わしはどうにも話下手で……スマンな。何が言いたかったかというと、ううむ。
 そう、わしの息子が泣きだした時、わしはいつもこうしてやったのだ」


165 : 碇シンジ&セイバー ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:27:43 qc3el7IE0

セイバーは少年の額に手を当てる。またも少年は震えたが、逃げなかった。
息子の話が少年の緊張を解いてくれたのだと祈りつつ、セイバーは掌に念じた。

「ホイミ」

柔らかな光が、セイバーの手から少年へと移っていく。

「え……」
「君は怪我をしていないから意味はないかもしれんが、どうだろう。息子は喜んでくれたのだが」
「あの……暖かい、感じがします……」

初めて、少年が答えてくれた。戸惑い、怯え――そして少しの安心。
傷を癒やす回復魔法は、暗く閉ざされた少年の心にも光を当てた。
セイバーは破顔し、どっかりと足を崩して座り込んだ。

「うむ、子供はやはり笑顔がいい!」
「あ、あの……僕は、その」
「いや、無理をすることはない。言いたくないことは言わずともよいのだ。
 君も何か辛い思い出があるのだろう。その重さはわしにはわからんし、背負うこともできん」

急かすことなく、責めることもなく、セイバーは少年へと寄り添う。
触れれば砕けてしまいそうなその心へと寄り添うように。

「だが、いま……君の隣にいることはできる。
 この聖杯戦争は、君にさらなる痛みを強いるものになるかもしれん。これ以上傷つきたくないのならば、引き返したほうがよいだろう。
 しかしもし、戦うというのなら。痛みと向き合い、立ち向かうというのなら……わしもともに戦おう」
「ともに、戦う……?」
「うむ。わしが君を、聖杯へと連れて行こう」
「本当に、ぼくと一緒に戦ってくれるんですか?」

弱々しく伸ばされた手を、セイバーは両手で優しく包み込む。
懇願するような、縋りつくような、鬼気迫る眼差し。セイバーはしっかりと受け止めた。

「あなたが、ぼくのサーヴァントだから……?」
「それもある。が、わしはそんなことは抜きにして、君を放ってはおけんのだ。
 わしはいつでも息子が誇れる父親でありたい。泣いている子を助けずして、何が父親と呼べるものか。
 だからわしは、君を助けたいのだ。君に、笑っていて欲しいのだ」

あ、とか細い声が漏れた。少年は顔を伏せる。
しかしそれは先程までの絶望に沈んだものではない。
セイバーの言葉こそ、今まで求めていたものだというように。
少年は泣いていた。ようやく安らぎに出会えたような――それは安堵の涙だった。

「ぼくは……ぼくの名前は、碇シンジです。
 エヴァの、いえ……いまはもう、何者でもない、ただの。何もできない碇シンジです。それでも、いいんですか……?」
「君は君であればそれでいい。君は君以外の何者にもなることはできないし、君の代わりなど誰もいないのだから」

シンジは、セイバーの手を強く握り返した。
求め続けた父親の匂いをまとうこの人となら、きっとやり直せる。
サード、そしてフォース・インパクトによって砕けてしまったあの世界を修復し、綾波レイや渚カヲルを生きかえらせることも、きっと。

「ぼくは、取り戻したい。友達を、みんなの生きていたあの世界を。
 お願いします、セイバーさん。ぼくに力を貸してください……!」
「心得た! 今よりわしが、君を守る盾となり、君の敵を倒す剣となろう!」

セイバー、偉大なる父王パパスは、力強く頷いた。
少年の絶望を切り裂く剣になる。かつて彼の息子が孫とともに魔王を討ち、世界の暗雲を払ったように。
父の愛情を求めた少年と、息子を守って果てた父。二人は固く握手を交わし、やがて歩き出した。
はるか彼方の旅路の果て、誰も悲しまない理想の世界を目指して。


166 : 碇シンジ&セイバー ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:28:40 qc3el7IE0

【マスター】
碇シンジ@エヴァンゲリオン新劇場版

【マスターの願い】
全てをなかったことにして、やり直したい

【weapon】
なし
【能力・技能】
料理や掃除などの家事

【人物背景】
汎用人型決戦兵器・エヴァンゲリオン初号機のパイロットに選ばれた14歳の少年。
幼少期に母を失い、父とも離れて暮らすようになり、自己主張に乏しい内向的な性格に育つ。
2015年、人類を襲う謎の敵・使徒と戦うために父に呼び戻される。
自らを息子としてではなくエヴァのパーツとして扱う父に反発するも、父に認められたいという一心から消極的ながらも戦うことを選択する。
戦いの中で、同じくエヴァのパイロットである二人の少女や中学校の友人、同居する保護者役の女性らと交流し、生来の明るさを取り戻していく。
しかし第10の使徒との戦闘中、危機に陥った僚友・綾波レイを助けるために人類絶滅級の災害であるサード・インパクトを引き起こす。
外部の介入によってなんとか被害は抑えられたものの、世界はほぼ壊滅状態に。心を通わせたはずの人々にも強く拒絶され、綾波レイもまたシンジのことを覚えていない。
再度父にエヴァに乗ることを強いられ、信じるもののなくなったシンジは無気力に従う。
そんな状況の中、シンジの唯一の心の拠り所となったのが、一緒にエヴァに乗る少年・渚カヲルだった。
父の命令を実行すれば世界を修復することができる――シンジは唯一の希望を胸に、始まりの場所たるセントラルドグマへ向かう。
かつての友・式波・アスカ・ラングレーらの妨害にあい、カヲルにも作戦の中止を促されるが、心の安定を欠いていたシンジは強引に目的を達成する。
が、その結果フォース・インパクトが発動。カヲルが自身の命と引き換えにすることで、すんでのところで世界の滅びは回避される。
シンジはまたも父に裏切られ、心を許した友を目の前で失い、絶望の底に叩き落とされるのだった。


167 : 碇シンジ&セイバー ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:29:29 qc3el7IE0

【クラス】
セイバー
【真名】
パパス@ドラゴンクエストⅤ
【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:A 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:C
【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:C
 乗り物を乗りこなす能力。人に使役される生物・人が作った乗り物に限られる。
【保有スキル】
ダブルアタック:A
 特別な才能ではなく、弛まぬ鍛錬と実践の中で鍛え上げた武芸の極み。一度の呼吸で二度の攻撃を可能とする。
会心の一撃:B
 確率で与ダメージが二倍・敵の防御力を無視する。Bランクであれば40%の確率で発動する。
回復魔法:C
 戦士でありながら自身・他者を回復する魔法を操る。この魔法は解毒作用を持つ。
カリスマ:C
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 セイバーは生前一国の王であったが、天空の勇者を探すために国を出たためランクが下がっている。

【宝具】
『天空の剣(ソード・オブ・ラミアス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大捕捉:10人
 天空の勇者だけが装備できる伝説の武器。
 パパスはこの剣を所有しているが、天空の勇者ではないため装備できない。
 道具としては使用可能であり、敵単体にかけられた補助効果を全て解除する。
 ただし対象となるのは対象が新たに使用した補助効果に限られ、宝具やスキルなどであらかじめ強化されている場合は解除できない。
『偉大なる父の背中(デュムパポス=エル=ケル=グランバニア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 一国の王であり、良き夫であり、そして息子を愛し守るその生涯が昇華した宝具。
 耐久のパラメータが二段階上昇し、さらに敵の攻撃によって怯まなくなる。
 後ろに護るべき誰かがいるとき、パパスは決して敵に背を見せることはない。
 鋼の意志と不屈の闘志で何度打ち倒されても立ち上がり、愛する者を守り抜くだろう。
【weapon】
パパスの剣 高名な刀匠によって鍛えられた特注品。切れ味がいいだけのただの鋼鉄の剣だが、息子・孫へと受け継がれし想いが宿る誓いの剣。

【人物背景】
かつて大国グランバニアの王であり、世界を流離う流浪の戦士であり、いずれ勇者の父親となる息子の父親――つまりは勇者の祖父である男。
魔王にさらわれた妻マーサを助けるため、伝説に謳われる天空の勇者を探し出すため、幼い息子とともに国を出奔する。
王族でありながら武芸の腕は世界有数であり、簡素な造りの愛刀のみでどんな魔物をも切り捨てる豪の者。
まだ幼い息子には惜しみない愛を注ぎ、過酷な旅の中でも優しさを失わないまっすぐな気性を育む。
やがて魔物の奸計によって息子を人質に囚われ、降伏を迫られる。
戦えば勝利は容易かった。しかしパパスは剣を執らず、最期の瞬間まで息子の身を案じ無抵抗を貫いた。
時は流れ、パパスほどの齢となった息子は妻や頼もしい仲間たちを得て、父の悲願であった天空の勇者を見つけ出す。それはなんと彼の息子、つまりはパパスの孫であった。
勇者の父親となった息子はついに魔界へと至り、囚われていたパパスの妻マーサと対面、そして魔王を打倒するのであった。
パパスとは勇者の血族、その始祖と言える偉大なる父親の名なのである。

【サーヴァントの願い】
父に裏切られたシンジを導き、彼の望みを叶え「ぬわーーーーーーーーーっっ!!」


168 : 碇シンジ&セイバー ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:30:23 qc3el7IE0


突如、パパスが炎に包まれた。激しい閃光、そして稲妻がシンジの全身を叩く。
巌のような肉体が、燃え上がる。何者にも屈さぬと誓った膝が、崩れ落ちる。
驚愕に目を見開くシンジの前で、パパスは愕然と振り返った。

「こ、これは……!?」
「消えよ、弱き者よ」

聞き慣れない声が静かに響く。
電撃に身を灼かれながらも、パパスが剣を抜き放つ――その首が舞った。
瞳に焼き付くのは光刃の軌跡。一筋の光がパパスという存在を断ち切り、終わらせた。
ゆっくりと倒れるパパスの向こうから、黒衣に身を包む人影が現れた。

「貴様ァ……!」
「我が小さき友よ……そなたの剣となるべきは弱者ではない」
「セイバーさん!」

シンジの悲鳴。光刃が閃く。パパス「だったもの」が、微塵に切り裂かれる。
信じると決めた、優しい父親の面影を宿す人が、一瞬にしてただのモノとなった。
それを成したのはこの黒い影。

「せ……セイバーさん?」

呆然と、パパスの亡骸へ歩み寄る。
瞬間、その躯は微細な光へと変じ散った。サーヴァントの消失である。
ここにはもはや、パパスはいない。
いるのはシンジともう一人――パパスを殺した、漆黒の殺戮者のみ。

「余こそは、至高にして究極のサーヴァント。偉大なる銀河帝国の長なり」

圧倒的な……そう、本当に圧倒的な。パパスとは比べ物にならないほどの圧倒的な威圧感。
差し出された手……人を容易く死に至らしめる電撃……圧倒的な「力」。

「そして世界を滅ぼせし因果を背負いし者よ。そなたこそ余に相応しきマスター」

黒衣の人物が、シンジへと手を伸ばす……その指先には、パパスを灼いた電撃がバチバチと火花を上げていた。
パパスが伸ばした手とは違う。
冷たく、鋭利で、禍々しく――そして圧倒的な「力」。

(強い……力。セイバーさんよりも強い……もっと、もっと……)

この「力」があれば、やり直せる。
誰にも負けない、誰をも打ち倒せる、無二の力……暴力。
必要なのは力だ。綺麗事なんて意味が無い。言葉が一体何を成せるというのか。
エヴァのような、使徒のような、すべてを破壊し尽くす「力」。
それこそが今、シンジが手にするべきものではないか? 黒衣の人物が、言葉ではなく視線でそうシンジに問い掛ける。
シンジの心、魂の底へと指先を伸ばしてくる、そんな感覚。
パパスを殺された恐れ、戸惑い、怒り……そして、それらと拮抗するほどの力への渇望、昂揚。
黒い感情。それを見て取った黒衣の人物は満足気に笑う。それこそを望んでいたのだと言うように。

「欠けたセイバーの位階は余が補おう。
 さあ、我が手を取るが良い。余を信じよ、余についてくるのだ。それ以外にそなたが辿る未来はない……」

シンジは伸ばされたその黒い指先を――


169 : 碇シンジ&セイバー ◆HyMn6jdD/g :2015/02/22(日) 02:31:11 qc3el7IE0

【クラス】
セイバー
【真名】
パルパティーン@スター・ウォーズ
【パラメーター】
筋力:A+ 耐久:B+ 敏捷:A+ 魔力:A+ 幸運:A+ 宝具:A
【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
フォース:EX
 目には見えない「エネルギーの流れ」を感じ、制御・操作する能力。単なる物理現象に留まらず、心・魂といった精神面への干渉も可能。
 予知、認識能力の増大、念力、身体能力の強化、サイコメトリー、マインドハックなど万能とも言える汎用性を誇る。
 パルパティーンは怒りや憎しみによって引き出されるフォースの暗黒面(ダークサイド)の使い手であり、またその究極である。
 本来持ち得ないスキルであろうとも、英雄が独自に所有するものを除いたほぼ全てのスキルをAランクの習熟度で発揮可能。
【保有スキル】
カリスマ:E++
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 パルパティーンは恐怖と謀略によって人を縛る、あるいは洗脳する。そのためランクは大きく下がっているが、フォースを併用することで一時的な上昇が可能。

【宝具】
『ライトセイバー』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 高温のプラズマを抑制フィールドに封じ込めて形成した光線剣。銀河に存在する物質のほぼ全てを容易に切断する。
 エネルギー体であるためにほとんど重みがないため、他の刃物類と同じようには扱うことができない。
 フォースの加護や先読み能力を持たない一般人が使いこなすことはまず不可能とされるため、事実上のジェダイ・シス専用武器である。
 同じ形質のエネルギーで形成されたビームやシールドは切り裂けないものの、力場を反発させることで打ち返すなど防御にも優れる。
 パルパティーンは銀河随一と呼べる剣戟の技量を誇るものの、殆どの敵には強大なフォースで事足りるため、この武器を使うことはめったにない。
『フォース・ライトニング』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100人
 フォースを純粋なエネルギーに変換し、光速の電撃として放つ。
 これは魔術ではないため対魔力では防御できず、直撃すれば電撃は滞留し1ターンごとに追加ダメージを与える。
『デス・スター』
ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:1-99 最大捕捉:999人
 銀河帝国が誇る難攻不落の宇宙要塞。その主砲たるスーパーレーザーは惑星を一撃で破壊する火力を誇る。
 想像を絶する威力を誇る反面、その制御には極めて膨大な人員と機械制御を必要とする。
 そのためパルパティーン個人で使用できる出力は本来の1%にも満たない。
 が、たとえ1%の出力であってもその光は容易く街を焼き払うだろう。

【weapon】
ライトセイバー、フォース

【人物背景】
銀河系を支配する銀河帝国初代皇帝にして、ダークサイドのフォースを信仰するシスの暗黒卿。
秩序を司る「ジェダイの騎士」の宿敵であり、また幾人ものジェダイを暗黒面へと引きずり下ろした諸悪の根源。
単純な戦闘能力だけでなく政治にも明るく、誰にも暗黒卿たる自らの正体を悟らせず人民の支持を集め、遂にはジェダイを排除し銀河帝国を打ち立てた。
銀河帝国の初代皇帝となったパルパティーンは自らに逆らうものを容赦なく弾圧し、唯一無二の暴君として君臨する。
しかしその繁栄は長くは続かず、彼がその手に絡め取った元ジェダイ、ダース・ベイダーの息子によって、帝国は崩壊への道を歩むことになる。

【サーヴァントの願い】
再び銀河をこの手に。


170 : 名無しさん :2015/02/22(日) 02:31:52 qc3el7IE0
投下終わりです


171 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/22(日) 03:31:37 GRbT32Nc0
>>102
このかっるいノリとシリアスなノリの何とも言えない空気、いいじゃんよ。
適当オブ適当にやっても、何ともならないじゃんよ、この悪夢。
ヤクザ天狗の話通じなさといい、凸凹コンビで先行き不安じゃんよ。

>>109
あやめちゃんかわいいじゃんよ。涙目になりながら拒絶されるとかますます迫りたくなりましたね。
最終回の音無なら、奏の為に形振り構わず聖杯を取りに行きそうですし、
宝具効果の爆弾っぷりといい、場をひっかき回せるコンビとして期待が高まりますね。

>>117
清くて優しい心を持った気品でゲラゲラ大爆笑しました。
どう考えても、佐野が煽て過ぎて刺されるイメージしか湧きません。
能力的には低くないのに、生き残れる気が全くしないですね。

>>123
懐かしいですね、ジャガー。
同しようもない状況でも変わらず普段通りを貫くジャガーさんには安心感しかない。
普通に戦ってピヨ彦を護れそうな感じがするのも、いやはや何とも。

>>127
片方は、笑顔にさせなくてはならなかった悪魔、片方は笑顔を失ったアイドル。
どちらも相手を笑顔にさせることを芯にしているコンビだけに悲しいですね。
でも、鳴海兄ちゃんなら何とかしてくれるって信じれるのが強いと思いました。

>>137
火災もとい葛西さんがいいですねぇ。マスターとしての願いが、本当に葛西さんらしい。
令呪の形もイカした設定で面白いです。
そして、とことんバトルジャンキーなダグバの底知れなさと合わさって狂力なコンビといえるのではないでしょうか。

>>144
互いに友人と別れながらも、最後まで意志を違えなかった者同士。
マタムネがまさか出てくるとは思わなかったので、この邂逅、目から鱗が落ちました。
金色の月の下で出会うというシチュエーションもまた雰囲気が出て小気味いい。

>>153
真相究明と戦闘上等。自由気ままに生きて戦うことを願いながらも、マスターを護ろうとする豪放磊落さ。
不思議と頼もしさもあって、カッコイイ。
誰が相手になろうとも絶望感がないセイバーと知を探求する少女のコンビは、愉快でした、


>>162
光から一点闇真っ逆さま。パパス、普通に強いのに弱き者とか言われて可哀想でした。
シンジ君の目のハイライトが消えた感じがしますね。
暗黒オブ暗黒のパルパさんに導かれるシンジ君の明日が心配です。



参加者まとめ、ありがとうございます。
正直、こんなに候補作が来るとは思っていなかったので絶賛先延ばし中の予定だったwikiを急遽作りました。
ゆったりとポチポチ更新しておきますので、御容赦下さい。

ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/


172 : ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 03:56:18 Y.uantrA0
皆様、投下乙です。
>>171
全候補話に感想をつけてくださると今後のモチベもつながりますね!
では、セイバーで投下します


173 : パンナコッタ・フーゴ&セイバー ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 03:57:39 Y.uantrA0
ぼくには、希望を見出した人物がいた。


その人はあまりに強大な組織を敵に回し、安息の地などなくなってしまうというのに敢えて苦難を選んだ。


ぼくはその人を信じていたのに…ぼくには彼についていくことができなかった。


それは突然の出来事で、チームの仲間はボートに乗って行ってしまった。


―――ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ。かつての仲間の殆どを見たのはあれで最後になった。


ブチャラティのチームとしての日々は、紫の煙となって消えていった。


見捨てたのはぼくの筈なのに。どうして見捨てられた感覚が胸の裡に湧くのだろう。


裏切り者は彼らではなく、ぼくが裏切り者だったからなのか…?


もしそうなら、僕は―――


◆ ◆ ◆


私には忠義を誓った人物がおりました。


その人は女性でありながら王となり、自国の民を思い、国に心身を捧げておりました。自分の犠牲をも厭わない程に。


しかし私は…あろうことか王の妻ギネヴィア様と恋に落ちてしまったのです。


その関係は円卓の騎士の分裂、その人が自身を捧げた国の崩壊を招きました。


騎士としての在り方とギネヴィア様への思い――私はそれらによる苦悩に打ち勝つことができなかった。


王を裏切ったばかりか、同じ円卓の友をこの手にかけ、ギネヴィア様の心を救うこともできませんでした。


自分の裏切りに罰を願おうにも、王は家臣を罰するにはあまりにも優しすぎた。


私に騎士を名乗る資格はない…私は――


◆ ◆ ◆



――なんて『恥知らず』なのだろう。


174 : パンナコッタ・フーゴ&セイバー ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 03:58:46 Y.uantrA0
◆ ◆ ◆

―――朝。

彼、パンナコッタ・フーゴは起床した。

(もうこんな時間か…)

時刻は7時半をとうに過ぎている。
遅刻するといろいろと面倒なので、急ぎ気味に制服に身を纏い、朝食を抜いて自宅を出る。
通学にいつも使っていることになっている道を無言で進む。
その道を追うにつれ同じ道を歩く同校の生徒が数を増す。
かなり急いで家を出たので、寝癖が出ていないか、自身のブロンドの髪を他人に気づかれないように触る。
当然だが、他の学生はフーゴの髪のことなど見ていない。
彼を一目見るとすぐに目を逸らすからだ。
彼を見た学生は、必ず歩くスピードを速めるか、逆に遅くする。
フーゴと隣り合って歩いていては、いつキレて暴力を振るわれるかわかったものではない。
フーゴは学校で"そういう"扱いをされていた。

校門をくぐる。なんとか登校時間には間に合ったようだ。教室の席に座り、一息つくために校舎へ歩を進める。
廊下で学校の教師とすれ違うと、その教師はフーゴに道を譲るかのように廊下の端へ身を寄せる。
教室の戸を開けて入ると、中でガヤガヤとしていた空気が一度静まり返り、また活気を取り戻す。

「学校……」

フーゴは若くしてギャングとして活動していたため、あまり学校というものに馴染みがない。
特にジャポーネの学校には行ったことがないので、新鮮味を感じていた。
それと同時に、『学校』という単語はギャングになる前のボローニャ大学までの日々を思い出させるため、奇妙な懐かしさも感じていた。

(やり直し…そのために殺し合う…か)


◆ ◆ ◆


フーゴはブローノ・ブチャラティと決別した後、バーでピアノを弾きながら過ごしていた。
ボスの娘を守るために組織を敵に回す…それは危険な選択肢だとあの場にいた全員が分かっていたはずだ。
本当にぼくの方が"正しい"のか?
果たしてあの時、"裏切る"ことは間違っていたのだろうか?
そんな疑問を胸に半年間を過ごした。

そして、フーゴの精神をスタンガンで焼かれたような衝撃が走ったのはつい最近のことだ。
パッショーネのボスが突然姿を現したという噂がフーゴの耳に入った。そのボスの名は――


――ジョルノ・ジョバァーナ。


チームの新入りの少年だった。
それを聞いてから間もなく、フーゴは組織から呼び出され、決別したチームの結末を知ることになる。

ブローノ・ブチャラティ、レオーネ・アバッキオ、ナランチャ・ギルガが死んだ。
苦楽を共にしたはずの殆どの仲間が死んだ。
――心臓に見えない穴を穿たれた気分だった。
絶望と共に自問自答を繰り返した。
…その中で行きつきかけた結論にこんなものがあった。

――あの時、引き返していれば。
――あの時、ぼくがしっかりとブチャラティを説得していれば。
――3人は死なずに済んだんじゃないか?
――あの瞬間に戻れるなら。
――いずれ起こることを知っていてもう一つのあり得る結果を手にできるのなら。




――時を遡りたい。




明日はジュゼッペ・メアッツァに行かなければならないのに、フーゴはどこにもいなかった。


175 : パンナコッタ・フーゴ&セイバー ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 03:59:34 Y.uantrA0
◆ ◆ ◆


聖杯戦争。どうやら、ぼくはそんな殺し合いに参加しているらしい。
ここは冬木という地らしいが、ジャポーネには来たことがないから馴染みが薄く、過ごしづらい。
誰がこんなところに呼んだのかはよくわからないが、ご丁寧に学生という身分まで用意してくれた。
どうやらぼくは『学年トップの成績を持ちながらも教師を4kgの百科事典でボコボコにした前科のある不良優等生』という役回りらしい。
他の生徒がぼくを避けるのもそのせいだろう。

―――ある意味、ぼくに相応しい役回りだな。

教室の隅で、フーゴは自嘲気味に呟いた。

『……心はお決まりですか?』

そんなフーゴに話しかける存在がいた。
それも他人――NPC――に聞こえない念話で。

『……』

フーゴは何も答えない。ただぼんやりと窓の外を眺めている。
セイバーのサーヴァント、ランスロット。それがフーゴのサーヴァントの真名であった。
アーサー王物語の円卓の騎士ランスロットその人である。

『聖杯が定めたモラトリアム期間が終わるまであとわずかです。…我がマスターよ、ご決断を』
『……』
『聖杯を勝ち取るおつもりならば、私はあなたの剣となりましょう。聖杯戦争から逃れたいのであれば、私はあなたの盾となりましょう』
『……わからないんだ』
『…わからない?』

フーゴはランスロットに合わせ、念話で返す。
頭から言葉をなんとか絞り出しながら文を紡ぐ。

『聖杯の力で過去に戻りたいのか。これからどうしたらいいのか。――それすらも』

確かにフーゴはやり直したいと願った。だが、仮に聖杯を手に入れて過去に戻り、チーム全員が生き残る結果を手に入れたとして、
それはジョルノ達が手に入れた『真実』を、それに向かおうとする意志を否定することに繋がるのではないか?
それをジョルノは、ブチャラティは、皆は良しとするのだろうか?
もしブチャラティだったら、どんな決断を下したのだろうか?

他の参加者を敵に回して聖杯を取るか。手がかりも何もないのにあるのかすらわからない殺し合いから離脱する方法を探るか。

『セイバー…教えてくれ。あのアーサー王物語の裏切り者の君ならば…どうする?』

パンナコッタ・フーゴ。彼は聖杯戦争の場でも、一歩を踏み出せずにいた。


◆ ◆ ◆


ランスロット。円卓の騎士の中でも最高の技量を持つ「完璧なる騎士」にして「裏切りの騎士」。
ランスロットとフーゴが契約を結ぶ引力のなったのは間違いなく『尊敬する人物との決別』だろう。

フーゴの元へ召喚されてから数日間。
ランスロットは魔力供給パスを通じて過去をその垣間見ていた。
フーゴも夢という形でランスロットの過去をみていたのだが、昔から英才教育を受ける過程で『アーサー王物語』について元々知っていたため、彼は別段気にすることはなかった。

(この少年も…仕える者から離れたことで多くの友を失った)

違いはあれど、似たような境遇にある少年を見たランスロット。
そんなランスロットには、ある思いが芽生えた。
信じた者と決別し、殆どの友を失い生き残った少年が、どのような道を歩くのか。
それを見守っていきたいという思いが。


そして今――その少年は自身のサーヴァントにこんな問いを投げかけた。


『セイバー…教えてくれ。あのアーサー王物語の裏切り者の君ならば…どうする?』


確かに――この少年の知るアーサー王物語ではランスロットは裏切りの騎士だろう。
最後まで騎士でいられなかった。ランスロットはそれを悔いていた。
だが、偽りの世界で命を授かった今、騎士としてもう一度やり直すことができる。
裏切りの騎士と呼ばれた者は、一歩を踏み出せないマスターに対しこう答える。


『私ならば――かつての私のあるべき姿となり、その信念に従うでしょう。この世界で、騎士として"やり直す"ことができるのですから』


もう一度、最後まで主に仕える騎士として。


『フーゴ…あなたにとってのあるべき姿とは…どんな人ですか?』


偽りの世界に召喚され、学生として日常を過ごしている。
偽りの世界で命を授かった――それはランスロットのマスターも同じであった。


176 : パンナコッタ・フーゴ&セイバー ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 04:00:52 Y.uantrA0
【クラス】
セイバー

【真名】
ランスロット@Fate/Zero

【パラメータ】
筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力C 幸運D+ 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔力に対する守り。魔力除けの指輪の効果もあり、ランクが高くなっている。
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
 
精霊の加護:A
精霊からの祝福により危機的な局面で優先的に幸運を呼び寄せる能力。
発動は武勲を立てうる戦場に限定される。

無窮の武練:A+
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

【宝具】

『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:30人
相手の策によって丸腰で戦う羽目になったとき、楡の枝で相手を倒したエピソードからくる宝具。
自身が触れた武器を魔力で侵食し自身の宝具とする能力。
それが宝具ならそのランクを維持、それ以外のもの(鉄パイプ等)はDランクの宝具となる。
自身の宝具とした武器はすぐに自分の手足のように自由に扱うことができる。
この能力の適用範囲は、原則として彼が『武器』として認識できるものに限られるが、
セイバーは理性を保っているため拡大解釈次第で如何様にもなる。

『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
友人の名誉のために変装で正体を隠したまま馬上試合で勝利したエピソードからくる宝具。
他者に変装し、自分の正体を隠蔽する能力。
セイバーとして召喚されたことにより狂化していないため、他者に変装することもできる。
敵を欺くことも可能だが、あくまで外見を装うだけで能力や性格までも模倣することはできない。
マスターは本来、サーヴァントの姿を視認すればそのステータス数値を看破できるが、彼はこの能力によりそれすら隠蔽することが可能。

『無毀なる湖光(アロンダイト)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
バーサーカー本来の宝具。
上記二つの宝具を封印することによって解放できる。
絶対に刃が毀れることのない名剣。
「約束された勝利の剣」と起源を同じくする神造兵装。
もとは聖剣だったが、同胞だった騎士の親族を斬ったことで魔剣としての属性を得てしまった。
バーサーカーの全てのパラメーターを1ランク上昇させ、また、全てのST判定で成功率を2倍にする。
更に、竜退治の逸話を持つため、竜属性を持つ者に対しては追加ダメージを負わせる。
セイバーとして召喚されたため、消費する魔力がバーサーカーのそれよりも少なくなっているため、積極的に使っていける。

【weapon】
『無毀なる湖光(アロンダイト)』
少なくともバーサーカーとして召喚された時よりは使いやすい。

【人物背景】
円卓の騎士の一人、「湖の騎士」にして「裏切りの騎士」と呼ばれたランスロット。
アーサー王の妻ギネヴィアと恋に落ちた彼は、
「完璧なる騎士」であるが故に愛する女を救うことも王を裏切ることもできず、
ギネヴィアの不貞が暴露されたことで円卓の騎士の座を追われ、ブリテン崩壊の一端を担ったという汚名を受けた。
第四次聖杯戦争ではバーサーカーとして召喚されたことがある。

【サーヴァントとしての願い】
騎士としてマスターに忠誠を誓うと共に、
マスターであるフーゴがどんな道を歩むのかを見守っていきたい。


177 : パンナコッタ・フーゴ&セイバー ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 04:02:04 Y.uantrA0
【マスター】
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より-

【マスターとしての願い】
分からない。

【weapon】
・「パープル・ヘイズ」のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦ができる。
単純な力も非常に強く、自身の体をかなり遠くへ投げられる。

【能力・技能】
・スタンド「パープル・ヘイズ」
破壊力:A スピード:B 射程距離:C
持続力:E 精密動作性:E 成長性:B

能力は『殺人ウィルスをばら撒く』。
パープル・ヘイズの両手拳に付いているカプセルに入っており、そのカプセルが割れると周囲にウィルスが撒き散らされる。
そのウィルスを呼吸で吸い込むか皮膚から体内に侵入すると約30秒という短い時間で『どう猛に』体内で増殖し、
生物を内側から腐らせるようにして殺してしまう。
一旦殺人ウイルスに感染したらスタンドを解除しても増殖は止まらず、
スタンドの本体であるフーゴ自身もウイルスに感染すれば死ぬ。
しかし、太陽光や照明等といった光で殺菌されてしまう。

【人物背景】
かつてのブチャラティチームの一員だったイタリアンギャング。
普段は落ち着きのある紳士的な性格をしている反面、とても短気でキレやすい。
元は下級貴族の出身で、あらゆる分野で光る才能を持っていたため、幼いころから徹底的な英才教育を施されてきた。
家からの金による補助もあるものの、頭はよく、13歳でボローニャ大学に入学できるほど。

しかし、祖父による強制と最悪な家庭環境、クラスでのいじめ、そして彼の心の支えであった祖母の死に目にも会わせてもらえず、限界に達したフーゴは自らを叱りつけた教授を殴り倒してしまう。
その後、警察に拘留されていたところをブチャラティに拾われてギャングとなる。

ところがボスの方針に反抗し組織を裏切る道を選んだチームメンバーに賛同することができず、一人チームから離脱した。
結果的に生き残ることができたが、このことはフーゴにとって大きなわだかまりとなっている。

この聖杯戦争では、ジョルノ達がディアボロに勝利し、ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャが死んだことを知った時点からの参戦。
ランスロットと契約を結び、フーゴはこの世界であるべき姿となりやり直すことができるのか、あるいは―――

【方針】
分からない。


178 : ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 04:02:35 Y.uantrA0
以上で投下を終了します


179 : ◆Y8tqqc3CsE :2015/02/22(日) 04:21:10 Y.uantrA0
ごめんなさい、アロンダイトの説明がところどころバーサーカーのままになっており、混乱を招くところがありますので以下のように修正します

『無毀なる湖光(アロンダイト)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
セイバーの本来の宝具。
上記二つの宝具を封印することによって解放できる。
絶対に刃が毀れることのない名剣。
「約束された勝利の剣」と起源を同じくする神造兵装。
もとは聖剣だったが、同胞だった騎士の親族を斬ったことで魔剣としての属性を得てしまった。
セイバーの全パラメーターを1ランク上昇させ、また、全てのST判定で成功率を2倍にする。
更に、竜退治の逸話を持つため、竜属性を持つ者に対しては追加ダメージを負わせる。
セイバーとして召喚されたため、消費する魔力がバーサーカーのそれよりも少なくなっているため、積極的に使っていける。


180 : ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:50:45 qWQFGwnU0
投下乙です。私も投下させていただきます。


181 : 八神はやて&キャスター ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:51:10 qWQFGwnU0
 夕焼けが空を満たす。カーテン越しにゆるりと差す赤い光と共に、かの都市とは違う歪みのない烏たちの鳴き声が響いている。
 そんなとある民家の一室に、ひとりの男がいた。年若い痩せた男だ。表情には憂いを湛え、手にした本を見つめている。
 見つめる目は、しかし右目だけは尋常なものではなかった。右目の前に発光する幾何学模様が浮いている。見る者が見れば、それは現象数式のクラッキング光であると理解できるだろう
 PiPiPiと幾何学模様から音を立てながら、男は手にした本に右目と意識を向けていた。

「……やはり駄目か」

 ほのかに灯るクラッキング光を消し去り、男はそう声を出した。
 呟く声は淡々と、しかし若干のやりきれない思いが滲んでいる。
 彼―――キャスターのサーヴァント・ギーの"解析"の現象数式により見通せた情報は少ない。この本の正式名称は夜天の魔導書であるということ、魔力蒐集を機能と目的としているということ、転生機能があるということ。
 そして、この本こそがマスターたる少女の体を蝕んでいるということ。
 だがしかし、彼にはこの現状をどうすることもできない。この本の形をした機関は外部からのアクセスを徹底的に禁じている。無理にこじ開けようものなら宿主を呑みこんで強制転生してしまう危険性が存在するのだ。
 そもそも技術者でも魔術師でもない彼に、この魔導書をどうこうできる道理などない。その事実を受け入れると、彼は書を本棚へと戻した。

「どうにも慣れないな、これは」

 無意識に口に出てしまう。それはどうしようもない無力感だ。
 どれほど手を尽くしても、どれほど力を手に入れても。全ての人間を救うことはできず零れる命は無数にあった。これだけは、どうしても慣れない。
 まさか、こんな時になってまでそんなことを痛感させられるとは思ってもみなかったが。

 部屋のドアを開け廊下に出る。ふと、鼻腔に漂ってくる香りがあった。音と、食事の香り。
 油で何かを焼く音。香ばしい匂いがここまで来ている。
 脳内器官の発達と共に味覚と食欲を失った身には不明だが。きっとインガノックが異形都市となる前なら腹の虫が鳴っていたことだろうと思う。

 リビングに降りてみれば、やけに堂の入った動きで料理をする少女の姿が目に入った。
 見事なものだ、と素直に感心する。未だ幼い身でありながら、マスターたる少女はフライパンを巧く使っていた。

「あ、待っててなギー。もうすぐ出来上がるで!」

 ギーの気配に気付いたのか、料理をしていた少女が顔だけ振り返り元気よく声をかけてくる。
 少女は車椅子に乗っていた。まだ十にも満たない年でありながら下半身に重い障害を持っていて、それでも持ち前の明るさは失わない。
 思わず、ギーは目を細めてしまう。何故か、雲の向こうの陽光を思わせる。少女にはそんな雰囲気があった。
 しかしその姿がどこか痛々しいとも感じるのは、決して気のせいではないだろう。


182 : 八神はやて&キャスター ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:52:02 qWQFGwnU0
「今日はいつもより腕によりをかけて作ったんや。量も少ないし、今度こそ完食してもらうでー」
「ああ。ありがとう、はやて」

 食べきれるとは口にしない。ギーはできないことを口にしない。コーヒーの他には、卵の炒め物を少し。それが、少女―――八神はやてとの妥協点だった。

「そやけど、ギーったら今日もずっと部屋に閉じこもってどないしたん?
 せっかくのいい天気やったんやし、外に出れば良かったんとちゃう?」
「……そうだね」

 いい天気。確かにその通りだとギーは思う。ギーの住んでいた都市とは違い、ここにはいつまでも変わらない青空が広がっている。

 ―――変わらない。ここはいつも同じ空だ。
 ―――空の色は青だけど。全ては偽りのもの。

 はやての代わりに何枚かの皿を持ち、リビングのテーブルに配置する。
 それが終わると車椅子から椅子へと移し、自分もまた対面の椅子に座った。

「では、いただきます」
「たくさん食べてなー」

 自分もいただきますと言いつつ、はやてはニコニコとこちらを見つめてくる。
 どうにも落ち着かないが、三日もずっと続けられてはいい加減に慣れるというもの。コーヒーカップを僅かに傾けながら、ギーはそう思う。

 そう、三日。ギーが召喚されてから、既に三日が経過していた。

◇ ◇ ◇


183 : 八神はやて&キャスター ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:52:50 qWQFGwnU0
 さる6月3日、海鳴市。八神はやては誕生日を明日に控えベッドで本を読んでいた。
 本来ならば、本来の正しい歴史であったならば。12時に闇の書が起動してヴォルケンリッターが現れ、魔法少女たちと共に闇の書を巡る物語が幕を開けるはずであった。
 だがここではそうはならない。12時に秒針が重なると同時、はやては"世界が変質した"のを感じ取った。見た目には何も変わらない、しかし何かが決定的に変わったのだと何故か確信を持って感じたのだ。

 通常の参加者ならば、冬木に招かれると同時に記憶を奪われ、それを取り戻すことが本戦への参加条件となる。
 しかしはやては偶然か、生まれ持った資質か、それとも何者かの作為か。理由は判然としないが、一切の記憶を無くさないまま冬木へと足を踏み入れることに成功していた。
 そして―――

「―――君が、僕のマスターかな」

 そして、少女は運命と邂逅した。

 それからは(少なくともはやての視点では)とんとん拍子に話が進んだ。
 サーヴァント・キャスターの召喚に伴い聖杯戦争に関する知識が流れ込み、とりあえず目の前の外套を羽織った優男が自分のサーヴァントであると認識すると、はやては「マスターとして衣食住の面倒みないとなー」などと暢気なことを言い出した。
 これに面食らったのはキャスターのほうだ。サーヴァントに食事は必要ないとか、霊体化できるから服も自前のもの以外はいらないとか、既にはやても知っていることを慌てて説明するも全て笑顔で却下された。
 そして極めつけはこれだ。

「あ、そや。これから私のことは"はやて"って呼んでな、ギー」
「……は?」

 互いの呼び名に関して、はやては衣食住以上に頑なだった。キャスターではなくギー、マスターではなくはやて。真名を知られてはいけないというセオリーに真っ向から反した行動に、さしものギーも呆けるしかできなかった。
 最初は幼すぎて判断がついていないのだと考えた。少し経って少女が家族というものに強く執着しているのではないかと考えた。最終的には、家族に憧れつつも聖杯戦争そのものを考えないようにしているのだと考えた。
 結局のところは現実逃避なのだろう。キャスターとかマスターとか、そういう聖杯戦争を想起させるような単語を避けることで必死に現実から目を背けているのだ。
 そうして擬似的な"家族"として、実に3日を彼らは過ごした。

「……けれど」

 けれど、それももう終わりだろう。モラトリアムは終わり、遂に聖杯戦争が開始される。
 冬木に足を踏み入れたと同時に記憶を取り戻すというイレギュラー故の破格のモラトリアムだったが、決して永遠のものではない。
 否が応でも、はやては戦いに巻き込まれる。

 終わりは、すぐそこまで迫っていた。

◇ ◇ ◇


184 : 八神はやて&キャスター ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:53:33 qWQFGwnU0
「これはそっちの棚に入れといてなー」
「ああ、分かった」

 食事が終わり、二人は食器の片付けに入っていた。
 ギーが口にしたのは、結局は二口程度だった。しかしそんなギーにはやては怒るでもなく、「最初に比べたら大きな進歩や」とどこか嬉しそうにしていた。
 ギーも、そんなはやてのことを憎からず思っている。インガノックでは失われて久しい"笑顔"を持つ彼女は、ただそれだけで眩しい存在だ。
 だが、それでも。現実は非情であり、彼らを待ってくれることはない。

「はやて。恐らく明日、戦いが始まる」
「……」

 拭き終わった食器を棚に戻しつつ、ギーは話を切り出す。はやては向こうを向いており、表情を伺うことはできない。

「モラトリアムは終わる。無論、戦いは全て僕が請け負うさ。でも覚悟はしてほしい」
「……嫌や」

 押し殺すように、はやての声。

「そんなの嫌や。私は殺すのも、殺されるのも絶対に嫌。なあギー、一緒にいよう? 聖杯戦争なんて怖いもん放っておいて、それで、それで……」
「はやて」

 びくり、とはやての肩が震えて、次いで両目からは大粒の涙が零れ落ちた。
 直視すべき現実は、やはり9歳の少女にとっては大きすぎたか。けれど。

「君が殺す必要はない。殺される心配もない。君は僕が絶対に守りぬく。
 だけど、戦いはとても怖いから。君はその怖さだけを我慢してほしい」

 そう言って、ギーははやての目元をぬぐう。声音は穏やかに、決して心配させないように。

「私、私は……」

 声にならない。はやては、ギーの外套に頭を預けると、そのまま泣きじゃくり始めた。
 見た目相応の子供のように。戦いを知らぬ子供であるが故に。


185 : 八神はやて&キャスター ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:54:05 qWQFGwnU0
 そしてギーは、泣き付くはやての背をさすり、思う。

 何としても、はやてを元の場所へと帰す。それが僕のやるべきことだ。例えそこにはやての帰りを待つ者がいなくとも、それでもこんな薄汚れた戦いに彼女は似合わないから。
 はやてを帰して―――そして、僕は消えるだろう。それは当たり前のことであり、マスターなくして存在できないサーヴァントの摂理だ。故に、僕ははやての"家族"になることはできない。
 なれるはずがない。なれると少しでも考えたなら、それは思いあがりというものだろう。

『こんにちは、ギー』

 ―――ああ
 ―――視界の端で道化師が踊っている

 いつもは見ないようにしている。道化師は、何故だか過去を思い起こさせる。
 過去の記憶。切れ切れで思い出せない。
 記憶。この手で助けられると驕っていた。差し伸べれば、必ず救えるのだと。
 記憶。次々と手の中をすり抜けていく命。
 けれど、けれど。それでも今度こそ、この小さなマスターの命だけは助けてみせると。
 そう、ギーは固く誓った。

◇ ◇ ◇

 泣き疲れて、宥められて、寝室へと運ばれて。気持ちが落ち着いたはやては眠りにつこうとしていた。
 覚悟は、まだできていない。ギーの言葉の意味も、半分だって理解できていないと思う。
 それでも、ギーが言ってくれた「守る」という誓いだけは、信じてみようと思えた。

『こんにちは、はやて』

 ……また、今日も。
 幻が語りかける。はやてにだけ見える幻。
 視界の端にちらつく道化師。焦点を合わせようとすると、フッと姿を消してしまう。この幻は、はやてが偽りの冬木市に来てからの3日間、ずっと彼女の視界に在った。
 これを誰かに話したことはない。勿論、ギーにも。言葉に出せば途端に不安になるし、そもそも聖杯戦争のことなんて考えたくもなかったから。

「……うっさい、消えて」

 投げやりな、意味のない返答。道化師は嘲笑を残して消え去った。いつもこうだ。あの幻はただ話しかけてくるだけで何もしようとはしてこない。

 幻のことを意識から消し、はやては自らのサーヴァントのことを考える。
 ギー、キャスターのサーヴァント。強いのか弱いのかは分からないけど、そんなこと関係なくはやてにとっては大事な存在だ。
 無口で無表情だと思っていたが、この3日で随分と笑顔を見せるようになった。ギーは多分、そのことを自覚していないのだろうけど。
 幼い頃に亡くなった両親を除けば、ギーははやてにとって初めて「身内」と呼べる存在だ。その感情は盲目であり、すれ違いがあるということを彼女に気付かせない。

 ―――こんな怖いことになったけどな、私は"家族"ができてとっても幸せなんよ

 幸せな夢を抱いたまま、少女は穏やかに眠りについた。


186 : 八神はやて&キャスター ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:54:47 qWQFGwnU0
【クラス】
キャスター

【真名】
ギー@赫炎のインガノック-what a beautiful people-

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運E 宝具A(EX)

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:E
自らに有利な陣地を作り上げる。

道具作成:C
道具を作成する技能。
医療品の類に限定してCランクの道具作成スキルを有する。

【保有スキル】
精神汚染:D
視界の端に映る道化師の幻。キャスターが自らの狂気と認識しているもの。
精神干渉のシャットダウンはできないが、代わりに意思疎通に問題はない。

現象数式:A
変異した大脳に特殊な数式理論を刻む事によって御伽噺じみた異能が行使可能となる、異形の技術。
火器や爆薬を超える破壊や、欠損した肉体の修復が可能。
キャスターのそれは解析による看破と肉体置換による治療に特化されている。
 
自己改造:E
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適正。
このランクが上がる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
現象数式を用いる為、変異した大脳にアステア理論を修得させている。

守護:A
《奇械》ポルシオンによる加護。宝具『赫炎切り裂く無垢なる声』が発動している間に限定してキャスターにAランク相当の対魔力・透化スキルを付与し、耐久ステータスをポルシオンと同等のものとする。


187 : 八神はやて&キャスター ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:55:43 qWQFGwnU0
【宝具】
『赫炎切り裂く無垢なる声(《奇械》ポルシオン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:33
キャスターの背後に降り立つ、人の形をした鋼の影。
ポルシオンは筋力:A 耐久:B 敏捷:A+のステータスを持ち、胸部の門から熱死を司る「切り裂く炎の右手」と圧死を司る「打ち砕く王の右手」を召喚して攻撃する。
維持はともかくとして発動にかかる魔力消費量が莫大であり、はやての保有魔力を以てしても短時間での連続発動は難しい。

『悪なる右手』
ランク:-(EX) 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ポルシオンを顕現させている状態でのみ発動可能。ポルシオンの形態を変容させステータスに上昇補正をかけ、変容した右手で薙ぎ払うことで対象の《現在》を奪い去る。
マスターに関しては聖杯戦争中における全ての記憶と変化が奪われ、全てが聖杯戦争前の状態にまで戻される。聖杯戦争参加前に死亡していたマスターは消滅するか死体に戻る。
サーヴァントに関してはその霊核そのものを取り込み消滅させる。
ただしこの宝具は現在全く機能しておらず、また仮に使用できたとしても上記の宝具以上の魔力消費を必要とするため一度の使用ですらはやての身に致死の危険を及ぼすことは想像に難くない。

【weapon】
なし

【人物背景】
何もかもが崩れ去った異形都市インガノックにて、弱者の生存を認めない都市法に抗ってまで無償の巡回医療を続ける数式医。
例え明日には死せる相手であろうと関係なく手を差し伸べ続ける。昨日も、今日も、明日も。両手からこぼれ落ちていく無数の命を見つめて。
謎の少女・キーアとの出会い、都市に残された最後の希望・奇械の顕現、その他いくつもの事件に巻き込まれながらも、彼は決して自分の生き方を曲げることはなかった。

【サーヴァントとしての願い】
ない。はやてを守り、元の世界へと帰すことを目指す。



【マスター】
八神はやて@魔法少女リリカルなのはA's

【マスターとしての願い】
家族が欲しいという願いは、歪ながらも既に叶った―――そう少女は思いこんでいる。

【weapon】
闇の書(夜天の書)。ただし現在は大半の機能が停止している。

【能力・技能】
料理をはじめとした家事全般が得意。ただし足が不自由で車椅子に乗っている。
保有魔力は規格外に高いが、現状彼女にそれを有効利用する術はない。

【人物背景】
海鳴市に居を構える9歳の少女。下半身に原因不明の障害を負っており、身寄りもなく一人暮らしを余儀なくされている。
実は闇の書(夜天の書)のマスターであり、その身に宿した魔力は膨大。不遇な境遇にもめげず明るく優しい少女であるが、辛いことを一人で抱え込んでしまう悪癖がある。
また、その前向きさは自身の境遇から来るある種の投げやりなものではないかと周囲の人々に推測されていた。
正しい未来においては魔法少女となるも、今回はそれ以前からの参戦である。

【方針】
日常を過ごす。聖杯戦争のことはあまり考えたくない。


188 : ◆GO82qGZUNE :2015/02/22(日) 11:57:19 qWQFGwnU0
投下終了です。


189 : 名無しさん :2015/02/22(日) 16:49:39 jdYS8y3U0
投下お疲れさまです
一つ質問させて頂きたいのですが、こちらの聖杯でも基本的にはサーヴァントの消滅=マスターの死という認識でよろしいのでしょうか
或いはマスターは残るのでしょうか


190 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/22(日) 23:30:43 GRbT32Nc0

>>172
恥知らずコンビのなんとも言えない哀愁がもっと追い詰めてしまえと囁きますね。
意志を固めたらとことん進めるだけに迷いがある今はまだはっきりと動けない。
騎士として忠誠を果たしたいといってるランスロさんだけど、戦争って外道行為待ったなしなんですよね。

>>180
いいですね、インガノック。原作だと、絶対救えると確信できますが、聖杯戦争なので厳しいですね。
現状、右手を伸ばす対象ははやてだけですが、今後のことを考えると、その対象がどんどん広がって、最終的に貧乏くじを引きそうなのがまた何とも。
そして、闇の書の機能は大半停止してるとはいえ、何かの拍子で目覚めでもしたら討伐命令待ったなしの爆弾でしょうねぇ、楽しいことになりそうですねぇ。

>>189

質問ありがとうございます。
さすがに、これは明記しておかないと駄目ですね、申し訳ありません。

当企画では、サーヴァントの消滅=マスターの死ではありません。
『令呪』が残っている限り、マスターは生存し続けます。『令呪』消失となりますと、この世界から『排除』されます。
もっとも、最終勝利条件は「最後の一人になるまで生き残る」なので、複数のマスター(サーヴァント)が生存したまま七日目を過ぎると、世界は滅びます。
あくまで、生き残れるのは『一組』だけというのが基本ルールです。
ちなみに、リタイアについては『基本的』には無理です。

では、投下します。


191 : シュラ&バーサーカー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/22(日) 23:31:32 GRbT32Nc0
「ァァアアァアア!!!!」

繁華街の路地裏で、褐色の男が叫んでいた。
よほどイライラしているのか、手首の血管が浮き出ている。
地面に転がっている複数の人間だったものを適当に蹴り飛ばし、彼は目を充血させて叫ぶ。
男の名はシュラ。
とある帝国の大臣の息子として、横暴の限りを尽くした悪逆非道の下衆であり、【死者】であった。

「ざけやがって、ふざけてやがるぜぇ! あのクソ糸野郎ッ!
 弱ったふりをして俺を殺そうたァ、許せんよなあ! 殺す、あらゆる拷問フルコースでぶっ殺してやる!!」

唾を吐き、転がる人間を原型がなくなるまで蹴り飛ばす。
ただ苛ついているから。目の前にこいつらがいきりたっていたから。
そんな簡素で小さい理由で、シュラは彼らを嬲り殺しにした。

「おいおいマスター。まだ聖杯戦争は始まってもいないだぜぇ〜、ちょっとぐらいゆったりしてもいいんじゃねぇのかァ?」
「……アギトの旦那か」

暗闇の中からゆったりと現れたサーヴァント――アギトに、シュラは面倒臭そうに言葉を返す。
ボサボサの黒髪に血に濡れた鎧。
これだけでも異様であるが、何よりも双眸に宿る狂気が、見る者を強張らせるだろう。
シュラもその例に漏れず、軽く冷や汗を流す。
サーヴァントとマスター。この枠組にはめられていなければ、自分など一捻りで殺されている。

「ったく、こんなになるまで甚振ってよぉ〜、可哀想じゃねぇか。もっと優しくしてやろうぜぇ〜」

にやにやと笑いながら、転がった人間を【食らう】アギトを見て、下衆な笑みが浮かんだ。
この圧倒的な力、狂気。
巧く使いこなせたら、聖杯なんて片手間に手に入る。
自分が当たりを引いた昂揚感。
まさしく、自分こそが聖杯に選ばれたのだ。


192 : シュラ&バーサーカー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/22(日) 23:31:57 GRbT32Nc0
      
「だけど、俺の魔物は生きる為にはこいつらを食べなければならねぇ! あァ〜〜〜、罪深い! 罪深くて泣けてくるぜ!」

彼のくぐもった笑い声をBGMにして、シュラはくるくると頭を回し、聖杯を手に入れた後の未来に思いを馳せる。
聖杯さえあれば、何にでもなれる。
クソッタレな革命軍のみならず、イェーガーズ、ブドー、そして大臣までもが自分の前にひれ伏すことになる。
これを愉悦と心得ずして、何を愉悦とするか。

「許してくれよぉ。これは仕方がねぇ、避けられねぇモンなんだ!」

最後に嗤うのは自分だ、とシュラは信じている。







罪を感じさせてくれればいい。
呼び出した魔物がNPCを咀嚼しているのを尻目に、アギトは何の気なしに空を見上げた。
戦場となるこの世界は地球の一都市が再現された偽りの街。
どれだけ被害を広げても、其処に本物はいない。
どうせならば、住民も本物を連れてきたら良かったのだ。
アギトは、ニヤついた表情の緩みをそのままに、屠ったNPCの首を無造作に放り捨てる。

(マスターとサーヴァントを除いてなぁ〜〜〜〜)

偽りの人間を虐殺した所で、感じる罪は軽い。
何せ、彼らはただの泡沫。偽りの世界に付随して生まれた付属品だ。
やはり、殺すには正規の手段でやってきた本物に限る。

「あぁ、月が微笑んでやがる、俺を許さねぇってなぁ」

そんな自分を運命は裁いてくれるのだろうか。
それとも、慈愛の心で許されるのだろうか。
この血塗れの身体を歓喜させてくれるものなら、彼は何にだって喧嘩を売るだろう。

「ならよぉ、もっと殺しちまったら――神様は俺を見てくれるかねぇ〜〜〜〜!
 たまんねぇなぁ、おい! サイコーだぜぇ〜〜〜〜っ!!!」

だって、彼は比類なき狂人なのだから。
穢れきった魂が聖杯を汚すことに、とてつもない快楽を覚える狂戦士――アギト。
一秒、十秒。永遠とさえ感じられる静寂の中、彼女達のタバコは口吻を交わし合っていた。
それは、紛れも無く誰かが望んだグランギニョルだった。


193 : シュラ&バーサーカー ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/22(日) 23:33:08 GRbT32Nc0
      


【クラス】
バーサーカー

【真名】
アギト@私の救世主さま

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力B+ 幸運D 宝具A

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:C
理性と引き換えにパラメータを上昇させるスキル。
聖杯戦争の枠組みにはめられた以上、狂神である彼もまたこのスキルの恩恵をある程度受けることになる。
会話は可能だが、その内は狂い、底無しの闇が広がっており、まともに意思疎通などできやしないだろう。

【保有スキル】

狂神:B
後述の狂魔を操ることができるスキル。

狂気開放:B
対峙するだけでも、恐怖が這い出る狂神。
動きは徐々に鈍くなり、戦うことすらできず――やがて膝を屈す。
相対する相手のパラメーターをランクダウンさせるスキル。
加えて、マスターは強き意志を胸に持たない限り、何をすることもできないだろう。

戦闘続行:A
狂気の闘志に頑健な肉体。
瀕死の傷であっても戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り戦い続ける。
その様は、まさしく――狂神。


【宝具】

『狂魔』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
彼と共に過ごした魔物の群れが顕現。
多種多様に呼び出せるので実用性に富む。
触手もいるのでエッチなこともできるよ!

『狂神』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:8
アギトの片眼、周りのNPC、宝具の死によって発動される絶対なる死の力。
彼らの死を源に、悍ましい【狂神】へと変貌する。
当然、魔力消費は激しいので乱用は効かない上、マスターの魔力が底無しでもなければ、発動は控えた方がいいだろう。

【weapon】
魔力を纏って肉弾戦。

【人物背景】
狂った予言に導かれた四人の覇王――【絶対なる四覇聖】と呼ばれる存在。
人を殺し、物を壊し、悍ましい世界を創り上げることで感じる罪を何よりもの快楽と称す狂人。
彼らの血に濡れた死骸を踏み越えて、アギトは高らかに嗤う。
罪を感じさせてくれ、と。
参戦時期は槍王争奪戦前。

【サーヴァントとしての願い】
穢れた自分が聖杯を得ることで罪を感じさせて欲しい。


【マスター】
シュラ@アカメが斬る!(漫画版)

【マスターとしての願い】
あんなクソッタレな死に方なんざ認めるか!! やり直しだァ!

【能力・技能】

我流の武術。肉弾戦は複数相手でも傷一つつかず勝てる伸び代の塊。

次元方陣――シャンバラ。
一定範囲の人間を予めマークした地点へと転送する帝具。
もっとも、使用には大量のエネルギーを使用するので連発はできない。

【人物背景】
顔に十文字の傷をもつ褐色の男。暴力的で、残忍な性格。
とある国の大臣の息子という立場を利用し、無法者を束ね、城下町で好き放題に暴れ回った。
その後、自身の悪行がラン(シュラを良く思っていなかった軍人)に暴露される。
そして、大臣からも見限られ、後がなくなったシュラは、ラバックという革命軍の人員に暴行を加え、情報を吐かせることで起死回生を狙う。
しかし、隙を突かれて口に仕込まれた糸で首を折られて呆気ない最後を遂げた。

【方針】
好きなように動く。ムカつく野郎は嬲り殺し、女は犯してから殺す。


194 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/22(日) 23:33:19 GRbT32Nc0
投下終了です。


195 : 名無しさん :2015/02/23(月) 02:01:06 lu.Q81so0
投下おつー
おー、アギト来たか
初代で名無がまさかの活躍してたけど救世主さまはみんな良いキャラしてるんだよな
こいつも結構かっこよくも動けるけど時期が時期でマスターがあいつだからどうなるやら
しかしシュラは漫画版か。ある意味アニメ版もやり直したい端折られっぷりだが死に方はあっちのほうが激戦だったかw


196 : 名無しさん :2015/02/23(月) 05:34:52 ebAzRF960
>>190
迅速なご回答ありがとうございます、了解しました


197 : ◆zhWNl6EmXM :2015/02/23(月) 13:17:37 20x4Kh2.0
皆様投下乙です。
投下します。


198 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/23(月) 13:18:33 20x4Kh2.0
◇◇◇◇



―――――――前川みくにゃ!いつでもお仕事ウェルカムにゃ!



前川みく、大阪出身。
15歳の高校一年生。
普通の少女だった彼女は、アイドルの世界へと飛び込んだ。
テレビで見たような輝かしい舞台を夢見て。
華やかな世界を夢見て。
自分が馬車によって導かれる、シンデレラであると信じて。

そんな夢は、自信は、そう長くは続かなかった。
彼女は、自らが魔法にかかっていないと思い込んでしまったのだから。


◇◇◇◇


199 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/23(月) 13:19:01 20x4Kh2.0



「みくだって、輝きたい」


部屋の片隅で、壁に寄りかかる様に少女が座り込む。
前川みくは、アイドルだった。
輝く舞踏会を夢見るシンデレラだった。
南瓜の馬車は彼女を城へと導いた。
しかし、彼女は未だに舞踏会へと足を踏み入れられなかった。

何度もレッスンを繰り返し。
何度も努力を積み重ね。
何度も地道な仕事をこなし。
そうして無心に下積みを重ねていた彼女に、晴れ舞台は来なかった。

「あの三人みたいに、すっごくかわいい衣装着て、すっごく綺麗になって、すっごくキラキラしたステージに立って…!」

遅れてきた新入りの三人にデビューで先を越され。
同期の二人にも遅れを取り。
プロデューサーに問いただしても、「企画検討中」の一言で流されるのみ。
いつになったら、お姫様になれるのだろうか。
待ち続ければ、アイドルとして輝けるのだろうか。

――――――いつまで待てばいい?

結局、自分は輝きの向こう側へ行くことは出来ないのではないか。
そんな不安と焦燥が、彼女をこの地へと誘った。


「みくだって、あの子達みたいな『アイドル』になりたい!」


アイドルの少女は、アイドルとなることを願う。
自分がアイドルであることを証明するために。

「でも……」

だが、同時に彼女は普通の子供だった。
願いの為に人を殺す覚悟を持てない、ただの少女だった。


「そんなことの為に…他の人を殺していいかなんて……解らない………」
『……安心しろ』


泣き言の様に言葉を漏らしたみく。
膝を抱え込む様に顔を埋め、弱々しく呟く。
そんな彼女の様子を見てか。
それまで口を開かなかった従者が、静かに呟いた。


『手を下すのは、私だ』


200 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/23(月) 13:19:35 20x4Kh2.0
彼女は――――アーチャーのサーヴァントは、はっきりとそう答えた。
兵器の如し機械の肉体。
頭部より伸びる赤髪。
兵器とすら称せる程に異様な容貌。
そんな怪物同然の姿をした従者が、口を開いた。

「…アーチャーちゃん?」
『私は人を殺す為に生み出された兵器だ』

みくが顔を上げ、アーチャーを見上げる。
少女の表情は僅かに強張っている。
人ならざる存在を前にし、恐怖を抱いている。
しかし、それでも少女はアーチャーを見据える。
彼女が、初めて己に付いて語り出したからだ。


『そういった役割を担うことには慣れている。
 いや…むしろ私にとって、それだけが生きる意義だった』


彼女は、静かにそう語る。
自らが兵器であり、自らは人を殺す役割こそが生きる意義だと語る。
そんなアーチャーの姿が、みくの瞳にはどこか物悲しく映った。
誰かを殺すことだけが生きる意味。
戦うことでしか存在を定義出来ない。
みくには理解が及ばなかった世界だった。

「でも、それじゃアーチャーちゃんだけが傷付いて…!」
『お前が気に病む必要は無い、人間の小娘』

故にみくは声を上げる。
アーチャーだけが戦い、傷付こうとしている。
こんな自分の為に戦おうとしている。
それは何よりも辛いことだろう。
だが、アーチャーはみくの杞憂を意にも介さぬ様にそう答える。


『私にも譲れぬものがある。その為に勝たなくてはならない』


真っ直ぐにみくを見据え、アーチャーが言い切る。
己の願いの為に戦う覚悟を、はっきりと宣言する。
その言葉を前に、その金色の瞳を前に、みくは何も言えなかった。
否、何か言おうとしてもそれが言葉にはならなかった。

『あの、その…』
『故に、お前も生きろ。お前は戦わずとも、生きるための縁がある』

しみじみと言葉を紡ぐアーチャーを見上げ、みくは口を開こうとする。
しかし、やはり今の感情を上手く言葉で言い表せない。
そんな少女を見下ろし、アーチャーは僅かながら穏やかな声色で呟く。



『……お前は、私とは違うのだからな』



ぼそりと呟いた一言。
みくは呆気に取られた様に、アーチャーを見つめていた。
その声色から感じ取れたのは、一抹の憧れのようなものだった。


201 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/23(月) 13:20:20 20x4Kh2.0

(皮肉なものだ……人間に歯向かい、人間を蔑んだ私が、人間の小娘に仕えることになるとはな)



――――彼女は、兵器だった。



人間を殺す為に、人間の手によって人間を素体に生み出された。
人間に叛逆し、人間を抹殺し、人間に畏れられた。
彼女は、人間の支配から逃れるべく戦った。
兵器である彼女は、化物である彼女は。
人間を殺すことを、自らの生きる縁と定義した。
それこそが、己の『正義』であると信じた。

そう信じて生きてきた彼女は、死んだ。

同じ兵器として改造された男に。
兵器でありながら、人へと肩を貸した男に。
自らが人であった頃に親しかった男に、殺された。


(小娘、お前の願いは叶う。私がこの戦いに勝ち、お前も勝ち残るのだから)


瞳を閉じ、過去の記憶に想いを馳せる。
自らがまだ人だった頃の遠き思い出。
あの死の瞬間に思い出した、穏やかな日常。

『フレデリック』『――――――』。

あの二人と穏やかに語らった日々。
兵器としての死の間際に思い出した、掛け替えの無い日常。
もう一度、人としてあの時を取り戻したい。
あの時の様に、三人で語らいたい。


(また、三人で会おう。今の私にとっての戦う意義はそれだ。
 小娘、お前も自らの願いを――――――大切なものを、見失うなよ)


故に彼女は戦う。
人類史上最悪の叛逆者『ジャスティス』は、戦いに身を投じる。


202 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/23(月) 13:21:12 20x4Kh2.0

【クラス】
アーチャー

【真名】
ジャスティス@GUILTY GEAR

【属性】
混沌・中庸

【パラメータ】
筋力A 耐久A+ 敏捷B+ 魔力D 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:D
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
Dランクならばマスターを失っても半日程度現界可能。

【固有スキル】
絶対悪:EX
兵器でありながら創造主たる人類に反旗を覆した存在。
自我を覚醒させた彼女は生物兵器『ギア』の存在意義を提唱し、聖戦を引き起こした。
アーチャーは個人としての意志を一切顧みられぬまま、人類の敵として未来永劫畏れられ続けることになる。

戦闘続行:A
ギアとしての脅威的な生命力。
瀕死の傷であっても戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り戦い続ける。

魔力放出:B
魔力によるジェット噴射。
背中に装備されたブースターから魔力を放出し、瞬間的に機動力を倍増させる。
魔力消費が高く、燃費は悪い。

【宝具】
『背徳の王(ギルティギア)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人類が生み出した『背徳の兵器』。
生物にギア細胞を移植することで生み出される生態兵器『ギア』としての肉体そのもの。
アーチャーは全てのギアの頂点に立つ存在―――――完成型ギア壱号機である。
ギアの特性として、並の生物を凌駕する生命力と身体能力を備える。
更にアーチャーはビームサーベル、炸裂弾、レーザービーム等、全身に数々の武装を内蔵する。

『叛逆の王(ギルティギア)』
ランク:A 種別:対人類宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人類が生み出した『全人類への叛逆者』。
人類の天敵として恐れられた逸話の具現。
敵サーヴァントが『人間』であった場合、対象の全パラメータを強制的に1ランクダウンさせる。
更に対象へ威圧によるバッドステータスを与え、あらゆる判定におけるファンブルの確率を上昇させる。
バッドステータスは精神干渉耐性のスキルによって軽減および無効化が可能。
ただしこれらの効果は人外のサーヴァントには一切機能しない。人から魔に転じた存在であろうと例外ではない。

『焦土の咆哮(ガンマレイ)』
ランク:D++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
両肩に仕込まれた砲身より大火力の巨大光線を放つ。
特殊な効果こそ持たぬものの、純粋に凄まじい破壊力・射程距離を誇る。
単純明快、故に強力無比な必殺宝具。
ただし発動には膨大な魔力を必要とする。

【Weapon】
全身に仕込まれた数々の武装。

【人物背景】
『あの男』によって創られた生物兵器「ギア」の完成型壱号機。
全てのギアを統率する能力と圧倒的な戦闘力を持つ最強最悪のギア。
人間の女性を素体に作られており、性別としては女性。
誕生して間もなく自我を確立させ、兵器でしかないギアの存在意義を提唱。
他のギアを率いて人類に反逆し、100年に渡る聖戦を引き起こした。
最終的にプロトタイプのギアであるソル・バッドガイと聖騎士団によって封印される。
その後配下であるテスタメントの手によって復活するも、ソルとの死闘の末に敗北。
過去の記憶を思い出し、ソルに「また三人で語り合おう」と言い残して死亡した。
「自分は人を殺すことだけを目的に人によって作られた兵器」と語っており、
人類を抹殺することを生きるよすがとしていたことを伺わせる。
人間だった頃はフレデリック(ソル)、『あの男』と親しい仲だった。

【サーヴァントとしての願い】
あの頃のように、また三人と語らいたい。

【方針】
聖杯を穫るべく戦う。マスターを護る。


203 : 前川みく&アーチャー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/23(月) 13:21:53 20x4Kh2.0

【マスター】
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版)

【マスターとしての願い】
アイドルとして輝きたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
アイドルとしてのレッスンを行っている為、運動神経はいいかもしれない。

【人物背景】
346プロダクション主催の企画「シンデレラプロジェクト」の一員。
大阪出身の15歳。猫のような独特の口調で喋る新人アイドル。オーディションでアイドルになった模様。
努力家で明るい性格だが他者への対抗心が強く、内面では自身への劣等感を抱えている。
デビューにおいて他のアイドル達に遅れを取り、みくは次第に焦燥感を募らせていく。
そうしてみくはプロデューサーの真意に気付かぬまま、聖杯戦争へと召還される。

【方針】
願いを叶えたいが、その為に他の誰かを殺していいのか解らない。
アーチャーだけを傷付かせたくない。


204 : 名無しさん :2015/02/23(月) 13:22:06 20x4Kh2.0
投下終了です。


205 : ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:02:31 ZMCdCKRg0
皆様投下乙です。
投下します


206 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:03:45 ZMCdCKRg0
「主任、この書類の決済をお願いします」
「ああ…」


ユグドラシルコーポレーション・冬木支部。
社員たちが忙しなく仕事に追われる中、主任と呼ばれた男・呉島貴虎はどこか釈然としない思いを抱いていた。
何度社内を見てもいつもと変わらぬ平和な光景が広がるばかり。

この会社、いやこの部署はここまでのんびりとした空気だっただろうか?
いや、むしろもっと重大な、根本的なことを忘れているような……?
だがそれが何なのかわからぬまま、ただ時間だけが過ぎていった。


仕事を早めに切り上げ退社した貴虎は悶々とした違和感を感じながらも車を停めてある駐車場へと歩を進めていた。
違和感を払拭しようとこれまでの日常を思い返してみたが余計に違和感が募るばかりで、それどころか軽く頭痛がしてきた。
何かが、あるいは何もかもが決定的に間違っている。
何故かは自分でもわからないが、心が強くそう訴えかけていた。





「おや?主任様じゃねえか。お早いお帰りのようで」
「………シド?」



声を掛けてきたのは営業担当の、シドと呼ばれる男だった。
確か地元のダンスチームをターゲットにした取引のためそれらしい格好で仕事をしている社員だったはずだ。
いや、違う。ありとあらゆる意味でこの男がここにいるのは絶対的に間違っている―――!



「お前が、何故生きている…!?お前はロシュオに……」
「はあ?」



無意識に疑問を絞り出した瞬間、全てを思い出した。
プロジェクトアーク成就のために奔走していた本当の日々。
葛葉紘汰と遠回りの末友好関係を築けたあの瞬間。
戦極ら部下の裏切りによって結果的にオーバーロードの王と出会ったこと。
オーバーロードの真実、圧倒的な力、蹂躙された沢芽市とユグドラシル。
そして、オーバーロードに隷属する道を選んだ弟・光実。



不審がるシドに目もくれず車に飛び乗り、自宅を目指して走り出した。
街が破壊されていない。インベスもいない。そもそも沢芽市ですらない……!
知らない街であるはずなのにまるでずっとここに住んでいたように道順を思い出せる。
知らない間に脳を弄られたかのようで吐き気がするが、それを堪えて武器を取り戻すためひたすらに自宅を目指した。


207 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:04:28 ZMCdCKRg0





「ここだけは、沢芽市と同じか」


この偽りの時間を過ごした呉島邸だけは寸分違わず沢芽市にあったものと同じだった。
平時からは考えられないほど大急ぎで、乱暴にドアを開けると一目散に自室へ向かった。
目的はスーツケースに保管していた貴虎の身を守る最大の装備だ。


「意味もなく捨てずに保管していたのは、こういうことだったのか…?」


ゲネシスドライバーを失った今、懐かしさすら覚える貴虎が愛用していた戦極ドライバーとメロンロックシード。
記憶を失っていても、身体がそれを大切なものだと覚えていたのかもしれない。



「どうやら記憶を取り戻されたようですね、マスター」



女の声に振り向くと、何もないところからローブを深く被った女性が現れた。
知識として刷り込まれている。聖杯戦争、万能の願望器を巡る殺し合い。
そしてこの女性こそ呉島貴虎に割り振られた戦闘代行者、サーヴァントだ。
その証拠に、令呪と呼ばれる紋様が自分の右腕の甲に刻まれていた。


「ああ、そのようだ。君が私のサーヴァントのようだな」
「ええ、この身はキャスターのサーヴァント。真名はメディア。
マスターのお名前を伺っても?」


キャスターは素直に自分の真名を明かした。
隠したところで疑り深いマスターなら令呪を使ってでも口を割らせるだろうと考えたからだ。
不本意だが少なくとも「ある程度は」付き合う相手ならそのぐらいの情報は明かさねばなるまい。


「呉島貴虎だ。それと、悪いがそのフードを取ってもらおうか。
君の生きた時代がどうだったかは知らないが、現代社会で素顔を見せない者を信用するわけにはいかんな」
「…………」


貴虎の物言いはあくまで現代日本を基準とした、礼儀を咎めたものだったが、言い換えればそれだけだった。
少なくとも素顔を確かめてどうこうする、という下心は一切なく、キャスターもそれは見抜いていた。


「……これでよろしいですか?」


ローブを取ったキャスターの素顔に貴虎は一瞬だが言葉を失った。
この世のものとは思えない美貌、それでいて品の無さというものを全く感じさせなかった。
人間では有り得ないほど尖った耳もそうであることが自然だと思わされる。
しかしすぐに見とれている場合ではないと気を取り直した。


208 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:05:03 ZMCdCKRg0


「ああ、もう良い。早速だが書斎に来てくれ。
方針についての打ち合わせをしておきたい」






「つまり、当分は陣地と魔力源の確保、情報収集に専念するよりないということか」
「はい、ただでさえも私は三騎士には相性が悪いので、慎重に動かざるを得ません」
「そうだな。それに伝承から考えて、君は戦う者ではないだろう?
つまり、策もなく歴戦の戦士と事を構えるのは自殺行為でしかない。私も自分がヘラクレスやジークフリードと戦えると思うほど自惚れてはいない」


現在の貴虎とキャスターの戦力は決して心強いものとは言えない。
元よりキャスターは魔術の腕はともかく戦闘代行者としての実力は低く、貴虎も戦極ドライバーがあるとはいえ無策でサーヴァントに挑むのは無理がある。
せめてゲネシスドライバーがあればもう少しはマシなのだろうが無いものねだりをしてどうにかなるなら苦労はない。

加えて、キャスターの見立てでは貴虎のマスターとしての適性は低く、十分な魔力を提供できないとのことだった。
魔術師のサーヴァントが魔力不足とあっては笑い話にすらならない。
となれば、余所から不足分を補うのは魔術師としては当然すぎるほど当然の発想。



「ですから、NPCから魂喰いを行う許可を頂きたいのです」
「それは構わない。私も手段についてどうこう言える人間ではない。
だが大量殺戮は問題だろう。何か考えはあるのか?」
「殺戮が問題ならば、殺さぬ程度に魔力を吸い上げれば良いのです。
それならば誰にも文句はつけられないでしょう」
「なるほどな、しかし意識を失わせたり、騒ぎになるような真似はするな。
大丈夫とは思うが、マスコミのしつこさと影響力を軽視するのは危険だ。
それに、万が一高潔な参加者に事が露見すれば損得勘定抜きで未知のアームズを使いロックビークルに乗って突撃してくることも無いとはいえないからな」



貴虎自身元の世界ではマスメディアを使った戦略を指揮する立場にあったため、その影響力と危険さを熟知していた。
例えば集団が突然倒れたなどのニュースが流れればそこからサーヴァントの仕業と推測されてしまう可能性もある。
葛葉紘汰のようなマスターないしサーヴァントがいれば、当然怒りを買うだろう。
序盤からそのような事態になることは絶対に避けなければならない。


209 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:05:40 ZMCdCKRg0


「……わかりました。では、軽度の疲労を覚える程度に留めましょう」
「ああ、それで頼む。それからサーヴァントには宝具というものがあるのだろう?
君の宝具はどういったものなんだ?」


宝具とはサーヴァントの半身と呼んでもいい。
その性能を知ろうとするのは聖杯を求めるマスターとして当然のことであり、キャスターもこの質問は予期していた。
キャスターは弱りきった風を装い誤魔化すことにした。通じるかどうかは五分五分というところだろうが。


「そのことなのですが……マスターは魔術師ではないため、抗魔力が低いのです。
そして、私と同じようにキャスターのクラスで現界したサーヴァントなら魔術で貴方の精神を読み取ることは容易い。
つまり、そこから私の宝具が漏れ、対策されてしまう可能性が高いのです。申し訳ありませんが……」
「教えなければ対策されることもない、というわけか。確かに道理だな。
わかった、宝具を使うタイミングは君に一任する。魔術に関して門外漢の私などよりよほど適切に使えるだろう」


ちょろすぎる。キャスターはこのマスターの扱いやすさに感謝した。


「君を裏切りの魔女などと言う文献もあるようだが、私はそのような風聞を何も考えず真に受けるほど愚かではないつもりだ。
そもそも、メディアに裏切りを働かせたのはイアソンを支持するアフロディーテの謀略だろう。
私も君も聖杯を求めてここへ足を踏み入れた。利害が一致しているのなら何も問題はあるまい。
部屋を用意させておこう、休息する時にでも使ってくれ。私は少し夜風に当たってくる」



話を切り上げると貴虎は無防備に背中を晒しながら外へと出て行った。
キャスターの指にかかればその背中に風穴を開けることがどれだけ容易か理解しているのだろうか?


(ふん、馬鹿な男……)


キャスターは基本的に顔立ちの整った男を信用しない。いやできないと言っていい。
それにあの迂闊さだ、あれではいずれ他の者に陥れられて脱落するのが目に見えている。
このため、キャスターは最初からマスターの乗り換えを視野に入れていた。

しかし貴虎の財力やコネは使いどころが大いにある。
それにこちらの言う事をあっさり信じる分、操縦も容易。
今はせいぜいサポートしてやろう、と魔女は一人ほくそ笑んだ。


210 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:06:22 ZMCdCKRg0





「葛葉、お前は俺のやり方を許さないだろうな……」


偽りの月を眺めながら今も沢芽市で人々を助けるために戦っているだろうあの男なら人殺しには決して賛同しないだろう。
勿論貴虎とて好き好んで殺人をしたいわけではない。だがもう他に方法が全く無いのだ。


「無理なんだ、葛葉。お前がいくら強くなったところでオーバーロードには、ロシュオには絶対に勝てないんだ」


戦略ミサイルすら消し去り、ゲネシスライダーを赤子のように葬り去るオーバーロードの王に人類が対抗する術など存在しない。
それこそサーヴァントを引き連れて立ち向かったところで跡形もなく消し飛ばされるのがオチだ。
さらにオーバーロードが開いたクラックによってヘルヘイム浸食のタイムリミットは年単位で縮まってしまったことだろう。
聖杯を手に入れなければ、遠からず人類は全滅してしまう。それを防ぐためならばもはや手段を選んではいられない。



「ヘルヘイム、それにオーバーロードさえ消し去ることができれば……光実、お前ともまたやり直せるだろうか」


光実が道を誤ってしまった理由には少なからずヘルヘイムの森の真実が関わっていることには貴虎も気づいていた。
逆に言えば、森の脅威と光実が当てにしているオーバーロードが取り除かれれば弟と敵対する理由もなくなる。
簡単には拗れた兄弟仲を修復することはできないだろう。あるいは光実は一生貴虎を許さないのかもしれない。
それでも、光実が人類の敵でなくなってくれさえすればもうそれで良かった。


「失敗は許されない、必ず、どんなことをしてもこの手に聖杯を……」




呉島貴虎は気づかない。
裏切りのクラスたるキャスターが実際に叛意を抱いていても、気づけない。
何故なら、貴虎の本質は性善説に基づいている。
日頃口で何と言っていようと、本心では誰も理由なく悪に手を染めるはずがないと思っている。
だから何度騙されても人を疑いきることができない。そして何度でも裏切られる。
部下や同僚からも。実の弟からも。そして、契約したサーヴァントからも。


その善性を嘲笑われていることに、気づかない。


211 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:07:24 ZMCdCKRg0
【クラス】 キャスター

【真名】 メディア@Fate/stay night

【ステータス】

筋力 E 耐久 D 敏捷 C 魔力 A+ 幸運 B 宝具C

【クラス別スキル】
陣地作成:A…魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。”工房”を上回る”神殿”を形成する事が可能。

道具作成:A…魔力を帯びた器具を作成できる。擬似的ながらも不死の薬さえ作り上げられる。

【保有スキル】
高速神言:A…呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。大魔術であろうとも一工程で起動させられる。

金羊の皮:EX…とっても高価。竜を召還できるとされるが、キャスターには幻獣召還能力はないので使用不能。

【宝具】
「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)」

ランク:C 種別:対魔術宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
メディアの「裏切りの魔女」としての伝説が象徴として具現化した宝具。
攻撃力は普通のナイフと同程度しかないが、「あらゆる魔術を初期化する」という特性を持つ最強の対魔術宝具である。
原作ではマスターとサーヴァント間の契約を断ち切るなどの用法で用いられた。
しかし、どれほど低いランクであっても宝具の初期化は出来ない。

【人物背景】

ギリシャ神話に登場する「裏切りの魔女」。自身を召喚した魔術師に数日で見切りを付け、彼を殺害して逃亡した。
本来なら二日はマスター抜きでも現界可能だが、マスターが自身より優れた魔術師であるキャスターへの嫉妬で魔力量を自身以下に制限していたため早々に消滅の危機に瀕する。
そこへ偶然通りがかった男性・葛木宗一郎に助けられた。彼と出会い、葛木が居候している柳洞寺に転がり込む。
その後、生前手に入らなかった束の間の日常を守るため、そしてマスターに聖杯を渡すため、町中から魂喰いを行いルール違反なサーヴァントであるアサシンを召喚し、第五次聖杯戦争で暗躍し始める。
冷酷・残忍、目的のためには手段を選ばず、奸計を得意とする正真正銘の悪女。
しかしこの性格は彼女に課せられた運命の反動である面もあり、裏切りに遭い続けた結果に、今度は自身が人を裏切る立場へ堕ちてしまった悲劇の女性。
本来は清純な女性で、惚れた相手にはとことんまで尽くすが、惚れた相手は甘えると逃げていったというトラウマを持つために、一歩引いた態度を貫く。必要であればどんなあくどい手段に訴えることも厭わない反面、必要でないのなら何もしない人で、hollowでは日常を十分に楽しんでいる。
かわいい女の子とかっこいい男を好む。筋肉マッチョとイケメンは嫌い。
天敵はバーサーカー。バーサーカーが狂化しているので描かれないが、同じギリシャの英霊で面識があるため。


212 : 呉島貴虎&キャスター ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:08:03 ZMCdCKRg0

【サーヴァントとしての願い】
受肉し、故郷へ帰る。







【マスター】 呉島貴虎@仮面ライダー鎧武

【マスターとしての願い】
オーバーロードとヘルヘイムから人類を救い、光実との兄弟関係をもう一度やり直す

【weapon】
戦極ドライバー:アーマードライダーに変身するためのベルト。
イニシャライズ機能があり貴虎以外の人間は着けることさえできない。

メロンロックシード:クラスAのロックシード。戦極ドライバーに嵌め込んで使うことによってメロンアームズへ変身できる。
専用アームズは近接・投擲武器としても使用できる大盾・メロンディフェンダー。

仮面ライダー斬月・メロンアームズ:貴虎が戦極ドライバーとロックシードを使い変身した姿。
システムの補助により視覚や聴覚、運動能力などが大幅に増大する。
前述のメロンディフェンダーと銃剣・無双セイバーを駆使した白兵戦を得意とする。
ただし科学兵器であるためそのままでは霊体であるサーヴァントにダメージを与えることはできない。

【能力・技能】
生身で新世代アーマードライダーの攻撃を受け止めるなど、並外れた頑強さと生命力を持つ。
また、アーマードライダーとしての力量自体も原作に登場する誰よりも高く、ロックシードの性能差をも覆す。

【所持金】
大富豪

【人物背景】
ユグドラシルコーポレーション研究部門のプロジェクトリーダー。
ヘルヘイムの森の浸食に備え人類のうち十億人のみを生き残らせる計画「プロジェクトアーク」の責任者でもある。
ノブレス・オブリージュを信条とする責任感の強い人物であり、逆に覚悟や責任といったものを持ち合わせず遊びに興じるビートライダーズには冷ややかな目を向ける。
その一方弟・光実をはじめとした身内に対しては甘く、自らの信頼とその対象を疑うことができず光実からは「一番信用しちゃいけない人ばかり信用する」とまで評される。
ある時オーバーロードインベスと接触したことを機にプロジェクトの方針を転換。
葛葉紘汰と結託し犠牲を出さない方法を模索しようとしたが事前にオーバーロードの存在を知っていた部下からの裏切りに遭う。
一命は取り留めたもののゲネシスドライバーを失い、変身できない状態でオーバーロードの王・ロシュオに捕らえられる。
やがてオーバーロードが本格的に地球侵攻へ動き出すと用無しと見做され解放される。
紘汰と接触しようと行動する中、光実がオーバーロードの手先になっていた事実を知る。
責任を感じた貴虎は光実と決着を着けるため自宅に保管していた戦極ドライバーとメロンロックシードを手にした。
本聖杯戦争の貴虎はドライバーとロックシードを取り戻してから光実との決闘に赴くまでの間から参戦している。

【方針】
何をするにも神殿を形成し、魔力を集めなくては何もできないため序盤は雌伏し情報を集める。
場合によっては斬月の仮面で正体を隠して敵マスターを襲撃することも視野に入れる。


213 : ◆LjoEJeq7VA :2015/02/23(月) 17:08:40 ZMCdCKRg0
投下終了します


214 : 名無しさん :2015/02/23(月) 18:44:18 HD/kfyVk0
皆様投下乙です。


【セイバー】6
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
伊佐木要@凪のあすから & ツナシ・タクト@STAR DRIVER 輝きのタクト
高嶺清麿@金色のガッシュ!! & マタムネ@シャーマンキング
本居小鈴@東方鈴奈庵 & ムゲン@サムライチャンプルー
碇シンジ@エヴァンゲリオン新劇場版 & パルパティーン@スター・ウォーズ
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より- & ランスロット@Fate/Zero

【アーチャー】3
スタン@グランブルーファンタジー & 瑞鶴@艦隊これくしょん
広川剛志@寄生獣 &エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版) & ジャスティス@GUILTY GEAR

【ランサー】1
酒留清彦@ピューと吹く!ジャガー & ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー

【ライダー】2
斉祀@THE KING OF FIGHTERS XIII & ???@アカツキ電光戦記
レパード@夜ノヤッターマン & 太公望@封神演義

【キャスター】3
比良平ちさき@凪のあすから & 雪姫(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)@UQ HOLDER!
八神はやて@魔法少女リリカルなのはA's & ギー@赫炎のインガノック-what a beautiful people-
呉島貴虎@仮面ライダー鎧武 & メディア@Fate/stay night

【アサシン】5
水本ゆかり@アイドルマスター シンデレラガールズ & シルベストリ@からくりサーカス
霜月美佳@PSYCHO-PASS 2 & ジャギ@極悪ノ華 北斗の拳ジャギ外伝
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 & 夜神月@デスノート
音無結弦@Angel Beats! & あやめ@missing
佐野 満@仮面ライダー龍騎 & 野々原渚@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD

【バーサーカー】4
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEEDDESTINY & デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
ダンディ@スペース☆ダンディ & ヤクザ天狗@ニンジャスレイヤー
葛西善次郎@魔人探偵ネウロ & ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ
シュラ@アカメが斬る!(漫画版) & アギト@私の救世主さま

【エクストラ】3
〈モレスター〉
鷹鳥迅@最終痴漢電車3 & 遠山万寿夫@痴漢者トーマス2

〈アドミラル〉
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & 提督@艦隊これくしょん

〈ヴァンパイア〉
雷小龍@ウィザーズブレイン & 月島亮史@吸血鬼のおしごと

〈しろがね〉
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ) & 加藤鳴海@からくりサーカス


215 : ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:52:44 cvHqRq460
投下させていただきます


216 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:53:50 cvHqRq460

目が覚めると、月影ゆりは世界に違和感を覚えた。
ゆり自身、上手く説明できない。
ただ、何かが違う。
正体の分からない、しかし、はっきりとした違和感を抱えたまま自室を出る。
リビングに居るのは、少しやつれた母のはずだった。

「おはよう、ゆり」

そこには、新聞を広げてソファーに座った父の姿があった。
見慣れているはずの、優しい笑みを携えた父だった。

「…………おはよう、お父さん」

その光景に、なぜか違和感を抱えたまま、ゆりは父へと挨拶を返す。
胸が、不意に痛んだ。
理解の出来ない痛みだった。

「ゆり……? どうしたんだい、ゆり?」

父の優しい言葉に、同年代の友人たちと比べると遅れて膨らみ始めた胸を抑える。
潤む視界に、天井を見るように顔を上げた。
父の顔をまともに見ることが出来なかった。

「なんだか、今まで……とても、哀しい夢を……」

服に皺ができる事も構わず、ゆりは胸を強く握りしめた。
今、この瞬間が、その手からこぼれ落ちてしまわないように、強く。
たっぷりと数分はそうしていたゆりは、視界を元に戻した。
父が、心配そうな顔でこちらを見つめていた。
また、涙が出そうになった。

「顔、洗ってくるね」

その言葉を残し、ゆりは洗面所へと向かった。
洗面所には、人形のように窓辺に腰掛けた妖精の姿があった。
大事な大事な、パートナーの姿だった。

「おはよう、キュアムーンライト」
「……………おはよう、コロン」

ゆりは、その姿を見ると、ふと、また視界が潤んだ。
そんなゆりを、パートナーであるコロンは心配そうに見つめた。

「ムーンライト……? どうしたんだい、ムーンライト」
「……なんでもないわ。なんだか、本当に……夢だったみたい……」

ゆりは、自身の抱くその違和感の正体に、うすうすと感じ始めつづあった。
同時に、自身がこんな荒唐無稽な世界を望んでいたのかと、失望すら覚え始めていた。

「おはよう、ゆりちゃん」
「おはよう、お母さん」

母とは、まともに言葉を交わすことが出来た。
ただ、母の姿は、ゆりの直近の記憶よりも幾分も瑞々しくふっくらとしていた。
懐かしい姿だった。
ゆりはコロンを人形のように自身の太ももへと載せ、両親に習うように手を合わせた。


217 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:54:58 cvHqRq460

「いただきます」
「いただきます」
「はい、召し上がれ」

三人の団欒が始まった。
ワイワイと賑やかなわけでもないが、ゆりが感じる暖かさをそのまま具現化したような暖かさだった。
この暖かさに包まれ続けてありたかった。


違和感の正体――――これが夢である事に気づいても、ここに居続けたかった。


『助けて!』


だから、その声が聞こえた時にも、違和感などなかった。
最初から、気づいている。
目が覚めた瞬間に、この世界が『夢』だということに。
凄く、優しくて。
余りにも、残酷で。
どう足掻こうとも、夢で終わる世界。

『助けて、プリキュア!』

月影ゆり、世界を救ったキュアムーンライトは食事を残したまま、席を立つ。
二度と戻ることの出来ない団欒から、離れる。

「ごめんなさい。お父さん、コロン」

死んだはずの父と、死んだはずのパートナーへと声をかける。
夢は夢としての設定を辞め、コロンは家族の前だというのにゆっくりと浮遊し始めた。
父も、母も、驚きの声は挙げない。
ソレが何よりもゆりに夢だという現実を突きつけていた。
視界が、潤んだ。

「ごめんなさい……もう、行けないの……もう……もう……!」

そう言いながら、ゆりは『外』へと向かう扉に手をかけていた。
この扉を開けてしまえば、きっと、『夢』ですらこの世界に戻れなくなる。
この『夢』に居続けたいと思った自身が、その『夢』を拒絶したからだ。

「ごめんなさい……お父さん……コロン。
 私、きっと……二人に会いたくて、ここに居たいと思って……
 でも……でも……」

涙が零れた。
ずっと、抑えようと努力し続けていた涙が溢れる。

「相変わらずだね、キュアムーンライト」
「ゆりが泣き虫なのは、小さな頃からだ」

二人は優しく微笑んだ。
ゆりの瞳から涙がこぼれ落ちる。
潤んだ視界で、父とコロンの唇が動く様が見えた。


218 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:55:08 cvHqRq460


『いってらっしゃい。』


涙が床に落ち、潤んだ視界はクリアになった。



―――― Precure Open My Heart ――――


そうして、月影ゆりはキュアムーンライトとなり、今日もまた世界を救った。
世界はまた救われた。
月影ゆりは、ただ、家路へと向かった。
ふと、自身の頬が濡れていることに気づいた。






219 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:56:27 cvHqRq460

「……ただいま」

月影ゆりは、激闘の末に自宅の門を潜ることが出来た。
ありふれた激闘と、ありふれた日常の繰り返しだった。

「おかえり、ゆりちゃん」

夢よりも、幾分も痩せ細った母が弱々しく迎え入れる。
夕食の準備をする母を眺める。
彼女はまた、『友達』とともに世界を救った。
冷めた目で、テレビの中では昏睡し続けていた少年少女達の目覚めを知らせるニュースが行われている。
『子どもたちが助かって良かった』
そんな感情を義務的に抱きながら、ゆりは自室へと向かう。
何事もなかったかのように外行きの私服を脱ぎ、部屋着へと着替える。
そんなルーチンワークとしか呼べない行動を続けると、ふと、ゆりの胸が痛んだ。
この先、どうなってしまうと言うのだろうか。

「……ももか」

ゆりは、自身の学習机に置かれてある写真へと目をやる。
そこには『友』とプリントされた服を着る親友の来海ももかと、『情』とプリントされた服を着る自身の姿があった。
『友情』と嘯くような言葉が、ゆりの胸を痛めつける。
ゆりの親友はゆりのことを親友だと思っている。
ゆりもまた、親友のことを親友だと思っている。
だけど、今のゆりには彼女の姿が遠かった。
夢というものを持って進み続けている彼女の姿が、眩しかった。
また、自らを慕う後輩の姿が、遠かった。
プリキュアを囚えるために創りだした、『叶えたい夢の世界』へと、プリキュアは閉じ込められた。
その世界が、『ああだった』のは、きっと、自分だけだ。


――――その世界が、『過去の世界』だったのは、あの場所には、自分だけしか居なかったはずだ。


その事実が、自身を汚いもののように思えさせた。

「……」

ゆりは自室を出る。
そこでは、すでに母が夕食の準備を完了させていた。

「お待たせ、ゆりちゃん」

そう言って、母の月影春菜は食器を運ぶ。
ゆりはその手伝いをしようとし、食事が三人分あることに目をやった。
普段ならば、何も言わずに、誰も食べない食事を食卓に並べる。
しかし、『夢』の影響だろう。
思わず、久しぶりとなる疑問の色を含んだ言葉を口にしてしまった。


220 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:57:00 cvHqRq460

「お母さん、これ」
「お父さんが帰ってきて、お腹が空いたままだと……可哀想でしょう?」

失踪した父。
しかし、実際はこの世を去った父。
それを、母は知らない。
父が人類と地球の『侵略者』に利用されて、多くの悪事を行った。
そして、母の素知らぬところで生命を落とした。
その事実を、どのように伝えるべきなのだろうか。
自身が伝えなければいけないことだとはわかっている。
わかっているが、伝えることが出来ないままだった。

「……そうね」

結局、真実を口にすることは、今日もできなかった。
帰ってくるはずのない父の食事を眺めながら、ゆりは嘘を口にした。
昔から、嘘は嫌いだったはずなのに。
『良い子だね』と褒めてくれる父と母が大好きで、父と母が喜んでくれる『良い子』の自分が好きだったのに。
良い子になることが誇らしくて、優しい両親の間で良い子になることだけを夢見ていた。

「いただきます」

ゆりは、嘘をついたまま食事を行った。
日に日に、味が薄まっているような気がする。
ゆりはどうするべきだというのだろうか。

優しき心に、辛すぎる哀しみに出会ったら、獣のように叫べばいい。
優しき心に、重すぎる苦しみに出会ったら、身を震わせて叫べばいい。

ただ、人は簡単に叫ぶことができず、事実、ゆりは叫ぶことが出来なかっただけだ。
叫ぶことが出来ない人間は、どのようにすればいいのだろうか。
今日もまた、ゆりは己の全てを制御できないまま、眠りについた。





221 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:57:30 cvHqRq460


――――ブラックサン、俺は死ぬ……だが、勝ったなどと思うな……


仮面ライダーBLACKはゴルゴムの魔の手から世界を救った。
しかし、南光太郎はゴルゴムの魔の手から秋月信彦を救うことが出来なかった。
滅茶苦茶となった時間の中で足掻いて見せても、世紀王の誕生は変えることが出来ない。
五万年に一度起こる、ゴルゴムにとって特別な意味を持つ日食の日。
陽の光が消え去り、黒き太陽と影の月が暗黒の空に君臨する日。
南光太郎と秋月信彦はその日、この世界に産み落とされた。
お互いが殺し合い、世界に君臨するために、産み落とされた。
二人の世紀王が殺し合い、一人の創世王を生みだす死の儀式。
勝利したのは、世紀王・ブラックサンとして選ばれた南光太郎だった。
しかし、それは創世王の誕生ではない。
ゴルゴムの洗脳を免れ、人類の味方・仮面ライダーBLACKとして生きた南光太郎の勝利。
そう、それは人類の勝利だった。


――――お前は一生苦しむことになるんだ……親友を……この信彦を……抹殺したんだからな。


すなわち、南光太郎は。
ゴルゴムの魔の手から逃れ、ゴルゴムの世紀王・ブラックサンではなく人類の味方・仮面ライダーBLACKとして。
すなわち、秋月信彦に。
ゴルゴムの魔の手に侵された、ゴルゴムの世紀王・シャドームーンに勝利したのだ。


――――……一生、後悔して生きていくんだ……ハ、ハハ、ハハッハハ!


『南光太郎』は『秋月信彦』を救うことが出来ないまま、世界はゴルゴムの魔の手から救われた。
『シャドームーン』は、『南光太郎』の名を呼ぶこともなく、消滅した。


――――俺こそが、次期創世王だッ!!


他次元からの侵略者『クライシス帝国』――――なんてものも訪れず。
世界は人間のものとなり、南光太郎は歴史から去った。
果たして、世界を救った南光太郎は、救われたのだろうか。

後の調査によって、秋月信彦の妹である秋月杏子と秋月信彦の恋人である紀田克美の生涯を確認できる。
しかし、その生涯を追ってみても南光太郎の姿が、影一つとして確認できない。
インターポール捜査官・滝竜介の捜査でも南光太郎の所在は一向にして判明していない。
ただ、大門明へとロードセクターを返還した情報を最後に消息を絶っている。

南光太郎は、実はゴルゴムとの死闘の後に、死んでしまったのだろうか。
暗黒の支配者であるゴルゴムですら殺すことが出来なかった南光太郎。
彼を殺したのは、より強大な敵か。
それとも、やはり、英雄を殺す病は孤独なのだろうか。


いずれにせよ、その後の南光太郎を知る者は居ない。






222 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:58:38 cvHqRq460

深夜。
気づかぬ内に願いを抱いていたゆりは、あるべくして、あるべき場所に立っていた。

「……いい風ね、ライダー」

楚々とした、肌を隠す服の上にウインドブレーカーを羽織ったゆりは、バイクにもたれ掛かりながら呟いた。
緑色の、バッタを模したバイクは目のようなライトを点滅させた。
ゆりによって召喚されたライダーの宝具、『災厄の騎馬<バトルホッパー>』。
意思を持つスーパーマシンであり、王の愛馬。
ゆりは、馬にそうやるように、優しく撫でた。

「風に当たりたかったの……少しは頭が冷静になってくれそうだったから」
「……どうするんだい、マスター」

ライダーのサーヴァント、南光太郎は尋ねた。
ゆりは儚く微笑した。
崩れ落ちそうな笑みだった。

「貴方はどうするの?」
「……ひとまずはマスターに従うさ。それほど、相容れないと言えるような思考をしているようじゃないからね」

マスターへと、意思を投げた。
ゆりは再びバトルホッパーを撫でる。
そして、ライダーと視線を合さずに、ぽつり、ポツリと語り始めた。

「考えようにもね、離れてくれないの」

それは、抱え続けていた濁りだった。
正しくいようとすることで生まれる、正しくない感情の集まりだった。

「大事な友達が、腕の中で消えていく感覚。
 大好きな父が、私じゃない娘を抱きしめる光景。
 優しかった母が、どんどんやつれていく日常。
 慕ってくれた仲間達が、私を置いて進んでいく未来」

ゆりを苛む苦しみの正体。
誰にも、それこそ、尊敬する人生の師である花咲薫子にも、親にも話さなかった想い。
それは、『自身と全く関係のない味方』である光太郎だからこそ吐露出来る感情だった。

「全部が、私の心から、離れてくれない。
 大人になれば、受け入れられるの?
 大人になったら、忘れてしまうの?」
「……マスター」
「教えて、ライダー。
 貴方は諦めてしまったの?
 それとも、忘れてしまったの?
 この、この……消したはずなのに、湧き上がる憎しみを。
 どうやって、貴方は乗り越えたの?」

徐々に熱を帯びていくゆりの言葉。
光太郎はただ、その言葉を聴き続けた。
聴き続けることが少女の溜め込んだ苦しみを晴らすものだと思ったからだ。
しかし、ゆりはその溜め込んだ苦しみを全ては吐き出さなかった。
何かが、ブレーキをかけた。


223 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 02:59:39 cvHqRq460

「世界から憎しみが尽きないのは、私たちの愛が、足りないから……」

ブレーキの正体は、かつてかけられた救いの言葉であり、同時に、呪いでもある言葉。
ゆりはこの言葉に救われ、呪われたのだ。
ゆりが進みかねなかった憎悪の渦への道を止めた救い。
代わりに、一生、ゆりは守護者として居続ける呪い。

「わからない」
「落ち着くんだ、マスター」
「落ち着いてるわ、嫌なくらい……本当に、嫌になる」

愛を持って拳を振り上げて、愛を持って走り続けた。
愛していた大事なものを失ってしまったことから生まれる憎しみは。
いつになったら、憎しみであることを辞めてくれるというのだろうか。

「教えて、ライダー」

ゆりは縋るような言葉を口にした。
初めて、光太郎は後ずさった。
ゆりの姿に怯えたわけではない。
ただ、何かを求めるその姿に、自身の孤独を幻視してしまったのだ。

「貴方は、どうして世界を憎まないままで居られたの?」


224 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 03:00:50 cvHqRq460


【クラス】
ライダー

【真名】
南光太郎@仮面ライダーBLACK

【パラメーター】
筋力B+ 耐久B+ 敏捷B+ 魔力B 幸運E- 宝具A++

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では南光太郎に傷をつけられない。
また、スキル・世紀王の影響により、味方からの魔術も無意識強制的にキャンセルする。

騎乗:A
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

【保有スキル】
世紀王:A
世紀王とは、独自の時間軸と独自の世界を所持している、この世の全てから隔絶された存在である。
誰も世紀王に特殊な概念で接触することは出来ないため、あらゆる時間・因果・空間の操作による攻撃を無効化する。
しかし、この他者からの因果干渉の無効化は、南光太郎が選別することは出来ない。
つまり、善意から生まれる祝福すらも無効化し、令呪による魔術的な拘束すらも逃れる。
令呪による従属の無効化はもちろんのこと、令呪をブースターとする魔力供給や、テレポートさせるといったことも出来ない。
よって、世紀王を超える巨大な神秘でない限り、秋月信彦をシャドームーンにさせないことは不可能である。

光の戦士:B
本来、暗黒の寵児である世紀王が持つはずのない、光を象徴する戦士の証。
宝具である『太陽の輝石(キングストーン)』は、太陽の光を受けることでその力をさらに引き出すことが出来る。


225 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 03:01:57 cvHqRq460

【宝具】
『災厄の騎馬(バトルホッパー)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:10人
人類が生まれるはるか昔から存在していたゴルゴムが崇める三種の神器の一。
バッタを模したバイクであり、自我を持ったスーパーマシン。
モトクリスタルという動力源を持ち、キングストーンのエネルギーと共鳴して力を倍増させる。
リライブタンクなる再生機関を積み込んでおり、どのような大ダメージを受けてもある程度の時間が経てば回復する。
世紀王のみが駆ることが出来る、王の象徴。


『渾沌の崩剣(サタンサーベル)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜15 最大捕捉:20人
人類が生まれるはるか昔から存在していたゴルゴムが崇める三種の神器の一。
透き通るような紅の刀身をした、暗黒秘密結社ゴルゴムが崇める宝剣。
キングストーンから生み出される攻撃的エネルギーを増幅させる役割を持つ。
もちろん、単純な増幅装置ではなく、神剣としても類まれな神秘を誇っている。
世紀王が持つことで初めて意味を持つ、王の象徴。


『太陽の輝石(キングストーン)』
ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1〜999 最大捕捉:9999人
人類が生まれるはるか昔から存在していたゴルゴムが崇める三種の神器の一。
仮面ライダーBLACKの莫大なパワーは、このキングストーンから供給されている。
太陽の光があるかぎり、この宝具は魔力を生み出し続ける永久機関である。
単純なエネルギー攻撃はもちろんのこと、相手の超能力を無効化・反射し、空間を遮る時空の壁すらも破壊する。
また、キングストーンのエネルギーを使用して通常以上の力を引き出す『バイタルチャージ』などがある。
そして、キングストーンはそれ自体が高潔な意思を持つ。
太陽のキングストーンと月のキングストーン、この二つ揃うと全宇宙を支配する『創世王』が誕生する。
世紀王によって生み出される光こそが、王の象徴。

【weapon】
宝具であるバトルホッパーとサタンサーベル、そして、自身の肉体を主な兵装とする。
サタンサーベルはマスターに貸すことも可能。

また、バトルホッパーと比肩するスーパーマシン『ロードセクター』。
このスーパーマシンは大門親子へと返し、すでに『南光太郎』の所有物ではなくなったため、聖杯戦争においては存在しない。

【人物背景】
暗黒秘密結社ゴルゴムにとって大きな意味を持つ、『五万年周期で起こる日食』の日に生まれた青年。
親友である秋月信彦もまた同日に生まれ、そのため、お互いに『ゴルゴムの世紀王』として殺し合う宿命を定められた。
『五万年周期で起こる日食』の日に生まれた二人の子供を殺し合わせ、ゴルゴムの主である『創世王』とするためだ。
本来ならばゴルゴムの脳改造手術によって南光太郎としての存在は死に、世紀王・ブラックサンとなるはずだった。
しかし、育ての親でありゴルゴムの支持者である信彦の父・秋月総一郎の手によって光太郎のみ救出される。
その瞬間、世紀王ブラックサンとなるはずだった光太郎は、蹂躙される運命にあった人類の味方・仮面ライダーBLACKとなった。
そして、同時にそれは、誰にも理解されない、血と死に彩られた青春の始まりでもあった。
その青春は、ゴルゴム帝国の崩壊とともに終わった。
南光太郎は世紀王シャドームーンとなった秋月信彦を救うことも出来ず、仮面ライダーBLACKは人類を救ったのだ。

その後、異世界からの侵略者『クライシス帝国』などという存在が訪れることもなく。
南光太郎は、誰に知られることもなくその生涯をひっそりと遂げた。

【サーヴァントとしての願い】
本質的に孤独である南光太郎の願いは、誰にも知られることはない。

【基本戦術、方針、運用法】
白兵戦においても高い戦闘力を誇り、スキル:世紀王と宝具:キングストーンによって殆どの搦手を無効化できる。
マスターである月影ゆり自体もサーヴァントと比肩する戦闘力があるため、まともに戦い続けることが最大の戦術。


226 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 03:02:27 cvHqRq460


【マスター】
月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!(プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち)


【マスターとしての願い】
自身の手から過ぎ去っていた、二度と取り戻すことの出来ない家族と友人を取り戻す。


【weapon】
『ココロポット』
ある世界において『ガイア』であり『アラヤ』である『こころの大樹』の力を蘇らせる『こころの種』を収納する魔具。
『こころの種』は人の心の花の彩りを取り戻すことで妖精が生みだす、神秘的な種である。
その種の力を使って、守護者である『プリキュア』に変身するための『プリキュアの種』が欠けた部分を修復することも出来る。
ココロポットを使うことで、月影ゆりはキュアムーンライトへと変身する。

『ムーンタクト』
世界中の花のパワーが込められたクリスタルドームという水晶を装着したタクト型のアイテム。
巨大な魔力が込められており、通常の光弾よりも強力な攻撃を行うことが出来る。
浄化の力を持っている。


【能力・技能】
『キュアムーンライト』
ある世界において、『ガイア』であり『アラヤ』である『こころの大樹』によって選ばれた存在だけがなる『プリキュア』。
その『プリキュア』の一人であるため、月影ゆりは変身することでサーヴァント級の戦闘力を発揮することが出来る。
スキル:光の戦士を所持しており、戦闘訓練を起こっていないにも関わらずあらゆる『武術』と呼べるものの戦闘論理を得る。
宇宙空間でも行動ができ、空を飛ぶことも出来れば自身の魔力をエネルギーとして発することも出来る。
魔力を自在に変化させ、光弾や反射障壁を生みだすことも出来る。
守護者として、地球そのものであり人類の普遍的集合体である『こころの大樹』から無限とも呼べるバックアップを受ける。

『プリキュア・シルバーフォルテウェーブ』
ムーンタクトから花を模した銀色の光弾を放つ、浄化の効果も持つ。

『プリキュア・フローラルパワー・フォルッテシモ』
ムーンタクトから発する銀色の魔力を身にまとい、相手へと突進する必殺技。
シルバーフォルテウェーブの威力の実に二倍。


【人物背景】
月影ゆりは、中学生の頃に父が失踪した。
同時に、歴代最強の呼び声も高い先代のプリキュアである『キュアフラワー』の活躍によって封印したはずの侵略者『砂漠の使徒』が現れ始めた。
その時、ゆりは失踪していた父が探していた、この地球上のどこかにある『こころの大樹』によって『プリキュア』に選ばれる。
こころの大樹が生み出した妖精『コロン』とともに、ゆりは地球と人類の心を守るために砂漠の使徒と戦い続けた。
その先に、失踪した父の手がかりがあると信じて。
着実にプリキュアとしての力を増し始め、キュアフラワーである花咲薫子をして砂漠の使徒との戦いに終止符を打てると思わせた。
しかし、自身の最大のライバルとなるダークプリキュアが現れ、激闘の末、敗北。
パートナーであるコロンとプリキュアとしての力を失い、使命であるこころの大樹の守護に失敗し、こころの大樹を大きく弱らせた。
人の心そのものである『こころの花』を枯らしたゆりは、例え戦えたとしても、戦うことの出来ない精神状態にあった。
だが、後輩プリキュア達とこころの大樹に導かれ、霊体となったコロンとの再会によって闘志を蘇らせる。
その後、砂漠の使徒との最終決戦の最中、敵のブレーンである『サバーク博士』が自身の父であると知る。
再び戦意を消失するが、自身を尊敬する後輩であり花咲薫子の孫である『花咲つぼみ』の奮闘に使命を思い出す。

そこでダークプリキュアは自身の細胞から生み出されたクローン、ある意味では父を同じくする姉妹であることを知る。
父性からダークプリキュアを抱きしめ、負い目から自身を抱きしめない父を目撃。
その後、砂漠の使徒の首魁、『デューン』と戦闘。
父はゆりを庇い、死亡した。
そこで初めてゆりは『殺人すらも厭わない憎悪』というものを覚えた。
しかし、つぼみのゆりに対する初めての喝によって踏みとどまり、正義の戦士として愛を持ってデューンと戦った。

結果、彼女は世界を救ったが、彼女は家族を失ったまま日常へと戻った。


【方針】
自身の憎しみから生まれる願いに忌避感を覚えつつも、この憎しみ育ててしまった自身に嫌悪感を覚えている。
聖杯戦争に対して限りなく否定に近い念と限りなく肯定に近い念を持つ、消極的参加者。


227 : 月影ゆり&ライダー ◆EboujAWlRA :2015/02/24(火) 03:03:02 cvHqRq460
投下終了です


228 : ◆10woxmrhdg :2015/02/24(火) 07:18:56 9uIhPQxY0
投下乙です。こちらも投下します


229 : ◆10woxmrhdg :2015/02/24(火) 07:19:26 9uIhPQxY0
どうしてお父さんに会っちゃいけないの!?

そうお母さんに言ったとき、お母さんは凄く辛そうな顔をしてた。
でもどうしても我慢することができなくて。ヒナミは部屋に閉じこもって。
そして、願った。お父さんに会いたい。そう願った。

そしたら次の瞬間には知らないところにいて。周りに知ってる人は誰もいなくて。
怖くて、寂しくて。泣きそうになりながら奔ろうとして。

「――あなた、大丈夫?」

そう、声をかけられたのだ。







「大丈夫、大丈夫よ」

古びたアパートの一室、泣いている少女とそれをなだめている女性の姿があった。
膝を抱え泣き腫らす少女と、妙齢の白人女性。

「ここは安全だから。少なくとも今は、あなたを狙う人はいないわ」

柔らかな手つきで頭を撫でる。そこからは打算や害意は感じられず、ただ少女のことを思っての行為であるとわかる。

「でも、でも、ヒナミは……!」

「そうね。でも今はあなたが落ち着くほうが先。
 だからほら、笑ってちょうだい? あなたにはきっと笑顔が似合うわ」

少女を撫でる手は、母が子に接するようどこまでも優しかった。最初は嗚咽のみを漏らしていた少女も、段々と落ち着きを取り戻していく。
少女は赤くなった瞳を女性へと向ける。女性は、にっこりと笑って少女を見つめ返した。

「……うん、偉いわ。とってもいい子」

女性は少女の頭を抱き寄せ、言った。
部屋には沈黙が満ちた。しかしそれは不快感のない、どこか暖かいものだった。



「……そう。話してくれてありがとう、ヒナミちゃん」

少しの時間が流れ、女性は少女から話を聞き終わっていた。
父親が突然いなくなり、会いたいと思っていたらここに呼ばれていたということ。そして、彼女が喰種という人間とは別の生き物であるということも。
ヒナミの側も、女性がサーヴァントであるということは聖杯の知識で知っていた。だからこそ自分が喰種であることを教えたのだ。


230 : 笛口雛実&ランサー ◆10woxmrhdg :2015/02/24(火) 07:20:24 9uIhPQxY0
「ううん。こっちこそありがとう……ランサーさん、あのね。これからヒナミどうなっちゃうのかな」

不安げに呟き、顔を伏せる。突如として聖杯戦争に呼ばれ、戦いを強制されたのだから不安は当然のものだろう。
ランサーのサーヴァントたる彼女は、安心させるようにヒナミの頭を撫でながら言った。

「大丈夫よ。私はあなたのサーヴァント、あなたを守るために来たんだもの。絶対に元の場所に帰してあげるからね」

「……うん。ありがとう、ランサーさん」

……嘘ではない。
その言葉は、決して嘘ではない。ランサーはヒナミを守るつもりだし、元の世界に無事に帰すつもりでもある。
もう決して、嘘はつかない。

「あなたは本当にいい子ね。なんだか娘を思い出すわ」

ふと、そんな言葉がついて出た。恐らくはもう二度と会うことの叶わない、誰よりも愛おしい娘。

「娘さん? ランサーさんの娘さんって、どんな子だったの?」

「どんな子って……」

ランサーは少し考え。
恐らくは初めて見る、嬉しそうな笑顔で言った。

「―――可愛い子よ」

とても、とても嬉しそうな笑顔だった。

「可愛い子?」

「ええ、親ばかになっちゃうけど、凄く可愛いのよ。料理が上手で、卵焼きが好きで。あんまり笑わないから誤解されちゃうけど、本当はとっても優しいの。
 ……あ、ごめんなさい。なんだか自慢みたいになっちゃって」

「ううん、ヒナミは気にしてないよ。だってランサーさん、凄く嬉しそうな顔してるもん」

言われて、自分が笑っていることに気付く。そしてどちらからともなく、二人は小さく声をあげて笑いあった。
その笑顔も、決して嘘ではなかった。







私の娘。可愛いセラ。
例え生き返っても、私はあなたに会えない。
私はこんなにもくすんでしまって、きっと会ってはくれないでしょうね。
それでもいい。あなたが幸せになってくれるなら、私はどうなったって構わない。
たくさん忘れてしまったけど、それでもひとつだけ忘れない。

私は、あなたのことを愛しているわ。セラ。


231 : 笛口雛実&ランサー ◆10woxmrhdg :2015/02/24(火) 07:21:00 9uIhPQxY0
【クラス】
ランサー

【真名】
レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)@ウィザーズ・ブレイン

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具E

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:E
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
I-ブレイン:A
脳に埋め込まれた生体量子コンピュータ。演算により物理法則をも捻じ曲げる力を持つ。
ランサーのそれは空間制御に特化しており、宝具として具現している。
また、I-ブレイン自体が100万ピット量子CPUの数千倍〜数万倍近い演算速度を持ちナノ単位での思考が可能。Aランク相当の高速思考・分割思考に匹敵する。

質量探知:A
周囲の空間構造を認識し、あらゆる質量を探知する。索敵に向いており、範囲は広域に及ぶ。Aランクの千里眼スキルに匹敵し、同ランクまでの気配遮断スキルを無効化。
ただし人間と水、石ころと宝石のように物質として似通っているものをこのスキルで見分けることは難しい。

慈母の魂:B
ただ娘の幸せを願い戦い続けたランサーの生き様が形となったスキル。
幼い少女を案じ戦う場合にのみ、威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する。

【宝具】
『光使い(ディメンション・ウィザーズ・ブレイン)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜5(1〜99) 最大捕捉:100
時空構造制御。空間及び重力を操作する。
重力を操り任意の方向に「落下」することによる飛行、空間構造の把握による質量探知、光を捻じ曲げ背後の景色を映し出すことによるステルス、超重力場の発生など能力の使用方法は多岐に渡る。
そして、最大の使用法は以下の二つ。
・Lance
局所的に閉鎖した空間の中で原子・陽子を加速させ荷電粒子砲として射出する。光そのものであるため、視認しての回避は不可能。これを回避するには直感もしくは予測による事前回避しか方法はない。
光使いたるランサーの代名詞であり、彼女がランサーのクラスで現界した最大の要因。生前数多の戦艦を撃墜した逸話から、ライダーの騎乗宝具を相手取った場合にダメージの上昇補正を与える。
ただし近距離では十分な加速を行うことができず威力が大幅に低くなる。
・Shield
自身の周囲の空間を歪曲させることであらゆる攻撃の軌道を捻じ曲げる空間防御。その性質上、周囲一帯を破壊する範囲攻撃を防ぐことはできない。

時空構造制御は本来自身の周囲の空間しか制御できないが、D3を用いることで操作範囲を広げることが可能。また、Lanceのみは単体で最大のレンジを誇る。

【weapon】
D3
光使い専用の外部デバイス。時空構造制御の範囲拡張のためのもので、このD3が存在する周囲の空間も同様に操作可能。D3は光使いにより操作される(原作者曰くファンネルみたいなものとのこと)。
外見は透明な正八面体で12個存在しており、普段は空間の裏側に収納されている。
ランサーのI-ブレインとリンクしているため、能力使用中に破壊されるとフィードバックダメージがある。

【人物背景】
光使いと呼ばれる魔法士の女性。大戦時、自らが兵器として人々を虐殺することに疑念を覚え、軍から脱走する。その後は名前を変え一般男性と結婚し子を育むも、夫に先立たれ自分の寿命も残り少ない状態になってしまう。
そのことから娘に悲しい思いをして欲しくないという理由で冷たくあたり、人知れず能力を使って金を稼いでいた。その後戦闘で負った傷により記憶喪失となり、娘とつかの間の安寧を手に入れるも、最後は軍の銃撃から娘を庇い死亡する。

【サーヴァントとしての願い】
セレスティ・E・クラインの幸せ。

【方針】
ヒナミの安全を確保し、ヒナミに知られないうちに全てのマスターとサーヴァントを脱落させ優勝する。


232 : 笛口雛実&ランサー ◆10woxmrhdg :2015/02/24(火) 07:21:47 9uIhPQxY0
【マスター】
笛口雛実@東京喰種

【マスターとしての願い】
お父さんとお母さんと一緒にいたい。

【weapon】
甲赫および鱗赫の赫子。

【能力・技能】
喰種と呼ばれる種族であり、人肉しか食べられない代わりに高い身体能力と五感を持つ。特に五感に関しては通常の喰種より遥かに上。
雛実は喰種としては最高クラスの素質を持っているが、訓練を受けていないので戦うことは苦手。というか参戦時点においては赫子を出すことすらできそうにない。
学校には通っていないので勉強関係の知識は少ない。

【人物背景】
20区に住む喰種の少女。年齢は10代前半で、愛称は「ヒナミ」。
喰種とはいえ自分で人を狩ることができなかったため、あんていくに食の面で世話になっていた。
性格は非常に穏やかで優しく、母親が殺された時も憎しみより寂しさや悲しさのほうが強かったほど。

【方針】
どうすればいいんだろう……


233 : ◆10woxmrhdg :2015/02/24(火) 07:22:15 9uIhPQxY0
投下終了です


234 : ◆RzdEBf96bU :2015/02/24(火) 10:55:58 826BLAH60
投下乙です。拙作ですが投下いたします


235 : 蓮見琢馬&ランサー ◆RzdEBf96bU :2015/02/24(火) 10:56:43 826BLAH60
■■■■はなぜ生まれてきた・・・?

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

父に復讐を。それだけを考えて生きてきた。
終業式の夜、父の家の門を潜り、長年かけてきた復讐を遂に完了させた。
父の愛娘を、彼女の視点から見れば恋人の関係であっただろう千帆を利用して。
自分がこの町で為すべきことはすべて終え、未練はもはやなかった。
杜王町から出ることを予定し、図書館で千帆の執筆していた小説を読んでいたところ、俺を追っていた虹村億奏に邪魔をされた。
厄介なスタンド使いであったが、如何にか奴を打ち倒すことに成功した。
しかし、奴が扉を封じたせいで図書館から出ることがかなわなくなってしまった。
図書館から出る方法を模索して、屋根の上から出るという結論を発見した。
茨の館からでるべく螺旋階段に足をかけた。一段一段と急な階段を昇りながら、今までの人生を回想した。
生まれてから今に至るまでの人生は、今まで食べたパンの枚数から、俺に投げかけられた罵倒の内容まですべて覚えている。
傍らに浮かぶTHE BOOKにすべて書かれている。
THE BOOKの最初の方のページには、当然生まれたばかりの記憶が、母の姿が描かれていた。
そのページを読み返すことで初めて温もりという感情を体験することができた。
螺旋階段の半ばの踊り場で一端立ち止まり、母の記述を読み返した。
この復讐は母のために為した。本の中だけで再会できる母のために。
僅かに懐かしさを感じたところでTHE BOOKを閉じ再び階段を昇り、ようやく最上階へ到達した。

___今までの支えであった復讐を終えた今、明日から何のために生きよう。

ふと浮かんだ疑問を振り払い、俺は目の前の扉を開けた。

そしてTHE BOOKのどこにも書かれたことのない街に俺はいた。


236 : 蓮見琢馬&ランサー ◆RzdEBf96bU :2015/02/24(火) 10:57:32 826BLAH60
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

一体何が起きているのか。一体ここはどこなのか。
目の前の景色から検索を行う。
________該当文0。
THE BOOKを読み返しても、今までいた図書館から場面転換を挟むことなく見知らぬ街に俺は移動していた。
頭がどうにかなりそうな奇妙な事態であったが、深呼吸を何度か行い平常心を取り戻した。
取り乱した奴から死ぬ。先の億奏との戦いから学んだ教訓だった。
何らかのスタンド攻撃であるのだろうか。そう考えた時、後ろに何者かの気配がした。
振り返ると女の姿があった。

「問おう。おまえがわたしのマスターか?」

冷たい、爬虫類のような眼をした女だった。とても人間であるなんて思えなかった。

「・・・母さん?」

それなのに俺の口から出たそれは、その女を見たとは思えないような言葉だった。


237 : 蓮見琢馬&ランサー ◆RzdEBf96bU :2015/02/24(火) 10:58:06 826BLAH60
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「…なるほど、サーヴァントを召喚し己の願いのために殺し合う聖杯戦争。お前はそのサーヴァントの一人で、おれはお前を召喚したマスターということか」
「そうね。理解が早いようで助かるわ」

狭いアパートの一室、俺はサーヴァントと向き合いながら対話をしていた。

「それでお前は槍兵のサーヴァント、名前は…田村玲子でよかったのか。」
「ええ、今回はその名前でいいわ。最も、聖杯戦争を真剣に勝ち残る気があるのなら無暗にわたしの名前を撒き散らさない方が賢明だと思うけど」
「わかったランサー。しかしお前の姿を見るととても槍をぶん回して戦うようなヤツには見えないがな」
「その点だけど、わたしの宝具、寄生生物《パラサイト》が生成する触手が槍に該当するということでランサーに振り分けられたみたいね」
「ふうん、英霊っていうからどんなものかと思ったが随分と適当な割り振りなモンだな」
「まあそのことはどうでもいいわ。それで?聖杯戦争に来たのなら、あなたにも願いがあるんでしょ」

ランサーに問いかけられ、少し返答を考えた。
長年の願いであった復讐も既に叶ってる。願いなどないと答えようとしたとき、一つの疑問が浮かんだ。
時計の秒針が数週回る程度の時間が経過して、漸く返す言葉を見つけた。

「母に会う。死んだ俺の母親に」
「…ほお、それがおまえの願いか。人間というのはどうしていつだって死人に会いたがるものなのか。」
「…そうかもしれないな。だが俺は答えを出すために母に会う」
「…答え?」
「そうだ。今まで復讐のためだけに生き、その復讐もついさっき終わった。
ならばこれから俺はこれからはなんのために生きるのか。その疑問の答えを出すために母に会いに行く」

俺の人生にはいつも母が関わっていた。
母の願いを無意識に受け取り、【忘れない】という能力を得た。
ビルの隙間で母の骨を見つけ、父に復讐を誓った。
母が自分の命と引き換えに俺を産んだことで俺は生きている。
始まりはすべて母だった。ならば終わりも、そして再生も母に会うことが必要なのだろう。
この聖杯戦争は試練と受け取った。俺の人生の新しい幕を上げるための試練だ。

「俺は聖杯を獲る。せいぜい手伝ってもらうぞランサー。」

そう言い終えるとランサーに背を向け早々にかび臭い部屋を出た。
ランサーの冷たい眼にじっと見られるのが厭だったのも部屋を出たわけの一つである。
しかしそんなチンケな好き嫌いよりも別の理由がほかにもある。
なぜ俺はランサーに母の面影を見たのか。
母とランサーにはなんら共通点は見えない。
加えて話を聞くにランサーは人食いの怪物であった。
どう考えようが母なんぞと呼べる存在ではない。
それなのに俺はどうして母さんと呼んだのか。
いくら考えても答えが出ない。
ましてやTHE BOOKに答えが書かれているわけもない。


238 : 蓮見琢馬&ランサー ◆RzdEBf96bU :2015/02/24(火) 10:58:52 826BLAH60
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「…似ているな」
彼が部屋から出た後で、不意にそんな言葉が出た。
彼の願いはわたしの抱いた疑問に似ている。
寄生生物《われわれ》はなぜ生まれてきた……?
その答えを出すために考えを巡らせ、いくらかの実験も重ねてきた。
一つの答えを出せばまた新たな疑問が湧いてくる。
わたしが死ぬ間際に泉新一と会い、また一つ疑問の答えを出すことができた。
そして彼もわたしの同類なのかもしれないということに気づいた。
復讐の完了という一つの答えを出して、また新たな疑問に直面している。
ふと思いついた。
彼を観察し続け答えを出すさまを目撃すれば、また新たな疑問の答えが出せるかもしれない。
目下の方針がとりあえずまとまったというところか。
「…ククク」
ふと笑っていたことに気づいた。
この笑いはいったいどのような気持ちから漏れ出た笑いなのだろうかと考えてみた。
彼を観察することへの楽しみなのか、答えを出せるかもしれない嬉しさなのか。
折角なので高らかに笑ってみることにした。
「フフフ…ホホホホ…ハハハハハハ、アハハハハハ アッハハハハハ アーハッハハハハハ!!!」
やっぱり、笑うと気分がよいということを発見した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

傍らに立って寄りそい…生命の生まれた答えを見つけるまで……


239 : 蓮見琢馬&ランサー ◆RzdEBf96bU :2015/02/24(火) 11:00:47 826BLAH60

【クラス】
ランサー

【真名】
田村玲子(田宮良子)@寄生獣

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具E

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
本能:C
寄生生物としての本能。この種を食い殺せという与えられた命令。
人間以上に冷酷に合理的な判断をすることが可能であり、同ランク以下の精神干渉スキルを無効とする。

ラーニング:B
物事を短時間で理解する学習能力と適応能力。僅かな時間で言語を理解する程度の知能を有する。

捕食:B
NPC、マスター、サーヴァント関係なく肉体を捕食する事で魔力を得られる。
ランサーにとっては魂喰いよりも魔力を良く供給出来る。

母:B
母として子を守る、生物としての行動。
自らの子供、もしくは子と同等の存在と見なしたものを守る際に有利な補正が与えられる。
生前、自らの命を賭して自らの赤子を守ったことから付与されたスキル。

【宝具】
『寄生生物(パラサイト)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ1~20 最大捕捉:30人
人間の頭部に寄生し、人を捕食して生きるか弱い生物。
寄生部位である頭部を自由に変形・変身・硬化させ操ることが可能であり、また寄生した人間部の力を150%引き出す。
また寄生部位を変形させての攻撃時にはその部位に限り、筋力B、耐久B、敏捷A相当のパラメーターを得る。


【weapon】
なし
【人物背景】
寄生生物の一匹。
寄生生物同士でセックスし生まれた赤ん坊を観察材料に使ったり、大学の講義に出席するなど、非常に知的関心の高い一体。
寄生生物はなぜ生まれてきたのか。その疑問を抱き答えを求めた。
最期は人間たちの弾丸から赤ん坊を守るため身を挺して庇い、ある少年の胸の穴を埋めて息絶えた。

【サーヴァントとしての願い】
蓮見琢馬を観察して疑問の答えを見つける

【マスター】
蓮見琢馬@The Book jojo's bizarre adventure 4th another day

【weapon】
スローイングナイフ

【能力・技能】
スタンド能力『THE BOOK』
射程距離は約30m。
自分の生まれてから今に至るまでの記憶全てが書かれた本のスタンド。
本の記述を読ませることで琢馬の記憶を追体験させる。
旨いイタリア料理を食べた記憶を読めばその味が舌に蘇り、交通事故に会った記憶を読めばその傷が再び体にきざまれる。
『THE BOOK』の文字が見えない程度にまで離れすぎては効果がなく、『THE BOOK』から2m程度まで近づかせる必要がある。
また、『THE BOOK』の記述を再読することでの反復練習により、投げナイフの技能を身に着けている。

【人物背景】
『忘れない』という力を持ったぶどうヶ丘高校の2年生。
幼少の頃その能力ゆえに苦しい生活を送っていたが、ある日スタンド能力に目覚める。
スタンド能力を得て母の死の原因たる父の存在を知り復讐を誓う。
父の娘であり、彼の妹でもある双葉千帆と恋仲となり、彼の復讐の完成型を仕込む。
復讐を終え、これからの人生で何をなすべきかを疑問に思ったとき、聖杯戦争に呼ばれる。

【方針】
聖杯を獲る
そして母に再会し、答えを出す


240 : 蓮見琢馬&ランサー ◆RzdEBf96bU :2015/02/24(火) 11:01:03 826BLAH60
投下終了します


241 : ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:10:55 cvHqRq460
投下させていただきます


242 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:12:18 cvHqRq460


世界史上、最大の暴君は誰か。


政治的な力を持たない一般のキリスト教徒の多くを処刑し、獣の数字や大淫婦とすら蔑まれるローマ皇帝・ネロか。
その名自体が暴君の意味を持つとさえされた、随皇帝・煬帝か
自身の理想を貫くために現実を歪めたとまで呼ばれた粛清を行った、ソ連書記長・スターリンか。

数多の人物の名前が挙げられる。
その中で必ずその名を挙げる物が居る。

「暴君の証明が間接的に人を殺した数であり、恐怖の渦に巻き込んだ土地の広さとするなら。
 人間が生み出した最大の暴君とは、間違いなく『神条紫杏』だろ。
 彼女を超えられるとすれば……それこそ神話上の神ぐらいなものだろう」

食糧事情、社会的インフラ、兵器開発、医療機関。
現代社会を成り立たせる全てがTSUNAMIグループを通じて行われている。
そのTSUNAMIグループが、文字通りありとあらゆる手段を用いて『間引き』を行えば。
それは世界の崩壊を意味する。
TSUNAMIグループの創始者であり、初代会長。
その『魔王』と同義の肩書きを持つ女こそが、『神条紫杏』なのだ。
巨大組織『TSUNAMIグループ』の総帥であるからこそ、神条紫杏は全世界を相手取って戦争を起こすことが出来た。

一国の王ですらなく、だからこそ、全世界へと平等におぞましき支配と死をばら撒くことの出来た魔王。
七十億を超え、八十億を迎えようしていた世界人口。
そのうちの半分以上を殺した戦争を起こした。
その戦争のためのあらゆる作戦を、自らが携わった。
彼女の目的は間違いなく『全世界に住む人間の粛清』だった。
彼女は津波のように、抗いようのない恐怖だけを残していった。
正しき罪を持って、あるべき場所で処刑することも出来ずに暗殺された。

しかし、誰も知りはしない。
彼女が未来を知っていたことを、未来では現在の世界人口の半分ですら『倍』なのだということを。
絶望の未来を回避するために、人を殺していたことを誰も知るわけがない。

結果として。
歴史にはその『真実』を記されず、ただ、全世界を恐怖の渦に陥れた魔王が居たという『事実』だけが残された。






243 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:13:17 cvHqRq460


日本史上、最強の侍は誰か。


無数の論争が行われつつも、剣聖という看板を必ず与えられる上泉信綱。
無数の真剣勝負に挑み、全てに勝利し、遂に一度として刀傷を受けなかった塚原卜伝。
二天一流を掲げ、数多の武芸者と斬り合って生き残り、技術書・精神書として五輪の書を記した宮本武蔵。

数多の人物の名前が挙げられる。
その中で必ずその名を挙げる物が居る。

「人を殺した数で強さが決まるというのなら、人斬り抜刀斎はどうだ」

誰かが言い出す。
その名前は、幕末の時代に人を斬り捨て続けた鬼の名前。
恐らく、戦の最中を含まないのならば、日本国で最も多くの生命を奪いとった侍と呼ぶのも憚れる修羅。
人斬り抜刀斎は、修羅さながらに生命を斬り捨てて新たな時代を切り開いた。
明治政府樹立の影には、幕府重鎮の相次ぐ暗殺が大きな要因となっている。
ならば、明治政府を作ったのは人斬り抜刀斎という鬼なのかもしれない。

人斬り抜刀斎の名前は誰もが知っているが、人斬り抜刀斎の正体は誰も知らない。

誰もしらないからこそ、その噂は大きくなっていく。
浄瑠璃や歌舞伎のモチーフにされ、その逸話も歪んでいく。

誰も知らない。
人斬り抜刀斎が、幕末の時代で、誰よりも人を殺すことに忌避感を抱いてたことを。
狂気に駆けるような混乱とともに人々が奔走する時代で、誰よりも人を斬り捨てる事実を見つめ続けていた。
その真実を、後世の人間は誰も知らないのだ。

結果として。
歴史にはその『真実』を記されず、ただ、暗殺を続けた人斬り抜刀斎が居たという『事実』だけが残された。






244 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:14:04 cvHqRq460

「人斬り抜刀斎か」

成人を迎えばかりほどの若さを持った、赤みがかった長髪をポニーテールに纏めた女が居た。
地味だが、仕立ての良い黒いウーマンスーツを纏った女。
垂れがちな目は柔らかさよりも、周囲を伺うような神経質な一面を抱かせる。
顔立ちは整っていたが、ソレ以外では特筆すべき特徴を持っていない。
それこそ、街を歩いていても誰も気にはしないような、平凡な女だった。
しかし、女は『平凡』という言葉から最も遠いような
神条紫杏。
『煬帝』が『暴君』の意味を持つように、ある世界において『Sian』は『魔王』の意味を持つ。

「聞いたことはあるよ、日本史上、最も人を『斬ったとされる』暗殺者だとね」

緋色の髪と頬に十字傷を刻んだ男が、西日の差す部屋の影の中で消えるようにして立っていた。
緋色の長髪を高い位置で結んだ、痩身矮躯の身体を青袴で包んでおり、とても英霊とも思えないような優男。
平均的な二十前後の女性のそれである紫杏と体格に大きな違いはない。

「……『ますたあ』よ」

しかし、その研ぎ澄まされた妖刀のような鋭い視線は、目の前の優男が英霊であることを如実に訴えていた。
アサシンのサーヴァント、『緋村剣心』。
別名、『人斬り抜刀斎』。
混乱の幕末の京都で人を斬り続けた鬼こそが、神条紫杏によって召喚されたサーヴァントだった。

「『拙者』ではなく、『俺』として登録された英霊を、主は召喚できた。
 とすれば、『ますたあ』の作る時代というものは、みんなが笑えるものなんだろう。
 そうでなければ、俺を呼ぶことは出来ない」

どこか仮面を被ったような口調でアサシンは語り始める。
この姿が、緋村剣心の全てではないのだろう。
恐らく、本来の抜刀斎はもっと別の姿なのだ。
仮面を被ることで、役割を演じることで生きてきた紫杏はそれを察することが出来た。
優れた観察眼というよりも、オカルトじみた同族の臭いを嗅ぎとったのだ。

「しかし、新時代を作る際には、笑えなくなる人物がいるのだろう」
「そうだ」

紫杏は躊躇いもなく肯定した。
抜刀斎は鋭い瞳を逸そうともせず、紫杏は反英雄の視線を真っ向から受け止めた。
魔王の肩書に、偽りはなかった。

「何かを選べば、何かが選べなくなる。
 そもそもとして、人は多すぎるんだ。
 いや、嫌うだけならいい。
 人間は、人間を、本当に滅ぼしてしまう戦争を起こしてしまうんだ。
 その歴史を変えるために、私は聖杯とやらを求めよう。
 仲間の計画が失敗する可能性も、0ではないからな」

それは未来を知ったからの言葉――――ではない。
短い生を過ごして知った、不誠実な世界の真実。
努力した人間が報われない、間違った世界の理だ。


245 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:14:40 cvHqRq460

「歴史を誤魔化して、私は死んだ。
 かつてあった大破壊の歴史を塗り替えるために、私は死んだ。
 『大破壊の未来という歴史を改変しようとした主体は神条紫杏』、宇宙をそう誤魔化すことが出来れば、成功だ。
 宇宙は私の死を観測することで、歴史は改変されず、歴史が元通りに進むと勘違いするだろう。
 ならば、私の仲間が歴史を改変させる。
 宇宙が気づいた時には、歴史は安定した状態に戻る。
 安定した歴史は、宇宙にすら手を出せない」

歴史は定められている。
例え、歴史を大きく動かしたと思われる人間を、タイムスリップの技術で殺したとしよう。
すると、歴史は変わるのか。
多くの場合において、歴史は変わらない。
『殺された人物のすぐ傍に居た誰か』が、代わりに定められた歴史通りに進むように偉業を為すのだ。
ただ、それでも『その人物』でなければいけない、という歴史も存在する。
例えば、燃料問題を根本的に解決してしまう機関を開発した科学者の死がそうだ。
その科学者が死ぬことで、燃料問題は解決されぬまま、未来へと棚送りになってしまう。
歴史が変わることも、かなり低い確率ではあるが、存在するのだ。

「『六人組』とは単なる数字だ、そこに所属する人物の『名前』は意味を持たない。
 私達六人で世界を救う……そう言った意味を持つ数字だ。
 必ず、六人組は世界を改編する。
 だが、もしも、私達の仲間が歴史の改変に失敗したら……そのための保険。
 この聖杯戦争に勝利し、聖杯を手にして歴史にアクセスする」
「根源に通じるため、聖杯を求めるということか」
「魔術師でない私が根源にアクセスできるかどうか、それは正直出来ない可能性も低いだろう。
 しかし、私の仲間が『一撃計画』を成功させるように、バックアップする。
 それが私の願いだ。
 人類の救済こそが、私の願いなのだ」

紫杏は語り続ける。
抜刀斎は、その言葉に偽りがないことを見抜いた。
しかし、聞き慣れぬ言葉があったために、疑問の言葉として紫杏の言葉をオウム返しにした。

「……一撃計画?」
「世界の人間の大半を殺して、戦争を起こした我々の敗北によって世界を安定させる計画だ」

『世界を殺す』
『わざと戦争に負ける』
その二つのフレーズを、何事もないように、紫杏は口にした。
すなわち、それは歴史において大逆の存在になるということ。
それこそ、『神』ではなく『魔王』と呼ばれる存在となるということ。
救いようのない存在へと堕ちることだ。

「私達は人を大勢殺した津波とならなければいけない。
 どのような英雄であっても、津波を止めることは出来ない。
 事実、オカルトと超常現象が支配する裏社会ですら、私達が組んだ『支配』という津波の前兆を止められなかった」

紫杏は己の意思を述べ続けた。
抜刀斎がそれを求めていることをわかっていたからだ。
紫杏が、人斬り抜刀斎を従えるに相応しい人間であるか。
紫杏が、人斬り抜刀斎を生んででも求めるに相応しい時代を作ろうとしている人間であるか。
抜刀斎は、それを求めていた。


246 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:15:24 cvHqRq460

「『一撃計画』によって、一度世界を壊れる――――手前で、私達は『故意』に失敗する。
 その結果、人は多く死ぬだろう。
 しかし、そもそもとして戦争を仕掛けた私達が、『引き際』を見極めて完膚無きに敗北する。
 これ以下では世界は再び巨大な戦争を起こし、これ以上は死ぬ必要がない死亡者数」

荒唐無稽な話。
しかし、抜刀斎は紫杏の目を見据え続けた。
無言で言葉を促す。
紫杏は、自身の想いと作戦を偽ることなく言葉にする。

「そんな、世界を維持するための、最小限の人口減少で終わる。
 そうすれば、封印された『そして、誰も居なくなった<ピースメーカー>』は使われることがない」

最大最強の人間爆弾、『そして、誰も居なくなった<ピースメーカー>』。
『反エントロピー』という馬鹿げた超能力を所持し、増え続けるだけのエントロピーを収束できる奇跡の人間。
文字通り、無限のエネルギーを操る夢の爆弾。
その使用は、世界が崩壊することを意味する。
それだけは、避けなければいけない。

「……そんなところだ。
 私が聖杯を手にせずとも、一撃計画は成功するだろう。
 だが、絶対ではない。
 絶対でない以上、保険が必要だ。
 そして、聖杯は保険としては十分すぎるものだ」

『紫杏が体験できるはずのない最悪の未来をやり直す』。
それこそが神条紫杏の願いなのだ。
抜刀斎は一度軽く目を閉じ、開いた。
怪しい眼光で、紫杏を見据えたまま、小さく口を開いた。

「この血刀が吸う血が増えることになる」
「そういうことになる、人斬り抜刀斎殿には申し訳ないがな」

紫杏は知っている。
抜刀斎が求めた理想と、日本が歩んだ歴史は異なることを。
富国強兵の元に人民を圧迫し、敗北する。
その中に、不幸となった人間は大勢いた。
それが歴史の常だと紫杏は納得できるが、抜刀斎はどうだろうか。
剣心の眼光が、より強烈に、妖しく光った。

「その先に、血を流した以上の人々の笑顔があるのなら……
 もしも、『ますたあ』の作ろうとする新時代がそうではないと思ったら、宝具の元に俺達の契約は破棄される」

その思考自体が、『無辜の怪物』によって侵された思考だった。
生命とは数字ではない、そんなことは人を斬り捨て続けた剣心自身がよく知っている。
だからこそ、宝具『人斬り抜刀斎』は自らの主を取捨選択する。
『人々の笑顔がある新時代』を作ろうとする人間しか召喚、及び契約できないようにするのだ。
そして、剣心が目の前の人間が主に相応しくないと判断すれば、契約は破棄される。
より上位の神秘を持ってしなければ、この宝具の効果を無効化することは出来ない。


247 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:16:58 cvHqRq460

「そこにで作られる世界が、自分の居場所ではないことはわかっているんだろうな?」
「愚問だな。
 幸せになることなど、とうの昔に諦めている。
 『誰もが幸福になって良い』というものは、義務ではなく権利に過ぎないのだからな」

紫杏は不誠実な世界を見つめ続けた。
紫杏は父は三流の政治家だったが、己の私腹を肥やすことを目的とするような政治屋ではなかった。
人のために動いていた父は、中東のテロリズムの手にかかり、死んだ。
よくあることだった。
紫杏の、たった一人の家族は、そんな言葉で片付ける事ができるような世界だった。
悪法もまた法であるが、悪は正されなければならない。

「血に濡れた神輿は誰も担ぎはしない」
「そうだ、そのために私は血に濡れねばならない。
 私という神輿を捨てることに、誰も躊躇いを覚えないように」

ふと、幼い頃からの想い出が蘇った。
隣町の公園に住む、桃の木の精。
大人は見えず、子供だけが見えることが出来る、座敷童のような精霊。
もしも、桃の木の精なんて、何の意味もない不可思議なことを目撃していれば別だったかもしれない。
自分は大人ぶって世界を分かっているつもりにすぎない子供だと言ってくれるのなら、変わっていたかもしれない。
そんな、何の意味もない、だけど、ロマンチックな寓話が存在するのなら。
不誠実な世界でも、好きになって良かったかもしれない。
しかし、現実に、桃の木の精を紫杏は観測できなかった。
『観測できなかったものは、存在しない』。
それこそが、『神条紫杏』が愛する、曲解した『シュレディンガーの猫』理論だった。

「それが広義的にも狭義的にも悪だとわかっているが、やらねばならないと思ったのだ」
「……契約は為された。
 人斬りの鬼として呼ばれた『俺』の名は『ますたあ』とともにある。
 『拙者』であるための刀は、『ますたあ』の従者である以上は持つことが出来ない」

鋭い日本刀が光を放った。
逆刃であるはずもなく、触れれば斬る、妖しき刀。
その刀で、その力で新時代をより良き新時代が気づかれると信じた。
紫杏と同じであった。

「例え、鏡に映る自分の姿がどれほどおぞましいものでも……やらねばならないと思ったのだ。
 やらねばならないことを我慢できるような、そんな人間にだけは、なれなかった。
 ……思えば、本当にそれだけなのだろうな」



――――結局のところ、神条紫杏と緋村剣心の二人は、最初から最後まで、我慢の出来ない大きな子供だったのだ。


.


248 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:19:44 cvHqRq460

【クラス】
アサシン

【真名】
緋村剣心@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

【パラメーター】
筋力D 耐久E 敏捷A+ 魔力E 幸運E 宝具E

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
『日本史上最大の暗殺者・人斬り抜刀斎』と畏怖された剣心は、無辜の怪物スキルの影響で高い気配遮断スキルを誇る。

【保有スキル】
無辜の怪物:B
生前の行いから生まれたイメージによって、過去や在り方を捻じ曲げられた怪物の名。
能力・姿が変貌してしまう。
このスキルは外すことが出来ない。
宝具・『人斬り抜刀斎』と同一されているため、姿に大きな変貌はない。

飛天御剣流:C+
一対多を主戦場とする、弱者を助ける救世のための剣術。
大きな力に与することもなく、ただ孤高で在り続けた天秤の剣。
緋村剣心は正統継承者であるが、本来、肉体的に優れたものが扱うべき剣術であるため、スキルランクは高くない。
スキル・無辜の怪物、及び、宝具『人斬り抜刀斎』の影響で奥義の使用が出来ない。

宗和の心得:B
同じ相手に同じ技を何度使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。
攻撃が見切られなくなる。

心眼(偽):B
いわゆる「第六感」「虫の知らせ」と呼ばれる、天性の才能による危険予知。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

【宝具】
『人斬り抜刀斎』
ランク:E 種別:対史宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
『不殺の剣士』を『人斬り抜刀斎』へと変える、緋村剣心の魂に刻まれた誓いの宝具。
『人斬り抜刀斎』とは、すなわち旧時代に捨てられた火村剣心の有り様。
剣心は世間から称えることはなく、人斬りの鬼として旧時代とともに消えていった。
本来の剣心は心優しき青年だが、人々と時代に形作った『人斬り抜刀斎』という鬼に精神を侵食されている。
どのような触媒を用いようとも、『人々が笑う新時代』を作ろうとする者しか緋村剣心を召喚することが出来なくする。
また、緋村剣心が望めば一方的に契約を破棄することが出来る。


【weapon】
血に染まった無銘の業物

【人物背景】
短身痩躯で赤髪の優男、左頬にある大きな十字傷が特徴である。
かつては長州派維新志士で、幕末最強とまで謳われた伝説の剣客・人斬り抜刀斎その人である。
修羅さながらに殺人剣を振るい数多くの佐幕派の要人を殺害してきた。
間違いなく、明治政府樹立の大きな要因であった。

しかし、ある不幸な事件から明治維新後は一転して不殺を誓い、流浪人として旅し、弱き人たちのために剣を振るっていた。
流浪人としての剣心は一見朗らかで間の抜けた人物であり、虫も殺せぬような人柄であった。
以降どのような残虐非道な悪人に対峙しても、どのような困難な状況に陥ろうとも不殺の信念を決して曲げることはなかった。
神谷薫との出会いや、同じ激動の時代を生き抜いた宿敵たちとの戦いを通じて、贖罪の答えと新たな時代での生き方を模索していく。

しかし、英霊としては多くの人間によって付与された『人斬り抜刀斎伝説』の影響を大きく受けている。
そのため、自らの意志で続けた人斬りではあるが、無辜の怪物として扱われている。
サーヴァントとして召喚される際には、『緋村剣心』ではなく『人斬り抜刀斎』となるのだ。
よって、『人斬り抜刀斎』時には習得していなかった飛天御剣流の技は使用することが出来ない。

【サーヴァントとしての願い】
誰もが笑って過ごせる平和な新時代を作る。


249 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:20:37 cvHqRq460

【基本戦術、方針、運用法】
優れた剣技を持っているが、敵サーヴァントとの直接対決では分が悪い。
単純な技術だけを持って人を斬るため、魔力供給自体もほとんど必要としない燃費の軽さ。
マスター暗殺が主戦術となる。





【マスター】
神条紫杏@パワプロクンポケット11

【マスターとしての願い】
遥か遠い世界が破滅するという『史実』のやり直し

【weapon】
-

【能力・技能】
・魔王
神条紫杏は死後に反英雄として登録されている。
もしもサーヴァントとして召喚されていれば、無辜の怪物スキルとは異なるが、
同じように本来の彼女とはかけ離れた姿・性格で召喚される特殊スキルである『魔王』をEXランクで所持している。
後世の創作によって定められるスキルであるため、マスターの立場である現在は持ち合わせていない。

また、『"周囲の人間が自分に望む人格"を完璧に演じる才能』を持っている。
それこそが、『魔王』の元となった紫杏の特殊な才能である。
その紫杏が設定した『人物』を演じることで、紫杏は高いカリスマ性を保持している。
また、動揺というものも限りなく抑えることが出来る。

【人物背景】
神条紫杏は高校に入学するまで、生真面目でどこか尊大な、自分のことを大人だと思う大きな子供であった。
子供だからこそ、欺瞞に満ちた世界を理解でき、それが我慢できなかった。
努力をしていた人が馬鹿を見て、ズルをしたり嘘をつく者が幸福になる世界。
それに対する怒りに似た感情を抱いており、常に世界を正そうとしていた。
例え、鏡に映った自分の姿がどれだけ醜いものでも。

高校在学中、表社会にも裏社会にも大きな影響を及ぼしている大グループ『ジャジメント』の幹部候補として渡米。
彼女はその渡米の最中、『人間が滅ぶ最悪の未来』からやってきた男・ミスターKと接触する。
ミスターKの語る滅びの未来が十分に信じることが出来るものだと確信し、彼の仲間である『六人組』に入る。
その後、18歳の春には日本支部の社長として就任。

ジャジメントと敵対している『オオガミグループ』も支配し、二つの組織を統合。
こうして、紫杏の『世界征服』は成功し、最悪の未来を回避するための『世界支配』を開始する。
燃料や食糧問題から生まれる人間同士の滅びの戦争を、世界人口の大半を殺すことで世界を維持する。
そんな『一撃計画』を実行した。
その後、ほどなくして暗殺される。
しかし、『六人組』は『一撃計画』を実行するだろう。

六人組としての彼女は、『見ることの出来ない顔も知らない誰かの笑顔』のために動いている。
世の中の不正義を直視し続けたため、自身が幸せになることを諦めている。
暗殺された直後、『自身が体験できない遠い未来をやり直そう』とする意思を以って、聖杯戦争に招かれた。


【方針】
サーヴァントとの接触は避け、マスターを暗殺する。


250 : 神条紫杏&アサシン ◆7WJp/yel/Y :2015/02/24(火) 21:21:21 cvHqRq460
投下終了です


251 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/02/24(火) 21:49:10 gH5lkIMo0
投下します。


252 : レイ・ザ・バレル&ランサー  ◆T9Gw6qZZpg :2015/02/24(火) 21:49:50 gH5lkIMo0

 人が課せられた運命のみに従い生きる、そんな世界であるべきだ。それがレイ・ザ・バレルを支え続けてきた思想であった。
 創れるから創ってみたい、などという冒涜的な欲望を切欠として産み落とされた欠陥品の生命を嘆き、ゆえにその生命の全てを不必要な欲望に溢れた世界の変革に使おうという決意。
 ある意味において、レイの在り方は世界の破滅のためだけに自らの生命を費やした同胞と表裏一体だったのだろう。
 その悲願は、父とも呼ぶべき男に導かれ、友となった少年と共に歩み、遂に実を結ぶはずだった。

――でも違う!
――生命は、何にだって一つだ。だからその生命は君だ、彼じゃない!

 宿敵と言うべき存在に訴えかけられた言葉は、間違いなくレイの心を揺さぶった。
 幾重にも連なる砲撃を受けて自機が大破していく衝撃の中、レイの頭はただ混乱していた。
 持てる全てを世界という舞台に捧げた彼のように生きてきた。それは、正しいのではなかったのか。
 己の生涯の土台となった信念を、なぜ今更になって自分は疑ったのか。
 レイが最後の決着を見届けようと思ったのは、自分の本心を改めて確認したいという想いゆえだったのかもしれない。
 既に勝敗の決した戦場を駆け、理想を叶えられない敗者となったレイは父と宿敵の対峙する場面へと辿り着いた。

 父は、理想を諦めていなかった。そしてレイが理想を諦めていないとも信じていた。
 逆転など無理だと誰の目にも明らかでありながら、未だに父は縋りついていた。
 きっと彼は、この先の日々も自らの理想を達成するためだけに生き続けるつもりだったのだろう。
 不必要となった生命を切り捨て、大地と宇宙に亡骸の山を築き上げたこの過程を、彼は何度でも繰り返すつもりなのだ。
 争いは、形を変えながら果て無く続く。父は邁進し続ける。レイは、友はその手に銃を握り続ける。
 一切の脇目も振らず、弱音の一つも許されずに、人々は運命に従う。
 何故なら他の生き方を知らない、知ろうともしないのだから。

 あれほど焦がれたレイの理想は、視界の中で父に纏わりつく呪いへと変質していた。

 この世界の変革を望んだ父は、いつ自らの使命から解放されるのか?
 誰よりも平和を願った友は、いつまで守護者で在り続けなければならないのか?
 憎悪の果てに討ち死にした同胞は、本当にたった一つの可能性さえ与えられなかったのか?
 一度過酷な宿命に縛られてしまった生命は、どれほどの時を経ても救われることなど赦されないというのか?

 結局、憧れた世界は恒久の幸福など齎さない。
 全てが、虚しくなった。
 もう、服従するのに疲れ果てていたんだ。

 気が付いたら、レイは父を撃っていた。
 ようやく自らの願いの本質を見据え、そしてレイは過ちと見なした。
 自分達を培い、突き動かし、蝕み続けた運命は、こうして終わりを迎えたのだ。
 しかし、自由を得たはずのレイの身体はまるで動かなかった。
 敵も味方も幾度となく傷付け、その道程すら父ごと切り捨てた自分に、今更何が出来るというのだろう。
 残り少ない生命で光を求めて、そのために死に往く父を孤独の中に置き去りにしたところで、果たして幸福感など得られるだろうか。
 それくらいならば、最後まで父と寄り添う方が幾らか満足出来そうに思えた。

――でも、僕達はそれを知っている。分かっていけることも、変わっていけることも。
――だから明日が欲しいんだ! どんなに苦しくても、変わらない世界は嫌なんだ!

 嗚呼、変われるなら、変わりたかった。
 しかし新たな明日を掴み取るには、既に時が遅かった。
 もっと早く望まなければならなかったと気付くことさえ、遅過ぎたのだ。


253 : レイ・ザ・バレル&ランサー  ◆T9Gw6qZZpg :2015/02/24(火) 21:51:12 gH5lkIMo0



 槍兵の名を冠する男の眼は、どうしようもなく似ている気がした。
 嘆きと憎しみと悲しみと、負の感情をないまぜにしながらも決して消えない光を宿している。
 このサーヴァントはまるで自分達のようだと、レイはそんな感傷に浸っていた。

「何に替えても成し遂げたい使命……と言ったな」
「ああ。俺には失くなったものだ。お前は持っているのか、ランサー?」
「あるさ」

 明るさなど微塵も無い、重々しくも力強い返答。
 その声色さえ、一心に使命感に駆られていた自分自身を思わせた。

「ラダムを全て倒す。俺の生命は、全て奴等を消し去るためだけのものだった。それを果たすためなら、俺は何とだって戦ってやる。俺がまだ、皆を覚えていられる内に」
「覚えて……?」
「戦う度に、記憶が無くなっていくんだ。確かにこの世界に生きていた人達の顔も名前も、俺だけが分からなくなる。俺にとっての思い出が、いつかただの歴史でしかなくなる。これが、俺の得た力の代償だ」
「……そこまでして、お前は勝ちたいのか」
「勝ちたいんじゃない。勝たなければならないんだ」

 彼の語る言葉の根底にあるのは、言うなれば運命の受容だ。
 どれほど狂った運命だとしても、彼は背負うと心に決めている。
 そこにあるのは、既に彼個人の願望ではない。
 他者に押し付けられ、強いられた道と知りながら、それでもランサーは戦うのだ。
 軋んで悲鳴を上げているはずの本心を、無理矢理に抑え込んで。

「……聖杯の力で、過去をやり直そうとは思わないのか? お前の運命が捻じ曲げられる前に帰りたいとは、思わなかったのか」

 投げ掛けた疑問は明確な反発心に基づくものではなく、つい口を突いて出たに過ぎない。
 聞いたランサーは、そのままただ呆気に取られたような表情を浮かべていた。
 何かを胸の内で処理したかったのだろう。ただレイを見つめ返すだけの静かな時間が数秒置かれ、ランサーの答えが示された。

「そういえば、そんなこと…………考えようとも思わなかったな」

 呟いたランサーは、遠い何処かをぼんやりと見つめていた。
 その姿を、レイは哀れだと思った。
 苛烈な運命に呑み込まれ、ランサーは何もかも忘却していく。
 家族や友だけでなく、自らが個としての幸福を願う権利を持つことさえ、既に思い出せなくなりつつある彼は。
 これ以上何を失い、最後に何かを得られるのだろうか。

「……マスター。お前の望みは、」
「少なくとも、お前のようにはなれそうにない」

 哀しい哉、希望的観測は出来そうになかった。
 ランサーの辿る末路がいかなるものか想像するのは、あまりにも容易かったから。
 彼の逞しい肉体は、どこか儚げに映し出されていた。



 何の因果か、全ての束縛から解き放たれ、やり直しの機会を与えられた自らの生命。
 その使い道として、目の前の英霊の歩んだ軌跡を往きたくないとだけは強く思えた。

「俺は変わる、生き抜く。運命ではなく、俺自身のために。これで満足か? キラ・ヤマト」

 レイ・ザ・バレルの抱いた願いは、ひどく単純なものであった。


254 : レイ・ザ・バレル&ランサー  ◆T9Gw6qZZpg :2015/02/24(火) 21:52:10 gH5lkIMo0

【マスター】
レイ・ザ・バレル@機動戦士ガンダムSEED DESTINY

【マスターとしての願い】
課せられた運命以外のために生きたい。

【能力・技能】
格闘戦、銃器の扱いなど軍人としての一通りのスキルを持つ。

【人物背景】
とある実験を発端として創り出されたクローン人間の少年。
将来に希望など持ちようのなかった境遇から、運命に全てを決められた世界を創り上げるべきという考えを持つ。
戦いの果てに理想を叶える一歩手前まで辿り着くも、最後は自らの手でその理想を捨て去った。

【方針】
生き抜く。



【クラス】
ランサー

【真名】
Dボゥイ(相羽タカヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:E 幸運:E 宝具:B
※『罪という名の仮面』解放時⇒筋力:B 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:E
※『永遠の孤独』解放時   ⇒筋力:A 耐久:A 敏捷:A+ 魔力:A 幸運:E

【属性】
秩序・中立

【クラススキル】
・対魔力:E(→B→A)
魔術を無効化する。通常時、『罪という名の仮面』解放時、『永遠の孤独』解放時と段階に応じてランクが上昇する。

【保有スキル】
・自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

・戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

・単独行動:C
頼れるマスターを失い、たった独りになってしまっても戦い続けるためのスキル。
Cランクならば単体で一日の現界が可能。


255 : レイ・ザ・バレル&ランサー  ◆T9Gw6qZZpg :2015/02/24(火) 21:53:27 gH5lkIMo0

【宝具】
・『罪という名の仮面(テッカマンブレード)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
侵略生物ラダムが人間の肉体を改造することで創り出した、生体兵器テッカマン。
相羽タカヤという青年が変身(テックセット)した強襲突撃型テッカマンの名はブレードと呼ばれており、その時の彼の姿が宝具と化した。
ランサーは後述する宝具と併用することでこの宝具を解放し、白き騎士へと肉体を変質させて戦場に赴く。
主な武装は近接戦用の槍・テックランサーと、テックランサーを回収するための鋼線・テックワイヤー。
その他クリスタルフィールドを纏っての突撃技・クラッシュイントルード、そして体内の反物質フェルミオンを破壊光線の如く放出する必殺技・ボルテッカを攻撃手段とする。
宝具解放時は高い性能を誇るが、その代償として三十分の変身制限時間が課せられている。
制限時間を経過して尚テッカマンへの変身を解除していなかった場合、意識が闘争本能に支配され暴走状態となる。一度暴走状態となった場合、原則として再度の正常化は不可能。
なお、暴走の際はスキルに「狂化:C」が付与される。

・『光を創りたる鉄人(ペガス)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:5
全長約三メートルの人型ロボット。ランサーのサポートロボとして機能する。
テッカマンが変身(テックセット)する際はテッククリスタルと呼ばれる結晶体の展開が必要とされるが、テッカマンブレードの場合はこの宝具にクリスタルを内蔵している。
そのため、ランサーが『罪という名の仮面』を解放するにはまずこの宝具を召喚し、内部にランサー自身の肉体を収納、収束させた光によるフィールド形成によって変身を完了させるというプロセスが必要となる。
この宝具もまた内部に反物質フェルミオンを搭載しており、ランサーのボルテッカと合わせて放出することで強化必殺技・ハイコートボルテッカが発動される。
また単体でも戦闘できるよう通常兵器も搭載されているが、総合的な性能は一般的なサーヴァントに数枚劣る。その点も踏まえてか、宝具としてのランクは低い。

・『永遠の孤独(ブラスターテッカマンブレード)』
ランク:A+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
予期せぬ状況に適応するため、テッカマンが第二段階の進化・ブラスター化を成し遂げた姿。
『罪と言う名の仮面』の強化形態であり、テッカマンの能力の更なる飛躍的な向上として幸運以外のパラメータが上昇する。
その他テックランサーの先端から通常時のボルテッカに匹敵する反物質砲を放つことが出来るようになり、ボルテッカは正面方向のみならず全方位に向けて発射することが可能となる。
ただしランサーの遂げたブラスター化は不完全なものであり、肉体の急速な崩壊が伴う事となる。ランサーの場合は全身ではなく脳神経核へと悪影響が一極集中しており、ブラスター化の度にランサーは過去の記憶を失っていく。
記憶喪失の果てに待つ自我の崩壊、そこから繋がる暴走の危険性、またマスターに強いられるバーサーカーに匹敵する魔力消費量も合わせて、解放の際は限度の見極めが強く要求される。

【weapon】
特に無し。

【人物背景】
侵略生物ラダムによって肉体をテッカマンへと変えられた青年。
家族と仲間を奪ったラダムへの憎しみに身を焦がしながら、彼は幾度となく傷付いていく。
かつての大切な人間を自らの手で討つ苦しみ、力の代償として未来も過去も失う哀しみを背負いながら、それでも彼は戦い続ける。

【サーヴァントとしての願い】
全てのラダムを倒す。


256 : 名無しさん :2015/02/24(火) 21:55:02 gH5lkIMo0
投下終了です。
なお、今回サーヴァントのステータス作成に下記のSSを参考とさせて頂いたことを補足します。
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/96.html


257 : ◆HPyFqJcNpk :2015/02/25(水) 02:12:21 MYAFiMKk0
投下します。


258 : ◆HPyFqJcNpk :2015/02/25(水) 02:13:01 MYAFiMKk0
「ああ、退屈だ。なにか、でかいことでも起こらないものかな……」

ここは、あるしゃれたホテルの一室。
エヌ氏は、その部屋のベッドに寝転がっている。
なぜここにいるのかといえば、それはエヌ氏本人にもわからない。
ただ気がつけば、いつのまにかここにいたのだ。

最初の内は大いに戸惑ったが、まとまった金もあり、周りが自分に疑いの目を向けるようなこともない。
それに気付いたエヌ氏は、悠々自適な生活を楽しむことにした。
とはいえ、大きなプールがあるくらいで、ほかにはあまり見どころもない地方都市である。
数日間こそ楽しむことはできたものの、今ではこうしてやる事もなくなってしまい、テレビを見ながら、そんなことを呟いているのだった。

その時、ノックの音がした。
「おや、誰だろうか」
約束などはしていないし、騒ぎが起きているような気配もない。
エヌ氏は頭をひねりながら、ドアをあけた。

「おむかえでごんす」
「わっ、なんだ、おまえは……」
「おむかえでごんす」

ドアの外にいたのは、丸っこくて小柄な身体をした、妙な生き物だった。
エヌ氏が何度もまばたきをして目をこすっていると、そいつは当たり前のように歩いていって、どこかへ行ってしまった。
「わけがわからん。あまりにひまだったものだから、幻覚でもみたのだろうか」
一度ため息をついてから、エヌ氏はドアを閉めた。
なんだか疲れてしまったような気がしたエヌ氏は、部屋に戻ってすぐにテレビと電灯を消して、ベッドに入った。
しかし、なぜか、なかなか眠りにつけなかった。
なにかが起こりそうな予感がして、いくら待っても眠気が訪れてこないのだ。
「こんなことは、はじめてだ。さっきのやつといい、もしかすると……」
ふと、ひらめいた事があった。
これは、一種の予知能力ではないだろうか。そういえば、何となく感覚が研ぎすまされているような気も……。
大きなニュースでもあるかもしれないと、再びテレビの電源を入れたエヌ氏はふたたび仰天する事になった。

「や、これはいったい、どうしたことだ」
画面に映されたのは、これまた妙な生き物だった。
ヒョウタンのような頭に、ブタのような鼻がついている。
体はつぎはぎだらけで、あちこちにバンソウコウが貼られている。
どのチャンネルも、その生き物が大写しになっているのだ。
「いよいよおかしいぞ。さっきまでは故障などしていなかったし……」

「ハ、ハ、ハ……」
大きな笑い声が、エヌ氏の背後から響いた。
びっくりしたエヌ氏が振り向くとそこには、無国籍的な印象を受ける、スマートな体型のハンサムな青年が立っていた。
「だれだ、おまえは。いったい、いつ、どこから……」
「にぶいやつだなあ! おれはおまえのサーヴァントさ」
「なんだって……」
何かを言おうとしたエヌ氏の手の甲に、するどい痛みが走った。
視線を向けると、そこには妙な模様がいつのまにか刻まれていた。
「なんだ、これは。これも、おまえのしわざか」
「そうともいえるな」
「ううむ、普通の人間にこんなことができるとも思えん。すると、宇宙人、それとも悪魔……」
「悪魔! こりゃあケッサクだ。まあ、願いを叶えるという点では、似ているかもしれんぜ」
「願いだと……」


259 : ◆HPyFqJcNpk :2015/02/25(水) 02:13:49 MYAFiMKk0
青年は、いろいろと説明をしてくれた。
ときおり、エヌ氏にはちんぷんかんぷんな単語を交えることもあったが、何とか現在の事情を飲み込む事ができた。

「すごいことも、あるものだ。どんな願いでも叶うとは」
「もちろん、代償は必要だ。人間と英霊のタマシイという……」
「困ったな。魅力的ではあるが、さすがに人殺しとなると……」
「どのみち、生き残れるのは一組だけなんだぜ。なんなら、全員を生き返らせるというのを願いにして、この話をなかったことにしてもいいんだ」
「うむ、まあ、自分の命を最優先するのは、当然だな。とりあえずは、それを念頭におくとしよう、しかし……」

ふと、気になったことがあった。
「……きみのほうも、願いがあったからここに現れたわけだろう。それを簡単に手放すような事を言ってしまっても、大丈夫なのかね」
「なんだい、一度安心したらばかになれなれしくなっちゃって。とはいえ、チーム・ワークは大切だからなあ」
にやりと笑った青年が、少しもったいぶるような素振りをして、口を開いた。

「……実は、この聖杯はどこかがおかしいのさ。だから、本来なら出てくるはずのない、願いなんてものがないおれが召喚されたんだ。
 ま、とりあえず、当分のあいだはキャスターのサーヴァントって役を演じるよ」
「よく分からんが、わたしを裏切ったりするつもりはないということでいいんだな」
「今のところはね」
「おいおい」
「アハハ……男ってのは、ちょっとばかしミステリアスなところがあった方が、魅力があるものさ。
 そうだ、そっちの事情はどうなんだい。自分から進んで参加したって感じじゃないが」
「うん……」
エヌ氏は、腕を組んで考え込んだ。

「それが、まったくもってわからないのだ」
「ふうむ」
青年はまじめそうな表情を作ったが、憂いとか深刻さのような感じはあまりなかった。
「この聖杯は、どうも、曖昧な部分が多いみたいだからな。そういうこともあるのかもしれない」
「そういうものかな」
「とりあえず、休んだらどうだい。眠ってしまえば、案外あっさりと思い出すってこともありそうだぜ」
「そうするかな。なんだか、どっと疲れてしまった」
「見張りなんかはこっちがやるから、安心して眠りな」
「任せるよ……」

電灯が消えて、辺りは真っ暗になる。
暗がりの中で、青年はなにごとかを呟いていた。

「どうものんきで、はっきりしないやつだな。そんなだからおれが呼ばれたのかもしれないが……。
 いや、もしかすると、本当にただの夢だってことも、あるのかもな。
 こいつの目が覚めたらさっぱりここで起こった出来事は忘れてしまって、いつもの生活に戻っているのかも。そして、おれも消える……。
 そうでなかったら、まあ、こいつと一緒に戦うことになるのだろうな。
 ふたつにひとつか。さて、どっちになるか……」


260 : ◆HPyFqJcNpk :2015/02/25(水) 02:14:51 MYAFiMKk0
【クラス】
キャスター

【真名】
ロック@手塚治虫作品

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具C

【属性】
中立・中康

【クラススキル】
陣地作成:-
通常の陣地作成スキルは保有していない。
キャスターが存在する場所が即ち彼が役柄を演じる舞台である。

道具作成:D
拳銃程度なら融通できる。

【保有スキル】
変化:D
姿を変える能力。
このランクでは外見の大部分を変化させる事は出来ず、変装上手(女装含む)程度に留まっている。
その真価は後述の宝具によって発揮される。

【宝具】
『輝ける星の名優(スター・システム)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自身

ロック・ホーム、間久部緑郎、その他数々の人物は外見と名前を共有し、様々な世界に存在している。
時には主役、時には悪役、記者、科学者、マフィア、エトセトラエトセトラ。
それらの人物は決して同一人ではあり得ないが、いつしか『ロック』という何者でもないキャラクターが確立されるに至った。

キャスターはいずれかの『ロック』を演じる事で、その能力や性格、使用した道具を再現する事ができる。
ただし、極端に知名度が低かったり存在を無かった事にされたりしたものに関しては完全に再現することはできない。六本指とか。

【weapon】
ムチ、銃など。

【人物背景】
手塚治虫の描くマンガ作品に度々登場するキャラクター。
初出は1949年の『少年探偵ロック・ホーム』。
初期では少年のキャラクターであったが、中期以降は主に成長した青年の姿で活躍している。
手塚が劇画の影響を受け作風を変容させると共に善役のみならず悪役キャラクターにも起用されることが多くなり、手塚作品の名脇役として人気を博す。

今回召喚されたのは固有の背景を持たない『ロック』という存在である。
外見・性格的には青年期の悪そうなロックに近いが、宝具によって変化し得る。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。
今のところは『聖杯戦争に召喚されたサーヴァント』として、それらしく振る舞うつもりでいる。


261 : ◆HPyFqJcNpk :2015/02/25(水) 02:15:23 MYAFiMKk0
【マスター】
エヌ氏@星新一作品

【マスターとしての願い】
不明。

【能力・技能】
不明。

【人物背景】
星新一の描くショートショートに度々登場するキャラクター。
『エヌ氏』というのは単なる記号のようなものであり、固有名ではない。
男性で、年齢はさまざま。
作品によって普通の会社勤めだったり泥棒だったり宇宙飛行士だったり未来人だったり発明家の博士だったりするが、多分同一人物ではない。
似たような存在に『エフ氏』や『アール博士』などがあるが、最も知名度が高いのはエヌ氏だと思われる。
マスターとして参加したのがどのエヌ氏であるかは不明。

【方針】
特に決めていないが、とりあえず死にたくはない。


262 : ◆HPyFqJcNpk :2015/02/25(水) 02:15:42 MYAFiMKk0
投下を終了します。


263 : ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:34:18 347En2..0
投下します。


264 : 暁美ほむら・イマジネーター ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:34:48 347En2..0

……私は夢を見ていた。

そこで私は蝶になっていた。
夢の中で私はひらひらと翅を羽ばたかせていた。
その感覚はとても楽しくて、心ゆくまで蝶であり続けた。

けれど、目を覚ますと私は私であって、蝶ではなかった。
私に翅はなく、羽ばたくことはできない。
それでも夢を見ている間、私は紛れもなく蝶だった筈なのだ。

同時に、思った。
もしかしたら私が蝶の夢を見ていたのではなく、
蝶が私になった夢を見ているのかもしれない。

蝶になった夢を私が見ていたのか。
私になった夢を蝶が見ているのか。
きっと私と蝶との間には区別があっても絶対的な違いと呼べるものではなく
そこに因果の関係は成立しないのだろう。





265 : 暁美ほむら・イマジネーター ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:35:30 347En2..0




意識に靄がかかっていた。
焦点が合わないレンズを通して世界を見ているかのよう。
ぼんやりと輪郭が歪み、カタチが溶けていく。

ここはどこなのだろうか。
答えは知っているのに、問いたくなった。
それはきっと不安に似た浮遊感が心を席巻していたから。

おかしな話だとは思う。
やるべきことも、これからやることも、どうしてここにいるかも、全部分かっている筈なのに何故だかヴィジョンが浮かばないのだ。
かといって閉塞感がある訳ではない。展望自体はあるのだ。ただ思い描くこと全てにリアリティが欠けている。

これまでのこと、これからのこと、どちらからも私のイマは切り離されている。
それぞれの事柄ははっきりしているはずなのに、繋がりが感じられない。
過去とも未来とも断絶されたイマを生きている。どうしてだろう。そんな筈ないのに。

私は頭を抑えながら、コップに注がれた水を飲み干した。
冷たい感触が喉を通り抜けていく。冷たい水が私という存在に溶け合い、そして消えていく……

飲み干すと「ん」と声が漏れた。
喉が渇いている訳ではなかった。けれどその、輪郭を撫でられるかのような感触はありがたいのだ。
こうして冷たい感じている自分は確かにいる。
それは現実のものなのだ。ここにいるのは確かに自分で、自分は確かにここにいる。

そんな当たり前のことが、今日は何故かありがたい。
普通に歩くだけでも雲の上を歩くかのような(無論そんな経験などない)ふわふわとした、奇妙な浮遊感がこびりついて離れない。
今立っている場所はハリボテで、私はそのことに気が付いていない。そんな感覚があった。
それでいて漠然とした不安だけは抱えていて……、

ともすれば次の瞬間には「現実」なんてものは消え去ってしまうかもしれない。
足場を踏み外した私はどこか別の場所に放り投げられ、私という存在自体がなかったことになる。
そんな馬鹿馬鹿しい妄想がどうしても振り払えない。
いやそれを妄想だといえるくらいには、私は私である筈なのだ。

けれど、その私に対して現実味を持てない。
ここにいるという感覚自体が、本当のようでもあり、嘘のようでもあり……判然としない。

私という存在がひどく遠いもののように感じられた。
矛盾した表現だ。だって、それを遠いものと感じるものこそが私であり、私はここにいるものだからだ。

でもじゃあ私はどこにいるのだろう。
こことはどこなのだろう。
形而上の問いかけ。思弁的で意味のない疑問。それは分かっている。
でも分からない。分かっているはずなのに、でも答えることはできない類の問い。

あるいはこれは夢?
でも、だとしても、私は夢から醒める方法が分からない。
なら現実と同じこと――そう思おうとしても、そもそもこの現実が不透明で、曖昧な……


266 : 暁美ほむら・イマジネーター ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:35:52 347En2..0

「イマジネーター」

私は頭を押さえながら呼びかけた。
声ははっきりとしていて、そのことに安堵を覚えると同時に、違和感が拭えなかった。
これは私の声? その筈だ。その筈なのに。

記憶が曖昧な訳ではないのだ。
聖杯戦争という場だって理解している。
だから己に与えられたサーヴァントを呼んだのだ。

「ほむらちゃん」

彼女は私より少しだけ齢が上で、近くに立たれると見下ろされる形になる。
快活な笑みを浮かべる少女だった。彼女こそが私に与えられた従者であり、力だった。
それを持ってして、願いを叶えろと言う。

願いなんて……そんなもの、もう私には。
何もない筈だった。
魔法少女たちは既に救われた。まどかに――円環の理に導かれ、魔女と化すことはなくなった。
それを私は受け入れた筈だった。
理に則って再構成された世界で、魔獣との戦いをただ漫然と繰り返す日々を送っていた。

その筈だった。
その記憶ははっきりとしている。
だからこんな場所からはとっとと抜け出すつもりだった。

でも、どうしてだろう。
その確かな筈の意志が、どこか遠い、まぼろしのようなものに感じられるのは。

それが私である筈だ。
暁美ほむらという名が意味する、私。
それ以外の私なんて、ある訳がない。

でも、私って……

「どうかしたの?」

イマジジネーターが心配そうに問いかけてくる。その瞳はこちらを気遣う色があった。
その瞳を見上げながら、私はふと問いかけた。

「ここは――現実?」

それとも夢?
そんなことを聞いた。
馬鹿みたいな質問だ。私らしくもない。

だが、同時に思いもする。
きっとこの質問に答えられる人は、どこにもいないと。

けれど……

「うん、そうだよ。ここは現実だよ」

けれど彼女は迷うことなくそう言ったのだ。
イマジネーターは、園村麻希である筈の彼女は微笑みを浮かべている。
どこまでも綺麗で、完成された、理想の微笑みを……






267 : 暁美ほむら・イマジネーター ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:36:12 347En2..0



ある日、私は興味深い話を読んだ。
神様から贈られ、人類に災厄を齎した女の人の話だった。
パンドラ、と彼女は呼ばれていた。

その女の人が持ってきた匣にはありとあらゆる災厄が詰まっていた。
それを開けてしまったがために、人類は苦しみを味わうことになったという。

でもただ一つだけ、匣の中に残ったものがあった。
最後に残った災厄はぎりぎりのところで外に出ることを免れた。

最後に残されたものが何であるか、それは一言ではいえない。
曖昧な言葉で、色々な風に考えることができるからだそうだ。

最後の災厄を、ある人はこう解釈していた。
それは“予兆”である、と
これから何が起こるかが分かってしまうこと、それが最も大きな苦しみであると。
それが分からないから人は生きていけるのだ、と。

またある人はこう解釈していた。
それは“希望”であると。
そんなものが、“希望”が残ってしまったから、人はこれからのことに絶望できなくなった。
これから先には苦しみしかというのに、でも希望が残されてしまった。
だから永遠に人は苦しむことになる。諦めることができず、ずっと……

どちらが正しいのか、私には分からなかった。
でも、もしかしたらこれは同じことを言っているのかもしれない。
そうも思った。

“希望”も“予兆”も、つまるところそれは“未来”を意味することで、
“未来”は誰にも手の届かないところにある。
“未来”に手を伸ばすには“想像力”を羽ばたかせるしかない。

だから私は“想像力”こそがパンドラの匣に残された、あるいは残ってしまったものなのだと思う。
そんなものがあるから、私は蝶になることを夢見てしまうのだろう……


268 : 暁美ほむら・イマジネーター ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:37:19 347En2..0



【クラス】
イマジネーター

【真名】
園村麻希(あるいはその理想にして魔王パンドラ)

【ステータス】
(理想)
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力B- 幸運C 宝具D
(魔王パンドラ)
筋力A 耐久A 敏捷D 魔力A 幸運A 宝具B
(そのむらまき)
筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力E- 幸運E- 宝具A+

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
・イマジネーション A
空想具現化(マーブルファンタズム)を為し遂げる力。
この世には決まりごとなど本当は何もない。すべては 不確定で、どんな事だって『不自然』なことはない。
鳥が空から落ちることもあるし、四月に雪が降る事だってある……

【保有スキル】
・魔術 D
ペルソナ使いとして魔術を操る。
使用魔術はペルソナに依るが、どれもさして威力はない。

・自己暗示 B
自身にかける暗示。精神攻撃に対する耐性を上げる。
また彼女はこのスキルにより下記のスキルの存在を忘却している。

・夢を見る人 -
全ては私が見た、ただの夢……
ステータス表示を宝具『マキ』発動時のものに固定する。
このスキルは真名が発覚するまで表示されない。

【宝具】
『私の夢(マキ)』
ランク:D 種別:対私宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
……本来の園村麻希は病室で寝たきりの少女に過ぎない。
元気に友達と遊び青春を謳歌する……全ては少女が抱いた夢。
ペルソナを行使しサーヴァントとして戦う少女は本当のイマジネーターが抱いた「理想の自分」である。
彼女は園村麻希のシャドウに過ぎず、イマジネーターはただ夢を見る。

『胡蝶の夢(パンドラ)』
ランク:B 種別:対私宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
園村麻希が持つ最悪の人格。
それはグロテスクな外見をした醜悪な化け物である。
しかし。それもまた彼女なのである。彼女の顔の、一側面。
それは醜悪な化け物であると同時に――彼女が夢見た蝶、あるいは彼女を夢見る蝶でもあった。
何よりも美しく、綺麗な……

己の真実を知り、絶望し、全てを葬り去ろうとした時にそれは姿を表す。
それはかつて禁断の匣を開け、世界に災厄をばらまいた女の名を付けられた。
パンドラ、と。

『楽園の扉(デヴァ・システム)』
ランク:A+ 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ディメンジョン・ヴァリアブル・アクセラレーター・システム。
元々はセベクが開発した空間転移装置。それが園村麻希の想像力と同調することでもう一つの世界を創り上げた。
イマジネーターの空層具現化はこの宝具に依るものである。
そのコアは『パンドラ』と同化し、守っている。


269 : 暁美ほむら・イマジネーター ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:37:34 347En2..0

【weapon】
・ペルソナ
もう一人の自分。神や悪魔の姿を取って現れる。
「ペルソナ様」と呼ばれる儀式(イニシエーション)を行い、フィレモンの前で自分の名前を答えることができた者だけが行使できる特殊能力である。
マキは「マソ」「ヴェルザンディ」といったペルソナを行使する。
回復魔法に優れているが、反面攻撃力に欠ける。

・銃、弓
マキが扱う武器。
ハンドガンなどを好む。

※どちらも理想のマキしか扱うことができない。
パンドラは武器など必要としないし、本当の園村麻希は寝たきりで起き上ることもできない。

【人物背景】
「女神異聞録ペルソナ」のヒロイン……にしてある意味で物語の元凶。
体が弱く、1年前から御影総合病院に入院している。美術部所属。
が、街の異変後、別人の様に明るく元気な姿で主人公たちの前に現れる。
主人公たちはある者の手によってパラレルワールドに飛ばされ、その麻希は異世界の彼女だったのだ。
出会って以降はペルソナを使いこなし、主人公らと共に戦う。
そして街の異変の黒幕を追い詰めるが……

主人公たちが訪れた世界とは本物の園村麻希が描いた「理想の世界」であった。
全てが彼女にとって都合のいい、心地よい世界。単なる想像の産物が、如何な運命が具現化されてしまった。
彼女は将来への不安と入院で自分だけが取り残されているという孤独感から、大きな心の闇を抱えていた。
結果として「理想の世界」と「理想の自分」を生み、そうして生まれた自分の一つが「最悪の自分」となって世界を滅ぼそうとした。
最後は自分と向き合い、己の影を認め、少女は少しだけ前向きになった。

【サーヴァントとしての願い】
(理想)特にない。元より彼女そのものが「願い」である。
(パンドラ)楽園を、何も存在しない楽園を創り上げる。
(園村麻希)???

【マスター】
暁美ほむら

【マスターとしての願い】
この世界からの帰還(と本人は思っている)

【能力・技能】
・魔法少女としての力。

【人物背景】
「魔法少女まどか☆マギカ」の登場人物。
時間を操る能力と銃火器を駆使して戦う。
時期としてはTV版ED〜叛逆のどこか。

【方針】
この舞台を調査し、そして……


270 : ◆Ee.E0P6Y2U :2015/02/25(水) 11:37:59 347En2..0
投下終了です


271 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/25(水) 12:21:58 m4qhxSOU0
>>198
みくにゃんが聖杯戦争に参加するって本当ですか、みくにゃんのファン続けます。
魔力的な意味では完全活用無理ゲーコンビですが、性格面では割と好印象ですね。
十全に活用するには魂食いもしなくてはいけない点がどうなっても不安材料になりますね。

>>205
まーた、信用してはいけない人を信用しちゃうのか、ニーサンは。
どう考えても空中分解後の裏切りフラグしかない。
手頃な美少女がいたら直ぐに乗り移りそうなの、不憫としか言い様が無いですね。

>>215
まずは、プリキュアってこんなにも重かったのかと、驚きの眼ですね。
両者共に、孤独に晒されているからこそ悲哀が強くて、儚い。
聖杯に縋る程に追い詰められたゆりさんの明日が見えません。

>>228
雰囲気的に、この擬似母娘、不幸になって暴走しそうで怖いですね。
レノアさん、ガチで決意固めたらどこまでも一直線だから色々と拗れそう。
身体の弱さもあってヒナミちゃんの寂しさがマッハ。

>>234
答えを求める両者が、聖杯を取ることで何が獲られるのか。
寄り添うか、それとも離れるか。
選んだ答えが正しいとは限らない中で、どれだけ足掻けるのかが気になる二人ですね。

>>241
真実が歪められた者同士、そこはかとなく悲しさが漂っていますね。
『我慢のできない大きな子供』という部分が、彼らの生き様を証明しているようで。
自ら闇に飛び込んだ彼らに迷いはないでしょうねぇ。

>>251
生きることに嘘も真もないって気づいたレイと生きることを忘れかけてるDボゥイ。
どちらも、待っている人がいるけれど、背を向けてしまったことに何処か物悲しさを感じますね。
運命に縛られた者が何を得て、何を失うのか。どう足掻いても絶望しか見えません。

>>257
手塚治虫作品×星新一が来るなんて思いませんでしたね。
キャスターの能力である、人物の再現がこれまた面白い。
まるで無貌の神みたいですが、うまくエヌ氏をサポートできるのか。

>>263
うわぁ、懐かしい。当時はタルカジャの意味も知らず、ダメージが全然入らないって泣きながら戦った覚えがあるパンドラさん!
実際、自分の夢を世界に具現化しているって意味では共通してますね、この二人。
理想の自分を求めていた二人が聖杯戦争でも、まだ追い求め続けるのか、それとも本当の願いに気づくのか。


そういえば、誰かは知らないですけれども、wiki編集してくれてありがとうございます。
すごく助かりました。

では、投下します。


272 : ココ・ヘクマティアル&ネゴシエイター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/25(水) 12:24:00 m4qhxSOU0
「いやいや〜〜〜〜! まっさか、ファンタジーな世界観に私が巻き込まれるとはね!!!」
「……その割には全く怯えてないのはどういった要件かね。
 もしや聖杯戦争が怖過ぎて、狂ったと言い張るのかな? いやはや、美人の狂う様は見苦しいからやめておいた方がいい」

夜の帳が下りる頃。
一組の男女が新都のホテル最上階にあるレストランで食事をしていた。
女性は、ワイングラスを傾け、男性は黙々と皿に盛りつけられた子羊のソテーを口へと放り込む。

「おいおい、私がそんな命が懸かった戦場でドンパチするぐらいで狂うと思うか?
 相互理解が足りてないなぁ、全くもう」

女性――ココ・ヘクマティアルはそれはもう笑顔だった。
ニンマリ笑顔の五倍増し、大層に身振りで表すぐらいには上機嫌である。
プラチナブロンドの長髪を振り回し、碧眼はぎょろぎょろと動く。
有り体に言ってしまえば、気持ち悪い。

「そりゃあ、怯えた所でどうにかなるはずもないし? 
 ま、商談前に巻き込むんじゃねぇ、せめてオフの時にしろクソッタレって言いたいのも山々なんだけどさ」

粘ついた笑みのまま、自分に対して不躾な発言をしたサーヴァントに対して、ココは口をへの字に曲げて抗議する。
くるくると頭を回しながら笑う姿は見かけの年齢よりも幼く感じさせる。
天真爛漫、と称されるだろう彼女は、むやみに内面の闇をひけらかさない。
この街が紛争地帯のように、銃弾が飛び交う荒れ果てた世界へと変貌しない限りは、今のペースを崩さないだろう。

「笑顔は大事だと思うんだ〜〜〜、ふへへっ」
「うむ。まずは、その頭の中身を掃除してから出直してきたまえ。何、心配はいらない。
 今なら、新庄君と私のラブラブ記念日二百五十一回目大サービスで、佐山銀行がトイチで治療費を負担しようではないか」
「パース、信用出来ないでーす」
「嘆かわしい。私程信頼できるサーヴァントはおらんよ? 残念過ぎて、子羊のソテーが泣いているんだが」

ぺらぺらと口上を並べるココに対して、サーヴァントである彼――佐山・御言はやれやれと身振りを加えて頭を掻き上げた。
一房だけ白く染まったオールバックの髪に、きっちりと着用したスーツ。
これだけを見れば、何処ぞのヤクザにしか見えないが、全く持って違う。
もっとも、懇意にしている家はどう見てもヤクザなのは別の話だ。


273 : ココ・ヘクマティアル&ネゴシエイター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/25(水) 12:24:35 m4qhxSOU0

「それで、方針は?」
「もち、聖杯狙い」
「嘘をつくのはやめたまえ。貴方の発言には真剣味が感じられん」
「ですよねー」

そして、明日の予定を聞くかのように、腹の探り合いが始まった。
聖杯戦争に参加するからには、マスターとサーヴァントの相互理解がどうしても必要である。
彼らは真っ向から戦って勝つタイプではない。
頭を回し策謀を練って、確実性を高めてから動くタイプなのだ。
その為には、まずは互いを知ることで、【底】を知ることから始めなくてはならない。

「でも、聖杯が欲しいのは事実。万物の願いを叶える黄金の器、燃えてこない?」
「燃えているのは貴方の頭の中だと思うがね」
「そうさ、私の頭はいつだって燃えている。戦場は、魂を燃やして生き様を散らす墓場みたいなものだ。
 私みたいなか弱い女性は気張ってないと、即座に死んでしまう」
「その意見には賛同するが、唯一つだけ――否定したい部分がある」
「言ってごらん?」

佐山は一息ついて、一言。

「か弱い女性だって? それは質の悪いジョークかね? だとしたら、お笑い芸人の才能はないから即座にやめたまえ。
 貴方のジョークは面白くない、もっとウイットに富んだ言語を学んで、新庄君好き好き大好き講座を十万回見て出直すことを薦めよう」

ストレートの暴言をココにぶつけた。
だが、ココもやられっぱなしでは収まらない。

「はぁ、こんなにも麗しき女性から放たれたジョークが通じないなんて。それとも、日本人には通じないジョークだったかな? それは申し訳ないことをした。
 その齢で白髪があるお爺ちゃんにはもっと優しい日本語を使うべきだったかな?」

暴言には暴言を。
やられたらやり返すといった信条を持つココからすると、佐山に言いくるめられるのは当然、拒否である。

「どうやら、私は喧嘩を売られているらしい。よろしい、その安い一文にもならない喧嘩、買おうではないか!」
「フフーフ、生憎と私はそんじゃそこらの安いマスターじゃない!」
「ならば、言わせてもらおう! 私もそんじゃそこらのぼんくらサーヴァントではない!」

ああ言えばこう言う。まるで、小学生のように意地を張り、顔を強張らせていた。
最初は優雅に振舞っていた二人も、いつのまにかに声を荒らげ聞くに耐えぬ罵倒を繰り広げている。
そして、そうなると必然に――。


274 : ココ・ヘクマティアル&ネゴシエイター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/25(水) 12:24:51 m4qhxSOU0

「……危うく追い出される所だった」
「些か、品が欠けていたようだね、私達は」

――店員に注意される。
聖杯戦争参加者のサーヴァント、マスターであっても社会常識から外れることをすると、咎められるのだ。
もっとも、肩をすくめて笑うココ達に反省は全く見受けられないが。

「ともかく、このまま煽り続けても埒が明かない」
「そうだねぇ。おふざけもここまでにして、真面目に話そうか」

一変。二人の纏う空気に緩みがなくなった。
鞘から抜き放った日本刀のように、輝きを伴った鋭さが互いの双眸に宿る。

「サヤマ。聖杯の存在、信じれる?」
「半々といった所か。この身がサーヴァントである以上、頭ごなしに否定はしないよ。
 ある程度の奇跡は叶えて然るべき。ただし……」
「ただし?」
「願いとは――自分を織りなす思いの詰まったものだ。そんな大切な願いを安い奇跡に頼って叶えるなど、失笑ものだね」

佐山は理想を抱いて前へ進むことができる男だ。
夢を説き、最良のハッピーエンドを選べる胆力もある。
しかし、その理想は自分の手で叶えるべきと彼は考えていた。
奇跡は大いに結構、素晴らしいものだ。けれど、その奇跡に縋って叶う程度の願いなど、持ち合わせているのだろうか。
否である、断じて彼はその主張をはねのける。
誰かの手を借りることはいいが、最初からそれを当てにすることは弱さだ。
人間は必ずしも強くあらねばならない、とまでは言わないが、少なくとも自分はその範疇に入らない。

「否定の論理はまだある。その聖杯が必ずしも、何の狂いもなく願いを叶えてくれる保証はあるのか。
 加えて、未だに【裁定者】が現れないことが不信を煽っている」
「不在なのかもしれないって考えは?」
「ありえん。【裁定者】無き聖杯戦争など、何の制限もないではないか。
 このモラトリアム期間は、【裁定者】のことを忘れて日常を楽しめという計らいだと予測はしているが、どうも、ね」

正確に言うと、まだ聖杯戦争は始まっていない。
今は、割り振られた役柄と日常生活に慣れろ、というメッセージと佐山は解釈する。


275 : ココ・ヘクマティアル&ネゴシエイター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/25(水) 12:25:19 m4qhxSOU0

「少なくとも、私は思わないね。もしも私が聖杯を渡す裁定者ならトラップをしかけて掠め取る」
「フフーフ、同意見だ。勝ち残った一組にはいどうぞーって聖杯を渡す優しい裁定者なら、嬉しいけれど……ありえないよねーっ」

高みから見て、嘲笑っている【裁定者】がいることぐらいココ達は理解している。
それが、何よりも鼻持ちならないのだ。

「そもそも、よくもわからない街にいきなり放り込まれて、聖杯戦争のルールを勝手に頭に流されて。
 それで、最後の一人になるまで殺し合えって言われても困る。マナーがなってないぞ、【裁定者】!」

ぷんすことじたばたしながら、ココはグラスに残っていたワインを一気に口元へと運ぶ。
ぐいっと一杯、濃厚なアルコールと果実の味が口内で弾け飛んだ。

「最初にやるべきことは信頼性の構築から始めるべきだというのに。
 ともかく! 私達に与えられた信頼が足りない! 武器を売る時だってそうだ、どの商品が高く売れるか。この相手は何を是としているか。
 入念なリサーチをこなすことで、初めて商売は成立するんだ」

この問いが解決されない限りは、聖杯が手に入るといったことは到底信じることができない。
故に、彼らは聖杯に懸ける奇跡が真っ当に叶うとは思わなかった。

「とりあえず、現状は様子見。これで決まりのようだね。
 それでは今後の方針だが、まずは、情報を収集。他者との【交渉】に重点を置くことを進言する」
「いいんじゃない? けどさ、サヤマ――交渉できるの?」
「無論だ。そもそも、私が今回呼ばれたサーヴァントの座は――ネゴシエイターだ。
 交渉で発揮される異色のサーヴァント、それが私だ!」
「……その割にはパラメーターがそこまで低くないんだね」
「交渉の場に立つには、ある程度の武力が必要だ」

訝しげな視線をぶつけるココに対して、佐山は不敵に笑う。
多種多様の種族、世界の面々と交渉をしてきた彼にとって、この聖杯戦争も一種の交渉なのだろう。
要求をぶつけ、境界線を探し当てる。そして、その先へと踏み出して、自分の意見を押し通す。
正当な理由を直球で投げて、相手をノックダウンさせてこそ、真のネゴシエイターである。

「譲れぬ願いもあるだろうが、ここは一つ、協調といこうか」
「そうだね。今だけは、私達二人だけの軍団だ。名前、付ける?」
「それはもっと人数が集まってからでいいだろう。とりあえず、互いの願いを打ち明けて、此度の議論は終了としよう」
「オーケー。それじゃあ、二人合わせて――」

互いに交渉を生業にする者同士、思う所もあるが四の五の言ってられる状況ではない。
戦わなければならないのなら、戦おう。ただし、その舞台は交渉という得意分野が活きる場所で大いにしようではないか。
両人、グラスを持ち、軽く前へと突き出して誓いを打ち鳴らす。



      「世界平和の為にも」     「世界変革の為にも」


かちゃん、とグラスの小気味いい音が響いた。


276 : ココ・ヘクマティアル&ネゴシエイター ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/25(水) 12:26:22 m4qhxSOU0
    

【クラス】
ネゴシエイター

【真名】
佐山・御言@終わりのクロニクル

【パラメータ】
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:A 宝具:A

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
交渉:A
  あらゆる世界、人種を相手にとって弁論をした彼は、交渉においては無敵と言っていいだろう。
  どんな理屈も無理矢理納得させるスキル。ただし、交渉の結果、戦いになることも多い。

【保有スキル】
カリスマ:A
大軍団を指揮・統率する才能。
全竜交渉部隊、尊秋多学院生徒会で培った彼のカリスマは留まることを知らない。
ただし、留まらなすぎて、よく反抗される。

まロい:E
新庄・運切のお尻を丁寧に、そしてハードに触る技術がスキルに昇華された。
なお、新庄・運切以外には全く通用しない。

戦闘技術:C
幼い頃から鍛え上げた技術の結晶。銃器、格闘、サバイバル技術など精通しているものは数知れず。
様々な敵を相手取る実戦を踏まえて、練り上げたスキル。

不屈:B
どんな逆境でも、決して自分を見失わず前に進める意志。
彼は立ち塞がる壁がどれだけ分厚くても、初志を貫徹するだろう。


【宝具】
『全竜交渉(ゲオルギウス)』
ランク:A 種別:対概念宝具 レンジ:1〜80 最大補足:1人
グローブ型概念兵器。プラスのメダルが嵌める左手用と、マイナスのメダルが嵌める右手用の一対で、メダルは脱着が可能。
概念の増幅や効果を逆転させる機能を持ち、メダルを本来とは逆にはめる事で概念破壊機能を発揮する。

『貘』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
手の平大の猪に似た姿をしている7th-Gの獣。
条件が満たされると【過去】を夢として周囲の人間に見せる能力を持っている。

【weapon】
ゲオルギウス。

【人物背景】
尊秋多学園・生徒会副会長を務める二年生の少年。
“悪役”になる事を望み、両親のしてきたことを追い求める為に、異世界との交渉部隊――全竜交渉部隊のトップに就任する。
ちなみに、服装はスーツ、もしくはブレザーの制服をよく着用している。

【サーヴァントとしての願い】
世界変革――というのは冗談である。
願いとは自分で叶えるものであって、聖杯に託すなどもっての外だ。
ただ、本物の聖杯が自分の手に転がってきたらまあ、使ってやらんこともない。
新庄君のエロい姿を大画面高画質で見れるプロジェクターや、新庄君の等身大フィギュアだったり――以下略。


【マスター】
ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド

【マスターとしての願い】
世界平和。とはいっても、聖杯に託すものではなく、自分で叶えるべき願いだと自覚はしている。

【weapon】
拳銃。

【能力・技能】
ビジネスマナー。
多国語を話せる。
射撃に関してはそれなりの技術。

【人物背景】
武器商人を営む二十代半ばの白人女性。
常に笑顔を絶やさず、交渉の時も大胆不敵。
しかし、武器を売るのは【世界平和の為】と称すなど、謎が多い。

【方針】
死ぬつもりもない、殺人に躊躇はないが、定められたルールに踊らされるのは気に食わない。
まずは情報収集を行うことから始める。
後の方針は、その時に決める予定。


277 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/02/25(水) 12:26:40 m4qhxSOU0
投下終了です。


278 : 名無しさん :2015/02/25(水) 19:12:09 Z5DZlqHk0
・──俺とお前は同期の桜




279 : 名無しさん :2015/02/25(水) 20:00:53 kozCUM5U0
>>278の感想がかっこよすぎて普通に感想するのが恐縮だが投下乙!
NPCに追い出されそうになる主従にワロタw
佐山のスキルの細かいところがいちいちらしくて素敵だ
商人と悪役の掛け合いもテンポよくていいな
この主従はもっと見てみたい


280 : ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:17:56 L/se9e8M0
投下します


281 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:19:36 L/se9e8M0

「もうううぅううぅうう!! 何なのよそれえぇええええぇえ!!」 

 そう言って、紺のジーンズに桜色をした長袖の上着を身に纏った、パーマヘアのケツでかおばさん。
野原みさえは、二十九年の人生の中でこれ以上とないヒステリーを爆発させた。今にも地団駄を踏みだしかねない勢い――訂正しよう、もう踏み出した。

 此処は彩の国さいたまの一都市である、埼玉県は春日部市……『ではない』。
みさえが今怒りを爆発させている場所は、みさえの人生の中で一度だって聞いた事もない場所に存在する都市、冬木市。その街の新都に存在する、一ビジネスホテルの一室だった。
今この冬木市へは、夫のひろしが長期休暇に入った為に、旅行で来た訳ではなかった。その証拠に、この冬木の街には、ひろしや、息子のしんのすけ、娘のひまわりだって存在しない。
――いや、より正確に言うなれば、今この惑星上に、埼玉県春日部市に住んでいる中流家庭の野原家の一員は、野原みさえ以外に存在しないのである。

 まさかこの街が、みさえ達が生活していた世界とは全く異なる世界に存在する街であった、と言う現実は到底みさえには許容出来ない事だった。
そう、彼女は導かれてしまったのだ。英霊と呼ばれる、諸人の信仰と想いで成り立つ神秘的な存在を駆り、如何なる願いをも叶えて見せる聖杯をその手に勝ち取らんとする戦い。聖杯戦争に、である。

「ちょっとアンタ!! アンタ私のサバ、えと、なんだっけ……そう、サーヴァントなんでしょう!? 今すぐ埼玉県春日部市に戻しなさいよ!!」

 グワッ、とみさえは、ひろしが他の女に鼻を伸ばしてる時に見せる表情よりも、鬼気に満ちた顔つきで一点を睨んだ。
――常人が目にしたら目を瞠るだろう。みさえが睨んでいる地点には、形容し難い、まさしく怪物的な姿をした異形の者が風船のように浮かんでいるからである。

「同ジ世界ノ中デ、人間ヲ任意ノ場所ニ送ル事ハ、十全ノ状態ノワタシナラ可能ダ。ダガ、世界ノ壁ヲ超エテ人間ヲ転送サセル事ハ、完全ナ状態ノワタシデモ不可能ダ」

 みさえの脳内に、男の声を編集し、甲高くした様な声が響く。
キャスターなるクラスを割り当てられた、みさえのサーヴァント、『ギーグ』が、申し出をそげなく斬り捨てたとみさえが理解するのに、二秒程掛かった。
脳内に声が響いた時、彼女は顔を顰めていた。この感覚には、慣れない。ギーグは常に、テレパシー――聖杯戦争の参加者は念話と呼んでいると言っていたが、全くみさえは意味をわかっていない――という手段で、彼女に語りかけているのである。

 その怪物は、みさえから見れば、もやしに似た存在だった。
奇妙な体躯であった。みさえの脚と同じ位の太さ、或いはそれよりも細い、華奢と呼べる次元ではない程弱々しい胴体。
この細長い胴体に輪をかけて細いのが、ギーグの手足。最愛の我が娘ひまわりのそれよりも小さく細いその手足に、果たして骨格が入っているのか。ゆらゆらと、触手のようにそれは揺れていた。
胴体と同じ位長い、鞭のような尻尾はうねうねと左右に蠕動しており、人の目を引く。尻尾と同じ程に人の目を引くのが、角の生えた頭部であろうか。
みさえが平手打ちをかましてしまえば圧し折れてしまいかねない程か弱い細首で支えられたその頭部には、よく見ると口がない。
この怪物が常にテレパシーで会話する訳は、ひとえに彼に口と呼べる器官がないからだった。嵌めこまれた眼球には生気と呼べるものがまるで感じられず、感情を読み取るのもみさえには一苦労だった。
極め付けが、その肌の色。長年洞窟で生活を続け、日光を浴びる事無く育ち、進化していった両生類のような、白くて冷たい、不気味な体色。みさえがもやしのようだと思ったワケが、この体色と全体的に細長いフォルム、と言う訳だ。


282 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:20:52 L/se9e8M0


「人間。本当ハオ前ダッテ理解シテイルダロウ。聖杯戦争ノ知識ハ脳ニ刻イ込マレテイル筈ナノダカラナ。コノ戦争ハ、最後ノ一組ニナルマデ戦ウ以外ニ、元ノ世界ニ帰ル方法ナドナイト」

「でもあんたはキャスター何でしょ!? 魔法使いならそれくらい――」

「不可能ダ。ソモソモ世界ヲ超エテ人間ヲ転送サセル事自体ガ、ワタシ……、イヤ、ワタシノ母星ノ技術ヲ以テシテモ不可能ナノダ。ソレニ、人間、オ前ハ勘違イシテイル。
ワタシハ今デコソキャスターノクラスヲ与エラレテイルガ、本来ワタシハ魔術ヲ使エナイ。ワタシガ操ルノハ、『PSI』ダ。シカモソノPSIデサエ、サーヴァントトシテノ今ノワタシハ制限サレテイル。
人間、オ前ガ元ノ世界ニ帰リタイノナラ、コノ戦イヲ最後マデ勝チ残ルシカナイ」

 みさえは言葉に詰まった。実を言うとみさえは、ギーグに言われるまでもなく、聖杯戦争の概略を、理解していた。
理解していながら、敢えて問うたのだ。ひょっとしたら、他の抜け道があるのではないか、と。一縷の望みにかけて聞いては見たが、ギーグは呆気なく、縋るみさえを斬り捨てた。
何かしら望みを見せてくれたっていいじゃない、宇宙人はこれだから……。みさえは沈み切った顔つきで、心中で愚痴を零した。

 何でこんな事になってしまったのだろう。
アクション幼稚園の送迎バスに乗ったしんのすけを見送りした後、卒園した後のしんのすけと、ひまわりの今後を考えていた時の事だった。
しんのすけは塾に行かせても良いのだろうか、いやでもあいつの性格じゃ美人の家庭教師の方が……、でもでもお月謝がかかりそうだし、そう言えばしんのすけは大学に行くのだろうか? 行けるのだろうか?
ひまわりの事も気になる。私に似て美人に育つんだろうなやだ私ったら、私は短大卒だったけれどひまわりはどうなるんだろう、高校を卒業したら働くのかな、幼稚園に入ったらピアノとかの習い事をさせてみようか、でも音楽はお金が……。

 一家の稼ぎ柱のひろしの年収は悪くはない。彼が出世すれば、『出世』すれば、『 出 世 』すれば、なお良いのだが。
だが彼の収入と言う問題を抜きにして、子育てと言う行為はそれ自体に多大な金が掛かる。しんのすけ達が自立出来るよう支援しようとすればする程、金が入用になる。
家計簿は赤くなりつつある一方だと言うのに、それに反比例するように、みさえの体重は黒字に近付いて行く。やだやだと嫌気のさすみさえ。

 ――なーんかドカッと、せめてしんのすけとひまわりの養育費だけでも口座に振り込まれてればなぁ――

 そう考えた瞬間みさえは、埼玉県春日部市から――元いた地球上からその姿を消し、遥かな遠い、冬木の地へと降り立った。
まさに着の身着のまま。大切なものの全てを、元いた世界に残したまま、である。

 突如としてビジネスホテルの一室に飛ばされ、訳もわからず戸惑っているみさえの前に現れたのが、彼女のサーヴァントであるキャスター、ギーグ。
当初はその異様過ぎる姿に悲鳴を上げたが、自らを宇宙からの来訪者――宇宙人だと解釈するのに十分程も待たねばならなかった――だとなのるそのサーヴァントの、根気のある説得で、みさえは漸く我を取り戻した。
そして何故ギーグとみさえは此処にいるのか、そしてこの世界で何をしなければならないのか、それをギーグから細やかに補足された時、みさえは激怒した。
初めてギーグを見た時のような、恐怖から来る感情でもなければ混乱状態でもなかった。純粋に、憤慨していたのである。

 教えられた事柄は、以下の通り。
自分が息子達の将来の為の貯えが欲しいと思ったから、此処に転送された事。
聖杯と呼ばれる万能の願望器――アラジンの魔法のランプみたいだとみさえは思った――を求めて、或いは意に反して、此処へとやって来るものが無数にいると言う事。
そして、この聖杯を入手する為には、聖杯戦争に参加する全てのマスターとサーヴァントを殺害するしか方法がなく、この瞬間からもう中途退場が認められないと言う事。
これこそが、みさえを絶望に叩き落とし、ギーグに対して烈火の如き怒気を浴びせかけた事柄であった。冒頭の場面は、そのやり取りを映していたのである。


283 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:21:39 L/se9e8M0


「ねぇ、もやし……あっ、と。ギーグ?」

「ソノ名前デ呼ブナ。聖杯戦争デ本来ノ名前、真名デサーヴァントヲ呼ブ事ハワタシノ弱点ノ露呈ニ直結スル。今ハ構ワナイガ、ワタシ以外ノサーヴァントト出クワシタラ、クラス名デ呼ベ」

「え? わ、わかったわよ。……で、聞きたい事あるんだけれど……」

「何ダ」

「あなたは、この戦いで、人を殺す事は平気なの?」

「地球ノムシケラヲ殺ス事ニ躊躇イハナイ」

 みさえがある程度は予想出来ていた答えではある。
ギーグが自分が宇宙人であるとカミングアウトした時は、みさえはその事をすんなりと受け入れられた。何分ギーグのこの容姿だ。宇宙人であっても不思議でない。
だがギーグの言葉と態度からは、地球人に対する強い侮蔑が現れていた。進んだ文明の星の住人からしてみれば、地球人など猿も同然、と言う事なのだろうか。本意は、ギーグにしかわからない。

「私には、人を殺す事なんて無理よ……」

 結局、みさえがギーグに対し怒っていた訳は、これに尽きる。
すぐに手が出る程気が短くて、節制を通り越してケチそのもので、見栄っ張りの目立ちたがりで、ダイエット何て全く続かない程の飽きっぽさだが、みさえは皆が認める良識人であり、子供思いの良い母親なのである。
例え元の世界に戻る為とは言え、その目的の為に人を殺すと言う事は、みさえには出来なかった。道徳的に、常識的に、許される事ではない。
それに、人を殺して元の世界に戻った所で、夫のひろしは、最愛の子供達であるしんのすけは、ひまわりは。自分を受け入れてくれるだろうか。
無理に決まっている。人殺しの母親など、絶対に彼らは認めてくれないだろう。その拒絶が、みさえには怖かった。
他の聖杯戦争の参加者にしたら、みさえの抱える悩みなど並一通りのチープなそれなのかも知れない。
しかし、家族を持ち、子供を持つ母親であるみさえにとってこの悩みは何よりも深刻で、至急解決したい出来事なのである。

「ダガ、心配スルナ。人間、私ノクラスハキャスターダ。通常キャスターハ、聖杯戦争デハ弱イクラストサレテイルガ、コノクラス、人ヲ殺シタクナイト言ウ今ノオ前ニハ向イテイル」

「どう言う事?」

「キャスターハ直接的ナ戦闘……ツマリ肉弾戦ヤ接近戦ヲ苦手トスルクラスダ。ワタシモ例外デハナイ。コノクラスハ通常、自ラノ陣地を自分デ作成シ、籠城。侵入シテ来タ存在ヲ叩キ潰ス、ト言ウ待チノ戦イ方ガ定石ニナル」

「えと、つまり……?」

「他ノクラスニ比ベテ、積極的ニ人ヲ殺シニ行ク機会ハ少ナイト言ウ事ダ」

「それを先に言いなさいよ馬鹿ギーグ!!」

 普段しんのすけを叱りつけるようなトーンで怒り始めるみさえだったが、ギーグの態度は冷ややかだった。

「勝手ニ解釈スルナ。キャスターハ自ラ殺シニ行ク機会ガ少ナイダケデ、ソレガゼロト言ウ事デハナイ。先程モ言ッタガ、キャスターハ弱イ部類ノクラスダ。
陣地モ定マッテナイ状態デハ単ナルカモダ。簡単ニ殺サレテシマウ。当然、ワタシモタダデハ殺サレナイ。ソウナレバ、全力デ迎エ撃ツ。
人間、キャスターデアルワタシガ、自分カラ直接戦闘ヲスル事ハナイ。戦闘スル機会ハ少ナイ、ダガ、モシモソウナッタ時ハ、オ前モ覚悟ヲ決メロ。コノ聖杯戦争、逃ゲ続ケルダケデハ、最悪ノ結果ニシカナラナイ」

「最悪の……結果……」

 それはつまり、死である。嫌だった。
家族に拒絶される事も辛いが、それに準じて、いや、同じ程に、死ぬ事は怖かった。死んだら、何もかもが無意味になる。
元の世界での、波瀾万丈だけど楽しい生活が消えてなくなる。頬杖を付きながら、煎餅を齧り昼ドラを見る気怠い一日が味わえなくなる。
しんのすけやひまわりの成長を、見る事が出来なくなる。そんな事、絶対にいやだった。だがその為には、聖杯戦争を生き残らねばならない。そしてそうする為には、ギーグが行ってくれるとは言え、殺人は不可避のものとなる。


284 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:22:31 L/se9e8M0


「……ギーグ……いえ、キャスター」

 みさえの声音が、ドスでも利かせているかの如く低くなる。

「何ダ」

「あんたに言いたい事があるわ」

 ギーグは小首をかしげた。
みさえの方も言葉を選んでいるらしく、沈黙の時間が続いた。そして、深呼吸をする事、数回。みさえはカッと口を開き、捲し立てる。

「――ひょっとしたら、私達が知らないだけで元の世界に帰る方法があるかも知れないから、可能な限りそれを調べる事!!
次に殺しの事だけど、こっちを殺す意図を持った奴らだけを、何とかする事!! そして最後に、しんのすけ――じゃなかった、私の子供と大差ない年齢のマスターは、殺さない事!! サーヴァントだけを何とかしなさい、以上!!」

 ペラペラと早口で、そう告げるみさえ。
それは元いた世界で、聞き分けのないしんのすけに対して強く出る時の調子そのままだった。
人智を超越した力を持つサーヴァント、その中でも間違いなく特異な出自と種族のギーグに対し、しんのすけと同じ感覚で命令を下すなど、肝が大きいのか、馬鹿なのか。

 ギーグは、緘黙を貫いていた。
これまでのように、何処かみさえを見下したような態度で言葉を告げるかと思いきや。ギーグの沈黙の時間は、長かった。
疑問気な顔を浮かべるみさえ。「どうしたの?」と訊ねると、テレパシーが脳内に響いた。

「……オ前ハ……、母親ナノカ……?」

 ギーグの思わぬ問いかけに、面食らうみさえ。私の子供、と言う箇所から、彼はそう考えた様である。

「え、えぇ、そうよ!! 年齢は二十四歳、身長は百五十九cmで、体重は五十二kg!! バストサイズは八十五のF、ヒップは八十二で、近所の人からは広末涼子に似てると評判よ!! どう、参ったかしら!?」

 相手がサーヴァント、しかも、地球の知識に疎い宇宙人である事を良い事に、ここぞとばかりに嘘八百を並べ立てる野原みさえ二十九歳。
驚いた事に、今彼女の並べた情報、一つたりとも真実がない。何処まで自分を脚色する気だ野原みさえよ。

「……ソウカ……」

 それきり、ギーグは黙りこくった。ひょっとしたら、何かしら計画を立てているのかも知れない。
ギーグは人間の姿形から逸脱したサーヴァントである。何を思っているのか、推し量る事はみさえには出来ない。

「(よし、一つたりとも情報を疑ってないわね!!)」

 自分が伝えた嘘の情報を信じている事を、みさえは喜んでいた。それで良いのやら、悪いのやら。


285 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:23:41 L/se9e8M0


 赤い帽子を被った少年が、突然歌を歌い始めた。
それまでの敵が使って来たPSIや超能力など比にならない、正体不明の力を発揮するギーグに。その凄まじい力の差に、少年と、その二人の友達、ロイドとアナは成す術がなかった。
世界を救おうとする幼い子供達が、埋めたくても埋めがたい力量差に、傷付き疲れて行く。彼らの心が折れるのも、時間の問題。そう考えていたギーグ。
そんな中で、少年は歌い始めたのである。気でも狂ったのかと思ったギーグ。しかし、少年の行動を愚かだと馬鹿に出来なかった。
何故なら、少年の歌を聞いたその瞬間に、ギーグの心に、彼の言葉では形容し難い謎の感情が湧きあがって来たからだ。

「歌うのを止めなさい」

 ギーグが少年を制止させようとする。しかし少年は、歌う事を止めなかった。 
赤い帽子の少年に比べて、いかにも頼りなさそうで臆病な、眼鏡をかけた少年。ロイドも歌を歌い始めた。帽子の少年と、同じものだった。

「歌を……止めるんだ」

 それまで三人の少年達――特に赤い帽子の少年に対して丁寧だった口調が、崩れ始めた。
今度は、金髪のツインテールの女の子、アナも歌に続いた。やはり、同じ曲だった。

「う、歌をやめろ!!」

 ギーグに余裕が目に見えてなくなっていた。発揮するPSIの力も、歌のせいか弱まって来ている。

「地球のむしけらども!! 黙れ!! 歌うな!!」

 何だ、この歌は!? 現在のギーグの胸中を占める疑問が、これだった。
聞く度に、心が掻き乱される。PSIを上手く発揮出来なくなる。だが、心から湧き上がってくる、この懐かしく暖かい感じは何なのだ。
初めて聞く、と言う感じのしない曲だった。遠い遠いその昔、まだ自我と言うものが希薄だった時に聞いたような曲。しかし、何処で聞いたのか。それが思い出せない。

 少年達は歌い続ける。ギーグの余裕は、最早存在しなかった。
今ギーグは、自分でも俄かに信じ難い事に、子供達が歌っているこの曲に対して、懐かしくも良い曲だと、思い始めて来ていた。
無意識の内に湧き起って来る謎の感情と、地球の征服を行わねばならないと言う感情が、鬩ぎ合う。

「歌を……やめろ!!」

 今のギーグは、そう叫ぶ事しか出来なかった。

 歌が、佳境に入る。ギーグは、意味のある声を上げる事すら出来なかった。
地球を征服しようと言う意思よりも、心の中から湧き上がる、暖かな感情が、今のギーグを支配。当初の目的と意思を、塗り潰してしまっていた。

 歌が、止んだ。少年達が、澄んだ目でギーグに目線を投げ掛けて来る。
長い沈黙があった。ホーリーローリーマウンテンの洞窟の中に、透明な静寂が緩やかに流れて行く。
ギーグが、赤い帽子の少年顔を向けた。真っ直ぐに、彼の顔を見つめながら、三人の子供達にテレパシーを送った。

「何故、私ガコンナ歌ニ敗レタノダ……。私ハ必ズオ前達ヲ……マタ……イツカ……」

 ギーグが後退する。背後にあるのは、彼の身体の何百倍もある大きさの、マザーシップ。
其処へと乗り込む際にギーグが、最後のテレパシーを子供達に送った。

「ケン!! マタ会オウ!!」

 赤い帽子の少年にそう告げると、ギーグはサッと母船に乗り込む。
そして、ギーグの母星のマザーシップは、上昇を開始した。到底地球の引力を振り切れそうにない形状をしたそれが、ホーリーローリーマウンテンの頂上よりも遥か高くへと飛翔する。

 ギーグの育ての親であるクイーンマリーこと、マリア。そしてギーグ達の星に刃向おうとしたマリアの夫、ジョージ。
二人の曾孫であるケンは、暗黒の大海へと飛び立ったギーグの宇宙船を、ただジッと見つめ続けているのだった。
ケンの口の中には、先程歌った、幼かった頃のギーグをあやす為にマリアが歌った子守唄の名残が、まだ残っている。


286 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:24:46 L/se9e8M0

 ギーグには、理解出来なかった。
何故あの歌に心を乱されたのか? 結局あの歌は何だったのか? あの時自分の心に湧いてきた感情は、何と言うものなのか?
わからない。地球人類を遥かに超える知的水準を持ったギーグ、彼の優れた知性を以ってしても、あの時の出来事と情動が、結局なんだったのか、わからずにいた。

 あの時心に浮かんだ、名状し難い感情の正体を探る。
聖杯なる代物が、本当に願いを叶える奇跡の道具であるなどとは微塵も思っていないギーグだったが、もしもこの胡散臭いものに願う事があるとすれば、これだった。
聖杯に疑問を解消して貰うのだ。あの時の感情の正体を、答えよと。

 ケン達が歌を歌っていたあの時、地球征服をすると言う感情と湧き上がって来た名状し難い感情が葛藤を起こしている最中、自分の育ての親であるマリアの顔が浮かび上がった。
彼女が――もう一人の母が関係しているのか、とギーグは考えもした。実際のところ、ギーグには良く解らない。
だからこそ、ひょっとしたら聖杯ではなく、髪の色も肌の色も体格も違うが、同じ『母』である野原みさえが、この戦争の中で自分の疑問に何らかの形で答えてくれるかもしれない。
ギーグの心を今も掻き乱している、ケン達との戦いの際に、心の中に湧いて出て来たあの暖かさを。

 人間の女性を育ての親とする宇宙人は、心の謎の解明の為、聖杯戦争へと今臨まんとしていた。


【クラス】

キャスター


【真名】

ギーグ@MOTHER


【パラメーター】

筋力E 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具EX


【属性】

混沌・善


【クラススキル】

陣地作成:-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。キャスターは宝具によりこのスキルが消滅している。
と言うよりキャスターは、そもそも魔術師ですらない。

道具作成:‐
魔術的な道具を作成する技能。上記の通りキャスターは魔術師でもない上に、普通の科学的な道具を作る事にも長けていない。


【保有スキル】

宇宙人:EX
地球外の惑星の文明で育った者。ランクEXは完全な宇宙人、太陽系の外の惑星の住人である。

宇宙人の精神:B
地球外の文明で育ち、培われた精神。同ランクまでの精神干渉を無効化し、かつ他人の痛みも感じない、精神的なスーパーアーマー能力。
しかし人間の女性に育てられた時期があるキャスターは、本来のランクからダウンしている。

PSI:EX
魔術とはその起源を異にする超能力。神秘を必要としない特異現象。
テレパシーやテレポーテーション、次元スリップによる仕切り直し。
身体能力の向上や身体の治癒に毒や麻痺などの状態異常の発生、対魔力で軽減出来ない各種属性による攻撃など、使用法は多種多様。
キャスターは本来惑星規模で影響を与えるPSIの力を持っているが、聖杯戦争に際し制約を負っている。


287 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:25:19 L/se9e8M0



【宝具】

『地球のむしけらには知覚出来ない攻撃(攻撃の正体が掴めない)』
ランク:B 種別:対人〜対城宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1〜100
キャスターの発揮するPSIの特殊な運用方法。キャスターの野望を阻止しようと現れた、PSIを操る少年達ですらどのような攻撃をされたのか解らなかったエピソードの具現。
常時発動型の宝具で、キャスターの意思次第で自由に解除は可能。
コレの発動した状態でPSIを発揮すると、機械的な唸り声を空間が上げ始める。
この時相手は、『攻撃に直撃するまで、キャスターがどのようなPSIを発動したのか、そしてその発動したPSIを如何なる感覚を以ても知覚出来ない』。
最低でもAランク相当の千里眼がなければ攻撃は目視出来ず、それがなかった場合には、相手は直感で回避か防御をするしかない。

『我が母星が生み出した鋼鉄の船(マザーシップ)』
ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:1〜1000以上 最大補足:1〜1000以上
キャスターの母星の文明が作り上げた、極めて巨大な宇宙船。ランクEXと言うのは、外宇宙の技術であるが故のランクEX(規格外)であるから。
キャスターは自らの極めて低い陣地作成スキルを、この宝具で補っている。
この宝具を発動させると、それまでキャスターには扱えなかった使い魔召喚(作成)を行う事が可能である。
嘗ての地球侵略の尖兵であるスターマン一族や、自らの文明が生み出したロボットや生物兵器などを無限に召喚させる事が出来る。
破壊しようにも、地球外の進んだ文明の産物であるマザーシップの破壊は尋常の事ではなく、Aランククラスの対城宝具をぶつけたとしても持ち堪える程。
強力な陣地であるのだが、本来的には聖杯戦争の範囲を超えたこの宝具の発動には、令呪二区画の消費が必要不可欠。
加えて一度発動してしまうと、その余りにも巨大な姿の為に目立ってしまうと言う欠点が不可避であり、場合によっては他参加者からの的にもなってしまう。
この宝具を使う事で消費される魔力は、幸いにも最初の発動時のみ。発動してしまったのならば、早急に全参加者を始末する必要がある。


【weapon】


【人物背景】

 西暦1998年、地球を征服せんと来襲した宇宙人。高い文明水準の星からやって来たようである。
正体不明の超能力攻撃を駆使する生物で、その規模は地球規模で、様々な場所で、ポルターガイスト現象、正体不明の錯乱現象、死者のゾンビ化、行方不明などを引き起こさせる程。
ホーリーローリーマウンテンの山頂付近の洞窟にマザーシップを停泊させ、地球支配の機会を虎視眈々と狙っていた。
が、ギーグの前に現れたケン、ロイド、アナの三人の子供が、彼の野望を挫く。彼を打ち倒したのはバットやナイフなどの暴力でもなければ、PSIなどの超常的な力でもない。
誰にでも歌えるような、何の変哲もない歌だった。歌に心を惑わされたギーグは、自らの敗北を認め、逃げるように地球を去っていった。
彼の正体はニ十世紀の初頭、地球から拉致した人間のカップル、ケンの曽祖父にあたるジョージとその妻マリアが育てた宇宙人の子供が成長した姿。
ギーグの母性の一族はこの二人に子守り役を命じ、育てる事になったのだが、拉致から二年経過してから、ジョージだけが地球に戻される。
戻ったジョージはPSIを初めとした奇怪な研究にのめり込むようになる。母星に永遠に帰る事がなくなった、妻のマリアを地球へと戻す為に。
ギーグが心を乱された曲の正体は、嘗てマリアが幼いギーグに歌って見せた子守唄である。


【サーヴァントとしての願い】

 ケン達との戦いで自らの心に湧いて出た感情の正体の究明。

【基本戦術、方針、運用法】
 
 対魔力に左右されずに威力を発揮出来るPSIと、攻撃の正体を隠し通す『地球のむしけらには知覚出来ない攻撃』の運用がキモとなるサーヴァント。
PSIで発揮出来る特異現象の数は種類に富み、状況次第によっては三騎士だって苦戦させうる強さをキャスターは持つ。
最大の欠点は、キャスターとしては落第点どころか、何故キャスターとしてのクラスが割り当てられたのか疑問に思う程の、魔力ステータスを筆頭とした全ステータスの低さ。
更に陣地作成と道具作成スキルをそもそも保持しないと言う点は致命的で、キャスターの強みの大部分が殺されている。
切り札と言える宝具、『我が母星が生み出した鋼鉄の船』はおいそれと発動出来る代物ではなく、序盤で発動しようものなら的以外のなにものでもなくなる。
このチームが優勝を狙うには、他の参加者と同盟を組み、三騎士に類するサーヴァントが減った時に、『我が母星が生み出した鋼鉄の船』を発動する機会を『待つ』と言う、キャスターの最も基本的な戦い方が求められる。


288 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:25:31 L/se9e8M0


【マスター】

野原みさえ@クレヨンしんちゃん


【マスターとしての願い】

子供達の養育費が欲しい。しかし、人を殺してまでそんな願いを叶えたくない


【weapon】

【能力・技能】

ゲンコツ、グリグリ、尻叩き:
対しんのすけ、ひろし用のお仕置き。

身体能力:
幼稚園バスに乗り遅れたしんのすけを、気合で自転車を漕いで送り届けたり、何人もの男性を投げ飛ばす程度には強い。


【人物背景】

 埼玉県春日部市に住まう最強の主婦。野原家の母。熊本県の生まれであり、三人姉妹の次女。夫に野原ひろし、子供に野原しんのすけ、野原ひまわりを持つ。
自由気ままな五歳児、しんのすけのいたずらに常に振り回される、短気でケチで見栄っ張りなケツでか小じわペチャパイおばさん。
しかし本当は誰よりも家庭を愛する、母性的な女性であり、今回の聖杯戦争に関しても全く乗り気ではない。


【方針】
人だけは絶対殺したくない。ギーグには、可能な限りサーヴァントだけを相手にさせるよう立ち回らせる。


289 : 野原みさえ&キャスター ◆zzpohGTsas :2015/02/26(木) 03:25:57 L/se9e8M0
投下を終了します


290 : ◆zhWNl6EmXM :2015/02/26(木) 18:50:13 eg4m24N20
皆様投下乙です。
投下します


291 : 桐ヶ谷柩&ランサー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/26(木) 18:51:36 eg4m24N20


「ええ。ぼくは、千足さんの選択を受け入れました」


少女は暗殺者だった。
暗殺組織『ダチュラ』に所属する生粋の殺し屋だった。


「ぼくは千足さんになら殺されてもよかった」


少女は心を奪われた。
暗殺者の集う10年黒組で出会った生田目千足に、想いを寄せた。
どこまでも誠実で、どこまでも真っ直ぐで、どこまでも優しい彼女に。
自らが恩師の娘の仇であることを知らない彼女に。


「だからぼくは倒れました。千足さんを受け入れました。
 ぼくはやっぱり、千足さんが愛しくて仕方無いんです」


少女は散った。
自らが仇であることを告白し、少女は想い人の手で仕留められた。
少女がこの冬木に召還されたのはその直後のことだった。


「でも、ぼくが此処に居るのもきっとそのせい。
 今度は、奇跡に願いを託せるんでしょう?」


少女に後悔は無い。想い人の選択を憎んでもいない。
しかし、それでも。
黒組の報酬を超える奇跡に縋れるというのなら。




「だったら、ぼくは千足さんとずっと一緒にいられることを願います」




ダチュラなど、最早関係ない。
『桐ヶ谷柩』は、己の為に戦うことを決意した。
例えそれが組織への裏切りになろうとも。
千足の選択への裏切りになろうとも。
愛に殉ずることが出来るなら、それでいい。
やり直しなんて―――――――必要ない。


292 : 桐ヶ谷柩&ランサー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/26(木) 18:52:52 eg4m24N20
◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇


「〜♪」

カーテンに頻られた窓より僅かな光が射す部屋にて。
まるで子供のような容貌をした少女、桐ヶ谷 柩は鼻歌を歌いながら机に向かっていた。
机に並べられているものは、何らかの実験に使うような薬物が収められた複数の瓶。
それは少女の商売道具。他者の命を奪う為に用いる薬品―――――いわば毒薬だ。
「エンゼルトランペット」と称された少女が仕事に用いる武器。
マスターとなった柩にとって、戦う為の武器の一つでもあった。


「主よ」


そんな柩の後方に、霊体化を解いたサーヴァントが姿を現す。
黒い髪。眉目秀麗な顔。泣き黒子。
数々の女性を虜にするであろう美貌の持ち主。
従者は、まるで主君に忠誠を誓う騎士の様に跪いていた。

ランサーのサーヴァント。
フィオナ騎士団が筆頭――――――ディルムッド・オディナ。

それが騎士であるランサーの真名。
桐ヶ谷柩に召還された、サーヴァントだった。


「ランサーさん、お疲れさまです」
「はっ。偵察を行った所、幾つか魔力の残痕が感じられました。
 やはり他のサーヴァントが続々と姿を現しているのかと」


立ち上がり、ぺこりと礼をする柩に対しランサーは黙々と偵察の報告を行う。
マスターである柩は魔術に関する知識を持たない。
当然の如く魔力を察知することも出来ない。
それ故、敵の気配を察知する為に霊体化したランサーが外部へと赴いていたのだ。


「今の所、マスターらしき者の姿は見受けられませんでした。
 しかし主よ、努々警戒は怠らぬ様に。有事の際は躊躇なく令呪をお使いになられよ」
「解ってますよ。それにしても、ランサーさんは本当に頼りになりますよね…。
 私にだってこんなに尽くしてくれますし――――――」


跪くランサーと目線を会わせる様に、柩がゆっくりとしゃがみ込む。
微笑みを口元に浮かべながら、彼の顔を見つめていた。


「…主に忠義を尽くす、ただそれだけが騎士の本懐であるが故」


そんな主に対し、ランサーは忠誠を示す様に跪く体勢を崩さない。
騎士の本懐、それは主への忠義を尽くすこと。
生前に果たすことの出来なかった騎士道だ。
ランサーは聖杯に託す願い等持たない。
主君に尽くし、聖杯を捧げること。
騎士としての役目を全うすることこそ、彼の願いだったからだ。
故にランサーは多くを語らず、ただきっぱりとそう答えた。

「……ふふっ」

従者としての言葉を紡いだランサーを見つめながら、柩は微笑みを崩さず。
柩の小さな手がランサーの頬にそっと触れた。

「……主よ、」
「その真っ直ぐな瞳も、その誠実さも、その優しさも」

直後にランサーの胸中に、唐突な込み上げたのは胸騒ぎ。
白い手の感触を頬に感じつつ、ランサーはゆっくりとその面を上げた。




「ほんとうに、千足さんそっくり」




恍惚とした声色で、柩は囁く様に呟いた。
その頬を仄かに赤く染め上げながら。
まるで、恋い焦がれる乙女のような顔だった。


293 : 桐ヶ谷柩&ランサー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/26(木) 18:54:11 eg4m24N20
はっとした表情を浮かべたランサーは、そんな主をただ見上げることしか出来ない。
既に理由は気付いている。いや、気付かぬ筈が無い。



彼女は愛する者と己の姿を重ね合わせていた。
そして、己の持つ魔性によって。
『黒子の呪い』によって―――――――――無自覚のうちに魅了されていた。



彼女の願いを聞いた時から薄々と理解はしていた。
どこか諦観にも似た感情が、槍兵の心中を満たす。
これも数奇な運命と言うべきなのだろうか。
それとも、生前と変わることの出来ない因果なのか。


(…ああ、そうか)


絆と忠義を裏切り、愛に殉じることを選んだ離反者。
それはまるで、自分のようだった。
愛する者への想いを馳せ、焦がれる姿。
それはまるで、彼女のようだった。

騎士は自らの忠義を貫くべく聖杯戦争へと参加した。
彼が出会った新たな主は、愛に殉じた者だった。
主は再び愛を選ぶ。仲間よりも、愛を取る。
愛する者と共に在り続けることを望む。

そんな主を、従者たる騎士が魅了していた。
想い人の為に戦う主を、誘惑していた。
このまま主は、生田目千足ではなく自分に想いを寄せる様になるのか。
それこそまさに――――――主の妃であるグラニアを魅了してしまった時のように。




(これが、俺に課せられた呪いか)




ディルムッド・オディナは、ただ目の前に主に跪き続けた。
誠実で在り続ける騎士の姿を、柩は愛しげに見下ろしていた。


294 : 桐ヶ谷柩&ランサー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/26(木) 18:54:56 eg4m24N20

【クラス】
ランサー

【真名】
ディルムッド・オディナ@Fate/Zero

【パラメータ】
筋力C 耐久D 敏捷A 魔力E 幸運E 宝具B

【属性】
秩序・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:B
詠唱が三節以下の魔術を無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

愛の黒子:C
魔力を帯びた黒子による異性への誘惑。
ランサーと対峙した女性は彼に対する強烈な恋愛感情を懐いてしまう。
対魔力スキルで回避可能。対魔力を持っていなくても抵抗する意思を持っていれば、ある程度軽減することが出来る。

【宝具】
『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大捕捉:1人
養父であるドルイドのアンガスより贈られた紅槍。
あらゆる魔術・魔力を無効化する刃を持つ魔槍。
魔術防御に対して絶大な効果を発揮するが、あくまで無効化できるのは刃の触れている間のみ。
また、既に完了した魔術の結果を無効化することは出来ない。

『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~3 最大捕捉:1人
妖精王マナマーン・マック・リールより贈られた黄槍。
如何なる魔術や再生能力を用いても治癒不可能な傷を負わせる魔槍。
傷を治癒する為にはこの槍を破壊するか、ディルムッドを消滅させるしかない。
治癒できない傷を負わせて対象を消耗させる、長期戦において効果を発揮する武装。

【Weapon】
宝具『破魔の紅薔薇』『必滅の黄薔薇』

【人物背景】
ケルト神話に登場するフィオナ騎士団の筆頭騎士。
忠義に篤く、正々堂々とした騎士道精神を持つ英霊。
生前、主君であるフィンの婚約者・グラニア姫に想いを寄せられ、駆け落ちを強要されてしまう。
葛藤の果てに愛を選んだディルムッドは、主君を裏切りグラニア姫と結ばれる。
ディルムッドはグラニア姫と共に出奔し、フィンに差し向けられた追手を全て切り抜ける。
最終的にフィンが折れる形で騎士団への復帰を許されるも、後に狩りの最中にフィンに見殺しにされる形で生涯を終えた。

グラニア姫との愛を選び、主君を裏切ってしまったディルムッド。
生前に果たせなかった「騎士としての忠誠」を貫くべく聖杯戦争へと参加した。

【サーヴァントとしての願い】
主に聖杯を捧げる。

【基本戦術・運用】
柩のマスターとしての適性が低く、パラメータの弱体化が見られる。
それでも卓越した白兵戦能力を持つことに変わりは無く、前衛としては大いに役立つ。
魔力を絶つ紅槍・治癒阻害の黄槍と宝具も地味ながら実用的。
火力には欠けるものの、白兵戦・長期戦において強さを発揮する。


295 : 桐ヶ谷柩&ランサー ◆zhWNl6EmXM :2015/02/26(木) 18:55:36 eg4m24N20

【マスター】
桐ヶ谷 柩@悪魔のリドル(原作)

【マスターとしての願い】
生田目千足とずっと一緒にいる。

【weapon】
デリンジャー、自作の毒針銃

【能力・技能】
暗殺者としての技能。
主に毒物の扱いに長ける。

【人物背景】
ミョウジョウ学園・10年黒組に編入してきた暗殺者の一人。
少女だが一人称は「ぼく」。小学生と見間違えるような幼い外見をしている。
初日に同じ黒組の生田目千足と出会って以来、彼女を深く慕っている。
その正体は暗殺組織・ダチュラの筆頭暗殺者「エンゼルトランペット」。千足の恩師の娘を殺した張本人でもある。
千足に憧れる素振りを見せた剣持しえなを嫉妬心から始末し、学園祭にて千足に自らがエンゼルトランペットであることを認める。
最後は正義と愛情の狭間での葛藤を経た千足にナイフで刺され、彼女の選択を受け入れて倒れる。


【方針】
機を伺い、勝機を掴む。
ランサーの傍にいたい。


296 : 名無しさん :2015/02/26(木) 18:55:49 eg4m24N20
投下終了です。


297 : ◆zhWNl6EmXM :2015/02/27(金) 00:35:20 uSoxPjHE0
wikiにて拙作の「桐ヶ谷柩&ランサー」を一部加筆修正させて頂きました。


298 : ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 00:58:28 NkeDUk7o0
皆様、投下乙です。
自分も投下させていただきますね。


299 : ウェカピポ&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 00:59:32 NkeDUk7o0



 ―― Now! Wake Up People! Yo! ――




 秘めた巨大な力(パワー)がこの灰色の街の至るところで蠕動している気配を肌で感じながら。
 そびえ立った塔(タワー)の一室で、男は生まれて初めてのこの高度からの景色を淡々と見下ろしていた。

 アスファルトに網目状にヒビが入ったような髪型の男である。

「これが『21世紀』……いい時代がやってくると言ったが、『20世紀少年』もその先は想像出来なかったようだな」

 デラウェア河に沈めたかつての相棒のことを僅かに思い出しながら、その男――ウェカピポは独りごちた。

 ウェカピポは19世紀末のネアポリス王国を追われ、アメリカ合衆国で国家の敵となり死んだはずの男である。
 この街で目覚め、自分が百年以上も未来の太平洋の向こう側にいるのだと知った時は少なからず動転したものだが、
 今のウェカピポの精神状態は王族の護衛に臨む時のような緊張感を伴う平静として保たれていた。

 冬木ハイアットホテルの一室に仮の拠点を構えながらも、ウェカピポは思う。

「だが、この仮初の街もまた……オレの居場所ではないのだろうな」

 ウェカピポの人生は――少なくとも、妹を暴力で苦しめた義弟を決闘にて討ち果たし、その結果王国を追われて以降の人生は、
 ただ自分の居場所を、帰るための場所を求めるためのものであった。
 ただのそれだけ……他には何も求めてなどいない。帰る場所のないことこそが、真なる孤独であったからだ。
 しかし、Dioに利用する形で死に、その瞬間に今も何処かで生きているという妹に思いを馳せ、
 その思いが『未練』となって、自分でも自覚していないほど僅かな『やり直しの願い』として聖杯に感知された今も。
 ウェカピポは、この街にとっても自分は異邦人なのだろうと感じている。そして、それは事実なのだろう。

「だから居場所を得るために聖杯を求める……つまらない男ね」

 独り言に対して返ってきた辛辣な言葉にも顔をしかめることなく、ウェカピポはベッドの方へと視線を向けた。

 声の主は、金髪碧眼の美女であった。氷か刃物を思わせる怜悧な魅力が、その無表情な横顔にはあった。
 彼女に、ウェカピポは未だ指一本触れていない。それどころか、ほとんど会話を交わしてすらいなかった。
 ウェカピポにとって彼女は、ただの相棒という言葉では言い表せないほどの繋がりを持つはずなのだが。

「ランサー」

 ウェカピポがサーヴァントとしてのクラス名で呼ぶと、彼女は鉄面皮を崩さずに青い瞳だけをこちらに向けた。
 決して自らと契約しているこの英霊の真名を知らないというわけではない。
 単純にサーヴァントの真名をみだりに呼ぶべきではないと考えたからだし、そういう一線を引くのがウェカピポという男だった。


300 : ウェカピポ&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 01:00:12 NkeDUk7o0

 槍兵のサーヴァント、『ミリア=レイジ』。

 この仮初の21世紀よりも更に未来、22世紀のロシアに生まれた美貌の暗殺者。
 時の暗殺組織の長の弟子にして恋人という地位にありながら暗殺者としての生き方へ疑問を抱いて組織を裏切り、
 過去に追われながら過去を振り切るために終わりのない戦いを続けていた女性である。
 その美しい金色の髪には禁忌の術式が宿り、その一本一本が変幻自在の『槍』として彼女の武器になるという。

 ウェカピポには、このミリアという美しい女性と親しくなりたい、などという浮ついた考えは欠片もない。
 しかし彼女の人生にはどこか共感めいたものを感じていたし、英霊という存在自体に『敬意』を抱いていた。
 英霊とはすなわち、語り継がれる存在。何かを『成し遂げた』存在であるからだ。

「なにかしら?」

 その英霊の言葉もまた、ウェカピポのそれと大差ないぐらいには素っ気ない。
 ウェカピポがランサーに必要以上の関心を抱いていないのと同様、ミリアにもマスターと慣れ合う気はないようだった。
 それはそれでいい。ウェカピポはコミュニケーション不全がストレスとなるタイプの人間ではない。
 だが、伝えるべきことは伝えておかねばいざという時に齟齬を来たすということは理解している。
 だからこそ、これだけは話しておかなければ。聖杯を求める理由、これだけは。

「君の言う通り、つまらないものだ。オレが求め続けているものはな……。
 オレはただ、家と金と仕事とを手に入れて、ささやかに生きていきたいだけだ。
 必要以上の欲を持っちゃあいない……野心もない。ただ居場所を手にしたいだけだ」

 ミリアは興味なさそうにこちらを睥睨している。
 ウェカピポはそれに苛立ったりはしなかった。視線を向けてくれるだけで十分だった。

「オレは憂いのない生き方がしたい。過去に追い立てられるのでも、未来に押し潰されるのでもなく。
 必要なのは『ささやかな幸せ』だ。そして願わくば、祖国の妹にもそれを与えてやりたいと思っている」

 この聖杯戦争に全力を懸けて挑んでいるマスター達にとっては、それは鼻で笑い飛ばされるような『願い』だろう。
 そんな下らない願いのために殺人儀式に挑もうとするウェカピポの姿は、滑稽に映るのかもしれない。
 だが、少なくとも目の前の彼女は、ミリア=レイジはそれを笑ったりはしなかった。 

「――『ささやかな幸せ』には『生命を賭す価値』がある。オレはそう考えている」

 ならばこそ。
 ウェカピポは、彼女とともに、このささやかな願いを抱いて、聖杯戦争へ挑むのだ。
 対するランサーの表情には、相変わらず何の感情も伺えない。
 しかし、僅かに気配が軟化しているように感じられるのは、ウェカピポの気のせいではないはずだ。

「……つまらない男は言い過ぎたわ。でも、カタいだけでは女を満足させられないことは覚えておくべきね」

 その美しい金髪を波打たせながら、ランサーはベッドの上で身を起こした。
 一切男を惑わすような素振りを見せないにも関わらず、時折ひどく男を惹きつける仕草を見せるところが彼女にはある。
 しかしそれに対して目立った動揺を見せるわけでもなく、ウェカピポは答えた。
 つまらない男というのはある意味では事実なのだろう、と考えながら。


301 : ウェカピポ&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 01:01:21 NkeDUk7o0

「……オレはこういう男にしかなれない。そういうサガに生まれついた。君にとって魅力を感じる男にはなれないだろう」
「そう? 少なくとも、令呪をチラつかせれば女を好きに出来ると思う男よりはマシなんじゃないかしら」

 ミリアはその金髪を掻き上げ、どこか遠くを見るような目をした。

「私が聖杯に託す願いは、ある男を英霊の座から永久に消し去ることだけ。
 結局、英霊になっても私は過去から完全に解き放たれることはなかったから」

 英霊の抹殺という物騒な願いを口にしながらも、その瞳には僅かに親愛のようなものが浮かんでいるように思えた。
 だからといってウェカピポはそれを問いはしなかった。踏み込んではいけない世界だ。自分の過去がそうであるように。

「だから、そうね……理解は示すわ。あなたの、そのささやかな願いに」

 彼女はそう言い、ウェカピポは思う。
 彼女と共に歩み、共に聖杯戦争を戦うのは、少なくとも不可能な道程ではないと。
 ならば。その戦争が真に始まりを告げる前に、自分にはやらなければならないことがある。

「感謝する、ランサー。おかげで覚悟が決まった」

 ウェカピポは、視線だけでミリアに出立を促した。

「行きたいところがある。オレの、居場所になるかもしれないところだ」
 


   ▼  ▼  ▼



 古くからの邸宅が並ぶ深山町の一角に、その洋館はあった。
 この地域では決して目立つほどの大きさではない、しかし確かな歴史を感じさせる造りの館。
 その中の一室、館に相応しい上品な調度品に囲まれながら、彼女はウェカピポを迎えた。

「お久しぶりです、お兄様。お元気そうで何よりです」
「お前も壮健そうだな。亭主は良くしてくれているか」
「ええ、それはもう。妻として可愛がっていただいております」

 妹の穏やかな笑みに、ウェカピポは内心の澱が溶けていくような心持ちになった。
 それは自然な微笑みであった。幸せに嫁いだ娘が、幸せな妻として浮かべるような微笑み。
 取り立てて特別なものではなく、だがそれゆえに、ウェカピポの胸を突く。

「あの人もじきに戻ってくるでしょう。喜びますよ、お兄様にお会いできたら」
「いや、長居するつもりはない。最後に、お前の顔を見たかっただけだ」
「最後に? 変なことを言うのですね」


302 : ウェカピポ&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 01:05:23 NkeDUk7o0

 お茶を勧めようとする妹を押し留めようとして、ウェカピポが腕を動かしたその時。
 手がテーブルの上の花瓶に触れ、それは運悪く転がって床に落ち、砕け散ってしまった。
 妹はそれを自然に目で追い、やれやれ仕方のない人ね、という呆れ半分の微笑みを浮かべた。

「……すまない。高価な品だったか」
「いえ、お怪我がなくてよかった。珍しいですね、お兄様がこんな」

 自然な会話。自然な反応。

 花瓶が落ちたことに妹が気付かない、などということは起こらなかった。
 当たり前だ。それこそが、本来あるべき形であるはずなのだから。

 自分に背を向けて屈み込み、破片を集める妹に向かって、ウェカピポは静かに一歩踏み出した。
 その手には、見つからぬよう隠して持ち込んだ、短剣の柄が握られていた。
 妹は掃除に夢中で、背後で兄が何をしようとしているかなど気にもしていない。
 ウェカピポはもう一歩を踏み出した。
 そして短剣を彼女の背に向け、僅かに振り上げた。



 それから――妹が初めて海を見た日のことを、その幸せそうな姿を、思い出した。



 ウェカピポは、短剣を構えたまま身を震わせた。
 唇を噛み締め、目を見開き、金縛りに遭ったようにその身を硬直させた。
 そして、最後には目を伏せ、短剣を持った腕をゆっくりと降ろし、小さく呟いた。

「済まない、ランサー……苦しませないで、やってくれ」

 それだけ言い残し、ウェカピポは妹に背を向けた。
 背後で霊体化を解いたミリアが、その髪の槍で妹を貫くのが、気配で分かった。
 悲鳴はなかった。きっと痛みも感じずに逝ったのだろう。
 そしてその気配もすぐに……ミリアの髪に溶け込み、消えた。

 玄関のほうでガタリと音がしたのに気付き、ウェカピポは目を上げた。
 そういえばそろそろ戻ると言っていた……妹の夫が、死んだような目でこちらを見ていた。
 見られたか。自分でも意外なほど冷静さを保ったまま、腰のホルスターの留め具を外す。

「貴様ッ! ウェカピポ! 我が妻に何をしたァァァーーーーーッ!!」

 激昂した義弟の頭蓋に抜き打ちの鉄球を叩き込んで黙らせ、ミリアを促す。
 ミリアが髪針を瀕死の義弟に撃ち込むと、義弟の体は分解されてその髪へと吸い込まれた。
 魂食い……僅か二人でも、魔術師でないウェカピポにとっては馬鹿にならない魔力になるだろう。

「……良かったの?」

 ミリアが案ずるような言葉を掛けた。
 ああ、と言おうとしたもののすぐには声が出ず、数回深呼吸して、ようやく返事をする。

「この街の人間は幻だ。俺達マスターを除いてはな……。だが紛れもなく、あれは妹そのものに見えた。
 それでもオレの帰るべき居場所は、ここじゃあない。ここに安心してしまえば、きっと聖杯には届かない」

 この仮初の街の幸せな妹ではなく、故郷の目の見えない妹のために戦わねばならない。
 その決意をこんな救いのないやり方でしか示せないのが、ウェカピポという男の持つ掟の複雑さであった。
 ミリアは彫像のように堅い表情のウェカピポに視線を向け、それからいつもの鉄面皮で言った。

「勝ちましょう、マスター。ささやかな願いが、聖杯を動かすに足ると証明するために」

 ウェカピポは、ああ、とだけ答えた。不思議と、今度は自然と声が出た。
 妹の映し身は消した。もはや完全に、この冬木にウェカピポの居場所は無くなってしまった。
 だが、これで良かったのだろう。その証拠に、覚悟は完全に定まっている。
 まだ見ぬマスターに『敬意』を払え。己の実力を過信せず『謙虚』に振る舞うことを忘れるな。 
 
 偽りの居場所で見る夢は終わりだ。さあ、目を覚ませ(Wake Up People)――。


303 : ウェカピポ&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 01:06:02 NkeDUk7o0

【クラス】
 ランサー

【真名】
 ミリア=レイジ@GUILTY GEAR

【パラメーター】
 筋力C 耐久E 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具B

【属性】
 中立・中庸


【クラススキル】
対魔力:C
 魔術に対する守り。魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。完全に気配を断てば発見する事は難しい。
 アサシンのクラスではないのにこのスキルを保有しているのは、暗殺者であったかつての自分を捨て切れていないからか。

追撃の女王:A+
 戦いの中で生じた隙を狙って一気呵成に攻め立てる戦闘技術。
 体勢を崩した状態の相手に対して、追撃の成功率および与ダメージが上昇する。
 当然追撃中に相手が再度崩れれば更なる追撃が可能となる、一方的に攻め続けることに特化したスキル。

縮地:C
 瞬時に相手との間合いを詰める技術。暗殺術として身につけた歩法の極み。
 単純に地上での機動力を高めるだけでなく、中空を蹴って加速や方向転換を行うことすら可能。

禁呪:?
 宝具の代償として身に宿すデメリットスキル。
 長時間に渡る戦闘や必要以上の魔力の投入などで宝具を酷使した場合、ランサーは宝具に心身を乗っ取られるリスクを伴う。
 このスキルを外すことは出来ないが、精神力によりある程度の抵抗が可能である。


【宝具】
『卑・泥獄墜法第六法(アングラ)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:30人
 ランサーの髪に施された、法術に許された領域を踏み越えた禁断の術式。
 この禁呪法の力により、ランサーはその美しい金髪を文字通り自由自在に武器として使うことが出来る。
 槍兵のクラスに相応しい黄金の槍だけでなく、剣や翼、花や月に変化させて多彩な攻撃を行う。
 スピードや射程、攻撃手段の豊富さなど多くの強みを持つが、その最大の脅威はスキルと組み合わせての圧倒的な連撃性能である。


【weapon】
投げナイフ。
ただし飛び道具は基本的に髪の槍で事足りるため、意表をついての牽制や迎撃用の一部の技でしか使わない。

【人物背景】
ロシア出身の元暗殺者。金髪碧眼の美女。
機械めいて冷静かつドライな性格であり何事も損得勘定で判断するが、その奥には人間らしい感情が芽生えている。
かつては孤児であり、アサシン組織に拾われて髪に禁呪を施され、以来暗殺者として生きてきた。
アサシンの長ザトー=ONEとは師弟であると同時に愛人関係でもあったが、暗殺者としての生き方に息苦しさを感じたミリアは彼を裏切る。
ザトー捕縛の功によりアサシン時代の罪を許されたミリアは、以来アサシン組織からの刺客に追われながら生きることとなる。
自ら罠にかけたザトーに対しては愛憎入り交じる感情を抱いており、過去を精算するため抹殺を誓いながらも未練を捨て切れていない模様である。
なお、趣味は猫を追い回すこと。一番大切なものは貞操である。

【サーヴァントとしての願い】
ザトーを英霊の座から抹殺し、過去から解き放たれた真の平穏を手に入れる。


304 : ウェカピポ&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 01:06:29 NkeDUk7o0
【マスター】
ウェカピポ@ジョジョの奇妙な冒険 第七部 スティール・ボール・ラン

【マスターとしての願い】
自分と妹のささやかな幸福。

【weapon】
鉄球。腰のホルスターに収めている。

【能力・技能】
『レッキング・ボール(壊れゆく鉄球)』
ネアポリス王族護衛官が修める鉄球の技術。
14個の小鉄球「衛星」が表面に付いた独自の鉄球を用い、投擲時に衛星が飛び散って相手を攻撃する。
衛星が直撃すれば重傷は免れないが、かすっただけでも衝撃波により十数秒間『左半身失調』の症状に陥る。
この状態では自分の左側にあるものを認識できなくなる(触っても脳が認識できない)という強力な効果である。
スタンドでも超能力でもない純然たる技術にも関わらず、ウェカピポは黒幕である大統領にすら通用させてみせた。

ちなみに王族護衛官の戦闘技術としての回転だけでなく、肉体の硬質化など「ツェペリ一族の回転」も使用可能。
ただしツェペリ一族の奥義である『黄金の回転』は習得していない。


【人物背景】
ジョニィとジャイロの刺客として登場した、元ネアポリス王族護衛官の男。31歳。
刈り込んだ短髪に網目状に剃り込みを入れた独特の髪型をしている。
ジャイロ以外で劇中に直接登場する唯一の鉄球使いで、ジャイロのものとは違う戦闘技術を用いる。

かつては王族護衛官としてネアポリスのために尽くしていたが、よかれと思って同僚と結婚させた妹が暴力を受けていることを知る。
婚姻無効の訴えに逆上した義弟を決闘で討ち果たすが、義弟の父親は王国の重要人物であり、ウェカピポの勝利は初めから許されていなかった。
ジャイロの父グレゴリオにより国外追放の汚名を浴びたウェカピポは自分の居場所、合衆国の永住権を求めてジョニィ達へ挑む。
その鉄球技術と決して慢心しない姿勢で二人を追い詰めるが、最後は偶然が呼んだ奇跡に敗北する。
自決を試みるもジャイロに妹の生存を知らされて思い留まり、以降はジャイロの依頼を受けて行動。
その過程でディエゴ・ブランドーと共闘する形でヴァレンタイン大統領と敵対するが、土壇場でディエゴに利用され死亡した。

【方針】
すべての敵に敬意を払い、謙虚に振る舞いながら聖杯を求める。
自身の魔力の乏しさと、ランサーが奇襲・強襲向きのサーヴァントであることを鑑み、ヒット&アウェイで確実に戦果を上げる。


305 : ◆q4eJ67HsvU :2015/02/27(金) 01:06:48 NkeDUk7o0
投下終了しました。


306 : ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:41:09 EMiiuJBc0
皆様投下乙です
これより投下します


307 : 奪うのも、与えるのも ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:42:10 EMiiuJBc0



――何となくだけれど、もう二度とみんなと踊る機会は来ないんじゃないかという気がしていた。







「みんなお疲れー!」
「今日のステージは大成功だったな!!」

今日は冬木市にあるいくつかのダンスチームの一つ、チーム鎧武のステージイベントだった。
もちろんインベスゲームなんてものは「この世界」には存在しないし、喧嘩でステージを取り合うようなこともない。
平和的にステージで踊る権利を分け合う、夢のような世界だった。まあ、実際夢なのだけれど。

「舞さん、ちょっと良いですか?話したいことが…」
「?うん、別に大丈夫だけど…どうしたのミッチ?何か悩み事?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど…」

僕はチーム鎧武のガレージの裏に舞さんを呼び出した。
別にここで皆に話しても良いんだけど、最後は舞さんと二人きりで話をしたかった。
この人が聖杯が再現したデータに過ぎないとしても、それでも舞さんには違いないから。

「実は学校の方がそろそろテスト期間に入るんです。
今回はいつもより難易度が高いらしくて、しばらくこっちには顔を出せないと思います」
「そっか……。寂しくなるけど、学校のことなら仕方ないよね」

こちらの世界でも裕也さんと紘汰さんはチームからいなくなっていた。
裕也さんは質の悪い食中毒で運悪く亡くなってしまい、紘汰さんは元の世界と同じように就職活動のためにチームから抜けた。
ようやくチームの皆が立ち直り、ステージを成功させただけに舞さんの落胆は当然だった。
けれど、僕がここにいられるのも今日が最後なんだ、仕方ない。

「でも終わったらまた一緒に踊れると思いますよ」
「当たり前でしょ?ミッチまでいなくなったらチームが回らなくなっちゃうんだから。
あ、そうだ。今度市内のチームを集めて合同イベントをやらないかって話が出てるの。
まだ予定は未定って感じなんだけど、ミッチが戻ってくるまでにバッチリ話進めとくから!」

そうか。この世界でも合同イベントは起こるのか。
ヘルヘイムの森やユグドラシルが関わらなくてもビートライダーズが協調していく。
こんなにも優しい世界が現実だったならどれほど良かっただろう。
心にこみ上げるものを抑えて最後に出来る限りの笑顔を作った。

「はい、楽しみにしてます」


308 : 奪うのも、与えるのも ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:42:53 EMiiuJBc0



――あなたのためなら、僕はどんなことだって出来る。







猶予期間は今日で終わる。
だというのに自分のマスターはダンスなどに興じている。
アーチャーはビルの屋上から双眼鏡でステージでNPCと踊るマスターを眺めながら嘆息した。
本当ならすぐ近くで見張っていたかったがついて来るなと言われているためこういう形に留めている。

自分を召喚したマスター、呉島光実が別段考えなしの人間ではないことは知っている。
魔力供給量の少なさを弁えた上で、アーチャーの魔力をなるべく温存し光実がマスターを仕留める策を立てた。
戦極ドライバーによって変身するアーマードライダー。それが光実の言うマスター殺しの切り札だった。
なるほどあれならば携行火器で武装した程度の人間や経験の浅い魔法少女では相手にもならない。
決定力の弱いアーチャーだが時間停止を駆使すればどうとでもアドバンテージは稼げる。
こういう方策を考えられるあたり光実は決してマスターとして外れというわけではないのだろうが――

「どうも、信用しきれないのよね」

アーチャーの光実への評価は一言で表して「胡散臭い」。
あの男の弁論はどこかインキュベーターを彷彿とさせるのだ。つまり生理的に受け入れにくい。
それにアーチャー自身年齢の近い男性と行動したことがないので今一つ距離感を測りかねる。
このためか方針や作戦においては弁の立つ光実に主導権が寄っているのが現状だ。

「まあ、パートナーとしてまっとうに動けるなら問題ないわ」

サーヴァントとして現界した今のアーチャーは世界の理を歪めた悪魔とは程遠く非力だ。
そもそも二面性を持つとはいえ、魔法少女として現界したのだから当然だが。
アーチャーが聖杯にかける願いは一つ。「物語」の完成だ。
鹿目まどかを円環の理から完全に引き剥がし、概念ではなく個人として安定させるには万能の願望器の力が必要だ。
このアーチャーは聖杯を得るべく数多の世界に伸ばされた暁美ほむらの端末、ないし分霊の一つ。

「…終わったわね」

考え事をしている間に、ダンスイベントは終了したようだった。
懸念していたサーヴァントの襲撃もなかったらしい。
光実が主張していた通りになったのが少々腹立たしいが。
それでも万一に備え、迎えに行くことにした。







「ついて来なくていいって言ったよね?」
「人目の多いステージならともかく、帰りは危険でしょう。
猶予期間も終わらないうちに死ぬなんて無様は許さないわ」


309 : 奪うのも、与えるのも ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:43:36 EMiiuJBc0

チーム鎧武のガレージから出た僕を待っていたのはアーチャーだった。
チームの皆(正確には舞さんだ)にアーチャーと一緒にいるところを見られたくないから来るなと言っていたのに……。
まあ、今日が最後なんだし我慢してやってもいいさ。

「わかっていると思うけど明日から本格的に聖杯戦争が始まるわ。
まさか、明日からもまだダンスに精を出すつもりじゃないでしょうね?」
「そんなわけないだろ、息抜きは今日で終わりにするさ」

本音を言えばもう少し続けていたかった。
ヘルヘイムやユグドラシルに振り回されることもなく、皆と踊っていられる日々。
本当はわかっていた。元の世界でこれから僕がどんなに上手く立ち回っても本当の意味であの時間は帰ってこないことぐらい。
だからだろう、アーチャーの言う通り無駄とわかっていても今日までチームに顔を出し続けたのは。

「その言葉、今は信じておくわ。今日はゆっくり休んでおきなさい」
「わかってるよ、明日から忙しくなるからね」

さて、僕が立てた作戦の問題点はアーマードライダーのような強敵がマスターにいた場合だ。
城乃内や初瀬レベルならともかく、紘汰さん並の使い手がいれば戦極ドライバーでは厳しいだろう。
本当の切り札としてゲネシスドライバーがあるが……それは今のところアーチャーには秘匿している。
いくら令呪があっても考え方も性別も違う人間相手にいきなり自分の武器全てを教えるなんて馬鹿のやることだ。
とにかく、ゲネシスの使いどころとアーチャーへの言い訳はよく考えておく必要がある。

僕は必ず勝つ。聖杯を手にすれば、もう誰も僕に指図はできない。
誰から奪い、誰に与えるのか。世界でただ一人、僕だけがそれを決める立場になれる。
聖杯がアーチャーのように時間にさえ干渉できるのなら過去に戻りつつ、僕に不都合なもの全てを消してしまえるかもしれない。
そう考えれば今までの紘汰さんの突飛で無責任な振る舞いも許してやろうという気にもなる。
今、元の世界で破滅しかけている舞さんを救えるのは紘汰さん、あなたじゃない。
この僕だけなんだ。


310 : 奪うのも、与えるのも ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:44:39 EMiiuJBc0
【クラス】
アーチャー

【真名】
暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語

【パラメータ】
筋力:E 耐久:E敏捷:D 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
対魔力:D
魔術への耐性。一工程の魔術なら無効化できる、魔力避けのアミュレット程度のもの。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても一日は現界可能。


【保有スキル】
道具作成:E
材料があれば爆薬の調合・爆弾の製作ができる。
アーチャーが作成した爆弾は他人が使ってもサーヴァントにダメージを与えられる。

自己暗示:E
自身にかける暗示。精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
……が、アーチャーの場合どちらかと言うと自分に無理やり言い聞かせているといったほうが正しく、効果は低い。


【宝具】
『やり直しの願い(コネクト)』
ランク:C 種別:対界宝具 レンジ:なし 最大捕捉:1
かつての願いを元にした時間停止能力の発現。本来は砂時計の砂を傾ける事による能力。
アーチャーに触れている者に対しては時間停止が働かない。
本聖杯戦争では再現の都合上で単に魔力を消費するだけで使用できる宝具になっており魔力消費・持続力も悪化している。
マスターである光実から供給される魔力が少ないため戦闘の度に時間停止に頼ることは難しい。
それに伴い、時間遡行の能力は消滅した。
また、付随する能力として盾の中に色んなものを収納することが可能だが、サーヴァントである以上武器は自由に取り出せるので意味がない。
時間操作という魔法を操る対界宝具にも関わらずランクが低いのは元は一人の少女の願いから生まれた宝具であるため。

『穢された願い(まどか・マギカ)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:なし 最大捕捉:1
鹿目まどかによって改変された世界での魔法少女・暁美ほむらの再現。
『やり直しの願い』との同時使用はできず、アーチャーはこの宝具と『やり直しの願い』の二つの形態を使い分けて戦うことになる。
改変以前の世界で鹿目まどかが使っていた弓矢を用いた戦い方に変化し、時間停止及び銃火器は使用できなくなる。
またこの形態でのみアーチャー本来の力を攻撃能力を持った黒翼という形で、ごく僅かながら行使できる。
神を穢しその手に収めた逸話から、黒翼による攻撃は神の恩寵を打ち破る。


311 : 奪うのも、与えるのも ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:45:37 EMiiuJBc0
【weapon】
「各種銃火器・爆弾」
かつてアーチャーが自作したり、自衛隊などの組織から盗んで使用していた武器の数々。
これらの使用に魔力消費は発生しないが、爆弾類を除き消費した銃火器・弾薬は現地調達しない限り二度と補充できない。
また、これら現代の兵器は霊体であるサーヴァントとの相性が悪くサーヴァントへのダメージにマイナスの補正が掛かる。

「弓」
魔法の矢を撃ち出す黒塗りの弓。
銃火器に比べサーヴァントへ与えるダメージが高い。


【人物背景】
とある時間軸で魔法少女だった鹿目まどかに憧れ、そしてその死を否定するべくインキュベーターと契約して魔法少女になった少女。
能力は特定期間内限定の時間停止と、一定期間の時間遡行。
魔法少女となった事で自信がつき、弱気だった性格は明るくなった。
だが魔法少女の契約には裏があり、魔法少女はやがて魔女となって人々に害をなす運命にある。
魔女化によって相転移する感情のエネルギーを回収する、というのがインキュベーターの真の狙いだった。
それに気付いたほむらは時間遡行を繰り返しまどかを魔女化させないように試みたが、何度やっても上手くいかない。
最終的にほむらはもう誰にも頼らないことを決め、人との接触や説明を避ける人物になった。
しかし単独では最強の魔女・ワルプルギスの夜にどうやっても勝利できず、本編の時間軸におけるまどかは「全ての魔女を消す」ことを願いにして契約。
ほむらの時間遡行により集まった因果の力で世界を改変して願いを叶えたまどかだが、その代わりに魔女を消す概念「円環の理」となって消滅した。
世界から魔女は消えたものの、エネルギーを求めるインキュベーターはほむらを魔女にして円環の理の掌握を試みる。
まどか達の力でこの実験は失敗したが、ほむらは円環の理として迎えに来たまどかを『愛』の力で捕獲。
再度世界を改変して鹿目まどかという人間を取り戻した。
神にも等しい存在となっていたまどかを、更に因果律を書き換えることで取り戻したほむら。
だがまどかの存在は不安定で、ふとした切欠で「円環の理」に戻る危うい状態にある。


312 : 奪うのも、与えるのも ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:46:21 EMiiuJBc0


【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力で自らの世界の改変を完全なものにする。


【マスター】
呉島光実@仮面ライダー鎧武
(参戦時期は34話終了後)

【マスターとしての願い】
誰にも、何にも脅かされない絶対の権力を手に入れる。

【weapon】
「戦極ドライバー」
アーマードライダー・龍玄に変身するために必要なベルト。
イニシャライズ機能があり光実以外の人間には使用できない。

「ブドウロックシード」
戦極ドライバーに対応するクラスAのロックシード。
これを使うことで龍玄・ブドウアームズに変身する。
専用アームズはエネルギー弾を発射するブドウ型の銃「ブドウ龍砲」。

「キウイロックシード」
戦極ドライバーに対応するクラスAのロックシード。
これを使うことで龍玄・キウイアームズに変身する。
専用アームズは輪切りのキウイを模した二つの撃輪「キウイ撃輪」。

「ローズアタッカー」
バイク型のロックビークルに変化するロックシード。
速度を上げることでヘルヘイムの森への行き来が可能だが本聖杯戦争では不可能になっている。

「ゲネシスドライバー」
アーマードライダー・斬月真に変身するために必要な次世代型ベルト。
こちらは誰でも使用可能であり、光実はこの性質を悪用して本来の変身者である兄・貴虎になりすましていた。
ちなみにコア部分は取り外し可能で、戦極ドライバーの拡張ユニットとしても利用できる。

「メロンエナジーロックシード」
ゲネシスドライバーに対応するクラスSのロックシード。
これを使うことで斬月真・メロンエナジーアームズに変身する。
斬撃武器としても使用可能な弓矢型の武器「創生弓ソニックアロー」をアームズウェポンの代わりとして扱う。
あらゆる性能が旧世代のアーマードライダーを上回る。

「クレジットカード」
富豪レベルの買い物ができるゴールドカード。

【能力・技能】
アーマードライダーとしての技量は可もなく不可もなくといったところ。
また、明晰な頭脳を持ち大人相手にも弁論で立ち回ることができる。
ただし本人の幼稚な精神性が足を引っ張ることも多々ある。


313 : 奪うのも、与えるのも ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:47:02 EMiiuJBc0

【人物背景】
沢芽市のダンスチーム「鎧武」に所属する高校生。チームメイトからの愛称は「ミッチ」。
ユグドラシルコーポレーションの重役を父に持つ御曹司でもあり、兄である貴虎からは将来を強く期待されている。
しかし本人はそんな期待を重荷に感じており、兄に秘密で放課後の時間をチーム鎧武で過ごすという二重生活を送っていた。
葛葉紘汰をヒーローとして強く尊敬し、高司舞に異性として憧れを抱いている。
紘汰が斬月(貴虎)に敗北し心を折られたことを切っ掛けにチームを守るためアーマードライダー龍玄に変身し、戦いを始める。
次々と真実が明かされ状況が変化していく中波風を立たせないようユグドラシル側とビートライダーズ側の二つの立場を使い立ち回る。
しかし次第に紘汰が思い通りに動かなくなり、紘汰に対して苛立ちを覚えはじめる。
そして紘汰が舞を沢芽市で起こっている異変と陰謀に巻き込んだことが原因でついに怒りが爆発。
以降紘汰を邪魔者と見做し命を狙うようになり、戦極凌馬らに裏切られた貴虎も見殺しにする。(ゲネシスドライバーはこの時入手)
一時シドと行動を共にするも彼の死後はオーバーロード・レデュエの右腕に収まる。
しばらくは寝首を掻くことも考えていたが後にオーバーロードの圧倒的な力を見たことで心が折れる。
本聖杯戦争の光実はその時点から参戦している。
能力は高いものの自分の判断を過信し、自己を客観視できないなど精神的には未熟で幼稚な面がある。

【方針】
使える魔力に限りがあるので戦闘を行う時は好機を見極めてから。
また状況次第で他のチームに取り入ることも考える。


314 : ◆sIZM87PQDE :2015/02/27(金) 06:51:05 EMiiuJBc0
投下終了です
尚、今回サーヴァントステータス作成に際して「第二次二次キャラ聖杯戦争」の暁美ほむらの項目を参考にさせていただいたことを捕捉します

ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/377.html


315 : 名無しさん :2015/02/27(金) 15:22:26 KsDMf..k0
【セイバー】6
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
伊佐木要@凪のあすから & ツナシ・タクト@STAR DRIVER 輝きのタクト
高嶺清麿@金色のガッシュ!! & マタムネ@シャーマンキング
本居小鈴@東方鈴奈庵 & ムゲン@サムライチャンプルー
碇シンジ@エヴァンゲリオン新劇場版 & パルパティーン@スター・ウォーズ
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より- & ランスロット@Fate/Zero

【アーチャー】4
スタン@グランブルーファンタジー & 瑞鶴@艦隊これくしょん
広川剛志@寄生獣 &エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版) & ジャスティス@GUILTY GEAR
呉島光実@仮面ライダー鎧武 & 暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語

【ランサー】6
酒留清彦@ピューと吹く!ジャガー & ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー
笛口雛実@東京喰種 & レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)@ウィザーズ・ブレイン
蓮見琢馬@The Book jojo's bizarre adventure 4th another day & 田村玲子(田宮良子)@寄生獣
レイ・ザ・バレル@機動戦士ガンダムSEED DESTINY & Dボゥイ(相羽タカヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード
桐ヶ谷 柩@悪魔のリドル(原作) & ディルムッド・オディナ@Fate/Zero
ウェカピポ@ジョジョの奇妙な冒険 第七部 スティール・ボール・ラン & ミリア=レイジ@GUILTY GEAR

【ライダー】3
斉祀@THE KING OF FIGHTERS XIII & ???@アカツキ電光戦記
レパード@夜ノヤッターマン & 太公望@封神演義
月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!(プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち) & 南光太郎@仮面ライダーBLACK

【キャスター】5
比良平ちさき@凪のあすから & 雪姫(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)@UQ HOLDER!
八神はやて@魔法少女リリカルなのはA's & ギー@赫炎のインガノック-what a beautiful people-
呉島貴虎@仮面ライダー鎧武 & メディア@Fate/stay night
エヌ氏@星新一作品 & ロック@手塚治虫作品
野原みさえ@クレヨンしんちゃん & ギーグ@MOTHER

【アサシン】6
水本ゆかり@アイドルマスター シンデレラガールズ & シルベストリ@からくりサーカス
霜月美佳@PSYCHO-PASS 2 & ジャギ@極悪ノ華 北斗の拳ジャギ外伝
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 & 夜神月@デスノート
音無結弦@Angel Beats! & あやめ@missing
佐野 満@仮面ライダー龍騎 & 野々原渚@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD
神条紫杏@パワプロクンポケット11 & 緋村剣心@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

【バーサーカー】4
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEEDDESTINY & デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
ダンディ@スペース☆ダンディ & ヤクザ天狗@ニンジャスレイヤー
葛西善次郎@魔人探偵ネウロ & ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ
シュラ@アカメが斬る!(漫画版) & アギト@私の救世主さま

【エクストラ】6
〈モレスター〉
鷹鳥迅@最終痴漢電車3 & 遠山万寿夫@痴漢者トーマス2

〈アドミラル〉
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & 提督@艦隊これくしょん

〈ヴァンパイア〉
雷小龍@ウィザーズブレイン & 月島亮史@吸血鬼のおしごと

〈しろがね〉
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ) & 加藤鳴海@からくりサーカス

〈イマジネーター〉
暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ & 園村麻希@女神異聞録ペルソナ

〈ネゴシエイター〉
ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド & 佐山・御言@終わりのクロニクル


316 : ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:07:09 JBnStuqI0
何もかもに乙です。
ただいまより、私も投下を開始します。


317 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:07:57 JBnStuqI0



 彼女のサーヴァントは、人混みの中から現れた。
 丁度、踏切の向こう側で、何人もの人が黄色と黒のバーが上がるのを待っていた時の事である。

 その人の群れの中に、彼はいた。

 彼はシャドーボクシングをしながら、体を左右に揺らして歩いていた。その姿は、彼女──香月舞に、ある人を想起させた。
 それだけでも何か目を惹く所があったのだが、電車が通りかかり、バーが上がった後、二人はすれ違った時、ようやく本格的にお互いの正体に気づいたようである。





 ────彼が、私のサーヴァントだ。





 ────彼女が、僕のマスターだ。


 線路を超えた向こうで、二人だけが静止し、振り向いた。
 人々がもう、向こう側の踏切を渡り終えた頃だった。
 残った二人の内、先に歩きだしたのは、サーヴァントの方であった。
 マスターの方へと歩み寄る。ハンサムな笑顔の似合う、ごく普通の青年であった。

 そう、人々に紛れた彼の姿は、一目見てそれが英霊だと気づかないほど、「人間」であった。

 舞は安心すると同時に、何故彼がそんなにまで人間であるのか、少し不審にも思った。
 しかし。
 実際のところ、英霊と呼ばれる者に出会ったのは舞も初めてである。
 他の英霊も、みんなこういう物なのかもしれない。

 ────彼の名は、東光太郎。

 かつて、ウルトラマンタロウとも呼ばれた男であった。







318 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:08:15 JBnStuqI0



 それから。

 香月舞は、肩より上で腕を組んでいた。
 それというのも、11歳の彼女の身長ではまだ腕を置くには少し高い手すりに手を乗っけていたからだ。
 それだけ無理して、橋から真下を見下ろしていた。

 真下には水面がある。絶えず、新しい水が流れ続けている。浅瀬の川だ。中では稚魚が泳ぎ、石が削られ、小さなゴミが流れている。
 それらは音も立てず、さらさらと小さな水音だけを立てている。
 水面には、舞ともう一人分の影が映っていた。

「ねえ、光太郎さん。聖杯戦争って、やめる事できるのかなあ……」

 表情も変えず、水面に映る光太郎の方だけを見て、舞は言った。
 真名の「東光太郎」の名を平然と呼ぶ事には、些かの抵抗もあるが、それでも「ランサー」などという明らかに不相応な俗称で呼ばれるよりはずっと良い。
 実際のところ、戦闘効率よりも、自分という一人の人間の尊厳の方が光太郎にとっては重要な物である。
 東光太郎として生きると決めたその日から、それは一層確かな物になっている。

「……できないだろうね。聖杯の方が僕らを閉じ込めていくつもりなんだ。まるで、聖杯の方が願いを叶えて貰いたがってるみたいだ」

「でもさ、聖杯なんて貰ったってつまんないよ。こっちから願い下げだなっ」

 舞は、ちょん、と、小石とも言えないような──アスファルトから抜け出した小さな砂のような石を舞は蹴とばした。
 それは、音も立てずに川の中に落ち、どこかへ消えてしまった。
 この川は、さらさらと流れているようであるが、その流れは、やはり、間違いなく早い。
 一秒にどれほどの物が遠くへ行ってしまうのだろう。川は一方的に進むので、こちらに舞い戻る事はない。
 今の小石も、一瞬で遠くへ消えてしまったと思う。
 もう二度と、今の小石と舞が巡り合う事はないだろう。

 時の流れも同じだ。
 いつか、様々な人や物との今生の別れが来る。


319 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:08:48 JBnStuqI0

 ──だからこそ。

 だからこそ、人は失ってしまった何かを求め、過ぎ去っていく物を振り返る。あるいは、己がこの川の先で大海に在る事を望む。
 聖杯は川の流れを戻す事も、流れた先に安全な未来を齎す事も出来るらしい。
 それが人を惑わせる。それが人を戦わせる。

 きっと、少年、少女にはまだ本当のところはわからないはずの事だろう。
 世間の小学生の多くは、いつまでも年に三度の長い休みがいつまでも終わらないと、心のどこかで信じて生きている。
 世情が悪くなり、子供たちが夢に対してやや斜に構えたシビアな思いを馳せるようになっても、それでも、多くはどこかでまだ安心のある未来を見据えているだろう。

 しかし。
 それでも。
 少なくとも、舞は、もう少しだけ、違った。
 季節が移り変わっていく姿をその瞳で見つめてきた彼女の観察眼は、既に年相応の感性を超えた物差しで世界を見ている。
 彼女は不思議な体験をする事が多かった。
 そして、些細な日常の積み重ねの意味を、心のどこかで既に実感していた。



「────だって、願いなんて、自分の持ってる力で叶えなきゃ、意味ないよ」



 その結論が、「これ」だった。

 昨日も、今日も、明日も、「香月舞」として生きる彼女は、その結論を出すだろう。
 光太郎は、そんな舞の言葉に感心すると共に、自分の見解を示して見せる事にした。

「……人によっては、そんな事もないのだろう。子を亡くした親、親のない子、やり直したい過ちを持つ者、地位や名誉の欲しい者、大きな夢のある者、世の中にはたくさんいる」

「でも……」

「──しかし、僕は舞ちゃんの言う事は全く持って正しい事だと思う。間違ってなんかないよ」

 光太郎もまた、便利な力を自ら捨てた者である。
 誰もが羨むスーパーヒーローであるのをやめ、それからはただの人間として生きてきた。
 だから、英霊の座は、今の光太郎にとって最も不要な物であった。
 光太郎は、水面に移った陽光に少しだけ目をやり、思いを馳せる。

「人間ってのはね、舞ちゃん。やっぱり、便利な力や発達した物があると、ついついそれに頼ってしまって、努力する事を怠ってしまうんだ。
 しかし、それではいけない。聖杯なんかに頼らなくても、人間はいくらでもやり直す機会を持っているし、無限の可能性を秘めているんだ」

「……わかってるよ。私だって、楽できる方法を持ってた事はあるよ。でも、そんな方法は、もう捨てたんだ」


320 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:09:15 JBnStuqI0

 ふと──。
 その言葉を聞いた時、光太郎は、言いようのない親近感を覚えた。
 それと、光太郎が先ほどから少し光太郎が感じていた物の正体を知った気がする。

 少女に残存する、ごくごく微量な魔力と、あらゆる怪異を惹きつける素養のような物。
 サーヴァントとしての光太郎ならば、それを自らの胸中で実感できる。
 確かに、幼少期、少女期には、魔の物と触れ合う力が高まる性質があるが、舞はおそらく、同年代と比べてもまだ、素養が高い。

 いや、まるで、かつてまで膨大な魔力を持っていたような予感さえする。
 もしかすると、彼女が捨てたのは、────「魔力」ではないか。
 それは、ほとんど、確信めいていた。


「わかったぞ、舞ちゃん。さては、君は、……魔法を捨てた魔法使いだな?」








 ──光太郎がそう言った時、舞の時間が、少し止まった。








 舞が振り返り、光太郎の表情を見る。
 光太郎は、ごく真面目な顔をしていたが、しかし、そんな表情を見てこそ、舞はあえてまた真実と違った回答を示そうとしていた。
 ひとまずは、「騙」そう。
 魔法使いと偽って、人を騙して見せる職業──それが彼女の夢なのだから。

「……捨ててなんかないもん。ほら、見て、光太郎さん」

 舞は、そう言って、両手を大きく開いて見せた。
 光太郎が見るが、その手には、何も握られていない。
 しかし、光太郎の視界と舞の右手との間が、舞の左手で不意に遮断される。右手を覆い隠す左手のカーテン。

「はいっ」

 右手を隠していた左手が退かされると、舞の右手には四つの赤い小さなボールが挟まっていた。
 紅いボールは、いつの間にそこに出てきたのかはわからない。
 どこから現れたのか──、少なくとも、光太郎の目には追えなかった。
 ジャブのような素早く巧みな手の動きによる物だという確信はあった。

 ……そう、これは、「魔法」ではなく、「マジック」だ。
 しかし、魔法と言い張って人を楽しませる手段である。
 彼女はマジシャンを目指していた。

「ほらっ、これが私の魔法。……あっ」

 指と指の間に挟んだ赤い玉が、一つ地面に落ちて転がってしまった。それを拾おうとして、今度は袖口からまた一個ボールが落ちた。
 彼女はマジックの披露の為に袖口にボールを常備していたのである。タネが見えてしまったので、これは「魔法」ではなく、完全なる「手品」になってしまった。

 舞は不器用なのである。本来的に、マジシャンに向いているタイプとは言えず、素の才能でいえば幼稚園児の弟の方に分があるくらいだ。


321 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:09:41 JBnStuqI0

 光太郎が、しばし呆気に取られていたが、我を思い出し、少し笑いながらボールの一個を拾い、舞に手渡す。もう片方は既に舞の手にあった。
 舞は、ありがとう、と一言言ったが、やはりどこか暗い面持ちだった。
 本来、マジシャンに失敗は許されない。一度タネが明かされてしまった時点で、もう二度と同じトリックをショーで使う事は出来なくなってしまう。
 とはいえ。
 基本動作の練習として、まだこのボールは手放せないが。
 そんな落ち込む舞の頭に、光太郎は手を乗せて撫でた。

「ほう、なるほど、手品か。凄いね。でも、まだまだ修業が足りないみたいだな」

「そうなの。しかも、これでもまだ基本中の基本なんだ。
 だから、大きなマジックをやるには、もっと、うんとたくさん練習しなきゃいけないし、これを失敗するようじゃまだまだ駄目だって」

 練習にこれだけ時間を費やすのは舞だけである。
 仮に同年代の人間が舞と同じ練習量をこなしていれば、もっと何ステップも上に行っているかもしれない。

「……でも、私、魔法にも聖杯にも頼らないよ。魔法を使えば簡単だけど、それでも、つまんないもん」 

「そうか、だとすると、先は長いかもしれないね。でも、それを何にも頼らずに自分でやると決めた想いがあれば、いつか、きっと出来るさ」

「私もそう信じてるよ。だから、私、いつか……何年かかっても、エミリーみたいな立派なマジシャンになる。
 本当の魔法なんか使わなくたって、私が自分で編み出した、もっと凄い魔法でみんなを驚かせるんだから」

 そのマジックが、いつか、どこか遠い世界にいる友達にも、憧れの人たちにも届くように──立派なマジシャンになる。
 それが舞の願いだが、喩えどんな甘言を聞いても、舞は二度と、便利な力には頼らないだろう。

「ねえ、じゃあ、光太郎さんは? 光太郎さんは、何か夢がある?」

「え? 僕かい? ははは。僕はね、そうだな、ボクサーになるのが夢なんだ。今の階級で、きっと世界チャンピオンになってやるぞ!」

 また、突然シャドーボクシングを始めて、光太郎は言った。
 彼の拳は風を切る音を鳴らす。ジャブ、ジャブ、ストレート。
 その為に落とした小さな袋には、おそらくグローブのが入っているのだろう。出会った時もシャドーボクシングをしていた。

 あの時は、趣味の範疇でボクシングが好きな程度かと思ったが、どうやらそんな程度ではない大きな夢を持っているらしい。
 ──ボクシング。
 そんな競技で夢を追っている人を、舞は一人身近に知っていた。
 幼馴染の、もう少し年上の男の、熱心な夢である。


322 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:09:52 JBnStuqI0

「ボクシングか。……私、ボクシングって嫌いだな。どうしてわざわざ痛い思いをしなきゃならないの?」

「じゃあ僕も、マジックって嫌いだな。見てる方がどうやってもタネがわからないんだから」

「もうっ、だから面白いんだよっ!」

「ははは。僕もね。だからボクシングは楽しいと思うんだ。お互いに痛い思いをして、自分の全てをぶつけ合って、それで仮に負けたとしても相手を讃える。
 次にやるぞっていうエネルギーになる。……戦う時もね、常に全力で、最後まであきらめないようにするんだ。
 スポーツって全部そういう物なんだよ。女の子にはわからないかな?」

 それは、舞もわかっている。
 リングにいる時のボクサーが、いかに輝いているかは、何度でも見つめてきた。
 ……「彼」がいなければ、舞は「魔法を捨てる」に至らなかったかもしれない。あるいは、もっと遅れていたのは確実だろう。
 仲間が夢を追って努力している最中で、魔法を使って賞を取った自分がひどく惨めで──世界から隔絶されたような気分になった。
 あの時の事が脳裏を過る。
 しかし、それでも、舞は何度でも、ボクシングを嫌う言葉を告げるだろう。舞には一生、同じ回答しか出ないかもしれない。

「女の子だって、夢を追うのに必死な男の人の気持ち、少しはわかるもん。それに、女の子だってスポーツはやるよ」

「はは、ごめんね、舞ちゃん。きっと、僕も、これからはたくさんの女性がスポーツで活躍すると思うよ。そうだな、……サッカー、柔道、それに、ボクシングもか」

 光太郎は言ったが、舞が言いたいのはただそういう事ではなかった。そこまではわかってくれなかったらしい。
 舞も、ボクシングをやっている人の気持ちはわかる。
 それは、舞がマジックをやるのと同じ気持ちなのだろう、と。

 しかし。

「でも、やっぱり私、ボクシングって嫌だな。好きな人が殴られてるの見て、楽しいわけないよ……」






323 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:10:08 JBnStuqI0



 ……夕方の公園で、舞はブランコを遊ばせていた。

 足をついて、小刻みに、キコキコと揺らしている。隣のブランコは光太郎が座って、公園で遊ぶ子供たちの姿を微笑ましそうに眺めている。
 前々から思っていたが、やはりこの光太郎という青年は子供好きな性格らしい。
 先ほど、この公園に来た時は子供たちと元気に遊んでいた。子供にも好かれる明るい性格で、すぐに子供と仲良くなっている。
 舞も、子供たちに先ほどと同じ手品を見せていたのだが、これがまた、好評で、多少の失敗は寛容に見てくれたので舞としても小さなファンが出来て嬉しい気持ちだった。

 ──光太郎さんって、子供みたいな人だね

 ──そうかな?

 ──……ううん、やっぱり違うかも……大人って、子供が思ってるより子供だったりするもん

 ──ははは、それは違いないね

 ──小さい頃の初恋の子が懐かしくなったり、いつまでも好き嫌いをしていたり、嬉しい時は大はしゃぎしたり……するもん、大人だって

 ──……ああ、そうだね、そういう意味では、僕も、子供の頃からずっと変わらないかもしれない、こうして見てると急に懐かしくなるんだ…………俺が、子供の頃が……

 しかし、やはり夕刻が近づくにつれ、だんだんと子供たちの数が減っていた。
 時間が時間なので、そろそろ帰るのだろう。そんな子供たちに光太郎は笑顔で手を振って見送る。
 遂には、公園には一人も子供がいなくなってしまった。

 そんな公園は寂しかった。
 しかし、だからこそ二人だけで話す事もできた。
 二人しか出来ない会話を交わす事ができた。

「そうか。……舞ちゃんも僕と同じか」


324 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:10:23 JBnStuqI0

 そう、全てを、光太郎に話した。
 舞がかつて、マジカルエミという全く別の姿で、魔法を使ってマジックをしていた事である。
 舞は、本当に魔法を持っていた子供だったのだ。

 誰にも話した事はない。だが、誤魔化そうにも、やはり光太郎にはどこか近い物を感じ始めていたので、いずれわかる事だろうと思ったのだ。
 どうせなら、早い方がいい。

 そして、光太郎もまた同じだった。
 光太郎はある世界でウルトラマンタロウという戦士として、人間離れした力を持って怪獣や宇宙人と戦ってきたのである。
 防衛組織ZATの隊員でもあったらしい。
 舞にとっては弟が見ているテレビ番組のような話だったが、彼女は信じた。
 光太郎の冗談ではなく、英霊として呼ばれるに相応しい頃の彼がそう思っていたと思って──。



「そして、やっぱり君も、自分が自分である事を選んだんだね」



 ……しかし、異能の力を持った二人の最終的な決断は共通していた。
 その力を捨て、人間として、自分の力だけで生きていく決意を固めたのである。
 その決意は、今振り返れば本当に一時の感情による物であったとも思う。だが、その決意こそが二人を普通の人間と同じにした。
 絶対的な力を得てしまった故の孤独はなくなり、二人は本当の意味で周囲に溶け込める人間になれたのだ。
 だからこその楽しみを得られているし、だからこその困難が降りかかるようにもなっている。

 それでも。
 人間は、やはり特別である事も、便利である事も求めてしまう──二人とて、そんな性質は何度も振り返ってくるのだった。

「光太郎さんは後悔はしてないの? ウルトラマンタロウをやめて……」

「……きっと、君と同じだよ。今でもウルトラマンタロウの力があったら、どれだけ便利かって思う事が何度もある。自分で捨てた物を、自分で後悔するのが人間さ」

 舞の漕ぐブランコの音はもう少し抑えられた。
 そして、完全に制止して、舞は真横を向いた。

「光太郎さんでも、そう思うの?」

「勿論さ。……でも、それは僕が僕になったからそう思うようになったっていう事でもあるんだ。
 タロウで居続けて後悔するより、東光太郎として後悔した方がずっと良いって、そう思ったんだよ。
 それだけは、絶対に間違っていないと今でも思っている。僕はウルトラマンタロウじゃない、東光太郎である事に誇りを持つべきなんだ、ってね。
 ……まあ、それでも後悔してしまうんだから、世話がないと言えばその通りだが」

 光太郎は正直な所を吐露した。
 わざわざ後悔をしたかしてないかと問うからには、舞にも後悔の念は僅かにあるだろう。
 強がる事もできるはずだが、人間というのは思った以上に小心者で、まだ誰かや何かに頼ろうと思う気持ちが変わらない。
 しかし、そんな弱さが見えなければ、人は強くも優しくもなれない存在であったりもする。

 また、舞は俯いてブランコを漕ぎ始めた。
 キコキコ、と音が耳元に鳴った。
 舞の目元には、光の結晶が煌めいているように見えた。
 光太郎も同じ気分だった。


325 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:10:39 JBnStuqI0

「光太郎さん」

「なんだい?」

「……たまにね。どうやっても、マジックの練習がうまくいかなくて、一日練習しても全然うまくなった気がしない時があるの。私って、本当に不器用なんだなぁ、って」

「僕もだよ。きっと、タロウがいたら、もっと多くの人を助けられるんじゃないかって思う時があるよ。旅先では、僕がタロウだったら助けられた命もあったからね……」

「魔法がなくなった時、お別れも言えずにいなくなった友達がいるんだ。……もう一度会いたいよ、トポ」

「……本当の事を言うとね、タロウとして、ZATの一員として怪獣と戦っていた頃の事が懐かしくなる時もある。あの時が人生で一番楽しかったと思う事がね……」

「せめてもう一度だけ、マジカルエミになれたらって、たまに思うんだ」

「せめてもう一度だけ、ウルトラマンタロウに戻れたら、またあの楽しい日々が巡って来るんだろうか」

 それは既に、会話ではなく、個々の郷愁になっていた。
 お互いが自分の想いだけを自然と口走った。しかし、それが言えれば、たとえ相手が聞いてなくてもいいような気がした。
 きっと、おそらく、相手はその気持ちを分かってくれている。
 ある一時期だけの夢や幻、青春を振り返り、回顧し始めていた──。

 ほんの少しの間だけ、楽を覚え、特別になった彼らも。
 それを自分で捨て去り、一人の人間になった彼らにも。
 今では、月日が流れた事で、その時代を懐かしく思い、そして悲しくなる時がある。
 たった一度でも良いから、取り戻したい物だと。

 夕空には、星が輝き始めていた。
 一番星、二番星、三番星、四番星……。
 今もまた、新しい星が灯を見せている。

 このまま、死ぬまで、時は流れていく……。それは恐ろしい事にも感じられる。
 マジシャンになれるかわからない舞にも、あてのない旅を続ける光太郎にも、どんな未来があるかはわからない。
 幸福であればいいが、決してそうとは言えないかもしれない。
 あの時が一生続いていれば、と思う事は何度あるだろう。



「「それでもさ」」



「夢っていうのは、やっぱり、いつか……そう、いつか必ず終わってしまう物なんだ。
 聖杯なんていう物に囚われていて、自分の力を信じられない人や、過去の過ちに縛られる人がいるのなら、僕はそれに立ち向かう。勿論、東光太郎として!」

「そうだよ、聖杯で叶えた願いなんて、きっといつか、自分の手で捨てる事になっちゃうよ。
 そんな少しの夢の為に戦うなんて、やっぱりおかしいと思う」

 だが、彼らは知っている。
 魔法も。
 超能力も。
 それは、決して、普通に生きる人間にとって、良い影響だけを与える物ではないと。

 二人とも、それは自分たちの手に余る物であり、自分たちの可能性を縮める物だと結論づけ、手放したのである。
 その決断に後悔があるというのに、間違っているとは思わなかった。
 だから、聖杯はあってはならない──、この星の人の前に姿を現してはならない物だと確信を持って言える。
 サーヴァントとマスターは、お互いの姿を見つめ合った。



「聖杯なんかに頼る限り、人はいつまで経っても一人前にはなれないんだ」


326 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:11:27 JBnStuqI0





【クラス】
ランサー


【真名】
東光太郎@ウルトラマンT(タロウ)


【パラメータ】
筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:E 幸運:A+ 宝具:A


【属性】
秩序・善


【クラス別スキル】
対魔力:D
 魔術への耐性。
 一工程の魔術なら無効化できる、魔力避けのアミュレット程度のもの。


【保有スキル】
母の加護:A
 ウルトラの母の加護により、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる事ができる能力。
 その発動は、太陽の下、自分の力で何かを成し遂げようとしている場合のみに限定される。

対怪獣:B
 怪獣や宇宙人、超能力者への耐性。
 通常の地球人の身体能力、技術結晶以外の攻撃の影響を緩和する事ができる。
 魔力への耐性は上記の通り、Dランクである。

気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を遮断する事ができる。
 本来はアサシンなどのスキルであるが、彼は自分の意思で人である事を望んだ為、人間の中に溶け込む事が出来るのである。
 とはいえ、あまりに察しの良いサーヴァントやマスターを相手にした場合、流石に読まれるかもしれない。
 当人も、むやみに霊体化せず、普段通り過ごし、「東光太郎」の名で呼び合う方が好みらしい。

ヒトの可能性:A+
 ウルトラマンではなく、人間の力で怪獣や星人に立ち向かう勇気や身体能力。
 彼らの世界の人間が持ち、怪獣戦で人間離れした能力を発揮する。
 彼の場合は、数十メートルの高さから落下しても「いてえなあ」で済ませ、何十メートルの高さや幅を飛び移り、竹槍一つで怪獣を攻撃する……といった能力を駆使しているのが見られる。
 一応言っておくが、普通の人間にここまでの可能性はない。彼らの世界の人間にはこのくらいの力があるという事である。


【宝具】
『胸に輝くウルトラの星(ウルトラバッジ)』
ランク:A 種別:対怪獣宝具・対星人宝具 レンジ:300万光年 最大捕捉:∞
 東光太郎をウルトラマンタロウへと変身させる宝具。
 この宝具を翳し、「タロウ」の名を呼ぶ事で、身長53メートル、体重5万5千トンという巨大な戦士として再現される。しかし、このサイズでの召喚には膨大な魔力を消費してしまうため、魔力消費を抑える等身大の姿にも変身可能である。
 便利な宝具であるが、光太郎は自ら使用に制限をかけ、現在は自分の意思で封印している(本来は返還したが、英霊となった為呼び出す事が可能)。パラメータは現在不明で、再現された時にそれは露わになるだろう。
 宝具の力は絶大であるが、光太郎はあくまで人間としての自分の力で困難を乗り切る硬い決意を持っているので、その決意を破るのは困難。加えて、マスターも望んでいない。
 ちなみに、タロウなる存在の正体は不明であるが、「ウルトラマンタロウが人間・東光太郎と一体化している」という説が有力視され、それがほとんど正史とも言われるが、一方で「光太郎自身がウルトラの命を授かった姿=タロウである」という説もある。
 ある時空では前者の説の通り、光太郎と分離したタロウがウルトラマンのルーキーを指導しており、また別の時空では、この宝具を再び使ってしまった光太郎が、タロウとして地球を去ってしまった事があると言う。

『ウルトラの星は太陽のように』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:300万光年 最大捕捉:1
 東光太郎を支える加護である。スキルにあるやつとは違う。
 かつて共に戦ったウルトラ兄弟や、彼を見守るウルトラの母や父の力、そしてウルトラマンタロウが、太陽のように彼を見守っているその姿が宝具である。
 光太郎が挫けそうになった時、自然と彼らの言葉や戦いが光太郎に届く、そんな不思議な力を持つ。
 しかし、言葉や想いが届いた後は、別に助けてくれるわけではないので、光太郎が自分で頑張るしかない。
 かつてのように光太郎の代わりに戦ってくれる仲間はいないが、それでも、彼らはいつまでも光太郎を励ますだろう。
 この宝具の最大捕捉は「東光太郎」限定の「1」であるが、同じようにウルトラの星から力や勇気を授かっている人間はこの地球にもたくさんいるはずだ。


327 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:11:54 JBnStuqI0

『其処に住まう民による、青き星すべての防御壁(ザリバ・オブ・オール・テリトリー=ZAT)』
ランク:B 種別:対怪獣・対星人宝具 レンジ:地球上  最大捕捉:1〜99(相手が怪獣の場合)
 東光太郎がかつて所属していた地球防衛組織・ZAT。既に光太郎自身は退任しているが、かつて光太郎がいた世界ではZATは継続して怪獣退治に専念していると思われる。
 多彩な装備を持ち、(一応)優秀な人材による、対怪獣用の作戦を発動する事ができる。
 この宝具により、光太郎自身もZATに所属していた時代の装備をその場に再現可能。隊員服、ZATヘルメット、ZATガンなどの基本装備はすぐに発動できるだろう。
 ただし、スカイホエールは勿論の事、ウルフ777級の宝具でも魔力消費は大きくなる他、明らかに悪目立ちするなどの欠点がある。
 光太郎もこの宝具の運用に関しては、『胸に輝くウルトラの星(ウルトラバッジ)』ほど硬く封印しているわけではないが、やはりZATを退任した以上、使わないに越した事はないと思っているだろう。


【weapon】
「ボクシンググローブ」
 東光太郎は元々、プロボクサーを目指していた青年である。序盤はZATをやりながらボクシングをしていた描写もある。
 その為、これはもう彼の命みたいな物であろう。初期だけの設定だが、最終回の後、彼が何をしているのかよくわからないので一応、まあ…。

「竹槍」
 申し訳程度のランサー要素。宝具ですらない。作中でも一度しか使ってない。
 しかし、多少なりとも怪獣にダメージを与える事が出来る凄い竹槍(というか、光太郎が凄い)。
 普段からこんな物を持ち歩いているわけではないが、一応ランサーなのでその辺はまあ、自由に召喚できるという事で…。


【人物背景】
 かつてウルトラマンタロウであり、ZATの隊員であった22歳の青年。
 今は、タロウに変身する為のウルトラバッジを返還し、一人の人間・東光太郎として生きている。
 光太郎は一人の人間として銀座の雑踏に消えてから、彼は特別な人間ではなくなった。
 彼がその後何をしているのかはわからない。
 プロボクサー、というのはあくまで当初の夢の一つであり、最終的に彼がそれを目指しているのかは不明。
 人間の平和の為に頑張っているのかもしれない。

 勿論、英霊の器でもないし、本人も特別な存在である事は望んでいない。
 だからこそ、この聖杯戦争を破綻させ、聖杯を解体、もしくはどこか人間の手の届かぬ場所に返し、自らも英霊の座を返還しなければならないという目標を持つ。


【サーヴァントとしての願い】
 聖杯の力に頼ってはいけない。頼ったとしても新たな後悔が生まれ、一人前の人間になる機会も失うからである。
 もし、聖杯を狙う者がいたなら、その事を教えなければならない。
 宝具も使うつもりはない。魔法、超能力などではなく、東光太郎としての自分の力で戦うのが彼の方針。


328 : 香月舞&ランサー ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:12:13 JBnStuqI0



【マスター】
香月舞@魔法のスター マジカルエミ


【マスターとしての願い】
 エミリー・ハウエルのような立派なマジシャンになる。
 しかし、それはこれから自分の力で叶える願いであって、魔法や聖杯に頼る願いではない。

【weapon】
「マジックアイテム」
 手品に必要な道具。小さな赤いボールを指の間に出現させる手品を練習している。
 他には、トランプなども基礎練習の為に所持しているかもしれない。

「ももんがのぬいぐるみ」
 かつて、トポという妖精が依代に使っていたぬいぐるみ。
 エミが魔法を捨て去った事から、既に人間界去っており、このぬいぐるみはもう喋らず、動かない。
 それでも彼がそこにいた思い出の証として残している。

「マジカルミラー」
 鏡の精を呼び出したミラーであるが、もう彼は人間界には来ないだろう。これはただのハート型の鏡になってしまった。
 トポが立ち去った後もこの鏡は舞の元に残り続けている。
 しかし、元々、使用頻度が極端に少なく、出てきてもストーリーに一切関わらないという、スポンサーの都合上、嫌々出しているような可哀想な玩具だったりする。


【能力・技能】
 マジックは好きだが、不器用で、基礎しかできない(とはいえ、勿論マジックを一切やらない人間に比べれば十分マジックができる)。練習中の身。
 マジカルエミとしてではなく、香月舞としても魔力素養を持っているのか、妖精と出会う事が多く、作中では鏡の精以外にも様々な妖精と出会い、何度も別れを告げている(これは弟の岬なども同様)。
 やたら地味な作風のせいで、11歳という年齢に見合った性格の反面、終盤ごろは殆ど大人のような感性を持ち始めている。


【人物背景】
 魔法を捨てた魔法使い。
 「マジカラット」という魔術団を経営している祖父母を持ち、母も元々はマジシャンだった背景から、一人前のマジシャンを夢見ている。
 1920年-1930年代に活躍したエミリー・ハウエルというマジシャンに憧れているが、父譲りの不器用さでマジックが上手くできないので四苦八苦している。
 かつて、鏡の精から授かった魔法により、「マジカルエミ」としてアイドル兼マジシャンをやっていた事があるが、努力で夢を叶えようとする周囲の人間を見て考えを改め、遂に魔法を捨て、香月舞として自分の力で夢を追う決意をした。
 それからは、マジカルエミではなく、マジカルマイとしてステージに立つ日を夢見て、引退した祖父にマジックを教わる日々を過ごしている。

 家庭科の成績が「2」と、持ち前の不器用さゆえにあまり良い感じではないが、それでも後半に差し掛かるにつれ成長して先生には頑張りを褒められるようになっていった。
 ちなみにそんなに好きではないものの、勉強が全くできないというわけではないらしい。
 まだ子供なので、やや純粋で、「初恋なんてどうせ忘れる」と一笑していた周囲の大人に食ってかかるような側面も見られる。というか、正直周囲の大人が大人げない。

 作風上、彼女は自分の感情を一切吐露せず、それをはっきり表す台詞もなく、風景や演出、行動によって心境の変化が見えてくる事が多い。
 その回の話の結末が描かれない事がザラにある。一つのストーリーとして何の動きもない場合もある。前二作(クリィミーマミ、ペルシャ)にたまにあったドタバタエピソードですらない郷愁的な話がやたらと多い。
 つまるところ、当初から、「マジカルエミ」には「ドラマ」は一切なく、ただ日常を過ごしていく中でひっそりと成長していく少女や、その周囲の人々の姿が描かれるのみなのである。
 下手すると、この聖杯戦争でも聖杯とも戦いとも何とも関係のない普通の日々や日常風景だけが延々描写される可能性がある(どうせ落ちるけど)。


【方針】
 マスター、サーヴァント共に、魔法や特殊能力を自ら捨てた人間である。
 その動機は、自分の力で何かを成す事の意味を知ったからに違いない。
 異常に便利な力を突然に手にしてしまった時、果たしてそれは本当に自分の望むべくして手に入る物ではないと二人は考えている。

 基本的に、相手に交渉し、願いの為に聖杯戦争に乗る事を引き留めるのが彼らの方針であるが、それで相手が選択した方針を必ずしも折る事はできないだろう。
 もし、聖杯の為に向かってくるならば、光太郎はそれを撃ち倒す手段を行使するしかない。
 舞は一切戦闘能力がないため、補助にあたるしかない。微量の魔力はあるので、それで何とか持ちこたえていこう。


329 : ◆CKro7V0jEc :2015/02/27(金) 18:13:01 JBnStuqI0
以上で投下終了です。


330 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:21:53 EsOhQmVc0
皆様、投下乙です。
私も投下させていただきます。


331 : テッド&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:24:21 EsOhQmVc0
ぼくの住んでた村が焼けちゃった。
ウィンディって人がソウルイーターっていう村のたからものを狙っておそってきた。
みんな、死んじゃった。
おじいちゃんもぼくに村のたからものを預けてどこかにいっちゃった。

…けど、村に来た知らないひとたちがぼくを守ってくれた。
1人は優しい顔をしたお姉さん。
1人は筋肉がすごい男のひと。
あと1人は―――


その人たちはよくわからないことをいっていた。


◇ ◇ ◇


――今のは………くんの………た……年前の…………


――そして……テ……は………300年……一人で旅……


――……、その……ドとかいう………うするんだ?


――つれては行けない‥


――…ッド………長い………一人…生き……なくてはいけ……旅の終わり…


――それでも やっぱり………運命……変え……いけない………ね


「いっちゃうの?ぼくはどうすれば‥」


「ねえ、一生のお願いだよ、ぼくもてれていってよ」


――テッド………つよい子に……さい。けっして……ないこと。


――………右手…紋章………誰にも…………だめよ。


「…うん」


みどりの布をかぶっていた人はぼくをみていてとてもかなしい顔をしていた。


◇ ◇ ◇


332 : テッド&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:27:59 EsOhQmVc0


「……ハッ!?――夢か」

森の中で、少年テッドは目を覚ます。
どうやら、木にもたれて寝てしまっていたようだ。傍らにはいつも手にしている弓と矢筒が転がっている。
木漏れ日が眩しくテッドの顔を照らしており、あまりの眩しさに太陽から顔を逸らした。

…またあの夢。たまに見ることがある。
故郷の村で起こった惨劇。そこで出会った変な3人組。まるで自分を知っているかのように話していた。
しかし、あの事件はテッドが今までの150年の旅をする発端となる事件。
それを夢に見て思い出すことはテッドにとって悪夢でしかない。
なんとなく、つけていた両手袋を外して手の甲を見る。
右手にあるのはソウルイーター。真の27の紋章の一つ。鎌を持った死神のような禍々しい紋章が刻まれている。
このソウルイーターを託されてから、誰とも親しくなることも許されず孤独に世界を放浪してきた。
そして左手には……令呪があった。3画の模様がテッドの左手の甲を彩っている。
それはテッドが聖杯戦争の地にいてマスターとなったことを示している。

「……あの…マスターさん……」

そこに実体化して現れたのは少女だった。
外見は幼く、10歳前後にしか見えない。何も知らぬ者が見ればテッドよりもはるかに年下に見えるだろう。
その身に纏われたセーラー服がその幼さを際立たせている。
彼女こそがアーチャーのサーヴァント、電(いなづま)。

「見張りをしていたのですが、誰も来なかったのです」
「…………そうか」

モラトリアム期間内でも他の参加者を襲う者がいないとは限らないので電は見張りを欠かさず行っていた。
テッドはしばらく沈黙してから電に対しそっけなく返すと、まだ気だるさの残る腰を上げて歩き出す。
今までの殆どがこのやり取りの繰り返しだ。
電が召喚されてからというもの、テッドは電と会話らしい会話をすることはなかった。
話しかけられても無視するか一言つぶやくだけで、自らのサーヴァントと関わり合おうとはしなかった。
テッドは振り返らずに木々の間で歩を進める。
まるで電など気にかけておらず、森に置いて行こうとしているかのように見える。

「はわわわ、待ってほしいのです」

一足遅れて、このままでは置いていかれると気づいた電は慌ててその後を追うのだった。
電には単独行動スキルがあるのでマスターから離れても問題はないが、ただ、マスターを一人で行かせるのは心配だったのだ。
初めて会った時、電は言葉を失った。その少年はまるであれゆることに疲れ果て心を限界まですり減らしているような様子だった。
笑うこともなく、ただ電を見つめる、無表情な顔。
それは本当の自分を押し殺すためにつけられたのっぺりとした仮面のようだった。
そして、開口一番に言われた言葉は『俺に構わないでくれ』だった。
何がテッドをそうさせたのか。どうして自分を拒絶するのか。
それを問うたこともあったが無視された。
電はそんなテッドの心をどうにか開けないか、悩みを聞いてあげることはできないかと考えながらモラトリアム期間を過ごしてきたのだった。
そのために何回か話題を振って会話をしようと試みたが、無視されるか、「そうか」「俺に構わないでくれ」と返されるだけだった。


333 : テッド&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:28:55 EsOhQmVc0

「あっあの!マスターさん、さっき手袋外していたのです」

それでもめげずに、とにかく話題を作ってもう一度話しかけてみる。

「…………」

無視される。「見ていたのか」なんて返事も帰ってこない。

「その時にアーチャーは――」

テッドについて回り、背後から必死に声をかけ、話をしようとする電。
テッドはそんな電に見向きもせずに歩いていたのだが――

「マスターさんの両手に令呪があるのを見たのです。あれってどっちが本物の――」

この言葉を聞き、テッドは急に立ち止まった。
あまりに突然のことだったので、電は「はりゃあっ?!」と声を上げ、テッドにぶつかってしまう。
テッドの体にも微かな痛みが生じたが、意に介せず、電に向き直る。
テッドはついに感情らしい感情を見せ、その重い口を開いた。
その顔には、明らかな怒気が含まれていた。

「――どうして俺に構うんだ?」
「………え?」
「おまえみたいな奴をみたことがある。俺に馴れ馴れしく事あるごとに構ってくる。そんなに俺が心配か?そんなに俺が可哀想か?」
「そ、そんな…違――」
「もう一度言う。俺に構わないでくれ……魂を喰われたくないのなら」
「え!?そ、それってどういう………」

その言葉を最後に、テッドの口は再び閉ざされた。
その日はどれだけ電が問おうとしても、話題を変えて話しかけても、テッドは一切口を開くことはなかった。

(マスターさん…)

一向に心を開かないマスターに、電は心を痛める。
テッドは何に苦しみ、心を閉ざしたのか。
まだ語られていない部分は多く、それを掴めていない。

(できるのなら、助けられる人は助けたいのです。敵も、マスターさんも)

それでも、電はいつかテッドが心から自分と向き合えることを願っていた。
常に戦争と平和について考え、戦闘の時も敵のことを気に掛ける。
殺し合いの聖杯戦争にいてはならないサーヴァント。
そんな優しい電はテッドを構わずに放っておくことはできなかった。


◇ ◇ ◇


334 : テッド&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:31:35 EsOhQmVc0


ソウルイーター。電が令呪と誤認したそれは令呪とは全く異なるものである。
テッドの右手に宿っており、持ち主には絶大な力を与えるが、
その代償として親しい間柄の者の魂を喰らい、持ち主の意志とは無関係に戦乱を巻き起こす。
まさにテッドにとっては呪いの紋章であった。
この呪いのせいで親しくなった者はみな命を落とし、その魂を喰われた。
テッドが誰とも打ち解けようとしないのはその呪いのせいで魂を喰われる者を見たくないという思いからの振る舞いなのだ。
それなのに。

(どうしてみんな俺に関わろうとするんだ…?)

アーチャーも、アルドという青年も。
自分と友になれば魂を喰われるというのに。
紋章が友の魂を喰らうことへの恐怖はテッドの心に深く根付いていた。



テッドは隠された紋章の村に生まれ、そこに住んでいた。
ソウルイーターは元々悪用されぬように村に保管されていた。
だが、それを手に入れるためにウィンディという魔術師が襲来。
唯一の生き残りであるテッドは村長にソウルイーターを託され、今まで150年の間、ウィンディの手から逃げてきた。

過去には一度ソウルイーターの呪いを忌み嫌い、逃げ出そうとしたこともあった。
紋章を宿す前から人生をやり直したいと思ったこともあった。
だが、同じ境遇の少年との出会いがテッドを変えた。
その少年は守るべきものを守るため、ソウルイーターのような呪いの紋章をその身に宿しながらも真っ直ぐに進んでいた。
その少年を見て、テッドはソウルイーターを受け継いだ運命を受け入れ、いつまでもソウルイーターを守っていくことを決意した。

テッドの願い。それはソウルイーターをウィンディのような悪しき者から守ること。
数十年前のテッドならば、ソウルイーターを放棄し、逃げる選択肢を選んでいたかもしれない。
しかし、ソウルイーターから逃げない意志を固めたテッドは聖杯にかける願いはない。
たとえ孤独で心が擦り切れて精神が壊れようと、ソウルイーターを悪い奴に渡すことは絶対に阻止する。
テッドは孤独に苛まれながらも、秘めている意志は強かった。
戦いを厭い、友になろうとするサーヴァントと、戦いを引き起こし、友を喰らう呪いの紋章を手にしたテッド。彼の行く末は――


335 : テッド&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:32:37 EsOhQmVc0
【クラス】
アーチャー

【真名】
電@艦隊これくしょん

【パラメータ】
筋力E 耐久E 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具D

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクならば二日程度の現界が可能。

【保有スキル】
水上戦闘:A
アーチャーは軍艦が生まれ変わった存在であるため、水上での戦闘を得意とする。
水面を歩くことができ、地上よりもスムーズに動くことができる。
水上での戦闘では敏捷のランクが上昇する。

夜戦:C
日没後に襲われる戦闘。
暗闇での相手の認識能力の低下を利用し、敵が知らぬうちに接近して攻撃を仕掛ける。
アーチャーの前身である駆逐艦は素早く小回りが利き、夜戦を得意とするためこのスキルを有する。
夜間の戦闘においてステータスが上昇する。

自己修復:C
魔力や戦闘で受けた傷を回復する能力。
アーチャーは軍艦として、燃料や鋼材といった資材を摂取することで補給及び修理をすることができる。

衝突:E
かつて他の艦とよく衝突したという逸話に由来するスキル。
あらゆる局面で判定を行い、失敗すると味方に衝突する。
衝突によるダメージは筋力の低さもあって微々たるものだが、双方がダメージを受ける。


336 : テッド&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:33:01 EsOhQmVc0
【宝具】
『抜錨・暁型駆逐艦娘 電』
ランク:E 種別:対艦宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜5人
実在の軍艦、暁型駆逐艦をモチーフにしたアーチャーの艤装を展開する。
戦闘時はアーチャーの背中に付着する形で装備されており、アーチャーの意思で主武装である主砲・魚雷等を発射する。
威力は主砲による砲撃よりも魚雷による雷撃の方が高い。
弾はマスターの魔力を変換して補充されるが、その燃費はかなり良好。

『この救済の手は未来へ向かう(ウォーシップ・ヒューマニズム)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:1人
スラバヤ沖海戦にて、姉であり同型艦の雷と共に敵艦の乗組員を救助した逸話の具現。
彼女らが敵に手を差し伸べたことは未来の平和に向けた勝利といえるだろう。
今日戦った敵兵は戦争が終われば隣人となるのだから。
マスター及びサーヴァントが死、または消滅に瀕した際、それを阻止して死の淵から救うことができる。
しかし、対象がそれを拒否した場合、宝具は発動しない。
また、この宝具が発動して誰かを救うために行動する際、全ステータスが大幅に上昇する。

【weapon】
・『抜錨・駆逐艦娘 電』で展開した艤装
通った場合、どんな装備をしているのかは後の書き手の方々にお任せします。

【人物背景】
暁型駆逐艦の4番艦であり、特型駆逐艦の最終艦の艦娘。語尾には「〜(な)のです」をよくつける。
性格は慌てんぼうで気弱だが心優しい。戦いを好まず、敵をも気遣っているほど。
就役してからはよく他の艦とぶつかったことがよくあり、一時は沈没させてしまったことも。
有名なエピソードとして、同型艦の雷とともに敵艦の乗組員を救助したことが挙げられる。

今回の聖杯戦争ではアーチャーとして召喚された。
マスターであるテッドはソウルイーターにより魔力が非常に豊富。
そのため、マスター補正により敏捷が1ランク、魔力が2ランク上昇している。

【サーヴァントとしての願い】
テッドの心を開く。
また、敵の主従と戦いたくなく、できることなら救いたい。

【基本戦術、方針、運用法】
基本的なパラメータは上昇しているとはいえどれも低め。
夜間かつ水上ならばもう少しマシに戦えるかもしれない。
燃費は魔力回復があり悪くないが、火力面があまり強くなく、Eランクの宝具しか攻撃に使えない。
『この救済の手は未来へ向かう』も他者を回復する宝具なので、
敵を倒すことに関しては非常に弱い。
はっきり言って、最大の脅威はアーチャーではなくマスターの持つソウルイーターであろう。


337 : テッド&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:33:52 EsOhQmVc0
【マスター】
テッド@幻想水滸伝シリーズ

【マスターとしての願い】
ソウルイーターを悪しき者から守る。それさえできれば聖杯はどうでもいい。

【weapon】
・木の弓
遠距離から一方的に相手を攻撃でき、追手を妨害しつつ逃走することに最適な武器。

【能力・技能】
・ソウルイーター
「生」と「死」を司る紋章。
主な魔術は敵からの生命力の吸収や敵の魂を喰らい、即死させる。
単純に攻撃する魔術も扱える。
宿主と親しい者の魂を喰らい、宿主の思惑とは関係なく戦乱を巻き起こす呪いを持つ。
この呪いによりテッドと親しくなった者はみな魂を喰われてきたため、それが起こらぬようテッドは他者から心を閉ざしている。
尚、この紋章は他者への譲渡が可能。当然、新たな持ち主も呪いを受ける。

テッドがいた世界の根源といわれる27の真の紋章の一つ。紋章自体が意志を持っている。
真なる紋章の継承者は不老の体になれるが、紋章の呪いを受ける。
魔術的に説明すると、『強大な力と呪いと不老を持ち主に与える生きた魔術刻印』。
27の真の紋章は世界の根源そのものである。そこから発される力が魔法か魔術かは分からないが、絶大な力であることは確かである。
その紋章から発される力は並大抵の対魔力ならば貫通してしまうだろう。
アーチャーよりもこちらを警戒すべきである。

・弓を射る能力
150年間孤独な逃亡生活を送っていたため、そこそこの技量はある。

・協力攻撃
他人に心を開かないテッドも協力することができる…かもしれない。
似た武器(弓など)を持つ仲間や縁のある仲間と連携攻撃を放つことができる。

【人物背景】
隠された紋章の村出身の少年で、悪しき魔術師ウィンディによって村が襲われて以来、150年もの間、孤独と共に真の紋章「ソウルイーター」を守り続けてきた。
「ソウルイーター」の呪いのため他者と深く関わろうとはしない。
本来は明るく、子供のように無邪気な性格なのだが心を閉ざしているせいで他人には不愛想に振る舞っている。
群島諸国では同じ境遇の『幻想水滸伝4』主人公に出会い、ソウルイーターから逃げない決意を固めている。
ソウルイーターを長年宿し、多くの魂を不本意ながらも喰って来たからか、その魔力は非常に膨大。
本来はこの時空からさらに150年後、心からの親友に出会う運命なのだが――。
参戦時期は幻想水滸伝4の終了後から。

【方針】
聖杯で願いを叶えるつもりはないが、ソウルイーターを守れなくなるため、死ぬことは回避したい。
アーチャー含め他人とは極力関わり合うつもりはない。


338 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/02/27(金) 22:34:21 EsOhQmVc0
以上で投下を終了します。


339 : ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:13:17 jfkg6Gg.0
投下させていただきます


340 : アルミン・アルレルト&アサシン ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:13:50 jfkg6Gg.0




『エレン、いつか外の世界を、探検できるといいね……』



――――何かを捨て去ることが出来るものだけが、何かを手にすることが出来る。






341 : アルミン・アルレルト&アサシン ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:15:26 jfkg6Gg.0

背後に蠢く人並み。
それらを無視し、アルミン・アルレルトは眼前に広がる巨大な水たまりを見つめ続けた。
舐める。
味覚を刺激するしょっぱさが広がり、ペッ、と吐き出した。
世界。
これこそが世界なのだろうか。

「感動かね?」

そんなアルミンへと、背後から声がかかる。
ゆっくりと振り向いた。
そこには、アルミンによって召喚されたアサシンのサーヴァントが立っていた。
道士服に身を包んだ、アルミンよりも低く、アルミンよりも細い矮躯。
アルミンが強く押せば、ひょっとするとそれだけで死んでしまうのではないか。
そんな考えを抱いてしまうほどの身体。
しかし、それでいてアルミンでは絶対に叶わない存在。
巨大な人間に勝てないことは当然のことだ。
アサシンはそうではない。
小さいにもかかわらず、巨大な人間でも叶わない。
そんな超常者であるはずのアサシンは、笑っていた。
ただでさえ細い目と、ただでさえ皺苦茶の顔に造られた笑み。
もはや顔に皺があるというよりも、首の上に皺が載っているといった具合だった。

「なんだか、信じられません」

アルミンは呆けた顔で自身のサーヴァントへ応える。
アサシンは、やはり皺苦茶の喉を動かして、『フォッフォッ』と低い声で笑う。
不快ではなかった。
今はもう居ない祖父を思い出す、心地よさすら感じる年長者の穏やかな笑みだった。

「世の中信じられないことだらけ。それを信じてみるのが始まりの一歩」
「そんなこと皆知ってるのに、なんで僕らは出来ないんだろう。
 疑うことすら、なんで出来ないんだろう」
「そこはそれよ、世界とやらが一枚上手なだけよ」

深い声でアサシンは言う。
この世の全てを知っているような声だった。
アルミンは、再び亡き祖父を連想した。
恐らく、アルミンの六倍は生きていたはずの祖父の、その倍は生きているように見える風体。
アルミンにとっては遠すぎて、大きな違いがあるはずのその二人が同じものに見えた。

「世界が構築した理を否定したつもりでも、世界の理に騙されておる。
 前に一歩進んだつもりが、後ろに一歩下がっている。
 世界を超えたつもりが、実際は釈迦の手の中」
「シャカ……?」
「世界の理から抜けだした、人々が目指すべき姿……と、されておる。
 『覚醒』という事柄に関しては、儂をして遠い人物よな」

アサシンは再び笑い声を上げた。
アルミンはその言葉を重く聞いていた。
全てが重要な言葉であるように思えた。


342 : アルミン・アルレルト&アサシン ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:16:04 jfkg6Gg.0

「さて、マスターは世界が突きつけてきおった『何』を否定するのかの?」

アサシンが問いかける『本題』。
試すような、嘲りと十分に取れる笑い。
見たことのなかった『海』という概念を直視した時。
アルミンが漠然と抱いた『やり直し』に基づく『願い』とはなんなのか。

「僕は、世界を旅がしたい」
「ほほう」
「そこには、こんな海があって、こんな街があって、僕『達』の知らない世界が広がっている」

大切な親友である、エレン・イエーガーにいつか語った言葉。
世界の広さと、壁の中の狭さを語る言葉。
夢に彩られていた、幻想の言葉。

「僕は、あんな世界、嫌だ……エレンも居ない、残酷な世界」

ミカサの言葉だっただろうか、それとも、誰の言葉でもない、自身が抱いた想いだっただろうか。
いずれにせよ、アルミンは思い出した。
世界は、とても残酷なんだという真実を。
エレンは自分を助け、死んだ。
もう二度と、エレンとは会えない。
世界を旅しようと約束した、誰よりも大切な友達を失った。
自分の、情けなさで失った。

アルミンは深い哀しみよりも、呆気に取られ、棒立ちになり続けた。
巨人はアルミンを襲おうとはしなかった。
そのまま、ずっと呆けていて――――気づけば、聖杯戦争に招かれていた。

「本気ってわけね」

アサシンは容姿から察せられる重ねた年月には似つかわしくない、軽い口調で応えた。
快活とした笑み……なのだろう。
理を活かす武人として究極の位にあるアサシン。
世界の理に、感覚的な意味では最も近い存在。

「アサシンの、願いは?」

アルミンは問いかけた。
ともすると、そんなものはない、と返ってくるのではないかと思いながら。
しかし、アサシンは応えた。

「聖杯か……いや、そんな欲もなくなってきてたんじゃが」

アルミンの悲壮な願いを受け止めながら、アサシンはこともなくそう言った。
その言葉には、熱意というものはなかった。
アルミンからすれば、この超然とした老人に願いというものがある事自体が意外ではあったが。

「わしも呼ばれたくなってのぉ……
 受肉してやり直して、いっちょ、みんなから呼ばれてみようかな、なんて」
「どんな、称号なんですか?」

皺苦茶の顔を、さらにくしゃりと歪ませた。
顔というよりも皺の集まりと呼べる、本来ならば笑みだとすら分からないであろうその表情。
しかし、アルミンは確かにその顔が笑みであることがわかった。


アサシン――――郭海皇は確かに笑った。


343 : アルミン・アルレルト&アサシン ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:17:11 jfkg6Gg.0



「地上最強の生物」



世界の広さを知り、世界の広さから認められるその言葉。
アルミンは、胸が高鳴った。
同時に、その高鳴りをエレンと共有できない事実を思い出した。
広い世界の中で孤独を感じ、涙が流れた。


344 : アルミン・アルレルト&アサシン ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:18:50 jfkg6Gg.0

【クラス】
アサシン

【真名】
郭海皇@バキシリーズ

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E+ 魔力E 幸運C 宝具-

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
気配遮断:-
暗殺者ではなく武術家である郭海皇は『暗殺者としての』気配遮断のスキルを持たない。
代替スキルとして『圏境』のスキルを持つ。

【保有スキル】
中国武術:EX
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく"修得した"と言えるレベル。
中国武術とはすなわち郭海皇その人のことであり、郭海皇の一挙手一投足の全てが『中国武術の理』である。
本来は『中国武術』と呼べぬはずの動きでも、郭海皇が行ったのならば、それは『中国武術』となる。

心眼(真):EX
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す"戦闘論理"。
宇宙の理と合致した郭海皇は、極々限定的に因果を捻じ曲げ、ゼロであるはずの逆転の可能性を生みだす。
止まるはずのない、中れば即死を免れない最強の拳を『死ぬことで止めた』という逸話から生まれた。

圏境:A
気を用いて周囲の状況を感知し、また、自らの存在を隠蔽する技法。
極めれば天地と合一し、姿を自然に透け込ませる(透明化する)ことが可能になる。
郭海皇にとっては、気配遮断の代用にもなっている。

【宝具】
『半歩崩拳、あまねく天下を打つ』
ランク:- 種別:対界魔拳 レンジ:1 最大捕捉:1人
空間に存在するあらゆる『理』を操る対界魔拳。
中国武術が刻み続けて、ついに到達した、『四千一年目』。
浸透勁・消力を代表とする、この世に存在する『理』を老体に載せて行動する。
あらゆる攻撃を海に打ち込まれる弓矢のように無効化し、あらゆる防御を夥しい年月に晒された城壁のように無効化する。
しかし、郭海皇は根源へと到達した存在ではない以上、無効化できない神秘というものも当然として存在する。


345 : アルミン・アルレルト&アサシン ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:19:34 jfkg6Gg.0

【weapon】
中国武術そのものであるため、あらゆる武具を扱うことが出来る。
アサシンクラスであり、また、郭海皇自身が必要としないため、暗器などは聖杯戦争に持ち込んでいない。

【人物背景】

『慣例とは言え許されるのか。この最前線に加わりますッッ』
『百年経ったからまた来たよッッ正真正銘の本物ですッッッッ』
『齢、百と四十六ッッ前ッッ大擂台賽覇者ッッ』

『御起立下さいッッ未だ健在ッッ』

『海王中の海王ッッ』

『郭海皇その人ですッッ』


郭海皇とは史上最強の中国拳法家である。
中国武術の高位の達人に与えられる『海王』という称号の最高位である『海皇』の位を持つ。
一度は『理合』という中国拳法そのものを否定し、豪腕だけを持って中国武術家のトップに立った。
しかし、自身の腕の半分もない老人に手も足も出ずに敗北。
その後、その豪の暴力を捨て、理合を極める。
消しゴムほどの重さしか持たない眼鏡を壁に埋め込む打撃すら無効化する『理合』を手にする。
世界で最も強い老人。


【サーヴァントとしての願い】
受肉し、『地上最強の生物』と呼ばれてみる。

【基本戦術、方針、運用法】
暗殺者ではないが、自身の姿すらも消せる極めた理合を用いればマスターの暗殺も容易い。
また、筋力Eの細腕から繰り出される一撃必殺の打撃と、全ての攻撃を無効化する消力で敵サーヴァントとの決戦も十分に行える。


【マスター】
アルミン・アルレルト@進撃の巨人

【マスターとしての願い】
エレンとともに世界を旅する。

【weapon】
『立体起動装置』
アンカーが付いた二つのワイヤーの射出機が腰ベルトに付けられ、操作装置を兼用する剣の柄部分と繋がっている。
このワイヤーを打ち出し、壁や巨人の体に突き立てて高速で巻き取ることによって、素早い空中移動を可能にする。
カードリッジ式のガスボンベが燃料となっている。
自宅に幾つか予備のガスボンベ補給を所持している。

『剣(スナップブレード)』
前述の立体機動装置と連動している、正確には立体機動装置の操作装置を『柄』として剣を加えたもの。
「柄」は撃鉄、ブレーキレバー(制動操作装置)、二つのトリガー(引鉄)、二つの補助スイッチ(刃のリリースなど)を持ち、操作内容は柄尻から伸びる管を通して各所へ有線で送られている。
接続先は柄からアンカー射出装置基部、そこから別口で後方のガス供給弁の順。
刃の部分には特殊な製法で折れ筋が入れられており、折る刃式カッターナイフの刃を拡大延長したような外見をしている。
高負荷が掛かった際には簡単に折れる仕様で、これにより持ち手や柄の保護を行っている。


【能力・技能】
格闘術やサバイバル技術などの他に、立体機動装置を利用した特殊な移動法を所有している。
『立体機動』
前述の立体機動装置を使用することによって行う移動方法。
ワイヤーの射出と、そのワイヤーの巻き揚げによって行う高速・高所移動。


【人物背景】
繁栄を築き上げた人類は、突如現れた天敵の『巨人』から逃れるために『壁』が築き上げた。
その中で安穏とした日々を百年送り続け、アルミンもそのうちの一人だった。
しかし、ちょうど百年後。
ついに巨人によって『壁』の一つが壊され、アルミンは巨人によって全てを失った。
その後、アルミンは半ば義務的な訓練兵団に入団し、卒団を前にして、人生で二度目の巨人の襲撃に遭遇した。
そこで、アルミンは友人を失い、幻想だけではない世界の現実を想い出した。

【方針】
優勝狙い


346 : アルミン・アルレルト&アサシン ◆YCEVNgTRAI :2015/02/28(土) 01:20:35 jfkg6Gg.0
投下終了です
尚、今回ステータス作成に際して「第二次二次キャラ聖杯戦争」のミカサ・アッカーマンの項目を参考にさせていただいたことを捕捉します
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/170.html


347 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/28(土) 04:32:41 ezuhaTlc0
投下します


348 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/28(土) 04:33:07 ezuhaTlc0

 ランサーのサーヴァントの前には、一人の男が気を失っていた。
 それが己のマスターだということは疑いない。男の右手には令呪が刻まれているからだ。
 だがランサーには、この男を目覚めさせるつもりはなかった。
 ランサーが仕えるべきは、天地魔界に於いてただ一人。主を違えることなどできようはずもない。
 聖杯戦争というシステムは理解しているが、従う義務などない。
 気絶しているのは幸いだ。別に抵抗されても全く障害とはならないが、多少の手間ではある。
 逆手に槍を持ち替え、男の喉元を狙う。
 この槍を突けば男は死ぬ。とすれば当然、この男のサーヴァントである己も消え果てるだろう。
 だが、迷いはなかった。何の縁もない人間のために戦うことなどできようはずがない。
 全力で生きた果ての終焉だ。誇りこそすれ、悔いはない。

「……ああ、こんなところで死にたくない……」

 と、男が小さく呻く。
 ランサーは、男が覚醒する前に殺すべく槍を握る手に力を込め、

「まだまだ、ぼっちゃんのために……」

 突き出した槍の穂先は、男の首を薄皮一枚裂いただけだった。

「痛っ……え? あれ?」

 男が目を開ける。
 その瞳が巡り、ランサーの姿を写して大きく見開かれ。

「……ちっ」

 ランサーは、小さく舌打ちをした。


349 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/28(土) 04:33:55 ezuhaTlc0

「はあ。つまり、その聖杯というものを手に入れたら何でも願いが叶うってことでしょうか」

 その男はグレミオと名乗った。
 長い金の髪、頬に走る刀傷、使い込まれた銅の斧。戦いを生業とする――というには少し線が細い。
 ぼんやりとした表情は現状を認識できているかどうかすら怪しいものだ。

「で、あなたが私のサーヴァント、と」
「俺にそのつもりはないがな」

 ランサーがグレミオに付き合って話をしているのは、少しだけ哀れに思ったからだ。
 どのみち殺すつもりではあるのだが、グレミオが起きた以上はどうして殺されるのかくらいは話してやっても損はない。

「俺の槍はただ一人だけに捧げたものだ。お前のために振るうことはできん」
「と言うと、ランサーさんもどなたかにお仕えされていたのですか?」

 戸惑っていた顔が、得心を得たというように笑う。それならば知っている、と言うように。

「私もある親子にお仕えさせていただいておりまして、あなたのお気持ちはよくわかります。
 ええ、それは確かに私などの命令は聞けないでしょう。どうぞ望むようになさってください」
「……いいのか? 俺はお前を殺すと言っているのだが」
「と言われましても、私は一度死んだようですから……この場合、殺すというより元に戻るということではないでしょうか」

 グレミオは柔らかく微笑んでランサーを促す。しかしこうなると逆にランサーのほうが戸惑ってしまう。
 必死に抵抗されたほうがまだしもやりやすいというものだ。

「お前には……願いがないのか? もう一度命を得て、その親子に再会したいとは思わないのか?」
「もちろん、未練はあります。ですがテオ様には合わせる顔がありませんし、ぼっちゃんにはたくさんのお仲間がおられますからね。
 もうお二人のお世話をできないことはとても残念ですが……私がいなくても大丈夫ですよ」
「主を残して死んだことに悔いはないと?」
「私の命でぼっちゃんをお守りできたのなら、それは私にとって誇るべきことです。後悔なんてありません」

 そう言葉を切ったグレミオは、寂しそうではあるが晴れ晴れとした顔だった。
 ランサーは槍を置いた。このグレミオという男、契約する気は依然として起こらないが、どういった主に使えているのか知りたくなった。

「少し、興味が湧いた。そのテオとぼっちゃん……について、聞かせてくれ」
「いいですとも。まず私がなぜぼっちゃんのお世話をすることになったかというとですね……」


350 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/28(土) 04:34:18 ezuhaTlc0

 太陽暦230年、トラン湖を中心とする地域に赤月帝国が興る。
 初代皇帝はクラナッハ・ルーグナー。国名はクラナッハが「赤い月の騎士」と称されていたことに由来する。
 時は流れ太陽暦446年、皇帝の血を引く者達の間で争いが勃発した。世に言う「継承戦争」である。
 後に「黄金の皇帝」と称されるバルバロッサ・ルーグナーが、叔父であるゲイル・ルーグナーを倒して皇帝に即位。
 バルバロッサは即位後すぐさま軍備を整え、混乱に乗じて侵攻してきた北方の都市国家軍を撃退した。
 戦乱で荒廃した国内の復興に尽力し、善政を敷いたバルバロッサは名君と讃えられた。
 そのバルバロッサとともに継承戦争を戦い抜いた六人の将軍のうち一人が、グレミオの仕える主だ。
 人呼んで、「百戦百勝」テオ・マクドール。帝国に武名高き猛将である。
 テオは早くに妻を亡くしたが、一人息子に恵まれた。その息子こそ、グレミオが世話を任された「ぼっちゃん」だった。

「つまりそのぼっちゃんにとって、お前は母親代わりということか」
「いえそんな、奥様の代わりなんて畏れ多いことです! まあ、テオ様は多忙な方ですから、私がぼっちゃんの面倒を見させていただいたことは確かですが」

 やがてテオの息子は成長し、当然のように軍に入った。その隣にはいつもグレミオと、親友のテッド少年がいた。
 六将軍の息子という身分もあってそれなりの地位を与えられ、任務を任された。その任務で彼は生まれ育った帝国の腐敗を知る。
 それは皇帝の豹変に端を発するものだった。宮廷魔術師ウィンディが側に就くようになり、皇帝は民を顧みない暴君と化したのだ。
 ウィンディはテッドが宿していた紋章を狙った。テッドはウィンディの手中に落ち、紋章は居合わせた少年へと受け継がれることになる。

「それからぼっちゃんは、帝国の圧政に立ち向かう解放軍を率いていたオデッサさんという方に出会い……色々あって、解放軍のリーダーをすることになったのです」
「では、父親と敵対することになったのではないのか」
「ええ、その通りです。テオ様は忠義に篤いお方ですから、皇帝陛下が間違っているとわかっていても裏切ることなどできないはずです。
 しかしぼっちゃんもまた、苦しむ民の実情を見て、オデッサさんに後を託されてしまった。ぼっちゃんはお優しい性格ですから、見て見ぬふりなどできなかったのでしょう」
「しかしお前は、そのテオという男の部下なのだろう。何故、主ではなく息子についていったのだ?」

 ラーハルトにはこれが疑問だった。グレミオの主はあくまでテオであり、その息子ではないはずだ。
 真に忠臣たるならば、息子を反乱軍のリーダーなど辞めさせて、父親の元へ連れ帰るべきではないか。

「ああ、それは……うーん。うまく説明できないんですが。

 確かめたわけじゃないんですが、とグレミオは前置きした。

「テオ様はきっと、ぼっちゃんの行動に怒ってはいらっしゃらないと思うんです」
「なに? だが、息子は父親の属する軍を裏切ったのだろう」
「ええ、それは事実です。しかしいまの帝国は……私がこういうのもテオ様には申し訳ないのですが、変わってしまいましたから。
 以前のバルバロッサ皇帝はまさに名君と称するに相応しい方でしたが、いつからか民を顧みなくなってしまった。
 役人は腐敗していますし、治安は乱れ山賊や野獣が跋扈しています。反乱という形で民の不満が爆発するのも、当然のことだったのです」

 皇帝が変わったことは、テオも当然察していただろう。
 それでも彼は、皇帝に忠を尽くす将軍であるがゆえに裏切ることはできず、帝国の敵である息子と戦うことを選んだ。

「おそらくテオ様は、ぼっちゃんのことを誇らしいと思っておられるはずです。
 ぼっちゃんは辛く険しい、でもきっと正しい道を選んだ。子供のわがままではなく、一人の人間として、多くの人達の想いを受け止めることを選んだ。
 その選択を、決して口には出せないことですが、テオ様は嬉しく思われているでしょう。ぼっちゃんは、強く正しく、そしてまっすぐに育ってくれたのですから」

 息子もまた、父親と対立することになるとわかっていても歩みを止めなかった。
 帝国の暴虐を止めるため、託された遺志を貫くため、そして囚われた友を救うために。
 グレミオは親子の戦いを止めるのではなく、側にいて守ることを選んだ。
 どちらが正しいのか、その答えを決められる権利はマクドールの名を継ぐ二人にしかないとわかっていたから。


351 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/28(土) 04:35:24 ezuhaTlc0

「……でも私、死んじゃったんですよね。ああ、ぼっちゃんとテオ様は今頃どうしているでしょうか。心配だなあ」

 解放軍を率いることになった少年は、仲間を集めて勢力を拡大していった。
 そして帝国六将軍の一人、ミルイヒ・オッペンハイマーとの戦いが始まり――グレミオは命を落とした。
 ウィンディに操られたミルイヒは罠を仕掛け、グレミオたちはまんまと引っ掛かってしまった。
 人食い胞子が充満する部屋の中から少年と仲間たちを押し出し、扉を閉め、そこでグレミオの記憶は途切れている。

「つまりお前は、自分の命と引き換えに将軍の息子を守ったわけか」
「あの時はどうしても他に方法を思いつかなくて……。ああ、ぼっちゃんに怪我がなければいいんですが」
「自分の命よりも優先するものがある、か。変わった人間だな、お前は」
「かも知れません。でも、ランサーさんも私と同じではありませんか?」

 グレミオが微笑む。その瞳は、ランサーから自分と同じ匂いを嗅ぎ取ったと雄弁に伝えてくる。

「あなただって主のためなら躊躇わず命を投げ出す方でしょう。目を見ればわかりますよ」
「……まあ、な」

 グレミオの言う通りだった。ランサーとて、主を救うためならば自らの命など喜んで差し出す男である。
 出会ったばかりの男に己の性を見抜かれたことに、もはや驚きはない。
 この男が自分を召喚した理由ははっきりした。グレミオとランサーは、その在り方がとても良く似ているのだ。
 主に揺るがぬ忠誠を捧げた者。命と引き替えにしてでも主を守り抜く覚悟を持った者。
 こんな男は、ランサーが出会ってきた人間の中にはいなかった。

「……いや、違う。二人だけ、いたな」

 ランサーはふと、己の最期を看取ってくれた二人の戦士を思い出した。
 敵であるランサーの境遇に共感し、涙を流した甘い人間たち。
 半身たる槍を預けたあの男もまた、友のために己の身を投げ出す男だった。

「グレミオ、聖杯を得ればお前は再び生を得ることができる。本当に悔いはないのか?」
「そりゃないといえば嘘になりますけど……というか、ランサーさん、私に従う気はないって言ってましたよね。なんでそんなことを聞くんです」
「それは今も変わらん。だが少しだけ、お前という人間を見てみたくなった」

 ランサーは戦いに敗れ命を落とした。だがランサーの想いは、彼の槍とともに、友と呼べる男へ受け継がれた。
 彼らならばきっと、主をただ倒すのではなく、より良い結果へと導いてくれるはずだ。
 だから後悔はないが、やはりまだ生きて主に仕えたいという気持ちも確かにある。

「俺もお前も、一度死んだ身だ。少しばかりともに旅をするのも悪くはあるまい」

 グレミオを殺して英霊の座に戻るのも、グレミオとともに聖杯戦争に参加して負けて死ぬのも、結果は同じだ。
 なら少しだけ寄り道をするのも悪くはない。そして万が一、聖杯に至ることができたのならば――。

「どうする? 主と再会できる望みを信じて戦うか、このまま朽ち果てるか。お前が決めていい」
「ずるい聞き方しますね。そんなの、答えは決まっているじゃありませんか」

 ランサーは、槍の代わりに手を差し出した。
 人間と手を組む日が来るなど夢にも思わなかったが、これも巡り合わせだ。

「俺はお前をマスターと呼ぶが、お前に仕えるわけではない。いいな?」
「わかっていますよ、ランサーさん……って、そういえばランサーさんの本名ってそれじゃないですよね。
 私だけ名乗ったのってなんだか不公平じゃありませんか?」

 口を尖らせるグレミオに、ああ、と笑みを返す。主従の関係でないなら教えてくれてもいいだろうと。
 そしてランサーも、最初は名乗るつもりなどなかったのに、今ではこの男になら教えてもいいと思っている。
 ランサーのサーヴァントたる、彼の真名は。


「陸戦騎、ラーハルトだ。以後、見知りおけ」


352 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/28(土) 04:35:58 ezuhaTlc0

【クラス】
 ランサー
【真名】
 ラーハルト@ドラゴンクエスト ダイの大冒険
【パラメーター】
 筋力:D 耐久:C 敏捷:A++ 魔力:E 幸運:D 宝具:D
【属性】
 混沌・善
【クラススキル】
対魔力:-
 ラーハルトは後述する宝具によって高い対魔力値を得るため、本人に対魔力は備わっていない。
【保有スキル】
騎乗:E+
 動物を乗りこなす程度。ただし、生前のラーハルトはドラゴンに騎乗する竜騎衆という戦士だったため、例外として幻想種たる竜を駆ることができる。
宗和の心得:B
 同じ相手に何度同じ技を使用しても命中精度が下がらない特殊な技法。攻撃を見切られなくなる。
縮地:C
 瞬時に相手との間合いを詰める技術。その場に残像を残すほど圧倒的な速度の体捌き。
【宝具】
『ハーケンディストール』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10人
 ラーハルトが誇る神速無双の槍技、その極致。闘気や魔法力を伴わない、純粋な速度から成る衝撃波を放つ。
 突進の勢いを全て破壊力に変換するため、この宝具のみダメージ計算に筋力ではなく敏捷の値を参照する。
 武器の性能や魔力に依存しない技術の類であるため、魔力消費は少ない。マスターから魔力を供給されずとも三度は使用できる。
『竜の血』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 純血の「竜の騎士」たるバランより授けられた、数滴の血。
 幻想種である竜の血には死者を蘇生させる効果があるが、死の淵より這い上がれるのは強靭な意志を持った者のみ。
 ラーハルトが致死ダメージを受けた際、自動的に発動。一度だけ死亡判定をキャンセルし、HP30%の状態で復帰する。
 本来ラーハルトが保有する宝具ではないため、ステータス欄には記載されない。また、ラーハルト本人もこの宝具の存在を認識できない。
【weapon】
『鎧の魔槍』
 魔界の名工ロン・ベルクによって生み出された槍。「鎧化(アムド)」の声に反応して全身を包む鎧を展開する。
 この鎧は雷以外のあらゆる呪文を弾く(対魔力:Bに相当)。
 両腕部の手甲は小型の盾やブーメランとしても使え、投擲用の短剣が随所に仕込まれている。
 微弱ながら再生能力を持ち、戦闘で破損しても刀身さえ無事ならば鎧は自動的に修復される。
【人物背景】
 魔王軍・超竜軍団長バランの側近である竜騎衆、その筆頭である陸戦騎を務める戦士。
 呪文は不得手であり、超人的なスピードと精密極まる槍の技で戦う。
 魔族の父親と人間の母親との間に生まれたハーフであり、その出自のため幼少期に人間から迫害を受ける。
 成長した彼は、世の悪を討つ竜の騎士でありながら魔王軍に属するバランの部下となり、父のように慕う。
 バランは息子である勇者ダイを我が物にするべく進軍し、ラーハルトはダイの仲間となったヒュンケルと交戦する。
 当初は圧倒するものの、死の淵にあっても勝負を捨てないヒュンケルの覚悟に圧倒され敗北した。
 戦いが終わり、ラーハルトの境遇に泣いてくれたヒュンケルを無二の友と認め、鎧の魔槍を託し息を引き取る。
 その後は棺の中で朽ちるのを待つだけだったが、バランが自身の竜の血を与えたことにより奇跡的に蘇生。
 託された最期の願い――バランの息子ダイを護るべく、最終決戦の場に馳せ参じた。
 なお、このラーハルトは蘇生する前からの参加である。
【サーヴァントの願い】
 蘇り、竜騎衆としてバランの力となる。


353 : ◆HyMn6jdD/g :2015/02/28(土) 04:37:00 ezuhaTlc0

【マスター】
 グレミオ@幻想水滸伝
【マスターの願い】
 蘇り、ぼっちゃんの傍にいたい。
【weapon】
 銅の斧
【人物背景】
 赤月帝国六将軍の一人、「百戦百勝」テオ・マクドールに仕える青年。早くに妻を亡くしたテオに代わり、一人息子である主人公の面倒を見ている。
 頬に大きな刀傷があり、斧を武器として扱うが、性格は至って温厚。家事全般を得意とし、特にシチューはマクドール家の定番のご馳走である。
 やがて主人公は帝国と敵対する反乱軍のリーダーとなるが、グレミオは主であるテオではなく主人公とともにいることを選ぶ。
 仲間を集め、拠点を手に入れて、反乱軍の規模は日に日に拡大、帝国にとってももはや無視できない勢力となった。
 そして六将軍の一人、ミルイヒ・オッペンハイマーとの戦いが始まる。
 主人公らはミルイヒの罠にかかり、人食い胞子が充満する監獄の一室に閉じ込められた。グレミオはとっさに主人公らを部屋の外へと押し出し、扉を閉める。
 やがて救援が来るが、グレミオの姿はどこにもなかった。彼は己の命と引き換えに、愛する主人公を守ったのだった。
 その後、108人の仲間をすべて集めた場合に限り、グレミオは甦る。
 戦争終結後、父をその手で討ち深く傷ついた主人公とともに、グレミオはどことも知れぬ旅に出た。
 なおこのグレミオは蘇生する前からの参加である。


354 : 名無しさん :2015/02/28(土) 04:37:28 ezuhaTlc0
投下終了です


355 : 名無しさん :2015/02/28(土) 07:20:36 hxxn6Apk0
アルミンにすら自宅があるっぽいのにレパードェ……


356 : 名無しさん :2015/02/28(土) 10:51:47 7T7U.tew0
同作出典キャラのいる主従まとめ
単にコピペしただけなので見づらくても堪忍なあ

【ジョジョの奇妙な冒険】
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より- & ランスロット@Fate/Zero
広川剛志@寄生獣 &エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
ウェカピポ@ジョジョの奇妙な冒険 第七部 スティール・ボール・ラン & ミリア=レイジ@GUILTY GEAR
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 & 夜神月@デスノート
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & 提督@艦隊これくしょん

【アイドルマスターシンデレラガールズ】
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版) & ジャスティス@GUILTY GEAR
水本ゆかり@アイドルマスター シンデレラガールズ & シルベストリ@からくりサーカス
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ) & 加藤鳴海@からくりサーカス

【艦隊これくしょん】
スタン@グランブルーファンタジー & 瑞鶴@艦隊これくしょん
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & 提督@艦隊これくしょん
テッド@幻想水滸伝シリーズ 電@艦隊これくしょん

【Fate/Zero】
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より- & ランスロット@Fate/Zero
桐ヶ谷 柩@悪魔のリドル(原作) & ディルムッド・オディナ@Fate/Zero

【GUILTY GEAR】
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版) & ジャスティス@GUILTY GEAR
ウェカピポ@ジョジョの奇妙な冒険 第七部 スティール・ボール・ラン & ミリア=レイジ@GUILTY GEAR

【ウィザーズ・ブレイン】
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
笛口雛実@東京喰種 & レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)@ウィザーズ・ブレイン

【からくりサーカス】
水本ゆかり@アイドルマスター シンデレラガールズ & シルベストリ@からくりサーカス
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ) & 加藤鳴海@からくりサーカス

【仮面ライダー鎧武】
呉島光実@仮面ライダー鎧武 & 暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
呉島貴虎@仮面ライダー鎧武 & メディア@Fate/stay night

【寄生獣】
広川剛志@寄生獣 &エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
蓮見琢馬@The Book jojo's bizarre adventure 4th another day & 田村玲子(田宮良子)@寄生獣

【機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
レイ・ザ・バレル@機動戦士ガンダムSEED DESTINY & Dボゥイ(相羽タカヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEEDDESTINY & デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

【幻想水滸伝】
テッド@幻想水滸伝シリーズ 電@艦隊これくしょん
グレミオ@幻想水滸伝 ラーハルト@ドラゴンクエスト ダイの大冒険

【凪のあすから】
伊佐木要@凪のあすから & ツナシ・タクト@STAR DRIVER 輝きのタクト
比良平ちさき@凪のあすから & 雪姫(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)@UQ HOLDER!

【魔法少女まどか☆マギカ】
呉島光実@仮面ライダー鎧武 & 暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ & 園村麻希@女神異聞録ペルソナ


357 : 名無しさん :2015/02/28(土) 11:47:25 vJzUk7K60
ウィザーズ・ブレインは雷小龍&月島亮二もだね


358 : ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:22:37 SDXWJxls0
投下します


359 : 『僕は悪くない』。だって全部私のせいだから ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:23:56 SDXWJxls0
郊外の廃工場。そこは誰も立ち入らなくなって久しい文字通りの廃墟のはずだった。
しかしその一室で白衣の科学者と黒い学ランの高校生が過ごしていた。
ラボ、というほど整った設備ではないが質素な大学教授の研究室よりはよっぽどましな機材が並んでいる。

なにより特徴的、というには憚られるが、その研究室に至る道には何体か異形の怪物が闊歩していた。
その様子をモニター越しに見る白衣の男。

「うーん。やはりNPCからではヒマワリロックシードしか作れないか。スイカとまではいかなくともせめてマツボックリくらいは欲しいところだが。
 まあ、ただ魂喰いをするよりはこうした方が効率がいいし、インベスを数体なら使役できるから無意味ではないのだが」

腰に付けたベルトに白と黒の錠前、『ヒマワリロックシード』を嵌める。
これによって装着者にロックシード内の魔力が供給される。
部屋の隅では錠を開いた『ヒマワリロックシード』とSと刻まれた錠前が並べて機械にセットされている。

「『やあ、プロフェッサー。何してるの?』」
「キャスターと呼んでくれ。門番の配置と魔力補給さ。
 NPCから作成したヒマワリロックシードを戦極ドライバーにセットすれば魔力になる。
 シドロックシード改め戦極ロックシードを使えばヒマワリロックシードから召還したインベスを操ることが出来る」

キャスターに相応しく、順調な陣地作成と魔力供給源の確保。
賞賛にたるその功績に対するマスターの反応はというと

「『戦極ドライバーに戦極ロックシード…?うわあ…それはないわあ……』」

トランプとか武器にして戦いそうな顔だよな(笑)といった風な腹立たしい笑顔を見せた。
過負荷らしくへらへらと笑う。

「あっははははは……変身」

左手にロックシードを持ち、両腕をクロスさせながら突出する。

『レモンエナジー』

ロックシードを起動しながら腕を回転させ右腕のみ戻し、腰のドライバーに装着、起動。
頭上に異界の門が開き、そこから力の源……レモンの形をしたアームズが下りてくる。

『ロック・オン!……ソーダ!』
『レモンエナジーアームズ!ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイト!』

アームズが展開。青いスーツに黄金色の鎧とマントを纏った姿に変身する。
アーマードライダー・デューク。開発者の特権で出力や能力に下駄をはかせた、正しい意味でチート級のライダー。
そんな彼が弓を構え……

「『あれ…?』」

光の矢が、打ち放たれた。

【球磨川禊@めだかボックス 死亡】


360 : 『僕は悪くない』。だって全部私のせいだから ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:24:31 SDXWJxls0


「『もう、勘弁してほしいなあ。『大嘘憑き』があるとはいえ死ぬのだけは本当に嫌なんだから』」


【球磨川禊@めだかボックス 蘇生】


「ふうむ。半信半疑だったが本当に生き返るのだね。いやあ、科学者としてはこの目で見た事象以外は信じたくなくてね」
「『ああ、そういうことね。僕はてっきり怒らせちゃったかと。ドキドキして心臓が止まるかと思ったよ』
 『いやでも僕は悪くない。悪いのはキャスターのネーミングセンスだ』」

矢に貫かれたが、加減していたのか周囲に被害は出ていない。
なにも『なかった』かのように二人して会話を続ける。

「まあ私のセンスについては置いておいてだ。その『大嘘憑き』による蘇生、あまりあてにしない方がよさそうだ」
「『え?なんで?』」

頭部を赤く点滅させ、死んでいた、そして今生きている球磨川を解析している戦極凌馬。

「先ほどよりなんというか…存在が薄くなっている。マスターも恐らく命を落とせばNPCやサーヴァントと同様に消去されるのだろう。
 完全に消される前に復活したから今君はここにいるが、あと1回か2回死んだらそれを『なかった』ことにするまえに君自身が『なかった』かのように消えてしまうだろう」
「『ふーん、そうか。確かに僕でも『ない』ものを『なかった』ことにはできない』」
「ついでに言うと君以外の誰かの存在を『なかった』ことにするのもお勧めしない。聖杯戦争にはマスターやサーヴァントの存在は重要なもののはずだ。
 もしそれを君が消してしまえば不具合が生じるかもしれない。そうなると…こんどこそ消されるかもね。本来なら一度死んだ身なんだ、それくらいできるだろう」

変身を解きながら語る。
その言を信じるなら球磨川は濫りに『大嘘憑き』を使ったり戦地に出たりはしないほうが良い、ということになる。
……キャスターにとって都合のいいことに。やっぱり怒っているのだろうか。

「『忠告ありがとう。ところで僕も試したいことがあるんだけどいいかな?』」
「なんだい?」
「『令呪だよ。『大嘘憑き』で令呪の使用はなかったことにできるのか。もしできたら戦力向上になるんじゃない?』」
「…………面白いね。やってみてくれ」

長考し、許可。
もしできるなら確かにうまく使えば便利だろう。
できなくとも……令呪を消費してくれるならそれでよし。

「では命令の内容だけどね……」
「『我、キャスターのマスターたる過負荷、球磨川禊が令呪を以て命じる…』」
「おい!?」
「『キャスター、汝はその知恵と力のすべてを以て…』」
「待て、話を聞け君は!」

普通のサーヴァントなら目の前で令呪を行使されそうになってもいくらでも対処できる。
だが戦極凌馬の身体能力は人間並み。変身すれば超常たる力を発揮できるが、それには僅かながら時間がかかる。
そのため力ずくで令呪の使用を止めるということができないのだ。

球磨川禊はその弱点を先のやり取りで突き止めた故に、変身を解いた彼にこの提案をしたのだ。
別に矢で貫かれたり、都合よく動かそうという意図が見えてムカついたわけじゃない、僕は悪くないと心中言い訳をしつつ。
今、絶対服従の命令が下される。

「『出会った女の子を裸エプロンにしろッ!』」

右手の甲の令呪が輝き、一画消耗される。
それを確認して、なにやらごそごそと試してみたが

「『ふむ。どうやら令呪の使用をなかったことにはできないみたいだ』」
「……本当だろうね?」
「『うん。極めて残念だけど本当だよ』」

自身になんらかの害や制限をもたらすものではなくひとまず安堵。
…色々と言いたいことはあるが。

「生憎とエプロンの持ち合わせはないのだが」
「『大丈夫!ちゃんと僕が最高に似合う可愛い逸品を用意しよう』」

そういうとなぜか、フリルの付いた可愛げなエプロンを掲げてみせる。
どこから出したとか、なんで持ってるんだとかあるが、最大の疑問は

「なぜ裸エプロン?」
「『僕の趣味だ。いいだろう?』」
「私は裸エプロンよりミニスカスーツに女秘書の方が好みだ」
「『くっ……相容れない!』」


361 : 『僕は悪くない』。だって全部私のせいだから ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:24:57 SDXWJxls0

【クラス】

キャスター

【真名】

戦極凌馬@仮面ライダー鎧武

【パラメーター】

筋力E 耐久D 敏捷E 魔力D 幸運C 宝具C++

【属性】

混沌・中庸

【クラススキル】

道具作成:B+
魔力を帯びた道具を作成する技能。
生前は異界の果実を分析・加工、それを人体に無害にできるフィルター『戦極ドライバー』『ゲネシスドライバー』の作成、体内に侵入した概念存在を摘出するなどを行った。
特にロックシードはヘルヘイムの果実を彼なりに安全に活用しようとした形態であり、彼の専門である。
しかし黄金の果実の力を得た者もそのロックシードを作り出している。
その材料はヘルヘイムの果実のみならず、蜜柑からカチドキロックシード、黄金の果実から極ロックシード。
他にも地球の記憶を記録したメモリをもとにWロックシード、古代の錬金術により作られたメダルをもとにオーズロックシード他多数のロックシードが作られている。
それは彼が直接作ったものではないがロックシードの開発者としての逸話から限定的ながら上級の道具作成スキルを持つ。

魂や宝具、礼装等を加工して生前作成したロックシードとすることができる。
出来上がるロックシードのランクは材料の強度に比例し、NPCの魂などでは最低ランクのものしかできない。

なお魔術的な道具よりも科学の方が専門であり、そうした物の作成や加工・修理の場合プラス補正がかかる。
彼は生物学、機械工学、医学に精通する。

陣地作成:E+
工房を作るのは得意ではなく、既存の研究地を利用する程度。
だが逆に乗っ取りや勝手に通用口を作っておくなどはよくやる迷惑な男である。
後述のスキルによりトラップの作成などは得意とする。

【保有スキル】

精神異常:A
倫理や法に囚われないマッドサイエンティスト。精神を病んでいる。
他人の痛みを感じず、周囲の空気を読めなくなっている。
精神的なスーパーアーマー能力。

自己陶酔:A
欲望と強烈な自我より生み出される生の高揚の極致。
精神系スキルの成功率を著しく増加させ、科学の才能を如何なく発揮させる。
しかしランクの高さに比例して、人格が破綻してしまう。

反骨の相:D
一つの場所に留まらず、また一つの主君を抱かぬ気性。
自らは王の器ではなく、また自らの王を見つける事のできない放浪の星である。
同ランクの「カリスマ」を無効化する。

破壊工作:C++
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
地位や技術を利用した策謀を得意とする。敵軍に与える損害自体は大きくないが、変身ドライバーの破壊など的確に致命的な箇所をついてくる。
変身に用いるドライバーに自壊装置を仕掛けておく、無人機のアーマードライダーによる待ち伏せ、スパイを送り込み背を突かせる、命の危機のある武器を言葉巧みに使わせるなど行った。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。

自己改造:―
自身の肉体にまったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
戦極ハカイダーとして現界した場合Aランク相当のこのスキルを獲得し、時間経過に応じて精神異常のランクも向上していく。
メカ戦極凌馬として現界した場合Cランクのこのスキルを獲得し、自己陶酔のランクは低下する。
しかし現在は人間、戦極凌馬として再現されているためこのスキルは失われている。


362 : 『僕は悪くない』。だって全部私のせいだから ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:25:45 SDXWJxls0
【宝具】
『異世界の侵略者からもぎとった公爵の地位(レモンエナジーロックシード)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
ゲネシスドライバーとあわせることでアーマードライダーデューク・レモンエナジーアームズに変身する。
戦闘及び変身にはロックシードに込められたエネルギーを使用するため魔力消費はほぼない。

変身後のステータスは下記のようになる。
筋力C 耐久C+ 速度C 魔力B 幸運C

スペックはそれなりだが、本業が科学者であり戦闘技術も経験も少ないため同格以上の相手に優位に立ち回るのは極めて難しい。
ソニックアローをメインウェポンとし、近接戦ではそれで切り結び、中距離以上では矢を放つ。
また立体映像の投影機能や光学迷彩、リアルタイムでのデータ解析機能など多彩な能力を持つ。


『機械仕掛けの侵略者より与えられし公爵の地位(ドラゴンフルーツエナジーロックシード)』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
ゲネシスドライバーとあわせることでアーマードライダーデューク・ドラゴンエナジーアームズに変身する。
戦闘及び変身にはロックシードに込められたエネルギーを使用するため魔力消費はほぼない。

変身後のステータスは下記のようになる。
筋力C+ 耐久B+ 速度C+ 魔力B 幸運C

レモンエナジーアームズのような特殊能力は少なく、オーバーロードのような高速移動、ステータスの制限はこちらの方が少ないなど直接戦闘に適する。
装備や戦術はレモンエナジーアームズと共通。

『科学こそが機械仕掛けの神の親(コロンブス・ロード)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0〜20 最大捕捉:上限なし
自分の研究が世界の真理という彼の理念と、メガへクスの技術への賛意が昇華した宝具。
レンジ内では彼の認める科学技術であればサーヴァントに干渉可能となる。
元は異界の果実とは言え科学技術によって加工されたロックシード由来の力ではサーヴァントへの干渉は難しいのだが、この宝具によりそれを克服している。

なお彼の認める技術であれば彼のもの以外でも干渉可能である。
もし異世界の科学に魅せられればそれによるサーヴァントへの干渉も可能となる。
ただしレンジ内全てが対象となるため、彼はサーヴァントでありながら偉大なる科学技術やその担い手に常に破れる危険性を有している。

魔法は科学による再現によって魔術へと位階を落とした。つまりは充分に発達した科学は魔法と見分けがつかない。
誰にも達成できぬ一歩によって、神秘は誰でも踏み入れる一歩となる。これは正しくコロンブスの卵。

『強き同朋よ、我が知は汝の力とならん(ドヴェルグ・オーブ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
数多の戦士が彼の開発したドライバーやロックシードを使用し、また彼の使用していたゲネシスドライバーが死後彼の認めた戦士に受け継がれ戦局に大きく影響した逸話が昇華した宝具。
消失時に彼の認めた戦士が存在する場合、その戦士の下にゲネシスドライバーとロックシードを一つ遺す。
対象の善悪は問わず、魔王を守護する寵姫かもしれないし侵略者に立ち向かう英雄かもしれない。


363 : 『僕は悪くない』。だって全部私のせいだから ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:26:30 SDXWJxls0


【weapon】

『ゲネシスドライバー』
エナジーロックシードを用いた変身に必要な戦極凌馬が開発したドライバー。
道具作成スキルによる追加作成も可能。
ただし他者に与えるドライバーには機能停止の仕掛け、「キルプロセス」を仕込む可能性が高い。
自身で使用するものにはそうした仕掛けは当然していない。
装備者は『異界の毒』に対する耐性を得られる。

『戦極ドライバー』
ロックシードを用いた変身に必要なドライバー。
道具作成スキルによる追加作成も可能。
ゲネシスドライバーに性能で劣るため「キルプロセス」を仕込む可能性は低い。
低ランクのロックシードを用いて魔力・栄養供給のための手段とすることが可能。
またゲネシスドライバーのコア部分を接続することでエナジーロックシードとロックシードの混成形態への変身も可能となる。

『ヒマワリロックシード』
道具作成スキルによりNPCから作成した、ヒマワリの種を象ったロックシード。変身に使うことはできない。
錠前を展開することでヘルヘイムの怪物、インベスを召喚・制御可能。
エネルギーはロックシード自体のそれに依存するため負担がかかることはない。
更に戦極ドライバーにセットし使用すれば魔力補給も可能。

『戦極ロックシード』
道具作成スキルにより作成した、大きく「S」と描かれたロックシード。
変身や魔力供給に用いることはできない。
かつてシドロックシードという同型のものを作成、それは次世代ライダーのソニックアローに装備することで無人のスイカアームズを操作した。
それの応用で、設置した工房内でのみヒマワリロックシードから召還したインベスを使い魔のように操ることができる。
原作にはないオリジナルだが、無人機としてスイカアームズを配備することができていたので、少なくともシドロックシードの上位種の似たようなものはあったのではなかろうか。

他に道具作成スキルによりロックシードなどを新たに獲得することが可能。
なお作成できるのは彼自身が作成したことがある物のみのため、カチドキ、極などの作成は不可能。


【人物背景】
変身ドライバーの開発者としてユグドラシル・コーポレーションに関わっている天才科学者。
「自ら発明したドライバーで人間を超越する」というプライドを秘めるロマンチストでもあり、かつその夢のためならいかなる犠牲もいとわないマッドサイエンティスト。
一般市民の被害よりも開発計画の推進を優先し、ある少年の悲惨な末路も「戦極ドライバーの性能を実証したサンプル」としか考えておらず目的のためなら人命が失われることも意に介さない。
また、都合の悪いことを知ってしまった友人、呉島貴虎を躊躇せず始末したり、部下の「戦闘続行は困難」の訴えを退け、自分の意向を押し通して多くの部下を酷使し続けたり、身の安全を確保するために戦場にいる部下を置き去りにし逃亡したりしていた。

その技術力と冷酷さでもって存分に暗躍し、オーバーロードとアーマードライダーの闘いの間隙をついて願望器たる「黄金の果実」を得ようと画策。
多くの人物を裏切り、利用し一時は「黄金の果実」をその手に収めるが、捕捉不能になってしまう。
結果黄金の果実に選ばれた「始まりの女」を救おうと動いた呉島光実、駆紋戒斗と闘うことに。
「キルプロセス」を作動させ、相手のゲネシスドライバーを無効化して終始有利に立ち回るが、駆紋戒斗が凌馬の技術に頼らない方法で超常の力を手にしたため敗れ去り死亡した。

その後地球の侵略を目的とした機械生命体「メガへクス」の手により機械化して復活。
メガヘクスの思想に共感を示し、それに逆らう貴虎・光実を排除するためドラゴンエナジーアームズへ変身。龍玄を圧倒、斬月とも戦い「戦極ドライバーでは勝てない」と発言する。
自分の研究や思想を理解出来ず、メガへクスに反旗を翻す貴虎を「神になるチャンスを二度も手放した本当に愚かで救えない男」と過去の彼との確執への呪詛と共に貶すが、「お前の語る理想の神など意味の無い空っぽの存在に過ぎない! そしてメガへクスの奴隷に成り下がった事でお前自身が空っぽの存在になってしまったんだ!」と真っ向から全否定される。
因縁を終わらせるべく互いの必殺技が激突し、斬月の肩に命中させるが無双セイバーの一撃で貫かれ致命傷を負い敗北。
貴虎に「さすが私が一度は認めた男」と称賛の言葉を送り再び消滅した。

【サーヴァントの願い】

全ての頂点に立つ神となる


364 : 『僕は悪くない』。だって全部私のせいだから ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:26:54 SDXWJxls0

【マスター】

球磨川禊@めだかボックス


【マスターとしての願い】

「『僕は昔から庶務になるのが夢だったんだ』」

【weapon】
『螺子』
どこに仕込んでいるのかスキルなのか大小さまざまな大量の螺子を武器とする。
下記の能力とあわせて敵を『螺子』ふせる戦闘スタイルをとる。

【能力・技能】
『大嘘憑き(オールフィクション)』
現実(すべて)を虚構(なかったこと)にする過負荷(マイナス)。
安心院なじみに課されたスキルをもとにして作り出した因果をなかったことにするスキル。
人や物が負った傷も、視力も、記憶も、人の存在そのものも、絶命したという事実も、最悪世界そのものも「なかった」ことにしてしまう。
ただし万能ではなく「なかった」ことにしたのを「なかった」ことにはできない。
例えばこのスキルで視力を「なかった」ことにしたら、もうこのスキルでは治せない。
人格に強く根付いた過負荷なども「なかった」ことにはできない。これは球磨川が人格を「なかった」ことにするのに躊躇しているかららしいので、その気になれば「なかった」ことにできるのかもしれない。
これにより自身や味方がどんなダメージを負おうと命を落とそうと「なかった」ことにできる、悍ましいながらも便利なスキル。

戦極凌馬の分析ではあと一回かせいぜい二回くらいしか自分の死をなかったことにはできなそう。
令呪の使用を「なかった」ことにもできない。
下手に使うと聖杯戦争の進行が滞ると判断されるかもしれない。
劣化大嘘憑きでは強い心の篭ったものはなかったことにできなかったし、強い信仰と情念で形成されたサーヴァントや宝具のもたらすものは負完全な大嘘憑きでもなかったことにはできないかもしれない。


『却本作り(ブックメイカー)』
強さ(プラス)を弱さ(マイナス)にする過負荷(マイナス)。
この過負荷の被害を受けたものは皆肉体も技術も頭脳も精神もすべて球磨川に等しくなる。
なお安心院なじみに預けているのでこの時間軸の球磨川禊はこの過負荷を保持していない。


地球上で一番弱い生き物であるが故、弱さを知りつくし敵の弱点や死角が即座にわかる。ちょっとした心眼。
弱者であるゆえ誰よりもその気持ちが理解できる。ちょっとしたカリスマ。
負け続きだから誰よりも勝ちたい。ちょっとした戦闘続行。
人に好かれるなんてほとんどないから簡単に人に靡く。人物眼:Eというわけではないのだが……
弱者ゆえの強みは持ち合わせるが、過負荷が勝利することなどほぼ在り得ない。

ちなみに異能者だが魔力供給はできていない。
過負荷の中の過負荷である球磨川禊が魔術回路なんて才能を持っているはずがない。


【令呪】

右手の甲、丸に十字。プラス螺子のようだったが、一画使用してマイナス螺子のようになった。
「『こっちの方が過負荷(ぼく)には相応しい形だ』」

【人物背景】
箱庭学園三年マイナス十三組在籍。自称「愚か者と弱い者の味方」。マイナス十三組のリーダーとして君臨する。
めだか達と同じ箱舟中学校の出身。当時支持率0%で生徒会長に就任し、数ヵ月後にリコールされるまで、自らにとって邪魔なものを阿久根に命じて破壊させていた。
幼少時から退廃的思想・破滅願望を抱き、箱庭学園に転入する前は転校する先々の学校を潰してまわった。箱庭学園に転入後、十三組生を中心としたエリートを抹殺することを宣言した。
規則に則って黒神めだかを追い落とす手段として生徒会をリコール、生徒会戦挙の火蓋を落とすきっかけとなる。
この戦挙の会長戦で改心、めだか達の仲間として生徒会入りする。

はずだった。

ハブに噛まれ死んだ後に『大嘘憑き』のより死を『なかった』ことにしようとした瞬間。
生を『やり直そう』とした瞬間の参戦。
故に今の彼はいまだにタチの悪い過負荷の中の過負荷のままである。

ちなみに興味の対象の移りが早いので、そのうち裸エプロンには飽きて令呪の命令を手ぶらジーンズとか全開パーカーとかに改めようとするかもしれない。


【方針】

「『とりあえず会った女の子はキャスターがその知恵と力の全てを尽くして裸エプロンにしてくれるはずだからそのためにも可愛い女の子を探す』」
「『キャスターは陣地に篭れ?知るか!そんなことより裸エプロンだ!』」


365 : ◆yy7mpGr1KA :2015/02/28(土) 22:27:52 SDXWJxls0
投下完了です


366 : ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:05:44 aeUV3yFk0
皆様投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます


367 : 海馬瀬人&セイバー ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:06:01 aeUV3yFk0
 乾いた風が頬を撫でる。
 熱を帯びた日差しが注ぐ。
 青空と白い大地を跨ぐ、水平線の前に立ち、もうもうと立ち込める砂煙を見る。

 砂漠の大地に現れたのは、いくつかの少年少女の影だ。
 その中でひときわ背の低い、1人の少年に目が留まった。
 遠くに見えるその横顔は、見知った男のそれではない。
 戦場で幾度となく相対した、宿敵の鋭さはそこにはない。
 しかしそこには確かな強さと、ひとかけらだけの寂しさが、宿されているようにも見えた。

 そうか。
 全て、終わったのかと。
 既に少年は答えを出し、全てに決着をつけたのだと。

 遠くから彼を見据えた男――海馬瀬人という少年は、静かにそう納得した。


368 : 海馬瀬人&セイバー ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:06:48 aeUV3yFk0


 少し前からこの状況に、微かな違和感は感じていた。
 街の中心にビルを構える、巨大企業海馬コーポレーション。
 いつものようにその頂の、社長の椅子に腰を下ろし、街を見下ろしながら仕事に追われる。
 それは変わらないはずだった。だがそれ以外が異なっていた。
 街の風景は慣れ親しんだ、童実野町のそれではない。
 会社の書類のいずれにも、マジック&ウィザーズの名前がない。
 常に隣に並び立つはずの、海馬モクバという弟がいない。
 足りないパーツやないはずのパーツが、絶えず違和感を訴えていた。
「貴様か、オレに戦争をしろなどとほざく輩は」
 そしてそれらが確信となった時、海馬瀬人の目の前に、姿を現した者がいた。
 明かりの落ちた部屋の奥に、ひっそりと立っている女に対して、海馬は鋭く言い放った。
「いかにも。私はセイバーのサーヴァント……聖杯の導きに従い、マスター・海馬瀬人の駒として現界した」
 歳は海馬よりも少し上――それでも成人はしていないだろう。
 そんな容姿にもかかわらず、闇の向こうに現れた女は、随分と大人びた様子で、静かに語りかけてきた。
 色素の薄い髪に、全身をすっぽりと覆うコート。端正な顔立ちではあったが、飾りっけがないという印象を受けた。
「それでオレに貴様を使って、聖杯戦争とやらを戦えと?」
「然り。マスターが戦いを勝ち残り、聖杯をその手に掴んだならば、あらゆる願いを叶える力が、共に授けられるだろう」
「古代エジプトの次は英国神話か」
 頼みもしないオカルトばかりと、海馬はため息と共に肩を竦めた。
「真実だ。万能の願望器たる聖杯は、確かに現実として存在する」
 セイバーは言う。
 聖杯には叶えられない願いなどないと。
 巨万の富を手にすることも。
 世界を支配することも。
 理を捻じ曲げることすらも。
「時の流れをさかのぼり、過去をやり直すことすらも――聖杯は可能とするだろう」
 一瞬、ぴくり、と指先が動いた。
 過去という2文字の言葉に対し、海馬は僅かに反応を示した。
「何か心当たることでも?」
 そしてその僅かな心の動きを、剣騎士の英霊は見逃さなかった。
 傲然としていた態度の中で、初めて揺らぎを見せた海馬に対し、セイバーは静かに問いかけた。
「オレは過ぎ去った道に興味などない」
 事実だ。
 過去を変えるつもりはないと、そう言い切った海馬の声には、今度は一切の揺らぎはなかった。
 彼にも暗い過去くらいはある。
 本当の両親と死に別れ、施設に送られていた頃のこと。
 海馬剛三郎に引き取られ、地獄の教育を施され、屈辱と苦痛に喘いだこと。
 その剛三郎との決着を果たせず、新たな敵をさまよい求め、心を暗く歪ませたこと。
 全てやり直せるというなら、それに越したことのない記憶だ。
 しかし、それらは乗り越えた。
 痛みも憎しみも何もかも、海馬は瓦礫の塔と共に、海の深くへと沈め捨て去った。


369 : 海馬瀬人&セイバー ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:07:35 aeUV3yFk0
「……強いて言うならば、失われた未来」
 だからこそ、願うものがあるとすれば。
 それは取り返せない過去ではなく、手にすることができなかった未来だ。
「もう一度戦いたかった男がいる……奴を再び呼び戻し、決着をつけたいという願いならある」
 最強の決闘者(デュエリスト)・武藤遊戯。
 その魂の奥底に潜む、古代エジプトの王の魂――アテム。
 海馬は無二の宿敵の死に目に、立ち会うことができなかった。
 彼がエジプトを訪れた時には、既に全ての戦いが終わり、戦友は在るべき場所へと還っていた。
 幾度となくカードという剣を重ね、そして勝てなかった男に対して、いつかリベンジを果たすという願いは、永劫叶わなくなったのだ。
 そのことに対する後悔は、僅かばかり存在している。
 願いが叶えられるのならば、あるいは果たせなかった再戦を、聖杯に望むかもしれないと、そう考えている自分がいる。
 静かに、しかし微かに熱を帯びた声音で、海馬はそう語っていた。
「悲しいな」
 それに対するセイバーの感想が、これだ。
 海馬の込めた想いを察し、そんな言葉を口にしたのだ。
 同情か、あるいは憐憫か――たった一言の言葉が、どちらを意味していたのかは分からない。
「オレを哀れむのはよせ……!」
 それでも、たとえどちらだとしても、彼女の一言は海馬の心を、随分と逆撫たようだった。
 瞳はこれまでにない光を放ち、声は唸るように響く。
 怒気を放った海馬の姿は、まさしく逆鱗に触れられた竜だ。
「すまない」
 それでもセイバーの対応は、どこ吹く風といった様子の、極めて涼やかなものだった。
 それでかえって白けたのか、ふんと鼻を鳴らした海馬は、腕を組んで椅子に座った。
「言っておくが、オレは聖杯戦争とやらに対して、乗ると決めたわけではない」
 しばしの沈黙があった後、海馬は再び口を開く。
 他人に強いられた戦争に、喜んで食いつく間抜けではないと、すっかり元の口調に戻って言う。
「だがどうやら、オレが貴様を呼び寄せた以上、命を狙われるという事実は覆せんらしい」
「その通りだ」
「ならばむざむざと殺られる気はない。敵が立ちはだかるというのなら、貴様の力、使わせてもらうぞ」
「心得た」
 静かに了承したセイバーを認めると、海馬は視線をデスクへと移し、広い引き出しを開いた。
 そこに入っていたものは、つい数分前に見つけたもの――自分のマジック&ウィザーズのデッキだ。
 何よりも信頼する最強のしもべを、その奥へと宿したプライドの結晶だ。
(これはゲームではない)
 これまでに戦ってきたように、カードでどうこうできる問題ではない。
 これから海馬が立ち向かうべきは、何よりも忌み嫌った戦争だ。
 憎き海馬剛三郎が食い物にしてきた、血生臭い殺し合いの舞台だ。
 そしてそこに携えるべきは、ゲームで戦うためのカードではない。
(くだらんな)
 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)。
 己のしもべに比べると、英霊サーヴァントとやらの、何とも心躍らぬことか。
 連れ添うべき相棒の姿を――ラクウェル・アップルゲイトの姿を見直し、海馬は内心でため息をついた。


370 : 海馬瀬人&セイバー ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:08:17 aeUV3yFk0
【クラス】
セイバー

【真名】
ラクウェル・アップルゲイト@ワイルドアームズ the 4th Detonator

【パラメータ】
筋力B+ 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具C

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

火除けの加護:D
炎属性のダメージを軽減する。

【宝具】
『刹那にて二天を舞う(イントルード)』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:-
精神を統一し、直後に倍速での行動を可能とする技能が宝具化したもの。いわゆる「2回行動」である。
性質上、最初の発動までにワンテンポ置く必要があるが、行動速度・反応速度共に向上するため、接近戦を優位に戦うことが可能。
更にマスターへの負担は大きくなるが、連続使用することによって、ある程度効果を継続させることもできる。

『剣閃六絶鉄をも断つ(アポカリプス・ゼロ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:20人
ラクウェルの誇る最大奥義が宝具化したもの。
巨岩を生じて対象を包囲し、諸共に断ち切る技である。


371 : 海馬瀬人&セイバー ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:09:01 aeUV3yFk0
【weapon】
・バスタードソード
両手持ちの大剣。柄の部分を伸縮させ、槍のようにして操ることもできる。

【人物背景】
戦争で疲弊した大地・ファルガイアを歩き、世界に残された美しい物を見るために旅をしていた渡り鳥。
剣の腕前は超一流であり、特務局ブリューナクのコマンダー相手にも互角に立ち回ることができる。
大人しく達観した性格であり、仲間達からは実力的にも精神的にも頼りにされていた。

実は8歳の頃に、新型兵器グラウスヴァインの暴走事故「フェルクレルングの白日夢」に巻き込まれており、身内の一切を喪っている。
またこの時本人も被曝しており、余命いくばくもない身体となってしまった。
上述した性格はそうした経緯によって形成されたものだが、時折己の命の短さに恐怖し、震えることもあったという。
一応騎乗スキルは保有しているものの、機械の扱いそのものは苦手。

一撃の重さに特化したパワー型ファイター。
竜脈の力を得て攻撃と傷の治癒を同時に行う「竜刃」、剣に毒気を纏い斬りつける「毒咬」といった技や、
味方に魔力ブースト効果を与える「月光」という技などを持つ。
反面速度はそれほど高くなく、宝具『刹那にて二天を舞う(イントルード)』による補強が肝要である。

19歳の時にファルガイアを守るための戦いに参加し、ARM・ディバインウェポンの暴走を阻止。
その後は旅の仲間である、アルノー・G・ヴァスケスと共に、身体の治療法を探すための旅に出た。
病気の治療法は見つからなかったが、世界に残された、本当に美しいものは見つけられたという。
生まれて間もない娘の小さな手を握り、そのあたたかさに安らいだまま、彼女は旅を終えた。

子供が産まれる歳までは生きた彼女だったが、サーヴァントとしての容姿は、後世に語られている、19歳当時のものになっている。
当然被曝による病の影響は消失している。

【サーヴァントとしての願い】
既に本当に美しいものは得られた。過去への悔いや願いはない。

【基本戦術、方針、運用法】
本人の腕力は高いが、広範囲を攻撃するような派手な宝具は持たない。
そのため『刹那にて二天を舞う(イントルード)』を主軸とした、白兵戦闘がメインになる。
セイバーとしてはさほどパラメーターが高い方ではないので、マスターの戦略で補う必要がある。


372 : 海馬瀬人&セイバー ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:09:53 aeUV3yFk0
【マスター】
海馬瀬人@遊戯王

【マスターとしての願い】
強いて言うなら、ただ一度きりの友(ライバル)との再戦

【weapon】
・カードデッキ
本来は武器ではない。
カードゲーム「マジック&ウィザーズ」の、40枚+融合デッキで構成されるカードデッキ。
高攻撃力のモンスターと、デッキを破壊するウィルスカードを組み合わせ、相手を完膚なきまでに殲滅することに特化したパワーデッキである。
もちろんただのカードであるため、殺傷能力はないのだが、時々手裏剣のように敵に投げつけ、不意を打つことがある。

・青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)
本来は武器ではない。
前述したカードデッキに投入されている、3枚のモンスターカード。レベル8・攻撃力3000・守備力2500のドラゴン族。
孤高の天才である海馬が、唯一絶対の信頼を寄せる他者であり、己のプライドと魂の全てを賭したと豪語する最強のしもべである。
その凄まじい能力値から、初期段階で生産が中止されているレアカードであり、デッキに3枚フル投入している決闘者は、海馬以外には存在しない。
後にこのカードを上回る性能を持つモンスターは、何体か登場しているのだが、
それでもなおその逸話と海馬自身の実力から、数多の決闘者に畏れられているカードである。
「攻撃・守備が最高の、なかなか手に入らない超レアカード」。

・デュエルディスク
本来は武器ではない。
マジック&ウィザーズをプレイするための立体映像(ソリッドビジョン)投影機であり、左腕に装着することで使用する。
金属製だが見た目以上に軽いらしく、これを付けたまま日常生活を送ることも問題なく可能。

【能力・技能】
・ゲーマー
バーチャル・アナログを問わず、ありとあらゆるゲームに精通した知識と技術。
特にマジック&ウィザーズにおいては、世界レベルの実力を有しており、「カードの貴公子」という2つ名と共に畏れられている。

・会社経営
ゲーム産業企業「海馬コーポレーション」の社長として、会社を経営するためのスキル。
類稀なる経営手腕は、幼少期の過酷な教育によって培われたものであり、16歳の時点で父親を凌ぐほどの力を獲得している。

・騎乗
乗り物を乗りこなすスキル。
どういった経緯で学んだのかは不明だが、ヘリコプターや戦闘機を操縦できる。アニメ版ではバイクを運転しており、他の乗り物にも乗れるかもしれない。

【人物背景】
童実野高校に在籍する高校2年生の少年で、大企業・海馬コーポレーションの社長でもある。
傲岸不遜な性格で、プライドが高く気難しい。しかし弟のモクバに対してのみ、愛情を見せる場面もある。

元は孤児だったが、海馬コーポレーション前社長・剛三郎にチェスで勝利し、彼の養子となっている。
その後は剛三郎と対決し、会社を乗っ取ることに成功したものの、敗北を悟った剛三郎はその場で投身自殺。
この後味の悪い結末は、長らく彼の心に影を落とすことになった。

上記の経験から性格が歪み、現在の姿が想像もできないほどの卑劣漢に変貌したものの、
宿敵・武藤遊戯との戦いと敗北によって変化が生じ、現在の人となりが形成された。
心の闇を打ち砕かれ、過去の憎しみをも振り切った現在は、幼い頃に夢に描いた「世界海馬ランド計画」のため邁進している。

無法者のグールズをタコ殴りにし海に捨てるなど、喧嘩の実力もそれなりに高い。
また、前世は古代エジプトの神官・セトではないかという説もあり、その頃から「青眼の白龍」のと宿命は続いている。

【方針】
気乗りはしないが向かってくる敵には容赦しない。


373 : ◆aWSXUOcrjU :2015/03/01(日) 23:10:33 aeUV3yFk0
投下は以上です


374 : ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:16:06 TO7OMFMo0
投下お疲れ様です。
伝説のブルーアイズを持つ男はどのような運命と遭遇するのか。
原作からして頭が良いしカードを相手の手に刺せれるし社長は万能だからなんでも適応しそうですね。
WAシリーズの運命に立ち向かうセイバーならきっと力になってくれるでしょう。

私も投下させていただきます。


375 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:17:31 TO7OMFMo0

人生。
人の生は一度であり繰り返されることのない一つの物語である。
死の形を以って退場した者には再び舞台に上がる権利など存在しないのだ。
荒野を駆ける荒くれ者達も例外に漏れず、死んだ人間は其処で終了を迎える。

輪廻転生という言葉もあるが実際の所、証明する事は出来ないだろう。
死んだ者は魂を転生し新たな転生体として生を歩む。
信じる者は救われる。思い込めば実現するかもしれない。

人の生は物語であるならば、生きた者の証でもある。
何度も繰り返し歩を刻み込んでも証は一つだ、何も塗り替える必要はない。
死者は死者の国へ還り眠る。それで充分ではないだろうか。

形や結果はどうであれ一度死んだ人間を再び舞台に上げる行為は侮辱に値するだろう。
決着を付けた人間に再度何を望むと言うのか、神が存在するならば回答を要求する。
蘇生させて何を望むのか、何を求める、何を渇望しているのか。
最も後悔だらけの人間にしてみれば蘇生は有難い事に含まれるが。


「ワイ、死んだんちゃうんか」


黒服の男はソファーに身体を寄せを頭を抱えながら呟いた。
サングラスの奥に隠れている瞳は伺えないが笑ってはいないだろう。
酒に酔っているわけでもない。酒を飲んだ記憶はあるが量は然程多くはなかったはず。
言葉から察するに彼は死を迎え人生に幕を降ろした人間なのだろう。

もの物語は願いを縋る者に与えられた本来存在しない奇跡の宴だ。

やり直し。
輪廻転生などではく、歩んできた人生をもう一度手にする儀式。
それが聖杯戦争、他者を殺し己が夢を追い続ける腐った風習だ。

聖杯などと呼ばれてはいるが殺しに意味を付加しただけにすぎないだろう。
生命を奪えない弱者のために正当な理由を与えるのだ。

戦わなければ、生き残れないから。


「そんなん当たり前や、何もしなかったら死ぬだけや」


376 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:18:38 TO7OMFMo0

聖杯戦争に参加しているならば、この男も何か夢が在るのだろう。
でなければ呼ばれない、招かれない、巻き込まれない筈だ。しかし。


「ワイは死んだ。自分で言うのもアレやけど終わり方は嫌いじゃない」


前述のとおり彼は一度死んだ、いや死んでいるのだ。
死者となった彼が行くべき場所は天国か地獄、将又無の境地か。
信仰している対象によっては異なるが、少なくとも聖杯戦争には辿り着かないだろう。

ならば願いだ。願いが彼を聖杯戦争に誘い込んだのだろう。
しかし願いは無い、有るかもしれないが、無いのだ。解れ、いいから理解しろ。

やり残した事が無いと言ったら嘘になる。
じゃあやり直すか? そんなのは御免だ。今は黙って眠らせろ、男は思う。
死んだのだ、終わった。

彼が言うように幕切れとしては本望に近い形だった。
全てが全てではないが、最後に瞳に捉えた光景は人生の中でも一二を争う輝きだった。
戻りたかった、だがこの手は汚れてしまった。もうあの頃には戻れない。


「孤児院……結局ワイはあの頃から変わってないガキっちゅーこと……なぁ、リヴィオ?」


男は孤児院で育った。長く、長い間を孤児院で過ごしていた。
彼は他の孤児達からも頼りにされており兄のように接しられていた。
其処に思惑や策は存在せず、嘘や血の匂いがしない平和な空間だった。
だが平和は永久に続くことはなく、彼は暗殺組織に身を置くこととなり家族と別れてしまった。
彼は暗殺者としての指導と訓練を受け、その身体は超強化と称される人体改造に侵されることなった。

殺しに携わった赤い手ではもう家族に触れる事は許されない。
彼の人生は分岐点を迎える、いや、元々決まった道だったかもしれない。
孤児院の優しい兄貴分は存在を殺し、十字架を背負ったテロ牧師として道を歩む。

その道で出会った男がいる。
ラブ&ピースを謳いどんな外道でも生命を奪わない一人の男。
その男の理想は決して叶うものでない、茨の道の領域を余裕で超えてしまっている。
外道にも情けを掛ける男が彼は嫌いだ、気に喰わない。

彼はその男と旅を共にしていた。
ラブ&ピース精神から必要のない修羅場を何度も体験した。
生命の危険だって勿論だ、殺していれば済む話が不殺故に大事になっていく。
馬鹿だ、この男は筋金入りのアホンダラや。男は常に思っていた。
だが男はそれでも信念を貫いていた。


377 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:19:29 TO7OMFMo0

真紅のコートを纏った男は信念を貫いていた。
男に迷いは存在していた、だが生き延びていた。

総ての生命を救うことは必ずしも幸運だけを惹き寄せる物ではない。
実際に彼が生かしていた生命のせいで多くの人間が死んでしまった事もある。
黒服の男は彼に忠告した、気付かせたかった、夢から目を覚ませと。
だが真紅の男は理解していた。生命を救い別の生命が消えてしまう矛盾の輪廻を彼は理解していた。
それでも追い続けていた、馬鹿だ、この男は筋金入りのアホンダラや。男は何度も思った。

けれど、背中を預ける存在になっていた。気付けば背中にはこの男がいる。

夢を追い続ける馬鹿だ。だけど、けれど、それでも。
自分もこの男のように馬鹿になれれば――。


「なぁトンガリ。ワレはこんな時どうする」


忘れるはずがない。
最後に飲んだ酒を。
最後に見た光景を。
最後に感じた暖かさを。
最後に隣に座っていた男のことを。

口が腐るほど会話した相手に、普段通りに話しかける。
お前ならどうする、この状況で。
救われるのは自分だけ。それでもオンドレは全員救うとナメた事をいつも通り抜かすのか。


「はわわ……リヴィオって人でもトンガリって人でもなくてアーチャーです」


「お前さっきから隣にいるけどなんやねん。アーチャーってお前恥ずかしくないんか?」


隣に座っているのは見慣れた腐れ縁の相棒ではなく一人の少女だった。
それも孤児院に居るような、どうも感覚が昔に戻ってしまう程に幼い少女である。
アーチャー……聖杯戦争は参加者一人に一体のサーヴァントが与えられる。
その存在は英霊、過去に名を馳せた伝説の存在であり人々の憧れである。


「ただのガキやないか、はぁーハズレって奴か」


「そ、そんなこと言わないでよろしくお願いします……なのです」


「そんなん語尾いらんやろ……ったく」


どうも彼の周りにはトラブルが絶えないらしい。
死んだと思ったら蘇生されて聖杯戦争だ、それも子供のお守り付き。
神様が存在するならばそれはとても腐った外道なのだろう。牧師とは思えない思考だが。


378 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:20:06 TO7OMFMo0

現実から一瞬退避するためにタバコに火を点けようとするが手前で中断する。
英霊だか何だか知らないがアーチャーは少女に変わりはない。
(ガキの目の前やしな……あー、孤児院のガキ共見た直後だから吸い辛いわクソ)
彼は人を何人も殺してきた。光も救いも値しない裏の外道の世界に足を踏み入れている。
それでも、人して、道徳を説くつもりはないが人間としての心は存在している。
タバコを仕舞いこむと彼はアーチャーに話しかける。


「それで、アーチャー。これからどうするんや」


「はい、マスターのためにアーチャーは頑張ります!」


「せやな、でもちゃう。お前はどうしたいんや?」


「ふぇ?」


アーチャーは予期せぬ返答に間抜けな言葉を呟いてしまう。
彼女は英霊であり、その主となるマスターのために力を尽くすつもりだ。
嘘や偽りなどではなく彼女の本心であり信念、指針である。

少しの間を置いた後彼女は言葉を新たに紡ぎ出す。
弱々しい言葉だが込められている意思は強く、訴えるように。


「わ、私はマスターさんのために他の参加者と戦います」

「……」

「……」

「……いいから続けてくれ」


返答や反応を待っていたが最後まで黙っているつもりらしい。
アーチャーは一度呼吸を行い心境を整理するとマスターを見つめた。
サングラスの奥を覗くように、そして話す。


「他の参加者に勝って……でも生命は奪わないように頑張ってマスターに聖杯を捧げます」

「――なんや、何なんやおんどれ。ワイは結局……」


その言葉は聞いた事があった。
その思いは受け取った事があった。
その信念には何度も悩まされた事があった。
その存在を他にも目にした事があった。

その男のように女は言い放った。生命は救う、と。


379 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:20:49 TO7OMFMo0


「ええか? 生かしといても背中を撃たれるだけや」

「それは解っているのです、それでも救いたいんです」

「抜かせ、ガキがいっちょ前に夢なんて語るなや」

「ガ、ガキじゃなくてマスターさんよりも年上です! ……です」

「知らんがな……」


殺しの世界に置いて相手を痛ぶり生命を奪わないのは三流のやることだ。
生命を奪わない格も存在――抜かせ、それで撃たれれば話にもならない。
理想論など必要なく、生き抜くためには常に現実的に行動するしか無い。
目の前の生命が例え奪う必要がなくても処理するしか安全は得られない。

聞けばこのアーチャーは戦艦の魂が人の形となった存在だという。
本当にこれは夢ではないのか。悪い酒にでも酔っているだけはないのか。
男は何度も考えるが今生きている実感が総てを現実に引き戻してしまう。


「救える生命全部救ってもな、何が報われるんや、何が手に入る」


「何もないです、得る物はないなのです。でも――


 総ての生命を最初から見限ることはしたくないのです。ごめんなさい……」


「――っ」


どうやら救いの理想論を語る馬鹿は古今東西問わず同じ思考に辿り着くらしい。
不殺の枷を己に嵌めどんなに傷付こうが信念を曲げない愚の骨頂。
それでも誰も見限ることなく総てを救おうと手を必死に伸ばす馬鹿野郎共。


「あー! あー! 神様この腐れ野郎め、ワイにもう一度尻拭いさせるつもりやな、黙って眠らせとけボケ」


立ち上がり男は叫ぶ。死んでも生きていても彼の道には同じ志を持つ者が隣にいるらしい。
同じ志とは男と同一ではなく、馬鹿共を指している。

「ま、マスターさん!? どうしたんですか?」

「ええか、アーチャー。これから戦っても殺す時は殺す。ってか必ず殺せ」

「……それがマスターさんの命令なら従うのです。でも、私にも少しは――ふぇ!?」

「お利口やな。夢語るだけなら誰にでも出来るんや。それだけは覚えとき」


380 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:22:12 TO7OMFMo0

男はアーチャーの頭の上に掌を置くと無造作に髪を弄る。
突然の行為に驚き、頬を赤らめるアーチャーだが男はそのまま窓を介して外を見つめる。
高さがある、此処は宿の一室だろう。それも自分が居た砂漠のような場所ではなくコンクリートで覆われている。
この外には願いのために殺しに掛かる外道共が溢れる無法地帯になる。


(アーチャーが英霊つってもワイにはガキにか見えへん。そないガキに選ばせとうない)


不殺の夢を追い続けるか。現実に戻り手を殺しに染めるか。
英霊、それも戦艦となれば多くの生命を奪ってきたのだろう。
少女という器が邪魔になり、男は――。

これは夢にしておこう。
彼は死んだ。この事実は覆らない。だが生きている。
それは理解している。けれど、けれど、だ。
他の人間を殺したら願いが叶う。簡単に信じられる話ではない。
彼とて聖職者の端くれだ。血塗られた聖杯など御法度だろう。


「マスターさん。その、これから頑張るのでよろしくお願いします……なのです」

「そうやな。よく解らんが黙って死ぬ気なんてないからな。
 ニコラス・D・ウルフウッドの生はもう一度だけ動くで、遅れるなよアーチャー」


もし総ての参加者が自分と同じ一度死んだ存在ならば。


「死んだ人間が墓から出て来ても碌な事にならへん、終わらせてやるのが筋や」


例外なく殺害する。
過程や結果はどうであれ死んだ人間は死んだのだ、現実を受け入れろ。


「だからなアーチャー。不殺なんて腑抜けた事は……まぁ」


ウルフウッドは最後まで語らず言葉を切る。
アーチャーは彼が言ったことを理解しているような表情を浮かべる。
その表情は笑顔ではなく、どこか暗く、それでも事情は理解しているような困り顔。
甘い夢を語っているのは解る。それでも貫きたい。しかしマスターのために総てを捧げよう。


「一つだけ聞いてもいいですか?」

「ええで」

「マスターさんの願いを教えて下さい」


大事な事を聞いていなかった。
マスターに総てを捧げる覚悟はあるがその行く末を聞いていなかった。
ウルフウッドはサングラスを外しこう答えた。


「きっしょ。そんなん絶対教えへんわ」


「え、ええ!?」


願いが恥ずかしい人間もいるだろう。夢は秘めておく物だ。
だがウルフウッドからその返答が来ると思っていなかったため面を喰らってしまう。
少し空気が和らいでので居心地は良くなったが。


381 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:23:32 TO7OMFMo0

不殺。

この信念を謳う存在と再び出会ったウルフウッド。
既にこの世界から消えた彼に再度言い渡される物語。

聖杯は総てを叶える。
その権利を求めるために彼は戦う――違う。
死んだ人間は死んだ。願いだろうと何だろうと生き返る事はない。

やり直したい事がないと言えば嘘になる。
けれどそれら総てを含んだ結果がウルフウッドの証であり物語である。

証を否定することは彼の物語に登場した総ての存在を否定する事になるのだ。

(見てるかトンガリ、ワイはまーた厄介事に巻き込まれてもーた)

平穏な世界は誰もが夢見て生きている。
辿り着けないだけであり、理想論は本当に理想の領域に留まっている。

(こんなガキがおんどれと同じ事ゆーてるで)

手を伸ばしても届かない事は十分承知している。
それでもお前は見限らなかった。

(でもな、アーチャーはまだ間に合うんや。ま、元から殺しはしてると思うけどな)

(そんな事言ってウルフウッドは付き合ってあげるんでしょ?
 優しいな―! 僕にも何だかんだで優しくしてくれたし本当に君は――)

(勝手にしゃしゃり出てくんなボケカス。お前はリヴィオの事頼んだで)

ウルフウッドに願いはない。
彼が求めるのはあるべき場所に還る事。つまり再び眠る事。

そのためには聖杯戦争を終わらせなくてはならない。
面倒な話だが仕方が無い。恨むなら神様にでも。聖職者とは思えないが。


(ワイはやるで、トンガリ。
 生きて還るや、もう死んでっけどな。最後の寄り道ぐらい神様も赦してくれるやろ)


そして死んだ男は再び動き出す。
彼の証でもある十字架を背負い込み荒れ狂う聖杯戦争を生き延びるために。


「アーチャー見とるとガキ共を思い出す……悪くはないのが腹立つでホンマ」


382 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:23:51 TO7OMFMo0

【マスター】
ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン


【マスターとしての願い】
なし。


【weapon】

・拳銃
 彼が愛用している代物

・パニッシャー
 ウルフウッドの代名詞でもある十字架を型どった最強にして最高の個人兵装。
 原作では群を抜いての超重量兵装で銃とロケットランチャーの複合兵器。
 弾丸の破壊力は大口径の機関砲以上あり砲弾一発一発が厚さ1m以上コンクリに1mほどの風穴を空け、発射速度は秒間100発以上はある。
 ロケットランチャーの方は数百mの爆風と衝撃を起すほどでロケット砲は自動装填があされるので連射が可能
 またパニッシャー×3の一斉射撃を防ぎきる異常な堅牢さもあり盾としても利用可能。
 大の大人5,6人ほどでようやく持つことが出来、総重量は数百キロある。
 ウルフウッド、ラズロはその超重量を接近戦での戦闘時に一瞬で数十回以上振りますなど攻撃に使用していたが、それは生体機能強化を受けている人外の為である。
 当然ながらその重量の為、人類が扱える所か持てる物ではない。


【能力・技能】
 原作ではその類稀る身体能力と戦闘センスで数々の修羅場を潜り抜けて来た。
 銃火器の扱いは勿論のこと、暗殺にも長けている。
 身体改造及び薬物投与によって人間離れした耐久力と身体能力を持っている。


【人物背景】
 孤児院によって育てられた孤児だが後に暗殺組織に身を置きのその身体を闇に染める。
 暗殺組織であるミカエルの眼から抜けだした後はGUNG-HO-GUNSに名を連ねる事となる。
 任務の中で不殺を謳うヴァッシュと出会い彼と共に行動する。
 その中で彼の中に眠る信念に触れるもウルフウッドは現実を見ていた。
 旅の最後、多くの修羅場を生き延びた彼は孤児院の家族であるリヴィオと――。


【方針】
 願いは無く、襲ってくる参加者は全て殺すつもりでいる。
 生き抜く上で理想や甘い戯言は通用せず、現実的に彼は戦い抜く。
 最後の一人になったらあるべき場所(死の世界)へ還る事を願うつもりでいる。


383 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:24:59 TO7OMFMo0

【クラス】アーチャー


【真名】
 電@艦隊これくしょん


【パラメータ】
 筋力D 耐久B 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具D++


【属性】
 秩序・善


【クラス別スキル】
 単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

 対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。


【保有スキル】
 艦娘:A
 生前戦艦だった存在を少女として転生させた者達が持つ能力。
 水上ではステータス以上の力を発揮することが可能である。
 また「近代改修」により鉄や燃料などの資材を消費することにより地力を上昇させることが可能。

 救済:A
 例え救う価値の無い存在でも。敵であっても救う優しい力。

 尽力:A
 自分のためよりも他者のために戦った時、本来以上の能力を発揮する力。 

 戦闘続行:C
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。


【宝具】


『砲雷撃戦』
 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜200 最大捕捉:1000
 駆逐艦としての装備を展開する能力。
 その大きさは当時と変わらず対人戦では圧倒的な火力で相手を殲滅する。
 能力のイメージとしては何もない空間から装備を具現化させる。
(ギルガメッシュの王の財宝に近いイメージです)



『第一水雷戦隊暁型四番艦駆逐艦電』
 ランク:D++ 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 生前の姿である駆逐艦を海域と共に展開し相手を制圧殲滅するアーチャー最大の切り札である固有結界。
 雷自身は魔術師ではなく元は駆逐艦であるが乗組員全員が心象風景を共有し、皆で展開することにより結界を継続させる。
 展開される領域は海域だが陸地も存在する。相手が陸地にいるか海域に居るかは相手の幸運に左右される。
 結界発動時、雷とマスターは駆逐艦に乗り込むことになり、乗組員の承認を得ればマスターが指揮を執る事も可能である。。
 なお、魔力供給の関係上発動可能回数は多く見積もって二回、三回目は現界を超える。


【weapon】
 ・12.7cm連装砲(立ち絵、初期装備)。

 ・高速建造材
 何かを作る時に役に立つ……かもしれない。(三つしかありません)


【人物背景】
 かつて日本において実際に運用されていた駆逐艦。
 スラバヤ沖海戦などに参戦するも最後は轟沈させられてしまった。

 その駆逐艦の魂が少女の形となって転生したのが英霊である電だ。
 艦隊これくしょんでは最初に選べる秘書官の一人であり選んだ提督も多いだろう。

 アニメでは他の駆逐艦達と仲の良い日常が描かれている。
 カレーに高速建造材をぶちかます辺り天然(?)かもしれない。


【サーヴァントとしての願い】
 マスターに全てを捧げる。


【基本戦術、方針、運用法】
 マスターのために戦うが生命は奪いたくないと思っており、命令といえど反抗する恐れがある。
 戦術としては狙撃ではなく広範囲圧倒的火力で相手を焼き尽くす。


384 : ニコラス・D・ウルフウッド&アーチャー ◆4oYTACNEQs :2015/03/01(日) 23:25:27 TO7OMFMo0
以上で投下を終了します


385 : ◆zhWNl6EmXM :2015/03/02(月) 04:14:47 exRDvpVE0
皆様投下乙です。
投下します。


386 : ラカム&ライダー ◆zhWNl6EmXM :2015/03/02(月) 04:15:38 exRDvpVE0


日が昇り始める明朝。
とあるマンションの屋上にて、二人の男が立っていた。
カジュアルな装いの若い男。銀色の騎士。
周囲の大気を、穏やかな風が支配している。
どこか冷たく、それでいて肌を撫でるような暖かさの風が吹く。
まるで、大空の中にいるような感覚に囚われる。


「俺はかつて、空に憧れてたんだ」


ラカムは、空を目指した男だった。
そして、空を棄てた操舵士でもあった。

彼にとっての全ての始まりは幼少期。
幼かったラカムは、町外れに打ち捨てられていた騎空挺『グランサイファー』に心を奪われた。
雲を裂き、空を駆ける船に憧れたのだ。
故に彼は、空への挑戦を決心した。
幼き日の彼は無垢な夢を抱いた。


「必死こいて操舵士のノウハウを学んだり、オッサン共と一緒に船の整備したり……
 空を目指して色々やってきたさ。懐かしい思い出だぜ、全く」


まだ幼かったラカムは、それをきっかけに操舵士としての技術を学び始めた。
街の技術者の協力を得て、グランサイファーの整備と修復を行った。
自らの駆る船によって空を駆けることを夢見て。
ラカムは、長い年月を費やした。
彼の夢は現実へと近付き、それにつれて自信と技術も自然に身に付き始めた。
自分なら行ける――――――そんな確信を持っていた。


「だけど、俺は駄目だった」


そんな夢の結末は呆気ないものだった。
ラカムは、空に敗れた。
技術者の監修と協力を得たことによる確かな修復。
ラカムが積み重ねてきた操舵士になるための地道な修練。
長い年月をかけ、それらを積み重ねてきた。
ラカムの技術が在れば、今の騎空挺グランサイファーは確実に飛行出来る。
技術者からもそう断言されていた。


それでも、ラカムは空へと飛ぶことが出来なかった。


余りにも呆気ない墜落。
それが騎空挺グランサイファーの末路だったのだから。
幸いラカムは大事に至らなかったものの、彼の夢はグランサイファーの墜落と共に途絶えた。
空へと飛ぶ為に、必死に挺の操縦技術を磨いてきた。
船を飛ばす為に、長い月日を費やして修復に臨んだ。
島の守り神の加護によって、気候も最適だった。
にも拘らず、グランサイファーを飛ばすことは出来なかった。
完璧なコンディションだったにも関わらず、失敗した。
それ以来、ラカムは空を棄てた。
『空に裏切られた』という思いを抱え、己の夢を喪った。
傍に立つ従者に対し、ラカムは己の経緯の全てを、募らせてきた思いを語った。


387 : ラカム&ライダー ◆zhWNl6EmXM :2015/03/02(月) 04:16:16 exRDvpVE0

「……空、か」


ラカムの傍に立つのは、白い髭を靡かせる老騎士。
彼はマスターの語る言葉を何も言わずに聞き届けていた。
決して邪魔をせず、彼の過去を受け止めていた。
そして、騎士は初めてその口を開く。


「おぬしが空に想いを馳せていた様に、我々も『大地』に想いを馳せていた」


ラカムの夢を否定も肯定もせず、騎士はどこかしみじみと語るように呟く。
操舵士が空に憧れていた様に、騎士は大地“ヴァース”に憧れていた。
空に浮かぶ雲で構成された島において、存在し得ない『土による大地』。
鉄やカボチャといった空には無い資源を生み出す、幻の土地。
空の民達はそんな大地に永遠の憧れを抱いた。
地を歩く人が空を目指した様に、空に住まう人は地に憧れたのだ。


「青海であろうと、空島であろうと…やはり人は変わらぬものだな。
 未知への憧れは、人々に大いなる夢を与えてくれる」
「…ああ。あんたの言う通りだろうな」


静かにそう語る騎士に対し、ラカムは少しの間のを開けて同意するように呟く。
未知への憧れ―――――それは人々が何かに『挑戦』する為の原動力。
ラカムは艇に魅せられ、空に憧れた。
故に彼は見果てぬ領域である空へと挑戦したのだ。
未知への憧れが、自分を空へと駆り立てた。
空に裏切られたと感じていたラカムにとっても、それは理解出来ていた。


「だからこそ、ふとした時に『やり直したい』って思っちまってたのさ。
 あの頃のように、もう一度空へと挑みたい―――――――――ってな」


夢を棄てたラカムは、ある時ほんの少しの願いを胸の内に抱いてしまった。
『空への挑戦をやり直したい』『グランサイファーに乗って、また空へと挑みたい』。
僅かに芽生えた思いが、彼をこの聖杯戦争へと導いた。


388 : ラカム&ライダー ◆zhWNl6EmXM :2015/03/02(月) 04:16:57 exRDvpVE0

「こんなクソッタレな殺し合いに巻き込まれて、ようやく気付いたんだよ。
 『空に裏切られた』だの何だのと御託を並べてたが、結局の所……俺は夢を諦め切れてねえんだってさ」


奇跡の願望器を巡る戦争。
最後の一組になるまで殺し合う闘争。
参加者足り得るのは『聖杯に託す願いを持つ者』。
そんな聖杯戦争に、ラカムは召還された。
巻き込まれてから、彼はようやく気付いてしまった。


自分は、奇跡に縋りたかったということに。
奇跡に縋ってでも、空への夢を棄て切れなかったということに。


皮肉なことだとラカムは自嘲する。
こんな殺し合いに巻き込まれて、ようやくそれを理解したのだから。
己の性を噛み締めたラカムを見据え、騎士は再び口を開く。



「おぬしはその夢の為に聖杯を取るか」



聖杯を得る為に戦うか。
騎士の問いは、実に単純なものだった。



「いいや、俺は奇跡なんかに頼らねえ」



ラカムの答えは、否。
無言で真っ直ぐに見据えてくる騎士に対し、ラカムは続けて言葉を紡ぐ。


「俺は、俺の意志でまた空に挑戦したい。
 今度こそ俺の手でグランサイファーを飛ばしてやる為に。
 聖杯なんて代物に頼っちまったら、それこそ本当の臆病者になっちまう」


389 : ラカム&ライダー ◆zhWNl6EmXM :2015/03/02(月) 04:17:40 exRDvpVE0
ラカムの望みは、再び空へと挑戦すること。
自らの手で騎空挺を空へと飛ばすこと。
この聖杯戦争に巻き込まれ、彼はようやく己の夢を取り戻したのだ。
既に己の願いを見つめ直した。
故にラカムは奇跡の願望器に頼るつもりなど無い。
己の意志で艇と向き合わなければ、空に挑まなければ、何の意味も無いのだから。


「俺はまず此処から脱出する手段を探す。
 例え勝つこと以外に手段が無くても、可能な限り諦めたくはねぇ」


ラカムの選んだ方針は脱出。
聖杯戦争そのものを否定するつもりはない。
だが、肯定もしない。
だからこそラカムは戦いに囚われぬ生還を目指す。
自分が勝ち残って聖杯を手にした所で、意味など無いのだから。
最悪、勝つことしか手段が無かったとしたら――――――その時はその時だ。


「だからよ……悪ィな、じいさん。俺はあんたの望みを―――――――」


俺はあんたの望みをきっと叶えられない。
聖杯を手に入れることより、生きて帰ることを優先するのだから。
ラカムは騎士に対し、そう言おうとした。



「よかろう。おぬしの望み、しかと受け取った」



だが、騎士は何の迷いも無く口を開く。
聖杯を手にする機会を放棄するも同然。
だというのに、彼はきっぱりと言ったのだ。


「じ、じいさん…?」
「元よりこの老体に『願い』はない。
 おぬしのような若き力を助ける為に此処に参じたのだから」


意外そうな表情を浮かべるラカムに対し、騎士は告げる。
元より願いなど無かった。
ただ彼は、ラカムの存在に導かれただけに過ぎなかった。
願いを持つ若き意志を助ける為に召還に応じた。

そして出会ったマスターは、空に憧れる男だった。
空に再び挑戦することを望む、活気溢れる若者だった。
そんな彼は、聖杯への願いを持たなかった。
己の意志で願いを叶える。その為に生き延びる。
奇跡に頼らずとも、自らの力で空へと挑戦する。

騎士は己のマスターに感心を抱いたのだ。
同時に自身が此処へ導かれたのは正解だった―――――と。
そう思ったのだ。


「…ありがとな、じいさん」


フッと笑みを浮かべながら礼を言うラカム。
騎士もまた、僅かな微笑を口元に浮かべる。
このような若者の為に槍を振るえるのなら、本望だ。
騎士はそう思っていた。

同時に、ラカムもまた騎士を早くから信頼していた。
騎士は己の経緯を真摯に聞き届け、何の縁もない自分の為の戦いに尽くすことを宣言した。
故に、この老騎士は信じられる。
半ば確信のようにラカムはそう感じていたのだ。


そして、騎士は槍を掲げる。
主の為に戦うことを宣言する様に、名乗りの口上を上げる―――――




「我輩はライダーのサーヴァント、ガン・フォール!
 主君の為に槍を振るう『空の騎士』となろう!!」




――――――空を駆ける騎士。空を望む操舵士。
――――――空へと想いを馳せる主従の契約が、此処に結ばれる。


390 : ラカム&ライダー ◆zhWNl6EmXM :2015/03/02(月) 04:18:09 exRDvpVE0

【クラス】
ライダー

【真名】
ガン・フォール@ONE PIECE

【パラメータ】
筋力C 耐久C 敏捷C+ 魔力D 幸運C 宝具C

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
騎乗:B
騎乗の才能。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
空の騎士:B
天空を駆る騎士。
宝具『蒼空の騎士鳥』に騎乗中、パラメータにプラス補正が掛かる。

神性:E-
生前に空島の神として君臨していた逸話が神性へと昇華されたもの。
しかし本人が『神』の概念を否定したため、ランクは極めて低い。

戦闘続行:D
往生際が悪い。
致命傷を受けない限り生き延び、僅かな治癒のみで次なる戦いへ挑むことが出来る。

【宝具】
『蒼空の騎士鳥(サー・ピエール)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
鳥にして動物系悪魔の実『ウマウマの実』の能力者・ピエールを召還する。
生前よりガン・フォールに付き従いし相棒であり、彼がライダーとして現界した所以。
ガン・フォールはこのピエールに騎乗して戦う。
悪魔の実の能力を解放することで翼を持った馬(ペガサス)の姿に変身することが可能。
能力解放中はピエールの飛行能力・身体能力が向上する。
悪魔の実の能力者は例外無く海に忌避され、泳ぐことが出来なくなるという弱点を持つ。

『碧天の騎空槍(スカイピア・ジャベリン)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大捕捉:1人
ガン・フォールが振るう騎士の槍。所謂ランスの形状をしている。
特殊な能力こそ持たないが、サーヴァントにも通用する切れ味を持つ。
『“空の騎士”ガン・フォール』の象徴として宝具にカテゴライズされた。

【Weapon】
『衝撃貝(インパクト・ダイアル)』
空島に存在する『衝撃を蓄積する貝』。
ガン・フォールはこれを掌の部分に装備して使用する。
物理的な衝撃を受け止めることで吸収・蓄積し、殻頂を押すことで吸収した衝撃を放出する。
鈍器などで事前に衝撃を蓄えてからの使用、あるいは敵の物理攻撃への防御と反撃を兼ねた手段として用いられる。
単純な打撃とは違い肉体の内側からダメージを響かせる為、物理防御を貫通することが可能。
ただし衝撃の蓄積量に応じて放出時に受ける反動も大きくなる。
また、一度衝撃を放出すれば再度の吸収が必要となる。

【人物背景】
『空の騎士』を名乗る老傭兵。
空島にて単身でゴッド・エネルの悪政に立ち向かっていた。
その正体はエネルが現れる前の先代の神。
アッパーヤードにて麦わら一味、神の軍団、シャンディアの三つ巴の戦いが勃発した際には
相棒であるピエールと共に行動を開始し、神の軍団との戦いに身を投じる。
しかし神官であるシュラやオームとの戦闘で疲弊し、最後はエネルの攻撃によって再起不能に陥る。
麦わらの一味によるエネル撃破後には再び神の座に納まった。

【サーヴァントとしての願い】
マスターの為に戦うのみ。

【基本戦術・運用】
基本的な能力値は並程度であり、突出した強みも無い。
彼が真価を発揮するのは宝具『蒼空の騎士鳥』に騎乗している最中。
騎乗中は飛行による優れた機動力を獲得する他、パラメータにも補正が掛かる。
更に宝具そのものの燃費が軽く、積極的に使っていけるのも強み。
リーチが短く扱いづらいが物理防御を無視できる『衝撃貝』は、宝具ではないものの貴重な火力源。
『蒼空の騎士鳥』の機動力を駆使して敵を攻め立て、ここぞという時に『衝撃貝』を叩き込もう。

【方針】
マスターを護る。


391 : ラカム&ライダー ◆zhWNl6EmXM :2015/03/02(月) 04:19:07 exRDvpVE0

【マスター】
ラカム@グランブルーファンタジー

【マスターとしての願い】
あの頃の様に、また空へと挑みたい。
奇跡の力ではなく、自分の意志で。

【weapon】
銃剣付きマスケット銃

【能力・技能】
騎空挺の操舵士としては一流。
しかし今の彼は空を捨てている。
射撃の腕前も優れている。

【人物背景】
凄腕の操舵士。29歳、種族はヒューマン(人間)。
ぶっきらぼうだが面倒見の良い性格。
幼少期、放置されていた騎空挺グランサイファーの操縦を夢見て操舵士を目指す様になる。
しかし修理したグランサイファーを乗りこなせず墜落させてしまい、それ以来空への夢を諦めてしまう。

夢現聖杯においては主人公一行と出会うよりも前に冬木へと召還されている。

【方針】
脱出の手段を探す。その為に情報を集める。
勝ち残る以外の方法がなければ、その時はその時で方針を練る。
襲ってくる相手には容赦しない。


392 : 名無しさん :2015/03/02(月) 04:19:33 exRDvpVE0
投下終了です。


393 : 名無しさん :2015/03/02(月) 13:42:50 FPnG9qGk0

【セイバー】7
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
伊佐木要@凪のあすから & ツナシ・タクト@STAR DRIVER 輝きのタクト
高嶺清麿@金色のガッシュ!! & マタムネ@シャーマンキング
本居小鈴@東方鈴奈庵 & ムゲン@サムライチャンプルー
碇シンジ@エヴァンゲリオン新劇場版 & パルパティーン@スター・ウォーズ
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より- & ランスロット@Fate/Zero
海馬瀬人@遊戯王 & ラクウェル・アップルゲイト@ワイルドアームズ the 4th Detonator

【アーチャー】6
スタン@グランブルーファンタジー & 瑞鶴@艦隊これくしょん
広川剛志@寄生獣 &エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版) & ジャスティス@GUILTY GEAR
呉島光実@仮面ライダー鎧武 & 暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
テッド@幻想水滸伝シリーズ & 電@艦隊これくしょん
ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン & 電@艦隊これくしょん

【ランサー】8
酒留清彦@ピューと吹く!ジャガー & ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー
笛口雛実@東京喰種 & レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)@ウィザーズ・ブレイン
蓮見琢馬@The Book jojo's bizarre adventure 4th another day & 田村玲子(田宮良子)@寄生獣
レイ・ザ・バレル@機動戦士ガンダムSEED DESTINY & Dボゥイ(相羽タカヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード
桐ヶ谷 柩@悪魔のリドル(原作) & ディルムッド・オディナ@Fate/Zero
ウェカピポ@ジョジョの奇妙な冒険 第七部 スティール・ボール・ラン & ミリア=レイジ@GUILTY GEAR
香月舞@魔法のスター マジカルエミ & 東光太郎@ウルトラマンT(タロウ)
グレミオ@幻想水滸伝 & ラーハルト@ドラゴンクエスト ダイの大冒険

【ライダー】4
斉祀@THE KING OF FIGHTERS XIII & ???@アカツキ電光戦記
レパード@夜ノヤッターマン & 太公望@封神演義
月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!(プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち) & 南光太郎@仮面ライダーBLACK
ラカム@グランブルーファンタジー & ガン・フォール@ONE PIECE

【キャスター】6
比良平ちさき@凪のあすから & 雪姫(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)@UQ HOLDER!
八神はやて@魔法少女リリカルなのはA's & ギー@赫炎のインガノック-what a beautiful people-
呉島貴虎@仮面ライダー鎧武 & メディア@Fate/stay night
エヌ氏@星新一作品 & ロック@手塚治虫作品
野原みさえ@クレヨンしんちゃん & ギーグ@MOTHER
球磨川禊@めだかボックス & 戦極凌馬@仮面ライダー鎧武

【アサシン】7
水本ゆかり@アイドルマスター シンデレラガールズ & シルベストリ@からくりサーカス
霜月美佳@PSYCHO-PASS 2 & ジャギ@極悪ノ華 北斗の拳ジャギ外伝
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 & 夜神月@デスノート
音無結弦@Angel Beats! & あやめ@missing
佐野 満@仮面ライダー龍騎 & 野々原渚@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD
神条紫杏@パワプロクンポケット11 & 緋村剣心@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
アルミン・アルレルト@進撃の巨人 & 郭海皇@バキシリーズ

【バーサーカー】4
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEEDDESTINY & デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
ダンディ@スペース☆ダンディ & ヤクザ天狗@ニンジャスレイヤー
葛西善次郎@魔人探偵ネウロ & ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ
シュラ@アカメが斬る!(漫画版) & アギト@私の救世主さま

【エクストラ】6
〈モレスター〉
鷹鳥迅@最終痴漢電車3 & 遠山万寿夫@痴漢者トーマス2

〈アドミラル〉
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & 提督@艦隊これくしょん

〈ヴァンパイア〉
雷小龍@ウィザーズブレイン & 月島亮史@吸血鬼のおしごと

〈しろがね〉
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ) & 加藤鳴海@からくりサーカス

〈イマジネーター〉
暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ & 園村麻希@女神異聞録ペルソナ

〈ネゴシエイター〉
ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド & 佐山・御言@終わりのクロニクル


394 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/02(月) 15:13:33 5jYSKGt60
投下します


395 : ドラコ・マルフォイと悪夢の聖杯戦争 ◆RzdEBf96bU :2015/03/02(月) 15:14:26 5jYSKGt60
「…できない…僕にはできない…でもあいつを、ダンブルドアを殺さないとあの人が…」
姿をくらますキャビネット棚の前でブロンドヘアの少年が震えながら座り込んでいた。
彼の名前はドラコ・マルフォイ。普段はデカブツでウスノロの子分を引き連れて傲慢不遜に歩く彼であったが、
今はその面影も見えない。

一年前、彼の父親、ルシウス・マルフォイは名前を言ってはいけないあの人から与えられた指令で
大失態を犯してしまった。その罰としてドラコは到底成功するはずのない命令を与えらた。
ダンブルドアの暗殺という、16歳の少年には荷の重すぎる命令を…
何度も暗殺を試みたがすべて失敗に終わり、もはや後がなかった。
このまま成果を出せなければあの人は嗤いと侮蔑と共に殺すだろう。
父も母も、そして自分自身も…
嫌だ。考えるだけで恐ろしくなって今にも死んで逃げたくなる。
だけど死ぬのは嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

キャビネット棚のガラスを見ると恐怖で塗りたくられた自分の顔が映っていた。
じっと見ていると、ガラスの中の自分の髪の毛がパラパラと抜け、鼻が凹んで切れこみだけとなり、
瞳は薄いグレーから青色へと変化した。その姿はまるで蛇のようで…

「わかっているだろうなドラコ。俺様の言葉は全てが絶対尊守の法なのだ。
それに逆らうというならばお前には死よりも恐るべき罰を与えねばならんな」

そしてガラスの中のあの人は笑いながらマルフォイに杖を向けて呪文を唱え、緑色の閃光が…

「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

マルフォイは絶叫しながら駄々をこねる子供の様に杖を振り回した。
あちらこちらに杖から飛び出た閃光が命中して、古ぼけた本やらガラス瓶やらがパラパラと棚から落ちた。
埃が舞い散ってしばらく物が床に落ち壊れる音が続いた。物音がやんだ後肩で息をしながらもう一度キャビネット棚のガラスを
見ると、さっき映っていたあの人の顔は自分の恐怖心が映し出したビジョンであったことにようやく気付いた。
力を失ったようにマルフォイはへなへなと尻から崩れ落ちて、頭を抱えて小さくうずくまった。

「ハア、ハア、ハア、嫌だ…怖い…怖いよ…助けて、父上、母上…逃げ去りたい。あの人も知らないどこか遠くに…」

その言葉を吐いた時だった。ポンと音を立てて、マルフォイの体はホグワーツから消え去ってしまった。


396 : ドラコ・マルフォイと悪夢の聖杯戦争 ◆RzdEBf96bU :2015/03/02(月) 15:14:53 5jYSKGt60
仮初の町で再現されたマルフォイの館、その瀟洒な館の中の絢爛な装飾品で彩られた客間の暖炉の前で、
マルフォイは自身のサーヴァントである三日月を象った姿の英霊と対峙していた。

「くそ、なんてこった…あの人の知らない場所に逃げられたと思ったら、今度は聖杯戦争だって?
地獄から地獄じゃないか…まるで悪夢だ」
自身の今陥っている状況、聖杯戦争の概要を聞いて、マルフォイはサーヴァントにそうこぼした。

「なあキャスター。僕は元の世界に戻ってあの人に殺されるのは嫌だ。
だけどこのままこの世界で戦い抜くのも怖い。…僕はどうすればいい?」
今のマルフォイには純血の誇りも、憎きポッター相手に張り合った傲慢さもない。あるのはただ一つ。
死の恐怖だけである。
うつむいて震えているだけのマルフォイに、キャスターは優しく答えた。

「あなたにできることはただひとつ。戦い勝利することです。この聖杯戦争で」
「そ…そんなことできるわけないだろう!聞いただけでも無理な話だ。たった一人で勝ち残るなんて」
「いいえ、一人ではありません。貴方には私がいます。私、クレセリアが」
その言葉を聞いてマルフォイは顔を上げてキャスターを見た。

「希望を捨ててはダメ。自分を信じて戦えばきっと道は拓けます。くじけそうになったときは私があなたを支えましょう。」
「…キャスター」
「マルフォイさん。貴方はあの人を恐れていますね。」
キャスターの問いに、マルフォイは力なく答えた。
「ああ、そうさ。あの人は今世紀最強の魔法使いさ。とても僕なんかじゃ敵うわけ…」
「いったい何を恐れる必要があるのですか?」
「…え?」
予想もしなかった言葉に、マルフォイは虚を突かれた。

「確かに通常ならば、例のあの人という人物に勝つことは難しいでしょう。しかしあなたは今、聖杯戦争に招かれたのです。
もし聖杯を手にしたのならば、例のあの人から逃げることも、勝利さえ、聖杯は叶えてくれるでしょう。
あの人から逃げる必要も恐れる必要もどこにもありません」
「僕が…あの人に勝つ」

それは想像しただけで背筋が凍るほどの恐怖であり、しかしそれは今まで自覚さえ許されなかった腹の底から湧きたつほどの渇望であった。

「マルフォイ…貴方には聖杯を手にする相応の実力があります。さあ、強く思い、望み、そして言うのです。貴方の願いを」
キャスターが囁くたびに、マルフォイの内のどす黒い恐怖心は灰色に色褪せていき、代わりに銀色に輝く欲望が満ちていく。
「キャスター…僕は聖杯を獲る…聖杯を獲ってあの人を、いや…ヴォルデモートを打ち倒して、代わりに僕が魔法界に君臨する!」
口に出すことさえ禁じられたその人の名前を言ったとき、自分を囲んでいた檻が砕けるのを感じた。
もはやそこには恐怖に呑まれた落ちぶれた少年の姿はなかった。
狡猾で機知に富み、己が為ならば他人を陥れることも厭わぬ純血の一族の末裔、スリザリン生の鑑たるドラコ・マルフォイがそこに居た。
その姿を見てキャスターは口元をゆがめていた。


397 : ドラコ・マルフォイと悪夢の聖杯戦争 ◆RzdEBf96bU :2015/03/02(月) 15:15:26 5jYSKGt60
轟々と燃え盛る暖炉の前、意匠を凝らした椅子にマルフォイは座っていた。
しかしその眼は何も捉えてはおらず、ただ欲望の夢に酔いしれている。
マルフォイの傍ら、漆黒のローブを纏った相貌のサーヴァントが、実に厭な笑みを浮かべていた。
(くっくっく…マスターを優勝狙いに持っていくことは成功といったところか)
心の中でキャスターはうまくマルフォイを誘導できたことに笑う。
マルフォイは知らない。キャスターの狙いが自分を傀儡にして、聖杯を取ろうとしていようとしていることも。
(マルフォイよ…オマエはただ浅き夢に溺れているがいい…聖杯を獲り…暗黒世界の王になるのは私だけだからな)
マルフォイは気づかない。彼の言葉も姿も名前もすべてが悪夢が嘯いた偽りであることに。
キャスター――――真名はダークライ。
新月の夜、彷徨いながら人々を悪夢へと誘うあんこくポケモン…悪夢の王。


398 : ドラコ・マルフォイと悪夢の聖杯戦争 ◆RzdEBf96bU :2015/03/02(月) 15:16:18 5jYSKGt60
【クラス】
キャスター

【真名】
ダークライ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊

【パラメータ】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具C

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:B
自らにとって有利な陣地を作り上げる。
とくにキャスターは夢のなかに陣地を作り上げる技能に長けている。

道具作成:B
魔力を帯びた道具を作成する技能。
主にふしぎだまやスカーフ、バンダナ、たね、わざマシンなどの作成が可能。

【保有スキル】
ナイトメア:B
眠っている相手に悪夢を見せて毎ターンダメージを与える。

威圧感:C
キャスターに対して攻撃が行われるとき判定が行われ、稀に相手を怯ませて攻撃を失敗させる。
判定の成功は幸運値に依る。

回復体質:D
バッドステータスからの回復が通常よりも早くなる。

悪タイプ:C
悪タイプに属するポケモンであることを示すスキル。
エスパー、悪、ゴーストの属性の攻撃に対して耐性を持つが、格闘、虫の属性の攻撃には追加ダメージを受ける。
また、悪タイプのわざを使うとき、威力が増加する。

【宝具】
『悪夢の最奥で嗤う影(ダークライ)』
ランクC 種別:対夢宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:30人
悪夢を見せ、悪夢の中に巣食う、キャスターの能力が宝具となったもの。
対象の夢に入り込み内容を自在に書きかえ、悪夢を見せる。
夢と現実の境界が見えなくなるほど、現実に近い夢も見せられる。
また、キャスターは相手を眠らせるわざも覚えているので、現実世界で戦っていたのに、
気づかないうちに夢を見せられていたということもありうる。

【weapon】
Lv53までに習得可能なわざ。
またわざマシンで新たなわざを覚えることも可能。
主なわざ
かなしばり ノーマルタイプ 相手一体をまひ状態にする
あやしいかぜ ゴーストタイプ 視界内の敵に攻撃 稀にその戦闘中に限り筋力、耐久、敏捷、魔力が上がることがある
でんこうせっか ノーマルタイプ 多少離れている敵にも届く
さいみんじゅつ エスパータイプ 敵一体をすいみん状態にする
だましうち あくタイプ 敵一体を攻撃 必ず当たる
あくむ ゴーストタイプ 相手を眠らせあくむ状態にする。すいみん状態よりも持続ターンが長く目覚めた時にダメージ。
かげぶんしん ノーマルタイプ 回避率を少し上昇させる

【人物背景】
時限の塔の崩壊を行い星の停止を招き、歴史を変えるためにタイムスリップした主人公とジュプトルを攻撃し、
主人公がポケモンとなってしまった原因でもあるすべての元凶。
世界を暗黒で包むことを目的としており、時限の塔の崩壊を防いだ主人公とパートナーを危険視し、排除することを計画する。
決して表に出てこない性格だと彼の宿敵であるクレセリアに評されており、事実主人公たちの夢の中でクレセリアに化け、
主人公たちが空間の歪みを招いていると嘘をついたり、パルキアをだまして襲撃させるなど搦め手を好んで用いる。
闇の火口にて主人公に悪夢を見せて闇の世界に誘おうとするが、悪夢を破られて失敗。最終決戦に入る。
敗北後、時空ホールを作り過去の世界から支配しようとするが、パルキアの攻撃を受けて全ての記憶を失い彷徨うことになる。

【サーヴァントの願い】
復活して再び世界を暗黒に包み支配する


399 : ドラコ・マルフォイと悪夢の聖杯戦争 ◆RzdEBf96bU :2015/03/02(月) 15:16:39 5jYSKGt60
【マスター】
ドラコ・マルフォイ@ハリー・ポッターシリーズ

【マスターとしての願い】
例のあの人を打ち倒して自分が魔法界の頂点に立つ

【weapon】
・杖
本体はサンザシ、芯は一角獣のたてがみ、25センチ、ある程度弾力性がある。
・輝きの手
蝋燭を差し込むと手を持つものだけにしか見えない灯がともる。泥棒、強盗の最高の味方。

【能力・技能】
・ホグワーツ6年生までで習う魔法。
5年生の時にスリザリン監督生に就任し、磔の呪文も使用できることから、技能は平均よりは高いと思われる。
・閉心術
心を閉ざして、思考を読ませなくする術。マルフォイはこの術において高い才能を持つ。

【人物背景】
主人公ハリー・ポッターのライバル的存在。スリザリン生で純血の一族マルフォイ家の長男。
純血主義者で、穢れた血や血を裏切るものを見下している。
敵を蹴落とすためなら卑怯な手も躊躇わず使う典型的スリザリン生だが、臆病な面もある。
父ルシウスがヴォルデモートの指令に失敗したのち、死喰い人見習いに任命され、ダンブルドア暗殺を命じられる。
失敗すれば自分だけでなく家族も命も保証できないことを知り、強い恐怖に苛まされる。
必要の部屋で怯えているときに、聖杯戦争に呼ばれる。

【方針】
キャスターと協力して、ほかの参加者を打ち倒して優勝する。
卑怯な手を使っても構わないが自分の命が危険になるような手段は嫌だ。
ただしマルフォイはその思惑がキャスターに操られているということに気づいていない。


400 : 名無しさん :2015/03/02(月) 15:16:59 5jYSKGt60
投下終了です


401 : ◆dM45bKjPN2 :2015/03/02(月) 23:07:02 I8yE65J.0
投下します


402 : ◆dM45bKjPN2 :2015/03/02(月) 23:10:49 I8yE65J.0
『───対象は20区にある喫茶店で ”喰種”の巣窟である可能性が───』

『現在も戦いが続いており…かなり大規模な戦いが』

失いたくなかった。
みんな、優しかった。

「見殺しにするの…?『あんていく』は助け合いだって、店長、言ってた」
「なら…あの数相手にお前は戦うのか?」
「だからってただ逃げるなんて…っ!」
「…お前は…死にたいのか?」
「そんなわけない……っ!!
でも、じゃあ…古間さんや入見さんは死にたいの……!?」

四方さんは言った。
古間さんと入見さんは芳村さんと出会って、今迄犯してきた罪の大きさを知ったって。
だから、何処かで罰を求めていたって。
ならば、此処で死のうと。
私たちを逃がすために、一人でも多く道連れにして死のうとして───

「罰…?
だったら私だって…私だって殺してきた。
喰べるためにもムカつくって理由だけでも!
た、たくさん殺してきた!!
私にだって罰が必要でしょ!?」
「…大人になれ。
今、お前に必要なのは罰じゃない。
考える時間だ」

『あんていくは仲間を助け合う』。
その教えを何時だって守ってきたのは、古間さんや入見さんだった。
だから、考えろと。
だから、知れと。
古間さんと入見さんが、逃げずに戦うその意味を───

「…『生きろ』っていうの…わたしに、みんなを犠牲にして───」

店長も。
古間さんも。
入見さんも。
みんな、みんな大事な人なのに。

『トーカ、学校はどう?
…あらそう、フフ…私も行ってみたかったわ、学校』

入見さんは、いつも優しいお姉さんみたいだった。

『ん?ネクタイがドブみたいだって?
おいおいトーカちゃん…冗談キツいねぇ…』

古間さんは、お兄さんみたいだった。

「店長…、店長は…」

店長は、私を学校に行かせてくれた。
何時だって助けてくれた。
それは。
まるで、本当にお父さんみたいな───

「……クソッ」
『───トーカ』

”お父さん”、なんて。
何で今、思い出してしまったのか。
優しかったお父さんも、私の元からいなくなった。

「…なんでみんないなくなっちゃうの…
ぜんぶなくなる…必死で覚えた公式も、校舎から見えるあの空も…」

大学に行く為に頑張って覚えた、公式も。

『霧嶋さん…一緒に、お弁当食べませんか…?』

初めてできた友達と見た、あの空も。
ぜんぶ。
ぜんぶ。

「なくさないようになにかしなくちゃって焦って…」
『───おねえちゃん』

弟も……アヤトも、私の元を去ってしまった。

「いつもどうしていいかわからなくて空回りばっか…」
『───トーカちゃん』

カネキも一人にしないなんか言って、何処かに行った。
あの言葉は。
とても、嬉しかったのに。

「店長達を助けたいよ…空回りだって…なんだってするから…」

瞳に浮かんだのは、血に沈むかつて殺した喰種捜査官の姿。。
その指には永遠の愛を誓う指輪が嵌められていて。
自分は、一体。
───何てことを、してしまったのかと。

「も……もう、いやだ……。
いやなの……いやなの───」


403 : ◆B7neUIhV3U :2015/03/02(月) 23:12:33 I8yE65J.0
それは。
幼き日に抱いた感情と同じで。

「店長達のところに行きたい…ねぇ…。
…本当にこれで終わりなの…?
本当にどうしようもないの…?」

だから、如何にかしたかった。
だから、終わりにしたくなかった。

店長と。
古間さんと。
入見さんと。
カネキと───みんながいた、あのあんていくに戻りたかった。

だから、これはやり直しの願い。
全てを無くした私の。
全てを取り戻す、物語。




















───やり直したい過去、ありますか?




───やり直せるのなら、何だってやってみせる。





▲ ▲ ▲


404 : 霧嶋董薫&アーチャー ◆dM45bKjPN2 :2015/03/02(月) 23:13:37 I8yE65J.0
▲ ▲ ▲












「貴方が、私のマスターかい?」

それが、己のサーヴァントとの最初の邂逅だった。
自分よりも、大分背が低い。
見たところ───ヒナミと同じくらいだろうか。
自らをアーチャーと名乗るその少女は、自分のことをサーヴァントだと言った。
数多もの命を聖杯に焼べ、たった一組の願いを叶える聖杯戦争の駒であると。
それに、トーカは疑問を抱いた。
この少女───アーチャーには、そこまでして叶えたい願いがあるのかと。

「…アンタには、そうまでして叶えたい願いがあんの?」

まるで、それは自分の覚悟を問うように。
目の前のアーチャーに尋ねた。

「私には、ないよ」
「……?ないのにこんな戦いに力を貸すの?」
「…私の真名はね、Верныйって言うんだ」
「ゔぇ……何?」

聞きなれない単語に思わず問い返してしまう。
アーチャーはそんな自らのマスターを見たまま、言い放つ。

「ヴェールヌイ。ロシア語で”信頼できる”という意味の名なんだ。
……マスターは多分知らないだろうけど、私は艦隊だったんだ」
「艦隊って…舟?」
「似たようなものだよ。今はこんな人間の姿に見えるけど、本質はそうじゃない」
「───っ」

”人間の姿にみえるけど、本質はそうじゃない”。
───まるで。
───それは、喰種のような。

「……マスターの願いは、敵に襲われた仲間達と元の暮らしに戻りたい、だったね。
戦いにすら参加させてもらえず、散るのを見るしかできなかった出来事を止めて、生活をやり直したいって」
「───そうだけど、何よ」
「……私も同じだよ。
大事な戦争には修理中で出撃することも出来ず。
暁も雷も電も…仲間がたくさん沈んだよ。
生き残った私は賠償艦としてロシアに引き渡されて、響からВерныйになったんだ」

その目には、どの様な惨状が映っていたのか。
仲間を失い、見知らぬ国へと引き渡される瞬間───彼女は、一体何を思ったのか。
辛かったはずだ。
悲しかったはずなのだ。
トーカには───その姿が、父親を失った後の自分に重なって見えて。
そして。
だから、と響は続ける。

「だから───マスターにはそんな思いをさせたくないんだ」
「……」

Верныйはそう語った。
全てを無くし、旅立つ気持ちを味わって欲しくないのだと。
それはトーカの心に何を齎したのか。
ぽつりと、トーカの口から言葉が漏れる。

「…私もな、人間じゃねえんだよ」
「……」
「───『喰種』。人間が喰うものが喰えず、人しか喰えないやつらだよ」

それは。
彼女の親友にすら、話すことはなかった彼女の秘密。
サーヴァントとマスターは一蓮托生。
だからこそ話したのであろうその秘密を、アーチャーは表情一つ変えずに聞き遂げた。

「…それでもアンタは協力しようっていうの?
───もしかしたら、喰うかもよ」

その瞬間。
少女の瞳が、深紅に染まる。
───赫眼。
喰種の生態的特徴の一つとされる、赤く染まった瞳。
それを見て、尚。
アーチャーはこちらを見据えたまま、言い放った。

「……それが、どうかしたかい?」


405 : 霧嶋董薫&アーチャー ◆dM45bKjPN2 :2015/03/02(月) 23:14:17 I8yE65J.0
「……は?」

思わず、間抜けな声を挙げるトーカ。
それを見てアーチャーは柔らかな笑みを浮かべ、

「───人間じゃないのは私も一緒だよ。
私なんて、ほら、艦隊だ」
「……意味わかんねー」

その笑みは、少し気恥ずかしそうだった。
彼女は生前、艦隊だったのだ。
人間の食物どころか、主に身体の中に入れるものは燃料だ。
それを見て、間抜けな顔をしていたトーカも少し、表情に柔らかさが戻った。

「行こう。マスターは、信頼できる。
マスターも信頼してくれれば───私は、マスターの為に全力を出せる」

アーチャーから差し出された細く白い手が、トーカに差し出される。
それを握るのにトーカは一旦躊躇したが───しっかりと握り返す。

「残念だけど、私はまだアンタを信用し切れてない」
「ああ───それでも、構わない」

そして。
人間の姿にして人間ではない少女二人が───全てを失った少女二人の、始まりだった


───さあ。
───失った生活を取り戻す、やり直しの聖杯戦争を始めよう。


406 : 霧嶋董薫&アーチャー ◆dM45bKjPN2 :2015/03/02(月) 23:15:25 I8yE65J.0
【マスター】
霧嶋董香@東京喰種

【マスターとしての願い】
「あんていく」のみんなと元の生活に戻りたい。

【weapon】
羽赫の赫子

【能力・技能】
喰種。
人間が食べるような食物は食べられず、人肉しか食べられない代わりに高い身体能力と五感を得る。
皮膚は包丁や拳銃では傷もつかない。
喰種特有のRc細胞という細胞を持っており、それを体外に放出し『赫子』という特殊な組織を形成する能力を持つ。
羽赫の赫子である彼女は肩辺りから羽のような赫子を出現させ赫子による高速移動、そしてRc細胞を小さな突起状に変化させマシンガンのように連射することができる。
肉弾戦もそれなりに強い。

【人物背景】
20区に住む喰種の少女。
普段は高校に通いつつ、喰種の喫茶「あんていく」でバイトをしている。
口は悪いが、根は優しい。
幼少時に人間に紛れ人間として生きていた父親・霧嶋新を喰種捜査官に殺害され、それから弟・絢都と共に東京を彷徨っていた。
喫茶「あんていく」の店長・芳村の提案により学校に通うことになり、あんていくでもバイトを始めるがそれが原因となり弟とは決裂。
今も弟のことは心配している模様。
そして原作13巻において喫茶「あんていく」が大量のCCG・喰種捜査官の強襲され、店長・芳村と古間円児、入間カヤが董香らあんていくの従業員の喰種を逃がすために応戦し、散る。
彼女は培った思い出や優しい仲間、手に入れた友を喪ったまま参戦。
やり直したい。
あの生活に戻りたい。
彼女の思いは、それだけだった。

【方針】
勝ち残る。
が、乗り気ではない参加者がいた場合はどうするか、まだ考えていない。


407 : 霧嶋董薫&アーチャー ◆dM45bKjPN2 :2015/03/02(月) 23:17:40 I8yE65J.0
【クラス】アーチャー

【真名】
 Верный(ヴェールヌイ)@艦隊これくしょん

【パラメータ】
 筋力D 耐久B 俊敏C 魔力E 幸運A 宝具C

【属性】
 秩序・善

【クラス別スキル】
 単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

 対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ないが、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
 艦娘:A
生前艦艇・戦艦だった存在が少女の姿に変わった者に付与されるスキル。
水上での戦闘において有利な判定を得、そして鉄などの資源があれば火力の増強・損傷した身体を魔力を使用せずに修復できる。

 信頼:A
「信頼できる」という意味の名を持つために付与されたスキル。
共に戦う者に信頼され、そしてアーチャー自身もその存在を強く信頼した時発動する。
耐久を一段階上昇させ、宝具の魔力消費を格段に少なくする。

 戦闘続行:B
戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】

『兵装・砲雷撃戦』
 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100

 駆逐艦としての兵装を現代に呼び起こす宝具。
 任意で範囲を指定することができ、戦闘時は肉体に付属させる型で展開する。
最大展開すると次々と砲門を増やすことができる。

『不死鳥の名は我にあり(Финикс
)』
 ランク:C 種別:ーーー レンジ:―― 最大捕捉:――

太平洋戦争において三度の致命的な損傷を受けながら尚生き延び、修復のタイミングなどで最後まで沈まなかった逸話が宝具となったもの。
致命傷を受け絶命したとしても3度までならば蘇生し万全な状態で戦線復帰できる。

『第六駆逐艦・響』
 ランク:C 種別:対艦宝具 レンジ:1〜200 最大捕捉:1000

彼女がまだ賠償艦として引き渡されていない、かつての駆逐艦としての姿を召喚し、かつての火力を取り戻す。
マスターと共に乗り込むことも可能。
英霊として召喚されたことにより、フランシス・ドレイクの黄金の鹿号のように海だけでなく場所問わず発動できる。
駆逐艦としての圧倒的火力で殲滅する。
不死鳥と賞賛されたその姿は生半可なことでは沈むことはなく、どれだけ破壊されても動き続けるだろう。
魔力消費は大きいものの令呪を使うか、または信頼スキルが発動すればあれば解放できるだろう。
本来ならこの宝具を持つ者はライダー適正を得るのだが、Верныйにとってはこの宝具が真の己の姿であるためアーチャー適正となっている。
アーチャーが駆逐艦として生きた、その生涯が此処に有る。

【weapon】
・『兵装・砲雷撃戦』
50口径12.7cm連装砲 2基4門を始めとした数多くの武装。

【人物背景】
日本において実際に運用されていた駆逐艦であり、賠償艦としてロシアに引き渡された駆逐艦。
その活躍ぶりから『不死鳥』とも呼ばれており、日本では響という艦名だったがロシアでは「信頼できる」という意味の「Верный」の名を得た。
その駆逐艦が少女の姿になったもの。

【サーヴァントとしての願い】
1人になった者、戦闘にて共に散ることすら出来なかった者として、マスターと共に戦う。
全ては、マスターのために。

【基本戦術、方針、運用法】
基本はその艦隊としての莫大な火力における殲滅。


408 : 霧嶋董薫&アーチャー ◆dM45bKjPN2 :2015/03/02(月) 23:18:41 I8yE65J.0
投下終了です
タイトルミスにより>>403 がトリが変わっていますが、私です


409 : ◆DvmU9SJm.Q :2015/03/03(火) 01:16:07 YTg96KtA0
投下します


410 : レオパルド&アサシン ◆DvmU9SJm.Q :2015/03/03(火) 01:17:04 YTg96KtA0

(あらすじ:暗黒経済組織ソウカイヤの末端ニンジャであるレオパルドは、赤黒いニンジャ装束を纏った死神……ニンジャスレイヤーの襲撃を受ける。
見せつけられた圧倒的なカラテの差。レオパルドは這々の体で逃げ回るが、ソウカイヤは既に彼を切り捨てていた。
「カイシャクしてやる」そして地獄の猟犬に追い付かれる。「ハイクを詠め」もはや恐れはなかった。絶望だけがここにあった。)



薄暗い街頭が頼りなく照らし出す夜の小道を、一人の男が駆け抜けていく。
男の名はレオパルド。ソウカイヤの末端ニンジャだ。

「ハァーッ! ハァーッ! ハァーッ!」

彼の息は荒い。ニンジャとは思えないほど乱れている。焦燥、動揺が所作からも滲み出ている。
ニンジャ身体能力による高速タイピングは何度も何度も打ち間違い、少しの時間を掛けて完了した。

#SEIHAI_NET:SYSTEM_BOT:いつもお世話になっております///
#SEIHAI_NET:LEOPARD:サーヴァント検索重点///
#SEIHAI_NET:SYSTEM_BOT:サーヴァントの特徴を入力してください、よろしくお願いします///

接続先はセイハイ・ネットのデータベース。
自分の側にいる姿なきニンジャ存在の正体を、これで確かめることができるはずだ。

#SEIHAI_NET:LEOPARD:赤白いニンジャ装束、全身に武器を装備、オキモノのごとき無口さ、実際機械///
#SEIHAI_NET:SYSTEM_BOT:検索中です、よろしくお願いします///

レオパルドは一時間前の出来事を思い出す。
ニュービーである彼は、エリート部隊であるシックスゲイツからマルナゲされたケチな調査任務をこなすため、スゴイタカイ・ビルの屋上へと向かった。
そこで見たのは……ソウカイヤ所属とは思えぬジゴクめいたニンジャであった。

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」

それがかのネオサイタマの死神であると、違法薬物で濁ったレオパルドのニューロンでも理解できた。
レオパルドとニンジャスレイヤーのカラテは残酷なまでに次元が違った。
人のカタチをした死が迫る。レオパルドは自らが属するソウカイヤへと助けを求めた。
ニンジャスレイヤーはソウカイヤにとっても仇敵。時間を稼げば必ず救援が来る。
か細い希望を胸に、レオパルドは死神から逃れようと走る。常人の三倍を誇る脚力で、一度は振りきった。
しかし、ブッダは彼に微笑まなかった。

「カイシャクしてやる。ハイクを詠め」

傷つき倒れたレオパルドの前に現れたのは、ソウカイヤの救援ではなく。
ニンジャに無慈悲に殺す狂気存在、ニンジャスレイヤーであった。
恐怖はもはやない。胸の内に宿るソウルとともに、どこかへ行ってしまったようだ。

「寂しい秋な……実際安い……インガオホー」

どうしてこうなってしまったのか。
ニンジャになれば全てが解決すると、世界の王になれると思ったのに。
レオパルドはしめやかに爆発四散した。


411 : レオパルド&アサシン ◆DvmU9SJm.Q :2015/03/03(火) 01:18:18 YTg96KtA0

キャバァーン! キャバァーン!
繰り返される電子的効果音が、記憶の反芻を終わらせる。

#SEIHAI_NET:SYSTEM_BOT:該当するサーヴァントな。カラダニキヲツケテネ!///

インフォメーションと同時にIRC端末に映し出されたのは、聞き慣れぬニンジャ……いや、サーヴァントの名前。
これが、レオパルドに宿った新たなソウルの正体。
聖杯戦争の参加者へ与えられる、ニンジャを超える力。

「トビカゲ・ニンジャ……!」

名を呼ぶ。瞬間、レオパルドの前に巨大なニンジャが現れた。
ニンジャネームは飛影。ニンジャ戦士トビカゲである。
実際オオキイ。あの悪名高きシックスゲイツの一角、ビッグ・ニンジャのソウルを宿すアースクエイクよりも、さらに1メートルほど長身だ。
オムラ・インダストリが製造するロボ・ニンジャシリーズとは比べ物にならない、精緻極まるハイ・テックボディ。
ニンジャ装束のカラーは赤と白。地獄の殺し屋めいた死神とは似ても似つかない。
しかし……秘めるカラテは圧倒的だ。それこそ死神どころか、ソウカイヤの総帥たるラオモト・カンにすら匹敵するかもしれない。
そのニンジャが、いま、レオパルドの命令を待っている。

「ハハハ……やった……やったぞ! このニンジャの力があれば、俺は今度こそ!」

レオパルドは昔、ヨモダという名のスラッシャー(武装強盗団)だった。
苛烈極まるネオサイタマの警察機構によって命を落とした瞬間、ヨモダにニンジャソウルが宿ったのだ。
絶対強者となったヨモダは思うがままに殺し、奪い、スシを喰った。しかし絶頂は僅か数日で終わりを告げた。
現れたソウカイ・ニンジャ、そして彼らを統べるラオモトによって、己は無敵の存在などではなく単なるサンシタにすぎないと再認識させられたからだ。
常人を超越した存在、ニンジャ。そのニンジャの世界もまた、冷酷な暴力が支配する上下社会でしかなかった。

「今度こそ……今度こそ……どうす、るんだ?」

レオパルドはニンジャスレイヤーによって殺害された。
しかしいま、レオパルドはここにいる。
ネオサイタマではないどこかの都市で、ニンジャを超える存在を従えて。
同じくニンジャを超える存在を葬る……スレイするために。

「このイクサに勝てば、俺は……ニンジャスレイヤーにも、ラオモト=サンにも、二度と怯えずに済む……?」


412 : レオパルド&アサシン ◆DvmU9SJm.Q :2015/03/03(火) 01:18:53 YTg96KtA0

レオパルドは現実を知った。
非ニンジャはニンジャによって虐げられ、ニンジャはより強きニンジャによって虐げられる。純粋なる力の論理だ。
当然ここにだって、トビカゲ・ニンジャより強いサーヴァントはいるだろう。
そんなやつに出会ってしまったとき、レオパルドはどうするのか。どうすればいいのか。
レオパルドの内にあるはずのソウルは、ニンジャ身体能力だけを残して去った。
トビカゲ・ニンジャは語らない。否、語る機能を持たない。
退くも進むもレオパルド次第。
全てを手に入れるためにイクサに臨むか、拾った命を惜しんで逃げ回るか。
どちらの道も、レオパルドの死に再接近する道であることに違いはない……ならば。

「……ジゴクなら見た。死神の跋扈するネオサイタマがジゴクでなければ、どこがジゴクだというのだ」

死神に蹴り落とされ、辿り着くのは新たな地獄。
ここで諦めるのならば何も変わらない。マッポに、ソウカイニンジャに、いいように小突き回されたあの日々と。

「ハァーッ! ハァーッ! ハァーッ……スゥーッ! ハァーッ! スゥーッ! ハァーッ!」

何の奇跡か、やり直す機会を得た。死神はレオパルドを仕留め損なったのだ。
いま……決別するのだ。弱い自分と。サンシタの自分とサヨナラするのだ。
ラオモトにドゲザした自分、ニンジャスレイヤーに命乞いした自分は、もういらない。
勝つ。勝つ。勝って、本当のニンジャになる。
無敵の存在。誰にも脅かされない、世界の王に。

「……ハイクを詠むがいい、まだ見ぬニンジャたちよ。今から俺が、お前たちの死神となる」

レオパルドとトビカゲ・ニンジャのシルエットが重なる。
ソウルなきハイ・テック・ロボ・ニンジャの内に、決意を秘めたニンジャが自身をソウルと化して宿る。

さあ……イクサの始まりだ。


413 : レオパルド&アサシン ◆DvmU9SJm.Q :2015/03/03(火) 01:19:47 YTg96KtA0

【クラス】
 アサシン
【真名】
 飛影@忍者戦士飛影
【パラメーター】
 筋力:D 耐久:D 敏捷:B 魔力:E 幸運:- 宝具:B
 筋力:C 耐久:C 敏捷:A+ 魔力:E 幸運:D (合身時)
【属性】
 なし
【クラススキル】
忍者:A
 同ランクの気配遮断、心眼(真)を複合するスキル。膨大な戦闘経験と情報演算によって危険を予測する。
【保有スキル】
投擲(手裏剣):A+
 手裏剣を弾丸として放つ能力。
仕切り直し:C
 戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
【宝具】
『飛影見参』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 マスターを粒子にまで分解し、自身と合一させる宝具。
 ソウルなき機械忍者であるアサシンは、マスターという生きたソウルと魔力の直接供給を得て本来の力を発揮する。
 宝具を開放したとき、マスターのニューロンは飛影自身の演算回路と直結される。
 マスターの思考速度、反射神経を超絶的に強化し、飛影を己の手足のように操れるのである。
 完全にマスターの意志で力を振るえる反面、肉体に掛かる負担も大きい。常人では数度の使用で死に至るだろう。
『分身殺法(リアル・ブンシン・ジツ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ: 最大捕捉:5人
 自分の分身を生み出し(最大で5体)、それぞれ別の個体として自由に操作・機動させる宝具。
 生み出される分身はアサシン本体と完全に同一の能力・武装を持っている。
 宝具発動中は本体と分身の区別は曖昧となる。破壊されたとしても、一体でも残っていればその個体が最終的に本体として判定され、ダメージを無効化する。
【weapon】
以下の武装はアサシン自身がかなり小型のロボ・ニンジャのため、人間でも無理をすれば持てなくはない。
 バトルショットブレード 刀の鞘の役目もある実弾銃。刀は反りの少ない忍者刀。
 サンダーアローガン 光線を発射する弓型の銃。
 マキビシランチャー 大腿部に内蔵された非人道兵器。本来は地面に撒いて使うものであるが、飛影は豪快に射出する。
 手裏剣 手裏剣。残弾は無限。
 鎖分銅 腕部に内蔵されている。敵を絡め取ったり、ロープ代わりにも使える。
【人物背景】
 かつて地球を訪れたラドリオ星人が、連れ去った忍者達の能力と姿を模して作った自律機動兵器。
 戦艦エルシャンクの危機に突如現れ、圧倒的な戦闘力で敵を駆逐する。
 初期は無人で暴れまわっていたが、終盤は地球人ジョウ・マヤと合身し、彼の操縦(=融合)で戦うようになる。


【マスター】
 レオパルド@ニンジャスレイヤー
【マスターの願い】
 無敵のニンジャ、そして世界の王になる 
【weapon】
 ダイヤモンドチタン製の爪
【能力・技能】
 常人の三倍近い脚力
【人物背景】
◆忍◆ ニンジャ名鑑#103 【レオパルド】 ◆殺◆
 ソウカイヤの末端ニンジャ。ニンジャソウルの憑依から日が浅く、甘さが目立つ。
 常人離れした脚力と両手に装備したクロー以外に、これといった特徴は無い。
 トイの外見は、バンディットを素体にクローを足しただけという挑発的な内容であった。


414 : 名無しさん :2015/03/03(火) 01:20:31 YTg96KtA0
投下終了です


415 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/03(火) 02:46:02 6JYcrupg0
>>280
やはりみさえは肝っ玉の大きい母親ですね。
聖杯戦争に巻き込まれようとも、母親である以上子供には絶対に手を出さない。
いい女としか言いようがなく、ギーグを導いてくれる安心感があります。

>>290
クレイジーサイコレズの柩さんだァ!独占欲が強くて、ちょっとでも千足さんに少しでも色目を使ったら毒をついつい盛っちゃう柩さんだァ!
そんな柩さんを魅了するオディナさんは一回黒子をぶっこ抜くべきだと思うよ。
どっちにしろ、彼女に惚れられてきゃっはうふふなまま終わる訳がないんだよなあ。

>>298
偽りといえども、妹を手にかけるウェカピポの覚悟と真っ直ぐさは思わず惚れてしまいそうですね。
ささやかな願いであろうとも、ウェカピポからするとそれは何よりも大切なものである。
セリフ回しと言い、節々からにじみ出る悲嘆を踏み越える覚悟が、一層引き立てていますね。

>>306
地の文から溢れている自分勝手さに、ああミッチだっていう安心感を覚えますね。
やっぱり、色々と拗らせたミッチは本当に魅力的で素晴らしいクズですね。
しかも、相方もほむらで、信頼なんてする訳ないだろ的な空気がたまりません。

>>316
自ら異能を捨てた者同士、どこか通じるものがあるのでしょうか。
ありのままで日常を過ごし、夢を叶える姿は眩しいですね。
そんな彼女達も他者から見れば、傲慢と思われる可能性があるのは何とも言えません。

>>330
マスターの方が脅威であるコンビは、貴重ですね。
互いに闘いを辞めたいという願いは同じなのに、見ている方向性が反対とは。
心を開いた瞬間、悲劇が起こるコンビでワクワクしますね。

>>339
かっこいいお爺ちゃんだ、かっこいい!
未熟なアルミンをうまくサポートしてくれるだろう頼もしさはやはり年の功なのか。
ピーキーな性能であっても、一撃必殺の打撃はやはり強いし、キレッキレですね。

>>347
仕える者同士、通じるものがあるのでしょうか。
前述のテッドとは違い、見ている方向が違えど不思議と信頼がある。
忠誠感はなくとも、手を取り合える良コンビですね。

>>358
変態コンビじゃないか、変態コンビ!両者趣味に走って、聖杯そっちのけな行動をしそうですね。
両者、共に気持ち悪さが存分に出ていて、素晴らしい。
ちなみに、私は女秘書と裸エプロンなら、裸エプロンの方が好きですね。

>>366
しつこいぐらいゴリ押しされる「本来は武器ではない」に草。
海馬のブルーアイズじゃないと心が躍らない姿勢、一途ですね。
過去ではなく失われた未来を望む海馬が、すごくらしくて面白かったです。

>>374
トライガンだ、すごいトライガンの雰囲気がある!
何故か、ニコ兄の方が強そうだし、世話を焼きそうだ!
そんで、最終的にはボロボロで死にかけのニコ兄を両手を広げて庇う電ちゃんが見えるよ!

>>385
渋いコンビですねぇ、ラカム&ガン・フォール。
空繋がりで聖杯戦争日馳せ参じて、想いも空で繋がっている。
奇跡に頼らずとも、願いを叶えてみせる気概はやはり強い。

>>395
小物臭がとてつもないマルフォイのお家芸、大爆笑。
中ボス感が激しいこのコンビの明日が見えない。
策略を張り巡らしすぎて、逆に転げそうで辛い。

>>401
やり直したいを願う董香の苛烈さが素晴らしい。
そして、全てを失った少女二人が手を組んで戦いに潜り込む悲嘆が切ない。
スキルの信頼もユニークで、色々と活用できそうですね。


>>409
忍者コンビはやはりロマンがありますね。
ただ、レオパルドの器の小ささが見えて、すぐやられそうなのが涙を禁じえません。
精神面でも乗ればトントンいけそうだけど、またカイシャクされる未来が見える……。


では、投下します。


416 : 神楽坂明日菜&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/03(火) 02:49:21 6JYcrupg0
                              





最後に見た景色は、あのバカが泣きそうな顔で手を伸ばした姿だった。













「タイムリミットはもうとっくに越えたはずなんだけど」

神楽坂明日菜は死んだはずだった。
救いの手を伸ばすことを良しとせず、【契約】の死神に鎌を振られる。
奪われた魂は二度と戻ってこない。力の抜けた身体に生命はなく、ぐったりと崩れ落ちた。
後悔がない、とは言わない。
だが、どうしようもない現実であると諦めていた。
流した涙も、零しかけた弱音も。
全ては死へと還っていく。

「ふざけんじゃ、ないわよ。何が聖杯戦争よ……!」

助けなんて求めてないのに。やり直すチャンスが勝手に舞い込んできてしまった。
それも、他者を排することでしか未来がないと御題目をつけて、彼女に迫る。
勇気ある選択を。踏み躙るか、それとも――。

「自分が生きたいからって、誰かを殺す……そんなの、できるはずがないじゃない!」

決まりきった選択肢だった。
こんな聖杯戦争など認めない。誰かを殺してまで掴む価値が、自分にあるとは到底思えない。
ぎゅっと握りしめた掌は血が滲み、食いしばった口元には鈍い痛みが迸る。

――本当に?

それは、心からの答えと確信して言えるのか。
明日菜には帰るべき日常がある。待っている人達がいる。
取り戻したいと、やり直したいと全く思っていない訳がない、
されど、その選択を取ることは、どこまでも深い闇へと堕ちていくことを意味するのだ。
我欲を叶える為に、他の全ての生命を刈り取ってでも、会いたいって感じたからこそ、この世界へと誘われたのではないのか。

「もっとも、此処ではそんな理屈は通用しないがネ」
「超さん……」

明日菜の言葉に対して、苦笑を以って答えるのは彼女が呼び出したサーヴァント。
視線の先には生前のクラスメイトだった超鈴音が、薄ら笑いを浮かべ、立っている。

「ふむ。聞いた話では、私のいた世界とは幾分違うが、明日菜サンの根源は変わりなさそうで安心したヨ」
「うっさい! 何でか知らないけど、超さんがサーヴァントだなんて訳わかんないわよ!」
「まあまあ、座として呼ばれたことには文句を言えない身ヨ。こればっかりは私にもどうすることもできない故、許して欲しいネ」

猛り狂う明日菜とは違い、鈴音は全くの揺らぎなく、両の瞳に意志を灯している。
今、何をすべきか。切り捨てるものと切り捨てられないもの。
彼女はそれを嫌という程理解させられる世界で戦ってきたのだから。


417 : 神楽坂明日菜&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/03(火) 02:49:40 6JYcrupg0

「ま、明日菜サンがどう振る舞おうと、私がやるべきことは唯一つ。
 聖杯を取る、そして願いを叶える。抵抗もせずに、みすみす死ぬ馬鹿ではないからネ」

迷いなどない。そんな時間すら、世界は与えてくれなかった。

「おっと、令呪で従わせるならやめた方がいい。明日菜サンのような参加者だけならまだしも、乗り気の人達もいるに違いないからネ。
 戦うな、なんて命令されたら明日菜サンを護ることもできなくなってしまう」
「っ……!」

迷える時間があるだけ、選べる選択肢があるだけ、明日菜は幸せだ。
自分には何もなかった。確定されている悲劇を変えるには、奇跡を呼び起こすしかなかった。
それこそ、過去に渡航し、未来を変えることぐらい――しなければ。

「思いを通すは、いつも力ある者のみ。正義だろうが悪だろうがネ。いつの日か、ネギ坊主にも言ったことがある言葉ヨ」

何度でも繰り返す。本懐を遂げ、世界に裁かれる身になろうとも、それまでの過程は絶対に譲れなかった。
狂気と言われようが、悪と言われようが、構わない。
最後まで貫き通した信念に、偽りはないのだから。

「まあ、まだ時間はある。それまでに決めるといい。ただ、選べないなら無様に死ぬだけだってことは頭に入れておいて欲しい」

奇跡に縋ることでしか、変えられないならば――進むしかない。
だって、鈴音に懸けられた想いは比類なんてないぐらい、強いものだ。
十の内、十を救う。それができたらどれだけよかったことだろうか。

「それと、もう一つ。与えられたチャンスを自ら捨てるのは、願いを叶えたいと恋焦がれる人達から考えると……残酷だヨ。
 明日菜サンの殺したくないって想いも、彼らと変わらず一つのエゴなのだからネ」

世界に怒りと悲しみもなく、平和であったら――きっと。
十の内、一を斬り捨てることなんてなかっただろうに。








       





遠い、遠い過去の夢。
燃え盛る炎、崩れ落ちる建物。
消し炭となった死体に、異形の怪物。
逃げて、逃げて、逃げて。
涙は炎に溶けて、怒号と悲鳴が耳を突き抜ける。
助けを求める自分がいた。恐怖に染まった表情で、手を伸ばす自分がいた。
伸ばした結果、誰かが犠牲になることも知らずに、夢中で叫ぶ。

生きたい、と。

それが、神楽坂明日菜の原点だった。


418 : 神楽坂明日菜&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/03(火) 02:51:21 6JYcrupg0
【クラス】
キャスター

【真名】
超鈴音@魔法先生ネギま!(漫画版)

【パラメータ】
筋力D 耐久E 敏捷B 魔力A 幸運B 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:B
自らにとって有利な陣地を作り上げる。
キャスターは緻密な準備により、

道具作成:B
魔力を帯びた道具を作成する技能。
主にロボットなど、機会技術系に長けている。

【保有スキル】

呪文処理:C
彼女の身体に刻まれた特殊な術式。
この刻印を解放することで、強大な魔法を使用することができるが、その代償に肉体、魂に多大な影響を与える。

中国武術:C
天才と呼ばれたネギ・スプリングフィールドとも渡り合える程の腕前。
一流とまではいかないが、それに追随するだろう。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターンに戻し,技の条件を初期値に戻す。


【宝具】

『ステルス迷彩付きコート』
ランクD 種別:対人宝具 レンジ:1~40 最大捕捉:1人
自らの身体を秘匿するステルス迷彩が懸けられたコート。
気配遮断のスキルを付与するが、あまり強い効果はない。

『時空跳躍弾』
ランクC 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1人
対象に撃ちこむことで数時間後へと飛ばす強力な弾丸。殺傷能力はない。
しかし、使用には潤沢な魔力が必要である為、聖杯戦争の枠組みで乱用は当然できない。

『航空時機(カシオペア)』
ランクEX 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:9人
過去、未来、世界すらも越えることができる超鈴音の技術と魔法が合わさった最高傑作の懐中時計。
擬似時間停止、時間ターン回避行動といった時を操ることができる。
これを使うことで何度でも【やり直す】ことができるが、その魔力消費は絶大である。
現状では令呪を消費しても、到底その効果を十全に発揮することはできない。
だが、逆に言ってしまえば膨大な魔力があれば使うことができるということだ。
それこそ、聖杯のような【奇跡】を以ってさえすれば――。


【weapon】
徒手空拳。

【人物背景】
主人公であるネギが受け持つ3-Aの生徒。勉強・スポーツ・お料理何でもござれの完璧超人。
その正体は、未来から歴史を変えるためにやってきた時空航行者。
世界に満ちた悲劇を変える為に、秘匿されている【魔法】をばらすことで救えない人達を救うことが目的。

【サーヴァントの願い】
歴史改変による世界平和。未来に起こる悲劇を変革する。

【マスター】
神楽坂明日菜@魔法先生ネギま!(TVアニメ第一期)

【マスターとしての願い】
生きたい。

【weapon】
パクティオーカード『ハマノツルギ』…アデアットと唱えることで召喚される剣……のはずが、何故かスチール製のハリセンとして顕現している。
                  もっとも、刀と打ち合えるぐらいには硬いので武器としては十分。
【能力・技能】

運動神経抜群、ある程度の戦闘経験があり。

魔力完全無効化能力…その名の通り、魔術を無効化する能力。
          子供の頃、自己の身を護る為に、悪魔と契約したことで生まれた。
          だが、空間系の魔法など、一部の魔法は防げないといった欠点もある。

魔を呼び寄せる体質…彼女は本来、魔物を呼び寄せやすい体質であり、子供の頃から各地を転々としていた。
          当然、助けてくれる大人はいたが、自分の代わりに死んでいく。
          そんな、彼女のトラウマの元凶である。現在は、上記の魔力完全無効化能力によって沈静化している。

【人物背景】
ネギ(主人公)の着任初日にネギが魔法使いであることを知ってしまった少女。
明朗闊達な少女だったが、幼少の頃に交わした悪魔との契約により、十四歳の誕生日に命を奪われる。


【方針】
自分のエゴで、人を殺すことに強い拒否感。けれど、願いを完全に捨て去ることはできない。


419 : 神楽坂明日菜&キャスター ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/03(火) 02:51:35 6JYcrupg0
投下終了です。


420 : ◆lhINMdXOes :2015/03/03(火) 16:47:09 LTE7CLh60
国崎往人&アーチャーを投下します


421 : 国崎往人&アーチャー ◆lhINMdXOes :2015/03/03(火) 16:48:28 LTE7CLh60
 
 青年は旅の人。行く当てもなくただ足が向くまま気の向くままたびを続けていた。
 旅の道連れは一つの人形。母の形見の古ぼけた人形。
 彼は「大道芸」と評して手を使わずとも人形を動かして身銭を稼いできた。

 ひとえに空の少女を探すために――


 青年は旅の途中とある海辺の街でひとりの少女と出会った。
 笑顔が印象的な少し風変わりの少女。
 そして学校ではひとりぼっちの少女。

 いつしか青年は少女に心惹かれていてゆく。
 しかし運命は過酷な世界を青年と少女に突き付ける。

 日に日に衰弱してゆく少女。
 母親役の女は衰弱する娘を置いてどこかに行ってしまっていた。
 青年も衰弱の原因が自分にあると知り、街を離れようとしていた。

 ひとりぼっちになった少女。
 衰弱した身体で過ごす夜はどれほどの絶望だっただろうか。

 だが――彼は戻ってきた。

「もうどこにもいかない。おまえと一緒にいておまえを笑わせ続ける。そうすることにしたんだ」

 青年は少女の名を呼び静かに眠る少女の肩を揺する。
 静かに少女の目が開かれる。

「観鈴、わかるか。俺だ」
「往人さん……」

 青年は一生懸命人形を動かして少女を笑わそうとする。

 とてとて歩く人形。
 宙返りをする人形。

 どれも彼女の笑顔を見るために精一杯の人形芸だった。

 しかしもはや彼女の目は再び開けられることはなかった
 青年は力なく横たわる少女の元を離れることはなかった。

 ――もう一度。

 ――もう一度だけやり直せるのなら。


 


 ◆     ◆      ◆





「それが貴様の願いか? 国崎往人、いや我がマスター」


422 : 国崎往人&アーチャー ◆lhINMdXOes :2015/03/03(火) 16:49:37 LTE7CLh60
 
 項垂れる青年――国崎往人に長身に女がそう語りかける。
 浅黒い肌をした長身の眼鏡の女、セーラー服にしてはいささか水兵服寄りの衣装を纏い、その豊満な胸には白いサラシが巻き付けられている。

「ああ……そうだ。俺はやり直したい。もう一度観鈴と……! お前となら勝てるんだな……お前は世界最強の戦艦だったんだろ?」
 
 世界最強の戦艦という言葉に女は遠い目をし、苦笑する。

「フッ、世界最強か。ただの無用の長物だったのかもしれんぞ? だがこの戦艦武蔵、マスターの望みを叶えるべく聖杯戦争に挑もうぞ」
「……アーチャーは聖杯にかける願いはあるのか? やはりあの戦争に勝つことだったりするのか」

 往人の言葉にアーチャーは一瞬面食らったような表情になりそして大きく笑う。

「ハッハッハ! すでに勝負の決まった戦を覆そうなど武人としての誇りに反する。それだけはないな。
 マスターよ、私はすでに望みは叶っている。兵器として生まれ、戦場で武人として華々しく散った。勝利の美酒を味わいたいのは当然だが戦って果ててこそ武人の本懐。
 それにな……私のようなものは活躍してはならんのだ。我らの敗北が巡り巡って今の貴様の生まれとなった。そうだろう?」
「ああ、そうだな……」
「ただ敢えて望みを言うとなら――私に乗艦し、私と共に海に沈んだ将兵達の鎮魂だな。私だけが人の形と心を与えられ英霊として生きながらえているのは散った将兵たちに申し訳がたたん」
「そう……だな」
「だからこそ我が力を求める者の手となり砲となろう。いけるなマスター。お前の望みを叶えるため存分に我が力を使え」
「ああ……!」


「良い返事だ。大和型二番艦、武蔵、参る!」


 蘇った残骸は一人の少女のために全てを賭けた青年に力を貸すと誓った。


423 : 国崎往人&アーチャー ◆lhINMdXOes :2015/03/03(火) 16:50:31 LTE7CLh60

 

【クラス】
アーチャー

【真名】
武蔵@艦隊これくしょん

【パラメーター】
筋力A 耐久A+++ 敏捷E 魔力E+ 幸運D- 宝具C+

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:E+
 近代の軍艦ゆえ最低限の対魔力しか保有していないが、大和型ゆえの神秘度補正により他の軍艦より若干耐性は高い

単独行動:A
 シブヤン海の海戦に武蔵は沈んだが、公式の沈没地点とされている場所に武蔵の船体は見つからなかった。
 一説によると未浸水区画も多く残したまま沈んだ武蔵は沈降中浮力と自重が釣り合い、海底に着底することなく今もなお世界中の海を彷徨っている――
 そんな都市伝説により、マスターがいなくても現界を可能とする(2015/3/2 武蔵発見)

【保有スキル】
水上戦闘:A
 世界最強の戦艦として水上戦闘に対して大幅にステータスの上方修正が加わる。

浮沈艦武蔵:A
 爆弾44発、ロケット弾9発、魚雷25発(米軍記録)の直撃を受けてもなお五時間以上航行を続けた逸話により
 致命的な傷を受けても戦闘を可能とし、決定的な一撃を加えられない限り生き延びる。

武蔵体操学校:B
 当時海軍は機械化と配属部署ごとに決まった作業しないことによる筋肉使用の
 偏りから来る低下を防止するための海軍体操というものを実施していた。
 武蔵の場合初代艦長である有馬大佐がこの海軍体操に熱心だったことによる異名である。
 それらの理由によりマスターは疲労が増すものの身体能力が強化される。が、サーヴァントと生身で戦えるぐらいの強化されるわけではないので注意。

【宝具】
『46cm三連装砲』
ランクC+ 種別:対軍宝具 レンジ:50〜300 最大捕捉:1000
大和型に搭載された世界最大の主砲。その三基による一斉射は都市区画ごと対象を粉砕する。
欠点として魔力消費が大きいのと近距離ではうまく撃つことができない。
用途によって砲弾を徹甲弾や対空用の三式弾へと換装できる。
零式水上観測機との併用による弾着観測射撃で高命中、高威力の砲撃を行うことができる。

『零式水上観測機』
ランクE 種別:対軍宝具 レンジ:1〜500 最大捕捉:5
観測機を飛ばせる状況(制空権を取れている)では弾着観測射撃を行うことができる。
偵察機ではあるが最低限の空戦能力も有しているが、これをメイン武装と使うには心もとない。

『15.5cm三連装副砲』
ランクD 種別:対軍宝具 レンジ:10〜50 最大捕捉:10
武蔵に搭載されている副砲、魔力消費が少なめなのが強み


【人物背景】
世界最大の戦艦大和、その二番艦であるのだが大和と比べると若干地味な印象。二番艦ゆえの宿命だろうか。
艦これでは姉の大和が正統派な大和撫子然とした姿に対して武蔵は褐色獣耳風ツインテ眼鏡でワイルドな風貌という属性てんこもり。どうしてこうなった。
姉の大和同様、その消費資源は莫大で演習番長呼ばわりされることもあるが、いざ強力なボス相手には大和型らしい攻撃力と防御力を遺憾なく発揮できるだろう

【サーヴァントとしての願い】
自分と共に海に散った将兵たちへの鎮魂


【マスター】
国崎往人@AIR

【マスターとしての願い】
もう一度全てをやり直して観鈴と暮らしたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
日本中を旅して回っていたので一般成人男性よりは身体能力が高いと思われる

・法術
手に触れずとも物を動かす力。人形以外にも軽い物なら自由に動かせる。


【人物背景】
ご存じ国崎最高。もといはぐれ人形使い純情派。Key主人公いちのイケメンでもある。
黙っていれば相当クールなイケメンであるがどこか芸人体質なのでやや残念キャラのきらいがある。
原作ではいろいろと不遇な境遇、往人と観鈴ちんが平和に暮らせる世界線を見たかった。
なお参戦時期はDream編のラストから

【方針】
観鈴のために手段は選ばない。ただし武蔵による魔力消費が大きいため誰かと組む場合もある


424 : ◆lhINMdXOes :2015/03/03(火) 16:51:11 LTE7CLh60
投下終了しました


425 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:29:49 qXvpTrXY0
投下いたします。


426 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:30:54 qXvpTrXY0

「まったくよぉ……どうしてこうなったんだか」


ウィスキーグラスに積み重ねられた氷の段が、カタンと音を立てて静かに崩れる。
薄暗い、微かな白色光のみが内部を照らす小さな街角のバー。
そのカウンターに肘をつき、真紅のジャケットに身を纏う男―――ルパン三世は、ため息をついた。
事の発端は、とある伝手より得たお宝の情報にあった。





◇◆◇





―――『聖杯』と呼ばれる、手にした者の願いを何でも叶えるという宝がある。



あまりにも胡散臭く、しかしそれでいて興味が引かれる内容ではあった。
望みを自在に叶える願望器……それも古今東西で神秘の代名詞とされる『聖杯』の名前ときたものだ。
ルパンの心を動かすには、そのインパクトは十分すぎた。



それが本当にあるなら、大したものだ。

果たして本当に望みが叶うかはどうあれ、ロマン溢れるこの代物を是非とも盗み出してみたい。

それ相応の守りがあるであろう一品を、鮮やかに盗み出してみようじゃないか。


427 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:31:33 qXvpTrXY0
そんないつもと変わらぬ軽い気持ちから、怪盗としての美学から、ルパンは聖杯についての情報を探っていた。
だが……捜索を始めてから数日後、その異変は起きた。

彼は調査の結果、日本のある場所に聖杯へと繋がる重要な何かがあるという情報を得た。
その土地の名は、冬木という街であった。
耳にしたことのない名前ではあるが、手がかりを掴んだ以上は行動せずにはいられない。


お宝のため、ルパンは早速その街に足を運ぶ事にした……そこまでは、良かったのだが。



―――おいルパン、どうした!?


頼れる仲間と共に冬木の街へと踏み入れた途端、ルパンは急激に己の意識が薄れてゆくのを感じた。
それまではどうにもなかったのに、不意に凄まじい眠気に襲われたのだ。
膝をつき崩れ落ちる彼の身を案じ、仲間達が駆け寄りその身を支える。


―――やべぇぜ、次元、五右衛門……何か急に眠く……


―――ぬぅ……罠のたぐいか?しかし、拙者達にはなにも……


不思議な事に、その眠気に襲われたのはルパン一人だけであり仲間は無事であった。
催眠ガスの類であるならば、彼等もまた道連れにされている筈だ。
つまりこれは、ルパン三世ただ一人を狙った攻撃……否、攻撃とすらも判断出来かねない兎に角危険な何かだ。



―――逃げろ、こいつは何か嫌な予感が……!



この場に留まり続けていてはいけない。
得体の知れぬ危険を察知し、ルパンは仲間達に撤退の意を示し……


そこで、ルパンの意識は完全に途絶えた。


428 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:32:08 qXvpTrXY0





◇◆◇



「……聖杯戦争なぁ」


そして目が覚めた時、ルパンはこの冬木の街にただ一人佇んでいた。
より正確に言えば、あくまで冬木と呼ばれている土地にいた訳であり、ここが本当にルパンの目指していた冬木なのかは怪しかった。
傍らにいた仲間達の姿はどこにも見えず、連絡も通じない。
兎に角厄介な状況としか言えなかった。
この様な窮地自体ははじめてではないのだが、だからといって簡単に乗り越えられるかといえば答えはノーだ。
状況を把握しようにも情報は何もなく、どう動けばいいのか悩む有様だったのだが……


「中々、悪趣味なゲームだって言いたいんだろ?」


そんな彼に助け舟を出したのが、目が覚めてすぐ側に立っていたこの男。
今は隣に座り、静かにウィスキーグラスを飲む長身の男性―――アーチャーのサーヴァントだ。
彼は警戒していたルパンに、己の知りうる全てを話した。


これは、聖杯を手に入れる為の戦い―――聖杯戦争であること。

ルパンは聖杯戦争を戦い抜くマスターに選ばれたこと。

そして、自身がルパンのサーヴァントであることを。


「そりゃそうだ。
 聖杯をいただこうにも、他の連中と殺し合いをしろってんじゃ乗り気にもなれねぇよ。
 まして俺みたいに、その内容さえ知らないで参加させられた連中もいるってんなら、尚更さ」


幸いにもアーチャーに敵意が無い事が分かったのか、ルパンはその話を友好的に聞いていた。
そして話が終わった時、この聖杯戦争とやらの仕組みに心底毒づいた。
万能の願望器なんてお宝が簡単に手に入らないだろう自体は予想していた。


429 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:32:47 qXvpTrXY0
例えばこれが、数多くのトラップや夥しい警護兵に守られており、命すらも落としかねない物だというのなら分かる。
その入手にしくじり命が果てるという展開になったとしても、それは己の未熟さ故であり文句は言えないだろう。

だが、まさか殺し合いをして生き残った者勝ちだなんて仕組みになっているとは、幾らなんでも想定外だ。
それも……殺し合いをすると分かってもいない者を了承もなく無理やり参加者として組み込むとあれば、不快に思わない方がおかしい。
悪趣味な思考の持ち主とは今までにも幾度となく対峙してきたが、この仕打ちはその中でも最上級だ。
その思惑通りに動かされるなど、まっぴらゴメンである。


「同感だな……俺も何でこんな場所に呼び出されたのかは分からないが、犯罪の片棒を担ぐ依頼はごめんだ。
 それに元々、男からの依頼は本来お断り……泥棒相手じゃ尚のことだ。
 やっぱ依頼人は美人に限るよ」


そんなルパンの主張に対し、意外にもアーチャーは肯定の意を示していた。
気軽な、聖杯戦争に呼び出されたサーヴァントとは思えない態度だ。


「へっ、俺だってどうせなら相棒は美人のお姉さんが良かったよ。
 誰が好き好んで、お前さんみたいなまるで英霊って柄にも見えねぇ男と組むなんかっての」


だが、このアーチャーがサーヴァントらしからぬ点はその態度だけではなかった。
その見た目もまた、青いジャケットに赤色のシャツ、紺のジーンズと、どこにでもいる様なカジュアルな服装である。
現代的すぎるその様相は、ルパンの言う通り歴史に名を残す英霊とはとてもじゃないが思えない。

しかし……そう口にはしながらも、ルパンは逆にこのサーヴァントが歴戦の猛者であろうことを見抜いていた。
こうして互いに軽口を叩き合い酒を酌み交わしながらも、この男にはまるで隙が見受けられない。
いつ襲われたにしても即座に反応できるに違いない。
何より彼から感じられる、隠しても隠しきれないプロとしての風格。
恐らくは、相棒の次元大介と同じタイプの人間であり……そして彼の更に上をいくであろう存在だ。


「……たしかに、俺は英霊なんて柄じゃない。
 世界を救うなんざ大層な事は何もしちゃいない……
 小さな都会の一角で、日々依頼人の為にただ働いてただけの男さ」

「……ま、それが救いになった連中もいるってこったろ。
 英雄なんてのは定義が曖昧だし、捉え方も人其々だ……アーチャー。
 お前、本当に願いはないのかよ?」


430 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:33:15 qXvpTrXY0

再度、ルパンは己がサーヴァントに問いかける。
自分と同じくこの聖杯戦争によからぬ思いを抱いてくれている事はありがたいが、彼とて召喚された英霊だ。
本当は、何かしら願いがあって然るべきではないのか。
そんな疑問を、どうしてもルパンは抱かざるを得なかった。


「……願い、か。
 そうだな……はっきり言うと、無いと言えば嘘にはなる。
 出来ることならって願ったことは、何度もあったさ」


その問いに、しばしの間を置いてから静かにアーチャーは答えた。
彼にも生前、もし叶うならばと願った―――絶対に叶うことのない願いはあった。

もう一度会って、声が聞きたい。
その身を抱きしめてやりたい。
新しい娘も入れて家族三人で過ごせたら、どんなにいいことだろうか。


愛する彼女とまた出会えたら、どんなに喜ばしいことだろうか。



「だが……その為に罪のない命を奪ったりしたら、きっとあいつは俺を許さないだろう。
 本気で泣いて、本気で怒って……悲しむはずだ」


しかし、その願いを叶えるわけにはいかなかった。
聖杯戦争に勝ち残るということは、その過程で罪なき命を奪うことにも繋がりかねないからだ。
そうなればきっと、彼女はアーチャーを許さないだろう。
生前よくふざけ合ったみたいに100tハンマーを振りかざするのではなく、本気で慟哭するだろう。
自分のせいで多くの命を奪ったという事実に、アーチャーにそうさせてしまったという事実に。

彼女の悲しむ姿を見たくはない。
だからこそアーチャーは、その願いを自らの内に封じたのだ。


「……いい女だったんだな、お前の女房は」

「ああ、最高の相棒だったぜ」


愛する女のため。
そのセンチメンタルな答えは、ルパンを納得させるには十分なものだった。
一人の男として、実に共感が持てる……尊敬できる答えだ。


431 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:33:35 qXvpTrXY0

「悪ぃな、アーチャー。
 湿っぽい話させちまってよ」

「気にするな、俺が勝手に話したことだ。
 それによ……可愛い子ちゃん達が参加者にいちゃ、殺すなんてもってのほかだろ?」

「ニヒヒ、そりゃ違いねぇぜ……ま、失礼な事聞いちまったのは事実だ。
 お詫びと言っちゃ何だが、いるか?」

「おう、折角だしもらおうか」


互いにタバコを手に取り、煙を燻らせる。


聖杯戦争。

思うところは色々とあるが、二人の思いに共通している点は一つだ。
他人を殺しあわせて手に入れられる聖杯なんて、きっとロクなものではない。
真っ当な願望器だというのなら、どうしてそんな血生臭い儀式が必要になるのか。
この歪んだゲームには、何かがあるに違いない。
ならば、盤上に立たされた自分達が成すべきことは何か。


「やるぜ、シティーハンター。
 このトンデモゲームがなんなのか、真相を暴いてやろうじゃねぇか」

「勿論だ。
 ろくでもない主催者から是非聖杯を盗み出してくれよ、ルパン三世?」


432 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:34:06 qXvpTrXY0

【クラス】アーチャー

【真名】
 冴羽 獠@エンジェル・ハート


【パラメータ】
 筋力D 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運A+ 宝具C


【属性】
 中立・中庸

【クラス別スキル】
 単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

 対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。


【保有スキル】
 気配察知:C
 気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。
 近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。

 心眼(真):A
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

 千里眼:B+
 視力の良さ。
 遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

【宝具】
『新宿の依頼遂行者(シティーハンター)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1  最大捕捉:10
生前、スイーパーとして幾多の困難をくぐり抜けあらゆる依頼を遂行してきた逸話と、
 その人間離れした強靭な身体能力が由来の宝具。
 戦闘或いはそれに準ずる場に立った際、置かれた状況が困難であり
 対峙する敵が難敵であるとアーチャー及びマスターが認識できた場合、
 その度合いに応じてアーチャーの筋力・耐久・敏捷値及び直感スキルをランクアップさせる。
 この宝具は自動的に発動されるものであるが、あくまで危険な状況と認識できた場合のみであり、
 状況の達成或いは、例えば対戦相手が致命的な傷を負い、
 戦闘続行が限りなく不可能になるなどといったそれに準ずる状況へと
 場が変異した場合には、この宝具は自動的に発動を終了する。

『裏世界を生き抜く技(スイーパー・スキル)』
 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1  最大捕捉:20
生前、スイーパーとして様々な優れたスキル・特にあらゆる銃器の扱いと狙撃に極めて長けていた事に由来する宝具。
 拳銃から狙撃銃までアーチャーが『銃』と認識できた武器を手にした時、その銃器はEランク相当の疑似宝具となる。
 この擬似宝具はアーチャーの手から離れた際に効果を失い、放たれた弾丸もまた運動を静止した際に神秘性を消失する。


433 : ルパン三世&アーチャー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:34:28 qXvpTrXY0

【weapon】
『コルト・パイソン357』
 生前アーチャーが愛用していた4インチのリボルバー拳銃。
 メタル・ジャケット弾を用いる、拳銃としては極めて高い威力を秘めた一品。
 英霊となった事で神秘が付随し、弾丸も魔力がある限り生成が可能になっている。

【人物背景】
 新宿を拠点とし活動する、『シティーハンター』の異名を持つプロのスイーパー。
 普段はどこか明るく能天気な雰囲気を出しており、一見ではどこにでもいそうな軽い男である。
 しかしその実力は一流であり、横に並ぶものはいない程の一流の狙撃スキルをはじめ、
 恐ろしく強靭な肉体と驚くべき瞬発力に跳躍力、極めて高い洞察力を持ち格闘技の技術にも長けている。
 世界中の闇社会ではNo1だろうと噂され、「本気を出せば東京をひとりで壊滅させられる」とまで言われる程の実力者。
 長身で整ったルックスをしており、黙っていればハードボイルドでニヒルな二枚目。
 しかしながら、超がつくほどの女好きであり女性が絡むと三枚目のスケベ根性を丸出しにするため全てを台無しにしている。
 幼少期にゲリラ組織の一員として育ち、超人的な技能はその戦場で身につけてきたものである。
 冴羽獠の名はその時に与えられたものであり、本名ではない。
 ある日、愛するパートナーである香を事故で失ってからは何をするにも空虚で満たされない日々を送っていたが、
 香の心臓を移植されその心を受け継いだ香瑩と出会ってからは、彼女を娘として受け入れ、
 再びシティーハンターとしての活動を再開している。


【サーヴァントとしての願い】
聖杯に捧げる願いはない。
 寧ろ聖杯の本質をマスターと共に疑っており、そのろくでもない本性を暴きたい。
 
【基本戦術、方針、運用法】
 聖杯戦争の主催・聖杯の本質についてとにかく情報を集める。
 進んで戦闘をする気はないが、敵意のある者や危険人物に対して容赦をするつもりはない。
 基本的にはアーチャーのセオリー通り、距離をとっての射撃で相手を倒しきる。
 それと、美人の女性とは是非お近づきになりたい。


【マスター】
ルパン三世@ルパン三世

【マスターとしての願い】
 聖杯に捧げる願いはない。
 そのろくでもない本性を暴き、よからぬ事を企んでいるだろう主催者の元より聖杯を盗み去る。

【weapon】
『ワルサーP38』
ルパンが愛用する拳銃。
 ドイツのカール・ワルサー社が開発した軍用拳銃であり、ルパンが扱うのはac41と呼ばれる1941年に製造されたモデル。
 前方に銃身が伸びた独特の形状をしている。


【能力・技能】
 怪盗として極めて高度な盗みと変装のテクニックを持ち、柔軟かつ軽やかな動きが可能な高い身体能力を持っている。
 また、射撃能力も相棒の次元の影に隠れてこそいるものの、真後ろにいる相手を見もせず撃つなど決して低くはない。
 車はもちろん船や飛行機、潜水艦に至るまであらゆる乗り物の運転技術がある。
 危機的状況においても柔軟に頭を働かせられるだけの余裕を持ち、時には狡猾ともいえる程の知恵をみせる。

【人物背景】
 世界的な大怪盗アルセーヌ・ルパンの孫にして、祖父と同じく卓越した腕を持つ大泥棒。
 明るくおちゃらけてどこか憎めない性格をしているが、抜け目なく頭が切れ、高い観察力を持った大物。
 なかなかの女好きにしてたらしでもある。
 怪盗としては、価値のある宝を盗むよりも盗むことが困難な代物を如何に鮮やかに盗み出すかに生き甲斐を感じている。
 その為、時にはなんの価値もないトイレットペーパーをターゲットにしたこともあり、
 盗んだ宝そのものへの執着もそこまで高くはなかったりする。
 国際指名手配を受ける程の大泥棒ではあるのだが、しかし時には弱い立場の人間を救い悪党に報いを受けさせるなど、
 義賊的な一面を見せることもある。

【方針】
 聖杯戦争の主催・聖杯の本質についてとにかく情報を集める。
 進んで戦闘をする気はないが、敵意のある者や危険人物に対して容赦をするつもりはない。
 それと、美人の女性とは是非お近づきになりたい。


434 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/03(火) 19:35:04 qXvpTrXY0
以上で投下終了です


435 : ◆.maUtDwYFk :2015/03/03(火) 21:13:25 A0X9pEnE0
投下させていただきます


436 : カテジナ・ルース&バーサーカー ◆.maUtDwYFk :2015/03/03(火) 21:14:15 A0X9pEnE0




「岩本虎眼、バーサーカーのサーヴァント……やってくれた喃、『ますたあ』よ」



封建社会の完成形は少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ。



――――失うことから全ては始まる、正気にては大業ならず―――







437 : カテジナ・ルース&バーサーカー ◆.maUtDwYFk :2015/03/03(火) 21:15:40 A0X9pEnE0

カテジナ・ルースという少女は、すでに正気と呼べるものを失っていた。
本来の少女性を失い、激しい負の感情が胸の内を暴れまわっている状態だ。
金色の艶やかな髪も、どこか傷んで見え、目も暗く沈んでいる。
正気であった頃の想い出は、遠い過去どころか別の人間の記憶のような、虚無感を抱いていた。
カテジナは安らげる居場所を求めていただけだったのかもしれない。
本当は、そういった居場所は、崩壊した家庭であって欲しかったのかもしれない。
幸福になりたいと、誰もが願うように願っていただけだった。

「……」

カテジナの背中に、冬風を連想させるような、冷たい悪寒が走った。
理由もなく寂しくなる。
この家には、カテジナだけしか居なかった。
自身の両親は、この家には居ない。
死んでいるわけではない。
父は仕事で、母は男だ。
カテジナにとって、ここは巣ではない。
孤独な邸宅から逃げ出すように、カテジナは自宅の廊下から外を見た。

「あ〜……あぁっ………」

そんな外、つまりカテジナが住む自宅の庭の中に、一人の老人が蹲っていた。
ガリガリと土を食べている。
乱れた総髪を、さらに振り乱している。
おかしなことだが、カテジナにとっては日常へと変化しつつある光景だった。
先日は珍しく寝入ったかと思えばそのまま脱糞し、カテジナが寝付いた頃に布団を抜けだして生肉を食らっていた。
あらゆる奇行は、この老人の頭がおかしくなっていることを意味していた。
カテジナは目を反らし、自室へと向かう。
その姿を見て見ぬふりをする程度の思いやりは、カテジナの中にも残されていた。

「いぐぅ……いぐぅ……」

痴呆症の老人にして虎の異名を持つ剣豪、岩本虎眼。
それが自身が召喚したバーサーカーのサーヴァントであった。
かつて栄光を誇ったであろう英霊も、老齢時ではこのザマだ。
バーサーカー、狂戦士のクラスに施される強化と狂化は老人の痴呆によって無効化されている。
召喚時、カテジナの前に現れた岩本虎眼ははっきりとした状態だった。
カテジナの魂を震わせる恐ろしさがあった。
しかし、泥を食むあいまいな状態の、今の虎眼の姿はそれとは程遠い。
もちろん、そんな状態でもカテジナでは手も足も出ないだろう。
老醜の極みであるあいまいな虎眼を連想し、カテジナは舌打ちを鳴らした。
それでも、深い絶望はなかった。

「……」

カテジナは自室へと踏み入れ、自身の業務机においた『とっくり』を抱え上げるように持った。
とっくりは何の変哲もないそれだが、不可思議な穴があった。
綺麗な円を描く穴ではなく、歪な破壊痕であった。
本来ならば、このような破壊痕は出来ない。
小さな円を書くような破壊を行おうと思えば、とっくりの頭まで壊れてしまうからだ。
神速を持って、最小の打撃を行わなければいけない。
虎眼が行った、虎眼の身体に染み付いた魔技の片鱗。
カテジナは薄く嘲笑い、口を開いた。


438 : カテジナ・ルース&バーサーカー ◆.maUtDwYFk :2015/03/03(火) 21:17:26 A0X9pEnE0



「むーざん……むーざん……」



『むーざん むーざん
 とーらの かーこいもの

 まーしろないぬ ころころ
 "かてじな"に か〜し も〜ろたら
 あ〜かいはな さいた
 むーざん むーざん

 ごふくやのい〜なずけ てくてく
 "かてじな"に な〜まえ よ〜ばれたら
 あ〜かいけ〜さ さいた
 むーざん むーざん

 ぶ〜ぎょしょのか〜みそり ずんずん
 "かてじな"のおおだな たずねたら
 あ〜かいまえだれ さ〜いた

 むーこからくるは"かてじな"
 とーらの かこいもの』


夢の中で見た童歌を、カテジナは狂ったように歌い始める。
外では未だにバーサーカーとなった岩本虎眼が泥をはんでいた。
狂気とは異なる、人間がいずれ迎えてしまうであろう老醜の極みだった。
バーサーカーのサーヴァント。
恐らく、曖昧な状態が長く続くであろうこのサーヴァントでは勝ちの目は薄い。
それでも、カテジナは笑った。
個人の善意を利用した世界の悪意が生む、狂気に侵されていた。
個人によって集団は作られ、集団によって社会は作られる。
しかし、個人とは社会ではないのだ。

「むーざん、むーざん」

意味もわからず、カテジナは笑いながら口ずさみ続けた。


439 : カテジナ・ルース&バーサーカー ◆.maUtDwYFk :2015/03/03(火) 21:18:11 A0X9pEnE0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
岩本虎眼@シグルイ 駿河城御前試合

【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:C 宝具:-

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
狂化:-
岩本虎眼は後述のスキルと狂化スキルと複合している。

【保有スキル】
痴呆:A
曖昧な状態・明瞭な状態・そのどちらでもない戦闘機能が鋭敏化された『魔神』状態がアトランダムに入れ替わる。
曖昧な状態では筋力・耐久・敏捷が1ランクダウンし、知能が大幅に下る。
明瞭な状態では通常のステータスに変更なし、魔人では筋力・耐久・敏捷が1ランクアップする。
明瞭な状態は長く続かず、曖昧な状態が一週間続くことも珍しくはない。
本来持つべき心眼(真)と宗和の心得がこのスキルによって消去されている。

死狂:C
被虐の誉れと同種のスキル。
肉体を魔術的な手法で治療する場合、それに要する魔力の消費量は通常の1/2で済む。
また、魔術の行使が無くても、一定時間経過するごとに傷は自動的に治癒されていく。
老齢時の虎眼と時代を共にする武士は、全てこのスキルを所有している。

【宝具】
『秘剣・星流れ』
ランク:- 種別:対人魔剣 レンジ:1-10 最大捕捉:1人
対人魔剣、厳密には宝具ではない。
六本ある右手指の間に刀を納め、左手の人差し指と中指で刀身を挟みこむように握る。
空間自体を裂くかのような、高速で繰り出される一文字の斬撃は、何人たりとも逃れることが出来ない。

【weapon】
通常の日本刀

【人物背景】
若き日には「濃尾無双」と謳われる剣の達人であり、かの柳生但馬守宗矩と互角以上の勝負を繰り広げた。
また「無双」の看板を掲げる剣術道場を訪れ、無双を名乗ることの許可と剣術の教授という名目と引き換えに、道場破りに及ばずして金品を獲得するという「無双許し虎参り」で路銀を稼いだとされている。

ストーリ上では伊良子清玄の虎眼流への入門儀式の際に初登場するが、老耄が激しく正気を失った曖昧な状態と化して描かれる。
白目をむき指が震えた状態で現れ、一瞬正気となり伊良子の額に付着させた小豆を抜刀で十文字に切り裂いた直後、また曖昧となり失禁している。

時折正気に戻るがその時見せる気性は曖昧の状態とは打って変わって苛烈そのもの。
勝負に勝った相手にでもその内容に不満があれば強い憎悪を抱き続ける。
また嫉妬心も非常に強く、妾のいくが少しでも親しくしたものは容赦なく斬り殺す。
いくが菓子を与えた子犬、いくが声をかけた呉服屋の亭主などは内臓をぶちまけることになったと童歌に謳われている。
また虎眼流道場内で死人が出た場合、真っ先に容疑者として挙げられ、しかも何が彼の逆鱗に触れるのかは古株の高弟にすらわからない。

ひとり娘である三重の結婚相手として、三重を敬っている人物だからという理由で藤木源之助を推挙した高弟(牛股)の口を顎関節まで真剣で切り裂いた。
己の強い「種」を残すことにのみ関心を集中させており、三重が女として生まれたことにも不満を見せている。
そのため三重の心中を思いやる描写はなく、種受けとしか考えていない。
多くの門弟が見守る道場内で、「種」のために伊良子に娘を強姦させようとしたこともある。

【サーヴァントとしての願い】
不明。

【基本戦術、方針、運用法】
虎眼自体が曖昧な状態からでは指示を聞き入れないため、明確な作戦を立てることが出来ない。


440 : カテジナ・ルース&バーサーカー ◆.maUtDwYFk :2015/03/03(火) 21:18:45 A0X9pEnE0

【マスター】
カテジナ・ルース@機動戦士Vガンダム

【マスターとしての願い】
巣を手に入れる

【weapon】
仕込みナイフ、拳銃など。

【能力・技能】
優れたモビルスーツの操縦技能を持つ。

【人物背景】
ポイント・カサレリア近くの街ウーイッグで商店を営むテングラシー・ルースの娘。
家庭を顧みない父、それにかこつけて愛人を作っていた母に幻滅していた。
戦災に巻き込まれ、レジスタンス機関である『リガ・ミリティア』と行動を共にすることになる。
しかし、子供であるウッソ・エヴィンをパイロットにするリガ・ミリティアの大人たちには嫌悪感を抱いていた。

その後、クロノクル・アシャーに人質として誘拐されるも、やがてザンスカール帝国の理念に賛同し、入隊。
尋常ならざる速度でモビルスーツパイロットとして実力を身に付ける。
最終決戦ではゴトラタンに乗り込み、クロノクルの駆るリグ・コンティオと共に、ウッソにとって最後の強敵として立ちはだかった。

小説版ではザンスカールのモビルスーツ操縦研修と並行して、スーパーサイコ研究所により強化人間としての処置を受けている。
テレビシリーズでも、作中トップレベルのパイロットであるウッソやクロノクルに比肩するモビルスーツ操縦技術の短期間での習得、
精神的干渉による会話描写、オールドタイプを見下す発言、ウッソに対する歪んだ執着と嫌悪、手段を選ばない卑劣ぶりなど、
強化人間にみられる情緒不安定性や狂気に近い行動が多くなったことから、強化人間の処置を受けている可能性がある。

【方針】
願いを叶える。


441 : カテジナ・ルース&バーサーカー ◆.maUtDwYFk :2015/03/03(火) 21:19:22 A0X9pEnE0
投下終了です


442 : ◆zhWNl6EmXM :2015/03/03(火) 21:46:34 ssIfqSDM0
皆様投下乙です。
自分も投下します。


443 : 美樹さやか&キャスター ◆zhWNl6EmXM :2015/03/03(火) 21:47:35 ssIfqSDM0




『魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね。
 君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変えることなのさ』



全てを知った少女は、絶望した。
自分は最早人間の身体ではないということを嘆いた。
魂を抜き取られ、肉体のみで動き、その身が朽ちるまで只管に戦う。
まるで、活動する屍人――――――ゾンビのようだと。
少女は、悲しみに暮れた。



『本当の気持ちと向き合えますか?』



親友の言葉が少女の胸の内に響く。
親友は、少女の片思い相手に恋をしていた。
ゾンビである自分が愛される資格なんてない。
抱きしめて貰うことなんて、出来ない。
故に親友が片思いの相手に告白するのを、ただ黙って見過ごすことしか出来なかった。
そうして少女は、初恋を失った。


本当の祈りを見失い。
無我夢中で戦い続け。
もう一人の親友を突き放して。
偶々汚い大人の姿を目の当たりにして。
何を守ろうとしたのかも。
何の為に戦ってきたのかも。
解らないまま。
心と身体は、消耗していった。



『―――――結局あたしは、一体何が大切で、何を守ろうとしてたのか―――――――』



もう何もかも、解らなくなった。
故に少女は――――美樹さやかは、奇跡に祈る。
魔法少女とは違う、もう一つの奇跡に。




何もかも、やり直したい。




◆◆◆


444 : 美樹さやか&キャスター ◆zhWNl6EmXM :2015/03/03(火) 21:48:19 ssIfqSDM0
◆◆◆



「本当に、バカだった」


悔いるように、さやかは呟く。
自らの道を後悔するように。
こうなってしまった運命を悲しむように。


「やっと解ったんだ、あたし」


月光の射す廃ビルにて、さやかは壁に寄りかかるように座り込んでいた。
その表情から感じ取れるのは疲弊。消耗。そして、ある種の悟り。
さやかは、自らの過ちを理解していた。
己の信念が己を蝕んでいたことを、認識していた。

『魔法は自分の為に使うもの』。

あの言葉も今なら解る。
全く持って、その通りだ―――――――と。
自分を省みずに戦い続けた結果がこれだ。
結局の所、自分の行く末にはこんな破滅しかなかったのだろう。
だったら今度は、他人の為ではなく。
自分の為に、戦いたい。
手元に転がるグリーフシードに触れながら、言葉を紡ぎ続ける。


「自分がゾンビだって思っちゃって、恭介に告白も出来なくて。
 自暴自棄になって、何の為に戦ってるのかも解らなくなって。
 最後の最後で、ようやく後悔して―――――――――――――」


懺悔のようにさやかは呟き、グリーフシードを手に取る。
既にソウルジェムの穢れを吸い取り、黒く濁っている。
さやかは魔法を自分の為に使わないと決心していた。
自分が傷付くことも厭わず、自暴自棄同然にグリーフシードの使用を拒み続けていた。

だが、彼女はそれを使った。
自らの運命に後悔をしたさやかは、グリーフシードを使用したのだ
故に彼女は疲弊しながらも魔女化を免れた。
それはさやかが己の理想を捨てたことを意味する。
自分自身の為にグリーフシードを使ったのだから。

この冬木にも、使わずに放置していたものを幾つか持参してきている。
恐らく聖杯戦争の集結までは保つ―――――と、信じたい。


445 : 美樹さやか&キャスター ◆zhWNl6EmXM :2015/03/03(火) 21:48:53 ssIfqSDM0


「だからあたし、こんな運命を、」
「ゾンビって、私への当てつけ?」


言葉を紡いでいた最中、どこか不服そうな声が耳に入る。
さやかは顔を上げ、傍の窓辺に立つ小さな少女の方へと目を向ける。

生気を感じさせぬ程に真っ白の肌。
皮膚の至る所に見受けられる継ぎ接ぎ。
死人の様に濁った瞳。
その外見から連想されるものは、ゾンビ。
死人でありながら活動を続けるリビングデッド。
尤も、そう感じるのも無理は無いだろう。

キャスターのサーヴァント、リタ。
彼女は正真正銘のゾンビなのだから。


「……えっと、ごめん」
「冗談よ。気にしないで」


僅かに表情に影を落としながら、さやかは謝る。
対するキャスターは得に気にする様子も無く、窓辺から無表情のまま夜空を見上げる。
キャスターの血相の悪い白色の肌が月明かりに照らされる。
黒く染まった瞳で、彼女はぼんやりと空を見つめていた。


――――――この子は、何を考えているんだろう。


さやかは己のサーヴァントにそんな感情を抱く。
自分より幼い外見をしているのに、妙に達観してて。
落ち着き払ってるけど、常に無愛想な返事ばかりで。
どことなく、あの暁美ほむらを思い出してしまう。
だから、何となく苦手意識を感じてしまう。
この子が『ゾンビ』であるということも含めて。
自分の身体をゾンビと揶揄したことを思い出してしまう。

でも、この子は自分のサーヴァント――――たった一人の仲間だ。
複雑な気持ちではあるが、協力し合わなければならない。
さやかはそう思い、キャスターに問いかける。


「ねえ、キャスター。聞いておきたいんだけど、あんたの願いって……」
「私の願い?」


キャスターの願い。
これから共に戦う上で、それを知っておきたい。
さやかはそう思ったのだ。
そんな彼女の問いかけに対し、キャスターはほんの少し考え込んだ後。


「別に、大したものでもないわよ」


素っ気なくそう呟く。
現に、キャスターの願いは当人にとってそう重要なものではない。
さやかのような深い渇望があった訳でもない。
此処に来たのも、ただ呼ばれたから。
奇跡を得る手段があったから、願いを叶えたい者がいたから、それに応えただけ。
叶わなくても構わないし、仕方無いと思う。
そんな程度の願い。
それでも、一度だけ奇跡に縋れる機会があるというのならば。



「昔の知り合いと、また会ってみたいってだけ」



キャスターは静かに呟きながら追憶する。
かつて旅を共にした、一人の騎士の姿を脳裏に蘇らせていた。


446 : 美樹さやか&キャスター ◆zhWNl6EmXM :2015/03/03(火) 21:49:33 ssIfqSDM0

【クラス】
キャスター

【真名】
リタ@神撃のバハムート GENESIS

【パラメータ】
筋力E 耐久E++ 敏捷D 魔力B+ 幸運B 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラス別スキル】
陣地作成:D
魔術師として自らに有利な陣地を作り上げる。
当人が不得手である為、作成出来るのは簡素な工房のみに留まる。
陣地内では宝具「夜霧の死霊郷」の効果が強化される。

道具作成:C
魔力を帯びた器具を作成できる。
魔術的な薬の調合に特化している。

【保有スキル】
医術:C
医療に関する技術。
薬物の知識に精通している。
前述の道具作成スキルはこのスキルに基づく技能。

死霊術:E-
魔術師としての技能。死者のゾンビ化を得手とするネクロマンサー。
ただし魔導書の喪失に伴い大半の技能が失われている。
ゾンビとしての能力、後述の宝具等でそれらを補っている。

屍人:A
ゾンビ。首を切り落とされぬ限り活動を続けるリビングデッド。
本来ならば知性無き亡者と化すのだが、リタの場合自我を失わずにゾンビへと転じている。
切り離した肉体の遠隔操作、噛み付きによる他者のゾンビ化などの異能力を持つ。
リタが生み出したゾンビも噛み付きによって同胞を増やすことが可能だが、肉体の遠隔操作は行えない。
ゾンビ達は神秘を帯び、サーヴァントに干渉する能力を得る。

魔力で肉体を構成された霊体であるサーヴァントはゾンビ化出来ない。
魔力パスを持つマスターはゾンビ化にある程度の耐性を持つが、
致命傷を負うか複数回に渡って噛まれ続ければゾンビ化は免れないだろう。
マスターがゾンビ化すれば魔力パスを喪失し、サーヴァントへの魔力供給が不可能になる。

【宝具】
『屍群の先導者(リード・ネクロマンサー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
傘に偽装した髑髏の魔術杖。
本来ならば本能のみでしか行動できないゾンビ達を自在に使役することが可能となる。
使役の精度と能力射程は魔力量に依存する。
死霊術によってゾンビを処分することも出来る。

『夜霧の死霊郷(ミスト・ネブルビル)』
ランク:C 種別:結界宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:-
壊滅した故郷を霧で包み、来訪者に幻覚を見せ続けた逸話の具現。
他者に幻覚を見せる霧の結界を展開する。
幻覚によって周囲の景観を偽ることが出来る他、ゾンビ達を生者に見せかけることさえ可能。
ただし陣地の外では射程と効力が大幅に劣化する。
精神干渉耐性などによって効果の軽減が可能。

【Weapon】
宝具『屍群の先導者』

【人物背景】
ゾンビの少女。無愛想な性格で、幼い外見とは不相応な程に落ち着き払っている。
元々はネブルビルという町に住んでいた町医者の娘。
町は200年前に魔物の襲撃によって滅びており、彼女だけが生還し魔導書によって不老化。
それ以来ネクロマンサーと化し、現在までの200年間に渡ってゾンビ化した住人達を使役してきた。
後に賞金稼ぎであるカイザル・リドファルド、ファバロ・レオーネ一行との交戦によって魔導書を喪失。
両親のゾンビに噛まれ、自我を保ったままゾンビと化す。
以降は自らにとどめを刺さなかったカイザルの旅路に同行し、成り行きで彼の手助けをすることに。

【サーヴァントとしての願い】
カイザル・リドファルドと再会する。
尤も、それほど願いに執着はしていない。
マスターの願いを叶えるついでに叶えたい程度の願い。

【基本戦術・運用】
基本はゾンビ化したNPCによる人海戦術。
ゾンビに他者を噛ませることで爆発的にゾンビを増加させることが出来るが、
使役における負担も大きくなるので適度な人数で制御することが推奨させる。
敵を陣地に引き込むことが出来れば幻覚によって罠に嵌めることも可能。
サーヴァントのゾンビ化が行えず、効果的な攻撃手段も持たない為、基本的にサーヴァント戦には向いていない。
可能な限りマスターを標的にするべし。

【方針】
正面対決を避けつつ勝ち残る。


447 : 美樹さやか&キャスター ◆zhWNl6EmXM :2015/03/03(火) 21:50:03 ssIfqSDM0

【マスター】
美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
魔法少女になってしまった過去をやり直す。

【道具】
『ソウルジェム』
魔法使いに変身する為のアイテム。普段は指輪として装着している。
その正体は物質化した魔法少女の魂そのもの。
ソウルジェムを破壊された魔法少女は魂を失い、死亡する。
また、ソウルジェムが肉体から100m以上離れることで仮死状態に陥る。
魔法を使うごとに穢れが溜まり、穢れが頂点に達することで魔法少女は魔女に転じる。

『グリーフシード』
魔女を倒すことで得られる道具。
ソウルジェムの穢れを移し替えることが出来る。
ただし一定以上の穢れを吸うと魔女が生まれてしまう。
さやかは魔女から回収したまま使わなかったものを幾つか持ち込んでいる。

【能力・技能】
魔法少女としての能力。
剣術による白兵戦を得意とする。
素質は高いが身体能力頼りの戦いが目立ち、戦闘技術は未熟である。
癒しの祈りで魔法少女になった為、治癒能力はずば抜けて高い。

【人物背景】
見滝原中学校に通う中学二年生。鹿目まどかとは親友同士。
明るく元気で活発な性格だが、思い込みの激しい一面も。
入院中のバイオリニストである上条恭介は幼馴染みであり片思い相手。
巴マミとの出会いで魔法少女に憧れる様になり、マミの死後に自らも魔法少女になる。
ソウルジェムに込められた願いは「現代の医学では治せない恭介の手を治すこと」。
当初は正義の魔法少女として活動し、利己的な暁美ほむらや佐倉杏子に強い反発を抱いていた。
しかし後に魔法少女の真実が明かされ、更に親友の志築仁美に恭介への想いを告白されてしまう。
ショックと失恋によって心身を疲弊させたさやかは、己を省みぬまま自暴自棄の戦いを続けてしまう。

穢れを限界まで蓄積させ、自らの運命に後悔したさやかは『やり直し』を願った。

【方針】
勝ち残る。
キャスターとは出来る限り協調する。


448 : 名無しさん :2015/03/03(火) 21:50:24 ssIfqSDM0
投下終了です。


449 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:18:59 9jZS3Wl60
皆様、投下乙です。
私もアドラー&U-511で投下します


450 : アドラー&アサシン ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:20:52 9jZS3Wl60
秘密結社ゲセルシャフトに最深部にて2人の男が睨み合っていた。
何に使うか分からない巨大な機械が作動しているが、この2人が争ったのだろうか、電気で焼け焦げた跡が点在している。
1人は勝ち誇った笑みを浮かべながらもう1人を見下ろす。
もう1人はこの男に敗北したのだろう、仰向けに倒れており、口から血を流している。

「グハァッ!ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
「貴様のクローンは全て処分しておいた。転生の器はもう無い。安らかに眠れ」
「どうかな…アドラー…お前も……」

直後、アドラーと呼ばれた男は強烈な脱力感に襲われ、そのまま崩れ落ちた。

「バカな…これほどまで…消耗する…とは……」

アドラーの使う電光機関は生体エネルギーを消費して無尽蔵の電力を生み出す特殊機関。
ゆえに、使い続けると死んでしまう。
今までそれを使い続けてきたアドラーの体も、限界に達したのだ。
アドラーはそのまま、目の前にいるムラクモという男と共に死を迎える………ことはなかった。

「――とでも言うと思ったか?全て計算済みだっ!」

膝をつきながらも、再び勝ち誇った笑みを浮かべるアドラー。
別の肉体に魂を移し変える転生の法。アドラーは既にそれを自らの手に収めていた。
今、アドラーの肉体が滅びようとも、他人の体を乗っ取り再びアドラーとして「やり直す」ことができる。

「俺は…転生し…偉大なる遺産を…継承す…る…」

邪魔だった組織の支配者・ムラクモを始末し、転生して古代都市「アガルタ」の超科学技術を我が物にできる。
最期までそのおぞましい笑みが崩れることはなかった。


◆ ◆ ◆


451 : アドラー&アサシン ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:22:15 9jZS3Wl60
深夜。冬木市某所――。

そこには豪邸があった。
それは中々に大きく、見たものは誰もが「この家の所有者は金持ちだ」と思うであろう。
その所有者の名はエルンスト・フォン・アドラー。
この偽の冬木に呼ばれ、サーヴァントのマスターとなった参加者である。
髪からは色が抜け落ちており、異様に白い。実際の年よりも一段と老けて見える。
アドラーは富豪らしく優雅なバスローブを見に纏いながら、電話の向こうにいる者と話していた。

「――すまないな、こんな夜中に。突然で申し訳ないが、軽油と鋼材をある分は全て調達したい」

「――大丈夫だ、金は払う。――ああ、恩に着る。――できるだけ早く頼む。そうだな、3日、遅くとも1週間以内には港の方へ輸送してくれ」

ガチャリ、と電話の受話器を置き、近くにあったソファに腰を下ろす。
その表情には口の端を釣り上げた醜悪な笑みがあった。

「ククク…まさかユンカーの地位がこんなところで役に立つとはな!」

誰もいないというのにアドラーは笑い続ける。
アドラーは元々ユンカー(貴族軍人)であったため、聖杯に与えられた地位もそれに準じて貴族といって差支えないものだった。
何よりも大きかったのが、富豪であるゆえに外部とのコネクションが豊富であること。
先ほどのやりとりも、貿易会社の重鎮であるNPCの友人に燃料と鋼材の手配をしてもらうための電話であった。
では、なぜ燃料と鋼材が必要なのか。それはアドラーのサーヴァントが主な理由だ。

アドラーの傍に、1人の少女が床から顔を出した。まるで海から陸へ上がるようにして床に手をつき、這い上がる。
ミニスカートが付いているウェットスーツに身を包んでいる、白金の髪をした少女だった。

「ユー、戻りました…」
「……アサシンか。どうだ、港への最短経路は確保できたか?」
「Ja(はい).この…冬木にいれば、どこからでも、すぐに地面を潜って行けます…」
「お前にしては大した成果だな。これから損傷を受けることがあれば、港へ向かえ。友人を通じて燃料と鋼材の手配をしておいた」
「Vielen Dank(どうもありがとう).」

その少女はアドラーのサーヴァントであった。真名はU-511。アサシンのクラスである。
大戦時、第三帝国(ドイツ)からヤーパン(日本)へ無償提供された潜水艦の1隻で、
それを擬人化した存在が彼女なのだ。
元が潜水艦であるため、アサシンは燃料と鋼材を使って自己修理ができる。
その上、改造して貧弱な能力を補強でき、燃料と鋼材があれば聖杯戦争において非常に有利になる。
だからこそ、アドラーはコネクションを利用してでも、なるべく早く資材を手に入れる必要があった。


452 : アドラー&アサシン ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:22:38 9jZS3Wl60
「それにしても、まさかの『潜水艦』…それもあのウーボートが俺のサーヴァントか。能力が貧弱な上に潜水しかできないと思えば、意外と芸達者ではないか」
「ユーは、弱いです。けど、見つからなければ、問題ないです。地面にも、潜れるから、どんな相手でも攻撃できます」

当たり前だが潜水艦は本来、水にしか潜れない。それなのに、アサシンは地中にも潜ることができる。
その潜水艦の限界を凌駕した能力は宝具『独逸の類なき儀形』の効果だった。
それはU-511自身であり、潜水艦であり、第三帝国からヤーパンへと身を移していった存在の具現。
聖杯に潜水艦の『下に潜み敵を撃沈する』という在り方が強く具現化された結果、地面にも潜れるようになったのだ。

アサシンは予想以上に利用できる。その事実にアドラーは笑みを深める。
アサシンのステータスを見たときには失望を禁じ得なかった。
だが、改造による基礎能力の補強に損傷の修復、夜戦の圧倒的な回避力等々…その秘めているポテンシャルは高い。
一般的にサーヴァントの弱点と言われるマスターも、電光機関を武器に戦える上、
たとえ死んでもアドラーには転生の法がある。
適当なNPCを選んで精神を乗っ取り、復活を繰り返せば実質的に不死身だ。
この聖杯戦争、思ったよりも楽になりそうだ。

「聖杯も気を利かしたな。さて……モラトリアム期間が終わるまであと3日か」

アドラーはソファの背もたれに体を預け、壁にかかった時計を眺める。
――マスターとして偽りの冬木に来る前。
ムラクモとの死闘の末、アドラー自身も消耗して死に至ったが、
転生の法によってクローンの肉体を乗っ取り、復活するはずだった。
しかし、まさか転生した先が聖杯戦争という殺し合いの会場だとは思いもしなかった。
せっかくムラクモを倒したというのに、「アガルタ」の遺産はこの場になく、手に入れることができない。
だが、今となってはそんなものはどうでもよかった。
アドラーには、聖杯というより魅力的な遺産しか見えていなかったからだ。

「俺は聖杯を取り、神を超える力を手に入れる。そして全世界…いや、全宇宙を支配する」

あらゆる願いを叶える願望機、聖杯。
アドラーの願いは聖杯を自らのために利用することだった。
アドラーはソファから立ち上がり、傍らに立つU-511に目線を移す。

「アサシン…サーヴァントならば当然だが、貴様は俺の駒だ。まさか自分の願いのために変な気は起こすことはないな?」

それに対しU-511は首を横に振り、否定する。

「Nein(いいえ).ユーは、第三帝国に仕えていた身です。だから、ユーは、マイスターに従います。同じく第三帝国にいた、マイスターに。…Sieg Heil(勝利万歳).」

U-511はアドラーに従い、その願いのために戦うことを選んだ。
かつてナチスドイツで生まれた彼女にとって、同じ国に仕える上官に従うのは当たり前のことだった。


453 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:24:31 9jZS3Wl60
【クラス】
アサシン

【真名】
(改造により可変)

U-511@艦隊これくしょん
さつき1号@艦隊これくしょん
呂500@艦隊これくしょん

【パラメータ】
(改造により可変)

U-511:筋力E 耐久E 敏捷E 魔力D 幸運C 宝具D
さつき1号:筋力E 耐久D 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具D
呂500:筋力D 耐久D 敏捷B 魔力B 幸運A+ 宝具B

【属性】
秩序・中庸

【クラス別スキル】
気配遮断:C+(A+)
水中及び地中に潜ることでサーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てばサーヴァントでも発見することは難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
日没後では夜戦の影響で2ランク上昇する。


【保有スキル】
艦娘:A
実在の艦船が擬人化されて現界した英霊であることを示すスキル。
燃料及び鋼材を消費することにより魔力の補充、損傷や武装の修復が可能となる。
元は潜水艦であるので息継ぎを必要とせず、いつまでも潜水できる。
また、宝具の影響で地中に潜ることも可能であり、こちらも息継ぎを必要としない。

夜戦:A
日没後に行われる戦闘。
アサシンの前身である潜水艦は暗闇に紛れており、夜戦中は昼戦以上に発見が困難であった。
夜間においては、潜水及び潜地中は回避判定で圧倒的に有利な判定を得る。たとえ敵の攻撃に当たってもかすり傷で済む。
また、気配遮断のランクを2ランク上昇させる。
ただし、地上に身体を出している場合や、宝具で因果の逆転などを起こされた場合はこのスキルは意味を成さない。

単独行動:D
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
アサシンは潜水艦として非常に優れた航続力を誇っていたため、このスキルを有する。
Dランクならば半日程度の現界が可能。

対日本:B
戦前ドイツから日本に譲渡されたアサシンを日本の技術では再現できなかったエピソードに基づくスキル。
日本人、及び日本出身のサーヴァント相手に有利な判定を得る他、攻撃を見切られにくくなる。

被虐体質:D
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
マイナススキルのように思われがちだが、
強固な守りを持つサーヴァントがこのスキルを持っていると優れた護衛役として機能する。


454 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:27:38 9jZS3Wl60
【宝具】
『独逸の類なき儀形(ウーボート・アウス・フロインドリヒェンラント)』
ランク:E+++ 種別:対軍宝具 レンジ:1 最大捕捉:30人
ナチスドイツから日本へ譲渡されたⅨC型Uボートが生まれ変わった存在であるアサシン自身が宝具。
水中に身を隠し、見つけられることなく一方的に数々の艦船を撃沈していった潜水艦は当時非常に恐れられていた。
アサシンのクラスで召喚され、『(海面)下に潜み敵を撃沈する』という在り方が色濃く具現化された結果、
水中のみならず地中にも潜ることができ、敵への肉薄が可能になっている。
ただし、地中に潜っている間は周囲が見えず、顔を出すなどして敵の位置を確認しなければならない。

また、ドイツから日本に譲渡され、その名を変えたエピソードから、魔力と資材を消費してアサシンを改造することも可能。
2段階に分けての改造となり、改造するたびに真名がU-511→さつき1号→呂500へと変化していく。
改造する際は戦闘で受けた傷を全回復し、パラメータも上述のように変わる。呂500へと改造すると性格と外見も変わる。使用できる宝具も追加され、大きく強化される。

『WG42(ヴルフゲレート・ツヴァイウントフィアツィヒ)』
ランク:D 種別:対地宝具 レンジ:1〜25 最大捕捉:1〜3人
ドイツで開発された対地対艦攻撃用の艦載ロケットランチャー装備。水中、地中から発射可能で、敵をロケット弾で爆撃する。
対地攻撃に有効であったという逸話から、地上にいる敵にはさらに大きなダメージを与える。
ただし、水面、または地下10m程度くらいの浅い深度からでないと発射できない上、
誘導性がなく照準の正確性に欠けるため、命中精度には難がある。

『試製FaT仕様九五式酸素魚雷改』
ランク:B 種別:対艦宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜10人
呂500へ改造することで使用解禁される宝具。
ドイツで開発されていた、ジャイロ機構によって自動変針と直線航行を繰り返し行い、
グネグネと蛇行しながら航走する魚雷で敵艦を攻撃する「Fat航走パターン」仕様を実装した試製潜水艦搭載用酸素魚雷。
史実では実現しなかった、ドイツ開発の仕様を日本海軍の九五式酸素魚雷へ実装した当時の日独技術の融合。
こちらも水中、地中で発射可能。破壊力は酸素魚雷だけあって非常に高い。
蛇行しながら航走するという特性上、複数の標的のうちどれかひとつに当たりやすい反面、
特定の対象を狙い撃ちすることには向いておらず、味方にも当たる可能性があるため、団体戦闘には不向き。


455 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:28:25 9jZS3Wl60
【weapon】
『WG42』、『試製FaT仕様九五式酸素魚雷改』

【人物背景】
ⅨC型Uボートの内の1隻だった潜水艦娘。ナチスドイツが日本にインド洋の通商破壊作戦を行わせるため、
通商破壊用潜水艦のモデルシップとして無償譲渡されることになった。
日本海軍籍になったはいいものの、ドイツの潜水艦は日本の技術では複製不可能で、
通商破壊用の潜水艦を量産する計画が頓挫したというエピソードを持つ。
薄い白金色のセミロングの髪に翡翠色の瞳を持ち、その肌は透き通るように白く、全体的に儚げな印象が目立つ。
拙い日本語を話し、時々ドイツ語を織り交ぜる。一人称は「ユー」。マスターのことを「マイスター」と呼ぶ。

日本の呉軍港へ着くと仮称として「さつき一号」と名付けられ、その1ヵ月後に正式に日本海軍籍となり、「呂500」となった。
アサシンは改造を進めて呂500になると、容姿と性格が別人と言っていいほど変わる。
スクール水着にの上に丈の短いセーラー服を身に着けており、日焼けしている。一人称は「ろーちゃん」。
性格も以前に比べて明るくなっており、「〜ですって!」「〜って!」を口癖にするようになる。
U-511に馴染んでいるマスターは呂500を見て印象ががらりと変わるであろう。
それと同時にU-511と同じようにいかなくなるという危険性も孕んでいる。

【サーヴァントとしての願い】
マスターに従う。
だが、呂500に改造されて性格が変わると、その願いを変えるかもしれない。

【基本戦術、方針、運用法】
基本的なパラメータはかなり低いが、改造を重ねることで強化できる。
しかし、改造には資材が必要な他、傷が全快するという特典もついてくるため、使いどころを見極めなければならない。
水中だけでなく地中にも潜れるのでどこからでも一方的に攻撃が可能。
さらに夜戦では敵の攻撃がほとんど当たらず、かすり傷しか受けないため改造してなくとも夜間では非常に強い。
被虐体質のスキルも持っているため、マスターを守るための囮としても機能する。
夜戦と組み合わせると頼もしい盾となってくれるだろう。
また、主従共に日本出身の相手には相性がいい。


456 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:29:22 9jZS3Wl60
【マスター】
エルンスト・フォン・アドラー@アカツキ電光戦記

【マスターとしての願い】
聖杯を取り、神をも超える絶対的な力を得る。

【weapon】
・電光機関
アドラーの身に着けている電光被服に装着されている特殊機関。
装備することで無尽蔵に電気を生み出すことができる。
チベットの秘境で発掘された古代文明アガルタの超科学技術を元に開発された。
強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
他にも高圧な電気を弾にして飛ばしたり、電力を体内に送り込んで超人的な力を得るなど、様々な応用が可能。
しかし、電光機関の電気は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、
使い続けた者は死んでしまうという欠点を持つ。
アドラーは転生することでこれを克服している。

【能力・技能】
・明晰な頭脳
謎の多い電光機関について、自力でその原理を解明したり、転生の法を独自にいち早く習得してそれを利用するなど、
非常に頭の切れる人物である。

・転生の法
アドラーが独自に習得した秘蹟。
たとえアドラーが死んでも別の肉体が存在する限り、
他人の身体に魂を移し変え、精神を乗っ取って復活することができる。
聖杯からの制限により、サーヴァントと『令呪を持つ者』を乗っ取ることはできない。
令呪・魔力供給パスも同時に受け継がれる。

【人物背景】
秘密結社ゲゼルシャフトの武装親衛隊長。
クローン兵士エレクトロゾルダートのオリジナルであり、また上司にあたる。
過去の戦時の人間で貴族軍人(ユンカー)だが、冬眠制御によって現在まで生き延びた。
かつてはナチスドイツの組織「アーネンエルベ」の士官として、チベットの古代遺跡の発掘に従事していた。
その際に発見した古代都市「アガルタ」の超科学技術(つまり電光機関)を独占し、己の野望に利用せんがために行動を開始する。
性格は野心家。
常に自分以外の全ての人間を見下したような言動をし、それは立場が上であるムラクモやミュカレが相手であっても変わらない。
己の分身と自ら述べるゾルダートたちに対してさえ「出来の悪い木偶」と蔑むほど。
冷酷で自信過剰で常に他人を見下したような態度を取る困った人間だが、それ相応の実力を持つ。
また、謎の多い電光機関について、自力でその原理を解明してしまうほどの頭脳も持ち合わせている。

冬木での地位は、元々貴族軍人(ユンカー)であったためか、かなりの富豪。
その財力とコネで資材を調達できる。
 
【方針】
聖杯狙い。
まずは夜の内にアサシンを利用して敵戦力の出鼻を挫く。


457 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/04(水) 01:30:13 9jZS3Wl60
以上で投下を終了します


458 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/04(水) 01:40:20 oub/7P6A0
皆様お疲れ様です。
こちらも短い間隔にはなりますが、投下させていただきます。


459 : ギム・ギンガナム&バーサーカー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/04(水) 01:40:50 oub/7P6A0
純粋に戦いを望み、その果てに男は散った筈だった。



文明の全てを塵に還すべく操っていた愛機に、その身を飲まれ共に大地へと封じられた筈だった。



しかし。


強き闘争を望む心は、凶暴なその魂は、そこで終わることをよしとしなかった。



更なる戦いを、この身を震わせる闘争を、まだまだ楽しみたい。



そんな強き欲望が……この男―――ギム・ギンガナムを、冬木の地へと降り立たせたのだった。




「フハハハハッ!!
 聖杯戦争か、実に面白い試みではないか!!」


目覚めを迎え、状況を把握したギンガナムの心に去来した感情は、この上ない歓喜であった。


460 : ギム・ギンガナム&バーサーカー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/04(水) 01:41:12 oub/7P6A0


「黒歴史に名を刻む伝説の戦士達と、会い見える……これぞ武門の誉れなり!!」



古の時代―――即ち黒歴史にその名を刻んだ英雄達を呼び出し、覇を競い合う戦争。
その参加権を、名だたる英霊達と顔を突き合わせる権利を得られたのだ。
純粋に闘争に生きるものとして、これを喜ばずにどうしていられようか。
魂が震えてならない。
一刻も早く他の参加者と出会い、本能が赴くままに闘争を楽しみたい。
ギンガナムは、この聖杯戦争の開始を今か今かと待ち焦がれていた。


「なあお前もそう思うだろう、兄弟ッ!!」


そして。


そんな彼に宛てがわれたサーヴァントもまた強い闘争本能の持ち主である事は、当然の結果であった。
歴史に名を残す英雄達を、その手で残らず葬り去る……そんな凶悪な思想のバーサーカーが選ばれたのは、必然と言えた。


461 : ギム・ギンガナム&バーサーカー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/04(水) 01:41:32 oub/7P6A0


「ウオォォォォ……!!」



英雄殺しの狂戦士―――バルバトス・ゲーティアは、唸りを上げる事でギンガナムに返答の意を示す。
狂化の影響で正常な思考こそ損なわれているものの、その本質たる凶暴性―――英雄への憎悪は微塵も衰えてはいない。
その命を刈り取れる時の訪れを、彼はまだかまだかと待ち望んでいた。


飽くなき闘争への欲求を抱き、歴史に名を残す英霊達と刃を交える時を心の底より望む二人の狂戦士。

最悪ともいえる闘争本能の権化が、今冬木の地に降り立ったのであった。



【クラス】
バーサーカー

【真名】
バルバトス・ゲーティア@テイルズオブデスティニーシリーズ

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B 敏捷:C 魔力:D 幸運:E 宝具:B

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
 狂化:B
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
 身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。

【保有スキル】
 戦闘続行:A
 戦闘を続行するための能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

 魔術:-
 大魔術を習得。
 生前にはそれを軽々と使いこなすだけの力量があったが、狂化の影響により魔術を行使できない。

【宝具】
 『アイテムなぞ使ってんじゃねぇ!!』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:10 最大捕捉:1
 バーサーカーが生前に見せた理不尽極まりない戦法が由来となった宝具。
 レンジ内の敵サーヴァントが宝具の開帳を行い能力を発動させる事を条件に、自動的に発動する。
 どれだけ距離が開いていようと範囲内ならば関係なしに、刹那の内に敵サーヴァントと限りなくゼロに近い距離へ転移し、
 例えどの様な宝具であろうとも強制的に発動を終了させ、戦斧の一撃を叩き込む。
 ただし一度に捉えられる相手は一人に限定される為、二人以上の相手が宝具を開帳した場合には一人を除き無効化は不可能となる。
 また、常時発動型・自動発動型の宝具に関しては機能しない。


462 : ギム・ギンガナム&バーサーカー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/04(水) 01:41:54 oub/7P6A0
【weapon】
 ・ディアボリックファング
  バーサーカーが生前より愛用し続けてきた、禍々しい外見を持つ戦斧。
  「噛み付く悪魔」の異名を持つ巨大な大斧だが、バーサーカーはこれを片手で軽々と振るう。

【人物背景】
 英雄を憎み、英雄と称される者を尽く殺戮しようと目論む狂戦士。
 冷酷かつ残忍、極めて好戦的な闘争本能の持ち主であり、その渇きを満たせるだけの熾烈な闘いを望んでいる。
 かつては有能な戦士として第一次天地戦争時代に活躍した地上軍の軍人だったが、
 その凶悪な性格が災いし、己よりも劣る仲間達が「英雄」と称されるにも関わらず自身は決してそう呼ばれなかった事から軍を離反。
 天上軍に寝返り暴虐の限りを尽くし、最後には地上軍によって討伐された。
 しかしその後も、怨霊としてその魂は地上に留まり続けているという噂もある。

【サーヴァントとしての願い】
 英霊達を全て残さず葬り去る。

【基本戦術、方針、運用法】
 優勝狙い。
 出会う英雄達を真正面から叩き潰し、片っ端から葬り去る。


【マスター】
ギム・ギンガナム@ターンエーガンダム

【マスターとしての願い】
 黒歴史に名を残す英雄達と闘争を楽しむ

【weapon】
『日本刀』
 常に帯刀している無銘の刀。

【能力・技能】
 優れたモビルスーツの操縦技術を持ち、戦闘に対しての観察力・洞察力に長けている。
 好戦的で苛烈な性格からは察し難いが、戦場では部下へと冷静かつ的確な判断を示し戦況を優位に運ぶなど、
 指揮官としても並々ならぬ才覚を持っている。
 生身の戦においても、パイロットらしからぬ屈強な肉体と剣の心得がある。

【人物背景】
 月面都市ゲンガナムを守る軌道艦隊の御大将を務めるムーンレィス。
 代々月の武門を統べ、数千年に渡り月を守護する名家ギンガナム家の頭領。
 その性格は極めて苛烈且つ好戦的であり、日頃から尊大な振る舞いが目立つ。
 まさしく戦闘狂と呼ぶに相応しい男。
 月の女王ディアナ・ソレルが打ち立てた地球移住計画に異を唱え、クーデターを起こし地球とムーンレィス双方に対して戦争を引き起こす。
 その最中で人類が歩んできた長き闘いの記憶『黒歴史』を目の当たりとし、その光景に強い感銘を受けている。
 戦場ではターンXを駆り圧倒的なまでの力で多大な被害をもたらすが、ロラン・セアックの操るターンエーガンダムとの死闘の最中、
 攻撃の衝撃で地上へ投げ出され、ロランと生身での決闘に挑むもターンエーとターンXが突如として発生させた
 光の繭にその身を囚われ、二機共々地上に封印され最期を遂げた。

【方針】
 黒歴史に名を残す英雄達と、純粋に闘争を楽しむ。
 出会う者達を容赦なく片っ端から葬り去る。


463 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/04(水) 01:42:11 oub/7P6A0
短いですが、以上で投下終了いたします。


464 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:06:36 lo//HoPE0
投下します。


465 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:06:50 lo//HoPE0
【1】

脳――及び、それに付随する頭部、それさえ残っていれば生存できる人間は存在する。
いやその生物を人間と呼ぶべきではないのだろうが、敢えてこの文中では彼を人間と呼ばせてもらおう。
では逆に、頭部を失った人間は存在できるのか。
すなわち、何らかの巨大な獣によって頭部は丸々喰いちぎられたが、中学生らしからぬ豊満な肢体は残った場合である。
結論から言えば、彼女は死んだ。
死んだが、その魂は天、あるいはそれに類するものに召されることなく、この街へと辿り着いた。
この話は、今後の物語に特別に重要であるというわけではない。
だが、面白い偶然ではないか。頭部を失った少女の主人が、頭部を残して死んだ従者を引き連れるなど。

もう一つ、面白い偶然がある。

彼女も彼も――


466 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:07:07 lo//HoPE0
【2】

学校で、彼女は一人だ。
机に突っ伏して眠る振りをする必要があるわけでもない、完全なる趣味の世界に逃げこむ必要があるわけでもない、
自分の椅子に誰かが座っている時に声を掛けられないわけでもないし、トイレや図書室――教室以外の場所に逃げ込む必要もない。
会話をする相手はいるし、クラスメイトとの仲も良好で、広義な意味で取れば友達もいる。
それでも、彼女は己の孤独感を埋めることが出来ない。
その孤独感の象徴が、彼女のはめている指輪である。
彼女はその指輪を買った覚えも貰った覚えもない、当然盗んだ覚えもない。
その指輪に関するありとあらゆる記憶が存在しない。
だが、外そうとすれば謎の焦燥感に襲われるため、外せないでいる。
誰も、何も言わない。教師でさえも何も言わない。
指輪は、彼女――巴マミにしか見えない。

「すみません」
授業が始まって十数分後、彼女はどこか異人じみてすらりと伸びた手を挙げる。
「どうしました?巴さん」
数学の授業中であり、巴マミは数学の教師にとって優秀な生徒であった。
少なくとも、黒板の数式が呪言めいて理解できない、等ということは無いはずである。
「保健室に行っても、構わないでしょうか」
「あっ、あぁ……保健委員、付き添ってあげなさい」
「いえ、一人で大丈夫です」
生徒の体調不良でありながら、教師としては胸を撫で下ろす心持ちであった。
中学生女子に抱くべきでない感想なのだろうが、巴マミは、どことなく断罪者めいている。
普通の人間とは何かが違う、それは彼女の両親が不在であることでなく、何か他の要因に端を発するような――いや、教師が考えるべきことではないのだろう。
ただ、巴マミは自分たちとは何かが違う。そして、真実がどうであれ、巴マミであろうとも体調を崩すことはある。
理解できる要因だったから、安心した。それだけのことだ。


467 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:07:24 lo//HoPE0
【3】

込み上げる嘔吐感を抑えながら、巴マミは保健室へと向かう。
ある朝から、幾度と無く彼女は自分が死ぬ夢に悩まされていた。
その夢の中で、彼女は幼児向けアニメに出てくるような魔法少女の姿をしており、二人の後輩と白い猫のような生物が見守る中、怪物と戦っていた。
武器は――銃だろう、巴マミに銃器に関する知識はない。だが、その銃が単発式であることは戦いの中で理解できた。
次々に、新しい銃を召喚するぐらいならば、一度に何発も撃てる銃を召喚すれば良いのに、と夢の中の自分に思う。
だが、何丁も銃を使い捨てていく様には、どこか不思議な爽快感があった。
怪物を倒しながら進んでいくと、とうとう親玉らしい怪物が見つかった。
その姿はぬいぐるみのようで、どこか愛らしい。だが、夢の中の自分は容赦しない。
知っているのだ、愛らしいのは外見だけであると。
夢の中の自分が持つ単発式の銃が、巨大な大砲へと変わる。
「ティロ・フィナ――――――レっ!」
叫びとともに、耳をつんざくような大きな音が響き渡り――怪物は大砲から放たれた無数のリボンに絡め取られ、強く締めあげられて首をかくりと、落とす。
それで終わりのはずだった。
きぐるみを脱ぎ捨てるかのように、ぬいぐるみの中から黒いぐにょりとした何かが現れる。
夢の中の私の拘束などものともせずに、それは夢の中の私に接近する。
口を大きく開く。私を食べる。そして、夢が覚める。

最初にその夢を見た時、巴マミは家中に響き渡る声で悲鳴をあげた。
彼女の人生において、家族がいなくて幸運だったことはその時ぐらいだっただろう。
その声はきっと、どんな深い眠りからでも覚醒に導いていたはずだ。
その悪夢を、彼女は何度も繰り返し見た。
何度も見れば慣れる。悲鳴もあげなくなった。
だが、自分が怪物に噛み殺される感触などは何度味わっても気持ち良いものではない。
何より問題なのは、起きている時にもその夢の映像がぼんやりと頭のなかで再生されるようになったことだ。
誰かが己に呪いをかけているのではないか、そんな冗談のような発想も真剣味を帯びる。
巴マミは真剣にお祓いに行くことを考えていた。

悪夢も見ずに、うつらうつらとしていられるのならば、毎日でも保健室に行きたくなる。
最初は冷たかった布団が自分を受け入れるかのようにあたたかみを帯びていく内に、巴マミはそう思う。
ぼんやりと天井を眺めながら、指輪を何となくかざしてみる。
養護教諭は今、外出中だ。
巴マミにそういう趣味があった、というわけでは断じて無い。
ただ、何となく――本当に何となく、夢の中の自分を思い出して、彼女はこう呟いただけだ

「変身【メタモルフォージ】」

醜い蛹から蝶が飛び立つように、偽りの巴マミという存在が――魔法少女へと、変わっていく。
記憶が戻る。夢のすべてが現実だと、知る。
濁る。濁る。濁る。濁る。
彼女の魂の象徴、右側の髪飾り――ソウルジェムが濁る。
自分の死が、自分の死によって絶望的となってしまった後輩二人に対する罪悪感が、
そして自分が巻き込もうとした魔法少女という運命の苛烈さが、彼女のソウルジェムを濁らせる。

絶望が、彼女を染め上げる。

ソウルジェムとは、卵である。
雛が眠る卵が親の温もりを求めるように、ソウルジェムは魔法少女の絶望を求める。
そして、魔女としてこの世に生まれ落ちる。
それでも、未だに人間として踏みとどまっているのは――彼女の精神力の強さのためだろう。
幼少の頃から、魔法少女として命懸けで戦ってきた。
救えなかった人間もいたし、弟子と別れることもあった。
そして何よりも、彼女の願いは――生きることだった。
交通事故で両親を失い、自らも死に向かう中。
あるいは、両親と共に死んだほうが幸せかもしれない、それでも彼女は生きることを願い、魔法少女になった。
始まりから、絶望だった。だから、彼女は耐えられる。

そして、この願いこそが二度目の死に際して――彼女をこの聖杯戦争へと導いたのかもしれない。


468 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:07:45 lo//HoPE0
【4】

半狂乱になり、涙さえ浮かべながら――それでも、彼女は立ち直った。
聖杯戦争、その情報が彼女にインストールされていく。
だが、願いなどは無かった。
いや、正確にいえば人を殺してまで叶えたい願いが無かった。
だから、このまま家に帰りたかった。
殺されてなおも、魔法少女であることが彼女の存在理由だった。
だから、戦わなければならない。
この偽物の街ではなく、自分の街、見滝原で。

9(キュウべえ)

己の命を助けた白い獣の名を心で呼ぶ、俗にいうテレパシーである。しかし、返事はない。
キュウべえとは特殊な生物であり、通常の人間に見ることは適わない。
魔法少女であることを思い出した今ならば、彼を見ることが出来るのではないかと思ったが、どうやらそもそもこの街にキュウべえはいないらしい。
魔法少女になったあの日から、いつも一緒にいてくれた家族のような存在である彼がいないのは少々不安だが、そもそもこういう場所であるのでしょうがないだろう。
ならば、次に呼ぶべきなのは――きっと、この場所で彼女の唯一の味方、己の従者【サーヴァント】。
もうすでに召喚されていたのか、あるいはこれから呼び出されるのか、彼女にはわからない。
だが、確信がある。キュウべえに語りかけるように、魔法少女見習いの愛おしき後輩に語りかけるように、心で語りかければ良い。

(来て、私のサーヴァント)

心の中の声と共に、空気が不自然に粘ついた。
動けなくなるような強い圧【プレッシャー】、魔法少女という外面を剥ぎ取られ、巴マミという少女になればガタガタと震えたくなるような、悍ましい悪【オーラ】。
思わず、目を閉じる。それは一瞬のことで、そして一瞬で十分だった。
彼女が目を閉じている間に、召喚は完了していた。

「問おう――」
発せられる強烈なオーラに反し、その男は穏やかな顔をしていた。
その顔は、世界中のほとんどの人間が知る、彼を思い起こさせる。

「君が、私のマスターか」

その男は救世主【キリスト】のような顔をしていた。


469 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:08:00 lo//HoPE0
【5】

自分が魔法少女であること、自分が死んだこと、自分のこと、自分のこと、自分のこと。
己のサーヴァントに話す時、口は驚くほどによく回った。
魔法少女の才能を持った二人の後輩と会った時と同じだ、
魔法少女という特異な才能は誰にも理解されない。
だからこそ、それを理解してくれる人間に己の孤独を埋めて欲しくて話す、話す、話す。

「聖杯で叶えたい願いはありません」
「ふむ……」
そして、伝えた。
聖杯に望む願いはない、その言葉にもサーヴァントは意に介すでもなく、微笑んでいる。
巴マミは紅茶を口に運ぶ、先ほどのプレッシャーが嘘であるかのように、男は穏やかである。
「ただ、見滝原に帰りたい。それだけです」
「本当に?」
「え?」
「本当に、君に叶えたい願いは無いのだろうか?」
なんということもない、ただの確認のはずだった。
本当に、ただのそれだけのはずだった。
だというのに、魔法少女になる過程で捨ててしまったあらゆることに関して、考えてしまう。
「聖杯があれば、君の両親は生き返る。聖杯があれば、君の後輩は生き返る……もしかしたら生きているかもしれないがね。
何でも話せる友人――それを願うのもいいだろう、マミ……本当に願いはないのかな?君は……一人で寂しくはないか?」
人間社会の中で、あまりにも特異すぎる人間は孤独だ、サーヴァントはその孤独に付け入る方法を知っている。
ただ、理解者であればいい。そして――導いてやれば良い。
己の悪意で心の空白を満たしてやれば良い。
だが、今回は趣向を変えよう。そうだ、ゲームをしよう。
この真っ白な少女を悪の色に染め上げるゲーム。
あの魔人に与えた餌の様ではなく、動機を与え、己の意思で人を殺させる、楽しいゲーム。
人を守るはずだった魔法少女が、罪悪感にがたがたと震えながら、目に涙すら浮かべ、
許しを請いながら何度も何度も何度も、何の罪のない人間に己の魔法を当てさせるように育成するゲーム。

己を殺した魔人への憎悪は未だに尽きない、だが――それは聖杯を手に入れ、再び受肉してからだ。
今は己の悪意を満たさずにはいられない。


「私はアサシンのサーヴァント、シックス。マミ、どうか考えておいて欲しい。
君が願いを叶えるということを、きっと君の会いたい人は……キミの孤独を埋めてくれるはずだからね」


470 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:08:17 lo//HoPE0
【6】

【クラス】
アサシン

【真名】
シックス@魔人探偵脳噛ネウロ

【パラメーター】
筋力B+ 耐久C+ 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具A+++

【属性】
混沌・絶対悪

【クラススキル】
気配遮断:E
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
生前のアサシンの犯罪が明るみに出なかったのは権力者との癒着によるものであるため、ランクそのものは低い。

【保有スキル】
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
全ての四肢を欠損しても戦闘を可能とし、
頭部さえ残っていれば決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

カリスマ:C-
プライド、トラウマ、恐怖――心の隙間に巧みに入り込む悪魔の魅力。
人外の才能を持った孤独な人間は彼に魅せられ、とある天才は彼の悪のパワーの前に全てを捧げた。
しかし、絶対悪であるが故にそのカリスマが適応される相手は限られる。

絶対の悪意:EX
他者が最も嫌がる行為を選択し、行い続ける、自分が常に絶対優位に立つことに関する天才的な才能。
悪意に関して、彼以上の人間はいない。
そして、その悪意の強さ故に――彼は悪意を発散せずにはいられない。

【宝具】
『新しい血族』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
7000年の定向進化の末に誕生した、強大な悪意と強い脳を持つに至った新種の人類たち。
彼に絶対に忠誠を誓う彼らを召喚する宝具であるが、その"謎"は暴かれた、彼は世界でただ一人の存在である。
故にこの宝具は存在出来ない。

『ただ1人の新種(シックス)』
ランク:A+++ 種別:対6【世界でただ一人の新種】宝具 レンジ:- 最大補足:1人
7000年の定向進化の末に誕生した、
強大な悪意と強い脳を持つに至った世界でただ一人の新種の人類、それがアサシンである。
自然を操り、人を操り、文明を操る、彼という存在そのものが7000年の時をかけて創り出された一種の宝具といえる。

【weapon】
『細胞と金属の結合技術』
細胞を金属に変えることができる。

『剣』
アサシンの一族の鍛え上げた血脈の象徴ともいえる剣。
特殊な能力はないが、硬度と切れ味は抜群である。

【人物背景】
「絶対悪」と呼ばれている男で、「新しい血族」の最先端に位置する者。
人類種の敵という意味で疑いようもなく絶対的な悪であり、
その悪意によって間接的に怪物強盗と電人という最悪の犯罪者達を生み出した。
表向きの顔は世界最大の兵器メーカー「ヘキサクス」の会長兼死の商人ゾディア・キューブリック。

【サーヴァントの願い】
再び受肉し、己の悪意を満たす。
その過程として、主に己のマスターである巴マミで遊ぶ。


471 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:08:32 lo//HoPE0
【7】


【マスター】
巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
見滝原に帰る……?

【アイテム】
・魔法によって召喚したマスケット銃
単発銃であるが、魔力の許す限りは無数に召喚出来る。

・ソウルジェム
魔法使いに変身する為のアイテム。普段は指輪として装着している。
その正体は物質化した魔法少女の魂そのもの。
ソウルジェムを破壊された魔法少女は魂を失い、死亡する。
また、ソウルジェムが肉体から100m以上離れることで仮死状態に陥る。
魔法を使うごとに穢れが溜まり、穢れがたまると、段々魔法が使えなくなっていき、穢れが頂点に達することで魔法少女は魔女に転じる。

【能力・技能】
魔法少女に変身することで様々な魔法を扱うことが出来る。

【人物背景】
中学3年生。魔女の結界に巻き込まれたまどかと美樹さやかの窮地を救い、2人の相談役となり魔法少女の存在と契約することの覚悟を説く。
魔法少女の中では珍しく、他者を魔女とその使い魔の脅威から守るという信念で戦い続けたため、まどかとさやかに大きな影響を与えた。
しかし2人の前では頼れる先輩を演じていたものの、一方で心の内に強い不安や孤独を抱き続けていた。
まどかとの会話により不安を払拭するが、直後の「お菓子の魔女」との戦闘でまどかとさやかの眼前で頭部を食い千切られるという呆気なくも凄惨な最期を遂げた


472 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:08:49 lo//HoPE0
【8】

おめかしの魔女。その性質はご招待。
理想を夢見る心優しき魔女。
寂しがり屋のこの魔女は結界へ来たお客様を決して逃さない。


473 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:09:03 lo//HoPE0
9【キュウべえは考える】

魔法少女とは別に、人間社会で暗躍する一族がいる。
その一族の祖はトバルカインと名乗り、その一族の強烈な悪意のために、アベルとカインの神話が用意された。
カインの子孫だから、悪意に満ちているのではない――その悪意のために、その祖先は人間で初めての殺人を起こしたものとされたんだ。
だから、ある種の神話とは――その一族のためのものだったんだよ。

その一族はあくまでもただの武器を作る一族だったのにね。

その一族がもたらした武器で、ある地域での戦争は百年続き、
その一族がもたらした武器に触れたとある武将は、第"六"天魔王を名乗り、
文字通り、その一族が第一次世界大戦の引き金を引き、
十数年前のある戦争の原因も、その国とその一族との繋がりを大国が知ったせいだと言われてる。

感情のない身だけれど、その一族の悪意を僕達が持てないことが残念でならないよ。
僕達に悪意は無いからね。


474 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆lnFAzee5hE :2015/03/05(木) 17:10:33 lo//HoPE0
投下終了します


475 : 名無しさん :2015/03/05(木) 21:17:50 BBkes41A0

【セイバー】7
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
伊佐木要@凪のあすから & ツナシ・タクト@STAR DRIVER 輝きのタクト
高嶺清麿@金色のガッシュ!! & マタムネ@シャーマンキング
本居小鈴@東方鈴奈庵 & ムゲン@サムライチャンプルー
碇シンジ@エヴァンゲリオン新劇場版 & パルパティーン@スター・ウォーズ
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より- & ランスロット@Fate/Zero
海馬瀬人@遊戯王 & ラクウェル・アップルゲイト@ワイルドアームズ the 4th Detonator

【アーチャー】9
スタン@グランブルーファンタジー & 瑞鶴@艦隊これくしょん
広川剛志@寄生獣 &エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険
前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ(TVアニメ版) & ジャスティス@GUILTY GEAR
呉島光実@仮面ライダー鎧武 & 暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語
テッド@幻想水滸伝シリーズ & 電@艦隊これくしょん
ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン & 電@艦隊これくしょん
霧嶋董香@東京喰種 & Верный(ヴェールヌイ)@艦隊これくしょん
国崎往人@AIR & 武蔵@艦隊これくしょん
ルパン三世@ルパン三世 & 冴羽 獠@エンジェル・ハート

【ランサー】8
酒留清彦@ピューと吹く!ジャガー & ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー
笛口雛実@東京喰種 & レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)@ウィザーズ・ブレイン
蓮見琢馬@The Book jojo's bizarre adventure 4th another day & 田村玲子(田宮良子)@寄生獣
レイ・ザ・バレル@機動戦士ガンダムSEED DESTINY & Dボゥイ(相羽タカヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード
桐ヶ谷 柩@悪魔のリドル(原作) & ディルムッド・オディナ@Fate/Zero
ウェカピポ@ジョジョの奇妙な冒険 第七部 スティール・ボール・ラン & ミリア=レイジ@GUILTY GEAR
香月舞@魔法のスター マジカルエミ & 東光太郎@ウルトラマンT(タロウ)
グレミオ@幻想水滸伝 & ラーハルト@ドラゴンクエスト ダイの大冒険

【ライダー】4
斉祀@THE KING OF FIGHTERS XIII & ???@アカツキ電光戦記
レパード@夜ノヤッターマン & 太公望@封神演義
月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!(プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち) & 南光太郎@仮面ライダーBLACK
ラカム@グランブルーファンタジー & ガン・フォール@ONE PIECE


476 : 名無しさん :2015/03/05(木) 21:18:25 BBkes41A0

【キャスター】9
比良平ちさき@凪のあすから & 雪姫(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)@UQ HOLDER!
八神はやて@魔法少女リリカルなのはA's & ギー@赫炎のインガノック-what a beautiful people-
呉島貴虎@仮面ライダー鎧武 & メディア@Fate/stay night
エヌ氏@星新一作品 & ロック@手塚治虫作品
野原みさえ@クレヨンしんちゃん & ギーグ@MOTHER
球磨川禊@めだかボックス & 戦極凌馬@仮面ライダー鎧武
ドラコ・マルフォイ@ハリー・ポッターシリーズ & ダークライ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊
神楽坂明日菜@魔法先生ネギま!(TVアニメ第一期) & 超鈴音@魔法先生ネギま!(漫画版)
美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ & リタ@神撃のバハムート GENESIS

【アサシン】10
水本ゆかり@アイドルマスター シンデレラガールズ & シルベストリ@からくりサーカス
霜月美佳@PSYCHO-PASS 2 & ジャギ@極悪ノ華 北斗の拳ジャギ外伝
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 & 夜神月@デスノート
音無結弦@Angel Beats! & あやめ@missing
佐野 満@仮面ライダー龍騎 & 野々原渚@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD
神条紫杏@パワプロクンポケット11 & 緋村剣心@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
アルミン・アルレルト@進撃の巨人 & 郭海皇@バキシリーズ
レオパルド@ニンジャスレイヤー & 飛影@忍者戦士飛影
エルンスト・フォン・アドラー@アカツキ電光戦記 & U-511@艦隊これくしょん
巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ & シックス@魔人探偵脳噛ネウロ

【バーサーカー】6
シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEEDDESTINY & デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
ダンディ@スペース☆ダンディ & ヤクザ天狗@ニンジャスレイヤー
葛西善次郎@魔人探偵ネウロ & ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ
シュラ@アカメが斬る!(漫画版) & アギト@私の救世主さま
カテジナ・ルース@機動戦士Vガンダム & 岩本虎眼@シグルイ 駿河城御前試合
ギム・ギンガナム@ターンエーガンダム & バルバトス・ゲーティア@テイルズオブデスティニーシリーズ

【エクストラ】6
〈モレスター〉
鷹鳥迅@最終痴漢電車3 & 遠山万寿夫@痴漢者トーマス2

〈アドミラル〉
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & 提督@艦隊これくしょん

〈ヴァンパイア〉
雷小龍@ウィザーズブレイン & 月島亮史@吸血鬼のおしごと

〈しろがね〉
本田未央@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ) & 加藤鳴海@からくりサーカス

〈イマジネーター〉
暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ & 園村麻希@女神異聞録ペルソナ

〈ネゴシエイター〉
ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド & 佐山・御言@終わりのクロニクル


477 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 21:59:41 XvyRslTQ0
投下します。


478 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:00:17 XvyRslTQ0
少女は死の運命に囚われていた。


砂神の巫女として生を受け、土地に恵みをもたらす雨神が暴走した際に封印するため、命を代償とする生贄として育てられた。
彼女はその運命を呪うことなく、皆を救えるのならば自己を犠牲にできる覚悟を抱いていた。
やがて雨の勢いが日に日に増す中、彼女は護衛の騎士と共に雨神の元へ向かう旅に出た。
その道中いろいろな出来事があったが、完全覚醒により暴走した雨神を封印することに成功した。
そしてあろうことか、砂神の力を解放し共に命を散らすはずだった彼女は奇跡的に一命を取り留めた。
それもこれも道中に出会った一団と、初めてお友達になった青い髪を持つ不思議な少女のおかげで。
縛り付ける様々なものから解放されて晴れて自由な身になった彼女は、護衛の騎士と共に世界を知るため旅立った。


しかし、少女の死の運命はまだ続く。


しばらくして彼女は体調を崩し、療養のため故郷の島に戻った。
しかし今まで彼女の面倒を見てきた者達は彼女を気味悪がり、常々陰口をたたいていた。
代々雨神を封印したら死んでしまう巫女が何故生きているのか、不吉なことが起こるのではないか、と。
加えて彼女が戻ってきた時期に不気味な魔物が出没するようになり、増々彼女への風当たりが強くなっていた。
さらに護衛の騎士とすれ違いを起こしてしまい、ただ一人悪意を受け続ける事に耐えきれなくなった彼女は城から逃げ出した。
どこへ行っても彼女は悪意に晒され、忌み子として罵倒され傷ついた彼女は、なにもかも恨み呪うに至った。


この島の人々は守る価値なんてない。こんな国、なくなってしまえばいい。
代々巫女たちを利用して、殺して、人の生きたい気持ちを踏みにじり。
私の気持ちを解ってくれない人たちなんて……みんな、みんな、大っ嫌い!!


そして彼女は自分を救おうとした者達をも拒絶し、災厄を振りまく異形の存在と共に姿をくらましたのであった……



 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜


479 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:00:52 XvyRslTQ0
夜。
闇の帳で覆われ、静寂が支配する刻。
サラは、ふと目を覚ました。
悪夢に魘されたせいか。病で身体が疼いたせいか。
分からないが、なんにせよ倦怠感があるのに意識ははっきりした状態になった。


辺りを見渡す。誰もいない。当然だ。
今は一人ぼっち。
月明かりが窓から差し込むだけで、暗闇と静けさが寂しさを誘う。
でも今は逆に、心身共に疲れずに済む。気が楽である。
悪口を言ったり、私と一緒に居る事を嫌がる使用人がいない。
私の話を聞かず、身勝手に振る舞う島の人々もいない。
ここには悪意がない。それだけで、どれだけ負担が減ったことか。


それに。
そばに居て欲しかったのに、私を置いて出掛けてしまったボレミアさん。
初めてできたお友達なのに、グラフォスを奪おうとしたルリアちゃん
なんで分かってくれないの。なんでなくそうとするの。私にとっての、大切な存在なのに。
……本当は、全て私の為の行動だってことは分かっている。酷い事を言ってしまったのは、ちょっと悔やんでいる。
でも、譲れない。ボレミアさん達は許せても。
命を懸けて守ろうとした人達が、私の事を忌み子というなら。
ならば私、忌み子になる。そして、あの島を滅ぼすと決めたから。
だから、もう我慢しない。グラフォスの力を抑えずに、辛い事から解き放たれる。
そうすれば私は……こほっ……ごほごほっ!







強い感情を抱いたせいか、身体に障り咳き込むサラ。
そこへ、彼女以外何もない部屋の中で、一羽の蝶が舞っていた。
闇夜で何物も見えない空間で、黄金に輝く蝶が舞っていた。


“サラ、大丈夫か?”


どこからか響き渡る声。
同時にサラの周りを漂っていた蝶がいつの間にか群れになり、一人の女性に姿を変えた。
黄金に輝く髪。赤く豪奢なドレス姿。気品溢れる顔立ち。貴族の令嬢のような淡麗な洋装。

その女性を知る者なら、或いは畏怖の念を抱き、或いは惹かれ、或いはその正体を暴こうとするだろう。
元々はとある資産家が所有する島の館で伝承として噂され、その場所で起きた詳細不明・未解決の大事件が世に知れ渡ったことで様々な憶測により伝説の存在へと至った魔女。

その真名はベアトリーチェ。
六軒島伝説に残る謎多き黄金の魔女。右代宮家一族を根絶やしにした謎多き登場人物。魔法を使った凄惨な殺人を好む恐怖の存在。

そんな魔女が、今は心配そうな顔をしてサラの所に近寄っている。
そう、彼女は此度の聖杯戦争にキャスターのクラスで召喚され、マスターである少女・サラと共にいるサーヴァントである。
ベアトリーチェはさらに傍に寄り、サラの額に手を当てた。


「おいおい、すげぇ熱じゃねぇか!」
「だ、大丈夫です。これくらい……こほっ……こほっ……!」


心配掛けまいと声を出したが、やはり辛いのか咳が漏れた。


「ほら、無理はせずに安静にしていな。ロノウェ」
「はい、お嬢様」


今度は執事姿の姿を現した。ポットやカップを載せたトレーを片手に持って。
ベットの傍にある小さなテーブルにトレーを置き、手際良く紅茶を入れる。
爽やかですっきりとした芳しい香りが仄かに漂う。


「先程薬をお飲みになられたばかりなので、
 今は心身が安らぐ飲み物を用意させていただきました。
 どうぞ、カモミールティーでございます」
「あ、ありがとうございます。ロノウェさん」


サラはロノウェから受け渡されたカップを手に取り一口飲んでみた。
体に染み渡ると、疲労が取れていくのを感じる。心地よい気分が広がる。


「……美味しい。すごく気分が楽になります」
「お褒めに預かり光栄です」
「うむ、流石ロノウェ。実によく出来ている。妾もその芳醇な香りにそそられたぞ。
 どれ、妾もカモミールティーをいただこうか。ついでに茶菓子も」
「ぷっくっく。かしこまりました」


こうして始まる、ささやかな夜のお茶会。
少しの合間だけで広がる談笑が、月夜のもとで寂しさを紛らわす。


480 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:01:28 XvyRslTQ0
今は安らぎを、少しだけ幸せ感じる。
辛い事ばかり続いていたから、彼女達と一緒に居る時間が大切な物になっていく。

いつの間にかこの館に招かれ、最初にベアトリーチェさんと出会った時は酷く緊張していた。
確か、ボレミアさんやルリアちゃん達と決別し、泣き虫で独りぼっちのブランウェンと一緒に逃げた後。
マナウィダンが祀られていた洞窟に辿り着いたところで、私は意識を失って。
そしたらここにいた。
だから最初は状況も分からずに警戒したけど、耐えきれずにそこでまた意識が朦朧になってしまったようで。
その後の私の看病をベアトリーチェさんやロノウェさん達がしてくれたようで。
彼女達のおかげで身体の不調もかなり良くなって。
そして気付いた時には、頭の中には“聖杯戦争”の知識が入っていて。
どういう状況であるか、自己紹介も含めてベアトリーチェさんが語ってくれた。
それからというもの、グラフォスの力は未だ強いままだけど、以前よりは弱まった。
私はベアトリーチェさんと、彼女の従者たちに囲まれて、今はこの館で静かに休んでいる。


本当に、彼女達との触れ合いには心が救われる。


ベアトリーチェさんは、無邪気な子供のように接してくれて、魔法で編み出した様々なアイテムをプレゼントしてくれる。

ロノウェさんは、何でもかんでも完璧にこなし、博識であり、特にロノウェさんが淹れてくれる紅茶は最高に美味しい。

煉獄の七姉妹。彼女達とも仲良くなった。色々とお喋りをして、姉妹でふざけ合っている光景が、何だか面白くて。羨ましい。

山羊さん達は……ちょっと顔が怖いけど、皆さん優しく接してくれて、頼りになる方々です。



今まで生きてきた中で、これ程楽しく充実したことはない。
今まで受けてきた仕打ちを忘れる程に、ここは心地よい。
今は、あの島の人々をどうしようとか、どうでもいい。
今は、叶えたい願いとか、恨み辛みとか、何も覚えない。
今は、………


……そういえば、この聖杯戦争に勝ち残れば何でも願いが叶う聖杯が手に入るというけど。
……いいや……今は………



 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜


481 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:02:09 XvyRslTQ0
サラが微睡み静まり返った後。
ベアトリーチェとロノウェは彼女の寝室とは別の場所にいた。


「ようやくぐっすり寝静まったな」
「ええ、看病の甲斐あって、以前より容態は良くなったようですね」
「しかし、それは表面上だけ、一体いつまで保つか……」
「やはり、砂神さまを何とかしなければ、ですか」
「………」


ベアトリーチェは黙って思案する。
重苦しい空気が、闇夜をより深くする。
現状、ベアトリーチェ達の置かれている状況は芳しくないからだ。




彼女のマスター・サラには生まれた時から共存している存在がいる。
砂神・グラフォス。
代々受け継がれる巫女の守護神。雨神・マナウィダンの暴走を抑える要。対極する力に拮抗をもたらす役割。
そして、強大な豪雨を治めるための代償として、依り代の人間の命を奪う宿命。


今回も共に過ごした巫女を糧に儀式は執り行われる、はずであった。
だがしかし、マナウィダンは別の少女によって封印され、グラフォスは力を発散したもののサラと共に消えずに済んだ。
それが、彼女に過酷な運命へと誘った。


グラフォスの力は日に日に増していき、サラの制御を受け付けづらくなっていった。
そして、神の力を抑えるのに精一杯になったサラは体調を崩してしまった。
それでもグラフォスは自らの暴走を止める事は出来ず、それが原因で彼女を余計に傷つける結果になってしまった。


グラフォスは望んでいない。彼女が傷つく事を。
共に生を受けた時から共に寄り添っていたサラを守りたいと。
自分のせいで彼女を苦しめ死なせてしまうなら、自分自身がいなくなって彼女を救いたいと、願う程に。


グラフォスはただ儀式の為に生まれた道具ではない。意思を持っている。
言葉を発せず他者との意思疎通は出来ないが。サラや極一部の者となら意思疎通はできる。
だからグラフォスは、自分の力を奪いサラを救う存在を待っていた。


だがしかし、元の世界ではそれも果たされず、サラが此度の聖杯戦争に呼ばれてしまった。
―――もし聖杯戦争に召喚されずに、抱いた願いで呼応されずに、たとえ辛くとも少しの時間を辛抱すれば、サラとグラフォスは求めた以上の結果が待ち受けていたのに。
しかも衰弱極まってサラは倒れてしまい、より最悪な事態へと進行していた。


そこへ登場したサラのサーヴァント・ベアトリーチェ。
キャスターである彼女との出会いが、グラフォスにとっての唯一の救いの道であった。
だから砂の神様は、黄金の魔女と契約を結ぶ事を選んだ。


482 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:02:32 XvyRslTQ0
聖杯戦争に召喚されたばかりのベアトリーチェは、目の前にいた自分のマスターが衰弱極まった状態であることに慄然とした。
彼女が意識を失ったところですぐさま容態を確認し、その原因がマスターの付喪神にあると認識した。
力滾る砂神から事情を聞き、一刻も早くこの状態を改善しなければと思考を巡らし、急場凌ぎの対策を講じた。


サラからの魔力供給を大幅カットし、代わりにグラフォスの力を吸収する。
とても単純な方法だが、サラの負担は軽減し衰弱状態からも抜け出すことができた。
しかし、これは一時凌ぎの手段に過ぎない。未だ影響は残り、サラは寝込んだままでいる。
さらにキャスターが力を削ぎ落としていても砂神の暴走は止まらず、日々力が増していて制御が効かなくなっている。
このままでは、サラの命も、一週間の内に尽きてしまうかもしれない。


本当であれば、砂神の力を全て吸収して奪い取り、サラから引き離せば、万事問題は解決する。
グラフォスも自分が消えてしまうにも関わらず、サラの身を案じてそれを望んでいる。
だがしかし、問題がある。サラが絶対に許さず、拒絶してしまうため奪おうにも奪えない。
サラにとってグラフォスは自身の半身、かけがえのない存在であるから。絶対に譲らない。
だからグラフォスをどうこうするはこれ以上当てにすることができない。
となれば、


「やはり、聖杯を獲るしかないな」
「サラ様を救うとなるとそうせざる負えませんね」


最初から分かっていた帰結。
何でも願いを叶えてくれる願望器なら、やり直しの願いを集めた奇跡の結晶なら。
当然サラを救えるはず、サラが望む世界を、叶えてくれるはずだ。


「しかしお嬢様、よろしいのでしょうか?
 一騎当千の英雄たちが集いし聖杯戦争を勝ち上がるには、些か荷が重いと思います。
 さらに制限時間まで設けられた上、迎撃態勢を整えるはずの我々が積極的に攻勢にでなければならない状況になるかと。
 中々に味わうことができない、刺々しい茨の道になると思われますが」


元々直接戦闘が苦手な傾向にあるキャスターであり、しかも対魔力を持つサーヴァントが多いという、最初から不公平な舞台。
だからキャスターは時間を掛けて策を講じ、自陣内で搦め手を用いて、何とか勝てるかもしれないという、傾きかけの均衡。
それなのに、此度の聖杯戦争は七日間という時限付き。まさにキャスター泣かせなセッティング。
だというのに、


「構わぬ、どのみち妾も願いを叶えなければならないからな」


魔女は自信に満ちていた。確証など、何もないのに。


「……どうせなら、複数の主従達をこの館に集めて、一世一代しかないパーティーでも開いてみたいものだな。
 妾だけで全ての敵を捌ききれなくてもよい。豪勢で愉快な猛者たちならどの様な舞踏会でも勝手にワルツを踊ってくれよう!」
「ぷーくっくっく。流石お嬢様。中々のユニークな発想でございますな」


むしろ冗談を交えて、ピンチをチャンスに変える意気込みだ。困難など、もろともしないかのように。


「何はともあれ、お嬢様が何かを為されるのであれば、不肖ロノウェ、どの様な事でも全力でお嬢様をサポートいたします」
「うむ、頼りにしているぞ」



ベアトリーチェは諦めない。
この先、どの様な絶望があろうとも。
無限の可能性に挑み敗れ去った彼女してみれば。
聖杯戦争などぬるま湯のように感じているのだから。
無論、数々の武勇伝を有する英霊たちに侮るつもりはないが。
全てのカケラで悲劇と絶望しか味合わなかった彼女にとってみれば。
一縷の望みが残されている聖杯がある限り、絶対に希望に縋りついてみせる。


483 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:03:39 XvyRslTQ0
【マスター】
サラ@グランブルーファンタジー

【参戦時期】
時期限定イベント「砂縛の涙、ひとしずく」
第5話「嘆きの砂丘を越えて」のエピソード1以降
ブランウェンと共にマナウィダンの祠に辿り着いた以降からの参戦

【マスターとしての願い】
今は何を願うとか考えていない。
嫌な世界から逃げたい?愚かな人々や国を滅ぼしたい?人生をやり直したい?

【weapon...?】
グラフォス

【能力・技能】
※ゲーム内でのアビリティを使用可能。性能はSSR版準拠。

「マエスティティア」
1ターンの間、敵の単体攻撃を味方の代わりに受ける。
再使用には5ターンのチャージが必要。

「クアドリガ」
1ターンの間、味方全体の被ダメージを50%カット。
再使用には5ターンのチャージが必要。

「エメス」
2ターンの間、自分の防御力を10倍UP。(つまり自分だけ被ダメージを1/10に抑える効果)
再使用には5ターンのチャージが必要。


【人物背景】
砂漠で覆われた島で生まれた少女。
砂神グラフォスをその身に宿していたため、巫女として城の中で育てられた。
優しく、礼儀正しく、控えめ。
あまり人と関わる機会がなかったため人見知りの気があり、自分の意見や我侭を言う事が苦手。
自分の命が例え生贄として捧げられたとしても、それで他人を救うためなら運命を呪わずにいられた覚悟と勇気を持っていた。

その想いは、今まで代々続いた仕来りが崩れた事で、裏切られてしまう。


【方針】
今は特に考えていない。とにかく安静する。



【クラス】
キャスター

【真名】
ベアトリーチェ@うみねこのなく頃に

【パラメータ】
筋力:E 耐久:D 敏捷:C 魔力:A++ 幸運:D 宝具:EX

【属性】混沌・中庸


【クラス別スキル】
陣地作成:A
 魔女として自らに有利な陣地を作り上げる。
 殺人現場や密室現場の構成に特化した“神殿”の形成が可能。
 その他に魔女の部屋や薔薇庭園を再現することができる。

道具作成:B
 魔力を帯びた道具を作成する。お菓子、紅茶、装飾、凶器など様々な物を魔術で編み出す。


【保有スキル】
魔女の家具:B
 『使い魔』の一種。術者の召喚に応じ、魔女が生前所有していた家具を召喚する。(詳しくはweaponに記載)

ゲームマスター:A
 推理合戦の出題者。ランクAなら、他人が犯したロジックエラーを修復することが可能なレベル。


484 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:04:20 XvyRslTQ0
【宝具】
『閉ざされた幻想世界』(クローズド・サークル)
ランク:C  種別:結界宝具  レンジ:1~20  最大補足:6人
 ベアトリーチェが最も好むミステリーの状況、外部からの干渉を受けない閉鎖空間を展開する結界宝具。
 “神殿”の任意の範囲を外部から隔絶し、内部の者達の逃げ場をなくし閉じ込める。
 この結界宝具は“対象を閉じ込める”という概念により、サーヴァントによる内外からの攻撃・干渉すらも無効にし、完全な閉鎖空間を形成する。
 ベアトリーチェや家具達は密室を自由に出入りすることができ、密室内ではパラメータがワンランクアップした状態になる。
 なお、この宝具から抜け出すには、魔女に屈服するか、密室内の戦闘で勝敗をつけるか、宝具『全ては魔女の仕業』に挑むか、
 大量に魔力を消耗する強力な宝具で強引に破るか、結界破りの宝具を使用するか、魔女が密室の維持を放棄した時、のいずれかである。


**『全ては魔女の仕業』(アンチミステリー)
ランク:E  種別:対人宝具  レンジ:0  最大補足:2人
 ベアトリーチェが得意としていた推理合戦を再現する宝具。
 任意で選んだ対象者を別の空間に転移させ、再現された密室殺人の経緯と現場を観劇しながら、出題者と挑戦者で殺害方法と密室脱出の推理合戦をする。
 魔女が出題する密室殺人はニンゲンには到底不可能な犯行であり、赤き真実を駆使して挑戦者を屈服させようとする。
 挑戦者が屈服した場合、魔女陣営に手出しできなくなり、のちに宝具『黄金郷に至る碑文』の生贄にされるが、それ以外のペナルティはない。
 逆に真相を解き明かした場合、一定時間魔女・家具のパラメーターがワンランクダウンする。
 なお、事件の登場人物たちは何一つ神秘や異能を持たないただのニンゲン達であり、NPCではなく魔女が用意した駒である。


**『黄金郷に至る碑文』(プルガトリオ)
ランク:EX  種別:???  レンジ:????  最大補足:????
 13人以上の生贄を捧げることで展開できる固有結界。
 この生贄となる者は、ベアトリーチェ陣営に殺された主従、屈服した主従、服従した主従である。(NPCは不可、主従の片方のみを生贄にすることは可能)
 生贄は何処にいようとも固有結界に呼び出され、六軒島の碑文の通りに生贄は次々と殺され、最後には魔女の宴にて参列した山羊の貴族たちに食い殺される。
 やがて生贄となった者達は従者となりてベアトリーチェの心象風景である黄金郷に招かれ、全ての束縛から解放され願いが叶い幸福を得ることが約束されている。
 生贄以外の者が聖杯戦争で優勝を得るには、固有結界内に踏み込んでベアトリーチェかマスターを討たなければならない。
 しかし黄金郷の崩壊を恐れる従者・家具達は彼女らを守るために立ち塞がるため、単独で討ち果たすのはほぼ無理であろう。
 そして侵入者が固有結界内で殺された・屈服した場合、彼らも黄金郷の一員として迎えられる。

 なお、固有結界内では家具のステータスはワンランクアップする。
 また侵入者に倒された従者・家具は固有結界内であればベアトリーチェの魔力が尽きるまではすぐに復活できる。
 この固有結界は条件発動型なので維持する魔力は少量で済む。展開するときも生贄から魔力を徴収するため、術者は魔力の消耗を気にすることはない。


485 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:04:38 XvyRslTQ0
【weapon】
数々な“魔法”を使用する。
ここで記す“魔法”はベアトリーチェがいた世界での呼び名であり、型月世界での“魔術”に相当するものである。
ちなみに、原作で使用していた“魔法”の大半は殺人事件の犯行を魔女の仕業にするための装飾であったが、神秘が普通に存在する聖杯戦争では実際に効力のある“魔術”として使用可能である。
空間転移・障害物をすり抜ける術(ただし“神殿”内部に限る)、赤の真実、結界構築、などの直接の戦闘や攻撃には関わらないものが多い。
「無限の魔法」で何度でも修復・蘇生を行うことができたが、この聖杯戦争では使用できないものとする。
これ以外に幾つかの戦争用魔法も使用する。(EP3でワルギリアとの魔法バトルで使用していたやつ)

『魔女の家具』は倒されても魔力を消費することで何度も召喚できる。宝具『黄金郷に至る碑文』発動中は必要魔力量が軽減する。
此度の聖杯戦争で呼び出せる家具は「山羊」、「煉獄の七姉妹」、「ロノウェ」。
その他の存在は召喚するのが難しい状況である。(条件・制約付きの特殊な方法で召喚が可能かも?)


「山羊」
 黒山羊の頭を持つ獣頭人身の怪物たち。Fate作品での竜牙兵にあたる存在にあたり、微々たる魔力で大量に召喚することが可能。
 ある程度の力・防御・スピードを持ち、その剛腕で無力な相手を無残な姿に変える。
 しかしサーヴァント相手だと無双されてしまい、強いマスターなら迎撃も可能。彼らが真値を発揮するのは数の暴力である。

「煉獄の七姉妹」
 ベアトリーチェの持つ上級家具。7つの大罪をモチーフとした悪魔たちであり、依り代となる杭の姿や少女の姿で人間達に襲いかかり殺害する。
 召喚に必要な魔力や戦闘力は山羊より数段も上。(Fate/Apocryphaのゴールムに相当)
 彼女達を呼ぶ事は相手に死を与えるも同然。故に敵対するマスターは苦戦を強いられる。武闘派のサーヴァントとは数度打ち合うのが限度か。

「ロノウェ」
 ソロモン72柱の大悪魔の一柱。ベアトリーチェに従える有能な執事であり、家事能力・戦闘能力は相当高い。
 一度の召喚に煉獄の七姉妹以上の魔力が必要になるが、それ以上の働きをこなしてくれるのは間違いない。
 彼と相対するマスターはまず勝ち目はないだろう。また、戦闘能力が低いサーヴァントなら撃退すらも可能性である。
 戦闘向きなサーヴァント相手でも、防戦一方なら耐えきりつつ戦う事ができる。



【人物背景】
六軒島に伝わる伝説に登場する黄金の魔女。
もしくは六軒島大量殺人事件に関与し、魔法で不可能犯罪を起こしたして後世に語り継がれる登場人物X。
そして幻想世界のゲームマスターとして主人公・右代宮戦人と推理合戦を繰り広げた幻想の住人。
その正体は、愛がなければ視えない。


【サーヴァントとしての願い】
絶望しかない運命を変えたい……?


【基本戦術、方針、運用法】
基本は自己の領地内で家具や魔法で迎撃。
第一宝具も併用し、襲撃者の実力に応じて臨機応変に対応する。
第二宝具は半分死に宝具。聖杯戦争だから推理モノより殴り合いがメインでしょうが!!
でもまぁ、折角の機会なので、推理モノを試してみたい書き手さんは是非挑戦してみてください。(非推奨)
とはいえリレーSSなので短編以下で、ほどほどに。
第三宝具は殆ど死んでいる宝具。積極的に狙わない方が吉。
でも条件を満たせたら凄い事になる。それまでホント役に立たないロマン宝具。


【捕捉】
戦闘描写は原作や各種メディア、格闘ゲーム「黄金夢想曲」を参照。
あとどうでもいいが、グラフォスの影響で耐久がワンランクアップしている。


486 : 砂塵の巫女と密室の魔女 ◆69lrpT6dfY :2015/03/05(木) 22:05:28 XvyRslTQ0
以上で投下終了です。
お目汚し失礼いたしました。


487 : ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:11:10 B.w8mQww0
投下乙です。私も投下させていただきます。


488 : 南条光&ライダー ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:12:28 B.w8mQww0
 ―――例題です。

 ここに、ひとりの少女がいました。
 誰より正義に憧れる少女です。
 誰より正義を信じる少女です。
 誇り高い少女でした。幼くも勇気に満ちた、怖いものなどないはずの少女でした。
 どんな者が相手でも決して怯まずに、少女は自分の信じる道を決して曲げません。
 少女は、正義の味方でした。

 しかし―――

 少女は、戦いに巻き込まれてしまいました。人の命など簡単に吹き飛んでしまう、とても怖い戦いです。
 少女は何も持っていません。持っていないと思っています。
 正義の心は持っているけれど。力はありません。覚悟はありません。
 少女はひとりきりだと思っています。何をしたらいいかわかりません。

 少女は泣いてしまいそうです。
 少女は震えています。


 ―――どうすべきですか?


 少女は、目を閉ざして諦めるべき?
 少女は、両手を真紅に染めるべき?
 少女は、誰かに助けを求めるべき?

 少女は―――

◇ ◇ ◇

 ずっと憧れていた。
 困っている人に手を差し伸べ、弱い人を悪の手から守り、誰かの笑顔のために頑張る。
 ヒーロー、英雄、正義の味方。呼び名は色々あるけど、要するにアタシはそういうものになりたかったんだ。
 テレビから、漫画から、時にはステージの上から皆に勇気と希望を与えてくれる。誰かを支えて、誰かに支えられて、皆を幸せにするヒーローに。
 アタシは、ずっと憧れていた。

「でも、やっぱり駄目みたいだ、アタシ」


489 : 南条光&ライダー ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:13:44 B.w8mQww0
 備え付けのソファに浅く腰掛け、南条光は噛み締めるように声を絞り出した。
 聖杯戦争。記憶を取り戻した時に、おおよその知識は頭に入っている。その意義は闘争であり、自分たちを除く全ての主従を排除しなければならない凄惨な殺し合い。
 そんなものは認められない。当たり前だ、誰かが血を流すことをヒーローが認めるはずがない。いや、これは最早ヒーロー云々以前の問題だ。
 止めなくては。理性はそう叫んでいるけど。でも心が固まって動かない。
 怖い、怖い、怖い。体が震えて仕方が無い。普段はあれだけ勇気だ正義だと言っておいて、いざとなればこうなるなんて我ながら情けない。
 震えを誤魔化すために、光は傍にいる己がサーヴァントへと声をかけた。

「なあライダー。ライダーには、やっぱり叶えたい願いがあるのか……?」
「願い、か」

 呟く声。不遜に、傲慢に。
 男の影がそこにはあった。軍服にも似た白い服で身を包む男だった。雷電のような、不思議な奇矯さに満ちた男だ。
 ライダーと呼ばれた彼は、刺すような視線を光に向け、言った。

「万能の願望器たる聖杯と、それを手にするための奪い合い。
 代償と犠牲を得て一滴の願いを叶える器か。下らん」

 ただ短く、吐き捨てる。細める視線に、稲光の如き鋭さを湛えて。

「欺瞞の極み。傲慢の果て。ああ、かの"鐘"を思い出す悪辣さだ。心底、下らん」

 呟くライダーの表情は最初と変わらない仏頂面ではあったけど、どこか苦虫を噛み潰したような歪みがあった。
 その様子を見るだけでも、ライダーが聖杯というものにどんな感情を抱いているのかがありありと分かる。
 強い人だ。素直にそう思う。目の前の理不尽に激し、常に正しくあろうとする姿勢は今の自分にはない姿だ。

「……そっか、そうだよな。アタシもさ、こんなの絶対間違ってるって思う。でもさ、アタシの心のどこかで、それを否定しきれないところがあるんだ」

 なんのことはない。それは保身と逃避から来る感情だ。自分が死にたくないから、自分が傷つきたくないから。誰かを救うことなんてせず自分だけ助かりたいという浅ましい欲求。
 只人として見るならば、それは当然の思考かもしれない。誰しも自分が一番可愛いのは当たり前だし、命のかかった場面でなお自分より他者を優先できる者は少ない。他者を手にかけるのではなく自らの保身に走るのみであるならば、あるいは仕方ないと人は言うかもしれない。
 しかしここにいるのは南条光だ。誰よりヒーローを求め、誰よりヒーローたらんとする彼女だ。人が仕方ないと諦めることを、仕方ないと言いたくないがために努力する少女なのだ。
 そんな自分が、あろうことか保身に走るなど……誰よりも何よりも自分で自分を許せない。
 そして、それでもなお、体を縛る恐怖は根強いもので。


490 : 南条光&ライダー ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:14:22 B.w8mQww0
「……ライダー。アタシは、どうしたらいいかな」
「さて、な」

 光の心情を聞き終わり、それでもライダーは何も答えない。ふぅ、と、どこか気の抜けたように嘆息すると、改めて光へと向き直った。

「私はサーヴァントだ。サーヴァントとはマスターに付き従う存在であり、故にマスターが望むならば全ての敵を屠り、その手に聖杯を掴むことさえ目指すだろう」

 不本意ながらな、とライダーは付け加える。

「だからこそ。南条光、私はお前に問う。お前は、私に何を望むのか」

 いつになく真剣な表情で、ライダーはそう言った。
 視線はまっすぐに光へと向いている。輝くような双眸に、見据えられる。

「私を動かすのは人の輝きだ。つまり、お前次第だ」
「何もかもを諦め、暗闇に沈むか。ここでもなお諦めず、輝き続けるか」
「お前は、どちらを選ぶ」

 ……そんなもの。
 そんなもの、決まってる。

 暗いのは嫌だ。暗闇は嫌だ。アタシはアイドルとして、ヒーローとして。もっともっと輝いていたい。
 事務所の仲間たちと過ごした日々を思い出す。アタシはあの陽だまりのように、いつだって明るくありたい。
 だけど。

「輝きなんて……ある、かな」

 自然と口が開き、勝手に言葉が飛び出す。
 こんな無力な自分に。恐怖で動けない自分に。殺し合いを強いる聖杯に何もできない自分に。
 "輝き"なんてものが、本当にあるのか、と。

「あるとも」

 即答だった。何の逡巡もなく、何の淀みもなく。ライダーはそう断言した。

「本当、か?」
「お前にも、ある」

 ―――本当に?

「だったら、アタシは……」

 ―――本当に。
 本当に、ライダーの言うように、アタシにも輝きがあるのだとするなら。

「……輝きたい! 今より、もっと、ずっと!
 絶対に諦めたりしない! 暗闇になんて逃げない!
 アタシは、ヒーローになることを絶対に諦めない!」

 叫ぶ。ありったけの声で。
 正義の味方は決して挫けない。そう宣言するように。

「決めたよライダー。アタシはもう迷わない。誰かを不幸にする聖杯なんて絶対に認めない。
 だから頼む。アタシを、助けてくれ」
「―――ああ」

 瞬間、ライダーの姿が輝いて。
 柔和な笑みを浮かべた彼の姿がそこにあった。

「無論だとも。我が真名ニコラ・テスラにかけて、これより私はお前と共に在る。
 お前の輝きに誓い、我が勇壮なる雷が応えよう」

 そしてここに、光は紫電の瞬きを目にする。
 人として当然の恐怖を乗り越え、尊いほどの純粋な願いと意思とを兼ね備え、焦がれし輝きとなった光を前にして。
 ライダーの蒼い双眸は、眩しそうに歪んでいたのだった。


491 : 南条光&ライダー ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:15:44 B.w8mQww0
◇ ◇ ◇

 少女は―――

 少女は、叫びました。
 助けて、と。涙を堪えて叫びました。するとどうでしょう。

 どうなりましたか?
 助かりましたか?

 どうにもなりませんでしたか?
 助かりませんでしたか?


 それは―――


「お前の声は届く。時に世界が若人を殺さんとしても、世界の敵がそれを阻む。誰が見逃そうとも、私は来よう」

「故に」

「羽ばたくがいい。天駆ける雷の鳳の如く。あらゆる機構を振り払い、空へ」


492 : 南条光&ライダー ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:16:16 B.w8mQww0
【クラス】
ライダー

【真名】
ニコラ・テスラ@黄雷のガクトゥーン 〜What a shining braves〜

【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具B

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
雷電魔人:A+
新大陸の祖霊にして強大なるふるきもの『雷の鳳』にかけられた永遠の呪い。あらゆる電子・電気を操る異能であり、肉体は幻想の雷電と化している。
雷電による攻撃の他、自身を送電しての回避行動、電磁力による虚空跳躍、索敵、雷化、非実体への攻撃(霊体化したサーヴァントへの攻撃は不可)など応用の幅は広い。ただし雷電による攻撃は対魔力スキルによって軽減・無効化される。
自身の肉体や宝具たる電気騎士が砕かれても再構成が可能であるが、それには相応の魔力消費が必要となる。また、霊核が完全に砕かれた場合は再構成不可能。
制約として以下の事項が存在する。
・一切の虚言が許されない(誤魔化しや黙秘は可能)。
・雷電が散ることから、水、特に海水に浸かっている場合は常に魔力が散逸し続ける。
・幻想なりしものであるため、彼を基底現実に繋ぎ止める楔(今回はマスターとのパス)がなくなった場合全ての電力を散らして消失する。
・雷電の源たる“輝き”が近くに存在しない場合、全てのステータスが1ランク、雷電魔人のスキルランクが2ランク低下する。その代わり"輝き"が傍にいる間は常に自身の魔力が微回復する(あくまでライダーの魔力であってマスターの魔力ではない)。

バリツ:B
東洋武術を祖とした無刀術。雷電魔人の異能と合わせた使い方もできる。

機関技術:A
機械技術。電磁兵装や電気機械の作成に長け、またそれらの豊富な知識を併せ持つ。

世界介入:-
基底現実を限定的に書き換える力。キャスタークラスでの現界ではないため現在は失われている。

【宝具】
『電界の剣』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:5
5本の剣状の発光体。雷電で形成されており、実体があるのは核たる黒色の柄部分のみ。
ライダーの周囲に浮遊する形で出現し、飛翔・滑空しながら敵に襲い掛かる。また、剣の周囲に存在する者を任意で防護する効果もある。
黒色の柄は"深淵の鍵"と呼ばれており、かつてライダーが"黒の王"と呼ばれる存在から簒奪した暗黒物質であり、《神々の残骸》とされている。
5つの剣はそれぞれにトール、ヴァジュラ、レイ=ゴン、ユピテル、ペルクナスの銘を持つ。


493 : 南条光&ライダー ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:17:55 B.w8mQww0
『電気騎士(ナイト・オブ・サンダー)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:600
第3次テスラ・コイル実験の折にライダーが製作した数十フィートの巨大な戦闘人形であり、雷の鳳が残した永遠の呪いの一つ。
ライダー自身の超電磁形態であり、ライダーが搭乗することで雷電魔人としての力の規模をそのまま拡大する。
フランクリン機械帯に電界の剣の核たる“深淵の鍵”を差し込むことで呼び出される。剣・斧・槍・鎚・弓に酷似した専用の兵装を使用可能。
また、白銀の盾(アガートラム)と呼ばれる巨大な4枚の盾により周囲や自身を防護することもできる。
巨大化も可能であるが、相応に魔力を消費する。

【weapon】
・フランクリン機械帯
ライダーの雷電能力を制御し、時に拡大応用させる碩学機械式ベルト。

【人物背景】
電気学を修める天才碩学。雷の鳳に与えられた呪いにより不老となっており、外見は青年であるもののその中身は老成している(原作においては実年齢92歳)。
人の輝きを尊び世の安寧を願い、暗躍する秘密結社や宇宙の分神的存在と戦い続け10万を超える人々を救った正真正銘の『ヒーロー』。
性格は一言で言えば傲岸不遜。理想を口にする割には情が薄い印象を受け、周囲の人間に対する扱いは割と酷いものがある。
しかし性根は完全に善性の人物であり情が薄く見えるのも表情が分かりにくいだけ。敵対した者であろうと、自分を傷つけようとした者であろうと「助けて」と請われれば決して見捨てることがない(※ただしガチ邪悪を除く)。

【サーヴァントとしての願い】
彼自身は聖杯に託す願いはない。強いて言うならば無辜の人々の安寧だが、ライダーは誰かの犠牲の上に成り立つ平和を良しとすることはない。むしろ聖杯を"鐘"と同じ類の存在ではないかと疑い、嫌悪している。
南条光の"輝き"に惹かれ、それを守護するために召喚に応じた。


【マスター】
南条光@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
ヒーローは誰かを泣かせるようなことはしない。

【能力・技能】
アイドルとしての技能。身体能力は同年代の少女よりは上だろう。
特撮知識がかなりある。

【人物背景】
徳島出身の14歳、南条光はアイドルである。
正義の味方を自称する大の特撮ヒーローマニアで、その入れ込み具合は筋金入り。アイドルになった理由も特撮の主題歌を歌いたかったから。
特撮が好きなだけでなく自身もヒーローたらんとしており、非常に明るく快活な性格。自分に厳しく他人に優しい、努力は決して怠らない。
それでも彼女は年相応の少女であることに変わりは無く、相応に脆い部分も存在する。

【方針】
誰かの笑顔を犠牲にする聖杯は認めない。打倒聖杯。


494 : ◆GO82qGZUNE :2015/03/05(木) 22:18:38 B.w8mQww0
投下終了です


495 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/06(金) 01:23:56 ktjq5MIw0



>>420
懐かしいですね、AIR。原作の不遇な結末をひっくり返せるか。
他の艦娘と違い、武人としての誇りを重点に置く武蔵さんは男前ですね。
武蔵の固定砲台っぷりを活かして、どれだけ戦い抜くことができるのか。

>>425
渋いながらも何処か清涼としたコンビですね。
両者共に、美人と遭遇したら即ルパンダイブ待ったなし。
それでも、決めてくれる所はしっかり決めてくれる安心感がありますね。

>>436
ガチのバーサーカーコンビとかもうどうしようもありませんね。
絶対、日常生活ぶち壊しますよ、このコンビ。
NPCとか周りに配置したら血の海ですよ、本当に。

>>442
ゾンビコンビの退廃的な雰囲気がいいですね。
ロリでババァだし、応用性が効くし、当たりでしかない。
さやかちゃんはひょっとしてすごく恵まれているのではないだろうか。

>>449
いいですねぇ、アドラー。
ネタまみれで色物なのに、何だかんだで強いんですよねぇ。
けれど、どう考えてもろーちゃんになったら反逆待ったなしでシャイセ不可避だと思います。

>>458
前述の彼女達よりも、日常に適用しそうにないコンビですね。
こんなコンビが街中にいたら即座にUターンですよ。
タイマンだったらかなり強いですし、もうヤバイですよ。

>>464
どうしようもねぇド外道で絶対悪のシックスさんだ! マミさんさようなら!
マミさんとか絶対煽られて憤死するしかない。
悪意に染まって、皆殺しのトリガーハッピーさんになる未来が見える。

>>477
いやあ、砂漠の民は強敵でしたね。これじゃサラ……国を守りたくなくなっちまうよ。
それはともかく、ベアトが口汚く顔芸を披露してないからまともなお姉さんに見えますね。
宝具のうみねこ再現が丁寧で面白いけれど、成就が激ムズってレベルじゃない。

>>487
お爺ちゃんヒーローだ、これで勝てる!
ヒーローコンビの鉄板っぷりは強いですね、これは折れそうにない。
逆に安心感が強すぎて、周りが劣等感に狂うまでありますね。


では、投下します。


496 : 衛宮士郎&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/06(金) 01:24:44 ktjq5MIw0
         





――理想に堕ちていく。













正義の味方になる。ただそれだけを求めて、衛宮士郎は聖杯戦争へ飛び込んだ。
あの一瞬とも言える永遠を、士郎は生涯忘れることはないだろう。
それは尊くも醜い夢を追い求めた軌跡であり、始まりだった。
輝く月の下、出会った一人の少女がいた。
地獄に堕ちようとも、彼女と出会った刹那は今も脳裏に刻まれている。
どんな状況でも気高い振る舞いを忘れぬ少女がいた。
彼女と結んだ一時の協調は、士郎にとって夢のような一時だった。

「――セイバー、遠坂」

雪のような白い肌の少女は、自分によく懐いてくれた。
苛烈な表面の裏腹にあった優しさは温かく、最後の最後まで自分のことを見つめていた。
きっと、選んだ選択肢が違っていれば、もっと彼女と仲良くなることもできただろう。

「イリヤ――」

どれ一つ取っても、代わりなどありやしない。
一人一人が衛宮士郎にとって、大切と言い切れる人達であり、手に入れるはずの未来だ。
真っ直ぐで、綺麗な夢の欠片。思い出すだけでも、表情が綻ぶはずだった。
けれど、けれど。
今の士郎には色が剥がれ落ちたガラクタでしかない。


497 : 衛宮士郎&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/06(金) 01:25:45 ktjq5MIw0
     
「桜」

最後に思い浮かべるのは、必ず守ると誓ったはずだった――後輩。
衛宮士郎が好きになった、少女。
そして、切り捨てた【一】。
理想に殉じる過程で、初めて背負った代償を、士郎は思い出す。
助けたかった。そう言ってしまえば、真実であり、殺さなければならなかったと言っても、それもまた真実である。
どちらにせよ、士郎が彼女を切り捨てた事実は変わらない。
彼女だけを例外にすることはこれまでの【衛宮士郎】を否定することと同意義である。
好きな子を守る。そんな当たり前のことすら、士郎はできなかった。

「俺は、正義の味方だ」

あの燃え盛る炎の中、助けられた自分。
真綿で首を絞められるかのような苦痛を抱え、生きているのは――誰かを救けることができるから。
理不尽な運命を許容できず、直走る。
その為に長らえた生命だっただろう。
誰とも知らぬ大多数の人間を救う為に、大切なモノを、士郎は壊した。

「聖杯は、害でしかない。なら、やることは一つだ」

まだ、走れる。まだ、戦える。
摩耗し、凝り固まった魂でも、正義の味方を貫くことぐらいは容易いものだ。
何せ、この身体は剣で出来ている。
剣はただ人々を護り、救い――斬り捨てることしか能がない。
無様だと嘲笑うなら、勝手に嘲笑えばいい。
衛宮士郎にはこうすることでしか存在価値はないのだから。
十の内、九を救い一を切り捨てる。
一の中に大切な人が含まれていようとも、士郎の選択は不変だ。
不条理に苦しむ多数を救う為に、士郎は剣を握る。
身体は剣で出来ている。不屈の心は鉄と化し、迷いはない。

「聖杯を破壊する。それ以外は認めないし、絶対にさせない」

自らの理想の為に聖杯を破壊する。

「なぁ――――爺さん」

末期に託された願いを、しっかりと受け継いだことに喜びを感じているのか。
それとも、想定以上に正義の味方を成し遂げている自分のことを誇らしく感じているのか。
視線の先で、呆然と佇むサーヴァント――衛宮切嗣に対して、士郎は薄く笑った。


498 : 衛宮士郎&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/06(金) 01:27:50 ktjq5MIw0
                











――理想に囚われていく。












これが、自分のしてきたことに対する罰なのだろう。
アサシンのサーヴァントとして呼ばれた衛宮切嗣の前にいたのは、【正義の味方】だった。
何せ、眼前にいる彼は切嗣の抱いた理想を全て体現した【衛宮切嗣】なのだから。
それを、間違いとは言わない。だが、正しいとも言えなかった。

――僕が、託さなければ。

衛宮士郎に預けた理想は、彼をどうしようもないぐらいに彼が本来歩むべきだった道を違えさせてしまった。
【衛宮切嗣】を過不足なく受け継ぎ、自分と同じ道をたどっている。
それを、悲嘆と呼ばずに何と称せばいい。
今の切嗣にとって、聖杯戦争は悪夢でしかなかった。


499 : 衛宮士郎&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/06(金) 01:28:15 ktjq5MIw0
     
……あの時、僕が抱いた安心感は、嘘だったのか。

伽藍堂のような士郎の双眸を、切嗣は真っ直ぐに見返すことができない。
自分の罪をまざまざと抉られているようで、耐え切れなかった。
どれだけ心が凍っていたのだろう。
いつのまにかに、吸っているタバコも、殆ど炭と化している程に切嗣の意識は閉ざされていたらしい。
揺蕩った紫煙が青に溶け、特有の香りが辺りに充満している。
吸って、吐いて。平常心とまではいかないが、ある程度は落ち着きを取り戻した。
見上げると、透き通った青の空が広がり、眩しい太陽の日差しが燦燦と照っている。
手を伸ばせば、どこまでも吸い込まれていきそうな錯覚さえ覚えてしまう。
けれど、気持ちのいい青は切嗣に祝福など与えてくれなかった。

「なぁ、士郎」
「ん? どうしたんだよ、爺さん」

屈託なく笑う彼の姿はあの月の夜に見た横顔と一見して変わらないように見受けられる。
けれど、違う。表情こそ似ているが、中身が致命的に破綻しているのだ。
正義の味方。そんなものの為に、衛宮士郎は【衛宮切嗣】になってしまった。

――罰、なんだろうな。

それは正義の味方が見た最後の夢だった。
願い事の残骸を引き継ぎ、彼は此処にいる。
救済さえも絶望に変える世界で、切嗣は何をするべきなのか。
理想に裏切られた自分に、できることはあるのだろうか。


500 : 衛宮士郎&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/06(金) 01:30:18 ktjq5MIw0
【クラス】
アサシン

【真名】
衛宮切嗣@Fate/Zero

【パラメーター】
筋力D 耐久D+ 敏捷C 魔力D+ 幸運E 宝具C

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。

【保有スキル】
単独行動:A
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる。
マスターを失っても数日間は現界可能。

正義の味方:B
相手の属性が悪である限り、正義の味方である切嗣のステータスはランクアップする。
悪の強さによって、ランクアップの幅は広がっていく。
もっとも、切嗣自身の属性が悪である事実は皮肉としか言い様がない。

魔術:E
暗示など、軽い魔術なら扱える。


【宝具】
『固有時制御』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
衛宮の家伝である「時間操作」の魔術を戦闘用に応用したもの。
戦闘時には自分の体内の時間経過速度のみを操作するなどの用途で使用する。
なお、固有時制御を解除した後に世界からの「修正力」が働くため、反動によって身体に相当の負担がかかる。

『起源弾(クライム・アヴェンジャー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
自らの起源を相手に発現させる礼装魔弾。
この弾丸で穿たれた傷は即座に「結合」され、血が出ることもなくまるで古傷のように変化する。
ただ、「結合」であって「修復」ではないため、「結合」されたところの元の機能は失われてしまう。
この銃弾は相手が魔術で干渉したときに真価を発揮する。弾丸の効果は魔術回路にまで及び、魔術回路は「切断」「結合」される。
結果、魔術回路に走っていた魔力は暴走し、術者自身を傷つける。
その仕様に加え、サーヴァントと化した現状では、必殺の魔弾と称すことができるのではないか。

【weapon】
トンプソン・コンテンダー

ワルサーWA2000

キャリコM950

【人物背景】
正義の味方【だった】一人の人間。

【サーヴァントとしての願い】
願う資格が、あるのか?


【マスター】
衛宮士郎@Fate/stay night

【マスターとしての願い】
聖杯を破壊する。

【weapon】
なし。

【能力・技能】

投影…思い浮かべた物体を、魔力で顕現させる魔術。

強化…魔力を通すことで、対象の強化を施す魔術。

【人物背景】
10年前に冬木市で起きた大火災の唯一の生存者。
その際、魔術師である衛宮切嗣に助け出され、養子として引き取られる。
後に、切嗣への憧れから、正義の味方となってみんなを救い、幸せにするという理想を本気で追いかけるようになる。
そして、その理想を叶える為に、大切な人達を切り捨てた。
それはまるで、鉄の心を胸に抱いたブリキのロボットのようだった。

【方針】
正義の味方を張り通す。その過程で生まれる犠牲は考えない。


501 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/06(金) 01:30:30 ktjq5MIw0
投下終了です。


502 : ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 01:56:43 JGI7q1Mc0
投下します


503 : 大魔王の挑戦 ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 01:57:24 JGI7q1Mc0

                                 おのれ……

 其処は、奥行きもなければ高さもなく、上下もなければ左右もない空間だった。
大理石のような白の色が、果てまで広がり続いている、そんな世界。宛ら、白色の無とでも言うべき場所である。
此処には、何者も存在しない。ネズミや蟻の子一匹、小枝の一本すらもが落ちていない。ただただ、白の一色だけが無限大に広がる風景。
時間の経過を計る術すら存在しないこの空間に常人が放り込まれれば、一週間と持たず自我が崩壊してしまうだろう。この世の場所では、断じてなかった。

 ――そんな場所を、男が。嘗てハイラル全土を支配し、大魔王として君臨し暗黒の統治を敷いていた男が、一人ゆっくりと確実に落ちて行く。

                               おのれ……ゼルダ!!
                               おのれ……賢者共!!

 男を血を吐く様な万斛の思いで、自らをこの場所に封印した憎い者達の名を叫ぶ。
ゼルダ。ハイラルの王女。知恵のトライフォースの所持者。時の賢者……。忌々しい賢者達の、首魁。
賢者。自らを封印する為に立ち上がった、六人の者達。忌々しい粗忽者。

                               おのれ……リンク!!

 そして最後に叫んだのは、憎んでも憎み足りない、自らを打ち倒したあの男の名前。
退魔の聖剣、マスターソードを振るう時の勇者。勇気のトライフォースの所持者。――自らのツメの甘さを象徴する、緑衣の青年。
考えるだけで、頭蓋の内部が怒りに燃える。その双眸が激しく血走る。殺せる時間は幾らでもあった筈なのに、どうして殺さなかったのだと。
湧いて出てくるのは、時の勇者の怒りだけにあらず。自らに対する怒りも、この魔王は水泡の如くに浮かび上がってくるのだった。

                          いつの日か……この封印が解き放たれし時……
                       その時こそ、キサマたちの一族根絶やしにしてくれる!!

 確かに魔王は、時の勇者に、時の賢者に、六賢者に敗れはした。
しかし、この身は死んではいなかった。あくまで、封印されているに過ぎない。
この桎梏がいつ解けるのか、それは彼には解らない。しかし、確信があった。遠い未来の話ではあるが、この封印はいつの日か解かれ、自分が再び現世に君臨すると言う確証が。
これは、暫しの休戦であるのだ。世界の壁を超えて行われる、時の勇者の一族達との永劫の戦いの、だ。

                         我が手の内に、力のトライフォースある限り……
 
 そう、彼もまた、天地開闢の際に神々が地上に遺した神器、トライフォースに選ばれたる男であるからだった。
これがある限り、自分は何時の日か蘇り、今度こそ残りの全てのトライフォースを手中に収め、覇王として君臨すると言う野望の火を絶やさずにいられた。

 次に会う時は、俺様が勝つのだ!!

 心中で強くそう叫びながら、嘗てゲルドの大盗賊であった男、ガノンドロフは、白い闇の底へと沈んで行く。
向かう先は、何物も存在しない、冥府の彼方……。


504 : 大魔王の挑戦 ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 01:58:30 JGI7q1Mc0

                             ……勇者よ……。よくぞわしを倒した……

 身体が燃える。人間など歯牙にもかけぬ程強靭な巨躯が、乾いた枯木のように炎上して行く。
世界に闇と絶望を齎さんが為にある大魔王は滅びの最中だった。鋼の塊をも砕く腕力も、冬の嵐を遥かに超える規模と威力を誇る氷の呪文も、今や発揮する事は出来ない。
大魔王の眼前で、神秘的な鎧を身に纏った青年――勇者――とその仲間達は、臨戦態勢を解いていない。最後に何かして来るのではないか、と言う事を警戒し、気を張り詰めているのである。

 負けた。魔王バラモスを使って地上の世界を征服しようと魔の手を伸ばし、アレフガルドに永遠の夜闇を与えつづけていた大魔王は、精霊ルビスの加護を受けた勇者とその仲間達に敗れた。
見事な力であった。流石は、難攻不落の彼の居城に立ち入り、此処までやって来ただけの事はある。

                             ……だが光ある限り、闇もまたある……

 間違いなく自分はこの世界から消滅する。だからこそ、その前に言っておかねばならない事があった。
彼は闇から出でたる大魔王。全てを滅ぼす者。故に、闇の事を知り尽くしているのだ。その対局にある、光の事も然り。

                          わしには見えるのだ。再び何者かが闇から現れよう……

 影を生まない光はない。光と闇は、コインの裏表のようについて回るものである。その光の強さが増せば増す程、生み出される影の色は濃くなって行く事を彼は知っている。
自分が例え消滅しようとも……、この世から悪の芽が摘み取られ尽くされようとも、その芽の『種』までは焼き払えないのだ。
彼は遥かな未来を見ていた。自分亡き後のアレフガルド。其処に、彼の意思を継いでいるかのように現れる、強大な闇の存在。彼らに、世界を絶望に陥れる望みを、この大魔王は託した。

                       だがその時は、お前は年老いて生きてはいまい。わははは……っ!!

 勇者は確かに強かった。しかし、永遠を生きる人間などこの世に存在しない。
次の巨悪が現れる時には、勇者は既に年老いて戦えなくなっているか、墓の下。成す術もない。
悪の輪廻は途絶える事はない。勇者の敗北は、長い目で見れば必然である。大魔王はその事を、暗に勇者達に語っていた。

 ――限界が来た。ぐふっ、と言う空気を吐く音と同時に、大魔王――ゾーマの姿が、大気と同化して行く様に透明になって行く。
その際に、ゾーマは見た。将来訪れるだろう、闇の者達。彼らに備えて、自らの意思を受け継ぐ者達を、未来の為に遺そうと決心する勇者達の姿を。
彼らに対して何かの思案を巡らせようとする前に、ゾーマはこの世から去った。名実共に、勇者達が勝利した瞬間だった。

 ――世界の垣根を超えて永劫に続く、大魔王と勇者達の戦いの伝説は、このようにして始まったのだった。


505 : 大魔王の挑戦 ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 01:59:32 JGI7q1Mc0

「力は十分に集まったのか」

 銅像の如くに引き締まった見事な体格と偉丈夫を持った、褐色の肌をした短髪の男が無感情にそう訊ねて来た。

「本調子ではない。サーヴァントはそもそも、本来の実力に大なり小なりの制限をかけて呼ばれる者らしいな。どんなに雑魚共を喰らっても、生前の力は発揮出来ないようだ」

「これだけ殺してまだ本調子じゃないだと? 大飯喰らいが……」

 言うと褐色の肌の男、ガノンドロフは周りを無感情に一瞥する。
酸鼻を極める様相が、其処にはあった。頭部を砂糖菓子の如く粉々にされ、脳漿と頭蓋、大脳を飛び散らされた死体もあれば、胸部や腹部にバスケットボール大の風穴の空いている死体もある。
十m上の天井に、身体を横に真っ二つにされた身体がへばり付いている死体もあれば、四肢を切断され、形容すらし難い程の激痛の最中で、苦悶に満ちた表情の死体もある。
冬木市の海沿いにある、工業用コンテナ。その内の一つは、市内のヤクザやチンピラ達が秘密裏に商談や契約を行う為の隠れ蓑的な場所であった。
其処に、ガノンドロフと、キャスターのサーヴァントであるゾーマはやって来た。「誰だ」と言った誰何や、「何しにきやがった」と言う怒号を、ヤクザ達が上げられたのはほんの数秒の間の事。。
キャスタークラスでありながら、三大クラスに匹敵せんばかりの、規格外の近接戦闘能力を、ゾーマはいかんなく発揮。コンテナの内部にいる男達の威勢がすぐに萎え、恐怖と絶望に失禁、叫び声をあげ出すのに時間はいらなかった。

 四〜五mにはなろうかと言う、ガノンドロフ以上の巨躯を持ち、大仰な橙色のローブと髑髏のネックレスを身に纏った青い肌の大魔王、ゾーマ。
彼はキャスタークラスに相応しい高い魔力を有しながら、三大クラスに近接戦闘を持ち込まれても問題ないどころか、逆に葬り去ってしまえる程の圧倒的なステータス、そして優れた宝具の持ち主だった。
しかし、そんな彼にも大きすぎる欠点があった。彼の現界の維持に掛かる魔力の量である。
ガノンドロフ自体がマスターにしては規格外、ともすればサーヴァントと戦える程の実力の持ち主である為に今の所魔力消費は苦ではないが、これが聖杯戦争後半に響いてくる事も容易に考えられる。

 そう、彼らは魔力の維持と確保の為に、このコンテナへとやって来たのだ。
聖杯戦争はまだ始まってすらいない。スタートの時点で蹴躓きたくなかったガノンドロフは、このコンテナへとやって来て、そこに運よく――被害者にとっては運悪くだが――居合わせた者達の魂を喰らい、今に至る。
魂を喰らうだけ、とは言いながらも、肉体を粉々にしてしまう辺りに、やり過ぎの感が否めないが。

「キャスターは自ら作り出した陣地に籠り、漁夫の利を狙う待ちのクラスであるらしいが……貴様のステータスならば直接打って出る事も可能だろう。が、流石に俺も拠点は欲しい。
街の中では俺の姿は目立つ。今後は此処を俺達の拠点とする、いいな」

「構わん」

 特に反対するでもなく、ゾーマはガノンドロフの申し立てを受け入れた。
冬木の街は、ガノンはおろかゾーマですら目を瞠る程の霊地。ならば自分達にとってもっと有利な、霊脈の集中した場所を拠点にすべきかとも考えたが、それは焦り過ぎであるともガノンは考えた。
ハイラルでの事を鑑みれば早々に手を打っておくべきだとは分かっているが、聖杯戦争自体彼にとってイレギュラーであり、初めての事。何が悪手になるか解らない。
口惜しいが、慎重に事を進めるしかなかった。このような場末の箱の中が、嘗て世界を支配しかけた俺様の拠点とは、とガノンは舌打ちを響かせた。


506 : 大魔王の挑戦 ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 01:59:54 JGI7q1Mc0

「(聖杯……万能の願望器か……)」

 冥府へと落とされて行く最中、冬木の街に現れてしまったガノンドロフは、当惑する他なかった。
明らかに冥府でない場所に呼び出され、何時の間にか脳に植え付けられた、聖杯戦争の知識。そして、この戦いの果てに得られる、聖杯と言う褒章。
奇跡と言う形で願いを叶える聖遺物。だとするならばそれは、ガノンの手にある、神々が生み出した聖三角、トライフォースに匹敵する神器である。

 ――面白い――

 ガノンドロフが求める物は早々に決まった。
聖杯に掛ける願いは、更なる力を得る事。そして、再びハイラルの地に君臨し、憎き時の勇者が宿す勇気のトライフォースと、忌々しい時の賢者が宿す知恵のトライフォースを奪い取り、今度こそ世界をこの手にする事だった。

「(だがその為には……)」

 最大の障害があった。それこそが、今は自分の相棒――サーヴァントとして振る舞っている、ゾーマの存在だった。
ガノンは彼には、自らが胸に抱く野望を既に話している。そしてその際、ゾーマが聖杯に願っている事を聞いていた。
そしてその時、ゾーマは何の迷いもなくこう答えたのだった。

 ――わしが聖杯なる神器に願う事があるとすれば、ただ一つ。奇跡を以て願いを叶え、人間の信仰と羨望を集めるその神器を、我が闇で満たし、絶望と闇の魔器へと変える事だ――

 ――正気か、とガノンは思った。
ゾーマの経歴はある程度把握している。アレフガルドなる世界を一度は支配した、強烈な魔王である。ステータスを見ても、その経歴に嘘偽りはない事は解っている。
しかしこの男が世界を支配した訳は、自らの欲望を満たすと言う意思によるものと言うより、世界を純粋に絶望と悪と闇とで満たしたい、と言う意思による所の方が大きいのだ。

「(狂人が)」

 万能の願望器に力や支配を望むでなく、破滅の杯としての変貌を望むゾーマの様は、ガノンドロフからして見たらまさに狂人その者だった。
最後の一組になったらば、この狂える大魔王を出しぬく必要がある。トライフォースが埋め込まれた手ではない方に刻まれた令呪によって、自殺を決行させるのである。
狂った願望に、千載一遇の好機を無駄にする訳にはいかない。ゾーマには迫り来るサーヴァントやマスター達を蹴散らしつつ、最後の最後で無駄に死んで貰う。

「(せいぜいその力を俺様の為に揮ってくれ)」

 血の匂いが蔓延するコンテナの中で、ガノンドロフは一人そうほくそ笑む。

 ……ゾーマもまた、自らと同じような事を考えながら、ニヤリと笑みを浮かべた事を知らずに。










【クラス】

キャスター


【真名】

ゾーマ@ドラゴンクエスト3 そして伝説へ


【パラメーター】

筋力A(A++) 耐久B(A+) 敏捷C(A+) 魔力A++(EX) 幸運E 宝具A++


【属性】

混沌・悪


【クラススキル】

陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 ”神殿”を上回る”城”を形成する事が可能。

道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。キャスターはこれを得意としない。


【保有スキル】

大魔王:A(A+)
魔物達の王。全ての闇の者の覇者。敵対した存在に、強い威圧感を与える。また同ランクの反骨の相も持ち、同ランクまでの精神攻撃を全て無効化させる。

カリスマ:A(A+)
大軍団を指揮する天性の才能。 Aランクはおおよそ魔族として獲得しうる最高峰の人望といえる。

対魔力:B(A+)
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
但しキャスターの場合は、『汝全てを曝け出せ』に限り、マスターのバックアップなしに使用する事が可能。


507 : 大魔王の挑戦 ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 02:00:20 JGI7q1Mc0

【宝具】

『汝全てを曝け出せ(いてつくはどう)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1〜100
キャスターが有する魔術の一つが、宝具となったもの。
指先から冷たい波動を高速で迸らせると言うものだが、この宝具の真価は、敵味方問わずスキルや宝具、魔術によって受けた効果を全てリセットさせると言うものである。
スキルや宝具によりステータスが向上しているのなら、向上前の値に戻り、宝具により対魔力やカリスマ等のスキルが付加されていた場合それらを元に戻す、と言った風に、全てをなかった事にする。
強化系の宝具を切り札としていたり、スキルによる一時的なステータス強化が肝要となるサーヴァントにとってはこれ以上となく危険な宝具である。
またこの宝具は、キャスター自身にも、『自らに掛けられた弱体化』を解除すると言う効果が発揮され、まさに完全なる仕切り直しを強要する事が出来る。
しかしこの宝具はあくまでも宝具やスキル効果によって生じた強化を0に戻すだけで、強化を付与させる宝具やスキルそのものを『消滅させる』事は出来ない。
相手サーヴァントやマスターは、強化やスキル付与を再度行うだけの力があるのなら、宝具やスキル、魔術などで再び自らを強化する事は可能である。

『闇の衣』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
キャスターが常に身に纏うバリア状のもの。
令呪を一区画消費する事で発動させる事の出来る、キャスターのステータス向上手段。
発動させる事でキャスターのステータスやスキルのランクは全てカッコ内の数値に強化されるだけでなく、発動時に毎ターンHPの自動回復効果が付与される。
この宝具を行使する事でキャスターは難攻不落の要塞と化し、敵対者を苦しめる。
しかしマスターにかかる魔力消費も並の事でなく、この宝具を発動したのならば早急に相手を滅ぼす必要がある。


【weapon】

『マヒャド』:
キャスターが得意とする氷の魔法(魔術)。広い範囲に氷の属性のダメージを与える。

『凍える吹雪』:
キャスターの吐く吐息。高い威力を誇る。


【人物背景】

 魔王バラモスを背後から操り、地上世界をも支配、闇と絶望の蔓延る世界へとせんと目論んでいた大魔王。
作中においては既に地下世界アレフガルドの殆どを支配、太陽の光を奪い永遠の夜の世界にし、住民達の心に暗い影を落としていた。
精霊ルビスを石化させたり、ラダトームに眠る、伝説の金属オリハルコンで出来た勇者の剣、王者の剣を三年の年月をかけて破壊する、同じく勇者しか装備する事の出来ない
光の鎧、勇者の盾を魔物が跋扈する場所に隠すなど、勇者への対策を徹底。
ラダトームの対岸に位置するゾーマ城を拠点とするが、其処へ辿りつくにも虹の雫なる道具を用いる必要がある等の徹底ぶり。
闇の衣と言うバリアを常に纏っているが、それを纏わずとも他を圧倒する力を誇る、まさに大魔王と呼ばれるに相応しい存在。
最後は、無敵の闇の衣を、竜の女王から授かった光の玉で剥がされ、全力を尽くして勇者達と死闘を繰り広げるも、敗北。
今わの際に、闇の存在は滅ばないと言う旨の言葉を残し、この世から消滅するのだった。


【サーヴァントとしての願い】

 聖杯を自らの力で、世界に絶望と闇を齎す道具へと変貌させる事。

【基本戦術、方針、運用法】
 
 キャスタークラスにあるまじき、三騎士すらも返り討ちにしかねない高いステータスが何と言ってもゾーマの武器。
ステータスを強化させるか弱体化させて挑もうにも『汝全てを曝け出せ』がそれを許さない。
『闇の衣』を纏った際のステータスは最早暴力的であり、仮に傷を負わせる事が出来たとしても、自動回復がその努力すら否定しかねない。
弱点を上げるとするならば、ガノンドロフとの反りの合わなさと、その『闇の衣』の使用条件。
ガノンドロフは最終的にはゾーマを自殺させようとする算段の為に、令呪の使用には極めて消極的。
発動に令呪一区画使わねばならない『闇の衣』を、マスターが進んで使う場面は、恐らくそうそう存在しないだろう。


508 : 大魔王の挑戦 ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 02:00:54 JGI7q1Mc0

【マスター】

ガノンドロフ@ゼルダの伝説 時のオカリナ


【マスターとしての願い】

更なる力を得てハイラルに君臨。今度こそ残りのトライフォースを手に入れ、リンクとゼルダ姫の一族を根絶やしにする。


【weapon】

力のトライフォース:
天地開闢の際に、世界を創造した三柱の女神がその地に遺したと言われる神器。
ガノンドロフが保有するこのトライフォースは、力の女神ディンが遺したもので、文字通り力を象徴する。
これ自体が宝具として機能する程の神造宝具であり、ガノンドロフのマスターとしては破格の身体能力と魔力量は、全てこのトライフォースがあったればこそ。
但し、力を暴走させすぎると、理性のない魔獣へと変貌する。

大剣:
ガノンドロフが保有する大剣。
片手で難なく振える膂力を持ち、その技量も卓越しているが、何故か使わない事の方が多い。殆ど飾りに近い。


【能力・技能】

マスターでありながら、下手なサーヴァントに匹敵、或いは上回る戦闘能力を誇る。
格闘術に対して造詣が深く、その一撃は非常に重い。しかし、瞬発力と反射神経こそあるが、敏捷性は低い。


【人物背景】

 ハイラルの辺境に広がる大砂漠に生まれた、女性主体の民族ゲルド族の間で、百年に一度しか生まれないゲルド族の男性、それがガノンドロフである。
盗賊の民であるゲルド族では、この百年に一度生まれると言う男を王とする文化があるのだが、彼はゲルド族だけでは飽き足らず、ハイラル全土を支配しようと目論む。
ゲルドの王であるガノンドロフは、当初はハイラル王に跪き、ハイラル王の軍門に下ろうとするが、これは聖地に眠るトライフォースを手に入れんとする為の方便だった。
しかしこの聖地に入るには、時の神殿の封印をコキリ、ゴロン、ゾーラの三秘宝で解除しなければならなかったのだが、後に時の勇者となる子供時代のリンクがその秘宝を集め、封印を解除してしまった事で、聖地への侵入が可能となる。
これに乗じてガノンドロフは全てのトライフォースを集めようとするのだったが、彼では力のトライフォースしか身に付ける事は出来なかった。
その後、この力のトライフォースを駆使し、ガノンドロフはハイラルの地に魔王として君臨。あらゆる地に魔物を蔓延らせる。
全てのトライフォースを今度こそ我が物にせんと、時の賢者であり知恵のトライフォースの伝承者であるゼルダ姫を拉致、六賢者を全て解放した勇気のトライフォースの継承者リンクと最終決戦に臨む。
しかし力に溺れ、踊らされたガノンはリンクに敗北。リンクとゼルダは、主の敗北と同時に崩れ去るガノン城から脱出するが、瓦礫の山からガノンドロフが復活。
力のトライフォースを暴走させ、魔獣ガノンへと変貌した彼は、リンク達と最後の決戦に臨むが、二人と六賢者の協力もあり、敗北。
闇の彼方へと封印され、ガノンドロフはハイラルの地を去る。……その手に、トライフォースを残しながら、であるが。


【方針】
聖杯狙い。NPCだろうが参加者だろうが、誰だって殺す事が出来る。但しゾーマの願いは基本的に、ガノンドロフには許容出来るものではないので、機が熟したら令呪を以て葬る必要がある。


509 : ◆zzpohGTsas :2015/03/06(金) 02:01:08 JGI7q1Mc0
投下を終了いたします


510 : ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:31:39 xNY7pIh20
ただいまより投下します。


511 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:32:44 xNY7pIh20























――そんなのありすぎて、言えないよ










512 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:33:00 xNY7pIh20



「恋のゲンコーハンで〜タイホしちゃうぞ〜♪」

 華やかなステージでアイドルが声を張り上げる。
 一層、大きな声でそのステージを盛り上げるのは、客席の大量のオタクたち。
 ファンの規模は数千人。この歌が終われば楽屋に戻れる。

 国民的人気アイドル・速水玲香のステージであった。
 先ほど、ファン同士がもみ合いになってしまい、不幸にも一方がもう一方を殺害してしまう殺人事件が起きて、慌ただしいままにこのライブは始まったのだが、そんな騒ぎが嘘のように盛り上がっている。
 最初の挨拶の他に、そんな暗い事件の面影は残っていなかった。

 続けるのは不謹慎とも言われたが、結局、ライブは予定通り行われた。
 はるばる遠くから来てくれたファンもいる。
 それに。
 病院に運ばれる間もなく亡くなった一人のファンの為にも──。

 レクイエムとして、歌を捧げたい。
 そこにいるファンの為に歌い、そこにいないファンの為にも歌う。

 それから、もう一人。
 玲香には特別な人がいる。


 大好きな、金田一という人──。







 冬木市でのライブを終えて、楽屋のドアを開けた玲香であった。
 先ほど起こった不幸な殺人事件の事も、ここ数日玲香の頭を悩ませていたある事象の事も、このライブの真っ只中だけは忘れる事ができた。
 忘れられるからこそ、笑顔でファンの前に出ていけるのでもある。
 これまでも、玲香は何度か殺人事件に巻き込まれたり、父親が死んだり、父親が殺人犯だと知らされたり、その父親を殺した殺人犯が実の兄だと知らされたり、その兄が死んだり、殺人容疑をかけられたり、養母に裏切られたり、マネージャーが殺されたり、誘拐されたり、親友が薬浸けにされて自殺したりした事もあったが、その度に悲しい事は忘れてステージに立ったものである。
 もう慣れた、と言っていい。

 まだ多くの人の歓声が楽屋にまで届いている。
 アンコールも終えたので、これ以上は流石に玲香の体力的にもファンの前に出ていく事は無理であった。
 やめ時を忘れると、アイドルの方が倒れてしまう。次の仕事で、また別のファンたちに答える為にも、ここで一度、今回の仕事は終わり……というつもりだった。
 運営をしている人たちは、最初に起きてしまった殺人事件の処理で忙しいらしく、普通ならすぐ挨拶に来てもおかしくないのに、玲香の楽屋には来なかった。
 まあ、やむを得ない事だろう。玲香も疲労を感じていたので丁度良い。

「……」

 楽屋の中には、汗ばんだ玲香にタオルを送るマネージャーの姿があった。
 本来なら安息すべき場面だが、玲香は戦慄する事になる。

 そのマネージャーは、ライブを始める前──いや、もっと言えば、アンコール前に楽屋に一度戻った時のマネージャーとも違っていた。
 ……しかし、そのマネージャーの顔を玲香は知っている。
 彼こそが、ここ数日、玲香を悩ませている元凶であった。

「……ど、どうして、あなたがここにいるの?」

 そう訊かれて、マネージャーはにやりと頬を歪ませた。
 よく見ると、このマネージャーの足元には、成人男性の足が転がっている。
 知っているブーツ。知っているズボン。それは、先ほどまで生きていたはずの本当のマネージャーのそれだった。
 数分前まで、それは立って動いていたのではないか……?


513 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:33:15 xNY7pIh20

 死体──。血の匂い──。

 玲香も流石に死体は見慣れてきたとはいえ──それでも、不快感を示さざるを得ない。
 また、殺人事件が起きた。本日、このライブで二度目だ。
 先ほどまで生きていた生物が、その器だけを残して横たわるこの感覚。決して十代の彼女が平然としていられる事ではないかもしれない。
 しかし、偶然にも何度か殺人事件に巻き込まれる機会があった彼女は、まだ声をあげずに済んだ。

 今、タオルをこちらによこした、この男は「玲香のマネージャーを殺害して、新しくマネージャーの座を奪おうとした」のである。
 そして、少なくとも今、「マネージャーを殺害する」という段階までは成功したらしい。

「マスターと違和感なく行動を共にできるんだ。この方が、聖杯を手に入れるには都合が良いだろう?」

 犯人は返り血を浴びていなかった。
 20代ほどの実に若い容姿のその男──それは、速水玲香が呼び出してしまったサーヴァント、アサシンであった。
 その真名は、「七人目のミイラ」──六星竜一。

 数日前から、どういうわけか彼女の周りにいる。
 本来、玲香には呼び出す意思はなかったが、彼は突然現れ、玲香をマスターとして扱ったのである。
 右も左もわからない玲香に聖杯戦争のルールを教え、更に玲香を困惑させるに至った。それから、聖杯戦争というゲームが玲香の脳裏を掠めている。
 他のサーヴァントとマスターを殺しつくし、願望器を得るという不愉快なルールのゲーム。
 玲香は無視を決め込もうとしていたが、呼び出してしまった以上は、彼を撃退する術はなかった。

 七人目のミイラは、玲香の前にこんな手段まで使って現れたのだ。
 玲香も遂に、顔を青くして、七人目のミイラを前に言葉を発せなくなった。

「……まあ、アンタにやる気がないっていうなら、別に俺はそれでも構わないが、俺の居場所は作ってもらわないとな」

 やる気──つまり、他のサーヴァントとマスターを殺す気。
 居場所──つまり、それはかつて玲香のマネージャーがいるべきだった居場所。
 玲香にやる気がなく、居場所を作ってやる気がなくても、アサシンはやる気があり、居場所を自ら作ろうとする。
 彼はそういう男だった。
 そして、何より、わけもわからずに聖杯戦争に巻き込まれた玲香に対し、アサシンは「令呪」のルールを教えていない。
 凶行を止めようにも玲香にはどうする事もできない力関係が自然と生まれていた。

 この六星は、かつて、玲香の友人である金田一一が巻き込まれた六角村の殺人事件の犯人だという。
 玲香が巻き込まれた事件でも、巧妙なトリックを使う殺人犯は山ほどいたが、彼もまたその例にもれず、あらゆる手段を使って殺し尽くしてきたらしい。
 二人は金田一という共通ワードを持ってはいるものの、金田一という存在への向き合い方はお互い随分と異なっていた。
 玲香は、金田一は無二の親友であり、大切な人だと思っている。一方で、六星は金田一を、自分の犯罪を暴いた宿敵だと思っている。
 殺人を平然と容認できる玲香ではないし、六星は殺人の為に生きている。
 ……相容れない。マスターとサーヴァントの相性は最悪と言っていいだろう。

「……どうして……どうして、こんなに酷い事をするの?」

 玲香は、落胆に始まった。
 マネージャーとは親しくしていたが、まさかこうなるとは思いもしなかっただろう。
 確かに、これまで、玲香のマネージャーが殺人犯だった事もあるし、強姦魔だった事もあるし、親友の自殺に繋がっていた事もある。
 しかし、今回のマネージャーは決して罪のない良い人だったと思う。
 こんな風に、簡単に殺されて良いはずがない。

 そんな玲香の反発を、アサシンは一笑する──。

「酷い……? ……ハッハッハッ、甘いねェ、国民的人気アイドル・速水玲香チャンよ」

「……」

「人間を殺すのも虫を殺すのも同じ事さ……ちょいとナイフを捻ればあっというまだ」


514 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:33:33 xNY7pIh20

 玲香はいかにも唖然、といった様子であった。
 アサシンの感情は理解されないのも無理はないかもしれない。
 憎しみに瞳すら向けてきている。
 流石に、それでは不味いと思ったのだろう、一層、その反発が強くなると感じたアサシンは、声のトーンを落として、もう一度、玲香にちゃんと伝える事にしようとした。
 しかし──やはり、苛立った。

 アイドル、と浮かれている相手に全てを包み隠さず話すのも忍びない。
 六角村の殺人に関して──そして、六星竜一という男の生い立ちに関して生まれた問題について、何が問題だったのかを話そうと、もう一度改めて口を開いた。

「……元はといえば、あの村の連中が悪いのさ。恨むなら六角村の連中を恨むんだな」

「村の連中……? マネージャーさんは関係ないじゃない……!」

「フン。俺も、元はと言えば母さんたちを酷い目に遭わせた六角村の連中に復讐する為に俺は殺人マシンになったんだ。
 一人の人間がこんなにおちぶれるまで、最悪の事をしたのは六角村の連中だ。
 ……まあ、温室育ちのお嬢様にゃあわからないだろうがな。母親をメチャクチャにされた子供の気持ちなんて……」

 そんな言葉を発した時、不意に。
 アサシンに予想外の一撃が放たれた。

 ペチッ。

 ──頬を叩く警戒な音。

 こうして少女の強い反発を受けるのは、二度目の事である。
 アサシンへのビンタと共に、玲香はこんな言葉をかけた。




「甘えないで!」




「何だと!?」

 思わず怒りそうになるアサシンであったが、玲香は、怯える要素もなく、言葉を返した。

 そこには、先ほどまでの怯えた子羊のような玲香はいなかった。
 まるで、金田一少年や七瀬美雪の姿が彼女に重なる──。
 かつて、対峙した──心と勇気でで犯罪者に対抗しようとした少年少女に、彼女は似ていた。
 だから、アサシンはその瞬間、何も言えなかった。

「私だって、辛い事はいっぱいあったわ! 温室育ちなんかじゃない!
 小さい頃に誘拐されて本当のお父さんを殺されて……それからずっと私を誘拐した犯人をお父さんだと思って育てられて……小さい頃からずっと芸能界で生きて友達もいなくて……。
 しばらくして、そのお父さんも殺されて……犯人が実は生き別れのお兄ちゃんで……そのお兄ちゃんも死んじゃって……。
 それからまた誘拐されて……殺人容疑をかけられて……お母さんみたいに思っていた事務所の所長にも裏切られて……友達は自殺して……。
 何度も、一体どうしたらいいのかわからなくなった事はあった……。死にたくなる事だって何度もあった……。正直、今でも何が何なのかよくわからない……。
 でも、みんなそのくらい辛い事を抱えて生きてるの! あなたみたいな人だって世の中にはいっぱいいるわ!
 私は人を殺そうなんて思った事なんて一度もないし、誰かを殺して幸せになった人なんて、何度殺人事件に巻き込まれても一度も見た事ないっ!」

「……」

「……」

 二人の間に沈黙が流れた。
 肩で息をするほどに怒りを露わにした玲香と、気まずそうに目を逸らすアサシン。
 落ち着くには時間がかかったが、やがて、アサシンの方が口を開いた。








「……すまなかった」

「……」

「俺が悪かった」


515 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:34:22 xNY7pIh20







【クラス】
アサシン


【真名】
七人目のミイラ(六星竜一)@金田一少年の事件簿


【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具C
※幸運はEだが、宝具の効果により、対象殺害時には都合の良い事が起きやすい。


【属性】
混沌・悪


【クラススキル】
気配遮断:A
 サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。
 彼の場合は、普通の人間に紛れ、サーヴァントとしての本能を隠す事ができる。
 マスターのフリをしてマスターに接触し、殺害するといった戦法が可能なレベル。


【保有スキル】
不動高校:A
 強力な犯罪者の血と、それに付随する悲壮な過去。
 彼の場合は、愛している人間や無関係な人間も含め、十名の人間を躊躇なく殺害する事ができる殺人マシーンとしての特性を持つ。
なり替わり:B
 NPCをペナルティ殺害し、その戸籍を乗っ取って平然と「人間」として暮らす事ができる。
 特に「今度新しく付近の高校に赴任する事になった25歳〜30歳程度の高校教師」が有効手である。
 顔が変わるわけではないので、殆ど街の人間とかかわりのない人物としかなり替われない。
 今回の場合は、マスターのマネージャーを対象に発動済。
芸術犯罪:B
 殺人に芸術性を求め、死体に何らかの細工を施す趣向。
 彼の場合は、「かつての事件になぞらえて被害者の体の部位を大きく切断する」という行動をわざわざ行う(最初のトリックに必要だったとはいえ)。


【宝具】
『七人目のミイラ』
ランク:EX 種別:対人 レンジ:1〜5 最大補足:1〜20
 都合良く殺人事件が起きる『金田一因子』を発動させ、殺人者側としてかなり手の込んだ殺人が何故か都合良く上手くいくようになる宝具。
 この宝具は常時発動しており、この宝具によって死んだNPCは「ペナルティ」には抵触しない(聖杯を以てしても止めようがない為)。ある意味究極のバグ。 尚、効果が同じであっても別名の宝具(「放課後の魔術師」、「地獄の傀儡師」など)が幾つも存在する模様。
 彼の場合、「直接手を下さなくても勝手に復讐相手が心臓発作で病死する」という高い精度を持つほか、「教会で死体が発見された夜に誰も教会を見張らず寝静まる」(その隙に死体を入れ替える)、「五塔夫人殺害の際にその場に居合わせた美雪が都合よく気を失う」、「金田一が通りかかる瞬間に何故か突然教会の十字架が降ってくる」、「集中線まで使って現れた警察が雑魚」、「高校側が何故か新任教師の顔を知らない」という感じで、この宝具をかなり上手に運用している。
 サーヴァント自身の低いパラメーターを補う強力な宝具であるが、マスターやサーヴァント自身が死ぬパターンが充分にありえるというのが問題点。

『芸術的な死体』
ランク:B 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
 父・風祭淳也から受け継いだ、「(物理的に考えて不可能な)凄まじい速さで人体を解体し、エキセントリックな死体に細工する」という特異な力。
 彼の父である風祭は、燃え盛る教会の中、ナイフだけで死体×6を瞬時に解体して七人に見せかけるというトンデモない離れ業を行っている(狩猟が趣味で動物の身体構造をよく知っているから…らしい)。
 それと同様に「七人目のミイラ」も、死体を切り刻みまくっている。
 彼は、「刻んだ死体を他人の家の鎧の中に入れる」、「隣で美雪が寝てる中で死体を切り刻んで館ごと燃やす」という行動を行いながら、誰にもバレずにそれを行っており、死体解体行為・死体装飾行為に対する異常なまでの敏捷性が備わっているのだろう。
 目安としては、だいたい一分程度で人間の死体を「芸術品」に仕上げられるものと思われる。

『禁断の果実(エデンのリンゴ)』
ランク:B 種別:対作品 レンジ:∞ 最大捕捉:-
 他の犯罪者が利用したトリックを無自覚に盗む宝具。
 このトリックの運用により、書き手は投下作品そのものが闇に葬られかねないスリルを味わう事ができる。
 また、いかに有名なトリックであっても、他のマスターやサーヴァントが「あの小説で使われていたトリックだったから」という理由で彼の使用したトリックを暴いたりはしない。

【Wepon】
 ナイフ


516 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:34:35 xNY7pIh20

【人物背景】
 「金田一少年の事件簿」の「異人館村殺人事件」に登場する殺人鬼。
 多くの殺人者を輩出した実績のある私立不動高校の教師・小田切進の正体。

 普段は温厚な先生を演じているが、「本物の小田切進」を殺害してなり替わり、一年近くも平然と教師を続けてきたらしい。
 母ともども戸籍がなく極貧生活だった彼がどうやって高校教員レベルの知識を得たのかは謎だが、とにかく物凄く頑張ったのだろう。

 実は青森県六角村で生まれた風祭淳也と六星詩織の息子であり、父親の顔は知らず、母親と一緒に暮らしてきた。
 詩織はかつて、村にある大麻畑を告発しようとした両親を目の前で殺害され、自らの六人の姉妹と一緒に教会で生きたまま燃やされそうになってしまった過去を持っており、村人に強い憎しみを抱いていた。
 生き残ったものの、職と住まいを転々とする極貧生活を、生まれた子供と共に送り続ける母は、もはや復讐に狂う殺人鬼となり、愛する人との間に生まれた子供・竜一さえも復讐の道具に利用したのである。
 竜一は、そんな母によって、殺人術・格闘技などを教え込まれ(詩織はどこで殺人術を学んだんだ…)、感情のない殺人マシーンとして育てられる。

「お前は母さんの代わりにあの連中に復讐するんだよ…お前はあいつらを殺す為に生まれてきたんだから!!」

 そんな竜一は、さまざまな殺人術を仕込まれた上で、「最後の仕上げ」として母を殺す事を命じられた。
 涙ながらに母親を殺した後は人間らしい感情を失い、「何人殺しても何も感じなくなった」と言っている。
 七人目のミイラという悲しき犯罪者はこうして誕生した。

 小田切進を殺害して不動高校に赴任したのはその後で、六角村の名家の娘・時田若葉(不動高校に入学)をターゲットにするのが目的だった。
 若葉を利用する為にひとまず恋愛関係になって近づくも、一緒にラブホテルから出てくる瞬間を激写され(六星の自演)、若葉の父親が怒って政略結婚させるために村に帰すところから物語は始まる。
 六星は金田一一、七瀬美雪とともに「若葉を政略結婚の魔の手から取り返す!」という名目で六角村に行き、そこでザルすぎる村人たちの監視を乗り切って、時田若葉、草薙三子、一色寅男、五塔蘭を殺害。兜霧子も若葉を教唆して殺害。
 復讐相手の一人である時田十三はこいつの凶行で娘を殺されたショックからか、心臓発作を起こして勝手に死んだ。
 さらには、金田一に真相を明かされて手詰まりと思われた段階からも、兜礼二、連城久彦を殺害。美雪を人質にしたり、金田一を猟銃で撃ったりと大暴れした。
 最終的に、父である風祭に殺害されるが、風祭は大麻畑を燃やしつつ、寄り添うようにして自害。
 その結果、この事件では、金田一、美雪、俵田(警察)、モブを除く、全ゲストキャラが見事全滅した。ここまでやったのは、20年以上の歴史ある金田一少年の事件簿でもこいつだけ。

 今シリーズでも彼に次いで異常な犯罪者である遠野英治、的場勇一郎もそれぞれ同じ不動高校の生徒と教師なので、もしかしたら高校内ですれ違った可能性さえある。そう思うと恐ろしい。
 彼ら三人の異常犯罪者が同じ時期に学校に揃っていたというのは、もはや「キセキの世代」と呼んで然るべき時代であろう。

 人を虫けらのように殺す犯罪者としての側面を持ってはいるが、普通に育っていれば心優しい素直な人間に育っていたようで、利用する為に近づいたはずの若葉にもだんだんと愛情が芽生えていた模様。
 母や若葉を殺害する時には涙を流しており、殺人マシーンとなりながらもどこかで他人を愛していたようにも見える。

 六角村の住民が全滅した後にわかったのは、「若葉は六星に殺害される時に抵抗していなかった事」、「六星は切断した若葉の首を見晴の良い丘に葬った事」、「」

 メチャクチャ撃たれた為に死んだかと思われていたが、「金田一少年の一泊二日小旅行」にて生存していた事が発覚。
 六星に一瞬でやられた警官二名が実はメチャクチャ強い警官だった事や、連城が実は既に百人殺している殺し屋だった事が判明し、その耐久性や戦闘力の高さが化け物じみている事が明かされた。
 この設定を流用すれば、サーヴァントとして身体能力込みでそこそこ強い事になる。

 ちなみに、以上の内容は全て、「金田一少年の事件簿」の事件のネタバレになるので、本編を読んでから読むように。


【願い】
 不明であるが、他のマスターやサーヴァントを殺すつもりである。


517 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:35:04 xNY7pIh20




【マスター】
速水玲香@金田一少年の事件簿


【マスターとしての願い】
 ない。
 いや、あるといえばあるが、ありすぎてどうしようもない。


【能力・技能】
 アイドルとしての抜群の歌唱力と美貌(彼女がテレビに出ない日はないらしい)。
 常人なら三回は自殺してもおかしくない悲惨な目に遭ってもめげないメンタル。
 どう考えても異常としか思えないほど曲がりくねっている絶叫マシーンが平気。
 手作りの結構おいしそうなスイーツを作れる(っていうか、本当に手作りなのか…?そういう演出じゃないよな…?)。
 相対したサーヴァントは勿論、マスター・関係者の幸運値をD〜Eランク相当に下げる事が可能。


【人物背景】
 「金田一少年の事件簿」の「雪夜叉伝説殺人事件」以降に登場する準レギュラーキャラ。
 作中世界における人気アイドルで、彼女がテレビに出ない日はない。漫画には出ない事の方が多い。

 不幸なキャラクターが多い「金田一」の中でも不幸オブ不幸といえば、もうそれは彼女の枕詞と言ってもいい。
 殺人事件に巻き込まれるのは当然として、何度も誘拐されたり、酷すぎる出生が明かされたり、体を迫られたり、濡れ衣を着せられたりする。
 しかも、既に美雪とラブラブな金田一に想いを寄せるキャラとして描かれるので、負け確定ヒロインとして、メタ的には更に哀れな感じになっている。
 死ぬ気配を見せた事が一度もないのに、googleで検索すると何故か「速水玲香 死亡」と予測変換が出るなど(2015年3月現在)、検索した奴は何考えてるんだと言いたくなる事案まで発生中。

 ヒロインである七瀬美雪も、殺人鬼に定期的に襲われたり、頭をハンマーで殴られたり、太ももをボウガンで撃たれたり、ひき逃げで重体になったり、殺人容疑をかけられたりする事はあったが、玲香と違って不幸な生い立ちはなく、実際そんなに不幸ではない(強いて言えばイトコがとばっちりで顔をグチャグチャにされて殺された程度だが美雪自身はそんなに気にしていない)。
 一般人である美雪が直接各事件の奥深くにあるドラマに関わらない構造のためか、不幸のドラマが玲香の方に全部やってくる。出てくるとだいたい悲惨な目に遭う。
 美雪と違ってそんなに殺人事件に巻き込まれない(とは言っても4〜5回くらいは巻き込まれているが)ので、最近の美雪が死体を見ても何も感じなくなっているのに対し、玲香はやはりまだ少し慣れていない感じがある。
 美雪を除く中学校までの幼馴染が80パーセントくらいの割合で殺人犯になる、または殺される金田一も結構不幸だが、あいつは存在そのものが元凶なので除外。

 まずは、基本的なパーソナルデータを簡単に明かしておく。

 年齢は16歳〜17歳。
 身長157cmで体重は36kg。血液型はO型。おとめ座。スリーサイズは83・55・84。体重からしておかしいが、スリーサイズのせいで余計に不自然になっている。
 好きな食べ物はメンタイコ。飼っている猫の名前はポチ。3歳で記憶を喪失するが、記憶喪失前は福岡県に住んでいた可能性が高い。なので無自覚で咄嗟に福岡弁が出る事がある。
 絶叫マシーンが好き。ブログをやっている。アイドルだが首にネックレスなどの物が巻けない。
 あの国民的大人気女優・ともさかりえと天下を二分するアイドルらしい(東原亜希ではない)。
 本名は「梓」だが、記憶をなくしているので本人は知らなかった。

 アニメの声優は飯塚雅弓。「殺人犯になって金田一を欺く」というエキセントリックなセガサターンでのゲーム版では倉田雅世、パチンコ版ではゆかなが演じている。
 ドラマでの俳優は中山エミリ(堂本剛主演版)、酒井若菜(松本潤主演版)。山田涼介主演版には未登場。亀梨和也主演版なんてない。
 ちなみに、松本潤の主演版ドラマでは、金田一の幼馴染という設定になっている。父子家庭で育ったが、父親が中学生の時に死亡という、比較的不幸でもない設定に改変。
 とはいえ、一応出自は漫画版のつもりなのでそれに準拠で。


518 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:35:31 xNY7pIh20

 では、ここからは彼女が登場した各事件を順番に振り返ってみよう。

 初登場は「雪夜叉伝説殺人事件」。ここで金田一少年と初遭遇してしまう。あと剣持、明智にも遭遇。
 テレビのドッキリの為に北海道の背氷村に来た彼女は、ロケのメンバーが次々に「雪夜叉」によって殺害される連続怪奇殺人事件に巻き込まれる。
 この時点では、着替えを盗撮されて明智に殺人の濡れ衣を着せられた程度で、まだそんなに不幸ではない。
 初期は「さっきのお礼よ…!//」のようなツンデレなキャラ付をされていた感じもあるが、その後は別にそんな事はなくなった。
 あと、クソババア女優との共演を嫌がるシーン、未成年だがタバコを吸っているシーンなど、悪女のような素振りをあえて見せる場面もあったが、こういう事もなくなった。
 正直、加納りえとかいうクソババア女優は業界でも嫌われていたうえに、人間として最低な事をして事件の原因を作った挙句、最初に殺されるので、玲香に嫌われても仕方がない。
 今回の犯人は玲香とは関係あるようでほとんど無関係なロケクルーの綾辻真里菜さんなので、実際そんなにダメージはない。その後の事件の犯人はだいたい彼女の関係者になってくるのだが…。
 そして、何を間違ったのか、今回の事件で金田一に惚れてしまい、以後、「タロット山荘」などでわざわざ金田一をテリトリーに招き入れてみすみす殺人事件を発生させてしまう事になる。
 
 次の登場が「タロット山荘殺人事件」。「雪夜叉伝説」では、正ヒロインの七瀬美雪は金田一に同行していなかったので、美雪との初顔合わせ。
 父親である速水雄一郎が登場する。タイトルにある「タロット山荘」は、雄一郎が経営する山荘である。
 引退するつもりでここに引きこもったのでメディアでは一時失踪扱いになったが、金田一を招待して本心を打ち明けようとする。が、芸能関係者やオタクまで一斉に押しかけてきてしまう。
 芸能レポーターや所属事務所の社長の赤間といった気持ち悪い中年に体を狙われていた事もあったが、こいつらは雄一郎によって無事殺害される。
 このペンションの為に赤間に5000万円の借金がある事や、「テレビに出ない日はない」くらいの人気アイドルなのに安月給な事が明かされた。芸能界の闇である。
 雄一郎は、金田一にネチネチと遠回しに「あんたが殺したんでしょ」、「個人的に犯人を暴きたくないから自首してほしいんだよねー」みたいな事を言われ続けて、遂に怒って金田一も殺そうとしたがそれは玲香が来たおかげで助かった。
 玲香的には実家で殺人事件が起きている時点でアレな感じもするが、まあ玲香の体を狙っていた中年二人の死は玲香にとってプラスなのでここまではまだそんなに不幸じゃない。

 しかし、二件の殺人事件だけではまだ安心…と思っていたのもつかの間、玲香の最愛の雄一郎が不審死を遂げてしまう。
 自殺と思いきや、「いや、これは自殺に見せかけた巧妙な殺人事件だ!」と推理モノっぽい展開になり、ちゃんと雄一郎以外にも犯人がいる事が明らかに。
 最愛の父親が殺された…というだけならまだマシだったのだが、彼女の不幸はこれだけではなかった。
 それは、金田一の公開推理で明かされる事になる。

 玲香は実の父を喪ったかに思われたが、実は雄一郎は、3歳の玲香と兄を誘拐し、目の前で本当の両親を絞殺した誘拐殺人犯だったのである。そのトラウマが原因で玲香は3歳までの記憶をなくし、首に物が巻けなくなっていた。
 ちなみに、雄一郎を殺害した犯人は、玲香のマネージャーの小城拓也という男。この小城が実は、玲香の本当の兄で、彼も最後には玲香を庇って雪上で死亡してしまう事になった。ひどい。
 父親だと思っていたら実は誘拐犯で、そいつが自殺したと思ったら実は殺されていて、マネージャーは優しい人だと思っていたら実は父親を殺した殺人鬼で、実の兄だった。何を言っているのかわからねーと思うが(ry
 もう説明しづらいので単行本を読んでほしい。


519 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:35:46 xNY7pIh20

 今回の事件で、「本当の父が殺されていた」、「育ての親が実は本当の父を殺した殺人犯でしかも死んだ」、「兄が育ての親を殺した殺人犯でしかも死んだ」という酷い目に遭った。
 それにしても、「あなたは玲香に大事に想われているからできれば自首してほしい」というような事を雄一郎に言い続けたくせに、玲香の実の兄は玲香の前で公開処刑する金田一は頭おかしい。
 正直、金田一がみんなの前で小城の正体を暴露しなければ、玲香が一人で外に出ていって死にかける事も、それを庇って小城が死ぬ事もなかったのでは…(金田一の公開推理の犠牲者は決して彼らだけではないが)。

 あと、アイドルオタクによる異常としか言いようがないストーカー行為(ハッキングして玲香の居場所を突き止める、玲香と長く一緒にいたいからロープウェイを壊す)を受けていた事も判明。
 社長にもレポーターにも体を迫られ、ファンにはストーカーされ、親父はクズでマネージャーは殺人鬼……アイドルって大変だね。
 それから、金田一を助けようと吹雪の中に飛び込んだ美雪を見て負けヒロイン確定を悟ったが、最後には新曲「あきらめないわ」を美雪に向けて送る事で宣戦布告。色々あってもやはり前向き。
 その後もなんだかんだで登場はするが、事件に本格的に関わる機会はそんなにないので省略。

 次の本格的な登場が「速水玲香誘拐殺人事件」。シリーズ最大の殺人鬼・高遠との初遭遇(のはず、変装だが)。
 速水玲香が誘拐された殺人事件はとっくの昔にあるはずだが、またまた誘拐されて殺人事件に巻き込まれる事になる。人生で二度目の誘拐+殺人。
 とはいえ、ハッキングで移動経路を特定して実家までやって来るオタクまでいるのに誘拐が二度目で済んでいるのは幸運かもしれない。
 まあ、今度はマネージャー・安岡保之と一緒にヤバいピエロに誘拐され、マネージャーが殺害され、気絶するほど強く頭を殴られ、母親のように慕っていた(養子に迎えようとしてくれていたレベル)事務所の社長に見捨てられたというだけの話である。
 どうでもいい誘拐事件の真相はというと、安岡が実は強姦魔(厳密には、仲間に真奈美を強姦させた)で、安岡保之の妻の真奈美がそれを知って殺害…という流れらしい。玲香は完全なとばっちりだった。
 一応、今回は、生き別れになった玲香の母(「タロット山荘」の小城の母でもある)が登場しており、これまた実は芸能界では大物女優な三田村圭子である。彼女は、家族よりも芸能界を選んだのであった。
 しかし、そんな彼女が、今回は実の娘の為に多額の身代金を用意したり、玲香を労わっておにぎりを作ったり、割と救われる場面が多い。
 玲香が唐突に「うまか…」とつぶやくシーンは本来なら感動的なシーンのはずだが、何故か笑える。
 ちなみに、三田村が玲香の母だと気づいたのは金田一で、玲香は最後まで気づく事はなかった。この人が名乗りをあげれば多少救われるんじゃないかなぁ…とも思うんだが。
 まあ、これも精神的苦痛に加え肉体的苦痛まで伴ったので、割と酷いかもしれない。精神的にダメージを受けるのは玲香、肉体的にダメージを受けるのは美雪の役割だったので尚更。

 「金田一少年の決死行」では一応、(終わらなかったが)最終回だから出てくる。
 殺人容疑(ちなみに高校二年生の一年間で四度目)のかかった金田一を匿い、最後に金田一に金をたかられるくらいしか出番がない。

 短編だと「速水玲香と招かれざる客」が代表的登場話になる。
 案の定、殺人事件に巻き込まれるが、「イベントが脱獄犯(殺人鬼)の乱入で台無し」、「暴走した殺人犯に狙われそうになる」という割と大した事ないものだった。
 今回は殺人事件の発生を終盤まで知る事なく、楽しそうにイベントしていたら実は裏で殺人事件が起きていたという感じなので比較的ダメージが薄い。
 とはいえ、金田一しか答えがわからないようなクイズゲームイベントで金田一と二人きりになろうとしたところで、天文学的な確率で脱獄犯がその答えを全て当ててしまい、金田一と二人きりになり損ねてしまった。
 未成年の男女+凶悪殺人鬼というヤバい環境で一つの部屋に閉じ込められる事になっており、読んでいる側からすれば超危険な状況になっていたが、金田一と剣持警部のお陰で助かる。


520 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:36:01 xNY7pIh20

 あとは、「錬金術殺人事件」。多分だが怪盗紳士との初遭遇(変装だが)。
 「ドアを溶かして侵入した後、またドアを溶接して密室を作る」というこれまたエキセントリックすぎるトリックで有名。なんでバレないの。
 ここでも案の定殺人事件に巻き込まれるが、今度は容疑者認定されて監禁される程度で済んだ。精神的に追い詰められて階段から転落したが大した事はない。
 金田一と美雪の絆を前にして落ち込む事もあったが、最終的には美雪と親しくなり、「三人でデート」する事になったので、割と恋愛面では前向きな展開になっているのかもしれない。
 謎解き場面では、芸能界の友人・夕凪はるかが薬浸けにされ、自殺させられた事が明かされるが、まあその程度は金田一キャラでは珍しくないので割とマシ。
 ちなみに、はるかの兄である神丘風馬が今回の殺人鬼だが、こいつの勘違いで玲香はゲス扱いされて犯人の罪を着せる為のスケープゴートにされる羽目になった。
 まあ、正直こんなんでも比較的マシだと言わざるを得ないのが現状である。
 今回もマネージャーが過去の事件に関連していた事がわかるが、当人には自覚がないので殺人鬼や強姦魔よりマシだろう。

 と、ここまでの不幸をお手軽にまとめると、

・幼い頃に、母親が家族と仕事を天秤にかけて仕事を選んだ
・その後、兄と一緒に誘拐され、父親を目の前で殺害される
・更にその後、記憶を閉ざし、その誘拐犯を父親だと思って生活し続ける
・3歳までの記憶は閉ざされる
・誘拐犯親父によって、5歳から劇団に入れられてしまい、小さい頃に友達と遊んだ記憶が殆どないらしい
・その親父がペンション作るために玲香の事務所の社長から5000万円も借金
・その事務所にいる間中、毎日のように働いているのに安月給
・雪夜叉の殺人事件で金田一とか剣持とか明智とか厄介な奴らと遭遇してしまう
・一応知り合いが頭をカチ割られてグロ死する瞬間を見る事に
・芸能レポーターに体を狙われ、事務所の社長に体を狙われるがまあ両方死んだ(もっと言うと雪夜叉でも迫られた事があるがそれはドッキリなのでまあ)
・父親が死んでその死体をうっかり見ちゃう
・と思ったら父親は実は誘拐犯だった事が判明、犯人は彼女のマネージャー
・その犯人は実の兄だった事が明かされ、とりま最終的には玲香の目の前で死んだ
・新しい事務所に移籍して社長を母親のように慕い、養女になる事を考えるが、その社長の本性は金の亡者の人間のクズ
・マネージャーと一緒にヤバげなピエロに誘拐される(人生二度目)
・ピエロに多少乱暴され、丸一日気を失わされる
・ピエロに目の前でマネージャーが射殺される(マネージャーが目の前で死んだのはこれで二回目)
・そのマネージャーが実はアイドルを強姦させたりする人間のクズだった事が判明
・客船まで貸し切って金田一と二人きりになろうとしたイベントに脱獄犯が紛れ込み台無し
・芸能界の親友が薬浸けにされて自殺
・その加害者みたいな扱いをされて殺人鬼のスケープゴートにされる
・そのため、知り合いたちに殺人鬼扱いされて精神的に追い詰められ、階段から転落


521 : 速水玲香と暗殺者の英霊 ファイル1 ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:36:11 xNY7pIh20

 と、まあ改めて羅列すると酷いものである。
 よく「気を失ったキャラが次のシーンではベッドの上」というシーンがあるが、彼女は現在までの少ない登場で三回もそんな状態になっている。
 「アイドルが重大事件を起こした、又は誰かの死に関わったマネージャーと」事を「1マネージャー」、「アイドルが人間のクズな社長の事務所に在籍する」事を「1社長」の単位で表した場合、彼女は現在3マネージャー2社長という好成績を収めている事になる。
 あと、社長秘書の正体がマジキチ連続殺人鬼の高遠だったり、マネージャーの奥さんが殺人鬼だったり、彼女に関わる芸能関係者やファンの民度が極端に低かったりもするが、その辺は割と普通かもしれない。
 幼少期から、人が殺されるその瞬間を見てる事も珍しくない。父親も兄もマネージャーも目の前で死んだ。養父は死体を目にし、養母にしてくれようとしたババアは近々死ぬ。
 周囲に殺人容疑をかけられて責められ、人間不信になった回数は二回。人に裏切られてヒスを起こす事もあった。
 タロット山荘の時も人間不信になって飛び出していった事があるが、ぶっちゃけ人間不信にならない方がおかしい。既にまともに人間と会話できなくなってもおかしくない。
 それどころか、金田一ワールドでは普通は殺人鬼側に回ってもおかしくないレベルである。
 悲劇的な過去を持つ復讐鬼が多数登場する金田一の中でも、「殺人鬼でも被害者でもないくせに不幸の代名詞扱い」という時点でヤバい。頭おかしい。
 ふと考えてみると、誘拐クソ野郎に殺され、父親の座を奪われた本当に玲香パパも凄く可哀想かもしれない。

 わかってると思うが、以上の内容は全て、「金田一少年の事件簿」の事件のネタバレになるので、本編を読んでから読むように。


【方針】
 聖杯戦争はしない。


522 : ◆CKro7V0jEc :2015/03/06(金) 17:38:41 xNY7pIh20
投下終了です。
アサシンの状態表に関しては、「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」の候補作として使用した拙作のものを改良して再利用しています。
ご了承ください。


523 : 名無しさん :2015/03/06(金) 23:44:10 QAu1ObeM0
>>501 衛宮士郎&アサシンについておかしな所があるので指摘させていただきます。 まず一つ目に衛宮切嗣に関してですが、オリジナルの設定で何の説明もなしにサーヴァントとして召喚されたことに違和感を感じました。切嗣は英雄という存在を憎悪しており、サーヴァントになれるとは到底思えません。加えて、原作的に英霊化するとは思えない部分を書かずに、サーヴァントになったと書かれても意味がわかりません。サーヴァントとして呼ばれたからには何かを望んでいると見受けられますが、何故書かれていないのでしょうか。正義の味方というスキルについても悪だけにステータスがアップすることも理由が明記されていません。切嗣が憎んでいるのは悪という枠組みだけではなく、戦争、流血などといったもの全般です。場合によっては正義も、憎いとさえ考える切嗣が何故悪だけに対してステータスがアップするのでしょうか。加えて、宝具である固有時制御もサーヴァントとなった状態では世界からの修正力も働かないと考えています。起源弾に対しても、必殺の魔弾と書かれていますが、あくまで必殺は魔術師に対してであり、それ以外に対しては特に致命傷を負わせる銃弾ではありません。他にも、原作では起源弾は弾数が限られていました。宝具となった現状は、弾数無制限で撃てるのでしょうか。その部分を明確にしてくれないと、困ります。 二つ目に、感想についてですが、少し言葉が悪いといいますかキャラに対して罵り貶している部分があるのはどうかと思います。見ていて気分が悪くなりました。書き手側としてもこのような感想を頂いても嬉しくはないと思いますので綺麗な言葉で感想を書かれるのはいかがでしょうか。


524 : 名無しさん :2015/03/06(金) 23:55:01 Vy3zJYXU0
>>523
長文による指摘をされていますが、俺ロワである以上>>1氏に最終的な決定権があると思うのですが。

>見ていて気分が悪くなりました
>書き手側としてもこのような感想を頂いても嬉しくはないと思いますので
「貴方が不快に思った」という個人的な意見と「書き手がそう思っているだろう」という推測を一緒くたにしない方が宜しいかと。


525 : 名無しさん :2015/03/07(土) 00:54:00 QOJaEZ7I0
>>523
君の長文の方が見ていて気分が悪くなる
思いっきり私怨入ってるよね


526 : 名無しさん :2015/03/07(土) 08:47:23 5jUjT46E0
>>532
その書き方だと、自分の書いたものに気に入らない感想が与えられたからその腹いせって形にしか見えない。
ぶっちゃけ、嫌なら指摘なんかせず見なければいいだけ。


527 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/07(土) 23:34:06 t95xIeWg0
皆様、投下乙です。
投下します
私は感想貰うとたとえネタでも飛び上がるくらい嬉しいですけどね


528 : 今にも落ちて来そうな空の下で:re ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/07(土) 23:35:41 t95xIeWg0
彼らが眠れる奴隷であることを祈ろう――



目覚めることで――



何か意味のあることを切り開いて行く眠れる奴隷であることを――



◇ ◇ ◇



オープンカフェ。その中の一席に彼はいた。
注文も出さず、彼はただ、そこに座っていた。
テーブルの向こうには空き席が1つある。
少し暑い。昼時だからだろうか。スーツの上着を脱ぎ、椅子の腰掛けにかけた。
彼がオープンカフェに来ているのも昼休みで腹ごしらえに来たかもしれない。
かもしれない、というのも可笑しいが、彼はどうも、なぜ自分がここにいるか分からないようだった。
なんとなく、知らない内にオープンカフェのテーブルに座ったのだろうか?
周囲を見回してみる。
ここは比較的都会といえる場所なのだろう、オープンカフェから視線を逸らせば道行く人は様々だ。
商談のためにスーツ姿で歩くサラリーマンに暇な時をショッピングで潰す若者。
空から落ちてきた太陽の光が街の人を動かしているようだった。
オープンカフェ内に視線を戻す。
ああ、やはり昼時だ。オープンカフェにごった返す人々。
みなランチを食すためにここに来ているのだ。彼が座るテーブル以外はみな満席だ。

「ああ……失礼……相席、いいかい?」
「ん、ああ、構わんよ」
「悪いな…このオープンカフェ、満席みたいでな…ここ以外空いてなかったんだ」

彼がしばらく呆けていると、ある男が声をかけてきた。身長は高く、190cm弱はある。
白人で、ヨーロッパから来たことが分かる。
彼は少し驚いた様子を見せながらも、丁寧に応対する。
その男は席に座ると、彼を不思議そうに見てから尋ねた。

「なあ、おっさん…注文、頼まないのかい?」
「うむ?店員からやってくるんじゃあないのか?」

彼はおっさんと呼ばれても怒ることなく、その質問に答える。
彼は頭部に白髪が目立ち、頬がこけていた。どこか疲れているような印象を持たせる中年の男性だった。

「いや、このカフェはまずレジに行かなくっちゃあならない。そこで注文してから席に座るんだ」
「そうだったのか。すまないな、私はこういうところにあまり来たことがなくてね」
「それで、何を注文するんだ?俺はイタリア出身だからイタリア料理をオススメしたいところだが、せっかくのジャポーネだし別のも頼んでみたい」
「…なら、君に任せてみようかな。私としても何を食べるか決めかねていたところだ」

彼はとりあえずカフェへの注文を男に一任した。
しかし、男は注文をしにレジに向かおうとせず、しばらく黙って彼を見つめていた。

「…私の顔に何かついているのか?」
「いや…その、おっさんは何か悩み事があるのか?」
「………」
「心に何かしょい込んでいるような浮かない顔をしている」

彼は男に会ってから、愛想笑いを見せることはあってもすぐに口元を一の形に戻し、思いつめた表情をしていた。
この男は彼のことを心配しているのだろうか。

「ああ…実は私には気がかりなことがあってね。…変なことを口に出すかもしれないが、許してほしい」

確かに、彼には心に抱えている疑問がいくつかあった。
突拍子もないことだが、この男に話そうと決めた。

「私は……もう死んだはずなんだ」



◇ ◇ ◇


529 : 今にも落ちて来そうな空の下で:re ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/07(土) 23:36:32 t95xIeWg0



彼の名は、夜神総一郎。二代目Lこと夜神月の父であり、Lや部下達と共に犯罪者を殺す存在「キラ」を追っていた。
総一郎はマフィアから名前を書かれた者が死ぬ「デスノート」を取り返す作戦に参加した際、
デスノートにメロことミハエル=ケールの名前を書くことができずにマフィアの生き残りの凶弾に倒れる。

死の床で、死神の目で月の寿命が見えたため月がキラでないと確信し、
後のことは月達に任せると伝えた瞬間、総一郎はどこだか知らないオープンカフェの中の一席にいた。
空を見上げると今にも落ちてきそうだった。

総一郎は今までの経緯を男に全て話す。
男は黙って総一郎の話を聞き続けていた。

「――今まで犯人と疑われていた息子が無実だと分かった。その事実があるだけで安心して死を受け入れられる。なのに私はまだ、こうして生きている。何故だろう?何か思い当たる節はないか―――レオーネ・アバッキオ?」
「……どうやら、あんたが死神と取引をしたっていう話は嘘じゃあなさそうだな。まさか名乗ってもいないのに名前を言い当てられるなんてな」

総一郎は未だ健在である死神の目を通じてその男――レオーネ・アバッキオに問いかける。
名乗ってもないのに名前を言い当てられるアバッキオは動揺を隠せない。

「私の『死神の目』は、人の顔を見ると名前と残りの寿命が見えるのだが、君の寿命が見えないんだ。その点も私としては不可解だ」

総一郎が持っていた疑問の一つ目は、自分が死んだはずなのに今、ここで確かに生きていること。
二つ目は、目の前にいるアバッキオという男の寿命が見えないこと。
デスノートの所有者の特徴として、死神の目を通して寿命が見えなくなるというものがある。
アバッキオが相席を求めてきたときはキラかと思い、驚いたがキラがヨーロッパ系の人間という事実はLの推理と大きく矛盾している。
この男はキラではない。長年キラの連続殺人事件に関わってきた総一郎は自然と察することができた。
キラでないならば、寿命が見えないことに何か他の理由があるのではないか、もしかしたらこの男は何か知っているのではないかと思い、アバッキオに抱いていた疑問を吐露したのだ。

「そうだな…答える前にこっちからも聞かせてくれ。『聖杯戦争』を知っているか?」

アバッキオは総一郎の質問に質問で返す。

「…聖杯戦争?…知らないな」
「よおく頭の引き出しの中を根掘り葉掘り探し回ってみろ。絶対にあるはずだ…聖杯がおっさんの頭の中に入れた記憶がな」

そう言われて総一郎はなんとか思い出そうと目を閉じた。
総一郎の54年の生涯が詰まっている記憶の海。その中で「聖杯戦争」をキーワードに検索をかける。
すると、確かに聖杯戦争に関する記憶が頭の表層に出てきた。
誰に教えられたかもわからない、デジャヴに近い感覚だった。
総一郎は目を見開き、愕然とする。

「…どうやら思い出したみてーだな」
「……あ、ああ……」
「おっさん、俺は何だと思う?」
「…『シーカー』…私のサーヴァント。真名は…レオーネ・アバッキオ…」

そう、アバッキオは総一郎のサーヴァント。そして総一郎は聖杯に冬木へ招かれた存在だったのだ。
アバッキオの寿命が見えなかったのは彼がサーヴァント、つまり、既に死亡している存在だったからだ。


◇ ◇ ◇


530 : 今にも落ちて来そうな空の下で:re ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/07(土) 23:37:14 t95xIeWg0



しばらくの間、総一郎は顔を手で覆い、俯いていたが今は落ち着きを取り戻している。
テーブルの上には二杯のイタリアンコーヒーが置かれていた。
もちろんアバッキオのチョイスである。

「…なぜ私はその聖杯とやらに呼ばれる必要があったのだ?」
「そこまでは俺にもわからねえ…」
「確かに、事件は私の目が黒い内に解決したいとは思っていた。聖杯に願えば生き返ることもできる…だが、だからといって人を殺すなど決して認められん…!」

サーヴァントという英雄を味方に授かり殺し合うという聖杯戦争に総一郎は怒りを燃やす。
総一郎はこれといった願いを持っていない。
志半ばで命を落としたが、それは月をはじめとする仲間達が受け継いでくれるはずだ。
では、ろくな願いも抱かず、なぜ聖杯に呼ばれたのだろう?

そんな総一郎を見て、アバッキオは警官になったばかりの頃を思い浮かべ、一種の羨望を覚えていた。
――俺もあの時、挫けずに正義を持ち続けていれば…おっさんみたいな立派な警官になれたかもしれない。
この総一郎という男はキラという殺人犯がどんなに危険だとしても決して諦めずに犯人に向かう『意志』を貫くだろう。
この聖杯戦争でも――。
アバッキオはその瞬間、死後に会った同僚との邂逅を思い出す。
自分のせいで殉職してしまったにも関わらず、アバッキオの行動を誇りに思ってくれていた同僚の邂逅を。
この聖杯戦争でも、総一郎に今までと同じ『意志』があるならその先にあるのは――。

「――なぁ、おっさん。これはあくまで俺の憶測に過ぎないんだが……この世界に呼ばれたのは、おっさんが知るべき『真実』があるからじゃあないか?この世界だからこそ辿り着ける真実があるからじゃあないか?」
「真実…か」

総一郎は連続殺人事件の『真実』へ向かい、その途中で死亡した。
だが、もし聖杯が総一郎の知らない真実があるために呼んだのだとしたら。
もし、そこに総一郎にしか辿り着くことのできない真実があるのだとしたら。
その真実へ向かわねばならない。
そんな義務感が総一郎の中で起こった。

「そう…かもしれない。…そんな気がしてきた」

――大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている
かつての同僚が教えてくれた、アバッキオを救った言葉。

「もしおっさんがそれに向かおうってんなら…俺は全力であんたを手助けするぜ。大切なのは『真実に向かおうとする意志』なんだからな」
「もちろんだ。君の言葉のおかげで、もう一度立ち上がることができた。どうか、しばらく私の相棒でいてくれ、シーカー」
「ああ。もう仲間を死なせるわけにはいかねぇ…絶対に」

アバッキオの言う真実。それが一体何なのかは分からない。それは根拠も形もない虚像かもしれない。
だが、そのあるかわからない『真実』が、総一郎を動かす原動力となったのは確かだった。



◇ ◇ ◇



彼らがこれから歩む『苦難の道』には何か意味があるのかもしれない――



彼らの苦難が――



どこかの誰かに希望として伝わっていくような――



何か大いなる意味となる始まりなのかもしれない――



『眠れる奴隷』は、再び目醒める。


531 : 今にも落ちて来そうな空の下で:re ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/07(土) 23:38:27 t95xIeWg0
【マスター】
夜神総一郎@DEATH NOTE(漫画)

【マスターとしての願い】
自分の知るべき真実があるならば知りたい

【weapon】
特になし
ただし、警官として警察庁から拳銃を支給されるかもしれない

【能力・技能】
・死神の目
人間の顔を見るとその人間の名前と寿命を見ることができる。
写真や映像であっても、人相が判別できるほど鮮明であれば名前と寿命を見ることができる。
似顔絵では名前と寿命が見えない他、鮮明な写真でも顔が大きく欠けている場合は見えないことがある。
自分自身を含めたデスノート所有者に関しては、名前だけしか見ることができない。
ちなみに、目の取引を行った場合、本来の視力にかかわらず、3.6以上の視力になる。

【人物背景】
警察庁刑事局局長にして日本捜査本部長でもある。主人公である夜神月の父親。
正義感の塊で、まさに警察官の鑑ともいえる人格者。
Lが息子である月をキラだと疑っていることで、大きなストレスを抱え込んでおり、日に日にやつれていっている。

第2部からは次長に昇進。娘と引き換えにノートを犯人に渡してしまったことに責任を感じており、
死神の目の取引をしてメロの本名を知るも、その正義感故にメロの名前をノートに書くことを躊躇い、
その隙をつかれて銃撃された傷が致命傷となって死亡。
最後まで月がキラだということを知ることがないまま死去した。

【方針】
困っている人がいたら助けたい。
銃を撃つなど人を傷つける事を良しとせず、たとえ敵であろうともむやみに殺そうとは思わない。


532 : 今にも落ちて来そうな空の下で:re ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/07(土) 23:39:44 t95xIeWg0
【クラス】
シーカー

【真名】
レオーネ・アバッキオ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメータ】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運C 宝具C

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
追跡:B
トラッキング能力。僅かな痕跡から敵の能力や行動パターンを予測し、現在位置をある程度の確率で特定する。

【保有スキル】
真実に向かおうとする意志:A+
シーカーがギャングに身を落とした後も心の底で持ち続けていた意志。
どのような肉体・精神状況下においても十全の戦闘技術を発揮できる。
そして、辿り着くべき『真実』に近づいているときに全パラメータが上昇する。

戦闘続行:B
信頼した者にはどこまでもついていく義理堅さ。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】

『映出す証拠(ムーディー・ブルース)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:-
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
人型だが、機械のような外見をしている。
過去にあった物事を再生、早送り、巻き戻し、停止して見る(利用する)ことができる。
スタンドの額にはデジタル表示のタイマーがあり、何時間・何日前の映像なのかが表示されている。
人間やサーヴァントの行動も再現できるが、宝具など敵の持つ異能や固有能力までは再現出来ない。
また再生中は攻撃も防御もできない完全な無防備となる。
この為、追跡や手掛かり探索などの調査などでは非常に役に立つが、直接的な戦闘行為には不向きである。
スタンドビジョンのダメージは本体にフィードバックされる。

『映出す真実(ムーディー・ブルース・プログレッシブ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:-
「映出す誠の行動」の進化形態。真名解放を行うことで使用可能になる。
従来の再生能力に加え、敵の宝具含む異能をも再生することが可能になる。
実質的に敵の宝具やスタンドを投影して利用することができるが、敵の使う能力によっては魔力消費がかなり多いので注意。

【weapon】
・宝具『映出す誠の行動』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で
筋力D、耐久D、敏捷D相当。
一応戦えないこともないが、本体が戦い、その補助として運用した方がいい。

【人物背景】
ブチャラティチームの一員のイタリアンギャング。
幼いころから正義感が強く、警官になるが、
次第に社会の矛盾に気づきはじめ、やがて自らも収賄などの汚職に手を染めていく。
しかし後にそれが明るみとなって汚職警官として罰を受けたばかりか、
それが原因となって同僚が自分を庇い殉職してしまったことで一生外すことのできない十字架を背負ってしまい、
その後にフーゴとブチャラティの勧誘を受けてギャングとなった。

そんな過去があるため、人をあまり信用しない性格。
特に新入りのジョルノ・ジョバァーナとは初対面時からことあるごとに衝突している。
しかし、一度信頼した者に対しては忠実に従い続ける義理堅さも持ち合わせている。
ブチャラティには絶対の信頼を置いており、ブチャラティが組織を裏切った際にも彼についていくことを選んだ。

トリッシュの記憶からサルディニア島へ辿り着いた後、スタンド能力でボスの過去を探っている時に
変装したボスの一撃により、再生中に致命傷を負わされる。
だが死の間際に最期の力を振り絞り、ボスの素顔のデスマスクと指紋をブチャラティたちに託し絶命した。
死後の世界では、かつて死なせてしまった同僚と再会。
彼が死後もアバッキオを恨んでいないどころか、アバッキオの生前の行いを誇りにさえ思っている事を知る。
かつての同僚と和解することで、アバッキオの魂は本当の意味で救われながら天に昇っていった。

【サーヴァントとしての願い】
総一郎と共に真実へ向かう。


533 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/07(土) 23:40:09 t95xIeWg0
以上で投下終了します


534 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/08(日) 01:05:42 cwvZxYk60
失礼します。
投下した後ですが、死神の目が少し説明不足なのと、ちょこちょこと誤字がありましたので少し修正させていただきます
【能力・技能】
・死神の目
人間の顔を見るとその人間の名前と寿命を見ることができる。
写真や映像であっても、人相が判別できるほど鮮明であれば名前と寿命を見ることができる。
似顔絵では名前と寿命が見えない他、鮮明な写真でも顔が大きく欠けている場合は見えないことがある。
自分自身を含めたデスノート所有者に関しては、名前だけしか見ることができない。
ちなみに、目の取引を行った場合、本来の視力にかかわらず、3.6以上の視力になる。
サーヴァントの真名も見ることができるが、サーヴァントは英霊であり、既に死んでいるため寿命は見えない。

宝具とweaponの欄に誤字があったので訂正します

『映出す真実(ムーディー・ブルース・プログレッシブ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:-
「映出す証拠」の進化形態。真名解放を行うことで使用可能になる。
従来の再生能力に加え、敵の宝具含む異能をも再生することが可能になる。
実質的に敵の宝具やスタンドを投影して利用することができるが、敵の使う能力によっては魔力消費がかなり多いので注意。

【weapon】
・宝具『映出す証拠』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で
筋力D、耐久D、敏捷D相当。
一応戦えないこともないが、本体が戦い、その補助として運用した方がいい。


535 : 名無しさん :2015/03/08(日) 01:25:27 .AZNitIc0
おお、面白いクラスとスキル
アバッキオらしいな


536 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/08(日) 05:12:34 5WBSY8Fc0

>>502
悪同士の格が組むと雰囲気が締まりますね。
誉れ高き悪の誇りが垣間見える会話と文章が一層引き立ててました。
もっとも、両者出し抜く気満々で協調性が欠けている部分に付け入る隙が生まれそうですね。

>>510
殺人を肯定する者と否定する者。
両者の食い違いはありながらも、自分の意志をやめない玲香はやはり強い。
宝具の金田一ワールド形成はユニークであり、スキルと相乗効果で発揮されると無差別に人が死ぬ恐ろしさは脅威ですね。

>>523
ご指摘ありがとうございます。

ご指摘されたサーヴァントとして呼ばれた部分については後々本編で仕掛けとして利用する予定があり、深く書き込んでいませんでした。
候補作という当選させるかわからない枠組みの中で書くことで本編のネタを潰したくはないと考えていましたが、私の配慮不足です、誠に申し訳ございません。
スキルについては、私の設定作成が甘かったことを深くお詫びいたします。
最後に、ご指摘された候補作の修正については私の書いた候補作全てが通る訳ではないので、通す場合に限って修正させていただきます。
そして、この衛宮士郎&アサシンについては通す予定がありませんので御安心願えれば幸いです。

感想については以後綺麗な言葉で書くようにするべく、注意します。
他の書き手様により、貴方の感想は見るに堪えない不快なものという声が多数集まった時は感想を付けるのを中止します。


>>527
真実を追い求めた刑事と警官が世界を超えて組むというのは、燃えますね。
宝具も刑事として生きた総一郎にお誂え向きであり、小細工も色々と可能。
そして、真実に近づく程にステータスが高まるスキルも個性が溢れていますね。


537 : 名無しさん :2015/03/08(日) 13:43:16 nh.rDr460
>>1さんに一つ質問があります。(既に出ていた場合は申し訳ございません)
この夢現聖杯儀典では鯖が消滅した場合、鱒はどうなるでしょうか?


538 : 名無しさん :2015/03/08(日) 13:45:35 y/22PXIk0
>>537
サーヴァント消滅後のマスターに関しては>>190で言及されてるみたいですね。


539 : 名無しさん :2015/03/08(日) 13:50:22 nh.rDr460
>>538さんご回答いただきありがとうございます。
そして>>1さん、二度も同じような質問をしてしまい失礼いたしました。


540 : ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 18:44:32 gOU.mOR60
投下します


541 : ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 18:57:40 L5wASEic0
申し訳ない、PCの調子が良くないので時を改めます


542 : ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 19:00:36 QCyj.ztE0
なにやら復調したようなので改めて投下します


543 : 朱に交われば…… ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 19:01:14 QCyj.ztE0
黒い夜闇の中歩む男がいる。
思い起こすのは自らの最期に見た光景。
シビュラシステムの申し子たる執行官と、新たな社会の導き手となるだろう監視官。

(全て彼女に……常守朱に託してきた。彼女ならばシビュラの統治ではないあるべき形で社会をやり直せるはずだ)

赤信号をみて、歩みを止める。
隣で同じように信号を待っている男に、携帯していた巨大な銃口を向ける。

『通信エラー、システムとのリンクを構築できません』

響きわたる電子音声。

(やはり、ドミネーターは無用の長物か)

最も使えたところで、これに頼ったかどうかは別だが。

信号が青に変わった。横断歩道を1人、渡る。
信号はすぐに赤くなった。
少し歩いて、すれ違った女性と二、三の言葉を交わす。

(ここにもいるのだろう。シビュラに依存した民のように、聖杯に縋った者が。
 だがそのために僕のように不本意に呼び出された者もいるはずだ。願いを叶えようとするものの数合わせに過ぎない者が。
 一つの願いのために犠牲を強いる、実に傲慢なシステムだ)

空が白み始める。
横たわる女性の顔は真っ青に染まっていた。

「NPCにも色の好みの違いはあるのか……
 彼は赤が好きで、その人は青が好きだったんだね」

倒れた女性に近づき、『魂喰い』するサーヴァントを見てぽつりと語る。

「『聖杯』よ、お前の色は何色だ?お前を裁くまで僕は歩みを止めない。
 協力してもらうよ……『赤マントの怪人』」




あなたは赤に染まりたい?黒に染まりたい?青に染まりたい?白に染まりたい?
彼らと出会えばあなたの望む色になれるかもしれませんよ。


【クラス】

ライダー

【真名】

赤マント(怪人A)@地獄先生ぬ〜べ〜

【パラメーター】

筋力B 耐久E 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具C+

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】
騎乗:E-
都市伝説と言う存在、彼をはじめとする『噂に乗る』ライダーは騎乗スキルを持ちえないものが多い。
赤マントに騎乗の逸話はないが、飛ぶという逸話と『風聞に乗る』という成り立ちから最低限保持する。
風に乗り、空を駆けることを可能としている。他の乗り物などは一切乗りこなせないが、希少な形の騎乗スキルと言えよう。
空を飛ぶスキルではなく、あくまで空に乗るスキルなので四方八方自在に動くことはできない。空中にある彼にしか踏めない床を走るイメージ。

対魔力:C
赤マントは近現代の都市伝説であり信仰・神秘は少ない。
しかし赤い頭巾や靴など装身具と言う共通点を持つ童話や童謡の逸話も取り込むことにより、霊格を向上させ、それに伴い対魔力も向上している。
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法など大がかりな魔術は防げない。

【保有スキル】
殺人鬼(真):A
人の道を外れた行為、殺人を重ねたものは人ならざるもの、鬼と呼ばれる。
怪人Aは下校中の子供ばかりを100人以上も惨殺した殺人鬼であり、また鬼の手に魂が触れたことにより『鬼』の属性を得て、一種の『混血』と化している。
持ち前の殺意と執念に加え、『鬼』としての頑健さも獲得したことで同ランクの戦闘続行も内包する。

怪力:C
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力を1ランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
本来人間である怪人Aはこのスキルを持つことはできない。
しかし『赤マント』はこのスキルを保持するのに加え、先述のスキルで魔物である『鬼』の属性を獲得しているためCランク相当で保持する。

都市伝説:B+
噂で成り立つ都市伝説であるということそのもの。噂で成り立つスキルというのは無辜の怪物に近いが、最大の違いはその噂が全て真実になり得るということ。
赤マントは多くの派生都市伝説を持ち、また赤い装身具の『元型』の童話や童謡も逸話として取り込んでいるため高ランクで保持する。
聖杯戦争が行われる地でその都市伝説、この場合『赤マント』が知られている限り幸運が2ランク上昇する。
噂は一人歩きする者であるため同ランクの単独行動も内包する。

このスキルが高ランクであるほど現象に近づくため、固有の人格は薄くなる。
B+ランクともなればただ伝承にあるような言葉しか紡がず、思考も伴わない。
そのため、本来子供のみを殺害してきた怪人Aは老若男女問わず殺す都市伝説『赤マント』に大きく近づき、無差別の殺戮を行う。


544 : 朱に交われば…… ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 19:02:40 QCyj.ztE0
【宝具】
『死に方くらいは選ばせてあげよう〜青髭は如何にして妻を殺す〜(ワットカラー?)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
「赤が好き?青が好き?白が好き?」の問いに対し答えたものを色になぞらえて殺す。
赤が好きなら血まみれにして、真っ赤に染めて殺す。
青が好きなら窒息させてチアノーゼ、真っ青に染めて殺す。
白が好きなら血を全て抜き取り、血の気の失せた真っ白に染めて殺す。
誰かに問わねば在り方が曖昧な赤マントという都市伝説において最も象徴的な逸話。

三つの問いは三途の川。答えた時点で死んでいる。

宝具が発動した時点で鎌に切り裂かれる、ロープで首を絞められるかロープで重りをつけられた状態で水中に放り込まれる、巨大な注射針を刺されての出血多量、そのいずれかの未来が確定する。
その正体は赤マントによる虐殺という結果の後に問いを放つという原因を導く、因果の逆転である。 
この宝具を回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。
なお必中攻撃ではあるが必殺ではないので、致命傷を負っても何らかの手段で治療をすることや並外れた耐久力により死の運命を回避することが可能。
場合によっては唯の小学生すら殺し損ねるが、死をもたらす宝具であるため本来なら在り得ないサーヴァントの失血死や窒息死と言う事象も起こし得る。

ある意味で当然だが、この宝具の発動を目にしたものは高確率で『赤マント』という真名を看破する。

『あなたにはガラスの靴より焼けた靴〜白雪姫の母の末期〜(クリムゾン・シューズ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
赤い靴はいてた女の子、異人さんに連れられて行っちゃった。
好きな色の問いに対して黄色などと答えると異界へと連れていかれるという噂に加え、赤マントの派生した都市伝説には、赤い毛布にくるまって寝ている人物が子供を毛布にくるんで異界へさらっていくというものがある。

三つの問いは三途の川。答えた時点で死んでいる。
異界とはすなわち冥界。答えなくても死んでいる。

ワットカラー?の問いに見当違いの答えを返したもの、答えずに攻撃や逃走などの選択をするなど質問を無視した者を地上333m、または地下333mに転移する。
善人ならば天国へ。天に昇って、落ちて死ぬ。
悪人ならば地獄へ。地に埋もれ、潰れて死ぬ。
上空で足掻くのも地下でもがくのも、まるで無様な死の舞踏。

その正体は赤マントによる誘拐・転移という結果の後に問いを放つという原因を導く、因果の逆転である。 
この宝具を回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。
死をもたらす宝具であるため本来なら在り得ないサーヴァントの墜落死や圧死と言う事象も起こし得る。
幸運判定に失敗した場合宝具は不発となり、敵をどこに転移することも出来ない。
また対象となった者は『赤い靴』を脱ぐ=両足を失うことでこの宝具を無効化できる。
物理的に失わずとも機能していない(歩けない)者にこの宝具は無効である。
なおただ転移するだけであり飛行能力などを封じることはできないため生き残る術が皆無な訳ではない。


『人喰いの狼から生まれる者〜赤ずきんは再誕する〜(ネバーエンディング・テリブルストーリー)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:1人
赤ずきんは狼に食われた後、そのお腹を切り裂くと出てきた。
そしてそのお腹に大量の石を詰めて、狼を殺した。

狼は死の象徴であり、また日の出の象徴でもある。
石とはキリストがパンにしたものであり、パンはキリストの肉、ひいては人の象徴である。
大量の石は「三途の川」の積み石のように、死と罪の転嫁を意味する。

再誕を象徴する「赤ずきん」の物語と鬼の手のよる幽体剥離を受けてなお復活した逸話が合わさり、昇華した宝具。
『赤マント』を殺害した者が「石を取り込む=人を殺めた」後に命を落とした場合、『赤マント』はそこから再び生まれる。
ステータスや宝具など全て同一の『赤マント』そのものである。

【weapon】
『無銘・大鎌』
何の変哲もない巨大な鎌。サーヴァントにダメージを与える程度には神秘を秘める。

『縄』
同上。

『巨大な注射針』
同上。

いずれも魔力消費により生成・修復可能。


545 : 朱に交われば…… ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 19:04:38 QCyj.ztE0
【人物背景】
怪人Aは仮面を被り、逆さの十字架を身につけ、赤いタキシードとマントを纏う連続殺人鬼。
下校中の子供ばかり100人以上を惨殺し、最初の犯行から30年以上たっても未だ捕まっていない。
元は床屋の店主だが、子供の悪戯で店が全焼し、自身も全身に大火傷を負ったことで子供を憎むようになったと噂される。
殺害の際に「赤が好き?青が好き?白が好き?」と問いかけ、答えに応じた殺し方をする、都市伝説『赤マント』を彷彿とさせる所業を行っていた。
ぬ〜べ〜の担当する生徒も殺害しようとしたが、悉く阻まれる。
鬼の手による幽体摘出、身に付けたマントが燃える、高所からの落下と致命的な事象を経験するも立ち上がり闇に消えていった。
今もどこかで怪人Aは子供に問いを投げかけ、殺しているのかもしれない。

ここにいるのはいつかの時間軸で死亡したであろう怪人A。
実在しない『佐々木小次郎』の殻をかぶってある農民が召喚されたように、都市伝説の妖怪『赤マント』の殻をかぶってサーヴァントとして現界した。

『赤マント』は1930年頃に日本で広まった都市伝説。
元はトイレで「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」との問いに赤と答えると血まみれにされ、青と答えると血を抜かれて死ぬという都市伝説。
同時期に流行った赤いマントをつけた怪人物が子供を誘拐し、殺すという都市伝説や青い紙ではなく白い紙だという噂などが合わさり生まれたと考えられる。
他にも実在した吸血鬼だ、連続殺人鬼だ。テストの回答を間違えるのを恐れた子供の深層心理の表れだなど様々な説が語られる。
悲劇と遭遇する赤い装身具からグリム童話の『赤ずきん』、アンデルセンの『赤い靴』などを元型とも捉えられる。
そして『マント』だけでなく『ちゃんちゃんこ』や『袢纏』、『マフラー』など多くの派生や起源をもつ。赤い服装のモノが問いを投げかけ答えによらず殺害するというのはあの『口裂け女』の起源とも考えられる。
多くの都市伝説が束ねられた恐怖の結晶であり、多くの都市伝説を生み出した恐怖の根源。
赤いマントを来た怪人が「赤が好き?青が好き?白が好き?」と問い、答えによらず殺すという怪人譚。
「あかーい半纏着せましょか♪」と歌が聞こえてきたら、あなたもご用心。

【サーヴァントの願い】

殺戮。

【マスター】

鹿矛囲桐斗@PSYCHO-PASS2

【マスターとしての願い】

望まぬ参加者を集める聖杯に裁きを。

【weapon】
『ドミネーター』
対象の犯罪係数を計測し、潜在犯と認定された者を執行する機器。
大柄な拳銃のような形状をしている。
セキュリティに関しては、摘出した酒々井水絵の網膜パターンをコピーしたコンタクトレンズを使用することで突破可能。
尤もシビュラシステムの存在しない冬木では機能せず、無用の長物も同然である。

【能力・技能】

薬学・心理学に長ける。
薬物と心理誘導によって不健全化した他人のサイコパスをクリアにすることが出来る。

『繋ぎ合わされた死体』
航空機墜落事故の唯一の生き残りであり、他の乗客184名の遺体を使った結合手術(脳や臓器や肌などを継ぎ接ぎに移植されたこと)で命を繋ぎ止めた。
そのため機械の認識上は『繋ぎ合わされた死体』にすぎず、サイコパスが認識出来ない存在だった。
魔術的には合成獣(キメラ)やリビングデッドに近似した存在であり、その在り方そのものが神秘と化している。微小ながら魔力供給が可能。
シビュラ以外の機械や魔術にどのように認識されるかは不明。


546 : 朱に交われば…… ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 19:05:02 QCyj.ztE0

【人物背景】
シビュラシステムに敵意を抱き、社会と人々を「クリアにしたい」と語る青年。
実態は墜落事故で唯一の生存者であった「鹿矛囲 桐人」という子供をベースに、東金財団が保有する医療特許技術の実験台として同事故被害者184名の遺体部位を使用した多体移植手術の結果、集合体として存在するに至った人間である。
複数の人間の身体組織が単体の人間として定着・融合していくにつれ、システム上では繋ぎ合わされた死体としか認識されないためスキャナーに探知されなくなっていき、最終的にサイコパスが測定できなくなったことで一般人からも疎外されるようになってしまっていた。
自身を社会から切り離したシビュラシステムを裁くために、仲間とともに数々の犯罪行為を行う。
数々の実験を兼ねた事件を経て、シビュラシステムの位置を確めようと画策していたが、犯行中に常守朱からの呼びかけに応じ、その導きによりシビュラの元に赴くことになる。
途中、立ちふさがった義体使用のシビュラの一体をドミネーターのエリミネーター・モードにて執行し、朱と共にシビュラシステムに集団的サイコパス計測を認めさせ、複合体としての鹿矛囲だけでなく、シビュラシステム自身の裁きにも成功する。
その直後、いずれ朱の正義が社会を導くと諭して社会の未来を託し、現れた東金朔夜とドミネーターによる相撃ちになり、死亡する。
システムの囚われないよう、社会そのものの『やりなおし』を願った、その瞬間の参戦。

【方針】

聖杯と向き合い、濁った色をクリアにする。
そのために参加者を、赤か、青か、白に染め上げる。
……聖杯の元へ赴けるなら他の手段をとるのもやぶさかではないが。


547 : ◆yy7mpGr1KA :2015/03/08(日) 19:06:10 QCyj.ztE0
トラブった割に短くてなんですが、以上で投下を終了します


548 : 戦争屋と死神 ◆69lrpT6dfY :2015/03/08(日) 19:21:41 nh.rDr460

聖杯戦争の本戦が始まるまでの猶予期間。
俺は偶々人気のない場所を歩いていたら、開けた場所に少女と銀髪の男が何か話し合っているところを見かけた。
傍からみると娘と父親ほどの年齢差があるが、遠くから見ても似ても似つかない二人である。
そして何より、男のパラメータらしきものが見て取れる。つまり少女がマスターで、銀髪がサーヴァントか。
幸運な事に、こっちは早めに二人を見つけたため気付かれていない。物陰に隠れて様子を窺ってみた。
……うん、あの主従が何をしているのか全くわからん。
さてどうしようか。奇襲で先制攻撃するか、相手に気付かれないまま退くか、利用するために尾行でもしてみるか。
……決めた。攻めよう。

「やれ、バーサーカー」

その一言で、瞬時に暴風が駆け抜ける。
次の場面に移ると、少し離れた所にいた二人組の目の前に理性を無くした狂戦士が飛びかかっていた。
銀髪が直前に気付き、咄嗟に少女を突き飛ばし、剣で攻撃を受け止めた。


チッ、奇襲してもそう簡単には殺せないか。
でも先制には成功した。こっちの勢いが強く、相手は防戦一方だ。
……なんか銀髪が驚いたような顔をしているような。
ん?なんか銀髪が叫んでる。なんだ?まさか俺の狂戦士に話しかけているのか?
もしかしたら知っている仲なのかもな。まぁ、あの化物には全く届いていないようだけどな。
とにかくそのおかげか、銀髪は中々攻勢にでてこないようだな。
しかしすげーなぁサーヴァント同士の戦闘ってのは。次元が違いすぎて全く近寄れねぇな。

さて、マスターの少女は、っと……いたいた。
戦闘圏から少し離れた所にいるな。
……どうやら腰を抜かして、怯えた顔で震えているな。
よし、あのマスターは素人のようだ。これなら楽に殺れそうだな。
んじゃ、誰にも気づかれないように移動してさくっと、ぐっ……!!
な、なんだ、力が、抜けて……いや、奪われて、いく……まさか!!?
 
 

男が疲労感と眩暈を覚えたと同時に、バーサーカーの口から破壊を帯びた光線が放たれた。
宝具により人間をやめて、魔物に変わった代わりに得た力を、対峙するセイバーに向けて解き放つ。
直撃すれば必滅は確実の攻撃を、しかし銀髪の男は紙一重で躱していた。
そして覚悟を決めたのか、バーサーカーが反動で硬直した隙に攻撃しようとして構えを取った。
しかし、それを大きな悲鳴が遮った。

鳴り響いた方向には、先程の攻撃の余波に巻き込まれた少女が倒れていた。
ぴくりとも動かず、真っ赤に血塗られた状態で。
マスターの危機にセイバーは一瞬動揺してしまった。それが命取りとなった。
我に返ったセイバーが振り向いた時には、その顔に強烈な殴打を受けて吹き飛ばされていた。
束の間の硬直が解けたバーサーカーがセイバーの方へ真っ直ぐ向かい全力で殴ったのだ。
そしてセイバーが復活する前に追撃を加えるバーサーカー。

殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!
殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!
殴る!!殴る!!殴る!!殴る!!殴る!!殴る!!殴る!!殴る!!殴る!!殴る!!


熾烈を極めるラッシュ攻撃。
全てが必殺の拳は地面をも陥没させ、砂埃が巻き上がる。
あまりの凄惨な光景により状況がどうなっているか全く分からないが。
明らかに勝敗は決した。
 
 

あ、あのヤロウ…!!
こっちはただでさえ戦闘で魔力をガンガン削られてんのに、
その上あんな攻撃を事前に知らせることもなくいきなりぶっ放すなんて!!
……まぁいい、これで一組落とせたから良しとしよう。
あとは女マスターを魂喰いすれば、いくらか体調も良くなるだろう。
……ん?

 ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

なんだ、こう、風切り音のようなものが、聞こえるような。
……気のせいか?

 ヒュォォォォォォォォォン

……いや、何だか嫌な予感がする。


「おい、バーサーカー。そいつはもういい、変な音の源を攻撃しろ」


549 : 戦争屋と死神 ◆69lrpT6dfY :2015/03/08(日) 19:22:41 nh.rDr460
あ、すみません、投下宣言忘れていました……以下、↑の続きです。


呼び掛けに応じたバーサーカーはすぐさま近くの物陰を攻撃する。


「あーあっ!とってもいいところだったのに」
「せっかくキミ達の闘いに素晴らしい音色を奏でてあげてたのにねぇ」


狂戦士の攻撃を躱しその場から飛び出した影が二つ。
全身黒尽くめで不気味な仮面を被った奇術師と小さな一つ目のピエロ。
そんな奇妙な組み合わせが、振るわれた暴行に物怖じせずに揃って軽口を叩いていた。
しかしバーサーカーは相手の言葉に耳を貸さずに畳み掛ける。

「おっと、危ない危ない」

黒い方が剣で応戦し、致命傷を受けないように攻撃を捌き続ける。
先の戦闘から間もなくの第二幕。
少しの間のせめぎ合いでだが、これも狂戦士の方が優勢である、ようにみえていた。
 
 

あの黒尽くめの男、気配を消していたから多分アサシンだろうけど。
なんて間抜けな野郎だ。自分から音を出しておめおめと自分の居場所を教えるなんて。
しかもバーサーカーより弱いとみた。これでもう一騎。順調だな。

……しかし、さっきの胸騒ぎはなんだったんだろうか。
たしか、あの風切り音みたいなのを聴いた時だったな。
……もしかして、あの音には何か意味があったのか?
いやでも、何も変化はないよな。
俺やバーサーカーには変調とかもないし、あの敵が強化されたようにも見えないし。
じゃあ一体、なんの為に自分をバラすようなことを……。

ッ!!!?

なッ、の、喉、が!?!?!?
 
 

男の首には、ナイフが突き刺さっていた。


男は十分に注意していた。誰かが接近するなんて事もなかったし、ナイフを投げられた訳でもない。


ならば何故ナイフが首に刺されているのだろうか。しかも、今も力が籠められている。


答えは簡単だ。










男の認識が、間違っているだけだから、だ。










「いやぁ、わりぃなぁ。折角勝利の美酒ってもんに酔いしれているところを邪魔しちゃってよ」


突如、耳元から聞こえる下衆な声。
いつの間にか、男の背後に赤毛の男がいて、その男がナイフを首に刺していた。


「でもな、これも戦争ってヤツだ。強い奴が弱い奴を喰い、油断した奴が寝首を掻かれる、ってな」


いや、いつの間に、ではない。
赤毛の男は最初から気配も隠さず、普通に歩いて、男に近づいて、ナイフを刺した。
普通ならその接近に絶対に気付くはずなのに、男は気付かなかった。
いや、男は認識できていなかったのだ。
幻覚に掛かってしまった男には、赤毛の男なんて全く気付けなかったのだから。


「まっ、俺が代わりに戦争を存分に楽しんでやるから、お前さんはここで大人しく、寝てな」


そして赤毛の男はナイフを横に振り、首を掻ききった。


550 : 戦争屋と死神 ◆69lrpT6dfY :2015/03/08(日) 19:23:06 nh.rDr460
◇◇
数分後、綺麗な鮮血を吹き出しきり、血だまりの中で動かなくなった男。
その光景を胡坐をかきながら、サーシェスは己が従者が戻ってくるのを待っていた。
そして音もなくアサシン、キルバーン(とその使い魔のピロロ)が戻ってきた。
いつの間にか隣に立っていた事を気にも留めず、サーシェスは立ち上がった。

「よぉ、遅かったじゃねぇか」
「フフフッ…なんせバーサーカーが消えるまでずっと足掻いていたからね、相手せざる負えなかったんだ」
「でもバカなヤツだったね〜。最後までキルバーンが足止めだって気付かないままでさ〜っ!」

敗者を嘲笑うピロロに不気味に笑うキルバーン、その光景に雑ざって嬉しそうに笑うサーシェス。
死を纏いし者達が一堂に集まる光景は、その場の空気はより一層不穏な雰囲気に変えていた。

「ところでマスター、あそこに残った人間についてだけど」

キルバーンが顔を向けた先には、先の戦闘で意識を失ったままの少女がいる。
ちなみに少女のサーヴァントは消えていなくなっていた。
バーサーカーの猛攻が致命傷となり脱落してしまったようだ。
そして少女の方も余り長くはなさそうだが、しかし、まだ生きてはいる。

「なんだ、アサシンの旦那。もしかして、ああいうのに興味があんのか」
「いいや。でも、戦略的な意味では魅力的なご馳走ではあるけどね」

アサシンの言葉に対し、サーシェスは下衆な顔を浮かべながら愉快そうに冗談を吐く。
しかし、アサシンは顔色一つ変えない。その仮面の内から、相変わらず陽気な調子で答える。

「狂戦士との戯れで多少は傷ついたし、今後の戦闘の事も考えて…魂喰いでもしておこうかな、っと思ってね」
「魂喰い?」
「ボク達サーヴァントは、生きた人間の精神や魂を喰うことで魔力を得る事ができる。
 通常、ボクらが現界するときや戦闘の際に消耗する魔力はマスターからいただくことになるんだけど。
 魔力量が少ないマスターじゃ傷の回復や宝具で大量に魔力を消耗するすぐに支障が出るはずさ。
 だから、そこで虫の息になっている人間から魔力をいただこうとね」
 
 
◆◆
このサーヴァント、やっぱり何か隠している。
この聖杯戦争に呼ばれてから、頭に叩き込まれた知識の他にアサシンから色々な情報を聞いたが。
自分の正体や能力については、

『ヒ・ミ・ツ』

と言って語ろうとしない。
何でも暗殺者としての自分の手の内を知られたくないようだ。
一応、確実に相手を殺すため、相手の力を削ぐため、そう簡単に殺されないため、の宝具だとは言っていたが。
それだけではっきりとはわかってねぇ。


正直、この英霊は胡散臭い。非常に危険であると、己の第六感が警鐘を鳴らしている。
なんせ出会った時から、このアサシンからは自分と同じ匂いを感じていた。
飄々としながら狡猾な手段で獲物を狙う、死猟の香りがぷんぷん漂っている。
同じような生業をしている者として気を付けなければならない……が。


まっ、それを含めて愉しむのが戦争ってもんだぜ…!


生粋の戦争屋は、身内に潜むかもしれない危険すらも許容し、この聖杯戦争を存分に味わおうとしていた。
当然、アサシンに不審な行動がないか最低限の警戒は怠らないつもりだが。
しかし早々自分に不利益になるような事はしでかさないだろうと踏んでいる。


「ああいいぜぇ。その女の魂、とっとと喰っちまって腹一杯にしとけよ」


まだ聖杯戦争は本番ですらない。折角ご招待にあずかったわけだし。
俺と気が合ったベストパートナーと一緒に、最高の舞曲を踊ってやろうじゃねぇか!


551 : 戦争屋と死神 ◆69lrpT6dfY :2015/03/08(日) 19:23:56 nh.rDr460
【マスター】
アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO

【マスターとしての願い】
戦争を楽しむ

【能力・技能】
戦争屋として培ってきた技能と鋭い直感が売り。
MSパイロットとしてはエースパイロットと互角以上に渡り合える程の超一流の実力。
生身でも驚異的な戦闘力を持っている。
適応力も高く、初めて扱うモビルスーツの特性もすぐに理解し上手に扱える。
さらに状況を的確に判断し、相手の危険性を予測して損害を抑える程の分析力も持つ。
他にも応対する相手・場面に応じてTPOをわきまえる。

【人物背景】
三度の飯よりも戦争が大好きな戦争狂。
「戦争が好きで好きでたまらない、人間のプリミティブな衝動に殉じて生きる、最低最悪の人間」とのたまう程の根っからの戦争屋。
元PMC所属の傭兵で、つい最近までイノベイター達の雇われ私兵として暗躍していた。
ソレスタルビーイングとの度重なる戦争の末、最後には過去のツケが回り死亡した。

そして今回の戦争には、最終回で死亡した直後から喚び寄せられた。

【方針】
もちろん優勝狙い。
聖杯戦争を楽しむだけ楽しむ。
 
 
 
 
【クラス】
アサシン

【真名】
キルバーン@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
使い魔(道化):B
 一つ目ピエロのような魔物・ピロロを使役する。
 戦闘には参加しないが、回復や呪文を使いサポートに回る。
 また、キルバーンとピロロは空間に関係なく意志疎通ができる。


552 : 戦争屋と死神 ◆69lrpT6dfY :2015/03/08(日) 19:24:13 nh.rDr460
【宝具】
『死神の笛』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:10
 死神を彷彿させるような大振りの鎌。柄の部分は笛にもなっている。
 鋭利な刃には小細工が施されており、鎌を回転させると風切り音により相手の感覚を奪うことができる。
 その死の音色を聞いたマスターやNPCの五感を奪い、元々人であったサーヴァントならば筋力・敏捷を一つダウンさせる。
 ただし、人の存在から遠ざかるほどに効き目は薄くなる。
 また、繊細な武器であるため、少しでもヒビが入ると上記の超音波を出せなくなる。(魔力の消費で修復は可能)


『大魔王の死神(キルバーン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
 誰にも知られなかったある秘密により、己が存在自体が宝具となった。
 何度倒されても復活した逸話から、たとえ絶命する攻撃を受けても暫く経った後に復活することが可能である。
 このカラクリを見破れない限り、彼を倒すことは不可能ではある。
 ただし、致命傷を回復するには相応の魔力が不可欠であるため、何度も復活するのは難しい。
 また、キルバーンの血液は魔界のマグマと同じ成分でできており、通常の武器を溶かしてしまうほどの超高熱・強酸性をもつ。
 たとえ宝具であれど、腐食作用により血液を浴びた場合はランクが一つ落ちてしまい、威力・能力も弱まってしまう。
 この血液を応用し、身体の一部を魔力で点火させ巨大な火球として相手に投射する攻撃「バーニングクリメイション」を奥の手として使うことができる。


【weapon】
メインの獲物は『死神の笛』。
サブに細身のサーベルを持っている。
その他、頭部の髪飾りに完全不可視の刃「ファントムレイザー」を隠し持っている。

なお、生前には『殺しの罠(キル・トラップ)』を使用していたと伝えられているが、
「ダイヤの9」以外の罠が描写された伝承(物語)がないため、「ダイヤの9」以外は使用できない。
他にも『決闘の審判(ジャッジ)』を所有していたが、アサシンのクラスで召喚されたため使用できない。

【人物背景】
冥竜王ヴェルザーの部下にして大魔王バーンの協力者。
冥竜王の勅命を受け、もしバーンの地上侵攻計画が失敗した場合は彼を暗殺するよう「キルバーン」と命名された。
バーンと対面した時からその真意を察知されたが逆に気に入られ、大魔王からの誘いもあり魔王軍の客人として仲間になる。
魔王軍の中でも軍団長レベルの実力を誇るが、基本は非道な策を弄して相手を貶める事に喜びを感じる、陰湿かつ残酷極まりない性格。
一方で自分のプライドを傷つけられた時は、相手の命を奪うためにあらゆる手段で付け狙う執念深さを持つ。
当初は前線に赴くことはあまりなかったが、勇者一団がバーンパレスに侵入してからは暗殺者として罠を張り巡らせ、彼らを幾度となく危機に陥れる。
しかしアバンが登場してからは逆に辛酸を舐めることとなり、怒りに燃えるキルバーンはアバンに復讐するため一対一の決闘を申し出る。
結局は尋常な勝負をせずに卑怯な手段でアバンを抹殺するが、奇跡的に復活したアバンの罠により敗れ去った。

【サーヴァントの願い】
大魔王バーンを打倒したその後の世界に復帰する。
その後の予定として、新たな戦いで傷つき弱った勇者達の前に姿を現して驚愕と絶望の顔を拝みながら彼らを殺す。

【基本戦術、方針、運用法】
こちらは姿を見せないように立ち回り、弱った相手の隙をついて罠に嵌めたり、相手の動きを封じて嬲り殺す。
勝利のためならどんな非道な手段も朝飯前。卑怯は褒め言葉。
逆に正面切っての勝負はしないが、万が一戦闘になっても多少は凌げる。
通常の戦闘であれば数度の打ち合いで逃げる。
逃げるのが難しい場合は、傷を負う代わりに相手の武器・宝具を腐食させたり、ワザと退場したフリをして後々復活する。
ただし、おいそれと手の内を晒すつもりはなく、復活も魔力消費が多いため、やはり基本に忠実、アサシンらしく闇討ち狙い。


553 : 戦争屋と死神 ◆69lrpT6dfY :2015/03/08(日) 19:24:46 nh.rDr460
◆◆
……ふーっ。ごちそうさま、っと。
思った通りだけど、やっぱりこの女マスター、そんなに魔力持ってなかったね。
とはいえ戦闘で消耗した分と、人形を一回復活させるだけの魔力は得られただけでも良しとするか。
なんせマスターの魔力量は心許ないからね。
何とか言いくるめる事はできたし、保険は持って置かなくちゃ。

とはいえ魔力保有量を除けば、何の躊躇いもなく人を殺せるのは彼の一番いいところだよね。
流石に勇者達一向みたいな戦闘力はなさそうだけど、この聖杯戦争に参加するマスターの中では結構強いようだし。
頭の回転も速いし、相手を倒すためには頼もし限りだけど……さすがにボクにも疑いは持っているだろうな。
でも、この人狼はそれを気にしないだけの器量がある。
むしろ、ボクが裏切ろうとするときには逆に喰ってくるだろうね……フフフッ、怖い怖い……っ!

なんであれ、今はマスターと一緒に聖杯戦争を楽しんでいれば問題なんてない。
しばらくは人形の方を“キルバーン”だと思い込んでいて貰えば十分だ。
ちゃんとスキルも宝具も機能しているし、まさか“真のキルバーン”が使い魔を演じているとは思うまい。
もし人形がやられて復活したとしても「宝具のおかげさ」って言えば納得してしまうだろう。
今は暗殺者として手の内は知られたくないから隠すけどね。
 
 
 
【クラス】
アサシン

【真名】
ピロロ@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:B 幸運:B 宝具:B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
正体秘匿:A
 サーヴァントとしての素性を秘匿するスキル。
 たとえ契約を結んだマスターでも、裁定者であろうともピロロのステータスを視認出来なくする。
 代わりに宝具『大魔王の死神(キルバーン)』のステータスが表示され、ピロロは使い魔としか認知されない。
 ただし自ら正体をばらした場合はその限りではない。

自己保身:C
 自身はまるで戦闘力がない代わりに、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』が無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。
 もし宝具が倒されても、相手が強者弱者に関わらず無差別に殲滅でもしてこない限り、高確率で危機から逃れることができる。


554 : 戦争屋と死神 ◆69lrpT6dfY :2015/03/08(日) 19:25:05 nh.rDr460
【宝具】
『大魔王の死神(キルバーン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
 ピロロの正体を隠匿・偽るための宝具。その正体はピロロが操る機械人形。
 生前、敵対した勇者達や協力していた魔王軍の誰であろうとも人形を本体と思い込ませた振る舞いから、
 たとえ契約者であろうとも、スキル“真名看破”であろうと、この宝具がサーヴァントであると誤認し、上記のステータスが表示される。
 何度も復活する秘密も、ピロロが壊れた人形を修復しているに過ぎない。
 さらに何度も死を偽装し、人形を倒した者にその場で倒したと思わせた、という逸話を再現するため、脱落者が消去する現象も偽装できるようになっている。
 この復活は所有者ピロロを討つか、“頭部を叩き割る”もしく“人形を完全に消滅させる”事で止める事ができる。
 ただし、後者の破壊によるものだと宝具『黒の核晶(くろのコア)』を起爆させかねない。


『黒の核晶(くろのコア)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~999 最大補足:???
 魔界で禁忌とされている伝説の超爆弾。
 宝具『大魔王の死神(キルバーン)』の頭部に隠されており、それが起爆すると大陸一つが消し飛ぶ程の威力を持つ。
 ただし、あまりにも規格外な破壊力を持つため、制限により爆弾は超小型となり爆発の範囲も抑えられている。
 ピロロの魔力で起爆させるほか、火炎系の呪文などで誘爆させることができる。
 通常であれば爆弾を凍結すれば爆発を阻止することができるが、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』の魔界のマグマにより凍結させる事ができない。
 なお、この宝具が使われた時、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』も共に消失する。


【weapon】
宝具『大魔王の死神(キルバーン)』が唯一の武器。
回復と氷系の呪文は使えるが、戦闘には向かない。

【人物背景】
キルバーンの使い魔としていつもそばにいた一つ目ピエロ。
しかしそれは仮の姿、彼こそが冥竜王ヴェルザーに遣わされた“真のキルバーン”であった。
普段は自分より大きい機械人形に“キルバーン”を演じさせ、自身もそれに付き従う魔物として演じていた。
その結果、人形の方が警戒される一方、非力である本体には害が及ぶことはなく、最期までは生き残る事ができた。
死闘の末に大魔王バーンを倒した勇者ダイ達の前に突如姿を現し、賞賛の言葉を贈ると共に自身の秘密をばらす。
そしてバーン暗殺用に用意していた『黒の核晶』を勇者達の前で起爆させ、彼らが絶望する顔を拝みながら魔界に帰ろうとした。
しかし即座に反応した勇者達の攻撃でピロロは倒され、『黒の核晶』も上空で爆発させられたため、勇者達を抹殺することはかなわなかった。

【サーヴァントとしての願い】
大魔王バーンを打倒したその後の世界に復帰する。
その後の予定として、新たな戦いで傷つき弱った勇者達の前に姿を現して驚愕と絶望の顔を拝みながら彼らを殺す。

【基本戦術、方針、運用法】
本体ピロロはひたすら目立たず、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』を使って暗躍する。
宝具『黒の核晶(くろのコア)』は最後の切り札。
素性とカラクリがバレないように上手く立ち回りながら暗躍と嫌がらせをしよう。


555 : 名無しさん :2015/03/08(日) 19:25:45 nh.rDr460
稚拙なものですが、以上で投下終了です。

問 作中で脱落したサーヴァント二体はとある作品のキャラ達をモチーフにしています。さて、誰でしょうか?

答え合わせは、この作品が選出された時に!


556 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:32:55 dOd3Tgao0
投下します


557 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:33:47 dOd3Tgao0












     【選べ】


     【1.このままおとなしく諦める】


     【2.藁にすがってでもやり直す】













.


558 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:35:49 dOd3Tgao0
  当然、2だった。


  病院の電話番号を押そうとしていた指を止め、そのままプッシュボタンの2番を押す。
  周囲に漂っていた選択肢の数々が消滅し、それと入れ違いのように頭に数々の記憶が蘇ってくる。
  早朝から自分を苛んでいた頭痛の原因。
  この『聖杯戦争』に呼び出された理由。

  確か、そうだ。神が『呪い』を解呪するために課したミッションを失敗した。
  二度と『呪い』からは逃げられない、そう運命づけられた。

  でも、諦めきれるわけがない。
  一生このままなんて絶対に嫌だ。
  だから青年は縋った。藁ほど細い最後の希望に。

(ああ、神様)

(できればチャラ神でも不倫神でも性悪神でもないタイプの神様)

(俺にやり直しのチャンスをください)

  神頼み。
  どうにもならない人間の、最後の手段。
  理屈を放り投げて奇跡にすがった。最早それしか道はなかったから。
  そうして気づいたらここに居た。
  そしてルールを知った。
  聖杯戦争がなんなのか。なにをしなければならないのか。
  その先に何が待っているのか。そういったこの世界における常識の全て。

  つまり、チャラ神でも不倫神でも性悪神でもないタイプの神様は青年の願いを見事取り上げてくれたのだ。
  そして願いを取り上げる代わりに条件押し付けてきた。
  戦って勝ち取るという条件を。
  聖杯戦争、サーヴァント同士による戦い。
  あまりに突拍子もない条件であったが、青年はだいぶ平静を保って居られた。

  きっとこれは、いつかの『恋愛ゲーム』のようなものだ。
  青年自身がEDに到達することでミッションへのやり直しの機会を得られるのだと。そう解釈したのだ。
  そうしてひとまず納得して、周囲に目を向ける。来るべき初遭遇をクリアするために。

「それで、俺のサーヴァントは……」


559 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:37:19 dOd3Tgao0


     【選べ】


  突然、脳内に声が響く。
  記憶を取り戻すきっかけになった、記憶の蓋をこじ開けた声。
  その声が、いつもの様に声をかけてくる。選択を迫ってくる。


     【1.イチゴパンツだけ身につけた、実はか弱い権藤大子さんをバーサーカーとして召喚】

     【2.イチゴ味な雰囲気を身にまとった、実は超強い聖帝サウザーをライダーとして召喚】


「ええっ!? こっちで決めんの!?」

  思わず叫んだ。
  頭のなかにあった『「この」聖杯戦争の知識』では召喚に対する選択権はなく、この世界にマスター召喚された時に与えられるものだったはずだ。
  だというのに。
  そんな世界の理すら覆し、嫌がらせを行う物が一つ。
  『絶対選択肢』。
  何度も何度も、文字通り頭を痛ませてきた青年の『当たり前』。
  これが出たならば、選ばなければならない。

  そして、選択肢の中に聞き覚えのある名前が1つ。
  『権藤大子』。
  彼が元居た世界でご近所に住んでいた体重三桁を誇る巨漢ツインテール五十路おばさん。
  確かに存在感・威圧感はあるが、これから生死を共にする相棒が『いちごパンツだけの』『実はか弱い』『権藤大子さん』は色々ヤバすぎる。
  一考の余地もなかった。
  迷わず右手をつきだして、選択肢を掴む。

「2!! 2の聖帝サウザーってやつ!!」

  あたりが光に溢れ、どこからともなく風が吹きすさぶ。
  あまりの風圧に目を細め、再び視界が戻った時に『それ』はあった。
  大きな、それこそ人間二人くらいなら軽々入るだろうトランク。
  嫌な予感が列をなして除夜の鐘のごとく警鐘を次々鳴らしていく。
  だが、踏みとどまれない。もう選択肢は選ばれてしまったのだから。
  ゆっくり、ゆっくり、トランクを横倒しにして、止め金具を外す。

「うーん……シュウ様? もうシンの所についたのか?」

  中に入っていたのは、筋骨隆々な成人男性。ご丁寧に『ライダー』というクラス名も見える。
  そんな大男が、まるで幼児のようにパジャマに身を包み、幼児のように目をこすりながらマスターたる青年に話しかけてきた。
  わかっていた。
  わかっていたともさ。
  絶対選択肢は○と×ではなく、×と××だ。
  アタリ・ハズレから選ぶのではなく、ハズレ・大ハズレから選ぶ。
  大ハズレが権藤大子さんだとするなら、聖帝サウザーと紹介されていた『ライダー』も純然たるハズレだ。
  わかっていた。
  わかっていたけれど。
  それでも青年・甘草奏は、がっくりと肩を落とす他なかった。


560 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:38:27 dOd3Tgao0
   十  十  十


「フハハハハハハ!!!! どーん!!!」

  ライダーはカレーライスにミニカーをぶっ刺して高笑いをしている。

「おや、なんだ……? まさか、これは……水陸両用!! ぶぅーん!!! フハハハハ!!」

  ライダーはミニカーにカレーの海を泳がせている。

「ハハ、ハ……? ……マスター、福神漬がないぞ。手抜きはやめてよね」

  ライダーは素に戻ってこちらに問いかけてくる。
  筋骨隆々な男がミニカーで遊んでいるってだけでも頭の痛くなる光景なのにそれ以降についてはもう信じたくもない。
  信じたくないので、情報の整理に移る。

  ライダーこと聖帝サウザーは能力的にはかなり恵まれたサーヴァントのようだ。
  ただ一点、宝具である『その名はイチゴ味』によって呪いにも似た人格変換がなされていなければ、の話だが。
  この宝具がある以上、かれはギャグ漫画やコメディ映画の主人公のような性格になり、すちゃらかなことをし続けるらしい。

  奏は真っ先に聖杯の獲得を選んだ。
  もともとそのために来たのだ。そうやって動いてしかるべきだろう。
  しかし、とライダーを見る。
  これはあんまりじゃないか。こんなサーヴァントでどうやって戦えっていうんだ。
  青年一人と、外見こそ屈強だが中身はやんちゃな少年のまま煌く未来に夢を馳せているような目をした聖帝一人。
  負ける。まず確実に。
  勝ち目があるとすれば一つ。宝具のうちの一つ、『天に将星の煌く時』が発動できた時だけだ。
  どうやら令呪を使えば、このやんちゃ聖帝は一時的に超真面目モードになれるらしい。
  説明を読む限りでは、超真面目モードのライダーはトランクで眠ったりミニカーで遊んだり歌ったり踊ったりはせずに、持てる力の全てを持って敵と戦うようだ。
  ならば当然、今後の方針は一つ。
  できるだけ令呪を温存、可能ならば令呪の数を増やしつつ重要な場面で超真面目モードを―――――


     【選べ】

     【1.令呪を持って命じる。早速だけどライダー、焼きそばパン買ってこいよ】

     【2.令呪を持って命じる。早速だけどライダー、自害しろよ】


「ねぇ今俺令呪を使いたくないって言ったよね!? 聞いてた!? いや、聞いてたから出したんだよね、こんな選択肢!!! あだだだだ!!!」

  口を突いて出た悪態に引っ張られるように頭に鈍痛が走る。
  躊躇はない。目の前に現れた選択肢を選ぶ。
  鳥が空を飛ぶように。
  魚が海を泳ぐように。
  『絶対選択肢』が出たならば選ぶ。
  それはもはや甘草奏にとっての常識。
  そうしなければ、助からない。
  だんだんと、万力に少しずつ力を込めていくように強くなっていく頭痛から逃れられない。
  放っておけば死んでしまうのではないかというほどの痛みから開放されない。

  頭を抑えている右手をゆっくり離して、ライダーに向ける。
  魔力が流れ込み、令呪が綺麗な光を放ちだす。
  その魔力に乗せて、絶対の命令権を持って放つ命令は一つ。

「令呪を持って命じる。早速だけどライダー、焼きそばパン買ってこいよ!!!」



  十  十  十


  前略、聖杯戦争の神様この野郎。
  俺の絶対選択肢は、聖杯戦争の地でも絶好調なようですよ。
  早々。


  そんなことを考えながら、奏はほんのり涙の味がする焼きそばパンを一口頬張った。


561 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:39:22 dOd3Tgao0
【クラス】
ライダー

【真名】
聖帝サウザー@北斗の拳イチゴ味

【パラメーター】
筋力:E++(C+++) 耐久:A++(C+++) 敏捷:D+++ 魔力:E 幸運:B 宝具:E

【属性】
渾沌・中立

【クラススキル】
対魔力:EX
魔力に対する対抗力の強さ。
本来ライダーの対魔力はEランク相当であるが、人体そのものに影響する魔術・宝具は全て無効化できる。

騎乗:EX
常に調子に乗っている。

【保有スキル】
南斗鳳凰拳:-
南斗鳳凰拳の正統後継者である。
一子相伝の暗殺拳、北斗神拳と対をなす存在であり、その威力は近接戦において無比。
特殊な格闘技を極めて高い水準で打ち出せると同時に、筋力と耐久を一段階向上する。

サウザー遺伝子:-
臓器の位置が左右逆になる内蔵逆位を引き起こす遺伝子の総称。ちなみに正式な学名である。
このスキルを持つ限り、人体に対して直接効果を持つ能力を全て無効化できる。

制圧前進:A
南斗鳳凰拳に構えはない、構えとは防御の型。その拳にあるのはただ制圧前進のみ。
自身の攻勢時に筋力・耐久を一段階上昇させる。

単独行動:E-
単独行動を行う。
ライダーは敵の本拠地に一人で遊びに行ったり女子供と一緒に誘拐されたり南斗六聖拳伝承者のうち五人で北海道旅行へ行ったりと拠点を離れる機会が多かった。
一人での外出の際にお弁当程度の魔力補佐を得られるが、マスター死亡後に長時間の現界は不可能である。

不退不媚不省:-
帝王の三訓。即ち『退かぬ、媚びぬ、省みぬ』の心。彼はどんな強敵相手だろうと決して逃走を選ばない。
ライダーが劣勢に立たされた場合、彼は宝具発動にかかる魔力を全て無視できる。そして鳳凰呼闘塊天を使い敏捷を三段階、筋力と耐久を更に一段階ずつ上げることが出来る。
ただしライダーがイチゴ味出典であるかぎりこのスキルが発動されることはない。
宝具『天に将星の輝く時』を発動すると一時的にこのスキルを取り戻すことが出来る。


562 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:41:52 dOd3Tgao0
【宝具】
『その名はイチゴ味』
ランク:- 種別:- レンジ:1 最大捕捉:1
出典の最後に『イチゴ味』を付けることによってライダーの存在自体をギャグにする史上最狂の宝具。
この宝具の存在がライダーをライダーとして召喚するに至った。出典というサーヴァントの根幹をねじ曲げる『呪い』。
この宝具が解放されている限りライダーはギャグキャラと化して耐久をAランクまで向上させることが出来る。ただし筋力がEランクまで下降する。
そして行動や言動が支離滅裂になり、至高が短絡的になり、空気が読めなくなる上に精神的なスーパーアーマーを得る。ただし空気を読んだほうが笑える場合空気を読む。
この宝具は基本的に解放されている状態であり、発動に魔力を消費しない代わりに、宝具『天に将星の煌く時』の解放以外で自らの意志によって発動をやめることはできない。


『時空を超えて顕れ出る凶刃(ターバンのガキ)』
ランク:E 種別:無差別 レンジ:1-99 最大捕捉:999
戦闘開始後、時々ターバンのガキが出現して誰かの太ももにナイフを刺して消えていく。
このターバンのガキの攻撃を受けたものは敏捷が二段階下がる。
一戦闘に何度も発動する上が、一度傷を付けられた人物は二度と標的にはならない。
さらにターバンのガキによって付けられた傷は戦闘終了まで消えることはなく、回復・治療も効果をなさない。
そしてこの宝具は50%の確率でライダー自身を傷つける。


『聖帝十字陵』
ランク:E 種別:固有結界 レンジ:99 最大捕捉:2
イチゴ味でお馴染みのいつもの場所を固有結界として再現できる。
この宝具自体にそれといった強化能力等はない。ただ、実家のような安心感を味わえる。
そしてこの宝具を発動している間に限り後述宝具『天に将星の煌く時』を発動出来る。
ちなみにこの宝具を発動すると、シュウ様やケンシロウ(リン・バット付き)、ターバンのガキや布切れの人が時々一緒に呼び出されることがある。


『天翔十字鳳』
ランク:E 種別:固有結界 レンジ:99 最大捕捉:10
何人も、天を揺蕩う羽を傷つけること叶わず。
南斗鳳凰拳唯一の『構え』を持つ奥義である。
この宝具の発動後10ターン以内に自身に向かって発動された攻撃を全て回避出来る。
たとえ因果を逆転させて『当たった』という結果を押し付ける宝具を発動しても、この宝具の効果を持って発動された宝具の効果をキャンセルするため絶対に当たらない。
ただし、『触れずに効果を発揮する』攻撃は避けられない。

宝具『天に将星の煌く時』発動中は効果が異なり、鳳凰のオーラを放つことができるようになる。
南斗鳳凰拳には落鳳破という技があるが、この宝具とあの技の見た目は似ていても本質的に異なる。
この宝具によって生み出された鳳凰のオーラは最初に触れた敵を一撃で殺すことが出来る。
『殺す』とは即ち極大ダメージによる致死、なので残機制キャラには有効打たりえない。

『天に将星の煌く時』
ランク:E 種別:覚醒 レンジ:- 最大捕捉:-
『聖帝十字陵』内で令呪一画を使うことにより発動が可能。
この宝具が発動された時、通常解除できないはずの宝具『その名はイチゴ味』を解除して彼は本来の自分を取り戻す。
ステータスが下記の状態になる。
筋力:C+++ 耐久:C+++ 敏捷:D+++ 魔力:E 幸運:B 宝具:E
『不退不媚不省』のスキルを取り戻し『天翔十字鳳』の効果を変更、更にターバンのガキ他イチゴ味のメンバーを全て一時的に消滅させる。

【weapon】
武器は不要。南斗鳳凰拳こそ至上の武器。
ちなみに召喚時にライダーが詰められていたトランクの中にミニカーや万国旗などの聖帝御用達おもちゃが入っている。

【人物背景】
ttp://bookstore.yahoo.co.jp/shoshi-176143/


563 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:42:57 dOd3Tgao0
【マスター】
甘草奏@俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している。

【マスターとしての願い】
ミッションをやり直して『絶対選択肢』を消す。

【能力・技能】
『絶対選択肢』
名付けたのは甘草奏本人。
既知の言葉を借りるならば『呪い』と称されるべき、常識に対して神がねじ込んだ勝手な理。
突如降って湧いたように選択肢が提示され、甘草奏にどちらかの実行を求める。そして甘草奏はそのうちのいずれかを実行しなければならない。
この選択肢に対して『選ばない』という決断は不可能。
選ばずに居ると頭痛が襲ってくる。最初は鈍痛程度だが、時間経過で脳みそをミキサーにかけられるような痛みに変わってくる。
そのまま時間が経過し続ければおそらく『死んだ方がマシ』レベルの痛みに変わるだろう。
そのため、甘草奏は選択肢のどちらかを確実に選ばざるをえない。

甘草奏による認識としては、『絶対選択肢』によって提示される選択肢は『最低なもの』と『それに輪をかけて最低なもの』の二種類が基本である。
ちなみに、神の与えるミッションの経過具合によって『絶対選択肢』は進化していく。
内容が一見どちらも『良いもの』に見えたり、選択肢の数が増えたりと様々。

この聖杯戦争における『絶対選択肢』について。
『絶対選択肢』とは上記の通り神がねじ込むことによって生まれた≒まず神の意思のもとにあるのが原則である。
しかし、一度『解除不可』とされた上で聖杯戦争に呼び出されたことにより『絶対選択肢』は創造主たる神の手を離れてしまう。
本来ならばある程度神の意志があったが、この地ではどのような場所でも選択を迫り、内容も多岐にわたる。
甘草奏の場合、今まで『絶対選択肢』は他者とのコミュニケーション上でしか飛び出さなかった(これはおそらく恋愛ゲームにおける対象との会話によるフラグ構築選択肢の再現)が、
この聖杯戦争では他者の関わらない行動の選択ですら飛び出すように(恋愛ゲームにおけるプレイヤーの行動選択によるフラグ構築も再現)なった。
そして、もはや神ですらこの選択肢を一方的にを消すことは不可能である。この『絶対選択肢』を消すのであれば聖杯戦争を終結させ、願いによって絶対選択肢に対して唯一強制力を持つ「ミッション」を再開する他ない。


【人物背景】
神の呪いによって『絶対選択肢』を与えられた青年。
選択肢を選び続けて早幾日、学園内有数のショウジキナイワー系男子として『お断り5』に任命され有名になってしまったルックスはイケメンの青年。
そもそもは常識人であり、料理が得意らしい。恋愛に奥手だが恋愛ゲームをやり込む一面もある。
器量の良さも相まって中学時代はかなりの回数告白されたことがあるようだ。
高校においても『黙っていればいい男』という評価が彼の人となりをよく表している。
ただ、選択肢が関わるとその評価は一変。
『ねえ俺のパイオツ触ってよパイオツ』『リンチされる豚の鳴き真似十回』『そんなことよりパンツ見せてくれない?』『この場で「お前ら全員俺のこと好きだって言わせてやる」と宣言』などの選択肢を選び、それを人前で実行し続けた。
そりゃあ嫌われる。まあ嫌われる。良くてドン引き。クラスの女子には近寄ると身を引かれるレベルで嫌われている。

参戦時期はいずれかのミッション終了時。それ以外は不明。
ただ、OADの時のようにこの聖杯戦争を「そういうエンディングを迎えなければならない世界」だと認識している。

【方針】
絶対選択肢を消すためにある程度積極的に動き……たかった……
ライダーをどう扱うか、というよりライダーがどの程度自重するのかが決め手になる。
令呪を集めてここぞという時に聖帝サウザーを呼んで戦えばまだ勝ちの目はあるかもしれない。


564 : 甘草奏&ライダー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/09(月) 06:43:17 dOd3Tgao0
以上です


565 : ◆69lrpT6dfY :2015/03/09(月) 19:47:07 guQaXHEE0
すみません、キルバーンの宝具「死神の笛」の内容を一部変更します。
人間だった鯖へのデバフ効果をやめて、マスター同様に幻覚効果に変更します。

【変更後】
『死神の笛』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:10
 死神を彷彿させるような大振りの鎌。柄の部分は笛にもなっている。
 鋭利な刃には小細工が施されており、鎌を回転させると風切り音により相手の感覚を奪うことができる。
 その死の音色を聞いたマスターやNPCの五感を奪い、元々人であったサーヴァントにも幻覚効果を付与する。
 ただし人の存在から遠ざかるほどに効き目は薄くなる。幻覚に耐性がある場合も同様である。
 また、繊細な武器であるため、少しでもヒビが入ると上記の超音波を出せなくなる。(魔力の消費で宝具の修復は可能)


566 : ◆HyMn6jdD/g :2015/03/09(月) 23:00:41 7YmkaUhw0
投下します


567 : ケイネス・エ・(略)&ライダー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/09(月) 23:02:30 7YmkaUhw0

かつてロード・エルメロイとまで称された名うての魔術師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。
輝かしき名誉に彩られた彼の人生は、四つの裏切りによって幕を閉じた。

第一の裏切りは、ケイネスの生徒であるウェイバー・ベルベット。
小癪な若造はケイネスが聖杯戦争に参加するにあたり用意した、征服王イスカンダルの遺物を掠め取った。
のみならずイスカンダルを召喚してのけ、ケイネスの前におめおめと姿を表した。
師の威光に萎縮するウェイバーを見たときは溜飲が下がったが、召喚されたイスカンダルめに愚弄された屈辱は忘れていない。
そもそも奴らが邪魔をしなければ初戦でセイバーを倒せていたかもしれないのだ。忌々しい。呪いあれ。

第二の裏切りは、ケイネスが召喚したランサー、ディルムッド・オディナ。
ディルムッドは魔術師の駒という分を弁えず、ケイネスの婚約者たるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリを籠絡した。
さらには敵であるセイバーと意を通じ、騎士道などという愚にもつかない理想を追い求めケイネスの戦略を根底からご破算にしてくれた。
最終的に自害させたことくらいでは何の慰めにもなりはしない。聖杯の中で永遠に苦しめばいい。呪いあれ。

第三の裏切りは、他ならぬケイネスの婚約者、ソフィア。
ディルムッドに心奪われた彼女は、ケイネスが魔術師として衰えたことを知るや即座に令呪を奪い自らがランサーのマスターたらんとした。
政略結婚の間柄ではあったが、ケイネスは真剣に彼女を愛していたのだ。だが、彼女はそうではなかった。
元凶はディルムッドだとはいえ、ケイネスの慕情は無残に踏み躙られたのだ。
それでも彼女を憎めないのは、やはり愛するが故なのだろう……。

第四の裏切りは、犬にも劣る卑劣漢である魔術師殺し、衛宮切嗣。
そもそもあの男は魔術師が当然備えるべき矜持など欠片も持ち合わせていない。魔術を下賎な機械と同列の手段としか認識しない、唾棄すべき愚昧だ。
何故あのような野良犬風情が、あれほど強力なセイバーを召喚し得たのか?
ランサーなどというハズレくじではなくあのセイバーをケイネスが召喚していれば、聖杯が既にこの手にあることは間違いあるまい。
とにかく……あの粗暴で下品で卑しく無知で不遜で卑劣極まる衛宮切嗣は、ことごとくケイネスの邪魔をした。
ケイネスが苦心して作成した工房は、ビルごと爆破するという野蛮極まる雑な工作で一瞬にして無に帰した。
ケイネスが誇りを掛けて挑んだ直接対決では、銃器や兵器を駆使するという魔術師の風上にも置けぬ痴態を晒した。
ケイネスが矜持と意地を捨てて誓約書に同意した夜、ランサーが自害した後、衛宮切嗣は伏せていた自らの手の者に命じケイネスらを撃った。
ケイネスは死んだ。ソフィアも死んだ。ランサーも死んだがそれはどうでもいい。
全てが衛宮切嗣のせいで狂ったのだ。憎い。八つ裂きにしても生ぬるい。地獄の業火で魂の髄まで焼かれてしまえ。呪いあれ。

そして、アーチボルトの血筋は絶えた。
ただでさえケイネスという家長が討ち死にし、魔術回路も破壊され、魔術の秘技も残せなかったのだ。
この先待っているのは名家の没落というありきたりな運命しかない。どこぞの一族の子を成すために女が担ぎ出されればまだ良い方だろう。

末期の瞬間、ケイネスが願ったのは何か。
愛するソフィアの存命か。
憎き衛宮切嗣の断罪か。
はたまた生家アーチボルト家の存続か。
何にせよ、彼はこう思ったのだ。


――こんなところで死にたくない


そして、彼は二度目の生を得た。


568 : ケイネス・エ・(略)&ライダー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/09(月) 23:02:58 7YmkaUhw0

「では今回の私のサーヴァントはお前ということか、ライダー」
「そういうことになる。よろしく頼むよ、マスター」

目覚めたケイネスを出迎えたのは、衛宮切嗣と同じ東洋人の青年だった――少なくとも見かけだけは。
短く刈り込んだ頭髪、引き締まった身体、朗らかな笑顔。
ライダーのサーヴァント、草加雅人。またの名を仮面ライダーカイザ。
それが今回、ケイネスに与えられた新たな手駒。

「魔力も……問題ない、昔通りだ。さらに月霊髄液もある……」

自らの身体の検分を終える。どういう奇跡か、衛宮切嗣によって傷つけられた魔術回路は完全に修復されていた。
肉体にも不備はない。車椅子などという屈辱的な装置を使わずとも両の足で立って歩ける。
ケイネスは、ロードと呼ばれた頃の、全盛期の力を取り戻していた。
さらにはケイネスが作成した魔術礼装、月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)まで所持していた。至れり尽くせりとはこのことだ。




「マスターが腕利きの魔術師だとは、俺も運がいい。微力ながら、誠心誠意仕えさせてもらうよ」

ケイネスの魔術の腕を測ったライダーがにこやかに言う。
ライダー自身の強さはおそらくそう秀でたものではない。弱くもないが強くもない、平均的というところだろう。
だが、魔術師として復活したケイネスが潤沢な魔力と魔術で補えば、格上のサーヴァントにも十分に対抗できるはずだ。
今回ソラウはいない。よって魔力負担はすべてケイネスが負うことになるが、そこは大した問題ではない。
そう、問題は……

「誠心誠意、か。ライダー、貴様は人間の魔術師である私に従うことに疑問はないのか?」
「もちろんさ、マスター。俺はサーヴァント……魔術師の駒だ。決してあなたを裏切ることはないし、軽んじもしない」
「その言葉に偽りはないか? 以前の私のサーヴァントは、貴様と同じことを言って私を裏切ったものだ」
「なるほど、そういう経緯があったか。それは不幸な、外れのサーヴァントを引いてしまったな。
 しかし信じてくれ。俺は生前、一度だって嘘をついたことはない。絶対にあなたを裏切ることはないと誓うよ」

笑顔。その笑顔が、信用できない。
どうせこいつも裏切る。あの忠義の騎士を気取ったディルムッドのように。ギアスの裏をかいた衛宮切嗣のように。
ならばどうする。決まっている。躾のなっていない犬には首輪をつけるのだ。
躊躇すれば足元を掬われる。ケイネスは同じ過ちを繰り返す気は毛頭ない。


569 : ケイネス・エ・(略)&ライダー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/09(月) 23:03:59 7YmkaUhw0

「令呪を以って命ずる。ライダー、私が死んだときは即座に自害せよ」
「……っ!?」

おもむろに放たれた令呪がライダーを縛る。
その意図は単純。マスターが死んだ瞬間、ライダーも死ぬ。一蓮托生の強制だ。
忠臣ヅラをしていたライダーの表情が歪む。人の良さそうな顔はどこへやら、憤怒と憎悪に塗れている。

「ほう、それが貴様の本当の顔か」
「……何のつもりかな、マスター。貴重な令呪をこんなつまらないことに使うなんて」
「保険だよ、ライダー。本当に私を裏切るつもりがないなら、何の問題もないだろう」
「そういうことを言ってるんじゃない。貴重な令呪を一画無駄に使用して、どういうつもりなのかと聞いているんだ」
「私の魔術を以ってすれば、一画程度ならさほどのハンデでもない。こうすることで私は貴様に全幅の信頼を置けるのだ。安いものだろう」

単独行動スキルを持たないライダーは、ケイネスが死ねばすぐさま後を追うことになる。
これでライダーからの能動的な裏切りは封じられた。ライダーの言うことが真実であれ偽りであれ、これで不確定要素をひとつ潰したことには変わりない。

「……いいだろう、今は納得しよう。だがこれっきりにしてくれ。俺にだって聖杯にかける願いはあるんだ。
 マスターの采配ミスで脱落するなんて結末は、俺にとっても願い下げだからな」
「わかっているとも。私はお前を信用しよう……お前が私を信用するのと、同じ程度にはな」

ライダーからの刺々しい視線を涼風のように受け流し、ケイネスは踵を返した。
手駒の誇りなど考慮に値しない。サーヴァントなど、所詮は魔術師の道具にすぎないのだから。
今宵、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの二度目の聖杯戦争が、始まりを告げる。




【マスター】
 ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/zero
【weapon】
月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)
 魔術礼装。刃や盾など自在に姿を変える流体水銀。生体反応の感知なども可能。
【能力・技能】
 魔術全般。特に降霊術、召喚術、錬金術に秀でる。
【人物背景】
 第四次聖杯戦争に参加した魔術師。魔術協会本部、時計塔においてロード=エルメロイの名で知られるエリート中のエリート。
 風と水の二重属性。降霊術、召喚術、錬金術に通ずる。
 魔術師として非凡だがプライドが高く、魔術師であるがゆえに柔軟性に乏しい。科学にも疎い。
 婚約者ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリと共に聖杯戦争に臨むが、自身のサーヴァントであるランサーとの不和、また「魔術師殺し」衛宮切嗣との相性の悪さによって敗北。
 魔術師としての人生、誇り、婚約者、命、尊厳などあらゆるものを奪われた絶望の果てにセイバーに介錯され、死亡する。
【マスターの願い】
 聖杯戦争をやり直し、今度こそ栄光を手にする。


570 : ケイネス・エ・(略)&ライダー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/09(月) 23:04:52 7YmkaUhw0

【クラス】
 ライダー
【真名】
 草加雅人@仮面ライダー555
【パラメーター】
 筋力:C+ 耐久:C 敏捷:D 魔力:D 幸運:E 宝具:C
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
騎乗:A
 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
オルフェノクの記号:B
 人為的にオルフェノクの因子を埋め込まれた人間。ライダーギアの欠陥を無効化する。
魔力放出(毒):B
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。
 ライダーギアを用いて変身するライダーはどれもフォトンブラッドというエネルギーで駆動し、ツールを利用して繰り出す攻撃に強力な毒性を帯びる。
 ただしカイザギアは内蔵するフォトンブラッドがさほど潤沢ではないため、必殺技使用の都度エネルギーのチャージを必要とする。
反骨の相:C+
 一つの場所に留まらず、また、一つの主君を抱かぬ気性。自らは王の器ではなく、また、自らの王を見つける事ができない流浪の星。同ランクまでのカリスマを無効化する。
 生前のライダーは秘めた本心を他人に悟らせなかったため、自らのマスターといえどもこのスキルを認識することは出来ない。
【宝具】
『九一三式装甲鉄騎(カイザギア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 悪の秘密結社スマートブレインによって開発された、強化戦士「仮面ライダーカイザ」への変身ツール。常時発動型の宝具。
 カイザギアは進化した人類「オルフェノク」の使用を前提としており、人間でも使用できないことはないが変身解除後に灰化・死亡するという欠陥がある。
 そのため「呪われたベルト」として次々と持ち主を変えたいわくつきのギア。
 本来なら変身するにはカイザフォンをギアに差し込む動作が必要であるが、サーヴァントとなった草加は魔力を纏うだけでタイムラグのない変身が可能。
『九一三式甲獣鉄騎(サイドバッシャー)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:30人
 カイザ専用として開発されたサイドカー型ヴァリアブルビークル。
 通常時は何の変哲もないサイドカーだが、戦闘時には二足歩行のバトルモードに変形する。
 右腕にフォトンブラッドバルカン、左腕に六連装ミサイル砲を装備している。ハサミ状の右腕や両足を駆使した格闘戦も可能。
『九一三式音速鉄騎(ジェットスライガー)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:5-30 最大捕捉:30人
 スマートブレイン製のライダーに割り当てられる超高速アタッキングビークル。ライダーギアに「3821」をコードを入力することで呼び出す。
 一見ただの大型バイクだが、最高時速1300km、ホイールを360°回転させることで瞬時に水平移動や局地旋回が可能。
 さらには空中・水中での活動もこなし、サイドバッシャーと同種のバルカンとミサイルを搭載するモンスターマシンである。
 ライダーの宝具は全体的に純機械製であるため神秘性は薄いが、巨体と神速を活かした突進攻撃は幻獣・神獣のそれにすら引けをとらない。


571 : ケイネス・エ・(略)&ライダー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/09(月) 23:05:19 7YmkaUhw0
【weapon】
 カイザフォン 携帯電話としても使用できるレーザー銃。本来は変身の起点となる道具だが、サーヴァントとなった草加は魔力を纏うことで瞬時に変身できるためその用途はない。
 カイザショット デジタルカメラ型パンチングユニット。拳に装着することで必殺技「グランインパクト」を発動する。
 カイザポインター デジタル双眼鏡。右足に装着することで必殺技「ゴルドスマッシュ」を発動する。
 カイザブレイガン レーザーガンとレーザーブレードをX字に複合した銃剣。銃口から放ったエネルギーネットで敵を拘束し、必殺技「カイザスラッシュ」を発動する。
【人物背景】
 仮面ライダーカイザに変身し、オルフェノクと戦う青年。普段は好青年だが、実は卑屈で自己中心的な性格の持ち主。
 過去に自身と仲間が襲撃された経緯から、オルフェノクに激しい憎悪を抱く。
 幼少の頃をともに過ごした園田真理に偏執的な愛情を抱き、彼女と距離の近い青年・乾巧を何度も謀殺しようとさえした。
 純粋な人間であるが体内にオルフェノクの因子を埋め込まれているためライダーギアの使用が可能。
 オルフェノクとの戦闘に備えて鍛えていたためか、判断力・運動能力に優れ、話術による人心掌握も得意とする。
 物語終盤、オルフェノクとして生きることを決意した木場勇治によって殺害される。その決断を固めさせた一因は、皮肉にも草加自身のそれまでの行いだった。
【サーヴァントの願い】
 二度目の生とオルフェノクの根絶。木場勇治は絶対に殺す。乾巧もついでに殺す。


572 : 名無しさん :2015/03/09(月) 23:05:34 7YmkaUhw0
投下終了です


573 : ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:21:46 irzvDDAU0
投下します


574 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:23:21 irzvDDAU0
いつも変わらない平和な日常―――

朝起きて朝食を食べて、友達と一緒に学校へ通い
授業を聞いたり、友達とおしゃべりしながら下校したり
家に帰って夕食を食べて、お風呂に入ってベッドを眠る。

そんな毎日をただ繰り返していれば何も苦しまずに済むかもしれない。
だけど私は思い出した。
夢の中で出逢った魔法少女、ほむらちゃんの悲痛な表情を見て全ての記憶が蘇った。

ほむらちゃんが転校生としてやってきた事。
マミさんとの出会いと別れ。
魔法少女になり魔女になったさやかちゃん。
さやかちゃんを元に戻そうとしたけど失敗して心中を選んだ杏子ちゃん。
たった一人でも諦めずにワルプルギスの夜に挑んだほむらちゃん。

私は誓った。
魔法少女達が絶望しない世界へ作り直すと。
全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。
全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で。
今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を私は泣かせたくない。
最後まで笑顔でいてほしい。
それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる。
これが私の祈り、私の願い。
そして私はインキュベーターに願いを伝えた……はずだった。

だけど願いは届かなかった。
運命の悪戯か必然によるものか、インキュベーターより先に聖杯が彼女の願いを聞き入れてしまった。
偽りの日常から目を覚ましたまどかにとって、この事実は受け入れがたいものである。
彼女なりに必死に悩んで悩みぬいた末の決断が、全て気泡に潰えたのだから。

願いを叶えるには、もはや鹿目まどか一人の犠牲では足り得ない。
この聖杯戦争に参加する自分以外の全ての人間を供物に捧げなければ到達できない願いとなった。
自分だけが犠牲になるのは構わない、だが他人を殺めてまで願いを叶える覚悟は今のまどかには無い。

「全ての魔法少女を救いたい……だけど誰かを殺すなんて私は……」

絶望的状況に打ちのめされるまどかの前に、なぁんと鳴く黒猫が姿を現した。
黒猫はまどかの方をじぃっと見つめて動かない。
まるで何かを求めているような気がした。


575 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:23:54 irzvDDAU0
「エイミー?」

黒猫を見たら、なぜかそんな名前が浮かび上がった。
今まで猫を飼った事なんて無いのに。

すると黒猫はゆっくりと歩き始めた。
時折こちらへ振り返って様子を見ている。
付いてきてと言っているのか、黒猫とまどかの距離は付かず離れずを維持している。

「あ、待って!」

黒猫から不思議な気配を感じたまどかは後を追いかけた。
きっと黒猫は私に用があって現れたのだと思った。
まどかが付いてくるのを確認すると黒猫はどんどん先へ進み山道へと入っていった。
不安に思いつつもまどかも山の中へと進む。

「どこまで行くのエイミー?」

黒猫は、なあんと鳴いて返事をすると更に先へ進んだ。
あまり奥へ行くと迷子になって出られなくなるんじゃ……と不安が大きくなる。
獣道を歩き続けると、広く手入れのされた道にたどり着いた。
そこには花畑があり、色々な種類の花がいくつも咲いていて、とても綺麗だった。
わぁ……と花に見惚れて足を止めると黒猫がまた、なあんと鳴いて歩き出した。

黒猫を見失わないよう、名残惜しくも花畑を後にすると
沢山の薔薇が咲き乱れる大きな庭が視界に入った。
山の中にこんな花が沢山咲いているなんて知らなかった。
まるで幻想の世界へと迷い込んだような、美しく神秘的な光景だった。
そしてまどかは目にした。
この庭の持ち主が住むであろう、巨大な屋敷を

昔の貴族が住んでいたような洋風の作りで
風情があり、薔薇の咲き誇る庭と合わせて、とても高貴な雰囲気を醸し出している。
まどかを歓迎するかのように扉は開いていて、黒猫が屋敷の中へと入っていく。

誰かが呼んでいる……。
声は聞こえないけど、そんな感覚が彼女の心を捉えて離さない。
まるで魂がこの家に引っ張られているような。
まどかは小声でごめんくださいと呟いてから屋敷に入り、黒猫を追った。


576 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:24:35 irzvDDAU0
屋敷の中は、使用人が毎日掃除をしているのか
綺麗に手入れが行き届いており生活感が感じられた。
だけど今は留守にしているのか、人の姿が全く無い。

屋敷の奥へ奥へと進む黒猫。
そしてある一室へ入るとようやく歩みを止めて、ごろんとくつろいだ。
まどかも恐る恐る部屋へ入ると、そこにはベッドで横になっている少女がいた。
少女が目を覚ますと、まどかに気付いたのか起き上がってこちらの方へ顔を向けた。

「……っ!?」

少女の姿にまどかは言葉を失う。
少女の顔や体には包帯が巻かれていて
包帯の隙間から見える肌は赤黒く変色をしている。
少女は重い病気を患っているのだと理解出来た。
まどかの顔を見た少女は優しく微笑みながら一言、こう言った。

「初めまして。私のマスターさん」

少女は、まどかのサーヴァントだった。





「ごめんなさい。すぐに貴女の前に現れたかったんだけど、私はこの家から出られなくて……」
「気にしないでキャスターさん 病気だもんね 仕方ないよ」

まどかのサーヴァント、キャスターは病により、外へ出ることが出来ない。
そのせいでマスターとは離れた山奥で現界する事になり
マスターとのパスの繋がりを利用して、まどか自身から会いに行きたくなるよう暗示をかけていたのを知った。

「ねえマスターさん。名前を聞いてもいいかな?」
「うん。私はまどか 鹿目まどか よろしくねキャスターさん」
「私の事もキャスターじゃなくて、エレンって呼んで。まどかちゃん」
「分かったよ。よろしくエレンちゃん」

名前を呼ばれたキャスターのサーヴァント、エレンはえへへと、はにかみながら笑った。
その姿は武勇伝を馳せた英雄たちとは思えないごく普通の少女にしか見えなかった。

「そうだ。美味しい紅茶とお菓子があるんだけどまどかちゃんも一緒に食べよう?」
「うん。頂きます」

まどかは思った。
エレンは病気で外に出られずに、友達も作れなかったんじゃないかと。
私で良ければこの子の友達になって笑顔でいてほしい……心からそう考えた。





まどかはエレンとのお茶会で色んな話をした。
自分のこと、家族のこと、友達のこと、学校のこと、だけど魔法少女のことは話さなかった。
ただでさえ聖杯戦争という争いが始まっている。
それとは直接無関係な争いまで話して、エレンを心配させたくはなかった。


577 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:25:14 irzvDDAU0
話を続けている内に暗くなってきた。
例え本当の家族じゃなくても心配はさせたくない。
帰り支度をしようとした時、エレンは真剣な眼差しでまどかを見て―――

「ねえ……まどかちゃん。聖杯でどんな願いを叶えたいの?」

どんな願いを持って聖杯を欲するのか、エレンはまどかに尋ねた。
不本意とはいえ聖杯戦争に参加した以上、必ず決めなくてはならない答え。
私は考えた、自分に願いが無くても、願いを叶えようとする人達との争いは避けられない。
戦う?サーヴァントと言っても私より小さい女の子のエレンを戦いに?
そうまでして叶えたくもない、戦いたくもない。

「もしかして、叶えたい願いは無いの?」

答えがなかなか出せずに沈黙が続くと
エレンは察したような表情で再び尋ねた。
彼女のの金色の瞳が自分の心を見透かしたような気がした。
ゆっくりとうなづくとエレンは、まどかの不安を消そうとなだめるような声で……。

「それなら聖杯を求めずに戦いから降りる方法を探しましょう」
「そんな方法あるの……?」
「残念だけど今は無いわ。でも探し出して見せる。もしかしたら他に協力してくれるマスターもいるかもしれない
 だからまどかちゃんは絶対に諦めないで」
「でもエレンちゃんの願いが……」

自分よりも小さなエレンがまどかを元気づけようと励ましてくれている。
だけど聖杯を諦めるということは願いを諦めることになる。
それではサーヴァントになったエレンちゃんの願いも叶わなくなってしまう。

「大丈夫よ。私の願いはもう叶ったから」
「え……?」
「私ね……物心付いた時から病気で体が弱くて寝たきりの生活をしてたんだ
 けっして人に移る病気じゃないけど近所の人たちは皆、不気味がって私に近づこうとしなかった
 両親もそう、こんな体の私を愛するはずも無くて、私はずっと一人だった……」
「エレンちゃん……」
「だけど、まどかちゃんはそんな私に優しくしてくれた
 病気の私を拒否しようともせずに友達になってくれた
 それで私は十分に幸せになれたの。だから聖杯なんてもういらないわ
 今度は私がまどかちゃんの願いに答える番、例えこの身がどうなろうと必ず元の家に帰してあげるから」
「ありがとうエレンちゃん、この先にどんな困難が待ち構えていても絶対に諦めたりなんかしない」

エレンの言葉を聞いて、まどかは決意した。
無謀とも言える聖杯戦争への脱出をエレンは必死で果たそうとしている。
どれだけ難しくても諦めなければ道がきっとあるはずだ。
あの時、私は心の中でどこか確信が持てていた。
私なら魔法少女達が悲しまなくてもいい世界が作れるはずと。

だからこの聖杯戦争でも諦めたりなんてしない。
くじけず、前へ進んでいけば奇跡はきっと起こるはずだから……。


578 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:25:44 irzvDDAU0
「そうだ。まどかちゃん右手を見せて」
「こう?」

エレンの言われるがままに右手を差し出すと、手の甲にある令呪に手を触れて魔力を込めた。
すると令呪が綺麗に消え去り、痕すら残らなくなった。

「これは……?」
「本当に消えたわけじゃないわ。幻覚の一種で見えなくなってるだけ
 でもこれでまどかちゃんがマスターだとばれにくくなるわ」
「エレンちゃん、ありがとう!」
「気を付けてね。もうじき聖杯戦争が開始される。どこで戦場になってもおかしくないから」
「うん、気を付けて帰るね」
「少しでも危険を感じたらすぐ戻ってきてね。屋敷の中なら私でも戦える
 まどかちゃんを守る事なら出来るから」

心配そうな表情を浮かべるエレン。
彼女のためにも死ぬわけにはいかないと、まどかは心に決めた。

「ねえ、あの黒猫はエレンちゃんのペット?」
「違うわ。この子が勝手に住み着いてるだけよ」

黒猫はエレンの言葉に抗議するように鳴いた。
その姿にまどかはふふっと笑う。
なんだかんだ言って黒猫はエレンに懐いているようだ。





月明かりが屋敷の窓から室内へと差し込む。
ぽかぽかした太陽の明かりも好きだけど月の光も幻想的で好き。
エレンは恋い焦がれる乙女のような表情で窓の外を見ていた。
自らのマスターである鹿目まどかの姿を思い浮かべながら。

鹿目まどか とっても素敵で愛らしいマスター。
見る者に安心感を与えるような慈愛に満ちたその瞳。
ほのかに甘い香りのするサラサラの髪。
薄いピンク色で柔らかそうな唇。
傷一つの無い、細くて綺麗な指。
強く抱きしめると折れてしまいそうな華奢で柔らかそうな身体。
その中で最も美しくて愛しいのは貴女の心

こんな醜い体の私と友達になってくれた。
私の言葉を何一つ疑うことなく信頼を寄せてくれた。
そして私に心配させないようにインキュベーターの存在を秘密にしていた。


579 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:26:29 irzvDDAU0
魔法少女、契約を交わして魔法の力を手に入れるなんてまるで私と同じ魔女みたい。
でも貴女の世界の魔女とは定義が随分と違ってるわね。
どんな願いも叶えられる魔法少女の力は興味深いけど、すぐに命を落としちゃう力なら必要無いわ。
私ならそんなリスク犯さなくても願いなんて叶えられるもの。

「それにしても絶望を糧にするなんて、まるで貴方みたいね」

そう言ってエレンは黒猫の方を見つめると
黒猫は尻尾を振りながらくつろいでいた。

鹿目まどか、貴女を見るとあの子を思い出すわ。
貴女と同じで家族に愛された、とっても優しくて、とっても可愛くて、そして―――


      とっても愚かな女の子


貴女は絶対に魔法少女になんてさせない。
欲しい、貴女が欲しいの。
きっとくれるわよね?あの愚かな子のように。
私をかわいそうだと思ってくれるなら断れないはず。
大丈夫。安心して貴女を愛する人達は私がしっかり愛してあげるから。
だから頂戴 鹿目まどか……貴女の身体を。
かつて私の友達だった女の子 ヴィオラのように……ね。


【クラス】
 キャスター

【真名】
 エレン@魔女の家

【パラメーター】
 筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:C(A) 幸運:E 宝具:A+

【属性】
 中立:悪

【クラススキル】
 陣地作成:-
 「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
 エレンは自らの宝具の外で活動が出来ないために、このスキルの効果は失われている。

【保有スキル】
 不治の病:-
 どのような治療をもってしても決して治ることの無い病気に侵されている。
 動くだけで足から血が滲み、常に激痛が肉体を襲っている。

 不死身の魔女:A
 心臓を破壊する、首を切り落とす等の致命傷を受けても蘇るスキル。
 魔力の続く限り復活が可能だが、一度の蘇生で大量の魔力と精神力が消費される。
 絶望に落ちて生への執着を失うと、このスキルの恩威が消滅し死を迎える。

 呪いの忌み子:-
 誰にも愛される事なく関わる者全てを不幸にした呪われし子供。
 このスキルを持つ者と親しくなるほど幸運が現象する。


580 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:27:18 irzvDDAU0
【宝具】
『呪われし魔女が住む館』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:200人
 魔女となったエレンが譲り受けた悪魔の館。
 所有者となったエレンの意思に従って活動する生きた館であり。
 エレンが望むままに内部の構造を自在に変えられ、侵入者を攻撃する。
 魔女に殺させた魂は悪魔の供物となり、必要条件を満たすことで悪魔から願いを叶えて貰うことができる。
 館の中にいる限り、エレンの魔力は2ランク上昇して病を抑えられるが
 外出すると病状が加速的に進行してエレンの命を蝕む。
 エレンが他者の体に乗り移っても、この宝具でエレンを殺害することが出来ない。
 またエレンが消滅しても所有者が悪魔に自動的に変わる為に、この宝具は現界を続ける。
 ただし、悪魔は人を殺すことが出来ないため、魔女がいなければ宝具の運用は不可能。
 悪魔はこの宝具の一部として召喚されており宝具を破壊すれば悪魔も消滅する。

『嘘と偽りの絆(マリシアス・コネクト)』
ランク:C 種別;対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 エレンの『外に出たい』という願いを叶えるために悪魔が与えた禁術。
 魔術の法則を無視して対象の人物と肉体を入れ替えることが出来る。
 他者と信頼を重ね、エレンの望みに真摯に聞き入れさせるのが条件であり
 握手するように相手と手を握り合い、念じれば発動される。
 他人の体に入れ替わってもスキル『呪いの忌み子』は決して外すことは出来ない。


【weapon】
 無し

【人物背景】
 貧民街の貧しい家で生まれた少女。
 生まれつき、病に侵されて周囲から疎まれて生きていた。
 唯一愛してくれたのが母親だが愛人を作り
 父と娘を捨てて出ていこうとする母親に憎しみを抱き殺害。
 妻の死体を見て嘆き悲しむ父親も殺害し燃え盛る家から脱出して逃走。
 そこで両親の魂を食らった悪魔が現れて、礼としてエレンに魔女の力と家を与えた。
 悪魔に与えられた家の中では飢えることも無く、好きなだけ勉強が出来て充実していたが
 外に出て友達を作りたい想いは日に日に強くなっていく。
 家に招き入れた人間を次々と殺して悪魔に魂を献上していき、ようやく外に出るための魔法を与えられた。
 そして家に招き入れた少女ヴィオラと信頼関係を築き、一日だけ体を貸して欲しいと約束して肉体を奪う。
 最後はヴィオラの父親が、エレンの体になったヴィオラを射殺し
 その死に様を見てエレンは嘲笑い立ち去った。
 
【サーヴァントとしての願い】
 鹿目まどかの肉体を奪い、聖杯戦争からの脱出を狙う。
 聖杯には興味なし。

【基本戦術、方針、運用法】
 主に人を惑わし欺く魔法に長けている。
 目立たない程度に宝具に魂食いをさせて悪魔に願いを叶えさせる。


581 : 鹿目まどか&キャスター ◆Q47.dLD/uw :2015/03/11(水) 00:27:51 irzvDDAU0
【マスター】
 鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争からの脱出

【能力・技能】
 最強の魔法少女になれる素質があるが、今は平凡な女子中学生としての力しかない。
 
【人物背景】
 見滝原中学校に通う中学2年生の少女で、クラスでは保健委員を務めている。
 桃色の髪を母親の勧めの赤いリボンで2つに結っている。
 10月3日生まれ、血液型はA型、身長は150cm未満で小柄。
 家族構成は母・父・弟の4人で、母が働き父が家事をするという家庭環境で育つ。
 心優しく友達想いだが、自分を何の取り柄もない人間だと考えるやや卑屈な面があり、
「誰かの役に立てるようになりたい」という夢を抱いている。
 その平々凡々な人格とは裏腹に、魔法少女としては途方もない素質を持っており、執拗にキュゥべえから契約を迫られることになる。
 当初は一見華やかではある魔法少女に夢を見ていたものの、マミの死やソウルジェムの真実に直面するたびにその認識を改めていき、
 魔法少女としての契約に踏み出せない自分の臆病さに迷いながらも、「当事者になれない傍観者」という立場で他の魔法少女に干渉していく。
 参戦時期は最終話でインキュベーターに願いを叶えて貰う寸前の状態から

【方針】
 何が有っても生きることを諦めない。
 聖杯戦争から脱出するための協力者を集めたい。


582 : 名無しさん :2015/03/11(水) 00:28:25 irzvDDAU0
投下終了です


583 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:17:35 ngs4oS3Q0
皆さんお疲れ様です。
私も投下させていただきます。


584 : 加藤久嵩&セイバー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:18:29 ngs4oS3Q0







――――――運命を創るコトはできなくても、人は、自らの運命を選ぶコトはできる……






――――――天児さんの、最期の言葉だ






◆◇◆




(先生……僕は……)



人類を救う。
世界征服を宣言し、全ての人類に恐怖の象徴として認識されていた男―――加藤久嵩の目的は、あまりにも純粋なものだった。
660年前のあの日……自滅スイッチが入り人類が滅亡を迎えたあの時から、彼はずっと想像し続けてきた。。
『やり直された』新たな世界で、人類を救うには何を成せばいいのかを。


圧倒的な力を持ち人類を滅ぼさんとするヒトマキナから、どうすれば人類を守り抜けるのか?

再び人類の自滅スイッチが入らないようにするには、どうすればいいのか?


その想像の末、彼が選んだのは修羅の道であった。


585 : 加藤久嵩&セイバー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:19:11 ngs4oS3Q0


ヒトマキナの持つ圧倒的な戦力には、どうあっても人類が打ち勝つことはできない。
故に、彼は永久にヒトマキナを月に封じるべく鍵となる地上のマキナ達を手中に収め封じる道を選んだ。
その驚異から、人類を守る為に。

人が人である所以たる『想像力』を失い生命として不自然なモノとなった時、その内に秘められた因子―――自滅スイッチが入り、人類は滅びる。
故に、彼は自らが悪となり人類にとっての恐怖の象徴となる道を選んだ。
世界を制御し死の恐怖を認識させる事で、人類から想像力を失わせない為に。


例えその過程で多くの命を奪う事になろうとも、それが人類救済に繋がると信じられたからこそ加藤は自ら世界の敵となる事ができた。
加藤機関の総帥としてその身に全人類の憎悪を浴びる形になろうとも、後悔はなかった。

恩師―――城崎天児から託された思いを無駄にしないためにも、そうする事に躊躇いはなかった。



(……早瀬浩一……!)


しかし、先の戦い―――JUDAとの決戦において、そんな加藤の信念は根底から揺さぶられた。

早瀬浩一。

ラインバレルを、そして城崎天児の意志を受け継いだというあの少年の言葉を前にして、加藤は激しい激情に駆られた。
何百年という時を過ごし、彼は人類を救うべく動いてきたのだ。
それを、早瀬浩一は偽りの方法であると否定した。
そして人類を救えと願った恩師は、早瀬浩一に己が想いを託したという。

ふざけるな。
どれだけの永い時を経て、自分が選択をしたというのだ。
昨日今日ファクターになったばかりの少年に、何がわかるというのだ。




――――――本当に人類を救いたいなら……俺たちに協力してくれ!!


586 : 加藤久嵩&セイバー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:19:38 ngs4oS3Q0


「ッ……!!」


しかし……加藤のやり方を否定した上で、早瀬浩一は手を差し伸べてきたのだ。
加藤の人類を救いたい思いは本物であると。
マキナが齎した仮初の未来を壊せると、本当の意味で人類を救うことができると。

自分達が協力をし合えば……それが出来ると。

その言葉は、加藤にとって許しがたいものではあった……だが、それでいて心に響くものでもあった。
彼は為そうとしている。
自分が為せなかった、本当の意味での人類の救済を。

本当の……『正義の味方』になることを。

出来るというのか。
自身が選択できなかった、諦めるしかなかった道を……彼は、選べるというのか。


「……セイバー。
 お前はどう思う……私は、一体どうすればいいのだ?」

振り返ることなく、加藤は背後に立つ己がサーヴァントに言葉を投げかけた。
幾多の戦場を駆け抜けそして英霊と呼ばれるにまで至ったこの男に、自分達の生き方はどう見えているのか。
過酷な運命を経て人類を救うべく刃を振るってきたこの英雄―――悪を断つ剣には、己が生きてきたこの世界がどの様に見えているのだろうか。

『正義の味方』と呼ぶに相応しいであろうこの武人に、問いかけずにはいられなかった。


「主よ……お前の気持ちはよく分かる。
来るべき驚異から人類を救うべく、敢えて修羅の道を行く……その様な生き方を選んだ者達を、俺はよく知っている」


セイバーは、加藤の選んだ道にある種のシンパシーを抱いていた。
彼と同じ道を選んだ者達―――ディバイン・クルセイダーズを、よく知っているからだ。


587 : 加藤久嵩&セイバー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:19:57 ngs4oS3Q0
圧倒的な戦力を持って地球圏を狙う異星の侵略者達。
その手から人類を守るべく、そして人類が一丸となって立ち向かえる体制を整えるべく、彼等は武力を以て地球圏の統一を目指した。
無論その過程で失われた罪無き命もあり、また、その真意を忘れ私欲に走った愚か者達もいた。
世論からすれば、決してディバイン・クルセイダーズは正しい組織とは言えなかっただろう。

だが、それでも総帥ビアン・ゾルダークを始め、人類を救わんとした総帥者達の信念は本物であった。
だからこそ彼等は、満足して最期を迎え散っていったのだ。
全人類に悪として恨まれようとも、自らが人類の敵として立ちはだかった事で結果的に人類は護る為の力を得る事が出来たのだから。
その思いは今もなお、セイバーの胸に強く生き続けている。


「だからこそ、俺はお前の信念を否定するつもりはない。
 お前の行動によって人類が一つに纏まったこともまた、変えられぬ事実だ」


加藤の行いは、まさしく彼等と同じだ。
故に、自身もこうして彼のサーヴァントに選ばれたのだろう。
ならば……今までの彼の行いを否定することは、決してできない。
そうする事で得られたモノがある以上、それを間違いだと断ずることはあってはならないのだ。


「だが……主よ。
 迷いを抱くという事は、それはまだ未来を想像できるという証拠ではないか?」


だが、そう宣言した上でなおセイバーは答えを出さず、敢えて問いかけた。

加藤が本当に見たい未来とはなんなのか。

早瀬浩一の語る理想―――希望こそが、本当の意味で加藤が望む未来ではないのかと。

故に彼は、こうして迷っているのではないかと。


故に……この聖杯戦争に招かれたのではないかと。


588 : 加藤久嵩&セイバー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:20:19 ngs4oS3Q0

(……もし、あの早瀬浩一の言うような未来を望むことができるなら……
 ヒトマキナの驚異から人々を解き放ち、想像力の喪失を防ぐことが出来るのなら……私は……)


人は運命を選び直すことはできる。
早瀬浩一が目指す様な運命を……自分もまた、新たに選べるというのならば……


「……セイバー。
 私が選ぶのは、血塗られた道だ。
 聖杯を得て奇跡を実現する……その為には、他の命までも奪わなければならない。
 時に残酷な選択を強いる事もある……それでも尚、お前は私と共に戦う覚悟があるか?」

「ああ……この剣に誓おう。
 人類を救わんとするお前の信念の為……俺もまた共に戦おう」


鞘を握り、片手で強く加藤の前に差し出す。
『正義の味方』になろうとする主のその信念を貫く為に。
人類を救わんとするその愚直な願いを共に果たす為に。

その為に……セイバーは、彼の剣として戦うことを宣言する。


「我が名はゼンガー……ゼンガー・ゾンボルト!
 我こそは、加藤久嵩のサーヴァント……悪を断つ剣なり!!」


589 : 加藤久嵩&セイバー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:20:36 ngs4oS3Q0


【クラス】
 セイバー

【真名】
 ゼンガー・ゾンボルト@スーパーロボット大戦OGシリーズ

【パラメーター】
 筋力:A 耐久:C 敏捷:C 魔力:C 幸運:D 宝具:A

【属性】
・秩序・中庸

【クラススキル】
・騎乗:B
 乗り物を乗りこなす能力。
 Bランクで魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなす。

・対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】
・直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

・戦闘続行:B
 戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

・宗和の心得:B
 同じ相手に何度同じ技を使用しても命中精度が下がらない特殊な技法。
 攻撃を見切られなくなる。

【宝具】
『霊式斬艦刀』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1
 セイバーが生前より愛用していた愛刀にして、彼を象徴する宝具。
 普段は何の変哲もない日本刀の形状をしているが、真名開放と共に真の姿を現す。
 その実態はセイバーの身の丈を更に超える大刀であり、その柄には彼の愛機であるダイゼンガーの意匠が施されている。
 文字通り艦隊ですらも斬れる程に巨大な一品だが、セイバーは持ち前の技量でこれを片手で担ぎ扱えている。
 ただし斬艦刀=ゼンガー・ゾンボルトの代名詞という程の知名度もまたある為、この宝具を開放する事は真名がバレる事も考慮しなければならない。

『斬艦刀・雲耀の太刀』
 ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100
 斬艦刀の最強形態にしてセイバー最大の威力を誇る宝具。
 魔力を収束させることで霊式斬艦刀の刀身を数倍にまで巨大化させ、その一撃をもって眼前の敵を斬り倒す。
 その名は薩摩示現流の奥義の1つ「雲耀」に由来し、鋭く研ぎ澄ました錐が薄紙の裏へ突き抜けるまでの時間、
 要するに「眼にも留まらない一瞬」のスピードで振り下ろされた斬撃とその剣圧で遠距離の相手すら倒すという極意である。


590 : 加藤久嵩&セイバー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:21:06 ngs4oS3Q0
【weapon】
 霊式斬艦刀のみを用い戦う。
 普段は真名開放をせず単なる日本刀として扱う。

【人物背景】
 地球連邦軍ATXチームの隊長にして、『悪を断つ剣』の異名を持つ武人。
 グルンガスト零式・グルンガスト参式・ダイゼンガーといった特機を乗りこなし地球圏防衛の為に幾多の戦場を駆け抜けてきた。
 また薩摩示現流の使い手として生身でも相当の戦闘力を秘めており、とある事件の際には超人が跋扈する
 異世界の戦場でその剣を振るい活躍したこともある。
 豪胆且つ実直な漢であり、一度自ら決めたことを、例え何があろうとも断固としてやり遂げる意志の強さを持つ。
 だがその強過ぎる信念ゆえに、情勢の変化に対して柔軟に立ち回れず、人の心の機微を理解しながらも、
 それに応じた接し方ができない不器用さも併せ持っている。
 かつては地球連邦軍の一員として地球圏防衛の為に力を尽くすも、その最中で「今の連邦軍では迫り来る驚異に立ち向かえない」という思いを抱く。
 そして、親友エルザム・V・ブランシュタインとの再会を経、自ら敵となって異星人に立ち向かう剣を鍛え上げるべく、
 連邦を裏切りコロニー統合軍へと着き、ディバイン・クルセイダーズの一員となる。
 この際、彼は「ディバイン・クルセイダーズが暴走した際はそれを食い止める」役目を総帥達から命じられており、
 ディバイン・クルセイダーズ亡き後はかつての理想を失い迷走する残党達をその手で打ち倒し、
 地球圏を守る剣となるべく再びATXチームへ合流する。
 そして地球を狙う侵略者エアロゲイターを退けた後は、理由はどうあれ仲間を裏切った己が表立って共に立つ訳にはいかないという思いから
 再び姿を消すも、地球圏に危機が迫る度に彼等の元へと馳せ参じ、悪を断つ剣としてその力を振るっている。
 その生前の経緯からライダーとしての素質もあり、もし彼がライダーとして選ばれていた場合は 
 霊式斬艦刀を失う代わりに生前の愛機が宝具となる可能性がある。

【サーヴァントの願い】
 人類を救わんとする主の願いを叶えるべく、その剣として戦い抜く。

【基本戦術、方針、運用法】
 主に従い戦う。
 基本的には真っ向からの勝負を挑むも、必要とあらば奇襲等も辞さないつもりでいる。
 

【マスター】
 加藤久嵩@鉄のラインバレル(原作漫画版)

【マスターとしての願い】
 真の意味で人類を救いたい。
 その為に聖杯が齎す奇跡が必要。

【能力・技能】
 組織の長として、強いカリスマ性と高い指揮力を持っている。
 マキナ『シャングリラ』のファクターとしてナノマシンを体内に注入されている為、常人よりも高い身体能力と自然治癒能力を持っている。
 ただしこの聖杯戦争においては自身の座標がはっきりとしない為に、シャングリラを呼び出すことはできない。

【人物背景】
 全世界に世界征服を宣言した組織『加藤機関』の長。
 世界の主要都市に核ミサイルの発射を予告したり、敵対する地球軍を容赦なく打ち倒すなど、
 人類にとっては恐怖の象徴と呼ぶに相応しい存在だった。
 しかしその真意は、行動とは真逆で人類を救うことにある。
 その正体は、660年前にナノマシンにより不老不死を実現し平和になったが故に想像力を失い、
 自らの遺伝子に組み込まれた自滅スイッチを入れて絶滅した人類の唯一の生き残り。
 恩師である城崎天児から人類救済の願いを託され、シャングリラのファクターとなる事で絶滅を免れた彼は、
 ヒトマキナの手により新たにやり直された世界で人類を救うべく行動を開始する。
 そして、人類の力ではヒトマキナに勝てないと判断してその進行を防ぐべく地上にある全マキナを手中に収める事を計画し、
 自らが人類の敵となり恐怖の象徴となることで、人類から想像力を失わせない様にした。
 だが、その最中に特務機関JUDAの一員である早瀬浩一と出会い、彼が天児よりラインバレルとその意志を託されたことを知り、
 かつて諦めた理想を実現させようとする彼の姿に、徐々に心を動かされていった。

【方針】
 聖杯を手にするために戦う。


591 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/11(水) 03:21:21 ngs4oS3Q0
以上、投下終了です。


592 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/11(水) 17:39:08 Jf0yZLxc0
投下させていただきます


593 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/11(水) 17:39:44 Jf0yZLxc0



どう考えてもバッドエンドにしかならない。



◇◇◇

ある日神様は一つの双六ゲームを思いついた。
二人の駒が絶対不死身の進行役と協力して一人の少女とどっちが先にゴールできるか競う双六。
負けた駒は死にます。どっちもゴールできなかったら世界が滅びます。
VIPの少女は死ねません。途中でゲームはやめられません。
本気で頭のおかしい馬鹿げた双六ゲーム。
少女の心はすり減ってこんなゲーム嫌になってしまった。
ただ好きな先生と一緒に居たいだけなのに。
優しい少年に傷ついてほしくないだけなのに。
ふつうでいたいだけなのに。
そこで優しい神様は代わりに別のゲームを用意した。
一騎のサーヴァントと二人一組でほかのペアを蹴り落として聖杯を狙うバトルロワイヤル。
どうあがいても、少女は殺し合いから逃げられない。


594 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/11(水) 17:40:29 Jf0yZLxc0
◇◇◇

「先生…会いたいよぉ、先生…ッ」
天使の羽の生えたリュックを背負った少女はただただ先生を呼び公園のベンチで泣いていた。
震える少女をピンク色の奇妙な生き物が少女の傍でふわふわと漂っている。
その生き物の名前はゆめうつつポケモンムシャ―ナ。ニックネームはムシャ。
少女は傍で浮いていたムシャを胸元に引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
彼女の元に一人の少年がコンビニの袋を携えて駆け寄った。

「よッ!ムシャ。エリの面倒見といてくれてありがとな。エリ、弁当買ってきたけどどっちがいい?
幕の内ってのと、鮭弁ってのがあるけどさ…」
少年が少女――エリに話しかけるが、エリは彼に反応せずベンチの上で座り込んでいるだけである。

「…エリ、大丈夫か?」
少年は屈みこみエリの顔を見た。涙が頬を伝い、瞳には絶望しか映っていなかった。
「…ライダーさん、わたしどうすればいいの?」
おおよそ数分は経った時、固く閉じていた口を漸く開いた。
「聖杯を獲って願い事をかなえればいいの?でもわたしは人を殺せる力がありません。
聖杯に刃向かって対決するの?でもわたしには刃向かうための知識も能力もない」
初めはぽつりぽつりと、しかしだんだんと決壊したダムのように言葉が流れ出した。

「なんで…なんでいっつも頭のおかしいゲームに巻き込まれなきゃいけないの?
なんで誰かを殺さなきゃ願い事がかなわないの?
わたしはただこんなとこから帰って先生と平和に暮らしたいだけなの!
ドラジェ君からお父さんがいなくならないで、泣いてほしくないだけなの!
それなのに、それだけなのに、どうしてなの!?」
思いが溢れる。涙が零れる。
その言葉は誰に向けたものなのか。
目の前の少年に向けてなのか。自分を弄ぶ神様に向けてなのか。

「でも…わたしは何もできない…戦うことも考えることも決めることさえこともできない…
何一つ力になれない…ごめんなさい…ごめんなさいライダーさん…なにもできない子供で…」
エリはそう言って打ちひしがれる。ただの子供がこんな場所でできることはただ一つ。
泣いて絶望することだけである。
涙を流すエリに、少年、ライダーは優しく彼女の頭に手を置いた。


595 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/11(水) 17:41:44 Jf0yZLxc0
「エリ…決めることもできないって気持ちさ、オレも分かるよ。オレもそうなったことあるからさ」
「…ライダーさんも?」
「ああ、オレはさ、子供の時からポケモンリーグで優勝することを夢見てずっとその夢だけを追っかけて旅してたんだ。
でもその旅の途中でプラズマ団との戦いに巻き込まれちまったんだ」
ポケモンの解放を求めて暗躍するプラズマ団。奴らはその目的のためポケモンリーグを狙っていた。
自分たちの都合だけで奪い踏みにじろうとしている連中。決して許すことができなかった。
ライダーは自分の「夢」を守るため戦いに挑んだ。
だが戦いを繰り返すうちに、彼の想像を超えたスケールへと変貌していった。
伝説のポケモン。ライトストーンの復活。ゼクロムとレシラム。N。ムシャとの離別。
いったいどうすればいいのかわからなくなってしまい、まじりっけのない夢も見れなくなって、真実さえ見失ってしまった。

「それで…ライダーさんはどうやって立ち直ったんですか?」
「ああ、オレ一人だけじゃ無理だったよ。だけど一緒に夢見てきたこいつらがいたからさ」
ポケモンリーグ優勝の夢は自分だけのものではなかった。ポケモンたちが、仲間たちが夢見ていた、確かな「声」だった。
ライダーは再び立ち上がり、ポケモンリーグをポケモンたちと共に優勝した。
取り戻した夢に呼応して、ムシャも戻ってきた。

「ライダーさん…それでも、わたしは…」
「大丈夫、おまえは一人っきりじゃないだろ?」
その言葉にエリは面を上げた。
「今のお前にはオレもいるしオレの仲間もついてる。こいつら皆頼りになるしな。
今すぐ答えを出せなくても、ずっと傍でついてるからな」
―だからエリ、涙を拭いて立ち上がろうぜ。
「ライダー、さん、」
エリは力なくも、それでも立ち上がってライダーの手を握った。
そして二人は歩き始め、公園の出口へと向かった。
その後ろをムシャがふんわりと追いかけていった。


596 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/11(水) 17:42:56 Jf0yZLxc0
【クラス】
ライダー

【真名】
ブラック@ポケットモンスターSPECIAL

【パラメーター】
筋力D 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具A

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:A++
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣、果ては竜種まで乗りこなせる。
ただし機械類については乗りこなしたという伝承がないため、乗りこなせるのは自転車程度。

【保有スキル】
ポケモントレーナー:B
ポケモンバトル、育成、捕獲、知識など、ポケモントレーナーとしての総合的な実力。
Bランクであれば、トップクラスのトレーナーであることを示す。

推理タイム:B
ブラックの脳内は常にポケモンリーグ優勝という夢に満たされていて、ほかの物事を集中して考えることが
苦手である。
手持ちポケモンの一匹であるムシャーナに自分の夢を食べさせることで発動可能。
夢をムシャーナに食べさせて頭を空っぽにし、真っ『白』にする。
真っ白になった頭に先ほどまで見ていた情報で頭が『黒』く染まり、高い推理能力を発揮できる。

軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
ライダーの場合は主にポケモンを率いての集団戦に効果を発揮する。

【宝具】
『共に夢見る獣たち(ポケットモンスター)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:-
ブラックと共に戦い、夢見た手持ちポケモンたちが宝具となったもの。
それぞれがEランク相当の単独行動スキルを有している。
自らが収まっているモンスターボールがライダーとのパスとなっており、これが破壊されると
パスが途切れて、消滅する。
ムシャ(ムシャーナ♂)
筋力D 耐久B 敏捷D 魔力A 幸運C
タイプ1:エスパー
とくせい:よちむ
ウォー(ウォーグル♂)
筋力B 耐久D 敏捷A 魔力D 幸運E
とくせい:ちからずく
タイプ1:ノーマル タイプ2:ひこう
ブオウ(エンブオー♂)
筋力A 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運D
とくせい:もうか
タイプ1:ほのお タイプ2:かくとう
チュラ(デンチュラ♂)
筋力C 耐久D 敏捷A 魔力B 幸運B
とくせい:きんちょうかん
タイプ1:むし タイプ2:でんき 
ゴーラ (アバゴーラ♂)
筋力C 耐久A 敏捷E 魔力B 幸運B
とくせい:ハードロック
タイプ1:みず タイプ2:いわ

『白き真実の竜(レシラム)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:-
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運C
とくせい:ターボブレイズ
タイプ1:ドラゴン タイプ2:ほのお
元は1体のドラゴンポケモンであり、双子の英雄と協力して新しい国を作った。その後仲違いした双子が、
どちらが正しいか決めるべく争いを始めた事により2つに別れ、真実を求めた兄の側についたのがレシラムである。
その尾から炎を吹き出し全てを焼き尽くす。
固有わざに、クロスフレイムを覚えている。
普段はライトストーンの状態であるが、ライダーの意志に応じて元の姿に戻る。
ただし現在のマスターでは呼び出し維持するだけでも魔力を多大に消費するため、令呪の使用が不可欠である。


597 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/11(水) 17:43:29 Jf0yZLxc0
【Weapon】
ポケモン図鑑

【人物背景】
一言でいえば、電波で熱血漢な性格。
常に仲間とポケモンリーグ優勝の誓いを叫んでいる。
夢に対しては非常に真剣で、ジムリーダーや四天王、ポケモンについて調べ上げているほど。
ポケモンリーグを幼少の時から夢見た14歳のポケモントレーナーにして図鑑所有者。
ともにリーグ優勝を夢見るポケモンたちと旅をつづけ、BWエージェンシー社長ホワイトとの出会いや
ジムリーダーとの戦いを通じて成長性していく。
しかし、プラズマ団やプラズマ団の王を名乗る少年N、伝説のポケモンゼクロムとレシラムを
めぐる陰謀に飲み込まれていく。
親友チェレンとの激闘の果てポケモンリーグ優勝を果たすも、リーグをプラズマ団が襲撃する。
ゼクロムをトモダチにしたNに対して、自分もライトストーンからレシラムを呼び出し、真実と理想が争う
闘いに身を投じる。
レシラムとゼクロムの決戦、ついにレシラムを打ち倒しNに勝利する。
だが、ゲーチスの真の企みを知り、激怒。ポケモンたちと共にゲーチスの手持ちポケモンを打ち倒す。
その後、ホワイトとの再会、Nとの和解、別れを経てレシラムも再び石に戻ろうとしていた。
その時、ゲーチスがレシラムの石化能力を利用し、ブラックをレシラム諸共封印してしまう。
ライトストーンに閉じ込められたブラックはホワイトの叫びを最期に聞いて、ライトストーンは
どこかへと飛び去ってしまった。

【サーヴァントとしての願い】
社長や皆のところへ帰りたい。
が、今はエリを守ることが最優先。

【マスター】
牧野エリ@VANILLA FICTION

【マスターとしての願い】
決めることができない。
【能力・技能】
ただの8歳の少女に知識も人脈も金も能力も技能もあるわけない。
本来の双六ゲームだったら、VIP扱いだったため骨が折れようが腕がもげようが死ぬことはなかったが、
今は参加者に格下げされたので、致命傷を負ったら普通に死ぬ。簡単に死ぬ。

【人物背景】
羽のついたリュックサックがトレードマークの寡黙な少女。
元は孤児院で暮らす少女であったが、友達とよく笑う普通の少女であった。
ある日、人類の存亡をかけた双六ゲームの一緒に双六のゴールを目指すパートナーに任命される。
小説家佐藤忍に会うまで二人ほど別のパートナーと行動していたが、虐待を受け続け精神がすり減ってしまう。
佐藤に人間として当たり前の施しを受けたことで彼を先生と呼び、想い慕う。
しかしもう一方の駒である刑事鞠山雪彦にその身を囚われる。
佐藤の敵である鞠山を警戒していたが、彼にも息子ドラジェがあり死ぬわけにはいかないことを知る。
誰も幸せにならない双六に絶望し自ら命を絶とうとするも、自分がどうあがこうが双六の進行するうちは
死ねないことを知る。そして世界を滅ぼすのは他ならない自分自身であるということを知らされる。

【方針】
分からない。


598 : 牧野エリ&ライダー ◆RzdEBf96bU :2015/03/11(水) 17:44:22 Jf0yZLxc0
投下終了です


599 : ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:22:40 Bwq9Xahg0
投下させていただきます。


600 : アインハルト・ストラトス&ファイター ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:23:49 Bwq9Xahg0

過去に触れて……改めて思ったんです


私は怖いんです


過去のことは忘れて今を生きていいと言われる事が


今の温もりや心強さに微笑んでしまいそうになるなるのが 怖いんです


守れなかった人を わかりあえないまま終わってしまった人を


今度は絶対に守り抜くと誓えるほどに強くなること


それが私の悲願でそれが叶えられるまでは絶対に


私は――――笑ってはいけないから――――


だから 私は―――――





そこで彼女の記憶は、一時途絶えた。





「ここは……一体……?」


しばしの意識の遮断から後、彼女―――アインハルト・ストラトスは自身の周囲に起きた異変に気が付き困惑した。
友人達との無限書庫探索ツアーを終え、様々な思いを抱えながら帰路に着く途中。
『何か』に引っ張られるような感覚を覚えた瞬間、意識は暗転。
気が付けば自分は見知らぬ場所に立っていたのである。

周囲はやや暗く状況は判別しにくかったが、しばらくして目が慣れた事で気が付いた。
自分はどうやら木造式らしき小型の建物の中にいるらしい。
見回すと周囲にはテレビや布団、テーブルらしき家具が見受けられ、人が住んでいる形跡が見られる。
―――――が、お世辞にも綺麗とは言い難かった。
初見の人間であればウサギ小屋か何かと思われかねない。
そんな粗末な作りの住居であった。

窓があったため外の様子を伺ってみると、どうやらこの小屋は海沿いの公園らしき場所に建てられている事が
分かった。
だが周囲の景色は彼女の知るどの景色とも当てはまらない、全く異質な物。

『にゃあ……』

困惑する主の心中を察したのか、彼女のデバイス・アスティオンも心配そうに鳴き声を上げる。
そんな愛機を心配させまいと、声をかけようとした時である。


601 : アインハルト・ストラトス&ファイター ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:24:23 Bwq9Xahg0



「おわぁーーーーーーーーーーーーっ!?」
「ッ!?」



突如として背後から何かが落下したような音と、何とも気の抜けた叫び声が聞こえてきた。
異変を察知したアインハルトは即座に振り向き、声の主を確認しようと試みる。
そこにいたのは―――――



「イテテ〜、クッソ〜〜聖杯の奴め〜っ、呼びかけに応じたんじゃからもう少し丁寧に召喚せんか〜〜っ!!」


アインハルトの予想を180度裏切る容姿をした一人の人物だった。
どうやら着地に失敗したらしく尻を押さえながら転がっていたが、構わず姿を観察した。
何やらトサカのようなパーツを頭頂部に備え、ブタか何かと見間違えそうなその人相。
額には何やら文字らしきものが描かれていたが、アインハルトには読めない異世界文字。
一見すると素顔に思えたが、どうやらよく見るとマスクである事が判別できた。
ここだけ見るとただの間抜け面の男だが、首から下は違った。
鍛え上げられた筋肉に覆われ、まるで鋼の鎧を纏ったようなその肉体。
格闘技の世界に身を置く彼女はすぐに理解した。
突如現れた彼が『歴戦の戦士』である、と。

彼がこの場に現れた真意は分からないが、万が一の事態を考えアインハルトは臨戦態勢を取る。
が、その心配はすぐに杞憂に終わる事となった。

「……ん? おお〜そこの君、もしや君が私のマスターか〜〜?」

そんなとぼけた声を出しながら、目の前の男が手を差し伸べてきたのだから。




「………という訳で、私はこの聖杯戦争という戦いにおいて君のマスターとして呼び出されたんじゃ」
「……サーヴァントという様々な世界の英雄を使い魔として使役する殺し合い、それに私は召喚されてしまった
 という訳ですね?」
「ムムーッ、さすがは魔法がある世界から呼ばれただけあって呑み込みが早いわい。私なんか未だに聖杯から
 頭に詰め込まれたルールを半分も理解できておらんというのに……」


その後、二人は互いに状況を確認するためにちゃぶ台を囲んで話をする事にした。
そこでアインハルトは自分が『聖杯戦争』と呼ばれる戦いに召喚された事。
この世界が自分のいたミッドチルダとはまた違う異空間である事。
聖杯は殺し合いの末、最後に残った一人の願いを叶えてくれる事。
目の前にいるのが自身のサーヴァントである『ファイター』だという事。
といった情報を得て、自身の置かれた状況を理解できた。
もっともファイターの方は探り探りで情報を話していたようで、そちらのフォローの方が時間がかかって
しまったような気もしたが。


602 : アインハルト・ストラトス&ファイター ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:24:55 Bwq9Xahg0

「しかし聖杯の奴め、どうせなら城やら豪華なホテルやらに私達を呼び出してくれたらいいものを、わざわざ
 キン肉ハウスをこの街に再現するとは力の入れ方を間違っておらんか? まあ勝手知ったるかつての我が家
 じゃから問題はないが………久々に来てみても、やっぱりブタ小屋じゃのう」
「ファイターさんは生前この小屋に住んでいらっしゃったのですか?」
「話せば長くなるが、私も生前はいろいろあってのう。だがこの家には一言では言い表せないくらいたくさんの
 思い出が詰まっておった。目を閉じれば、今でも懐かしい光景が浮かんでくるわい」

そう話すファイターの背中に、アインハルトは無意識に何か大きなものを感じていた。
話の通りであれば彼もまた別の世界で英雄として戦った存在の一人。
果たして彼はどれほど壮絶な人生を送ってきたのだろうか。
そう聞いてみたい思いを一端横に置き、彼女は改めてファイターに話を続けた。

「……それでファイターさん、先程話していただいた『聖杯』という存在は、本当にどのような願いでも
 叶える力があるのでしょうか?」
「そうじゃのう、私も詳しくは知らんが、異世界から私達を召喚できるくらいだから凄まじい力を秘めている事は
 間違いなかろう。富や名声、不老不死、もしかしたら時間を好き勝手に弄る事すら可能かもしれん」
「時間をも、ですか?」
「かつて私がいた世界でも、時間を遡って未来からやってきた悪行超人がおったぐらいじゃ。何でも願いを叶える
 というならそれくらい出来ても不思議ではないかもしれん……まあ本当にそうなのかは実際に見てみないと
 わからんがのう」



時間を弄り、過去を変えられる。
もし本当にそうならば。
『彼女』を守れなかった過去を変える事すら可能なのだろう。

だが聖杯の力を使うには、この殺し合いで最後の一人にならねばならない。
それ即ち、この場に呼ばれた自分以外のマスターを殺めるという事。

果たして自分にそれが可能なのだろうか?
自分とは全く無関係な他者を傷つけ、万能の力で一人自身の願いを叶える。
そんな方法で、果たして自分は納得できるのか?

いや、それ以前に――――――――


「(ヴィヴィオさん達は、私を軽蔑するでしょうね)」


脳裏に浮かぶのは、後輩でもあるチームメイト達の顔。
まだ出会って半年ほどだが、そう感じさせないだけの日々を彼女達と過ごしてきた。
特に彼女――――高町ヴィヴィオは、誰よりも自分に歩み寄ろうとしてくれた。
何故彼女はあそこまで自分に優しくしてくれるのだろうか?
正直今でもよくわかっていない。
もしも自分がこの戦いに乗ると答えたら。
――――――――彼女は、何と自分に言うのだろうか。


603 : アインハルト・ストラトス&ファイター ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:25:35 Bwq9Xahg0



「アインハルトよ」

その時、彼女の肩を叩く者がいた。
ファイターである。

「ファイターさん………」
「どうやらその様子だと、この殺し合いに参加するか否かで迷っておるようだが、ここに呼ばれたという事は
 君には大なり小なり何か叶えたい願いがあるという事じゃな?」
「………はい」

そう問われ、アインハルトは重々しく首を縦に振る。
そしてアインハルトも彼に続けて問いをぶつけてみた。

「ファイターさんも、何か願いがあってこの戦いに参加したのですか?」
「私の願いか? そうじゃのう、久しぶりに復活したんだし、やっぱり地球の牛丼特盛ツユギリを心ゆくまで
 食いに行きたいし、テレビで漫才も見たいし……」
「いえ、そういう事ではなく………」
「わかっとる、冗談じゃ冗談。まあ本当の事を言うと――――願いはない」
「えっ?」

思わぬ言葉にアインハルトは驚いた。
この殺し合いに馳せ参じたのであれば、何かしら聖杯にかける願いがあるはずなのに。
彼はそんなものは無いと言い放ったのだ。

「私も生前は妻や子にも恵まれたし、超人オリンピックV2をはじめいくつもの功績をあげたし、最後には
 大王の座にもつけたし……それに何より、たくさんの掛け替えのない親友達にも出会えた。人間達に
 ダメ超人と馬鹿にされたり数多くの悪行超人との戦いで死ぬような思いもしたが、それも今となっては貴重な
 思い出じゃ。だから私は自分の人生に悔いはないし、聖杯の力でやり直したいような事も無い。失敗も成功も、
 その全てがあってこそ今の私があるんじゃからのう」

懐かしい思い出を語るように話すファイター。
そして彼は子を見守る親のような眼差しでアインハルトを見つめ、言葉を続けた。

「だからアインハルトよ、私は君がどんな願いを抱えておるのか今は深くは聞かん。先の様子を見ても、
 私には思いもよらん深い事情があるのだろう。果たして君がこの聖杯戦争でどう行動するのか、それを
 決めるまでは私も何日でも待つつもりだ。そしてその間は私が必ず君を守り抜くと約束しよう。
 元より人間を守るのは私達正義超人の役目じゃからな。それに君以外でも望まずに巻き込まれた者達も
 いるかもしれん。そういった人間達も助けないといかんし、話の分かるサーヴァントも必ずいるはずじゃ。
 そんな奴らとも私は分かり合い、この戦いをできる限り無血で終わらせたいんじゃ」
「ファイターさん……」
「まあ他のサーヴァントに比べたら頼りないかもしれんが、私とて本来の世界では伝説超人(レジェンド)と
 呼ばれた男じゃ、任せておけ! 馬場でも猪木でも三騎士クラスでもドンと来い!
 へのつっぱりはいらんですよ!!」
「(言葉の意味はよくわかりませんが……とにかくすごい自信です!)」

ハハハと笑いながら自信満々の様子で答えるファイター。
この戦いに乗るか否か、その結論はまだはっきりとは出ていない。
しかし今は頼れる者が自身の従者たる彼しかいない。
彼を信じてみよう。
仕方なくではなく、不思議と自然にそう思えたアインハルトだった。

「こちらこそ、至らぬ面もあるかと思いますが……よろしくお願いします、ファイターさん」
『にゃあ!』
「うむ、よろしく頼むぞアインハルトよ!」

固く握手を交わす両者(と一匹)。
その様子は主と従というより、むしろ友人同士にも見える光景だった。


604 : アインハルト・ストラトス&ファイター ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:26:18 Bwq9Xahg0


「(今は正直、どうすれば良いのか決めあぐねています………本当に聖杯があらゆる願いを叶えられるという
 ならば………ファイターさんは、私の悲願を許してくれるでしょうか?)」


片や前世の記憶に縛られ、未だに未来へ進む事を躊躇う若き覇王。

片や誰よりも友情に厚く、如何なる敵とも分かり合おうとした超人界の大王。


まるで異なる二人の王の進む道は、いずれ一つの道に交わるのだろうか。

分かっているのは、彼らが進む道は決して平坦な道ではなく、茨の道だという事である。


『友情』という花がこの偽りの街で咲くまでは、まだ遠い。


605 : アインハルト・ストラトス&ファイター ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:27:10 Bwq9Xahg0


【クラス】
 ファイター(エクストラクラス)

【真名】
 キン肉マン(キン肉スグル)@キン肉マン

【パラメーター】
 筋力A 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運A+ 宝具B

【属性】
 秩序・善

【クラススキル】
 超人:A
 人間をはるかに超越した戦闘能力を持つ知的生命体の総称。
 「物理法則を無視した挙動を行う」「重い物の方が早く落下する」「砂は音に弱い」「死んでも生き返る」
 「地球の自転が逆回転すると時間が戻る」等、人間の常識を超越した生態や法則の元に行動しており、
 存在の概念としては生物よりも妖怪に近いともされている。
 悪く言えば存在そのものが曖昧でいい加減。
 超人レスラーとしての本来の彼らの戦場である『リングの上』であれば、全てのステータスに
 1ランク分の補正がかかる。

【保有スキル】
 カメハメ殺法100手:A
 今は亡きファイターの師である超人プリンス・カメハメより伝授された格闘技術。
 パワーを司る『48の殺人技』、テクニックを司る『52の関節技』の100手によって構成されている。
 ファイターはこれら数々の技の駆使し、幾多の強豪超人をリングに葬ってきた。

 カリスマ:B
 他者を引き付け魅了する存在の強さ。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、一つの惑星の大王としてはBランクで十分と言える。

 戦闘続行:B
 超人レスラーとして決して試合を投げない不屈の闘志。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 友情パワー:A+
 『戦いとは相手を屈服させる為ではなく、分かり合う為に行うもの』とする正義超人の理念の結晶。
 心に愛がなければスーパーヒーローじゃないのさ。
 このスキルにより正悪問わず数々の超人達がファイターと固い友情を結んだ逸話がある。
 属性:悪のサーヴァントがファイターと何らかの形で深く関わった場合、高い確率で属性:善に反転する
 可能性を秘めている。

【宝具】
『戦士達の四角い戦場(チョウジンレスリング)』
 ランク:C 種別:結界宝具 レンジ:1〜30 最大補足:-
 超人レスラーとしてのファイターの本来の戦場であるレスリング会場を再現する固有結界。
 結界内の風景はファイターが生前試合を行った会場のいずれかがランダムで選ばれ再現される。
 この結界内部において敵味方のサーヴァントは超人レスリングのルールに則り『自らの肉体から繰り出される
 技、もしくは内蔵された兵器以外での戦闘』を禁じられるため、それに該当しない武装・宝具の使用が
 一切不可能となる。
 またリング内での戦闘はルール無用、如何なる残虐な戦いが行われても構わないが、凶器を持ち出す・リング外
 の観客を危険に晒す等の行為を故意に行った場合ペナルティが課せられ、一時的に結界内でのステータスが
 1〜2ランク減少してしまう。
 ただしファイター自身が純粋な魔術師ではない為、ある程度の魔力の準備がない場合は展開時間はごく数分で
 終わってしまうので注意が必要である。
 
『火事場のクソ力』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
 ファイターが強敵と対峙し生死の境目まで追い詰められた際に、己の限界を超えた力として発動される宝具。
 本来ならば超人強度95万パワーのファイターの力を最大7000万パワーまで底上げする事が可能であり、
 この宝具により幾多の戦いを勝ち抜いた事からファイターは『奇跡の逆転ファイター』の異名を手にしている。
 聖杯戦争においては例えファイターの持つ魔力が底をついた場合においても自動発動し、全てのステータスを
 一時的に2ランク上昇させ戦闘続行を可能とする。
 またこの宝具は『友情パワー』と全く同一の物とも言われており、ファイターと強い友情を結んだサーヴァント
 はごく小さい確率だがこの宝具そのものが自身に『伝染』する可能性が存在する……。

『奇跡を呼ぶ素顔の閃光(フェイスフラッシュ)』
 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:4人
 キン肉星の王家の血を引く者にしか使う事が出来ないとされる奇跡の力。
 自身のマスクの下の素顔から強烈な閃光を発し、様々な現象を引き起こす事が可能。
 その効力はドブ川を澄み切った川に変える・鉄柱を飴のように溶かす・他者の傷を癒す・花から死人を
 生き返らせるなど多岐に渡る。
 そのあまりにも規格外の効力の為か此度の聖杯戦争においては大幅に性能が引き下げられており、一度の
 使用でも多量の魔力を消耗してしまう制限がかけられている。


606 : アインハルト・ストラトス&ファイター ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:27:38 Bwq9Xahg0

【weapon】
 なし。
 超人レスラーであるファイターにとって、自身の肉体から繰り出される技こそ最大の武器である。

【人物背景】
 地球から500億光年離れた大キン肉星雲1番惑星キン肉星の王族に生まれた正義超人。
 身長185cm、体重90kg、超人強度95万パワー。
 幼い頃両親と共に地球に旅行に来た際、父・真弓の手により宇宙船に紛れ込んでいたブタと間違われて
 地球に捨てられ、以後20年近くに渡って自身の素性を知らぬまま地球で暮らしていた。
 基本的に性格はビビりのお調子者で、当初は人間達からダメ超人と罵られながら怪獣達と戯れていたが、
 その後参加した超人オリンピックにおける2度の優勝と師匠カメハメとの出会い、テリーマンを初めとする
 超人達との交流、悪魔超人や完璧超人との戦いを経て心身ともに成長し、邪悪の神が仕組んだキン肉星
 王位争奪サバイバルマッチを見事制した後は恋人のビビンバと結婚、晴れてキン肉星第58代大王に就任し
 超人レスラーを引退、地球を去って行った。
 数十年後、再び地球が悪行超人の魔の手に晒された際は息子・キン肉万太郎をはじめとする新世代正義超人
 に地球防衛を託し、自身は時折地球に赴き陰ながら万太郎を支えていった。
 
【サーヴァントとしての願い】
 生前願いはほぼすべて叶えたので特になし。
 「人間を守るのが正義超人の指名」とし、現状は自身のマスターや巻き込まれた者達を助ける事を
 第一目的としている。


【マスター】
 アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはvivid

【マスターとしての願い】
 天地に覇をもって和を成せる王となる。
 そしてかつて守れなかった『彼女』を守れるよう、強くなりたい。

【weapon】
『アスティオン』
 アインハルトが使用する真正古代ベルカ式デバイス。愛称は『ティオ』。
 猫型のぬいぐるみ(モデルはシュトゥラの雪原豹)の内部にはクリスタル型の本体が内蔵されている。
 行動パターンも猫そのもので、人語は解さず鳴き声を発する。かわいい。
 その名はクラウスとオリヴィエが死産した豹の子供に付けようとしたものであり、二人が好きだった
 小さな英雄物語の主人公の名前でもある。
 能力としては攻撃補助はほぼ行わず、ダメージ緩和と回復補助に特化している。

【能力・技能】
 古代ベルカの格闘術『覇王流(カイザーアーツ)』の継承者。
 基本的に戦闘では『武装形態』と呼ばれる大人モードへの変身魔法を使用し戦う。


【人物背景】
 本名はハイディ・E・S・イングヴァルト。年齢12歳。
 異世界ミッドチルダのS.t.ヒルデ魔法学院中等科に所属する少女であり、古代ベルカ時代にあった
 シュトゥラ王国の国王「覇王イングヴァルト」の末裔。
 覇王の身体資質と一部の記憶を受け継いでおり、かつて果たせなかった彼の悲願を叶える為に夜な夜な
 ストリートファイトを行うなどの活動を続けていた。
 その後ある戦いをきっかけに聖王オリヴィエのクローン・高町ヴィヴィオと出会い、彼女とその友人達と
 交流を徐々に深め、現在は公式魔法戦競技選手としてヴィヴィオ達と『チームナカジマ』の一員として
 参加している。
 今回の参戦時期は原作11巻56話〜57話の間(無限書庫探索ツアー終了後)から。
 
【方針】
 聖杯戦争に本当に乗るべきかは今は思案中(基本的には否定的)。
 今はファイターと共に行動し、結論を出す。


607 : ◆wIEqTYjkiE :2015/03/11(水) 22:28:03 Bwq9Xahg0
投下終了します。


608 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/11(水) 22:40:10 5iLpCWW60
投下します


609 : 横山千佳&バーサーカー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/11(水) 22:41:42 5iLpCWW60
  横山千佳は、どこにでも居る女の子だった。
  普通に学校に通い。
  普通に勉強して。
  普通にご飯を食べて。
  普通に友達と遊び。
  普通に家に帰って。
  普通に寝る。

  そんな普通の毎日を送る女の子だった。

  ただ、一つ違っていたのは、彼女が『魔法少女』にあこがれていることだった。
  心の底から憧れて、いつか自分も魔法少女になりたいと願っていることだった。

  彼女の人生が小さく変わったのは、その人との出会いだった。
  大好きなプロデューサーさん。
  彼の魔法で千佳はきらめく舞台の上に立てた。

  夢をかなえるためにアイドルになって。
  まるでアニメのヒロインのようなきれいな衣装を着て。
  まるでアニメに出てくる魔法少女のような、楽しい楽しい毎日を過ごして。

  そうして彼女は皆と一緒に仲良く楽しくアイドル活動をしながら暮らしましたとさ。
  めでたしめでたし。
























  と、終わるはずの物語が。
  『魔法少女』によって、ねじ曲げられる。
  きらめく舞台の上でも抱き続けた『魔法少女』への願いによって、ねじ曲がる。


610 : 横山千佳&バーサーカー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/11(水) 22:43:03 5iLpCWW60
  目を覚ますと、そこは自分の部屋のベッドの中だった。
  昨日もお仕事を頑張って、帰ってきてそのまま寝てしまったみたいだ。
  いつ眠ったかも覚えてないけど、ベッドの中に居るということは、そういうことだろう。
  朝の日差しを浴びながらのろのろと体をおこすと、そこには見知らぬ人が立っていた。

「あなた、だぁれ?」

  それは、綺麗なドレスを着た巻き毛の可愛い女の子。
  普通の人と違うところは、腕が六本ある所。

「      .....      」

  女の子が何かを呟く。
  でも、千佳には聞き取れない。
  寝ぼけ眼を擦って、もう一度彼女の方を見てみる。
  すると今度は、文字が浮かび上がって見えた。

  『バーサーカー』
  『魔法少女』

「魔法少女、なの?」

  そういえば、そんな感じの格好をしている。
  ふりふりのドレスとくるくるの髪はお姫様みたいで、お話の中に出てくる魔法少女そっくりで。
  それに気づいた千佳は、俄然興味津々になり、食いつくように彼女に近づいた。

「あたしは横山千佳だよ! あなたは? お名前は? 魔法少女なの!?」

「      .....      」


  とってもとっても小さな声。
  千佳はもっと近づいて、彼女の声に耳を傾ける。
  そうすると、ようやくその言葉が聞き取れた。






           まじかるー


                             」


611 : 横山千佳&バーサーカー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/11(水) 22:44:38 5iLpCWW60
【クラス】
バーサーカー

【真名】
六本腕の魔法少女/アンデッド・マジカル@魔法少女・オブ・ジ・エンド

【パラメーター】
筋力:D 耐力:EX 敏捷:E 魔力:EX 幸運:E 宝具:E

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:-
感情のない殺戮兵器と感情を失った狂人はよく似ている。
彼女は思考そのものが存在しないので狂っているわけではないが、その行動は一般常識・倫理観と照らし合わせれば完璧に剥離している。
言葉を持たないため会話はできないが、マスターの指示にはちゃんと従う。
このスキルによるパラメータの上昇はない。

【保有スキル】
魔法少女:-
魔法少女である。
ステッキを使う魔法は、自身の魔力のみで宝具を使用できる。

災害:-
未来からもたらされた人為的災害。
彼女の存在自体が自然災害であると記録されているため、雨が降る・風が吹くのと同じく方舟内の自然現象と捉えられて現界に魔力を必要としない。
更にこのスキルを持つものが同種の人的災害を起こす場合、世界側が魔力を負担するので魔力を消費しない。

殲滅指令:-
魔法少女たちにくだされた唯一の指令。『人間を皆殺しにする』。
サーヴァントとして呼ばれた際、マスターが殺せないため皆殺しにできないようにリミッターがかけられたため今はこのスキルは意味を成さない。
もしもマスターが死亡すれば、このスキルがバーサーカーに再び指令を送り始める。
このスキルは彼女の存在に関わるスキルであるため、たとえ令呪三画を使用しても消滅させることはできない。

感染拡大:-
魔法少女に殺された人間はマジカルゾンビになる。
NPCや他マスターを殺すと、彼らをゾンビとして使役することができる。
そしてこのスキルによるゾンビの蔓延も、スキル:災害によって自然現象と捉えられるためルーラーすらバーサーカーを罰することはできない。

単独行動:EX
スキル:災害によって生まれた副産物的スキル。
彼女は世界が魔力を供給し続ける限り消滅することはない。
彼女を殺すには宝具『願いが叶う不思議なステッキ』を5つとも破壊する必要がある。


612 : 横山千佳&バーサーカー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/11(水) 22:45:39 5iLpCWW60
【宝具】
『願いが叶う不思議なステッキ(まじかるー)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:-
六本腕の魔女が持つ五本のステッキ。鏡をあしらった大きなステッキと短剣のように使える小さなステッキ四本からなる。
この宝具を解放することによって彼女は下記『鏡よ鏡よ魔法の鏡』『不思議な呪文をトテチテタ』を使うことができる。
この宝具を全部破壊されない限りどれほどの重症を負ってもバーサーカーは消滅しない。必ず復活する。
ただ、この宝具を全部破壊されれば消滅するし、この宝具を奪われれば下記『魔法の鏡』『トテチテタ』も奪われる。
そのため耐久力はEX判定となる。
発動されていなくても宝具が本体という奇妙な存在であるため、その逸話を知っていない限り初見で彼女を消滅させることはほぼ不可能である。


『鏡よ鏡よ魔法の鏡、私のお願い叶えてね(まじかるー)』
ランク:E 種別:召喚 レンジ:- 最大捕捉:-
オルタナティブ・マジカルを一体召喚できる。
彼女らは全てステッキを持っており、そのステッキを破壊しない限りは消滅しない。
逆にそのステッキを奪えば、その魔法少女の能力を自由自在に操ることができる。
彼女らにもバーサーカー同様リミッターがかけられており、勝手にNPCを殺すことはできない。
唯一巻き戻しの魔女/クロノス・マジカルは召喚できない。


『不思議な呪文をトテチテタ、もっと可愛くなりましょう(まじかるー)』
ランク:E 種別:進化 レンジ:- 最大捕捉:-
上記『魔法の鏡』で呼び出したオルタナティブ・マジカルが死んだ際に発動できる。
次に同じ魔法少女を召喚する際、パワーアップさせることができる。


『そして、男の子と女の子は結婚してずっと仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし(まほうしょうじょ・オブ・ジ・エンド)』
ランク:E 種別:終末 レンジ:- 最大捕捉:全人類
バーサーカーのマスターが死亡することによって発動される最悪の宝具。
六本腕の魔女はマスターが死亡するとスキル:殲滅指令を取り戻して人類の皆殺しを再開する。
魔力を消費しないのをいいことに、魔法少女をバンバン量産し、マジカルゾンビを量産し、参加者・NPC問わず人類を阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き落とす。
この宝具はバーサーカーが消滅するか、再契約するまで発動し続ける。


【weapon】
四本の短剣ステッキ。訓練された自衛隊員程度ならば完封勝ちできる。

【人物背景】




               まじかるー




【マスター】
横山千佳

【マスターとしての願い】
魔法少女になりたい!

【能力・技能】
特になし

【人物背景】
魔法少女に憧れる9歳児。一応アイドル。
魔法少女への強いあこがれが、悲劇を生み出した。

【方針】
バーサーカーと一緒に出歩いて、知り合いを探す?


613 : 横山千佳&バーサーカー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/11(水) 22:45:50 5iLpCWW60
以上です


614 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/12(木) 12:40:42 qRYXVJ0Y0
>>542
色を焦点に据えた二人が組んで、他参加者を様々な色で染め上げる。
鹿矛囲の聖杯を裁くというスタンスが他とは異質ですね。
宝具である様々な因果の逆転が、戦うにあたって多種多様な戦法を取れて実にギミックに富んでいますね。

>>548
人間のプリミティブな衝動に殉じて生きる戦争屋さんは戦争となると表情が綻びますね。
実際、戦えるなら何だってやるサーシェスはどうしようもないけれど、かっこいい。
そして、サーヴァントであるキルバーンとピロロもイキイキ暗殺ライフをおくれそうで何より。

>>556
本当に先行きが不安なコンビですね、シリアス的な意味では。
実家のような安心感が得られる固有結界は強いし、ターバンのガキは割と使える所が本当に面白い。
絶対選択肢を消したい奏からするとどうにもならないけれど、笑ってしまいますね。


>>566
色々と拗らせていらっしゃるお二方は仲が悪いですね。
もっとも、令呪のおかげでしばらくはいがみ合いながらコンビとして続きますが。
草加さんはたっくんがいないから、いつもよりは大人しくしてる可能性があるかもしれませんね。

>>573
下衆の極みであるエレンは本当にヤバイですね。
原作でも様々なトラップでヴィオラを殺してきた悪意が牙を剥く時は来るのでしょうか。
このままだと、まどかの身体とチェンジしてやりたい放題する可能性が高いですが果たして。

>>583
正義の味方として想いが繋がっている彼らは聖杯奪取派でありますが、清らかに感じました。
根底にあるものが真っ直ぐだからなのもありますが、やはり夢をしっかりと持っているからでしょうね。
そして、宝具の斬艦刀は艦娘を一刀両断待ったなしで強烈ですね。

>>592
エリちゃんかわいい、かわいい。
そして、色々とポケモンを繰り、戦うブラックは後方で軍師を務めるのが適任なのだろうか。
耐久の高さはさすがポケスペキャラですし、宝具と合わさって集団戦に持ち込めばかなり強そうですね。

>>599
武闘派の二人の王はストレートに友愛を築きそうですね。
両者拳で語り合うを地でいきますが、彼らの眩しさは他者にどう映るのか。
他者を導くまであるファイターも、どうしようもない悪に遭遇してもなお、友情パワーを貫けるのか。

>>608
千佳ちゃん可愛いですね、ラブリーチカちゃんなら聖杯戦争に呼ばれても、可愛さに揺るぎはありません。
この前の戦国イベントでも刀に目を輝かせていて、思わず抱きしめたくなりました。
ただ引き連れているサーヴァントが核爆弾級の地雷で、殲滅命令を取り戻すと阿鼻叫喚ですね。



投下します。


615 : 竜ヶ峰帝人&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/12(木) 12:41:34 qRYXVJ0Y0
赤。朱。赫。緋。赤光。
何より目立つその男の髪の色。
それは燃える炎を想起させる赤だ。
悠々自適、天下無双。
まるで、この世の全てが自分の為に回っているかの表情を浮かべている。

「俺を引き当てたこと、光栄に思うといい。お前、今最高にツイているぞ」

両手を大きく広げ、唄うように声を紡ぐその男はまさしく世界に愛されていた。
それは確信であり、不変であり、絶対。
どんな客観的事実だろうとも捻じ曲げてみせよう、その男がそう在れと願うならば。

「名乗ろう。アサシンの座にて推参したサーヴァント――クレア・スタンフィールド。
 いや、レイルトレーサーと名乗るべきか、それともフェリックス・ウォーケン?
 まあ名前などどうでもいい。名前が変わろうとも、俺が俺であることに何の変わりもないのだからな」

男、クレアを呼び出した少年は呆然とする他なかった。
壮絶なまでの圧倒的な空気。爛々と輝く双眸に埋め込まれた意志。
どれを取っても、少年とは違い存在感がある。

「それで、お前の名前は? 一応、聞いておくのが筋というものだろう。何、挨拶は大事だ。万国共通、礼儀は大事にしとけと習ったものだ」
「え、えっと……りゅ、竜ヶ峰、帝人です」

少年、竜ヶ峰帝人は一見しても凡庸だった。
短く刈り揃えた黒髪に、幼さが残る顔つき。
華奢な身体はひょっとすると、鍛えた女性よりも劣るかもしれない。

「そうか。まあ、いい。名前にさしたる重要性は秘められていない。大事なのは、俺から見たお前の姿だ」
「……は、はぁ」
「ん? どうした、怯えているのか。怯えなくてもいいぞ。この俺が呼ばれたんだ、お前の命運は太陽の日差しよりも眩しい輝きに照らされている。
 何せ、世界の中心である俺が傍にいるんだ、不安がる必要性は全くもってない」

人選間違えたかなあ。帝人は顔にこそ出さなかったが、眼前のサーヴァントに対して、一抹の不安を抱かざるをえなかった。
此処に呼び寄せられる前、池袋にいた時もとびっきりに変人な面々と付き合いがあったけれど、このクレアという青年もある意味とびっきりだ。
外見こそ、如何にも陽気な外国人といった風貌だが、口から放たれる言動はエキセントリック過ぎてついていけない。


616 : 竜ヶ峰帝人&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/12(木) 12:42:01 qRYXVJ0Y0
    
「そ、そうですか。とりあえず、呼び名はどうしましょうか? クレアさん、でいいですか」
「ふむ。俺としてはクレアで構わんが、後々本名がバレると面倒なことも起こり得るかもしれん。
 無論、俺ならどんな窮地であっても切り抜けるが、時間がかかりすぎてどうしようもないといった状況も否定はできない。
 なので、ここはアサシン、で頼もうか。何、それぐらいの情報ならばバレた所でどうともならないだろう」

だが、全く話が通用しないという訳ではない。それだけでも、帝人にとっては大助かりだ。
平和島静雄みたいに些細な事でブチギレ暴力直行コースだったり、折原臨也みたいに煙に巻く発言もない。
できれば、門田京平のように、理路整然とした実直青年がよかった、なんて思ったりもするけれど。

「しかし、聖杯戦争と呼ばれる馬鹿騒ぎ、実に不快だ。聖杯を欲するなら、終幕までは踊り続けなければならない。
 決められた舞台、カチコチに固められた演目、俺には相応しいと思えん」

顔をしかめ、唸りながら考え込むクレアを前に、帝人は何も言えなかった。
下手に機嫌を損ねると、その矛先が自分に向くかもしれない。
出会ったばかりの彼は何が地雷なのか。
拙い観察眼と頭で見極めてからでないと、思うような言葉は紡げない。
マスターとサーヴァント。彼の行動を制限する令呪こそ掌に刻まれているが、そんなの何の安心にもならない。
彼が一度動けば、令呪を掲げる前に、自分の身体など分割バラバラ雨霰だ。

「だが、一度請け負った仕事は全うするのがポリシーだ。ある種、お前は俺に勝利を依頼した雇い主だ。
 可能な限り、お前が望むように動こう。もっとも、意見具申程度のことはするがな」
「それで大丈夫です! こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
「固くならなくてもいい。何度も言うが、お前は最高にツイているんだ。もっと自信を持て。
 自分こそが選ばれたのだと大袈裟にでも笑え」
「あは、はは……さすがにそこまでは、ちょっと」

故に、帝人の表情から緊張が抜け落ちることはなかった。
超常の存在が、今は自分に従っているが、これから先もずっと従ってくれるとは限らない。
なればこそ、出来る限り、彼の言うことに逆らわない方がいい。
今は平凡な男子高校生である竜ヶ峰帝人として振る舞おう。


617 : 竜ヶ峰帝人&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/12(木) 12:42:27 qRYXVJ0Y0

故に、帝人の表情から緊張が抜け落ちることはなかった。
超常の存在が、今は自分に従っているが、これから先もずっと従ってくれるとは限らない。
なればこそ、出来る限り、彼の言うことに逆らわない方がいい。
今は平凡な男子高校生である竜ヶ峰帝人として振る舞おう。
         
「ともかく、呼ばれたからには聖杯を取る。それだけだ」
「やっぱり、アサシンさんも叶えたい願いがあるんですね」
「……いや、正確には俺が叶えたい願いではない。そもそも、願いなど俺が叶えたいと願えば、すぐに叶う。
 聖杯などに頼らずとも、俺は独力で大丈夫だ。それだけの力量を兼ね備えているのだからな」

相も変わらず不遜な発言をする彼に対して、帝人は頬を掻きながら曖昧に笑う。
宙を見ながら、脳内でイメージトレーニングをしているのだろうか。
クレア・スタンフィールドは依然として絶好調だ。

「願うというよりは、手に入れるということだな。シャーネに聖杯を捧げる為にも、俺は最後まで戦う」
「シャーネって人は……彼女、ですか?」
「ああ。俺が世界で一番愛している女だ。いや、世界という枠組みは狭すぎたな、宇宙一、いや銀河の果てまでひっくるめても、一番だ」
「僕にはイマイチピンと来ないんですが、ともかく……聖杯をプレゼントしたいってことであってますか?」
「そういうことになるな。さて、俺の呼ばれた理由は話した、次はお前の番だ。お前は、何を望んでこの戦場に降り立ったか。
 サーヴァントとして、お前に勝利を届ける者として、俺には聞く権利がある」

次いで、クレアの双眸が帝人へと向けられる。
何を望み、何が欲しいか。
問いかけは単純なもので、躊躇なく答えられるはずだ。

「僕は――」

思い浮かべるのは池袋で過ごした一年間。
隣には紀田正臣がいて、少し後ろには園原杏里がいて。
騒がしくもどこか穏やかな日常が、何よりも大切だった。

「僕は――!」

けれど、今は何処にもない。
正臣は何処かへと消えて、残った帝人達も茫洋と日常を続けるしかなかった。


618 : 竜ヶ峰帝人&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/12(木) 12:42:43 qRYXVJ0Y0

「もう一度、正臣や園原さんと日常を過ごしたい!」
「それが、お前の抱える願いか?」
「ええ。僕はやり直したい、三人でまた――遊びたい。
 それが、僕の願いです。きっと、そうだ」

首を縦に振り、帝人は叫び返した。
その表情には悲痛が色濃く描かれているだろう、と感じながら。
彼らがいる日常を、喪った日常を、取り戻したいと思うのはきっと本心であると思うから。

「でも、こんな聖杯戦争に巻き込まれるなんて考えてもいなかったし、困ります。
 死にたくもないし、戦いたくもない。僕は、こんな舞台に上がることを、望んでいなかった!」
「…………本当に、そうなのか?」

目に見えぬ何かが足りないと叫んでいる心臓など無視してしまえ。

「お前の表情からして、どうも腑に落ちないんだがな……。まあいい、どちらにせよ、勝利を目指すことに変わりはない」

釣り上がる口元などきっとまやかしだ。

――――あぁ、また笑ってるのか、僕は。

池袋のチンケな非日常とは違う、本物の非日常が帝人を迎えに来たのだ。
これを興奮せずして何を興奮すればいい。
帝人の運命は、本来辿るはずだったレールから外れ、与り知らぬ所で変わっていく。
そして、非日常が、日常へと堕ちていく終ぞの時まで――笑い続けるのだろう。


619 : 竜ヶ峰帝人&アサシン ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/12(木) 12:43:36 qRYXVJ0Y0



【クラス】
アサシン

【真名】
クレア・スタンフィールド@バッカーノ!

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運A 宝具D

【属性】
中立・善

【クラススキル】
気配遮断 C
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】

心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

無窮の武練:A
一つの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
才能に傲ることなく、弛まぬ努力を続けた結果、彼は類まれなる身体能力を身に付けた。

【宝具】
『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1
彼が繰り広げた逸話が元になっている宝具。
どんなことがあろうとも、自分を見失うことなく、【線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)】で在り続ける。
世界はクレア・スタンフィールドの見ている夢だから。故に、心技体は常に十全である。
この宝具は常時発動型であり、バッドステータス系列の効能を無効にする。

【weapon】
なし。

【人物背景】
アメリカ全土にその名を轟かす最強の殺し屋。
殺し屋として働く一方、車掌としての顔も持っており、その職業を利用して各地で殺し屋として活動している。
性格は傲岸不遜。世界は俺の物とはっきり言い切れるまでのジャイアニズムな考え持つ自信家。

【マスター】
竜ヶ峰帝人@デュラララ!!

【マスターとしての願い】
もう一度、日常をやり直す。/聖杯戦争という池袋の非日常を超える非日常に呼ばれたかった?

【能力・技能】
なし。

【人物背景】
非日常を求めて池袋に引っ越してきたごくごく平凡な高校生だった。
しかし、池袋の裏に触れるに連れて、徐々にその内面に変化が現れる。
夢にまで見た非日常が帝人を蝕んでいく。
参戦時期は少なくとも、6巻以降。

【方針】
とりあえず、死ぬことは避けたい。/非日常を楽しむ?


620 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/12(木) 12:44:03 qRYXVJ0Y0
投下終了です。


621 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:02:30 PaDwEHrM0
皆さんお疲れ様です。
私も投下させていただきます。


622 : 鷲巣巌&ライダー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:03:07 PaDwEHrM0





「麻雀の強さが全てを決め、世界各国の首脳陣ですら雀力で鎬を削り合う世界……か」




状況から察するに荒唐無稽でないことは確かだが、何とも信じがたい。
しかし、それでいて実に興味のひかれる話でもある。
卓を挟み対面に座る男の話に、彼―――鷲巣巌は強い関心を抱いていた。
自身とて、より強大な共生の利益を生む手段として日々より麻雀を用いてきた。
そして勝ち上がり、表・裏共に社会での地位を確固たるものとしてきた。
鷲頭にとって麻雀とはまさに、最大の武器にして生存競争そのものであった。

そんな鷲頭ですらも、このサーヴァントの話には正直驚かされていた。
よほど常人とは違う頭の持ち主でなければ出来ないような創作の世界に思える。
だが、こうして自らも知らぬ間にこの謎のゲーム―――聖杯戦争に招かれた以上は、現実にそういう世界があるのだと認めざるを得ない。
この冬木という街並みとてそうだ。
己が歩んできた昭和の時代と比較して、明らかに文明の度合が発達している。
今こうして座っている全自動卓とて、鷲頭からすれば驚嘆に値する代物であった。
積み込みに依存するイカサマの類は尽く封じられ、真の意味で運が全てを左右する卓……実に面白い。


「ならば、願いが叶う聖杯とやらも決して与太話の類ではあるまい。
 ワシが生きてきた世界とは違う、平行して存在する世界に招かれたということか。
 貴様の存在も、紛れもない本物であろう……ライダーよ」


黒に近い濃緑色の軍服を身に纏う義足の男。
そしてその軍服に刻まれるは、特徴的な逆卍―――ハーケンクロイツの文様。
雀荘、それも廃れた場末の卓という場には大よそ似つかわしくないナチス・ドイツの軍人。
対面に座るこの男こそが、鷲巣巌が引き当てたライダーのサーヴァントなのだ。


「理解が早くて助かる……しかしワシズよ。
 そういうお前の腕とて、見事なものだ……これ程までの雀力ならば、或いは我等第四帝国の精鋭をも上回りかねないぞ」


不用牌を切ると共に、ライダーは鷲巣への素直な賞賛を述べた。
現在この卓で行われているのは、店員のNPCを二人―――情報漏洩を避ける為、現金で買収済みである―――引き入れての東西戦。


623 : 鷲巣巌&ライダー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:03:27 PaDwEHrM0
しかし……東三局目にして既にNPC二人は、箱割れ寸前で状況についていけてない。
実質、鷲巣とライダーの二人による戦いであった。
この二人が、圧倒的に強すぎるのだ。


「そういう貴様もだ……イカサマも仕掛けもない純粋な麻雀でワシにここまで並ぶ者など、そうはいなかった。
 しかもその相手が、かの有名な空の魔王になろうとは思いもよらなかったぞ」


二人は、互いの実力と豪運を認め合っていた。
鷲巣は数多の鉄火場を潜り抜け幾度と己が命を麻雀に賭けてきたが、ここまで自身に喰らいつき飲み込もうとする相手と対戦したことはなかった。
ライダーとてそれは同じだった。
第四帝国の精鋭どころか各国の首脳陣と比較しても遜色ない程の強敵と打つ経験など、滅多にあるものじゃない。
偉大なる総統程ではないにせよ自身を呼び出すだけのものを持ち合わせていると、そう素直に感じざるを得なかった。


「だが、この場で競うのは麻雀ではなく正真正銘の殺し合い……お前にそれを生き抜く覚悟があるか?」


しかし、この聖杯戦争で求められるのは雀力ではない。
これは生粋の殺し合いであり、必要なのは生き抜くための力だ。
鷲巣が常人よりも修羅場を潜っているだろう事は容易に推察できるが、それでもこの場で立っていられるのか。
その意思を確かめるべく、ライダーは静かに問いかけた。



「……誰に向かって口を聞いておる?」



その瞬間であった。
鷲巣の声により重みがかかり、その眼光がより強きものへと変わった。
身に纏う空気が、一変したのだ。
サーヴァントであるライダーですらも、この変化には流石に息をのまざるを得ない……知っているからだ。
優れた雀力のある者のみが発する事のできる、あの特有のオーラを。
鷲巣が放っているのは、まさにそれだった。
流石にライダーは呑まれる事無くそれを流しているが、横に座るNPCは完全に震え上がっている。


624 : 鷲巣巌&ライダー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:03:44 PaDwEHrM0


「殺し合いだと?
 ふん、笑わせる……そんなものは、もう飽きるほどに経験してきたわ……!」


人によっては狂気すらも感じさせる様な微笑を浮かべ、鷲巣は山よりツモった牌を卓に強く叩きつけるかのように置く。
そして勢いよく、手牌を前に倒しその全貌をさらけ出した。

その一連の動作はまるで、彼の実力と自信を誇示するかのように尊大で……そして、恐るべきまでの力強さを感じられるものであった。



「ツモ、四暗刻……48000だ」



勝敗は決した。






◆◇◆



「ところでワシズ……お前の聖杯にかける望みはなんだ?」


雀荘を後にして間もなく、ライダーは鷲巣へと問いかけた。
自身が月の第四帝国へと聖杯を捧げるべくこの戦いに臨むように、彼とて戦う覚悟を見せた以上は望みがあるはずだ。
聞けば、戦後の日本において大躍進を遂げている大企業の社長という。
ならば社の利益をより潤沢にすべく願うか。
そう、率直にライダーは考えていたのだが……


625 : 鷲巣巌&ライダー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:04:03 PaDwEHrM0

「そうよな……永遠の命、とでも言おうか」

「ほう?」


意外な答えが返ってきた。
鷲巣は社の利益ではなく、不死を望んでいるというのだ。
しかし、それは人としてある意味まっとうな意見だ。
生きている人間の大半は、考えたことのある夢だろう。


「ワシも人である以上、死は免れぬ。
 もっともワシを殺せる者など存在しえぬだろうから、死を迎えるならば寿命と考えるのが妥当だろう。
 そうなれば、築き上げてきたものは全て失う……人の定めとはいえ、空しき事だ」


そう口にした鷲巣の脳裏にあったのは、かつて自身が対峙した一人の科学者の姿であった。
彼は老化と若返りの薬という人知を超えた発明を生み出し、そして鷲巣自身の肉体でその成果は実証された。
そして、戦いを終えた後……鷲巣は彼を自らの配下に招き入れようとしたのだ。
鷲巣がその価値を認め、叩き潰す事無く手に入れようとする人材などそう滅多にいるものじゃない。
それだけ、男の発明は鷲巣にとって魅力的だったのだ。
もっともその男は、GHQの策略により薬物を投与された結果、物言わぬ赤子となり研究成果は永遠に闇へと葬り去られたのだが……


「だが、それすらも超越する術があるなら……永遠に頂点に立ち続ける事が可能になるならば、どうだ?」


あの研究物は、望んできたものを尽く手にしてきた鷲巣が手に入れられなかった数少ないモノだ。
それを今、こうして手にするチャンスが巡ってきたのだ。
血がたぎって仕方がない……望まずにはいられないではないか。



「ワシは聖杯を手にする。
 貴様の力……存分に使わせてもらうぞ、ライダーよ」





そして余談ではあるが、本来辿るべきたった未来において、この鷲巣の望みはあまりにも深刻なモノとなる。



老境を迎えた彼は、『死』という避けられぬ運命を前にして狂気に奔り、結果として数多くの若者を葬り去る吸血の悪魔と化したのだから。



それを当然今の鷲巣が知る由はないが、そんな悲惨な未来を避ける為にも……彼は、この望みを叶えなければならないのだ。


626 : 鷲巣巌&ライダー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:04:26 PaDwEHrM0
【クラス】
ライダー

【真名】
ハンス・ウルリッヒ・ルーデル@ムダヅモ無き改革

【パラメーター】
筋力:D 耐力:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:A 宝具:A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:A
 乗り物を乗りこなす能力。
 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

【保有スキル】
直感:B
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を感じ取る能力。
 視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
 生前、戦場で幾度となく死線を潜り抜けてきた結果、認識力を異常拡大させた事に由来する。

戦闘続行:A
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 生前、例え右足を吹き飛ばされようとも医師から「絶対安静にしてろ」と言われる程の重傷を負おうとも、
 尽くを無視して出撃を繰り返してきた事に由来する。

千里眼:C
 視力の良さ。
 遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

雀力:A
 麻雀の強さ。
 世界各国の首脳陣にも比類しうる強さを持っており、全自動卓でツバメ返しを行える程の桁外れの技量がある。
 
【宝具】
『空を舞う第四帝国の魔王(ユンカース Ju87G スツーカ)』
 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:2〜60 最大捕捉:20人
 ルーデルの象徴にして、敵国に様々な恐怖を刻みつけた常時発動型宝具。
 第二次世界大戦時にルーデルが愛用していた急降下爆撃機スツーカを呼び出す。
 機体に取り付けられた機銃及び、戦車の装甲ですら打ち抜けるようにと外付けした37mm機関砲を主な兵装として用いる。
 ルーデルが乗り込む操縦席の後部に後部機銃席があるため、ここにもう一人乗せることが可能。
 宝具化して神秘を纏ったことで魔力が続く限り弾切れは起らないが、後部機銃に関しては誰か他の者を乗せなければ使用はできない。
 後部機銃自体の使用自体は魔力を持たぬ一般人でも可能。
 急降下時には通称『ジェリコのラッパ』と呼ばれる独特の風切り音が鳴り響き、威嚇効果は高いものの奇襲に気づかれやすい欠点もある。
 高い性能を誇る強力な宝具だが、常時発動型であるため秘匿する場合はどこか屋内等に常に隠す必要がある。
 また、度々破壊されては修復され出撃している逸話に由来してか、宝具であるにも関わらず現代の工具等で一般の戦闘機同様修復が可能。
 本来ならば対艦用爆弾も兵装として装備されているのだが、鷲巣が魔術師として高い適性をもってはいない為装備されてはいない。


627 : 鷲巣巌&ライダー ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:05:13 PaDwEHrM0
【weapon】
 武器の全てが宝具のスツーカに集約されている。
 
【人物背景】
 第二次世界大戦時、ナチス・ドイツに所属していた航空機パイロット。
 冷静沈着な性格であり、極めて強い愛国心を持つ。
 ソ連軍に国家の敵として名指しされる程の凄腕であり、現代に至るまで上をいく者はいないとされている撃墜王。
 その成果は凄まじく、戦車519輌、装甲車及びトラック800台以上、火砲150門以上、装甲列車4両、戦艦1隻撃沈、
 嚮導駆逐艦1隻、駆逐艦1隻、上陸用舟艇70隻以上、航空機9機と、報告にあるだけでも常軌を逸している。
 戦闘の際に高射砲を受け左足を失ったため義足になっているのだが、そうとは感じさせないまでの高い身体能力があり、
 担当した医師ですらもその姿には力なく首を振るしかなかったという。
 第二次世界大戦末期、敗戦色が濃厚と悟った総統アドルフ・ヒトラーと共に宇宙に旅立ち月の裏側へと退避。
 そこで新たに発足した第四帝国の一員として、長い年月を経てヒトラーの指示で再び地球制圧の為に降り立つ。
 高い雀力を持ち、地球を代表する五人の首脳陣との麻雀勝負においては、
 スコルツェニーと共に地球屈指の武人とされるジョージ・ブッシュを相手に死闘を繰り広げ、見事勝負を収めている。

【サーヴァントとしての願い】
 第四帝国の為に聖杯を入手し、総統に捧げる。

【基本戦術、方針、運用法】
 優勝を狙う。
 鷲巣と協力し、スツーカによる強襲を軸に敵サーヴァントの撃破を狙う。



【マスター】
 鷲巣巌@ワシズ 閻魔の闘牌

【マスターとしての願い】
 かつて手に入れることができなかった不死を今度こそ手にする。

【weapon】
 自らの鍛えた肉体。
 ジェラルミンケースに入れて持ち運んでいる大量の札束。


【能力・技能】
 IQ200以上とも噂される頭脳、物事に動じない胆力。
 いざという時の為に鍛えぬいた軍人ですらも一撃で倒す肉体など多くの超人的能力を有している。
 桁外れの豪運を誇りギャンブルに強く、特に麻雀においては無敗という恐るべき怪物。
 また、音楽は上流階級のたしなみとしており絶対音感を備えている。


【人物背景】
 経営コンサルタント業界でも屈指の大企業「共生」の長にして、戦後の日本社会に表・裏問わずに強い影響を与えてきた昭和の怪物。
 第2次世界大戦の末期には特高の権中警視だったのだが、その先見の明で日本の敗戦を予見して特高を辞職。
 戦争犯罪人としての重刑を免れた後、日本を占領するGHQ相手の高レート麻雀で勝ちを積み続け資金を増やし、共生を作り上げた。
 その利益の追求のため、また共生に牙を剥く者を叩き潰すため、時にはその命すらも賭けるほどの麻雀勝負に挑み、勝ち続けてきた。
 冷酷かつ不遜な性格で、自分を見下すものは例え神といえども気に食わないと言い切る程の尊大さを持つ。
 しかし同時に強いカリスマ性も持ち合わせており、出会った多くの者達が魅了されてきた。
 どれだけ危機的な状況に瀕しても常に冷静さを失わず、死を全く恐れている様子が見えない。
 それは、どの様な窮地であろうとも必ず最後には己が勝つという絶対の自信から来ている。
 ちなみに老境に差し掛かった際には、自らの老いと迫りくる死の事実から精神を病み徐々に狂い始める未来があるのだが、
 この全盛時の姿からはそんな様子はとてもじゃないが想像がつかない。

【方針】
 聖杯を勝ち取る。
 その為には使えるものはすべて使い、利用できる者は全て利用する。


628 : ◆gFt4yki6K6 :2015/03/12(木) 14:05:34 PaDwEHrM0
以上、終了になります。


629 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:45:33 RQYwEef.0
ミスがあったので報告です
>>611のバーサーカーの真名、アンデッド・マジカルとなっていますが正しくはリビングデッド・マジカルです
そして説明文中で何度か魔女と書いてますが全て魔法少女です

投下します


630 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:47:10 RQYwEef.0
『そうか……だとすれば、確かに私を呼び出せるだろう』

  沈みゆく月を眺めながら、異形のバケモノと少女が並んで喋る。
  それは、少女についてのいくつかのこと。
  少女の生い立ち、少女の傷の意味、少女ともう一人の少女について。
  そうして話を進めていくうちに、バケモノは一つの事実に辿り着いた。
  マスターである少女もまた、『人間』ではない。

「なんかわかったのか?」

『ああ。お前は人間ではない。もっと単純でもっと複雑なものだ』

  バケモノはテレパシーで隣に佇む少女に語りかける。
  少女も、バケモノと境遇を同じくした『モノ』であると。
  生物の形をして、生物のように振舞っている『モノ』。
  その実態は完全な人間ではなく、表出した人格の一つ。

  二重人格。
  一つの体に二つの人格が宿っている。
  主の人格が何らかの問題に直面した時に生み出される、
  逃げ場のない『現実』。
  それでもなんとか逃げるため、別人格によって表の人格はふさぎ込み、逃避する。
  裏の人格は都合のいい身代わり。嫌なこと、気持ち悪いことを表の人格の代わりに行う都合のいい存在。

  彼女は、その『裏の人格』だった。
  体もない。顔もない。あるのは人格だけ、という単純な存在。
  世界にその存在を認められず、それでもそこに今生きている複雑な存在。

「バケモノ扱いか、言ってくれるねぇ」

  隣に座って缶コーヒーを飲んでいた『裏人格』の少女が答える。

「ま、オレがバケモノだから真昼はひとまず幸せになれたんだ。バケモノってのも捨てたもんじゃないよ」

  ひひひ、と笑う少女。
  闇夜によく映える真っ白な髪と、同じくらいに真っ白な肌。
  そして左目の上から下まで縦に真っ直ぐ伸びた傷跡が目を引く少女。

  番場真夜。そして番場真昼。
  夜が真夜で昼が真昼。
  今は真夜だが、そのうち真昼になる。
  少女は自身が呼び出したバケモノに対してそう名乗った。


631 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:48:04 RQYwEef.0
「でも、実際さー」

  真夜は缶コーヒーを傾けて自嘲気味に笑う。
  その瞳はとても悲しげで、切なげで。

「オレが居るってのが、もう、『不幸』なんだろうな。きっと、真昼にとってはさ」

  彼女は、『自分の生まれてきた意味』を知っている。
  辛い現実から逃げるために、番場真昼が心を切り離した。そうして生まれたのが『番場真夜』だ。
  真昼の世界を踏みにじった者を殺し。
  真昼の空っぽな心を埋めるために殺し。
  決して本当の幸せにはたどり着けない、作り物の幸せを集め続ける。
  幸せになりたいのに、決して幸せになれないという感情が作り上げたのが『番場真夜』だった。

「なあ、リヴェンジャー」

  真夜が、そのクラス名を口にする。
  リヴェンジャー。
  アヴェンジャーのような『世界への復讐者』ではなく、もっと深く、もっと黒い、絶対的な『何者かへの逆襲者』。

「オレが生まれたのは、その昔、真昼を救ってくれる誰かが居なかったからなんだ」

  少女の過去。
  焚かれ続けるフラッシュ。
  出口のない密室。
  ちらつく刃物の影。
  暴力を振るう大人。
  助けを呼ぶ声は誰にも届かず、虫カゴの中の虫けらのように少しずつ少しずつ弱っていく番場真昼。

「オレが居ないと真昼は壊れてた。でも、オレが居る限り、真昼は救われない」

  番場真夜は、その時生まれた。
  大人が死に、フラッシュが止み、切り裂かれた顔の傷が埋まり、あの密室から抜け出し。
  自由を手に入れた。
  それでも、真昼は救われなかった。真夜の存在を望み続けた。
  真夜が居るということは、真昼にとってその忌まわしい事件のトラウマが残っているということ。
  救われない。
  番場真昼は救われていない。
  番場真夜が居る限り、番場真昼は前を向けない。背負った傷を赦せない。


632 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:48:28 RQYwEef.0
「だからオレは、真昼に、オレが生まれるきっかけになった事件をやり直させたい。そうして、『誰か』の勝手で狂った真昼の人生の歯車を戻したい」

  誰かの勝手が番場真夜を生んだ。
  その『誰かの勝手』を修正する。

「この願いが届けば、オレは消える」

  自身の存在の否定。

「それでもオレは、真昼に、幸せになってほしい」

  その身に宿された願い。

「きっとオレは、そのために生まれてきたんだ」

  そして、生まれた理由への回答。
  その一言は、もしかしたらリヴェンジャーが求め続けていたものかもしれない。


  『私は何者だ』

  『なんで私は生まれたんだ』


  リヴェンジャーが、何度も何度も繰り返し続けた問い。
  誰かの勝手で生み出された生命の意味への問い。
  その問いに、彼女は彼女としての『答え』を導き出した。
  その答えを信じて願いを叶えれば、『番場真夜』の存在は消えてなくなる。
  自殺にも似た願い。
  だとしても、誰にも否定することはできない。
  何故ならばそれこそが、番場真夜の生まれてきた理由なのだから。


633 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:49:07 RQYwEef.0
『いいのか』

「いいさ。オレは最初から居ないほうが良かったんだ。だから『もとに戻るだけ』だよ」

  飲み干した缶コーヒーの缶を放り投げる。
  べ、と苦そうに舌を突き出して、そのまま傍にあったキャンディに手を伸ばした。
  少し舐めたあと、噛み砕き、甘さに頬をほころばせる。
  その姿は歳相応の少女のようで。

  いつかは消える『人格』でしかない少女、番場真夜。
  それでも、生きている。
  今は生きている。
  そんな生を否定してでも、ただ、生まれた意味に至るために、戦う。

  その姿は。
  鏡に写ったリヴェンジャー自身のようで。

「オレが言いたいことはそんだけだ」
「そのうち朝日が登る。アイツとも仲良くしてくれよな」

『……ああ、分かった』

  それ以上の会話は必要なかった。
  たった数分の会話、それだけで一人と一体の心は確かに繋がったのだから。

  朝日が登るであろう場所を、二人で並んで見つめる。
  白い髪、白い肌。白い躯、紫の尻尾。
  眩い光が一筋伸び、白にまみれた二人を照らす。

「じゃ、おやすみ」

『ああ』

  短い言葉のやりとりを終え、番場真夜が目を閉じる。
  空はもう白みだしている。
  次に出会えるのは、半日後。


634 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:49:39 RQYwEef.0
  すやすやと寝息をたてる『昼』の少女の中に戻った『夜』の少女の笑顔を思い出す。
  リヴェンジャーが不確かな自分を埋めるように伸ばした手の先で、番場真夜と出会った。
  人間のエゴによって生み出された一人と一体。
  彼女の存在が、リヴェンジャーの『逆襲』に一つの形を与えた。

  願ったのは共に『生まれた意味に至る』こと。
  願いの果てに居たのは一人の救われなかった少女。

  番場真昼。

  彼女を救う人間はどこにも居なかった。
  誰も、誰も、誰も、誰も。
  生まれてから今まで、彼女を救おうとする人間なんて誰もいなかった。
  それでも。
  彼女を救いたいと願う『一人』が生まれた。
  そこに生まれた意味があると知って、ずっと彼女の味方であろうとする『一人』が居た。
  その願いを聞き届けたやり直しの願望機は『一人』を掬い上げ、願いを同じくする『一体』と出会わせた。
  それがこの物語の始まり。



  誰かが言った。
  世界は赦しに満ちている、と。
  ならば、彼女たちも。
  番場真夜の負った咎も、番場真昼の負った傷も、赦されてしかるべきだ。

  だから、戦う。
  人間ならざる一人と一体だけでも。
  ちっぽけな少女一人くらいは救えると、世界の赦しを得ることができるのだと、彼らを生み出した『人間』に教えてやるために。
  そこにこそ、彼らの『存在の証明』があるのだと知るために。
  そして全ては、世界に見捨てられていた少女・番場真昼を救うために。


635 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:50:14 RQYwEef.0
  遠く、遠く、放り投げられた空き缶のその向こう。
  水平線の向こうから、太陽が昇り始める。
  リヴェンジャーの視線が一際鋭くなり、世界を睨みつける。
  再現された街の中に溢れかえる『人間たち』を睨みつける。


  そうして、人間たちへと、届かぬ声で語りかける。


  彼女が生まれた事実に逆らうならば、私は彼女に力を貸そう。
  彼女たちが救いを求めるならば、私は、彼女たちのために全ての願いを踏みにじろう。
  貴様ら全てが見捨てた少女のために。
  貴様らに生み出された私達の力で。
  それが私の祈り。
  それが私の願い。
  それが私の望み。
  それが私の生まれた意味。
  少なくとも、この場では。

  だからこれは。
  攻撃でもなく。
  宣戦布告でもなく。
  私を。
  いや。
  私達を生み出したお前たちへの。

『逆襲だ』

  三本指の拳を顔をのぞかせ始めた太陽に向かってつきだして、『逆襲者(リヴェンジャー)』のサーヴァント・ミュウツーはこう唱えた。

  世界よ赦しに満ちていろ。
  逆襲するは、我らにあり。


636 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:51:26 RQYwEef.0
【クラス】
リヴェンジャー

【真名】
ミュウツー@劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲 完全版

【パラメーター】
筋力:E++ 耐力:B++ 敏捷:C+ 魔力:A+ 幸運:C 宝具:E

【属性】
渾沌・悪

【クラススキル】
逆襲者:A
無差別的に世界に対して復讐するものではなく、己を生み出した『何か』に逆襲するもの。
アヴェンジャーとの違いはこのクラススキルを持っているかどうか。
このスキルを持つものは自身の怨敵である『何か』との戦闘の際に筋力・耐力・敏捷が一段階ずつ上昇する。
リヴェンジャーの場合、『人間』と戦う場合このスキルの効果が適用される。

なお、判断基準は『人外ではないもの=人間』となるため、厳密に言えば人間ではない神と人間のハーフや人の意識の集合体も人間の姿をしていれば人間と定める。
逆に元々が人間であったとしてもその姿が人外であればこのスキルは働かない。

【保有スキル】
陣地作成:E
ミュウツー城とその地下に存在していた『ポケモンコピーマシーン』を作成できる。
この陣地の作成を続けることによって彼は宝具『理由を知らない生命たち』を発動できる。

人外:-
リヴェンジャーは見た目で分かる通り人外の生物である。
NPCにも、他のマスター・サーヴァントにも一目で『人間ではない』とばれ、他参加者には一発でリヴェンジャーが参加者であるとばれてしまう。
容姿変更の宝具などを用いない限りこのスキルは外れない。

こうかはばつぐんだ!:-
戦う相手がかくとうタイプ、もしくはどくタイプだった場合、魔力と耐力と筋力が一段階向上する。
なお、出典段階であくタイプやはがねタイプが居なかったため、こうかがない相手が存在しないのが強み。

超能力生物:A
エスパー能力が使える生物。ランクAともなればマスターに寄らない優秀な魔力回路を自前で持ち、Aランク相当の魔術と同じ威力の念動力(エスパーわざ)を使える。
生まれながらに持った力であるためこのスキルは外せない。

テレパシー:A
自身の意思を言葉ではなく念波として脳に直接伝えることが出来る。
訓練しだいで使えるようになる口語とは違い、人工ポケモンであるリヴェンジャーのみが使える超能力。
Aランクともなれば範囲内に存在する生物全てに語りかけることが可能。人間かそうでないかは問わない。


637 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:52:19 RQYwEef.0
【宝具】
『理由を知らない生命たち(ポケットモンスターズ・コピー)』
ランク:E 種別:召喚 レンジ:1 最大捕捉:1
陣地のコピーマシーンからリヴェンジャーが生み出したコピーポケモンを再現することが出来る。
陣地の作成具合によって召喚できるモンスターが増えていき、ミュウツー城が完成すればあの夜コピーしたモンスターの全てを召喚できるようになる。
原則として一種類につき一匹ずつしか召喚できないが、召喚している一匹がひんしになった場合その一匹をコピーマシーンまで戻して別の一匹を出せる。

ちなみに、召喚可能なポケモンは以下のとおりである。(下に行くほど召喚が難しく、陣地の工作が進んでいる必要がある)
ピカチュウ・ニャース・フシギダネ・ゼニガメ
ロコン・ヒトデマン・コダック・サワムラー
シードラ・プクリン・サイホーン・ストライク
ドククラゲ・サンドパン・シャワーズ・ゴルダック
キュウコン・ラフレシア・ギャロップ・ジュゴン
ギャラドス・ニドクイン・ピジョット
リザードン・フシギバナ・カメックス・カイリュー

それぞれミュウツー以下の火力だが、それぞれが神秘をその身に宿した宝具であるため他の英霊とも戦える。
独特のまだら模様からミュウツーのコピーモンスターだと気づかれる可能性がある。
そして、下記の宝具『遺伝子の揺り籠』によって捕えたサーヴァントのコピーも生成できる。
ただし、サーヴァントのコピーは陣地が完璧に完成している必要がある。
サーヴァントのコピーは全てのパラメータが元の英霊を上回るが、宝具は使用できない。

『遺伝子の揺り籠(ツー・ボール)』
ランク:E 種別:捕縛 レンジ:1 最大捕捉:1
リヴェンジャーの開発した目玉模様のモンスターボールを投げる。
サーヴァントに当たればそのサーヴァントを一時的に捕らえることができる。
原作と違い、この宝具の発動前後は一切のエスパー能力が使えず、レンジ1の超至近距離でしか発動が出来ない。
同時に発動できるボールも一個のみであるため使用にはタイミングを図る必要がある。
これを陣地に持ち帰ることでサーヴァントをコピーできる。

『アイの格率(アイ・ツー)』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
リヴェンジャーの存在の根幹にある『とある少女』の幻影。
リヴェンジャー自身も記憶の彼方に置いてきたものであるためその存在は誰も感知できない。
この宝具は『宝具』という分類ではあるが魔力の消費などは一切なく、世界に及ぼす影響力もない。
ただ、リヴェンジャーに対して問いかけ続ける。
『私は誰だ』『ここはどこなんだ』『誰が産めと頼んだ』『私はなんのために生まれたんだ』と。


【weapon】
エスパータイプの技。肉弾戦も少々。
防御用にバリアを張ることもできる。
そして、マスターの魔力を用いればねんりきで気象操作も可能である。

【人物背景】
説明するとつまらなくなるので割愛。
名作だから見て、どうぞ。
オススメはミュウツーの逆襲の前日譚も入った完全版。


638 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:53:01 RQYwEef.0
【マスター】
番場真夜@悪魔のリドル(アニメ版)

【マスターとしての願い】
番場真昼の過去をやり直す。

【能力・技能】
リミッター解除。
彼女は日没から日の出までの間、番場真夜として活動できる。
その際、筋力のリミッターを外して戦うことが可能になる。
大きなハンマーを振り回し、壁を軽々と砕くほどの戦力を有する。
ただし長い間戦闘することには向かず、少し戦うとしばらく休憩する必要がある。
その上平衡感覚がおかしくなるらしく、一撃振るうと足取りがおぼつかなかったり、重心を移動させる攻撃でバランスを崩したりする。

番場真昼。
彼女の主人格。
貧弱で根暗。決して他人には言わないが、耐え難い殺人衝動を抱えている。
そして、自身の存在を肯定するために殺す相手の所持品を『聖遺物』として求める癖がある。
その衝動を理解して解消するのが番場真夜の主な仕事である。
番場真昼の思考が真夜に通じる場面は多々あるが、逆はそんなにない。

光。
特にフラッシュのような強い光にトラウマがあるため、それを向けられると錯乱してしまう。

【人物背景】
ちぐはぐニーソちゃん(裏)。
白い髪と大きな傷がトレードマーク。
様々な願いを持った黒組生徒の中でも珍しくこれといった願いがない。
というよりも真昼に学生生活をさせて人と触れ合わせるのが願いだったのかもしれない。

参戦時期は黒組入学前。
聖杯にやり直しを願うまでもなく、その後番場真昼が救われていたということを彼女は知らない。

【方針】
リヴェンジャーの陣地が整うまでは表立った交戦は控える。
真昼状態で発見されるとほぼ為す術なしなのでお昼は気をつける(行動しない、とは言ってない)。
真昼が聖遺物を手に入れてしまった場合、やむなく殺人に挑む。

夜しか動けないという欠点を補うため、リヴェンジャー・真昼/真夜共に敵の拠点を探すように動く。
勝てそうな相手を探して襲撃後、『遺伝子の揺り籠』で捕らえて戦力にする。
そうして力を蓄えて、夜に一気に敵を撃つという作戦が基本となる。

なお、彼女の願いが叶った場合、番場真夜の人格はこの世界から消えてしまう。
そのことに番場真昼が気づいているのかどうかは不明である。


639 : 番場真夜&エクストラクラス・リヴェンジャー ◆tHX1a.clL. :2015/03/12(木) 21:53:30 RQYwEef.0
以上です


640 : ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:10:54 YTDHPiB.0
皆様投下乙です
自分ももう1作投下させていただきます


641 : 忌夢-Nightmare- ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:11:46 YTDHPiB.0
 万能の願望器、聖杯。
 英国神話にその名を残す、奇跡の力を宿した聖遺物。
 その所有者として選ばれた者は、あらゆる願いを叶えられる、全能の力を得られるという。

 いかなる願いも叶えられると聞いた時、真っ先に雅緋の名前が浮かんだ。
 彼女のもとに聖杯を持ち帰り、蛇女再興と妖魔討滅のため、使ってもらおうと考えた。
 でもそれは最初の一瞬だけだ。
 すぐにそれだけではダメだと、ボクは思い直すことになった。

 ボクが本当に望むことは、雅緋に強くなってもらうことじゃない。
 強くなったその先で、幸せになってもらうことだ。
 ならば今、彼女が不幸なのは何故だ?
 抜身の細い刃のように、鋭くも危うい闘志を振りまき、戦いに臨んでいるのは何故だ?
 それはボクが彼女の母を、死に追いやってしまったからだ。
 ボクが雅緋を連れ出したばかりに、ボクらは妖魔に出くわしてしまった。
 ボクが雅緋を守れなかったばかりに、彼女の母が代わりに命を落とした。
 全てボクの軽率さと、ボクの弱さが招いた悲劇だ。
 あの日のボクの失態が、雅緋を狂わせてしまったんだ。

 やり直したいことがある。
 全ての始まりとなったあの日を、もう一度やり直したいと思う。
 そしてもう1人の悲劇――妹の紫とのことも、やり直したいとボクは思う。
 ボクが弱かったばかりに、紫は己の全てを閉ざし、家に引きこもってしまった。
 今でこそ強引に連れ出してはいるけど、根本的な解決でないことは確かだ。
 ボクが紫に負けていなければ、そもそも起こりえなかった悲劇なんだ。
 それも全てをひっくるめて、ボクは過去をやり直したい。
 ボクに力がなかったばかりに、多くを失ってしまった人達を、聖杯の力で救いたい。

「ボクは……ボクは力が欲しい! 過去をやり直せる力を……悲劇を覆せる力が欲しいっ!」

「――その願い、確かに聞き届けた」

 願いを口にしたその時、黒い囁きが聞こえた気がした。
 次の瞬間、ボクの意識は、黒い闇に塗り潰されていた。


642 : 忌夢-Nightmare- ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:12:26 YTDHPiB.0


「――がぁあああああああああっ!」
 吹き荒れる風の音の中に、血を吐くような悲鳴が混ざる。
 無明の室内に蠢く影が、漆黒の烈風を振りまきながら、苦悶と共にのたうっている。
「ぐぁっ! ああああっ……!」
 大柄な影から聞こえてくるのは、若い女の悲鳴だった。
 黒い四肢が動くたび、がちゃりと響く金属音が、身の軋む音のように聞こえていた。
「……令呪を、もって命ずる……ボクの許可なしに、まとわりつくなッ!」
 絞り出すような叫びだった。
 締め上げられた喉元から、必死に吐き出したかのような、文字通り必死の絶叫だった。
 一瞬光が走ったのち、風は瞬く間に立ち消える。
 渦巻く闇から解放されて、散らかった部屋に現れたのは、成人して間もなくといった様子の女性だ。
 広い額と、肌着だけを纏った肌には、珠のような汗が浮かんでいる。
 女はぜいぜいと息を吐きながら、ふらふらと壁にもたれかかり、豊かな胸を上下させていた。
「はぁ……はぁっ……!」
 秘立蛇女子学園が3年――忌夢(いむ)。
 かつて選抜メンバーに身を置き、4年の休学期間を経て、再びその座へ返り咲かんとする、現代に生きる忍の女だ。
 数多の忍学生達の、五指に数えられたその忌夢が、ひどく憔悴しきっている。
 遂には立っていることすら困難になり、滑り落ちるようにして床に座る。
「マスター、今一度命令しろ。俺を纏って戦うのだ」
 その原因を作ったのが、その傍らに立つ影だ。
 いいや、影と表現するには、その姿はあまりにも仰々しく、そしてあまりにも禍々しかった。
 闇よりもなお黒き体は、光沢を放つ金属の鎧だ。
 2メートルはあらんかという巨躯は、随所に刺々しい意匠が施され、攻撃的な気配に満ち溢れていた。
 何より異彩を放っているのは、その顔面を覆うマスクだ。
 狼の頭部を象ったそれは、さながら神話のフェンリルか――あるいは地獄の番犬(ケルベロス)か。
 バーサーカーのサーヴァント。名を、暗黒魔戒騎士・呀(キバ)。
 強力なサーヴァントではあるようだが、忌夢に割り当てられたそれは、とんでもない厄介者だった。
(このサーヴァントは、主を喰う)
 直感的に感じたことだ。
 驚くべきことにこのバーサーカーは、人間でもましてや魔物でもない。
 漆黒の人狼鎧そのものが、サーヴァントの宝具であると同時に、意志を持つ一個のサーヴァントなのだ。
 そしてこのサーヴァントは、マスターを己が装着者としようとする。
 その絶大な力と引き換えに、内に渦巻く狂気へと、忌夢の意識を堕とそうとする。
(恐ろしかった)
 鎧の内側に見たものは、圧倒的な破壊衝動。
 力を渇望する凄まじい執念と、最強たらんとする己を倒した、何者かへの苛烈な憎悪だ。
 倒さねばならない者がいる。
 乗り越えなければならない壁がある。
 全てを打ち倒し取り込んで、最強の高みへと上り詰めてみせる。
 渦巻く妄執と激情が、忌夢の理性を飲み込んで、黒く塗り潰そうとしていた。
 それに飲み込まれることに、微かな高揚感を感じていた自分自身が、何よりも恐ろしく思えた。
(みんな、こんな風に感じていたのか)
 深淵血塊を使った雅緋も、禍根の力を放った紫も。
 荒れ狂う親友と妹は、こんなおぞましい感情と共に、戦っていたというのか。
 知らぬままのうのうとしていた自分が、あまりにも情けなく感じられた。


643 : 忌夢-Nightmare- ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:13:39 YTDHPiB.0
「立て。もう一度俺を纏え」
 鎧の声が煩わしい。
 無責任に要求する呀を、忌夢はきっと睨みつける。
「焦るな……今はまだその時じゃない」
「約束が違う。マスターは俺と戦うと言ったはずだ」
「時をわきまえろと言っているんだ。
 必要な時にはそうさせてやるさ……ただ四六時中あのままじゃ、勝てる戦いも勝てなくなる」
 バーサーカーの力は強い。
 だが理性を保てなくなるというのは、あまりにも大きすぎるリスクだ。
 あのまま出歩いたところで、とても他のマスターを探すことはできまい。
 ただ野放図に暴れ回って、魔力とやらを使い果たし、自滅して倒れるのがオチだ。それは避けなければならなかった。
「臆病者め」
「何とでも言え。ボクは忍だ」
 地道に立ち回ってこそが本分なんだと、忌夢は呀へと言い返した。
 そう言って再び立ち上がると、覚束ない足取りで自室を歩き、窓の方へと向かっていく。
「安心しろ。お前の力が必要になれば、その時は存分に使ってやる」
 言いながら窓の鍵を開けると、がらがらと窓を開いて外に出た。
 アパートのベランダから見えるのは、住み慣れた土地とは違う街だ。
 その上には深夜の宵闇の中で、月の白光が浮かんでいた。
(そうさ……この身なんて惜しくはないんだ)
 聖杯を手に入れるかわりに、呀にこの身体を捧げる。
 そのことそのものに迷いはない。
 どうせ大切な人を悲しませた、不甲斐ない人間の命なのだ。
 それをドブに捨てた程度で、彼女らが笑顔を取り戻せるのなら、喜んで捨ててやると断言できた。
 まずは忍の技を駆使し、街に潜んだライバルを見つける。
 そしてそれらの敵と対峙し、確実に葬り去っていく。
(その中で必要だというのなら)
 そうしなければならないのなら、この身は再び鎧を纏い、暗黒騎士となるだろう。
 そうしてでも手に入れなければならない。それが聖杯というものなのだ。
(待っていて)
 大切な想い人達の姿を、月の向こうに描きながら。
 愛する者と妹を想い、忌夢は死地へと赴く決意を固めた。


644 : 忌夢-Nightmare- ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:14:39 YTDHPiB.0
【クラス】バーサーカー
【真名】呀(キバ)
【出典】牙狼-GARO-
【性別】男性
【属性】混沌・狂

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:A 敏捷:C 魔力:B 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
狂化:E
 クラス特性による後付けのスキルではなく、呀自身が保有していたスキル。
 理性を持たない存在であるため、複雑な思考を行うことができない。

【保有スキル】
精神汚染:A+
 精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。
 そもそも怨念のみが凝り固まった存在であるため、干渉すべき精神が存在しない。

対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師では呀に傷をつけられない。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【宝具】
『暗黒騎士・呀(キバのよろい)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 黒き闇に堕ちた心。
 その心に輝きはなかったのか。その心に希望はなかったのか。
 それを知りたい者は行くがよい。黒く深い闇の中へと……
 ――古より人を襲ってきた、魔界の怪物・ホラー。
 それと戦う力を身につけた、魔戒騎士の鎧であり、呀という英霊そのものである。
 暗黒魔戒騎士である呀の鎧は、心滅獣身という暴走状態を超えた先に発現する、闇に堕ちた姿である。
 ソウルメタルはデスメタルと呼ばれる、漆黒の金属へと変質しており、装着の制限時間も消失している。

 本来は所有権を認められた魔戒騎士にしか装着できないが、
 元所有者・バラゴの遺志が宿った呀は、自ら所有者を選び、自身を装着させることができる。
 これにより装着者の理性と技術を得た呀は、その力をより効果的に発揮できるようになるが、
 呀自身の持つ狂化のスキルが伝染し、装着者の思考力を蝕んでいくようになる。
 何よりも恐ろしいのは、前述した単独行動のスキルがあることにより、マスターの死後も新たな贄を求めることである。


645 : 忌夢-Nightmare- ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:17:49 YTDHPiB.0
【weapon】
黒炎剣
 ソウルメタルの剣・魔戒剣が、呀の力によって変化したもの。漆黒の長剣である。
 魔戒騎士としての修行を経た者は、これを自在に操ることができるが、そうでない者には持ち上げることすらできない。
 より強い魔力を込めることによって、身の丈を凌ぐ大剣・閻魔斬光剣へと変化させることもできる。

暗黒斬
 長柄の斧。ホラーを喰うために用いていた武装であり、倒した相手の魂を、呀の鎧に取り込むことができる。

【人物背景】
最強の力をひたすらに欲し、暗黒魔戒騎士へと堕ちた男・バラゴ。
その力への執念が、死後鎧へと宿され、意志を持った姿である。
バラゴの超人的な戦闘技術を失ったため、バラゴが纏っていた時よりも弱体化しているが、
それでも鎧自体の力と、宿された凄まじい妄執によって、高い戦闘能力を発揮している。
前述する武器の他、イバラを纏って盾とする防御技「薔陣薇幹」を使うことができる。

なお、バラゴ本人の魂は、死後に師の魂と再会し、己の罪を悔い改めている。

【サーヴァントとしての願い】
完全な復活を果たし、再び力を求める。

【基本戦術、方針、運用法】
生物でない鎧のサーヴァント。
怨念のみで構成されたバーサーカーは、我武者羅に攻撃することしか知らないため、
その力を最大限に発揮するには、マスターが纏って戦う必要がある。
しかしマスター自身が狂化するというリスクは、決して無視できるものではない。
自律行動させて共に戦うか、その身に纏って戦うか、状況に応じた判断が必要となる。


646 : 忌夢-Nightmare- ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:18:57 YTDHPiB.0
【マスター】忌夢(いむ)
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性

【マスターとしての願い】
雅緋と紫にまつわる過去をやり直したい

【weapon】
如意棒
 長さ・太さを自在に変化させられる棒。

秘伝忍法書
 必殺技・秘伝忍法の力を引き出すための巻物。

【能力・技能】

 日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
 蛇女子学園の元選抜メンバーとして、ひと通りの忍術をマスターしている。
 忌夢は得意技として、電撃を操ることができる。

忍転身
 現代の忍の戦闘形態。上述した秘伝忍法書の力を引き出すための姿。
 この術を発動した忌夢は、ドイツ軍服風の装束を纏う。

忍結界
 忍同士の決闘時に発動される結界術。自身と対戦相手を一定空間内に閉じ込めることができる。
 本聖杯戦争では弱体化しており、バスケットコート程度の範囲にしか展開できない。

命駆
 命懸けの覚悟で臨む、決死の戦闘形態。
 防御力が半分以下になるが、追い詰められたことで潜在能力が解放され、攻撃力が大幅に向上する。
 なおこの状態になった瞬間、忌夢の衣服は全て弾け飛び、下着姿になる。

禍根の力
 忌夢の一族に伝わる、特殊体質由来の力。
 怒りや憎しみといった感情によって引き起こされる「拒絶の力」であり、身体能力を数十倍に高めることができる。
 最大限に発揮した際には、漆黒のオーラとして具現化するほどになるが、
 上述したような激情によって引き出される力であるため、それほどの力を発揮した際には、必然正常な思考力が損なわれてしまう。
 忌夢はこの力を扱う才能に乏しく、未だ発動させたことがない。

深淵の血
 禁術・深淵血塊によって暴走した雅緋の血を、同じく禁術である血塊反転によって取り込んだもの。
 通常は効果を発揮することはないが、前述した禍根の力に目覚めた場合、
 芋づる式に引き出され、忌夢を雅緋同様の暴走状態へと導いてしまう。
 仮にこの状態で『暗黒騎士・呀(キバのよろい)』 を纏った場合、
 呀の幸運以外のステータスが、全て1ランク上昇する。


647 : 忌夢-Nightmare- ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:19:19 YTDHPiB.0
【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を養成する機関である、秘立蛇女子学園の生徒。
21歳の3年生で、スリーサイズはB88・W60・H82。悪人の名家の出身であり、現筆頭・雅緋の幼馴染でもある。
かつて雅緋が妖魔と戦い、暴走・廃人化したことを受けて蛇女を休学。
雅緋の療養に付き添い尽くしていたが、彼女が復活したことにより、自身も蛇女へと舞い戻る。
雅緋が母親を喪ったこと、妹の紫が引きこもってしまったことの原因を作っており、強い負い目を感じている。

一人称が「ボク」で、口調も男性的なもの。
委員長気質な性格であり、問題児揃いの蛇女選抜メンバー候補の中では、ツッコミ役として苦労が耐えない。
もとより雅緋を強く慕っており、彼女に付き従い支えることを自らの存在意義としていたが、
療養中にややこじらせてしまったようであり、半ば同性愛じみた感情へとハッテンしている。

忍法の性質を表す秘伝動物は狐。
忍装束こそドイツ風だが、戦闘スタイルは中華風の棒術であり、俊敏な身のこなしで敵を翻弄する。
必殺の秘伝忍法は、超高速で駆け抜け敵を圧倒する「デッドフォックス」、
電撃を纏った如意棒を、回転させながら投擲する「ローリングサンダー」。
また現時点では未習得だが、自らの大切な何かを自覚した時には、更なる奥義である絶・秘伝忍法を発現することができる。
忌夢の絶・秘伝忍法は、如意棒から無数の管狐を召喚し攻撃させる「サンダーフォックス」。
この絶・秘伝忍法は、一般には「善と悪の力がぶつかった時に発現する」と言われており、善なる者との戦いが、発現の引き金となる可能性が高い。

蛇女ルート第3章終了後より参戦。再び選抜メンバーとして認可されるべく、抜忍の焔達を追っている。
当初は自分と雅緋以外の仲間など要らないと言っていたものの、現在は他のメンバーにも、仲間意識を芽生えさせている。

【方針】
優勝狙い。
呀に身を捧げることに迷いはないが、理性的な行動が取れないのはまずい。
普段は取り込まれないように立ち回る。


648 : ◆aWSXUOcrjU :2015/03/13(金) 01:19:52 YTDHPiB.0
投下は以上です
忌夢&呀組でした


649 : ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:15:46 tlHA0sKI0
投下させていただきます。


650 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:16:52 tlHA0sKI0
 凶悪なモンスターたちが今も徘徊する薄暗い炭鉱、その地下にある洞窟に小さな影があった。
 白い体毛、背中には小さな羽根。頭にポンポンがある二頭身の生き物、モーグリ。
 マフラーを首に巻いたモーグリが洞窟の壁に向かってただ一匹、じっと佇んでいた。
 そのモーグリの名はモグ。勇敢な戦士であり、世界を救った英雄たちの一員でもある。
 モグは俯いてじっと、掌中のお守りに視線を注いでいる。在りし日に思いを馳せながら。

 破壊者は倒れ、瓦礫の塔は崩れ落ち、滅びに瀕した世界には生命の息吹が吹き込まれる。
 そしてそれを為した英雄たちも、それぞれの居場所に戻っていった。
 ティナはモブリズに。ガウは獣ヶ原ヘ。セッツァーは空を自由に翔けまわっている。
 リルムは約束の為にジドールと、他の面々も思い思いの自分が行くべき場所に歩き出した。
 仲間たちと同じく、モグもまた子分のウーマロと一緒に帰っていった。
 生まれ故郷のナルシェの洞窟、待つ者も無いモーグリの住処に。
 
 荒れ果てた世界に緑が戻り、人々は活気に満ちていた。
 一時はゴーストタウン同然だったナルシェにも、少しずつではあるが人が戻ってきている。
 それでも、戻ってこないものはある。
 モグと一緒に暮らしていた十匹のモーグリたち。
 モグリン。モグプウ。モグッチ。モグシン。モグポン。
 ムグムグ。ズモモグ。モグール。モグタン――モルル。
 もう、誰もいなかった。
 残ったのは手の中のお守りだけ。

 世界は救った。平和は戻った。しかし、モーグリは?
 世界を巡って世界を見てきて、それでもモーグリはどこにもいなかった。
 モグは世界に残った最後のモーグリかもしれなかった。
 そう断言できる確証は無い。だが生き残りがいると楽観する事も出来ない。
 世界に刻まれた爪痕は深く、滅びた種は数多い。

 力が無ければ生き残れない。知恵が無ければ生きる道は無い。
 それが大自然の理、自然に生きる者たちの法。
 激変する環境、分断された大地、現れた強力なモンスターたち。
 果たしてモーグリたちが滅びの運命に抗う事はできたのか。
 活気が戻ろうとするナルシェの街と静寂に包まれるモーグリの住処が、その答えである。

 それでも、もしかしたら誰か生きているかもしれない。帰ってくるかもしれない。
 そんな淡い希望を胸に抱いて、モグは今日も一人で洞窟に佇む。
 それが叶わぬ望みと知りながら。

 共に戦った仲間はいる。子分のウーマロも炭鉱に住んでいる。
 みんなとの繋がりは今のモグにとってかけがえの無い宝物だ。
 平和になった今、誰に会いに行くのだってそう難しいものでは無い。
 移住だってどこにだってできるだろう。
 しかし、モグは故郷を離れることはできなかった。

 どうしようもなく寂しかった。
 それが仕方の無い運命なのだとしても。
 モグは一人で孤独に耐えていた。
 耐えるしかなかった。

 そんなただ一匹だけのモーグリがやり直したい、そんな思いがちらりと頭に浮かんでも仕方の無い事だったろう。


 ○ ○ ○


「不愉快クポ! 全く何考えてるクポ!」

 モグは激怒していた。首に巻かれたマフラーと、その下から首にかけたお守りが揺れている。
 温厚なモーグリには大変珍しい激昂ぶりだった。どこか間が抜けてもいたが。
 モグは怒りに任せて絶叫した。

「ぼくはぬいぐるみじゃないクポー!」


651 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:18:13 tlHA0sKI0
 モグが聖杯戦争の舞台に呼ばれ、降り立った場所。
 それはぬいぐるみ専門店だった。
 気づいた時には大きいサイズのぬいぐるみと仲良く一緒に陳列されていた。
 頭についているポンポンにタグがつけられていた。値段は五千百十円。
 目を覚ましたモグが自分の扱いに気がついた瞬間、ぶちキレた。蓄積されたストレスが爆発した瞬間だった。
 ポンポンのタグを力任せに引きちぎり、満身の力を込めて握りつぶした後、渾身の力で地面に叩きつけた。

 その後は自分はぬいぐるみじゃないと叫びながらモグは店内を爆走。
 突然の事態に反応できた者は誰もいなかった。あっという間にモグは人の隙間を潜り抜け店から脱出。
 荒ぶるモーグリは怒りに任せて昼間の通りを出鱈目に走り、姿をくらました。
 現在は何らかの倉庫らしき場所に逃げ込んでいた。人の気配も明かりも無く、潜むには絶好の場所だった。
 積み上げられたダンボールの一つに腰掛けて、いまだ収まらない怒りをぶちまけている。 

「どうやったら間違うクポ! どこからどう見てもなまものクポ!」

 モグの身長は122cm、体重は43kgと確かにぬいぐるみと間違えるのは少々無理があった。
 実際どういう経緯でそんな事になったのかは定かではない。謎である。

「本当に非常識クポ! ここの人間は――」
「そこまでにしておけ、毛玉」
「――クポ?」

 なおも収まらぬ怒りであったが不意にかけられた言葉にモグは固まった。
 辺りを見回すが、誰もいない。少なくとも人間の姿は無い。

「誰クポ? どこにいるクポ?」
「毛玉よ、私はここにいる」
「クポ!?」

 また声がしたと思ったらいきなりモグの身体が浮き上がった。
 モーグリは短時間なら浮遊する事は可能だが、これはモグの意志によるものでは無かった。
 抵抗しようとするも身動きが取れない。見えない何かで押さえつけられたように手足は動かなかった。
 この事態にモグは危機を感じ……る前に崩壊する瓦礫の塔での出来事が頭を過ぎる。

「ぬいぐるみじゃないって言ってるクポー!」 
「口を閉じていろ毛玉。安心しろ、別にお前を喰おうとしている訳では無い」

 言葉と同時にモグの身体が下降を始め、そのままゆっくりと地面に着地した。
 一体何なのかと訝しむモグの目の前、そこに何かがいた。
 辺りは暗いが洞窟暮らしのモグにはそれが何かはっきりと視認できた。
 それはモグより更に背が低い二頭身の――二足歩行するトカゲ、そうとしか言いようの無いなにか。
 石か何かでできた鎧を着込んで、マントまで羽織っている。
 人間なら普通は衝撃を受ける異様な姿であるが、ここにいるのは同じく人ではないモーグリ。
 姿よりも先に身体の大きさに目がいった。

「……ぼくより小さいクポ」
「見た目で能力が決まる訳では無い。サル共を見れば良く分かるだろう」
「サルってもしかして人間のことクポ? それよりあんた誰クポ?
 ここに住んでるクポ? それなら勝手に入ってごめんクポ」

 どこかずれた事を言って頭を下げるモグに、直立するトカゲは冷静に応じた。少々の呆れを滲ませて。


652 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:19:02 tlHA0sKI0
「……私はライダーのサーヴァント。お前に召還された……従者だ。
 だから私はこの場所に住んでなどいない。わかるか、毛玉?」
「あ、そうだったんだクポ……サーヴァントって何クポ? ライダーって名前クポ?」
「……先が思いやられるな。サルよりはましかと思ったが、毛玉はしょせん毛玉か」

 やれやれといった調子でライダーを名乗るトカゲは首をすくめた。
 その思いっきり馬鹿にしたような物言いと態度に、頭に血が上っているモグはカチンときた。
 なんで馬鹿にされているか解らないのにも苛ついたが、なにより毛玉呼ばわりが気に入らない。

「さっきから毛玉毛玉うるさいクポ! ぼくの名前はモグだクポ! モーグリのモグクポ!」
「ほう、それは失礼した。ならば私の事はライダーと呼ぶがいい。
 ではモグよ。改めて訊くが今の自分がどんな状況にあるか理解しているか?」
「だから一体何のことだかさっぱり……クポ? 聖杯戦争? サーヴァント?」

 頭の中で妙な単語がちらつくのにモグは気づいた。
 聖杯戦争、サーヴァント、マスター……本来は知るはずの無い単語の羅列。
 一つ違和感が生じると連鎖的に次々と湧き上がる疑問。
 自分の今の状況がどれだけ異常であるか、モグはやっと認識し、そして混乱した。
 頭を抱えて、いや押さえてその場でぐるぐる回り始める。

「ど、どういうことクポ。なんでぼくはこんなこと知ってるクポ?
 ここどこクポ? なんでこんな所にいるクポ?」
「血の巡りの悪いお前の為に、一つ一つ答えよう」

 うろたえるモグにライダーは仕方ないとばかりに嘆息する。。
 ぐるぐるしているモグを先ほどのように押さえこんでから、知りうる限りの情報で説明を始めた。

「何故、知る筈も無い知識が頭の中に入っているのか。これは恐らく聖杯によるものだな」
「聖杯……ええと、願いごとをかなえるアイテム……クポ?」
「与えられた知識に誤りが無いならその認識で間違いなかろう。
 ここでの戦いで守らねばならぬ掟の周知のためだろうよ。
 この汚らしい世界の知識も有る程度与えられているようだ」
「世界クポ?……そういえば確かに何かここは変クポ」

 冷静になって振り返れば、ここに落ち着くまでモグにとって見知らぬものばかり目にした。
 建築物、服装、綺麗に舗装された道路に、道に転々としているよく分からない機械。そして今いる倉庫。
 先ほどまで腰掛けていたダンボール箱もモグは見たことが無い。
 世界最速の飛空挺ファルコン号でモグは世界の土地を巡ったが、こんな場所はどこにも無かった。
 
「何がなんだかわからないクポ……」
「私にもよくは分からん。与えられた知識はお前と大差ないだろうからな。
 確かなのは、この地が冬木と呼ばれる場であるという事だけだ」
「ライダーにもわからないクポ?」
「心当たりは無くはないが……断言はできん。異世界と表現するのが妥当か」
「異世界クポ……」

 異世界、幻獣界やカイエンの夢の中のような場所なのかとモグは思った。
 それならばこの世界と自分の住む世界はどこかで繋がっているのか、そこが気になった。

「私とお前の住む世界も違うのだろう。
 ……いや、その無駄に多い白毛を見るに……モグよ。
 私と同じ姿をした者たちを見たことがあるか」
「あちこちに行ったけど……ライダーを見るのは初めてクポ」
「……そうか」

 ライダーはまたも嘆息した。
 そこに込められた意味はさっきとは違うようであったが、モグがそれに気づく余裕は無かった。
 既にモグの怒りは萎えていた。いまモグの心中にあるのは渦巻く不安だけだった。
 こうやって話している間にもモグの中で情報の整理は進んでいく。
 こういった非常時に際しては潜った修羅場の数が物を言う。
 しかし冷静になった分だけ、恐怖を感じた。聖杯戦争。聖杯というアイテムの奪い合い。
 かつてのガストラ帝国の姿がモグの頭に浮かんだ。


653 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:19:55 tlHA0sKI0
「最後に、何故ここにお前がいるのか。それはお前がそう願ったからだ」
「ぼくが、願ったクポ? 」
「聖杯戦争とはその者の願いを叶えるための戦いだという。
 願いが無ければここに来る事はできないという事だ。心当たりはあるな?」
「……無い、とはいえないクポ」

 モグにも願いはあった。とても切実な願いが。

「僕はみんなに会いたいって、いつも思ってたクポ。でも、なんで……」
「吐いて捨てるほどいるであろう愚か者の中で、何故お前が選ばれたのかは分からん。
 しかしお前はここにいる。それは間違いない」
「クポー……」

 モグにも事情はある程度飲み込めた。戦争。モグにとって縁遠いものではない。
 聖杯というアイテムの存在をモグは自分の中で噛み砕く。怖気が走った。

「僕はこれからどうなるクポ?」
「どうであれ戦うしか無いだろう。生き残りたければ、勝ち残るしかない。それが……いや」
「クポ?」
「なに、こんな悪趣味なものに大地は関係ないという事だ。
 理を歪める無様な妄執よ、誇りなどある筈も無い」

 淡々と語っていたライダーが初めて感情を覗かせた。
 それは自嘲のようだった。薄っすらとしたもので、はっきりとは分らなかったが。
 モグには自分を食べようとする恐竜から逃げ回った経験はあれど、トカゲの表情を読んだ経験はなかった。

「ライダーは戦いたくないクポ?」
「喚びかけに応えた以上、務めは果たす。だが奴隷扱いはしてくれるな」
「僕はそんな事しないクポ」

 その言葉を最後に会話は途絶えた。モグは考える事に集中したかった。
 願い、聖杯、世界、故郷、仲間。そして目の前のライダー。
 これからどうすべきか自分の中にある全てを引っくり返して考える。
 いや、答えそのものは決まっていた。大切なものは何か、簡単な話だ。
 それが弱くなった自分だけで果たせる事なのか、それが問題だった。
 自分の右手を見る。そこには知らぬ間に見知らぬ紋様が刻まれている。
 サーヴァントに対する絶対命令権。モグは自分の目的のためにこれを使うつもりは無かった。
 ライダーはそんなモグの姿を黙って見ていた。少しの間じっとモグを観察し、口を開いた。

「……そろそろ消えるとするか」
「クポ? どうしたんだクポ?」
「霊体化をして魔力の消耗を抑える。その時がくるまで、力は温存しておきたい」
「ちょっと待ってクポ。魔力って――じゃなくて、話したいことがあるクポ」
「霊体になっても念話で話せる(このようにな)」
「おお、なんだか懐かしい感覚クポ……い、いや待ってクポ。
 大事な話だからこんなじゃなくてちゃんと話したいクポ」

 背中を向けて消えようとするライダーを、モグは引き止めた。
 聞きたい事と、伝えなければならない事があった。


654 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:20:45 tlHA0sKI0
「……なんだ」
「えーとクポ……僕は、戦わないといけないクポ?」
「戦わなければ、死ぬだけだ」

 モグはゆっくりとライダーに確認をとった。
 今更な質問だが、しかしモグには必要な事だった。問いを重ねる。

「ぼくみたいな人が他にもいるクポ?」
「私たちがいる以上、そう考えるのが自然だ」
「その人たちに勝ったら願いがかなうクポ?」
「そういう事になっている」
「みんな願いを持ってるクポ?」
「わからん。さっきはああ言ったが証明はできん」
「……ライダーはぼくの子分クポ?」
「……その認識でも、間違いではない」
「わかったクポ……僕は決めたクポ」

 モグはマフラーの下に手をやり、お守りを握り締めた。
 モグの心は既に決まっている。口に出すのは少しだけ勇気が必要だったが。

「ぼくは、他の人たちに会ってみたいクポ」
「ふむ、それで」

 ライダーは続きを促す。それだけでは何とも言い様が無い。

「色々考えてみたクポ。
 でも、いくら考えても聖杯戦争っていうのが何なのか全然わかんないクポ。
 だから色んな人に聖杯をどう思ってるか話を聞いてみたいクポ」
「なるほど……お前は聖杯を疑っているということか」
「んー……そうなるクポ?」

 モグのひとまず出した結論。それは何もわからないという事だった。
 だから色々な意見を聞いてみたいし、情報も集めてみたい。
 モグが旅をしていた時も一人が全体を引っ張るのではなく、皆で協力しながら世界を渡り歩いた。
 あちこちで拾い集めた情報を元に世界を飛び回ったりもした。
 その経験から出した答えだった。

「だって本当になんにもわからないクポ。
 戦争っていうぐらいだから、もしかしたら全部嘘かもしれないクポ。
 リターナーも嘘で酷い目にあったクポ。それに……」

 戦争と聞いて思い浮かべたガストラ帝国。
 帝国と和平を結んだ瞬間を思い出す。その後、帝国の首都に留まったリターナーは騙まし討ちに遭う事になる。
 エドガーの活躍が無ければ、モグはあの時ベクタで命を落としていたかもしれなかった。
 その苦い経験とその後に何が起こったかを考えれば、与えられた知識を鵜呑みにする事なんてできはしない。
 そして邪魔者がいなくなった帝国はあの大陸を浮上させ……。

「願いをかなえようとして、でもそれがもしかしたら……」

 モグは言葉を切った。俯いて地面に視線を向ける。体は小刻みに震えていた。
 かつて見た光景がフラッシュバックした。忘れることの出来ない記憶だった。 
 迸る閃光、砕ける船体、吹き飛ばされる仲間たち、モグも空へ投げ出された。
 飛空挺の残骸と共に宙を舞い、浮遊感に包まれながら見た、眼下に広がる燃える大地。
 野望を叶えるために帝国が手を伸ばした絶対の力。
 それが壊れた魔導士の手に渡った時――世界は、引き裂かれた。

「……とにかく、わからないことだらけクポ。
 でもぼくは知らないといけないクポ。
 もう二度と……あんな思いはしたくないクポ」


655 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:21:36 tlHA0sKI0
 モグはこの戦争を降りるつもりは無い。
 恐怖がある。しかしそれは戦いに対してではない。モグは乱暴な雪男も従える勇猛果敢な戦士である。
 それは、またあの大破壊が繰り返されるかもしれない可能性への恐怖だった。
 永遠に再会することが叶わなくなった、ナルシェの同胞たちの姿を幻視する。
 もし聖杯が三闘神に匹敵する力を持つアイテムだとすれば。
 それが邪悪な心を持つ者の手に渡ったなら。

「絶対に、あんな事は繰り返しちゃいけないクポ」

 わからない事だらけではあるが、それでも理解できる事がある。
 この戦いから逃げてはならない。
 あの大惨事を経験した者として、聖杯とは何か、見極めねばならない。
 もう二度と失わないために、失わせないために。

「お前の言いたい事はおおよそわかった。つまり、願いを叶える気は無いのだな」
「それはわからないクポ……。やりなおしたいこと、いっぱいあるクポ。
 でも僕は……聖杯が怖いクポ。なにか、とても恐ろしいものな気がするクポ」

 この戦いを乗り切って故郷に帰っても、モグの孤独が埋められる訳では無い。
 それでも、モグは聖杯に手を伸ばす気になれなかった。
 怖いのだ。取り返しのつかない、何かを失ってしまいそうで。

「分かった……では一つだけ訊いておこう。
 もし他の参加者と戦わねばならなくなった時、お前はどうする?」
「逃げるクポ。逃げて逃げて逃げるクポ。
 でももし、逃げられなくなったら……覚悟はできてるクポ」

 ライダーの質問の意図はモグには分かっていた。
 自分のこれからの行動がどれだけ危険なものであるかも。
 だから言った。自分には戦う覚悟があると。モグは戦士だった。
 それを聞いて、ライダーは頷いた。

「よかろう……ならば、私も命尽きるまで力を貸そう」
「クポ、でもライダーも願いが……」
「構わん。聖杯を恐ろしいと思うお前の心は理解できる。
 聖杯とは大地のおきてを歪めかねない代物だ。看過はできん」

 モグにとっては予想外の言葉であった。モグはライダーの協力は半ば諦めていたからだ。
 一応、子分かどうかと聞いてみたがそれに何かの強制力があるわけではない。
 頭を捻っても、説得する方法が浮かばない。令呪も使いたくない。
 願いがあるからここにいる、それがライダーの言葉。
 モグにとってライダーは最初の関門だった。

「本当に、大丈夫クポ?」
「フフ、安心するがいい。私が裏切る事は無い、サルとは違うのだ。
 信用できんと言うなら私の願いを教えてやろう。
 私は……未来が見たかった。ただ、それだけだ」

 願いを口にしたライダーの表情を、やはりモグは大まかにしか読めなかった。
 どこか晴れ晴れとしているような、しかし何かもっと……はっきりとは分らない。

「未来クポ?」
「他愛の無い、ただの未練よ……お前の言葉を聞いて私の目も覚めた。
 恥を晒すこの身だが仮初の命ある限り、お前を護ると大地に誓おう」
「……あ、ありがとうクポー! すっごく心強いクポー! 」

 モグは跳んで跳ねて全身を使って喜んだ。モグにとって、仲間ができた事は何よりも嬉しい事だった。
 モグの様々な仲間たち……格闘家、将軍、暗殺者、青魔導士、ものまね士、どろぼ……冒険家。
 その中にライダーが加わった瞬間だった。一人じゃないという事は、本当に素晴らしい事だった。
 それにしても。


656 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:22:07 tlHA0sKI0
「でも、何だか大げさクポ……」
「大げさなものか。
 お前はこれから愚物共と幾度も相対しなければならん。命がどれだけあっても足りんわ」

 モグにとってそこが一番、頭の痛い問題だった。
 ライダーの協力を諦めていた理由もここにある。危険が大きすぎるからだ。
 聖杯戦争のルールに基づくなら、参加者同士が出会えば戦闘が始まるのが道理。
 参加者の目に触れる機会が多くなればそれだけ危険も増し、こちらの消耗も激しくなる。
 モグの目的を果たすには避けては通れない難問である。話をするだけでも自衛の戦力は必要だった。
 しかし……その戦力が足りない。全く足りない。

 サーヴァントの実力がどの程度のものかは、モグにはまだ分らないので置いておくとしても。
 モグの現在の戦闘能力は最後の戦いから比べると著しく低下している。
 魔法の力は失われており、モグの特技である踊りは扱いが難しい。
 武器が無いのも苦しい。スノーマフラーとお守りしかこちらに持ってこれていなかった。
 魔石の力で上昇させた能力も軒並み低下している。アイテムもポーション一つ持っていない。
 お守りの力でずっと戦いを避けていたせいで身体と実戦の勘もかなり鈍っている。
 正直に言って、この状態で戦闘になるのは不安極まりなかった。
 三闘神とまでは言わずとも、もしも八竜に匹敵する力を持つ存在と遭遇すれば、現状逃げる事すら困難だろう。

「クポー……せめて魔法が使えれば――あ、そういえばライダー、魔力がどうとか言ってたクポ?」
「魔力の消耗を抑えるとは言ったが……お前も魔法が使えるのか」
「今は使えないクポ。ってライダーどうかしたクポ?」

 今度はモグにも良く分かる程に、ライダーは露骨に顔をしかめた。
 身体のあちこちをさすりながらライダーは返事をした。

「少し、嫌な事を思い出してな。……今は使えないとは?」
「クポ、ちょっと複雑だからちゃんと説明するクポ。モグの武勇伝もたっぷり教えてあげるクポ!」
「なるべく簡潔に話せ」

 モグは今度は自分が教える番だと張り切って、自分の世界に存在した魔法の説明を始めた。
 話はあっちこっちに脱線したが、モグの踊りの力も含めてライダーは大体の事情を把握した。

「成る程、しかしお前から魔力は供給されているぞ」
「だったら魔法も使えるかもクポ! 久しぶりに使ってみるクポ!
 ――――ファイア!」

 昔の要領を思い出しながら精神を集中してモグは魔法を唱えた。
 ……しん、としている。

「……何も起こらないクポ」
「私に流れる魔力は神とやらのものでは無い事がはっきりしたな」
「クポー……じゃあちょっと試しに一曲おどってみたいクポ」
「うむ、これからのためにもお互いの戦力は把握しておくべきだろう。
 私も大地の力を借りるという、その技に興味がある」
「それじゃあ人が全然いないところまで行くクポ。
 一度おどると凄く目立つから場所を選ぶクポ」

 モグはライダーの力を含めて、自分達の戦力の把握と増強に努めることを最初の目的とした。
 準備が重要であることは、弱肉強食の自然界を生きる両者共にしっかりと理解しているためだ。
 参加者を探すのは出来る限りの仕込をした、その後になる。

「わかった。お互いの連携のための訓練も必要だ。
 猶予がある間にやれる事はやっておくぞ。……連携か」
「クポ? また嫌な思い出クポ?」
「フフ、あやつらに学ぶのが癪なだけだ。
 しかし、出歩くにはお前の姿は目立つがどうする。夜を待つか?」


657 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:22:39 tlHA0sKI0
 ライダーは姿を隠せるがモグはそうはいかない。
 人間しかいない街にモーグリの姿は目立つ。
 お守りの加護もただの街の住人には効き目が薄い。バニッシュも使えない。
 しかし、モグには秘策があった。

「クポ! それはちゃんと考えてあるクポ! これを見るクポ!」

 そう言ってモグは手近にある大きなダンボール箱に手を伸ばす。
 箱を開けて中身を取り出す。そして、空いた箱を自分に被せた。
 それだけでは少しだけ大きさが足りないが身体を寝かせると……。

「これで見えなくなった筈クポ! 移動も楽々クポ!」
「むぅぅ……やはり頭のデキは……いや、何も言うまい」

 ダンボールの中で恐らく自慢げに胸を地面に向かって張っているだろうモグを見ながら、ライダーは唸った。
 少なくとも人間と組まされる事に比べれば、この程度の事など問題にもならない。
 人間に対する遺恨は無かったが、それでもライダーが人間嫌いな事に変わりはない。
 この世界に来てからは、特に。

「……そういえば、まだ私は名乗ってなかったな」
「クポ? ライダーじゃないクポ?」
「それはただのクラスの名だ。私の名は別にある」

 ライダーは目前のダンボールに意識を集中させた。
 するとモグが被っていたダンボールの形が揺らぎ、消失した。
 驚くモグの前に立ってライダーは名を明かした。少しの苦悩を秘めて。

「……我が名はアザーラ。恐竜人の……アザーラだ。
 それが、お前が抗う運命に供する者の名だ、モーグリのモグよ」


 ○ ○ ○


 それは、夢想だった。
 アザーラの前に立つ異邦人たち。
 その姿を見て、全てを悟り、考えてしまった。
 恐竜人の未来を。幸福と繁栄を享受する自分達の子孫の姿を。
 この目で見たいと、死の際に願ってしまった。
 それこそが歪み。
 本来あるべき定めに逆らいアザーラは今、戦場にいる。
 天は人を選び、恐竜人は消え去る。それこそが大地の掟。
 その遵守されるべき掟をアザーラは破った。自分の未練が為に。
 許してはならなかった。恐竜人の名誉を汚した己を。
 許してはならなかった。大地の掟を壊しかねない聖杯を。
 定められた運命を覆してはならない。それはいずれ、破滅を呼ぶ。
 なればこそ、アザーラは無様を晒しても戦わねばならない。
 歪みは、正されなければならないのだ。


658 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:25:04 tlHA0sKI0
【クラス】
ライダー

【真名】
アザーラ@クロノ・トリガー

【属性】
秩序・中庸

【パラメータ】
筋力C 耐久B+ 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい
ライダーの魔力に対する抵抗力は本来あまり高くない。だが超古代の竜種と呼べる存在であるためこのランクとなっている。

騎乗:A
騎乗の才能。幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
ライダーは原始の時代に生息した数々の猛獣を飼い慣らし、戦力として活用した。

【固有スキル】
超能力:B
魔力に依存しない特異能力。このスキルは魔力をあまり消費せず行使できる。
念動力で人間を振り回したり、巨岩を敵の頭上に瞬間移動させて落とす事などができる。テレパシーを使って敵を眠らせる事なども可能。
ただし魔力が篭っていないためサーヴァント相手には効果が薄い。

カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。
ライダーは弱肉強食の世界にあって長として兵を率い、種の存亡を賭けた戦いを指揮した。

竜の鱗:A
恐竜人が持つ非常に硬い鱗の肌。物理攻撃を受ける際、耐久に対して常にプラスの補正がかかる。
種族としての身体的特徴であるため、この効果は意識外の攻撃にも適用される。
雷属性の攻撃を受けると感電し防御力が弱まってしまうが、ライダーはこの弱点を克服している。

大地のおきて:A
勝った者が生き残り、負けた者は死ぬ。
それこそが大地の掟。神すら存在しない時代に在った絶対の法。
ライダーはいかなる相手にも怯むことは無い。そしてどんな事があっても戦いの結果をぼかすことはない。

【宝具】
『黒鋼の暴竜(ブラックティラノ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:7
ライダーの、恐竜人たちの最終兵器。
極めて強固な鋼の皮膚を持った巨大なティラノサウルスを召還する。
口から炎を吐き、非常に長く伸びる舌で敵を絡めとって噛み砕く事を得意とする。
ある程度の単独戦闘も可能であり、もしライダーが倒れても魔力が続く限り継戦が可能。
しかしこの恐竜の真価はライダーが騎乗した際に発揮される。
ライダーの指揮の下に防御態勢をとった場合、その鉄壁の守りを崩すことは困難を極める。
だが最大出力の炎を吐く際には防御態勢は解かれ、あらゆる攻撃が普通に通用するようになる。
それでも巨体に見合った高い生命力を持っているのでそう簡単に倒れることは無い。
状態異常や精神干渉は有効なので、そこだけは注意が必要。

【Weapon】
超能力

【人物背景】
6500万年前の原始の世界で繁栄していた恐竜人たちの長。
種族を率いるに相応しい高い知能を有し、天の炎による雪と氷の時代の訪れも予見していた。
人類と熾烈な生存闘争を繰り広げるが未来人の介入により敗北。滅びの運命を覆すことはできなかった。
今際の際に宿敵から手を差し伸べられるも拒絶。大地の掟に従い天から落ちて来た炎の中に消えた。
この決戦は星の転換点でもあり、もし勝利していれば恐竜人は氷河期を生き延び自然と調和しながら繁栄する、そういう可能性もあった。
なお数千万年の後も少数ながら恐竜人は生き残っているが、アザーラがそれを知ることは無い。

色々と謎めいた存在なせいか実は未来人説や平行世界からやってきた説などが存在する。
性別については不確定な要素が多い。とりあえずは性別不詳でいいのでは無いかと思われる。

【サーヴァントとしての願い】
もしかすれば存在しえたかも知れない世界を垣間見る。叶える気は全く無い。
浅ましい願いを抱いて定められた死を歪めた自分を嫌悪している。
聖杯戦争も大地の掟を壊すものとして嫌っている。


659 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:26:46 tlHA0sKI0
【マスター】
モグ@ファイナルファンタジーVI

【マスターとしての願い】
群れのみんなに会いたい。
しかし聖杯が怖いのでこの願いを叶える気は無い。

【weapon】
・モルルのお守り
恋人の込めた祈りがモグに危害を加える者を遠ざける。
ぶっちゃければこれを装備していれば雑魚敵とエンカウントしなくなる。
しかし聖杯戦争での戦いは毎戦がボス戦のようなものなのであまり意味が無い。
ただ敵の使い魔ぐらいなら避けて行動する事ができるだろう。

・スノーマフラー
モグの子分であるウーマロが身に着けているマフラー。
どういう訳かモグやウーマロ、あとガウのような自然に縁のある者にしか装備できない。
非常に高い防御力を有し、魔法にも強い。回避能力も大幅に上昇する。
更に炎属性の攻撃を半減し、冷気は吸収してしまう。何が素材かは不明。


武器は持ってこれなかった。


【能力・技能】
・魔法
モグは魔法の力の根源である三闘神が消滅した時間軸からやってきた。だから当然魔法は使えないし、魔力も失われている。
現在は生命力、つまり神に由来する外なる魔力では無く、モグが本来持っている筈である内なる魔力を使ってサーヴァントを維持している。
なので以前と比べるとその魔力量は雀の涙ほどでしかない。魔法も使えない。

・おどる
モグが踊ることによって大自然の力を借り、様々な奇跡を起こす。
その力は周囲の地形にまで影響を及ぼし、モグの記憶した自然の姿を元に、辺り一帯が塗り替わる。
踊りの種類によって八種の地形が再現され、顕現する地形によってそれぞれ異なる四種の効果が発動する。
砂漠ならば砂嵐を巻き起こす。森林ならば木の葉が舞う。山なら崖が崩れ落ち、洞窟なら落盤が起こる。
治癒の効果を引き出すことが出来ればゾンビ化を治したり、死の呪いを解呪する事も可能である。
自然の力を利用したこの現象はサーヴァントにも通用し、なおかつ対魔力などの魔力耐性では防げない。
一度顕れた自然現象を回避することは困難であり、発動すれば必中するものが多い。ただし即死判定の発生するものはこの限りでは無い。
これらの現象の発現による魔力消費は殆ど無く、モグが踊り続ける限り何かしらの効果は発生し続ける。
街中に砂漠を出現させるなどの無茶な地形変更をする場合はたまに失敗し、成功した後も相応の負担がかかっているのか稀に転倒してしまう。
しかし一度顕現した地形は戦闘が終わるまで消耗無く維持され続ける。

これだけ見れば素晴らしい能力の様に思えるが当然デメリットも存在する。
まず、踊っている間のモグはそれ以外の行動をとることができず、途中で止まることもできない。
自由に踊りの内容を切り替えることもできないし、敵の攻撃を意識的に迎撃する事も難しい。
途中で転倒するか踊りの続行が不可能な状態にならない限りずっと踊りっぱなしである。足が地面に付かない浮遊状態でもモグは踊り続ける。
次に、踊りによってもたらされる現象をモグが操作する事ができない。
敵と味方を区別するぐらいは出来るが何が起きるかは完全にランダムであり、その効果の矛先がどこに向くのかは誰にもわからない。
最後に、踊りの威力はモグの魔力の強さに依存する。つまり現在の失われた魔力では全盛期の十分の一も力が出ない。
力の質そのものは自然のものであるためサーヴァントにも耐性を無視して攻撃は通るが、出力が貧弱なため殆ど効き目は無いだろう。
ただの一般人が相手なら話は別であるが。

使用中は無防備であり、不確定要素が多すぎ、単発では威力不足と、とても扱いが難しいアビリティである。

・モーグリらんぶ
モグが瀕死の重傷を負った場合にのみ使用できる必殺技。
相手の懐に飛び込み捨て身で拳の連打を叩き込む。
防御力を無視してダメージを与えるこの切り札はサーヴァントに対しても有効である。
しかしこの技も威力が魔力に依存しているので、正直あまり期待はできない。


660 : モグ&ライダー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:27:19 tlHA0sKI0
【人物背景】
モーグリ族の勇士。年齢は十一歳、現在は十二か十三になっているだろう。
踊りと歌が趣味。賢く強いモグは群れの中ではリーダー的存在だった。
争い事は好まないが、一度覚悟を決めると敵に後ろを見せない勇敢な戦士となる。
仲間を率いて何の縁も無い少女をどろぼ……トレジャーハンターと一緒に守った事もある。
夢の中に現れた幻獣ラムウの導きが転機となり、反帝国組織リターナーの活動に参加した。
世界が崩壊した後もなんとか生き延び、故郷であるナルシェに一人帰還する。
その後しばらくして訪れたかつての仲間たちの呼びかけに応え、子分と一緒に世界を救う闘いに赴いた。

実際の所、群れの仲間たちがどうなったのかは不明である。
モグの言葉等からおおよその察しはつくが明言された訳では無い。
また、ナルシェに生息する以外のモーグリが世界に存在しているかどうかも不明である。

【方針】
聖杯の調査。少なくとも放置する気は無い。
ひとまずは参加者を探して意見を収集。人となりも観察する。
戦闘になった場合は逃げる事を優先。ただし戦う覚悟自体はできている。
猶予期間中は訓練を中心に活動。


661 : ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/15(日) 02:28:24 tlHA0sKI0
以上です。


662 : 名無しさん :2015/03/15(日) 16:14:48 VYU35me60
これから結構ヒドイ内容を投下します。


663 : 名無しさん :2015/03/15(日) 16:15:56 VYU35me60



青天の霹靂


衝撃の真実


愕然として言葉が出ない程の


アイデンティティが崩壊する音が聞こえた







ボクが一番カワイイなんて、そんなの当然のコトじゃないですか。


枕言葉に“絶対”というような強調する言葉が不要な位に


「ボク=カワイイ」という等式は


必然で、常識で、世界の法則で、自然の摂理で、無意識に刷り込まれた掟で


つまり、それくらいありふれて皆が分かっている事ですよ。


ファンの皆さんも、他のアイドル達も、プロデューサーさんも。


ボクの前では虜になってしまう程のカワイさですよ!


ホント、ボクのカワイさって罪ですよね!










だけど、

だけど、

だけど、










「ホゲ〜?」


664 : 名無しさん :2015/03/15(日) 16:16:41 VYU35me60










なんなの、この子

なんなの、この子

なんなの、この子










ち、超かわいい!(ホワワ〜ン

今までのボクのカワイさが霞む程に、この子はたまらなくカワイイ!

カワイさでこのボクが負けてしまったのは悔しい気もしますが、

そんなことも忘れてしまうぐらい心がときめいちゃいます!

もっと直に触れてみたいですね。

おいでー、おいで〜。



「ホキュ〜?」



ああ、もう、なんですか、そのヨタヨタ歩く姿は。

なんで一つ一つの仕草が絶大に愛らしいんですか、コンチクショー!

うふふ、来た来た、捕まえたぁ!すごいフカフカ〜、癒される〜♪

あっ、そういえばこの子マントを付けてますね。

しかも何か書いてある……メ、ソ、……後は読めませんけど

そうですか、この子“メソ”っていう名前なんですね。

あーよしよし、なでなで、うりうり、うぇへっへっへっへー♪

……んっ?


665 : カワイイボクと伝説の青いヒゲ ◆69lrpT6dfY :2015/03/15(日) 16:17:10 VYU35me60



………



ファスナーついてるー!!!(ガビーン

えっ、ちょなにこれ!?なんでこんなものが付いているんですか!!?

…ちょ、ちょっとだけ開けてみようかな?



ビクッ!「ふんがあ!!!」



ひゃっ!!



「フーーッ!!フーーッ!!」


ハッ!?「……ムキュ?」



な…何か…何かあやしいけど…でもかわいい…!!

おどかしちゃってごめんねメソ君、怒っちゃった?

でもすぐに申し訳なさそうな顔するのもかわいい。

……よし、決めました。この子、連れて帰りましょう!

ボクとこの子がいればもっとファンの皆さんをメロメロにできますしね!

そういう事ならプロデューサーさんも分かってくれるでしょう!

それじゃメソ君、一緒に行きましょう!




(ニヤリ)キュピ〜ン







666 : カワイイボクと伝説の青いヒゲ ◆69lrpT6dfY :2015/03/15(日) 16:17:49 VYU35me60
【クラス】
キャプティベイター(エクストラクラス)

【真名】
めそ@セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん

※本当はメソ…ゲフンゲフン!ゲッフンッ!!いっ…いや!なんでもない!!
※“めそ”と“メソ”で表記揺れがあるけど、“ニホン”と“ニッポン”と同じぐらいに使い分けても分けなくてもいいです。

【パラメータ】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C+ 魔力:B 幸運:A++ 宝具:C

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
かわいいは正義(仮称):EX
 如何なる者でも相手を魅了する、それだけの能力。
 しかし侮るなかれ。相対した者は“めそ”に対する戦意・害意・悪意を失わせ、逆に萌えさせてしまう。
 “めそ”が一時的に不審な行動をとっても、直後のキュートな姿を見ればそんな事を忘れさせてくれる。
 このスキルが“めそ”の唯一にして生存するための武器である。
 ただし、このスキルが本当に万人受けするのか、どの様な状況・精神状態にどの程度まで有効なのかは詳細不明である。

【保有スキル】
正体秘匿:EX
 サーヴァントとしての素性を秘匿するスキル。
 “めそ”のステータス、スキルを視認出来なくする。
 というか誰であろうと“めそ”はただのペット(珍獣)としか認識されない。
 ちなみに、“めそ”には更なる謎が隠されているようだが……それが判明されていないのでランクがEXとなっている。

念動力:D
 両肩にチャームポイントを装着した変人を操り浮遊させて皆で食べようとしたカレーを強奪させる程度の能力。
 たぶんチャームポイントがないと操れないし、素の状態で何かサイキックパワーを発揮したこともない。
 そして自身の強化させる事もないのだが、今回は特別に宝具を発動した時に使用する。
 ……もしかして、アレが着ぐるみやジャージに入るために……いや、よ(ry

【宝具】
『“仮初”伝説の青いヒゲ』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 出典での関連性が判明していないが故に無理矢理関連付けられた、本来のものとは違うかもしれない“仮初”の宝具。
 青い眉毛を青いヒゲとして配置換えした時に発動する。
 今までの可愛い姿は損なわれてしまうが、代わりに自身をパワーアップさせる事が可能となる。
 自身の念動力とマスターの魔力を注ぎ込んだ量に応じて筋力、耐久、敏捷が比例して上昇する。
 ついでにマッスルボディになり身体も大きくなる。あと戦闘後には通常の姿に戻るのでご安心を。

 ただし、“めそ”はこの宝具を自主的に使用することはない。

【weapon】
何者をも魅了するそのキュートさが唯一の武器。
宝具は取って付けたようなものなのであまり当てにできない。

【人物背景】
わかめ高校ヒゲ部のマスコット的存在。
もともととある山奥の怪しい洞窟の奥にある「どすこい喫茶ジュテーム」に潜んでいたが、
その近くにハイキングで訪れていたヒゲ部メンバーが情熱を注いで調理したカレーの匂いに食欲をそそられたのか、
ヒゲ部部長の花中島マサルを操ってカレーを強奪、完食したところで彼らと遭遇する、っというのがヒゲ部との馴れ初め。
そのとんでもないキュートな仕草で部員達を即刻メロメロにさせ、彼らに連れられて下界に降りる事に。
その後はなんやかんや。時折怪しい様子を窺わせるが、愛らしい仕草で覆い隠してきた。
ちなみに弱点は雨期の湿気でじめじめする事。そのせいですごい危機に追い込まれた事もあったが、最後の一線を越えることなく事無きを得た。

【サーヴァントとしての願い】
なし?

【基本戦術、方針、運用法】
当たりではない、(聖杯戦争の常識から)外れたサーヴァント。ていうか、サーヴァントなのか、こいつ?
一切の攻撃も出来ないが、一切の攻撃もさせない。
萌え殺す、ただそれだけ。自身の可愛さだけで何とかする。
それがダメな程の危機的状況なら宝具も使うかも?…いや、ないか。
どうしても宝具を使用するなら令呪を使ってね☆


667 : カワイイボクと伝説の青いヒゲ ◆69lrpT6dfY :2015/03/15(日) 16:18:03 VYU35me60
【マスター】
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
ボクの可愛さでトップアイドルになる!!

【能力・技能】
ボクの能力は当然“カワイイ”ですよ!

他にもアイドルとしての歌・ダンス・トークなど。
他のアイドルより体当たり系の企画が多いので多少は鍛えられている?

【人物背景】
最近346プロで凄く売れ出している、と〜〜ってもカワイイアイドルとはボクの事です!(ドヤァ
えっ、人物背景?
そんなの、ボクがカワイイということが分かれば十分ですよ!
それじゃボクのカワイさについてこれから思う存分語って(ry

【方針】
この子(めそ)と一緒にボクのカワイさをアピール!


668 : 名無しさん :2015/03/15(日) 16:18:25 VYU35me60
以上で投下終了です。お目汚し失礼しました。


669 : ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 19:59:31 m14TRhHk0
皆様投下お疲れ様です。
私も投下します。


670 : 異能バトルは聖杯系のなかで ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:01:47 m14TRhHk0
「……ぐっ」

俺は右腕を押さえていた。

「ぐうっ!があああ!」

俺の中のもう一つの人格――俺をも狂わせる力が俺を乗っ取らんと暴れるたびに右腕が疼く!

「ま、また暴れだしたというのか……ッ!」
「フ……この地に降りてお前も血がたぎっているんだな?」
「……くくっ。つくづく楽しませてくれるじゃないか。我が秘なる力《相棒》よ…いいだろう。此度に限り、お前を解き放ってやろうではないか!」

俺は意を決し、右腕を前に突き出す。俺の中に燻る力を喚ぶ呪文を詠唱する。

「我こそは混沌の覇者なり!深淵に揺れる煉獄の業火よ。混濁する昏き焰、歪曲する真紅の闇。絶叫し、発狂し、破滅へと誘う灯火。罪を以て罪を制す。黒の断片を身に刻み、不遜なる摂理に牙を突き立てろ!」

俺の掌の上に黒い焰が湧き上がり、踊り狂う。
これが俺の能力――神をも焼き殺す煉獄の業火。その名も――《黒焰》(ダークアンドダーク)。

「フフフ、怖いか?」

……とはいったものの、実際はぬるいお湯程度の温度しかない上に波動拳みたいに飛ばすこともできない。
ただ黒い炎を出せるだけである。

「さて、事の序でに聞いておこうか」

俺は《黒焰》を目の前にいる、俺と同年代くらいの少年に見せつけながら問う。

「……どちらさまですか?」


 >ランサー。君のサーヴァントだ。
  シュトルテハイム・ラインバッハ3世です。


◇ ◇ ◇


671 : 異能バトルは聖杯系のなかで ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:03:44 m14TRhHk0


ついに。ついに来てしまった。異能に目覚めてから幾許かの時を経て、ようやく『日常』が『非日常』に変貌した。
聖杯戦争、略して聖戦。ジハードと呼ぶにふさわしきこの戦いの場に俺は召喚されてしまったのだ。
これも我が異能、《黒焰》の賜物だろうか。
―――くくっ。
手の甲に宿る令呪を見て、思わず笑いが漏れる。

俺、「ギルディア・シン・呪雷」こと安藤寿来は元々泉光高校に通う高校生で、文芸部員だった。
何気ない日常を過ごしていた俺達文芸部員。
しかしある日、俺達は文芸部室で突如謎の光に包まれ、目が覚めたら異能に覚醒めていた。
その日から俺達の日常は非日常に変貌して……いくと思ったがそんなことはなかった。
そこにあったのは変わらない日常。
俺達が異能に目覚めただけでそれから半年以上を経ても何も起きなかった。
まるで起承転結の起や承で物語が止まってしまったかのようだった。

だが。それもまた、思い違いだったことに気づく。
俺達の日常は非日常に変貌していくと思ったがそんなことはなかったと思ったらそういうことでもなかったのだ。
何がトリガーになったかはわからない。ただ、目が醒めたら、『そこ』にいた。
よくある序盤で異世界に連れ去られる展開はラノベでもよく目にしてきたが、今の状況はまさにそれだった。
異能を手に入れて半年が過ぎても来なかった『非日常』が今、俺に降りかかっている。
なんて『遷延の始動(スロースターター)』なんだろう。

「聖杯戦争…」

聖杯という、なんでも願いを叶える願望機のために殺し合う。
所謂バトルロワイアルのようなものだろうか。
俺は《黒焰》を以てしてそれに参加しようとしている。
混乱や恐怖がないわけではない。
だが、それ以上に俺の中で昂っている感情は――

「超かっけー!!」

――喜びだった。
異能を手に入れ、昔から思い描いていた『非日常』がついに始まるのだ。
小説でよく見る心が踊るという表現を身をもって体験できた。

そして現在。俺の目の前にはだいたい同年代くらいの少年が立っている。もちろん初対面だ。
かく言う俺も少年なのだが、目の前の少年はどこか中華風な…有り体に言えばRPGに出てきそうな姿だった。
とりあえず力を抑えながら呪文を唱え、《黒焰》を見せつけてみたが、なんとなく気まずくなったのでへりくだった調子で「……どちらさまですか?」と聞いてみた。

 >ランサー。君のサーヴァントだ。

サーヴァント!そうだった。聖杯戦争ではサーヴァントという存在とペアを組んで戦うんだった。
こういう二人一組で勝ち上がっていくバトル物もかっけーしアリだよなー。
ということはこの人が俺のサーヴァント。だからRPGっぽい服装なのか。
それはそれとして。

「…かっけー…!」

思わずうっとりしてしまう。
ランサー。槍を意味する【lance】が変化してランサー。単純ながらも心に響くその名前は何度聞いても飽きない。
見た感じランサーは棒術使いで槍とはなんか違う気がするが突っ込まない。


672 : 異能バトルは聖杯系のなかで ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:04:59 m14TRhHk0
「我が名はギルディア・シン・呪雷。この世界では『安藤寿来』という仮の名前を持っている」

名乗られたらこちらも名乗りで返すのが礼儀。俺も仮の名前と共に真名を名乗る。
真名といえば、聞いた話(ではなく聖杯から与えられた記憶)によるとランサーはあくまでクラス名で真名が他にもあるらしい。

「ランサーよ。汝にも己を示す真名があるはずだ。さあ、名乗るがいい。案ずることはない」

いざそう思うと止められず、真名を問う。
どんなかっこいい真名があるんだろう。そんな期待から顔が思わずにやけてしまう。
そんな俺を見てランサーは少し困ったような顔をして、言い淀んでいる。

「サーヴァントなんだから真名ってあるんだろ?教えてくれよぉ〜、一生のお願いだから!」

思わず、姿勢を崩して素の態度で懇願してしまった。理由は単純、すごく気になるからだ。
こんなところで一生のお願い使うのもどうかと思うが、それが気にならないほど俺の心は有頂天になっていた。
するとランサーは、

 >名前は…忘れたよ。
  シュトルテハイム・ラインバッハ3世です。

と短く答えた。
……それはそれでかっけー。
夏目漱石風に言うと『我輩はランサーである。名前はもう無い』ということだろう。
敢えて序盤で名乗らずに、物語が進むうちに真名が明らかになる展開っていうのもいいよなー。
どうせなら、ランサーに二つ名をつけてみるのもいいかもしれない。
どんな二つ名がいいだろう。
ランサーのかっこいい二つ名の考案に無我夢中になってしまう。

聖杯戦争、サーヴァント、令呪、そして名も無きランサー。
今まで夢見た『非日常』は、俺の予想を遥かに超えたかっこいいものだった。
聖杯戦争が殺し合いという危険なものだということも忘れてしまうほどに。


◇ ◇ ◇


マスターも自分のように禍々しい力を持っているのだろうか。
それが安藤が呪文を唱えて《黒焰》を見せつけたときにランサーが抱いた印象だった。
黙って見ているといきなり「どちらさまですか」と様子を変えて名前を聞いてきたので少し驚いたが。

ランサーの右手に宿るソウルイーターは宿主の意思とは別に戦乱を引き起こし、近しい者の魂を喰らう呪いの紋章。
ランサーはそれを背負って生きてきた。

『一生のお願い』。
ついさっき出会った安藤がかけてきた言葉だが、ランサーはその言葉を幾度となく聞かされてきた。
今は亡き親友・テッドがよく頼み事をするときに使っていた言葉だ。
ソウルイーターも元々はテッドから受け継いだものだ。
思えば、テッドが最後に使った一生のお願いは――

『――、一生のお願いだ…。おれが これから することをゆるしてほしい…』

その後、テッドはランサーの右手に宿るソウルイーターにテッド自身の魂を喰らうよう命令し、死亡した。
そのおかげで敵にソウルイーターを渡すことは避けられたが、テッドは目の前で「おれのぶんも生きろよ」と言い残し、消えていった。

ソウルイーターはオデッサ、父のテオ・マクドール、そして親友のテッドの魂を喰らった。
目の前で何やら考え事をして自分の世界に浸っているマスターを見て、ランサーは嫌な汗を流す。
聖杯戦争におけるサーヴァントはマスターにとって最も近しい存在となるであろう。
もし、マスターが死ねば、その魂はどこへ行くのだろうか。
恐る恐る右手に浮かぶ紋章を見る。
すると、ランサーの不安に応えるようにソウルイーターが不気味に光りだす。
禍々しい鎌の形をした模様がランサーの手に浮かび上がる。
思わず右手を抑え、跪く。
奇しくも、その様子は安藤が《黒焰》を出す時にしていた演技と似ていた。


673 : 異能バトルは聖杯系のなかで ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:05:54 m14TRhHk0

「ランサー、その右腕…まさか――」

安藤はいつのまにか考え事を止めており、跪くランサーを見ていた。
依然目が輝いており、心の中では「かっけー」とでも思っているのだろう。

 >これは…ソウルイーターという宝具なんだ。
  ……。

「ソウルイーター…なるほど。聞くからに不吉な力だ」

 >…呪われた紋章と呼ばれている。
  ……。

「…くくっ、そうか。そういうことか。なぜお前が我がサーヴァントとなったかが分かった気がするぞ」
「お前もまた…右腕に呪われた力を飼っているのだな。だからこそ俺はお前を戦友と呼べる」
「俺とお前は似ている。俺も力を制御できずに周囲を巻き込んでしまいそうになることがよくあるからな…」
「共に戦おう、槍兵のサーヴァントよ。俺の《黒焰》とお前の《魂縛》(ソウルアブソーバー)が力を合わせれば神の魂だって喰らうことができる!」

安藤はまたも他の文芸部員から『厨二乙』と言われそうな言葉を紡ぎ、ランサーに手を差し伸べる。
勿論、この台詞は全て安藤が作り上げた設定である。
《魂縛》もソウルイーターという名前が纏う雰囲気から安藤が勝手に命名した産物なのでソウルイーターもソウルアブソーバーも同じだ。

ランサーは安藤の手を取り、立ち上がる。その表情に不安の二文字はなかった。
ソウルイーターを恐れず、「自分と似ている」と言って歩み寄ってくれる安藤を見て、ランサーはある人物を思い出す。
ランサーには、安藤のようにソウルイーターを恐れずに傍にいてくれる存在がいた。
その名はグレミオ。戦いが終わり、解放軍から抜け出す時にもついてきてくれた、ランサーにとっては母のような人物だった。
一度はミルイヒの手により死んでしまったが、レックナートの手により蘇った時の喜びは今でも忘れられない。
挫けそうになった時も「テッドくんとそのおじいさんが守ってきた紋章です。悪いものじゃないはずです」と励ましてくれた。
ランサーは誓う。ソウルイーターを信じよう、マスターの魂を喰らうことはない、と。

「さて、これからどうやって聖杯戦争を勝ち抜いていくかの話だが――」
「――まず先に言っておくと、俺は聖杯にかける願いはないんだ」

安藤の口調が落ち着いたものになる。
ところどころでカッコつけたがったりするが、平常時と厨二全開のオンオフを切り替えられる。それが安藤という人なのだろう。

「確かに異能バトルは好きだし、戦ってみたいけど、だからといって他人を殺したいなんて思わない」

聖杯戦争は、かっこいい。だが、殺し合うのは間違っている。それが安藤の持論だった。
殺し合いを止めるために協力できる者と同盟を結び(ついでに二つ名もつける)、聖杯戦争を終わらせる。

「異能は、かっこいい。ただ、それだけでいいんだ。その力で誰かが不幸になるのは許されない」
「だから、誰も異能で不幸にならないために…一緒に戦ってくれ、ランサー」

安藤の言葉に、ランサーは会心の笑みを浮かべて首を縦に振った。
ランサーも、かつて赤月帝国の荒んだ行政に苦しめられる国民のために、平和な未来のために解放軍を率いて帝国を打ち倒した。
誰も不幸にならないために戦う――それにランサーが断る理由は存在しない。

「…くくっ」

安藤がまた厨二全開モードになったらしい。右人差し指の第一関節を眉間に当てて声のトーンを低くする。

「これから聖杯戦争を戦い抜いて、その過程で仲間を作って世界そのものに立ち向かう俺…かっけーじゃん!」



「共に行こうぞランサー…さあ――始まりの終わりを始めよう」



安藤寿来
が仲間になった


674 : 異能バトルは聖杯系のなかで ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:07:11 m14TRhHk0
【クラス】
ランサー

【真名】
無銘@幻想水滸伝

【パラメータ】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具EX

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
天魁星:EX
108星の首魁の星。
運命の流れの中で宿命を背負い、天地宿命の108星を集める者。
ランサーには人を惹きつける力があり、それを象徴するかのように彼の元には仲間が集っていく。
他の主従と協力する際に同盟が成立しやすくなる。

カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能であり、一つの集団を纏め上げるにはCランクで十分と言える。
本来は帝国をうち倒し新たな国を作り出したためBランク相当のカリスマを持つが、
勝利した日の夜に行方をくらましたため、ランクが低下している。

軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、 逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

いっしょに:B
協力攻撃。繋がりのある仲間と連携攻撃を放つことができる。
登場話時点ではマスターと「主従攻撃」、
もとい「黒き火焰槍(ダークネスピアサー)」※マスター命名 を繰り出すことが可能。
連携した時には、与ダメージ上昇などの特殊効果が発生する。


675 : 異能バトルは聖杯系のなかで ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:07:38 m14TRhHk0
【宝具】

『生と死を司る紋章(ソウルイーター)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:50人
安藤から《魂縛》(ソウルアブソーバー)と名付けられた。
世界の根源といわれる27の真の紋章の一つ。紋章自体が意志を持っている。
真なる紋章の継承者は不老の体になれるが、紋章の呪いを受ける。
魔術的に説明すると、『強大な力と呪いと不老を持ち主に与える生きた魔術刻印』。
ランサーはこの紋章を右手に宿している。
27の真の紋章は世界の根源そのものである。そこから発される力が魔法か魔術かは分からないが、絶大な力であることは確かである。
その紋章から発される力は並大抵の対魔力ならば貫通してしまうだろう。
ただしサーヴァントに対しては英霊であるため、即死攻撃は効かない。

ソウルイーターは「生」と「死」を司る紋章。
主な魔術は敵の魂を喰らい、即死させる魔術。
単純に攻撃する魔術も扱える。
魔術の強さにもよるが対城宝具級の威力も出すことは可能。ただし消費魔力が非常に膨大になる。
宿主と親しい者の魂を喰らい、宿主の思惑とは関係なく戦乱を巻き起こす呪いを持つ。
この呪いにより、ランサーは解放軍の前リーダーオデッサ、従者グレミオ、父のテオ、親友のテッドの魂をソウルイーターに喰われた。
使える魔術は以下の通り。下にいくほど強力になる。

死の指先 敵一体に即死効果
黒い影 広範囲の敵に闇属性のダメージを与える
めいふ 広範囲の敵に即死効果
さばき 敵一体に闇属性の特大ダメージを与える

『幻想水滸伝』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
本拠地の湖城がある湖とその西に位置する陸地を展開し、ランサーの元に集った天地宿命の108星の他、18000を超える解放軍に参加した兵士を独立サーヴァントとして召喚する固有結界。
ランサーは魔術師ではないが、彼ら全員で心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能となっている。
召喚される兵は人間のみならず、エルフ、ドワーフ、コボルトといった種族に加え、竜騎士に魔術師に軍師、山賊や湖賊、果てには元々敵の将を務めていた者がいる。
ランサー達が解放軍であらゆる壁を乗り越えて手を取り合い、帝国軍をうち倒した歴史がこの固有結界に顕現する。

【weapon】
・天牙棍
ランサーは棒術に長ける。

【人物背景】
赤月帝国の将軍テオ・マクドールの嫡男。使用人からは坊ちゃんと呼ばれている。
上流階級の生まれだが、寛大な父の影響もあってか、自由気ままに育つ。
武器は長棍で、カイから習った棒術の使い手。
赤月帝国皇帝・バルバロッサとの謁見時に勧められ、自身も赤月帝国で働くようになる。
しかし、行く先では帝国の行政に苦しめられる国民の姿を見、今の帝国に疑問を抱き始める。

山賊討伐の任務の際、親友のテッドの右手に真なる27の紋章のひとつ、ソウルイーターが宿っていることが判明。
宮廷魔術師・ウィンディにこの事がバレ、帝国から追われるテッドの頼みで、ソウルイーターの継承者となる。
自らも反逆者として追われる中、宿屋で偶然知り合った男・ビクトールに出会い、解放軍へ参加。
数々の出会いと別れを経て、解放軍のリーダーとして成長していくことになる。

本来、彼にも名前があったはずなのだが、解放軍が勝利した日の夜に付き人のグレミオと共に行方をくらましたため、
彼が英雄として祀られた時点で記録上彼の本当の名前は残っておらず、人々の記憶から失われている。
そのため、真名も『無銘』となっている。

余談だが、安藤の右腕に宿る力のことを半ば真に受けている。

【サーヴァントとしての願い】
安藤と共に戦う。


676 : 異能バトルは聖杯系のなかで ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:08:45 m14TRhHk0
【マスター】
安藤寿来@異能バトルは日常系のなかで

【真名】
ギルティア・シン・呪雷@異能バトルは日常系のなかで

【マスターとしての願い】
聖杯戦争というかっこいい異能バトルを堪能しつつ、
殺し合いを止める

【weapon】
特になし

【能力・技能】
・《黒焰》(ダークアンドダーク)
黒い炎を操る能力。
……なのだが、その炎は湯たんぽ程度の温度しかなく、攻撃力皆無である。
はっきり言って役に立たない。

・《黒焰――終止符を打つ者》(ダークアンドダーク オブ・ジ・エンド)
黒い炎が攻撃力を増し、熱くなっている。
……なのだが、その炎は安藤の体を覆い、安藤を焼き尽くすまで消えない。
その炎は異能自体を奪われても消えることがなく本人の意思でも消えない。
はっきり言って使うこと自体が自殺行為である。
部員にも使用を固く禁じられていた。

・サブカルチャーの知識
特にバトル物に対して明るい。

【人物背景】
型的な邪気眼系厨二病を体現したような嗜好で、闇・混沌などのワードや旧字体の格好良い漢字などを好み、
自ら『ギルディア・シン・呪雷』という真名を名乗る。
文芸部内では厨二的言動や異能のスペックの差もあってか若干いじられキャラのような立場にある。
無駄にカッコつけたがったり調子に乗りやすいところなどもあるが仲間や友人のことを心底から考え行動できる優しさと誠実さの持ち主。
自身が厨二病であることには自覚的で、設定でふるまっている状態とそうでない状態のスイッチを切り替えることも可能。
時には能力を持て余す文芸部メンバーを諭したり、励ましたりすることも。
文芸部全員の異能の名称を考えたのも安藤。
 
【方針】
協力できる者がいれば仲間にする。
そしてその仲間に二つ名をつける。


677 : ◆mjMMzIwy1E :2015/03/15(日) 20:11:10 m14TRhHk0
以上で投下を終了します

また、ランサーが無銘となった経緯は聖杯戦争企画交流雑談所・毒吐きスレ2の>>1689氏のレスを参考にさせていただきました
この場を以てお礼申し上げます


678 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:01:50 rjj9hDHo0
投下します


679 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:03:00 rjj9hDHo0
  誕生日。
  中学生の頃までは特別だったその日を久しぶりに祝うことにした。
  少しだけ豪華な食卓、ケーキに立てるロウソクは三本。
  今年で30歳になった。

  部屋の片付けをした。ゴミ袋を一杯使って、ゴミ出しだけで疲れてしまった。
  仕事も始めてみた。といっても誰かと接することのない、スピーチの書き起こしをするだけの在宅ワークだが。
  少しだけ外出もしてみた。本屋さん、古本屋さん、小さな図書館、見ず知らずの人と接するのはまだ怖いけど、それでも買い物や受付の人との会話くらいはできるようになった。
  布団を買い替えた。ネットゲームのアカウントを減らした。カーテンを買ってずっと開けていない窓を開けてみた。髪の手入れをしてみた。
  あれから、色々なことがあった。
  あと数十秒でそんな波乱の29歳が終わる。

「ふんふふん、ふん、ふん、ふん」

  鼻歌を歌いながら、ロウソクに火を灯す。
  ケーキの前に置いてあるのは父と母の遺影。
  そして、インド神話にまつわるいくつかの本。
  自分にとって何者にも代えがたい、大切な人たちの思い出。

  あれから、色々な文献で調べた。
  太陽神の息子。
  不死身の英雄。
  施しの英雄。
  非業の最期を遂げ、死後に父なる神スーリヤと同化してその生涯の幕を閉じた男。

  そんな凄い英霊が、なんで自分に召喚できたのかはわからない。
  でも、彼のお陰で自分を取り巻く世界がほんの少しだけ変わった。
  ほんの少しだけ前を向けた。
  ほんの少しだけ重たい荷物が軽くなった。
  硬く閉ざされていた未来に、少しだけ光が差した。

  幸せになったかどうかはわからない。
  自分はこれからもひとりぼっちだろうし、働くのが辛くなる時もくるだろう。
  人との付き合いがうまくいかないことや、どうしようもない自体に巻き込まれることだってあるはずだ。
  いつか何かのきっかけで、また後ろを向いてしまう時がくるかもしれない。

  でも、これだけは言える。

「アタシ、元気だよ」

「それなりに楽しくやってるよ」

  面と向かってはもう言えない。
  でも、できるなら、特別でない自分の声が届くように。
  手を合わせ、祈りを捧げる。

  今も地球の裏側で変わらず自分を見守り続けている太陽に向かって、ただ祈りを捧げる。


680 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:05:06 rjj9hDHo0
  ○  ○  ○


  朝八時。目覚まし時計がけたたましくアラーム音を吐き散らす。
  生活習慣改善のために特に用事がなくてもこの時間に起きるようにしていた。
  のろのろと布団から腕を出して、目覚まし時計のボタンを押す。
  そしてそのままのそのそと布団から体を出して、そのまま顔を洗いに行く。

  蛇口をひねり、手を洗う。ぱしゃぱしゃと水を弾く右手にアザがあった。
  ミミズ腫れのような色をした、複雑な形を模した痣。
  見覚えがある。これは確か―――

  遅ればせながら事態を把握して慌てて自室に戻ると、いつものように/あの頃と変わらず、自分の抜け殻のような布団のそばに、一人の男性が立っていた。
  黄金の鎧を身に纏った細身の男性。
  白髪。
  冷めた瞳。
  大きな耳飾り。
  心臓がむき出しになっているような赤い胸飾り。

  彼は、いつものように飄々とした口でこう言った。

「問おう、お前がオレの―――いや、そこは間違いなさそうだ」

  その男は続ける。

「少し窶れたように見えるが、お前でも食事が喉を通らないという事があるのか」

  多少、ムッとするが口を挟まない。
  彼はそういう人物……いや、英霊なのだ。
  気を長く、続きを待つ。
  すると彼は、一呼吸おいてようやく『一言』を付け加えた。

「だが……姿勢が良くなった。胸を張り、前を向いている。血色もいい。見違えるほどだ」
「立派になったな、ジナコ」

「……そういう時は『やつれた』じゃなくて『スリムになった』って言うべきっすよ。『ボク』からのアドバイスっす、カルナさん」

  『一言少ない癖はなおした方がいい』
  『特別ではない君を庇護し続ける』
  別れ際の今生のはずのやりとりが、一年の時を経て噛み合う。

  運命は気まぐれだ。
  気まぐれで人を殺し、気まぐれで人を不幸にし、気まぐれで人を戦争に巻き込む。
  何度も何度も、そんな気まぐれに傷つけられてきた。
  でも、運命は気まぐれだから、時々素敵な贈り物をくれる。
  そんな素敵な贈り物を、きっと奇跡と呼ぶんだろう。

  ジナコ=カリギリの30歳の誕生日。奇跡が起こった。


681 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:06:00 rjj9hDHo0
―――


「オレに礼を言いたいと願ったらここに居たと」

「そういうこと。どうもまた、巻き込まれちゃったみたい」

  あの時とは違い、布団を片付けてからちゃぶ台を挟んで二人で話をする。
  昔のジナコを知っている人物からすれば驚くべき進歩。
  しかし、カルナはそれもまた当たり前だというふうに全く気にせずに話を続けた。

「それで、今回は何をすればいい? 菓子の買い出しか? インターネットの匿名掲示板で挑発か?」

「んなことする必要ないって」

  皮肉ではない。カルナは素直に『そういう行動を依頼してくるものだ』と考えて提言している。
  まるで過去の自分の失態を突かれるようで、少しだけばつが悪くなる。
  あの頃より少しだけ軽くなった髪の毛を掻きながら、話を続ける。

「アタシはさ」

  一年ほど前。カルナとの出会いがジナコを変えた。
  ジナコはあれから、『ジナコさん』でも『ボク』でもなく『アタシ』だった。

「やり直せるならやり直したい、って、分かるから……聖杯が欲しい人の気持ちも、分かる。
 できれば、そういう人たちに聖杯を取って貰えればなぁ、って思わなくもない」

  ジナコの人生は、たった数秒の事故で大きく狂った。
  何度も何度も願った。あの数秒をやり直せれば、と。
  その願いは一度月に届き、願いを叶えるための聖杯戦争に参加することになった。

「でも、生きて帰りたい」

  ジナコは、自分のことをよく知っている。
  自分の願いのために他人を殺せるほど強い人間じゃない。
  自分のわがままで犠牲になる人を笑って見過ごせるほど悪い人間にもなれない。
  それでも、生きていたいと願う。
  道を示してくれた破戒僧と太陽のために、少しでも前を向いていたいと思う。


682 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:06:56 rjj9hDHo0
「こんな風に考えるのって、間違ってることかな?」

  やり直しの聖杯戦争を肯定する。
  やり直しの聖杯戦争を否定する。
  二つの意思が、ジナコの中にはあった。やり場のない、答えの見つからない意思同士のぶつかり合いを吐露する。
  しかし、カルナはこれにも当たり前と言わんばかりに即答した。

「自身の生に執着することは動物として当たり前のこと。他者の心を尊ぶことは人間として当たり前のこと。
 正誤で判断するものではない。道理だ。お前は今、動物として、人として、理に適う道を行こうとしているだけにすぎない。
 道理を批判できる者は人を超えて超越者たらんとするものか、人を捨てて悪鬼に堕ちようというものくらいだろう」

  つらつらと、水を流したように語るカルナ。
  その言葉は、やはり何も包み隠さないカルナの真実。

「お前は人間でいい。いや、お前はお前でいい。
 誰がそれを否定しようと、お前がお前でありたいならば、お前はお前で居続けろ」

  どんなくだらない言葉も真正面から受け止め、真正面から返す。
  憎らしく、煩わしく、鬱陶しく思っていた彼と同じだ。
  久しぶりのカルナのあまりの『カルナっぷり』に懐かしいやら嬉しいやらでジナコは思わず泣きが入り。
  ぐしゅぐしゅと鼻をすすりながら、右手を差し出す。

「じゃあ、そうする。こんなアタシだけど、もっかい、よろしくね。カルナさん」

「ああ」


  月の聖杯戦争。
  ジナコとカルナの聖杯戦争は結局始まることはなかった。
  それはジナコがまだ『ジナコさん』だったから。
  あれから、ジナコは少しだけ前を向いた。
  少しだけ前を向いて、これから少しだけ歩き出してみる。

  もう一度出会い。
  もう一度挨拶を交わし。
  もう一度自分の心をぶつけ。
  もう一度。
  もう一度。
  これが最後になろうと、もう一度だけ。


683 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:07:10 rjj9hDHo0












  さあ、聖杯戦争をまた一から始めよう。












684 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:08:18 ynv7KddA0
投下します。


685 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:08:20 rjj9hDHo0
【クラス】
ランサー

【真名】
カルナ

【パラメーター】
筋力:B 耐力:C 敏捷:A 魔力:B 幸運:A+ 宝具:A++

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
ランクCだと魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
貧者の見識:A
相手の性格・属性を見抜く眼力。言葉による弁明、欺瞞に騙される事がない。

騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。
「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
カルナは『マハーバーラタ』では戦車を駆り、戦場を走る姿が描かれているが、マスターの適性の低さからBに落ちている。

無冠の武芸:-
様々な理由から、認められることになかった武具の技量。
剣、槍、弓、騎乗、神性のスキルランクをマイナス1し、属性を真逆のものとして表示するが、真名が明かされた場合消滅する。

魔力放出(炎):A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
カルナの場合、燃え盛る炎が魔力となって使用武器に宿る。

神性(A)
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。

【宝具】
『日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:1
カルナの肉体と一体化し、彼を守っている光の鎧。
その強度は凄まじく、神であろうともこの鎧を突破することは困難である。
ちなみに約束された勝利の剣が神霊レベルの魔術行使とされる。
原典のインド神話でも、この鎧がある以上カルナは誰にも殺せないと言われた。

CCCでジナコが生還後、カルナが英霊の座に戻ったことで再び取り戻した。

『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』
ランク:A 種別:対軍 レンジ:彼の視線の届く範囲 最大捕捉:100
武具など無粋。真の英雄は眼で殺す……!
CCC版ではスキルだが、本聖杯戦争ではスキルの発展という形でこちらに分類されている。
目からビームを出す。
Apo版では対軍〜対国宝具だが、あちらは武器を使っているので射程・威力が段違いである。

『梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)』
ランク:A+ 種別:対国 レンジ:2〜90 最大捕捉:600
光槍を敵の頭上遥か高くに投擲し、時間差で劫火を降り注がせて敵を焼き尽くす。
投擲行動に攻撃力はないが、使用後2ターンに渡ってランダムにダメージ判定を発生させる(1ターンは6回行動のため、1ターンあたり1〜6回/最大12回の追加ダメージを与える)。
投擲自体が敵にバッドステータスを与える扱いとなる、特殊な攻撃である。
ジナコの魔力で発動は不可能。令呪三画ブースト+生命力全注入でも撃てるかどうか怪しい。

『日輪よ、死に随え(ヴァサディ・シャクティ)』
ランク:A++ 種別:対神 レンジ:40-99 最大捕捉:四桁以上
カルナの持つ「対神宝具」。
黄金の鎧を捨てることを代償としてその姿を現す神をも滅ぼす光の槍。
ただし、発動は一回限りである。
ジナコの魔力で発動は不可能。令呪三画ブースト+生命力全注入でも撃てるかどうか怪しい。

【weapon】
目。
あと槍。

【人物背景】
カルナさん。
BBの補佐がないのでApoの時のステで参戦。
幸運はCCCどおり自称、二人の再会を祝してもう一個プラスをつけてもいいかもしれないと考えてる系サーヴァント。


686 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:08:44 rjj9hDHo0
【マスター】
ジナコ=カリギリ

【マスターとしての願い】
カルナともう一度会ってお礼を言う。(叶っている)

【能力・技能】
特になし。
ハッキング能力はある程度。

【人物背景】
ジナコさん。
CCCED後、少しだけ前を向けた時期から参戦。
なのでエリートニートのジナコさんという殻を破って素のでもアタシ口調になっている。
30歳の誕生日にやり直しの聖杯さんの粋なはからいでカルナさんと共に聖杯戦争に叩き込まれる。

【方針】
やり直しの願いを肯定。
こんな状況でしかやり直せない人も居る。
ただ、できるのであれば生還はしたいので方法を探す。
カルナの自前の魔力での戦闘のみが頼みの綱。
マスターとしては平均以下どころか最低クラスであるため、積極戦闘は避けたい。

ちなみに、CCC時点とは違ってBBのバックアップがないので宝具の発動にはかなり気を使わなければならない。
『我を呪え』以上を使おうものなら干からびて死ぬ。令呪三画ブースト使ってもたぶん無理。


687 : ジナコ=カリギリ&ランサー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/15(日) 23:09:18 rjj9hDHo0
以上です

>>684さん、お待たせしました


688 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:10:39 ynv7KddA0
◆tHX1a.clL.氏、リロード忘れにより投下途中に割り込む形となってしまいました。
深くお詫び申し上げます。そして、投下乙です。

それでは、改めて投下します。


689 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:11:30 ynv7KddA0


 人は死んだら、どこに行くんだろう。





 とある殺人事件の被害者となった少女の告別式が、日光の下にて執り行われていた。
 その会場を遠巻きに眺める一人の男の名は、石川。犯行を未然に防げず、真犯人も白日の下に晒せなかった警察官の一人である。
 石川の目が映し出すのは、日差しに作り出される陽炎の揺らぎ。すすり泣く遺族達の姿。警察の無力の象徴。

「無垢な命が奪われたことを悔い悼む、その心掛けは尊いものであると思うよ。マスター」

 そして傍らから語りかけるのは、褐色の肌を晒す白装束の男。
 悠然とした態度を見せる彼は、その盲いた両目ゆえに石川の浮かべる表情を視認することが出来ない。
 されど視覚以外の感覚が鋭敏となったセイバーならば、石川が男に向ける感情がどのようなものかなど理解しているのだろう。
 その感情、敵意をして尚、セイバーは表情を崩さない。

「だからこそ、悪も同じく討たれた事実まで君は悔いるべきでない。君の手で捕らえられなかったなどというのは、問題の本質ではないからね」

 淡々と、男は石川の敗北を突き付ける。そして、それを敗北であるとは述べない。
 特に責め立てることなく、男はただ柔和に石川に語りかけていた。

 彼の名はセイバー。またの名を、東仙要と言った。




690 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:12:05 ynv7KddA0



 冬木の地で催される魔の儀式、聖杯戦争。
 偶然にも、その参加者としての資格を得た一人の男がいた。
 男には、確かに願いがあった。
 自分の職を奪った上司が憎い。行き場の無い自分を見捨てた家族や恋人が恨めしい。明日の行方も知れない自分など気にも留めない、道行く人々のへらへらした笑顔が腹立だしい。
 何をやっても上手くいかせてくれない今の世界が、自分に優しく暖かいものに変わればいいのに。
 浅慮極まる男の願望だが、それさえも聖杯は拾い上げ、ランサーの通名を持つ女の英霊を宛がった。

 女を従者として男が取った行動は、何のことは無いただの強盗殺人である。英霊の実力を試してみたいというそれなりの戦略眼もあったが、むしろ強大な力に物を言わせての鬱屈の発散と言った方が的確だろう。
 ただ欲望を満たすだけの行為であっても、ランサーは速やかに実行し男を喜ばせた。彼女が男を見つめる目に混ざっていた嘲りの色に気付いた際の苛立ちも、彼女の働きを見れば晴れるというものだ。
 ともかく、犯行の舞台となったマンションの一室は血液で彩られ、一組の主従が立ち去った後の室内には身体を無残に抉られた少女の亡骸が残された。
 少女の栗色の瞳は、絶望に見開かれたまま滲んでいた。

 殺害された少女は、真面目さが取り柄のクラスでも人気の子であったという。
 友人からの評判も良かった彼女は、しかしこれきり誰かと笑いあうことも叶わず、限りなく広がる筈だった未来も閉ざされ、無念のまま短い生涯を終えることとなった。
 尤も、男には少女の半生になど興味は無かった。思うことがあるとすれば、彼女の交友関係から足が付く心配は無さそうだという安堵だけだ。
 思い付く限りの証拠の隠滅は済ませた。この街にも警察がいるようだが、どうせ男まで辿り着くまい。万が一辿り着いたとしても、ランサーがいれば返り討ちに出来るだろう。
 男の完全なる勝利である。
 こうして次々と段階を踏んでいけば、どんな強奪も叶う筈。そう、いずれ聖杯とやらも。
 満たされたちっぽけな物欲は、僅かに芽生えかけた罪悪感を容易く踏み潰し、着実に肥大化しようとしていた。

 しかし、事がそう都合良く進む訳も無い。
 男の前に一人の警察官が現れたのは、犯行から一日と数刻ほど経った頃であった。
 石川と名乗ったその警察官は男に言い放った。お前がやったんだろう、と。
 男にとって全くの寝耳に水であった。真相が暴かれるにしても、これは早すぎる。適当なことを言っているだけではないかと考えるも、石川の男を射抜く視線に込められた確信の感情を見れば撤回せざるを得なかった。
 こうして自らの所業を糾弾された状況で、動揺を抱いたまま男が選択したのは言い逃れでは無く口封じ。せっかく手に入れた武力に物を言わせる形で、ランサーに石川の排除を求めた。
 短絡的な選択ではあるが、所詮それが男の器だったと言うべきなのだろう。
 当然ながら、ただの人間でしかない石川には英霊に太刀打ちするなど不可能。腹に食らったランサーの初撃で壁へと蹴り飛ばされ、激痛に動きを鈍らせる。
 接近したランサーが自慢の槍を男へと振り下ろそうとするのを見て、男は二度目の白星を確信した。
 ある種の全能感に身を震わせながら、あとはただ石川の死を見守るだけであった。


691 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:13:05 ynv7KddA0

――君の正義は、ここで潰えるべきではない。

 石川の首に振り下ろされた槍は、あと数センチメートルまで肉薄した辺りで停止した。代わりに、ランサーの胸が長刀で貫かれていた。
 自らの身に何が起こったか、ランサーがそれを完全に把握するよりも前に長刀は抜き取られ、ランサーの肉体は鮮血を噴き出しながら地面に崩れ落ちた。
 代わりにその場に立っていたのは、長刀の持ち主である白装束の男。既に死したランサーをちらりと一瞥したきり、白装束は男へと顔を向けた。
 ただ呆気に取られたままの男と石川であったが、現状の把握を終えるのは男の方が早かった。自らの身に最大の危機が及んだ土壇場になってて、男は最早無意味な優秀さを発揮した。
 俺の意思じゃなかった。許してくれ。これからは心を入れ替える。
 自己保身の言葉をつらつらと頭に浮かべ、その中で最適解と思われるものを選び出す。しかし、声となることは叶わない。
 男の首が、瞬きする間に刎ね飛ばされていたのだから。

――此度の聖杯戦争にはセイバーのクラスで現界した。共に正義を成そう、我がマスターよ。

 意識が消失するまでの残された数秒間の間で男が聞いたのは、白装束が石川に語りかける声。
 男の目が捉えた最期の光景は、呆けた表情の石川に白装束が片手を差し出す様。
 そして、石川の左手の甲で放たれる赤い輝き。





 失われた二人の命がこの街でどのような意味を持つのか、マスターは考えてみたか?

「……当たり前だ。そんなことを聞くってことは、お前には何か考えがあるのか」

 ああ。まず、あの被害者となった少女の魂魄は感知できなかった。ランサーのマスターだった男も同じだ。
 魂魄は死神の魂葬によって尸魂界に導かれるまでは、『整』……君達の言葉を借りれば『幽霊』として現世に留まる筈。かつて死神であった私の常識に、この街の在り方は反している。
 故に少なくとも、此処は現世ではないのだろう。『幽霊』が存在していないからね。
 死を迎えた魂は何処にも往けず本当の意味で消滅する、在り方としては尸魂界に近いと考えるべきだ。

「それが、どうだっていうんだ」

 ここから考えられる有力な可能性の一つは、街の住人が一種の幻のようなものだというものだ。
 あの少女も本当に死んだわけではない。人の命が失われたように見せかけているだけ。言わば只の『作り物』だ。
 あそこにいる人々も、家族を喪い悲しむ者という役割を演じているだけ。
 こう考えれば、君は何を悔いる必要も無いのだろう。悪が事を成したとは言え、命を奪われた者がいるわけではないから。

「いや、その理屈はおかしい。あのマスターだった……お前が殺した男はどうなる? 俺と同じ状況で此処に呼び出されたなら、奴は本当の意味で死んだ筈だ。だとしたら、あの男に殺された少女もまた同じだった可能性もあるんじゃないのか?」


692 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:13:35 ynv7KddA0

 そうだ。私もそこが気になっていた。
 数百数千の人間の中でマスターのように記憶を取り戻した、夢から覚めた者だけが聖杯戦争の参加者たり得る。
 問題は、聖杯戦争におけるマスターとマスターでない者の区別は可能だが、マスターでない者が『最初から作り物である』か『未だ本物になっていないだけ』か、私達サーヴァントにも区別はつかないことだ。
 だからこそ、私達はもう一つの可能性を考えなければならない。
 この街に舞台装置として置かれたとされる『作り物』には『本物』が紛れているが、その人数が極少数とは限らない。
 数割に及ぶのかもしれないし、極端な見方をすれば全員がマスターと同じように元いた世界から呼び出されたのかもしれない。
 魂魄だけも同然の存在に作り変えられて、擬似的な尸魂界と化したこの冬木の街にね。
 故に、街の住人は『本物』に見せかけた『作り物』と見なすべきではない。『作り物』に見せかけた『本物』と見るべきだ。
 私達は、安易に他者の命を『作り物』であると楽観視するべきではない。全てが『本物』である可能性を常に頭に置くのが適当だ。

「だとしたら、俺に悔いるなというのは筋違いだろう。何人も死んだんだぞ。あいつのせいで、そして、お前のせいでな」

 君は、あのランサーのマスターだった男もまた死ぬべきではなかったと言いたいのだろう?
 それは誤りだよ。
 命を無為に奪うことは、平和を乱す唾棄すべき所業だ。だからこそ、非道に手を染めた者には決して屈してはならない。
 力を振るい命を摘み取ることは恐れを抱くべき行為だ。しかし討つに値すべき敵と相対した時に限れば、私達の行いは正義だ。

「……だから、あの男を殺すのは正しかったと? 詭弁だ」

 マスター。秩序の遵守が必要だという考えには私も心から共感する。
 しかし、マスターが今ここで警察官としての役割を果たすことに何の意味がある?
 この街で罪を犯したを捕らえたところで、君の帰るべき世界に何の益も齎しはしない。それどころか、その者を逃さないためと言って、永遠にこの箱庭の中に身を置かなければならなくなる。
 何より、悪に相応しき裁きを下さず、赦しといって安寧を約束する……今のマスターが守ろうとしている秩序は善かもしれない。だが悪の前に折れた時点で、悪だ。
 守るべきものを守れず、悪に相応の裁きを与えられない規範を守ったところで、それは真に世界を救うことにはならない。
 聖杯戦争の地に呼ばれたなら、与えられた仮初の役割を果たすのは決して本懐ではない。マスターの為すべき使命は、聖杯戦争での勝利以外に無いのだよ。

「お前は、俺に人殺しの手伝いをしろと言うのか」

 今のマスターは、マスター自身に縛り付けられているようなものだ。
 正義を志すなら、世界を一度作り変えるべきだ。君を縛る法を変え、悪に屈する君自身を変えければならない。

「……セイバー」

 改めて申し上げよう。共に往こう、マスター。私達の歩む道こそが正義だ。




693 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:14:18 ynv7KddA0



 俺はこれまで、違法な手段で事件を解決してきた刑事を何人も見てきた。
 そういう連中の殆どが自滅している。
 一線を越えるごとに心が蝕まれていって、気が付いたらこっち側に戻れなくなっているんだ。
 ……お前はあっち側の人間になるなよ。





 友愛として差し出されたセイバーの右手を、石川は握らない。
 その代わり、石川の右手はセイバーの胸倉を乱暴に、力の限り掴み上げた。

「誰がお前の同類になるか……!」

 石川の憤怒が露わにされるのを肌で感じながら、しかしセイバーは動じない。
 その見透かしたような態度にまた怒りを抱いた石川は、左手の甲をセイバーの眼前に突き付ける。
 宿した赤の光を受け止めることの出来ない双眸であることなど、石川には関係無かった。

「俺が、お前を令呪で従わせることも出来ることを忘れていないか?」
「私をこの街の警察に突き出すか? それとも、いっそ自害でもさせるか? マスターがそのような行動を取ったところで、聖杯戦争は何も解決などしない。いや、そもそもこの街の法や組織が英霊相手に機能するかも疑わしい」
「お前……」
「あのランサーと戦い敗れたなら理解しているだろう? 君一人では英霊を倒せない。今の君が憎むべき敵と戦うためには、私の力が必要不可欠だよ」

 やはり表情を崩すことなく、セイバーは淡々と事実のみを告げる。
 目の前の男はセイバー、自らのサーヴァント。石川はマスター、万能の聖杯を巡る闘争の当事者。
 被害者となった少女の死も、殺人犯の死も、ランサーの死も、全ては魔法や超常の産物。
 石川の生きる法の社会の尺度では計り知れない代物。唯人の石川では、到底手に負えない相手。
 とうに理解していた筈の現実を突き付けられ、石川は小さく歯噛みする。
 ゆっくりと、セイバーの衣服を掴んでいた右手を離した。

「……こうして私を討たないことが、何よりの証明だよ。君が私の同志となり得る人間であることの、ね」

 どこか親しげにすら感じる声色に、石川の顔はまた憎悪に歪む。
 この英霊は、自分達の関係が上下関係ではないと確信している。
 石川の守る秩序を嘲笑い、しかし石川本人を見下すどころか寄り添おうとしている。
 その掴みどころの無さを、恐ろしいと感じた。
 放たれるセイバーの言葉は、石川の芯の部分を刺激するかのように次第に雄弁さを宿していく。


694 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:15:07 ynv7KddA0

「不思議だね。マスターと交わした言葉は少ないのに、私は君に共感を抱いている……本当は、マスターも既に理解しているんじゃないのか? 君が『何か』を望んだために聖杯戦争に招かれた事実。君が『この私』をサーヴァントとして召喚した事実。これらを繋ぎ合わせた時に示される意味を」

 セイバーの甘言が、石川を引き付ける。
 疑問を突き付ける冷徹さが、石川の胸の内で得体の知れない悪寒を齎す。
 誘導するかのような声色が、石川の身体を包み込む。
 ……絡み付かれ、呑み込まれる。
 茫然とセイバーの発する声に耳を傾けていた石川は、雑念を振り払うように自らの脳を揺り起こす。
 紡がれそうとなった言葉を遮るように、石川はセイバーに自らの意思を示した。
 吐き出した声は、セイバーだけでなく己自身にも言い聞かせるためのものでもあった。

「都合のいい妄想に俺を巻き込むな。お前が何と言おうと、俺はお前の言う正義とやらには付き合わない。聖杯なんか求めない。そして、いつかお前も捻じ伏せる。これが答えだ」
「今はそれでも構わない。私は君に従おう。しかし力の恐ろしさを知る君なら、その壁を乗り越え、真に正しき振るい方を見出せると信じているよ。その時、私と君は盟友となる」

 石川の反駁にも、セイバーは何ら不快感を示さない。
 ただ形式的な隷属の意思を示すと共に、セイバーの身体が大気の中へと溶ける。
 石川の前から透けて消えゆくセイバーは、最後に柔らかな笑顔を向けていた。

「待っているよ、マスター。君が境界(ボーダー)を越えられる時を」





 絶対的な悪に勝つには、絶対的な正義になるしかない。
 つまり、コインの裏表になるということです。
 傍から見れば同じ物になるということです。


695 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:15:39 ynv7KddA0





「済まない」

 一人立ち尽くしていた石川は、ふと小さく呟いた。

「君に報いる結果は出せなかった。でもこれだけは言わせてくれ。もう俺は負けない」

 石川の前には、一人の少女が佇んでいた。
 罪人を赦すかのような暖かな笑みを、その顔に浮かべていた。
 その笑顔が、石川にはまた痛ましく見えてならなかった。

「こんなことを終わらせて、必ず帰る。帰って、俺の――」

 栗色の瞳は、滲んでいた。



【マスター】
石川安吾@BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係

【マスターとしての願い】
聖杯に掛ける願いなど無い――?

【weapon】
警察官が使用可能な範囲での装備

【能力・技能】
・刑事
捜査一課の刑事として相応の能力を持つ。しかし基本的に自らの能力を真っ当には行使せず、裏社会に住む人間を活用した違法捜査を常套手段としている。

・死者との交信
とある事件で頭部に被弾し、摘出できなかった弾丸を頭部に残したまま生活することとなった石川は、その日から死者と話せるようになった。
脳の未知なる領域が覚醒したのではないかと考えられているが、真偽は不明。
死者との交信における大まかな条件は以下の通りである。
①石川にしか死者の姿は見えない。また死者は一切の物理的干渉をすることが出来ず、石川が相手でも同様である。
②死者の姿を見る上で満たされるべき条件は不明。石川がいくら強く望んでも死者が一向に現れなかったというパターンも少なくない。
③死者の姿が見えなくなる条件の一つは、遺体が荼毘に付される(≒遺体が消失する)ことである。
④結局の所、死者と交信する能力の原理自体は一切不明。そのため仮に石川が冬木の地で死者の姿を見たとしても、死者が魂魄や尸魂界とは異なる概念を有しているためなのか、冬木の地が何らかの特殊な作用を与えたためなのか、そもそも全てが「夢」――度の過ぎた妄想の産物でしかないのか、石川含め誰一人として真相を説明することは出来ない。

【人物背景】
警視庁捜査一課に所属する刑事。階級は巡査部長、年齢は31歳。
ある事件に巻き込まれたことをきっかけとして、死者と交信する能力を得た。
持ち前の正義感と、無念のまま命を落とした者達のために行動する。一方で身勝手な犯罪者に対してはかなり高圧的な態度で臨む。
※「BORDER」は複数のメディアで展開されている作品ですが、今作では2014年放送のテレビドラマ版からの出典とします。

【方針】
聖杯戦争にも殺人にも協力する気は無い。冬木からの脱出方法を探す。
現時点ではセイバーを必要な限りで利用するが、いずれ然るべき形で決着を着ける。


696 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:16:29 ynv7KddA0



【クラス】
セイバー

【真名】
東仙要@BLEACH

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:B

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
・対魔力:C
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Cランクでは魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

・騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。
尤も、「瞬歩」と呼ばれる高速歩法が可能である東仙には必要性の薄いスキルではあるが。

【保有スキル】
・カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
かつての九番隊隊長、現虚圏統括官としてこのスキルが付与された。

・心眼(真):B(→D)
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
後述する特定の宝具を解放した場合のみ、ランクダウンする。

・自己改造:D(→A)
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
後述する特定の宝具を解放した場合のみ、大幅にランクアップする。

・裏切りの死神:B
斬魄刀を携え世界の守護者となった魂魄、死神。彼等へと反旗を翻し、彼等の守る世界の秩序を憎み否定した者が有するスキル。
「属性:秩序」のサーヴァントと対峙した際にパラメーターが上昇する。
……本来ならば、無法者を誰よりも憎む東仙にこそ「属性:混沌」のサーヴァントに対抗するためのスキルが付与されるはずであった。
しかし彼自身が反逆者へと成り下がったため、既にその余地は失われた。


697 : みえるひと ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/15(日) 23:17:15 ynv7KddA0

【宝具】
・『清虫(すずむし)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
斬魄刀の解放の第一段階、始解を行った形態。
超音波のようなものを発して相手を気絶させる。
ただしCランク以上の「対魔力」のスキルを持つ相手には効果が半減する(意識を混濁させるに留まる)。
また、「対魔力」のスキルに拠らずとも本人の精神力次第で持ち堪えることも可能。

・『清虫弐式・紅飛蝗(すずむしにしき・べにひこう)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:5人
斬魄刀の解放の第一段階、始解を行った形態。こちらは攻撃用に応用させた型。
巨大な針状に分裂させた刀身を一気に撃ち放つ。

・『清虫終式・閻魔蟋蟀(すずむしついしき・えんまこおろぎ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:50人
斬魄刀の解放の第二段階、卍解を行った形態。
刀の鍔の飾り輪が巨大化・分裂し、力場を発生させて黒いドーム状の空間を作り出す。
この空間内にいる全ての者は、視覚、嗅覚、聴覚、魔力感知能力を完全に遮断される。
例外として斬魄刀本体に触れている者のみ、通常時の感覚を取り戻すことが出来る。本体とは刀身自体も含むため、斬られたり刺されたりした場合でも感覚は元に戻る。
ただしBランク以上の「対魔力」のスキルを持つ相手には効果が半減する(感覚をある程度鈍化させるに留まる)。
また、「直感」や「心眼」のスキルの発動を妨げるものではない。

・『清虫百式・狂枷蟋蟀(すずむしひゃくしき・グリジャル・グリージョ)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:-
解放時パラメーター⇒筋力A 耐久B+ 敏捷A+ 魔力A 幸運D
破面としての斬魄刀解放、帰刃を行った形態。斬魄刀の能力解放ではなく、虚との融合、真の姿への変化と言う方が相応しい。
全身が黒い体毛で覆われ、四本の腕を持ち、背中には鎖が巻かれた二本の角と昆虫のような四枚の翅が生えた、虫のような姿に変わる。顔も口元を除き、土偶のような仮面で覆われる。
その姿は、率直に言えば醜悪。
パラメーターの変動、保有スキルの一部のランクの変動、虚化時の能力の更なる強化の他、盲目であった視力を回復させる。

【weapon】
・斬魄刀
全ての死神の武器となる刀。解放の段階および性質に合わせた宝具へと変化する。

・鬼道
死神が身に付けた霊術。相手を直接攻撃する「破道」と、防御・束縛・伝達等を行う「縛道」がある。
それぞれに一番から九十番台まで様々な効果を持つ術が多数存在する。数字が大きい術ほど高度で強力である。

・虚化
破面としての姿に変化する。虚閃の放射、超速再生の能力を得られる他、『清虫百式・狂枷蟋蟀』の解放条件として必須である。

【人物背景】
元護廷十三隊九番隊隊長にして、虚圏統括官となった盲目の死神。
秩序を重んじ、絶対的な正義の行使を信条としているが、(狛村左陣の言葉を借りれば)内心では「世界を憎んでいる」。
何らかの共感をしたためか藍染惣右介に従い護廷十三隊に謀反を起こし、死神の対極である虚の側に付いた。
やがて虚化の修得さえも明らかとした東仙は、尸魂界への決戦の中で死神として在るべき姿からかけ離れていく。
ゆえにサーヴァントとしての東仙要は、死神の身を捨てたにも関わらず召喚されたクラスが死神の象徴と言うべきセイバー、秩序無き世界を忌み嫌いながら当人の属性が混沌、などの歪さを抱えた有様である。
……本来ならば、狛村左陣と檜佐木修兵に敗北した後に和解を果たして命を終えたのだが、石川の召喚したサーヴァントとしての東仙要はその記憶を欠落させている。

【サーヴァントとしての願い】
絶対的な正義を成す。その実現手段の一つとして聖杯を手に入れる。


698 : 名無しさん :2015/03/15(日) 23:18:04 ynv7KddA0
投下終了します。


699 : ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:38:55 j6nJcidI0
皆様投下お疲れ様です。
候補話投下します


700 : 佐久間まゆ&ランサー ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:40:16 j6nJcidI0
――あの人と出会った時の事は今でも鮮明に覚えている。
――あの人を喪った時の悲しみを今でも忘れる事はできない。
――あの人にまた会いたいと今でもずっと願っている。

華やかな光を放つスタジオに、シャッター音が響く。
ファンシーな空間の中心には、可憐な美少女が一人。
にっこりと微笑む少女を彩るのは淡い桃色の洋服と、両の腕に絡み付く真紅のリボン。
しばらくして撮影が終わると、少女のもとにスーツを着た男性がやってきた。

「撮影お疲れさまです。佐久間さん」
「はい、お疲れさまです。プロデューサーさん」

プロデューサーと呼ばれた男にかけられた労いの言葉に対し、佐久間さんと呼ばれた少女、佐久間まゆは先程と変わらぬ笑顔を浮かべた。

「これで本日の仕事は終わりです。ご苦労様でした」
「はい、それじゃあまゆはこれで帰りますねぇ。明日は何時からでしたっけ」

明日の予定など、他愛のない会話をしながら、プロデューサーとまゆはスタジオの通路を歩いていく。
仏頂面で強面の男に連れ添うように歩く可憐な少女。
時折、まゆの会話に対し、困った時の癖なのか首筋に手をあてる男に対しても、まゆは今までと変わらない笑みを浮かべていた。

「それじゃあ、まゆは直帰しますねぇ」
「はい、それでは明日、事務所でお待ちしています」

軽い会釈を交わしながら、まゆとプロデューサーはそれぞれ別の方向へと歩いていく。
去り際、プロデューサーの耳に微かにまゆが誰かと話している声が聞こえた。

「?」

疑問に思って振り替えると、まゆと並ぶようにしてどこか今時の学生服を連想させる黒い洋服を着た少女が、まゆと話をしながら歩いているところだった。
まゆの友人だろうか、いつからそこにいたのか、あの頭部に浮かぶ輪っかは流行りのファッションなのか。
様々な事が浮かぶが、そこでプロデューサーの思考は停止する。
NPCである彼にとって、それ以上踏み込む事は許可されていなかった。
能面の様な表情を浮かべ、プロデューサーは踵を返して後の仕事を片付ける為に事務所へと足を進めた。


701 : 佐久間まゆ&ランサー ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:40:59 j6nJcidI0
「お目当てのプロデューサーさんは見つかった?」

黒服の少女がまゆへと語りかける。
泣き黒子が特徴的な、おっとりとした印象の少女だった。

「やっぱり、いませんでした」

少女の問いに、まゆは残念そうな表情で答える。
先程まで話をしていた人物は、本来まゆのプロデュースを担当していた人物ではなかった。
この舞台において『佐久間まゆのプロデューサー』という役割を振り当てられたのが、あのNPCだったというべきだろうか。
まゆは試しにプロデューサーに、本来のプロデューサーの名前を訪ねてみたが、この事務所に、そのような人物はいないという返答が返ってきた。
微かに本来のプロデューサーがいることに期待をしていたのかもしもれない。
その表情には少なからず落胆の色があった。

「もしかしたら、聖杯がそのプロデューサーさんと会ったらまゆちゃんの夢が叶っちゃうと思ったのかもしれないわね〜」
「ふふっ、それはありませんよぉ」

クスクスと茶化すように笑う少女に対して、まゆもつられる様に笑みを浮かべ、少女へと顔を向ける。
ハイライトを失った双眸が、少女を捉えていた。

「偽物のプロデューサーさんなんかに、まゆが心を動かされる訳ないじゃないですか、ランサーさん」

仕事場で浮かべ続けていた作り物の笑顔とは違う、どこか凄みを感じる笑みがランサーと呼ばれた少女に向けられる。
常人であれば気圧されてしまうかもしれないが、ランサーはそれをどこ吹く風といった調子で平然と受け止めている。

「言いましたよねぇ、まゆは、まゆのプロデューサーさんを取り戻したいんですって。
だから、作り物のプロデューサーさんがここにいたってまゆの夢は叶わないんです。
まゆが大切なのはあの日あの場所でまゆと出会ってくれたプロデューサーさんなんですから」


702 : 佐久間まゆ&ランサー ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:41:40 j6nJcidI0


読者モデル・佐久間まゆがアイドル・佐久間まゆへと変わった理由。
それは一人の男性との出合いだった。
『目と目が合う、瞬間、好きだと気付いた』という歌詞があったが、まゆにとってはまさしくその通りの出合いだった。
社長を説き伏せ、移籍する事になったアイドル事務所。
ようやく、想い人と一緒になれると舞い上がっていたまゆに待っていたのは、まゆと想いを同じくする、無数のライバル達だった。
だが、それは必ずしも彼女にとって悪影響を与えた訳ではなかった。
事務所にいる少女達もまゆに負けず劣らず、男性の事を想っていた。
彼女達との関係を言い表すならば、仲間であり好敵手という形容がピッタリだっただろう。
誰が彼を射止めたとしても恨みっこなし。
ただただ、彼に振り向いてもらえるように、時に衝突し、時に協力しながらお互いを磨き合う日々だった。
そんな日が唐突に終わりを告げた。

男性が、彼女達のプロデューサーが亡くなった。
まゆの世界は、一瞬にして色合いを失ってしまった。
それから先の事を、まゆはあまりよくは覚えていない。
『プロデューサーの夢を叶える』と死を乗り越え夢へと進んだアイドル達がいた。
『プロデューサーがいたからこそ、アイドルを続けられた』とアイドルの世界から離れた女性達がいた。
まゆはそのどちらにもなれず、ただただ思っていた。
『もう1度、プロデューサーに会いたい』と
『プロデューサーを生き返らせたい』と

気付けばまゆは、冬木市に作られた架空の女子寮の中にいた。
そしてその部屋の中にいたのが、黒い洋服に身を包み、武骨な薙刀を携えた少女、ランサーのサーヴァントだった。
何事かと混乱する彼女を落ち着かせる様に、ランサーはまゆが聖杯戦争という願いを叶えるための争いに招かれたこと、そしてそのルールを伝える。
ランサーの説明と、脳内に流れ込んでくる聖杯戦争の情報で、まゆは大まかな事態を理解する。
そして思った。思ってしまった。
『ここで優勝すれば、プロデューサーを取り戻せる』と。

「ねえ、マスター。一つだけ質問をさせてもらってもいいかしら〜?」

混乱していたまゆが落ち着くのを静観していたのだろう。
問いかけをしても問題はないと判断したランサーが口を開いた。
あるいはまゆが、彼女の想いに対して後ろ暗い希望を見出だしてしまったのが表情や態度に出てしまっていたのを読み取ったのかもしれない。

「……なんでしょうか」
「そんなに身構えなくても大丈夫よ〜。
私はね軽巡洋艦、んーと、軍艦って言った方がわかりやすいかしら。
そんな船から生まれた存在だから、どんな命令にだって従うのは吝かじゃないわ〜」

にっこりと微笑みながらランサーは続ける。

「でもね、その命令で被る責任は貴方にくるの」

ランサーの笑顔が消える。
鋭い、射抜くような、試すような視線が、まゆを捉えていた。


703 : 佐久間まゆ&ランサー ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:42:25 j6nJcidI0
「これは戦争だもの、マスターが優勝して夢を叶えるためなら、他の参加者を殺さなくちゃ駄目なの。
私はマスターからの命令があればお爺ちゃんお祖母ちゃんから小さな子供。
どんな相手だって殺してしまえるわ。
でもね、それはマスターが殺すことになるの。
殺したのは私だけど、殺すのはマスターの意思。
それをふまえて聞かせてちょうだい。
マスター、あなたは他人を蹴落として<<コロシテ>>まで夢を叶える必要があるのか。
この方法で夢を叶えて、貴女は幸せになれるのか」

ゾクリと底冷えのするような重圧がまゆを襲う。
自身を貫く視線にゴクリ、とまゆの喉が自然と鳴った。
それでも、その言葉程度で、その重圧程度で、恋に全てを投じた乙女が止まるかと言われれば、それは否であろう。

「まゆは、亡くなったプロデューサーさんを助けたいんです」

ポツリ、とまゆの口から言葉が漏れる。
感情が、想いが、そこからまるで僅かに決壊したダムの様に漏れ出す。

「プロデューサーさんがいなくなって、前に進んだ子がいます。
道を諦めた人もいます。
まゆはそのどっちでもない」

トップアイドルになったとしても、その輝きを見てほしい人間がいなければ意味がない。
プロデューサーがいなくなった事を受け入れ、別の道を歩めるほど大人でもない。

「まゆにとってはプロデューサーさんこそが全てだったんです。
どこか私の知らないところで死んでしまったプロデューサーさんを、
お別れも言えなかったのに受け入れるなんて、まゆにはできないし、したくもありません」

だからこそ、確定した運命に反逆する。

「『幸せになれるか』なんてわかりません。
でもプロデューサーさんのいない世界ではまゆは幸せになれません」

自身にも言い聞かせるように、まゆは断言する。
ランサーを見据えるその瞳には確固たる意思が宿っていた。

「そう、随分と大事な人みたいね。
でも、プロデューサーさんって人は、貴女がそんな事をして喜ぶ人なのかしら〜?」
「……喜ばないと思います。
きっと、まゆがそんな事をしたって知ったら、優しいプロデューサーさんはとっても傷つきます。
そして怒って、悲しむと思います」

ランサーの問いに、まゆの表情が俯き曇る。
だが、それも一瞬。

「でも、死んだままなら、そんな悲しまれる事や怒られる事だってできないんです。
それなら、まゆは生き返ったプロデューサーに怒られた方がいいです」

その言葉と共にまゆは悲しげに、にっこりと微笑む。
今にも壊れてしまいそうな笑顔の裏に、ランサーは壊れ様のない想いを読み取った。

「もう、しょうがないな〜」

どうあっても、眼前の年端も行かない少女は揺らがない。
それを認め、軽く頭を掻きながら諦めたように溜め息を吐いてランサーが口を開いた。

「貴女みたいな女の子がこんな事をするなんて止めたかったけど、
そこまで言われちゃうと、私からは何も言えなくなっちゃうわ〜」

ランサーがまゆに向かって右手を差し出す。
それは共に戦い、まゆの槍と、盾となることを了承した証。
その意思をランサーの浮かべた柔らかな笑みと挙動から読み取ったまゆは、応えるように右手を差し出した。

「天龍型2番艦、龍田よ〜。私の名前がバレると困っちゃうから、ランサーって呼んでちょうだい、マスター」
「まゆは佐久間まゆっていいます。マスターよりもまゆって呼んでください、ランサーさん」

握手を交わす2人を夜の月明かりが照らしていた。


704 : 佐久間まゆ&ランサー ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:43:01 j6nJcidI0


「ごめんなさいね〜、ちょっとからかってみただけよ。
まゆちゃんの想いがそれくらいで揺らぐなんて私も思ってないもの」

舞台は現在へと戻る。
ハイライトを失った瞳で微笑みかけるまゆに対して、悪戯っぽく口元に指をあてながらランサーが謝罪をする。

「もう、そういう冗談、まゆは嫌いですよぉ」

むすっと頬を膨らませ、そっぽを向くまゆをランサーは優しげに見つめる。

ランサーがこの魔力もなく、戦争というものすらも知らない少女に手を貸そうとした理由。
出会った時の問いかけから、まゆがどうあっても考えを変えないとわかった事、確かにそれもある。
だが、もう一つ。まゆとランサーに共通した想いがあった。

ランサーの正体、それは第二次世界大戦時に日本の軽巡洋艦として戦い続けた龍田の魂を受け継ぐ、艦娘と呼ばれる存在。
彼女には一隻の姉がいた。
時には共に戦い、活躍もした彼女達。
無鉄砲で向う見ずだが、型式の遅れなど気にも留めずに奮戦する姉がランサーの誇りであった。
そんな姉は彼女の知らぬ遠い海で眠る事となった。
姉妹の死に目に会えなかった事、駆けつける事ができなかった事。
艦娘となり姉と再会できた後も、それがランサーの悔いとして、心のどこかに残っていた。
『自分の知らない所で死んでしまった大切な人を助けたい』
まゆのその願いを聞いた時、ランサーは自身が何故彼女に呼び出されたのかを理解した。
同じ願いを持つ者同士引き合ったのだろう。
自身の叶えられなかった願いを他者の願いと同一化する行為はおこがましいのかもしれない。
それでも、ランサーは思う。
『かつて経験した過ちを繰り返さない事』こそが艦娘の存在意義の一つであるのならば、自分と同じ願いを抱えるものに、救済の手を差し伸べたいと。

妄執と言わればそれまでなのかもしれない。
然れども、誰かを真剣に思う気持ちを否定させなどしない。

直に日が暮れる。
少女2人の道先を照らす光は心許ない。
それでもなお、2人は前に進んで行く。
進む以外に道を見出す事は、今はまだできないのだから。


705 : 佐久間まゆ&ランサー ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:44:23 j6nJcidI0
【クラス】
ランサー

【真名】
龍田@艦隊これくしょん

【属性】
秩序・中庸

【パラメータ】
筋力C+ 耐久D 敏捷C+ 魔力D 幸運D 宝具C

【クラス別スキル】
耐魔力: E
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

【保有スキル】
水上戦闘:A
水上にて戦闘を行なえるスキル。
Aランクともなれば、水上を滑るように移動でき、敏捷のランク及び非近接攻撃の回避成功率が上昇する。
ランサーは元々が軍艦であるため、水上での戦闘を得意とする。

対潜弱点:A
潜水・潜地中の相手との戦闘時、幸運のランクが低下する。
Aともなるとほぼ最低値になり、ちょっとの事故が死につながる。
龍田は潜水艦との不幸な逸話に事欠かない。また、その最後は潜水艦による雷撃であった。

料理発祥:C
竜田揚げをマスター、あるいはランサーが経口摂取した場合、微量ながら魔力が回復する。
ただし、竜田揚げから真名を解明されるリスクが発生する。
龍田によって竜田揚げが考案されたという逸話が、竜田揚げそのものがランサーを構成する一材料として昇華されたもの。
自身を構成する存在をランサー、あるいは魔力パスの繋がった存在が取り込む事により、魔力として返還、蓄積する。

矢避けの加護:C
『彼方に散りし天の龍』が発動している間のみ付与されるスキル。
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に収めている限り、潜水・潜地以外の投擲及び射撃武器を肉眼で捉え、対処できる。
ただし、超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。
天龍との合同任務中に、敵戦闘機27機からの空襲を受けても無傷で切り抜けた逸話が昇華したスキル。

【宝具】
彼方に散りし天の龍(第十八戦隊出撃ス)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
第十八戦隊として共に戦っていた姉妹艦、天龍を具現化し、共に戦闘を行う。この間、スキルに矢よけの加護が追加され、筋と敏の能力が倍加される。
この天龍はランサーが共に戦っていた天龍を具現化した概念存在であり、座にいる英霊、天龍を直接召喚する訳ではない。
故に仮に戦闘にて天龍が破壊された場合も半日ほどのインターバルをおいた後に再召喚できる。
尚、天龍のステータスは龍田と同一かつ筋力と敏捷の倍加が適用され、艤装として無銘の刀剣に加えて14cm単装砲と7.7mm機銃を装備している。
また、その代わりに水上戦闘以外の保有スキルは全て存在しない

率いられし駆逐者の群(第十一水雷戦隊旗艦 軽巡龍田)
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:20〜80 最大捕捉:9
ランサーの合図により何もない空間から砲撃の一斉射を行う。また、水上での戦闘時には魚雷による雷撃も追加される。
新造駆逐艦隊の急速練成艦隊の旗艦を務めた逸話から、ランサー旗下の駆逐艦の砲台と魚雷を一時的に呼び出し、斉射を行なう。
この宝具は雷・電・響・新月・玉波・早霜・秋霜・霜月・島風の同位存在が同一の聖杯戦争に参戦している場合、その数だけダメージと最大捕捉数、攻撃回数が減少する。

【weapon】
艤装
本来であれば単装砲と機銃も搭載されているが、今回はランサーのクラスとして呼び出された為、薙刀以外の攻撃用装備はオミットされている。

【人物背景】
第二次世界大戦の軽巡洋艦、龍田の魂と記憶を受け継いだ艦娘。
おっとりとした口調に甘いボイスで、辛辣な台詞を吐く。
公式曰くヤンデレとの事で、その言葉通り物騒な発言が多い。
天龍の事はなにかと気にかけ話題に出すほど姉妹思い。
潜水艦と衝突したり嵐に遭遇したりと不幸な事件に見舞われることが多い。
また、味方と衝突事故を起こした事や最後は潜水艦に沈められたことから潜水艦が苦手

【サーヴァントとしての願い】
天龍が沈んだ戦闘への介入。
ただし、艦娘となってから天龍と再会はできたので、この願いよりもマスターの願いを優先させたい。


706 : 佐久間まゆ&ランサー ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:46:16 j6nJcidI0
【マスター】
佐久間まゆ@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
死んだプロデューサーを助ける

【weapon】
アイドルの武器とは歌唱力とビジュアルとダンスである

【能力・技能】
家事一般・事務所への潜入や、人知れず他人の車にGPSを設置できる

【人物背景】
読者モデルだったが、プロデューサーに人目惚れし、プロデューサーの事務所に所属するまでにいたったアイドル。
ちょっと、いや、かなりのヤンデレ気質があるが、面倒見がよく気配りもしっかりできるので、プロデューサーが絡まなければ素直子と評判。
事務所の移籍などおっとりした見た目に反してかなりの行動力をもっている。
彼女の愛は情熱的で重く激しい。もし、その愛情を向けられた相手がいなくなったら?
そんなIfストーリーからの参戦

【方針】
ひとまずはアイドルをしながら魔力補充。霊地の確保及び可能な限り竜田揚げの摂取。
戦闘自体についてだが、通常攻撃に関しては魔力の消費も激しく無い分、宝具、特に発動後は常時展開される『彼方に散りし天の龍』は消耗が激しい。
十全に行動する為には魔力の充実が必要不可欠である、が魂喰いを行なう事は『必要以上にプロデューサーを悲しませる』と判断し、現状考えてはいない


707 : ◆SWbhV464vU :2015/03/16(月) 02:48:14 j6nJcidI0
以上で投下を終了します。
プロデューサーの死因ですが特に決めてはおりません。
ただ、まゆの預かりしらぬところで、不幸な事故により亡くなっております。


708 : ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:31:38 W1NqD0Gg0
皆様投下乙です
候補話を投下します


709 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:33:18 W1NqD0Gg0


―――お前は既に犠牲によって生かされている





「…………裕也」


青年、葛葉紘汰はかつて手に掛けた友人の墓参りに訪れていた。
といってもそれは元いた世界の話であって、この世界の彼を紘汰が殺めたわけではない。
そもそもインベスになり果てた裕也の墓など元の沢芽市には作られるはずがない。
それでも、この偽りの世界でも裕也が故人となっている原因は自分にあると紘汰は解釈していた。


「遅くなってごめんな。記憶戻ってたんだけど、中々ここに来る踏ん切りがつかなくて」


墓に水をかけ、なけなしの貯金を崩して買った花を供えた。
今日ここに来たのは、悩んだ末に出した答えを伝えるためだった。


「裕也、俺……戦うよ」


喉元から絞り出した声音は紘汰の悩みの深さを物語っていた。
その手には本来裕也が使うはずだった、始まりの切っ掛けとなった戦極ドライバーが握られていた。
これを手にした時から運命は動きだし、そして狂いはじめた。


「大人になって変身するっていうのはさ、何もこんな力に頼る形じゃなくても良かったんだ。
皆で馬鹿やって、踊って、そんでいつか子供でいられなくなって少しずつ大人になる。
そういう平和で普通の未来があれば、きっとそれで良かったんだよ」


失って初めてわかる、という言葉があるがまさにその通りだ。
戦い続けてもがき続けた今だからこそかつての日常がどれだけ大切だったか実感できる。
もう取り戻せない時間と命を取り戻すたった一つの方法―――それが聖杯。


「きっと、この道は間違ってるんだと思う。
だけど今まで出してしまった沢山の犠牲を全部無かったことにできるかもしれないんだ。
もちろん他のマスターも皆生き返らせて、そんな冗談みたいなハッピーエンドを掴めるなら……俺は」


学の無い紘汰には複雑なロジックはわからない。
それでも死というものを無かったことにする、という行為がおかしなことだというのは感覚的に理解できる。
しかし、おかしなことを願ってはいけないのだろうか。
自然の理に反することでも叶えられるからこその聖杯ではないのか。


「……戦う。戦って戦って、最後に聖杯を手に入れる。手に入れなくちゃいけない。
それが力を手に入れて過ちを犯した俺なりの責任の取り方だと思うから。
だから…もし俺を許してくれるなら、どうか見守っててくれ。
この聖杯戦争をアーマードライダー鎧武の最後のステージにしてみせる」


710 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:33:57 W1NqD0Gg0


最後に墓前に手を合わせ、荷物を持ってその場を立ち去った。
そんな紘汰の前に、何もない場所からゆらりと現れたのは彼のサーヴァントだった。
山吹色の道着を着た、顔に傷のある男だった。


「ごめん、何か待たせちゃったな」
「いいさ、これから人を殺そうっていうんだ。
平気でいられないのは悪いことじゃないさ」


クラスをファイター、真名をヤムチャというこの男は召喚された時から紘汰に対して親身に接してくれた。
紘汰にとっては今まで抱えていた事情全てを相談できる兄貴分のような存在になっていた。


「しかし、書置きぐらい残しておいた方が良かったんじゃないのか?」
「いいんだ、姉ちゃんは巻き込みたくないし、俺が何書いても嘘だってバレそうだしな」


ここに来る直前、紘汰は自宅を出て寝袋や食料品などを購入していた。
以前ユグドラシルに姉を人質にされかけた経験から聖杯戦争に巻き込まないために家を出ることにしたのだ。
NPCであろうと紘汰にとっては紛れもなく姉なのだ。
飢えという問題も戦極ドライバーを着けておけば容易に解決できるし着けられない状況に備えていくらか保存のきく食料もあるので心配はない。
何よりこれからマスターとして過ごす中で普段通り姉と接する自信が全くない。


「ところでさ、あんたの願いって何なんだ?」


話題を変えるために今まで聞きそびれていたことを聞いてみることにした。
先ほどまで自分のことで精一杯だったこともありサーヴァントの願いを聞くのを忘れていたのだった。


「俺か?俺の願いは…ありきたりかもしれないがもう一度人生をやり直したい、かな。
恥ずかしいことに俺は途中で戦いを友達に丸投げして一線から退いてしまってな、それが心残りだったんだ。
だから今度は諦めずに修行して、少しでもそいつの力になってやりたいんだよ」


どうせ自分では孫悟空に追いつけないと諦めてしまったのはいつだっただろうか。
サイヤ人と地球人の違い、センスの差、師匠の差と言い訳はいくらでも思いつく。
しかし途中までは自分も悟空が到達した強さに遅れながらもついていくことはできていたのだ。
どこかで無理だと決めつけて投げ出してしまってはいなかったか、という心残りがファイターを聖杯戦争に呼んだのだ。


711 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:34:37 W1NqD0Gg0


―――それに、俺だって一度は悟空に勝ちたいからな。


サーヴァントとして全盛期の肉体で召喚されたからか、とうに枯れたと思っていた闘争心が湧き上がる。
悟空に挑むということがどれほど無謀かは自分が一番よく知っている。
それでも、いやだからこそ乗り越えたいと願うのも武道家の性なのだろう。


「諦めずに、か……。じゃあやっぱり俺は諦めたってことなのかな?
犠牲と引き換えの希望なんて嘘っぱちで、ただの絶望だと思ってた。
でも俺は裕也を犠牲にして生き延びて、今も他を犠牲にして願いを叶えようとしてる」
「そうとも限らないんじゃないか?
お前は犠牲になった人の命を大事にしているからマスターになったんだろう?
死者を生き返らせようと思ったらそれこそ神様や聖杯にでも頼むしかないんだからな」
「だけど俺は……!」
「まあ聞けよ。俺達戦士は気を操って戦うんだが、不思議なことに相手の気が邪悪か清純かわかるのさ。
少なくともお前からは邪悪な気は全く感じない。お前の願いは邪なんかじゃないってことだ」


ファイターの気遣いを受けても尚紘汰の表情は曇ったままだった。
ふと名前も知らない白いアーマードライダーの男のことを思い出した。
あの男は聖杯という奇跡も無い中一体どれほど重い覚悟を背負っていたのだろうか。
自分が同じように犠牲を生み出す側に回ってはじめてあの男にも苦悩があったのではないかという考えに思い至った。


(そりゃ敵わないわけだよな……)


今ならわかる。白いアーマードライダーの強さの源泉は覚悟や責任感の重さに由来するものだったのだ。
だからこそシドなどとは比べものにならない実力を身に着けるに至ったのだろう。


「俺も強くならなくちゃな……」


そうだ、自分はもうこの道を選んだのだ。引き返すことなどできるわけがない。
途中で脱落することも許されない。最後に勝ち残るまで戦い続けるしかない。
戦わなければ生き残れないし、誰も救えないのだから。


712 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:35:36 W1NqD0Gg0
【クラス】 ファイター(エクストラクラス)

【真名】 ヤムチャ@ドラゴンボールZ

【属性】 秩序・善

【ステータス】

筋力 B 耐久 B 敏捷 B 魔力 E 幸運 D 宝具B

【クラス別スキル】
対魔力:D…魔術に対する抵抗力。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
亀仙流武術:A…武術の神・武天老師を開祖とする武術。
もっともその骨子は「よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む」。
基礎体力の向上を目的とする以外に決まった型というものはなく、弟子の自主性が重んじられる。
その流派の在り方から実体化して食事や睡眠を行う際、魔力の回復量がやや増大する。

舞空術:B…全身から気を放出して空を飛ぶ技術。このランクでは空中での高速戦闘が可能なレベルである。

気配感知:B…心を無にし精神を研ぎ澄まし、自然と一体化することで遠くの気を感じ取る技術。
広域の気配を感知しその大きさまで測れるが、スキルの性質上気配遮断スキルには対抗できない。

気配絶断:B…心を無にすることで己の存在を無にする技術。暗殺者としての技術である気配遮断とは似て非なるスキル。
気を絶っている間サーヴァントとしての気配を消し、魔力消費を極限まで抑える。
戦闘態勢に入った時点でこのスキルは全く機能しなくなる。

【宝具】
「かめはめ波」

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
気を両手に凝縮して放つ亀仙流の必殺技。ヤムチャだけでなく複数の戦士が身に着けた宝具の域に至った技。
使い手の実力によっては惑星すらも破壊するが聖杯戦争ではその最大出力に大幅な制限が設けられている。(ヤムチャ自身のステータスも同様であり、マスターの適性によってさらに低下している)
またマスターの紘汰から供給される魔力が少ないため全力での解放は困難である。
尚、どれだけレンジと捕捉数が広大でも強大な敵に対して使用される技であるため種別は対人宝具である。

【人物背景】
元々は砂漠を中心に活動する野盗だったが最初の神龍召喚以後、孫悟空の仲間となり同時にブルマと恋人同士となる。
後に亀仙人の元で修行を積み、かめはめ波、繰気弾などの技を会得していった。
作中で敵味方の戦闘力がインフレしていくにつれ次第に戦いについてこれなくなり、人造人間の襲来を機に事実上戦線から退いた。
当初はキザな二枚目を演じていたが後に熱血漢で仲間思いな生来の性格が顔を出すことになる。
悟空を筆頭とするZ戦士の中では最も心優しく気配りのできる人物だがそれ故に損な役回りを負う場合も多い。

【サーヴァントとしての願い】
もう一度人生をやり直したい。
ついでに聖杯戦争の中で強敵と戦ってみたい。


713 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:36:18 W1NqD0Gg0
【マスター】 葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武

【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れ、犠牲になった人達(聖杯戦争のマスター含む)を生き返らせなければならない。

【weapon】
戦極ドライバー:アーマードライダーに変身するためのベルト。
イニシャライズ機能があり紘汰以外の人間は着けることさえできない。

オレンジロックシード:クラスAのロックシード。戦極ドライバーに嵌め込んで使うことによってオレンジアームズへ変身できる。
専用アームズは無双セイバーと連結できる太刀・大橙丸。

ゲネシスコア:戦極ドライバーの発展型であるゲネシスドライバーのコア部分。
戦極ドライバーに接続することで本来ゲネシスドライバーでしか使用できないエナジーロックシードが使用可能になる。

レモンエナジーロックシード:クラスSのロックシード。戦極ドライバーと接続したゲネシスコアに固定して使うことでジンバーレモンアームズへ変身できる。

ダンデライナー:ホバーバイク型のロックビークル。飛行機能と機体前方に機銃を備える。

仮面ライダー鎧武・オレンジアームズ:紘汰が戦極ドライバーとオレンジロックシードを使い変身した姿。
システムの補助により視覚や聴覚、運動能力などが大幅に増大する。
前述の大橙丸と銃剣・無双セイバーを駆使した白兵戦を得意とする。
ただし科学兵器であるためそのままでは霊体であるサーヴァントにダメージを与えることはできない。

仮面ライダー鎧武・ジンバーレモンアームズ:戦極ドライバー、オレンジ及びレモンエナジーロックシード、ゲネシスコアの組み合わせで変身した鎧武の強化形態。
その性能はゲネシスドライバーを使って変身したゲネシスドライバーにも匹敵する。
遠近両用の弓、創世弓ソニックアローに加え無双セイバーも武器として使用可能。
オレンジアームズと同じく科学兵器であるためそのままでは霊体であるサーヴァントにダメージを与えることはできない。

この他にも紘汰は様々なロックシードを持っていたが聖杯戦争に召喚された際に紛失している。

【能力・技能】
常人離れした身体能力の持ち主でライダーとしての戦闘センスも非常に高い。
しかし戦闘力はその時の精神状態で振れ幅が激しく怒った時には凄まじい実力を発揮する一方戦いに迷いを抱いた時は低下してしまう。

【所持金】
貧困


714 : 葛葉紘汰&エクストラクラス・ファイター ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:37:00 W1NqD0Gg0
【人物背景】
沢芽市のダンスチーム、チーム鎧武の元メンバー。幼い頃に両親を亡くしており、育ての親となった姉・晶の支えになるためにチームを脱退しアルバイトに明け暮れていたが、鎧武のメンバーからは未だ慕われており、性格上本人もチームに何かあった際には助け舟を出す生活を送っていた。
人間的な意味での「変身」に憧れていた中、偶然迷い込んだヘルヘイムの森で戦極ドライバーを入手しアーマードライダー鎧武となった。
その後チームの危機を受け、当時掛け持ちしていたバイトを全て辞めて用心棒としてチームに一時復帰、戦いの日々に足を踏み入れる。
明るく優しい心と強い正義感を併せ持つ熱血漢。他人の危機を見過ごせない気質で、自身の損得を考えない行動によって憂き目に遭ってしまうことを、幼馴染である舞に心配されている。
また正直者ゆえ隠し事は苦手だが、他人に心配をかけまいと問題は一人で抱え込む傾向にある。
戦っていくうちにチームメイトの光実と共に大企業・ユグドラシルが自分たちを戦極ドライバーのデータ収集のためのモルモットとして利用していた事実を知り憤慨。
その後ヘルヘイム活性化によるインベス侵出に伴い、襲い来るインベスの危機から沢芽市民を守るために奮闘するも、それにより自身の思惑を優先する光実との亀裂、守ろうとした市民からのインベス侵出原因の疑いによる非難、そして初瀬のインベス化に加えユグドラシルによる排除を目の当たりにするという数々の悲劇に見舞われる。
しかし目的の一致から協力関係を結んだ戒斗との共闘、そして彼の意志を見込んだDJサガラからの物資供給を経て、ビートライダーズの抗争終了を見届けたことで用心棒としての務めを果たした後、戒斗と共にビートライダーズから脱退しインベスやユグドラシルとの戦いへと気持ちを新たにする。
ユグドラシル幹部の呉島貴虎から光実同様にヘルヘイムによる地球侵略やユグドラシルの本分について知らされ動揺するも、人類繁栄のために犠牲を当然とするユグドラシルの在り方に疑問を抱くと共に、事実上の人類削減計画である「プロジェクト・アーク」の全貌を知りユグドラシルとの敵対を改めて決意。
しかし自分が鎧武としての初陣で排除したビャッコインベスの正体が、森の果実を食べて変異した裕也である事実を貴虎によって突きつけられ、友を殺めた自責の念と、ユグドラシルと同じく犠牲による選別を行っていた自身の在り方から深く絶望する。
本聖杯戦争の紘汰はその時点からDJサガラからカチドキロックシードを受け取る以前までの間から参戦している。

【方針】
マスター、サーヴァント共に十分な戦闘力を持つものの搦め手、特にアサシンの奇襲に対してはやや脆い。
しかし最大の問題は紘汰の魔力供給量の乏しさであり気(魔力)を大量に使うファイターを支えきるのは難しい。
高い感知能力や機動力を活かして避けられる戦いは避けて魔力を温存するのがベストか。


715 : ◆LjoEJeq7VA :2015/03/16(月) 14:37:47 W1NqD0Gg0
以上で投下を終了します


716 : ## ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 01:52:54 U1zC82Ek0
お疲れ様です。
これより投下させていただきます。


717 : ## ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 01:54:47 U1zC82Ek0
すみません、トリップミスです。
こちらが正しいトリですので投下させていただきます。


718 : ## ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 01:57:03 U1zC82Ek0
またしても失礼しました。
◆gFt4yki6K6ですが、本来のトリップが出てこないようですので、これでダメならば最悪このまま投下させていただきます。


719 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 01:58:20 U1zC82Ek0






もはや慣れさえも覚えてしまった、ループする日常。



死して目覚めることを繰り返し、幾度となく多くの経験を積んできた日々。



血反吐を吐き内蔵をぶちまけ、いつ終わるとも知れない戦場を彷徨い続けてきた。



そして今―――数え始めてから実に157回目―――もまた、脱出する事は叶わずに新たなループに突入しようとしていた。




――――――くそ、またか……だがこれで覚えた。




――――――これなら……次のループで、きっと突破できる。




――――――今度こそ……!!






しかし……何度も願ったその文字通りの意味で命賭けの望みは、皮肉にも思わぬ形で実ることになった。


死に覚えという『やり直し』を望む願望と、それに相反する『やり直しからの脱出』という願望を併せ持っていたがために……


720 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 01:58:52 U1zC82Ek0





◆◇◆






「……聖杯、戦争……?」


目覚めた時に見えた天井は、いつもの宿舎とは違っていた。
己が手には、目覚めの度に記してきたループの回数を示す数字の代わりに、赤い文様が浮かんでいた。
そして、脳内には今までにない知識が流れ込んでいた。

聖杯戦争。
サーヴァントを用いて戦い、生き残った者には万能の願望器が与えられるという儀式。
その参加者に、自分は選ばれ招かれた。

何もかもが、今までのループとは違っていた。
全く異質すぎるその状況に、彼―――キリヤ・ケイジは、ただただ戸惑うしかなかった。


(……ループを抜け出せた……けど、この状況は……)


変わらぬ繰り返しにより精神をすり減らしてきた毎日。
その耐え難き苦痛から脱出出来た事自体は、喜ぶべきなのかもしれない。
だが、そこに至るまでの過程が想像を超えすぎていた。
ギタイに打ち勝ち戦いに勝利し、その上で新たな日々を迎える。
それこそがケイジの考えていた最善であり、望んでいたものであった。
故にこの状況ではどうしても喜ぶよりも前に驚愕が出てきてしまうが、これを驚くなという方が無理という話だろう。


721 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 01:59:16 U1zC82Ek0

(……とにかく動こう。
 ここでじっとしているわけにはいかない)


とは言え、いつまでも惚けている訳にはいかない。
頭に流れ込んできた情報どおりならば、これは正真正銘の殺し合いだ。
何でも望みが叶うというのは胡散臭い話ではあるが、ケイジも時間のループという通常では考えられない経験をしている。
そしてなにより、この聖杯戦争によってループを脱する事が出来たのだ。
ならば真実として信じる他なく……いつ誰が襲って来るかも分からないのだから、兎に角集中しなくてはならない。
不意打ちや奇襲の類で死ぬことは、これまでのループで嫌なほど体験しているのだから。


(……聖杯……何でも願いが叶う願望器か。
 それがあれば……ギタイどもを地球から一匹残らず抹殺する事も……)


同時に、聖杯へと託す望みもまた胸中に浮かんできた。
圧倒的な力と物量で地球を侵略しようとする忌まわしきギタイども。
聖杯があれば、その全てを消し去ることができるかもしれない。
ギタイの驚異から人類を救い出せる……そんな希望が、ケイジの中に湧いてきたのだ。


(……その為には、他の参加者を殺さなくちゃならない。
そして、多分……ここで死んだら僕は本当に死ぬことになる……)


だが、その願いを叶えるには他の参加者に勝つ……つまりその命を奪う必要がある。
人類の為に倒すべきギタイではなく、守るべき人類に刃を向けねばならないのだ。
まさかここで死んだ者がループしてまた復活するなんて事はありえないだろう……無論、自分も含めてだ。
ならば、どうすればいい。
今までと違って、死んでやり直すことはもうできない。


どの道、開始から一週間が過ぎてしまえば死ぬしかなくなる。
ギタイを地球から消し去らねばより多くの命が消える。
だから、戦場に勝ち残る道を選ぶべきか。

それとも、ギリギリまで他の道を模索するべきか。
罪のない命を奪いたくないという思いに従うべきか。
これまでのループでもそうしてきた様に、絶望的な状況下での希望を探し求めるべきか。

それはケイジが158回目にしてようやく掴んだ、本当に取り返しのつかない重すぎる選択だった。


722 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 01:59:45 U1zC82Ek0



――――ガタッ。


「…………!!」


その時だった。
不意に背後から聞こえてきた物音に、ケイジは反射的に振り返った。
まさかもう、他の参加者が近づいてきたのだろうか。
警戒心を剥き出しに、物音の方向へと視線を向けると……そこには、一人の男が立っていた。
金髪のオールバックをした、警官服を身に纏う白人男性。
その容姿だけを見ればどこにでもいそうなただの警官だが、しかしその瞳にはあまりにも冷たい眼光が宿っていた。
例えるなら、抜き身の刀のような……人間らしさがまるで感じられない能面の様なものであった。


(他のマスターか、サーヴァント……!?
まずい、こっちも応戦の準備を……僕のサーヴァントは……!!)


咄嗟に身構え、状況を冷静に確認する。
この男が他の参加者であれば、どうにかして迎え撃たなければならない。
しかしこの場には、いつもと違い機動ジャケットもバトルジャケットもない。
頼れる武器は唯一、自身に宛てがわれたサーヴァントのみなのだが……そこまで考えて、ケイジはある事に気づいた。
自分のサーヴァントは、一体どこにいるのか。
頭の中に流れてきた情報通りなら、サーヴァントはマスターのすぐ傍らに控え立っている筈である。
だが今、それらしき者の姿は見当たらない。
まさか自分には、サーヴァントがいないというのか。


「……いや、待て。
 まさか……お前が僕のサーヴァントなのか?」


否。
もしや傍らに立つこの男こそが、自分のサーヴァントではないのか。
状況からしてその可能性が高いと、ケイジはその男に問いかけたのだった。
無論、万が一ということもある……確認できるまでは、不用意に警戒心をとかない方がいいだろう。
出来ることなら、期待通りの答えが返ってきてほしい。
固唾を呑んで、彼はそう願ったのだが……



それは、最悪の形で裏切られることになった。


723 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 02:00:46 U1zC82Ek0


「なっ……!?」


問い掛けから数秒後。
男が無言のままに右手を前に出し……その手が、鈍く光る銀の刃へと変化したのだ。
そして、力強く床を踏み抜き疾走。
僅か一瞬で間合いを詰め、その刃と化した右手をケイジの喉もとめがけ突き出したのである。


「くっ!?」


警戒心を解いていなかった事が幸いした。
ケイジはギリギリのところでそれに反応し、横へと大きく転がってその一撃を回避することに成功した。
振り抜かれた右手は背後の壁をいとも容易く貫通し、大穴を開けている。
人間では考えられない所業。
戦場でギタイと出会った時に似ている。
この男は、紛れもない人外の存在……サーヴァントだ。


「…………」


男は左手も右手同様に刃へと変形させて、再びケイジに迫る。
またしても一瞬で詰まる距離。
男は左右から同時に刃を振り抜き、その首を狙う。
動きは一度目よりもさらに早く鋭い。
今度は……回避が、間に合わない。


「……やめろぉっ!!」


ようやくループからの脱出が叶ったというのに、これからどうするかも決めてないというのに、こんなところで死んでたまるものか。
逃れられぬ死の一撃を前に、ケイジはただ叫んだ。
そんなもので止まる筈がないのはわかっていたが、口にせずにはいられなかったのだ。


すると、そんな彼の渾身の願いに呼応するかのように……その手に宿る令呪が赤く輝き。


「ッ……!?」


男は、その手を止めた。
ケイジが発した令呪が、その動きを封じたのだ。


724 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 02:01:11 U1zC82Ek0


「……令呪が……やっぱりお前が、僕のサーヴァントか……
 けど、それならどうして僕を……?」


ケイジは安堵のため息をつく同時に、目の前のサーヴァントへと問いかけた。
他でもない自分のマスターを、それも召喚直後に殺そうとするなんてただ事ではない。
この異常な英霊は、一体何者なのか。
何をもってこの聖杯戦争に参加しているのか。
その真意を、確かめなければならない。
集中力と緊張感をそのままに、固唾を飲んでケイジはその答えを待った。



そして、返ってきた答えは……あまりにも残酷で、冷たい言葉だった。



「勝利のため、人類を抹殺する。
 それが我々の役目だからだ」


そのサーヴァントの名は、T-1000。
人類が絶滅の危機を迎えている未来の世界より、時空を超えてあらわれた最悪の殺人ロボット―――ターミネーターである。
彼が機械軍の人工知能スカイネットに与えられた使命は、人類抵抗軍指導者ジョン・コナーを成長する前に抹殺する事。
そうする事で、機械軍の勝利を確かなものとする……人類に完全な滅びを与える事なのだ。



ギタイを抹殺し人類を救うべく、未来を変えるために過去へのループを繰り返し続けたキリヤ・ケイジ。

人類を抹殺すべく指令を与えられ、未来を変えるために過去の世界へと送り込まれたT-1000。



近しい境遇を持ち、しかしその目的はあまりにも正反対すぎる二人。

はたして何の因果か……聖杯戦争は、この両者を主従として選んだのであった。


725 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 02:01:41 U1zC82Ek0


【クラス】
アサシン

【真名】
T-1000@ターミネーター2

【パラメーター】
筋力:D 耐久:A 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:A

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
気配遮断:D
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。

【保有スキル】
戦闘続行:B
 戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。 
 
【宝具】
『迫り来る流体の殺戮者(T-1000)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1
 T-1000の宝具にして、T-1000そのもの。
 流体多結晶合金製のその肉体は、基本となる人型を構成する状態から完全な液状、
 あるいは刃物のような高い硬度を持つ固体状態まで自在に変容することができる。
 その変化は完璧であり、人に擬態した場合はその容姿はもちろん声帯や感情パターンまでも忠実に再現できる。
 物体に変容する場合もその色や模様、質感までも元通りにコピーすることができるが、
 銃器や自動車の様な複雑な部品を有する物体や、火薬やガソリン、薬品などの化学反応を伴う物質には変身できない。
 その液体金属状の肉体故に外部からの衝撃によりダメージを負っても致命傷とはならずすぐに再生が可能。
 バラバラの破片に砕かれても結合し元通りになるなど、アサシンにあるまじき高い耐久はこの宝具による。
 しかし液体金属という性質上、極低温下においては肉体が凍結してしまうという弱点もある。
 また、あまりに強すぎる衝撃を一度に受けた場合は一時的に形態維持能力が混乱し、機能不全を起こし無防備な状態になる事もある。
 破壊するには、この状態でさらに修復不可能なほどのダメージを与えるか、
 それ以外では高熱や化学変化でT-1000の肉体そのものを完全に分解・溶解するしかない。

【weapon】
 変容させた自らの肉体そのもの。

【人物背景】
 人工知能スカイネット率いる機械軍が人類を絶滅まで追い込んだ破滅の未来で生み出されたターミネーター。
 従来のターミネーターよりも優れた耐久力とスピード、パワーを持って生み出された。
 人類抵抗軍の指導者であるジョン・コナーを抹殺するようスカイネットからプログラムされており、
 まだ彼が幼い子供の内に殺すべく過去へと送り込まれた。

【サーヴァントとしての願い】
 人類を抹殺する。
 ジョン・コナーの殺害を絶対とする。

【基本戦術、方針、運用法】
 目的達成のためならば手段は選ばない。
 何者であろうとも邪魔な人類は殺害するのみ。
 ケイジの令呪により動きを制限されている。


726 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 02:01:58 U1zC82Ek0


【マスター】
 キリヤ・ケイジ@All you need is kill

【マスターとしての願い】
 終わりのないループからの脱出。
 ギタイを地球上から一匹残らず抹殺し、人類を救う。

【weapon】
 軍人としての基本的な能力。

【能力・技能】
 157回にも及ぶループによって培われた集中力と状況判断力。
 幾度となく命を晒すことで身につけた戦闘技術。


【人物背景】
 近未来世界、異星より地球に襲来した異形の侵略者『ギタイ』を打倒すべく統合防疫軍に入隊した初年兵。
 初出撃でいきなり絶望的な戦場へと送り込まれ、そこで命を落とす。
 しかし意識を取り戻した瞬間、出撃前日の朝に戻るという現象に見舞われ、
 以後は死亡するか30時間が経過すると再びその朝に戻るというループする日常を繰り返すことになる。
 そんな生と死を繰り返す中でも己の記憶だけは積み重ねられると認識し、ギタイを打ち倒すために
 何度も死亡してはコツを掴むという死に覚えの経験を積み重ねてゆき、兵士として著しい成長を遂げていく。
 だがその精神は終わりの見えないループの中で磨り減っており、脱出を果たせない日々に苦しんでもいた。

【方針】
 ギタイを抹殺して人類を救いたい。
 しかし、その為に他の参加者を殺さなければならないのかという葛藤があり、どうすべきかに悩んでいる。


727 : ケイジ&アサシン ◆uYhrxvcJSE :2015/03/17(火) 02:02:23 U1zC82Ek0
以上で投下終了となります。
大変失礼をいたしました。


728 : ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 16:59:24 dqc0CoY60
投下いたします


729 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:00:05 dqc0CoY60


犯罪が一年の間に一件も起きない都市と言うものは、通常は存在しない。
犯罪と言うものは治安の悪さ及び住人の層と言うものを土壌に発生する。
治安の悪い区画や通りがない都市と言うものもまた、存在しない。アウトローが稠密する場所と言うのは、何かしらの理由があるものだ。
空気が彼ら好みの所であったりとか、歓楽街であったりだとか、薄暗い路地裏であったりだとか、地価が安かったりだとか、
その場所にあった習慣に理解を示さない外人が集まりやすいだとか、理由は幾らでもある。
そう言った条件に該当する場所と言うものは、都市と呼ばれる所を探せば何箇所でも見つかるし、そう言った場所がない都市と言うものは、そもそもありえない。

 それは、彼が主に活動していた栃木県宇都宮から、遠く遠く離れた、此処冬木市においても、同様であったようである。

「おーおー、メタルスライム共がいそうな臭いがするする」

 冬木市は新都の繁華街、その『いかにも』な場所に通じていそうな、外灯が少ない故に暗く、じめじめとした路地道を見て、青年が呟いた。
真っ当な人間だったら避けて通りそうな道である。進んで此処を入って行く人間は、そうそうはいないだろう。
そんな場所を、青年は面白そうな顔つきで見つめている。それはそれは嫌らしく、小憎たらしい笑みで。

 黒い学ランを身につけた黒髪の青年であった。
そして、人の目を引く程の体格の良さであった。此処に来るまで、結構な数の道行く人間達の目線を引いていた。
人より頭半分程も高い百八十を超える程の身長に、厚みのある筋肉を体中に百キロ以上程も搭載しているのだ。
肥満体ではない。むしろ脂肪の類は人より少ない位である。身についた筋肉全てが、地道かつ過酷なトレーニングで切磋されている事が、学ランの上からでも解った。
宛らこの男の身体つきは、ラガーメンか。しかもその上、その顔つきは明らかにまだまだ子供っぽさを残した高校生、どんなに贔屓目に見ても大学一〜二年生程度のそれ。
兎に角、その年の子供にしては、度が過ぎる程の筋量と体格の持ち主であった。

 これだけの身体つきであれば、やはり自分に自信があるのだろう。
何の臆面もなく、堂々と路地裏へ続く道を歩み始めたのだ。見知らぬ街の、見知らぬ裏路地に。
悪そうな奴は大体友達だろ、とでも言わんばかりに……


730 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:01:12 dqc0CoY60


 実を言うとこの学ランの男が、所謂不良だとかチンピラだとか言う人種とつるんだ年数は、それ程長くない。
恐らく一年だって経っていないだろう。だが、そう言った者達が集まりそうな場所と言うものは、凡そ臭いで解った。
この男、所謂アウトローと付き合って来た年数こそ短いが、その短い間に彼らと接して来た回数と、その経験の内容が異常なのだ。
だから、解る。そう言った者達が集まりそうな場所が。そして案の定――

「ゴールデンハンマーチャーンス、ってか」

 絵に描いたような不良――メタルスライム――達がたむろしていた。
やや開けた路地裏に集まっている、十一名のはぐれ者達を、ニヤニヤ笑みを浮かべて男は眺める。男達の視線が、一斉に学ランの男に集中する。
何処ぞで買ったカップ酒をあおったり、地面に座ってチンチロリンをやっていたり、ヤニを吸っていたり。
男にしてみれば、典型的過ぎて笑える程の不良行為だった。しかもその殆どが十代、最年長で二十代前半程度だと言う事実が、より笑いを助長させる。

「んーだよ、時流が数十年遅れた西日本の田舎都市だから、てっきりろくでなしブルースから飛び出して来たような奴らが出てくるのを期待してたのによ……」

 この場にいるメンバー全員が、それなりに洒落たパンク風だったので、男は落胆の態度を隠せないでいた。
男はそれこそ、今日日マガジンの不良漫画でも採用されないような、コッテコテの不良学生のような奴らがいるのではと、ワクワクしていたのだ。
それがこれでは、肩透かしだった。

「おい田舎モン、君達がどんなに服装を整えたってな、俺みたいな都会生まれのジュノンボーイからしたら、
『おっ、田舎者が東京に憧れて頑張ってるね〜、でもここ東京じゃないからどんなに頑張ったって滑稽なだけだぞ〜』としか映らないぞ」

「んだテメェ、どこ高の奴らだ?」

 此処まで露骨に挑発されては、例え不良でなくても不機嫌な態度を表面化させてしまうだろう。
事実この場にいる全員が、殺気と怒気を放出させて、学ランの男を睨みつけていた。
が、何を思ったか、彼は唐突に「プッ」、と吹き出し、嫌なニヤニヤ顔を浮かべて、この場にいる不良達を一瞥し始める。

「どこ高ってお前よぉ……。現実でそんな言葉使う奴とか本当に実在したんだな、天然記念物飛び越えてもう幻想種だぜおい」

「冬木じゃ見た事もねぇ奴だが……お前、何処の誰様だよ? つか、俺達に何の用な訳?」

 常ならばこの男のような舐めて掛かった口を利くような男にはすぐに飛び掛かりそうなものであるが、不良達はそうはしなかった。
単純である、学ランの男の、同年代にしては余りにも圧倒的過ぎる体格の良さに、ビビっているのだ。
見るに、この場にいる十一人の中には、下手したら塾通いのもやしっ子ですら勇気を奮って立ち向かえば倒せそうな程、貧相な体格の者も散見出来る。
服装と髪型、髪色だけを変えて、強くなれたと勘違いしている、哀れな人種。と言うより、此処にいる者達の殆どが、徒党を組んで強い気でいるはぐれ者達だ。
であれば、この場に現れた闖入者の、際立った身体つきに気圧されるのは、当然の事。それを学ランの男はしっかりと計算に入れていた。

「ん〜、まぁ俺の素性に関しては、お前達に言っても無意味だから止めとくわ。目的だけなら話してやるよ」

 ポリポリとこめかみを掻きながら、学ランの男は、言葉を続けるのだった。

「この場で俺の為に死んでくれね?」

「あぁっ!?」

 学ランの男の物言いに、流石の彼らも沸点に達したらしい。
場に張りつめていた殺意の量が、一瞬で倍増する。それを感じてもなお、彼はふてぶてしい笑みを崩さない。

「んーとね、俺はチミ達の命とお金が欲しい訳よ。だから大人しく死んでくれねーかなぁ、って」

「テメェ、喧嘩売ってんのかオラ!!」

 一番近くにいた、この場にいる不良たちの中では最も体格も良く、そして学ランの男と同程度の身長の不良が近づいて来る。
不良が学ラン男の襟を掴みかかろうとしたその時、目にも見えない程の速度で、学ランの男が右腕を動かした。
と同時に、不良が前方向に思いっきり倒れ込み、地面に沈んだ。ピクリとも、動かない。死んだのではないかと思う程であった。


731 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:02:24 dqc0CoY60


「臨戦態勢に移るのが遅ぇなぁオイ。これで喧嘩売ってないと思うんだったら、不良になんてなるんじゃなかったな」

 言うと男は、男を気絶させるのに使った右腕を、だらりと垂らす。
右手の五本の指は、鉤爪状に折り曲げられ、まるで虎のようであった。学ランの男が不良を倒すのに使った技の名前は、顎(チン)ジャブ。
虎爪と呼ばれる独特の手の形を作り、それでもって相手の顎を押し上げるようにして掌底を放つ技である。

 学ランの男言葉を紡ぎ終えた後で、何の呵責もなく、倒れ込んだ男の後頭部を思いっきり右踵で踏みつけた。
ゴクンッ!! と言う嫌な音が響いた。尾を引くように、ジワリと血液が、不良の顔面から地面へと伝わって行き、水たまりを形成する。

「悪いなぁ君達、恨みは特にないんだけど、俺も割とマジで必死なんだわ。大人しくくたばってくれねーかな、抵抗するだけ無駄だから」

「な、何だよお前!! いきなりあらわれて、命寄越せとか、頭おかしいんじゃねぇのか!?」

 今回に限り、不良たちの方が明らかにまともな事を言っていた。
学ランの男の方が異常である事は、誰の目から見ても歴然としている。急に目の前に姿を見せて、命と金を寄越せとのたまい、暴力を振るう。
不良達の目から見ても、横暴が過ぎる行為であろう。それを彼は、何の疑問も覚えず実行しているのだ。気狂いとしか思えないのも、当然だった。

「っせぇなぁ、生きた人間みたいにくっちゃべるNPCだぜ……大人しく生身で本当の人間様の為に働いてくれよな〜頼むよ〜」

「このキチガイが!!」

 言って、一番学ランの青年の近くにいた、金髪を逆立たせた青年が、懐に忍ばせておいたバタフライナイフを取り出した――と同時に。
ブンブンと横方向に風車の如く回転しながら吹っ飛んで行き、建物のコンクリ壁に激突する。
カランッ、と、ナイフの刀身が地面に落ちる、乾いた音が響く。学ランの青年は、大儀そうに不良達の方に向き直った。
先程の金髪の不良に対して、高速の上段後ろ回し蹴りを見舞った為である。

「――なあ」

 学ランの男が、面倒くさそうに呟く。
だがその言葉は、どうも、不良達に向けられたそれとは思えない。彼の意識がどうも、不良達に向いていないのだ。
まるで、この場にいない誰かにでも話しているかのような。独り言のような空気すら感じられる。

「『魂喰い』はアンタしか出来ないんだろ? 俺の実力を測りたいとか来るとき言ってたが、、俺の実力は十分解ったろうよ。後はアンタが宜しくやってくれ」

「は、は……? お前、何言って――」

 学ランの男から一番遠い場所にいる肥満体の青年が、そう口にした、刹那の事。
ボゥンッ!! と言う音を立てて、彼の身体が限度一杯にまで膨らませた風船のように、破裂!!
頭からつま先に至る全ての部分が弾け飛び、周囲に、彼を形成していた皮膚や筋肉、毛髪や骨格、内臓の類がが四散する。

 何が起こったのかを理解する前に、砕け飛んだ肥満体の男の直近にいた二名の男達が、「ぶぁっ!!」と言う声を上げ、打っ飛んだ。
学ランの男から見て左方に居た男は、頸椎をほぼ真横に圧し折られて即死していた。右方に居た男は、頭の、顎より上の部分を消し飛ばされていた。


732 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:03:00 dqc0CoY60



 この場に散開していた不良達の中心部分に、スゥッ、と男が現れた。
まるでそれは、今まで大気と同化して透明になっていたものが、その状態をゆるゆると解いて行く様にも見えた。
良い歳の取り方をした中年男性であった。よく手入れのされた美髭を唇上に蓄えた、黒髪オールバックの壮年。
街に繰り出し女性を口説けば、年の若い女子高生ですら口説き落とせそうなナイスミドル。だが同時に――余りにも異様過ぎる男でもあった。
それは、学ランの男が子供に見える程の偉丈夫である為か? 彼を超える程の筋量を搭載している為か? 
それとも青いマントを肩にかけ、鎧状の服装を身に纏っていると言う奇抜極まりない服装の為か?
違う。見る者に異様な印象を与える訳は、その男から薫る血の匂い、闘争の香り、そして――理性のない猛獣ですらが恐怖に歪みかねない程の、その死の気配。

 ……そんな気配に、不良達は、呑まれていた。
マシンガンを持ったとて、この男には敵わない、いやそもそも、核を以ってしても……?
茫然と、自分達の矮小さに気付かされていた彼らを、その口髭の男はつまらなそうに一瞥する。

 その時――残りの六名が、意味不明な叫び声を上げて、即死した。
ある者は分厚いコンクリート塀にめり込み、ある者は身体を破裂させ、またある者は身体を十字に寸断された状態で。
そこいらじゅうに、血液が飛び散る、内臓の破片めいたものが散乱する、骨片が中空を舞う。
鮮やかな褪紅色と野暮ったい赤黒色、そして白色の骨片が舞い散る、地獄めいた景観の只中に佇みながら、口髭の男は、静かに口にした

「北斗琉拳奥義、魔舞紅躁」

 目線を、学ランの男の方に向けて、更に言葉を続ける。

「俺の拳は、兄弟子である男達と、俺を破った北斗の漢以外には遂に存在せなんだ。坊主、貴様には見えたか?」

 酸鼻を極る光景に、顔を強く顰めていた学ランの男は、わざとらしく「うぇっ」と呟いてから口を開く。

「全然みえねぇな、腕を動かした事実すら解らなかったよ、フレディ・マーキュリーのおっさん」

「……つくづく思うが、そのフレディとやらは誰の事を指しているのだ? 会う時に言っただろう、俺の名前はアサシンで、真名は――『ハン』である、と」

「だったら俺の事も坊主呼ばわりしないで、マスターか本名で呼んで貰いたいね。忘れたのなら教えてやろうか? 俺の名前は――」

 其処で一区切りおいてから、ビッ、と。自分の事を親指で指差して、自信満面のツラでこう言った。

「妻夫木聡だ」

「意識を通して俺に伝わってくる情報には、『佐藤十兵衛』だと記されているが?」

 半ば呆れたような調子で、ハンが言葉を返した。
すぐに十兵衛は、芸名みたいなもんと言って、茶を濁すのだった。


733 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:04:34 dqc0CoY60






 ハッキリ言えば佐藤十兵衛なる男は、性欲と物欲と煩悩の塊のような男である。
聖杯、実に魅力的なものであると言えるだろう。万能の願望器の名を冠するその器物は、ありとあらゆる望みを叶える聖遺物であると言う。
何を願おうか。自分の仮性包茎を治すか、いやいや流石にこれは論外だろう、ソロモン王並のハーレムでも築くか? 
いやいや、それは金持ちにでもなれば即座に解決する、でも童貞と処女厨を滅茶苦茶拗らせた十兵衛は、純粋無垢な大和撫子で童貞を捨てると決めているのだ。
やはり金だろう、正直現状でも金に困ってはいないのだが、ある目的を達成するには、全くの資金不足であると言わざるを得ない。
彼が生きている内に達成したい目的。それは――そう!! あの『Google』を買収し、十兵衛ドットコムを世界最大の情報通信業会社にする事である!!
理論上不可能な事を、聖杯は達成可能なのだ。これはもうやらなきゃ損だ。もと居た世界じゃ、何年かけた所でGoogleの買収する事など不可能なのであるから。

 ――と、自分が聖杯にかける夢をクッソ真面目に、自分に呼応して現れた、アサシンのサーヴァント、ハンに表明する佐藤十兵衛。
そしてそれに対するハンの答えは――

「貴様を殺して座に帰るとしよう」

 スッと戦いの構えを取り始め、十兵衛を睨みつける、と言うものであった。当たり前と言えば、当たり前の反応。
さしもの十兵衛も肝を冷やしたのか、冷や汗をかきながら、右手を前に突きだしてハンを制止させる。

「オイオイ何でだよ、真面目に夢を表明したつもりだぞ俺は」

「ふざけるな、俺は貴様のような俗物に呼ばれた覚えはない。これならばまだ、座で退屈していた方がマシだ」

 「それに……」、と、更にハンは言葉を紡いで行く。

「貴様は俺に、本音を語っていない。それが貴様の本当の夢じゃない事は、俺は知っている」

「オイオイ、拳法家拗らせるとエスパーでも使えるようになるのかよ。格闘タイプとエスパータイプの複合だから、チャーレムだな」

「貴様が抱く、最も強い渇望を俺に話せ。話さねば、或いは、その話がつまらなければ、俺は貴様を葬る」

「結局殺すのかよフレディ・マーキュリー似のおっさん、交渉が下手過ぎるぞ」

「その強気は、令呪に裏打ちされてるのか? だとしたら無意味な事だ。北斗琉拳、疾火煌陣。この間合いなら、貴様が令呪を消費する前に殺す事など容易い。
選べ、死ぬか、話すか、だ」

 ハンと十兵衛との間の距離は、三〜四m。喧嘩においても、一足飛びで詰められる短い距離であるが、相手は拳法家のサーヴァント。
この程度の距離など問題にならないだろう事は、十兵衛も流石に理解している。だから、彼は、観念したように口を開く。

「何で出会ったばかりの奴に、自分の恥晒さなくちゃいけないのかね……」

 重い溜息を吐いて、十兵衛は語った。

「俺は人間的に重大な欠陥を患ってる。……普通の奴なら、それも、幼稚園児のガキにだって出来る事がある時出来なくなっちまった」

 ハンの、獰猛な光を宿す瞳を強く睨みつけて、十兵衛が言った。

「ある時を境に、自分から”諦める”と言う能力が欠如しちまった」

「ほう」

 十兵衛の言葉に興味を持ったのか、そんな言葉をハンは漏らす。

「……ぶっ殺したい位憎い奴がいる」


734 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:05:12 dqc0CoY60

 そう語る十兵衛の顔は、酷い怒りと憎悪、そして、後悔に彩られていた。
ハンの表情に、感嘆の念に彩られた。それは、ハンが評価する感情であったからだった。

「俺は、そいつと喧嘩をした。絶体絶命の状況で、俺は自分の策謀で奴をビルから突き落として、俺は成り行きでビルの屋上から川に飛び込んで……。
絶対に勝ったと思った。……だがそいつは生きていた。不死身の肉体でな。油断して川から上がった所を突かれて、俺はボコボコにされた」

 ギリッ、と、歯軋りの音。

「顔面の形が変わるんじゃないかって程殴られて……マジで死ぬって思って命乞いして……、ションベンまで漏らして……。
挙句の果てに、県知事のおふくろの七光りに救われて……。悔しくて、悔しくて、悔しくてなぁ……ッ」

 ――あの時十兵衛は、絶対に勝ったと思ってた。相手を倒したと言う安心感から、完全に油断し切っていた。
今にして思えば、馬鹿な話である。どんな事にも絶対何てある訳がないのに……。
師である入江文学は言った、「お前がやっていたのは喧嘩じゃない、遊びだ」と。本当にその通りだったと思う。
生半な覚悟で喧嘩に臨んだ代償が、忘れたくても忘れられない屈辱と、命の危機。……二度と、あんな目になど遭いたくなかった。
そして……一刻も早くこの記憶を抹消したかった。……自分をそんな目にあわせた喧嘩師、工藤優作を倒して/殺して。

「そいつを殺したいのか」

「ちげーよフレディ野郎、女心が読めねーな」

 盛大に舌打ちを響かせて、十兵衛が補足する。

「そいつにな、俺が味わった屈辱と同じ位の恥辱は味あわせてやりたい。そいつを同じ目に遭わせたいからこそ、俺は歯食い縛って地味できつい鍛錬にも耐えて来た。
お前の言う通り、俺が現状で一番渇望してる事はそれさ。だが、それはあくまで聖杯じゃなく、俺の力でやりたい。自分の願いは自分で何とかするんでね。
聖杯にはGoogle買収でも願うってわけ」

 十兵衛はプライドの高い男でもある。
工藤優作の事を今も恨み続けていると言う点からも推して知るべき事柄だろう。
そんな男だからこそ、あの喧嘩師とは自分の実力でケリをつけたかった。でなきゃ、今までの自分の修行が無駄になってしまう。
キリストの血を受け止めた聖遺物を、あんなバカヤクザの抹消に使うだなんて、勿体ない事この上ない。
だから、聖杯は自分の欲望――Google買収――の為に使わせて貰う。こう言う事であった。

「……フン、面白い男なのか、俗な男なのか、よく解らんな。小僧、お前、聖杯戦争を勝ち抜く覚悟はあるのか。
お前も時と場合によっては、人を殺す状況がないとも言えぬのだぞ」

「フレディ、英霊になるほどの拳法家であるアンタに聞きたいがよ、喧嘩……って言うか、闘争だな。それにおいて先ず真っ先に求められる才覚って何だと思うよ」

「知れている。それは――相手を殺す事について悩まないか、と言う事だ」

「ビンゴ。存外、似た者どうしだな」

 ピッ、と人差し指を上げて十兵衛が言った。

「喧嘩ってのはさ、相手を慮っちゃいけないのさ。俺の喧嘩の師匠である、いい歳こいて童貞で、AT限定免許しか資格のないおっさんが聞いたよ。
勝利を得る為にその時必要な技が相手を殺っちまうかも知れないものだった時、お前はそれを相手に使えるのか、ってよ」

 「だから俺はこう答えた」。
ニッ、と、本当に悪辣な笑みを浮かべて、十兵衛が口を開いた。

「負けたくないから放ちますってな。負ける位なら、殺した方がマシなんだよ、俺は。縦しんば相手が生きてて、相手にどんな障害が残ろうが、知ったこっちゃねぇ」

 十兵衛が表明を終えてから、沈黙が流れた。
言葉を返すべきである筈のハンが、緘黙を貫いているからだった。
値踏みする様な目線が、十兵衛を嘗め回す。底冷えする程の殺意を宿した瞳である。十兵衛に拭えぬ恥をかかせた工藤優作だって、あんな瞳ではなかった。
如何なる死線を潜り抜けたら……あんな目が出来て、あんな身体つきになれるのか。学ランの下のシャツを汗でグショグショにしながら、冷静に考える十兵衛。

「……成程。存外、つまらない男ではなかったようだな」

 フフッ、と相好を崩して、ハンが言った。十兵衛が、嘗て感じた事のない程の緊張感から、解放された瞬間でもある。


735 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:05:49 dqc0CoY60


「正直な事を言えばな、内心ではかなり恐れていたよ。俺はつまらない人間にだけは従いたくはないからな。
かと言って、この聖杯戦争を勝ち抜きたくないと言う腑抜けに従うのも御免だ。俺はこの聖杯戦争で退屈を紛らわすのが、何よりも楽しみだったのだ。
そんな機会を、早々に失いたくなかった。俺が一時的に従ってやるマスターとしては、小僧。貴様は及第点だ。認めてやる」

 思い起こすのは生前の日々。
一言で言えばハンは、強い男だった。拳格も高く、拳法の才覚も、格上であるカイオウやラオウに引けを取らぬ位あったと言える。
彼は拳法修行が何よりも楽しかった。日々強くなって行き、その力を戦闘で存分に揮う事が、何よりの楽しみになるのには時間はいらなかった。
だが彼にとっての最大の不幸は、北斗琉拳を学んでしまった、と言う事であろう。この拳法は、強すぎた。そしてハンの才能が、ありすぎた。
琉拳を極め、強者の頂に辿り着いた時には、彼と同等の才能を持っていた男は、カイオウとヒョウ、ラオウ以外にいなかった。
強者となってからの日々は退屈を極まりなかった。誰もが自分の実力に恐れをなし、誰もが自分に媚び諂おうとする。
強い男と戦うのに相応しい拳法である北斗琉拳を学んだと言うのに、その拳法が余りにも強すぎたせいで誰も挑む者がいなくなってしまったと言うのは皮肉な話だった。

 退屈で退屈で、退屈で、退屈で……。気の狂ったふりをして兄弟子であるカイオウに挑みかかろうとした事も、少なくなかった。
兄弟子と言う手前、そんな暴挙を犯す訳にも行かず、さてどうしたものか、と悩んでいた時に、あの男がやって来たのだ。
思い出しても血が滾る、長い人生で、あれ程楽しく、血肉が湧き躍った戦いはない。北斗神拳伝承者・ケンシロウ。
修羅の国にて広く信じられている救世主伝説の主人公、ラオウでこそなかったが、ケンシロウもまた強かった。事実、ハンはその男に敗れた。
全力で戦い、奥義を披露し、それでも及ばなかったのならば、最早悔いはない。拳法家としての本懐は、十分果たされた。

 聖杯戦争!! なんと素晴らしい催しなのだろう!!
洋の東西、いや、世界の壁と時間軸の隔てなく、あらゆる時代あらゆる世界から英雄猛将大悪人共が集まる、戦いの場。
これにハンが滾らぬ理由がない。ケンシロウと同格いや、それ以上の戦士がいるかもしれないのだ。修羅の国に敷かれていた、修羅制度よりも魅力的である。
こんな、まさに自分の為に用意されたとしか思えない程おあつらえの戦場から、つまらない理由からハンは退場したくなかった。
佐藤十兵衛は、悪くない。当分は自分と共に行動する事を許してやる程度には。

「だが、小僧。仕方のない事と言えばそれまでだが……お前はどうも魔力が不足し過ぎている。これでは、十全の力を発揮出来ぬかも知れない。……出るぞ、小僧」

「出るって……あぁ、なるほどね。そう言う事か。」

 マントを翻し、背を向け始めたハンに対し、当初は怪訝に思った十兵衛だったが、すぐに何をするのか合点が行ったらしい。
ニヤリ、と笑みを浮かべながら、早歩きで彼を追い越す。そして示し合せたように、両者は同時に言葉を紡ぐのだ。

「魂喰い(しょくじ)の時間だ」

「魂喰い(メタルスライム狩り)の時間か」

 ニヤリ、と笑みを向けたのは、今度はハンの方だった。
彼の姿が、空気と同化して行く様に透明なそれとなった。成程、これが霊体化か、と感心する十兵衛。覗きには大層便利な能力である。

 一陣の風が吹いた。寒い、どこのクソ田舎なんだよ冬木は、と、平時は悪態を吐く所であるが、今はそうではなかった。
今の自分の心境を、静かに彼は呟くのである。その顔つきは、今までの彼からは想像もつかない程真面目で、遊びのない顔つきであった。

「燃えるぜ」

 ――新都の路地裏で不良を尽く惨殺する十五分程前の、冬木某所の公園での一幕が、以上であった。


736 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:06:14 dqc0CoY60





                             最強のマスター/サーヴァントは誰か!?

                          多種あるマスター/サーヴァントがルール無しで戦った時……

                          出来レースではなく策謀暗殺ありの『戦争』で戦った時

                             最強のマスター/サーヴァントは誰か!?






                          今現在、最強のマスター/サーヴァントは決まっていない





【クラス】

アサシン


【真名】

ハン@北斗の拳


【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷B++ 魔力D 幸運D 宝具B


【属性】

混沌・中庸


【クラススキル】

気配遮断:A++
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
暗殺拳の一種である北斗琉拳を高いレベルで会得しているアサシンの気配遮断能力は極めて高く、
かつ後述する宝具効果により、攻撃の態勢に移っても気配遮断のランクが下がらない。


【保有スキル】

北斗琉拳:A++
一子相伝の暗殺拳である北斗神拳を源流を同じにする、1800年前に創始された暗殺拳。またの名を、北斗劉家拳と呼ぶ。
凄絶な修行を経ねば技の会得は許されず、アサシンの高いステータスはその修練に裏打ちされている。
北斗神拳同様、矢や銃と言った飛び道具に対する見切り技や返し技、経絡『破孔』を利用した拷問、人体に備わる自然治癒を活性化させる術を持つ。
ランクA++は流派の中でも最高峰の使い手であり、正統伝承者と全く引けを取らないレベルで、様々な奥義を使用する事が出来る。
但しアサシンですら北斗琉拳を極めたと言う訳ではなく、アサシンの場合は『魔界』と呼ばれる境地に足を踏み入れていない為に、
ランクがややダウンしている。

勇猛:A+
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
命のやり取りをこそ最高の愉悦とし、周りの部下を敢えて自分に敵対心を抱く者や『修羅』と呼ばれる拳法家で固めているアサシンの勇猛ランクは、最高クラスである。

気力放出:B
武器ないし自身の肉体に闘気を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。いわば『魔力放出』の闘気版である。
闘気の扱い自体は、北斗・南斗の名を冠した他の拳法でも可能であるが、北斗琉拳は闘気の扱いにおいてはそれらの拳法から一歩抜きんでている。


737 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:06:50 dqc0CoY60


【宝具】

『疾火煌陣』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:1〜15
北斗琉拳を扱うアサシンの戦法そのものが、サーヴァントとなって宝具となったもの。常時発動型の宝具。
修羅の国を跋扈する修羅や、彼らを束ねる郡将ですら、『拳の影すら捉える事が出来なかった』と言わせしめる攻撃速度をアサシンは持つ。
己の肉体のみを用いたアサシンの攻撃は、影も見えず、音も立てず、残像すら確認出来ない。
宝具ランクと同等の宗和の心得を持ち、ランク以下の見切りに類するスキルを無効化させる。
アサシンが攻撃態勢に移っても気配遮断ランクが下がらない理由の正体がこの宝具である。
但しこの宝具の恩恵を受けるのはあくまでも『肉体のみ』を用いた攻撃だけで、闘気を用いた範囲攻撃であったり、闘気を目に見える形で纏わせた場合は、
この宝具は機能しなくなる。


【weapon】

北斗琉拳:
1800年前に、北斗宗家の者達が、北斗神拳の創始とほぼ同時期に創始した、とされる暗殺拳。開祖はリュウオウとされる向きが強い。
北斗神拳では人体の気孔を秘孔と呼ぶのに対し、北斗琉拳は破孔と呼び、その秘孔と破孔の数が違うと言った細やかな差異はあれど、概ねの箇所は似通っている。
北斗神拳と戦い方は似通っている。が、戦いに対するスタンスが違い、北斗琉拳の優れた使い手及び伝承者は、
身体から放出される圧倒的な闘気を用いて空間を歪め、相手との距離感や、空間の把握能力を狂わせ、其処を突く事を旨とする。
そう言った戦い方の都合上、闘気の扱いにも長け、北斗琉拳以上に闘気に長けた拳法は、現状元斗皇拳をおいて存在しない。
そして北斗神拳との最大の相違点は、北斗琉拳には所謂、『魔界』と呼ばれる技術の領域が存在し、これは、
拳の使い手が大きな怒りや憎悪を抱いた時に踏み入れる事が出来る境地とされ、北斗琉拳の究極の頂とされる。
魔界に足を踏み入れた者は元の人相の原型がない程邪悪なそれに代わり、その影は幻魔影霊と呼ばれる魔人の姿を地面に映す。
更に扱う闘気が『魔闘気』と呼ばれるそれに変貌。これを戦闘に利用すると、空間の把握能力が狂うのではなく、
相手は一時的な無重力状態に陥ったような錯覚を覚え、まともに立っている事すら叶わなくなる。
非常に強力な拳の境地である事は確かだが、この状態に入った者は正気を失い、いたずらに殺戮を繰り広げる状態となる。
この『魔界』の存在のせいで、一時北斗琉拳は魔道の拳であり北斗神拳に及ばぬ屑星の拳とされた、と言う事実がある。
但し本来的には北斗の名を冠する通り非常に拳格の高い流派で、そもそも北斗琉拳の創始者が北斗神拳の創始者と兄弟だったと言う事実から、
古の昔より交流が深く、『北斗神拳に伝承者なき場合はこれを劉家拳より出す』という掟が存在するなど、非常に密接な関係にある。


【人物背景】

核の炎に世界中が包まれ、地球上からあらゆる緑が失われ、殆どの生命体が死滅してしまった地球。
その地球の中に存在した、修羅の国、つまり昔で言う中国に興った『修羅の国』と呼ばれる国を統治していた、三人の羅将。その一人がハンである。
彼の過去については謎が多い。いつ北斗琉拳を学んだのかと言う事実を筆頭に、ケンシロウとヒョウの関係やラオウの事をどこで知ったのか、等。
ただ言える事があるとすれば、彼は常軌を逸した戦闘狂であると言う事、そして彼が学んだ北斗琉拳は、一子相伝の暗殺拳、北斗神拳の正統伝承者、
ケンシロウを大いに苦戦させる程に磨き上げられたそれである、と言う事だった。


【サーヴァントとしての願い】

ない。聖杯戦争で強者との戦いを楽しむ。


【基本戦術、方針、運用法】

アサシンらしからぬ、高いステータスと、攻撃態勢に移ってもランクがガタ落ちしない、高ランクの気配遮断が最大の武器であるサーヴァント。
格闘戦は寧ろ、固有スキルと宝具、そして北斗琉拳の技の数々を考えれば平均よりも遥かに秀でていると言っても良く、下手な三騎士クラスであれば、
返り討ちに合わせる事も可能である。一対多との戦闘も得意であり、闘気を用いた範囲攻撃で、軍団を生み出す宝具もカバーできる。
アサシンのセオリー通りである、マスター暗殺が最も強力かつ驚異的な手段であるのだが、ハンは兎に角戦闘狂であり、アサシンクラスでありながら、
マスターを無視しサーヴァントと戦う傾向にある。恐らくハンのこの性情こそが、唯一にして最大の弱点となるだろう。


738 : 山さん…大変な時なのにありがとう ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:07:20 dqc0CoY60



【マスター】

佐藤十兵衛@喧嘩商売


【マスターとしての願い】

Google買収。工藤優作を倒す願いは、聖杯では叶えない


【weapon】


【能力・技能】

富田流の継承者である入江文学から師事しており、流派の奥義を幾つか伝授されている。
心臓に重い一撃を叩き込んで相手を一瞬で気絶させる『金剛』、自己暗示をかけて火事場の馬鹿力を引き出す『無極』、
投げ落とす際に股間に通した手で睾丸を握り潰し、その痛みで相手の受け身を封じる『高山』。以上三つを使用可能。
またこれ以外にも、進道塾の高弟達にしか伝授されていない秘奥義である『煉獄』も、不完全ながら使う事が出来る。
だが十兵衛の戦闘の骨子は、勝つ為ならば何でもする、と言うそのスタンスである。
打撃や組、投げ技を利用するのは勿論の事、ルール規定がなければ凶器攻撃も平然と行うダーティさは、彼を語る上で外せない要素。
また非常に頭が良く、機転も利き、様々な知識・雑学を用いて罠や策略を巡らせることにも長け、洞察力も優れている。
これを利用して戦う前から自分の有利な状況を作り上げて置き、相手のペースを大いに乱す。これが十兵衛の恐ろしさである。
彼と戦った者は皆口を揃えて言う。十兵衛は、追い詰めてからが本番である、と。


【人物背景】

東京から栃木県宇都宮へと引っ越してきた高校生。官僚の父と、県知事の母を持つ。
父親の仕事の都合から転校が多く、またその体格の良さからいじめのターゲットにされていた過去を持ち、中学1年の時、偶然出会った、
進道塾で空手を学んでいた高野照久に助けられた。が、この時高野から言われた「見た目は強そうなのにお前弱いんだな」、と言う言葉をバネに、
いじめられっ子から脱却する事を決意。後の師である、富田流の入江文学から指導を受け、喧嘩に明け暮れる生活を送るようになる。
嘗て自分を助けてくれた高野を、自分の強さを見せつけると言う意味で喧嘩を売り、彼を倒す。
しかし、喧嘩三昧の毎日を送る過程でヤクザをボコボコにした事がきっかけで、彼に向けて送り込まれた工藤優作に完膚なきまでの敗北を叩き込まれる。
命乞いまでし、失禁すらしてしまったその時の屈辱が忘れられず、再び十兵衛は、嘗ての師である入江文学から再び師事。
工藤へのリベンジマッチの為に、文学の下で修業をし、その力をつけて行くのであった。

嫌いなものは春菊とピーナッツ。事あるごとに女性の知識を披露するが、実際には童貞かつ仮性包茎のエロ孔明(経験はないけどエロ知識だけは豊富と言う意味)
過去に教育実習生の多江山里から、細木数子を見ると勃起してしまう体質に調教されており、過去に戦った柔道家のキンタマを潰した際に、
彼が上げた苦悶の声を携帯の着信音にしている。
つまり佐藤十兵衛と言う男は――滅茶苦茶性格が悪い。


【方針】
さしあたって冬木の様子見。フレディのおっさんを何とか操りたい。


739 : ◆zzpohGTsas :2015/03/17(火) 17:07:41 dqc0CoY60
投下を終了します


740 : 名無しさん :2015/03/19(木) 15:41:08 .BzuGAnE0
質問よろしいでしょうか
この聖杯戦争ではルーラーもしくは監督役のような立場のキャラが配置されるのでしょうか?


741 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/20(金) 02:15:20 tTZCsZOo0
>>621
麻雀繋がりの野郎二人は強烈ですね。
若い鷲巣ならルーデルと同じで戦闘続行がついていてもおかしくはない。
原作のアカギを読むと、永遠の命を願う鷲巣の必死さも際立ちますね。

>>629
真夜ちゃんかわいい。かわいい。
何故、生まれてしまったという根本に逆らう彼らはまさしくリヴェンジャー。
世界が赦しに満ちているか、問いかけるミュウツーの覚悟もまた真っ直ぐでキレッキレ。

>>640
装着型バーサーカー、マスターを完全に殺しに来てますね。
スキルの単独行動といい、気に入らなかったら裏切れることに、おお、もう。
愛する者達の為に、どこまで忌夢が覚悟を定められるか。

>>649
すごく雰囲気はシリアスなのに、モグは可愛いしアザーラは風格がある。
聖杯を心の底から否定はしないけれど、縋る気はないスタンス、いいなぁ。
戦争についてしっかりと考えてるからか考えに地盤がありますね。

>>662
可愛さアピールコンビはどう考えても血生臭い戦闘に合うと曇る。
聖杯戦争で可愛さアピールとか難しいんだよなあ。
幸子のアイドルオーラで何とか出来たら苦労はしないけど、難しい。

>>669
何だかんだで凸凹ってなりながらも、相性はいい主人公コンビ。
安藤は肝心な時はきちんとキメるし、無銘もしっかりとしてるし。
ランサーのスキルである【いっしょに】もゲームシステムぽくて面白いですね。

>>678
エピローグ後のジナコカルナの安定感、強い……。
本編とは違ってこの二人なら大丈夫だって断言できますね。
ジナコが出した聖杯戦争に対しての答えもらしくて、もう。

>>688
互いに抱くのは正義であるけれど、埋められない溝があるようで。
本文でもある通り、境界を越えるか越えないか。
盟友になるか、敵対視したまま果てるのかが鍵になってきますね。

>>699
まゆの言葉の節々が実にらしくてしみじみしましたね。
「死んだままなら怒られた方がいい」って所がまゆですねぇ。
対潜弱点だったり、竜田揚げだったりユニークなスキルもある龍田を上手く使いこなせるのか。

>>708
ヤムチャは普通に強いはずなのに、何故か不安視してしまう。
でも、紘汰さんの重い空気と中和されていい塩梅。
そして、所持金が貧困だって部分が哀愁をそそる。

>>718
未来を変えるといった境遇は共通していても、目的は正反対。
聖杯を手に入れると絶対に争いそうなコンビですね。
取り返しがつく選択をするのか、それとも取り返しがつかないまでに突き進むのか。

>>728
ヘラヘラしていながらも復讐は自分の手で完遂する。
最強を望む彼らの戦いは燃えますね。
ハンとの武闘派コンビも様になっていますし、実に面白い。

>>740
ルーラー、もしくは監督役に準ずるキャラは配置する予定で進めています。
ちなみに、ルーラーなり監督役なりの候補話も絶賛募集中です。

後、今更ですっごく申し訳ないですが、この戦争で死んだ参加者、NPCの死体は残ります。
現状は矛盾もないので大丈夫かと思っております。


742 : 仲村ゆり&セイバー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/20(金) 02:16:14 tTZCsZOo0
例えばの話である。
もしも、時間を巻き戻せて、やり直せるとしたら――どうするか。
考えた所で仕方はないのかもしれないし、何より時間の無駄だ。
仲村ゆりは投げやり気味に空を見上げ、深く溜息をついた。

「所詮、夢は夢であって、現実とはかけ離れているってね」

空の上か。はたまた、海の底か。
彼女が望む世界は一体何処にあるのか。
戯言である。考えた所で抱えているものが軽くなる訳でもなし。

「いい加減、ぬるま湯に浸るのも飽きたし……そろそろ動こうかと思うのよ」

死語の世界に堕ちても決して消すことのなかった【憤怒】を忘れ、ゆりはこの偽りの世界で茫洋と日常を演じ続けた。
もっとも、記憶を取り戻してからは、日常などお構いなしであったが。

「僅かながらでも、可能性があるなら賭けてみようなんて。聖杯に縋れば、幸せな日常が戻ってくるかも〜って思っちゃうとはねぇ。
 しかも、クソッタレな神様に一瞬でも頭を垂れたことは本当に末代までの恥ね」

霞んでいた過去の悔恨を何度も反復することで、怒りを固定する。
縁は自分の記憶だけ。思い出せたのは幸か不幸か。
喉を鳴らし、顎に指を当てて、くつくつと笑う。

「あたしらしくもない。成仏したからって精神的に日和りすぎよ。ま、結果的にはまだ成仏できてないけどさ」

ゆりの中にいる【悲嘆】は望む。
聖杯の奇跡を以ってして家族を蘇らせ、幸せだった日々を取り戻せ、と。


743 : 仲村ゆり&セイバー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/20(金) 02:18:01 tTZCsZOo0

「それにしても調子に乗りすぎよね、神様って奴は。ああ、本当に殺してやりたいし、ムカつくムカつくムカつくっ!」

そんな切なる【悲嘆】の願いを、ゆりは踏み潰した。
自らの意志で七難八苦の戦場へと飛び込み、足を進める。
聖杯も、神様も全部ぶっ潰す。誰かに敷かれたレールの上を直走るなどまっぴら御免である。
ゆりは震える身体を無理矢理に抑えつけ、手を伸ばす。

「――あんたは、どうな訳? 聖杯最高ですぅ〜とか抜かす感じ?」

伸ばした手は強引に掴まれて。
握り返された力は強く、強く。

「答えなさいよ」
「……答えて欲しいのか? わかりきった答えを返す程、愚者でもあるまい」
「いいえ、別に。どんな返答が返ってこようとも、あたしの答えは決まってますから。どんな手を使ってでも、神様を引きずり出してフルボッコ!
 そのついでに聖杯を投げ捨てて、高らかに笑ってやるわ」

眼前の男は煙草を吹かし、眼を細めるだけ。
彼は少女に何も語らない。何も、明け渡さない。
短くなった煙草を投げ捨てて、男――セイバーのサーヴァント、斎藤一は揺らぐこと無く言葉を紡ぐ。

「俺に願いはない。生前に未練がある、そんな女々しさは持ち合わせていないからな。
 今回呼ばれたのも座の気紛れだろう。無論、呼ばれたからにはこの刀に誓って、最後まで戦うがな」

斎藤は腰にぶら下げた刀に軽く手を当てて、目を細める。
それはまるで、主を見極める狂犬のようで。

「やることは生前と何一つ変わらん。偽りの街だからといって、戯れが過ぎる阿呆共はいつだって存在する。
 市井に仇なす腐った悪は、主従問わず始末をつけるのが俺の役割だ」

「悪・即・斬。聖杯に目が眩んで悪業に手を染める奴等は斬る」

その対象は主であっても例外ではない。
斎藤は言外にそう釘を刺していた。


744 : 仲村ゆり&セイバー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/20(金) 02:18:27 tTZCsZOo0

「後一つ。言っておくことがある」
「随分と注文が多いのね」
「貴様の刃となるんだ、これぐらいの要望は黙って聞き入れろ」

そして、新たにタバコを口に咥え、火をつけた。
たったそれだけの動作がゆりの身体から吹き出る汗を更に多くさせる。
これが、サーヴァント。人と英霊の間にある隔たりだとゆりは理解した。

「魂喰いは絶対にしない。俺の生命が尽き果てようとも、それだけは断じて認めない」
「あら、生き汚いのは嫌いなの?」
「貴様は俺に弱者を食い散らかす程度の低いことをさせるのか? いいだろう、やってみろ。
 ただし、それを強制した瞬間――貴様を斬り捨てるがな」

甘かった。令呪などで支配できるから安心だという自覚が僅かにでもあったことが恥ずかしい。
これは駄目だ。令呪を使って行動を縛れるなどと考えるべきではない。

「別に構わないわ。あたしがしたいのは無意味な虐殺ではないから」

ならば、最大限に利用することでどうにか手綱を取るだけだ。
せっかく掴んだチャンスを、棒に振ってなるものか。

「その言葉を違えないことを願いたいものだが」
「そっちこそ、生半可に遊び半分で消えてしまわないことを祈っているわ」

皮肉交じりに誓った言葉に、嘘偽りはなかった。
そう信じることで、身体の震えを抑えるしか無い自分の弱さが、嫌になった。


745 : 仲村ゆり&セイバー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/20(金) 02:20:02 tTZCsZOo0
【クラス】
セイバー

【真名】
斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運B 宝具??

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E-
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を僅かに軽減する。

騎乗:E-
乗り物を乗りこなす能力。
馬や単車程度なら勘で乗れるかどうかというレベル。

【保有スキル】

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

戦闘続行:A
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
生前の彼はどれほどの深手を負おうとも、自らの正義を貫く為、刀を握り続けた。

宗和の心得:B
同じ相手に同じ技を何度使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。
攻撃が見切られなくなる。

【宝具】

『牙突』
種別:対人魔剣 最大捕捉:1
斎藤が独自に編み出した必殺の刺突が魔剣として宝具レベルにまで昇華されたもの。
幾つもの型があり、まともに受けたら身体が真っ二つになる威力。

【weapon】
日本刀。

【サーヴァントとしての願い】
未練がましく、聖杯へと縋らなくちゃ叶わない願いなどないはずだ。

【人物背景】
元新選組の三番隊組長の男。主人公である緋村剣心とは幕末で斬り合ったこともある。
維新後は【藤田五郎】と名を変え、西南戦争では警視庁抜刀隊に所属した。
そして、その後は警部補に奉職するが、裏では警視庁の密偵として暗躍する。


【マスター】
仲村ゆり@Angel Beats!

【マスターとしての願い】
このふざけた聖杯戦争を企んだ神をぶっ殺す。ついでに、聖杯も。

【能力・技能】
拳銃、ナイフなど、戦闘技能はある程度身に付けている。

【人物背景】
死後の世界でSSS(死んだ世界戦線)を率いていた少女。
裕福な家庭の長女として育てられたが、自宅へ押し入った強盗により弟妹たちを全員殺され、弟妹達を助けてやれなかったことを今でも強く悔いている。
最後に、音無達よりも一足先に【卒業】して消滅するはずだった。

【方針】
どんな手を使ってでも聖杯、神様はぶっ殺す。


746 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/20(金) 02:20:49 tTZCsZOo0
投下宣言してないですが、投下終了です。


747 : 名無しさん :2015/03/20(金) 04:13:25 fiVAhfPA0
まとめ

【セイバー】10
杉村弘樹&黒沢祐一
伊佐木要&ツナシ・タクト
高嶺清麿&マタムネ
本居小鈴&ムゲン
碇シンジ&パルパティーン
パンナコッタ・フーゴ&ランスロット
海馬瀬人&ラクウェル・アップルゲイト
加藤久嵩&ゼンガー・ゾンボルト
石川安吾&東仙要
○仲村ゆり&斎藤一

【アーチャー】9
○スタン&瑞鶴
広川剛志&エシディシ
前川みく&ジャスティス
呉島光実&暁美ほむら
テッド&電
ニコラス・D・ウルフウッド&電
霧嶋董香&Верный(ヴェールヌイ)
国崎往人&武蔵
ルパン三世&冴羽 獠

【ランサー】11
酒留清彦&ジャガージュン市
笛口雛実&レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)
蓮見琢馬&田村玲子(田宮良子)
レイ・ザ・バレル&Dボゥイ(相羽タカヤ)
桐ヶ谷 柩&ディルムッド・オディナ
ウェカピポ&ミリア=レイジ
香月舞&東光太郎
グレミオ&ラーハルト
安藤寿来&無銘
ジナコ=カリギリ&カルナ
佐久間まゆ&龍田

【ライダー】11
斉祀&???
レパード&太公望
月影ゆり&南光太郎
ラカム&ガン・フォール
南条光&ニコラ・テスラ
鹿矛囲桐斗&赤マント
甘草奏&聖帝サウザー
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト&草加雅人
牧野エリ&ブラック
鷲巣巌&ハンス・ウルリッヒ・ルーデル
モグ&アザーラ

【キャスター】12
○比良平ちさき&雪姫
八神はやて&ギー
呉島貴虎&メディア
エヌ氏&ロック
野原みさえ&ギーグ
球磨川禊&戦極凌馬
ドラコ・マルフォイ&ダークライ
○神楽坂明日菜&超鈴音
美樹さやか&リタ
サラ&ベアトリーチェ
ガノンドロフ&ゾーマ
鹿目まどか&エレン


748 : 名無しさん :2015/03/20(金) 04:13:41 fiVAhfPA0
【アサシン】16
○水本ゆかり&シルベストリ
霜月美佳&ジャギ
ディアボロ&夜神月
音無結弦&あやめ
佐野 満&野々原渚
神条紫杏&緋村剣心
アルミン・アルレルト&郭海皇
レオパルド&飛影
エルンスト・フォン・アドラー&U-511
巴マミ&シックス
○衛宮士郎&衛宮切嗣
速水玲香&七人目のミイラ(六星竜一)
アリー・アル・サーシェス&キルバーン(ピロロ)
○竜ヶ峰帝人&クレア・スタンフィールド
ケイジ&T-1000
佐藤十兵衛&ハン

【バーサーカー】8
○シン・アスカ&デスピサロ
ダンディ&ヤクザ天狗
葛西善次郎&ン・ダグバ・ゼバ
○シュラ&アギト
カテジナ・ルース&岩本虎眼
ギム・ギンガナム&バルバトス・ゲーティア
横山千佳&六本腕の魔法少女(リビングデッド・マジカル)
忌夢&呀

【エクストラ】11
〈モレスター〉
鷹鳥迅&遠山万寿夫

〈アドミラル〉
ルドル・フォン・シュトロハイム&提督

〈ヴァンパイア〉
○雷小龍&月島亮史

〈しろがね〉
本田未央&加藤鳴海

〈イマジネーター〉
暁美ほむら&園村麻希

〈ネゴシエイター〉
○ココ・ヘクマティアル&佐山・御言

〈シーカー〉
夜神総一郎&レオーネ・アバッキオ

〈ファイター〉
アインハルト・ストラトス&キン肉マン(キン肉スグル)
葛葉紘汰&ヤムチャ

〈リヴェンジャー〉
番場真夜&ミュウツー

〈キャプティベイター〉
輿水幸子&めそ


749 : ## ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:44:06 Q3XmgwyU0
皆様お疲れ様です
これより投下させていただきます


750 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:44:46 Q3XmgwyU0



聖杯戦争におけるサーヴァント―――英霊。
それは端的に一言で言うならば、生前に多くの逸話や伝説を持った英雄或いは準ずる者が、
後世において人々の強き信仰を得て形を成した存在である。
彼等は聖杯戦争というシステムがなければ、本来人の手に御せる存在では決してない。

その強さは、遥かに人の領域を超えており……



「グハァッ!?」



まともに戦って、人間が勝てる存在ではない。



「……くっ……!!」


全身を駆け巡る激痛に、たまらず苦悶の唸り声を上げる。
壁面へと叩きつけられ半ば埋もれたその背からは、足元のアスファルトまで血がにじみ出ている。
骨にまで届いてないのはせめてもの救いなのだろうが、それにしても大きいダメージだった。
しかもこれは、長時間に及ぶ死闘の末などではなく……開幕からものの1分、万全の状態からたったの一撃を受けただけの結果だ。


「これが……サーヴァントの強さなのか……!!」


目の前に立つ黒い異形のサーヴァントを前に、ジョナサン・ジョースターは心底驚嘆していた。
彼は無謀にも、サーヴァントを相手に生身で戦いを挑んでいたのだ。


751 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:45:05 Q3XmgwyU0
何故、この様なことになったのか……事の発端は、十分程前に遡る。




◆◇◆




業火に包まれ沈みゆく客船の中、宿敵ディオの首を抱き抱え、ジョナサンは安らかにその生を終えた。
彼にとって、ディオは憎き父の仇であり許してはならない邪悪そのものだった。
だが、そんな相手に対して彼は死の間際にこう言い残したのだ。


――――ディオ……君のいうように、ぼくらはやはりふたりでひとりだったのかもしれないな。


――――奇妙な友情すら感じるよ……


自らに致命傷を与えた宿敵を尚、ジョナサンは友だと言ったのだ。
お互いに、言葉では容易く言い表せないほどに辛い日々を過ごしてきた。
例えそれが、命を賭けて殺し合うものへと変化していったとしても……
二人で一緒に過ごした時間は、かけがえのない本物だった。
少なくともジョナサンは、そう死の間際に感じていたのだ。

だからこそ……彼は、無意識のうちに願ってしまったのかもしれない。

もしもやり直せるのなら……こんな形ではない、真っ当な友人同士として共にありたいと。

そんな、純粋な願いが……聖杯に届いた。

彼を、この聖杯戦争へと導いたのだ。


752 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:45:25 Q3XmgwyU0


「……聖杯戦争、か……」


目覚めた時、その身に刻まれた筈の致命傷は完全に癒えていた。
加えて、令呪を通じこの聖杯戦争の知識と情報を与えられた状態で……
万全そのものと言ってもいい状態で、ジョナサンは冬木の街に一人立っていた。

そう……誰も傍らに立つことなく、一人でだ。
マスターとして聖杯に選ばれたのにも関わらず……側にいる筈のサーヴァントが、どこを見渡してもいないのである。
これはどういう事なのか。
もしや自分には、サーヴァントも何も与えられなかったのではないか。
状況からして、ジョナサンはそう考えずにはいられなかった。

しかし……その直後、彼はふと己が右手に違和感を覚えた。
いつの間にか、自分でも気がつかぬ内に何かをその手で握り締めていたのである。
とっさに持ち上げ、眼前へと掲げると……そこには、見た事もない謎の道具があった。


「このスティックは……?」


それは、光沢を放つ白いスティックだった。
どこか短剣のように見えなくもない、神秘的なデザイン。
そして握りしめている手からは、不思議と温もりを感じる。
まるで自分を優しく包み込もうとするかのような……その印象を言葉で表現するなら、まさに『光』だ。
このスティックは、光が形を持ったかのようなものだと……ジョナサンには、そう思えた。


(……不思議だな。
 不安だった心が、自然と安らいでいる……)


心が穏やかになる。
この神秘的なスティックのおかげだろうか。
何も分からぬままにただ呼び出されどうすればいいのかも分からなかった胸中に、いつのまにか落ち着きが取り戻せていた。
そしてそうなると、今後に向けてどうすべきかという思考が働いてくる。
この聖杯戦争で、自分はどうすればいいのか。
聖杯を得るために、ここで戦わなければならないのか。
生き残り願いを叶えるために、他者を倒さなければならないのか。


753 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:45:43 Q3XmgwyU0


(……聖杯があれば、どんな願いでも叶う。
 ディオも生き方を狂わせることなく、父さん達も無事に生きていられる世界が……)


もし聖杯が手に入ったなら、自身にとって理想とも言える世界が訪れるだろう。
エリナも、父も、スピードワゴンも、ツェペリも、そしてディオも。
誰もが幸せに生きていられる理想の世界で、皆と共に己もあれるだろう。

だが……それを望んで、本当にいいのだろうか。



―――――ガッシャァァァァァァッ!!!



「なんだ……!?」


そんな考えが脳裏に浮かんだ、その刹那。
後方より聞こえてきた巨大な轟音に、ジョナサンは驚き振り返った。
何か硬い物―――例えるなら石や岩がハンマーで破壊されたかのような、明らかな破砕音だった。
少なくとも、自然に起こる物音ではない。
そして、それを裏付けるかのように……発生源であろう場所から白い煙が立ち上っているのが見て取れる。
嫌な予感がする。
何が起きているかはわからないが、兎に角ただ事ではない。
思考を中断させ、ジョナサンはその直感の命ずるままに駆け出した。


そして、その当たって欲しくない予感は当たってしまった。


754 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:46:29 Q3XmgwyU0


「これは……!!」


ジョナサンが駆けつけた轟音の発生源。
それは、小さな一軒のアパートだった。
見るとある部屋の外壁が粉々に吹き飛んでおり、無残な姿を晒している。
そして、その内部には……黒い異形の化け物がいた。
2メートルを超える巨躯に、極めて太い四肢。
かろうじて人と分かる二足歩行の様相はしているが、全身を漆黒の靄で包まれており容姿がまるでわからない。
恐らく……いや、間違いなく破砕音の原因はこの怪物だ。
ならば、こいつは一体何者なのか。


(……あれは!?)


注意深く観察して、ジョナサンはそれを発見した。
怪物の足元で倒れ伏している男がいる。
その手には、赤い三角の印が……自身と同じく令呪が宿っているではないか。
つまりあの異形は、この男が召喚したサーヴァントなのだ。
飛び散った破片からしてアパートが内部から破壊された事は明らかであり、他の主従が仕掛けてきたわけではなさそうなのがその証拠だ。
恐らくは本人も意図せぬ偶発的な召喚だったのだろう。
狭いアパートの一室でサーヴァントを召喚してしまい……そして御する事叶わず、暴走させてしまった。
男は酷く出血しており、ピクリとも動いていない……既に事切れているようだ。
それにも関わらずサーヴァントが現界し続けていることからすると、単独行動スキルかそれに準ずる何かを持っているのだろうか。


「な……なんだ……?」


その時だった。
アパートの各部屋から、爆音と衝撃に驚いた住民達が次々に出てきたのだ。
暴走したサーヴァントが間近にいる中で、彼等は現れてしまった。
最悪のタイミングだ。
そんな事になれば当然、このサーヴァントは……


「ぐ……グオオォォォォッ!!」


獲物と見定め、襲いかかる。


755 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:47:15 Q3XmgwyU0




――――――ブシャァァァッ!!!



力強く振る割れた豪腕が、もっとも近くにいた男の頭部をいとも容易く砕いた。
鮮血の噴水が降り注ぎ、周囲の人々を朱に染めていく。
何が起きたのか理解できず、誰もがその悲惨な光景を前にただ呆然として立ち尽くしていた。


「う……うわああぁぁぁぁぁっ!!??」


そして一秒にも満たない僅かな時間を経て、一人の男が悲鳴を上げた。
目の前で人が死んだ、無惨に殺された。
その事実に恐怖し、心の底から絶叫した。
それを皮切りに周囲の者達もまた同様の反応を示す。
このままでは確実に、この化け物に殺されてしまう……そう誰もが感じ、一斉に駆け出し始めた。
死にたくないと一心に、我先にと逃げ出し始めたのだ。


「あっ……!?」


だが……そんな住民の一人に、不幸が訪れた。
恐怖のあまり足がもつれ、その場に膝から倒れ込んでしまったのだ。
焦りの声を上げ、急ぎ震える手で体を起こそうとする。
しかし……遅かった。
既に怪物は、その目の前まで迫ってきていた。
その豪腕を振り上げていたのだ。


「い……いやぁぁぁぁぁぁっ!!」


嫌だ。
こんなところで死にたくない。
彼女は涙と鼻水で顔を歪ませ、迫り来る死の恐怖に声を荒らげた。

そして、無情にも豪腕は振り下ろされ、彼女の命を……


756 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:47:51 Q3XmgwyU0


「波紋……!!」



奪うことは、なかった。



「疾走ッ!!」



青白い閃光が迸り、怪物の腕を打つ。
振り下ろされるはずだった一撃は、その衝撃に静止をやむなくされたのだった。
これぞ、修行と壮絶な戦いの末にジョナサン・ジョースターが身につけた、太陽の力。
特殊な呼吸法により肉体から生み出された、サーヴァントにも通じうる神秘の生命エネルギー……その名を、波紋!


「逃げるんだ!!
 この怪物は、僕が引き付ける!!」


ジョナサンは怪物から女性を庇い、両者の間に割って入った。
そう、彼は立ちはだかったのだ。
人間の身では決して勝てぬ超常の存在たるサーヴァントの前に。
目の前で命が失われるのを、防ぐために。


「あ……は、はい……!!」


助けられた女性は、困惑しつつも立ち上がり、言われたとおりにその場から離れていった。
ジョナサンはそれを見届けると、安堵のため息をついた。
周囲にも逃げ遅れている者は誰もいない。
残っているのは、自分とこの怪物だけだ……ならば、やるべき事は一つ。


「こいつを、このまま野放しにはできない……いくぞ!!」


この怪物を倒すことだ。


757 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:48:14 Q3XmgwyU0
勢いよく地を蹴り、怪物へと全力の蹴りを繰り出す。
無論ただの飛び蹴りではない、波紋を纏わせてある。
さらにそこへ、全身を捻り錐揉み状に回転を与える。

亡き師も用いた、必殺の一撃……!!


「波紋乱渦疾走!!」


トルネーディ・オーバードライブ。
渾身の錐揉みキックに波紋を組み合わせたその一撃は、一直線に怪物の胴体へと突き刺さった。
常人は言うまでもなく、人を超えた吸血鬼ですらも受ければただではすまないその威力。
それがまともに直撃したのだから、当然相応のダメージは通っているはずだ。
そう、今の一撃にジョナサンは確かな手応えを感じていた。


「グオオオオオオォォォォッ!!」

「なっ!?」


しかし……この尋常ならざる怪物相手には、決定打にはなりえていなかった。
僅かに怯む様子こそあれど、唸りを上げて真っ直ぐに拳を突き出してきたではないか。
ジョナサンは咄嗟に両腕を交差させ、その一撃が無防備な胴体に直撃するのを防ぐ。


「グハァッ!?」


だが、防御越しの一撃ですら威力は想像を絶していた。
凄まじい勢いで体が吹き飛ばされ、アパートの敷地を覆うコンクリートの外壁へと背より叩きつけられた。
今まで体験してきた中でも、最大級の一撃だった。
タルカスやブラフォード、そしてディオですらも上回るほどの、恐るべき豪撃だった。


「これが……サーヴァントの強さなのか……!!」


人の身でサーヴァントに挑む。
それがどれだけ無謀な行いなのか……ジョナサンは、その一撃をもって思い知ることができた。


758 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:48:42 Q3XmgwyU0




◆◇◆




怪物が、一歩一歩こちらに迫って来る。
己の命を完全に絶つために、トドメを刺そうとしてきている。
このままでは、まずい。


「くっ……なら!!」


体を壁より起こし、同時に怪物目掛け勢いよく左腕を地面から上空へと振り上げる。
さながらソフトボールのピッチャーの如き、所謂アンダースローの動き。
それに伴って、腕を滴っている鮮血が怪物へと跳ねた。
波紋を纏った血の飛沫を飛ばす、言わば血の散弾だ。
そして血液は高い波紋伝導率を誇る。
まともに直撃すれば、ただではすまない威力だ。


「グウゥゥゥゥッ!!」


だが、またしても通じず。
怪物は両腕を交差させた防御体制のまま、波紋の散弾を浴びながらも突き進んできている。
戦力差がありすぎるが故に、打つ手が尽く通じない。
あまりにも絶望的な状況だ。


「……まだだ、まだ……!」


しかしそれでも、ジョナサンは諦める訳にはいかなかった。
ここで自分が倒れれば、この怪物は街へと解き放たれるのだ。
そうなれば、犠牲者が出てしまう。

いや、この怪物だけではない。
聖杯戦争が始まれば、これ以上の力を持った存在とて現れるかもしれないのだ。
そうなれば……どれだけの人々が巻き込まれるのか。
どれだけの命が失われてしまうのか。
どれだけ、悲しい思いをする人々が出てしまうのか。


「そんなのは……嫌だ……!!」


そうだ、そんな事は望んでなんかいない。
例えこの世界が僅かな時間で閉じる儚きモノであるとしても、そこに生きる人々の命を見殺しにはできない。
まして参加者として招かれた者達相手には尚更だ。
聖杯があれば、どの様な願いだって確かに叶えられるだろう。
だが、それを手にするためだからと言って、人を殺めていい理由には決してならない。
生きる全ての人々の誇りを、汚していい理由にはならない。


759 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:49:27 Q3XmgwyU0
「僕は……こんな聖杯戦争を、許すわけにはいかない!!」


聖杯戦争を止める。
こんな間違った儀式は、絶対に止めなければならない。
だからこんなところで諦めてたまるか。

強き思いを、勇気の心を持って、ジョナサンはそう宣言した。





――――――よく言った、ジョナサン。




「え……?」


その時だった。
右手に握り締められていたスティックが、青く光り輝いたのだ。
まるで、彼の誇り高き魂に呼応するかの様に。


「ッ……!?」


その光を前に、怪物も思わず足を止めてしまった。
本能的に感じ取っていたのだ。
これはただの光ではない。
ジョナサンが放った波紋と同質の……そして遥かに強力な神秘性が秘められている光だと。


760 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:49:57 Q3XmgwyU0



――――――君のその気高き魂、勇気……しかと受け止めた。



そしてスティックは一際眩い光を放つと、その姿を変化させた。
先端が三叉に開き、柄の文様がスライドする。
その下から顕れたのは、人の顔を模した白き彫刻だ。


「この声……まさかあなたが、僕の……?」


その顔を見て、脳裏に語りかけるその声を聞いて、ジョナサンはその事実に気づいた。
自分にはサーヴァントがいなかったのではない。
この手に握られていたこのスティック。
そこに宿るこの神秘の存在こそが、他ならぬ自身のサーヴァントなのだ……!!



――――――君にならば、私の力を託せる……!



スティックから放たれた光は、ジョナサンの左手に収束され形を成す。
それは、小さな一体の人形だった。
白銀の肉体に真紅のラインを走らせ、輝くクリスタルを体の各部に宿した力強きフォルム。
強い勇気の心を持つ者の前にのみその姿を現す、光のスパークドールズ……!


「……はい!!」


声の導くままに、ジョナサンは動いた。

展開された右手のスティック―――その名をギンガスパーク!―――を、自らの体の前に掲げる。

そして、左手に握られたスパークドールズをその頂きに力強く合わせる……!!


761 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:50:31 Q3XmgwyU0



――――――ウルトライブ……!!



光の奔流が、ギンガスパークより溢れだす。
それはジョナサンの全身を包み、そして彼の中へと流れ込んでゆく……!!


「ウオオオォォォォォォッ!!!」


今、彼は自身のサーヴァントとひとつになる……!!




――――――ウルトラマン……ギンガッ!!




◆◇◆



「…………!!」


目が潰れるかと思わんばかりの光が、ようやく消え去った。
一体、何が起きたというのか。
怪物―――バーサーカーは、瞼を持ち上げ視線を前方へとようやく向ける。
するとそこには、今までいたはずのジョナサンの姿はなく。


「グォォッ!?」


彼に代わり……新たな一人の戦士が静かに佇んでいた。
光輝くクリスタルを身に纏う、白銀の戦士。
それは、ジョナサンが握り締めていたスパークドールズそのものの姿。


「ショウラァッ!!」


ランサーのクラスをもって現界を果たし、そして一体化を果たしたジョナサンのサーヴァント。
その名は、ウルトラマンギンガ……!!


762 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:50:54 Q3XmgwyU0


「ハアアァァァッ!!」


ギンガが力強く雄々しい声を上げると共に、その手に蒼く煌く三叉の槍が出現する。
これこそが、彼が槍兵のクラスに選ばれた所以。
宝具『銀河に輝く希望の槍(ギンガスパークランス)』!


「イィヤァッ!!」

「ッ!?」


弓を引くかのごとく力強くランスを引き絞り、疾走するギンガ。
瞬時にして詰まる互いの間合い。
そしてレンジに捉えると同時に、ギンガは勢いよくランスを全力で突き出す。
対するバーサーカーもまた咄嗟に拳を突き出し、その迎撃を図る。
必殺の威力を込めた矛先と拳とが、真正面より激突しあい……!



――――バキィッ!!


「ガァァァッ!?」


バーサーカーの拳が、音を立てて砕け散る!
そして矛先は尚も止まらず……その胴体を正確に、真正面より突き穿つ!


「グギャァァッ!?」

「オオォォォォッ!!」


肉体をぶち抜かれ、苦痛に呻きを上げるバーサーカー。
ギンガはそんな彼の巨体を、ランスを力強く振り上げることで夜空へと投げ上げた。


763 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:51:23 Q3XmgwyU0

「これで決める!!」


その手のランスを光の粒子に変えて収め、ギンガは必殺のポーズを取った。
手刀を作った右手を、肘を垂直にして体の前へと縦に構え。
握った左の拳を、Lの字を作るかのように右手の肘に合わせる。
同時に、全身のクリスタルが白く光輝き、その右腕全体には一際強力な光が宿る……!!


「ギンガクロスシュート!!」


そして、叫びと共にその光は解き放たれた。
右腕より溢れ飛び出した光線―――ギンガクロスシュートは、一直線にバーサーカーへと突き進み……
膨大な熱量が、その肉体を飲み込む!!



「グギャアアァァァァァァァァッ!!!」



―――――ドゴォォォンッ!!!



バーサーカーは自らを襲う光に断末魔の悲鳴を上げ、その肉体を爆発四散させた。
不運なマスターの下に召喚され、殺戮の限りを尽くそうとした誰もその名を知らぬ狂戦士は、この瞬間に聖杯戦争より脱落した。

光を体現した英霊……ウルトラマンギンガの手によって。




◆◇◆




(……すまない。
 本当なら、もっとちゃんと弔いたかったんだけど……)


764 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:51:48 Q3XmgwyU0

バーサーカーとの死闘を終えた後。
状況的にあまり人目につくのはまずいと判断して、ジョナサンはあの場を離れた。
不幸にもバーサーカーの犠牲となった者達を弔いたい気持ちはあったが、危険を考えればどうしても離れざるをえなかった。
それが、どうしても悔しいが……せめて、冥福だけは祈らせてほしい。
ジョナサンはアパートの方角へと顔を向け、静かに一礼をしたのだった。



「……ウルトラマンギンガ。
 それが、あなたの名前なんですね」


礼を終えた後、元の形状へと戻ったスパークランスを見つめ、彼は静かにそう呟いた。
先程語りかけてきた声は、今はもう聞こえない。
だが、彼は紛れもなく自身のサーヴァントとして側にいてくれている。
一体化を果たした中で、彼は語りかけてくれた。

自らが必要になった時は、再び力を貸してくれると。
己が勇気を失わない限り、自分の力を貸そうと。
その誇り高き魂に誓い、共に戦おうと。

ジョナサンをマスターとして認め、この聖杯戦争を戦い抜いてくれると。


「ランサー……ウルトラマンギンガ。
 僕はこの聖杯戦争を必ず止める……どうか、力を……!!」



その体漲る勇気に、迷いなき覚悟に喝采を。




【クラス】
ランサー

【真名】
ウルトラマンギンガ@ウルトラマンギンガ

【パラメーター】
筋力:- 耐久:- 敏捷:- 魔力:- 幸運:-  宝具:A++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】

対魔力:C
 魔力に対する守り。
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
 このスキルは、銀河に輝く光が発動した時のみ機能する。

【保有スキル】

仕切り直し: C
 戦闘から離脱する能力。
 また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
 このスキルは、銀河に輝く光が発動した時のみ機能する。

飛行:A
 空を自在に飛ぶ能力。
 このスキルは、銀河に輝く光が発動した時のみ機能する。

使い魔(スパークドールズ):A
 怪獣や宇宙人、ウルトラマン達の魂が宿ったスパークドールズを使い魔として顕現・自身と一体化させて使役できる。
 ただしこの聖杯戦争においてはギンガが他のスパークドールズを保持していないため、このスキルを使うことはできない。

勇気ある主:B
 ランサーが現界する上で宿したデメリットスキル。
 マスターの心に勇気が満ちていない限り、如何なる状況であろうともランサーは銀河に輝く光を開放できない。
 確かな勇気と希望を持って、諦めず真っ直ぐ前に向かう者にのみランサーはその力を貸す。


765 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:52:26 Q3XmgwyU0

【宝具】
『銀河に輝く光(ギンガスパーク)』
ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1〜300 最大捕捉:200
 ランサーを象徴する宝具にして、またランサーそのものとも言える存在。
 マスターの心に勇気が満ちた時に、真の姿を展開してギンガのスパークドールズを出現させる。
 そのスパークドールに宿る魂をマスターがこの宝具で読み込んだ時、ランサーはマスターと一体化しウルトラマンギンガとして顕現する。
 この時、ランサーのパラメーターは 筋力:A 耐久:B 敏捷:A 魔力:C 幸運: B へと変化し、
 対魔力、飛行、仕切り直しのスキルが機能するようになる。
 この宝具が発動すればマスターは極めて強力な能力を誇る存在となるが、
 その効果に比例して魔力消費も相応に高い上、この宝具は継続して三分間しか使用できない。
 制限時間を越えると自動的に宝具の効果が終了する。
 再度の使用には一定以上の感覚を置く必要があるが、マスターの魔力次第で感覚を短くすることは可能。
 本来この宝具で顕現したウルトラマンギンガは50メートルを超える巨人となるのだが、
 英霊という枠に当てはめた為に性能が落ちており人間大の大きさでしか顕現できない。

『銀河に輝く希望の槍(ギンガスパークランス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100
 ウルトラマンギンガがランサーのサーヴァントとして選定された由縁の宝具。
 蒼く光り輝く三叉の槍で、銀河に輝く光を開帳して顕現した後に使用可能となる。
 ランサーの身の丈程はあるだろう長槍だが、これをランサーは片手で軽々と操る。
 
【weapon】
 銀河に輝く光が発動しなければ戦闘は不可能。
 宝具開帳後はギンガスパークランスをメインに用いる他、徒手空拳でも屈指の実力を持つ。
 そして必殺の威力を持った多彩な光線技を扱える。

【サーヴァントとしての願い】
 勇気ある希望を秘めたマスターと共に戦う。

【人物背景】
 遥か昔に、すべてのウルトラ戦士と怪獣・宇宙人が激しい戦いを繰り広げていた世界にて。
 ある日、何者かによって彼等の大半が人形『スパークドールズ』に姿を変えられ、宇宙中に散り散りになった。
 それから千年の時が経った地球において、悪意を持つ人々がスパークドールズと一体化し、怪獣となって暴れだしていた。
 そこで地球人の少年礼堂ヒカルの下に突如として降り立ち、彼に自らの力を貸し与えた謎のウルトラマン。
 ヒカルと共に数多くの困難を乗り越え、そして宿敵ダークルギエルとの戦いを終えた後に彼から離れ姿を消した。
 その正体は時を越え現れた未来のウルトラマンにして、元はダークルギエルと一つの存在であった。
 『永遠の命=後世へと受け継がれていく命の繋がり』という命題に対して、それを信じた光の側面がギンガとして、
 受け入れられなかった闇の側面がダークルギエルとなったのである。
 故にギンガは、自身の力を与える人物として真っ直ぐに未来を目指す勇気と希望に満ちたヒカルを選んだ。
 本来ならば英霊というカテゴリーに当てはまらない力を持った存在なのだが、
 強引にその枠に当てはめているのに加えて未来の存在である為知名度・信仰が皆無に近いこともあって、
 この聖杯戦争において能力は大幅に制限されている。


766 : ジョナサン&ランサー ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:52:48 Q3XmgwyU0

【マスター】
ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
 人々の命を奪う聖杯戦争を許せない。
 必ず止めてみせる。

【weapon】
 徒手空拳。
 ただし必要に応じて剣や波紋伝導率の高い武具を使う事もある。

【能力・技能】
 特殊な呼吸法により生み出される神秘の生命エネルギー『波紋』の使い手。
 体術にも優れており、練り合わせた波紋と組み合わせて戦う。

【人物背景】
 イギリスの名門貴族ジョースター家の一人息子。
 性格は極めて真面目な英国紳士で、己の信ずる正義のためならばどのような困難であろうとも怯むことなく、
 それを真正面から受け止め、乗り越えることが出来る、そして自分の正義だけを盲信せず、他人に対する配慮を忘れないで、
 共感する優しさをもっている。
 父親のジョージ・ジョースターが養子として引き取ったディオ・ブランドーとの出会いを切っ掛けに、彼の運命は大きく動き出した。
 ジョースター家の財産乗っ取りを密かに企てていたディオは、執拗なまでに彼へと様々な謀略を仕掛け失墜を狙うが、
 その最中にジョージ・ジョースターの毒殺を企てていたことが彼へとバレてしまう。
 しかし追い詰められたディオは発見していた石仮面の力で吸血鬼となってジョージを殺害し、ジョナサンにも手傷を負わせ逃げ延びた。
 その後、ジョナサンは吸血鬼となったディオを倒すべくウィル・A・ツェペリに師事して波紋法を習得。
 ディオとの決戦に臨み、犠牲を払いながらも勝利を収める。
 決戦後は恋人のエリナと結婚し、仲間達に見送られて新婚旅行に出るのだが、
 その旅路にて生き延びていたディオに客船を襲撃され、致命傷を負ってしまう。
 炎上し沈みゆく船の中、最後の力を振り絞ったジョナサンはエリナを逃し、そして逃げ延びようと足掻くディオを道連れにしてその生を終えた。
 その間際には、ディオにどこか奇妙な友情を感じていた。

【方針】
 聖杯戦争を止めるために出来ることはないか、模索する。
 また、人々の命を平然と奪う悪は許さない。


767 : ◆uYhrxvcJSE :2015/03/21(土) 02:53:05 Q3XmgwyU0
以上、投下終了になります。


768 : ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/21(土) 03:38:02 wWtg3RCE0
投下お疲れ様です。
私も短いですが投下させていただきます。


769 : ボッシュ=1/64&バーサーカー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/21(土) 03:39:58 wWtg3RCE0
見上げた先に、青があった。
果てしなく、限りなく、空間が広がっている。

青に点在する白から覗く光は暖かく。何処かから吹き抜けていく風が心地よく。
踏みしめた緑の大地は柔らかく。そしてそれらに何の感慨も抱かず。
原野に一人立つ少年は、初めて味わう陽光の眩しさに目を細めた。

「……リュウ」

降り注ぐ光に手をかざし、金髪の少年……ボッシュは呟く。
仰ぎ見るのは偽りの青空。刷り込まれた知識がそう教えてくれていた。

「お前は……空を開いたのか……?」

反逆者たちが目指した空は、ここには無い。
つまり、この地平にボッシュを殺した竜はいない。
ならばこの世界全ては、ボッシュにとって何の意味も無いものだった。

「だったら……俺も行かないと……駄目だよな」

何故こんな事になったのか、理由はどうでも良かった。
自分が蘇った訳も、侵食された身体が元に戻っている事も、どうでもいい。
リュウがここにはいない、それだけが重要だった。

「また……すぐに追いつくよ……相棒」

輸送任務の失敗以降、ずっとボッシュはリュウの背中を追い続けた。
積荷を処分する時も。隊長と共に包囲した時も。半身を捨てた時も。
そしてリュウと同種の力を手にした時も。だから、今度も。

「お前に出来て……俺に出来ないわけ……ないよな」

リュウ=1/8192は統治者を打ち倒し千年の封印を破るという不可能を成し遂げた。
ならばボッシュ=1/64が聖杯戦争という障害を乗り越えられない道理など存在しない。
既に、チェトレに代わる新しい力は与えられていた。

「……バーサーカー」

ボッシュの背後に、異形が現れた。二足で立つ、赤い鬣の、牙持つ獣人。
獣の瞳に理性の輝きは無く、ただそこに在るだけで暴力的な威を放つ。
ボッシュはその狂戦士の圧にも平然としていた。慣れたものだった。

「俺……行かないと……あいつのところに」

往かねばならなかった。例え世界を壊してでも。
リュウのいる、本当の青空の下へ。
そして、今度は。

「だからさ」

柔らかな風を全身に浴びながら、穏やかにボッシュは言った。
ただ一つの願いを叶える為に。

「全部、叩き潰せ」

狂戦士の、獣の雄叫びが、空を震わせた。


770 : ボッシュ=1/64&バーサーカー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/21(土) 03:41:37 wWtg3RCE0
力を示さねばならない。
例えそれがどこであろうとも。
立ち止まる事など出来る筈がない。
何度道を踏み誤ろうとも、命ある限り、走り続ける。
それだけが唯一、自分の存在を証明する方法なのだから。


  ○  ○  ○


 ――――あー、駄目だなこ■は。

召還のプロセスの最中、―――――は思った。
過去の記憶を思い出すために召還に応じたのはいいのだが。

 ――――バー■ーカーって、ついてね■な。

現在進行形で、―――――は狂気に侵食されていた。
今から喚ばれるのがどんな世界か見たかったが、どうやらそれは叶いそうにない。

 ――――なん■■うか、同■するぜ。

そしてどうにも自分の勝ちがとても遠い事も悟っていた。
狂気だけならまだしも、とても不快なものが精神に纏わり付いてくる。

 ――――歴史■■視■ば、確か■俺はろ■■な■■■か■■。

―――――を汚染するのは狂気だけではない。彼自身の過去。
望まずとも歴史に刻んだ悪名が、―――――の身も心も侵してゆく。

 ――――サ■■■■トって■■■倒なも■■。

ブレードトゥース。―――――のもう一つの姿。
十万Gの賞金首。もはや弁明も不可能なハンターキラー。

 ――――■ろそ■考■■の■難し■■■■■■。

狂気と風評が蝕み、怪物としての性質が固着していく。
聖杯戦争のシステムに組み込まれた以上、抗うことはできない。

 ――――ご■■■一■■戦■■■■■■■。

まだ見ぬマスターに思いを馳せる。男ならまだいい。
女の子が相手なら悔やんでも悔やみきれない。色んな意味で。

 ――――■■■。

意識が闇に沈んでいく。
全ては塗り替えられ、そして。

 ――――がんばれ■。

怪物だけが残った。


771 : ボッシュ=1/64&バーサーカー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/21(土) 03:43:20 wWtg3RCE0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
ブレードトゥース@メタルマックス3

【属性】
中立・狂

【パラメータ】
補正込  筋力A+ 耐久A+ 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具C
補正無  筋力C  耐久B  敏捷C 魔力E 幸運D 宝具C

【クラス別スキル】
狂化:A
理性の代償として能力を強化する。
全ての理性を引き換えに全能力値が上昇し、更に筋力と耐久が1ランク上昇する。
宝具により本来より1ランク上昇している。

【固有スキル】
無辜の怪物:A
生前の行いから生じたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられた怪物の名。
能力や姿が変貌する。バーサーカーの場合、真名が賞金首時代のものに変更され怪物としての側面が強化された。
このスキルは外す事ができない。

砲弾迎撃:B
両腕を振るって迎撃可能な攻撃を遮断する。獣人化している時のみ効果を発揮する。
対象は砲弾やミサイルのような遠距離攻撃など。宝具によりある程度の魔術も叩き落す事が可能。
間断の無い連続攻撃や飽和攻撃などは防ぎきる事が難しい。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらく自立できる能力。
ランクCならばマスターを失っても一日は現界可能。

仲間殺し:B
怪物としての特性。狂化状態でもこのスキルの効果は発揮される。
バーサーカーは自分の腕の届く範囲に何者かが存在する場合、確立でそれを攻撃する。
攻撃判定は常に行われており、味方も対象内である。マスターも例外ではない。
スキルに無辜の怪物が存在する限り、このスキルが無効化されることは無い。

【宝具】
『100,000Gの賞金首(クラン・ナンバー3)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
冷血党という武装組織に捕獲された、とあるハンターの成れの果て。
数々の賞金稼ぎを殺害し人々から恐怖されたバーサーカーの一面が宝具として具現化。
常時発動型の宝具であり、発動中は赤い鬣と長大な牙を持つ獣人の姿に変身する。
これはバーサーカーに移植されたメタモーフ細胞と呼ばれるものの効果である
筋力と耐久に常にプラスの補正がかかり、更に狂化が1ランク上昇する。
そして様々な戦車や機動兵器を破壊したバーサーカーの爪撃には機械属性に対しての特効が発生する。

この宝具は無辜の怪物と連動しており、令呪を使用しても解除することができない。
宝具とスキルのどちらか一方だけを封じても、多少能力が劣化するだけで獣人化が解除される事は無い。
両方まとめて無効化された場合は人間の姿に戻り、激痛に地面をのたうち回りしばらくの間は戦闘不能になる。
もしもこの状態で生き残り、且つ宝具の再起動に成功した場合、バーサーカーは必ずマスターに反逆する。
反逆したバーサーカーはどんな状況であってもマスターの息の根が止まるまで執拗に攻撃し続ける。

バーサーカークラス専用宝具であり、違うクラスで召還されていればこの宝具もまた違った姿を見せる。

【Weapon】
爪と牙

諸々の効果が解かれた場合も素手で戦う。武器は取り出せない。


772 : ボッシュ=1/64&バーサーカー ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/21(土) 03:44:46 wWtg3RCE0
【人物背景】
武装集団クラン冷血党の幹部にして凶悪な賞金首。賞金の額はクランの中で最高の十万G。
ハンターや一般人はおろかクラン内でも恐れられる狂獣であり、目的のためなら仲間も殺す。
元々はクランに捕獲されたハンターで、監禁中は実験体1313号と呼ばれていた。
成功率が極めて低い人体改造手術が成功したため洗脳処理を施され、組織の手駒として各地を荒らしまわった。
この賞金首として悪名を広めていた時期は常に変身状態にあり、一握りの人物しか彼の人間としての素顔を知る者はいない。
組織に対する忠誠心は皆無であり、魔犬のオズマというハンターと交戦した際に洗脳が解け、冷血党への復讐を誓う。
組織の指導者であり己を怪物に変えたグラトノスに戦いを挑むも返り討ちにされ再び捕えられる。
何とか脱走するが追っ手の手に掛かり絶命。その後、とある科学者に拾われ蘇る事になるが代償として記憶を失う。
それからは記憶を取り戻すために大陸各地で女の子とイチャついたり依頼をこなしたり色々したりしつつ冷血党の壊滅に成功する。
復讐に成功し嫁もゲットしたが、最後まで記憶が戻る事は無かった。

以上の経緯により賞金首と賞金稼ぎの二面性を持ち、どのクラスで召還されるかによって性質が変わる。
例えばライダーとしてならば凄腕のハンターとして現われ、残虐非道の賞金首として認識されないので無辜の怪物が付くような事も無い。
今回はバーサーカーとして召還されてしまった為、無法者としての側面が前面に出ることになってしまった。
望まずして行った大量の犯罪行為により無辜の怪物として扱われ、その象徴である獣人状態が解けることは無い。

【サーヴァントとしての願い】
過去を思い出してみたかったが召還された時点で半ば諦めている。

【基本戦術、運用法】
とりあえずバーサーカーに殺されないように注意が必要。
単独行動持ちだが狂化と常時発動している宝具のせいで平時でも魔力の消耗が激しい。
宝具の魔力消費はどうにもならないので頑張って耐えるしかない。もし解除すればそれはそれで地獄を見ることになる。
なので長生きしたければ交戦はなるべく避ける。そして出来るだけ敵を作らないこと。


【マスター】
ボッシュ=1/64@ブレス オブ ファイア V ドラゴンクォーター

【マスターとしての願い】
そらをみにいく。

【weapon】
獣剣
レイピアのような細身の剣。

【能力・技能】
獣剣技

チェトレの力は使用不能。力の残滓なのか魔力は多め。

【人物背景】
地下世界に生きた16歳の少年。一言で表現すれば転落したエリート。
名前にある数字はD値と呼ばれ、ボッシュのいた地下世界ではこの高低によって人生は決定付けられる。
ボッシュの64という値はかなり高い数値であり、将来は約束されたも同然、だった。
レンジャーという治安維持組織に所属し、そこで与えられた任務によってボッシュの運命は狂い始める。
任務の失敗、敗北、仲間を見捨て敵前逃亡、人を捨てるも再度の敗北。
最終的には人外の存在との接続を果たし、空を目指す者たちの最後の壁となって立ちはだかる。

幼い頃から狂育と呼んで差し支えない訓練を父親に強いられた結果、かなりの戦闘力を持っている。
ただし性格の方は癖が強くなってしまい、エリート主義に凝り固まった面倒くさい人間になってしまった。
同僚であるリュウ=1/8192とはD値が低い事を見下しながらもそれなりに親しく接していた。

【方針】
勝利する。


773 : ◆ZnyqsGLe0. :2015/03/21(土) 03:46:14 wWtg3RCE0
以上です。


774 : 孤独な少佐と復讐の王 ◆69lrpT6dfY :2015/03/21(土) 19:31:05 /DSNZVXM0
投下します。


775 : 孤独な少佐と復讐の王 ◆69lrpT6dfY :2015/03/21(土) 19:31:32 /DSNZVXM0

…………………

…………………

…………………

………どうやら、私は、

また、やり直す機会を得たようだ。



「本来の世界」に戻そうと戦い、それが潰れた男に、また「やり直し」の機会を与えるとは、なんという皮肉なのだろうか。

だがしかし、図らずしも呼び出された聖杯戦争とやらに、私は挑まなくてはならない。

レナードが敗れ、TAROSを再建して計画をやり直す事も出来なくなったいま、今の私に縋れるのは奇跡の器しかない。

現段階では信憑性は薄いのは重々承知している。今更伝承に出てくる願望器に現を抜かすというのもどうかとは思う。

だが、私がいた世界もどうだ。

パラジウムリアクター、アーム・スレイブ、ラムダ・ドライバ、オムニ・スフィア、……

そんなSFみたいな物がありふれていた世界があるなら、お伽話のような世界があってもおかしくないだろう。

普段の私なら、そんなものを“肯定”することはなかっただろうが。

ともあれ、瀕死であった筈の私が無傷で日本の知らない街にいて、その上戦争とは名ばかりの殺し合いに強制参加させられた以上、私はただ戦い抜くのみだ。



さて、現状での私が所持している戦力は、少々心許ない。

肌身離さず携帯していた小火器やナイフは、没収されたのか今はない。それらに関しては現地で用達すれば問題ないだろう。

一番の問題は私が所持する最大戦力、サーヴァントの方だ。

サーヴァント。過去の英雄たちを再現した従者。その力は彼らが残してきた武勇伝以上に凄まじいものである。

我々と変わらない背丈で、アーム・スレイブ以上の破壊力と機動性を持っている。全く常識を覆す存在だ。

しかし、私のサーヴァントには難点がある。

この聖杯戦争で私が引いた従者のクラスは狂戦士・バーサーカー。

狂化によってさらに能力を上げるが、その代償として理性を失い暴れるしか能がなくなる。

いくらかはこちらのいう事を聞いてくれるが過信はできないし、何より意志疎通が出来ないのは欠点以外の何ものでもない。

正直いって、いかに強大であろうとも制御の効かない兵器ほど信頼できないものはない。

アーバレストをあてがわれた頃の宗介と同じように、兵士の観点から見てコレの運用は無理だろう。

さらに宗介の場合は長期にかけてアーバレストに馴染み、AIとコミュニケーションを取り、彼自身の環境・心境の変化でアーバレストを最大限に使用できるようになったが。

一週間という制限が設けられて狂戦士との会話が成り立たない以上、この聖杯戦争を勝ち残るのはほぼ無理だと推測する。














ならば、敵マスターを沈黙させ別のサーヴァントを得るのが上策、か。





776 : 孤独な少佐と復讐の王 ◆69lrpT6dfY :2015/03/21(土) 19:32:14 /DSNZVXM0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
ゲイル・レアグローブ

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:D 宝具:C

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:B
 理性と引き換えにパラメータを上昇させるスキル。
 理性や技術・思考能力・言語機能を失っている。

【保有スキル】
再生:C
 傷付いても血を流さずに徐々に再生する。

戦闘続行:B
 戦闘を続行するための能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

勇猛:A
 威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。

【宝具】
『人ならざる闇、暴魔君臨(モンスタープリズン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:10
 悪しき者に邪悪な力を授ける魔石「ダークブリング」(以下、DBと省略)、
 その中でも強力かつ危険とされる裏DBと呼ばれるものの一つがこの『モンスタープリズン』である。
 このDBは依り代を強靭で凶暴な怪物へと変貌させるが、代償として人間の身体・理性・魂を封印し二度と人の姿に戻れなくする。
 しかし全てを殲滅せんとする闘争本能が向上し、幸運以外のパラメータを一段上昇させる。
 更に再生能力も備わり、口からビームを放つこともできる。

【weapon】
宝具によって得られた力で殴るのみ。

【人物背景】
デーモンカード(以下、DCと省略)でキングと呼ばれる最高司令官。(以下、「ゲイル・レアグローブ」を「キング」と称する)
また、かつて世界を震撼させ小国シンフォニアと戦争していたレアグローブ国の王の子でもある。
しかし戦後に生まれ普通に育ったゲイルは、後に同じ名前で同じ生年月日であるゲイル・グローリー(以下、彼を「ゲイル」と称する)と意気投合する。
――余談だが、ゲイルもシンフォニア王の息子であり生前からの因縁で結ばれているが、彼らはそのことを知らないまま親友となった。
共同で悪魔を退治し人々から守る組織・DCを結成したが、組織の規模が大きくなるにつれて意見の対立が深まり、最終的に彼らは別々の道を歩むようになる。

DCを引き継いだキングはDBを入手し、組織の悪行をさらに増長させてしまい、数年後に再会した親友ゲイルの言葉にも耳を貸せなくなっていた。
その直後、DC本部が治安維持を担う帝国の強襲を受けたため仲間や妻子を殺されキングは捕まってしまう。
原因がゲイルの通報である事を知ったキングはすぐさま脱獄、ゲイルへの復讐として彼の妻を目の前で殺害。
さらにゲイルに絶望を与えるため、広範囲を破壊するDB『エンド・オブ・アース』の種を植え付け、家族どころか誰にも会えない孤独を味あわせる。

そしてDCを再興し、より一層強大な悪の組織に築き上げ人々の生活を脅かしていた。
さらに数年後、ゲイルへの復讐を完遂するためにキングは情報を流してゲイルを誘き寄せ殺害しようとする。
ジンの塔にてゲイルと再会。さらに彼の息子にして二代目レイヴマスター・ハルもその場に居合わせたため、親子共々亡き者にしようと彼らと戦う。
最初は二人を相手にキングが圧倒していたが、逆転されてしまい深手を負う。そこでキングは裏DB『モンスタープリズン』を使用。
人間を辞めてまで治まりきらない憎悪を振りまきグローリー親子を苦しようとするが、最後の力を振り絞ったグローリー親子の一撃によりトドメを刺される。
しかし、裏DBが弱まり理性を取り戻したキングも最後の力を振り絞り、ゲイルに植え付けたDBを起爆………そして大爆発によりDC本部が消滅した。
キングは別のDBで『オーバードライブ』を転移させ、自分の胸に剣を刺し自害する。
最後になって憎しみよりも友情を捨てきれなかった事を告白し、親友との和解を経て、キングは安らかに息を引き取った。


此度の聖杯戦争では『モンスタープリズン』を使用した後より召喚されたため、理性を失えど憎悪を抱いたままの参戦である。


【サーヴァントとしての願い】
■■■■■■■■■■■

【基本戦術、方針、運用法】
ただ目標に向かって猪突猛進。
ある程度はマスターの言う事を聞くが制御はほぼ無理。
中距離以上で有効なビームも戦術的に使用するにはマスターの手綱次第。


777 : 孤独な少佐と復讐の王 ◆69lrpT6dfY :2015/03/21(土) 19:34:17 /DSNZVXM0
【マスター】
アンドレイ・セルゲイヴィッチ・カリーニン@フルメタル・パニック!

【マスターとしての願い】
「本来の世界」に戻す……?

【能力・技能】
厳格な軍人としての身体能力と手堅い指揮能力。

【人物背景】
ミスリル作戦部西太平洋戦隊“トゥアハー・デ・ダナン”陸戦コマンド指揮官。階級は少佐。
かつてはソ連の特殊部隊“スペツナズ”指揮官だったが、陰謀によって現在はソ連を追われている。
ミスリル所属後は的確な指揮で一癖二癖ある部下たちを統制し、数々の難しい任務を遂行してきた。

彼がアフガニスタンに従軍している間、彼女の妻・イリーナとお腹の赤ちゃんは祖国で彼が帰ってくるのを待っていたが、病院での医療事故により母子共に死去している。
退役後の未来図を描いていた彼にとっては妻子の消失は相当な衝撃を与え、数多の壮絶な苦難を乗り越えてきた彼にもその事だけは心の奥底に残っていた。
それから数年後、ミスリルに所属していた彼は敵対している組織“アマルガム”の幹部・レナードと接触。
彼から時間災害の話を聞かされ、彼のオムニスフィアを使った予言が的中したことを受け、「本来の世界」に戻す考えに賛同しアマルガム側につく。
この裏切りは『戦士の不文律』の体現者として絶対的信頼を置いていたミスリル側にしてみればかなり衝撃的なことであった。
その後はアマルガムに攻撃を仕掛けてくるミスリルの部隊と何度も衝突し、手堅い戦術で彼らを苦しませてきた。
しかし、彼の戦術をも上回るミスリルの猛攻により「本来の世界」に戻す計画は阻止されてしまう。
カリーニンは計画をやり直そうと最後まで足掻いたが相良宗介に阻まれ、ヘリの墜落時に傷を受けたにも関わらず宗介と最後の死闘を始める。
最後は自分にとどめをさせなかった宗介に対し、宗介自身の本質を説き、かつて宗介の母親が遺した言葉である「イキナサイ」を伝え息絶えた。

【方針】
バーサーカーの運用に匙を投げて、
他のマスターを排除し別のサーヴァントと再契約する。


778 : 名無しさん :2015/03/21(土) 19:34:41 /DSNZVXM0
投下終了です。


779 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:52:02 kU3hwANQ0
投下します。


780 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:52:34 kU3hwANQ0



 人の心を失くしたお前は、人じゃないだろ。





 夕暮れ刻。ソラの住む部屋のあるマンションの入口前。
 おどけた調子で「ハロー」とソラが声を掛けた相手は、セミロングの茶髪を靡かせる事務服の女性である。
 昨日ふとしたきっかけで出会った女性であり、この時間にこの場所で再会するよう約束し、こうして律儀に来てくれたのだ。

「お疲れさん。仕事はもう終わったんだよね?」
「はい。今日はちょっと頑張って終わらせてきました。いつもはまだ残業とのことなんですけど、今日は特別です」
「経理って言ってたっけ? 数字関係はどうも苦手だからさ、決算がどうのって話せるの凄いよね」
「いえいえ、皆さんそれぞれに得意分野を活かしているだけですよ。そう言う貴方だって、今日は用が済んだら私の髪をキレイにしてくれるんですよ?」
「ふふっ、ありがとー」
「あ、そういえば今日は皆さんにも『前より明るくなったね』って言われちゃいました。なのにもっと見た目が良くなるんですから、今日はラッキーです!」

 取り留めの無い会話であるが、楽しそうに受け答えしてくれる。その笑顔もまた好印象だ。
 このような出会いで無ければ、もしかしたら上客となり得る相手だったのかもしれないとソラは一抹の寂しさを胸に生じさせる。
 しかしそんな感情はすぐに脇に追いやり、ソラは本分である目的を果たすための質問を彼女にする。

「あ、そうそう。昨日言った通り、部屋に入る前に渡しておきたい物があるんだよね。ちょっとこっち来てくれる?」
「あれ? 部屋に入ってからじゃなくていいんですか?」
「うん、先に君に見てもらいたくてね。その後で部屋まで持っていくよ」
「ああ。そういうことですか。運ぶの手伝った方が良いですか?」
「別にいいよ。腕怪我してるでしょ? じゃあ、こっち来て」

 ちょいちょいと手招きし、女性を日陰側へと連れて行く。
 どこからか女の子の声が何かを歌うのが聞こえてくる。曲はトロイメライだが、歌詞なんてあっただろうか。
 奇天烈な歌を耳にしながら歩みを進め、建物の影に二人が覆い尽くされる辺りまで着いた時、そこには金髪碧眼の少女が笑顔を浮かべていた。

「こんにちは! あ、こんばんはでしょうか?」
「…………あれ? 私、何してるんだ?」
「さあ、何でしょう?」

 ぴたりと、女性の顔から笑顔が消える。
 まるで催眠から解けて正気に戻ったかのように、女性の顔は力が抜けきっている。
 唖然としたまま立ち尽くす女性に向けて、ソラは肩を抱いて顔を近づける。


781 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:53:18 kU3hwANQ0

「んぁ……は!? お前、何でここにいる、」
「うん、今ので十分だよ。ありがとね」
「え、ちょっ」

 途端に、女性の顔は驚愕と憎悪に歪んだ。
 下手に騒がれると面倒なので、鳩尾に思い切り一撃加えて気絶させる。
 ぐったりと寄りかかってくる女性を抱え、ソラは少女へと顔を向けた。

「よし、用は済んだよ。じゃあ片付けてくるから、ちょっと待っててねキャスター。ううん、可符香ちゃん」



 ソラ――怪人ファントムが聖杯の獲得を志す上で、厄介事が一つある。
 高い魔力を持つ者、ソラ達の言葉で言えば「ゲート」である者が、ファントムの手で、絶望のどん底に突き落とされた時。その者は新たなファントムを生み出して死ぬ。
 この原則は恐らく、冬木に集ったマスター達が相手でも同様なのだろう。
 問題は、ファントムとは元となった人物のそれと異なるとはいえ明確な自我を持った怪物であり、また程度の差はあれ戦闘能力も持っていることだ。
 ソラが魔力を持つマスターの殺害を実行すれば、至極単純な死への恐怖という絶望のためにファントムが生み出される。
 そしてそのファントムは、きっとソラの思い通りには動いてくれない。大方、聖杯への物欲を抱いたがためにソラの新たな競合相手として立ち塞がるだろう。
 厳密に言えば生命体ではない英霊はともかく、マスターを倒そうとすれば新たなライバルを無駄に生み出しかねないのだ。

 しかし、この課題を解決する手段を持つ者はすぐ側にいた。
 他でもないソラのサーヴァントとして現れたキャスターである。
 初めてキャスターのステータスを見た時、思わずソラは頭を抱えたものだった。キャスターを名乗りながら、彼女は本物の魔法など使えやしない。そして身体能力も平凡な女子高生と何も変わらないときた。
 ファントムであるソラに魔法使い(キャスター)を味方にしろと言い、それでいてまともに戦力にならない。酷い嫌味だとしか思えなかった。
 それでも、彼女の持つ宝具の一つはソラにとって好都合な代物だった。

 キャスターを象徴する代物であり、キャスターの名前をそのまま冠した宝具の名。
 それを人は、『フウラ・カフカ』と言う。



 深夜。街外れ。
 その女性が次に目を覚ました時、傍に立っていたのは緑の怪物が一体だけ。

「えっと……もしやその姿はグレムリンさんでしょうか?」
「ごめいとーう。別に機械に悪戯する趣味なんて無いけど」
「ですよね。本当は人間達を陰から支えてくれる、私達と共にあるべき妖精さんですから」
「妖精じゃなくて、これでも人間のつもりだけどね」

 その満面の笑顔に、ソラは得物を振り下ろす。
 一振りの刃が放つ鈍色の輝きで、彼女の視界を埋め尽くす。
 一秒後には、綺麗な赤一色に染まったことだろう。


782 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:54:16 kU3hwANQ0



 キャスターから肉体の一部分を移植された相手は、その人格を『風浦可符香』という少女に上書きされる。これがキャスターの宝具の効果である。
 ファントムの誕生を望まないソラにとっては非常に助かる効果である。
 仮に魔力の素養を持つマスターであっても、頭に希望だけをたっぷり詰めた人格を宿した『風浦可符香』ならば、死の瞬間においてさえ絶望することは無い。
 それどころか、別の要因で絶望する羽目になったとしても『風浦可符香』となればその瞬間に絶望は希望に塗り潰され、ファントムの誕生は防がれる。絶望が希望に変わり、新たに魔法使いとなるのである。
 『風浦可符香』は、これから魔法使い(キャスター)になることが出来る。だから彼女はこのクラスで召喚されたのかもね、とソラは一人納得した。

 相手を殺さず野放しにするとしても、『風浦可符香』は便利な相手である。
 少なくとも、『風浦可符香』の善良な人柄がソラと敵対するようなことは無い。いや、恐らく相手が善人だろうと極悪人だろうと『風浦可符香』は友好的に接するだろう。
 そんな彼女が相手なら、ソラは無意味な軋轢を生じさせずに済む。少なくとも、下衆なファントム共を相手にするよりは幾分か気楽だ。
 更に一度『風浦可符香』となった相手は、事情を軽く説明すればソラ達に協力を仰ぐことも可能である。当然だ、他でもないキャスターの分身も同然なのだから。
 その精神を征服するという意味で、ソラはキャスターを介して他者を制圧できる。相手が街の住人だろうがマスターだろうが、それこそサーヴァントだろうが、一度『風浦可符香』となってしまえばソラの物だ。

 そして宝具の効果は、たった今一人の女性――マスターとして聖杯戦争に参加するはずだった彼女によって実証された。
 彼女と出会ったのは昨晩のことであった。先手必勝とばかりに暗殺者のサーヴァントを差し向けてきて、結果としてソラ一人に見事に返り討ちにされた。
 敗因を挙げるならば、不幸にも暗殺者のサーヴァントが戦力としては低級――精々フレイムと同等か――であったため、またソラを只のか弱い「人間」と勘違いしてしまったためといったところか。
 こうして身を守る手段を失ったマスターの女性を、ソラは実験の材料とすることにした。
 自慢の得物で二の腕にほんの少し傷を付けて、調達したキャスターの血液を傷口から無理矢理注ぐ。その数秒後、マスターの女性はソラの蛮行に対する怒りではなく、粗暴さなど微塵も感じさせない明朗な表情をソラに向けた。『風浦可符香』による乗っ取りは一先ず成功である。
 翌日はごく普通の日常生活を送らせてみた。どうやら『風浦可符香』は休むことなく活動していたようだ。多少の性格の変化には周囲も気付いたが、その程度で済んで何よりだ。
 キャスターと対面させてみたところ、途端に正気を取り戻した。『風浦可符香』である者同士が接触した場面に限り、宝具の効果が一時的に切れるというのは本当のようだ。
 最後の仕上げに、再び自らの人格を封じられた彼女を『風浦可符香』のまま殺害した。結果として、ファントムは生まれなかった。マスターの女性に魔術師の素養が無かったのかもしれないが、ここは『風浦可符香』の人柄ゆえだと考えよう。
 ポジティブも度が過ぎてないか、と思わず苦笑したくもなったが、終わりよければ全て良し。



 昼下がり。昨日の夜の後始末を終えたソラは、広場に置かれた椅子に腰かけティータイムに洒落込んでいた。
 ソラもキャスターも腹を空かせているわけでは無く、それどころかソラには味覚すら無いのだが、そこはまあ気分というものだ。
 テーブルの上にはアイスのレモンティーを注いだグラスが二つ、皿に乗せられた幾つかのドーナツ。ドーナツはすぐ側に見える屋台のショップから買ってきたものだ。
 対面に座って幸せそうにドーナツを頬張るおかっぱ頭の彼女に、ソラは語りかける。

「そろそろ戦争も始まるだろうから改めて聞くけどさ。キャスター、僕は人間に戻りたいって思うだけだよ。こんな怪物の身体で終わらされた人生をちゃんとやり直したい、ただそれだけ。これって変かな?」
「え? 勿論変じゃないですよ。願いを抱くことは誰にだって許された権利です。だからマスターの願いも等しく正解です!」
「だよね。だから僕は聖杯が欲しい。他の人間を蹴落としてでもね。でも、君はそう思わないんだよね?」
「はい。せっかく奇跡の願望器と称される逸品ですよ? マスターだけでなく皆の願いが叶えて世界は幸せで満ち溢れるなら、それがベストな選択です。だから、聖杯さんはマスターも含めた皆のために使った方が良いと思うんです!」
「まあ、それも良い考えだね」


783 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:55:03 kU3hwANQ0

 別に他の人がどうなろうと構わないけどなあ。そもそも一番の犠牲者は僕なんだし。
 そんなことを思いながら、しかし口には出さずにソラはドーナツをまた一口齧る。
 ソラが食べているのはチョコレートを塗られたオールドファッション。プレーンシュガーにしようかとも一瞬だけ考えたが、あの日あの時に決別した指輪の魔法使いを思い起こさせる一品を選ぶ気にはなれなかった。
 結局、キャスターがプレーンシュガーを選んだせいで意味の無い考えになってしまったが。
 表面に出さないソラの不快感には構わず、彼女は向日葵のごとく明るい笑みを振りまいてる。
 包帯と眼帯の痛々しさも、笑顔の眩しさの前には些末な事である。

「でもさ、聖杯ってのは一人分の願いを叶えるのが限界じゃないの? だからこうして戦争なんかするわけだし」
「そうとは言い切れません。例えば、ドーナツをこうして千切って皆で同じ味を共有するように、聖杯のエネルギーを分散させればいいんですよ。国一つの歴史を変えて余りあるなら、きっと世界中の人間と共有できます」
「仮に出来るとしてさ、皆の願いは中途半端な叶い方になるんじゃないの?」
「心配はいりませんよ。万が一足りなかったとしても、私達が手順を踏めばもう一度聖杯さんを呼び出すことだって出来ますよ。儀礼というのはいつの時代も繰り返されるものですから」
「また聖杯戦争を始めて、誰かを犠牲になるってわけね。僕は別にいいけど、それで皆は納得するのかな? 代わりに願いを叶えても納得してくれないかもしれないよ」

 キャスター自身に願いは無い。いや、他人が願いを叶えることがキャスターの願いと言うべきか。
 博愛主義のような思想となれば聖杯戦争など断固拒否とでも言い出しそうなものだが、予想に反してキャスターは肯定的だった。
 その真意を知るために、ソラは質問を投げ掛け続ける。
 怪訝な表情のソラに臆することなく、キャスターはその日本人離れした顔つきを真っ直ぐにソラに向けた。

「いいえ。ここにいる皆さんは英霊、それぞれの願いを叶えるための概念に等しい存在です。だから皆さんの願いを叶えた時点で、皆さんの本懐は果たされたと言えるんです」
「うん、英霊はそうかもしれないけど、マスターの側はそれで納得するのかな。それこそ、僕が昨日やっちゃったあの人とか。僕が今いちいちこんな話してるのも、ここが一番気になるからだし」
「そうですねえ……いえ、やっぱり大丈夫だと思いますよ」
「聖杯で生き返らせるから、とか?」
「それ以前の問題ですよ。人の生涯は、誰のものであっても全て輝かしい軌跡です。つまり人は皆、命を終える時に貴く尊い英霊となれるんです。だから英霊の受肉が聖杯で実現できるように、マスターだった人々もまた聖杯によって幸福な世界に甦ることが出来るんです」
「ふーん。昨日の出来事のせいで心変わりするんじゃないかと思ってたけど、やっぱり本気で言ってたんだ。まあ、今のその張り付いたような態度も演技かもとは思うけど」
「やだなあ、真剣勝負の場で無意味な嘘を吐く人なんているわけないじゃないですか」
「別に何でもいいけどね、僕の邪魔にならなければ。皆のための聖杯ってのでも、別に構わないよ」
「そうです。手を繋いだ世界中の人類の希望の象徴、それでこそ聖杯なのです。聖杯さんを皆で使うためにも、これからは一緒に頑張りましょうね、マスター!」
「て言っても、頑張るのは基本僕だけど」

 生じる犠牲を願いのために已む無く妥協するというよりも、そもそも聖杯戦争のネガティブな側面すら彼女はポジティブに解釈する。
 成程、超ポジティブ少女とは良く言ったものだ。
 本当に全ての人々が彼女の理屈に納得させられるかは正直なところ怪しいと思うが、今ソラの敵とならず、また一人を手に掛けたソラを非難しないなら十分だ。
 勿論、ソラは本当に他の人々と聖杯を分け合おうなんて発想には微塵も共感してはいないが、口に出すだけ無駄だろう。
 それを差し引いてもちょっと付いていけないとも思うけどさ、と呆れ交じりの視線で、ストローでレモンティーを啜る少女の顔を見つめる。
 平凡な顔つきだけどパーマのかけ方次第でいくらでも化けるな、と全く無関係なことを頭の片隅で考えたのは職業病ゆえか。

「ん? 私の顔に何か付いてますか?」
「ううん。何でもない」


784 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:55:50 kU3hwANQ0

 それはともかく、出来ればあまりヒヤヒヤさせないでもらいたいものだ。
 周囲の人間は自分達に興味など無いようであるため無用な警戒は不要だが、やはり心臓に悪い。
 こうしてソラに気を揉ませるのは、キャスターの持つ二つ目の宝具――これもまた『フウラ・カフカ』と言う名なのだが――の効果だ。簡単に言えば、キャスターが常に外見を変化させ続けているためである。
 この宝具にキャスターのステータスの特性を併せれば、敵対する相手にキャスターの正体が特定される懸念をする必要性はかなり薄まる。
 即ち、今後はキャスター自身に偵察活動をさせる選択肢も考慮に入れられるのである。
 今回に限っては事に及んだが、本格的に聖杯戦争が開始されたら大ぴらには動けまい。片や姿を晒せば嫌でも目立つファントム、片や戦闘能力皆無のサーヴァント。
 上級のサーヴァント――それこそインフィニティーに並ぶほどの――と真っ向勝負をすれば確実に敗北する程度の実力しかない以上、素直に大人しくせざるを得ないのが実情だ。
 ならば、当分の間は情報収集に徹するのが吉。表面上ソラはただの美容師として、またキャスターもただの十代の少女として、また頃合いを見て幾名かの『風浦可符香』を配下として、冬木の街で生活するのが無難というもの。
 そして、かつて白い魔法使いを討ち取った時のように、見据えた敵の付け入る隙を見つけたら確実に物にする。それが叶うかどうかは、自分だけでなくキャスターの立ち回りにも懸かっているのだ。
 頼むよー、と今度は期待の籠もった目を向けて、その感情に気付いているのかいないのかキャスターはまたにこりと笑い、ツインテールが小さく揺れた。

「じゃ、食べ終わったらキャスターは……今日の所は、僕の家にでも戻ってなよ。まだ君を動かす理由も無いし、僕もとりあえず仕事しとかないと」
「むむう。私だってマスターの力になりたいんですけど……」
「適材適所ってやつだよ。それにその内お使いとか頼むだろうしさ」

 ああ、全く彼女が来てくれて良かったとソラは心から思う。
 どこまでも、彼女はこの醜いファントムを安心させてくれる。
 それは戦略眼としての観点だけではなく、ソラがソラのアイデンティティを自認する切欠としての意味でもあった。

「っ――!!」
「どうしたんですかマスター? なんだか顔が怖いですよ?」
「あぁ……うん、気にしないで。ちょっと嫌な事思い出しただけ。ちょっと、ね」
「そうですか……きっとマスターも辛い思いをしてきたのでしょうね。でも大丈夫です! 八百万の神達が人々へ救済を齎したように、マスターにもまた相応しい癒しが訪れると決まってますから!」
「ふふっ」

 真ん中分けの長い黒髪の女の子が視界に映し出された時、ソラは一瞬その肢体に鋏を思い切り突き刺してやりたい衝動に駆られた。自分の傷を抉る相手に全力で反発するのは、生物として当然の反応だ。
 瞬きする間に一つ結びの髪と泣き黒子の女の子へと変わった頃には、既に衝動も沈静化している。これもまた、外敵の無い状況では平静さを保てている証拠である。
 そして今度は妙に目つきの悪い女の子になっている。キャスターの在り方の不安定さにおぞましさを抱き、口を開けば甘言しか吐き出さない、知ったような顔で人の心の隙間に入り込もうとする人柄に気色悪さを抱く。
 理解の及ばないナニカを受け入れないで嫌悪し、しかし感情を表出させず上手に付き合っていく。ごくごく普通の生き方だろう。
 この子はいつだって、ソラが至極まともなんだと自覚させてくれる。なんと素晴らしい話であることか。

 指輪の魔法使いに徹底的に絶望させられたソラにとって、キャスターは存在自体が希望であった。
 彼女に癒された今だったら、ソラを否定した彼にも返事だって出来る。たとえ、彼にはもう届かないのだとしても。


785 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:56:31 kU3hwANQ0





 ほらね? 僕は人間(ソラ)だよ。



【マスター】
ソラ@仮面ライダーウィザード

【マスターとしての願い】
滝川空という人間に戻る。

【weapon】
・ラプチャー
ファントム化した時のみ装備する。
鎌のような一対の剣。組み合わせて鋏のようにも使える他、投擲武器にもなる。

【能力・技能】
・グレムリン
ファントムとしての真の姿。
身軽で俊敏な動きが特徴であり、狭い場所や高い場所を素早く移動する。
ファントムは魔術によって生み出された産物であるため、サーヴァントにもダメージを与えることが可能。
特にグレムリンはファントムとしても上級であり、低級のサーヴァントなら自力で倒せるほどの実力を持つ。
なお、死の直前に賢者の石を失っているため進化体への変身は不可能。

・滝川空
生前の滝川空は美容師として生計を立てていたため、女性のヘアカットと接客トークが得意。
また連続殺人鬼としての素顔を長らく特定されなかったことから、証拠隠滅の技量も持つと思われる。

【人物背景】
上級ファントムの一人。本来失われるはずだった人間としての自我を残したままファントムとなった異端の存在。
ファントムの名である「グレムリン」と呼ばれることを嫌い、頑なに「ソラ」という名を自称する。
人間であると自覚しながらファントムの肉体を持っていることを嘆き、再び人間に戻る手段の発見のために暗躍した。
最終的にはファントムの頂点に立つワイズマン=笛木奏に対して反旗を翻し「賢者の石」と呼ばれる魔法石を入手。
賢者の石に大量の魔力を注入するために無差別破壊行為を行うが、仮面ライダーウィザード=操真晴人に賢者の石を奪回された挙句に敗れ、死亡した。
ファントムとなる前は「滝川空」という人間であり、美容師として生計を立てていた。
同時に、過去にある女性と破局したトラウマから「白い服を着た長い黒髪の女性」ばかりを数十人も手に掛けた連続殺人鬼でもある。
トラウマはファントム化した後も健在であり、条件を満たす女性を見かけた時は課せられた任務を放り出してでも自身の手での殺害を試みる。

【方針】
当面は下調べに徹し、自分達の正体を極力知られないようにする。
キャスターの宝具は必要に応じて使用させる。実戦ではソラ自身が矢面に立つ。


786 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:57:18 kU3hwANQ0




【クラス】
キャスター

【真名】
風浦可符香@さよなら絶望先生

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運A+ 宝具A

【属性】
混沌・善

【クラス別スキル】
・陣地作成:-
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
キャスターは通常の「工房」を作成する能力を持たない。そもそも彼女にとっての陣地とは一つの場所を指すのではない。

・道具作成:E
魔術を帯びた道具の代わりに「キャスター自身の一部」と呼べる物を作り出す。
尤も常識を外れた再生能力は持たず、「常人より身体の回復が若干早い」というレベルの解釈をするためのものでしかない。

【保有スキル】
・ポジティブ遺伝子:A++
極限まで昇華されたポジティブシンキングは、既に常人の思考を逸脱している。
効果は「精神汚染」のスキルとほぼ同様であり、他の精神干渉系魔術をシャットアウトする。
本物の精神錯乱を起こしているわけではないため、他者との意思疎通自体は差支えなく可能である。

・情報抹消:C
対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。
これに対抗するには、現場に残った証拠から論理と分析により正体を導きださねばならない。
かつてキャスターの素性が多くの人々から秘匿されていたことによって付与されたスキル。

・変身:E
自らのカタチを変えるスキル。
後述する宝具と一体化したスキルとも言える。


787 : 変わったアナタを誰に見せたい? ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/21(土) 21:57:58 kU3hwANQ0

【宝具】
・『赤木杏(フウラ・カフカ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1〜∞
――私たちの知っている可符香ちゃんは天使みたいないい子でした。
『風浦可符香』とは、ある一人の少女からドナー提供を受けた少女達が代わる代わる演じていた「共有人格」とも呼べる存在である。
言い換えれば、『風浦可符香』からドナー提供を受けた人間は全て『風浦可符香』へと変わる。
この宝具は、聖杯戦争においても『風浦可符香』の再生を実現するためのものである。
臓器であれ皮膚であれ血液であれ、キャスターから肉体の一部を移植された相手の人格は『風浦可符香』の人格に上書きされる。
(血液に関しては、開いた傷口から少量流し込むだけでも条件が達成される)
NPCもマスターもサーヴァントも同様に扱われ、相手の性格や精神力、宝具の持つ能力、「対魔力」や「神性」のようなスキルなど一切の対抗要素が無視される。
そして『風浦可符香』になった者は、自分の人格が上書きされている事実を絶対に自覚出来ない。
即ち、キャスターにとっての「陣地作成」とは「他者の内面への浸食」を指しているとも言える。
ただし『風浦可符香』を演じる者が同時に複数存在出来ない都合上、『風浦可符香』である者同士(キャスターも含む)が鉢合わせた状況に限り本来の人格は復活する。
当然ながら、そのような場面においてもキャスター本人だけはぶれることなく『風浦可符香』で在り続ける。
相手に本来の人格を取り戻させたくないならば、『風浦可符香』である者同士が一箇所に集まらないように配慮しなければならない。
なおキャスターが消滅した場合に限り、聖杯戦争から全ての『風浦可符香』という人格が完全に消滅する。

・『絶望少女達(フウラ・カフカ)』
ランク:E 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
――ある朝目覚めると風浦カフカは     なっていた。
『風浦可符香』は2のへ組の女子生徒ほぼ全員であり、2のへ組の女子生徒ほぼ全員が『風浦可符香』である。
この宝具は常時・自動発動型であり、一つの人格が複数の人間によって共有されているという状況を再現する。
キャスターの身体は、常に2のへ組の女子生徒の誰かへと変化し続ける。ペースは不規則的であり、数秒で変化する場合もあれば丸一日固定される場合もある。
ある時は常月まといであり、ある時は木津千里であり、ある時は日塔奈美であり、ある時は加賀愛であり……
そして当然、誰の姿であってもキャスターの人格は一貫して『風浦可符香』である。
キャスターの幸運値の高さにより、変化は基本的に最適のタイミングで発生し、また変化が起こる決定的な瞬間を誰にも目撃されない。
キャスターが保有する「情報抹消」のスキルとも合わせれば、他の参加者がキャスターの正体に辿り着くのは容易な話ではないだろう。
また付随する効果として、『風浦可符香』である者は特定の対象の姿を「実在しないはずの一人の少女」の姿だと認識する。
※キャスターは自らの姿を常に「実在しないはずの一人の少女」の姿と認識している。
※キャスター以外の者は、自我を取り戻していない状態では自身の姿を、自我を取り戻した状態ではキャスターの姿を「実在しないはずの一人の少女」の姿と認識する。

【weapon】
特に無し。

【人物背景】
風浦可符香という人物は実在しません。

【サーヴァントとしての願い】
幸せは皆で一緒に掴むものです!
聖杯も仲良く分かち合いましょう!


788 : 名無しさん :2015/03/21(土) 21:59:20 kU3hwANQ0
投下終了です。


789 : ◆RzdEBf96bU :2015/03/22(日) 15:34:58 AxhLu94M0
投下します


790 : 朝日の中で ◆RzdEBf96bU :2015/03/22(日) 15:35:26 AxhLu94M0
朝日の下、荒廃しきった偽りの町でルーラーは静かに佇んでいた。
蒼く澄んだ鋼の身体のドラゴン、ある世界では時の神とも謳われた伝説のポケモン、名はディアルガ。
此度はサーヴァントの枠組みに当てはめられ、聖杯戦争の進行を任されていた。
ルーラーとして降臨し、幾多の戦いを観察し見守ってきた。

一人、また一人と敗北しいなくなるのを敗北するのを見てきた。
悲しみと絶望に飲み込まれ、涙を流しながら消滅するのを見てきた。
怨嗟と憎悪をのたまいながら朽ち果て行く姿を見てきた。
誇り高き精神も輝くような勇気も遂に潰えて果て往く勇者を見てきた。

それでも彼らは抗うことをやめず歩き続けた。
あまりにも純粋な願いがため。

太陽が沈むたびに、終わりを示す時計の針が迫っていった。
その中でもディアルガは一つ祈り続けた。
この聖杯戦争を勝ち抜き、理想と夢を叶えん者が現れることを。

そして今聖杯戦争は朝日の中で終わりを迎えた。
彼/彼女が優勝者であることを聖杯はルーラーに告げていた。
彼/彼女が天まで届くような階段を昇るのを目にしながら、
役目を終えたことを認識し、ディアルガは自らが解体されていくことを認識した。

彼/彼女の物語をディアルガは見続けてきた。
仲間を失い、敵を討ち、信念が滅び、笑顔を失い、
足掻きもがき苦しみ、それでも立ち上がって前に進み続けていた。
彼/彼女の声をディアルガは聞き続けていた。

彼/彼女は何を願うのか。ディアルガはそれを知っていた。
彼/彼女を、いや彼/彼女だけでなくこの聖杯戦争に呼ばれ闘った者たちを見続けてきたディアルガにはそれが理解できていた。

そして時は巻き戻る。


791 : 朝日の中で ◆RzdEBf96bU :2015/03/22(日) 15:35:55 AxhLu94M0


偽りの冬木の町、月も既に沈み、もうすぐ朝になる頃であろうか。
人々は眠り、静まり返った街の中、ディアルガは夜空の下、高層ビルの屋上から町を見下ろしていた。
やり直しの願いにより再びこの町が再生され、解体されたはずのディアルガもまた、再びこの地に足を下ろしていた。
胸中の金剛石に似た宝石が光り、ビジョンが映し出された。
テレパシーにより浮かび上がったビジョンが、ディアルガにこの聖杯戦争に呼ばれたマスターたちを見せていた。
一人、また一人とマスターたちが偽りの夢より覚め、己のサーヴァントを召喚していた。
まだ陽炎のような平穏の夢を見ている者もいるが、その終わりもやがて来るだろう。

もうすぐこの戦いの前の泡の夢も終わりに近いことをディアルガは感じ取っていた。
闘いが一度始まれば、この平穏も容易く崩れることを、ディアルガは見てきていた。
かつてのように、裏切り、別れ、絶望、嘆き、破壊、こんな言葉では語り尽くせぬような惨劇が
洪水のように彼らを飲み込んでいくことだろう。

然れどもディアルガは曇らず、慈悲深い眼差しで彼ら/彼女らを見ていた。
ディアルガは知っているからだ。
かつて英霊となる前、恐怖に屈せず己に立ち向かい見事打ち負かし、
静止し掛けた時を再び揺り動かし、世界から闇を振り払ったポケモンたちを。
此度の聖杯戦争でも、きっと彼らのような存在が現れることを、ディアルガは信じていた。

自分自身はただ聖杯戦争の管理しかできぬが、未来に受け継がれる輝ける魂の持ち主を信じよう。

空を見上げると、朝日が昇り始めていた。

また、聖杯戦争が始まる。


792 : 朝日の中で ◆RzdEBf96bU :2015/03/22(日) 15:36:16 AxhLu94M0
【クラス】
ルーラー

【真名】
ディアルガ@ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊

【パラメーター】
筋力B 耐久A+ 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A+
時間を操る伝説のポケモンと語られ、竜の力も持つその身は高い対魔力をほこる
A+以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、魔術ではルーラーに傷をつけられない。

真名看破:B
ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。
ただし、隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、幸運値の判定が必要になる。

神明裁決:A
ルーラーとしての最高特権。
聖杯戦争に参加した全サーヴァントに二回令呪を行使することができる。
他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。

【保有スキル】
時の守護者:A
じげんのとうで世界の時を守っていたポケモンであった。
タイムパラドックスにより消滅したものをも呼び戻す力をも持っていたが、
サーヴァントとしての形に押し込められ、現在は他者の時間操作能力を無効にする程度にとどまっている。

神性:EX
神霊適性を持つかどうか。
世界の時を守る時の守護神でもあり、異なる世界の神話では、世界を作ったとされるアルセウスが身を分け創造した神のポケモンでもある

鋼・ドラゴンタイプ:B
鋼とドラゴンの属性を持つポケモンであることを示すスキル。
ノーマル、みず、くさ、でんき、どく、ひこう、むし、エスパー、いわ、ゴースト、あく、はがねの属性の攻撃に対し耐性を持つ
代わりに、ほのお、こおり、かくとう、じめん、ドラゴンの属性の攻撃に対しては追加ダメージを受ける。
また自身の放つはがね・ドラゴンタイプの技の威力に増加補正が与えられる

威圧感:C
ルーラーに対して攻撃が行われるとき判定が行われ、稀に相手を怯ませて攻撃を失敗させる。
判定の成功は幸運値に依る。

プレッシャー:C
ルーラーに攻撃を行ったときに消費する魔力の量が、本来消費されるはずの量の二倍となる。

テレパシー:B
遠方の様子もテレパシーで見ることのできるスキル。
また他者に対してもテレパシーで映像を見せることが可能。

【宝具】
『時の咆哮』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:100
時が歪むほどのエネルギー波を放ち攻撃する。
ドラゴンタイプの属性を持ち、スキル鋼・ドラゴンタイプの威力補正を受ける。
使用後反動により、1ターンルーラーは動けなくなる。

【weapon】
ポケモンとして覚えているわざ。
また全サーヴァントに対応した令呪が胸の宝石にきざまれている

【人物背景】
時元の塔にて『時』を守る番人だったが、時元の塔が崩れ始めた事により暴走。
やみのディアルガともいえる存在に成り果ててしまう。
未来世界で星の停止を迎えた後では、歴史を変えようとするものを始末する意志のみで動く。
星の停止の歴史を変えようとする主人公とジュプトルたちに刺客を差し向け排除しようとする。
現代でも時限の塔の崩壊が進み、星の停止を迎えようとした寸前、主人公が時の歯車を収めたことにより崩壊を食い止め、
ディアルガの暴走も止まった。
本来は慈悲ぶかき存在であり、星の停止の歴史を変えたことによるタイムパラドックスにより消滅した主人公と、
主人公を失い悲しむパートナーの願いを汲み、主人公を復活させた。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争の円滑な進行…?

【その他】
令呪の形は時計の文字盤に、多数の針が刻まれているイメージ。


793 : 名無しさん :2015/03/22(日) 15:36:35 AxhLu94M0
以上で投下終了です


794 : ◆GO82qGZUNE :2015/03/22(日) 21:08:14 9BvgtyJ60
投下乙です。私も投下させていただきます。


795 : 黄金螺旋階段の果てに ◆GO82qGZUNE :2015/03/22(日) 21:09:30 9BvgtyJ60
 ―――たとえ世界が終わっても。
 ―――尽きない想いがここに在る。

 崩れた螺旋階段を昇る、昇る、昇る。この先に「愛のかたち」があると誰かが言った。
 既に砕け散った世界を背に、見えぬ先を追い求めて。彼/彼女は階段を昇り続ける。

 それは《――》。それは《――》。偽りの街の戦いを勝ち抜いた男/女。
 ■■■■は黄金螺旋階段を昇る。一歩、一歩と踏みしめて。今も。今も。
 頂上を目指して。いと高きに在るものを、目指して。
 そして、頂上に在るものは笑うのだ。今も。今も。

『さあ、諦める時だ』

 そこは黄金螺旋階段の果て。誰かの夢の残滓が眠る、暗闇の幽閉の間。
 既にそこには誰もいない。旧き王も新しき王も、何もかもが消え去ったはずのその場所。
 しかし声が聞こえる。誰かに似ていて、故に誰でもない声。支配者の響きはない。
 たとえて言えば、全てを嘲笑する響き。涙を流して笑いながら、心から焦がれて願う声。

 ―――たとえて言えば。
 ―――狂った道化師が何かを囁くような、声。

『■■■■』
『偽りの都市の全てを切り捨てた哀れなる者』
『既に、きみは諦めているはずだ』

 否、諦めてはいない。
 諦めなどするものか。この身は未だに何も果たせてはいないのだから。
 理想と夢を追いかけて、過ぎ去った想いを引きずって。とうとうこんなところにまで来てしまった。
 後悔はある。未練はある。しかし決して諦めはしない。いつか夢見た世界に行き着くその時まで、妥協などしないと決めたのだ。

『ならば話は簡単だ』
『見せるがいい。きみの、"願い"を』
『この都市に訪れた七日間の意味。
 きみがその手を赤色に染めてきた意味。
 如何なる理由と願いとが、その根源か』

 ―――黙れ。黙れ。黙れ。

 姿なき声を切って捨てる。たとえそれが何者だろうと、全てを決めるのは自分であり、奴ではない。
 そう。決めるのは、自分だ。
 無数の声を呑みこんで。無数の涙を呑みこんで。彼/彼女は手を伸ばす。
 聖杯へ向けて。いと高き場所へと向けて。
 自らの望みを叶えるために。
 
 ―――黄金螺旋階段。その最後の一段を、今、昇りきる。

◇ ◇ ◇


 そして世界は再誕した。


◇ ◇ ◇


796 : 黄金螺旋階段の果てに ◆GO82qGZUNE :2015/03/22(日) 21:10:17 9BvgtyJ60
 カチカチ。カチカチ。カチカチ。
 カチカチ。カチカチ。カチカチ。

 時計の音。時計の音。
 今度こそ、今度こそと呼びかけ続ける。

 カチカチ。カチカチ。カチカチ。
 カチカチ。カチカチ。カチカチ。

 カチカチカチカチ。

 秒針が動く。それは決して止まることはない。
 
 それは白銀色の懐中時計。かつてひとりの男が持っていた。
 今は朽ち果て、打ち捨てられた懐中時計。狂ったように秒針を回転させる。

 秒針が動く。
 凄まじい勢いで、狂ったように、逆回転を。
 せめて一分、いいや二分。己が滅びを受け入れてないが如く、時計の針は逆巻きを続ける。

『こんにちは、■■■■』

 螺旋階段の下。ひび割れた時計の隣に何かが現れる。
 それは道化師。それは幻。かつて大公爵の手で呼び出され、尊い願いを待ち望む哀れな影法師。
 誰かが黄金螺旋階段を昇りきるその時まで、彼は待ち続けるのだ。今も。今も。

『全ては始まりへと戻り。喜劇はまた繰り返される』
『……次は、どうかな』

 道化師グリム=グリムは視界の端で笑う。誰かの幻へと戻り、誰かの視界へと映り、誰かの耳元に囁きながら。
 笑いながら、ただひたすらに待ち続けるのだ。

 此処は都市。全ては偽りなれども、あらゆる願いの果てがそこに在る。
 彼方は都市。かつて誰かの願いによって巻き戻った。今は誰も覚えていない、忘れ去られた幻想の一幕。
 喝采は無い。喝采は無い。ただ、誰かがそこを昇るだけだ。そして、それこそが、この聖杯戦争の真実である。
 螺旋の果ては、未だに見えない。


797 : 黄金螺旋階段の果てに ◆GO82qGZUNE :2015/03/22(日) 21:11:45 9BvgtyJ60
【クラス】
ルーラー

【真名】
グリム=グリム@赫炎のインガノック-what a beautiful people-

【ステータス】
筋力? 耐久? 敏捷? 魔力? 幸運? 宝具?

【属性】
?・?

【クラススキル】
対魔力:-
根源存在のスキルにより一切機能していない。

真名看破:A+
ルーラーは全てのマスターとサーヴァントの視界に遍在する。
あらゆるサーヴァントの真名・スキル・宝具などの全情報を把握する。

神明裁決:A
ルーラーとしての最高特権。
聖杯戦争に参加した全サーヴァントに二回令呪を行使することができる。
他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。

【保有スキル】
根源存在:?
根源より呼び出された現象数式体。ルーラーはあらゆる物理的影響を受けず、世界そのものに働きかける類の力でのみルーラーに干渉することができる。
ただし、相対する者がルーラーをただの幻である(=現実ではない)と強く認識した場合、ルーラーは泡のように弾け、以降その人物に干渉することができなくなる。

剥奪:?
任意の対象から"可能性"を剥奪する。可能性を剥奪された者は"奪われた者"となり、ルーラーの隷属下に置かれる。
このスキルの対象となるのは既に死亡している者のみである。また、元世界で死亡していたとしてもマスター権を持つ者や脱落していない状態のサーヴァントを従わせることはできない。

【宝具】
『根源の現象数式』
ランク:? 種別:? レンジ:? 最大捕捉:?
あらゆる不条理を不条理のまま現実にする。その本質は願いの成就であり、世界の改変。"聖杯"へと働きかける力。
ルーラーは黄金螺旋階段を登りきった者の願いを叶える。ルーラーは"権利"を持つ者の願望成就を拒否することができない。

【weapon】
影の槍
ルーラーの影を槍のように撃ち出す。この影は可能性そのものである。

【人物背景】
心よりの想い。そして、願い。それは何よりも尊いのだと誰かが言った。
そして想いは根源を生んだ。あらゆる幻想を生み出し、あらゆる条理を捻じ曲げる、白い仮面の道化師を。
故に彼は望む。グリム=グリムは望むのだ。黄金螺旋階段の果てで、人の想いと、願いを。

【サーヴァントとしての願い】
人の願いの行き着く果てを求める。


798 : ◆GO82qGZUNE :2015/03/22(日) 21:12:53 9BvgtyJ60
投下終了です。


799 : ◆HyMn6jdD/g :2015/03/23(月) 23:26:24 8BtQr12A0
投下します


800 : シモン&バーサーカー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/23(月) 23:27:08 8BtQr12A0


――いいかシモン、忘れんな。


目を閉じればいつも、あのときの言葉が脳裏に谺する。
忘れようとしたって忘れられるはずがない。
シモンにとって、世界でただ一人「兄」と慕った男の声だ。


――お前を信じろ。


無論、血が繋がっている訳ではない。
関係を表すならば、単に同郷というだけだ。
家族でも親戚でもない、遠い関係。


――俺が信じるお前でもない。


しかしそれでも、その男はシモンにとって「兄」だった。
ただ目の前の壁を掘ることしかできないシモンに、目的をくれた。
壁を掘り抜いた先にあるもの――未来という名の希望をくれた。


――お前が信じる俺でもない。


いつしかその男は、シモンだけではなく多くの人間の拠り所となっていた。
無知で、無茶で、無謀で、無鉄砲で、無遠慮な男。
しかし誰もが、その男の背中に夢を見た。
閉塞した世界を叩き壊す可能性を見た。
その背中についていくことを願った。


――お前が信じるお前を信じろ。


その男の名は、カミナと言った。
そして、カミナは、もういない。
もう、どこにも、いないのだ。


801 : シモン&バーサーカー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/23(月) 23:27:31 8BtQr12A0

   ◇


キュラキュラキュラ……と、軋んだ金属音が響く。
薄暗い、星灯りだけが光源の路地裏で、少年は一人、ドリルを回し続けていた。
ビルの壁は穴だらけになっている。
少年は意味もなく壁にドリルを突き立て、回し、掘る。
しかし掘り「進んで」はいない。穴が開いたと見るやそれを放り出し、次なる穴を穿つ。その繰り返し。
どこにも行かず、機械的にドリルを回し続ける。

「…………」

その様子を、傍らでずっと見ている男がいた。
腕を組み、気怠げに壁にもたれかかる男。少年が召喚したサーヴァントである。
クラスはバーサーカー。狂戦士の英霊。
しかしその瞳は確かな理性を宿し、少年の行動をつぶさに観察していた。

「はぁぁ……」

バーサーカーは溜息を付く。
別に疲れた訳でも呆れた訳でもない。生来の癖のようなものだ。
だがいい加減、飽きて来る頃だった。
出逢ってからこっち、少年は一言も発することなく黙々と壁に穴を開け続けている。
バーサーカーに一度として眼をやることもなく。
サーヴァントを召喚したマスターならば、自分に課せられた役割は理解しているはずだ。
自分以外の全てのマスターを倒し、聖杯に到達すること。
そうすれば願いは叶う。万能の願望機たる聖杯は、因果をねじ曲げてそれを可能にする。
過去の英霊であるサーヴァントにも願いがある。だからマスターの呼びかけに応じて参戦し、マスターの武器として戦う。
バーサーカーにも聖杯に掛ける願いがある。
かつて失ったものを取り戻すために、地獄の底からこうして這い上がってきたのだ。
だがいくらバーサーカーがやる気だろうと、マスターにその気がなければ意味がない。
これはハズレを引いたか――と、バーサーカーがマスターに見切りをつけようとしたとき。

「……ぁ」

少年の手元で、濫用に耐えかねた手回しドリルが二つに折れた。
頑丈そうに見えたドリルだが、古くなっていたか、あるいは少年の使い方があまりにも乱暴だったか。
いずれにしろ少年の手は止まった。


802 : シモン&バーサーカー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/23(月) 23:28:53 8BtQr12A0

「おい」

声をかける。少年はようやく、のろのろと振り向いた。
罵声を浴びせるか、あるいはいっそ、一発蹴りをくれてやろうか。
そう考えていたバーサーカーは、少年の瞳に吸い寄せられるような引力を感じた。
深い――どこまでも底のない、真っ暗な穴。
想起されたのは、そんなイメージだ。

「……ほう」

やる気なさげだったバーサーカーの眼が軽く見開かれる。
ハズレなどと思ったのは間違いだ。俄然、このマスターに興味が湧いてきた。

「お前。良い眼をしているな」

壁を蹴って離れる。踵の滑車が火花を上げる。少年の鼻先で顔を突き合わせた。
じっと、双眸を覗き込む。息がかかりそうな距離。
少年は、ぴくりとも動かず見つめ返してくる。
恐れ、戸惑い。そんな弱腰の感情は読み取れない。
かといって怒りや憎しみなどの強い感情があるわけでもない。
そこにはただ、穴がある。何もかも吸い込み、落下していくだけの、底のない奈落が。
間違いなく、バーサーカーと同じ眼をしていた。

「あんたが、俺のサーヴァントか」
「そうなるな。なんだ、状況は理解できてるのか」
「わかってる。考えはだいたいまとまった」

なるほど、とバーサーカーは得心した。
あの穴開けはある種の手慰み、思考を円滑に進めるための儀式のようなものだったらしい。
応えた少年の声には震えがない。とすれば、導き出した答えは聞かずともわかる。

「やる気か?」
「そのためにここにいる。あんたは違うのか」
「いいや……俺も同じだ」

少年は既に、覚悟を終えていた。
今さらどうするべきかなど迷わない。やると決めた、そういう顔をしている。

「だが念の為に聞いておこう。お前は何のためにここにいる?」
「兄貴を、取り戻すためだ」

少年――シモンは言い切った。


803 : シモン&バーサーカー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/23(月) 23:30:28 8BtQr12A0

「兄貴は死んだ。もういない。なら……取り戻す。生き返らせる。
 それで、もう一度、俺たちのグレン団をやり直すんだ」

絶望に濁った眼でシモンは続ける。
それこそが唯一残された救いだと、心底から信じきった眼で。

「聖杯ならそれができる。そうだろう」
「ああ、そうだな。死んだ奴だって生き返すことができる。それが聖杯だ。
 だがそのためには、お前以外の他のマスターが邪魔だ。一人残らず皆殺しにしなきゃならない」
「俺は……弱い。俺一人でみんな殺すなんて無理だ。でも、そのためにあんたがいるんだろう」

殺人に躊躇いはない。
己の弱さを認めた上で、尚、それを為そうとしている。

「バーサーカー。俺は聖杯が欲しい。誰かを殺したって構わない。俺は兄貴に生きてて欲しいんだ」
「クク……いいだろう。お前は誰よりも俺のマスターたる資格があるようだ」

バーサーカーは立ち上がり、シモンに手を差し伸べる。
このマスターは、気に入った。
地獄に堕ち、夜を這い回り、天の太陽ではないただ一つの光を追い求める魂。
それはまさしく、バーサーカーと同じカタチの魂だからだ。

「俺の願いはな、弟を甦らせることだ。かつて、俺がこの手で葬った弟を……。
 兄を甦らせたいお前が、弟を甦らせたい俺を召喚した。洒落が効いていると思わないか」
「バーサーカー、あんたも……?」

シモンはここでようやく、バーサーカーに決意以外の視線を向けた。
バーサーカーがシモンに感じたシンパシーを、シモンもまた感じ取ったのか。

「俺の名は矢車想。長くなるのか短くなるのかわからんが……シモンよ。俺と一緒に、地獄に堕ちよう」

バーサーカーが真名を名乗る。このマスターには、そうするだけの価値がある。
果たして、彼が差し伸べた手を、シモンは躊躇うことなく握り返してきた。
契約はここに成った。
弟は兄を求め、兄は弟を求める。聖杯を手にするために、この場限りの地獄の兄弟が起つ。
太陽は闇に沈んでいる。星灯りだけが彼らを祝福していた。


804 : シモン&バーサーカー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/23(月) 23:31:41 8BtQr12A0

   ◇


ドリルをいくら回しても、もう前には進めない。シモンの背中を押す声が、聞こえなくなったからだ。
ドリルは虚しく回るだけ。燃えるような熱は去った。
グレン団はカミナが作った組織だ。今のグレン団には魂がない。炎がない。
シモンでは、カミナの代わりにはなれない。
このままではみんな死ぬ。
シモンも、ヨーコも、ロシウも、キタンも、ダヤッカも、リーロンも、ミギーもダリーも。
カミナが作ったみんなの居場所が、なくなってしまう。それだけは、許せない。認められない。
シモンはカミナの代わりにはなれない。それはわかっていたことだ。
ならば、カミナを取り戻せばいい。
グレン団にはカミナがいなければならない。それが正しいカタチであり、自然な状態なのだ。
どのような手段を使っても、あの声が、あの背中が戻ってくるのならば、迷いはしない。


――あばよ、ダチ公。


最後に聞いた、カミナの声を思い出す。
シモンはそれを、否定する。

「あばよ、じゃない……俺たちは一緒だろ、兄貴。だから……」

握り締めたコアドリルが弱々しく光る。
刃先が皮膚を裂き、流れ出た血が掌を汚していく。
だが、構わない。

「……俺、やるよ。必ず兄貴を、生き返らせてみせるから」

これからシモンは、見も知らない誰かの血でさらに手を汚していくのだから。




【マスター】
 シモン@天元突破グレンラガン
【能力・技能】
螺旋力:EX
 ドリルは一回転すればその分前に進む。生命体に進化を促す原初の生命エネルギー。聖杯戦争においては魔力に変換が可能。
 ただし、現時点でのシモンは秘めた螺旋力に蓋をした状態であり、全力を出すことが出来ない。ゲーム的に表現するなら最大MP低下。
 螺旋力は前に進む意志を発現の起爆剤とするため、ネガティブな精神状態では本来の力を発揮できない。
 結果的にバーサーカーも相応に弱体化している。シモンが全螺旋力を開放することができれば、バーサーカーもまた本来の力を取り戻すだろう。
  筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:E → 筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:D 幸運:C
【weapon】
コアドリル
 ガンメン・ラガンの起動キーとなる手のひらサイズのドリル。武器として扱うにはやや心もとないが、非常に強固。
【人物背景】
 獣人に支配された地球の地下世界に生まれた、穴掘りを生業とする少年。
 来る日も来る日もドリルで穴を掘る毎日だったが、同じ村に住む青年カミナに触発されて地上への旅に出る。
 シモンは生まれつき類まれな螺旋力を持っていて、偶然発掘したガンメン(ロボット)・グレンを起動させることができた。
 内向的な性格だったが、破天荒男カミナに弟と認められ、カミナ率いるグレン団の中核として少しずつ成長していく。
 だが獣人との戦いの中で、シモンを助けるためにカミナは散る。カミナを慕って集まった人間たちは大いに悲しみ、シモンもまた絶望に苛まれる。
 カミナを失った喪失感はニアと名乗る少女との触れ合いで癒され、やがて立ち直るのであるが――。
【マスターの願い】
 カミナを生き返らせる。


805 : シモン&バーサーカー ◆HyMn6jdD/g :2015/03/23(月) 23:32:14 8BtQr12A0

【クラス】
 バーサーカー
【真名】
 矢車想@仮面ライダーカブト
【パラメーター】
 筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:E 宝具:C
【属性】
 混沌・狂
【クラススキル】
狂化:E
 「狂戦士」のクラス特性。通常時は狂化の恩恵を受けないが、その代わりに正常な思考力を保つ。
 ダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗するとどんどん自暴自棄になる。
【保有スキル】
心眼(真):B
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
料理作成:D
 市販の食材を使い、料理を作成するスキル。
 バーサーカー自ら「地獄の豆腐料理」と称する麻婆豆腐は僅かながら神秘を帯び、マスターが食べれば魔力を回復する効果を持つ。
 ただし激辛のため、常人では一度に多量の摂取はできない。
【宝具】
『白夜へ向かう飛蝗(マスクドライダー・キックホッパー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 バッタの形状をしたコアであるゼクターをベルトにセットすることで全身に装甲を纏う、常時発動型の宝具。
 矢車が使うゼクターはキックホッパーと呼称され、先にロールアウトした既存のマスクドライダーシステムとは互角の性能ながらも系列の異なるモデルである。
 キックホッパーは脚部にジャッキが取り付けられており、作動させることで凄まじい跳躍力を生む。
 自分がジャンプするだけでなく、敵に押し当てて作動させることで吹き飛ばす用途にも使える。
『時をかける飛蝗(クロックアップ)』
ランク:D 種別:対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 マスクドライダーシステムが共通して搭載するタキオン粒子操作機構の一環。
 世界と異なる時間流の中に突入し、自身以外の存在から見れば相対的に超高速となる(自分以外は止まって見える)行動を可能とする。
 ただし矢車の肉体に多大な負担がかかるため、発動していられる時間は10秒ほど。再度の発動にはややインターバルが必要。
 結果的な事象としては超加速しているように見えるものの、時間の流れを早めているだけなので攻撃力が増す訳ではない。
『地獄に堕ちた飛蝗(ライダーキック)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10人
 マスクドライダーシステムが共通して搭載するタキオン粒子操作機構の一環。
 タキオン粒子を凝縮させ、純粋に破壊力へと変換した蹴りを叩き込む。
 インパクトの瞬間にジャッキを連動させることで、キックの反動で空中に戻り、二度三度と連続して蹴り続けることも可能。
【weapon】
『白夜へ向かう飛蝗(マスクドライダー・キックホッパー)』
 秘密組織ZECTが異星生命体ワームと戦うために開発したマスクドライダーシステム。
 ホッパーは増加装甲形態マスクドフォームがオミットされ、常に機動性に優れたライダーフォームで活動する。
 さらにゼクターをセットする向きによって、蹴撃主体のキックホッパー・拳撃主体のパンチホッパーと二種の形態を使い分けられる。
 が、矢車の戦闘スタイルは蹴りを多用するものであり、またパンチホッパーの使用者は彼の弟以外にいないと決めているので形態を変化させることはない。
【人物背景】
 ZECTの精鋭特殊部隊シャドウを率いる若き指揮官――だった男。
 完全調和(パーフェクト・ハーモニー)をモットーとし、あらゆる物事に卓越した才能を見せる、絵に描いたような完璧な人間。
 しかし仮面ライダーカブトと関わることで運命が激変。ザビーゼクター、部下、ZECT上層部の全てに見放され、失意の内に街を彷徨う。
 やがてカブトの前に再び姿を現したとき、矢車の中に完全調和の信念は一欠片も残っていなかった。
 「地獄を見た」と嘯き、あらゆることに無気力かつ厭世的な言動を見せる。が、自身を笑った(と矢車が感じた)対象には非常に攻撃的な対応を取る。
 かつて自身を陥れ、同じく全てを失った影山瞬を弟とし、カブトやワームに区別なく襲い掛かり、気の赴くままに暴れ回った。
 最後はワームと化した影山に自らの手で引導を渡し、二人だけの光――白夜を求めて、何処とも知れぬ旅に出た。
【サーヴァントの願い】
 影山瞬を生き返らせる。


806 : 名無しさん :2015/03/23(月) 23:32:44 8BtQr12A0
投下終了です


807 : ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:36:57 simc.Ts.0
投下します


808 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:38:26 simc.Ts.0


「違うッ!!!」

うらぶれた人気のない路地裏に、男の声が響き渡る。
その男は、世界を呪うかのような瞳をしていた。

「こんなはずじゃねぇ……オレは……俺は幸せになるんだ……!
 そのための力を俺は手に入れたッ……オレのスタンドは無敵だッ!
 ウェザーの記憶も利用して、承太郎の記憶DISCを手に入れる。
 そしてオレこそが『天国』に行くんだッ!
 なのに……クソッ、あのクソ神父のせいでよォォォーー!」

男――ドナテロ・ヴェルサスは、瞬間的に戻った死の記憶に憤っていた。
暫くの間そうして憤り、やり場のない感情を穴を掘ることで発散していたが、
いつまでもそうしているわけにもいかないので、ヴェルサスは壁にもたれかかり、落ち着いて状況を整理する。

「チクショー……それにしても何がどうなってやがる……足の傷も無くなっているし、カタツムリにもなってねえ……
 一体どういうことだ……?」

唐突に起こった想像もし得ない奇妙な状況に、ヴェルサスは理解が追いつかない。
記憶が確かなら、ヴェルサスは気に入らないプッチ神父を裏切り、
ウェザーの記憶を戻し、その混乱に乗じて『天国』へと至る手段を得ようとしたが、
敵対する空条徐倫たちによって阻まれ、人質として利用され最後はプッチの手によって囮に変えられ、
処分されたはずだった。
だが打ち捨てられた死の間際、彼はまだ死にたくないと、幸せになりたいと、新しい自分の人生をやり直したいと、
そう強く思ったのだ。その時彼は、この偽りの世界へと導かれた。聖杯戦争という戦いに関する記憶と共に。

「正直理解できねーが、これだけは事実だ。オレは死んでねぇ……そしてもう一度チャンスを得られたッ!
 このヴェルサスが、『天国』に行く力を得るチャンスをッ!」

手のひらをギュッと握りしめ、その生を、事実を、実感する。
ドナテロ・ヴェルサスは、生まれてから今までずっと不幸だった。
彼の人生に幸運というものはひとつも無く、ただただ不幸だけ。
冤罪から実刑判決を受け、獄中でも様々な不幸にあい、
身も心もズタボロになり己が何のため生きているかも分からない人生だった。
故に彼は誰よりも幸福を求める。
自分自身の出自を知り、力に目覚め彼はより自分こそが幸福になるべき存在だと自覚したことで、
更にその想いは強くなった。

「そうだ……オレにだって幸せになる権利はあるッ!聖杯戦争だかなんだか知らねーが、
 要は全員ぶっ殺せば願いが叶えられるってことだろう?
 やってやる……やってやるぜッ!!このオレの”アンダーワールド”で!!」

「ブラボー!おお…ブラボー!!」

「ッッ!?」

そう宣言した直後、ヴェルサスの眼前には上下逆さの状態でこちらを拍手で称える女の姿があった。
まったく気づかぬ間に至近まで接近されている上に、重力が逆転しているとしか思えない奇妙さ、
ヴェルサスは面を喰らい後ずさる。


809 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:39:38 simc.Ts.0

「な……なんだてめーは!?う、うおおおおッアンダーワールドッ!」

だがすぐに気を取り直し、自身のスタンド”アンダーワールド”を発現させ女に殴りかかった。
口のない能面のような、のっぺりとした人型のヴィジョンが女にラッシュをしかける。

「その意気やすばらし……わっ!ちょっと、待って、くださいよ、ねえ!敵じゃ、ありませんってば!」

女はアンダーワールドの拳撃を軽やかに躱しながら、敵でないことを説明しようとする。
しかし混乱しているヴェルサスは聞く耳を持たず殴り続ける。
アンダーワールドはパワータイプのスタンドではないが、人並みかそれ以上の近接能力はある。
守勢一方ではいずれ攻撃は命中してしまうだろう。
それに壁際に追い詰められつつもある。

「……チッ」

それを理解した女はヴェルサスに聞こえないよう小さく舌打ちをして、懐に隠し持ったアイテムに手を伸ばした。
すると――

「なんだ……どこに消えやがった!?」

――女の姿が一瞬にして消え去った。
四方八方見回すが、つい今まで目前にいたはずの女は影も形もなく消えている。

「クソッ……そうだ!アンダーワールド!」

一瞬のことでヴェルサスは動揺したが、自身のスタンド”アンダーワールド”の能力
『地面に起こった過去の出来事を再現できる』
を利用すれば女の消息を探れることに気づき、即座に発動した。

地面を掘ると、消える直前の女の行動が再現され始めた。
過去の映像をよく見ると、女は消える直前に何やら懐に手を伸ばし、道具を取り出した。
その道具は何やら少女趣味の折り畳み傘のようなものだったが、
女がそれを翳した瞬間、女はなんと壁の向こうへと消えるように姿を消し、一瞬の間を置きまた現れた。
この映像から考えるに、女は壁抜けの能力、もしくは瞬間移動能力を持っている。
そして映像の続きを見る限り、女は逃げ出した訳ではないらしい。
走りだすこともなく消えた先に留まり、また懐から何かを取り出した。
今度は赤いボールのようなものだ。
先ほどと同じように女は道具を翳すと、またもや姿を消した。
過去の映像はこれで終了だ。
つまりこの行動が直近の女の行動だろう。

(ということは……逃げること無くもしまたオレに何かしようと考えるならば、近づいて来ているはずだ……
 とすると……ッ!)

「後ろかッ!?」

「せぇぇいかぁぁい〜〜!!!」


既に、女は背後まで近づいていた。
そしてヴェルサスは振り向こうとする時間すら無く、女の手で両肩を抑えられた。
ヴェルサスはクッと小さな悲鳴を上げつつも何とか抵抗しようとしたが、女の力は見た目よりあるようで、
動き出すことはかなわない。


810 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:40:37 simc.Ts.0

「しずかーに……暴れないで……暴れないでください。私は敵ではありません。むしろ味方!
 それどころかあなたの腹心の部下なのです!
 冷静になってよーく思い出してください。この場は聖杯戦争!そしてあなたはマスター!
 そして私は、あなたのサーヴァントなのですよ!
 どうです?落ち着きましたか?思い出しましたか?」

女は矢継ぎ早に言葉をまくし立てる。
ヴェルサスはひとまず危険は無いと判断し、落ち着いて女の言葉を頭のなかで反芻した。
聖杯戦争、マスター、サーヴァント。その言葉の記憶は、確かにヴェルサスの中にあった。
だが、理解し難いその記憶のことを考えるより、自分の末期への怒りと再びチャンスを得られた喜びが先立った。
今、落ち着いたことでようやく聖杯戦争という争いに巻き込まれたのだと自覚することが出来た。
英霊と主従を組み、万能の願望機をめぐって最期の一人になるまで争い合う血塗られた戦争、
それが聖杯戦争。だが、ヴェルサスには不思議と恐怖はなかった。
先ほどまでは自分の最期と理解不能な出来事に感情を乱され、真面目に考えることもしなかったが、
落ち着いて考えてみると、むしろヴェルサスにとってこの聖杯戦争は、
命が助かったこと以上のありがたいチャンスの場だった。
縋る糸の見えたどん底は、ヴェルサスにとっては光り輝く道なのだ。
あらゆる願いを叶えられる聖杯を手にすることができれば自分は幸せになれる。
その希望があるだけで、ヴェルサスは戦うことにも非道に走ることにも何の躊躇もない。

「そうか……聖杯戦争、理解したぜ……そして、お前がオレのサーヴァントか」

ヴェルサスは理解を終えると、落ち着き払った声で後ろの女に語りかけた。

「やっと、分かって頂けましたか……ふふ……では手を離します。
 そうしたらゆっくりと、こちらに振り返ってみてください」

そう言い、女はヴェルサスの肩からその手を離した。
そして女の言う通り、ヴェルサスはゆっくりと振り返る。

「改めて、初めまして。私のクラスはレベル、反逆者のサーヴァントです。
 以後、お見知りおきを」

レベルのサーヴァントと名乗った女は、恭しく一礼をした。
冷静になってよく見てみれば、女はまだ少女と言ってもおかしくない容姿だった。
黒髪の中にある赤いメッシュが、垂れ下がる舌を連想させ不気味さを覚える。
しかし、得体は知れないものの、とても歴史に名を残すような偉大な英雄には見えない。

「ではまずひとつお聞きしたいことがあります。
 ズバリ、マスターの聖杯への『願い事』とその願いに対する『方針』はいかなるものでしょうか?
 私はあなたに付き従い、粉骨砕身努力する所存ですが、願いと方針が分かっていればよりお役に立てるというもの。
 先ほどマスターの意気込みの一端を耳にし感銘を受けましたが、仔細なことは聴けておりませんでしたので……」

女はそう言い、微笑を浮かべながら期待を込めた瞳でヴェルサスを見つめる。
対するヴェルサスは、少しの間だけ思案したが、とっくの昔に答えは決まっていた。

「オレの願いは『幸せになること』だ。そしてその願いを叶える為なら誰がどうなろうと知ったことじゃねーし、
 なんならこの世の中の気に食わねーヤツらをメチャメチャにしてやったっていい。
 そして利用できるものは何でも利用する。それだけだ」

ヴェルサスははっきりと断言した。
世を疎み己の幸福に焦がれる彼の願いとその為の手段は単純にして邪悪。
まともな神経を持った人間ならば躊躇してしまうようなストレートな願いだ。
しかしヴェルサスのこれまでの人生は、彼に良心や道徳といったものを育むことなど無かった。
だがそれを聞いた女が浮かべた表情は、『嫌悪』ではなく『愉悦』だった。


811 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:41:47 simc.Ts.0

「素晴らしい!素晴らしいですよマスター。やはりあなたは私の見込み通りの御方です。
 実を言うと私もマスター同様、願いのためならば他人がどうなろうと構わないのです」

にっかりと笑いながら、女は楽しそうに言う。

「お前の願い?」

ヴェルサスは女の言った願いという部分が気になり訊く。

「私の願いは、この世界の在り方の逆転。強者が力を失い弱者がこの世を統べる世界の実現です!
 私はかつて、力弱き者として強者に虐げられていました。私はそんな世界を逆転したい!
 下克上したいのです!全てをひっくり返して強者に弱者の屈辱を味あわせてやりたい!
 ……その過程の中で多少の犠牲や代償があったとしてもそれは理想の世界のための致し方ないリスクだと私は考えます」

女は表情を喜色から真剣味あるものに一転して、今度は熱っぽくその願いを語った。
その願いにはヴェルサスも少し、いや、大いに思う部分があった。
自身の人生を狂わせた大きな要因、何もかも決めつける判事のババア。
そして偉そうに指図をして、自分だけが『天国』を目指そうとしているプッチ。
どちらも偉ぶり一方的に力で弱者を押し付ける強者だ。
だからヴェルサスには女の言うことが理解できたし、共感する所もあった。

「……いいぜ、その願い、オレは否定しない。他のマスター共をぶっ殺して叶えればいい。
 オレの幸せにとって邪魔にならないならなんだっていい」

故に、ヴェルサスは女の願いを容認した。

「マスターならば分かって頂けると思っていました。
 共に戦いましょう。そして強者達のいる地上を地底に、地底を地上にひっくり返してしまいましょう!
 私の力はそのためにあるものです」

その言葉を聞いた女は、満足気な表情を浮かべながら、芝居がかった動きでヴェルサスに語りかけ、
信頼の握手のため手を差し出した。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


812 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:43:19 simc.Ts.0

女――レベルのサーヴァント・鬼人正邪は、先ほどの会話の後、
ヴェルサスに自身の能力や戦闘の際どうするかなどの説明や、
逆にヴェルサスの能力やできることなどの情報交換を済ませた。
そして情報交換を終えると、とりあえず情報収集をして来るとヴェルサスに告げ、彼の元から離れた。
ひとまずはこの程度の接触でいいだろうと判断したからだ。
正邪はしばらく人通りの無い道を歩き、ヴェルサスから十分離れたことを確認すると、

「ああ〜」

と深い息を吐く。
そして

「姫の時にも散々思ったが、良い奴のふりってのは最ッッッッ高に気分が悪いなぁ……やっぱり」

と、先ほどまでの慇懃無礼とまで言えた態度は一変し、
偽らざる本音を吐露した。
そう、正邪は端からヴェルサスに忠誠など誓ってはいない。
話した内容自体は所々本心ではあったが、丁寧な態度は全ては演技だ。
元より正邪が他人に対して信頼を寄せたり、忠誠を誓うことなど無い。
何故ならば彼女は生粋の『アマノジャク』だからだ。
利用価値があるうちはその本性を面に出さないが、最終的には相手が最も嫌がるタイミングで裏切るだろう。
正邪にとっては他人に嫌がられる事こそ悦びで、好かれる事こそが苦しみなのだから。

「あいつ、握手を断ったな……ま、バレてないとは思うが、信用にはもうひと押しというところかな……
 あいつはどうせ強者ではなく弱者側の人間なのだから、付け入る隙は十分あるだろうし」

ヴェルサスは、正邪に握手を返さなかった。
正邪は知らないことだが、ヴェルサスもまた、正邪とは違ったベクトルで人を信用することが出来ない人間である。
例え多少の共感を覚えようが、心の底から人を信じることはない。
ある意味で、互いに互いを利用することしか考えていないこの主従は似たもの同士と言えた。


813 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:44:55 simc.Ts.0

果たしてこの二人が行き着く先はどこだろう。何も変えられず、地べたを這いずり回るだけの終着か、
それとも、目指すべきまだ見ぬ楽園か、はてまた、地べたなど生ぬるく感じる、救いのない地の底か。
いずれかの、またいずれでもない終わりに向けて、下克上の幕は切って落とされた。


【クラス】
 レベル(エクストラクラス)

【真名】
 鬼人正邪@東方輝針城、弾幕アマノジャク

【パラメータ】
 筋力D 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具B

【属性】
 混沌・悪

【クラス別スキル】

 反逆者:A
その言葉の意味通り、レベルは反逆したことに関する逸話を持つものに与えられるクラス。
 正邪は自身のいた幻想郷の全てを敵に回し、強者に対する下克上を果たそうとした。
 敵がレベルに反逆心を抱かせた場合、パラメータが一部上昇する。
 正邪の基本的な反逆心のトリガーは、相手が強者であること。発動した場合耐久と敏捷のランクが1つ上がる。
 また同ランクまでの精神干渉を無効化するが、同時に主君に対して忠誠を抱くこともない。

【保有スキル】

 仕切り直し:B
 戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

 幻想少女:D
 幻想郷に住む少女達の大半が持っている能力。
 少量の魔力で飛行でき、弾幕攻撃を放つことが出来る。
 ランクDでは、飛行速度も弾幕威力もそれなり。

 単独行動:A
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 正邪は孤立無援の状態で10日間追っ手から逃げ、
 逃げ切れたことからマスターを失っても10日は現界していられる。

 弾幕避けの加護:A
 矢避けの加護の弾幕版。正邪は本来反則といえる回避不可能の弾幕の数々を、
 自身の力と道具の力で避けきった。
 そのことから、飛び道具に対して無類の回避能力を有している。


814 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:45:31 simc.Ts.0

【宝具】
『何でもひっくり返す程度の能力(リバース・イデオロギー)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:20
 アマノジャクとしての正邪の能力が宝具と化したもの。
 その力は時に物理法則を無視し上下左右の感覚すらひっくり返す事ができる。

『不可能弾幕には反則を(インポッシブル・ブレイカー)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1
 正邪が幻想郷住民たちから盗みだした9つのマジックアイテム。
 主に攻撃回避や逃げに特化した道具が多い。
 小人族の宝である打ち出の小槌の余波により、道具自体が魔力を有するため、
 使用する際魔力は消費しない。また使用する度にその力は向上する。
 一度に装備できるのはメインとサブの2つ。。
 一部サブ効果として、装備しているだけで効力を発揮するものもある。
 
 以下のものが道具とその能力。

 ひらり布:身を隠すことで一定時間攻撃を無力化出来る。

 天狗のトイカメラ:レンズに収めた飛び道具などを、シャッターを切ることで消すことが出来る。
  サブ効果として、敏捷が一段階上昇する。

 隙間の折り畳み傘:壁際に追い詰められた際、その逆側の一定距離までワープすることが出来る。
          また一定時間壁に潜むことも可能。

 亡霊の送り提灯:一定時間、まるで幽霊になったかのように実体を失い、無敵になる。

 血に飢えた陰陽玉:マーカーを飛ばし、マーカーのある位置までワープ出来る。
          ただしワープ距離はあまり長くない。
  サブ効果として、正邪の当たり判定が見た目より小さくなる。

 四尺マジックボム:着火することで、一定時間後爆発しあたり一帯の攻撃を消すことが出来る。
  サブ効果として、メインアイテムを使用した際周囲の攻撃を消すことが出来る。

 身代わり地蔵:装備することで、自身に当たった攻撃を数回無かったことに出来る。
        文字通り身代わり。

 呪いのデコイ人形:配置することで、敵に人形が本体だと誤認させることが出来る。
  サブ効果として、攻撃範囲が広くなる。

 打ち出の小槌(レプリカ):唯一の攻撃武器。攻撃するまでに溜めがいるが威力は高く、
              相手次第で大ダメージを与えることが出来る。
  サブ効果として、メインアイテムの能力が向上する。

『究極反則生命体(アルティメット・ファウル・シイング)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
 数多くの正邪を犠牲に(ゲーム的な意味で)、一部のプレイヤー達は恐ろしい境地に達した。
 本来アイテムを使わなければ回避不能と思われた弾幕、その全てをアイテムを使わずに制覇したのだ。
 それこそが究極反則生命体である。
 この場合では正邪自身が宝具となり、発動すれば道具が使えなくなる代わりに、
 神がかった回避能力を得ることが出来る。

『弾幕アマノジャクゴールドラッシュ』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 10番目の反則アイテム、打ち出の小槌(本物)を発現することが出来る。
 その力は、ありとあらゆる攻撃を小判へと変化させ無力化することが出来る。
 ただし正邪にとって色々と例外的なアイテムなので、発動には令呪を一画消費しなければならない。

【Weapon】
 宝具である『不可能弾幕には反則を(インポッシブル・ブレイカー)』
 による反則アイテム各種

【人物背景】
 下克上を企むアマノジャク。妖怪である。
 人の嫌がることを好み、喜ばせると自己嫌悪に陥るほど筋金入りのひねくれ者。
 小人族の末裔をそそのかし、秘宝の力で幻想郷を混乱に陥れた。
 そしてその野望が失敗に終わるも、諦めること無く遂には幻想郷中のお尋ね者となった。
 性格は前記の通り非常に嫌な性格をしており、本質的には小物。
 しかしその反逆心は神々や大妖怪を敵にしても折れぬほど強い。
 しぶとさも天下一品で、孤立無援の逃飛行を10日にわたって繰り広げた。
 
【サーヴァントとしての願い】
 強者が支配する安定した世界をぶち壊し、弱者が物を言う世界に変える

【基本戦術・運用】
 単純な戦闘能力は低いため、真っ向勝負を避け策を弄して戦う。
 こと逃げることに関してはスペシャリストなので、生命力だけは人一倍。


815 : ヴェルサス&レベル ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:46:37 simc.Ts.0

【マスター】
 ドナテロ・ヴェルサス@ジョジョの奇妙な冒険Part6ストーンオーシャン

【マスターとしての願い】
 幸せになる

【能力・技能】
 スタンド『アンダーワールド』
 地面は過去の出来事を記憶しており、それを再現することが出来る能力。
 といっても偽りのこの地には記憶が無いに等しいため、ポテンシャルは発揮しがたい。
 基本的にヴェルサス自身が覚えている出来事を再現できる。
 射程距離に関して諸説あるが、この場では街1つ程度という説を採用する。
 

【人物背景】
 身長181cm、体重72kg。これといった定職は持たない。
 第三部に登場する吸血鬼DIOの実子であるが、今までその自覚は無く、
 スタンド能力の才能のため謎の精神的な苦しみ陥っていたが、
 プッチと出会ったことでその出自を知りスタンド能力を開花させた。
 不幸な人生を送ってきたため世の中に対する怨みやハングリーさ、
 また誰よりも幸せになるという強い向上願望を持っている。
 本当に幸せになってほしいものだ。

【方針】
 幸せになるためなら誰がどうなろうと構わない。
 しかし無差別に襲いかかるのではなく、慎重に立ちまわる。


816 : ◆Me7YRUBRz6 :2015/03/25(水) 21:47:09 simc.Ts.0
以上で投下を終了します


817 : ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 02:07:16 sST8VMeI0
投下乙です。自分も投下させて頂きます。


818 : ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 02:08:01 sST8VMeI0


―――――アイドルの世界に、興味は無いかい?



「アイドルになったらいろんなキグルミ着てお仕事できるでごぜーますか?」

幼きシンデレラの御伽話は公園で始まりを告げる。
質素なスーツを身に纏った地味な風貌の男性が、着ぐるみに似た服を着る少女に自らの名刺を差し出す。

「アイドルになれば、もっと楽しくなって………もう寂しくならねーですか………?」

寂しがり屋の少女はアイドルという希望を見出した。
少女の問いかけに対し、男性は優しく微笑みながら頷く。
彼は少女をお城へ導く魔法使いにしては余りにもしがなく、お姫様の手を引く王子にしては余りにも平凡だった。




「仁奈は、アイドルになりてーです!」

それでも少女は彼の真っ直ぐな招待に応えた。
少女にとって、彼こそが南瓜の馬車を引く魔法使いであり、お城の王子様であった。
ある意味で運命の出会いだった。
彼は自分をアイドルの世界へ導いてくれた、たった一人のプロデューサーだったのだから。







819 : 市原仁奈&ライダー ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 02:09:15 sST8VMeI0



「市原仁奈、9歳です!よろしくおねげーしますよ!」

その日から市原仁奈は魔法にかけられた。
プロデューサーの手に引かれ、アイドルとしての階段を駆け上がることになった。

「コアラのキグルミでごぜーますね!コアラの気持ちになれるですよ〜!」

仕事で可愛らしい着ぐるみを沢山着て、色んな動物の気持ちになって。
着ぐるみ集めが大好きな仁奈にとって、それは何よりも楽しくい時間だった。

「お歌のレッスンは大変でごぜーますね……
 でも、みんなと一緒ならつらくねーですよ!」

時にはダンスやボイスのレッスンを何度も繰り返し。
その過程で多くのアイドルと顔を合わせ、時に友達のような間柄になった。

「プロデューサー!仁奈、CDデビューでごぜーますか!?」

幾つもの仕事をこなし、何ヶ月以上もの時を経て。
仁奈はキグルミアイドルとして人気を獲得し、ついにソロユニットとしてのデビューが決まって。
嬉しさのあまり何度もはしゃいで、プロデューサーと喜びを分かち合った。

「ずっとずっと、このままがいいでごぜーます!だから、仁奈を一人にしやがらないでください」

市原仁奈は幸せだった。
アイドルとして頑張っていけば、寂しくならない。
このままずっとずっと、プロデューサーと一緒にいられると思っていた。
天真爛漫で、寂しがり屋なシンデレラはそれを疑わなかった。
大好きで大切な、お父さんのような人といつまでもお仕事ができると思っていた。





820 : 市原仁奈&ライダー ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 02:09:48 sST8VMeI0





―――――仁奈、大切な話があるんだ。




「……え?」

プロデューサーから告げられた言葉に仁奈はただ呆然とした表情を浮かべることしか出来なかった。
仕事の都合でプロデューサーの異動が決定し、仁奈の元から離れることになったというのだ。
既に仁奈はアイドルとして熟成し、立派な一人前となった。
プロデューサーは新たな新人の育成という次の仕事へ赴かなければならない。

「じょ、冗談でごぜーますよね?仁奈とずっと一緒にいてくれやがりますよね…?」

必死に問いかける仁奈に対し、プロデューサーは「ごめん」と呟き申し訳なさそうに顔を俯けさせるのみ。
信じられなかった。嘘だと思いたかった。大切なプロデューサーと離れたくなかった。
一人にしないと約束してくれたのに。
大粒の涙を目元に溜め、今すぐにでも泣き出したくなるような悲しみが胸に押し寄せてくる。
仁奈の心はプロデューサーが傍にいなくなってしまうという恐怖と不安でいっぱいになっていた。
そして沈黙の後、プロデューサーは仁奈の肩に手を置き、口を開いた。

―――――ごめんな、仁奈。本当にごめん……でも、俺はいつでもお前を応援してるから。

その日を経て彼は仁奈のプロデューサーでは無くなった。
残された仁奈の胸に去来したのは虚無感と孤独感。
今までずっと自分を見守ってくれて、いつも一緒にいてくれたプロデューサー。
海外赴任で滅多に会えない父親を持つ仁奈にとってプロデューサーは魔法使いであり、王子様であり。
そして、もう一人の父親のような存在だった。
だが幾ら手を伸ばして懇願しようとも彼は戻ってこない。
『大人』の事情に対し、幼い子供は何も口出しは出来ない。

ずっと一緒にいてほしいのにもう傍にはいてくれない。
永遠の別れでも何でもない、ただの仕事の都合による異動に過ぎない別離。
ただ仕事で顔を合わせることがなくなる。中にはそれだけのことだと割り切れるアイドルもいるかもしれない。
しかし、9歳に過ぎない幼い少女がそれを納得することは出来なかった。
大好きなプロデューサーと離れたくないという思いは胸に残り続けた。
例えプロデューサーとアイドルの関係でなくなるだけだとしても。
それは仁奈にとって、まるで大事な人がどこか遠くへ行ってしまうような恐怖だった。
あどけない想いを抱えた少女が『奇跡』に縋ろうと思ってしまったのは、必然だったのかもしれない。





821 : 市原仁奈&ライダー ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 02:10:54 sST8VMeI0
◆◆◆



「君は、つらい思いをしたんだね」

日が落ちて誰もいなくなった公園のベンチに座り、仁奈は涙を堪えながら顔を俯かせる。
仁奈は自らの《サーヴァント》に全てを語った。
アイドルになった経緯、プロデューサーのこと、孤独を恐れる気持ち、そして自分の夢を。
仁奈の隣に座る白髪の老人は、幼き少女の言葉を受け止め穏やかな声色で呟く。

「仁奈には、どうすればいいのか…わからねーです」

全てを吐露した仁奈は、泣き言のようにぼやく。
彼女の胸の内は恐怖で一杯だった。
独りぼっちになることを恐れて、奇跡を巡る戦いへと身を投じてしまった。
プロデューサーとずっと一緒にいたいという『願い』を抱いてしまった故に、彼女は冬木に召還された。
だけど、やっぱり心細い。殺し合いという状況が怖くて仕方無い。
少しずつ涙声を混じらせていく仁奈を、老人は優しげな瞳で見つめていた。
まるで孫を見守る祖父のように、少女に慈悲を向けていた。

「君の望みは、その人とずっと一緒にいること。それは間違いないね?」
「……そうでごぜーます」
「どうすればいと思う?」

突然投げ掛けられた問いかけ。
仁奈はきょとんとした表情へと変わり、老人を見つめた。
一緒にいる為にどうすればいいのだろうか。
どれほど悩んでも、今の仁奈にその答えは導き出せない。
それでも仁奈は、どうにかして正解を見つけたかった。プロデューサーと一緒に居る方法を知りたかった。
精一杯考え、悩み続ける仁奈を見つめて老人は穏やかに口を開く。

「簡単なことさ。皆で同じ夢を持てばいいんだ」

そういいながら静かに立ち上がった老人を見上げて、仁奈はぽかんとした顔で言葉を零す。

「同じ夢で、ごぜーますか…?」
「君も、君の大切な人達も、皆同じ『夢』を見ればいいんだ。
 皆で手を合わせ、共に命を賭けるに足りる、素晴らしい『夢』だ。
 そうすれば皆の心が擦れ違うことも無くなる。想いの擦れ違いや、一方的な欲求によって生まれる不幸も無くなる
 世界は、幸せになる」

同じ夢を見れば、皆は一つになれる。
皆が同じ方向を見ていれば、擦れ違うことも無くなる。
そうすれば世界は幸せになれる。
老人の語る理想のような言葉に、仁奈は自然と目を輝かせていた。
ずっと皆と同じ方を向けて、ずっとずっと一緒にいられる。
それはまさに仁奈が望んだ未来だった。
プロデューサーと離れたくない、一緒に居続けたい仁奈にとってのハッピーエンドだった

「プロデューサーも、仁奈も、皆で同じ夢を持てば……?」

希望を見出したように、仁奈は静かに呟く。
仁奈と老人は出会ってからまだ数時間にも満たない仲だ。
それなのに、この老人の言葉には不思議な安心感を感じてしまう。
プロデューサーと一緒にいる時のように、ほっとした気持ちになれる。
知らず知らずのうちに、仁奈の心は自然に老人へと寄り添っていたのだ。


「ああ。そうすれば、皆は一つになれる」


右手に獰猛な鉤爪を持つ老人《ライダー》は、仁奈へと優しく生身の左手を差し出す。
幼きシンデレラの手を最初に引いたのは、素敵な魔法を掛けてくれた心優しい王子様《プロデューサー》だった。
王子は去っていき、奇跡の願望器を巡る戦争によってシンデレラの魔法は解ける。
どうしようもなく無力で臆病な少女へと落ちぶれたシンデレラの手を引くのは―――――――







「ニナさん。私と一緒に、夢を見ませんか?」







◆◆◆


822 : 市原仁奈&ライダー ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 02:12:10 sST8VMeI0
【クラス】
ライダー

【真名】
クー・クライング・クルー(カギ爪の男)@ガン×ソード

【属性】
混沌・善

【ステータス】
筋力D+ 耐久E 敏捷D+ 魔力D 幸運A+ 宝具A

【クラス別スキル】
騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。宝具で召還するヨロイの操縦に特化。

対魔力:E
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

【保有スキル】
精神異常:A+
狂気的な善意。
かつての過酷な経験によるショックから負の感情を自覚できない。
仲間が死のうと悲しみや怒りを一切抱かず、己を憎む者に対しても当然の如く温厚に接する。
常軌を逸した思考による精神的なスーパーアーマー。

狂信:A++
己の夢への絶対的な信奉。同ランク以下の精神干渉を無効化する。
更に他者から仕掛けられた交渉判定のファンブル率を上昇させる。
ただし自身と同じ夢を見る同志からの交渉判定のみファンブル率上昇効果は発生しない。
このランクが高ければ高いほど精神に異常を来す。

カリスマ:C++
強烈な善意によって他者を魅了し、絶対的な崇拝を勝ち取る才能。
特に心に傷を負った者、世界を恨んでいる者に対しては強力な効果を発揮する。
ただしライダーの異常性を認識出来る者はカリスマの影響を受けない。

幸福の同志:A
「皆で同じ夢を見ればいい。そうすればこの世から不幸が消える」
ライダーの思想に感化された者に「狂信」スキルを付加させ、自らの同志として洗脳する。
「狂信」スキルのランクと洗脳の度合いはライダーの思想にどれだけ侵食されているかによって変動する。

【宝具】
『鉤爪の男(クー・クライング・クルー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
右腕に装着されたカギ爪の義手。
友人の医師から「夢を掴んで離さないように」という想いを込められて送られたもの。
神秘を帯びていること以外さしたる能力は無いが、彼の象徴として宝具化している。
殺傷能力はあるのでサーヴァントに対する武器として使える。

『夢は彼の者を殺さず、夢人は死せず(デッドエンド・デニアー)』
ランク:C+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1人
自動発動型宝具。
自身に向けられた攻撃を『偶然』によって回避する。
偶然通りかかった鳥の群れが身代わりの盾となる、放たれた弾丸が偶々義手に弾かれたことで負傷を免れる等、奇跡のような強運に彼は守られる。
生前より信じ込んでいた『夢が自分を殺させない』という身勝手な自負の具現。
ライダーがより強く己の夢を信じていれば効力はアップし、また魔力消費も軽減する。
自動発動のため魔力消費の融通が効かないことが欠点だが、ライダーは夢への狂信によって消費を限りなく抑えられている。
なお『幸福の時よ来たれ、世界に安寧の夢を』解放中には一切機能しない。

『幸福の時よ来たれ、世界に安寧の夢を(ビギンズ・バースデイ)』
ランク:A 種別:固有結界 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
浮遊した大陸『テラフォーミングベース』を心象風景として具現化する固有結界。
結界自体に特殊な効果はないが、結界内でのみライダーが搭乗出来るヨロイ『バースデイ』が召還可能。
バースデイは武装を持たないが、巨体を生かした物理攻撃、G-ER流体の操作・制御といった能力を持つ。
結界はライダーの持つ『夢』、そして生前のライダーの同志達の『夢』によって維持される。
同じ夢を見る彼らの強烈な意志の力によって形成されている為、固有結界でありながら必要とされる魔力消費は多くない。
本来ならば『ライダーの夢を実行する舞台』なのだが、サーヴァントとしての枠組みに嵌められたことで劣化。
実行の為の条件は整っておらず、単純にバースデイによる戦闘を行う為の宝具となっている。


823 : 市原仁奈&ライダー ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 02:12:39 sST8VMeI0

【Weapon】
宝具『鉤爪の男』
バースデイ(ライダーが搭乗するヨロイ。端的に言えば巨大ロボである)

【人物背景】
『幸せの時』の遂行を目的とする組織の長。
右腕にカギ爪の義手を付けた老人であり、既に老衰による死期が迫っている。
元々はマザー(地球)の官僚だったが、細菌兵器の暴走によってマザーが崩壊。
囚人惑星エンドレス・イリュージョンの月へと逃れるも、争いに巻き込まれ右腕を失う。
この時の過酷な体験と争いを繰り返す人間の醜さによって絶望し、負の感情を自覚出来なくなってしまう。
それ以来「争いの無い世界を作る」という夢を持つようになり、自らの組織を結成。
世界平和の為の手段として、世界をやり直し全人類に自らの意思を強制的に植え付ける計画『幸せの時』を画策した。
性格は徹底して温厚で、常に穏やかな物腰で他者と接する。
負の感情を自覚出来ないため怒りや悲しみの感情を見せることも無い。
叛逆した部下を説得しようとしてうっかり殺してしまう、更に自分が他者を殺しても「その人は心の中で生き続けているのだからそれでいい」と本気で考える等、その内面には常軌を逸した異常性を秘めている。
世界を平和にするという善意で動いているが、実態は己の罪を正当化し他者の夢を矮小と捉える傲慢で狂気的なエゴイスト。
因みにカギ爪の義手は“友達”の医者から『夢を掴んで離さないように』という想いを込めて送られたもの。

【サーヴァントとしての願い】
『幸せの時』を完遂し、世界から争いを無くす。

【方針】
夢を実現するべく聖杯を手に入れる。
その過程で他の参加者を殺すことにもなるが、目的を果たせば皆生き返るので問題は無い。







【マスター】
市原仁奈@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
プロデューサーに一緒にいてほしい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
アイドルとしての技能。

【人物背景】
9歳の幼きアイドル。タイプはパッション属性。
趣味は着ぐるみ集めで、普段着も着ぐるみをイメージした格好をしている。
天真爛漫な性格だが寂しがり屋。父親は海外で仕事をしているとのこと。
「〜やがります」「〜ごぜーます」と言った喋り方が特徴的。
因みに左利き。

【方針】
ライダーを信じる。
独りぼっちにはなりたくない。


824 : 名無しさん :2015/03/26(木) 02:12:51 sST8VMeI0
投下終了です


825 : ◆FUMjk7BfMw :2015/03/26(木) 14:41:38 sST8VMeI0
>>822
すいません、ライダーの宝具『夢は彼の者を殺さず、夢人は死せず』の解説を加筆します。

自身に向けられた攻撃を『偶然』によって回避する。



自身に向けられた攻撃を『偶然』によって回避する。
ライダーが致命傷を負う攻撃を仕掛けられた場合に発動する。


826 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:33:17 yXgaBLGY0
投下します。


827 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:33:51 yXgaBLGY0

 ――テレビの中で煌めいていた、皆の「夢」の素敵な貴方。
 叶うならば、私も貴方のようになりたかった。



 北条加蓮の重ねた年月は、ただ空虚なだけのものだった。
 性質の悪い病なんかに付き纏われたせいで床に伏してばかりの、人並みの青春を送れない毎日。
 他の大多数の少女達ならば当たり前に積み重ねていく、友情や恋心に満たされた思い出。それを持たない代わりに加蓮の心に刻まれていくのは、変わり映えのしない真っ白な室内が齎す閉塞感。
 貴重な時間を無為に過ごすストレスだけを、ふつふつと募らせるだけだった。
 だからだったのだろう。加蓮がアイドルという職業に憧れを抱いたのは。
 歌声と舞踊で人々を魅了する彼女達の姿は、加蓮が夢見る充実感に満ち溢れた日常。
 笑顔を届け、笑顔を受け取り、世界が笑顔で満たされる。
 ああなれたらいいのにと、加蓮は実らぬ想いと知りながら抱いていた。

 プロデューサーと名乗る男が加蓮の前に現れたのは、ようやく病の治療を終えて人並みの生活を送り始めた頃だった。
 彼が加蓮に示したのは、念願のアイドルになるチャンス。
 まさしく千載一遇のチャンス。二つ返事で受け入れようかという気持ちはすぐに生まれた。
 しかし実際に口から出たのは、努力は趣味じゃないなんて気怠げな言い草。それはきっと、成果を出せないかもしれない自分自身を庇うための予防線だったのだろう。
 そんな加蓮の態度に苦笑しながらもプロデューサーは加蓮を受け入れ、北条加蓮の新たな日々は始まりを告げた。
 私を見つけてくれてありがとう。そんな感謝を彼に伝える勇気は、まだ無かった。

 アイドルの卵としての毎日は、ひたすらに苦悩の日々だった。
 最初に漏らした言葉に反し、加蓮としては出来る限りの努力をした。それどころか、多少の無理すらしているつもりだった。
 なのに、身体がまるでついてこない。すぐに息を上げ、簡単に調子を崩し、払った苦労に見合うだけの対価を加蓮に与えない。
 病床に伏した期間の長さ、人並みの体力すら持たない虚弱さ、自分自身の肉体が障害となる。加蓮の夢にとっての枷は、他ならぬ加蓮自身だった。
 先輩や同僚の少女達がアイドルとして芽吹く転機を掴むのを横目に、成果の出てくれない練習を積むだけ。
 加蓮を閉じ込める空間が、病室からレッスンルームに変わっただけじゃないか。
 ただ、焦燥だけが加蓮を蝕みつつあった。
 少しずつ実力は上がっていると褒めてくれるプロデューサーの前で、結局目に見えた結果を出せない申し訳なさも焦燥の中には含まれていた。
 彼を喜ばせたい、たったそれだけのことがあまりに難しかった。

 そんな加蓮にも転機は訪れた。
 とある先輩アイドルを主役として開催するライブに、バッグダンサーとして参加するチャンスが与えられたのだ。
 レッスンの合間に垣間見たプロデューサーのせわしない働きぶりを見るに、加蓮にこの席を用意するために相当の苦労をしたのだろう。
 嬉しかった。そして同じくらい、怖かった。
 いざ舞台を与えられてみれば、自分に出来るのかなんて怖気づいてしまうのが現実。元が病人、成長の実感も無い。もしも失敗すれば、彼の顔に泥を塗る羽目になる。否定の理由だけは十分なほどに挙げられた。
 それでも引き受けようと思ったのは、プロデューサーが後押ししてくれ、仲間達も応援してくれたから。
 彼等の声があるおかげで自分だって出来る人間なんだと、信じられる気がしたから。
 いや、本当はただ信じたいだけだったのかもしれない。加蓮が、そして加蓮以外の誰もが。


828 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:34:21 yXgaBLGY0

 結論だけ言えば、失敗だった。

 何百人もの観客の歓喜の眼差しが注がれるそのステージの上で、ライブの盛り上がりが最高潮に達しようかと言う局面に至って、加蓮の身体は突然に貧血を起こして失神し、ばたりと倒れ込んだ。
 その後のライブがどうなったのか、加蓮は正確には知らない。プロデューサーは大丈夫だから気に病むなとしか告げなかったし、先輩のアイドルもあのくらいどうってことないと笑っていたから。
 しかしプロデューサーが方々に謝り倒している姿を見れば、自分の犯した失態が決して軽くないことは容易に理解出来た。その後ろ姿の小ささを見て、気に病むなという方が無理な話だ。
 先輩のアイドルが見せた笑顔から僅かに感じ取れた疲労も、その本心を加蓮に勘ぐらせるには十分だった。本当の気持ちなんて本人以外に分かりようが無いから、加蓮の中で築き上げられた憶測が全てとなる。

 加蓮に親しい者達は皆、手痛い非難を直接浴びせることはしなかった。しかし、そんな事実は加蓮の心を救いはしない。
 ようやく手にした初めての仕事で、目も当てられない失敗。よりにもよって、他人を思い切り巻き込む形で。こんな経験の後で、元気など簡単に出せたものではない。
 これからアイドルとしてやっていけるのか。また同じような機会を与えられても、いつどのタイミングで同じような失敗を犯すか分かったものではないのに。今は笑って許してくれる周囲の人間に、これから何度の迷惑を掛ければ済むのだろうか。
 ある時ふと耳にしたのは、やっぱり駄目だったじゃん、病み上がりだもんね、なんて嗤い合う誰かの声。その声色はいつかきっと、加蓮の聴覚を埋め尽くすのではないか。

 今までの人生で積み重ねた経験の乏しさは、到底埋められそうにない。
 北条華蓮は、結局、周囲の期待に応えられない人間。
 失望だけが、加蓮の全てを呑み込んでいた。

 加蓮がアイドル事務所を立ち去ったのは、ライブから五日ほど経った頃のことだった。
 呼び止めるプロデューサーや仲間達の声に、耳を傾けたくなかった。一瞬だけ視界の端に映った彼等の今にも泣き出しそうな顔からも、すぐに目を背けた。
 こうして、北条加蓮のシンデレラストーリーには呆気なく幕が下ろされたのである。
 ありがとうは、結局一度も言えなかった。
 ごめんなさいは、何度だって吐き出せたのに。

 アイドルという「夢」を手放す代わりに手に入れた、ただの平凡な女子高生としての毎日。熱中出来る代わりの何かを見つけられない、鬱屈とした時間。
 あの後の彼等がどのような未来を歩んだのか、加蓮は知る由も無い。顔や声を聞く度に傷を抉られるような息苦しさがあって、それが嫌で彼等の情報を取り入れないように努めたから。
 当然、いつしか彼等からの連絡もぴたりと来なくなった。
 日々の刺激を漫然と受け流す代わりに、ひたすら繰り返すのは過ぎ去った時間を悔いるという作業。
 どこから間違えていたのだろう。
 ライブ前の体調管理が及ばなかったことか。バックダンサーの仕事を引き受けたことか。日々の体力作りが不完全だったことか。アイドルとなる前に、病を抱えて生まれてしまったことか。
 不必要に入り組んだ迷路。時間をかけて辿り着くゴールはいつも、達成感の得られない空っぽの空間。その度に生み出されるのは「とにかくやり直せたらいいのに」なんて漠然とした願望。
 結局、傷を抉られるような息苦しさのせいで加蓮はいつも思考を打ち切る。

 望み通りの過去を手に入れられるなら、何だって捧げられる気がした。どんな酷い真似だって出来る気がした。
 理想郷へと連れて行ってくれる人さえ傍にいたなら、たとえ道程が修羅でも構わない。かつてのプロデューサーのように、今の自分を見つけてくれる人がいたなら。
 なんて、荒唐無稽な虚仮威しに過ぎない思考が渦巻く程度には、未来へと進む加蓮の時は無味乾燥としていた。

 「夢」を「夢」で終わらせたバッドエンド。そんな彼女のエピローグは、ただの空虚だった。




829 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:35:15 yXgaBLGY0

 私は、「夢」を見ていた。
 それはある英霊の、とある一人のヒーローの軌跡。

――衰え始めた人間なんて要らないんだよ。

 必要なだけの力を出せない自分自身が、彼にとっての現実。
 衰えた彼自身の肉体こそが、彼の前に聳え立つ高い壁。
 かつての輝きを鈍らせてしまった彼を不要とする人間が現れるのも、当たり前のことだった。

――これ以上、足手纏いにはなりたくねえんだよ。
――その程度だったんですか? 貴方のヒーローに対する思いは。
――そろそろ別の道を進むのも、悪くねえんじゃねえのか?

 本当は、彼だって諦めたくなかったはずだ。
 しかし現実の厳しさを突き付けられ、彼は栄光の座を下りるしかなかった。
 衰えた事実それ自体よりも、自分の存在が相棒にとっての枷になることをきっと彼は恐れたのだ。

――最後に皆さんへの一言が、「ByeBye」だそうです。

 こうして、彼の姿は表舞台から消えていく。
 色褪せた偶像の末路として、これは必然だったのだろう。

――全然分かってない。今まであいつの何を見てたの? バーナビーはちゃんと理想を追ってるよ!
――難しいことわかんないけどさ、ヒーローやりたいならやればいいじゃん! それが一番お父さんらしいと思うよ、私は。

 なのに、彼の物語はバッドエンドで締め括られない。
 彼の周りには、腑抜けた彼に発破をかける人達がいた。
 言い訳をして胸の奥に押し込んだ彼の本心を引きずり出してくれる人達がいた。

――もしもしタイガー、司法局のGOが出たわ! 一日限定で二部ヒーロー復活よ!
――ここは俺達に任せてください!
――おー、いたいた! 早く乗れタイガー!

 彼が日陰者になった後でも、復活の機会を作るために手を尽くす人達がいてくれた。
 そう、彼の積み重ねた努力と活躍の日々は、逆境に立たされた彼を見捨てない。
 彼の秘めた輝きを知る沢山の人々が、彼を後押ししてくれる。
 そして皆の存在を知ることが出来たなら、彼の取るべき道は決まっている。


830 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:35:42 yXgaBLGY0

――俺は誰かに必要とされたくてヒーローやってんじゃねぇんだ……
――ヒーローなどと気取りながら、悪を裁かぬ貴様に何が出来る!?
――俺はただ、助けを求めている人がいたら手を差し伸べる……それだけだ!!

 精一杯のエールを受け取った彼は、遂に自らの最高の輝きを取り戻した。
 他の誰かにそうあれと命じられるのではない、彼自身の口でこうあるのだと宣言する。
 あるがままの自分を受け入れて、肯定する。
 最後に彼をヒーローたらしめたのは、他でもない彼自身だったのだ。

――いいか! これはライアン様からのアドバイスだ。こいつの相方は、お前しかいねえ!
――代理として、私が二人の復帰を認めます!
――ワイルドタイガーはね、ぼくがこまってるのをたすけてくれたんだよ! だからワイルドタイガーはヒーローだよ!
――先輩は俺達の憧れですから!
――タイガー! タイガー!! タイガー!!! タイガー!!!!

 彼の雄姿は自然と大勢の人々の心を動かし、躍らせ、惹き付けた。
 一度失ったはずの彼の居場所もまた、気付けば再び用意されていた。

――いいのかよ?
――この流れじゃ断れませんよ。まあいいでしょう。貴方がいると、僕が引き立ちますから。

 相棒の声に込められた感情が額面通りの侮蔑じゃないことなんか、誰の耳にも明らかだ。
 彼の意思と彼以外の皆の意思の合致。それはつまり、彼が復活という事実を意味していた。
 それは紛れも無いハッピーエンド。
 諦めかけた未来まで繋がる道へと舞い戻り、ヒーローの日々はここからまた始まっていく。
 こうして、彼の物語は「末永く幸せに暮らしましたとさ」なんてお決まりの文句でフィナーレを迎える。

 それは、とある一人のヒーローの軌跡。
 それは、自らの限界に至ってなお理想郷へと辿り着いた英霊の復活譚。
 それは、聳え立つ壁の高さに挫折した男が、人々に支えられながら壁を乗り越え「夢」を掴み取った物語。

 それは、あの日の私に選べなかった可能性が、いつかの未来で辿り着いたのかもしれない結末。




831 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:36:19 yXgaBLGY0

 長椅子に並んでホットドッグを仲良く貪る一組の男女。
 その姿は、傍目にはきっと恋人同士になど見えるまい。年齢に二回りほど差のありそうな二人の姿を見れば、友人や兄弟よりは親子と見るのが妥当だろう。片方が制服の女子高生だからと言って不純な関係に見られるのだけは勘弁と、加蓮は口に出さずに願う。
 加蓮の目から見てもうだつが上がらないおじさんという印象を受ける風貌の男だが、しかし紛れも無く彼は『ヒーロー』の名を冠した加蓮のサーヴァントである。
 アイドルを辞めてから何日か何週間か、もしかしたら何か月か経った頃、ふと気付けば加蓮は冬木の街に立っていた。それから数刻の時を経て出会ったのが、彼であった。

「戦争。もう始まっちゃうんでしょうね、タイガー」

 彼には『ヒーロー』という聖杯戦争のために与えられた座があり、また『鏑木・T・虎徹』という生来の名前がある。
 それなのに、加蓮が彼の名をどちらでもない『ワイルドタイガー』、略してタイガーと呼ぶのは、他でもないタイガー自身の望みだ。
 『ワイルドタイガー』は、彼が街のヒーローとして活動するための二つ名。自ら選んだ仮初の名を掲げることは、今の自分が守られるべき市民と等しい存在では無く、市民を守る希望の象徴であろうとする意思表明なのだとタイガーは語った。
 だから、タイガーは一市民としての自己を示す本名ではなく、また聖杯戦争――願いの名の下の潰し合いの駒としての自己を示す記号でもなく、『ワイルドタイガー』を今も頑なに名乗っている。

「……だな。ったく、何をどうすればこんな糞ったれたイベント思いつくんだか。しかもわざわざヒーローの俺を呼び出してよ。嫌味か?」
「呼ばれちゃったものはしょうがないよ。本当、嫌になる気持ちは分かるけどね」
「それに願いを叶える聖杯なんて餌まで吊るしやがって。悪趣味どころじゃねえぞ」

 そう、ワイルドタイガーは英霊となって尚その信念を揺るがせない。
 目の前を行き交う人々が送る日々の尊さ。これがワイルドタイガーを戦わせる理由である。
 願いのためと言って争いを起こせば、必ず誰かが傷付くし死人だって出る。マスターには一切の怪我をさせないなんて都合の良い話が実現するとは限らず、それでなくとも戦争とは即ち暴力と被虐の肯定だ。
 ヒーローは、ワイルドタイガーはそんな所業を許さない。ゆえに彼の取るスタンスは、聖杯戦争という儀式そのものへの反逆以外に無い。

「だから戦うんでしょ? ヒーローはいつの時代も正しい皆の希望。でしょ? 期待してるんだから」
「……おう。そう言って貰えると助かるぜ」

 タイガーにとって唯一の懸念は、マスターがタイガーに独善的な戦いを強いたりしないかであった。
 しかし、タイガーを召喚した加蓮が出会った翌日にはタイガーの信念にぴったり適合する意思を示したことで、その懸念はほぼ解消された。
 北条加蓮とワイルドタイガーは二人で、あるいは仲間となる者達皆で力を合わせ、悪を食い止め聖杯戦争を止めさせる。その上で加蓮も含めた罪の無い全ての人々を、本来いるべき居場所へと還す。
 これが、タイガー達の下した決定である。

「頑張らなきゃね。お互いに」

 加蓮はタイガーの意向に沿うことに納得している。そこには何の問題も無い。
 だから、誰も何も憂慮するポイントなど無い。
 今回の話は、これで終わりなのだ。
 なのに何故、タイガーは今妙な沈黙を決め込んでいるのだろう。
 加蓮の微笑み――自分でも少し白々しいと思う表情を、何故見つめているのだろう。

「なあマスター。本当に、望みとか無いのか?」

 恐る恐る、といった調子でタイガーは口を開いて加蓮に問うた。
 とっくに結論など出したはずの、今更な話を。


832 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:36:41 yXgaBLGY0

「やだ、どうしたの急に。こんな所から皆で帰れたらいいって、何回も言ったじゃん」
「いや、俺って一応サーヴァントとしてここに呼ばれただろ? こういう時は、何かどうしても叶えたいこととか、やり直したい事がある奴がいたからって話なんだが……本当に、マスターは家に帰りたいってだけか?」
「……だから、そんなの勘違い。私みたいに、特に願いが無くてもマスターになっちゃう人もいるんだって。物事には例外ってのが付き物なの」

 最初は何も気にしてないというような気楽な笑顔で。なお食い下がってきたタイガーに対しての二度目は、ほんの少し曇ってしまった笑顔で。
 加蓮は加蓮なりにタイガーに応える。笑顔はたくさん練習したから、そこに綻びは殆ど無い。
 これでいいでしょ納得してよ。そんな苛立ちも、笑顔を上手に取り繕ったせいで伝わらない。
 だからタイガーは、軽い調子で会話を続けてしまう。そのまま視線を前に向けたから、僅かに変貌を始めた加蓮の表情には気付けない。

「やっぱ、そういうもんか? ほら、年頃の娘だったら何かあるかなーって思ってよ。会えなくなった人に会いたいとか、夢を叶えたいとかさ」
「……違うって」

 そう言ってタイガーは、高く設置された大画面のモニターを指差す。
 画面の中で放映されるのは幼い少女が二人と長身の少女が一人、愛らしい衣装に身を包んで歌い踊る姿だった。
 かつて何度も見慣れ憧れた、アイドルの楽曲のコマーシャル。
 加蓮の顔が強張ったのもタイガーはやはり見落とした。ゆえに、地雷は見事に踏み抜かれた。

「例えば女の子だと、あんな感じにアイドルになりたいなー、とか」
「――だからさっきから無いって言ってんじゃんっ!!」

 気付けば、加蓮は立ち上がり叫んでいた。笑顔なんか、とっくに消し飛んでいた。
 怒号に呼応するように周囲が一瞬しんと静まり返り、場違いなまでに元気な歌声だけがその場に虚しく響く。
 一身に注がれる奇異の目と、ばつの悪そうなタイガーの顔が気まずくて、加蓮はすとんと座る。
 すぐに人々は普段の様子を取り戻し、しかし二人の間から消えた和やかな雰囲気は取り戻せない。

「…………ごめん」
「いや、なんか俺も悪かったよ。しょーもない詮索して」

 お互いに謝ることは出来た。でも、ただそれだけ。
 次の言葉を見つけられず、二人別々にあらぬ方向に視線を飛ばす。
 居心地の悪い静けさだけが二人を包んでいた。

「……帰る」
「あ、おい待てって!」

 無理矢理にでも空気を入れ替えられそうな選択として、加蓮はこの場を立ち去ることにした。
 勿論タイガーはこうして追従するから、気まずさから解放されるわけではない。
 ただ、黙って座るよりは歩きながら周りの風景に目を向ける方が、幾らか気が紛れそうだと思っただけだ。
 全然関係の無い適当な話題を振るタイミングなんて、黙っていればそのうちやって来る。改めて言葉を重ねれば、加蓮の起こした癇癪なんてすぐに過去のものになり、互いにどうでも良くなるはずだ。
 でも今はただ、頭を冷やすために時間を使いたかった。

 どうして、この人だったの。
 その呟きが誰の耳にも拾われなかったのは、きっと幸いだったのだろう。




833 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:37:51 yXgaBLGY0



 ワイルドタイガーは、私の「夢」とも言える存在。

 だから私は、怖くなった。
 本当に誰かを傷付けてしまうのが嫌だった。死なせた責任を負うことに怖気づいた。
 でも何よりも怖かったのは、「貴方」を血で汚すことだった。

 弱虫の私には遂に実現出来なかった、ハンデを背負った人間のサクセスストーリー。
 齎された機会を物にして成功者となったワイルドタイガーを、失敗者の私がもし主従の立場を盾に従わせたなら。
 その瞬間に彼は私一人のためだけに独善家となり、彼の信念は見るも無残に捻じ曲げられるのだろう。
 聖杯を手にする過程で憧れのヒーローはヒーローではなくなり、ワイルドタイガーの栄光の歴史には泥が塗られる。
 それでいて、きっと理想の結果は得られない。悪に染まったヒーローに勝ち目なんてある訳が無くて、どうせ塵屑みたいに消えるだけ。
 でも、私の過去を綺麗に塗り変えるためには、タイガーには消えてもらわなくてはならない。最適のパートナーと一緒に勝ち残ることが、聖杯戦争のルールだから。
 私が優勝するためには、絶対に優勝出来ないサーヴァントが不本意な最期を迎える必要がある。
 シンデレラの成り損ないがシンデレラになるために、かつてのシンデレラが階段の下へと蹴落とされる。

 果たしてその時、私は私でいられるのか。
 私の「IF」とも言うべき、けれど決して私ではない他人が嘆き苦しみ泣き叫ぶ様を見た時、私の浮かべる表情はどんな有様なのか。

 怖かった。知りたくなかった。だから、そんな可能性の詰まった箱に蓋をした。
 足手纏いがいなければ、きっと皆でハッピーエンドへと走って行ける。呆れるくらいに簡単な話だった。
 タイガーは誰もが望むヒーローで在り続け、ヒーローに庇護された人達の未来が守られ、約束通り私は彼の手で日常へと返される。あの、空っぽの日常へ。
 きっとこれが、誰にとっても最良の結末。

 その結末を迎えるためにも、私は私に出来ることをする。
 私の願いを、胸の奥に仕舞い込む。
 初めて出会った時にワイルドタイガーが私に向けた、明朗な綺麗な……何にも知らないあの笑顔。
 彼に守られる私は、代わりに彼の笑顔を守るつもりだった。
 こんなの思い上がりも甚だしい考え方だと分かっているけど、それでも、せめて。
 ……こうでも考えなければ、濁った何かが私の中から噴き出してしまうような気がした。
 そんな本音も、胸の奥に仕舞い込む。

 私の「夢」を叶えるために、私の「夢」を汚してしまうのが怖かった。
 だから私は、私の「夢」を諦める。私の「夢」を、守るために。
 うん。きっと、これでいいんだと思う。



 ――「夢」は、やっぱり永遠に「夢」のまま。
 だって、貴方が私を見つけてしまったから。


834 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:38:20 yXgaBLGY0



【マスター】
北条加蓮@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
アイドルになれなかった私を変えたかった。

【weapon】
特に無し。

【能力・技能】
アイドルとしての練習を積んだため、歌やダンスの腕前は常人より上。
しかし元病人ということもあって体力は平均レベル、あるいはそれ以下。

【人物背景】
長い入院生活を余儀なくされていた元・病弱な女子高生。
テレビ画面の中のアイドルに憧れ、プロデューサーとの出会いをきっかけに自らアイドルデビューした。
当初は斜に構えた気怠げな態度を取るも、経験を積むうちに本来の真面目な素顔が前面に表れ、煌めく乙女へと変わっていく。
……というのは本来の歴史の話。
今ここにいる彼女が背負うのは、「夢を叶えられなかった北条加蓮」というIFの物語。

【方針】
ワイルドタイガーと一緒に、皆のために頑張る……?


835 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:38:47 yXgaBLGY0



【クラス】
ヒーロー

【真名】
鏑木・T・虎徹(ワイルドタイガー)@劇場版TIGER&BUNNY -The Rising-

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:D 幸運:B 宝具:C

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
・正義の味方:A+
正義の名の下に平和を守り続けてきたヒーローのアイデンティティとも言うべきスキル。
その効果は人命救助や悪人退治などの善行を行う際のパワーアップ……ではない。ヒーローにとって人助けは当然の行為であり、これにわざわざプラスの効果は生じない。
このスキルは、ヒーローが自らのアイデンティティを喪失しかねない場面において発動するマイナススキルである。
悪人に服従する、非道な行為に加担する等といった悪行を強いられ、ヒーローとしての信念を捻じ曲げられる状況に陥った時、大幅なパワーダウンを引き起こす。
そして、例えばマスターから聖杯戦争での勝利が最終目的だと明言されている行動を命じられた場合にも、ヒーローが納得していない限りこのスキルは発動する。

【保有スキル】
・NEXT能力:D
正確にはスキルではなく、NEXTが持つ固有の超能力を便宜的にスキルとして扱ったもの。そのため自らの意思で発動させる。
ワイルドタイガーのNEXT能力は「ハンドレッドパワー」。主な効果は一定時間の筋力・耐久・敏捷の向上であり、発動終了後から一時間は再発動不可能となる。
ある時期からNEXT能力の減退が進んでおり、発動状態の継続時間が短縮されている。これに伴いランクも下落した。今回召喚されたワイルドタイガーは一分間のみ発動可能。
なお、このスキルは発動の際に少量の魔力消費を伴う。

・正義の壊し屋:B
救助活動のためなら器物損壊や建造物等損壊も辞さない姿勢を指した(不名誉な)称号がスキルとなった。別名・賠償金野郎。
設置物や施設や要塞など、モノへの攻撃で与えるダメージにプラスの補正がかかる。

・勇猛:C
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。

・カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
ワイルドタイガーには集団を指揮する能力などほぼ皆無に等しい。しかし彼の奮闘する姿は自然と人々の心を惹き付け、高揚させる。
ここではあくまで人々を奮い立たせることに特化したスキルと捉えるべきである。


836 : ヒロイン&ヒーロー ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/26(木) 22:39:49 yXgaBLGY0

【宝具】
・『LEGEND OF THE HEROES』
ランク:D〜A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足人数:12人
この宝具は、シュテルンビルトの街に刻まれたヒーロー達の栄光の歴史そのもの。
彼等の成し遂げた活躍を再現するかのように、『ヒーロー』の座に相応しい他の英霊を召喚する。
ただしあくまで宝具によって具現化した概念存在であり、座にいる英霊を直接召喚する訳ではない。
元々は、シュテルンビルトにおける過去から未来まで全ての時間軸のヒーローを呼び出すことも可能な宝具であった。
ただし今回サーヴァントとして参戦したワイルドタイガーが召喚出来る対象は「NC1980年前後においてワイルドタイガーと共に闘ったヒーロー達」に限定されている。
即ちバーナビー・ブルックスJr.を始めとする一部リーグのヒーロー七名、二部リーグの後輩ヒーロー四名、一度ながら共闘した元一部リーグ所属のゴールデンライアン、以上の総勢十二名が対象となる。
ヒーローのパラメーターの総合値は、一部リーグ組がワイルドタイガーとほぼ同水準であり、二部リーグ組がワイルドタイガーより一定以上に低い。
召喚対象および人数はワイルドタイガーの任意で決定可能。人数が増加すればするほど宝具自体のランクは上昇し、要求される魔力消費量も増大していく。
そして召喚したヒーローは全員が二つのスキルを持つ。一つは「NEXT能力」、もう一つは「正義の味方」である。

【weapon】
・ヒーロースーツ
ワイルドタイガーが活動する際に着用する装甲服。
身体能力を向上させるのに加え、スーツ自体の耐久性も上々。

・ロンリーチェイサー
出動時に使用しているバイク。バーナビー用の車体と接続させるとダブルチェイサーになる。

【人物背景】
超能力を持った新人類NEXTにして、シュテルンビルトで日夜活動したヒーローの一人。
既に衰えた存在と見なされ居場所も奪\0われ、一度はヒーローとしての自信を見失ってしまう。
しかし支えてくれた者達の言葉を受け止めて自信を取り戻し、街の窮地に駆け付け人々を助け抜く。
そして沸き起こる待望の声に応える形で、彼はヒーローとしての復活を遂げた。
ワイルドタイガーは、再び夢を叶えたのだ。

【サーヴァントとしての願い】
マスターも含めた全ての人々を守り、この聖杯戦争とやらを止めてやる。


837 : 名無しさん :2015/03/26(木) 22:40:36 yXgaBLGY0
投下を終了します。


838 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:24:42 eAV0b1Ps0
皆様、投下お疲れ様です
私も投下します


839 : 御坂妹&レプリカ(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:27:30 eAV0b1Ps0




――このサーヴァントは実験が行われていた時のミサカ達に似ています、とミサカ10032号は第一印象をミサカネットワークを介して報告します。



◆ ◆ ◆


840 : 御坂妹&レプリカ(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:29:31 eAV0b1Ps0


「………」

「手ごたえなし、とミサカは困惑します」

公園のベンチに腰をかけながら、巨大なゴーグルをつけた無表情な少女が独り言ちる。
時刻は夜で人通りも少ないためか、夜風の通りすぎる音がより一層大きく聞こえる。

「やはりこの世界には『ミサカ』が一人しかいないのですね、とミサカは判断します」

その少女は虚空を眺めており、一見するとまるで機械や人形のような印象を与える。
彼女は大量生産された御坂美琴のクローン『妹達(シスターズ)』の内の1体、ミサカ10032号。
彼女を知る者からは『御坂妹』と呼ばれている。

御坂妹が偽の冬木に喚び出された際に感じたのは違和感だった。
『妹達』は脳波でリンクされたミサカネットワークにより情報を送受信して意識や思考を共有しているのだが、
冬木に降り立ってからは別個体からの情報を得られないのだ。
御坂妹にとっては他の『妹達』からの連絡がぱったりと途絶えてしまったどころか存在すら確認できない感覚だった。
このことから、御坂妹はこの世界に『妹達』は自分ひとりしかいない、と推測し、現在に至る。
今まで他の個体とは少なからずミサカネットワークにて情報のやり取りをしていたのだが、
それがなくなったことによりそれなりの新鮮味と寂しさを感じていた。

「…エレクトロゾルダート」
「…なんでしょう、ミサカ一〇〇三二號」
「その呼び方は少し長すぎるのでミサカで構いません、とミサカは本題とは別にミサカと呼ぶよう促します」

御坂妹は、傍らに立つ軍服を身に着けた1人の男、エレクトロゾルダートに声をかけた。
御坂妹の座るベンチの50cm右隣に直立不動かつ無言で後ろ手を組んで佇んでいた。
1ミリたりとも動かないからかその存在感は無きに等しく、
たとえ存在に気づいたとしても常に発されている、兵器に照準を合わせられているかのような威圧感から誰も近づこうとはしないだろう。
ゾルダートの顔にも表情はなく、御坂妹と似たような雰囲気を感じさせる…いや、実際に両者は似ていた。

「了解しました、ミサカ。…それで、何か聞きたいことでも?」
「あなたは、いえ、"あなた達"は――」

御坂妹が言い終える前に、夜の公園に足音が響いてきた。
何事かと周囲を見回すと、先ほどまで2人しかいなかった公園にぞろぞろと人が集まってきていた。
少し目を凝らすと、その全員がゾルダートと同じ顔であり、同じ歩き方であり、同じ軍服を着ていることがわかる。
まるでクローンのよう、いや、クローンだ。
『妹達』と同じく、全ての個体が同一の存在。
御坂妹のサーヴァントは『レプリカ』のサーヴァント、エレクトロゾルダートであった。
エレクトロゾルダートはある人物のクローンという存在ゆえに量産可能で、今現在召喚しているのは公園にいる10体だけだ。
御坂妹は10体の内1体を自分の元に置き、それ以外の個体には別の指示を与えていた。

「8人で分散して半径1km地帯を見回っていましたが、敵サーヴァントの気配はありませんでした」

公園に集まったゾルダートの内の1体が口を開くと、それに追従して「同じく」という台詞が7回繰り返された。
8体は周辺の見回りを任されたらしい。

「ミサカ一〇〇三二號、自動販売機から全員分のジュースを買ってきました」

残りの1体のゾルダートは両手から零れ落ちそうな量の缶ジュースを抱えている。
見回りとは別に、御坂妹からお使いを頼まれていた個体だ。
彼はいそいそとベンチへ寄り、缶ジュースを御坂妹の隣に一つ一つ立てていった。
そのゾルダートは御坂妹と会話していたゾルダートとは別個体なので、会話の内容を知る由はない。
そのため、御坂妹のことをミサカではなくミサカ一〇〇三二號と呼んだ。

「…これからはミサカと呼んでください。そういえばエレクトロゾルダートはネットワークを持っていませんでしたね、とミサカは頭を抱えます」

エレクトロゾルダート達は『妹達』とは違い、情報を共有していない。
そのことをすっかり忘れていた御坂妹は表情をあまり変えずに片手で自らの額を押さえる。

「これからミサカ一〇〇三二號のことは『ミサカ』と呼ぶんだ。いいな」
「「「「「「「「「Jawohl(了解しました).」」」」」」」」」

御坂妹の傍らにいたゾルダートの言葉に対し、他のゾルダート達は異口同音に口を開いた。


841 : 御坂妹&レプリカ(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:30:44 eAV0b1Ps0




しばらくしてから、御坂妹は額から手を退け、話題を先ほど中断されたものに戻す。
エレクトロゾルダートのマスターである御坂妹にとってはかなり重要な話だからだ。

「――エレクトロゾルダート…あなた達に聞きたいことがあります、とミサカは話を本題に戻します」

御坂妹はゾルダート達に問いかける。

「あなた達は、自分達がどんな存在だと思っていますか?とミサカはかねてより抱えていた疑問をぶつけます」
「我々がどんな存在か、ですか?」

御坂妹は首を縦に振り、頷く。
エレクトロゾルダートは『妹達』の在り方と似ている。
彼らを見ていると、まるで自らをただの道具としか見ていないようだった。
だから、御坂妹は彼らと出会ってから気がかりだったのだ。
エレクトロゾルダートも、自分達が『実験動物』だった頃のように、自身の命に価値を見出していないのではないか、と。

「…サーヴァントであり、ミサカのために戦う存在です」

ゾルダートの1体は淡々と答える。
確かに、それは通常のサーヴァントとしてならば当然だろう。
しかし、エレクトロゾルダート達は量産でき、多数対少数で戦うという性質上、個々の力が非常に弱い。
もし三騎士のような強大な敵を相手取る場合、多数の犠牲は免れないのだ。
それにも関わらず。

「ミサカが勝利を手にできるのならば、我々は喜んでその歯車となりましょう」
「そのために我々の命を捧げます」
「Sieg Heil!」
「ミサカに一万年の栄光を!」

ゾルダート達が口々に答える。その内容はどれも主君への忠誠を示すものばかりだ。
かつての『妹達』が殺されるために造られた存在ならば、エレクトロゾルダートは特攻するために造られた存在だろう。
やはり、彼らはあの頃の『妹達』に似ている――御坂妹は『実験』に協力していた頃の『妹達』を思い返していた。


――俺は世界にひとりしかいないおまえを助けるためにここに立ってんだよ


無謀にも学園都市最強の『一方通行(アクセラレータ)』に挑んだお人好しの言葉が蘇る。


――この子達は私の妹だから。ただ、それだけよ


自分のために命を捨てようとした『妹達』のオリジナルであり、困った姉の言葉を思い出す。



聖杯を巡る争いの中にいることは御坂妹も自覚している。
かつて救われた命を無駄にする気はなく、襲われれば応戦する覚悟もできている。
御坂妹には聖杯にかける願いは特にないが、強いて願いを挙げるとするなら――

――かつて上条当麻や御坂美琴が自分達にそうしてくれたように、エレクトロゾルダート達1人1人を生命のある『個』として見ていきたいということくらいであった。


842 : 御坂妹&レプリカ(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:32:53 eAV0b1Ps0
【クラス】
レプリカ

【真名】
エレクトロゾルダート@アカツキ電光戦記

【パラメータ】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具A+

【属性】
秩序・悪(個性の獲得によって変動する可能性有り)

【クラス別スキル】
複製:A
ある存在の複製であり、量産可能であることを示すスキル。
その特性から一体あたりの現界による魔力消費は非常に軽く、Aランクならば50体で通常のサーヴァント1体分の魔力消費になる。
マスターの意思で魔力が許す限りレプリカを追加召喚し、戦わせることができる。
さらに、レプリカは量産した個体の内1体が残っている限り、消滅したことにはならない。
このスキルの効果は宝具『第三帝国の悪夢』と重複している。

【保有スキル】
無我:D
クローンであるがゆえに自我が希薄で、個性がない。
それゆえに情に心を動かされにくく、あらゆる精神干渉を一定の確率で無効化する。
しかし、自我に目覚めて個性を獲得する例が報告されており、その場合このスキルは失われる。

単独行動:C-
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。ランクCならば1日程度活動可能。
しかし電光機関を使用すると、魔力を消耗するため活動可能時間は大幅に短縮される。

スキル覚醒:D
聖杯戦争の過程で新たなスキルを獲得する可能性を示すスキル。
レプリカは強い個性の目覚めにより新たなスキルを取得するかもしれない。
ただし、デメリットスキルも取得してしまう可能性もあるので注意。


843 : 御坂妹&レプリカ(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:35:03 eAV0b1Ps0
【宝具】
『第三帝国の悪夢(エレクトロゾルダート)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:100人
秘密結社ゲゼルシャフトの私兵。
ゲセルシャフトで量産され、使い捨ての兵として運用されたクローンとしての存在自体が宝具。
電光機関の命を削るという欠点を数で補うために、
ゲゼルシャフトの武装親衛隊長アドラーをオリギナールとして量産された複製體(クローン)であり、一種の特攻兵器。
マスターの意思で魔力が許す限り同等のレプリカを追加召喚することができる。
さらに倒されたレプリカ自体を媒体に新たなレプリカを召喚可能であり燃費も良い。
レプリカの各個体は同じクラスに属する独立したサーヴァントとして扱われる。
しかし、同時に現界する数が80体を超えると維持に要する魔力の都合上各個体の弱体化は免れない。

また、何らかのきっかけで精神面で強い個性に目覚める個体もおり、次のような逸話がある。
・ある個体は自分達の上に立つ者がゲルマン民族でないことを疑問に思い、ゲセルシャフトを乗っ取るべく裏切った。
・ある個体は、電光機関で寿命を消耗した自身と仲間の命を救うために完全教団に戦いを挑んだ。

【weapon】
・電光機関
各個体が身に着けている電光被服に装着されている特殊機関。
無尽蔵に電気を生み出すことができる。
強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
他にも高圧な電気を弾にして飛ばすなど、様々な応用が可能。
電光被服と組み合わせることでパラメータを上昇させることもできる
しかし、電光機関の電気は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、
使い続けた者は死んでしまうという欠点を持つ。
レプリカはサーヴァントであるため、生体エネルギーの代わりに魔力を消耗する。

・電光被服
電光機関と組み合わせ電力を供給することで、使用者に超人的な身体能力を与える装備。
電光機関を使用している間、筋力・敏捷が1ランク上昇する。

【人物背景】
秘密結社ゲゼルシャフトの私兵。
アドラーをオリジナルとしてゲゼルシャフトが量産したクローン兵士であり、
「エレクトロゾルダート(電気の兵士)」という名前はそれら全ての個体の総称として使われている。
量産されたゾルダート達は全員電光機関を装備し、使用している。
電光機関とは本来、使用者に多大な消耗を強い、寿命を消費していく代物である。
ゾルダート達はその電光機関のリスクについて基本的に知らされておらず、戦闘時には文字通り捨て身で電光機関を行使し戦う。
その為個々の生命活動時間は非常に短いのだが、クローン技術により数で補う事でそれがカバーされている。
要するに、特攻兵器にして捨て駒の扱いである。
更に作中を見る限り、負傷し戦えなくなった個体は電光戦車の生体材料に使われているようである。
ゾルダート達に個体差は少なく、基本的には上司や組織に忠実かつ愛国心が強く、外部の人間や敵対者には排他的かつ攻撃的という共通性質を持つ。
しかし、何らかのきっかけで個性に目覚めることがあり、ストーリーにおいても作中で強い個性に目覚めて単独で行動するようになる。

此度の聖杯戦争ではマスターである御坂妹に忠誠を誓っているが…。

【サーヴァントとしての願い】
ミサカに一万年の栄光を!

【基本戦術、方針、運用法】
パラメータは全ランクEで、電光機関使用によるパ伸びしろも微妙。
それだけなら最弱間違いなしだが多数召喚による物量戦術でそれを補う。
対人宝具しか持っていないサーヴァントとは相性がいい。
しかし単独行動中に電光機関を使いすぎると自然消滅する上、自我に目覚める個体もいるので管理はきちんとしよう。


844 : 御坂妹&レプリカ(エクストラクラス) ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:36:05 eAV0b1Ps0
【マスター】
ミサカ10032号(御坂妹)@とある魔術の禁書目録

【マスターとしての願い】
特に願いはないが、エレクトロゾルダート達1人1人を生命を持つ『個』として見ていきたい。

【weapon】
・銃器
通った場合、どんな銃を所持しているかは後の書き手の方々にお任せします。

・専用のゴーグル
『欠陥電気』を制御するために周囲の電場の状態を把握しなければならないため、
能力の使用には電気力線を可視化するゴーグルを身に着ける必要がある。

【能力・技能】
・『欠陥電気』
オリジナルの御坂美琴と同じく電気を操る能力だが、その強度はせいぜいレベル2〜3相当。(美琴はレベル5)
それでも美琴の1%にも満たないらしく、電磁力線の視認などの力もない。
動物の体表面のノミだけを殺したり、空気中の酸素をオゾンに分解し敵の酸欠を誘うといった程度には器用な使い方ができる。
またクローンである上に同じ学習を施されているため全員が全く同じ脳波と精神構造を持っており、
これを利用して電気操作能力を応用し「ミサカネットワーク」と呼ばれる独自の脳波リンクネットワークを形成している。
妹達は常にこのネットワークを通して各個体間の遠距離通信を行ったり、経験や知識を共有しているが、
偽の冬木には10032号しかいないため、ミサカネットワークは使えない。

・銃器を始めとする戦闘技術
実験のために与えられた記憶と10031回に渡る一方通行との戦闘経験により、
兵器・銃火器類の扱いや体術などではオリジナルを上回っている。
実戦慣れしており、相手が素人なら集団戦でも軽くあしらってみせることが可能。

【人物背景】
御坂美琴の体細胞クローン『妹達』の内の1人。単価にして18万円。
服装は美琴と同じ常盤台中学のものを着用している。
容姿は美琴と瓜二つだが、ゴーグルを装着していること、短パンを穿いていないことでオリジナルと区別できる。
表情に乏しいが無感情ではなく、基本的に感性は美琴と同じ。
羞恥心はないに等しく、上条当麻に対してパンツを見られようが全裸を見られようが、全く表情を変えることはない。
また、脱げと言われたら公衆の面前で脱ぐこともためらわない。
一方通行(アクセラレータ)の絶対能力進化計画の最中に上条が介入し、
自分を含む約1万人の妹達の未来を救い、また自分たちを人として認めてくれた発言もあって、
上条当麻に恋愛感情を抱いており、美琴の前でそれらしい明言をしている。
参戦時期は、少なくとも上条が一方通行を倒した以降。
上条に買ってもらったネックレスの有無は通った場合、後続の方にお任せします。

『妹達』は「超能力者の量産は可能か」という命題に基づき始まった、
『量産型能力者(レディオノイズ)計画』で開発されたクローン技術から生み出された。
しかし、計画終盤の演算結果から、その実験は失敗に終わる。
その後、美琴と同じく学園都市に7人しか居ないレベル5の超能力者であり、
学園都市最強の能力者・一方通行を絶対能力(レベル6)へと至らせるための実験に使用される。
この実験によって既に00001号から10031号が一方通行に殺害されている。
しかし、その実験を知った上条当麻が一方通行を倒したことで実験は中止され、
生存することができた10032号から20000号までの9968人は、
実験の中止に伴い世界各国の研究所に「治療」のため預けられた。

【方針】
救われた命をこんなところで失いたくはない。
聖杯には興味はない。


845 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/03/27(金) 06:36:28 eAV0b1Ps0
以上で投下を終了します


846 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/03/29(日) 13:31:53 Ob/obUMw0
拙作「レイ・ザ・バレル&ランサー」について、ステータスの一部修正と本文の一部修正を行ったことを報告します。
更新済みwikiのページで内容を確認できます。問題がある場合は修正前の内容で再度編集します。


847 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/30(月) 04:25:44 OzDxnscc0
>>750
王道な熱血コンビは見ていて気持ちが良いですね。
気高き魂が輝きを呼ぶ。そして、勇気を糧に戦う。
スキルの勇気ある主といい、ジョナサンとの相性が抜群ですね。

>>768
ブレードトゥースの狂っていても、何処か残っている根底の感情が悲しい。
そして、あの空でなければならないボッシュの思いの強さときたら。
それ以外を不要と断じれる強さと脆さが儚くも綺麗なのが、もう。

>>774
信頼関係などはなっからない乗り換え上等。
とはいえ、冷静な判断を下すカリーニンの堅実さは侮れない。
偽りの世界で「本来の世界を取り戻す」というのは思う所がありますね。

>>779
何とも薄気味悪さが漂うコンビ、怖いとしか言い様がない。
人間の定義、ぶっとんだ幸せ理論、宝具の異質さ。
不安定な両者の恐ろしさが地の文に滲み出ていますね。

>>789
時の守護者だけに、やり直しといったイメージがすごく似合いますね。
輝きを信じるといった真っ直ぐなルーラーというのは珍しい。
あくまで聖杯戦争の管理に徹するとしていますが、どうなるか。

>>794
道化師である彼は高みで嗤っている姿が似合いますね。
幻想と不条理の根源であるけれど、ある意味立ち位置はわかりやすい。
偽りの都市といい、雰囲気がマッチしていますね。

>>799
互いにかけがえのない半身を失っているからか目が淀んでいますね。
大切な人の為なら、地獄だろうが駆け抜ける気概。
螺旋力も今のままでは十全ではないですが、全開となるにはやはり矢車さんが鍵ですね。

>>807
正邪に振り回されるヴェルサスの姿が脳裏に浮かびますね。
ひねくれ者だけに、わざと嫌がることをやりそうだったり。
慇懃無礼で逆に胡散臭さが増しててゲスっぽさが際立っていて、嫌らしい。

>>817
幼女とお爺ちゃんといった見た目は穏やかなコンビなのに……。
嘘は言ってない所がまた、どうしようもない。
一緒に接していく内に、カギ爪の思想に染まっていく仁奈ちゃんはもうダメかもしれないですね。

>>826
夢を諦めたアイドルと夢を叶えたヒーロー、対称的ですね。
勝ち残ってしまっては【夢】を汚すことになってしまう。
ホットドッグを貪る所が、父と娘のような雰囲気が出ていていいですね。

>>838
複製されたレプリカ繋がりの二人は独特ですね。
自我が芽生え、抗ったという共通点からも雰囲気は似ていますが。
ゾルの自我は未だ拙いものではあるが、はたして。


投下します。


848 : ネギ&ランサー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/30(月) 04:26:18 OzDxnscc0
この世界には秘密がある。
街を歩く殆どの人間が知らない、とっておき。
そんな世界の裏側を知るのは極一部である。
多くの人が行き交う雑踏に紛れ、口元を真一文字にした少年が濁りきった瞳を太陽へと向ける。
世界は色褪せている。彼女が死んでから。神楽坂明日菜が死んだ瞬間から。
少年、ネギ・スプリングフィールドの世界はモノクロに染まっていた。
それは、この偽りの街に呼ばれてからも変わらない。
太陽の暖かな光も今となっては煩わしさを覚えてしまう。

「僕は此処にいる、やり直す為に」

後、数日。穏やかな日常も終わり、闘いが始まる。
ネギの目的はただ一つ。聖杯を取ることのみだ。
神楽坂明日菜ともう一度逢いたい。あの時気づけなかった過ちを消し去って、救う。
故に、願いを携えて彼は進まなければならない。

「アスナさん、僕は――間違っているのでしょうか」

その為には、他の誰かを斬り捨てる。
他の人が大切にしている想いも、未来も、全てを犠牲にしてしまう覚悟が必要だ。
もしも、同じく参加している中に知り合いの誰かがいたならば、ネギの頭の中にも、葛藤が生まれただろう。
だが、此処には自分しかいない。生きた知り合いは、自分しかいないのだ。
偽りの教え子、偽りの姉、偽りの幼馴染。全てが偽りであって真実ではない。
冬木市という雑多な街で、ネギはたった一つの真実を追い求める。

――ごめんなさい、僕は先生失格みたいです。

今まで培った倫理観も冒涜へと捨ててしまえ。
丁寧に悔いる必要はないし、引き返す道は疾うの昔に崩れてしまった。


849 : ネギ&ランサー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/30(月) 04:27:20 OzDxnscc0
     
……人を殺してでも、僕はやり直したいんだ。

この聖杯戦争を勝ち残ったとして、ネギが護れるものなんてほんの少しにも満たないはずだ。
マギステル・マギになるという夢を掲げながら、我欲を以って他者を踏み越えようとする不適合者。
汚れた指先で、望む彼女の笑顔はきっと――綺麗だ。
例え、自分が地獄の底に堕ちようとも、明日菜は手を伸ばすだろう。
伸ばして、力いっぱい手を掴み取ろうとして。
それだけはいけない。こんな自分勝手な奴を助けようとしてはならない。

「ごめんなさい、アスナさん」

小さな声で紡がれた謝罪は、誰の耳にも届かない。
何を想い、何を誓うか。
そんなことは今はどうだっていい。
誰に理解されずとも、譲れない願いがある。
戦って、勝つ。廻り続ける世界で、最後まで生き切ってやるんだ。

「僕は、戻れないことを望んでいる」

喧騒を抜け、一人歩く最中、つらつらと思考に浸ったが、どれも無意味な幻想だった。
抗えない運命と、掴んでしまったやり直しの機会。
幼いネギにとって、それは縋るには十分過ぎるぐらいにピースが揃っていた。
踏み出した一歩の先は底の見えない崖か、それとも光指す道か。
先行きの見えぬ戦いが、ネギを待っている。

『それでいいの?』
「……ええ。そうでもないと、僕は甘えてしまいますから」

そんなネギを心配してか、霊体化しているサーヴァントは優しく声をかける。
呼び出されたサーヴァント――彼は一目見て、普通の人間だった。
荒事なんてとてもじゃないが得意そうな顔には見えない。


850 : ネギ&ランサー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/30(月) 04:27:58 OzDxnscc0

『……それは、僕に対しても含めてかな?』

憂いを帯びた目に、控えめな身体。
白く染まった髪はさらさらで、顔つきは純朴そのもの。
ランサーとして呼ばれた彼は金木研と名乗った。

「いえ、貴方のことは頼りにしていますよ、【ランサー】さん」

このサーヴァントと出会い、共に歩んでか数日しか経っていないが、彼は自分のことをどうにも気にかけているらしい。
それは、青年の優しさなのか。それとも、戦えるモノになってほしい利己的な打算があるのか。
どちらにせよ構わない。カネキにも願いを叶える為に呼ばれ、譲れぬ想いもあるのだろう。
負けられないのは両者変わらない。
聖杯戦争に余計な情は不要だ、勝ち上がることだけを考えていればいい。

「だから、勝ちます」
「うん、マスター。絶対に勝とう」













金木研には恋焦がれていた願いがあった。
かつて、自分に手を差し伸べてくれた少女がいた。
まだ選び直せる。優しく諭してくれた人がいた。
彼女達は優しく、正気を喪ってなお、彼らの姿は今も脳に色濃く残っている。
結局、それらの思いは報われなかった。

――やり直したい。

英霊という座になっても消えなかった願望が、終わりを迎えたはずのカネキを再び戦いへと引きずり込む。
始まりともいえる【彼女】が、脳裏へと絡みつく。
戦え、と。足掻け、と。
熱狂に包まれ、赤い贓物と肉で彩られた――災厄の果実を喰らって雄叫びを上げろ。
これが、醒めたら戻る悪夢ならどれだけよかったことか。
熱く、冷たい激情を秘め、カネキは聖杯戦争で踊り狂う。
血でベトベトになった両手をもう一度振るうことを良しとする。
それはきっと、拭えない汚れに酔いしれた喰種としての本能だろう。
そんな、ありふれた悲劇を変える為に、カネキは此処にいる。
この少年の物語を悲劇になんて、させない。


851 : ネギ&ランサー ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/30(月) 04:34:23 OzDxnscc0
【マスター】
ネギ・スプリングフィールド@魔法先生ネギま!(第一期)

【能力・技能】
魔法。

【weapon】
父親の形見でもある木の杖。

【人物背景】
主人公。立派な魔法使いになる為に、日本へと修行に来た十歳の少年。
充てがわれた教師という役割を不慣れながらもこなし、順風満帆に見えたが……。

【マスターの願い】
神楽坂明日菜を蘇らせる。


【クラス】
 ランサー

【真名】
金木研@東京喰種

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷B+ 魔力E 幸運E 宝具C

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】

喰種:B
高い再生能力、身体能力を持つ怪物。
人間を食べることで魔力回復、能力の強化を行うことができる。
ちなみに、人体を除けば摂食できるのは基本的に水とコーヒーだけである。

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

【宝具】

『赫子』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜4 最大捕捉:4人
赫子は喰種の狂気を煮詰めたような産物であり、同時に最大の武器である。
カネキの赫子は、腰回りから這い出る複数の触手であり、主な使い道は刺突や打撃といった肉弾戦の補助。
強力な再生力とパワーが長所だが、脆さも併せ持っているといった弱点もある。

【weapon】
『赫子』

【人物背景】
とある事故から、喰種の臓器を移植されたことで半喰種となってしまった元人間。
【喰種と人間の双方の世界にいる者】として、自分にできることを探し、戦いの中で得た居場所を護ろうと足掻くが……。

【サーヴァントとしての願い】
あんていくで過ごしたあの日々が戻ってくることを。


852 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/03/30(月) 04:37:55 OzDxnscc0
投下終了です。

そして、締め切りの告知ですが、
4/3までとさせて頂きます。


853 : ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:35:37 KMZD6C060
投下します


854 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:36:16 KMZD6C060
「居んだろ、おとぎ話に。ふわふわで、きらきらで、世界が皆味方してくれるような、そんなお姫様」

  居酒屋の一角。
  テーブルを挟んで女性が二人。
  ショートボブのババアが、グラスを傾けながら見目麗しい女性に語りかける。

「私もアレだったんだよ。小さい頃はさ、王子様が居て、幸せな未来があって」
「でも、女ってイヤなもんでさ。歳食ってババアになる内に、変わるんだ。お姫様から、その昔大嫌いだった、しわくちゃしゃがれのヨボヨボ魔女に」

  麗しい方の女性は、ただ粛々と枡に注がれた酒を呷る。
  相槌を打たず、目も伏せているが聞き流しているわけではない。
  ただ、耳を傾け、心を聴いている。
  女性の弓がババアのために引かれるのを良しとするか否かを見極めるために。
  即ち、ババアが美女のマスター足りえるかどうかを見定めるために。

「子どもの頃、魔女見る度に思ってた。『こいつらはなんでこんなひどいことするんだろう』って。
 でも、二十歳超えて、三十路越えて、四十に差し掛かろうってなれば……ぼんやりわかってくる」

  ババアは続ける。

「魔女は輝かしい未来がないんだ。老い先短いし、あとは劣化してくだけだから。
 だから、『現在(いま)』に縋って、醜くても足掻き続ける。幸せな『現在』をぶち壊されないために」

「『現在』を守るためなら、なんだってする。お姫様に毒盛ったり、子どもを焼いて食ったり、なんでもだ」

  一息置いて、また続ける。  

「そうなった、私も」

  いや、私の場合は過去かと付け加え、一気にグラスを呷る。
  今日三杯目のブランデーのロックが飲み干された。


855 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:36:36 KMZD6C060
  ババアはグラスを置き、深くため息をつく。
  その息には女性らしさや艶っぽさは欠片もなく、ただ、時間が彼女に残した澱だけが積み重なったような。そんな溜息だった。

  傍にあったデキャンタからグラスに氷をひとつ補充するとブランデーの瓶を傾る。
  グラスの八割が琥珀色に染まる。
  溶け始めた氷とブランデーの間に出来たセピア色に、過去の自分を眺めながらババアは言葉を続けた。

「私の人生、どん底のどん底だった」

「好きな男にフラれ、そっから急転直下、真っ逆さま」

「アイツの残した将棋を指しながら、どん底で生きて、どん底で死んで、その上更にこんなところに呼び出されて」

  どん底。
  この表現に誰も文句は言わないだろう。
  一人の男のせいで彼女の人生はどん底のどん底だった。
  その男と出会わなければ、ババアだってそれなりの恋をして、それなりの失恋をして、それなりの相手を見つけて、それなりの結婚をして、それなりに長生きして死んだだろう。
  だが、出会ってしまった。
  世界を変えるほどの恋をしてしまった。
  分不相応な愛でその身を焼きつくし、鬼天使は空を飛べなくなってしまった。
  輝かしい幼少期に人生の絶頂を迎え、あとは四十まで急転直下の真っ逆さまにどん底の底まで落ち続けた。
  一人の男のせいで人生は狂いに狂い、これっぽっちの幸せも掴めずに生涯の幕を閉じた。

「でも、それでも」

「やり直しは願わない。何百回、何千回、何万回やり直したって私は谷生(アイツ)に惚れるだろうし、谷生は振り向かないだろうからね」

  その目には、確固たる意志が宿っている。
  あの男を愛した自分に間違いはない。
  あの男が愛さなかった自分に間違いはない。
  そう心の底から信じているような瞳だ。

  あの男を愛さなかったようにしてほしい、なんて願いは届けない。
  だって、幼い彼女の身を焼きつくした恋心は、たしかに彼女の世界の中心だったから。
  あの男に愛された自分にしてほしい、なんて願いは届けない。
  だって、将棋以外を愛するアイツなんて、そんなもの、ガワだけが同じ偽物だから。


856 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:37:45 KMZD6C060
  ふ、と自身のあまりに乙女チックな『決心』を鼻で笑い、グラスを持ち上げながら口を開く。

「アンタさ、こんな話聞いたことある? 風が吹けば、桶屋が儲かるって話。なんか色々あって儲かるってやつ」

「いえ、存じませんわね」

「つまり、世界ってのはつながってるってことなんだよ。
 今アンタが死ねば私が死ぬように、世界ってのはどんだけ離れてても繋がってるのさ」

  詳しく説明するのは骨が折れるので、触りだけ説明して本題に入る。

「例えば、風が吹いただけで、桶屋が儲かるとして」
「例えば、中国の蝶々の羽ばたきが、カリブでハリケーンを起こすとして」

「誰かの人生がやり直されたら、どれだけの影響が出る」

  世界は綿密に絡み合っている。
  今日の石ころが、明日の株価を大暴落させる。
  昨日のふとした無駄遣いが、未来の自分の無限の資産を築く。
  何かのきっかけで何かが崩れ、新しい何かが生まれる。
  世界はそんないくつものつながりでできている。
  だとすれば。

「誰かの人生が、終わったはずの私の人生を、どれだけぶち壊す」

  変わる。変わる。変わってしまう。当然、変わってしまう。変えられてしまう。
  ババアが折角吐き出した『やり直さない』という意志が、誰かのせいで捩じ曲げられてしまう。

「ふざけんな」

  一言。

「もっかい言うぞ、『ふざけんな、この野郎』だ」

  更に一言。  

「振り向かれずに捨てられて、アイツのせいで惨めに死んだとしても」

「谷生との数年間が私の全てだ。全てなんだよ」

  彼女にとって谷生との数年間は、『全て』だ。
  彼女がコップだとするなら、その九割は血よりも濃い『谷生』で埋まっている。
  それが、消える。誰かの勝手で消える。空っぽになってしまう。
  折角やり直さないと誓ってまで守ろうとしたものが消される。そんなの許せるわけがない。

「あの数年間を消されるくらいなら、死んだほうがマシだ」

  だからババアは。
  ふわふわな『お姫様』として未来に夢を見るのではなく、醜い『魔女』になって『お姫様』たちを虐げることを誓った。


857 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:39:09 KMZD6C060
  ま、もう死んでんだけどさ、と付け加えて一口酒を飲み、更に続ける。

「私の願いは一つ」

「『アンタら全員の願いなんか知ったこっちゃない』
 『ただ、アンタらのやり直しのせいで、私の人生が狂うってんなら』」

  グラスをテーブルに叩きつけ、宣戦布告をする。
  相手は、聖杯でも参加者の誰かでもなく『やり直しの聖杯戦争』それ自体。

「やらせるかよ」

「私の人生壊させるかよ」

  あの数年を、誰かの勝手で消させたりしない。
  幸せな思い出を、誰かの幸せのために消されてなるものか。

「いいか、覚えとけ。私の願いは一つだ」

「『やり直しの聖杯戦争なんて望んだヤツら全員のやり直しの願いを全部押しのけて、くだらない願いを願ってやる』」

  『やり直させない願い』。
  それは明確な、『やり直しの聖杯戦争』とそこに望みを抱いて来た参加者へのアンチテーゼ。
  しかし、誰も彼女を咎めることは出来ない。
  それこそが、彼女のやり直し『への』願いなのだから。

  全てを聴き終わった美女は、す、と深く息を吸うと、ずっと見え隠れしていた『それ』にまつわる彼女の感情の発露をこう評した。

「恋する乙女のパワーは無敵ですわね」

  ババアと美女。
  生まれた年代も、生きてきた世界も違う。
  共通するのは性別だけ。でも、性別が同じならば、通じるものがあるのだ。

「そんな可愛いもんじゃないさ」

  ババアはにやりと口の端を持ち上げて、顔に皺を一層深く刻む。

「私のはしわくちゃで、おいぼれで、よぼよぼで」

「それでも醜く、前を向いて未来を夢見る若者に一撃食らわせようとする、『ババアの意地』さ」

  美女が口を抑えて笑う。
  ころころと、まるで鈴を転がすような声で笑う。
  ババアとはあまりに違いすぎるその見た目に、もう一度軽く笑って。
  今度は目の前の美女に、その心を問うた。


858 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:41:34 KMZD6C060
「アンタの方は、あるの? 願い」

「……そうですわね。実は私(わたくし)も願いなんてありませんの。やりたいことはあらかたやって来ましたし」

  美女はその昔、天下を統一し泰平した。
  可愛い妹分と共に全国を行脚し、何不自由なく生きた。
  満たされ、惜しまれ、死んだ。ババアとは真逆の最期を迎えた。

「ただ、今の貴女の言葉で、決めましたわ」

  ただ、それでも。ババアの感情の大きさが理解できる。ババアの本気が納得できる。
  美女がグラスに添えていたババアの右手に自身の左手を重ねた。

「力を貸させてください。綺麗な過去を守りましょう。
 やり直しがどうとかより、そっちの方が面白そうですし!」

  握られた手を眺めながら、いよいよ酔いが回ってきたババアが冗談を飛ばす。

「……言っとくけど、そっちのケはないからね」

「あらあら残念。ですが、貴女も私の守備範囲からは遠すぎますわ。もう三十歳ほど若くなれません?」

  ババアが初めて愉快げに、声を上げて笑う。  
  つられて美女がころころ笑う。
  二人で少々笑ったあと、今度は美女の方から切り出した。

「それで、もし優勝したら何を願うんです? 下手な願いじゃ意味が無いんでしょう?
 過去も未来も変わらないような願い、あります?」

「じゃあ、そうだね……この平和な日々が続くことでも祈っとくか。無難にさ」

  ババアは飲みかけの酒の入ったグラスを突き出す。
  それは、無骨ながらもババアが生まれるはるか昔……美女の最盛期たる時代から続いていた風習の一つ。

「ふふ、その願い、いい感じですわ!」

  彼女のサーヴァントも枡を手に取り、差し出す。

  齢40を数えるババア、千鳥チコ。
  天下泰平を成し遂げたアーチャー、今川ヨシモト。

  共に願いは、『世界平和』。
  
  一人のババアの我儘。
  他者の願いを踏みにじり、それでも過去に縋り付き。
  魔女のごとき分厚い上っ面を隠すための偽の願い。
  ただ、今はその願いに―――

「願わくば、天下に永く平和のあらんことを」

「そして、私の人生が、どん底のままであるように」

            ―――乾杯。


859 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:43:00 KMZD6C060
【クラス】
アーチャー

【真名】
今川ヨシモト@戦国乙女

【パラメーター】
筋力D(A) 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
そもそもが戦国武将であるため、魔術的な防御に関する逸話が少ない。
そのため対魔力は最低ランクである。

単独行動:B
戦国武将として、単騎で敵陣に乗り込みつづけて遂には天下泰平を成し遂げた武将。
マスターからの魔力供給を断っても48時間の現界が可能である。

【保有スキル】
海道一の弓取り:A
日本でも指折りの弓の名手としての逸話から来たスキル。
視力補正の『千里眼』と命中補正の『正射必中』、射程距離補正の『弓神の加護』の効果がそれぞれ同ランクで得られる。
更に彼女に使いこなせない弓はなく、他人の宝具であろうと弓ならばその真価を引き出して扱うことが可能。
そして弓を武器として扱う場合、筋力にプラス補正が付く。

陣地制圧:A
天下統一を成し遂げた武将に与えられるスキル。
他者の陣地に踏み込んでその場にいる人物を打倒した場合、その陣地をそっくりそのまま自身のものにすることが出来る。
キャスターならばまさに陣地を、霊脈上に陣地を張っている人物からはその霊脈の主導権を奪える。

可愛いもの好き:A
可愛いものに目がない。
可愛いものを攻撃する時筋力にマイナス補正が付く。
これは性格から来るスキルであるため外すことは不可能である。

ファッションショー:A+++
ファッションショーをいたしますわ!
他の女の子や自分の服装を自由自在に変更することが出来る。
選べる服装は制服・スッチー・ナース・水着・女教師などなど様々。
ただし行動に制限の付く装飾品(手錠・足枷など)を付けることは出来ない。あくまでコスプレ鑑賞用。
つまりこのスキルは可愛い女の子にコスプレさせてカワイイヤッターする以外特に効果はない。


860 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:45:05 KMZD6C060
【宝具】
『烈風真空破』
ランク:E 種別:対人 レンジ:10-99 最大捕捉:5
物凄く気合を込めた矢を放つ。
その破壊力は甚大。一時的にアーチャーの筋力をAランクまで向上させる。
魔力消費がかなり低く、マスター不在の状態でも最大三発まで撃てる。

『烈風翠嵐葵時雨』
ランク:C 種別:対城 レンジ:1〜99 最大捕捉:999
空に魔法陣を描き、その魔法陣に魔力のこもった弓矢を放つことで魔法陣中の魔力を解放。
魔力が無数の弓矢となり天上から降り注いでくる。
その範囲は広大、その威力は強大、敵本拠地の砦を一撃で壊滅させるほど。『烈風真空破』と同じく一撃がAランク相当の破壊力となる
ただし、本来は発動に魔術師(徳川イエヤス)の補助が必要であるため、この聖杯戦争でも制限なしでの単独発動は不可能である。
単独で発動する場合は令呪一画による魔力ブーストが必要。
キャスター・魔術師もしくはそれに類する人物が協力した場合、相応の魔力消費が必要。

『榛名』
ランク:B 種別:― レンジ:― 最大捕捉:―
卑弥呼が時読の眼の力を込めた、それを手にすれば天下の覇権を得られると言われている勾玉。
勝負の節目にその真価を発揮する。その効果は『未来予測』。
魔力を消費して数十秒先までの未来を正確に察知し、その察知した未来に関して過去の段階から干渉できる。

【weapon】
弓矢。つよい。
短刀。よわい。

【人物背景】
パチンコ戦国乙女シリーズのキャラクター。お気楽極楽破天荒お嬢様。
特にこれといった設定はない。絵とセリフを聞けばだいたい分かる。詳しくはwikiのセリフ欄で。
担当曲『トキメキ一途』が流れ出すと打っている人間が直視できなくなる。
出典はパチンコ戦国乙女2の天下泰平後。
ちなみに誤解されがちだが戦国乙女・戦国乙女2・戦国乙女3・パチスロ戦国乙女と戦国乙女〜桃色パラドックス〜は別世界である。
把握のために戦国乙女〜桃色パラドックス〜を見たりはしないように気をつけよう。




【マスター】
千鳥チコ@ハチワンダイバー

【マスターとしての願い】
私の人生の全てを消させない。

【能力・技能】
鬼モードと呼ばれる超集中能力。
人が死に瀕した時、通常の数十倍・数百倍の集中力を発揮して逃げ道を探る。
それを意図的に引き起こすことによって局面を読み、まるで未来予知のような読みの深さで敵の戦術を読み解く。
ただし、これを使うには魔力が必要。しかもアーチャー現界よりも高い魔力が必要となる。
発動する時間に応じてゴリゴリ魔力を消費していき、終いには魔力枯渇で死んでしまう。

【人物背景】
世界中の将棋指しから愛されたが、世界一愛した人の愛は得られなかったババア。

【方針】
やり直しなんか願うつもりはさらさらない。
でも、誰かが何かをやり直して、その結果谷生との時間がなくなるというのならば話は別。
優勝して、その後聖杯に『世界平和』かなんか、そのへんのテキトーな願いを込める。

アーチャーの燃費の良さを利用して宝具によるヒットアンドアウェイ戦法を用いる。
アーチャーは中〜遠距離での戦いで一番実力を発揮できる。近づかれたら即逃走くらいの勢いでいいだろう。
マスターであるチッチは戦闘に覚えがないので近づかれたら何が何でも逃げる。ただしババアの体力で長時間の逃走は不可能。
数人が集まって乱戦してるようなら令呪一画使用して烈風翠嵐葵時雨ぶっ放す。
躊躇はない。ババアは未来を夢見ない。


861 : 千鳥チコ&アーチャー  ◆tHX1a.clL. :2015/03/30(月) 05:45:16 KMZD6C060
以上です


862 : ◆GO82qGZUNE :2015/04/01(水) 05:08:15 kIGbOW/20
拙作「八神はやて&キャスター」について、ステータスの一部修正を行ったことを報告します。
更新済みwikiのページで内容を確認できます。問題がある場合は修正前の内容で再度編集します。


863 : ◆tHX1a.clL. :2015/04/02(木) 22:26:18 6KQuBluQ0
思うところがあるので拙作「ジナコ=カリギ&ランサー(カルナ)」を取り下げさせていただきます
直前に申し訳ありません


864 : ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:39:35 yXadnEPQ0
滑り込みですが、投下します


865 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:40:13 yXadnEPQ0






                               昔々 あるところに
                             とっても 怖い街が ありました
                              <魔界都市> と いいました





                                 昔々 その街に
                            とっても きれいな お医者さんが
                                住んでおりました
                           月の光さえ 羨むような ひと でした
                              その お医者さんの名は――


866 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:40:34 yXadnEPQ0

 一人のNPCが死に掛けていた。

 清らかな磯の匂いを風が運んでくる、冬木市の港であった。
コンテナが複雑に立ち並び、一種の迷路を形成しているこの場所でその男は、ミミズが蠕動するかの如くモゾモゾと地を這って動いていた。
潮の臭いに異臭が混じっている。錆びた鉄の香りである。天上に浮かぶ満月の光が、この場に不釣り合いで、無粋な臭いの正体を照らしていた。
鮮やかな褪紅色の血液が地面に広がっていた。男は、その血液の上をビチャビチャと這っているのだ。

 港の夜間警備を担当するこの男には、右肘より先と、左大腿より下がなかった。六秒程前に失った。
肘より先の部分は、その手にライトを握った状態で男の数m先に、太腿より下の部分は、男の背後に落ちている。
夥しい量の血液が、切断面から流れ続けている。失血死も時間の問題であった。だが、その様な死に方は許されないのだろう。
苦悶の表情を浮かべ、ナメクジが這った後の如き脂汗を体中に浮かばせ、正常な思考すらも覚束ないながらも、それだけは、この男は確信していた。

 男の真正面にあるのは、斬り飛ばされた右腕だけではなかった。
現実には存在する筈のない存在が佇んでいるのだ。鎧を身に包んだ、百八十cm程の体長を持った、人間の『骨格』。
そう、人間の骨が動いているのである。御伽噺の中の住人が、男の前に現実として存在しているのだ。
鎧を着こんだ戦士然とした骸骨は、その手に剣を握っている。この剣で以て、男は四肢を斬り飛ばされた。
唐突な事だったから、反応も出来なかった。コンテナの上からこの骸骨は飛び降りて来た為、持っていたライトの明かりに映らなかったのである。
着地と同時に骸骨は彼の事を切り裂いたのであった。

 もしも、此処に聖杯戦争参加者がいたのであれば、この骸骨が召喚によって呼び出されたもの。
もっと言えば、キャスターのサーヴァントが呼び出した巡回役のものだと、凡その察しはつくであろう。
この哀れな夜間警備の男は、運悪く、偶然この付近を根城とし、陣地を画定しようとしているキャスターが使役する、
見回りの為に巡回させていたこの使い魔と遭遇、現在に至ってしまった、と言う訳だ。

 死んでしまう。頭蓋の中の大脳が考える事と、胸中にしまわれた心が、何度も何度もその事を考えていた。
痛い、苦しいと言う感覚よりも、その一念が今や優先されている。自分は此処で死んでしまうのだ、と思うと、痛みや苦しみが吹っ飛んでしまった。
こんなわけのわからない奴に殺されてしまうのか!? 俺はまだ四十なんだぞ、子供は上の子がやっと中学生になったんだ!!
遺された家内だけで、二人の子供を養える訳がないだろう!! 死にたくない!! 死にたくない!! 

 ――死にたくない!!

「治療を欲するかね」

 背後から、玲瓏とした声が響き渡った。男の声であったが、それを聞いた瞬間、ゾワリ、と、冷たいものが背をなぞったような感覚を男は憶えた。
剣を振り上げ始めた骸骨の動きが、停止する。潮風すらも、止んでいた。
眼球の嵌っていない、ポカリと空いた虚無の眼窩は、一点に集中されている。釘付け、と言っても良かった。

「お、俺は……死にたく、ない」

「君の望みは解った」

 背後に佇んでいるであろう男が、音を立てずに此方に近づいて来る。
解るのである。隠したくても隠せない気配が、近づく度に累乗して行く様に跳ね上がって行くのだから。

 骸骨の戦士が、身に纏っていた鎧ごと塵になり、宙を舞った。
まるで数秒の間に、圧縮された数万年の時間を経験してしまい、一瞬で風化してしまったかのようだった。

「無粋な者は消え失せた。治療に取りかかろう、すぐ終わる」


867 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:41:01 yXadnEPQ0

 ――――美しい。

 死にたくないと言う一念に支配されていた頭と体と心に、そんな一念が湧きあがった。
そして即座に、今度はその感情で男の全てが支配されてしまった。

 その手に斬り飛ばされた男の右腕を持った、純白のケープを身に纏うその男性は、美しいと言う言葉が逆に陳腐過ぎて、
使う事すら躊躇ってしまう程の美貌の持ち主であった。
痛みも苦しみも、呼吸すらも警備員の男は忘れている。寧ろ、この男に看取られて最期を飾るのも、悪くないとすら思い始めて来ている程だ。

 いつの間にか、左脚が、天井の美を誇る男の傍に置かれていた。
ケープの男が、警備員の男の右腕の切断面を軽くなぞり始める。すると、何を思ったか、男は嫉妬をし始めたのだ。
他ならぬ、自分の右腕にである。何故この美しい男に俺の分離された腕は掴まれているのだ、と。
余りにも不条理でも、余りにも狂気染みた怒りの念。その感情が余りにも馬鹿げていると言う事に気づく理性は、警備員の男には存在していなかった。

 ケープの男が、手に持った左腕を警備員の男の腕の切断面にくっ付ける。
奇跡が起こった。くっ付いたのである。そして、指が動くのである。筋繊維や神経、骨や血管の等の諸々の問題を一切無視して。
ただケープの男が斬り落とされた左腕をなぞり、それをくっつけるだけで、回復させてしまったのだ。
この男は、神か、悪魔か!! 人間ではありえない治療の業、これを奇跡と呼ばずして、何と呼ぶのだろうか。

 無言で白衣の男が、分離した左脚に手を伸ばす。
終ってしまう。警備員の男がそんな事を考える。あの満月ですらが色褪せてしまう程の美を持つこの男と自分との関係が終わってしまう。
警備員の彼には確信があった。今この二人を繋ぎ止めているのは、医者と怪我人と言う関係。
自分が怪我人でなければ、この男はたちまち自分から興味を失ってしまうだろうと言う絶対の予感があった。
そしてその予感は事実当たっている。神の美貌を持つこの男は、五体満足の人間には、一切の興味関心を抱かないのだ。

 この関係が少しでも長く続いてくれるようにひた向きに祈る警備員であったが、彼の意思とは裏腹に、身体は、白衣の男に屈服していた。
警備員は気付いていなかったが、流れ出る血液の量が、明らかに減っているのである。
それはあたかも、この美しき白い医師の治療の妨げとならないよう身体全部が彼に対して協力しているかのようであった。
そしてもっと無慈悲なのが、白衣の男の方であった。男は相手の身体を治す者として、一切の迷いなく、先程の腕と同じ要領で脚をくっ付けてしまったのだ。

 自分の五体が、完全な状態で戻って来た事を実感する警備員の男。
つい数十秒前まで、死ぬ一歩手前であったと言う事実を、彼は認識出来ずにいた。
先程の痛みも苦しみも、目の前の男の美に比べれば、儚く消える夢幻も同然。そんな事を男は考えていた。

「失血が酷いな」

 氷そのもののような冷たい、ともすれば冷淡とも取れる語調で白衣の医師は口にする。
その語調が、白衣の医師の絶対的なプロ意識に裏打ちされていると言う事など、警備員の男は永久に理解する事はない。


868 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:41:57 yXadnEPQ0

「この造血剤を飲みたまえ、それで全てが解決する」

 ケープから灰色の錠剤を取り出した白い医師は、警備員のその手にそれを握らせる。
彼はそれを水もなしに口にし、ごくりと飲み込んだ。水なしの錠剤は飲み難いにもかかわらず、スルリと、
予めオブラートにでも包んでおいたかの如く、それは容易く飲み込めてしまった。
飲み込んでから、数秒程してからだろうか。血液を一度に多量に失い、下がってはいけない温度にまで低下してしまった体温が、急激に上昇。
一瞬で元の体温に回復、いや体温だけでない、体力すらも回復し、連日の夜間警備によって蓄積してきた慢性疲労も吹っ飛んでしまった。
歳のせいか百m走り込むだけで死にそうになる程衰えていた警備員の男であったが、今のコンディションならば、42.195kmでさえ走破出来る自信がある。

「次はなるべく、この区域を避けるようにして警備をしたまえ。そうすれば、今日のような目に遭わずに済む」

 そう言うと白衣の男は、片膝ついた状態から直立の状態に移行、警備員の男に背を向けた。

「ま、待ってくれ!! ち、治療費は――」

「不要だ」

 拒否の言葉は余りにも簡潔で、そしてハッキリとした意味を持っていた。
短くそう告げた瞬間、白い医師の姿が、忽然と、警備員の男の前から消えた。
あっと言う間の出来事、どころの話ではない。まばたきをし、一瞬だけ視界が暗黒に染まったその刹那の間に、あの男は消えていたのである。

 あの白い男と出会った時間は、時間にして一分と言う、余りにも短い時間だった。
しかし、この警備員は生涯彼の姿を忘れる事がないであろう。記憶から抹消するには、あまりにもあの男は強烈過ぎた。
あまりにも――美し過ぎた。目を瞑ってみる。瞼の裏の暗黒をスクリーンに、あの男の輪郭が先ず形成される。
次に、本物の白よりも尚白いであろう純白のケープが纏われ始め、その下に肉体の厚みが生まれ始める。
そして最後に、顔。この世に美の神と言うものがいるのならば、その権能と力を最大限にまで駆使して生み出したような、秀麗な顔立ち。
目を瞑っていても、つい数秒前に出会った人間の顔を思い出すかのような楽さを以て、あの白衣の男の姿が思い描けてしまう。

 ゆっくりと瞼を開く警備員。
頭上には、月が明けき光を地上に降り注がせている。満月と、その周りを彩る、宝石を鏤めたような冬の夜空ですらが、今の彼には遠い。
今の彼には、月の完璧な円形を鏡に、あの白い医師の幻影が映っているのだった。







 NPCを治す事は所詮無意味な行為である。
そうだと解っていても、染みついた本能が、見捨てると言う行為を許さなかった。


869 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:42:25 yXadnEPQ0

 自分の医術を欲して来た者には、それを施す。医療の行為を邪魔する者には、死を与える。
聖杯戦争なる遊びの舞台に呼び出され、ルーラーとしてのクラスを与えられてもなおこのスタンスを崩す気は、この美しい医師には毛頭なかった。
例え自分の医術を必要とする者が、聖杯戦争のマスターだろうが、サーヴァントだろうが、それを拒む事なく治療を行うつもりでいる。
彼のこの信条を、聖杯戦争の『根幹』が許さず、否定しようとしても関係ない。その時は、その根幹とすらも敵対する腹積もりだ。

 余りに無差別に破壊とカオスを撒き散らす存在には、ルーラーとして制裁もしよう。
無暗やたらにNPCを殺害する者にも、裁きを下して見せよう。
だがそれ以外なら、このルーラーは、聖杯戦争が如何なる結末を迎えようが知った事ではない。
数秒に一人何かが死ぬ魔界都市新宿では、人間の死ですら綿毛より軽い。
この男は確かに医者ではあるが、その実、死と言う概念を世界のどの医者よりも軽い目で見ている。
だから、自分の患者でない限りは、この男は、聖杯戦争内で誰が死のうがどうでも良いと思っていた。
自分はただ、自分を求める者だけを救うだけ。聖杯戦争にはなるべく干渉しない。そう心に決めているのだ、と。

 誰もいない無人の船着き場で、白い医師は海を眺めていた。
男に見つめられている間、世界にはそよ風一つ凪ぐ事はなかったし、海面も小波一つ立たせる事がなかった。
熱のない目で海と空とを眺めるその様子は、素粒子の動きを観測する物理学者の如く機械的である。
だが、この世ならざる美を持つこの男に数秒見つめられれば、例え海であろうとも、恥じらいの余り沸騰してしまうだろう。
何の感情も熱も籠っていない男の目には、それだけの物理的な『熱』を伴っていた。

「平和な世界と言うものを考えてみた事もあったが……実際体感すると、暇と言うものだな」

 近い将来、この冬木の街は、聖杯戦争の影響で、多くの人間が死に、死んだ人間に倍する数の人間が、悲しみに暮れる事となる。
いや既にこの街は、サーヴァントと言う名の怪物が跋扈する『魔都』へと変貌を遂げている。
それでも尚、あの魔界都市新宿の住人である彼、メフィストにとって、この街は平和そのものであった。
こうなると暇でしょうがない。この街にはせつらは当然の事、屍も、夜行も、千葉もいないだろう。
退屈責め自体はどうとも思わないメフィストであったが、このような場所では少し勝手が違う。

 メフィストにしては珍しい、憂鬱そうな溜息を吐きながら、彼は海に背を向ける。
途端に、海にさざ波が走った。それはあたかも海神が自らの意思で、メフィストの気を引こうと海を動かしているかのようにも思えた。
しかし彼は無情である。海の様子になど最早一切の興味もなくなったようで、音も立てずに早歩きでその場を去って行く。

 ――もしも、天上で輝くあの満月に、言葉を発する口があれば、語りかけたであろう。メフィストよ、それで良いのか、と。
お前の行うサーヴァントの治療行為を続ければ、最後の日まで最後の一人が残らず、結局殆どの参加者が聖杯に願いを掛ける事もなく皆消滅するのだぞ、と。
そしてその消滅する者は、お前とて例外ではないのだぞ、と。

「私は病人が好きなのだよ」

 この場の誰に言うでもなく、メフィストが静かに呟いた。

「私を求めてくれるから」

 ……このルーラー/メフィストは全てを理解した上で、聖杯戦争に臨んでいた。
例え神が脅しを仕掛けて来たとしても、この男は自らの理念を曲げるつもりはないだろう。
明けき光を後ろに背負い、純白のケープをはためかせ。ルーラー・メフィスト、何処へ行く。


870 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:42:51 yXadnEPQ0

【クラス】

ルーラー


【真名】

ドクターメフィスト@魔界都市シリーズ


【ステータス】

筋力D 耐久A++ 敏捷A 魔力EX 幸運C 宝具EX


【属性】

秩序・中庸


【クラススキル】

対魔力:EX
全ての魔術的攻撃を無効化する。
神霊級の存在が行使する奇跡や魔法、抑止力の効果ですらも、高確率でキャンセルする。

真名看破:B(EX)
ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。
ただし、隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、幸運値の判定が必要になる。
後述する固有結界宝具内では、真名看破ランクがカッコ内のそれに変更。
如何なる隠蔽能力を持っていようとも、真名を隠し通す事は出来なくなる上に、過去の来歴すらも看破されてしまう。

神明裁決:A
ルーラーとしての最高特権。
聖杯戦争に参加した全サーヴァントに二回令呪を行使することができる。
他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。


【保有スキル】

道具作成:EX
魔術的な道具を作成する技能。
ルーラーの場合は魔術的な道具は当然の事、科学知識にも造詣が深く、そう言った道具も作成可能。
本来的には水と油の関係である魔術と科学が完全に融合した『魔界都市』の住民であるルーラーは、それら2つの理論を組み合わせた道具も作る事が出来る。
人智を超越した怪物や魔人達が跋扈する魔界都市と化した新宿の中においてすら、最強かつ最高の魔術師であり、
神代の産物としか思えない程の道具や装置を生み出して来たルーラーの道具作成ランクは最高クラス。
但し、宝具レベルの道具を作成するとなると、それに応じた時間と材料が必要となる。

プロフェッショナリズム:EX
スキルの域にまで昇華されたプロ意識。
医者であるルーラーの場合は、『患者を治す』と言う一点に関しては妥協を全く許さない。
例え相手が後の障害になる事が解っていても、相手が大悪人であろうとも。
相手が患者であり、かつ自らに治療を求めて来た場合には、ルーラーはそれに応じる。
患者の治療はルーラーとしての使命よりも優先される事柄で、何者であろうとも、ルーラーの治療行為を邪魔する事は許されない。
仮にルーラーの医療行為を邪魔した場合には、ルーラーはその相手を全力で排除しに掛かる。
聖杯戦争のルール違反すら見逃す、いやそもそも聖杯戦争の成り行き自体に興味の薄いルーラーの逆鱗が、これである。
……逆に言えばルーラーは、治療行為を邪魔さえしなければ、能動的に攻撃を仕掛けて来ない。そして、完治した患者にも、最早興味もなくなる。

精神耐性:EX
精神的な攻撃や干渉に対する耐性。
このランクとなると、精神に作用する一切の事象を、神霊級のそれを含めて完全に無効化する。
生前から人間であるかどうかすら疑われてきたルーラー。かの『外宇宙の邪神』について深い知識を持ち、
なお正気を保っている所から見ても、やはり純粋な人間からは程遠い存在なのだろう。

医術:A+++(EX)
魔界都市最高の医者であるルーラーは、オカルト・科学を問わぬあらゆる知識を修めており、それら全てを医術の為に利用している。
ルーラーの行うありとあらゆる治療行為及び製薬行為は、常に有利な判定を得る。
厳密には純粋な医療技術ではないが、諸々の装置を利用する事で、死者の蘇生をも可能とする。
固有結界宝具の中では、ランクがカッコ内に上昇。一神話体系の治療神・医術神に肉薄する程の医療技術を発揮する。
但し死者/サーヴァントの蘇生に関しては、サーヴァントとして召喚された為大幅な制約が課せられており、
固有結界宝具内で、かつ、『死後3分以内』でなければ行う事は出来ず、しかも確率で失敗する。

高速思考:A+++
物事の筋道を順序立てて追う思考の速度。
ルーラーの思考速度は生前から人間のそれを超越しており、1/10000秒の速さで一画面が送られ続ける、
大量の方程式や数字、記号を易々と理解する程の思考スピードを持っていた。


871 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:43:50 yXadnEPQ0

【宝具】

『神の美貌』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大補足:???
ルーラーが持っている、『神の美』とすら称される美貌。それが宝具となった物である。常時発動型で、魔力消費はゼロ。
再現不可能、性別の垣根を超える、数秒とその顔面を直視する事が出来ない、神ですら妬く、月すらも魅了する、輪郭だけでも美しい、
理性のない人間ですら数秒正気を取り戻す、機械ですら識別出来ず停止する、美醜の価値観が違う異なる生命体ですら動きを止める……。
彼の美しさを物語るエピソードは枚挙に暇がなく、そして上にあげたそれら全てが事実なのである。
ルーラーの姿を見たサーヴァントは、対魔力スキルや対精神スキルが如何に高かろうとも、最初の一回は確実に、その美しさの余り思考を停止、魅了されてしまう。
この時魅了されてしまうと、魅せられた者はルーラーの行動を正しく認識する事が出来なくなる。
具体的には、ルーラーが攻撃の態勢に移ったとしても、「こんな美しい者がそんな行動に移る筈がない」と誤認してしまうのである。
魅了状態からの復帰の早さは、それらの防御スキルの高さ次第で上下する。
例え回復したとしても、この宝具は魔術的要因の一切絡まない、正真正銘生来の美貌が宝具となった物の為、如何なる宝具や防御スキルを以ってしても防御不可能。
最初の一回以降も、防御スキルのランク次第では、判定で再び魅了されてしまう可能性が高い。
精神を薬物で汚染されたジャンキーや狂人ですらも、一瞬正気を取り戻し我を忘れたと言う逸話から、精神汚染や精神異常スキル持ちにも機能する。
常軌を逸したこの美しさは、人間とは全く異なる価値観で動く、人以外の獣や、知性も理性も無い超常生命体にも発揮される。
またこの美しさはこの世ならざる美である為、如何なる魔術的手段や呪いを持っても再現、模倣不可能で、これらの宝具やスキルを無効化させる。

以上の点からも、規格外の宝具である事は疑いようもないのだが、魔界都市には、
そんなルーラーの『神の美』を超える、『天使の美』を持つ、黒いコートを身に纏う存在がいたと言う。
ルーラーが懸想する『彼』の美は、影すらも美しいとされ、その本来の姿を現せば、余りの美しさに如何なる存在も正気を保てなかったらしいが……。


872 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:44:10 yXadnEPQ0

『魔界都市に君臨する侵犯不可能領域(メフィスト病院)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:200〜300 最大補足:2000
生前、ルーラーが管理、運営していた、新宿は歌舞伎町を所在地とするメフィスト病院。
どんな重傷を負っていようが、ここに搬送されるまでに生きていればどんな怪我でも病気でも完治出来る、
と言われていたこの病院を心象風景とする固有結界を展開する宝具が、これである。
真名解放と同時に、旧新宿区役所周辺の風景と、其処を拠点とする、地上10階地下10階、収容人数2000人を誇る白亜の大病院の風景が展開。
病院の中にはDランク相当の単独行動スキルを持ったメフィスト病院の従業員が二百人近く活動しており、それに加えて、
病院内には区外の文明水準の何世紀何十世紀先を行く医療装置が幾つも存在し、この補助を借りる事で、ルーラーは生前の医療技術を万遍なく発揮可能とする。
ルーラーはこの病院を戦闘用のそれとして見ておらず、本当に、患者の治療の為の施設として割り切っている。
固有結界の展開にも維持にも、サーヴァントとして矮小化されたルーラーには無視出来ない程の量を消費されてしまうが、
この宝具を使わねば治療出来ない患者と遭遇した場合には、惜し気もなくこの宝具を開帳する。
ルーラー自体は、確かにこの宝具を医療用のそれとしか見ていない。但し、この宝具の展開時に、固有結界の核となるメフィスト病院を攻撃した場合は、話が変わる。
元いた魔界都市新宿に置いてメフィスト病院及びその院長であるルーラーは、絶対に攻撃も襲撃もしてはならないと、区内のヤクザは当然として、
新宿に住まう魔術師や吸血鬼、悪霊等、新宿を根城とするありとあらゆる存在の不文律となっていた。
それはメフィスト病院に従事する医療スタッフの数々が、改造手術により高い戦闘能力を有するに至ったと言う事もそうだが、
病院自体が超科学技術による最先端の防衛・迎撃システムを誇っており、破壊活動を許さない事も極めて大きい。
また院長であるルーラー自体が、魔術に対して極めて造詣が深い男であり、様々な霊的・魔術的防衛手段を病院に施している。
ルーラーは病院の中では絶対の優位性を誇り、病院内部の指定の空間を操作する事で、一生院長室に辿り着けなくする事も可能で、現にこの装置のせいで、
病院に押し入った物盗りの類が、永遠に病院を彷徨う事となり、餓死してしまったと言うエピソードもある程。
もしもこの固有結界を破壊するとなると、高ランクの対城宝具或いはそれ以上の宝具を幾度もぶつけるか、ルーラー自体を消滅させるしかない。
こう言った理由から、メフィスト病院に襲撃を仕掛ける事はタブー中のタブーとされており、それを行う物は極めて少ない。
ルーラーは生前幾度も『メフィスト病院には臓器が足りない』と零しており、その臓器の殆どを……引き取り手のないヤクザやゴロツキ、
そして此処を襲撃して来た無知で愚かな者で賄って来たのだった。

実はこれでもまだ十全のメフィスト病院と言う訳ではなく、本来ならば『アカシア記録装置』、
即ち『根源』すらも操作可能な領域が存在すると言うのだが、それだけは聖杯戦争の範疇を逸脱する為、無条件で使用が不可能となっている。


【weapon】

針金:
文字通り銀色の針金を、ルーラーは常に何百m単位で持ち歩いている。
瞬間的な速度でルーラーは針金細工を生み出す事が出来、これによって針金細工のトラやサイ、幻想種を生み出す事が出来る。当然針金細工の為に中身は空洞。
また針金を目にも留まらぬ速度で伸ばしたり縮める事で、相手を切断する事も可能である。
本来の実力なら針金細工の維持には何のデメリットもなかったのだが、サーヴァントである為に、維持には魔力消費が掛かる。

メス:
文字通りの医療道具であるのだが、ルーラーの使うそれは、如何なる技術で作られているのか。
核弾頭でも破れぬ被膜を切り裂く力と、物質を素粒子レベルにまで分解する攻撃に直撃しても破壊されなかった程の耐久力を持つ。
空間や次元を切り裂く事も可能で、空間を切り裂いて、数百m単位で移動する事が可能。
直接このメスで敵を切り裂かれると、耐久や宝具のランクを無視して相手にダメージを与える事が出来る。
宝具として機能してもおかしくない程の性能を誇るが、耐久力に関しては劣化が施されており、Bランク相当の宝具攻撃、
或いはAランク相当の筋力を有するサーヴァントの攻撃に直撃すると破壊されてしまう。
また破壊されたメスを生み出すのにも、魔力が必要となる。

ケープ:
ルーラーが身に纏う純白のケープ。
彼に身の危険が迫った時、意思を持ったように動き始め、攻撃を防御する。飛来する銃弾を包み、無効化した事もあった。


873 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:44:31 yXadnEPQ0

【人物背景】

198X年9月13日金曜日、午前3時ちょうどに東京都新宿区『のみ』を直撃したマグニチュード8.5以上の直下型地震、通称魔震(デビルクェイク)。
たった3秒しか揺れなかったと言うこの地震による死者は4万5千にも上り、更に地震の影響で、
新宿区と区外との境界には幅20メートル、深さ50数キロにも達する<亀裂>が生じてしまい、新宿と区外は完全に隔絶されてしまう。
魔震については様々な憶測があり、上位存在が意図的に引き起こしたと言う説もあるが、実態は不明。
何れにせよ確かなのは、魔震以降新宿の亀裂から様々な古代文明の遺跡や遺構が見つかった事、新宿全体が濃厚な霊地となってしまった事、
発掘された古代のアイテムや異次元からの漂着物により、瞬く間に新宿は世界で最も発展した都市になってしまった事。
そして新宿全体が、サイボーグ手術や薬物の影響で正真正銘の怪物となったヤクザやゴロツキ、新宿から噴き出る妖気に引き寄せられた、
妖物や悪霊の跋扈する、カオスの権化のような都市になってしまった事である。

メフィストはそんな都市で医者を行っている男であり、区内であれば知らない者はいないとされる程のVIPである。
彼の医療技術が神域を遥かに超える所にあるのは、かの大魔術師であるドクトル・ファウストを師に持ち、ファウストの一番弟子であるからこそ。
自らの治療を欲するものには無限大の慈悲を以て治療に当たるが、自らの治療を邪魔する者には死を与える恐るべき男。
事実メフィストに意図して害を与えた者の殆どは、その圧倒的な実力の前に葬り去られている。
このような来歴から、新宿区内では『最も敵に回してはいけない男の1人』として知られており、戦車を目の前にしても恐れないヤクザですら、
その名を聞いてしまえば恐怖の余り震えあがる程。
過去のある一件のせいで女性に対しては強い嫌悪感を抱いており、その反動で男色家になる。
現在は西新宿で、年商3000万円のせんべい屋を営む美青年店主、『秋せつら』に熱を入れているが、せつらには袖にされている。
男女の性差を超越する神の美貌を持ち、万人が認める究極の美青年であるメフィストだが、実は好物は『タンメン』である。


【サーヴァントとしての願い】

不明


【方針】

自分の医療技術を求める者がいるのなら、例えNPCだろうが、マスターだろうが、サーヴァントだろうが、それに応じるつもりである。
ルーラーとしての役割は、余程酷いルール違反を犯す者でもない限りは、黙認してやるつもり。
但し、自らの邪魔をする者には、相応の報いを受けて貰う。医療行為のし過ぎで魔力が枯渇、消滅しようが、7日経過し、冬木が消滅しようが、
別にメフィストは如何でも良いと思っている。


874 : 聖杯鬼譚 ◆zzpohGTsas :2015/04/02(木) 23:44:46 yXadnEPQ0
投下を終了します


875 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/03(金) 00:06:18 XN5ikx8w0
普通に勘違いされてるかもしれないんで急遽。
締め切りは4/3いっぱいなので、後一日大丈夫です。
時間ギリギリに投下するのが信条だったり、
残業で帰るのがおそくなっちゃったけど、推敲だけはさせて下さいお願いします!
っていう書き手さんがいるのなら、
締切時間前に鳥でも出して「投下するんで待って」って書き込んでくれたら、多少の時間は過ぎても全然待つんで。


投下されたものの感想は後日書きます。


876 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/03(金) 19:12:45 VZUauivU0
皆様、投下乙でした
滑り込みになりますが投下します


877 : ケン&バーサーカー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/03(金) 19:14:24 VZUauivU0
この偽の冬木にも、現実世界と同じように東から朝日が昇り、西へ夕日が沈む。
太陽が空を惜しむように沈もうとしていた頃、古風なアパートの一室からマッシュルームカットの男が出てきた。

「チャコ。少し、ドライブに行ってくる」
「わかった。ご飯作っておくから、7時までには帰ってね」

恋人のチャコに外出を告げ、男はポケットから愛車のキーを取り出して部屋を出る。
7時までどれくらいあるかを腕時計で確認しながら、コツコツと階段を降り、アパートの玄関の扉を開いた。
その男は自分を照らす夕日へ振り返り、眼鏡の奥で何かを懐かしむような遠い目をしていた。

「……夕焼けは人を振り返らせる」

かつて日本を20世紀へと戻すために活動していた男、イエスタデイ・ワンスモアのリーダー・ケンはそう呟く。
駐車場へ赴き、愛車のトヨタ2000GTに乗り込む。
エンジンを作動させてから、ケンは道路に愛車のタイヤを乗せ、走った。

ケンの耳には愛車のエンジン音が響くのに、夕日の照らす冬木を見ているとどことなく静かな心地よさを感じる。
胸に秘めている20世紀への郷愁がその姿を心に映し出すからだろうか。
ケンはふと思い立ち、運転しながら傍らにある8トラック・カートリッジ・テープを備え付けのカーステレオに挿入する。
そこから流れてきた音楽は、吉田拓郎の「今日までそして明日から」だった。


   ◆


私は今日まで生きてみました



ときには誰かの力を借りて



ときには誰かにしがみついて



私は今日まで生きてみました



そしていま私は思っています



明日からもこうして生きていくんだろうと


   ◆


懐かしいメロディと共に車内に流れる歌声。
この歌を聞いていると、20世紀に縋っていた自分も21世紀の今を生きていることが改めて実感できる。
ケンは夕日の下をトヨタ2000GTで駆りながら、偽の冬木に来る前のことを思い返す。
全国で開かれた20世紀博を利用したイエスタデイ・ワンスモアの計画はあと1歩で達成されるはずであった。
大人を虜にして洗脳してしまう「懐かしいにおい」を利用した、日本をありし20世紀の姿へと戻す計画。
その計画はある5歳児とその家族によって未然に防がれた。

あの時、ケンとチャコは21世紀の日本に絶望し、まだ人々が「心」を持っていた20世紀をやり直さなければならないと信じていた。
しかし、20世紀に憑りつかれた大人達は、満身創痍になりながらも未来を手に入れようとするその一家の姿を見たことで21世紀を生きたくなったのだ。
それにより、懐かしいにおいは効力を失い、ケンは負けを悟った。

『オレの人生はつまらなくなんかない!家族がいる幸せを、アンタ達にも分けてあげたいくらいだぜ……!』

懐かしいにおいを克服した一家の父がかつて自分に放った言葉だ。
彼は、過去の自分よりも家族と共に未来を生きることを選んだ。

『オラ、オトナになりたいから!!』
『オトナになって、おねいさんみたいなキレイなおねいさんといっぱいおつきあいしたいからっ!!!』

未来を手に入れるために、その5歳児はボロボロになってタワーを駆け上がってきた。
オトナになりたい…。そこには、子どもの21世紀を生きる意志があった。

「俺も…21世紀を生きたくなったのかもしれないな…チャコと共に」

ケンの理想に共感し、一緒にいてくれた女性・チャコ。
アパートで待ってくれているのはNPCのチャコだが、彼女の存在はケンにとってかけがえのない存在であった。


878 : ケン&バーサーカー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/03(金) 19:15:08 VZUauivU0


しばらく運転を続けていると、金色の点が群がっている場所が次第に見えてきた。
夕日の光を反射して輝いている海であった。
ケンはそれを見据えると、アクセルを踏む足に力を籠めてスピードを上げる。
だが、それを妨害するように助手席の方向からケンの左肩が女性のような華奢な手で叩かれる。
ケンは1人でドライブに出かけたはずだったが――

「…なんだ。バーサーカー」

トヨタ2000GTの助手席に座っていたのはいつの間にやら実体化していたケンのサーヴァントであった。
ほとんど下着といっても過言ではない露出度の高い外見にコートを羽織ったショートカットの女性だ。
しかし、彼女の息は常に荒く、所々で呻き声を漏らしている。傍から見れば異様な雰囲気だ。
彼女の名はエクスイ。兵器の強化に長けるロボット「エレメントドール」の内の一体。
相棒のパイロットと共に月面の戦争で勝利したが、ある理由で発狂してその相棒を殺し、結果破棄された悲劇のエレメントドール。
バーサーカーといっても狂化のランクが低いためか、最低限の理性を維持しており、ケンとはそれなりに意思疎通ができる。
ケンの肩を叩いたのも、エクスイなりのケンへの呼びかけなのだ。

「…………未来……生きるなら…何……願うの…?」

バーサーカーは呻き声をなんとか言葉に変えてケンに問いかける。
恐らく、「やり直しを願っていたケンが未来を生きたくなったのなら、聖杯にどんな願いをかけるのか」と聞きたいのだろう。
話の前後を把握していればエクスイの真意は容易に読み取れた。

「…そうだな」

ケンは顎に右手を置き、考える素振りを見せる。

「他の奴らが、どんな思いを胸に生きているのかを確かめてみたい」

聖杯を奪い合う者たちは、少なからずとも願いを持っていることだろう。
かつての自分のようにやり直すか、あるいは欲望を満たすか、あるいは聖杯戦争からの離脱か。
ケン達を阻止した一家のように、彼らには歩んできた人生がある。
聖杯にかける願いも、彼らの生き様もその過程で生まれるものだ。
だからこそ、21世紀を生きると決めたケンは知りたくなった。今を生きる者達の「心」を。

「……思い……」

エクスイはケンの言葉を繰り返す。
頭の中では深く考えるも、狂化のせいで考えを纏めようとしてはそれが霧散してしまい、憤慨するかのように呻き声を強くする。

「着いたぞ」

そうこうしている内に、ケンの愛車は冬木の某所にある防波堤の近辺に来ていた。
ケンとエクスイは車を適当な場所に止めて、防波堤に登る。
そこから先はオレンジ色の海が広がっていた。
視界を横にずらすと、港から貨物船が出港して旅立つところが映る。

「…バーサーカー。さっき言った俺の願いのことだが」

ケンは首をエクスイの方に向ける。
地平線から吹く強い風が2人を揺らす。
エクスイはというと、小さな呻き声とともにただ前を凝視している。

「詰まる所、それの達成には他の参加者とのコンタクトが不可欠だ。それは場合によってはかなり危険な行為になるだろう」

ケンの眼鏡の奥に潜む目は真剣そのものだった。

「だから、少しでも助けになる力が必要だ。そのために力を貸してほしい…頼む」
「…………」

エクスイは何も言わず、まるで寝落ちしそうな様子で首を上下に振った。
首を縦に振ったのだから肯定の意を表したと見ていいだろう。…そう思っておこう。
ケンは再び海へ顔を向ける。
丁度、夕日が地平線に沈もうとしているところだった。

エクスイはケンの元に来てからも多くを語らない。
狂化しているせいもあるが、彼女は都合の悪いことに対しては――たまに彼女の気まぐれでも――返答しないらしい。
そのため、今もエクスイの詳しい願いはケンにも分かっていない。
……ただ、かつてのケンと同じ願いを持っていたであろうことだけはなんとなく理解できた。
今にも沈みそうな夕日を見る彼女は、ケンの眼鏡にはどこか悲しげに映ったのだ。

……夕焼けは人を振り返らせる。


879 : ケン&バーサーカー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/03(金) 19:17:09 VZUauivU0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
エクスイ@怒首領蜂大往生

【パラメータ】
筋力C 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運E 宝具A+

【属性】
混沌・善

【クラス別スキル】
狂化:D
筋力と魔力が上昇するが、言語能力が不自由になり、複雑な思考が難しくなる。

【保有スキル】
エンチャント:EX
物品を強化する能力。
バーサーカーは兵器を強化するエレメントドールである性質から、
武装・艤装などの人工兵器の強化に特化しており、それ以外の物品は強化できない。
このスキルの効果は単なる武器だけでなく、人工兵器に属する他サーヴァントの宝具にまで及び、
基本性能の向上と機能の拡張が容易にできる。
宝具を強化した場合、その宝具のランクが1ランク上昇する。

心眼(真):E-
エレメントドールとしてパイロットと共に戦場を潜り抜けた経験によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
狂化により、ランクが著しく低下している。

変形:-(B)
トランスフォーム能力。自らのカタチを変えるスキル。
『大往生したなどと誰が決めたのか』発動後に使用可能。
エレメントドーターとなったことにより、人型の他、巨大な水上戦艦や戦闘機へ変形することができ、
形態を変えて戦闘することができる。
巨大兵器に変形している間はその巨体に見合う分の魔力が必要になるので魔力の燃費が悪い。
なお、人型の場合でも射撃攻撃で応戦できる。サイズの違いから火力は低くなる分、他の形態より魔力消費が軽い。


880 : ケン&バーサーカー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/03(金) 19:18:02 VZUauivU0
【宝具】
『大往生したなどと誰が決めたのか(エレメントドーター・ネクスィ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜200 最大捕捉:1000人
バーサーカーが消滅した際に自動で発動する宝具。
一度はパイロットを殺害したことで破棄され、大往生したエクスイが、
エレメントドールから巨大ロボット「エレメントドーター」へと進化して大復活を遂げたエピソードの具現。
消滅した後に、バーサーカーの姿を模した「エレメントドーター」として一度だけ復活する。
外見は発動前とあまり変わらないが、上半身と下半身が分離した外見が特徴的。
復活した際、変形スキルが使用可能になり、武装が追加され広範囲を攻撃できるようになる。
パラメータは以下のように変化する。

筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運E

本来、エレメントドーターは高層ビル並に巨大なのだが、英霊という枠に当てはめた為に人間並のサイズでしか顕現できない。
だが、それは人型の場合のみで、巨大兵器に変形した際はその限りではない。

【weapon】
・『変形』での各形態に搭載された武装
『大往生したなどと誰が決めたのか』発動後、エレメントドーターになることで追加される。
搭載された武装によって射撃を展開する、圧倒的な弾幕攻撃が脅威。

【人物背景】
弾幕STGゲーム「怒首領蜂大往生」に登場する、戦闘機の専用ナビゲータであり、知性や感情を持つ兵器強化用人型ロボット「エレメントドール」。
主人公(パイロット)のパートナーとして選択できるエレメントドールのうちの一体。
露出度が非常に高い服装に灰色のコートを羽織っている。
数世代前の旧式エレメントドールで、パイロットの安全性よりも機能及び武装面を重視して作られた。
そのため、搭乗するパイロットに対しての配慮に欠ける面が多いが、上級パイロットには大変好まれていた。

地球を侵攻しようとしている月の機械兵団との最終決戦にて、
エクスイはマザーコンピューターに飛び込みコンピューター内に負荷をかけ、敵の演算能力を落とすことでパイロットと共に勝利をつかんだ。
しかしマザーコンピューター内で月の兵器が動き出した真実を知り発狂、パイロットを殺害する。
人間に手をかけたことでエクスイは破棄されてしまうが、
その時にエクスイが流した血の涙は、「本当の敵は人間だったのだ」という彼女の悲しみを伝えるものであった。

その6年後、続編「怒首領蜂大復活」においては巨大兵器への変形能力を持つ巨大少女ロボット「エレメントドーター」として登場。
同作で起きた事件の張本人で、他のエレメントドーターも彼女を主人として従っている。
ちなみに本作では『ネクスィ』という名義で登場しているが正式名称は『ネクストエクスイ』。
最終ボスではなく2面ボスとなり主人公を襲う。
「やり直さなければ」という思いの元、未来の争いの元を断つために過去にもどり、
切欠を無くして争いのない歴史へと書き換えようと試みる。
使命の為に追跡者は許さない厳しい態度をとるが、仲間や自然には優しい。

【サーヴァントとしての願い】
不明。

【基本戦術、方針、運用法】
初期状態ではバーサーカーの癖にパラメータが平均より低く、これといった武器もないのでエンチャントによるサポートしか期待できない。
この状態では狂化と固有能力が全く噛み合っていないといえるだろう。
一方で『大往生したなどと誰が決めたのか』が発動すると武装と変形スキルが使用可能になり、自力で戦闘ができ大分マシになる。


881 : ケン&バーサーカー ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/03(金) 19:19:04 VZUauivU0
【マスター】
ケン@クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲

【マスターとしての願い】
他の参加者がどんな思いを胸に生きているのかを確かめてみたい。

【weapon】
・トヨタ2000GT
ケン曰く、「俺の魂」。
20世紀を代表する名車。移動手段に使える。

【能力・技能】
特になし。
「におい」を使った洗脳は20世紀博の施設がないためできない。

【人物背景】
クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲に登場する。
秘密結社「イエスタディ・ワンスモア」のリーダー。恋人兼協力者兼同居人にチャコという女性がいる。
「懐かしいにおい」を利用して大人達を子供に戻し、ひろしやみさえを連れ去った張本人。
本編では「汚い金」や「燃えないゴミ」ばかりがあふれる21世紀の日本を憂いており、まだ人々が「心」を持って生きていた20世紀への逆戻り及びやり直しを企てる。
大人達の懐古心を原動力とした計画の最終段階において、大人達はタワーでの野原一家の奮闘をテレビを通して視聴したことで懐古心が収まり、21世紀を生きたいと思うようになる。
そして、計画を進めることができなくなり「未来を返す」と敗北を認めた後、大人達を解放する。
解放後、タワーの大展望台の屋上からチャコと共に飛び降り自殺を図ったが、
しんのすけの叫びと偶然足元に位置していた巣を守ろうとした鳩の抵抗で機を逸してしまう。
そしてチャコを労わりつつ何処かへ去っていった。

【方針】
他の参加者と会って、話を聞きたい。


882 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/03(金) 19:19:45 VZUauivU0
以上で投下を終了します


883 : series17 :2015/04/03(金) 21:19:30 Gj1pgXpk0
推敲が期限ギリギリまでかかりそうなので、ひとまず予約だけしておきます。


884 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/03(金) 21:20:17 Gj1pgXpk0
すみません。トリップを間違えて付けてしまいました。


885 : ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/03(金) 23:11:19 sBbYkNc20
私もすみませんが予約させてください。


886 : ◆r3IajhLtCQ :2015/04/03(金) 23:19:00 ZjCxqolw0
なら私も予約させてください


887 : ◆bM9ATKlCpQ :2015/04/03(金) 23:21:12 V9VmOIOE0
予約お願いします。


888 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/03(金) 23:37:39 Gj1pgXpk0
すみません。少し時間をオーバーします。
何とか今夜中には出来るのでご容赦を。


889 : 名無しさん :2015/04/03(金) 23:40:10 NPu4WF8I0
質問ですが、予約での延長制を認めるにしても期限を明確にしなくてもよいのでしょうか?
これを決めておかないと無制限の延期を認めるも同然になると思うのですが。


890 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/03(金) 23:46:22 XN5ikx8w0
締め切り間際ですが、締め切り前に書き込みがあった方々は投下をしても大丈夫です。

最終締め切りは一時をタイムリミットと予定しております。

後、十二時〜一時の間、レスポンスは出来ませんのでご了承下さい。


891 : ◆uYhrxvcJSE :2015/04/03(金) 23:53:09 XwkiKzW.0
時間が十二時ギリギリになりそうですので念のため予約いたします


892 : 名無しさん :2015/04/03(金) 23:55:24 f/MaiUv20
滑り込み投下します
2作推敲は無理だったので、1作予約しながら投下します


893 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/03(金) 23:56:49 f/MaiUv20

其処は、この世の底辺だった。
真っ暗闇を照らすのは、液晶モニターの明かりだけ。
響く音は、キーボードを叩く音だけ。
其処に居る自分もまた、底辺の存在だった。

「……けっ、ざまあみろ」

下卑た笑みを浮かべながら、ディスプレイに向かって虚しい勝利宣言をする。
前傾姿勢を改めたことで、椅子の背もたれが軽く軋んだ。
もう何年も使い倒した椅子だが、安物なうえに何度もストレスに負け殴打しているため、そろそろ買い替えどきかもしれない。

「ちう様に喧嘩売ろうなんざ、数億年早いんだよ」

スーパーネットアイドルちう。
それが、私の正体である。

とはいえ実際に大人気ネットアイドルだったのは数年以上前のことであり、今ではすっかり落ち目のロートル扱いだ。
日々訪れる老いには抗うことが出来ず、フォトショップ修正を行ってもなお若いコスプレイヤー相手にファンの数で劣りつつある。
少女と表現するのが妥当な年齢も、何年も前に終えてしまった。

しかしながら、それを認めるわけにはいかない。
もしもそれを受け入れてしまえば、今まで積み重ねてきた“ちう”としてのアイデンティティが崩壊してしまう。
リアルの全てを犠牲にし、もう10年近く“ちう”をコスプレ界の頂点に君臨させることだけを生き甲斐としてきた。
もしもこれでネットアイドルを引退しようものなら、人生で最も大切な時期と引き換えたにしてはあまりに虚しいリターンじゃないか。
せめてあと10年くらいは、業界で大きな顔をしていたい。

「……」

まともに電気代を払えず、すでに取り外してしまった天井の蛍光灯を見つめていてもしょうがない。
視線をディスプレイへと戻すと、今度は憎き新人アイドルのホームページではなく、自分自身の城を表示した。
もう何年も更新している雑記の項目を選ぶと、自分の歴史を感じ取れる。
とはいえここ最近は、昔ほどキレのある文章が書けなくなっていた。
時折過去の記事を眺めては、当時の自分の勢いと熱さを、苦笑いと共に羨んだものだ。

「聖杯戦争、ね」

かつての自分に思いを馳せることを止め、少しでも建設的なことを行おうと新規投稿ボタンを押す。
今日投稿する予定の記事は、今話題の都市伝説の『聖杯戦争』なるものだ。
何でも聖杯を賭けて戦って、最後まで残れば願いが叶うのだとか。
くだらない迷信だろうし、こんな世迷い事を本気にするほど愚かではないのだが、記事にするには持ってこいの話題である。

「……願いが叶う、か」

ふと呟くと、まだ無垢な中学生だった頃の思い出が蘇ってくる。
無垢というにはインターネットの毒素に侵されすぎていたように思えるが、それでもあの頃は全てが輝いていた。
少なくとも、今の自分にはそう見える。

あの頃自分が通っていた、麻帆良学園中等部。
魔法なんていう非現実的なものの存在を、あの学校で知ることになった。
麻帆良に伝わる噂話には何らかの裏があることも、数年に渡る大冒険で身を持って知った。

故に、根も葉もない噂話に間違いないと、断言まではできないでいた。
今なお麻帆良の学園都市に住んでおり、その噂話の裏に隠れた非現実がすぐ傍にないとも限らない。
気軽にサイトにアップしてもいいものか。

(私なら――何を願うんだろうな)

中学生の頃だったら、永遠の若さと不死なんてものを願ったかもしれない。
けれでも今は、そんなものを手に入れてもしょうがないと知っている。
100年経っても死なず老いずの立場になったら、身分証の提示が出来なくなってしまうし、
身分証を取得するために事情を話せば待っているのは実験動物だ。

最強のネットアイドルの座も、願って手に入れるものじゃない。
確かに、ライバルアイドルにウイルス送り込んだりと、お世辞にもクリーンな戦いをしているとは言えないだろう。
それでも、裏工作を引っ括めて全て自分の力で手に入れたものだから、ここまで固執し喜びを味わえるのだ。

それじゃあ、例えば――――


894 : ◆zzpohGTsas :2015/04/03(金) 23:56:52 47DNlBEI0
時間ギリギリですが、候補作最後の投下です


895 : ◆zzpohGTsas :2015/04/03(金) 23:57:21 47DNlBEI0
今投下してる方が終わり次第投下します


896 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/03(金) 23:58:58 f/MaiUv20

「ちーうちゃーん」

思考の中断をするように、インターホンが鳴らされる。
その後、ドアを叩く音と共に間の抜けた声が聞こえてきた。

通販した食料品が必要なためインターホンの音を切るわけにはいかないが、
こうして不定期にやってくる知り合いのことを考えると、
いっそインターホンを叩き壊してしまいたくなる。

「たまには外に出ないと体に悪いよー」

朝倉和美。
中学時代に同じクラスで、ハグレモノ同士そこそこ会話をした間柄だ。
と言っても一方的に声をかけられるだけだったし、友人だったわけではない。
そもそもクラスでまともに会話をする相手がいなかった自分と違って、朝倉は友人とまでは呼べなくとも“つるむ相手”には困ってなかった。
単なる気まぐれと好奇心で秘密を知られ、そして時折手伝わされた程度の関係だ。

「花火しようよー、花火ー!」

続いて聞こえる脳天気な声は、椎名桜子のものだろう。
こいつは小学生の頃からの付き合いだが、本当にただ顔見知りの期間が長いだけだった。
会話はあまりしないし、朝倉ほど積極的に声をかけてくるわけではない。
特に目立たない等散々な評価をくれた奴だが――それでも、困ってる時は手を差し伸べてきた。
最もそれが余計なお世話であるがため、今もこうして居留守を使っているのだけれども。

「うーん、駄目ですね……やっぱり入れません」

そして、相坂さよ。
大嫌いな非現実の体現者であり、ざっくりというと地縛霊だ。
この学園都市に住み着いており、朝倉のことを慕っている。
麻帆良の近辺をよくうろついている朝倉と共に、今の私を訪ねてくる回数が最も多い存在だ。
ちなみに朝倉・相坂に続く第3位は教師として学内で就職した佐々木まき絵で、椎名の馬鹿は持ち前の運で仕事をこなし暇してるからか第4位。
第5位には、やや差が開いて、佐々木とつるんでたまに訪れる大河内アキラあたりがランクインするだろう。

「無駄に世界でも有数の安全地帯よね、ここ」

ドア越しに聞こえてくる言葉は、さほど大袈裟なものではない。
魔法なんていう狂ったものに精通した連中から購入した道具を駆使し、危険なものは立ち入れないようにしている。
引きこもり当初こそ相坂の奴に侵入を許し外に出そうとするお節介ズを生んでしまったが、今では幽霊だろうとこの部屋には入れない。


897 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/03(金) 23:59:18 f/MaiUv20

「…………」

耳をそばだてる。
適当に人の部屋の前でくっちゃべってから帰っていった。
多分、今回も、ドアノブに何か差し入れをぶら下げて。

「何だ、こりゃ」

小一時間ほど室内で待機してから、扉を開けて差し入れを確認する。
即座に差し入れを回収しようとして、死角に隠れていた朝倉達に捕まったことがあるため、今ではすっかり差し入れを回収するのに時間を置くようになってしまった。
ソレが四葉五月の作った小籠包だったりすると冷めてしまって猛烈に後悔するのだが、どうやら今回は食べ物の類ではないらしい。
袋には、よく分からない骨董品のようなものが入っていた。

「……ま、貰えるもんは貰っとくか」

大方、また身の安全を守るためのものだろう。
何せ私は元麻帆良学園中等部3年A組にして、あの白き翼の元メンバーだ。
今ではすっかり有名になり、そして危険も増えてきた2つの組織に不本意ながら属していたのだ、そりゃ自室に防衛設備くらい設ける。
もはや朝倉達を追い払うためにしか使われていないが、それでもいつ本当にヤバい相手に襲われるか分からない。

だからこうして、朝倉達も定期的に魔法世界の防衛アイテムを持ってくる。
それを拒んだことはないし、いざという時のために全て残しておいてあった。
単純に、さすがにソレを朝倉達に使うのは気が引けるというのもある。

「……願い、か」

顔を上げると、再びうっすら光を放つディスプレイが視界に入る。
不意に、願いが頭をよぎる。
しかしそれを、すぐさま頭からかき消した。

「……馬鹿くせぇ」

鼻を鳴らし、自分の思考を嘲笑する。
確かに、私は、あいつらのことが嫌いじゃなかった。
朝倉達にしろ、追い返してはいるものの、別段嫌っているわけではない。

むしろ――あの頃は、彼女達に対し、好意すら抱いていた。

もっともそれを口に出すつもりはないし、指摘されたら一生否定するのだろうが。
それでも長い年月と、そして失われていった多くのものが、胸の内ではその感情を認めさせていた。
自分は、あの麻帆良学園中等部が好きだったのだと。

「やり直しなんて、出来るものかよ」

それは、否定の言葉だった。
けれどもそれは、何より願ってやまないことだった。

「……問おう、貴様がマスターか」

瞬間、パソコンが光に包まれて。
気が付くと、目の前にしわがれた老人が立っていた。


898 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:00:12 I6ez126I0

「は……?」

口から出たのは間抜けな声。
そして同時に全身の毛穴から嫌な汗が噴き出している。
これでも修羅場を何度か潜って来た身だ、さすがに分かる。

こいつは、ヤバい。多分私は、殺される。

「聖杯戦争における、このパンタローネのマスターなのか問うているんだ、人間」

言葉が喉に引っかかり、何も喋ることが出来ない。
多分、息を吐くことすら出来ていないと思う。
胃液も喉で引っかかってくれているだろうことだけは、不幸中の幸いだろうか。

「ふん……薄っぺらな笑顔だ」

部屋を見渡した爺――パンタローネは、何やらディスプレイを覗きこんでいた。
どうやらパソコンから出てきたというわけではないらしい。
ディスプレイには、変わらず『ちうのホームページ』が映されている。

「顔の造形をこのようにするくらい、我々自動人形(オートマータ)にでも出来る」

嘲笑。
そして底意地の悪そうな笑み。
オートマータを自称するパンタローネは、同じくオートマータのような存在である絡繰茶々丸と比べて、恐ろしく感情豊かに思えた。

「やはり、聖杯戦争とやらで優勝するのが、フランシーヌ様にお笑い頂く最善最短の道か」

顎に手を添え、品定めをするように眺め回される。
喉のつっかえが突然取れたかのように、言葉が口からついてでた。
絞り出すような声ではあったが、胃液が一緒に出なかっただけ上等だろう。

「うるせえな……」

恐怖はあった。
言いたいこともたくさんあった。
聖杯戦争という単語に引っかからないわけがなかった。

「今、心から笑えてねえことくらい、誰より自分が分かってンだよ……!」

それでも、一番最初に口から出たのは、その言葉だった。
何よりもそれは、今の自分が気に病んでいたことだったから。

「ちゃんと昔は、笑えてたんだ。トップアイドルらしく」

毎日自分を撮りながら、ずうっと思い続けてた。
今の自分が浮かべる笑顔は、なんて薄っぺらいのだろうと。


899 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:00:29 I6ez126I0

「でも、しょうがねえだろ! 突然意味のわからねえことに巻き込まれて、挙句クラスメートの一人が人身御供になって!」

最初に何かがズレたのは、多分あの日だ。
神楽坂明日菜が、何らかの事情で自ら犠牲になったという日。
あの日から、少しずつ歯車は狂っていった。

「何かがズレて! 異常が普通に変わっていって! 私だけが取り残されてんだ!」

狭い狭い自分の世界に、かつて居場所と信じた場所に、一人戻っただけのはずなのに。
あの麻帆良学園中等部の空間こそが、いつしか居場所になってしまっていた。

「外から聞こえる鬱陶しい楽しそうな声にも!
 勝手に使命を背負ってどこかに行っちまう馬鹿共にも!
 なんとかそれでも前を向いてる残された奴らにも!」

一度溢れ出した感情は、もう止めることが出来ない。
こんなことを言ってもどうにもならぬと分かっているのに、言葉を止めることが出来ない。

「歯車が狂って、もうどうにもできないとこまで来ちまったんだ。
 止まっちまった歯車には、全体をどうこうすることなんて出来ねえんだよ!」

込み上げた涙を見られぬように、視線を地面へと移す。
瞳には、不気味なパンタローネでも、もう三週間掃除していない誇りだらけの床でもなく、あの日々が映し出されている。
何だかんだで悪くなかったあの日々は、瞼を閉じればいつでも思い出すことが出来たし、嫌でも脳裏に浮かんでくることさえ会った。

「やり直してえよ……」

本当は、ずっと思っていた。
それが無理だと分かっていたから、ずっと冷めた目をして座り込んでいただけ。
足掻いている皆の背中も見えなくなって、どうしようもなくなって……
いつしか、思うことすらやめていただけだ。

「私だって、願いが叶うなら全部やり直して心から笑いたいに決まってるだろ!」

ぶちまけて、それから自分が口にしたことの重大さにようやく考えが至る。
都市伝説を信じるなら、聖杯戦争で勝ち残れば願いが叶う。
もし今の叫びを願いとみなされたなら、私はこの聖杯戦争に参加したことになるのだ。


900 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:01:28 I6ez126I0

「よかろう」

そしてそれは、見ず知らずの者との殺し合いを意味している。
何の覚悟もないままに、勢いだけで決めてしまった参加表明。
死ぬ覚悟なんて勿論ないし、殺す覚悟だってない。

「今は、お前がマスターだ」

しかしクーリングオフの類はないと、パンタローネの歪んだ表情が如実に表していた。
万が一キャンセルが出来たとしても、主従関係じゃなくなった瞬間殺されてもおかしくない。
もう、逃げられないのだ。

「フランシーヌ様よりは格が低いが、仮にも主君」

己の軽率さを悔いている隙をつかれ、肩に担がれてしまう。
不摂生でやや体重が増加しているのに、苦もなく持ち上げられてしまった。
そして、そのまま――

「笑いたいと言うのならば、まずは貴様にフランシーヌ様のために用意した芸を披露してやろう」

ガシャンと窓を突き抜けた。
あまりのことに、悲鳴すら出ない。
パンタローネはそのまま空中で数回回転すると、綺麗にポージングを決めながら着地して見せた。

「ふむ、これは気に入らんか」

心臓が爆発しそうになる。
かつて自分をあの部屋から連れ出したネギ・スプリングフィールドも大概強引で無茶だったが、パンタローネはその比ではない。
危うく命を落とす所だった。

「そこで次なる演目を見ているがいい」

そう言うと、私をベンチに座らせた。
随分高圧的ではあるし、敬意は欠片も感じ取れないが、一応私を主君扱いしているようだ。
この調子なら、上手くやれば、アイツをコントロールすることも出来るかもしれない――


901 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:03:32 I6ez126I0

「あ、あの……」

冷静に聖杯戦争での立ち回りを計算している自分に気が付きふと顔をあげると、そこにはパンタローネではなく、よく知らない少女がいた。
私の顔を心配そうに覗きこんでいる。

ああ、そうか。
いくら非日常に溢れていても、窓から人が落下してきたらざわつきはするし、心配してくれる奴の1人か2人は居るわな。
すっかり外の世界は異常で満ちてしまったと思っていたが、全部が全部変わったわけじゃないらしい。
少しだけ、ほっとする。

「だいじょうb――――」

しかし、なんと返せばいいのか。
曖昧な、すっかり板についてしまった形だけの笑みを口元に浮かべ、少女の目を見つめ返そうとして。
少女の頭部が砕け散り、見つめ返す目が失くなったことに気が付いた。

「……………………は?」

きゃあああああああ、なんて悲鳴がそこら中から聞こえ始める。
文字にすれば間抜けだが、実際は凄惨で必至な声。
もっと心から捻り出されたような声だが、他に表記のしようもない。

「な、んだよ、これ……」

そんな悲鳴も、次々上がらなくなっている。
もう上げようがない状態にさせられた少女達。
その原因は、はっきりと分かっていた。

「どうだ、鬱陶しい声も響かなくなっただろう?」

にたりと笑う、オートマータ。
歯だけはカチカチと鳴るのに、体はちっとも動かない。
まるで、金縛りにでも遭ったかのようだ。


902 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:03:44 I6ez126I0

「逃げてください、長谷川さん――!」

そんな金縛りを解いたのは、金縛る側であるはずの、この学園の地縛霊。
相坂が、無謀にもパンタローネの挑みかかろうとしていた。
追加の花火や酒でも買うためこの場を離れていたのだろうか、ぶら下げていたコンビニ袋をポルターガイストで振り回している。

「…………っ!」

逃げろ。
それは、本当ならば私が言わねばならない言葉だったのに。
喉だけが、金縛りに遭い続けている。

「今、皆さんが先生を呼んできてますから!」

パンタローネは私には手を出さないだろうし、逃げるべきは相坂だ。
きっとこいつは自分が霊体だから平気と思っているのだろう。
けれど――

「だから、早……ッ!?」

けれど、私は見たのだ。
パンタローネの掌に穴が空いているのを。
そしてその穴をかざして、少女の体に穴を空けているところを。
もしそれが、空気を吸い込み真空を作る技のようなものだとすれば――

「あ……っ」

自身が存在していた空間を吸い込まれ、相坂は、見えなくなってしまった。
最期に何かを告げることもなく。
おそらく何が起きたか理解せぬままに、ここから消えてしまった。
消滅したのかは分からない。
だが――消滅した可能性が存在し、そして、それは、紛れも無くこの私のせいだった。


903 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:04:38 I6ez126I0

「やれやれ、たかが人間如きが敵うつもりか?」

幽霊などという不可思議な存在を滅した直後でも、パンタローネに油断はない。
背後からの奇襲に対しても冷静で、振り下ろされた刀に対して掌の穴をかざす。

「くっ……!」

襲撃者――葛葉刀子の愛刀に、拳大の穴が空く。
今でも学園屈指の実力者である葛葉先生が洒落にならない化け物を撃退する所を、今まで何度も見てきた。
だが、愛刀を折られたなどという話、付き合いの長い桜咲刹那からすら聴いたことがない。

「貴様ァ!」

多くの死体を見て怒れども、葛葉先生の太刀筋は乱れない。
けれども、これでは勝てないと、頭の中で何かが告げていた。

葛葉先生は確かに強い。
けれども、一部の狂った連中と比べると、どうしても見劣りをしてしまう。
一部というのは、あのフェイト・アーウェルンクスやエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、それにネギ先生あたりを指す。

「ククク、ただの人間にしては多少はやるようじゃないか」

そして――パンタローネは、その“一部”の連中と、同じ雰囲気を持っていた。

「すまない、遅くなった!」

案の定押され始め、トドメを刺されそうになったその一瞬。
何者かが割って入ってきた。
この学園にいる、“一部”の存在の一人――高畑・T・タカミチだ。

「大丈夫!?」

どうやら椎名や朝倉が高畑先生を呼んできたらしい。
おそらくは朝倉の支持で椎名が行ったのだろう。
奴の幸運ならば、騒ぎの流れ弾などで死ぬおそれが少ない。
そして、現場に行っても死ぬおそれがない相坂を、こちらに寄越したというところか。

なるほど、賢明な判断だよ。
自分も動きたい所をこらえて、ここよりやや離れた場所にいた連中の避難をさせていたあたりも含めて。
でも――

「…………ッ」

せわしなく視線を動かす朝倉に対し、謝らなくてはと思った。
なのに、「すまねえ」というたった四文字ですら喉を通らない。
死ぬはずがない相坂の姿が見えないことに、朝倉の顔色が悪くなるのが分かった。

「なるほど、貴様はナルミのような打撃を打つ」

この惨撃で、初めてパンタローネが退いた。
高畑先生の気の篭った拳を受け、パンタローネが距離を置く。


904 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:05:27 I6ez126I0

「だが貴様程度ではこのパンタローネには勝てん」

下卑た笑みでの挑発にも、高畑先生は動じない。
ただ冷静に、構えを取った。
いや――冷静ではないか。
ただとっくに、この惨状を目にした時点で、コレ以上心乱されようがないくらい、怒髪天にきているだけだ。

「生憎、こういう芸も持っていてな」

心底楽しそうな笑みで、パンタローネが空気を吸い込む。
それを意に介さないかのように、高畑先生が高速の拳を抜いた。
例え真空状態であろうとも。
例え拳がズタズタになろうとも。
決して止まらぬ、絶対無比の破壊力を込めた拳。

「なッ……!」

真空状態は、元に戻ろうと周囲のものを引き寄せる。
そのことは、遥か昔の人斬りや、馬鹿で有名なスタンド使いでも知っていることだ。
そして、知識だけは得続けることが出来る自動人形でも知っている。

「ほうら、こうして拳が鈍る」

吸い込まれたのは、葛葉先生。
盾にするように、高畑先生との間に吸い寄せられた。
それでも、拳は止まらない。
例え急激なブレーキをかけようとも。
例え威力をどれだけ殺そうとしても。
決して止まらぬ。絶対無比の、破壊力が込められた拳は。

「ハハハハハハハハ!」

だが高畑先生は、拳の威力を弱めてしまった。
どれだけ弱めようとも、葛葉先生の体を貫くことに代わりはないのに。
それでも彼の優しさが、拳の威力を弱めてしまった。

結果残るは、無慈悲に笑う人形のみ。
緩めた上に人体越しの打撃では、人形を破壊するほどまで至れない。
そして、その隙を逃してやるほど、パンタローネはお人好しではなかった。
ましてや今は大虐殺の演目中、手を緩めてやる理由はない。


905 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:06:13 I6ez126I0

「ごめんさよちゃん、今行く」

高笑いをするパンタローネを見据えて、ぽつりと朝倉が呟いた。
その言葉に、椎名のみならず私の首までぐりんと動く。
首だけでもスムーズに動かせるようになるほどの衝撃が、その言葉には込められていた。
だって、つまり、その言葉の意味するところは――

「桜子は、千雨を連れて逃げて」

桜子から制止の言葉が出るより早く、朝倉は弾かれたようにパンタローネへと突っ込んでいった。
相手は自動人形、魔法使いとはまた違う。
例え魔法使い相手に生き延び続けた朝倉でも、勝てる道理なんてないのに。

「千雨ちゃん、走れる!?」

朝倉は、死ぬ気だ。
そして、もう、止められない。
それが分かったからだろう、千雨の手を引き、桜子が走り始めた。

「ごめんね……」

走っているというよりも、引きずられているに近い。
私の足はおぼつかず、完全にお荷物となっていた。
なのに、謝罪の言葉は、椎名の口から聞こえてくる。

「このタイミングで、外に出ようなんて言っちゃって」

ああ、くそ。
なんだよ、それ。
お前ら、どんだけお人好しなんだよ。

そんなんだから。
“普通”が通用しないくらい、平和ボケしてやがったから。

だから私は、今も昔も、眩しすぎて直視できなかったんじゃないか。

「あーあ……私、ラッキーガールだったのになあ」

突然、視界が傾いた。
転倒したとすぐに気が付かなかったのは、椎名の体が視界を覆っていやがったから。
一緒に倒れこんだのだ。

「吐いたことも、なかったのに……」

早く逃げないと、椎名まで殺される。
そう想い、どかそうとして――全身から、何やら液体を浴びた。
それが血の類であることは、匂いがせずとも想像できる。

「でも……よかった……」

必至に椎名の体をどかす。
気弱になってんじゃねえ、逃げるんだろ――
そう声をかけようとして、絶句した。

「千雨ちゃんだけでも、助かって……」

目を丸くする私の視界に、椎名は半分ほどしか映ってない。
ピントが合ってないわけじゃなかった。
背中から後ろが、綺麗にえぐりとられて、物理的に半分になっていたのだ。

「そう考えると……やっぱり、ラッキー……かな……」


906 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:07:38 I6ez126I0

知っていた。
こいつが、お人好しだってことは。
アーティファクトで幸運を分けるために、家の前で定期的にチアダンスをしていることも。
そのついでに、朝倉が近況報告をしてくれていることも、相坂が見まわってくれていることも。

なのに私はそれに応えてやれなかった。
それどころか、私のせいで、こいつらは――――

「緊張状態からの緩和が笑いに繋がるという」

言わねばならない言葉はあった。
謝罪の言葉も感謝の言葉も、いっぱいあったはずなのに。
なのにとうとう、言葉にすることが出来なかった。
たくさんあった告げたい想いは、外に出せぬまま、胸の中にとどまり続ける。

「どうだったかね、我がマスターよ」

甘く見ていた。
人の命を奪うことを。
聖杯戦争というものを。

甘く見ていた。
非日常を体験したことがあるからと。
実際に友人が死ぬ所を、目にしたことなんてなかったのに。

「ふむ、これもダメか」

こんなことなら、さっさと踏み出せばよかった。
完璧にやり直せなくとも、少しだけ、軌道修正できていたかもしれないのに。
やり直せるチャンスは、たくさんあったはずなのに。

「ならば、やはり聖杯で願いを叶えるしかないな」

私は、やり直したかった。
けれども、それは、こういうことなんかじゃなかったのに。
今失った奴らこそ、もう一度、やり直したい相手だったのに――


907 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:08:01 I6ez126I0

【マスター】
長谷川千雨@魔法先生ネギま!

【能力・技能】
パソコンのハッキング。

【weapon】
ノートパソコン

【人物背景】
麻帆良学園中等部3年A組。
ネットアイドルであり、他のライバルに妨害工作を図る陰湿な性格を持ち合わせる。
担任教師ネギ・スプリングフィールドに外の世界へ連れだされてから態度は軟化。
否定し続けた魔法というファンタジーに囲まれながらも、少しずつ交流を深めていった。
本聖杯戦争では、神楽坂明日菜が人身御供となった後の未来から参戦。
なお、明日菜が人身御供にならなかった未来でも、千雨は引きこもりと化していた。

【マスターの願い】
全てを、やり直す


908 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:08:18 I6ez126I0

【クラス】ライダー

【真名】パンタローネ@からくりサーカス

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷B++ 魔力D 幸運E 宝具C

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
騎乗:C
大玉等、曲芸に見立てれば、無骨な岩製だろうと人肉製だろうと乗りこなせる

対魔力:E
炎等、実在するものを発動するタイプの魔術には、ある程度耐性があるといえる。
生来の頑丈さ故だが、人形だからと炎や雷が特別苦手というわけではない。
一方で、人形破壊者の血は猛毒となっている。

【保有スキル】
憤怒:E
怒りスイッチが入ることで、フランシーヌ以外の者の命令を無視し感情のままに行動することができる。

最古の四人:B
フランシーヌ人形を笑わせることが存在意義であるため、フランシーヌ人形を否定するような行動を取ることが出来ない。
フランシーヌ人形のためならば、マスターにだろうと牙を向くことが出来る。
ただし、フランシーヌ人形を否定するような言動を取ると、存在意義を失ってしまい自壊していく。

【宝具】
『深緑の手(レ・マン・ヴェール・フォンセ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:大量
真空状態を生み出し相手の体を抉り取ることが可能な穴を持つ、フランシーヌ様にお作り頂いた両手。
応用として地面を削り取り武器としたり、空気を打ち出し遠距離攻撃をすることも可能。
長い腕で大人数を同時に相手取ることも可能。

【weapon】
『大玉』
いつでもどこでも新緑の手で作り出せる大玉。
基本何でも新緑の手で削りとって形を整えられる。
岩だと物理ダメージが強いし、人肉だと精神的ダメージが強い。

【人物背景】
自動人形(オートマータ)最古の四人の一人。
主君であるフランシーヌ人形を笑わせるだけに生み出され、そのためならば手段を厭わない。
子供の肉塊で玉乗りをしたり、滑稽なポーズを研究したりと、フランシーヌ人形のために様々なことに取り込んでいる。
また、観客に見てもらう必要もあるため、武器を持たぬ者の前では高速で動けないなど、自動人形の秩序に対しては従順。
人間のことを見下しており、度々油断しては激おこぷんぷん丸となるのが特徴。
それでも戦闘力は超一級品で、新緑の手を使い多くの猛者を殺害してきた。

【サーヴァントとしての願い】
フランシーヌ様「ニッコリ」


909 : 長谷川千雨&ライダー :2015/04/04(土) 00:08:40 I6ez126I0
投下終了です


910 : ◆bM9ATKlCpQ :2015/04/04(土) 00:08:57 lvtpx4Ms0
投下させていただきます。


911 : ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:09:02 9p.RF3VE0
それでは、投下いたします


912 : 瀬文焚流&アーチャー  ◆bM9ATKlCpQ :2015/04/04(土) 00:09:53 lvtpx4Ms0
あと、一歩だった。
確かに目の前に、かつて倒れた部下_____志村は立っていた、はずだった。

「はっ。命令通り長生きします!!」

バカが付くほど素直なその言葉に思わず破顔した、その直後だった。
突如現れたサラリーマンたちの吹くブブゼラの爆音が轟き_____志村を再び、失ったのは。

そして、坊主頭の男、瀬文焚流の視界は暗転する。





「………志村ぁぁっ!!」


その声と共に、瀬文は飛び起きた。
聖杯戦争の舞台___偽りの冬木市に用意された、マンションの一室。

「……どこだ、此処」

さっきの出来事はただの性質の悪い悪夢、のはずはない。
人気はないようだが、念のため辺りを見回す。

「…ぬいぐるみ?」

目についたのは、部屋の隅に鎮座する大き目のピンク色の熊のぬいぐるみ。
30歳はとうに超えた男である瀬文に、当然ながらこんな趣味はない。
かわいらしい見た目をしているが、新手のSPECホルダーによる罠である可能性も否定できない。ぬいぐるみに爆弾を仕込んである可能性もある…。
そう考えを巡らせた矢先。


「気が付いたみたいだな、マスター」

「……………は?」


ぬいぐるみが、喋りだした。
しかも、自分の足で立ち、歩き出したではないか。

「どうしたマスター、そんな顔をしt…!?」

マスターとは何か、なぜここに呼び出したのか…?
そんな疑問が脳裏に浮かぶのとほぼ同時に、ほぼ反射的にぬいぐるみの頭部分をつかみ、壁に叩きつけた。

「……何者だ、お前」
「マスター、な、何をする…それが人にものを聞く態度か…! 離せ…!」
「人じゃないだろ」

瀬文の手から逃れようと必死に手足をばたつかせるも、リーチの短さ故に届かない。
子供のおもちゃのような音を立てながら、虚しく空を掻くのみ。

「クソッ…なんて不便な体だ…!」
「御託はいいからさっさと答えろ。お前は誰だ、どうしてここに俺を呼び出した」
「呼び出した…?私もここに呼び出されたんだ、マスターも聖杯に呼び出゛さ゛れ゛た゛ん゛じゃ゛な゛い゛の゛か゛…!」

元SIT小隊長として鍛えられた瀬文の指が顔面にめり込み、もはや原形をとどめないほどに変形したぬいぐるみから、絞り出されたかのような声が漏れる。

「聖杯………?」

その言葉を聞いた途端、瀬文の脳に、見知らぬ記憶が次々と焼きついた。
未詳での同僚__当麻紗綾が捜査の際にキーワードを半紙に書きつけ破り捨てることでひらめきを得ていたのを思い出すが、そんなものではない。
聖杯戦争のルール、サーヴァントとマスターの関係、右手に刻まれた令呪の意味、そして____勝者は聖杯を用いて願いを叶えられるということ。
まるで記憶を弄られているかのように、次々と詰め込まれていく。

「ハアッ…ハアッ…ハアッ……」

息を荒くする瀬文のその足元では、いつの間にか力の緩んだ手から抜け落ちたぬいぐるみが、ぐったりしている。
それを見下ろし、瀬文は問う。


「お前が、俺のサーヴァント…なのか?」


913 : 瀬文焚流&アーチャー  ◆bM9ATKlCpQ :2015/04/04(土) 00:10:36 lvtpx4Ms0



「聖杯ってのは、本当に何でも願いを叶えられるのか」

先ほどの一悶着から数分後、ぬいぐるみが落ち着いてきたころ、瀬文がふとそんな問いを口にした。
これまで様々な超能力__SPECを目の当たりにしてきたが、流石にまだ信じ切れてはいないのだ。

「さあ?私だってこの世界にいきなり呼び出された身なんだ、そんなこと聞かれても困る。
 …まあ、ただ一つ言えることは、街一つ分の空間を作り出して別の世界から私たちを呼び寄せた辺り、その聖杯はとんでもない力を持ってる、ってことだけだな。
 私の元いた世界じゃ、旗艦でもそんな芸当はとてもじゃないが不可能だ。
 マスターは、何か叶えたい願いがあるのか?」
「………ある」

一言だけそう答えた瀬文の脳裏には、志村の顔が浮かんでいた。
保証はない。しかし、聖杯の「とんでもない力」ならば、志村を再び救ってやれるかもしれない_____。


「………乗った」

 
無意識にそう、呟いていた。

「本当にいいのか?…人間というのは、よく後悔というものをするのだろう?」
「後悔…?そんな物はない。『命捨てます』。これが俺たちSITの言葉だ。…お前はどうなんだ」
「私は元々兵器。戦うことだけが存在理由…嫌がる理由などない。
 霧の大戦艦、キリシマだ。よろしく頼む」

また一組、聖杯戦争の扉を叩く。
彼らの結末は、後悔か、それとも_____?


914 : 瀬文焚流&アーチャー  ◆bM9ATKlCpQ :2015/04/04(土) 00:11:07 lvtpx4Ms0
【クラス】
アーチャー

【真名】
キリシマ(ヨタロウ)@蒼き鋼のアルペジオ-Ars Nova-

【パラメーター】
筋力:D-(C) 耐久:D-(C) 敏捷:D-(C) 魔力:E 幸運:B 宝具:A+
※()内は「無辜の怪物」解除時

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】

対魔力:D
魔術への耐性。一工程の魔術なら無効化できる、魔力避けのアミュレット程度のもの。

単独行動:B(C)
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。熊のぬいぐるみの姿は、魔力消費を抑えるのに一役買っている。

【保有スキル】

嵐の航海者:B-
「船」と認識されるものを駆る才能を示すスキル。
生前船員・船団を率いることはなかったため、カリスマは備えていない。

狂化:-(E)
熊のぬいぐるみの姿では、このスキルは失われている。
Eクラスでは、通常時は狂化の恩恵を受けないが、その代わりに正常な思考力を保つ。 ただし、相手に攻撃されたり回避されたりするごとに好戦的になっていく。

気配遮断:A---(-)
熊のぬいぐるみと化したことで手に入れたスキル。一切動かなければサーヴァントである事さえ気が付かれない。
ただし、動いている時はこのスキルは発動しない。

動物会話:C(-)
熊のぬいぐるみと化したことで手に入れたスキル。言葉を持たない動物との意思疎通が可能。
動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。

無辜の怪物:A
生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられなった怪物。能力・姿が変貌してしまう。
このスキルを外すことは『緑光刻まれし霧』を除き不可能。
このスキルにより、彼女の姿はピンク色の熊のぬいぐるみの物と化しており、その影響でステータスや一部スキルのランクが変化しているが、「気配遮断」と「動物会話」が可能となっている。

クラインフィールド:E(A)
クラインの壺理論を応用することで、受けた攻撃のエネルギーを任意に逸らし攻撃を無力化するバリアを展開する。
ただし、全てを処理出来るわけではなく徐々にエネルギーは蓄積されてゆき、適度に発散しなければやがてフィールドが消失してしまう。
調整を行うことで物理攻撃にも使用可能。熊のぬいぐるみの姿では手のひらサイズが精一杯。


915 : 瀬文焚流&アーチャー  ◆bM9ATKlCpQ :2015/04/04(土) 00:11:40 lvtpx4Ms0
【宝具】
『緑光刻まれし霧』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100
彼女の在りし日の本来の姿である、金剛型戦艦四番艦『霧島』の姿を模した霧の大戦艦『キリシマ』を召喚する。再現の都合上基本的には空中を航行するが、元は艦船であるため水上での戦闘では+の補正がかかる。
科学的な存在であることと釣り合わないランクの高さは、同じ霧の船であるイ401が拿捕された際、7年間の研究にもかかわらず全く解析することができなかったという逸話から来る『霧の艦隊』そのものが持つ神秘性によるもの。
姿こそ『霧島』に緑色の紋様が刻まれただけであるが、『強制波動装甲』『超重力砲』をはじめとするその装備は全くの別物であり、圧倒的な火力・防御力を有する。
また、この宝具を発動している間のみ、「無辜の怪物」が解除され本来の姿(?)を取り戻し、ステータス・スキルが本来の物へと戻る。

『黄光刻まれし霧』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100
『緑光刻まれし霧』発動時のみ使用可能。『霧島』の姉妹艦である『榛名』の姿を模した霧の大戦艦『ハルナ』を召喚する。(メンタルモデルも一時的にサーヴァントとして召喚する)
性能面では『緑光刻まれし霧』とほぼ同等だが、魔力消費の関係上2隻を長時間同時運用することは困難を極める。
その真価は、『緑光刻まれし霧』との合体を行うことで劇的に強化される『超重力砲』にある。
威力は絶大であるが、発射には演算への集中と莫大な魔力を要求される。

【weapon】
『緑光刻まれし霧』とクラインフィールド。しかし、現状のマスターである瀬文の魔力量では、『緑光刻まれし霧』の連続使用可能時間は持って10分といったところ。

【人物背景】
近未来、人類と敵対する『霧の艦隊』と呼ばれる第二次世界大戦時代の艦の形状を模した艦艇群の中の一隻。「メンタルモデル」と呼ばれる、外界との接触を図り情報収集を行うために形成された、茶髪のショートアップにパンツスタイルの女性の姿を模したインターフェイスを持っていた。
姉妹艦であるコンゴウの配下であり、ハルナと共に横須賀港を襲撃するも、イ401との戦闘に敗北、「後悔」という感情を知る。メンタルモデルと船体を失うが、核たるユニオンコアだけは辛うじて無事であった。
その後、刑部蒔絵という少女にハルナ共々保護された際に、ハルナの持つナノマテリアルを少量分け与えてもらい、部屋にあったピンク色のクマのぬいぐるみの姿を借りて復活した。
今回はその付近の時間軸(復活直後)からの参戦となる。
性格面は非常に勝気で好戦的な物であったが、熊になってからは鳴りを潜め、比較的常識的な性格となっている。

【サーヴァントとしての願い】
船体・メンタルモデルを取り戻し、『後悔』の感情を晴らす

マスター】
瀬文 焚流@SPEC?警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿?

【weapon】
拳銃など警察の装備

【能力・技能】
元SIT小隊長であるため、常人と比べて身体能力・戦闘能力が高い。
真価はその刑事魂(刑事とかいてデカと読む)にあり、これによりたとえ満身創痍になろうが能力で記憶を消されようが時を止められようが真実に向かってひた走り続けることができる。もし瀬文がサーヴァントとなれば戦闘続行:Aは確実レベル。
とはいえ、あくまで純粋な人類であり、無能力者であることは間違いない。

【人物背景】
警視庁公安部未詳事件特別対策係(通称:未詳)捜査官。警部補。坊主。
若くしてSITの小隊長を務めていたが、犯罪グループとの銃撃戦のさなかに不可思議な現象に見舞われ、部下である志村を誤射した疑惑をもたれ、未詳へと左遷された。
鞄代わりに紙袋を持ち歩いており、その中に拳銃などもしまっている。口癖は「○○なめんじゃねぇ / ○○なめんな」(権力、命など)。
強い正義感と、高圧的で生真面目な軍人気質の持ち主であるとともに、かなりの常識人。
SIT在籍時の矜持でもある「命捨てます」を掲げる一方で、志村の一件によるトラウマから「人の死」に強い恐怖心を持っており、「悪人だろうが政治家だろうが、人の命は人の命」と語り、自殺を試みる被疑者や他人の生命を弄ぶような人物に対しては怒りを露にする。
志村が殺された(第8話)直後からの参戦。

【マスターとしての願い】
志村を生き返らせる。

【令呪】
キリシマの「智の紋章(イデア・クレスト)」と同じものが右手の甲に刻まれている。

【方針】
マスターである瀬文の魔力量があまり高くないため、むやみな戦闘は避け、まずは情報収集に徹する。(熊のぬいぐるみ状態での不意打ちも捨ててはいない)
勝てると確信に至った時や、やむを得ない場合のみ、『緑光刻まれし霧』を用いて戦闘する。


916 : 瀬文焚流&アーチャー  ◆bM9ATKlCpQ :2015/04/04(土) 00:11:56 lvtpx4Ms0
以上で投下を終了します


917 : ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:13:04 9p.RF3VE0
では


918 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:13:50 9p.RF3VE0





                     われわれは何事についても1%の百万分の一も知らない

                                        ――発明王、トーマス・アルヴァ・エジソン


919 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:14:18 9p.RF3VE0



「最悪」

 グラスに注がれた琥珀色のウィスキーを一口するなり、その女性は愚痴を零した。
白い石鹸の如くに綺麗な肌をした、一目見て十代だと分かる、年若い綺麗な少女である。
零した言葉に込められた心情を余す事無く、その顔付きは表現していた。
眉間にしわが寄せられたその様は、誰が見ても『不愉快である』以外の気持ちを読み取る事は出来ないだろう。

「この店はお気に召さなかったかな?」

 少女の向かい側に座る男が、訊ねて来た。
……ゾッとする程の美貌の持ち主だった。腕利きのテーラーに仕立てて貰ったであろう高級そうな黒スーツを厭味なく着こなす、金髪に赤青オッドアイの美青年。
高い鼻梁、理知的な輝きを宿す双眸、微かに吊り上げられた唇。顔の造詣は、男性美の純粋な結晶そのもの。
体格も身長も、人体の黄金比と言える程完璧なバランスを保っており、極め付けが、身体から発散される都会的で、スマートな空気。
一目見て理知的だと悟らせる風貌だった。さながら、古の昔から連綿とその高貴な血統を受け継いできた、貴族。
さながら、世の男性が求めてやまない要素を全て獲得したような、完璧な紳士。何も知らない一般人が目の前の男を見て抱く印象は、そんな所だろうか?

「お酒は美味しいわよ。だけどこんな場所じゃなかったら、もっと美味しかったでしょうね。お酒の美味しさは場の質に左右されるのよ?」

「成程、それには私も同感だ」

 フフ、と笑みを浮かべて金髪の男が返した。
並一通りの女性が見たら、熱にうなされ恋に焦がれる程の魅力的な微笑みであったが、対面する少女は全く靡きもせず、不機嫌そうな態度を崩しもしない。

 場所は冬木市新都某所に建てられた、会員制の高級BAR、その中でも更に上客にしか案内されない最高級のVIPルームだった。 
壁に掛けられた燭台と弱めの光しか放たないシャンデリアで薄暗めに演出された室内、西欧から仕入れたと思しき最高級のソファ、
本物の水晶と何ら遜色はないクリスタルガラスのテーブル、その上に置かれた、一本数十万は下らないとされる銘柄ウィスキーとつまみの数々。
それを、少女は気に食わないと言った。余人と酒を飲んで語らうのならこれ以上とない環境であるにもかかわらず、だ。

「アンタ、よく人から白々しいとか、わざとらしいとか、胡散臭いとかよく言われない?」

 コト、とガラステーブルの上にウィスキーグラスを置いてから、少女が言葉を投げ掛けて来た。

「直そうとは思っているのだがね。どうにも生れ持った性分は直し難いのだよ」

「ったく、どうして私の周りにはこうもアクの強い奴しか集まらないのよ……」

 心底辟易したような態度で少女は愚痴る。
……見れば見る程、この場においては異様な少女だった。脇の部分を露出させた、紅白の『巫女服』を着用しているのだ。
頭に付けられた大きな赤リボンが良く似合う、可愛らしいこの少女。ドレスコード及び年齢を考えた場合、このようなBARにおいては店先で門前払いも不可避の人間だろう。
名を『博麗霊夢』と言うこの少女は、正真正銘本物の巫女、本物の十代前半の女性である。
そんな少女がこの店のVIPルームに案内され、あまつさえ酒を口にする。これを以上と言わずして、なんと言う。

「それで、よ」

「フム」

「幻想郷に戻れる方法はあるの?」

 射抜くような目線で、金髪の男を睨めつける霊夢。
嘘やごまかしは一切許さないと言う、彼女にしては珍しい、強く確かな意思がその黒い瞳に内包されていた。
少女とは思えない、大の男でも怯みかねない程の気魄をぶつけられても、金髪の男は何処吹く風。実に涼しげな顔をして受け止めるだけであった。

「色々な可能性を思い描いてはみたが、我々の組がこの戦いに勝ち残る事しか他にないようだね」

「ちょっと、ちゃんと本気で考えてる?」

「はは、君がそう言いたい気持ちも理解出来るが、コレが事実なんだよ、マスター」

 ある程度予期出来た事であるが、選択肢は一つしか霊夢には残されていなかったようである。
ますます機嫌が悪くなる。酒の味とは、気分に大きく左右される。
これではテーブルの上の酒も、ヘドロのような味しか感じられないであろう。


920 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:15:12 9p.RF3VE0

 聖杯戦争。下らない催しだと霊夢は思う。
二人の願いを叶える為だけに、他の何十人もの参加者を殺し尽すと言う、気の違った様な争い。まるで蠱毒だ。
そして参加者は、ただ殺し合うのではない。自らに宛がわれた『サーヴァント』と呼ばれる、人間を超える戦闘能力を秘めた存在を駆使し、勝ち残らねばならないのだ。
しかも、七日と言う期限の間に最後の一組が残らなければ、聖杯戦争を開催する冬木市ごと消滅、願いを叶える事もなく全員死んでしまうらしい。

 ……全く笑えない。こんなつまらないジョーク、妖精だって口にしない。
その面白くないジョークの場に、霊夢は招聘されてしまった。妖怪達の最後のユートピアである幻想郷は博麗神社から、外界とはまた異なる世界に存在する冬木市へと。

「人を殺すのは嫌かい? マスター」

 ガラステーブルの上に置いてあったグラスを手にし、中のオンザロックを転がしながら、金髪の男が訊ねて来た。
ピクっ、と霊夢の眉が一瞬反応する。男は相変わらず、アルカイックスマイルを浮かべていた。

 男の聞いた事は、半分は間違い、半分は正解だ。
霊夢は決して平和な世界からやって来た訳ではない。幻想郷とは、妖怪が人間を喰らい、戯れで殺す事など珍しくもない世界だった。
そんな世界で生まれそだった彼女の死生観は現代の人間とは異なり、冷たく、シビアである。
妖怪や、それに準ずる超常の存在を相手に一戦を交え、最悪葬り去る事だってどうとも思ってはいない。
但し――相手が人間となると、少々気が引ける。出来なくはない、と思うのだが、人を殺した経験は霊夢にはない。不安じゃないと言えば、嘘になる。
霊夢が自信をもって『殺せる』と断言出来るのはサーヴァントであるが、このサーヴァントと言う存在は霊夢の思う以上に強い存在であり、
彼女では成す術もなく殺される事だって、珍しくないと言う。
そもそもマスターである霊夢がサーヴァントを直接相手取ると言う事が、聖杯戦争の考えからしたら異端そのものであり、自殺行為そのものなのだ。

 ではサーヴァントは誰が下すのかと言えば――この金髪の男。
聖杯戦争において、本来存在しない筈のエクストラクラス、『アヴェンジャー』。つまり、復讐者のクラスを割り当てられたサーヴァントだった。

「嫌ならばそれで良い。私が何とか、君が人を殺さないように善処しよう」

「アンタが? 冗談でしょ、私から見えるステータスは……貧弱そのものだけど」

 だが懸念があった。そう、このアヴェンジャーの男、直接戦闘がかなり苦手なのである。
何せ筋力と耐久が最低値、やや優れているのは敏捷、魔力と幸運は最高クラス、と言う極端なタイプ。
魔力が高い癖に、キャスタークラスではない為陣地作成も道具作成も持たない。そもそもサーヴァントに魔術は効果が薄い。予め耐性を持っているからだ。
つまりこのサーヴァントは、その高い運でのらりくらりと立ち回る事が必要なサーヴァントなのである。これで不安を覚えるな、と言う方が無茶であった。

「はは、正直に言わないでくれ。貧弱さについてはこれでも少々気にしているんだ。此処まで弱体化しなければ、私は聖杯に呼ばれもされなかったのだからね」

「呼ばれもされなかったって、まるで呼ばれたかったみたいな言い草ね。こんな馬鹿みたいな催しに」

「私にとっては、楽しい催しだよ。マスター」

「……人が死ぬかもしれないのに、楽しいのかしら?」


921 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:15:40 9p.RF3VE0

 スッ、と目を細めて、アヴェンジャーを見つめる霊夢。
静かな声音だった。しかしそれでいて、その声の冷たさと刺々しさたるや、尋常のものではなかった。
まるで、氷の刃の剣先をそのまま首筋に突き付けられているかのような……。そんな感覚を、常人ならば覚えるであろう。
対するアヴェンジャーは、実に涼しげな顔をするだけであった。

「幻想郷、妖怪妖魔達のサンクチュアリを管理する巫女の割には、人道的な事を口にするのだね」

「質問の答えになってないわよ、アヴェンジャー」

「失礼。率直に言えば、かなり楽しみだよ。あぁ、ただ誤解しないように言っておくよ。人が死ぬのが楽しいのではない。
このような状況で人間が何を選び、何をきっかけとして変わって行くのか。私にとって興味のある事柄はそれだけで、聖杯については欠片も興味がない」

「ハッキリしたわ。アンタ、性格悪いわよ」

「生来からのものは変え難いのだよ、マスター。それに、聖杯戦争において召喚されるサーヴァントと言うのは、大なり小なりマスターの性格や性質、
生きざまを反映する、鏡のようなもの。私が君に呼応して此処に呼ばれたと言う事は、つまりそう言う事ではないのかね?」

「楽園の素敵な巫女に向かって失礼ね。アンタの言った事が事実なら、アンタを呼び出すに相応しい存在は八雲紫以外にいないわよ」

「成程、確かに彼女なら一見すれば私と反りは合うように見えるだろうな。尤も、私は彼女に従うつもりもないし、彼女も私から早々に縁を切りたがるだろうがね」

「……知ってるの? アイツの事」

 意外そうな顔つきで、霊夢が聞いて来た。フフッ、と、蠱惑的な笑みを浮かべてアヴェンジャーが口を開く。

「インテリくずれでね。特に神や悪魔、妖怪と言った存在には目がないのだよ」

 言ってから、それまで手に持っていたウィスキーグラスの中身を全て飲み干す。
アヴェンジャーが音もなくテーブルにグラスを置いたと同時に、霊夢が声を発する。

「まぁでも、紫に比べたら、アンタの方がイイ性格してるわね」

「ほう、善良と言う意味かな?」

「悪辣って意味よ」

 スッ、とソファから立ち上がり、アヴェンジャーを見下ろしながら霊夢は言葉を続ける。

「紫の胡散臭さやわざとらしさは、全て幻想郷の為を思ってか、そもそも何にも考えてない事が大体だったけど、アンタは違うわね。アヴェンジャー」

「と言うと?」

「アンタは明白に、腹の中に何かを隠し持ってるタイプよ。それも、大体良からぬ事を、ね」

 テーブルの上に置いてあったウィスキーグラスを乱暴に手にし、グイッと一気に煽る霊夢。
カッ、と良い音を立ててテーブルの上に置くと、早歩きでドアへと近づいて行く。と、まだソファに足を組んで座っているアヴェンジャーの方に顔を向けて、言葉を発した。

「聖杯戦争が楽しみ、って言ったわね、アヴェンジャー」

「あぁ、そうだね」

「自分本位なアンタがもしも、私が死んだ方が『楽しめそうだ』って思ったのなら、アンタは私を見捨てるのかしら?」

「マスターが死ぬ事をよしとするサーヴァントは聖杯戦争に存在しないよ」

 表情も口調も声のトーンも一切崩しもせず、アヴェンジャーが言った。
あまりにも堂々と。あまりにも自信満々と。それが、当然であるかのごとくに。
しかしそれを受ける霊夢の態度は、「ふぅん」、と、口調も態度も冷めたものだった。

「私ね、結構勘は鋭い方なの。下手なおみくじより良く当たるとも評判よ? で、そんな私の勘が弾き出した答えはね――」

 一呼吸置いてから、霊夢が言った。

「アンタは私の死すらも、悪巧みの歯車の一つとしか数えてない、って事よ」

「……」


922 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:16:08 9p.RF3VE0

 静かな笑みを浮かべるだけ。無言を貫きながら、アヴェンジャーは霊夢の方を見つめていた。
霊夢の方も、厳然とした態度で彼を見つめるだけ。互いの目線が、交錯する。蛇と蛇が絡み合うが如くにねじくれあう二人の視線。
無言の睨み合いが、唐突に終わりを告げた。霊夢が、アヴェンジャーに背を向けたのである。

「精々、私の身を守って見せてよね。頼りないサーヴァントさん?」

「頼りないなりに、善処しよう」

 言葉を聞き終えるや、霊夢はドアを開け、部屋の外へと出て行った。
薄暗く、ムーディーな部屋の中に、アヴェンジャー一人だけが残された。
聖杯戦争はもう始まっている。自分も行かねばならないな、と思い、彼は重い腰を持ち上げた。
すると、規則正しいリズムのドアノックの音が、四回程響いて来た。「入っても構わない」、そう口にすると、灰色のスーツを着た壮年の従業員がドアを開けて入室する。
入るなり、「失礼します」と恭しく礼をして見せるその様は、如何にもVIP客に対する礼儀を心得たベテランと言った様子であった。

「お連れのお嬢様が御外へと出られましたので、何事かと思いまして……」

「彼女は酒があまり強くないのだ。夜風に当たりたいのだろう。私も店を出る。次に来る時は、なるべく飲みやすく度数も低い物を用意してくれないか?」

「畏まりました、『閣下』」

 再度従業員がアヴェンジャーに対して深々とお辞儀をする。
アヴェンジャーの事を見る壮年の男の瞳は、尊崇、敬愛、畏怖。凡そ人類が表現しうる、様々な尊敬と崇拝の感情がないまぜになっていた。
まるでアヴェンジャーの事を、『神』として認識しているような……。

「下がって良い。私も出る」

「はっ」

 言うと、音もなく壮年の従業員が退室する。
また一人きりになったVIPルームの中で、アヴェンジャーは一人、意味深長な微笑みを浮かべ、クツクツと笑い始めた。

「やはり来た甲斐があったな、聖杯戦争……」

 聖杯に無理に介入し、この偽りの冬木市に降臨した苦労に見合う愉悦が、此処にはあった。
戦争が本格的に始動する前から、あの面白さであるのだ。多少の弱体化など問題にならない程、アヴェンジャーの心は昂っていた。
これからどのように聖杯戦争を楽しんでやろうか。どのような面子を、魔界に誘ってみようか。霊夢の処遇はどうしようか……考える事は山積みで、そして、楽しみは尽きなかった。

 シャンデリアの光が、アヴェンジャーを照らす。
出来上がった影には、『六枚の翼』が背中から生えているのが解った。

 アヴェンジャーの真名は、ルイ・サイファー………………。


923 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:16:40 9p.RF3VE0


【クラス】

アヴェンジャー


【真名】

ルイ・サイファー@真・女神転生シリーズ


【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷C 魔力EX 幸運EX 宝具EX


【属性】

混沌・善


【クラススキル】

復讐者:EX
己の復讐に縁があるものと対峙した際、筋力・耐久・敏捷のパラメーターがスリーランクアップする。
アヴェンジャーの場合は『唯一神』及び『大いなる意思』の関係者、及び『天使』としての属性を持つ者と対峙した場合、このスキルが発動する。
宇宙開闢以降、最初に四文字の神及び彼を生み出した大いなる意思に対して反旗を翻した明けの明星たるアヴェンジャーは、歴史上最古かつ最大の復讐者である。

対魔力:E+++++
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を削減する。
……但しアヴェンジャーの場合は、その削減する数値が異常で、如何なる魔術も物理的な攻撃も、元の威力の四分の一しか効力を発揮されない。
神霊級の魔術の直撃でもない以上堪えもしない為、事実上、魔術的手段でアヴェンジャーを一撃で葬り去る事は出来ない。

神性:-
かつては最高ランクの神性ランクを誇っていたが、前述の反逆により、このスキルは失われている。

【保有スキル】

大魔王:EX
悪魔、その中でも高位の存在である魔王であるか。
アヴェンジャーは神に反逆して見せた魔王の中の魔王・大魔王であり、悪魔としての格は規格外である。
一切の精神干渉を無効化し、令呪による縛りすらも制御。EXランク相当のカリスマと反骨の相も内包。
相手の保有する唯一神や天使に関係するスキルや宝具の効果を無効化させる。
また思考回路が人間と決定的に違う為、逆にアヴェンジャーに無理に精神干渉を行うと、致命的に精神と大脳を破壊される。

単独行動:EX
マスター不在でも行動可能。
このランクの単独行動になると、マスターの魔力供給を一切不要とし、例えマスターが死亡したとて行動を可能とする。
アヴェンジャーを直接滅ぼさない限りは、彼は聖杯戦争の舞台から退場する事はない。

話術:EX
言論によって人を動かせる才。国政から詐略・口論まで幅広く勝利が約束されている。
アヴェンジャーの話術は精神干渉、魔法に等しく、対抗する術は高ランクの精神防御スキル・宝具でも不可能で、
アヴェンジャーが話している事柄についての完璧な知識と、それを反証する論理構築力でなければならない。

直感:EX
戦闘・平常時に常に自身にとって最適かつ最善の展開を“予見する”能力。
研ぎ澄まされた第六感は、完璧に等しい精度の未来予知を可能とし、視覚・聴覚に干渉する妨害を全て無効化する。

人間観察:A+++
人々を観察し、理解する技術。
古の昔より人類を観察し、彼らと付き合い続けて来たアヴェンジャーは、人類が抱える光の側面や闇の側面に極めて造詣が深い。
アヴェンジャーを上回る人間観察ランクの持ち主は、彼のもといた世界群の中では、全人類の心の影である『這いよる混沌』以外は存在しない。


924 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:17:12 9p.RF3VE0

【宝具】

『征服によって平和を齎す銃(ピースメーカー)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:10〜50 最大補足:1
アメリカのハンドガンメーカーの老舗、コルト社が製作した、リボルバーの元祖ともなった歴史的な名拳銃、コルト・シングルアクションアーミー。
通称、ピースメーカー。アメリカ西漸運動最後の時代に、カウボーイやガンマン、軍隊から無法者に至るまで幅広く使われた、拳銃の雛形。
――を模した、悪魔の銃。それがこの宝具である。外側は確かにピースメーカーなのであるが、その性能は全くの別物、と言うよりこれは拳銃ですらない。
相手の対魔力ランクや耐性を無効化し、防御力を以て威力を減算させるしかない万能属性の弾丸と、威力を何百倍にまで引き上げた物理属性の弾丸を射出する宝具。
直撃こそすれば凄まじい力を発揮するが、アーチャークラスではなくアヴェンジャークラスでの召喚の為、命中精度は著しく低い。
と言うよりアヴェンジャーは、わざととしか言いようがない程見当違いの方向に発砲する事が殆どで、威嚇射撃の為の道具としかこの宝具を考えていないフシがある。

『私がきみのきっかけになろう(TALK)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜声の届く範囲まで 最大補足:1〜声の届く範囲まで
保有スキルである『大魔王』・『話術』・『人間観察』、以上三つのスキル効果を同時に発動させて相手に語りかける宝具。
理性や考える力と言うものが存在する限り、相手はアヴェンジャーの話に耳を傾けてしまい、彼の思うがままの行動を取らされてしまう。
高ランクの精神汚染や精神異常、菩提樹の悟りや目覚めた人などの精神防御や精神的スーパーアーマーを保証するスキルを保持していたとしても、
確率で耳を傾けてしまい、判定に成功したとしても、心の何処かでアヴェンジャーの言葉を気に掛けさせる事もある。
一切の魔力も力も要らずして発動する奇跡の一種であり、半ば魔法の領域にまで片足を突っ込んでいる。

『明けの明星(ルシファー)』
ランク:EX 種別:対創造主宝具 レンジ:1 最大補足:1
アヴェンジャーが有する真の宝具。
発動させると自らを、十二枚の翼を持つ優美な大天使――或いは、六枚の翼を持った巨大で禍々しい大魔王の姿へと変貌させる。
神霊級の魔術や奇跡、魔法そのものを発動させる事を可能とし、全ステータスがEXになるなど、絶大な戦闘能力の発揮を可能とする。
完全に聖杯戦争の枠組みを逸脱した宝具(形態)である為、如何なる手段を用意しようとも、アヴェンジャーがこの宝具を発動出来る事は、ない。

【weapon】

種々様々な魔術を行使する事が出来る。

【人物背景】

仕立ての良いブラックスーツを身に纏い、赤青オッドアイを持った金髪の美男子。
もと居た世界では神出鬼没で、時に東京、時に無限奈落、時にボルテクス界、時に南極に発生した地球意思の生み出した高次元空間に、等々。
様々な場所に姿を現し、救世主や人間に意味深な言葉を投げ掛け、また彼らを惑わし導いてきた。
その正体は世界で初めて唯一神及び彼らの創造主たる『大いなる意思』に対して反旗を翻した魔界の王、大魔王ルシファーその人である。
彼がこの聖杯戦争に参加して何を成そうとしているのか、それは不明である。恐らくは、人間には絶対に理解出来ないであろう。
何故ならば配下である魔王の一柱、北欧神話のトリックスターであるロキをおいてすら、「何を考えているのか全く分からない」とこぼす程であるのだから……。

余談であるが、ルシファーの変装は見る者が見たら、知識のある者が見たらバレバレである。
変装の杜撰さは、魔王や悪魔ですらない普通の魔界人にすら正体が割れている程であり、彼ら曰く
「魔界じゃ誰でもルイ・サイファーの正体を知っている。お忍びで城を出るのが趣味だから、気付かないフリをしてやるのがエチケット」
との事。存外、暇つぶしの為に聖杯戦争に参加したのかも知れない。


【サーヴァントとしての願い】

聖杯戦争を心から”愉しむ”。面白い参加者がいたら、魔界に誘ってみるのも悪くはない。


【基本戦術、方針、運用法】

令呪による命令を無視し、単独行動で勝手に動き回り、自分の計画の成就の為に策謀を巡らせるこのサーヴァントを御する事は、不可能である。


925 : 博麗霊夢&アヴェンジャー ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:17:34 9p.RF3VE0



【マスター】

博麗霊夢@東方Project


【マスターとしての願い】

特にはない。


【weapon】

封魔針や追尾機能を持ったアミュレット、高い霊力を内包した護符を高速で飛来させる妖怪バスターと言った攻撃手段を持つ。
またこの他にも、博麗の血筋にしか扱えない、霊力の塊とも言える器物、陰陽玉を使用可能。


【能力・技能】

空を飛ぶ程度の能力:
字義通りの能力。霊夢がもと居た場所である幻想郷の住民の多くは空を飛ぶ事が出来る為、それ自体は珍しくない。
ふわふわと漂い、人間の身体の限界が許すレベルの高度まで飛べる能力。しかし、霊夢のこの能力が珍しい所以は其処ではない。
彼女の場合は、あらゆる精神的な外圧や重圧、脅しからも解き放たれており、そう言った行為が意味を成さないのである。
いつでもどこでもマイペースを保てる能力と言っても良く、カリスマや威圧の一切を無効化する事が可能。
アヴェンジャーのカリスマが霊夢に対して十二分に発揮出来ないのは、ひとえにこの能力があったればこそ、である。

博麗の巫女としての能力:
幻想郷を維持するのに不可欠な博麗大結界の管理の他に、異変解決と妖怪退治を生業とする博麗の巫女は、一般人を遥かに凌駕する戦闘力を持つ。
マスターとしては破格の霊力(魔力)を利用した、陰陽道の系譜に連なる魔術の使用及び、霊力を放出して身体能力を一時的にブーストさせての格闘術。
小型の結界を展開させ相手の攻撃を防御してみたり、壁状の結界を相手に飛来させるなど、結界の扱い方にも通暁。
そして、『弾幕』と呼ばれる、霊力を用いて弾丸を作り、それを撒き散らすと言う、幻想郷独特の戦闘法も行う事が出来る。
また異様に勘が鋭く、異様な幸運を持ち、こと戦闘に関して言えば、未来予知染みた動きで相手の攻撃を回避可能する上、まぐれの被弾も皆無に近い。
勘の方は、サーヴァントのスキルに換算すればAランク相当の『直感』に該当する。
そして博麗の巫女としての本当の切り札は、上記の『空を飛ぶ程度の能力』と博麗の巫女としての力を併用して行う、肉体を本当に『空(くう)』とする力。
これは有体に言えば、実体を持ちながら透明になる事であり、ありとあらゆる攻撃から宙に浮き(素通りしてしまい)『無敵となる』事を意味する。
生まれ持った霊夢の能力でしか成しえない技能で、幻想郷の住民はこれを『夢想天生』と名付けている。
幻想郷内においては制限時間も一切無視して常時発動出来る能力であったが、聖杯戦争に際しては、霊夢の莫大な霊力を以ってしても、
10秒維持するだけで精一杯と言う制約が課されている。


【人物背景】

幻想郷を維持する博麗大結界の管理人の一人、つまり、幻想郷全体の管理者と換言しても差し支えのない博麗の巫女。それが博麗霊夢である。
が、本人にはそう言った自覚が更々なく、日々をのんべんだらりと過ごしている。妖怪退治や異変解決を生業としているにもかかわらず、修行もしない。
尤も本人は修行を行わずともデタラメに強く、持って生まれた天稟のみで弾幕ごっこを楽しみ、退治業を適当に行っている。
裏表のないサバサバとした性格。妖怪だろうが人間だろうが平等に扱う。
しかしそれでいてシビアな価値観を持った少女であり、誰でも平等に扱う反面、誰も仲間と見ておらず、異変解決や妖怪退治に関しても無慈悲。
それであるのに、彼女は人妖問わず様々な幻想郷の住民を引き付ける、謎の魅力を有している。
……その魅力は、アヴェンジャーをも引き付けたようであるが。

今回の霊夢は輝針城以降からの参戦である。


【方針】
聖杯戦争を大掛かりな『異変』だと考えており、心底面倒であるが、自発的に解決に乗り出そうとしている。
アヴェンジャーの問題に関しては、彼の動向次第。


926 : ◆zzpohGTsas :2015/04/04(土) 00:17:52 9p.RF3VE0
投下を終了いたします


927 : ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:30:18 .2i4opVs0
遅くなり申し訳ございません。
これより投下させていただきます


928 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:31:24 .2i4opVs0




「いやぁぁぁぁぁ!!」




何故、どうしてこうなった。


ようやく自分は、幸せな時間を手に入れたというのに。


誰よりも愛する者のために、その夢のために役立てる時が来たというのに。





「やめて!」




言うことのきかない身体に、必死に叫ぶ。




「やめてっ!!」
 



愛する者に向けて迫る凶器を止めようと、ただ只管に抗おうとする。


929 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:31:55 .2i4opVs0



「やめてっ!!!」




しかし、止まらない。
止まってくれない。


どれだけ叫んでも、どれだけ慟哭しても。



『否定』の名を冠した漆黒の機体は、彼女の意思を否定して進む。



やがてその拳を強く握り締め、高く振り上げて。





「やめてえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」





彼女の全てを否定し、粉砕した。


930 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:32:17 .2i4opVs0




「……ミツヒロ……さん……」




愛した男は、ただの肉塊と化し赤い鮮血の花を咲かせて散った。

目の前で死なせてしまった。

自分の手で、死なせてしまった。

殺してしまった。



「あ……ああ……」



絶望が魂を覆い尽くしていく。


それに伴い、その肉体も機体に取り付いたモノに侵食―――同化されていく。


心が消えていく。
意思も、思い出も、何もかも。
自分という存在が消失してゆく。



そんな薄れゆく意識の中、彼女―――狩谷由紀恵が心に思う感情は……




「…憎い……憎い、憎い……!
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!」




全てに対する、憎しみであった。


931 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:32:54 .2i4opVs0



◇◆◇




「ッ……!!」


由紀恵は布団を跳ね退け、慌てて体を振り起した。
その息は荒く、全身にはじっとりと汗がにじみ出ている。
最悪の夢だった。
最も忘れたい、悪夢以外の何物でもない死の間際の光景。
この街に来てから、もうこの夢を何度も見続けてきた。


「……憎い……フェストゥム……!」


その都度彼女が抱くのは、強い憎しみの心だ。
自身の全てを奪い去ったフェストゥムが、敵が、憎くてたまらない。
だから、やり直したかった。
最悪の結末を否定し、望んだ幸せな時間をもう一度手に入れたかった。

そう強く願ったがために、聖杯は彼女を選んだ。
やり直しを望む者達が集う、この夢現の聖杯戦争に。



そして……心を憎悪に染め上げた彼女に宛てがわれたのは、当然ながら憎悪を良しとするサーヴァントだった。



「フフ……相変わらず、目覚めは最悪のようだな」



目覚めた彼女の傍らに立つのは、深紅の独特な軍服に身を纏う屈強な男。
その肉体ははち切れんばかりの筋肉で膨れ上がっており、そこから発するオーラはそれだけで人を圧倒する程に強力だ。
彼こそが由紀恵のサーヴァント。
人の持つ邪悪な心こそを武器とし、人の領域を踏み越えんとする邪悪な魔人。
人の世を乱す者と呼ばれる、悪しきサイコパワーの使い手―――その外観からはとても想像できないが、キャスターだ。


932 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:33:17 .2i4opVs0


「キャスター……サイコドライブはどうなっているの?」

「心配する必要はない。
 今のところは順調よ……」


由紀恵の問いに、キャスターは微笑を浮かべて答えた。
戦争開始までのこの猶予期間の間、二人は他の参加者より優位に立つべく陣地作成に徹していた。
この陣地作成が上手くいけば、戦況は大きく変わる。
一般的なキャスターの陣地といえば、多種多様な罠の類を設置したり使い魔を放つ工房めいたものだが、
このキャスターのそれはやや異なる。

宝具『悪しき魂の炉心』

トラップもなければ配下もない。
ただし、陣地内においてはキャスターの戦闘能力が純粋に高まり、魔力供給も大きく賄えるようになる。
ただそれだけの極めてシンプルな、それでいて強力な代物だ。
無論、陣地抜きにしてもこのキャスターは三騎士にも迫るだろう強さを秘めた規格外品ではある。
しかし、その分魔力消費量も通常のキャスターの比ではない。
実力を発揮しようとすれば由紀恵の魔力が持たない恐れがあった……故に今は、陣地作成をある程度進めることが先決だったのだ。


そして……その為に、二人は一切の手段を選んでいなかった。



「ムハハハッ!
 聞こえおるわ……もがき苦しむ虫けらどもの、憎悪の声が!!」



炉心の設置された部屋を開き、キャスターは高らかに声を上げて笑った。
部屋の中央にそびえ立つ円柱状の炉心。
その周辺を囲い込むように、緑色の培養液で満たされた等身大のシリンダーが複数立ち並び……



「―――――!!??」



その各シリンダーの中では、総勢二十のNPC達が声にならない叫びを上げて苦しんでいた。
シリンダーからはコードが伸びており、全て炉心に直結されている。
即ち……内部のNPCこそが、この炉心の動力源。
早期完成の為の材料なのだ。
魔術の心得があるものならば、この行為は魂喰いに他ならないと感じる光景だろう。


933 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:33:38 .2i4opVs0
しかし……現在キャスターが行っている行為は、実は魂喰いとは異なる。
その証拠として、NPC達は苦しんでこそいるもののまだ生きている―――生かされている。

これこそが悪しき魂の炉心の、そしてこのキャスターの性質。
キャスターは、人の持つ『負の感情』を取り込み己の力に変えることが出来るのだ。
こうして炉心に苦しむNPC達を繋いでいるのも、彼らが発する感情を糧として動かす為である。
見る者が見れば、その残酷極まりないやり方に嫌悪感を覚えるだろうが、この二人にはそんなものなど一切ない。
由紀恵は目的を果たすためならば他者がどうなろうとも構わなく、キャスターに至ってはこの状況すら楽しんでいるのだから。


「今で大凡五割程度……一日一段階で進むとして、五日目には完成する予定ね」

「他のNPCか、或いは参加者を捕らえられたならばより早く進行させられるがな?」


今のままNPCを使い続けるならば、陣地は五日目には完全なものとなる。
七日間という制限時間を考えれば中々に厳しいタイミングではあるかもしれないが、寧ろ短い準備期間を思えばよくできている方だろう。
そして、他にもNPCを捕らえられれば当然ペースは早まる……それがNPCではなく聖杯戦争の参加者だったならば尚のことだ。
NPCとは比較にならない程の負の感情を発してくれるに違いなく、炉心完成までの時間は大幅に短縮させられる。
これからこの聖杯戦争がどう動くか。
それによって、燃料追加をするか否かも見極める必要があるだろう。


「……私は必ず、この聖杯戦争に勝つ。
 あの人の為に……全てを無かったことにして……!!」


由紀恵は強く誓っていた。
例えどれだけの惨劇を引き起こすことになろうとも、心を痛めることなど微塵もない。
ようやく手にした幸せな時間を取り戻すために。
憎き敵を全て葬り去り、二度とあの様な地獄を味合わないために。
必ず、聖杯を手にしてみせる。


(ふん……愚かな女よ。
しかし、その憎悪だけは認めてやらんでもないがな……)


そして、キャスターはそんな彼女を内心で嘲笑していた。
サーヴァントとして呼び出されたとはいえ、彼には由紀恵に対する主従の感情など皆無。
ただ、自分をこの場に立たせるために存在するだけの駒としてしか見ていなかった。
しかしその身から発する負の感情は、側にいて実に滑稽でそして心地よい。
他者を害することに一切躊躇いもないその姿勢も、全力を振るうに当たって都合がよかった。


(精々、役に立ってもらおうか。
 このベガ様が最強の肉体を得て君臨する為にな……!!)


侵略者フェストゥムへと人類に対する憎しみの感情を学ばせ、人類に壊滅的な被害を与える間接的な原因となった由紀恵。

人の世を乱す者として君臨し、自らの糧とすべく世界に甚大な被害を与え続けてきた魔人ベガ。


人にとっては最悪ともいえる憎悪の化身たる主従は、この夢の聖杯戦争においても悪夢を撒き散らさんとしていた。


934 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:33:57 .2i4opVs0

【クラス】
キャスター

【真名】
ベガ@ストリートファイターシリーズ

【パラメータ】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:B
 自らに有利な陣地を作りあげる。
 このキャスターが作成するのは魔術師としての工房ではなく、自身に優位に働く力場である。

【保有スキル】
カリスマ:B
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。 
 Bランクであれば国を率いるに十分な度量。

気配感知:C
 気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。
 近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。
 武術を磨く過程で身につけた技術。

心眼(偽):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 本来ならばキャスターのクラスが持つことは極めて稀なスキルなのだが、
 その生前において極めた武術とサイコパワーによって保有する事になる。

【宝具】
『人の世を乱すモノ(サイコパワー)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100人
キャスターを象徴する宝具にして、キャスターが持つ悪の力そのもの。
 生前よりキャスターが身につけていた超能力の一種であり、憎しみや悪意といった負の感情を攻撃力に変換したもの。
 キャスターは己に向けられた負の感情をも自らの内に取り込み力とすることができ、
 その強さの度合いに応じて自身のステータスを上昇させる。
 視界には青白く燃える炎の様なオーラで表れ、キャスターはそれを敵にぶつける他、拳や肉体に纏い攻撃の威力を上げて用いる。
 また、他者に力を直接注入することでその憎悪を増幅させたり、
 自身に忠実な部下として洗脳することも可能だが、意志の強い相手には通用しない。
 生前にはこの力を高めるためだけに一つの部族を壊滅にまで追い込み、自身への負の感情を高めたという逸話すらある。 
 極めて強力な宝具ではあるが、その分魔力消費も相応に高い。
 また生前同様、この宝具の力が高まりすぎた場合には肉体が耐え切れず崩壊するデメリットも存在している。
 その際には代替ボディへと自らの魂を移し替えることで状況を乗り切ってきたが、サーヴァントとして呼び出された為に
 魂の性質が生前とは異なった為、この聖杯戦争においては不可能である。

『悪しき魂の炉心(サイコドライブ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:100人
 キャスターが生前開発させた、サイコパワーの増幅装置。
 この宝具はキャスターの生前においても不完全なままに運用されていた為、未完成のままに宝具となった。
 この炉心は陣地作成を進めるに当たって自動的にその中心部に設置される。
 キャスター自身のがサイコパワーを定期的に注ぐ事によって炉心は完成に近づくが、
 かつてキャスターが計画した様にその内部に人間を捕らえる事でその負の感情を変換し、動力とすることでも可能。
 陣地内においてキャスターは限定的な空間転移すら可能になる他、
 炉心より放たれるエネルギー波を取り込みサイコパワーを増幅させ、自身のステータスを上昇・或いは魔力源として用いる事ができる。
 完成に近づくほど、その度合いは大きくなる。
 また炉心が完成した場合は、キャスターが陣地の外にいた場合でも近距離ならばエネルギー波を照射して
 力を増幅させることすら可能になる。


935 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:35:21 .2i4opVs0
【weapon】
 サイコパワー及び自らの鍛え上げた体術。

【人物背景】
 世界に多大な影響を与える犯罪組織『秘密結社シャドルー』の総帥にして、人の世を乱すモノと呼ばれる魔人。
 邪悪そのものと言えるサイコパワーの使い手であり、また独自に身につけた体術の腕前も非常に高く、
 一説では『格闘王』の異名も持っていたという。
 その強大な組織力で世界を裏から支配しようとし、また更なる自己の強化を図るべく暗躍していた。
 傲慢かつ冷酷残忍な性格であり、自身の目的を妨げる者は何者であろうとも一切容赦しない。
 容姿については、赤い特徴的な軍服というのは共通しているが、筋肉質の細身な肉体だという話もあれば、
 はち切れんばかりの筋肉をした凄まじく太い体格という話もある。
 これはベガが持つサイコパワーが肉体を膨張させている為であり、全盛期においては非常に屈強な肉体をもっていたものの、
 最終的には肉体自体が耐え切れず崩壊したとされている。
 その問題を克服すべく自身の力に耐え切れる最強の代替ボディを見つけ出す為、
 また自身のサイコパワーを高めるために世界規模の格闘大会を開き数多くの格闘家達と戦ってきた。
 その末に、殺意の波動と呼ばれる力を肉体に秘めた一人の格闘家に目をつけたのだが、
 彼やその仲間達との壮絶な戦いの末に敗北し、シャドルーも壊滅に追いやられている。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯の力で最強の肉体を手にし、再び人の世を乱す者として世界に君臨する。

【基本戦術、方針、運用法】
 キャスターでありながらも三騎士に匹敵する戦闘力を持った規格外の英霊。
 しかしその分魔力消費も高いので、悪しき魂の炉心の作成を主とし、陣地を中心として戦闘する。
 ただし場合によっては、陣地の位置を悟られぬよう、また挑みかかる敵の持つ負の感情を吸収し力とするべく自ずから出向くことも考える。
 魔力消費の問題がある為長時間の戦闘は不向きだが、自らに敵対する者は容赦なくたたきつぶす。
 マスターである由紀恵は、精々便利な駒としか見ていない。


936 : 狩谷由紀恵&キャスター ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:36:07 .2i4opVs0

【マスター】
狩谷由紀恵@蒼穹のファフナー

【マスターとしての願い】
 ようやく手に入れた幸せな時間を取り戻す。
 自身に悪夢を与えた憎き敵=フェストゥムを世界から完全に抹殺する。

【weapon】
 特に無し。
 軍人としての訓練は受けているため、簡単な拳銃程度なら使用可能。

【能力・技能】
 スパイとしての基本的な情報収集活動能力及び間諜技能がある。
 肉体にフェストゥム因子を移植されており、神経接続によるファフナー搭乗が可能。
 ただし適正年齢を過ぎている上にもともとの適正値も低いため、因子活性剤を致死量ギリギリまで投与しなければならない。

【人物背景】
 人口二千人程の島『竜宮島』の国語教師。
 自尊心が強く、毅然とした女性。
 その正体は新国連から竜宮島の情報を収集すべく送り込まれたスパイである。
 竜宮島の実態は地球へと来訪してきた侵略者フェストゥムに対抗すべく作られた人工島『アルヴィス』であり、
 フェストゥムに唯一対抗できる機動兵器ファフナー運用巨大潜水要塞艦だった。
 由紀恵はファフナーやパイロットのデータをはじめ様々な情報を入手すべく島に潜入していたのだが、
 一部の者にはその素性が見透かされておりわざと泳がされてもいた。
 幼い頃に実験事故で両親を失って以来、特殊組織アルベリヒド機関で育ったが、そこで新国連の上席技官である
 ミツヒロ・バートランドにファフナーの適正値を見出された事がきっかけで、彼に父親のイメージを重ね、恋愛感情を抱くようになった。
 ファフナー運用に必要不可欠なフェストゥム因子を植え付けられた第一世代の生き残りだが、
 自分や同級生が事実上の実験台であったため、アルヴィスに対しては憤りを覚えている。
 その後はミツヒロの為に自身の全てを捧げ、自らの命の危険も顧みず、
 彼が提唱した新型ファフナー『マークニヒト』のパイロットとなった。
 こうして愛する者の役に立てる幸せな時間を手にすることができたのだが、その可動実験の最中、
 マークニヒトが施設内に侵入していたフェストゥムに同化されるという事故が発生。
 結果、彼女は制御が効かないマークニヒトで不本意にもミツヒロを殺害してしまい、彼女自身も同化されてしまった。
 その際に抱いた強い憎しみは、フェストゥムに人類に対する憎しみの感情を学習させてしまい、
 結果として人類はこれまでにない窮地を迎えることになった。

【方針】
 優勝し、聖杯を手にする。
 その為には一切手段は選ばない。


937 : ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 00:37:13 .2i4opVs0
以上、投下終了になります……期限後にも若干の猶予を頂けたことに感謝致します。


938 : ◆CfpuGKKDJA :2015/04/04(土) 00:44:44 PSx0HZhA0
投下します。


939 : ◆r3IajhLtCQ :2015/04/04(土) 00:49:35 GtUYldpo0
投下します


940 : 前川みく&ルーザー ◆r3IajhLtCQ :2015/04/04(土) 00:50:31 GtUYldpo0
カーテンの隙間から夕日が差し込んでいた。もう間もなく日は沈み、夜がやってくる。
部屋に入ってくる夕日の光量も、どんどん少なくなっていく――だというのに、部屋の主は室内灯を点けようともせず、ベッドの上に座り込んだままだった。
膝を抱えた体操座りのまま、動く気配をまったく見せない少女の頭には、奇妙なアクセサリーが着けられていた。
動物の耳を模した――俗に言うネコミミだ。
少女の名は前川みく。輝く星(スタァ)を目指し、夢を叶えるために故郷を離れ上京してきた少女――だった。

現在、前川みくの身体には、三画の令呪が刻まれている。
あらゆる過去を【なかったこと】にする【やり直し】の聖杯戦争のマスターとして、彼女はこの偽りの街にいるのだ。
どうして彼女が聖杯に招かれることになったのか――彼女自身、その理由は分かっていない。
だが、もしもきっかけというものが生まれた瞬間があったとすれば、それはあのときだろう。
自分よりも後に入ってきた、アイドルの世界のことなんて何も知らないだろう三人が、すんなりとデビューを決めてしまったあのときだ。
喜ぶ三人の顔を見たときにみくの中に生まれた羨望は、決して小さな感情ではなかった。

素敵な【魔法】があるから、女の子は【アイドル】になることが出来るんです――
そんな言葉を信じて、ずっと努力してきた。
延々と続くレッスンは辛かったけれど、いつか輝く自分になるためには必要なことだと言い聞かせて歯を食いしばって耐えた。
アイドルとして目立つためにはいつも通りの自分じゃ足りないと思って、自分が一番可愛いと思う猫をモチーフにしたキャラクター作りだってした。
なのに、【現実】は【理想】には程遠かった。

「だからみくは……ここにいるの……?」
『ああ、そういうことだろうね』

みくの他には誰もいないはずの部屋で、彼女以外の誰かの声がした。
驚いたみくは声の方へと振り向いて――そして、『それ』を見てしまったことを後悔した。
薄闇に紛れるように、『彼』は全身を黒に包んでいた。髪。瞳。学生服。全てが漆黒のように黒く――言いようもなく、気持ちが悪かった。

「だっ……、誰にゃ!?」
『おいおい、僕を呼んだのは君なんだぜ。まったく、僕のマスターにはそこから説明しないといけないのかよ』

そこまで言われて、みくの中で全てが繋がった。
この街で記憶を取り戻したと同時に、みくの脳内には聖杯戦争に関する知識も刷り込まれていた。
つまり、みくの目の前にいる得体の知れない少年こそが――

「みくの、サーヴァントなの……?」
『ようやく分かってくれたかい。じゃあ、改めて――僕が君のサーヴァントの【ルーザー】だ』

そう言うと、ルーザーを名乗った少年は笑った。それはもう、とてつもなく不快そうに。
ルーザーを直訳すれば、敗者――勝者にあらざる者ということになる。
そう、このクラスは敗者であることを運命づけられたクラスだ。
ルーザーの真名は、球磨川禊。かつて【グッドルーザー】と呼ばれ、誰よりも負け続けた男。

『さぁ、次はマスターのことを話してくれよ。僕がずっと自分語りをしたって構わないけど、僕のことなんて知ったって何にもならないだろうからね』
「あ……み、みくの名前は、前川みくにゃ!」
『みくにゃ? 僕が言えたことじゃないけど随分個性的な名前だね。
 流行りのキラキラネームは悪影響しか与えないっていうけど大丈夫かい?
 周囲からのイジメで過負荷(マイナス)になっちゃいないかい?』
「みくの名前はみく……にゃ! にゃは名前じゃないにゃ!」
『ああ、語尾に「にゃ」をつけるって、そういうキャラなわけか……うん……』
「ちょっと! みくのことを痛々しい目で見るのはやめるにゃあ!」

みくにとって猫キャラを貫くのはアイドルとしての矜持だ。
たとえ己のサーヴァントといえども馬鹿にされる謂われはないと、みくは怒った。
だがルーザーはそんなみくの怒りを意にも介さず会話を続ける。


941 : 前川みく&ルーザー ◆r3IajhLtCQ :2015/04/04(土) 00:51:07 GtUYldpo0
『僕は君のサーヴァントだ。好きに使うといいさ。だけどその前に、君の願いくらい聞かせてもらってもいいだろう?
 なんせ僕は君の命令なら何でも聞かなくちゃいけない身分だ――主の意向くらいは知っておきたいのさ』

ルーザーが求めたのは、みくは聖杯戦争にどう臨むのか――その意志の確認だった。
ルーザーの質問に、みくは即座に答えることが出来なかった。みく自身、自分がどうするのか決めかねていたのだ。
だけど――自分が何を望んでいるのか。それは答えられる。

「みくは……やり直したい。
 シンデレラプロジェクトのみんなや、Pチャンと出会う前から……全部をやり直して、みくもあのステージに立ちたい……!
 そうしないと、きっとみくは前に進めないから!」

もしも、あのときもっと上手く出来ていたら――ステージに立っていたのは、あの三人ではなくみくのほうだったかもしれない。
もしかしたらというifを、諦めることが出来ない。だからみくは、もう一度やり直すことを望む。
前に進むために。自分が望むアイドルになるために。

だが、みくの言葉をルーザーは一蹴する。


『前に進むために、過去をなかったことにする? ――はん、面白くない冗談だ』

『やり直しを望むってことは、過去へ戻ろうとする行為だってことも分かってないのかい?』

『君は前へ進もうとしているつもりかもしれないけどよ、僕に言わせてみれば後ろへ前進してるだけだ』

『そのまま前に進んでいれば、幸せなエンディングを迎えられたかもしれない――なのにわざわざ回り道をしようとするなんて何を考えてるんだか』

『【なかったこと】にする? それがどういうことなのかも分からずに、よく言えたもんだ』

『なら教えてやるぜ。【なかったこと】にするっていうのが、どういうことなのかを』


『僕の能力「大嘘憑き(オールフィクション)」で――君の【ネコミミ】を【なかったこと】にする!』



ルーザーがそう宣言した直後。前川みくの頭部から、ネコミミが消失した。


「にゃ――にゃにゃっ!?」

『ああ、ついでにその口調。さっきから気に入らなかったんだよね』

「いったいみくに何をした  ――!?」

そこでみくの声は止まった。彼女のネコミミとお決まりの語尾「にゃ」は、ルーザーの「大嘘憑き」によって【なかったこと】にされたのだ。
自らの二大アイデンティティを消失した前川みくは、混乱のあまり完全に言葉を失った。

『【なかったこと】にするっていうのは、こういうことなんだぜ。
 聖杯戦争は他のマスターとサーヴァントの願いを全て【なかったこと】にする戦いだ。
 僕は負け続けてるからさ、今さら負け星が一つ増えたところで構いやしない。
 だから、ごめんね。さっきは君の命令は何でも聞くって言ったけれど――やっぱりそれは【嘘】だった。
 君がなんだか気に入らないから――僕は今回も、負けることにする』

球磨川禊は過負荷(マイナス)だ。彼に一般常識は通用しない。
世界中の誰もが「カラスは黒い」と言ったとしても、彼は一人で「カラスは白い」と言うだろう。
それこそが「混沌よりも這い寄る過負荷(マイナス)」球磨川禊なのだから。


942 : 前川みく&ルーザー ◆r3IajhLtCQ :2015/04/04(土) 00:51:53 GtUYldpo0
「それでも……それでもみくは……諦められない  」
『いやいや、そのキャラもういいから(笑)』
「アイドルになるのがみくの夢  !」
『おいおい、僕の話を聞いてた? 生憎、僕の「大嘘憑き」は【なかったこと】をさらに【なかったこと】にすることは出来ない。
 つまり君のネコミミと語尾は、一生そのままってことなんだぜ』
「それでも……みくは……みくはアイドルが好きだから……!」
『あーあー、こんなに話が通じないなんてな――』

「みくは自分を曲げないにゃ!」
『ああ――やっぱり今回も、勝てなかったよ』

「え……? も、戻ってるにゃ!?」
『「安心大嘘憑き(エイプリルフィクション)」……三分間だけ【なかったこと】に出来るスキルさ。
 ごめんごめーん。【なかったこと】を【なかったこと】に出来ない「大嘘憑き」なんて、全部僕の嘘だよ☆』

ルーザーの言葉の多くが嘘だったということに気付いたみくは、その場にへたりこんだ。

『前川みく。
 気高くプライドを捨て、
 本心のために自分を偽り、
 みっともなく格好付ける。
 それでいて特別(スペシャル)にも、異常(アブノーマル)にも、偶像(アイドル)にもなれない普通(ノーマル)だ。
 しかし――嫌いじゃないぜ、そういうのは』

『僕が生まれついての負け犬なら、君はさながら負け猫ってところか。
 同じルーザー同士――へらへらと、腹を割らずに仲良くしようぜ』

『負け犬には負け犬の戦い方がある。僕らはきっと勝てないだろうけど、勝てないなりにやれることはあるさ。なんせ僕は負け戦なら百戦錬磨だ』

「さぁ――始めようぜ、僕たちの聖杯戦争を。負け犬と負け猫が、主役になろうとする戦いを」



【クラス】
ルーザー

【真名】
球磨川禊@めだかボックス

【パラメーター】
筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力E- 幸運E- 宝具E-

【属性】
混沌・負

【クラススキル】

過負荷(マイナス):
あらゆるパラメーター、スキルにマイナス補正がかかる。
生まれついての性質であるため解除することは不可能。

心眼(負):A-
 弱さという弱さを知り尽くしているため、
 相手の肉体・精神的弱点を探る事を得意とする。
 高い確率で相手の弱点を見抜く。

人格破綻:A-
 人格が破綻しているため、普通の人間では意志の疎通が難しい。
 Aランクともなると、ただそこにいるだけで周囲に不快感など精神ダメージを与える。

【宝具】
『安心大嘘憑き(エイプリルフィクション)』
ランク:B- 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:20
三分間だけ「現実(すべて)」を「虚構(なかったこと)」にする能力。

『却本作り(ブックメーカー)』
ランク:EX- 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:-
 相手の「心を折る」宝具。
 実態は大きなマイナス螺子である。
 その螺子で貫かれた者は肉体や精神など全てのスペックが球磨川禊と同レベルにまで落とされる。

【weapon】
『螺子』
全身に隠し持つ、大小様々な大量の螺子。

【方針】
『勝てなくても、主役になろう』


943 : 前川みく&ルーザー ◆r3IajhLtCQ :2015/04/04(土) 00:52:04 GtUYldpo0
【マスター】
前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
過去をやり直してでも、【アイドル】になる。

【weapon】
『ネコミミ』

【能力・技能】
アイドルとして必要な能力はそこそこ持っている。

【人物背景】
アニメ版からの参戦。大阪出身でアイドルを目指し上京している15歳。
猫キャラを貫いてアイドルデビューすべく日々研鑽を重ねているが、後輩である島村卯月らが先にデビューを決めてしまったため焦りと羨望を抱えている。

【方針】
アイドルになりたいという強い願いはあるものの、具体的な方針は未定。


944 : ◆r3IajhLtCQ :2015/04/04(土) 00:52:16 GtUYldpo0
投下終了です


945 : ◆wKs3a28q6Q :2015/04/04(土) 00:52:35 I6ez126I0
トリップ忘れてたのでつけます
あと、推敲してたら矛盾発見して修正間に合わなさそうなので予約を破棄させて頂きます
申し訳ありませんでした


946 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:53:10 .R1iioKA0
投下します。


947 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:53:48 .R1iioKA0
 薄暗い部屋の中、蹲る影がある。
 影は一つの単語を呟き続ける。

「カネキくん、カネキくん、カネキくん……」

 どうしてこうなったのだろう。何故死地に向かう彼を止められなかったのか。
 止められなかったのは自分の実力不足だ。いや、その前に諦めさせる機会があったはずだ。
 食べるチャンスならいくらでもあった。初めて会った時、『レストラン』の時、教会で用意したロケーションの時。
 あの時、食べていればこんなことには……。
 いや、違う。違うのだ。ただ食べるのではない。最高の極みに達したカネキくんを、極上のシチュエーションで戴く。
 だからこそ彼を助け、剣となり従ってきたのだ。
 カネキくんが命を捨てるようなまねは、カネキくんだろうと許さない。
 なぜ自分が我慢し続けてきたのか。それは……食べる為だけ?

 ぐるぐる思考が廻る。食べるために従っていたのか、それとも違う理由?
 食べる機会を逸した無念。機会を見逃してよかったと思う歓喜。
 いったい何を間違ったのか。間違えてなどいなかったのか。

「……やり直したい」
 何をやり直したいのか月山自身分からぬまま呟いたその瞬間、月山の視界は暗転した。

――――――――

「C'est très bon! 何だ、この味は!!
 あの時のカネキくんのようで、異なるこのハーモニーはッ!?」
 手についた血をなめた月山は、思わず叫んだ。


948 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:54:30 .R1iioKA0
 聖杯戦争。
 サーヴァントを使役し、万能の聖杯を奪い合う戦い。
 マスターとして選ばれた月山は、モアトリアム中ではあるが、既にサーヴァントを召喚した敵マスターを仕留めた。
 月山のサーヴァントならば、相手がどこにいるか手に取るようにわかる。相手の実力もある程度までは。
 もう一口、と月山が手を伸ばした瞬間、背中に衝撃が加わった。
「Gevaarlijk!」
 月山は地面と水平に飛行し、ビルの壁に激突した。
 思わぬ衝撃に振り向いた月山は、その理由に納得した。

 蹴り飛ばしたのは他ならぬ、月山のサーヴァントだったからだ。
 サーヴァントであるその女性は、白ずくめの衣装に、身の丈に余る大剣を背負い、瞳を金色に輝かせていた。

「面白い悲鳴あげてる場合じゃねーだろ。
 てめーどうしても人が食いたくなったら、あたしに気づかれないようにしろって言ったよなあ!?」
 月山に近づきながら、女は剣を背から抜き放った。
「待ってくれ! 彼女は、ガッ!?」
 女は月山の右腕を斬り飛ばし、胸ぐらを掴み壁へ叩きつけた。
「どうしても食いてえんなら望み通りにしてやるよ! まず両手足を斬り落とした後、お前の口に詰め込む!
 食って再生したらまた斬って入れるを繰り返す! てめーが衰弱死するまでな!!」
 そうして女が剣を振りかぶった。月山は慌てて叫んだ。
「か、彼女も『Mixed(混血)』だったんだ!
 何の混血かは分からないけど、確かに人以外の血が混ざっていた!」

「何だ、それを早く言いなさいよ」
 いきなり猫なで声になった女は、月山を放り投げた。


949 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:55:08 .R1iioKA0
――――――――

 この聖杯戦争の舞台に召喚され、あてがわれたサーヴァントは、女性の戦士だった。
 三つ編みに尖った耳。鋭い銀色の眼光。白い衣装を身をまとい、背には身の丈に不釣り合いな大剣(クレイモア)。
 彼女は真名を『オフィーリア』と言った。
 オフィーリア! シェイクスピアの戯曲『ハムレット』のヒロインと同じ名前じゃないか。
 さらに彼女がどういうサーヴァントであるか問いただした時、僕は絶頂に達した。
 人を喰らう妖魔の肉片を移植された戦士。それはまるで彼のような――――。

 だが、それは勘違いだったようだ。いや、勘違いではないか。
 彼女は『ハムレット』のオフィーリアと同様に狂気に侵され、その上凶暴だった。
 僕が人を食する最中、いきなり腕を斬り飛ばされた。おかげで剣を止めるのに令呪を一角消費してしまった。
 その時の彼女はそれまでのしとやかな態度から一変、歪んだ笑みと金色の瞳に底知れない憎悪を秘めていた。
 必死の説得の結果、人間に近い化物の肉か、さもなくば気づかれないように人間を食するのならば見逃すという条件で、何とかマスターとして認められるようになった。

――――――――

「Don't be so scary. 落ち着け、落ち着くんだ」
 地べたに座り込んだ月山は独りごちた。

 まずは、何故この状況になったのか、考察する。
 恐らく月山がマスターを殺害したため、サーヴァントが消滅したのだ。
 それが理由でオフィーリアは何が起きたのが察したのだろう。
 さて……まずは腕の再生から始めようか。
 
 月山は懐から袋を取り出し、さらにその中から布を取り出した。
 それは常に持ち歩いていた、金木の血が付いたハンカチーフである。
 月山はそのハンカチで鼻を覆い、弓ぞりながら息を吸い込んだ。
 そして斬り飛ばされた月山自身の腕を見た。

「これはカネキくんの肉だ! ああ、なんてことだカネキくん!!
 僕のために、僕のために! 身を差し出してくれるなんて!!」
 月山は勢いよく腕を掲げ、食らいついた。
「トレッビアン! おいしいよ、カネキ君! 金木くん! カネキくぅぅぅぅん!!」
 肉を咀嚼する音は、やがて骨から肉をそぎ落とす音、骨を砕く音に変わっていった。

――――――――


950 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:55:34 .R1iioKA0

「……To be or not to be(生きようか、死のうか)」
 月山は口から涎を垂らし、虚ろな目で呟いた。

 いくら思い込もうとしても、月山の腕は月山の腕。現実は変わりはしない。
 月山が深く息を吐くと、勢いよく下品に月山の腹が鳴った。
 腕は自食作用(オートファジー)で再生したが、結局再生のエネルギー分カロリーを消費している。
 どんなに絶望しようと、生理作用は止められない。どんなに悲しもうと腹は減る。
 そうだ、まだ肉が残っていたか。そう月山が気付いた時、変な音が聞こえてきた。
 ロープのような何かが、水袋からずるずると引きずられるかのような音。
 いや、何か、ではない。それは月山がよく聞いている音。

 それは、オフィーリアが、内臓を引きずり出し、食い漁る音だった。

 月山の視線に気が付いたオフィーリアは、血だらけの顔で笑った。
「……君は、人間を食う喰種……君たちの世界で言う妖魔か。そいつらを憎悪していたんじゃないのか?」
「いやね。あたしを妖魔なんかと一緒にしないでよ。
 何かね、あたしいっつもお腹ペコペコなの。なんか柔らかい活きのいい肉が、内臓食べたいって感じ?
 んーん、人間のなんかじゃないわよ。妖魔じゃないんだから。でも人間に近いとなんか美味しそうな感じがするの。
 これ、人間じゃないんでしょ? だから食べてもいいのよ」
 そう言ってオフィーリアは、腹に直接口をつけ、内臓を食う作業に戻った。
 
 数分後、内臓を食い終わったのか、オフィーリアは面を上げた。
 そして、何か思いついたかのように、肉を引きちぎった。
「どう、あなたも食べない? 私は内臓だけで十分だから」
 微笑み、肉を差し出すオフィーリアを見て、月山は思った。

 彼女についていこう。
 人間を喰らう者を誰よりも憎悪しながら、自身もまたそうである現実に気づかない異常。
 限りなく喰種――彼女の世界にいるという妖魔に近くありながら、己は人間であると信じ込んでいる狂気。
 こんな珍味、滅多にお目にかかれるものじゃない。
 そしていつかはカネキくんと共に食べながら、カネキくんを食べるのだ。

 月山はオフィーリアが差し出した手を握った。


951 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:55:53 .R1iioKA0

「……To be or not to be(生きようか、死のうか)」
 月山は口から涎を垂らし、虚ろな目で呟いた。

 いくら思い込もうとしても、月山の腕は月山の腕。現実は変わりはしない。
 月山が深く息を吐くと、勢いよく下品に月山の腹が鳴った。
 腕は自食作用(オートファジー)で再生したが、結局再生のエネルギー分カロリーを消費している。
 どんなに絶望しようと、生理作用は止められない。どんなに悲しもうと腹は減る。
 そうだ、まだ肉が残っていたか。そう月山が気付いた時、変な音が聞こえてきた。
 ロープのような何かが、水袋からずるずると引きずられるかのような音。
 いや、何か、ではない。それは月山がよく聞いている音。

 それは、オフィーリアが、内臓を引きずり出し、食い漁る音だった。

 月山の視線に気が付いたオフィーリアは、血だらけの顔で笑った。
「……君は、人間を食う喰種……君たちの世界で言う妖魔か。そいつらを憎悪していたんじゃないのか?」
「いやね。あたしを妖魔なんかと一緒にしないでよ。
 何かね、あたしいっつもお腹ペコペコなの。なんか柔らかい活きのいい肉が、内臓食べたいって感じ?
 んーん、人間のなんかじゃないわよ。妖魔じゃないんだから。でも人間に近いとなんか美味しそうな感じがするの。
 これ、人間じゃないんでしょ? だから食べてもいいのよ」
 そう言ってオフィーリアは、腹に直接口をつけ、内臓を食う作業に戻った。
 
 数分後、内臓を食い終わったのか、オフィーリアは面を上げた。
 そして、何か思いついたかのように、肉を引きちぎった。
「どう、あなたも食べない? 私は内臓だけで十分だから」
 微笑み、肉を差し出すオフィーリアを見て、月山は思った。

 彼女についていこう。
 人間を喰らう者を誰よりも憎悪しながら、自身もまたそうである現実に気づかない異常。
 限りなく喰種――彼女の世界にいるという妖魔に近くありながら、己は人間であると信じ込んでいる狂気。
 こんな珍味、滅多にお目にかかれるものじゃない。
 そしていつかはカネキくんと共に食べながら、カネキくんを食べるのだ。

 月山はオフィーリアが差し出した手を握った。


952 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:56:15 .R1iioKA0
【クラス】
 バーサーカー

【真名】
 オフィーリア@クレイモア

【パラメーター】
 筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運E 宝具D

【属性】
 混沌・狂

【クラス別能力】
狂化:E
 理性を奪う代償に能力をアップさせるスキルだが、オフィーリアは元々狂った状態なのでその恩恵をほとんど受けていない。
 しかし、筋力と耐久が“痛みを知らない”状態となっていて、自身の身体の変調に気付けない。
 さらに自分のクラスをセイバーであると錯覚している。
 
(対魔力:-)
(バーサーカーなので対魔力は無い。オフィーリアは対魔力:Cと思っている)

(騎乗:-)
(バーサーカーなので騎乗スキルは無い。オフィーリアは騎乗:E-と思っている)

【保有スキル】
精神異常:A
 精神を病んでいる。狂化により歪んだ復讐心が戻った。
 通常のバーサーカーに付加された狂化ではない。
 復讐の対象のみならず、およそ全ての人間に対する嗜虐性。
 精神的なスーパーアーマー能力。

半人半妖:B
 その身に妖魔の血肉を取り入れた者。単独行動:Bに加えて実体化に必要な魔力が他のサーヴァントより少なくて済む効果を持つ。
 さらに妖魔の成り立ちから、対竜宝具の攻撃により受けるダメージが多少追加される。 
 実はオフィーリアは既に妖魔として覚醒しており、理性ではどうしようもない『人の内臓を食べたい』という衝動がある。
 だが、狂ったオフィーリアは、人間を食することを拒み、人間に近い生き物かサーヴァントのみ食しようとする。

妖力解放:B
 魔力を肉体の強化に注ぎ込み、筋力、耐久、敏捷値を上昇させる。
 魔力総量の10%以上で瞳が金色に変わり、30%以上で顔つきが醜く変貌し、50%以上で体つきが変化する。
 80%以上を超えると元に戻れなくなり、妖魔として覚醒する。
 ……というのが通常の戦士であるが、実はオフィーリアは既に覚醒している。

再生能力:D+
 魔力を消費し、肉体を復元するスキル。有害な毒素を体外に弾くこともできる。
 オフィーリアは既に覚醒しているため、時間をかければ四肢や内臓の再生が可能。
 魔力の消費に伴い、妖力解放に準じた肉体の変化が起きる。
 
妖気探知:B+
 オフィーリアを中心とした半径数km圏内にある魔力の大きさと位置を探知し、Bランク以下の気配遮断を無効化する。

漣の剣(さざなみのけん):-
 種別:対人魔剣 レンジ:2~4 最大補足:1人
 驚異的な全身の柔軟性により剣を波打たせ、刀身をうねる蛇のように操る。
 なお、オフィーリアはこれが自分の宝具であると思い込んでいる。

【宝具】
『大剣(クレイモア)』
 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大補足:1人
 クレイモアはオフィーリアの元居た世界では戦士の象徴、代名詞として扱われているため、宝具として登録された。
 特殊な能力は一切無いが非常に硬度が高く、格上の宝具と打ち合っても単純な物理攻撃なら、折れるどころか刃毀れ一つ作ることは無い。

『覚醒体・漣のオフィーリア』
 ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人
 オフィーリアが妖力解放の限界を超え、覚醒者となった姿。
 巨大化し、手には鉤爪が生え、下半身が蛇の胴体に変化。全ステータスに+補正が追加される。
 この状態でも死ぬ寸前まで、オフィーリアは自身の変化を認識できない。


953 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:56:30 .R1iioKA0
解説
 クレイモアと呼ばれる戦士の中でナンバー4の戦士。同じ戦士からは『血塗られた狂戦士』と称される。
 幼い頃目の前で、兄が笑ったまま覚醒者に内臓を食われる場面を目撃し発狂。外観は理性を保っているようだったが、覚醒者に対する復讐心、兄への強い愛情と憎悪が人格を歪めていた。
 戦士になっても狂った人格は変わらず、妖魔や覚醒者に対する憎悪はあっても民間人をいたぶり、同僚の戦士を挑発して覚醒者になるよう仕向けたりと本末転倒な行動を繰り返していた。
 そんな中、とある覚醒者狩りのメンバーに選ばれ主人公のクレアと合流するが、半覚醒者のクレアを覚醒者として見定め、ゴナールの町の覚醒者諸共切り殺そうと暴走する。
 覚醒者を斬殺した後、ラキと共に逃げたクレアを追跡し、圧倒的な実力でクレアを追い詰める。
 さらに、突如現れたイレーネにも襲いかかるが、一太刀も浴びせられずに返り討ちに遭い、傷の痛みから錯乱し、覚醒してしまう。
 自らが覚醒したことに気付かないまま再びクレアに襲い掛かり、その最中に自身が覚醒したことに気付き再び錯乱するが、再戦の最中自我を取り戻し、クレアにプリシラ打倒の想いを託して散る。
 死の間際、兄が笑みを浮かべていた理由が自分が無事だったがためだと思い至り、満足とともに湖の底へ沈んでいった。

【基本戦術、方針、運用法】
 オフィーリアは令呪を使いでもしないと、全く従わないので自由に行動させるしかない。
 妖気探知でサーヴァントを突き止め、オフィーリアが戦っている最中に月山がマスターを仕留めるという分担作業になるだろう。
 オフィーリアにはサーヴァントか人外のマスターの内臓を食べたい(本当は人間の内臓を食べたい)という、理性で止められない衝動があるので、それも自由にさせるように。
 月山は、人間を食う姿をオフィーリアに見せないようにしよう。必ずオフィーリアに殺されてしまうので。


954 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 00:56:49 .R1iioKA0
投下終了です。期限の猶予を頂けたことに感謝します。
月山の解説は一部dM45bKjPN2様の文章を参考にさせていただきました。


955 : ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 00:57:37 9n4qKXsQ0
遅くなって申し訳ありません。
今から投下を始めます。


956 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 00:59:21 9n4qKXsQ0
夢を、見ていた。
それは一人の少女の物語。
一つの体に二つの魂を宿した儚い少女の軌跡。
謎を探し、謎を追い、そして深い孤独を抱え、それでも笑顔を振りまく少女がいた。
よすがを持たずしるべを探して、少女は町を彷徨い歩く。
いつしか少女の隣には仲間がいた。ダーリンと慕う男性がいた。
彼らと共に時に笑い時に泣き、そして時には勇ましく少女は異形の存在と戦った。
日常の中で少女の孤独は埋められていった。そして、少女の想いも成就した。
しかし全てのものに終わりはやってくる。どんな夢もいつかは覚めるものだった。

少女は全てが終わった後、世界から消えゆく運命にあった。
少女は世界の理から外れた存在で、正しい歴史に変革される世界において少女の居場所はどこにもなかった。
それでも少女は、二つの創られた魂は願った。自分達は存在していたいと。
その願いは、聞き届けられた。少女たちの愛する運命変革者にではなく、もっと別の何かに。
本来の運命から外れ、二つの魂は戦場へとおちてゆく。
そして――――

  ○  ○  ○

「なーのだなーのだ、なーのなーのだー」

一人の少女が不思議な歌を口ずさみながら元気よく通りを歩いていた。
腕を振り振り、足も高く振り上げて様々な場所を行ったり来たり。
猫耳のような帽子がどういう原理かピクピクと動く様がすれ違う人々の目を引いた。

「なーのだなーのだ、なーのなーのだー?」

周囲の目を気にすることなく少女はどんどん突き進む。
繁華街に行ったかと思えば森に足を伸ばし。
そうかと思えば港に行き、ぐるりと回って山へ行く。

「なーのだなーのだ、なーのなーの……にゃー!」

とにかく様々な場所に少女は出没した。
気になった事には首を突っ込み、ときたま現れる国家権力から逃げ出して。
朝から晩まで休憩を挟みながら町中を隅から隅まで歩き回った。

「なーのだなーのだ、なーのなーのだ〜……」

そしてすっかり日が暮れた頃になって少女……ねねこは立ち止まった。
そこは人気の無い公園で、ねねこにとっては縁深い場所だった。
ふう、ため息を一つ吐いて右手の人差し指を頭に当てる。
その手の甲には赤い紋様が刻まれていた。

「うーむ、謎なのだ」

謎。
ねねこの趣味であり、ねねこという少女を表すものであり、ねねこの現状でもある。
ねねこにとってこの世界は謎に満ちていた。

「ここがどこなのか、今日も解明できなかったのだ」

数日前、ねねこは今いる公園のベンチの上で独り目を覚ました。
所持品は服と帽子と靴だけ。それら以外は何も持っていなかった。
つまり完全な無一文である。そして更に悪いことに。

「今日もこの公園で休むのだ。ちょっとだけ憂鬱なのだ……」


957 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:00:03 9n4qKXsQ0
ねねこは記憶の殆どを失っていた。
断片的な記憶、例えば自分の家族や住所といったものはぼんやりと覚えている。
が、それがどこにいるのか、どこのことなのか。具体的な事が何も分からない。
確かなものなど何一つ無く、何故も何時も分からない。頼るべき存在もいない。当然ながら住居も無い。
つまり十代にも届いていないかもしれない少女が、完全に身一つで世界に放り出された格好だ。
行くべき場所も無いので今日までずっと、この公園で寝泊りしている。
ねねこはいつものベンチに座った。流石に夜間にうろつき回る事はしない。
今日も記憶のはじまりと同じくこのベンチの上で夜を明かすことになる。

「謎が謎を呼んで大変なのだ……でも、謎には必ず鍵があるのだ」

そんなどうしようもない状況でもひたすら前向きで能天気なのがねねこという少女だった。
このあまりにも謎めいた状況に対する好奇心がねねこの体中に満ち満ちている。
記憶を失くした美女(自称)。正しく謎の王道である。
明日も元気一杯に謎を解き明かすためにねねこは町に繰り出すだろう。
日を追うごとに謎は次々と降り積もってゆくのだから尚更である。
特に断続的に意識が飛ぶのは重大な謎だった。商店街にいたと思ったら住宅街にいた、そんな事が頻発するのだ。
気づいた時には目の前に食べ物があったり、一度補導された時もいつの間にか一人でいた、なんてこともあった。
謎というより怪奇というべき領域に入っているが、そこの区別についてねねこはあまり気にしていない。

「今日はもう休むのだ。謎はまだまだいっぱいなのだ」

ねねこは明日に備えるため、その身をベンチに横たえた。
ねねこは自分の記憶の始まりであるこのベンチで眠ることを好んでいた。
寝心地がいいとはとても言えないが、何か思い出す切欠があるかもしれない。
何より、自分の事を知っている人物が現れるかもしれない。そんな淡い期待を抱いていた。

「明日はきっと謎を解き明かして見せるのだ……」

ねねこにも不安が無い訳では無い。一人でいるのは寂しいし、恐怖もある。
それに何かとても大事な、忘れてはならない誰かとはぐれた、そんな漠然とした思いに囚われている。
それでもそれを上回る何かをねねこは常に感じていた。いつも何か暖かな存在を傍に感じるのだ。
そんな想いを感じるからねねこは力の限り謎を探すことが出来るのだ。
自分は一人じゃないのだと、そういう確信をねねこは持っていた。
謎は必ず解けるもので、だからねねこは謎が好きだった。

「おやすみなさいなのだ」

自分を見ている誰かに向けて、言葉をかけた。
日の光のような暖かさを確かに感じながらねねこは眠りに付いた。
明日はどれだけの謎を解くことができるのかに思いを馳せながら。

「おやすみなさい、ねねこ」

ねねこはそんな言葉を聞いた気がした。


958 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:00:59 9n4qKXsQ0
ねねこの紫色の瞳が閉じられた瞬間、少女の人格は切り替わる。
開けられる目蓋、そこから覗く緑の瞳。
ねねこという少女は眠りに付き、ねねこに憑依した精神体……ネイトが顔を出す。
むくりとネイトはベンチから起き上がり、すたすたと歩き出した。
ねねこのように大げさな身振りではなく静かな歩みだった。
ねねこが今日までちゃんと生きて来れたのはネイトのおかげだった。
食料を用意していたのもネイトであるし、身を清めてくれていたのもネイトである。
それがねねこがたびたび感じる意識の断絶の原因である。
そしてネイトはベンチなどではない本当の寝床に向かっていた。

五分もかからずに見えてきたのはみすぼらしい一軒家。
誰も住んでいない、寒々とした雰囲気の二階建ての建物だった。
ネイトはここを自分の拠点として使用していた。ここ以外にもあちこちに緊急用の避難所を用意してある。
ねねこが毎日好き勝手にあちこち歩き回るので手ごろな物件探しは容易であった。
誰の目にも入らないように注意深く身を潜めながらネイトは家の中に上がり込む。

音を立てないように古びた木製の階段を上り、障子を開けた。
その部屋には家具などは置かれていなかったが、隅に綺麗に畳まれた布団が積まれていた。
他には食料や水の入ったペットボトルが少々とやけにぼろぼろな子供用のオーバーオール、あとは水の張られたタライがあるぐらいだ。
これから明日のための準備をしなければならなかった。ねねこが目覚める前にである。
しかしネイトがねねこの身体を使って連続して行動できる時間はそう長くは無かった。せいぜい一時間がいい所である。
なのでいつものように仕事を自分の従者に分担してもらう。
従者、即ち……サーヴァント。ネイトは聖杯戦争に参加しているマスターだった。
ネイトは服を脱いでオーバーオールに着替えた後、呟くように言った。

「セイバー」

その言葉に反応してネイトのサーヴァントが部屋の中に実体化する。
現れたのは全身を深い青の鎧で固めた眉目秀麗な戦士。
天につき立つ二本の角飾りのついた兜を被り、その精悍な顔つきは強い意思を感じさせるものだった。

「私はここに、マスター」

それはセイバーのサーヴァント。
聖杯戦争において最優と呼ばれるクラスであり、そしてこの戦士はそう呼ばれるに足る力を秘めていた。
フェイドムとの世界の命運を賭けた決戦の直後にネイトはこの地に召還されセイバーと巡りあった。

「今日もご苦労様。あなたにはいつも無理を言ってしまってごめんなさい」
「いや、君たちの事情は理解している。私にできることなら気兼ねせず言ってほしい」

その最優の戦士の現在の仕事は三つ。まずは動き回るねねこのの身辺警護。
未だ開戦はしていないとはいえ、子供一人ではなにかと危険が多い。
そのため常にセイバーには霊体化してもらってぴったりとねねこについてもらっている。
何か危険があればネイトが表層に浮かび上がり、ねねこと交代して事にあたる段取りになっている。

次に生活するうえで必要になる雑務。
ネイトが行動できる時間はあまり長くは無いため、どうしても手が回らないことがある。
それらを代わりにセイバー引き受けてもらっていた。服の洗濯や沐浴の準備などである。
表立って行動できない以上、湯船に使ってゆっくりと入浴などはできないネイトはもっぱら水で体を清めていた。

そして物資の調達。
ねねこの食事や生活に必要な細々としたものを手に入れる必要があった。
金銭はねねこの後をつけてきた変質者を成敗して手に入れた。
出来る限り町の住人から物資を盗む事は避けていが、外道にかける情けは無い。
財布の中身から住所を探り当てて、必要なものだけ頂戴し当座の資金としている。
お金は普段は持ち歩かずに各所に隠し、必要な分だけ取り出すことにしている。
ねねこに小遣いを持たせていないのは、余裕があまり無いのと余計なトラブルを避けるためである。


959 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:02:05 9n4qKXsQ0
「ありがとう。そう言ってもらえると私も助かるわ」
「礼を言う必要などない。これもサーヴァントの務めというものなのだろう」

小間使いのような仕事も、セイバーは快く引き受けてくれていた。少し不器用なのが玉に瑕では会ったが。
ネイトもセイバーもいわゆる家事というものには疎く、二人揃って手探りの状態だった。
ネイトが着ているぼろぼろのオーバーオールも二人の実験台だった。先に練習をしておいて本当に良かった。

「記憶が戻れば、私ももう少し色々と役に立てるのだろうが」
「セイバー、あなたの記憶はまだ……?」
「ああ、私が誰であるか、何故ここにいるのか……未だ何も。
 だが安心してほしい。私は牙を失った訳では無い。君たちを守ることはできるはずだ」

セイバーはねねこと同じく過去の記憶を失っていた。
自分が聖杯戦争に参加した理由も、聖杯にかける願いも何もかも。
それが単なる記憶の混乱によるものなのか、セイバーが持つ特性なのかそれは分からない。
もしかすればねねこが記憶を失っていた事とも何か関係があるのかもしれない。
だがネイトは特にその事は気にしてはいなかった。
セイバーにはネイトたちを守る意志があり、それを果たせる力があるか。それが重要だった。

「その時がきたらよろしく頼むわ、セイバー」
「我が剣に誓って。……まだ、決心はつかないのか」
「……セイバー、何度も言ったはずよ。私はねねこに事実を教えるつもりはないわ。

セイバーのマスターはねねこではなく、あくまでネイトである。
同じ身体を共有してはいるが、二人は別個の存在でありマスターとしての権利は共有されてはいない。
つまりねねこは聖杯戦争の事など何も知らないし、言ってみれば町の住人たちと代わらない存在である。
そしてねねこはネイトが自分の体に憑依していることも知らず、他の記憶同様にネイトの存在も忘却していた。
だから未だにネイトはねねこと会話を交わしていない。むしろ接触を避けていた。

「本当にそれで戦い抜けると?」
「できるか、じゃない。やるしかないのよ」


960 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:03:52 9n4qKXsQ0
ねねこの処遇はセイバーと念話で何度もこの事については議論していた。
何もかもを秘密にしているのも偏にねねこを戦いとそれに伴う悪意から遠ざけるためである。
ねねこに戦闘経験が無い訳でなく、心の強さも並みの人間を超えているだろう。
しかし聖杯戦争はフェイドゥムのような会話の出来ない化け物とは違い人間同士の争い。
ネイトは人間がどれだけ醜くなれるか知っている。それを正すために未来を遡ってきたのだから。
そして何より、切なる願いのためならどれだけ人間が非常になれるかも知っている。ネイト自身がそうだったのだから。
それがどれだけ無理のある選択であるのかもよくわかっていた。迷いがあれば負ける、これはかつてネイトが言った言葉だ。

「これ以上はまた後で話しましょう……これをお願いね、セイバー」

ネイトの時間は限られている。
いつものようにネイトは服を渡そうとする。

「承知した。だがその前に少しだけ聞いてもらいたい」
「……何かしら?」

セイバーは剣を取り出し、自分の眼前に掲げた。

「……私はあなたのサーヴァントだ。
 例えどんな困難が立ちふさがろうとも我が剣でそれを払い、必ずあなたたちを守り抜くと誓おう。
 我が身は定まらぬ存在なれど、この剣はいかなる相手にも揺らぐ事は無い」
「……しかし覚えておいてほしい。情愛と怯儒は違うものであると。
 あなたのその想いは果たして誰のためのものなのか。よく考えてもらいたい」

それだけ言うと、剣を下げてネイトから服を受け取った。

「それでは失礼する。時間をとらせてしまいすまなかった」

それだけ言って、セイバーは去っていった。
ネイトは一人それを目で見送り、呟いた。

「……ええ、その通り。嫌になるくらいあなたの言う通りよセイバー。

セイバーの言葉は間違いなく正しいものだった。
しかし、ネイトには一つの懸念があった。
ネイトはフェイドゥムとの決戦時、運命変革の直前から呼び出された。
その場合因果は改変され、ねねことネイトは本来ならば消滅するはずであった。
しかしこうして二人はこの場で生きている。これはどういう可能性を指し示すのか。
ネイトは考えるだけでも恐ろしかった。もしも自分の全てを賭けた戦いが失敗に終わっていたら。
もし何らかの方法で元の世界に帰ったとして、その世界は果たして正常な世界なのか。
その場合、自分が取るべき行動は何か? そしてそれはねねこに許容できるものかどうか。

「無様、ね」

そう自嘲せずにはいられなかった。


961 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:05:37 9n4qKXsQ0
  ○  ○  ○

ねねこは夢を見ていた。
それは一人の男の物語。
秩序と混沌が織り成す壮大で小さな閉じられた世界の物語。
名前を持たず、過去を持たず、それでもなお高潔な男だった。
剣を振るい、盾を振るい、男は形の定まらない世界で戦い続けた。
男には仲間がいた。守ると誓った女神がいた。
男は懸命に仲間と共に混沌の軍勢と戦った。
意志を持たない不滅の軍団。それを率いるのは十人の魔人たち。
苦闘の果てに魔人たちを打ち倒し、遂に男は神を打ち倒した。
そして終わりはやってくる。全ての夢はいつかは覚める。
混沌の世界は移り変わり、そして。

「なのだ?」

いつのまにねねこは草原の只中にいて、空には見たことも無いほど綺麗な青が広がっている。
湖があって、彼方には御伽噺にでてくるような城が見えている。
そして夢のはずなのに吹き抜けてゆく風を確かに感じた。
これは夢とは思えないほどにリアルな実感にねねこは混乱した。

「大丈夫だ」

声が聞こえた。ねねこは顔を向ける。
視線の先に水晶を手に持った戦士がいた。
その瞳は確かにねねこを見据えていた。

「光は、我らともにある」

その言葉と共にねねこの意識は浮上する。
ここで見たことは全て忘れ去り、また一日が始まるのだ。

ねねこは目蓋をあけた。そこにはいつも見上げる空がある。
昨日と変わらず伸びをして、ベンチから起き上がる。

「う〜気持ちいい朝なのだ。今日も一日頑張るのだ!」

伸びを一つして、ねねこは歩き出した。
いつもと変わらぬ朝、しかしそれも束の間の夢である。



【クラス】
セイバー

【真名】
不明(ウォーリア・オブ・ライト)@ディシディア ファイナルファンタジー

【属性】
秩序・善

【パラメータ】
筋力B 耐久A+ 敏捷B 魔力B 幸運B 宝具EX

【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【固有スキル】
光の戦士:A++
光と共に歩む者。胸の中に宿り続ける光は全ての迷いを祓い清める。
光に満ちた揺ぎない信念はあらゆる精神干渉を受け止めた上で無効化する。
魂に刻まれた想いは神であろうとも完全に消し去ることは出来ない。

光の加護:B+
セイバーが使う光の力全般を指す。
光の剣や盾を作り出したり、敵を追尾する光柱を放つ事ができるなど幅の広い能力。
後述する宝具が発動することで劇的に効果が上昇する。

喪失:EX
セイバーは記憶の大部分が欠落しており、真名も忘却している。
名無しなのか無銘なのかも判然とせず、ルーラーであろうともセイバーの真名を知る事はできない。
この失われた記憶は生半可な方法では取り戻せない。


962 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:06:04 9n4qKXsQ0
【宝具】
『偽令・騎士叙任(クラスチェンジ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
セイバーの潜在能力を一時的に開放し、各種能力を上昇させる。
防御面では自動回復と耐久値のプラス補正、更にセイバーの攻撃時には魔力に対する反射判定が発生する。
攻撃面では全ての攻撃のクリティカル率が大幅に上昇し、それに加えて光の剣による追加判定が発生する。
そして必殺の連続攻撃『オーバーソウル』の使用が解禁される。
様々な恩恵を受けられるが持続時間は三十秒ほどで連続発動は不可能。

『神光の輝石(クリスタル)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
この宝具をする発動することで六角柱の水晶が顕現する。
規格外の力を秘めているが、この宝具単体で何かの効果が現れる訳では無い。
一度でも発現させておく事で後述の宝具が自動発動するようになる。

セイバーは現在この宝具を忘却しており現在は使用不能。

『光が遺せし最後の幻想(ファイナルファンタジー)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
神光の輝石を一度でも発現させていればセイバーが消滅する際に自動発動する。
クリスタルに秘められた膨大な魔力が開放され、セイバーはいかなる状況であっても復活する。
例えセイバーが魔力枯渇の果てに消滅した場合もリレイズが可能。
復活する際にはセイバーの魔力が最大まで充填され、加えてAランクの単独行動スキルが付与される。
ただし復活の代償としてクリスタルは輝きを失い、尚且つ今後一切魔力を補給する事ができなくなる。
マスターからの魔力供給を受ける事はできず、魂食いをしても魔力が補填される事は無い。
令呪を使用しても魔力の補填はできないがそれ以外の影響なら受ける。

【Weapon】
・剣と盾
盾とは殴るためのもの

・光の力
ねねこの服を乾かすのにも使用している。

・各種のきば系アイテムは使用不能。

【人物背景】
記憶を失った戦士。胸の中の衝動に従い聖杯戦争に臨む。
己の存在も定まらないが、その剣に一切の迷いは見られない。

ディシディアファイナルファンタジーの中心人物であり、ファイナルファンタジーの主人公と目される人物。
秩序と混沌の二柱の神の戦いの場に突如として現れた謎の男。
性格は謹厳実直であり揺るぎない精神の持ち主。自他共に厳しいが柔軟な判断力も併せ持っている。
その正体は神々を統べる『大いなる意志』により創り出された自身の写し身である。
記憶を転写することに失敗したため自我を持たず、当初は意志を持たない虚ろな存在だった。
プリッシュという少女に拾われ秩序の神の下に導かれ、そこで出会った仲間たちとの交流を通して自己を確立していき立派な戦士として生まれ変わった。
終わりなき戦いを繰り返す中であらゆる記憶を失われるが、微かだが確かな光として戦士の胸の中に残り続けた。

【サーヴァントとしての願い】
守護。何も思い出せないがそれだけははっきりとしている。
それとは別に何か大切なことを忘れていると感じている。



【マスター】
ねねこ/ネイト@ゆめりあ

【マスターとしての願い】
ね:謎なのだ。
ネ:ねねこと一緒に生きて帰る。
  しかし、それは本当に正しい選択なのか?

【能力・技能】
ねねこの変身能力は夢世界限定であり三栗智和に依存した力であるため使用は不可能。

・逆輪廻
ネイトが使う未来ではなく過去に向かって転生する外法。
時を遡行する業であるが本人が永い時をかけた言っている事から、あまり都合のいい能力ではないようである。
それ以外にも色々できるが現在は全て使用不能である。


963 : ねねこ/ネイト&セイバー ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:06:44 9n4qKXsQ0
【人物背景・ねねこ】
謎を探す神出鬼没の謎の少女。語尾にはよく「なのだ」がつく。口癖は「謎なのだ」。
性格は無邪気で人懐こく、物怖じせずに誰とでも接することが出来る。要は子供である。あと妙に俗っぽいことを知っている。
謎を探していつもをどこかをさまよっているが、ねねこ自身もまた謎に包まれた存在である。
出生も、年齢も、家族も、よく動く帽子も、どこからか取り出す765ハンマーも全てが謎である。
駅前で出会った三栗智和をダーリンとして慕い、共に夢世界モエラで負の感情の集積体であるフェイドゥムと戦った。

その正体は未来からやってきた意識体『ネイト』を受け入れるために現実改変能力で創造された器。
ねねこはネイトの存在に気づいていないらしく、ねねこルート以外では基本的に接点を持つ事はない。
無から作り出された存在であるため家族なども存在せず、夜は智和が通う学校に入り込んで寝泊りしていた。
ねねこには家族や出自の記憶が断片的に残っているが、これは現実化できなかった背景設定の名残である。
ネイトが三栗智和と出会うためだけの存在であるため、その出会いが無かった事になる改変後の世界では消滅が決定付けられている。
しかし三栗智和の力とねねこの願いが奇跡をおこし、無事にハッピーエンドを迎えることになった。
他のルートでも生存しているが、これはルート別に設定が違うのか、それとも運命変革による改変現象なのか詳細は不明。
参戦時期はねねこルートのエピローグ直前。そのため記憶の殆どが封じられた状態である。ネイトの存在も忘却している。
聖杯戦争には本来の役割通りにネイトの器として精神も一緒に召還された。
あくまでねねことネイトは別個の存在であるため聖杯戦争についての知識は何も持っておらず、サーヴァントとの契約もネイトが主体である。

【人物背景・ネイト】
未来から来た女。ねねこの身体に宿った意識だけの存在。肉体は十四歳の時に捨てたと語っている。
フェイドゥムにより壊滅した未来の世界から外法・逆輪廻を用いて運命の岐路なる刻にやってきた。
逆輪廻とは名前の通り輪廻の逆、過去に向かって行う転生でありネイトは数百年の時をかけて時間を遡ってきた。
フェイドゥムとは夢の世界に廃棄された人間の負の感情が意志を持った存在であり、人間の精神への回帰を目的としている。
怒り、悲しみ、死への恐怖……それら忌むべき感情の具現であるフェイドゥムが人間の意識に流れ込む時、人は途方も無い悪意に支配され世界は地獄に変貌する。
ネイトはフェイドゥムによる全人類への意識逆流が果たされた絶望的な未来の世界で生を受けた。
ネイトの語るところによれば全世界規模の戦争が起こり黒煙と塵が空を覆い、海は枯れ、陸は焦土と化した。
人類の八割は死滅し、人が出会えば争いが起こるためお互いを完全に隔離する事でなんとか生き延びている。
これをどうにかするためにネイトは生み出され、長い時間をかけて輪廻を繰り返し、フェイドゥムの意識逆流が行われる以前の時代にやってきた。
その決意は非常に固くどんな非道も辞さない覚悟でいる。生きてきた環境のせいか、人と人の繋がりというものをうまく理解できない。
しかしねねこたちと接する内に人間らしい感情が芽生えることになる。造られた存在であるためかフェィドゥムに汚染されてもいない。
一時的にねねこの身体を借りて行動も出来る。その場合は瞳の色が変化する。ねねこは紫、ネイトは緑の瞳である。
ねねことネイトが会話することは本来ないのだが、ねねこルートではねねこと意識化で会話を行うことが出来る。
ネイトはこの現象に驚いていたことから憑依先の人格とは接触を持つことが無いのが普通のようだ。
多くの場合、戦いの中で消滅する事になるがねねこルートでは幸せを掴むことができた。

ねねこルートのエピローグ直前、運命変革に抗って因果地平の彼方に送られる前からの参戦。
逆輪廻などの能力は使用不可能。ただし魔力は並以上に保有している。

【方針】
ね:謎を解き明かすために街中を散策する。
  聖杯戦争に巻き込まれている事に気づいていない。
ネ:ねねこの精神の保護を最優先。なるべく戦闘は避ける。
  これからどうするべきかの方向が見えず悩んでいる。


964 : ◆ZnyqsGLe0. :2015/04/04(土) 01:08:32 9n4qKXsQ0
投下を終了します。
猶予を頂きありがとうございました。
そして時間を超過してしまい申し訳ありません。


965 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/04(土) 01:09:17 cJpqmQlU0
以上で、締め切りとさせて頂きます。
当選のお知らせは土曜日〜日曜日の間にはしようと考えております。


966 : ◆SiqYg22N/2 :2015/04/04(土) 01:09:45 .R1iioKA0
すいません。間違えて月山の解説を別の文章に上書きしていたようです。
今投下します。

【マスター】
 月山習@東京喰種

【マスターとしての願い】
 カネキくんの消息を突き止める。もし既に死亡しているなら生き返らせる。
 そして受肉したオフィーリアを、カネキくんと一緒に食べながらカネキくんを食べたい。

【weapon】
 甲赫の赫子(かぐね)
 カネキの血が付いたハンカチーフ(保存袋に入れてある)

【能力・技能】
 喰種。
 人間が食べるような食物は食べられず(コーヒーのみ辛うじて飲める)、人肉しか食べられない代わりに高い身体能力と五感を得る。
 皮膚は包丁や拳銃では傷もつかない。
 喰種特有のRc細胞という細胞を持っており、それを体外に放出し『赫子(かぐね)』という特殊な組織を形成する能力を持つ。
 甲赫の赫子を持つ彼は肩甲骨からリボンのような螺旋状の赫子を出し、盾やドリル、先端を剣に変形させるなど攻防共に巧みに使いこなしている。

【人物背景】
 喰種の中でも変わり者と称される月山家の一族。人間の食べ方にこだわりや趣味嗜好が強い。
(ただ殺して食うのではなく、狙った人間を生かしたまま目玉だけをくりぬいて持ち去ったり、わざわざ専門の高級料理店で人体を調理させて食べるなど)
 あんていくで出会ったカネキに興味を示し、巧みに罠に嵌めて喰種レストランで食らおうとしたが彼が隻眼と知ると独占すべく解体屋を殺害し救出。以後、カネキに執心するようになる。
 打算的な欲望が大本とはいえ、その忠実な姿勢は金木から評価されており、反アオギリ解散の頃には信用はされなくても仲間として認められていた。
 そして原作13巻で喫茶「あんていく」が大量のCCG・喰種捜査官に強襲された時、店長たちを助けようとする金木を止めるため戦うが、敗北し失敗。
 続編の「東京喰種:re」では見る影もなく焦燥した姿になっているという。

【方針】
 オフィーリアに殺されないよう、うまくマスターを仕留め喰らう。


967 : ◆uYhrxvcJSE :2015/04/04(土) 01:15:48 .2i4opVs0
お疲れ様です。
ご迷惑をおかけしたところもあり、申し訳ございませんでした。
大変でしょうが、発表を楽しみにしております。


968 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:34:54 JvfM/lMk0
>>853
いいですね、ババア。純愛ですねぇ。
醜いと言いながらも、愛の為に一直線なババアは醜くも何処か気高さを感じます。
世界平和で繋がったババアと美女の今後に乾杯、ですね。

>>864
ルーラーとしてはある意味とびっきりな人が来ましたね。
本当に死ぬイメージがないですし、そもそも負けるとは思えませんね。
聖杯戦争関係なしに治療するその姿は素敵過ぎて、参加者を虜にしそうです。

>>876
過去に縛られていた男がついに未来を向きましたね。
そして、今を生きる心を知りたいと願う彼の望みは儚いものではありますが、
どこか前向きであって、ほんのりとしあ哀愁が漂っていましたね。

>>892
いきなりの麻帆良大虐殺はインパクトに残りましたね。
千雨がもう笑えない現場に放り込まれどうなってしまうのか。
パンタローネの笑顔のサーカスは思わず此方もニッコリとしてしまいますね。

>>910
ヨタロウの可愛らしさとは裏腹に、キリシマさんは苛烈ですね。
お互い、現状を理解してとりあえずは前を向くことが出来ましたが、
後悔を晴らすという共通点を持った彼女達はどれだけ足掻けるのでしょうか。

>>917
これは心の底から胡散臭いサーヴァントですね。
語る言葉全てが胡散臭いし、信用出来ないのも無理はありませんね。
紅白巫女も苦い顔をしていますが、利用出来そうにないからそれはもうげっそりしますよ。

>>927
ともかく、ベガ様が楽しそうで何よりです。
憎しみを糧に進んでいる由紀恵さんはボロ雑巾のように捨てられそう。
手段を選ばないという面では共通していますが、最後の一線的な意味では由紀恵さんが躊躇しそうですね。

>>939
みくにゃんが猫キャラやめるって本当ですか、それでもみくにゃんのファンやめません。
負け犬と負け猫といった隙あらば食らいついてやろうというハングリー精神、いいですね。
主役になれるか、脇役のままで終わるか。どちらにせよ、面白いコンビですね。

>>946
人肉喰らいつきコンビはユニークですねぇ。
月山の一言一言が面白くて笑ってしまいました。
けれど、バーサーカーが矛盾に気づいた瞬間、月山はぶっとばされそうでどうしようもないですね。

>>955
少女と騎士。一見すると王道なコンビですが、少女は二重人格。
忘却を共通点としてはいますが、思い出した時が心配ですね。
セイバーは大丈夫ですが、ねねこは果たして乗り越えられるのか。





お待たせしました、登場する主従の発表をさせていただきます。


969 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:37:07 JvfM/lMk0
朝焼けの空の下、橋の近くにある公園で一人の男が汗を流しながらランニングをしていた。
身体が疲れ果てても起き上がり、また最初から。体の節々に生じる痛みなど無視し、垂れ落ちる汗をTシャツの袖で拭い、ただ黙々と。
断続的な息遣い、絞り上げられた肉体、暗く淀んだ瞳。
まるで、研ぎ澄まされた日本刀のようだ。鋭く、触れるもの全てを断ち切る白刃は流麗というよりも無骨だ。
正直、今置かれている状況は出口がわかっている為、前のループよりは幾分かマシだ。
毎回鬼のようなトレーニングの後、即座に来襲するギタイの群れと戦い、そして血反吐を吐いて死んでいく地獄よりはマシだ。
いきなり偽りの世界に放り込まれたとはいえ、【キリヤ・ケイジ】は鍛錬を怠ることはしなかった。
出会い頭にサーヴァントに殺されかけ、訳もわからない内に令呪を一画消費してしまうことになったが、まだ生きている。
戦うことは、できる。未来は残っている。

(サーヴァントに殺されないようにしながら、今は――生き残るしか、ない)

ケイジのサーヴァントはマスターに襲いかかる凶悪さを秘めている。
現状、令呪で抑えてはいるが、いつ暴発するかわかったものじゃない。
アレは正直言ってとびっきりの狂犬だ。鎖で繋ごうとも、身体を揺らし人間であるならば誰にでも噛み付くとびっきり。
当然、ケイジからすると厄介なことこの上ない。
このまま聖杯戦争に突入するのは危険だ。相手に刃が向くならまだしも、その刃が自分に向くのなら。

(危険、だよな。鞍替えも頭に入れておく必要があるか)

ケイジはT-1000を切り捨てる覚悟はある。
信頼など皆無だ、これまでも、そしてこれからも。
彼は断じて仲間じゃない。背中を預けて支えあう相棒足り得ない。
戦場を共に駆けた彼女と違い、T-1000は――ギタイと同じく化物だ。
共に行動するだけでも吐き気がするのに、何故協力ができようか。
この数日間、あれこれと話しかけたりしてみたが、結果は散々だった。
故に、気など許せるはずもなく、今この時だけは自宅待機を命じている。
普段一緒にいるだけでも悍ましいのに、リフレッシュ代わりのトレーニングまで一緒にいては敵わない。
せめて、朝の時間帯は生命の危険を感じずにいたい。
その結果、ケイジは一人トレーニングに励んでいるのだった。


970 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:38:56 JvfM/lMk0

「…………ダルい」

そんなケイジの視界の端にダルそうに歩く少女が映った。
制服を着崩し、カバンをぶら下げながら薄く開いた目を擦っている。
一見すると、髪もしっかりと整えている今風の女子高校生のようだ。
欠伸を噛み殺し、ふらふらとしていることから寝不足だと見て取れる。
友達とのお喋りが長引いて夜更かしでもしたのだろう。
もっとも、長らく戦場にいたケイジには見慣れない平穏の象徴である。
此処には平和がある。総てを焼き尽くす業火の炎も、無差別に襲い回るギタイもいない。
それは、偽りであっても素敵なことだとケイジは思っている。

「こんな時に学校なんて行かなくてもいいのに。タイガーの馬鹿」

少女――【北条加蓮】のげんなりとした言葉にケイジは苦笑しながら悠々とすれ違う。
そんな小さなことで悩める彼女はきっと幸せだ。
自分とは違い、戦場とは無縁でまともな感性を持ったか弱き人間なのだから。

――彼はまだ、弱者を切り捨てる覚悟を定めていない。













夢を見ていた。
眩しくて、綺麗で、輝かしくて。
ニュージェネレーションズがトップアイドルになった幻想的な物語。
全部、夢のままであったらよかったのに。

「くだらな……」

太陽が天高く登り、朝が来る。
平常なら纏わり付く睡魔を跳ね除けて、布団から這い上がるのだが、【本田未央】はもぞもぞとするだけで一向に起き上がらない。
有り体に言ってしまえば、未央は部屋に引き篭もっていた。
布団に丸まって、瞼を閉じ、外界を全てシャットアウト。
彼女の脳内は聖杯戦争という恐怖に満ちている。外出などもっての外だ。

「寝直そ、どうせ学校になんて行かないし」

燦燦と輝く太陽を尻目に、未央は宙を見上げ、何となく手を伸ばした。
そして、何も掴めやしない手をぎゅっと握りしめる。
勝手に逃げた自分には、誰も付いてきてくれない。
リーダーの責務も、ガラスの靴も、全て投げ捨ててしまった。
残ったのは惨めったらしいプライドとまたアイドルをやりたいという今更過ぎる願いだけ。
顔に浮かぶ嘲りは自分を刺し貫いているかのようで、苛立たしい。
前に進むことも後ろに戻ることもできない現状は、未央にとってもどかしいものでしかなかった。
いっそのこと、どちらかに振りきれてしまえば楽なのに。
天秤は依然として変わらず。叶えたいと縋った聖杯はあるのに、動けず。


971 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:40:01 JvfM/lMk0

――どうでもいいっての。

偽りとはいえ、日常を模っているからなのか、接している人間も人間らしい。
全部が人形だというのに。それらが知人や家族を模しているだけで忽ちに情が湧いてしまう。
結局、未央はちっぽけで膝を抱えて俯いている少女でしかないのだ。
そんな自分にさえ気にかけてくれるクラスメイトがいるのに、一歩も動けない。

「はぁ、明日はどうしよう」

ふと携帯を見ると今日も電話がかかってきている。
どうせ、学校をサボっていることを問い質す電話だろう。
数秒かけ直すべきか考えたが、面倒臭いから放置することに決めた。
携帯を投げ捨てて、未央は見なかったことにした。
いつもなら適当に電話越しであしらってしまうのだが、今日はそういう気分ではない。
ぐちゃぐちゃにかき混ざって何を話していいかわからないし、下手をするとボロが出てしまう。

「行きたくないなぁ、学校」

センチメンタルな心で、クラスメイトである彼女の煩い小言を聞くのは少し身体が堪える。
おせっかい、ご苦労様なことである。
委員長だからなのか、それともプログラムされているからなのか。
どうでもいい、下らないと言いながらも、既に考えが聖杯戦争に囚われていることに気づかないまま、未央は二度目の睡眠に入っていく。









972 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:42:32 JvfM/lMk0
授業が始まる前の休み時間。【前川みく】は返ってこない電話に、ため息をつく。
本田未央のサボタージュは今日も変わらない。
クラスメイトとして設定された知り合いの怠惰な生活態度に物申さんと、毎日電話をしているのだが、効果は今日もなかったようだ。

「前川さんがげっそりとしているってことは、また本田さんのことかい? 気分が優れないなら保健室でも行ってきたら?」
「あぁ、竜ヶ峰クン。みくは平気平気、ただ未央チャンがね……」

困ったような笑顔を見せてくる彼は【竜ヶ峰帝人】。みくと同じくクラス委員をやっている男子生徒だ。
短めの黒髪に幼気が残る顔。人懐っこい笑顔は、可もなく不可もなく普通である。
女装でもさせたら意外といけるのではないかと想起させる華奢な体格は、もっとちゃんとご飯を食べろと口出ししたくなる。

「学校には来ないと駄目って言ってるのに、効果がないの」
「優しいね、前川さんは。本田さんのこと、本当に気にかけているんだね」

やれやれとジェスチャーし、げんなりとした表情を見せるみくに、帝人は苦笑する他なかった。
未央に対してうざったいくらいに気にかける彼女のことはクラス委員という薄い仲である帝人でさえもわかるのだ。
お節介が過ぎる。言ってしまえばそれだけだが、気にかけられるというのは悪いことではないだろう。

「自宅には行ってみたの?」
「インターホン鳴らしても返事なし。連打したのに」
「それって逆効果なんじゃ……」
「これぐらいしないと出てこないよ。未央チャン、ヘタレだし」

みくは鼻息を荒くし、帝人に対してぐちぐちと未央の悪い点を挙げ連ねる。
とはいっても、その悪い点もある種の親しみを込めたものだとわかるから、帝人も嫌な気分にはならなかった。

「……それに、自己満足って言われちゃうかもだけど、みくは未央チャンと学校に行きたいし」

はにかみながらそう言葉を続けるみくの姿は、何故だか知らないかとても輝いて見えた。

「はは……次こそは前川さんの気持ちが伝わるといいね」
「うん、みくは食らいついたら離さないことを教えてやるんだにゃ!」
「…………にゃ?」
「あ、今のなしなし、なしだから」

何とも言えない気まずさを感じ取ったのか、帝人はそそくさと自分の席へと戻っていく。
もうすぐチャイムも鳴り、授業が始まる。日常を演じる作業を、みくは今日も繰り返す。
それは今の自分が置かれている現状から逃げ出したいからなのか、それとも、演じていないと狂ってしまいそうになるのか。
みく自身も追い詰められているからか、何が正しいのかわからなかった。


973 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:44:20 JvfM/lMk0

(人のことを気にする余裕なんてないんだけどなぁ。少しでも知っている人に会いたいだなんて、みくも参っちゃってるのかも)

聖杯戦争。限られた期間の中、互いの願いを懸けて生命を取り合う戦争に、みくは決意を定められずにいた。
自分以外の全員を殺せば、願いは叶う。されど、その代償にみくは一生人を殺したという十字架を背負わなくてはならない。
人を殺すということは、みくの中では最大級の禁忌であり、割り切れないものだ。
それは現代に生きる少女からすると当たり前のことであり、覆せない現実だった。

(どうするべきかなんて、決まってるのに。それに、あの【ルーザー】のヘラヘラした顔を思い出すとどうも調子が狂うにゃあ。
 何が負け犬と負け猫だにゃ。まだ、みくは負けてないもんっ!)

成した結果には常に過程が付き纏う。
アイドルになるという結果には、他の参加者達の死の過程がくっついている。
聖杯に注がれたたっぷりの血を飲み込む覚悟を、みくは持てない。
考えても、考えても、みくの胸に詰まった蟠りは、未だ消えなかった。
ぐわんぐわんと頭を揺らし、何となく教室の外に視界を移すと、生徒会長の少年がちらりとこちらを覗いていた。
大方、風紀の見回りであろう。朝の短い休み時間の合間を縫ってご苦労様なことである。
利発そうな顔立ちに成績優秀、運動神経もいいといった欠点が見当たらない完璧超人だ。
みくもあれだけ頭が良かったら迷わずに済んだのかなぁと、取り留めのない戯言を口にした。









974 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:46:40 JvfM/lMk0
(数日間過ごしてわかったけど、死後の世界にあった学校とは違うな)

記憶を取り戻した後、【音無結弦】は現状の把握と自分が通う学園を熟知することに努めていた。
まだカウントダウンは成されていない。幾分かの猶予がある内に、少しでも有利な環境を創出したい。
そう考えた音無が最初に始めたことは環境の熟知だった。
これより先、この街は聖杯戦争という殺し合いの舞台となる。
当然、音無が通っている学園も例外ではない。
ならば、出来る限りの情報を集めておくことで後々有利な戦場を構築するのは良策なはずだ。
放課後は街に出かけ、最低限何の施設があるか確認程度はしておくつもりである。

(いや、個性的な面々がいるってのは同じか。アイドル候補生なんてものはまだ可愛いものだ。
 中等部には【子供先生】や【ゴーグルを付けた女子中学生】がいるらしいし、マスター候補はこの中にでも多くいるのかもな。
 もっとも、そんなあからさまな奴がマスターとは早計に過ぎるけど)

生徒会長という役柄を与えられているからか、学校内の事情は色々と入ってくる。
私的な悩みから公的な悩みまで、様々だ。
これには音無が真面目ではあるが、気さくに付き合えるといった評判がある。
そもそも、生徒会が抱えるキャパシティを超えている気がするが、過剰に気にする程ではない。
いざとなれば、他の役員に放り投げてしまえばいいと考えている為、音無も気が楽だ。

(生徒会長だからこそ、情報を集めるには適した立場だし、周りの人間から信頼もされる。やることも多々あるが、リターンもちゃんとある。
 この役柄にあてがわれたのは運が良かった、か。まあ、こういう立場の方が様々な方面に付き合いも出来て、あやめを『紹介』することができる)

そして、並行してあやめともコミュニケーションを図り、能力について聞き出している。
あやめの特性上、人との繋がりを失くしては音無は生き残ることは出来ない。
誰かと繋がり、彼女を周りへと伝え続けるには人を侍らせておかなければならない。
故に、音無は生徒会長を真面目に演じる必要があった。


975 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:48:20 JvfM/lMk0

(あやめの建前は幾らでも作れる。妹だったり、従姉妹だったり。やりようによっては、善良な参加者を装える。
 他の参加者にお人好しな奴が混じっていたら上手く利用できるかもしれない)

彼女の性格上、人前に出すということは避けたいが、生憎と自分の生命もかかっているのだ。
出会った当初よりは打ち解けてはいると思うが、信頼を全幅するにはまだ至っていない。
その辺りはこれから先も絆を深めることで解決するつもりだが、どうも彼女を見ていると毒気が抜けてしまう。

(重ねているのかもな。初音を)

正直、病気がちだった妹とあやめは似ている。気弱で儚げな、華奢な少女。
それはかつて自分が人生の全てとさえ称せた妹を生き写しにしたかのようだ。
感傷だとわかっていながらも、音無は、あやめに対して初音を重ね見ている。
あの時無くしたものを、今度こそ護れるかもしれない。
出会った当初はともかく、今の音無はあやめのことを奏の元に辿り着く為の踏み台とはとても思えなかった。

(――これで、ますます負けられなくなっちまった。どうやら俺は思っていたよりも欲張りらしい)

ならば、勝ち取るしかない。あやめも含め、二人で幸せを掴むのにはやはり、聖杯が必要だ。
お互い死者となって、未来がない存在だから。戻る場所がない亡霊だから。
奇跡に請いへつらってでも、絶対に死者の運命を変えてやる。
犠牲が必要なら、覚悟がなければ進めないなら、音無結弦は迷い無く一歩を踏み出すだろう。

(……勝つぞ、この戦争)









976 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:50:14 JvfM/lMk0






夢に、堕ちていく。
【霧嶋董香】はゆったりとしたモラトリアムに顔を顰めていた。
偽りとはいえ、高校生活を真面目に過ごしているのは習慣からなのか。
もうすぐ聖杯戦争が始まるというのに、董香の動きは緩慢だった。
机に突っ伏し、窓から見る空は呆れるぐらい快晴だ。
思わず、だらしない格好を晒してしまう程に董香は腑抜けていた。

「やり直したいと願うのは、間違いなのかな」

囁くような小さな声。震える手を無理矢理に抑えつけながら問いかけた言葉は弱々しく、うちひしがれている。

――畜生、私はまだ悩んでるのかよ。

この世界は残酷だ。力がなければ生き残れない。
弱者は搾取され、家畜以下の存在として侮蔑される。
何故、とは思ったことはなかった。
それは少女が生きた人生のなかで変わらぬ論理として定着していた絶対であり、不変である。
否定はしない。少女もそれが正しいと考えているし、この身で体現してきたから。

(けれど、またチャンスが巡ってくるなら。もう一度やり直せるなら。
 私は変えたい。クソッタレな世界を変えて、また――皆と、あんていくで過ごしたいんだ)

最良の選択をしてきたつもりだった。後ろを振り返ることなく駆け抜けたはずだった。

(私は聖杯が欲しい。奇跡でもなんでもいい。縋れるなら、恥も外聞もなく縋ってやる)

けれど、後悔がないとは言い切れなかった。
今更、人を殺すことに迷っているのか。それとも、聖杯なんてある訳ないと疑っているのか。
もしもの話だ。
笛口雛実のような子供が参加者の中に紛れ込んでいたとしたら、どうする?
日常を取り戻したいと願っている董香と同じ存在がいたら、どうする?
自分は何の躊躇もなく殺せるのだろうか。

「…………ッ」

殺せるとは到底言えなかった。
カネキやアヤトからすると、自分はとんでもなく甘い喰種であって。
願いの為に一直線に走れる程、強くない。
どれだけ取り繕っても、董香は弱くて浅ましいガキなのだ。
仲間達との別れを許容できない、未熟者。
それが、霧嶋董香だった。









977 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:53:28 JvfM/lMk0
【神楽坂明日菜】は今の環境を良しとは思えず、どこかむず痒いと感じている。
【ネギ・スプリングフィールド】は今の環境を夢だと断じながらも、宙ぶらりんであると感じている。
【長谷川千雨】は今の環境をクソッタレと断じ、絶対にやり直そうと決めている。
必然、彼らの間には微妙な齟齬が生じることになる。

「アスナさん……」
「あぁ、もうっ。そんなにひっつかなくても私は逃げないわよ」

少年と少女達は子供だった。
どちらもまだ幼く、頑なに尖っていた意志の中身はヒビ割れていた。
行動次第でどうにでも転がる脆い子供達。
くだらねぇ、と吐き捨てる千雨の呟きは彼らには届かない。

「ごめんなさい。…………ごめんなさい」
「そんな顔しないでよ、もう……。別に嫌な気分じゃないからいいって」

けれど、少年少女達は互いがマスターであることに気づいていない。
お互いのことを知っているが故に。
消しきれない甘さがまだ残っているが故に。
知り合いが争わなくてはならない相手ではない、と蓋をしている。
生き残れるのはただ一人。
少年少女達の誰一人も欠けずに元の日常へと帰れる選択肢は存在しないのだから。
今の関係も甘い泡沫の夢であり、聖杯戦争が始まったらこんな関係ではいられない。
蓋をした真実に気づかず死ぬのか、それとも気づいた末に戦うことになるのか。
少年少女達はそんな絶望なんて吹き飛ばすと言うだろう。諦めずに貫けば、きっと帰れると信じるだろう。
それでも、と少年少女達が進む道に先はないにも関わらず。

「――――千雨さん?」
「何でも、ねぇよ」

どうしようもない現実を既に味わい、黒の意志を秘めているのは千雨だけだった。
墜ちかけた覚悟は、再び浮上する。










978 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:55:33 JvfM/lMk0






「ホンマ、ありがとうな。スタンさん」
「いいっていいって。困った時はお互い様、だろ。だから、気にすんなって」

陽射しが照った並木道を二人の少年少女が談笑しながら歩いていた。
【スタン】と呼ばれた少年はニット帽を深めに被り、ラフな服装で身を固めている。
その姿は今風の少しおちゃらけた若者といったものだが、醸し出している雰囲気はいたって温厚な草食少年である。
そして、もう片方の車椅子の少女は照れくさそうに笑うスタンをニコニコとした顔で見つめていた。
もこもこニットのキャミソールにリボンの付いたスカートは可愛らしさをこれでもかとアピールしており、幼いながらも見惚れてしまう。

「そないなこと言わんといてや。私、すっごく助かったんやで?
 あのまま誰も通りかからず放置されていたら泣いていたかもしれへん」
「そうか? とうか、俺じゃなくても誰かが助けてくれたさ。大袈裟だよ、はやては」

事の始まりは数分前。
【八神はやて】は行きつけの八百屋で買い物を行った帰り道、車椅子の車輪を溝にはめてしまい身動きが取れずにいた。
嵌まった車輪は動かず、はやての力では全く動かないものだった。
このまま、誰も通り過ぎなかったらどうしよう。そもそも、通り過ぎたとして助けてくれるのか。
過った不安が胸の内を染めていく時、たまたま通りかかったスタンが慌てて駆け寄ってきたのだ。

「大袈裟やないわ。助けてくれて、ありがとな」

そのついでに家まで車椅子を押しているのが顛末だ。
この程度の良いことはしたってバチは当たらない。
ほんの気紛れで助けた程度のことに、そこまで感謝をされるのはどうも恥ずかしい。
スタンは頬を掻きながら、照れくさそうにそっぽを向く。

「とりあえず、家まで送ってくよ。まぁ、それぐらいはするさ」
「そんな、悪いわ……スタン君にだって用事があるやろ。起こしてもらっただけでも十分やって」
「いいから! 用事って言っても急いでる訳じゃないんだし、この程度のお節介はかけさせてくれよ」

この聖杯戦争に呼ばれて以来、両者共にサーヴァント以外とこんな穏やかに会話をしたのは初めてだ。
そんな理由からか、はやてに対して、必要以上に近づいてしまった。
無論、彼の根幹にある心優しさも拍車をかけているのだが、結果としてはオーライである。
こんな少女がマスターとして呼ばれているはずがないという油断もあり、スタンは何の躊躇いもなくはやてと接していた。


979 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 19:58:01 JvfM/lMk0

「……はぁ、お人好しが過ぎるわぁ。そんなんじゃ貧乏くじばっか引いてまうよ?」
「可愛いお姫様のお手間を少しでも減らせるならこのスタン、何よりも嬉しく思うのです」
「似合わへんわー。言い慣れてないことを無理に言う必要はないんやで?」

じっとりと目を細めるはやては、表面上は笑顔である。
足が動かないといったハンデをものともせぬ明るさを、見せてくれる。
とてもじゃないが、この喜怒哀楽が激しい少女が偽りとは思えない。
けれど、参加者以外は予め造られた存在であり、本物ではないことがスタンの心に影を落とす。

「というか、スタン君、学校は?」
「……黙秘権を行使するということで.そういうはやてだって学校はどうしたんだよ?」
「私は休学中。足がこれやしな。わざわざ学校に行くよりも自宅学習の方が効率いいし」

車椅子を使っているということは当然、彼女の脚は動かない。
そんな状態で学校に行っても、他者に迷惑をかけるだけだと知っているのだろう。
些か、不躾な発言だっただろうか。
はやては気にした風を見せていないが、やはり思う所はあるはずだ。
ここは年上として、毅然とした態度で彼女に接するべきである。

「………そっか」

とはいっても、年上だからといってスタンは未だ少年の域であり、女の子に対してパーフェクトな気遣いなどできるはずもなく。
ただ静かに頷くことしかできなかった。
何か元気づける言葉を言えたらいいのに。
例え八神はやての存在が偽りであっても、今こうして二人で歩く時間は本物だ。
そんなことを言った所で、彼女に伝わるはずはない。
笑顔の形をしているはずの顔は、道化師よりも不細工だ。
誰かの心を不安にさせる事しか出来ない、不完全で歪な笑顔だった。

「そないな顔せーへんの! 私が気にしてへんのにスタン君が暗い顔になるんはおかしいやん?」
「お、おう」
「全く、年上なのにスタン君はダメダメやな〜」

けらけらと笑うはやてに、スタンも曖昧に笑いかける。
やはり、気にするものは気にしてしまう。
七日間だけの生命であるのに、彼女は懸命に生きている。
自分とは違って、彼女は真っ直ぐに力強く生きている。それが、とても眩しくてたまらなかった。

「そや! 今度、お礼も兼ねて家で手料理振るまったる! グッドアイディアや、私!」
「別にそこまでしなくてもいいって。お礼をされる為に助けたんじゃないぞ、俺は」

言葉にしたことは本心ではあるが、別の思惑もある。
聖杯戦争がこれから始まるのに、あちこちにふらついていたら関係のない人まで巻き込んでしまう。
それは、はやてにしても同じであり、この少女を護りながら自分が戦えるとも思えない。
だから、彼女を戦火から遠ざけるのが正しい選択肢だ。
彼女と戦場で会うことはないと確信しているからこそ、スタンは目を背け続ける。









980 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 20:01:21 JvfM/lMk0





雲一つない青空だというのに、空模様とは裏腹に【仲村ゆり】の顔は曇っていた。
それはもう、暑い夏に買ったアイスを転んで落としてしまったぐらいには曇っている。

「だ〜〜〜〜〜っ! 広すぎるのよ、この街! もっと狭くしなさいよね!!」

奇しくも音無と思考が一致したのか、ゆりも聖杯戦争の舞台となるこの冬木市を隈なく調べるべく、街へと出ていた。
ただし、学校はサボっている。学校など別に行かないしどうでもいい。
言ってしまえばそれだけだが、そもそも授業を真面目に聞くことを良しとしないゆりが学校に行っても得るものは何もない。
立ち寄らない場所よりも立ち寄りそうな場所を重点的にマークするべきだ。
そう決断してしまえば、後の行動は早かった。

「これじゃあ、街を全部隈なく把握っていうのはきっついわね……」

学校をサボって、街の各場所を探索している中、腹に据えていたのが爆発したのか、ゆりは足踏みをして苛立ちを抑えている。
歯軋りし、顔を顰めっ面にしている美少女といえば絵面はいいが、如何せんこのような街中では大層目立つ。
そして、周りが見えてなかったのか、歩いてくる人にもぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさいっ」

どうやら尻餅をついてこそいるものの、怪我はなかったようだ。
ふと視線を向けると、金髪の少年が茫洋とした顔で此方を見つめている。
その瞳の中には光がなく、まるで死後の世界にいたNPCのように。

「……ああ、気にしなくていい」
「よかったぁ。今後は気をつけるわっ。ホント、ごめんなさいね」

交わす言葉など一言で十分だった。
ゆりと金髪の少年――【ボッシュ=1/64】はまだ交わる時ではない。
このような偶然から始まる出会いは、彼らには似合わなかった。
ゆりはボッシュを一瞥するだけに留まり、ボッシュに至っては振り返ることすらしない。
興味が無いことに時間を割く程、彼らに余裕はなかった。
風が吹く。温かくも何処か寂しげな思いを乗せた風が彼らの間を分かつように。

「――絶対に、空へと辿り着く」

ボッシュの呟きは誰にも届かない。
ゆりにも、自分自身にも、この世界にいる道化師にも。
彼がその言葉を投げつけるのは唯一人、彼と最後まで横に並び立てていた相棒だけだ。
綺麗な空の下、血霞が舞い散る戦場で再び相見えることを夢見て、ボッシュは空虚な自分自身に意志を灯す。
こんな紛い物の空ではない本物の青を、この手に。








981 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 20:03:48 JvfM/lMk0
「ミサカーっ! 一緒に帰ろうー!」
「ほうほう、一緒に帰宅とは女子中学生らしいです、とミサカは気さくに挨拶を交わします」

授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、各人が思い思いの行動を始める時間帯。
騒がしく、姦しい会話が各地で繰り広げられている中、夕日が照った廊下で二人の少女が仲睦まじく歩いている。
【南条光】と【ミサカ10032号】はクラスメイトだ。
たまたま席が隣同士の彼女達はなぜかウマがあった。
最初は忘れたシャープペンの貸し借りだったり、一緒に昼食を共にするといったことを経て、今ではそれなりに良好な関係になっていた。
南条は天真爛漫、ミサカは冷静沈着な性格であることから彼女達の印象は正反対に見える。
けれど、不思議と会話が弾むのだ。
大抵は南条が話して、ミサカが聞き役に徹しているスタイルではあるが妙にマッチしている。

「なぁ、ミサカー。聞きたいんだけどさー」
「はいなんでしょう、答えられることなら大抵は答えますよ、とミサカは自分の寛大さをアピールします」

もっぱら、話す内容は南条が好きな特撮やアイドル活動など、マシンガンのように撃ち放たれる南条の言葉にミサカが相槌を打ちながら聞くだけだ。
だが、ミサカの顔に苦痛はない。自分の知らなかったことを南条はたくさん知っている。
代替品であり消耗品。ちょっとお高い実験動物程度の扱いであったミサカにとって南条の話は興味深いものばかりだ。
恵まれているとはいえない日常を歩んできたミサカには、この世界は初体験ばかりであった。
何せ、友達と一緒に帰り道を歩くことすら、彼女は経験したことがなかったのだから。
楽しいのだ。隣を歩く親友が嘘であっても、ミサカは今を楽しんでいる。
元の日常では味わえなかった――人間としてありきたりな毎日。
ああ、そうか、と。これが喜びなのだ、と。
ミサカは頬を少しだけ柔らかく歪めて、南条に笑いかけた。
それは決して代替品でも消耗品でもない純粋な人が浮かべる表情であった。

「ミサカの頭に着けてるそれってゴーグルだよな? かっこいいな、それっ」
「そうでしょうか、ミサカに似合ってますか、とミサカは照れ照れしながら恥ずかしげに答えます」

そろりと触ったゴーグルは冷たく、ミサカの頬の熱と比べひどく現実味がなかった。
これは武器。聖杯戦争を勝ち抜く為に使う人殺しの武器。
南条には絶対に言えない日常の裏側で活躍するものだ。

「うん、似合ってるぞ! アタシの目に狂いはない!」

キラキラとした目でミサカを見る彼女は純粋だ。
暗く淀んだ世界を一変させるのではないかと錯覚するぐらい、輝いている。
きっと、彼女みたいな人間たくさんいれば、この閉じられた都市で行われる聖杯戦争も打開できるのかもしれない。
呆れる程に、真っ直ぐな彼女の目は綺麗で、ミサカは希望を垣間見た気がした。









982 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 20:06:33 JvfM/lMk0
「まさかこんな所でも働くたァ驚きだぜ。工場勤務、性にはあってるけどよ」

夕暮れの町工場。
錆のついた壁に絶え間なく動く機械が所狭しと置かれている中は正直いって快適ではない。
けれど、【ラカム】にとってはそれはもう慣れた環境だ。
くるくるとペンチを回しながら独り言ちる程度には余裕がある。
もっとも、嫌そうの表情をしながらも、その言葉の節々には喜びが混じっていた。
元々、飛行機をいじっていた身として、工場で働くことに苦痛はない。
ああ、でも戦いながら働くのは辛いよなァと、これからの道筋の見えなさには少し辟易する。

「とまあ、こんな感じっすわ。下っ端の仕事を見ていて得るもんなんて無いと思いますがねぇ、社長?」
「何、下請けの工場を視察するのも有意義な時間さ。
 サボタージュを行っている者がいないか、抜き打ちチェックの意味も込めているがな」

そんな姿をスーツ姿の女性――【神条紫杏】はにこやかな笑顔で見つめていた。
嫋やかさを感じる大人の笑みだ。ラカムの仲間でも、ここまで表情が作れるのはいないだろう。
年下だというのに、多種多様に表情を作れる我らが社長はどうやら演技派なようだ。
できることならば、こんな閉ざされた街ではなく、外の広い空の上で出会いたかったものだが。

「その心配はなさそうだ。特に、君には期待しているんだ。この工場の中でも君は優秀だからね」
「買いかぶり過ぎっすよ。俺は大したモンじゃねぇっての」

もっとも、偽りとはいえ人間であることには変わりない。
近づけるなら、近づこう。その華奢な手を優しく握りしめる程度はしても、男の甲斐性として許されるだろう。
偽りの存在と一夜の関係みたいなロマンスも中々に悪くはない。


983 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 20:08:40 JvfM/lMk0

「しかし、貴方のような若い女性が社長とはまだまだ世界は捨てたもんじゃないですね」
「ははっ、それこそ買い被り過ぎだ。私は大した人間じゃない。むしろ、つまらないとさえ思う」

このやり取りも言ってしまえば、茶番だ。
聖杯戦争が始まれば、彼女とも会うことはないだろうし、そんな余裕も壊れてしまう虚しさが漂っている。
後戻りはいらない。選択肢など最初から一つしか無い。

「俺はそうとは思えないんですがね。貴方の目には意志がある。空を高速で飛ぶ飛行船のように、ね」
「ははは、好きに解釈してくれていい。好意的な目で見られるのは、嬉しい事だからな」

ラカムはまだ神条紫杏の本質を知らない。
血で濡れた覇道を突き進む彼女は、迷いをとっくに切り捨てている。
自分でさえも使い捨ての道具であり、理想を叶える為なら何だってする。
過程よりも結果だ、終わりよければ全てが良しとなる。
高々、参加者全ての犠牲で世界が安定状態になるなら、安いものだ。

――その過程で切り捨てられるものに、自分も含んでいる。









984 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 20:11:18 JvfM/lMk0
外は既に真っ暗闇。夜の時間である。
歓楽街が喧騒に包まれ、酔客が多く現れる馬鹿騒ぎは各居酒屋で繰り広げられているだろう。
そして、【千鳥チコ】はそんな数ある居酒屋の中でも行きつけの小さな居酒屋で酒を嗜んでいた。
薄暗い店内、妖しく光る電灯、並ぶ酒瓶。
偽りとはいえ、酒は元いた場所と変わらない。
飲めば酔えるし、味も良質。将棋にこそ劣るが、酒も悪くはない。
モラトリアムが終われば、嫌でも戦争に酔ってしまうのだ。
酒で酔うなんて贅沢、もうすぐ味わえなくなる。
ならば、今の内に飲めるだけ飲んでおこう。
チコは舌を転がし、アルコールの熱さに甘美なる声を上げる。

「はは、いい飲みっぷりですね、ご婦人」
「世辞はいらないよ。どうせこんなババァが一人で酒なんてみみっちいとでも言うつもりだろう?」

ふと横を見ると、大柄な体格の外国人が、ウイスキーのグラスをぐいぐいと傾けている。
いわゆる、一気飲みというやつだ。それなりに強い酒であるというのに、外国人の男はものともせずに喉に流し込んでいく。

「まさか。酒を嗜むのは誰でもウエルカム。じゃないですか、ご婦人程の器量があれば、引く手は数多だと思いますが?」
「口が上手いねぇ。そういうことはもっと若い女に言うのが定理だと思っていたが、私もまだまだ捨てたモンじゃないってか」

からからと笑い、チコはお替わりを頼み、外国人も同じくお替わりを頼む。
鋭い視線が交差する。それは酒飲みの意地か、それともちょっとした戯れか。
グラスに酒が注がれるのと同時に、彼女達の笑みが更に深くなる。

「けれど、残念。私には心に決めた男がいるんでね。アンタの気持ちには答えられないよ」
「残念、ふられてしまいましたか。もっとも、口説いてるつもりはなかったんですけどねぇ」

お互い、息をつかぬ一気飲みをし、再びお替わりを。
注がれるのと同時に、グラスを傾ける。
これを数回。顔が火照る程度に繰り返し、最後に一言。

「では、せめてもの餞に。この卑しい輩に名前をお教え願えませんかね」
「はっ。次会えたらだね。そうしたらある種の運命を感じちまうかもしれないだろう?」

そして、チコは立ち上がり、会計を済まし、颯爽と居酒屋を後にする。
その立ち振舞いには先程まで酒を飲んでいたとは思えない凛とした姿だった。

――ババァだけど、いい女だ。後もう少し若けりゃなあ。

外国人はほくそ笑む。心底面白いといった表情を作り、からからと嗤う。
【アリー・アル・サーシェス】という傭兵は何よりも楽しいことが大好きだ。
戦争が好きだ、武器が好きだ、血の匂いが好きだ、絶望に塗れるクソッタレが好きだ。
もしも叶うならば、聖杯戦争に参加する奴等も、チコのように食いごたえがあることを。
そう願って、サーシェスは再度酒の入ったグラスを傾けた。









985 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 20:14:33 JvfM/lMk0






『盲目なる生贄達は既に盤上へと配置され、ルールも刻まれ、既に準備は整った』

道化師【グリム=グリム】は総てを見下ろせる高みにて、ただ笑う。
嘲り、蔑み、哀しみ、楽しみ。
人に生じる感情をごちゃ混ぜにし、彼は俯瞰するだけ。
生贄達がどんな夢と願いを貫くかを楽しみたい。
余計な茶々を入れど、本質は傍観だ。
過剰なルール違反がない限りは、行く末を楽しむ舞台装置に過ぎない。

『第一の夜を盲目の生贄達が踊り狂う。遍く願いよ、輝くが良い。
 これこそが、聖杯戦争の始まりである』

集められた参加者達に届くメッセージ。
始まりの合図は、唐突に。
思い思いの夜を過ごしていた参加者達の表情は引き締まる。

『現在時刻を記録しよう。午前0時――カウント・ダウンは今此処に始まった』

時計の針が動く。
カチカチ、カチカチ、カチカチ。
煩いぐらいに耳に入る針の音など関係なしに、道化師の声は依然として続いている。

『世界が望んだ【その時】だ、【鐘】よ、震えるがよい』

鐘の音が鳴り、昨日への道は粉々になって砕け散った。
縛られた世界、箱庭に閉じ込められた生贄達は戦う他ない。
願いに焦がれた愚者が黄金螺旋階段を登り切るまで、聖杯戦争は終わらない。

『聴こえるはずだ、生贄達よ。これより先は、戦争だ。一心不乱に足掻く、戦争だ』

盲目で浅ましい愚者達は、目指す他ないのだ。
螺旋の果てにある願いを求めて。

『さて。今宵の恐怖劇の幕開けだ。黄金螺旋階段の果てに、きみたちの願いはある』

喝采無き戦場で、今日もまた、聖杯戦争が繰り返される。


986 : 黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm- ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/05(日) 20:16:57 JvfM/lMk0
投下終了です。

ルーラー:グリム=グリム

セイバー:仲村ゆり&斎藤一

アーチャー:千鳥チコ&今川ヨシモト、霧嶋董香&ヴェールヌイ、スタン&瑞鶴

ランサー:ネギ&金木研

ライダー:ラカム&ガン・フォール、南条光&ニコラ・テスラ、長谷川千雨&パンタローネ

キャスター:八神はやて&ギー、神楽坂明日菜&超鈴音

アサシン:竜ヶ峰帝人&クレア・スタンフィールド、神条紫杏&緋村剣心、
     音無結弦&あやめ、アリー・アル・サーシェス&キルバーン(ピロロ)、キリヤ・ケイジ&Tー1000

バーサーカー:ボッシュ=1/64&ブレードトゥース

エクストラ:御坂妹&エレクトロゾルダート、前川みく&球磨川禊
      、北条加蓮&鏑木・T・虎徹、本田未央&加藤鳴海

以上、21組で本企画を進めようと考えております。

予約は4/7/00:00より受付させていただきます。


987 : 名無しさん :2015/04/05(日) 20:21:54 n7rsRVoU0
アサシン率高い上に危険な奴ばっかじゃねぇか


988 : 名無しさん :2015/04/05(日) 20:22:49 n7rsRVoU0
すみません、誤爆しました


989 : 名無しさん :2015/04/05(日) 20:36:51 QqU2CjNE0
発表お疲れさまです!
やっぱりこういうSS形式は凄くワクワクするなぁ


990 : 名無しさん :2015/04/05(日) 20:50:17 ETO3kDfw0
発表投下乙です!
今後の展開が気になる組み合わせが多いなぁ
学生がかなり多いしこの聖杯も学校周辺が激戦区になりそうだ


991 : 名無しさん :2015/04/05(日) 22:48:54 kPcLpqTw0
おお、まさかのSS形式での発表…!
お疲れ様です!めっちゃわくわくしました!
これにて開幕ですね


992 : 名無しさん :2015/04/06(月) 00:04:58 hBPhzP9.0
質問なのですが、物語の開始時刻や地図などの設定はありますか?


993 : 名無しさん :2015/04/06(月) 00:49:16 7uoBY7iQ0
投下乙です。全員登場の話は燃えるし、その構成力にも惚れ惚れしますわ

質問と言うより希望ですけど、当選した参戦作品の媒体の一覧を用意できると嬉しいかも
原作が漫画かアニメかゲームかとか、把握に要する時間の目安とか
以前他所のスレで書き手の方々が各々で紹介していた感じで


994 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/06(月) 01:05:10 p8l8dVM20
>>992
物語の開始時刻は午前0時の深夜開始ですね。
地図はwikiの方で載せておいたのでよろしければ御覧下さい。

>>993
把握時間に関しては個人差があり一概に当てはまるかわからないのでやめておきます。
一応、参戦作品の媒体は乗せようかと思いますので何卒ご容赦願います。


995 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/06(月) 12:19:33 p8l8dVM20
念の為に次スレを立てておきました。
こちらは予約などの書き込みで埋めるつもりです。


996 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/07(火) 00:00:12 WBpmlN2k0
本田未央、前川みく、ルーザー(球磨川禊)を予約。


997 : ◆ZjW0Ah9nuU :2015/04/07(火) 00:17:11 V5dM5.fE0
御坂妹、レプリカ(エレクトロゾルダート)で予約します

学生達が通う学校の位置は地図のどこ辺りにありますか?
一応どの地区にあるかだけを言ってくださったらこちらとしても助かるのですが…


998 : ◆MZYnmmtZ2U :2015/04/07(火) 00:26:01 WBpmlN2k0
おっと、申し訳ない。
一応、地図上では学園はC-2に位置しております。
小中高一貫です。


999 : ◆wKs3a28q6Q :2015/04/07(火) 00:29:04 yp5JL13U0
神楽坂明日菜・キャスター(超鈴音)予約します


1000 : ◆GO82qGZUNE :2015/04/07(火) 05:41:34 YituExeU0
音無結弦・アサシン(あやめ)予約します。


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