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聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚

1 : ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:50:11 pE5vBz1A0








――――神が世界を五分前に創造された可能性を、誰も否定することは出来ない。







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2 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:51:48 pE5vBz1A0

突然、激しい鈍痛が頭に広がった。
立ち眩みという言葉では生ぬるい。
視界が一瞬ブラックアウトし、すぐに元の東京の姿に戻る。

たたらを踏み、その姿勢を維持する。
ゆっくりと、空を眺めてみせる。

吸い込まれそうな真っ青な空。
ポツリポツリと孤独に漂う浮き雲。
空を狭める無数のビル群。

その中で顔を見せる、輝く紅い満月。

何も変わりはしない。
ふぅ、と息を吐く。
今日もまた、東京は紅い満月に見守られている。
少女は隣を歩く、友人と会話を続けた。

「ねえ、知ってる。紅い満月の話」
「なにそれ?」

無愛想に顔を歪めている少女と、ニコニコと笑みを絶やさない少女。
対照的な二人は、しかし、距離を縮めて歩いている。
あるいは肩が触れ合うほどの距離だ。
息も触れ合うような近さで、ニコニコとした少女が話を切り出した。

「月のない夜に出てくる紅い月が、夢を叶えてくれるんだってさ。
 その満月を見た、どうしても叶えたい願い事を持ってる人はさ」


――――月に運ばれて、月が願いを叶えてくれるんだってさ。


それは誰かが言い出した、与太話。
電子の海を潜り抜け、0と1のノイズが生み出した途方も無いお伽話。
自らの体内に埋め込んだはずの、その『血』とも言える魔術回路を電子へと移したウィザード。
すなわち、電子の世界は魂の世界。
0と1の電子ノイズに隠された、魂の数字。

「新月なのに、なんで満月が出てくるのさ」
「叶うことのない夢が叶うんだから、月のない空に満月が出てもおかしくないでしょ?」
「なんだ、そりゃ」

呆れたように肩を落とす少女と、クスクスと笑う少女。
少女が言うには、見えるはずのない事象を観測した時。
叶うはずのない夢を願った時。
人は月へと運ばれるのだという。

「アホくさい、ウサギが火に飛び込んでやっと行ける場所に、あたし達は月を観るだけで行けるって?
 それはちょっと人間様の傲慢なんじゃの?」
「でもさ、そんな勇気のあるウサギが行ける場所だからさ」

一方の少女は、にこりと笑ってみせる。
澄んだ笑顔だった。
ひょっとすると、この少女も『叶うことのない夢』を願っているのかもしれない。

「きっと月は楽園なんだよ。
 きっと、月は全てが叶う場所なんだよ」

少女たちは、山手線を走る電車を背負いながら、街へと溶けこむように消えていく。
少女たちの背後の、さらに奥。
ガタゴト、と、激しい音を鳴らす電車の奥に、0と1のノイズが走った。

「あたしは別に月に行きたいとは思わないけどなぁ」
「えー、なんでぇ?」
「だって、ここにアンタがいるし。月には居ないんでしょ?」

そのノイズには、誰も気づくことはなかった。
紅い満月だけが、全てを嘲笑っていた。
楽園はすでに、血と欲を求めていた。


3 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:52:29 pE5vBz1A0



   ◆   ◆   ◆



魔人アーチャー。
同年代の少女と比べても幾分小柄な体躯の少女が、そこに居た。
凹凸の少ない肉体に、ぴっちりと張り付いた着流しは血に染まっていた。
血の滴る愛刀、圧切長谷部を手持ちの布で拭う。
背後には不可解とも言えるほどに入り組んだ機械が、まるで人体のように幾多もの絡み合っている。
これは回路だ。
ある種のエネルギーを流すことで、奇跡を発動させる神秘の機関だ。

ここはある巨大なビルのワンフロア。
その名を言えば、誰もが知っているようなビル。
そのビルのワンフロアの全てを扱った、巨大な術式。

魔人アーチャーは赤い斑点のついた白い着流しを翻し、その術式と向き合った。
魔人アーチャーに、魔術の知識も、電気工学の知識も薄い。
しかし、『物を改める』ということにおいて、少なくとも、この日本において魔人アーチャーの右に出るものはない。

床に転がる自らの召喚主を爪先で蹴っ飛ばした。
血の斑点が着流しだけではなく、清掃を怠って久しい床にも彩られる。
恐らく、このワンフロアを貸し切り、たった一人でこの術式を完成させたのだろう。
しかし、魔人アーチャーはそんな狂気に染まった執念の果てに目もくれず、術式だけを観る。

微動だにせず、じっくり一時間は観察を続けただろうか。
やがて、魔人アーチャーは脚を動かした。
そして、大きく取り付けられた窓から外を眺めた。

窓から広がる空間は、人で埋め尽くされた雑多な空間。
人、人、人。
この魔都を構成しているものは、間違いなく『人』だった。
鎌倉に創りあげるのとはまたわけが違う。
北条氏の領地の更に奥、関東などという片田舎にここまでの都を創りあげたものだと感心する。

「タヌキもようやるわ」

半ば呆れながら、発展を遂げた魔都を眺める。
なるほど、確かにここは『穢土』だ。
ドロドロと、じっくりと時間を漬け混み熟成した怨念と、恵まれた生活から生まれる生温い怨念に塗れている。
上等な魔都だ。
徳川家康がどういう意図で、ここに居を構えたのかは不明だ。
しかし、悪くない。


4 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:53:04 pE5vBz1A0

「わしは良いと思うんだよね、こういうのもさ。なんか人間って感じじゃん」

ケラケラと笑いながら、血の滴る床を歩きまわる。
この潤沢な怨念を借りれば、いい願望機が出来上がる。
今の聖杯は良くない、未熟だ。
単調すぎる。
魔人アーチャー――――第六天魔王・織田信長が求めるものとは、少し違う。
滅びに向かう世界を救うには、こんなものではダメだ。
召喚者であり聖杯の起動者が未熟だったことも有り、願望機としても不十分なのだ。

「英霊の座なんてついてみるもんじゃの、なぁ、月よ」

南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれり。
月を眺めれば、そこには超級の聖遺物がある。
そこにあるものと、ここにあるものを繋げばいい。
恐らく、誰も知らない叛逆を、それでも月は観測している。
少々、月の力を借りなければいけない。

「永遠の満月の方程式……ってところかの」

『管理の怪物・ムーンセル』と『結合』し、聖杯戦争を開始する。
造られた偽りの魔都を再現し、その中に英霊の魂を溜め込み、そのデータをこの未熟な聖杯にダウンロードさせる。
その時、万能の願望器たる『聖杯』は完成するのだ。
必要だ、英霊の魂が。
無限の英霊を、永久への礎とする。
そのための戦争だ。
願いを満たすための、戦争を始めるのだ。

『人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり』

その瞬間、数多の並行次元の数多の人物が同じ夢を見た。

――――己が、蝶となる夢を見た。


5 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:54:09 pE5vBz1A0



   ◆   ◆   ◆



――――第玖百玖十玖號聖杯ノ創造、成功セシメリ。


万能の願望器、聖杯。
七騎の英霊を限定的な術で再現し、六騎の英霊を杯に捧げることで全ての
冬木市に眠る、アインツベルン・遠坂・マキリが誇る規格外の魔術礼装。
それは、しかし、ある人物によって盗まれた。
下手人がどうなったのかは、定かではない。
何者かに大聖杯の術式を託したのか。
無事、命を永らえて大聖杯の術式を起動せしめたのか。
『万能の観測機』足り得ない我々では、その未来を確定させることは出来ない。

――――我、英霊ノ召喚ニ成功セシメリ。

はっきりとしたことは一つ。
多くの地霊と怨念が跋扈し、同時に、科学が太陽を駆逐する眠らない魔都・東京。
この空間に大聖杯の術式が埋め込まれた。
そこから召喚された、一騎の英霊。
人類史に名を残した、まさしく『通常』の『例外』である英霊にふさわしい蛮行。

――――魔人ヲ名乗ル弓兵ノ英霊ノ召喚ニ成功セシメリ。

自ら『魔』を名乗るその英霊は、聖杯を、その手に染めた。
数多の欠陥を生み出し、数多の奇跡を植えつけられた聖杯。
月の観測機と並列直結された、規格外の願望機。
月のない空に浮かぶ、偽りの満月。
再現された数多の欲望渦巻く魔都・東京。


――――コレヨリ、聖杯戦争ヲ開催スル。


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6 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:55:00 pE5vBz1A0

【クラス】
魔人アーチャー

【真名】
織田信長

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具E〜EX

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、
逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

カリスマ:B-
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。

魔王:A
生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。
所有者は能力や姿が変貌してしまう。「無辜の怪物」とは似て非なるスキル。
魔人アーチャーの場合だと生前の本人が「魔王」を自称しているため任意で発動。
解除のコントロールが可能で、デメリット無しで恩恵だけを受ける事ができる。
この能力のお陰で、ロリからボインになったり、体形も自由自在。

天下布武・革新:A
古きに新しきを布く概念の変革。
相手が「神性」スキルを持つ者、「神秘」としてのランクが高い者、体制の守護者たる英霊などであればあるほど自分に有利な補正が与えられる。
これによって半神の英霊や神代の英傑、彼らが持つ宝具に対して絶対的な優位性を誇る。
反面、神秘の薄い近代の英霊を相手にした場合、何の効果も発揮しない。それどころか逆に自分の各種スキル、宝具の効果が低下する。

【宝具】
『三千世界(さんだんうち)』
ランク:E〜EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:3000人
長篠の戦いで信長が使ったとされる戦術「三段撃ち」。
自分の周囲に無数の火縄銃を配置し、両手に持った銃も合わせて全方位に向けた一斉射撃を行う。
本人は「三千丁の火縄銃によるマミさん的な『火縄=カタ』アクション」と評している。
武田軍騎馬隊を葬った逸話から「騎乗」の適性を持ったサーヴァントに対しては攻撃力が倍増する。
「神性」や「神秘」が低い相手には単なる火縄銃でしかないが、それでも三千丁の銃火器の止まる事のない一斉射は脅威である。


『第六天魔王波旬(だいろくてんまおうはじゅん)』
ランク:E〜EX 種別:対神宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
神仏を恐れず敵対する宗教勢力を悉く焼滅させたことで信長につけられた異名。
そして、生前に行った「比叡山焼き討ち」に代表される苛烈な所業を合わせた物。
「神性」や「神秘」を持つ者に対して絶対的な力を振るう存在へと変生する固有結界。
後世で民衆が彼女に対して抱き積み重ねた畏敬の念と恐怖により大焦熱地獄が具現化する。
神性を持たず神秘も薄い英霊は熱さを感じるだけで済むが、高い神性を持つサーヴァントは、この固有結界の中では戦うどころか存在を維持することすら難しい。
なお、発動中の彼女はビジュアル的に裸になるらしい。


7 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:55:14 pE5vBz1A0

【weapon】
主武装は火縄銃と日本刀。
スキル「天下布武・革新」の効力で、「神秘」や「神性」が高い相手ほど宝具の効果や能力値が強化される。
さらに同様の能力がある宝具も所持しているため、相乗効果により「神性」「神秘」の高い英霊に対しては絶対的といえるほどに相性が良い。
反面、「神性」を持たない相手や「神秘」が薄い近代の英霊に対しては性能が低下し、宝具の力も有効に発揮されなくなってしまう。
「相性ゲーとか得意なんだよネ、わし!!」とは本人の弁。

【人物背景】
見た目は若々しいが、年季の入った尊大な口調で話す。所謂「ロリババア」。口癖は「是非もなし」。
場面によって言い方が変わり、「是非もなしかな?」「是非もないかな?」「是非もないんだよ!?」と使い分ける。
史実通り新しい物・珍しい物好きで「旧弊とか仕来りとかバカなの?死ぬの?」とか言っちゃうレベルで型破りな英霊。
いつも着ている軍服は大日本帝国陸軍の物ではなく、ナチスドイツの制服を元にしたもので、かっこ良かったのでマスターに似た物を作らせたらしい。
曰く「ジャーマンのセンスハンパないな!」
また自己顕示欲が強く、「真の覇王」を名乗る。基本的に賑やかな事を好むが、昔好きだった敦盛は、踊ると死亡フラグが立つので自重しており、酒の席でも披露する事はない。
幼名は吉法師。父・織田信秀は当初、彼女の弟の信勝に家督を継がせるつもりだったが、時は乱世・戦国時代。
信勝程度では、先の世まで織田家を存続させていく事などできないと判断し、女の子なのに幼い頃から妙に大物臭を漂わせていた彼女を当主に据えた。
家督相続後は男性として振る舞い続け、実は女性であることを隠すため情報規制を敷いていた。
だが、それらの事情が『尾張の大うつけ』などと呼ばれる信長の若かりし頃の奇行として後の世に伝えられることになる。
また信長にまつわる数々の面白エピソードは、性別を隠すために家臣が敢えて広めた情報工作によって生まれた物であるとも言われる。
目的を遂げるためには手段を選ばず、逆らう者には苛烈な弾圧と冷酷な裁定を下す暴君。
だが滅びに向かおうとしている日本の未来を思って行動しており、救国の英霊であるのは間違いない。


8 : ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:56:05 pE5vBz1A0
OPの投下が終わりましたので、続いて基本ルールを貼らせていただきます


9 : ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:56:17 pE5vBz1A0

【ルール】
・版権キャラによる聖杯戦争を行うリレー小説です。
・参加者は世界を超えて現れた『紅い満月』に導かれて、聖杯内に再現された東京で最後の一組になるまで殺し合います。
・主従は『全18組』と考えていますが、場合によっては加減があります。
・基本的に一クラス二騎ずつですが、通常クラスの他にも『エクストラクラス』のサーヴァントの投下を許可します。
 ただしエクストラクラスが来なかったりした場合は通常の7騎から選びます。
・サーヴァントが投下されない場合、>>1がちまちま登場話を書いて投下するスレになります。


【設定】
・舞台はムーンセル・オートマトンと東京聖杯に再現された山手線区画内の東京です。
・聖杯戦争への参加資格は『月のない空間に紅い満月』を観測していることですが、割とその辺は適当でいいと思います。
・聖杯から毎日昼の0時に『通達』が行われます。

<時刻について>
未明(0〜4)
早朝(4〜8)
午前(8〜12)
午後(12〜16)
夕方(16〜20)
夜(20〜24)

<登場話候補の募集について>
とりあえず現状で明確な期限は設けません。
一応目安としてある期限としては、個人的な都合で、1/25と考えています
最終締め切りは、どんなに遅くとも、三日前には通達させていただきます。
他の聖杯戦争スレからの流用も、同トリップからの投下なら構いません。

投下する主従は、クラスを一巡せずに同クラスをいくつ投下しても構いません。

その他細かいルールや質問があったら随時対応し、最終的なルールは参加者決定時に決めようと思います。


10 : ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 12:56:47 pE5vBz1A0
以降、よろしくお願いします
八時頃に一組目を投下させていただきます


11 : 名無しさん :2014/12/16(火) 19:44:46 ftSWgvCA0
投下乙です。流れるような文章の面白さに引き込まれました。


12 : ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:05:50 pE5vBz1A0
>>11
ありがとうございます、それでは一騎目を投下させていただきます


13 : ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:09:05 pE5vBz1A0


紅い満月の裏に、夥しい都市伝説が魔都に跋扈している。

それは、満月を隠す雲か。
それとも、満月が呼び寄せた妖しい星々か。

恐らく、両方だろう。
妖気は妖気を呼び、憎悪は憎悪を呼ぶ。
やがて、数多もの『不穏』が一つの渦となり、『災厄』が創りあげられる。

そうだ、災厄とは巨大な何かではない。
多くの闇が集まり、光を覆い隠すことで生まれるのだ。


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14 : ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:09:58 pE5vBz1A0





右目を不自然に瞑った隻眼の男が、夜明けを迎えた歌舞伎町の裏通りを歩いていた。
ゆったりとした暗色の服に隠しているが、見るものが見れば、隆々とした肉体の盛り上がりを感じ取れる。
左目から放たれる眼光は周囲の酔っぱらいの酔いを醒ますほどに鋭い。
過敏なまでの警戒心。

「キャスター」

眼光と同じく、短くも鋭い声が響く。
夜明けを迎えようとする朝日から隠れるように。
しかし、空に聳える紅い満月に照らされるように。
裏路地に、一人の男が現れた。

背の高い、痩せぎすの男だった。
褪せた茶色の外套に全身を隠し、その下に旧日本陸軍の軍服をまとっている。
軍帽の下には、骨にそのまま薄い皮膚を載せたような、そんな、精気のない顔が置かれていた。
人よりも亡霊に近い雰囲気を持った男。
だが、その男からは確かに妖気のような、得体のしれない邪気を放っていた。

「なんだ、『ふうま』の小倅」

目の前の痩せぎすの怪人こそが、聖杯戦争を成立させる幾多の英霊の一騎。
キャスターのサーヴァント。
そして、奇妙な隻眼の男こそがキャスターのマスター。
その名を……ここでは、『ふうまの御館』としておこう。
かつて隆盛を誇り、しかし、時勢に従って没落した『ふうまの一族』の現当主である。
閉じられた右目は、ふうまが『邪視』の一族と呼ばれる要因である邪眼を制御できないため。
ふうまの御館の右目は、あまりにも不自然に金色に輝いているのだ。
勘の鋭いものならば、それが邪視の力であることを察するだろう。

「マスターと呼べ、俺の邪眼を悟られれば『コト』だ」

その意味も込めて、キャスターに釘を打つ。

「ハ、ハ、ハッ……怯えているのか?」

キャスターのサーヴァントは五芒星<ドーマンセーマン>の刺繍が縫い付けられた白い手袋を見せつけながら、薄い頬を引きずって笑みを魅せる。
目の前のサーヴァントは魔人だった。
ただ、東京を破壊するという意思だけに統一された、歪つながらも純正たる魔人であった。
聖杯は何を思って自らの
現状、魔都とまで呼ばれる東京は自らの欲しているものだ。
東京を手中に収めるということは、即ち、闇の世界に置いて中枢を担うということなのだから。

「貴様のような男を呼べば、俺でなければ、誰もが怯むだろうな。
 しかし、俺には東京が必要だ。あそこは、裏社会に置いてはもはや楽園だ。
 その楽園を手中に納めれば、即ち、俺はこの世の主となれる」

ふうまは魔人を左目で見据える。
魔人はふうまの視線を受けて、薄い頬を緩ませた。
それが笑みだということに、ふうまが理解するのに僅かに時間が必要とした。


15 : ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:13:22 pE5vBz1A0

「お前に東京は必要なかろう。
 上海でも、紐育でも、巴里でも、倫敦でも、好きなところに居を構えればいい。
 しかし、お前がそうであるように、俺の怨念と憎悪は東京を求めているのだ」
「お前と同じにするな。俺には憎悪以外の信念がある」

苛立ちを覚えながら、突き放すようにキャスターへと言葉を投げ捨てた。
キャスターは頬をさらに釣り上げた。
相も変わらず、『それが笑みだ』と思わなければ笑みだとわからないような笑い方だった。

「いいや、お前もまた同じだ」
「クドい男だ」
「父もない、母もない。怨霊を父とし、憎悪を母として、この末世に生まれでた魔童子。
 それが貴様だ、末法の世の何が貴様を縛り付けているのかは知らんがな。
 貴様の本質は怨みと憎しみよ」

チッ、と短く、キャスターにも伝わるようにあからさまに舌打ちを行う。
その瞬間、ふうまの脳裏に過ったのは、一人の女。
自らの腹違いの姉であり、ふうまを人たらしめる唯一の要因。
あるいは、その『姉』が居なければ。
ふうまは、『ふうまの一族の再興』という目的すらも失うかもしれない。
己を己たらしめる、自分自身以上に『己』とも呼べる女だ。

「俺は違う。俺には女が居る」
「俺にも居た、思えば、始めから決まっていた女だった。正しく『俺の女』だった」

そう言うと、魔人はすっと遠くを眺めるように目を細めた。
感慨だろうか。
いや、違う。
そこに、穏やかなものはない。
憎悪と怨念、それを満たす一因。
愛した女すら恨んでいる、愛した女すら憎んでいる。
そして、己を高めている。
やはり、目の前のキャスターは究極の『怨霊』だ。

「聞け!ふうまの小倅!」

突如、キャスターが声をはりあげた。
空気を震わせる、怒声。
大地すらも震えた、しかし、それは声の物理的な振動によるものではない、当然ない。
それは共振。
空気を震わせた、『憎悪』の性質が、大地に眠リ続ける多くの『憎悪』を震わせたのだ。

「わが聖なる血を犯したる者達よ。
 無数の邪を迎え入れ、我が呪いすらも貶めた者達よ。
 我はこれより神の御子が想像した聖杯の力をもって、三千世界の帝都を灰燼に帰すであろう。
 呪われよ、帝都……
 二千年の永きに亘る、伏ろわぬ民の呪詛を聞け!」

影が蠢いた。
それは、宝具の発動の瞬間だった。
キャスターの宝具、『帝都物語』。
帝都物語の能力は、自らの存在する空間を『東京』へと塗り替える能力。
この瞬間、聖杯が創りあげた『東京のイミテーション』は『東京』へと姿を変えた。
『真なる東京』は、すなわち聖杯を極一部に置いて上回る神秘。
宇宙の介入は行われず、むしろ、バックアップを受け。
東京の大地霊と心を共にする。


キャスター――――加藤保憲/平将門の『固有結界』は展開される。

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16 : ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:17:19 pE5vBz1A0

数多の呪いが跋扈し、魑魅魍魎が蠢く魔都・東京。
大いなる大地すらも揺るがす、天・地・海、三匹の龍が破滅へと導く魔都・東京。
瞬きほどの時間も必要とせず、東京の紛い物は真なる魔都へと姿を変えた。

伏ろわぬ民が姿を表す。
水虎や土蜘蛛を代表とする、大和に『敗北』した者達。
彼らは決してキャスターの式神ではない。
彼らには彼らの思惑が有り、ただ、キャスターがより上位の伏ろわぬ民であるが故に従っているだけ。
しかし、同時に彼らの行動に対してキャスターは魔力の消費を必要としない。

「十分だ、キャスター」

闇の奥から光る赤い瞳を左目で捉える。
その異様な光に、つぅ、と僅かに汗を流しながら、ふうまはキャスターへと語りかける。
恐怖が流させた汗だった。
その恐怖が肉体を止めることを制御は出来たが、それでも完璧には消せない。
その消せなかった怯えが汗を流させたのだ。

「ここからは血肉震わせる地獄……何、いつもの東京だ」
「そうだ、ここは俺の知る、そして、おまえの知る東京となった。
 神の御子に連なる、紛い物の東京ではない」

加藤が笑みを深める。
ふうまもまた、釣られるように笑みを深める。
なるほど、確かに加藤の憎悪にふうまも『共振』していた。

「力を手に入れる、実にシンプルだ。分かりやすいのが俺の人生だ」
「全てを滅ぼせ、その後は、好きにすればいい」
「勝つぞ、キャスター」

ふうまは踵を返し、歌舞伎町の表通りへと戻っていく。
加藤は霊体化し、不可視の存在へと戻った。
しかし、戻らなかったものがある。
今ココは魑魅魍魎が跋扈する地獄変。
地獄であることを思い出した、正しく『魔都』なのだ。


17 : ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:18:27 pE5vBz1A0

【クラス】
キャスター

【真名】
加藤保憲@帝都物語

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具EX(B)

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
"工房"の形成が可能。

道具作成:D
魔術的な道具を作成する技能。

【保有スキル】
神性:A+
加藤は守護神である平将門の荒ぶる神としての一面を切り取られた存在である。
すなわち、神霊である平将門の分霊であるため、加藤は高い神性を持つ。

仙人:E
加藤保憲は秘術によって仙人の入り口とも言える尸解仙に達した存在である。
彼は超越者である仙人であり、より上位の神秘を持ってしなければ彼を殺すことが出来ない。
(ランク:Eの神秘に相当する攻撃では加藤を傷つけることも出来ない)

呪術:A
陰陽道、奇門遁甲、蟲術、あらゆる術を呪いのために用いることができる。

【宝具】
『帝都物語』
ランク:EX(B) 種別:対国宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:1000人
加藤保憲の固有結界であり、同時に東京の守護神である平将門の固有結界。
常に同じ世界が展開される通常の固有結界とは異なり、『その時間軸における平将門が守護する東京』が展開される。
そのため、平将門を奉っていない時間軸、また『東京』がそもそも存在しない時間軸においては展開することが出来ない。
加藤は結界内において大和朝廷に貶められたまつろわぬ民と、天・地・海の『龍』の召喚を可能とする。
オカルトと科学が入り混じり、まつろわぬ民が跋扈する魔都・東京を塗り替えることにおいては特上の宝具である。
東京で展開されることで、世界にとっての『異物』であるが、同時に魑魅魍魎の跋扈する魔都・東京の紛れも無い『現実』でもあるために、神秘としての測定を不可能としている。


【weapon】
名刀・関孫六。
かつて三島由紀夫との魂をかけた勝負によって得た戦利品である。

【人物背景】
紀州・龍神村の生まれとされるが、詳しい出生などについては一切が不明である。
明治の初頭から昭和73年(1998年)にかけて存在した、大日本帝国陸軍の将校(少尉、後に中尉、戦後は自衛官)。
だが、正体は帝都・東京の滅亡を画策し暗躍した魔人である。

長身痩躯で、こけた頬にとがった顎、さっぱりとした刈上げといった容姿で、いかなる時代においても老いの感じられない外見をしている。
眼光は鋭く、体の大きさに似合わないほど軽い身のこなしが特徴的である。
黒い五芒星(ドーマンセーマン)の紋様がある白手袋を着用している。剣の達人で関孫六を愛用する。

その正体は東京の大地霊、平将門公の『東京への怨念』が形となって生まれい出た分霊。


18 : ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:18:39 pE5vBz1A0

【マスター】
ふうまの御館@対魔忍アサギ 決戦アリーナ

【マスターとしての願い】
己を主とした上での、『ふうまの一族』の再興。

【weapon】
忍者刀、及び、鍛えぬかれた肉体。

【能力・技能】
『邪眼・魔門』
 自らの手で対象に触れることによって、対象が最も得意とする忍法/特性/能力を奪う事ができる。

【人物背景】
没落した忍者の血筋である『ふうまの一族』の末裔。
ふうまの一族を再興することを生涯の目的とし、隆盛を極めつつも退廃した魔都で暗躍する日々を過ごしている。
強い上昇志向を持ち、また、そのためには手段を選ばない非情な性格。

【方針】
聖杯を自らの手中に治める。


19 : ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA :2014/12/16(火) 20:20:23 pE5vBz1A0
投下終了です

そして修正、織田信長の出展書き漏らしていました
正しくは、こちらです

【真名】
織田信長@コハエース


20 : ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:21:45 fqKva/E.0
続いて投下させていただきます


21 : ナンシー・リー&セイバー ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:23:32 fqKva/E.0

大通りに面した喫茶店の中に、二人の男女が居た。
一人は金髪のコーカソイド女性。
一人は簡素なブレザー型制服を身にまとった女子高生。
コーカソイド女性記者のインタビューだった。
内容は、『紅い満月』の話。
記者の言葉を信じるならば、オカルト雑誌への持ち込みのための取材だ。

「つまり、紅い満月の噂はもうクラス中に広まってるのね」

アナログな録音機をテーブルに置いたまま、記者と名乗ったコーカソイド女性はコーヒーに口を運ぶ。
コーヒーで喉を潤す記者の優雅な動作に、取材対象である女子高生はハッと息を呑む。
金髪をアップにして、その髪を華美なカンザシでとどめている。
レディーススーツに身を包んでも隠し切れない女性的な豊満な肉体。
ともすれば下品にも移る姿は、しかし、その記者――――ナンシー・リーの内から溢れる情熱によってかき消される。
瞳から社会正義熱とも呼ぶべき情熱を溢れさせるナンシーの視線を真っ向に受けて、女子高生は小さく頷いた。

「みんな噂してます。中には、天体観測みたいなことしだした友達もいますし」
「天体観測?」
「夜に集まって、お菓子とか食べるだけです。みんな本気にはしてないんです」
「……そう」

ナンシーは額に指を当て、少しの時間だけ思案する。
そして、その思案に答えが出たのか、席を立った。
真っ直ぐに卓上の伝票に手を掛ける。

「ありがとう、雑誌に載る際に一度私のアカウントで知らせるから、今回の件で問題があったら連絡してきて」

そう言ってナンシーは伝票を手に取り、代わりに名刺を一枚、テーブルの上に置いた。
ペコリ、と女子高生は一礼し、ナンシーは微笑んだ。
会計を済ませ、喫茶店を出るナンシー。
一度だけ、店内を見渡し、足早に大通りの中の民衆へと紛れ込んだ。

「サーヴァントの気配は?」

ナンシーは自らにしか聞き取れない程度の音量でつぶやく。
誰も彼もが早足で、ナンシーのことになど気にも留めない。
いや、少々ではあるが、好色な視線がナンシーの肢体を舐めるように浴びせられていた。

『異常はありません。
 ただ、この人混みの中で襲ってくるとすれば、搦手に秀でたキャスターかアサシン。
 気配察知の特殊スキルを持たない『僕たち』では、対応が遅れるます。
 マスターも気を抜くことのないようにしてください』

幼い声色の硬い口調で念話が送られる。
念話を送った相手は自らのサーヴァントであるセイバーであり、その中の一人の『魔法の派』だ。
LAN直結とは違い、しかし、肉声による会話とも違う奇妙な感覚。
ナンシーはどこか背中にむず痒さを覚えながら、その言葉を受け入れた。
警戒に置いては魔術に造詣の深い『魔法の派』が最も優れているだろう。
ナンシーは自らのサーヴァントの言葉通り、警戒を怠らずに気を張り詰める。

「今は『魔法の派』のまま、警戒を続けて」

ひとまず、自室へと戻り、聖杯戦争の根幹であると思われる『紅い満月』に対する取材データをまとめよう。


22 : ナンシー・リー&セイバー ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:26:12 fqKva/E.0





「……」

ナンシーは女性向け高級マンションの自室から東京を眺めながら、思案にくれていた。
ここは東京。
恐らく、全盛期の電子戦争が行われずに十数年の幾月が流れたという『シチュエーション』で再現された空間。
煽るように、ミネラルウォーターを口に運んだ。
中級層でもある程度の嗜好を我慢すれば、オーガニック水を浴びるほどに飲んでもお釣りが来るような経済社会。
ある種の理想郷とも言える。

しかし、社会の悪は残っている。
据え付けのテレビを起動させると、大企業の不正や政治家の悪政を報道している。
しかも、その報道もまた指向性を持って歪められている。
ネオサイタマと比べれば楽園とも言えるが、しかし、そんなことに意味は無い。
悪は正されなければいけない。
社会悪はこの『シチュエーション』内の東京にも残されていた。

「マスターもいい物、飲んでるね」

そんなナンシーに、一人の少女が語りかけた。

「貴方も飲む? 剣術の城も、魔法の派は要らないって言ったけど」
「剣術の城は固くて、魔法の派は根暗だから」

ケタケタと笑いながら、金髪の少女はナンシーと同じくミネラルウォーターを口にした。
髪色を除けば、先ほどの女子高生となんら変わりのないような少女。
しかし、この少女もまた英霊、人類の規格外存在である。
最優のサーヴァントとも呼ばれるセイバークラスの英霊だ。
と言っても、この聖杯は少々通常の聖杯とは異なる。
セイバーであるからといって、他のサーヴァントと比較して優秀であるとは限らない。

「この時間帯って面白い番組やってねーなー」

セイバーはソファにドカッと座り込み、据え付けのテレビを見て不満気にこぼした。
どちらがこの部屋の主かわからない姿に、思わずナンシーは苦笑がこぼれた。
しかし、咎めはしない。
まだ短すぎる付き合いではあるが、この少女が言動とは裏腹に優れた存在であることはわかっていた。
もしも、この状態で急襲が行われても、安定したその実力で落ち着いて対応するだろう。

「ん」

ザッピングしていたセイバーであったが、急に言葉を漏らした。
取材データをまとめていたナンシーはセイバーへと声を投げかけた。

「どうしたの?」
「何か、剣術の城が変われってさ」
「……いいわ、変わって」
「はいはーい」

のんきな顔を
0と1のノイズがセイバーの身体を包み、その姿を変えた。
長い金髪は短く切り込んだ短髪に。
女性らしい柔らかさを感じられた肉体は、硬さと青さを持った少年のそれへと。
セイバー――――アーサー王・技巧の場が剣術の城へと姿を変えたのだ。


23 : ナンシー・リー&セイバー ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:27:13 fqKva/E.0

「マスター」
「なにかしら、セイバー」

開口一番、剣術の城はナンシーを鋭く見据えた。
ナンシーは目を逸らすことはしなかったが、しかし、冷や汗をかく程度には威圧感を覚えていた。
やはり、英霊とは――――ニンジャ。
系列こそ違えど、本質は同じだ。
超常者なのだ。

「技巧の場も、魔法の派も、アレでブリテンの安寧を願っている。
 百万人のアーサーは全て、そのために名前を捨てた」
「そう」

ナンシーは息を大きく吐き、剣術の城と向かい合う。
金髪碧眼をした剣術の城は、幾分も幼い。
青年というよりも少年と呼ぶべき姿だ。
しかし、ナンシーを見据える碧い瞳は何層にも重ねられたカタナのように鋭かった。

「我々に個はない、なるべきものが王になれば良い。
 『アーサー』とはそういうものだ。
 嫌な言い方になるが、一つの機関。
 マスターが召喚した通り、アーサーとは、すなわち我が宝具である『王の器』なのだ」

アーサー王は一つの定形を持たない。
正確に言えば、『アーサー王伝説』を一人の『アーサー王』が成し遂げたと認識しているナンシーでは一つの定形に留めることが出来ない。
かつて、ブリテンに外敵が現れた。
外敵は強力であり、また、内部で完全に一つとなっていなかったブリテンでは対応できなかった。
そのために、時の魔術師、マーリンは王を求めた。
王を選定するための剣、エクスカリバー。
その剣を抜いたものこそ、『外敵』との闘争を指揮するにふさわしい人材であるとしたら。


しかし、エクスカリバーを抜いた存在は――――百万人にも及んだ。


結果、アーサー王は百万人のアーサー王となり、伝説を創りあげた。
その結果こそがナンシーの召喚したセイバーのサーヴァント、『アーサー王』の正体だ。
このアーサー王は一人であり、一人でない。
複数で存在することは出来ないが、一つの『器』に複数の存在から選定してダウンロードすることが出来る。

「マスターもこの選定の剣に誓え。
 決して、ブリテンに害を成さないということを」
「誓わなければ」
「マスターを殺すか、あるいは拘束した上で自害をする」

正面から切り込んでくるその言葉に、ナンシーは微笑した。
少年王の鋭さが心地よかった。


24 : ナンシー・リー&セイバー ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:28:38 fqKva/E.0

「安心して、私は貴方の理想と相対することはないわ」
「……」
「ただ、誓うことは出来ない」

カチャリ、とセイバーの剣が翻る。
ナンシーの喉元に、すっ、と血が伝った。

「相対するときは、私の理想と貴方の理想が違った時だけ……こちらも、全力で殺しに向かわせてもらうだけよ。
 だから、貴方の剣には誓えない。
 私の誓いは、私の信念にだけ捧げられているわ」

セイバーはナンシーに鋭い眼光を浴びせ続け――――やがて、破顔した。
少年らしい、穏やかな顔だった。
そして、ゆっくりとソファーに座り込み、話を変えた。

「ブリテンには様々な奴がいた。
 剣ではなく、バカみたいな鈍器を持ち歩いている騎士も居た。
 誰もが『外敵』との戦いに必死だった」
「それ、ランスロット? ガラハッド?」
「ガウェインだ。カエルのような鎧を着た、フザけた騎士だったよ」

言葉とは裏腹に、セイバーの顔は柔らかかった。
貶しているわけではないのは、その顔で容易に察することが出来た。

「そんな奴らばかりいる国だ、誰かの思惑によって弄ばれることが我慢できなかった」

その声色には、ナンシーにも明かしていない色が感じ取れた。
ナンシーは追求しなかった。
セイバー自身から聞かされた、アーサー王の出生の秘密からすると。
セイバーもまた、己の存在意義を創りあげた存在に弄ばれたのだろう。
そして、自身と同じく、そこから立ち上がったのだろう。

「衝動ね」
「衝動……?」

それを、ナンシーは『衝動』と称していた。
かつての赤黒のニンジャのように、言語化の難しい、魂から生まれ出てくるものだ。

「社会正義の衝動よ」
「社会正義?」
「人々が創りあげた社会を、個人の思惑で壊し、隠蔽されることは許されるものではないわ。
 その社会正義の衝動が、貴方に剣を抜かせたのね」

自室の窓から紅い満月を見上げながら、ナンシーはつぶやいた。
その瞳には、決して絶えることのない社会正義の熱があった。
己を薪にして、燃え上がる社会正義の炎。


25 : ナンシー・リー&セイバー ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:29:40 fqKva/E.0

【クラス】
セイバー

【真名】
アーサー王@実在性ミリオンアーサー

【パラメーター】
筋力D〜B+ 耐久D〜B+ 敏捷D〜B+ 魔力D〜B+ 幸運D〜B+ 宝具A

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
全てのアーサー王は、選定の剣によってランク:Cに値する対魔力スキルを与えられている。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。
アーサー王は、選定の剣によってランク:Cに値する騎乗スキルを与えられている。

【保有スキル】
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を"感じ取る"能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。
アーサー王は、選定の剣によってランク:Cに値する直感スキルを与えられている。

魔力放出:C
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
アーサー王は、選定の剣によってランク:Cに値する魔力放出スキルを与えられている。

カリスマ:E〜B
軍団を指揮する天性の才能。
全てアーサー王は、選定の剣によってランク:Eに値するカリスマスキルを与えられている。
下限としてのランク:Eであり、アーサー王の個体によっては高いカリスマスキルを所持している。

【宝具】
『選定の剣(エクスカリバー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
百万本存在する、王を選定するための聖剣。
引きぬいたものを『アーサー王』とし、引きぬくことの出来なかったものを『民』とする。
アーサー王を選定するためだけの剣であるが、それ自身も相応の神秘を宿した聖剣である。

『王の器(ミリオン・アーサー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
百万人のアーサー王が成し遂げた伝説。
その伝説を、一人のアーサー王という絶対存在が成し遂げたと改変されてしまった逸話型の宝具。
『サーヴァント・アーサー王』という器に、百万人のアーサー王の一人だけが顕現することができる。
ナンシー・リーは、アーサー王の中でも高いステータスを持つ剣術の城・技巧の場・魔法の派の三人を好んで顕現させている。

【weapon】
聖剣エクスカリバー。
選定の剣ではあるが、それ自体も優れた聖剣である。

【人物背景】
四方を海に囲まれた大地ブリテン。
ここは内戦と外敵の襲来により混迷を極めていた。
そこで国を救う真の王を見極めるため、エクスカリバーという名の剣を抜く試練が与えられた。
剣に選ばれし者こそ真の王アーサー。

だが、選ばれた者は――――100万人にも及んだ。

それはアーサー同士を競わせ不要な人材を淘汰し、本当の意味で国を統治できるアーサーを選ぶ計画だったのだのだ。


26 : ナンシー・リー&セイバー ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:30:02 fqKva/E.0
【マスター】
ナンシー・リー@ニンジャスレイヤー

【マスターとしての願い】
社会正義。

【weapon】
-
【能力・技能】
指折りのハッキング能力を所持しており、そのハッキング能力で重ねた罪による懲役は推定で数百年規模のものとなる。
かつては違法薬物を用いることで体内LAN端子を用いずとも無線アクセスを可能としていたが、現在は不可能。

【人物背景】
ニンジャスレイヤーと共同戦線を組むフリージャーナリスト。
過去にカルト教団に潜入した際、ハッカーの修行をしたこと、さらに違法電脳サイバネ手術を受けたことにより、ニンジャスレイヤーと出会った時点でテンサイ級のワザマエを持つハッカーでもあった。
その技術を生かしてハッキングやトラップ解除、情報収集・解析などの分野でニンジャスレイヤーをサポートする。
ソウカイ・シックスゲイツの一人ダイダロスとの電脳戦を経験して以降、急速に成長。
第二部ではヤバイ級ハッカーとして、タカギ・ガンドーのような事情通やサイバーゴス達に広く存在を知られており、英雄視されている。
IRCでは「YCNAN」というハンドル・IDを名乗る(「NANCY」を後ろから読んだもの)。

生身の戦闘能力も非ニンジャとしては高く、クローンヤクザ程度には遅れは取らない。
銃撃やコトダマ空間でのコマンド入力の際のシャウトは「TAKE THIS!」(「食らいな!」といった意味か)

時間軸では第三部に当たる。

【方針】
社会正義。


27 : ◆devil5UFgA :2014/12/17(水) 02:30:18 fqKva/E.0
投下終了です


28 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 18:57:18 zWpYIJ1M0
>>1
スレ立て、投下乙です。
また新しい聖杯スレ。しかも舞台は再現された東京。
東京が舞台だと加藤みたいに土地そのものに因縁のあるキャラも多そうで面白そうですね。

それでは、自分もセイバーの候補作を投下します。


29 : 真島誠&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 18:58:12 zWpYIJ1M0



 池袋西口公園。ここが俺の庭。
 この庭に溜まっている俺たちはIWGP、池袋ウエストゲートパークと呼んでいる。なんでって、その方がカッコいいから。
 まあ、今では、このIWGPもテレビで有名。ワイドショー。仰々しい字体。表情も言葉も的外れなコメンテーター。
 マスコミの奴らは、IGWPに溜まる奴らは行き場のない若者だと思っているらしい。
 確かに、俺は学校も行ってないし、定職を持っているわけでもないし、平日の昼間も仲間とブラブラ遊んでいるだけだ。

 だが、俺たちは行き場がないからここにいるんじゃない。
 このIWGPを愛しているから俺たちはここをたまり場にしてるんだ。
 ここが俺たちが最後に辿り着く「行き場」。だから俺たちはここにいる。




 ────じゃあ、ここまで、一言で言うと、ハイ!





 ────ブクロ最高ォォォォォォォォーーーーーッッ!!!





 ……。
 …………。
 ………………。
 ……………………おぅ。



 …………だいたい、俺は仕事がないと言っても、収入がまるっきりゼロっていうわけじゃない。
 池袋は事件だらけの街だ。誰も彼もが乾いてる。人が多けりゃ多いだけキメてる奴もいる。ヤクザも大量にいる。おまけに警察がほとんど役に立たない。
 だからこそ、たまに俺を頼ってくる「依頼人」なんかが現れる。
 警察ではどうしようもないような事件や面倒事を抱えた奴が、たまに俺を頼って金をぶら下げてやって来るんだ。
 いつの間にか、俺は≪池袋のトラブルシューター≫と呼ばれるようになった。俺もよくわかんねーけど、まあ探偵みたいなもん?

 その日はまあ、何のトラブルも舞い込んでこないただの暇な一日だった。
 これが俺にとっても普通なんだけど、まあ一応、上のトラブルシューターの話は俺の紹介って事で。俺は本位じゃないけどこれを一応全部紹介しなきゃならないんだろ。
 んで、家の手伝いをするのも面倒で、真夜中のブクロをぶらぶらしていたら、やがて俺は吸い込まれるようにIWGPに辿り着いた。

 横っちょでGボーイズが騒いでいる。
 Gボーイズっていうのは、池袋の黄色の若い恰好のギャングたち。いま流行りのカラーギャング。
 ……一言で言うと、ブクロで一番迷惑な奴ら。IGWPで溜まってる行き場のない若者は多分こいつらの事。
 でも、気の良い奴らでみんな俺のダチ。特に、こいつらのボス・崇とは、ずっと昔、ガキの頃からのダチだ。


 そのGボーイズどもが普段通り何やら騒いでる横で、俺はのんびり、ベンチに寝転がって空を眺めた。
 まあ、別に星を見るのが好きなわけじゃないけど。どっちかというと、……そうそう、横になるのが好きなんだ。
 そろそろ俺たちはピンクの看板よりも目に良い光を見る事を思い出した方が良い。
 ん、俺カッコいい事言った?


 まあ、それで、その後、俺、もっと重大な事を思ったわけよ。



 ────あれ? なんで月が赤ぇの……?



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


30 : 真島誠&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 18:58:37 zWpYIJ1M0



「……っつーのが、まあ俺がここに来るまでの紹介? みたいな?」

 真島誠。彼がおよそ80年後から≪セイバー≫大神一郎を呼び出したマスターである。
 彼は真正面からセイバーを見つめている。まるでお見合いか、にらめっこだ。
 お陰で、セイバーもここに召喚されてすぐに、上から下までざっと彼の身体的特徴を眺める事ができた。

 マコトは長身で、外国人のように整った顔立ちだ。大神の時代ならば──その感覚が彼らの時代でも通用するならば、美男子であろう。
 男性の舞台役者──いや、この時代ならば「アイドルグループ」の一員でも全くおかしくない。
 しかし、それでも、どこか表情が硬く、初見だと凶悪な顔付にさえ見える。
 あまり飾り気のない灰色のパーカーにキャップ帽、という出で立ちは、セイバーにはあまりにも馴染みのない姿だった。
 ファッションはこれから随分と変わっていくらしい。「モダンガール」も、もはや誰も知らない死語だ。「ハイカラ」は「ナウい」へ。時代を感じる。

 パーカーもキャップ帽も、一応召喚の際に頭の中にインプットされてはいるが、やはりセイバーとしても目は慣れない光景だ。
 実はこれはマコトの年齢からすればやや幼いくらいの恰好なのだが、セイバーはそこまではわからなかった。
 この時代のこの年齢の人間はだいたいこのような恰好をしているのだろうと思った。

「他に聞きたい事あるか? えっと……セイバー」

 さて、マコトはセイバーにとっても調子が狂う相手だが、幸いにも「悪いやつではない」らしい。
 セイバーにとって大切なのは、自分のマスターが悪人ではないという事実である。
 ──彼が善良な市民か、あるいは悪か。それ以外ならば、あとはどんな立場の人間でも魔力の強弱も彼にとっては関係はない。たとえどれだけ弱くてもセイバーが守って見せる。
 マコトは、一言で言えばバカ(セイバーはそう思っておらず、あくまで「エリカくんとかと同じタイプ」とかお茶を濁したような表現で彼を表現するだろう)だが、それも裏を返せば純粋な人柄の男だ。
 目的の為に願いを殺してはならないという程度の良心は持っているだろうし、少しでも悩みを持った人間を放っておけない優しさを持っている──だから、池袋では彼は「バカ」と呼ばれているのだが。

 そんなマコトが、セイバーにとって、「最適」と呼べるマスターであった。
 自分の願いに屈しない生まれながらの正義感が彼の中に眠っているのを、セイバーはその胸で感じている。

「……いや、ありがとう。君たちの帝都の事が、住んでいる人の口から聞けただけで嬉しいよ」

 セイバーは、特にマコトの砕けた若者言葉に眉を顰める事もなく、そう返した。
 マコトたちの帝都がどれだけ平和であるのかを、一市民の言葉で聞きたかったのである。
 また、ここに来るまでの経緯を確認し、マコトが意識的にここに来ようとしたわけでもなさそうな事を知る事ができた。
 マコトに説明を要したのは、その為であった。

「いやいやいや。ありがとうっつーなら、こっちの台詞じゃねえかな……。いやー、マジで感動だなぁ。
 セイバーがテートを守らなかったら俺たちのブクロもなくなってたわけだろ?
 崇たちもGボーイズなんか解散して、低俗……低俗……低俗過激団? みたいな平和守るカッコいいチーム作ればいいのに」
「あ、ああ……。ちなみに、帝国華撃団なんだけど」
「すいません。えーっと、テイ……テイ……風俗過激団?」
「帝国華撃団」
「あー、それ! あはは……」

 マコトは気まずそうに笑って濁した。
 ともかく、このマコトという男は、彼なりにこの池袋を愛している。ここで会ってから、「ブクロ」と呼ばれる未来の池袋を楽しそうに話してくれている。
 この時もまた、マスター・大神一郎が太正時代に活躍した(マコトたちの歴史では「大正時代」が正しいのだが、マコトの学力ではそもそも「タイショウジダイ」がどんな字を書くのかおそらく知らないだろう)帝国華撃団の隊長である事を知り、純粋に喜んでいるのである。


31 : 真島誠&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 18:59:03 zWpYIJ1M0

 当のマコトは、軍人といえば人間と戦うイメージで好かなかったが、何でも大神一郎は降魔とかいう化け物と戦っていたらしいと聞いて納得したらしい。
 一般市民のマコトがここまでの事象・事実どの程度信じているのかは全くわからないが、とにかくただならぬ状況であるのは彼も理解している。

「……しかし、一応言っておくけど、俺たちの住む世界とマスターの住む世界は別物だ。俺たちは君たちの池袋を守ったわけじゃない。君たちの帝都を築き上げてきたのはまた別の人間で──」
「別にいいよ、それでも。どういう理屈だか知らねえけど。まあどんな世界でも、セイバーが俺たちのブクロを守ってくれたって話だけで、こっちは焼きそば十杯はいけんだよ」

 どこまでも純粋な男である。焼きそばのくだりは全く意味がわからないが。
 ……まあ、ある世界の帝都が2000年頃まで平和を保っている事実はセイバーとしても喜ばしい。
 異世界の話だとしても、こうして、未来の帝都の人々から、「英霊」として褒められるのも照れる物がある。
 と、ここでマコトは少し態度を改め、少し丁寧な口調になった。

「……あ……。それじゃあ記念にサインもらえます? このパーカーの上でいいんで」
「サイン……?」
「ブクロを守った英霊のサイン」
「はは……照れるな」

 セイバーは、ギザギザ頭を掻いた。
 マコトも少しそちらに目をやっている。ワックス等で固めているわけではなさそうで不思議であった。

「あれ? もしかしてサイン書いた事ないっすか?」
「そうでもないよ。たまに俺のサインを欲しがる人もいたんだ。帝国歌劇団ではモギリだったんだけど……何故か有名になってね。まあ、滅多に機会はなかったけど」
「そうっすか。あー、でもパーカーの上に書くと真名バレちゃうか……。それじゃあ、パーカー脱ぐんで、このシャツの背中んとこお願いします」

 マコトから差し出されたサインペンで、セイバーは「大神一郎」の名を書いた。
 書きなれた様子で滑らかにペンがその名を記すのをマコトは背中で感じた。マコトのシャツには色んな有名人の名前が記されている。たとえば、川崎麻世とか川崎麻世とか川崎麻世とか。
 さて、その川崎麻世のサインだらけのシャツに大神一郎のサインが加わって、これで満足……といった様子である。

 そこまでの挨拶作業を終えたところで、マコトにも、一つだけどうしても気になる事があったようで、これからそれを大神に告げる事になった。

「で、親睦を深めたところで早速一つ言いたいんだけどさぁ──」

 マコトは息を大きく吸う。
 そして、飲み込んだ分、大声で叫んだ。





「────ここ渋谷じゃん!! だって、あれ109じゃん!!」





 ──二人の目の前で、かの有名な渋谷のシンボル109がこちらを見下ろしている。セイバーも、109の存在は召喚された時に辛うじて知っている。
 マコトが愛する池袋とは対をなす街が、ここ渋谷なのである。
 マコトも別に渋谷が嫌いというわけではないだろうが、渋谷と池袋ならばやはり池袋派である。池袋こそが彼の故郷、彼の庭、彼の寝床。
 IWGPではないにせよ、そこがサンシャインシティならまだわかる。しかし、あれは109だ。

「バットマンといえばゴッサムシティ、スパイダーマンといえばニューヨーク、じゃあマコトといえば? ……ブクロだろ!? ブクロ行こうぜ!? なぁ、セイバー」
「はぁ……」
「つーか、本当のブクロに帰りてえ……。母ちゃんの焼きそば食いてえ……。ぶっちゃけ、ここどこなんだよ……」

 気づけば、もうマコトは泣きそうな顔で項垂れていた。
 月の裏側。一般市民にとっては、遠すぎる旅路。三秒でホームシックになってもおかしくない。三秒は自分が置かれている状況を正確に理解し、信じるに至る時間だ。
 彼はどうやら、あまりにもバカすぎて、今更その三秒が巡って来たらしい。


32 : 真島誠&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 19:00:41 zWpYIJ1M0

 マコトの性格を悪口紛いに説明しておくと、「マザコン」、「ブクコン(池袋コンプレックス)」、「焼きコン(焼きそばコンプレックス)」である。
 池袋で最強の男である彼も、人の数倍純朴で、郷土愛が強い分だけ、そこから離れるのを嫌う人間なのである。
 ホームシックの度合いは人よりも激しい。

 その様子をセイバーは察した。

「……マスター、いや、マコトくん。俺の使命は、君を無事に生きて元の池袋に返す事だ。
 令呪に命じられるまでもなく、俺は君たちを守ると決めている。サーヴァントとしても、友人としても、何でも命じてくれ
 たとえ仮初でも、俺は帝都に住まう人間を傷つける者を、そして帝都を利用する者を許さない。俺と共に生きてここから帰ろう、マコトくん」

 セイバーは優しい声でそう言う。
 悪を蹴散らして、正義を示す──それが帝国華撃団・大神一郎の生き様である。
 マコトのように帝都の聖杯戦争に巻き込まれた人間は全て守る。
 そして、マコトも彼ほど露骨ではないが、困っている人間を放っておけない性質の人間であり、たとえ仮初でも池袋が傷つけられていくのを許せない男であった。
 しかし、それでもこう叫ばずにはいられなかった。
 あの時、空なんか眺めてしまった自分を呪いながら────




「めんどくせえええええええええええええええええええええええーーーーーーー!!!!!!!」


33 : 真島誠&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 19:01:15 zWpYIJ1M0





【クラス】
セイバー

【真名】
大神一郎@サクラ大戦

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:B
 大抵の動物を乗りこなしてしまう技能。幻想種(魔獣・聖獣)を乗りこなすことはできない。

【保有スキル】
カリスマ:A
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 特に女性に対して強い効力を発揮する。
呪縛:D
 女性が風呂に入っていると体が勝手に風呂場の方に動いてしまう保有スキル。
 魔力、又は強い意志で抑え込む事ができる。

【宝具】
『霊子甲冑』
ランク:A〜D 種別:対人、対獣、対機 レンジ:1〜5 最大補足:1
 所有者の霊力を引きだすシルスウス鋼製の甲冑。現代ではパワードスーツ、あるいは巨大ロボットの中間にあたる(サイズは3米ほど)。
 大神機は銀色。二刀流を装備している。
 光武、光武改、光武二式、光武F、光武F2、神武、天武など、あらゆる機体を繰った伝説が残っているが、いずれの霊子甲冑が宝具として召喚されるのかは不明。
 この宝具によって彼のパラメーターは一時的に底上げされる。

『狼虎滅却・震天動地』
ランク:EX 種別:対界 レンジ:∞ 最大補足:∞
 帝都と巴里、二つの街を守った時にたくさんの人々から受けた信頼と絆こそが大神一郎にとって最大の宝具である。
 ここでも彼が受けた信頼の数だけこの宝具は強くなっていく。ただし、信頼値が低ければ使えない。
 また、特定人物との信頼と絆を深めた場合、それはこの縮小版である『合体技』として発現される事もある。

【weapon】
 神刀滅却
 光刀無形

【人物背景】
 太正十二年から太正十六年にかけて帝都、巴里で活躍されたとされる軍人。階級は少尉→中尉→大尉。
 海軍士官学校を主席で卒業。その後、銀座・大帝国劇場にモギリとして配属された。太正十六年に大帝国劇場の支配人となる。
 (公的な記録で残っているのはここまで)

 これらはあまりにも不自然な記録であるが、実は大帝国劇場が普通の劇場であったのは表向きの話。
 大帝国劇場は、秘密防衛組織『帝国華撃団』の拠点であり、舞台で踊る帝国歌劇団のスタアは全員、霊力を有している「花組」の戦士なのである。
 大神一郎は帝国華撃団花組の隊長として、彼女たちの信頼を勝ち取り、黒之巣会や黒鬼会と戦い、これを迎撃。
 二度の帝都防衛に成功した後は、その功績を買われて巴里に派遣され、巴里華撃団の隊長として現地でまたも首都防衛に成功している。
 これらの功績により、二十四歳にして帝国華撃団総司令にまで出世する。
 また、帝国華撃団及び巴里華撃団の十三名の女性隊員は殆ど、彼に対して恋愛感情を抱いていたとされ、他にも彼に好意を持つ女性は数知れなかったと言われている。

【サーヴァントとしての願い】
 人々を守る。マスター・マコトの護衛。

【方針】
 マコトのマスターとしてマコトを護衛する。
 力なき人々の剣となり、正義を果たすのが大神一郎である。
 ただし、帝都を脅かす降魔や悪は容赦なく迎え撃つ。


34 : 真島誠&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 19:01:31 zWpYIJ1M0


【マスター】
真島誠@ドラマ版池袋ウエストゲートパーク

【マスターとしての願い】
 帰りたい。

【weapon】
 なし。

【能力・技能】
 すぐれた行動力、体力、機転。
 ボウリングが物凄く上手。

【人物背景】
 池袋に住んでいる無職の青年。実家は果物屋。しかし、池袋で起こるトラブルを解決する「トラブルシューター」として信頼されている。
 本人にトラブルシューターとしての自覚はなく、面倒事に巻き込まれるのは嫌う。そのため、殆どの依頼は断るが、友人や人の良い相手に頼まれてやむを得ずいくつかの依頼を受けている。
 池袋を愛しており、中でも池袋西口公園を拠点としている。カラーギャング「G-Boys」にも信頼されており、リーダーであるキング(安藤崇)とは幼い頃からの親友同士。
 ストラングラーの事件や池袋カラーギャング抗争を解決した事によって最終回後は表向きにも有名になっているが、G-Boysが存在している時間軸の頃である為、少なくとも中盤ごろの参戦であると思われる。
 ちなみにインポテンツ。

【方針】
 まずは池袋を目指す。
 つーか帰りたい。


35 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/17(水) 19:01:45 zWpYIJ1M0
以上で投下を終了します。


36 : 東京美食家-トーキョーグルマンディーズ-  ◆lnFAzee5hE :2014/12/17(水) 20:30:14 X.21.NAg0
乙です、投下します


37 : 東京美食家-トーキョーグルマンディーズ-  ◆lnFAzee5hE :2014/12/17(水) 20:30:54 X.21.NAg0



彼女は以前から存在していたのか、あるいはその病ごと、この聖杯戦争のために造られたのか、真実がどちらかはわからない。
ただ、彼女はひどく憔悴していた。
毎夜毎夜、赤い月の夢を見るのである。
夢の中で彼女は一面の夜の砂漠の中に立っている、星一つ無い夜空にあるのはただ赤く妖しく輝く月のみ。
だが、その月はよく目を凝らして見れば、月では無い。球の形に押し込まれた幾億もの内臓なのである。
それは果たして心臓なのか、膵臓なのか、胃袋なのか、肺なのか、原型がわからなくなるまでに圧縮されたそれらは、見ている内に砕け、彼女に降り注ぐ。
そして、彼女は壊れた月の破片に押し潰され、死ぬことも出来ずにもがき続ける。

「夢など見るのではなかった」

そして誰ともわからぬ声を聞き、彼女は覚醒する。
現実世界の彼女に肉体的な痛みも疲労も一切存在しない、ただ夢の中での超現実的な痛みは彼女の心を確実に蝕んでいた。
その治療のために最近開業した精神科を訪れることにしたのだ。
新宿駅を出て、徒歩十分。
ビル群の中にひっそりと、しかしはっきり異質な物として建つ巨大な洋館こそが、彼女の目的地である。
そのデザインはとても病院とは思えない、郊外のレストランとでも言われた方がしっくり来るだろう。
だが、その一見病院とは思えないデザインが目的であると彼女にこの病院を薦めた母親は言った。
一見して病院とわからないデザインが精神科に行くというストレスを和らげるらしい。

「うわぁ……」
扉の前に立つと、玄関の扉はギイと音を立てて児童で開く。
中に入り、一瞬彼女は夢のことも自分が精神科に来たことも忘れていた。
まず、目に入ったものは高級感を漂わせるアンティークの調度品である。
彼女にはその価値がどれほどのものなのかわからなかったが、少なくとも自分には一生手の届かないものであることだけは理解した。
敷かれている赤いカーペットもきっと高級品なのだろう、彼女は二回程その場で飛び跳ねた。
正直なことをいえば、タップダンスを踊りたいほどにこの高級感溢れるカーペットを堪能したい。
それと同時に耳に入るのは、奥の部屋から聞こえるピアノ演奏だ。録音ではなく、生の音のようである。

「こんにちは、お嬢さん」
「わっ……」

これ以上驚くことはあるまいと思っていたが、奥の部屋から現れた老医師を見て、彼女は再び驚いた。
外国人である、彼女が判断するにはおそらくはヨーロッパ系。
その両目は知性の輝きに満ちており、口元は薄く微笑んでいた。

ぞくり――と、彼女は寒気を感じた。
邸内が寒いわけではない、一生をこの館で過ごしたくなるぐらいには丁度良い室温である。
そうだ、目の前の老医師の目が――

「予約をされた方では?」
「そ、そうよ……」

何を考えているのだろう、と彼女は己の頭を小突きたくなった。
きっと、相手が外国人だから変に緊張してしまったのだろう、そうに違いない。
彼女はそう判断し、部屋へと促す老医師に付いて行く。


38 : 東京美食家-トーキョーグルマンディーズ-  ◆lnFAzee5hE :2014/12/17(水) 20:31:10 X.21.NAg0

「わぁ……」
診察室だからといって、館の雰囲気が変わったわけではない。
中央には貴族がパーティーに使うようなテーブルが置かれており、その上でキャンドルがゆらゆらと妖しい光を放っている。
隅にはピアノが置かれている、先程まで弾かれていた形跡がある、やはり目の前の老医師が弾いていたのだろうか。
そして、壁には幾つも絵が掛けられている。一見して上手いとわかる、だが誰が描いたかを判断できるほど、彼女には画家の知識はなかった。

「えっ……」
「何か?」
どこかの大聖堂、どこかの海、どこかの塔、そんな絵の中に、彼女は見た。

「あ、赤い……赤い月!何で!?ちょっと説明しなさい!!アンタ!!」
夢の中で彼女を何度も殺した紅い満月、その絵が何故ここに。
掴みかからんばかりの勢いの彼女の様子を見て、老医師はああ、と得心し、言う。

「あれは何時のことだったか、夢の中に一度だけ、紅い満月が現れた。
牢獄内は、酷く退屈で……新しい出会いというは気晴らしに最適だ。どうした……?座れよ」
「…………ッ、早く説明してよね」
老医師に促されるままに、彼女は椅子に座った。
同じ夢を見たのか、いやそういうわけではないらしい。
話の意味がよくわからない。牢獄。
目の前の老医師の雰囲気が変わったような気がする。
動物園のライオンは檻に入っているから安心だ、でも逃げ出して、目の前にライオンが立っていたら、そんな幼いころの疑問がふと、蘇る。

「このまま、私のことを話そうか。それとも……君のことを話してもらおうか。
酷く汗をかいているね、緊張している?目の下の隈も酷い……それに、君の服から焦げ臭い匂いもする。料理を失敗したかね?」
「えっ、はっ、かっ、関係ないでしょ」
「香水は……使い慣れていないようだな、嘔吐の臭いを消そうとしたなら失敗だ、余計に臭う。香水ではなく、バニラエッセンスでも使っていたほうがマシだ。
それに、過食症になる可能性もある。嘔吐に快楽を覚えているね。腹が膨らみすぎている、だが……吐かなかった、君の倫理観が働いているな」
「あっ……わ、私、帰るわ!二度とこんな所来ない!馬鹿!死ね!変態医師!」
咄嗟に席を立ち、彼女は出口に向かって駆け出す。
彼女ははっきりと老医師に対し恐怖の感情を抱いていた。

「レディーの振る舞いをしたまえ、マドモアゼル」
だが、いつ現れたか――扉の前に突如現れた長身の男が道を塞いでいる。

「君が紅い満月を見てここにいる"人間"なのか……」
「それとも違うのか……ンッ!どうでもいい!」
首にかかる圧力が、長身の男の両腕によるものだと気づいた時には遅すぎた。


39 : 東京美食家-トーキョーグルマンディーズ-  ◆lnFAzee5hE :2014/12/17(水) 20:31:20 X.21.NAg0


意識の覚醒と同時に、生きていると感じる間も無く彼女は激痛に襲われた。

「アッ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
自分に何が起こっているのか、確認したい。
だが、目が開かない。
いや、彼女は知る由も無いことだが、その両目は刔られていた。

耳から得られる情報は、ナイフとフォークの動く金属音と、静かな咀嚼音。
そして。

「ムッシュハンニバル……本日のメインディッシュは?」
「活造りだ」

今の状況を想像させる最悪の会話だけ。


40 : 東京美食家-トーキョーグルマンディーズ-  ◆lnFAzee5hE :2014/12/17(水) 20:31:39 X.21.NAg0


終身囚であるハンニバル・レクターはある日、夢の中で紅い満月を見た。
そして、それを描いた。
夢の中の記憶を頼りに紅い満月を紙に再現することは、彼にとって難しいことではない。

書き終わり、完成した紅い満月の絵を目視した瞬間。
彼は東京にいた。

「Ah……ムッシュ、君が僕のマスターかい?」
「そういうことらしいな」

洋館の一室、ディナーを待ち望むグルマンディーズのように、彼らは向かい合って座っていた。

瞬間移動――ありえるはずのない現象を、彼は自然に受け入れていた。
向かい合って座るサーヴァントという存在も、そして聖杯戦争もだ。

「さて、ムッシュ……Ah……」
「ハンニバル・レクターだ」
「オウケィ、ムッシュハンニバル……まず、どうしようか」
「……日の光を浴びて、食事にしよう。気心の知れた友人と摂る食事は何よりも美味しい」

「oops、先程も言ったが、僕は喰種……人間と同じ食事はノー」
「食事にしよう、アサシン。」



「君も私も大好きなものを食べに行こう」





【クラス】
アサシン

【真名】
月山習@東京喰種

【パラメーター】
筋力C+ 耐久B+ 敏捷D+ 魔力E 幸運C 宝具D

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
自身の気配を消す能力。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
美食家として活動していた彼を喰種対策局は討伐することは出来なかった。

【保有スキル】
喰種:B
喰種という種族としての特性、水と人体、珈琲以外の食事に対し拒否反応を起こし、無理に摂取すれば体調不良に陥る。
また、飢餓状態に陥ると激しい頭痛や判断力の低下に陥り、飢えを満たすために親しい友人であろうと構わず襲いかかるようになる。
しかし、人体を摂取していれば筋力増強、回復力強化、機動力推進などあらゆる恩恵がもたらされる。

【宝具】
『捕食器官(ナイフにしてフォーク)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
Rc細胞によって構成されており、硬化と軟化を繰り返しながら自在に動く。喰種の捕食器官である赫子。
肩甲骨の下あたりから現れる金属質の赫子であり、高密度のRc細胞の凝縮で赫子の中で随一の頑丈さを誇るが、重量のせいでスピードで劣り扱いづらい。
その形状は螺旋を描いている。

【weapon】
三日月のマスク
彼の素顔を隠す三日月の仮面

【人物背景】
東京二十区で美食家(グルメ)として恐れられた喰種。
その名の通り、捕食対象の特定部位を選り好みして食べるなど食事にはこだわりを持っており、ある青年に対しても食材として異常な執着を持っていた。
ランサーとしての適正もあり、その場合は騎士としてその青年に関する宝具を持っていた可能性がある。


41 : 東京美食家-トーキョーグルマンディーズ-  ◆lnFAzee5hE :2014/12/17(水) 20:31:50 X.21.NAg0
【マスター】
ハンニバル・レクター@ハンニバルシリーズ
(時期としては羊たちの沈黙でクラリスと遭遇する前)

【マスターとしての願い】
不明

【weapon】
ナイフ
スパイダルコ社製のSPYDERCO - Harpy C08
何らかの思い入れがあるようだ。

【人物背景】

レクターとの面接のルール

ガラスの仕切りに近づかない
鉛筆やペンは渡さない
ホッチキスやクリップも渡さない
書類は食事の差し入れ口から
彼からは何も受け取らない
個人的な話はしない
まともな人間だと勘違いしない

 チェサピーク州立病院ボルティモア精神異常犯罪者診療所 より

【方針】
不明


42 : ◆lnFAzee5hE :2014/12/17(水) 20:32:01 X.21.NAg0
投下終了します


43 : 名無しさん :2014/12/18(木) 00:28:46 0w3K2wN20
東京近辺及び関係者が次々と投下されてる!
存外いるもんだな
これからも様々な東京系の投下に期待


44 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/18(木) 00:55:55 JAeNmtDc0
皆様投下乙です。私も続きますね。


45 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/18(木) 00:57:12 JAeNmtDc0


 ――普き諸仏に帰命し奉る。


 ノウマク サマンダボダナン オン ダリタラシタラ ララ ハラマダナ ソワカ オン

 ヴィハタシャ ナガヂハタエイ ソワカ ノウマク サマンダボダナン ヴィロダキヤ 

 ヤキシャヂハタエイ ソワカ ノウマク サマンダボダナン ベイシラマンダヤ ソワカ。


 傲慢なる尊、持国天よ。夜叉の長、増長天よ。龍族の主、広目天よ。そして毘沙門天よ。

 魔都“東京”を四方より守護せし御仏達よ。


 ハラ ドボウ オン ボッケン シュタン シリィ。


 随求滅悪、“穢土”を浄土と成し、吉祥在らしめ給え。


 ――東京を、この眠らぬ都に蠢く闇を、救いの光にて照らし給え。
 



   ▼  ▼  ▼


46 : 朱鷺宮神依&バーサーカー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/18(木) 01:02:31 JAeNmtDc0


 蝋燭の仄かな明かりが、彼女の横顔を揺らめかせる。

 東京の喧騒の狭間で忘れ去られているような寂れた寺の御堂に腰を下ろし、彼女は一人心を鎮めていた。
 歳の頃は十六、七。艶やかな黒髪を髷のように大きくひとつに結い、身には当世の学生服を纏っている。
 女性としてはやや長身にして、華奢ながら引き締まった体つき。
 先刻から微動だにしないその洗練された佇まいには、心身ともに相応の修練を積んでいることが伺われた。
 凛とした、という形容がこの上なく当てはまるその姿。

 その一筋に閉じられた瞼がぴくり、と動き、次いで彼女はその瑪瑙色の瞳を見開いた。

「――気配が、変わった」

 その実感は、彼女にとっても戸惑いを孕んだものであった。
 気配。人や人ならざる者の、というよりはもっと大きく、漠然としたものの気配が、今、確かに変わった。
 不可思議な表現ではあるが、それはこの街の――『東京』の纏う気配に違いなかった。
 
「まつろわぬ者共の蠢きが天に地に満ちている。これが聖杯戦争の始まりを告げる嚆矢だとすれば、次なる動きも近いか」

 少女は立ち上がることなく、そのまま傍らにある刀を手に取り、静かにその刀身を抜き放った。
 奇妙な刀である。それは確かに日本刀の形をしていながら、刃と呼べる部分が存在していなかった。

 銘を『珠依姫 三門守宗(たまよりひめ みかどもりむね)』。

 肉ではなく心を、骨ではなく魂を斬るこの刀こそ、彼女を――あるいは彼女の宿命を象徴する刃であろう。

 ――『千年守(ちとせのもり)』。

 古来より人の世と聖霊の世の理が乱れるとき目覚め、その刃を振るいて異変を折伏する定めを負う者。
 歪みを正したのちはその時代へと別れを告げ、再び悠久の眠りの中に落ちてゆく者。
 他の誰とも異なる時の流れの中にその身を置き、ただひたすらに世界を救うことを宿命付けられた者。

 朱鷺宮神依――彼女が赤い月によりこの魔都・東京に招かれたのは、まさしくその宿命によるものだろう。

 少なくとも、神依自身はそう考えていた。
 後に東京事変と呼ばれた危機を鎮め、その余波として起こった幾つかの事件を解決しながら今の世の暮らしに馴染んできた矢先。
 聖霊界の新たなる歪みかと思われたあの赤い月が、神依を彼女の知る、同時に彼女の知らない東京へと連れてきた。
 目に映る姿は疑いようもなく東京でありながら同時にどこか違和感を覚えざるを得ない街並みの中で、
 神依はこの街を、そしてその裏で進行する企てを――聖杯戦争のことを考え、感じ、知っていった。

(私が招かれたのが偶然か必然か、もはやどちらでも変わるまい。この街が孕む闇は、世界を滅ぼしかねん。
 千年守としての使命を全うし、聖杯を邪なる者の手に渡らせることなくこの東京の歪みを正すのみ)

 聖杯戦争。
 個人のエゴによって世界の理すら捻じ曲げる、究極の自己本位によって執り行われる傲慢なる儀式。
 それに縋らねばならぬ者もいよう。それでなければ叶えられない願いもあろう。
 しかし神依には、それは人の手には余るものであるとしか思えない。
 応仁の世より今に至るまで、人は自分の叶えられる望みしか叶えられはしない。
 だからこそ、人は一生懸命に今を生きるのだ。


47 : 朱鷺宮神依&バーサーカー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/18(木) 01:03:34 JAeNmtDc0
「だが、血で血を洗うこの聖杯戦争。人を殺めてでも聖杯を得ようとする者共と相対するからには、こちらにも剣がいる。
 私の心だけを斬る剣ではなく、修羅の剣が……返り血を浴びてでも使命を果たすための剣が、それを振るう覚悟が、必要となろう。
 ……このはが傍にいないのは寂しいが、これで良かったのかも知れん。修羅道を征く主の姿など、見せたくはない」

 蝋燭が揺らめく。

 御堂の床の板目に影が落ちる。

 二つの影。

 神依と、もう一人の影が。

 見上げるばかりの大男である。神依を見下ろすように仁王立ちするその姿は岩のごとく大きく重い。
 鬣のように弧を描く白髮と、武芸者めいた時代がかった衣装は見る者を威圧する。
 そしてその片腕には、一振りの抜身の刀が握られている。その巨体に見合った、並外れた巨刀である。

 要素の一つ一つを抜き出せば、古き世の侍であるかのように映るだろう。
 しかしその面構えが、その目が、その身に纏う殺気が、この男が武士などというものではないと如実に語っていた。
 この男は人殺しだった。この男は修羅であった。この男は――『鬼』と呼ばれた存在であった。


 ――バーサーカー『壬無月 斬紅郎』。かつて江戸の世を震撼させた人斬りである。


 神依のサーヴァントとしては考えうる限り最も忌まわしい、英霊と呼ぶより怨霊と表現したほうが相応しい悪鬼。
 ただ力に呑まれ、衝動の赴く限り女子供までも手に掛けた男。意味なき殺生それ自体を生きる目的とした男。
 狂化スキルによって理性を失ったその姿は、まさしく鬼である。人と呼ぶべき者の姿ではない。

 目の前に鎮座するその巨体を睥睨し、神依は口を開いた。

「我が従者、狂戦士の英霊よ。忌むべき殺人者よ。私は貴様を英霊の座に相応しい存在だとは思わん。貴様の生涯に敬意も払いはせん」

 それは拒絶であり、断絶だった。生涯を懸けて人を殺め続けた鬼と、人を守るためにその身を捧げた千年守との。
 しかし、それでも、この狂戦士は神依のサーヴァントとして召喚されたのは事実なのだ。
 ならば。

「だがこの使命を……この魔都・東京の歪みを断ち切るという使命を果たすために、血を浴びることが避けられないのだとしたら。
 私はあえて人斬りの剣たるお前を振るい、その罪を背負おう。全てが終わった暁には、その咎を受けもしよう。
 我が狂戦士、壬無月斬紅郎よ! この朱鷺宮神依の刃は魂を斬る! ゆえに貴様は、私の代わりに命を斬る役目を帯びよ!」

 修羅の剣を求めた自分に与えられた、血塗られた刃。
 それを振るってでも成さねばならぬ使命があるのならば、その宿命に従おう。
 聖杯を、この魔都・東京を、人の世を脅かす力を、誰の手にも渡すわけにはいかない。

 狂戦士が唸り声を上げた。その響きが大気を揺るがし、蝋燭の火を掻き消した。


 再びその姿を取り戻した闇の中で、ふた振りの刀が、それぞれ赤い月の光を浴びて煌めいていた。 

 心を斬るは、朱鷺宮神依の珠依姫三門守宗。

 命を斬るは、壬無月斬紅郎の紅鋼怨獄丸。



 ――我ら二刃にて、帝都幻想の悠久を斬る。


48 : 朱鷺宮神依&バーサーカー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/18(木) 01:03:57 JAeNmtDc0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
壬無月斬紅郎@サムライスピリッツ

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A 敏捷C+ 魔力B 幸運C 宝具E

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:B
「狂戦士」のクラス特性。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
Bランクだと全能力が1ずつ上昇するが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】
無限一刀流:A+
「鬼」をその起源に持つと語り伝えられる剣の流派。「無限流」とも。
相手を一刀のもとに斬り伏せる剛の剣であり、地や虚空を走る斬撃をも生む。
その極意「無双剣」は莫大な気の奔流を刃とし、相手を塵も残さず斬り飛ばすものである。

剣鬼:A
人斬りという概念そのもの。
バーサーカーは、たとえ狂化していようとも人斬りの技量を一切衰えさせることはない。
無限流の奥義の数々や宝具発動に至るまで、半ば無意識にて生前同様の殺人剣を使いこなす。
無窮の武練スキルとの違いは、修練の極みではなく殺戮の果てに辿り着いた境地であるということ。

侍魂:C-
サムライスピリッツ。
怒りの爆発を刃に乗せて力に変え、あるいは自身を無の境地に置くことで静なる剣を引き出す奥義。
バーサーカーは狂化の影響で感情のコントロールが利かず、このスキルを有効に機能させにくい。



【宝具】

『斬撃にて破天を得ん』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自身

その生涯を懸けてただひたすらに人を斬り続けた『鬼』が追い求める剣の道、その極致。
壬無月斬紅郎が『そこに在る』と認識したものは『斬れる』。ただそれだけの理を世界に強要する宝具。
あらゆる矛を通さぬ盾も、いかなる術式にて固められた魔術結界も、たとえ低級宝具を寄せ付けぬ神秘の守りであろうとも。
ただ目の前にあり、振るう刃が届くのであれば、斬紅郎は至極当たり前のようにその存在を『斬る』。

白兵戦においては事実上無敵の宝具であるが、魔力の負担は切れ味に比例して大きくなり、それに当然バーサーカーの多大な維持魔力が上乗せされる。
つまり発動の瞬間を誤れば即ち自身の劣勢を招くという、捉え方によっては敵味方双方に一撃必殺の『死合い』を強いる宝具である。
なお、所詮は人斬りの極意に過ぎぬため宝具ランクは低いが、前述の通りこの宝具の前に宝具ランクを基準とする防御は意味を成さない。


【weapon】
「紅鋼怨獄丸(あかはがね おんごくまる)」
人並み外れた巨体の持ち主である斬紅郎にとっても太刀と呼べるほどの巨大な刀。


【人物背景】
「鬼」が開祖として編み出したといわれる剣術「無限一刀流」の伝承者。
身長8尺4寸(約252cm)。寛保三年(1743年)九月六日生まれ、出身地は京。

かつて山賊に捕らえられた息子を敵ごと斬殺したことで「鬼」となり、幾つもの村を地獄絵図と変えた人斬り。
やがては己の村をも襲い、その際に妻を殺害して以降は剣客のみを狙うようになり、その後も意味なき殺生と死合を求め続けた。
数多の命をただ力の赴くままに奪い続けたその悪行ゆえ、多くの剣客達にその生命を狙われ、遂には死合の果てに命を落とす。
力のみを信奉する人斬りではあるが、その狂気の奥には力に飲み込まれた己を悔やむ心があり、最期は自分を討った者に感謝しながら絶命した。
死後、その魂は冥土にあったが、天草四郎時貞の秘術によりもう一度現世へと舞い戻ることになる。

上記の通り、まごうことなき反英雄であるが、修羅の剣を求めた朱鷺宮神依に応える形でサーヴァントとして召喚された。


49 : 朱鷺宮神依&バーサーカー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/18(木) 01:04:25 JAeNmtDc0
【マスター】
朱鷺宮神依@アルカナハート

【マスターとしての願い】
魔都東京の歪みを正す

【weapon】
「珠依姫 三門守宗(たまよりひめ みかどもりむね)」
実体としての刃を持たない刀。
人体を覆う霊的エネルギーであるエーテル体、あるいは魔力や霊体だけを斬ることができる。

【能力・技能】
「時のアルカナ『アヌトゥパーダ』」
神依が契約している聖霊(高次の霊的存在)。
失われた古代文明が残した意思を持つ機械時計。時空を操る能力を持つ。
最古のアルカナとされているが、その詳細の全てが謎に包まれており、意志の疎通も不可能。
神依の睡眠中は肉体の老化を止め、戦闘時は限定的な時間停止などでサポートする。

【人物背景】
聖霊界と物質界の調和が乱れるたびに目覚め、異変を解決する『千年守(ちとせのもり)』の少女。
外見年齢は十六、七歳だが、これは眠りに就いている間は肉体の時間が停止するためであり、実際は室町時代(応仁年間)の生まれ。
十歳の時に『千年守』となって以来、世界の理の乱れに呼応して目覚め、事態を収拾したのち永い休眠に入るというサイクルを繰り返している。
古風な口調や達観した物言いが印象的だが、これは今の時代に適応し切れていないためでもあり、機械類や外来語が苦手。

時を操る聖霊「アヌトゥパーダ」を契約アルカナとして持ち、我流剣術を含めたその戦闘能力は作中トップクラス。
過去に高位の悪魔を撃破し、聖霊界屈指の錬金術師パラセ・ルシアを幾度となく退けたなど、千年守として申し分無い実力を持つ。

【方針】
無益な殺生は好まないが、使命のため避けられぬならば咎を背負ってでも斬る。


50 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/18(木) 01:06:28 JAeNmtDc0
投下終了です。


51 : ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:27:09 4kmoF.5E0
おお……投下が!投下が!
投下お疲れ様です!

では、自分も続いて三組目の主従を投下させていただきます


52 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:28:20 4kmoF.5E0

「充――――」

海岸沿いを波が静かに打ち付け、海へと戻っていく。
何かを洗い流すように、しかし、嘲笑うように痕跡を残して。
その中で、艶やかな黒髪をオールバックでまとめた学生服の少年――――桐山和雄は静止していた。
調度良い岩に腰を掛け、その手に持ったイングラムM10サブマシンガンを眺めながら、呟いた。

「俺は、本当にどっちでもいいと思ったんだよ。
 いつも、いつも……」

そして、視線を移す。
ザクロを踏みつぶしたように、ぶにゅぶにゅとした地面を眺める。
それは、数分前まで動いていた物体。
もはや、ただの肉。
幼少時代に、入ったばかりの使用人がぶち撒けた食事を思い出した。
目の前の光景と、過去の記憶の中の光景は、何の変わりもなかった。
ただの物だ。
生命などではない。

重い腰を上げ、空を眺める。
満月が桐山を照らしている。

「パララ……パララ……」

唄うように、先ほど響いた音を口にする。
もっと激しい音かと思った、もっと現実離れした音かと思った。
実際は、ポップコーンの焼きあがる音と何の変わりもなかった。

「パララ……パララ……」

騒音と化したポップコーンを想像しながら、桐山は銃口を眺める。
想像とは違い、全てはもっと現実味のあるものだった。

人が破裂して現れるものは血と肉。
ただ、その血と肉は特別なものではない。
家庭科の調理実習で見るものと、大差ない。
道端に転がる犬猫の市街と、大差ない。

銃口から飛び出る音は、ただの騒音。
劇的な音であるわけがない。
ただ、少しうるさい、ポップコーンの破裂音。
ただ、少し連続する、タイヤのパンク音。

「パララ…………?」

ふと、桐山はおかしなものを見つけた。
それこそ、『現実味のない』ものだった。
包み込むように、空に広がる満月。
その奥に、あるはずのないものがあった。
目を凝らす。
視線の先に、おかしな妖光。

紅い満月が、嘲笑うように、桐山を照らしていた。


53 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:29:42 4kmoF.5E0


   ◆   ◆   ◆


最初に、母が死んだ。
母は腸を食い破られ、その皮を悪魔に被られ、死んでいた。
その時、心のなかで奇妙な音が聞こえた。


――――今ならわかる、あれは心に藁を乗せる音だったのだ。


そこからは、悪魔との戦いだった。
世界との戦いだった。
己の心との、戦いだった。

神に会えば神を斬り、鬼に会えば鬼を斬った。
その先に、何かがあると信じた。
信じた先に、人々の世界があると信じて、斬った。

神に会えば神と手を取り、鬼に会えば鬼と手を取った。
母を殺した悪魔と手を結ぶことから生まれる、腸を突き破るような怒りを抑え、その先に人が笑えると信じた。
信じた先に、二人の友が笑っていると信じて、天魔と手を取った。


けれど――――その先には、何もなかった。


何も、ありはしなかった。
己すらも、友すらも、ありはしなかった。

その先に、◆◆◆などという少年は。
その先に、■■■などという少年は。
その先に、▲▲▲などという少年は。
どこにも居なかった。

その先にあったのは。

神に捧げられた魂、ロウヒーローと。

力を求める飢えた魂、カオスヒーローと。


――――人々の英雄の魂、ザ・ヒーローだけだった。


54 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:30:31 4kmoF.5E0

それでも、その先に何かがあると信じた。
例え、隣から、何の声も聴こえなくなっても。
心のなかで藁が乗せられる音だけを聴きながら、人々のために奔走した。
己が斬り捨てた熾天使達が降臨する様を眺めても、走り続けた。
己の頭上と背後に熾天使達が微笑んでいる不快感を覚えても、信じ続けた。

ふと、背後を見た。
女性が倒れていた。
起き上がることはなかった。
その名を呼ぼうとし、自分がその女性の名を忘れていることに気づいた。
そこにあるのが当たり前すぎて、その女性の存在すらも忘れていた。
背後から温もりが消えた。

心の奥から聴こえる、藁が重なる音が、大きくなっていることに気づいた。

ついに、少年は自身が何をしたいのかもわからなくなった。
わからないために、少年は人々の声に耳を傾けた。
何も聞こえなかった。
その声は、少年に向けられたものではなかったからだ。
やがて少年は、人々が求めているものが自身でないことに気づいた。
やがて人々も、自身が求めているものが少年でないことに気づいた。

聖地を作る際の落石の事故。

少なくとも、歴史上では、そんな馬鹿な記述で、ザ・ヒーローの物語は終わりを告げた。
だが、本当はそうではない。
ザ・ヒーローの物語を終わらせたのは、その少し前のこと。
ザ・ヒーローが息の根を止める、ほんの少し前のこと。
人類全てのための聖なる工事の際中なのに、周囲に誰も居なかったことが。
落石の際に見た、遠くで嘲笑う人々が。


――――ザ・ヒーローの心に乗った『最後の藁』だった。


.


55 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:31:40 4kmoF.5E0


   ◆   ◆   ◆


桐山和雄が、世界の事実を思い出したのは映画館を見ていた時だった。
劇的なことではなかった。
ちょっとした、店員の失敗だった。

店員がぶち撒けたケチャップ。
販売コーナーの奥で回るポップコーン。
そして、自らに人懐こく話しかける、沼井充。

一週間前の朝食を連想するような気軽さで、桐山和雄は記憶を取り戻した。

「……紅い満月か」
「あれ、ボスどうしたんですか?」
「充、俺は帰る」

そう言い捨て、桐山は映画館を抜け出た。
当然、沼井は困惑し、すぐに桐山の背中を負った。
桐山と沼井充では役者が違う。
もし、『神の子』とでも呼ぶべき天才が居るとしたら、桐山和雄がそうだ。
多くの捧げられる魂ではなく、数少ない選ばれた魂。
それが、桐山和雄という存在だ。

桐山は裏通りへと向かう。
何かの確証があったわけではない。
ただ、不自然に空に輝く紅い満月の光を追って、裏通りに入ったのだ。
そこには、一人の少年が居た。
翠緑の服を着た、少年が存在した。
服、と言っても桐山のそれとは異なる。
タイトな、ボディースーツのようなその服の上に軽鎧を身につけている。
腰元には銃、背には刀を背負い、左腕には手首全てを覆うハンドベルドコンピュータが付けられている。
あまりにも若いその容姿とは裏腹な、戦士の姿だった。

「――――」
「サーヴァントというものか」

桐山はその存在を知っていた。
聖杯から魂にダウンロードされた情報。
心的な抵抗が少ないこともあって、桐山は聖杯戦争についての知識を既に有していた。
目を凝らすような心持ちで少年を見つめる。
ステータスが、脳に流れ込んだ。
つい数日前までは出来るはずのなかった行動にも、不可思議な気持ちを抱かない。
桐山和雄とはそういう少年だった。
あるいは、そう言った感情を、幼少の事故で母とともに奪われた少年だった。

「ザ・ヒーロー……エクストラクラス」

誰に伝えるわけでもない言葉。
己の状況を確かめるだけの言葉。


56 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:33:00 4kmoF.5E0

「――――」

ザ・ヒーローは何も口にしなかった。
バーサーカーではない以上、口をきけないわけではない。
ただ、何かを拒絶するように口を開こうとしなかった。
桐山は不快と思うわけではなく、少々の時間思案する。
しばらくすると、ポケットに手を突っ込み、何かをつかみとった。

「コインの」

桐山の指から弾かれた『何か』を、ザ・ヒーローは包み込むように優しく掴んだ。
そして、ゆっくりと指を開く。
変哲もない、ただのゲームコインだった。

「コインの、表と裏だ」

桐山は感情もなく口にする。
自ら決めても良かったが、判断をザ・ヒーローへと委ねることにした。
何しろ、桐山は『どちらでも良い』と思ったのだ。
故に、無責任なまでに選択をザ・ヒーローへと委ねた。

「お前が他者を救いたければ、そのコインの表を見せろ。
 お前が他者を殺したければ、そのコインの裏を見せろ」

ザ・ヒーローは、しばしコインと桐山の顔を見比べ。
鋭く、コインを弾いた。
桐山の考えに、怒りを覚えたわけではない。
結局は同じだったからだ。
もはや、ザ・ヒーローもまた『どちらでも良かった』のだ。

くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。

綺麗にコインが中空を舞う。
桐山とザ・ヒーローの空虚な二つの視線が、重なる。
そして、ザ・ヒーローの手の甲にコインが乗る。
ザ・ヒーローはそのまま、桐山へと手を突き出した。
コインは、表を向いていた。


57 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:33:18 4kmoF.5E0



――――今も、コロシアムの英雄像は涙を流し続けていた。



.


58 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:34:07 4kmoF.5E0

【クラス】
ザ・ヒーロー

【真名】
ザ・ヒーロー

【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具A+

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
虚偽の英雄:A
生前の思想を捻じ曲げられ、人々に祀り上げられた英雄。
人在らざる者と相対する時、スキルを含めた全てのステータスが1ランク上昇する。
しかし、真っ当なる『人間』と相対する時、スキルを含めた全てのステータスが1ランク下降する。
選民の秩序も荒廃の混沌も望まなかった、そんな少年の想いを捻じ曲げた者は、天使でも悪魔でもない人間だった。

カリスマ(偽):C
軍団を指揮する才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマ(偽)は、人々に『そうであれ』と願われて初めて生まれる、呪いじみた栄光。

【保有スキル】
戦闘続行:A+
休むことを許されない。
霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。

対話:-
あらゆる生命体と対話する術を持つ。
しかし、『人類種の英雄』であることを押し付けられたことで、少年の中からこのスキルは消滅した。

人間:-
友が魔と融合しようとも、友が神の使徒になろうとも、それでも彼は人間で在り続けた。
虚偽の英雄スキルによって、このスキルは失われている。
天使と悪魔と人間に全てを奪われた少年は、ただの『人間』であることすら許されなかった。

【宝具】
『悪魔召喚プログラム(デジタル・デビル・プログラム)』
ランク:A+ 種別:対魔宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:十二柱
それは、その名のとおり、悪魔を呼び出すためのプログラム。
無数の時間を重ねて生み出された、あらゆる『魔』に属する者を統べる術を、電子プログラムに詰め込んだ電子仕掛けののソロモンの指輪。
悪魔召喚プログラム自体には特別な力が宿っている訳ではなく、要するに魔方陣の構築をオートプログラムでやってくれるだけの機械にすぎない。
現代、悪魔が要求するものは生贄や魂ではなく、より合理的なマグネタイトの現物支給を要求する。
一種の貨幣経済が生まれたことにより、初めてこの宝具が成立した。
そのため、悪魔そのものをプログラム化するのではなく、悪魔を呼び出すための"呪文"をテキストファイルとしてメモリーするのである。

縋るものなく生きられない人間が生み出した、究極の紛い物の神器。
賢者の結晶であり、愚者の末路。


59 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:34:46 4kmoF.5E0

【weapon】
無銘の剣とイングラムM10サブマシンガン。
セイバークラスでないために神剣を所持しておらず、アーチャークラスでないために魔銃を所持していない。
また、悪魔に連なる特殊弾を所有しておらず、通常弾のみの攻撃となる。

【人物背景】

かつて、三人の少年が居た。

三人の少年は、悪魔に踊らされた。

三人は二人になり、二人は一人になった。

残った一人は消えた一人を殺し、さらに消えたもう一人を殺した。

背中を支える女性も、いつの間にか消えていた。

少年の眼下には、人々の見上げる視線があった。


もう、どこからも声は聞こえない。


【サーヴァントとしての願い】
少年は、自身のためだけの願いすらも奪われた。


60 : 桐山和雄&ザ・ヒーロー ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:35:03 4kmoF.5E0
【マスター】
桐山和雄@バトルロワイアル(漫画)

【マスターとしての願い】
少年は願いを持たない。

【weapon】
イングラムM10サブマシンガン。

【能力・技能】
天賦の才としか言いようのない、短期間であらゆる術を治めることができる。
そこに指導は必要とせず、技術書の類だけでおおよその仕組みを理解できる。
まさしく、神の子。

【人物背景】
城岩中学校 男子出席番号6番
3年B組男子不良グループ『桐山ファミリー(沼井充の命名)』のリーダー。
襟足が長いオールバックの髪型が特徴。
中国四国地方トップクラスの財閥の御曹司で、容姿端麗、成績優秀かつ運動神経も抜群。
芸術的なセンスも高く、絵画や音楽でも高い才能を持つ。
喧嘩の強さや独特のカリスマ性から仲間からはボスと呼ばれて崇拝されている。

幼少時代に交通事故で実母と感情を司る脳細胞の一部を失い、かつての優しい性格を失った。

【方針】
皆殺し


61 : ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 01:35:42 4kmoF.5E0
投下終了、及び、訂正です

【真名】
ザ・ヒーロー@真・女神転生


62 : ◆devil5UFgA :2014/12/18(木) 03:18:05 4kmoF.5E0
大変申し訳ありません、コインは『表』ではなく『裏』でした

>>56
>コインは、『表』を向いていた。

>コインは、『裏』を向いていた。

訂正させていただきます、大変申し訳ありません


63 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:12:36 bt1VaHE60
登場話案を投下します。


64 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:13:07 bt1VaHE60



 ──2011年、ネオ歌舞伎町。
 俺ことホストの獅子丸ちゃんは……ってこんなナレーションいらねえよ!

 このSS読んでるって事はネット環境あるんだろ!? じゃあ「ライオン丸G」でググってウィキペディアでもなんでも見てあらすじ見れば済むじゃん!!
 っつっても、ライオン丸Gなんて見てない奴が大半だろー、どうせ。
 オッサンしか知らないような快傑ライオン丸だの風雲ライオン丸だのを2006年に深夜枠で完全リメイクったって、誰も見ねえよなー!!

 知っている人は知っている、でも知らない人は知らないままでいいやー、もう。
 どーせ放送なんかとっっっくの昔に終わってるし、視聴率も円盤の売り上げももう全然関係ないもんねー!! 
 嫌々出てた出演者はもうライオン丸Gの事なんか完全に忘れ始めた頃だろ!
 権利者はいい加減、ユーチューブにアップされてるライオン丸Gの本編動画消せって!
 それでも2ちゃんでそこそこ評価されてるし!! 有名じゃなくても負けじゃねえし!!
 主演は今を時めくカリスマイケメン俳優、波岡一喜だぜ!! 見てないそこの君ー、ちょっとは興味出てきたかー!!

 とは言っても、この登場話もどうせ落ちるんだしもうやめた!! 説明も宣伝ももうやらない!!
 ウンコブリブリーッ! チンコボリボリーッ! インキンカイカイーッ!

 てなわけで今夜はライオン丸と先代タイガージョーがお送りするサオリちゃんのオッパイ祭りだじょー!
 毒吐きとツイッター盛り上がってっかー!? 勃たせて待ちやがれ!

 あ、オープニング始まっちゃった。

 かーぜよー、ひかりよー、せーいぎのいのりー(ry



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 闇夜。──高層ビルが立ち並ぶ街並み。
 ここは東京。しかし、地球の表面に建造されたお馴染みの日本の都市ではない。
 ある夜に、獅子丸が見た月の上に模造されたもう一つの東京であった。

 獅子丸は、自分がここに立っている事が不思議でならない。
 月の裏側など、まるでアニメや近未来SFの世界である。
 しかし、どうやら酔っぱらって見ている幻想ではなく、現実らしい。
 頭の中がはっきりしているのに、ありえない状況に陥っているのである。

「あんたは……」

 そして、そこには獅子丸だけではなく、もう一人──。
 其処に最初から存在した術式と共に、この現代に召喚された戦士が立っていた。

 威圧的な大柄。虎柄の衣装。片目の男。
 おそらくは、この日本の戦国の世から召喚された野蛮な武士の一人。
 有名人だろうか。──たとえそうだとしても、獅子丸は歴史の教科書の武将たちと会った事はないので、顔だけ見てもわからない。
 近いのは、伊達政宗だろうか。

「──」

 しかし、どうも獅子丸はこの男にそれ以外の見覚えがある気がした。既視感というやつだ。
 誰かに似ているようでもあり、また、かつてどこかで肩を並べたような気もした。
 時折、この男を夢に見たような覚えもある。

「問おう。お前がこの俺の主君か──」

 ……そう問われた頃には、獅子丸は腰を抜かしていた。
 サーヴァントは強面で、いかにも蛮族といった感じである。現代なら確実に暴力団かプロレスラーといった風体。
 少し前の獅子丸ならば咄嗟に土下座で謝っていたかもしれない。
 今の獅子丸でも、そのプレッシャーに、自身も気づかぬ内に足が竦み、尻と掌が地面についた。


65 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:13:56 bt1VaHE60

「……」

 目の前の彼がこの聖杯戦争における、獅子丸のサーヴァントであった。
 その真名はわからないが、背には太刀を背負っており、一見すると≪セイバー≫のようでもあった。

「あ、あんたが俺のサーヴァントぉ……?」

 動揺して、裏返った声で、オウム返しのように、そう問う獅子丸。
 頭の中に言葉は浮かばなかった。相手が口にした言葉を何となく拾って、それをぶつけるくらいしかできない。
 サーヴァントの問いがまともに耳に通さなかった可能性もゼロではない。
 ……いや、実際そうなのだろう。声と言葉を聞いていても、意味が頭の中に入っていない。

「ああ。して、お前は俺の主君で合っている、よな……?」

 マスターとサーヴァントとの間に嫌な沈黙が流れる。
 どちらも自己紹介を始めない。
 先に問うたサーヴァントの方は、獅子丸の返答を待った。

 だが、獅子丸は、それからすぐに何か言葉を発せる頭がなかった。
 呆然としているというか、もうこの時点で気力を使い果たしているというか。
 あるいは、サーヴァントの出方を伺っているのか。



 やがて、サーヴァントの方が沈黙に折れて口を開いた。

「……今わかった。お前は、この聖杯戦争でも屈指の外れ主君だな……俺程度に怯えているようでは先が思いやられる」

 サーヴァントの方から帰って来た言葉は侮蔑であった。
 あまりにも露骨に、マスターを冷やかに見つめながら──。
 目の前の獅子丸から、弱者の香を嗅いだのだろう。
 この言葉は、流石に獅子丸の耳に届いた。

(そ、そんな事言ったって、じ、自分だってハズレサーヴァントじゃねえかよ……)

 獅子丸にしてみれば、そういった悪態をつけるのは心の中だけである。
 出来ればサーヴァントは女性──それもオッパイの大きい美女であって欲しかったのだろう。それなら令呪を使ってムフフな事もできるから、という理由だ。
 それと全く対照的な、男性らしさを象徴するような大丈夫が現れたのだから、失望もかなり大きい。

 だが、それよりも前に、ヤクザと肩をぶつけたのと同じ気分で、殺されるか殺されないかの緊張感が獅子丸の中に生まれている。
 冷静な状態でこういった相手と遭遇した時、獅子丸も流石に恐れを抱かずにはいられない。

「まあいい。仕方がないから俺の方から名乗ってやろう」

 ふぅ、と彼のサーヴァントは溜息を吐いた。
 獅子丸の様子を見て、呆れながらも、とにかく聖杯を勝ち取る為の情報交換を要としたのだろう。

「俺は、≪ランサー≫のサーヴァント、真名は虎錠之介だ。又の名を、……タイガージョー」

 ────虎、錠之介。
 ────タイガージョー。

 獅子丸は、その二つの単語に脳が刺激されるのを感じた。
 
 その名前、ごく最近どこかで耳にしたような…………。



「……って、待って、虎錠之介ぇっ!? 錠さんと同じ名前! それに、タイガージョー!?」

 その名前を聞いて、今度は獅子丸は思わず立ち上がり、飛びあがってしまった。
 目の前の男に感じた恐ろしさが押し切られるほどの衝撃だったのだ。


66 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:14:22 bt1VaHE60

≪虎錠之介/タイガージョー≫

 獅子丸は、その名前の男をよく知っている。
 しかし、目の前の男ではない。フリーランスの用心棒で、この男とは対照的に痩せぎすの男だ。彼はいつも黒いスーツを着ていた。
 この大阪のおばちゃんのような虎柄の服など着用しているのを見た事がないし、両目ともしっかりその健康を露出している。
 何度となく錠之介と会い、殆ど友人といっていい関係になった獅子丸も、その姿を見間違えるはずはない。

 ……生涯の親友、虎錠之介。
 獅子丸は、そんな男に対してある約束を果たせずにいた。

 思わず痒すぎる股間を掻きながら、ここにいる「錠之介」と名乗るサーヴァントにすり寄り、じっとその顔を見る。

 ──うむ、やはり、別人だ。

 しかし、これだけ名前だけが同じ別人などあるのだろうか。
 「トラ・ジョーノスケ」という名前と「タイガージョー」という二つ名。
 いずれも獅子丸がよく知る錠之介にも共通しているキーワードである。

 ランサーはそんな獅子丸に訝しそうに訊く。

「随分な驚き様だな。何故だかはわからんが、今のでお前もまともに話す気になっただろう。お前の名は?」
「え、えーっと……俺は元ホストの獅子丸ちゃんっす!」

 嘘をつく理由はない。
 その口調は、かつて慕った錠之介に語るように、自然と彼なりの敬語が出てくるようだった。

「獅子丸?」

 今度は、ランサーの方が獅子丸の全身を眺めた。
 まるで自分と同じような行動をするなぁ、と呑気に思いつつ、やはりこうジロジロ見られると恐ろしい。
 しかし、股間が痒くなったので、獅子丸は自分の股間に再度手をやった。


 股間をせわしなく掻き続ける獅子丸の姿に、ランサーは彼と同名の男の姿を重ねる────事はなかった。
 流石に、ランサーが生きていた頃に出会ったあの男と、この獅子丸は似ても似つかないのだ……。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


67 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:14:37 bt1VaHE60



 ────群雄割拠する戦国時代。

 人と人との戦乱は衰退を見せ始めたが、代わりに妖怪や魔物がその姿を現し始めた。
 日本征服を目論む大魔王ゴースン。彼が妖術を用いて放つゴースン魔人の配下たち。
 それに立ち向かう正義の忍者がいた。

 何度もぶつかり合ったランサーの親友、快傑ライオン丸である。
 その本当の名が「獅子丸」であった。

 果心居士から受け継いだ金砂地の刀を操り、大魔王ゴースンを倒す為に沙織、小助と共に旅をするライオン丸──。
 大魔王ゴースンの用心棒として、日本一の剣豪を目指して強い者と戦い続けてきた「銀砂地」のタイガージョーには、彼との出会いは宿命だった──。

≪もう一度言う……正しい者が勝つのではない、強い者が勝つのだ!≫

 無論、当初は、刃を交える敵として二人は出会った。
 最初の勝負では、タイガージョーは右目を潰され、ライオン丸に敗北した。
 その時の傷が今もこの右目の視界を暗くしている。
 英霊として再現された時にも、ゴースンに奪われた左目が健在でライオン丸に奪われた右目は失われたままなのは、おそらくその決着と仇に固執するあまりだろう。
 この傷、この失明こそがライオン丸との戦いの証であり、友情の印だ。
 ──この右目が回復される事など永久にありえない。錠之介に心がある限り、この右目の傷は絆として残り続ける。

≪俺とお前は所詮戦わねばならない運命なのだ……≫

 やがて、戦いを重ねる中で、いつの間にか、共に力を合わせてゴースンの打倒を目指すようになっていた。
 ライオン丸がタイガージョーに惹かれ、タイガージョーもまたライオン丸に惹かれたのだ。
 共に力を合わせる事の意義もタイガージョーは戦いの中で知った。
 剣術以外の時間が楽しいと思った事もある。

 ……しかし、今も決して二人が敵でないわけではない。ライオン丸とタイガージョーとは、「味方」であり「敵」なのである。
 それが剣士と剣士が出会った時の終わらぬさだめなのだ。

(獅子丸……)

 生きていた時の戦績は一勝、一敗、二度の引き分け。
 双方が同じ数だけ勝利し、敗北している。
 だから、いつか決着をつけるはずだった……。
 いつか、またそれぞれの剣をぶつけ合い、結果を受け入れ、共に手を取り合うはずだった。

 ────まだ二人の決着はついていない。

≪錠之介! しっかりしろ、錠之介!≫
≪獅子丸か……すまない≫

 錠之介の最期の記憶が右の瞼の裏に思い出される。
 ──あの日。
 ゴースンとの決着をつけようと決めたあの日であった。

≪……お前との勝負、預けっぱなしにして……。俺だけ先に逝ってしまうなんて……≫
≪馬鹿! これくらいの傷がなんだ……お前もタイガージョーと呼ばれた男じゃないか!≫
≪いや……今度ばかりは堪えたぜ……。すまん、先に逝かせてくれ……≫

 ……そう、決着がつかぬまま、タイガージョーは、あっけなく逝ったのである。
 全身を銃で撃ち抜かれ、最後に獅子丸と言葉を交わせた事さえも奇跡であった。
 あの悔しさを、あの痛みを、虎錠之介は地獄の底でも忘れる事はなかった。

 そして、そんな虎錠之介の聖杯への願いは、剣士として、ライオン丸と最後の決着をつける事であった。
 それが剣士としてのけじめであり、錠之介の悲願である。

 他の誰でもない、宿敵ライオン丸との勝負の為に、彼は≪ランサー≫として、再び現世に召喚されたのである。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


68 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:14:54 bt1VaHE60



(気のせいか……いや、この男からは何かを感じる。予感で終わればいいが、カマをかけてみるか……)

 ──ランサーは少し、思案した。

 あの獅子丸と、ここにいる獅子丸は共通点の一つもないが、どうも関係がある気がしてならなかった。
 虎錠之介とタイガージョーの名に反応したのが一点。
 そして、戦いを求めるランサーの嗅覚が、僅かばかりだがこののダメ丸の中にも戦士の匂いを感じ取ったのが一点。
 それが杞憂でなければ、あるいは……本当に、獅子丸と関係があるのかもしれない。
 しかし、できればそうでない事を願いたい気持ちがランサーの心の大半を占めている。

 もし、本当に関係があるとすれば、ランサーは、どうするのだろう。

 この獅子丸と決着をつければ良いのだろうか。
 ……いや。それはない。
 タイガージョー自身が決着をつけたいライオン丸でなければ意味はない。
 だが──。

「俺も獅子丸の名に聞き覚えがある。──いや、こう呼ぶべきか、ライオン丸」

 それを聞いて、どんな答えが返って来るとしても、ランサーはこう訊かねばならなかっただろう。
 杞憂であるならば良い。
 しかし、もし現実あるならば、ランサーは激しい失望を覚えるに違いない。



 生まれ変わりか、



 あの獅子丸の子孫か、



 それとも只の偶然なのか、



「はぁぁぁぁぁ!? なんであんたがライオン丸の事を知ってんの!?」



 その解答は、双方にとって残念な物であった。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


69 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:15:31 bt1VaHE60



 ライオン丸──それは、ネオ歌舞伎町では、獅子丸がキンサチで変身した姿の事である。

 しかし、ネオ歌舞伎町でも半ば都市伝説のように有名になっていった「ライオン丸」の正体が、ネオ歌舞伎町ワースト1ホストの獅子丸だとは誰も思うまい。
 ライオン丸は巷では、スカルアイをキメたカブキモノたちと死闘を繰り広げている謎のヒーローらしいのである。
 一方、獅子丸は少し前まで、ただのバカなホストに過ぎなかった。
 誰もライオン丸と獅子丸を結び付けようとはしない。

 ……しかし、ランサーはすぐにそれを見抜いてしまった。

 その理由はすぐにわかった。
 事情を聞くうちに、獅子丸は自分が戦国時代に活躍した「快傑ライオン丸」の子孫、あるいは生まれ変わりであるという事に気づき始めたのである。
 獅子丸、錠之介、沙織、小助(コスK)、キンサチ、ギンサチ、ライオン丸、タイガージョー……身の回りのあらゆる単語が、まるで仕組んだように共通している。
 生まれ変わりについて先に察したのは、ランサーの方であった。

「しっかし、俺が本当に戦国時代のライオン丸の生まれ変わりだったとはなぁ……この金玉のインキンもその時からだったりして……うわぁ! 嫌だぁっ!!」

 それぞれがそれぞれの生まれ変わりであるとするならば、時折見る「夢」にも説明がつく。
 獅子丸は、このキンサチを手に入れて以来、時折、白い獅子の戦士のデジャヴュを見る事があるのだ。
 だとすれば、超カッコいいじゃん! ……くらいにしか認識していないのがこの獅子丸という軽い男であった。
 極力、聖杯戦争のような厄介事は避けたいが、こうもヒーローっぽいシチュエーションだと心意気がまた違う。

「これもまた宿命か。……だとすれば仏も何もあった物じゃないな。よりによって、こんな奴が未来のライオン丸だとは──」

 ランサーは激しく項垂れている。それは虎錠之介としての彼の人生でもかつてないほどの落ち込みようであった。
 百戦錬磨の武人が頭を抱えるほどの相手と言えば、獅子丸の肩書きも少しは様になるだろうか。
 これを、むなしさと呼ぶのだろう。
 獅子丸の意気が高揚し、ランサーの戦意が喪失するとは、まるで先ほどとは正反対である。すっかり立場が逆転してしまった。

「いや、こんな奴って何すか! 俺だって、つい最近までライオン丸として立派に活躍してきたんすから!」
「俺が現世にいた時、ライオン丸……獅子丸は俺の好敵手だった。しかし、その魂を継いでいる筈の貴様は何だ。……脆弱だ! もはや斬る価値もない」
「ねえ、……聞いてます!?」

 よりにもよって、獅子丸がホスト。ホストの概念がないランサーにとっては、もう殆ど、売春と同義である。
 ましてや、この獅子丸は剣の経験も無く、あの獅子丸ほどの正義感も持ち合わせていない。
 本来なら相手にしないような屑、雑魚だ。
 しかし、彼が獅子丸の生まれ変わりであるという。信じたくないが、その可能性が非常に高いと聞いて、平静を保つのは難しかった。

「だが、少なくとも、マスターもライオン丸として戦えるのは不幸中の幸いか……」
「ん? それ! 確かにそうっすね! マスターもサーヴァントも変身できるとか、俺たち超強ぇーじゃん!」
「……」

 そう上手に事が運ぶ事もないだろう。
 他のマスターがこぞって高い戦闘能力を有している可能性も否めない。
 第一、基本的にマスターは魔術師たちが成るべきものであって、獅子丸のような人間はマスターには向いていない。


70 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:15:42 bt1VaHE60

(どうせならば、俺自身の生まれ変わりの男の方が主君に向いていたかもしれんな)

 自分の生まれ変わりも、どうやら褒められた人間ではないようだが、それでもヤクザの用心棒だというのなら、まだランサーに通じる何かがあるだろう。
 それなりに頭の働くタイプの人間であるらしいので、ランサーのマスターには丁度良いはずだ。
 この際、魔術の才など求めないので、せめて剣術の才を欲したかった。

 とはいえ、もうこの悪条件は覆らない。
 そろそろ覚悟を決めて、自分が組まねばならない相手を受け入れる必要がありそうだ。
 ランサーは、獅子丸に向き直して言った。

「獅子丸。これ以上、お前に失望している時間と余裕はない。ただ幾つか、俺の方から言わせてもらう。
 俺の主になったからには、恥ずべき行いをするな。そして、もう一つ。俺は誰にも縛られるつもりはない。ましてや、お前のようなマスターにはな」

 ……そう、それだけ聞き届ければもうあとは良い。
 この獅子丸が変身したライオン丸にどれほど強さがあるのかはわからないが、その力を酔って乱用するような真似を絶対にしない事を願いたい。
 万が一にでも、酔った勢いで「自害せよ」などと命令されたらたまらないのである。しかし、それをする不安があるのがこの獅子丸であった。

 そんなランサーの申し出に、獅子丸は、大きな声で笑い出した。

 どうしたのか。

「いや、本当にそういう所も錠さんにそっくりだな〜。でもまあいいっすよ。俺は誰も縛るつもりはないし。
 ……って、あれ〜? もしかして、こっちの錠さんも童貞なんじゃないっすか〜!?」

 下品だが、懐かしむようにそう言う獅子丸の姿に、ランサーは何も言えなくなってしまった。
 獅子丸は、ランサーの目の前で股間を掻き続ける。
 そんな、どこにもあの好敵手の片鱗も感じさせない男に、一瞬だけ、ライオン丸の姿が重なった。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


71 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:16:03 bt1VaHE60



(……錠さん)

 このストイックな男が錠之介が生まれ変わる前の姿だと知って、獅子丸の中には強い喜びが生まれていた。
 今は亡き親友、虎錠之介とまた会えたような、そんな錯覚がしたのだ。
 何度もぶつかり合いながら、いつの日か共に戦う仲間になっていたあの男の面影をどこか感じさせる。
 亡くしたはずのものとまた会える。
 共に抱えている一つの後悔を、聖杯を得る事で払拭できるはずなのだ。

 そう。
 戦国時代、虎錠之介が、獅子丸と決着を果たせなかったように──。
 この獅子丸にも、かつて錠之介と交わし、果たせなかった約束があったのである。

≪決めた。俺はお前をもっと強くしてやる≫
≪本当に?≫
≪約束する≫

 これが、錠之介が獅子丸に約束した内容だ
 獅子丸はそれと同じだけ価値がある契を、錠之介と交わした。
 あの朝日が差す廃倉庫の中で。


≪────じゃあ、俺もソープに連れてくの、約束します!!≫


 あの時の固い握手に報いる為に、獅子丸は、ランサーの力が必要だった。
 もう二度と果たせないと思っていたあの約束が果たせるのなら、獅子丸は何だってする。

 豪山が犠牲にしてきたホストクラブの仲間、ハルナとハルカ、スナックマスター、錠之介の両親……それもみんな、全て、もう一度だ。
 獅子丸がライオン丸であったばかりに死んでしまった大事な友人たちに、獅子丸は謝らなければならないし、ああして奪われた身の回りの命を獅子丸はまだ受け入れきれなかった。
 たとえ世界中で、毎日いくらでも戦争の犠牲者が出ているとしても、獅子丸は自分のエゴの為に彼らを甦らせたいのだ。

 その為に、また新しい犠牲を作る覚悟ならある。
 男と男は、一度交わした約束を絶対に果たさねばならないと──それならば。



 ────どんな犠牲を払ってでも、何万人が死んだとしても聖杯を手に入れ、豪山に犠牲にされた人々を生き返らせ、錠之介をソープに連れていく。
 

(錠さん……マジで、待っててください。絶対、錠さんを童貞のまま死なせたりなんてしません!)


72 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:16:20 bt1VaHE60






【クラス】
ランサー

【真名】
虎錠之介(タイガージョー)@快傑ライオン丸

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運E

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
戦士の魂:B
 死亡時に残存した魔力を用い、生前使用していた道具を使ってマスターや仲間を手助けする事ができる。
 その効力は長くは続かず、保って十分程度。動かせる物体や時間も残存している魔力に比例する。


【宝具】
『銀砂地の虎(タイガー・ジョー)』
ランク:B 種別:対人 レンジ:- 最大補足:-
 背の銀砂地の刀を抜き、「ゴースンタイガー」と唱えて空中回転する事で虎面の戦士に変身する虎錠之介の宝具。
 この姿に変身する事により、一時的に、筋力A、耐久B、敏捷A、魔力B、幸運Dにパラメーターが底上げされる。
 必殺技はタイガー霞返し等。

『象牙の槍(ゴースン・ブレイカー)』
ランク:D 種別:対人 レンジ:1〜3 最大補足:1
 大魔王ゴースンを唯一倒す事ができると言われる槍。…であるが、史実では使用より前に破壊されている。
 協力な妖術の素養を持つゴースンの弱点ともいえるこの槍は、もしかすると強い魔力の持ち主に対して効果を発揮する。

【weapon】
『銀砂地の太刀』

【人物背景】
 戦国時代に存在した剣術使い。今回は象牙の槍の所有者であった為か、ランサーとして登場。
 ある戦国大名の家に生まれたが、日本一の剣士をめざし、出奔。強さを求めてゴースンと手を結び、銀砂地の太刀を得てタイガージョーとなった。
 卑怯な真似を嫌い、己の戦いに美学を持つ典型的なダークヒーローである。
 獅子丸ことライオン丸との初戦では敗北し、右目を突き刺されて重傷を負うも、続く二回戦ではライオン丸に勝利する。
 そうした戦いを繰り広げるうちにライオン丸との間に友情が芽生え、やがて獅子丸、沙織、小助とともにゴースンを倒す為の旅をするようになった。
 最期はゴースンに挑むも返り討ちに遭い、その後にゴースン魔人・ガンドドロに殺害されたとされる。生涯のライバル、ライオン丸と決着をつける事はなかった。

【サーヴァントとしての願い】
 獅子丸(@快傑ライオン丸)との決着をつける。

【方針】
 獅子丸(@ライオン丸G)と共に聖杯を得て、願いを叶える。
 その際にセイバーなどの強力な剣士と出会う事があれば、一戦交える。


73 : 獅子丸&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:16:38 bt1VaHE60




【マスター】
獅子丸@ライオン丸G

【マスターとしての願い】
 聖杯を手に入れ、豪山によって犠牲にされたみんなにもう一度生を与える。
 そして、錠之介(@ライオン丸G)をソープに連れていきたい。

【weapon】
『キンサチの太刀』
『ギンサチの太刀』

【能力・技能】
 キンサチの太刀を抜き、ライオン丸へと変身する事ができる。
 物語途中からはキンサチの太刀の影響で生身でも高い戦闘能力を発揮するようになり、錠之介に鍛えられた事で更に成長する。

【人物背景】
 ネオ歌舞伎町のホストクラブ「ドリーミン」のワースト1ホスト。客はハリセンボンしかいない。
 ある時、ホームレスの果心居士に「キンサチの太刀」を託された事でライオン丸の力を得て、「カブキモノ」と呼ばれる狂人と戦う事になる。
 普段はカプセルホテルで生活しており、性格は臆病でいい加減で女好き、しかも借金まみれでインキン持ちと良いところがない。
 普段からどんなところでも下ネタを連発し続けるバカであるが、それでも人懐っこく、性根は誰にでも優しい性格をしている。
 ライオン丸として戦ううちに成長していき、虎錠之介や沙織などたくさんの人々と友情を育んでいく。
 作中では、快傑ライオン丸の生まれ変わり、または子孫である事を示唆する描写がある。

【方針】
 ランサーと共に聖杯を得て、願いを叶える。


74 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/18(木) 14:17:04 bt1VaHE60
投下終了です。


75 : ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/18(木) 19:23:48 IZHs7wzE0
投下乙です。
自分も投下させて頂きます。


76 : <私>・シップ ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/18(木) 19:25:40 IZHs7wzE0
・ハードボイルド・ワンダーランド

私は電車で新宿を出て、いつかのように服を買うことにした。
<ポール・スチュアート>でシャツとネクタイとブレザーコートを買い、アメリカンエクスプレスで勘定を払った。
そんなものでも全部身に着けてみると、なかなか悪くない雰囲気を与えてくれた。
ただ鏡の中を覗き込むと、ネイビー・ブルーのフラノのブレザー・コートの片方の袖が、やっぱり一センチ半ばかり短いことが分かった。
正確には服の袖が短かいのではなく、私の左腕が長すぎるのだ。どうしてそうなったかは分からない。気づいたら体がいびつになっていたのだ。
店員は一日あれば袖を調節できるからそうすればどうかといってくれたが、私は今回も断った。

「スポーツなんかはやっていないんだけどね」
断りながら私は言った。店員はアメリカン・エクスプレスの控えを渡しながら私の言葉に頷いた。
過度な運動と過度な飲食を避けることが洋服にとって一番いい。
この前拾い上げた、世界に満ちた多種多様な法則の一つだった。

服を買うのにも飽きると、私はレストランに入りサンドウィッチを食べることにした。
レストランではどういう訳かコンチェルトが流れていて、聞く限りそれは『ブランデンブルク』だった。
しかしカール・リヒターでも、トレヴァー・ピノックのものでもない。
正統派とは言えないが重みものある旋律で、もしかしたらこれがパブロ・カザルスの『ブランデンブルク』なのかもしれなかった。

レストランには私の他には三組の客しかいなかった。
何事か話し合っている男女と、本に読みふける若い男。それにコーヒーカップを前に微動だにしない老人だけだった。
『ブランデンブルク』を聞きながら、私は運ばれてきたサンドウィッチと熱いにコーヒーに手を付けた。

そのサンドウィッチは、新鮮ではりのあるパンを使っていて、レタスもしっかりとしていたし、マスタードも上物だった。
しかしマヨネーズは市販のものだろう。それに包丁がよくない。良いサンドウィッチを作る為には清潔な包丁が不可欠なのだ。
とかく見過されがちなことだけれど、サンドウィッチに対してかなり辛い評価基準をを持つ私にとって、看過することのできない部分だった。
とはいえ食べられないほどではない。私は基準線ぎりぎりのそのサンドウィッチを熱いコーヒーで胃に送り込んだ。

レストランを出ると空に雲が出ていた。
雨が降りそうな気配を感じ取った私は、降られる前に部屋に帰ることにした。
『ドゥー・ナッシン・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー』のユニークなローレンス・ブラウンのトロンボーン・ソロにあわせて口笛を吹きながら車を運転した。
それからピーター・アンド・ゴードンが代わって『アイ・ゴー・トゥー・ピーセズ』という古い、甘くて切ない唄を響かせた。

それからボブ・ディランが『ポジティブ・フォース・ストリート』を唄っている頃になると、私はアパートにたどり着いていた。
彼の唄はすぐ分かる。何といってもハーモニカがスティーヴィー・ワンダーより下手だ。
日はもうすっかりくれていて、すでに雨がその口火を切っていた。カリーナ 18000GT・ツインカスタムターボを止め、私は慣れない自分の部屋に入った。


77 : <私>・シップ ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/18(木) 19:25:51 IZHs7wzE0

「いい雨だね」
部屋に入ると待っていたのは彼女だった。
彼女はソファーに深く座り、どういう訳か『スポーツ・ニッポン』を開いていた。
スピーカーからはラヴィン・スプーンフルの『レイン・オン・ザ・ルーフ』の懐かしい唄声が流れている。
そんな中にあって彼女のような若くて美しい娘が『スポーツ・ニッポン』を読んでいた。何の役には立たないが、何も読まないよりは意味があることだった。
彼女はそんな『スポーツ・ニッポン』から顔を上げ、やってきた私を湖みたいな瞳で見上げていた。

「服を買ったんだね。似合ってると思うよ」
「広告会社の若手有望社員みたいにしてみたんだ」
「ふうん。その橙色のシャツは君によく似合っていると思うよ」
「とてもありがとう」と私は言った。「君のセーラーもよく似合っている」
「それはどうも」
「本当のに言っているんだ」
「ところで何か食べたかい?」
「サンドウィッチとコーヒーを少しずつ」
「じゃあ大丈夫だね」

彼女はそう言って私から再び目を逸らし、代わりに『スポーツ・ニッポン』を目を落とした。
やれやれ、と漏らすと、私は冷蔵庫から氷をとりだし、大きなグラスに大量のウィスキー・オン・ザ・ロックを作り、少しだけソーダを加えた。
そのグラスを片手に私はカノジョの向かいのソファーに座り込んだ。
私はつねづねソファー選びにその人間の品位がにじみ出るものだと――またこれはたぶん偏見だと思うが――確信している。
ソファーというものは犯すことのできない確固としたひとつの世界なのだ。
しかしこれは良いソファーに座って育った人間にしか分からない。音楽や本と同じだ。良いソファーはもうひとうの良いソファーを生み、悪いソファーはもうひとつの悪いソファーを生む。
それもまたこの世界に満ちた法則の一つだった。

「ねえ、精液を飲まれるのって好きかい?」
娘が不意に私に訪ねた。
どこかで聞いたことのある問い掛けだった。
『精液を飲むと美容になる』のような記事がまた載っているのかもしれなかった。
世の中の人間はそんなにも精液を飲ませたがるものなのだろうか。私は不思議に思った。

「別にどっちでも」
「でもここにはこう書いてあるよ。『一般的に男はフェラチオの際に女が精液を飲みこんでくれることを好む』って。
 マスターは違うのかい。『一つの儀式であり承認である』とも書かれているけど」
「よくわからない」
「飲んでもらったことある?」
「覚えてないな。たぶんないと思う」
「ふうん」

そう彼女は言って、再び『スポーツ・ニッポン』に目をやった。
私の目はそんな彼女に向いていた。
彼女は若くて美しくて、セーラーのグレーブルー・ヴェルヴェットの深い色合いがよく生えた。
袖から覗く腕や脚は肉付きがよく、見ているとそれがまるで冬の雨みたいに思えてきた。
しばらく同じ部屋で過ごすようになって、私はこの娘に対して好感を抱いていることに気付いていた。
好感を持てる女性は私の人生の中でもそれほど多くはなかったので、ちょっと珍しい気分だった。
そんな彼女を見つめながら私はウイスキーを煽った。
何時しかラヴィング・スプーンフルの唄声は消え、『レイニー・デイズ・アンド・マンデイ』がかかっていた。
カーペンターズに重なるように窓の外から雨の音が聞こえていた。


78 : <私>・シップ ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/18(木) 19:26:21 IZHs7wzE0

・世界の終わり


水面には波紋ひとつ残らなかった。
水は獣の目のように青く、そしてひっそりとしていた。
その静寂を眺めていると、自分が宇宙の辺土に一人で残されたように感じられた。
もうどこにも行けず、どこにも戻れなかった。そこは世界の終りで、世界の終わりはどこにも通じてはいないのだ。
そこえ世界は収束し、静かにとどまっているのだ。

だから僕ができることは一つだけだった。

「君は夢を読むことができるんだね」

誰もいない筈の森の中で、彼女は僕に対して語りかけていた。
その声は街の人々よりも色が濃く、森の雪よりは優しかった。
通り過ぎゆく雨――僕は彼女がそういうものに思えた。

「君は夢を、心を読むことができる。そしてそれを一つにまとめることができる。
 君が今まで見てきた夢を見つけることができる。そこにあって、誰もそれを奪いとることのできないものを、君はそこに見つけることができる」

彼女は小さく頷いて、それから濡れた目でじっと僕を見つめた。

「君がいたから、あの人は僕をサーヴァントに呼んだんだね。
 運命のスリガオ海峡で、扶桑も山城も見ていた僕を。
 皆が忘れても、僕だけは絶対に覚えていた……何もかも変ってしまった帝都で、それでも覚えていた僕を……」

僕は彼女の言葉を信じた。
信じることができた。この水を辿って行って、その流れに身を任せて、本当の生命が本来の姿で生きる場所を知ったから。
そしてそこで僕は振り返ったから。

僕は雨ふりのことを考えてみた。
私の思いつく雨は降っているかいないのかわからないような細かな雨だった。
しかし雨は確かに降っているのだ。そしてそれはかたつむりを濡らし、垣根を濡らし、牛を濡らすのだ。
誰にも雨を止めることはできない。誰も雨を免れることはできない。

「僕も今ではあの世界のことを思いだせる。空気や音や光や、そういうものをね。
 唄がそんなものを僕に思い出させてくれたんだ」
「立派な世界かなんて、僕には分からなかったけど、少なくともあれは僕達が生きていた世界なんだ。
 良いことも、悪いことも、どちらもあったんだね。それを僕は覚えていたいんだ」

雪は何時か止むだろう。春の温かさが来て、それは雨になる。
そのことを確信しながら、僕は踏む雪の軋みを聞いていた。


79 : <私>・シップ ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/18(木) 19:26:41 IZHs7wzE0


・ハードボイルド・ワンダーランド

いつものように、目覚めは隅の方から順番に帰ってきた。
ブックシェルフ・スピーカーが右端に現れたかと思うと、左端ではバスルームのぬっぺりとしたドアが浮かび上がっていた。
やがて視界がだんだん内側へと移っていって、まるで湖に氷が張るときのようにまん中で合流した。

合流した先にあったのは目覚まし時計で、三という数字を挟み込むように二つの針がぴんと伸ばされていた。
目覚まし時計はオリーヴ・グリーンの丸いシンプルな造形をしていて、左わきに小さなボタンがつつましくついている。
私がボタンを押すと、振動してブザーを鳴らしていた時計は、定められたルールに従ってぴたりと止まった。
ブザーが鳴り止んだとき、私は自分が時計とマールボロ・ライトの置かれたテーブルを前にして目覚めたことを知り、同時にソファーに座りながら眠っていたことを知った。

そうして目が覚めた私の心を、何かが打った。
それは唄だった。完全な歌ではなく、唄の最初の一節であり、もっと言うならば和音だった。
四つの音がまるでやわらかな太陽の光のように、空からゆっくりと私の心の中に舞い下りてきた。
最初の四音はすぐに次の五音へと導かれメロディーとなった。
『ダニー・ボーイ』
スピーカーから流れ出していたのは、その唄だった。
私は開けたばかりの目を閉じて、そのつづきを聞いた。
メロディーが心にしみわたり、体の隅々から固くこわばった力が抜けていくのがはっきりと感じられた。
久しぶりに『ダニー・ボーイ』を耳にすると、私がどれほど心の底でこの唄を目止めていたかということが分かった。
あまりにも長いあいだこの唄を失っていた気がする。私はそれに対する飢えさえも感じ取ることができなくなってしまっていたのだ。
音楽は長い眠りについていた私の筋肉と心をほぐし、目にはあたたかいなつかしい光を与えてくれた。

ほのかな優しい光を感じた私は目を開いた。そして立ち上がって天井の電灯を消した。
その光は薄暗い電灯の光ではなかったからだ。もっと星の光のように白く、あたたかな光だ。
電灯を消したことでその光がどこから来ていたかを知った。
光は窓から降り注ぐ月の光だった。
月は朝の海のようにやわらかく、静かに輝いていた。
部屋がまるで昼のように明るくなっていた。ずっと月がなかった夜に、月が覚醒しているのだ。

その月を見ながら、私は自分が目覚めたことを知った。
これで私は私が喪ったものをとり戻すことができた、と思った。
それは一度失われたにせよ、決して損なわれていないのだ。
私は目を開けて、その深い月を見つめた。雨は止んでいた。しかし何時かまた降りそそぐだろう。
雨は何時も公正に降り注ぐのだから。

何時しか『ダニー・ボーイ』は終わっていた。
代わりに現れたボブ・ディランは『激しい雨』を唄いつづけていた。


80 : <私>・シップ ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/18(木) 19:27:05 IZHs7wzE0

【クラス】
シップ

【真名】
駆逐艦・時雨改二

【パラメーター】
筋力D 耐久E 敏捷A 魔力E 幸運A+++ 宝具E

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
砲撃 D 
艦むすとしての砲撃性能。駆逐艦としてはこれでも上位の性能を誇る。

索敵 C 
艦むすとしての索敵性能。判定に成功すると命中回避を上げることができる。

【保有スキル】
爆雷 C 
戦艦や空母と違い、駆逐艦は潜水艦への攻撃が可能。
先手は取られてしまうが潜水による気配遮断に対応できる。

夜戦 B 
夜間戦闘における威力補正。夜間戦闘において火力が飛躍的に上昇する。
また幸運値に依存して命中補正がかかる。

【宝具】
『改二』
ランク:E 種別:対空 レンジ:1-20 最大補足:10
度重なる改修の結果手に入れた強力な対空性能。
佐世保に帰投した際に修理ついでの改装を繰り返していた結果である。
最終形と就役当初の時雨は明らかに別物。
対空攻撃が幸運値に依存して威力・命中に補正がかかる。

【weapon】
22号対水上電探
13号対空電探

【人物背景】
白露型駆逐艦2番艦『時雨』――その艦むす。
開戦時は同型艦の白露、初春型駆逐艦の有明、夕暮と時雨の4隻で第一水雷戦隊第二七駆逐隊に所属していた。
艦むすのモデルになっている白露型の「時雨」は旧神風型を先代にもつ2代目である。
(先代の時雨は旧神風型の10番目として、日露戦争直後に誕生。しかし第1次大戦に参加したという記録も無く、実戦を迎えることなく引退したとされている。ある意味本当の幸運艦だった。)
史実では歴戦をくぐり抜け、「呉の雪風・佐世保の時雨」と言われた超のつく幸運艦となった。
しかしそれは雪風と同じく味方の死を多く見ることでもあった。
扶桑・山城・最上・満潮・山雲・朝雲……多くの味方が散っていき、しかし本国にはそれが『大戦火』と伝えられる。
そんな中にあって時雨は損傷を受けつつも生き残り、その度に改修を受けた。
結果戦争末期には全くの別の艦になっており、それが『改二』として再現されることになる。
戦争末期、幸運を誇った時雨も遂に倒れる。
そして艦むすになった彼女は思う。戦争が終わっても、みなの戦いを、真実の姿を決して忘れはしない、と。


【マスター】
『ハードボイルド・ワンダーランド』の<私>

【マスターとしての願い】
失ったものを手に入れる。

【能力・技能】
・計算士としての能力。シャフリング。
決して解けない暗号を作る……が『世界の終わり』がああなった今、この能力は恐らく使えなくなっている。
ただそうでなくとも仕事柄高い暗算能力を誇る。

【人物背景】
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の<私>。
『ハードボイルド・ワンダーランド』の物語の語り部であり、主人公である。
『ハードボイルド・ワンダーランド』の章は、暗号を取り扱う「計算士」として活躍する私が、自らに仕掛けられた「装置」の謎を捜し求める物語である。
半官半民の「計算士」の組織『組織(システム)』と、それに敵対する「記号士」の組織『工場(ファクトリー)』は、暗号の作成と解読の技術を交互に争っている。
「計算士」である私は、暗号処理の中でも最高度の「シャフリング」(人間の潜在意識を利用した数値変換術)を使いこなせる存在である。
ある日、私は老博士の秘密の研究所に呼び出される。太った娘(博士の孫娘)の案内で「やみくろ」のいる地下を抜けて研究所に着き、博士から「シャフリング」システムを用いた仕事の依頼を受けた。
アパートに戻り、帰り際に渡された贈り物を開けると、一角獣の頭骨が入っていた。私は頭骨のことを調べに行った図書館で、リファレンス係の女の子と出会う。
翌朝、太った娘から電話があり、博士が「やみくろ」に襲われたらしいと聞く。
私は謎の二人組に襲われて傷を負い、部屋を徹底的に破壊される。その後、太った娘が部屋に現れ、私に「世界が終る」ことを告げる。

……彼は知る。
「シャフリング」の真実を。
己の意識の中にあるもう一つの世界――『世界の終わり』と名付けられた物語を。

【方針】
???


81 : ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/18(木) 19:27:32 IZHs7wzE0
投下終了です。


82 : ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 01:56:50 JminN.as0
皆様投下乙です。
過去候補作のリメイクになりますが、投下させていただきますね。


83 : 七原秋也&キャスター  ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 02:01:54 JminN.as0




Someday girl, I don't know when, we're gonna get to that place Where we really wanna go and we'll walk in the sun
 いつか――いつとは知らないけれど、俺たちは俺たちがほんとうに望んでいる場所へたどり着けるだろう。そしてそこで、陽の光の中を歩けるだろう。



But till then tramps like us baby we were born to run
 でも、それまでは――俺たちはどうも、走り続けなければならない。



                                    ――明日なき暴走(Born To Run): Bruce Springsteen




   ▼  ▼  ▼


 古臭いロックンロールが、繁華街のスピーカーから雑踏へと掠れた響きを持ってメッセージを投げかける。

 夜道を行き交う人々は皆忙しげで、何十年も前のロッカーが歌に託した言葉などに耳を傾けはしない。
 行き場を無くした歌手の叫びは滑稽なほどにあっけなく大気へと溶け、街のざわめきに掻き消されていった。

「知ってるかな。ロックンロールは、もともと反逆の音楽なんだぜ」

 人々の波から一歩離れ、街灯にもたれかかるように立ちながら、少年は傍らに立つ青年へと語りかけた。
 茶髪に染めた髪の青年はまだ二十歳そこそこに見えるが、少年のほうは更に若い。
 学生服を着たその姿はせいぜい中学生ぐらいといったところで、横顔にも僅かに幼さの残滓が残る。
 しかしどこか、歳相応を越えた――何かを乗り越えた者が持つある種の凄みを感じさせるところがあった。
 茶髪の青年は視線だけを向け、何も言わずに学生服の少年の続きを促す。

「俺が生まれ育ったのは香川の片田舎でさ。こんな人混みなんかとは無縁の、それでも結構いいところだった。
 そこで俺は大きくなって――ロックを知った。音楽の力があれば、なんだってできるようにその時は感じた。
 反政府印の退廃音楽ってレッテル貼られてたけどさ。俺にとってロックは宗教みたいなものだったからな」

 昔を懐かしむように語るその口調は、十四、五の少年が語るには相応しくないようなものだった。
 まるで過去――二度とは戻ってこない過去を、手の届かない場所から振り返っているようで。

「だけどさ、あの時あいつが……ああ、そうだな、俺の『友達』が、こう言ったんだ。
 『聞きたいときに聞きたいやつが聞くのさ。そうだろう?』ってさ。そんなことそれまで考えたこともなかった」

 友達、と口に出した時に、少年は僅かに照れくさそうな、それでいて誇らしげな表情を見せた。

「この街の人間は、誰もロックンロールなんか聞いちゃいない。だけど、あいつはこれでいいんだって言うだろう。
 禁止されたり推奨されたり、そんなんじゃない。聞きたいやつが聞きたい音楽を聞く、それが当たり前だってことが。
 ……この『東京』は、あいつが、俺たちが、望み続けた世界だ。この街の当たり前が、俺たちにとっては陽の光の中なんだ」

 少年は顔を上げた。前髪が夜風で、僅かに揺れた。

「……キャスター。俺、戦おうと思う」

 眠らない街、東京。そのネオンと喧騒の中で、それでも立ち消えることなく、力強く。

 香川県城岩町立城岩中学校三年B組男子十五番、七原秋也は、己のサーヴァントへ向かってはっきりと告げた。


84 : 七原秋也&キャスター  ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 02:02:31 JminN.as0



   ▼  ▼  ▼



 その時、少年は十五歳だった。


 十五歳。


 まだ音楽や、スポーツや、勉強や、友人とのたわいない会話が世界の全てで、
 その世界の中だけで生きることを許されるはずの年頃だった。

 少年には幼い頃から共に育った親友がいた。
 共に学園生活を送ってきた、心許せる級友達がいた。
 彼自身は知らなかったけれど、自分へと想いを寄せている異性だっていた。
 あまり付き合いがない連中だって、掛け替えのない存在には違いがなかった。

 だけど。

 そんな生活は、たった一日で、何もかもぶち壊しにされた。
 あの日、バスに充満したガスの中で遠のいていったのは彼の意識であり、日常だった。
 そして離れていったものは、もう二度と戻っては来なかった。


 ――戦闘実験第六十八番、通称『プログラム』。


 少年――七原秋也の全てを奪い去った悪夢の殺人ゲームが、それだ。

 あのプログラムで、みんな、みんな死んでしまった。
 無二の親友だった慶時も、どんな時もクールだった三村も、無口だけどいいやつだった杉村も。
 自分を救ってくれた委員長も、灯台の女子達も、最初に自分が殺してしまった立道も……それから川田も。
 あの桐山和雄だって、死んでいいわけがなかった。あんなプログラムさえ無ければ人殺しになんてならなかったのに。
 何もかもが秋也の手のひらからこぼれ落ちていって、側に残ったのはたったひとりだった。

 その生き残った少女、中川典子と共に、秋也は走り続けた。
 ほんとうに望んでいる場所へたどり着くために、陽の光の中を歩くために。
 いつかこの国をぶっ壊してやる――その思いだけを希望として、秋也たちは逃げ続けた。

 そんな中、秋也は、ふと思ったのだ。

 俺達が生き延びようがくたばろうが、きっとこれからもプログラムは続く。
 毎年毎年、何十人という子供達が理不尽な国家システムの中で死んでいく。
 プログラムだけじゃない。共和国によって無慈悲に命を奪われる者、血を流す者、涙にむせぶ者。
 秋也にはどうしようもない巨大な圧力の下敷きになって、みんな永遠に苦しみ続ける。

 この国をぶっ壊してやると誓った。それまでは典子と二人で生き続けると誓った。
 死んでいった大切な人たちのために。失われたかけがえのない全てのために。 

 だが、それはいつになる。いつになったら辿り着ける。
 いや、そもそも辿り着けるのか。ゴールはどこだ。どこまで走り続けたら立ち止まることが許される。
 その時まで自分は本当に生きていられるか。典子を守り続けていられるのか。

 そんな弱気になったのは初めてだった。
 やると決めたらやる、躊躇わない、それが七原秋也という少年の気質だったから。

 その日は新月だった。
 月の登らない闇に紛れて、国外脱出への最後の行程を突破するつもりだった。
 哨戒している兵士達に見つからずに港まで辿り着ければ、そのまま漁船に乗って太平洋へと向かう手はずだった。
 だがそう上手くはことは運ばず、二人を捕らえようと躍起になった兵士達は銃弾の雨を二人に浴びせかけた。
 あとほんの少しの距離なのに。手を伸ばせば届きそうなくらい近くに来ているのに。
 物陰に潜んで兵士達が見失うのを願いながら、悪態をつきそうになるのをすんでのところで堪える。
 隣に典子の荒い息遣いを感じる。不安を払うように額の汗を手の甲で拭って、秋也は縋るように満月を見上げた。


 満月?


 ――新月の夜に、赤い満月がのぼっていた。


85 : 七原秋也&キャスター  ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 02:03:00 JminN.as0



   ▼  ▼  ▼



 そういえば、昔、あのくそったれのプログラムに巻き込まれる前に、そんな噂を耳にしたことがある。

 クラスの占いに詳しい女子、稲田だったか南や金井だったか、とにかく、そんな話をしていた。

 その時は興味もなかったし、くだらないおまじないの類だと聞き流していたが、今になって思い出した。




 ――どうしても叶えたい願い事を、月のない夜に出る赤い満月が叶えてくれるんだって。



   ▼  ▼  ▼



「……キャスター。俺、戦おうと思う」

 聖杯戦争を知り、月の願望器が真実であると知り、最後の一人が願いを叶えられると知り。
 そしてこの『東京』を自分の目で見た秋也の、それが結論だった。

「……戦う、か。マスター。君はこの聖杯戦争で、何を願う?」

 茶髪の青年、キャスターが問いかける。

『魔術師』のクラスで召喚されたというこのサーヴァントは、英霊と呼ぶにはどこか軽い、二枚目を気取った雰囲気の青年だった。
 魔法使いというイメージからはあまりにもかけ離れていて、秋也は最初随分と面食らったものだ。
 だがふとした時に見せる、たった今も見せているその真剣な眼差しには、伝承に語られる英雄であることを納得させる輝きがあった。

「俺が、聖杯に懸ける願いは――」

 その英霊の存在感に気圧されように自身を奮い立たせて、秋也は復唱するように呟いた。
 願いはとうの昔に決まっていた。必要なのは覚悟だけだった。
 しかし逡巡は一瞬だった。走り続けなければならない、その覚悟はあの時にしていたのだから。

「この東京を、俺たちにとっての現実にする。魔都だとか何とかなんて、知ったことか。
 どんなに穢れてようが、どんなに後ろ暗かろうが――俺たちがあんなにも焦がれた自由が、ここにはあるんだ」

 そう告げる。しかし秋也の答えを耳にしても、キャスターの硬い表情は変わらなかった。

「あのさ、マスター。こう言っちゃ何だが、聞く限りではマスターが聖杯戦争に呼ばれるきっかけは何もかもプログラムのせいだろ?
 だったら死んだクラスメートを生き返らせるとか、あるいはプログラムに選ばれなかったことにだって出来るんじゃないの」

 砕けた口調だが、それゆえに重みのあるキャスターの言葉が秋也へと刺さる。

「そりゃあ願いたいさ。またあいつらに出会えたらどれだけいいかって思う。一緒に今まで通り、仲良くやれたら、どんなに……」

 その願いは、確かに秋也にとって甘い蜜ではあった。しかし、それでも。 
 
「だけど、駄目なんだよ。あの地獄を、無かったことにしちゃいけないんだ。俺が覚えてなきゃ、いけないんだ」

 誘惑を跳ね除けるようにして、声を絞り出す。
 これは傲慢かもしれない。死んでいったあいつらは、本当は生き返らせてほしいと思っているかもしれない。
 だけど、あの国を誰も理不尽に泣かないで済むような、ロックンロールを聞き流して行きていけるような国にするためには。
 秋也は、死んでいった旧友たちに背を向けて、走りだすしかないのだ。


86 : 七原秋也&キャスター  ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 02:03:24 JminN.as0

 キャスターの口調は、既に気取ったものから真剣なものへと移り変わっていた。

「これは戦争だ。俺達サーヴァントはいい。どうせ一度は死んだ身で、やられたところで英霊の座に戻るだけだからな。
 だけどマスターはそうはいかない。負けたら、死ぬ。マスターが俺に命令を下せば……今度こそ人殺しになる」
「……兵隊を撃ったことならあるさ」
「そうじゃないって。聖杯戦争で戦うことは、人の願いを踏み越えて進むことだ。ただ生きるためだけに戦うのとは違う」
「その覚悟はあるのかって? そんなのは分からない……だけど、あいつらのために、俺だけに出来ることなら、俺は……!」

 秋也は無意識に拳をぎりぎりと握り込んでいた。
 これは理不尽に立ち向かうための戦いではない。相手も相応の願いを抱えているだろう。
 葛藤を押し殺そうとする秋也を、キャスターは神妙な顔立ちで見つめていたが、やがておもむろに口を開いた。
 
「もういい。もう十分だ。俺が召喚に応じるに値するマスターだってことは、よーく分かった」

 思わず顔を上げた秋也の目の前で、改めて名乗らせてもらおうとキャスターは咳払いをして姿勢を正す。

「操真晴人。人呼んで指輪の魔法使い『ウィザード』。此度の聖杯戦争では『魔術師(キャスター)』のクラスとして現界した」

 掲げた指先に輝く、真紅の指輪。その輝きが秋也を射抜く。

「この指輪に誓おう、マスター。俺がお前の、最後の希望だ」

 不敵なキャスターの視線に、秋也はつい苦笑いを返してしまう。 

「自分で言うことかよ、そういうの」

「自分で言わなきゃ意味が無いんだよ。誰かに望まれてヒーローになったんじゃないからな、今の俺は」

 キャスターが笑い、秋也もまたつられて笑う。

 笑いながら、心のなかでは残してきた典子のことを思う。

 本当は一刻も早く戻ってやりたい。そばに居て、勇気づけてやりたい。

 それでも、彼女がもう一度家族と笑い合えるような世界を持って帰るためには、今は戦わねばならない。


 昨日、今日、明日、未来。全ての涙を、宝石に変えてやるまでは。

 それまでは――俺たちは、走り続けなければならないのだ。


87 : 七原秋也&キャスター  ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 02:04:36 JminN.as0
【クラス】
キャスター

【真名】
操真 晴人@仮面ライダーウィザード

【パラメータ】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:D 宝具:B
(通常時)

筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:A 幸運:D 宝具:B
(ウィザード・フレイムスタイル時)

【属性】
中立・善 


【クラススキル】
陣地作成:B
「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作成可能。
晴人の「工房」は後述のクラススキルの補助をメインとした性能となっている。

ウィザードリング作成:A
「魔術師」のクラス特性「道具作成」の変型スキル。
魔力を消費し、自身の宝具に使用する魔術を秘めた指輪ウィザードリングを作成する。
上位フォームへの変身リングなど、高位の指輪になるほど必要となる魔力量は上昇する。
なお生前の晴人は指輪の制作を知己の職人に任せており、このスキルは聖杯戦争にあたって獲得したもの。


【保有スキル】
高速詠唱:-
魔術の詠唱を高速化するスキル。
ウィザードの呪文詠唱は全て宝具が代行するため、必要としない。

ウィザードローブ:D
変身によって身に纏うローブによる特性。対魔力と魔力放出の複合スキルで、それぞれDランク相当。
高位の指輪による変身を行うと、このスキルのランクも同時に上昇する。
なお、このスキルは変身前の状態では一切機能しない。

騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
本来は騎乗兵のクラスにも適合する晴人だが、キャスターとして召喚されたため劣化している。
生前目にしたことのある乗り物であれば乗りこなすことができるが、未知の乗り物には発揮されない。


【宝具】
『呪文詠う最後の希望(ウィザードライバー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
 晴人が腰に装着する、ベルト状の呪文代行詠唱装置。
 普段は実際にベルトに偽装されているが、ドライバーオンの指輪で本来の姿を取り戻す。
 ウィザードリングをかざすことでそれぞれに対応した音声を発し、晴人本人の詠唱無しで呪文を行使する。
 そしてその真の能力は、変身リングをかざすことにより晴人を戦うための姿『ウィザード』へ変身させることにある。
 変身状態では各能力が上昇しウィザードローブのスキルを獲得する(変身リングによって能力・消費魔力は変動する)。
 詠唱できる呪文はあくまで指輪依存のため、事前のウィザードリング作成の状態次第で有用性が一変する宝具。


『心淵に棲まう竜(ウィザードラゴン)』
ランク:B 種別:対人宝具(対城宝具) レンジ:-(1〜?) 最大補足:1(1〜?)
 晴人の心象風景内に存在する竜(幻想種としての竜ではなくファントムと呼ばれる精神世界に巣食う魔物である)。
 本来は宿主である晴人を絶望させ喰い尽くす存在であるが、晴人はこれを抑え込み魔力の供給源としている。
 マスターから晴人自身に十分な魔力が供給されている状態であれば、それ以上の消費魔力をこの宝具に肩代わりさせることができる。
 ただし休息なしで行使できる魔力量には限界があり、またマスターからの魔力供給が一定に満たない場合は使用不可能。

 この宝具のもうひとつの特性として、心象風景内でならドラゴンが自我と実体をもって活動できるというものがある。
 つまりこの宝具は、術者の心象風景をもって現実を塗り潰す魔術――『固有結界』に対するカウンターとして機能する。


88 : 七原秋也&キャスター  ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 02:05:01 JminN.as0
【weapon】
「ウィザードソードガン」
剣と銃の2形態に変形する武器で、晴人は変身前後を問わず使用する。
基本的に「コネクト」の指輪で別空間から取り寄せ、場合によっては二刀流で戦う。

「ウィザードリング」
宝具『呪文詠う最後の希望(ウィザードライバー)』で呪文を行使するための指輪。
初期から所持しているのは変身リング『フレイム』と魔法リング『ドライバーオン』『コネクト』『キックストライク』。
これ以外の指輪は、専用スキル「ウィザードリング作成」で魔力を媒介に作成する必要がある。

「ドラゴタイマー」
ドラゴン系スタイルの分身を最大三体まで出現させられる魔道具。
発動にドラゴン系のリングを必要とするため、初期状態では使用不能。


【人物背景】
 かつて謎の儀式「サバト」の生贄にされながらも生還した過去を持つ青年。
 その素質を認めた「白い魔法使い」にウィザードライバーを託され、ファントムと戦う魔法使い「ウィザード」となった。

 一見クールに気取った二枚目半といった印象を受けるが、実際は真面目で責任感の強い性格。
 普段の飄々とした態度は自分の内面を表に出さないためのポーズであり、悩みや葛藤はひたすら内面に抱え込む傾向があった。
 しかし仲間との出会いや幾多の激戦を通して、周囲を信じ自分を曝け出すことを学んでいった。

 同じサバトから生還した記憶喪失の少女・コヨミとは良いコンビであり、次第に心を通わせるようになる。
 しかしサバトの黒幕であった白い魔法使いとの戦いの中で、彼女は白い魔法使いの死んだ娘を模した賢者の石で動く人形と発覚。
 また彼女の体は既に限界に近づいており、遂には晴人の目の前で力尽き消滅してしまう。
 晴人はコヨミの最後の願いを受け入れ、彼女の心を救うという自分自身の希望のために最後の戦いへと挑んでいった。

 好物はドーナツ。それもプレーンシュガーしか食べないというこだわりがあるらしい。


【サーヴァントとしての願い】
 なし。かつてコヨミを失ったという過去には既に自分の中で決着を付けている。
 召喚に応えたのは、秋也の心を満たす深い絶望と、その奥に微かに灯る「最後の希望」を感じ取ったから。



【マスター】
 七原 秋也@バトル・ロワイアル(原作小説版)

【マスターとしての願い】
 聖杯の力で大東亜共和国をこの『東京』のような、人々が自由に生きられる世界にする。

【weapon】
 ベレッタM92F。かつてプログラムからの脱出時に持ち出したもの。

【能力・技能】
 運動神経は抜群であり、プログラムやその後の逃亡を通して相当の修羅場を潜っている。
 しかし戦闘能力は一般人の域を出ず、また魔術師としての能力は当然ながら皆無。

【人物背景】
 城岩中学校3年B組の中学生。
 早くに両親を亡くし孤児院で生活していた。運動神経が高く、陽気で強い精神力を持つ。

 修学旅行中に戦闘実験第六十八番プログラムの対象としてクラスごと拉致され、国家に殺し合いを強いられる。
 開始時に親友を教師役によって殺害され、その後はその親友の想い人であった中川典子と行動。
 更に前回のプログラムの生還者である川田章吾と出会い、共にプログラム脱出を目的として奔走する。

 幾度となく生命の危機に見舞われ、また三村や杉村といった友人を次々に失い続け、
 最後には最大の協力者であった川田までも失いながらも、典子と一緒にプログラムから脱出。
 その後川田の知人を通して国外逃亡の手段を手に入れ、典子と二人で生き続けることを決意する。

 ちなみにバトルロワイアルの登場人物は媒体ごとにキャラクター性に違いがあるが、原作版の七原も例に漏れない。
 特に、お人好しの熱血漢というイメージの強い漫画版とは印象が異なる。

【方針】
 少年は最後の希望に出会った。だから、願いのために戦う。


89 : ◆Y4Dzm5QLvo :2014/12/19(金) 02:05:40 JminN.as0
投下終了しました。


90 : ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:33:44 E9m/gn7U0
皆様、投下お疲れ様です!
続きまして、私も投下させていただきます!


91 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:37:04 E9m/gn7U0


ゴッサムに制定された、デント法。

その法によって、人は精神異常を理由に刑を逃れることができなくなった。
ある一人の英雄によって叩きこまれた、多くのアーカム精神病院の犯罪者は刑務所へと居住を変えた。
甘い法定が守っていた精神異常患者は、犯罪者へと、正しい肩書を得ることとなった。


その中で、たった一人だけ、未だにアーカム精神病院の奥の奥で監禁されている犯罪者が居た。


彼は退屈だった。
今まで、どこか浮き足立っていると言っていいほどに弾んでいた心はどこかに消えてしまった。
わかる、消えたのだ。
この街から、自分とも言える存在が消えた。
情報は絶えていたが、それでも、隠し通せないものは存在する。
それが彼/ジョーカーに対してならば、尚更だ。

――――ゴッサムに佇む闇の騎士、バットマンが消えた。

言いようのない虚無感がジョーカーを襲った。
いずれ消えると感づいていたが、そのことすらどこか虚しいものだった。

「…………………HAHAHAHAHA!」

ジョーカーは笑ってみせた。
バットマンの出来の悪いジョークを笑うように。
ジョーカーは、出来ることならバットマンの出来の悪いジョークをもっと見たかった。
たとえ、そのバットマンがジョーカーの知るバットマンでなくとも。
ジョーカーはバットマンの出来の悪いジョークを欲した。
欲して、欲して、欲して――――やがて、その欲にも少しだけ飽きた。

ジョーカーは窓から闇を見た。
そこに、蝙蝠のシンボルが浮かんでいるかと思ったからだ。
しかし、そこにあったものは月ではなかった。
異常者であるジョーカーですら、己の目を疑った。
ありえない光景だった。
そこにあったものは。


――――血に塗れながら笑う自身のような、紅い、紅い月。


.


92 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:38:56 E9m/gn7U0



   ◆   ◆   ◆


「知ってる? 人を喰うオバケの話」

曲がり角に佇む存在の顔すらもわからなくなる、誰彼時。
二人の女子高生が歩いていた。
お互いの顔と顔を認識できる、そんな至近距離で歩いていた。

「そのオバケにはさ、脚がなくてさ」
「あー、知ってる知ってる」
「脚のないおばけは、いつもおかしなことばかり口にして。
 脚を止めた人をさ、よくわからない方法で食べちゃうんだってさ」

短髪の少女が打った相槌と、語りながら都市伝説の物語は終末へと向かう。
二人の少女は、どこかおかしくなり、顔を合わせ、笑顔を重ねた。
そして、声を合わせるように。
『ひとくいオバケ』の正体を口にした。

「女性の裸」
「子宮の中で死んだ赤ん坊」

しかし、その声は重なることはなかった。
二人の知る都市伝説は、終りの部分だけが異なっていた。
不思議そうな顔を浮かべる一人と、少し落胆したような顔をした一人。

「…………えっ?」
「……ま、噂ってそんなもの――――」

片方が『そんなものか』、そう言おうとした瞬間だった。
誰彼時、その顔すらも見えない時間帯。

「両方正しいんだぜ」

裏路地から、声が響いた。
嘲笑うような、不快な声だった。

その声を、ただの浮浪者の声と認識して足を止めなかった少女。
そして、その声に気を取られて足を止めた少女。

二人の少女の反応が別れた。
そんな瞬間だった。

「――――っ?」

脚に強烈な違和感を覚え、そして、次に地面へとキスをした。
理解が出来なかった。
鼻に強烈な鈍痛を、脚に消えない違和感を抱きながら、脳に幾つもの疑問を浮かばせた。
疑問を浮かばせたまま、少女は強烈な力によって、裏路地へと引きずり込まれた。
視界が暗転する。


93 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:40:21 E9m/gn7U0

「な、なに、ねえ、なに!? なんなの!?」
「い、いやああああああああああ!!!」

誰に問うでもなく、ただ、自分の中の疑問を言葉という形にした。
其れに遅れて、チープな叫び声が響いた。
脚に強烈な違和感を覚えた少女は世界が理解できず、必死に視界を動かした。
その中に、不思議なピエロが居た。
出来の悪いピエロだった。
石灰をたたきつけられたような、塗りの厚い白い化粧。
幼稚園児がクレヨンで描いたような、分厚い唇の紅い化粧。
出来の悪い縫い物のような、不自然に長い唇。
不気味なピエロが、自身の首根っこを抑えていた。

「バーサーカーはなぁ……可哀想な奴なんだよ。
 ママに捨てられて、トイレに捨てられたんだよ。
 しかも、満足な出産じゃなかったから、呼吸も出来ずにそのまま溺れ死んだんだ。
 だから、そのマーマの裸が、バーサーカーが最初に見て、最後に見た世界なんだ。
 バーサーカーは自分の体をマーマの裸だと思ってやがんだ」

不気味なピエロ/ジョーカーは、優れた膂力で女子高生を放り投げ、語り始める。
視界がまた動く。
そこで、ようやく気づいた。
自身の両足が失われていることに。

――――ジョーカーの背中の奥に、紅い、紅い、胎児/女性の裸体が浮かび上がっていることに。

「いやぁ!? なに、いや、これ、いや!!」
「あ、紅い……赤ん坊……女の人……?
 なんで、なんでピエロ……?」

自身の脚がもぎ取れたことに、痛みよりも動揺を覚えた女子高生は叫び声を挙げる。
そして、残された少女は理解が出来ず、視界から流れこんできた情報を言葉にするだけだった。

ジョーカーの背後に浮かび上がる、正体の掴めない不気味な存在。
それこそが、ジョーカーが紅い満月によって導かれ、訪れた東京で召喚した英霊だった。

バーサーカーのサーヴァント。
そのバーサーカーの、『こうげきのしょうたいがつかめない』攻撃。

女子高生が痛みによる悲鳴を上げていないのは、その攻撃の測定不能の力によって、痛覚の麻痺を付随されたからだ。
痛みは伴わず、ただ、吹き飛んだ脚がそこにだけある。
混乱に陥った少女は、ただただ叫び声を上げ――――

「――――えっ?」

――――パァン、と。
タイヤがパンクするような気軽さで、頭部が内側から弾け飛んだ。
残された女子高生は、壁に描かれた紅い花火を見た。
血で描かれたその花火の絵は、友人の頭部が内側から放射線状に破壊されたことを暴力的なまでに知らせていた。

「な、なにこれ……いや、近寄らないでよ……なにこれ……?」

状況が理解できず、尻餅をついてあとずさる。
胎児とも、女性の裸体とも取れる、虚空に浮かんだ存在へと逃げるように。
女子高生の背中が、ジョーカーの脚についた。


94 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:42:02 E9m/gn7U0

「おいおい、嫌うなよ。バーサーカーは良い奴なんだ。
 ガキの頃、まだ優しかったママのためにいつも笑ってやがったんだ。
 お前にはその顔がお似合いだって、バカみたいな握力で一日中頬を摘まれててもママが大好きなままの純粋な奴なんだぜ?
 そんな良い奴を怖がっちゃ、ダメだろう?」
『アー……キ、モ、チ、イ、イ……』

ジョーカーの擁護する声に歓喜の声を挙げるように、空気が振動した。
それが声だということを、少女は認識できなかった。
しかし、マスターであり異常者であるジョーカーは、バーサーカーが発した音が声であることを認識できた。
ジョーカーは、バーサーカーという、『悪そのもの』である壊れた存在を正しく認識していた。
壊れた鏡ならば捻くれた棒が真っ直ぐに映るように。
ジョーカーの瞳にはバーサーカーが綺麗な像を描いて真っ直ぐに映っていた。

「笑えよ、ん?
 ツレが死んだんだ、哀しいだろう?
 哀しいからこそ、逝った友達を笑って送ってやれよ!」

唇の端を切り裂かれ、不気味な裂傷痕の入った唇を大きく歪める。
不気味な表情だった。
それを笑顔だと認めることすら拒絶させるほどの嫌悪感を抱かせる表情だった。
同時に、笑顔という言葉以外では表現できない表情だった。

「HAHAHAHAHA!!!!」

手本を魅せるように、腹部を強く引き締めて、どこかわざとらしくジョーカーは大きく笑ってみせた。
裏路地にジョーカーの嬌笑が響き渡る。
人の官能を揺るがしかねないほどに、喜色に満ちた笑い声だった。
ジョーカーはあらゆる人間のお手本だった。
少なくとも、ジョーカー自身はそう考えていた。
鏡に映る歪んだ鏡像、それがジョーカーにとっての世界だった。
なのに、世界は、自身こそが歪んでいると言い続けているようだった。
自身が歪んだ鏡に映った鏡像であるとした。
そんな世界に対しては失望を抱いていた。
そのままでは、その圧力に敗北し、ただのこそ泥のまま人生を終わらせかねないほどの失望だった。
しかし、ついに正しい鏡を見つけた。
他者の言う、その『歪んだ鏡』に、自身と同じく、真っ直ぐな姿を映すものが居た。


――――ああ、バッツ。俺の愛しい鏡像。俺の、世界でたった一つの玩具。


「HAHAHAHAHA!!!!」

心のなかにある不定形の性器が勃起することを自覚しながら、ジョーカーは笑い続けた。
その笑いへと最初に応えたのは、女子高生ではなく、自らの従者、バーサーカーだった。

『ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン
 ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン
 ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン
 ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン』

ジョーカーの嬌笑と、バーサーカーの狂声が響き渡る。
それは、決して大きな音ではない。
裏路地から表通りに漏れても、頭のおかしな浮浪者が頭のおかしな笑いを上げていると思うだけだ。
東京は、ゴッサム・シティほどではないが、頭のおかしい人間だけが住む都市だからだ。
しかし、女子高生の心象世界にはその世界を破壊しかねないほどの大音量で響いていた。


95 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:43:56 E9m/gn7U0













「――――――――――――――――――――ア、ハ」

やがて、何かが決壊した。

「HAHAHAHAHAH!!」
その決壊を感じ取ったジョーカーは、やはり、手本を見せるように笑みを魅せつける。
釣られるように、頬を上ずった。
出来上がった少女のその顔は、笑っているようにも、泣いているようにも見えた。

「ア、ハ、ハ、ハ……」
「HAHAHAHAHA!!!!」
「ハ、ハハ、ハハハ……」
「HAHAHAHAHA!!!!」
「ハハハハハハ!」
「HAHAHAHAHA!!!!」
「ハハハハ!ハ、ハハ!アハハハハハハハ!」
「HAHAHAHAHA!!!!」
「アハハハハハハ――――!」


――――ペチャリ、と音がした。


ペンキを壁に叩きつけた時の音だ。
ジョーカーにも覚えがある。
よくやった、意味もなくやった。
落書きは、意味もなく楽しい。
視線を横にやると、薄汚れた壁に紅いペンキがつけられていた。

ジョーカーは虚空に佇む不定形の何かを眺める――――ジョーカーにはその虚空に存在する存在が正しく認識できている。
次に、コンクリート壁に打ち付けられ、トマトのように千切れた薄皮と紅い果肉をぶち撒けた女子高生を眺める。
幾度か見比べると、ジョーカーは芝居がかった動作で肩を竦めた。
そして、女子高生の頭部の奥に眠る誰も除いたことのない恥部を覗きこむように顔を近づけた。

「友達が死んだのに笑うな、だってよ」

裂かれた笑顔で、唾を脳髄に吐きかけながら言葉を送った。


当然だが、ジョーカーはバーサーカー/ギーグの意思など、これっぽちも理解できていない。


96 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:46:20 E9m/gn7U0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
ギーグ

【パラメーター】
筋力? 耐久? 敏捷? 魔力? 幸運? 宝具?

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:A
言語能力を残しているが、ギーグはその音の集まりを言語と認識していない。
理性も自らの超自然的な力によって破壊されている。
全てのパラメータが1ランクアップしている。

【保有スキル】
精神混濁:A++
『精神』がすでに『精神』と呼べないほどに混濁した状態にある。
自らの感情と異なる他者の感情の影響を受けやすい。
精神干渉魔術に対しては非情に弱い。
しかし、自身ですら精神がコントロール出来ないほどに混濁しているため、どのような精神干渉術でもギーグを『操る』ことは出来ない。

超能力:A
この世の法則に伴う何とも違う、超自然的な力。
ギーグの力は時すらも超えることが出来、己すらも破壊する。

カリスマ:-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
ギーグのカリスマは『悪』の心を持つものを魅了していたが、現在このスキルは失われている。
心を自壊させたギーグには、その狂信者ですら覚まさせる不気味な存在へと成り果てたからである。


【宝具】
『イナクナリナサイ』
ランク:? 種別:対?宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
彼、あるいは彼女は、自らの超自然的な力によって『ギーグ』という存在を破壊した。
ギーグの意識も、ギーグの物理的肉体も存在しない。
誰もギーグの正体をつかむことが出来ない。
だからこそ、ギーグの攻撃は誰からも認識できない。
また、自身のパラメータの認識しようとするものを、マスターの認識すら阻害する。


【weapon】
なし。
ライダークラスでの召喚ではないため、あらゆる攻撃から身を守る『悪魔のマシン』と全てを予言する『知恵の林檎』は所持していない。

【人物背景】
地球を侵略するために来襲。しかし、彼の持つ予言マシン「ちえのリンゴ」がギーグの敗北を予言。
その内容は「三人の少年と一人の少女によって悪魔は敗れる」というものだった。
その為、ギーグは様々な手を使って、便宜上ネスとする少年の冒険を阻もうとする。

あまりに自らの力が強大過ぎたためか、自我が崩壊してしまっているため、普段は「あくまのマシン」によって力を制御している。
この「あくまのマシン」は全ての攻撃を無効化・反射するため、この段階でギーグにダメージを与える事はできない。
また、自身を敗北させるはずのネスにしか操ることができないはずの特殊なPSIを行使することができる。

解放されたギーグは力を暴走させ、「こうげきのしょうたいがつかめない」攻撃を行う。
単純な全体ダメージ、ステータス異常、雷属性の攻撃などの効果があるが、中には即死効果を持つ攻撃もある。
唯一、ブレインショック系PSIに弱く、これをかければ、ある程度は受けるダメージを抑えることができる。
またダメージを与える度に狂気に満ちたセリフを発するようになる。

自我を破壊させたギーグは、『悪の化身なんてものじゃない、悪そのもの』


97 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:46:59 E9m/gn7U0

【マスター】
ジョーカー@ダークナイト

【マスターとしての願い】
聖杯に、あらゆる『バットマン』が溜め込んだ、とっておきの、出来の悪いジョークを見せてもらう。

【weapon】
ジョーカーは、特殊な武装を持たない。
得てして『安い』武器を好む。

【能力・技能】
ジョーカーは、特殊な技能を持たない。
あくまで人類の成し得る物しか持たず、また、歴史上に名を残すほど何かの技能が秀でているわけでもない。
ただ、ジョーカーはその人生のどこかで――あるいは最初から、他者と比較してた捻じ曲がった精神性を持っていた。

【人物背景】
顔にピエロのような不気味なメイクを施した謎の犯罪者。
指紋、DNAその他の情報がどのデータベースにもなく、正体や出自について作中では明かされる事がなかった。

無慈悲であり、プライドが高く大胆不敵で傲岸不遜、残忍かつ冷酷な最凶の性格。

敵であるマフィアを味方につけ逆に支配してしまうなど人間心理につけこんで弄ぶ術に長けている。
バットマンも冷静さを失い、デントは心の隙を突かれて悪に染まりトゥーフェイスへと変貌した。

道化好きな面は過去作品と共通するが、より暴力的、残虐的な嗜好を持つ。
原作で描かれた各種の飛び道具や玩具は登場せず、「安い」という理由からダイナマイトやガソリンを多用。
特に、相手が死に至る過程を堪能したいが為にナイフを用いた殺人を好むが、銃器についても拳銃から機関銃、対戦車兵器までを使いこなしている。

トランプのジョーカーをトレードマークとし、犯行現場に残したり名刺代わりに配っている。
また劇中で「犯罪、それは最高のジョークだ」と発言していることから、彼にとってジョーカーの名は「犯罪というジョークを生む者」としての意味も含んでいる。

髪の毛は緑がかった長めの金髪であり、きちんと整髪されていない。
服装は全体的に原作での色調をダークトーンに抑え、紫を基準としたスーツにロングコートを羽織る。
また新調した服は全てメーカー品ではなく自分で誂えた物。

【方針】
ギーグを使って、ギーグと遊ぶ。
当然だが、ジョーカーはギーグの意思を欠片も理解していない。


98 : ジョーカー&バーサーカー ◆devil5UFgA :2014/12/19(金) 02:47:13 E9m/gn7U0
投下終了です、ギーグの出展はMOTHER2です


99 : ◆e83YoP7QSA :2014/12/20(土) 00:26:01 mZdlKymI0
投下します


100 : 東條希&キャスター(モハメド・アヴドゥル) ◆e83YoP7QSA :2014/12/20(土) 00:30:33 mZdlKymI0
最近、妙な噂が立つようになった。
「紅い満月を見た者は月へ連れていかれる」という。所謂オカルトの類だ。
学校でも学生のおしゃべりにふと注意を向けるとその噂がおしゃべりのテーマに度々なっている。

「スピリチュアルやね」

女子学生の話し声が飛び交う教室の一角で、東條希は小さく呟いた。
紅い月だとか、連れていかれるだとか、話の出所が分からないにも関わらず話題になっている噂に希は興味を抱いていた。
小耳に挟む噂は様々であり、中には「月に行って城に閉じ込められる」「月の王子様が現れる」みたいなロマン溢れる内容もあったが、「紅い満月が出る」「連れていかれる」ことは共通していた。
この共通点に何かがある…希はそれを確信していた。

(もしかしたら、ツクヨミさんが何かを伝えたいのかもしれんね♪)

その噂からスピリチュアルな魅力を感じた希は、噂を調べるべきか自らを占うことにした。
そう考えながら希は常備しているタロットカードの中から1枚、カードを引く。
引かれたカードは『魔術師』の正位置。新しい出会いや発見を暗示している。

(カードもウチに進めと言うとるし)

通学カバンを肩にかけ、校舎の屋上へ向かうために教室を出る。
放課後は屋上で、スクールアイドルとしてライブに向けた練習がある。
その練習が終わったら少し調べてみよう。
カードの暗示に従うならばその噂を調べると何かあるらしい。
それは新しい出会いかな?それとも新しい発見かな?
紅い満月のような普段では聞かないようなことにワクワクしているからであろうか、シュシュで結われた髪が楽しげに揺れていた。
希には自分だけの趣味があり、パワースポット巡りなどの『スピリチュアル』なことに目がなかったのだ。





「今日の練習はここまでにしましょう。お疲れ様」

親友の絵里の声が屋上に響く。時期が冬に差し掛かっている頃だからだろうか、青かった空は夜になりかけていた。
絵里の言葉を聞いた希はすぐに帰り支度を始めた。その紅い月とやらを見られるかを調べるためだ。
普段は絵里と一緒に帰路につくのだが、適当に取り繕って皆より早く学校を出た。
紅い満月に関する噂。そこに何かが待っている。『魔術師』のカードから感じられた、スピリチュアルな魅力が希の足を早めていた。


101 : 東條希&キャスター(モハメド・アヴドゥル) ◆e83YoP7QSA :2014/12/20(土) 00:31:12 mZdlKymI0
希が向かった場所は、神田明神。パワースポット巡りで行く場所であり、巫女として手伝いに行く場所でもある。
急ぎ足で向かったが、学校を出たときに比べて辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
なぜ神田明神に向かったか?実際のところ、単なる勘である。
希は「パワースポットに行けば何かあるかも」という根拠のない期待だけで神田明神に来たのだ。
噂の手がかりもなければ、正確な情報もない。あるのは「紅い満月を見た者は月へ連れていかれる」という言葉だけである。
とにかく、まずは月を見ることが重要だ。紅い満月というのだから、月を見れば何かがわかるはず。
希は神社の境内に立ち、もう登っているはずの月を見るために暗い夜空を見渡した。…が、何も見つからない。

(あれ?もしかして今日って新月やったっけ?)

もし今日が新月の日であるならば、あきらめた方がいいだろう。月が見えないのなら、噂が本当か確かめることすらできない。

(もし今日が新月やったら満月の日まで待つしかないかもしれんな…)

希は少しがっかりした面持ちで帰路についた。
『魔術師』の正位置は前述のように新しい出会い、そして発見を暗示する。
昔から運がよく、占いが当たることに自信を持つ希は占いが外れたことにショックを隠せなかった。

「やっぱりたまには外れることってあるんかな〜…カードのお告げ通り調べてみたんやけど、まさかなにも発見できひんなんてな〜」

トボトボと街灯のない暗い路地を歩いていた希だが、ふと妙な違和感を感じた。
明るいのだ。今日は新月のはずなのに。月明かりでもなければ、周囲が見えなくなるほど暗いはずが、目を凝らさなくとも見渡せる。
そして、自分の背後から紅い光が照らされていることに気づいた。その紅い光は淡く、それでいて美しく、誘惑するかのように希の後ろ姿を照らしていた。
それに呼応するように希は振り向く。

(紅い…満月…)

希の瞳には、地球よりも大きいとも思えるほどに巨大な紅い満月が映っていた。
彼女はそれに見とれているかのようにしばらくの間動くことはなかった。





「…っ!!」

意識が再び覚醒した希を襲ったのは、悪寒。今の希にはわかる。この月はとてつもなく不吉なもの。
希は無意識に走り出した。

たどり着いたのは自らが通う学校、音ノ木坂学院。希がここに3年間通い、友達をつくり、スクールアイドルになった特別な場所。
そこに行き着いても、紅い満月は動くことを拒むかのように自分と音ノ木坂学院を照らしている。
そこにあるのはいつも自分が通う音ノ木坂学院のはずなのに。
希には、紅い満月に照らされた音ノ木坂学院が、まるで作り変えられたかのように感じた。

まさか自分は作り変えられた別の東京にいる?そんな疑惑が希の心を支配する。
そんなはずはないと自分に言い聞かせながら、希はスマートフォンを取り出し、ある人物の電話番号を縋るように入力した。
綾瀬絵里。音ノ木坂でできた、人生初めての親友。

『もしもし?どうしたの希?』
「えりち、一つ聞きたいことがあるんやけど…μ'sって知ってるやんな?」



『――μ'sって何?』



この一言で希は確信した。今自分がいる場所は住み慣れた音ノ木坂でないことに。電話の向こうの人物が綾瀬絵里であって綾瀬絵里でないことに。

「……ありがと、変なこと聞いてごめんな?」
『ちょ、のぞ――』

静かに電話を切る。スマートフォンからはツー、ツーという話中音がむなしく響いていた。



「…進んだらあかんかったんかな」
希はそれから一歩も動くことができず、立ち尽くしていた。夜だというのに寒さすら感じない。
学校で引いた『魔術師』のカード。
あれが意味するものは何だったのかを自問自答していた。

そんな考えに耽っていたせいか、希が遠方から近づいてくる足音に気付いたのはかなり先であった。
その足音に気づいた希の視線にいたのは、ローブを羽織った褐色肌の男だった。
男の名は、モハメド・アヴドゥル。キャスターのサーヴァントである。
希はこの時確信した。『魔術師』の暗示が正しかったことを。


102 : 東條希&キャスター(モハメド・アヴドゥル) ◆e83YoP7QSA :2014/12/20(土) 00:31:42 mZdlKymI0
キャスターは不思議がっていた。
キャスターが見たところ、希は何も知らない様子だったため、聖杯戦争の一連のルール――予め聖杯から記憶に刷り込まれている情報――を説明した。
無論、この東京は再現された偽りの世界であり、希が殺し合いの参加者だということも。
それなのに、目の前の少女は静かに頷くだけで表情を変えることはなかった。
普通の少女ならば、突然殺し合いの世界に放り込まれようものなら絶望の表情を見せたり、泣き出したりしたっておかしくはない。
いや、むしろあまりの出来事に呆然としているのだろうか…?


「ウチはその紅い満月にさらわれてこの世界に来たんやね」
「うむ、そうなるな。紅い満月を見たものは偽りの東京へと招かれる。話を聞いてみたところ、君は巻き込まれたようだが…大丈夫かね?」
「巻き込まれた言うよりは…ウチ、誰かに呼ばれたような気がするん」

「呼ばれた?」とキャスターは聞き返す。

「うん、これって単に巻き込まれただけとは思えへん。…何かがウチをこの世界に導いたと思うんよ」
「しかし、君は魔術師ではなくただの人間。そう考えるには無理が――」
「これが何よりの証拠や」

そう言って希はタロットカードをキャスターへと向ける。
それは『魔術師』のカード。ただ、学校でなんとなく占った際に引かれた『魔術師』の正位置。

「ここに来る前、紅い満月の噂を調べるかどうか占ったんよ。そしたら出たのは『魔術師』のカード。その時に思ったん。カードが進め言うとるって」
「………」
「夜に月を探しに行ったら、新月の夜やった。でも、空には満月があったん。それは紅い満月で、気づいたら違う東京におった」

希は一時、『魔術師』の暗示を信じて行動したことに後悔してしまったことを告白する。
住み慣れた音ノ木坂から全く別の世界へ飛ばされたことへの恐怖も。

「でも、あなたに出会えて分かったんよ。運命のタロットカードのお告げは正しいって」
「なるほど…これは全て聖杯の導き、ひいては運命の導きと。そう言いたいのだね?」
「だから、ウチは知りたい。どうしてウチが聖杯戦争に呼ばれたのかを。最初は怖かったんやけど…あなたに出会えて、カードが正しいと思たら、勇気が湧いてきたんよ。あなたはただの人間言うけど、ウチってこう見えても風の中の竜の神さんとか天神さんとか、いろいろ見えるねんで♪」

希は信じることにした。『魔術師』が意味する発見と新しい出会いが聖杯戦争の先にあると。

「――いいだろう!君の意志はよくわかった!私は生前占い師をしていてね。君が運命の導きを信じるなら!私からも運命のカード、タロットで君の進むべき道を示そう!」

キャスターも希の意志を認め、所持しているタロットカードから1枚引き、希へと向ける。
引かれたカードは、星ッ!スターのカード!そして正位置ッ!明るい未来、可能性の象徴ッ!
キャスターはこの『星』のカードを見て運命を感じた。
このカードはかつてDIOを倒す旅を共にした承太郎のスタンドの命名の元になったカード。

「私のカードも進めと言っている。迷うことはない」

キャスターはDIOの姿を再び見ることなく、謎のスタンド使いの急襲から仲間を庇い、死を迎えた。
しかし、後悔はなかった。
エジプトへの旅は一度死にかけたこともあったが、
共にDIOへ立ち向かった仲間のためならば、命は惜しくなかった。
「助けない」と言ったのに自らそれを破ってでも仲間を庇うとは――どうやら私は仲間のことになると自分が見えなくなるようだ。
――だが、それもいい。
もう一度、私はサーヴァントとして生を受けた。
この命をこの少女のために使おう。
彼女が自らの運命を信じ、前に進むのなら。
私は彼女を守る『魔術師』となろう。



「あなたがウチのサーヴァント……でええねんな?」

「YES I AM!このキャスターのサーヴァント、モハメド・アヴドゥルと!」

突如、アヴドゥルの背中から逞しい猛禽類の頭がついた赤い像が姿を現す。

「この『魔術師の赤』が!君を守ろう!」



キャスターの頼もしさに希の顔は自然に明るくなった。
まさか『魔術師』のカードを引いて本当に魔術師に出会ってしまうとは。
カードのお告げは本当によく当たる。
希はそれを痛感せずにはいられなかった。


103 : 東條希&キャスター(モハメド・アヴドゥル) ◆e83YoP7QSA :2014/12/20(土) 00:32:23 mZdlKymI0
【クラス】
キャスター

【真名】
モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運A 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
陣地作成:D
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
ただし、キャスターは本来占い師であるため、工房を作ることは難しい。
工房が作れたとしてもそれはただの「占い屋」である。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。
このスキルは『魔術師の赤』の炎による作成に特化しており、炎を使って作れないものは作成できない。

【保有スキル】
心眼(真):B
スタンド使いとしての修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

博識:B
キャスターが占い師として様々な人の話を聞いてきたことや、趣味の古書集めにより身につけたあらゆる分野に通ずる知識。
持ち前の知識から、一定確率で相手のスキル・宝具の能力・真名を看破する。

かばう:C
邪悪の化身を倒す旅路で仲間を庇い死亡した逸話からくるスキル。
かばう対象の代わりにキャスターがダメージを受ける。

占い(タロット):C
タロットカードによりキャスター自身を含む対象の未来をある程度示すことができる。
その占いが的中するか否かは幸運判定により決定される。

炎の探知機:B
『魔術師の赤』の炎を応用したスキル。
炎は生命エネルギーの象徴であるため、生命に引き寄せられる炎を作り出すことで隠れている敵を見つけ出すことができる。
同ランクまでの気配遮断のスキルを無効化し、気配遮断を持つ敵が攻撃態勢に移った場合はそれを完全に無効化する。

【宝具】
『魔術師の赤(マジシャンズレッド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:20
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
たくましい人間の男性のような肉体の上に鳥(猛禽類)のような頭がついた人型スタンド。
NPCはスタンドビジョンを視認することができない。
火炎や熱を自由自在に操る能力を持ち、鉄をもドロドロに溶かしてしまうほど高温。
さらに、『魔術師の赤』の炎は、キャスターの意思で点けたり消したりすることが可能。
したがって、風に流されず重力に逆らえる。水をかけたり真空状態になっても消えない 。
他にも物理的な形状を持つ炎で相手を縛りあげて酸欠で気絶させたり、炎で瞬時に穴を掘って退避するなど、
様々な場面で応用が効く宝具。

【weapon】
・宝具『魔術師の赤』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で、
筋力C、耐久C、敏捷C相当。
ただし、火炎を操る能力が主になるため、能力はそこそこ。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。

【人物背景】
生まれつきのスタンド使い。
生真面目で意志の強い頑固な性格をしており、ジョークの類を一切言わない上に苦手とするが、指導力と人を引っ張る魅力がある。
自らを「ギャンブルには向いておらず結構熱くなるタイプ」と評している。このような人柄から、柔軟な思考を持つ者はベストパートナーである。
一方で、敵へイタズラをするために仲間を立小便に誘ったりと、豪快な一面もある。

職業は占い師。かつて空条承太郎による邪悪の化身・DIOを討つ旅に同行した。
承太郎と出会う以前にその優れたスタンド能力に目を付けた邪悪の化身・DIOから仲間に勧誘されている。
占い師という職業柄誰かの話を聞く機会が多いためか、若しくは古書集めの趣味の賜物か、ジョースター一行の中でも特に様々な分野において博識で、敵のスタンド使いについて自分が知っている情報を仲間内に提供する事で実質的に一行のブレイン的な役割も担っていた。
しかし、最期はDIOの側近の攻撃から仲間を庇い、両腕を残して亜空間に飲み込まれ、死亡した。

マスター補正により、幸運が大きく上昇している。


104 : 東條希&キャスター(モハメド・アヴドゥル) ◆e83YoP7QSA :2014/12/20(土) 00:33:29 mZdlKymI0
【マスター】
東條希@ラブライブ!

【マスターとしての願い】
なぜ再現された東京に召喚されたのかを知りたい

【weapon】
特になし

【能力・技能】
運がいい。
タロット占いがよくあたり、過去では処世術として使っていた。
魔力面では、魔術師には劣るものの、霊感が強く、パワースポット巡りなどスピリチュアルなことに長年触れてきたのでそこそこある。

【人物背景】
国立音ノ木坂学院に通う三年生、スクールアイドルユニット『μ's』のメンバー。
基本的におっとりしており、似非関西弁を話す。

パワースポットや占いに傾倒する不思議系スピリチュアルガール。
が、メンバーに対して胸をわしわしと触るセクハラ親父な面もある。
運がいいことが自慢でくじ引きでハズレを引いたことはないらしい。
チャームポイントは大きなバスト。長所は美味しそうに物を食べられることと感動屋なところ。
占いはタロットカードを使う。
神田明神で巫女服を着て掃き掃除などの簡単なお手伝いしている。

幼い時から霊感が非常に強く、自分にしか見えない霊や霊獣が見えていた。
現在ではぼんやり見える程度らしい。
 
【方針】
キャスターとともに行動する


105 : ◆e83YoP7QSA :2014/12/20(土) 00:33:55 mZdlKymI0
以上で投下を終了します


106 : ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:06:26 8uWnMxU20
皆様投下お疲れ様です
自分も投下をさせていただきます


107 : 両備&キーパー(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:06:58 8uWnMxU20
 摩天楼の輝きを、その更に上から受けながら。
 高層ビルの屋上に立ち、足元からネオンライトを浴びる、2つの黒い影がある。
「なるほど……貴方が両備のサーヴァントってこと」
 括った二房の茶髪を、夜風にさらさらと揺らすのは、10代半ばと思しき少女だ。
 されど翡翠とサファイアのオッドアイに、確かに宿った剣呑な気配は、ただの女子高生のそれではない。
 不敵な笑みをにやりと浮かべる、黒い学生服の少女は、おくびも弱みを見せることなく、目の前の存在と相対していた。
 秘立蛇女子学園に在籍する、現代の忍者の卵が1人――忍学生の両備である。
「そう。我が名は『キーパー』。遥か英霊の座より呼ばれ、この紅き月の地へ降り立った、門番(キーパー)のサーヴァントである」
 そんな両備と向き合うもう1つの影は、目に見えて異様な存在だった。
 闇に溶け込む黒ずくめのローブに、顔面を覆う黄金のヘルム。
 それらを纏う身の丈は、2メートルにも及ぼうかという巨体だ。
 兜の影に顔を隠しながらも、ハスキーな声と鋭い視線が、辛うじてそれが男性であることを伝えていた。
「門番……7騎のどれにも属さない、特別なエクストラクラスってやつ。なかなか強そうな駒じゃないの」
「それはお前の腕次第。我らサーヴァントの力は、マスターの持つ力によって左右される」
 完璧に瑕を穿つのも、鳶を鷹へと変えるのも、全てはお前の力次第と。
 得意気に笑う両備に対し、あくまでも静かに厳格に、キーパーはそう言い放った。
「ふぅん……まあいいわ。それなら貴方は幸運よ。この両備様以上に、強いマスターなんてありえないから」
「大層な自信だな」
「当然。貴方も両備の手足として、相応に働いてもらうわよ」
 右の拳を握りながら、両備はキーパーへと言った。
 その手に刻まれた支配者の証――紅き3画の令呪を、これ見よがしに突き出しながらだ。
 どれほど強力な英霊であっても、この印が刻まれている限り、マスターの前では奴隷に過ぎない。
 隷属者の意志をねじ曲げる、その印を両備が持つ限り、主従の関係は揺るぎはしない。
 それが彼女の持つ加虐心を、更に黒々と増幅させる。
 その絶対不変の法則こそが、両備の歪んだ支配欲を、強く支えていたのだった。
「………」
 対する英霊の答えは、静寂。
 口をつぐんで沈黙し、ヘルムの下の視線を向ける。
 見定めるように、値踏みするように、冷たく鋭い眼差しを、キーパーは闇の奥から光らせていた。
「……聖闘士(セイント)の中にも忍者はいたが……」
 夜風の音のみが聞こえる中、数秒ほどの沈黙の後。
 ややあって、重い口を開いたキーパーが、ようやく発した次なる言葉は。
「お前も負けず劣らずのいっっっっっっけ好かねぇ奴だなぁ!」
 これまでの厳かさが嘘のような、あまりにフランクな悪口だった。
「は……はぁっ!?」
 一瞬、両備は面食らって沈黙。
 そして一拍の間を置いて、素っ頓狂な声を上げる。
「いけ好かないって、アンタ、それ一体どういうことよ!?」
「そりゃ言葉の通りだっつの。令呪があるからってつけ上がってよ、上から目線で偉そうに」
「偉そうにって当たり前でしょ!? 両備はアンタのマスターなの! アンタより偉くて当然なのよ!」
 ぷりぷりと怒る両備に対し、キーパーはやれやれと肩を竦める。
 目に見えてうんざりしたと言わんばかりのリアクションは、先ほどの様子とはまるで別人だ。
「というかアンタ、キャラ変わりすぎじゃないの! そんなに両備が気に食わないってわけ!?」
「あーそうだなもうやめだやめだ! せっかく若い姿で出てきたってのに、堅っ苦しくなんてやってられっか!」
 半ばやけくそ気味に叫ぶと、キーパーは黒衣をひっつかみ、強引に自らの身から剥ぎ取った。
 はためく布地のその向こうから、新たに姿を現したのは、筋骨隆々とした大男だ。
 ラフなシャツとジーンズの下では、浅黒い皮膚に包まれた、鋼のような筋肉が盛り上がっている。
 それだけでもインパクト大だったが、両備の目を更に引いたのは、晒された彼の素顔だった。
 紫がかった銀髪の顔は、決してむさ苦しくはない。荒々しさを湛えつつも、同時に整った部分も感じさせる、いわゆるちょいワルのイケメンだ。
 だがその調和をぶち壊しにするのが、左目を深々と抉り取ったように、痛ましく刻まれた傷跡だった。
 それが男の印象を、ワイルド気味な美青年から、一挙に悪人面へと変える。
 由緒正しい英霊よりも、ゴロツキを率いる大悪党――そんな言葉が似つかわしい、強面の男の姿がそこにはあった。


108 : 両備&キーパー(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:07:34 8uWnMxU20
「だいたい英雄だの教皇だのは、俺の性には合わねぇってんだよ。
 なのにどいつもこいつも揃いも揃って、好き勝手に囃し立てやがって」
 不機嫌そうに腕を組みながら、キーパーは愚痴っぽくぼやいた。
 その独り言の意味するものは、両備には何一つ理解できない。そしてその置いてきぼり感が、更に彼女の苛立ちを掻き立てる。
「アンタねぇ、黙って聞いてればぺちゃくちゃと……両備を無視して盛り上がってんじゃないわよ!」
「盛り上がってねぇよ! つうか黙って聞いてもいねぇだろうが!」
 理不尽な怒りに対して怒鳴り声が飛んだ。
 先ほどまでの緊迫した空気は、一体どこへ行ったのやら。夜景を見下ろす屋上の空気は、すっかりぐずぐずになってしまった。
「とにかく! アンタは両備のしもべなの! 両備の願いを叶えるためだけに、呼ばれてここにいる存在なの! これ以上文句言うと令呪使うわよ!」
「分かった、分かったよ。俺もそいつは理解してる。釈然としねぇが、他にすることもねぇからな。手伝いくらいはしてやるよ」
 手の甲を突き出す両備に対し、キーパーはやれやれといった様子ながらも、彼女の言葉に同意を示した。
 そうしてキーパーが折れたことで、だだっ子とチンピラの言い争いは、ひとまず終結したのだった。
「で? そのお前の願いってのは何なんだ」
 そうして話に一段落がついて、改めてキーパーが尋ねたのが、それだ。
 両備は聖杯に何を願うのかと。
 この聖杯戦争において、彼女はいかなる動機を携え、他者の願いを踏みにじる気でいるのかと。
「えっ!?」
 一瞬、両備は返事に詰まった。
 はっと目を見開いて、声を上げることしかできなかった。
 そんなことを聞かれるとは、両備自身思ってもみなかったのだ。
「な、何よ。願いくらい何だっていいでしょ。だいたいアンタには関係ないことじゃない」
「つっても願いが分からなくちゃ、協力のしようもねえだろうが」
 ろくでもない願いを叶えてやるわけにもいかねぇからな、とキーパーが言う。
 悪人面の割には正義漢じみた発言だが、そこを気にする余裕は両備にはなかった。
「でも、そんな急に言われても……」
 言葉に詰まった両備は、途端にしどろもどろといった様子になる。
 最初の余裕も、先ほどまでの怒りも、まるで嘘だったかのようだ。
 そんな両備の態度に対して、キーパーは半ば苛立たしげに、早く言えと視線で訴えてくる。
 結局沈黙と思案の末に、両備の口をついて出たのは。
「……………胸よ」
 発音にしてたった2文字。
 顔を赤らめながら言ったのは、体の一部を指す単語だった。
「胸?」
「そうよ、胸よ! 胸を大きくしてほしいのよ! 何か文句ある!?」
 こうなるともうやけくそだった。
 開き直った両備は、未だ顔を赤くしながらも、思い切った様子で喚き散らした。
 両備の胸はとても小さい。バストサイズは70台にも達していない。
 それが何よりのコンプレックスであり、巨乳族だらけのコミュニティの中では、殊更深刻な問題として、彼女の心を傷つけていた。
 それが大きくできるというなら、まさに願ったり叶ったりだ。
 大っぴらに人に言うには、やはり恥ずかしさがつきまとうが、切実な願いであることには変わりなかった。
「かぁっ、小せぇな! 乳よりもまずその願いが小せぇ!」
「なっ……!」
 が、その正直な願いを聞かされた、キーパーの反応ときたら、これだ。
 期待させといてそれか、と言わんばかりに、大きな手で顔面を覆いながら、がっかりした様子でそう言われたのだ。
 恥のかき損ではないか。両備としても不本意な反応だった。
「大体お前にゃまだ早ぇよ! どうせまだガキなんだから、そういうのをそこまで深刻に考えるこたねぇ! もっと他のこと考えろよ!」
「ガ、ガキって何よ!?」
「実際まだ何か有るだろ? もっと大事な願いってのがよ! そういうのに使えばいいじゃねえか!」
 そんな馬鹿馬鹿しい願いのために戦えるかと、キーパーは容赦なく言い放った。


109 : 両備&キーパー(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:08:43 8uWnMxU20
「他の願い、って言っても……」
 対する両備はまたしても、言葉の先を濁らせる。
 豊胸の願望は、両備にとって、間違いなく渾身の願いだった。
 恵まれた体格を持った男には、恵まれない体型の女の気持ちなど、分かろうはずもないだろうが。
 それでもなお他に挙げろと言うならば、残された答えは1つしかない。
(そんなこと、言えるわけがないじゃない)
 しかしそれを口にできるほど、両備には願いに対する自信がない。
 それを果たすことが正しいのかどうか、心が揺らいでいるからだ。
 彼女の抱えたもう1つの願い――それは姉の仇討ちである。
 今の蛇女子学園には、彼女の仇敵が在籍していた。
 忍同士の抗争の中、敬愛する姉と刃を交え、そして殺害した女――雅緋。
 次期選抜チームの筆頭候補として、学園から働きを見守られている者の死こそ、両備の何よりの願いだった。
 そのために同じ学園に潜入し、幸福の絶頂から追い落とすため、暗殺計画を練り続けてきた。
(でも)
 それでも、今の両備は聞いてしまった。
 姉を殺した下手人は、雅緋ではないということを聞かされてしまったのだ。
 雅緋が戦場に駆けつけた時、既に姉は息絶えていた。
 それを聞かされてしまった今、両備の復讐の心は、揺らぎに揺らぎ始めていた。
 殺されたという事実そのものが、虚偽だったという可能性がちらついている。
 しかも仇だと知りながらも、彼女らのいる環境に、安らぎを感じてしまっている自分もいる。
 だからといって簡単に、復讐をやめるとは口にできない。それはこれまでの何もかもを、諸共に無為にする言葉だからだ。
 これまで歩んできた道のりが、何より両備のプライドが、その選択肢を許さない。
 だからこそ、願いとして口にできない。
 肯定の言葉も否定の言葉も、この場では口に出せなかったのだ。
「まぁいい。今はもう聞かねぇから、もちっとまともな理由を考えとけ」
 そして相手のキーパーも、これ以上は聞いても無駄だと考えたのか、そこで追及を打ち切った。
 それに内心でほっとしている、そんな惨めで情けない自分に、両備はひどく嫌悪感を覚えた。
「……そうだ。アンタの真名、まだ聞いてなかったわよね。アンタの名前、何ていうのよ?」
 両備がキーパーへと尋ねる。
 今はとにかく、話題を変えたいと思ったからだ。
 情けない話ではあるものの、このまま願いの件を考え続けるのは、とても両備には耐えられなかった。
「俺か? そうだな……この歳だと、こっちの方がいいか」
 一瞬、キーパーは考えこむ。
 そして少し言葉を選ぶと、両備とは至って対照的に、自信を持って問いかけに答えた。
「俺様の名はハービンジャー。力と破壊を司る黄金聖闘士(ゴールドセイント)」
 それは伝説の守護者の名。
 地上の愛と平和を守る、十二の太陽の戦士の称号。
 光すらも置き去りにする、必殺の拳を武器として、地を裂き海を割る最強の名だ。
「――牡牛座(タウラス)の、ハービンジャーだ」
 黄道十二星座に選ばれし、戦女神アテナの守護者。
 それこそがキーパーのサーヴァント――ハービンジャーの背負う名前だった。


110 : 両備&キーパー(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:09:26 8uWnMxU20
【クラス】
キーパー
 拠点防衛や治安の維持など、ものや場所を守ることにまつわる英霊のクラス。
 適性値の高い英霊であればあるほど、防衛戦において優れた能力を発揮する。
 1つの街を守り抜いた左翔太郎(仮面ライダーW)や、法の番人であるユーリ・ペトロフ(ルナティック)などが適性を持っている。
 更に広義の意味では、自らの宝物庫の門番という解釈で、ギルガメッシュにも適性があると言われている。
 似たようなクラスにシールダーがあるものの、細かい部分ではアーチャーとガンナー程度には異なっている。

【真名】
ハービンジャー@聖闘士星矢Ω

【パラメーター】
筋力B+ 耐久B 敏捷C+ 魔力A+ 幸運C 宝具A+

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
防衛態勢:C
 マスターを護衛しようとした際に、耐久値が若干プラスされる。
 また、1つ下のランクまでの「気配遮断」スキルを無効化できる。
 ハービンジャーは金牛宮に閉じこもるよりも、自ら打って出ることを好んだため、あまりランクが高くない。

【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
 人間の六感を超えた第七感。
 聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
 その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
 ハービンジャーの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。

勇猛:A
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

戦闘続行:C
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

【宝具】
『牡牛座の黄金聖衣(タウラスクロス)』
ランク:A+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・牡牛座(タウラス)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
 黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
 この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・敏捷・幸運のパラメーターが1ランクずつアップする。


111 : 両備&キーパー(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:10:05 8uWnMxU20
【weapon】
なし

【人物背景】
女神アテナを守るために戦う、88人の戦士・聖闘士を統括する教皇。
かつては聖闘士最高位に位置する、黄金聖闘士の1人・牡牛座の聖闘士として、最前線で豪腕を振るっていた。
今回の聖杯戦争においては、彼が教皇の地位を得たきっかけになったと言われている、パラスベルダ戦役の際の年齢で現界している。
(私服はマルスと謁見した際のものとなっている)

大柄な体格と強面の通り、豪快で荒っぽい性格。
根っからの戦闘狂であり、「骨の折れる音が好き」「心の骨が砕け散る音はそれ以上に好き」と語っている。
一方で過去の境遇から、弱い者いじめは嫌っており、
金牛宮に攻め込んだ青銅聖闘士(ブロンズセイント)達を一蹴した時にも、露骨に不機嫌そうな態度を取っていた。
「骨の強さは心の強さ」という、独自の根性論を展開している。

元々はスラム街の出身であったが、過酷な環境の中で自然発生的に小宇宙に覚醒。
ろくに修行を受けていないにもかかわらず、正規の聖闘士すらも撃退した力を見初められ、火星の神・マルスのスカウトを受ける。
その圧倒的な力に屈服したハービンジャーは、修行を積み、彼らが聖域から奪い取った黄金聖衣を纏う黄金聖闘士となった。
その後はマルスの下で戦っていたのだが、ペガサス光牙との戦いや、マルスの討伐を受けて聖域に残留。
聖闘士達の誇りに触れていくうちに、そんな彼らを蔑ろにする神々への怒りを覚えるようになり、共に愛の女神・パラスと戦った。

当時の聖闘士達の中でも、比類なき超パワーの持ち主として知られている。
巨体を活かしたパワーファイターだが、決して鈍重というわけではなく、黄金聖闘士の光速拳も当然放つことができる。
必殺技は、腕を正面に突き出す勢いで、電撃と衝撃波を放つ「グレートホーン」。
更に両腕を左右に振り抜くことで、その威力を全方位に放つことができる、「グレイテストホーン」を併せ持つ。
その他に習得している技として、自らの体を不定形の影に変え、自在に変形しながら殴りかかる「シャドーホーン」がある。

【サーヴァントとしての願い】
特になし

【方針】
とりあえず両備について行く。
できれば強いサーヴァントと戦って、身と心の骨の折れる音を聞きたい。


112 : 両備&キーパー(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:10:33 8uWnMxU20
【マスター】両備
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性

【マスターとしての願い】
復讐を果たしたい? 胸を大きくしたい?

【weapon】
スナイパーライフル
 長距離の敵を狙撃するために設計された、長大なライフル。
 両備は中距離の銃撃戦においても、この銃を使い回しており、問題なく使いこなしている。
 また、グリップ部には斧状の刃が取り付けられており、近接戦闘を行うことも可能。
 最大弾数は不明。そもそも弾切れを起こす描写がない。

【能力・技能】

 日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
 蛇女子学園の選抜メンバー候補として、ひと通りの忍術をマスターしている。

忍転身
 現代の忍の戦闘装束。この術を発動した雅緋は、マントを羽織った白装束を纏う。

忍結界
 忍同士の決闘時に発動される結界術。自身と対戦相手を一定空間内に閉じ込めることができる。
 本聖杯戦争では弱体化しており、バスケットコート程度の範囲にしか展開できない。

命駆
 命懸けの覚悟で臨む、決死の戦闘形態。
 防御力が半分以下になるが、追い詰められたことで潜在能力が解放され、攻撃力が大幅に向上する。
 なおこの状態になった瞬間、両備の衣服は全て弾け飛び、下着姿になる。

狙撃
 スナイパーライフルを用いた狙撃技術。

【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を養成する機関である、秘立蛇女子学園の生徒。
16歳の1年生で、スリーサイズはB69・W56・H90。
元は善忍を養成する学校・死塾月閃女学館の生徒だったが、
姉の両姫を選抜チーム筆頭候補・雅緋に殺害されたと思い込んでおり、復讐のために蛇女へと転校を果たす。
しかし教師の鈴音から、両姫が死んだ時雅緋は現場に到着していなかったと聞かされたことにより、
復讐を辞めるべきか否か、その狭間で苦悩するようになる。

他人をいじめるのを好むサディスト。
常に偉そうな言動を取っており、相手を軽んじた口調で接している。
一方で、自分の小さなバストには大きなコンプレックスを抱いている。
自らの理想を体現した忍転身時には、バストサイズが95までアップするのだが、
それですら転身を解いた時、そこから通常の体型に戻ることに虚しさを感じ、コンプレックスを加速させる結果を招いている。

忍法の性質を表す秘伝動物は鹿。
斧を備えたスナイパーライフルを用いることで、あらゆるレンジの敵に対応することを可能としている。
特に得意としているのは銃撃戦で、放った銃弾を壁に跳弾させ、変則的な機動で敵を追い詰める。
必殺の秘伝忍法は、周囲に複数の機雷を展開し炸裂させる「8つのメヌエット」、
その機雷を正面に撃ち出し、銃撃することで誘爆させる「リコチェットプレリュード」。
更なる威力を持った絶・秘伝忍法として、背中に背負ったユニットからミサイルを乱射する「メヌエットミサイル」を持つ。

【方針】
優勝狙い。向かってくる敵には容赦はしない。


113 : ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:10:54 8uWnMxU20
投下は以上です


114 : ◆devil5UFgA :2014/12/20(土) 01:14:20 wZnJizNM0
投下お疲れ様です!

スピリチュアルやね……(感想)
・魔術師の正位置
『起源、可能性、機會、才能、チャンス、感覚、創造』
・魔術師の逆位置
『混迷、無気力、スランプ、裏切り、空回り、バイオリズム低下、消極性』
のんたんを導いた魔術師のタロット、アブならば正位置とも呼べるものなのでしょうなぁ
あるいは、これからそれが逆位置へと変化するのか……
現状では消極性や無気力とは程遠いのんたんの意味する『魔術師』のカードがどのような意味を持つのか、面白い要素すぎる!


そして、氏のトリップである◆e83YoP7QSAですが、Googleで検索にかけてみたところ、どうやらトリキーが割れているようでした。
お手数では有りますが、よろしければ万一に備えてトリップの変更をお願い致します


115 : ◆arYKZxlFnw :2014/12/20(土) 01:15:02 8uWnMxU20
ごめんなさい、両備の状態表にミスがありました

忍転身
 現代の忍の戦闘装束。この術を発動した雅緋は、マントを羽織った白装束を纏う。
  ↓
忍転身
 現代の忍の戦闘装束。この術を発動した両備は、赤い外套を羽織ったドレスを纏う。


116 : ◆devil5UFgA :2014/12/20(土) 01:16:04 wZnJizNM0
更新忘れ……失礼しましたorz


◆arYKZxlFnw氏も投下お疲れ様です!
き、君は……強いタイプの牡牛座!強いタイプの牡牛座じゃないか!


117 : ◆/tJTAVSk6k :2014/12/20(土) 01:21:13 mZdlKymI0
>>114
感想ありがとうございます

では、こちらのトリップで行かせていただきます


118 : ◆Hepxfwsbwc :2014/12/20(土) 01:23:49 mZdlKymI0
ごめんなさい、このトリも検索かけたら割れてました
これでいきます


119 : 名無しさん :2014/12/20(土) 01:25:50 MCzuAeGU0
ひらがなだけ、英数字だけのトリキーだとだいたい検索で出てくるので漢字、ひらがな、英数字を混ぜたトリキーにすることをオススメします


120 : ◆kRh/.U2BNI :2014/12/20(土) 01:28:57 mZdlKymI0
>>119
ありがとうございます
これでいけると願ってます


121 : ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:06:13 OzItFOls0
皆さん投下乙です。
自分も投下させて頂きます。


122 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:06:52 OzItFOls0

……開け行く東雲しらみ渡れば、壁にあらはな貫を踏み、桁など伝ひ、
天井を見るに、爪先長き事、二尺ばかりの上臈蛛(じやうらふくも)頭より背中まで切りつけられて、死したり。
人の死骸有りて、天井も狭し。ああ誰が形見ぞや……


(宿直草巻の二より抜粋)


……一面の桜である。
満開の桜の只中である。
春の海原を渡る綿津見の猛き息吹が断崖を駆け上り、儚き現世の栄華を一瞬にして薙散らす。
生みも空も大地も渾然一体となって、ただただ世界を桜色の一色に染め上げんとしているかのようである。
その桜の霞の中にひと際黒き影がある。
朽ちかけた墓石。そして――黒衣の男。
対峙するのは桜色に染まった女である……

(この物語が始まる少し前のこと)







123 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:07:26 OzItFOls0

裸の女がいた。

綺麗な顔をしていた。半月型の大きな瞳。端麗に伸びた鼻筋。形の善い富士額。
長い髪が濡れている。流れ落ちる雫が幕を張り艶艶とした黒を湛えていた。
一方で肌は陶器のように白く、それだけに唇の朱が善く映えている。
すらりと伸びた手足は指先まで肌理細かな美があった。

端正で麗しい。
しかしそれだけではなかった。
太っている訳ではないが、痩せてもいない。
――肉だ。
その女には肉がついていた。若く瑞瑞しい肉は湯を浴びて俄かに火照っている。
張りのある乳房もまた濡れていて、臍にかけてつう、と雫が垂れていた。
湯気たちのぼる肉体は月に照らされ、妖しげな白を浮かび上がらせていた。

もしそこに完成された美というものを求めたのならば、肉は邪魔だった。
余分なものである。定められた黄金比から、その肉があるせいで僅かにずれてしまっている。
――しかしそのずれが。
淫靡なのだ。
完成された美をただ描いただけではそれは人形だ。人ではない。女でもない。
女には肉がついている。肉が彼女を女にしている。描き出された絵でもなく、造り込まれた蝋人形でもなく、一人の女にしている。
だからそこにいるのは――女なのだった。

――なんていやらしい躰だろう。
茜はその女を注視(みつ)めながら思った。
鏡には裸の女が映っている。それをじっと眺めていると、その女もまた茜をじっと見返してきた。

――妹とは、真逆の躰だ。
顔立ちも身体つきも似ていた。しかし何もかもが真逆だった。
何時だって毅然と前を向いていた妹とは違い、目の前の女には背を丸めていて、どこか後ろめたいものを臭わせている。
その後ろめたさを糊塗して隠している。そうして取繕った結果がこのふしだらな肉だ。
どろどろと長く伸びた髪は婦(おんな)であることを否応なしに主張していて、これも短く切り揃えていた妹とは真逆だった。
何より違うのはその瞳だ。妹の瞳には何時だって迷いがなく、鋭いまなざしをもってして理路整然とした主張を掲げていた。
だがこの女の目は違う。黒く揺れるその瞳はあやふやだ。何を云いたいのか、何を思っているのか、何もかもが漠然としている。

――何だこれは。
周りに対して、曖昧にそう問いかけているのだ。
目に付く物全てが分からないとでもいうように、疑問に揺れている。
どこに行けばいいのか。どうしてここにいるのか。どうすればいいのか。
問い掛けすら判然としない。
一つに絞れば、あるいはまだ善かったかもしれないのに。

――分からないのだ。
自分が何であるかさえ、目の前の女は分かっていない。
分かっていないのに、それを問いかけることもしない。
分からないという思いを抱えたまま、女という器に依って生きている。
何もかも分かっていた妹がすぐそこに居たにも関わらず、問いかけることもしなかった。
否、妹だけではない。ただ一人の例外を除いて、この女は今まで誰とも言葉を闘わせたことがない――

あの男は、ただ一人この女と相対した彼は、そんな在り様を突き付けてきた。
何も分かっていない。分かっていないのに、超越者であるかのように振る舞う、そんなおかしさを突いた。
そして言ったのだ――貴方は悲しいのだと。
自分が悲しんでいることすら分からないような、そんな女であると、あの男は言ったのだ。
散り行く桜の下で――


124 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:07:57 OzItFOls0

だから女は、織作茜は生きている。生きることになったのだ。
そのままじっと鏡を見つめ――そこに映る女が目を放すと、茜もまたその場を後にしていた。
月明かりに照らされた、一人では大きすぎる風呂場を出た。

誰も居ない脱衣所はおかしなくらい明るかった。
備えられた電灯は茜の知るものよりずっと進んだ造りのもので、月よりもずっと明るく、はっきりと躰を照らしていた。
――茜の、女の躰を。
その躰は、また別の意味合いも持っていた。妹よりも大きな乳房の隅、脇にかかるように走る痕が在る。
――令呪だ。
ここがどこか、どうしてこんな場所にいるのか、その理由が刻まれている。

「セイバーさん」
肌についた雫を拭きながら、茜は誰も居ない屋敷で、声を上げていた。

「……何かありましたか?」
すると声があった。
りん、と流れるような音がして、姿を現したのだ。
白い髪がはらりと揺れた。
その白は茜の陶器のような代物ではない。あんな塗り固められた白よりもずっと淡い、どこまでも透明に近い白だった。
肌も、そして眼も、同じように白い。躰を描き出す色素が限りなく薄い。
ともすれば倒れしまいそうな儚さを纏った彼女は、しかし凛としていた。
その腰に刀差し馳せ参じる佇まいは、儚くも決して手折れぬであろう強い芯を感じさせた。

――例えるなら、桜か。
最後には儚く散ることが定められている。
終わりは決して遠くない。もしかすればそれは明日かもしれない。
しかし――強いのだ。
はなと散る桜を嘲笑する者はいない。何故ならばその瞬間こそ桜が最も美しく、そして凛々しい瞬間だからだ。
それに彼女在り様は似ている。
桜に似た彼女こそ、茜に与えられた従者である。

名は沖田総司。
幕末最後の剣客集団、新撰組一番隊組長。
芹沢鴨暗殺、池田屋事件など重要な任務をこなし、一番隊の中でも最強の剣士と知られる剣豪。
それが――彼女であるという。

そう、彼女だ。
音に聞く沖田総司は女であった。
伝承によれば沖田は美しい顔立ちをしていて、天才的な美青年だったらしい。
しかし――女だとは。

「明日の予定について話しておこうかと思いまして」
云いながら、茜は彼女の装いを窺った。
空のような色をした羽織は、上質な生地のものであったがところどころ汚れている。
首に巻かれたマフラーに飾りの類は一切見えず、その端麗な顔を覆ってしまっていた。
そして何よりその手に握られた刀は使い込まれている。その鞘には傷があり、柄に掛けられた指先には痕があった。
彼女を包んでいるのは紛れもない戦いの衣装だった。

それを窺いながら、茜は自分の服を着る。
襟刳の開いた黒い襯衣(しゃつ)に黒い服筒(すらっくす)を穿く。
以前は着ることのなかった洋装だった。

――妹が着ていたから。
茜は着ることができなかったのだ。
装いは文化だという。何かを殊更強調したり差別したりして、漸く人は社会的属性を獲得する。
そこまでして漢(おとこ)か、それか婦(おんな)かの区別が付く。
だから、今まで洋装を着ることができなかった。妹は決して何の婦(おんな)としての装いをしなかったから。
茜はきっと同じ理由で――髪も切れなかった。

今更洋装を着てみたからといって別段何の意味がある訳でもない。
ただ時の流れを元に戻した気にはなれた。妹を、母を、家族をみな喪った以来、自分はどこか時間から切り離されていたように思う。
遅くも早くもない。ただ隔絶した時の流れに、取り残されていた。
それが妹のような洋装に身を包むことで――元に戻れた。
そんな気がした。

しかし、いざ洋装を着てみるといささか慣れないものがあった。
この屋敷にあった服は採寸が違ったようだった。
胸が、腰が、肉が――躰の線が浮き出てしまっている。
何も飾る気はなかったのに、これでは婦(おんな)のままだった。


125 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:08:31 OzItFOls0

「明日、服を買いに行きましょう」
そう云うとセイバーは「服ですか?」と聞き返した。
突然の申し出に、困惑しているようだった。
当然だろう、彼女はただ戦うだけにやってきた。
この東京に――聖杯戦争という舞台に。
それ以外の飾りなど、彼女は求めていないのだ。

「はい。服です」
セイバーの困惑を無視して、茜は云った。

やはりセイバーと自分は――違う。
セイバーは女だ。しかし婦(おんな)ではない。
彼女は、沖田総司はやはり漢(おとこ)なのだ。

似ている、と思った。
セイバーは似ているのだ。
女でありながら、婦(おんな)であることを選ばなかった、彼女に。

茜が喪った――殺した妹に。

あの桜の木の下で、黒衣の男に言われるまで、茜は自分が悲しんでいることにすら気が付いていなかった。
だからだろうか。もう叶わないと思いつつも、また妹と話してみたいと思うのは――

「服を買う。まずはそれから始めます。そして――」
――戦うのか。
茜がこの地にやってきたのは、偶然だった。
紅い月の風聞などを聞きつけ、気付けばこんな場所に来ていた。
――それで、戦うのか。
闘うことをどこまでも避けてきたというのに。

「――それからのことは、そのあとに考えます」
平坦な口調で、茜は云った。
聖杯というものを、茜はよく知らない。
基督(キリスト)教由来のものである。先代や碧ならばいざ知らず、自分はそちらには造詣は深くない。
そういった事柄にとても詳しい人物ならば知っているが、知っているだけで今はどうしようもない。
否、軽い程度の知識なら、彼を頼らずとも分かるし、この場合深い知識など要らぬようにも思える。
それに出自など――分からずともいいのかもれない。
見るべきはその褒章だ。
聖杯戦争――それを知り、識った今、自分はどうするのか。

――分からない。
分かろう筈もない。自分の個すら分からぬというのに、その願いなど掴める筈もない。
後悔はしない。そういう生き方をする。
そう決めた――決めはした。
だが、それでどうするのだ。
婦(おんな)としてではなく、織作茜という個は何を求めている――


126 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:09:25 OzItFOls0

「あの――」
不意にセイバーが口を開いた。
嫋やかな眼差しが茜を射抜いた。

「――私も、いいでしょうか?」
おずおず、といった風に彼女は茜に問いかけていた。
何を――と思わず茜は聞き返していた。

「服です」
「服――」
「服を明日マスターが買いに行かれるのでしたら……できれば、私の分もお願いしたいんです。
 袴とブーツ……桃色のものがあれば、是非。サーヴァントとしてはおかしな話ですが――」
――それが着たいらしい。
袴と、ブーツが欲しいとセイバーは云っていた。
茜は思わず彼女にじっと注視してしまった。
云った彼女の目にはそれまでには見せなかった色が浮かんでいた。
何か、あったのだ。
詳しくは分からない。しかし、彼女もまた、そういう装いをしたいという、個を持っていた。

桃色――桜の色か。

「――分かりました」
「では……」
「そうですね。明日はセイバーさんの分も買うことにします」
「それは――」
――ありがとうございます。
そう云って、セイバーは笑った。
その笑みは儚くも可憐な――少女の笑みだった。

それを見たとき、茜は自分が何をしたいのかに気付いた。
何の為にここに来たのか――それは分からないけれど。
しかし、今何を求めているのかは分かった。
――話をしたい。
妹に似ている、この桜のようなセイバーと話してみたいのだ。

とにかく服を買おう。セイバーと共に、新たな装いを用意するのだ。
それに何か象徴的な意味を求めている訳ではないけれど――
――一つの仕切りにはなる。
それはきっと大切なことのような気がした。

彼女の――織作茜の願いは、そんなことから先ず始まった――


127 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:10:09 OzItFOls0


【クラス】
セイバー

【真名】
沖田総司

【パラメーター】
筋力C 耐久E 敏捷A+ 魔力E 幸運D 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
・対魔力E
幕末に魔力とかそういうのねぇから!
神秘の薄い時代の英霊のため対魔力がほとんど期待できない。
申し訳程度のクラス別補正である。

・騎乗E
新選組が騎馬を駆って活躍、という話は寡聞にして聞かぬ。申し訳程度のクラス別補正である

【保有スキル】
・心眼(偽)A
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

・病弱A
天性の打たれ弱さ、虚弱体質。桜セイバーの場合、生前の病に加えて後世の民衆が抱いた心象を塗り込まれたことで、「無辜の怪物」に近い呪いを受けている。
保有者は、あらゆる行動時に急激なステータス低下のリスクを伴うようになる、デメリットスキル。
発生確率はそれほど高くないが、戦闘時に発動した場合のリスクは計り知れない。

・縮地B
瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。
単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。
最上級であるAランクともなると、もはや次元跳躍であり、技術を超え仙術の範疇となる

・無明参段突き
対人魔剣。最大捕捉・1人
稀代の天才剣士、沖田総司が誇る必殺の魔剣。「壱の突き」に「弐の突き」「参の突き」を内包する。
平晴眼の構えから“ほぼ同時”ではなく、“全く同時”に放たれる平突き。超絶的な技巧と速さが生み出す、防御不能の秘剣。

【宝具】
・誓いの羽織
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
幕末に京を震撼させた人斬り集団「新撰組」の隊服として有名な、袖口にダンダラ模様を白く染め抜いた浅葱色の羽織。
サーヴァントとして行動する際の戦闘服と呼べるもので、装備する事によりパラメータを向上させる。
また通常時のセイバーの武装は『乞食清光』だが、この宝具を装備している間、後年に「沖田総司の愛刀」とされた『菊一文字則宗』へと位階を上げる。
一目で素性がバレかねないあまりにも目立つ装束のため、普段はマスターが用意した袴を着用している。

・誠の旗
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50
最大捕捉:1〜200人
桜セイバーの最終宝具。
新撰組隊士の生きた証であり、彼らが心に刻み込んだ『誠』の字を表す一振りの旗。
使用者本人も魔人アーチャーとの最後の戦いまで気付いていなかったが、一度発動すると、かつてこの旗の元に集い共に時代を駆け抜けた近藤勇を始めとする新撰組隊士達が一定範囲内の空間に召喚される。各隊士は全員が独立したサーヴァントで、宝具は持たないが全員がE-相当の「単独行動」スキルを有しており、短時間であればマスター不在でも活動が可能。
ちなみにこの宝具は新撰組の隊長格は全員保有しており、効果は変わらないが発動者の心象によって召喚される隊士の面子や性格が多少変化するという非常に特殊な性質を持つ。
例として挙げると、土方歳三が使用すると拷問などの汚れ仕事を行ってきた悪い新撰組、近藤勇が使用すると規律に五月蝿いお堅い新撰組として召喚される。また召喚者との仲が悪いとそもそも召喚に応じない者もいる。桜セイバーが召喚するのは、世間的に良く知られたメンバーで構成されたポピュラーな新撰組である。

【weapon】
・『乞食清光』
日本刀『加州清光』の愛称。諸説あるが、史実通り沖田総司の愛刀。


128 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:10:27 OzItFOls0

【人物背景】
和服を着こなし、物腰柔らか、かつ謙虚という絵に書いたような大和撫子。いつも冷静だが意外と陽気な所もあり、サーヴァントとしての扱いやすさもセイバークラスに相応しい。
だが、ひとたび斬り合いとなれば冷徹な人斬りへと変貌。得物を抜いた相手に対しては隙を見つければ即座に斬り捨て、背後を見せた者にも一切容赦せず、殺し合いや死生観に関して極めてシビアな感性を持っている。
生前は凄腕の剣士として知られているが、自分では「剣豪である」というつもりはないらしい。
史実通りちょっと体が弱く、ショックな事があると血を吐く。また局長や副長など新撰組の仲間達と最後まで戦えなかったことを気に病んでおり、昔の事を考えると申し訳ない気持ちと自分の不甲斐なさから落ち込んでしまい、情が深いだけにメンタル弱い所がある。
物凄く似合ってる袴とブーツはマスターから貰ったもので、サーヴァントとして活動する際は、宝具である羽織とマフラーを着用している。
生前、病によって新選組の同胞達と共に戦場で最後を迎えられなかったことから聖杯に託す願いは、『最後まで戦い抜くこと』。

……という設定で『Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚』で活躍するらしいサーヴァント。
元は『コハエース』にて琥珀さんが適当に考えた新サーヴァントである。
キャラデザを社長に投げてみたところ、何故か社長が本気を出してしまい公式化。
お祭り漫画に出演の他フィギュアも出て、これには琥珀さんも困惑なのだった。
(ちなみに最初は琥珀さんがサーヴァントが力を手に入れた『コハセイバー』だったのだが、そんな適当な設定は社長の手により無視された)
『コハエース』誌上で読者参加型真名当てクイズを行い、正解者には作者の経験値氏よりメガドラソフトが送られたとか。


129 : 織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:10:58 OzItFOls0


【マスター】
織作茜

【マスターとしての願い】
???

【能力・技能】
一見して楚楚とした女性だが、その実彼女は非常に機知の効く才媛である。
薬物や嗅覚に関する知識を持つ。

【人物背景】
出典は『絡新婦の理』及び『塗仏の宴』
時期は『塗仏の宴』開始前。

刑事、木場修太郎は、近頃世間を騒がせている「目潰し魔」の捜査に奔走するうち、
榎木津との共通の友人で映画会社を経営する川島新造が何らかの手がかりを持っているのではないかと踏む。
しかし彼は「蜘蛛に訊け」との謎の言葉を残して行方をくらませる。
聖ベルナール女学院の生徒、呉美由紀と渡辺小夜子は、学院内に飛び交う噂話を追ううちに、望めば人殺しさえ行う悪魔「蜘蛛」と、それを崇拝する「蜘蛛の僕」の存在を知る。
教師、本田幸三から酷い仕打ちを受けていた小夜子は半ば勢いに任せ、「本田を殺してくれ」と「蜘蛛」へ叫ぶ。
そんな時、美由紀らはかつて「蜘蛛の僕」の一員であったらしい麻田夕子と接触するが、三人ともに窮地に陥っていく。
伊佐間一成は、釣りに訪れた房総半島の興津町で呉仁吉という老人と意気投合する。
漁師であった彼の「収集物」の価値を精算すべく伊佐間は、旧知の間柄である今川雅澄を招請する。
折りしも近在の旧家、織作家の大黒柱、雄之助の葬儀の最中であり、織作家の使用人である出門耕作から「ついでに、残った骨董品の精算もしてもらいたい」と請われ、
今川と伊佐間は連れ立って「蜘蛛の巣屋敷」と渾名される織作の屋敷へと赴く。そこで彼らは織作家の事件に巻き込まれることになってしまう。
(絡新婦の理・あらすじ)

織作家の次女として生まれる。28歳。不明の男と織作真佐子の子。
織作是亮と結婚するが、母織作真佐子に性交渉は禁じられていた。
上記事件で夫、母、姉、二人の妹を全て喪った。

……連続目潰し魔、絞殺魔、ベルナール女学院、織作家、多くのものを巻き込んだ惨劇の黒幕。
学生、刑事、殺人鬼、家族……全てを直接・間接的に操り、邪魔な人間をすべて排除することに成功する。
そうして全く自分の手を汚すことなく目標を達成するが、中禅寺秋彦との対話を通して己の理に気づく。

その後、羽田隆三に家族と共に過ごした屋敷を売却し、新たな生活を模索するこになる。
妹たちを弔う為にも韮山の土地の調査に赴くが、そこで……

【方針】
セイバーと話す。


130 : ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/20(土) 14:11:15 OzItFOls0
投下終了です。


131 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/20(土) 14:18:21 JCm//xrI0
皆さま投下乙です。自分も投下させていただきます。


132 : 零崎曲識&アーチャー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/20(土) 14:19:11 JCm//xrI0
『月の出ない夜に出る紅い月が願いを叶える』


聖杯戦争の切っ掛けとなるこの噂はありとあらゆる人間に伝えられた。

幼稚園児、小学生、中学生、高校生、大学生。
教員、教師。
警察官、刑事。
消防隊員、救急隊員、自衛隊隊員。
政治家、公務員、弁護士。

料理人、技術者、研究員、教授。
駅員、ドライバー、フリーター、主婦、サラリーマン。

何の職務にも属していない人間。
戸籍のない人間。
奴隷のような人間。

人ではないもの。
人だけども人の形を取っているだけで人ではないもの。
化物。

様々な人間の耳へ噂話は入りこんでいった。
当然、もちろんのこと。
『殺人鬼』にも噂を耳にする権利はあった。



◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆



『殺し名』の第三位に列せられる殺人鬼の一賊。
彼らは『零崎一賊』と呼ばわれている。

零崎曲識もその一人。

最も彼は、零崎の中でも異常かつ確固たる信念を以ってベジタリアンとなった殺人鬼。
そうなった原因でもあり、理由でもあり、動機でもある
ある少女のことを彼は思い出していた。
噂話と少女を重ね合わせていた。

彼女は『赤』であると表現しても過言ではない。
人類最強
人類最強の請負人
赤き征裁
死色の真紅
数々の異名の中にも、そして彼女自身も『赤』が必要不可欠であった。

曲識はもう一度『彼女』と再会するその日まで少女だけを殺すと宣言した。
そして、今日まで少女以外殺した事はない。
何故『彼女』に執着するのか?

『彼女』が曲識の初恋だった以外、理由は果たして必要なのだろうか。


零崎曲識は例の噂話に登場する『紅い月』とは彼女のことだと連想していた。
あらゆる願いを叶えられる紅い月――なんて非現実的な夢物語ではなく。
あらゆる依頼を請け負う赤い女ならば、あぁきっと『彼女』だ。納得できる。

しかし、表の世界で自棄に噂立っているのは一体どうしてだろう。
『彼女』なら仕方ないの一言で済むのは一種の法則だが
これは異常だ。
異常の中の異常であり、異常事態のなんでもない。
それとも――彼女の名を騙り、何者かがやらかしているのかもしれない。
本物でも偽物でも、彼女と再会することが叶うならば……

必要はない。
何もする必要はない。
零崎曲識は根拠もなく、いつかきっと彼女と再会できると奥底で淡い希望を抱いていた。
まるで偶然に、それでいて運命的に、しかし必然の再会があると信じていた。

だが。
だけども。
それでも。
そうだとしても。

殺人鬼は世界の片隅で想った。


「哀川潤」


彼女の名前を呟き、思う。


会いたい。


133 : 零崎曲識&アーチャー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/20(土) 14:20:04 JCm//xrI0
◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


月が見えるはずのない空間で、紅い月が見えた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


『紅い月』

その正体は『英霊』だった。
聖杯戦争においてサーヴァントと称される『赤』の存在が出現し、高らかに問いかけた。


「私は『アーチャー』の英霊として馳せ参じた雑賀衆頭領・雑賀孫市だ。問おう、お前が私の契約者か」


雑賀孫市。
戦国時代に名のあった人物だが、果たして認知度としてはいかがだろうか?
少なくとも曲識は知らなかった。
それよりも、彼女もまた『赤』を彷彿とさせる英霊。
ふむ、と曲識は彼女を眺めてから口を開く。


「お前が噂の『紅い月』だったという訳か……」
「……どうにも変わった解釈をする男だな」


確かに『赤』を象徴する英霊・アーチャーだが、曲識の求めている『赤』ではなかったのである。


「人を探していたんだ。お前と間違えてしまったらしい」
「だが、私と契約する以上――お前は『聖杯戦争』の渦中にいる」


戦争。
無差別殺人をかがげる曲識にとって、いや。
すでに『戦争』を体験した曲識にとっては無縁であり続けたかったものだ。


「戦争はしたくない」
「望みがあるのにか」
「お前が戦地で活躍した英霊ならば『戦争』がいかなるものか理解し、体験しているはずだ。
 僕は五年前の『大戦争』を、あの途方もない『赤』さを体験したからこそ言える」


聖杯戦争。
恐らくアレに匹敵するか、二の次になるのか、なんであれ末恐ろしい戦争となるのだ。
一見すれば『戦争』をした兵士に見えぬ曲識であるが
語る言葉の重みで『戦争』の情景を知っているとアーチャーは感じる。


「お前の意思は理解した。ならばどうする。ここは戦場だ」
「生きて帰る」


まだ『彼女』と再会できていない。


「死ぬ訳にはいかない」


『家族』を心配させる訳にもいかない。


「臆病者だと罵られようとも構わない。僕は誰も殺さないし、いざとなれば逃げる。
 『逃げの曲識』の異名通りのままであり続ける。それが僕だ。だから――」

「お前が戦って欲しい。アーチャー」


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


134 : 零崎曲識&アーチャー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/20(土) 14:21:00 JCm//xrI0


「我らは弱い者は認めないが――高く評価するならば契約の誓いを立てよう」


アーチャーは銃を天に掲げ、三回発砲する。
その銃声は、世界の全てに響き渡った。
銃を天へ向けたまま、アーチャーは高らかに宣言した。


「我ら、誇り高き雑賀衆! 只今より契約の紅い鐘を執行する!
 響け! 我らが炎の音を打ち鳴らせ!!」


瞬間。
戦場の銃声の如く数多の鐘の音がどこからともなく響き渡る。
まるで、一斉に飛び立った幾千羽の群れが空を黒く染め渡るかのように。
英霊の鳴らす鐘は曲識でさえも知らぬ神秘的な音色であった。
鐘の音が響く中、アーチャーは語る。


「これは我らが心、我らが炎、我らが命の誇り。命の炎が尽きるその瞬間まで、お前の力となろう」

「ただ、一つだけ言っておこう」

「我らは君主を持たない」

「そしてお前を君主と思うつもりもない」

「我らの君主は誰でもない、我ら自身だ。この生き様こそ、我らの誇り」


その言葉を聞いて、曲識は驚く。
別の意味で驚いた。
同じような言葉を知っている。
似たようなセリフを呟いた『少女』を知っている。


――あたしを主人と呼んでいいのはあたしだけだ!


だからアーチャーだったのだろう。
召喚されたのは『少女』を想っただけで、『少女』を思うが故にだったのか。
それを知った曲識は少しだけ笑みを浮かべた。


「あぁ、それは――悪くない」


135 : 零崎曲識&アーチャー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/20(土) 14:21:50 JCm//xrI0
【クラス】アーチャー
【真名】雑賀孫市@戦国BASARA
【性別】女性
【属性】秩序・中庸

【パラメーター】
筋力:E 耐久:D 敏捷:A 魔力:C 幸運:C 宝具:C


【クラススキル】
単独行動:B
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Bランクの場合、魂に致命的損傷を受けても短期間ならば生存できる。

対魔力:C
 魔術に対する抵抗力。 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
騎乗:E
 乗り物を乗りこなす能力。
 戦国時代に生きた英霊の為、馬くらいは乗りこなせる。

心眼(真):B
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

カリスマ:C
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。

戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】
『煙鳥翔華』
ランク:C 種別:自身 レンジ:- 最大捕捉:-
戦闘を行いながら武器を作成し、切り替える雑賀孫市の十八番。
マグナム、ショットガン、マシンガン、手榴弾、ロケットランチャー、操作可能な導火線。
これらから選択する事が可能である。

『八咫に羽ばたけ雑賀黒鳥』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
傭兵集団雑賀衆による援護射撃。アーチャーが信号弾を発射後、宝具は展開される。
宝具展開時、また誓いの鐘の音を鳴らす時、集団の姿は見られないが
雑賀衆は一個体を雑賀衆と見るのではなく幾千の集団一つを雑賀衆と認知している為
彼らはアーチャー・雑賀孫市と共にあり続けている。


【人物背景】
傭兵集団雑賀衆の三代目頭領。
非常に用心深く、感情にも流されず、雑賀衆を高く評価する者とのみ契約を結ぶ。
誰と契約しようとも決して屈せず、己の生き様を貫く。

先代の雑賀孫市は織田信長に殺された。
先代は彼女の恩師であり、特別な人物であった。
彼女には信長への憎しみと恨みが残り続けている。

彼女はまだここに『織田信長』がいることを知らない。

【サーヴァントとしての願い】
彼女は契約に乗っ取るだけである。

【方針】
生き残る方針の曲識を安全を優先させる。いかなる相手の戦闘も躊躇はしない。


136 : 零崎曲識&アーチャー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/20(土) 14:22:33 JCm//xrI0
【マスター】零崎曲識@人間シリーズ

【参加方法】
紅い月が初恋の『彼女』だと思い込み、彼女との再会を願った。

【マスターとしての願い】
生き残る。


【能力・技能】
音使い。
精神感応と衝撃波の二通りの技術を保有する。
またあるいは楽器を凶器にして殺す。
楽器がなくとも、声が『音』である以上、ある程度の会話を交わす事により相手を支配することも可能。
人間なら効果はあるが、人間ではないものには通じない。
サーヴァントにどの程度まで音の力が通じるかは不明。

殺人鬼故にスキルでいう精神汚染に匹敵する精神の持ち主。


【人物背景】
最も敵に回すのを忌避される醜悪な軍隊にして、最も味方に回すのを忌避される最悪な群体、零崎一賊の一人。
少女しか殺さない為『少女趣味』、無差別殺人を嫌う為『逃げの曲識』の異名を持つ
天然で思いこみが激しい音楽家たる殺人鬼である。


【方針】
サポートや逃げに徹底する。ただし『少女』は殺す。


137 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/20(土) 14:23:06 JCm//xrI0
投下終了です。


138 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:45:47 JHEBxtcU0
投下します。


139 : ジョン・マクレーン&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:46:16 JHEBxtcU0



 あまりにも酒に溺れすぎて人間をやめる一歩手前まで来ると、つい昨日まで毛ほどもわからなかった日本の言葉がわかるようになるらしい。
 全く読めなかった日本語の看板の意味が、今の俺には分かっている。
 これは一体、どういう事だ。

『エロイモノナラナンデモソロウ』

 最低な看板が目の前にどでかく構えられているのがわかる。
 町中にディズニー以外のアニメの絵とタイトルが掲げられている事もわかる。
 飯屋の名前も、交通看板も、ここが左車線の道路である事も、何故か今の俺にはよくわかる。
 ……そう、きっと、ここはポルノの街だ。看板を見る限りだと、漫画の絵で描かれたポルノ・コミックが売ってそうな店が山ほどある。この街に来る奴は全員逮捕してやりたくなる。
 世界にはこんなに堂々と下品な看板を拵えておける場所があるって事だ。治安の良い日本でも、裏にはこんな街が存在するらしい。
 書き入れ時のこのド深夜にしては全く活気がないのはどういうわけだかわからない。
 俺も誤解されないようにさっさと出ていきたいが、しかし、その前に、俺は何故こんな所にいるのか考え直すべきだろう。

 ……そうだ、今の内に頭の中を整理し直そう。
 今朝方、──別れた女房の愛しさのあまりに酒をたらふく飲んで、外の空気を吸おうと思ってそのまま寝ちまった翌日だ──気づけばこの日本の東京に俺は立っていた。
 ジェット機にも、船にも乗った覚えはない。なのに、いつの間にか俺の体と心はニューヨークから東京までトリップしている。

 酒の中に危ない薬でも入っている可能性をまず最初に考えた。つまり、心だけ東京にトリップしてる可能性だ。本当の俺は今ニューヨークの俺の部屋にいるとする。
 よりにもよって、俺は刑事だ。もし、検査に引っかかればクビ間違いなし。明日からバッジを捨てて辛い職探し……それもおそらく希望はゼロだ。完全に人間をやめる事になる。

 だが、二日酔いにしては妙に頭が冴えてるし、よりにもよって、学んだ覚えのない日本語がすらすらと頭に浮かぶ。
 どこかのバカが気まぐれで酒に混ぜた薬物にはそんな副作用まであるってのか。……そんなはずがない。

 それから、なんでも聖杯戦争だとか、サーヴァントだとかマスターだとか、そんなゲームのルールが俺の頭の中に入っている。こいつも不思議だ。
 俺は戦争屋でもなければ、ゲームのプレイヤーでもない。そんな状況に向いてる人間じゃない。
 今日までもテロリストや犯罪者にはいくらでも縁はあったが、「聖杯の為に戦争をしろ」なんて言われるような覚えはない。
 だいたい、聖杯戦争だと? どこの宗教戦争だ。
 何がどうして、俺がこんな所にいる。



 ……ああ、それから、俺がいる場所も高い語学力も信じられないが、もう一つくらい信じたくない事実があった。
 そいつは俺の後ろにいる。

「よう、マスター。あんた、映画で見た事があるぜ」

 見覚えのある戦争屋が、俺のその──パートナー、≪サーヴァント≫らしいって事だ。そいつが俺になれなれしく声をかけてくる。
 シルヴェスター・スタローンにそっくりな──いや、もっと言えば、そいつが演じたあのランボーそのものな奴が俺の前にいやがるんだ。
 コスチュームプレイにしては、異様にクオリティが高い。間違いない、シルヴェスター・スタローンが演じたランボー本人だ。
 ランボーが俺の事を映画で見てくれてるとは光栄だね。


140 : ジョン・マクレーン&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:46:33 JHEBxtcU0

「それはこっちの台詞ですぜ、シルヴェスター・スタローンさんよぉ。だが、残念ながら俺はブルース・ウィリスじゃない。
 あんなに禿げた覚えはねえんだ。言っておくが、俺の使ってる育毛剤は信用できる。あのハリウッド俳優に贈ってやりたいくらいだね。
 ……なあ、こいつは一体どういうわけだ? なんで俺はこんな所にいる? 一体何がどう間違って戦争なんかに参加させられてる!
 あんた俺のサーヴァントだろ、俺を今すぐ一人きりのマイホームに帰してくれ」

「……それはできない。この聖杯戦争から脱出するのは、令呪を以ても今すぐには不可能だ」

 映画で見たランボーそのものな寡黙で落ち着いた口調。
 こいつも俺も日本語で話しているらしいが、どういうわけかそうやって話せてしまう。
 まるで、日本人の俳優が声を吹き替えてくれているみたいにだ。こんなのは俺の声じゃない。

「混乱しているようだな。順を追って話そう。まずはマスターがここに来た理由からだ。
 なぁマスター、あんたはここに来る前、赤い月を見なかったか?」

 俺は昨夜の記憶を辿った。
 確かに、そんな物を見た気がする。しかし、それを上塗りするくらいの孤独と寂しさと悲しみとが昨夜の俺の心を占めていた。
 しかし、何故こいつがそんな事を知ってる。

「ああ、見たよ、夢の中でなぁ。俺は寝ちまってたんだ。だから、月が真っ赤だった。
 俺の夢を精神分析してくれるのか? で、赤い月の夢はなんだ? 『酔っぱらって凍死直前』の暗示か?」

「……俺はユングでもフロイトでもない。俺があんたに伝えたいのは、あんたがここにいる理由だ。
 結論から言う。あんたは赤い月を見たツイテない男だからここにいる。間違いでも夢でも何でもない。そして、ここは、あんたが見た月の裏側に再現された東京だ」

 こいつが何を言っているのか、俺には全くわからない。俺は頭を抱えた。
 ただ、こいつが言ってる事が一つだけ正しいのを俺はよく知ってる。

 そう──俺は、ツイてない。
 よりにもよって、女房と子供が出てくる幸せな夢じゃなく、ランボーと一緒に月の裏側に東京そっくりな街を見つける夢を見るくらいにな。

「月を見て月に来た……? そんな理屈が通るんなら、毎晩別れた女房の写真を眺めてる俺は今頃ヨリを戻してアルコールともオサラバして人間を取り戻してるはずだ。
 それだけじゃない。ルーシーとジョンに山ほど弟と妹が出来ている頃だろうさ」

「……明日から寝る前に、写真のほかに避妊具を用意するといい」

「……ああ、そうさせてもらうよ!」

 俺の怒号とは対照的に、ランボーは冷静だった。
 そいつが気に食わない。

 俺だってこれまで大変な目に厭ほど遭って来たプライドがある。
 しかし、ファンタジーの世界に足を踏み入れたのは初めてだ。映画のランボーも同じだろう。
 こいつの話を聞いてると頭がおかしくなりそうだと思った。

 ドッキリカメラってのは絶対にない。一刑事の俺がドッキリカメラに遭う可能性と、ジョン・マクレーンが戦争に巻き込まれる可能性なら、後者の方が断然高い。
 そう、残念な事にだ。俺はそういう人間だ。


141 : ジョン・マクレーン&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:47:19 JHEBxtcU0



 だが、俺は、こいつが現実であるのを受け入れたくなくて、ランボーを無視してすたすたと歩きだした。
 自分の足でこの街を調べていかなければならない。そいつが俺たち刑事のやり方だ。
 しかし、ランボーは俺について来て話しかけてくる。俺は歩きながらこいつの話を一応聞いてやった。

「残り17騎の敵を潰して聖杯を得れば好きな願いを叶えられるんだ。あんたには、願いはないのか」

「その敵ってのは何だ? テロリストか? 犯罪者か? それとも、シュワルツェネッガーか?」

「兵隊かもしれない。あんたみたいに突然巻き込まれた刑事かもしれないし、女子供かもしれない」

「そいつはご免だな。テロリストをブッ殺すのは俺の趣味だが、女子供を傷つけるのは俺にはできない」

「それは……俺も同じだ」

 ランボーは、素朴にそう答える。
 やっぱり、こいつはヒーローには違いないらしい。俺の知ってるランボーだ。
 俺もランボーも、ヒーローになった事で何かを失った犠牲者だ。だからもうヒーローなんて御免だね。俺はヒーローになったから女房に逃げられたんだ。

「俺はおさらばするぜ。戦争なんざ御免だ。お前と会えて光栄だったよ、ランボー」

「おい、この戦争に呼ばれた以上、何処にいようと巻き込まれるぞ。しばらくは俺と一緒にいた方がいい。
 映画なら、この次にあんたは爆発に巻き込まれてこいつが現実の物だと知る羽目になる」

「そいつは面白い。アメリカ映画の爆薬の50パーセントはあんたが放った弓矢だと思ってたぜ」

「ここは、日本の東京だ」

「ああ、その通り。どういうわけかここは日本だ。日本ってのは戦争をやめた国だな。見ろよ、この平和に恍けたご立派なポルノ街を。こいつが、次の瞬間、ドンと爆発するってのか?」

「なぁ、こいつは警告だ。どっちにしろ、巻き込まれる。この街も戦場になる。あんたと俺は、そういう体質なんだ。運命だと思って、ここらで折れてくれないか?」

 嫌な事を言うが、残念ながら的を射ている。
 俺ことジョン・マクレーンも、ランボーも、どうやら事件や戦争に巻き込まれるタイプなのだ。どう逃れようとしても、事件は襲ってくる。
 爆発が起こっちまう前に、このポルノ街で全てを受け入れなきゃならないらしい。
 俺はランボーの方を向き直った。

「……」

 これだけ空気を吸って、これだけ頭に怒りが湧いて、これだけ歩き疲れるなら、こいつは本当に夢じゃないらしい。
 そして、俺はやっぱりツイテないって事だ。
 俺がまたこの危険から生き残るには、それこそすぐに順応してファンタジーの世界に飛び込むしかないらしい。
 これがドッキリカメラってのは絶対にない。一刑事の俺がドッキリカメラに遭う可能性と、ジョン・マクレーンが戦争に巻き込まれる可能性なら、後者の方が百倍高い。
 そう、残念な事にだ。

「……じゃあ、ジョン・ランボーさんよ。今回、俺は何と戦えばいいんだ?
 ここまで揃ったからには本当にシュワルツェネッガーとでも戦えってぇのか?」

「いや、マスター。戦うのは俺たちサーヴァントの方だ。
 俺のサポートと、それから魔力供給……場合によっては、もしかすればあんたも戦う事になるが、出来る限りはあんたは戦闘に参加しないようにこっちが努力する」

「そうか、そいつはいい。丁度、何もしたくない気分だった。テロリストとの決死の攻防戦も、ヒーローになるのも、もう永久にごめんだね。
 で、映画によると、あんたは自分の戦争を終えたはずだが、戦争をやめた戦争屋ってのはどれくらい役に立つんだ?」

「……」


142 : ジョン・マクレーン&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:48:12 JHEBxtcU0

 ランボーは俺の皮肉に押し黙った。
 こいつも表立って、戦争に乗ろうって言う腹ではないらしい。こいつももう戦争なんざしたくないし、ヒーローになるのはご免なんだ。
 俺と同じ、巻き込まれただけの人間だ。決定的に違うのは、聖杯戦争って奴についてどれほど詳しいか。
 俺はこいつと組まなきゃならない。

「……ああ、すまない。こういう言い方はよくなかったな。俺もあんたの実力は痛いほどよくわかってる。
 弓矢でヘリコプターを落とせるのはこの世中探してもあんただけだろうよ。
 普通なら負ける気がしないね。俺もジェット機もヘリコプターも落とした事はあるが、流石に小石や弓矢じゃ絶対に無理だ。
 だがな、あんたがここにいるって事は、シュワルツェネッガーが出てきても全然おかしくない状況だ。お前は勝てるのか? ターミネーターに。
 あんただけが戦争して、それで二人で生き残れるのか? ……俺だって、伊達に何度も死に損なってない」

「つまり──」

 ああ、俺は、嫌々ながらこの聖杯戦争を受け入れる。
 そう決意したからには、ランボーだけに全てを任せてはおけない。
 深く呼吸をする。俺は、心を落ち着ける。
 いつものように、また派手なドンパチに巻き込まれる前に。

「俺もその聖杯戦争とやらに参加させてもらう。俺が元の仕事に戻る為にな」

「そいつは、何というか……あり難い。だが、無理はするな。あんたが死んだら俺も消えちまう」

 俺は苦笑した。





 こいつは、ダイ・ハード──そう呼ばれている俺が、死んじまうかもしれない状況ってわけか。





 最悪の運命だ。


143 : ジョン・マクレーン&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:48:29 JHEBxtcU0








【クラス】
アーチャー

【真名】
ジョン・ランボー@映画「ランボー」シリーズ

【属性】
中立・中庸

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具B

【クラス別スキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【固有スキル】
破壊工作:A
 戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。
 アーチャーの場合は、トラップの達人。
 ランクAの場合、進軍前の敵軍に六割近い損害を与えることが可能。
 ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。
心眼(真):A
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【宝具】
『一人だけの軍隊(ファースト・ブラッド)』
ランク:EX 種別:対人、対城 レンジ:− 最大捕捉:−
 ランボーシリーズで登場した兵器や自作トラップを任意でその場に召喚する宝具。
 銃器の場合、召喚した時点で弾丸が全て装填されているが、弾数は使用によって減少する。
 また、耐久性は通常と変わらず、魔力を帯びた宝具では容易に破壊できてしまう。
 この聖杯戦争の最中に自作した罠や入手した現代兵器も新たに宝具として扱う事ができるが、ランボーの世界の技術や能力を超越した兵器は使用できない。
 消費される魔力は、武器の規模に比例する。

『帰還兵の故郷(ザ・ジャングル)』
ランク:B 種別:対軍 レンジ:20〜99 最大補足:1000人
 固有結界。指定範囲にジャングルの結界を張る。
 アーチャーにとってはもはやここが故郷だと形容されるほどに、その戦闘能力が活かされる戦場である。
 この結界内ではアーチャーの気配が感応しづらくなり、逆にアーチャーの感覚は鋭敏になる。
 また、『一人だけの軍隊(ファースト・ブラッド)』を併用する場合、『一人だけの軍隊(ファースト・ブラッド)』の魔力消費は軽減される。
 
【Weapon】
 サバイバルナイフ

【人物背景】
 ベトナム戦争の帰還兵。「普段は無口・無表情で愛想もないが、怒りに火がつくと暴れ出す」。
 強靭な肉体・経験・戦術を駆使し、たった一人で軍隊を一つ潰せるだけの能力を持っている怪物のような兵士である。
 ベトナム戦争で捕虜となった際に受けた拷問や、故郷アメリカに帰った際の人々の迫害により、PTSDを起こしており、保安官によった受けた取り調べでトラウマが発動。それが発端となって、自分を追ってくる警察や軍隊を追い返すべく、「戦争」を始めたのが『ランボー』である。
 その後、逮捕されたが、『ランボー/怒りの脱出』で、ベトナムにいるアメリカ人捕虜の救出を行う為に釈放された。
 シリーズを経て、だんだんと超人化が激しくなっていく。

【サーヴァントとしての願い】
 平穏。

【方針】
 聖杯戦争を終える。


144 : ジョン・マクレーン&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:48:45 JHEBxtcU0



【マスター】
ジョン・マクレーン@映画「ダイ・ハード」シリーズ

【マスターとしての願い】
 平穏。

【weapon】
 ベレッタ M92FS
 法執行官記章・証票

【能力・技能】
 世界一ついてない男。
 しかし、諦めずにどんな苦境の中でも機転を効かせてテロや犯罪者を倒すトンデモない能力を持つ。
 格闘でも銃撃でも常人離れしており、どんな目に遭っても何故か死なない異能生存体。

【人物背景】
 ニューヨーク市警の刑事(2ではロサンゼルス市警、3ではまたニューヨーク市警に戻っている)。
 何故かいつも巨大な事件に巻き込まれる「世界一ついてない男」。それでいて、何故かいつも生き残る悪運の持ち主。
 妻ホリー・ジェネロとは離婚と結婚を繰り返しているが、結局最終的に離婚。生まれ持ってのついてない体質に愛想を尽かされた模様。
 ルーシー・ジェネロ=マクレーンと、ジョン・“ジャック”・マクレーン・ジュニアという子供がいる。ジョンにも不幸体質は受け継がれた。
 愚痴をこぼしながらも、なんだかんだで事件を解決するヒーローなのだが、本人はそんな境遇には全く満足していない。

【方針】
 聖杯戦争の「敵」が万が一襲ってくるようならば容赦はしないが、女子供や罪のない人間を相手に戦争をおっ始めるつもりはない。
 むしろ、この聖杯戦争の方に向けて「戦争」を行う。


145 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 00:49:00 JHEBxtcU0
以上で投下終了です。


146 : ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 00:54:07 heMummWk0
皆様投下お疲れ様です
流れに乗って、私も投下させていただきます


147 : 南ことり&アーチャー ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 00:55:10 heMummWk0


嬉しい事と、楽しい事が同時に訪れた。
まるで寝坊したサンタクロースがお年玉を持ってきたようだった。
なんで、もっと早く来てくれなかったのだろうか。
なんで、もっと寝坊してくれなかったのだろうか。

なんで、なんで、なんで。

そんな言葉ばかりが、私の脳裏を占領する。
頭ばかりが動いて、身体が動かない。
心を決めても、言葉が出ない。

もっと、もっと、もっと。

そんな言葉ばかりが、私の身体を急かす。
もっと、自分の好きなことを活かしたい。
もっと、自分の好きな友達と過ごしたい。

右に手を伸ばすと、左の煌めきが増した。
左に眼を向けると、右の温もりが増した。

言葉が出なかった。
ずっと、ここに居たかった。
もっと、先に行きたかった。

服飾の勉強のための、たった一人の海外留学。
母校を廃校から救うための、大事な友人とのスクールアイドル活動。

どっちも、やりたい。

それを伝えたかった。
どちらを選ぶにしても、そんな悩みがあることを、大事な友達に伝えたかった。
本当に大事な友達だから、かけがえの無い人だから。
だからこそ、隠し事なんてしたくなかった。

でも、言ってしまえば――――どちらかを決めなければいけなかった。

ここに居たまま、どこかに行きたい。
そんな、願いとも呼べない、馬鹿げた願いを抱いた時だった。

月のない夜、紅いお月様が嘲笑っていたのは。


148 : 南ことり&アーチャー ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 00:56:02 heMummWk0


   ◆   ◆   ◆


私は眠っていた。
星を巡る生命の本流。
ライフストリーム。
この世界に満ちる生命は、私達人類の表面的な感覚の上で終わりを迎えても、実質的には終わりを迎えていない。
生命の流れに紛れ込み、ありとあらゆる情報として、この星を駆け巡る。
それが生命というものだった。

私は眠っていた。
未だに、悪夢を見る。
それこそが私の罪に与えられた罰。
例え、多くの罪があの男に集められようとも、私の中にある罪は消えはしない。
与えられた永遠という罰は、罪を見せつけ、私を苦しめていく。
その苦しみこそを求めていた。

私は眠っていた。
呆けたままに、眺めていた。
何時だってそうだった。
私は傍観者だった。
その手も、その脚も。
私は、動かさなかった。
己の中の激情を悪しきものとし、あの人の言葉の前に押さえ込んだ。
私が行った罪は、何も行わなかったこと。

星の守護者を身の内に宿し、星の流れに身を浸らせる。
あらゆる記憶が、感覚的に流れこむ。
その記憶の詳細は理解できないが、心の内が居たんだ。

私の罪は、消えはしない。
永遠に、消してはいけない。

――――だが、罪を犯す者を、救いたい。

しかし、それは私のエゴだ。
その者にとって、本当に大事な選択だとすれば、それは己が決めるべきだ。
私が選んだからこそ、私が罪を抱いたように。
己自身で、己を決めるべきだ。
その結果を己のものとするために。


決断を、人に委ねるなど――――

.


149 : 南ことり&アーチャー ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 00:57:18 heMummWk0


   ◆   ◆   ◆


「お帰りなさいませ、御主人様〜!」

にこやかな笑顔と、穏やかだが声量の大きい声が小さな店内に響き渡る。
華美な装飾はないが、乾燥的な寂しさはなかった。
煩くはないが、寂しさを与えないおとなしいBGMが流れる。
その中に動きまわる黒のワンピース調の野暮な服と白いエプロンをまとった少女たちはにこやかな表情を維持していた。
少女たちメイドに出迎えられた、野暮ったい服装の男はその雰囲気に満足したように目を細めた。
先導されるがままに、席へとつく。

「本日のご注文はお決まりでしょうか〜」

間延びした、しかし、リズムを崩さない語調。
店員の醸しだす雰囲気を楽しんでいるのか、男はすでに決まっている注文を、どこか勿体ぶるような態度で口にしなかった。
そんな男の店員に不快感を示さず、店員はニコニコと柔らかな笑みを浮かべ続ける。
店員のその優しい態度に、男は何度目かになる『癒やし』というものを感じた。
そして、注文を口にした。

落ち着かない様子で、しかし、静かに食事を待つ。
どこか不摂生に太った男には、あまりにも『可愛らしすぎる』、そんな軽食を待ち続ける。。
とは言え、男も不摂生ではあったが、清潔でないわけではなかった。
小奇麗な店内で浮くようなことはなかった。
店員と同時に客もまた、この喫茶店の空気を作っていった。

そんな光景を、誰からも観測されずに眺めていたアーチャーにも、この店内に込められた想いが理解できた。

アーチャーは長く黒い髪をした、長身の男だ。
黒い服の上に紅い外套をまとっているためにわかりづらいが、皮膚の下には隆々とした筋肉が眠っている。
鋭さと暗さを持った瞳とその肉体から、特殊な訓練を受けた経験のあるものだとわかる。
英霊。
何らかの偉業をあげた者。
アーチャーのサーヴァントとして、南ことりに召喚された男――――ヴィンセント・ヴァレンタインもそんな存在だった。
ヴィンセントは星を死滅させる存在との戦いに身を費やした一員であり、そして、星を救った男だった。

ヴィンセントは自身を彩る華やかな伝説に似合わない、暗い瞳を動かせる。

そこは、落ち着いた場所だった。
まるで、時が止まっているかのような。
様々な雑念から離れ出られるような、そんな場所だった。

ここはヴィンセントのマスターである少女、『南ことり』が望んだ世界だ。
魂に刻まれた願望が、色濃く浮き出た場所だ。
ヴィンセントは、目を逸らした。
傲慢なまでに罪を許された空間。
それが、この場所に対してヴィンセントが抱いた想いだった。


150 : 南ことり&アーチャー ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 00:59:04 heMummWk0

「お疲れ様です〜」

その空間での業務も、終わりを告げた。
マスターであることりの顔には充足感に満ちていた。
ヴィンセントは、その顔に対して、疑問が尽きなかった。
本当に、それでいいのだろうか。
老婆心のような、要らぬ世話であるとはわかっているが、思わずにはいられなかった。

「マスター」

結局、ヴィンセントは耐え切れずに言葉を投げかけた。
ヴィンセントは、この空間をことりが何よりも求めていることを理解していた。
その空間に、自身の居場所などありはしないことも。
本来、存在しないはずの超自然者の言葉に、ことりはいら立ちの表情を見せるだろうか。

「なぁに、アーチャーさん?」

しかし、予想に反して、ことりはにこやかな顔をヴィンセントへと向けた。
あっけに取られたように、ヴィンセントは続く言葉が出てこなかった。
かろうじて、言葉を絞り出す。

「…………いや」
「? 変なの」
「……機嫌がいいようだな、それは、何よりだ。
 本当に、皮肉でもなくな」

ヴィンセントの戸惑った言葉に、ことりはニッコリと微笑んでみせる。
その笑い顔に濁りはなく、だからこそ、ヴィンセントをより困惑させた。

「穂乃果ちゃんにはμ'sがなくて、私には海外留学がなくて。
 でも、私達には音ノ木坂学院がある」

つまりは、そういうことだった。
この場所に、スクールアイドル『μ's』は存在しない。
この時間に、南ことりに与えられた海外留学の機会はない。
しかし、音ノ木坂学院は存在する。
決して、廃校になどなりはしない。

残念ではあるが、延々と続く今がある。
ことりは、それが嬉しかった。
自らを苦しめていたものから解き放たれたのだ。

「凄く残念だけど、凄く嬉しい。
 なんだか、身体が軽くなったみたい」

果たして、心を苦しめていた重荷と同時に大事なものも消えてしまったことに気づいているだろうか。
今は気づいていなくとも、やがて、気づくだろう。
ことりは決してμ'sを嫌ってなどなかった、むしろ、その逆。
ならば、それが消えたことに対して――――ことりは、どのような感情を抱くだろうか。
決まっている。
不安と、罪悪感だ。


151 : 南ことり&アーチャー ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 01:00:28 heMummWk0

「マスター、貴方は――――……!」
「……なに、今の?」

その瞬間。
ヴィンセントの言葉を遮るように、ことりの身体に刻まれたものへと震えが走った。
それは、ヴィンセントにも感じ取られた。
巨大で異質な力の震えだった。

サーヴァントの、あまりにも大きな魔力を知らせるものだ。
ヴィンセントはもちろん、ことりにもその意味をきちんと理解が出来た。
だが、ことりは、認めなかった。

『違う、私は願いが叶った』


『これから、服飾の勉強を頑張って、高坂穂乃果とともに生活する』


『やがて、海外ではなくとも、遠くへ離れることになっても』


『高坂穂乃果との穏やかな生活と温かい青春を、ことりは手に入れたのだ』


――――紅い満月は、その伝承の通り、ことりの願いを叶えてみせたはずなのだ。


だから、戦いなどあるはずがない。
他者を傷つけなければいけない道理などない。
異能の理が、血を撒き散らす現実などありはしないのだ。

ことりの心で膨らみすぎた充足は、その影に眠る不穏な血を隠していた。
小さな血痕が放つ、あまりにも大きな違和感を、ことりは無視した。
悪寒を放ち続ける、紅い満月だけが照らす闇から視線をそらす。
下着を嫌な汗が濡らしていた。

一度、目を瞑り、開いた後、裏路地を見る。

何もない、普通の風景。
慣れ親しんだ、自らが好んだ世界。
なんてことのない、日常。


そのはずなのに――――世界は、こんなにも血でべっとりとしている。


ことりは、目を逸らし、日の当たる表通りへと逃げていった。
霊体化していたヴィンセントは、ただ、何も言うことはなかった。
心の弱さを暴力的に否定できるほど、ヴィンセントは強い人間ではなかった。


152 : 南ことり&アーチャー ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 01:01:11 heMummWk0

【クラス】
アーチャー

【真名】
ヴィンセント・ヴァレンタイン@FINAL FANTASY Ⅶ

【パラメーター】
筋力C+ 耐久B+ 敏捷A 魔力B 幸運E 宝具EX

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:C(A+)
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
宝具を解放し、カオスとなることでA+以下の魔術全てをキャンセルする。
事実上、魔術ではカオス・ウェポンに傷をつけられない。

単独行動:A
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
体内にあるエンシェントマテリアのおかげで、マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】
獣の因子:A
星が生み出した規格外の宝玉、エンシェントマテリアを体内に埋め込まれている。
エンシェントマテリアが持つ、複数の人外の因子に応じて、その姿を変化させることが出来る。
宝具であるカオス・ウェポン以外の因子を用いた変身では、自らの意思を失う。

心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す"戦闘論理"
逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

自己改造:E
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。
かつて外科的に行われた実験によって、ヴィンセントは限定的に自らの肉体を改造することが出来る。

【宝具】
『罪と罰(デス・ペナルティ)』
ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
ヴィンセントの体内の『カオス』の因子を目覚めさせる『何か』とともに残されたリボルバー式のライフル銃。
生命を刈り取るたびに神秘は増していき、釣られるように銃口から放たれる弾丸の威力が増していく。
その罪が完全に溜まった時には、星が生み出した守護兵器である『ウェポン』ですら一撃で破壊する。
現在は生命が宿っていない状態であり、通常の銃器にすら劣る兵装である。

『星の海への送り手(カオス・ウェポン)』
ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
星が終焉を迎える時、星は内部に宿した多くの生命を一つに集め、その一つとなった生命を『オメガ・ウェポン』に宿して旅立っていく。
その際、全ての生命を一つにまとめるために、現存する生命を刈り取る存在こそが『カオス・ウェポン』である。
無差別に刈り取られた生命は、清浄な生命はオメガが一つにし、淀んだ生命はカオスが引き受ける。

ヴィンセントはこの宝具を開放すると、禍々しい羽を生やし、肌を青白く染めた悪魔の如き怪物となる。

【weapon】
宝具であるデス・ペナルティ。
生命を刈り取っていない状態の顕現であるために、宝具としての力は不十分。
だが、ヴィンセントは自身の高い技能と優れた身体能力でカバーしている。

【人物背景】
長い黒髪をした長身の男性で、物静かな性格。
何事にも関心がないように見えるが、決して冷徹な人間ではない。
内には熱い感情を秘め、また数十年の時を経ても一途にルクレツィア・クレシェントを想い続けている。
彼女や宝条との間に起こったある事件がきっかけで罪の意識を背負っている。

黒の服と赤いマントを羽織り、銃を武器にする。

外見年齢は27歳だが、人体実験を受けた結果、身体の老化が止まっており、実年齢は50代半ばとなる。なお、この人体実験によってヴィンセントは様々な怪物に変身できる身体になってしまい、そのために人間時でも驚異的な回復力と身体能力を持つ。

ヴィンセントの父、グリモア・ヴァレンタインは世界的グループ、神羅カンパニーの資金援助によって研究を進めるフリーランスの学者。
ジェノバ・プロジェクトが発足する以前の神羅屋敷でルクレツィアと共にオメガとカオスについて研究していた。
しかし、カオスの泉から持ち帰ったカオス因子の暴走により、グリモアはルクレツィアを庇い死亡する。
この事件は後のヴィンセントとルクレツィアの運命を左右する大きな要因となる。

機械の扱いが苦手である。


153 : 南ことり&アーチャー ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 01:01:34 heMummWk0

【マスター】
南ことり@ラブライブ!(アニメ)

【マスターとしての願い】
自らすらもわからない、自らの願いを叶える。

【weapon】
-
【能力・技能】
服飾の才能に秀でており、

【人物背景】
幼馴染である穂乃果の始めたスクールアイドルグループに、2人目のメンバーとして最初に加わった。
衣装製作やダンスステップの考案などを担当。
母親は音ノ木坂学院理事長。
合宿等にはいつも黄色い枕を持参しており、また、学院で飼育されているアルパカが大のお気に入りらしく度々恍惚している。
スクールアイドルを始めた頃に秋葉原のメイド喫茶で「ミナリンスキー」という名前でアルバイトを始め、わずか数か月で『伝説』と呼ばれる存在になるが、周囲にはそのことを隠していた。
メンバーの中では副リーダータイプで、それも先頭に立つよりフォローに回るタイプであったが、秋葉原での路上ライブでは中心的な役割を果たす。

穂乃果とは自身の人生で初めての友達であり、それ以後は無二の親友となった。
このため穂乃果に対しては並々ならぬ想いがあり、時に穂乃果のことで頭がいっぱいになることもある。
穂乃果に対しては常に甘い態度で接するため、海未からそのことをたしなめられることも多い。

現在、ある悩みを抱えてしまい、その悩みと周囲を気遣うあまりジレンマに陥っている。

【方針】
自らが求める安息である甘受する。


154 : ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 01:01:45 heMummWk0
投下終了です


155 : 名無しさん :2014/12/21(日) 01:34:19 5yxUk9Eg0
皆様投下乙です。
他ではあまり見られないキャラクターや独特な雰囲気の話が多く、楽しみながら読ませて頂いてます。

>>1氏にご確認したいのですが、
・NPC殺傷の制限等はありますか
・ここでは記憶を取り戻す予選などはなく、元世界で月を見た時から記憶が連続しているのでしょうか
(その場合拠点などは聖杯から用意されているのか、それとも自ら探し出すのかどちらでしょうか)
・マスターまたはサーヴァントが死亡した場合、相方も電脳死?になりますか
 リタイアする方法はないということでよろしいのでしょうか

本来行間で読み取るべきことも混じっていて申し訳ありませんが、よろしくお願いします。


156 : ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 01:49:43 heMummWk0
>>155
お読みいただきありがとうございます

>・NPC殺傷の制限等はありますか
制限はありますが、その裁定は魔人アーチャーが改造した聖杯自体が行います。
そして、突貫工事、かつ、ムーンセルという超級の聖遺物とシンクロしているために、魔人アーチャー自体も把握しきれていない『バグ』が多数あります

>・ここでは記憶を取り戻す予選などはなく、元世界で月を見た時から記憶が連続しているのでしょうか
>(その場合拠点などは聖杯から用意されているのか、それとも自ら探し出すのかどちらでしょうか)
聖杯が用意した『東京』という電脳空間での拠点や役割、いわゆる『日常』は聖杯によって用意されています。
記憶の有無にはバラつきがあります。
聖杯がこしらえた周囲のNPCのように元世界の記憶を失っていたり、月を見た瞬間から記憶を連続して月で生活している状況もあります


>・マスターまたはサーヴァントが死亡した場合、相方も電脳死?になりますか
> リタイアする方法はないということでよろしいのでしょうか
原則として、『何もしなければ』コンビを失った者もまた魂が死にます
リタイアの方法は、少なくとも、聖杯戦争のルールなどのような『聖杯から与えられた情報』には入っておりません



リレー上重要な箇所にも関わらず、作中外にて明記しておらず申し訳ございません

ひとまず、『魔人アーチャーに修正を施された聖杯は、願望器として成立しつつも、無数の欠陥を抱えている』と認識してくだされば幸いです
ある程度、その、フレキシブルに


157 : 名無しさん :2014/12/21(日) 02:01:31 5yxUk9Eg0
>>156
ご回答頂きありがとうございました。
今後のSSも楽しみにしています。


158 : ◆nEZ/7vqpVk :2014/12/21(日) 02:24:13 xt1X8P4E0
皆様投下お疲れ様です。
私も投下させて頂きます。


159 : 槙島聖護&キャスター  ◆nEZ/7vqpVk :2014/12/21(日) 02:25:06 xt1X8P4E0


―――膝をつき、空を見上げた。


風が心地良い。
東京では、決して感じることの出来ない風だ。


夕日に染まっている所為か。

或いは、額から血が流れている所為か。


空が。


―――そして、月が。



「なあ……どうなんだ、狡噛。
 君はこの後、僕の代わりを見つけられるのか」


「いいや。……もう二度と、御免だね」



―――赤く、紅く、アカク見えた―――





160 : 槙島聖護&キャスター  ◆nEZ/7vqpVk :2014/12/21(日) 02:25:41 xt1X8P4E0


聖杯。


マタイの福音書、マルコの福音書、ルカの福音書。
つまりは共観福音書にて、最後の晩餐で使われたと記されている、イエス・キリストの聖遺物―――聖杯。

或いは、イエスの処刑時に流れた血を受け止めたという、聖杯。


この聖杯を巡って、様々な物語が残っている。

クレティアン・ド・トロワが書いた、円卓の騎士ペルスヴァルが聖杯を探索する物語。
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハによって補完されたパルチヴァール。
そしてこの、トマス・マロリーによるアーサー王物語によって、それは伝説となった。

或いは、キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち、
つまりはテンプル騎士団によるエルサレムでの聖杯の発見の物語。

また、マグダラのマリアの―――


「おっと……お邪魔だったかな」

銀色の髪に青い学生服の少年が、コーヒーカップを二つ載せたお盆を持って部屋に入ってきた。

「いいや。全く問題ないよ」

アーサー王物語を閉じ、机に置く。


「……ショーゴは博識だね。読書が好きなのかい?
 まるで図書館のように本が揃えてあったけど」

銀髪の少年―――フェイトが、カップを二つテーブルに置き、正面に座る。

「ありがとう。
 そうだね……知識も与えてくれるし、本を読むという行為で、自分の感覚を調整できるからね」
「……自分自身との対話ができる、ということかな」

成程、この少年は頭が回る。

一つ頷いて、淹れてくれたカップを持つ。
すると、花のような香りが漂ってくる。

「これは……」

少しだけ、口へ運ぶ。

「……豊かで、繊細だ」
「お気に召したようで光栄だ、マスター」

涼しげな表情で評価を受け取る少年。
彼も珈琲を飲み、監視モニターへと目を向ける。


161 : 槙島聖護&キャスター  ◆nEZ/7vqpVk :2014/12/21(日) 02:26:27 xt1X8P4E0

―――新宿区歌舞伎町。

元々セーフハウスの一つがあった場所だが、生前そのまま部屋が再現されていた。
蔵書も同じように残っていたのは幸運と言うべきだが―――。


マンションに設置されたカメラは、街を行き交う人々を映している。

シビュラシステムに支配されているわけでもないのに、
人々からは同じように無機質な物しか感じられない。


「……まるでお人形さんだね」

少年は自嘲するかのように吐き捨てる。

そう、これは聖杯が生み出した人形―――聖杯戦争を彩るただの舞台装置だ。
彼らに意志はなく、戦争中のみ生きることが許された幻のようなものだ。


「……何故、聖杯は彼らを生みだしたのだと思う?
 勝ち残る人間を探すだけならば、彼らは必要のないモノだ」

少年に問いかけてみる。

「さあ……。
 でも、彼らが幻想―マボロシ―の存在だとしたら。
 それを生みだしたカミサマ……ああ、聖杯か……は理不尽じゃないのかな。
 お人形さんの命なんて軽いモノだとでも思ってるんじゃないか」

彼は静かに珈琲を啜る。

「……そうだね。
 彼らがただの人形なのか、そうでないのか。
 確かめてみる必要がありそうだね」


彼らの中に、自らの意志で行動するモノはいないのか。
魂を輝かせることができるモノはいないのか。

まるでここは、シビュラシステムに捉われた人間そのものを映しだしたような世界。
聖杯というシステムに捉われた人々。


―――東京。


僕が居た日本では、ほとんどの人口が東京に住んでいた。
では、ここはどうだ。
世界の全てが東京に凝縮されていると言っても過言ではない。


参加者として呼ばれた人間達には勿論興味がある。
ゲームのプレイヤーとして招かれた以上、ゲーム自体を楽しみもしよう。

だがそれとは別に、やりたいことがまず出来た。

聖杯とはなんなのか。
聖杯に意志はあるのか。
ここに生きる人間に意志はあるのか。

問いかけてみたい。


「さあ、出掛けるとしようか、キャスター」
「御随意に、マスター」


―――同じ髪の色の少年を連れ、僕は街へと歩き始めた。


162 : 槙島聖護&キャスター  ◆nEZ/7vqpVk :2014/12/21(日) 02:27:10 xt1X8P4E0

【マスター】
槙島聖護@PSYCHO-PASS

【マスターとしての願い】
『聖杯』を見極める。

【weapon】
剃刀

【能力・技能】
『格闘術(プンチャック・シラット)』
インドネシアの伝統的な武術「シラット」を実戦での技術に特化させた、「プンチャック・シラット」という格闘術を習得している。
常人の域において達人レベルの能力を持つ。

『カリスマ』
ライバルの狡噛慎也曰く「他人の精神を支配し影響を与え、まるで音楽を指揮するように犯罪を重ねていく男」。

『免罪体質』
シビュラシステムによって管理されたPSYCHO-PASS内の日本において、
本来なら犯罪係数が上昇する状態にあっても、規定値を超える犯罪係数が計測がされない。そのため刑の執行(ドミネーターによる捕獲・射殺)が不可能。
サイコパスも常に良好状態で、本人曰く「いつだって真っ白だった。一度も曇ったことがない」。色相はクリアホワイトである。
免罪体質者の中でも更に特異な人間とされている。

【人物背景】
シビュラシステムの誕生以降、最悪の犯罪者と呼ばれる。
人間は自らの意志で選択・行動するからこそ価値があり、魂を輝かせることができるという考えを持っており、
シビュラに捉われない人間の行動に協力や助勢を行う。

免罪体質者として、シビュラシステムに無視されていたことから、他者から孤独を指摘されると、
「この社会に孤独でない人間などいない」と孤独であることを否定しなかった。

【方針】
聖杯戦争をプレイヤーとして楽しむ。
街に住む人形に自らの意志で行動するモノはいないのかを様々な方法で確かめる。


163 : 槙島聖護&キャスター  ◆nEZ/7vqpVk :2014/12/21(日) 02:27:45 xt1X8P4E0

【クラス】
キャスター

【真名】
フェイト・アーウェルンクス(テルティウム)@魔法先生ネギま!

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具C

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:B
「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作成可能。
フェイトの工房は『墓守り人の宮殿』。

道具作成:B
『地』の属性を付与した魔術的な道具を作成可能。

【保有スキル】
魔術:A
西洋魔術及び東洋魔術に精通し、特に石化魔術を代表する『地』属性の魔術を最も得意とする。
身体強化、浮遊術、転移魔術、追跡魔術、召喚術、捕縛術など使用可能な魔術は多岐に渡る。

八卦掌:C
中国武術の一派。陰陽八卦に基づいた技術理論による体術。一見して舞踊のように見える動作が特徴である。
敵対者との数々の戦闘を経て、キャスターながら魔術と体術を併せた肉弾戦・近接戦を好む。

瞬動術:B
魔力や気を用いた歩法、移動術。
足に魔力や気を集中させて地面を蹴る事で、短距離間を超高速で移動できる。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

珈琲挽き:C
初めて『旨い』と思った時の珈琲の味を再現させるため、日々珈琲を挽いて飲んでいる。
日に七〜十杯は珈琲を飲む。


【宝具】

『造物主の掟(コード・オブ・ザ・ライフメイカー)』
 造物主に反乱したため使用不可。


『鵬法璽(エンノモス・アエトスフラーギス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
天秤を下げる鷲を象った魔法の印璽。
この印璽は、標的となる人物の言明を魂に刻みつけ、強制的に厳守させる。
対象が口に出した言葉でなければ成立しない。

【weapon】
指輪(魔法の発動体)

【人物背景】
秘密結社『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の造物主が作り上げた人造人間『アーウェルンクスシリーズ』の三体目。通称『地のアーウェルンクス』。

彼の生前の目的は「世界を救う」こと。
性格は冷徹で滅多に感情は乱さず、自らの目的の為には他者に容赦の無い行動も表情を変えずに遂行する。
だが他のアーウェルンクスシリーズと違い、造物主から忠誠心や目的意識を植えつけられず、自由に動くことを勧められている。
二体目が戦争孤児を嬲り殺そうとしたところを救ったりもしている。

ネギ・スプリングフィールドとの一騎打ちの末、ネギの「魔法世界の救済計画」の推移を見極めるという条件付きで敗北を認める。
以降はテラフォーミングによる魔法世界救済計画「Blue Mars計画」をネギの補佐として計画を進める。

ジャック・ラカン、そしてネギとの戦闘を経て、戦闘の『面白さ』を知り、肉体と精神を極限まで使った戦いを求めている。


164 : ◆nEZ/7vqpVk :2014/12/21(日) 02:28:00 xt1X8P4E0
以上で投下終了です。


165 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 03:17:27 JHEBxtcU0
投下します。


166 : 安藤崇&ライダー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 03:17:48 JHEBxtcU0



 ──池袋。

 この街には、悪い奴がいる。

 悪い奴がいるから、悪い奴のせいで悲劇が生まれる。

 その悲劇から、被害者の亡霊が想像され、今度は嫌な都市伝説が生まれる。

 だから、悪い奴がいる事と都市伝説が生まれる事は最終的に直結する。

 今回はその一例を話してみよう。

 道路にピアノ線を張って事故を起こして楽しもうとする悪い若者たちがいて、それに引っかかって怪我をするライダーがいた。

 ライダーの怪我は頻発した。

 これはギロチンワイヤートラップというらしい。

 怪我だけで済んだならまだ良い話で、中には運が悪くて、ギロチンみたいに首と命を吹っ飛ばしてしまうライダーがいる。

 それがまた、最悪に運が悪い条件が重なっていないと発生しない。

 バイクのスピードを出しすぎていた事、ピアノ線が丁度首のあたりに仕掛けられていた事、ハンドルをかなり強く握っていた事、首を鋼のように鍛えていなかった事。

 そして、そんな悪条件での死亡に加え、もう一つの不幸を付け加えてできるのが都市伝説。

 この場合、「首が吹っ飛んでも気づかなかった事」。

 そのせいで、首のないライダーが走り続けてしまう事があるというのだ。

 その亡霊が、今も池袋を走り続けている。

 それが世に言う、首なしライダーで、今現在、この池袋にも頻出する都市伝説らしい。

 なんでも、住民にとっては運の良い事に、それは、一部の人間の間では北欧人のようにナイスバディな女性だと騒がれているとか……。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



【池袋ウエストゲートパーク×デュラララ!! in 聖杯戦争】



 ……私、セルティ・ストゥルルソンは、まずある提案をしたい。
 もし、誰か、私の今の心境をくみ取ってくれる人間がいるなら、この提案をぜひ受けてほしい。

「──フォォォォォォォォォォォォォォゥッッッ!!!!!!!!!!」

 今日の今日まで、池袋で敵に回してはいけない人間のリストが住民たちに浸透していたと思う。
 そこに、また約一名、別の人間の名前を付け加えたいと。
 私は今、そう、提案したい。

「ん〜っ♪ いいよ、いいよ、ライダーちゃん、乗ってるぬぇ〜♪ もっと、ぶっ飛ばーしてー♪」

 そいつは、首なし馬(シューター)で池袋の街を走っている私の真後ろに乗っている。
 私は辛うじて、こいつの味方である為に、一緒にこうして楽しく二人乗りができるのだ。
 そして、そいつは現在進行形で、一般の公道を130kmのスピードで走らせている私に、もっとぶっ飛ばせと歌っている。
 周囲の人間が鳴らすクラクションも、随分と遠くを過ぎ去っていく。

 万が一、手元が狂って不幸な事故が起きたら、即死亡。
 私はともかく、彼は間違いなく、一歩間違えば死ぬ体だ。平和島静雄のように頑丈な体をしているわけじゃないし、私のような非人でもない。

 彼は私の体に密着せず、上半身は空を掴んでいる。捕まらずに、上半身いっぱいに手を広げて風を感じて笑っている。
 その声には、全く恐怖という物が籠っていない。震えてもいないし、調子がいつもと比べておかしいわけでもない。
 自然に会話している時と全く同じに、こいつは風を感じ続けている。

 ……ああ、このマスターがもし不慮の事故で死んでしまえば、私も消えてしまうのに。
 だいたい、こいつは本心で聖杯を欲しているのだろうか。


167 : 安藤崇&ライダー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 03:18:14 JHEBxtcU0

「吾輩、仮面ライダーなり〜♪ へん〜しんっ!」

 ……わからない。この男が、本物のバカなのか、それとも、これしきの事を恐怖と捉えない百戦錬磨の鉄の人間なのか。
 正直、こいつと出会って、サーヴァントの私の方が混乱している。
 冒頭で結構な尺を食って説明された「首なしライダー」の恐怖が、こうもあっさりと打ち破られてしまうなんて。

 聞きたい。
 こいつは、本当に昨日まで、魔術も幻獣もない世界に生きていた人間なのか……?
 池袋で首なしライダーと恐れられた私を見て、あろう事か「バイクに乗せてほしいだっちゃ♪」と陳情するこの若者が、今日まで非現実のない世界に生きていた事を──それを私は、今も全く信じられない。

「ライダーパーンチ! アチョー! ほわたたたたたたたたたっ!! あたっ!!」
『コラッ、暴れるな!!』

 車体が大きく傾いた。
 こいつが後部で暴れているのだ。まるで子供のように、虚空を殴り続けていたらしい。
 どうやら、こいつの目の前にはショッカーの戦闘員が山ほど湧いていたようだ。
 ライダーキックをしなかったのは不幸中の幸いだ。

「はーい、すぅいましぇーん。吾輩、大人しく反省するナリ〜♪」

 ……こいつは、私たちがいたあの池袋の人間ではない。
 私たちのいる池袋とは、また、≪別の時代の池袋≫の人間であり、また、こいつは私のマスターであり、また、こいつはその池袋においてキングだった男だ。
 そこには≪黄巾賊≫はいなかったらしく、その池袋における黄色のカラーギャングは≪G-Boys≫と呼ばれているらしい。
 彼は、その中のキング。

 名前は安藤崇。年齢は二十代前半ほど。
 私が出会った人間の中では一番平凡な名前だ。しかし、その人間性は平凡じゃない。
 折原臨也と平和島静雄とサイモン・ブレジネフとこいつが並んだら、池袋は戦場になる。泣く子も、大人も、すたこら逃げるだろう。
 ……デュラハンの私が言うのも何だが。

 ちなみに、彼は、別に先述の三人のように、人間のそれを遥かに凌駕する戦闘能力があるわけではないらしい。
 まあ、人間の中でも上位であるのは確かだが、「若者たちの喧嘩では負けない」という非常に泥臭い物で、臨也や静雄のように圧倒的な能力値を叩きだすのは不可能だ。
 それでも、どうしても、彼は池袋の誰よりも狂っている人間な気がしてならない。
 言動の中から感じる妙な余裕と幼さと狂気。それが全てを指し示している。

 危険だ。────私も、そう感じる。
 こういう奴は、敵にしたくない。

『キング。もう約束の二十分は経ったぞ』

 私は、こういう約束で彼をこのシューターに乗せたのだ。
 はっきり言って、何の理由もなく魔力を使用するなんてバカげていると思う。
 まして、こいつは目を見張るほど強い魔力の持ち主じゃない。魔術師でも何でもないただの人間なのだ。
 こうして、シューターに二十分も載せた理由は、「令呪使っちゃおうかな〜」と言われたからだ。

「……あーーーー」

 なんだ、その間は。延長するつもりか。

「……おっけーおっけー。そのままゆーっくりIWGPまで行って、降ろしてチョ〜♪」

 未練を断ち切るまでの時間も早い。
 シューターは、この時点で既に140kmほど出していた。可哀想に、私の相棒。今回は体も心も疲れただろう。それは私もだ。


168 : 安藤崇&ライダー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 03:18:46 JHEBxtcU0

 とにかく、私は、指示通り、ゆっくりと池袋西口公園に止まってキングを下ろした。彼は池袋西口公園の周囲を走っていたのだ。
 結局、これが肝試しだというなら、私の方が肝が冷えていた。

『どういうつもりだ、キング。微々たるものとはいえ、宝具をこれだけ派手に使ったからには魔力が消費される』

 こうして、マスターとの会話に限って、念話で手軽に意思疎通できるのは、やはり在り難い。
 今まで、パソコンや携帯やPDAを使って他人に意思を伝えてきたが、そういう面倒さとは主従間においてだけは、全く無縁になっている。
 まあ、サーヴァントがPDAで、「お前が私のマスターか」と聞いてマスターとファーストコンタクトを取るのは恰好がつかないせいもあるだろう。

「だってぇ、バイクでブッ飛ばしたかったんだむぉん」
『やっぱり、それだけの理由か……』

 呆れる。

「それに、やっぱり首なしライダーと2ケツして伝説になりたいでしょ〜♪ それでこそ池袋のKINGでしょ、俺たちの世界にはそんなのいないし〜」
『……』

 私は、「絶句」を覚えた。
 そういえば、「絶句」するのは久々だ。普段は口を利けないんだから、絶句もできない。

「で、ライダーちゃん。聖杯ってさぁ、やっぱり人を殺さないと手に入らないのぉ?」

 いきなりここまで核心の話題に戻るか。

『……ああ。聖杯を得るには、他のサーヴァントを抹殺していく必要がある』
「じゃあ、パス」

 キングは即答する。
 こいつ、なれなれしくも興味本位で私のシューターを触って、こっちを向きもせずに興味なさそうに答えている。
 しかし、こいつの考えている事はわからない。何故、聖杯を得ようとしないのか。
 私は、すぐにシューターを消して、言った。

『……お前たちは、悪い事をする奴らじゃないのか』
「俺たちは悪い事はするけど、カッコ悪い事はしないの〜」

 シューターが消えて、つまらなそうに、小石を蹴っていじけるふりをしながらそう言う。

『カッコ悪い事っていうのは誰が決めるんだ』
「オ・レ♪ まあ、カッコ悪い事する奴らは、こっちがついブッ殺しちゃうかもしれないけど」

 やはり、ただの善良な市民というわけでもなさそうなのが感じられる。
 不良の番長なだけあって、やはり考え方は物騒だ。

『サーヴァントは英霊だ。私のように生きたまま連れて来られる奴もいるが、多くは死を経験している。また召喚される事もある』
「あのさ〜、ここにいる英霊のライダーちゃんは別にカッコ悪い奴じゃないでしょ〜。ライダーみたいな奴を殺すのはイヤ〜ンなの〜、走っててそう思ったのよ〜ん」
『……』

 今度は、つい感動の絶句をしてしまった。
 ……いけない。
 このまま絶句に慣れていくと、マスターに対してもまた口が利けなくなってしまう。

「ん? つーか、ライダー、首ないっ!! ヘルメットの中、首入ってないじゃんっ!! なんだ、怖ぇっ!! 超怖ぇっ!!!!」

 今更?
 ……っていうか、さっき首なしライダーって言ってたじゃないか!

「……なーんて、嘘ぴょーん。ライダー、全然怖くなーいよーん」

 屈託のない笑顔をこちらに向けてくるキング。
 こいつの一番怖いのはこの屈託のない笑顔だ。まるで、幼児のように邪心がないが、だからこそ、裏がありそうな気がしてしまう。

 ……まあいい。
 私も、このマスターをどうすればいいのか、正直言えば持て余すのではないかと心配だったが、そこはこのキングの方が調整できるのではないかと思い始めていた。
 彼は身体は「普通」であっても、精神的に、もはや「異常」ともいえる領域に入っている。
 私は対象的に、精神的には「普通」、身体的には「異常」だ。
 双方で双方の何かを補える関係というのは、いかにも良質なコンビとなりえるだろう。
 物怖じせずに私に話しかけてくる人間というのも、実に好意的に受け取れる。……色んな人に恐れられてきた私には。

『なあ、キング。……一つだけ、聞きたい事がある』
「なぁにぃ〜?」
『呼び方だが、どうしても「キング」でなければ駄目なのか?』
「ダメェ〜」


169 : 安藤崇&ライダー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 03:20:18 JHEBxtcU0






【クラス】
ライダー

【真名】
セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具D

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:A+
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。

【保有スキル】
神性:D
 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
 「粛清防御」と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果がある。また、「菩提樹の悟り」「信仰の加護」といったスキルを打ち破る。

【宝具】
『首なし馬(シューター)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1人
 ライダーが騎乗している「コシュタ・バワー」と呼ばれる首なし馬。
 本来は馬車の姿をしているが、現代日本に順応させる為にその姿をバイクに変身させている。馬車の姿や馬の姿に戻す事も可能。
 壁を走る事もできる。

『変幻自在の影(スパイダー・シルク・シャドウ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1〜99人
 ライダーを覆っている黒い影。変幻自在であり、鎌や盾に変形させて運用させる事ができる。
 糸として発現した際には、数十キロメートルまで伸びており、規模や強度も含めて変幻自在である。

【weapon】
  PDA

【人物背景】
 池袋の都市伝説「首なしライダー」。猫耳のヘルメットに、漆黒のライダースーツを纏っており、ヘルメットを脱ぐと首がない。
 その正体は、デュラハンと呼ばれる欧州の妖精の一種である。しかし、20年前、アイルランドで自分の頭部を盗まれた為、記憶の所々が欠落している。
 性格は至って常識人であり、お人よしで礼儀正しい現代っ子。インターネットやDVD鑑賞が趣味で、ホラーや宇宙人が苦手。
 首がないため言葉を発する事はできず、普段はPDAを使って会話するが、今回はマスターとの間だけは念話で会話可能。

【サーヴァントとしての願い】
 不明。

【方針】
 マスターに従う。


170 : 安藤崇&ライダー ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 03:20:45 JHEBxtcU0


【マスター】
安藤崇(キング)@ドラマ版池袋ウエストゲートパーク

【マスターとしての願い】
 不明。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 池袋の若者では最強の男。
 カラーギャング「G-Boys」をまとめ上げる高いカリスマ性を持っており、残忍かつ強力な暴力を容赦なく振るう。

【人物背景】
 池袋を騒がせるカラーギャング集団「G-Boys」のキング。
 飄々としてトリッキーな言動が多く、時には語尾に「〜ナリ」や「〜だっちゃ」といった言葉をつける。
 一見すると幼く純粋で素直なようだが、実際は凶暴で猟奇的でサディスティックな性格でもある。
 仲間や子供に対してはおおよそ優しく接しているので、余程の事がない限りは、彼の機嫌を保つ事ができるだろう。
 しかし、裏切り者や「カッコ悪い事をする奴」、自分にとって気に食わない相手には、指をハサミで裁断する、ナイフで鼻の中心を切り裂いて鼻の穴をつなげる…といった拷問を行っており、その狂気が現れている。
 また、仲間が殺された際には普段の余裕をなくして冷徹で凶暴な口調になった事もある。
 主人公・真島誠の高校時代の同級生であり、今も親しい。高校までは気弱な少年だったらしい。
 原作小説や漫画に出てくるキングとは全くの別人。

【方針】
 不明(基本的には気まぐれ)。


171 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 03:21:02 JHEBxtcU0
以上で投下終了です。


172 : ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 03:55:49 3GWSSxSs0
皆様投下乙です。
自分も投下させて頂きます。


173 : 折木奉太郎&アサシン ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 03:57:55 3GWSSxSs0

多くの学生が夢見るのは薔薇色の青春だ。
部活動。友情。恋愛。
それらに彩られた華やかな高校生活を望むだろう。

尤も、俺は――――折木奉太郎は、そんなことに興味は無かったのだが。
やらなくていいことは、やらない。
やるべきことは手短に。
それこそが自分のモットー、省エネ主義というものだ。
毎日を平穏に過ごせるのなら、灰色の高校生活でも良い。
無味無色の静かな青春でも構わない。
そう思っていた。

――――折木さん!

姉の命令で古典部に入部するまでは。
部活で出会ったのは、町の名家のご令嬢。
名前は千反田える。
思えば、氷菓の秘密を解き明かしたことが始まりだったか。
古典部の文集である氷菓、それに記された千反田の叔父の真相を解き明かして以来。
千反田は俺を「探偵役」として頼る様になった。
天真爛漫、そして好奇心旺盛。
そんなあいつの「気になること」に毎度付き合わされ、その謎を解き続けてきた。
最初は面倒だと思ってたし、のらりくらりと避けようとさえ思っていた。

しかし、そんな現状に居心地の良さを感じつつある自分がいた。
自分を特別扱いしてくれるあいつを意識しつつある自分がいた。

いつしか彼女の存在が自分の中で大きくなりつつあることに気付き始めていた。
自覚しつつある想いが、自らの主義に反することも理解していた。
これがジレンマという奴だろうか。
伊原のアプローチを躱し続けてきた里志も、こんな思いを感じていたのだろうか。


――――ねえホータロー、『願いを叶える紅い満月』の話って知ってるかい?


そして、唐突な始まりはそんな噂話から。
友人の福部里志から聞かされた、些細で胡散臭いオカルト話である。


◇◇◇◇


「はぁっ――――はぁっ――――」

真夜中の路地裏を、ふらふらと小走りで進む自分がいる。

何故俺はこんな所にいるのだろう。
記憶はぼんやりと覚えている。
自宅の窓から『紅い満月』を偶然目撃して―――――
そこから意識が途絶えている。
気がつけば、見慣れぬ都市で自分は彷徨っていた。
此処はどこなのだろうか。
ただ漠然と解るのは、此処が自分の知る町ではないということ。

足下に転がるゴミを意に介さず、小汚い路地裏を進んでいく。
理屈ではなく、推理でもなく。
ただ『行かなければならない』という感情に動かされて。
この先に何かがあるということを、頭ではなく心で理解していた。

何があるのか。
解らない。
だが、何かがある。
そんな曖昧な直感を頼りに、歩を進めていた矢先。


―――――ベチャリ。


靴の裏が認識したのは異物の感触。
咄嗟に足を止めてしまう自分。
恐る恐る足下を見下ろし、月明かりに照らされる『それ』を目に焼き付ける。

紅。
紅。
紅。
紅。

あの時の満月のような紅。
ペンキを一面に打ち撒けたかのような紅。

よく出来た塗料だ。
余りにも精巧で、まるで本物そっくりだ。
自身の頭が現実を認識することを拒む。
小刻みに震えだす自分がいる。
ただただ、目の前の事象を理解したくない。
そう思っていたのに、俺の視線は路地の先へと。
そして、『真上』へと向けられる。

―――巨大な、蜘蛛の巣だ。


174 : 折木奉太郎&アサシン ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 04:00:31 3GWSSxSs0

路地を挟むビルの間に、有り得ないサイズの蜘蛛の巣が張り巡らされている。
蜘蛛が捕らえるのは蝶などの昆虫。
だが、あの蜘蛛の巣に捕らえられているのは。
月の光に照らされ、俺はそれを認識してしまった。

身体中を糸で雁字搦めにされた女性。
全身を裂かれ、血をポタポタと垂らし続ける女性。
手足を切り落とされ、達磨同然となっている女性。

「っ、おげえ゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛――――!」

ついに耐え切れず、俺は胃の中のものを吐瀉物として地面に吐き出してしまった。
有り得ない。有り得ない、有り得ない。
こんなの夢に決まっている。
どうせたちの悪い夢だろう。余りにも非現実的だ。


「ひひひへはははは、あははははハハハ、ハハハハハハハハハハハハ―――――――!!!!!!」


そんな俺の現実逃避を踏み躙る様に、狂った哄笑が響き渡る。
声の主は―――――『蜘蛛の巣を張り巡らす怪物』。
あの女性達を蜘蛛の巣に嵌めて惨殺したであろう張本人
文字通り蜘蛛の如く巣にしがみついていた軍服姿の男は、颯爽と地面へと降り立つ。

「御機嫌よう我が主よ、お目にかかれて光栄の至り」

軍服姿の男は慇懃無礼な笑みを浮かべながら、こちらへ会釈をしてくる。

――――我が主?
こいつは何を言っている。
俺が、この男の主?
言っている意味が、分からない。
兎に角理解が及ばない。現状を上手く認知出来ない。
脳内の警鐘がけたたましく鳴り響いている。
だが、そんな中で自分の頭は現状をどこか客観的に理解していた。
否、この『東京』に導かれた時点で。
何もかも解っていたのかもしれない。
そう、これは殺し合いだ。
願いを叶える為の―――――――――


「私はアサシンのサーヴァント、真名は『紅蜘蛛“ロート・シュピーネ”』。
 以後お見知りおきを」


今の俺は、全てを理解していた。
紅い月に導かれた者達による『聖杯戦争』。
マスターとなった者はサーヴァントと呼ばれる従者を率い、殺し合う。
俺がこの路地裏を進んだのは、サーヴァントの存在を無意識に感じ取っていたから。

そして。
俺を選んだのは、醜悪な化物だった。
人の命を踏み躙ることに何の呵責も覚えない――――最低の狂人。


175 : 折木奉太郎&アサシン ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 04:01:32 3GWSSxSs0
◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇


『――――××時になりました、ニュースの時間です』
『先日、相次いで発生した女性の行方不明事件――――』

あの出来事から幾日経っただろうか。
マンションの自宅、仄暗い食卓にてズルズルとカップ麺を啜りつつテレビへと目を向ける。
ニュース番組で報道されているのは女性の行方不明事件、殺人事件など。
いずれも物騒な出来事ばかりだ。その上近場でも何件か事件が発生しているらしい。
夜中に出歩く女性は毎日注意を払っているのだろうか。
実際に遭遇した際には、どうするのか。
他人事の様に考えながら、麺を箸で口に運ぶ。

(…あいつの仕業なんだろうな)

しかし、今の自分に取っては他人事などではなかった。
あの日見た凄惨な殺人現場。
月夜に浮かぶ蜘蛛の巣。
そして、人知を超越した怪人。
ほんの少し前までは未知の世界だった出来事が、今では間近に感じられてしまう。

――――紅い満月?
――――そんなオカルトじみた話、ある訳ないだろ。

そう思っていたのも、何日前のことだったか。
今となっては、認めたくないとさえ感じている。
あの悪夢を目の当たりにして以来―――――


「自らは自宅に引き蘢り、身の安全を確保ですか。
 随分と気楽なものだ。いや、寧ろそれも戦略の一つと言うべきですかねぇ」


唐突に背後から声が響く。
びくりと一瞬背筋が震えるも、すぐに俺は振り返る。

「ア、アサシン…」
「いえいえ、ご冗談ですよ。寧ろ私としてはその方が好都合。
 貴方はマスターとしては弱小だ。ですので、下手に出歩くよりは得策でしょう」

いつの間にか俺の背後に立っていたのは軍服姿の醜悪な男。
自分に与えられた唯一の従者、アサシンことロート・シュピーネ。
シュピーネは不敵な笑みを浮かべ、こちらに会釈をしてくる。

――――こいつは、いつもこんな調子だ。

物腰こそ礼儀正しいが、その実こちらを見下している。
無力な俺を嘲笑うように気味の悪い笑みを浮かべている。
この幾日でこいつの性格は大まかに把握出来ている。
そして、俺の知らぬ間に何をしているのかも――――何となく。

「…また、誰かを殺しに行ってたのか」
「さぁ。どうでしょうねぇ?少なくとも私は情報収集の為に外へ赴いていたのですけどね」

ニヤニヤと笑みを浮かべながらシュピーネは答える。
声色、表情から見て取れる。
諜報活動を行っていたことは事実だろう。
現にこいつは勝つ為にここに来ている――――聖杯に望む願いがあるのだから。
その為に行動を起こすことは至極真っ当だ。
だが、ただの情報収集だけで終わらせる程真っ当な人間でないことも理解している。
魔力収集の為に、快楽の為に。
この男は何人も殺し、何人も犯しているのだから。

「なあアサシン、もういい加減―――――――」
「あぁマスター、先んじて言っておきますが。
 もし貴方が令呪を用い、この私を縛り付ける命を発しようとした場合」

シュピーネの表情から一瞬だけ笑みが消える。
まるでこちらを脅しに掛かる様に、冷徹な声色へと変わる。
俺はただ、びくりと恐怖を覚えることしか出来なかった。


「――――聡明な貴方ならご理解頂けますよねぇ?
 お願い致しますよ、貴方に手を上げるのは私とて心が痛むものですから」


再び、シュピーネが慇懃無礼に笑う。


176 : 折木奉太郎&アサシン ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 04:02:17 3GWSSxSs0
「…解ってるよ」

適当な空返事をしながら、俺は心底思う。
ああ、やっぱり―――――こいつを信用なんてしたくはない。
こんな恐ろしい男を、信じたくはない。
『サーヴァントは主にマスターとの相性で選ばれる』とはこいつの談だったか。
何故こんな怪物が俺を選んだのか、理解出来ない。

―――――ハナから俺のような、体よく使える『弱者』を好んで選んでいたのではないか。

「ならば安心しました。貴方とは良き信頼関係を結びたいですからね。
 しかしマスター、一応言っておきますが…身の安全を優先することはまぁいいでしょう。
 だが、貴方はマスターとしての自覚も足りないようだ。もう少し気を引き締めた方が宜しいかと」

そしてシュピーネは再び一礼をし、こちらに助言のような一言を投げかける。
俺は何も答えない。投げかけてくる言葉を無視する様に。


「聖杯に託す願いがあるのならば、ね」


ククッと不気味な笑みを浮かべながら、シュピーネは姿を消した。
再び何処かへと出かけてしまったらしい。

(俺の、願いか)

シュピーネが姿を消し、俺は食べ終えたカップ麺をテーブルに置く。
『聖杯に託す願い』。
あいつが言い残した言葉を脳内で思い浮かべ、ぼんやりと右手の甲の令呪を眺める。
思えば、あの紅い満月は『願いを叶えてくれるもの』らしい。
ならば俺にも何かしらの願いがあったのだろうか。
省エネ主義の俺が何かを望むことなんてあったのだろうか。


―――――折木さんは、特別な人ですよ!


(…まさか)

正直に白状すると、自らの願いは薄々理解している。
自らの主義と反する、たった一つの願いを。
だが、己の理性がそれを拒んでいた。
あいつとの薔薇色の青春が、殺人の免罪符?
切り捨てられないプライドと淡い想いの為に、殺し合いをする?
余りにも巫山戯ている。
そんなちっぽけでつまらない願いが、戦争に参戦する権利足り得るのか。
そんな理由で、殺人が出来るものか。
しかし、願いの心当たり等それしか存在しないのも事実。

やらなくてもいいことは、やらない。
やるべきことは、手短に。
では、やるべきことが解らない時は?

(どうしろって言うんだよ…)

――――折木奉太郎。
――――ちっぽけな願いを抱いた『探偵役』は、まだ動けない。


177 : 折木奉太郎&アサシン ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 04:03:02 3GWSSxSs0

【クラス】
アサシン

【真名】
ロート・シュピーネ@Dies irae

【ステータス】
筋力E+ 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具C

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:B+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は非常に難しい。
ただし自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
精神汚染:C-
殺戮と略奪を謳歌する狂人。
同ランク以下の精神干渉系魔術の効果を軽減する。
ただしシュピーネの行動原理は我欲と恐怖であり、自身を上回る力や器に対し強い恐れを抱く。
そのため「威圧」等の対象を畏怖させる精神干渉系魔術はランクを問わず効果が倍増する。

慧眼:C-
騎士団首領代行より見込まれた先見の明。
敵の策略・戦術の察知に長け、また目的の本質を見抜くことが出来る。
ただし生前の逸話に基づき、敵の力量を侮り油断した際には効果が半減する。

諜報:A
偵察や情報収集の際に有利な判定・補正が与えられる。
生前のシュピーネは軍の諜報機関に所属していた時期があり、騎士団でも諜報活動を任されることがあった。

【宝具】
「辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワ・ゲットー)」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:50
かつてワルシャワ収容所において幾多の捕虜を絞殺した縄を素体とする聖遺物。
シュピーネの身体から自在に伸びる無数のワイヤーとして形成される。
主に拘束や切断、絞殺に使う他、ワイヤーを蜘蛛の巣のように張り巡らすことも出来る。
単純な強度や切れ味は非常に高いが、神秘を持つ攻撃であればワイヤーを断ち切ることが可能。
尚、シュピーネは聖遺物と霊的な繋がりを持つ為、聖遺物の損傷はアサシンへのダメージフィードバックとなる。
神秘の無い攻撃に対しては頑健である為、サーヴァント戦よりもマスター暗殺で真価を発揮する宝具。

【Weapon】
宝具『辺獄舎の絞殺縄』

【人物背景】
ナチスの裏の裏で結成された魔人の集団「聖槍十三騎士団」の一員。
本人曰く本名は「昔に捨てた」らしく、魔名である「紅蜘蛛(ロート・シュピーネ)」を名前として名乗っている。
殺戮や簒奪を好む残虐な狂人。物腰こそ丁寧だが慇懃無礼であり、本質は俗物的な小物。
元はナチスの研究施設・諜報機関に所属するマッドサイエンティストだったが、
首領代行であるヴァレリア・トリファにスカウトされ騎士団へと入団する。

騎士団の首領、副首領を強く恐れており、二人の復活を避けるべく計画の鍵である藤井蓮に協力を持ち掛ける。
しかし蓮の幼馴染みを人質に取ったことで交渉は決裂、そのまま交戦に縺れ込む。
まだ未熟な蓮を聖遺物の能力で追い詰めるも、最終的に土壇場で成長した蓮に敗北。
命辛々で生き延びるも、ヴァレリアに用済みと判断され処刑された。

他の団員同様に超人的な戦闘能力を持つものの、実力自体は騎士団の中で最も低い。
藤井蓮との対決もヴァレリアによる「蓮を成長させる為の策」に過ぎず、当て馬として利用されていた。
彼の本職は諜報や斥候であり、元々戦闘者ではなかった模様。

【サーヴァントとしての願い】
永劫の自由を獲得し、殺し犯し奪うことを謳歌し続ける。

【方針】
基本は諜報や偵察メイン。
情報を掻き集め、敵マスターの暗殺を狙う。
サーヴァントとの直接戦闘は極力回避。真っ向からの力比べでは分が悪い。
必要があれば奉太郎に協力を仰ぐが、主従の主導権は自分が握る。


178 : 折木奉太郎&アサシン ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 04:03:48 3GWSSxSs0

【マスター】
折木奉太郎@氷菓(アニメ版)

【マスターとしての願い】
今はまだ上手く纏まらない。

【weapon】
なし

【能力・技能】
非凡な洞察力と推理力を持つ。
鎌掛けで相手の出方を伺うなど機転も利く。
とはいえ基本的には無気力省エネ主義。やる必要がない時には頭を使わない。

【人物背景】
神山高校に通う男子生徒。
座右の銘は「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」。
普段は無気力で怠惰、本人も省エネ主義を自称する程にマイペースな性格。
学校での成績は平々凡々であり、教養にやや乏しい面がある。
しかし洞察力や推理力は並外れており、根は非常に理知的。
訳あって廃部寸前であった古典部に入部し、そこで出会った千反田えるに見込まれ「探偵役」を担う羽目に。
当初はえるを邪見に扱っている節もあったが、次第に彼女への好意を自覚し始める。
因みに同じく古典部の福部里志、伊原摩耶花とは中学時代からの付き合い。

【方針】
やるべきことが何なのか、まだ解らない。
シュピーネの凶行を止めたいが、何も出来ない。


179 : ◆Gnjocyz9X2 :2014/12/21(日) 04:04:18 3GWSSxSs0
投下終了です。


180 : ◆ninjMGPkX6 :2014/12/21(日) 12:59:24 ZPGIxlho0
投下乙です。
エクストラクラスを投下します。


181 : 無常矜侍&モンスター ◆ninjMGPkX6 :2014/12/21(日) 13:00:05 ZPGIxlho0


 ――飢(かつ)えている。
 その感覚が全てだった。


 彼は没落した名家の子息としてスラムで育った。
 満足な食事もなくガラクタの中で暮らす彼は、餓えていた。
 故に欲した。自らを満たすものを。

 彼が唯一持っていたもの、それはほんの僅かな力。「根源」の間近に位置する世界へアクセスする、アルター能力と呼ばれるもの。 
 その力を引き出すため精製……人工的な強化を受けた際、彼は見た。
 向こう側の世界より溢れ出る無尽蔵の力を。

 精製されたことで彼は力を得た。だが足りない。飢えは埋まらない。
 精製で得た力など、あの無尽蔵の力に遠く及ばない。
 故に、全てを望む。

 そして彼――無常矜侍は見た。
 二人のアルター使いの激突が向こう側の世界への扉を開いた際に輝いた、紅い満月を。
 その月は、かつて東京だった地域を残す大地――ロストグラウンドを照らしていた。


   ※   ※   ※


182 : 無常矜侍&モンスター ◆ninjMGPkX6 :2014/12/21(日) 13:00:47 ZPGIxlho0


「ここが、聖杯戦争の舞台のようですねぇ」

 首に絞めたネクタイを締めながら、無常は「東京」を見渡した。
 その視界に映るのは、何の変哲もない住宅街。彼の知る世界で言えば本土にあるような都市。富がある程度行き渡っている風景。
 この場所に餓えはほとんどない。安穏とした生活で満たされている者も多いだろう。

「――足りない。向こう側の世界へ至る道がこんな物だと笑わせる」

 だが、無常は飢えている。
 普通の生活など、彼の餓えを満たすものではない。
 無常矜侍を満たすものはなにか。全てだ。

「私は確かに見ました。
 まるで向こう側の世界を照らすように輝く紅い満月を……いえ、それだけではない。
 その奥に、全てを満たすような何かがあった。
 向こう側の世界の更に奥……まるで全ての源のような何かが」

 無常は思い返すだけで舌なめずりをした。その様子を例えるならば、蛇だ。
 腹を空かせ得物を丸呑みにせんとする蛇だ。

「この茶番もそれを目指すための第一歩、ということでよしとしましょう」

 ウフフ、と気味の悪い笑い声を無常は漏らした。
 ――いや、笑い声は彼一人のものではない。
 もう一つ、不気味な笑い声が地面から浮かび上がって来た。

「ウフフ、向こう側の世界か。俺は見たぞ。真実を」
「……モンスターですか」

 無常の笑みが消えるのと、四つん這いの怪人が現れるのはほぼ同時だった。
 エクストラクラス、モンスターのサーヴァント。その姿は魔物という呼び名が相応しい奇っ怪なものである。
 毛髪のない頭部に接続されたガラスのシリンダーは首で何重にも巻きつけられ、内部で細い何かを――脳髄のようにも見えるものを――漂わせている。
 着ているのは数えきれぬほどの円が描かれた全身タイツだ。
 不気味としか言い様がない装備を纏う顔は、焦点の合わない瞳で虚空を見つめている。

「見せてやろうか、マスター、真実を」
「やめなさい。令呪で縛り付けられたいのですか」
「ウフフフフ……」

 モンスターは首を振りながら、ぼんやりとした笑い声を返した。
 狂っているとしか言い様がない己のサーヴァントに舌打ちする無常の背後……住宅の影に潜む者が、一人。

 狙いを定めてスリケンを構えているのはアサシンのサーヴァント。
 マスターの名を受け、無常を抹殺するべく腕を振りかぶったアサシンは――自らの手から虹色のスリケンが生えてきた事に気付いた。

「…………!?」

 思わず悲鳴を漏らしかけたアサシンだが、それを必死に抑え周囲を見渡す。近くの屋根でのんびりと寛いでいる鳥が目に入る。
 だが鳥は巨大だった。先ほどまでいたはずの雀は、いつの間にか人間すら食い殺すバイオスズメに変わっていた。

「この世界にバイオスズメがいる。おかしいと思いませんか? あなた」

 振り返ったモンスターがゆっくりと歩いてくる。アサシンの方へ。
 離脱を図るアサシンだが、その体にはわらいなく:漫画家、イラストレイター。代表作は「KEYMAN」。新たなる虹色のスリケン……モンスターの武器であるエネルギー・スリケンが生えてくる。
 アサシンは必死にニューロンからゲン・ジツ対策を発掘した。怪しいオブジェの破壊。
 バイオスズメをスリケンで撃墜し、次いで光り輝くタンポポを両断。手に生えたスリケンが消えた。エルフのせんしは光った。
 「どうだ。お前にも真実が見えてきたか」モンスターが笑う。舞台はムーンセル・オートマトンと東京聖杯に再現された山手線区画内の東京です。「グワーッ!」新たに生えてきた虹色の刃がアサシンの左腿を破壊した。
 転倒しながらもアサシンは必死にスリケンを投げる。【クラス】オブジェは次々に破壊されていくが、それ以上の速度で光り輝くオブジェが生まれていく。


【アサシン(名無しのニンジャ)@ニンジャスレイヤー】
[状態]ダメージ(大)、幻惑状態
[装備]ニンジャ装束
[道具]スリケン
[所持金]なし
[思考・状況]
1.ここから離脱


183 : 無常矜侍&モンスター ◆ninjMGPkX6 :2014/12/21(日) 13:01:29 ZPGIxlho0


 投下終了です。

 「ア……アイエエエエエエエエ!?」

 歪み続ける風景の前にパニックに陥ったアサシンはこの項目では、テレビアニメについて説明しています。漫画版については「スクライド (漫画)」をご覧ください。この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。
 倒れ伏したアサシンの体から、虹色の刃が雨後の筍のように生えていく。もはや爆発四散するのを待つだけとなったその体に、無常はゆっくりと歩み寄った。

「もういいでしょう……アブソープション!」

 半ば死に絶えていたアサシンの体が分解され、無常の口内へと吸い込まれていく。咀嚼するように口を閉じた無常は、つまらなげにアサシンの体があった場所を一瞥した。

「……サーヴァントとはいえ、クズはこんなものか」

 体がサーヴァントを構成する大量の魔力で満たされたにも関わらず、無常は未だ飢えている。モンスターは首を傾げながら笑った。

「そうか。マスターにはまだ見えないか。真実が。
 じきに見えてくるぞ。聖杯を取ればマスターにも真実が見える」
「フン…………」

 無常は答えを返さない。モンスターが狂っているのは明らかだ。しかし、その力は認めざるを得ない。
 なにせモンスターと相対するだけで相手のサーヴァントは怯え戸惑い、いきなり生えてきた刃物に切り裂かれ死んでいくのだ――ゲン・ジツの範囲内にいない無常にはそう見えた――尋常な力ではない。

「モンスターが倒したサーヴァントを、私がアルターで吸収する。
 さすがにサーヴァントの能力は手に入らないようですが、勝てば勝つほど私の魔力は高まっていく……
 このアルターがある限り、モンスターの無敵は盤石です。
 聖杯を得た私は向こう側の世界へ――そして、その更に奥へと辿り着く! ウフフフフ!」

 手を広げながら無常は笑う。
 彼のサーヴァントと同じ、狂った笑顔を浮かべながら。


184 : 無常矜侍&モンスター ◆ninjMGPkX6 :2014/12/21(日) 13:02:09 ZPGIxlho0


【クラス】
モンスター

【真名】
メンタリスト@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力C 耐久C- 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具B

【属性】
中庸・悪

【クラス別スキル】
根源接続:E
万物の源たる「根源」と繋がった異能力者の証。
低ランクでもスキルに凄まじい補正が加えられ、Aランクともなればもはや全能者。

コトダマ空間の深奥でインクィジターの攻撃を受けたメンタリストは、真実を見た。

【保有スキル】
精神汚染:A+
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術をほぼシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
このサーヴァントは「根源接続」を持っている限り、このスキルを外せない。

気配遮断:B-
ステルス装束を使用した気配遮断。時間制限がある。
ただしゲン・ジツを使った状態ではBランクに留まらない。

話術:C
弁論の上手さ。相手の感知判定にマイナス補正を与える事ができる。

ゲン・ジツ:B+++
周囲に特殊な力場を形成し、範囲内の者の知覚や精神を乱す。
「根源接続」で強化されたゲン・ジツはもはや形容不可能。

【宝具】
「我が真実を見せる光(ディセンション・ダマシ・ニンジャ)」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:無限 最大捕捉:ソウル憑依者

モンスターがその身に宿すニンジャソウル。
ディセンションによりモータル(常人)を半神存在たるニンジャに作り変える。
このニンジャソウルはダマシ・ニンジャクランのグレーターニンジャのものであり、幻や情報操作による幻惑を得意とする。

モンスターのステータス・スキルのほとんどはこの宝具由来のものである。
また別の効果として、相手マスターにステータスやスキルを視認される際に偽の情報を見せることが可能。


185 : 無常矜侍&モンスター ◆ninjMGPkX6 :2014/12/21(日) 13:03:32 ZPGIxlho0

【Weapon】
ガラスシリンダー
ステルス装束

【人物背景】
ザイバツ・シャドーギルドのニンジャ。
白兵戦にも秀で、脳波で操るエネルギー・スリケンは攻防一体の性能を備えている。
元々は不気味ながらも落ち着いた人物だったが、転送事故でコトダマ空間の深奥に落ちた際に謎のニンジャ・インクィジターから攻撃を受け発狂した。
しかし、その後再登場した際は以前と比較にならない戦闘力を得ていた。

モンスターのクラスで召喚された彼は、発狂以後の能力・及び人格で固定されている。

【サーヴァントとしての願い】
ありとあらゆる存在に対して真実を見せる。

【方針】
発狂しているものの作戦を理解し命令を効く程度の理性は残っているため、基本的には無常に従うだろう。
もっとも、いつ無常に「真実」を見せようとしてもおかしくはないが。


【マスター】
無常矜侍

【マスターとしての願い】
聖杯を使うことで向こう側の世界、そしてその奥に見えた何かへと到達する。

【weapon】
なし

【能力・技能】
周囲の物質を分解し己のエゴに合わせた形で再構築する異能「アルター能力」の持ち主。
無常矜侍のアルターは相手のアルターを吸収して変質させる「アブソープション」である。
魔力で構成されているサーヴァントも吸収可能だが、対象が瀕死の状態でないと通用しない。
能力を得ることもできないが、自らの魔力とすることは可能である。

【人物背景】
日本本土からロストグラウンドへと送られてきたアルター使い(ただしこの無常はロストグラウンドへ向かう前に聖杯戦争へと参加している)。
「全てを手に入れること」を目標とし、作中で様々な策謀を巡らせている。陰険な性格を表すかのようなその策謀はカズマや劉鳳の怒りを買った。
最終的には向こう側の世界にたどり着いて満たされたが、その直後にカズマによって倒された。

【方針】
無常、メンタリストともに屈指の実力者であるため一対一では極めて有利だが、さすがに複数組が相手では心もとない。
そのためサーヴァントを一人ずつ確実に撃破し、倒したサーヴァントを吸収して自らの魔力とする事で長期戦に持ち込む。
同盟を結んでいると思しき相手には策略を用い、分断した上で各個撃破する。


186 : ◆ninjMGPkX6 :2014/12/21(日) 13:04:19 ZPGIxlho0
今度は本当に投下終了です。


187 : ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:49:39 zL7E9XHM0
投下お疲れ様です
自分ももう一組分、投下させていただきます


188 : ユウキ&セイバー ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:50:05 zL7E9XHM0
「――ずっと、ずっと考えてた」
 1人の少女がそう言った。
 夕暮れの光に照らされて、数多の葬列に囲まれながら、そう口にした少女がいた。
 仮初のバーチャル空間の中、残された命を生き抜くために、本当の生涯を駆け抜けた少女だった。
「死ぬために生まれたボクが、この世界に存在する意味は何だろうって」
 何も生み出すこともせず。
 何かを与えることもせず。
 いずれは消える命のために、薬と機械を浪費して。
「周りの人達を困らせて、自分も悩み、苦しんで……その果てにただ消えるだけなら」
 たった今この瞬間に、いなくなってしまえばいいと。
 死に逝くまでの時間の間に、幾度も幾度も考えた。
「何でボクは生きているんだろうって、ずっと」
 死ねよ、死んでしまえよと、ひたすらに己を呪い続けた。
「でも……でもね」
 それでも。
 だとしてもと、今は思う。
 最期の僅かな時間になって、そうじゃないと思えた自分がいる。
「ようやく答えが、見つかったような気がするよ」
 最愛の親友に身を預け、確かな温もりに包まれながら、涙に濡れた笑顔で言う。
 無力に震えた冬を越え、花々に囲まれたこの世界で、少女はそう口にする。
「意味なんてなくても生きてていいんだ、って」
 無意味なはずの命だった。
 何一つ残すこともなく、他人に負担を負わせるだけで、勝手に死んでいくものと思っていた。
 それでも、そうではなかったと、今なら素直にそう言える。
「だって最期の瞬間が、こんなにも満たされているんだから」
 こんなにも大勢の人々に囲まれて。
 大好きな人の腕の中で、一つの旅を終えられるのだから。
「私……私は、必ずもう一度貴方と出会う」
 友の声が聞こえている。
 朦朧とした意識の中でも、はっきりと言葉が感じられる。
「どこか違う場所、違う世界で、絶対にまた巡り会うから」
 旅路の果てに巡り会った、結城明日奈という少女。
 自分より少し年上で、どこか亡き姉を思わせる、優しく強く憧れた少女。
 悲しみの涙に揺れながらも、自分を見送るそのために、優しい笑顔を浮かべる彼女と、最期にこの場所で会うことができた。
 この世界に刻みつけた想いを、母なる十字架の名と共に、彼女は受け止めてくれた。
 何もできないと思っていた自分に、決してそうではないのだと、身をもって教えてくれたのだ。
「その時には教えてね。ユウキが見つけたものを」
 一瞬、そんな明日奈の姿に、姉の面影がダブって見えた。
 自分を変えてくれた大切な友と、自分を支えてくれた姉の姿が、その時確かにそこに見えた。
 何より大切に思う2人の笑顔を、最期に焼き付けることができる。
 誰より大切に思える2人だからこそ、伝えたいと思うことがある。

 ――ボク、頑張って生きた。ここで、生きたよ。

 声にならないその声が、紺野木綿季という少女の、生涯最期の言葉になった。
 無垢な雪原に最後の結晶がひとつ落ちるように、《絶剣》ユウキは、その瞼をそっと閉じた。


189 : ユウキ&セイバー ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:50:37 zL7E9XHM0


「――だから、未練はなかったはずなんだけどな」
 なのに、生きながらえてしまった。
 天には紅く濁る月。
 肌を刺すのは冷たい夜風。
 暗闇に紫の髪を揺らして、少女は1人苦笑した。
 人生という名の旅を終え、新たに旅立ったはずのユウキは、未だ大地を踏みしめていた。
 最期の花園とは似つかない、コンクリートの地獄の中に、ユウキは確かに生きていたのだ。
 一体何が起きたのか。何故自分がまだ生きていたのか。
 納得して逝くはずだったはずの命が、どうして選ばれ生きながらえたのか。
「生き返りたくなんてなかった、って思ってる?」
 分からないこと尽くめの中に、問いを投げかける者がいた。
 優しく柔らかな声色ながらも、遠慮無く突き刺すように問いかける、青年の声が闇から響いた。
「そんなことは言えないよ」
 そんな贅沢は許されないと、ユウキは振り返りながら言った。
 欲は確かにあったものの、それ以上に強く納得し、受け入れたはずの死ではあった。
 それでも拾ったこの命は、自分と同じ境遇の誰かが、どうしても欲しいと願った命だ。
 未練や無念を踏み台にして、選ばれてしまった紺野木綿季が、もぎ取ってしまった大切な命だ。
 だからこそと、彼女は思う。
 決して無駄には使えないと、痛切に実感することができる。
「ボクには願いなんてない。誰かの願いをこれ以上、踏み台にしたくないとも思ってる」
 それは全て叶えてきた。
 残すべきものは全て遺し、満足して妖精の世界を去った。
 だから聖杯に願うべきものはないし、新しい願いも思いつかない。
 この聖杯戦争とやらの舞台で、自分が一体何をすべきか、ユウキにはまだ答えが見つからない。
「それでも、黙って殺られはしない。どれだけ続くか分からないけど、この命を無駄には使わない」
 こうして生きていることそのものが奇跡だ。否、異変とすら形容してよかった。
 だからこそ、こうしているうちに、どこかでまた消えるかもしれない。
 聖杯戦争に殺されるまでもなく、いつかぱったりと寿命が尽きて、勝手に命を落とすかもしれない。
 だからこそ、決して無駄にはできない。
 死ぬための命だなんて二度とは言わない。
 ここで生きている僅かな時間を、一片も無駄にしないためにも、わざと殺されるようなことはしない。
「ボクは生きるよ。アスナとの約束を守るためにも、一生懸命に生き抜く」
 それは偽りも何もない、ユウキの正直な意志だった。
 時間が限られているからこそ、偽らず伝えたいと願う、心からの想いだった。
「それでも、この世界にルールがあるなら、ボクだけじゃどうにもできないことにも、どうしてもなっちゃうんだと思う」
 聖杯戦争にはルールがある。
 限られた制約の中では、どうしても力が及ばないこともある。
 現実の殺し合いだからこそ、オンラインゲームの世界以上に、越えられない壁というものがある。
 それは3年という旅路の中で、骨身に沁みて思い知ってきた、ユウキの実体験だった。
「だから、その時にはセイバー……君がボクを手伝ってね」
 助けてくれとは口にしない。
 どうにもできない問題を、だからとて丸投げする気はない。
 自身も限界まで力を尽くし、それでも越えられない壁があった時、その時にだけ力を借りる。
 年齢相応の笑顔と共に、ユウキはそうした意を込めて、宵闇の奥の青年に言った。


190 : ユウキ&セイバー ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:51:04 zL7E9XHM0
「うん、それでいい。そう言ってくれる君になら、俺も力を貸してあげられる」
 暗がりに立つ青年の影が、柔らかく頷いたように見えた。
 聖杯戦争のために与えられた、古の英霊達の映し身――剣騎士のクラスを与えられたサーヴァント。
 その誇り高き魂が、ユウキを主として認めたのだ。
 命を預けるに値する、正しいマスターだと認識したのだ。
「っ!」
 びゅん、と風を切る音がする。
 瞬間、世界に光が満ちる。
 刹那の眩い輝きは、暗闇をたちどころに切り裂いた。
 煌きが消えたその瞬間、既にセイバーの姿は、闇に紛れてはいなかった。

「冴島雷牙」

 かしゃん、かしゃんと音がなる。
 甲冑の具足の音と共に、眩い像が歩み寄る。
 闇夜に浮かび上がるのは、黄金に輝く鎧だった。
 月夜の暗黒の只中に、太陽の後光を放つのは、金色に彩られた獣騎士だった。
 雄々しき鎧を纏った中で、顔面を覆うマスクだけが、獰猛な狼を象っていた。

「またの名を――黄金騎士、牙狼(ガロ)」

 それは魔を祓う騎士の名前。
 古より蔓延る魔物・ホラーを、人知れず切り裂く魔戒騎士の名。
 最強の血統の中にあり、その中でも最も強いと言われる、気高く優しき黄金の騎士。
「この場は主の剣騎士(セイバー)として、手となり足となることを誓おう」
 その騎士が、静かに膝をついた。
 生きることを諦めないのなら、その道を拓く力となろうと。
 正しき心を持つ主なればこそ、その意志を何より尊重し、支えるために戦おうと。
 万人のために在る魔戒騎士が、今はただ1人の少女の騎士として、跪きその手を差し出した。
 一瞬、ユウキは驚き目を見開く。
 当然、経験のない光景だ。驚きも気恥ずかしさも顔に出てしまう。
「……ありがとう、セイバー」
 それでも次の瞬間には、元の笑顔を浮かべていた。
 ゆっくりと手を差し出すと、セイバーの構えた黄金の手を、柔らかな所作で握り返した。
 かつて《絶剣》と謳われた、仮想世界の申し子、ユウキ。
 仮初の世界でありながら、誰よりも一途に真っ直ぐに、本物の人生を駆け抜けた少女。
 これより彼女が挑むのは、死に逝くための葬列にあらず。
 新たな命が続く限り、最期の一刻まで走り抜ける、生きるための旅路である。
 電脳最強の少女は、最強の名を持つ騎士と共に、その道を戦い抜くと決めた。
 どんな目的のためであろうと、その道が生きることに繋がるのなら、全力で歩んでいこうと誓ったのだった。


191 : ユウキ&セイバー ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:51:40 zL7E9XHM0
【マスター】ユウキ
【出典】ソードアート・オンライン
【性別】女性

【マスターとしての願い】
精一杯生きて戦い抜く。自分の命を無駄にはしない。

【能力・技能】
剣術
 アルヴヘイム・オンラインのプレイヤーのうち、剣士職のプレイヤーが持つスキル。
 プログラミングされた動作により、一般人でも剣術を扱うことができる。

飛翔
 アルヴヘイム・オンラインのプレイヤーが持つ標準的なスキル。
 妖精の肉体を得たプレイヤーは、翼を生やし、制限時間つきながらも空を飛ぶことができる。

ソードスキル
 アルヴヘイム・オンラインのプレイヤーが習得するスキル。魔力属性が付与されており、サーヴァントにもダメージを与えることが可能。
 原型となったソードアート・オンラインにおけるそれと比較すると、強力な必殺技としての色合いが強くなっており、
 技の威力や性質に応じて、使用後に硬直時間が発生するものもある。
 ユウキはオリジナルソードスキルとして、ゲーム中最大の連打回数を誇る、「マザーズ・ロザリオ」を編み出している。

フルダイブ環境の申し子
 3年間のフルダイブによって培われた、バーチャル世界への並外れた適合率。
 フルダイブ環境においては、常人を遥かに超えた反応速度を有しており、本物の戦士とすら互角以上に渡り合える。

【weapon】
細剣
 戦闘時に用いる直刀。黒い極細の剣である。

【人物背景】
突如としてVRMMO「アルヴヘイム・オンライン(ALO)」に現れた、インプの少女。ギルド「スリーピング・ナイツ」のリーダーである。
SAOサバイバー最強と謳われたキリトすらも凌駕する力を持ち、その絶対的な強さから《絶剣》の仇名で呼ばれるようになる。
11連打のオリジナルソードスキル「マザーズ・ロザリオ」を有しており、それを賭けた辻デュエルを受け付けていた。
その中でキリトの恋人・アスナと出会い、スリーピング・ナイツの目的のために協力を求めた。

その仰々しい仇名とは裏腹に、子供っぽく無邪気な性格。一人称が「ボク」の活発な少女である。
後述する理由から生き急いでいる節があり、「ぶつかることになってでも、想いは伝えなければならない」と考えている。
笑顔の裏では生きる理由に悩んでいたが、周囲にはその様子を見せることなく、真っ直ぐに生き抜いている。

本名は紺野木綿季(こんの・ゆうき)。享年15歳。
生まれた時に輸血用血液製剤からHIVに感染しており、15年に渡る闘病生活を続けていた。
両親と姉は既に他界。自らも情報リークによりリアルの居場所を失っており、
12歳の時に医療用VRマシン「メディキュボイド」の初の被験者として、バーチャルの世界で生きることを選んだ。
その後は同じく終末医療に入った、スリーピング・ナイツの面々と共に、様々なオンラインゲームの世界を渡っている。
最期に辿り着いたALOでアスナと出会い、幸福な時間を過ごした末、16歳の誕生日を迎える前に眠りについた。
ALO史上最強の剣士の名は、アスナに託されたマザーズ・ロザリオと共に、そこに生きる人々の間で語り継がれている。

【方針】
未確定。


192 : ユウキ&セイバー ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:52:13 zL7E9XHM0
【クラス】セイバー
【真名】冴島雷牙
【出典】牙狼-GARO- 魔戒ノ花
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:D+ 耐久:E+ 敏捷:D+ 魔力:D 幸運:B 宝具:A(EX)

【クラススキル】
対魔力:E (B)
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
 『黄金騎士・牙狼(ガロのよろい)』発動時にはBランクに変化し、第三節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。

退魔:-(EX)
 闇を切り裂き退ける力。
 セイヴァークラスとしての雷牙のクラス別スキルであり、
 後述する「二重召喚」が機能しなければ、発動どころかステータスとして表示されることもない。
 悪魔や魔獣など、邪なものと対峙した時、与えるダメージが倍加する。

【保有スキル】
無窮の武練:B
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
 心技体のほぼ完全な合一により、ほとんどの精神干渉の影響下においても十全の戦闘能力を発揮できる。

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

二重召喚:-(EX)
 二つのクラス別スキルを保有することができる、極めて希少なスキル。
 通常時には機能しておらず、ステータスとして表示されることすらもない。
 後述する宝具を解放した時のみに機能し、雷牙は剣騎士(セイバー)のサーヴァントから、救世主(セイヴァー)のサーヴァントへと姿を変える。


193 : ユウキ&セイバー ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:52:47 zL7E9XHM0
【宝具】
『黄金騎士・牙狼(ガロのよろい)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B+ 耐久:B 敏捷:C+ 魔力:A 幸運:B
 光あるところに、漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた。
 しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ。
 ――古より人を襲ってきた、魔界の怪物・ホラー。それと戦う力を身につけた、魔戒騎士の鎧である。
 この鎧には活動制限時間が存在しており、人間界では99.9秒間しか纏うことができない。
 セイバーの纏う「牙狼の鎧」は、最強の魔戒騎士の血族が受け継いできた鎧であり、黄金の輝きを放っている。
 更に緑の魔導火を纏うことにより、攻撃力を底上げする「烈火炎装」を発動することが可能。
 背部には2つのワイヤーアンカーが仕込まれており、攻撃やターザンアクションに使用することが可能。

『魔導馬・轟天(ゴウテン)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大補足:50人
 100体のホラーを狩った者にのみ与えられる、馬の姿をした魔戒獣。
 魔戒剣に力を与え、大型の「牙狼斬馬刀」へと変化させることも可能。
 雷牙は轟天継承の試練こそ受けていないが、黄金騎士への怨念を取り込んだザジとの戦いが試練代わりとなり、変則的な形で受け継いでいる。

『Tusk of thunder(こうかくじゅうしん)』
ランク:EX 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 雷牙が誇る最大宝具。
 本来活動限界時間を超えた『黄金騎士・牙狼(ガロのよろい)』は、
 装着者の心身を侵食し、「心滅獣身」と呼ばれる暴走形態へと変貌させてしまう。
 しかし、生前に強制的な心滅獣身に追い込まれた雷牙は、仲間達の想いによってこれを克服、
 「光覚獣身」と呼ばれる新たな力へ変えて我が物とした。
 存在そのものが規格外のものであるため、当然再現することも困難を極める。
 雷牙の意志でコンスタントに発動することはまず不可能であり、普段はステータスとして表示されてすらいない。
 雷牙およびマスター、そしてそれら以外の様々な意志が条件を満たした時、
 まさに奇跡と呼ぶべき確率の下に、初めて具現化する力である。
 この宝具を解放した雷牙は、スキル「二重召喚」の発動により、救世主(セイヴァー)のサーヴァントとして生まれ変わる。

【weapon】
魔戒剣
 ソウルメタルによって鍛え上げられた、魔戒騎士のための剣。
 修行を経た者はこれを自在に操ることができるが、そうでない者には持ち上げることすらできない。
 雷牙の魔戒剣は赤鞘の直刀で、鞘を盾や棍棒代わりにし、変則的な二刀流スタイルを取る。
 『黄金騎士・牙狼(ガロのよろい)』の纏った際には、黄金の長剣・牙狼剣へと変化する。

魔導火
 正確には魔導火の込められたライター。
 これでホラーを識別したり、烈火炎装発動のキーとしたりする。

【人物背景】
古より最強の家系として語り継がれてきた、黄金騎士・牙狼(ガロ)の鎧を纏う冴島家の魔戒騎士。
始祖たるホラー・メシアとその使徒を、単独で全滅させた伝説の騎士・冴島鋼牙を父に持つ。
雷牙自身も絶大な資質を有しており、父をも超える史上最強の黄金騎士になり得るとすら言われている。
父の親友・涼邑零に騎士としての修行をつけられ、多くのことを学び育った。

性格は極めて温和で社交的。零同様騎士らしくないフランクさを持っており、一番優しい黄金騎士とも言われている。
戦闘時の弁舌も零譲りであり、涼しい顔をして毒を吐き、ホラーを挑発することも。
一方で几帳面な部分があり、執事の倉橋ゴンザからは、「意外と細かい」と評されていた。
両親から強さと優しさ、そして強い意志を受け継いでいるが、
唯一母親の画才だけは受け継がなかったらしく、絵心は酷いものであるという。

生身での戦闘スタイルは、零のものを模した変則的な二刀流スタイル。
牙狼剣を攻撃の主軸とし、防御や補助的な打撃を鞘で行っている。
『黄金騎士・牙狼(ガロのよろい)』を纏った際には、牙狼剣一振りによるオーソドックスな戦闘スタイルを取る。

【サーヴァントとしての願い】
特になし


194 : ◆arYKZxlFnw :2014/12/21(日) 15:53:21 zL7E9XHM0
投下は以上です


195 : ◆devil5UFgA :2014/12/21(日) 15:59:32 heMummWk0
皆様投下お疲れ様です!
遅くなりましたがまとめwikiをご用意出来ました!

ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/41.html


196 : 名無しさん :2014/12/21(日) 16:17:30 mLZqTxiw0
投下おつー
昨日死んだと思ったら今日投下されてるユウキに本人同様驚いたわw
はええよ、ホセ!w
牙狼のEX宝具かっこいいな
彼女たちが生き抜く先がどうなるのか楽しみだ(予定


197 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 18:12:23 JHEBxtcU0
投下します。


198 : 赤木信夫&キャプテン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 18:12:50 JHEBxtcU0



 ────かつて、地球の平和と、人々の笑顔を守り続けてきた、34のスーパー戦隊。
 ────宇宙帝国ザンギャックとの戦いで失われたその力を受け継いだのは、とんでもない奴らだった!



 ……というのは、テレビの中だけのお話。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 少し昔、テレビから幽霊が這い出してくる映画があった。髪が長く、白い衣服に身を包んだ綺麗な女性であるが、井戸に突き落とされて死んでおり、爪は剥がれ落ちている。
 この赤木信夫という男もそれを怖がった一人だ。
 しかし、同時に、その映画を見た時には「テレビの中から人間が這い出してくる」というシチュエーションに、どこか夢も抱いていた。
 テレビの中の世界に憧れていた。
 テレビの中にいるヒーローが、自分と出会う日が来ないかと思っていた。

 ……そう、彼はオタクだ。
 それも、スーパー戦隊オタクだ。土曜にどれだけ夜更かししても、日曜の朝7時半までには必ず目が覚めてしまう体質なのである。
 そんなスーパー戦隊オタクである彼は、いつかテレビの中から抜け出してきたヒーローと会うのが夢だった。
 ついでに、『にじよめ学園ズギューーン葵』というテレビアニメの少女がテレビから抜け出てくるのも密かに期待しているが、やはり今でもスーパー戦隊と会いたい。

 ──29年間、ずっと抱き続けた、スーパー戦隊への熱い想いが彼の胸の中にはあった。
 子供の頃からの夢のヒーロー。
 スーツアクターも子供に夢を与えるヒーローだが、それよりもっと会いたいのは、正真正銘のテレビの中のヒーロー──。

 そして、それが妄想世界で叶ったのは、また別の話。
 確かに、非公認戦隊アキバレンジャーとしてスカウトされた彼は、あらゆる公認戦隊の大それた力を受けてきた。

 特捜戦隊デカレンジャー。
 轟轟戦隊ボウケンジャー。
 鳥人戦隊ジェットマン。
 五星戦隊ダイレンジャー。
 恐竜戦隊ジュウレンジャー。
 忍風戦隊ハリケンジャー。

 あらゆるスーパー戦隊の力を受け、今も赤木信夫はこうして、この世界で非公認戦隊アキバレンジャーのアキバレッドとして活躍している。
 そう、それは全て──「妄想」という電脳世界での話だ。
 しかし、今は、どういうわけか、この現実に存在するはずの空間──赤木自身の部屋で……赤木は、テレビの世界のヒーローと対面している。

「……そうか、つまり、お前にとって俺たちゴーカイジャーはテレビの中のヒーローってわけか」

 こうして、よりによって現実世界で海賊戦隊ゴーカイジャーのゴーカイレッド、キャプテン・マーベラスが自分の部屋にいる事がどういう原理であるのか、赤木信夫にはわからない。
 また、葉加瀬博世の常軌を逸した発明による物だろうか。


199 : 赤木信夫&キャプテン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 18:13:05 JHEBxtcU0

「ええ、そういう事です」

 ともかく、赤木も思わず萎縮して、こうして敬語を使って返事をする事になった。
 サーヴァントが堂々と立っているのに対し、マスターはかしこまって正座、というのも珍妙な光景だろう。

 赤木としても、「ウル●●●●●イア」の劇場版とかで、まあこういうシチュエーション自体はたまーに見かけるし慣れてもいるので、それを受け入れるくらいはできる。
 それが現実の物となった事に、原理への疑問点を上回る嬉しさが赤木には込み上げている。
 どうやら、マーベラスを演じた小澤亮太さんではなく、本物のマーベラスらしい。ドッキリカメラでも、何でもなく、目の前にいるのは本物のマーベラスだ。

 部屋中に、スーパー戦隊のフィギュア、DVD、ロボット、ポスター……などなど、スーパー戦隊グッズが置かれているので、それを見て、このキャプテン・マーベラスの方も自分がこの世界で「役者」に演じられている事を理解した。
 ゴーカイジャーの姿もその中には見受けられる。モバイレーツの玩具、レンジャーキーの玩具、ゴーカイジャーのフィギュア……。
 自分たちの所有物、宝具の模造品がこうして置いてあるのは不思議な感覚であった。
 何より、マーベラスが怪訝そうに見つめているのは目の前の赤木信夫の事である。

「なんだか、お前……」
「鎧みたいな奴だな、……って言いたいんですよね?」
「……」

 マーベラスは自分が言いたかった事を赤木に先に言われて押し黙った。
 伊狩鎧。マーベラスの仲間たちゴーカイジャーで唯一の地球人であり、ゴーカイシルバーの異名を持つ男。
 自分たちの地球を守って来たスーパー戦隊について、殆どオタクと言っていい知識を有している。

 赤木はその男をテレビで知っている。
 歴代スーパー戦隊への愛が強い、という性格設定は、赤木ら戦隊ファンにとっては共感しやすい立場のキャラクターである。
 赤木を見て、マーベラスがそいつを思い出す事も計算ずくだ。赤木の口から彼の名前が出てくるのは仕方のない事だろう。

「とにかく聖杯の話だが、俺もそれを手に入れる方針で行く。ただ、俺は普通に聖杯を手に入れるつもりはない」
「海賊らしく、手に入れるんですよね?」
「さっきから、人の台詞を横取りするなッ! 全部見透かされているようで腹が立つ……」
「あ、すみません……」

 赤木には、マーベラスの次の台詞がわかってしまうのだから仕方ない。
 テレビでマーベラスを見ていたのだから、彼がどんな事を言うのか感づいてしまう。

 マーベラスが聖杯を欲さないわけがない。
 しかし、同時に、マーベラスが「聖杯を正攻法で得ようとする」という手段を取るわけがない。
 彼は海賊。奪うのが上等。つまり、彼はサーヴァントを倒さず、聖杯の現在の持ち主から奪い取り、お宝として回収するのが目的だ。

 海賊である自分が自分の台詞を盗まれた事を、マーベラスは相当不快にも思っていた。
 だが、やれやれと肩を竦めて、すぐに落ち着いた。

「信夫。俺が考えている事がわかるなら、これ以上の説明はいらないな」

 赤木も、まだ話してほしいところはあるが、聖杯戦争に関するルールはおおよそ頭に入っている。


200 : 赤木信夫&キャプテン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 18:14:29 JHEBxtcU0

 ──赤木には、願いはない。
 いや、願いなんてもう、ここにマーベラスが来た時点で叶ったような物なのだ。
 確かに、赤木もできれば歴代スーパー戦隊全員に会いたいくらいだが、それでも、そんなに大きな欲を持つつもりはない。

「……じゃあ、俺の次の台詞は取るなよ」
「あっ、はい」

 最低でも、この台詞だけは自分の口から言ってやろう、と。
 マーベラスはこの狭い赤木の部屋で叫んだ。




「よし、今回も……派手に行くぜっ!!」

 





【クラス】
キャプテン(エクストラ)

【真名】
キャプテン・マーベラス@海賊戦隊ゴーカイジャー

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運A 宝具B

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
対魔力:E
 無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
騎乗:B
 魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなす。
嵐の航海者:A+
 「船」と認識されるものを駆る才能を示すスキル。
 船員・船団を対象とする集団のリーダーも表すため、軍略、カリスマを兼ね備える特殊スキル。

【宝具】
『戦隊魂を受け継ぐ器(モバイレーツ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1人
 キャプテン・マーベラスをゴーカイレッドや歴代レッドへと変身させる為の携帯電話型の変身道具。
 『赤き戦士の魂の鍵(レンジャーキー)』を通す事によって、マーベラスを深紅のスーツに包む。
 これを使用し、ゴーカイレッドやその他の歴代レッドに事で一時的にパラメーターが底上げされ、スキルが付与される事がある。

『赤き戦士の魂の鍵(レンジャーキー)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1人
 35のスーパー戦隊の力を封じ込めた鍵。
 これを『戦隊魂を受け継ぐ器(モバイレーツ)』に挿しこむ事によって各レッド戦士に変身可能。
 各スーパー戦隊のレッドは、変身時に各々異なる能力やスキルを保有しているが、変身した際にそれを発揮する事ができる。
 本来はレッド戦士以外のレンジャーキーも使用できるが、今回はゴレンジャー〜ゴセイジャーのレッド戦士(タイムファイヤー、姫シンケンレッド等除く)の鍵しか召喚できない。
 史実では本来の力の持ち主に返還されているとされるが、後の大戦で再度使用したという説もあり、今回はそれに基づいている。

【weapon】
  『戦隊魂を受け継ぐ器(モバイレーツ)』、『赤き戦士の魂の鍵(レンジャーキー)』

【人物背景】
 海賊戦隊ゴーカイジャーのレッド。
 かつては宇宙をまたにかける「赤き海賊団」の一員であり、アカレッド、バスコと共に旅していたが、バスコの裏切りによって壊滅し、ゴーカイガレオンを受け継いで新たな仲間を探し始めた。
 その目的は、「宇宙最大のお宝」を得る事であり、そのために四人の仲間を見つけて地球へ。
 宇宙でかき集めたレンジャーキーを使って歴代スーパー戦隊の戦士の姿へと変身しながら、宇宙帝国ザンギャックと戦う。
 後に地球における35番目のスーパー戦隊として認められ、レジェンド戦士の一員となった。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯を「お宝」として持ち帰りたい。
 願いはいくらでもあるが、欲しけりゃ自分で手に入れる。

【方針】
 正攻法ではなく、「海賊らしく」聖杯を得る。


201 : 赤木信夫&キャプテン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 18:14:45 JHEBxtcU0


【マスター】
赤木信夫@非公認戦隊アキバレンジャー

【マスターとしての願い】
 不明。

【weapon】
 モエモエズギューーン

【能力・技能】
 妄想空間でアキバレッドへと「重妄想」する事ができる(強い意志や想いを発現させて現実世界で変身する事もある)。
 スーパー戦隊に関する知識やオタク知識が非常に深く、シリーズについてやたらと細かい部分まで把握している。

【人物背景】
 秋葉原にある「S.P.D.(佐々木ポンポコデリバリー)」の運送員。実家暮らし独身29歳。
 重度のスーパー戦隊オタクであり、歴代スーパー戦隊を誰よりも愛する男。
 ある時、秋葉原にある「戦隊カフェひみつきち」店長の葉加瀬博世によって、モエモエズギューンを受け取った赤木は、青柳美月・萌黄ゆめりあと共に「非公認戦隊アキバレンジャー」として「邪団法人ステマ乙」と戦う事になった。
 邪団法人ステマ乙との戦いは全て妄想世界での出来事であり、現実世界には何の影響も及ぼさない、いわば仮想的な闘いだったが、その戦いはやがて現実世界を巻き込む戦いに発展していく。
 その果てに、彼らは、「八手三郎」というあまりにも巨大な存在が彼らの運命を操っている事に気づき、テコ入れや打ち切りへの反逆を開始した。
 二期では八手三郎による記憶の改変が行われており、最終回の内容などがねつ造されている。
 二期最終回で太陽に突っ込んで死亡したはずだが、今回また記憶の改変が行われているようで、自分が死んだ事も八手三郎の事も完全に忘れてまた普通に秋葉原で暮らしている。

【方針】
 キャプテンと共に、正攻法ではなく、「海賊らしく」聖杯を得る。


202 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 18:15:02 JHEBxtcU0
以上で投下終了です。


203 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 22:32:41 JHEBxtcU0
投下します。


204 : 雨宮桂馬&アサシン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 22:33:13 JHEBxtcU0



 雨宮桂馬は、オタク刑事である。

 警視庁渋谷中央署生活安全課少年係。
 これが桂馬の正式な肩書だ。

 本人は、「オタク」ではなく、「ゲーマー」なので、「ゲーマー刑事」という呼び名が欲しいと主張している。
 しかし、渋谷には彼をそんな風に呼ぶ人間はいない。
 下手をすると、本名の「あめみやけいま」を、「あまみやけいま」と呼ぶ事さえもある。
 それが故意なのか、それとも本当に間違えての事なのかはわからない。

 性格は至って温厚だが、少し抜けていて刑事としての迫力には欠ける。
 だが、それでいて、彼には人を見る目があって、刑事としての強いカンと粘り強さと刑事の魂も持ち合わせている。
 だからこそ、今日子供でさえも信じないような噂にも、彼は強い嗅覚でその噂の危険性をかぎつけ、目を向けていた。

 それは数週間前、いつものように、パソコン通信をしていた彼が、自然と耳に入れる事になった噂だ。
 今では、パソコン通信だけではなく、桂馬と関わりのある渋谷の少年少女たちの間にもその噂が広がっていた。
 噂の目が出てから渋谷中に花を咲かせるまで、数週間程度だというのだから恐ろしい。


≪紅い満月が、願いを叶えてくれる≫

≪紅い満月はどんな願いでも叶えてくれる。死者の蘇生も、人生をやり直す事も可能である≫

≪紅い満月を見た者は、そのまま月に運ばれるが、運が良ければ願いを叶えてこの世界に帰ってくる事ができる≫

≪ブラッドムーンと呼ばれる皆既月食とは別物である。見た人にはそれがわかる≫


 それが、今回桂馬が目にした噂だった。
 口裂け女、首なしライダーときて、「紅い満月」。
 街のオカルトチックな噂の中では、それだけは唯一恐怖とは無縁なロマンチックな話だった。
 口裂け女や首なしライダーというよりは、七夕とか流れ星に似ている。

 普通と違うのは、「紅い満月を見た」という人間がいない事だ。
 目撃者が月に連れていかれてしまうルールだから仕方がないかもしれない。
 「運が良ければ戻って来られる」というのが、この噂が流れた理由の予防線となっているのも特徴だ。月に連れられて帰って来られなくなってしまえば、噂が出てくる事もない。
 しかし、人に流行らせる技巧としては少し弱い。
 先述の口裂け女や首なしライダーのような噂には、必ず「目撃者」がいたのである。だから噂は現実味を保った身近な恐怖として爆発的に広がった。そういうメカニズムがある。
 この「紅い満月」は、ファンタジーの世界にしか存在しない。これまで誰が目撃したわけでもなく、誰がその恩恵を被ったわけでもない。自作自演でも、発信者は「自分が見た」と言うべきではないだろうか。

 だから、桂馬も初めてパソコン通信で見かけた時には、この噂が浸透する事はないと思っていたし、密かに怖がりだった桂馬も全くその噂を恐れる事はなかった。



(しかし、どうにも気になる……)

 彼も最初に見た時には、そう思っていた。
 結論から言えば、一笑して忘れる事ができなかったのだ。
 刑事としての勘が、この噂の不穏さに過敏に反応していた。

 気づけば、噂について、パソコンサイトを通じて調べている。
 コーヒー牛乳片手に、ここ数日の行方不明事件を洗い、ネット通信仲間にその噂について詳しく知らないか聞いてみる。
 それが約一時間。
 行方不明になった人間の何パーセントかが、実は紅い満月とやらに連れられているのかも……と考えたところで、やはり馬鹿らしくなってしまった。

(まあ、月に爆弾が仕掛けられているわけでもないでせう)

 渋谷でとある爆弾事件を解決して以来、彼はどうやら、「爆弾事件」に縁がある。
 本来は少年課の刑事であるはずが、何故だか爆弾に関わる事件に巻き込まれてしまうのだ。


205 : 雨宮桂馬&アサシン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 22:33:36 JHEBxtcU0



 忘れるつもりで、パソコン通信を閉じてから、今日までの数週間。
 結局、桂馬はその噂を忘れなかった。

 いや、これだけ渋谷中で流行してしまったばかりに、忘れようにも次々と耳に入ってきてしまうのだ。
 初めて見た翌日には、もう先輩刑事の麻生しおりがその噂を口にし始めていた。
 一週間後には遂に、若者の噂など知るはずもない頑固親父のゴロイチまでその噂をするようになってしまった。
 やがて、町中がその噂の奇怪さに怯えている事に気づいた。

(……もしかして、本当に?)

 桂馬もそう思い始めていた。
 そういう悪寒が、何故か桂馬だけは強く感じていた。

 そして、ある日、紅い満月を実際に見かける事によって、オタク刑事は真実を知る事になった……。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 ────そして、紅い満月を見た桂馬が辿り着いた先は─────



 ……また、渋谷の街だった。
 厳密には、電脳空間に模造された月の裏の≪街≫なのだが、今の彼がそんな事を知る由もない。

「……すると、アサシンさんも渋谷には来た事があるのでせうか」

 雨宮桂馬は、自らが呼び出したサーヴァント≪アサシン≫にそう訊く。

 紅い満月を見た桂馬が連れて来られた先では、「聖杯戦争」というゲームが始まっていた。
 それは、桂馬が大好きなアーケードゲームでもテレビゲームでもなく、リアルゲームである。
 サーヴァントと呼ばれるパートナーと共に、魔術を駆使してこのゲームで生き残るのが趣旨らしい。
 他のマスター/サーヴァントを襲撃し、他のマスター/サーヴァントの奇襲を回避し、生き残ったペアだけが、この紅い満月から解放され、元の日常に回帰できる。
 この電脳空間では、それぞれ役割が与えられ、その記憶を埋め込まれる場合がある。桂馬などは、もろにその影響を受けているようで、元の日常についてはぼんやりとしか覚えていなかった。
 噂に聞いていた、「運が良ければ元の世界に帰れる」とはこの事だったのである。

 そして、≪アサシン≫はサーヴァントの種別の一つだ。

 どうも、暗殺者(アサシン)はあまり桂馬が好むタイプの英霊ではない。
 警察だった──この世界では彼は「警察をやめて私立探偵になった男」である──彼にとって、証拠を残さずに「暗殺」する手の人間は厄介だ。
 やはり、事件は証拠を残して起こしてくれた方が警察としては楽である。
 まあ、事件なんて起こさないのが一番なのだが。

 そんなアサシンの真名はカナンといった。「約束の地」を意味する言葉であるのはどこの世界でも一緒だろう。
 桂馬よりも若い容姿だ。褐色、色の抜けた綺麗な銀髪、整った容姿の外国人である。
 日本語は達者。服装はこの世に召喚された時点でも十分に当世風。桂馬も、その肌の色と横顔に少しぽーっとなった。
 到底、暗殺なんていう物騒な言葉とは無縁であるかのように思えるが、感情を殺したようなその瞳は、確かに常人とは違った。

「ああ。私の友達が住んでいる」
「いづれ、僕もその友達には会ってみたいですね」

 桂馬の意に反して、やる気の籠らない空の返事が出た。
 それも、やはりカナンの容貌に見惚れているからであろう。
 褐色肌、というのもなかなかよろしいカテゴリである。

「で、そのお友達の名前と年齢は?」


206 : 雨宮桂馬&アサシン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 22:34:00 JHEBxtcU0

 しかし、その友達とやらも同じ渋谷の街に住んでいるなら、どこかですれ違っているかもしれない。
 ……若者ならば尚更だ。
 桂馬の前の職業は若者の相手をするのが仕事の「少年課」刑事である。
 彼女の友人がどの年代かにもよるが、アサシンと同年代ならばおそらくは知り合っていてもおかしくはないだろう。
 一応、訊いてみた。

「大沢マリア。20歳くらいだと思う。聞いた事はないか?」
「えっと……渋谷も広いですからね」

 桂馬には、心当たりはなかった。20歳となると、もう桂馬にもわからない年代かもしれない。
 アサシンも、期待こそしていなかったが残念そうである。

「……そうか」

 まさか、桂馬もそれが日本屈指の大手製薬企業・大越製薬の研究所所長の娘であるとは思うまい。
 また、渋谷に住んでいるとはいっても、桂馬が召喚された時代ではまだ大沢マリアは10歳の少女である。
 この10年後に、ウーア・ウイルスという史上最悪の細菌兵器をめぐる事件が同じ渋谷で起こり、マリアはその渦中で巻き込まれる事も桂馬はまだ知らない。

「そうだ、桂馬。あやとりをした事はあるか?」

 友達、という話題から、アサシンが連想したのは「あやとり」だった。
 そのマリアとの思い出があやとりの中にある。
 日本人はみんなあやとりができるとマリアに聞いていた。

「ええ。そりゃ、昔……大人になった今はもうほとんどやりませんけど」
「そうか。残念だ……あやとりも楽しいのに」

 本格的に項垂れるアサシンの姿に、また少し見惚れる。
 麻生しおりの大人のセクシーさにまた匹敵する色っぽさがアサシンにはあった。
 無感情なようで、このような可愛い言葉が出てくるのだから堪えがたい。

 なんでせう、この胸のドキドキは……。

「なぁ、桂馬」
「な、なんでせう」
「好意とまではいかないようだが、私には桂馬の感情がよくわかる。……その。もう少し、抑えてほしい」
「は、はい……」

 ……どうやら、桂馬の感情も「色」として出ているらしい。
 大方、日本の色彩感覚で言うならばピンク色にでもなっていたのだろうか。
 思わず、恥ずかしがって、桂馬は帽子を深く被って目を隠した。穴があったら入りたい気分である。
 桂馬はすぐさま話題を変える事にした。


207 : 雨宮桂馬&アサシン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 22:34:17 JHEBxtcU0

「……と、ところで、アサシンさん」
「何?」

 なんでもないような顔をしてアサシンはそう訊く。
 しかし、桂馬にとってはなんでもない話ではない。
 だって、今いるのは……



「どうして、僕たち────こんな、高い所にいるのでせう」



 ……そう、ここは渋谷と言っても、センター街の巨大ビルの屋上だ。
 しかも、その中でも最高所、足場の悪い貯水タンクの真上に立っている。

 例によって、夜風が強く吹いており、コーヒー牛乳を持つ手はぴくぴく震え、左手で帽子を強く抑えている。
 トレンチコートが、はためくというより、もはやほとんど風に持って行かれるような形で桂馬の右側に重量を集めていた。

 ここは、他のサーヴァント、マスターの気配を読む為に、アサシンが選んだ最適所だ。
 周囲数十キロを「見て」、「聞いて」、「触れて」、「嗅いで」、「味を確かめる」事が出来る場所。
 ゆえに、アサシンはここを選び、周囲を見ている。

 桂馬は、もしかすると……「自分は吊り橋効果なる物に惑わされて、アサシンの横顔に色気づいたのではないか」、と気づきつつあった。




【クラス】
アサシン

【真名】
カナン@428〜封鎖された渋谷で〜/CANAAN

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
 筋力D 耐久D 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具B

【クラス別スキル】
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。
 マスターや他のサーヴァントは気配を察知することで彼我の位置を探っているので、
 その基本戦術を無意味にしてしまう、この技能の重要性は高いと思われる。

【固有スキル】
共感覚:A+
 独立している五感が同時に機能している特異体質。
 文字に色がついていたり、音が形として見えたり、人間の感情を察知したりといった事が可能。
 その為、気配察知や千里眼のスキルも同時に併せ持つ。
戦闘続行:B
 瀕死の傷でも撤退を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り逃げ延びる。
心眼(真):C
 幼少期からの実戦経験によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

【宝具】
『鉄の闘争代行人(テツノトウソウダイコウニン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜99人
 ウーアウイルスによって人為的に齎されたアサシンの驚異的な身体能力や共感覚。
 共感覚をフル稼働させる事により、戦闘区域や敵の位置を完全把握する事が出来、それにより、全く土地勘のない場所でも地形を生かした戦闘が可能。
 また、アサシンの身体能力や戦場における知性そのものが異常に高く、その場にある武器の最適な使い方を理解し、見事に駆使する事ができる。

『希望の地(カナン)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:1〜5人
 大事な人間を守る為の固有結界。
 結界内では、アサシンとそのマスターに殺意を持つ者は全て、自分のスキルと宝具を活用する事ができなくなる。また、ステータスにも何らかの影響が及ぶ事がある。
 唯一、殺気を遮断する事ができる相手には弱い諸刃の剣。

【Weapon】
 ベレッタPx4ストーム
 毛糸のあやとり

【人物背景】
 鉄の闘争代行人と呼ばれるフリーランスの傭兵。
 かつてウーア・ウィルスで全滅した中東の村の生き残りであり、抗ウィルス剤なしで症状を耐えきった初めての人物。その結果、元々持っていた『共感覚』が大幅に強化され、五感を全て同時に使用する事ができる。
 NGOの夏目に依頼され宿敵、アルファルド・アル・シュヤが率いる組織「蛇」との戦いに臨む。
 以前、中東で出会った大沢マリアという女性に深い友情を感じている。

【サーヴァントとしての願い】
 大沢マリアのいる世界へと帰る。

【方針】
 不明。 今は周囲にサーヴァントや魔術師がいないか確認中。


208 : 雨宮桂馬&アサシン ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 22:34:38 JHEBxtcU0




【マスター】
雨宮桂馬@街〜運命の交差点〜

【マスターとしての願い】
 不明。

【weapon】
 コーヒー牛乳

【能力・技能】
 アーケードゲーム、テレビゲームが得意。
 警察としての最低限の能力。

【人物背景】
 警視庁渋谷中央署生活安全課少年係のオタク刑事。ただし本人はゲーマー刑事と主張する。25歳。帽子とメガネとトレンチコートが特徴。
 渋谷を巡回中に「シャチテの悪魔」からの時限爆破予告を発見し、「シャチテの悪魔」との渋谷を賭けた暗号ゲームに挑む。
 桂馬の尽力によって、一度渋谷は爆弾の魔の手から救われた。
 ゲーム、パソコン、コーヒー牛乳を好み、「けふ(今日)」、「〜でせう」、「ヤバ吉」など独特の言葉を使う。
 本来は、カナンの初出である「428〜封鎖された渋谷で〜」にも登場予定だったがボツになった(警察をやめて私立探偵になったというのはその場合の設定である)。

【方針】
 とりあえず高いところから降りる。


209 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/21(日) 22:34:52 JHEBxtcU0
投下終了します。


210 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:10:49 vyV83KpY0
投下します


211 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:12:04 vyV83KpY0












───男の話をしよう。

男は人生の中で、全てにおいて臆病だった。

己の扉は重く堅く、鉛の如き城門を。

己への道は深く長く、迷路の如き回廊を。

その姿は影の中。夜中の如き暗闇に。

しかし、闇とは何れ暴かれるもの。

邪悪な闇なら尚更だ。

臆病な男を暴いたその先は、覚めることのない、結果の無い無限地獄。

囚われ続けたその先に、あるのは光かそのまた地獄か。

『覚めない夢はない』と言われるが、さて。









▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


212 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:13:40 vyV83KpY0
とあるビルの屋上にて───男は、月を見上げていた。
今度は紅い月。月なんて真面目に見たのは何時以来か。

「……ハァーッ!ハァーッ!」

そして。
我に戻った男は、怯えるように地に平伏す。
親と逸れた子供のようにキョロキョロと辺りを見回し、雷に怯える子犬のようにブルブルと震えている。
今の男を一言で表すなら───『惨め』。
その一言に尽きた。

「今度は何処だ……!上空から『飛行機』でも降ってくるか?
それともこのビルごと『倒壊』するかーッ!?」

不様に喚き立て、床を転がる。
コンクリートの床はとても冷たいが、男はそんなことすら気にしない。
まるで、今すぐに災厄が訪れるかのような慌てぶりで転がっている。

「わかっているぞ、どうせ次はその影から───ァ、ハッ!!!???」

機関銃のように喚き立てる男の胸に、痛みが訪れる。
具体的に言えば、熱。
胸に現れた刻印が、熱を発している。
胸を焦がす熱は、恐慌状態の男の精神を追いやるには十分だった。

「ァ、そうか、次は焼、くのか、ふざけるな、死にた、くない……!
オレはッ!オレはッ、こんなことでェーーーーーッ!!!」

───絶叫。
静かな街に男の悲鳴が轟く。
そして。

「ハァー、ハァー……」

痛みが引いた。
が、精神は未だに恐怖の中にある。
逃げなければ。
逃げなければ、逃げなければ。
逃げなければ、また殺される。
恐怖で上手く機能しないのか、足がもつれて床に激突する。
だが、そのまま男は腕を使い匍匐前進の要領で進む。
立ち上がる時間すら惜しいのか。
それとも、恐怖心に煽られた心が止まることを許さないのか。
───そこに。

「……お前が私のマスターか?」

化物が、立っていた。
肌は白く、背は高く。
身体つきからして性別は女性なのだろう。
手に持った禍々しい杖からは威圧感が。
そして一番の特徴は───その髪の毛が、蛇だったのだ。

「お前か」

男は、呟く。
ジリジリと迫る化物に、男は尻餅をつき後ずさる。

「お前がオレを殺すのか」

近寄るな、と男は呟く。
化物は意にも介さず、接近する。
男はもはや呻き声を発することしかできない。
そして。
最後の体力を込めた、絶叫が響く。

「オレのそばに近寄るなああ───ッ!!!」


213 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:15:10 vyV83KpY0
ぎゅっ、と。
男が絶叫の後に感じたモノは、暖かさだった。
長らく感じていなかった、人間の温もり。

「───私はおまえを殺さぬ」

男は、抱き締められていた。
蛇の髪と青白い肌に、男は包まれていた。
化物は、語る。

「ああ、無限地獄に囚われた人間よ。
小賢しい者の手で全てを変えられた悲劇の者よ。
私には───おまえの悲しみがわかる」

漏れる声は、美しかった。
思わず聞き惚れてしまう程の、その美声。
見た目からは想像が付かぬその美しさ。

「悔しかったろう。怖かったろう。悲しかったろう。辛かったろう。
もう怯えなくても良い。
おまえの悲痛な願いは、この私が聞き遂げた」

同情ではない。
これは、共感。
光によって追いやられ、全てを変えられた───その痛みを、理解したのだ。

「私のクラスはコマンダー───マスター、おまえの名を教えてくれるか?」

男は、抱き締められたまま口を開く。
かつての威厳はもはや無く。
そこに宿るのは、1人の男としての弱さ。

「───『ディアボロ』。オレの名は、ディアボロだ」

どれほど磨耗したのだろうか。
あれ程隠し通してきた情報を、ディアボロはするりと口から発した。

「……ディアボロよ。これは私とおまえの、プライドを賭けた戦争だ。
───共に、我等の”威厳”を取り戻そう」

化物……コマンダーが囁く。
ディアボロは、ただただ頷くのみだった態度から、徐々に自我を取り戻していく。

「オレは───『結果』に辿り着くことができるのか……?」
「ああ」
「オレは、生き延びられるのか……?」
「そのための、戦いだ」

ディアボロの瞳に、活力が戻ってくる。
依然心に張り付いた恐怖心は振り払えていないものの、活動の意思が戻ってきていた。
そして。

「頼む、コマンダー───共に、闘ってくれ」

かつてのディアボロならば、想像もつかないことを零した。
『結果』に辿り着かない、死の『過程』に捕らわれたことは、彼の心を蝕んでいた。
およそ、これが最後のチャンス。
これを逃せばディアボロは、一生死に続けることだろう。

「ああ───愚かな人間ならば、私らここでおまえを殺していただろう。
しかし、おまえは違った。
おまえは私の同志だ」

答えるコマンダーも、これが最後のチャンス。
愚かな人間に仕えるつもりなどないし、そしてコマンダーが認める人間などこの男を除いて1人として存在しないだろう。

「行くぞ、ディアボロ。
───私達には、まだやり残したことがある」








そして。
男と化物は、再び死闘の渦中へと飛び込むこととなる。
願いは一つ。


───我の全てを変えた者に、天罰を。





▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


214 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:16:46 vyV83KpY0













───女の話をしよう。

女は生まれた頃から美しかった。

つま先から頭髪まで、聖女の如きその美貌。

見惚れた者から粉々に。美しいものには棘がある。

美女にして魔女。

裁定者にて処刑執行人。

しかし、罪とは巡り帰ってくるもの。

程なくして、その悪行は己に帰ってきた。

醜き精神はその姿に。蛇の如き執拗さはその髪に。

魔の女神は変貌する。美しき姿を化物に変え。

己を醜き姿にした女神に死の報復を。

天界を揺るがした大罪人。

その名を───メデューサ、と言った。


215 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:17:37 vyV83KpY0
【クラス】
コマンダー ”指揮官”のサーヴァント

【真名】
冥界女王メデューサ@新・光神話 パルテナの鏡

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A+ 幸運C 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
指令:A
指揮官としての指揮性能。
一つの世界の女王として君臨した彼女は破格の性能を誇る。
このランクならば、己の配下を手足のように自在に動かせる。

配下生成:B
指揮官としての配下生成性能。
魔力を消費することで生前従えた数々のザコ魔物を召喚することができる。

【保有スキル】
陣地作成:B
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
コマンダーの場合、魔力を溜め込み配下を作る「冥府界」を製作可能。

冥府:B 
冥府界において君臨した彼女の持つスキル。
彼女の陣地内において、彼女の把握できない場所はない。

【宝具】
『冥府造りし我等の魔』
ランク:B 種別:- レンジ:- 最大補足:-

生前コマンダーが作り上げた冥府軍のボスを召喚する。
ただし召喚できるのは一体ずつで、その一体を自分で戻すか相手に消滅させられるかしなければ次のボスを召喚できない。
そして、召喚できるのは下記のボスのみ。
・魔獣ツインベロス
・三つ首竜ヒュードラー
・ビッグ死神
・邪神パンドーラ
・魔神タナトス

『忌むべき呪いの蛇女王』
ランク:A+ 種別:- レンジ:- 最大補足:-

己の姿を一つ目の巨大な首だけの蛇へと変貌させる。
この宝具は『冥府造りし我等の魔』を封印しなければ使うことができず、魔力消費も膨大になる代わりにパラメーターを以下のものに変貌させる。
筋力A 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具A+
また、元の姿に戻ることも可能。
コマンダーはこの姿を嫌っており、滅多なことがなければこの姿を見せることはない。

【weapon】
『杖』
彼女が使用する武器。
肉弾戦にも使用することができる。

【人物背景】
新・光神話 パルテナの鏡に登場する冥府軍の指導者。
顔立ちは美しい女性ながら、不気味な青白い肌とヘビになった頭髪を持つ。
これは過去にパルテナから掛けられた呪いによるものであり───それこそが、今回の聖杯戦争に参加した理由である。
元は黒髪の美女だった。
25年の時を経て復活したメデューサは、パルテナへ復讐のため天界、人間界へと進攻する。
が、メデューサが蘇ったのは己の力ではなく、冥府神ハデスの手により蘇らせられただけで彼女はそのことを知らなかった。
そして後にハデスに「用済み」と始末され、冥府界に散る。
が、しかしラストにおいてもう一度復活し、かつて敵対したピットの手助けをし、また消滅した。
彼女が聖杯戦争に参加した理由は、己を醜い姿に変えたパルテナへ復讐するため。
が、愚かな人間・魔術師などに仕えるつもりはなく召喚次第魔物にでも手足を食わせ利用する予定だったが、マスターを見て思想を変えた。
『光』の持ち主に全てを奪われ、苦しみを味わった者同士。
美しかった黒髪は醜い蛇に。絹のような柔肌は罅の入った白い肌に。
『美貌』を奪われ『醜さ』を与えられた彼女が、
『結果』を奪われ『過程』に取り残されたディアボロを認めるのはまた当然と言えた。
この戦争は、彼らの”威厳”を取り戻す物語。
『絶頂/美貌』は、再びこの手に。


216 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:18:44 vyV83KpY0

【マスター】
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険。

【マスターとしての願い】
この死の『過程』から抜け出したい。

【weapon】
スタンド 『キングクリムゾン』
しかし弱りきっているため使用できるかは不明

【能力・技能】
『時を吹き飛ばす』能力と『未来を視る』能力。
『過程』を吹き飛ばし『結果』だけが残る───が、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムによって『結果』に辿り着かず『過程』に取り残された彼にとって果たしてスタンドは発動できるのか。

【人物背景】
彼の正体や経歴、素性は全ての人間にとって謎であり、彼の正体を探ろうとする者は容赦なく、冷酷で計算されつくした残忍さを演出して警告したのち始末している。
その手腕や強力過ぎるスタンド能力に反し、自分の来歴が表に出ることを極端に恐れる小心な一面を持つ。
最終決戦においてゴールド・エクスペリエンス・レクイエムに敗北し『結果に辿り着かず死に続ける』ことになった。
彼はその頃から参戦。
故に死への強大な恐怖感を抱いている。
かつての威厳は、もはや存在しない。

【方針】
コマンダーと共に生き残る。
死にたくない。


217 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/21(日) 23:19:54 vyV83KpY0
投下終了です。
ディアボロ&コマンダー(エクストラクラス)でした。


218 : 名無しさん :2014/12/22(月) 00:18:39 DFdne4B.0
現在までの候補作

クラス別のまとめ
左がマスター、右がサーヴァント

【セイバー】
ナンシー・リー@ニンジャスレイヤー&アーサー王@実在性ミリオンアーサー
真島誠@ドラマ版池袋ウエストゲートパーク&大神一郎@サクラ大戦
織作茜@塗仏の宴&沖田総司@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚
ユウキ@ソードアート・オンライン&冴島雷牙@牙狼-GARO- 魔戒ノ花

【アーチャー】
零崎曲識@人間シリーズ&雑賀孫市@戦国BASARA
ジョン・マクレーン@映画「ダイ・ハード」シリーズ&ジョン・ランボー@映画「ランボー」シリーズ
南ことり@ラブライブ!(アニメ)&ヴィンセント・ヴァレンタイン@FINAL FANTASY Ⅶ

【バーサーカー】
朱鷺宮神依@アルカナハート&壬無月斬紅郎@サムライスピリッツ
ジョーカー@ダークナイト&ギーグ@MOTHER2

【ランサー】
獅子丸@ライオン丸G&虎錠之介(タイガージョー)@快傑ライオン丸

【ライダー】
安藤崇(キング)@ドラマ版池袋ウエストゲートパーク&セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!

【キャスター】
ふうまの御館@対魔忍アサギ 決戦アリーナ&加藤保憲@帝都物語
七原秋也@バトル・ロワイアル(原作小説版)&操真晴人@仮面ライダーウィザード
東條希@ラブライブ!&モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険
槙島聖護@PSYCHO-PASS&フェイト・アーウェルンクス(テルティウム)@魔法先生ネギま!

【アサシン】
ハンニバル・レクター@ハンニバルシリーズ&月山習@東京喰種
折木奉太郎@氷菓(アニメ版)&ロート・シュピーネ@Dies irae
雨宮桂馬@街〜運命の交差点〜&カナン@428〜封鎖された渋谷で〜/CANAAN

【エクストラ】
─ザ・ヒーロー─
桐山和雄@バトルロワイアル(漫画)&ザ・ヒーロー
─シップ─
駆逐艦・時雨改二@艦隊これくしょん-艦これ-&『ハードボイルド・ワンダーランド』の<私>@世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
─キーパー─
両備@閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-&ハービンジャー@聖闘士星矢Ω
─モンスター─
無常矜侍@スクライド&メンタリスト@ニンジャスレイヤー
─キャプテン─
赤木信夫@非公認戦隊アキバレンジャー@キャプテン・マーベラス@海賊戦隊ゴーカイジャー
─コマンダー─
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険&冥界女王メデューサ@新・光神話 パルテナの鏡


219 : 名無しさん :2014/12/22(月) 01:22:02 4e2l7GyI0
>>218
何と濃い面子だ・・・w


220 : ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:34:43 D.Qzcivw0
投下お疲れ様です!
まとめ、ありがとうございます!
私も早速ランサー枠の主従を投下させていただきます!


221 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:36:11 D.Qzcivw0


人肉を喰うことは、それほど珍しいことではない。
おおよそ窮地に陥れば、人は人を喰う。
そこにあるものは肉だからだ。
親が子を活かすため、自らの肉を喰らわせたという話も、特異な話ではない。

『人食』は本能的な部分でおかしなことではないのだ。
子殺しの生命体も、共食いも、あらゆる生物が行っている。

珍しいことではないが、人はそれを忌避した。
それでも尚、人食を行ったものは、鬼と呼ばれ/魔と呼ばれ/妖と呼ばれ、怪異となる。
腐敗の時代、飢饉や辻風に侵された都でも、そこにはあった。

人が共食いを行うことを嫌ったのは。
あるいは、人を喰う存在を人とは別のものにしたのは。

人の心に、鬼が居たからだ。

しかし、現実に異物となり得る『鬼』が現れた時。
人は、己の中の『鬼』とどう向き合うのか。

しかし、『人を喰う人の形をした生物』が鬼と蔑まれた時。
人喰い生物は人とどう向き合うのか。


地球上の何処かで、誰かがふと気づく時が来るのだ。
鬼は、人であることに。
人は、鬼であることに。
人は、鬼と同じく。
鬼は、人と同じく。


――――互いが、腐敗の陽だまりに紛れ込んでいる隣人であることに。


.


222 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:37:57 D.Qzcivw0


   ◆   ◆   ◆



音楽室の前に付く。
音が響いていた。
防音設備の行き届いた音楽室の中から音が流れるのは、窓を締め忘れているのだろう。
音楽と呼ぶには、いささか異質な音だった。
連なりだけを見れば立派な音楽だろう。
しかし、感受性が豊かなその少女――――小坂依子には、その目的と感じ取れなかった。

――――練習なのかな。

それにしては、音に乗ってくる感情の色というものが掴みとれなかった。
何かを伝えようとしているわけでも、何かを成そうとしているわけでもない。
不思議な音の連なりだった。
演者の存在が気にかかった依子は、音楽室の扉に手をかけ、少し立ち止まる。

「……」

ある種、不気味とも呼べるその音楽を奏でる人はどんな人なのだろうか。
あまり、愛想の良いほうではない。
しかし、ここには自らが落とした『忘れ物』がある。
入るしかない。
依子は扉を開いた。

「あ……」
「…………」

そこで依子は一人の男と出会った。
野暮なスーツを身に纏った男だった。
人間味を感じさせないその姿は、しかし、隠すことの出来ない雄臭に溢れていた。
全身から溢れ出る精気は、依子の背中に嫌な汗を流させる。
先ほどのどこか無機質な音楽を、目の前の男が演奏していたのだとしたら。
おかしなことなど何もない。
人の演奏するものでないような想いを抱いた依子は、何の間違いもなかったのだ。

「あの、その……わ、忘れ物を……」
「……」

威圧感を前にして、依子は言葉を絞りだすことが出来ない。
男はどこか視点の合っていない、ガラス玉のような目で依子を見る。
視線を戻し、鍵盤へと指をかけた。
その無愛想な姿に、依子は逆にほっと胸を撫で下ろした。
一般に解放されていたかどうか、そんなことも問い詰めるほどの度胸はない。
如何せん、目の前の男は『怖かった』。
なにか、惹かれるよりも恐怖を覚えさせるタイプの、不思議な男だ。
がさごそと、音楽室の中を静かに動き回る。

依子のその様子を見もせずに、しかし、男は言葉を口にした。

「その奥だ」
「えっ?」
「棚の裏……椅子とともに影になっている部分にある」

依子の位置からは見えないが、確かに男の位置からはその落とし物を見つけることが出来る。
背を向けているまま見つけることが出来たということは、依子が音楽室に訪れる前に見つけていたのだろう。


223 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:39:18 D.Qzcivw0


――――まさか、『背中に目が付いている』わけがないのだから。


しかし、視線のようなものを感じる。
やはり、不気味な男だった。

「ありがとうございます」
「……」

男は返事をせずに鍵盤へと指を走らせる。
ありがとう、と言いつつも男の態度に小さな不満が募る。
やはり、無感情な男だった。
そう思いながら、同じ空間に居ることの圧迫感から逃れようと足早に出入口へと向かう。
その瞬間、ガラリ、と音を立てて誰かが入室してきた。

「ねえ、見つかっ――――」

艶やかな濡れ羽色の髪を、うなじにかかる程度の長さに切りそろえた依子だった。
少々痩せ気味の、しかし、女性としての肉が付くべき箇所に付いた女。
長い前髪は右目を覆い尽くし、片方から見える瞳はやわらかな色を見せ、すぐに鋭い色に変わった。
ビクリと身体を震わせたが、その視線が自身ではなく男に向かっていることに気づいた。

「何してんのよ、あんた」

男は依子の友人――――霧島董香の知り合いのようだった。
普段とは異なる剣呑な雰囲気に、思わず息を呑んだ。
しかし、敵対心を多く含んだその言葉に、男は特に気にすることなく平然とした態度を続ける。

「演奏だ、指先のいい運動になる」
「部外者立入禁止」
「……これはすまなかったな」

男は素っ気ない態度で立ち上がり、長い脚を動かして大股で去っていた。
董香とすれ違う瞬間、董香自身は鋭い瞳で男を睨みつけるようにしていたが、

「……ったく」
「お父さん?」
「違うよ、絶対違う」

苛立ちを隠し切れない言葉だった。
いつも気怠げで、でも、優しく振る舞う董香に相応しくない言葉だった。
少し、言葉が詰まった。
董香の口から両親の話を聞いたことがない。
恐らく、複雑な家庭事情なのだろう。

「放っといて帰ろ、依子。忘れ物は見つかったんでしょ?」
「う、うん」

董香の放つ色は優しげなものになっていた。
董香は背中を見せる、その背中へとついていく。
少し、小さな背中に見たことのない色を見て、小さな動揺を覚えていた。


224 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:41:45 D.Qzcivw0

「知り合い?」
「……まあね」

やっと振り絞った声がそれだった。
否定はしなかったが、否定したいという色を持った声だった。
少し安心しながらも、続く言葉が出ない。
沈黙のまま、校門へと向かって歩く。
気まずさを覚えるが、それを打開するすべが思いつかなかった。

「……あれ、なんだろ?」

そこで、飼育小屋の近辺に人だかりができていた。
ちょうど、肛門付近にある飼育小屋だ。
帰路につけば、誰もが目につくような空間。
そこには複数の兎が飼われていた。

「……!」
「どうしたの?」

たまたま、飼育小屋側を歩いていた董香はその騒ぎの原因を理解できた。
たまたま、逆側を歩いていた依子は董香の影で騒ぎの原因を見ることが出来なかった。
覗きこむように、董香の肩口から飼育小屋の中を見る。

「見ないほうが――――」
「……!」

そこにあったものは、兎の死骸だった。
腹を裂かれ、目を繰り抜かれた兎が転がっていた。
周囲の兎は、何事も無く過ごしていた。
言葉が出なかった。

――――それは殺すために殺された死骸だった。

捕食のための死骸ではない。
ただ、生命を奪われただけの死骸だった。
何の知識もない依子でもそれが理解できるほどの無残な姿だった。

なんで、こんなことが出来る人が居るのだろうか。

そう思いつつも、ならば、自分は捕食のためならば兎を殺せるのかとも考えた。
非常時、そこに兎がいて、自身が激しい飢餓にあれば。
自身は兎を殺せるだろうか。

知ってはいても理解してはいない疑問が浮かび上がる。
自らは、牛や豚の死骸の上にいる。
その疑問から目を逸らすように、言葉を口にする。


225 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:42:45 D.Qzcivw0

「ひどい……」

目の前の光景をそんな安っぽい言葉しか吐けない自身に嫌悪感を覚える。
董香も言葉を失っているのか、少々肩が震えていた。
どのように声をかければいいかわからず、ただ、その背中を見る。
すると、董香は絞りだすような声で、憎々しく口にした。

「……ミンチだ」

その声色は、恐怖を覚えさせる声だったが、依子はその恐怖をこらえた。
最近の彼女は、少し、おかしかった。
辛いことでもあったのだろうか。
思えば、彼女のことは何も知らないのかもしれない。

「ね、ねえ」

そんな董香に対して、何かをしてあげたくなり。
ふと、思い返してかばんの中から取り出した。
いつものような顔を見せて欲しかった。

「クッキー、美味しいよ?」
「……」

依子の言葉に、董香は呆けたような表情になった。
間違えただろうか。
怒るだろうか。
動物の死骸の前で差し出すものではなかっただろうか。
気遣いなど相手に伝わるものではない。
それぞれの線引というものがある。
これは、董香の怒りを引き起こすものかもしれない。
急に、不安になった。

「……ありがと」

しかし、董香は弱々しく、優しく微笑んだ。
依子もまた笑みで返した。
董香はクッキーを口に含み、空を眺めた。
依子も、釣られるように空を眺めた。


依子は、紅い満月に気づいていなかった。
董香は、紅い満月に気づいていた。


そのことに、董香は気づいていた。
自らは願いを求めるものであり。
依子はそうではない。


孤独感が、董香を包んでいた。
当然、依子は理解していなかった。


226 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:43:19 D.Qzcivw0


    ◆   ◆   ◆


「――――――――ゥッッウゥゥツッッッ!!」

その後、トイレに篭って、依子は胃の中に眠る『異物』を懸命に嘔吐していた。
喉を胃酸で焼かれる感覚を味わい、鼻の奥からツンとした酸味を覚える。
その不快感を超える不快感を、胃の中から吐き出している。
ふらふらとした挙動でトイレから出る。

「毒を食らうのは感心できないな」

そんな依子の姿に対して、リビングに腰を掛けて食事をしている男が居た。
それは、先ほど依子が音楽室で出会った男性だった。
そして、食しているものは生肉だった。
異常な光景だ。
もっとも、男は異常な存在であるために、それはなんらおかしいことではない。
男はランサーのサーヴァント。
紅い満月と聖杯に導かれた霧島董香に召喚された風変わりな英霊だ。

ランサーは、ナイフとフォークを使って生肉を食らっていく。
肉を喰うのも目的だが、同時に指先の感覚を『慣らす』ための行為だった。
ランサーは、先述の通り風変わりな英霊だ。

第一に、ランサーは現界のための『器』を必要とする。
それは人だ、人の『死骸』だ。
首を切り取り、腕を切り落とし、脚を切り捨てる。
頭部と四肢に、自らを構成する『寄生生物<パラサイト>』を寄生させる。

第二に、ランサーは霊体化することが出来ない。
ランサーの胴体は人間そのものだからだ。
霊子に分解すれば、その人間の肉体を再構成することが出来ない。

第三に、ランサーは人を捕食し続けることで魔力を生みだすことが出来る。
それは魔術に関する法則というよりも、ある種の、世界が定めたルールに近かった。

「『肉』を食え。マスターの混乱はサーヴァントである俺にも影響を与える」
「……うっさい」

ランサーはそのために、自らを維持するために、今も捕食を続けていた。
銀のナイフとフォークが肉を切り裂きながら、二つの何かの会話は続く。

「兎の死骸か?」
「アンタがやったの」
「必要のないことはしない。俺が言っているのは、マスターの行動を狂わしているものだ」

食事だけではないだろう、と付け加えた。
短い期間ではあるが、食事以外では、董香は自らよりも人間に近いことを感じ取っていた。
いわゆる、強く熟成した感情を持っているだ。
その感情が、不快感を産んだのではないだろうか、とランサーは考えたのだ。

その考えは間違っていない。
ラビットと呼ばれる自らの死を、投影させた。
そして、誰もその兎の肉を食まない群れの姿に、自らの異質さを投影させた。
一人ぼっちの気分だった。


227 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:43:44 D.Qzcivw0

「『肉』を食え」
「……」
「……強情だ」

同時に、自身と同じく『肉』を必要とする董香が『肉』を取らないことが理解できなかった。
グールと呼ばれる、人の肉と、水と、珈琲以外は身体に受け付けない生物。
其れ以外の何かを摂取することは、正しく、心を蝕む毒だ。
そのことを教えるように、後藤は肉を食み続けながら言葉を続けた。

「蝿は教わりもしないのに飛び方を知っている。
 蜘蛛は教わりもしないのに巣のはり方を知っている」

皿に盛った生肉にナイフを突き立てる。
意味のない行動。
慣れない聖杯戦争における、指先の『訓練』。

「蝿も蜘蛛も、ただ"命令"に従っているだけなのだ」

ランサーは特異なサーヴァントであった。
マスターだけでは生きていけない。
もう一つ、『寄生先』としての宿主を必要とする。

「地球上の生物はすべてが何らかの命令を受けている」

これは、その宿主の身体の消化器系や内臓器官を自らのものとして馴染ませるための、食事だった。
細いナイフの先で、筋の多い肉を丁寧に切り取る。
おおよそ、食肉とは思えない。
通常の牛や豚が、その肉体そのものを食用として加工されていることを、董香はよく知っている。
実習で扱う『それ』が、自らの食する『それ』と大きく違うことを知っているのだ。

「俺にもまた、今も流れてきている……生まれたその瞬間から、今、この瞬間でさえも」
「……」

董香の目に、不理解の色を見たのだろう。
ランサー――――五体の寄生生物が宿った怪物、『後藤』は、機械のような視線を董香へと向けた。
幾分も慣れた視線ではあるが、抑えがたい嫌悪感はあった。
同時に、目の前の生命が自身とは異なる生命であることに、どこか安堵していた。

「お前たちに、命令は来ていないのか?」
「……命令?」

後藤の疑問に、董香は疑問で返した。
それが答えであることに後藤は納得し、生肉を口にする。
本来存在しないはずの顎を動かすような顔の動き。
歯などないのにすり潰すような動き。
一つ一つが、『擬態』の訓練であった。
その異質さを示すように、後藤は己の衝動を口にした。

「――――この種を喰い殺せ、だ」

コリッ、とその音が聞こえてきそうな、歯の奥でなにか異物がぶつかる感覚を董香も感じ取る。
噛み砕けないものはないはずの後藤の挙動。
顔の筋肉を動かすようにして、その異物を知らせる。
芸達者なものだ、董香は食事をする振りの難度は痛いほどに知っている。
そんな董香の抱いた、どこか場違いな感想を知らず、後藤は異物を、プッ、と吐き捨てた。


228 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:45:13 D.Qzcivw0



まるで、見せつけるようなその動作の先に、甲高い金属音がした。




――――床に、血の付着した、金色に輝くピアスが転がっていた。





.


229 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:46:46 D.Qzcivw0

【クラス】
ランサー

【真名】
後藤@寄生獣

【パラメーター】
筋力B+ 耐久B+ 敏捷A+ 魔力E 幸運C 宝具D

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
寄生生物:A+
寄生生物パラサイトとしての能力。
後藤は四体のパラサイトを完全に統率することが出来る超級の適性を持っている。
人間の肉体に寄生するために霊体化することが出来ず、また、現界に魔力以外にも人の肉を必要とする。
しかし、人の肉を食い続けることでマスターからの供給魔力を少量で抑えることが出来る。

自己改造:A
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を"感じ取る"能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

【宝具】
『虐殺器官(パラサイト)』
ランク:D 種別:対『人』宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:5人
自らでは生きながらえることを可能としない生命体。
蛇のような形をして、たんぽぽの綿毛のような何かに包まれて、どこからか現れた。
寄生先の脳を丸々食い取り、そのまま自らを脳へと変質させて身体を奪い取る。
自由自在に頭部を変質させ、数十メートルの長さに伸ばすことや、刃のように薄く鋭く変化させることが可能。

後藤は自ら以外に四体のパラサイトを四肢に寄生させており、その四体全てを自由に統率できる。

【weapon】
四肢の寄生生物を刃などに変質させて攻撃する。
他の四体を統率するために、頭部を変質させることはめったに行わない。

【人物背景】
ある日、どこからか現れた蛇のような何か。
人間に寄生し、脳を食い取り、その身体を己のものとする生物、パラサイト。
通常、パラサイトは人間の頭部を丸々乗っ取った寄生生物である。
後藤の場合、一人の人間の肉体に五人のパラサイトが寄生している。
頭部及び四肢の全てがパラサイトであり、また、寄生先である人間の胴体部にもプロテクターのようにパラサイト生物が覆っている。
後藤は自身も含めた五体全てのパラサイトを『統率』することが出来る。
後藤以外にも右腕として扱われている『三木』が統率者となれ、自身以外の4匹の意識を支配し、完全に統率できるのは後藤だけである。

母体である人体の大半がパラサイトに置き換わっているために、かなりの自由度でその姿を変える事ができる。
体はパラサイトの鎧(プロテクター)で守られている。
対向走行しているトラック同士の交差による激突の衝撃にも耐え、ショットガンの直撃を複数受けるなどしても基本的にダメージを受けない。

寄生生物が本能的に感じている『この種(寄生先の生物)を食い殺せ』という命令を五体全てが感じ取っているため、常に高い闘争心と捕食欲を抱いている。


230 : 霧島董香&ランサー ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:47:41 D.Qzcivw0

【マスター】
霧島董香@東京喰種

【マスターとしての願い】


【weapon】
自身の特殊な細胞から生み出される赫子。

【能力・技能】
身体能力は極めて高く、数メートルを跳躍し、素手で人体を貫く筋力をもつ。
個体差はあるが成体ではヒトの4 - 7倍の筋力を持つとされる。
小さな切り傷程度であれば一瞬、骨折でも一晩程度で治癒する。
感覚器官がきわめて優れており、遠方から近づく人物の体臭を嗅ぎ分けられ、人ごみの中から足音を聞き分けることができる。

また、赫包(かくほう)と呼ばれる硬化と軟化を自由に行う細胞を所持している。
董香の赫子(かぐね)は肩まわりから羽のように放出される赫子。
ガス状に出現する例が一般的。
攻撃時には直接叩きつけたり固形化して射撃する例が確認されている。
主にスピードを生かした瞬発系の攻撃を行う。Rc細胞を放出して戦うため持続時間が短く短期決戦型と見られている。

【人物背景】
人間世界に紛れ込み、人を喰らう正体不明の怪人「喰種」が蔓延る東京。
霧島董香も、水やコーヒーを除けば基本的に摂食できるのは人体のみである、『喰種』の一人である。
人肉を食すと一度の摂食で数週間の活動ができる。
だが、常人が摂食する食品を口に含むと、味覚に嘔吐中枢が刺激されるほど不快に感じ、無理に摂食すれば体調を壊すなどの不調が発生する。
飢餓状態になると激しい頭痛や判断力の低下に陥り、親しい友人であろうとも捕食に躊躇しなくなる。
経験者はこの苦痛を「地獄のような苦しみ」と表現している。
なお、歯の生え揃っていない(捕食器官が未発達な)赤ん坊の場合は同種の母乳を飲むことで栄養が摂取できる。

清巳高等学校普通科の女子高生(2年生→3年生)で、右眼を前髪で隠している。
苦手科目は古文。
幼い頃は小鳥を飼っていたが、今は苦手になっている。
放課後は『あんていく』という喫茶店でアルバイトをしている。
ウサギのマスコットを好み、マスクもそれに合わせていることから、喰種対策局からは「ラビット」の呼称が付けられている。
親友である依子の手料理を度々口にしているため戦闘能力を十全に発揮できず、赫子を片方の肩からしか出せない。

普段はか弱い者にも気遣いを忘れない心優しさを見せるが、感情的になると激情に駆られ、敵対した人間を躊躇なく殺すなど凶暴な一面を持っている。
この極端な生命観を喰種としての生き方から来ていると考えられている。
平穏な暮らしを営める人間を羨んでおり、元が人間であるカネキに対しては複雑な感情を抱いているが、彼の優しさに惹かれている。

既に両親はおらず、弟のアヤトと同居していたが音信不通となり、後に敵対関係となる。
家族を失ったヒナミというグールを引き取って同居していたが、アオギリの騒乱の後に彼女はカネキについていくことを選んだため、元の一人暮らしに戻った。

【方針】



231 : ◆devil5UFgA :2014/12/22(月) 01:48:16 D.Qzcivw0
投下終了です


232 : ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 03:59:51 nQRBb93Y0
まとめ&投下乙です。
自分も投下します。


233 : ユズ・アサシン ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 04:00:30 nQRBb93Y0

―― 一人しかいない。

私はまた囚われている。あの時みたいに街の中に立ち往生。家には帰ることはおろか連絡も取れない。
山手線、というのも同じだった。何かの因果だろうか。それともこの地域には何か意味があるのか。
あの時は逃げようとした。何が何でも逃げようとした。
悪魔とか神とか、変な宗教の話はどうでもいい。
みな何でそんなことばかり目が行くのか分からない。
食べ物は投げ込まれるものを猿みたいに必死に得ようと争うしかない。公園の隅っこにびくびくしながら寝るしかない。文明の利器はすぐに使えなくなった。あんなに暑かったのにシャワーさえ使えないなんて!
ただ逃げたかった。貴方と一緒に、こんな場所から逃げたかった。

でも――彼は逃げなかった。
逃げてはくれなかった。どれだけ私が頼んでも、心が折れたと訴えても、貴方は私の手を取らなかった。

――貴方は私じゃなく、あの男の手を取ったんだ。
全ての元凶のあの男の。
何時もこっちを見下すような目をして、こんな事態に巻き込まれたのもあの人のせいなのに謝りもしない。
何か知っている素振りだけはするのに助けてはくれない。
その癖あの人は貴方を弟と呼ぶ。
貴方の従兄弟なのに――従兄弟に過ぎないのに。

――そんなあの男の手を、貴方は取ったんだ。
よりにもよってあの男の手を。
私がどれだけ縋っても、どれだけ頼んでも、どんな言葉をぶつけても、無視したのに。
確かに私は駄目だったかもしれない。逃げたい逃げたいとしか言わない女なんて、本当はうざかったかのかもしれない。
でも――それでも頑張ったんだよ、私。
訳の分からない理由で、訳の分からない封鎖に巻き込まれて、見るだけで恐ろしい悪魔に襲われて、命を狙われたんだよ。
山手線内に悪魔がはびこるようになって、段々中にいる人たちもおかしくなって、人間たちも戦うようになって。
それでも着いていったんだよ、私。
怖くて仕方がなかったけど、それでも一緒に戦った。置いていかれたくなかったから。
だから――それくらい許してよ! 逃げたいって、弱いことを言うくらい、許してよ……

私には何もないんだよ。
正義も、力も、信条も、使命感もない。
神様のことなんて考えたこともない!
ただの――ただ幼馴染のことが好きだった普通の女子高生だったんだよ。
貴方の隣にいたい。それだけの理由で、あの日も東京に来たんだよ。
それじゃ駄目? 馬鹿なことなの? 
普通の人間でいいじゃない。
何で関わらなきゃならないの? 神様とか、天使とか、悪魔とか、そんなことに私を巻き込まないで!

一緒に学校を行きたかった。
同じクラスで授業受けて、休みの日は服買いにいく。
模試とかあればげんなりしするけど、同時に勉強会とかで家に行けないかなとか悩んでさ。
運動会とか文化祭とかも一緒に頑張りたい。きっと絶対楽しいから。
それで夏休みには――どっか旅行とか行くの。茶化されるかもしれないけど、一緒に。
でも二人っきりだと流石に恥ずかしいから、アツロウとかも連れていこう。

――そんなことを願っちゃ、駄目なの?
人が人として生きていくことを願うことが、普通なんじゃないの。
そう思っていたのに――貴方はあの男の手を取った。


234 : ユズ・アサシン ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 04:01:11 nQRBb93Y0

――よりにもよって、あの男の。

何となく、予感はしていた。
貴方やアツロウには私には見えない別の展望が見えてるって。
翔門会は明らかに何かたくらんでいるし、カイドーやホンダさんも思惑があって動いてるみたいだった。
だから、貴方も色々考えていたんだろうとは思う。それが理解できる道なら、私も頑張ってついていくつもりだった。

――でも、あの男のだけは。
あの男が示したのは――魔王となる道だった。
全ての悪魔統べる王となって、神へと反逆する。
そんな選択肢を、あの男は突き付けてきたのだ。
力を持って、力を制す。野蛮で恐ろしい、理解のできない提案だった。

――魔王なんて。
そんなものに、そんな訳の分からないものに、貴方はなって欲しくなかった。
ただの人間でいて欲しかった。

――だって不安だったから。そんな力を手に入れたら貴方が変ってしまいそうで……

人には許されない、悪魔統べる魔王の力。
そんなものを身体に詰め込んだら、きっとおかしくなる。
見た目はたとえ変わらなくとも、人ではいられなくなる。
そんな気がした。そんな気がしてならなかった。

そして――その不安は的中したのだ。
貴方は魔王になった。魔王になって――人を殺した。
神を討つ為に、守る筈の人を殺すという、そんなことをしでかした。
人を殺し、天使を殺し、殺戮の果てに神を討とうとした。
その途中でアマネさんも――

――だから、私は戦った。
初めてだった。封鎖された東京の中で、初めて私は自分の意志で戦った。

――他でもない、貴方を止めるために。
皮肉な話かもしれない。貴方の隣にいた頃は、あんなに戦うのをいやがっていたのに、いざ貴方を敵に回すと、躊躇いがないなんて。
それでも――人の心を完全に忘れ去る前に、貴方を止めたかった。
神とか天使の言葉なんてどうでもよかった。奴らが信用できないことくらい私にだって分かっている。
だから私が戦ったのは貴方のため。
あんな男にそそのかされて、魔王になった貴方を、人間に戻す為に。

――でも駄目だった。
私は敗けた。
上野、不忍池での決戦。魔王と神の代行者の前哨戦。
そこで私は天使たちに組して――そして敗けた。
私の、初めての戦いは、呆気なく終わった。

――いっそ殺してくれたのなら。
楽になったと思う。完全に貴方は変ってしまったのだと、諦めることができるから。

――でも貴方は。
殺してくれなかった。
そして悲しそうな顔をした。
何でそんな顔をするんだ。おかしいじゃない。貴方はもう人じゃないのに。
悲しむなんて――ずるいよ。
本当に、ずるい。私は貴方を――殺す気だったのに。

決別して以来、貴方とは会ってない。
アツロウとも、カイドーとも、無論あの男とも。
魔王となった貴方はきっとどこかで戦ってるんだろう。
ミドリちゃんはまだどうにかするつもりらしいけど、私はもうどうにもできなかった。


235 : ユズ・アサシン ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 04:01:35 nQRBb93Y0

――あの時殺してくれなかったから。
私は貴方を憎むことができないでいる。
魔王を、無辜の人を殺戮し、天使を虐殺し、神を討たんとする悪逆の魔王を憎めないでいる。

――それが何よりもつらい。

そんな矢先に、また東京に囚われた。
似たような状況だ。あの時と同じ、何の前振りもなくこの中に閉じ込められた。

――でも、私は一人だ。
あの時は貴方がいた。アツロウがいた。
一緒にどうにかしようって、思うことができた。
でも今は違う。もう貴方たちは私を置いていってしまった。

―― 一人しか、いない。
東京の街で、私は今一人だ。
私はどうすればいいの。
分からない。

―― 一人で、戦うしかない。
縋りつきたい人にはもう言ってしまったから。
さよなら、と。






236 : ユズ・アサシン ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 04:02:00 nQRBb93Y0



孤独と後悔と
憎悪と嫉妬と
殺意と未練と

そして愛情を

全て混ぜ込んだかのような想いがある。
結果、その想いありとあらゆる色をぶち込んだかのようなどす黒い色をしている。
マスターからパスを介して伝わってくる想いを、彼女は無言で受け止めていた。

――なんて醜く、浅ましい心の色だろう。

愛したいのなら愛せばいい。
憎いのなら憎めばいい。
そんな簡単なことすらできない。やろうともしない。
殺したいと思いつつもその実離れないで欲しい。
その有り様を声高に糾弾する癖して、本心では主張などどうでもいいと思っている。

――ただ見て欲しいだけだ。
想い人に、自分を見て欲しい。たったそれだけの、なのにぐちゃぐちゃで訳分からない心の中。
幼稚で我儘なだけの、意味の分からぬ色。

その色を彼女、明智光秀は知っていた。

――ああ、これは。
あの色だ。
他でもない自分の――彼女を殺した時の色だ。

かつて小悪魔王・織田信長を討った、明智光秀の想い。
それとこのマスターは同じ色の想いをしている。

――殺そうとした癖に。
魔王を殺そうなどと、とんでもないことをしでかした癖に、自分は信長を振り切れなかった。
戦国武将として現界したときも、ずっとその想いが引っかかっていた。

―― 一緒にいて欲しいって、それだけのことなのに。
どうしてこうもねじくれて、どこで間違えてしまったのだろう。
秀吉への、あの天真爛漫な娘への嫉妬なんて、結局はきっかけに過ぎない。
利休は――彼女ならあるいは分かってくれたかもしれない。

――マスターは私のことを見ていない。
きっとどうでもいいのだろう。聖杯など、ムーンセルなど。
想いの中心にあるのは何時も一人だけ。そんな想い人がこの場にいないのだから、何もないのと同じこと。

それを分かっているから、光秀は黙っていた。
悩むことしか――今のマスターにはできない。
出会ってまだロクに会話も交わしていない身だが、しかし光秀には分かった。
自分と同じだから。
きっと気付くはずだ。ぐるぐると回る悔恨と寂寞の果てに、マスターは求めざるを得ない。

――去って行ったあの人の下に、走るしかないと。
どんな形であれ、そうする他に道はないと。
かつて光秀がそうだったように。

――また、一緒に。信長様……

愛に善く似た黒い想いの果てを、彼女は知っている。


237 : ユズ・アサシン ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 04:02:19 nQRBb93Y0


【クラス】
アサシン

【真名】
復讐ノ牙・明智光秀

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運E 宝具C

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
・気配遮断 D
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
・心眼(偽) A
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

・影・水龍の爪 A
アサシンの戦国武将としての在り方。『水』の加護を得ることができる
『水』の近くで戦闘している時や『水』の攻撃をする際、有利な判定を得ることができる。

・秘宝略奪 B
英霊の神秘の象徴『秘宝』を奪い取る力。
倒したサーヴァントの神秘を自身の肉体に付属・融合させる。
『自己改造』スキルがランクと共に正当な英霊に離れていくに対して、こちらは寧ろより英霊としての神秘が上がっていく。

【宝具】
・『天下布武・反逆』
ランク:B 種別:対信長宝具 レンジ:1
生前、織田信長に執着し、その果てに「信長と二度と離れない」と宣言した逸話による宝具。
一度は殺害未遂にまで至った憎悪と紙一重の想いはもはや呪いのようなものだった。
『織田信長』という存在に相対・共闘する時にのみ発動。全パラメーターが上昇する。

【weapon】
・『銃』
アサシンのメインウェポン。
拳銃の形で連射可能。
・日本刀
戦国武将が標準装備している刀。

【人物背景】
出典はアニメ版『戦国コレクション』
戦国世界で信長を殺しているという。銃を武器に使う。
信長の家臣「小悪魔クインテット」のひとりであったが自身に秘宝を宿しておらずそれが嫉妬心となり負の力で秘宝を育てていく。
遠征軍の総大将の座を下ろされたのが決定打となり、秘宝が覚醒し戦国武将が現在に飛ばされる原因となった。
森蘭丸と共に現実世界に飛ばされた際、一時記憶喪失になっていたが火事をみた際に記憶を取り戻す。
(名探偵・明智先生として登場。助手の木林少年と共に天下村全裸殺人事件の解決に挑んだりしたが、それは夢である)
記憶が戻った後、自身が殺したと思っていた信長と再会、秘宝の献上を求められるが、それを拒否し行方をくらます。
今川との決戦では信長に加勢するが、信長だけを戦国世界に行かせないと、残りの宝珠は自分が手に入れると宣言し逃亡する。


238 : ユズ・アサシン ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 04:02:39 nQRBb93Y0

【マスター】
谷川 柚子(ユズ)

【マスターとしての願い】
“彼”を……

【能力・技能】
・comp
二画面の特徴的な外見のゲーム機であるが、改造が施されており悪魔召喚プログラムが入っている。
が、既に魔王が誕生した今召喚は使えなくなっている。
ハーモナイズやスキルセットは一応使えるが、サーヴァントを相手取るには心もとない。

【人物背景】
出典は『女神異聞録デビルサバイバー』及び『デビルサバイバー オーバークロック』
主人公の幼馴染。17歳(高校2年生)。とてつもなく胸が大きい。ウインドウに収まらないくらい。
ハンドルネームは「YUZ」。ロックアーティスト“ハル”のファン。
突如として山手線内が自衛隊によって封鎖される『東京封鎖』に主人公と共に巻き込まれる。

最初期からいるパーティメンバー。
彼女自身はこれといった主張を持たず、終盤まで「逃げたい」というスタンスのまま封鎖を過ごす。
分岐ルートの旗頭キャラの一人であるが、彼女のルートに分岐条件はない。つまりどれだけ人を死亡させても突入できる唯一のルートになる。
「逃げたい」という彼女の言葉を聞き脱出するも、最終的に悪魔が世界にあふれるという悲惨なエンディングとなる。
ヒロイン的立ち位置だが、彼女のルートは実質バッドエンドである(OCでは一応救済がある)

参戦ルートはナオヤ・殺戮ルート。
このルートでは主人公は魔王となり、邪魔する者は全て殺して神に挑むことになる。
魔王となった主人公とユズは決別し、更に殺戮を選んだ彼を止めるべく最終的には敵対することになる。
神の代行者・メタトロンと共に主人公の前に立ちふさがるも、魔王の力に彼女は敗北する。
最後に「さよなら」と言い残して、主人公の下を去った。

【方針】
分からない。


239 : アサシン ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/22(月) 04:02:52 nQRBb93Y0
投下終了です。


240 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/22(月) 06:10:49 y7dC6TVQ0
皆さま投下乙です。
二作目投下させていただきます。


241 : 一之瀬はじめ&セイヴァー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/22(月) 06:11:53 y7dC6TVQ0
あなたは噂話を信じるだろうか?
ましてやそれが、都市伝説じみた噂話を――

地域や場所や世界観によるかもしれないが、一般常識的な世界では『ありえない』の一言で済まされる。
一時、口裂け女や人面魚が実在すると新聞やニュースで取り上げられ、警察沙汰になった世界もあると聞く。
が、結局その世界もソレらを都市伝説であると認知し、平和に事なき終えたと云うのだから。
きっと、都市伝説を間に受ける人間なんて世間を知らぬ子供程度だ。

赤い月。
実際、赤い月は現実で見る事が可能である。
原理は夕日と同じく、赤色が我々の目に届くことによる現象
と、科学的な説明ができるほどだ。

しかし、新月。あるいは本来、月のない場所で赤い月を目にするのは無理があった。
さらに、月によって別世界へ導かれ、そこであらゆる願いが叶えられるなど
やはり現実的ではなかった。

だから、この話は噂話なだけで
それ以上もそれ以下もなく、話題の一つとして弄ばれているに過ぎない。
誰も信じなかった。


「なぁ、知ってる? 『紅い月』の話」
「知ってるけどさーどうしてそんな話が広がっているんだ? テレビとかで話題になった訳??」


ここでも二人の男子生徒が噂話を口にしている。
どちらも信用性もない話を弄んでいるらしい。
彼らの脇を通り、学校の屋上へ足を運んで行く女子生徒が一人。

お気に入りの手帳とお弁当を手にし、さわやかな風が吹き荒れる中。
彼女は呟く。


「うーん……『紅い月』かぁ」


芝生のある屋上に寝転がりながら、空を見上げた。


「なんだか、おもしろそうっすねぇ〜」



◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆



かつて『紅い月』の元で二人の英雄たる者が己の理想が為に戦った。
二人の戦いは熾烈を極め、山を消し、海を裂き、大地を揺るがし、一種の天変地異を巻き起こし
壮絶な死闘はまるで神話の世界のようである。

ようやく決着がついた時にはもう、全ての結末が決定されていた。

一人は平和の礎を築いた英雄として称えられ
一人はその平和を破壊の脅威を纏った裏切り者として伝えられ

今日に至る。

だが、どちらもこの結末は納得していない。
どちらも結末よりも先の未来を、その先の夢を思い描いていたのに。
全てが奪われた。

否、それも違う。
英雄として称えられた男はそれよりも、もっと大切な事を望んでいた。
自身の手によって殺し、全てを終わらせてしまった彼と、友と平和な世を作り続けたかった。
互いに平和を望んでいた。
だからこそ、一時期であれ争いもない平和を実現しえたのである。

なのに何故。
何故、このような結末になってしまったのだろう。

やり残したことは両手では数え切れない。
やらなくてならないことが山ほどあるというのに――
全てを後の世代に任せる他ないのか……



◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


242 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/22(月) 06:13:12 y7dC6TVQ0


「すごいっす! やっぱり『紅い月』の噂は本当だったんっすね!!」


女子生徒こと一ノ瀬はじめ。
彼女は遊園地に来た子供のように興奮していた。

はじめは『紅い月』の噂話を真に受け止めた数少ない人間であり
マスターたる資格を持ち合わせていたのである。

聖杯戦争。
マスター。
サーヴァント。
聖杯により再現された『東京』。
そして何より――『ありとあらゆる願いを叶える願望機たる聖杯』が実在する事。


「本当に何でも願いが叶っちゃうんっすか! これって超すごい事じゃないっすか!!
 聖杯にお願いしちゃえば、かわいい文房具が欲しい放題で、勉強しなくてもいい点取れちゃったり
 あ! 総理大臣にもなれちゃうんすか!? うひょー! すごいっす!!」


何とも底の浅い願いばかりを口にするはじめだが
彼女が選ばれた以上、聖杯に導かれない者に彼女を咎める術もないのだ。
だが、はじめはうーんと唸る。


「でも、僕って魔法使いじゃないんすけど……いいんすかね?」


本来、聖杯戦争は魔術師たちが行う聖なる戦争なのだ。
一方のはじめは、何からどう見てもたたの女子高校生。


「もしかして、魔法使いの才能あるってことっすかね?」


彼女のどうでも良い疑問に答える声はない。
ただ、誰もいないはずの空間に一つの存在が音もなく出現した。
はじめは気づく。


「僕のサーヴァントさんっすか? 僕、はじめっす!」


風貌は古典的な印象を醸し出している。
しかしながら雰囲気は決して英霊や偉人たる特徴的な重みは一切なく。
はじめでなくとも容易に話しかけられそうな、そんな印象を与えていた。


「『セイヴァー』とし召喚された千手柱間だ」
「『セイバー』さんっすか? 剣持ってないっすよ」
「ははは! 『セイバー』ではない。本来あらぬ『セイヴァー』よ」
「よく分かんないっすけど……セイヴァーさんっすね! よろしくっす!!」


本来あるべきものではないエクストラクラスと称させるもの。
『セイヴァー』とは。
はじめが勘違いした通り、『セイバー』ではない。
文字通りの「救済者」にして様々な由来が存在しえる。


この世でただひとり、生の苦しみより解脱した解答者
地上でただ一人、生命の真意に辿り着いたもの
覚者であること。


そして何より
『セイヴァー』を召喚する者は、善悪はどうあれ『人類を救う』理念に基づいた人物である事。


243 : 一ノ瀬はじめ&セイヴァー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/22(月) 06:15:24 y7dC6TVQ0
「ワシは『セイヴァー』たる英霊ではないがの」
「何の事っすか?」
「……はじめと言ったか、聖杯に何を願うつもりぞ?」
「んーそれなんすけどねぇ〜僕、願い事ありすぎて困ってるんすよ! もうちょっと考えさせて欲しいっす!!」
「おお、そうか。まだ時間はある。焦らず考えるといい」


深刻に唸るはじめ。
しかし、唐突にセイヴァーへ問いかけた。


「セイヴァーさんのお願い事ないんすか?」


望みがない、訳ではない。


「後悔はある。だが、先の未来を過去の者が物言う通りものではあるまい。夢は後の世代に託したのだ」
「そうっすかー」


短絡的に受け止めたはじめだが、しばらく唸って言う。


「でも、やっぱり願い事あるなら叶えた方が良いっすよ!」


彼女は何も考えていない訳ではない。
無論、世界のことや他人のことを真剣に考えている。
何を考えているか分からないと理解されないことも多いが、決して無鉄砲に飛びださない。


「自分の夢は自分で叶えたいからいいじゃないっすか!
 それが皆の為になるってセイヴァーさんが考えているなら叶えたっていいと思うんすよ、僕は」
「……しかしだの」
「僕はセイヴァーさんの夢を信じるっすよ! 大丈夫っすよ!!」


はじめは何でもないただの女子高校生に過ぎない。
英霊の願いを『正しい』と信じたところで何も保証はなかった。
彼女は神でなければ、この世の理でもないのだから。

だが。
事情も知らずとも、巡り会ったマスターなだけでも、彼女は親身に「信じる」と声をかけた。
里の長として慕われるソレとは全く異なる想いだった。


「――そうか」


過去の身であろうとも関係はない。
聖杯戦争では、過去の身であろうとも願いを叶える英霊たちが集う。
セイヴァーもその一人。


「面白い事を言うの、マスター。そうだの、一つ考えておくとしよう」
「あ! じゃあ、僕も願い事思いついたんで聞いて貰ってもいいっすか?」
「ほお? 聞かせてくれ」


「僕、セイヴァーさんとデートしたいっす!!」


説明するまでもなく、とんでもない沈黙が流れた。


「一緒に遊園地行ったり、美味しいもの食べたり、カラオケしたり、買い物したり
 色々遊んで欲しいっす! 僕、もうワクワクしてきたっす!! きっと楽しいっすよ〜!」


真剣に悩んだ末のマスターの願望に、何故かセイヴァーは落ち込む。


「マスター……ワシはおっさんぞ」
「だってセイヴァーさんってすごい英雄なんすよね? そんな人とデートするってすごいことっすよ!!」
「孫もおる」
「駄目っすか?」
「駄目ではないがの。もう少し考えようぞ……」
「んー駄目っすかねぇー」


244 : 一ノ瀬はじめ&セイヴァー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/22(月) 06:16:19 y7dC6TVQ0
【クラス】セイヴァー
【真名】千手柱間@NARUTO
【属性】秩序・善

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:C++ 幸運:C 宝具:A


【クラス別スキル】
菩提樹の悟り:C
 物理、概念、次元間攻撃等をランク分軽減し、精神干渉は完全に無効化する。


【保有スキル】
カリスマ:A+
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 Aランクともなれば人として最高位のカリスマ性。A+は既に魔力・呪いの類である。

仙術:A
 自然エネルギーを取り込み成り立つ能力。自然エネルギーには動きながらでは集められない。
 一時的に全ステータスの1ランク上昇と魔力感知でも察知不可能な悪意を感じられる。
 また『水と土に満たされし樹海浄土』と組み合わせる術が使用可能となる。

黄金律:E-
 人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
 無類の賭け事好きであること、対価に無頓着の為、金銭感覚が疎い。
 このランクの場合、逆に金銭に困ってしまう。


【宝具】
『水と土に満たされし樹海浄土』
ランク:A 種別:自身 レンジ:- 最大捕捉:-
特殊な能力、体質が必要とされる血継限界であり、非常に高度な精密さを求められるセイヴァー自身の能力。
基本は『木遁』という総称。その単語を調べれば十中八九セイヴァーの真名が看破される。
文字通り木を用いた術で、拘束から樹海の創造、分身、木製の巨人を操ることが可能。
この術で拘束されたバーサーカーは狂化が剥がれ落ちる危険性が高い。

『常しえの平和を愛で束ねよ』
ランク:EX 種別:? レンジ:? 最大捕捉:?
戦場を共に闘う同士が存在すれば全ステータスが1ランク上昇する。
それはサーヴァントであれ、マスターであれ誰であっても良い。
また、嫌がおうにも悪属性のサーヴァント、そのマスターを引き寄せてしまう。
悪属性のサーヴァントはセイヴァーのカリスマスキルの恩恵を受けない。

積み重ねた努力とそれを支える仲間の協力により、平和には愛が必要だと悟った
六道仙人の息子・大筒木アシュラの思想が形を成した宝具。
常時開放型宝具だが魔力消費は一切必要としない。止める術もない。因果の呪いである。

この宝具所持する英霊は大筒木アシュラ本人と千手柱間、うずまきナルトのみ。


【人物背景】
かつてうちは一族と双璧を成し、数多の忍一族から一目置かれ且つ恐れられた伝説的な忍。
「森の千手一族」の長であり、六道仙人の血筋であり、木ノ葉隠れの里の創設者の一人であり
「最強の忍」「忍の神」と謳われた初代火影である。

基本は大らかなお人よし、落ち込む癖がある。
愛情に溢れ、人々の心を掌握する壮絶なカリスマ性を持ち合わせていたが故に
もう一人の木ノ葉隠れの里の創設者・うちはマダラとの対立の切っ掛けになってしまう。

里の方針を巡り、マダラと死闘を繰り広げ、彼にトドメを刺したところで
忍とは目標の為に忍び耐える者であると悟った。これがセイヴァーとして現界した所以である。


【サーヴァントとしての願い】
過去の存在であるが故に願う事は躊躇っていたが
はじめの言葉により何か願うかもしれない。


245 : 一ノ瀬はじめ&セイヴァー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/22(月) 06:17:17 y7dC6TVQ0
【マスター】一ノ瀬はじめ@ガッチャマンクラウズ
【性別】女性

【マスターとしての願い】
セイヴァーとデートする

【weapon】
ハサミ
 彼女のお気に入りのハサミ

【人物背景】
ごく普通の立川市に住む女子高校生。
本来はガッチャマンとしての素質があるが、彼女はガッチャマンになる前の彼女である。

口下手だが彼女なりに物事を真剣に考えている。
恐らく、この聖杯戦争についても何か色々考えている。
天才的な発想をし、あらゆる突破口を切り開くが
彼女の行動は周囲に理解される事が少なく、困惑させることが多い。

あとメンタルが強い。
どのくらい強いかといえば
人類すべてが抱く『悪意』の根源であり『悪意』そのものを受け入れても
平常心で居られ、一緒にデートをするくらい強い。


246 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/22(月) 06:18:19 y7dC6TVQ0
一部タイトルが抜けてしまってすみません。
投下終了します。


247 : 名無しさん :2014/12/22(月) 09:14:12 qfCxds9.0
酉無くて申し訳ありませんが
セイヴァーの一人称、俺でした
些細なミスをしてしまい、すみませんでした


248 : ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:06:07 9qGkGl/w0
皆様投下乙です
私も投下させていただきます


249 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:07:33 9qGkGl/w0

ヘルヘイム。

そこは異形の怪物たちが住まう異世界。
人間ではまず生き延びることのできない魔の森。

その魔境を駆ける人影がひとつ。
人影は白と緑の鎧武者といった出で立ちであり、右手には黒い太刀を、左手には緑の盾を握っている。
鎧武者と対峙しているのは三体の怪物たち。
全体にずんぐりとした丸い形状の人型は怪人と呼んで差支えないかもしれない。
怪物たちは緩慢な動きで鎧武者を囲み襲い掛かろうとしていた。

「はあっ!!」

鎧武者がドスの利いた声を張り上げると同時に、真っ直ぐ構えた太刀の柄の部分から四発の弾丸が飛び出した。
うち二発が怪人の一体に命中し、怯んだ。
その瞬間を逃さず鎧武者は一直線に駆け出し残る二体のうち一体に鋭い斬撃を見舞い爆散させた。

倒された仲間に構わず鎧武者へ殴りかかったもう一体の怪人の拳を盾でいなし、返す刀で一太刀。
瞬く間に二体の怪人を仕留めたが、先に銃撃を浴びた最後の一体が恐れをなしたか逃げ出そうとしていた。

「逃がさん」

鎧武者は左手の盾をブーメランの要領で投擲、背中を向けていた怪人を転倒させた。
そして再びフルオートでの銃撃を見舞い、今度こそ仕留めたのだった。







「呉島だ、ベースキャンプ付近のインベスの掃討を完了した。これより帰投する」

鎧の下で一息つきながら鎧武者の男、呉島貴虎は通信機でユグドラシル本部へ成果を報告した。
人間である貴虎がヘルヘイムの森で生存できているのは彼が腰に巻くベルト、戦極ドライバーの性能のおかげだ。

プロジェクトアークと呼ばれるユグドラシルコーポレーションが極秘裏に進める計画を成就させる切り札といえる道具、それが戦極ドライバー。
人間にとって猛毒であるヘルヘイムに成る果実をロックシードと呼ばれる錠前に変換し、怪物と戦う人類の牙である。
同時にロックシードが齎すエネルギーを人体に無害な形で行き渡らせ、食物のないヘルヘイムで人間が生き延びる唯一最大の術でもある。

「どれほど計画が上手く進捗しても救える人類は十億人程度……わかってはいるが」

地球は十年後には恐るべき繁殖力を持つヘルヘイムによって残らず侵略される。
早期にその事実を突き止めたユグドラシルは人類文明存続を懸けたプロジェクトを打ち立てた。

それがプロジェクトアーク。

戦極ドライバーの力によって強引に人類をヘルヘイム環境に適応させ生き残りを図る計画である。
だが最新技術の塊である戦極ドライバーは十年掛けても最大十億台程度しか生産できない。
つまり単純計算で生き残れる人類は僅か十億人。
その席に座ることを許されなかった人間は十年後までに殺し尽くす、そういう前提の下に成り立つ計画だった。
そして計画を推し進めるプロジェクトリーダーに抜擢されたのがユグドラシルの重鎮たる呉島家の長男、貴虎だ。

日毎に迫るヘルヘイム浸食のタイムリミット。
その時が来れば人類六十億を消し去る決断を下さねばならない。


250 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:08:16 9qGkGl/w0
他に方法はないのかと考えたことは一度や二度ではない。
だが都合よく妙案が浮かぶはずもない。
さりとて逃げ出すことなど許されない。
特別な家柄に生まれ特別な力を持つ呉島貴虎の責任から背を向けるなど論外だ。
心に圧し掛かる重圧を無理やりに跳ね除けふと空を見上げた先に――――――






――――――不気味なほど赤い満月があった。







「何だ…?あの月は、一体」
『気をつけて、あなたは運命を選ぼうとしている』
「何?」

背後からかけられた声に振り向くと、そこには金髪の少女がいた。
民間人か?一瞬そう思ったが様子がおかしい。
何より少女にはただの人間と思わせない一種異様な雰囲気があった。

『この先に踏み込めばもう二度と後戻りはできない。
最後まで戦い続けることになる』
「……?」

少女の語り、より具体的に言えば唇の動きに若干の違和感を覚えた。
だが違和感はすぐに頭の中から消え、この少女に何かを言わねばならないという思いが貴虎の脳を支配した。
理屈ではなく、感情がそう訴えかけているのだ。

「これが運命だとしても、後戻りなどするつもりは毛頭ない。
誰にも許されずとも、この罪を背負って俺は人類の未来を切り開く」

それよりもお前は一体何者だ、そう続けようとして、しかしできなかった。
視界が、景色全体が目まぐるしく動き、歪み、塗り替えられていく。
一体何が起こっている。
これもまだ解明されていないヘルヘイム特有の現象だというのか。
気づけば世界は一変し、現実世界のようなビル群の夜の雑踏に取り残されていた。

「どういう事だ!?」

声を荒らげ、ずんずんと街を歩くが得られるものは何もない。
強いて言えばこの辺りは沢芽市ではないとわかったことぐらいか。
ユグドラシルに連絡を取ろうとするが完全に不通になっている。
通信機の故障ではなく、自分が通信の届かない場所に飛ばされたからなのか。

「無駄だ、聖杯戦争に勝ち残らない限りここから出ることはできない。
聖杯が作り出した、この偽物の東京からはな」
「何だと?」

どこからともなく男の声が聞こえる。
しかし姿は見えない。隠れているのか。

「聖杯戦争はマスターとサーヴァントが二人一組となって他のマスターとサーヴァントと殺し合う儀式だ。
お前はマスターとして選ばれ、俺がお前のサーヴァント、アーチャーとして現界した」

探せども声の主は現れない。
いや、貴虎が近づく度に向こうが遠ざかっているのだろう。
その証拠に足音が聞こえる。

「聖杯戦争とは何だ!?殺し合うとはどういうことだ!?」
「言った通りだ。万能の願望器である聖杯を巡る戦い、それが聖杯戦争だ。
最後に勝ち残った一組だけがどんな願いも叶える権利を得られる」
「出てこい!二人一組だと言うなら姿ぐらい見せたらどうだ!」

盾に収納していた太刀、無双セイバーを抜刀し威嚇する。
これ以上隠れ続けるつもりなら攻撃も辞さない、という無言の意思表示だ。
実際、突然殺し合いとやらに巻き込まれた貴虎はかつてないほど苛立っていた。
それこそあと十秒も沈黙が続けば手近な場所に無双セイバーの銃弾を撃ち込んでいたかもしれない。

しかし、結果的にそれは為されなかった。
アーチャーと名乗った男と思われる人影を見てとったからだ。
ようやく姿を見せる気になったか。と声を掛けようとして――――――


251 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:10:39 9qGkGl/w0








|/H\
| 0M0)
|⊂ /
| /







|
|
|ノシ
|





|/H\
| 0M0) <チラッ
|⊂ /
| /




「………………………………何故見ている?」

アーマードライダーらしき者がチラチラとこちらの様子を窺っていた。
他にも色々ぶつけるべき疑問がある気がするのだがとにかくまずこれを言わなければならないような気になってしまった。
そして大いに脱力するとともに思考にも幾分冷静さが戻ってきた。


252 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:12:00 9qGkGl/w0

「いや、すまない。
まさか仮面ライダーがマスターとは思わなくてな、つい身構えてしまった」
「仮面ライダーだと?……まあ良い、お互い一度変身を解いて話をしないか?
近くに人目がないとはいえいつまでもこのままというわけにもいくまい」
「ああ、そうだな」

同時に変身を解除すると、ごく普通の日本人男性が現れた。
少なくともビートライダーズの若者たちと比べれば風格と呼べるものは備わっているようだ。

「呉島貴虎だ。聖杯戦争、いや聖杯について詳しく教えてもらいたい。
無論、お前自身の素性とそのベルトについてもだ」
「勿論話す。俺も自分の力では叶わなかった願いを叶えるために召喚に応じた身だからな。
俺の真名は橘朔也、仮面ライダーギャレンだ」







「なるほど、過去現在未来、古今東西の英雄をサーヴァントとして召喚する殺し合いか。
そして紅い月を見た私はマスターの一人として選ばれた。そうだな?」
「ああ、大体はその認識で問題ない。
もっと厳密に言えば異なる世界からもサーヴァントは召喚され得る。
俺はマスターとは別の世界の仮面ライダーというわけだ」
「わかった。私自身ヘルヘイムから直接召喚されたのだから嫌でも信じざるを得ない話だ。
最後に確認するが、聖杯とはどんな願いも叶えられる万能の杯…これに間違いはないな?」
「勿論だ、現に死者である俺を一時とはいえ蘇らせるという有り得ない現象を起こしているんだからな。
それとマスター、俺からも一つ聞きたいことがある。
お前は勝ち残った後、聖杯に何を願うつもりなんだ?」

アーチャーの眼は半端な回答は許さない、という念が込められているようだ。
しばらくどう答えたものか、と逡巡する。

貴虎が胸に秘める願望を語るなら必然プロジェクトアークについても語らなければならなくなる。
人類の七分の六を抹殺するなどという狂気の沙汰をどう説明すれば良いものやら。
最悪この場でチームが空中分解することすら有り得る。
悩んだ末に出した結論は、答えられないということを正直に答えるというものだった。

「すまないが、今は全てを正直に語ることはできない。
今言えることは、聖杯戦争、そして聖杯は初めて私に与えられた絶望以外の可能性だということだ」


253 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:12:34 9qGkGl/w0

人の手では人類を十億人残す計画を打ち立てるのが精一杯だった。
これまでそれが最善の道なのだと必死に自らに言い聞かせてきた。
しかし。本当に願望器などというものが実在するのなら。
六十億よりも遥かに少ない、極少数の犠牲で全ての人類をヘルヘイムの脅威から救えるかもしれない。

勿論、聖杯にヘルヘイム全てを根絶する力がないということも有り得る。
あるいは、勝ち抜いたところで全てが徒労に終わる可能性とて無いとはいえない。
それでも可能性があるというのなら賭ける価値は十分にある。
まさしく、藁にも縋る思いだった。

「……そうか、わかった。今は深く詮索しないことにしよう」
「助かる。そういえば橘…、いやアーチャー、お前は聖杯に何を願うんだ?
私が話さなかったのだから、そちらも話さないということでも構わないが」
「……俺の願いは、ひどく個人的なことだ。
生前、世界と友を救った代償に人間をやめ、永遠に孤独な生を歩む羽目になった仲間がいた。
そいつを人間に戻してやりたくて生涯を研究に捧げたが、結局自分が人より長生きしただけに終わってしまった。
だから聖杯ならあるいはあいつを、剣崎を人間に戻してやれる方法を知っているんじゃないかと思ったんだ。
あいつはこんなことで人間に戻れて喜ぶような奴じゃないが…それでもこのままなんて、俺は嫌なんだ」

アーチャーは思う。
剣崎はもう生き続けることに疲れているんじゃないかと。
自分自身周りの誰よりも長生きし、多くの人に置いて行かれる立場になったからこそ余計に身につまされるのだ。

そして剣崎はそんな自分よりも遥かに長く生き、今も運命と戦い続けている。
もう、そんな過酷な人生から解き放たれても罰は当たらないだろう。

「俺は単なる意地や未練で仮面ライダーの名を汚そうとしている。
こんな、人間同士の殺し合いにしか解決する方法を見出せないんだからな」
「……私も似たようなものだ。
人間の自由と平和を守護する者。そんな戦士の称号は私には不似合いすぎる。
やはり私はアーマードライダーで良い。アーマードライダーの方が良い」

―――今しがたまで人類六十億を淘汰する計画を推し進めていた男が仮面ライダーなどと性質の悪い冗談にも程がある。

口には出せない苦い思いを噛みしめながら願う。


どうかこれから流される血が人類にとって意味ある犠牲の血であることを。


254 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:13:23 9qGkGl/w0
【クラス】
アーチャー

【真名】
橘朔也@仮面ライダー剣

【パラメータ】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:C 宝具:C+
(通常時)

筋力:D+ 耐久:D+ 敏捷:D 魔力:E 幸運:C 宝具:C+
(ギャレン・ノーマルフォーム時)

筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:B 魔力:E 幸運:C 宝具:C+
(ギャレン・ジャックフォーム時)

筋力:B+ 耐久:B+ 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具:C+
(ギャレン・キングフォーム時)

【属性】
秩序・善 


【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。
無効化はできずダメージを多少削減する。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


【保有スキル】
融合係数:B++(B−)
ライダーシステムで変身する仮面ライダーのみが持つ特殊スキル。ラウズカードに封印されたアンデッドとの適合度を示す。
融合係数は変身者の闘志や戦意、怒りによって上昇し筋力・耐久にプラスの補正を与える他、ラウズカードの効果を高める。
逆に迷いや恐れを抱くと低下し、本来の性能さえ発揮できなくなる。
アーチャーの場合は普段の融合係数はさほど高くないが、戦いを強く決意した時などは爆発的な高まりを見せる。

騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
生前目にしたことのある乗り物であれば乗りこなすことができるが、未知の乗り物には発揮されない。

科学知識:B
現代科学に対する理解の深さ。
人生の大半を研究に捧げたアーチャーは特に生物学と機械工学に秀でている。

人物眼:E
相対した人物の本質を見極めるスキル。
このランクではマイナススキルとして機能し、言葉による弁明や欺瞞に騙されやすい。
ただし生前アーチャーを騙した者がことごとく彼よりも早く死亡した逸話から「悪意・害意を以って」「意図的に」アーチャーを騙した者はアーチャーが生存している間永続的に幸運が1ランク低下し続ける。
また、このスキルはマスターに開示されることはなくアーチャー自身も認識していない。いわば隠しスキル。


255 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:14:09 9qGkGl/w0


【宝具】
『颯爽たる炎の射手(マスクドライダーギャレン)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
アーチャーが腰に巻くギャレンバックル、ラウズカード及び強化変身に使用するラウズアブソーバーを一セットとした装備の総称。
ギャレンバックル に、「CHANGE」のラウズカードを差し込んでから腰に宛がう事で、自動的にベルトが伸びて腰に装着される。
また変身する際カード状のエネルギーフィールドが展開され、適合者以外の触れたものを弾き飛ばす。
システムには自己修復機能が備わっており、ある程度ならば破損しても一定時間で再生するが魔力を消費する。
醒銃ギャレンラウザーを装備し、遠距離攻撃が可能だがアーチャーは生前近接戦闘で絶大な戦果を挙げた逸話から敵との距離が近づくほど射撃攻撃のダメージ数値が向上する。
このギャレンラウザーとラウズカードを組み合わせて戦い、場合によってカテゴリーJやカテゴリーKのカードを使った強化変身を行うのがアーチャーの基本戦術である。
宝具としての性質が科学に寄っているため性能はともかく神秘性は高くない。

『朽ち果てぬ絆(エレメンツ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大補足:1人
生前アンデッドと戦い抜いたアーチャーと仲間たちの絆が具現化した逸話型宝具。
絆を結んだ仲間の仮面ライダーを独立サーヴァントとして召喚し共に戦う。
ただしアンデッドである剣崎一真と相川始は未だ英霊の座に到達していないため実質呼び出せるのは上城睦月(仮面ライダーレンゲル)のみである。
またアーチャーの能力限界の都合上一度に最大一分間しか持続させることができず、呼び出されたレンゲルはラウズカード「リモートテイピア」を使用することができない。

【weapon】
「醒銃ギャレンラウザー」
ギャレン専用の銃型カードリーダーで、普段はギャレンの右腰のラウザーホルスターに収納されている。
零距離で連射し続ければ上級アンデッドも戦闘不能に追い込めるほど高い威力の弾丸を発射する。
ラウズカードを12枚まで収納可能なオープントレイが内蔵されている。
トレイを扇状に展開してカードを引き抜き、スラッシュ・リーダーにラウズすることでベスタの効果を発揮することができる。
またAP(アタックポイント)と呼ばれるラウズカードを使用するために必要なポイントが設定されており、魔力とは別に戦闘中はこちらも管理する必要がある。
ギャレンラウザーの初期APは5500。
ジャックフォームに強化変身すると銃口下部にディアマンテエッジが追加され銃剣となり、初期APも7900になる。
さらにキングフォームに強化変身するとより大型化したキングラウザーに変化、初期APも9500になる。

「ラウズアブソーバー」
ジャック、キングフォームへの強化変身に必要なパワーアップアイテム。
変身時に左腕のアームズシェルに標準装備され、内蔵された3つのカードトレイにカテゴリーJ・Q・Kのカードを収納する様になる。


256 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:14:48 9qGkGl/w0


【人物背景】
人類基盤史研究所BOARDに所属する主人公・剣崎一真の先輩。
真面目で正義感が強く誰よりも純粋な心を持つ男だが、他人の言動に左右されやすく、そのためピーコックアンデッドである伊坂やウルフアンデッドである新名、さらに広瀬義人(トライアルB)にまで利用されてしまう。
言い換えれば他者の意見を尊重する男であり、良くも悪くも自分を貫き通すのみのライダーの中で、周囲に気を配っている男であるため、睦月をスパイダーアンデッドの呪縛から解放させるために奔走するなど先輩らしい一面を見せる。
物語初期で体の不調を訴えており、本人はそれを急遽完成させたライダーシステムの弊害と思い込んでいたが、実際には橘の恐怖のビジョンが体にまで影響を及ぼしているためだった。一時期は、伊坂の副作用のあるシュルトケスナー藻で克服したが、後に支えだった恋人・小夜子を殺害され、怒りによってそれを完全に克服し伊坂を倒した。
その後は小夜子を失った責任を感じてギャレンの資格を放棄するが、レンゲルの登場とかつての先輩・桐生の暴走を目の当たりにし、眼を逸らしきれない正義感と桐生の遺言で戦線に復帰する。剣崎とは別行動をしつつも時に共闘するが、状況に振り回されながらも最終的には始を信じ続ける剣崎を信じ、始を守るため金居と戦い行方不明になるが、烏丸に助けられ無事だった。
戦いが終わった後は世界と始を救うためアンデッドとなった剣崎を人間に戻すための研究を続けていたが果たせぬまま没した。



【サーヴァントとしての願い】
優勝し、聖杯の力で剣崎を人間に戻す。
ただしそのために殺し合いをすることに対する迷いをまだ振り切れていない。


【マスター】
呉島貴虎@仮面ライダー鎧武
(参戦時期は少なくともゲネシスドライバー完成よりも前)

【マスターとしての願い】
聖杯の力でヘルヘイムの森の脅威を根絶する。
元々人類の七分の六を抹殺する計画の責任者だったこともあり、そのために殺し合いをすることへの迷いはない。

【weapon】
「戦極ドライバー」
アーマードライダー・斬月への変身に必要な変身ベルト。後述するロックシードを嵌め込むことで変身する。
最初に変身した者を登録するイニシャライズ機能があるため貴虎以外には使用できない。
その本質はヘルヘイムで人類が生き残るための生命維持装置であり、ヘルヘイムの果実をロックシードに変えてセットする事で栄養分を無害な形で取り込む事が出来る。
このため空腹感を感じることなく長時間活動できる他、この性質を利用してサーヴァントに安定的に魔力(生命力)を供給することができる。
とはいえ元々魔術師でない貴虎のマスター適性の低さを根本的に覆せるほどではない。
また貴虎の戦極ドライバーは無双セイバーと呼ばれる銃剣が標準装備されている。
貴虎自身の力量も相まってサーヴァントにすら通用する戦闘力を発揮する。
ただし通常兵器の域を出ないためサーヴァントに抗戦することはできてもダメージを通すことはできない。


257 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:15:26 9qGkGl/w0

「メロンロックシード」
斬月・メロンアームズへの変身に用いるロックシード。クラスはA。
このロックシードで変身するメロンアームズは専用装備の大盾・メロンディフェンダーと前述の無双セイバーによる攻撃と防御のバランスが取れた白兵戦を得意とする。
メロンディフェンダーには先端と両端に鋭い刃がついており、ブーメランのように相手へ投げつける投擲武器としても使える。
加えて格上であるゲネシスライダーやオーバーロードの攻撃を何度受け止めてもビクともしない強度を誇り、この性質上メロンアームズは比較的格上との戦いに向いている。
また、ある程度の高速移動能力も有している。
本来インベスと呼ばれる怪人を召喚する機能もあるがこの聖杯戦争では制限によりオミットされている。

「ヒマワリロックシード」
アーマードライダーへの変身には対応していないロックシード。クラスはD。
貴虎が緊急用に持ち歩いていた予備のロックシード。
メロンロックシードと同じくインベスを召喚することもできなくなっている。
しかし栄養補給機能は健在であるため平時はこちらを使いサーヴァントに魔力を供給することができる。

【能力・技能】
生身でゲネシスライダーの攻撃を受け止めるほどの身体能力を持つ他、崖から転落しようと海中に叩き落されようと生還する途轍もない生命力の持ち主でもある。
また全てのアーマードライダーでも随一の技量を誇り、本来覆すことが不可能であるはずの戦極ドライバーとゲネシスドライバーの性能差すら覆して勝利するほど。
ただし魔術師としての適性は皆無であるため戦極ドライバーを用いても一度にさほど多くの魔力を提供することはできない。
水道に例えれば水(供給源)は大量にあっても蛇口が非常に小さいため僅かずつしか水を出せない、というところ。


258 : 呉島貴虎&アーチャー ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:16:02 9qGkGl/w0

【人物背景】
ユグドラシルコーポレーション研究部門のプロジェクトリーダーであり呉島光実の実兄。一人称は「私」または「俺」。
主にプロジェクトマネジメントやヘルヘイムの森における研究班の護衛・インベス掃討を担当しており、物語開始以前から戦極ドライバーを用いて変身していた最初のアーマードライダー。
同僚の戦極凌馬とともに人体実験に等しいテスト運用を繰り返し戦極ドライバーを完成させた過去があり、右肩にドライバー暴走時に負った古傷が残っている。

ノブレス・オブリージュを地で行く責任感の強さの持ち主。寡黙でプライドが高く、遊びに興じる若者たるビートライダーズたちを「社会に貢献しないクズ共」と嘲っているものの、力なき者たちを護ることを義務としており悪戯に傷つけることはない。
実際には非情に徹しきれない、情に篤い性格でありプロジェクトアーク実現に対しても人類の七分の一しか救えないことを苦悩しており、大多数を切り捨てる罪を一身に背負う覚悟を固めている。

一方で不器用なまでにまっすぐな部分があり、野心を持たない潔白さが凌馬の失望を買い、弟を導こうとする姿勢が光実に強い束縛感を与えている。
また、自らの信頼とその対象を疑うことが出来ず、光実には「一番信用しちゃいけない相手ばかり信じ込む」と評されている。
実際に部下である凌馬、シド、湊耀子は貴虎に内密で「禁断の果実」を手に入れるため暗躍しているのだが彼は全く気がついていない。

【方針】
基本的には常に真正面から戦って優勝を狙う。
アーチャーがサーヴァントの足止めに成功さえすれば大抵のマスターは斬月の力で斬り伏せられる。
が、肝心のアーチャー自体が非常にムラの大きい、安定性の三文字とは無縁のサーヴァントであるため最悪この作戦すら成功しない可能性がある。
そんな時は貴虎がアーチャーを護衛し、立ち直るまでそっと見守る必要がある。
また貴虎、アーチャー共に極めて騙されやすい性格をしているため誤情報や同盟相手の裏切りへの耐性はほぼゼロに等しい。
また仮に戦力で圧倒したとしてもお互い魔術に関する知識に乏しいためあっさり足元を掬われることもある。
総じて真っ向から戦うタイプの敵には滅法強く、搦め手を使う相手には極端に弱い。チームとしての強さが非常に偏っている。


259 : ◆sIZM87PQDE :2014/12/22(月) 14:16:55 9qGkGl/w0
以上で投下を終了します


260 : ◆huhjqa4LDA :2014/12/22(月) 18:22:18 mE5YVLQM0
皆様投下乙です。
自分も投下させて頂きます。


261 : 東兎角&バーサーカー ◆huhjqa4LDA :2014/12/22(月) 18:23:50 mE5YVLQM0


懐かしい光景が目の前に広がっていた。

テーブルに向かう一人の女性の姿。
今はもういない、優しかった母さん。
肉親の為に必死に内職をして。
僕を養う為に必死にその身を削って。
母さんは、過労で倒れた。
帰らぬ人となった。

砂場で遊ぶ小さな子供がいた。
――――――僕だ。
何も知らなかった、純粋なかつての僕。
母の仕事の帰りを無心で待ち続ける僕。
僕は母さんからずっと教えられてきた。
誰かの為に尽くせる、優しい子になってくれと。

僕は皆を守る為に戦おうとしていた。
だけど、結局は何も守れなかった。
大切なものを天秤に掛けられず、結局は自分だけのことを考えていた。

母さんも、僕も、同じだった。
自分を削ってまで周りに尽くしたのは、優しいからじゃない。
誰かを失うことが怖かったから。
結局は、自分自身の為だけに頑張っていたんだ。

僕は、ずっと僕自身を守る為に戦っていた。

自分の性を悟ってしまった僕は。
一人ぼっちで、脳漿の記憶の隙間を彷徨い続けた。
時間の感覚なんてものは無い。
行く宛も無いまま、歩き続けた。



そして僕は、未知の光に触れた。



その時、僕は僕の未来を悟る。
ああ、そうか。
まだ僕■、休めない■か。
戦わ■ちゃ■■ないの■。
僕■力■あ■から、戦■なく■■ならな■。
何か■守■為■――――――――――



意識が狂気に浸されていく最中、僕は理解した。
強さこそが、力こそが、戦う運命そのものだということを。


262 : 東兎角&バーサーカー ◆huhjqa4LDA :2014/12/22(月) 18:24:32 mE5YVLQM0
◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆

少女―――――東兎角は、暗殺者だ。

暗殺者一族『東のアズマ』の一人娘。
幼い頃から暗殺者としての技術を徹底的に叩き込まれた。
暗殺者の養成学校においても周囲が一目置く程の能力を備えていた。
そんな彼女の運命を変えたのはとある学園への編入だった。

ミョウジョウ学園、10年黒組。
暗殺者の集められた特別クラス。
黒組に混じっている『標的』を暗殺した者には望む報酬が一つ与えられる。

だが、兎角は『標的』を、一ノ瀬晴を守る為に戦った。

何故守ろうとしたのか、当初は兎角自身も解らなかった。
だが、彼女は次第に自分が晴に惹かれていることに気付き始めた。
日向の世界の存在である晴を守ることを固く決心していた。

そんな中、兎角は一つの真実を知る。
晴が「他者を無意識に魅了し、惹き付ける」――――女王蜂の能力を持つということを。
晴は疑念を抱いた。兎角はその能力に操られ、自分を守っていたのではないかと。
兎角自身もまた同様。自分が晴の操り人形に過ぎなかったのではないかと、疑念を抱いた。

そして、兎角は決断した―――――晴の暗殺を。

自らの手で晴を殺害する。
それこそがたった一つの道であった。
自分が晴を守ったのは、自分自身の意思であるという証明の為の。
真に操られているのならば、自分は晴を殺すことが出来ない。

兎角は、自分自身の信念の為に暗殺を決行し。
暗殺を完遂した。
晴への想いを、心の底から自覚した。

『おめでとう東兎角さん。貴女が黒組の勝者となりました』

黒組の主催者である理事長の賞讃の言葉が耳に入る。
『標的』を、一ノ瀬晴の暗殺に成功した。
東兎角は、黒組の勝者となった。

だが、もう兎角の望みは。
彼女が最後にたった一つだけ抱いた願いは。


『もう叶わない。私の、願いは――――――――――』


初めて抱いた、一人の少女としての感情。
止め処ない涙で視界が歪む最中。
兎角は、『紅い満月」を目の当たりにした。


263 : 東兎角&バーサーカー ◆huhjqa4LDA :2014/12/22(月) 18:25:32 mE5YVLQM0

故に彼女は、この舞台へと降り立つ。
兎角の目の前に立っていたのは、一人の少年だった。
辿ってきた運命を否応無しに想起させる白い髪。
内なる姿を隠すかのような眼帯のマスク。
禍々しくもどこか疲弊した、赫色の瞳。

兎角がその姿から連想したのは、刃だ。
自分と同じ、戦うことを定められた剣。
戦いの宿命から、運命から逃れることを許されない―――――一振りの刃。

「お前が、私のサーヴァントだな」

兎角は確認する様にそう呟く。
相対する少年は何も答えない。
否、答えられる程の思考能力を持たない。

バーサーカー。
『狂戦士』のサーヴァント。

聖杯の知識によって情報は得ていた。
彼らは理性の多くを奪われ、意思疎通の能力を失っている。
目の前に立つ少年もまた例外ではないらしい。
彼の返答が返って来ないのも兎角の予想通りであった。
故に兎角は意に介さず、自らの決意を改めて固める。

兎角の願いはただ一つ。
一ノ瀬晴を救うこと。

自らの手で命を奪った少女を救う。
それこそが暗殺者の抱いた、たった一つの願い。
自分自身の為に戦うことを決意した、少女の祈り。

故に必要以上の言葉は交わさない。
そんなものは必要ない。
自分は戦える。目の前の少年も戦う意志を備えている。
ただそれだけで十分だ。

――――私は己の為に戦う。

迷いは無い。躊躇など無い。
自分はもう人を殺せる。
既にこの手で、彼女を『殺した』のだから。
覚悟はとうに、出来ている。



「――――――勝つぞ、バーサーカー」



暗殺者の瞳に、決意/殺意の焔が灯った。


264 : 東兎角&バーサーカー ◆huhjqa4LDA :2014/12/22(月) 18:26:13 mE5YVLQM0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
金木 研(カネキ ケン)@東京喰種

【ステータス】
筋力C+ 耐久D 敏捷B+ 魔力E 幸運E 宝具D

【属性】
中立・狂

【クラススキル】
狂化:D++
筋力と敏捷のパラメーターを1ランクアップさせるが、
言語能力の多くを失い、複雑な思考が難しくなる。

【保有スキル】
喰種:B++
人を喰らって生きる怪人、喰種(グール)。
カネキは人間から喰種へと転じた極めて異質な存在である。
そのため喰種特有の『赫眼』が左目のみに発現している。
人間を凌駕する生命力、再生能力、身体能力を兼ね備える。
また人間を生命の糧とし、人肉を喰らうことで再生能力および身体能力の向上・魔力の回復が行える。
その代わり珈琲以外の人間の飲食に対し極めて強い拒絶反応を抱く様になる。

見切り:B
敵の攻撃に対する回避の成功率がアップする。
敏捷値に若干の補正も与えられる。

戦闘続行:B
喰種としての強靭な生命力。
瀕死の重傷を負ってなお戦闘を行うことが可能。
ある程度の苦痛に対する耐性も兼ねている。

精神汚染:E(A++)
喰種と人間、双方の精神と肉体を兼ね備える歪な存在。
通常時はEランクだが、カネキの精神状態によって変動を繰り返す。
後述の宝具「百足」の解放時にのみランクがA++まで上昇する。

【宝具】
「暴食の牙(リゼ)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:10
喰種の持つRc細胞によって形成される補食器官「赫子(かぐね)」。
種別は攻撃力と再生能力に特化した「鱗赫(りんかく)」。
カネキの腰の部分より伸びる複数の鉤爪状の触手として形成される。
赫子はカネキの意思で自在に動き、あらゆる敵を無慈悲に引き裂く。
この宝具はカネキの喰種としての力と意識を引き出す為、発動中は精神汚染スキルのランクが上昇しやすくなる。

「百足(ムカデ)」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:10
喰種同士の共食いを行った者が稀に発現する進化形態「赫者」としての能力。
右腕に百足を連想させる獰猛な赫子を形成し、全身に赫子と同じRc細胞による装甲を身に纏う。
更に筋力・敏捷を1ランクアップさせる。
凄まじい機動力と回避能力、そして百足の赫子を駆使し、眼前の敵を徹底的に攻撃する。
しかしこの宝具の発動時には精神汚染スキルのランクがA++まで上昇。
唯でさえ不安定なカネキの精神は凄まじい勢いで暴走、荒廃していく。

【weapon】
宝具及び喰種としての身体能力。

【人物背景】
上井大学国文科の大学一年生。東京の20区で一人暮らしをしている。
読書好きの大人しい性格。内気で優柔不断な一面も。
自己犠牲精神とも言える優しさを持ち、全てを一人で抱え込む傾向が多い。

元々は普通の人間だったが、喰種の臓器を移植されたことで半喰種となってしまう。
当初は自らの喰種としての性を必死に否定していたが、
喫茶店「あんていく」の店長・芳村や霧島トーカなど他の喰種との交流を経て
「喰種と人間の双方の世界にいる者」として生き方を模索する様になる。

作中中盤、喰種集団「アオギリの樹」幹部であるヤモリから受けた凄惨な拷問を経て喰種として覚醒。
ヤモリの撃破後は「あんていく」の面々に別れを告げ、20区を去る。
その後の半年間は仲間の喰種達と行動を共にしていたが、トーカとの再会等をきっかけに「あんていく」へ戻ることを宣言。
しかし「あんていく」が喰種捜査官に侵攻されていることを知り、カネキは戦いの渦中に飛び込む。
喰種捜査官を次々と戦闘不能にしていくも、最強の喰種捜査官である有馬の前に完敗。
散っていく中で「今まで他人の為ではなく、自分自身を守る為に戦っていた」という自らの性を悟った。

【サーヴァントとしての願い】
――――――。

【方針】
戦う。


265 : 東兎角&バーサーカー ◆huhjqa4LDA :2014/12/22(月) 18:26:59 mE5YVLQM0

【マスター】
東兎角@悪魔のリドル

【マスターとしての願い】
一ノ瀬晴を救う。

【weapon】
ナイフ:近接戦闘用のナイフ。
投げナイフ:投擲用のナイフ。複数本所持。
仕込みスタンガン:ブーツの踵に仕込まれたスタンガン。

【能力・技能】
暗殺者としての卓越した技能を備える。
身体能力に優れ、刃物や銃器の扱いに長ける。
戦闘で用いるのは主にナイフ等の身軽な武器。
「人を殺せない呪い」を克服している為、殺人は問題なく遂行可能。
ただし能力的には常人の範疇に過ぎない。

【人物背景】
「東のアズマ」と呼ばれる暗殺者一族の娘。15歳。
暗殺者の養成学校である私立17学園からミョウジョウ学園の10年黒組に転入した。
暗殺者が集められた黒組にて『標的』である一ノ瀬晴に惹かれ、彼女を護る為に戦う決意をする。
性格は冷静沈着で馴れ合いを好まず、ぶっきらぼうな一面も目立つ。

晴と共に黒組の暗殺者達を退け続けたが、
作中終盤に晴が「他者を無意識に魅了し惹き付ける能力」の持ち主であることが判明。
兎角が自分を護ってくれたのは能力に操られていた為ではないかという晴の疑念を払うべく、
そして自らの意思を照明すべく兎角は晴の暗殺を決意する。
己の手で晴の心臓にナイフを突き立て、晴を護ろうとしたのは本心であることを証明した。

晴を殺害し、『黒組の勝者』となった直後に紅い満月に導かれた。
アニメ版において晴は奇跡的に生還しており、所謂パラレルルート。

【方針】
あらゆる手段を駆使して勝つ。
暗殺、闇討ち、奇襲、どんな手も厭わない。


266 : 名無しさん :2014/12/22(月) 18:27:15 mE5YVLQM0
投下終了です。


267 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/23(火) 01:27:07 4l1bHA3o0
投下します。


268 : 森沢優&キャスター ◆CKro7V0jEc :2014/12/23(火) 01:27:36 4l1bHA3o0



 諸君! この二人の女の子をおぼえているだろうか!

「あーあ、困っちゃうなぁ」
「まったくよねー、困っちゃうわー」
「聖杯戦争なんて言われたって、こっちも叶えたい願いなんてないよぅ……」

 なんて、困っているの青い髪の女の子は森沢優ちゃん。
 そんなに困っていない方のピンクの髪の女の子はそのサーヴァントの≪キャスター≫ミンキーモモである。

 なんとなんと、この二人の乙女も、東京を舞台にしたこの聖杯戦争に巻き込まれてしまっていたのだっ!

 もし、知らないという人がいたら、その人たちの為に教えてあげよう。
 説明がいらないという人は、次のセリフのところまで飛ばしてほしい。

 森沢優は、東京都国立市くりみヶ丘でクレープ屋を営む森沢家の一人っ子である。
 私立セントレミー学園小等部に通っている、自由奔放を絵に描いたような女の子だ。
 ある日、魔法世界「フェザースター」の箱舟を見た優ちゃんは、な、な、な、なんと! 魔法のステッキを授かって、魔法が使えるようになってしまったのである!
 魔法の天使クリィミーマミとなった優ちゃんは、新宿でアイドルとしてスカウトされてしまう。
 アイドル・クリィミーマミと森沢優としての二重生活を送っている彼女は、時に悩みながらもたくさんの人に歌と希望を与えていくのが彼女の昨日までの物語。

 一方、ミンキーモモは、空にある夢の国「フェナリナーサ」から来たプリンセス。
 地球では、ペットショップ兼獣医さんの記憶を改竄して、その娘として暮らしている。
 でも、そうやって周囲を巻き込みながらも最後にはみんな笑顔にしちゃうのがこのモモという女の子なのだ。
 好奇心旺盛で元気爆発! 魔法の呪文で18歳の女の子になって色んな事件を解決して、夢を与えていくのが彼女の使命である。

 二人とも、たまに挫折したり、悩んだりするけど、前を向いて自分の持つ魔法と向き合っている。
 願いは自分の力で叶える物だっていう事を、誰よりもよく知ってるし、世の中がそんな魔法みたいにうまくいくものじゃないと誰よりもよーく知っているのだ。

 だから、二人は聖杯戦争なんて大っっっ嫌い! ニンジンよりも、ピーマンよりも、シイタケよりも、聖杯と戦争が嫌いだ。
 たまーに悲しい事もあるけれど、楽しくて楽しくてたまらないいつもの日常が、二人は大好きで、またそういう日常に帰りたいと思っているんだ。

「この聖杯戦争のお陰で原宿に引っ越す事になっちゃったし、しばらく好きな人とも会えないなぁ」
「へー、優ちゃん。好きな男の子いるの。ねえねえ、今度紹介してよ」

 二人は女の子同士の話を始める。
 まだ11歳だからね、仕方ないね。


269 : 森沢優&キャスター ◆CKro7V0jEc :2014/12/23(火) 01:27:49 4l1bHA3o0

「だめーっ! 俊夫の事なんてぜーったい教えてやんないっ!」
「えへへー、俊夫くんっていうんだ。優ちゃんの好きな子」

 聞いちゃった聞いちゃった、とはやしたてるキャスター。
 ついうっかり好きな人の名前を口にしてしまった優は、顔を真っ赤に染め上げて怒った。

「こらーっ! キャスター。そんな事言ってると、マリョクキョーキューしてやんないぞぉ」
「えー、それは困っちゃうなあー」
「えっへん! もしこれからもマリョクキョーキューして欲しければ、私の事は優さまと呼べ―っ」
「ははーっ、優さまーっ!」

 ……先が思いやられる二人である。
 でも、こんな事を言って、二人でえへへと笑って、また元の仲良しに戻るのが10歳の女の子だ。



「……あーあ。でも、俊夫だって、もうちょっと悲しそうな顔して見送ってくれたっていいのになぁ」

 優もちょっぴりセンチな気分になり始める。
 この間の引っ越しの日の事を思い出したのだ。

 彼女のブルーの原因は、幼馴染の大伴俊夫。
 優よりちょっと年上だけど、とっても優しい男の子だ。優をいつもからかっているけど、彼も本当は優しくて優の事が大好きなのだ。
 そんな彼が、引っ越しの日には、あんまりにも冷めた態度で優を見送った。優の事が大好きなはずの、俊夫のお友達のみどりくんも、そうだった。

 ……なんでだろう。
 そういう記憶が今の優の中にはあった。
 でも、不思議がるよりも怒りがこみあげてくる。

 確かに、優の家があったところから今の優の家は近いし、マミのコンサートがあれば俊夫は絶対に来るだろう。
 でも、いくら頻繁に会えるとはいっても、前みたいに毎日会って喧嘩したり遊んだりできなくなってしまうんだ。
 あんな形でお別れでいいのかな……。優は悩む。

「ねえ、優ちゃん。俊夫くんってそんなにヒドい奴なの?」
「そうなのっ! 俊夫って、 す っ っ っ ご い ヒドイヤツなの! この前だって、私の事、キュラソ星人って言ったのよー!」
「キュラソ星人! まあ、そんなヒドい事言ったの!?」

 キャスターも、髪型がビラ星人みたいだからって、ビラ星人だなんて言われたら顔を真っ赤にして怒るだろう。

「ね? ひどいでしょー」
「全く、優ちゃんにキュラソ星人なんてヒドすぎるんだわー! 抗議しましょう! 裁判所に訴えましょう! いっそもう別の男に乗り換えちゃえーっ!」

 男の子の話になると、だんだん、ヒートアップする二人だった。

「じゃあ、もういっそ、聖杯で俊夫をすっっっごい優しくてかっこいい男に変えてやっかー」
「そうしちゃえ、そうしちゃえーっ!」

 こうなったらもう二人は止められない。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


270 : 森沢優&キャスター ◆CKro7V0jEc :2014/12/23(火) 01:28:11 4l1bHA3o0



「……キョーボーなヤツら」

 優のフードに潜っていたオスネコが、ひっそり愚痴を呟いた。
 優は二匹の猫の形をした妖精を飼って(?)いた。彼らも優のついでに連れて来られたのだ。
 一匹は、楽天的なメスネコのポジ、もう一匹がこの皮肉屋なオスネコのポジだ。

「ねえ、ネガ。本当に聖杯なんてあるのかしら?」

 ポジがネガにきいた。
 すると、ネガが答えた。

「あるわけねえだろ。そう簡単に魔法で願いが叶ったらこっちだって苦労しないの」
「そうよねぇ……本当ならロマンチックなんだけど……。でも、二人で戦わないといけないのは駄目ね」
「全く、聖杯だとか戦争だとか、厄介な事してくれるよな。……俺知ーらねっと」



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 やっと落ち着いた優とキャスター。
 のんびりと、これからの方針を考える。

「……でも、やっぱり聖杯戦争なんてやりたくないよねぇ」
「魔法だって誰かの夢を叶える事はできないもん。聖杯なんて嘘だよ」
「そうだよねぇ。……やーっぱ、みんな自分の力で夢を叶えてるんだし」

 優とキャスターは、これまでにあった色々な出来事を思い出した。
 そう、二人は、「夢は自分自身の力で叶えるもの」である事も、「魔法も本当は全然役に立たない」という事もよく知っているのだ。

「ほらポジ、こいつらも意外とシビアだぞ」
「黙ってなさい!」

 ネガの皮肉とポジのつっこみが優のフードの中で行われた。
 しかし、そんな漫才にも優は気づかずに溜息をつく。

「あーあ、戦いたくないなぁ。くりみヶ丘に帰りたいよぉ……」

 優が少し項垂れた。
 そんな優の姿を見て、キャスターは黙り込む。
 こんな時、サーヴァントとしてどんな声をかけてあげればいいだろう。

 しかし、迷っていても仕方がない!
 根拠はないが、キャスターはすぐに優を慰めた。

「大丈夫! あたしがなんとかしたげる」

 どん! と胸を張ってキャスターが言う。
 そんなキャスターの姿を、優は心配そうに見つめた。

「本当に大丈夫かなぁ」
「大丈夫。このミンキーモモの手にかかれば、なるようになーる!」


271 : 森沢優&キャスター ◆CKro7V0jEc :2014/12/23(火) 01:29:04 4l1bHA3o0



【クラス】
キャスター

【真名】
ミンキーモモ@魔法のプリンセス ミンキーモモ(1982年版)

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力A+ 幸運E 宝具A+

【クラス別スキル】
陣地作成:B
 魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
道具作成:A+
 魔力を帯びた器具を作成可能。
 結構なんでもちょちょいのちょいで作っている様子が見られる。

【固有スキル】
情報抹消:B
 キャスター対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。
 例え戦闘が白昼堂々でも効果は変わらない。これに対抗するには、現場に残った証拠から論理と分析により正体を導きださねばならない。
フェナリナーサ式魔法:B
 魔術よりも現実性が希薄な魔力運用方法。このスキルの魔力供給は人間の「夢」によって強度が変わる。
 現在の値はBであるが、NPCや参加者の「夢」の力が必要であり、上昇・下降も考えられる(本来ならば地球上の物が有効)。
 ただし、人の夢を叶えたり、生命の法則を覆したりはできない。

【宝具】
『魔法の装飾品(ミンキーモモペンダント)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜99
 キャスターの強力な魔力、及びそのスキルの供給源。
 この宝具がある限り、キャスターは通常の魔術師以上の魔力を使用でき、魔術の範疇を超えた運用も可能となる。
 キャスター自身も潜在的な魔力を有しているが、大部分はこの宝具に依る為、これが破壊されると魔法が使用できなくなってしまう。
 また、地球上に存在する「夢」によって、維持される為、「夢」の力が弱くなるほどその耐久性は脆くなる。

『大人の階段(アダルトタッチ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:─ 最大捕捉:─
 『魔法の装飾品(ミンキーモモペンダント)』を運用し、あらゆる能力を持つあらゆる職業を獲得する宝具。
 この宝具の使用によって身体年齢は18歳に変わる。その際に変身できる職業は任意。
 また、一時的にパラメーターの上昇やスキルの増加が行われる。

『夢の国の車(グルメポッポ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1〜5人
 キャンピングカーを模した宝具。
 キャスターの移動手段であり、自動車としてもヘリコプターとしても使用できる。
 キャスターの外見年齢は10歳くらいのはずだが、キャスター自身の記憶操作によって、公道で運転していても誰かに何か言われる事はない。
 地球上に存在する「夢」によって作られている為、それが喪失されると消滅する。

【Weapon】
 『魔法の装飾品(ミンキーモモペンダント)』
 『夢の国の車(グルメポッポ)』

【人物背景】
 夢の国フェナリナーサから、地球に来たプリンセス。
 その出自から驚異的な魔力を先天的に持っており、指先一本で簡単に道具を出したり、人間の記憶を改竄したりできる。
 地球に来た際は、「どこかの国のどこかの町」でペットショップを営む子供のいない夫婦のもとに勝手に記憶を改竄して「娘」として介入。
 以後、その家で暮らす。
 主にヤクザや地上げ屋、暴走族、核攻撃などのやたら現実的な脅威と戦った逸話が有名。
 そんな日々の中で、「夢は与える物ではなく自分で持つ物だ」と気づき、モモ自身も成長していく。
 最終的には、魔法の限界にぶつかった挙句、ペンダントを銃撃されて破壊されて魔法を失い、交通事故で死亡する為、幸運値はとても低い。
 死後は、自分自身の本当の夢を抱きながら、地球での両親の本当の子として生まれ変わった。
 ちなみに、よく似ているハマーン・カーンとは関係ない。

【サーヴァントとしての願い】
 ない。願いや夢は自分の力で叶えていくもの、あるいは時として絶対に叶わないものだから。

【方針】
 なるようになる。


272 : 森沢優&キャスター ◆CKro7V0jEc :2014/12/23(火) 01:29:22 4l1bHA3o0



【マスター】
森沢優@魔法の天使クリィミーマミ

【マスターとしての願い】
 ない。願いや夢は自分の力で叶えていくもの、あるいは時として絶対に叶わないものだから。

【weapon】
 ポジ、ネガ
 ルミナスター

【能力・技能】
 クリィミーマミに変身できる(その際、肉体年齢は14歳になり、魔法の運用ができる)

【人物背景】
 私立セントレミー学園小等部。1973年10月10日生まれ。10歳→11歳。
 両親は東京都国立市のくりみヶ丘でクレープ屋「クリィミー」を経営しており、自身も店を手伝っている。
 魔法世界「フェザースター」の妖精・ピノピノが乗る箱舟を助けたことから1年間だけ魔法をもらい、クリィミーマミに変身する事になった少女。
 新宿で変身した際に芸能界にスカウトされ、歌手・クリィミーマミとしてデビューした後は、優とマミの二重生活が始まる。
 更に、優が好意を抱く幼馴染の俊夫がマミにメロメロになるという「二人だけの三角関係」が勃発。
 自由奔放で心優しい性格であるが、マミとして芸能界の仕事をする中で成長し、同世代の女の子よりも少し大人びている。
 夢を失った人間には見えない「フェザースター」が見える事から、強い「夢」の資質を持っていると推定され、キャスターとの相性は高い。

【方針】
 困っちゃうなぁ。


273 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/23(火) 01:29:38 4l1bHA3o0
以上で投下を終了します。


274 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:13:35 hh59W9DM0
カワイイカワイイ輿水幸子ちゃんの登場話、投下します


275 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:14:05 hh59W9DM0
     七年前のあの日。

     宇宙がちっぽけな落とし物をしたせいで

     ■■は、一人ぼっちになった。



     渋谷の街は、瓦礫の山になって

     ■■の心にも ちっぽけな穴が開いた

     でも、宇宙の落し物は、それだけじゃなかったんだ。


276 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:14:52 hh59W9DM0
  その姿はまるで、五体を投げ打ち神に祈りを捧げている信徒のようで。
  その姿はまるで、太陽の光から必死に逃げようとする闇の怪物のようで。
  そしてその姿はまるで、生きる方法を忘れてしまった死体のようで。

  右袖の破れた漆黒のコート。
  薄汚れたタンクトップ。
  銀のネックレス。
  整った顔立ち、眠るように優しく閉じられた瞼。

  河川敷、橋の下。
  湿った地面に横たわる、死体のような男。

  男は生きている。
  まだ、生きている。

「またそんな格好して!」

  男に対して声がかけられる。
  甲高い声。自信にあふれた少女の声。
  どこか育ちの良さを思わせるような声。
  男の目がようやく開き、夢の続きを唄うようにこう呟いた。

「……輿水か」

「輿水か、じゃないですよ! 毎回毎回、不審者に間違われたらどうするつもりですか!!」

  『輿水』と呼ばれた少女に手を引かれ無理やり体を起こされる。
  筋肉が悲鳴をあげ、関節が痛みを発する。
  這いつくばった地面に逃げる熱の心地悪さ。
  体に触れていた小石の刺々しさ。
  口に広がる土の味。

  まだ、惨めに生きている。
  まだ、地獄には程遠い。

  まどろみにも似た、靄の掛かった意識の中で、矢車想は逃げようのない生の感触を噛み締めた。


277 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:15:29 hh59W9DM0
「そもそも、貴方だって何かお願いがあって聖杯戦争に参加したんでしょう?
 なのになんでそんなに無気力なんですか! もう少し、やる気ってものをですね……」

  輿水が小言を言いながら矢車の体についた泥を払う。
  口にするのは、『聖杯戦争』という聞きなれない単語。
  聞きなれないが、記憶はある。
  聖杯戦争とはつまり、願いを叶えるための争い。
  それぞれが胸の内に秘めた希望を抱いて挑み、その大半が希望を叶えることなく散っていく、眩い光の墓場。

「……願い、か」

  矢車にも大きな願いはあった。
  しかし、その願いが叶うことはない。
  矢車の相棒―――影山の手は、もう光には届かないから。
  彼自身がその手で、その未来へ至る道を潰してしまったから。

『……俺は、兄貴も知らない暗闇を知ってしまった。
 連れて行って欲しかったけどさ、俺はもう一生この暗闇から出れないよ……』

  弟と呼んだ男の姿が変わる。  
  肩を寄せて生きた友が化ける。
  忌まわしき敵の姿へと変化する。

  神様はつくづく、矢車のことが嫌いらしい。
  アンカージャッキにタキオン粒子が流れ込み、エネルギーが暗闇の倉庫群を眩く彩る。
  ジャッキがガシャンと音を立てて伸び、どこまでも広がる漆黒の空へと飛び上がる。
  化け物との、ワームとの、ワームに変わってしまった弟との決着をつけるために。

  高く、高く、舞い上がり。
  夜の闇を切り裂いて舞い上がり。
  位置エネルギーが最大になり、脚に力を込めて一気に飛び降りる寸前。
  矢車の複眼に移ったのは、そこにあるはずのない紅い月。

  輝く月を見上げて思うことは一つ。
  出来ることなら、影山と共に。
  世界で一番眩い夜を、世界で一番優しい太陽を見に行きたかった。
  自分たちのようなはぐれものでも掴める光があると知りたかった。
  二人で誰にも汚されない光を掴み、少しだけでいいから救われたかった。

―――矢車想の願いは一つ、『影山と共に白夜を見に行くこと』
   ムーンセル・オートマトンもそう記憶・記録し、矢車想を導いた。
   その直後、矢車が自らの手でその願いの根幹を叩き折ったとは露知らず。

  電子音声。衝突。破裂音。
  彼の最後の感覚は、その三つ。
  彼の最後の記憶は、たった二つ。
  『ほんのちっぽけな願いすら叶えられなかった無念』と、『弟を失った虚無感』。
  たったそれだけの思いが、矢車想の最後だった。


278 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:16:00 hh59W9DM0
「お前は、あるのか」

  小さな体で一生懸命胸を張る輿水を見ながら、訊ねる。

「ボクですか? モチロンですよ! ボクの願いは、トップアイドルになることです!!」

  トップアイドル。
  万能の観測機に願うには、あまりにもちっぽけな望み。
  ただ、本人にとっては変えようのない、眩いばかりの夢。

「……俺には、お前すら眩しい」

  願いを持つ者は、こんなにも輝いている。
  太陽の光を受けて月が輝きを放つように。
  きっとこのムーンセル・オートマトンも、人の願いを受けて眩く光輝いていることだろう。

  だとすれば、ここは最悪だ。
  更に深い闇の中に落ちてしまった弟を救えなかった報いが、聖杯戦争への参加だとしたら。
  身を焼きつくすほどに眩い『願い』という光の中へ身を投じることだとしたら。
  矢車を罰するのにここより最適な場所はないだろう。

  現実世界よりも眩い光から逃げるように、矢車は高架下へと移動し、そこで横たわった。
  この世界は、矢車にとって眩しすぎる。木漏れ日すらも、目を焼きかねない。

  しかし、この世界はそんなちっぽけな逃避すらも許してはくれない。
  突如目の前に現れた少女は、矢車を必死に日向の道へと引きずり出そうとする。
  抵抗する気力もない矢車を引き連れては、眩い光の中に放り込んでいく。
  まるで地獄で罪人の様子を見張る悪魔のように。何度でも、何度でも、光の世界へ引きずり出す。

  そんな悪魔の様な少女、輿水幸子は特に気にせずいつもの調子でこう言った。

「当然ですね。ボクはカワイイですから!」


279 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:16:24 hh59W9DM0
  矢車が再び大地に身を投げ出した。
  何も考えることはない。
  願いがどうとか、望みがどうとか、そんな輝かしい未来には感慨もない。
  他人の光に炙られながら、死ぬ思いをして手に入れたい夢もない。

  このままずっと埋もれていくことができれば、それでいい。
  闇の中でもぼんやりと浮かぶ、叢雲に霞む月程の明かりがあれば、それでいい。
  再びゆっくり目を閉じて、大きく息を吐く。

「それより、そろそろボク、ライブに行きたいんですけど」

「……勝手にしろ」

「勝手にしたいのは山々ですけど、最初に言ったでしょう。他の人たちはボクたちの事情を考えてくれないんです!
 ボクと貴方が離れてたらそれこそいい的じゃないですか!!」

  輿水がぷりぷり怒る。
  聖杯戦争は、マスターとサーヴァントの二人で行う。
  どちらが欠けてもその場で失格となり、原則としてもう一人も消滅する。
  輿水と矢車も、その例に漏れない。
  二人が望まぬ主従の契りを結んだその日から、運命共同体として生きていくことになった。

  矢車が死ねば、輿水も死ぬ。
  輿水が死ねば、矢車も死ぬ。

  あっけなく終わる。夢も希望もなく終わる。あの時二人で描いた白夜への理想と同様、跡形もなく崩れ去る。

「輿水」

「なんですか?」

「何かあったら念話で呼べ。俺には、ここがお似合いだろう」

「貴方はなんでそう無気力なんですか!」

  どうせ叶わない願いを呟く。
  停滞、風化、消滅。闇の中で這いつくばり、眩い光へ思いを馳せる。
  こんなちっぽけな願いすらも、今の矢車にとっては高望みでしかない。  
  矢車は再び大きく、大きく息を吐いた。


280 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:17:13 hh59W9DM0
  輿水がもう一度矢車の腕を引き、今度は彼が両足で立つまで引っ張り上げた。
  頭一つ分身長の違う矢車を見上げながら、輿水は彼の腕を引きこう続ける。

「ほら行きますよ。矢車さん!! あと、輿水って呼ぶのやめてください! それ、一応真名なんですからね!!」

  真名。サーヴァントの生前の名前を示すもの。
  輿水とは、少女・輿水幸子が人間であった時の、英雄となり名を残した時の名前。
  サーヴァントは、特にキャスターは、その中でも特殊な英霊である輿水幸子は、自身の真名を秘匿し、手の内を隠すことが重要になる。
  自身の戦術の核たる陣地に付いて気取られないために。
  この聖杯戦争で真名がバレれば、大きなウィークポイントとなり得る情報を渡してしまう。
  だいぶ曲者な性能である輿水にとってそれは避けたいところらしい。

「可愛いボクの名前を呼びたいのはわかりますけど、クラス名でお願いします! ボクのクラス名、覚えてますか?」

「……キャスター」

「そう、それです! 今後はそれでおねがいしますね! 絶対ですよ! じゃあ行きますしょう、カワイイボクの初ライブです!!」

  日の光の下へ。
  眩い世界へ。
  逃れようのない表舞台へ。
  再び引きずり出される。

「ところで矢車さん。ライブするのは決まりとして、その後どうしますか?」

「任せた」

「……まかせた、って……普通はマスターが方針を考えるものなんですけど」

  これといった方針はない。
  矢車としてはこの高架下で、光から逃げることができるならばそれでいい。
  それでも何か他のことをしなければいけないすれば、零れ落ちた光の残滓に会いに行くくらいだ。

  表舞台のスポットライトからあぶれ、闇に落ちてしまった願い。
  いずれは闇に飲み込まれ、その存在を霧散させる光。
  矢車でも直視できる、新たな闇の住人。
  願いを手放さざるを得なかった、悲しい悲しい敗北者。

  彼らと出逢えば、矢車は再び、淡い光へと歩き出せるかもしれない。
  失ってしまった影山の影を求めるように、彼らを求める。
  矢車の心の闇を理解してくれる、本当の意味でのパートナーを求める。
  ただ、今はまだその時ではない。

「……今はまだ、眩しすぎる」

  今はただ、この地獄の底で、再び目覚めの時を待つ。
  高架下の影を抜け、眩い光が目に入る。
  矢車は少しだけ目を細めて、キャスターに手をひかれながら表舞台へと帰っていった。


281 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:17:53 hh59W9DM0
【クラス】
キャスター

【真名】
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷EX 魔力EX 幸運A 宝具E

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
陣地作成:EX
自らに有利な陣地を作成できる。
キャスターの陣地は『ファンの心の中』に作成され、キャスターの強さは『エリア内のファンの人数』よって決まる。
ファンが増えるほどキャスターの知名度はあがり、彼女がトップアイドルに近づくことになる。
そして彼女がトップアイドルに近づくほどに、彼女の『アイドル』としての存在感は高まり、ステージ上での魔力が増え、宝具の効果が上がる。
ただし、キャスターが陣地作成を行うためにはファンになり得る人物に宝具である歌を聞かせなければならない。
つまり陣地作成中に人目につく場所で宝具を展開するため参加者と出会う・襲撃される可能性が極めて高く危険がつきまとう。
ちなみにこの陣地作成は他のマスター・サーヴァントに対しても有効であり、彼らをファンにしてもNPC同等の効果が得られる。

会場設営:D
どこであろうとマイクとスピーカー付きのライブバトル用の小規模ステージを呼び出すことが出来る。
彼女はこのステージの上に乗っている間、自身の『アイドル』としての存在感を魔力に転じさせることができる。

【保有スキル】
アイドル:C
Cランクアイドルである。
アイドルマスター世界でのCランクアイドルはいわゆる『人気アイドル』であり武道館ライブが出来るくらいの知名度・人気がある。
相応の『魅了』と『カリスマ』のスキルを併せ持つ。
更にアイドルスキルを持つ者は自身のアイドルとしての存在感によって魔力値が上下する。
キャスターは通常状態で魔力:C程度であり、陣地の状態によってAにもEにも変化する。

溢れ出る自信:A
自身に満ちている。
彼女の自信は他者に伝搬し、戦闘中彼女の仲間に『勇猛:A〜E』のスキルを付与する。

虚勢の天才:B-
図に乗り、調子をこき、虚勢を張ることに定評があるアイドル。
虚勢の結果で追い詰められれば追い詰められるほど腹をくくり、魔力と幸運が一段階上昇する。
ただし側にマスターが居ない場合、虚勢を張って追い詰められるとヘタレて幸運が一段階加工する。

達筆:B
字がかなり上手い。そもそもは単なる特技程度だったが、聖杯に英霊として認知された瞬間にキャスターの逸話の一部と見なされスキルと化した。
字にまつわる全ての事象において同スキルを持つものより優位に立つことが出来る。
Bランクともなれば書面化されている文章の他者による改竄察知や文章化されて実態のある呪文・ルーンの一部改竄が可能となる。

カワイイボクのカワイイ仲間たち:−
使い魔としてはこいりさちこ・ぷち幸子・ドヤ顔人形を召喚できる。
召喚に制約はなく、魔力の許す限り無限に召喚可能。ただしステージでの魔力補正なしの状態では1体ずつが限度。
倒されても特に支障はなく、倒された側から再生産が可能。ただし前個体からの記憶の引き継ぎなどはできない。
大きさはそれぞれ手のひらサイズであり、戦闘能力・キャスターとの念話能力その他有用な能力は一切ない。
ただ、可愛い。それで十分である。
一応、はこいりさちこは箱に隠れることで擬態、ぷち幸子は幸子同様の知能・会話能力、ドヤ顔人形は見た人間が思わず殴ってしまうことを利用したデコイとそれぞれ長所はある。


282 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:19:11 hh59W9DM0
【宝具】
『舞い降りる自称・天使(さちこインザスカイ)』
ランク:E 種別:登場 レンジ:1 最大補足:1
キャスターの二度目のSRの逸話が宝具になったもの。
この宝具の発動キーを握るのは彼女ではなく彼女のマスターである。
マスターが『さちこインザスカイ』と口にすれば、どこに居ようと幸子が空からあのポーズで右隣に降ってくる。
それだけである。


『To_my_darling…』
ランク:E 種別:固有結界 レンジ:1〜99 最大補足:10
ステージで使用できる宝具。キャスターの歌がそのまま宝具になったもの。
この歌をキャスターが歌いはじめ、その後『貴方の魔法が解けるまで』が続く間、彼女が指定したマスターはサーヴァントに有効な攻撃を行うことができるようになる。
ステージはもともと設営してあるものでも自身がスキルで呼び出したものでもかまわない。彼女が『ステージである』と認識し、マイクとスピーカーが存在すればそこがステージである。
また、この歌を他人に聞かせることによってキャスターは他人の心の中に陣地を作成することが出来る。


『貴方の魔法が解けるまで(シンデレラマスター・オンステージ)』
ランク:E 種別:固有結界 レンジ:1〜99 最大補足:10
『To_my_darling…』終了直前に追加発動できる固有結界。キャスターの歌がそのまま宝具になったもの。
『To_my_darling…』の効果を持続させると同時に、歌に合わせて様々なバフ・デバフ効果を及ぼす。
ライブが続けば続くほど結界内に展開されるバフ・デバフは多くなり、アンコールまで行けばまず負けることはないと言えるほど力量差が出来る。
同じ曲は一回の宝具の解放で一度までしか歌えない。ただし全曲歌い終わった後、アンコールとして特別に同じ曲をもう一度歌うことが出来る。
歌える曲・歌の効果は以下のとおりである。

陣地E以上
・『パステルピンクな恋』:宝具展開中、スキル『恋の病』を任意の相手に押し付ける。このスキルを得た人物はキャスターに対して恋愛感情を抱き、キャスターを攻撃の標的に出来なくなる。
陣地D以上
・『ススメ☆オトメ 〜jewel parade〜』:任意の相手の敏捷を一段階上昇させ、対魔力Bを授ける
陣地C以上
・『輝く世界の魔法』:任意の相手の攻撃を一段階上昇させる
・『ゴキゲンParty Night』:任意の相手の耐久を一段階上昇させる。
陣地B以上
・『KISSして』:任意の相手の攻撃を一段階下降させる
・『アタシポンコツアンドロイド』:任意の相手の耐久の一段階下降+回避・再生などの防御系スキルを一つ打ち消す
陣地A以上
・『お願い!シンデレラ』:現在発動中・以降発動する歌によるバフ・デバフ効果を倍化させる

全曲+アンコールにおねシン倍プッシュで自身側の攻撃・耐久・敏捷が四段階上昇+対魔力B++、相手は攻撃・耐久が四段階下降+防御系スキル2つ消失+『恋の虜』となる。
ただし最終段階まで宝具を展開するには陣地をA以上作成し、更に一時間弱戦闘が続いている必要がある

【weapon】
なし。しいてあげるなら可愛さですかね!

【人物背景】
カワイイカワイイボクですよ!
外ハネがカワイイ!
タレ目がカワイイ!
自信満々でカワイイ!
どうですかプロデューサーさん!
プロデューサーさん?
聞いてますかプロデューサーさん!
ボクが一番カワイイんですよ!
フフーン!
ドヤァッ!


283 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:20:35 hh59W9DM0
【マスター】
矢車想

【マスターとしての願い】
なし。(ムーンセルには影山と白夜を見に行きたいという願いで認識されている)

【能力・技能】
『ホッパーゼクター』
ヒヒイロノカネ製のバッタ型の変身アイテム。リバーシブル仕様になっており、表ならばキックホッパーに、裏ならばパンチホッパーに変身出来る。
ただし、矢車は戦闘スタイルや弟の存在からパンチホッパーには変身できず、キックホッパーでのみ戦闘が可能である。
変身後はだいたい 筋力C 耐久D 敏捷C+++ 魔力E 幸運A くらいの能力を持ってる。(幸運値のみ装着者によって変動)
対マスター戦で有効。キャスターの宝具が合わさればサーヴァントとも戦える。
大きな衝撃で変身が強制解除することがある。

『クロックアップ』
普通の時流とは別の時間の流れに存在するタキオン粒子の波に乗り、常人には察知出来ないほどのスピードでの行動を可能にする。
ただしムーンセルではタキオン粒子が再現されていないのでただの意識と肉体の超加速として発動される。
なので同程度の敏捷C+++、B++以上もしくはA+以上で普通に対応可能。
そしてだいたい30秒ほどでクロックアップは強制解除となる。

『ライダージャンプ』
アンカージャッキによって超跳躍を可能にする。
ライダーキックの発動キーであり、これを省略してライダーキックを放つことはできない。

『ライダーキック』
キックホッパーの必殺技。破壊力は20t。
ライダーキック→反動でライダージャンプ→ライダーキック→反動でライダージャンプというハメ殺しも可能。

【人物背景】
もうパーフェクトもハーモニーもない頃の矢車さん
本編最終話、影山と共に闇の中でも沈まない太陽を見に行く直前より。
以下、渋より抜粋。

ZECT所属当時は「パーフェクト・ハーモニー(完全調和)」の信念のもとに行動する完璧主義者で、的確に部下を指示しチームプレーで対処することから、部下たちからの信頼は厚かった。
この性格ゆえに調和を乱すスタンドプレーを非常に嫌い、シャドウをことごとく出し抜く天道総司に苛立ちを覚え、カブト抹殺に執拗にこだわるようになる。
それを優先するあまり部下を見殺しにしてしまったことでザビーゼクターに見限られ、ザビーの資格を喪失。
そしてシャドウチームリーダーも解任され、最終的には部下の影山瞬によりZECTから事実上追放される。

その後、己を卑下し「完全調和」の精神を喪失するほどにやさぐれた姿とキックホッパーの資格を引っさげて再登場。
後に自分同様にZECTから追放された影山にもう1つのホッパーゼクターを授け「弟」とし、行動を共にするようになる。
以降どのグループにも属さず、自らを「闇の住人」と称し、影山と2人で気の赴くまま、ライダー達やワームに戦いを挑む。
ザビーゼクターが影山を見限った後に再び資格者として選ばれかけるが、過去の栄光に全く未練は無く、自ら睨んで拒絶した。

やさぐれてからは「どうせ俺なんか…」「お前はいいよなあ…」「今、俺を笑ったな?」など、ネガティブな台詞が目立つようになるが、神代剣を一時的に「弟」に加えたり、人間に戻った時の間宮麗奈に手を差し伸べるなど、「闇」に堕ちた人間には寛容な姿を見せている。

以前はプライベートな趣味として料理を嗜み、時に部下に手料理を振舞うこともあったが、キックホッパー資格者となってからはほとんどインスタント食で済ませている。

一度はZECTに協力してカッシスワームを攻撃したり、その後は自分を鎖で縛って自制しようとしたりと、本人なりに悩んでいたようであるが、最終的にはもう一度光を掴むべく、闇の中でも輝き続ける白夜の世界への旅行を計画。
そこに影山も連れて行こうとしたが、最終話直前に首飾りの影響でネイティブと化そうとしていた影山の懇願を汲み、彼をライダーキックで打ち倒した後、一人何処かへと旅立っていった。

【方針】
眩い光に耐えられない。
今はただ、地獄の底で……


284 : ◆tHX1a.clL. :2014/12/23(火) 02:21:08 hh59W9DM0
投下終了です


285 : ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:14:36 qfhoj69I0
皆様投下お疲れ様です!
では、私も透過させていただきます!


286 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:15:55 qfhoj69I0



これは地獄を照らした少年達と鎧達の輝き。


避けることのできない人の最期。


人の最期の側に存在した『光り』。


.


287 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:17:59 qfhoj69I0


   ◆   ◆   ◆


やつれていることは自覚していた。
それでも立ち止まることは許されなかった。
孤拳一撃。
慣れない徒手による攻撃は、しかし、すでに死に体だった魔物、<光狩>を吹き飛ばした。

そのまま、ふらふらとした足取りで歩いて行く。
傍目には満身創痍に見えただろうが、実際のところはそれほど疲労はしていない。
ただ、歩きやすいように歩いていた。
心の揺れを感じないように、身体を揺らしていた。

ご丁寧に横並びに整列していた魔物を、大鎌<カイリ>で生命を刈り取る。
なんてこともなく、消滅した。
周囲から魔物の気配が、ひとまずは消えた。

「……」

特異な紅い眼で、『蒼く凍った』夜空を見上げる。
<凍夜>と呼ばれる、不気味な空間。
光狩が生み出した、時が凍った終わらない夜。
その終わらない夜に現れる、蒼く輝く二つ目の月、『真月』。

「蒼い夜を……」

二つ目の月である『真月』は、魔物のものだ。
魔物を照らし続け、魔物に人間を誑かさせる月だ。
人間に夢を見せ、誑かす魔物。
永遠の夢を見せ、決して夢を叶えさせない月だ。

「蒼い夜を、終わらせる……」

そんな、残酷で無慈悲な蒼い夜に終わらせる。
そのために、いずみは戦い続けていた。
仲間は居た。
だけど、仲間は大事な人だった。
自らが仲間を信じられ続けることができれば、仲間に自らを信じ続けられることができていれば。
きっと、今も仲間が側にいたかもしれない。

「私が、蒼い夜を終わらせる……」

しかし、その繋がりも自らが断ち切った。
自らの紅い目が発する異能の力で。
仲間たちの『記憶』から自身を消したのだ。
もはや、彼らにとっていずみは愛憎など抱くわけのない『他人』なのだ。

「私、だけで……」

一人だけの道が、どこまで続くのか。
そんな単純すぎる弱音が心を支配した。
その弱い心を叱咤する。
どこまで続くなんかなんて、決まっている。
どこまでも続くのだ。
『蒼い夜』を終わらせるために、どこまでも続く道を歩き続けるのだ。
それでも、疲れたように、憎むように。
空を眺めた。
蒼い夜空に広がる蒼い月に、視線を合わせる。


288 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:19:29 qfhoj69I0


――――そこには、紅い月が輝いていた。


目が奪われた。
皓い月は、幾度と無く目にしていた。
蒼い月は、幾度と無く目にしていた。
しかし、紅い月は初めて目にしていた。

ふと、いずみの脳裏にある噂話が蘇った。

――――在る筈のない紅い月が、願いを叶えてくれる。

自らの紅い目を同じ、紅い月。
仲間との繋がりを失っても、残された自身には最後の願いがあった。
蒼い夜を終わらせる、願いがあった。
紅い月は、いずみを聖杯戦争へと誘った。









そこで、異常な結果が起こった。
聖杯の、出来の悪さを示す、そんな、頻出しているありきたりな異常だった。



『問おう、貴方が俺のマスターか』

.


289 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:20:18 qfhoj69I0

此度の聖杯戦争に用いられる聖杯は急ごしらえの聖杯。
未熟な聖杯に継ぎ接ぎし続けた結果の『異常<バグ>』。

聖杯が用意したバイタルデータとして再現され、英霊の身体の各部に0と1のノイズが走る。
それでも、ざんばらに乱れた髪をした英霊は、肉体と呼ぶにも躊躇われる堅牢な筋肉と硬化した骨を持っていた。
紅い月に奪われていたいずみの目が、英霊へと奪われた。

『願いを叶えたいか』

空気を振動させない声で、いずみへと問いかけた。
英霊へと奪われた瞳が、英霊の後方に聳える再び紅い月へと注がれる。
願いを叶える、紅い月。
心を疲労させたいずみは、その願いを求めた。
蒼い夜を終わらせる、そんな願いを。
その願いを感じ取ったのか、英霊はいずみへと語りかけた。

『英霊の魂を記録した、英霊の座。永遠と記録し続けた月の観測器。
 二つを結び、異常な世界を作り、異常な現象を起こす。それこそが聖杯戦争。
 聖杯に注がれる贄は天魔外道の欲望と、牙なき者の血と、踏み潰された願い。
 そこから、叶うはずのない願いに捧げられる』

聖杯戦争のルールを魂にダウンロードされていないいずみには知り得ない知識。
伸ばした手が、ふと止まった。
安易な願いへの、忌避感。
甘い話には裏があり、実在する聖遺物は得てして悪魔を産みだす物である。

『願いを求める前に、伝えねばならないことがある』

止まった手が、その先へと伸ばそうか、引っ込めてしまうべきか迷っている中。
英霊の言葉は、続いた。

『我ら『正義を行う者<エクゾスカル>』の輝きを見よ。
 絶望の果てに、我らは居る』

英霊は、腰だめに拳を構えた。
忠犬のようにそびえ立った重自動二輪から、光が発せられる。
荷台に備えられた黒塗りの鞄が不可思議に開き、触手のように英霊の身体にまとわり付く。
それは鎧だった。
暗色に輝く、人類を照らし続けた光だった。
頭部には『七生』、永遠を意味する言葉が紡がれている。
ならば、この鎧の光は、永遠の光か、永遠の終わりにそばにある光か。
わからない。
わからないが――――鎧は、英雄だった。


290 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:21:00 qfhoj69I0


『――――零式防衛術に甘言を操る術はない』


いずみが抱いた、『在り得る筈のない』願いのもとに紅い月へと伸ばされたいずみの手。
その手に、英霊――――エクゾスカル戦士・葉隠覚悟は拳を合わせた。
ゆっくりと伸ばしたいずみの手に合わせるように、ゆっくりと伸びる。
その技は、零式防衛術。
零式防衛術は心の防衛術。


――――英霊は、実体を持たぬ孤拳でいずみの心に因果を極めた。


流れ込むはずのない情報が、いずみの心に流れた。
それは映像でもなく、音声でもなく、触感でもなかった。
いずみの知り得る法則とは異なる、言語化できないものが流れ込んでくる。
いずみは、眼球以外の何かで七つの鎧を見た。
暖かなものがいずみの心を包んだ。

それは、人を照らしつづけた『光り』だった。


涙が、こぼれた。




   ◆   ◆   ◆


291 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:22:51 qfhoj69I0

「だから、記憶は返せません。返す方法が、全くわからないんです」

いずみはズレた眼鏡を両手で直しながら、向かって正座をする白い軍服の英霊に語りかけた。
ここは聖杯によって用意された自室。
質素な、しかし、いずみの嗜好そのままの部屋。
その中で、いずみと軍服の英霊は互いに正座をして向かい合っていた。
いずみは眼鏡の位置を直すと、自身の柔らかな短い栗色の髪にそっと触れた。

「……」
「……」

沈黙が場を支配する。
目の前の英霊は、紅い月によって聖杯戦争に導かれたいずみの従者<サーヴァント>だ。
与えられたクラスは騎乗兵<ライダー>のクラス。
機械化軍用犬、月狼<モーントヴォルフ>を跨っているからだと、本人は言った。

そんなこと、いずみは知っていた。

ライダーは、生前の記憶を失っているようだった。
いずみと紅い月に誘われる前に出会ったことも覚えていなかった。
記憶を失っていた。
いずみの心に流れてきたものが、ライダーの記憶だったのだと思った。
申し訳なくなりつつも、あの強い『光り』こそがライダーをライダーたらしめるものの一つなのだと思うと、腑に落ちた。

「……あの」

いずみは、ライダーへと問いかけた。
ライダーは、いずみとは対照的にきっかりと眼鏡をかけている。
美形というのは少々異なるが、目鼻立ちに筋が通った顔をしていた。
女性であるいずみよりは背が高く体格もいい。
だが、人知を超えるほどの異常な体格はしていない。
軍服の下には鍛えるという言葉が生温いほどの肉体が眠っていることはわかるが、それでも『異常』ではなかった。
想像できる範囲の、ひょっとすれば、出会えるかもしれない。
少なくとも、『服の上から』覗く肉体はそんなものだった。

しかし、目の前の存在が、英霊であることを強く感じ取っていた。
顔全体から、強い意志を感じる。
背筋を伸ばした身体から、曲がり得ない信念を感じる。

「……問題はない」

沈黙を破ったのはライダーだった。
やはり強い視線のままいずみを見据えている。
ライダーが咎めているわけではないことは理解できたが、咎められているような気分になった。
ライダーはそんないずみの心境を知ってか知らずか、言葉を続けた。


292 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:23:22 qfhoj69I0

「失ったものは消えてしまったものだ、もはや、この世の何処にも存在しないだろう。
 だが、誰かに授けたものならば、この世の何処かにはある」

強い視線を浴びせられ、それでもいずみは視線を逸らすことが出来なかった。
男女の垣根を超えた、人としての感情が胸にあふれる。
欲しいものを見つけた瞬間だった。
指先に触れぬまま、仮初の温もりを求めかけた、目を逸らしかけたいずみを正したものだった。
感謝だった。

「ならば、問題はない」

ライダーの言葉に、いずみは不思議と心が安らいだ。

「私は、聖杯を必要としません」
「……」
「ライダーは?」
「仔細なし、捧げる願いは我が身と我が生にあった」

ライダーの声に、いずみは同意する。
聖杯を求めるつもりはなかった。
『光狩』でないものを切り捨てる覚悟は、すでになかった。
ある意味で、いずみはすでに願いが叶っていた。
自らを超える孤独が有り、しかし、孤独で人を照らす光があった。
孤独だが強い光がどこかに有り、そして、自分は自分が持っていた仲間という光を守るためだと思えば。
いずみは、幾らか心が暖かくなった。
その事実だけで、いずみは救われていた。

「……」

ライダーと視線があった。
いずみは微笑んだ。
ライダーは微笑まなかった。
だが、意思の強い目に光があった。

やはり、光だった。

人間の尊厳を照らし続けていた鎧の輝きだった。
暗色の其れは、闇の中に居ても光り輝いていた。
ライダー――――葉隠覚悟は、光だった。
仲間という光を失っても、輝き続ける光だった。


本物の英雄が、いずみの目の前に居た。

.


293 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:23:49 qfhoj69I0

【クラス】
ライダー

【真名】
葉隠覚悟@エクゾスカル零

【パラメーター】
筋力C 耐久C+ 敏捷D 魔力E 幸運D 宝具A+

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
零式防衛術:A
零式防衛術は相手を殺す技でなく。己を殺す技。
零式防衛術は認識の技、己こそが己の身を滅ぼす。
零式防衛術は愛憎怨怒を滅殺する技術なり。
覚悟は己から受け入れぬ限り、あらゆる精神干渉魔術を無視できる。

戦闘続行:EX
霊核が破壊されても長時間の戦闘を可能とする。
また、マスターから主従の契約が断たれても通常時のパフォーマンスを発揮することが出来る。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

【宝具】
『七生輪廻、正義に報いる(強化外骨格・零)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
いかなる攻撃もはね返す『盾』、いかなる防御も突破する『矛』。
最強の『盾』と『矛』が同時に存在する奇跡の解答。
しかしその時、果たして正義は完成するのであろうか。
ジェットバーニアや無味無臭無色の毒ガスやプラズマ兵器や特殊ナパームなど、あらゆる武装が内蔵されてある。
筋力・耐久・敏捷を1ランクアップさせる。


『法滅の光輝(エクゾスカル零)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
強化外骨格・零と人機一体となり、人類の救世主たるエクゾスカル戦士となった際に発する、人が最後に見る『光』。
それは、人が死にゆく際に、人が絶望に堕ちる際に、それでもなお人を照らし続けたかつての栄光の輝きである。
強化外骨格・零を装着している際には常時発動されており、覚悟はマスターが死亡しても一度の戦闘が可能とされる。
マスターが死にゆく時、あるいは、自らが散りゆく時に限り、全てのステータスを強化外骨格・零装着時からさらに1ランクアップさせる。
少年が愛した友や歌が『世界/少年』の中から消えようとも、友と歌を照らし続けた『少年/鎧』の光りは消えはしない。



【weapon】
斬魔挺身刀/神武挺身刀、零式連装機銃「残月」、零式防衛術正式拳銃「曳月」。
この三つを愛犬である機械化軍用犬『月狼<モーントヴォルフ>』のシート裏に収納した状態で携行している。
また、身体に八個の『零式鉄球』を埋め込んでいる。
零式鉄球は、普段こそ球状だが、覚悟の意思に応じて体内に吸引され、血中に溶解した後、任意の箇所を 『メタルスキン』 で覆う。


【人物背景】
未来現実という地獄に落とされた、白い軍服を纏う少年。
「牙を持たぬ人」を守るため、世界征服を企む超能力者や科学者、カルト教団を相手に人知れず戦ってきた一族の末裔。

彼の生きた時代での活躍が終わった後に冷凍睡眠に就いている。
目覚めた後は零式防衛術の倫理と、戦闘経験以外全ての記憶を失っていた。
そのためか、心に欠落したものがあることを自覚しており、必要と判断すれば、容赦ない攻撃を躊躇なく行う冷酷非情な“死神”となっている。

常に冷静で、表情を崩すことはほとんどない。
「不当な攻撃には正当な報復を」という理念の下、危害を加えようとする者に仮借ない反撃を行う。
習得した戦技“零式防衛術”は、防爆服で身を包んだ兵士をも容易く絶命させ得る威力を持つ。

『正義失格者』として『傲慢』の罪を持つとされ、絶望に満ちた世界でも頑ななまでに「正義」を守ることに拘っている。


神武の超鋼よ、我を立たせ給え。
牙無き人の明日の為に。
無限の英霊よ、我を砕き給え。
それが永遠への礎なら。

我が身は、既に――――


294 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:24:04 qfhoj69I0

【マスター】
火倉いずみ@夜が来る! -Square of the Moon-

【マスターとしての願い】
紅い空と蒼い夜を終わらせる。

【weapon】
『カイリ』と呼ばれる大鎌。

【能力・技能】
『繕い』と言う傷を癒やす能力と、名も存在しない記憶を奪う能力を持っている。
また、『光狩』と呼ばれる怪物と戦うための戦闘技術も所有している。

【人物背景】
夜空にもうひとつの月、蒼く輝く『真月』が出現するとき。
『光狩<ひかり>』と呼ばれる異形の魔物が人々を欲望に誘い、その心を蝕んでいく。

火倉いずみは、魔物である『光狩』と戦う『火者<かしゃ>』である。
いずみの一族自体が『火者』であり、『光狩』に対して様々な知識を持っている。
私立桜水台学園の学生として生活しながら、夜空が蒼く染まる『凍夜<とうや>』の中で『光狩』と戦っていた。

心優しい性格をしているが、同時に責任感も強い。
『光狩』の策略によって崩壊した仲間たち、その仲間たちを独立しての危険な戦いから遠ざけるために記憶を消して、一人で戦い続けている。

夢を見続ける凍った夜を終わらせ、夢を叶えるための朝を望んでいる。

【方針】
紅い月から脱出する。


295 : 火倉いずみ&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/23(火) 06:24:18 qfhoj69I0
投下終了です


296 : ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:51:59 vnEJVbKk0
投下乙です
自分も投下させていただきます


297 : 両儀式&デス(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:52:29 vnEJVbKk0
 夜の街を出歩くことに、さほど大きな意味はない。
 昔の自分が好んでいたことを、ただ習慣として繰り返しているだけだ。
 それでもひょっとしたら、その中で、獲物に巡り会えるかもしれない。
 だから私は、この徘徊を、今日まで飽きることなく続けていた。

 ――紅い月の噂を知っているか?

 夜は月の出る時間だ。
 だからこそ、トウコから昼に聞いた話を回想する。
 お前のことだから知らないだろうがな、と言われて、少しむっとしたことを思い出した。

 ――これは鮮花から聞いた話なんだがな。新月の夜に紅い満月が出て、願い事を叶えてくれる、という噂があるらしい。

 曰く、紅い月を見た者は、月の誘いに導かれ、こことは違う世界へ行けるのだという。
 曰く、月の世界とは、その者が抱えている夢が叶う、理想の世界であるのだという。

 ――滑稽だとは思わないか? 古今東西、月にまつわる神話には、そうした類のものはない。
   月神とはその大概が、荒ぶる祟り神であり、すなわち死の象徴だ。彼らが叶えてくれるものなど、せいぜい自殺願望(タナトス)くらいだろうに。

 流れ星の話をなぞったにしても、少々強引の過ぎる噂だと。
 相変わらず何が笑いどころなのか分からない、物知りぶった語り口で、トウコはそう言ったのだった。
 とはいえ、馬鹿馬鹿しいという意見には同意する。
 月を見ただけで願いが叶うなんて、そんな都合のいい話があるはずがない。

 ――だが、気になる点もある。月とはすなわち異界の門だ。
   兎の話を知っているか? 神様のために身投げした兎が、死後月へと召されたという話だ。

 もっと分かりやすい例で言えば、かぐや姫の例もある。お伽話の姫様の故郷は、不死の一族が暮らす月の都だ。
 人は闇の中に浮かぶ、ひときわ大きな光を見て、異界を夢想したのだと。
 故に天上に光る月は、あちらとこちらの世界を繋ぐ、異界の門であるのだと。
 両儀の家でも聞いた話だ。つい最近も考えたばかりなのに、そこまで言われて、ようやく思い出していた。

 ――そういう点ではさっきの噂も、まるきり的外れでもないんだよ。
   今日はその新月の日だ。まさかとは思うが、用心に越したことはない。

 さらわれないように気をつけろよと言って、トウコはその話を締めくくった。
 分かっている。
 そちらの方が本当であるのなら、もう片方はそのための嘘だ。
 何かろくでもない目的のために、人を月にさらおうとする者が、人を集めるために撒いた餌だ。
 都合のいい話であればあるほど、裏の意図を怪しまなければならない。
 そういうことを口にする奴ほど、裏ではろくでもないことを考えているに決まっている。

 紅い満月を見上げながら、私はそんなことを考えていた。


298 : 両儀式&デス(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:52:50 vnEJVbKk0


「――なんだ、お前は」
 両儀式がそれを見た時の、第一声がそれだった。
 夜空の星がそうであるように。
 あるいは月がそうであるように、
 路地裏に浮かび上がるように、白い影が立っていた。
 ぼさぼさした黒髪の下にあるのは、少年のように若い顔だ。
 さながら幽霊か何かのように、触れれば消えてしまいそうな、儚い美しさを持った存在だった。
(こいつは)
 それでも、それだけの人間だったなら、式は決して驚きはしない。
 彼女に宿った直視の魔眼は、全く違う光景を視ていた。
 死の線が見えない。
 正確には、正常に見ることができない。
 ぴったりとした服を纏った、その上に浮かぶ死の線が、浮かんでは緩やかに消えている。
 まるで壊れた電飾のようだ。見えやすい見えにくいならともかく、点滅している線など視たことはなかった。
 殺せるのか殺せないのか――それが曖昧な存在であるということか、こいつは。
「サーヴァントという」
 低く、されどよく通る声だ。
 海のように青い瞳で、まっすぐと式を見据えながら、白い男はそう名乗った。
「これから始まる聖杯戦争……君がその戦いを生き残るため、与えられた戦の駒。それが僕だ」
 妙な感触だった。
 こいつはただ、話しているだけだ。
 聞き覚えのない単語を並べ、分かりにくい話をしているだけに過ぎない。その点では、普段の蒼崎橙子とそう変わらない。
 だというのに、妙に身体がざわつく。
 こいつを見て、話を聞いていると、随分と底冷えしたような心地になる。
 ああ、そうだ。
 この感覚は知っている。
 あの2年間の眠りの中で、いやというほどに味わっている。
「お前は、死か」
 これは死の感触だ。
 いいや自分が感じているのは、その死に対する恐怖感だ。
 何もない死そのものではなく、そこに落ちることを恐れる己の心だ。
「そうらしい。サーヴァントとして呼ばれた僕は、『死神(デス)』の名と力を与えられている」
 デス。
 すなわち死を意味する単語。
 サーヴァントには決められた役職があり、その適性を持つ者が、選ばれ割り振られ呼ばれるのだという。
 しかし本来、目の前の男は、そのいずれの適性も持っていなかった。
 にもかかわらず、呼ばれてしまった。結果システムは歪められ、ありもしない第8のクラスが、特例として与えられた。
「あるいは君という存在に引き寄せられ、僕はこうして降り立ったのかもしれない」
 死と虚無を司る式だからこそ、相応のサーヴァントが求められた。
 だからこそ彼女という存在に合わせて、死神のクラスが生み出された。
 だからこそ本来呼ばれるはずもない、7つの適性を持たない男が、死神として呼び寄せられてしまった。
 あるいはそうなのかもしれないと、男はそう言っていた。


299 : 両儀式&デス(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:53:17 vnEJVbKk0
「……それで、聖杯戦争ってのは何なんだ。オレはこれから、一体何をさせられるんだ」
 分かりきってはいたことだが、己が死という性質を持っていると言われれば、あまりいい気分にはなれない。
 いくらか不機嫌な顔を作りながら、式はデスと名乗った男へ尋ねた。
「文字通りの戦争だ。君同様、サーヴァントという駒を割り振られた主人(マスター)が、ここにはあと17人いる。
 君は僕を操り戦い、それら全ての敵を倒して、最後の1人として勝ち残らなければならない」
「何でそんなことを。何か見返りでもあるのか」
「聖杯戦争とは文字通り、聖杯という存在が用意した戦いだ。戦争に優勝した者には、万能の願望機である、聖杯の力を使う権利が与えられる」
 すなわち聖杯の力を使って、あらゆる願いを叶えることができるのだと。
「は――」
 ほら見ろ、やっぱりろくでもなかった。
 橙子から聞いた噂話を思い出し、式はデスの言葉を鼻で笑う。
 紅い月の噂は本当だった。
 確かに月を見た自分は、こうして訳の分からない状況下へ巻き込まれた。
 更にその見返りとして、夢を叶えてくれるときた。
 しかしそこには殺し合いという、血なまぐさく残酷な、余計なおまけまでついてきた。
 本当に願い事が叶うとは思わなかったが、それ以外は何から何まで、笑ってしまうほどに予想通りだ。
 あまりにも下らなさすぎて、失笑ばかりがこみ上げてくる。
「一応聞いとくけど、オレに願いがなかったとしても、簡単に一抜けはさせてもらえないんだろ?」
「その通りだ。だからこそ、僕は君を守らなければならない」
「そうかよ」
 ため息混じりに式が言った。
 願い事を言えと言われても、元より生も望みも希薄な身だ。心当たるものなどない。
 一瞬、織を生き返らせるということも考えたのだが、死人を蘇らせることなど、到底できるとは思えなかった。
「だったらやることは決まりだ。オレは帰り道を探すよ」
 それが式の出した結論だ。
 こんな面倒な徒労に、長々と付き合うつもりはない。
 合法的に殺人を犯せる機会ではあったが、どうやらここまでの話を聞くに、マスターとやらである自分は、さほど好き勝手には戦えないらしい。
 であるなら、やることは1つだ。この不毛な戦いをさっさと切り上げ、元いた場所へ帰る方法を探すことだ。
「その道が、戦いの先にしかないとしたら」
「それならそれで戦うまでだ。さっさと他の連中を殺して、なるべく早めに終わらせる」
 両儀式にはそれくらいしか、やることも望むこともない。
 問いかけるサーヴァントに対して、式はきっぱりと言い放った。
「……そうか。それなら、それでいい」
 しばらく沈黙したデスは、ややあって口を開き、そう答えた。
「話が終わったなら、行くぞ」
 従者の返答を聞き届けると、式はそう言って踵を返す。
「どこへ?」
「高い所に上りたい。それならどこでもいいさ」
 確かめたいことがある、と式は言った。
 そういう前提で話をしているが、どうも今いるこの場所は、一瞬前までいた場所とは、何かが違うような気がする。
 路地裏の風景は同じだが、感じるものが違うのだ。
 認識を広げる必要がある。
 せめて違和感の正体自体は、今のうちに確かめておきたい。
 巫条ビルの一件があったばかりなのに、もう一度上るというのも妙な話だが、ともかくもそうした考えのもと、式は適当なビルを探すことにした。


300 : 両儀式&デス(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:53:43 vnEJVbKk0


 紅い満月が照らす下、紅く染まった街並みを見る。
 夜も更け冷たい風が吹きながらも、東京はなおも眠ることなく、ネオンと雑踏に満ち溢れている。
 猜疑と野心が渦を巻き、怨念にも似た血の色をして、コンクリートジャングルを駆け巡っている。
 ここは人の欲望の坩堝だ。
 それが肌で感じられるほどに、異様な気配を伴って、この東京の街を満たしていた。
「なるほどな」
 思った通りだ。
 ここまで気色の悪い気配は、これまでに感じたことは一度もなかった。
 やはり式が立っているこの場所は、住み慣れた地元の大地ではない。
 ここはこの戦いを起こした聖杯とやらが、現実の街を模倣して、手ずから作り上げた異空間だ。
 ここが月の世界であるという、これまで感じてきた直感は、やはり正しかったということだ。
 だとすると、よもや徒歩では帰れまい。
 結界の境界を殺すにしても、その境界を認識する必要がある。
 普通ではない帰り道を、普通ではないやり方で、探さなければならないということになる。
 本来こういう役割は、橙子や幹也の領分なのだろうが、無い物ねだりをできる状況でもなかった。
「凄いな……」
 と、その時。
 不意に、傍らに立つサーヴァントが、ぽつりとそんなことを呟いていた。
「この気配がか?」
「いや、この街そのものがだ」
「そうか? 少し大きいだけの街じゃないか」
 見た目だけの話であれば、何も変わったところはないだろうと、式はデスに向かって言う。
「僕は街を見たことがない。文明と呼べるようなものは、全て滅ぼしてしまった」
「滅ぼした?」
 滅んだ、ではなくてか。
 この線の細いサーヴァントが、世界の文明と呼べるものを、全て滅ぼしてしまったというのか。
「僕は1人の少女を殺した。その結果、世界は滅びで満たされ、停滞と死が荒野を広げていった……」
 命なきものの身は朽ち果て、錆と劣化と共に崩れていった。
 大地は狂い姿を変え、植物は生きていくことを許されず、動物も人間も数を減らした。
 そうして死ばかりが蔓延る荒野を、自分は作ってしまったのだと、デスのサーヴァントは言った。
「聖杯の力を手に入れれば、滅びをなかったことにできるかもしれない……それでも、それが許されることなのか、僕は今も迷っている」
 この罪をなかったことにして、十字架を投げ捨てることが許されるのかと、死神は結論を迷っている。
「……お前、一体何なんだ? まだちゃんとした名前も聞いてないぞ」
 そんなことを言うデスに対し、式は、ようやく興味を持った。
 死そのものを纏うこの男が、一体何者であるのか、ほんの少し気になったのだ。
 だからこそ、らしくないことを言った。
 自ら駒だと名乗った男に、本当の名前を聞くことなど、普段ならばありえないことだ。
「キャシャーンだ」
 静かに、されど確たる声で。
 死神は自らの名を口にした。
「僕の名前は」
 キャシャーン。
 その奇妙な響きの名前が、何故だか妙に印象深く、式の中で反響していた。


301 : 両儀式&デス(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:54:46 vnEJVbKk0
【マスター】両儀式
【出典】空の境界
【性別】女性

【マスターとしての願い】
特になし

【weapon】
ナイフ
 何の変哲もないナイフ。
 日頃式が愛用している得物だが、このナイフでは彼女の真価は発揮されない。

義手
 左腕に嵌められた精緻な義手。霊体を掴むこともできる。

【能力・技能】
直死の魔眼
 「 」の端末たる肉体に備わっていた、モノの「死」を視ることができる瞳。
 モノの死にやすい部分である「死の線」を認識することができ、そこを突くことによって、該当箇所を死に至らしめることができる。
 この攻撃によって破壊されたものは、いかなる技術や能力をもってしても、元の形に結合することはない。
 事象の視覚化に特化しているため、物質や生命体よりも、概念や霊体、能力などの死を視ることに向いている。

剣術
 日本刀を用いた戦闘技術。
 その練度は常軌を逸しており、自己暗示によって肉体そのものを作り変え、超人的な身体能力や未来予知の力を獲得する。
 あくまでも防戦に徹した場合の話だが、一般的なサーヴァントとも渡り合えるとのこと。

バイク運転
 二輪車の運転技術。

料理
 板前級の腕前を持つ。
 相当に舌が肥えており、自分が作るからには下手な食事では我慢ならないということで、現在の料理の腕を獲得したらしい。
 ただし他人の料理であるなら、よほど不味いものでなければ我慢できるとのこと。

【人物背景】
2年の昏睡から目覚めた少女。あるいは根源へと至る器。
直死の魔眼と呼ばれる力を持ち、様々な怪異や魔術師と戦ってきた経歴を持つ。
人を殺したくて仕方がない、殺人衝動の持ち主であり、ある一件から、自分が殺人鬼であると誤解している。

とある事故で昏睡状態に陥ったことにより、それまでとはあらゆる意味で異なる存在になってしまった式は、
それ以前の自分の記憶に対して実感が持てず、現在の生すらも実感できなくなった。
そのため性格は至ってダウナーであり、全てが万事どうでもいいという具合に振る舞っている。
後述する理由から「オレ」という男性的な一人称と口調を使っており、余計にそうした印象に拍車をかけている。
ただし本質的には少女であり、時々びっくりするほどそれらしいリアクションを見せるとのこと。
幼少の頃から自分が異常であるという自覚があったため、自分を含めた人間というものそのものが嫌い。

二重人格者を人為的に生み出してきた家系の生まれであり、かつては「織」という人格と共存していた。
しかし式が事故に遭った際、織が身代わりとなって命を落としたため、現在の人格は1つしかない。
織は破壊衝動・殺人衝動を有していた男性人格であり、現在の式の言動は、失った織の存在を補完している部分が大きい。
更に肉体の根底には、『両儀式』という本質を司る、第3の意識が眠っているようだが……

身のこなしは軽やかであり、高い戦闘能力を誇る。直死の魔眼を使わずとも、チンピラ程度が相手なら苦戦もしない。
ただし日本刀を持たない限りは、常識的な意味での達人止まりの実力であるため、その域を超えた相手には苦戦を強いられるだろう。
根源に繋がる肉体を持っているものの、普段その力は直死の魔眼としてしか発揮されていないため、魔力量はさほど多くない。

本聖杯戦争においては、第一章「俯瞰風景」の数日後から呼び寄せられたものとする。

【方針】
脱出方法を探す。他のマスターが向かってくるなら戦う。


302 : 両儀式&デス(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:55:07 vnEJVbKk0
【クラス】
デス
 死神のサーヴァント。
 暗殺・謀略・隠密にまつわるアサシンのクラスと異なり、死そのものにまつわる英霊に与えられるクラスである。
 必然魔獣や悪魔などの非人間霊の方が多く、人間霊の場合、アサシンの適性を持つ暗殺者よりも、殺人鬼や虐殺者の方が当てはまりやすい。
 前者の場合はバジリスク、後者の場合はアドルフ・ヒトラーなどが適性を持っている。魔人アーチャーこと織田信長にも、多少の適性があるらしい。

【真名】キャシャーン
【出典】キャシャーン Sins
【性別】男性型ロボット
【属性】混沌・中立

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:C+ 敏捷:A 魔力:E 幸運:E 宝具:A

【クラススキル】
急所突き:C
 標的の急所を見極め、必殺の一撃を叩き込むためのスキル。
 戦闘中にクリティカルヒットを狙える確率が増加する。

威圧感:A
 存在そのものが放つ死の恐怖。
 相対する相手にプレッシャーを与え、行動や判断を鈍らせることができる。
 Aランクともなると、低級のサーヴァントであれば、身動ぎすることも難しくなる。
 「勇猛」などの精神干渉に耐性を与えるスキルがあれば、軽減ないし無効化が可能。

【保有スキル】
戦闘続行:A+
 基本的に死ねない。 他のサーヴァントなら瀕死の傷でも、戦闘を可能とする。

直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

【宝具】
『月という名の太陽を殺した男(カース・オブ・ルナ)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 女神を殺した罪の証。
 永劫に死ぬこともない代わりに、真に生きるということも実感できない生の牢獄。
 どれほどの傷を負ったとしても、それに比例した苦痛を伴い、瞬時に再生する自己修復能力である。
 キャシャーン自身の意志でも、マスターが令呪を使ったとしても、オンオフを切り替えることはできない。
 このサーヴァントを殺すには、亜空間にでも追放するか、分子レベルまで完全消滅させるかしかない。
 仮に前者を行ったとしても、マスターに令呪がある限りは、
 強制転移によって帰還させることができるため、基本的には後者以外の攻撃は意味をなさない。
 ただし肉体の再生には、当然マスターの魔力消費が伴うため、乱用は禁物である。


303 : 両儀式&デス(エクストラクラス) ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:55:41 vnEJVbKk0
【weapon】
なし

【人物背景】
月という名の太陽がいた。
ルナという名前で呼ばれる少女は、地に溢れたロボット達を癒やし、幸福な生涯へと導いていた。
しかし彼女の存在を、疎ましく思う者がいた。
ロボットの王たらんとした男は、自分以外に支配者となり得るものを抹殺するため、彼女のもとに暗殺者を送り込んだ。
ルナを刺し貫いた男こそ、キャシャーンと呼ばれたロボットだった。
そしてルナが死んだその瞬間から、世界の滅びが始まったのだった。

キャシャーンが再び目を覚ました時、世界は滅びの中にあった。
記憶を失ったキャシャーンは、自分をつけ狙うものと戦い、その度に殺し続けてきた。
ルナの返り血を浴びたことで、死にたくとも死ねない身体になった男は、望まぬ殺戮を繰り返し、屍の頂で涙した。

やがて旅路の果てに、キャシャーンは、再び蘇ったルナと出会った。
しかし彼女の築いた世界は、死を忘れ去った者達が、ただ漫然と日々を過ごすだけの、怠惰に満ちた世界だった。
失望の楽園に立ち尽くした男は、歪な世界を認めることができず、自ら彼らにとっての「死」となった。
滅びを免れたとしても、永遠の生を取り戻したとしても、死というものから目を逸らしてはならない。
ルナとロボット達が死を忘れた時、キャシャーンは再び現れて、彼女らを殺しにやって来る。
キャシャーンはそう言い残すと、彼女らの目の前から立ち去り、一人孤独な死神となった。

歪んだ倫理を正すため、義憤に駆られ立った英雄なのか。
犯した罪を贖わんとし、自ら十字架を負った罪人なのか。
キャシャーンが何者であったのかは、今は、誰にも分からない。

【サーヴァントとしての願い】
世界の滅びを消し去りたい?


304 : ◆arYKZxlFnw :2014/12/23(火) 16:56:00 vnEJVbKk0
投下は以上です


305 : ◆W91cP0oKww :2014/12/23(火) 17:38:26 Dl9TKsZk0
皆様投下乙でございます。
では、私も投下します。


306 : アドルフ・ラインハルト&キャスター ◆W91cP0oKww :2014/12/23(火) 17:39:29 Dl9TKsZk0
雑踏の中、口元を襟長の服で隠し、金髪の男が夜闇の街を歩く。
世界は色褪せている。それは、この偽りの街も同じだ。
もっとも、後数刻も経てば、そんな戯言じみたことを考える余裕もなくなるだろう。
闘いが、始まる。血で血を洗う殺し合いの幕がいよいよ上がるのだ。

(それを望んで、オレは此処にいる)

男――アドルフ・ラインハルトは聖杯などには興味がなかった。
『サーヴァント』も連れず、投げやりに歩く彼はまるで自殺志願者のようだ。
だが、その比喩は間違いではない。
彼の願いは唯一つ。無様に死にたい。ゴミのように、誰にも顧みられずに一人で死にたい。
喪失を恐れ、真実から目を背けた自分にはお似合いの結末だ。
だから、願いを込めて言葉を紡ぐ。
紅に光る満月に吐き捨てるかのように。
酒に溺れた酔客の与太話に付き合う気軽さで、アドルフは見上げた夜空に堕ちていく。

どうか、この哀れなバケモノに死に場所を下さい、と。

結果、アドルフの切なる願いに聖杯が反応したのか、彼の身体は元いた世界から一片の欠片も残さず消失していた。
知識でしか知らない日本の街並みに、いつの間にかに転移していたのだ。

(戦って、死ぬ。此処はお誂え向きの戦場なんだろ? 願いに酔った死にたがりが集う戦争の世界なんだ。
 ならば、何の躊躇いもなく――戦える。オレは、一人で死ねるんだ)

これが、住んでいたドイツだったならば少しの葛藤が生まれただろう。
愛している『はず』の妻に二人で育んだ結晶を想起させ、アドルフの高揚を萎ませる。
そんな、もしものIFが可能性に入っていたはずだ。
しかし、実際はそうはならなかった。
アドルフに縁がないトーキョーという大都会。
小吉艦長と同じ、多くの日本人が暮らす雑多なバトルフィールド。

(どうせ、オレは道具のようなものだ、予め、定められた運命を直走る家畜に過ぎない)

知った事か。そんなどうでもいい情報、考えても意味などない。
小吉艦長が住んでいただろう街だからどうしたというのだ。
自分の願いは変わらず、無様に死ぬことである。
嘘、真実、不貞、弱さ。あらゆる負の感情を束ねてゴミ箱へと捨ててしまえ。
一個一個丁寧に開ける必要はないし、立ち向かう気力は疾うの昔に折れてしまった。
人間は、弱い。動物のような理性なき行動を平然と取り、振り返ることすらままならない。


307 : アドルフ・ラインハルト&キャスター ◆W91cP0oKww :2014/12/23(火) 17:39:59 Dl9TKsZk0
   
「悔しくなんか、ない」

そして、アドルフが護れるものなんてほんの少しにも満たないだろう。
マーズランキング二位という座にありながら、仲間を導くことすら満足にできない不適合者。
自嘲し、皮肉げに頬を釣り上げた。きっと、自分がいなくなろうとも、誰も悲しまない。
此方が何を想い、何を忘れぬと誓っても――世界は今も廻り続けている。

(だから、何も期待するな)

喧騒を抜け、自宅へと帰る最中につらつらと考えたことはどれも無意味な雑音だった。
過る想い、砕けぬ世界、掴んでしまった真実。
どれもが全て、下らない。
アドルフのすることは踏み出した一歩をそのまま突き出すだけだ。
例え、誰に理解されずとも、この雷光で最後の輝きを放つことこそが、本懐である。
きっと、無様に死にたいだけだ。
バケモノでしかない自分は、それしかできないのだから。
そして、そんなクソッタレでどうでもいいバケモノにはお似合いのサーヴァントがきっと呼ばれるのだろう。
そう、思っていたはずなのに。

「お、おかえりなさい」

自宅のドアを開け、迎えてくれた少女は――無垢な金色だった。
憂いを帯びた目に、控えめな身体。
自分の後ろをおどおどとしながらついてくる彼女はとでもじゃないが、サーヴァントとは思えない。
一部の好事家から見ると、夢の様な少女ではあるが、それとこれは話が別だ。
アドルフにはそのような趣味はない為、特段に気にすることではないけれど。

(まさか、引き当てたサーヴァントが子供とはな)

この少女と出会い、共に暮らしてから数日間。
どうやら、少女は自分との距離感を縮めたいらしい。
それは、少女特有の寂しさなのか。それとも、元来人の温もりに飢えているのか。
このような子供と触れ合う機会がないアドルフにはわからないことばかりだ。
少女も願いを叶える為に呼ばれ、ヤケクソのように生きている自分とは違い、譲れぬ想いもあるのだろう。

――知ってしまったら、情を抱いてしまう。

故に、彼女とのコミュニケーションは最低限に留めている。
この戦場に余計なモノは不要だ、闘って死ぬことだけを考えていればいい。
正義無き世界で、アドルフは雷の鬼神となって、駆け抜けるのだから。


308 : アドルフ・ラインハルト&キャスター ◆W91cP0oKww :2014/12/23(火) 17:40:26 Dl9TKsZk0
      






フェイト・テスタロッサには恋焦がれる願いがある。
かつて、自分に手を差し伸べてくれた少女がいた。
なまえをよんで。そう言ってくれた人達がいた。
彼女達は優しかったが、それでも尚忘れ得なかったモノは色濃く残っている。

――――母さん。

最後まで分かり合えなかった母親。どんなことがあろうとも、信じ続けた一つの愛の形。
その思いの果てに報いはなく、ただ一方的な戯言だったかもしれない。
けれど、フェイトにとっては何にも替え難い真実だった。
だって、自分は大魔導師として名を馳せる母、プレシア・テスタロッサの『実の娘』なのだから。

(戦う、マスターと共に)

フェイトは未だ自分に秘められた『真実』を知らない。
実の娘であるアリシア・テスタロッサから生まれたクローンだということも、自分を気にかけてくれていた少女達の想いも。
本来の優しさを押し込め、気丈にも戦う決意を灯しながらも――何にも知らないのだ。
名を冠する運命に縛られ、視野が狭まったフェイトはどうしようもなく無垢だった。
その様は親の後を付いて回る雛鳥だ。
力で優位に立つサーヴァントには見えない歳相応さが見て取れる。
幾ら力があろうが、フェイトは幼い少女である。
箱庭の世界で満足してしまう、お人形でしかない。

(その為には、マスターと常に一緒にいて仲良くしないと、だよね)

死が彼らに終わりを告げるまで。
願いの本質に気づくタイムリミットは、彼らには後僅かしか残されていなかった。


309 : アドルフ・ラインハルト&キャスター ◆W91cP0oKww :2014/12/23(火) 17:40:49 Dl9TKsZk0


【クラス】
キャスター

【真名】
フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷A 魔力A 運E 宝具C

【属性】
秩序・善

【クラススキル】

陣地作成:C
ある程度の陣地作成は可能。

道具作成:C
魔導師として、自分が使うデバイスの調整程度はできる。

【保有スキル】

魔法:B
修行・鍛錬によって培った魔法の技巧は幼いながら完成されている。

電気:B
体内魔力を電気へと効率よく変換できる資質。

飛行:A
デバイスを使用して飛行することが可能。そのスピードは雷の如し。

【宝具】

『バルディッシュ』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
母プレシアの使い魔でフェイトの師でもあるリニスが、フェイトのために製作した専用のインテリジェントデバイス。
レイジングハートと同じく祈願型。
発動すると斧型の《デバイスフォーム》を基本形態とし、状況に応じて鎌型の近接戦闘形態《サイズフォーム》、封印時に用いる槍型の《シーリングフォーム》に変形する。

【Weapon】

バルディッシュ。

【人物背景】
金の髪と『寂しげな目』をした魔法少女。
その少女は、ただ母の笑顔が見たくて戦い、母の願いの為にどんな災難辛苦を乗り越える覚悟があった。
本来であるならば、成長した姿で参戦するはずだった。
しかし、母への強い想い、マスターであるアドルフが自分自身を道具と思っているふしがあることから『真実』を知らぬ時点での召喚となった。

【サーヴァントとしての願い】
母の悲願を叶えたい。

【方針】
願いの為なら闘う覚悟はある。


【マスター】アドルフ・ラインハルト@テラフォーマーズ

【参加方法】ふと見上げた空に浮かんでいた月が、紅かった。

【マスターとしての願い】
無様に、闘いの果てで死を迎えたい。しかし、心の奥底では――?

【Weapon】

避雷針搭載の特殊手裏剣。
能力向上に繋がる特殊薬剤。

【能力・技能】
雷を操る能力。
武器である手裏剣を投げて、突き刺し、放電することで敵の急所へ的確な攻撃を行なうこともできる。
また、特殊薬剤を過剰摂取することで、数億ボルトの雷を操れるようになる。
他にも、微弱な電流を発して敵を探知することが出来る他、
皮膚もウナギ状のヌルヌル状態になるようで、作中でゴキブリの強烈なパンチを粘液で受け流したりなど多彩な戦術をこなしている。
普通ならば、自分も感電死してしまうが、内部に埋め込まれた安全装置によって事なきを得ている。

【人物背景】
襟長の服を着て常に口元を隠した27歳の金髪青年。妻子持ち。
普段は淡泊で冷酷な態度とは裏腹に、内面は優しさで満ち溢れている。
幼少時より軍に買われて実験体として扱われた為に、自分の命に価値を見出だせずにいた。
しかし、現在の妻に出会ったことで『人間』になれた。
妻に対しては、仕事で忙しい中でも電話したりするなど、深く尊敬し愛している。
だが、妻は浮気をしており、子供も間男の遺伝子を引き継いでいるので不憫である。

【方針】
嘘も真実も、闘えば忘れられる。


310 : ◆W91cP0oKww :2014/12/23(火) 17:41:18 Dl9TKsZk0
投下終了です。


311 : 東京は二度死ぬか ◆lnFAzee5hE :2014/12/23(火) 22:31:09 3d0dSFa60
投下します


312 : 東京は二度死ぬか ◆lnFAzee5hE :2014/12/23(火) 22:31:21 3d0dSFa60

「善なる霊は来たれーーーーー!悪霊は去れーーーーーーっ!」

「教祖ッ!」
「教祖ァ!」
「キャーー教ちゃーーーーん!」

都内――某ライブハウスは今日も異常な熱気に包まれていた。
ステージ上、神官用の白衣を纏ったモヒカンのボーカルが叫ぶ、それに合わせて観客も狂的な叫び声をあげる。
それは何も知らぬ人間から見れば、一風変わった服装を纏ったロックバンドによるライブなのだろう、
しかし見よ、ボーカルが持っているのはマイクではない。
それはどこか心臓に似ていた、あるいは貝殻のようにも見える、鉄と岩と土を混ぜあわせ、押し潰し、捻じった様な形をしていた。
それはヒトならざるものによって生み出されたモノだった、名を天狗の宝器と呼ぶ。
そして、それを持つボーカルもまた、ただの歌手というわけではなかった。

コンビニエンスストアが24時間営業になったのは何故か、便利だからというだけではない。
光が必要なのだ、夜闇に潜む魔が現れぬように――常に夜を照らし続けるものが。

東京は知っている、夜の闇に潜む魔の存在を。
その魔の前で、人間はあまりに脆く儚いことを。

ガイア教、メシア教、ディーバ教、翔門会、幾つもの新興宗教団体がこの東京にあるのは何故だ、
人間は知らず知らずのうちに求めているのだ、文明によってなおも制しきれぬ魔に抗う方法を。

そして、このライブハウスに集まる人間もそうだった。
面白半分、社会からの逃避、真のオカルティスト、理由は様々あるだろう、だが、彼らは皆、知っていた。

「ゴッタクセン!」
「ゴッタクセン!」
「ゴッタクセン!」

新興宗教団体「狂天騒神会」――ここにあるものは本物なのだと。

「ある日ッ!街をッ!歩いていたらッ!神ッ!様がッ!憑いてッ!言ったッ!」
ボーカル――いや、この宗教団体の教祖である岩田狂天がまるで歌うかのように韻を踏んで話す。ラップだ。
この宗教団体に人が集まる一因にはこれもあるのだろう、今、人々が必要とするのは堅苦しい説法ではなかったということだ。
掻き鳴らされるギター、ひたすらに激しさを重視したドラム、自らの胸に神の言葉を刻みつけるベース、
原初の時代――音楽こそが神とのコミュニケーションツールだった、ならば今この時代にあって始まりへと帰っているのだろう。
感極まって泣き出す女がいる、声が枯れていることにも気づかず叫び続ける男がいる。
このライブハウスという狭い世界はただひたすらに、シンプルだった。
そして、この熱狂は中世におけるサバトをどこか彷彿とさせた。

「太陽ッ!紅くッ!満月ッ!紅くッ!さぁッ!恐れるなッ!人の子よッ!願いッ!描きッ!聖杯ッ!掴みッ!世界はッ!紅いッ!求めるは何ッ!止めるモノは無しッ!」

「修羅ッ!」
「修羅ッ!」
「シュラァッ!」

熱狂が頂点まで高まった時、世界が一瞬、ぼやけた。

「■■■■■■!!!!!!!!!!!!」
その雄叫びは、会場内のあらゆる音を切り裂いた。
それは言語ではない、人間の言葉ではない、だが、世界のあらゆる動物と比べても、それと一致するものはない。
それは魔の声だった、会場内の全てが望んでいた本物だった。

「何故ッ!人はッ!神を作るッ!それはーーーーーッ!神など存在しないからだッ!
人はッ!滅びッ!神はッ!失せるッ!しかし魔だけは生き残るッ!ならばどうするッ!それをどうするッ!魔を神にッ!大神にッ!」

全てが嘘であったかのように、世界が静まり返った。
岩田狂天はステージ上で仰向けになって倒れこんだ。
信者たちは託宣を聞き、何も言わず――ただ祈った。


313 : 東京は二度死ぬか ◆lnFAzee5hE :2014/12/23(火) 22:31:38 3d0dSFa60
スタッフに運ばれて、岩田狂天がステージから去っていく。
そして、誰かが何か言葉を発し、波紋のように信者間で言葉が広がっていき、
がやがやとした賑わいが戻ったところで、誰かが会場から去り始め、そして今日のイベントは終わった。

「お疲れ様でした」
「おう、おつかれ。俺は帰るから、あとよろしく頼むわ」
「はい」

タクシーに乗り、岩田狂天は自宅へと向かう。
乗る度に彼は思う、教祖という立場はそのままにあるのに、自分の車は持ち込ませなかった紅い満月はどうしてこうも融通が効かないのだと。

「アンタもそう思うだろ」
「えっ、何がですか?」
「あぁ、アンタじゃない」

車内には運転手と岩田狂天の二人だけだ、誰に話しかけたというのだ。
しかし、このような格好をしている人間ということはどこか頭がプッツンしているのだと運転手は思い直し、気にせず車を走らせる。

だが、運転手には見えてはいなかったが、後部座席には確かに、岩田狂天ともう一人が座っていた。

「■■■■■■」
それは人でありながら、人ならざる姿のモノだった。
まず目に入るのは、顔から足先まで全身に入ったタトゥーのような文様だろう、それは心臓の鼓動に合わせてぼんやりと点滅していた。
上半身には何も着ず、ただジーンズとスニーカーだけを履いていた、冬の寒さなど気にならないのだろう。
そして、魔性であることの象徴であるかのように、その目は金色に輝いていた。

「運転手さんさ、アンタ何でも願いが叶う……って言われたらどうする?」
「はぁ……まぁ、やっぱり老後を安心して暮らせるぐらいのお金ですかねぇ」
この質問に何の意味があるだろうか、運転手は訝しんだ。
だが、岩田狂天は特に何かするでもなく、そうかと言って、黙りこんでしまった。
タクシーが目的地へと到着する。

「俺が、あんたの願いを叶えるって言ったらどうする?」
「それはつまり……?」
「まぁ、今は気にしないでくれよ……そのうち、そのうち」
料金を丁度払い、岩田狂天は魔を連れて家の中へと入る。
その後ろで運転手の舌打ちが聞こえた。気にしない。

「そのうち、あんたにも聖杯をやるよ」

冷蔵庫を開き、取り出したミネラルウォーターを飲みながら、
なんとなく、岩田狂天は人修羅との出会いを思い出していた。

その日も夜で、説法の帰りで、冷蔵庫でミネラルウォーターを飲んでいた。
東京を離れて修行に行こうと思ったのに、何故か東京を出る気にならなかったことが、紅い満月を思い出す切っ掛けだった。

「■■■■■■」
突然に岩田狂天の目の前に立っていたモノは、彼を一瞥して、そして興味をなくしたようだった。
そして、岩田狂天もまた、目の前に立つモノが支配出来るようなモノではないことを悟った、
いや、人の身に余るモノが支配できないことは、師匠の顛末を見る以前から知っていた。
ただ、目の前のモノはあまりにも危険すぎた、岩田狂天は宗教家ではあるが魔術師ではなかった、
全てを喰い尽くさんばかりに飢えている彼の乾きを満たす術を知らなかった、鎖から逃れ、東京を殺す恐れがあった。

故に、平将門を東京の守護神としたように、菅原道真を天神としたように、
聖杯によってあらゆる現世利益をもたらす神として、岩田狂天は「狂天騒神会」にて彼を祀った。

あるいはそれは彼にとって最適な取り扱い方だったのかもしれない、
魔の力の源であるマガツヒは、人間の強い感情から生まれる。
ライブハウスでの擬似サバトは魔を満たした。

だが、魔の性質は変わってはいない。
彼はひたすらに破壊を求めている。
全てに裏切られ、全てを失い、何も生み出せなかった彼は、全てを破壊することでその心の空虚を満たそうとしている。

「気長にやるとしますかね、気長に、気長に」
だが、魔とは、神とは、そういうものだ。
あまりにも巨大な力は人の手に余る。

岩田狂天は教祖という立場に飽きていた、だからこそ紅い満月を見た時、彼は決めていた。
手に入れた聖杯は、信者に分けると。

どのような願いを叶えるのだろうか、どのような世界を作るのだろうか、どのような神を生み出すのだろうか、
それを見届けて、旅に出よう、と。

「■■■■■■」
バーサーカーが興味なさげに呟く。
それは神が彼に送った言葉だった。


呪われてあれ。


314 : 東京は二度死ぬか ◆lnFAzee5hE :2014/12/23(火) 22:31:56 3d0dSFa60
【クラス】
バーサーカー

【真名】
人修羅

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷B 魔力A 幸運D-- 宝具A+++

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:B
何もかもを破壊した彼は狂っていた。
全てのパラメーターが1ランクアップしている。

【保有スキル】

貫通:A
 始まりのマガタマ、マロガレの最後の力。
 Aランク以下の物理半減、物理無効、物理吸収を無効化し、相手に攻撃を加える事を可能とする。

自己改造:A
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

反撃:B
 デスカウンターによる反撃、相手から攻撃を受けた際、状態を立て直し瞬時に相手への反撃を試みる。

【宝具】
『禍魂(マサカドゥス)』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 禍魂(マガタマ)と呼ばれる悪魔の力が結晶化されたもの。
 これに寄生された人間は適性があれば悪魔に姿を変え、無ければ死に至る。
 東京の守護神たるマサカドが生み出した究極のマガタマであり、この土地が東京であるが故に扱うことが出来る宝具。
 A+++ランクまでの物理攻撃と神霊クラスを除く全魔術、呪殺即死、破魔即死、及びあらゆるバッドステータスを無効化する。
 ただし、この宝具は予め、バーサーカーに寄生させておく必要があるため戦闘中に使うことは出来ず、
 また、その使用には莫大な魔力が必要となる。

【weapon】
・『マロガレ』
禍魂(マガタマ)と呼ばれる悪魔の力が結晶化されたもの。
これに寄生された人間は適性があれば悪魔に姿を変え、無ければ死に至る。
Dランクまでの破魔属性の攻撃を無効化する。

・スキル
東京での戦いの中で、バーサーカーが身につけたデスカウンターを除く七つのスキル。
狂化状態で使用するならば令呪を必要とする。

【人物背景】
世界を創成するために、東京を球状にして世界を崩壊させる東京受胎を、
偶然発生の中心である病院にいた事から他数名と共に生き残った少年。
ルシファーに魅入られ「マガタマ」を体内に寄生させられる事で悪魔へと変貌する。
悪魔が巣食うボルテクス界となった東京をさ迷い、世界の在り方を示す様々なコトワリに触れ、
そして、全てのコトワリを拒み、世界創世の可能性を無くした。


【マスター】
岩田狂天

【マスターとしての願い】
聖杯を信者に与える

【能力・技能】
師から「天狗の宝器」を与えられ、「自分の神」とそれによる霊感を得た。
信者に対し、託宣を行う場合はトランス状態になり、自分で何を言ったかは覚えていない。

【人物背景】
出典は『稗田のモノ語り 魔障ケ岳 妖怪ハンター』
宗教団体「狂天騒神会」の主催。モヒカンにサングラスという出で立ちで、
説法をライブ会場でラップ調で行うという独特の手法で若者に人気を得ている。

【方針】
まずはバーサーカーを鎮める


315 : 東京は二度死ぬか ◆lnFAzee5hE :2014/12/23(火) 22:32:37 3d0dSFa60
投下終了します


316 : ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:14:45 AajDVvwU0
お疲れ様でした、投下します


317 : 風海純也&セイバー ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:15:38 AajDVvwU0

突然だが「F.O.A.F」という言葉を知っているかね?
フレンド オブ ア フレンドの頭文字、それが「F.O.A.F」。
友達の友達、当人からすれば他人に近しい存在を指す言葉だと考えればいい。

普段何気ない会話をする友人、もしくは昔を思い出して貰いたい。
其処には「友達の友達から聞いた話」、この切り口で話題を振る友人が居たと思う。
実在性や現実味を帯びることは少ないが、神秘性を秘めた話題には適当な口上だ。

本当に在った話かどうかを確かめる術は無いが、重要なのは其処じゃあない。
話自体の面白さこそが命。誰が創った話何て真実の横に供えられた修正液のような物だ。

友達の友達から広がっていく噂に必要なのは「面白さ」のみ、と考えるのが普通だ。
「いつ」「どこで」「だれが」なんて物は曖昧で構わない。
そもそも噂なんて物に信憑性など期待する方が可怪しいのではないだろうか。

広がっていく噂は成長する、語り手によって色が付着され本来であるべき姿とは異様に変化していくケースだ。
「流れ星を見れば願いが叶う」この噂に「消える前までに三回願いを込める」アレンジを加えて拡散しよう。
するとこの噂を聞いた者は「流れ星が消える前までに願い事を三回込めるとその願いが叶う」という噂に変化する。

広がれば広がるだけ噂は一見信じ難い「都市伝説」の姿へとなっていくのだ。
まるで話自体が生きているかのように姿を変えていくのだ、奇妙でしかない。

「F.O.A.F」は必ずしも虚偽とは限らない、故に真実とも言い難い。
だが与太話には持ってこいの、語られる「都市伝説」や「怪談」の類には相性が良い。
「体験」したのは自分ではない、聞いた話を自分流に語る唯の暇つぶし。




    

   「友達の友達から聞いた話なんだけど――願いを叶えてくれる紅い満月の話って知ってる?」






―――

――

― 



――

――――

ぼくが目を覚ましてからどれ位時計の針が進んだのか。
そんなことを考えても意識を失った時間が曖昧で思い出せないため意味は余り持たないだろう。
夜――腕時計を見れば深夜の時間帯であった。

酔い過ぎて記憶を失った可能性を考えてみたがそもそもぼくはお酒を飲んでいない。
編纂室から出た後、ぼくは小暮さんと一緒に帰宅していた筈だ。
其処で休憩がてらカフェに入り、世間話をしていた。

―――

――




318 : 風海純也&セイバー ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:17:37 AajDVvwU0

「先輩はいかがされますか?」

今日の仕事を終えた僕と小暮さんはカフェに入り腰を下ろしていた。
日が落ちかけている夕暮れ、少しセンチメンタルな空気に……ぼくと小暮さんではそうならない。

目の前にいるガッチリとした体型の男性は小暮宗一郎。
ぼくと一緒に警察史編纂室に配属された巡査部長だ。
とても強そうな体格をしている小暮さんは見た目通りぼくより年上である。
けれど階級はぼくの警部補より下のためぼくの事を先輩と呼んでいる。
最初は中々馴れなかったが今ではすっかり馴染んでしまった。
元々小暮さんは体育系の人もあって規律をちゃんと守る人間だった。

「僕はコーヒーで。小暮さんは?」

「自分は入る前から決めていたであります。すいませーん!」

どうやらぼくの返答を待っていたらしい。
大きく手を挙げ店員を呼ぶと小暮さんは注文を伝えた。

「コーヒー一つと、このいちごパフェスペシャルを一つ」

小暮さんの注文を聞いた店員は少し戸惑っていた。
大柄の男性が可愛らしい物を頼んだんだ、面を喰らったのだろう。
初めて見た時の道明寺が笑いを零し突っ込みを入れていた記憶が蘇る。

「ご確認します。コーヒーがお一つ、い、いちごパフェスペシャルがお一つでお間違いないでしょうか?」

「はい」

「か、かしこまりました……」

強面の男性の力強い返事を聞くと店員はカウンターの方へと消えていった。
途中、下を向いて笑いを堪えている姿が目に止まったが我慢は出来ないものだろうか。

「今日は一段と疲れましたからな、甘い物が食べたいのです」

「そうですね……今回の事件もまた、慣れっこですが疲れますからね……」

ぼく達編纂室が担当する事件は表にあまり出ない分野を担当することが多い。
それは一見ただの現象に過ぎない、所謂オカルトに関係する分野である。
極端に言えば色々な現象が重なった原因が存在する上での結論だが、どうも言い切れない。
全てが全て、人間が抱える闇の一言で表せないような現象だ。

こっくりさん、チェーンメール、コインロッカーベイビー……都市伝説の延長にある事件の数々。
他にもバイト広告で発生した闇の高額バイトや南の島で起きた猟奇殺人事件、それに関わるぼくの知り合い達。

編纂室に配属されてからどうも不思議な体験が続いていた。


319 : 風海純也&セイバー ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:18:42 AajDVvwU0

「今回の事件である「失踪事件」でありますが……ふむ」

ぼく達が今回担当する「失踪事件」は正確に言えば「担当しない」。
これはぼく達に意見が欲しい、と地方からの依頼であった。
幾つかの地域で老若男女問わず失踪事件が起きているらしいのだ。
マスコミにはまだ流していないらしく、その分野に縁のあるぼく達に意見を求めてきたのだ。
正直な話、その分野のエキスパートとして扱われるのはあまり嬉しくない。
だが、人が失踪している事件だ。本気で取り組まなくては。

「そうですね……此処で一度情報を整理しましょうか」

「うす! 失踪事件が起きているのは確認されているだけで「地方」で「三件」」

小暮さんの言う通り今回の事件は三件だ。
失踪した人間は「三名」であり、老若男女問わず、失踪した人間に「共通点は感じられない」。

「はい……失踪した人達は「何も残さず失踪」している……ただどの人も「外で消えている」」

失踪した人達はバニシングポイントと思われる地点に何も残してない。
鞄だとか、靴だとか。証拠になりそうな物は一切落ちていなかった。
共通項と言えば、外に行ったきりで消えていること。此処までなら多くの失踪事件と変わらない。

「それで「紅い満月」でありますか……これは本当でありますか?」

紅い満月、失踪事件が起きた時、空には紅い満月が登っていたと言うのだ。
それは各地方の証言者が揃って口にしていたのだから間違いないのだろう。
証言者全員が「当時の記憶を覚えていない」点が気になりはする。
その地方には繋がりが全く存在しない。口裏を合せているとは思えない。
けれど同じ回答を貰うと少し、何処か不気味な空気が漂ってくるのだ。

「証言者が言っているのですから間違いはないでしょう……光の関係で紅く見えたんでしょうか?
 少なくともその日は全く関係無い日だと思うのですが……まぁ考えていても仕方が無いですね」

証言者が見たと言うなら今は其れを信じるしかない。
ぼくはそう発言するとタイミングよくコーヒーとパフェが運ばれてきた。
小暮さんが注文した「いちごパフェスペシャル」は女子高生が好みそうな物を組み合わした代物だ。
ピンクとクリームの色しか目に映らなく、所々に刺さっているお菓子がチャームだ。

「いただきます」

其れを豪快に口の中へ放り込む小暮さん。
ガツガツ、「オノマトペ」でも何でもなく食事の音が聞こえてくる。
ぼくも冷めないうちにコーヒーを頂くが……小暮さんが食事の合間を縫って話を切り出す。


320 : 風海純也&セイバー ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:20:08 AajDVvwU0

「紅い満月を見た者は「月に運ばれ願いを叶えてもらえる」……先輩はどう思いますか?」

「どう思う……」

それは一種の都市伝説のような怪奇現象である。
言葉の通り紅い満月を見た者が月に運ばれ願い事を叶えてもらう、そのまんまだ。
誰に叶えてもらうかは語り手次第で「うさぎ」だったり「月」だったりしている。
特に条件はないらしい、一見普通の都市伝説だ。
ならば今回消えた人達は紅い満月に「招かれた」ことになるのだろう。

「やはり、と言うか都市伝説を元に発言しているとしか今の段階では言えませんね。
 僕達が直接紅い満月を見た訳ではありませんので……ただ。
 もし都市伝説が本当なら証言者の方々は何故「紅い満月を見ているのに存在」しているんでしょうね」

都市伝説の揚げ足を取っているようで申し訳ないがぼくは正直に発言した。
紅い満月を見ている人達が失踪しているなら証言者も失踪するのが普通だろう。
最も失踪している人が少ない事の方が重要であり、謂わばこの発言はナゾナゾのようなものだった。

「それは……都市伝説と思い込んでいるだけでしょうな」

「そうですよね……っ。
 携帯が鳴って……犬童警部から?」

ぼくと小暮さんが整理していると犬童警部からの着信があった。
記憶が正しければ帰り際には競馬の予想していたと思う。
だが警部も警部だ。競馬ではなく何か事件の事に関しての連絡だろう。

「はいもしも……警部ですね――ッ!?」

「ど、どうしたでありますか先輩!?」

ぼくは電話越しで犬童警部から事件の新情報を聞くと自然と立ち上がっていた。
それに驚く小暮さんに対し、ぼくは犬童警部から聞いた事をそのまま話した。

「証言者の人達が全員――「死亡」しました……?」


ぼくはそれだけ告げると急に意識が遠退きその場に倒れこんでしまった。
突然過ぎて小暮さんが慌てているが生憎ぼくも全く感覚がないため動けそうにない。

「先輩! 先輩!!」

小暮さんが必死にぼくに声を掛けてくれるが口すら動かないようだ。
全く持って動かない。犬童警部から事件の話を聞いた途端身体の制御が効かなくなっていた。
次第に瞳も開けられなくなってきており、闇が訪れそうだ。

「犬童警部でありますか!? 自分は小暮で――え!?
 もう「遅かった」……? それは一体、先輩のことでありますか!?」

電話での小暮さんと犬童警部の話を聞く限りだと、どうやら犬童警部は何か知っているようだ。
あの人は何時も情報を持っている節を見せて入るがどうも話をしてくれる空気を出さない。
今度会ったなら問いただしてみるのもいいかもしれない。
折角父さんや編纂室の皆、兄さん達のおかげで助かった命は無駄にしたくない
そもそもぼくはこのまま死ぬのか?

倒れている中、ぼくが最後に目にしたのは小暮さんでも床でもなかった。

窓の隙間から見える紅い満月がぼくを嘲笑っているように瞳に映り込んでいた。



――

―――


321 : 風海純也&セイバー ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:22:36 AajDVvwU0

つまりぼくは何かの怪奇現象に巻き込まれたことになる。
失踪事件を担当していたぼくが失踪しているとは本末転倒だろう。
携帯の電波は繋がらない。目に入り込んでくる景色から東京だと確認できる。
入ってくる情報は日本製の物ばかり。ぼくがこの場所を東京と断定したのにはもう一つの理由がある。

「聖杯戦争……一体」

呟いた単語は脳内に響くようにぼくの身体を駆け巡る。
理解するのに時間は必要なかったが感じるには多くの時間を必要としていた。
殺し合いだの、サーヴァントだの……ぼくは一体何に巻き込まれたのか?

「聖杯……キリストの? 願いが叶う……か。
 「紅い満月」「聖杯」「願い」「最後の一人」……これが都市伝説の正体?」

今手元に在る情報で現場を把握するならば――。

「紅い満月」を見た者は「失踪」する。その行く先は「創られた東京」。
「選ばれた人間」は「月」に「招待」され「殺し合い」を行う。
「サーヴァント」が与えられ、それを使役することにより「最後の一組」を目指す。
「優勝」した者には「聖杯」から「願い」を叶える権利をもらう……頭が痛くなる話だ。

この仮説が正しいならば紅い満月を見た証言者は「選ばれなかった」のだろう。
口封じのようなものなのか、今のぼくには判断出来ない。


「よう兄ちゃん、それでちょっとは飲み込めたか?」


背後からぼくに声を掛けたのは美しい程に整った顔立ちをしている男性だ。
和服のような物を着ていて、手には盃が。若干肌蹴ている姿からは「和」を感じさせる。
言い方を変えれば極道のような日本文化を感じるのだが、彼がぼくの「サーヴァント」らしい。

「元々情報は全て「頭に入り込んでいた」ようでしたが……それでも現状を理解するのは難しいのが本音です」

「まぁそうだろ……でも巻き込まれも参加には変わりない。
 この聖杯戦争でどう生き抜く……どう帰るつもりだ」

サーヴァントの問いかけにぼくは迷うこと無く返答した。

「誰かを殺してまで叶える願いなんてありません……それに僕は警察です。
 この事件の謎を解き明かし、犯人を捕まえるまで戻る気はありません」

殺し合いを強要する人間を野放しにしておくことは決して許されることではない。
大方小説にでも影響されたのか、この犯人を追いかければ失踪事件の解決にも繋がるだろう。
ぼくの事は小暮さんたちも探してくれているはずだ。ならぼくは調査をする。

「よく言った……俺の「百鬼夜行」はあんたの力になるぜ?」

桜が舞うように美しく、一瞬彼の後ろに無数の妖怪が居るように見えた。


322 : 風海純也&セイバー ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:23:38 AajDVvwU0


自分でも認めたくはないがぼくはどうやら、怪奇現象に縁があるらしい。
それも今回のぼくのパートナーは「妖怪」だと言う。
正確にはクォーターらしいのだが……末裔でも充分怪奇現象の一種だ。

受け入れたくない事実だが、今のぼくは「都市伝説」に「参戦」している。
「紅い満月」が招く「バトルロワイアル」をぼくはこれから乗り越えなければないらしい。
全く持って自身はないが黙っている訳にもいかない。
「セイバー」はぼくの力になってくれるらしい。

郷に入れば郷に従え……やるしかないようだ。

昔のぼくでは考えられないが仕方が無い、状況が状況だ。
犯人を特定、或いは真実に近づくために行動を開始しなくては。

警察史編纂室所属風海純也警部補、「紅い満月」の調査に乗り込む――。


―――

――



どうやら黙って寝かせてはくれないらしい。

聖杯か……面白いじゃないか。

俺のマスターは風海純也……警察、か。

正しい心を持っているならそれでいい、今の俺は主であるあんたに従うだけだ。

俺の畏れ――裏で糞笑う野郎共を許しはしねえ。

俺は召還された、そして関係人間も巻き込んでいる――この落とし前、つけさせてもらう。


闇に紛れるは古から伝わる百鬼夜行。

踊らりゃ踊れ、其れは見た者総てを魅了する桜の百鬼夜行也。

今宵の宴は真ん丸輝く御月様。

天井より紅く染め上げ進む道は茨か楽園か。


【マスター】
風海純也@流行り神 警視庁怪異事件ファイルシリーズ

【マスターとしての願い】
願いはない。事件の真相を追い続ける。

【weapon】
なし。

【能力・技能】
これといって目立った特徴はないが、科学とオカルトの両方の視点から物事を考えれる柔軟な思考を持つ。それと足が速い。

【人物背景】
元はキャリア組で警視庁捜査一課に配属されたが後に警察史編纂室に配属されることになる。
その後は相棒である小暮巡査部長と共に怪奇現象に近い事件を担当していくことになる。
怪奇現象に関わっていく中、彼は突然編纂室が解散された事を告げられた。
捜査一課に再び配属されるが何かが可怪しい、薄汚い蜘蛛の糸に絡みこまれた運命が動き出す。
彼の父親、仲間……総てを巻き込んだ事件を乗り越えた先、彼は人として大きく成長していた。

【方針】
紅い満月に関わる事件(聖杯戦争)の調査が基本となる。
オカルト的な観点から話を進めようとしているが、まずは情報収集が先になるだろう。


323 : 風海純也&セイバー ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:24:42 AajDVvwU0

【クラス】
セイバー

【真名】
奴良リクオ@ぬらりひょんの孫

【パラメーター】
【人間状態状態】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力D 幸運B 宝具A
【妖怪状態】
筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運B 宝具A

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
妖怪:D
古から伝わる存在の証。
セイバーは純粋なる妖怪ではなく人間とのクォーターのためランクDとなっている。
この性質ゆえにセイバーは傷の治りが早く夜になると本来以上の力を発揮する。
夜になると妖怪の力が覚醒し変身する。
明るいうちでも変身は可能だが、魔力を消費するため注意が必要である。

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。
多くの妖怪を魅了し百鬼夜行の頭としての由来がスキルとなった。

畏(おそれ):A
妖怪の力を総称した物。
セイバーは魑魅魍魎の主であり、百鬼夜行の頭でもあるため絶大な力を有する。

【宝具】
『祢々切丸』
ランク:D 種別:対妖宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
ぬらりひょんの血筋に伝わる長ドス。その力は妖怪のみを斬り裂く。
聖杯戦争では「サーヴァントのみ」を斬り裂くドスとして具現化した。
斬り裂く対象が妖怪に近しい存在ならば絶大な威力を発揮するだろう。

『明鏡止水』
ランク:B 種別:対妖宝具 レンジ:―― 最大補足:――
その力は畏れを発動することにより相手から認識されなくする奥義である。
そして派生することにより攻撃技である『桜』に応用することも可能である。

『鬼纏』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大補足――
かつて信頼を気付いた妖怪の力を纏う能力。
これにより祢々切丸に氷を帯びさせたり巨大化させるなど多用な技を放つことが出来る。
尚、後述である固有結界発動時でなければ使えない。

『鏡花水月』
ランク:B 種別:対妖宝具 レンジ:1 最大補足:1
相手の認識をずらし総ての影響を絶つ技である。相手の隙を突くカウンターと考えるのが妥当である。
見えていても触ると波紋が立って消えてしまう「水面に映った月」の様に、ぬらりくらりとして本質を掴ませない、
ぬらりひょんの本質を表しているとも言える技。

『百鬼夜行』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:―― 最大補足:――
桜舞う夜を展開し嘗てセイバーが頭となりて築き上げた百鬼夜行を展開する。
魑魅魍魎、多くの妖怪がセイバーの力となりて具現化する。
この間、セイバーは前述である宝具『鬼纏』を発動させることが出来る。

【weapon】
祢々切丸

【人物背景】
人間と妖怪のクォーターである少年。その血筋はあの妖怪であるぬらりひょん。
学生として平穏な生活を営んでいたが変わり征く状況から知らずの間に妖怪との抗争を行っていた。
己の組の頭に就任し、気付けばその背中には多くの妖怪が彼の力となりて、柄ではないが世界のために戦っていた。


324 : ◆CRqDK4Bsjw :2014/12/23(火) 23:26:04 AajDVvwU0
投下終了です


325 : ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:14:38 5R.s5Ijg0
皆様投下お疲れ様です!
私も8騎目を投下させていただきます!


326 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:16:27 5R.s5Ijg0


――――ビスケットが砕ける。

『生き残るのは本当に強いものだけでいい。
 豊かな家族や国に生まれただけでクズが幸福な人生を送り、そうじゃない子供は空腹や寒さで震えているような世界。
 そんな世界こそが、そもそも間違いなんだ』

――――目の前の男は、ビスケットを食べれる。

『幸福とは、その人間の能力だけで得られるべきなんだ!』

――――僕たちは、ビスケットを食べられない。

『お前は、弱いものには生きている価値がないと言うのか?』

――――そんなの、間違っている。

『まさに!その通り!』

――――だから、恵まれただけの弱者は死ななければいけない。
――――弱者の生きれない世界を、強者だけが生き残れる世界が欲しい。
――――恵まれなかっただけの強者が恵まれただけの弱者に奪われることがあってはならない。



『例えば――――――――――――――――『君』の妹さんのように?』





.


327 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:18:42 5R.s5Ijg0


   ◆   ◆   ◆


「お帰りなさい」

男がドアを開けると、そこには一人の少女が居た。
若く、美しく、艷やかだった。
緑色の野暮ったいジャージを身を包んでも、なお、色っぽい。
色欲の権化のような少女だった。
当然、彼女は通常の少女ではない。
彼女は英霊、アサシンのサーヴァント。
豊満な女躰と、柔らかなブロンドヘアー。
タレ目がちな瞳は母性を感じさせ、その存在に全てを任せればどれだけ幸福に成れるだろうか。

「ただいま」

しかし、男の獣欲をくすぐる媚体を前にしても、男の前に色欲の色はなかった。
お互いに欲望を感じさせないそのやり取りは、新婚としての生活というよりも家族としての生活だった。
兄と妹の、そんな生活だった。

「あら、それ……」
「これ好きでね」

ハハッ、と笑いながら一つ百円程度のハンバーガーを口にする。
ジオット・セヴェルス。
この紅い月に導かれる前に着込んでいた高級スーツはすでに路銀に変えた。
特別なものではなかった。
少なくとも、ジオットはそう思っていた。
今の彼は日々の生活を日々の仕事で賄うフリーター、住処を得た風来坊だ。

「いつもお疲れ様です」
「いやぁ、でも日雇いのほうが楽だよ」

かつて、誇張なく世界を支配した大グループ『ジャッジメント』の会長だ。
ナノマシンを使って微弱なウイルスをばら撒いて、その年の流行病を仕立てあげて製薬業界をコントロールする。
そんなことばかり続けていた。
後は、順番を待つだけだった男。
なのに、誰も自分の前に立ってくれなかった男。

「世界を支配するのも大変だったよ。
 ウイルスばら撒いて、その年の病気を起こして、イレギュラーが起こらないようにしたり。
 その病気のワクチンがきちんと無駄にならないように在庫を掃けさしたり。
 まだ出来立ての世界支配だから、逆らう奴とかもいるし」

二個目のハンバーガーに手を伸ばしながら、アルバイト求人誌を床に置く。
あまりにも自分勝手な『悪』が世界を支配するための理論に、しかし、アサシンはニコニコとしたままだった。
アサシンは卓袱台へと食事を運んだ。
もやしだけを炒めたもやし炒めであった。


328 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:19:39 5R.s5Ijg0

「マスターも大変ですね。
 私も『悪い人』でしたが、どちらかと言えば兵隊さんでしたので」
「いやぁ、君たちも君たちで大変だろう?」
「マスターほどではありませんわ」

アサシンは豊満な胸を揺らしながら、微笑んだ。
それでも、目の前の料理に伸ばす手を止めない。
卑しいまでの姿は、しかし、アサシンに染み付いた貧困の習慣だった。

「友達だけど、その心は決して消えませんでしたわ。
 彼女は友達だけど、私は線の外側に居た」
「線?」
「テレビに映る側と、テレビを見る側ですわ」
「あー、なるほどね」

「所詮は酸っぱい葡萄だろう?
 人間が自分自身の力で奇跡を起こせないから、暴力的なまでになんでも叶える奇跡を『いけないもの』だとする」

なんてこともなく呟きながら、ジオットは六畳一間の安アパートの畳に腰を下ろす。
尻もちをついて座ることは慣れていた。
幼少時代では、椅子に座れる機会のほうが圧倒的に少なかったからだ。
そして、コンビニで買ってきたワンカップ酒を、別のカップに注ぎ込む。
聖杯。

「僕らに注げるものが酒で、神様に注げるものが奇跡だってだけ。
 別に、おかしなことじゃないさ」

そう言いながら、グイッ、と日本酒を煽った。
安っぽい甘さがジオットの喉を通り過ぎた。
嬉しそうに顔を綻ばせる。

「使っていいって言うならもらおうよ、やっぱり便利だろうしさ。
 遊んでもいいし、本当に欲しいものをもらってもいいなぁ」

ただ、その言葉だけは、どこか演技がかったものだった。
心の奥底から願うものが、容易く手に入ってしまう可能性に嫌悪している感情を隠そうとしているものだった。
アサシンは何も言わなかった。
己の中で処理できないものは、確かにある。
それを暴力的なまでに解決してしまう、自らよりも『恵まれたもの』に対する嫌悪はアサシンの中にもある。

「マスターは、ここに来る」
「僕は、まあ、列に並んでてね」
「列?」
「その列に並んでて、ついに僕の順番が来たかと思ったら……
 なんだか、順番じゃなかったみたいで、ヒーローに追い返されちゃった。
 でも、列に戻る気もなくなってね」
「……列とは、なんですか?」

その比喩表現が上手く掴みとれず、アサシンは問いかけた。
ジオットは言葉を続ける。
どこか優しい瞳をしていた。
その瞳が、自分を誰かに重ねていることにアサシンは気づいた。
恐らく、ジオットは自身を妹に重ねている。


329 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:20:30 5R.s5Ijg0

「誰かに牙を向けるってことは、列に並ぶってことなんだよ。
 いつかは、自分の順番が来る」

ジオットは笑いながら言った。
フォークで、もやし炒めに舌鼓を打つ。
悪くはない味だった。
丁寧に調理されているが、しかし、安っぽさが消えない。
チープな味はジオットの舌が好むものだった。

「マスターの言う『列』とは違いますが、列ならば、私も並んだことが有ります」
「へぇ」
「きっと、次は私の番だ。きっと、次は私達の番だ。
 そう考えて、待って、待って、待って――――結局、列なんてないことにやっと気づきました」

アサシン――――悪忍・詠は嘲笑ってみせた。
己を嘲笑う笑みだった。

「モニター越しに映る悲劇は知っています。
 しかし、それは現実ではないのです。
 私達がモニターに映る裕福な生活を現実だと信じられなかったように、富裕層もモニターに映る貧困層を現実だと思えなかった。
 だから、遠くにある貧困へと支援はしても、近くにいる私達にはなにもされなかった。
 世界に見捨てられ気分になり、それは違うことに気づきました」
「そうだね、それは違うよ」

ジオットの言葉に、アサシンは頷いた。

「施しを待っていてどうなりますか、自らで掴むしかありません。
 『存在してほしい』施しを存在させるためには、自らが誰かに施しを授けるしかない。
 フィクションをどうにかして実在させるしかない」

そう言った後、アサシンは少し表情を歪めた。

「そうわかってもなお、憎しみは消えません。
 富裕への憎しみは、決して消えません。
 救ってくれなかった、『善』への憎しみは消えません。
 友情を抱いても、心に染み付いた憎しみは消えません」

詠はジオットの目を見据えた。
ジオットは笑っている。
世界から隔絶された笑みだった。
どこかで止まらなければいけないのに、誰も止めてくれない笑みだった。

「例え、結末がどうなろうとも、私もサーヴァント。
 貴方の『悪』の誇りに舞い殉じましょう」
「誇りだなんて、そんな大層なものじゃないけどね」

ジオットは笑う。
ひとまず、やるべきことは見つかった。
捧げる願いはないが、手段と目的はわかった。
ならば、その後に願おう。

「願いを叶えるってことを簡単に勘違いしている奴らを殴るのは楽しいね」


330 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:21:03 5R.s5Ijg0


   ◆   ◆   ◆


誰もが、現実に不満を持っていても世界を変えようとしない。
自らがフィクションを持ってきてやっても、人々は現実を望んだ。
何かが違っているような気がした。
ただ、敗北して、終わることは分かっていたことだ。
納得はできずとも、構わなかった。
赤い男が迫る。

「――――」

そして、そのまま立ち去った。
赤い男はジオットを殺さなかった。
復讐を成し遂げた時から並んだ、復讐されるための列の順番が来たと思ったのに。

敗北したジオットは呼ばれた。
願いもわからなくなったまま、誘われた。

フィクションが消えた後で、なお、紅い月が輝いていた。

ふと、あるオカルトを思い出した。
『どうしても叶わない願いを叶えてくれる、紅い月が存在する』と。

――――願いを叶えるために現れたというヒーローを、『赤い男』を、連想させた。


331 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:21:47 5R.s5Ijg0
【クラス】
アサシン

【真名】
詠@閃乱カグラ

【パラメーター】
筋力B 耐久D+ 敏捷E 魔力D 幸運E 宝具D

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。

【保有スキル】
悪忍:B
政府公認ではなく、私企業などの依頼も受けて忍としての任務を行う者。
詠は高いスキルランクを誇っており、周囲を忍以外から隔絶する忍結界を使用することが出来る。
また、忍転身を用いることで、一瞬で衣服を忍び装束へと変化させることが出来る。

貧者の英雄:B
その名の通り、貧しき英雄。
もちろん、例外は存在するが、詠は根本的な部分で富裕層と分かり合うことができない。
恵まれた資金を持つマスターと契約を結ぶと、そのステータスを1ランクをダウンさせる。
しかし、貧者との契約であると筋力・耐久・敏捷を1ランクアップさせる

自己暗示:E
自身にかける暗示。通常は精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
自らは空腹でないと思うことで、通常では考えられない期間無食で過ごすことが出来る。

【宝具】
『裂隙、氷下の国より(ニブルヘイム)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:10人
詠が全身に仕込んだ宝具を一挙に解放させる。
両腕のボウガンと大砲を次々に発射し、忍び衣装の中に隠した爆弾を炸裂させる。

『神よ、何処に行かれたのですか(ラグナロク)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:2〜20 最大捕捉:20人
詠が背負う、身の丈はある大剣の宝具。
ただでさえ巨大な大剣は真名を解放させることで、さらに巨大な大剣へと姿を変える。
身の丈の倍はあるラグナロクを振るい、全てを一刀に断つ。

【weapon】
両腕に籠手のように装着したボウガンと大砲、及び爆弾。
そして、背に備えた自らの身の丈ほどもある大剣。

【人物背景】
選抜クラス所属の秘立蛇女子学院2年。
お嬢様のような見た目と口調だが、実は恵まれた育ちではなく入学後も日々の食事にも困るほど困窮している。
裕福な生活を送っているお嬢様である斑鳩にはそんな事情から憎悪の感情を抱いている。
好物は安価な食材として知られるもやし。

かつて、貧困で飢えていた時に街頭テレビで自国の富裕層が海外の貧困層への支援を行う会見を目にしてしまう。


332 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:22:05 5R.s5Ijg0

【マスター】
ジオット・セヴェルス@パワプロクンポケット14

【マスターとしての願い】
まだ決めていない。

【weapon】
これといって武術の心得などは無いが、2年前にNOZAKI社で回収した『ヒーロー』の遺体を改造し「変身スーツ」として使用している。
これにより生身での戦闘が可能になるほか、光線兵器に対する防御力が極限まで高まる。

【能力・技能】
特殊な能力は技能を持たないが、高いカリスマ性と辛抱強い執着を持っている。

【人物背景】
『ジャジメントグループ』会長。
人間の望みや恐れの具現化を促す装置「ドリームマシン」を用いて人為的にカタストロフを起こし、地球を強者のみが生き残る世界に作り変えようとした。
幼少期を紛争地域で過ごして妹以外の家族を失った後、国際的な支援を受けられない(「戦争で悪者にされた側」の国だった為)環境で極貧生活を送る。

しかし幼少期にその家族共々、旧支配者グループを構成する欧州の巨大財閥『カエサリオン』の一族に踏み躙られ弟を失う。
残った妹も心臓移植のために殺害された過去がある。
守るべきものが無くなって以降はカエサリオンへの復讐のみを生きる糧とし、過激な手段で裏社会をのし上がっていった。
その憎しみはカエサリオンを滅ぼしても消える事はなく、捕獲したカエサリオン一族を殺すことなく苦痛を与えながら「飼育」している。
その様子は、脳髄のみを培養液に漬け込み管理する、といったあまりにも非人道的なものであり彼の狂気を象徴している。

また、強大なカエサリオンに復讐するには人外の存在の力に頼らざるを得ず、妻との合意の上で彼女を生け贄に捧げ、亡霊を呼び出し契約する。
しかし、その後に妻が子供を身篭っていたこと、自分の復讐への決意を鈍らせない為に妊娠を黙秘していた事を知ってしまう。
失ったもののあまりの大きさに、以後の彼は立ち止まるという事をしなくなる。

ハンバーガーを好むのは、彼が生き抜いた地域で最も豪華とされた食べ物だったことに起因する。
現在も奢侈な新作ハンバーガーは好まず、質素なハンバーガーを食べ続けている。
一番好きな食べ物は「母の手製のスープ」だが、既に色も味も記憶の彼方にあり、大好きだったということだけを今でも覚えている。

「カタストロフ」の際は乗り込んできた赤いヒーローと一対一の決闘になるが、カタストロフの頓挫を目の当たりにして戦意を喪失。
赤いヒーローがその場を去った後、ひとり残った自分を呼ぶかのように出現した紅い月に誘われ、この世から姿を消す。

【方針】
世界を壊す。


333 : ジオット・セヴェルス&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/24(水) 01:22:23 5R.s5Ijg0
投下終了です


334 : 名無しさん :2014/12/24(水) 07:23:26 e16H8Uwo0
投下乙です!
おお、まさかジオットさんが登場するとは……この人がマスターになるなんて怖すぎますよ

そして一つ質問。
この聖杯戦争は参加者が18組となっていますが、それはどうやって決めるでしょうか?
投票?


335 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/24(水) 08:06:30 tv9OYDUM0
投下乙です。三作目投下させていただきます。


336 : 桂木弥子&セイバー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/24(水) 08:08:21 tv9OYDUM0
なんでも願い事一つ叶えてあげる。

もし、あなたなら何を願う?


世界平和。
地位や名誉。
幸福。
不幸。
復讐。
愛。

本当に本当、なんだって叶えられる。全てがあなたの思うがまま。
紅い月に願って御覧。きっと願いを叶えられる。


ただし、聖杯戦争に勝利しなければならない。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


「ごめんなさい!」


桂木弥子は、聖杯戦争の舞台に到着して早々にジャンピング土下座をかましていた。
彼女に召喚されたサーヴァント――セイバーは無愛想な表情を浮かべたまま。
なんであろうとも弥子が謝罪を止める事はない。


「まさか『紅い月』の噂話が本当だったなんて知らなかったんです!
 だって、皆話しているからこっくりさんみたいな都市伝説かなって思っちゃうじゃないですかっ!」


彼女もまた、数多のマスターが一人。
月に願った少女。
桂木弥子も確固たる願いを抱き、それを聖杯に認められたのだ。
だが、弥子は続ける。


「しかも、聖杯戦争とか! 戦うなんて出来っこないのに選ばれたのだって
 もう訳わかんないしっ!! そ、それに……それに……」


「それに! 『駅前のジャンボパフェ1年分が欲しいな』ってお願いを承諾されるなんて
 普通、考えられないじゃないですかっ!!!」


確固たる願い……とは、貪欲な暴食たる願いだった。
深刻な思いで願った他の者とは比べようがないし、一体何しに来やがったと罵倒されても仕方がない。
弥子も、そんな覚悟を早々に構えてしまったところである。
始終を聞いたセイバーは沈黙の後


「……はぁ」
(溜息つかれたーーーーー!!!)
「面倒くせェ、難儀な探偵がマスターになったもんだぜ」
「は、はい……すみません……
 ――あれ? あの、どうして私が『探偵』やっている事、知っているんですか??」


まだ、話してもいないのに。
弥子はポカンとする。

その通り、桂木弥子は世間で『名探偵』と称されるほどの身分となった少女だった。
実際は彼女の隣にいる魔人が謎を解いているのであって、彼女にはトリックを解く頭脳は持ち合わせていない。
傀儡に過ぎずとも『探偵』であるのには変わりないだろう。
「あぁ」とセイバーが答えた。


337 : 桂木弥子&セイバー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/24(水) 08:08:58 tv9OYDUM0


「まァ、俺はそういうのに関係した英霊だ。英霊と言える御身分か知らねェがな」
「そうなんですか?」
「――で。そのパフェとやらを願うのか、食いしん坊探偵」
「願いませんよ! 言ってるじゃないですか!!」
「なら、どうする」


どう?

そんなの……分からない。

何故なら桂木弥子は仮初の『探偵』であり、かといって聖杯戦争へ身を投じる戦士でもない。
できることがあるとすれば――
一つしかない。
彼女の利点であり、彼女の武器。

人の心への理解。

決して、数々の事件を前に棒立ちしていた弥子ではない。
彼女はありとあらゆる犯罪を知った、様々な『謎』とその『犯人』を見た。
難事件を踏んでいくごとに、彼女は『彼ら』の心理へ関心を向けた。
それを理解していった。


「聖杯戦争をするのにも『理由』があるはず――その『理由』を知りたい」


仮想とはいえ日本の『東京』を舞台として選び、聖杯戦争を始めた『誰か』。
ミステリーにおける『動機』なるものを知りたい。
桂木弥子が決心した目的は、それだった。


「要するに『動機』か」
「はい。探偵だったら犯人を探せよって言われそうだけど、それが一番大切な事じゃないかなって思ってて……」
「……いや、むしろ合格点だ」


セイバーが語る。


「探偵を気取るにしろ、その心を忘れるなよ。そいつが出来ねェ奴はただの知的強姦者だ」
(ごめんなさい。一名、知り合いにいます……)
「しかし『動機』を重んじる探偵……か。珍しいが、俺のマスターには最適って訳だな」


最適なのだろうか?
自信はない弥子だったが、どことなくセイバーの様子は嬉しそうに見えなくない。


「探偵は『謎』に呼ばれる存在だ。聖杯戦争の『謎』に呼ばれたって事だろうぜ。
 今回ばかりはワトソン役を演じてやらァ。せいぜい頑張りな、ホームズ君」


こうして桂木弥子の『謎』解きが始まるのであった――


338 : 桂木弥子&セイバー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/24(水) 08:09:53 tv9OYDUM0
【クラス】セイバー
【真名】ウィラード・H・ライト@うみねこのなく頃に散
【属性】秩序・中庸

【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:E 幸運:B 宝具:E-(A)

【クラス別スキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
探偵権限:A
 マスターが魔術師と相反する探偵の場合、効果を得るスキル。
 このランクでは宝具と治癒を除く魔力消費を一切必要としない。

魔術師狩り:A
 異端審問官のエースとして得た称号の一つ……らしい。
 キャスター、または『魔術師』『魔女』『魔法使い』の称号を持つ
 サーヴァントとの対峙時、耐久・魔力の1ランク上昇を得る。
 
戦闘続行:B
 往生際の悪さ。奇跡の魔女と死闘を演じ、その最後まで戦い続けた……らしい。


【宝具】
『ヴァン・ダインの二十の楔』
ランク:E-(A) 種別:対人 レンジ:1〜10 最大補足:1人
セイバーの正体であり、セイバーの漆黒の剣、そしてセイバーの宝具たる能力。
剣に斬られたサーヴァントはダメージを受けない。これは攻撃判定としても扱われない。
セイバーに斬られたサーヴァントのステータス・スキル・宝具の情報が
セイバーへ与えられて行き、二十回目の斬撃を受けた瞬間、確実に真名が看破される。
真名を暴露されたサーヴァントはセイバーの刃の脅威に曝され、Aランク宝具の攻撃と化す。
また、事前に真名が暴露されているならば二十回の斬撃は必要としない。
対神性・魔術特化宝具の為、一切の神秘性を持ち合わせていない。

【人物背景】
SSVDの主席異端審問官。階級は一等大司教。
かつて冷酷無慈悲に職務を全うし、『二十の楔のライト』『魔術師狩りのライト』の称号を得た。
無限の魔女を埋葬し、奇跡の魔女と死闘を繰り広げた英霊。


……という、前述の幻想は理解しない方がいい。頭痛になる。


ミステリーの戒律が一つ『ヴァン・ダインの二十則』の概念が英霊化し、召喚された。
彼の性格は粗っぽい上に口が悪く、誰に対してもタメ口で礼儀を知らない。
軽々しい発言を口にする事が多いが『動機』を重視する為、人情を大切にする性格である。



【マスター】桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ
【性別】女性

【マスターとしての願い】
聖杯戦争の『謎』を解く

【weapon】
超人的な大食い。
数多の犯罪者と接した為、彼らの深層心理を理解する力がある。

【人物背景】
ごく普通の女子高校生だった。
父親の死を切っ掛けに魔人と共に『謎』を解く宿命を持つ探偵の道へ。
彼女の活躍によりHALの事件が解決した、その後の参加となる。


339 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/24(水) 08:11:41 tv9OYDUM0
投下終了です。


340 : ◆7PJBZrstcc :2014/12/24(水) 09:06:27 bls7BSiE0
投下させていただきます。


341 : ◆7PJBZrstcc :2014/12/24(水) 09:07:33 bls7BSiE0
ありとあらゆる世界に現れる紅い満月。
そしてそれは噂という形で人々の中に情報として入っていく。
その噂は1999年のM県S市杜王町にも届いていた。

◆ ◆ ◆ ◆

「仗助くん億泰くん、『紅い満月』って話知ってる?」

吉良吉影を倒して少しした後、何気ない日常を過ごしていた仗助たちの元に広瀬康一がこんな話を振ってきた。
 話を振られた仗助は知らなかったのか顔を顰めたが、もう一人の億泰は知っていたのか「おお、俺も聞いたことあるぜそれ!」と返す。

「しらねーなあ、どーいう話なんだそれ?」
「僕も詳しくは知らないんだけど、空に紅い満月が浮かんでいてそれを見たら願いが叶うんだってさ」
「俺はその紅い満月が浮かぶのが月がない夜だって聞いたぜ!」

 その話を聞いた仗助は一瞬思考が止まり、次の瞬間には「アホくさ」と一蹴する。話を一蹴されて康一はちょっとムっとしたが、それ以上に億泰が反応した。

「何でだよ、ロマンチックでいいじゃねーか!!」
「月の色が赤じゃなかったら俺もそう思ったかもな」
「まあ確かに、そう言われてもおかしくないよね……」

 赤い月が薄気味悪いという仗助の意見に思わず賛同する康一。そこで彼はある可能性に思い当たる。

「でもさ、月のない夜に浮かぶ月ってスタンドかもしれないよ」
「スタンドね……」
「トニオさんみてーな人のスタンドだぜ、きっと!!」
「……だといいけどな」

 結局その日は話がまとまらず、とりあえず新月の夜に紅い月が浮かぶかどうか確かめるという事で落ち着いた。
 そして新月の夜、仗助が家の窓から外を眺めていると異常に気づく。
 空が赤い、紅い空。
「おいおい、冗談だと思ってたけどマジなのか!?」
 仗助は外に飛び出す、紅い空だけでなく月を見る為に。
「本当に願いが叶うなら、お袋に止められている口座も俺が使えるようになるといいなぁ〜!!」

 そんな事を言いながら仗助は空に浮かぶ紅い月を見た。
 『紅い満月』を見てしまった。


342 : 名無しさん :2014/12/24(水) 09:08:12 wgsqeaMQ0
ステータスおかしい奴ばっかだな


343 : ◆7PJBZrstcc :2014/12/24(水) 09:08:24 bls7BSiE0
「っていうワケなんスよキャスター」

 そして今、仗助は己の従者であるキャスターに今までの事を説明していた。
 自分の頭の中に知らない情報が入っているという事に関しては気味悪く思わないでもなかったが、似たようなことができるいけ好かない漫画家をしっていたので仗助は取り乱さずに済んだ。
 ちなみに敬語を使っているのは、英雄なんだし年上だろうという適当な判断によるものである。

「キャスター、単刀直入に聞きます。俺はこの戦いから脱出することが」
「すまない、それは無理だ」

 仗助の一番の疑問をくい気味に返すキャスター。あまりにも希望のない話におもわず顔を落とす仗助。
 そんな仗助を見かねてかキャスターは励ましの言葉を口にする。

「安心してくれマスター、君の事は俺が守る」

 キャスターとしては安心させるつもりで言った言葉だが、仗助としては少し不満だ。
 キャスターに悪意がない事は分かっている、自分は一見するとただのガクセーにしか見えないという事も分かっている。

 ここでキャスターの外見を描写しよう、服装は学ランといういかにもな学生。身長が高いわけでもなく、仗助が見る限り筋肉質だとも思えない。強いて特徴を挙げるとするなら黄色、赤、黒と様々な色を持つ髪の毛と逆立った髪型、そして左腕についているよく分からない機械ぐらいだ。剣や槍と言った武器を持っている様子は無い。

 ここで言っておくと、別に仗助はキャスターを侮るつもりはない。いくら武器を持っていなくてもそれは自分も同じ。そして魔術師というクラスなのだ、きっとスタンドかもしくは似たような何かを持っていると考えていた。
 でも自分にだって誇りがある、ジョースターの一族だという誇り(まあ65歳で浮気するようなジジイの血を引いていると言われると微妙な気もする時もあるが)。
 決して自分一人の力とは言えないものの、殺人鬼から街を守ったという自負が仗助の中には確かにあった。
 そんな思いのこもった視線をキャスターはどう受け取ったのか、こんなことを言い始める。

「マスター、君はどうやら俺の力に疑問があるようだ」
「別に疑ってるわけじゃ……」
「確かに俺は見ての通り剣を振ったり拳で戦う男じゃない。だが君を守る力はある」

 そう言ってキャスターは何処からかカードの束を取り出した。そしてその中から1枚を選びそれを左腕についている機械の上に置く。

 すると、巨大な盾を持った男が前触れもなく仗助の前に現れた。

「そのモンスターは俺が宝具で呼び出したんだ」
「グレートだぜ……」
「ちなみにこいつの名前は『ビッグ・シールド・ガードナー』だ。こいつは俺のデッキの中でも屈指の守備力を誇っている」
「キャスター、あんたがスゲェって事は分かった。だけど、俺もただ守られるだけじゃいね―ぜッ!!」

 そう言って仗助は自分の精神の具現化であるスタンド、『クレイジーダイヤモンド』を出す。彼は出したスタンドでキャスターの使役するモンスターに殴りかかった。

「ドラァッ!!」
(かてぇ。なんて硬さだ、キラークイーンのシアハートアタックと同じくらいにかてぇ)

そしてそれを見たキャスターは一瞬だけ驚くが、すぐに持ち直す。

「驚かないんスね」
「いや驚いているさ。俺は生前闇の力を持ったアイテムや世界を滅ぼそうとした男ならしているが、こんな分かりやすく自前の超能力を持った奴にはあったことがないからな」
「それはそれでスケールの大きい話っスね」

 こうして二人はお互いの力を認め、どちらともなく握手をする。
 それは友情の証。世界を超え、まったくの異郷の中で生まれた結束の印。
 そして二人は今後の事を話し始めた。

「マスター、君はこれからどうする?」
「俺は、俺みたいにこの戦いに巻き込まれた人間を助けたい。勿論戦うっていうなら容赦する気はねーけど、それでも戦いたくないって奴がいるなら俺は助けてやりたい」
「マスタ―……」
「だから、キャスターには悪いんスけど力を貸してもらえないっスか」

 その仗助の問いにキャスターは頷く、こうして二人の聖杯戦争は始まった。
 だがこれはあくまで始まり。
願いを持つ参加者、そしてこの戦いを開いた聖杯、それらに挑む無謀な戦いの始まりでしかない。


344 : ◆7PJBZrstcc :2014/12/24(水) 09:10:50 bls7BSiE0
【クラス】
キャスター

【真名】
武藤遊戯@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ

【パラメーター】
筋力E 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運A 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
陣地作成:-
魔術師として自らに有利な陣地を作成可能。
キャスターは後述の人物背景の都合このスキルを所持しておらず、また必要としていないので消滅している。

道具作成:D
魔力を帯びた器具を作成可能。
キャスターは後述の宝具を用いて戦い、なおかつ宝具が自然と魔力を帯びているので基本必要はない。
ただし再現された東京の内部でカードを手に入れた場合、カードに魔力を帯びさせることは可能。

【保有スキル】
遊戯王:A
ありとあらゆる「ゲーム」に勝つ力。
その力は最早運命操作に近いが、決して隙がないわけではない。

決闘王:A
デュエルモンスターズと呼ばれるカードゲームで戦う者たちの王である称号。
聖杯戦争ではカードを発動する際に魔力を必要とするが、これを軽減する効果がある。
ただし、発動に何らかのコストが必要なカードの場合はこの限りではない。
また、彼らデュエリストは一般人に比べて魂の力が強いとされている。

騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。
キャスターは生前乗馬に長けていたので所持しているが、馬以外には発揮されない。

【宝具】
『決闘者の王の剣(デッキオブキングオブデュエリスト)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜? 最大補足:1〜?
キング・オブ・デュエリスト、武藤遊戯が使用したとされるデッキ。
最低40枚のカードからなるカードの束で、その力を具現化し使役することができる。
強力な魔術師や剣士、それらを融合した魔導騎士、さらには神すらも従える事が出来るが、使役する存在が強力になるにつれてサーヴァントの負担になっていく。
また、この宝具はデュエルモンスターズのバトルシティ編以降のルールに遵守する。
例としては、カードは戦闘開始と同時に5枚手札に加わりその後さらにデッキから1枚ドローする。
その後、使役するモンスターを召喚する。または手札にある魔法を発動したり罠を仕掛けたりも可能。
次に、モンスターが召喚されていれば攻撃することができる。ただし、カードによる特殊な効果が無い限りはモンスター1体に付き1ターンに1度までしか攻撃できない。
攻撃終了後、再び魔法の発動や罠の仕掛ける等が可能になるがしなくてもよい。それらが終了したらターン終了を宣言する。このタイミングで手札が7枚以上の場合は6枚になるように墓地に捨てなければならない。
また、次にドロー出来るのは「ターン終了を宣言してから」3分後である。
ちなみに、戦闘終了と同時に墓地に行ったカード、手札などは全てデッキに戻る。
なお、この効果は自分のみであり相手には作用しないが、相手がデュエリストの場合は別である。
最後に、戦闘以外でもカード効果は使用可能だが負担は戦闘時より大きくなる。

『決闘者の盾(デュエルディスク)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
前述の宝具を発動させるための媒介。左腕に装着している。
モンスターは最大5体、魔法と罠は合計5枚まで発動、伏せゾーンが存在する。また別個にフィールド魔法ゾーンも存在。
融合デッキ(エクストラデッキ)の枚数制限は無し。
また、キャスターから見て未来に追加されるペンデュラムゾーンは存在していない。

【weapon】
前述の宝具以外なし。


345 : ◆7PJBZrstcc :2014/12/24(水) 09:11:45 bls7BSiE0
【人物背景】
元々は3000年前のエジプトの王。しかし、大邪神ゾークとの戦いの末に自らの魂をファラオの証である千年錘(千年パズル)にゾークと共に封印する。
それから3000年後、ゲーム好きの高校生武藤遊戯によって千年パズルは組み上げられファラオの魂はよみがえる。
しかしこの時点でファラオは記憶がなく、自らを武藤遊戯の別人格「もう一人の遊戯」と思い込んでしまった。

性格は基本敵に真面目、大胆不敵、強気で仲間思い。仲間を守るために自らの身を挺したり、仲間を傷つける人間には容赦がない。
とはいえ堅い人間ではなく、表遊戯(遊戯の主人格)にシルバーを勧めたり、友達をからかうなど軽い面もある。

その後、様々な戦いを経た末キャスターは自らの記憶と自分の名前であるアテムを取り戻す。
そして、最後の戦いである戦いの儀の末にキャスターは冥界に還って行った。

ちなみに、アテムという名があるにも拘わらず真名が武藤遊戯になっているのには理由がある。
まず第一に、決闘王武藤遊戯の別人格所持は後に残るもののアテムという名前が残らなかったこと。(名もなきファラオについては残っている)
第二に、アテムが成した大邪神ゾークの封印については、アテムという名前が残らず、そもそもその事実が起きた事すら現代には認知されて無かったためである。


【マスター】
東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
この戦いを止めたい

【weapon】
スタンド『クレイジーダイヤモンド』

【能力・技能】
スタンド『クレイジーダイヤモンド』
近距離パワー型で人型のスタンド。パワースピード共に高く、また精密な動きも可能。
具体的には至近距離で発射された弾丸を指でつまんで止める事が出来るほど。
固有の能力に壊れた物体や負傷した生物を修復する能力がある。
ただし、病気の治癒は出来ずまた死者蘇生も不可能である。
また、仗助自身にこの能力は行使できない。

【人物背景】
M県S市杜王町に住むリーゼントが特徴でスタンド使いの高校1年生。
見た目から不良と誤解されることもあるが、根は正義感の強い好青年である。
彼の分かりやすい特徴としては、髪型のリーゼントを侮辱されると周りが見えなくなるほど逆上する、というものがある。

【方針】
聖杯戦争に巻き込まれた人間を助ける。
自分の意志で殺し合いに乗っている奴には容赦しない。


346 : ◆7PJBZrstcc :2014/12/24(水) 09:12:10 bls7BSiE0
投下終了です。


347 : 名無しさん :2014/12/24(水) 09:57:32 5R.s5Ijg0
>>334
正式な18騎については、自分の一存で決めさせていただきます


348 : ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:22:02 wVVu2Ug.0
2騎目を投下させていただきます


349 : ゲーニッツ&アサシン ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:23:25 wVVu2Ug.0
ここは荒れ果てたスタジアム。
つい数刻前までは観客の歓声が轟き、活気が溢れていた姿はもうそこにはない。
あるのは災厄が到来を象徴するかのように空を覆う赤黒い雲に、無残にも破壊されたスタジアムの設備の残骸だけ。
そして残骸の一部を宙に浮かせてしまうほどに激しく突風がなびいている。

この格闘大会、キング・オブ・ファイターズ決勝戦の会場だった場所はまさに地獄絵図であった。
観客はとうに逃げたか、または破壊されたスタジアムに生き埋めにされたか。
そこにいたのは、三人の格闘家に一人の女性、
そしてスタジアムを風だけで破壊した牧師風の格好をした男性であった。

「驚きですね。これ程までとは…」

その男、ゲーニッツは膝をつく。

「神楽さん。あなたが見込んだ方々、なかなかのものでした。しかし、あなた方の手でオロチを封じようなどとは考えない事です。手を引く事をおすすめしますよ」

オロチ。地球意思と呼ばれる人類を滅ぼす存在。今は封印されているが、
それが解かれればオロチの圧倒的な力により人類は無に還るだろう。
ゲーニッツは封印の護り手・神楽ちづるを殺害するためにスタジアムを襲撃したのだが、
キング・オブ・ファイターズ優勝チームの格闘家達との死闘の末、敗北したのだ。

「封じてみせるわ…必ず…」
「勝ち気なお方だ…――いい風が来ました。そろそろ頃合いです」

ゲーニッツの言葉とともに強風がさらに激しさを増す。
当のゲーニッツはというと、敗北したにも関わらず冷静且つ落ち着いている。
よく見ると跪いた姿勢で手のひらに風を集めている。
風が強くなったのはこれが原因のようだ。

「逃げる!?」

その様子を見て彼が何かする気だと悟ったのか、優勝チームの格闘家の一人が声を上げる。
が、ゲーニッツは天を仰ぎながらそれを否定する。

「いえ、召されるのです。――天へ」

その瞬間、言葉に代わってゲーニッツの口から吐き出されたのは彼自身の血であった。



◆ ◆ ◆



(ですが、残念でなりません。物語の最後を…見れないとは…終幕です…)



自害する刹那、赤黒い雲の隙間からは紅い満月が見えていた。


350 : ゲーニッツ&アサシン ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:25:04 wVVu2Ug.0
天にまします我らの父よ、願わくは、み名を崇めさせたまえ

み国を来らせたまえ み心の天になるごとく、地にもなさせたまえ

我らの日曜の糧を今日も与えたまえ、我らに罪を犯すものを、

我らが赦すごとく、我らの罪をも赦したまえ 我らをこころみにあわせあず、

悪より救いだしたまえ 国と力と栄光(さかえ)とは、限りなく汝のものものなればなり 



「アーメン」

牧師が主の祈りを唱え終わる。
教会に設置された時計が礼拝の終わりを告げるように音を鳴らす。
ここは無宗教者が多い日本だからか、礼拝に来た信徒は十人にも満たず、時計の音がやけに大きく聞こえる。
教会のつくりは質素ながらも独特な西洋の雰囲気があり、牧師の後ろにそびえる十字架が妙に神々しい。

礼拝が終わると、信徒たちは長椅子から立ち上がり、
ある者は用事のために教会の出口へ向かい、ある者は感動のあまり余韻に浸り、ある者は聖書をもう一度開いた。

「ゲーニッツ先生」

信徒の一人が前に来て牧師に話しかけた。
敬虔な信徒であるようで、その瞳は輝いている。
牧師・ゲーニッツの説教に心を打たれたことが分かる。

「先ほどの説教、私の心にとても響くものがありました。もし時間がありましたらもっと詳しい話を聞かせていただきたいのですが…」
「もちろん、構いませんよ。立ち話もなんですから、控室にご案内しましょう」

ゲーニッツの手引きに信徒がついていく。
彼らを見て本格的に礼拝の終わりを感じたのか、釣られるように残った信徒達もあとに続き、礼拝堂には誰もいなくなった。



控室には膝丈くらいの広いテーブルに、それを挟んで対面する形で置かれている椅子。
ゲーニッツが「どうぞ、座って」という言葉に甘えて信徒は座った。

「さて、先ほどの説教の話ですが」

そう言いながらゲーニッツはテーブルに2つのコップと氷水が入ったピッチャーを置き、信徒に対面して座った。
それを見た信徒は慌てて「注ぎます!」とピッチャーを持ち、水でコップを満たそうとする。

「主が水をワインに変えた話を知っていますね?」
「ええ、主が『これがわたしの血である』と言って弟子に与えたんですよね」

信徒はどんな話をしてくれるのか期待に胸が膨らむあまり、
水をこぼす心配をよそに顔をゲーニッツに向ける。




ガ  オ  ン  !




「ええ、その通りです。――ほら、水がワインに変わっていますよ?」
「え?」

信徒がコップに目を戻すと、確かに水をコップに注いでいたはずなのにワインが入っている。
それにピッチャーで水を注いでいたはずなのにピッチャーが見つからない。それどころか手も――

「あ…あ…あああ?」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?」

現状を理解した途端、信徒は悲鳴を上げた。
信徒の両手がなくなっていたのだ。ワインに見えたそれは、両手の断面から溢れた信徒の血。

「ワ………ワインの正体は………本当に血だったァーーーーーしかもわたしの血でェ〜〜〜〜――」

その台詞を最後に、もう信徒の声は聞こえることはなかった。
言い終わったと思った時にはスデに頭部が消えていたからだ。


351 : ゲーニッツ&アサシン ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:27:06 wVVu2Ug.0
その様子を見届けたゲーニッツがふと視線を横にそらすと――
そこには、金のハート型アクセサリが特徴的な長身の男が立っていた。
彼はドアをノックして入ったわけではないし、最初から隠れていたわけでもない。
『現れた』のだ。
その男は信徒の死体に指を食い込ませると、死体がみるみる干からびていく。
原因は男に血を吸われているからである。それは同時に、男が吸血鬼であることも示している。
男の名はヴァニラ・アイス。サーヴァントで、クラスは「アサシン」にあたる。

「……なるほど、これが人間の血か。……力がみなぎってくる感じがする。
……このような肉体をくださったDIO様はやはり素晴らしいお方だ」
「気が済みましたか、アサシン?」

ゲーニッツは別段驚きもせずに淡々と話す。丁寧な口調も変わらない。

「それにしても、困りますね。少しは慎重にその『クリーム』を使ってくれませんか」
「……私の勝手だ」
「勝手にされてはあなたの死に繋がることを忘れないでください。暗黒空間に飲み込まれれば、私とて無事ではないことはあなたも知っているはず」
「……フン」

アサシンは干からびた信徒の死体をスタンド『クリーム』の口に入れながら気だるげに答えた。
『クリーム』。『クリーム』の暗黒空間に飲み込まれた者は何もかもが粉みじんになって消えてしまう。
それはマスターであるゲーニッツも例外ではない。
マスターの近くにいなければならないというサーヴァントの特性上、
『クリーム』の能力は慎重に扱わなければならないのだ。
それゆえに、少しでも長い時間離れられるように、魂食いをする必要があった。
不定期に教会の控室に入ってくるNPCはもれなくアサシンの餌食となり、暗黒空間に飲み込まれるというわけである。


352 : ゲーニッツ&アサシン ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:27:29 wVVu2Ug.0
「……おい」
「何か質問でも?」
「貴様の聖杯にかける願いは何だ?」

それを聞いたゲーニッツは「ふむ」と唇に手を当てて、

「神を目覚めさせる…ですかね」

と短く答えた。
その神の覚醒とは、言うまでもなくオロチの覚醒を意味している。
三人の格闘家に敗れて自害しようとした時には残りの同志達に後を任せ、自らの物語は終わったものと思っていた。
が、聖杯戦争の舞台に立ったその時、ゲーニッツは再現された東京から尋常でないエネルギーを感じた。
聖杯を勝ち取れば、オロチを完全に覚醒させることができる。
あの時の自害はまだ起承転結の『承』でしかなかったことを確信したのだ。

「神の覚醒などと…馬鹿馬鹿しい上に短絡的な…」
「ほう?」

その答えに対し、アサシンは鼻を鳴らす。

「貴様にはその神の『最大の障害』はいなかったのか?」

障害……確かにいる。オロチを封印した忌まわしき三種の神器の子孫。神楽ちづる。草薙京。八神庵。
特に今もオロチの封印を護る神楽ちづるはまさに最大の障害であった。

「なるほど。アサシン、あなたの願いは『最大の障害の存在を抹消する』ことですね?それならばあなたにとっての神も『安心』を得られる…そう言いたいのですね?」
「DIO様は世界の中心となるにふさわしいお方だ。多少の障害は私が出るまでもない。そこらのスタンド使いが挑んだところで軽くあしらわれるだけだ」

すると突然、「だがッ!!」とアサシンが声を張り上げた。唇がピクピク蠢いており、殺意が満ち溢れるような形相で続ける。

「ジョースター…ジョースターの者共は違う!奴らはDIO様を脅かす『最大の障害』ッ!!聖杯の力をもってしても奴らを消さねばならんッ!!」

アサシンの聖杯にかける願い。それは忌まわしきジョースターの者共を『いなかったこと』にしてDIOに『安心』を捧げることだった。
その願いを叶えるためにも、邪魔する者は全員暗黒空間にばらまき、粉みじんにしなければならない。
――このゲーニッツという男も。
聖杯が叶えられる願いは一つだけ。ゲーニッツにも願いがあることが分かった以上、いつまでも放っておくわけにはいかない。
令呪がある分、今のところは向こうが有利だが――必ず願いを叶えてみせる。
DIO様への忠誠に誓って。

(そちらにも願いがありましたか…こちらには令呪がありますが、いつ裏切られてもおかしくはないと思うべきですね)

行動を共にするものを排除しようと考えているのは無論アサシンだけではない。
ゲーニッツもまた、オロチの完全なる覚醒のために聖杯を勝ち取らなければならない。
機を見てゲーニッツを消そうとしてくることも視野に入れておかねばならないが…やはりここは『協力』が必要だろう。
一時的な協力だが、やはりアサシンの宝具が味方にいるのならば心強い。
こちらもマスターといえど、『吹き荒ぶ風のゲーニッツ』の異名を持ち、同志からも一目置かれるくらいには実力がある。



―――全ての参加者を排除する。
お互いの『最後の障害』はそれから考えればいい。



アサシンの望みを聞いたゲーニッツは立ち上がり、控室の窓を開ける。
その瞳は人のものではなく、蛇のように縦に割れていた。

「いい風が来ました。アサシン、お互いにとっての神のために―――聖杯を勝ち取ろうではありませんか」


353 : ゲーニッツ&アサシン ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:28:14 wVVu2Ug.0
【マスター】
ゲーニッツ@ザ・キング・オブ・ファイターズシリーズ

【マスターとしての願い】
オロチを完全に覚醒させ、人類を滅ぼす

【weapon】
特になし

【能力・技能】
・「風」の力を操る。
任意の場所に竜巻を起こしたり、かまいたちを発生させて相手を切り裂くことができる。
他には風に乗って瞬間移動することもできる。

【人物背景】
「風」の力を操るオロチ八傑集の一人。
八傑集随一の実力者で、オロチ復活を目論む一族の実質的なリーダーだったと思われる。
他の八傑集も同様だが、人の形をした完全な人外で、はるか昔から転生を繰り返して現代まで生き延びてきた。
戦闘能力は若い頃からズバ抜けたものがあり、
オロチの力を奪おうとしたルガール・バーンシュタインと一戦交え、右目を奪って退けている。
そのやり方は極めて冷徹で、オロチ復活に非協力的だった八傑集の一人を、
その娘に宿るオロチ八傑集の力を暴走させることで両親を殺害させる。
その行動理念は全てオロチの意思によるものであり、普段のゲーニッツはそれほど残忍ではない。

キング・オブ・ファイターズが開催される直前には、三種に神器の力を測るために
草薙京に野試合を仕掛けて片手で圧倒した。
この時点で結束が不十分な三種の神器は脅威になり得ないと判断したゲーニッツは
封印の最後の護り手、ちづるを排除すべくキング・オブ・ファイターズの決勝戦会場を強襲するが、
優勝チームに敗れ自らの風の力を使い自害した。
 
【方針】
優勝狙い。邪魔する者は殺す。


354 : ゲーニッツ&アサシン ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:28:35 wVVu2Ug.0
【クラス】
アサシン

【真名】
ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメータ】
筋力B 耐久A+ 敏捷D+ 魔力E 幸運D 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:-
自身の気配を消す能力。
宝具によって気配を断つため、このスキルには該当しない。

【保有スキル】
邪悪の加護:EX
邪悪の化身への忠誠に殉じた者のみが持つスキル。
加護とはいっても最高存在からの恩恵ではなく、自己の忠誠から生まれる精神・肉体の絶対性。
ランクが高すぎると、人格に異変をきたす。
EXともなると『バリバリと裂けるドス黒いクレバス』のような歪んだ精神になる。

戦闘続行:A
信仰の強さ。DIOに刃向う者を消すことへの執念でもある。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。

吸血鬼:D
多くの伝承に存在する、生命の根源である血を糧とする不死者。
一度は死んだもののDIOの血により蘇生されたことで肉体が吸血鬼と化した。
しかし吸血鬼になって間もない状態の上、一人の生き血も啜らずに死亡したためランクは低い。
並外れた筋力に吸血、再生能力など人を超越した様々な異能力を持つが、
ランクが低いために使えるのは前の三つだけである。
代償として紫外線、特に太陽光に弱いという致命的な弱点も持つ。

【宝具】
『亜空の瘴気(クリーム)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
口から先はアサシン以外のあらゆるものを『粉みじん』にする暗黒空間へと繋がっており、アサシン以外は入った瞬間に消滅してしまう。
また『スタンドの口の中に入る→スタンドがスタンド自身を脚から順に飲み込む』といった手順で通常空間から姿を消し、
暗黒空間への入り口を球状に露出させて『触れるもの全てを消滅させる不可視の球体』になることもできる。
この状態で移動する際は臭いも音もなく色も完全に透明であり、
攻撃しようにもアサシン本体に届く前に攻撃が『粉みじん』になってしまうため、
相手は逃げる以外の一切の抵抗が出来ない。

アサシンはこの宝具を気配遮断スキルの代用としているが、
厳密には気配を遮断しているのではなく『この世から魂と肉体を別世界にうつしている状態』である。
そのため、『気配遮断を無効化する能力』ですら『亜空の瘴気』には無力である。

ただし、暗黒空間からは外の様子が見えず、攻撃の際に一切の衝撃・手ごたえが無い。
そのため、逐一顔を出して相手の位置を確認する必要がある。
あらゆるものを無差別に暗黒空間へ飲み込むという特性上、マスターをも飲み込む危険があるので細心の注意が必要。

【weapon】
・宝具『亜空の瘴気』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で、
筋力C、耐久D、敏捷B相当。
暗黒空間に隠れて移動するときはこちらのパラメータが適用される。

【人物背景】
エジプトのDIOの館にて、ジョースター一行の前に立ち塞がった最強にして最後の刺客。
DIOに心からの忠誠を誓っており、自らの首を切断してDIOに血を捧げたほど。
この時、DIOの血で蘇生された時に身体が吸血鬼と化しており、それに本人は気づいていなかった。
普段は冷徹だが、DIOが関わると、
『砂で作られたDIOの像を壊させた』という理由で蹴りだけでイギーを殺してしまうほどに
激昂して普段以上の残忍さを見せる。
上記の凶悪なスタンド攻撃によりアヴドゥルを即死させ、イギーを蹴り殺したが、
最期はポルナレフに吸血鬼であることを看破され、日光を浴びて死亡した。

【サーヴァントとしての願い】
ジョースターの存在を『なかったこと』にし、
DIOの勝利を確実なものとする。


355 : ◆kRh/.U2BNI :2014/12/24(水) 22:30:01 wVVu2Ug.0
以上で投下を終了します


356 : ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 00:22:45 QDn.qZws0
投下お疲れ様です
>>347ではトリップを付け忘れていたので、再度

正式な18騎に関しては、私の裁量で決めさせていただきます
本当は大半が自分だけになるかもと思っていましたが、面白い主従が来る今の状況は嬉しい限りで……!


357 : ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:18:15 QDn.qZws0
投下させていだきます


358 : 暁美ほむら&ビースト ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:19:44 QDn.qZws0

暁美ほむらは月を探していた。
太陽の光を浴びて、ようやく輝く月を探していた。
誰もが寝静まった中で大地を照らすその月に、かつてのほむらは少女・鹿目まどかを連想させた。
いずれ、あの月へと、少女の中へと誘われることだけを夢見ていた時期があった。
しかし、それは叶わなかった。

「ふふ……」

ほむらは、ケラケラと小さく嗤った。
柔らかな、しかし、下品な笑みだった。
少女の願いは、皓い無機質な獣に奪われようとしていた。
神を飼い慣らそうとする獣に、奪われようとしていた。
我慢など出来るわけがなかった。
元々、少女の決意に納得などしていなかった。
元々、一つ前の宇宙に未練がないわけがなかった。
それでも、少女の願いを理解したから、我慢出来た。
そんな、少女の願いが踏み潰されようとした。

「ならば、せめて、願いを踏み潰すのは――――私の手で」

ほむらは、ケラケラと小さく嗤った。
柔らかな、しかし、下品な笑みだった。
明日になれば、神から切り離した少女と再び出会う。
いずれ少女は自らを殺す。
歪だが熱い愛を抱いたほむらを超える。
そういった少女だ、そういった少女であって欲しいと願った。
誰よりも、ほむら自身が。

ほむらは、ケラケラと小さく嗤った。
柔らかな、しかし、下品な笑みだった。
鹿目まどかは特別だった。
どう特別なのかは、ほむら自身も理解できない。
初めてだというだけなのかもしれない。
まどかが本当に世界で特別なのかもしれない。

ほむらは、ケラケラと小さく嗤った。
柔らかな、しかし、下品な笑みだった。
悪魔はすでに狂っていた。
狂っていたが、涙が流れていた。
ほむらは、月を探していた。
新月の夜に、月などどこにもありはしなかった。
その事実に、狂った少女は涙を流したのだ。
ほむらは、少女が永遠に月であって欲しかった。
誰の脚も踏み入れない、古代に見た月であって欲しかった。

「…………………?」

その中で、不思議なものを見つけた。
探し続けた、延々と探し続けたもの。
しかし、其れに強い不快感を抱いた。
それは月であって、月ではなかった。

――――新月の夜に、紅い月が輝いていた。

まるで、血に染まった少女のように見えた。
数度は見たであろう、悪夢の少女だった。
少女は血に染まってはいけない。
もっと、もっと、もっと。
少女は――――普通の少女でなくてはならない。
決して、少女は神ではない。

『少女を全てから取り戻したい』

強い愛をリフレインさせたその瞬間、暁美ほむらは紅い月へと誘われた。


359 : 暁美ほむら&ビースト ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:21:26 QDn.qZws0



ほむらが東京へと誘われると、そこは街中だった。
鬱陶しいほどに、人が無数に居た。
その中に、自分とだけ視線を合わせる『獣』が居た。
女性の形をしていたが、それは獣だった。

その獣は神を産み、神を殺した獣だった。
最強の獣たるビーストを殺して、神は生誕する。
永遠の千年王国が約束された世界。
その世界に、獣は居なかった。
壊れていく、未来のない世界を生き抜くために獣の因子を発揮させ、人間を辞めた獣。
その獣達に居場所はなかった。

――――だから、獣は地獄から蘇って、神を殺した。

獣は、永遠の安息を人間から奪った獣だった。

「ふふ……」
「……」

ほむら――――悪魔は嗤い、獣は口を閉ざした。
悪魔と獣は、隣り合って歩き出す。

神を殺した獣が居た。
神を奪った悪魔が居た。
少女は悪魔だった。
獣も悪魔であった。
少女は神を愛し、それゆえに、神を奪った。
獣も神を愛し、しかし、神を愛せなかった。

栗色の瞳と薄く紅の入った唇。
面長なその顔を、瞳と同じ栗色の髪で彩っている。

獣は目を伏せた。
長い栗色の髪の中から覗く、どこか虚ろな瞳に、ほむらは吸い込まれそうになった。
栗色の瞳の中に、金色の瞳を観た。
獣の瞳だった。

「私は――――」

か細い声だった。
唇を小さく動かした、小さな声。
世界に栄光をもたらしたと言われる、英傑の声とは思えないものだった。
どこか親近感を覚え、同時に強烈な嫌悪を覚えた。


360 : 暁美ほむら&ビースト ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:24:19 QDn.qZws0

「私は、ビースト。人が望んだ神を殺し、約束された世界を奪った獣。マスターは?」

獣が放ったかすれたような声にまぎれて、ほむらは瞳を再び覗くことができた。
強さを感じる瞳ではなかった。
しかし、吸い込まれる瞳だった。
唇を歪に動かし、淡く嗤いながらほむらは答えた。

「私は、魔なる者。神が望んだ優しい世界から、神の願いだけを奪った悪魔」

獣の瞳に吸い込まれながら、それでもほむらは嗤い続けた。
栗色の瞳から凶暴な金色を感じながら、嗤い続けた。
獣は笑わなかった。
不快の念を抱いているようではなかったが、同時に共感もしていない瞳だった。

「……少しだけ」

ケラケラと嗤い続けるほむらを尻目に、獣は路地裏を眺めた。
路地裏の闇の中に、金色の幻想を抱かせる栗色の瞳を向けた。
いや、それは栗色の瞳ではなかった。
栗色の瞳は、金色に染まり、人の瞳から獣の瞳へと変化させていた。

「少しだけ、待っていてくれるかしら」

カツカツとブーツで地面を叩きながら、やはり小さな声で呟いた。
ほむらはゆっくりと頷いた。

その瞬間、獣の身体が『膨張』した。

膨らみ続ける身体は、獣の質素な服を喰いとるように破った。
長い黒髪は、触手のように蠢き、蝙蝠の翼のような形を描いて固まった。
女性としては長身であったその身体は更に膨らみ、2メートルを超えた。
ガラス細工のようだった指先は節くれだった大木の枝のように固まり、細い腕もまたほむらのウエストほどまで膨らんでいた。
獣は、男でも存在しないようなマッシヴな肉体へと変化させる。
魔獣の因子を発動させ、なお、魔獣<デビルビースト>に至れなかった魔人<デビルマン>。
魔獣の因子を発動させ、なお、魔獣<デビルビースト>に堕ちなかった魔人<デビルマン>。
そんな獣が、路地裏の中へと消えていく。

「ふふ……」

その後ろの姿を見ながら、ほむらは嗤った。
泣いているようにも見えるその笑いは、感じ取っていた。
獣が闇を蹂躙する様を。

数分もしないうちに、ひょっとすると数十秒のうちに、路地裏から血に染まった獣が現れた。
全て、返り血であった。
獣は傷を負っていなかった。
満足するように、やはりほむらは嗤った。

「神様は好き?」
「好きではないわ……ただ、愛しただけ。愛したけど、好きにはなれなかった」

獣――――不動ジュンは、やはり小さく呟いた。

「私もよ。神様は好きではないけど、神様を愛したの」

嗤っていた。
その奥には寂しさがあった。
ほむら自身は欲望としての愛を肯定しつつも、神にまでなった少女が欲望を肯定しないことを察していた。
少女の葛藤も、悩みも、全てをひっくるめての願いであることは知っていた。
それでも、ほむらは欲望を願った。
それがほむらの愛なのだから。


361 : 暁美ほむら&ビースト ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:24:57 QDn.qZws0

【クラス】
ビースト

【真名】
不動ジュン@デビルマンレディー(アニメ版)

【パラメーター】
筋力B 耐久C+ 敏捷D 魔力C+ 幸運E 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
魔獣の因子:A
人を神の愛から遠ざける、魔獣の証明。
より強力な獣であるほどスキルランクは高くなる。
不動ジュンは神を産み、神を殺した最強の獣であり、神に連なる者は不動ジュンに対して優位に立つことはできない。
専用のスキル・宝具を所持しない限り、神性を持つサーヴァントのステータスを不動ジュンと同等まで下げる。
不動ジュンの元々のステータス以下であったステータスは、さらに1ランクダウンさせる。

【保有スキル】
気配察知:C
獣としての超感覚。
付近の生命体、無機物の位置や配置を補足可能。
このランクであれば周囲十m前後の範囲をカバーできる。

変化:C
魔人<デビルマン>へと身体を変化させる。
身体が膨張し、まるで鍛えあげられた英雄のような強固な鋼の肉体へと変える。
また、翼を生やして飛行することも可能。

魔眼:E-
獣と化した金色の瞳は、男女を問わず誘惑する。
ジュン自身も扱いきれない色欲の瞳。
特殊な魔力も持たない、ジュン自身の魅力。
魔眼とも言えないような魔眼。

【宝具】
『女神転生(デビルマン)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
不動ジュンの身体を膨張させ、硬質させ、筋骨隆々の魔獣の力を持った魔人へと姿を変える。
腕や翼、頭部を硬質化、あるいはエネルギーを纏わせて強化させることも出来る。
他にも、強力な高圧電流を身体から発することも出来る。
不動ジュンはこの宝具を解放していない状態では、生身の人間の能力となんの代わりもない。


『神殺魔獣(デビルマン・ギガイフェクト)』
ランク:B 種別:対神宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
神を殺した最強の獣である不動ジュンの真なる姿。
身の丈10メートルを超える巨躯へと変身し、肌は青みがかり、眼球には黄疸のような濁りが支配する。
自らの全身からエネルギーを放射し、全ての物体を消滅させる。
この宝具を解放することで、不動ジュンはステータスを1ランクアップさせる。
なお、この際の魔獣の因子スキルで挙げられるステータスは上昇したステータスのことを指す。
(宝具を解放することで、敵サーヴァントは下げられたステータスを該当箇所のみ回復させる)


362 : 暁美ほむら&ビースト ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:26:04 QDn.qZws0

【weapon】
-

【人物背景】
ファッションモデルをしている22歳の女性、実家は仙台、短大卒業後、モデルになる為に上京した。
物語開始時は都心のマンションで一人暮らしをしていたが、後に滝浦和美が押しかけてきて同居することになる。
デビルマンとして覚醒後、デビルビーストを駆る“ハンター(エグゼクター)”として扱われ、HA関係者からはコードネーム「ハンターJ」と呼ばれる。
ジェイソン・ベイツのみが唯一、何度かだけ「デビルマンレディー」や「レディー」との呼称を用いた。

ある夜、突然自宅に現れたアスカ蘭により連れ出された倉庫で狼型ビースト・ウルヴァーに襲われ、命の危機に追い込まれた影響により「デビルマン」として覚醒する。
翌朝それが悪夢ではなく現実だと自覚した際には衝動的に自殺を試みるも踏み切れず、結果、表面上はさほど変わらぬモデルとしての日常に戻りつつ、アスカの呼び出しに応じてはハンターとしてビーストを狩る二重生活を送ることとなる。

元来の陰気な性格も相まって、不条理な運命への絶望、先の見えぬ凄惨な戦いに対する葛藤と虚無感、そして獣の欲望への自己嫌悪に絶えず苦しむ。
物語中盤では、『たとえ世界に居場所がなくとも“人”として生き続けたい』との前向きな思いも持っていることを吐露する。
しかし、その後、徐々に、しかし確実に狂い行く世界と自分自身への苦悩はむしろ日増しに深刻となり、情勢悪化とともに本人の精神もまた追い詰められていく。
それは、和美との間に起こる束の間の幸福と最悪の悲劇により決定的となってしまう。

物語終盤では、楽園にてアスカに犯され、インフェルノに堕とされる。
一時的に絶望し状況を受け入れようとするも、同じくインフェルノに堕ちていたかつての敵、そして和美との邂逅によって、アスカを討つことを決意。
死んでいった全てのビーストやデビルマンの力と怨念、そして和美の愛をその身に凝集させ、復活。
インフェルノを脱し“悪魔”として地上に再臨し、“神の子”アスカと対峙する。
終始不利な戦いとなるが、両翼、両腕を失いながらも逆転勝利する。
そして月日が流れ、復旧し以前の活気を取り戻した街に、一人孤独に歩くジュンの姿があった。
和美に似た少女や、尻尾が生えた子供達が元気に駆けていくのを静かに見送りながら、彼女は人知れず雑踏の中へ消えて行く。


また、「デビルマン」の名を冠する様々な作品の中で、所謂“人間”とそれ以外の勢力(デビルマン、デーモン、或いはデビルビースト)の両方を救うことができた最初のデビルマンである。


363 : 暁美ほむら&ビースト ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:29:22 QDn.qZws0
【マスター】
暁美ほむら@劇場版魔法少女まどか☆マギカ [新篇]叛逆の物語

【マスターとしての願い】
円環の理から鹿目まどかを完全に切り離す。
まどかの願いである円環の理を叶えたまま、まどかをまどかとして存在させる。

【weapon】
各種銃火器、爆弾などは所持していないが、東京にはヤクザ事務所はいっぱいある。

【能力・技能】
円形の盾に内蔵された砂時計を用いた「時間操作」の魔法を操ることが出来る。
操作できる砂の量は1か月分のみで、砂の流れを遮断して時間を止める「時間停止」。
砂時計の上部から砂がなくなった時点で時間を1か月前まで逆行させる「時間遡行」しかできないという制限がある。
上部の砂がなくなると、時間停止も発動できなくなる。
今回の聖杯戦争では『時間遡行』を禁止されている。

【人物背景】
「現在」とは異なる未来の「時間軸」から来た、鹿目まどかの友人。
元々の時間軸では、魔法少女として戦うまどかに憧れる、病弱かつ引っ込み思案な少女であった。
だが、最強の魔女「ワルプルギスの夜」との戦いでまどかが戦死するのを目の当たりにして、「彼女に守られる存在から彼女を守る存在になりたい」という願いのもとにキュゥべえと契約を結んだ。
その後幾度も時間を遡り、まどかの悲劇的な最期を阻止するための戦いに身を投じる中で、魔法少女の本質やキュゥべえの正体を知ることとなる。
途中の別の時間軸のまどか自身と交わした約束により、まどかがキュゥべえと契約を結ぶことを阻み続けていた。過去には眼鏡をかけ、髪も三つ編みにしていたが、他の魔法少女たちに事情を話し協力を求める手段ではまどかを救えないという結論に至り、以降の時間軸では誰にも頼らず魔女を倒すという決意と共に、眼鏡を外し髪型も変えている。

まどかに対する想いは、当初は単なる友情であった。
だが、失敗を重ねて同じ時間を何度も繰り返すうちに後に引けなくなり[14]、全ての価値観をまどかの生死のみに置くようになる。
しかし、そのことがほむらも知らぬうちに、まどかに対し最高の魔法少女にして最悪の魔女となる素質を持たせるという結果に繋がっていた。
キュゥべえにその事実を伝えられた後に臨んだワルプルギス戦においては、重傷を負いつつもまどかの因果をさらに増やすことになる「時間遡行」を断念した。
今までの自分の行動が却って事態を悪化させていたという事実を認識したことで絶望したほむらは、ソウルジェムの穢れが急激に増加し魔女化する寸前であった。

最終話で、まどかによって再構成されたのちの世界でも以前の世界の記憶を維持しており、時間制御能力は失ったものの、まどかに成り代わる形で能力を継承し、彼女の武器である弓を使うようになる。

ある時、ほむらは魔法少女の鹿目まどか・美樹さやか・巴マミ・佐倉杏子と共に、見滝原で夜ごとに出現する怪物・ナイトメアと戦っていた。
だが、そんな状況に、ほむらはどこか違和感を持つ。

やがてほむらは、この現状が魔女化寸前の自分自身が作った結界の中にあり、概念と化したまどかを観測しようとするキュゥべえに利用されていることに気づく。
ほむらはキュゥべえの企みを破綻させるため、自ら円環の理に導かれず魔女と化すことを選ぼうとする。
だが、他の魔法少女たちの活躍によってキュゥべえの企みは砕かれ、ほむらの前にも円環の理の力を取り戻したまどかが現れる。
しかしほむらは、浄化される前に円環の理から人間としてのまどかを強引に引き抜き、世界をさらに改変する。円環の理から外れた存在となったほむらは悪魔を自称し、彼女のソウルジェムは穢れの浄化を全く必要としない「ダークオーブ」へと変化し、悪魔ほむらへと変貌を遂げた。

ほむらによる世界の改変後には、アメリカから帰国してきた転校生のまどかと再会するが、ほむらの問いに対して欲望より秩序の方が尊いと返したまどかに対しては、いずれ自分は敵対するかもしれないと述べた。

神にも等しい存在となっていたまどかを、更に因果律を書き換えることで取り戻したほむら。
だがまどかの存在は不安定で、ふとした切欠で「円環の理」に戻る危うい状態にある。

そのまどかを安定させるために、ほむらは聖杯戦争へと挑む。

【方針】
聖杯を手に入れる。


364 : 暁美ほむら&ビースト ◆devil5UFgA :2014/12/25(木) 02:30:06 QDn.qZws0
投下終了です


365 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:33:04 QbgUl3Oc0
投下乙です! この企画を体現するような雰囲気の組でワクワクしますね。
こちらもエクストラクラス投下させていただきます。


366 : ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:33:42 QDn.qZws0
第二次二次キャラ聖杯戦争にて投下させていただいた候補作のリメイクになりますが、
こちらでも投下させていただきます!


367 : 九頭竜天音&エクストラクラス  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:34:13 QbgUl3Oc0


 ――私は、ただ、人を救いたかった。



 空が赤い。

 半ば異界と化したこの東京を象徴する、臓腑から滴る濁り血を溶いたような、赤。  

 この一週間で失われた夥しい命を吸って、一層その色の昏さを増しているような、赤。

 あの赤に、私も呑まれていくのだろうか。


 ああ、赤い。


 アスファルトに倒れ伏したまま、己から流れた血で染まった手のひらを、まるで他人事のように眺める。

 よくもこの躰にこれだけの赤が詰まっていたものだと感心するくらいに、血溜まりが確かに広がっていくのが分かる。

 私の心の内面は一面の花畑だということだけれど、その土を掘り起こせば、下から溢れるのはこんなに醜い赤なのか。

 躰が沈んでゆく。ずぶずぶと、この血の沼に、重力に引かれて、沈んでゆく、そんな錯覚。

 魂だけが吸い上げられて、この汚れた躰を置き去りにしていくような、そんな。


「…………お父様…………アマネは、お傍に…………」


 呟いた言葉すら、赤に溶けてゆく。

 だけど、もしもこの言葉が本当に父に届いたとして、父は耳を傾けてくれるのだろうか。

 私は、父の説く救いを信じ切れていなかった。人は人の力だけで試練を越えてゆけると、そう考えてしまった。

 確かに父は間違っていた。父の信じた救いは何ももたらさなかった。それでも、私が正しかったわけでも、なかった。

 その結果がこの幕切れだ。私は父のように最後まで己を信じ抜くことも出来ず、ただ無念さの中で溺れてゆく。


 残る力を振り絞って僅かに視線をずらすと、『彼』の姿が目に映った。

 ほんの数日前は普通に語り合うことの出来る存在だと思っていた、ごく当たり前の少年。

 そして今はもはや、人のいかなる言葉も届きはしない、万魔の王。

 それでも、せめて、彼が人のために魔を率いるのであれば、私が彼と共に征くこともあったのかもしれない。

 だって、私はただ、人を救いたかっただけなのだ。


(ベルの王……私は、あなたを……)


 続く言葉を、頭のなかで形にすることすらもはや出来ない。

 私という存在が形を失い、闇の中へ崩れていく。

 ただ、空が赤いとだけ感じた。

 その赤い空の中で――昇るはずのない赫い赫い月が、煌々と輝いていた。


368 : 九頭竜天音&エクストラクラス  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:34:56 QbgUl3Oc0


   ▼  ▼  ▼



「……様! アマネ様! いかがなされましたか」


 九頭竜天音(アマネ)は、その呼びかけで白昼夢から目覚めた。
 声の方へ目を向ければ、朱色のフードで頭を覆った『翔門会』の信徒である。
 顔立ちはフードの裾の影に隠れて見えづらいが、自分を心配しているというのはありありと伝わった。

「いえ、少し疲れていただけです。気になさらぬよう」

 なおも顔色を気にする信徒をなだめ、部屋の中を見回す。
 色鮮やかな装飾が目を引く祭壇。ここは六本木ヒルズの最上階の翔門会総本部だ。
 壇上には父もいる。これから信徒たちに説法を聞かせるのだろう。
 何もおかしなことはない。いつも通りの教団。そしていつも通りの、巫女としての自分。
 そのはずだ。それなのにどこかズレを感じてしまうのは、たった今見た夢のせいだろうか。

「……本当に、気持ちの悪い夢でした」

 自分が死ぬ夢など、二度とは見たくないものだ。
 あの赤い空。悪魔達の呻き声。見下す少年の冷たい瞳。
 やけに生々しかったおかげで、まるでこちらの世界のほうが夢だと感じてしまいそうだ。
 しかしこのまま呆けていては、また周りに心配をかけてしまう。
 アマネは努めて冷静な声を心掛けた。

「お父様も今日は一段と熱が入っているようですね。きっとベル・ベリト様もお喜びでしょう」

 当り障りのないことを言った、つもりだった。
 翔門会は魔王ベル・ベリトを信奉する教団。何もおかしなことは言っていない。
 それなのに傍らの信徒は、心配を通り越して、怪訝そうな顔でこちらを眺めている。
 
「アマネ様……」

 おかしい。
 この反応は、どう考えてもおかしい。
 そうアマネが違和感を募らせ始めた矢先。 

「……今のは私の心の中だけに秘めておきます。よほどお疲れなのでしょう、巫女ともあろうお方が『主上様のお名前を間違える』など」

 今度こそ、アマネは表情を凍りつかせた。
 主上の名前を間違えた?
 間違えるも何も、主上とはベル・ベリトただ一柱のはずだ。
 翔門会の教えは、神の試練に打ち勝つためにある。そのために悪魔の力を借りてでも、いつか来るべき試練に……。
 そこでアマネは訝しんだ。
 いつか来るべき試練とは何の事だっただろうか。
 試練とは「いつか」ではなく、「今まさに」訪れているものではなかったか。


369 : 九頭竜天音&エクストラクラス  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:35:33 QbgUl3Oc0

 壇上では既にアマネの父、教祖クズリュウの説法が始まっていたが、アマネの耳には届かなかった。
 何か、大事なことを忘れているような気がする。
 この東京で、何かが起こっていた、ような気がする。
 そして自分はその中で、ただ人を救おうと……救う? 何から? どうやって?
 分からない。何かが分からないという事だけは分かっているのに、その何かが分からない。
 
「……割れた卵、白銀の夢。知れども知り得ぬ見知らぬ友。憧れと微睡みに染まる午後の色。
 響く大いなる翼、その旋律をもって少年を誘う。降臨せしは、汝の名を知る者……」

 父の説法が遠く響く。あの文句はなんだろう。ベル・ベリトを讃えるものでないことだけは確かなはずなのに。
 自分のよく知る父の口から、自分の知らない聖句が紡がれる。
 主上。それは神? あるいは悪魔? それとも、どちらとも異なるモノ?
 その存在は、アマネを、人間達を救ってくれるというのだろうか。
 神の試練。万魔の蹂躙。冷たい目をした少年。赤い空。血のように真っ赤な。
 アマネの脳裏に夢の光景が蘇る。いや、本当に夢なのははどちらだろう。

 この東京と、あの赤い東京、そのどちらが夢なのだろう――――――。
 



   ▼  ▼  ▼



 赤い月。

 それを望んだ誰もが、同じ夢を見た。


 ――――己が、蝶となる夢を見た。



   ▼  ▼  ▼



「――世は音に満ちて」

 父の声が響く。

「世は音に満ちて」

 信徒達が口々に応える。

「世は音に満ちて!」「世は音に満ちて!」「世は音に満ちて!」


 その聖句の合唱の中で、九頭竜天音は、胡蝶の夢から目覚めた。


370 : 九頭竜天音&エクストラクラス  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:36:25 QbgUl3Oc0

 聖杯戦争。東京封鎖。神の試練。令呪。ベルの王。偽りの魔都。ムーンセル。あの赤い月。

 もう、疑いはなかった。自分の立ち位置が、はっきりと分かった。
 東京封鎖から八日目。自分はあの東京で息絶えるその瞬間に、赤い月に見初められて此処へ来たのだと。
 そしてこの東京のイミテーションに存在するという、万能の願望器。
 それを手にすることが出来れば、あの何もかもが狂ってしまった東京を、あるべき形へと変えることができる。
 音程の狂った楽器を、正しい響きへと「調律」するように。
 あの魔王となった少年の目指す、殺戮の果てにある未来ではなく。
 ただ自分のささやかな――だけど決して諦め切れない、人が怯えずに生きていける未来を、この手で。

「……聞こえますか、私の英霊よ」

 アマネは胸元を押さえながら、虚空に語りかけた。
 心臓が苦しかったわけではない。胸の中央に、ただ焼けるような熱だけを感じていた。
 服を脱いで確かめる気はなかったが、これが令呪の刻印が刻まれる感覚だと、漠然と実感する。
 これが契約の証ならば、言葉は届くはずだ。それならば。

「九頭竜天音がマスターとして命じます。姿を現しなさい、我がサーヴァントよ!」

 言葉にまず答えたのは、無数の羽根だった。
 舞い散る純白の羽根が、ホールの空間を埋めるように光り輝く。
 ざわめく信徒達の間を進み、アマネは愕然とした表情の父を押しのけるように壇上へ立った。

『――問おう。君が、僕のマスターか』

 脳内に直接響いたその言葉に、確固たる頷きで返す。
 その肯定を受けて、ホールの中空に魔力が結集した。
 霊体であったサーヴァントが魔力による実体を得て、その姿を現したのだ。

 少年のような、しかし人とは異なる存在との印象を受ける純白の姿。
 背中に一対、頭に一対の翼。まるで天使、あるいは神。
 しかしアマネだけが、その真実を知っていた。彼は人間であり、同時に紛い物の神でもあると。

 ホールに集った信徒達はパニックを起こしていた。
 口々に、主上様が降臨なされたとか、アマネ様が奇跡を起こされたなどと口走っているのが聞こえる。 
 彼らがアマネの記憶の一部から生まれたNPCならば、無意識にアマネが感じていた『彼』の存在を元に、
 この偽りの東京の翔門会は形成されたのかもしれない。
 隣で父は腰を抜かして震えている。ただし、本当の父ではない。父は死んだ。ベル・ベリトに食われて、あの時。
 それでも、もう一度死なせたくはないと、そう思う。

 アマネは空中に浮かぶ己のサーヴァントへ目を向けた。
 意識を集中すると、脳裏にステータスが浮かんだ。本来の七騎のどれでもない、そのクラス名も。


371 : 九頭竜天音&エクストラクラス  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:37:58 QbgUl3Oc0


「……エクストラクラス、『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』……」


 機械仕掛けの神。物語の幕引きを担うもの。
 神の試練を乗り越えるために戦った自分には皮肉なサーヴァントだと思う。
 それでも、神の、悪魔の、あの少年の手から東京を取り戻し、赤い空を払って蒼穹に幻想曲を響かせるには。
 アマネには、この紛い物の神の力が必要なのだ。
 アマネは呼びかける。願いを乗せて、その純白の姿へと。


「……歌いなさい、お前の歌を……神名綾人、いえ……真、聖……ラーゼフォン……!」


 かくして魔都・東京に、紛い物の神が降り立つ。手を携えるは、運命の巫女。ただ切なる祈りを胸に。


 天空に谺せよ、歓喜の歌。

 嘆くなかれ、それは汝の音色。

 神の不確かな音。


 ――世は、音に満ちて。



.


372 : 九頭竜天音&エクストラクラス  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:38:19 QbgUl3Oc0

【クラス】
デウスエクスマキナ

【真名】
アヤトゼフォン@ラーゼフォン


【パラメーター】
筋力B- 耐久B- 敏捷B- 魔力A- 幸運B- 宝具EX

【属性】
秩序・中庸



【クラススキル】

機械仕掛けの神:?
デウスエクスマキナの固有スキル。
世界の辻褄を合わせる存在としての側面を持つ英霊が、超越者のままサーヴァントとして現界するために必要なスキル。
物語の幕引きを担う者という出自により、戦闘時の与ダメージ及び被ダメージ、また各種判定において有利な補正を得ることが出来る。
しかし、高次の存在ゆえに聖杯には世界に対する異物として扱われるため、全ステータス及び一部スキルがランクダウンしてしまう。
またその影響でマスターに要求する魔力量も跳ね上がり、常にバーサーカー級の維持魔力が必要になる。


【保有スキル】

神性:A+
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
アヤトゼフォンは本来人間であるが、イシュトリとの融合により限りなく神に近い存在となっている。

対魔力:B-
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
なおクラススキルの修整によりランクダウンしている。

魔力放出(歌):A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
アヤトゼフォンの場合、自らが歌う歌に魔力が宿り、物理的・魔術的破壊力を持つようになる。
周囲に音障壁を展開したり、音に指向性を持たせることで虹色の衝撃波としてビームのように放つことも可能である。

精神昇華:B
アヤトゼフォンの精神は、人間・神名綾人と器たるゼフォンが融合した結果、より高次のものへと移行している。
精神に影響するスキルや宝具に対して高い耐性を持つ反面、ランクが高いほどヒトとしての意志は表出しにくくなる。



【宝具】

『神の未知なる音(ラーゼフォン)』
ランク:EX 種別:調律宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
アヤトゼフォンそのものにして、彼が歌う『調律の歌』。
イシュトリと融合し神の心臓ヨロテオトルへ至った奏者オリン、すなわち『真聖ラーゼフォン』の力の発現である。

『調律の歌』は『TOKYO JUPITERが存在した世界』以外の平行世界に由来する存在に対して限定的な『調律』を発生させる。
正確には『並行世界の部分的な破壊と改変』をもたらす宝具であり、対象が属する世界そのものを攻撃するため、物理的・魔術的な防御は基本的に意味を成さない。
サーヴァントには耐久無視の絶対的な攻撃宝具として作用するが、事実上この『東京』においてはあらゆる存在に干渉できると思われる。

本来ならば平行世界そのものを破壊し、ひとつに再構築するための宝具であるが、サーヴァントの枠を得て現界したため劣化している。


【weapon】
無し。
真聖ラーゼフォンとして覚醒する以前の、光を武器にする能力は失われている。


【人物背景】
 少年・神名綾人が、ラーゼフォンと呼ばれる巨大ロボット(実際は奏者の器)とひとつとなった姿。
 ラーゼフォンの真の姿であり、「調律」と呼ばれる世界の改変、破壊をも可能とする、神の如き力を持った存在。
 その姿はラーゼフォンに綾人が融合したようなもので、全身及び背面に生えた翼は白色で統一されている。
 単純な腕力だけでも敵を寄せ付けず、放つ歌声はあらゆる障害を瞬時に破壊し尽くす、文字通り「機械仕掛けの神」と言える性能を持つ。
 その真の力は全ての並行世界を破壊し、ひとつの世界へと再構築する「調律の歌」を歌うことにある。
 その使命を果たすため、同じく奏者を得て覚醒した真聖ベルゼフォン(クオンゼフォン)と激突。
 本来ならばそこで刺し違えるはずであったが、綾人の人間としての潜在意識の働きにより、本来とは異なる形で調律を遂行した。

 なお劇中では主に50m級のサイズだったが伸縮は自在であり、この聖杯戦争において人間大で現界しているのは単純に魔力の消費を抑えるためである。


373 : 九頭竜天音&エクストラクラス  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:38:57 QbgUl3Oc0

【マスター】
九頭竜天音@女神異聞録デビルサバイバー

【マスターとしての願い】
魔王ア・ベルを倒し、世界を正しい姿に『調律』する。

【weapon】
「COMP」
正式名称コミュニケーション・プレイヤー。
二画面式のゲーム機だが、改造により悪魔召喚プログラムを組み込まれている。
もっとも、アマネの「死」により契約が解除されているため、現在の仲魔は無し。

【能力・技能】
COMPを介して魔法やスキルを行使可能。アマネは特に魔術の扱いに長けている。
また、その精神の内部に天使レミエルが憑依しているが、東京封鎖七日目の戦いで傷つき弱体化している。
なお、もう一体の憑依悪魔であったイザ・ベルは既に打倒・吸収されアマネの中から消滅している。

【人物背景】
宗教組織「翔門会」の巫女。15歳。
大きな花飾りの付いた特徴的なカチューシャが印象的(よく間違われるが前髪ではない)。
その精神の中に天使レミエルと悪魔イザ・ベルを同時に憑依させられている(イザ・ベルは後に主人公に討たれる)。
神秘的な雰囲気の少女で、主人公達とも幾度と無く接触し、ルートによっては共闘する。
いわゆるLAWルートのキャラクターでありながら、憑依した天使レミエル共々狂信的な印象のない稀少な人物。

出典はナオヤルート殺戮編。
主人公が魔王となり東京中の悪魔を従えることで東京封鎖は解除されたが、悪夢は終わらなかった。
アマネは立ちふさがるもの全てを殺戮する魔王ア・ベル(主人公)を止めるために戦いを挑むが、力及ばず倒される。
その際に死の淵で見た「赤い月」が、この聖杯戦争参戦の契機となる。

【方針】
最終的に聖杯を獲得するつもりでいるが、同盟なども必要になると東京封鎖の経験から判断している。


374 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/25(木) 02:39:08 QbgUl3Oc0
投下終了しました。


375 : ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:41:26 QDn.qZws0
投下お疲れ様です!
おお、封鎖された東京繋がり……!神聖ゼフォンは卑怯だぞ天音さま……!

では、私も投下させていただきます


376 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:42:27 QDn.qZws0




不可思議な空間があった。
それはいかなる科学的、及び物理的手段によっては観測されない『異常』であった。
しかし、魔術の素養に長けた者ならば気づけたかもしれない。
ある小さな市街を覆うようにして生まれた空間の歪。
歪みは砂時計のように∞の形を描きながら、くるくると回り続けている。


くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。
くるくる、と。


延々と。
永遠と。
刹那的な感情によって小さな宇宙が回転し続けている。
誰もそれに気づかない。
ある偶然によって観測された瞬間から、僅か数瞬だけ巻き戻され、観測の間違いを探す。
気の遠くなるような時間の中で、世界は穏やかに進み続けていた。
誰もが気づかぬまま、悪魔の偽千年王国は今日もまた動き続ける。





377 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:42:48 QDn.qZws0

美樹さやかは、そんな『誰もが』のうちに含まれ一人の人間だった。
この世界での生に心の奥底で違和感を覚えつつも、その違和感を気の遠くなるような一瞬の中で薄められていく。
今日もまた、その違和感を消化できないまま学園へと向かっていた。
何をすることも出来ない。
この宇宙は、この宇宙を作った悪魔そのものなのだ。

「うーっす、さやか」

友人、佐倉杏子が語りかけてくる。
眠そうにまぶたを擦り、呑気な犬のような表情を浮かべている。
違和感。

「おはよう、美樹さん」

先輩、巴マミが語りかけてくる。
後ろにくっついてくる少女を穏やかに撫でながら、幸福に満ちた顔で校内へと向かっている。
違和感。

「おっはよー!」

さやかはすっかり慣れてしまった違和感を噛み殺し、必要以上に明るい声を発する。
笑いながら、校内へと向かう。
違和感を覚えつつも、その違和感が薄れていることに気づきつつあった。
いつかはこれが淀みのない喜びへと変わる。
そこに言いようのない恐怖を感じつつも、その恐怖の理由がわからない。
さやかはそんな気持ちから逃げるように視線を虚空へ移した。

「あっ……」

すると、ベンチに一人の影を見つけた。
桃色の髪をした小柄な少女。
隣にはやつれたように細い体をした黒髪の少女がいる。
小柄な少女はどこか困ったように笑い、黒髪の少女がからかうように笑う。
仲睦まじい二人の友人、といったところだろう。
言いようのない怒りと哀しみと―――――嫉妬がこみ上げる。

「どうしたの、美樹さん」
「えっと、あの子なんですけど……」
「おー、転校生じゃん」

さやかの様子を奇妙に思ったマミが話しかけ、それに応えたさやかの声に対して杏子が反応を示す。
二人ともあの少女のことを詳しくは知らないようだ。
さやかも知らない。
ただ、同学年の帰国子女であることしか、知らない。
ふと、胸が傷んだ。
正確に言えば、常に持ち歩いているアクセサリーが傷んだ。

「どこかで会った、ような……」
「はー? なんだそれ?
 さやか、不思議ちゃんか?」
「あぁん?」

小馬鹿にするような杏子の声に対して、さやかは眉をぴくぴくと動かせて敵意のようなものを示す。
取っ組み合いを始める。
いつものことだと、マミはただ愉快に笑っているだけだ。
ふと、さやかは視線をもう一度桃色の少女へと移した。
黒髪の少女が、妖艶に笑っていた。

――――怒りを超えた、殺意が胸に芽生えた。

「……さやか?」

その表情の変化に気づいた杏子が、どこか怯えたような声で語りかける。
ハッ、と我に返り、いつものにこやかな顔を浮かべる。
どこか、不自然な笑みであったことはさやかも気づいていた。
理解しようのない怒りを覚えながら、さやかはもう一度だけ、桃色の少女と黒髪の少女へと視線を移した。
やつれた少女が優しげに笑い、豊かな表情の少女が苦笑した。
歪な、二人だった。


378 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:43:43 QDn.qZws0




「……」

さやかは、不自然な気持ちを整理するために一人で屋上に佇んでいた。
杏子はマミとともに食事を取っているのだろう。
ソウルジェムを眺める。
魔法少女である証。
濁りが見えた。
さやかは、中庭へと視線を移す。
上条恭介と志筑仁美が居る。
仲の良さそうに、二人は話し込んでいた。
吹っ切れたとは言え、どこか陰鬱な気分のまま、次は天空を眺めた。

そこには雲ひとつない空の中に、砂時計が回るように◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆には◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆まるで時を戻すように◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆円環の理の穂先に狙われた◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆いつか来る終わり◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆鹿目まどか◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆私の友達◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

そこには雲ひとつない空が広がっていた。
不可思議な気持ちのまま、さやかは呟いた。

「なーんか、アンニュイさやかちゃんって感じー?」

うーん、と大きく伸びをする。
理解が出来ない違和感と焦燥感。
しかし、理解が出来ない以上、解決が出来ない。
もやもやとした胸のうちのまま、さやかは教室へと引き返す。
すると、脚元に奇妙な生き物が居た。

「やあ、さやか」
「ん?」

うさぎのようにも見えるが、間違いなくうさぎではない。
少なくとも、うさぎは言葉を喋らない。
薄汚れたうさぎのような存在はインキュベーター。
外宇宙からやってきた地球外生◆◆◆◆◆◆あり◆◆◆◆魔法少女の生みの親◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆憎むべき◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆奴隷と化した◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆「キュップイ」

奇妙な魔力が走ったその瞬間、インキュベーターが奇妙な行動を取った。
それは外面から察することではなく、宇宙そのものにクラッキングするような不正行為だった。
短い間、世界から切り離される。
世界の奴隷と化したインキュベーターが残した、最後の切り札。
世界そのものを改竄する力。
それは世界の何処かで観測されている以上、宇宙を飛び回っているインキュベーターもまた解析している。
負荷が大きく利に合わないために普段は使わないだけだ。


379 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:44:10 QDn.qZws0

「やあ、さやか。なんだか、久し振りだね」
「…………………あ」

インキュベーターの声にさやかは、急激な衝撃に襲われる。
ガツンとハンマーが頭に直撃したような衝撃。
そこから芋づる式に記憶が掘り起こされていく。

鹿目まどか。
私の友達。
私を救ってくれた友達。
絶望の行き着く先。
魔女。
救い。
円環の理。
暁美ほむら。
世界の敵。
悪魔。
鹿目まどかの、友達。

全てを思いだした。

「あああああああああ!!!!!!」
「思い出したようで何よりだよ」

さやかは絶叫を上げ、地面に膝をつき片手で顔を覆う。
荒い息を吐きながら、状況を想い出す。
世界そのものである暁美ほむらによって、さやかの記憶は改竄された。
それを世界にクラッキングを仕掛けたインキュベーター、キュウべえが直した。
しかし、それもすぐに世界の修正が入る。
ならば、こんなことをしている暇はない。

「あの、転校生……! くそっ!」

さやかは一瞬で魔法少女へと変わり、駆け出す。
しかし、ここはインキュベーターが世界から切り離した空間。
当然出口など見つからない。

「待ちなよ、相手は因果を塗り替えた相手だよ。
 『斬れば斬れる』、なんて当たり前のことを覆すのが因果律の操作さ。
 君じゃ勝てない」
「キュウべえ!早くここから出しなさい!
 というか、アンタもよく私の前に顔を―――――!」
「ちょっと待ってよ、さやか。今日はその暁美ほむらについての相談なんだ」

一拍遅れて、キュウべえもまたさやかの敵であることを想い出す。
希望を与えて絶望を取り出す、感情を持たない外宇宙の生命体。
彼らは統一の存在であり、全てがキュウべえである。
宇宙を救うために、さやかのささやかな幸福を傷つける、彼らもまた定義通りの悪魔。


「暁美ほむらを殺して欲しい、それが僕らの相談事だよ」


.


380 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:44:40 QDn.qZws0

悪魔と悪魔の対立――――いや、それは暁美ほむらの勝利に終わっている。
インキュベーターはもはや世界の、暁美ほむらの奴隷だ。
抗うことは出来ない。
インキュベーターは徐々にインキュベーターでなくなっていく。
正しく世界の奴隷へと成り果てるのだ。
だからこそ、暁美ほむらを殺そうというキュウべえの発言は理解できた。
しかし、感情が許しはしない。

「私は忘れてない。アンタが、まどかの願いを踏みにじろうとしていたことを」
「円環の理についてはいいだろう、失敗したんだから。
 それに、今は時間がない。手短に話すよ」

キュウべえはしっぽを動かした。
世界に、虚ろな『穴』が空いた。
『穴』は空を写していた。
『黒』ではなく『蒼』に見えるほどに美しい夜空だった。

その中に、『紅い月』が輝いていた。

魔法少女となり、一時は円環の理の一部でもあったさやかにはわかった。
紅い月は、ただの異常現象ではない。
何か奇妙な力がある。
それこそ、円環の理と同じく概念そのものであるようにも思えた。

「全時間軸に突然現れた月さ。
 僕らは、全てを観測していたはずの僕らですら、紅い月が何時現れたのか『覚えていない』んだ」
「……手短に済ますんでしょう?
 余計なことばかり言ってていいの?」
「あれは全ての願いを叶える月、万能の願望器なのさ。
 その名も聖杯、聖杯伝説のことは知ってるかな?」
「知らない」
「なら、いいよ。ただの奇跡の一つさ」

キュウべえは尻尾をくるくると回しながら、紅い月を背負ってさやかへと語りかける。
言葉とは裏腹に、それほど『紅い月』に執着を抱いていない様子だった。
さやかはキュウべえの話の内容に対する不信感が高まる。

「紅い月は自らが見初めた者を聖杯をめぐる争い、『聖杯戦争』の舞台へと誘う。
 願いを持った人間ならば、それこそ距離や概念なんて関係なくね。
 そこでは多時限にわたる全ての世界の出来事を観測した『ムーンセル』が蓄えたデータを元に、パートナーのサーヴァントが召喚される。
 マスターとサーヴァントの二人一組で聖杯の所有権を争うのさ」
「………………アンタの話はわかりづらいのよ!」
「英霊、つまりは過去に偉業を成した英雄たちをパートナーにして殺し合うのさ。
 舞台は作り物の電子空間。
 最後の一人だけが願いを叶えられる。
 詳しくは僕も知らないんだ、僕らじゃ行けないからね」

キュウべえは話を要約する。
理解は出来た。
つまり、願いを叶えるために他の人間を殺さなければいけないということだ。
願いを叶えるために、他人を踏みにじらなければいけないのだ。


381 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:45:00 QDn.qZws0

「……願いが叶う?
 また、そんな話で釣ろうっていうの?」
「嘘はつかないよ、僕は。
 実際、願いは叶えてみせたじゃないか。
 それに騙すのなら何も知らない子を騙せばいいじゃないか。
 暁美ほむらに対する敵意を抱いているのが、全てを知っている君しかいないから君に頼んでいるんだ」

円環の理。
その存在を知っているのは、かつて円環の理の一部であった美樹さやかと百江なぎさぐらいなもの。
そして、円環の理の『基』である鹿目まどかと親交があったのはさやかだけ。
暁美ほむらと同じく、鹿目まどかに執着しているのは、さやかだけ。
それでも、さやかの心から疑心の念を消えなかった。

「アンタが行けばいいじゃない」
「さっきも言っただろう、僕達じゃ行けないんだ。
 僕たちはこれを、それこそ君たちが理解できないほどの時間、観測できた。
 『紅い月』は時間軸を超越した概念だからね、それこそ古からある月なんだ。
 でも、未だに紅い月は僕達を導こうとしない。
 恐らく、『願い』というものへの執着っていうのが足りないんだろうね」

キュウべえは抑揚のない声で応える。
暁美ほむらを排除しようとしていることはわかるが、人間ほどの強い願いを持てないのだろう。
さやかは吟味する。
何度も、苦手とも言える頭脳労働を繰り返す。
しかし、出てくる答えは一つだけだった。

「……わかったわ」

溺れる者は藁をも掴む。
奇跡による解決以外の道は、残念ながら若すぎるさやかは知らなかった。

「助かるよ、さやか」
「インキュベーター、アンタもいつかは倒す。
 円環の理を、私の友達を踏みにじる奴は、私の敵だ」

さやかはキュウべえに、インキュベーターに対する敵意を剥き出しにする。
キュウべえは困ったような動作で肩をすくめてみせた。
その動作が苛立つが、想いを抑える。
さやかがキュウべえが背負う紅い月へと強い視線を向けた、その時だった。


『紅い月に誘われる前に、もう一度だけ、よく考えたほうが良い』


どこからか、質量というものに干渉しないアストラルな声がさやかに届く。
すでに肉体というものが偽りに過ぎない魔法少女の魂に語りかける声。
その声は剥き出しの刃のような危険に溢れた声だった。


382 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:45:38 QDn.qZws0

『紅い月の大地に足を踏み入れたが最後、お前は二度とそこに戻れなくなる』

忠告のような。
激励のような。
悪魔の誘いのような。
不可思議な、思惑を掴み取れない声だった。

『死して消えるか、生きて溶けるか。
 魔法少女となった時点でお前は元より救われぬ身、唯一の救いが円環の理へと導かれること。
 今いる場所へは、お前という意識は二度と戻ることが出来なくなる』


今いる場所。

佐倉杏子が居て。
巴マミが居て。
志筑仁美が居て。
上条恭介が居て。

――――鹿目まどかが居る世界。

虚像だが、優しい世界。

『お前が願いを抱き、紅い月が願いを感じ取った時、お前はお前でなくなるのだ』

巴マミに憧れた想いを。
佐倉杏子が差し伸べた手を振り払った想いを。
鹿目まどかが願わないものを。
人を犠牲にして、自分のために聖杯を手に入れる。
そんな行動は、美樹さやかではないのかもしれない。

「まどかが泣いているんだ」
「さやか?」

その声に対して、さやかは応えてみせた。
声が聞こえていなかったインキュベーターは突然のさやかの語りに疑問の声を挙げる。
しかし、さやかはそれを意に介さない。


383 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:46:16 QDn.qZws0

「まどかは無意識の内に、何度も考えてたんだと思う。
 魔女へと変わる自分達、冷たい仮面の奥で苦しんでいる知らないはずの友達。
 どうすれば救われるのか、ずっとずっと考えてたんだと思う。
 その結果が、円環の理なんだ」
「…………?
 君は何を言っているんだい?」

想いを願えば、己でなくなる。
想いを願うだけで、人が犠牲になる。
人が苦しんでる中で、自身だけが奇跡を手にする。
そんな重圧に、所詮は奇跡を願っただけの少女であるさやかが耐えられるわけがない。
すなわち、負の重圧はソウルジェムの濁りを加速させる。
願えば、魔女へと急降下。
今度は、種を理解している。
ただ利益だけを信じた、魔法少女への願いとは違う。
それでも、美樹さやかは前へと進んでみせる。

「アイツの考えもわかる、アイツの気持ちもわかる。
 アレでまどかが救われただなんて思わない……いや、結局のところ、円環の理なんて全てまどかの単なる欲望なんだ。
 苦しんでいる人を見たくない。
 絶望を跳ね除けたくて魔法少女になった奴が、絶望に沈んで絶望をまき散らして欲しくないなんて。
 全部まどかの優しい欲望だ。
 いつか、それも失われたかもしれない。
 それを奪おうとしたインキュベーターを許せなかったのも、わかる。
 でも、私はまどかに救われたんだ。
 そして、まどかの願いが消えてしまったんだ。
 まどかが、また苦しんでるんだ。
 何も解決しない、アイツに比べたらなんの展望もない願いだ。
 でも――――」

インキュベーターの背に輝く、紅い月を眺める。
奇跡への片道切符。
美樹さやかをもはや違う場所へと誘う船。

「今度は、私が助ける番だ」

美樹さやかの蒼い瞳が、紅い月を見据える。
紅い月の妖しい光が、美樹さやかの蒼い影を捉える。


――――紅い月は、当然のように、奇跡の願い手を月へと導いた。





384 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:46:42 QDn.qZws0

不可思議な『月』があった。
あるはずのない『月』があった。
人を、楽園へと誘う『月』。
人を、地獄へと堕とす『月』。
それはもう一つの月、真なる世界へと至らせるための、人の血に彩られたかのような『紅い月』。
美樹さやかは、そんな紅い月の大地を踏みしめていた。

謝りたかった。
最後まで一緒にいてくれたのはまどかだったのに、さやかはひどいことを言ってしまった。
助けたかった。
本当に狙われているのはまどかだったのに、さやかは傷つけてしまうだけだった。
抱きしめたかった。
さやかの怒りを撒き散らかされるだけのまどかは、それでもずっとさやかと一緒に居てくれた。


――――まどかは私を救ってくれたのに、私はまどかを救えなかった。


さやかは自身のソウルジェムを眺めた。
かつて『円環の理』という宇宙そのものの一部だったさやか。
濁りが見える、魔女への道が近づいている。
身体が震える。
魔女とは、すなわち絶望だ。
暗く、冷たく、残酷で、辛い。
そこには光などない。
あんなもの、二度となりたくない。

「でも……」

だからこそ、覚えている。
絶望に包まれようとしたその瞬間、優しさに包まれた記憶を。
正しく、最後の最後で救われた記憶を。
その救いが、ここにはあるのだろうか。
もしも、自身が魔女になろうとすればどうなるのだろうか。

「まどか……」

円環の理は、大事なものを奪われて本当に概念へと成り果てたまどかは、聖杯戦争に加入できるだろうか。
全ての願いを叶える究極の願望器、『聖杯』。
その聖杯が願いを叶えるためだけに創りあげた宇宙。
その宇宙に、円環の理は介入し得るのだろうか。

万能の願望機である『聖杯』と究極の救いである『円環の理』。
この二つのどちらが勝るかなんて、正しくさやかの枠中を超えた神秘の対決であるため想像もできない。

「……」

さやかは意を決した。
美樹さやかのまま、聖杯を手にしてみせる。
自分に残されていた、大事な友達を。
その友達を守ろうとした、一人の敵を。
悪魔の根幹は愛という名の欲望である。
その欲望を、自分も抱こうとしている。


385 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:47:40 QDn.qZws0

「だから、なんだ」

痛みを感じた。
暁美ほむらへの念は――――正直なところ、さやか自身すら理解できない。
もっと言ってしまえば、ほむらが何故あそこまでまどかに入れ込むのかも、実のところさやかには曖昧にしか理解できない。
初めての友達。
自身という存在に意味をくれた感謝。
まどかという存在の在り方への尊敬。
当てはまりそうな言葉になど、幾らでも出来る。
ただ、そのどれもが正しくてどれもが間違っていることは理解できた。
言葉になど出来ないし、言葉になどしてはならないのだろう。
きっと、暁美ほむらという人生で初めて出会った光が、鹿目まどかというものなのだろう。
だからこそ、まどかが救われずにいる世界を我慢できなかった。
それこそがまどかの願いであることがわかっていたとしても。
それが恐怖すらも覚悟した、まどかの一世の願いを踏みにじるものだと知っていても。
ほむらには、我慢出来なかったのだろう。

「……」

さやかは静かに眼を瞑った。
さやかは今から人ではなくなる。
人を踏みしめる人となる。
願いのために、全てを殺すと決めた。
願いのために、他の願いを踏みにじると決めた。
鹿目まどかなら、きっとしない。
そんなまどかが尊いのではない。
結局、まどかは他人を犠牲にする代わりに自分を犠牲にしているだけだから。
その想いに、暁美ほむらが心の奥では納得できなかったように、ただの考え方の違いだ。
だから、美樹さやかにとって暁美ほむらは理解し難い敵あり、同時に隣人でもあったのだ。
さやかは、仇敵であり、隣人のことを想った。

ただ、それで終わり。
其れ以上の感傷は、少なくとも今はなかった。
眼を開く。
すると、そこには魔法のように一人の巨人が存在していた。


巨大な威圧感を持つ巨人であった。


筋肉は大猩猩(ゴリラ)。
牙は狼。
燃える瞳は原始の炎。
二メートル五十センチの全身には、闘争エネルギーが充満していた。
狂戦士の名に相応しい巨体と獣の如き瞳を持ったバーサーカーのサーヴァント。
それがさやかの召喚に応じ、『紅い月』が選び出した多次元世界の英霊であった。

バーサーカーの獣の瞳は、美樹さやかだけを捉えていた。
獣の瞳の奥には、確かに値踏みをする色が秘められていた。
さやかはその名も知らない英霊に気圧されるように後ずさった。
しかし、ふぅ、と軽く息を吐き、天空を仰ぐ。
そして、意を決したように獣の瞳へと向き合った。


386 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:48:24 QDn.qZws0

「アンタが、私のサーヴァント?」
「――――」

さやかの問いに、バーサーカーは応えなかった。
バーサーカーからはすでに言語能力は失われ、理性の大半を奪われていた。
このバーサーカーは存在そのものが狂気であり、一度は敵の誘導に遭い、理性のないまま罪のない人々へと襲いかかった。
狂化ランクはC。
ただでさえ無双を誇るその腕力がさらに強化されている。
何本もの綱を編み上げたような腕につながる手には、一本の刃物が握られていた。
折りたたみ式の大型ナイフ、いわゆるジャックナイフである。
しかし、それはジャックナイフと呼ぶにはあまりにも巨大すぎた。
刃渡り四十センチ、幅八センチ、峰の厚さ一センチ。
もはやジャックナイフというよりも鉈や手斧と呼ぶべきものだった。
この異形のジャックナイフこそが、この英霊の全てであった。
この英霊に、もはや名前はない。
ただ、知るものは皆、この英霊をこう呼ぶ。


――――暴力の化身、バイオレンスジャック(凶暴なジャックナイフ)と。


語るべき過去もなく、言葉も失われた。
しかし、獣の瞳はさやかを見つめ続ける。
クラススキルによって思考を失ったはずの眼だというのに。
全てを見透かすような瞳をしていた。

「……」
「……」

さやかとバーサーカーは、睨み合うように視線を交わす。
ふと、不思議な感覚に襲われた。
この威圧感を、さやかは知っていた。
奇妙な違和感であり、その理解できない違和感は暁美ほむらという悪魔が創りあげた宇宙を連想させて不快の念を覚えた。

さやかは気づいていない。
バーサーカーが放つ威圧感はすなわち、さやかが『紅い月』に誘われる直前に語りかけた声であることに。

「やるわよ、バーサーカー。
 優勝……いえ、違うわね。やっちゃいけないことを、やるのよ。
 全員殺して、まどかを円環の理に還す」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

さやかの言葉に応えるように、バーサーカーは天を仰いで人のものではない咆哮が響き渡らせる。
言葉などと到底呼ぶことの出来ない、耳をつんざく爆音の集合。
強大な肉食獣があげる、相手を威嚇するものとも違う。
自身の存在を知らしめる、威嚇を超えた挑発。

――――その挑発に呼応するように、大地が揺れた。

比喩ではない。
バーサーカーの雄叫びとともに、巨大な地震が起こったのだ。
街で暮らす者達は、正体不明の恐怖におののく。
地震への恐怖ではなく、バーサーカーの起こした空気の振動が覚えるはずのない恐怖を覚えさせた。
バーサーカーが持ち、発することの出来る世界が破滅する記憶。
かつて、魔神が世界を修復し、それでも魔神自身の記憶から消すことのできなかった『終末の記憶』。
バーサーカーの超能力によって、その終末の記憶を呼び覚ませ、地震という概念を引き起こしてみせたのだ。

想像(イマジネーション)で世界を創造する力。
魔神の眷属とも直系とも呼べるバーサーカーは、その力によって自身の記憶の底にある破滅の記憶を引き起こす。
バーサーカーは全ての破滅を起こす。
バーサーカーは全ての救いを守る。


――――友人が求めた世界を守るために、その力を振るい続けていたのだから。


.


387 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:49:13 QDn.qZws0

【CLASS】
バーサーカー

【真名】
バイオレンスジャック@バイオレンスジャック

【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運E 宝具B

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:C
敏捷と魔力を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】
怪力:A
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は"怪力"のランクによる。

神性:C
ある世界で、魔神である『サタン』によって『不動明』が産み落とされた。
それはサタンの分身とサタンの分身によって産み落とされた子であり、神そのものとも言える。
その『不動明』は突き詰めるとジャックではないが、限りなくジャックそのものでもあるため、ジャックは神性を有している。

創世:E+
『無』から『有』を生み出す力であり、規模が大きければ大きいほど多大な魔力を必要とされる。
ジャックが扱う念動力、瞬間移動、念話なども全てはこのスキルによるものである。
このスキルはランクが一つ違うだけで文字通り天と地ほどの差があり、ランクAともなると宇宙創造の逸話を持つ者しか所有できない。

自己再生:A
上記のスキル『創世』によって生まれる力。
瀕死に近い傷であろうとも、通常必要とされる魔力・時間とは比べ物にならないほどの魔力・時間で再生してしまう。
このスキルは魔力供給主である美樹さやかとの相性が抜群に良いため、上位のランクを所有している。

【宝具】
『叛逆の刃(バイオレンス・ジャック)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
バイオレンスジャックの象徴であり、鉈のように巨大なジャックナイフ。
ジャックが超能力で創りだしたナイフであり、ジャックの魔力が存在する限り無限に生み出すことが出来る。

『狂宴は終焉のために幕を開ける(デビルマン・グリモワール)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
かつてデーモン族の勇者であった『アモン』。
そのアモンの力を乗っ取った強い精神力で巨大な力を操る『デビルマン』。
どちらをも大きく上回る力を持つ、宇宙を開闢した『神』と同種の力を持った真の『悪魔人間』へと変身する。
全てのパラメータが1ランク上昇し、同時に『創世』と『神性』のスキルが強化される。

【weapon】
・ジャックナイフ
ジャックが創造の力によって生み出したジャックナイフを扱う。
刃渡り四十センチ、幅八センチ、峰の厚さ一センチ。
もはや鉈や斧と呼ぶにふさわしい規格外のジャックナイフである。
ジャックの魔力が存在する限り、無数に生み出すことが出来る。

・超能力
念動力や念話、瞬間移動などを扱うことが出来る。
念動力はジャック自身の腕力には劣るものの射程距離が長く、ジャックはこれを扱って遠方の敵を倒す。
念話は言語能力を失い、思考能力も奪われているために念話としての体を成していない。
瞬間移動はすなわちムーンセルの演算を塗り替える必要があるため、移動距離が増えれば増えるほど魔力消費が大きくなる。

【人物背景】
関東地獄地震によって物理的に孤立した関東の荒野に現れた謎の巨人。
身の丈は二メートル五十、ゴリラのように隆起した筋肉と狼のような牙を持っている。
「バイオレンスジャックと出会った人間は破滅する」という逸話を持った死神であり、彼の側には常に戦乱が存在する。
その正体は創世神の力を持った悪魔サタン『飛鳥了』が愛した悪魔人間デビルマン『不動明』である。
悪魔と悪魔人間の最終戦争によって明は死に、その後現れた『神の軍団』によって地球は『無』へと変えられた。
サタンはその『無』となった地球を、『無』から『有』を生み出す『創世』の力によってかつての姿へと再生させた。
その際に復活した不動明は、サタンの『愛した人間を殺した』という無意識のうちの哀しみからサタンからサタンと同じく『創世』の力を与えられた。
明はサタンの、いや、親友であった『飛鳥了』が生み出した世界を守るように、バイオレンス・ジャックとなって世界を放浪していたのだ。


388 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:49:40 QDn.qZws0

【マスター】
美樹さやか@劇場版魔法少女まどか☆マギカ [新篇]叛逆の物語

【マスターとしての願い】
悪魔を殺し、神を還す。

【weapon】
・剣
さやかが魔力によって生み出す剣。
特別な力は持たないが、さやかの魔力が存在する限り無数に生成が可能。

【能力・技能】
・自己再生
魔法少女となる際の願いである『上条恭介の怪我の完治』から生み出されたさやかの魔法。
強力な治癒能力であり、ほとんど防御を無視して戦っても問題がないほど。

・オクタヴィア召喚
円環の理から切り離された現在では使用が不可能な技
自身の魔女形態を召喚する技。
ムーンセルの生み出した電子空間に別の宇宙そのものである円環の理を招かねばならないため莫大と呼ぶのも馬鹿らしい魔力を必要とする。
そのため、たとえ円環の理とのリンクが存在しても実質使用不可能。

・魔女化
技能とも呼べない、魔法少女の末路。
円環の理から切り離されてただの魔法少女へと戻ったさやかは、同時に魔女という絶望の結末を用意されている。
魂であるソウルジェムが濁りきった時、さやかはさやかではなく『オクタヴィア』という人魚へと永遠に姿を変える。

【人物背景】
見滝原中学校に通う中学二年生。
ある日魔法少女である巴マミと知り合い、その生き方に尊敬の念を抱く。
マミ死亡後、マミの遺志と己の欲望である上条恭介の怪我の完治のために魔法少女となる。
潔癖な癖があり、マミとは違った理念で動いていた暁美ほむらと佐倉杏子に嫌悪感を抱いていた。
紆余曲折の末、絶望し、魔女となり、死亡する――――が、親友である鹿目まどかが『魔法少女を救う』概念と化したために救われる。
その後、円環の理の一部となり、インキュベーダーに囚われ、円環の理に導かれなかったほむらへの救出へと向かった。
ほむらはインキュベーターから救いだすものの、ほむらの欲望によって切り取られた円環の理の一部であったため、さやかもまた円環の理から切り離された。
一人の魔法少女へと戻り、また、かつての記憶を失いつつある。

【方針】
聖杯を手に入れる。


389 : 美樹さやか&バーサーカー ◆FFa.GfzI16 :2014/12/25(木) 02:51:44 QDn.qZws0
投下終了です


390 : 名無しさん :2014/12/25(木) 03:52:15 DHC/SnlEO
>>342
型月ではよくあること


391 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/25(木) 08:14:34 jdrkdX6E0
投下乙です。私も投下させていただきます。


392 : 黒崎一護&バーサーカー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/25(木) 08:15:49 jdrkdX6E0
彼が来た時には、すでに少年の姿は消えてしまっていた。
人の目どころか幽霊が見える彼の目にも見えない。

果たして、少年はどうなってしまったのだろう。
誰も知らない。

幽霊が見えるだけの高校生の手には、少年に渡すはずだった飛行機のおもちゃだけ残される。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


黒崎一護。
幽霊が見える高校生。
兼、聖杯戦争に参戦したマスター。

全くもって妙な異名が一つ増えたところで、一護が頭をかかえるのは――


「カエレ!」
「帰る家もねぇよ! 今は!!」


彼のサーヴァント・バーサーカーの存在であった。
狂戦士の文字通り、意思の疎通を図るのは困難だと一護も分かってはいるものの。
一護が一番に動揺したのは、バーサーカーは『少女』だという点なのだ。

彼にも小学生の妹が二人いるが、彼女らよりも幼い。
死人のように血の気のない肌と白髪と白の衣装を纏った姿。
この『少女』が本当に英霊だというのか?
一護には俄かに信じがたい話だった。


「クルナ……!」
「もう俺は隣にいるし、言うのが遅すぎるだろ!」


しかも話す言葉はこんなものばかり。毛嫌いされているのだろうか。
やれやれと溜息をつく一護は、手元に残っていた飛行機のおもちゃに気づく。


「コレも渡せなかったしな……」
「……オイテケ」
「ん?」
「オイテケ……オイテケ……」
「なんだよ、欲しいのか? ホラよ」


バーサーカーはすでに抱え込んでいる飛行機(?)らしきものを脇にかかえ
一護から貰ったおもちゃで遊び始めた。
思わず「変わってんなぁ」と一護は呟く。
サッカーをする男勝りな妹の例があるし、珍しい事ではないのだろうが
それでも女の子が飛行機好きなのは世間体では変わった部類に違いない。


「……なぁ、名前くらい教えてくれたっていいだろ?」


バーサーカーは水底に響く呻き声のような言葉を発するが、肝心な真名を一護には伝えていない。
否、バーサーカーだからこそ伝える事が困難であるはず。
かと言って、一護は『少女』の正体に心当たりもなかった。


393 : 黒崎一護&バーサーカー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/25(木) 08:16:38 jdrkdX6E0


「願い事は……あるのか?」


バーサーカーはピタリと遊ぶのを止め、呟く。


「イツカ……イツカ、タノシイウミデ……」
「うみ? 海のことか?」


それ以上の事は続かなかった。
やはり一護には理解できない。
ただ、一つ。
彼女はそこへ至ることを望んでいる。聖杯に願うは『海』へ至る事。

一方の一護は漠然としていた。
紅い月を見上げ、何かを望んだはず。
一瞬のことで彼の記憶も曖昧で――少年のことか、昔死んだ母親のことか、もっと他の事か。
願う事がありすぎて、よく分からないままで済ませようとしていた。

しかし、彼女には確固たる願いがある。
自分とは――違う。


「よし、わかった。海に連れて行ってやる」


少女の願いだけは叶えてやりたい。一護は決心した。


「それまで俺がお前を護るから」


別に聖杯に願わずとも、少女が望む海へ連れてゆく手段はある。
そう信じて。


「俺は黒崎一護だ。よろしくな、バーサーカー」


かくしてマスター・黒崎一護の聖杯戦争が


「チョウシニ……ノルナ!」
「うお!? まともに喋った!? ってか、さっきから毒舌酷くねぇか!?」


始まるのかもしれない?


394 : 黒崎一護&バーサーカー ◆3SNKkWKBjc :2014/12/25(木) 08:17:36 jdrkdX6E0
【クラス】バーサーカー
【真名】北方棲姫@艦隊これくしょん(『アリューシャン・ダッチハーバー』)
【属性】混沌・狂

【ステータス】
筋力:E 耐久:B 敏捷:C 魔力:A 幸運:C 宝具:E

【クラス別スキル】
狂化:D-
 耐久が上昇するが、言語機能がある程度制限される。
 複雑な思考を長時間続けることが困難になる。

【保有スキル】
使い魔(戦闘機):A
 不気味な使い魔を作り出すスキル。
 生きているが元は戦闘機であり、宙を浮き、爆撃など戦闘機らしい攻撃手段を取る。

開幕爆撃:C
 戦闘開始時に使い魔たちによる先制攻撃が可能。
 このスキルのランク以上の俊敏を持つサーヴァントには効果が得られない。

索敵:A
 敵を発見するスキル。
 このランクならば索敵用の使い魔でレンジ1〜30の範囲を把握可能。
 同ランクの気配遮断を無効化できる。
 

【宝具】
『ダッチハーバーの失態』
ランク:E 種別:対人 レンジ:- 最大補足:-
バーサーカーとの戦闘で戦線離脱したサーヴァントの宝具の詳細を自動的に入手できる。
無論、情報はバーサーカーではなくバーサーカーのマスターへ与えられる。
バーサーカーのマスターは入手した情報をいつでも確認する事が可能。
宝具を複数所持する場合は、ランダムに選択される。
再度対峙し、情報入手する場合は別の宝具の情報が入手できる。


『零式艦上戦闘機「アクタン・ゼロ」』
ランク:E 種別:自身 レンジ:- 最大補足:-
バーサーカーが大切に(?)抱きかかえている戦闘機。
神性・魔術に精通する英霊にはバーサーカーの正体を看破する事は不可能となる。
この宝具はバーサーカーの象徴故、手離すことはできない。破壊することもできない。

【weapon】
5inch単装高射砲
 中距離からの射撃が可能。

飛行機のおもちゃ
 マスターから貰ったもの。とくに意味はない。

【真名について】
ある世界において『北方棲姫』と呼ばれ、人類を脅かす脅威と称されているが
それはバーサーカーの真名ではなく、バーサーカーの正体でもない。
彼女はある時代で起きた戦争の情景そのもの。。
彼女に真の名をつけるとすれば、かつての戦争に敬意を表して、こう名付けるべきだろう。
『アリューシャン・ダッチハーバー』――と。

【サーヴァントとしての願い】
イツカ……タノシイウミデ……

【基本戦術】
マスターが膨大な魔力を持っているので存分にバーサーカーの性能を引き出せるだろう。
使い魔の作成は意外にも低燃費。余裕があればストックを作成しても問題ない。
相手を逃しても、宝具の情報が入手できる。


【マスター】黒崎一護@BLEACH
【性別】男性

【マスターとしての願い】
バーサーカーの願いを叶えてやりたい。

【weapon】
霊感が強い。
生まれついて霊力が膨大にあり、聖杯戦争においては魔力として変換される。

【人物背景】
幽霊が見える高校生。まだ、死神代行になる前の彼である。


395 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/25(木) 08:18:05 jdrkdX6E0
投下終了です。


396 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:34:53 6GzEkvAU0
一巡しなくても同クラスを投下していいとの事なので、バーサーカーだけ未投下ですが、セイバークラスで投下します。


397 : 木之本桜&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:35:25 6GzEkvAU0



 夜桜。
 無数の提灯の光に照らされ、桜は漂白に限りなく近い桃色を美しく映えさせる。
 水面にもまた、その美しさが反転されており、その景色を水面下で揺らしている。

 上野公園に舞い散る桜の美しさは、あれから100年の時を経ても変わらなかった。
 かつて、大事な仲間たちと共に勝利の乾杯をしたあの桜の下。
 かつて、大切な人と初めて出会ったあの舞い散る吹雪の中。
 かつて、帝都に来た彼女を迎えたあの桃色の風。

 ひらり、ひらり──。

 英霊、真宮寺さくらはそこに再誕する。
 またも、多くの桜吹雪に見守られながら──。
 この桜の下に物語を開始するのは、最早、彼女の運命と言っていいだろう。
 そして、こうして、「桜」の情景に囲まれる事が、これほど似合う少女もいまい。

 彼女が纏う桃色の袴にも、桜の花びらが刺繍されている。
 その裾は、艶のある長い黒髪を束ねた真っ赤なりぼんと共に、激しく揺らめいている。
 揺れる黒髪や着衣は、振り子のように振れて続け、その振れ幅が一向に小さくならない。
 ここに、強い風が吹き続けている限り──この二人の契が終わるまで。



「……あなたが、私のマスターですか?」



 真宮寺さくら、否、≪セイバー≫は、目の前にいる小さな少女にそう問いかけた。

 目の前のマスターの年齢は、かつての仲間ならば、さくらがかの「帝国華撃団」に入りたてた頃、出会った少女・アイリス(イリス・シャトーブリアン)くらいだろう。
 魔力の代替となる、「霊力」であれば、その素養を持つ人間は若ければ若いほどに強い物を有する。
 アイリスが高い霊力を持つように、このくらいの年齢の少女でも全くおかしくはない。
 セイバーも、なるべくならアイリスほどの年齢の少女を戦いに参加させたくはないが、それでも、アイリスが現実問題、降魔との戦いで強力であったように、この少女もあるいはそうかもしれない。

 だからこそ、その宝具『霊剣荒鷹』を抑えながら、強い魔力を持つその少女との契を再確認する必要があるのだ。
 私と巡り合うマスターはこの少女でいいのだろうか、と。
 まだ早いかもしれないが、これが最終確認だ。
 何の誤りもない事が明らかになり、この契約が無事に済めば、この二人はこれから共に戦う事になる。
 たとえ、これほど幼い少女であっても。

 あらゆる考えを巡らせながらも、そのセイバーはその少女の全身を眺めていた。
 ……少女は、目を薄く開けて、ぼんやりとセイバーの姿を見返している。

「ほ、ほえ〜……」

 恐れおののきながらも、その二つの桜に見惚れるようにして驚嘆している。
 この様子を見る限りでは、もしかすると、何かの間違いによってセイバーを呼んでしまったのだろうか。
 あまり、強い邪気や意思は感じられなかった。それどころか、聖杯戦争に臨む覚悟もない。
 この紅い満月の聖杯戦争は、どうやら当人の覚悟や決意と無縁に、突然連れて来られる場合もあるらしいので、少女もまた、その一人であるのだろう。
 少なくとも、この夜中にこんな所に一人でいる少女が、何らかの異常な出来事と関わりを持たないとは思えない。
 やれやれ、とセイバーは思った。


398 : 木之本桜&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:35:54 6GzEkvAU0

 気が抜けたようで、どことなく安心したようでもあった。
 主従の関係である事をまずは捨てて、一つ、人間と人間、女の子と女の子として、自己紹介から始めてみよう。
 全ての話をするのはそれからでもいい。

「私は、真宮寺さくらと言います。しかし、できれば、この場ではセイバーと呼んでください。
 ……あなたの名前を、聞かせてもらえますか?」

 セイバーは優しい朗らかな口調で訊いた。
 その目線に合わせるべく、そっと腰を下げてしゃがみこむ。屈んで話さねばならないほど幼い相手とも思わないが、それでも、セイバーはそうして話したかった。
 相手の表情が見えるところで話した方が、会話を楽しめると思ったのである。

 ……もし、目の前の少女が事故によってここに連れて来られたならば、セイバーは彼女を帰す方針である。
 元より、セイバーには他者を犠牲にしてまで叶える願いは殆どないし、願うとすれば帝都の恒久たる平和と発展くらいのものだ。
 それも、蒸気なしにここまでの発展を成し遂げた100年後の帝都を「聖杯」によって知らされた後では、願うまでもないかもしれない。
 この小さな少女の無事が、強いて言うならば今のセイバーの願いに切り替わった。

「あ、あの……私は、えっと、私も……木之本、桜です!」

 半ば目を瞑りながら、それでも幼い子が一生懸命自己紹介をするかのようにそう口にしたマスター。

 ──桜。

 その名前に、少し、セイバーは目を見開いて、しかしそれを受け入れて微笑んだ。
 なんという偶然だろう。
 この「桜」の木の下で、「さくら」と「さくら」が出会ったのである。
 また、その双方が強い魔力や霊力の持ち主である事も、偶然としては出来すぎているくらいの物であった。
 ふふ、と笑った後、セイバーは再度問いかけた。異常な状況で不謹慎かもしれないが、同じ名前の女の子に出会えた事を嬉しく感じたのだろう。
 その笑みが、桜をどことなく安心させる効果を齎していた。

「さくらちゃん……か。お名前、一緒ね」

「は、はい!」

 桜が安心しているのが、今はセイバーにもよくわかった。
 警戒の色はないようで、最低限、この聖杯戦争を理解しているのかと思われた。
 あるいは、セイバー自身が纏う温厚な人柄が、桜にも伝わったのかもしれない。

「それで、さくらちゃん。あなたは……私のマスターで合ってますよね?」

「はい……。私が呼んじゃったみたいです……ごめんなさい」

「そう……。でも、謝らないで。私を呼んでくれてありがとう、さくらちゃん。
 私、またこんなに綺麗な上野の桜を見られて、とても幸せなんです。……私ももう、この桜を二度と見られないと思っていましたから……」


399 : 木之本桜&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:36:17 6GzEkvAU0

 上野の桜には、セイバーも幾つかの思い出を持っている。
 しかし、かつて、ある戦いでその若い命を散らしたセイバーにとっては、本来二度と見る事が出来ないはずのものだった。
 それは、セイバーが「真宮寺」であった為に──。
 あの黒鬼会との決戦の日。遂に、さくらはあの「魔神器」を使ってしまった。
 魔を鎮める為、唯一、その命を以て都市を救う事ができる血統、「真宮寺」──その一人娘である限り、帝国華撃団に来た時から、その終幕は運命だったのかもしれない。

「何か、あったんですか……?」

「ええ。でも、もうずっと前の話です。ずっと昔の……」

 今一度、この桜の花が見られたセイバーには、もう現世に悔いはないのだろう。
 偶然にも頬に張り付いた桜の花びらに、あの人への想いを馳せながら、セイバーは感慨に浸った。
 あの人は──大神一郎は、その後、どんな人生を歩んだのだろう。
 あれだけたくさんの女性と出会い、好かれてきたのだから、きっと誰かと結婚しているに違いない。
 それは、すみれか、マリアか、あるいは他の誰かなのだろうか……。
 だとしたら、やっぱり、少し、嫉妬する。

 しかし、あまり長くも浸れない。風が、頬の花弁を自ずと払った。それを合図に、セイバーは我を取り戻した。
 木之本桜は、セイバーの様子を見て呆けている。
 いけないいけない、と。
 セイバーは、桜にこれまでのいきさつを訊く事にした。

「それで、さくらちゃんは、どうしてここに来たのかな?」

「それは……」

 今度は桜が、そう言われて、ふと何か思い出して記憶をたどり始めた。
 セイバーは、その姿を大人しく見守る事にした。
 多少、記憶をたどるのが遅れても仕方がない。

「……確か、学校でみんなが……えっと、あれ?」

 しかし、途中でその、記憶をたどるようなしぐさがぷつりと途絶えた。セイバーも、怪訝に思う。
 彼女は、何やら自分の記憶の限界にぶつかったらしいのである。
 糸が切れたように、考える事への限界を悟ってしまったのだ。

(何か、学校でみんながしている噂を聞いたような……)

 木之本桜は考える。

 紅い満月。
 ……そう、紅い満月が、願いを叶えてくれる。とか。

 そんな、女子小学生の間で流行しても何の変哲もない噂が、桜の脳裏を過り、それから先が何も思い出せなかった。
 東京タワーが見える町に住んでいたはずだし、やはりこの上野からそう遠くない場所に桜の日常があるはずである。
 しかし、何故かその日常が、今の感覚では遠くにあるようだった。

「あれ……? どうして……? そこから何も思い出せないよ〜〜〜!!!」

 桜は慌てふためいていた。

 何故か、桜は、自分が住んでいるのが東京のどの辺りなのかさえも、よく覚えていなかった。
 自分が木之本桜であるという事実はよくわかるし、家族の名前、友達の名前もよく覚えている。
 自分がカードキャプターさくらである事も、クロウカードを封印する戦いをしてきた事もはっきりとわかる。

 しかし、自分が住んでいた町が東京のどこにあるのか──つい最近まで知っていたはずなのに、何故か地図から抜けているような気がしている。
 何故、自分がこんな夜遅くに上野にいるのかも、今の桜には全くわからない。
 これより前の記憶は、昼ごろの物である。昼から、突然記憶が夜まで飛躍し、また、位置情報も上野に変わってしまった。

 桜は、自分の記憶を掘りだそうとする度に、暗い面持ちに変わっていった。
 セイバーは、そんな桜を見かねて、早々に、桜が知らないであろう事を解説した。


400 : 木之本桜&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:36:34 6GzEkvAU0

「……わかりました。それだと、さくらちゃんは自分からこの聖杯戦争に参加したわけではないようですね」

「聖杯、戦争……」

 桜は、その言葉だけは何か思うところがあるように呟いた。
 いや、最早、確実にその単語と意味する物だけは脳内にインプットされていた。
 その事実は、セイバーの方もよく知っている。この現世に来た時に、現世での最低限の知識と聖杯戦争の知識を拵えている。
 おそらくは、何かがその脳に直接、記憶を植えつけたのだろう。

「ねえ、さくらちゃん。さくらちゃんは、この聖杯戦争に来る前、『紅い満月』を見なかったかしら?」

「あ〜〜〜っ! そうです! 私、『紅い満月』を見て……えっと、それから……」

 やはり、だ。
 何かによって記憶を書き換えられているのかもしれない。
 人の記憶に干渉できるならば、それによって、このように記憶を書き換える事も可能なのだろう。
 これまでの経緯をごそっと取り除かれており、それで大分混乱しているようでもあった。

「やっぱり……そこから先は……全然思い出せません」

 桜はしゅんと小さくなった。

「そこから先は……多分、もうここに来ていたのかと」

「ほえ? でも、お昼休みだったはずが……いつの間にか、夜に……」

「……聖杯戦争においては、ここに来る前の時間など些細な事です」

 100年の時を隔てて召喚されたセイバーが言うのだから間違いはない。
 それよりもまず考えなければならないのは……。

「時間よりも、場所が大切です。さくらちゃんがどこにいたのか……それはわかるかしら?
 それがわかれば、さくらちゃんをお家に帰す事ができるかもしれないけど……」

 そう、場所だ。
 木之本桜を元の場所に帰すには、場所を知る必要がある。
 ともかく、どういう事情があるにせよ、この小さな少女が浮浪しているわけにもいかない。
 ましてや、こんな時間だ。

「えっと、友枝町の、友枝小学校に……」

「友枝町? 町の名前までわかるのなら、後は早いかしら……」

 思ったよりは手がかりがある。
 聖杯による記憶の混濁はそうそう大きくはないのかもしれない。
 しかし、ふとセイバーはある問題にぶち当たった。

「あれ? でも……この帝都に、友枝町なんていう場所……あったかな? そうすると、結構遠くである可能性も……」

 セイバーも、帝都の町をよく知っているが、そんな場所はどの作戦中も訊いた事がなかった。
 遊びに行った事もないし、田舎の町としても知られていない。
 もしかすれば、東京都の外なのかもしれない。

「えっと、友枝町は東京タワーが近くて……だから、東京のどこかに……」

 東京タワー。
 セイバーたちの時代にはないが、後の帝都のシンボルである。
 勿論、この現世に召喚されるに従い、セイバーはその記憶を有している。
 東京タワーは、東京ディズニーランドとは違って東京都内に存在している建物である。


401 : 木之本桜&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:37:01 6GzEkvAU0

「それだと東京範囲内かしら? でも、ここからの道のりは? せめて、どの駅や町が近いとかはわかるかしら?」

「うぅ……わかりません」

「そうですか……」

 とにかく、名前までわかるのなら、そこを探すのに苦労はないはずだ。
 地図を使えばすぐに見つかるだろうし、地図ならば現代にはそこら中に存在する。
 コンビニエンスストアという手軽な店がそこかしこにあるはずである。

「じゃあ、さくらちゃん。まずは、友枝町がどこにあるのか探しましょう」

「は、はい!」

「仮に途中で敵に遭遇した場合は、私が撃退します。でも、さくらちゃんも、なるべく気を付けてください」

 この桜の下を離れ、今度はどこかにある『友枝町』という町を目指す事にした二人であった。

 ……しかし、二人がその町に辿り着く事は、おそらくないだろう。
 この山手線区画内には──そして、あるいはここで全東京を再現したとしても、『友枝町』などという町はどこにもない。
 それは、木之本桜たちが住まう世界にしか存在しない町なのだから……。


402 : 木之本桜&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:37:16 6GzEkvAU0



【クラス】
セイバー

【真名】
真宮寺さくら@サクラ大戦シリーズ

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:D
 魔術に対する守り。
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
 大抵の動物を乗りこなしてしまう技能。
 幻想種(魔獣・聖獣)を乗りこなすことはできない。

【保有スキル】
心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
破邪剣征:A+
 真宮寺に伝わる剣技の力。
 邪な魔力を持つ者、あるいは魔獣に対してかなり有効な攻撃力。

【宝具】
『霊子甲冑』
ランク:A〜D 種別:対人、対獣、対機 レンジ:1〜5 最大補足:1
 所有者の霊力を引きだすシルスウス鋼製の甲冑。現代ではパワードスーツ、あるいは巨大ロボットの中間にあたる(サイズは3米ほど)。
 さくら機は桜色。大刀を装備している。
 光武、光武改、神武、天武など、あらゆる機体を繰った伝説が残っているが、いずれの霊子甲冑が宝具として召喚されるのかは不明。
 この宝具によってセイバーのパラメーターは一時的に底上げされる。

『霊剣荒鷹』
ランク:B 種別:対人 レンジ:1〜50 最大補足:1〜50
 真宮寺家に伝わる魔を絶つ剣。「二剣二刀」の一つである。
 意思を持っているとも言われ、さくら自身の意思の持ち様に応じて、この宝具の技の種が増え、剣の威力も上がるとされる。
 現時点でのセイバーは、『破邪剣征・桜花放神』、『破邪剣征・百花繚乱』、『破邪剣征・桜花霧翔』、『破邪剣征・百花斉放』などの技が使用できる。

『魔神器』
ランク:EX 種別:対界 レンジ:∞ 最大補足:∞
 「剣」、「鏡」、「珠」の三種の神器。
 真宮寺の血を受け継ぐセイバーの命と引き換えに、 降魔を全て封印して都市を救う事ができる最終手段である。
 この場合、周辺区域及びマスターの護衛と、その時点で半径5km以内の敵対サーヴァント、魔獣、魔物の殲滅が可能となる。
 但し、使用には膨大な魔力とセイバー自身の命が必要となる為、発動の機会は滅多にない。

【weapon】
 『霊剣荒鷹』

【人物背景】
 太正十二年から太正十四年にかけて帝都で活躍されたとされる大帝国劇場「帝国歌劇団」の女優。明治三十八年七月二十八日生。
 仙台の名家、真宮寺家から上京して、帝国歌劇団・花組として多くのヒロイン役の女優を務めるが、太正十四年十一月に死亡が発表された。享年20歳。
 元陸軍対降魔部隊・真宮寺一馬大佐の一人娘であった事、北辰一刀流の剣術の達人であった事、大帝国劇場の支配人米田一基もまた対降魔部隊の同僚であった事などが明かされており、太正十四年頃の「黒鬼会」との闘争中に亡くなった説などが後の世の研究によって有力視されているが定かではない。
 ややドジで、舞台本番の最中にアクシデントを起こす事もしばしばあったと言われるが、逆にそれを楽しみにしていた観客も多く、その親しみやすさや顕著さから一般市民に高い人気を獲得した。
 その死は当時の帝都に衝撃を与えたが、葬儀は関係者のみの密葬に終わり、死因も明かされないままであった為、当時から様々な憶測がなされた。
 (公的な記録や後の研究資料等で残っているのはここまで)

 後の世の研究によって推測された事柄は的を射ている。
 大帝国劇場は、秘密防衛組織『帝国華撃団』の拠点であり、舞台で踊る帝国歌劇団のスタアは全員、霊力を有している「花組」の戦士なのである。
 真宮寺さくらは、黒之巣会と戦い、過去に帝都の防衛に成功した記録も軍部には残っている。
 しかし、黒鬼会との戦いにて、帝国華撃団の戦力に限界を感じた真宮寺さくらは、「魔神器」を使う事によって、自らの命と引き換えに降魔を封印。帝都を救出したのである。

 以上は、「サクラ大戦2〜君、死にもうことなかれ〜」にて正規のルートをたどれなかった場合(大神さんが魔神器を破壊しなかった場合)のさくらである。
 本編に特にそういうアナザールートがあるわけではない。

【サーヴァントとしての願い】
 マスター・木之本桜の無事。

【方針】
 まずは、木之本桜を友枝町に帰す。


403 : 木之本桜&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:37:34 6GzEkvAU0




【マスター】
木之本桜@カードキャプターさくら

【マスターとしての願い】
 不明。

【weapon】
『クロウ・カード』
 魔術師クロウ・リードが、自身の持つ「闇の力」の魔力を用いて生み出したカード。
 現時点でさくらが保持しているカードは不明。さくらカード編に突入しているかとかも特に考えていないので、その辺りは自由に。
『封印の杖』
 クロウカードを封印・解除するアイテム。

【能力・技能】
 魔力保有者。カードキャプターとしての能力を持つ。
 チアリーティング部所属で、バトンを得意とする。スポーツも得意な模様。
 家事は当番制なのでおおよそこなす事ができるが、裁縫は苦手。

【人物背景】
 友枝町(東京都内に存在すると思われる)に住む小学4年生。
 父の本棚の中で発見した不思議な本を開いてしまった事で、クロウ・カードを解き放ってしまい、封印の獣ケルベロス(ケロちゃん)と共にクロウ・カードを集める事になる。
 性格は明るく友達想いで、どこか天然である。「ほえ〜」、「はにゃ〜ん」、「さくら怪獣じゃないもん!」などの可愛すぎる名言多数。
 今回は、故郷友枝町が実在の東京にないせいか、山手線区間内を再現した際にも友枝町に関するデータはなく、彼女の居場所はなくなっている。
 それに伴い、さくら自身も友枝町の位置情報等に関する記憶が失われている。

【方針】
 まずは友枝町を探し、帰る。


404 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/25(木) 20:37:51 6GzEkvAU0
以上で投下を終了します。


405 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:21:27 41VRFM.k0
投下します


406 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:22:16 41VRFM.k0






親愛なるあの人を失った、その後。

ある日、空を見上げた。

二人じゃ見ることなんてなかっただろう夜空。

ああ、もう一度。

あの人に───会いたい。

その時。

月が、私達を見つめていた。

紅い、月が。

あるはずのない、紅い月が。

───でも、それだけじゃない。





▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


407 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:23:48 41VRFM.k0
「───」

カツカツ、と足音が響く。
瞳は虚ろ。
足取りは不安定で、その目線は空中を彷徨っている。

「知っているんだよ、月。ムーンセル・オートマトン。
人類を観測する万能器」

彼女は、呟く。
意思とは関係なく、その言葉は淡々と紡がれる。
知識が勝手に掘り起こされる。

「……でも、紅い月なんて知らない。
ムーンセル・オートマトンにはそんな機能なんてないはずなんだよ」

長い美しい銀髪。エメラルドの瞳。
そして金の刺繍を施した純白のシスター服にを纏った少女……インデックスは、呟く。
彼女には、特殊な能力がある。
───完全記憶能力。
一瞬でも見たものなら永久に忘れない、その頭脳である。
問題なのは、その中身。
常人なら一目見るだけで発狂するほどの代物───魔導書の中身を記憶しているのだ。
一冊や二冊ではない。
その数、10万3000冊。
その情報量は、魔術の殆どに至る。
一部の特殊な魔術こそ知らないものの、それ以外ならば彼女は全てを網羅しているのだ。
だからこそ、彼女はこの東京にてムーンセルの異変を察することができた。

「……とうま」

だが、それだけ。
察することができただけ。
彼女自身を守る防御機構『自動書記』に全魔力を回しているため、彼女は魔術を使えないのだ。
できるとすれば、魔力の流れを探知するか相手の魔術詠唱に介入し魔術を誤作動を誘発させるか。
どちらも、戦力とは言い難い。

「とうまぁ……」

だからこそ彼女は皆に狙われ、皆に守られていた。
必要悪の教会。学園都市の友達。
───そして、上条当麻。
異能を打ち消す右手だけを武器に、襲いかかるもの全てと戦ってきた1人の男。

「とうまぁ……っ!!」

───だが、しかし。
彼は、もういない。
第三次世界大戦。
ロシアにて、その戦争の中心にいた彼は『ベツレヘムの星』へ特攻したのだ。
そして、彼は英雄となった。
戦争を終わらせた英雄。
───その名誉と引き換えに、彼は彼女の元へ戻ってくることはなかったが。
行方不明。大海原に墜落した『ベツレヘムの星』周辺からは、上条当麻の肉体はおろか手掛かりすら見つからなかったのだ。
彼女を地獄から救い上げ。
そして世界を守った上条当麻は、跡形もなく姿を消した。

「とうまぁ……っ」

彼女の瞳から涙が溢れる。
大きな瞳から溢れる大粒の涙。
未知の場所に連れてこられた不安から、耐えていた感情が流れ出したのだ。
わんわんと。
他人の目も気にせず彼女は泣き喚き───そして、異常に気づく。

「痛っ……?」

指先からの、小さな痛み。
涙に濡れた瞳で己の指を見ると。

「え、何、これ」

その指は、黒く染まっていた。


408 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:25:59 41VRFM.k0
ムーンセルによるデリート。
マスターとしてこの場に呼ばれたはずの彼女は、サーヴァントとすら出会えずに消滅が始まっていた。
何故か。
───それは、彼女の脳内の魔導書にあった。
10万3000冊の魔導書。その知識量。
当然、その知識はこのムーンセルの東京にてアバターとして構築された彼女の肉体にも備わっている。
魔導書図書館とも呼ばれる、その膨大な知識量が。
その膨大な知識量は1人間のアバターに付加される情報量を遥かに超えていて───だから、ムーンセルはインデックスを『バグ』と判断した。
これは、マスターではないと。
ただ一人の人間を再現するのにこんなにソースを回さなければいけないのはあり得ない───だから、これはただの『バグ』だと。
故に、彼女の身体は消滅が始まっていた。
マスターであるはずの彼女は、バグとして処理されかけていた。

「あ、嫌───」

小さく呟くインデックス。
それは、とても小さな声だった。
消えたくない気持ちはある。
行方不明の上条当麻を探すまでは死ねない───だというのに、蓄えられている知識が、消滅は避けられないことを主張する。
ムーンセルにおける肉体の消滅の特徴として、消える寸前まで意識が鮮明なことが挙げられる。
だからこそ。
インデックスはまだ消える訳にはいかないと、黒く染まり消えていく感覚を無視して、それでも足掻く。

(とうまは、痛くても辛くても頑張ってくれたんだよ)

脳内に浮かぶのは、ツンツン頭の少年。
彼が決死の覚悟で助けてくれたのだ。
その命を、こんなところで捨てる訳にはいかない。

「───今度は、私の番なんだよ」

このムーンセルから帰還し、上条当麻の捜索を。
いつも助けてくれた少年を───今度は私が助けるのだと。
……しかし、現実は非情である。
消滅は止まらない。
不正なマスターとして消される彼女には、彼女自身の力で消滅を避ける方法などない。
……そう、彼女自身の力では。

『……メだ……気づ…てく……!』

叫ぶような、懇願するような。
小さな声が脳内に響いた。
もはや肩まで黒く侵食したその重い体を無理矢理動かし見渡すが、辺りには人の気配すらしない。
誰、と聞こうとしたが。
もはや喉の機能すら失われかけているらしい、掠れた空気の音しか発せなかった。

『私達…名前は───だ……!
くそ、届かな…月……ムーンセルめ、そこまでして私達を戦場に向かわせないつも…か…!』

届く声が、鮮明になっていく。
声は二つ。
今届いたのが低い大人の声で───もう一つ届いたのは、少年の声だった。

『空を───空を見上げてくれ』

その声は。
とても、暖かさに包まれていた。
うつ伏せで消えかける体をゴロンと転がし、空を見上げる。
そこには、あるはずのない紅い月と。
夜空に見えるはずのない───眩い何かが存在していた。

『明けない夜はない。それと一緒で、月が支配し続ける世界もないんだ!
必ず───必ず、明日もまた陽は昇るんだ!
だから、お願い……諦めないでくれ、君が一つ名前を呼んでくれるだけでボクらはそちらに行けるんだ』

黒く染まった腕を、夜空に浮かぶ眩い『ソレ』へと手を伸ばす。
重い。動かすことすら一苦労だ。
それでも、インデックスは手を伸ばし続ける。

「た……う」
『そうだ……後一言だけ、それでボクらは君の力になれるんだ……!」

上手く機能しない喉を必死に動かし、一言だけ。
インデックスは、叫んだ。

「───太陽」

その、瞬間。
バリンと、何が割れる音がした。



『太陽ぉーーーーーーー!!!!!』

そして。
戻りつつある感覚の中インデックスが見たのは。
神々しい向日葵と───深紅のマフラーを巻いた、暖かい光を放つ少年だった。


409 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:28:25 41VRFM.k0
そして。
サーヴァントと契約を結んだことにより───ムーンセルから『マスターである』と認識されたインデックスの消滅は、止まった。
黒い肌は元の白い肌に。
失われた感覚も、その身体に戻っていく。
そして、インデックスは現れた彼らに向かい、一言。

「貴方達は……」
「───ボクはジャンゴ。太陽少年ジャンゴ。
今回の聖杯戦争じゃアーチャー、って呼んだ方が正しいのかもしれない」
「私はおてんこ」

マフラーの少年───ジャンゴと、向日葵・おてんこが喋る。
体力が少しずつ戻るインデックスに手を差し伸べ。
彼は、こう言った。

「君のサーヴァントとして現界した───宜しくね、マスター」

ゆっくりと差し伸べられた手を、インデックスは掴む。
その手は、太陽のように暖かかった。

「君の願いは通じた。
ボクは、君を絶対に此処から地上に返そう。
絶望も悲しみもいらない───『いつも心に太陽を』、だよ」

優しく微笑むジャンゴの笑みに、インデックスは感じ取った。
ツンツン頭の少年と、同じ暖かさを。
ああ、この人ならば。

「───うん、お願いするんだよ、アーチャー」

共に、戦っていけるかもしれない。


410 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:29:30 41VRFM.k0
【クラス】
アーチャー

【真名】
ジャンゴ@ボクらの太陽シリーズ

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具A+

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:D 
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
現界可能な時間は二日程度。

【保有スキル】
太陽少年:A
太陽少年としての彼の在り方がスキルになったもの。
太陽の光が当たっている場所ならば自動的に魔力がどんどん回復する。

騎乗:B 
生前彼が乗り回した棺桶バイクの逸話故に手に入れたスキル。
乗り物を乗りこなすスキル。
Bランクならば聖獣・魔獣以外を乗りこなす。

吸血鬼の血:C
彼の中に眠る力の一つ。
太陽少年でありながら月の力を得る。
月光の下ならば気配を隠すことができ、また相手に気づかれにくくなる。

太陽の加護があらんことを:B
太陽の恵みを多く貰い成長した果実を食すと様々な効果を得られる。
青リンゴ、リンゴならHP回復・マンゴーなら魔力回復・バナナなら筋力上昇・レモンなら俊敏上昇などなど。


【宝具】
『その身に宿し吸血鬼(ダークジャンゴ)』
ランク:C 種別:- レンジ:- 最大補足:-

彼の中に眠る吸血鬼の力を使い、半ヴァンパイア化する。
ダークジャンゴになった場合筋力A、耐久B、俊敏Aへと強化される。
しかしこの宝具は月の下でしか使えない。
噛みつくことで相手の魔力を喰らうことが可能。
そして再生:Bのスキルが付加され、傷が自動的に回復していく。
また鼠や蝙蝠、狼などへの変身も可能。
太陽少年でありながら闇の力を手に入れた代償か───この宝具を日光の下で発動した場合、己がダメージを受ける。

『おてんこさま』
ランク:A+ 種別:- レンジ:- 最大補足:-

太陽少年を導く太陽の精霊。
その姿は太陽意思ソルが降臨したもの。
彼の戦いを支え続けた相棒であり、その膨大な知識でサポートする。
おてんこさまと合体することで、太陽少年の姿は太陽の化身───ソルジャンゴへと姿を変えることができる。
ソルジャンゴになった場合筋力A、耐久A、俊敏Bへと強化される。
更にAランクの魔力放出(炎)のスキルを取得することができる。
おてんこさま自体に戦闘能力はない。

『浄化せし太陽の拘束(パイルドライバー)』
ランク:A+ 種別:対イモータル宝具 レンジ:1 最大補足:1

対象を棺桶に封印し、四つの台から発射される太陽光を圧縮した極大の熱量で焼き尽くす。
この宝具に打ち勝つ方法はただ一つ。
この宝具の出力を、己の力で上回るのみである。
不定形の存在、吸血鬼などに追加補正がかかり追加ダメージを与える。
数多の吸血鬼を屠ったこの宝具が太陽少年にアーチャーとしての適正を与えた。
太陽の力を借りた至高の一撃である。

【weapon】
『太陽銃”ガン・デル・ソル”』
太陽少年が使用する武器。
その場でパーツを変えることにより様々な用途に使用できる。
連射に爆弾に放射に属性変化、万能武器のなんでもござれ。

【人物背景】
太陽少年ジャンゴはヴァンパイアハンターである。
太陽少年という称号を持ち、太陽銃「ガン・デル・ソル」の後継者。
最強のヴァンパイアハンターだった父・リンゴから太陽を操る術と「紅のマフラー」を受け継いだ。顔に白いフェイスペイントをしており、夏でも長袖・マフラーを外さず、また冬でも半ズボンである。父・リンゴの太陽と母・マーニの月の血を併せ持つ。父親の仇を追うため、イストラカンに行き、そこで大地の巫女リタや生き別れの兄サバタと出会う。
『ゾクタイ』の劇中で半ヴァンパイア化してしまうが、浄化された結果太陽と暗黒の力を使い分けられるようになる。『シンボク』では、冒頭地下牢獄に封印されていたが、ヴァンパイアの血の力によって復活する。だが、その影響で軽い記憶喪失に陥った。
『ゾクタイ』では太陽銃の他に剣・槍・槌を使いこなす。
素手での攻撃も難なくこなす。
『シンボク』では剣が残り、「直剣」「長剣」「刀」「曲刀」「大剣」の5種類に細分化された。
しかしこの場ではアーチャーのクラスで呼ばれたため剣の類の武器は持ってこれなかったようだ。
紅い月に魅せられた者が集まる聖杯戦争にて、彼は召喚された。
本来は『月に仇なす存在』としてムーンセルに危険視され、英雄王同じくムーンセルの裏に封印されていたが、インデックスの願いを聞き届け再臨。
太陽少年は、再び夜の世界───月の光の下で再び戦うこととなる。


411 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:30:12 41VRFM.k0
【マスター】
インデックス@とある魔術の禁書目録

【マスターとしての願い】
行方不明の上条当麻を探す。
そのための帰還。

【weapon】
なし

【能力・技能】
「10万3000冊の魔導書」
彼女の脳内に記憶されている膨大な魔術知識。
常人なら一目見ただけで発狂するレベルのものを余すことなく記憶し、その膨大な知識が彼女の武器である。
相手の魔術詠唱に割り込み魔術の誤作動を起こさせる「強制詠唱(スペルインターセフト)」などを使用できる。
しかし魔力は自動書記に全て回しているため、ジャンゴに送る魔力はごく僅かで魔術は一切使えない。

【人物背景】
「必要悪の教会(ネセサリウス)」に所属するシスターにして魔術師の少女。
10万3000冊の魔道書を記憶する「禁書目録」という過酷な役割を担っている。
魔法名は「Dedicatus545(献身的な子羊は強者の知識を守る)」。
本名、年齢等のパーソナルデータは一切不明であり、作中では未だそのことについて言及されていない。
外見年齢の割に幼い性格で、わがままな言動が目立つ。しかし根幹の部分では誰かが傷付くのを嫌い、人を守るためなら自分の身を顧みず、「禁書目録」という凄絶な宿命を笑って受け入れる芯の強さと優しさ、献身の心を持っている。
姫神曰く「誰かに助けてもらうべき特別な才能も知識も兼ね備え、側にいるだけで他人を幸せに出来る心の持ち主」で、ステイルも「(インデックスの)傍若無人に見える振る舞いは全て誰かの為」であると語っている。普段はシスターらしからぬ能天気な振る舞いが多いが、時折篤い信仰を見せる。
今回は上条当麻が決戦の果てに行方不明になった新約前より参戦。

【方針】
帰還の為の方法探し。
襲われたら応戦。


412 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/25(木) 22:31:17 41VRFM.k0
投下終了です
インデックス&アーチャーでした、タイトル入れ忘れました
すみません


413 : ◆OSPfO9RMfA :2014/12/25(木) 23:31:07 8OohGRms0
投下します。


414 : ロット王&セイバー ◆OSPfO9RMfA :2014/12/25(木) 23:31:52 8OohGRms0

 紅き月に照らされ、セイバー、アルトリア・ペンドラゴンは聖杯からの召喚に応じた。


 ――問おう。あなたがわたしのマスターか。


「如何にも」

 巨大な剣を携えし、赤い鎧に身を纏った男が応えた。

「我が名はロット王。11人の支配者が一人」
「ロット王……!?」

 アルトリアは驚愕する。ロット王と言えば、アルトリアの実姉モルゴースの夫。つまり、義理の兄にあたる。
 だが、目の前の男は義兄とは似ても似つかない顔だった。
 しかし、その威風堂々たる名乗りからは嘘を感じられない。

「我が名に聞き覚えがあるか、セイバー。だが、その前に汝も名乗られよ」
「承知した。我が名はアルトリア・ペンドラゴン。ブリテンのアーサー王でもあった」
「ブリテンのアーサー王だと?」

 今度はロット王が驚愕する。アルトリアの顔をマジマジと見つめ、思案する。

「貴公の伝説、その子細を聞かせてもらおう」
「心得た」

 アルトリアは語る。自らの行いを。ブリテンの末路を。

「なるほど。我の知るブリテンとは違うブリテンと言うだな」

 ロット王は一つの答えを得る。

「この戦、紅き月に導かれ、あらゆる場所、あらゆる時代を超え、願いを叶えるべく猛者が集まるとのこと。我と貴公の世界が違うのも、当然と言ったことか」
「では、義兄……いえ、マスターの世界にもブリテンが?」
「そうだ。日々『外敵』からの脅威と内乱による混乱により、束の間の平和も掴めぬ国だ。一刻も早く治世し、民に平和を与えねばならない」


415 : ロット王&セイバー ◆OSPfO9RMfA :2014/12/25(木) 23:32:26 8OohGRms0

 国を憂うロット王の言の葉は、アルトリアの心に響く。

「我はエクスカリバーを抜いた者を王とする国の在り方に異議を唱える。我は――」
「わたしも」

 アルトリアはたまらず、ロット王の言葉を遮る。

「わたしも、エクスカリバーを王の選定に使うやり方は、間違っていると思います」
「――そうか」

 ロット王は右手をアルトリアに差し出す。

「奇しくも、異なる世界のアーサー王と願いが一致するとはな」
「必ず、聖杯を手に入れましょう」

 アルトリアは両手でその右手を取り、強く握手を交わした。

「ところで、マスターの世界のアーサーは、どのような王だったのですか?」
「百万人いた」
「え?」

 アルトリアは思わず素っ頓狂な声で返す。

「我がブリテンには百万本のエクスカリバーと、百万人のアーサーがいた」


416 : ロット王&セイバー ◆OSPfO9RMfA :2014/12/25(木) 23:33:00 8OohGRms0
【CLASS】
 セイバー

【真名】
 アルトリア・ペンドラゴン@Fate/stay night

【パラメーター】
 筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具A++

【属性】
 秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A
 魔術への耐性。ランクAでは魔法陣及び瞬間契約を用いた大魔術すら完全に無効化してしまい、事実上現代の魔術で傷付ける事は不可能なレベル。

騎乗:B
 乗り物を乗りこなせる能力。魔獣・聖獣ランク以外なら乗りこなす事ができる。

【保有スキル】
直感:A
 戦闘中の「自分にとっての最適の行動」を瞬時に悟る能力。ランクAにもなると、ほぼ未来予知の領域に達する。視覚・聴覚への妨害もある程度無視できる。

魔力放出:A
 魔力を自身の武器や肉体に帯びさせる事で強化する。ランクAではただの棒切れでも絶大な威力を有する武器となる。

カリスマ:B
 軍を率いる才能。元々ブリテンの王であるため、率いる軍勢の士気は極めて高いものになる。ランクBは一国を納めるのに十分な程度。

【宝具】
『風王結界(インビジブル・エア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1個
 彼女の剣を覆う、風で出来た第二の鞘。厳密には宝具というより魔術に該当する。
 幾重にも重なる空気の層が屈折率を変えることで覆った物を透明化させ、不可視の剣へと変える。敵は間合いを把握できないため、白兵戦では非常に有効。

『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 神造兵器でもあり、あまりに有名なその剣は、通常時は『風王結界(インビジブル・エア)』によって隠されている。
 真名を解放することで所有者の魔力を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による“究極の斬撃”として放つ。

『全て遠き理想郷(アヴァロン)』
ランク:EX 種別:結界宝具 防御対象:1人
 「不老不死」の効果を有し、持ち主の老化を抑え、呪いを跳ね除け、傷を癒す。真名解放を行なうと、数百のパーツに分解して使用者の周囲に展開され、この世界では無い「妖精郷」に使用者の身を置かせることであらゆる攻撃・交信をシャットアウトして対象者を守る。


417 : ロット王&セイバー ◆OSPfO9RMfA :2014/12/25(木) 23:33:18 8OohGRms0

【weapon】
 『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』

【人物背景】
 ブリテンの伝説的君主・アーサー王その人である。選定の剣を引き抜き、不老の王となった。
 王となった彼女は騎士達が望むような「完璧な王」として振る舞うが、勝利のために村一つを滅ぼすなど、彼女の合理主義的な決断は理想論的な騎士道精神を掲げる騎士達と相容れることはなくやがて円卓の中で孤立していくこととなる。
 律儀で丁寧、そして負けず嫌い。悪く言えば頑固なのかもしれない。かわいらしいもの(例えばぬいぐるみ)を好むという少女らしい一面も。

【サーヴァントとしての願い】
 王の選定をやり直す。



【マスター】
 ロット王@実在性ミリオンアーサー

【マスターとしての願い】
 ブリテンの王となり、ブリテンに平和をもたらす。

【Weapon】
 人の丈ほどもある大剣

【能力・技能】
 魔法無しで『外敵』と渡り合える剣技

【人物背景】
 『エクスカリバーを抜いた者が王となる権利を得る』と言ったマーリンの政策に異議を唱える『11人の支配者』の一人で、実質的なリーダー。
 ブリテンを憂う気持ちは強く、ブリテンに仇なす者は例え味方であっても斬る、実直な男。
 後に、アーサーに『王のUTSUWA』を見せつけられ軍門に下るが、参戦時期はそれよりも前である(具体的には2話)。


418 : ◆OSPfO9RMfA :2014/12/25(木) 23:33:49 8OohGRms0
投下終了です。


419 : ◆HQRzDweJVY :2014/12/26(金) 01:48:18 TaYUhnIw0
投下します。


420 : ???  ◆HQRzDweJVY :2014/12/26(金) 01:48:50 TaYUhnIw0

――俺たちが最強の力手に入れたとして
      その後にこの目にはどんな世界映るのか?


  *   *   *

――ヒトフタマルマル、■■■■■ノ召喚ヲ感知セリ。

――ヒトフタマルニイ、■■■■■ノ脱落ヲ感知セリ。

――該当サーヴァントノクラス名不明。

――所持技能不明。

――宝具名及ビ効果不明。

――マスター不明。

――聖杯ヘノ影響ハ軽微、重要度ハ低ト判定。

――『伍百十弐號案件』トシテ記録後、残■■騎ニヨリ聖杯戦争ヲ続行ス。

(第玖百玖十玖號聖杯・第七起動記録より抜粋)


  *   *   *


421 : ???  ◆HQRzDweJVY :2014/12/26(金) 01:51:09 TaYUhnIw0
人々が行き交う大通りに面する雑多な建物郡。
少ないスペースに押し合いへし合い、様々な雑居ビルが乱立している。
だがいくら密接しているといっても、それらが同一の建物でない限り、その間に必ずスペースは存在する。

ビルとビルの間。都会の喧騒も届かない、薄汚れた路地裏。
陽の光も滅多に入り込まないそんな場所でも逞しく生きている者達がいる。
昆虫、小動物、そして多種多様な雑草が独自の生態系を築いている。

――だが今やその生態系は完膚なきまでに破壊されていた。

その原因となっているのは"ある植物"だった。
一見するとそれはツタ属の植物によく似ている。
だがその植物には一つだけ、あからさまに奇妙な点があった。
蔦が伸びている先に、まるでファスナーのような割れ目(クラック)が開いているのだ。

そしてその異常な路地裏に来客があった。
生存競争に敗れたのだろう。やせ細った小さな野良猫が弱々しい足取りで路地裏に逃げ込んできた。
全身に傷を負い、数時間もすれば誰に知られることもなく命を落とすだろうか弱い生命。

だがその眼がカッと開かれる。
その瞳が見つめるのは毒々しい色の果実。
飢えた野良猫は吸い寄せられるように近づき、その果実を口にした。
そしてそのまま何かに取り憑かれたように果実を貪り食らう。

するとどうか。
ひざ下にも届かなかったはずの野良猫の体躯が二倍に、三倍に、数十倍に膨れ上がっていく。
否、体躯だけではない。
その顔は眼窩の落ち窪んだ髑髏を思わせる顔に。
その毛並みは新緑を思わせる緑色の皮膚に。
地球上のどの動物とも似ていない異形そのものの姿へ変化していく。

それは成長などという生易しいものではない。
身体の中からまったく別のものへと変質していく――言わば、"変身"だった。

「シャギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」

誰もいない路地裏で怪物が身を震わせながら、誕生の産声を上げた。
その怪物は、ある次元ではこう呼ばれていた。
――侵略(インベス)、と。


422 : ???  ◆HQRzDweJVY :2014/12/26(金) 01:51:34 TaYUhnIw0
  *  *  *



聖杯戦争開始直後、聖杯はあるサーヴァントの脱落を記録した。
いや、正確には"観測できなくなった"のだ。
聖杯が"観測できない"から"脱落した"と判断した――それは通常ならば正しい認識だ。
だが物事には常に例外がつきまとう。
例えば――観測したサーヴァントが『あまりにも巨大すぎて観測できなくなった』のだとしたら。
籠の中から出たことのない小鳥が広大な空を知らぬように、あまりにも巨大すぎるその概念を認識できないのだとしたら。

それは聖杯さえも感知できない巨大すぎる異分子(イレギュラー)。
その異分子の名は"ヘルヘイムの森"。
幾多の文明を滅ぼし、数多の文明を高次に無理やり押し上げた強制進化の宇宙意思そのもの。

だがどんな形であれ『サーヴァント』という枠に収められた以上、その力には大きな制限がかかっている。
大量い割れ目(クラック)を開くことも、割れ目(クラック)を通じて次元を超えることも不可能。
それどころか路地裏の割れ目(クラック)は瞬時に閉じ、蔦状の植物はすぐに枯れ落ちる。
一介のサーヴァントである『ヘルヘイムの森』に許されたのは実を付け、怪物(インベス)を作り続けることのみ。

だがその行為は緩やかに、だが確実に聖杯戦争を侵略していく。
故にそのクラス名は――侵略者(インベーダー)。
どんな形であれ、世界を侵食し、染め上げることしか知らぬ異端のサーヴァント。


423 : インベーダー  ◆HQRzDweJVY :2014/12/26(金) 01:52:09 TaYUhnIw0
【クラス】
インベーダー

【真名】
ヘルヘイムの森@仮面ライダー鎧武

【パラメーター】
筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具EX

【属性】
中庸・中立

【クラススキル】
・侵食:E
 他者を、周囲の世界を己自身で塗りつぶすスキル。
 本来ならば複数個の世界を侵食してきたインベーダーのスキルはEXランク相当であるが、本聖杯戦争で発生したスキル「外部接続」によって最低ランクまで劣化している。Eランクともなれば、ほとんど成長性を持たない。

・単独行動:EX
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 EXランクのインベーダーはマスターを持たずとも活動できる。

【保有スキル】
・認識阻害:EX
 このスキルを保有する限り、聖杯そのものに存在を認識されない。
 過去、多数の世界を侵食してきたヘルヘイムの森はあまりにも巨大な概念であり、第玖百玖十玖號聖杯からの観測は不可能である
 本スキルの発動までに数秒がかかったため、聖杯は『脱落済みのサーヴァント』として認識している。
 このスキルがある限り、インベーダーは決して"勝者"として認識されない。
 最後の2騎となった場合、聖杯はインベーダーではない方を『最後の一騎』と認識する。

・外部接続:E
 本聖杯戦争においてのみ発生した特殊スキル。
 聖杯の内部と外部を繋ぐ事ができる特殊な能力・技能の持ち主であることを指し示す。
 Eランクは"辛うじて外部と接触している"程度の微弱な繋がり。
 極めて脆弱な繋がりのため、『クラックを通じてヘルヘイムの森に行く』ことは不可能であり、
 更には聖杯が認識すれば(または魔人アーチャーがそう望めば)その時点で、一切の聖杯内部への干渉は不可能となる。

【宝具】
・侵食異界"歩み促す深緑の森(ヘルヘイム)"
 ランク:-(本来はEXランクに相当) 種別:対文明宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞
 時空・距離・次元の壁を乗り越え、侵食する森そのもの。
 干渉先の文明を森で包み込み、"ヘルヘイムの森"という概念のうちに取り込んでしまう。
 ただしスキル「外部接続」によってこの宝具は使用不可となっている。

・呪われし禁断の果実(プレ・ロックシード)
 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 ヘルヘイムの森に自生する極彩色の不気味な果実。
 この果実を口にした生命体を『インベス』と呼ばれるモンスターへと変質させる。
 生命体を惹きつける性質があるらしく、劇中でも数名の人間が魅入られたようにその身を。
 戦極ドライバーを装着してもぎ取れば錠前型の宝具・挑むべき禁断の果実(ロックシード)となる。

・誘惑する運び手の蛇(サガラ)
 ランク:-(本来はBランクに相当) 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
 ヘルヘイムの森が持つインターフェース的存在。
 接触先の文明に溶け込み、時に助言し、時にそそのかし、事態の変革を図る。
 ただしスキル「外部接続」によってこの宝具は使用不可となっている。


【背景】
仮面ライダー鎧武に登場する現象および異世界の名称。
幾多の世界を侵食してきた植物のような存在であり、文明を強制的に進化、もしくは滅亡させてきた。
英霊というよりただの現象であり、カテゴリ的には神霊に近い。
本来ならば召喚されるはずのない存在だが、正式ではない聖杯のためか特殊な形で召喚された。
何から何まで極めてイレギュラーに近い存在。



【マスター】
本サーヴァントにマスターは存在しない。


424 : ◆HQRzDweJVY :2014/12/26(金) 01:53:20 TaYUhnIw0
投下終了です。


425 : ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:40:28 0reRZpOo0
投下させて頂きます。


426 : 白瀬芙喜子&アーチャー ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:41:03 0reRZpOo0
占い師を見つけたので、ふと立ち寄ってみたのである。

「まったく。これから死ぬ相手を占ったところでどうしようもないぞ」
「気にしない、気にしない。あ、お代はタダにしといてね」
「……だから、私の方が嫌なんだ」
「アハハ、別にいいじゃん。あなたは過去を綺麗に精算しちゃったみたいだけどさ、あたし達の方は色々残ってるし。
 ま、簡単には片付かないだろうけど、頑張ってる人は否定しないわ。
 だからさあ、ちょっとくらい押し付けちゃおうかなあって。ほら、実力あるのにかやの外だった人がここにいるじゃない?」
「あの中に混ざって戦えるほど、若くはない」
「それに理由もない、でしょ? で、結果の方はどうよ」
「それがわかっているのなら……む」
「お、不吉なの出た? 死神? 悪魔? 塔? 吊された男? 審判はやだなあ。
 まず描かれてるのが天使なのが嫌だし、復活だとか発展だとかぜーんぜん似合わない!」
「……月、だな」
「……んー、ごめん。特にコメントないわ」
「まあ、私の占いなぞそんなものだ」
「そんなものよね。じゃ、さよなら」

背中を向ける。
自己満足だけを残して、ちょっとしたハプニングに期待しながらその場を去った。


427 : 白瀬芙喜子&アーチャー ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:41:34 0reRZpOo0
   ◆   ◆   ◆


そうして最後の一日は、あっさりと、何事も無いままに終わりを迎えた。

「――は、あ」

吐く息は白い。
なんだか体もガタガタ震えている気がするけれど、感覚がとっくになくなっているから自分の正確なコンディションは判断不能。
……とりあえず、今日が私の最後の一日である事ははっきりしている。

「――うん。こういうのって、私らしい」

朝から続く雨は、夜になって勢いを増している。
おまけに今夜は新月で、辺りはなんだかまっくらやみ。
夜のビル街で暗闇、というのもちょっと変な気もするけれど、まあ、悪くはないしむしろ良さげ。
ほら、こういうのって何よりも雰囲気が大事だし。
大体、こうして自分で終わり方を選べるなんて、これまでの事を思えばそれだけで上等すぎる。

もう何も憎くはないし、何もこわくはない。
ただ、今日という日まで全力で生きてきた事を誇らしく思う。

……けど。
全く未練がないかと言えば、そうでもなかったりもする。

「ちぇ。……ほんのちょっとだけど、期待してたのになあ」

最後の最後。
都合良く再会を果たした誰かさんに看取って貰えないかなあ、なんて。
そんな、ロマン溢れる想像をしていた私もいるのだった。

「――アハ」

それもおしまい。
笑みと一緒にだいじな何かもこぼれてしまって、強かに腰を地面に打ち付けた。
立ち上がるのもめんどくさい、というか物理的に不可能なので、そのまま仰向けになってみたりする。

空には有るはずのない紅い月。
それを見ている私の視力も既に喪失済。

「うん――なかなかいいんじゃない?」

いや、本当に。
こういう終わりも悪くない、と思ったのだ。
ハッピーエンドは望んでないし、バッドエンドはもってのほか。
ちょっとした未練を残す、ビターエンドが私にはちょうどいい。

今日の天気は雨。
私の過ごした、最後の一日は、こうして――。


428 : 白瀬芙喜子&アーチャー ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:42:30 0reRZpOo0

     *    *    *

一台の黄色くて小さくてボロボロで、走っているのが奇蹟のような車がありました。
その車は、東京という名前の国の、街の中を走っていました。
乗っていたのは二人の女性です。

運転席でハンドルを握っているのは長い黒髪が艶やかな妙齢の女性で、右腿には大口径のリヴォルバーを吊っていました。
この女性は実はサーヴァントで、人間ではありませんでした。
助手席でハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)を握っているのは、短い銀髪が艶やかな妙齢の女性でした。
この女性は実はアンドロイドで、人間ではありませんでした。
ただ、この国ではそう珍しくもないし、普通の人なら見た目ではほとんど判断できないので特に気にされていないし、本人達も気にしていません。

「あのさ」
助手席の銀髪の女性が、銃の点検をしながら、自分のサーヴァント、アーチャーへと話しかけました。
「――蛇足だって思わない?」
それだけ聞くと意味不明でしたが、アーチャーは無表情で、
「その話は、もう三回目ですが」
あっさりとそう答え、マスターの方はちょっと不機嫌そうな顔を作りました。

「あたしにとってはそれくらい重要なことなの!
 あたしの状況ってさ、もうどうしようもないものだったのに。それがこんな都合のいい助かり方って、もう侮辱よこれ。あー屈辱!」
「生きているのなら、生きていられたということでしょう」
「ん。いや、それ以前の問題。この状況自体は、まあ、受け入れられるわよ?
 たださあ、せっかくのいい感じなシチュエーションを邪魔されたのが気に食わないっつーか」
「そうですか」
「しっかし、聖杯戦争に、サーヴァントねえ……ま、ここってヴァーチャルな空間らしいし、そういうのもアリっちゃアリなのかな。
 なんだってあたしがここにいるのかは知らないけど。ったく、もしも黒幕がいるんなら〔ピー〕で〔ピー〕で×××××な目に合わせてやるわ」

マスターはわりと滅茶苦茶な事を言っていましたが、アーチャーは相変わらずクールです。
愚痴をひとしきり聞いてから、マスターに一言。
「それで、この辺りの地理はもう頭に入りましたか」
「オッケオッケ。次行きましょっか」
ものすごく軽い調子ですが、顔は真面目でした。

ぶすん。

べべべべべと、排気音を響かせる車の中では、マスターとアーチャーがいろいろな話をしていました。

隠れられそうな場所や狙撃地点について、とか、
こちらから仕掛ける時はどんな場所がいいか、とか、
自分たちの『説得力』はどのくらいか、とか、
狭い道がけっこう多いのでモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)も用意すべきかもしれない、とか、
それよりも爆弾や地雷はどうか、とか、
二人はとても物騒な話を、ドライブ中の世間話のように気楽に交わします。


429 : 白瀬芙喜子&アーチャー ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:43:46 0reRZpOo0
「んー、サイボーグとも超能力者ともやりあったけど、英雄……ヒーローかあ。あなたも変身したりするの?」
「しません。私は」
「アハハ、ごめんごめん。でもさ、あなたもサーヴァントって事は、それなりに人助けとか人殺しとかやってきたんでしょ?」
「そうですね。それをどう受け取るかも、どのように呼ぶのかも人の自由です。
 ただ、私は神様ではないし、そうなろうと思いません」
「同感。聖杯ってのも、本当かどうか怪しいものよねえ。途中で降りるのも出来そうにないし、貰えるもんなら貰っとくけど。
 ……神様ね。悪魔なんかもいそうな雰囲気よね、ここ」
「まあ、撃てば死ぬのなら問題ないでしょう」
「あら気軽。ま、こっちも病み上がりだし、頼もしいと思っとくわ。私はそういうの、対処方法ないしなあ。あいつらはユーレイとも戦ったらしいけ」

ど、と言い終わる前に、アーチャーがいきなりアクセルを踏み込んで、小さな車が大きく揺れました。
マスターが思わずうひゃあと叫びます。

「何よ、敵襲!?」
「何か言いましたか?」
「いや、だからあ」
「何か言いましたか?」

アーチャーは凛とした顔で、キッとした目付きになっていました。
それを見たマスターは、何かを察して無言になりました。
「そのようなことはありません」
無言のマスターに対してアーチャーが言い放ちました。
「……うん、まあ、こういう話はやめときましょっか。撃てば死ぬんなら問題ないんだし」
マスターは内心では、そもそもサーヴァントだって幽霊みたいなものっぽいのにどうなのよこれはと突っ込みを入れていました。


「はあ。それにしても、戦争、って感じでもないわよね、ここ。
 強いて言うなら……狩り、かなあ。ハンティング。ま、そういうのは慣れてるし、昔とったなんとやらで、やるだけやってみますか」
「それは追う側と追われる側、どちらですか?」
「両方!」
「奇遇ですね。私もです」


430 : 白瀬芙喜子&アーチャー ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:44:40 0reRZpOo0
【クラス】
アーチャー

【真名】
師匠@キノの旅

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷C+ 魔力E 幸運A 宝具D

【属性】
中立・中康

【クラススキル】
対魔力:D
一工程による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならばマスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
旅人:A
世界を旅する者。
法も警察も存在せず、野生動物や天候、そして生きている人間が脅威となる世界で、旅を続けられる者。
『心眼』『仕切り直し』など、自身の生存や危険の回避に関するスキルについてCクラス以上の習熟度を発揮できる。

破壊工作:E
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。
奇襲・不意打ちの延長としてのトラップの作成に長ける。
集団戦の場合は相手を混乱させ、一時的に行動不能にする程度に留まる。

透化:C−
精神面への干渉を無効化する精神防御。
余程特殊な事態が発生しない限り、自己を保ち続けられる。

【宝具】
『旅の話(the Beautiful World)』
ランク:D 種別:対国宝具 レンジ:- 最大捕捉:2人

文化も技術も社会体制も異なる様々な『国』が存在する世界の旅人であるアーチャーの逸話が具現化した宝具。
アーチャーとその同行者は、『国』によって課せられるルールを完全に無視して行動する事が可能となる。
ただし、アーチャーの行動が国に認められるようになる訳ではない。
街中で戦闘行為を行えば当然住人の目を惹くことになるし、場合によっては警察や番兵に追われる。

また、国の中でアーチャーが調達した物資は僅かながら神秘を帯び、戦闘や生活に活用できる。
これにより、状況に合わせた装備の作成や罠の設置が可能となる。
それが近代兵器であっても問題なく適用されるが、それを扱えるかどうかはアーチャー自身の腕前に依存する。

今回の聖杯戦争では、舞台である東京が『国』として扱われている。

……隠された効果として、アーチャーは永続的に『国』の中に留まる事はできない。
どのような結末であっても例外はない。
脱落した場合は勿論のこと、たとえ勝者となったとしても、必ず国外へと出る事になる。

【weapon】
四四口径リヴォルバー『カノン』。
薬莢を用いず、シリンダーに直接火薬と雷管、弾頭を装填する。
口径が大きく破壊力がある弾丸を用いるため、手足を撃っても傷は大きなものになる。
扱いが簡単とは言えないが、パースエイダーの有段者であるアーチャーは悠々と使いこなす。

【人物背景】
旅人。本名不明。欲望に忠実で幽霊が苦手な凄腕のガンマン。
相棒の背の低いハンサムな男と共に、金目の物のために仕事を受けたりトラブルに首を突っ込んだりして感謝されたり恨まれたりを繰り返している。

『歴史のある国』では単独で国の警察を手玉に取った上に相棒と共に三日三晩の間戦い続け、
『殺す国』では国の防衛のために300人の軍隊の指揮を行い、的確な陣地を築くなど、高い戦闘能力と技術を持つ。
一部の国では数十年もの間そのエピソードが語られる英雄とされているが、時には商人に強盗を働いたり、仕事のために平然と大量殺人を犯したりする。
常に冷静に、自分の命を最優先し、人情に流される事はほとんどない。が、『アジン(略)の国』では報酬もなしに国と一人の男を救うなど、直接的に自身のメリットにならないような行動も行っている。

いつかは旅を終えて静かに暮らし、一人の少女の師匠となる――のだが、その『旅の終わり』がどのようなものであるのかは未確定な事項である。
それに加えて聖杯のバグのため、サーヴァントとして召喚された彼女は自身の生涯の記憶を完全には保持しておらず、旅人であった頃の彼女に近い(そのもの、ではない)。
なお、老年期の状態で召喚された場合でも、その戦闘能力と技術は殆ど変わりない。


431 : 白瀬芙喜子&アーチャー ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:46:02 0reRZpOo0
【マスター】
白瀬芙喜子@パワプロクンポケット14

【マスターとしての願い】
特に無いが、文句は言いたい。

【weapon】
装甲型のサイボーグも撃ち抜ける拳銃。

【能力・技能】
アンドロイドとしての高い身体能力と情報処理能力。
任意で起爆が可能な地雷の操作。ただし、聖杯戦争に持ち込めているかどうかは不明。

【人物背景】
世界を支配する勢力の一角である大企業・オオガミグループによって開発された第三世代アンドロイド。潜入型。
現実主義者でありながら極度のロマンチストでもあり、自由を愛する性格。夢は『好きな相手に看取られながら死ぬ』こと。
敵対した相手に容赦はしないが、非情になりきれない面もある。

組織を抜けた後も戦いを続けるが、元々短い寿命は限界に達しており、『パワプロクンポケット14』の時点では実力はかなり衰えている。
原作本編では最期まで自分の生き方を貫き、その最期を悟った日にも笑顔でいる姿が描写されている。

が、ここではその最期の日に聖杯戦争に参加させられる事になったので割と激おこ。
ムーンセル内で身体能力がどうなっているのかは不明だが、少なくとも寿命を迎える寸前そのままではない。

【方針】
無抵抗で死ぬ気はない。優勝した場合も、生き続けるつもりはない。


432 : ◆7bpU51BZBs :2014/12/26(金) 02:46:39 0reRZpOo0
投下を終了します。


433 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:21:11 AiWcDRi.0
投下します


434 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:21:21 AiWcDRi.0



我々は多くのことを知っているようで、案外無知なものである。
フィクションの中の産物とせせら笑ってきた魔術なんていうものは実在しているし、
世界でも有数の石油王であるサタン氏なんぞは、実のところは悪魔サタンの血を引く黒魔術の大家だったりもする。

そして、これも知らないことだろうが、
サタン氏の片腕としてニュースで紹介されたルイ・サイファー、彼なんぞは本物の悪魔だったりする。

そして、ルイ・サイファーが来日する目的がたった一人の少年に会うためだなんて、世界中の誰もが知らないことだろう。


435 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:21:36 AiWcDRi.0


ここは人跡まばらな奥軽井沢、それを更に奥へ奥へと進むと、言い知れぬ妖気を漂わせた山々がある。
そこは、まだ日本が邪馬台国と呼ばれていた頃、長い間魔法使いの大集団が悪魔を引っ張りだそうと色々研究したところであると伝えられている。
その中に一際高い小山があるが、それは山ではなく、古代のビルディングであり、長い年月の内に、こんな形になったのだ。
そこに、一人の来客が訪れようとしていた。

「おかしいなァ、だれか表の戸を叩く者がいるみたいだ!」
人も訪れないような山奥である、来客などあるような場所ではない。当然、インターホンなどはついていない。
そこに暮らす蛙男は訝しんだ、一体何者であろうか、と。

「だれだ!?」
「ルイ・サイファーという者だ」
「知らん!」
ルイ・サイファーという男が、かの有名なファウスト博士のように有名ならば、あるいは蛙男も聞く耳を持ったのだろう。
だが、ルイ・サイファーという名なぞ、古代からの魔術的知識に通じる蛙男ですら聞いたことはない。
あるいは、彼の主にとって福音をもたらす者であるかもしれないが、
窓から覗いてみれば、山奥であるというのに汚れ一つないスーツを着こなした男である。あまりにも、怪しすぎる。

「東方の神童に会いに来たのだが」
「ああ、悪魔くんのことですか」
悪魔くん――それこそ、彼が仕える主の名前である。
三歳にして父の心胆を寒からしめた恐るべき異形の頭脳の持ち主、今まで存在した天才の全てを否定しかねない恐るべき大天才、
十歳にもならぬ身でありながら、全人類が幸福に暮らすことの出来る千年王国の建国を目論む恐るべき少年――いや、人間より生まれながらまさしく悪魔なのである。

「あいにく東京に行っていないんです!」
「では、中に入れて待たせてくれないか」

返答は言葉ではなく、石によって行われた。
あからさまに怪しすぎる男である、蛙男はルイ・サイファーの頭上に石を投げて殺してしまった。

「痛いなあ」
「キャーッ!」

ところがどうだろう、頭を石で潰されたルイ・サイファー、平然とした顔で立っているではないか。
投げつけたはずの人の頭より大きい石は地面に転がっているし、ルイ・サイファーは血の一滴も流していない。
これには蛙男が悲鳴を上げるのも無理は無い。

「この世界の日本の作法に詳しいわけではないからね、今のは盛大な歓迎と解釈させてもらおう」
「ヌヌヌ……」
「それで、入れてくれる気は……無いのだね、それなら悪魔くんが帰ってくるまで、外で待たせてもらうが」
石を投げても死なぬ相手である、魔術師に違いない。
となると対抗できるのは、悪魔くんだけである。
今は紳士的に振舞っているが、もし目の前の男が牙を剥けば、
何の抵抗もできずに、ようやく手に入れた悪魔召喚の鍵、創造の書を奪われることになるやもしれない。

「では外で待っていてくれ」
「そうか、私は寒空の下冷たい岩に座って人を待つのが大好きなんだ」
「外で待っていてくれ」
「ちぇっ」

かくしてルイ・サイファーが待つことしばらく――ようやく、悪魔くんが戻ってきたのである。


436 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:21:50 AiWcDRi.0



「君が悪魔くんだね、私はルイ・サイファー、ルイと呼んでくれたまえ」
「はぁ、で、何の用件かな」
「結論から言うと、私は悪魔だ。そして、是非……君の手伝いがしたいと思って馳せ参じたんだ」
悪魔くんという少年はいかにも平々凡々とした格好である、誰が彼を見て悪魔と呼ぶだろう、
だが、妖しくぎらついているその目を見るが良い、どうにも少年ならざる恐ろしさを感じるではないか。

その悪魔くん、千年王国の建国のためには悪魔の力が必要であると考え、幾度も悪魔召喚の儀式を行っているが、一度も成功してはいない。
全人類の中で最も優秀であろうその頭脳でさえも失敗する悪魔召喚の何たる恐ろしいことか。
だが、何十冊もの魔導書を積み上げ、幾度もの経験を重ねた末に、とうとう、悪魔召喚の鍵と成り得る創造の書を手に入れたのだ。
ならば、今直ぐに創造の書の古代文字を解読させ、その儀式を行いたい、
しかし、悪魔くんの知る中でそれを読むことのできる唯一の男、ヤモリビトは未だその行方を晦ましている。
ならば、文字通り悪魔の手も借りたくなるのも人情ではないだろうか、もちろんルイ・サイファーが本物の悪魔であるのならば、の話であるが。

「魔法陣は完璧です、呪文も完璧、それでも何か足りないものがあると?」
「だから、私が来たんだ……どうだね、別に魂や金を頂こうというわけではない、
私は石油王サタンと契約をしていてね……つまり、千年王国を作る手伝いをするように言われてきたんだ」
「ほう……」

悪魔は召喚者の尻の毛まで毟り取るほどに際限なく報酬を要求し、契約を曲解し、自分の利益しか考えない生物である、
しかし、いざ契約をしたとなれば契約者に逆らうことは出来ない。
つまり、油断さえしなければルイ・サイファーはこちらの手伝いをしてくれるのだろう。
もちろん、悪魔は心の隙に付け込み、隙が無ければ作り出す生物である、悪魔の前で油断しない人間などどれほどいるかはわからないが。

「なるほど、なるほど、君の言った通り、魔法陣は完璧だ」
悪魔くんが示した悪魔召喚用の魔法陣、なるほど、悪魔から見ても完璧なものである。
だが、足りぬものがある。そして、それこそがかのファウスト博士が知り、創造の書に記された秘密なのだ。

「君たちは魔法陣の周りに集まって、エロイムエッサイムを唱えるが良い……後は私でやっておこう」
エロイムエッサイムとは悪魔召喚のための呪文である。
魔法陣の周囲を回る際、1センチに一声ずつ、唱えなければならない。

「さぁ……!始めようじゃないか!」

「エロイムエッサイムエロイムエッサイム」
「我は求め訴えたり!」
「エロイムエッサイムエロイムエッサイム」
「我は求め訴えたり!」
「エロイムエッサイムエロイムエッサイム」
「我は求め訴えたり!」

それは人間界において信じられぬほどに、尋常ならざる光景である。
あどけない少年が、擬人化した蛙の様な男が、忌まわしき魔法陣を囲み、召喚の呪文を唱えているのである。
それも、先導するのは悪魔である――まるで中世サバトの光景ではないか!

そして聞くが良い!ルイ・サイファーなる悪魔が唱える恐ろしき呪文を!

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には傲慢なる聖四文字の神。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

.みたせ みたせ みたせ みたせ みたせ
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」

「―――――Anfang」
「――――――告げる」
「――――告げる。
彼の身は月が下に、彼が命運は月の光に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

「誓いを此処に。
彼は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。

「我が名、明けの明星の名の下に!
彼の名、救世主の名の下に!
来たれ、紅き満月よ!」


おお!魔法陣の中心で蠢く大地を見たか!
湧き上がるものを見たか!
それは月である!紅き満月である!

彼らが召喚したのは紅い満月――その事実を認識した瞬間、悪魔くんの姿が消えた。


437 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:22:01 AiWcDRi.0



「サタン君、悪魔くんが目障りであるなら私が消してあげよう」

「佐藤君、私ならヤモリビトになろうとしている君を元の姿に戻してやれる」

「悪いようにはしない、私と契約するが良い」


438 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:22:15 AiWcDRi.0


日本三大電機メーカーの一つ――太平洋電機、その社長室に悪魔くんはいた。
もちろん、悪魔くんのいた現実世界ではなく、再現された東京においての、である。

「――郎!一郎!聞いているのか!?」
「はいはい、聞いていますよ」

誰が想像するだろうか、太平洋電機社長の第一子その人こそ、松下一郎こと悪魔くんであると。

「東京第一小学校に入学して、平凡で善良で人畜無害な人間になれってんでしょ……困るなあ」
「お前の行いで困っているのはこっちの方なんだ……」
「まぁ、いいでしょう……こっちも東京にいなければなりませんからね」
「おぉ、そうか……良かった良かった、実はなお前の新しい家も決めてあるんだ、
とにかく善良でまともな人間になってほしいと思ってな……そう、一郎も知っているだろう……メシア教の教会にお前を預ける」
「メシア教……!」
「どうだ、いい考えだろう」
「ええ……とても、いい考えだと思います」

「とても……」

メシア教の教会に移った悪魔くんが司祭の目を盗んで行う儀式の正体は一体なんだというのだ!
悪魔召喚ではない――しかし、英霊の召喚でもないのだ!

「エロイムエッサイム エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」
「エロイムエッサイム エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」

「我が声に応え、目覚めよ!」

聖なる祭壇で眠る邪悪な龍の姿を見ることは――この教会内では悪魔くんと彼の英霊以外には叶わない。
悪魔くんは龍を目覚めさせようとしていた。
だが、悪魔くんの声にも応えず、未だ龍は眠りについている。

「起きないか」
「ええ、今のところは……」

悪魔くんの側に立つ聖職者然とした男、彼こそ悪魔くんが呼び寄せた英霊であり、クラスはライダーである。
では、眠る龍こそ、彼が乗りこなさんとする宝具なのであろうか、間違ってはいない。

だが、今はまだ龍は眠り続けている。
そう、目覚める時ではないのだ。

「僕達の千年王国のため」
「ええ、必ず聖杯を手にしましょう……ザイン」

千年王国も、龍も、そして彼の真の宝具たる方舟も――


439 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:22:28 AiWcDRi.0
【クラス】
ライダー

【真名】
ザイン@真・女神転生Ⅱ

【パラメーター】
筋力E+ 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具EX

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
騎乗:EX
あらゆる乗り物に対して一般人程度の適性のみ持ち合わせる、
その代わり、方舟に対して騎乗を可能とする。

対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

神性:E
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。

【宝具】
『封印されし半身(セト)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
未だ眠り続けているザインの半身たる龍。
セトが目覚め、ザインとの融合を果たした際、ザインは裁きの天使である真の姿を取り戻す。
その際、ザインのパラメーターは下記のものとなり、宝具『千年王国の方舟』が解禁される。
また保有スキルである神性がEXにまで上昇する。

筋力A++ 耐久A+ 敏捷C 魔力A+ 幸運C 宝具EX

『千年王国の方舟』
ランク:A++ 種別:対宙宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
ザインが真の姿を取り戻した際に使用可能となる宝具、選ばれし者を乗せた方舟。
本来ならば、宇宙の彼方まで飛んで行くことも可能であるが、
この世界は偽りであるため、再現を許す場所までしか飛ぶことは叶わない。
また、この宝具にザイン及び、そのマスターが乗り込んだ時、宝具『全てを裁く光(メギド・アーク)』が解禁される。

『全てを裁く光(メギド・アーク)』
ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
『千年王国の方舟』より発せられる強力なエネルギー光、再生のために行われる真の大破壊。
この宝具が発動した際、『千年王国の方舟』以外の全てが消滅する。

【weapon】
格闘術……最強のテンプルナイトとして、彼は非常に高水準の格闘術を収めている。

【人物背景】
全てを裁く者、あるいは彼もまたザ・ヒーローと呼べるのかもしれない。


440 : 悪魔くん聖杯戦争(法) ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:22:38 AiWcDRi.0


【マスター】
松下一郎(悪魔くん)@悪魔くん千年王国

【マスターとしての願い】
千年王国の建国

【weapon】
なし

【能力・技能】
釈迦やキリスト以来の天才児であり、魔術に対して大いなる知識を持っている。

【人物背景】
小学二年生。大手電機メーカー「太平洋電気」の社長令息。大きな垂れ目、タマネギを思わせる髪型、突き出た額といった独特の容貌をしている。
「精神的異能児」と言われるほどの天才的頭脳を持つ少年で、貧富の格差もない平和な世界を創造しようとしている。
一般的な倫理の枠にとらわれず、目的のためなら手段を問わない面がある。あまりの頭の良さゆえにクラスメートから「悪魔くん」とあだ名されている。
この聖杯戦争に至る際、ルイ・サイファーの介入によりサタンと戦うことはなかった。

【方針】
なるべく早くザインを元の姿に戻したい


441 : ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 15:22:49 AiWcDRi.0
投下終了します


442 : ◆W91cP0oKww :2014/12/27(土) 15:33:01 9SP62nGE0
投下乙です。二騎目、投下します。


443 : 法月仁&ライダー ◆W91cP0oKww :2014/12/27(土) 15:35:07 9SP62nGE0
プリズムショーの最中、法月仁は昔の夢を見た。
彼の始まりともいえる栄光の残骸が降り注ぐ絶望が、脳裏へと絡みつく。
ステージが熱狂に包まれ、人々の歓声が聞こえる――災厄の景色。
積み上げた努力も、プリズムの煌きの前には何の価値も見出さなかった法月仁を構成していた全てが、燃え尽きていく。
醒めたら戻る悪夢ならどれだけよかったことか。
ひどく現実感に乏しく、蔓延した煌きが彼を追い詰める。
そして熱く、冷たい景色が、見渡す限りに広がっていた。
滅びの煌きに魅了された世界に、一人残された弱き自分。
それはきっと、もう二度と思い出せない綺麗な思いを砕いた最後の刹那だろう。

――見上げた月に堕ちていく。

瞬間、仁がいたのは何処とも知れぬ夜闇の街だった。
当然、困惑する。得体のしれぬ現状に、滴り落ちる汗を拭う余裕すらない。
いつもの優美な態度も鳴りを潜め、きょろきょろと辺りを見回して爪を噛む。

(どうなっている!? ドッキリ企画か? まさか、私をはめたんじゃないんだろうな!?)

かすかに震える手を無理矢理抑え、仁は顔を歪め頭を悩ませる。
エーデルローズ主宰である自分に対して、ドッキリなど許されることではない。
必ずしも、企画した連中を追い詰めてやると固く決意する。

「――――いい加減、現状を理解せよ」

そして、その決意をあっさりと塗り替える言の葉が仁の耳へと届く。
たった一言。ただそれだけで、仁の身体は石のように硬直してしまう。
背後に何かがいる。
声だけで判断すると妖艶なる美女のように感じるが、身の毛がよだつこの気配は決してただの美女ではないだろう。

「よい、振り返ることを許可する」

刹那、仁の身体に纏わり付いていた重力が一瞬にして羽毛のような軽さに成り代わった。
思わず、そのままの勢いで身体を回し翻ってしまう程に。
視界が変わる。ふわりと靡く黒髪に、茶色に焼けた肌。
凹凸の激しい胸に、引き締まったおしり。加えて、身体の隅々に塗りこまれた紋様。
法月仁ともあろう者が見惚れてしまうぐらい、その少女は――魅力的だった。


444 : 法月仁&ライダー ◆W91cP0oKww :2014/12/27(土) 15:36:15 9SP62nGE0

「妾はオンバ。この度の戦、ライダーのクラスを充てがわれて顕界した」

視線の先にいたのは蠱惑的なバケモノに、仁はゴクリと唾を飲む。
いけない、このままだと流される。
気品ある人間としてのプライドが停滞した現状を何とか踏み越えようとギチギチと音を立てた。

「知識は勝手に読み込まれているはず。なればこそ、後は貴様の心の在りようだけよ」
「聖杯、戦争……ッ! は、ははっ、最近、生徒達の噂話として耳に入ってましたが……。
 紅い月に導かれた者は願いを叶えることが出来るといった与太話、それが本当だとは俄に信じ難い。
 ええ、私はそのような夢を見る子供ではないのですがねぇ」
「然り。けれど、今更疑う訳でもあるまい? 勝ち残れば、願いは叶う。
 妾を呼び寄せたのだ。未だ寝惚け眼を晒し、戯言を口走るようなら、その細い身体――喰い潰すぞ」
「……ええ、そうみたいですね。貴方の佇まいは人間とは違う。まるで、気品ある超常の存在。例えるなら、女神」
「――――ハッ。まさか、その呼び名で妾を例えるとはな。愉快ではあるが――」

ギロリと。彼女の両眼が細められ、殺気が漏れ出した。

「二度目はない。以後、その名を呼ぶな」
「こ、心得ておきます」

流れ出した汗をハンカチで拭い、仁はずれた眼鏡の焦点を合わせ直す。
眼前の少女はサーヴァントと呼ばれる人外。
口に出す言葉は慎重に選び取らなければならない。
ほんのちょっとでも機嫌を損ねることを言うと、自分の首は一秒もかからず離れてしまうだろう。

「さてと、まずは拠点を固めるとしようか。この世界でも貴様には割り振られた役割があるはず」

こうしている間にも、事態は進む一方だ。
一旦は自分の中に流し込まれた知識を整理しなければ頭がパンクしてしまう。
脳内に滞ったモノを円滑にするには落ち着ける場所が必要だと判断した仁は植えつけられた記憶に在った拠点へと足を進める。

(願い、ですか)

その最中、仁は改めて自分が抱く『願い』についてじっくりと考える。
世界は色褪せている。そう感じたのは、いつからだっただろう。
仁は一人だった。煌きがない、ただそれだけで世界は冷たかった。
どれだけの研鑽を重ねても、親の七光りと称されて真っ直ぐな瞳で誰からも顧みられることもない。
認めてもらいたい。煌きなんてなくても、プリズムショーはやっていけるのだと証明したい。
そして、父親である法月皇に――自分が此処にいることを見て欲しかった。
たった一度だけでもいいから、振り返って欲しかったのだ。 人はそれを、その程度と嘲笑うかもしれない。
けれど、仁にとっては何にも替え難い大切な“願い”だったから。

――私を認めないこの世界は下らない。

聖杯があれば、きっと。
プリズムの輝きなんてなくても、世界の色も、欲しかった愛も取り戻せるのだろうか。


445 : 法月仁&ライダー ◆W91cP0oKww :2014/12/27(土) 15:38:36 9SP62nGE0
     


【クラス】
ライダー

【真名】
オンバ@ブレイブ・ストーリー〜新説〜

【パラメーター】
筋力D 耐久B+ 敏捷D 魔力A 幸運E 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではライダーに傷をつけられない。


【保有スキル】

憎悪:B…相手に憎悪を抱けば抱くほど、能力が向上する。
     憎悪の化身故に、負の感情が齎す闇は深い。

戦闘続行:B…瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

【宝具】
『キャノン・ライセンス』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:5人
オンバの依代である大松香織が使う職業専用武具(バズーカ)。
魔力を込めると、弾丸を発射することが出来る。
そして、一日一回だけではあるが、強力な封印魔法(魔力の砲撃)を行使できる。

『この世全ての憎悪』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
自分を生み出した世界、宿命を呪うオンバの呪いそのもの。
この宝具を受けたモノは身体を『乗り移られる』。
無論のこと、強い意志によってこの宝具は防げるが、負の感情に呼応して宝具も強大化していくので完全に防ぐことは困難である。
とはいっても、その呪いは直ぐに発動するのではなく、身体の持ち主の肉体、精神を徐々に脅かす遅効型なので其処に勝機を見出す必要がある。
……狂える魔狂姫を浄化せしめる正義があるならば、あるいは。

【weapon】
キャノン・ライセンス

【人物背景】
神教において、かつて女神に仕えていたが老神に寝返ったため魔界に落とされたと伝えられる魔狂姫。
ヒト、心を持つ者の持つ「負」の感情の化身、それ故にわが身に絶望し、自らを生み出した世界を憎悪し自らの宿命を変えるために暗躍する。
本編では、封印から解き放たれ、大松香織へと取り憑き、物語の裏側で虎視眈々と『願い』を叶える機会を狙っている。


【マスター】
法月仁@プリティーリズム・レインボーライブ

【マスターとしての願い】
――――認めてもらいたい?

【weapon】
なし。

【能力・技能】
なし。

【人物背景】
エーデルローズ財団の理事長である法月皇の息子であり、エーデルローズの主宰。
かつて氷室聖、黒川冷と共にプリズムキングの座を争ったトッププリズムスターの1人。
段は温厚な紳士を装っているものの、その本性は傲慢かつ自分以外の他者やその思想を決して認めない、異常なまでの狭量さと自己中心的な人物である。
もっとも、ここまで歪んだ背景には、複雑な家庭環境、技術よりもプリズムの輝きを重視する風潮。
加えて、彼の傍に寄り添う人間が誰もいなかったからこそなのかもしれない。

【方針】
聖杯を自らの手中に治める?


446 : ◆W91cP0oKww :2014/12/27(土) 15:39:30 9SP62nGE0
投下終了です。


447 : ◆HELLmKU1MQ :2014/12/27(土) 18:43:58 T7zPdGgQ0
投下します


448 : 姫川友紀&ランサー  ◆HELLmKU1MQ :2014/12/27(土) 18:44:58 T7zPdGgQ0

 10月某日、某東京ドーム。
 その日、とある試合があった。
 球場内は両チームのファンの熱気で溢れかえっていた。
 勝った方が日本シリーズ出場へ大手を掛ける大一番。
 
 しかし、試合の方は……
 初回から先発投手の立ち上がりを打たれ失点。
 その後も失点を重ね、5回持たずにマウンドを降りた。
 打線も初回から沈黙。肝心な所で一本は出ない。
 本塁打も出るものの、ソロホームランのみで後続は打ち取られる。
 
 そして、七回の裏の攻撃の前。
 ホームチームの応援歌が流れる。
 軽快なラッパの音が印象的な応援歌であった。


『闘魂こめて 大空へ!
   球は飛ぶ飛ぶ 炎と燃えて!

 おお キャッツ!
   その名を担いて グラウンドへ!
     照らすプレイの たくましさ!

 キャッツ! キャッツ!
   ゆけゆけ それゆけ 巨猫軍!』


 ライトスタンドの一角で彼女は声を出す。
 その声はグラウンドの選手たちに届かないかもしれない。
 けれども、大っきな声で声援を送り続ける。

 ―――なぜなら、彼女は『アイドル』なのだから。

 白とオレンジのユニフォームとキャップ。
 右手にはオレンジ色のメガホン。
 左手には売り子から買ったビール(二杯目)。
 
 彼女の名は『姫川友紀』。
 とあるアイドルプロダクションに所属しているアイドルだ。
 何故、アイドルである彼女が野球場にいるのか?
 普通、アイドルで野球といえば試合前の始球式であるが。
 彼女はプライベートでキャッツを応援に来たのだ。
 ようするに三度の飯よりも野球(主にキャッツ)が好き。
 アイドルの仕事よりも野球(主にキャッツ)が好き。
 それが彼女なのだ。
 
 なお、この七回もまたキャッツは無得点で終わった。
 
『ゲームセット!』

 試合はキャッツの負け。
 最終回にノーアウトでチャンスは作ったものの……
 結果は追いつかない程度の反撃であった。

 相手チームのヒーローインタビューを聞きながら帰り支度をする。
 そして、そそくさと球場を後にする。

「はぁ……」

 球場のゲートを出た直後、友紀は大きく溜息を吐く。
 しかし、すぐに気持ちを切り替える。
 あとはなくなったが、まだ明日がある……。

「明日は勝つ!」
 
 気合いを入れ直し、友紀は空を見上げる。
 星が輝いていた、その隣では月も輝いていた。
 

 ―――しかし、彼女の目には赤い満月が写っていた。


  ▽ ▽ ▽


449 : 姫川友紀&ランサー  ◆HELLmKU1MQ :2014/12/27(土) 18:45:25 T7zPdGgQ0

「……ん?」

 友紀が気付くと球場内に戻っていた。
 しかも、グラウンド内に入っていた。
 本当に無意識だった。
 何故自分でも戻ってきたのか、思い出せなかったが。
 あることを思い出した。
 
「……そ、そういえば、聞いたことがある!
 『赤い満月を見るとよからぬことが起きる』って!
 【す●ると】のあとにやってた深夜の胡散臭いバラエティ番組でやってた……まさか、そんなことが……!」

 誰に言うでもなく友紀は呟く。
 その直後であった友紀の背後から……

   ズン、ズン、ズン……
 
 と、重量感のある足音が聞こえた。
 その足音に気付き、後ろを振り向いた。

 ―――デカい。

 第一印象はとにかくソレであった。

 ―――此間のハズレ助っ人外国人よりも遙かにデカい。

 友紀の目測で推定身長2m以上。
 黒く細かいカールのかかった長髪に黒いレスリングパンツ。
 そして、何よりも目を引くのは、その男の頭部にある二本の角。

「お前がオレのマスターか?」

 その巨体から聞こえた声。
 友紀はその男を見上げるような格好になっている。
 そして、友紀の脳裏にはその問いにどう答えたらいいか、一瞬で閃いた。


「ゲェーーーーッ! レスラーのサーヴァント!?」


 何故だか、こういうリアクションを取らねばならない気がした。
 その角の男は少し戸惑ったが、冷静に返す。

「……一応、ランサーだ」
「いや、どうみてもレス……」
「ランサーのサーヴァント・バッファローマンだ!」
「あっ、はい」
 
 友紀はランサーということでとりあえず納得した。
 しかし、バッファローと聞くと他のリーグの球団を思い出した。
 だが、それよりも重要なのは今のこの状況の詳細をランサー・バッファローマンから聞いた。

「聖杯戦争……?」
「そうだ、なんでも願いを叶える願望器らしいぜ?」
「なんでもか……『キャッツの優勝させて』とかでもアリ?」
「ああ」
「うーん……どうしよう……」
(それは本気で悩むことなのか?)

 そして、数秒ほど友紀は考えた。

「なら、いらないや!
 あたしの願いは他の人を蹴落としてまで叶える願いじゃない!
 自分で……というよりもキャッツが掴み取る願いだ!」

 試合中以外の奇跡など要らない。
 ましてや、キャッツ他プロ野球と全く関係ない人たちを勝手な願いのために犠牲にするわけはいかない。

「あたしの考えに文句はある?」
「いや、別に構わないぜ! ルール破りは悪魔の十八番だからな」
「えっ、18番はクワタでしょ?」
「…………まあそんなことはいいが、他のサーヴァントに襲われたらどうするんだ?」
「そん時はランサーが戦えばいいんじゃないかな?
 ホームラン50本くらい打ちそうな腕とか筋肉してるし、多分倒せるって!!」
「まあ、俺はそれで構わないがな」
「よし、じゃあ! しまってこーっ!!」


450 : 姫川友紀&ランサー  ◆HELLmKU1MQ :2014/12/27(土) 18:45:51 T7zPdGgQ0

【クラス】
 ランサー

【真名】
 バッファローマン@キン肉マン

【ステータス】
 筋力:A 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C+ 宝具:B

【属性】
 中立・悪

【クラススキル】
 対魔力:E
 無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
 超人レスリング:A
 超人レスラー最上位の1人であることを示す。
 リング上ではステータスが上昇する。

 戦闘続行:A
 試合終了後まで勝負を諦めない往生際の悪さ。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 怒れる猛牛:A
 自身の怒りが最大時、ステータスを1ランクずつ上昇させる。

【宝具】
 『猛牛の突進(ハリケーンミキサー)』
 ランク:B 種別:対人 レンジ:1〜5 最大補足:1〜10
 ロングホーンを用いた突進技。
 その威力は5人の邪神をも吹き飛ばす。

 『煌めきの流血列車(ロングホーン・トレイン)』
 ランク:B 種別:対人 レンジ:1〜5 最大補足:2〜20
 バッファローマンがランサーたる最大の要因。
 自身が槍となり、相手に突進しロングホーンで串刺しにする技。
 なお、バッファローマンと同等の実力を持っていなければ発動は出来ない。

【weapon】
 ロングホーン 

【人物背景】
 人間をはるかに超える戦闘能力を持つ「超人」のひとり。
 元はキン肉族と肩を並べるほどの繁栄を見せていたバッファロー一族の唯一の生き残り。
 その後、紆余曲折あり大魔王サタンに自らの血を売り正義超人から悪魔超人へと転身した超人である。

 技術よりも腕力・体力にものを言わせたファイトスタイルが特徴的であるが、
 性格は冷静沈着であり、試合中に熱くなっても場外乱闘は好まない。
 また、相手のスタミナの消耗を誘う戦術を取るなど試合巧者である。
 
 最近、草野球チームのマスコットにもなった。


【マスター】
 姫川友紀@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
 元の世界に帰ってキャッツの優勝を見届ける。

【weapon】
 特になし

【能力・技能】
 強いて言うならアイドルの才と野球の知識。
 落ちるスライダーが投げられる。

【人物背景】
 とあるアイドルプロダクションに所属するアイドル。
 本人曰く、強豪の野球チーム『キャッツ』の大ファン。
 アイドルの仕事よりも野球が好きな20歳の野球好きアイドル。

【方針】
 元の世界に帰る方法を探す。


451 : ◆HELLmKU1MQ :2014/12/27(土) 18:46:19 T7zPdGgQ0
投下終了です。


452 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/27(土) 21:08:32 IcAKo/H.0
皆さま投下乙です。投下します。


453 : 紅い月に願うもの ◆3SNKkWKBjc :2014/12/27(土) 21:09:16 IcAKo/H.0
――――奇跡だ。


「奇跡だろう。奇跡である。奇跡でなくてなんと口にすればいい!」


紅い月に願った。
それはマスターだけにあらず、サーヴァントもまた然り。
異常中の異常。彼のような存在を『イレギュラー』と称しても過言ではないのだが……

そのサーヴァントは『ランサー』に座する英霊の一人。
しかし、『吸血鬼』という風評被害、歪んだ信仰心を抱き、生前のそれとは全く以て違う。
まるで別人のような有様になってしまったランサー。


「我が生涯を捧げた伴侶には初夜にして裏切られ!
 我が魂を捧げた信仰には、斬首をもって報いられ!
 そう、かようにも我が信仰は砕かれた!
 神の愛を見失い、神の愛を否定され、残されたのは堕ちるばかりの我が名声!」


オペラ男優かのように語り尽くす彼だったが、狂気ではなく狂喜に満ち足りていた。


「故に願ったのだ! オレは願ったのだ!! ――あの『紅い月』に」


そう。
『紅い月』に願ったのはサーヴァントの方であった。
サーヴァントが『紅い月』を望み、『紅い月』に導かれ、そして『紅い月』の裏側へ。
欠陥塗れの『東京』を舞台にした聖杯戦争に登場を果たしたのだ。
極めてイレギュラーである。


「なんだ、お前は」


対して、異常たるランサーに冷淡な視線を浴びせる女性が一人。
彼女は『紅い月』に何も願っていない。
狂喜によって願われたランサーが為に、聖杯が強引にマスターとして選出された
とんでもないハタ迷惑を負ってしまった不幸な女性なのだ。
ランサーが「おぉ」と感嘆を漏らす。


「なんと勇ましい。このような美貌、このような魅力を持ってして
 何故それほどまでの勇猛を抱くのだろうか!
 オレの居た時代ではあり得ない。あり得たとしても、そう、オルレアンの乙女のような女よ!
 そうか! そなたは『聖女』であらせられたか!!」
「…………はぁ?」


突拍子もないランサーの発言に彼女は困惑する。
彼の狂気に押されていないうえに、訳も分からぬ妄言を口にするランサーに呆れているようだ。


「そなたが『聖女』ならば、我が信仰心が再び認められたのだ!
 そなたを愛そう! そなたへの愛が我が信仰心!! オレは失った愛を――ここで取り戻したのだ」
「話が通じないのか、このバカは。お前はなんだ。何者かと聞いている」
「オレはランサーの座より召喚されしヴラド三世――」
「……なッ」
「『聖女』よ! 我が妻よ! オレの願いはすでに成就されたのだ。
 さぁ、そなたの望みを聞かせてくれ!!」


ランサーの言葉なんて耳に入らない。
女性は、それ以上に動揺していた。

これがヴラド三世?
これがドラキュラの成り果て?

これが―――『アーカード』になりうる吸血鬼……?


「そんな馬鹿な! お前が『アーカード』であるはずがないッ!!」


インテグラル・ファンブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングは
無論そう叫ぶしかなかった。


454 : 紅い月に願うもの ◆3SNKkWKBjc :2014/12/27(土) 21:10:38 IcAKo/H.0
インテグラは幼き少女の頃、父をなくした。
そして当主になった。
そして――どうしようもない化物と出会い、それを使役する宿命を背負った。

それが『アーカード』。吸血鬼の真祖たる存在である。
だから……


「違う! お前は『アーカード』ではない!
 アイツもアイツでそれ相応にバカだが、これほどバカではない! その真名を撤回しろ!!」


こうなるのは当然である。
彼女は『アーカード』のなんたるかを知っている。
死にぞこないの化物、人間に殺されるべき化物、そういう化物だと知っている。
だが、いくら化物であってもランサーのような化物ではないのだ。


「おぉ、我が妻よ。一体なにがあったというのだ。何が不満なのだ。
 そなたの為ならばオレの在り方すら変えよう。オレの誤りがあるのならば正そうではないか!」
「全部だ! 全部に決まっている! まず私を妻と呼ぶのを止めろ!!」
「それは出来ぬのだ。そなたは聖女であらせられる。
 我が信仰心たる愛を、そなたへ向けるのだ。故にそなたは我が妻なのだ!」
「――黙れ! その呼び方を二度とするな!」


瞬間。
空中に一つの令呪が消えてゆく。
ランサーはあまりのことに驚愕を見せた。


「なんと!? 何故なのだ! 何故かような事をしたのだ、聖女よ!」
「お前の愛などいらん。化物の愛など、人間は必要としない」


息が呑まれる。
ランサーは一つの単語を耳にし、沈んだ声色で話す。


「化物だと、オレを化物と蔑むのか!」
「そうだ、お前は化物だ。ヴラド三世を騙るならば、尚更そうだ」


酷い求愛をしておきながらランサーはインテグラに殺意を向けた。
彼女は怯まない。怯むどころか言葉を続ける。


「化物じゃないとでも? これほどの酷い有様になっておきながら化物ではないと。
 お前が人ならば、このような有様になってなどいない。
 英霊とやらに成り果てて、過去を蒸し返そうなどはしない。
 お前は人であることに耐えられなかった化物だ」


ランサーの様子に彼女は言う。


「私を殺すと脅すか。私がここでお前に自害を命じると考えているか。―――舐めるな。闘ってやる」


455 : 紅い月に願うもの ◆3SNKkWKBjc :2014/12/27(土) 21:11:29 IcAKo/H.0
「なんと……なんと残酷な。なんという運命、なんという試練なのか!」


インテグラの意思を感じ、ランサーは再び熱弁した。


「その根本を捻じ曲げず、オレを嫌悪し、オレを殺すと云ったのだ!
 そなたは人の愛すら受け入れられぬ定めなのか!! 聖女が故に! 聖女であるが為に!!」

「その精神。その御心。なんと美しいことか。
 しかし……そなたは何故かような凍てつく心を持ってしまったのだ。
 何がそなたをそこまで追い込んだというのか。これが我が試練なのか」


ランサーは思わず嘆く。
ランサーの愛を全く受け付けない鉄の心。
いかなる愛を告げれば、その心は開くのか。
ランサーには何も術がなかった。
彼女へ愛を伝える術を。


「聖杯よ! オレが次に願うべきはこれなのか!
 ならば成そう! 我が愛を我が主に伝える術を教えたまえ!!」


「………」


ランサーの知らぬところでインテグラは溜息を漏らした。
アーカードの方が、まだ通りがかなっていた方だったのだと思い知った。
本当の意味でアレ(ランサー)は狂っている。

あの少佐よりも、あの神父よりも、あの吸血鬼共よりも
むしろ、向こうの連中の方が幾分かわいいように思えてくるほど狂っていた。
本当にアレが『ヴラド三世』なる英霊で間違いはないのか……?

何より――聖杯戦争というこの戦場を切り抜けなければならない。


「お前の望みは知った事ではないが。お前は私の槍になると誓うか」
「無論。『聖女』よ、そなたの手は穢すものではない。ならばオレが穢すのだ。
 そなたの為ならば――この一時、汚名を被ろうとも躊躇わない」


ならばいい。
それならばいい。
忠誠ではなく狂愛であるが、ランサーは仕えると云った。
妙に律儀なのが、彼女の知るアーカードと重なるのは酷い皮肉かもしれない。


「ならば敵を殴殺しろ。『見敵必殺』だ」
「心得た。我が主」


妻と呼称したい愛を抑え、ランサーは応える。

『紅い月』の元で戦争が始まろうとしていた。


456 : 紅い月に願うもの ◆3SNKkWKBjc :2014/12/27(土) 21:12:11 IcAKo/H.0
【クラス】ランサー
【真名】ヴラド三世@Fate/EXTRA
【属性】秩序・善

【ステータス】
筋力:A 耐久:A 敏捷:E 魔力:C 幸運:C 宝具:C


【クラス別スキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術行使を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】
信仰の加護:A+++
 精神・肉体の絶対性を持つ。このスキルのせいで彼は狂っている。

戦闘続行:A
 戦闘から離脱する能力。
 敗戦しても逃れ続けた往生際の悪さが垣間見える。

無辜の怪物:A
 生前の行いから生まれたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられた怪物の名。
 ちなみにこのスキルは外せない。


【宝具】
『串刺城塞(カズィクル・ベイ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:0〜50 最大補足:300人
発動と同時にランサーの槍が空へと飛翔し、ランサーを中心に周囲の大地から槍や杭が噴出・乱立し、
その中で最も巨大で禍々しい杭が敵を穿って拘束、最後に天から拘束した敵目掛けて槍が投槍の如く飛来する。
ゲーム版では色々技があり、それらは記載しないが使用可能とする。

【人物背景】
自害させられるランサーではなく、自害するランサーで有名。
信仰心の狂気の果てに『紅い月』が彼を召喚させ、マスターとしてインテグラを巻き込んだ。
どうでもいいが『マスターを妻と呼ぶな』という令呪が使用されている。


【サーヴァントとしての願い】
自らの愛をマスターへ伝える術を知る




【マスター】
インテグラ@HELLSING

【マスターとしての願い】
しょうもない巻き込まれを食らった為、願いなどない。
あったとしても彼女のことだから叶えようともしない。

【能力・技能】
銃と剣の腕前はいい。
いかなる相手を前にしても怯まない精神力がある。

【人物背景】
本名:インテグラル・ファンブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング
化物殲滅機関『ヘルシング機関』の局長。
化物の愛など要らぬ鋼の女。そして真祖の吸血鬼の主。


457 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/27(土) 21:12:51 IcAKo/H.0
投下終了します。


458 : ご立派なランサー ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 23:09:09 AiWcDRi.0
投下します


459 : ご立派なランサー ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 23:09:23 AiWcDRi.0




ケイネス・エルメロイ・アーチボルトという高慢ちきな男のせいで如何にしてウェイバー・ベルベットが屈辱を味わうこととなったか、
その詳細については、この物語とは特別に関係無いため、記述を避ける。
唯一つ言えることは、それがウェイバー・ベルベットが行動を起こす切っ掛けになったということである。
極東の地で行われる聖杯戦争なる競技、それは肩書も血筋も意味を成さない完璧なる実力の世界である、
ケイネスも参加するであろうそれに参加し、完全なる勝利を手に入れること、
己の自尊心を傷つけたケイネスに正当なる復讐を行う絶好の機会ではないか、そう考えたウェイバーは何があろうとも聖杯戦争に参加することを決めていた。
しかし、運命の女神は彼に微笑まなかった。
野望の炎に胸を焦がす彼に微笑んだのは、紅い満月であった。

果たして、どこで彼が紅い満月を見たのか。
洗面所の鏡であったのかもしれないし、他人の目に映るそれであったのかもしれないし、あるいは夢の中で爛々と輝いていたのかもしれない。
ただ、事実として言えることは彼は東京に召喚され、そしてたった今記憶を取り戻し、サーヴァントとの対面の段になったということだけである。

「……どうして、こうなる?」















           /´ ̄`ヽ            , --、
          /  人   l             /    \
        / /爻ヽ  ヽ      , ---、 | く⌒ヽ ヽ , -─‐-、
        { /∠⌒ヽ }  }       / ,--、ヾ> ヽ } レ'  , ---、 ヽ    ____,
        レ'彡イ {Uj }ヾミイ       {  \ } }|  V /  /     `! |  t´r'⌒
    ⌒)ノ  |  ドこzン八三}     ,ィ\/⌒ヾ ̄ヾノ_ノ  ァ'-─-、 ゞL__,〃
     (ソ⌒ヽ! ト--イ ⌒__,ハ  ,ィシvく}了ミy'´7´l}_, -‐┴-、   `ヽ  ̄ ′
      レ)   ! ト--イ (  ノ `ーべ⌒ヽ>y' 〃, -┴┴ミ、_}_}_}_j ヽ⌒) j
      ヽ)、___,>、ト--イ ))〈     ト㍉チrく    // ̄ヽ、_) / /  _..._
  '⌒>‐ミ、 \)こZヾ--ヘ{{ l|  y' ゝ ヾミ゙)'}|≧>、 / /バ⌒ヽn V/ 〃⌒ヽ
  (⌒ヾ>ニKド、⌒Yく_/ヽj} 人_ゝ__>==1 r彡"´/ / | |   /y'}[__//    `
    ,ィ  ゙̄Vソ,イノ \__ム丁了)ノr'ン´フノ ィ彡/| | ヽヽ. // ヽVソ´
   / / r‐ヘ `Y {    [二[| ,勹77´ ̄ シ三彡'/| |\ ヽV/ミ、_} Kミ、
  { {   トZべ.」 |   [三}〒ラ77 (_)(_) r三/ / | |> \f⌒l/l | L }
 ヾl |  l三ィ∧ l __. [三}⊥.イ工===ァべ/ /,ィ| |/>l{ l>}X.| |゙)レ′
  ヾ, ヽ  {三N>} Y二ヽ」ニ/l⌒ヾ´  /  {O}___」 |/rくゝ _ソ\l |(
   >、 \ 缶jfハ >n' fy' l ⌒y} //⌒\/rヘ l/ /7㌦\j j
  /∧>、_/フイ/7-Vきy'/1 |(⌒)|}./|ト、   \j.ハ ヽ. //) l| //
  !{ニ///,イ///∠7/Zl{ |ィ^トl|\.j| ノへ.____}へ. V/´ ヽV./
  ゞ〃'Tヽ 〃´ ̄ ̄〃⌒l  VハVj  }ソ       ヽ \  //
  ケミ三彡"     /   ゝ ゞ= 'ノ二/         \ ゝ" /       



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  /  /ヽ  \|  ヽ
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 |//    \ | | |
 ヽハ \  /_`| | |
  | Kヒ0)  イヒ0>| |||
  || ̄ヽ   ̄ |||||
  |人  __  ||ハN
  | |\   /| /L
  |/ ̄>┬  /|// \
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   | ||  |/ |
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だが、そのサーヴァントはウェイバーの想像を超えて、余りにもご立派すぎた。


460 : ご立派なランサー ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 23:09:37 AiWcDRi.0

【クラス】
ランサー

【真名】
マーラ様@女神転生シリーズ

【パラメーター】
筋力A+ 耐久C+ 敏捷C+ 魔力B 幸運D+ 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
ご立派:A
ナニがとは言わないが、余りにもご立派すぎて……対峙するものに恐怖を与え、
また相手次第では同ランクのカリスマを発揮する
やめてくださいマーラ様……そいつもう、雌の顔になってますから……

誘惑:C
エデンの園の蛇、キリストを誘うサタン等、誘惑者に連なる者のスキル。
交渉によって相手を堕落させることが出来る。

騎乗:C+++
ご立派な戦車を乗りこなすためのスキルであって、別にそういう騎乗ではない。
そういう騎乗ではないが、そういう騎乗の場合はご立派なだけではなく技術もすごい。

【宝具】
『魔羅羅鬼打印(マララギダイン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:4人

マーラ様のご立派な頭頂部より発射なされる緑色のどろりとした炎。
CEROは通っているので実際健全である。

『絶頂昇天突き』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-5 最大捕捉:1人

マーラ様がランサーたる証。
全力で突進なさるその姿は……最早、宝具。


【weapon】
移動用に戦車(チャリオット)に乗っている、猛突進を補佐する。

【人物背景】
余りにもご立派なその御姿は、何万人ものメガテニストを男女問わず魅了する。


【マスター】
ウェイバー・ベルベット@Fate/zero

【マスターとしての願い】
自身の力を周囲に認めさせる

【能力・技能】
オーソドックスな魔術を習得。また錬金術の心得がある。
魔術師としての力量は平凡の一言。
一般人への暗示も失敗しかねない程度に才能が無い。
さらに貧弱な体躯をしており、腕力や体力に欠ける。
しかし研究者としての適性は高く、洞察・分析能力や、文章の解読・記憶に長ける。
また、魔術師としては珍しく現代技術や機械の使用に対する抵抗感が薄い。
そして、凄まじい強運の持ち主である。

【人物背景】
Fate/zeroのヒロイン

【方針】



461 : ◆lnFAzee5hE :2014/12/27(土) 23:10:08 AiWcDRi.0
投下終了します、ウェイバー・ベルベットのステータスに関して一部二次二次聖杯よりお借りしました。


462 : ◆X5hLCZajsg :2014/12/28(日) 00:32:06 5oGkFW9U0
投下乙です
こちらも投下させていただきます


463 : 相良宗介&アサシン ◆X5hLCZajsg :2014/12/28(日) 00:32:56 5oGkFW9U0


――そうだ、俺が殺した!! さぁ憎め!!




嘲るようなその声に背中を押され、相良宗介は窓から身を躍らせた。
直後、背後から爆発が押し寄せてくる――ということはなく、宗介は着地を失敗して強かに背中を地面に打ち付けた。
痛みに悶絶する。だが、立ち上がる気力が湧いてこない。
何故か。理由などはっきりしている。

「ちど……り……」

彼女が、死んだからだ。
ミスリルのエージェント・相良宗介の護衛対象である少女、千鳥かなめ。
同じクラスに通うクラスメイト。何度も共に視線を潜り抜けてきた戦友。
そして、あるいは、宗介にとってただ一人の――。

「……あ……」

改めてその事実を認識し、身体から力が失せていく。
告げたのはガウルンだ。宗介にとっての仇敵、腐れ縁と呼ぶのも忌々しい最低のクソ野郎。
何度も戦場で殺し合い、誰よりもガウルンを知る宗介だからこそ、その言葉が嘘だったとは到底思えない。
やると言ったらやる。あの男はそういう奴だ。
ガウルンが本気で千鳥を殺そうと思い、手勢を差し向けたのなら、宗介が傍にいない千鳥など赤子の手を捻るが如くだ。
宗介に変わって千鳥の護衛についた情報部のエージェントなど宛てになるはずもない。
千鳥かなめは間違いなく、疑いなく、ガウルンによって殺されたのだ。
宗介は何も出来ず、この地で無様を晒している。
千鳥のいる東京から遠く離れた、この香港の地で――。


464 : 相良宗介&アサシン ◆X5hLCZajsg :2014/12/28(日) 00:34:16 5oGkFW9U0


「どうした、若いの。立てないのか?」


その時、背後から聞こえてきた声に驚き、跳び起きた。
生きる意思のない身とて、身体に染み付いた動きまでは消えない。
一瞬で銃を引き抜き背後へと向ける。そこには壮年の男がいた。
手を伸ばせば届く距離に立っていたその男に、宗介は全く気づかなかった。
気力がないとはいえ、そこまで腑抜けていたつもりはなかったのに。
片目を眼帯で覆ったその男は、面白がるように宗介の目を覗きこんだ。

「ほう、いい動きだ。よく訓練されているな。だがどうにも気合がない。
 若いの、自分が置かれている状況が理解できているか?」

宗介は再び愕然とした。
しっかりと男をポイントしていたはずの銃は、瞬きの間に男の手の中へと移動していたからだ。
何をされたか、はわかる。
男は無造作に銃を掴んだ。宗介は反射的に発砲しようと指に力を込めたが、その瞬間足を払われ転倒した。そして銃を奪われた。
宗介とて最精鋭たるSRTのウルズ7を務める身だ。生身での格闘戦も熟達している。
しかしこの隻眼の男は、そんな宗介を子供をあやすように翻弄してみせた。

「何だ、貴様は!?」
「何だとは何だ、自分のサーヴァントに向かって。それともまだ寝ぼけてるのか?」

男からの三度目の問い。この時になって宗介の意識はようやく明瞭になってきた。
この男が何者なのか。
宗介の置かれている状況とは何なのか。
そうだ――ここは香港ではない。

「紅い月……聖杯戦争……!」

ガウルンの仕掛けた爆弾から逃れようと窓から飛び出したあの瞬間、宗介は確かに見ていた。
未だ夜に遠い時刻でありながら、夜天に輝く紅き満月を。


465 : 相良宗介&アサシン ◆X5hLCZajsg :2014/12/28(日) 00:34:47 5oGkFW9U0


――――ねえ、知ってる。紅い満月の話


――――その満月を見た、どうしても叶えたい願い事を持ってる人はさ


――――月に運ばれて、月が願いを叶えてくれるんだってさ。



そんな噂話を聞いたのはいつだったか。
平凡な日常に退屈していたクラスメイト達が語る、他愛もない都市伝説。
しかし今、現実に。宗介はその紅い満月を見て、この東京の地に立っている。

「願いが、叶う……?」
「そう、それが聖杯戦争の報酬だ」

呟いた言葉が現実になるように、隻眼の男――宗介のサーヴァントが肯定する。
ドクン、と心臓が早鐘を打つ。
くだらん、迷信だ、何の根拠もない、ただの集団妄想だ。平常な相良宗介であれば疑いなくそう判断しただろう。
しかし、今の宗介は。今の相良宗介には、縋るものが必要だった。
千鳥かなめの死を否定する、奇跡という可能性が。
可能性の実在を証明する鍵は今、この手にある。
刻まれた紋様。令呪。サーヴァントへの絶対命令権。
戦って、勝ち残れば、千鳥かなめは生存する。
揺れ動いていた宗介の瞳がピタリと定まった。

「……あんたは、俺のサーヴァントなのか」
「さっきからそう言ってる。なんだ、やる気が無いのか?」
「否定だ。何としても聖杯を獲得する。それが俺の任務だ」
「任務? いやそうじゃないだろう」

サーヴァントは葉巻を取り出し、煙を吹かす。

「若いの、ここでは誰もお前に命令などしやしない。だからこそ重要なのは、お前自身の意志(センス)だ。
 見たところどこかの兵士なんだろうが、誰に命令された訳でもなく、誰かの道具としてではなく。
 お前は、自分の意志で引き金を引くんだ。それが出来ない奴は戦場に立つべきじゃない」
「俺の……意志?」
「そうだ。俺はマスターに仕えるサーヴァントだが、道具の道具になる気はない。
 お前はどうだ? 誰かの道具か、それとも自分の足で立って戦う戦士か。どっちだ?」

問われ――宗介は思考する。
どこか、長い付き合いのある信頼する上官と、似た雰囲気を持つこの男。


466 : 相良宗介&アサシン ◆X5hLCZajsg :2014/12/28(日) 00:35:37 5oGkFW9U0


「俺もそう暇じゃない。これが最後だ、若いの。お前は戦士か?」

この男の前では、己を偽れない。
ありのままの自分を曝け出し、背中を預けたい。そう思わせる男だ。
ならば、宗介の答えは決まっている。

「肯定だ、少佐。俺は、俺の意志で戦う。
 千鳥を護るためなら、俺はミスリルのSRTではなく、陣代高校2年4組のゴミ係でもなく、相良宗介として引き金を引く。
 そのために、力を貸してくれ……少佐!」

肯定。
誰かの道具としてではなく、相良宗介自身の願いを叶えるために、自分だけの戦いを始める。
宗介は決意と共に背筋を伸ばす。

「……よし、いいだろう! いい目になったじゃないか、若いの。
 いや……名前を教えてくれ、マスター。これから共に戦うんだからな」
「ハッ、相良宗介軍曹であります、少佐!」

染み付いた敬礼の動作。
何故だか、この男に敬礼するのに全く躊躇いはない。

「相良……宗介な。しかしソースケ、さっきからその少佐ってのは何だ?」
「ああ、いや。なんとなくあんたはそう呼ぶのがしっくり来るんだ」
「そうか? まあ真名を隠すためには有効かもしれんが……しかし、少佐かぁ。どうにも昔を思い出すな」
「不快なら別の呼称を考慮するが」
「いや、構わんよ。その呼び方ではどうあっても俺には繋がらんしな、不都合はない。俺もお前を軍曹と呼ばせてもらおう」
「了解だ、少佐」

にやりと笑い、サーヴァントが敬礼を返す。
肩を並べて歩き出す。
それが何とも頼もしい。本当に、少佐と――アンドレイ・カリーニン少佐が隣にいるようだ。
が、決して少佐ではない。

「では行くか、潜友よ! たまにはコンビでの潜入ミッションも悪くない」
「肯定だ……と、そういえばあんたの本当の名前は何というんだ?」
「俺か? そう言えばまだ名乗っていなかったな。俺の名はな……」

サーヴァントがバンダナを締め直す。
ゆっくりと振り向いたその横顔は不敵に笑っている。


「アサシンのサーヴァント。裸の蛇――ネイキッド・スネークだ」


紅い月が輝くその日。
九龍を殺し、蛇と出会った。


467 : 相良宗介&アサシン ◆X5hLCZajsg :2014/12/28(日) 00:36:18 5oGkFW9U0

【マスター】
 相良宗介@フルメタル・パニック

【マスターの願い】
 千鳥かなめを生き返らせる

【weapon】
 コンバットナイフ、拳銃(グロック19)+予備弾倉

【能力・技能】
 高度に訓練された軍人。格闘、狙撃、爆破、AS操縦と、あらゆる破壊工作に通じる。

【人物背景】
 都立陣代大高校2年4組に在籍する高校生兼、対テロ極秘傭兵組織「ミスリル」作戦部西太平洋戦隊に所属する傭兵。
 全世界から優れた人材を登用するミスリルの中でも最精鋭とされる特別対応班(SRT)の一員。コールサインはウルズ7。
 人型兵器アーム・スレイブの操縦にかけては世界屈指の実力を誇り、生身での戦闘力も高い。
 オーバーテクノロジーを記憶する特殊な人種「ウィスパード」とされる少女・千鳥かなめを護衛する任務を受け、陣代高校へと転校・潜入する。
 幼少の頃から戦場で育ったため、平和な日本の一般常識に馴染めず、たびたび破壊行動を実行し周囲に大損害を振りまいている。




【クラス】
 アサシン
【真名】
 ネイキッド・スネーク@メタルギアソリッド3 スネークイーター
【パラメーター】
 筋力D 耐久D 敏捷B 魔力D 幸運A+ 宝具C+
【属性】
 中立・善
【クラススキル】
気配遮断:A++
 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となる。
 通常このスキルは攻撃態勢に移るとランクが大きく下がるが、宝具と組み合わせた初撃に限り、完全な隠密攻撃が可能となる。
【保有スキル】
CQC:A
 スネークが師と共に開発し、生涯を掛けて鍛え上げた技。格闘のみならずナイフや拳銃、壁や地面など様々なオブジェクトを利用した極近距離での戦闘技術体系。
 接近戦を行う際、一時的に敏捷・幸運の値が1ランク上昇する。
サバイバル:C
 物資のない状況であっても、周囲の環境から生存に必要な要素を見つけ出す。山・林などの自然環境の中にいると魔力が急速に回復する。


468 : 相良宗介&アサシン ◆X5hLCZajsg :2014/12/28(日) 00:36:48 5oGkFW9U0

【宝具】
『現地調達(スネーク・ハンド)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 無手で潜入して武器装備を現地で入手する手腕。
 手にした武器にEランク相当の神秘を付加し、宝具として扱える。
 この宝具自体に攻撃能力は皆無であるため、魔力消費も極小である。常時発動型の宝具。

『潜入工作員の友(ダンボール・ボックス)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 スネークが段ボール箱をかぶっている時、あらゆる他者は目の前にダンボール箱が近づいてきてもそれを当然のことと認識し、不審に思わなくなる。
 使用中は気配遮断スキルがEXランクにまで上昇し、初撃のみ完全な隠密先制攻撃が可能となる。
 マスター・サーヴァントを問わず生物はこの認識操作から逃れられないが、実体を消す訳ではないので監視カメラなどには効果が無い。
 使用後に存在が露見した際は、敵を振り切って安全を確保するまで再使用は不可能となる。

『愛国者(パトリオット)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大捕捉:10人
 スネークが師であるザ・ボスから受け継いだ、弾倉が∞の形をした短機関銃。
 装填数は無限であり、弾切れはない。しかし消音はできないため、この銃を使う時は気配遮断スキルが一時封印される。
 この銃を使用していた人物は世界でザ・ボスとスネークの二人だけに限られるため、使用すればほぼ確実に真名が察知されてしまう。
 宝具としても最低限の神秘しか備えていないため有効な宝具とは言い難いが、スネークにとっては何よりも頼りにする相棒であり、師への誓いの証でもある。

【weapon】
 コンバットナイフ…激しい格闘戦の最中でも破損しないよう、耐久性が重視されている。
 45口径ハンドガン…入念にカスタムされたハンドメイドモデル。
【人物背景】
 大戦の英雄ザ・ボスよりボスの称号「ビッグ・ボス」を受け継いだ伝説の傭兵。
 単身でソ連領に侵入、師であり戦友であり親であったザ・ボスを自らの手で抹殺。
 その後も世界各地で様々な紛争に姿を表し、ビッグ・ボスの名を全世界に轟かせていく。
 やがて米軍特殊部隊FOXHOUNDの司令官として活動する一方、武装要塞国家アウターヘブンを創設、その指導者となる。
 自らの遺伝子から生み出されたクローンであるソリッド・スネークと対決、彼の手にかかって死亡する。
 なお、このスネークの肉体は全盛期のネイキッド・スネークのそれである。
【サーヴァントの願い】
 相良宗介のサーヴァントとして「忠を尽くす」。


469 : 名無しさん :2014/12/28(日) 00:37:12 5oGkFW9U0
投下終了です


470 : ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:29:21 /oIxfN320
投下乙です。
自分も投下します


471 : エイサップ鈴木・ランサー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:29:51 /oIxfN320

「止めろ! その槍で東京を焼き払うというのか」

東京上空。躍り出たエイサップは叫びを上げた。
青い空を突き刺すように伸びる摩天楼たち、その先にある者こそ彼が相対すべき敵だ。
白亜の巨人がその存在を響かせている。生物的的なフォルムが陽の光を浴びて照りかえっていた。
白き槍を巨人は街に向けていた。エイサップは身を乗り出して叫ぶ。「やめろ!」

「黙っていろぉぉぉぉぉぉ」

対する巨人が叫びを持って返す。その声は強いエコーがかかっており、元の声色はおろか性別すらつかめない。
しかしその声に込められた想い、いやに生っぽくて恐ろしい願いの丈――その怨念は余すところなく伝わってくる。
東京の空を怨念の声が埋め尽くす。エイサップはただひたむきに己が呼び出してしまったものに呼びかけた。

「その槍はそうやって使うべきものじゃない筈です。これは悪しきオーラ力が為すようなことだ!」
「悪しきものにオーガニック・エンジンは応えない! あのプレートは私に応えてくれたのだ」
「そのオーラは悪ではないないんです! だから! こんなことをやってはいけない!」
「お前の言葉など聞かない。 ただ呼ばれ、流されただけの者! その言葉に私は動じない」
「分かってもらうことすら放棄する。そんな者が正しくあるものか!」
「未熟者があああああ」

巨人が叫びを上げこちらを蹴りあげてくる。
エイサップは舌打ちし、オーラバトラーを駆った。ブウウウウンと翅音が響き、その肢体が駆動する。
深い翠を湛えたオーラバトラーは機敏に反応し、巨人の足を擦り抜けた。
脚で殴ってくるか! エイサップはそこに込められた怨念を間近で感じ、そして己が従者の想いの強さを感じ取る。

オーラバトラー・ナナジンの軌道を整えながら――ナナジンもまた巨躯である――エイサップは自らの従者と相対した。
地上界とバイストンウェルを巻き込んだ戦いの最中、彼は突如として東京上空へと舞い戻ってきてしまった。
しかしそこは彼の知らない東京。そして呼び出してしまった巨人が東京を焼かんとしていた。

「未熟なるマスターはただそこで見ていればいい!
 これは私の願いを叶える戦いだ!」
「そうは行くものか。ただ焼き払うことで叶う願いなど、認める訳にはっ!」
「呼び出した者が語ることではない!」

エイサップの言葉は届かない。巨人はなおもその身に光を纏い東京へと襲いかからんとする。
光が円環となってその身を包む。それはオーラ力とはまた別の――より根源的でオーガニック的な力だ。
エイサップはその発露を止めるべくナナジンを駆った。翅音を立てナナジンは巨人へと接近する。
「邪魔をするなああああ」叫びと共に、巨人が腕と一体化した槍を振るう。
ビシュン! ビシュン! 鞭がしなる音を立てナナジンを襲う。エイサップはそれを必死に擦り抜ける。

「オーラ力よりプリミティブだというのか!」

その攻撃は鮮烈を極めた。サーヴァントとマスターという関係はこの瞬間何の意味も持たなかった。
青く白い槍はナナジンを捉えるべく幾多の攻撃を為してきた。捉えられれば即ち死。エイサップは直感的にそのことを把握する。
研ぎ澄まされた意識に巨人の叫びがこだまする中、彼はそれでも巨人と戦うことを選んだ。


472 : エイサップ鈴木・ランサー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:30:25 /oIxfN320

「死ねよやああああああああああああああ」

強烈な殺意と共に両肩より槍が放たれる。鋭くも柔らかな、矛盾した性質を持ったフィンがナナジンを狙う。
させるか! エイサップは目を見開き、剣を抜く。腰より柄を引き抜き、オーラの刃を解き放つ。
燃える! 陽光を浴びたソードが炎を纏った。ソードを手に、オーラを火に、エイサップは槍と対峙した。

「斬るぞぉぉぉぉぉぉ」

叫びが衝突し、オーラとチャクラが渦を巻いてぶつかった。
オーガニック的な力に対して、エイサップは聖戦士の神秘で対抗する。
バチバチと弾けるような音が東京の空に響く。その下では多くの人が視える。
あそこには人がいる。この街を生き、そして明日を生かんとする者たちが。
そこにこんな力を落す訳には行かない。この力はこんな風にあってはいけないものだ。
オーガニック的ということは、それ即ち破壊とは相反している。それをエイサップは自然と感じ取っていた。

「令呪を以て命ずる!」
「な、何をおおおおおおおお」

オーラとチャクラがぶつかる中、その手を翳した。
ナナジンの視界を通じて巨人が視える。バロン・ズゥと名のついた巨人を止めることができるのは自分の役目だ。
故にエイサップは言った。

「止まれ! その力が振るうべきはあの街じゃない!」

ギン! と音を立て、その手の甲が明滅する。
それは与えられたこの戦争にて印の一角。力を御する象徴だ。
摩訶不思議な力! それをエイサップは行使する。ただ歪んだ力より街を守る為に。

「ぬう!」

絶対の縛りを受け巨人が苦悶の叫びを上げる。
如何な強大な存在であろうと、それに対抗することはできない筈だった。

「こんなもので私の、私が――」

しかし巨人はなおも蠢いた。
その身をぶるぶると震わせ、立ちふさがる障害を跳ね除けんとした。
その様にエイサップは息を呑んだ。なおも動くその願いの意志。その正体は――

「――ジョナサンに。息子にしてあげられなかったことに」

――その言葉と共に、オーガニック的な光が炸裂した。
キイイイイイイン、と甲高い音が割れるように響く。
そしてその怒張したチャクラが輪となって巨体を包み込んだ。

「行けない! そちらが側に行ってしまえば」
「ジョナサンの為にいいいいいいいい」

エイサップの本能的な叫びも届かず、東京の空を光が埋め尽くした。
エイサップのオーラ力すら退け、オーガニックエナジーがナナジンを取り込む。
そしてエイサップは触れた。巨人の――ランサー/バロン・マクシミリアンの光の一端に。

そこにあったのは――母性だ。

ここでないどこか。そこには一人の母と、その息子がいた。
母は母であった。息子もまた母を求めていた。それは人であるということだった。
しかしどこで間違ったのだろうか。二人は噛み合わず、すれ違い、決裂してしまった。
その別れが――母が息子に銃を向けるという悲劇になって帰ってきた。

「これが……貴方の願いだというのか」

エイサップの口からは思わず言葉が漏れていた。
エナジーが記憶となって意識を瞬く間に走っていく。
流れるように繰り広げられた愛憎劇。それを通してエイサップは巨人が母であると知った。

そう母は、息子に銃を向けた母は、それでもなお母であった。あらんとした。
それ故に彼女は全てを捨て、息子へと走った。その願いの重さにプレートが――宇宙の孤児(オルファン)が応えたのだ。
母の想いがリバイバルを呼び、巨人となってカタチを得た。
――それこそがこの力の正体! 何とオーガニック的で原始的な想いの丈か。


473 : エイサップ鈴木・ランサー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:30:50 /oIxfN320

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「それで貴方はこんな力を……!」

母は叫びを上げる。そしてその身に更なる光を、より強きエナジーを、遥かな巨躯として体現する。
ハイパー化。令呪ですら留められない強烈な願いの光。そういうものに、エイサップは触れてしまったのだ。

「ジョナサンの為に死ねえええええええええええええ」

母の叫びが東京にこだまする。その光を持って東京を焼き、戦争に勝利する。そのつもりであるか。
それを理解した上で、エイサップは臆さず口を開いた。

「駄目だぁぁぁぁ!」
「息子を想う母の気持ち! そういうものを私は振るう!」
「駄目です! 貴方のそれは、ただそうありかったと思っているだけです。
 母でありたいではない。母でありたかった――未来を創るではない。過去を埋めようとするものだ。
 過去を力にして振るってはいけないんです。それは未来を滅ぼす行いだ!」
「私も、ジョナサンも、過去はつらいものでしかなかった!」
「だからこそ未来を向いて居なくてはならないんです。間違ってもそんな風に振るっていいものじゃない。
 親と子は傷をなめ合うような関係じゃない!」

エイサップの言葉に迷いはない。
彼もまた親との距離を見失っていた者だった。
不貞の仲でできた子ども。アメリカと日本という、異国の血を混ぜ合わせた者。
そんなのだから、エイサップは自分の居場所というものがあやふやだった。
だが、それでも母は母だ。父は父だ。それだけのものだ。
認められない関係を、親を求める心を力にして振るってはいけない――!

「私はジョナサンの為に戦うことを止める! ただそれだけでいい。バロンであればいいのだ」
「その想いは間違っても悪じゃないんです。決して悪にしてはいけないものだ」
「私は……私はクリスマスすら祝えなかった――!
 8歳と9歳と10歳と、12歳と13歳との時も――カード一つ渡せなかった」
「それを想う心こそ、その過去を忘れられぬつらさこそ、貴方の言う力でしょう! 
 それを戦争に使っちゃ駄目だぁぁぁぁぁぁぁ!」

言葉と言葉をぶつけあう。迸るエナジーに載せ、言葉が空間に広がっていく。
エイサップはバロンと名乗る母に相対し、その力を留めんとした。

「あの子は……あの子はただ悲しかっただけなのに、私は気づいていたというのに――」
「待つ子のつらさもあれば、待たせる母のつらさもあったでしょう。
 それをまず思い出すんです!」
「思い出すものなど――!」

巨人、バロン・ズゥが再び動かんとする。チャクラ・エクステンションが高まっていく。
東京を焼き、息子への愛を力にして願いを叶えようとした。

そんなことをさせてはいけない。
強い意志を持ってエイサップは再び手をかざした。
令呪にオーラ力を乗せる。そして再び言うのだ――母よ、立ち止まれ。

「私はバロン・マクシミリアンだ!」

自らを縛らんとするオーラを、母はそう言って跳ね除けようとした。
だが、認めてなるものか。
息子想う母の心が、街を焼くようなものであってはいけない――

「仮面を被って親ができるものかぁぁぁぁぁぁ」

その言葉と共に、巨人の光は縛られ、収束していった――


474 : エイサップ鈴木・ランサー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:31:21 /oIxfN320










街に落ちたエイサップは「ン……」とうめきを漏らした。
土の匂いがする。どこかで人の雑踏も聞こえた。
そして意識が戻ったとき、はっ、として彼は立ち上がった。

そこは東京だった。
見慣れた東京の街。人がいて、生活している地上界。
そこに彼は帰ってきたのだ。

(いや)

エイサップは気付いた。帰ってきたのではない。
服は聖戦士のそれであるし、何より消耗が先の戦いが現実であったことを告げていた。
空を見上げた。しかしそこには何もない。バロン・ズゥもオーラバトラーも、全て消え去り元通りの空がある。

どうやらあの光に呑みこまれ、二つのマシンは消え去ったらしい。
バロン・ズゥ――ランサーの方はその性質上再び持ってくることも可能かもしれない。

(そうだ――あの人は)

聖杯戦争。エイサップが突如として巻き込まれた事態と、そしてそこで出会った一人の母。
全ては唐突だった。しかし本能的に理解していた。聖杯なるものの真意は掴めずとも、オーラ力が呼応して彼女を呼んだことは分かった。
そして呼ばれた彼女は、その願いを叶えるべく東京を火の海に包もうとした。
それを止める為に、自分は戦い、そして止めたのだ。

目を瞑り、力の流れを感じ取る。
聖戦士としてのオーラ力、それとオーガニック・エナジーとの接続が確かに確認されると、エイサップは思わず息を吐いた。
大丈夫だ。彼女はまだ近くにいる。ただ眠っているだけだ。

(これから……一体どうなるんだ)

エイサップは自身の身に起こったことに混乱していた。
突如としてバイストンウェルに呼ばれ、かと思うと唐突にまた別の東京に呼ばれた。
しかも呼ばれるままに戦ってしまった。己の従者の暴走を止める為に、令呪と呼ばれるものを二つも行使してしまった。

とはいえ――それでもこの東京を守ったことに後悔はなかった。
そこにある人々の生活を守ることができた。違う東京であっても、エイサップにとって知らない街ではない。
バロン・ズゥとナナジンの戦いは目立つものであっただろうが、実時間にしては数分。被害もほとんどなかったことだろうし、東京の日常はそのままだろう。

そして何より子を想う母の力で街を焼かないで済んだ。
それは絶対に正しいことだったとエイサップは感じていた。


475 : エイサップ鈴木・ランサー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:31:39 /oIxfN320


【クラス】ランサー
【真名】バロン・マクシミリアン(アノーア・マコーミック)
【属性】中立・善

【ステータス】
筋力:B- 耐久:B- 敏捷:B- 魔力:C 幸運:E 宝具:A-

【クラス別スキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
抗体:B
オルファンのアンチボディとなる適正。
ランクが低いと不安や恐怖を増幅させられ拒否反応を示すが、高いと攻撃的かつ野心的になり、オルファンを盲従し他人への関心が薄れ独善的になる。

チャクラ:B
物理的破壊効果を持つ輝きをアンチボディを通して扱うことができる。
瞬間移動や交信等、さまざまな不可思議な効果も生み出す。パイロットの精神状態などで威力が変わる。

母の愛:A+
子を想う母の心。決して揺るがぬ意志。限界を越えてもなお戦意は衰えない。
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。

【宝具】
『母から、息子に(ジョナサン・バロンズゥ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:10人
バロンと化したランサーがジョナサンへと与えた新たなアンチボディ。母の想いにプレートが応え、リバイバルした。
宇宙を漂う孤児、オルファンのプレートから生み出された存在。「オーガニック・マシン」とも呼ばれる。
ブレンパワードとグランチャーの二種がいるが、バロンズゥはグランチャーの変種とも言うべき存在で、オルファンの抗体化を促進するなどの特徴は強化された形で受け継いでいる。
この機体はバロンがリバイバルさせた機体をジョナサンに与えたもの。ソードエクステンションなどの手持ち武器はなく、胸部から直接チャクラ光を照射する。
また、両肩のひれ部分(フィン)は伸縮自在の格闘兵器であり、これが槍となって相手を絡め取るように切り刻む。

ランサーのステータスはこの宝具を使用している際のもの。
マイナス補正がついているのは、エイサップとの激突で宝具自体にダメージを受けた為。
ランサー自身も消耗した今、宝具自体も全長3メートル大にまで縮んでしまっている。


【人物背景】
『ブレンパワード』の登場人物。立ちふさがった最後の敵。
物語後半に突如として現れた謎の人物で、仮面や鎧・マントを身に着け、声もボイスチェンジャーで変えている。
自分が見込んだジョナサンにオルファンを掌握させようと目論んでおり、自身の所有するバロンズゥを与えるなど強く肩入れしている。
……その正体は行方不明になっていたノヴィス・ノア初代艦長でジョナサンの実母アノーア・マコーミックである。
ジョナサンと再会し、彼の為に地位を捨て仮面を被り彼を支援しようとしていた。
最終決戦では自らバロンズゥに乗り込み、その妄執から機体は巨大化しハイパーバロンズゥと化し、チャクラエクステンションすらものともしない圧倒的な戦闘能力を見せる。
無理にエナジーを消耗した末にハイパーバロンズゥは崩壊、ハイパー化の代償で心身ともに激しく衰弱しジョナサンに連れられる形で戦場を去った。
最後はジョナサンと共にオルファンの巣立ちを見つめていた。仮面を取り息子と二人で。

【サーヴァントとしての願い】
ジョナサンの為に。


476 : エイサップ鈴木・ランサー ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:31:52 /oIxfN320


【マスター】
エイサップ鈴木

【マスターとしての願い】
???

【能力・技能】
・オーラ力(ちから)
バイストン・ウェルの人間が扱う生体エネルギー。
地上人であり聖戦士であるエイサップは強いオーラ力を持っている。
魔力の代用となるかもしれない。

・ナナジン
彼の駆るオーラバトラー。
東京に来る直前まで乗っていた為、一緒に召喚された。
が、バロンズゥとの激突でどこかへ飛んで行ってしまった。

【人物背景】
アニメ版『リーンの翼』の主人公。
日本・山口県在住の大学浪人中のフリーター。日本人の母と、アメリカ人の父を持つ。
友人である朗利と金本がアメリカ軍の基地へテロを起こしに行った事で、バイストン・ウェルから召喚されたオーラシップと遭遇。
自身もバイストン・ウェルへと召喚され聖戦士となる。


477 : ◆Ee.E0P6Y2U :2014/12/28(日) 01:32:10 /oIxfN320
投下終了です。


478 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:45:59 cpg9Oco60
皆様投下乙です。自分も投下します。


479 : 金田正太郎&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:47:49 cpg9Oco60



 『嵐』のように荒れ狂うエネルギーが砕いた、『瓦礫』と燃え盛る『炎』の中。

 あいつの記憶の『欠片』が頭に雪崩れ込み、あの日の『街』の面影が『竜巻』のように渦巻く。

 これは『力』……そして『光』。何もかも滅茶苦茶にしちまいそうな。

 『奴ら』の仕業なのか、これは。あの年寄りみたいなガキ共が引き起こしたことなのか?

 あいつの力を神輿に担いだタチの悪い『祭り』。『空』から降り注いだ光の柱。

 何もかも、あいつを中心に起こっちまったことだ。

 憎くないかっていったら、そりゃあ嘘だ。山形は死んじまった。許せるわけがねえ。

 だから俺が決着を付けてやるって思った。だからここへ来たんだ。


 それでも……それでもよォ。


 なあ、鉄雄。

 お前は俺のこと煙たがってたかも知れねェが、俺にとってお前は、やっぱり『仲間』だったんだぜ?

 だからさ、お前が困ってる時は……俺ァ『走る』ことしか出来なかったんだよ。



   ▼  ▼  ▼


480 : 金田正太郎&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:48:31 cpg9Oco60


「そこの暴走バイク、止まりなさーい! こら、止まらんか!」

 深夜のハイウェイの空気を切り裂くようなサイレン、赤いパトランプ、スピーカー越しの怒声。
 それら全てを置き去りにして、真紅のバイクがテールランプの残像を残して疾駆する。
 一般的なバイクよりも二回り近くは大きそうなその車体は、圧倒的な加速で警察の車両を寄せ付けない。
 それだけの性能、並みの乗り手ならば振り回されそうなものだが、シートに跨るまだ若いその少年は違った。
 ハンドルを切る動きにも、アクセルを吹かす判断にも、まるで躊躇いがない。
 一言で言うならば、度胸がある。今まで幾度となく走りこんできた、スピードの中で生きてきた人間の凄みだ。
 そんな少年の顔にも、流石に大気を震わすローター音と空中から投射されたサーチライトには焦りが浮かんだ。

「うわっヘリまで出てきやがった! ねばねばねばねばと納豆みてえだ、いい加減しつこすぎンじゃないのォ!?」

 少年――金田正太郎は、どうせ聞こえないと分かっていながら空中から追跡してくるヘリに声を張り上げた。
 ちょっとこの『新しい相棒』の試し乗りをしてみたらこれだ。ちょっとばかしスピード出しただけじゃねえか。
 先行車の合間を縫うように車体を倒し込みながら、金田は内心毒づいた。

 金田のいた東京――第三次世界大戦の後に再建された新首都『ネオ東京』のお巡り達に比べれば、
 この『崩壊前の東京』の警察はお行儀がいいもんだと高をくくっていたのが間違いだった。
 いつの時代もポリ公の頭の固いのは共通らしく、聞き分けがまるでないのもそっくりそのままと来た。
 無理やり撒こうにも、金田はこのへんのハイウェイの繋がりについてまだ明るくない。
 スピードだけなら振り切るぐらいの加速は出来るだろうがその後が面倒だな、そう思っていた矢先。

「――正太郎? 正太郎、聞こえる?」

 バイクのハンドル部に備え付けられたモニターに、エメラルドグリーンがかった銀髪の少女が映る。
 誰もが見惚れるであろう美貌を備えたその少女に、しかし金田は怒鳴り声で返した。

「正太郎正太郎って、何度も何度も下の名前で呼ぶンじゃねえよ!」
「あら、どうして?」
「呼ばれ慣れてねえから、その、なんだ……むず痒いからよ」
「ふふっ」
「あっ笑ったな! ンなこたァどうでもいいだろ、何の用だよ!」

 どこかいたずらっぽい笑みを浮かべた少女の姿が金田の言葉に応えるように消え、代わりにモニターには地図が表示された。
 それがこのハイウェイのナビゲートだというのは、このバイクを指すマーカーの存在から読み取れる。
 モニターからは姿を消したものの、彼女の言葉は引き続き金田の頭のなかに直接響いていた。

 モニターからは姿を消したものの、彼女の言葉は引き続き金田の頭のなかに直接響いていた。

『この速度だと30秒後、立体交差があるわ。下の車線に飛び降りてそのまま地下道に入って』
「なるほど、そうすりゃ撒けるか……って飛び降りる!? 正気かァ!?」
『あら、この機体の本当の性能を試すいい機会じゃない?』
「そりゃあどこかで試すつもりではいたけどよォ……しかたねえ、やるしかねえか!」

 ちらりとバックミラーに目をやると、後続の白バイはかなり後方に遅れていた。
 あとはヘリさえ振り切れば、確かにお巡り達はこちらを完全に見失うだろう。
 そう考えているうちにも、彼女が指定したポイントが迫り来る。タイミングは一瞬。ぶっつけ本番だ。


481 : 金田正太郎&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:49:10 cpg9Oco60

 アクセルを全開。バイクは度胸と思い切りだ。金田は吠えた。

「行くぜ『ガーランド』! だあああああああああああああああああああッ!!!」

 瞬間、マニューバクラフト『ガーランド』の真紅のボディに劇的な変化が起きた。
 後方のカウルがせり出し、金田の体をシートごと覆うように移動する。
 前後の両輪は背後に折り畳まれ、代わりに四肢がせり出してスラスターを噴射した。
 頭部ユニットのカメラが青く輝き、ここに『ガーランド』は人型形態マニューバスレイヴへと変形したのだ。
 狭苦しいシートで金田が歓声を上げる。

「ほ、本当に変形しやがった!」
「正太郎!」
「わかってらァ!」

 両脚でハイウェイの路面を踏み締めて跳躍、全身のスラスターをフル噴射して空中で方向転換。
 バイクの常識を完全に凌駕した機動性を発揮したガーランドは、強引に進路を変えて下の車線へと降り立った。
 接地する直前に再びマニューバクラフト形態へ変形、超速回転する二輪が再び路面を捉える。
 恐らくは呆然としているだろう警察車両達を置き去りにして地上へ降りるコースに乗り、そのまま地下道へ。

『車線左側に地図に載ってない連絡ルートがあるわ。そこを通りましょう。警察の目撃情報は宝具で揉み消すから安心して』

 少女のナビゲートを頼りに地下のバイパスを経由し、金田正太郎は警察の目から消えた。



   ▼  ▼  ▼


 ――背中ごしにセンチメンタル 始まるわ

  ――瞳に緑のパワーが走るの

   ――あの夜 星さえ流れる Oh! Destiny


 繁華街のスクランブル交差点を見下ろすモニターに、流行りのアイドルのライブ映像が流れている。
 流れる銀髪。無邪気さと物憂さ、少女性と成熟性をひとつに内包するその不思議な魅力。
 ポップスからバラードまで歌い分けるその歌唱力も相まって、モニターに映る彼女を目にしない日はない。

 ――『時祭イヴ』。

 彼女こそは東京で今一番有名なアイドルにして――そして金田正太郎のサーヴァントでもある。
 
「いやぁ、俺のバイクにゃ負けるがなかなかゴキゲンなマシンじゃねえの。ロボットになるのもクールだな」
『良かった。正太郎に気に入ってもらえて、私も嬉しいわ』
「……あのさァ、その名前で呼ぶの何とかなンねえの? 金田とか、金田クンでもいいんだぜ?」
『名前で呼ばれるの、いや?』
「そういうんじゃねェけどよ」
『私はいい名前だと思うわ』
「…………」

 ガーランドを路肩に停めて、壁に寄りかかりながら金田は渋い顔で炭酸飲料を啜る。
 この手の「お上品な女の子」は金田が育ったネオ東京の掃き溜めにはいなかったタイプであり、どうも調子を狂わされる。
 調子が狂うといえば、今まさに『生放送』で歌っているはずのイヴと念話で話している事自体が大概奇妙だが。


482 : 金田正太郎&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:49:47 cpg9Oco60

(時祭イヴ。東京が丸ごと中に入った宇宙船のバーチャルアイドル。だから騎乗兵の英霊、ねえ)

 金田としては自分でバイクに乗るわけでもないやつがライダーを名乗るというのが釈然としないが、それはともかく。
 彼女、ライダーのサーヴァント時祭イヴは、何から何まで例外的なサーヴァントであるらしい。

 第一に、彼女は本来人間ではない。実在の人間を人格ベースにはしているが、あくまで自我を持ったプログラムである。
 だからこうして「歌番組に出演」という体を取りながら、同時に金田と会話するくらいは容易いことである。
 第二に、真名を秘匿するのが鉄則のサーヴァントでありながら、彼女の存在は東京中の誰もが知っている。
 もっともサーヴァントだと分かっているのは金田ぐらいだろうが、アイドルとしての彼女を知らない都民はほぼいないだろう。
 第三に――ここで話が最初に戻るが、彼女は騎乗の逸話を持つ英霊ではない。
 彼女が乗っていたのはあくまで宇宙船であり、端末であるガーランドに乗って戦うのはマスターである金田なのだ。

 戦う。すなわち、数多のマスターが己の願いを懸けてサーヴァントと共に戦う、この聖杯戦争で。

(なんでも願いが叶うなんて昔話じゃあるまいしって笑っちまうとこだが、あのアキラの力ってやつを見たあとじゃ、やっぱり信じちまうよなあ……)

 常識を越えた力はある。あるのだ。金田はそれを実感していた。
 あの力の発現の光の中で一瞬脳裏に映った「赤い月」が、ネオ東京のアバズレどもが噂していた願いを叶えるヨタ話の真実だったとして。
 願いを叶えるなんざ嘘っぱちだとは今は言えないだろう。何よりこの崩壊前の東京が、サーヴァント時祭イヴがその証拠だ。
 超常の者達が集う聖杯戦争に、何の因果か金田正太郎は巻き込まれた。その事実。

『正太郎……いえ、マスター。マスターがこの赤い月の聖杯に託した願い、聞いてもいいかしら?』

 ふと、改まった口調でイヴが訪ねてきた。
 願いと言われても、金田はほとんど巻き込まれてここへ来たようなものだ。少しだけ首をひねり、

「願いなんて思いつかねぇなあ。他のマスターみんなぶっ殺して叶えるっつーのも寝覚め悪ィし」

 ただ、と続ける。

「……ただ、後悔みたいなもンは、あるのかも知れねえな」
『後悔?』
「ああ。あいつが……鉄雄が俺に言ったんだよ。『金田、助けて、助けて』ってな」

 赤い月が、願いを持つ者を引き入れるのだという。
 その時に金田が抱いていた願いがあるとしたら、それはきっと、そのことだろう。
 確かに鉄雄はいつまで経ってもガキで、そのくせ力に振り回されて、それに、山形の仇だ。
 だけど、それでもあいつは、と金田は思う。あいつは、確かに友達だったのだ。

『それじゃあ、鉄雄さんを救うのが、マスターが聖杯に懸ける願い?』
「さあな。まだ頭ン中すっきりしてねえんだよ。これからゆっくり纏めるさ」
『その間に他のマスターと戦うことになったら?』
「そン時ゃその時だ。ナメられっぱなしで健康優良不良少年が務まるかよ」

 冗談のつもりではなかったのだが、イヴはその言葉を聞いて小さくふふっと笑った。


483 : 金田正太郎&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:50:12 cpg9Oco60

「ねえ、正太郎。私、正太郎みたいな人、知ってるわ」
「俺みたいな奴?」
「若さを何かに叩きつけるみたいに生きていた人ね。立ち向かうことしか知らない、愚かだけど真っ直ぐな人」

 遠回しに馬鹿にされてるのではないかと思ったが、懐かしむようなイヴの声は何処か優しい響きをしていた。
 本当にプログラムで作られた紛い物の人格なのかと不思議になるくらいだ。

「正太郎。私は聖杯戦争を通して、貴方のことが知りたい。私に願いがあるとしたら、それはきっと人を知ること」

 その真摯な言葉に金田は何か気の利いた返事を虚空に探し、結局は頭をがしがしと掻いて、

「まぁ、まずは他のマスター連中を見つけねえとな。あ、そういやひょっとして俺も学校行かなきゃいけないのか?」

 照れ隠しめいて適当なことを言いながらガーランドに跨がり、キーを回す。
 エンジンの掛かった車体をいざ発進させようとして、ふとその前にイヴに声を掛けた。

「そういや、ちょっと気になったんだけどさ」
『なに?』
「メガゾーンにしろ、この東京にしろさ、なんでこの時代なんだ? 俺達にしちゃ一昔前って感じだぜ」

 崩壊前の旧東京の街並みを見渡しながらそう訊くと、イヴは一瞬だけ言い淀み、

「……きっとこの時代が、人々にとって一番平和な時代だったのでしょう」
「一番平和な時代、かァ……」

 ネオ東京に生きる自分達の知らない、一番平和な時代の東京。

 それを実感するためには、きっと金田はまだこの東京を知らなさ過ぎるのだろう。
 この時代を知るためにも寝る前にもうひとっ走りするか。そう思う金田を乗せ、東京の風を切ってガーランドは加速していった。


484 : 金田正太郎&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:50:38 cpg9Oco60
【クラス】
ライダー

【真名】
時祭イヴ@メガゾーン23

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力C 幸運C 宝具A

【属性】
秩序・善



【クラススキル】
騎乗:D
騎乗の才能。機械であればそれなりに乗りこなせるが、生物の場合は効果が落ちる。
決して騎乗に長けていないこの英霊がライダーとして召喚されたのは、かつて「東京を内包する船」に乗っていたから。

対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。


【保有スキル】

電子の歌姫:A
バーチャルアイドルとしての存在感。
イヴは東京に暮らす人々からは実在の人物と信じられており、彼らに対して強い影響力を持つ。
ただしその知名度ゆえ、サーヴァントとして真名を秘匿することが出来ない。

プロパガンダ:B
街に流れる情報をコントロールするスキル。
メディアを通して東京都内に情報を発信したり、逆に封殺、あるいは恣意的な情報による民衆の煽動などが可能。
一時バハムートを制圧した軍がイヴを傀儡として行った東京都民への情報統制が、イヴ自身のスキルとして定着したもの。


星の開拓者:B

人類史のターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。

難航・難行に対して「不可能なまま」「実現可能な出来事」にするための有利な補正が働く。

「地球への人類帰還」という難行を成し遂げるため尽力した彼女は、人間ではないにも関わらずこのスキルを有している。



【宝具】

『疾駆する衝動(ガーランド)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:1人
ライダーの端末であるマニューバクラフト。赤いバイク形態から、人型ロボットへと変形する。
人型形態(マニューバスレイブ)での全高は3.8メートルであり、操縦者は胴体内部へと収納される。
バイク形態でも破格のスペックを持つが、変形すると操縦者の脳波を読み取り瞬時に最適な戦闘行動が可能。
武装はレーザーオーブガン一丁を除くと格闘のみだが、優れた操縦者であればサーヴァントとも渡り合える。

なお、ライダーの宝具としては特異だが、この宝具に騎乗するのは基本的にライダーではなく人間である。
機体の性能を最大限に引き出せるのは直接ライダーと魔力パスの繋がっているマスターだが、操縦自体は誰でも可能。


『東京幻影(バハムート)』
ランク:A 種別:対都市宝具 レンジ:東京全域(本来) 最大捕捉:東京全域(本来)
内部に1980年代の東京を再現した宇宙船『メガゾーン23』の中枢であった、砂時計型の巨大コンピュータ。
本来は時祭イヴの本体であり、EVEプログラム自体はその一部に過ぎないが、イヴが英霊となったため主従が逆転し宝具と化している。
この『東京』の何処か(おそらくは地下空間)に存在し、ライダーはこの宝具が破壊された場合プログラムとしての死を迎え消滅する。
逆に言えば時祭イヴとしての姿は実体を持ったホログラムのようなものに過ぎず、何度でも再構築が可能である。

この宝具の機能は東京の都市機能の制御であり、ライダーはこの東京という都市のシステムそのものを支配下に置ける。
例えば街中の監視システムから情報を獲得し、ネットワークで制御されている機械に対して干渉することも出来る。
電子の歌姫スキルによる影響力、プロパガンダスキルによる情報統制と合わせ、情報戦で徹底的に上位に立つことが可能である。


しかし本来の支配能力は東京全域に及ぶはずだが、とある魔人の固有結界『帝都物語』により東京の在り方が変質させられたため、弱体化。
効果を十全に発揮できるのは宝具『疾駆する衝動(ガーランド)』を中心としたエリアに限られ、それ以遠に関しては相応の魔力が必要となる。


485 : 金田正太郎&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:50:59 cpg9Oco60
【weapon】
無し。
騎乗物の宝具ですら彼女自身の武器ではない。


【人物背景】

伝説的OVA作品『メガゾーン23』に登場するバーチャルアイドル。
1980年代の東京を内部に再現した全長100km以上の超大型宇宙船メガゾーン第23版艦『MZ23』。
それを制御するコンピュータ『バハムート』に搭載された人格プログラムであり、その代弁者である。
MZ23内部の東京に暮らす住民からは実在のアイドルだと信じられているが、実際はバハムートや管理側の人間によって制御されている。
しかし本当は自我を持っており、ロボットに変形するバイク『ガーランド』を通して東京の住人と接触しようとしていた。
その真の存在意義は人間のライフデータを入手して地球管理システムに送信し、地球に帰還するに相応しいと認めさせること。
一時は軍によるバハムートの制圧で軍の傀儡と化すが、人格データだけをバハムートの開かずの間に隔離することで自我を保つ。
最期は地球防衛システムADAMによる攻撃を受けMZ23が崩壊していく中、持てる力の全てを投じ人類を地上に帰還させた。

本来はプログラムであるため英霊の座に昇るような存在では無いが、MZ23内の東京都民によって十分な信仰が集まっていたこと、
そして単なるプログラムの粋を超えて人類を地球に帰還させるという偉業を達成させたため、例外的にサーヴァントの資格を満たした。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯に懸ける願いは無い。
聖杯戦争を通して、メガゾーンではないこの東京の人間の在り方を知りたいと考えている。



【マスター】
金田正太郎@AKIRA


【マスターとしての願い】

不明。鉄雄を助けたい?

【weapon】
バッテリー式のレーザー砲を所持。
威力は高いが、電力の消費が激しすぎて連発できない。

【能力・技能】

バイクの運転に関しては非常に高い技量を持ち、また度胸のある走りをする。
身体能力そのものも高い。

【人物背景】


『AKIRA』における主人公のひとり。
第三次大戦後に復興したネオ東京で暴走族を束ねる、自称『健康優良不良少年』。
もうひとりの主人公である島鉄雄とは児童養護施設の頃からの兄弟分である。
とある事件をきっかけに超能力に目覚めた鉄雄を救出するため奔走するが、豹変した鉄雄はそれを拒絶。
友人の山形まで殺害され、自分の手で決着を着けることを決意した金田は、単身鉄雄の元に向かう。
出典は劇場アニメ版であり、アキラの力の解放に巻き込まれた直後に赤い月に転送された。

【方針】
とりあえず走りながら考える。


486 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/28(日) 02:51:15 cpg9Oco60
投下終了しました。


487 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/28(日) 03:27:41 cC55lirE0
投下します。


488 : 花村紅緒&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/28(日) 03:28:14 cC55lirE0


 時は大正、浪漫の時代──。

(少尉は死んでしまったんだわ……)

 溢れる浪漫と共に、闘争と権力と、まだ誰も知らない災害の萌芽が芽生え始めていた激動の時代──。

(シベリアで、部下を庇って……)

 東京。男勝りで、「はいからさん」と呼ばれた一人の少女は──。

(少尉にもう一度会いたい、そのためなら私は……)

 婚約者の死に、誰よりも純真な願いを抱いた──。


 ……そう、花村紅緒は悲劇の物語のヒロインである。
 今も、まるでジュリエットのように、両手を重ねて目には涙を浮かべている。
 シベリア出兵で部下の為に体を張って、寒い大地でひとり朽ちて死んでしまった愛しい人に想いを馳せて。
 その人の命がもう一度この世界に蘇るならばどんな事だってすると、紅緒はその時心に誓った。
 だから、天国のあの人に、せめて夢に出てくれるように。
 そして、できるのならその夢の中に自分も連れていってくれるように……。

 これで三日ほど、大喰らいでつくねが大好きな彼女もほとんど食事を取らず、翌日まで眠れない夜を過ごしている。

 ……今は、思いっきり昼間だが。

 どこかの公園の湖の辺で、そんな風にしてアヒルの行進を見ている紅緒であった。
 ぼけーっと、アヒルの数を数えながら、もう殆ど呆けて生気も失っている。
 着付け、髪型、化粧、何もかもが微妙。しかし、万が一、何かの間違いで伊集院少尉が目の前に現れてもいいのに、本人なりの努力をした結果だった。
 幽霊でもいい。それならば、一緒に連れていってくれたっていいのに……。

 聞こえてくる民衆の声。どこかの金持ちの婦人たち。
 ああ、どうせこの私の悲しみも知らずに、どうでもいい話に花を咲かせているのだろうな……。



「ねえ、紅い満月の話って知っていらっしゃる?」

「願いが叶えてくれるんですって?」

「そうですわ。滅多に見る事ができないという話ですけど……」

「一度でいいから、そんな綺麗な物、見てみたいですわね」



 花村紅緒は、大好物のつくねでも見かけたように目を見開き、落ち込んでいたシリアス顔を思いっきり崩して、歯をとがらせて婦人たちに訊いた。

「そのハナシ、詳しくお聞かせ願いたい!!」

 この時代、誰よりも強い願いを持ったハイカラさんが、翌の夜に紅い満月を見る事になるというのは必然だったかもしれない。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


489 : 花村紅緒&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/28(日) 03:28:28 cC55lirE0



 ────花村紅緒が紅い満月を見てから暫く。


 彼女の経っている場所は、大正の町並みから、いつの間にか、異常な発展を遂げた東京の姿に変わっていた。
 まるで、江戸川端散歩先生の少年小説の世界である。
 木製でも煉瓦作りでもない材質で作られた背の高い建物を見上げ、次に一面に敷き詰められた灰色の固い石を見下げる。
 金持ちの家を渡り歩いてきた彼女ですら、それが町中ともなると見た事がない。

 夜中、真っ暗なはずの道には街灯。どんな家にも必ず電気がある。
 紅緒が軽く叩いても割れない頑丈な窓ガラス。
 なんと、この地面の下を走っているという地下鉄なる電車とトンネル。

 ここがどうやって出来ているのか、彼女は現代の最低限の知識を使って知っていたし、この場所での自分の役割も悟っていた。
 しかし、それでもやはりはしゃがずにはいられない。
 あの東洋の小国に過ぎないはずの故国が、100年後には驚くべき科学都市に!
 それこそ、自分が知っている全ての人を連れてきたいほどの衝撃であった。

「ねえ、ランサー。見て見て! あの巨大な建物! 有名なビルティングなのかしら!」

 彼女が召喚したサーヴァント、ランサーも紅緒の奔放ぶりに驚きを隠せない様子である。
 早速だが、ランサーの額には脂汗が浮かんでいる。

 流石は激動の時代に「はいからさん」と呼ばれたマスターである。
 女の身でありながら、その元気は尽きる事がまるでない。
 ましてや、大正時代なんていう大昔の人間がこんなにも元気な人間だったとは……

 ランサーこと、宇宙の騎士テッカマン──南城二も思ってもみなかっただろう。

(……ただのビルだろ)

 彼のいる未来の地球はとうに、生物が長く住めないほど汚染され、人類は宇宙へとその住処を映そうとしていた。
 このビル群も、ランサーが生きる時代には既に色褪せ、苔が蒸し、くたびれたように傾いている頃である。
 だから、ある意味では珍しかったが、紅緒が指差すビルが特別有名な物ではない事も知っていたし、内心では嘆息している。
 ビルさえない時代の紅緒と、ビルが滅んだ時代のランサー……。

 そうだ、数年後、地球は滅んでしまう……。
 人類の故郷を救う最後の一手、「クリーン・アース計画」も失敗に終わってしまった。
 宇宙進出を目指した人類には、強敵・悪党星団ワルダスターが立ちふさがった。
 彼らの蛮行が、常に地球人の発展を妨害する。彼らは、地球を得る為に地球人を皆殺しにしようとしているのだ。

 そんな背景があってか、彼にとっても、このビルの群れは物珍しいし、感慨深い物でもあるが、ここまではしゃぐ事ではないだろうと思っている。

「あのビルをゴジラがブッ壊して、モスラが子供産んで、ラドンと戦って、キングギドラが……」

「ああ、全く! もっと静かにできないのか! 気が散る!」

 そんな英霊の頭を悩ませる、このハイカラ少女。……この女、果たして女か?
 こんな人間の願いが、「婚約者の命を甦らせる」なのだから、ランサーも不可解でならない。
 今のところ、ランサーも全く、この女を「女」として見ようと思えないのである。
 婚約者とやらは、果たして現実の存在か? 最初からこの世に存在しないのではないか? もしいたとして、それはおそらく悪趣味な異星人に違いない。

「なーんだ、みんな大好きカッツェ様じゃなくてガッチャマンのくせに。失礼な事考えてる」

「ガッチャマンじゃない、俺はテッカマンだ!」

 怒りそうになるランサーであった。
 何故、大正時代の人間がガッチャマンを知っているのかは全く謎である。
 とにかく、何度も訂正しつつ、「鉄火巻き」だとかまた間違いが起きて、この少女との会話が徒労になる理由を増やしていた。

「あのですね。少尉は、異星人なんかじゃありません! もっともーっと、ステキな人なんだから……」

 ランサーの考えをここまで読んでいるのもまた謎だ。もしかすれば、ランサーの方が独り言のようにぶつぶつ呟いていたのかもしれない。
 紅緒が幸せに浸る姿を眺めていたが、すぐに彼女の表情は暗い面持ちに変わった。
 のろけ話をしようにも、相手はもう死んでしまっているというのだ。彼女自身、それを忘れかけていたのだろう。
 涙が出るより前に、話題を逸らそうとしたのか、紅緒はランサーに訊いた。


490 : 花村紅緒&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/28(日) 03:28:45 cC55lirE0

「……ねえ、ランサーさん、あなたってどうして、そんなに何でも異星人だって疑ってかかるの?」

 先ほどから、紅緒の事も「異星人」扱いしており、今度は伊集院だ。
 ランサーが「南城二」という名前である事や、更に未来の人間である事、テッカマンなる存在で悪党星団ワルダスターなる悪そうな名前の悪役と戦っているスーパーヒーローである事は訊かされている。
 異星人が実在していた事は驚くべきビッグニュースだ。これまた、紅緒が元の世界に持ち帰りたい話である。

 しかし、だからといって疑いすぎではないだろうか。
 もはや、異星人に対する憎しみさえ感じる次元の話であった。

「……」

 そこまで訊かれて、ランサーの方も、理由を答える事にした。
 隠し立てする必要はない。ランサーの願いに関わる話だが、紅緒がこれまで婚約者の話を聞かせてくれたのだから、サーヴァントの方も語っておくに越した事はない。

「……俺は、悪党星団ワルダスターに父を殺されたんだ」

「えっ?」

「だが、勘違いはしないでほしい。俺も、もう別に異星人だからって全てを疑うつもりはないし、地球人を異星人扱いするつもりもないんだ。
 俺があまり異星人を疑ってしまったせいで殺してしまった心優しい異星人たちもいる……それで気づいたんだ……」

 友好的な異星人の集団を憎しみから撃墜し、その生き残りに憎まれ、銃を向けられた痛み。
 それをランサーは忘れない。
 テッカマンは、決して今まで、正しい事だけをしてきたわけではなかった……。

 父を殺された憎しみは、全ての異星人の方へと向いた。
 地球人を思いやるサンノー星人、あのアンドロー梅田にも、何度ランサーは怒りを向けた事かわからない。
 だが、戦っていくうちに気づいたのだ。
 地球人が優れているわけではないし、異星人が悪なのでもない。異星人たちを侵略していくワルダスターこそが悪なのだ。
 テッカマンがすべきは、異星人全てを殺し尽くす事ではなく、ワルダスターを滅ぼし、異星人たちを含めた宇宙を救いだす事だ。

「俺が本当に憎むべきはワルダスターだった……! だが、俺はまだ、本心から異星人を完全に信用しきれていないのかもしれない。
 俺はこの手で罪もない異星人たちの命を奪っておきながら、俺の父を殺したワルダスターを今も憎み続け、それを異星人という枠に当てはめて考えているんだ……!!
 俺が本当に異星人たちと手を取り合って生きていくには、ワルダスターを滅ぼさなきゃならないんだ!!」

「……」

「ワルダスターの存在がなければ、まだ生きていられた命がいくつもある……!
 ワルダスターさえなければ、ワルダスターさえこの世にいなければ……」

 悪党星団ワルダスターによる被害は甚大だという。
 地球が滅びたのは自業自得による物だから、まだ収まりがつく。
 しかし、ワルダスターによって奪われていく命は、ただ理不尽であり続ける。
 それは、テッカマンが誤って奪ったあの宇宙船の人々の命のように……。

 紅緒は、白目を剥いてショックを受けていた。
 白目というよりは、長い睫に囲われている中に、目が全く描きこまれていないような表情だった。

 それからすぐに、元の紅緒のシリアスな潤んだ瞳になった。

「ランサー、あなたって、可哀想な人……」

「……そう思うかい?」

「ええ……。とっても……。それだけ未来の人でも、悲しみって消えないのね……」

 ふと、そう言う紅緒の姿に、ランサーは確かに「女」を感じた。
 まるで、一人の可憐で優しい乙女のように見えた。
 これこそが、紅緒に幾人かの男が惹かれていく理由だったのかもしれない。


491 : 花村紅緒&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/28(日) 03:29:13 cC55lirE0

(……しかし、俺はまた、あの時のような罪を犯そうとしている。宇宙をワルダスターから救いだす為に、俺は……)

 聖杯を得るには、勿論、他のサーヴァントたちを殺していかなければならない。
 しかし、それはワルダスターの侵略に比べれば微々たる物でもある。
 聖杯が願いを叶える器だというのなら、ワルダスターをこの世から消し去ってみせよう。

「そう考えると、私の願い、本当にこれでいいのかって……。考えてみれば、ごくごく、個人的な悩みだし……」

「いいんだよ。俺はあんたのささやかな願いを叶えてやりたい。俺はあんたのサーヴァントだからね。
 ……それに、この男のような女の子に、婚約者なんて、もう二度とできないと思ってね。そう思うと一生嫁の貰い手がなくて可哀想だ」

「な、何をーっ!! 折角シリアスな話をしていたところなのにーっ!!」

 ぺちっ、と平手打ちをしようとするのを、ランサーは上手くかわした。
 これを避けられる人間は、軍人たれども数少ない。

「ははははははははは」

 からかうようにランサーは笑う。
 空元気のような冗談だが、それを少しでも心安らぐものとするのは、他ならぬマスター、紅緒であった。
 彼女は周囲を明るくさせる達人である。
 自由奔放で、時代を輝かせた麗しい人。



 21世紀の東京にも、はいからさんが通る────。




【クラス】
ランサー

【真名】
南城二@宇宙の騎士テッカマン

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運D

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
騎乗:B
 乗り物を乗りこなす能力。
 魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなす。
守護騎士:B
 他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。
 但し、異星人が対象の場合、このスキルはDランクまで落ちる。
戦闘続行:C
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】
『宇宙の騎士(テッカマン)』
ランク:A+ 種別:対人 レンジ:- 最大補足:-
 宇宙開発用の身体強化システム「テックシステム」によって、ランサーが変身する超人。
 テックサンサーと呼ばれる武器を所持し、ボルテッカと呼ばれるエネルギー砲を放つ。
 変身できる時間は僅か37分33秒だが、多彩な武器と強化されたパワーで並のサーヴァントは圧倒可能。
 使用の際にパラメーターが筋力A、耐久B、敏捷B、魔力D、幸運Dに底上げされる。

『宇宙の騎馬(ペガス)』
ランク:B 種別:対人 レンジ:- 最大補足:-
 ランサーの相棒となるロボット。人工知能を持ち、言葉も話すことができる。
 テックシステムが内蔵されており、ランサーは『宇宙の騎馬(ペガス)』の内部で『宇宙の騎士(テッカマン)』へと変身する事になる。
 誰でもテックシステムを利用する事ができるが、適合しなかった場合は、内部の人間は黒焦げになって死亡してしまう。

【weapon】
 ビームガン

【人物背景】
 悪党星団ワルダスターと戦う「スペーツナイツ」に所属する青年。
 常人ならば適合できずに死亡する「テックシステム」に適合し、テッカマンへと変身する事ができる。
 しかし、父親をワルダスターに殺害された憎しみが異星人全てに向いており、仲間であるサンノー星人のアンドロー梅田などにも辛く当たる事が多かった。
 その最たるものは、地球外の宇宙船というだけで、友好的な船を撃墜し、両親や仲間を殺された異星人マリアンに命を狙われた事だろう。
 当初から性格の悪さや単純すぎる性格、異星人への理不尽なまでの風当りなど、到底ヒーローとは思えない行動ばかりが目立ったが、アンドローとの出会いで宇宙人を認め始め、強い友情を結びながら異星人たちと共にワルダスターと戦う決意を固めた。
 打ち切りにより、作品は物凄く中途半端なところで終わったため、現時点までワルダスターとの決着はついていない。
 本来ならば、ワルダスターによって悪のテッカマンへと改造された父親と戦う予定もあったとか…。

【サーヴァントとしての願い】
 悪党星団ワルダスターの存在を消滅させる。

【方針】
 どんな犠牲を払っても聖杯を手に入れる。


492 : 花村紅緒&ランサー ◆CKro7V0jEc :2014/12/28(日) 03:29:27 cC55lirE0


【マスター】
花村紅緒@はいからさんが通る

【マスターとしての願い】
 伊集院少尉を甦らせる。

【weapon】
 木刀

【能力・技能】
 男顔負けの身体能力を持ち、特に剣道が得意。
 また、その自由奔放な性格で、女囚や警官、軍人すらも振り回す事ができる。

【人物背景】
 陸軍少佐の一人娘で、跳ねっ返りのじゃじゃ娘。学校の成績は英語以外極めて悪く、酒乱でつくねが好き。
 男顔負けの剣道の達人であり、下手をすれば軍人にも勝ってしまうほど。そのため、作中キャラには女として見てもらえない事がほとんど。
 女学生時代に陸軍少尉・伊集院忍と許嫁となる事を命じられ、当初は強く反発するも、だんだんと惹かれあっていく。
 しかし、婚約まで決まった時、伊集院少尉は上官の嫌がらせでシベリアに出兵する事になり、二人は引き裂かれる。
 やがて、伊集院少尉の死を聞かされた紅緒は、失意の内に自殺未遂さえ図るのであった。

 …という説明を聞くと、悲劇のヒロインだが、実際にはかなりギャグタッチの漫画で、どちらかというと現代でも楽しく見られる話である。
 また、実際は伊集院少尉の生死を巡ってはこの後もドラマがあり、現段階ではちょっとした勘違いをしている状態。
 何故か、多くの男性にモテモテでもあるが、容姿は際立って美しいほどでもないらしい。
 これまたどういうわけか、大正時代当時になかったサブカルチャーや技術にも詳しい時がある(ガッチャマン、ヤマトなど)。

【方針】
 聖杯を手に入れる。


493 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/28(日) 03:29:49 cC55lirE0
以上で投下を終了します。


494 : ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:37:56 LOS2n6tA0
皆様投下お疲れ様です
私も投下させていただきます


495 : コロマル&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:38:42 LOS2n6tA0

「……うるさい」

新月の夜の事だった。
岳羽ゆかりが自室で勉学に励もうとしていた時だ。
静かな夜、の、はずだった。
突如、階下から激しい怒声――――いや、怒『音』が響いた。
鳴き声だ。
犬の鳴き声が、ゆかりの自室まで響いている。
この建物内に犬は一匹しか居ない。
しかし、聡明な犬だ。
余程のことがなければ、慌てふためきはしない。

「……うるさい!」

だから、ゆかりも最初は何か事件が起こったのかと思った。
駆け出すように外へと出て、コロマルへと駆け寄った。
コロマルは、空へと向かって遠吠えをあげていた。
皆が空を見上げ、その宇宙が何の変哲もない新月の空であることを確認し、首を傾げた。

動物の言語を解することが出来るアンドロイド、アイギスに翻訳させれれば『紅い月』が見えるというのだ。
当然、誰一人として新月の空に紅い月を見ることはなかった。
誰もが怪訝な顔をしながら、しかし、遠吠えを続けるコロマルを尻目に自室へと戻った。
それから、一時間、未だにコロマルは遠吠えを続けていた。

「……あー、もう!」

ゆかりはついに堪忍袋の緒が切れ、先程よりも乱暴に廊下と階段を叩きつけながら駆け下りた。
そして、コロマルへと怒声をぶつけた。

「コロマル!アンタちょっと――――」

そこで、言葉が途絶えた。
正確に言えば、怒声をぶつける相手を見失っていた。

「……コロマル?」

そこから、ゆかりの仲間であるコロマルは姿を消していた。
ゆかりは首を傾げた。
コロマルは賢い犬だ、ひょっとすると、ある一部では自身よりも。
そのコロマルの異常行動は、不気味以外の何者でもなかった。
ゆかりは空を見上げた。
月は出ていなかった。


496 : コロマル&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:39:55 LOS2n6tA0


   ◆   ◆   ◆


諸君らはニンジャをご存知であろうか。
そう、平安時代をカラテによって支配した、もはや神話存在へと化した超常の者たちである。
諸君らにとってニンジャとは、もはやお伽噺のような存在なのかもしれない。
しかし、ニンジャは実在する。
古事記に記されている通り、言葉にするのもおぞましい手段を持って人間を支配した半神存在は、実在するのだ。

『ドーモ。お困りのようだな、マスター』

突如、真昼の都会に放り出され、呆けていたコロマルへと語りかけた声もまた、ニンジャだ。
コロマルはその声の主が同種であることに気づいた。
なにせ、人間の言葉ではない。
意味こそ同じだが、それは決定的に違う音だ。
コロマルは、周囲を見渡した。
老若男女、様々な人間が歩いている。
ここは大通り、人間が居るのは自然だ。
しかし、同種――――シバ犬の存在は見当たらない。

『マスターの名は?』
「クゥーン……」
『コロマル、虎狼丸――――トラとオオカミの強さと気高さを持つものか……良き名だ』

コロマルの、通常の柴犬とは比べ物にならない知能。
その知性すらも大きく上回る、圧倒的な知性。
しかし、同時にその声はコロマルの心を揺さぶった。
恐怖で、だ。
コロマルは喉を鳴らす。
姿の見えぬ、威圧者への警戒だけが募る。

「グゥゥゥ……!」
『道理だ、すぐに姿を見せよう』

それは向かいの交差点に、突如として現れた。
コロマルと目が合う。
コロマルは震えた、恐怖に震えた。



『ドーモ、アサシンです』



原初の恐怖だった。
突如現れた狼犬とも呼ぶべき巨大な犬は、しかし、コロマルと同じシバ犬であった。
コロマルとの大きな違いはその巨躯と、身体中についた無数の傷痕だ。
その全てがコロマルの恐怖を誘った!
それはコロマルが体験のしたことのない、犬種に刻み込まれた支配者の恐怖だった!


497 : コロマル&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:41:26 LOS2n6tA0

「アオォォォォォン!!!?!??」

ストライダーは空気振動を起こし、同種の犬とニンジャ聴覚の持ち主にのみ聴きとる事のできる言語を操っている。
一方でコロマルは、当然、ニンジャアニマルではない。
残念ながら、コロマルの鳴き声を翻訳することは叶わない。
我々に動物の言葉を解する能力はないのだ!

「アオーン!?ゥグゥ……アオーン!」

突如として行動が乱れたコロマル。
聡明な読者諸氏には想像がつくだろう。

そうだ、NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)症候群だ。

ニンジャは人間だけでなく動物をも支配していた、古事記にもそう書かれている。
コロマルの中のニンジャに対する恐怖が心中を暴れまわっているのだ!

『落ち着け、コロマル=サン』
「アオオオーーーン!」

遠吠えを続けるコロマル。
これがNRS症候群であることは、聡明なアサシンも理解できた。
故に、ただ静かに待った。
コロマルの雄叫びは続き、続き、続き――――やがて、収まった。
荒く息を吐くコロマルへと、アサシンは静かに言葉を続けた。

『私はアサシン、真名はストライダー。マスターも承知の通り――――』

アサシンのサーヴァント、ストライダーは小さく言葉を切った。
コロマルは喉を鳴らし、アサシンの言葉を待った。

『ニンジャだ』














「アゥオォォォォオーーーン!!!?」
『落ち着け、コロマル=サン』
「アゥオ、オオオォォォォォォォオーーーン!!!?」
『私は敵ではない、コロマル=サン、わかるか、コロマル=サン!』

再びのNRS症候群!
ストライダーもまたこれは想定外だった。
コロマルの鋭い瞳から、ニンジャに抗えるドッグであると見抜いたからこその吐露であるというのに……


498 : コロマル&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:41:50 LOS2n6tA0

「アオ、グゥ……ゥ……」

そんな中で、コロマルは小さく、何かを零すように息を整える。
コロマルの内側から、仮面の力が漏れだす。
ペルソナ――――己の中の己を、普遍的無意識、あるいはコトダマ空間に沈んだ己を、神や悪魔の姿で顕現させる御業。
コロマルはそんな技を身につけていた。
だからこその、異常なまでのニンジャソウルへの忌避があった。

『そうだ、コロマル=サン。コロマル=サンは詳しい、知能指数も実際高い。だからこそ落ち着け』

ストライダーは何処からか手に入れてきたらしきズバリドリンクをコロマルへと渡す。
コロマルは息を整えながら、浴びるようにズバリドリンクを口にした。

「アー……クゥーン……」
『聖杯戦争については理解しているな、コロマル=サン』

さながらズバリ中毒者のように、コロマルは息を吐く。
ストライダーはコロマルへと語りかける。
コロマルは頷くが、顔をしかめた。
我々にはわからないが、少なくとも、ストライダーはコロマルの顔の変化を見ぬいた。

『願いはあるか?』
「……」
『なければ、良い。帰巣本能が揺さぶられているのならば、帰巣しよう』
「クゥーン……」
『私はニンジャアニマル、超常の犬。この力を持って、マスターの願いに尽力する。
 帰ろう、『家』へと』

家。
その言葉に、コロマルは揺れた。
仲間が待っている。
家族と呼べるかはわからないが、大事な仲間だ。

「オンッ!」

短く吠えた。
ストライダーは、笑った。


499 : コロマル&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:42:55 LOS2n6tA0
【クラス】
アサシン

【真名】
ストライダー(タロウイチ)@ニンジャスレイヤー

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力E 幸運C 宝具-

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
気配遮断:B-
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
縮地:B
瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。
単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。
つまりは、カラテだ。

気配察知:B+
周囲の気配を察知する超感覚、同ランクまでの気配遮断を無効化する。
犬のニンジャアニマルであるストライダーは高い気配察知スキルを所持している。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
一度は敗北した状態から復讐を成し遂げたストライダーは仕切り直しのスキルを持つ。


【宝具】
『猿神退治(ストライダー)』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
ストライダーに憑依したニンジャアニマルのソウルであり、厳密には宝具ではない。
憑依したニンジャアニマルとしての意識はすでに消滅している。
ストライダーはこの宝具によって超犬的な身体能力を所持している。
また、世界各地に残る『猿神退治』の逸話によって、邪悪なモンキーのニンジャに対して強いアドバンテージを得る。

【weapon】
己の牙と爪を武器にして戦う。
また、ニンジャソウルの昂ぶりによって、マフラーめいた襤褸布を生成する。

【人物背景】
ニンジャに飼い主を殺されたシバ犬、タロウイチ。
彼自身も死の淵にあったその時、謎のニンジャソウルが憑依。
一命を取り留めたタロウイチは『ストライダー』、動物であるニンジャのニンジャアニマルとなり。
復讐の戦いに身を投じる。
近未来都市『ネオサイタマ』を舞台に、ストライダーvsニンジャの死闘が始まった。


500 : コロマル&アサシン ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:43:32 LOS2n6tA0

【マスター】
コロマル@Persona3

【マスターとしての願い】
なし、高い察知能力と知性を持つがために紅い月を発見してしまい、半ば強引に参加させられた。

【weapon】
首輪が『ペルソナ』と呼ばれる実体を持つ超能力を発動させるためのキーとなっている。
また、苦無を口に加え、相手を切り刻む。

【能力・技能】
・ペルソナ召喚
召喚器である首輪によって普遍的無意識、あるいはコトダマ空間に眠る己、『ケルベロス』を呼び寄せる。
ケルベロスは炎や呪いの呪文を唱えることが出来る。

【犬物背景】
長鳴神社の神主の愛犬、柴犬のアルビノ。
アルビノであるため、生後間もない頃は体が弱かったらしい。
漢字表記では「虎狼丸」という、ものすごく強暴そうな字が当てられている。
というのも、虎狼丸という名前は飼い主である神主の「せめて名前だけは強くあってほしい」という思いからつけられたものだとか。
義理堅く男らしい性格、忠犬を絵に描いたようなキャラクター。
一時期の自分と似た境遇のノラ犬に対して自分のエサを持ってくるといった、他の犬に対しても面倒見のいい一面も。

【方針】
帰宅する。


501 : ◆devil5UFgA :2014/12/28(日) 03:43:49 LOS2n6tA0
投下終了です


502 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:21:16 V1n1ct4Q0
ランサー組、投下しますね。


503 : 御神苗優&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:21:59 V1n1ct4Q0




 ――ここに一枚のプレートがある。


 高度に発達しすぎたために滅びてしまった超古代文明の何者かが、現代の我々への警告を綴った伝言板である。


 彼らは語る。


「我々の遺産を悪しき者から守れ」と。


 このメッセージを誠実に受けとめ、超古代文明の遺産を封印することを目的に活動する組織があった。


 そして、その組織の特殊工作員を遺跡に出現するという伝説の妖精にちなみ「スプリガン」と呼ぶ。






   ▼  ▼  ▼



「予定よりも随分遅いご到着ですな、“スプリガン”」

 ヘリから降り立った自分を迎えた研究員の不躾な台詞に、御神苗優は内心で「地球の裏側から呼んどいてそりゃあねえだろう」とボヤいた。
 遺跡保護組織アーカムが派遣した調査団のテントの明かりがあちこちから届いてはいるが、ここは言ってみれば秘境も秘境。
 この古代マヤ文明のものと思われる新たなる遺跡は中央アメリカ某国の未開発地帯、要は密林の奥地にあり、交通の便は最悪もいいところだった。
 おまけに今夜は新月である。ヘリの夜間飛行を避けて明日の到着にしたところでバチは当たらなかったぐらいだ。

「それでこいつが噂の新遺跡か。パッと見はそこまでのモンには見えねえけどな」

 闇に目を凝らして、その新発見の遺跡とやらを遠巻きに眺める。
 外見上は、そこまで真新しいわけでもない古代中南米式のピラミッドだ。
 今まで見つかっていなかったのだから当然といえば当然だが、取り立てて大きいというわけでもない。
 もっとも、中南米の遺跡といえば「パレンケの仮面」の一件を思い出す。
 地球に文明を伝えた異星人ケツアルクアトルがその意識を移した翡翠色の仮面と、彼に執着するテスカトリポカの怨念が生んだ事件。
 あれに匹敵するような遺産(オーパーツ)がこの遺跡にも隠されているのなら、なるほど確かにスプリガンが派遣されるのも頷ける。

 しかし、優が事前に受け取っていたケースファイルに記録されていた資料には、それらの予測を裏切る内容が記されていた。

「この遺跡の発掘物は明らかに他の場所とは異なる体系に属するものなのです。異星由来とは別の文明によるものとしか考えられません」

 早足で優を先導しながら、ファイルの中身を復唱するように研究員が語る。
 曰く、この遺跡から出土した遺品にはこれまで発見されたどれとも違う未知の象形文字が使われているのだという。
 マヤの古代文字はもう何十年も前にとっくに解読されている。似た言語体系であればそこからの推測も不可能ではないはずだ。
 にも関わらず未だに未解析ということは、全くの異文明がこの地に存在した証左だろう。

「既に、アメリカからは言語学の権威である山菱理恵女史がいらしておりました。もっとも今はアーカムの施設に戻っておられますが」
「アイツまで来てるのか? となると思ったより大事だな」
「はあ。お知り合いで?」

 訝しむような顔の研究者に、まあちょっとした昔なじみでね、と言って誤魔化す。
 優にとっては古い友人であり、今は17歳の若さで教授職に就いている言語学の天才と称される彼女に、アーカムからの依頼があったということは。
 S級工作員『スプリガン』である優の派遣も含め、アーカムがこの遺跡をいかに重要視しているかが伺えるというものだ。


504 : 御神苗優&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:23:10 V1n1ct4Q0

 研究員の後に続いて幌をめくり、調査団のテントのひとつに入る。
 ここは発掘品を整理・解析するための区域であるらしく、強奪に備えて銃を携行したエージェントの姿もあちこちにあった。
 地面にはシートが敷かれ、その上にところ狭しとナンバーを振られた出土品が並んでいる。
 御神苗優は仮にもアーカムのエージェントである。仕事柄この手の発掘品を目にする機会は多く、考古学にはそれなりの知識がある。
 その優の目から見ても、確かにこれらの遺物はこのあたりの他の遺跡から回収されたものとは何処か異なるように思えた。

 そして、それらの遺物から少し離れた場所に、より厳重な警備に守られたケースがひとつ。
 大きさは長辺が2メートルほどといったところか。それなりに大きな異物が収められていることが伺える。

「……あれが?」
「ええ……」

 今回の調査団が発見した最重要遺物の存在は既にファイルでチェック済みだ。
 全身に緊張を漲らせている警護のエージェントに軽く手を挙げて許可をもらい、優はケースの中をそっと覗いてみた。

 一言で言えば、赤い矢印のような遺物だった。
 1メートル半はあるだろう赤い板状の棒の先端に、半月状のプレートが付いた奇妙な形状をしている。
 見ようによっては槍のようにも思えるが、やはり矢印と表現するのが一番しっくりくる形だ。
 少なくとも単純な武器の類であるようには見えないのは確かだった。

 優は屈みこんで、その赤い矢印の柄の部分を注視した。
 果たして事前の報告の通り、そこにはびっしりと見たこともないような象形文字がレリーフとして書き込まれていた。
 流石に対応表無しで読めはしないがマヤ文字ぐらいなら優も直に見たことはある。
 この遺物に書かれている文字はそれとは明らかに違う。あの山菱理恵が手こずるわけだ。
 しかし、と優は怪訝に思った。
 古代文字は専門外だから考えたところで分からないとして……この文字の傍に彫ってあるこの『顔』は、なんだ?

「なんだこりゃ……『目が三つ』あるぜ。三つ目人間の顔が並んでやがる」

 隣の研究員がよく気付いたとばかりに勢い込んで同調する。

「同じような三つ目の意匠が、この遺跡からは至るところで見つかるのです。当時の人間にとって、三つ目は何らかの意味を持っていたのかと」

 思わず、床一面に並んだ出土品に目をやる。
 それらのひとつひとつに三つ目が彫ってあるかと思うと、流石に不気味なものを感じなくもない。

「山菱女史が断片的に解読した結果ですが、どうやら過去の何らかの殺戮についての記述があるようです。
 全てが明らかになるまでははっきりとは申せませんが、もしも何らかの古代兵器の類だとすれば」
「米軍、KGB、ネオナチ、欲しがりそうな連中は腐るほどいるな。わざわざスプリガンが呼ばれるわけだ」
「本来はこの場でもう少し解析を進める予定だったのですが、先に安全な場所に移したほうがいいとの指示でしてな。
 山菱女史が引き上げたのも身の安全を考えてとのことです。彼女は以前危険な目に遭ったそうですから」

 いよいよキナ臭い話になってきたが、このあたりまでは予想の範疇ではある。
 到着した時には既に壊滅、みたいなケースでなかっただけマシなくらいだ。

「……まあ、三つ目がどうとか細けえことを考えるのはヤメだ。あとはこいつを搬出まで護衛すれば任務完了――」

 そう呟きながらもう一度ケースの中に目をやり、そこで、優は硬直した。

「どうしました?」

 研究員が一瞬怪訝そうな表情を浮かべるが、優はそちらに目をやる余裕もない。

「いや、この槍みたいなやつ、今動かなかっ」

 ごとり、と今度は明らかに音が聞こえた。隣の研究員が全身を引き攣らせるのが空気で分かった。
 音は一回ではなく何度も、それも小刻みに、徐々に間隔を短くしながら、連続して響いた。
 しまいには殆ど振動と言っていいぐらいに速く。明らかに異常だった。赤い矢印の遺物に何かが起こっていた。
 そして遂に異物が光を発したかのように感じた……しかし、すぐに優はそれが錯覚だと気付く。
 外からだ。この赤い光は、外から差し込むものだ――!

「何の光だってんだ! 今夜は新月だぞ!?」

 すぐにでも銃を抜けるように神経を向けながら、テントの外へ転がり出る。
 しかし光源を見上げたその時、優は一瞬だけ銃のことなど頭から吹っ飛ばしてしまった。



 赤い満月だ。新月の夜に、赤い満月が登っていた。



 皮肉にも――その赤い月光は、御神苗優を、『スプリガン』に相応しい戦いへと招き入れるものだった。


505 : 御神苗優&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:23:43 V1n1ct4Q0



   ▼  ▼  ▼



 だんだんと意識がはっきりしてきた。
 頭を小刻みに振って強引に覚醒させる。大丈夫だ、どこも不調はない。
 あの赤い光が何らかの攻撃だったとしても、問題なく戦える。
 そう思っていた。視界のその先に悠然とそびえ立つ、あの赤い鉄塔を見るまでは。

「どうなってんだ……ありゃ東京タワーじゃねえか」

 さっきまでは優は中央アメリカ某国の遺跡にいたはずだ。
 だが、此処は『東京』だ――夢ではない。確かな実感がある。風の音、頬に触れる夜風の冷たさ。
 大規模な魔術か何かに巻き込まれたのか? それくらいしか思い当たるフシがない。

 カタカタと何かが震える音を聞き、優は咄嗟に拳銃を抜き振り返った。

「あの遺跡の赤い矢印……なんでこんなとこにあんだ……?」

 アスファルトの上で小刻みに震えるそれを、優が困惑の視線を送った、その直後。

『なんでって? そりゃあ、それがボクのものだからに決まってるじゃないか』

 頭のなかに直接、少年の声が響いた。
 冷や汗が流れ落ちる。動揺を理性で抑えつけ、優は怒声を張った。

「誰だテメェ!? どこから話しかけてやがる!?」
「あんまりわめくなよ、みっともない。仮にもボクのマスターなら、もっとデンとかまえてほしいもんだ」

 今度はテレパシーではない、本当の声だ。
 そう認識し、声の方向へと銃口を向けようとするよりも、少年の更なる言霊が先に優の鼓膜を揺らす。


「アブトル・ダムラル・オムニス・ノムニス・ベル・エス・ホリマク!」
「われとともに来たり、われとともに滅ぶべし!」

 
 その呪文詠唱が引き金だった。優の背後で赤い矢印が浮き上がり、さながらブーメランのように回転を始めた。


 ひゅーるるんるん。ひゅーるるんるん。ひゅーるるんるん。


 その回転を受け止めた存在は、月光を背にして街灯の上に立っていた。
 背は低い。優よりもだいぶ年下の少年であるようだ。制服の学ランを肩に羽織り、マントのようにたなびかせている。
 頭は丸坊主で……その額には、まるで『第三の目』とでも言うべき何かが輝いていた。
 優の脳内に、遺跡で目にしたレリーフがフラッシュバックする。

「三つ目……おまえが三つ目人間か……?」
「ぶしつけだなあ。いいさ、教えてやる。ボクはランサーのサーヴァント――『写楽保介』だ」

 サーヴァント。
 その言葉を脳が認識したのを契機として、優の脳内に堰を切って知識が流れ込んでゆく。
 聖杯戦争。令呪。赤い月。偽りの魔都・東京。
 そして理解する。自分の置かれている状況を。今の優は、聖杯戦争のマスターであるという事実を。

 聖杯。すなわち、万能の願望器。
 以前にネオナチと争奪したあの器とは違う。赤い月が内包する、聖杯という概念。
 それを命を懸けて奪い合う戦いに自分が身を置いているということを、我が事として優は認識した。


506 : 御神苗優&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:24:32 V1n1ct4Q0

「それで、えーと……名前も知らずにマスターって呼ぶのもシャクに触るな。名前、何てんだい」

 写楽は一貫して契約上は主人である優に対しても傲慢な振る舞いを崩そうとしない。

「写楽……いや、ランサーって言ったな。俺は優、御神苗優だ」
「御神苗優ねえ。変な苗字だな。まあいいや、おい早速だが聖杯に託す願いってのを言ってみな。ボクが力を貸してやってもいいぜ」

 おいじゃねえよ、と言いたいところをぐっと飲み込み、答えを探す。
 だが、答えなど聖杯戦争のシステムを理解した瞬間から、既に決まっていたようなものだった。
 この『赤い月の聖杯』がムーンセル、つまりは月のオーパーツであるというのなら。
 アーカムからの正式な指令ではない。だが、優がスプリガンであるのなら、取るべき道はひとつだろう。

「……ランサー。俺は聖杯には願いは懸けねえ。その逆だ。俺は聖杯を“封印する”」

 封印? と呆気にとられた顔をした写楽に向かって、優は懐から取り出した一枚の板を放り投げた。
 写楽が槍とは反対の手で受け止めたそれは、超古代文明が残したというメッセージプレートだ。
 今という時間軸から切り離されているために破壊不可能とされるそれには、古代文字で警告が記されている。

「読めるか、ランサー?」
「馬鹿にすんない、古代ヘブライ語なんざ片目つぶっても読めらあ。なになに……」




 ――未来の人類へ……

 ――この伝言を発見する者が心ある者なのを願って……

 ――心ある者たちよ

 ――過去からの伝言を伝えたい。

 ――この惑星には多種の異なる文明があった……

 ――だがまもなくすべて滅びる……

 ――種としての限界、異文明ゆえの争い、堕落、荒廃……

 ――君達には未来あることを願う

 ――世界中にあるわれらの文明の断片を遺産として残そう……

 ――だが、もしも君達に遺産を浮ける資格がなければ、それらをすべて封印してほしい

 ――悪しき目的に使う者達から守ってほしい……

 ――われらと同じ道は決して歩んではならぬ……




「この『赤い月の聖杯』は人の手には余る代物だ。この聖杯戦争だけじゃねえ、悪党の手に渡れば本物の戦争が起こる。
 いや、対等な戦争すら起こらないかも知れねえ……そんなものを誰の手にも渡すわけにはいかねえだろ!」

 優にしてみれば、それは当然の道理だった。
 だというのに、写楽はぽかんとした顔を見せた後で、堰を切ったように大笑いを始めたのだ。


507 : 御神苗優&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:25:14 V1n1ct4Q0

「アーッハッハッハ! ハハハハッハハハッヒーッヒーッ」
「おいてめえ! 何がそんなにおかしいってんだよ!」
「ヒーヒーッ、ゴホッゴホッ……なんてことはねえ、よく似た話をボクも読んだことがあったからね」

 ひとしきり笑うと元の偉そうな顔に戻り、写楽はプレートを優に投げ返す。

「もっとも、ボクが読んだのは三つ目族の『遺書』だったけどな」
「遺書……?」
「そうだ。さっきのメッセージとやらとよく似たことが書いてあったよ。自らの文明の毒で滅んだってさ」

 そう言って写楽はにたりと笑った。

「だが、その遺書はこうやって結んであったよ」




――わが子のわが子のさらにその子につづくとおき血をわけた子らよ

――われがつげたることばを読みそしてそのようにおこなえ
 
――邪悪な文明を敵となし……

――すべてうちくだくべし

――やきはらうべし

――邪悪な人を殺しさるべし!



「分かるかいマスター。なんでせっかくの遺跡を封印するんだ。悪用する人間を殺しちまったほうが手早いじゃないか!」

 今までで一番の邪悪な笑みを見、優は確信した。
 このサーヴァント、写楽保介は、見てくれこそガキだが油断ならない存在だと。
 恐らくは反英雄として人類史に名を残した英霊なのではないか、そう直感が告げている。
 だが、だからといって退くわけにはいかないのだ。
 
「俺はスプリガンだ! 過去の遺産を巡って流れる血なんざ、一滴たりとも許しゃしねえ!」

 二つの瞳で、写楽の三つ目を正面から見据える。
 無言の睨み合いがどれだけ続いたか。数十秒か、それともその数倍の時間が流れていたかもしれない。
 先に音を上げたのは写楽の方だった。

「わかったわかった、降参降参。そこまで固い決意なら、ボクも何も言えないや」

 手のひらをひらひらと振り、これ以上やり合う気はないことを示す。

「だがこれだけは守ってもらうぜ。自分で死のうとしない。やられたらやり返す。きっちりな」
「当然だろ。俺自身が生き残らなきゃ、封印も何もあったもんじゃねえ」
「それだけ聞けりゃあ十分だ。これから上手いことやってこうぜ、マスター」

 そういって写楽は姿を消した。これが、知識だけでは知っていた霊体化か。
 あの油断ならない三つ目が目の前からいなくなったのを見て、優は大きく息を吐いた。

「ったく、とんだミッションになっちまったな」

 夜空を見上げる。あの赤い月は、今夜は昇っていなかった。


508 : 御神苗優&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:25:59 V1n1ct4Q0



   ▼  ▼  ▼



(……なーんてな。ボクが聖杯をあきらめるわけないじゃないか)


 霊体化したまま、写楽はにやりと笑う。
 さっきのはあくまで、甘ちゃんのマスターに合わせてやっただけのことだ。
 写楽の願いは唯一つ。「三つ目族による世界支配の完遂」に他ならない。
 聖杯を封印するのは勝手だが、少なくとも写楽の願いを叶えてもらってからでなければ困る。

(まあ、戦う気自体はあるみたいで安心だな。マスターが何を考えようが、最後に勝ち残って聖杯を獲るのはボク達だぜ、フフフ)

 そこのけ、そこのけ、三つ目がとおる。

 写楽保介の含み笑いは誰にも、すぐそばにいる優にすら聞こえることはなかった。





【クラス】
ランサー

【真名】
写楽保介@三つ目がとおる

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具B

【属性】
渾沌・悪


【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】
魔眼:B+
魔眼を有していることを示すもの。
写楽の額にある第三の目は厳密な意味での魔眼ではないが、それに準ずるものとして扱われる。
写楽のあらゆる能力の源であり、何らかの形で塞がれると全ステータスと知能が急落する。

オーラ:B
第三の目から放たれる、精神エネルギーによる念動波。
物体を動かしたり、人間を拘束し身体の動きを完全に停止させるなど多彩な使い方が出来る。
彼の宝具はこのオーラを増幅することが可能。

機械作成:A
その悪魔的頭脳を発揮し、ガラクタから大掛かりな機械を組み立てる。
人間の脳をトコロテンのように軟化させる装置、あらゆるものを腐食させる劇薬など、非道な発明が多い。


509 : 御神苗優&ランサー  ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:26:33 V1n1ct4Q0

【宝具】
『赤いコンドル』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:10人
マヤ文明の遺跡から発掘された、赤い矢印のような形をした槍状の武器。
写楽の「アブトル・ダムラル・オムニス・ノムニス・ベル・エス・ホリマク」の詠唱により召喚される。
その表面には三つ目族を象ったレリーフと古代象形文字が並び、写楽によれば「全滅戦争の案内書」とのこと。
伸縮自在で近接武器として使える他、写楽のオーラを増幅する機能を持ち、更には人を一瞬で蒸発させる熱線を放つ。
写楽の作成した機械のキーにもなり、手元から離した状態でも熱線による自律攻撃が可能など、応用性の高い宝具。


【weapon】
宝具「赤いコンドル」以外は無し。
「三つ目の剣」など他の三つ目族の武器を手にしたこともあるが、クラス制限により没収されている。

【人物背景】
額に感覚器官「第三の目」を持つ三つ目族の最後の生き残り。
三つ目族とは二つ目の人類を遥かに超える頭脳と超能力を持つ古代人類である。
普段は額の目に×印の絆創膏を貼って力を封じており、幼児並みの知能と純真な人格のまま生活しているが、
ひとたび絆創膏が剥がれると世界支配を企む悪の人格が目を覚ます。
三つ目の写楽はプライドが高く傲慢で邪悪な性格だが、同時に歳相応の少年性も併せ持つ。
また赤ん坊の頃に母親を失ったため母性愛に飢えており、母親のこととなると取り乱すこともある。


【サーヴァントとしての願い】
三つ目族による世界支配。
ちなみに止められるに決まっているので優に話すつもりはない。




【マスター】
御神苗優@スプリガン

【マスターとしての願い】
人類の手に余る遺産である『赤い月の聖杯』を封印、もしくは破壊する。

【weapon】
身体能力を通常の30倍にまで増幅する強化スーツ「A・M(アーマード・マッスル)スーツ」を装備。
装備時はあらゆる銃弾・火炎・電流を無効化するが、それ以外の魔術や超能力、気功などを防ぐことは出来ない。
また精神感応性金属(オリハルコン)製のファイティングナイフ及び特殊徹甲弾を装填可能な拳銃を所持している。

【能力・技能】
銃火器やナイフの使用や拳法による格闘など、あらゆる戦闘技術に精通している。
また職業柄、古代文明のテクノロジーや魔術・オカルト・超能力などについての知識も豊富。
窮地に陥ると『殺人機械』として圧倒的な戦闘能力を発揮することがあるが、優自身はこの力を忌避している。

【人物背景】
超古代文明の遺跡を守護する特殊機関「アーカム」のS級エージェント「スプリガン」である高校生。
かつて両親を殺害され、また米軍に拉致・洗脳されて殺人機械(キリングマシン)として訓練された経験を持つ。
一時期はそのせいで感情を失っていたが徐々に本来の性格を取り戻し、自らの意志でスプリガンを志す。
なお、任務のたびに出席日数不足による留年を気にしており、高校生活を楽しみたいのもあってボロボロの状態でも登校しようとしている。

【方針】
不必要な犠牲は出したくないが、それでも聖杯の封印あるいは破壊が最優先。
どうしても避けて通れないのであれば、敵マスターの殺害も辞さない。


510 : ◆q4eJ67HsvU :2014/12/29(月) 03:26:45 V1n1ct4Q0
投下完了しました。


511 : ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:34:24 .CsW8hl20
投下させていただきます


512 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:34:55 .CsW8hl20





紀元前数千年。
人々は天上の神に近づかんものと、巨大な塔を作り始めた。
神はこの人間の野望にお怒りになり、この塔を壊し、人々に制裁を加えられた。

これを、バベルの塔という。






513 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:35:16 .CsW8hl20


『魔王 ア・ベル』。
『救世主 ア・ベル』。
あるいは、『少年 峯岸一哉』。

選択が近づいている。
これから、彼は『何か』にならねばならない。
もはや、只人であることは許されない。
しかし、許されないとは、果たして。
誰に許され、誰を許せばいいというのか。

その許しすらも、自らが決める選択。
選択が迫られている。
封鎖された東京。
現れる悪魔。
告げられる試練。
巻き込まれる王位継承の魔戦。
目覚める魂。
目まぐるしく状況は変化し、選択を迫る。
だが、どれだけ選択を迫られようとも、選ぶのは自身だ。


さあ、選べ。


――――生きるか、生かされるか。


.


514 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:36:39 .CsW8hl20


   ◆   ◆   ◆



『ベル』

ベール、バアルとも呼ばれ、アッカド語で『主』を示す言語。
紀元前二千五百年頃、古代メソポタミア時代に世界を支配した始原の神の名。
王権の象徴であり、主という概念そのもの。
かつて、神に挑み、敗れた者。
天を支配する神でありながら、地へと、闇へと、魔へと、『堕とされた者』。
『かつて』偉大であった神。

――――それこそが己の中に眠る、世界を変える『因子』。

峯岸一哉は熱湯としか言いようのない、熱いシャワーを浴びながら現状を整理していた。
火傷を負いかねないシャワーは少年の思考を加速させた。

自身は、東京に居た。
自衛隊によって封鎖された東京。
表向きはガス事件とのことだったが、実際は『悪魔』が現れたため。
そして、『天使』が人間に最後の試練を与えたため。
都民はその試練の挑戦者になった。

自身の中に眠るもの。
それは『ベル』が唯一絶対の神に敗れて、無数に分断された『神の因子』。
それはそれは東京に現れた『悪魔』が魔王となるために求めるもの。

少年はまだ知らない。
彼の中に眠る『ベルの王の因子』は『罪の始まりの因子』である『魔王ア・ベル』であることを。
己が従兄としか認識していない人間が、遠い過去、自らの生命を奪ったことを。

そう、遠い、遠い過去。
己の生命を奪った兄が、己を求めていることを。
神への憎悪を、己にも求めていることを。

『求められているものじゃなく、求めるもの。それが問題さ』
「……なんの話だ」
『これからの話さ』

思考の途中に紛れ込んだ言葉に反応してシャワーを止め、振り返る。
そこには、青みがかった学生服を着込んだ少年が立っていた。

「で、どうするんだい?」

そこで初めて少年、ライダーのサーヴァントは口を開いた。
今までの言葉は、ライダーが操るテレパシーだったのだ。
ライダーは冷たい目をしていた。
手段を選ばない、非情な目であった。
少年はその目から逃げるように視線を外した。
そして、浴場から出、下着をつけ、紅いズボンを履き、黒の無地の服を纏い始める。
猫耳のような、ファッション性の高いヘッドホンをつけた。


515 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:38:13 .CsW8hl20

「……決めているさ」


少年がいる場所は、『塔』だ。
少年が召喚した英霊は、『塔の主』だ。

『塔』としか言いようのない建築物だ。
天を突くような、天へと届く事自体が目的であるかのような『塔』だ。
おおよそ、少年にとっての、現代の技術では再現できない複雑な機器が被占めた部屋もあれば、ゆったりとした広大なフロアもある。
少年は、窓辺に立ち、外を眺める。
空には『紅い月』が輝いていた。
あの夜、突如、少年が観測した『紅い月』。
運命の選択を迫られた少年が観測した『紅い月』。
紅い月に導かれた少年は、聖杯を求めた。
奇跡を求めた。
全てを解決するために、聖杯を求めることを選択したのだ。

「……」

『塔』の中に居る少年は思案にふける。
現在、この『塔』は名を偽っていた。
『塔』とライダーの放つ催眠術のような電波によって、誤認されていた。
現在の『塔』は、外向きには『東京タワー』と呼ばれていた。
少年の知る東京タワーとは、外観も内装も異なる。
しかし、それは少年とライダー以外には『東京タワー』と認識されている。

現在、ライダーの意志によって閉鎖されており、誰も立ち寄れない『無人の東京タワー』となっている。

窓から外を眺めた。
心の闇の中を映したような街が、眼下に広がっていた。
それが偽りとわかっている。
少なくとも、少年にとっての真の東京は、選択を迫られている。
このような、鈍色に映る世界ではない。
自身の知る東京と、眼下に広がる世界の差異の大きさに、破壊衝動が少年の中に湧きでた。

「手段を選んではいけない」

少年の胸の内をなだめるように、ライダーは口にした。
ライダーの目は冷えていた。
決意によって冷やされた目であった。
自身はライダーのような目を出来ているだろうか、ふと、少年はそう思った。

「自らの使命を選択したのならば、手段を選んではいけない」
「ライダーの言う使命なら選んだ」

少年/ベルの王はライダー/塔の主へと言葉を返した。
耳に付けたヘッドホンからは音は流れていない。
眼下を眺める、少年/ベルの王にとっての偽りの東京が広がっている。
それは偽りであり、あるいは、取り戻したいはずの東京だった。
少年/ベルの王が何よりも求めている東京だった。


516 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:39:14 .CsW8hl20

「手段は、使命を為すための力を手に入れてから、決める」
「……『選んだ使命を為すための力を手に入れる』、そのために、『手段を選んではいけない』。
 ぼくはそう言っているんだ」

ライダーは悪人ではない。
悪人ではないが、手段を選ばない英霊だった。
道理に反しようとも、自らの中の何かを曲げない。
そんな英霊だった。
ライダー/塔の主/『バビル2世』は、すでに宝具を展開している。
少年/ベルの王/『峯岸一哉』はその宝具の中に居る。


――――ライダーの真名、『バビル2世』という名もまた、塔があってこその呼び名。


バビル2世の宝具は、天を突く巨大な塔。
ベルの王である少年の魔力量は潤沢だ。
操る事こそが出来ないが、身のうちに宿った神であった因子は宝具の発動を成功させた。

「わかるかい、マスター。自分が背負っているその重さが」
「……」

バビル2世の展開する、その宝具の名は。

「君は神にも、悪魔にもなれる。そして、その選択は君の自由だ。
 その自由の重さの意味と、孤独という言葉を、忘れてはいけないよ」


―――『御主へと至る塔<バ・ベル>』―――


.


517 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:39:40 .CsW8hl20

【クラス】
ライダー

【真名】
バビル2世@バビル2世

【パラメーター】
筋力D+ 耐久D+ 敏捷C+ 魔力B+ 幸運D+ 宝具A+

【属性】
中立・善

【クラススキル】
騎乗:B+
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

対魔力:D+
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。


【保有スキル】
破壊工作:B
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
バビル2世は自身の『超』能力を用いて、相手の戦闘準備を妨害し、策謀を破壊する。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。

仕切り直し:B
窮地から離脱する能力。 
不利な状況から脱出する方法を瞬時に思い付くことができる。
加えて逃走に専念する場合、相手の追跡判定にペナルティを与える。

情報抹消:D
自身の情報を目撃者から消し去るスキル。
このランクでは長時間観測した相手、もしくは自身の真名や背景を把握している相手からは自身の情報を抹消することは出来ない。
しかし、短時間の遭遇であり、戦闘前に自身の正体を知られていないのならば、能力・真名・外見特徴などを改竄できる。
また、相手の精神干渉にも強い耐性を持つ。


【宝具】
『戦士、ひとり(バビル2世)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
バビル2世の身に秘めた超能力が強力すぎるために、スキルを飛び越えて、バビル2世自体が『宝具』と化した。
その力は多岐に渡り、身体能力を高める超体力・超感覚、瀕死の重傷を負っても短期間に回復する超再生能力、テレパシー、催眠術、テレキネシス。
他にも、顔の筋肉を操作して別人に成りすます変身能力などがある。

強力な宝具だが、生前のポテンシャルを引き出すためには膨大な魔力供給を必要とする。
また、魔力供給が十分でも使用が過ぎると老化現象を起こし、消滅する。

『三つの下僕』
ランク:C〜B 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
バビル2世は不定形生物・ロデム、怪鳥型ロボット・ロプロス、巨大ロボット・ポセイドンの三体を使役している。
ロデムは不定形の生物であり、どんな姿にも変身できるが戦闘能力には秀でていない。普段は黒豹の姿をして、バビル2世を護衛している。
ロプロスは超音速で空を飛び、口からロケット弾と超音波を放つ怪鳥の如き兵器である。
ポセイドンは巨大ロボット、指にレーザー砲、腹部に魚雷を装備しており、バビル2世の最強の僕である。

『御主へと至る塔(バ・ベル)』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
超高性能コンピュータが管理しており、5000年間の地球上の様々な出来事を記録している。
催眠ライト・レーザー砲・ミサイルなどで武装、侵入者は塔内に仕掛けられた数々の罠で撃退する。
そして破壊されても自動修復する機能を持ち、バビル2世に超能力者としての教育を施す装置や傷ついたバビル2世を癒す治療装置も完備している。

人工砂塵でその姿を隠すこともできるが、今回は超能力による認識改変で『東京タワー』として認識させ、宝具としての事実を迷彩している。


518 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:40:01 .CsW8hl20

【weapon】
バビル2世は特殊な兵装を持たない。

【人物背景】
少年、山野浩一は毎晩、ある塔の夢を見るようになっていた。
その塔は聖書に出てくる『バベルの塔』であった。
ある晩、使者が訪れ、彼はバベルの塔へと連れて行かれる。
浩一は大昔にバベルの塔を築いた宇宙人、バビルの能力を受け継ぐ者だったのだ。
バビルは言う。
「地球を征服するも地球人のために使うもそれはきみの自由だ」と。

かくして『山野浩一』は『バビル2世』となり、バベルの塔の全てを与えられ、絶大な超能力を身につけた。

超能力者となったバビル2世に塔のコンピューターが告げたのは、ヒマラヤの奥地に住まうヨミという男に会うことであった。

それは最強の超能力者バビル2世と、世界支配を企む超能力者ヨミとの死闘のはじまりであった。




【マスター】
峯岸一哉@女神異聞録デビルサバイバー

【マスターとしての願い】
秩序と混沌の二人の言葉を借りるならば、『試練と運命からの解放』

【weapon】
・改造COMP
改造コミュニケーションプレイヤー (Communication Player) の略称。
特殊なプログラムが複数ダウンロードされている。
悪魔召喚プログラム、相手との力を均等にするハーモナイザー、そして、未来を伝えるラプラスメールとしての機能は再現されていない。
悪魔や異能者が扱うことが出来る魔法などを再現するスキルクラック機能は一部再現。

【能力・技能】
・ベルの王
かつて、偉大なる神が居た。偉大なる神は唯一無二の神に戦いを挑み、敗れた。
敗れた神はその力を分断され、力は魔界へと堕ちた。
強大すぎる力は分断されても、なお、意思を持ち、意思を持った。
峯岸一哉はそのうちの一人である『魔王ア・ベル』の因子を強く持った少年である。
高エネルギー思念体『バ・ベル』の最終試練に打ち勝つことで『ベルの王』として覚醒する。

【人物背景】
出典は『女神異聞録デビルサバイバー』及び『デビルサバイバー オーバークロック』
峯岸一哉は平凡な高校生であったが、突如として山手線内が自衛隊によって封鎖される『東京封鎖』に巻き込まれる。
『悪魔』に溢れ、魔都と化した東京で従兄の直哉から改造COMPを与えられ、インストールされた悪魔召喚プログラムを駆使して生存していく。
やがて、その動きはベルの王の繰り広げる『魔戦』と神と天使が与えた『試練』の中心となっていく。

かつて唯一神に敗北したベルという魔王の因子を持っている。
というのも、ベルの因子は聖書に現れる『ア・ベル』が所有しており、兄である『カイン』に殺されたアベルは『ア・ベル』の因子を人間という種に植え込んだからである。

参戦時期はルート決定直前。
名前は漫画版から引用。

【方針】
あらゆる手段を選んではいけない。


519 : 峯岸一哉&ライダー ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 06:40:15 .CsW8hl20
投下終了です


520 : ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 13:53:12 .CsW8hl20
続いて投下させていただきます


521 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 13:53:47 .CsW8hl20


ピノキオはおじいさんを助け、

まじめに努力し働き、

最後、妖精から人間にしてもらいます。


めでたしめでたし。






522 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 13:54:04 .CsW8hl20


世界は人間でないもので溢れている。
誰かが人間だと思っている隣人も、実は人間ではないのかもしれない。
それは鬼や魔、あるいは、妖怪などと呼ばれたりする。
誰もが隣に妖怪に居ることに気づいていない。
気づいているのは、妖怪だけだ。
人間は数が増えすぎて、人間がそばにいることが当たり前だと思ってしまっているのだ。
例えば、総髪の髪を黒い帽子で隠し、暗色のジャケットを纏った中肉中背の男。
多少変わってはいるが、誰もこの男が人間でないとは思わないだろう。
だが、この男は妖怪だ。
不気味な泡の中で生まれた、妖怪なのだ。

「……」

青年は人々に包まれながら、紅い月を見た。
青年は目深に被った帽子を、さらに深くかぶった。
人々の視線から逃れるような動きだった。
暗色の服装をし、手には骨のような杖を持ち、青年は歩く。
孤独が妖怪である青年を包んだ。
周囲の人々が寄り添っているからこその孤独だった。
常に自らの隣を歩いていた妹のような女も、自らの後ろをついてくる弟のような男も、今は居ない。

いや、果たしてその二人は男なのだろうか、女なのだろうか。
自分は男なのだろうか。

いつ生まれたのか誰も知らない。
己ですら、知らない。
暗い音の無い世界で、一つの細胞が分かれて増えて行き、三つの生き物が生まれた。
彼らはもちろん、人間ではない。
また、動物でもない。
だが、その醜い身体の中には、正義の血が隠されているのだ。
その生き物。

――――それは、人間になれなかった妖怪人間である。

妖怪人間――――ベムは総髪の髪を撫でる。
痩せぎすの身体からは妖気を発していた。
ベム自身が消したいと思っても消せない、人とは異なる、不可思議な妖気を。
現に、今も勘の良いのであろう少女が、振り返ってベムを何度も見ていた。
孤独を覚えたベムは、再び紅い月を見上げた。

「……ようやく死ねる、か」

呟いた言葉は、決してベムの言葉ではない。
空に輝く紅い月を見て、一人の男を連想したために出た言葉だ。
紅い月のようなどす黒い赤さを持った肌をした、自らの同類が口にしていた言葉だ。
ベムではない、別の妖怪人間が言った。

『正義だけでなく、悪の心を持つことで、妖怪人間は人間に成れる』

不気味な肌も、緑の血も、永遠の命も消え去る。
そして、人間と仲間になれる。


523 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 13:55:00 .CsW8hl20

「……ピノキオ」

ベムは呟く。
すると、空気が蒸気を浴びたようにゆらめく。
その中から、ギターを背負った少年が現れた。
彼こそが、ベムのパートナーであるサーヴァント。

――――エクストラクラス、『ピノキオ』のサーヴァント。

ピノキオは『人形』だが、『人間』だった。

良心回路<ジェミニィ>だけでなく。
服従回路<イエッサー>だけでなく。
善悪両方の回路を持つことで、人間になり得たお人形。

ピノキオのクラスはそんなクラスだ。
人間になった人形の英霊。

「ピノキオは――――」

ベムはピノキオを見据えた。
ピノキオは視線を逸らさない。
ベム自身、高い戦闘力と不死身の身体を持っている。
死によって孤独から逃れるも出来ない身体を持っているのだ。
だからこそ、ピノキオに問いかけた。
自らと同じく、人間とは異なる身体を持つ人形へ。

「ピノキオは、人間、なのか?」
「……難しい質問だね、マスター」

ピノキオは答えあぐねているようだった。
ピノキオはすでにベムの正体に感づいている。
そして、ベムの視線の中に人間を羨む色を含んでいることに気づいている。

「マスターの求める人間ではないけど、聖杯は僕を人間と認識した。
 ロボットではなく、人間として。
 だから、ピノキオのクラスで現界したんだ」

人間が事故によってその身体の全てを機械に置き換えたとして。
果たしてその人間は人間なのだろうか、ロボットだろうか。
ベムは人間だと答えるだろう。
ピノキオも人間だと答えるだろう。
身体の問題なのだろうか。
ベムの解決したい問題は身体の問題だが、同時に、それだけでないことも理解していた。


524 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 13:56:53 .CsW8hl20

「聖杯は俺を人間として認識するのか?」
「また、難しい質問だね」

ピノキオは誤魔化すように背負ったギターを引き始めた。
誤魔化す、はぐらかす、という行為がピノキオの人間性の証明だった。

「それは聖杯のみぞ知る観測結果。
 大事なのは、マスター自身が自分のことをどう思っているのか、さ」

ピノキオは嘘をついた。
平然と、嘘をついた。
実際のところ、大事なことはベムのベム自身をどう思うか、ということではない。
大多数の人間がベムのことをどのように思うか、だ。
ベムが人間に受け入れられるならば、ベムは喜んで自身を人間として観測する。
しかし、そうではない。
悪の心を拒絶したベムは、一生、人間のために生きる。
人間を羨み、人間を愛したために。
悪の心で妥協せぬまま、人間の悪を正す存在であることを選んだ。

「ピノキオ」
「なんだい?」

ピノキオはギターを引き続けた。
優しい音色だった。
ベムは目を細める。
これからの問いが、ピノキオに対して行っていい質問か躊躇った。
しかし、せずには居られなかった。

「ピノキオは、幸せだったのかい?」

音色が一瞬だけ乱れた。
悪意はなかったが、ベムは質問を悔いた。
触れてはならないものだったのだろう。
あるいは、ピノキオ自身が最も知りたいことだったのかもしれない。
音色が元に戻った。
ギターを引きながらピノキオ――――ジローという名のサーヴァントは口笛を吹いた。

「……さあね」

はぐらかすように応えた『人造人間』キカイダーは、

嘘をついていた。





525 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 13:57:25 .CsW8hl20





ピノキオはおじいさんを助け、

まじめに努力し働き、

最後、妖精から人間にしてもらいます。


めでたしめでたし。




















でも、ピノキオは。


人間になれて。


――――本当に幸せだったのでしょうか。


.


526 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 14:00:57 .CsW8hl20

【クラス】
ピノキオ

【真名】
ジロー@漫画版人造人間キカイダー

【パラメーター】
筋力C 耐久D+ 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具E

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
人間:C
人間証明、あらゆる判定においてジローは人間として扱われる。
例え、どのような身体や精神構造していようが、キカイダーは人間である。

【保有スキル】
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の機械を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

変身:D
ジローは人間としての身体と機械としての身体を持つ。

気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
ジローは自らの気配を偽ることが出来る。

【宝具】
『不完全証明(ジェミニィ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ジローを人造人間キカイダーたらしめる宝具、良心回路とも。
常時展開されており、魔力の消費を必要としない。
本来の完全な良心回路はあらゆる善と悪を判別できるが、ジローの良心回路は複雑であるために善と悪に心を悩まされる。

『完成証明(イエッサー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ジローを人造人間キカイダーたらしめる宝具、服従回路とも。
常時展開されており、魔力の消費を必要としない。
本来、嘘をつくことのできない創造物であるジローに嘘をつかせる悪の回路。
ジェミニィとイエッサーが常時解放されているジローは、もはやロボットではなく人間である。

【weapon】
・デンジ・エンド
腕に電磁波をまとわせ、敵を斬り裂く。
兵装というよりは必殺技。

・ブラスター(破壊光線)
キカイダーの最大火器、眼から強力な破壊光線を放出する。
その威力はキカイダー01、キカイダー00を一瞬で破壊するほどである。
その破壊力を恐れたジローは使える事は知っていたものの、あえて使用しなかった。
だが、服従回路を埋め込まれた後、その影響でためらい無く使用し、一瞬で01達を破壊している。


527 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 14:01:31 .CsW8hl20
【人物背景】
人間態の名前はジロー。
息子であった一郎の死を受けて、光明寺博士が制作した人造人間。
プロフェッサー・ギルなどの悪人に利用されないように、光明寺博士によって良心回路が付属されている。
だが、その良心回路は不完全なため、ギルの笛やハカイダーの口笛などにロボットを操作する道具によって操られることがある。
初めは人体の構造なども理解していない様子だったが、その後学習していき、人が傷付くことや死ぬことをさけるようになる。

一度ハカイダーに倒されるが、ハカイダーに光明寺博士の脳の影響が見られたために、ハカイダー(光明寺博士)によって修理され、『ダーク』のアジトを破壊することに成功する。
だがハカイダーから脳を移植しなおすことで助け出した光明寺博士は記憶を完全には取り戻していない。
また、ダークアジト爆破によって菌に侵された人間との遭遇、キカイダーとの戦闘で脳をハカイダーへ移植することとなったギルとの再会で、自責におわれることとなる。
その後偶然もあり、自身のプロトタイプであるキカイダー01(イチロー)と出会う。
新たな敵『シャドウ』との戦いに身を落としていく。
しかし「誤解」や「嫉妬」によりイチローと離れてしまい、その「寂しさ」を紛らわすためにキカイダー00を制作。
後に、シャドウやハカイダー(ギル)に立ち向かうが、ジャイアントデビル(アーマゲドン)の前に捕らえられ、服従回路を取り付けられてしまう。

こうして、ジローは人間と同じ「不完全な善」と「完全な悪」の二面性を持った、「心」を持つようになった。





【マスター】
妖怪人間ベム@ドラマ版妖怪人間ベム

【マスターとしての願い】
人間になりたい。

【weapon】
凄まじい強度を持つ、骨のような杖を持ち歩いている。

【能力・技能】
超人じみた身体能力と不死身の肉体を持つ。

【人物背景】
人間形態は帽子を被った銀髪の青年。
寡黙で無愛想な性格だが、どのような人間にも優しく接し、いつか人間になれる日を夢見て流浪の旅を続ける。

助けを必要とする人間を見過ごすことは出来ず、それを忘れてしまうと本当の妖怪になってしまうと語る。
人間になった時に困るからと、箸の持ち方など人間の行儀作法をベロに教える。

アニメ版のような重厚な人格はなりを潜めている。
だが、自身の存在や他者との関係に思い悩んだり敵対する相手に熱く語りかけたりするなど、常に超然としていたアニメ版より若さを逆手に取った人間味の強い人物として描かれている。
自分達の正体を知りながらも受け入れてくれた夏目に強い信頼と友愛を寄せる。
東郷への復讐を果たそうとする夏目を止めるため、「ただの妖怪になっても構わない」と夏目の代わりに東郷を殺そうとする。

人間になる方法とは、すなわち悪を受け入れること。
ベム達が正義だとするならば、『悪』である『名前の無い男』を受け入れることで人間へとなれる。
しかし、人間になる事を悩んだ末にベムは拒否する。
人間が悪の心に負けそうになった時、死ぬことのない自分たちが止めてやるために。

廃研究所で名前の無い男を倒し、夏目の眼前で燃え盛る炎の中にベラ・ベロと共に消えていった。


【方針】
人間になりたい。


528 : ベム&エクストラクラス ◆devil5UFgA :2014/12/29(月) 14:02:13 .CsW8hl20
投下終了です


529 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:35:21 fe/EeUtQ0
投下します。


530 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:35:44 fe/EeUtQ0
「俺はセイバーのサーヴァント、テイ……って、なッ、何いい!?  お、お前は何者だ―!?」

ドン引きして後ずさるツインテールの女の子がそこにいた。
ここに呼び出される前に見た赤い月。
禍々しさを感じたそれと違う綺麗な赤色を身にまとった、見るからに“ヒーロー”のような姿をした少女だった。
あ、でもでも、サチカちゃんの方が可愛いからね、ほんとだよ!?
って、今はそれどころじゃない!

「誰だよおおおおお―ッ!? その姿、お前、まさかアルティメギルの怪人か!?」

うっかり見とれてしまったせいで何も答えなかったせいで、セイバーちゃんの誤解が進展している!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

違う、ぼくは怪人じゃない、ヒーローなんだ。
慌ててそう答える。
あ、でもでも怪人さんたちのことを悪く言ってるんじゃなくて。
怪人さんたちは欲望を我慢できないだけで話を聞いてくれる人や、受け入れてくれる相手さえいてくれれば――

「声が小さくて何言ってんのか分かんねえよおおおー! 
 って、こら、聞かせようと亀な頭近づけるな、キモいんだよ!」

ああ、やっぱり、か。
なんとなく嫌な予感はしていたんだ。
ううん、それはもう予感なんかじゃない。
もっと大きな、確信とも言ってよかった。
ぼくの見た目は普通の人と違うから。
しかも呼び出したのがこんなに可愛い女の子なら当然だ。
女の子に怖がられて当然の姿をぼくはしていて。
悲鳴をあげられるのも、石を投げられるのも慣れっこだった。

「その頭、多分えーっと、ふ、ふたなり属性とかいう奴のエレメタリアンだな!
 男の娘属性や性転換属性同様、俺には厄介だぜ! 一気に決める!」

慣れっこだった、はずなのに。
正義の味方に剣を向けられるのがこんなにも辛いのは、いつしかぼくの周りに沢山の人がいてくれたからだ。
ションが。
アナくんが。
ギー子が。
カニくんが。

サチカちゃんが。

そしてみんながいてくれたから。

でも、ここにみんなはいない。
この東京には、ぼくしかいない。
それが辛かった。それが寂しかった。
だからきっとぼくは、セイバーちゃんを呼んでしまったんだ。


531 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:36:08 fe/EeUtQ0
「オーラピラー!!」

セイバーちゃんの右腕のリングから放たれた光の柱が、ぼくの身へと降り注ぐ。
う、動けない。
これじゃ令呪に命じることもできない!

「完全開放(ブレイクレリーズ)!」

その隙をセイバーちゃんは逃さない。
刀身を二又に展開させ炎の刃を形成すると同時に跳躍し、そのまま一刀両断せんと振り下ろしてくる。
光の柱に囚われたぼくには回避することはできない。

なら!

――かわせないなら喰らっちまえ!! ガマンしろ!!!
  ようは倒されなきゃいいのさ!!

それしか、ない!
かつてぼくはそうすることでカニくんとの戦いを終わらせられた。
友だちを傷つけた憎くてたまらなかった彼を許すことができた。
彼と友だちになれた。
今回だってそうしよう。
この一撃を耐えて、拘束が溶けた隙に令呪を使って……ううん、命令なんかじゃなくて。
ちゃんとぼくの口で、大きな言葉でお願いしよう。
話をしないかって。
そうしたらきっと、ぼくたちは。


「グランドブレイザー!!」













友だちに、なれるはずだから。


532 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:36:44 fe/EeUtQ0
「…………?」

あ、あれ?

なんでだろ、痛みが、こな、い?
え? え?
剣が、ぼくの前で、止まって、る……?


「どうし、て……」

話をしようって決めた少女に、頑張って大きな声で問いかける。

「斬れっかよ……」

少女は卑猥な姿をしたぼくから目をそらさずに答えてくれた。

「そんな、理解されないことが分かっていて、それでも理解して欲しいって言いたげな奴を。俺は斬れねえよ」

答えは、明白だった。
彼女がヒーローだったから。
救いを求める誰かに手を差し伸べるヒーローだったから。

「きみは……」
「俺もさ――分かるんだ。理解されないっていうのがどれだけ辛いのか、って」

そう呟いた少女が光りに包まれ、次の瞬間にはそこには少女より年上の高校生くらいの男の子がいた。

「え、え? き、きみ、セイ、バーくん?」
「あー、まあこういうわけでさ。俺も容姿的なことじゃあんま人のこと言えねえっていうか。
 だからすまん! いきなり襲いかかって悪かった!」

頭を下げてくれるセイバーちゃん改セイバーくん。
でもぼくは何がどうなってるのか分からないことだらけだった。
えっと、女の子に変身、してたのだろうか?
ヒーローなら特におかしくないけれど。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?」

きみは、女の子になりたいの?
だから聖杯を求めてぼくのサーヴァントに?

「それに近い勘違いならしたことあるけどさ。
 違うんだ。俺はどこまでいってもツインテールを愛する男なんだ」

……えっと、ツイン、テール?

「そう、ツインテール! 俺は明日もツインテールを見るために、今日ツインテールを結ぶんだ!」

……性癖に沿った姿に変身して能力を得るって、むしろぼくの世界じゃそっちが怪人と呼ばれてるんだけど。

「な、なんだって―!? あ、てことはやっぱりお前怪人なのか!?」

ぼくはヒーローだよ。こんな姿だけど。


533 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:37:29 fe/EeUtQ0
「ならそっちこそ、願いはヒーローぽい姿になりたいとか、そんななのか?
 そのために聖杯戦争を勝ち残りたいっていうのか?」

彼の目が険しくなる。
それもそうだろう、セイバーくんは正義の味方だ。
人を殺して願いを叶える戦いなんて認められないはずだ。

「ぼくはヒーローになりたい」

……セイバーくんに痛いところを突かれたのは事実だ。
テレビでモザイクを掛けられたりしないでいい姿になりたいってずっと思ってた。
人間態になれる怪人たちを羨ましく思うこともあった。
何より、この外見さえどうにかできれば、サチコちゃんと少しでも吊り合えるんじゃないかって、そう考えてしまう。

――それでも。
……それでも僕は
――その笑顔を守りたいと思った。

ぼくは、ヒーローだ。
そして、ヒーローとしての僕を彼女は慕ってくれている。
なら、ぼくがどうしたいかは決まっている。

「ぼくがなりたいヒーローは、救いを求める人たちの味方だ。
 他のマスターやサーヴァントだからって関係ない」
「そっか、俺もそれでいいと思う。
 偽りの絶対を求めたところで、それは本当の強さじゃない。本当の愛じゃないんだ。
 お前はそのままのお前で、そのままのお前だからこそ心に愛があるかぎり人を守ることも、笑顔にすることもできるんだよ」

そう笑って差し出してくれたセイバーくんの手を、僕は握りしめた。
そのとおりだと思う。
ぼくは、こんなぼくだけど、でもこうして、ぼくのことを分かってくれる友だちが、また一人、増えたのだから。

「よろしく、セイバーくん」
「おう、よろしくな、マスター!
 長い夜になるかもだけど、大したことはないさ。今夜からはお前と俺でツインテイルズだからな!」



   マスター
ペ ニ ス マ ン

   サーヴァント
テ イ ル レ ッ ド


534 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:37:51 fe/EeUtQ0
【クラス】
セイバー

【真名】
テイルレッド/観束総ニ@俺、ツインテールになります。

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:B 宝具:B
(観束総ニ時)

筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A++ 幸運:A 宝具:B
(テイルレッド時)

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
世界を渡る小型戦艦スタートゥアール号に搭乗した経験があることで、辛うじてクラス補正を得た。
ただし騎乗先がツインテール属性なら如何なるものでも乗りこなせる。

【保有スキル】
魔力放出(炎):A
正しくは属性力放出(ツインテール)。属性力とは端的に言えばあるものへの思い入れから生じる心の力である。
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
セイバーの場合、燃え盛るツインテール愛が炎となって使用武器に宿る。

神のツインテール:A+
世界最強のツインテール属性を持つ証。
冗談ではなく世界レベル――どころかアルティメギルを始めとした数多の異世界人をも虜にするレベルである。
A+は既に魔力・呪いの類である。
カリスマを兼ね備えるだけでなく、ツインテール属性の敵との戦闘時や、味方との連携時に多大な補正が入る。
またツインテール属性のサーヴァントやマスターの真名や精神状態を高確率で看破することができる。
自身の内なるツインテールとの対話の域にまで至ったこのスキルは無効化されない。

尚、ツインテールとしては古今東西ありとあらゆる世界に類を見ない影響力を誇るため、本来ならEXランク相応である。
しかし、「俺はまだツインテールの麓に辿り着いただけ」との本人の自己申告によりA+ランクとなっている。


変身:C
後述による宝具での変身、及び強化形態への変身が可能。
また、英霊化した今、テイルレッドの大きくなった姿とも言えるソーラ・ミートゥカにも自在に変身可能。
ただし逸話によりソーラの姿では弱体化してしまう上、本人もツインテールを愛する男である自身を受け入れているため、理由がなければ変身しない。


535 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:38:17 fe/EeUtQ0
【宝具】

『俺、ツインテールになります。(テイルギア)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
ツインテール属性を核として装着者の属性力と共鳴し生成される強化武装。
通常はブレスレットの形態で腕に装着されているが、他者に認識されない。
その能力は精神状態により左右される。深海や宇宙空間でも変わりなく運用出来る。
「テイルオン!」の掛け声で起動できるが、無言変身も可能。
体力が尽きると変身は自動的に解除されるが、エネルギーが切れた場合は例外でその場に倒れこむだけであり、変身も自動的に解除されない。
身体能力の向上や武器の生成だけでなく認識阻害等の機能も兼ね備えている。
本来なら属性力を吸収、拡張もできるのだが、ツインテール愛故に他の能力はほとんど使用されない。

セイバーの場合、変身時に性転換を経て赤いツインテ幼女ヒーロー化されるが、これは装備開発者の趣味。
炎の剣ブレイザーブレイドを用いた接近戦をメインに、炎を操る能力も有している。
必殺技はオーラピラーで敵を拘束してからの、完全開放した炎剣による一刀両断技グランドブレイザー。

尚、観束総ニがテイルレッドに変身しているため、真名は観束総ニの方なのだが、英霊の座にはテイルレッドとして登録されている。
これはあくまでもテイルレッドとして広く世にヒーローとして知れ渡っているからである。
そのため、テイルレッドが観束総ニであると気づかない限り、観束総ニの姿では自らのマスター以外にはサーヴァントとして認識されない。

『絆のツインテール(プログレスバレッター』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
菱形で左右を引っ張ると三角になる一対の髪留め。
ツインテールを結うフォースリヴォンに装着することで、「攻撃特化」と「速度特化」の二極集中進化をもたらす。
プログレスバレッタ―自体も、基本形のプログレスモード以外にも、盾、剣強化、ブーメランとして使用可能。

・ライザーチェイン
上結びツインテール攻撃特化戦闘形態。
ツインテール属性力の循環を止めて上体に集中させることで攻撃力を増幅。
一方で、ギアの防御力は属性力の循環により発生していたため防御力が下がる。
(筋力:A 耐久:E 敏捷:B 魔力:A++ 幸運:A 宝具:A)

・フォーラーチェイン
下結びツインテール速度特化戦闘形態。ツインテール属性力の循環を止めて下体に集中させることで脚力を増幅。
さらにツインテールの毛先が地面についてしまうのを嫌う総二のこだわりにより、超加速を実現。
しかしライザーと同じく循環が停止するので、防御力が下がる。
(筋力:C 耐久:E 敏捷:A+ 魔力:A++ 幸運:A 宝具:A)

両形態にいえることだが、循環が22秒以上止まってしまうとギアが暴走し、最悪使用者ごと爆発する。マスターも爆発する。
必殺技はライザーチェインによる超加速からフューラーチェインに瞬時に変身しての渾身の一撃、ライジングブレイザー。


【weapon】
・武器:ブレイザーブレイド(炎の剣)、ブレイザーブレイドツイン(二刀流)、
    ブレイザーエッジ(ライザー)、ブレイザーセイバー(フォーラ―)、プログレスバレッター

【人物背景】
ツインテールを愛してやまない男子高校生。
基本的には優しい性格で、正義感あふれるヒーロー気質。
世界最強のツインテール属性を持っており、ツインテール愛の大きさゆえに、世間とズレた感性を持っているが、それ以外は常識人。
敵も味方も濃い面子や変態ばかりのせいでツッコミに回ることも多い。
テイルレッドとしてはその愛らしさから世界中で大人気であり、ヒーローというよりアイドル的な扱いをされている。
また、相手の意志を組み、想いを正面から受け止め、その上で正面から正々堂々と倒す人としての器の大きさと戦士としての誠実さも併せ持つ。
これは総二自身自らのツインテール愛が世間から爪弾きにされるものだと理解して生きてきたためであり、
ツインテールのついでに世界を救わんとする彼だが、誰にも理解されない苦しみに叫び続ける人々を増やしてなるものかという意志もまた本物である。
その仁の篤さは敵にさえ好意的に受け止められている。

【サーヴァントとしての願い】
ツインテールをもっともっと広めたいが、それは自らの愛や、誰に認められずとも共に歩んでくれる仲間たちとなすべきことであり、願望機なんて必要ない。

【方針】
ツインテールを愛し、ツインテールを守り、ついでに人助けする。


536 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:38:35 fe/EeUtQ0
【マスター】
ペニスマン@THE PENISMAN

【マスターとしての願い】
願いがないなんて言ったら嘘だ。でもぼくはヒーローで、もっと大きな願いがある。
救いを求める人たちに手を差し伸べる。

【weapon】
頭部からのビクビクドピュ

【能力・技能】
ヒーローとしての優れた身体能力。
本人曰くの臆病さと、優しさといった精神状態に左右されがちだが、その実力はかなりのもの。
怒った時の彼は最強格の怪人さえも恐怖させる圧倒的な戦闘力を誇る。
特殊な能力こそないが、耐えて、殴って、蹴って、倒すシンプルな強さがある。
また、彼にぶん殴られた欲望を暴走させた者たちの多くはその欲望ごと吹き飛ばされすっきりして心を入れ替えられるという。

【人物背景】
相性はペニー。
ヒーローの家系に生まれたが、その名の通りな形をした頭部を持つため、幼少の頃から人とあまり馴染めなかった。
そのためヒーローでありながらも怪人のような悲哀があり、手に入れた一握りの幸せをいつか失ってしまうんじゃないかと怯えている。
孤独というものを誰よりも理解しており、様々な出会いの中で、怪人にも手を差し伸べるヒーローになることを決意した。
自身を師匠としたってくれている一人の少女に恋をしているが、吊り合わないと諦め、それでも守りたいと思っている。


【方針】
ヒーローとして、救いを求めるマスターやサーヴァントに手を差し伸べる。
それが例え、欲望に従ってしまった人たちでも、話を聞いて、支えてあげたい。


537 : ペニスマン&セイバー  ◆TAEv0TJMEI :2014/12/29(月) 15:41:36 fe/EeUtQ0
投下終了です。


538 : ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:29:07 FkQTtAg60
みなさん投下お疲れ様です。
私も投下します


539 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:30:17 FkQTtAg60








――――神が世界を五分前に創造された可能性を、誰も否定することは出来ない。



――――ならば、神が世界を五分前に変容させた可能性を、いったい誰が否定することなど出来るだろうか。




――――『運命石の扉』が今、静かに、しかし確かに




――――魔神によって、抉じ開けられる。


540 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:30:38 FkQTtAg60
◇ ◇ ◇



赤い緋い紅い月が、天上で煌めいていた。
人類によって生み出され消費されていく叡智の光が燦々と照らす電気街。
彼の地が放つ明るさ/賑やかさ/喧噪に紛れながら、しかし空だけは、天だけは、己が領域だとでも言わんばかりに。
悠然と、超然と、判然と、下界を見下ろしていた。

そんな、神様のような月の下。

バーサーカーは、キレていた。

もともと、バーサーカーは暴力が、争いが好きではない。
というか嫌いだ。大嫌いだ。この世で1,2を争うくらい嫌いだ。俺に争うと言う言葉を使わせるな。
平和に何事もなく一生を過ごせれば世界の真理も金銀財宝も不老不死も何一ついらない、そんな無欲で控えめな人間だ。
だから、彼がサーヴァントとして召喚され、聖杯によって戦争のルールを刻み込まれた直後、彼の脳裏に浮かんだのは「殺す」というシンプルな二文字だった。

マスターが漫画の中に出てくるような陰湿悪質魔術師野郎だったら?殺す。
聖杯獲得のためにきりきり働けとのたまうヤツだったら?殺す。
バーサーカーが欲しくもない聖杯のために力を合わせて行こう、などと的外れなことを言い出したら?殺す。

というか人を狂戦士(バーサーカー)呼ばわりとは殺すどこのどいつだ殺す聖杯か殺す座とやらに戻ったらしこたまぶん殴って殺す!

殺す。

殺す。殺す。殺す。

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!


だから、バーサーカーが目の前のマスターを即座に殺さなかったのは、ソレが女だったからというだけでしかない。

バーサーカーはよっぽどのことがない限り、女には優しい。自分よりも年下ならば尚更だ。
人を殺せるスタンガンを向けられようとも即座にキレない程度には、フェミニストだ。
少年時代に味わった、甘酸っぱさとは程遠い苦々しい初恋の思い出。
その頃から、彼は自分の強さと女の脆さを理解していた。

「うーん、成功して良かったあ」

そんなバーサーカーの憤りと抑制に全く気付くことなく、もしくは狂戦士(バーサーカー)はみんなこんな感じだとでも思っているのか。
とあるビルの屋上で。立ち入り禁止の看板の内側で。彼女(マスター)は大きく伸びをする。
地に足がついてることを確認するようにぴょんぴょんとジャンプ。それに合わせて、二本の三つ編みが尻尾のように跳ねる。
ジャージにスパッツ、運動靴といった動きやすさだけを追求したようなファッションを身にまとった彼女は、いかにもスポーツ少女といった出で立ちだった。


541 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:31:21 FkQTtAg60

(こいつ……本当にマスターか?)

間違いないはずだ。魔力のパスは確かに彼女から繋がっている。
事故ということもあり得ない。理由はバーサーカーの下、正確には床にある。
即席で書かれたと思われる、サーヴァント召喚儀式に用いる魔法陣だ。
バーサーカーは正規の手順、魔法陣やら詠唱やらによって呼び出されたのだ。
しかも、その詠唱にご丁寧に
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者」
とわざわざ付け加えたあたり、相当にバーサーカーのクラスをご所望の様子である。

しかし、それらの事実が、目の前の快活そうな少女となかなか結びつかない。
血なまぐさい魔術師どもの儀式であるはずの聖杯戦争と、噛み合わない。

「…………」

困惑で怒りを打ち消された形になったバーサーカーは、ひとまず『静観』という方法をとることにした。
口下手で、初対面の相手と上手くいった試しがほとんどない彼にとって、相手の出方を見るというのは一種の処世術となりつつある。
――もっとも、そうして最初は大人しい態度をとっていることで相手に舐められてしまっていることを彼は未だ分かっていないのだが。

「これからよろしくね、バーサーカー。って言っても、理性がないのがバーサーカーだよね」

理性はあるがな。
言葉には出さずに、静観を続ける。
こちらの理性がないと思っているのなら、それはそれで好都合だ。このあとの動きで彼女を見極められる。
バーサーカーが大嫌いな類の人間か、そうではないかが。

「じゃあ、ちょっと待っててね。準備してくるから」

おう、よくわからんが行ってきな。
言葉には出さずに、静観を続ける。

しかし、バーサーカーはそこで妙なものを見つけた。
簡単に言えば、人工衛星。しかし、まさかビルの屋上にそんなものが鎮座している道理はあるまい。
しかもマスターはその衛星らしき何かに堂々と乗り込み、我が物顔でなにやらゴソゴソしているではないか。
正しく彼女にとっての『我が物』なのかもしれないが、それにしたって、どうして年端もいかぬ少女がこんなものをビルの屋上に持ち込んでいるのか。
奇妙なマスターに加えて更なるハテナマークを頭の上に追加したバーサーカーは――考えるのを止めた。
どうせ考えたところで分かるものではないだろう。もともと、頭脳労働は専門外だ。

「お待たせ!この中狭いからあんまり大きなものは持ち込めなかったんだけど、これで準備は完了だね」

何やら荷物をまとめて、駆け足で戻ってくるマスター。
やけにゴテゴテというか、少なくとも女の子が小旅行に行く荷物とはとても思えないそれら。
来る聖杯戦争に向けての備えだろうか。それにしたって、なぜ自分の家や隠れ家などではなく、こんな分かりやすく怪しそうな衛星(?)に。
……まあ考えるのはやめたので、もはや彼女の荷物など、どうだっていいことにしておく。

「それじゃ、一緒に世界を救おうね。この聖杯戦争を――ぶっ壊して!」

そうか、それがお前の願いというやつか。
そうだな、一緒にこのクソッタレな聖杯戦争をぶっ殺そうな。
言葉には出さずに静観を続け…………
…………うん?

流石に、バーサーカーは考えるのをやめるのをやめた。

あン……?

「あン……?聖杯をぶっ壊すってお前、今なんつった」


「……あれ?今喋らなかった?」


「あ」


………………。



「「どういうことか、説明してくれる(か)?」」


542 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:31:54 FkQTtAg60
◇ ◇ ◇



『もしもし?』


『ああ、その反応は、やっぱり気付いていたんだね』


『はじめまして、でいいのかな。それともお久しぶり、といった方が良いかも』


『おかりんおじさ……岡部さんの思っている通り』


『あたしの名前は阿万音鈴羽』


『橋田至の娘で、ラボメンの一人』

『そして、』



『貴方が気付いたダイバージェンスメーター数値「6.666666」』



『そんなあり得ない世界線、Z(ゼータ)世界線からタイムマシンでやってきた、未来人ってやつだよ』


『時間がないから、手短に言うね』


『今回、貴方は何もしなくていい』


『というよりも、何もできないと言った方がより正確』


『何故なら、この世界の貴方は観測していないことが確定しているから』


『聖杯戦争も』

『紅い月も』


『何も観測出来ないまま「大破壊」に巻き込まれるだけの運命だと、定められているから』


『他ならぬ、未来の貴方自身の観測によってね』


『だから「今回」は、あたしじゃないといけない』


『岡部倫太郎でも、橋田至でも、椎名まゆりでも、牧瀬紅莉栖でも、駄目』


『この世界線でこの時代に貴方に観測されなかった私、阿万音鈴羽でしか、聖杯戦争には関われない』


『その結末を、変えられない』


543 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:32:11 FkQTtAg60


『だから貴方に電話したのは警告のため』


『少なくとも一週間、そのダイバージェンスメーターの数値が変わらなかったら』


『逃げて』


『出来るだけ遠くに、出来れば国外に移住できればベストかな』


『とにかく「東京」から、離れて欲しい』


『無茶なことを言ってるのは分かってるよ』


『あたし?あたしのことは……気にしないで』


『…………ごめんね、心配かけて。でも、仕方ないんだ』


『出来るだけのことはしてみるけど、どこまでやれるかは全くの未知数だから』


『あたしがイレギュラーとして参加するだけで、何か変わるのかもしれないし』


『逆に、もしもあたしが優勝しても、聖杯そのものを破壊できても、何も変わらないのかもしれない』


『でもさ』


『頑張るよ』


『頑張って、未来を変えるよ』


『頑張って、世界を救うよ』


『ごめん、もう時間がない。早くこちらでサーヴァントを召喚しないと、席が埋まっちゃうかも』


『……ありがと』


『さよなら』


『………………………』


『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にあるか、電源が入っておりませ』


544 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:32:28 FkQTtAg60
◇ ◇ ◇



かつて、戦争があった。



冬木より生まれ、東京より始まり、魔王より齎された戦争。
英霊が、怨霊が、御霊が、そうして人間が。
斬り、穿ち、貫き、駆け、術し、潜み、狂いながら。
競い、争い、奪い、与し、騙し、背し、猛りながら。
紅い月を見た主(マスター)と従者(サーヴァント)おおよそ十数組が、敵対者の一片の一粒まで消滅せしめんと、殺しあった戦争。
血を魑で清め、骨を絶ち肉を喰らい、魂を魄で塗りつぶして、都を地獄へ変えた戦争。


どんな願いも叶うという、神の子が作りたもうた器をめぐる戦争。

そんな戦争があった。



そんな戦争があった、として。



果たして、

被害が―――「行方不明事件相次ぐ。カルト集団による暴走との噂も」
破壊が―――「我が国の重要文化財が焼失したというこの痛ましい事態は、私といたしましても誠に遺憾でありまして」
余波が―――「そういやあいつ、最近見ないな〜。アカウント変えたのかな」
余震が―――「来るな……来るな、来るなバケモノオオオオオオオ!!!…………ぁ」
悲劇が―――「ママ、もう朝だよ。なんでパパはおはようしないの?ねえ、ママ」

総面積509,949,000km²もの世界を内包する青い星において、2187.42 km²ぽっちしか存在しない戦場、『東京』だけで収まるなんてことが、ありえるだろうか。

例え再現された世界だとしても、例え裏側の世界だとしても、たとえレプリカの世界だとしても。
『其処』で行われた戦争が、現実に全く影響を与えないなんて慈悲を、親切設計を、やさしさを、聖杯モドキが持ちあわせるはずがあるだろうか。
そもそも、この聖杯戦争を執り行おうとした誰かの目的は、なんなのか。
怨念と怨念と怨念と怨念が混ざり合い穢土と化した魔都、『東京』で、彼もしくは彼女はいったい何を行おうとしていたのか。

答え合わせには未だ早い。
戦争は未だ準備段階。こんなところでネタバラシなど、ルール違反にも程がある。

だから、結論だけを簡潔に伝えよう。
理論も公式も途中式も何もかもをスキップして、最終解だけをズルして教えよう。



地球におけるたった0.0004%の地域を舞台に起こった十数人による戦争は、その後







世界100%、総人口70億超を、滅ぼした。


545 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:32:58 FkQTtAg60
◇ ◇ ◇



「だからあたしはここに来たんだ」



そういって締めくくられた彼女の説明は、バーサーカーにとっては正直言ってワケノワカラナイものだった。



「つまりお前は未来人で」

「うん」

「未来はこの聖杯戦争が原因で滅びかけてて」

「うん」

「それを変えるために、タイムマシンに乗って過去にやってきたと」

「うん、その通り」

頭が痛い。
いつからこの世界は青ダヌキが闊歩するような理論が罷り通るようになってしまったのか。

「なんでバーサーカーだ」

「だって、サーヴァントが聖杯を欲しがってたら、あたしの目的を隠したまま一緒に戦わなきゃいけなくなるわけでしょ?
あたし、そんな器用じゃないし、人を騙すってことも好きじゃないし……」

「だから、いっそのこと狂化してて理性のない狂戦士(バーサーカー)っつーことか」

「その、ごめんね。まさか理性のあるバーサーカーなんてイレギュラーが発生するなんて思わなくて。
……でも、私自身がイレギュラー因子ならこうなることもありえるのかな……」

「本来ならありえないはずのマスターだとか、さっき言ってたアレか?」

「うん。この聖杯戦争は本来、『紅い月』を観測した者たちによって行われるものだってことが調査で判明してたんだ」

「だから私は、絶対に『紅い月』に呼ばれるように裏技を使った」

「んだよそりゃ」

「順番を入れ替えたんだよ」

「『紅い月』に呼ばれてサーヴァントを所有するのではなく」

「サーヴァントを予め召喚しておくことで、『紅い月』に聖杯戦争参加者だと認められるようにしたんだ」

「そうでもしないと、魔術師でもない私が関われるかどうか怪しかったから」

「ふーん……」

「だから、そろそろ『紅い月』からお迎えが来ても良い頃だとは思うんだけど……」

そこで鈴羽は、目の前のバーサーカーが何かに引っかかっている顔をしていることに気付いた。
喉の奥に魚の小骨が、という時のちょっとしたイライラ感というか。
どうにもスッキリしないと、その面持ちが語っている。


546 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:33:30 FkQTtAg60

「こまけえ話は置いとくとして、だ」

「全然細かくはないんだけど……君は何が気になってるの?
聖杯は欲しくないんだよね。あたしの話がまだ信用できない?それなら」


「なんで、お前なんだ?」


それはある意味、当然の疑問だった。


「お前、鈴羽だっけ?魔術師でも超能力者でもなんでもねーお前が、どうして選ばれた?」

救世主として。メシアとして。
阿万音鈴羽は不適合者ではないか、と。

「タイムマシンの関係者だからか?だからって、お前ひとりでここまでやってきたわけじゃねえだろ。
元締め、おかりんおじさんとやらはどうして、自分じゃなくてお前に行かせた」

「そいつが無理でも、他に誰かいなかったのかよ。お前が自分で志願したのか?どうして誰も止めなかった?」

「殺し合いだぞ」

「おかしいだろうがよ。ガキが踏み入れて良いような場所じゃねえだろ、聖杯戦争ってのは」

その言葉は、年長者としての心配から来るものだったのだろうが。
目の前の少女は聖杯戦争にはそぐわない、と最初の印象を引きずってのものなのだが。
バーサーカーは、地雷を踏んだ。


「母さんはあたしを産んですぐ、死んだ」


ぽつりと、そう漏らす。


「母さんの命を奪ったのは大破壊以降に流行った『不治の病』だって聞いてる」


一度溢れ出した言葉は、止め処なく流れ続ける。


「父さんは『喰われながら』タイムマシンの設計図をあたしたちのもとに転送してくれた」


自分の生きる意味を確かめるように。


「まゆりお姉ちゃんは生き残るために屑どもの『捌け口』になりながら、死ぬまで私を育て続けてくれた」


あるいは、懺悔のように。


「紅莉栖先生は『教団』の連中に捕まっても、拷問されても、最期まであたしたちの計画を外に漏らさなかった」


それが皆の、愛すべき『ラボメン』たちの最期。


「他のみんなも、死んでいったよ。ある人はあたしを庇って。ある人は敵を道連れにして。
みんな、みんなみんな死んだ。殺された。――――全ては『シュタインズ・ゲート』のために」


世界は破滅に向かい続け、計画は止まらず、そんな中で鈴羽は生きてきて。


547 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:33:48 FkQTtAg60


「おかりんおじさんはことあるごとに言ってたよ。『お前が生きていてくれて良かった』って。
誰が死んでも、消えても、あたしの前では涙一つ見せずにそう言って抱きしめてくれた」


鈴羽は知っている。
岡部倫太郎は、誰にも見つからないところで人知れず涙を流していたことを。
誰よりも仲間を愛し、だからこそ本当は他の誰でもない己の手を汚して、自分を犠牲にして、世界を救いたいと思っていたことを。
それでも、彼自身の観測が絶対であるが故に、より『選ばれる』可能性の高い阿万音鈴羽を選ぶしかなかったことを。
かつて『シュタインズ・ゲート』への切符を届けてくれた彼女に、賭けるしかなかったことを。


だから。


「あたしじゃないといけない。みんなの遺志を継いで、みんなを救うのは、あたししかいない」

強い、強すぎる瞳の色だった。
何もかもを飲み込むような、絶望さえも塗りつぶすような。
明るさの裏に秘めた、阿万音鈴羽の使命感。
『運(さだ)められた子供』としての、義務感。


「あたしは失敗しない。失敗できない。腕がもげても足が削げても死ぬことが分かっても、最期まで足掻いて、死んでも未来を変える」


それは、既に強迫観念の域に達していたのかもしれない。


スイッチが、入る。


「失敗しない」


肉親も愛する人々も全て奪われて。


「失敗しない失敗しない失敗しない」


縋る『よすが』が、救いの糸が。計画の終着点が。


「失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない」


世界でここにしかないと理解していたから。


「失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない」


彼女はそのために生きてきて。


「失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない失敗しない」


そのために、死ぬのだから。


548 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:34:07 FkQTtAg60


「おい」


次の瞬間、鈴羽は空にいた。

「は?」

突風を伴った身体が、タイムマシンに乗っている時と似ているような、違うような、浮遊感とGに満たされる。
自分のいた場所、ラジ館の屋上が見る見るうちに視界から離れて行って。
ある時点から、逆風と共にどんどんその光景が近づいてきて。
上昇して、落下していることを理解して。
ようやく、鈴羽は『投げ飛ばされた』ことに気付いた。

ぐんぐん伸びていくように錯覚するビル群。さようなら、さようなら。もう会うこともないでしょう。
対照的にどんどん迫る来る地面。こんばんはコンクリート、ファーストキスがあなたとだなんて猛烈にお断りだ。
現実逃避しかけた脳内がぐらぐらする。風切り音が痛い。叫ぶ。何も聞こえない。

落下。

高さ的に。


死   


「よっと」


がくんという衝撃と共に温かい何かに包まれた、と認識した瞬間、世界は落下を止めた。
お姫様抱っこ。バーサーカーの腕に抱えられたのだと気付くのに、少々の時間がかかる。
死にかけたという体験より、ようやく意識の方が天高くから戻ってきた。
投げ飛ばしたのはバーサーカー。受け止めたのもバーサーカー。
つまり、赤ん坊を喜ばせるために行うことがある、所謂たかいたかーいをサーヴァントレベルで行われたということだ。

「落ち着いたか」

「な、な、なにすんのさ!落ち着けるわけないでしょ!」

「怖かっただろうが」

「こ……怖くなんかないもん!あたしは一人前の戦士で」

「自分の命は、大事にしろよ」

そんな当たり前のことを言うためだけに、彼はこんな暴挙に出たのか。
絶句する鈴羽を尻目にバーサーカーは彼女を下ろし、立たせて、ばつが悪くなったのか、後ろを向きながら。

「おめえの覚悟だとかなんとか、その辺は分かったよ。ただ、さ」

煙草に火をつけ、紫煙をくねらせる。
サングラスの奥の瞳は寂しそうに遠くを見つめていた。

「お前にだって、大切な人ってやつが一人や二人、まだいるんだろ?
じゃあ、簡単に死んでもいいなんて言うんじゃねえよ」


549 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:34:27 FkQTtAg60


それは――――違う。


いないよ。


この世界で、この時間軸に。


あたし――阿万音鈴羽という名のイレギュラー(存在するはずのない存在)を大切に思う人なんて、いないよ。


そう言いかけた、その時。
バン!と。
扉が開かれる音がした。


550 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:34:42 FkQTtAg60








「ふぅーっはっはっ!!!!」


551 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:35:23 FkQTtAg60


「なん、で」



扉の向こうに


存在はずのない存在が、いた。


「バイト戦士よ、貴様、の、単純極まりない行動パターンなど、ふぅ、ふぅ、この鳳凰院凶真の前ではグェッホッホッホ!」

息切れ、咳き込み、かっこわるい。
恐らく、汗水垂らして全速力でここまでやってきたのだろう。
普段は運動なんてしていないくせに、こういう時だけやたら頑張るのが、彼だ。
何も変わっていない。いや、これから先、何も変わらなかったというべきか。

「バイト戦士、いや、ラボメンナンバー008!阿万音鈴羽よ!」

よたよたになって力尽きそうになりながら、それでも精一杯虚勢を張って、狂気のマッドサイエンティストは確かにこちらを見て、言った。
阿万音鈴羽という存在を認めて、観測して、言った。



「待っている!」



「『東京』で、待っている!」



一週間経とうが、一ヶ月経とうが、一年経とうが。
いつまでも、いつまでも。
帰りを待っている。
お前には帰る場所がある。

ただそれだけを伝えるために、岡部倫太郎はやってきた。
たった一本の、わけのわからない電話を信じて。
彼に出来ることはないかと必死に考えて考えて考えて。
鈴羽がバーサーカーを召喚している間に、みっともなく走り回って。
鈴羽がバーサーカーと話している間に、ラジ館の警備の目をかいくぐって。
会ったこともない別の世界線のラボメンのために。
伝わるかも定かではない思いを伝えに、やってきてくれた。


552 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:35:38 FkQTtAg60


「もう、馬鹿だなあ……」


耐えきれず、夜空を見る。
綺麗だ。都会の光に紛れながらも、星々は確かに輝いている。
今まで下しか見ていなかったから、分からなかったけれど。
この世界は、あたしたちが守りたかった世界は、こんなにも。


「ねえ、バーサーカー」

「あたしにはこれだけで十分だよ」


意識が引っ張られる感触。
『呼ばれている』のだと分かる。
時間がない。語らいの時間も触れ合いの時間も、何もかもが足りない。

だから、ここで彼に、岡部倫太郎に返す言葉は、一つしかない。

さよなら、ではなく。

ありがと、でもなく。



「いってきます!」



帰ってくるための、言葉。


見上げた月は、紅く染まっていたけれど。

今まで見たどんな景色よりも、美しかった。


553 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:35:54 FkQTtAg60
◇ ◇ ◇



人が飛んでいた。



バタフライエフェクトという現象がある。

初期の極めて小さな差が後に無視できないほど大きな差となることを表す現象のことである。
ブラジルでの蝶の羽ばたき一つがテキサスで竜巻を巻き起こす、というような例えから名づけられた現象のことである。

とある小さな娘が我儘を起こすことで、最終的に街一つの在り様を歪めてしまうような。
とあるボーイミーツガールが失敗に終わることで、最終的に皆の人生を幸せにするような。
とある男の子の性別が女の子に成り替わることで、最終的に世界の命運を変えてしまうような。
とある男が一つのプログラムを開発してしまうことで、最終的に世界を滅ぼしてしまうような。

そんな、一見にしては嘘のように思える現象が、理論が、世界には確かに存在している。

阿万音鈴羽が狙ったのも、それだ。

もしもマスターが違ったら。
もしもサーヴァントが違ったら。
もしも脱落者が違ったら。
もしも優勝者が違ったら。

もしも。もしも。もしも。IFの積み重ね。蝶の羽ばたきの繰り返し。

その果てに『シュタインズ・ゲート』に辿り着ける可能性があるのならば。
その先に『大破壊』の起きない未来があるのならば。
試す価値はあると。

そのために、阿万音鈴羽はここにいる。


閑話休題。


人が飛んでいた。
蝶の羽ばたきというよりは、竜巻に巻き込まれた被害者のように。


人が、ぶっ飛んでいた。


ぶっ飛んだ人は空中で皮ジャンとその下のシャツを、チャラチャラしたアクセのついたズボンとその下のパンツを、ついでにヅラを。
魔法のように、奇術のように、剥ぎ取られながら。
最後は全裸ハゲになりながら、錐揉み回転を繰り返し、地面に激突する。
着陸ではなく、激突である。
航空機が空港へ優雅に舞い降りるのと、炎上爆発しながら街のど真ん中に突っ込むのくらい違う。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

いかにもガラが悪いですよとアピールに余念のないファッションの男たちは、みな一様に口をあんぐり開けていた。
先ほどまでの威勢はいったいどこに消えたというのか。
彼らの仲間が迎えた凄惨な最期を見届けるかのように、着陸した沈黙がひっそりと舞い降りる。


554 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:36:12 FkQTtAg60


「よお」


沈黙を破ったのは、奇しくもこの事態をその名の通り「巻き起こした」竜巻その人であった。

「もっかい言ってみろよ。なんだっけ。
「人の縄張りで何勝手にイチャイチャしてんだ淫乱ビッチ」だったか?
「バーテンの格好しながら野外で特殊プレイしてる変態野郎」だっけか?
「金と女置いてけ、俺たちが有効活用してやる」だとか「そのクソダサいコスプレを汚されたくなきゃ失せろ」なんかも言ってたっけなあ」


ふぅ、と息を吐く。すぅ、と息を吸う。ただの深呼吸。
だが、その一連の流れに男たちは「死刑執行のために斧を研ぐジェイソン男」を幻視した。


「まあ、その、アレだ。お前らは俺と、鈴羽と、このバーテン服を送ってくれた俺の弟を傷つけてくれたわけだ。
お前らは想像力を働かせたことがあるか?働かせたことがないなら今働かせろ死ぬ気で働かせろ死んでもいいぞむしろ死ね。
お前らの言葉で傷ついた相手が自殺するかもしれない、ってさ。想像したか?想像できたか?想像しろ。

つまりお前らは俺と、鈴羽と、弟と、三人を殺そうとしたってことだよな?

殺そうとしたなら殺されても文句は言えないよな?正当防衛ってやつだよな?」

チンピラの因縁付けにしても、あまりにも頭が悪すぎる理論。
だが、誰もがそれに反論できない。反論した者から死刑が執行されるだろうことを、男たちは本能で感じ取る。
一方、止めなければいけないという思考が馬鹿馬鹿しく思えるような怒気を横合いから感じながら。
鈴羽が先ほど受けた「たかいたかい」など、バーサーカーにとっては準備運動のようなものなのだと、今更に思い知りながら。
「血管がぶちぎれた時の音」を、鈴羽は確かに聞いた。

つまりだ。



「三回ぶち殺す!!!!!!」



男たちの不運は、挙げればキリがない。

「や、やっちまえ!相手は一人だ!囲んでぼこっちまヴぉぐぅぁ!」
「俺たちクリムゾン・ゲッコウのバックにはソウカイヤがついてるって知ってんだろうなテメエ!」
「あれ……いま俺ナイフ刺したよな、なんで3ミリしか刺さらゴキュ」

この世界において彼らが集合場所としていたのが深夜のラジ館屋上だったこともそうだ。
たまたま彼らの集会がある日に、如何かにもなよっとした男が女を連れて先客として存在していたこともそうだ。
リーダー格の男にとって鈴羽の外見が好みだったこともそうだ。
彼らがブクロではなくアキバを活動拠点としていたカラーギャングだったこともそうだ。
召喚されて以来、バーサーカーが鈴羽に発散するわけにもいかないイライラを溜めこんでいたこともそうだ。


555 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:36:26 FkQTtAg60


ただ、男たちにとっての唯一の幸運といえば。


「だめだ、俺ぁもう逃げる!命がいくつあっても足りねえ!」

「おい!早く階段降りろ!下まで行っちまえばこっちのもうぐぇごぼぅぁ!!」

「……おいおい。屋上からここまで何メートルあったと思ってんだ……?」

「なんで……嘘だ……こんなもんありえねえ……自販機、だぞ」



嘘のようで、冗談のようで、にわかには信じがたいことではあるが。



「うわああああああああああああああああ!!!」



バーサーカー。
狂戦士。
『自動喧嘩人形』
『池袋のフォルテッシモ』



そして『池袋最強』にして『池袋最凶』である彼は。



「死いいいぃぃぃぃぃぃぃねええええぇぇぇぇぇ!!!!!!!」



『平和島静雄』は今まで、喧嘩で人を殺したことがない。


556 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:36:50 FkQTtAg60
【クラス】
バーサーカー

【真名】
平和島静雄

【パラメーター】
筋力B++ 耐久A+ 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具C

【属性】
中立・善(狂)

【クラススキル】
狂化:E
通常時は狂化の恩恵を受けないが、その代わりに正常な思考を保つ。
但しダメージを負う、もしくはコミュニケーションを行う際に幸運判定を行い、失敗した場合は筋力と耐久のステータスが上昇し、暴走する。
簡単に言えば、キレると制御不能になる。

【保有スキル】
池袋最強:D→A(東京・池袋近郊のみ)
池袋で最強の存在だという平和島静雄の知名度により、筋力と耐久にボーナスを得る。
池袋において知らぬ者のいない「敵に回してはいけない存在」である、という逸話により東京、特に池袋近辺では非常に強い効果を発揮する。
一方、現代において生身で自販機を投げ飛ばす人間など見たことのない者からすれば眉唾ものでしかないため、東京以外では僅かな効果しか得ることができない。

自動喧嘩人形:D
売られた喧嘩を買わずにはいられない沸点の低さ。戦闘回避の判定の際に、著しく成功率を下げる。
その代償として、静雄が「喧嘩」と認識した行為に対して魔力消費を極力抑える効果もある。
平穏な生活を望む静雄にとっては忌み嫌うべき不名誉な通り名だが、池袋における知名度補正に呪いとして付随されている。

戦闘続行:B
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘を可能とするスキル。
平和島静雄は刃物で切られようが銃弾を撃たれようがビルの屋上から落下したフォークリフトが直撃しようが、全く怯むことなく戦闘を行い続けた。

勇猛:B
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
ただし狂化時にはその勇猛さを失うため、意味を失うスキル。
平和島静雄は妖刀・罪歌との戦いの中で怒りに狂うことなく『全力』を出し、痛みによる洗脳を完全に無効化した。

力量偽装:C
サーヴァントとして見抜かれていない場合のみ相手マスターからパラメーターを隠蔽し、
更に通常行動時はサーヴァントとして気取られることなく存在できる。一種の気配遮断。
チンピラはもちろん、名のある殺し屋や殺人鬼にさえも一見は長身のひょろい金髪チャラ男としか見られない静雄の特性。



【宝具】
『一世代での進化(平和島・静雄)』
ランクC 種別:対人宝具
突然変異とさえ称される平和島静雄の肉体そのもの。
サーヴァントのステータスに換算して筋力Cランク以下の対人攻撃を無効化し、それ以上の攻撃もダメージを大きく軽減する。また、回復速度も上昇する。
「キレると筋肉のリミッターが外れる」という特殊な性質により幼い頃より骨折などの怪我を繰り返した結果、
肉体も彼の全力に耐えられるように「進化」し、異常な頑強さと回復力を誇るようになった。
彼が池袋最強と呼ばれる所以となった宝具。
但し、平和島静雄にはサーヴァントとしての神秘性そのものが著しく欠けているため、ランクCレベルを超える攻撃はサーヴァントによるもの以外でもダメージ判定を受ける。

『都市伝説・自販機を投げる男』
ランク:D 種別:対人宝具
自販機を投げ、道路標識を振り回し、車をサッカーボールのように蹴り転がすことさえある、
並外れた怪力を生かした「なんでもあり」な静雄の戦闘スタイルが逸話として宝具と化したもの。
彼が武器として扱うものは何であれ、ランクD相当の宝具としてみなされる。
また、彼が扱うものがランクD以上の神秘を持つものであっても、静雄にとっては「単なる武器」として扱われるため
その神秘性は損なわれランクDの宝具としてしか見なされない。


557 : 滅亡因果のメシア/喧嘩人形、戦争する ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:37:06 FkQTtAg60

【weapon】
自分の身近にあり、大きかったりリーチがあったりするものを好む。使用方法は投げたり振り回したり。
犠牲者としてはポストや自販機、標識やガードレールなどが挙げられる。

【人物背景】
池袋で借金の取り立てをしている長身、金髪、サングラスが目印の青年。細見。
池袋で最も「喧嘩を売ってはいけない男」池袋最強とも渾名される。
前述の宝具にあるように、キレると体のリミッターが解除され、凄まじい怪力を発揮する特異体質。
更に非常に短気であるという性格も災いし、幼い頃からトラブルが絶えなかった。
本人は暴力や喧嘩を非常に嫌っており、髪を金髪に染めたのも「黒髪だと舐められて喧嘩を売られる」という先輩のアドバイスに従った結果。
キレさえしなければどこにでもいるような気のいいアンちゃんであり、自分より年下の者に対しては面倒見のいい一面も。

【マスター】
阿万音鈴羽@STEINS;GATE

【マスターとしての願い】
此度の聖杯戦争が原因と目される「大破壊」の阻止。

【weapon】
未来から幾つか武器を持ちこんでいる。
しかし、サーヴァント召喚儀式の道具も持参していたため、それほど大きなものは持ち込めていない。


【能力・技能】
基本的には鍛えた人間程度。バイト戦士。
Z(ゼータ)世界線からの参戦という都合上、此度の聖杯戦争に参戦する他作品によっては原作では持ちえない知識、能力を持っている可能性もある。

【人物背景】
聖杯戦争によって引き起こされたと目されている「大破壊」の影響により人類が滅びかけているZ世界線からタイムマシンでやってきた未来人の少女。
性格は基本的にSTEINS;GATE本編とあまり変わっておらず、単純明快で人が好い。
また、この時代に順応するために選んだ服装がジャージにスポーツブラ、スパッツにスポーツシューズといった格好から分かるように、体を動かすことが大好きなスポーティ少女。
ただ、自分のために死んだ仲間たちのことを思ってか、時たまその面持ちに影を見せることも。

【方針】
「大破壊」に繋がりそうな事象への介入、阻止、排除。


558 : ◆GOn9rNo1ts :2014/12/30(火) 01:37:22 FkQTtAg60
投下終了します


559 : ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:45:47 YbJjap8E0
投下を開始します。


560 : ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:46:12 YbJjap8E0

最近、宇佐美蓮子は思うのだ。
どうして私は、こんな時代でなく、もっと過去の時代に生を受けることができなかったのだろうか、と。

この21世紀初頭に、もはや私の追い求めるロマンは枯渇しつつあった。

40年前に人類はとうとう月に辿り着いたが、そこに先人たちが夢想した兎達の姿はなかった。
火星や金星、他の太陽系内の惑星に次々機械の目を送り込んだが、生命の痕跡さえ捉えることができていない。
そして、太陽系外――さらに遠くの宇宙に輝く星を目指すには人の、いや、人の文明の寿命より遥かに長い時間が必要で。

宇宙一つを例に挙げてみても、人類が観測可能な領域と、
どうあがいても観測不可能な領域は、この時代はっきりと区切られつつあった。
今や観測による科学が限界を迎えつつある時代――科学から、ロマンは枯渇してしまうのだ。

近頃、そんなことばかり考えていたからだろう。


最近、宇佐美蓮子は月を――赤方偏移のせいだろう、妙に紅く輝くあの月を見るたび思うのだ。
実はここは東京などではなくて――『月』なのでないかと、思うようになっていた。
馬鹿馬鹿しい。
ここが月面上なら、空に浮かぶ『アレ』はいったい何だというのか。
誰かが造った偽物とでも? 荒唐無稽な幻想だ。
――だけど、それが本当なら少しロマンチックかもしれない。

蓮子は車窓から、もう一度月を見上げた。
『ここは月面上の、東京都の○○区●●町で……』
そんな情報が、頭の中に閃いた気がした。
今度は詳細な情報が判った。事実なら、電車はそろそろマンションの最寄り駅。
月面上、というのはひとまず置いておくとしても。

『次は……、……。お出口は、左側です。…………線はお乗換えです。 The next station is...』

おお、当たってた。
どうやら、私の脳はロマンの不足に苦しむあまり、ヘンな能力に目覚めてしまったらしい。
月を見るだけで、自分の位置が分かる。――但し、枕詞に『月面上の』と付くけど。
どういう原理なのだろう。位置を知るなら、普通は星を見るんじゃないのか。
私の脳内の方が、21世紀の東京より余程ロマンチックな造りのようだ。
――流石に、解剖して観測する事はできないが。

ともかくあと5分も歩けば、私の住むワンルームマンションだ。
就活用に買った慣れない革靴。説明会の会場から1時間近く車内に立ちっぱなしだったせいで、私の足はパンパンだった。
頑張れ、私。あとちょっとでお風呂に、お布団。

そうしてやっとの思いで部屋に辿り着いた私は、郵便受けに何か入っているのに気付いた。
薄汚れた布にくるまれた、何かが。


561 : ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:46:33 YbJjap8E0

長さ70cmほどの細長い包み。
中に入っている物は硬いが、中間程の位置に折れ曲がる場所がある。
手に取ると、ずっしりとした重量を感じた。
包みを解くと――現れたのは、腕だった。
人の右腕、を象った、人形の部品。

そんな悪趣味な贈り物を発見した私は、一瞬だけ驚いたが――期待が、胸にこみ上げてくるのを実感した。
これで……全部『そろった』のだ。

一昨日は、駅のロッカーに。
帽子をかぶった頭部と、五体を差し込む穴の空いた胴体、そして、左腕が。
昨日は、大学の講義室のゴミ箱の裏に、両脚が。
まるで私に拾われるのを待っていたかのように、ひっそりと放置されていた。
そして何故かその部品は、私だけが存在に気付き、他の人はそれがある事を認識できない様だった。

だから最初は幻覚だと思ったのだ。
こんな気味の悪いモノ、触らないのが一番だと。
だけど、私は何故かそれを放っておくことができなかった。
もしこの人形の全身を揃えることができて、それが、
例えば――独りでに動き出したとしたら――凄くロマンチックだと思ったからだ。

ともかく、この右腕で人形は完全な人の形を得ることになる。
私は期待に胸躍らせながら隻腕の人形を押入から引っ張りだし、たった今手に入れた右腕をはめ込んだ。
こうして、私にしか見えない男性型等身大フィギュアが完成。
紅白のキャップをかぶり、揃いのカラーのユニフォームに見を包んだその姿は、どう見ても野球選手だ。

だが、当然のことだが、それが独りでに動き出す――なんてことは無かった。
壁に背を預け、力なく座り込んだまま。
人形の服の中を探ってみたが、電源スイッチのようなものを見つけることはできなかった。
顔の前で手を叩いたり、声を掛けてみたりもしたが、反応は無し。

だめだこりゃ。
今度は、この人形を動かす方法を探さないと。
動けば、の話だけど。
いずれにせよ、現状では打つ手なし。
そう悟った私は、急に強烈な眠気に襲われた。
そしてパジャマに着替えもせずに、ベッドに倒れこんだのだった。


562 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:48:08 YbJjap8E0


それから2時間も経たず、私は目を覚ますことになる。
スタジアムの歓声と、早口の実況。
時々僅かに聞こえるのは、投球がミットに収まる音と、乾いた打撃音。
テレビの野球中継だ。
ベッドのそばに転がっていたリモコンが私の手に触れて、テレビの電源を点けてしまっていたのだ。

今日はこんな時間まで延長があったのか。それともニュースのスポーツコーナーか。
私はうんざりして床をなで、リモコンを拾い上げると、上体を起こして騒音の源にそれを向けた。

――そこで私は、気づいてしまったのだ。
あの人形が、動いていることに。
液晶テレビの蒼い光と部屋の窓から差しこむ紅い光の中、その人形は二本の足で立ち、
ゆっくりと腕を振りおろしていた。
まるで野球の投手が準備運動でもするように。
液晶の向こうで行われている試合をまっすぐ見つめ、ウォームアップを続けていた。
まるで、『次は俺が投げる』とでも言いたげに。


「あんた……野球、したいの?」


人形は言葉を発することはなく、ただ画面の向こうの試合を見つめていた。


私はテレビを切ると、人形の手を引いて部屋から飛び出した。
目指す先は、一駅離れた距離のバッティングセンター。
妙に紅い光が照らす夜道を駆け抜けながら、慣れない靴でできた靴擦れも意に介さず、私は人形を引っ張り回した。


「待ってください! おじさん! 待って!!」


閉店間際の時刻、シャッターを下ろそうとしていた店主を制止して、私はバッティングセンターに滑り込んだ。
そしてピッチングコーナーでグラブを拾い上げ、


「良いよ、投げて! 好きなだけ!」


と、人形に告げた。

人形はグラブを受け取ると、淀みない動作で左手に嵌め、マウンドへと向かった。
まず右手にロジンバッグを取り、指先をロジンがをまぶした。
そしてピッチングプレートのそばに転がっていた硬球を拾い上げ、両手を胸元に置いて一瞬だけ、直立不動の姿勢を取ったのだった。

それから、人形は両手をゆっくりとワインドアップ。
そして左足を大きく踏み込み、右腕をムチの様にしならせ、白球を投げ放ったのだ。

人形の全身の力が乗った白球はシュルシュルと大気を切り裂く音を軌跡に残しながら、
真っ直ぐにホームベース上のターゲットに到達。
ストライクゾーン上に縦横3区画、9枚並んだ四角いターゲットの中央、5番のパネルを打ち抜いていた。
ターゲットの上に取り付けられた電光板が、「ただいまの球速:152km/h」と表示する。

目を丸くする蓮子のことなど気にも掛けず、人形は白球を拾い上げ、第二球を投げ放つ。
第一投と同じ軌道でストライクゾーンを通過するかに思われたそれは
ホームベースの直前で急激に高度を落とし、下段中央、7番のパネルを獲得。
素人目にもわかる、見事なフォークボールであった。


「凄い・・・」


蓮子の口から小さく、驚嘆の声が漏れた。
この時代、等身大人型ロボットは小走りして、階段をようやく昇り降りするのが関の山だったはずである。
ところがこの人形は人間のようなフォームで直球・変化球を投げ分けるに留まらず、
転がっているボールを自分の目で判別し、拾い上げている。


563 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:48:42 YbJjap8E0
と、ここで、人形は3球目の投球を試みるも、手近にボールが無い事に気づいたようだった。
そこで蓮子がボールを放ってやると、その人形は左手のグラブでそれを見事にキャッチ。
人形は、帽子のつばをつまみ、蓮子に向かって小さくお辞儀した。
この人形はキャッチボールもできるのだ。
孤独な野球少年もこれがあれば練習相手には困らないだろう。
……流石に150キロを超える速球を受ける自信は、蓮子には無いが。

人形は再びダイナミックなフォームで三球目を放つ。
今度の投球は四角の枠、ストライクゾーンの遙か上方を通過した。
アンパイアの頭上を通過するコースの、大暴投である。


「……いやいや待て待て。とんだ欠陥商品じゃない、コレ」


プロ野球選手も顔負けの速球を、こんな風に暴投されては危険極まりない。
ロジンバッグをいじる人形の様子も、どことなくばつが悪そうだ。

妙に人間くさい人形だ、と、蓮子はそこで気づいた。
野球をする人形というよりは、野球選手そのもののようだ、この人形は。

いったいこの人形は、どこの誰が作ったのか。
スポーツ用品メーカーの新商品なのか。
それとも、工業用機械のメーカーが技術力の宣伝のために作ったのか。

説明がつかない。
仕草が妙に人間くさいのはともかくとして、わざわざミスを犯すプログラムをするものなのだろうか。
それもミスをした時の動作まで含めて。
球速150キロを超える暴投なんて、巻き込まれた人間は大けがを負いかねないのに。

そういえば、さっきスイッチを探してみたときも、この人形、どこにも商標らしきものを見つけることはできなかった。
この人形は個人で製作したものなのだろうか。
その方がまだ説明は付きやすい、か。
往年の名選手のプレイを、人形の動作プログラムとしていつまでも残したいと考える野球ファンだっているかもしれない。
だが、これほど複雑な動作を可能とする人形を、個人の有する技術力で製作できるものなのだろうか。
まるで21世紀初頭に出現したオーパーツ。

解き明かしたい。誰が、何のためにこの人形を作ったのかを。
そして、何故私のもとにそれの部品が現れるのかを。
蓮子はそう願うようになっていた。
ロマンは、この21世紀の東京にも、確かに存在していたのだ。


「君なら、そう願ってくれていると、信じていたよ」


唐突に蓮子の背後から掛けられた、男の声。
蓮子が振り向くと、そこにはゴーグル付きの帽子をかぶった青年がいた。

「俺はライダー。マスターである君の、サーヴァントさ。
 真名は『伝説のモグラ乗り』、ってことになってる。自分で言うのも何だけど」

ライダー。サーヴァント。真名。
その単語が引き金となり、蓮子は自分が本来ここにいるはずでない、『異物』だったことを思い出したのだった。


564 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:49:14 YbJjap8E0



蓮子は、『未来の』東京の生まれだったのだ。
彼女が生を受けた時代、日本の首都は京都へと戻され、東京は自然へと還りつつあった。
東京−京都間を53分で結ぶ高速鉄道が開通していた。
蓮子は京都の大学に通い物理学を専攻する学生で、オカルトサークルで活動していた。
そんな蓮子の傍には――いつもメリーが、マエリベリー・ハーンがいた。

たった二人のオカルトサークル、『秘封倶楽部』。
境界の裏の幻想を覗くことができる、特別な眼をもっていたメリー。
そして蓮子も、月を見ただけで自分の位置がわかり、星を見ただけで現在の時刻が分かる眼をもっていた。
不思議な眼を持つ同士の二人は、その能力を生かして、常識という境界の裏に隠された幻想を、ロマンを追い求めていたのだ。

あの日もそうだった。
二人でお月見をしていた時のこと。
いつもなら、メリーに見えていたのは月の境界が開いた時、その裏側に見えていたのは伝承に伝わる餅つきの兎、
高天原に住まう高貴な神々、そしてきらびやかな月の町並み。

だがあの日は違ったのだ。
新月に開いた境界の向こう、メリーにまぶたを触れてもらい、彼女と視界を共有した蓮子が見たのは、紅い月。
そして、記録でしか見たことがない、21世紀初頭の東京の町並み。
「行ってみましょう」と、私はメリーに手を引かれ、境界の向こう側にあったこの街へと、意識を跳躍させたのだ。

それから先の過程は曖昧だが、私はこの月面上の東京に迷い込む際、メリーとはぐれてしまったらしい。
そしてここで開かれる聖杯戦争に巻き込まれ――マスターとして目覚めるまでの間、
私は就職活動中の学生として、記録的な就職難だった21世紀初頭の東京で、灰色の日常を送っていたのだ。


565 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:49:50 YbJjap8E0



宇佐見蓮子のサーヴァント、ライダー・伝説のモグラ乗りが蓮子に問うた。


「では、マスター。君が聖杯に託す願いを聞こう。 たとえそれがどんな願いであろうとも」

「聖杯とは何なのかを知りたいわ」

「……ええと、それが願い事になっちゃうけど、良いの?」

「良いのよ。私は聖杯に叶えてもらう願いなんて、持ってないもの。
 それよりも……聖杯が何のために願いを叶えてくれて、何のために私達を戦わせるのか。
 その方がよっぽど興味あるわ」


蓮子がそう答えると、ライダーは微笑んで


「……そうか」


と呟いた。

それを見た蓮子が、怪訝そうな表情をすると、


「……いや、昔、俺も似たような事を聞かれて、君と同じような事を答えたのを思い出しただけさ」


と、ライダーは話したのだった。


「ところでライダーの真名は『伝説のモグラ乗り』だけど、本名は別にあるんでしょ?」

「ああ。……教えて欲しいか?」

「いいえ? 自分で調べて、当ててみせるわ。だって、その方が……ロマンがあるじゃない」

「ロマン、か……。そうだな、確かにいい言葉だな」


懐かしむように、ライダーは呟いたのだった。


566 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:50:15 YbJjap8E0



「……で、お二人さん、話はまとまったでやんすか?」


ライダーの背後に、彼と同じ服装で、分厚いメガネを掛けた青年が現れた。


「ライダー。この人は?」

「俺の相棒の、オチタ君さ」

「マスターの蓮子ちゃんでやんすね。よろしくでやんす。
 オイラ、不本意ながら、今回はコイツの『宝具』らしいでやんす」

「オチタ君は、俺の『宝具』であるバトルディッガーの操縦や整備を手伝ってくれるんだ」

「任せるでやんす!」


と胸を張るオチタ。


「それは心強いわね。
 ところでステータスが見えないけど、オチタ君は戦わないの?」

「戦いはコイツに任せてるでやんす。オイラは平和主義者でやんすからね」

「オチタ君……そこは胸を張る所じゃないわ」

「それで、蓮子。これからどうしようか?」

「まずはメリーを探しましょう。メリーも私と一緒にここに迷い込んで、
 きっと私と同じように、聖杯戦争に巻き込まれてるはずよ」

「おお、女の子が増えるのは、オイラとしても大歓迎でやんす!
 ……でも、その前に……あの人形、そろそろ降板させてやったらどうでやんすか?」

「「……あっ。」」


野球人形は、ヘトヘトになって肩で息をしながらも、未だに投球を続けていた。
ストラックアウトは既に7ゲーム目に突入。
球速は130kmを下回っていた。


567 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:50:54 YbJjap8E0
【クラス】ライダー
【真名】伝説のモグラ乗り
【出典】パワプロクンポケット10 装甲車バトルディッガー編

【性別】男性

【パラメーター】
 筋力D 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具A

【属性】
 中立・善

【クラススキル】
対魔力:E

騎乗:D〜A
 生前戦車乗りだったライダーは、陸上を走る機械の乗り物に対してはAランクのスキルを発揮するが、
 それ以外の乗り物に対しては、Dランク相当(乗り方を覚えた一般人程度)のスキルしか発揮しない。

【保有スキル】
仕切り直し:D〜B
 戦闘から離脱する能力。
 煙幕を利用できる状況なら、その効果はBランクまで上昇する。

機甲部隊化:D
 バトルディッガー搭乗時に発動。
 バトルディッガーを盾として、歩兵として行動する味方に回避・防御のボーナスを与える。

宝具整備・改造:C
 バトルディッガーの整備・改造を行うスキル。
 Cランクならば、ある程度までの車体の破損の修復と、武装やオプションパーツの換装が可能。
 大破してしまった車体の修理や、車体構造の根本的な改造は不可能。


【人物背景】
 モグラ乗りと呼ばれる、戦車を駆って古代人のダンジョンに挑む者達の一人。
 数々のダンジョンを攻略し、各地の大学に調査資料を送っていた凄腕である。
 チャンバの街では、揃うと願いの叶う『3つの珠』が眠るダンジョンを立て続けに踏破。
 『3つの珠』と遺跡を巡る争いに終止符を打った。
 その後も、野球人形の出現するダンジョンを求めて各地を巡ったと言われている。


568 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:51:23 YbJjap8E0
【宝具】
『愚か者の鉄土竜(バトルディッガー)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:5
 『モグラ』とも呼ばれる、ダンジョン探索用に設計された戦車(タンク)の一種。
 バトルディッガーは非常に拡張性が高い構造で、多岐に渡る追加装備が存在する。
 37mm〜150mm口径の各種戦車砲に加え、火・氷・電撃・酸の各種特殊砲、水上移動用のフロート、ドリル等。
 運用には最低でも二人の乗員が必要。
 燃料と弾薬の補充には、マスターの魔力を必要とする。

『試製122ミリ砲(ヘルガ)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1
 ライダーの戦友より譲り受けた、バトルディッガーの主砲。
 上述のチャンバの街の騒乱の終わりの日、突如出現した『天使』にトドメを刺したという目撃談が、逸話として残されている。
 この逸話から、バトルディッガー本体よりも若干高い神秘性を備える。
 また、スキル:神性を持つ敵に対しては、ダメージが増加する。

『腐れ縁のメガネ相棒(オチタ君)』
ランク:E 種別:対宝具 レンジ:1 最大補足:1
 バトルディッガー専属の整備士。
 『やんす』の語尾と分厚いメガネが特徴的な、ライダーの相棒にして親友である。
 ライダーの逸話を語る上で欠かすことのできない人物であるため、このたびライダーの宝具として呼び出されることとなった。
 ライダーとともに、バトルディッガーの操縦や整備を行ってくれる他、勝手にライダーの傍に出現して、どつき漫才を繰り広げ出す。
 『平和主義者』であり、バトルディッガーの操縦以外で戦闘に干渉することはない。

『拾い物は俺のもの(ローグライク・ロールプレイング)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:30 最大補足:1
 常時発動型宝具。
 生前ダンジョン内に落ちているアイテムを拾得して、過酷なダンジョンを闘い抜いてきたライダーの逸話から生まれた宝具である。
 ライダーとそのマスター、周辺数十メートルの場所に時々アイテムが出現するようになる。
 アイテムはライダー自身と、そのマスター、そして彼らが仲間と認識する人物にしか認識することができない。
 アイテムの内容はバトルディッガー用の部品と、野球人形のパーツである。
 ライダーとライダーに同行する者の幸運値が高いほど、質の良いアイテムが出現する。

『野球人形(キングダム王立野球軍)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大補足:9
 野球をするための、人型ロボット。
 上記宝具で四肢・胴体・頭部の野球人形のパーツを集め、組み上げることで完成する。
 野球以外の目的で動くことはなく、戦闘の役には立たない。
 ライダーが生前挑戦したダンジョンでも時折野球人形の部品が発掘されたが、作中でその目的・用途が明かされる事は無かった。
 古代人はなぜ役立たずの野球人形をダンジョンに遺したのか、それを解明するため、ライダーはダンジョンに挑み続けたのである。
 この聖杯戦争を戦う上でも、全く役に立たない代物である。


569 : 宇佐見蓮子&ライダー ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:51:45 YbJjap8E0
【マスター】宇佐見蓮子
【出典】東方project(秘封倶楽部)
【性別】女性
【参加方法】
 月見の際、メリーの能力を借りて月の向こうに映る帝都を発見し、帝都に迷い込む。

【マスターとしての願い】
 無し。
 ロマンを追いたいという願いを持つが、それは聖杯に託す願いではない。

【人物背景】
 東京出身、京都の大学に通う学生。
 専攻は超統一物理学。
 留学生のメリー(本名:マエリベリー・ハーン)と共にオカルトサークル『秘封倶楽部』を創設し、
 日本に潜む不思議を追い求めている。

【能力・技能】
 『星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力』を持つ。
 但し、日本標準時にしか対応していない。
 『プランク並に頭は良いかもしれない』と自称している。平均的な若者より頭は切れるようだ。
 メリーにまぶたに触れてもらうことで『結界の境目が見える程度の能力』を不完全ながら共有することができる。
 『結界の境目が見える程度の能力』によって、結界の向こう側、幻想の向こうに追いやられた者達の空間を覗き、
 その中で活動することができる。

【weapon】
 無し。

【方針】
 蓮子と同様に帝都に呼び出されているであろうメリーと合流し、聖杯の謎を解明する。


570 : ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 01:52:08 YbJjap8E0
以上で投下を終了します。


571 : ◆R1q13vozjY :2014/12/30(火) 02:15:25 YbJjap8E0
>>567
ライダーのステータスに追加します。

【weapon】
降車時の戦闘では、リボルバー拳銃を使用する。
最低限の神秘を帯びているため、サーヴァントにも通用する。

ライダーには手榴弾やロケット弾を駆使して、小型のモンスターやならず者どもを相手に立ちまわった逸話も残されているが、
『騎兵』のクラスで現界している今回、それらの武装を使用することはできない。


572 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/30(火) 09:07:29 vLRB1N1E0
皆さん投下乙です。投下させていただきます


573 : 志筑仁美&キャスター ◆3SNKkWKBjc :2014/12/30(火) 09:08:38 vLRB1N1E0


「私は――『魔女』だと思うのです……」


志筑仁美が言う。


「私は、ただ……美樹さんと対等になりたかっただけでしたのに……」


彼女を追い詰めてしまった。


「それは……優位に立ちたかった訳ではなかったのに……
 けれども、私はきっと心のどこかで望んでしまったのかもしれません……
 酷い女です……」


美樹さやかがいなければ、上条恭介と結ばれるのだ。
彼女が消えてしまえばいいんだ、と。
無論、仁美はそう思った事はない。ないのだが、一瞬でもその悪意を抱かなかった訳でもない。

何にせよ。
彼女が追い詰めたことにより美樹さやかは死亡した事実には変わりない。
仁美は少なくともそう確証していた。


「だから、私は美樹さんを生き返らせたいのです。
 他の、見知らぬ人たちを犠牲にしても、大切な友人でした彼女を生き返らせる。
 私の責任で、私が背負うべき罪なのだと思っています……」

「あなたは――こんな私の為に聖杯を授けてくれますか……?」


すると、彼女のサーヴァントは「ハハン」と彼女の懺悔を鼻で笑った。


「あなたが『魔女』ですか。『魔女』を名乗るのがおこがましいですよ、マスター。
 ならば私が崇拝したあのお方は『悪魔』でなくて、何だとおっしゃるのでしょうか?」


悪魔?
それは比喩的な表現なのか、それとも正真正銘の悪魔なのか。
半信半疑に仁美は問う。


「失礼でなければ、一体どのようなお方なのでしょうか?」
「そうですね。この聖杯で再現された『東京』――再現された時期から10年後先の未来……
 『東京』愚か、世界全土を滅亡させてしまう……そういうお方でした」
「未来……」
「えぇ、故に私は未来の英霊です」


574 : 志筑仁美&キャスター ◆3SNKkWKBjc :2014/12/30(火) 09:09:24 vLRB1N1E0


未来の英霊。
異常な存在であるが、何より――未来の世界を滅亡させる。
そんな『悪魔』に仕えたと云うこのサーヴァントの証言が確かならば。
仁美の表情は青くなる。
「あぁ」と忘れ物を取りに来たかのように、サーヴァントが応えた。


「恐らく、マスターのいる世界ではありません。パラレルワールドの原理はご存じでしょうか」
「は、はい……えっと、つまり。あなたがいらっしゃる世界と……私のいる世界は別、だと……」
「そうです。ですから安心して下さい」


本当に? 本当なのだろうか。
近い将来、サーヴァントが仕えた『悪魔』が仁美のいる世界を滅ぼさない保証は
どこにも存在していないのだから。

不安な仁美を差し置いて、サーヴァントが言う。


「彼に比べれば、なんのこともありません。必ずやあなたに聖杯を授けましょう。マスター」


彼がいつの間にか手にしている花を差し向ける。
それは青を帯びた美しい紫色に染まっていた。


「これは……」
「これが私の真名です」


図鑑で見た事がある。
『桔梗』だ。
それが花の名前で、彼の、サーヴァントの真名。


「以後はキャスターとお呼び下さい」
「わかりました。よろしくお願いします、キャスター」


魔法少女にもなれずして『魔女』となった志筑仁美の物語が始まる。


575 : 志筑仁美&キャスター ◆3SNKkWKBjc :2014/12/30(火) 09:10:03 vLRB1N1E0
【マスター】志筑仁美@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
美樹さやかを生き返らせる

【能力・技能】
魔法の才能がないことが保障されている

【人物背景】
見滝原中学に通う中学二年生。
魔法少女を勧誘する存在から無視されている為、魔術の才能は全くないだろう。
さやかの死を償おうとして『紅い月』に願った。




【クラス】キャスター
【真名】桔梗@家庭教師ヒットマンREBORN!
【属性】秩序・悪

【ステータス】
筋力:D 耐久:D 敏捷:A 魔力:A 幸運:E- 宝具:A

【クラス別スキル】
道具作成:A
 魔力を帯びた植物を作成する。
 トラップや飛び道具としても活用可能。

陣地作成:A
 魔術師に有利な陣地を作り上げる。
 魔力を帯びた植物を配置させ、宝具のカモフラージュにも利用できる。


【保有スキル】
直感:B
 感じ取る能力。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

魔力放出(雲):A
 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
 キャスターの場合、防御や空中浮遊に使用するほど器用に扱える。

使い魔(恐竜):C
 恐竜の使い魔を時空を超え召喚させる。
 ある程度、数を制限されている。


【宝具】
『無限群衆』(スピノサウロ・ヌーヴォラ)
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:100人
近未来の最先端科学による兵器。太古に実在した恐竜の能力をオリジナルとしている。
キャスターの肉体から恐竜の頭部が出現、幾多も分裂を繰り返す。
あらゆる原型を留めていないおぞましい風貌に見る者は恐怖する。


【weapon】
雲のマーレリング

匣兵器
 キャスターの肉体そのものに埋め込まれている。
 これを破壊してしまうと、キャスターの命が危うくなる。


【人物背景】
未来の英霊。世界を滅亡へ導くとしても数百人殺した彼は英霊に成った。
ただし、彼自身が報われたかは定かではない。


576 : ◆3SNKkWKBjc :2014/12/30(火) 09:11:40 vLRB1N1E0
投下終了します


577 : ◆OzO3NU97wY :2014/12/31(水) 17:07:21 AWvp5cIo0
二次二次聖杯の時のトリップで「バーサーカー」を投下した後、
こちらでのトリップで「セイバー」を投下します。


578 : ジョン・シルバー&バーサーカー ◆OzO3NU97wY :2014/12/31(水) 17:08:07 AWvp5cIo0


 ジョン・シルバーは、大海原を相手に舵を取り、宝の島で仲間を裏切り人を殺し、その果てにフリントの宝を得ようとした生粋の海賊であった。
 その男の今日までの逸話を聞いた事がある者も、彼の名は悪役の象徴として訊いただろう。
 宝への貪欲な執着は噂以上に底なし。目的の為ならば手段を選ばず冷徹な男である。
 かつての仲間に犠牲者が出る事も決して何とも思わない。心を許した相手を裏切る事もできる。
 味方をある程度大事にするとはいえ、それは戦力として見ているからでもあるという。

 しかし、シルバーは決して、渇いた家に生まれたわけでもなければ、悲壮な過去があるわけでもなく、また脳に疾患があるわけでもなく、言わば根っからの悪人でもない。
 およそ、悪人の生まれる条件を踏まず、ただ一つの憧れの為だけに着き進める──下手をすれば数万人に一人の病気以上に特異な体質。

 彼は、生まれながらに持ったロマンを求める心だけが桁違いに大きかったのだ。
 ロマン……そう、彼の求める物に一番近いのはそれだ。彼が欲する物は何でもなく、ただ常に「大きい何か」であり続ける。
 ただ一つの「憧れ」だけはどこの誰にも消せはしない。
 彼はその漠然とした何かの為に、他人も、自分も、心も、肉体も犠牲にできる、「願望を持つのにふさわしい器」の持ち主なのである。

 仮に彼がスポーツマンだったのなら、余程優秀な選手になれたのかもしれない。
 己を鍛える為に、適切なトレーニング方法で確実に世界を制覇する算段を組むだろう。
 また、仮に彼が科学者であったとしても、歴史に名を残す偉大な発明ができたかもしれない。
 世界の中に在る真理を弄る為に、その知能を巡らせていくだろう。

 しかし、彼は、どんな願望も包み込む器量を持ちながら、願望など抱えてはいなかった。
 大切な物もない。
 その時にコーヒーを飲んでいたなら、コーヒーを飲む事が彼にとって最も大切な事。
 その時に酒を飲んでいたなら、酒を飲む事が彼にとって最も大切な事。
 その時にただの水を飲んでいたなら……、と。
 ただ、器量と同じだけ、彼が興味を抱ける存在はこの世になかった。
 だから、大切になるかもしれない物を見つけ出す為に、彼は宝を探る海賊となった。

 かの宝島の冒険者たちも、多くは彼と敵対していながら、その男としての器量を認めない者はいない。
 生還者はいずれもシルバーに裏切られた経験の持ち主でありながら、友情を感じている者さえいる。
 人を惹きつけるカリスマを持ち、その時々を自分の思うように生きるだけでありながら、彼は敵味方誰であっても、慕われていた。
 不思議な男であた。

「……」

 そんなシルバーは今──東京の町にいた。
 東洋の小さな島、日本……その現在の首都。
 およそ、生まれてから今日まで、全くシルバーにとっては縁もゆかりもない場所である。
 仮に航海の旅路に出たとして、シルバーはこの日本列島の制覇までは望まない。それほど小さく、無名の土地である。
 技術力はさほどでもなく、
 しかし、男は必然的にここに来た。

 体が突き動かすように、シルバーはここに来てしまったのだ。
 そう、この、聖杯戦争に──。

 男には、願いはない。

 しかしながら、この東京聖杯戦争の最中を縦横無尽に駆け巡り、敵を殺し尽くしたとしても、願望器に近寄りたいという強い念がある。
 それは、決して彼が、殺戮そのものを目的に聖杯戦争を行おうとしているという事ではない。
 全てを捨て去って得たい悲願があるわけでもなく、並み居る都民と魔術師を相手に殺人がしたいわけでもなく、ただの一念が彼を聖杯戦争まで引き寄せた。


579 : ジョン・シルバー&バーサーカー ◆OzO3NU97wY :2014/12/31(水) 17:08:41 AWvp5cIo0

 それは、聖杯を欲する……いや、せめて「一目見たい」という程度の興味関心である。
 彼にとっては、それだけで充分であった。
 聖杯に対して情熱を注ぐマスターたちも、多くは聖杯そのものではなく、聖杯の願望器としての性能を確かめようとしている。
 しかし、少なくとも彼は、「聖杯」そのものに対して憧れを抱き、それを欲しているのである。



「貴様が私のマスターか────」




 シルバーの前に現れたサーヴァントは、人のカタチをしていなかった。
 獰猛なけだもの──おそらく、肉食動物。シルバーの肩でフリントが警戒し、慌てて羽ばたき始めたのをシルバーが止める。
 雪原のように真っ白な体毛、血のように真っ赤な瞳。シルバーの鼻孔を突く獣の匂い。
 その口からすらすらと人の言葉が流れ出てくる事には、流石のシルバーも僅かにだが驚きを禁じ得なかった。
 想定外のサーヴァントに、シルバーは苦笑する。

「……ああ、そうだが」

 このサーヴァントはじっくりとシルバーの様子を観察した。
 サーヴァントの側も、その嗅覚をふんだんに利用して、シルバーの人格を類推しているようである。

「大凡の場合、人間がマスターになるとは思っていたが、いやはや、お前は身体的には只の人間でありながら、同時に只の人間らしからぬ所を持っている。
 潮の香りがする。肉体は、片足でありながらヒトの中では極めて頑強。服の色は気に入らないが、その瞳は誇りのある瞳だ。
 一際、面白い男とお見受けした……」

「買いかぶりすぎじゃねえかい、大イタチさんよ」

 このサーヴァントは、獰猛な白クマにも見えるが、よく見るとやはりイタチであった。その体躯は一メートル半ほど。通常のイタチの体躯の三倍、いや、それ以上か。──シルバーが見て来た野生動物たちとは大きく違った。
 その種の中で特異な存在と言うならば、シルバーよりむしろ彼の方だろう。声帯の違いから考えても、人語を理解できたとして、これほど丁寧に語る事ができるだろうか? 念話ではなく、口もそのまま動いている。
 それは、明らかにイタチの枠組みから外れていた。生体そのものが、何らかの事情で異常な発達を遂げていると言っていい。
 しかし、その特徴からシルバーは彼がイタチであると結論づけた。ジムの連れている虎が成長しても張り合えるのではないだろうか。
 とにかく「それ」は、イタチという生物の規格を完全に無視していた。どんな物を食えばこれだけ巨大になりえるのか、シルバーはこのアルビノのイタチの外形を見下ろしながら考える。

「……私はバーサーカー、真の名はノロイだ」

「ノロイ……ここの言葉でそのまま、『呪い』か。お前の真名を聞いた奴はさぞかし怯えるだろうぜ」

 シルバーは苦笑する。

「人間、貴様の名はなんだ」

「……おっと忘れてたな。俺の名はジョン・シルバーだ」

 そんなシルバーをバーサーカーは黙って見届けた。シルバーの笑みの途絶と共にノロイは口を開いた。

「ところで、マスターよ。お前の目的を聞かせてもらおう」

「俺の目的か? ……そりゃあ、聖杯とかいう物を手に入れる事さ」

「それはわかっている。だが、聖杯で叶えたい願いがあるのではないか」

 バーサーカーはそう聞く。
 ただ、実を言えばシルバーは巻き込まれたも同然で、ここに来るまでは目的らしい物はない。


580 : ジョン・シルバー&バーサーカー ◆OzO3NU97wY :2014/12/31(水) 17:09:01 AWvp5cIo0

 それでも──彼は聖杯が欲しかった。
 魔力を持たないとしても、この聖杯戦争を勝ち抜き、その願望器を緒が見たい。
 唯一無二の存在を得たいと心から欲するこの欲望こそが、男を突き動かす。聖杯がどんな用途の物であるとしても、それを掴みとろうとするだろう。
 それは男の本能であった。体の底から全身を這い回るこの意思に、抗う事はできない。

 聖杯。──ただ、その存在がある事実こそが、シルバーを惹きつける。


「聖杯とやらで呑むラム酒がどれだけ美味いのか知りたいんだ。
 そいつがその時、俺の一番大切な物になりゃあ、設け物さ」

 いわば、そういう事だった。
 この戦いで得た杯を使って飲むラム酒の味を求めていただけである。

 シルバーにとって大切な物は、その時その時で全く別の意味を持つ。
 それが大切になるという事はないかもしrねあい。

「一番大切な物だと? ──」

 シルバーの言葉が、バーサーカーにはわからなかった。

「ヘッ。誰にでも語る事じゃねえさ。まあ、そうだな……。
 これからお前はどうしたい。折角だから聞くが、あんたらイタチには大切な物ってのはあるのか」

 そう言われると、バーサーカーにとってもシルバーの目的などどうでも良くなったのだろうか。
 彼は自らの生きがいとも言える行為を語らいだした。

「……折角、この人里に召喚された以上、私は人を相手に殺しを楽しみたい。
 追いつめて楽しく殺したい。あのネズミ共のように、悲鳴を上げて人間共が死んでいくのを見たい。
 それが私の目的だ。勿論、お前はその対象外だが」

 バーサーカーが薄く笑うのを、シルバーは不愉快そうに見つめた。

「殺しか。なるべくやりたかぁねえんだが、それがあんたのやりたい事だってんなら邪魔はしねぇ」

「物わかりの良い人間だ。私のマスターに相応しい。
 面白い、面白いぞ、シルバー。カッカッカッカッカッカッ…………」

「いや……言葉を理解するイタチを見た後じゃぁな。
 それに、それだけ戦うのが好きなら、俺が聖杯を得るのにも役に立つってもんさ」

 殺人は極力避けたいが、聖杯という宝を得る為にはシルバーは手段を択ばない。
 このノロイという真名を持つサーヴァントを利用し、参加者を減らして聖杯を手に入れるのも一向。
 また、別の方法で聖杯が得られるなら、それはそれで構わないというスタンスであった。
 ただ聖杯が欲しい。その為に真っ直ぐに動いていく自分の中にこみあげる、この刹那的な情熱こそが、今この一瞬のシルバーに満足感を与えていた。




 ────彼は一人、ジムのいない東洋の都で新たな冒険を始めている。────


581 : ジョン・シルバー&バーサーカー ◆OzO3NU97wY :2014/12/31(水) 17:11:30 AWvp5cIo0


【真名】ノロイ@ガンバの冒険
【クラス】バーサーカー

【パラメーター】
 筋力C 耐久C 敏捷A− 魔力D 幸運C 宝具C

【属性】
 混沌・悪

【宝具】
『ゆっくり殺せ…楽しく殺そう…』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2〜5
 多量の相手を片手の爪で纏めて突き刺し、掻き切る事ができる。ただし、これはあくまで対ネズミ時。
 身長は1メートルほどなので、人間相手でも複数名を相手にできる可能性が高い。

『劇画立(トラウマ))』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:相手の視覚範囲 最大捕捉:相手の視覚範囲
 ただ立つだけで相手に恐怖を植え付ける。かなり不気味な立ち方。
 並のサーヴァントならば、強弱の差に関係なく謎の戦慄を覚えるという。

【クラス別スキル】
狂化:E
 通常時は「狂化」の恩恵を受けない。代わりに、正常な思考力を保つ事ができる。

【保有スキル】
催眠術:B
 目を見た相手に催眠術をかける事ができる。
 相手が生物でるならば充分に利用する事が出来る。

カリスマ:A
 高い指揮能力と人心掌握術を持ち、多くの仲間を集めてネズミたちを襲撃する。
 イタチたちからは絶対的な忠誠を誓われており、ネズミの支配を実質支配していた。

殺戮への高まり:B
 敵を殺戮する毎にその能力値を微弱ながら強めていく本能。NPCの小動物や虫を相手にも運用可能。
 このスキルこそが、狂化の恩恵を受けない彼をバーサーカーたらしめている。

【weapon】
 なし

【人物背景】
 1メートルほどの巨大なアルビノのイタチ。ネズミたちを追いつめて殺す事を楽しみ、愉悦としている。
 雪のように真っ白な体をしており、内心には白い物に対する偏愛と狂気に満ちた美意識がある。白い花を汚した部下に対して怒り狂い、容赦なく粛清した事もあった。
 知能が高く、ネズミたちの言葉を学習して話す事が出来、更には真っ赤な眼光を利用した催眠術までできる。
 仲間を売ったネズミに対しては「殺す価値もない」と発言しており、やはり独自の美学の持ち主である。

【サーヴァントとしての願い】
 特になし。他者の殺戮のみが目的。

【基本戦術、方針、運用法】
 獰猛な生物としての圧倒的な力が武器。また、鋭利な爪では敵を切り裂く事ができる。
 殺しそのものを楽しんでいるため、殺戮を主目的とするが、同時に理知的でもあり、殺戮の為に相手を仲間に招き入れて騙させる真似もする。
 主に、相手を何らかの方法で自分の下におびき出してから殺す作戦を取り、それを楽しむので、遠距離の敵も察知しておびき出す戦法を取る可能性が高い。
 何故か催眠術のような精神攻撃を利用できる為、それを利用した戦法を取る事も可能。


582 : ジョン・シルバー&バーサーカー ◆OzO3NU97wY :2014/12/31(水) 17:11:50 AWvp5cIo0

【マスター】ジョン・シルバー@宝島(アニメ版)

【マスターとしての願い】
 特になし。
 この聖杯戦争もまた、自分にとって一番大切な物を見つける旅路であり、聖杯を得る事そのものが目的である。

【weapon】
 杖 、フリント(オウム)

【能力・技能】
 左足は義足だが、一般人と同等以上の格闘能力や身体能力を持つ。特に腕力において右に出る者はいない。船乗り五人を軽くあしらうほど。
 宝の地図に示された場所に辿り着いた時には、海賊・冒険家たちの誰よりも早く宝に向かっていったほどの執念を持ち、「男は一度やろうと決めた事があれば一本の脚が二本にも三本にもなる」と発言した。
 人心掌握術に長けており、悪役でありながら善悪問わずありとあらゆる人間を引き付ける魅力を持っている。
 コックとしての腕も有能。

【人物背景】
 主人公ジム・ホーキンズとともに、伝説の海賊フリントの宝を競い合った海賊。悪役でありながらかなりのロマンチストであり、男の中の男として描かれている。
 当初は、フリントの宝を探す船にコックとして乗り込み、ジムたちとも親しくしていたが、実はフリント海賊団の元一味であり、自分が乗りこませた海賊仲間と共に島で反乱を起こす。
 脱出した船長やジムたちとは島で戦う事になり、シルバーは彼らを相手にあらゆる作戦を取り仕切って宝を争奪し合う事になった。
 しかし、その過程でジムに対して強い興味を抱き、敵ながら強い信頼と友情が芽生えていった。
 宝に対する執着は非常に強く、ただ宝を得る事に対するロマンのような物が彼を突き動かしている。その為にはどんな手段も厭わず、敵対勢力には卑劣な罠を仕掛ける事も多かった。

【方針】
 聖杯を手に入れる。
 ただし、他の参加者との協力・対話の意思もあるので、そこまで積極的に殺して回ったり、不意打ちをしかけて襲い掛かったりというやり方をする気はない。
 あるいは何らかの目的を持つマスターやサーヴァントとの問答を楽しむ事もあるかもしれない。


583 : ◆OzO3NU97wY :2014/12/31(水) 17:12:42 AWvp5cIo0
以上で投下終了します。
続きまして、こちらの聖杯で使っている別トリからセイバーを投下します。


584 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:14:23 AWvp5cIo0



 学校の下駄箱であった。靴箱の前のふたりは、放課後の奇妙な静けさの中で夕日に照らされている。
 普通の日常の中では少し特別な日だったが、事が大きく発展した今になって振り返れば、普通の一日だった。

 要するに、その日は期末試験が近く、中等部は早帰りだったのである。
 ラクロス部に所属している友人も、これといって近日に試合を控えているわけではないので、この期間は放課後の練習がない。
 下校時間は、中等部全生徒がほとんど重なる事になる。
 ただし、このふたりは、少し先生のちょっとした用事に付き合わされる事になり、他の生徒たちよりも遅く帰る事になっていた。

 結果的に、彼女たちは共に、ほとんど部活を終える頃と変わらない時間まで学校にいた。先生の用事が長引いたのだ。
 活気に溢れているはずの校舎内に生徒がふたりだけ残っている、というシチュエーションだったのだ。
 こういう事は滅多にないので、要するにそれが特別な日という事だった。
 彼女の友人も靴箱に至るまでの道中で先生への悪態を言い尽くしてしまい、靴箱の前では「そういえば」の一言から始まる他愛のない噂話を聞かせていた。

「月が赤く見えるのは、月の光が人間の目に届くまでに大気を通過する影響よ」

 彼女──雪城ほのかは、友人が熱心に語っている「噂」について、そう回答した。
 彼女は科学部で部長を務めている身であり、天文学も勿論カバーしている。
 主に科学に関する知識が最もほのかの興味の矛先であるが、総合的にも学年トップの成績を難なく得られるほど、彼女の知的関心は強かった。
 科学、地学、医学、生物学、歴史、社会学、文学、文化……中学生にして、少なくとも高校生レベルまでは苦もなく理解している。
 知的探求こそが彼女の趣味と言って過言ではない。
 その結果、そんなほのかについたあだ名は「薀蓄(ウンチク)女王」だ。それは、蔑称というわけではなかった。

 友人が多く社交的というタイプでもないが、今日までほのかの周囲には中学生らしいいじめの影はどこにもない。
 女子中学生のコミュニティの中でも紛れるおしとやかな明るさと、目立った喧噪が少ないベローネ学院全体の生徒の傾向のお蔭でもある。
 男子は男子で、この黒髪長髪の優しい美少女に悪意を注ぐ事は絶対にありえない。男子部と女子部に分かれている現状、最早彼女の存在は神話になっている程だ。
 特に、この友人と親しくなってからは良い噂の方が多く流れるようになり、今では女子部から嫉妬の影もほとんど完全に消え去りつつある。

 近頃、巷で噂の都市伝説≪紅い満月≫についても、ほのかはこの友人以外の道筋で既に何度か耳に通していたので、科学的な反論の準備はあった。
 ようやく、ここで彼女の口から聞く事になったのか……という感じである。
 ともかく、ごくごく簡単に要旨だけ纏め、ほのかが知る知識の五パーセントにも満たない単純な理屈で回答し、後は個人的な感想を述べる事にした。

「でも、本当にお月様が願いを叶えてくれるなら素敵ね。
 ……実は、私たちが見ている月は、だいたい1.3秒前の姿なのよ」

 ……やはり彼女には、自由な感想を述べる上で要旨だけ纏めるのは至難の業だった。
 ちょっとした薀蓄が入ってくる。いや、それ自体が彼女が抱いた感想に関連するのだから、この薀蓄が含まれるのはやむなしだろうか。
 やはり、女王と呼ばれるだけあって、口の方が勝手に回ってしまうらしい。

「光を超える速さで進行できる物はないから、私たちのお願いが光速で届いたと仮定して片道1.3秒。
 同じく願いを叶えてくれる織姫様と彦星様の場合、およそ16年か25年かかるから、それよりはちょっぴり早いわね」

 人間の寿命を考えれば、七夕の往復50年は充分先が長いが、宇宙的に考えれば一瞬である。1.3秒がそれより「ちょっぴり早い」と表現したのはそれ故だった。
 同時に、七夕にかかる時間を聞いて驚愕と失望を抱いて騒いでいる友人に、ほのかは微笑みかけた。
 彼女のここ数年の七夕の願いは、おそらく50年も待てない願いなのだろう。ほのかの幼馴染のとある男性もそれに絡んでくるが、その話は今度としよう。
 ほのかの微笑みが、友人のある問いかけで崩れる。


585 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:14:40 AWvp5cIo0

「え、私? 私が赤い月に出会えたらっていう事……?」

 ほのかは願いを叶えてもらえるとしたらどうするの、という旨の質問だった。
 目の前の親友の願いはわかりきっている。だいたい、彼女たち二人共通した願いと、友人個人の願いを分けて考えると、片方は「平和」、片方は「恋愛」に関わるものになる。
 平和を願うのも一つ。

 ……しかし、ほのか個人は?

 いや、願いがないわけではない。むしろ巨大な願いを持っている。
 確かに、今の沈んだほのかの瞳には、彼女が叶えたい願いが秘められているようであった。
 遠い日のあの出来事。

 今日まで、それを誰かに祈る願いとは考えては来なかった。
 それは、自分でつかみ取ろうとしている物でもあり、七夕や祈願を風習的に捉えて参加して、その時々に、自分の手助け、願掛けのように祈る願いだった。
 だから、その願いを思い出すと、自ずと心に影が差した。

「……それは、やっぱり────」 

 ここにいるふたりだけが、そこから先の彼女の回答が意味する物を知る事ができる。
 かつて、この学校で一緒に過ごした、とある男の子の事を──今はこの学校にはいない人の事を、ほのかは口にしたのだ。

 彼女がどうしても叶えたい願いといえば、それだけだった。
 彼がこの学校を去った理由も、彼と経験した冒険と戦いも、今はここにいる二人だけが知っている。

 またいつか会える……。この青空の下で。
 ほのかは、いや、ふたりはそう信じている。
 しかし、それはいつだろう。
 明日か、何年後か、お婆さんになってからか。
 三秒か、三十年か、五十年か。

 ほのかの知識を以てしても、その少年が行きついた場所へと向かう手立ては考え付かない。
 だが、彼女はいつまでも研究するだろうし、その少年もまたほのかに再び会う手立てを必死に考えている頃だろう。

「……キリヤくん」

 皮肉にも、科学を超越した「往復1秒」というスピードで、雪城ほのかが月に導かれるのは、その夜の出来事であった。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆


586 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:14:57 AWvp5cIo0



 感覚的には、翌日であった。

 気づけば、ほのかは東京都内の某所ホテルの一室にいた。
 同じ都内と言っても、ほのかたちが住む若葉台からは電車でおよそ一時間の区域である。
 普段の通学ルートでは山手線の駅を利用する事はないが、今回のこの地域は山手線の線路に囲まれた場所だ。
 たった一人でここまで来た事になっている。……とは言っても、電車とバスを利用して来たので、この夜中に女子中学生たった一人で街を歩くという事はなかった。

 何故、ほのかがそんな所にいるのかというと、都内で開かれる特別な少年少女向けの科学コンテストにほのかの研究が選ばれる事になったからだ。
 これは、一か月以上も前から決まっていた事である。
 そして、科学部の友人たちがここにいないのは、学校側から代表者一名を選出して臨むよう言われたからだったはずだ。

 今回の場合、海外からも日本の中学生の研究を見物に来る科学者・専門家が多く来訪する関係上、日本の長期休暇とは些かズレ込んだ時期に研究発表が行われる。
 その為に、数日間授業を欠席してこちらに来る形になるので、科学部全員で……というわけにはいかないのだろう。

 日程がよりにもよって、試験日程と重なるというのだから、学年トップのほのかでなければ救いようがない。
 学校からも、期末テストを欠席し、後から追試を受ける形を例外的に認め、こちらに向かう事を許可されている。
 何せこれだけの大きなコンテストなので、逃せば次はないだろう。ほのかも出場したかったし、学校側もそんなコンテストに生徒が推薦されれば鼻が高い。
 いわば、科学部のインターハイのような物に出るとなれば、先生や友人たちもここに来てほのかの姿を応援したかった事だろうと思う。
 引率の先生さえ、テスト前の多忙によってここにはついて来なかった。形式上は、他校の先生が面倒を見てくれる事になっている。

 ほのかは、そんなこの世界の「設定」に微かな違和感を覚えながらも、これから自分がする事に緊張と期待を感じていた。
 中学生相応の実験しかできないとはいえ、自分の発明が世界各国の人たちの目にも留まり、下手をすれば海外メディアにも紹介される事になるのである。
 虚栄心は全く持たず、ただ自分が探りだしたい世界の法則と真実の為だけに研究をしてきたつもりだが、いざ足を運ぶと気づく物だ。
 ──誇らしいというのはこういう事である、と。

 それが、今現在彼女が置かれている「もう一つの状況」への緊張を僅かながら忘れさせていた。
 そう、聖杯戦争という名の戦いの事である……。



「はい。セイバーさん、お味噌汁が出来たわよ」

 ほのかは、ニコッと笑って、お椀に入れた味噌汁を≪セイバー≫の元に運んだ。
 目の前にいる今日からのパートナーに、味噌汁を振る舞っているのだ。
 このホテルは三食食事つきで、他にも飲食店や購買、自動販売機があるので、客人の室内にはコンロの一つもない。
 部屋は最低限の休息ができる場所になっており、まあおおよその家具は綺麗で、それなりに豪華な印象を受ける。
 しかし、この部屋にある調理用具といえば、インスタント食品やティーパックに熱湯を注ぐ為のポットや、プラスチック製の食器くらいだった。
 今ほのかがセイバーに差し出しているのは、備え付けられていたインスタント味噌汁である。どうやら、茶菓子や粉末のインスタント食品といった軽食は無料でホテルが支給してくれているらしい。

 時間をかけて作る事はできないがせめて、というつもりだ。
 湯気が立っていて、ほくほくと暖かそうなそれをセイバーの目の前に置く。

「熱いから気を付けて」

 注意している傍から、セイバーは汁の中に、ちょろっと無防備に出した舌を突っ込む。

「熱っ……!」

「ほら、だから言ったのに……」

 そう言われながらも、セイバーは、すぐに舌を小出しして、吐息で少しずつ冷ましながら、落ち着いて味噌汁を啜り始めた。

 ほのかが召喚したセイバーは、味噌汁を食べるのが初めてだった。
 だからこそ、セイバーがほのかに、ここにある「インスタント味噌汁」なる物について訊いて、ほのかはセイバーに「味噌汁」を振る舞った。
 セイバーが持つ知的関心を満たし、セイバーの世界を広げてあげる為のやさしさである。


587 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:15:18 AWvp5cIo0

「……しかし、美味しいです。この星の物は食べた事がなかったのですが……こんなに美味しいとは」

 セイバーは満足そうにそう言った。これはお世辞でも何でもない。
 ほのかとしては、これはあくまでインスタント食品なので、本当の味噌汁はもっと奥が深い物であると、教えてあげたかった。

 少し順序がおかしいようだが、今度は「茶」を振る舞おう。……またお湯を注ぐだけで完成の代物だが、それでも良い。
 二つ、プラスチックの茶碗を手に取った。

「あの……もう結構です、マスター。私は英霊ですから、栄養を補給しなくても魔力さえ供給していただければ……」

「ううん、私がお茶を飲みたくなったの。一人で飲むより二人で飲む方が好きだから、一緒にどう?」

「そういう事ならば……」

 セイバー……。それは、美しい金色の髪に灼眼の、日本人離れした顔立ちの女性型サーヴァントである。
 多くの日本人は、それを見て北欧系の外国人だと思うかもしれない。しかし、外国人という見識は、正解でもあり、ハズレでもある。
 ボリュームのある髪に目を囚われがちな、彼女の耳に注目すればそれがよくわかる。
 彼女の耳は、真上に突き出すように尖っていたのだ。まるで猫の耳のようである。あるいは、神話のエルフが近いかもしれない。

 セイバーの真の名はイクサー1といった。
 彼女は、この国どころか、この星の人間ではない──遠い外国、異星の民なのだ。いや、もっと言えば、純粋な人間ですらない。
 イクサー1は、クトゥルフと呼ばれる惑星で生まれた人造人間であり、また同時にクトゥルフに生まれながらにしてクトゥルフに抗う者であった。
 彼女の母星クトゥルフには、他星を侵略し、宇宙を殺戮と支配で埋め尽くす野望が生まれてしまったのである。
 善の心だけを持ったばかりに、自星の蛮行へと強く反逆する意思が生まれてしまった。そして、クトゥルフの大半が死すまで、母たちを裏切り、同胞たちを殺してきた。
 そんな出自をあっさりと信じるほのかも余程腹が据わっている相手だと思う。

 そして、とある世界の地球上で、イクサー1はある少女と共にイクサーロボを駆り、不毛と化した大地でクトゥルフの侵略を退けたのであった。
 セイバーは、その世界の地球を完全に救う事は出来なかったが、それでも、諸悪ビッグゴールドを倒す事には成功している。
 ……だが、やはりそこから先は敗北としか言いようがない。クトゥルフの技術を以ても、命を生き返らせる事は不可能であり、クトゥルフが齎した地球の悲しみは癒えない。
 幼いながらに両親を喪ってしまった者もたくさんいるだろう、忘れて全てをリセットした方が幸せな者もいるだろう──彼女のパートナーもまた、その一人だ。
 だから、セイバーは己のパートナーを、別の全く異なる──クトゥルフの侵攻のないパラレルワールドの地球に預け、宇宙のどこかへと去った。

 この時、クトゥルフの侵略のない宇宙がいかに平和であったかを身を以て知らねばならなかった彼女は複雑であった。
 やはり、クトゥルフは彼女の故郷でもあったからだろう。
 元はと言えば、クトゥルフ自体は悪徳を持つ集団ではなかったが、その長であるサー・バイオレットがビッグゴールドに取りつかれたのが惨事の原因であった。
 それゆえに、一段と辛かった。本来は温厚な部族の長が、一時魔が差した為に世界の脅威となったのだから。
 平和を望むがゆえに、正義を持つがゆえに、同胞、姉妹さえも手にかけねばならなかった。
 ……あの感触、あの叫び、あの殺意、あの悔しさ。確かに忘れない。

 そんな彼女の望みは一つだ。
 全ての宇宙を、「クトゥルフそのものが無い世界」ではなく、「クトゥルフがビッグゴールドの支配を受けなかった世界」へと「書き換え」を行う事である。
 そうなれば、渚の周りの人が死ぬ事もなければ、イクサー1とイクサー2が殺し合う運命もない。
 やがて地球とコンタクトを取る事になっても、その時はお互いに友好的に交流する事もできるだろう。
 並行世界の中からも、全て消し去り、そこからの分岐を一切なくす事ができる。

 それが宇宙を渡る中で芽生えた、彼女のせめての願い──いや、そうとも呼べない儚い夢である。
 叶わないとしても構わない。叶わなくても渚はまだ幸せにやっている。しかし、それでも少し努力して届くならば、そこに届かせてみたかった。


588 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:15:57 AWvp5cIo0



「お茶も、美味しい……。この星の物はこんなにも上品な味をしているんですね」

「だからこれは、本当のお茶じゃなくて……」

 ほのかがやれやれと苦笑している。
 味噌汁もそうだが、もっと時間をかけて作った物の方が、味を好みに整える機微が利いて美味しいだろう。
 これは、お茶や味噌汁の味を手軽に再現する為に作られた物である。確かに充分美味しいが、これだけでお茶を飲んだというのはまた違う。

「本当のお茶はどこに?」

「どこに行けば淹れてもらえるかしら……? 緑茶じゃなくて紅茶なら町中にお店があると思うんだけど」

「それでも構いません。紅茶というのも、少し興味があります」

 ここには敵はいるが、冷徹なクトゥルフはいない。だから、セイバーも腹を満たす余裕を持てるのだ。
 嗜好品にありつくのも、今のこの表向き平和な東京では容易である。かつてのセイバーが降り立った東京とは全く違う。
 食べ物は勿論、この星の文化についてもう少し詳しく知る事ができるかもしれない。
 ただ、服装はこのピンク色のタイツとビキニアーマーでは、当然街中で目立つので、ひとまず変えなければならないだろう。
 どのような服装に変えて、明日街に出てみようか……。

 ……いや。

 そんな最中で、ふとセイバーの表情は少し固くなった。
 何かの想いがふと過って、気づかされてしまったような面持である。

「……マスター。本当に私たちはこれでいいのでしょうか」

 セイバーが、重くなった口を開いた。

「どうして?」

「私はサーヴァントです。従者として召喚されたからには、いつでもマスターの為に命を張る覚悟があります。
 マスターは、私を死に追いやる命令もしなければなりません。もしそんな状況になった時の為に、私たちはもっと心理的な距離を置くべきではないかと思ったのです」

「そんな……」

「そして、私がこの聖杯戦争で最も優先すべきはマスターの命と願いであると考えています。
 私の願いを叶える為に、あなたの願いを穢したくはないのです。元々、私の願いはあなたの世界とは関係のないものですから……」

 セイバーは、ほのかに好感触を持っていた。元々、セイバーは今ある自分の運命を充分に受け入れている。この悲願を叶える術を今日まで必死に探していたわけではない。
 むしろ諦観していた。こうなってしまうのは仕方ない、法則なのだと。
 現実に、願望器に縋れる人間など普通はいない。こうして聖杯戦争に参加できた者もごくごく限られている。
 一度起きてしまった事を戻す術も、他人の人格を矯正する術も、人の命を戻す術もない世界で、人間たちは生きている。
 セイバーはただ、宇宙を彷徨い、英霊となった果てに偶然、「聖杯戦争」を知り、それを使って叶えたい巨大な願いに後から気づいたというだけである。
 あるいは、正さず、宇宙をこのままにしておくのが正しいのかもしれない。正義の人造人間とはいえ、正義と悪との明確なラインは知る由もないのだ。
 あくまで、おおまかに決められた線引きの中で、自分が思う正しい事をしているのであり、それが侵略者に仇なす事であった。
 だから、セイバーには今の自分が正しいという確証は持てていない。正しくあれ、という思いはある。


589 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:16:13 AWvp5cIo0

 しかし、一方でほのかの願いは、正さと歪さのラインに立つよりは、ただ実に一途で純真な物である。
 ある戦いで闇の世界に誘われ、今はどこにいるかもわからない──いや、もっと言えば完全に消滅したかもしれないキリヤという少年との再会だ。
 そのために、ほのかは中学生だてらに、あらゆる神話や伝説を模索し、「闇の世界」に関連する逸話がないか、そこに行く着く術がないかを探していたと言うし、あるいは科学的に、異世界に行く技術を探していたとも言う。

 そして、現状で見つけた唯一の手段がこの「聖杯戦争」への参加であった。
 月に願いを見込まれて、巻き込まれるようにここに来た彼女であるが、ここに来る一秒前に強い願いを発したのもまた事実である。

 聖杯に望みを託す。──それが彼女の見つけた有力手段なのだ。
 果たして、彼女に他者を傷つける覚悟があるかはわからない。しかし、願いへの想いは本物であった。
 願いの為に縋る方法の一つとしてこの東京に身を置きながら、そこで他者を殺める覚悟はイマイチ乏しい。
 しかし、セイバーはそんなマスターにこそ憧れも抱いた。
 ほのかは正しいかもわからない願いを持ちながら、普段は優しく、おおよそ社会の規範となるような人間性を保ち、一個人として好感の持てる人間になっている。
 その人間の、ただ一途な願いに、セイバーは殉じたいとも思っていた。

 できるならば、セイバー自身も己の願いを叶えたいが、最優先すべきはマスターの願いだ。
 実際は、このマスターくらいの願いが人間の器には丁度良いのかもしれないと思う。

「戦法的に、もし、私を捨てるべき状況になったら、すぐに私を捨ててください。
 私の些細な負傷は全て無視し、自分の魔力と身の安全の確保を最優先すべきなのです。
 ……だから、こうしてマスターとサーヴァントが親しくするのは、その時に自分を辛くするだけかと」

「私は……」

 ほのかは言葉に詰まっていた。セイバーの複雑な思考を読んだわけではないが、迫力に圧倒された。
 次の一句が見当たらないのである。
 それは、こうして茶を飲み合う相手を含め、今は日常の裏側で戦争をしなければならない状況だと認識させられたからであった。
 犠牲。──セイバーの台詞から連想した、その言葉の意味を、深く噛みしめる。
 セイバーだけではなく、敵もあるいは犠牲にしなければならない。そこに対する回答はまだ模索しきれていない。
 しかし、セイバーを犠牲にしなければならないという一点に関しては、答えが浮かんできた。

 双方、お茶を持つ手が震える。
 少し考え、お茶を台に置いた後で、ほのかはセイバーの方を真っ直ぐ見据えて言った。

「私の願いは、ずっと会いたいと思っている友達に会う事よ。
 セイバーさんとも、こうしてお友達になれた以上は、離れ離れになりたくはないわ」

「マスター。それは私も同じです。人との別れがつらい事はよく知っています。
 ……しかし、私が言っているのは、いざという時です。その時が来たら、私を捨てる覚悟を持ってください。
 そして、いざという時が来た場合の為に、普段から私をもう少し突き放した態度で接するべきではないかと思うのです」

「いいえ! 私たちはパートナーだから」

 ほのかの即答に、セイバーはたじろぐ。
 パートナー──そんな存在が出来るのは、いつぶりか。かつての戦いで、パートナーの記憶からもイクサー1は消滅した。
 イクサー1もクトゥルフのない別の宇宙では、彼女のパートナーはその記憶を引き継がなかったのである。

 セイバーにも、自ずと暖かい心が湧きあがるような一言であった。
 ほのかは、続けた。


590 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:16:29 AWvp5cIo0

「……セイバーさん。戦いだけの日々だけじゃなくて、普通の日常を過ごす事も当然大事な事だと思うわ。
 そういう日々の中にも学ぶ事はあるし、守りたい物が自然と見えてくるものなの。
 もし、戦いの中で私のピンチが来たとしても、私はパートナーは捨てない。私はそういう自分になりたくないし、あなたとの日常を捨てたくないから……」

「……マスターはサーヴァントを切り捨てて戦わねば勝ち抜けない運命だとしても?」

「そんな運命なんて、変えてしまえばいい」

 またもや、即答であった。

「それは……あなたの経験から出た言葉ですか」

「ええ。私には大事なパートナーがいる。『なぎさ』が教えてくれたんです」

 なぎさ。
 昨日まで一緒に放課後語らっていた友人。いや、今日も、明日も、これからもずっと友人である少女の名前であった。

 実は、なぎさとほのかは、かつてもある戦いに身を投じていたのである。
 光の使者、プリキュアとして、ドツクゾーンなる闇の存在と日夜戦ってきた。
 しかし、彼女たちは一度たりとも、日常を捨て、運命に屈した事はない。
 守りたい日常を噛みしめながら、その世界のなんでもない日々を守るために戦ってきたのである。
 学校、友達、遊び、趣味、笑顔、家族、自分──世界を守るためではなく、世界の中に在る小さな物たちのために。

 だからこそ、イクサー1を見捨てるなどという判断は生まれなかったし、そこにいるパートナーを失った時点でほのかは戦う意味をなくしてしまう。

「パートナーへの信頼、そして日常ですか……。
 あなたの様子を見る限りでは、────『美墨なぎさ』という人物は、『ホノカ』にとても良い影響を与えたようです。
 ぜひ一度、私も美墨なぎささんに会ってみたいですね」

「あなたもよ、セイバーさん。……加納渚さんという人に会ってみたいわ」

 二人は、ふふ、と笑った。
 奇しくも、二人がパートナーと認めている少女の名前は全く同じなのである。
 どうやら、セイバーもほのかに折れ、納得したようである。



 それから、茶を飲み、翌日の準備に取り掛かる事にした。

「さて、明日の発表会一日目の準備……と」

 ほのかは初日は見学である。ほのかが発表をしなければならないのは「最終日」であり、まだ数日だけここにいる事になる。
 しかし、自分と関係ない発表日も参加者は要出席とされており、面倒にも「入場する事」だけは義務づけられているので、学校を休んでここに来なければならなかったのだ。
 ほのか自身もそれぞれ他の学校の研究には興味はあるが、それにしても、時間を詰めれば一日で終わるようなイベントである。
 各日にちごとに、せいぜい四時間程度しか研究発表がない。それを何日にも配分している。
 これだと、海外の来賓のスケジュールもどれだけ空いているのか、という話になる。
 それに、名簿に名前を書いて入場さえすれば後は退出自由というのも変だ。

 ……いやはや、そんな研究発表会があるだろうか?

 まるでほのかに数日学校を休んでここにいろ、とでも言いたいような……。
 いや、あるいは、もっと多くの時間をこの東京聖杯戦争に裂く為に組まれたスケジュールであるような……そんな気がした。
 そう考えるのは自意識過剰だろうか?


591 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:16:44 AWvp5cIo0



【クラス】
セイバー

【真名】
イクサー1@戦え!!イクサー1

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運D

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
 乗り物を乗りこなす能力。
 魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなす。

【保有スキル】
守護騎士:B
 他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。
飛行:A+
 自力で飛行する事が可能。
 宇宙空間や亜空間においても飛行可能であり、大気中以外でも活動ができる。
光具:B
 魔力光を自在に操るスキル。
 ビーム、ソードなどの形で運用可能だが、手に余るほど巨大な物は生成不可能。

【宝具】
『善なる守護光の剣(イクサーソード)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:1〜5 最大補足:1〜5
 セイバーが何もない空間からその右手に再現できる光の剣。
 固形物ではなく光そのものであり、破損しないが、代わりに発動中は常に魔力を消費し続ける。

『善者の化身たる巨人(イクサーロボ)』
ランク:EX 種別:対人 レンジ:1〜99 最大補足:1〜99
 セイバーと『加納渚』と同調する事によって起動できる巨人。
 現状では加納渚が参加しておらず、そのために運用不可能と思われる宝具。
 『渚/なぎさ(ザ・ベスト・パートナー)』の固有結界を発動させる事が不可欠となる。

『渚/なぎさ(ザ・ベスト・パートナー)』
ランク:A 種別:結界 レンジ:1〜99 最大補足:1〜99
 セイバーが形成する固有結界。
 この結界内では、一時的に彼女のパートナー・加納渚の以前の戦闘データ・身体データが仮想復元され、『善者の化身たる巨人(イクサーロボ)』を操縦する事ができる。
 また、結界内に侵入した存在の「パートナー」も仮想修復が可能であり、本人の魔力消費と共に再現される。それにより、結界内では単体では利用不可能(特定人物と二人でなければ起動不可能・再現不可能)な宝具の運用が可能。
 基本的には多人数を再現する事はできず、そのサーヴァント又はマスターのパートナーと呼べる人物(あるいはその他の動物・魔物・植物・無機物)一個のみが仮想復元できる。
 そこで召喚されられた人物の所持品や着用している衣服、装備等は記憶から再現される。

【weapon】
 なし。

【人物背景】
 宇宙を放ろうする民・クトゥルフが、自分たちを守る戦士として作った人造人間。善の心のみを有している。
 正確には、クトゥルフの長サー・バイオレットが巨大機械生命体に触れた事によって、正の意志が具現化した存在ともいえる。
 同じく邪な意志から生まれたビッグゴールドにサー・バイオレットが支配された事によって他星を武力で侵略し始めたクトゥルフを相手に、イクサー1は裏切りの戦いを挑む。
 地球を守るため、巨大機械生命体の創作者の血を受け継ぐ加納渚(小説版のみの設定でOVA版では渚でなければならない理由は特に語られない)と共にイクサーロボを駆り、クトゥルフの侵略者たちと戦う。
 姉妹であるイクサー2、復讐に燃える心優しきセピアといった強敵、難敵と戦いながらも、打ち倒し、やがてビッグゴールドを倒す。
 続編『冒険!イクサー3』などにも登場する。

【サーヴァントとしての願い】
 ビッグゴールドの存在抹消。

【方針】
 聖杯を手に入れる方針である。
 マスター(ほのか)をパートナーと認め、彼女に不足している部分を自分で補う。
 また、あくまで自分の願いよりもマスターの願いを優先する。
 それから、服装がヤバいので、そこはどうにかしようと思う。


592 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:17:10 AWvp5cIo0


【マスター】
雪城ほのか@ふたりはプリキュア/ふたりはプリキュアMax Heart

【マスターとしての願い】
 キリヤくんとまた会いたい。

【weapon】
 不明。
 ただし、ホテル内の設備は聖杯戦争期間中に自由に利用可能である他、ここに来るまでに準備してきた最低限の着替えや道具が部屋に整っている。
 科学コンテストの発表の為の設備も所持しているはず。
 通常ならミップルを連れてきているはずだが、今回は他校の引率の先生に没収されているという事で、どうしても出したい時に出す感じで…。

【能力・技能】
 中学生レベルとしては非常に高い知識を持っており、特に科学に造詣が深い。
 また、スキーやスケートといったウインタースポーツも得意。

『光の使者・キュアホワイト』
 雪城ほのかが伝説の戦士として認められ、ミップルとの連携で変身できるプリキュア。
 人間離れした戦闘能力を有するが、キュアブラックと比べると打撃力や防御力に若干脆さがあり、トリッキーな回転やいなし技で応戦する。
 ただし、美墨なぎさと二人揃っていなければ変身できないという難点があり、セイバーの宝具を利用して再現する以外の変身方法はない。

【人物背景】
 ベローネ学院女子中等部2年(又は3年)桜組クラス委員。科学部。1990年4月4日生。血液型はB型。
 成績は学年トップであり、「薀蓄女王」と呼ばれている。
 両親は共にアートディーラーで、普段は家におらず、ほのかは祖母、飼い犬と一緒に暮らしている。幼馴染に藤P先輩こと藤村省吾がいる。
 光の園から現れたミップルとの出会いがきっかけで、美墨なぎさとともに「伝説の戦士・プリキュア」に選ばれ、闇の世界から現れたドツクゾーンと戦う事になる。
 そんな戦いの中で、全く正反対だったふたりは時に対立しながらも戦いの中で友情を築いていく。
 ほのかは戦いの中で出会ったドツクゾーンの少年・キリヤとの奇妙な交流の中でも着実に成長していった。
 やや天然ボケで、科学部では珍妙な実験をしては爆発を起こしており、ミミズを可愛がるような一面も見せる。
 参戦時期は無印最終回後であり、Max Heartの最中であると思われる。

【方針】
 聖杯を手に入れる。
 しかし、現段階では迷っている最中。相手がどんな人物であるかにもより、モチベーションが変化するだろう。


593 : ◆CKro7V0jEc :2014/12/31(水) 17:17:27 AWvp5cIo0
以上で投下終了します。


594 : ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:12:04 aiiKpqMA0
投下させて頂きます。


595 : 園原杏里&アサシン ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:12:38 aiiKpqMA0
月の光を意識した事は無い。
否――自分が意識して何かを視る事など、一度としてなかった。

両親を亡くしてから、自分はずっとそのままでいて。
――あの声も届かない。
自分は、人を愛せない。
何かに寄生しなければ生きていけない。
常に客観視している。
額縁の中に存在する世界を、外部から眺めている。
それは多分これから先も変わらない事なのだと――園原杏里は思っている。
――今、この時ですら。
杏里がいるのは額縁の外だ。

学校からの帰宅の途中だった。
杏里には友人と呼べるような人物は一人しかいないし、その友人も近頃は杏里と距離を置いている。
自分から物理接触《リアルコンタクト》を図るような事も殆どない。
一人で帰宅するのが常だったのである。
平素とまるで変わりない。
昏い路。
それを辿る途中。
善くないものに――行き会った。

男の眼は明らかに正気ではなかった。
紅く染まった、歪に光を反射する両眼。
何かに憑かれたでもしたか。
そもそも、人ではないのか。
杏里は。
すぐに背を向けて逃げ出した。

怖かったのだと思う。
その男の――眼が。
その眼を、杏里は知っている。
それは杏里の――母親の眼だった。
母が、父へと向けた眼だった。
知らない筈は無い。
なのに――それを知っているという事が、今ここにいる杏里の記憶と矛盾していて、それが怖かった。

――愛してる。

躰と心が乖離する。
幽々と眩暈が起こる。
気が付けば杏里は人気の無い路地裏にいて、大柄な男に頸を絞められている。
聲が出せない。
出したとて――周囲に人の気配はない。
逃げ場も――無い。
額縁の外で視ている杏里は何処か冷静に状況を把握している。
だから。
目の前の男を。
――どうする?
手段はある。それが思い出せない。

男の力が強まる。
壁に押付けられた杏里の躰は宙に浮いている。

――愛してる。

意識が遠のく。
額縁が遠のいて、何も視えなくなる。
その――寸前。

大きな満月を背にした、
狼の姿を視た。


596 : 園原杏里&アサシン ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:13:21 aiiKpqMA0
男が手を離して、後ろを振り向いた。
杏里は尻餅をつく。
鋭い刀のような凶器を持った狼は。
文字通り音も立てずに男の許に駆け寄り、振り向いたその喉首を。
掻き切った。
ただひゅうひゅうという音を出しながら、男はそのまま倒れて、
死んだ。

「――あ、」
杏里は顔を上げる。
狼が――少女が、そこに立っていた。

澄んだ凛々しい眼。
ヴェリーショートの髪。
端正な顔立ち。華奢な腕。
何もかもが血に染まっている。
真っ赤な血潮を蒼い月光が照らしている。

「あなた、は――」

――知っている。
目の前の少女が如何なる存在であるのか――杏里は知っている。
サーヴァント。聖杯戦争。紅い月。
自らが寄生する相手の事も――明瞭と思い出している。
人を愛する妖刀。
人でないものを断つ妖刀。
杏里の中で常に愛の呪いを唱え続ける罪歌は――沈黙している。
まるで――目の前の少女が人なのか、そうでないのか、判断できないとでも言うように。

サーヴァントは。
高校生の杏里と、精々が二三程度しか歳が変わらないように見える少女は。
迚も悲しげな表情で。
「僕は」
人を殺しましたと言って、血に染まった手を翳した。

杏里は――何も言えなかった。

おとうさん。
おとうさん。
苦しいよ。

罪歌が無ければ。
母が、父を殺していなければ、杏里は既に死んでいる筈だった。
そして、今この時も――杏里は少女に助けられたのである。
けれど。

「僕は善悪の基準も物事の真贋も正否も判らないけど――仮令止むを得ない状況でも――どんな時でも――ひとごろしは」
良くない事です。
「悪者を退治した訳じゃない。正当防衛でもない。正義の天誅でもない」
僕は単なる殺人鬼なんだと少女は言った。
その――罪を。
決して正当化してはいけない。
こびりついたけものの匂いを、消してはいけない。
僕は。
「だから――ここに来た」


597 : 園原杏里&アサシン ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:14:09 aiiKpqMA0
酷い矛盾だと杏里は思う。
或いは少女が召喚された事そのものが何かの間違いなのかもしれない。
聖杯は最後の勝利者の願いを叶えるものだと言う。
ならば――其処に辿り着く為には。
――厭だ。
それは杏里も厭だった。
少女も。
殺人という行為を――決して自ら進んで行う事はしないだろう。
ただ、それをする時は。
魔物が――降りている。

――愛してる。

「――私には――聖杯にかける願いは――ありません」
色々な想いを振り切って――杏里はそう言った。
それは慥かな事実である。
他者を蹴落としてまで叶えるべき望みを、杏里は持ち合わせていない。
あるとするならば。

「私は、この戦いを――止めたい」

聖杯がどのようなものなのか。
本当に願望機としての機能を持っているのか。
それは理解らないし、杏里にとっては重要な事ではない。
ただ。
この戦いは――果たして一度だけで終わるのか。
杏里がここにいるのなら――その周囲の者達も巻き込まれる可能性はあるのではないか。
その想像は。
自身に降り掛かった事態よりも遥かに、杏里を惧れさせた。

自分は人を愛せない。
罪歌は――人を愛している。
少女はどうなのだろう。
判る筈もない。

人の心は箱に入っている。
箱の蓋は決して開けられない。
ラベルが貼られていようが中身が説明されていようが、結局は想像する事しかできない。
それが普通なのだと杏里は思う。
自分でさえ自分の事を全て知っている訳ではない。有耶無耶である。
強かな所もあれば褻らわしい所もある。
杏里の内部には愛を謳う妖刀が入っていて杏里はそれに寄生している。
完全に支配している訳でもなければ、その逆でもない。
瞭然と領解る部分など何一つない――。
――魍魎の匣。

けれども。
今表層に出ている園原杏里という外的側面《ペルソナ》は。

「それに――私は」
池袋を。
「この街を――守りたいんです」
偽物でも。
傲慢かもしれないけれど。
ここに――彼らがいるのなら。


598 : 園原杏里&アサシン ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:15:13 aiiKpqMA0
太陰が浮かんでいる。
三十八万四千四百キロの距離から届く青白くて弱い光が杏里と少女と、死体を照らしている。
杏里は額縁の外部からその景色を視ている。
これは――現実である。
データではなく。リアルだ。

少女は――杏里から離れる。
そのまま背を向けて、去ろうとする。

「ま、待ってくださいッ」
杏里の声に少女が振り向いた。
澄んだ眼が杏里を直視して、杏里はその視線に耐えられずに目を逸らした。
「僕は人殺しです」
だから一緒には――いられない。
「でも――」
言葉を続けようとする杏里の頸に。
ナイフが当った。

――愛してる。

罪歌は杏里に戦い方を教えてくれる。けれど。

「僕は喧嘩は弱い。戦い方なんて知らない。でも――殺し方なら知っている」

身体の内部から罪歌を顕現させる事さえ出来なかった。
少女がその気になっていたのなら。
――僕はそんなことはしたくない。

「あなたの事だって僕は殺してしまうかもしれない。それに僕は――ひとりの方がいい」
ごめんなさいと言って少女はナイフを持った手を引いた。

杏里は何もできない。
少女を受け入れられない訳ではない。
ただ。少女は――杏里と同じ場所にいない。

――愛してる。

少女はどこまでも人間で。
そして。

「僕は――狼だ」

行き遭う者を屠る――。

忌避すべき狼《ルー=ガルー》だと少女は言った。


599 : 園原杏里&アサシン ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:15:52 aiiKpqMA0
【クラス】
アサシン

【真名】
神埜歩未@ルー=ガルー 忌避すべき狼

【パラメーター】
筋力E+ 耐久E 敏捷D+++ 魔力E- 幸運D 宝具E-

【属性】
秩序・中康

【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。

【保有スキル】
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失っても一日間現界可能。

直感:E+
戦闘時、常に自身にとって最適な展開を感じ取る能力。
相手を殺害する時――ただ、その一太刀にしか活路がないその時のみに発動する。

情報抹消:B
対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶・記録から、彼女の能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。
たとえ戦闘が白昼堂々でも、カメラなどの機械の監視でも効果は変わらない。
……自身の犯した罪がなかったことにされたアサシンの逸話の具現。
狼は絶滅した。
そういうことになっている。

【宝具】
『忌避すべき狼(ルー=ガルー)』
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
通り悪魔の一種。
何万分の一秒の僅かな隙間、「今ならできる」というその時が訪れた時、あらゆる制約、条件を無視し、アサシンの目の前に立つものを殺害する。
由来、動機、不明。
アサシン自身もこの宝具をコントロールすることは出来ない。
出合ったものを屠る忌避すべき狼。

【weapon】
特殊セラミック製ナイフ『アームブレイド』。
研磨せずとも劣悪な環境下で百年以上性能を維持できる凶器。

【人物背景】
携帯端末《モニタ》という鎖に繋がれた管理社会で生きる少女。
ヴェリーショートの髪に男言葉で話す。

ある満月の夜、「殺人衝動を抑えきれなくなる」という男に襲われた歩美は、その男を殺害してしまう。
既に男は落ち着きを取り戻し、謝罪し、凶器を手放し、殺す理由などない。
正当防衛でも、制裁でも、復讐でもなく、殺した。
憎かった訳でも怖かった訳でもなく、何の得もない。
歩美は自らの殺人の動機を考えていた最中、ある連続殺人事件に巻き込まれる。

人を殺したくなるようなことも、殺す事で満たされるようなこともなく、ただ殺すだけの狼。
罪への罰を求める殺人者。


600 : 園原杏里&アサシン ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:17:19 aiiKpqMA0
【マスター】
園原杏里@デュラララ!!

【マスターとしての願い】
戦いを止めたい。

【weapon】
妖刀・罪歌。
普段は杏里の身体の中に収納されており、任意で顕現させる事ができる。
「人を愛する」人格を持つ罪歌によって斬られた人間は精神を犯され、持ち主である杏里の命令に服従するようになる。
デュラハンの首と身体の繋がりを断ち切るなど、霊体を斬り裂く事も可能。

【能力・技能】
罪歌の持つ力と経験を引き出す事で強大な戦闘力を発揮する。
学校での成績は優秀だが、PCや携帯電話、インターネットに関する知識は極めて薄い。

【人物背景】
池袋に存在する来良学園に通う高校生。
おかっぱ髪に眼鏡をかけた、地味な風貌の少女。

幼い頃に父親に殺されかけ、その際に母が父を殺し自殺するのを目撃する。
直後に、死んだ母親が持っていた妖刀・罪歌の新たな所有者となる。
自身の心を常に対象となる事柄や人物から「額縁を隔てた」形で捉えるようにしている為、本質的に他者との付き合い方が理解出来ておらず、また常に恐怖感も抱いていた。
これらの理由から、本来取り付いた人間の精神を蝕む罪歌の声すら彼女には届かなかった。
自らを「寄生虫」と称し、他人に依存する生き方を行う杏里は、親友である張間美香が行方不明となった事をきっかけに、歪んだ愛の物語に巻き込まれる。

【方針】
不明。


601 : ◆7bpU51BZBs :2014/12/31(水) 22:17:56 aiiKpqMA0
投下を終了します。


602 : ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:38:29 B/n8UrJA0
一作書き上がったので投下させていただきます


603 : 園田海未&アーチャー ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:40:44 B/n8UrJA0
「う〜ん、今日もパンがうまい!」
「全く、太っても知りませんよ?」
「まぁまぁ、ちょっとくらいはいいんじゃないかな?今くらいは」

私の隣には、高坂穂乃果と南ことり。
幼い頃よりずっと共にいた幼馴染の二人がいます。

もう少し前だったなら、ここに他の皆がいたのかもしれません。
小泉花陽が、星空凛が、西木野真姫が、矢澤にこが、絢瀬絵里が、東條希が。
しかしμ’sの練習に明け暮れる日々は、つい先日をもって終わりを告げました。

ラブライブ優勝という、大きな名声をもって。

後は三年生の皆の卒業をもって、μ'sを解散として終わらせるだけ。
音ノ木坂学院の廃校もなくなり、ラブライブの優勝も果たした。

全ての目的を終え、今はほんの一時の休息の時間。
無論、アイドル部もアイドル活動も残ったメンバーで続けていくつもりです。
現一年生、そして穂乃果とことりの二人に加えて、来年入部するであろう新入生達と一緒に。

「それじゃあ海未ちゃん、この辺で。また明日ね〜」
「はい、また明日」
「さよなら〜」

家も近づき、別れ道で二人と別れて一人帰路につきます。

一人になるとたまに思います。
きっと来年、新入生が入って続いていく生活もまた素晴らしいものになるでしょう。
μ'sが解散しても、私達の活動は続いていく。

ただ、それでも。
あの9人で過ごした日々は、とても名残惜しいものでした。

永遠に、とは言いません。
せめてあと一年、いえ、数ヶ月であってもあの日々が続いてくれればどれほど素晴らしいものなのだろう、と。
そんな思いがふと心に浮かび上がってくることもありました。
目的が、全てをやり遂げた後の空白を埋めようとする自分の弱い部分がそう思っているだけであることは自分がよく分かっていましたが、それでもそれを思うことは止められませんでした。


604 : 園田海未&アーチャー ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:41:21 B/n8UrJA0
そして、今日もまたそんなことを考えてしまう日でした。

二人と別れ、一人家に向かう私はふと空を見上げていました。

「…そういえば、今日は新月でしたね」

普段から色んなものに意識を向けることが多く、それがμ'sでの歌詞作りに役立ってきました。
当然、夜空を見上げて月や星を見ることも多く、気がつけば自然と今日がどの月の日かも頭に入っていたのです。

今日は新月、月が見えるはずもない真っ暗な空。

そのはずだったのに。

「あれ…?月が……」

空に見えた、真っ赤な丸。
新月の日に見えるはずのない満月がそこにはありました。
白ではなく紅に輝く丸い月が。

もしラブライブに向けて練習していた数週間前であればそれを見て何か歌詞を思いつくことができたかもしれません。
しかし、今の私にはその月が妙に不気味なものに見えました。

―――――月のない夜に出てくる紅い月が、夢を叶えてくれる

近頃学校で話されている都市伝説、というよりまるでお伽話のような噂。
女子高生にありがちな話だと思っており、穂乃果やことり達はともかく私はそう興味をもってはいませんでした。

そんな、大して興味も持っていなかったはずの話が脳裏をよぎり、心の中に少しずつ不安と恐怖が沸き上がってきました。

そのまま一心不乱に家まで走って帰り、自室にこもります。
一眠りすれば忘れているだろう。明日からはまた今日と同じ平穏な日常を過ごしていくだけだろう。
そうであって欲しいと、私は思っていました。

だから気付いていませんでした。
その紅い月を見たその時から、既にそんな日常から離れた場所に攫われていたことに。



早朝。
檜の板が敷き詰められた静寂な空間に園田海未はいた。
そこは弓道場。彼女が日頃の朝練に使用している場所。
普段も朝のアイドル活動の練習の前にこの場で弓道の鍛錬をするのが彼女の日課であり。
それはその活動が一旦の終わりを遂げた今日であっても変わらない。

心を無にし、精神を極限まで研ぎ澄ませ。
的の中心を狙い、矢を引き絞り。

パシッ

外した。
的から3cmほど逸れた場所に矢は刺さっていた。


605 : 園田海未&アーチャー ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:42:14 B/n8UrJA0
「………」

かつてもこのようなことがあった気がする。
しかし、今外した事実はその時と比べてあまりに心に重くのしかかってくるように感じた。

「珍しいわね、あなたが外すなんて」

ふとそんな声が聞こえ、チラリと後ろに視線を向ける海未。
自分と同じように弓道着を纏った女性が一人佇んでいた。
その存在に気が付かなかったのは弓道に集中していたからだろう。

「…いえ、たまたまです。今度こそは―――――」

そんな彼女の存在を意識の外に追いやり、再度弓に意識を集中させる。
しかし。

放たれた弓は今度は的から5cmほど離れた場所に刺さった。

「…っ!今度こそは………!」

こんなことはあってはいけない。
今自分の中にあるものを受け入れてはいけない。
そんなものはないと、そう言い切れるように矢を当てなければならない。

「もういいわ」

それでも震える手で矢を射ろうとする海未の傍に女は寄り、構える海未の腕を解かせる。

「離してください…!まだ、私は……」
「弓道は射手の精神状態が現れやすい。
 いくら集中しても、心の奥に生まれた恐怖を打ち消すことはできないの。
 今のあなたでは、あの的に当てることすら難しいわ」

まるで海未の心を見透かしたかのように女は続ける。
今、海未が直視することを恐れている一つの感情に向き合わせるかのように。

「怖いのね?」
「……夢ならいいなと、そう思ってました。昨日紅い月を見たことも、私自身の弱さ故に持っていた願いのことも」

聖杯戦争。
自分の願いのために他者を殺める儀式。

そう、願いを叶えるためには、生き残るためには自分と同じように願いのために戦う者を殺さねばならない。
その事実が海未の心を恐怖で縛って離さない。

「私には…そんな勇気なんて……!他の人を殺してまで叶えたい願いなんて……!」
「…………」
「こんな私のサーヴァントになってしまったあなたには、とても申し訳ないと思っています…。
 でも、私、怖いんです……」

既に弓も取り落としている。
こんな心境で、弓を引くことなどできなかった。それでもいつも通りにしていれば夢は覚めてくれると思っていたから続けて。
結局自分の弱さを露呈させただけだった。


606 : 園田海未&アーチャー ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:43:03 B/n8UrJA0

「一つだけ聞かせて。あなたには願いはある?あるいは、死にたくない?」
「…願いは、ありません。人を殺めてまで叶えたい願いなんて。
 それでも、死にたくもありません……。身勝手なのは分かってますけど、それでも死ぬのは怖いです……」
「そう……」

女は小さくその言葉に頷き、海未の落とした弓と矢を拾い上げる。

「なら、それが私の願いでいい。あなたを死なせないために、私は戦う」

海未の目の前で静かに構えるその姿は弓道有段者である彼女すらも惚れ惚れするものだった。

「…いいの、ですか?」
「私に願いなんてない。強いてあるとするなら、あなたのような戦えない者達の平穏のために戦うこと、それが昔から私の役割だったから。
 だから、あなたの代わりに弓を引き敵を射抜くのは私の仕事。
 あなたは、この私が必ず守りぬくわ」

気がつけばその女、園田海未のサーヴァントの左肩には板のような何かが装着されていた。
その表面には、空港の滑走路のようなもようが見える。

そして彼女は引き絞った矢から指を離し。

「一航戦の誇りにかけて」

海未を守るという意志と共に放たれた矢は、寸分違わず的の中心を射抜いていた。
海未には当てることが叶わなかった的の中心を、正確に。


【クラス】
アーチャー

【真名】
加賀@艦隊これくしょん

【パラメーター】
筋力C 耐久B+ 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具C

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
マスターを失っても2日は現界可能。


607 : 園田海未&アーチャー ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:43:49 B/n8UrJA0

【保有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す。

慢心:B
生前に轟沈することになったと言われるきっかけによる呪い。
勝利や有利状況が長期間続くと幸運ランクが下がり心眼スキルや宝具による恩恵が受けにくくなる。
これは本人の注意力や心境に影響されず発動するが、発動を意識した場合時間経過で軽減される。


【宝具】
『天翔けるは栄光の一航戦』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:2人
空母として健在だった時代の加賀が所属する部隊、一航戦の戦歴が宝具に昇華したもの。
第二次世界大戦初期から数々の戦いに身を投じてきた彼女の部隊の搭乗員は当時世界最強クラスとまで言われるほどだった。
加賀の搭載する艦載機が所有しており、射出と同時に発動する。
艦載機による攻撃の際には「矢避けの加護」のような無効化系のスキルを無視して最善の状態で攻撃することが可能。
盾や鎧などの武装や防御系宝具には効果が無いが概念宝具による無効化においても効果を発揮し、Cランク以下のものは貫通することが可能。

しかし艦載機が発進するまでは発動せず、またスキル・慢心が発動した場合発動が無効化される場合がある。


【weapon】
『零式艦上戦闘機』『九九式艦上爆撃機』『九七式艦上攻撃機』
加賀が生前搭載した艦載機であり、合計90機が搭載されている。
普段は矢の形で装備されており、弓で射ることで戦闘機の形態へと姿を変え攻撃する。
艦載機には妖精たちが搭乗しており、アーチャーの意志と一航戦として刻まれた記憶、経験から操縦されている。
零式艦上戦闘機は敏捷性に優れ、敵の撹乱や障害物の排除などを得意とする。
九九式艦上爆撃機はそこそのの耐久性と爆撃性能を持ち、敵との直接交戦においては最も有用な艦載機となる。
九七式艦上攻撃機は耐久性は低いが最高速度が高く、不意打ちによるヒット&アウェイを得意とする。
これらは加賀の宝具によるステータス底上げにより性能以上の能力を発揮することができる。

基本的に艦載機は全て矢の形で搭載されており、戦闘中には矢が尽きない限りは魔力による補充を必要としない。
しかし補充にはある程度の時間と少なくない魔力消費が発生するため、戦闘中に尽きた場合は致命的な隙を晒すことになる。
また、アーチャー自身の受けたダメージによっては発艦することができなくなる場合もある。


『20cm砲』
空母としての運用が確定していないために搭載された兵装。
筋力ランクにしてC+ほどの砲撃を行うことができる。
しかし生前は空母としての運用に重点を置かれたため発砲経験がほとんどなく、本人も存在を忘れている可能性がある。


608 : 園田海未&アーチャー ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:44:07 B/n8UrJA0

【サーヴァントとしての願い】
聖杯にかける望みはない。今はサーヴァントとしてマスターの命を守り抜く。

【人物背景】
旧日本海軍において主力として活躍した航空母艦。
元々は戦艦として作られる予定であったが軍縮会議により廃艦が決定。しかし実装予定の同型艦・天城が震災により破損したことで空母として改装されることになる。
当初は空母として様々な問題を抱えていたが、海軍史上一、二を争う大改修の果てに空母の一つとして完成する。

速度は日本空母史上最低であったが艦載機搭載数は最大であり、圧倒的な航空攻撃力をもって日本海軍の主力となる。
その後は一航戦として初陣の第一次上海事変をはじめ日華事変、真珠湾攻撃など数々の戦いにおいて高い戦果を上げていく。
それらの中での実戦と猛訓練により、加賀を含む一航戦の擁する航空隊の技量は神域に達していたとさえ言われている。
しかし連勝続きによる軍の慢心のまま乗り込んだミッドウェー海戦において出撃準備中に米機動部隊の爆撃を受ける。
それにより艦橋の前においてあった爆薬や魚雷に誘爆を引き起こしたことで艦橋が爆発。
甲鈑、ガソリン庫へも引火していき消火の甲斐なく沈没することになった。
この戦いで一、二航戦の他空母も轟沈しており、第二次大戦における転落の第一歩となっていく。

艦隊これくしょんにおける艦娘としての彼女は空母においても最大の性能を誇ると言われている。
性格面では基本的に真面目でありクールで物静か。感情を表に出すことはあまりない一方で感情的になりやすい。
なお鉄皮面にも見える無感情さは生前の自身の艦内における風紀の悪さに対する悔恨からくるものとも言われている。



【マスター】
園田海未@ラブライブ!(アニメ)

【マスターとしての願い】
楽しかったあの日々をもう少しだけ続けたい。
が、他者を殺めてまで叶えたい願いなどではない。

【能力・技能】
日舞の家の跡継ぎとして剣道や弓道などの武術を習う有段者であり、一般人としては戦闘能力は標準以上であると思われる。


【人物背景】
国立音ノ木坂学院2年生であり、スクールアイドルユニット『μ's』に初期から所属しているメンバーの一人。
実家は日舞の家元であり、武術の心得を持っている。チャームポイントは長い黒髪。
意志が強く真面目だが、融通が聞かず恥ずかしがり屋な一面も持つ。

スクールアイドル活動には当初反対していたが、幼馴染の高坂穂乃果、南ことりの説得によって参加を決意、以降作詞やレッスン指導を担当するようになる。
練習や特訓といった行為を娯楽と捉えている節があり、時に他のメンバーがそれによる暴走に巻き込まれることも。
また、高坂穂乃果が生徒会長となって以降は副会長として南ことりと共にその補佐をしている。

ラブライブに優勝しμ'sとしての活動を終えたことで心に生まれた隙間。
そこにほんの少しだけ叶わぬ幻想を夢見て、その瞬間に紅い月を目撃してしまったことで聖杯戦争に巻き込まれる。


【方針】
不明。ただし戦いや死に対する強い忌避感があり。


609 : ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/03(土) 01:44:28 B/n8UrJA0
投下終了です


610 : ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:34:33 6UkfXBXA0
皆様投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます


611 : 神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:35:18 6UkfXBXA0
 ――駿河先輩は知っていますか? 赤い月の噂話を。
 これは僕もつい先日、友達から聞いた話なんですけどね。
 え? 友達がいたなんて初耳だって?
 いやだなぁ。いくら僕にだって、友達くらい1人や2人はいますよ。2人と言わずたくさんいます。
 例の悪魔様の話だって、その友達経由で知ったくらいですから。
 友達の友達の話です。友達の友達は皆友達で、世界は友達の輪で広がってるんですよ。
 ああ、でもその話を最初に言い出した人は、好きな女性タレントに会いたいがために、ツテを辿っていったのがきっかけだったんですって。
 随分と私欲まみれの輪もあったもんですね。知らなきゃ美談で済んだのに。

 それで何の話でしたっけ。
 ああそうだ、願い事の話だ。よかった、なんとか最初の話と繋がりましたよ。
 ともかく友達から聞いたところによると、近頃新月のはずの夜に、赤い満月が浮かび上がるって、そういう現象があるんですって。
 月イチの現象が近頃っていうのも、また杜撰で笑える話ではありますけど。
 でもってその赤い月なんですけど、それを見た人は月の都へ連れていかれて、願いを叶えてもらえるんだそうですよ。
 なんともまぁ最初から最後まで、突拍子もない話ですよね。
 かぐや姫じゃあるまいし、そもそもその話の結末にしたって、悲しい別れ話だっていうのに。

 でもアレですよね。願いを叶えてもらえるっていうのは、偶然にしては面白い一致ですよね。
 え? ほら、アレですよ。悪魔様の話ですよ。
 アレも悪魔様にお願いすると、願いが叶うっていう話だったじゃないですか。
 違いました? 悩みを解決してくれるって話? ああそういえばそうだった気もしますね。
 紛らわしいけど願いと悩みだったら、厳密には全く別物の話だからなー。そうなると関係ないのかなー。
 まぁ僕はこんな与太話、全然信じちゃいませんから、別にどうってことはないんですけどね。
 だって無理ありすぎるでしょう? 徹頭徹尾むちゃくちゃだらけでしょう?
 そんなものを信じるくらいだったら、まだ悪魔様の方が信憑性はありますよ。
 まぁでもアレもアレで、もう出なくなったって言ってましたっけ。
 だったらいいや。話はそれでおしまいです。
 もし今後クラスのお友達に、赤い月の話題を振られたとしても、本気で信じちゃダメですよ。
 あんなもの信じ込んだらバカを見ます。鼻で笑っちゃえばいいんです。
 聡明な駿河先輩だったら、こんな幼稚極まりない都市伝説に、振り回されることなんてないって、僕は信じてますからね。



 なんてわざとらしく言うもんだから、こんなことになったんじゃないのか?
 それが赤い月に魅入られ、気付いたら見知らぬ街へと飛ばされた、私――神原駿河の感想だった。




612 : 神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:35:37 6UkfXBXA0
 真っ当な形で願い事を叶えてもらうには、どうにも複雑な試練をクリアしなければならないものらしい。
 有名なドラゴンボールだって、集めるべき個数は7つもある。
 そう考えると今回の話も、なるほどそれくらいのプロセスは必要だろうなと、納得ができる部分があった。
 あくまでも部分があった程度だが。
 その他概ねに関しては、そういった論理的な意味よりも、感情的な意味合いで、受け入れられないと思った。

 ・今私がいるこの街は、アーサー王伝説の聖杯の力で、赤い月の中に用意された空間である。
 ・聖杯は伝承に謳われている通り、手にした者に奇跡をもたらし、願い事を叶えることができる。
 ・しかし聖杯を手にできる者は1人だけで、そのためには他に欲しがっている人間を、皆殺しにして勝ち残らなければならない。
 ・戦いを進めるための手段として、聖杯はその候補者に対して、サーヴァントと呼ばれる使い魔を貸し与える。
 ・サーヴァントとは人類史上に名を残す英霊のコピーであり、その力をもって殺し合う儀式を、聖杯戦争と呼称する。
 ・サーヴァントには大まかに分かれて7つのクラスが存在し、自分のそれと戦闘スタイルが異なるサーヴァントが、最低6種類はいると考えていい。

 要約するとこんな感じだ。
 今しがたこんなろくでもない説明を、槍騎士(ランサー)なるサーヴァントから受けたというのが、私のここまでのハイライトだった。
「ここまでは理解したな?」
 そう問いかけてきた少年が、私に割り当てられた英霊だそうだ。
 身長は結構あるようだし、顔立ちもなかなかのイケメンだが、表情には若さが残っている。どう贔屓目に見積もっても、私と同い年くらいにしか見えない。
 この歳で亡くなった短命の英霊だったのだろうか? はたまた英霊として語り継がれた、全盛期の姿で蘇ったのだろうか?
 できれば後者であってほしい。その方が何となく強そうだ。
 余談として先日購入した、シオン攻め童虎受けの薄い本は、なかなかに良いものであったと付け足しておく。
「理屈としてはな。もう少し人道的なルールにできなかったものかと、納得できずにいる部分はあるが」
 私はランサーの確認にそう答えた。
 聖杯戦争。
 争い合い。
 すなわち殺し合いということだ。
 聖杯とやらが定めたルール下では、確実に誰かが命を落とす。
 願いを叶えてもらうためには、他人の願いを踏みにじり、命を奪わなければならない。
 私のように偶然巻き込まれた人間が、それは申し訳ないことをしたと、一抜けさせてもらえるようなルールもない。
 であれば他の参加者に殺されないよう、迎え撃つ必要性が出てくる。
 そうなれば結局生まれるのは死体だ。誰も彼もがルールに従い、殺人者になることを強要されるのだ。
「不服なようだな」
「もうたくさんなんだよ。願いという誘惑に踊らされて、人が不幸になるのを見るのは」
 犠牲を伴う願いと聞くと、どうしても思い出すことがある。
 今はただ包帯を巻いているだけの、何もない綺麗な左腕を、右手で強く掴んでしまう。
 猿の手。
 もといレイニーデヴィル。
 願いという単語と神原駿河を、関連付けて語る上で、決して欠かすことのできない言葉。
 かつて私が願いをかけて、今は奪い取られてしまった、私の弱さと卑しさの具現。
 多くの人間を不幸にし、今も不幸を振りまくかもしれない、逃れようのない忌むべき怪異だ。
 私が赤い月の噂を気にし、新月の夜空を見上げていたのも、その怪異が要因ではあった。


613 : 神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:35:58 6UkfXBXA0
「かつて私は願いのために、取り返しのつかないことをしてしまった」
 足が速くなりたいというだけで、大勢の学友を傷つけてしまった。
 拒絶したのは自分だと言うのに、先輩を取られたことに理不尽に怒り、人を殺しかけてしまった。
 今もその力に振り回されそうな人間を前に、どうすることもできないまま、無様に立ち尽くしている。
「だから嫌なんだ、こういうのは」
 この上願いという言葉につられ、他人を不幸に貶めるのは、どうしても我慢ならなかった。
 法規的な意味もある。人道的な意味もある。
 何よりそれ以上に、この心が、その重荷に耐えられないと思う。
 我ながら自分勝手な正義感だ。駄々をこねる子供のようで、言っている自分が情けなかった。
「つまり、お前に戦う意志はないと?」
「もちろん、黙って殺されるつもりはない。私だって死にたくはないんだ」
 ランサーの言外の意図を読み取って、私はそう返した。
 別に他人を殺したくないからって、自分が殺されていい道理はない。
 沼地蠟花の問題を、未だ解決せず放り出してしまっているのは、間違いのない事実なんだ。
 だから、こんなところでは死ねない。自分の命を投げ出すような、そんな真似は絶対にしない。
「できることなら、聖杯とやらの目的が何なのか……何故こんなことをさせているのか。
 それを知るために戦いたいし、止めるために戦いたい。それが私の動機だ」
 だからこそ、探すべきは第三の道だ。
 聖杯の意志に待ったをかけて、この戦争を中止させる道だ。
 敬愛する阿良々木先輩なら、きっとこういう道を選ぶだろう。
 それがどれほど困難であっても、最良の結末であるというのなら、迷わず突き進むのだろう。
 同じようにできるのか――そう問われると、不安ではある。
 揺れ動いている私ごときに、その茨の道を踏破できるのかと、どうしても迷いがつきまとう。
 それでも、それ以外の道など選べなかった。ならば行くしかないと思ったのだ。
「そうか」
 意外にも、ランサーの返事はそんなものだった。
 願いがないのかと問うた割には、願いをかけないという選択に対し、それほど不快感を示していないようだった。
 無表情な顔を見るに、無論、歓迎もしていないのだろうが。
「だったら1つだけ言っておく。戦いの勝敗を分けるのは、戦うという意志があるかないかだ。
 マスターのその想いが半端なものなら、本気で挑んでくる人間には、容易く呑まれて食い殺される……
 死にたくないというのなら、それだけは覚えておくといい」
 そう言うとその言葉を最後に、ランサーは私の目の前から姿を消した。
 霊体化、というやつらしい。英霊とは要するに幽霊だ。生身の肉体を持たないのだから、姿を見えないようにもできるのだそうだ。
「戦う意志、か」
 それが一番の不安要素かもしれない。
 何物にも代えがたい願いを武器に、本気で挑んでくる人間相手に、私は立ち向かうことができるのだろうか。
 包帯をきつく握り締め、私はそう考えていた。


614 : 神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:36:15 6UkfXBXA0


(なんてザマだ)
 相羽シンヤは自嘲する。
 かつてテッカマンエビルを名乗り、今はランサーと呼ばれる僕は、己が境遇をあざ笑う。
 望んで手に入れた力じゃなかった。しかし強者という座から、一度引きずり下ろされた自分の、なんと脆弱で滑稽なことか。
 あの神原駿河という少女は、マスターとしては完璧にハズレだ。
 魔術師適性を持たない彼女に、アテにできるほどの魔力はない。
 その上願い事もなく、自分の戦う動機にさえも、大して自信を持てずにいる。
 モチベーションも能力も、全てが落第なマスターだ。
 当然その下で戦う僕にも、かつてラダムがそうしたように、誇れるほどの力などはないんだろう。
(なのに何でだろうな)
 それでも。
 だとしても、不思議と悪くないと思える自分がいる。
 神原駿河という在り方に対して、シンパシーを感じている自分がいる。
 戦うことを覚えた動機は、兄を慕い憧れたからだ。
 たとえ醜いコンプレックスでも、兄より強くなりたいと思い、兄に並びたいと願ったからだ。
 その願いをラダムにねじ曲げられ、僕はタカヤ兄さんに対して、取り返しの付かない罪を犯してしまった。
 ライバル意識は憎悪へと変わり、何度となく兄の憎しみを煽り、凄惨な殺し合いを演じてきた。
 あんな思いをしたくない――その気持ちは彼女と変わらない。
 だからあんな弱い娘に対して、共感しているのかもしれない。
(どの道、僕にも大した願いはないんだ)
 現世に未練などはない。
 この世に残してきた兄は、ラダムの軍団を打倒し、傷ついた後も立ち直った。
 だから僕は現状に対して、満足してしまっている。神原がそう言ったように、僕にも聖杯にかけるべき願いがない。
 だとしたら、そんなに身構えることもないかもしれない。
 ああ言っておいてこう考えるのも何だが、あの危なっかしいマスターの面倒を見てやるくらいの、その程度の意識でいいのかもしれない。
 とにかく今のところはそれでよしとして、これからのことはまた後で考えよう。
 僕は不安げな顔をしたマスターを、そんな風に考えながら見下ろしていた。


615 : 神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:37:09 6UkfXBXA0
【マスター】神原駿河
【出典】花物語
【性別】女性

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を止めたい

【能力・技能】
運動神経
 女子バスケットボールの世界では有名人。
 分身や2段ジャンプが得意と申告しており、実際それくらいのことはできそうなだけの運動能力を誇る。

【weapon】
なし

【人物背景】
かつて猿に願った少女。直江津高校の3年生である。
幼少期にレイニーデヴィルと呼ばれる悪魔の遺体に、願い事をしたことによって、周囲に災いを振りまいた過去を持つ。

レズでBL好きな腐女子で受けでロリコンでマゾヒストで露出狂で欲求不満。
……と、絵に描いたような変態性癖の持ち主だが、常日頃からオープンスケベというわけではなく、
相手がそうした会話にどの程度対応できるかを考えた上で、接し方を変えるタイプ(阿良々木暦に対してのそれは、極端にオープンな状態)。
本質的には人当たりの良い人物であり、後輩からの信頼は厚い。
基本バカだが勤勉で責任感が強く、何かと自分に厳しい人間である。
目上の人間に対してはやたらと褒めちぎる傾向があるが、度が過ぎて時々嫌味に聞こえてしまうことも。

沼地蠟花に悪魔の左手を奪われたため、現在は超常的な能力を一切持っていない(一応、左手を隠していた包帯は、継続して巻いている模様)。
あくまでも人より危ない性癖を持っていて、人より運動ができるだけの、普通の女子高生である。

【方針】
積極的に優勝を取りに行こうとは思わない。とにかく聖杯戦争を中断させる手段を探りたい。
聖杯を悪用しようとする者がいたら、止めたいと思う。


616 : 神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:37:27 6UkfXBXA0
【クラス】ランサー
【真名】相羽シンヤ
【出典】宇宙の騎士テッカマンブレード
【性別】男性
【属性】混沌・中立

【パラメーター】
筋力:E+ 耐久:E 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:E(B→A)
 魔術に対する守り。 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
 宝具『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』解放時にはBランクとなり、魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 更に宝具『決壊(ブラスターエビル)』解放時にはAランクとなり、事実上現代魔術により傷をつけられることがなくなる。

【保有スキル】
怪力:(-)B
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
 宝具『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』解放時にのみ機能するスキル。

自己改造:B
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
 
勇猛:C
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

【宝具】
『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:C 幸運:D
 宇宙生命体ラダムの科学の結晶・テッカマン。
 異星を侵略するための牙であり、同時に脆弱な本体を守るための殻でもある。
 通常時はテッククリスタルと呼ばれる、赤い水晶体の形をしている。
 宝具解放時にはシンヤの身体を変異させ、黒と赤に染まった禍々しい鎧のごとき姿となる。
 エビルは多目的汎用型のテッカマンであり、あらゆる戦況に対応できるパラメータを有している。
 武器は超硬質の槍・テックランサーと、投擲したそれを回収するためのテックワイヤー。
 両肩パーツは取り外して、ラムショルダーという名称の斬撃武器として用いることも可能。
 必殺技のPSY(サイ)ボルテッカは、変身時に発生した反物質を開放し、敵目掛けて発射する砲撃技。
 相手の魔力放出攻撃にぶつけた際、ボルテッカの出力が相手より勝っていれば、
 対象の攻撃エネルギーをそのまま吸収し、ボルテッカに取り込んで跳ね返すことができる。
 また、変身時に展開されるエネルギーフィールドを利用し、高速形態に変形して突撃する、
 クラッシュイントルードと呼ばれる攻撃を行うことも可能。
 既にラダムの洗脳下にないシンヤだが、変身制限時間はない。

『決壊(ブラスターエビル)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 予期せぬ状況に適応するため、テッカマンが進化した姿。
 外敵を排除することのみを盲目に求めた、性急かつ歪な進化の産物であり、いずれ滅びへ行き着く袋小路である。
 宝具『戦慄の黒き魔人(テッカマンエビル)』の強化形態であり、
 この宝具を解放したエビルは、幸運以外のパラメータが2段階上昇する。
 テックランサーの先端からは、通常時のボルテッカに匹敵する反物質砲を放つことができ、
 ボルテッカは正面方向のみならず、全方位に向けて発射することができるようになる。
 ただし要求される魔力量は極めて大きく、同時にシンヤ自身の肉体もまた、急激に崩壊していく諸刃の剣である。
 生前のシンヤはたった一度の戦闘で限界を迎えており、文字通り一発限りの最後の手段であると言える。


617 : 神原駿河&ランサー ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:37:47 6UkfXBXA0
【weapon】
なし

【人物背景】
かつて宇宙生命体ラダムに取り憑かれ、テッカマンエビルへと改造された少年。享年18歳。
天才肌の双子の兄・タカヤのことを敬愛しつつも、
強い劣等感とライバル意識を抱いており、徹底した努力でその差を埋めようとしていた完璧主義者だった。

ラダムに取り憑かれた際には、その屈折した感情が増幅されたことにより、
タカヤの変身するテッカマンブレードに対して、狂気じみた執着心を抱いていた。
最終的にはタカヤがブラスター化によって自滅する前に決着をつけようと、
自らもブラスター化して真っ向勝負を挑むという、あまりにも不毛な道を選択。
愚かながらも、意地と信念を曲げることなく突き進んだシンヤは、勝利の目前までタカヤを追い詰める戦いぶりを見せた。
その後肉体が限界を迎え、一瞬の隙を見せたことにより敗北したものの、
最期の瞬間にラダムの洗脳から逃れたシンヤは、ようやく本心からタカヤと向き合い、眠りについた。

死後の現在においては、当然ラダムの洗脳による影響はなく、本来の相羽シンヤの人格を取り戻している。

【サーヴァントとしての願い】
特になし


618 : ◆arYKZxlFnw :2015/01/04(日) 17:38:00 6UkfXBXA0
投下は以上です


619 : ◆HQRzDweJVY :2015/01/04(日) 23:43:52 W7z80IVc0
投下します。


620 : アカツキ&キャスター  ◆HQRzDweJVY :2015/01/04(日) 23:45:14 W7z80IVc0
天を見上げるほどに巨大な摩天楼。
幾つものビルディングが連なるその姿は、現代の"東京"を象徴する光景といっていいだろう。
そんな高層ビル郡の内の屋上に、その男の姿はあった。

「……」

男は日本人にしてはやや大柄な体躯を、白い詰め襟の軍服に押し込めている。
そう、軍服である。
その服装は言うまでもなく現代日本において極めて異質である。
では彼の格好は仮装か何かだろうか? ――否、そうではない。

何故ならば彼の名は"アカツキ試製一號"。通称"アカツキ"。
冷凍睡眠による長い眠りから覚め、現代に蘇った旧帝国陸軍技官であるからだ。
そして今アカツキは口を横一文字に引き結び、深く鋭い猛禽類を思わせる瞳で地上を行く人々を睥睨していた。

「およ、マスター、何見てんの?」

そんな彼の背後、何もない空中から溶け出すように現れた女性もまた奇怪な格好であった。
赤と白、巫女服と軍服を足して2で割ったような服装をしている。

「キャスター、戻ったか」

キャスターと呼ばれた女性はそれに答えず、アカツキの視線を追いかけ、何かに感心したように口笛をヒュウと鳴らした。

「はー……やっぱアタシ達の知っている東京とだいぶ違うねぇ。
 こんなでっかい建物が両手の指じゃ足りないぐらいに立ってるなんて想像もできなかったよ」
「無理もない。この場所はあの戦いから半世紀以上経っている東京を模しているのだ。
 ……しかしキャスター、貴君は実際に帝都の町並みを見たことがあるのか?」
「いやいや、アタシの乗組員が写真を見てたのさ。
 アンタも知っての通り、流石に海から出れる身体じゃあなかったしね」

女性が発した"自身の乗組員"という異質な言葉。
だがそれについて互いに気にすることなく会話を続ける。
そんな奇妙な2人の間をひときわ強いビル風が吹き抜ける。

「それでキャスター、索敵状況はどうなっている」
「ああ、他のサーヴァントの姿は今のところ確認できない。
 少なくともこの周辺にはいないみたいだよ。
 ま、隠蔽系のスキルを持つ奴が本気で隠れているなら話は別だけどさ」

彼女の周囲を旋回していたおもちゃのような飛行機が紙切れへと姿を変えていく。
これが彼女がキャスターとして持つ能力。
"艦載機の運用"という用途に限定された陰陽術である。


621 : アカツキ&キャスター  ◆HQRzDweJVY :2015/01/04(日) 23:46:07 W7z80IVc0
「そうか。では足で情報を集めるしかないようだな」

そう言ってアカツキは地上へ降りるため踵を返す。
だがキャスターは立ち止まったまま、その背中に向かって声をかけた。

「……なぁマスター、もう一度確認するけど、アンタの目的は聖杯の破壊でいいのかい?」
「ああ。それで問題ない」
「でもさぁ、聖杯を破壊したら……その、アンタも消えちゃうんだよ?
 アタシたちサーヴァントは元々そういうものだからいいけどさぁ……」

その言葉を聞いても顔だけ振り向いたアカツキの表情に変化はない。
少し前までと同じむっつりとした無表情のままだ。
そんなアカツキに対し、キャスターは少し意地の悪い表情を浮かべる。

「なぁなぁ、いっそのこと聖杯を手に入れてみるってのはどうだい?
 それこそ何でも願いが叶うって話だし、神様にだってさ――」
「――人は神になどなれん。決してな」

だがその選択肢をアカツキは断固たる口調で否定する。
大いなる力を受け止めるにはそれに見合った大いなる器が必要だ。
だが万能の願望機は、人という種が持つには危険過ぎる代物だ。
故に破壊する。そこに迷いなど一欠片も存在しない。するはずもない。

「故にいつの時代も人は己の手で足掻くのだ。人類に万能の願望機など必要ない」
「……そうだね。バカなことを聞いたよ。忘れとくれ」
「かまわん。それよりも急ぐぞ。事態は一刻を争う」
「了解だよマスター。さぁ、抜錨だぁ!」

2人は連れ立って踵を返し、屋上を後にする。



聖杯内部に再現された大都会東京。
その魔都に降り立ったのは、この都市がかつて"帝都"と呼ばれていた時代を生きた2つの魂。
男の名はアカツキ。電光を操る陸軍技官。
女の名はキャスター。同名の艦船の魂を持つ従者(サーヴァント)。
共に、異なる世界の、だが類似した"かつての大戦"によって生み出された戦闘兵器の成れの果て。

それは偶然か、奇縁か、運命か。今はまだ誰も知らない。
ただ一つ確実なのは、彼らの記憶より遙か未来の東京(ていと)で、今、開戦の鐘が鳴る。



       情 ケ 無 用 、戦 闘 開 始 !


622 : アカツキ&キャスター  ◆HQRzDweJVY :2015/01/04(日) 23:52:26 W7z80IVc0
【クラス】
キャスター

【真名】
隼鷹@艦隊これくしょん

【パラメーター】
筋力E 耐久D- 敏捷E 魔力A 幸運C+ 宝具C

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
陣地作成:A
 魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
 キャスターが作るのは"工房"ではなく"鎮守府"である。

【保有スキル】
多重解釈:B
 彼女らは資料によって『大戦で使用された艦艇の生まれ変わり』、『特殊な力を持つ艤装を装着した普通の少女』など多種多様な解釈が存在している。
 そのためこのスキルの保有者は全くの同条件で召喚されたとしても、全く異なる技能・ステータスで召喚される可能性がある。
 今回は少なくとも以下の解釈をまとって現れた。
 ・『艦船自体が英霊となり、少女の姿をとっている』
 ・『艦船時の記憶を保持している』

戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 "かつての大戦"を終戦まで戦い抜いたキャスターは高い戦闘続行スキルを持つ。

千里眼(偽):B
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。
 キャスターは電探を持つため、擬似的にこのスキルを保持している。

【Weapon】
式神札/航空式鬼神召喚法陣隼鷹 大符
 式神札をスクロール上の甲板から発進させることで艦載機に変化させ、攻撃・探査等を行う。
 用途によって『九六式艦戦』『九九式艦爆』『九七式艦攻』を使い分けることができる。

【宝具】
・乙式戦闘術・超戦時徴用
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 対象となる人物を指定することで、対象のステータスを一時的に平均よりやや下程度のサーヴァント並に向上させる宝具。
 なお向上するステータスは対象となった存在の戦闘能力に依存する。
 隼鷹は元々"橿原丸"という客船であったが、戦時徴用により空母へと改装され大戦を戦い抜いた……その逸話の顕現。
 また『逸話を一時的に他人に譲る』という特性から、宝具発動中はキャスターのステータスが低下し、発動時間も持って数分程度であるなど使いどころの難しい宝具。

・甲式隠蔽術・工房偽装
 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 纏うことでステータスの擬装を行う透明な外套。
 竣工時、戦艦"武蔵"の隣の船台で建造されていたが、武蔵のロールアウト後も隠されたまま建造されていたため、人々は「第二の武蔵がいる」と噂した。その逸話の顕現。

【人物背景】
軽空母隼鷹をモデルとした艦娘。
酒に関する台詞が多く、「酔いどれお姉さん」といった感じの台詞が多い。
これはモデルとなった隼鷹の館長が大酒飲みであった逸話から来ているとされる。

【サーヴァントとしての願い】
なし。強いていうならマスターを守りつつ美味しい酒をいただく。


623 : アカツキ&キャスター  ◆HQRzDweJVY :2015/01/04(日) 23:52:41 W7z80IVc0
【マスター】
アカツキ@アカツキ電光戦記

【マスターとしての願い】
聖杯の破壊。

【weapon】


【能力・技能】
『電光機関』
電子機器の動作を阻害し、身体能力を飛躍的に向上させる特殊な装置。
古代文明のロストテクノロジーの産物であり、アカツキは電光被服と呼ばれる外付けの装置を持っている。
代償として生命力を削るデメリットを持つが、特異体質であるアカツキはほぼノーリスクで電光機関を発動できる。
ただしエネルギーは消費するらしく、腹ペコであることが多い。

【人物背景】
旧帝国陸軍技官であり、実直で冷静な学者肌の人物。
"かつての大戦"で電光機関の輸送任務中、事故により潜水艦ごと北極海に沈んだ。
だが船内の冷凍睡眠装置によって生存しており、潜水艦の浮上とともに現代に蘇った。
そのまま当時の上官からの『電光機関の破壊』という任務を遂行するために活動を開始する。
なお蘇ったムラクモを撃破した(アカツキ電光戦記ED後)から召喚された。


624 : アカツキ&キャスター  ◆HQRzDweJVY :2015/01/04(日) 23:52:55 W7z80IVc0
以上で投下終了です。


625 : ◆devil5UFgA :2015/01/04(日) 23:57:10 wmySiJ0w0
投下お疲れ様です!
続いて私も投下させていただきます!


626 : 灰原哀&セイバー? ◆devil5UFgA :2015/01/04(日) 23:58:14 wmySiJ0w0


天空に紅い月が昇る時、闇の眷属<エミュレーター>が人間の世界へ侵略してくる。

彼らには科学という常識に満たされた力は一切通用しない。

闇に対抗し得る唯一の力、人々が遠き過去に忘れ去った魔法を使って戦うもの。

彼の者は『常識を破壊せん』とやってきた侵略者から世界を守るもの。

しかし、常識から乖離される魔法は世界からの修正を受ける。

常識を守るために、常識から身を隔離させる。

今日もまた、どこかで侵略の足音が響き渡る。

不可視の紅い月が輝く。

常人たれば、常識の内に居れば、観測出来ない紅い月。

混沌が夢想を掻き乱すように、紅い月が輝いていた。



――――彼の名は、宵闇の魔法使い<ナイトウィザード>



.


627 : 灰原哀&セイバー? ◆devil5UFgA :2015/01/04(日) 23:59:10 wmySiJ0w0


   ◆   ◆   ◆



空に浮かんだ紅き印が導く時空の中で、二人は相対していた。
一人は指貫グローブを青いブレザーを着崩した青年と呼ぶには少々若い少年。
一人は栗色の髪をおかっぱに切りそろえたまだあどけない顔をした童女。

「で、アンタが俺のマスターってわけか」
「そうみたいね、なんだか、実感が湧かないけど」

童女、灰原哀が応える。
声色も、立ち振舞いも、戸惑いを誤魔化すように浮かべた笑みも。
全てが外見から察する年齢とはかけ離れたそれであった。

「俺は魔剣使い、柊蓮司。セイバーのクラスでアンタのサーヴァントってわけだ」

セイバーと名乗った少年とも青年ともつかない若い男、柊蓮司も哀の奇妙な雰囲気を感じ取ったのだろう。
平時、柊が少女に対して向ける態度とは異なっている。

「セイバー?」
「……あん、なんだ? バーサーカーとしてでも召喚したのか?」

なら、失敗だな。
柊は続けて言ったが、哀は未だ表情に不思議そうな色を浮かべている。
そして、しばし、考え込んだ後、親指と人差し指を合わせて円を作る。
その円を望遠鏡のように覗きこむ。

「……貴方、ステータスにはキャスターのクラスって書いてあるわよ」
「なにぃ!?」

そんな馬鹿なことがあるか、と言いながら柊は虚空へと手を伸ばす。
そして、静かに目を瞑る。
目を瞑る。
目を瞑る。
……………目を瞑る。

「魔剣がねえ!!!??」

カッと見開き、みっともないと言えるほどに叫び声を上げた。
それは怒号にも悲鳴にも聴こえる叫びで、とにかく、柊の動揺が伝わる叫びだった。

「な、なんでだよ!なんでセイバーなのに魔剣がねえんだよ!」
「キャスターだからでしょう?」
「俺はセイバーだ!」

現実を直視できない柊は怒り、怒り、怒り――――やがて、顔面を蒼白させた。

「魔剣のない魔剣使いなんざただの使いっ走りじゃねえか……勘弁してくれよ……」


628 : 灰原哀&セイバー? ◆devil5UFgA :2015/01/05(月) 00:00:09 BFSoDOPQ0

「魔剣のない魔剣使いなんざただの使いっ走りじゃねえか……勘弁してくれよ……」

己の半身のごとき魔剣が喪失することは、半ば柊蓮司のアイデンティティを揺るがすような出来事であった。
ましてや、戦うための場となれば、余計にだ。

「あら、上手いこと言うわね」

動揺を浮かべる柊に対して、哀は童女に似つかわしくない、妖艶な笑みを浮かべた。
それは『耳年増』や『マセた少女』と言った言葉では説明できないほどの笑み。
現に、灰原哀は童女であって、童女でない。
実年齢は十八、しかし、自らの精製した薬物によって幼児化をしている。
哀自身に薬物を作らせた『組織』から逃れるために、だ。
本名を宮野志保、コードネームをシェリーという。

「それでも、キャスターのクラスなんでしょう?
 何かしら、突出したものがあるんじゃないの?」

哀は、胸中に動揺を抱えながらも柊に問いかけた。
聖杯戦争の意味は知っている。
人智を超えた超人、英霊を従者<サーヴァント>を召喚し、他者が召喚したサーヴァントと決闘を行う。
決闘を勝ち抜き、最後の一組となった主従が万能の願望器である聖杯を手中に収める。
そして、聖杯は奇跡の願いを求める者を、半ば強制的に参加者とする。
そのため、召喚するサーヴァントは重要だ。

「いや、俺は、魔剣がないと……」

先ほどまでの啖呵は何処に行ったのか、小さな声に相応しい背中を縮めて小さくなっている。
召喚されるサーヴァントの重要性は柊自身も理解している。
だからこそ、恥ずかしさで頭が沸騰しそうであった。
『最優』とされるセイバーと名乗った癖に『最弱』とされるキャスター。
穴があったら入りたいとは、まさにこのことだ。

「まあ、元気を出しなさいよ、パシリのサーヴァントさん」
「キャスターだ! 魔術師だよ、魔術師!」

キャスターは半ば反射的に叫ぶ。
哀はどこか面白そうに笑うだけだ。
嘲笑われているようで、苛立ちと同時に寂しさがこみ上げてくる。
そして、情けない想いに襲われながらも、早口で語り始める。

「俺にとっちゃ魔剣が杖で箒なんだよっ、だから、魔剣がなきゃキャスターとしてもだな!」
「それは聞き飽きてきたわよ」

いい加減に建設的な話題へと移ろう、からかうように言っていた自身のことを棚に上げたように返す。
顔を真っ赤にし、身体を震わせながら、しかし、言葉を飲み込む。
これ以上に怒りを見せつけても、哀は動じないだろう。
むしろ、その動揺すらも哀の望むところだ。
この手の女とは何度も相対している。
だからといって、扱い慣れているというわけでもないが。

「で、何が出来るの?」
「だ、だから、何も……あ、い、いや、月衣!月衣ならある!」
「かぐや?」

聞き慣れない言葉を聞き返す哀。
柊はまともな会話が続くことを確信し、目の前の童女に対する評価を改める。
余裕に溢れた童女ではあるが、人をおちょくることだけに命をかけているような増上慢ではない。


629 : 灰原哀&キャスター ◆devil5UFgA :2015/01/05(月) 00:00:53 BFSoDOPQ0

「見えるだろ、あの『紅い月』が」
「ええ、紅いだけなら幾らでも説明できるけど、他の子達には見えてないっていうのが謎を深めているわね」
「つまりは、あの結界なんだよ。常識を阻害する、あり得ない結界なんだ」
「結界? つまり……あの月がパシリの宝具ってことかしら?」
「パシリじゃねえよ!」

哀がからかうように口にした言葉に、柊は飽きもせずに激昂する。
クスクスと哀はおかしく嗤い、柊は肩を上下させながら息を整える。
哀はそれ以上は口にせず、続きを促す。
柊は苛立ちを覚えつつ、荒げながらも言葉を続けた。

「俺はウィザードだからな、結界が使えるんだよ!
 あ、いや、あれは月匣だから俺の結界じゃないんだけど……」
「げっこう?」
「ウィザードが使う結界が月衣で、エミュレイターが使う結界が月匣で……」
「エミュレイター?」
「とにかく、結界が使えるんだよ! その結界の中に宝具の魔剣やら学校用の鞄やらを置いてあるんだよ」

説明ベタな、あまり知能が高くないであろう本筋から離れた言葉を並べた後、強引に結論だけを口にする。
その中から生じる専門用語などの説明はしなかったが、哀は小さく頷いた。
ここでその用語についてつついても、

「さて、セイバーなのになぜかキャスターの柊蓮司くん」
「うるせえ!」
「その月衣には何が入ってるの?」
「……鞄だろうな」

そう言って目を瞑る。
虚空に手を伸ばし、ふと、眉を潜めた。
感じなれない存在を感じ取ったのだ。

「なんだこりゃ」

柊はそう言いながら一つの『水筒』を取り出した。
自らの結界の中に存在したという割には、柊自身も把握していない・
哀は、水筒に書かれた文字を眼にした。
ちょうど、柊からは見えない位置にあるものだ。

「下がるお茶?」
「……げっ」

その言葉を読むと同時に、柊は嫌そうに声を漏らした。
そして、くるり、と水筒を回転させる。
そこに書かれている文字を読んで、さらに顔を歪ませた。

「これ俺のじゃねえだろ!」
「そうなの?」
「アンゼロットってババアのだよ……」

正確に言えば、それはアンゼロットなる柊蓮司の知人が用意した、柊蓮司の特性を利用した魔道具だ。
そのお茶を飲めば、年齢が『下がる』という力を持っている。
柊蓮司の持つ、『可視不可視を問わない森羅万象遍く全てを下げる』という力に由来した魔具なのだ。


630 : 灰原哀&キャスター ◆devil5UFgA :2015/01/05(月) 00:02:11 BFSoDOPQ0

柊が吐き捨てるように言い捨て、同時に哀は興味深そうに眼を細めた。
そして、再び柊が顔をしかめた。
柊は虚空から色違いの水筒を取り出す。

「……ご丁寧に、『上がるお茶』までありやがる」

柊蓮司は項垂れた。
灰原哀は得心を得たように、頷いた。


【クラス】
キャスター

【真名】
柊蓮司@ナイトウィザード

【パラメーター】
筋力C 耐久D+ 敏捷D 魔力D+ 幸運E 宝具E〜A++

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:D+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
世界から隔絶される結界、『月衣』の形成が可能。

道具作成:-
魔術的な道具を作成する技能だが、柊蓮司は道具を作成する技能を持たない。

対魔力:?
この記述は閲覧できません。

騎乗:?
この記述は閲覧できません。

【保有スキル】
属性付随:C
魔器に<風>と<火>の属性付随魔法<エンチャント魔法>をかけることが出来る。

魔力放出:A
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
瞬間的に魔力<プラーナ>を用いることで幸運すらも向上させることが出来る。

心眼(偽):D
直感・第六感による危険回避。
修行ではなく、世界を幾度と無く救った経験から身についた非論理的な才能。

二重召喚:?
この記述は閲覧できません。

【宝具】
『下がる男』
ランク:E〜A++ 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
柊蓮司が持つ、あらゆる事象を『下げる』、特上の異常能力である『柊力』が宝具化した物。
自らの年齢であろうと、自らの学年であろうと、無限の力を持つ世界の守護者の力量であろうと、森羅万象如何なる物でも『下げる』ことが出来る。
それは可視の存在だけでなく、不可視の概念存在も例外ではない。
柊蓮司は無数の平行世界に存在する柊力の持ち主の中でも最大の力を持つ『オリジン』である。

しかし、柊蓮司はこの宝具を自らの意思で使用することが出来ない。
史実のように魔術師サイモン・マーガスや守護者アンゼロットなどの他者からの介入が存在して、初めて、この規格外の宝具を使用することが出来る。

『神殺しの魔剣』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
この記述は閲覧できません。


631 : 灰原哀&キャスター ◆devil5UFgA :2015/01/05(月) 00:03:11 BFSoDOPQ0

【weapon】
キャスタークラスでの召喚のため、愛用の神殺しの魔剣を取り出すことが出来ない。
しかし、身体年齢を下げる『下がるお茶』と、下がる物によって下がった年齢を上げる『上がるお茶』を所持している。

【人物背景】
柊蓮司はエミュレイターと陰ながら戦う魔剣使いのウィザードである。

ルール第一版では輝明学園秋葉原校高等部に在学。(本来なら3年生に進級しているが、単位が不足し留年の危機にあった。)
言動が荒っぽく不良学生を名乗ってはいるが、性格はむしろお人好しな方である。

赤羽くれはに「遅刻しないのは小学生以来」と言われたり、授業をサボって昼寝に向かった際くれはに「またサボり?」と言われるなど、かつては本当に「不良生徒」だった。
しかし高校1年のある日、眼が覚めるとベッドの中に一本の剣が出現し「我を継承しろ」と告げたことで彼の人生は一変する。
最初は剣から逃げていた(剣は靴箱の中や机の中にまで入っていた)柊だった。
だが、ある時、校庭でくれはが得体の知れない怪物と戦い、しかも頭上に「紅い月」が昇っているのを目撃してしまう。
そして、柊の存在に気を取られたくれはが怪物に捕らわれた瞬間、彼は剣を掴み、怪物を一刀両断した。

事態を理解出来ていない柊に、くれはとその母・赤羽桐華は、彼がウィザードとして覚醒したことを告げた。
そしてこの事件の中で柊は「なぁなぁで学校に行っていた」と自覚し、以降真面目に学校に出ようとするようになった。
しかしその直後からウィザード組織の勧誘が相次ぎ、学業との両立を重視した柊は「一番適当な勧誘をしていた」日本コスモガード連盟に身を置くこととなる。
しかしそこで半年間も任務に従事させられるハメになり、くれはが絡んだ『星を継ぐ者』事件で最終的にコスモガードと決裂。以後はフリーランスとして活動する。

高校在学中はウィザードの任務のために学校を休むことが多く出席日数が足りないことから、「不良学生」のレッテルを自ら貼っていたようだ。
自身は出席日数が足りないことには危機感を抱いており、任務がない限りは真面目に学校に顔を出そうとしていた。
『ふぃあ通』内のミニドラマ内ではもはや「不良学生」である事を忘れ去られつつあるのを極度に気にしており、不良っぽい行動を取ろうとしたり、「不良」と呼ばれて喜んだりしていた。

輝明学園高等部を卒業したが、都市伝説扱いされている(=ほぼ誰も信用してくれない)。
卒業後は単位を気にする必要がなくなったためか、『シェローティアの空砦』において魔剣を改造するために一時手放しウィザードを休業した際、楽隠居していた。

大抵は名字かフルネームで呼ばれており、名前だけで呼ばれる事は滅多にない。柊を名前で呼ぶのは、姉の京子と並行世界ガイアの自分である柊レンだけである。




【マスター】
灰原哀@名探偵コナン

【マスターとしての願い】
不明。

【weapon】
-

【能力・技能】
幼児退行の副作用を持つAPTX(アポトキシン)4869を使用したが、知能までもは幼児化していない。
そのため、高い薬物知識を持つ。


【人物背景】
栗色の髪をした涼やかな印象の日本人離れした美少女。事実上本作のもう一人のヒロインといえる。
一見すると単に寡黙な女の子だが、その正体は黒の組織の元メンバー。
本名は宮野志保といい、組織でのコードネームはシェリー。


黒の組織の一員であったが、姉・宮野明美を組織の命を受けたジンに射殺される。
これに組織に反発して軟禁されるが、自身の開発したアポトキシンを服用して自殺を図るも幼児化し、偶然とはいえ脱走に成功した。
以降、阿笠博士の下に身を寄せて、帝丹小学校に通う小学生として生活している。
保護してくれた阿笠博士に対しては全幅の信頼を寄せている様子。

基本的には理知的で冷静、初対面の人間にはあまり積極的に口は開かない。
組織に身を置いていた時期が長かったせいか、警戒心の強い部分もあり、特に初期は誰に対しても一定の距離を置いて接していた。
猫を被ったりすることはなく、大人に対しても地の態度で接する。しかし子供の演技をした際の演技力はなかなかのものである。
元科学者だけあって、化学製品や電子情報の知識や扱いは登場キャラクターでも指折りの実力を持つ。
コナンが風邪のときに誤って白乾児(パイカル)という酒を飲んだ経験から、アポトキシンへの試製解毒薬を精製するなど、技術分野では阿笠博士と同等以上の技量を有している。

【方針】
不明。


632 : 灰原哀&キャスター ◆devil5UFgA :2015/01/05(月) 00:03:25 BFSoDOPQ0
投下終了です


633 : アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:53:04 FbBZ7y820
投下します


634 : アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:53:18 FbBZ7y820





むかしむかし、第三次聖杯戦争の時代、アインツベルンはとても強い槍使いの召喚に成功しました。


635 : アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:53:28 FbBZ7y820


――冬木は燃えていた。
誰がその熱量を信じるだろうか、日は沈み、夜はとっくに訪れていたというのに、冬木を支配していたのは闇ではなく、光だった。
何もかもが燃えていた。それは公園であり、住宅であり、高層建築物であり、思い出であり、そして人であり、死体であった。
失われた生も、元から存在しない生も、今消えようとする生も、懸命に逃げ場を探す生も、何もかもが平等に炎に巻かれ、焼かれていった。

全てが廃と化し、灰と化し、風に吹かれ、消えていく。
残るのは圧倒的な炎、炎、炎。

死に行く誰かが、それを聞いた。
この地獄と化した街に高らかに響く笑い声を。
――祝福されなかった赤子、そのようなものを思わせる邪悪な声を。

空を見上げる。
炎の光で、夜空だというのに、昼のように明るく見えた。
だから、見てしまった。
男も、女も、子供も、老人も、死にゆく者も、生き延びんとする者も、皆、それを。


――おぎゃあああああああああああああああ。


妖が、嗤っている。


――どうやら、夜は明けそうにないらしい。


636 : アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:53:40 FbBZ7y820


月の綺麗な夜だった。
衛宮切嗣は何をするでもなく、縁側で月を眺めている。
冬だというのに、気温はそう低くはない。
わずかに肌寒いだけで、月を肴にするにはいい夜だった。
傍らには一人の少年がいる。彼もまた何をするでもなく、切嗣と一緒に月見をしている。
名前はラーマ。
かつて切嗣が全てを喪った炎の中で、唯一の救いをもたらした存在だった。

――ラーマ……?

衛宮切嗣の隣に座っているのは、褐色肌の少年だった。
どこか違和感を感じる、あの火災で助けだしたのは■■ではなかったか。
一つ、世界に綻びを見つけると、まるで泉のようにこんこんと疑問が湧き上がる。
己の住居は、東京ではなく冬木ではなかったか。
己の隣にはもう一人大切な娘がいるはずではなかったか。
その娘を――救う途中の旅路ではなかったか。

そもそも、月の色は――こんなにも紅くないのではないか。

「ラーマ……」
「どうしました?」

「僕は……いや、月は何色だい?」
それは世にも珍妙な質問であったに違いない。
並んで同じ月を見ているのだ、聞くまでもなく見るままに答えは己の中にある。
それでも、切嗣は聞かずにはいられなかった。
その答えが、新しい戦いを告げる合図になる、戦う前から決まりきった負け戦の合図に。

「何言ってるんですか……今日は、それはそれは綺麗な青い満月ですよ」
「……ああ、そうだね。変なことを聞いてしまった」
そう言うと、切嗣は悲しそうな笑みを浮かべて、蔵の方へと歩き出した。
そのような切嗣の表情を見ることは初めてで、ラーマは何かを言おうとして、何も言えなかった。
ただ、青い満月が狂ったように輝いていた。


637 : アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:53:55 FbBZ7y820



――以前はそうだったのかもしれない。でも今は違うの。私には意志があり、望みがある。"この世に産まれ出たい"という意思が。
かつて愛した女性の口で、それはそう語った。

――おぎゃあ。
彼女の声と共に、そのような幻聴が聞こえた気がする。


638 : アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:54:22 FbBZ7y820


ぎい――と、戸が軋む鈍い音を立てて、蔵の戸はゆっくりと開いた。
蔵の中の雑多な収集物を脇に寄せて、切嗣は地下への扉を探す。
確信に近い予感があった――サーヴァントは、この蔵の地下にいる、と。

肉体労働は一切苦にならなかった、しかし地下へとその歩みを進める度に肩が疼いた。
あの戦いから時々、切嗣の感情に呼応して快感と共に右肩に奇妙な疼きを感じる時があった。
しかし、この疼きは何かが違うように思えた。

――恐怖。
切嗣のものではない怖気が、右肩から全身に伝わるようであった。

しかし、歩みを止める気は切嗣には無かった。
その権利も、あの火災で燃え尽きてしまった。

地下にあったものは、切嗣の予想に反して――槍、ただそれだけであった。
それを振るうべき使い手がいない、いやその槍さえも――赤い織布で雁字搦めにされている。

――封印。
英霊としてこの地に召喚されながら、その槍は、そうされているようにしか思えなかった。
切嗣は一歩、槍に近づいた。
赤い織布の封印から僅かに、その刀身が姿をのぞかせている。
その刀身に反射されていたのは、切嗣の姿ではなかった。

そこに映るものは世界の全てを憎んでいたかのような淀んだ目をした男だった。
切嗣は目を凝らし、刀身を見る。刀身に映る人物が切り替わる。
すぐに気づく、これはかつて槍の使い手だった者達なのだと。

男がいた、女がいた、己の利益のために槍を振るうものもいれば、人を守るために槍を振るうものもいた、
復讐者が血反吐と共に槍を振るう光景が映り、軍勢を引き連れて槍を振るう将軍の姿が映り、
そして、最後に映った者は――少年だった。

どこまでも真っ直ぐな瞳をした少年だった。



切嗣は、その目を見れなかった。


639 : アインツベルンが悪い ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:54:34 FbBZ7y820
【クラス】
ランサー

【真名】
獣の槍@うしおととら

【パラメーター】
筋力E〜C++ 耐久E〜B 敏捷E〜B 魔力E〜C 幸運E 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】

単独行動:C〜A
マスター不在でも行動でき、持ち主が不在の時でも自在に動くことを可能とする。

憎悪:A+
白面の者に対する尽きる事の無い憎悪。

【宝具】
『獣の槍(スピアー・オブ・ビースト)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:10

春秋・戦国期の中国で、白面の者に両親を殺された兄妹が、白面の者を倒すべく身命を賭して作り上げた武器。
妹が炉に身を捧げることで妖怪を討つ力を得た鉄塊を、刀剣鍛冶である兄が刀剣に鍛え上げ、兄自身も白面への
底知れぬ怨念と憎悪から槍の柄へと変化(へんげ)した。
そうして出来た“獣の槍”は意思を持ち、どんなに妖(バケモノ)を切り刻んでも刃こぼれせず、錆びもしない“妖器物”となる。
槍に選ばれた人間が手にして戦うと、槍は使用者に囁きかけ、魂と引換えに妖を滅する力を与えるために、
使用者の身体能力は著しく向上する。また使用者は空中の妖気を頭から吸収し、
髪が異様に伸びた外見となり(戦い終えると妖気の吸収が途絶え、元の姿に戻る)、
その姿では治癒能力は異常とも言える程向上、加えてこの状態は妖怪と同じ存在と化している。
変化した際には、蓄積された槍の使用者達の戦いの記憶と経験を、現在の使用者が瞬時に自らのものとして戦う事が可能となっている。
また結界や人にとり憑いた妖、呪いなど、通常の視界には映らないものを悉く斬り裂く能力を持っている。

『封印の赤織布』
ランク:B 種別:対槍宝具 レンジ:1 最大補足:1

常時発動型の真名の存在しない宝具。
妖達が団結・変化した織布であり、獣の槍の力を封印している。
この赤い織布を取り除くことによって、獣の槍のパラメーター及び、保有スキル単独行動は上昇していき、
それに応じて、マスター及び、獣の槍使用者の魔力消費量及び、魂の削られる量は上昇していく。

『白面の者』
ランク:E〜A++ 種別:対憎悪宝具 レンジ:XXXX 最大補足:XXXX人

第三次聖杯戦争時に召喚されたランサー、シャガクシャの持つ宝具。
第四次聖杯戦争の際、切嗣に宿り、産まれ出る時を待つ。

【人物背景】

白面の者を憎む。




【マスター】
衛宮切嗣@Fate/zero

【マスターとしての願い】
???

【能力・技能】
右肩が疼く。

【人物背景】
正義の味方にはなれなかった。

【方針】
???


640 : ◆lnFAzee5hE :2015/01/06(火) 21:54:48 FbBZ7y820
投下終了します


641 : ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:44:07 NVfh5pj20
投下乙です。
自分も投下します。


642 : 殺生院キアラ・バーサーカー ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:45:45 NVfh5pj20

 Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth.
 pleni sunt caeli et terra gloria tua.
 Hosanna in excelsis.

(聖三祝文 セラフィムの歌)


「これ、みんな人間が作ったのよね。<神>のために」
「そうだな」
「だけど、<神>には分からないのよね。これがどんなにきれいかも。
 なにを思って、この歌が作られたのかも。この歌を歌う人たちの心も、どんな祈りが乗せられていたかも、<神>にはわからないのよね』

(   )


 女は螺旋である。
 たとえば、人類というものを、時間軸の中で連続したものとしてとらえると、袋状をした連続体と見ることができる。
 子宮という機能として女をとらえた場合、女とは子を産む袋である。袋が袋を生み、その袋がまた袋を生む――、
 男は連続体ではなく、その袋の付属物である。
 つまり、人間を時間軸にそって眺めた場合、女という無数の肉の袋でつながった螺旋として見ることができるのだ。
 一種のウロボロスである……

(上弦の月を食べる獅子)(螺旋論考)


 ……月もまた螺旋である。
 月は、自転と公転をする螺旋であり、太陽系や銀河系などのさらに大きな螺旋の一部でもある。
 しかし、別の視点から見た場合でも、月を螺旋と呼ぶのは、それなりに根拠のあることなのだ。
 朔望を繰り返す、月の陰陽の満ち欠けそのものが、ひとつの螺旋なのである。
 
(上弦の月を食べる獅子)(螺旋論考)





643 : 殺生院キアラ・バーサーカー ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:46:07 NVfh5pj20



 ……ああぁっぁっぁあぁ! ――いけませんわ!
 そんなにも、強く貪るだなんて――ああっ!
 駄目ですわ……駄目ですわ。そんなにがっつかれたら、私、もう――


はぁぁぁ、と女の嬌声が響き渡った。
あまりの快楽にもはや耐えられぬ、と云わんばかりのみだらな声であった。
口元は弛緩し涎がこぼれ、瞳はもはやとろけるよう、はっはっ、と断続的に吐く息はじんわりと熱を帯びている。
女の衣服は既に破り去られていた。露わになった豊満な肉体は火で炙ったかのように紅潮し、でんと張りのある巨大な乳房はてらてらとした汗に塗れている。
女は時節腰をくねらさせている。快楽に打ち震えているのか。その動きがまだ卑猥であり、淫靡であった。
犯される女は凌辱を一身に受け、一方的な快楽に溺れていた。

女を犯しているものは、羽だった。
羽がはらりはらりと舞っている。羽に覆われた小さきもの。
羽を持つ者は、奇妙なカタチをしていた。丸くふくれた胴体には首も脚もなく、首の先にある筈の頭部もない。
ふわふわとした体毛はわずかに金色を帯び、まるで人間の髪の毛のようだ――

それが、女を犯していた。
一つや二つではない。無数の羽が女の身体に吸い付き、這い回り、ただ己が欲望のままに貪っていた。


 そんなにも、貴方は私を求めて……
 ああ、いけませんわ、いけませんわ……気持ちよくなってしまいますわ――
 ―――ああぁ、あ―――あ―――!!!


女が再びみだらな叫びを上げる。 
その興奮が伝わったか、舞い散る羽は勢いを増して女を犯していく。
肌を舐め、乳を吸い、ぐちゅりぐちゅりと汁をまき散らす。ただただ肉を求めて。
そうして凌辱を繰り返すうち、さらに幾ばくかの羽が舞った。

――出てきたのは子どもの頭だった。
青い目とちんまりした鼻、ふっくらした唇を持ち、巻き毛の淡い金髪の先からは一対の羽が伸びている。
子どもの頭が羽ばたき空を飛び回り、その下では無数の乳呑み児が女の身体を這い回っている。
飛び回る子どもらは一様に口を開けている。紅い唇に笑みを浮かべ何かを唱えている。


644 : 殺生院キアラ・バーサーカー ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:46:32 NVfh5pj20


『■■■■・■■■■・■■■■――■■■・■■■・■!』
『■■■■・■■■■・■■■■――■■■・■■■・■!』
『■■■■・■■■■・■■■■――■■■・■■■・■!』

『■■■■・■■■■・■■■■――■■■・■■■・■!』
『■■■■・■■■■・■■■■――■■■・■■■・■!』
『■■■■・■■■■・■■■■――■■■・■■■・■!』


それはまるで歌のようであった。
――そう! 歌なのだ。
子どもたちは歌っているのだ。
言葉を奪い取られ、その身は狂人に堕した。
しかし子どもたちは歌い続ける。そこには確かな祈りがある。
ただだた歌い続ける。意味を失った詞はまるでこのように聞こえるのだ。


『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』


と。


『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』

『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』


645 : 殺生院キアラ・バーサーカー ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:47:16 NVfh5pj20

歌は途切れることなく続く。
子どもの頭が飛び回り、犯される女が嬌声を上げる。
サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥスと響く歌声に愛撫されるかのように、女はあああぁっぁあっぁぁ、と乱れているのだ。
それは淫欲に溺れる地獄絵図のようでもあると同時に、聖なる祝福の女は神々しい導きの図であるようにも見えた。


 あ―――ああ、ああああああああああ!
 いい、最高……! これが三千世界……! 貴方――天使でしたのね。
 んん、あっ……ああああぁぁぁぁぁあぁあぁあぁぁっぁぁぁあぁぁぁぁ!


雷のごとく迸る快楽に、女の身体がびくんびくんと跳ね上がる。
その目はもはやどこにも焦点が合っていない。彼女は既にどこも視てはいないのだ。
祈荒という名すらどこかに置いて、導きに従い遥かな天上へと繋がろうとしている――

それを見下ろしているのは、確かに天使であった。
翼生やした子どもの頭部の群れ。それを統括するがごとく鎮座する天使がいる。
一見してそれは卵のようだった。歪な形をした、直径3メートルほどの卵。膨らんだ胴体は鱗状の何かにびっしりと覆われている。
その突端部に、人間の上半身に見えた。

そして彼であって彼女であったそれこそが、<天使>なのであった。

太陽が発狂したある時代、あるところにカルト教団があった。
災厄を齎す太陽の下、近親相姦を重ねることによってある子どもが生まれた。
近親相姦による遺伝子異常に依るものか、生まれた子どもは完全なXXY染色体を持っていた。
雄を決定づけるXYと雌を授けるXX――その両方を兼ね備えたモノ。
完全なる両性具有、シーメール、アンドロギュノス……! 

教団はそうして生まれ出でた彼/彼女を<天使>として扱った。
神より遣わされしエンジェル/天使。それは教団が彼/彼女を残して全員死に至るまで続いた。
集団自決を唯一生き残った<天使>は研究施設に保護された。

保護された彼/彼女は言葉を理解できた。否、言葉しか理解できないのだ。
<天使>は周囲のヒトや物質を一切感知できなかった。
理解することができたのは電子的に変換されたデジタルデータのみ。
コンピュータ処理で電子化すること――純粋なる情報として出力することで、ようやく<天使>は世界を認識する。
ヒトは仮想のアヴァターを介してのみ、<天使>の目に留まることができるのだ。

彼/彼女は明らかに何かを視ていた。
それはあふれ出る情報の渦であった。情報を代謝し、森羅万象を喰い散らかしてなお足りぬような、超常たるモノ。
ヒトが<神>と名付けた存在にそれは接続<アクセス>しているのではないか――当時<天使>を研究していたヒトは考えた。

しかし、その研究の途上で<天使>は堕してしまった。
初潮を迎えた彼/彼女は彼/彼女ではいられなくなったのだ。
完全なる両性具有を失った彼/彼女は<天使>でなくなり――
――ただの女になった。<天使>はヒトに堕した。

エンジェルの名を持った彼女は、意識を持ったのだ。
ヒトの世界に降り立った彼女は、その意義を与えられヒトとして生きてきた。

しかし――それで彼女は満たされなかった。

どれだけ正義を掲げようと、
これ以上ないほど高邁な使命であろうと、
たとえ人類の未来と存亡を賭けた戦いであろうと、

彼女にしてみれば――どうでもよかったのだ。

与えられた存在意義に従事した。人類の未来、進化の導き手として諾々と従った。
しかし、本当はそんなことどうでもいい。
人類が、ヒトがどうなろうと構わない。

彼女が求めていたのは、かつて接続した<神>の領域。
純粋なる情報世界へ還りたい。物質に縛られない零子の海へと溺れたい。
堕した<天使>は再び天に還ることのみを求めていた。


646 : 殺生院キアラ・バーサーカー ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:47:49 NVfh5pj20

故に――彼女は再び身体を捨てた。
堕天使の王<ルシファー>の我/アートマを纏い、彼女は天を目指した。ただ己が欲望と本能に溺れるままに。
此度の聖杯戦争でもそれは同じこと。サーヴァントというアヴァターに己をコンバートし、仮想世界に物質として身を結ぶ。

それが――バーサーカー/エンジェル<ルシファー>の在り方。


 あああぁぁぁぁぁぁぁあああああ――いいの! 気持ち良いの! 
 貴方! こんなものを視てきたの――!


マスターたる女は打ち震えている。
エンジェルの記憶に貫かれ、彼女はその一端をを垣間見た。
そこにあったのはヒトの脳ではとても耐えきれないような情報の海!
心がが結晶と化し、肉が透明になり、肉が結晶と化し、心が透明になる――
無限の螺旋階段を上るヴィジョンが流れる。あらゆる感覚が溶けてなくなり、因果の一部と化す。

螺旋に繋がること、縁に混じり合うこと――これ以上の快感があろうものか!
女は、キアラはひたすらに快楽に溺れた。そして理解する。<天使>が何を求めているのかを。
それでもなお、溺れた。


 恥知らずの身体! なんてふしだらな娘なの。いやらしい……
 ほんとうに、だらしなくてふしだらな身体……!
 貴方は神様になりたいのですね。はぁ……なんともふしだらな。
 ――でも


信じられぬほどの快感に溺れながらも、誘っていた。
天使を。
言葉介さぬ堕天の王を。
意識をも超越する、更なる快楽の深みへと導く為――

 
 ――まだ足りませんわ。あっあっあっ――
 神になるのはただの手段でしょう!……あっ……あぁぁぁぁぁ――!
 気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい――!
 ただそれだけを貴方は求めている。
 それが<神>という名であろうと、なかろうと、もはや貴方はどうでもいい
 貴方は知ってしまったから、この快楽を。
 気持ちよくなりたい。結局のところ、貴方はそういう娘なのですよ。


だからねえ、と女は<天使>へと手を指しのばした。
快楽に溺れながら、子どもの顔に貪られながら、淫猥な手つきで彼女は<天使>を誘った。


 もっと、もっと気持ちよくなりましょう――
 貴方にはそれ以外何もないのですから。
 和光同塵。真如波羅蜜。
 人の! 生命の! 地球の! 月の! 星の! 宇宙の! 神の!
 ありとあらゆるものの欲望のはけ口として!――


接続したことでその言葉を理解できたのか、はたまた魔性菩薩の想いが情報になり<天使>を浸食したのか、
<天使>はその言葉に呼応するようにサンクトゥス! サンクトゥス! サンクトゥス! と歌い上げ、同時にキアラの身体に群がった。


 あ、ああ―――ああああ!
 ああああおあぁぁぁあぁっぁあっぁあぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁ!
 いいの! いい! そう! これ! 痛み! 快楽! ああとろける!
 痛い、痛いの、助けて、ああ、そうよ! この痛み、この随喜こそ、私の証……!


キアラは情報の濁流に貫かれ、<天使>もまた彼女の身体に溺れている。
祈りと嬌声が東京の夜を染めていく――


『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』
『聖ナル哉・聖ナル哉・聖ナル哉――萬軍ノ・主ナル・神!』
『サンクトゥス・サンクトゥス・サンクトゥス・ドミヌス・デウス・サベオス!』


果たして、その祈りは月にまで届かざるや。


647 : 殺生院キアラ・バーサーカー ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:48:26 NVfh5pj20


【クラス】バーサーカー
【真名】エンジェル<ルシファー>
【属性】中立・狂

【ステータス】
筋力:B 耐久:A 敏捷:D 魔力:A+++ 幸運:A 宝具:A+

【クラス別スキル】
狂化:EX
<神>の世界へ、という欲望に意識が埋め尽くされている。
ヒトとしての理性や意識はもはやない。

【保有スキル】
神性(偽):A
<神>の膝元へと翔ばんとするもの。
<天使>としての神性は既に失われているが、宝具の効果によりこのスキルを得た。
判定の際は同ランク『神性』と同じ効果を得る。

信仰の加護:A+++
<神>に殉じた者のみが持つスキル。
加護とはいっても<神>からの恩恵ではなく、自己の信心から生まれる精神・肉体の絶対性。
ランクが高すぎると、人格に異変をきたす。が、既に人格などというものはない。

全門耐性:C
魔術、物理双方に耐性を持つ。
魔術、物理双方のダメージを軽減する。魔術ならば同ランクの対魔術と同じ効果。
神性スキルで貫通可能。

魔力放出(歌):A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
バーサーカーが口にするのはただ一つ『Sanctus, sanctus, sanctus, dominus deus sabaoth!』という神への祈りのみである。
神に祈り、神を呪う。その歌は大地を揺るがす。

【宝具】
『主よ、私を哀れんでください<ルシファー>』
ランク:A 種別:対神宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
原初の我<アートマ>。ASURAと呼ばれる量子的バイオメカニック。
高位次元に広がるダークエネルギーの海を動力源に持つ。
有機物であり、無機物である、量子演算子に近いボディは人格の主観によって形態を変化させる。
即ち<アートマ>は量子の不確定性のふるまいに依存している。

……中でもこの<ルシファー>は原初の我<アートマ>。
身につけたものの欲望と本能を増大させ、それに見合った姿に肉体を作り替える。
「<神>の情報の天国に舞い戻る」というバーサーカーの欲望と結びついたこの宝具は、<神>の似姿たる卵に似た姿となった。
そうして<天使>は神に呼びかける歌を垂れ流し、地上を放浪する。
本来なら30メートル大の大きさだが、サーヴァントして情報をコンバートした結果十分の一の大きさで再現されることになった。

舞い散る翼は金髪の子どもの頭となり、辺りを自由に飛び回る。
子どもの頭はかみつくか羽で叩く以外の攻撃手段を持たないが、一つ一つがDランク相当の神性(偽)を持つ。


【人物背景】
出典は『クォンタムデビルサーガ・アバタールチューナー』
ASURAたちを電脳空間において殺し合わせ、喰い合わせた――ジャンクヤード編においては水瀬眞と並んで黒幕の立ち位置になる。
元々は<神>との交信を担っていたが、初潮を迎えると同時に能力を失い、テクノシャーマン・セラに役目を譲る。
カルマ教会の一員としてマダム・キュヴィエの下で働いたが、最終的にはマダムに反旗を翻す。
本心では人類のことなどどうでもいいのだ――そう糾弾された彼女は<ルシファー>の<アートマ>を使用。
<神>への祈りを垂れ流すグロテスクな存在と化す。

しかし<神>が応えることはない。
情報存在たる<神>は人の意識をバグとして認識し、それから発せられる祈りを処理できていなかったのだ。
<神>の発狂により宇宙メルトダウンが起こる。<天使>の行いはそれを促進しているだけだった。
最後はゲイルに討たれる。人間だったの頃のエンジェルが、その存在意義を問いかけたASURA-AIに。


648 : 殺生院キアラ・バーサーカー ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:48:58 NVfh5pj20

【サーヴァントとしての願い】
<神>の世界へ。


【マスター】
殺生院キアラ

【マスターとしての願い】
快楽を。

【能力・技能】
独自のコードキャストを組み上げるなど、ウィザードとしての実力は超一流。ダキニ天法に習熟する。
また武術にも精通し、アリーナのエネミー程度ならば撃退できる

【人物背景】
出典は『Fate/EXTRA CCC』
本名は殺生院祈荒。二十代後半の日本人。
本作の黒幕であり、真ルートに進むことで相対するラスボス。通常ルートでは死体を偽装したきり出てこない。

地上にて細々と長らえていた真言立川詠天流の宗主の娘として生まれたが、生来病弱だったため14歳までほぼ寝たきりでいた。
戒律に囚われ、自分の事を「可哀想」と言うだけで救おうともしなかった周囲の人々の姿から、書物にある清い人間像も消え失せた。
そして「もしや人間と呼べるものは、もうこの世にはいないのではないか?いたとしても自分唯一人なのではないか」という思いに憑かれることとなる。

14歳のとき信者から霊子ハッキングを教えられ、外界を知ったことからみるみるうちに病気は快癒する
(元々キアラの病気は外界では普通に治せるものであったらしい)。その後閉鎖的だった詠天流を改革し、ネット経由で信者を急激に増やしていった。
しかしそれに伴い行方不明者や死者が激増、そして異変に気付いた父親を存在レベルで完全否定した彼女は、
名目として「女であるにもかかわらず、女と一体になろうとする」「悟りそのものを否定する」という立川流の禁忌を二つ犯したかどで破門される。
その翌日、彼女は父親の髑髏本尊を持ち去って「師の術具を奪う」ことで最後の禁忌を破り、信者同士を殺し合わせ、自分以外は全て死者となった教団を立ち去った。
その後、彼女は立川流の理念に基づいて信者を救ったが、彼女を慕った信者は次々と自殺したという。

更に電脳史上最大の禁忌といわれるコードキャスト・万色悠滞を開発したことで西欧財閥に指名手配された。
魔性菩薩の異名を持つ。


649 : ◆Ee.E0P6Y2U :2015/01/07(水) 11:49:17 NVfh5pj20
投下終了です


650 : ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:16:51 k12qiHqU0
投下させていただきます


651 : 対峙!二人の『魔神』!! ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:17:52 k12qiHqU0
君がもし―――――


ある日突然、人間以上の力を持ったとしたら―――――


君はその力をどう使う?


その力で世界を滅ぼす悪魔になるか―――――


それとも―――――――




  ◆  ◆  ◆



「………つまり、アタシはそのセーハイセンソーとかいう殺し合いに巻き込まれて、ここは月の上で、アタシが
 今いるこの東京はそっくりな偽物ってわけ? マジで?」
「ああ、そして俺は君のサーヴァントとして召喚された。クラスはライダーだ。驚いたかもしれないが、落ち着いて
 俺の話を―――――」
「これが落ち着いていられるかっつーの! 何だよそれー!? つまりバトルロワイアルって事じゃん! どっか
 の漫画や映画じゃあるまいし、勝手に人を呼び出すなっつーの! 一体どこのドイツ人の仕業だー!? 主催者
 出てこーい! アタシがフルボッコにしてやるーっ!!」
「いや頼むからあまり騒がないでくれ! まだ始まったばかりとはいえ、どこにこの戦いに乗った参加者がいるかも
 わからないんだぞ!?」
「うるせー!!」

ライダーのサーヴァントは召喚早々頭を抱えた。
自身のマスターである目の前にいる少女が明らかに状況に困惑していた為、おそらく自身の意思に反してこの場に
召喚されてしまったのだと踏んで状況を丁寧に説明したものの、結果は少女が予想に反してキレて騒ぎ出してしまった。
こういう場合普通ならパニックを起こすなりするものかと思っていたが、何というか随分と肝が据わっている少女
だとライダーは思った。
まあそれはともかく、今は彼女を鎮めなければ。
ライダーは暴れる少女を羽交い絞めにし、近くの物陰へと一時退避した。


652 : 対峙!二人の『魔神』!! ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:19:13 k12qiHqU0


「うう……変身してるアタシを取り押さえるなんて、あんた凄いね。流石はアジ……じゃなくてサバとかいうの
 だね?」
「サーヴァントだ。まあそんな事より、これからどうする気なんだ? ええと……」
「ああ、そういや名乗ってなかったっけ。アタシはZちゃん! よろしく!」
「!?」

数分後、ようやっと落ち着いた少女―――Zちゃん―――はライダーと共に物陰のゴミ箱の上に鎮座して話を進めていた。
自身の名を伝えたと同時に、Zちゃんはライダーが驚愕した表情を浮かべていたのに気付いた。

「あれ? やっぱ変な名前だった? いやぁこの名前アタシのばあちゃんが付けたんだけど、今流行のキラキラネーム
 ってレベルじゃないよねー。でも別に今は嫌ってわけじゃ―――――」
「………Zちゃん、ひとつ聞きたいんだけど」
「何?」
「君のその恰好………それは一体何なんだ?」
「ああこれ? これはねぇ………」

ライダーはマスターの少女の名を聞くと共に、出会った時からずっと気にかかっていた事を聞いてみた。
黒いロングコート状のコスチューム。
胸に付けられた赤いプロテクターのようなパーツ。
そして頭に被った特徴的な形状のヘルメット。
コスプレにしか見えないその姿はどう見ても―――――

自身が最もよく知る存在。
生前、長きに渡る戦いを共にしてきた『友』の姿に、とても酷似していた。
名前といい、他人の空似とかいうレベルではない。



その後ライダーは、Zちゃんから自身の姿や身の上などの説明を聞き、唖然とした。

兜十蔵、光子力、パイルダー、弓先生、三博士、地下帝国、機械獣、あしゅら男爵、その他諸々。
彼女の話の中に出てくる単語の一つ一つが、あまりにも自分の記憶に存在する情報と類似していたのだ。
その事実を受け止め、ライダーは納得しがたかったが一つ確信した。

「(きっと……おそらくこの子は……Zちゃんは俺やミネルバも知らない並行世界の『あいつ』なんだ!)」


ライダーはかつてある事情により幾度となく世界をやり直し、数え切れないほどの可能性の世界を経験してきた。
この聖杯戦争には様々な並行世界からマスターや英霊が召喚されている事も承知している。
故に気付いたのだ。
自分が様々な世界を見てきたとしても、それがすべての世界ではない。
例え自身が存在していなかったとしても、『あいつ』単体が存在する世界も無論あり得るのだ。
彼女もその可能性の一つなのだろう。
………色々と認めがたい部分もあるにはあるが。


653 : 対峙!二人の『魔神』!! ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:19:52 k12qiHqU0
「どしたのライダー? 何かアタシの顔についてる?」
「いや、何でもない……話を戻すけど、君はこれからどうするんだ? この戦いに乗るのか、それとも―――」
「んな訳ないじゃん! 聖杯戦争だか宇宙円盤大戦争だか知らないけど、勝手に連れてこさせられて殺しあえとか、
 アタシは絶対嫌だ! こんな戦争ぶっ潰して、こんな事始めたどっかの馬鹿をメッタメタのボッコボコにして
 やるよ!! あとこんな胡散臭い戦いに乗った奴らもついでにボコる!!」

ライダーに問われ、Zちゃんはそう啖呵を切り、決意を表明した。
何か行動を起こす時には、正しいか正しくないかではなく、やりたいかやりたくないかで決めろ。
大人社会が押しつける正義なんてものは二の次三の次でいい。
祖母から教えられ、自身の信条でもある言葉がZちゃんの心に再生された。


「そうか、だったら―――――――俺もZちゃん、君に力を貸すぜ」
「えっ!? でもサーヴァントって、なんか願いを叶えたくて参加するんじゃなかったっけ?」
「確かに基本的にはそうだろうな。だけど俺もこんな殺し合いに喜んで参加する気は更々ない。今の俺に何か
 願いがあるとすれば……そいつはZちゃんみたいにこの殺し合いに巻き込まれた人達を救う事と、この殺し合いを
 止める事、だな」

たった一人の願いの為に大勢の命が犠牲になる。
そんな事は決して認められない。
ライダーの答えは召喚された時点で最初から決まっていた。
万が一自身のマスターがこの戦いに乗り気だった場合は最悪自害も考えていたが、杞憂に終わった事にライダーは
人知れず安堵したのだった。

「へー、アタシ達気が合うじゃん! よーし、じゃあライダー! そうと決まればアタシ達二人でこの戦い、
 必ずぶっ潰そうよ!!」
「ああ、よろしく頼むぜZちゃん!」
「ところでさぁ、ライダーってどんな事が出来る訳? 魔法使ったりビーム出したりするようには見えないけど?」
「それに関してはおいおい説明するよ。一つだけ言っておくなら……俺の宝具を見たら、絶対驚くと思うぜ?」
「ふーん、何だか知らないけど楽しみにしとく!」



主と固い握手を交わし、いよいよ歩みを進めながら、ライダーは思案していた。
方針は決まった。
果たしてこれからどう立ち回るべきか。
自身の力に自信がない訳ではない。
むしろ自分の宝具は破壊力・制圧力に関してはトップクラスだと考えている。
だがその分、小回りはほとんど効かず燃費が悪いという致命的な欠点がある。
魔術師ではない彼女の力でどこまで力を発揮できるかは完全に未知数である。

そしてもう一つ。
自分の宝具が『真の力に目覚める』という事態が起きた場合だ。
もしそうなれば、この月の聖杯戦争は灰燼に帰すかもしれない。
断じて比喩表現ではない、物理的にである。
如何にこの戦いに幾多の英霊が呼び出されているとしても、滅多な事ではそのような事態は起こるまい。
そうライダーは信じたかった。
いや仮に宝具の力が解放されたとしても―――――
その時は自分の主が全てを吸い上げられ、真っ先に命を落とすかもしれない。


654 : 対峙!二人の『魔神』!! ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:20:20 k12qiHqU0


そんな事は絶対にさせるものか。
『鉄の城』よ、俺の『友』よ。
この月の戦争においても、絶対にお前を悪魔になどさせない。


もう一度、君と一緒に悪を討とう。





振りかざしたその手で 一組の主と従者は何を掴むのか。


共に目指した場所に 答えはきっとあるのだろう。


二人の『魔神』は、赤き月の戦争にその拳を向けた。


その行方はまだ、誰にも分からない。


655 : 対峙!二人の『魔神』!! ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:20:50 k12qiHqU0

【クラス】
ライダー

【真名】
兜甲児@真マジンガーZERO

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具A+〜EX

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 野獣ランクの獣は乗りこなせない。
 ちなみにライダーは生前よりバイクへの騎乗に長けており、このスキルは後述の宝具を操る際に
 ある程度の補正を加える事が可能。

【保有スキル】
心眼(真):B
 長きに渡る宿敵との戦いを通じて培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

機械工学:B
 科学的な物質・存在への見識。
 ライダーは天才科学者であった祖父から受け継いだ才により、独力でUFOを開発するほどの知識を有している。
 必要な機材・材料さえあれば後述の自身の宝具を含む機械類の修復を可能。
 また科学面における逸話を持つ宝具を目にした場合、かなり高い確率で真名を看破することができる。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 例え規格外の存在が相手であっても、決して諦める事無く人々のために戦った生前の逸話から保有している。

【宝具】
『神にも悪魔にもなれる魔神(マジンガーゼット)』
ランク:A+ 種別:対城宝具  レンジ:1〜99 最大補足:1000
 兜甲児の祖父・兜十蔵が作り上げた『鉄の城』の異名を持つスーパーロボット。身長18m、重量20t。
 その装甲は富士山麓から採掘されるジャパニウムを素材とする『超合金Z』で構成されており、いかなる
 既存の兵器の攻撃も通す事がない堅牢さを誇る。
 背部に装備した紅の翼・ジェットスクランダーにより、空中をマッハ3で飛行する事も可能。
 通常時に使用可能な主な武装はロケットパンチ・ルストハリケーン・ブレストファイヤー・アイアンカッター・
 サザンクロスナイフ・ドリルミサイル・光子力ビーム。
 また後述の宝具によって、更なる力を発揮する事も可能なのだが………
   
『人の頭脳を加えし翼(ホバーパイルダー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大補足:10
 マジンガーZの操縦席へと変形する赤き小型戦闘機。
 「パイルダーオン」のコールと共にマジンガーZの頭部へとドッキングし、鉄の魔神に人の頭脳を加える。
 小型ミサイルやビーム砲も装備しており、単機での戦闘力も有している。
 その操縦はオートバイと変わらぬ感覚で行えるよう設計されているため、ライダーは自身の宝具を常に十全の
 態勢で操る事が可能である。

『七つの秘めし魔神の力(マジンパワー)』
ランク:A+ 種別:対人宝具  レンジ:- 最大補足:-
 マジンガーZに搭載された七つのブラックボックスが発動する事で解放される究極の宝具。
 己以外の強者を一切認めず、全てを取り込み最強の存在へと進化する純粋な意思の力そのもの。
 非常に強力ではあるが、一つ発動する度にマスターの負担も激増する。
 概要は以下の通り。

 再生:いかなるダメージも瞬時に再生する。
 吸収:あらゆるエネルギー攻撃を吸収し、自身の糧とする。
 強化:マジンガーZの機体性能を更に強化する。
 高次予測:マジンガーZの状況シミュレーションを、未来予知と同等の超絶的レベルまで引き上げる。
 変態:機体そのものを変態させ、マジンガーZに新たな武装を追加する。
 因果律兵器:勝利の可能性が0.1%でもあるならば、その力を差異次元からこちら側に強引に現界させ発動する。
 そして………

『終焉を呼ぶ魔神(マジンガーゼロ)』
ランク:EX 種別:対星宝具  レンジ:測定不能 最大補足:計測不能
 マジンガーZの持つ魔神パワーの七つ目『魔神化』そのもの。
 この宝具が万一発動した場合、『神にも悪魔にもなれる魔神(マジンガーゼット)』は
 『終焉を呼ぶ魔神(マジンガーゼロ)』へと変貌しライダー自身をも取り込み、敵対者もろとも世界全てを
 破壊し尽くす悪魔そのものと化す。
 発動条件はこの聖杯戦争においては『魔神化を含むすべての魔神パワーの解放』、もしくは『マジンガーZが
 自身を脅かす力を持つと認定した存在の確認』の二つ。
 この零の名を持つ魔神が目を覚ました場合、間違いなくこの赤い月の聖杯戦争は物理的に塵と化すが、
 おそらくそれより先にマスターの魔力が底をつくと思われる。


656 : 対峙!二人の『魔神』!! ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:21:39 k12qiHqU0
  
【weapon】
光子銃(フォトンガン)
 ライダーが携帯しているエネルギー銃。
 その名の通り光子力エネルギーのビームを放つが、あくまで護身用。

【人物背景】
元祖スーパーロボット・マジンガーZのパイロットを務める少年。
天才科学者である祖父・兜十蔵の遺したマジンガーを駆り、世界征服を企む悪の科学者Dr.ヘルに仲間達と共に
立ち向かった正義の心を持つ熱血漢。
……だが実は彼の世界は幾度となく魔神化したマジンガーの手により滅びており、彼はマジンガーのパートナー
ロボット・ミネルバXの手によりその意識を過去に送られ、数え切れないほどの世界のループを繰り返し続けて
いたのだった。
全てはマジンガーZを終焉の魔神として覚醒させない為に……。
生前は度重なる戦いの結果負った重傷により全身をサイボーグ化する事にもなったが、此度の聖杯戦争では
Dr.ヘルとの戦いを終えた後に生身の肉体を取り戻した状態からの参加となった。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を止め、巻き込まれた人々を救う。


【マスター】
Zちゃん@ロボットガールズZ

【マスターとしての願い】
特に無いが、本当に聖杯とやらがあるならちょっと興味がある。
あと黒幕はボコる。

【weapon】
・パイルダー
Zちゃんの『祖母』兜十蔵が開発した携帯型光子力応用装置。
形状はマジンガーZのホバーパイルダーと同様。
頭部にかざす(パイルダーオン)事で光子力エネルギーを解放し空中元素を固定、瞬時に超合繊維Zを
精製し外装として纏う事でZちゃんを『マジンガーZちゃん』へと変身させる。
変身する事で使用可能な主な技はオリジンたるマジンガーZと同じく、ロケットパンチ(手袋が飛ぶ)・
ルストハリケーン・ブレストファイヤー・光子力ビーム等。

【能力・技能】
上記のパイルダーを使用しての変身能力以外はごく普通の少女。
運動能力はそれなりに高い。

【人物背景】
ロボットガールズチームZのリーダーを務める姉御肌的性格な少女。
普段は東京都練馬区大泉学園光子力町の光子力研究所に所属し、光子力エネルギーの普及活動を行っている。
『無敵の力はアタシのために! 正義の心は二の次、三の次!』を信条としており、光子力を狙う地下帝国の
機械獣ガールズと戦う際も基本的に周囲の被害お構いなしに暴れ回り、例外なく相手をフルボッコにしている。
物事をあまり考えずに突っ走る熱血タイプだが、周りの人達のキャラが濃すぎる為ツッコミ役に回りがち。
義理や人情に厚く何故か同姓によくモテる。
ちなみにZちゃんという名前は愛称ではなく、本名である。

【方針】
この聖杯戦争をぶっ潰す。
あと悪党や気に入らない奴らはフルボッコする。


657 : 対峙!二人の『魔神』!! ◆MoyrepToUg :2015/01/07(水) 23:21:58 k12qiHqU0
投下終了です。


658 : ◆yy7mpGr1KA :2015/01/08(木) 20:54:37 6x0V/ICs0
投下します。


659 : 神の摂理に挑む者達 ◆yy7mpGr1KA :2015/01/08(木) 20:55:36 6x0V/ICs0
クリック?クラック!

それでは今日は八尾比丘尼のお話をしましょう。

昔々の大昔、寺のすぐそばまで海が来ていた頃。
あるとき「珍しい魚が取れたぞ」と漁師が村の者に行ったので見に行くと、そこには顔は人の顔で、あとはみな魚と言うおかしな魚があったそうな。
村の皆が気味悪がって「海へ捨てよう」と騒いでいると、どこの者か旅の人がやってきて「これは人魚と言うものだ。荒神様にお供えすれば、良い御利益があるかもしれん」と言った。
それならばとその通りお供えをして荒神様のお祭りをしたが、お祭りを終えてもこの気味の悪いお供えを頂く者はいなかった。
ところがちょうどそこに乳母に連れられた小さな娘がやってきて誰も知らないうちにその肉をちょこっとつまんで食べてしまった。

それから十七年、娘はこの世のものとは思えないほど美しく成長した。
村は誰がこの美しい娘の婿になるのかという話でもちきりになった。だがそれから二年も三年も経つうちに皆が首をかしげるようになった。娘は年を取っていないように見えたのだ。
そして四年、五年も経つと変わらない娘の姿に皆は気味悪がるようになった。
もちろん婿になろうという者など誰もいない。仕方なく遠くの村から婿をとった。婿も最初は若くて美しい嫁さんなので喜んだが、そのうち人の口から話が漏れる。
「お前さん、あんたの嫁後の年を知ってるかね。うちのばあ様と同じ、八十七だぞ」と。
逃げ出す亭主もいれば、気にしない亭主もいた。

だが二百年、三百年と経つ間に亭主に持った男も次々に死んでいく。それでも自分は十七のまま、五百年、六百年と経てばもう海だった場所も干上がって田畑に変わってしまうほど。元の親も、亭主も、知り合いも、もう誰もいない。
目に見える景色も、もうすっかり変わってしまった。
こうなっていてはもう生きている甲斐もない。やがて頭を丸めて尼になり、諸国巡礼の旅に出てしまった。
そうして巡り巡って八百歳になった頃、どう巡ったかは知らないが尼は若狭の国へやってきた。そして尼は誰にも会わないように深い深い洞穴の中に入っていって、そして二度と出てくることはなかったということだ。






     ☨     ☨     ☨

「……仕方ない」

白野君は僕を殺してくれなかった。死者に導かれ冥府に行くことも叶わなかった。
……僕の自殺は、失敗だ。
ラプンツェル。大切な人を失い、それを取り戻そうとする者が冥府に導かれる物語。
志弦を取り戻せるなんて考えていない僕では導かれないのも当然か。

自嘲。

彼女の下に行きたいとか、神への復讐だとかそんな考えを持つ人もいるのだろう。
でも、魂だとか死後の世界だとか、神が人格を持つなどと言うのはどうしても自分には信じられなかった。
文化や慣習としては敬意を払おう。だが実在するとは思わない。
怪奇現象が実際に存在することも知っている。だがそれは自然現象が偶然、知り合いに似ているだけ。

死んだ人間は生き返らず、もう会うことはできない。死後の世界は存在しない。
そう考える僕では、『死後の世界』なんて導いてくれないのが当然か。つくづくままならない。

最後の希望は白雪姫。この泡禍で妃の役となり、処刑されることを望むしかないか。

「〈喜べ、僕。君の願いは、ようやく叶う〉」

それは彼には意味のない呟き。でもそれは、ある世界では最悪のトラウマ〈断章詩〉。
それを唱える彼の背後では冥界に導かれた〈王子〉が、〈泡禍〉を滅ぼしており。
頭上では血のように赤い月が煌々と輝いていた。


     ☨     ☨     ☨

長い、長い、長い時が流れた。
10年か、100年か。遥か昔に数えることも考えることもやめた。

時折ふと思い立って試してみることがあった。
手から植物を生やし、進化させ、『方舟』の材料と同質のものにしようとした。
それでも方舟に導かれはせず、また考えることをやめた。

またあるときは生やした木を炭化、変質させ『月』に存在する石と同組成のものにしようとした。
それでも月に至ることはなく、また考えることをやめた。

あれからどれだけの年月が経ったろうか。
何かしようとする気分でもなくまたすぐ思考を停止しようとしたが


……なぜだ?


ここにきて初めて疑問というものを覚えた。
あれは確か大気の成分による光の乱反射とそのときの位置関係によって起こるもののはずだ。
ならばなぜ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宇宙空間から見る月が紅く染まって見えるのだ?


     ☨     ☨     ☨


660 : 神の摂理に挑む者達 ◆yy7mpGr1KA :2015/01/08(木) 20:56:41 6x0V/ICs0

「聖杯、戦争か」

眼鏡の男が、誰にともなく呟く。

「〈神の悪夢〉ではなく〈神の子の血を受けた杯〉か。僕が求めるものとしては、皮肉が効いてる」

くっくっ、と口の端から笑いを漏らす。愉快気ではない暗鬱な笑い。

「きみはどう思う?セイバー君」

少し離れて、物品を漁る男に声をかける。
ここは東京、池袋。その片隅にある小さな古物商だった。

「おれは、帰還する。このような偽りの地ではなく、真実の地球に再び足をつけるのだ」

男は願いを語った。
かつて神の座へと近づきながら、人間の機転と大自然の力に敗れ、星の外へと追放された今への忸怩たる思いを。
仲間の犠牲は、何をしても無駄にしてはならないと決意を誓った。

「聖杯が何であろうと構わん。おれは何であろうと、何をしようと聖杯を手にしてみせるぞ!」

エシディシ。俺の理想に唯一理解を示してくれた同朋。
ワムウ。俺達と共に生きながらも己を貫いた強き戦士。

二人が命を賭したその結末を、このカーズが断じて無にするわけにはいかんのだ!

「……聖杯が何か、か。君はこんなものを知っているかい?」

私たちの心の、深く深く、とても深く。
もう『私』というモノすら分からなくなるほどの遥か深くに、神様がいます。
神様は深みの寝所で、ずっと眠り続けています。
神様はずっと、夢を見続けています。
神様はあるとき、悪い夢を見ました。
神様は全知なので、この世にあるすべての恐怖を一度に夢に見てしまいました。
神様は全能なので、自分の見た悪夢を切り取って、寝所の外に捨ててしまいました。
切り取られた悪夢は大きな泡になって、深みの寝所からゆっくりと上がってきました。
大きな泡は上へ上へと上がりながら、二つに、四つに、八つにと分かれていきました。
泡はいくつにも分かれ、やがて数えきれないほどの小さな泡になりました。
そしてたくさんの泡は、はるかな深みから次々と浮かび上がってきます。
私たちの心へ向けて。
神の見た、悪夢の泡が。

「知らんな」
「そう。まあ自費出版のオカルト本だからね、無理もない。この詩は19世紀中頃にイギリスの童話作家であるジョン・デルタによって記された、『マリシャス・テイル』という本の冒頭分さ。
この世に存在するありとあるゆる怪奇現象に対する一つの解釈と考えてもらっていい。真偽はともかくとして、僕らは怪奇現象の類をこれになぞらえて〈泡禍〉と呼んでいる。
この神の悪夢の泡は人間の意識に浮かぶと急速にその人の持っている恐怖や悪意や狂気と混ざり合って、すぐに人間の小さな意識の器では収めきれなくなって現実に溢れ出すと言われている。
そして溢れ出した悪夢は現実を変質させ、悪夢を現実のものとしてしまう。……この聖杯戦争も僕はそれだと考えているよ」

まるで大学の教授のように聞かせるように淀みなく話し続ける神狩屋と、物漁りをやめて生徒のように耳を傾けるカーズ。

「聖杯戦争は魔術儀式と認識していたが?」
「うん。魔術、つまりオカルティズム。オカルトは人の無意識を操作し、無意識のエネルギーを用いるという側面があるらしいんだけど、その実践者は神話や民話を儀式に取り入れたりするんだ。
ルーン魔術の起こりは北欧神話だし、いわゆる礼装の類はそう言ったものを再現しようとしているだろう?
……『集合無意識』、『元型論』というものがある。童話や神話などは地理的、文化的な交流がないにもかかわらず似たようなモチーフのものが語られることが多いんだけど、それは?」
「異類婚姻や神隠し、冥界訪問などか。学説としては知らんが、世界中で似た物語が多いのは知っている」
「話が早くて助かるよ。『元型論』っていうのは‘人類の意識には文化に関係なく共通の原型がある’というものだ。異類婚姻なら『美女と野獣』や、『鶴の恩返し』が有名かな。
昔から伝わる物語というのは古いゆえに元型に近いものらしい。そして神の悪夢というのは『元型』に限りなく近い、もしくは負の『元型』の塊と言われている。
だから浮かんだ〈泡〉があまりに大きいものだと、その人固有の恐怖を希釈して物語の『元型』に近くなるんだ」


661 : 神の摂理に挑む者達 ◆yy7mpGr1KA :2015/01/08(木) 20:57:12 6x0V/ICs0

例えば、自分が助けられたはずの者が死んでいくことを恐れる人がいた。
その人に大きな〈泡〉が浮かんだ結果、童話『ヘンゼルとグレーテル』に近似した「グレーテルが魔女を殺す」「ヘンゼルのいないグレーテルが魔女となり、新たなグレーテルに殺される」〈泡禍〉となった。
ヘンゼルが目印を残しておけば助けられたのに、家に帰れず魔女と化し、殺されてしまうグレーテルの物語。

例えば、愛するものを失うことを恐れる人がいた。
その人の〈泡禍〉は「町中の人が泡に還ってしまう」人魚姫の物語。
娘が自分と異なる価値観を持ち、泡へと還っていき、他の家族もいずれ泡沫となる人魚の物語。

「『物語』を再現しているんだよ、これは。聖杯…それだけじゃなく願望器を求める物語は古今東西あらゆるところにある。
そしてそれに挑むのは再現された『英霊』。過去の『英雄譚』の登場人物だ。混ざり過ぎて固有の新たな物語と言っても過言じゃないと思うけどね。これは『聖杯戦争』という物語……そして〈泡禍〉だ」

すでに傍らのセイバーに語るでなく、己が学説をまくし立てるだけになりつつある。

「何が言いたい?願いは叶わないとでもいうのか?」
「いや、たぶん願いは叶うよ。例えば僕は不老不死だ。始皇帝しかり、これは権力者ならば求めてやまないものじゃないかな。僕には全く不要なものだけどね。
他にも死者を蘇らせることが出来る人や記憶を奪うことのできる人を知っている。誰かにとって求めてやまないものは、きっと他の誰かにとって見るのも悍ましいものだ。
白雪姫に憧れる人もいれば王子に憧れる人もいるだろう。かぐや姫のようにこの地での思い出をなくすかもしれないし、浦島太郎のように年を取るかもしれないけど故郷に帰る事はできるんじゃないかな」

さらり、と思いやりなど欠片もない一言。
カーズはこの地での思い出など重視しないし、不死身ゆえに時間の経過など気にしないが……それでもこの男が致命的にずれているのは分かった。

「……おまえは何を願うのだ?」

悪夢のような形で願いが叶うと考えるこの男は何を思うのか。
当然の疑問を投げる。

「僕はね、〈白雪姫の妃〉になりたかったんだ」
「……なに?」
「〈妃〉に限らない。処刑された〈狩人〉でもいい。白雪姫に限らず赤ずきんの〈狼〉でもいいし、ラプンツェルの〈王子〉として冥界に導かれてもよかった。
……僕はね、人魚の肉を口にしたゆえに死にたくても死ねない〈八尾比丘尼〉なんだ。だから、この『聖杯戦争』という物語でも死に至る配役になりたいと思っているよ。
ああ、そういえば聞いてなかった。セイバー君、君は僕を殺すことができるかい?」

そう口にした神狩屋には今までにない情動があった。
虚ろで空っぽで死に向かう、絶望にも憧憬にも近似した真っ暗闇の情動が。

「お前を殺せば、その魔力供給で現界しているおれも消える。聖杯を求めるおれには聞けん願いだな」
「ああ、そうか……そうだね。聖杯戦争のマスターという役目はこなさないと義理が立たないか……君に死んでくれというわけにはいかないか、仕方ないね。
それじゃあ、かねてから考えていた仮説を試すことにしよう」

仮初でしかない生の仮初の役割として、マスターという立ち位置を一時的かも知れないが受け入れる。

「お前より使えるマスターが見つかれば殺してやるさ……仮説?」
「うん。発生したばかりの『童話』クラスの〈泡禍〉に飛び込んで自ら『配役』を演じればその『配役』に収まれるんじゃないかってね。
それを実行するには余計な先入観は邪魔だから、この先『物語』の解釈なんかはせず、方針も君に任せるよ。『集合無意識』に拒まれるなんて御免だしね。
参加者を殺せというなら殺そう。同盟を組めというなら組もう。ここが英霊集う地なら〈人魚〉のような不死身の怪物を殺せるものもいるだろう。
端役でも主役でもいいから『聖杯戦争』で必ず息絶える『配役』になれるよう、僕を……死に導いてくれ」

一人の不死者は死出の旅路を願う。
一人の不死者は現世への帰還を願う。
これはきっと、黄泉平坂の穢れたる出会い。


662 : 神の摂理に挑む者達 ◆yy7mpGr1KA :2015/01/08(木) 20:59:18 6x0V/ICs0

【クラス】
セイバー

【真名】
カーズ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷B+ 魔力D 幸運C- 宝具B+

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:A+
現代の魔術はおろか神代の魔術を用いても彼を傷つけるのはほぼ不可能である。
十万年以上の長きにわたり生きつづけ、積み上げたその神秘は破格のランクを誇る。

騎乗:C++
騎乗の才能。大抵の乗り物を人並み以上に乗りこなせる。
なお後述するスキルにより乗機と一体化すれば幻想種とて乗りこなす可能性を秘める。


【保有スキル】
原初の一(偽):D
偽りのアルティメット・ワン、アルティメット・シイングに至る進化の過程。生まれついての吸血種が宝具による肉体改造で変異したたった4人の柱の闇の一族、その一人。
英霊の座においてもその4人しか持ちえないスキルであり、Dランクでも破格のもの。
本来のものとは異なり、星のバックアップを受けることはできないが関節を無視した柔軟な動き、卓越した身体能力、肉体の再生、全身の細胞からの捕食、他の生物との一体化など様々な能力を持つ。
また死徒に対してのみ同ランクのカリスマを内包する。
生前彼はある二つの宝具を用いて最高ランクのこのスキルを取得したのだが、完成したアルティメット・シイングは精霊の域であり、英霊の再現が限度である聖杯では進化する前の彼しか再現できなかった。
九尾の妖狐、ファニーヴァンプといった規格外の存在を再現することが可能な状況であれば、彼はAランク相当のこのスキルを保持し、さらに多様な能力を発揮するであろう。

策謀:C
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落としたり自身が有利になるよう立ち回る才能。
奇襲や策略の実行、それによる敵へのダメージ等の効果に有利な判定が得られる。
一流の軍人をもってしても対応できない惨虐にして鮮やかな襲撃、影武者や人質を利用しての闘いなどを行った。
手段を問わず目的を達するのが至上であり、最終的な勝利のみを求める。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。

ラーニング:A
僅かに会話を耳にしただけで異国言語を習得、一目見ただけで銃を分解、発達した文明にも瞬く間に馴染んで見せるなどを可能とする高度な学習能力と適応力。
見聞きした技能を学び取ることが可能。
彼はこのスキルで宿敵の技法、『波紋法』も習得しているが、太陽の属性を弱点とする今の肉体では使えば自滅を招く。

道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。
生前は被ったものを吸血種やその上位存在に進化させる石仮面、並行世界においては超能力を覚醒させる矢の作成を行った。
セイバークラスとして召喚されたため大きく制限されている。

【宝具】
『輝彩滑刀の流法(モードオブシャイニングブレ―ド)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0〜4 最大捕捉:5人
スキル:原初の一(偽)による卓越した肉体操作により彼らは固有の流法を持ち、カーズのそれは『光』である。
四肢から骨を硬化させたブレードを生やし、そのエッジ部分を微小な刃が走り、それが複雑な反射をすることで輝いているように見える。
チェーンソーのようなそれは硬度や神秘で勝るものをも切断する。
刃を突き立てることによる吸血、刃なしで光を放つことも可能。

『血の運命紡ぐ石仮面(ヴァンパイア・イヴ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
血を浴びせると骨芯が飛び出す石仮面。この仮面を被ってその骨芯が脳を突くことで死徒へと変異する。
対人宝具ではあるが人間だけでなく馬などの動物にも効果を発揮し、またとある宝具と組み合わせることでスキル:原初の一(偽)のランクを大きく向上させることが出来る。
宝具ではあるが魔力消費と道具作成スキルにより生産可能。


【weapon】
宝具およびスキルに依存。


663 : 神の摂理に挑む者達 ◆yy7mpGr1KA :2015/01/08(木) 20:59:47 6x0V/ICs0

【人物背景】
はるか昔、地球に出現した太陽光に当たると消滅してしまう生き物の一族、その一人。
その一族の多くは穏やかに過ごしていたが、突如生まれた一人の天才がより強い力を求めたため争いが起き、その天才と協力者一人、何も知らぬ赤子二人を残して一族は滅んだ。
その天才がカーズであり、その四人が石仮面をかぶり、原初の一(偽)となった柱の闇の一族である。
柱の闇の一族は多くの動物を殺し喰らわなければ生きられないため当然戦争が起こり、宿敵として波紋使いの一族とは幾度も争った。
戦争を続けながらも石仮面、そしてエイジャの赤石の力で更なる進化を遂げようと画策。
そして十万年以上が過ぎた西暦1939年、波紋使いジョセフ・ジョースターとの闘いにおいて3人の同族を失うも赤石と石仮面によってアルティメット・シイングに進化を遂げる。
その圧倒的な力でジョセフや人類を圧倒したが、ジョセフの機転と地球の力に敗れ宇宙空間に追放され、考えることをやめた……はずだった。
彼は生きながらにしてその規格外の存在からサーヴァントとして参戦した存在である。そのため霊体化や座に依存した知識の獲得などはできない。

【サーヴァントの願い】
地球に帰還する

【マスター】
鹿狩雅孝(神狩屋)@断章のグリム

【マスターとしての願い】

聖杯戦争という〈泡禍〉の登場人物として死に至る。
それができなければ聖杯に死を願う。

【能力・技能】
〈黄泉戸契〉(ヨモツヘグリ)
抱えた悪夢の内容は“自分だけが死なない”。
神狩屋の血液などを摂取する事で、ケースバイケースだがあらゆる肉体の外傷を治癒する事ができる。ただし、瞬時に〈異形〉化するため一般人には使用できず、耐性のある〈断章保持者〉でも摂取し過ぎると〈異形〉化する可能性があるらしいため、治療の際には少しずつ様子見をしながら使用している。
また、神狩屋自身はいかなる外傷を負っても、意思とは関係なく瞬時に〈効果〉が発動するため、決して肉体的な損傷で死ぬ事はできない。
なんらかの異能保持者に用いた場合どうなるかは不明。
……正しくは〈八尾比丘尼〉。人魚の体の一部を口にした者が不死身になるように、神狩屋の肉体の一部を許容量以上に取り込んだものは不死身の人魚になる。
人魚と言っても美しいものではなく、全身から鱗や小魚を生やした醜い不死身の〈異形〉と化す、黄泉の存在。

神狩屋自身はこれ以外に能力は持ちえないが、不死身ゆえに骨折など厭わず肉体の力を発揮できるためおぞましいまでの力を発揮することができ、痛みや自らの負傷も気に懸けず行動が可能。


【人物背景】
泡禍に対処する「断章騎士団」の支部、神狩屋ロッジの世話役。通常は拠点を構える店名の「神狩屋」で呼ばれる。
大学在学中に入院した病院で、後に婚約者となる志弦と知り合い、駆け落ちをした。しかし、志弦は神狩屋に浮かび上がった〈神の悪夢〉による〈泡禍〉の犠牲となり、自殺している。
その後は自殺を試みるも先述の断章ゆえに死ぬことが出来ず、仕方なく生きる理由として「断章騎士団」に所属、団員のために動いていたが……
友人、役目、義務などに拘っているふりをして嘘の生を嘘の生き甲斐で満たしている…その実生きることなどどうでもいいと考え、強烈な自殺願望を抱き続ける生ける屍。
役目自体はそれなりに気を紛らすことはできていたのだが、自分と同じく恋人の死を悪夢として抱えた友人が命を落としたことで糸が切れる。
かねてから目をつけていた自分を殺せる〈断章保持者〉に殺されようと画策した、その最中の参戦である。
原作中では最後に自らの断章により多くの人を異形に変え、その解決のために殺されることになる……彼の望み通りに。

強烈な自殺志願者にして究極の無神論者。
死後の世界や幽霊など一切信じず、死を求めるのも恋人のいない世界に一切の意味を感じていないから。
死後に再会できるとか輪廻だとか、死者の蘇生などどう辿っても考える男ではない。
『愛する人を失う』という恐怖を真摯に抱えた人に対して「死後の世界や霊魂を信じているのになぜそんなことを恐れるのか?」などと言ってのけるほどである。


【方針】
神狩屋は目的のためならば何でもする。誰かの恨みを買って殺されようとするし、誰かに同情されて殺されようとする。
カーズは目的のためなら何でもする。人質も取る、奇襲もする、影武者だって使う。


664 : ◆yy7mpGr1KA :2015/01/08(木) 21:00:27 6x0V/ICs0
はつかねずみがやってきた。
とうかは、おしまい。


665 : ◆devil5UFgA :2015/01/09(金) 01:59:12 yFIuwOF.0
一ヶ月がそろそろ経とうとしてるので、ちょっと投下します、魔人アーチャーです


666 : カイン&魔人アーチャー ◆devil5UFgA :2015/01/09(金) 02:00:22 yFIuwOF.0

「いい具合に、澱んでいるじゃぁないかの」

魔人アーチャー、織田信長は広大な東京を眺めながら呟く。
目の前の東京は、偽りであるはずの東京は、確かに息をしていた。
邪が、魔が、都市の中に導かれている。
造物ではあり得ない、ねじ曲がったものが溢れている。
聖杯が息の音を上げつつある。
揃いつつある。
複数の英霊が、複数の奇跡の願い手が。

「準備は整いつつある」

声と同時に、カラン、コロン、と音が響いた。
下駄の爪先が地面を叩く音と、遅れて下駄の踵が地面へと突く音だ。
どてらを着込んだ銀髪の男。
世間から、世界から切り離されたような、気配の薄い男。
やはり薄い笑みを浮かべながら、魔人アーチャーへと男は近づいてくる。

「いやはや、なんともね。マスターも落ち着かないんじゃないのかの?」
「慣れているさ。お前が考えている以上に、俺は長い時を生かされている」

その男の名は、カイン。
原初の罪を背負った男、大地を血で穢した男。

「永遠の魂の牢獄、無意味なことだ」
「罪の始まり。まあ、人間だもの、是非もないねぇ」
「そういうことだ」

血の罪に与えられた罰は永遠の牢獄。
永遠の生命を与えられた、劣化しない、腐らない魂。
それこそが魂の永遠の牢獄。

「で、どうするかの」
「お前は決まっているだろう?」
「聖杯を利用させてもらう。アレは良い、良い兵器になる。
 日ノ本を守るに過ぎたるほどの」
「唯一神を殺すのはメシアだ、となると、聖杯より生まれし物ならば唯一神を殺せる」

カインの目的はただひとつだ。
己を呪い、罰を与えた唯一神の打倒。
カインである限り、永遠の牢獄の中で呪い続けた夢。


――――それは『昭和の大日本帝国の一員である、たった今現在』のカインでも例外ではない。

.


667 : カイン&魔人アーチャー ◆devil5UFgA :2015/01/09(金) 02:01:44 yFIuwOF.0

「危機がある、日ノ本は狙われている」
「いつものことだ。お前が英霊ですらない、生存時の瞬間ですら唯一神は日本を狙っていた」

神々の代理闘争、そんな戦争は確かに存在する。
己のために、人を使って、人が戦争する。
そんな戦争だ。
『魔人アーチャーを召喚した軍人』が所属していた大日本帝国が参戦した、第二次世界大戦がそうであるように。
『魔人アーチャーが聖杯を改造している瞬間に現れたカインという日本軍人』の向かう第二次世界大戦がそうであるように。
神々の代理戦争は、人と神話の歴史であった。

「日の本が危険に晒されている、天魔の類によって。
 儂にはそんな理由があれば十分じゃ」

それを、目の前のマスターから聞かされた。
ならば、立たざるを得なかった。
どのような逸話で語り聞かれていようとも、織田信長は日本の英傑だからだ。
そして、神代の存在であり、神の御子とも繋がりのあるカインとの共同によって聖杯を完成させた。
日ノ本の国を天魔より救うために。


668 : カイン&魔人アーチャー ◆devil5UFgA :2015/01/09(金) 02:02:35 yFIuwOF.0

「正しくはないな。悪魔は何もしない、ただ、人の心に己の思想を染み渡らせていく」
「第三帝国もかい?」
「アレは分かりやすいほどに、オーディンの意思がある。
 もちろん、総統として動く者の意思も、理念も、野心も存在する。
 しかし、その全てを十全に理解し、本人の意思を介在して操るのが悪魔だ」

死と詩を司る神、北欧の主神オーディンからの神託を授かったアドルフ・ヒットラー。
彼の者は神の一因である御子を殺しめた聖槍・ロンギヌスの槍を手にした。
その瞬間、彼の者が手にした槍はグングニル、勝利を導く槍となる。
彼の者は神の一因である御子そのものである聖杯を手にした。
その瞬間、聖杯は神の御子ではなくなった。

『崇めていたものを別のものへと変える』

貶めるとは、そういうことだ。
崇められ、ある種の幻想であることを前提とした崇高を、現実的な、頭のおかしな行動へと変える。
唯一無二の神を、オカルティズムへと貶めた。
頭のおかしな執着のものへと貶めるのだ。

「アレが行ったことには全ての意味がある。
 『知恵』と『知識』、そして、『闘争』という点においては上回るものはない。
 第三帝国の専横は、そのまま世界を鉤十字の旗の下に置いても良し。
 例え負けても、エインヘリヤルの増員にも繋がる」
「第三帝国だけかい?」
「オリュンポス神族、天津神も、だ。
 日・独・伊、あらゆる神々が大戦に『乗じて』、ヘブライへと仕掛けた。信仰を得るためにな。
 お前が東京の聖杯戦争で上等な信仰補正を得られるように、信仰は存在すら不定形である神魔にはお前たち以上の意味を持つ」
「それは、それは」

信長は、パンパン、と手を叩く。
内部に異教神の住処を宿し、大いに貶められたギリシアの神々。
ティタン神族まで出張ってくればややこしくなるが、結局はオリュンポスの神々はヘブライに制止させられた。
本来、あの半島にはオリュンポスだけでなく、様々な出自の神がある。
ベルの神族もまた、地中海の神。
多重に絡み合った、複数の信仰の力によって、イタリアは早期に脱落した。
天津神は粘っている。
日本という国は、ある意味で複雑だ。
全てを塗り替えた、塗り替えたが、しかし、問題がある。
天津神の前、あるいは同時。
高天原に登らなかった、登らせなかった神々。
国を譲らせた神が、抑えつけられた神々が居る。
乗じるというのならば、今がそれだ。
いずれ、内部から壊れる。

「第三帝国はヘブライ神族に唆されたスラブ神族によって止められるだろうな。
 第三帝国の本拠によって最も脅威であるのはヘブライじゃない、スラヴだからだ。
 踊らされてることを理解しても、踊らざるをえない。
 ……大日本帝国もまた、いずれ終わる。
 相手はあの唯一神だ」
「えらく買うじゃぁないか、伴天連の神を」
「あの傲慢なる唯一神は宇宙の大いなる意思のアバターだからだ」

簡素に応えた。
その中に隠し切れない憎しみを秘めた男だった。
直哉という罪人はこの世の全てを知り、その全てを憎む男だった。


669 : カイン&魔人アーチャー ◆devil5UFgA :2015/01/09(金) 02:03:07 yFIuwOF.0

「唯一神は殺すことすら難しい。難しいが、誰もが殺そうと思うぐらいには、不死身ではない」
「ほうほう」

魔人アーチャーは面白そうに相槌を撃つ。
カインは憎悪を隠そうともしない。
天を恨む、大地を穢した男の怨みは深い。
この魔都に相応しい物だ。

「だが、あの天に煌く、傲慢なる聖四文字の唯一神は何度でも生まれてくる。
 宇宙の大いなる意思が人々の集合無意識を読み取った瞬間、奴は何度でも君臨する。
 人は太陽なくして生きていけない弱き生き物だからだ。
 そして、古今に至るまで、太陽とは唯一神であるからだ。
 唯一神が祖神達を悪魔に貶めて、勝ち取ったからだ」

歯を軋ませながら、怒りをむき出しにして直哉は唯一神への憎しみを口にする。
魂を永遠の牢獄へと閉じ込めた、己の意思の死を迎えることが出来ない罰。
罪と罰の始まりである男。
直哉の魂の真名は、カイン。
弟・アベルを殺し、この大地に人の血を染み込ませた始まりの罪を背負った男。
唯一神の意思を裏切った、あまりにも多すぎる人間の一人。
唯一神の意思を憎む、あまりにも多すぎる罪人の一人。

「つまり、マスターの思惑としては……『新たな太陽を作る』ということかの」
「太陽は俺の弟、アベルだ」
「是非もねえなぁ、おい! いや、誤用だけど気にすんなよ!」

カカカ、と魔人アーチャーは笑った。
唯一神を殺しても宇宙の大いなる意志が人間の意志を読み取り、蘇らせる。
ならば、唯一神の代わりとなる太陽を用意する。
論理的といえば論理的だ。
しかし、唯一神を殺すというただ一点に置いて言えば、もう一つの答えがある。

「人を滅ぼすかの?」
「ことはそう単純ではないだろうが……しかし、単純で済むかもしれないな」
「そいつぁ見逃せんっつうの、わしも英雄よ」

笑みに鋭さが増す、この魔人は笑ったまま人を斬り捨てる女傑だ。
己の中の何かに従い、生き抜いてきた魔人だ。

「お前は神を殺せば良い、天下布武の旗を掲げる第六天より来たりし魔王。
 今までそうしてきたように、な」
「とりあえず聖杯手に入れようぜ、ってことかの!」

先ほどまで向けていた殺気を消し、カラカラと笑ってみせた。
手にかけた刀を取り外す。
刀とともに殺意は納めた。

「俺の弟を万魔の王、ベルの王とする。唯一神をしてその存在自体を『敵対者』と貶めた『ベル』へと、な」
「いいんでね、そういうのもさ!
 悪魔が神様なら、わしもワンチャンスあるしの」

あくまで、聖杯を前にしての同盟だと口にした。
カインは笑った。
魔人アーチャーも笑った。
神を前にして抗うために、彼らは今を笑った。


670 : カイン&魔人アーチャー ◆devil5UFgA :2015/01/09(金) 02:04:04 yFIuwOF.0

【マスター】
カイン(直哉)@女神異聞録デビルサバイバー

【マスターとしての願い】
唯一神の殺害、及び、弟であるア・ベルのベルの王としての覚醒。

【weapon】
-
【能力・技能】
魂が神代の時代より永劫生き続けているカインは、正しく神代の天才である。
魔術と関連されるものに高い適正と知識を持つ。

【人物背景】
聖書に記されている『カインとアベル』の逸話に記されたカインその人。
神から肉を要求され、大地を耕すことが仕事であったカインは肉を所持しておらず、弟を殺して神に捧げた。
殺人という罪を犯したカインは、神によって永遠という罪を与えられる。
以来、真の意味で死ぬこともなく魂が摩耗することもなく生き続けている。

本編開始の遥か以前、第二次世界大戦中より参戦。

【方針】
聖杯を手に入れる。


671 : カイン&魔人アーチャー ◆devil5UFgA :2015/01/09(金) 02:04:55 yFIuwOF.0
投下終了です


672 : ◆9u1Bq1HCTk :2015/01/09(金) 20:47:26 Y0ynQDe60
投下します


673 : アート&アサシン ◆9u1Bq1HCTk :2015/01/09(金) 20:48:03 Y0ynQDe60
僕がフリーマムや最恐と共に行動していた頃、裏社会の中で奇妙な噂が広まっていた。
なんでも、「月のない夜に出てくる紅い月が、夢を叶えてくれる」というものだ。
最初にそれを聞いた時は、よくある噂として聞き流していた。
確かに僕には叶えたい願いがある。夢がある。それは、罪を集める者として、ミニマムを根絶しなければならない。
だが、その願いを叶える事は僕の手でも成し遂げられることでもあった。
だから、そんなロマンチックな噂に関心を寄せるようなことはこれっぽっちもなかった。


実際に、紅い満月を見るまでは


真っ暗な夜空に浮かぶ不気味な虚像。何者をも魅了するような、魔性の輝き。
他の人も見ていたかどうかはわからないが。それを見ればすぐにあの噂を思い出させる、衝撃的なものだった。
本当に願いが叶えられるのではと、信じられるほどに。

だが、そのような感傷に浸ったのはほんの一時の間だけ。すぐさま僕は現実に戻っていた。
目的を成す為には立ちはだかる壁も多い。だが、例えどんな壁であろうと僕は成し得てみる。
例え友達を失う事になろうとも、ミニマムが原因で亡くなった弟のために、どの様な事でも成し遂げる覚悟もある。
だから噂の事はすぐに忘れ、明日に備えるためにまた闇へと紛れ込んだ。


それがまさか、本当にその噂を体験する事になるとは―――


 ◆


「はじめまして、アート君。いや、ここはマスターって呼ぶべきかな。ボクは『キルバーン』。アサシンとして喚ばれた、君のサーヴァントさ」

気付いた時には、僕は見知らぬ場所にいた。そして全身黒づくめで奇抜な恰好をした道化師と対面した。
何も感知する間もなく連れ去らわれるなんて想定外な事態に驚愕し、当然ながら警戒した。
目の前の人物が誘拐犯ではないかと疑いの目を向けたが、僕の緊張など目もくれず彼は色々と語りかけてきた。

紅い月の事、聖杯戦争について、ムーンセル、再現された東京、サーヴァント、令呪、魔術、等々…

要約すると、願いを叶えるための儀式に招待された、ということを教えてくれた。
俄かに信じがたいが、しかし目の前の存在だけでも僕の常識の外にいるということはすぐに分かった。
僕がある程度納得したところでアサシンは問いかけてきた。

「それでマスター、君は何を願うんだい?」

つまり、覚悟はあるのか、と。
それに対して僕は、この聖杯戦争を勝ち残り聖杯を手に入れてみせる、と宣言した。
こちらに召喚されてしまった以上、元々立てていた計画は頓挫した。
ならばハイリスクではあるものの、聖杯で願いを叶えられるのならばそれに託すしかない。
それに元の計画でも不安要素は多数はあった。それが無くなったとも思えばいい。
何より、ノーウェアの面々とも争わずに済む。ナイス君を、この手に掛ける必要もなくなる。

とはいえ、それは聖杯が絶対の物であるという前提があればの話である。
無論願いの為に人を殺める事は全く厭わない。しかしただの殺戮者になるつもりもない。
参加者全員が望んで戦いに身を投じるのならばその首を狙おう。だがそれ以外の参加者もいるのでは。
このような儀式を行う思惑は何だ。この戦争から途中で降りる事が出来るのか。
現状でわかる事はアサシンが語ったことのみ。それ以外の情報もあるのかもしれない。
無知のままでは、逆に下手を撃つかもしれない。見誤らないためにも、聖杯戦争を見極める必要がある。

「へぇ、ただ優勝を狙うだけじゃないんだ」

だから僕はアサシンに行動方針を伝えた。
優勝を狙いつつも無闇に騒ぎ立てずに静かに情報を集める事。
他の主従を見つけ観察し、場合によっては接触し情報交換や協力も得る事。
逆に無益と判断したらアサシンに間引いてもらう事。
自分たちが優位になれるように行動し、最終的に勝ち残れる状況に持っていくのが理想だ。
幸い偽物の東京での僕の役割は本庁勤務の警察官だそうだ。なんという皮肉だろうか。
ともあれ、立場も情報収集も他者より優位に立てているだろう。

「つまりボクの本領が発揮できるってことだね、特に問題はないからそれでいいよ」

思いのほか軽い感じで受け止められたが、これで彼との契約が結ばれることとなった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


ナイス君、ミニマムの孤独から解放されるのももうすぐかもしれない。

友達である君の死と、君の大切な人の絶望で終わるはずだった結末が変わるかもしれない。

******、僕は君を―――−−−‐-‐…


674 : アート&アサシン ◆9u1Bq1HCTk :2015/01/09(金) 20:48:52 Y0ynQDe60
【マスター】
アート @ Re:_ハマトラ

【マスターとしての願い】
罪(ミニマム)を根絶する

【能力・技能】
身体にいかなる怪我を負っても無傷の状態に戻る「再生のミニマム」。
発動条件は心臓にある中枢神経を損傷すること。

人並みならぬ努力家であり、優秀な頭脳の持ち主。
一通りの武道も心得ていて、警察官としての技能も習得している。

【人物背景】
特殊な能力・ミニマムの保持者達を襲撃し、彼らのミニマムを奪っていく「罪を集める者」。

元々はミニマムホルダー達の育成機関であるファクルタース学園出身だが、アートだけは滞在中にミニマムを覚醒させることができなかった。
能力が無い弱者であることにコンプレックスを抱いていたが、それを補うべく勤勉と鍛錬を必死に重ねた。
その甲斐もあって21歳の若さで警視というエリート警察官となり、持ち前の強い正義感で職務に励んでいたが、
ミニマムホルダーたちの脳髄を狙った謎の「連続猟奇殺人」を追う最中、犯人・モラルからある事実を告げられた後に射殺された。
しかし、心臓に銃弾を受けた事で「再生のミニマム」が覚醒し蘇生。
同時に過去に学園で起きた事故で「自分が弟・スキルを殺した記憶」が蘇ったことで、彼の罪たるミニマム全てを根絶すべく暗躍を開始する。

【方針】
優勝狙い。
ただし序盤は情報収集のためにマスターであることを隠しながら行動し、戦闘もなるべく回避する。
場合によっては他者との情報交換や協力にも応じる。

【備考】
ミニマム能力により、通常よりも魔力回復が早まってます。
ただし、異常なほどではない、ちょっと優秀に収まる範囲です。


675 : アート&アサシン ◆9u1Bq1HCTk :2015/01/09(金) 20:49:14 Y0ynQDe60
【クラス】
アサシン

【真名】
キルバーン@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
使い魔(道化):B
一つ目ピエロのような魔物・ピロロを使役する。
戦闘には参加しないが、回復や呪文を使いサポートに回る。
また、キルバーンとピロロは空間に関係なく意志疎通ができる。

【宝具】
『死神の笛』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:10
死神を彷彿させるような大振りの鎌。柄の部分は笛にもなっている。
鋭利な刃には小細工が施されており、鎌を回転させると風切り音により相手の感覚を奪うことができる。
その死の音色を聞いたマスターやNPCの五感を奪い、元々人であったサーヴァントならば筋力・敏捷を一つダウンさせる。
ただし、人の存在から遠ざかるほどに効き目は薄くなる。
また、繊細な武器であるため、少しでもヒビが入ると上記の超音波を出せなくなる。


『大魔王の死神(キルバーン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
誰にも知られなかったある秘密により、己が存在自体が宝具となった。
何度倒されても復活した逸話から、たとえ絶命する攻撃を受けても、ムーンセルの消去から暫く経った後に復活することが可能である。
このカラクリを見破れない限り、彼を倒すことは不可能ではある。
ただし、致命傷を回復するには相応の魔力が不可欠であるため、何度も復活するのは難しい。
また、キルバーンの血液は魔界のマグマと同じ成分でできており、通常の武器を溶かしてしまうほどの超高熱・強酸性をもつ。
たとえ宝具であれど、腐食作用により血液を浴びた場合はランクが一つ落ちてしまい、威力・能力も弱まってしまう。
この血液を応用し、身体の一部を魔力で点火させ巨大な火球として相手に投射する攻撃「バーニングクリメイション」を奥の手として使うことができる。
その他、頭部の髪飾りに完全不可視の刃「ファントムレイザー」を隠し持っている。


【weapon】
メインの獲物は『死神の笛』。
サブに細身のサーベルを持っている。

なお、生前には『殺しの罠(キル・トラップ)』を使用していたと伝えられているが、
「ダイヤの9」以外の罠が描写された伝承(物語)がないため、「ダイヤの9」以外は使用できない。
他にも『決闘の審判(ジャッジ)』を所有していたが、アサシンのクラスで召喚されたため使用できない。

【人物背景】
冥竜王ヴェルザーの部下にして大魔王バーンの協力者。
冥竜王の勅命を受け、もしバーンの地上侵攻計画が失敗した場合は彼を暗殺するよう「キルバーン」と命名された。
バーンと対面した時からその真意を察知されたが逆に気に入られ、大魔王からの誘いもあり魔王軍の客人として仲間になる。
魔王軍の中でも軍団長レベルの実力を誇るが、基本は非道な策を弄して相手を貶める事に喜びを感じる、陰湿かつ残酷極まりない性格。
一方で自分のプライドを傷つけられた時は、相手の命を奪うためにあらゆる手段で付け狙う執念深さを持つ。
当初は前線に赴くことはあまりなかったが、勇者一団がバーンパレスに侵入してからは暗殺者として罠を張り巡らせ、彼らを幾度となく危機に陥れる。
しかしアバンが登場してからは逆に辛酸を舐めることとなり、怒りに燃えるキルバーンはアバンに復讐するため一対一の決闘を申し出る。
結局は尋常な勝負をせずに卑怯な手段でアバンを抹殺するが、奇跡的に復活したアバンの罠により敗れ去った。

【サーヴァントの願い】
大魔王バーンを打倒したその後の世界に復帰する。
その後の予定として、新たな戦いで傷つき弱った勇者達の前に姿を現して驚愕と絶望の顔を拝みながら彼らを殺す。

【基本戦術、方針、運用法】
こちらは姿を見せないように立ち回り、弱った相手の隙をついて罠に嵌めたり、相手の動きを封じて嬲り殺す。
勝利のためならどんな非道な手段も朝飯前。卑怯は褒め言葉。
逆に正面切っての勝負はしないが、万が一戦闘になっても多少は凌げる。
通常の戦闘であれば数度の打ち合いで逃げる。
逃げるのが難しい場合は、傷を負う代わりに相手の武器・宝具を腐食させたり、ワザと退場したフリをして後々復活する。
ただし、おいそれと手の内を晒すつもりはなく、復活も魔力消費が多いため、やはり基本に忠実、アサシンらしく闇討ち狙い。


676 : アート&アサシン ◆9u1Bq1HCTk :2015/01/09(金) 20:50:21 Y0ynQDe60
 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇






どうやらマスターの目も上手く欺けるようだね。
うん、やっぱりボクの正体には気付いていないようだね。
まさか今まで応対していたボクが機械人形で。
ただの使い魔にしか見えないボクが“真のキルバーン”だなんて。

クククククッ!!

しかし、なかなか使えそうなマスターに出会えたのは幸運だったね。
そうだね、頭が回って行動力も悪くない、何より他者を蹴落とす覚悟もある。
すぐさま優勝狙いに定めて、ボクが立ち回りやすい方針を立ててくれた。
そんな君に敬意を表し、今は素直に従ってあげようじゃないか。

だから、ボクの願いを叶える為にも期待に応じてちょうだいね、アート君





【クラス】
アサシン

【真名】
ピロロ@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:B 幸運:B 宝具:B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
正体秘匿:A
サーヴァントとしての素性を秘匿するスキル。
たとえ契約を結んだマスターでも、裁定者であろうともピロロのステータスを視認出来なくする。
代わりに宝具『大魔王の死神(キルバーン)』のステータスが表示され、ピロロは使い魔としか認知されない。
ただし自ら正体をばらした場合はその限りではない。

自己保身:C
自身はまるで戦闘力がない代わりに、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』が無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。
もし宝具が倒されても、相手が弱者にも容赦ない場合でない限り高確率で危機から逃れることができる。


677 : アート&アサシン ◆9u1Bq1HCTk :2015/01/09(金) 20:50:37 Y0ynQDe60
【宝具】
『大魔王の死神(キルバーン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
ピロロの正体を隠匿・偽るための宝具。その正体はピロロが操る機械人形。
生前、敵対した勇者達や協力していた魔王軍の誰であろうとも人形を本体と思い込ませた振る舞いから、
たとえ契約者であろうとも、スキル“真名看破”であろうと、この宝具がサーヴァントであると誤認し、上記のステータスが表示される。
何度も復活する秘密も、ピロロが壊れた人形を修復しているに過ぎない。
さらに何度も復活したという逸話を再現するため、ムーンセルが脱落者を消去する現象も偽装できるようになっている。
この復活は所有者ピロロを討つか、“頭部を叩き割る”もしく“人形を完全に消滅させる”事で止める事ができる。
ただし、後者の破壊によるものだと宝具『黒の核晶(くろのコア)』を起爆させかねない。


『黒の核晶(くろのコア)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~999 最大補足:???
魔界で禁忌とされている伝説の超爆弾。
宝具『大魔王の死神(キルバーン)』の頭部に隠されており、それが起爆すると大陸一つが消し飛ぶ程の威力を持つ。
ただし、あまりにも規格外な破壊力を持つため、制限により爆弾は超小型となり爆発の範囲も抑えられている。
所有者の魔力で起爆させるほか、火炎系の呪文などで誘爆させることができる。
通常であれば爆弾を凍結すれば爆発を阻止することができるが、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』の魔界のマグマにより凍結させる事ができない。
なお、この宝具が使われた時、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』も共に消失する。


【weapon】
宝具『大魔王の死神(キルバーン)』が唯一の武器。
回復と氷系の呪文は使えるが、戦闘には向かない。

【人物背景】
キルバーンの使い魔としていつもそばにいた一つ目ピエロ。
しかしそれは仮の姿、彼こそが冥竜王ヴェルザーに遣わされた“真のキルバーン”であった。
普段は自分より大きい機械人形に“キルバーン”を演じさせ、自身もそれに付き従う魔物として演じていた。
その結果、人形の方が警戒される一方、非力である本体には害が及ぶことはなく、最期までは生き残る事ができた。
死闘の末に大魔王バーンを倒した勇者ダイ達の前に突如姿を現し、賞賛の言葉を贈ると共に自身の秘密をばらす。
そしてバーン暗殺用に用意していた『黒の核晶』を勇者達の前で起爆させ、彼らが絶望する顔を拝みながら魔界に帰ろうとした。
しかし即座に反応した勇者達の攻撃でピロロは倒され、『黒の核晶』も上空で爆発させられたため、勇者達を抹殺することはかなわなかった。

【サーヴァントとしての願い】
大魔王バーンを打倒したその後の世界に復帰する。
その後の予定として、新たな戦いで傷つき弱った勇者達の前に姿を現して驚愕と絶望の顔を拝みながら彼らを殺す。

【基本戦術、方針、運用法】
本体ピロロはひたすら目立たず、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』を使って暗躍する。
宝具『黒の核晶(くろのコア)』は最後の切り札。
これを使ってしまったら全ての宝具を失ってしまうため、その時は聖杯戦争を諦めるしかない。
ゆえに、宝具『大魔王の死神(キルバーン)』が致命傷を負ったら一度姿をくらませて「アサシン一騎脱落」と周囲に思い込ませる。
その後聖杯戦争が佳境に入り決着がついたところで再登場、宝具『黒の核晶(くろのコア)』で全員脱落させる。
というのが最上の策。
ただし、ルーラーの探索機能やムーンセルが生存・脱落を把握しているため、脱落者リストなどを偽る事は出来ない。
素性とカラクリがバレないように上手く立ち回りながら暗躍と嫌がらせをしよう。


678 : ◆9u1Bq1HCTk :2015/01/09(金) 20:51:47 Y0ynQDe60
以上で投下終了します。


679 : ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:01:53 fnsW2K7U0
みなさん投下乙です。投下させていただきます。


680 : 姉帯豊音&ライダー ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:02:52 fnsW2K7U0


美しき女一人ありて、長き黒髪を梳りていたり。顔の色きわめて白し。
身のたけ高き女にて、解きたる黒髪はまたそのたけよりも長かりき。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


姉帯豊音は閉鎖された空間にいた。

彼女の周囲には同年代の人間がいなかったし、現代において常識とも言えるインターネット機器すらない。
そんなド田舎に彼女は暮らしている。
唯一、テレビがあり。
それで視聴した麻雀を独学するという隠れた才能を発揮していた。
しかし、閉鎖された空間では猫に小判で豚に真珠、宝の持ち腐れに過ぎない。

豊音の住む村は不便なうえ、色々とややこしい規則のようなものがあって
なかなか満足に外の世界へ踏み入れる事すら叶わない。
まるで、彼女を封じ込めるかのように。
彼女を外に出してはならぬように。
ソレは機能し続けていた。

そんな閉鎖された空間にも、どの風に乗ってきたのか分からない噂が広まった。


紅い月があらゆる願い事を叶えてくれる。
馬鹿馬鹿しい夢物語の噂が。


願い事かぁ、と豊音はほんわかと考えた。


「東京に行ってみたいなぁ」

「東京は色んなところから色んな人が集まるんだよー」

「だから東京で色んな人に会って、お買いものしたり、遊んだりしたら。ちょー楽しいよー」


『東京』に行きたい。

豊音の願いを嘲笑うかのように、紅い月が怪しく輝いた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


あの恐ろしい夜の世界を統べる不死身の化物が
ひどく哀れな弱々しく泣き伏せる童に見える


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


681 : 姉帯豊音&ライダー ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:03:50 fnsW2K7U0


ライダーを召喚したのは女性……どこか幼さを感じさせるから少女かもしれない。
身の丈はライダーと同等なほど高く、女性の身長とは思えぬ印象を受けてしまう。
それでもライダーは眉一つ動かさない。
どんな人間であろうとも、ライダーはそれ以下の化物なのだから。
……だが。


「わ〜! ちょーかっこいいよー!!」


冷酷な雰囲気とはまるで違う、のんびりとした間の抜けた口調で言った。
キラキラと子供のような目で眺める彼女にライダーは問う。


「問おう、お前が私のマスターかね。人間(ヒューマン)」
「姉帯豊音だよー 豊音って呼んでいいよ〜」


かつてライダーが主として仕えた人間たちとは違う。
純粋無垢な少女であった。
体だけは成長して、中身はまるで成長していない。そんな人間。
到底、ライダーのマスター足りうる人間ではなかった。


「ライダーさんはどんな英雄〜?」
「私は化物だ」
「んー………? 妖怪さん??」
「吸血鬼と言えばいいか」
「吸血鬼!?」


あわあわと困惑しながらも、豊音は興奮もしていた。


「うわぁ〜! 吸血鬼と会ったの初めてだよー!!」


別にこれは、豊音が田舎娘であろうかなかろうが関係ない。
常識的に考えて、普通の人生で吸血鬼に出会う事はまずありえないのだ。
よほどの事に驚いてそんな反応をしてしまったのかは定かではないが。
彼女はどこからともなく手帳とペンを取り出し


「さっ、サインしてくれるかなっ」
「……サイン?」
「ライダーさんのサインが欲しいんだよー」


682 : 姉帯豊音&ライダー ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:05:11 fnsW2K7U0


行動の意図すら掴めないが、何か減るものではないしライダーは名を書き込む。
達筆な筆記体に豊音は満足げな表情を浮かべていた。
いよいよ、ライダーが彼女に問う。


「お前はこの闘争で何を望む?」
「願い事はもう叶っちゃったんだよー」


豊音は『東京』へ来る事を望んだ。
そして、聖杯によって再現されたとしても舞台が『東京』であることには変わりない。
すでに望みは叶った。
しかし、まだ何かを望むのならば


「ここに来た色んな人たちと会いたいよー
 ……まだ、何も知らないから。色んな事を知りたい」


彼女は本当の意味で箱入り娘であった。
『東京』も、交通機関の諸々や、常識や流行から、何から何まで
当然、闘争すら知る訳ない。

それでも豊音はライダーに言う。


「ライダーさんは色んな人と戦いたいんだよねー」
「あぁ、そうだとも。戦争は楽しい」
「それじゃ一緒に頑張ろー」
「……殺せるか? 無縁な人間を。殺すのはお前の殺意だ」
「そうだねー 戦いたくない人と戦っても駄目だよねー ちゃんと考えるよ〜」


豊音はライダーのサインが書き込まれた手帳を見る。


「戦わなかった人にも、戦う人にも。ちゃんとサインは貰うよー」

「大事な思い出の記念になるんだよ」

「だから、ライダーさんと会えたのも思い出なんだよー」


みんな忘れない。
殺す人も、殺さない人も。


「これからきっと。辛いこともあるし、悲しいこともあるよね。
 でも、ここに来れなかったら……そんなことも出来なかったんだよ………」


683 : 姉帯豊音&ライダー ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:05:42 fnsW2K7U0


これが彼女の望んだ『東京』へ至る術だったのか誰も分からない。
しかし、聖杯戦争がその術ならば。
彼女はどんな事があっても聖杯戦争をする。


「ライダーさんと一緒に戦う事を楽しむよー」


彼女はそう笑う。
何と初々しい闘争心なのだろうか。
まるで闘争を強引に知った子供のような、芽を出した植物のような柔らかな殺意。

果たして彼女は戦えるのか。
肉体的という意味ではなく、精神的な意味で。

純粋無垢な彼女に対してライダーは応えた。


「それでいい。まだ、それでいいとも」


彼女の、生まれたての闘争心を愛した。


「これから殺し殺されよう。それが闘争だ」
「うん。どんな人と会えるか楽しみだねー」



無知な少女と闘争を求める化物は、こうして『東京』へ至った。


684 : 姉帯豊音&ライダー ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:06:45 fnsW2K7U0
【クラス】ライダー
【真名】アーカード@HELLSING
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:B 耐久:D 敏捷:C 魔力:C 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:D 
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
 
騎乗:D-
 近代的な乗り物は乗りこなせる。扱い方が雑。

【保有スキル】
吸血鬼:A
 夜を統べる化物。再生能力と変身能力等、数多のスキルを保有している。
 メジャーな弱点は嫌悪感を抱くだけで効果はない。

【宝具】
『白銀と漆黒』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
対化物用と対人間用。それなりに神秘性のある二丁の銃。

『最後の領土』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
ライダーの棺。何故か手足が生えて、自立的な行動が可能。
これに乗って(?)移動も可能だが、棺が動くかは気分次第らしい。
ライダーがコレで睡眠を取ると魔力が回復する。

『叡智の鉄槌』
ランク:D 種別:対界宝具 レンジ:1〜50 最大補足:50人
近代科学の結晶。偵察機・SR-17。ライダーは籠城を破壊する為だけに使用する。

『拘束制御術式』
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大補足:-
発動するとライダーの体が不定形になり、犬の使い魔が登場したり、無機物と同化することが可能。
ライダーが取り込んだ命を解放する第零号を発動するには、マスターの意思と『最後の領土』が必要。

『デミトリ号の悲劇』
ランク:A 種別:- レンジ:- 最大補足:-
かつて一つの船を蹂躙し、幽霊船へと変貌させたライダーの逸話によるもの。
乗り物に纏わる英霊、それそのもの、何かに騎乗(乗っ取っている)している英霊
宝具等を持ち合わせる相手との戦闘中、ライダーの全パラメーターが1ランク上昇する。
また、ライダーと戦闘が続くと嫌がおうにも宝具等が摩耗し
乗り物そのものの英霊ならば戦意喪失に陥り、魔力が極端に減少してしまう。

【人物背景】
人間を止めてしまった人間に滅ぼされるべき弱い化物。

【サーヴァントとしての願い】
殺し、殺される。人間に滅ぼされる。即ち闘争。


685 : 姉帯豊音&ライダー ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:07:18 fnsW2K7U0
【マスター】姉帯豊音@咲-saki-

【参加方法】
紅い月に『東京』へ行く事を望んだ。

【マスターとしての願い】
色んな人と会って、色んな事をする。
辛い事、楽しい事を体験する。
あとサインを貰う。

【weapon?】
サインセット
 色んな人からサインを貰う為の道具

【能力・技能】
麻雀をやってると魔力的なオーラを発揮する。多分、魔力はある。
麻雀に関しては一般人が彼女に勝つことは、ほぼ不可能。

【人物背景】
身長197cm、ド田舎に住む女の子。
岩手・宮守女子に入学する前からの参加となる。



【基本戦術、方針、運用法】
ライダー殺しのライダー

問題はたった一つ。
ライダーをうまく扱えるか。
豊音がライダーの仕えるべきマスターとなりえるかである。

しいていうならば二人とも存在感が凄い。


686 : ◆3SNKkWKBjc :2015/01/10(土) 10:07:38 fnsW2K7U0
投下終了します


687 : ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:49:20 7MMklgAM0
皆様投下乙です
自分も投下させていただきます


688 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:49:43 7MMklgAM0
 人が人を殺すこと。
 それはとても重いことで、辛いことだと母は言った。
 なれば人殺しの私の命は、どこへと流れ着くのだろうか。
 世界を救ったという功は、多くを殺したその罪に、見合うだけのものだったのだろうか。

 大勢の命を奪った私は、罪の重さに耐えられず、膝を折って座り込んでいた。
 立ち上がり歩き出すことも叶わず、歩こうとする気力すらもなく、ただその場に留まり続けていた。
 私の魂はどこにも行けず、縛られ続けるのだろうか。
 満たされることを許されず、罪に苛まれ続けることが、私に科せられた罰なのだろうか。
 そんなことを考えながら、私は焦点の合わぬ目で、窓の外を見上げていた。

 その時、私はそこに見た。
 いつの間にか訪れていた、夜の暗闇の空を。
 その中心に浮かび上がる、血の色に染まった紅い月を。

 それを認めたその瞬間、既に私の身はそこにはなかった。
 中学校の教室ではなく、見知らぬ街の路地裏に、私は座り込んでいた。
 自動車の通り過ぎる音が、通りから次々と聞こえてくる。
 話し声と靴音が、洪水のように溢れかえっている。
 人の数だけの欲望が、渦を巻くように街を満たし、私の身体にのしかかってくる。
 そんな異様な空気の只中に、いつしか私は放り込まれていた。

 ああ、ここが地獄なのねと。

 美国織莉子はその街に、そんな感想を抱いていた。


689 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:50:17 7MMklgAM0


「――オラクルレイッ!」
 叫びと共に光が奔る。
 街の暗闇を閃光が切り裂き、軌跡を描いて疾駆する。
 コンクリートを縫う流星は、しかしぱりんと音を立て、瞬間粉々に砕け散った。
「くっ……!」
 美国織莉子は歯噛みする。
 焦りに表情を歪めながら、白い装束を揺らして、眼前の存在を睨み据える。
「………」
 それは異様な気配を放つ、甲冑姿の魔人だった。
 最先端都市東京において、中世に逆行したような装束を纏い、槍を携えたもののふだった。
 織莉子はそれを知っている。
 聖杯戦争なる儀式――それを遂行するために招かれた、サーヴァントであることを知っている。
 目の前に立つ英霊が、ランサーのクラスを与えられていることを、目と脳が確かに認識している。
(くだらない……)
 このサーヴァントを扱う者も、それに抗う自分自身もだ。
 織莉子がそれと遭遇した時、ランサーはスーツ姿の女性から生気を吸い取り、アスファルトへと打ち捨てていた。
 何が目的だったのかは知らないが、犠牲者は聖杯戦争とは関係ない、ただの一般人であったはずだ。
 願いを叶えるという報酬に目が眩んだあまり、ランサーを従えるマスターは、そんな人間にまで手をかけたのだ。
 あるいは自分達魔法少女も、ただの人間から見れば、こんなにも身勝手に映るのだろうか。
 くだらないもののためにくだらないことをと、虫唾が走るような心地だった。
(そしてそれは、私自身も)
 こうして足掻いている自分もまた、同様にくだらないことをしているものだと、織莉子は己を嘲笑った。
 当に死んだはずの身だというのに、何を必死になっているのだ。
 断罪を求めたのは他ならぬ、私自身ではなかったのか。
 処刑人は目の前にいる。地獄に住まう死神は、目前にまで迫ってきている。
 だのにいざ対峙してみれば、今更に命を惜しいと思い、みっともなく抵抗している自分がいる。
 滑稽だ。結局我が身が可愛いというのか。罪を背負うと言いながら、全く何という有り様だ。
「………」
 がちゃり、がちゃりと足音が聞こえる。
 死への秒読みを告げる具足が、着実にこちらへと近づいてくる。
 あの槍がこの身を貫いた時、今度こそ自分は死ぬだろう。
 何ゆえか生き延びたこの身体も、今度こそ本物の地獄へと堕ちるだろう。
 それがサーヴァントというものだ。悔しいがそうでない者との間には、それほどの実力差があるのだ。
(厭だ)
 死は恐ろしくないはずだった。
 それだけの罪を重ねてきた自分は、裁かれて当然の人間だったと思っていた。
 しかし、今の織莉子は違う。
 大切な者を喪った。自分の計画に巻き込み、その人生を台無しにしてしまった。
 そして他ならぬ自分も、一度死というものを味わってしまった。
 もうあの想いを味わうのは嫌だ。同じ場所へと堕ちるのは嫌だ。
 こんな所で為す術もなく、惨めに朽ち果てるのは嫌だ。
(キリカ――!)
 死なせてしまった友の顔が、織莉子の脳裏に浮かび上がった。
 一番会いたかった友の名を呼び、織莉子はきつく目を閉じた。


690 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:51:11 7MMklgAM0


 どうしたの、キミ。こんなところに座り込んで。
 うちの生徒じゃないみたいだけど。

 私はたくさんの人を殺したの。
 結果としてたくさんの人を救ったけれど、それでも私には重すぎて、立てないの。




691 : 名無しさん :2015/01/10(土) 14:51:32 7MMklgAM0
.






「――ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」






.


692 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:52:12 7MMklgAM0


 稲妻のような雄叫びだった。
 上空から響いたその咆哮に、織莉子ははっと目を見開いた。
「?」
 どうやら幻聴ではなかったらしい。
 敵のサーヴァントも歩みを止めて、夜空へ視線を向けている。

 ――どん、どん、と音が鳴った。

 鍵がかかって閉ざされたドアを、荒々しく叩くかのように。
 開かないはずの扉を、無理やりこじ開けるかのように。
 月と雲だけがある虚空を、それでもなお叩くかのような音が、織莉子の鼓膜を打っていた。

 ――どん、どん、と音が鳴る。

 いつしか地鳴りを思わせるほどに、重く大きくなっている。
 びゅうびゅうと風が荒れだした。
 通りにあるらしい街路樹の葉が、がさがさと揺れる音が聞こえてきた。
 凍える夜風が吹き荒れて、灰色の雲を走らせている。
 さながら紅い月を中心に、竜巻を生じるかのように、雲が渦を巻いている。

 ――ぴしっ、と割れる音がした。

 その時何もない空に、ヒビが入ったように見えた。
 さながら魔女の結界が、主を喪い消える時のような。
 空間そのものが崩れて、そこに穴を生じるような、そんなヒビが浮かび上がった。
(来る……!)
 あのヒビの向こうから何かが来る。
 扉を叩く音の主が、そこには確かに存在する。
 この東京の空を打ち砕き、現れんとする何者かが、あの空の向こうに間違いなくいる。

 ――ばりん、と砕ける音が鳴った。

 織莉子の左手に痛みが走った。
 そしてその感覚と同時に、夜空が遂に砕け散った。
 境界の向こうにあったのは、それまでと変わらない空だ。
 織莉子をこの世界へと誘った、紅く大きく不気味な月だ。
 しかし、そこには何かがいる。
 両手を広げて舞い降りる、何者かの影が増えている。
「あ……!」
 そしてそれを見間違うほど、織莉子は酷薄な人間ではなかった。
 紅の闇夜に浮かび上がる、漆黒のシルエットを目にした時、織莉子は我知らず声を漏らしていた。
 虚空に棚引く燕尾服は、蝙蝠の翼のように艷やかで。
 金色に輝く左目は、黒豹の眼光のように雄々しい。
 しなやかに舞い降りたその姿は、織莉子が誰よりも待ち望んだ、懐かしい背中に他ならなかった。
 愛というただ1つの動機を謳い、魔女の法則すらもねじ伏せてみせた、強く気高き魔王の背中だ。
「キリカ……!」
 サーヴァント、クラス・バーサーカー。
 その真名を、呉キリカという。
 愛に殉じた最強の守護者は、こんな所にまでも来てくれた。
 こんな情けない女のために、彼女も地獄から駆けつけてくれたのだ。
 何よりも待ちわびたその姿に、織莉子は微笑し、涙を浮かべた。


693 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:52:36 7MMklgAM0
「サーヴァントを呼んだか……!」
 敵のランサーが槍を構える。
 対等の存在の到来に、いよいよ本気を示したようだ。
 その眼前に立つキリカもまた、自らの得物を展開した。
 さながら烏の鉤爪のような、三爪二対の六本爪だ。
「……!」
 その背中が、震えている。
 そこに恐怖の色はない。感じられるのは怒りだ。
 大切な者を害そうとした、眼前の怨敵を前にして、キリカが怒りに震えているのだ。
 その姿は生前のそれと、何ら変わらないものだった。
 その怒りは生前のそれよりも、更に鋭さを増していたようにも見えた。
「はっ!」
 気合と共にランサーが迫る。
 一呼吸の間に距離を詰め、鈍色の槍を突き出してくる。
 コンクリートの地面が砕けた時、しかしそこにキリカはなかった。
 飛び退いたバーサーカーがいた場所は、獲物の斜め上方だ。
「カァアアアッ!」
 叫びと共にキリカが迫った。
 立ち並ぶビルの壁を蹴り、急速に方向転換をかけた。
 漆黒の爪が唸りを上げて、ランサーの鎧へ振り下ろされる。
 鋭い金属音を上げながら、その外装を深々と抉る。
 着地と同時に地面を叩いた。
 空中で天地逆転の姿勢を取り、追撃の回し蹴りを放った。
 両手両足を交互に使い、絶え間ないラッシュを叩き込むのが、呉キリカの戦闘スタイルだ。
「チッ!」
 弾き飛ばされたランサーが舌打ちする。
 態勢を立て直すよりも早く、キリカが爪を構え殺到する。
 それでも百戦錬磨の英霊だ。崩れた姿勢そのままに、強引に槍を繰り出そうとする。
「がっ!」
 その瞬間、ランサーの手が鈍った。
 その生じた一瞬の隙を突き、キリカの強靭が敵を襲った。
 決して手を抜いたのではない。外的干渉によって強引に、その速度を落とされたのだ。
 高速戦闘を得意とするキリカだが、それを可能とするものは、単純な自己の速さだけではない。
 速度低下――己に近づく万物全てを、等しく遅くする固有魔法。
 それにより相対的加速を得ることで、キリカは風となり影となる。
 闇に忍びて闇に舞う、黒き魔獣を止められる者など、誰一人として存在しない。
 そこまでは、織莉子もよく知っていた。
「貴様ァァっ!」
 瞬間、ランサーの魔力が弾けた。
 槍が眩い光と共に、膨大なエネルギーを放ち始めた。
(いけない!)
 奴は宝具を使うつもりだ。
 その武器の力の全てを解放し、必殺の一撃を叩き込むつもりだ。
 あれをまともに食らってはまずい。いかなキリカと言えど、その力の前では、ただで済まされるとは思えない。
「キリカ、避け――」
 反射的に声を上げ、回避を指示しようとしたその時だ。
「えっ……!?」
 織莉子の知らないはずの力が、そこにカタチを持って現れていた。
 地に降りたキリカのその背後に、黒々と渦巻く影があったのだ。
 何だあれは。あんな魔法は、キリカには備わっていないはずだ。
 質量を増す漆黒を前に、織莉子は汗を流し困惑する。
 しかし、その疑問もすぐに晴れた。
(あれは……!)
 影が形作ったその姿には、織莉子も見覚えがあったからだ。
 幾つものマネキン人形を、不細工に継ぎ合わせたかのような、醜くもおぞましい姿。
 死神の鎌を幾重にも携え、断罪の杭をその身に備えた、死臭と殺意のキリングマシーン。
 かつてキリカの魂が、死とともに生じたはずの――魔女。
 それが今、生きたキリカの背後に在る。
 死神は唸りと共に鎌を広げ、宝具を放たんとするランサーに先んじ、獰猛に凄絶に襲いかかった。


694 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:53:45 7MMklgAM0


 ふーん。
 よくわかんないけど、でっかい荷物持ってるってことかなぁ。

 ンー……

 ……じゃあ!
 私が半分持ってあげよう!




695 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:54:19 7MMklgAM0
 光の粒子となった使い魔が、夜の街へと消えていく。
 ずたずたに引き裂かれたランサーの遺体が、機能を失って消滅する。
 勝ったのはキリカだ。
 最後に戦場に立っていたのは、バーサーカーのサーヴァントだ。
 随所に負った切り傷で、黒服に赤い染みを作りながら、それでもキリカは勝利した。
 かつて守りきれなかった主を、今度こそ守り抜いたのだ。
「………」
 変身を解いたサーヴァントが、織莉子の元へと歩み寄る。
 見滝原中学の制服姿が、最愛の主の前に跪く。
 言葉はない。話せないからだ。
 バーサーカーのサーヴァントは、高いステータス補正と引き換えに、その理性を喪失してしまう。
 今のキリカは、生前のように、感情豊かに振る舞うことはできない。
 騒がしくも微笑ましい声を、かつてのように聞くことは、叶わない。
「……ああ……!」
 瞬間、怒涛のような罪悪が、織莉子の胸に押し寄せた。
 そうだ。これは私のせいだ。
 サーヴァントとはすなわち死霊だ。私がキリカを殺したのだ。
 たった15歳の人生をめちゃくちゃにし、あまつさえ命を奪ってしまった。
 そしてその行き着いた末路が、この物言わぬ人形のような姿だ。
 自分と同年代の少女を、こんな痛ましい姿に貶めたのは、他ならぬ美国織莉子の罪なのだ。
「ごめんなさい……本当にごめんなさい……!」
 膝から崩れ落ちた織莉子は、キリカの手を握り、叫ぶ。
 止めどなく溢れる涙と共に、ひたすらに謝罪の言葉を並べる。
 そこに再会の喜びはない。そもそもの別離の原因を作った、そのことに対する自責があった。
 どうしてだ。どうしてこんなことになった。
 生き残るべきは自分ではなく、むしろ彼女であったはずなのに。
 こんな姿になってしまうのは、自分の方でよかったのに。
「……?」
 その時。
 不意に、何かが涙を拭った。
 暖かく柔らかな感触に、織莉子ははっとして前を見た。
 涙を拭いたその感触は、キリカの伸ばした人差し指だ。
 左手で織莉子の手を握り返す、キリカのその顔には、穏やかな笑顔が浮かんでいた。
「あ……」
 赦すというのか、この私を。
 本能だけの獣に貶されて、それでもなお私への愛を忘れず、笑顔を返してくれるというのか。
 思考回路を失ったキリカに、言葉を紡ぐことはできない。
 それでも織莉子の心には、彼女の言わんとする言葉が、確かに伝わったような気がした。
 いいんだよ。
 そんなに自分を責めなくても、私が貴方を許すから、と。
 在りし日のままの笑顔が、そう語りかけてくるような気がした。
「キリカ……ッ!」
 耐え切れず、織莉子はキリカを抱き寄せた。
 力任せにしがみつき、わんわんと声を上げて泣きじゃくった。
 もう二度と手放したりしない。
 こんなにも自分を慕ってくれる友を、二度と殺させたりはしない。
 地獄の中で掴み取った、漆黒色の温もりを胸に、織莉子はひたすらに泣き続けた。


696 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:54:41 7MMklgAM0


 だから、一緒に行こう。


697 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:55:07 7MMklgAM0
【マスター】美国織莉子
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性

【マスターとしての願い】
???

【weapon】
ソウルジェム
 魂を物質化した第三魔法の顕現。
 美国織莉子を始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
 濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、濁りきると魔女になる。聖杯戦争内では魔女化するかどうかは不明。

【能力・技能】
魔法少女
 ソウルジェムに込められた魔力を使い、戦う力。
 武器は宝玉。浮遊する無数の宝玉を展開し、自在に操り敵にぶつける。
 固有魔法は未来予知。一瞬後の敵の行動から、数週間後に訪れる破滅まで、様々な未来を見通すことができる。
 ただし制御が不安定で、予知するつもりのなかった情報も、勝手に予知されてしまうことが多々ある。
 当然未来予知も魔力を消費するため、燃費が良いとは言いがたい。
 必殺技は魔力の刃を宝玉に付与し、光と共に切り裂く「オラクルレイ」。

【人物背景】
見滝原市にて活動している魔法少女。
市議会議員を父親に持っていたお嬢様である。
母は幼い頃に他界し、父も汚職の疑惑をかけられてことで自殺したため、現在は独りで暮らしている。

基本的には温厚でおっとりとした性格。
しかしその一方で、目的のためには手段を選ばない、冷酷な判断力を有している。

魔法少女としての願いは「自分が生きる意味を知りたい」。
未来を見通し、救済の魔女による地球滅亡を知った織莉子は、
それを食い止めることを使命=生きる理由とすることを誓った。
キュゥべえの目を逸すため、相棒のキリカに魔法少女殺しを命じながら、
自らは救済の魔女となる魔法少女を探していたのだが、キリカが巴マミに倒されたことによって計画は破綻。
残された手札と時間で、ターゲットである鹿目まどかを殺すことを強いられた織莉子は、
その守護者である暁美ほむら、そしてひいては周囲の人間ごとまどかを抹殺するため、見滝原中学校を襲撃する。
結果的に集結した魔法少女達によって、織莉子はキリカ諸共倒されてしまったのだが、
命を落とすその瞬間、最後の一撃を放ったことにより、まどかの殺害に成功し人類を救った。

本来ならソウルジェムが砕けたことにより、そのまま死亡するはずだったのだが、
死の間際脳裏に浮かんだ紅い月を見たことにより、聖杯戦争へと招かれている。

【方針】
未定。少なくとも、キリカを喪いたくはない。


698 : 美国織莉子&バーサーカー ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:55:35 7MMklgAM0
【クラス】バーサーカー
【真名】呉キリカ
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性
【属性】混沌・狂

【パラメーター】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:A 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
狂化:C
 幸運を除いたパラメーターをランクアップさせるが、
 言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】
愛:EX
 無限に有限なるもの。絶望の鎖を噛み千切り、世界の法則すらも従える牙。
 力でも技でも理想でもない、キリカの持つ最大最強のスキル。
 かつて魔女となった彼女は、呪いよりも明確な意志の下に、絶望をねじ伏せ魔女の性質を固定化させた。
 このスキルによりキリカは、いかなる状況下においても、マスターの命令を忠実に実行する。

戦闘続行:A
 魔法少女の肉体は、ソウルジェムが破壊されない限り死ぬことがない。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、肉体が完全消滅しない限り生き延びる。

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

速度低下:C
 魔術系統の一種。発動した対象の敏捷性、および反応速度を遅らせる。
 生命体に対して発動した場合、相手は自分の速度が落ちていることを認識できない。

【宝具】
『福音告げし奇跡の黒曜(ソウルジェム)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 魂を物質化した第三魔法の顕現。
 キリカを始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
 キリカの固有武器は鉤爪であり、平時は3本×2=6本を展開して用いている。
 固有魔法は速度低下。 制御が難しく、6本以上の鉤爪を展開した際には、数が増えるごとに精度が低下する。

『円環の理(MARGOT)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:20人
 かつて安らかなる絶望の果てに、キリカの魂が生じた魔女。
 その性質が何だったのか、正確な情報は残されていない。
 しかしその魔女は、生前のキリカの意志を遺したかのように、美国織莉子を守り戦い続けた。
 円環の理に導かれた現在は、キリカの魂と同化し、その力の一部として操ることができる。

【weapon】
なし

【人物背景】
かつて希望を運び、いつか呪いを振り撒いた少女。
絶望よりも強い意志の下、死してなお大切な者を守り抜いた、美国織莉子の最愛最強の守護者。
閉ざされた心をねじ曲げて、愛する者を欺いてなお、その隣に寄り添いたいと願った、魔法少女の末路である。

固有魔法により相手の速度を落とし、相対的にスピードで優位に立つ、変則的な高速戦闘を得意とする。
鉤爪を敵に向かって投擲する「ステッピングファング」、
無数の爪を縦に連ね巨大な刃を成す「ヴァンパイアファング」を必殺技に持つ。

魔女となったその魂は、輪廻の果てに生誕した、神の下へと召されたはずだった。
しかし聖杯の呼びかけと、想い人の呼び声に応じ、少女は再び現世へと降り立つ。
全ては彼女の背負った重荷を、もう一度分かち合うために。

【サーヴァントとしての願い】
織莉子を守る


699 : ◆arYKZxlFnw :2015/01/10(土) 14:55:56 7MMklgAM0
投下は以上です


700 : ◆ACfa2i33Dc :2015/01/10(土) 20:04:06 awFektRM0
投下します。


701 : エリザベス・セイバー ◆ACfa2i33Dc :2015/01/10(土) 20:07:15 awFektRM0

 ――シーン.1


 薄暗い部屋だった。
 蝋燭の揺れる炎に、室内の全てが照らされている。
 魔法陣が、異教の祭器が、魔術の礼装が、炎によって浮かび上がっていた。

 そして部屋に唯一設えられた窓からは、不気味な程に明るい紅い月が、空に浮かんでいるのがはっきりと見えている。

 紅い月。
 現在では単なる光学現象と捉えられるそれは、しかし古来は『異界の月』――現世からここではない場所を覗く窓であった。

「私はベルゼブブ。
 全てが貴方と表裏一体……お忘れなきよう。――なんてね?」

 その紅い月を背負って、一人の少女が佇んでいた。

 紺色のブレザー――おそらく、何処かの高校の制服だろう――その上に、異国風のポンチョを羽織った少女だ。
 艶のある銀の髪、輝く緋色の瞳、人形のように整った美貌。
 一見すれば、衆目を魅了する美少女である。
 だが、二目と見ればそのような印象は消え失せる。その少女には、現実味が、人間としてのにおいが皆無だった。
 ――異界の美貌であった。

 そして、その少女に相対する女性もまた、異界の美貌の持ち主であった。
 奇しくも少女と同じく銀髪、煌めく金の瞳。
 エレベーターガールのような蒼い衣装も、その美貌と奇妙な調和を作り出していた。

 彼女の名はエリザベス。ベルベットルームの住人――だった。今は、そうではない。

「ベルゼブブ……ですか?」
「ご不満ならベルゼブブでもベル・フライでも飛田鈴でも、好きに呼んだらどうかしら。
 貴女が一番馴染みのある名前で名乗ってあげただけだしね。
 で……わざわざ呼び出して、用事は何かしら? 今は気分がいいし、Talk(お話)くらいはしてあげてもいいわよ?」

 彼女の問いかけに、自らをベルゼブブ――『蝿の魔王』と名乗った少女は軽く笑みながら答える。
 生きるモノ全てを嘲るような、或いは玩具を眺めるような、そんな笑みだった。
 しかしそれを気にかけた様子もなく、彼女は少女に問うた。

「貴女が噂の“願いを叶える紅い月”という事でよろしいのでございましょうか」

 噂。
 それは最近街でよく聞かれる、よくある類の都市伝説だった。

『願いを持った人間だけが、特別な紅い月を見ることができる』
『その紅い月を見た人間は、月へと運ばれ、そして願いを叶える事ができる』

 なんという事はない、殆どの人間は一笑に付すような御伽噺だ。
 しかしエリザベスは、その御伽噺に目を付けた。

 『月』、そして『願いを叶える』。彼女はこの二つの符合に望みを賭け、そして、儀式に臨んだ。

「違うわ。この『紅い月』は私の世界の月であって、『通り道』ではないもの。
 けれど、その『通り道』を作ってあげる事はできる。望むなら、今すぐにでもね」

 そして、その賭けは正しかった。
 『紅い月』は、『願いを叶える月』へと至る道筋であり、また望みを抱く者を選り分ける選別者だった。

「では、その通り道を作って頂いてよろしいでしょうか」
「ええ、いいわよ」

 エリザベスの要求に、少女は即答する。
 数瞬の間。
 その後に、エリザベスは言葉を続けた。

「悪魔という物は取引に代価を要求すると聞きましたが、代価の方は要求されないのでしょうか?」

 彼女の疑問も尤もである。
 悪魔とは呼び出した者を誘惑し、堕落させる者だ。それが取引に代償を要求しないなど、不気味にも程がある。

「言ったでしょ? 今の私は気分がいいのよ」

 ――当然、少女はそれ以上を答えない。
 何らかの企みがあるのか、もしくは本当に『気分がいいだけ』か。
 或いは、こうして選択肢を突き付ける事も魔王の愉悦の内であるのか。

 しかしどれであるにしろ、彼女の選択肢はそもそも一つしかない。

「わかりました。では、道をお願い致します」

 元より、それだけが望みなのだから。

「……ふふ。なら、その紅い月を見つめなさい。その向こう側に、紛いモノの月が――そして、紛い物の街が見えるでしょう」

 少女に促されて、エリザベスは窓の外の紅い月を見つめ――そして、その向こうに浮かぶ偽りの街を見た。

 ――『彼女達』が現れる時に浮かぶ『紅い月』は、『彼女達』が封印された異世界の月だという。
 ならば。そこからまた更に別の異世界へと飛ぶ事も、お膳立てによっては不可能ではない。

 ――空に浮かんだ紅き月<しるし>の導きは時空<とき>を越え、異界の夜へとエリザベスを飛び込ませていった。


702 : エリザベス・セイバー ◆ACfa2i33Dc :2015/01/10(土) 20:07:44 awFektRM0

 ↓↓↓

 ――シーン.2


 次にエリザベスが目を覚ました時には、彼女は既に桜の花弁舞い散る校庭に佇んでいた。

「聖杯戦争、でございますか」

 『聖杯戦争』のルールは、既に彼女の頭の中に入っている。

「不可思議ですが、そういうものなのでしょう」

 いきなりの異常事態にも、彼女は平静そのものだ。
 元より、奇跡の願望機の奪い合いである。
 何が起きても不思議ではないと、エリザベスは最初から合点していた。

「……はて。私のサーヴァントはどちらでしょうか」

 次に彼女は周囲を見渡して、自らのサーヴァントの姿が見えない事に気が付いた。
 聖杯戦争は、マスターとそのサーヴァントが戦う争いの筈である。
 だというのに、エリザベスのサーヴァントはその姿を見せていない。

「それも不可思議ですが……ここは、学校でしょうか?」

 『輝明学園』。
 周囲の様子から読み取るに、ここはそのような名前の学校らしい。

「学校に来たのは、あの方に案内してもらって以来ですね……おや?」

 不意に違和を感じて、エリザベスは空を見上げた。
 彼女にもはっきりとわかる、大きな『力』が動いている。

「これがサーヴァント、というものでしょうか……しかし、これは」

 言うが早いか。
 彼女のサーヴァントは空の上から落ちて――いや、『下がって』きた。


703 : エリザベス・セイバー ◆ACfa2i33Dc :2015/01/10(土) 20:08:57 awFektRM0
 ↓↓↓

 ――シーン.3


「ぬぅぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 エリザベスの頭上に、唐突に影が差した。
 影は、人の形をしていた。

「あらあらまあまあ」

 驚きの声と共に、エリザベスはその場から飛び退がる。
 一瞬前まで彼女が立っていた場所に、1m近い砂煙が立った。

「おやおや」
「おやおや、じゃねーよっ!」

 口に手を当てて驚きのリアクションを見せるエリザベスに抗議するように、男が砂煙の中から飛び出した。 
 砂煙の高さから見て相当な高さから落ちた筈だが、その姿は無傷そのものだ。
 纏ったコートにも、砂埃一つついてはいなかった。

「おや、無事でございましたか」
「そりゃまぁ、ウィザードには月衣<カグヤ>があるし、そもそもサーヴァントだから単純な物理攻撃じゃ傷付かないしな……ってそうじゃねーよ!
 人が落ちてきたのをさくっとスルーするんじゃねぇ! せめて心配くらいはしろよ!」
「それはまあ、置いておきまして」
「置くんじゃねぇよ!?」

 食って掛かってくる男をいなしながら、エリザベスは質問する。

「あなたが私のサーヴァントという事でよろしいのでしょうか?」
「ん……ああ。そうだよ、セイバーのサーヴァントだ。
 ……何が悲しくていきなりマスターにぞんざいに扱われなきゃいけねぇんだ、アンゼロットを思い出すぜ」

 男――エリザベスのサーヴァント、セイバーは、おそらくは彼の生前の知人の名前をぼやきながら、何処からか己の『宝具』を取り出す。
 ――それは、2m超の諸刃の大剣であった。刃には何らかの魔術的な意匠を伴ったルーンが刻まれており、片手でそのような大剣を振り回す姿は、確かに『英霊』に相応しい、と見てもおかしくはない。

「……ほう」

 エリザベスも、その姿には思わず息を呑んだ。
 ――正確には、その魔剣に含まれた因果に目を惹かれた。

「神殺しの剣、というわけですね。実際に見たのは初めてです」
「……わかるのか?」
「なんとなくでございますが。そのような剣を持っているのならば、私のペルソナ全書から……あら?」


704 : エリザベス・セイバー ◆ACfa2i33Dc :2015/01/10(土) 20:09:07 awFektRM0

 エリザベスはそこで言葉を切ると、ぱたぱたと自らの身体を検める。
 普段から彼女が持ち歩く、一種のシンボルと言ってもいい全書は、そこには見当たらなかった。

「いけません。ペルソナ全書をどこかに落としたようです」
「……おい、それ大丈夫なのかよ」

 声にどこか不安げな色を滲ませながら、セイバーはエリザベスに問うた。
 今のエリザベスの状態は、魔剣を落とした魔剣使いのようなものだ。
 その辛さは、セイバーにも身に染みてわかっている。

「問題と言えば問題ですが、しかし願いを叶える為ならばこの程度は乗り越えなければならないでしょう」
「……そりゃそうだが。でも、願いを叶えるって言っても別のやり方もあるんじゃないのか?」

 セイバーが、やんわりと『戦う以外の方法を探すべきではないか』と提案した。

 これはマスターを慮ってのみの一言ではない。
 『紅い月』。それはセイバーにとっては、『敵』の浮かべる闇の印である。
 それが浮かび続けるこの『月』は、このセイバーにとっては『不気味』、あるいは『警戒』の対象だった。
 偶然の一致だと思いたいが、この聖杯戦争が『彼女達』の遠大な計画の一部ではない、という証拠はないのだ。
 この聖杯戦争のルールに従って殺しあうのは、正直――彼の良心においても――あまりやりたくはなかった。

「いいえ。これが唯一の望みでございます」

 そのセイバーの提案を、エリザベスは遠回しに、しかしはっきりと拒絶した。
 彼女は既に、どのようなリスクを置いてさえ、この『聖杯戦争』に願いを託す事を選択している故に。

「……あんたの願いって、なんだよ」
「とある方を救う為でございます」

 そう。“彼”。
 “月”に封じられた死そのものに抗い――全てを賭して封印した、とあるペルソナ使い。
 如何なる手段を用いても、彼の魂を救う事。
 それが今のエリザベスの“意義”であり――それ以外に、意義はない。

「……そうかよ」

 そして、その決意を察して、セイバーは嘆息した。

 ――セイバーとて、歴戦の英雄である。
 戦友との別離は、一度や二度では数えられない。
 その中でも、“星”を止める為に戦い、そして使命を果たして消えたある勇者の事は、今でも記憶に残っている。

 そして彼は、

「わかったよ。あんたと一緒に戦ってやるさ」

 英雄故に、自らのマスターを見捨てられないのだ。

「ありがとうございます。……ところで、あなたのお名前……真名の方をお伺いしてよろしいでしょうか」
「あれ? そういや、言ってなかったか……柊蓮司だ。よろしく頼むぜ、マスター」

 名乗りながら、セイバーは己のマスターに手を差し出した。

 ――ここに契約は成立した。

 彼女達はこれより、夜の闇纏いて魔都を行く。


705 : エリザベス・セイバー ◆ACfa2i33Dc :2015/01/10(土) 20:10:04 awFektRM0

 ↓↓↓

「……しかし私、弟を持った事はありますが、従者を持ったのは初めてでございます」
「弟と従者を同列に扱うんじゃねーよ! 弟をなんだと思ってんだっ!」

 ――The World is Critical.
          NightWizard.


---

【クラス】セイバー
【真名】柊蓮司@ナイトウィザード
【パラメーター】
筋力B 耐久D 敏捷C+ 魔力D 幸運E 宝具B
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
 セイバーのクラスのサーヴァントでこそあるが、活躍した時代が現代に近すぎるため対魔力のランクはそこまで高くない。
騎乗:C
 魔法使い<ウィザード>としての“箒”への騎乗能力。
 己の箒へと騎乗している間、敏捷ステータスを1ランクアップさせる。
 ――なお生前の経歴から“宇宙戦艦への搭乗能力”を所持しているが、セイバーはそんな物は持っていないし、そして宝具に追加されるような事もない。
【保有スキル】
魔剣使い:A+
 たった一つの魔器を相棒とし、その力を全て引き出す能力を持つ。
 魔剣を所持している限り、全てのST判定で成功率を上昇させる。
 ただし魔剣を失った場合、全てのステータスが1ランクダウンする。
魔力放出(プラーナ):B
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
 セイバーの場合、「プラーナ」と呼ばれる生命エネルギーを放出する。
心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
下がる男:A+
 学年、レベル、年齢など、あらゆる物が下げられた逸話に基づくマイナススキル。
 ステータスの低下等「下がる」判定の対象となった場合、判定無しでそのバッドステータスを受けてしまう。
 もはや一種の呪いの域。というか、実際に「柊力」というパワーとして観測された事すらある。
【宝具】
『裏切りの飛龍(ワイヴァーン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1人
 セイバーの無二の相棒たる「魔剣」。
 元の形状はバスタードソードであったが、幾多の戦いを経て現在は科学と錬金術を取り込んだ「箒<ウィッチブレード>」として鍛え直されている。
 外見は二メートル長の大剣だが箒としての騎乗機能も備えており、騎乗したままの高速突撃が可能。
 500年前に“碧き月の神子”を殺害するのに用いられた(正確には神子が自害するのに用いられた)という曰くが付いており、その際のいきさつから「神の如き力や運命を持った存在を絶ち切る」という力を付与されている。
 この逸話から、【神性・あるいはそれに準ずる能力を持つ存在の再生・復活能力を無効化する】という能力を持つ。
『三千世界の剣』
ランク:- 種別:対人魔剣 レンジ:1~15 最大補足:15人
 数多の自らの魔剣の同一存在を並行世界から呼び出し、一斉攻撃を行うこのセイバーの絶技。
 本来宝具ではないが、「並行世界より自らの宝具の同一存在を呼び出す」という第二魔法に近い特性を持つ。
【weapon】
『裏切りの魔剣(ワイヴァーン)』
『月衣(カグヤ)』
 全てのウィザード・侵魔が持つ一種の個人用結界。
 「常識を遮る能力(常識内の法則による攻撃を全て遮り、宇宙空間などでの活動も可能となる)」・「月衣の隙間に物を格納する能力」の二つを持つが、どちらの能力もサーヴァントとして召喚されている現状ではたいして役に立たない。(サーヴァントに単なる物理攻撃が通じないのは当然だし、余計な品を持たない限りサーヴァントは武器ごと霊体化できる)

 本来ならこれに加えて「月匣」という対界結界を展開する事が可能だが、セイバーというクラス適正に準じてその機能はオミットされている。


706 : エリザベス・セイバー ◆ACfa2i33Dc :2015/01/10(土) 20:10:31 awFektRM0
【人物背景】
 「ファー・ジ・アース」と呼ばれるパラレルワールドの地球を守護する魔法使い<ウィザード>の一人。(『ナイトウィザード』の世界では常軌を逸した特殊能力を持つ人物は職業魔術師でなくともウィザードと称される)
 幾度となく世界の危機を救った歴戦の勇士であり、ウィザードの世界では有名人の一人である。……色々な意味で。
 高校生時代の様々な事件の顛末(3年生から1年生に学年が下がった、レベルが下げられた、年齢を下げられて少年化した)から「下がる男」とも呼ばれており、半ば不名誉なあだ名として定着してしまっている。
 また度重なる任務で高校の単位が非常に危うく、通学中に拉致される光景は一時期の定番のパターンと化していた。
 ただし、それでも自分の事を不幸となど思っていないと本人は言う。
 最終的に高校を卒業する事に成功したが、周囲には殆ど信じられておらず都市伝説扱いされている。
 総じて散々な目に遭う事も多いが、目の前の世界の危機や人間を見捨てる事のできない快男児である。

 余談だが、柊京子という姉がおり、姉には頭が上がらないらしい。
【サーヴァントとしての願い】
 なし。できれば地下迷宮に飛び散った自分の卒業証書を取り戻したいが、そんな事の為に聖杯を使ってもなぁと思っている。



【マスター】エリザベス@ペルソナ3
【マスターとしての願い】
 彼(主人公@ペルソナ3)を救い出す。
【weapon】
『ペルソナ全書』
 心の海より出でしペルソナを記録し、管理する為にエリザベスが所持する本。
彼女との戦いの際には強力な武器としても使われる。攻撃属性は打撃。

 ……その筈なのだが、どういうわけだかなくしている。
【能力・技能】
『ペルソナ能力』
 ペルソナ全書を用いて、記録されたペルソナを召喚する事ができる。
 ただし、ペルソナ全書をなくしているため使用できない。
【人物背景】
 主人公のみが行けるベルベットルームで働く謎のエレベーターガール。
 力を管理するものという役職(?)らしい。
 主人公のペルソナ使いとしての素養が高い事を認め、本編5月以降、数々の個人的な依頼を頼んでくるようになる。
 どうも外の世界に強い興味があるようで、その内容は「○○の名物を取って来て」等珍妙なものも多い。

 主人公に対して強い興味と執着を持っており、「P4U」においてはベルベットルームを留守にし主人公を助けようとしている、と語られている。

 余談だが、テオドアという弟がおり、弟を振り回しているらしい。
【方針】
 如何なる手段を用いても願いを叶える。戦いであっても、それ以外でも。


707 : 名無しさん :2015/01/10(土) 20:10:46 awFektRM0
投下終了です。


708 : ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:07:47 F3Q8apPo0
投下します


709 : 渋谷凛&ランサー ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:08:56 F3Q8apPo0


「貴方は夢なのよ……」

暗い部屋の中、カノジョは疲れたように、言葉を漏らした。
液晶越しに映る、輝く少女。
カノジョはカノジョを知っているが、カノジョはカノジョを知らないだろう。
液晶は壁だった。
カノジョとカノジョを隔てる、壁だった。

「私の夢……私の、私達の……靴を履けなかった……私達の……」

誰もが見た光、誰もが背負う影。
その光は自分ではなく、しかし、その影は自分自身だ。

「私達が見た、光なのよ……」

己が選び出した希望の光をもって、己が絶望を背負う。
矛盾。
彼女は希望であり、同時に絶望でもあるのだ。
誰もが光を見る。
誰も影を見ない。

「私の……夢……」

しかし、夢は現実ではなかった。
光が暗い部屋を照らしていた。
光が、影を強めた。


710 : 渋谷凛&ランサー ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:10:39 F3Q8apPo0





男が、口元に付いた髭を撫でる。
恐らく、日本でなくとも目の前の男を知らぬものは居ないだろう。
いや、知らぬものも増えたかもしれない。
『知らない』ことが、『知っている』者に得も知れぬ恐怖を与えるような、そんな男だった。
彼の者はアドルフ・ヒトラー。
召喚主――――渋谷凛が開いた、なんてこともない歴史の教科書にも名前と顔写真が乗った英霊。
此度の聖杯戦争においてランサーのクラスで召喚されたサーヴァントである。
教科書を閉じ、凛はヒトラーを見る。
ヒトラーは不気味に嗤っていた。
恐怖は感じなかった。
そもそも、現実味を感じていなかった。

「アドルフ・ヒットラー……本当にそっくりね」
「私は本物のアドルフ・ヒトラーさ」
「本物じゃないんでしょう?」
「アドルフ・ヒトラー本物ではないが、人々の心が噂となっていでて生み出した本物だ」

ランサーのサーヴァント、アドルフ・ヒトラー――――そんな仮面をつけられた無貌の神、ニャルラトホテプ。
かのサーヴァントは己の真名を隠すことはしなかった。

「言ってしまえば……私は魔法使いなのだよ、灰かぶりのお姫様」
「知っているの、私の事」
「可能性の一つとしてならばな。数多の少女に求められた少女よ」

数年前までただの少女であった渋谷凛。
現在の渋谷凛は、そんな過去すら信じられないような輝かしい『偶像少女<アイドル>』。
普通の少女がアイドルのトップに立つ。
誰もが夢見る、可能性という希望だった。
凛にとっても、夢の様な出来事だった。

――――凛はうなじを触った、特に意味はなかった。

思えば、自分の経歴も信じられないようなものだ。
目の前の英傑の経歴も、ある意味では一緒なのかもしれない。
這い寄る混沌、ニャルラトホテプ。
噂話の中に生きる、願いを叶える存在。
そんな神そのものである素性を語り、現在では仮面をつけられた月に吠えるもの。

「しかし、呆けているかのように冷静だな。
 ひょっとして、信じていないのか?
 無貌である私に仮面をつけられた事実、これはお前が考えている以上に『深刻』なのだよ」

『深刻さを感じていない』など、誰が原因だと思っているのだろうか。
そんな野卑な言葉を飲み込む。
嘲りを浮かべたままのランサーは、ランサーが口にする文面ほどの真剣味を持っていない。
運命を嘲笑うもの。
目の前の存在はニャルラトホテプ、人々の無意識の海から生まれでた存在。
不思議なことに、凛はそのことに対してあまり疑いの念を抱かなかった。
話のスケールが大きすぎて、何もかもが夢のようだった。
魔女に化かされたような、そんな気分だった。


711 : 渋谷凛&ランサー ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:12:03 F3Q8apPo0


――――渋谷凛は再びうなじを触った、理由は、特になかった。

強いて言えば、その動作で一人の男を思い出せた。
その記憶が凛の心を落ち着かせた。

「……」

そもそも、何もかもが夢のようだった。
夢だ、夢だ、と、言い続けた物語。
叶える、叶える、と、進み続けた道。
二人で走った道と、二人で叶えた物語。
本当に嬉しかったのに、少し経つと、本当に夢だったのではないだろうか。
凛は誘われた、あるいは、叩きこまれた。
少なくとも、凛の心の表面と呼べる場所には願いといえるものはなかった。
なにせ、願いが叶ってしまったのだろうか。
少女たちが夢を見、少女たちがそんな少女を求める『少女のための偶像<シンデレラ・ガール>』
少女たちが求めた偶像である凛もまた、ある一面においては英霊と言えるのかもしれない。
崇める少女たちが、偶像がより英霊であることを求め、聖杯戦争へと運んだ。
そんな馬鹿なことがあるのかもしれない。

「……」

それを、ヒトラーという混沌は、凛をじっと見ていた。
手を明かしたのも、混沌の計略。
あらゆる方法で、混沌は影として試練を与えようとしていた。
少女が光であるために、影を生みだすものとしてより強い光を発するように。
混沌は、偶像に試練を与えようとしていた。

時計の長身と短針が重なった。
今は魔法がかかった時間か、それとも、魔法が解ける時間か。
這い寄る混沌は、静かに笑った。

人を試す笑みであり、物を捨てる笑みだった。


712 : 渋谷凛&ランサー ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:12:34 F3Q8apPo0





耳障りの良い言葉。
煌かしい栄光。
崇め上げる視線。

世界を救う使命と使命への勇猛を、選民の傲慢と非選民への排他へと変える。
己の抱く夢と他者へと与える希望を、他者への蹂躙と自らの優越へと変える。

現在、万能の願望器そのものである宝具、『這い寄る混沌<ニャルラトホテプ>』の解放は行われていない。
聖杯戦争が聖杯戦争であり続ける限り、解放することは出来ない。
しかし、アドルフ・ヒトラーという仮面の奥に潜むものは、無謀の神だ。
この世の影であれとされて、生まれた悪意の権化だ。
一年前まで街を歩いていただけの少女が、今はスポットライトを浴びている。
そんな夢みたいな物語が実現することを体現することで、少女へと夢を与えるもの。

ああ、少女よ。
他でもない、『少女のためだけの偶像<シンデレラ・ガール>』を生み出した者達よ。
お前たちが善意の元に生み出し、自らの手に収まらぬ光に悪意を抱いた灰かぶりの姫。
お前たちが求めた偶像は今、この世全ての悪意の前に晒されているのだ。

お前たちがお前たちの生み出す灰かぶりの姫に成ろうと思う限り、そこに影はあるのだ。
影を背負わぬものが栄光であると思い続ける限り、お前たちは邪神の悪意に晒され続ける。
影を見続ける者こそが、影は消せぬものである知る者こそが、影は善ではないと気づいた者こそが。
唯一、邪神に抗えるのだ。

お前たちはお前たちが生み出した光なんて、そんな下らないものに、何を見た。
光に目が眩み、影を背負ったことに気づかず。
灰かぶりの姫を視認した目に未来への希望を宿し、影響を受けた心に灰かぶりの姫への敵意を抱いた。
灰かぶりの姫へと向ける其れは希望か?
灰かぶりの姫へと浴びせる其れは悪意か?
意味などないのだ。
意味など、何もない。

善意に意味は無いように、悪意にも意味など無いのだ。
灰かぶりの姫が、物語の後も幸福であり続けた意味など、何もないのだ。

ただ、灰かぶりの姫はそこに居るだけなのだから。


713 : 渋谷凛&ランサー ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:13:34 F3Q8apPo0


【クラス】
アドルフ・ヒトラー(ニャルラトホテプ)

【真名】
ランサー

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力A 幸運A+++ 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:A+
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
神の御子を手にしたヒトラーは、神の御子と同等の対魔力を持つ。
事実上、現代の魔術師ではヒトラーを傷つけることは出来ない。

【保有スキル】
カリスマ:A+
大軍団を指揮・統率する才能。
カール・グスタフ・ユングは「ヒトラーの力は政治的なものではなく、魔術である」と語っている。

人間観察:EX
人々を観察し、理解する技術。
人類の影であるニャルラトホテプは、本人が否定したい、隠したい部分も含めた全てを把握している。
しかしその性質故に、希望や創造性を決して認める事はない。

月に吠えるもの:-
無貌であるはずのニャルラトホテプが聖杯戦争においてアドルフ・ヒトラーの仮面を被せられたことで生じたスキル。
普遍的無意識に存在する、神や悪魔の姿をした人格。
あるいは、ニャルラトホテプの一側面。
自らの化身の一つである『月に吠えるもの』を行使する。
ごく限定的に後述の宝具を使用できる。
具体的に言えば、『ニャルラトホテプが被ったヒトラーの仮面』に属する集団・逸話を召喚、模倣できる。

【宝具】
『神聖魔槍・失楽園(ロンギヌス・オリジナル)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:2〜5 最大捕捉:1人
アドルフ・ヒトラーが生涯の探索の末に手にした、神の御子の処刑に用いられ聖痕の一つを創りだした槍。
この宝具において傷を負った者は、永遠に治らぬ傷が創りあげられる。
それが高い神性を誇る者の場合、血を流し続けるという神秘的な概念性の毒は強さを持つ。
また、この槍を持って殺害された者はより上等な神秘を持ってしなければ蘇生されない。

『這い寄る混沌(ニャルラトホテプ)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜999 最大捕捉:1000人
アドルフ・ヒトラーの仮面の奥に潜む、人々の普遍的無意識の世界に潜むニャルラトホテプという存在そのもの。
『意思』というものが全ての意味を持つ普遍的無意識の世界が存在する場合、ニャルラトホテプは全能の力を持つ。
それはニャルラトホテプが望めば世界の創造すらも容易く可能とするほどである。
ニャルラトホテプは全ての人間が抱え持つ影そのものである、正しく人間の考える『邪悪の権化』である。
人が己の中の影を見つめ続けない限り、ニャルラトホテプは悪意によって願望を叶え続ける。
すなわち、世界以外を嘲り笑うニャルラトホテプそのものが最悪の形で顕現し続ける『万能の願望器』なのである。

スキル:月の吠えるものによって限定的に一部を使用できるが、
聖杯戦争が聖杯戦争であり続ける限り、完全に聖杯の枠組みを超越した能力であるため使用不能。


714 : 渋谷凛&ランサー ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:14:09 F3Q8apPo0

【weapon】
宝具である聖槍ロンギヌス

【人物背景】
アドルフ・ヒトラーは第一次世界大戦〜第二次世界大戦期において世界を混乱の渦に貶めた、大きな一因。
ゲルマンドイツを巧みな政治手腕によって支配し、第三帝国を名乗りヨーロッパを蹂躙した。

そんな男の仮面を被った、這い寄る混沌・ニャルラトホテプ。
全ての人間の意識が眠る普遍的無意識の海に生じたダークサイドの権化。
ニャルラトホテプは全ての人間が抱え持つ影そのものである為、人が人である限り絶対に滅ぼせない。
ニャルラトホテプに対抗する手段はただ一つ。
「全てを受け入れた上で、決して諦めないこと」である。


715 : 渋谷凛&ランサー ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:14:42 F3Q8apPo0

【マスター】
渋谷凛@アイドルマスター・シンデレラガールズ


【参加方法】
何者かに誘われた、そして、その何者かは他人かもしれないし、自分かもしれない。


【マスターとしての願い】
光を強めることを何者かに願われた、そして、その何者かは他人かもしれないし、自分かもしれない。


【weapon】
ある意味では、トップアイドルである凛自身が兵器とも言える。


【能力・技能】
・トップアイドル『シンデレラ・ガール』
容姿、歌唱力、挙動、愛嬌、知性――――そんな言葉では説明できない、『言葉ではない魅力』


【人物背景】
彼女は少々勘違いされることが多いだけの、何処にでも居る普通の少女である。
『本当は』『実は』『意外と』、そんな言葉で修飾されることの多い、普通の少女である。
彼女はこの世のものとは思えないほど完璧な、誰もが羨むトップアイドルである。
『やっぱり』『思った通り』『さすが』、そんな言葉で修飾されることの多い、トップアイドルである。
その二つが渋谷凛であり、切っても切れない、二つの渋谷凛である。


【方針】
彼女は人から生まれたものに試されている。


716 : ◆Y0s8yQbTc2 :2015/01/11(日) 02:15:09 F3Q8apPo0
投下終了です


717 : ◆l3Kp5ooqz6 :2015/01/11(日) 02:47:14 S2TrXurM0
投下お疲れ様です!
キャラクターが被ってしまいましたが、渋谷凛含む登場話を自分も投下させていただきます。


718 : 『夢は夢で終われない』 ◆q4eJ67HsvU :2015/01/11(日) 02:48:50 S2TrXurM0



    ――誰もがシンデレラ、夢から今目覚めて

      ――始まるよ、新たなストーリー描いたら 

        ――つかもう、私だけの光(My Only Star)

          ――まだまだ遠くだけど、光降り注ぐ明日へ向かうために






   ▼  ▼  ▼



「変わり続けてるようで、やっぱり変わらないね、この街も」

 渋谷凛にとって、この繁華街のスクランブル交差点は自分の庭の中心のようなものだった。

 まだ輝く世界へと続く最初の一歩を踏み出す前から、この街の雑踏の中に彼女はいた。
 夢中になれるものがあるわけでもなく、それをまあこんなものかと諦めて、ただ過ごしていた日々。
 だけど、全てを変えたあの一歩もまた、この街であの人と出会った時に始まったのだ。

 忘れるわけがない。最初はなにか質の悪い勧誘だと思ったぐらいだけど。
 でも、あの日のプロデューサーとの出会いこそが、凛にとってのガラスの靴だった。
 あの日の出会いがなければ、凛はきっと、夢中になれるものに出会えることなく過ごしていただろう。
 輝きの向こう側を知ったから、あの人が、あの少女たちが手を引いてくれたから。
 だからこそアイドルとして、幾多の苦難を乗り越え、大切な仲間たちと出会い、凛は成長していけた。

 信じることの強さを知った。夢見ることの輝きを知った。
 そして叶えたいと思った。心の底から。こんな気持ちになるのは初めてだった。
 夢は夢で終われない。動き始めていったのだ、輝く日のために。

 輝くステージ。煌めく衣装。ただの女の子にとっては遠く眺めるだけの場所だった、お城の舞踏会。

 アイドルとして己を高め、昨日の自分を越えてゆくたびに、それは御伽話の挿絵ではなくなっていった。
 手を伸ばせば届く場所。いつの日にか辿り着ける、輝きの向こう側。
 たくさんのライバル達と競い合い、磨き合い、共に笑い合って、向かっていったその先に。
 誰もが憧れた、あのシンデレラの舞台があったのだ。

 凛にとってそれは、幸せな記憶だった。
 辛いことはたくさんあった。苦しいこともたくさんあった。
 それでも、そんな日々を乗り越えたからこそ手に入れられた輝きがあった。
 そう、『今の凛』は記憶している。


 だけど、今、この偽りの東京で。


 凛は、すべての始まりの場所であるこの街を――聖杯戦争の当事者として見下ろしていた。
 
「聖杯戦争、ね……」

 馴染みのある雑踏をビルの上から見下ろしながら、他人事のように疑問に思う。
 そんな願いが、本当に自分にあるのだろうか? 
 凛にとっては願いとは自分の力で叶えるものだから、聖杯に頼るのは違うのではないか、という思いはある。
 もちろん一人の力では出来ないこともあるだろう。それでも頼ることと頼り切ることは違う。
 魔法使いにかぼちゃの馬車とガラスの靴を与えられたとしても、舞踏会に出るのは自分自身なのだ。

 だからこそ、この聖杯戦争で叶えなければならない願い――いくら足掻いても到底自力では叶えられない願いなど、
 凛にとってはそれこそ無縁のものであるように思えるのだった。


719 : 『夢は夢で終われない』 ◆q4eJ67HsvU :2015/01/11(日) 02:49:57 S2TrXurM0


 ――もっとも、今の凛がはっきりとした願いを持てないのには、もっと別の理由があるのだろうけど。


 凛は下界から視界を戻して、そこでようやく、隣で立ち尽くしている少女のほうへ目を向けた。
 率直な印象を言ってしまえば、印象の薄い子だ。クラスで三番目くらいに可愛い感じの、だけどあまり注目はされないような。
 年頃は凛と同い年ぐらいだろうが、制服を着崩している凛と違って、至極普通に制服を制服らしく着ている。
 かといって、特段固くて真面目であるようにも見えない。あくまで、何処にでもいる、凡庸な、当たり前の女の子。
 それが凛にとって、パートナーとなる少女――『岸波白野』に対する印象だった。

 だけど。言葉では言い表せないけれど、凛には、自分が何故彼女と惹き合うこととなったのか、察しはついていた。
 似ているのだ、きっと。今の自分と、彼女の、その中途半端な在り方が。
 そして、恐らくは、その魂の形も。

「ふーん、あんたが私の『マスター』? ……まぁ、悪くないかな」

 凛を『サーヴァントとして召喚した』少女に向かって、ぶっきらぼうに声を掛ける。
 確か昔、あの人に向かっても似たようなことを言ったなと思い出し、不思議な気持ちになる。
 あれはきっと『アイドルである渋谷凛』の記憶であって、『英霊』として召喚された自分のものではないはずなのに。
 
 呆然としていた白野が名を問うのを聞き、凛はその身を翻した。

 身に纏っていた高校の制服が光に包まれ、代わりに魔力で編み上げられた装備が姿を現す。
 露出の多いセパレートの鎧を丈の長い蒼のマントとスカートが覆う。
 両手が同じく篭手で、両足の腿までがガーター付きの黒いソックスで覆われ、膝から下は更にブーツで固められた。
 魔力の膨張が巻き起こす風が、マントを、スカートを、彼女の流れるような黒髪をたなびかせる。
 纏うのは水の魔力。奔流と冷気。凛が得意とする、蒼の魔術。
 そして――その手に握るのは、透き通るような錯覚を覚えそうなほど蒼白く輝く、両刃の剣。

「私は凛。渋谷凛。此度の聖杯戦争では、『剣士(セイバー)』のクラスとして召喚されたみたい」

 その事実は、凛にとっても意外と言う他ない事態だった。しかし、事実なのだ。
 目の前の彼女がそれを受け入れるように、自分自身が受け入れなければならないと、凛は決意していた。
 そうしなければきっと――聖杯戦争という壁には、立ち向かえないから。


   ▼  ▼  ▼


 『空の世界』――そう呼ばれる世界があった。

 青空に浮かぶ島々。その間を行き交う空を飛ぶ艇、「騎空艇」。
 それを操る人々は「騎空士」と呼ばれ、時には危険な冒険にも身を投じていた。
 死滅したとされる地上。星の民の遺産たる生物兵器、星晶獣。語り継がれる神秘、魔法。
 危険と隣り合わせでありながら、同時に未知へのロマンをも内包する、そんな世界だった。

 現代日本に暮らすアイドル渋谷凛は、その『空の世界』を訪れたことがある。

 正確には、その世界のことを夢で見たのだ。
 凛と、同じ事務所のアイドルである島村卯月、神崎蘭子は、夢の中で『空の世界』を冒険していた。
 凛と卯月は剣士、蘭子は召喚獣たる魔王となって、騎空挺に乗り騎空士達と共に旅をした。
 それは凛にとってはただの夢で、それでも不思議なくらい存在感のある夢だった。

 しかしそれは夢であって、夢ではなかった。
 空の世界は――『大いなる青の幻想譚(グランブルーファンタジー)』の世界は、確かに存在した。

 その世界の人々は、ある日突然この世界を訪れた少女達のことを忘れなかった。
 彼らは少女達のことを口伝で、歌で、あるいは書物として語り伝えた。
 物語はいつしか伝承となる。彼女達は、夢の世界で英雄となったのだ。


720 : 『夢は夢で終われない』 ◆q4eJ67HsvU :2015/01/11(日) 02:50:44 S2TrXurM0
 その伝承を、人知れず遥か遠方から記録し続けている物体があった。
 ムーンセル・オートマトン。全長三千キロメートルに及ぶフォトニック純結晶体。
 全地球の記録にして設計図たる、神の遺した自動書記装置。
 その超級の聖遺物は、彼女達の伝承をもその記録として保存していた。

 しかし、伝承の記録だけでは英霊は英霊足り得ない。
 元の世界におけるアイドルとしての渋谷凛ならばともかく、この『空の世界』の凛にその資格はない。
 そこには確かに物語はあったが、実体と呼べるほどの確かな存在がなかったからだ。

 しかし、ここに不確定要素(イレギュラー)は起こる。

 ムーンセルが記録していた英霊としての枠組みに、本来の「渋谷凛」の人格と記憶がダウンロードされた。
 英霊足り得ないはずの存在が、サーヴァントとして召喚される条件を満たしてしまった。
 あってはならないエラー。発生しないはずの不正データ。

 赤い月の聖杯戦争におけるイレギュラーが生んだ、存在しないはずの剣士――『ネバーセイバー』。

 凛の話を聞き、マスターである私、岸波白野は思う。
 彼女が不正規の英霊として召喚されることになった原因とは、きっと――


 >1.それはきっと私――岸波白野のせいだ。
 2.それは多分ザビエル氏のせいだ。


 不正規のサーヴァントが召喚された原因。それは、マスターである私自身が不正規な存在だからだろう。
 作り上げられた枠組みに、イレギュラーとして自我が与えられてしまった。それは他ならぬ私自身の相似形であるわけだし。
 それ以上に、何よりも、私が此処にいること自体が、見方によってはバグ以外の何物でもないのだから。

 私は、岸波白野は、かつて彼女とは違う私のサーヴァントと共に月の聖杯へと至り――そして既にデータとして解体されている。

 不正データとして削除されたはずの私がここにいる理由。
 それは多分、ムーンセル自体が目的をもって私という不正データを再構築したからだろう。
 そしてその理由こそが、この『赤い月の聖杯戦争』。
 ムーンセルの能力を利用していると思しきこの東京の聖杯に対して、ムーンセルが意趣返しとして送り込んだ「抗体」。
 しかしあからさまに刺客を送れば、東京の聖杯の管理者に警戒される。それゆえの、ほんの些細な措置。
 他愛ないバグを引き起こすコンピューターウイルス。あるいは、聖杯戦争というシステムへのアンチプログラム。

 恐らくは、こうだ――『岸波白野は、ムーンセルと一体化した赤い月の聖杯に接触することは出来ない』。
 加えて、こうか――『しかし、だからといって、岸波白野は抗うことを決して辞めたりはしないだろう』。
 故に、こうなる――『赤い月の聖杯戦争に対して、岸波白野はセーフティ付きの妨害装置として機能する』。

 私という存在が立ち向かうことをやめては生きていけないことを理解した上で、この聖杯戦争へのカウンターとして利用している。
 よくも上手く使ってくれるものだとほとほと感心することしきりだが、しかし、ドロップアウトするわけにもいかないようだ。
 普通のサーヴァントならば、マスターが敗退すれば英霊の座に戻るだけだろう。だが、彼女はどうだ?
 彼女は「渋谷凛」ではあっても「アイドルとしての渋谷凛」ではない。座に戻ると同時に、解体されてしまうのではないか。
 かつての、私自身のように。

 言い淀みながらも、それでもそう伝えた私へと応えるように、セイバー・渋谷凛は真っ直ぐこっちを見据えた。

「きっと今の私は、夢の続きを見ているようなものだと思う。あの日見た夢の続きを、夢の中の私だけが見続けているんだと思う」

 そう言って、癖なのだろうか首の後ろを手でさすりながら、それでもその名の通り凛として、彼女は言うのだ。

「それでもさ――『“夢”は“夢”で終われない』。そうでしょ、マスターも?」


721 : 『夢は夢で終われない』 ◆q4eJ67HsvU :2015/01/11(日) 02:51:34 S2TrXurM0

 ああ――そうだ。

 確かに彼女は、私に、岸波白野に召喚されたサーヴァントなのだと、その時はっきりと確信した。
 諦めない。諦めることを良しとしない。立ち向かう。どんな困難にも。
 アイドルであったオリジナルの彼女は、そうやってどんな苦難も越えてきたのだろう。そして、その心を引き継ぐセイバーも。
 彼女の言う通りだ。夢は夢で終われない。彼女の、あるいは私にとっての『今』がただのひと時の『夢』に過ぎないとしても。
 ムーンセルによって与えられた役割を演じるしかない、『幻』のような生だとしても。

 >私は、生き続けることを諦めない。

 私のサーヴァントに向かって、高らかにそう宣言する。
 あの月の聖杯戦争で、私に最後まで力を貸してくれたあの英霊の想いに報いるためにも。
 今目の前で微かに微笑んでいる、この蒼い少女と共に進むためにも。
 勝ち残ったとして聖杯に辿り着けるかどうかは分からない、だからなんだ。それがどうした。
 未来が不確定であることが、岸波白野(わたし)が、渋谷凛(かのじょ)が、歩みを止める理由になるものか。
 彼女が答えてくれる限り、私は私として、この赤い月の聖杯戦争へと立ち向かうと誓おう。



 >――“心は決して折れはしない(Never Say Never)”。


 この東京で、私達は、夢から目覚める。




【クラス】
セイバー(ネバーセイバー)

【真名】
渋谷凛@アイドルマスターシンデレラガールズ

【パラメーター】
筋力B 耐久D 敏捷B+ 魔力B 幸運A 宝具B

【属性】
中立・善


【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:D
騎乗の才能。幻獣種を除く大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
騎乗にまつわる逸話に乏しいため、剣士のクラスとしてはランクが低い。

SYSTEM ERROR:?

詳細閲覧不能。

この非正規の英霊は聖杯のシステムに何らかのバグをもたらす可能性がある。



【保有スキル】
シンデレラガール:A
ただの女の子からアイドルの頂点へと昇りつめた少女の称号。
苦難を乗り越えて成長した逸話により、困難へと立ち向かう時にステータス以上の力を発揮できる。
また彼女の歌やアイドルとしての魅力は、相手の性別を問わず惹きつける一種の魅了として発揮される。

夢幻の剣技:B
アイドルであるはずの凛が夢の中の『空の世界』で使っていた剣術。
セイバーは本人も知らないはずの剣技をまるで「知っている」かのように使いこなす。

魔術:C

神秘を司る力。『空の世界』ではこれを修めた者は魔法使い、または魔女と呼ばれる。
凛は水属性の魔術を使うことが出来る。


722 : 『夢は夢で終われない』 ◆q4eJ67HsvU :2015/01/11(日) 02:51:59 S2TrXurM0
【宝具】
『青天に歌え蒼の剣(アイオライト・ブルー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
セイバー・渋谷凛の奥義たる魔法剣。
その刃を手でなぞることで水属性の魔力を纏わせ、斬撃と共に炸裂させる。
また魅了状態の敵に対しては、シンデレラとしての輝きが光の魔力を引き出し更なる威力を与える。
威力と扱いやすさ、決して高くない消費魔力と、バランスよく高いスペックを持つ宝具。

『召喚石・傷ついた悪姫(ブリュンヒルデ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:50人
二対の黒翼と闇の魔力を纏いし覚醒魔王を召喚する力を秘めた召喚石。
魔王はその右手に炎、左手には氷を宿し、それら二系統に加え強大な闇属性の魔術で敵を殲滅する。
外見は中学生ほどの少女に見えるが、難解な言い回しを好むためその意思を汲めるのは召喚者のセイバーぐらいである。
…………言うまでもないが、その正体はアイドル神崎蘭子が夢の中の『空の世界』で真の魔王の力を手にした姿。


【weapon】
蒼い刀身の剣を使う。


【人物背景】
出典はソーシャルゲーム『アイドルマスターシンデレラガールズ』、そしてそのコラボレーション先である『グランブルーファンタジー』。



渋谷凛は十五歳の女子高生。そして『シンデレラガール』の座にまで昇りつめた人気アイドルだ。
クールでぶっきらぼうだが、人一倍努力家であり、自分に妥協を許さない性格の少女である。
ある日彼女は夢を見た。それは蒼天を騎空艇が飛ぶ『空の世界』の夢。その世界で凛は剣を握り戦っていた。
しかし夢はいつか醒める。凛は不思議な夢のことを時折思い出しながらも、元の生活へ戻っていった。

しかし彼女にとっての『夢』は、空の世界――『グランブルーファンタジーの世界』の人々にとっては現実だった。
ある日突然現れ、そして去っていった幻の剣士。空の世界の人々は彼女を忘れなかった。
その伝承が英霊としての枠を形作り、聖杯がその枠に相応しい魂としてオリジナルである渋谷凛の心と記憶を当てはめた存在。
それがサーヴァント『セイバー・渋谷凛』の正体であり、厳密にはアイドル渋谷凛が英霊となったわけではない。

『赤い月の聖杯戦争』に紛れ込んだ岸波白野というプログラムエラーが生み出した、存在しないはずの剣士――ネバーセイバー。



【サーヴァントとしての願い】
英霊として不確かな状態であり、願いと呼べるほどはっきりとしたものは持っていない。
それでも、決して立ち向かうことを諦めたりはしない。



【マスター】
岸波白野(女)@Fate/EXTRA

【マスターとしての願い】
不明。

【weapon】
ムーンセルによって送り込まれる際に、コードキャスト用の礼装を幾つか持ち込んでいる(本人が選んだわけではない)。

【能力・技能】
魔術師としての才能は平凡。
しかし戦略眼に秀で、月の聖杯戦争を通して更に磨きがかかっている。

【人物背景】
Fate/EXTRAの主人公(性別はプレイ開始時に選択可能)。
個性に乏しく「存在感が薄い」と言われがち。某サーヴァント曰く「典型的な汎用救世主型主人公」。
しかしその一方で逆境においても決して諦めない往生際の悪さが特徴で、悪足掻きを得意とする。
その必死の行動は下馬評を覆し、数々の格上のマスターたちにさえ抗しうるほど。
物語開始時点では記憶喪失であり、自分が何者かも分からない状態で悩みながらも成長していく。

その正体はムーンセルにアクセスした魔術師ではなく、何らかの原因で自我を持ってしまったNPCであった。
月の聖杯戦争にあたって「生まれた」ような存在であり、記憶喪失などではなくそもそも過去というものを持たない。
地上の人間がモデルではあるのだがその本人ではなく、いわばその人物を枠として新たな人格が芽生えたようなもの。
ムーンセルにとってはバグのようなものであり、聖杯にアクセスしたが最後、不正データとして認識されてしまう。

この聖杯戦争における白野はかつて月の聖杯戦争で最後まで勝ち残り、聖杯を手にしながらもムーンセルに解体されたはずのデータである。
しかしその異常なまでの諦めの悪さを一種の「抗体」とすべくムーンセルにより再構築された――『赤い月の聖杯』に対するアンチプログラムとして。

【方針】
自身が不正なプログラムであることは自覚しており、たとえ勝ち残っても聖杯には辿り着けないのではないかと感じている。
それでも、決して立ち向かうことを諦めたりはしない。


723 : ◆q4eJ67HsvU :2015/01/11(日) 02:53:23 S2TrXurM0
投下終了しました。
かなり反則気味の設定なので、正規のセイバーかエクストラクラスかは1さんにお任せします。


724 : ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:40:07 AHy3TVso0
皆さん、投下乙です。
私もエクストラクラスで投下します。


725 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:42:57 AHy3TVso0
この奇跡を、終わらせたくない。

「大会が終わったら、μ'sは…おしまいにします!」

μ'sが解散する。
それを知ったとき、そう思わずにはいられなかった。
わかってる。μ'sは私達9人でないとダメだってことは。
けれど…どうしても諦めがつかなかった。
卒業して、μ'sがなくなってしまうのはいやだ。
また1人ぼっちに戻ってしまうのはいやだ。

昔からアイドルを目指して色んな努力をしてきた。
寝るときは顔パックをつけてるし、お肌を守るために夏でもセーターを着てる。
「にっこにっこにー♪」に合わせた振り付けや言い回しだって研究した。

音ノ木坂学院に入って、アイドル研究部を設立。ついに夢だったアイドルになることができた。
妹達は私を『スーパーアイドル』として心から慕ってくれた。
――でも、現実はそんなに甘くはなかった。
私以外のメンバーは練習に耐えられず、1人、また1人とアイドル研究部から退部していき、私1人だけになってしまった。
1人だとアイドル活動もできず、ユニットは当然解消。
妹達にアイドルをやめたなんて言えず、家では『スーパーアイドル』を見る眼差しが痛かった。
それでもアイドルを続けようとがんばったけど…1人ぼっちでは何をしようにも無駄だった。
時間だけが過ぎていって――気付いたら3年生になっていた。

もうスクールアイドルを続けることを諦めかけていた、そんなときに。
穂乃果を中心にμ'sが誕生した。
私から見たμ'sはとても眩しかった。
はじめは私の苦労も知らないでスクールアイドルをしていたことが羨ましくて潰そうなんて考えもしたけど…皆が私をμ'sに誘ってくれて、スクールアイドルを続けることができた。
1人ぼっちのアイドルではなく、みんなと共にあるアイドルになれた。
妹達にも本当のことを打ち明けることができて、妹達の『宇宙No.1アイドル』としてやっていくことができた。
3年生になって、やっと夢を叶えることができた。
それは私の奇跡だった。私達の奇跡だった。

だから、そんな奇跡を終わらせたくない。
卒業して、μ'sに入る前みたいな1人ぼっちに戻るのは、もう…。

そんな思いが心のどこかにあったことは覚えている。
泣かないと決めていたのに泣いてしまったあの日の帰り道。
まだ夕日が見えていたのに、なぜかそれを直視できた。
それが夕日じゃなくて紅い満月だと気付くのに時間はかからなかった。



◆ ◆ ◆



「なんで…」

μ'sという存在が、消えていた。

「なんでμ’sがなくなってるのよ…」


毎日のように登校して。授業はいつものように寝たり上の空になったりで聞き流して。
放課後にアイドル研究部の部室に入った途端、にこは絶句した。
まず初めに感じたのは懐かしさ。しかしそれは決して受け入れられない、おぞましいものであった。
そこにあったのはμ'sのメンバーが集まる明るい部室ではなく。
1人ぼっちでスクールアイドルを続けていた頃の暗い部室。
額には汗が滲み出ており、心臓の動きが速くなっていく。
混乱を振り払い、とりあえず部室に常備してあるコンピュータを起動して『μ's』で検索をかけるも、一致なし。
部室を飛び出し、恥を忍んでクラスメイトにμ'sのことを聞いても「μ'sなんて知らない」という応答ばかり。
放課後に屋上でメンバーを待っても日没まで誰一人来なかった。

μ'sがなくなったのはただの勘違いだったことへの期待も空しく、にこは学校を出て帰路につく。
その頃にはもう月が空に顔を出しており、完全に夜と言える時間帯であった。
にこは無意識に視線を落とし、街灯を頼って路地に沿うようにトボトボと歩く。
とにかく気持ちを落ち着かせ、どうしてこのような状況に置かれているのかを考える。

もしかしたら過去に戻ったのかもしれないなんて突拍子もないことを考えもした。
実際のところ、にこは紅い満月に導かれ聖杯戦争の参加者になっており、身体に令呪が刻み付けられているのだが、彼女はまだそれらの事実を知らない。
そして、後に出会うサーヴァント(=アホ)のせいで、致命的な勘違いを犯すことになる。


726 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:44:55 AHy3TVso0
◆ ◆ ◆



周辺の景色は変わらない。確かなのは、にこ以外に人がいないということだけ。
しかし、『それ』は人が100人いるかのような騒がしさを連れて突然にやってきた。



「とーーーーーーーーーーーう!!!!!!!」



暗がりから飛び出してきた影。
その人物はにこを片手で持ち、華麗にジャンプ。アクロバティックな動きで着地した。

「え、うえぇぇ!?」

考えごとで忙しかったにこは当然ながら現実に引き戻され、驚愕の声を上げた。
にこが見上げると、まず目に入ったのは特徴的な形の眉毛、そし襟を立てたマントのような白いコート。
やけにはっちゃけた恰好をした男はにこを片手で抱えながら、何もない空間を睨みつけながら仁王立ちをしている。

「あぶない!!見えない光線だ!このダークヒーローのマスターを察知したアーチャーの攻撃に違いないぞ!」
「ちょっと何よアンタ、いきなり―――ウオアァ!!??」

にこが抗議し終える前に男はさらに10mほど高く跳躍し、決めポーズとともに着地する。

「はいやーーー!どうだ、見ろ!見えない光線を華麗にかわしたぞ!!嘘じゃないぞー!?」
「……お、おろして〜」

男はその声に気づくと腕の力を抜き、にこを文字通り落とした。
その際ににこが発した「ぐぇっ!?」という声は届いていないようだ。
男の名はアクターレ。かつてダークヒーローとして一世を風靡した悪魔である。

「大丈夫かい?どうだった、オレ様の華麗なアクションは!何せ生で見れてしかもヒロイン役みたいなこともできたんだ!感無量だったろ?」
「大丈夫じゃないわよ!さ、さっきからなんなのよあんた!ていうか、誰!?」
「誰って、このオレ様を知らないのか?ヴェルダイムで大活躍した世界的ダークヒーロー、アクターレを!」
「知らないわよ!!アンタ一体何がしたいのよ!」
「何ぃっ!?オレ様を知らない!?オレ様がマイナァ!?」
(本当になんなのよコイツ…)

まるで会話が成り立たない。にこはとりあえず、バカは放っておいてさっさと家へ帰ろうとする。

「オイオイちょっと待てよ!せっかくキミを助けるために来たっていうのに1人で帰るなんて…ハッ!!そういうことか…これは所謂『ツンデレ』ってやつだな!!」
「何でそうなんのよ!!しかも、助けるって何!?にこの何を助けてくれるっていうのよ!?」
「決まってるだろ?オレ様が主人公のボディーガード役でキミがヒロインの護衛対象の役ってだけさ。おおっと、本名で呼ぶのはよしてくれよ?名前がばれるとマズイらしいからな。オレ様のことはダークヒーローって呼んでくれ」

…訳がわからない。これは本格的に頭が参ってしまいそうで、にこはすぐにでも逃げ出したい気持ちに駆られた。
実際のところアクターレはエクストラクラス『ダークヒーロー』のサーヴァントである。
が、ダークヒーローにとっては聖杯から授けられた聖杯戦争に関する記憶はダークヒーローの独自フィルターで曲解されており、
その結果このように意味不明な文言を発しているのだ。


727 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:45:56 AHy3TVso0
「護衛対象の役って…アンタと私が何かのドラマに出てるとでも言いたいわけ?」
「そりゃあ、舞台は作られた東京だからそうなるな。オレ様達のためだけに用意されたんだぜ?豪華だろ?」

にこは目を見開いた。
確かに、目の前のダークヒーローは『作られた』東京と言った。
つまりにこが今いる場所はにこが住み慣れた東京ではないということなのか。

「作られた東京ってどういうことよ!?」
「ええと、新しい世界を作り出してそこで撮影するってカンジかな?」
「つまり、私は別世界に飛ばされてここにいるってこと?」
「そうそう、それそれ!」

…とにかくダークヒーローの言っていることが果てしなく理解しづらいことと
とてつもなく現実離れしたことが起きたのは理解できた。
もし、魔法か何かで別世界に飛ばされたことが本当なら。
μ'sがなくなったことにも関係があるかもしれない。

「…ねえ、μ'sって知らない?」
「なんだそれ?石鹸?」
「違うわよ!宇宙No.1アイドルのにこが入ってた宇宙No.1スクールアイドルユニット!」

今度はダークヒーローが目を見開く番だった。
理由は単純。宇宙No.1という単語を真に受けたのだ。アホだから。

「な、なんだってー!?う、宇宙No.1アイドルなの!?マジで!?」
「……へ?」

どうしよう…宇宙No.1アイドルってこと真に受けちゃったよこの人。
まさか本気で宇宙No.1なんて真に受けられるとは思わず、
にこは目的も忘れてつい調子に乗ってしまう。

「そ、そうよ!にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこにー♪笑顔届ける矢澤にこにこー♪にこにーって覚えてラブにこー♪」
「うおおおおーーーー!!!こいつは本物だ!!宇宙No.1アイドルに間違いねぇ!!宇宙のYAZAWAだ!!俺のダークヒーロー魂がそう叫んでいるぜ!!」
「そ、そうかしら…あ、あは、あはははは…!」

かつてμ'sのメンバーから寒いだのキモチワルイだの言われていた自己アピールをこうも真面目に評価され、にこは照れ気味に上機嫌になる。
ダークヒーローもダークヒーローでにこのことをすっかり『宇宙No.1アイドル』だと信じ込み、すれ違いながらも互いに気兼ねなく話せるようになっていた。



◆ ◆ ◆



ダークヒーローはにこがアイドルだとわかったとき、またもや全サーヴァント中最強ともいえる勘違いをしていた。
何とも形容しがたい異次元の妄想力である。



フフフッ……!

そうか、そういうことか……!

この聖杯戦争ってヤツはズバリ……!



オーディション!!



要するに、ダークヒーローのオレと宇宙No.1アイドルにこにーがタッグを組んだように、
聖杯がくじ引きで2人1組でチームを組ませてどのタッグが最後まで生き残るかを見るってワケだな!!
そして最後まで生き残った組がスターの座に返り咲けるということか…!
つまり、他の奴等もこのスターの座をかけて参加しているライバル…絶対に負けられないぜ!!

だがしかしっ!!
にこにー…このオーディションでは出会いたくなかったな。
この東京で出会わなければ、お前とデュエット曲を歌ってもいいと思ったぜ。
けどな…スターの座は常に1つ!!2番じゃあダメなんだ!!
にこにーに代わってオレ様がスターの座につけば、あわよくば『宇宙No.1ダークヒーロー』の称号が手に入るかもしれないだろ?
悪いが…何も知らなさそうなにこにーには少し嘘をつかせてもらう。
どんな手を使っても最後に勝つのがダークヒーローなんでな…!
オレ様に英霊の座なんて似合わない!!目指すはスターの座だ!!
待ってろよ、母ちゃん、アクタレオ、家族のみんな…!
兄ちゃん、必ずスターの座に戻って見せるぜ!


728 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:47:23 AHy3TVso0
◆ ◆ ◆



褒められたことでダークヒーローに少し気を許したにこは、再現された東京で起きた異変を打ち明けた。
μ'sがなくなったこと。何が起こっているのかわからないこと。

「もしダークヒーローが知ってるならさ…教えてよ。なんでにこは別の世界にいるの?」
「説明しよう!!にこにー、お前は選ばれたのだ!!にこにーは神様から選ばれし存在!オレ様は神様から遣わされた聖霊さ!にこにーのボディーガード兼サポートをするよう頼まれたんだ!」
「え、いや、さっきアンタの話聞いてたらまるで俳優気取りみたいな――」
「とにかく、神様はにこにーに試練を与えたんだ!この東京には少なからずオレ様みたいな聖霊を連れた人間がいる!ソイツらを探すんだ!」

言うまでもなくダークヒーローは嘘をついており、彼は聖霊ではなくサーヴァントである。
そしてにこはマスター。まだ聖杯戦争の情報を持たず、願いを持って紅い満月に連れ去られたことすら知らない無自覚のマスターである。
ゆえに、にこは知らない。自分の命が危機に瀕するかもしれないことを。

「………」

………どうにも胡散臭いが、ダークヒーロー以外情報提供者がいない外、信じるしかなかった。
とにかく、ダークヒーローが言うように、他にも聖霊がいるらしい。その人達を探そう。
ぶっちゃけダークヒーローよりも頼りになりそうだ。
…だけど、今日は帰って寝よう。
どうにも頭が痛いのだ。原因はμ'sがなくなったショック、現実離れしたことによる混乱と――

「次回予告ッ!にこにーこと宇宙のYAZAWAとペアを組み、2人のゆゆうじょうぱぱわーで最後の1組まで勝ち残ったアクターレ。
そんなアクターレ達の前に現れたのはなんと、魔界の技術の結晶といわれ、伝説として語り継がれていたプリニガーX・轟であった!
しかもプリニガーX・轟は宝具『無限の皮製(アンリミテッドプリニーワークス)』によって自身を量産させる凶悪なサーヴァントだった!!
倒しても倒しても増殖する上に1体でも脅威なプリニガーX・轟に圧倒されていくアクターレ達。
そんな時、アクターレの中の未知なる力が覚醒して…9人に分裂した!?
次回「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」最終話!『叶え!オレ様たちの悪夢――』
何?選考を通らないと続編もクソもない?細かいことは気にするな!」

――隣で訳の分からない独り言を話し始めたダークヒーローと行動を共にすることへの気苦労のせいだろうか。


729 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:49:06 AHy3TVso0
【マスター】
矢澤にこ@ラブライブ!

【マスターとしての願い】
μ'sを取り戻す。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
特になし

【人物背景】
国立音ノ木坂学院に通う三年生、スクールアイドルユニット『μ's』のメンバー。
メンバー内では唯一、幼い頃からアイドルを目指している。
μ'sで最も小柄でスタイルも貧相だが、強烈な個性を放つ。
ことあるごとに猫被ったりセコい作戦を立てては空回りするアホの子、いじられキャラとして描かれている。

アニメでは、唯一のアイドル研究部員であり、同時に部長であった。
小泉花陽と同じくアイドルに対しての情熱は誰にも負けないぐらい持っており、
そのせいもあって穂乃果率いる「スクールアイドル」を目の敵にすることもあった。
しかし、それは1年生の頃にスクールアイドル結成したもののうまくいかなかったことから羨望を向けていた部分もあったということが考えられる。
相当な苦労人故かμ'sやラブライブへの執着心がかなり強く、
穂乃果がμ's解散を宣言したり第二回ラブライブの出場に消極的な様子を見せた時は真っ先に怒りを露わにした。
 
【方針】
ダークヒーロー以外の聖霊(サーヴァント)を探す。
自分が聖杯戦争に参加していることに気づいていない。
なぜ別の世界へ引き込まれたのかもわからない。


730 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:50:15 AHy3TVso0
【クラス】
ダークヒーロー
自らの正義を貫くためには社会にとっての悪になることも厭わなかった英霊のクラス。
その特性から、多くの反英雄がこのクラスに該当する。
特に「混沌・善」の属性を持つ英霊はとりわけ適性が高い。
その大半が譲れない目的の為に全てを捨てられる覚悟の持ち主で、
精神干渉を無効化できるスキルをクラス別スキルとして保持している。
代表的な適性を持つ英霊として、ロールシャッハ(ウォッチメン)が挙げられる。

【真名】
アクターレ@魔界戦記ディスガイアシリーズ

【パラメータ】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運B 宝具A

【属性】
混沌・善(?)

【クラス別スキル】
殉ずる魂:B
ダークヒーローとして自分の正義を貫き通す覚悟。
己の信念に基づいた行動をしているときにパラメーターが上昇し、威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。
ただし、己の信念に外れた行為をしているときは逆にパラメーターが減少し、英霊の格が下がる。

【保有スキル】
アホ:A
アホ。言い換えるとバカ。
アクターレは自分を超人気のダークヒーローだと思っており、
誰もが自分のファンだと思いこみ、前向きな妄想も激しいため、アクターレと会話が成り立つのは難しい。
聖杯から与えられた情報も曲解して伝えるため、情報伝達は非常に不得手。

役者魂:A
スターとしての素質であり、様々な役割を『演じる』能力。
他人のフリをして立ち去ったり、死んだフリからの不意打ちが成功しやすい。
Aランクだと演技に熱が入りすぎて放っておくと自分の目的や過去、自分がサーヴァントであることも忘れてしまう。

スターオーラ:C
アクターレが常に放っている人気スターのオーラ。
威圧に近い精神干渉で、無意識に手を緩めてしまう。
人間、または、生前が人間だったサーヴァントから受けるダメージを多少削減する。
人外や、精神干渉を無効化するスキルを持つ相手には効かない。

バラエティ根性:A
体を張ったスタントマンの仕事もこなせる不滅の肉体と精神。
魔界のテレビ局から死亡扱いされて干された時もめげずにダークヒーローの座へ返り咲いて見せた。
瀕死状態のとき、敵の宝具によるダメージを完全に無効化する。
また、『戦闘続行』スキルの特性も併せ持っている。

真名秘匿(誤):E-
真名を隠蔽することができる…というより、名前を間違えられる。
間違いの代表例として、アホターレ、バカターレ、ハナターレなど。
間違えられた場合、真名を看破されたことにはならない。


731 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:51:33 AHy3TVso0
【宝具】

『ラストバトルを踊ろうぜ!(しびれマイハート)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ダークヒーローとして勇者を打ち砕く、問答無用の自己陶酔世界。
術者の心象風景で現実世界を塗りつぶし、内部の世界そのものを変えてしまう固有結界。
アクターレは元々悪魔であるため、固有結界を使える。
魔界の特撮ダークヒーロー番組のロケ地を展開し、番組の1シーンが再現される。
この結界内においてアクターレはこの結界では絶対的強者であり、
アクターレの『特撮番組に出ているオレ様はこのくらいカッコよくて目立つんだ』という妄想が結界内では具現化されている。
相手は『ダークヒーロー・アクターレにやられる雑魚敵(勇者その1)』の役であり、
どんなに耐久が高くともアクターレのあらゆる攻撃で大ダメージを受ける。
デコピンだけで地の彼方まで吹っ飛び、少し小突かれるだけで倒される怪人の如く爆発するし、オレ様しか見えないビームで黒コゲになる。

…ここまで書くと凶悪な宝具に見えるが、実は『有効な攻撃は最初の一発だけ』という制約があり、
アクターレの初撃が当たろうが外れようが一発目で固有結界は維持できなくなってしまう。
展開の度に魔力を消費するため、一発当たるか外れるかが勝負の重要な分かれ目になる。


『血潮たぎらせ舞う白虎(ラヴダイナマイツ)』
ランク:E〜EX 種別:対城宝具 レンジ:??? 最大捕捉:55000
超巨大なライブステージを展開し、宇宙遺産級のライブコンサートを開催する固有結界にしてアクターレの最強技(?)。
あらゆる場所にいるNPC、マスター、サーヴァントを固有結界に引き込み、彼らを観客にライブを披露する。
再現された東京に召喚されたことにより、ライブ会場は東京ドームを元に構成されており、観客は最大で55000人にも及ぶ。
引き込まれた者は『オレ様色』に染まってしまい、彼に黄色い声援を送るようになる。

ライブ中の観客の憧れ・声援は信仰となって結界内の魔術基盤を強化していき、
熱気・盛り上がりは魔力となって結界内に充満する。
最終的にエレキギターを地面に叩きつけることで溜まった魔力と魔術基盤を利用して結界全域に雷を発生させ、マスター及びサーヴァントにダメージを与える。
その威力はライブの盛り上がり・観客数・評価に応じて上下し、
最高の盛り上がりでライブを締めくくった時には魔王をも一撃で倒してしまう程の威力。
NPCはダメージを受けない。

【weapon】
・エレキギター
アクターレが常備しているエレキギター。
なぜかそこから電気を走らせることができ、「エレキソウルフル」という技が使える。
『血潮たぎらせ舞う白虎』でも使用する。

・サイン色紙
アクターレの名前が書いてあるサイン色紙。
誰彼構わずこれを押し付けている。
投げると一応武器になる。


732 : 矢澤にこ&ダークヒーロー ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:52:26 AHy3TVso0
【人物背景】
魔界戦記ディスガイアシリーズに登場する悪魔。初出は魔界戦記ディスガイア2。
黄色い髪に独特の形をした眉毛、白いマントが印象的。
非常に名の知れたダークヒーローで人気も高い。
だがそれは昔の話、今はとある事件がきっかけでテレビ業界から干されており仕事が激減、
人気も無くなり辺境ヴェルダイムの旅番組というダークヒーローとは一切関係の無い地味な仕事をしていた。
仕事がなくなったせいか、家族とアパート暮らしで家具のほとんどを質に入れ、家賃を3年滞納している。

性格はバカで前向き、家族思い。信条は「どんな手を使っても最後に勝つのがダークヒーロー」
手段は汚い一方で、自分の信条に従って行動し、家族思いでもあるため属性は混沌・善(?)となっている。
どんな状況でもダークヒーロー魂を忘れておらず、関わる人物は自分のファンだと思っている。
ポジティブ思考からくる超次元拡大解釈により危機的状況をオーディションと決めつけたり、
話かけられるとサインをねだられていると解釈したり、
自分が主役だと言い張って脚本や打ち合わせを無視するなど、彼のアホな逸話は語るに尽くせない。
アクターレ(=アホ)と表記されたこともある。
家族構成は弟と妹が4人、ペット1匹、母親が1人。
自分を慕ってくれる家族を大切に思っている。旅番組の仕事も家族を心配するあまり引き受けることを躊躇っていた。
弟からは大人気のダークヒーローだと信じられているが、家族には不人気で仕事がないことを隠していた。

ディスガイア2本編では、辺境ヴェルダイムの旅番組中にアデル達と出会い、
勘違いから戦いを挑まれ負けてしまう。
この時、テレビでは通り魔に殺されアクターレ氏は死亡、と報道されテレビ業界から見捨てられる。
迎えがなくなり帰る事が出来なくなり困っている所に、魔王ゼノンがヴェルダイムに居るという情報を入手し、これを利用してテレビ業界に戻ってやると決意。
ラストはアデル達と協力しゼノン(偽)を倒す。
ゼノンが偽物であったことを利用して、魔王ゼノンにまつわる情報がアクターレの自作自演であったと告白。
ゼノンを倒しに来た魔神・魔王・勇者にボコボコにされたものの、
その際に発した「俺が真のダークヒーローだ!」宣言でダークヒーローとしての人気を不動のものにした。

その後は数々の魔界を渡り歩き、オレ様色に染め上げていった。
が、ディスガイア4の舞台となる魔界でそれに失敗し、小物を演じて地獄の獄長に就任した。
その際に、演技に熱が入りすぎて目的と過去を忘れてしまい、
ダークヒーローのイメージからかけ離れたヘタレになってしまった。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争をスターの座を決めるオーディションだと思い込んでいる。
このオーディション(聖杯戦争)を勝ち抜き、もう一度魔界のスターの座へ返り咲く。


733 : ◆kRh/.U2BNI :2015/01/11(日) 18:52:54 AHy3TVso0
以上で投下を終了します


734 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 00:59:06 zt6Vr0a60
皆さん、投下乙です。
これより投下を開始します。


735 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 00:59:31 zt6Vr0a60
      ◆            ◆

暗い処だった。
厚い雲が空を覆い、早瀬のように流れていた。
時折できる雲間から太陽と月の光が差し込み、暗黒の地の僅かな光明となっていた。

この地を、6つの影が駆けていた。

青年が一人に若い娘が二人、背中に翅を生やした少女、象頭の大男、赤い甲殻を纏った異形。
剣に、拳に、弓に、槍に、太刀に、ハサミ。
各々がそれぞれの武器を手に、同じ場所を目指して駆けていた。

彼らの目指す先には、少年と――禍々しい『力』があった。
おぞましい唸りを上げ渦巻いていた『力』が、少しずつその形を定め始めていた。

弓を手にした少女が、『力』の傍に立つ少年に向かって呼びかける。

「助けに来たよ!」

背を向け佇んでいた少年が驚き、少女たちの方を向いた。
そして、少年は僅かにためらった後、

「どうして来たの! 君が来なければ、次の死食までは世界は生きのびられたのに!
 二人の力が合わさったら、何もかも破壊されてしまう。終わりだ‥‥」

と、助けに来たはずの彼らを咎めたのだった。

「でも、その力をコントロールできれば破壊ではなくて創造に使えれば‥‥」

「ぼくらの宿星は死だ。破壊の力が勝つ」
少女の言葉を遮るように、少年は言い放った。

すると少女の身体が宙に浮き、『破壊の力』のもと、少年の傍らに吸い寄せられる。

「‥‥どうしてそんな定めなの‥‥みんなゴメンネ、私達すべてを破壊してすべてを終わりにしてしまうわ」

『破壊の力』は今まさに、『破壊するもの』として、人の似姿を取ろうとしていた。

5人の戦士が『死の宿命』に立ち向かうべく、『破壊するもの』に立ち向かう。


736 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 00:59:55 zt6Vr0a60

「■■、あきらめるな。オレ達も戦うぞ!」                        「最果ての島から終末へ・・・おもしろい」

剣を構え、金髪の青年が少女の名を呼び、励ます。             赤い甲殻の異形が両手のハサミを捧げ、拳闘の構えを取る。




               「こいつを倒せば人間に戻るのか、それともゾウのままか?」

               象頭の大男が太刀を抜き放ち、その長い鼻で大きな盾をかざす。




「あんまりひどいことすると、おしおきよ!」                          「■■、あんたを死なせやしない!」

翅の少女は、その小さな身体に似合わぬ長槍の切先を突きつける。             赤毛の少女は拳を握り、必死に呼びかけた。


737 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:00:13 zt6Vr0a60
戦いは、熾烈を極めた。

 【超音波】  【凝視】  【アシッドスプレー】  【ぶちかまし】

――魔物の力。


 【骨砕き】  【龍尾返し】  【烈風剣】  【超高速ナブラ】

――人の技。


 【マッドサンダー】  【アースライザー】  【グランドクロウズ】  【メイルシュトローム】

――自然の猛威。


 【死神のカマ】  【ナイトメア】  【イビルウィスパー】  【フェイタルミラー】

――そして、心の闇。

あらゆるエネルギーを『破壊』ただそれだけのために振り撒く『破壊するもの』。

宿命の子たる少年と少女がそれを創造の力、『光の翼』で必死にその力を抑えこもうとする。


738 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:00:58 zt6Vr0a60
5人の戦士が、鍛えに鍛え、超人の域に達した技と術で、彼らに応える。


 「スターバースト!」「五月雨斬り!」「分身剣!」「黄龍剣!」

 「生命の水!」「ナイアガラバスター!」「シャッタースタッフ!」「クイックタイム!」

 「幻日!」「無形の位!」「龍神降臨!」「乱れ雪月花!」

 「勝利の詩!」「ラウンドスライサー!」「無双三段!」「リヴァイヴァ!」

 「シャドウサーバント!」「龍神烈火拳!」「アースヒール!」「タイガーブレイク!」


闇の翼と光の翼、破壊と創造の力がせめぎ合うさなかで、

無敵とさえ思われた『破壊するもの』の肉体が、少しづつ、そして、確実に傷つき始めていた。


739 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:01:23 zt6Vr0a60
だが――

「アビスが破壊の力で満たされるわ…」

「もう、ぼくたちにはおさえられない!」

雲間から僅かな光をもたらしていた太陽が、月に覆い隠されてゆく。
――『死食(トータルエクリプス)』。

15年前、地上を襲った『死食』を想起させる光景。

いよいよ『破壊するもの』は黄金色に輝く闇の翼を広げ、その真の力を振るいだす。

混沌の災厄たる火炎と冷気の嵐は、妖精の翅を焼き、凍てつかせた。

明王の如き拳撃のラッシュは、ロブスター族の硬い甲殻をも打ち砕いた。

吹き荒ぶアビスの風の前に、強靱な意志秘めた青年剣士さえ地に伏した。


740 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:01:43 zt6Vr0a60
残り、二人。

だが彼らは挫けない。

散開陣形『鳳天舞の陣』の中心で囮を引き受けていた象頭人身の巨漢。
ここにきて傷だらけの身体を押し、大剣を地面に突き立てて、土埃を巻き上げながら猛然と突撃。
『破壊するもの』の懐に潜り込んで、大剣を引き抜き、その勢いを以って逆袈裟に斬り上げた。
白刃の軌跡が下弦の月を象る奥義「地すり残月」は――不発。

『破壊するもの』の超振動を纏った右の手刀が刃を受け止めていた――。
そして左の手刀が象の首を切り落とさんとしたその時――

黄金の疾風が、猛虎の如き黄金色の闘気を纏った鉄拳が、『破壊するもの』の脳天に突き刺さる。

遂に『破壊するもの』の肉体はヒビ割れ、スパークし、雷鳴のような轟音と共に崩壊してゆく。

「■■、帰ろう――」

破壊の権化たる存在を今まさに打倒した女性拳士が、宿命の子を出迎える。

長きに渡る死闘はこれで終わる――。

しかし――。

『破壊するもの』に集められた『力』は――余りに巨大だった。

巨大すぎる『破壊の力』が肉体という依代を失った結果――。

天文学的な規模の、世界の全てが無に帰す程の、大爆発が発生した。


爆心地となった異界の地『アビス』は木っ端微塵に弾けた。

月も、太陽も、宇宙空間に限りなく広がってゆく白い光の爆発に呑み込まれた。

母なる大地も例外でなく、光の波によって一瞬にして浚われ、粉々になって消滅した。


――あとには、暗黒の『無』だけが残った――。


741 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:01:59 zt6Vr0a60
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742 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:03:51 zt6Vr0a60
      ●            ●


メリーことマエリベリー・ハーンの意識はそこで覚醒した。

寒い。大量の寝汗をかいていた。
そして自身の身体がベッドから転げ落ち、床の上に投げ出されていることに気付く。
のろのろとベッドに這い戻ろうとした所で、急にふわりと身体が浮き上がった。

「『セイバー』……おはよう」

メリーは、首だけを起こし、自分を優しく抱え上げる『サーヴァント』の、仮の名を呼ぶ。

「マスター、そんな所で寝たら、カゼをひく」

長い黒髪を結い上げた、褐色がかった肌の端正な顔立ちの『少年』が、
彼なりの不器用な気遣いで、マスターのあいさつに応えた。

「……マスター、また、『あの夢』を?」

「……ええ」

5人の戦士と、『破壊するもの』と、ここにいる少年を含む二人の宿命の子の、世界の命運を決した死闘。
メリーが夢としてこの光景を見たのは、今朝が初めてではなかったのだった。


743 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:04:23 zt6Vr0a60
      ○            ○

オカルトサークル、秘封クラブのいつもの活動の帰り道のこと。
新月の夜、ふと空を見上げたメリーは、月に境界が開きかけているのを発見する。

メリーの持って生まれた特別な眼は、時々、現実世界をくるむ境界のほころび――スキマを見つけだすことができるのだ。
メリーがスキマの向こうに見るのは、人々の記憶から忘れ去られ、幻想となってしまったモノ。

メリーは新月に目を凝らしながら、サークル仲間の蓮子のまぶたに手を触れた。
こうすることで、境界を視る能力は他人に共有させることができるのだ。
暗く浮かぶ月に開いたスキマの向こうには、メリーの生まれた時代からすれば過去の遺物となってしまった、
東京の摩天楼の、在りし日の姿が写った。

いつも見える神さまや妖怪たちの住まう世界とはちがうが、なるほど確かに、
首都が京都に返され、東京が森に還りつつある時代に生きるメリーにとっては、この摩天楼も忘れ去られた幻想に違いなかった。

この目には、こんなタイムマシンのような使い方もあるのだ。
また新たな能力の使い方に目覚めてしまったようだ。

メリーはうきうきしながら、蓮子を連れて月の向こうの過去世界に意識を跳躍させた。

月のスキマに向かって飛んでゆくメリーの意識。

高層ビル街が目の前に迫り、そこで、メリーは驚愕する。

この空間は――!!


744 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:04:39 zt6Vr0a60
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745 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:04:52 zt6Vr0a60
      ●            ●

『0』と『1』のデジタル情報の海に飛び込んだメリーは、
この部屋――高級マンションの一室に流れ着き、つい先ほどと同様、床の上に投げ出されていたのだった。

聖杯戦争のルールはその時既に、頭の中に刻みこまれていた。
セイバーと出会い、サーヴァントの契約を結んだのはそれからすぐのこと。

それから数日、メリーは東京の大学に通う留学生で、外国のさる大富豪の令嬢という役割に従って生活していた。
部屋に置かれていた通帳には、いち学生が扱うには過ぎた金額が預けられていた。
自動車のキーも置いてあり、やはり学生が乗り回すには恐れ多いような高級車がこの建物の地下に停められていた。

私と共に月の結界の裏側に飛んできたであろう蓮子の行方は不明。
おそらく、私と同様に21世紀の東京に流れ着き――ひょっとしたら、私と同じように聖杯戦争に巻き込まれているのかもしれない。

ここで暮らすようになったメリーは毎晩、同じ夢を見ていた。
セイバーが英霊として座に選ばれるに至るまでの、セイバーの出生と、冒険の記憶を。


746 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:05:13 zt6Vr0a60
      ◆            ◆

セイバーに名前は無かった。
赤子の頃、彼は腐海――荒れ果てた密林の廃墟に捨てられていたのだ。
ぞう族、象頭人身の人々の町に拾われた少年は、そのままぞう族の町で育てられる。
ぞう族には個人の名前をつける慣習がないせいか、そのままずっと少年と呼ばれ続けていた。

心身ともに健康に成長していった少年だったが、ある時を境に少年の宿る星に刻まれた運命が動き出してしまう。
不幸にも人さらいに誘拐されてしまった少年だったが――すぐにその人さらいは命を落とす。
自由になった少年は、その後善人、悪人、様々な人々と関わりあうが――皆、死んでしまう。
まるで、死に魅入られ、死の定めを負ってしまったかのように。

自分を育ててくれたぞう族の街に戻ることもできず、各地を放浪するうちに、少年は知ったのだった。
――彼の生まれた年の頃には、『死食』という災厄が世界を襲っていた事を。
『死食』のあった年に生まれた生物は、人も、動植物も、魔物も、全て死に絶えてしまう。
だが唯一、死食から生き残る者がいて、その者が『宿命の子』であるという事を。

――死食から生き残った少年は、『宿命の子』だったのだ。

600年前の死食とともに現れ、『死の定め』を負った宿命の子は『魔王』として世界の頂点に立ち、
異界からの魔物・四魔貴族を呼び寄せて恐怖による圧政を敷いたという。
300年前の死食によって現れた宿命の子は逆に死の定めを退け、四魔貴族を異界の門・アビスゲートの向こうと追い返して、
『聖王』として世界の復興を為したという。

心優しい少年は、自分が魔王となる事を良しとしなかった。
だが、死の定めを跳ね返し、聖王となる事はできないままでいた。
聖王にも魔王にもなれない少年は、素性を隠し、他者との関わりを避けて孤独な放浪を続けることしかできなかった。

――サラ・カーソンと出会うまでは。

 「ぼくに関わった人はみんな死ぬんだ。ぼくを助けようとした人も殺そうとした人も。だから、ぼくに構わないで」
 「そんなふうに思いつめないで。ね、行こう」

サラ・カーソンは少年と同じ年頃に見える少女だった。
彼女は300年の時を経て再び開きつつあったアビスゲートを封じる為に、各地を旅していた。
サラの誘いを、何故か少年は断りきれずに、同行する事になる。
彼女と自分は、何だか似ている気がした。
生まれも育ちも、姿かたちも何一つ似ていない同士だったのに、どうしても彼女の事が他人だとは思えなかったのだ。


747 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:05:33 zt6Vr0a60
――アビスゲートを巡る旅は、危険な旅だった。

深遠な魔王殿の奥の更に奥、長い長いダンジョンの最深部。
西も東もわからぬ密林に囲まれた、灼熱地獄の要塞の中枢。
霧深いタフターン山の頂から進入する、生きた罠の蠢く洞窟の最奥。
西の海を超えた世界の果て、その深い海の底の宮殿。

アビスゲートは辿り着くのさえ困難な、険しい道のりの先にあった。

魔戦士長アラケス。
魔炎長アウナス。
魔龍公ビューネイ。
魔海候フォルネウス。

四魔貴族はアビスゲートを守るべく、アビスの側からそれぞれの分身を送り込んできた。
本体に力の劣る分身であるにもかかわらず、それらは他の魔物とは一線を画す強敵揃いだった。

しかしサラと少年たち一行は数々の困難を乗り越え、アビスゲートを封じてゆく。
一人の仲間の生命も失うことなく。

いつしか少年の心に生まれたかすかな希望。
かつての聖王のように、アビスの侵略を退ければ、この身に振りかかる死の宿命にも打ち克てるのではないか。

だが、少年につきまとう宿命はそんな希望をも打ち砕いたのだった。
残るゲートは一つ、最後の魔貴族の分身を破り、アビスゲートの封印を試みた少年は、
ゲートの向こう側から、呼び声を聞く。

『宿命の子よ
 いざ
 ゲートを開け』

ゲートの向こうから、抗いがたい力で吸い寄せられる少年と――サラ。
同じ時代に一人しか現れないはずの宿命の子が、二人。
なぜ。どうして。
答えを求められる状況ではなかった。

「君は向こう側へ行く人じゃない。さよなら。」

サラには少年と違って、彼女を愛する家族が、友達がいた。
サラは少年と違い、周りの人が理不尽な死を遂げる死の宿命を背負っていなかった。

――彼女こそが、『聖王』として生まれるべくして生まれついた存在なのだろう。
そう感じた少年は、サラをアビスゲートの外へと突き飛ばした。
一人アビスの側に残った少年は、向こう側からゲートを完全に封鎖し、アビスへと消えたのだった。

――だが――。


748 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:05:52 zt6Vr0a60
      ●            ●

(だけど、セイバーの仲間たちは、セイバーをアビスまで助けに来てくれた。
 ……それがセイバーの世界の完全な消滅という結果を招いてしまったのね)

「マスター?」

セイバーの黒い瞳が、心配そうにベッドのメリーの顔を覗きこんでいる。

「何でもないのよ、セイバー」

この子は、優しい子だ。
彼と、その仲間たちの優しさが、巡り巡って何もかもを滅ぼしてしまうなんて、
宿命って――不条理だ。
私はそんな彼に同情する。――同情してあげることしかできない。

私が巻き込まれてしまった聖杯戦争とは――戦争なのだ。文字通りに。
私の指示一つでセイバーは他のサーヴァントと戦い――もし敗北すれば、私は死んでしまう。
もし勝利すれば、敗者のマスターを殺すことになってしまう。
私は殺されるのも、殺すのも、覚悟ができないままでいた。
私が望むのは、蓮子を探しだして、一緒にこの戦争から脱出する。それだけだった。

彼はサーヴァントとして、何とか世界が消滅する運命を変えたいという願いを聖杯に託しているのだろう。
だけどごめんなさい、本当にごめんなさい――私はこの少年の願いを叶えてあげるために、生命を賭けた戦いに挑む事はできない。
私にとって世界の崩壊は所詮、遠い幻想の向こうの世界なのだ。
テレビのニュース映像の向こうで繰り広げられる紛争地帯の惨劇と同じくらい、他人ごとなのだ。
だから――。

「マスター……その石は? 危ないよ、寝るときにそんな尖ったものを握ってたら」

「えっ!?」

そこでメリーは自分の手に何かが握られているのに気付いたのだった。
その釣り針とも鍵とも付かない細長い石は、メリーにとって見覚えのあるものだった。

「……伊弉諾物質(イザナギオブジェクト)……」

「……イザナギ?」

「大昔にこの国、日本を創造したという、神様の名前よ」

伊弉諾物質。
メリーがサナトリウムで療養中、幻想となった地底奥深くの世界を体験した時に持ち帰った石片である。
イザナギプレート。日本列島を生み出した海底プレートは、2500万年前に大陸の下に潜り込み、消滅した。
この石片は消滅したそのプレートと同じ成分で出来ていて――明らかに加工された形状をしている。
石を加工することのできる知的生命体――人類など、現れるはずのない時代なのに。
これは、古の神々が手を加えた石なのだ。
この石を握ると、メリーには、見えるのだ。
2500万年前に神々の創造した、日本の姿が。

「聞きたいかしら? 日本を創造した神々のお話、『国産み』の神話を」

頷くと、セイバーは私の語り出す国産みの神話を、熱心に聞き入ったのだった。
その黒い瞳は、ここにきて初めて、歳相応の好奇心豊かな少年の輝きを放っていたように見えた。

(私は貴方に何も与えられない。だからせめて、この話だけでも聖杯への土産にして欲しい)

今のメリーには、そう願うことしかできなかった。


――それにしても、私はいつの間にこの伊弉諾物質を手にしていたのだろう。


749 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:06:19 zt6Vr0a60
【クラス】セイバー
【真名】宿命の子
【出典】ロマンシングサ・ガ3

【性別】男性

【パラメーター】
 筋力A 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具B

【属性】
 混沌・善

【クラススキル】
対魔力:C

騎乗:C

【保有スキル】
見切り:B
 敵の技を見切り、完全に回避する方法を閃く能力。
 一度『見切った』技は、視聴覚と行動の妨害が無い限り確実に回避することができる。
 同ランク以上の『宗和の心得』を持つ者の技は見切ることができない。
 初見の攻撃を見切ることもあり、『直感』スキルに類似するが、『直感』と違って視聴覚の妨害を軽減することができない。

魔術:C
 草木や風の力を操る術、『蒼龍術』を一通り扱うことができる。

龍神降臨
 対人魔術。最大捕捉:1(自分のみ)
 かつての聖王が開発した『蒼龍』の最強術。
 龍神の力をその身に宿し、一定の時間だけ無敵の肉体を得る。
 術や技を放つ際の魔力・体力消費を無視できるようになり、あらゆる肉体・精神へのダメージを無効化する。
 代償として、無効化したダメージは生命力の直接的な消耗、すなわちここではマスターの魔力消耗で肩代わりすることになる。

単独行動:C
 1日程度であれば、セイバーはマスター不在・魔力供給なしでも現界可能。
 生前、彼は他人を避けて、ずっと独りで生きてきた。――サラに出会うまでは。

真名秘匿:E
 名無しのまま育ち、出生の秘密をひた隠しにしてきた少年は、書類などの記録から真名を特定するのが難しい。

神性:-(A)
 セイバーの世界で、死食を生き延びた宿命の子はいずれ『神王』になるとされ、多くの信者によって崇められていた。
 もし彼が宿命の子であるという出自を明かしていれば、彼は生きながらにして神の如き信仰を集めていたに違いない。

【weapon】
 両手剣『東方不敗』。両手剣の扱いを得意とし、様々な技を体得している。
 また、上述の通り術の心得がある。

【人物背景】
 彼個人を示す名はなく、ただ『少年』と呼ばれている。
 世界でただ二人、『死食』を乗り越えて生き残った宿命の子のうちの一人である。
 宿命に選ばれた少年は、聖王となることも魔王となることもできず、孤独にさまよい続けていた。
 だがアビスゲートを封じる旅をするもう一人の宿命の子・サラと出会い、少年は彼女の旅に同行するようになる。
 数多くの困難を乗り越え、最後のアビスゲートを封じようとした時、サラと少年はアビスゲートに吸い寄せられる。
 少年はサラをかばい、向こう側からアビスゲートを封鎖してアビスへと消えたのだった。

 ――だが、サラは仲間を引き連れ、アビスにやってきた。少年を助け出すために。
 アビスに二人の宿命の子が存在するという、今までになかったイレギュラーが、破壊の力の化身『破壊するもの』を生んでしまう。
 死闘の末『破壊するもの』を撃破した少年とサラたちだったが、
 『破壊するもの』の消滅の際に発生した膨大なエネルギーは、少年の世界の何もかもを消し飛ばしてしまったのだった――。


750 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:06:33 zt6Vr0a60
【宝具】
『宿命の子よ、いざ、ゲートを開け』
ランク:C 種別:対界宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 宿命の子が持つ、異界への扉『アビスゲート』を開閉する力が宝具と化したもの。
 結界など、異空間につながる出入口を自由に開閉することができる。新たに出入口を作成することはできない。


『死食(トータルエクリプス)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜100
 セイバーの世界を300年ごとに襲う災厄『死食』と、死の力に満たされた異界『アビス』を再現する、固有結界の一種。
 暗黒の空を覆う厚い雲のすき間から、僅かに皆既食のコロナ光が差す空間を展開する。
 その空間に満たされた死の力は、踏み入れた者の耐久・対魔力にかかわらず、生命力を徐々に奪ってゆく。
 死星の元に生まれたセイバーとそのマスター、そしてアンデッドや怨霊など、死に魅入られし者だけがその影響を免れることができる。

 さらにセイバーが魔王として世界を滅ぼすと決心したならば、
 座を通じて『四魔貴族』が結界内に現れ、セイバーに協力してくれることだろう。
 また、固有結界外でも彼らは分身を送り出す形で力を発揮してくれる。
 ……もちろん、今のセイバーに魔王となる意志は全くないため、召喚は不可能。


『破壊するもの』
ランク:-(A) 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:5
 宝具『死食(トータルエクリプス)』内に、死星の下に生まれし子が二人存在する時に自動的に発動する。
 純粋な破壊の力そのものが人の似姿をとり、凄まじい破壊を振り撒く。
 その制御は死星の元に生まれし子たちの精神力に依存するが、非常に困難を極める。
 今回現界している死星の下に生まれし子はセイバーだけのため、事実上発動不可能。


『破壊と、■■の力』
ランク:-(EX) 種別:対界宝具 レンジ:無限 最大捕捉:無限
 宿命の子が二人存在しなければ発動できないスキルであるため、発動不可能。
 『破壊するもの』の制御が完全に宿命の子たちの手を離れた時、セイバーの世界の何もかもが破壊しつくされ、消滅した。
 だが――。


【サーヴァントとしての願い】
(少年の)世界が消滅することを防ぐ。


751 : マエリベリー・ハーン&セイバー ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:06:49 zt6Vr0a60
【マスター】マエリベリー・ハーン(愛称:メリー)
【出典】東方project(秘封倶楽部)
【性別】女性
【参加方法】
 月見の際、月の向こうに映る帝都を発見し、帝都に迷い込む。

【マスターとしての願い】
 無し。
 蓮子と合流し、聖杯戦争を脱出したいが――?

【人物背景】
 京都の大学に通う留学生。出身国は明かされていない。
 海外の生まれだが流暢な日本語で話し、日本の文化に馴染んでいるため、日本での暮らしは長いと考えられる。
 専攻は相対性精神学。
 同じ大学に通う宇佐見蓮子と共にオカルトサークル『秘封倶楽部』を創設し、
 日本に潜む不思議を追い求めている。

【能力・技能】
 『結界の境目が見える程度の能力』を持つ。
 結界の向こう側、幻想の世界に追いやられた者達の空間を覗き、その中で活動することができる。
 結界の向こうでケガをしたら身体にフィードバックされたり、拾ったものを持ち帰ったりするなど、
 その能力は結界の向こうを覗き見るに留まらなくなってきている。
 他者のまぶたに触れることで、その者に不完全ながら『結界の境目が見える程度の能力』を共有させることが可能。

【weapon】
 無し。メリーは戦う力を持っていない。
 『伊弉諾物質』をいつの間にか持ち込んでいた。

【基本戦術、方針、運用法】
 宝具を除けば、概ね標準的な性能のセイバーといえる。
 マスターはその能力から人の域を外れつつある存在となっており、魔力は非常に高い。
 蒼龍術による搦め手や範囲攻撃も可能で、直接戦闘ならば並大抵の相手に遅れをとることはないだろう。
 マスターの能力『結界の境目が見える程度の能力』とセイバーの宝具『宿命の子よ、いざ、ゲートを開け』は相性抜群。
 組み合わせると、色々と面白い使い方ができるかも知れない。


752 : ◆R1q13vozjY :2015/01/12(月) 01:07:07 zt6Vr0a60
以上で投下を終了します。


753 : ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:28:30 GCxPl9yM0
投下乙です。
私も投下させていただきます。


754 : 汝は人狼なりや ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:29:33 GCxPl9yM0
小さな村に一つの噂があった。
村の外れに住んでいる老婆はとても頭がよく、こちらの思うことをピタリと当てるという。
小さな村に一つの噂が立った。
曰く、村の外れに住んでいるあの老婆は『魔女』ではないか。
噂はどんどん広まり、村中の人が老婆を恐れた。
噂を耳にした神父がこう言った。

「魔女は水に嫌われるものです。池に投げ込み、浮かんできたなら魔女、沈めば人間です」

村人はそれを聞き、老婆を池に投げ込んだ。
老婆は必死に泳ぎ、岸にたどり着いた。
村人は『魔女』を火あぶりにして殺した。


小さな村に一つの事件が起きた。
山道の入り口で村長の一人息子が獣に噛まれたような傷を負って死んでいたという。
小さな村に一つの噂が立った。
曰く、山の麓で過ごしている男は人を喰らう『人狼』ではないか。
噂はどんどん広まり、村中の人が男を恐れた。
男の隣人に話を聞くとこう言った。

「あの日血に染まった前掛けを洗ってたし、肉を喰ったと言っていた」

村人はそれを聞き、男が寝ているところを見計らって『縛り首』にした。
男の部屋には新しい熊の毛皮が置かれていた。




好奇心は猫を殺す。
噂は、それの伴う恐怖と狂気は『人間』を殺す。


755 : 汝は人狼なりや ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:30:29 GCxPl9yM0

ある町に噂が立った。
曰く、月のない夜に出てくる紅い月が夢を叶えてくれる。
ある者は聞き流し、ある者は血眼になって空を眺めた。
ある新月の夜、「生き別れた恋人に会いたい」と常日頃から言っている男が望遠鏡を持って歩いているのを見かけた人がいた。
それ以降、男の姿を見た者はいない。


ある街に噂が立った。
曰く、かつてこの街で騒がれた猟奇殺人鬼が戻ってきた。
曰く、猟奇殺人の被害者は残らず血を抜かれていた。
曰く、殺人鬼は死神のような吸血鬼だった。

……街で、猟奇殺人など起きてないにもかかわらず。

しかしある夜、恐れと噂は形を成し、人を殺しに蠢きはじめた。
ある像はかつて街に巣食った『混沌』に『蛇』
ある像は伏せられし罪、本来ならあり得ぬ『殺人貴』
ある像は不完全ながらも魔王へと堕ちた『朱い月』

その全てが水面に映る月、一夜と果つる虚ろな鏡像。
しかし鏡像踊る『ワラキアの夜』に真実の『朱い月』が昇ったとき……『タタリ』は一個の『吸血鬼』の実像を結んだ。
吸血鬼の名は『ズェピア・エルトナム・オベローン』

稀代の錬金術師にして死徒二十七祖の一角である彼はかつて第六法という神秘に挑みこれに敗北。
その姿は霧散した――だがその霧散はズェピアの思惑通りの結末となった。
肉体という檻から解放され大気に散った霊子は意思からも解脱した為流れるまま根源たる無に落ちていき次の変換を待つのだが、生前「タタリ」という術式を完成させていたズェピアは死徒の肉体を形成していた強大な霊子を拡散しつつも世界に留まることに成功する。
ズェピアは人間が滅びるまでのスパンで「タタリ」が発生するであろう地域を割り出し、千年単位の航海図を書きその通りに己の死体が流れるルートを計算した。
無論そのルートは情勢や状況によって無限に枝分かれする一方通行のものだが――それを循環するルートへ編みかえ、意思が消えた後も霧散した自身がそれに従い移動するようプログラムした。
そしてある一定条件が満たされた時と場所で彼の霧散した霊子はその地域で発生した「噂」に収束し現世に蘇る。
くり返し くり返し 幾度も 幾度も 人の世が終わるまで、次に朱い月が昇るその時まで「タタリ」は駆動し続ける。
永い永い流転の果てに その身が第六法に辿りつくことを夢見て……

だがその夢は叶わなかった。
死徒ズェピアの見た夢は自らの継嗣と退魔の末裔に滅ぼされた。

ワラキアの夜が終わりを告げる、朱い/紅い月の光の下で……

     ☨     ☨     ☨

「キ…キキキキキキ!!!魂魄ノ華爛ト枯レ杯ノ蜜ハ腐乱ト成熟ヲ謳イ例外ナク全テニ配給。
嗚呼是即チ無価値ニ候…蛮脳ハ改革シ衆生コレニ賛同スルコト一千年!
学ビ食シ生カシ殺シ称エル事サラニ一千!麗シキカナ毒素ツイニ四肢ヲ侵シ汝ラヲ畜生ヘ進化進化進化…進化セシメン!!!
カカカカ…カ・カ、カット!カットカットカットカットカット!リテイク!!…………我、神の子の血を以て第六法へと至らん!!」

それは宣誓。叶わぬと言われた夢にそれでも手を伸ばすという堂々たるもの。
これは開幕。脚本家(ズェピア)自ら演じる筋書き無し(アドリブ)の殺戮(ドラマ)。

「嗚呼、聞クモ無残ナ悲シ嬉シ…真祖の血に染まる朱い月は、神の子の血に至る紅い月とは!
神の子の悪戯か、カインの子の悪戯か!姫君もなかなかの演出家ではないか」

大いに笑う。絶望を振り払うように。
大いに嗤う。己が運命の在り様を。

「さて、このソワレはダブルキャストのはず。私と共に踊るのは……君かな?」

問う。汝は何者なりや?
答える。自ら存在意義を問うことこそ、彼女の存在証明。

「ワタシ、キレイ?」




東京に噂が立った。
曰く、この都市には口裂け女がいる。


756 : 汝は人狼なりや ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:32:03 GCxPl9yM0
【クラス】

ライダー

【真名】

口裂け女(オロチ)@地獄先生ぬ〜べ〜

【パラメーター】

筋力C+ 耐久C 敏捷B+ 魔力D 幸運D 宝具C

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

騎乗:B+
都市伝説と言う存在、彼女をはじめとする噂に乗るライダーは騎乗スキルを持ちえないものが多い。
しかし口裂け女には乗り物を扱う逸話があるため騎乗スキルを持つ。
野獣ランクまでなら乗りこなし、都市伝説に類する存在であるならば魔獣クラスであっても乗りこなす可能性がある。
―口裂け女は赤いスポーツカーに乗って現れる―
―口裂け女は人面犬に乗ることができる―

対魔力:E
近現代の存在であり神秘が少ないことに加え、呪われたと言う逸話があるため魔なるものに対する耐性は極めて低い。
クラススキルにより最低限得た程度。無力化はできず、ダメージを僅かに軽減する。
―口裂け女の容姿は犬神憑きによるものである―

【保有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

飛翔:B
空中を飛ぶ能力。赤い傘が必要と言う逸話もあるが、別になくても飛べる。
―口裂け女は空を飛ぶ―

都市伝説:A
噂で成り立つ都市伝説であるということそのもの。噂で成り立つスキルというのは無辜の怪物に近いが、最大の違いはその噂が全て真実になり得るということ。
最強の都市伝説の一角である口裂け女は最高ランクで保持する。
聖杯戦争が行われる地でその都市伝説、この場合『口裂け女』を知るものがいる限り全ステータスが1ランク向上する。
噂は一人歩きするものであるため同ランクの単独行動を内包する。


757 : 汝は人狼なりや ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:33:01 GCxPl9yM0

【宝具】
『承認欲求〜白雪姫の母は鏡に問う〜(ワタシキレイ?)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:上限なし
噂に乗らなければ存在できない、誰かに問わねば在り方が曖昧な口裂け女という都市伝説において最も象徴的な逸話。
「私、綺麗?」という問いに対して明確な答えを返したものと戦闘を行う場合、Cランク相当のスキル:加虐体質を獲得し、また追撃時に攻撃判定を3度追加できる。
またある意味当然のことだがこの宝具を発動した場合、それを視認したものはまず確実に『口裂け女』という真名を看破する。
吸血鬼や人狼など知名度で勝る都市伝説に対してはこの宝具は効果を発揮しない。

『信ずる者は巣食われる〜口の裂けた赤ずきんの老婆は狼〜(ライク・ア・ナーサリーライム)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2人
恐れ、噂するものが存在する限り膨らみ続ける都市伝説という存在に口裂け女の逸話が合わさり、昇華した宝具。『口裂け女』を知るものがいなければ効果を発揮しない。
口裂け女が口を耳まで裂いた者もまた口裂け女となる。
ステータスや宝具など全て同一の口裂け女そのものである。同時に存在できるのは3体まで。
―口裂け女に口を裂かれた者も口裂け女になる―
―口裂け女は三人姉妹である―

『末妹不成功譚〜この灰かぶりは小鳥に出会わない〜(ポマード、ポマード、ポマード)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
三にまつわる口裂け女の噂と、三と言う数字の神秘性、末子成功譚の逆を行く逸話が宝具と化したもの。
シンデレラ、三枚のお札、三匹の子豚など3つ目、もしくは第三子が成功するというのは世界中で散見されるモチーフである。
しかし口裂け女は三女であるにもかかわらず、交通事故や手術の失敗など要因は違えど一人だけ口が裂ける結果となったと噂される。
またポマードやハゲ、べっこう飴などと三度唱えると逃げ出すという噂もあり、三位一体をはじめとする聖なる数字3は口裂け女にとっては失敗をもたらす数である。
『口裂け女』に対する全てのスキル・宝具を三度目に無効化できる。
なお四度目、五度目には通常の効果を発揮し六度目に再び無効化できる。

また「ポマード」など前述の文言を唱えた場合幸運判定を行い、失敗した場合1ターン恐慌状態になる。
ただし加虐体質のスキルを獲得している場合判定の成功率は上昇し、この効果も三度目には無効化される。

『悪夢は寝て見ろ〜狂えるお茶会でアリスは目覚めない〜(ドウモリ・ハロウィンナイト)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
悪の究極妖怪、オロチであることそのもの。
本来は周囲の妖怪を取り込んで己が一部に変換、より強力な妖怪へと進化していく宝具。
しかしズェビアの固有結界『タタリ』が噂によって最恐の存在に姿を変えるものであること、かつて再誕したのが霊気によってさまざまな妖怪を再現できる機械を利用したものと近似しておりその影響を受ける。
加えてそもそも悪の究極妖怪、オロチを完全には再現できないため宝具が変質。
『噂にある最強の妖怪』へと姿を変える宝具となってしまった。
それにより今は『口裂け女』になっているため、それ以上の効果の発揮は今のところ見込めない。
ワラキアの夜は明けた、しかしもしかすると妖怪をとり込むこの宝具なら……?

【weapon】
『刃物』
口裂け女は様々な刃物を使うと言われる。ナイフ、鋏、メス、鎌、斧から日本刀まで。
魔力消費により様々な刃物を生成可能。


758 : 汝は人狼なりや ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:34:13 GCxPl9yM0

【人物背景】
学会を追放された科学者、百鬼久作の手により復活した大妖怪。
その復活をぬ〜べ〜およびその生徒が阻もうとしたために百鬼は口裂け女やはたもんばなど多くの妖怪を産み出し、障害とした後にその妖怪をオロチ復活の糧とした。
復活には成功したのだが、善の究極妖怪ケサランパサランに敗北、消滅した。
その大妖怪が、伝説上の存在であるため噂に乗るライダーとして再現された……のだが変質した宝具の効果により本来とは異なる姿となる。
『噂に聞く最強の妖怪』、その器としてかつて取り込んだ都市伝説上の妖怪『口裂け女』の姿をとっており、その逸話の大半を再現している。

口裂け女は1980年ごろ日本で流行した都市伝説。後には韓国にも伝わっている。
子供が媒介の中心だったゆえか次々と逸話が盛られ物理的な強さは相当なものと噂される。
ターボババアのように速く、ひきこさんのように力強く、赤マントのように神出鬼没で、猿夢のように不滅で、くだんのように理不尽で、人面犬のように異形な都市伝説。
くねくねが最狂ならば口裂け女こそ最強の都市伝説ではなかろうか。
さながら吸血鬼のように、強みと同じく多くの弱みを持つ都市伝説、その具現。

【サーヴァントの願い】

再誕

【マスター】

ズェピア・エルトナム・オベローン@MELTY BLOOD

【参加方法】

消滅の間際アルクェイドが『空想具現化』で顕現した朱い/紅い月を目にした

【マスターとしての願い】

今度こそ第六法に至り人類滅亡の未来を回避する

【weapon】
『エーテライト』
第五架空元素という存在を編んで作られたナノ単位のモノフィラメントを所持。
医療用に開発された擬似神経でもあり生物に接触すると神経とリンクして擬似神経となる。
他人の脳に接続すれば、対象の思考や精神を読み取り、行動の制御(活動停止、リミッター解除)など可能。
肉体や神経の縫合、ワイヤートラップ的な設置他、用途は多岐に渡る。
戦闘では鞭のように使用する、相手の思考を読み行動を縛る、悪性情報の実体化など。

【能力・技能】
死徒二十七祖第十三位、『ワラキアの夜』。
かつて『黒の吸血姫』との契約ほか様々な保険により『タタリ』という一つの現象にまでなったのだが、『白の吸血姫』の手により一個の死徒に再び堕ちた。
そのため後述する固有結界は現在駆動できないが、それでも二十七祖の一角にして元アトラシアとして卓越した戦闘技能を誇る。
錬金術師としてのエーテライトの扱いや並行・高速思考、吸血鬼としての爪や怪力を武器とする。

『固有結界・タタリ』
周囲の人間の心のカタチをカタチにする固有結界。
ある周期で出現する現象であり、特定コミュニティ内の人間(それに匹敵する知能を持つ者を含む)の噂・不安を煽って増大、集束させ、その内容を元に、不安や恐れのイメージを具現化、自身に転写して顕現し、噂通りの能力を持つ吸血鬼「タタリ」として具現化する。出現したタタリはその一定地域内を殲滅する。
簡単に言えば、噂やら都市伝説を広め、イメージされた通りの姿・能力に変身することができるという能力。
記憶も含めて本物と寸分違わぬ偽物を作り出すことも可能で、存在しないはずの者、既に死んだ者になることも可能。
具現化される噂や都市伝説に制限はなく、場合によっては「願い」めいたものもその対象となりうる。しかし、「具現化」=「吸血鬼タタリの(嗜好・知識を取り戻した上での)復活」であるため、具現化された話がどんなものでも「発生源の住人を皆殺しにする」ものに変えられてしまう。
タタリである死徒ズェピアは既にこの世に存在せず、「タタリ」も一晩しか持たないが、出現したタタリを退けようとも、起動式の条件さえ満たせば再び出現できるため、永遠に存在し続ける。

アルクェイドによって死徒ズェピアへと戻されたため現在この固有結界は駆動できない。
だが何らかの形で再び『現象』になることができれば……?


759 : 汝は人狼なりや ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:34:31 GCxPl9yM0

【人物背景】
MELTY BLOODのヒロイン、シオン・エルトナム・アトラシアの三代前の祖先(曾祖父)に当たる人物で、五百年前のアトラス院で院長を務めた天才錬金術師。
未来を求めるという過程で初代アトラシアが辿り着いた「人類滅亡」に、彼もまた辿り着いてしまう。それに抗おうと数多の策を講じて実行に移そうとするも、その悉くが失敗に終わる。
覆す方法を模索し続けるもその度に「より明確な滅亡」という計算結果を見せつけられ、最後には発狂してしまった。
死徒となって自身の存在を強化したズェピアは滅亡回避のために第六法を目指すも敗北、肉体は消滅し、構築していた霊子が霧散する。
しかし、それ以前に完成させた「タタリの駆動式」と「霊子の航海図」、アルトルージュ・ブリュンスタッドと交わした「契約」他多数の保険により、意識も記憶もへったくれもない霊子たちを留めて漂流させることに成功、自身を現象へと変える。現在の彼は「特定の時間・地域に固有結界タタリを展開する現象(人々の噂や不安を元にそれを様々な形で具現化する)」であり、タタリとして虐殺を行ないつつ、より強大な存在である真祖の肉体を得て再び第六法に挑もうとしていた。
「ワラキアの夜」という通り名の由来となった15世紀のワラキアを皮切りに、幾度か顕現。一度前は3年前のイタリア。自分を滅ぼしにきたリーズバイフェ・ストリンドヴァリとシオンを返り討ちに仕留めた。シオンから吸血し、彼女を半死徒に変えている。
そして日本三咲町へと舞台を移し、遠野志貴、シオンと交戦。様々な条件が重なり敗北、消滅を迎えようとした瞬間に参戦。


【方針】
『口裂け女』の噂を広め、『口裂け女』を産み出し、勝利で幕を閉じる。
『タタリ』とやることは変わらない。


760 : ◆yy7mpGr1KA :2015/01/12(月) 01:35:02 GCxPl9yM0
投下完了です。


761 : ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/12(月) 03:45:50 Tmfr56y60
投下お疲れ様です。
私も投下させて頂きます。


762 : 藤宮紅葉&エクストラクラス(ノービス)  ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/12(月) 03:46:27 Tmfr56y60


―――よいか、紅葉。
お前の命はお前のものではない。我ら、日本民族すべてのものじゃ。
多くの下らぬものに惑わされるでない。
時が来たならばその命、すべての人々のために捨てねばならんのじゃからな。




東京。


人が築いてきた文明の光。

そのすべてが消え。
天岩戸は閉じられた。
街が『緑』で浸食されはじめている。
それでも薄く街が照らされているのは、遠くに見える、赤い月のせいか。


―――楓姉さん。
確かにわたし達は、日本を穢してきたかもしれない。
けど、それは努力すれば変えられるはず。
日本に住んでるみんなが頑張れば、きっと。

『今の日本に住む人々にはそんな力はありません。
 信じられるものなど何もないのです。

 これは大地を清らかなものへと変える力と、穢れた人間達を蔓延らせる力との戦いなのよ。
 腐りきったこの国の民に、勝利の光が届くはずはありません。
 いえ、そうさせないのが奇稲田の使命なのです』

そんなことない。
わたしは奇稲田である前に人間だもの。
絶対に人間を信じる。

だから、みんなを救いたい。

『この地に希望はあるの?
 醜く穢れたこの大地に。
 思いやりも労わりの気持ちも忘れたこの国の人々に。
 希望は』


それでも。


わたし……みんなのこと、愛してる。
愛してるから、守りたい。

愛してる。

愛してる…………





763 : 藤宮紅葉&エクストラクラス(ノービス)  ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/12(月) 03:47:04 Tmfr56y60


目を瞑っていても。光が差してくるのが分かる。
横たわったまま、閉じていた目を開く。

「ここ……は?」

わたしは、奇稲田の力を使って。
それで……。

「おっ。やっと起きたか、お嬢ちゃん」

上半身だけ起き上がり、声のした方を向く。
白い髪に髭を薄く生やし、煙草を加えたおじさんがこちらを見ている。

「ええと……?」
「お嬢ちゃん、下着はもうちょい色気のあるもの選んだ方がいいぞ」
「えっ?」

見ると、いつの間にか白単衣ではなく、
いつもの国土管理室の服に着替えていて。
そして、スカートがめくれ上がったままになっていた。

「きゃーーー!?」

慌ててスカートを直してパンツを隠す。

「あーあ、折角いい眺めだったのに」

ぷはーと煙を出しながら白髪のおじさんは言う。
よく見てみると、横髪は黒い。白く染めているのかな?

「え、えっと。
 ……わたしは藤宮紅葉です。あなたは?
 そして、ここは……?」

おじさんはにこっとすると。

「おう、挨拶がちゃんとできるのはいい子の証だな。
 紅葉ちゃんな。俺は俵文七。
 ここは統道学園、その校舎の屋上だな」


764 : 藤宮紅葉&エクストラクラス(ノービス)  ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/12(月) 03:47:34 Tmfr56y60

立ち上がって辺りを見回してみると、確かに学校の屋上にいるみたい。
……学校も久しぶり。もうずっと前のように感じる。
島根にいる、あーちゃんやクラスのみんなは無事だろうか。
ハッとして文七さんに聞いてみる。

「あっ、あの。楓姉さんは……スサノオはどうなったんですか!?」
「あー。そのまんま呼ばれたクチか。
 ほれ、その手にある紋章みたいなの、見てみな」
「紋章……?」

右手を見ると、草薙さんの勾玉があったあたりに、
不思議な紋様が三画描かれていた。

「これ……は?……いたっ!!」

頭に激痛が走り、何かが頭の中に大量に流れ込んでくる。

―――しばらくの間、痛みに耐え。

「せいはい……せんそう……?」
「そっ。何の因果かは知らねーけど。
 お嬢ちゃんはそれに巻き込まれた。
 そして俺はその紅葉ちゃんのサーヴァントってワケだな」
「え……えええええええええええええええええ!?」

頭がぐるぐるする。
ただでさえスサノオのことでいっぱいいっぱいだったのに、
新たに別の問題を持ってくるとか本当にどうにかしてほしい。

「……お嬢ちゃんが聖杯戦争に勝ち抜きたいってんなら、
 俺の力を使って全員ぶっ倒してもいい。
 そうじゃないってんなら、まあそれにも付き合う。
 ただし」

文七さんは真面目な顔をしてこちらを向いた。

「最後に、おっぱい揉ませてくれ」
「ええええええええええええええ!?」


765 : 藤宮紅葉&エクストラクラス(ノービス)  ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/12(月) 03:48:05 Tmfr56y60

【マスター】
藤宮紅葉@BLUE SEED

【マスターとしての願い】
戻って楓姉さんを止めないと。

【weapon】
勾玉:大蛇の力を宿した勾玉。胸に埋め込まれている。
 勾玉を共鳴させることで、荒神の位置を感じ取ることができる。
 聖杯戦争においては魔力源として使えるくらいだろう。

【能力・技能】
『奇稲田の血』
 代々受け継いできた奇稲田の血。
 その血は化物を封じ込める力を持つ。

『まつりうた』
 命の力を削って祈り唄うことで、
 日本人全員の心に『祭』の熱い心を呼び起こさせる。

【人物背景】
古来より日本に巣くう化け物「荒神」を、命を捧げることにより封じる力をもつ人柱「奇稲田」の血を引く15歳の少女。
その事実を知らぬまま祖母と母親の元、出雲で呑気に暮していたが、
存在すら知らずにいた双子の姉、楓の失踪を機に己の運命を知ることに。
故郷出雲での事件の後、東京へ移住し、対荒神専門機関『国土管理室』に所属する。

ちょっぴりドジでどこか抜けてる、素直で元気な脳天気ヒロイン。
祖母に躾をきっちりされており、行動力はあるが意外に礼儀正しく気配りもできる。

【方針】
まずは聖杯とはなんなのかを調べる?


766 : 藤宮紅葉&エクストラクラス(ノービス)  ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/12(月) 03:49:56 Tmfr56y60

【クラス】
ノービス(エクストラクラス)

【真名】
俵文七@天上天下

【パラメーター】
筋力A+ 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具-

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
なし。
ノービス(素人)にクラススキルは存在しない。

【保有スキル】
天性の肉体:A
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。
このスキルの所有者は、常に筋力がランクアップしているものとして扱われ、
鍛えなくても筋骨稜々な肉体を維持することが出来る。

戦闘続行:A
いかなる絶望的な状況においても、決して折れること無き不屈の意志。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命傷を受けても即死でない限り生き延びる。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

対異能:C
異能の者相手に己の力のみで勝利した普通人が保持できるスキル。
異能力持ちとの戦闘時、自身のパラメータのひとつを1ランクアップさせる。

ワキガ:C
臭い。

【宝具】
なし。
ノービス(素人)に宝具は存在しない。

【weapon】
なし。

【人物背景】
統道学園3年。二度留年している20歳(独身)。風体はチョイ悪オヤジ風。趣味はナンパと釣り。
学園生活をエンジョイすることに拘る風来坊だが、その一方で頼りにされ、親友のために死より勝る恐怖すら超えるナイスなタフガイ。
いつもは前髪をかき上げているが、本気を出す際は前髪を下ろす癖がある。「くっだらねぇぜ」が口癖。

武術の心得はないが、天性の豪腕と驚異的な打たれ強さ、野生動物並みの動体視力と反射神経を誇り、戦闘力は作中で最高クラス。
自身の天性のみで修練を積んだ者たちを圧倒する「生まれついての絶対的強者」である。
その豪腕から「ダブルインパクト俵」の異名を持ち、他にも「統道最強のド素人」「エクソシスト俵」など数々の異名を持つ。
龍眼の力に呑まれた棗慎と対峙し、ボロボロになりながらも勝利し、作中で唯一、異能の者相手に己の力のみで勝利した普通人でもある。

迷走しまくる同作品の中でも、魅力のひとつが彼の生き様である。


767 : ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/12(月) 03:50:12 Tmfr56y60
以上で投下終了です。


768 : ◆OSPfO9RMfA :2015/01/12(月) 14:56:33 RbdyaFN60
投下乙です。

私も投下します。


769 : 緋村剣心&ランサー ◆OSPfO9RMfA :2015/01/12(月) 14:57:14 RbdyaFN60

 紅き月光の下を、一人の壮年の男が歩く。
 腰には木刀を携え、赤き衣と袴の、時代に似合わぬ和装だった。

「ここが未来の東京……いや、『東京の未来の一つ』でござるか」

 この戦の舞台、東京は彼が生きる時代よりも未来の地。
 感慨深そうに辺りを見渡しながら散歩をしていた。

 ふいに男は気配を感じ、そちらの方を見やる。

「あんたがオレのマスターか?」

 男に声を掛けたのは、黒い学ランを着た利発そうな少年だ。

「如何にも。拙者は緋村剣心。今はしがないの主夫でござるよ。お主が拙者の従者でござるか?」
「そうだ。オレは武藤カズキ。何を隠そう、槍の達人だ!」
「槍兵であったか。いや、関係ない話でござるか」

 剣心は申し訳なさそうな顔をする。

「拙者にはもう、他者を殺めてまで叶えようとする願いはござらん。むしろこの戦を止めようと思う次第。拙者の目の前で人死には出さぬよ。すまぬが、お引き取り願えないでござるか」

 それは聖杯への謀反、不殺の決意。殺し合いを目的とする戦への反抗であった。

「だったら、オレも手伝う」

 カズキは迷わず言葉を返す。

「オレにも願いは無いし、オレが強くなったのは人を殺すためじゃない。人を護るためだ。『偽善者だ』って言われても、オレもこの戦いを止めさせたいと思う」
「……そうでござるか」

 カズキの言葉に、剣心は穏和な笑みを浮かべた。

「なら、これからよろしく頼むでござるよ、カズキ」
「ああ、任せてくれ!」


770 : 緋村剣心&ランサー ◆OSPfO9RMfA :2015/01/12(月) 14:58:13 RbdyaFN60
【CLASS】
ランサー

【真名】
武藤カズキ@武装錬金

【属性】
秩序・中庸

【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運A 宝具A++

【クラス別スキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【固有スキル】
戦闘続行:A
 往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。

無窮の武練:A
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
 いかなる地形・戦況下にあっても十分の戦闘能力を発揮出来る。

核鉄:A
 カズキの心臓部に埋め込まれている、錬金術により生み出された合金。
 闘争本能に呼応し、武器となる。また、非展開時は治癒能力を高める。
 カズキの心臓の代わりをしており、破壊されると死亡する。
 埋め込まれているのは、シリアルナンバーⅢ。

単独行動:E+
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクEならば、マスターを失っても数時間は現界可能。
 ただし、宝具『黒の核鉄(ヴィクター化)』を発動させれば魔力回復が容易な為、実質的な現界可能時間は延びる。

【宝具】
『突撃槍の武装錬金(サンライトハート改)』
 ランク:C 種別:対人 レンジ:1-3 最大捕捉:1人
 シリアルナンバーⅢの核鉄が武装錬金した姿。
 一見すると柄の長いブロードソードのような形状。
 闘争心に呼応して槍先が分解し、内側からエネルギーが放出され、槍先のサイズを自由自在に変更させることができる。
 これは胸に埋まった核鉄が変形した物であり、破壊されると死亡する。

『黒の核鉄(ヴィクター化)』
 ランク:A++ 種別:対人 レンジ:1-3 最大捕捉:99人
 シリアルナンバーⅢの核鉄。カズキの身体を「第三の存在」と変貌させる。
 筋力、耐久、敏捷を1ランクアップさせる。また、飛行を可能とさせ、高い再生能力を付与させる。
 発動には多大な魔力が必要だが、それらを周囲の生命体から吸収(エナジードレイン)することによって成り立たせる。
 エナジードレインは自分の意思で止めることができず、また、自身のマスターであっても対象外とならない。
 瀕死の重傷や死亡した場合、カズキの意思に関係なく発動する。その為、彼を殺害するにはこの宝具を破壊する必要がある。
 カズキは既に英霊の身であり、ヴィクター化が進むことはない。だが、エナジードレインは仲間(少なくともマスター)を巻き込む為、当人らに覚悟があっても、カズキはあまりこの宝具を使いたがらない。

【Weapon】
サンライトハート改

【人物背景】
和月伸宏作『武装錬金』の主人公。
正義感の強い熱血漢。明るい天然な少年。友達も多く、信頼も厚い。
敵であろうと全力で救おうとする姿勢は『偽善者』と言われるほど。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を止める。人は死なせない。

【基本戦術、方針、運用法】
対聖杯、かつ非殺。


【マスター】
緋村剣心@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を止める。人は死なせない。

【能力・技能】
剣術(飛天御剣流は使えない)。

【人物背景】
和月伸宏作『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の主人公。
不殺の誓いを抱き、人のために剣を振るう流浪人。
幕末時代、『新時代の為』に人斬りをしてきた過去を持つ。
現在は神谷活心流道場に腰を下ろし、神谷薫と再婚、息子をもうける。

不殺主義で、他者が他者を殺めることもよしとはしない。
恵まれぬ体躯で飛天御剣流を酷使したため、現在は飛天御剣流は使えない。


771 : ◆OSPfO9RMfA :2015/01/12(月) 14:58:41 RbdyaFN60
投下終了です


772 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:29:22 a2SgeJQI0
投下します


773 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:29:57 a2SgeJQI0
東京の夜に輝く赤い満月ねェ。
そいつは嫌なものを思い出させやがる。
何をって?
ドラゴンさ。
東京を――地球を襲ったクソったれなドラゴン共の中には死人を操り、月に擬態するドラゴンがいたんだよ。
ハッ、つまるところ見えている異常なんざまだマシなんだよ。
本当にこええのは外面を取り繕い、心のなかで爪を研いでいる奴らさ。
あの月にも――ムーンセルにも――月の聖杯にも――この戦いの裏側にも。
案外そういうクソ野郎がいやがるんじゃねえか?





窓側にて赤い月を見上げ、とりとめのないことを考えていた俺の耳に、ふと、女の歌声が響く。
それはどこかで聞いたことがあるようでないような歌で。

――紅く染…る 揺ら…世界 7…響く 夢 の終…り――

かつての戦いを唄ったようにも、来るべき戦いを唄うようにも聞こえる、そんな歌。

(七体+αの帝竜たちとの戦いを経て、今度は七騎+αの戦いにランサーとして呼ばれるとは因果なものだ)

思わず顔を顰めるものの、聞こえてくる歌自体はどこか懐かしさを感じさせるもので、悪くなかった。
歌が聞こえてくるのは一階の庭からだろうか。
もっと近くで聞きたいとそう思い、宛てがわれた一室を出て、音を立てないようゆっくりと階段を降りていく。

――紅く…… 揺らぐ…… 7つ……人の 別れ
  命枯…て 願い生ま…… ……叶え 夢… 欠片――

歌に誘われるままに歩を進める。
独特な歌詞が繰り返される中、歌もまた進んでいく。

――ああ…… 此処は何処……

何故だろうか、自然と涙が出てきそうだった。
らしくもない。が、仕方がないのかもしれない。
歌なんていう人間の文化に触れたのは、一体いつ以来だったか。

――存在 証明 機械じかけ… ……

人竜になって以来聞かなかったはずだ。
そうなると、ああ、千や万じゃ済まない数えるのも億劫な程の時ぶりなのか。

――あなたが居た 世界…愛してやまない日常 明日を迎え………――

(今の俺はあいつだけじゃない、ネコやダイゴたちもいた頃の俺として現界しているはずなんだがな。
 年をとったら涙もろくなるっていうのは本当みてぇだぜ)

苦笑しながらもリビングの扉の前に立つ。
このまま扉を開ければそのまま部屋を通って、窓から庭に出られる。
でもそうする前にもう少しだけ、この歌を聞いていたかった。


774 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:30:19 a2SgeJQI0

――幻想…海…彷徨… 遠いあなた… 唄は 何処?――

久しぶりの人間の肉体に、久しぶりに聞く歌が染み渡っていく。
ただ、だからこそ気付いた。
どれだけ染みわたるように思えども、この歌は俺に向けて歌われたものじゃない。

――何時か貴方が ………… 泣かないで ……… この唄を――

これは彼女にとってのたった一人のために歌われたものだ。
きっと自分がそうだったように、彼女もまたこいつのためならなんだってできるという奴のために命を賭けたのだろう。
記憶の夢で見た彼女の記憶は、どこまでも自身のものと似通っていた。

――………… ただ想う 遠いあなたの …………――

勢い良く扉を開ける。
これはこのまま盗み聞いていい歌じゃない。
彼女にとってのたった一人に届けられて然るものだから。

「あ……」

紫陽花の枯れた庭で歌っていた彼女がこちらに振り向く。

「すみません。勝手にお庭に出てしまって。危険なのは分かっていたのですが。
 でも、月をこの目で見ていたくて」

困ったような笑みを浮かべる彼女に、なんと返していいのか分からなかった。
垣間見た夢の中で、彼女は降り注ぐ月の欠片から地球を守るために命を散らしていた。

「そう、か」
「あ、気を使ってくれなくても大丈夫ですから。
 月が憎いとかそういうのではないんです。ただ、本当に月が赤いんだなあって。
 最初見た時なんて、びっくりしました。タイミングがタイミングでしたから。
 月の欠片を壊すつもりで、うっかり月本体にまで悪影響を与えてしまったのかと血の気の引く思いでした」

言われてみれば夢で垣間見た彼女は天然ボケでどこか間が抜けていて。
最強のアンドロイドだということが信じられない、どこにでもいるような一人の人間だった。

「くっくっく……」
「もう! 笑わないで下さい、本当の本当にびっくりしたんですからね!
 本当に……本当に、びっくりしました。
 砕いたはずの月が真っ赤に輝いていて……、死んだはずの私が生きていて……」

そうだ、このどちらが従者(サーヴァント)なのか分からないメイド服の彼女は本当に、本当に驚いていた。
聖杯戦争に巻き込まれたことにも。意図せず召喚してしまった俺にでもなく。
自分が今なお存在していることに、一番驚いていた。
聖杯に何を願うと問いかけた俺に対して、まずは落ち着くための時間を下さいと言って彼女が一人部屋に篭ったのは数時間前の話だ。


775 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:30:50 a2SgeJQI0
「……願いは、見つかったか?」
「はい……いいえ。本当は見るけるまでもなく気づいたんです。
 だって私はそれを願ったからきっとここにいるのですから。
 でもそれが、その願いを抱くのが正しいことなのか、私には分からなくて。たくさんたくさん考えました」

そう言って女は自分の胸に手を当てて、少しずつ言葉を綴り始める。

「きっと今の私は幽霊なんです。たった一つの未練からこの世にしがみついているそんな、幽霊。
 おかしいですよね、アンドロイドなのに幽霊だなんて。
 修理されたと思うよりも、ずっと腑に落ちるんです。ああ、私は幽霊になってしまったんだな、って」

おかしいとは言いつつも、そこにどこか嬉しそうな響きを感じて、俺は彼女の意見を肯定する。

「おかしくねえよ。身体が何だろうが、アンタには意思が……心があるんだ。
 化けてだって出られるさ」

幽霊になる。
それは魂があるということ。心の存在証明。

「心……。そうですね、私には心があります。私の心が本当に、心と呼べるのか悩んだ時もありました。
 皆さんは私のこと、完璧な心を持っていると言ってくれましたが、それは単なるプログラムでしかないとしたらと」

自分が大切に思っていたものの全てが、組み込まれたものなんかじゃない、自分自身のものだったという証。

「でも、今はこうも思ってしまうんです。単なるプログラムだったならよかったのに、って。
 心を持っていてよかったって、やっと、そう思えたはずなのに。なのに……!」

けれど、心があるということは幸せなだけじゃない。

「痛いんです、苦しいんです。叶えたい願いがあります。でも、でも私は、私の願いのために、拳を振り下ろせない!
 もしも私みたいにただ、愛する誰かに会いたいだけだとしたら。もしも愛する誰かのために聖杯を求めている人がいるとしたら。
 私はそんな人を殺したくありません。誰にも悲しい涙を流させたくないんです」

心があるからこそ辛いこともある。

「だから、選べないんです。前は選べたのに。世界中の命と美里良、自分自身と美里優

女が、泣いていた。
目の前で、女が泣いていた。

ああ、どうしてその涙を拭えずに英雄などと名乗れようか。

「まほろ」

目の前の女の名前を呼んで、そっと、手を伸ばす。

「タケ、ハヤ、さん?」

名前を呼び返してくる女を抱きしめてやることはできない。
こいつは俺の女じゃない。それは優とやらの役目だ。
俺にできるのは涙を拭ってやるくらいだ。


776 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:31:29 a2SgeJQI0

「選ばねぇでもいいじゃねえか。いいや、どっちも選んじまえ」
「……え? で、でも、そんなこと」

まほろの顔に困惑が浮かぶ。
自分と他人を天秤にかけて悩み続けるくらい真面目な奴だ。
そんなこと、考えもしなかったのだろう。
或いはアンドロイドの性故か。
正しい答えを、正しい判断を、これまでは完璧にこなしてきたのだろう。
けれど。それはもう過去の話だ。

「お前は自分のことを幽霊だなんて言いやがるが。
 ちげえよ、お前は生まれ変わったんだ。
 一度死んで、人間に、生まれ変わったんだ」

たった一つの願いに気づいてしまったから、こいつは完璧(アンドロイド)ではいられなくなった。

「人間なら欲張ってもいいし、矛盾していてもいい。その上すげえぜ、人間は。
 不完全だからこそ、成長できる。敵わぬ敵にも勝てるし、叶わない願いだって叶えられるんだ」

完璧ではいられなくなったけど、それが、どうした。
本当に大事なのは完璧であることなんかじゃない。

意思だ。

自分がどうしたいかという意思だ。
不可能に立ち向かう意思だ。

「だからさ、言えよ。
 お前の、願いを」

その言葉が、トドメとなった。

「私は……、私は、逢いたい! 優さんにもう一度逢って、ずっと、傍にいたい!」

塞き止められていた想いが、選べずに無理だと諦めていた願いが止めどなく、まほろの口から溢れてくる。

「でも、誰にも悲しい涙を流させたくなんてない!」

相反する願い。矛盾した願い。
どちらかを選んだら、どちらかは成り立たない、そんな願い。
だけどそう願ってしまう2つの想いはどちらも本物で。
その両方が偽物なんかじゃない彼女の心で。

「だったら答えは一つだ。誰にも悲しい涙を流させないで、愛する人の元の所へ帰ればいい。
 誰かが決めたシステム通りに人を殺したりしないで、願いだけ叶えちまえ」

その意思を好ましく想い、その心を救ってやりたいとそう思ったから。

俺が、叶えてやる。

俺がこいつの願いを両方共叶えてやる。

「それって、ずるですよね」
「それもまた人間らしいだろ?」


777 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:31:53 a2SgeJQI0

苦笑するまほろに対し、シニカルに笑い返す。

「タケハヤさんは、いいんですか?
 タケハヤさんにだって逢いたい人が……」

彼女の言うところの泣かせたくない人には、俺やあいつのことも入っていたのだろう。
今更に気づき、全く、どうしてもこうも俺の周りにはお節介が集まるんだと贅沢な悩みを抱きつつも首を横に振る。

「俺は……俺たちはいいんだ。
 人間よりずっと長い時間を共に過ごせて幸せだったから」

だから、今度は、お前の番だ、まほろ。
俺はもう十分に幸せだったから。
今度はお前に俺の時間をくれてやる。

「解き放ってやるよ、まほろ。お前をこの紅い月の聖杯戦争から」

その選択に後悔はない。
胸を張って言い切れる。




「なんたって俺は、正義の味方だからな」







あ? 俺たちはどうなのかって?
そりゃそーか。
片や人の姿をしたアンドロイドで。片や人の姿をしたドラゴンだ。
それでも。
それでも俺たちは人間だ。
納得出来ないって言うんなら、こっから先はアンタらの目で確かめな……!


778 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:32:29 a2SgeJQI0
【クラス】
ランサー

【真名】
人類戦士タケハヤ(タケハヤ シン)@セブンスドラゴンシリーズ

【パラメーター】
通常時:筋力B 耐久C 敏捷B+ 魔力C 幸運C(自己申告) 宝具C
人竜時(狂化込):筋力A+ 耐久B 敏捷A+ 魔力B+ 幸運C(自己申告) 宝具A+

【属性】
中立・善(通常時)→混沌・狂(人竜時)


【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

狂化:D(人竜時)
筋力と魔力のパラメーターをランクアップさせるが、 言語能力が不自由になり、複雑な思考が難しくなる。
特に半竜の目覚め時はドラゴンの力を抑えきれず暴走した状態。


【保有スキル】

自己改造:A-
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
ランサーは幼少の頃人為的な天才(Sランク)に改造され、反動で寿命も尽きかけていた。
人竜となった後も無理を上乗せしたこともあり、竜の破壊衝動と肉体の限界に苦しめられることとなる。

魔力放出:A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。
絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。

勇猛:A-
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
ただし、ランサーのそれは自己犠牲が過ぎる面がある。
後述の宝具により狂化時も無効化されない。

戦闘続行:B-
絶望に屈さず戦い抜く意思の力。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、無茶しても生き延びる能力。
ただしランサーは長期戦に向かないため、効果を発揮するには仕切り直しや若干の間が必要となる。
そのため正確には戦闘続行というよりも戦闘復帰能力である。


779 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:33:46 a2SgeJQI0
【宝具】
『立ち向かいし希望の刃(天叢雲剣)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
人類の願いが込められた刀。
真名開放により本来はネコとダイゴとの合体技であるSKY・インパクトを一人で使用可能。
巨大な氷の刃で敵全体を薙ぎ払うことができる。燃費はいい。
尚、間違いなくタケハヤの愛刀だが、彼が人竜となった後は愛した人の手を通して“13班”と呼ばれる英雄たちに譲られている。
13班はこの刀で真竜を討ち一度目の竜との戦いを終わらせたとも伝えられているため、宝具としては13班が使った方がランクが上がる。

『人竜の目覚め(ドラゴン・クロニクル)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:− 最大捕捉:1人
タケハヤの身体に宿している情報キー。
竜の情報を分解し、他の生物や物質に組み込むことができ、この宝具を開放することでタケハヤは人竜と化す。
解放後は最強の幻想種としての能力に加え、若干の再生能力、ランクA+宝具級の威力を誇る超高速スピンなど多彩な技も使用可能となる。
また、攻撃時に結界破壊の判定を得る。
反面、宝具解放後は狂化:Bが付き、徐々に竜としての破壊衝動に飲み込まれていき、マスターへの負担も急激に悪化する。
加えてこの宝具は一度開放すると死ぬ寸前まで解除不能。
令呪や力ずくでの一時的な沈静化は可能だが、それも長くは保たない。
尚、この宝具に関する逸話は全て再現可能である。

『人類戦士タケハヤ』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:− 最大捕捉:1人
その身を竜と化そうとも、彼はどこまでも人間である。
タケハヤをタケハヤたらしめる意思の力。
真に彼を象徴する彼の在り方、生き様が宝具として昇華したもの。
性質としては複合スキルに近いが、宝具なだけあり、非常に多くの効果を持つ。

彼はいかなる判定でも人間として扱われる。彼に対する竜殺し系スキルは、『人間』によるA+以上のもののみ効果を発揮する。
神、魔、竜に対する攻撃の際、多大な補正が入る。
地球の守護者として地球上での戦闘の際耐久に補正が入る。月では本来意味が無いが、再現された東京が舞台なため、補正が最大になっている。
狂化して尚人としての意思をぎりぎりのところで保たせることができる。自らを抑えるに足ると判断した仲間の前では別である。
この宝具は無効化されない。

【weapon】
人類戦士の槍

【能力】
まほろと重なる一度目の人と竜の大戦の姿(セブンスドラゴン2020)で召喚された。
参戦時期自体は死亡後(セブンスドラゴン)なため、そこに至るまでの記憶や能力もある程度は所持していると思われる。
また、死亡直前にドラゴンクロニクルを引き剥がしたため、再度融合するまではSKY時代の姿及びステータスとなっている。

【人類背景】
誰もが彼のことを不幸だと言いました。
親を失い、明日を奪われ、押し付けられたのはできそこないの力。
それでも彼は笑いました。
それなりに幸せだったと。
家族ができ、愛する人ができたのだと。
だから彼は竜に――いいえ、ずっとずっと憧れていた正義の味方になりました。
大切な人たちを守れる、愛する女を救える正義の味方になりました。
そうして彼は路を拓き、戦友を助け、後を託して、眠りにつきました。
自らを刃と変えて、竜を貫くその日まで。


【サーヴァントとしての願い】
まほろを愛する人ともう一度逢わせてやる。


780 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:34:08 a2SgeJQI0
【運用方針】
宝具『人類戦士』により、実質通常のサーヴァントの二倍程のスキルを持っているようなものであり、人竜化前でも十分に戦える。
が、その真骨頂はやはり人竜化。
ステータスが軒並み強化され、大火力と再生能力も追加されるため余程の相手でない限り遅れを取ることはない。
底上げされたステータスを更にスキルと宝具で補正する分かりやすい強さである。
しかし人竜化後は運用が完全にバーサーカーのそれに切り替わるので注意が必要。
強大な戦闘力と引き換えに、マスターへの負担も激化し、『人類戦士』で幾らか抑えれているとはいえ、暴走の危険性さえある。
そもそも人竜化前のタケハヤ、及びマスターであるまほろ共々長期戦には不向き。
生前同様戦闘行為そのものが彼らの寿命を削り、ドラゴン・クロニクルを使用しようものならまほろのエネルギーは急速に枯渇に向かう。
ドラゴン・クロニクルは常時発動型な上に任意解除できないため、基本使用はまほろの死への片道切符である。
まほろ側の輝ける闇も同様である。併用しようものなら一分も保たずにマスター、サーヴァント共に蒸発する。
最善手は13班にそうしたように、サポートに徹すること。
タケハヤは感情的ながらも、リーダーとしての統率力や本命の先鋒後詰といった支援力に優れている。
まほろにしても不利な状態での戦い方は心得ており、メイドとしてのアフターケアや非戦闘時のサポートもこなせる。
信頼できる相手と組めさえすれば、最小の戦闘行為で大きな戦果を上げられる可能性も存在する。







【マスター】
安藤まほろ@まほろまてぃっく(原作漫画版。ここ重要)

【マスターとしての願い】
もう一度優さんの傍に――。

【weapon】
死亡後からの参戦のため、武装解除に加えサポートメカも呼び出せない。
ハンドガンと小太刀さえ紛失済みで素っ裸である。
自身の機能・動力源と直結している完全消滅兵装『輝ける闇』だけは組み込まれたままであるが、使用は死に直結する。
ただでさえ少ない残存エネルギーを使い果たすためである。
尚、『輝ける闇』は科学の産物だが、欠片とはいえ月を破壊している事実があるため、ムーンセルに自身に有効な力として解釈された。
その為、月の聖杯戦争では神秘に対してもその力を発揮できる。

【能力・技能】
とある世界の最強の戦闘用アンドロイド。
手軽に使える各種武装を完全に紛失しているとはいえ素手での格闘戦でも管理者の巨大ロボットを圧倒する性能と技術を誇る。
引退後はメイドとして働いていただけあり、家事から各種機械の運転まで完璧である。
が、形から入りたがるため変装や潜入任務は苦手。
またそれを抜きにしても現役時代から間の抜けた所や天然なところがある。
後、それなりの理由はあるのだが、彼女が限界まで眠くなると頭から無数のひよこが出現し、自身と周囲の人間を眠らせてしまう。

ムーンセルの外に彼女の実態が存在しているのかは不明。
単にムーンセルに修理されたとかではなく、その特殊な生まれ故にワイアードゴーストとして迷い込んだ可能性も十分にある。


【人物背景】
異星人(セイント)と地球人との共存を目指す組織ヴェスパーに生み出されたということこになっている戦闘用アンドロイド。
稼働時間が残り一年となったため、自身が父親を奪ってしまった少年、美里優のために生きることを選択。
メイドとして優の基で働くことになる。
父親の件に関しては優に伏せていたが、当の優にはうすうすと察せられていた。
そのことを、地球を裏から支配し、異星人撲滅を目論む組織“管理者”との戦いの中で告げられるとともに告白される。
しかしまほろにはもう時間は残されていなかった。
激化するヴェスパー、セイント、管理者の戦いの末に、管理者の自滅という形で月が砕けてしまう。
地球に降り注ぐ欠片から彼女が愛した世界を、優を守るために、輝ける闇を起動。
自身も管理者に破壊される中、月の欠片を消滅させた。
後に残されたのは砂浜に描かれた優の告白への返事だけだった。

【方針】
誰にも悲しい涙を流させない方法で、優さんのところへ帰りたい。
(あくまでも悲しい涙を流させたくないなので、戦士であるまほろは敵と見なした非道な相手には割りと容赦ありません)


781 : あの日々まで届きますように  安藤まほろ&ランサー  ◆TAEv0TJMEI :2015/01/12(月) 15:34:27 a2SgeJQI0
投下終了です


782 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:00:16 gPPY3HAk0
皆様、投下乙です


783 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:00:26 gPPY3HAk0



これは夢……

だったのか……

悪い夢……いや……

いい夢だった……


784 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:01:09 gPPY3HAk0


生きるということは常に戦い続けるということである、特に――日本全国から人が集まる物騒な都市、東京はそうだ。
学生、サラリーマン、自営業主、主婦、いや幼児や老人ですらも、自分がより良い位置へと居座るために、他人を蹴落としあっている。
だが、獣ですら休むというのに――人間が常に気を張って暮らし続けることなど出来ない。
安らぎが必要であった。人によってそれは、家であり恋人であり趣味であり、
そしてここに――『3姉妹』、実の三姉妹が経営するスナックに安らぎを求める男がいた。

――夢を見ているような気がした。

三姉妹のママが歌うカラオケを子守唄代わりに、カウンターに突っ伏して男は眠っていた。
男は鎧を着ていた。
それは比喩表現ではなく、現代の東京に於いては実に奇妙なことであるが、男は黒の西洋鎧を纏っていた。
長女のママが男に毛布を被せようとする。冬の日であった。少なくとも、温もりもなく眠れば風邪を引くような日である。
その時、鎧が――牙を剥いた。
男の精神性を表すかのように、その鎧は尖りすぎていた。
長女の指が切れる。
「姉さま大丈夫でして?」
出血する。傷は浅い、長女は切れた指を口にやり、血を吸う。
「ほんと無駄に尖ってるのよねぇ」
「自分が傷つきたくない奴ほど、人を傷つけるんでしてよ」
「正直どこに向かいたいのか方向性がわからないんだけど」
結果として、三姉妹から毛布だけでなく、辛辣な言葉を掛けられることとなった男は、心の中でそっと呟く。

(味方は……己だけ)
いつの間にか目覚めたのか、あるいは最初から寝ていなかったのかもしれない。
辛く厳しい現実の世界の前に戦うことも出来ず――何も見なかったかのように、ただじつと目を閉じることしか男には出来なかった。
気づかない間に目から涙が溢れていた。

何故、己はこうも上手くいかないのだろう。
新プロジェクトのメンバーには選ばれず、同僚からはどうも避けられている節があり、部下からも舐められているように思える。

(俺が……危険すぎる男だからか)

心の中でまで、嘘をつかなければならなかった。
社内で彼が危険な男と呼ばれている所以は、その尖りすぎる鎧にあり――ほとんど蔑称である。
それでも、誰も並び立てぬ孤高の男であると嘘をつかなければならなかった。
力もなく、それを補う要領の良さもなく、ただ孤独なだけの自分など――誰が認めたいものか。

(力【仲間】が……欲しい)

涙で――視界がぼやける。
三姉妹は店の後片付けのために、カウンターからは引っ込んでいる。
あるいはそれは、彼女たちなりの配慮なのかもしれない。
だが、泣くことなど出来ない。

プライドがあるのだ――王としての。

(……!?今……俺は何を思った?王……俺は何かを……)
涙でぼやけた視界に、紅い満月が映る。


785 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:01:22 gPPY3HAk0


店内に、紅い満月のオブジェは存在しない。
存在するはずのない紅い月を認識すること、それが――この戦争への参加条件。
男は――偽りの記憶の殻を被せられて、この東京で係長として働いていた。
だが、真実の彼はそうではない。
争いの絶えない国――ブリテン、百万人の王、十一人の支配者、外敵、数多くの英雄が覇権を争う国で、彼もまた戦っていた。

彼の名はリエンス王。

王の剣――エクスカリバーに選ばれず、十一人の支配者にも選ばれず、
ただ孤高と孤独を履き違えて戦うしか無かった哀れな王。

十一人の支配者の一人――ロット王と戦って敗れたはずだった。
だが、紅い月は――それを由とはしなかった。
薄れゆく意識の中に、紅い月が輝く。
彼は紅い月に手を伸ばした、何者にもなれなかった己が――今度こそ選ばれるために。

そして、彼は東京に辿り着いた。
聖UTSUWAを手に入れるために。

夢から醒めるように、チャンネルを替えるように、さくり、と記憶は取り戻された。
リエンス係長という偽りの器は今度とも利用することがあるかもしれない、
だが真の自分――リエンス王を取り戻し、偽りのしがらみから解き放たれ、どこか清々しい気分を味わっていた。

「モガママ、勘定は付けといてくれ」
瞬、と立ち上がり、偽りの安らぎを後にする。
二つの意味で、この場所は偽りの安らぎだった、とリエンス王は思う。
そもそもこの場所が偽りであったこと、そして――結局、俺は安らぎなど得てはいない、ということ。

3姉妹を出る。表の看板の明かりは消えていた。魔女の格好をした三姉妹が描かれている。
今ならば理解できる、この看板は――いや、三姉妹のママはブリテンの魔女の三姉妹がモティーフになっていたのだ。
俺の記憶か、あるいは元の世界の記憶か、どちらかはわからないが――それが元になっている。

NPCだから問題はないだろうが、百万人のアーサーや十一人の支配者がいる可能性にも留意しなければならないだろう。

もう電車は無くなっていた、NPC時代の稼ぎが入ったそう厚くもない財布の中身を確認し、タクシーを拾う。
(サーヴァントというのは、俺の家にいるのだろうか)

記憶を認識した時点で、サーヴァントが現れる。
そういうものだと思っていたが、未だロット王の周辺にサーヴァントが現れる気配はない。
ならば、すでに召喚されていて――己には見えなかっただけではないか、その可能性を考えて、運転手に家までの道を急がせる。

記憶を取り戻した今となっては、溜息の一つもつきたくなるようなアパートの前に辿り着く、
城で暮らしていた俺が、こんな豚小屋に――と文句の一つも言いたくなる。

階段を昇る。

まるで空気が粘性を持ったかのような圧力を、自室に近づくに連れてリエンス王は感じていた。
間違いなく、サーヴァントは自室にいる。
そして、巨大な力を持っている。

俺が持ち得なかった力だ。
なんとも形容しがたい、UTSUWAと呼べるものだ。

今更、退けるものか。

アーサーにも、
ロット王にも勝てなかったから、俺は聖杯を取りに来たのだ。

自室に入る。
小部屋が、まるで迷宮のように思えた。
ここにサーヴァントがいる。

とてつもなく恐ろしい気配がする。
ここにとどまりますか。

何かに聞かれたような気がした。
だから、リエンス王は叫んだ。

「お前が……俺のサーヴァントか!名を名乗るが良い!」
「ダッジャール……真名は、カオスヒーローだ、本名は忘れた」


786 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:01:33 gPPY3HAk0

◇ ◇ ◇


聖杯 獲らなきゃ 帰れねぇ

うた:リエンス&ダッジャール

聖杯 欲しさに 来たぜ 東京 
私 欲しくて たまらない

なんで 聖杯 が 欲しいんだ
なんか 他に やること 無いのか

元の 世界じゃ 殺された
一発逆転 狙うには

聖杯 獲らなきゃ 帰れねぇ

聖杯 じゃなきゃ ダメなのか
悪魔合体とか いいんじゃない?

私の 願いは ただ 一つ
認められたい それだけさ

聖杯 じゃなきゃ 帰れねぇ
悪魔の力じゃ みんな ドン引きだ

聖杯 獲らなきゃ 帰れねぇ

聖杯 よりも 愛が 欲しい


787 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:01:48 gPPY3HAk0




「わかった……リエンス、どうせ暇人だ。お前が聖杯を獲りたいっていうなら、協力しても良い」
「本当か」
まるで花開くかのように、リエンス王が笑った。と、同時にダッジャールもまた、嗤った。
忍び装束を着て、急所部分の防御のために、紅い鉄鋼を纏った男である。
まるで闇と血の化身を思わせる男である、邪悪な――そしてどこか、自嘲を思わせた。

「お前は……いや、お前も……」
今まで偽りの環境の中にいた、そしてこれからは仮初の主従関係の中に身を投じることとなる。
ならば、不用意に関係性を揺らがせるべきではない。
しかし、リエンス王は――王だった。
支配者として意地を通そうとするのならば、聞かなけれならない。

「俺を侮っているのか」
「当たり前だろ」
ダッジャールが言葉を返した瞬間、リエンス王に宿った令呪が鈍く――輝く。
支配者であるが故に、例え孤独になっても、卑屈になることだけは出来なかった。
だからこそ、ロット王と戦うことになったのだ。
命よりも惜しい物があったのだ。

「令呪を以て命じる――」
「だから、お前は……」
ダッジャールは抗う様子を見せなかった、ただ嘲りの表情を浮かべ、言った。

「王の器じゃないんだ」

令呪から光が失われる。
何も言わず、リエンス王は部屋の隅のベッドへと向かう。
出来たはずだった、令呪を以て――ダッジャールを従わせることが。
それでも、やはり――リエンス王の――王としてのプライドが、それを許さない。

「畜生、どいつも……こいつも……」

願わずにはいられない、力が欲しいと。
エクスカリバーにも、十一人の支配者にも、いやブリテンの大地そのものに、己を認めさせる力が欲しかった。
だが、今の己はどうだ。
従者【サーヴァント】にしか侮られる程度の、王の器でしかない。

「畜生……」

ただ、ベッドで打ち震える。
王とは器だけじゃない、そのはずなのに。


788 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:01:59 gPPY3HAk0


リエンス王は、まるで己を見るようだった。
そうだ、力が欲しかったのだ。
ダッジャール――いや、カオスヒーローも。

神の戦地と化した東京で、混沌の英雄として戦う以前の彼は弱者だった。
不良グループに虐げられ、常に力を欲していた。
力を求めて、仲間と共に戦った。
いや、今思えば彼らは仲間ではなく――人生で最初で最後の親友だったのかもしれない。

悪魔と戦い、天使と戦い、成長する度に思った、もっと力を。
そして――かつて彼を虐げた男に敗北し、彼は決意する。

力を――悪魔との合体を。

そして彼は、成ったのだ。
混沌の救世主【カオスヒーロー】に、悪魔を率いて、神を討つ者に。

だが、力を手に入れれば手に入れる程に、視界は広がり、上には上がいることを知った。
魔王、天魔、大天使、魔神――魔人である己ですら未だ届かぬ高み。

そして、かつての親友。
救世主【ザ・ヒーロー】

戦い、敗北した。
救世主は強く、己は弱かった。

そして、負けたが故に――偽救世主、反救世主のクラス、ダッジャールとして召喚された。

だが、後悔はなかった。
まるで、夢の様な日々だった。
いや、もしかしたら本当に夢だったのかもしれない、目を開ければ、今までのように何でもない自分がいるのかもしれない。
ただウジウジと力を求め地を這いずるだけの己がいるのかもしれない。

それでも、良かった。

良い夢だった。
本当に、良い夢だった。

ただ、不安があった。
俺は良かった。全ては夢、それで良かった。

だが、勝者である救世主は、どこへ行き着くのだろう。
ただ進み続けた先に、何が待ち受けていたのだろう。

聖杯にかける願いは無い、だが、もし許されるのならば。

「お前は……自分を救えたのか……?」

それが、知りたかった。


789 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:02:10 gPPY3HAk0


予告譚

聖杯戦争に挑まんとするリエンス王、しかし彼のサーヴァント、ダッジャールはあからさまに彼を見下していた。
このままでは不味い、己の王のUTSUWAを示さなければならない。

そんな時、彼が出会ったのはこの魔法のネックレス!

これを付けた時から、女性にはモテモテ、仕事はバッチリで、ギャンブルも絶好調、あとサーヴァントは憧れの眼差しで見るようになりましたし、
あとドミノ倒し出来るぐらいに聖杯が集まりましたね。

今までの人生が嘘のように上向きになる リエンス王だったが!

「アナタねぇ……約束を破りましたね、魔法のネックレスを使ってる時は令呪を使っちゃいけないって」
「いや、悪かった……でも、一回だけだ、もうしないよ、約束する」
「いいえ、もうアナタに次はありません、アナタには罰が下ります」

魔法のネックレスをリエンス王に授けたセールスマンの示談の条件とは!?

次回 『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚』!

「しまるネックレス」!

いえいえお代は一銭もいただきません。


790 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:02:29 gPPY3HAk0



【クラス】
ダッジャール

【真名】
カオスヒーロー@真・女神転生Ⅰ

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A

【属性】
混沌・中康

【クラススキル】
救世主(偽):A
新たな神話の時代の敗者である彼は、高ランクの偽救世主である。
彼はその逸話から属性が秩序のサーヴァントと戦う際に全パラメーターが1ランク上昇し、
中立のサーヴァントと戦う際に全パラメーターが1ランク下降する。

敗者に口なし:C
敗れた英雄たる彼は歴史の中に埋没した存在である、
故に相手が真名を看破するスキル・宝具を発動した際、その効果を防ぐことが出来る。

【保有スキル】
自己改造:A
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
悪魔と合体した彼はまさに偽の英雄である。

魔術:C+
このランクは、彼がレベルの上昇によって習得し得る魔術を一通り修得していることを表す。
また、ガーディアンとしての彼の逸話から、本来ならば使用することが出来ない、ペンパトラ、アギダイン、マハラギダインの使用が可能である。

【宝具】
『偽りの救世主の末路(デビルリング)』
ランク:A 種別:対魔宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

ダッジャールでなければ存在し得ない、平行世界の彼の宝具。
装着することで、ダッジャールの全パラメータが2ランク上昇する。
ただし、1ターン後にダッジャールはデビルリングから供給される過剰な力に抗えず死亡する。

『偽りの救世主の末路(バイバイエンジェル)』
ランク:E 種別:対神宝具 レンジ:10 最大補足:1人

ダッジャールでなければ存在し得ない、平行世界の彼の宝具。
本来の救世主を差し置いて、偽りの英雄を撃破した逸話から生じた宝具。
相手の属性が秩序、あるいは神に仕える者であった場合に発動できる。
相手の全パラメータを1ランクダウンし、ダッジャールにスキル狂化:Dを付与する。
この状態は5ターンは継続する。

『偽りの救世主の末路( そして 夢は 終わる )』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ: 最大補足:6人

固有結界。
彼が討ち倒された場所、カテドラル下層、及びその場にいた悪魔達を再現する。
その際、彼は打倒されるべき偽りの英雄として幸運が2ランクダウンし、
引きずり込んだ敵サーヴァントの全パラメーターは1ランクアップする。

【weapon】
無銘の剣

【人物背景】

かつて、三人の少年が居た。

三人の少年は、悪魔に踊らされた。

三人は二人になり、二人は一人になった。

残った一人は真の救世主で。

消えた二人は偽の救世主だった。

だとしても。

それは良い夢だった。

【サーヴァントとしての願い】
救世主が自分を救えたかを知りたい


791 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:02:41 gPPY3HAk0
【マスター】
リエンス王@実在性ミリオンアーサー

【マスターとしての願い】
聖杯に選ばれたい

【weapon】
無銘の剣
尖りすぎる鎧

【能力・技能】
それなりの剣技、あと歌が上手い。


【人物背景】
選ばれて下さい それしかないの
惨めな 惨めな 手を使っても
選ばれて下さい でなきゃダメなの
選ばれない事より 惨めはないから

【方針】
未定


792 : 聖杯のUTSUWA ◆lnFAzee5hE :2015/01/12(月) 23:03:08 gPPY3HAk0
投下宣言抜けていましたので、遡って投下宣言をしたということにさせて頂きます。
そして投下終了します。


793 : ◆GM1UsJ3g8. :2015/01/13(火) 01:40:08 xWilW5ok0
投下します


794 : 桜塚星史郎&セイバー  ◆GM1UsJ3g8. :2015/01/13(火) 01:40:40 xWilW5ok0


 その日、桜が雪のように散っていた。
 雪と違うのは、舞う花弁は薄紅色をしていることか。
 赤く染まる世界で、二つの人影がある。

 二人は『賭け』をした。
 当時15歳だった学生服の男は面白そうに微笑んでいる。
 その引締った肢体を血に濡らし、桜の木を背後に、とある未来を賭けた。
 9歳と幼い少年は何が何だか分からないと言った様子で不思議そうに見て、聞いている。

 ――懐かしい『記憶』だった。
 ――あの一年を経るずっと前の、契機である。

 男は問うた。
 桜がどうして薄紅色をしているか。

 少年は首を振る。わからなかった。
 間をおいて、丁寧な口調で言葉を続ける。

 答えは、桜の木の下には死体が埋まっているからだ。
 そして、死体の血を吸っているから桜の花は赤いんだ、と。
 少年は疑問を覚えた。覚えた疑問を、男に打ち明ける。
 血を吸われる『人』たちは苦しくないのか。
 そう、真摯な瞳で投げかけた。

 あの瞳。
 あらゆるものを許容する絶対的な瞳。
 今でも鮮烈に思い出すことができる。

 
 ――ああ、懐かしい。
 ――これが意味するのはなんだろうか。


 懐古の念を押しこめ、夜空を見上げる。
 今宵は新月の日。夜空を彩るのは自身の名の一部でもある星々の数々。 
 しかし、文明の発展故に廃れた東京には、星の煌きなど微塵も感じさせない薄汚れた虚空があるはずだ。
 なのにどうして、ぽっかりと空いた暗闇の中で紅い月が禍々しくも艶やかに輝いているのだろう。

 彼は、噂で聞き及んでいた紅い月の逸話を思い出す。
 ならば自分は、あの月に選ばれ、導かれたということか。
 途端にまどろみを覚え、混濁する意識の渦の中、彼はぽつりと呟く。


 紅い月――。
 あの月は『願望』のために、どれだけの屍を啜っているのだろう。


795 : 桜塚星史郎&セイバー  ◆GM1UsJ3g8. :2015/01/13(火) 01:41:03 xWilW5ok0
 


 × × ×


 死者の魂を目撃するのはもう何度目だ。
 墓地やパワースポットなど、霊験あらたかな舞台でなくとも、それらは観測できる。
 あまつさえ、カラオケボックスなどという現代的な場でも何食わぬ顔で在住しているのだ。
 特にあの少年の隣で、ここ一年数多くの魂と観測したのだ――何を今更と、鼻を鳴らす。

 生前の不幸を呪い、未練の体現として顕現することの多い、俗に言うところの幽霊を彼は恐れたことはない。
 さもありなん、彼は陽の陰陽師・『皇(すめらぎ)』と対称となる陰の陰陽師・『桜塚護』だ。
 幽霊を恐るるどころか、撃退する側の人間である。
 死者の遺した感情なんて関係なく、ただ邪魔な『物』を排斥するように術を使役していた。

「そうか」

 彼は、眼前の存在を確認する。
 目の前の、人型をしたそいつは、有体に言えば幽霊だ。
 聖なる杯により再現された、とある人物の過去を元にした復元体。
 仕組みこそ異なれど、何も知らぬ人間はそれを、幽霊と呼ぶのだろう。

 だが、未練のみで死に永らえていた幽霊と英霊は違う。
 たった今この瞬間、彼は、桜塚星史郎は肌で感じ取る。
 今まで巡りあったどれとも違う――まさに異質。超凡の名に足る存在だ。

「私を招喚したのは、あなたですか」

 一本の三つ編みを尾のように振るいつつ、常世から逸脱した存在はこちらに問う。
 制服のような衣装に、宝玉が嵌めこまれた籠手などを身に付けた、風変わりな意匠だ。
 風体が小学生さながらの矮躯であるがために、どうにも不釣り合いな気がする――。
 反して、それらの装備はまるで彼女のためだけに作られたかのような、奇妙な感覚を覚えた。

「…………」
「…………あの」
「ん――ああ、失礼」

 少女の戸惑いに、星史郎は微笑みで返す。
 彼の意識は一点に行っていた。
 あどけなさが残る幼げな面とは裏腹に、精悍な眼光を放っている。
 かつて見た、皇の少年と同じ瞳だ。無垢で素朴で、優しさを秘めた面構え。

「もう一度訊きますけど、あなたが私を招喚したんですか」

 少女が再度問うた。
 慣れた調子で、しかし引き締めた表情で。
 そんな様子をおかしそうに笑うと、星史郎はいよいよ答える。


796 : 桜塚星史郎&セイバー  ◆GM1UsJ3g8. :2015/01/13(火) 01:41:24 xWilW5ok0
「そうですね、僕が君のマスターです」
「……そうか、私はセイバーだよ。名前は獅堂光」

 セイバーは背を差し伸べる。
 僅かな間をおいて、星史郎は手を握り返した。
 小柄な体格通り小さな手のひらは、温かな、人間とまるで変わらない手のひらである。

「最優のセイバー、ですか。それは幸運かもしれませんね。よろしくお願いします」

 手を放し、ふと自分の手の甲に目が付いた。
 自分の手の甲には、一筆書きで描かれたような紅い『☆』印がポツリと滲みでている。
 小さく笑みを零す。皮肉と言えば皮肉なものだ。

「それでですけど」

 セイバーが切り出す。
 
「星史郎さん。あなたは、どうしたいんですか」
「……どうしたい、とはどういうことでしょう」

 少し、意地が悪いだろうか。
 それでも、星史郎はとぼけた調子で訊き返す。
 僅かな間をおいて、星史郎の瞳を射抜き。

「つまり、『願い』のために殺し合ったり、するんですか」

 セイバーは逃げず、改める。
 どこか後ろめたさを感じながらも毅然と振る舞うその姿は、『少年』と重なった。
 ああ、と星史郎は確信する。
 だとしたら、だとしたら――――こう応えるべきだろう。
 
「ええ、僕は『桜塚護』……有体に言えば暗殺者です。
 理由がなくとも人ぐらい殺しますし、それが自分のためになるというなら、尚更です」

 セイバーは悲しそうに目を伏せる。
 彼もそうだった。そして彼は、黙し、自らを喪ってしまった。 
 彼女が、彼と全くの同一であるならば、これからの旅路は彼にとってまるで意味のないものとなる。
 だからこそ、見定めなければならない――紅い月が選り抜いた、自らのパートナーの価値を。

「わかった」

 セイバーは星史郎と向き直る。
 彼女は確と、長身の星史郎を、ひいては空に浮かぶ紅い月を見上げていた。

「誰にも『願い』は否定できないよ。『願い』は誰かの『心(おもい)』の形だから」

 『願い』のために生き、死にいった者、殺してしまった者を、セイバーは覚えている。
 セイバーもまた、『願い』のために人を殺めた人間の一人だ。

「それでも、『わがまま』なのは分かってるけど――私はもう二度と後悔したくない。
 成し遂げる為に、人を殺しても、誰かの悲しみを生むだけだって、分かってるから」

 故に悩み、悔み、泣いた。そんな過去(でんしょう)がある。
 だからこそ、セイバーは続ける。

「私はサーヴァントとしての『使命』を背くことになるかもしれない。だけど私は誰かを犠牲になんてしたくない!!」

 サーヴァントとしては異端な在り方だろう。
 英霊としての格を宿す者は、その身を血に染めたものは多い。
 何かのために戦い、争ってきた。他者の犠牲を前提にしないサーヴァントは珍しい。
 同時に、柱を殺める為の伝説・『魔法騎士(マジックナイト)』としても、外れた存在である。
 セイバーの英霊たる由縁は、騎士だからでもなく戦士だからでもない。
 彼女は思いの力で世界を救った――救世主・『獅堂光』なのだから。

「『心(おもい)』、ですか。なるほど」

 星史郎はセイバーの意向に耳を傾ける。
 しばしの吟味の後に、――彼は言う。

「僕は君の言うような、悲しみなんて僕には分からない。
 僕は生れてこの方、誰かに対して特別な感情を抱いたことがない。勿論、誰かを殺したとしてもです」

 表情が曇るセイバーを傍目に、星史郎は過去をなぞるように告げる。


797 : 桜塚星史郎&セイバー  ◆GM1UsJ3g8. :2015/01/13(火) 01:41:44 xWilW5ok0
「それではセイバーちゃん、『賭』をしましょうか」
「賭け、ですか」
「ええ、これから私はしばらく様子を見ます。
 あなたの意向を尊重すべきかどうかを――殺さないでいて、何かが変わるかどうかを」 

 ああは言ったものの、急な提案に戸惑いを隠せないセイバーは、どうして、と問う。
 彼女の知る『願い』は、その人の命を賭してまで思い続けるものが大抵だった。
 だから、『願い』によって招かれたマスターが、こうも簡単に方針を変えるとは、正直考慮していなかった。
 困惑したセイバーに、星史郎は優しく応じる。

「あなたが僕と正反対だからですよ」

 かつて、『少年』に対してそうしたように。

「今度こそ、あなたが僕の『特別』になるのなら、僕は変われるのかもしれない――」

 かつて、『少年』に対して期待したように。
 桜塚星史郎はセイバーに滔々と語る。
 あの時は、初めての目撃者だからこそ――。
 今度は、紅い月が仕掛けたサーヴァントだからこそ――。
 試しに遊んでみる価値は、あるのかもしれない。

「うーん……、よくわかんないや」

 セイバーは正直な所感を述べる。
 星史郎の言葉通り――彼女と彼は正反対の性質の持ち主だ。
 理解しがたくても、ある種当然と言えよう。

「でも」

 それでもセイバーは、星史郎の瞳を捉え続けた。鈍く輝く左目と、空虚に輝く義眼を。

「約束する。私はあなたの『特別』になる」

 星史郎は表情を変えずに、その言葉を受け入れる。
 そんな様子を窺いつつ、セイバーは言葉をつづけた。

「だって、『特別』な人がいたら頑張れるし、残された人たちを思う気持ちは芽生えてくるから」

 彼女にはかつて仲間がいた。
 同じ『魔法騎士(マジックナイト)』の龍咲海と鳳凰寺風。
 それに導師(グル)のクレフをはじめとする異世界の住人たち。
 彼女たちが支えてくれたからこそ、セイバーは救世主たるほどの偉業を成し遂げられた。
 彼女たちを通じて、『特別』な人を喪う気持ちを知った。
 その気持ちを、マスターである桜塚星史郎にも知ってほしい。
 誰も『特別』な人がいないだなんて、そんなのとっても寂しいから。

「きっと、約束を果たしてみせます」
「ええ、期待してます」

 星史郎の励ましを、セイバーは首を振って受け取らなかった。

「違うよ。あなたも一緒に」

 セイバーは最初そうしたように、もう一回手を伸ばす。
 きょとんとする星史郎に向け、セイバーは微笑みかける。

「私一人じゃ何にもできないから、一緒に頑張ろう」
「……そうですね、頑張りましょう」

 そういえば、ずっとあなたは人を頼りませんでしたね。
 星史郎は内心で独りごち、もう一度手を握り返す。それから――。

「やっぱり昴流くんとは違いますね」
「どうしたんですか?」

 小さく漏らした言葉を、セイバーは聞き返す。
 星史郎は小さく頭を振る。
 そして一歩、歩きだした。セイバーもまた、その隣をついていく。 

「いや、なんでもないですよ。行きましょう」

 ここは――この地球でたったひとつ、滅びの道を楽しんで歩いている都市。
 桜塚星史郎はおかしそうに笑みを作り、セイバーの隣を歩いている。


798 : 桜塚星史郎&セイバー  ◆GM1UsJ3g8. :2015/01/13(火) 01:42:05 xWilW5ok0
【クラス】
セイバー

【真名】
獅堂光@魔法騎士レイアース(漫画)

【パラメーター】
筋力D++ 耐久C 敏捷C 魔力B++ 幸運D 宝具B+

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:B
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:A
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
魔法騎士:A
 魔法騎士(マジックナイト)の伝説が色濃く残留したセフィーロの加護、特質を強く受ける。
 いかなるクラスで顕現しようとも魔法を使いこなすことができたり、心次第でパロメータが上昇したりすることが挙げられる。

魔力放出(炎):
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。
 絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。

【宝具】
『心象風景(エスクード)』
ランク:B++〜EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 魔法の国・セフィーロにおいて伝説とされたエクシードという鉱石から錬られた剣。
 何よりの特色は、心次第でこの剣は形を変え、徐々に成長していく点にある。
 使わない時は手の甲の籠手に仕舞われる。また、獅堂光以外が使おうとしても炎と化し握ることさえ叶わない。
  
『魔神・輝きの庭(レイアース)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:40〜90 最大捕捉:百単位
 前述の『心象風景(エクシード)』を鍵として起動する、簡単に言うと巨大ロボット。
 ただし、今回彼女はセイバーのクラスで顕現しているため、この宝具を使えるかどうかは不明。
 しかし、剣を使っているといえば使っているので聖杯次第かもしれない。

【weapon】
宝具である『心象風景(エスクード)』
及び、保有スキルの加護を得て、魔法も使うことができる。
魔法などの描写はアニメやゲームを参考にするといいかもしれない。

【人物背景】
社会科見学で東京タワーを訪れていた際に、龍咲海、鳳凰寺風と共にセフィーロに招かれ、魔法騎士としてセフィーロを救うこととなる。
その道中、東京は常に『帰るべき場所』として思い描かれていた。
紆余曲折あり、獅堂光らは無事に魔法騎士としての定めを成し遂げたが、
その戦いにおいて彼女たちは消えない精神的な傷を負うこととなる。
その後、一度東京へ帰した彼女たちであったが、再び何者かにより誘われ、セフィーロへ降り立つ。
かつての後悔を踏まえ、獅堂光ら魔法騎士は自分のために刃をふるう。
そして真の意味で救世主となった彼女は、英霊としての格を宿し、この聖杯戦争へと招喚される。


【マスター】
桜塚星史郎@東京BABYLON

【マスターとしての願い】
描写なし

【weapon】
目立った武器はないが、札や式神を使うことがある

【能力・技能】
『桜塚護』としての陰陽師の能力。
本編ではおよそ底知れないものとして描かれている。
しかし、強力な術であるほど、『逆凪』という反動・副作用が大きい。
本編では動物に肩代わりさせることで、難を逃れていた模様。
また、実質的な続編である『X』では、『東京BABYLON』よりもはるかに好き放題やってる。参考になるかもしれない。

【人物背景】
暗殺集団(という建前の)『桜塚護』に属する男。
15歳の時に肉親を殺し、正式な『桜塚護』を襲名する。
彼にはおよそ、人としての感情が希薄で、何かを殺すなどと言った行為に躊躇がない。
1年間、皇昴流と共に生活し、そういった感情を身につけようとしてはいたが、本人いわく駄目だったようだ。
なお、桜塚護としての彼を知るには、続編の『X』を読むといいかもしれない。

【方針】
『賭け』の結果次第


799 : ◆GM1UsJ3g8. :2015/01/13(火) 01:42:22 xWilW5ok0
投下終了です


800 : ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:45:30 MpARLUbA0
よろしいようでしたら、自分も投下します。


801 : マエリベリー・ハーン&ライダー ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:45:57 MpARLUbA0




―――ねえ、メリー。紅い満月の話って知ってる?

      月のない夜に出てくる紅い月が、夢を叶えてくれるんだって―――




.


802 : マエリベリー・ハーン&ライダー ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:46:14 MpARLUbA0

何時からだろう。自分がよく月を見るようになったのは。
遅くなってしまった帰り道の最中、私―――マエリベリー・ハーンはふとそう思った。

大学の研究で帰宅が遅れるようになってからか。
雨の続いた時に久々に見た月が綺麗だったからか。




―――いや、きっと違う。誰かに満月について言われたからだ。
自分の隣には、いつもその「誰か」がいたはずだ。
記憶とさえ言えないおぼろげな違和感だけが残っているが、何故かそう思えてならないのだ。


「見る」といえば、前から疑問に思っていた事がもう一つあった。
時折、得体のしれぬ何かの「裂け目」が見えるのだ。
最初は気のせいかとも思ったが、どれほど頭を振ろうが目薬を点そうが、その「裂け目」が見えなくなることはない。
他の誰も見えず、気にする事のないもの故に、誰かにそれを打ち明けた事はなかった。

……いや、ないはずなのだ。しかし、誰か一人だけその事を打ち明けた気がしてくる。
その秘密を気持ち悪がれもせず、むしろ素敵な事だとされた気もする。

(一体、誰の事なんだろう……)

そんなことを思いながら歩き続けていると、ふとあるものが目に飛び込んできた。
それはある神社だった。稲荷神社だろうか、それほど大きくはないにしろ整備も行き届いているように見える。

(お賽銭、入れてみようかな)

そう思ったのは気まぐれだったのだろう。この曖昧な思い出を整理するのに神様にも手伝ってもらおうと思ったのか。
何の気もなしに賽銭箱の前まで足を運ぶ。
夜に冷たいだろうに、手水で手を清めるのを忘れないのは自分でも少し滑稽だ。
そして賽銭でも入れようと、カバンの中を弄った。


(あれ、何だろ?)

妙な手触りがする。小さく硬い手触りは、財布でも携帯電話でもない。
おもむろに取り出してみると、それは小さな石だった。釣り針とも鍵とも言い難い人工的な見た目の。


「伊弉諾、物質……」

ふと、そんな言葉が口に出てきた。






その瞬間、全てを思い出した。


803 : マエリベリー・ハーン&ライダー ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:46:25 MpARLUbA0

――宇佐見蓮子。『秘封倶楽部』の片割れ。私の親友。



なぜ今まで忘れてしまっていたのか。
いつも待ち合わせに遅れる彼女の事を。
この手を引っ張って何処へでも連れて行ってくれる彼女の事を。
この眼を羨ましいと言った彼女の事を。
共に神様の世界を見に行こうと言った彼女の事を。


あぁ、全てを思い出した。
あの時見えた、赤い月の向こう側。その先にかつての東京の街並みを見たのだ。
蓮子が話してくれた噂話。「赤い月が願いを叶える」という伝説を確かめるために。
「結界の境目が見える」この眼を頼りに、あのトリフネの時の様に二人でやって来たのだ。

けれど、そこにあったのは御伽や夢の世界じゃない。
血を流し、命を喰らうまごう事なき戦場だったのだ。


記憶が湧いて出るのに合わせるように、目じりから熱い何かがこぼれてくる。
彼女も、宇佐見蓮子もここにいるのだろう。あれほど大切に思っていたはずなのに、こんなにも思い出すのに時間がかかった。


「……蓮子、会いたいよぉ」

誰も居ない夜の神社で、一人泣きながらそう呟く。



『問おう。うぬが我らのマスターか?』

……いや、誰かいた。


804 : マエリベリー・ハーン&ライダー ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:46:36 MpARLUbA0

はっとして振り向いたその先にいたのは、少年が一人。
足元には黒猫が一匹、少年本人も黒外套に黒い帽子と黒尽くしだ。
それゆえか、この闇夜の中で少年の白く端正な顔だけが浮かび上がるようで、
しばしの間、ぼうっと見つめていたのに気付いて頭を振った。

「えっと、あなたが私のサーヴァント、なのよね?」
戸惑いながらも、黒マントの少年に声をかける。

『うむ。この者がうぬのサーヴァントだ。こやつは少々無口な性質でな』

不意に少年ではない声が答える。見ると、どうやら足元にいた黒猫が喋ったのだ。

「ライダーのサーヴァント、葛葉ライドウだ」
『ところで娘よ。うぬはこの聖杯戦争で何を望む?』

どうやら本当にこのサーヴァントは無口らしい。
今度は黒猫が問いをかけてきた。

『我らはかつて帝都守護を任された身。だが、今は一介のサーヴァントに過ぎん。
 うぬが望むならば、他の者たちを殺める修羅の道も歩むつもりだ』

これからの方針を、自分にまかせるらしい。
そう言われて思うのは、やっぱり一つしかない。


805 : マエリベリー・ハーン&ライダー ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:46:46 MpARLUbA0

「私は聖杯に願う事は何もないわ。
 そりゃ、もっと行きたい場所や見てみたいものはあるけれど、誰かに犠牲を強いてまで叶えたくない。
 それに、どんな冒険だって親友と一緒じゃなきゃ嫌だもの。
 ……この東京に、ううん、この聖杯戦争にいるはずの親友と一緒に帰りたいの。」

蓮子に会う。ただそれだけしか望みはない。
どんな未知の場所も、どんな奇跡も、彼女が隣にいるからこそ魅力的なのだ。
ただ独りで、それも誰かの血で穢れた願いなんてこちらから願い下げというものだ。

「だから、手伝ってほしい。
 私が親友に、蓮子に会えるように。あの子と一緒にこのバカげた戦争から抜け出せるように」
もしかしたら、ライダーにも望みがあるのかもしれない。こんな自分の考えを聞いて裏切るかもしれない。
それでも、これが本心なのだ。偽るつもりはない。

「分かった。マスターの望みとあらば」
その絵本の王子様のような顔をこちらに向けて、今まで無言だったライダーが答える。
その人形にも見える顔とは裏腹に、眼には熱い意志の光が輝いている。

「ライダーのサーヴァントとして、十四代目葛葉ライドウとして、君と親友を護ろう」
「お願い。ライダー」

『うむ、決まったな。ひとまずは拠点に移動するとしよう』


さっきまで流れていた涙はもう出てこない。手に握りしめていた伊弉諾物質にふと見る。
神の世界を見ようと約束した親友の顔が浮かんできた。


……もう忘れないからね、蓮子。
必ず、あなたに会いに行くから。


806 : マエリベリー・ハーン&ライダー ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:46:57 MpARLUbA0

【クラス】ライダー
【真名】十四代目葛葉ライドウ
【出典】葛葉ライドウシリーズ
【パラメータ】
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷C+ 魔力A 幸運B- 宝具A
【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
また、下記宝具により召還したものならば竜種さえも該当する。

対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
見切り:B
敵の攻撃に対する学習能力。
相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。
但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。

召喚術:A
神道系の術を用いた召喚術。ランクAもあれば悪魔を自力で契約し、召喚、行使が可能。
また、電子的な器具を用いずとも悪魔の同時召喚も可能となる。

魅了:D+
異性を惹きつける見目の美しさ。ライダー対峙した女性は彼に対し、強烈な恋愛感情を懐く。
相手の心理状態や感情によっては抵抗できる。また一部の同性にも有効。

【宝具】
『赤口葛葉』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1
葛葉ライドウの一門で継承される霊刀。魔、神の属性を持つ対象に有効。
防御に使用することにより、あらゆる攻撃の威力を半減することも可能。

『アメノオハバリ』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:10〜20 最大捕捉:100
日本神話に名高き神剣、天之尾羽張。真名を解放すると、周囲の魔力を吸収しライダーに与え続ける。
魔力を注ぎ込む事で、一時的に巨大化し相応の威力、レンジを有する。
ただしその逸話から、使用するには少女の命一人分を代償にする。代償には魔力が多い方がより適する。

『悪魔召喚皇』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大補足:100
ありとあらゆる悪魔を従える召喚師としての伝説が宝具となったもの。
今までに仲魔した悪魔をその場に応じ、封魔管を通じて即座に召喚する。
一度の召喚で可能なのは最大で八体まで。また仲魔の強さに比例して魔力の消費量が上がる。
また、仲魔の中にはムーンセルの処理能力を上回るため召喚できないものもいる(かの明けの明星など)。
ただし多くの逸話に登場する「疾風属 モーショボー」「外法属 モコイ」は魔力消費がほぼない。

『陰陽デンデン太鼓』
ランク:A- 種別:召喚宝具 レンジ:- 最大補足:-
修験地獄の封印を司る森羅万象の守護者、「雷電属 コウリュウ」を召還する。
まぎれもない竜種だが、ライダーはこれによって召還したコウリュウならば騎乗できる。
ライダーのクラスを取得した要因でもある。

【Weapon】
コルトM1877(コルトライトニング):
梵字を刻み込んだ銃弾により、サーヴァントへの干渉が可能。主に牽制に使われる。
また召喚した悪魔との連携技も可能。

業斗童子:
通称ゴウト。黒猫の姿をしたライダーのお目付役兼指南役。
悪魔との戦闘に関する知識が豊富であり、また猫の手ながらタイプライターも打てる。
ただし、ねこじゃらしには思わず反応してしまう。
また会話も出来るが、彼の言葉はサーヴァントとマスターにしか聞こえず、他のものには鳴き声に聞こえる。

【人物背景】
あり得たかもしれない時代「大正二十年」において、帝都守護の任を命じられた凄腕のデビルサマナー。
霊的守護を司る国家組織「ヤタガラス」に属し、鳴海探偵社で探偵見習いとして働く。
死人驛使事件、超力兵団事件、アバドン王事件、隻眼化神事件、コドクノマレビト事件と数々の異変を解決している。

【サーヴァントとしての願い】
強いて言うなら「日本と帝都(東京)に住まう人々の幸福」。
ただし、彼は誰かの犠牲の上に願いをかなえる事を良しとしない。

【方針】
マスターが親友に出会えるように護る。


807 : マエリベリー・ハーン&ライダー ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:47:07 MpARLUbA0
【マスター】
マエリベリー・ハーン

【出典】
東方project

【マスターとしての願い】
特になし。聖杯戦争からの脱出を考えている。

【weapon】
なし。

【能力・技能】
『結界の境目が見える程度の能力』
「結界」や「境界」の境目を観測することができる能力。
更に夢を通して、幻想郷に迷い込んだり、地球から遠く離れた衛星などに移動できる。
ただし、夢の中で受けたダメージは現実にフィードバックする。

霊感のある家系らしく、また能力の関係から一般的な魔術師と同等かそれ以上の魔力を持つと思われる。

【人物背景】
首都が京都になった時代の大学生。京都の大学で相対性精神学を専攻している。
宇佐見蓮子と2人でオカルトサークル「秘封倶楽部」を結成している。
マエリベリーは呼び辛いので、あだ名は縮めてメリー。
蓮子とは互いの能力を酷評し合っている仲だが、基本的に仲は良い。蓮子に比べて積極性は低め。
地元(出身国)は不明。日本に身寄りはいないらしい。
蓮子と日本語で会話している他、むしろ日本人臭い思考が見られるので、日本に長く住んでいるのかもしれない。

【方針】
蓮子と再会して、聖杯戦争からの脱出方法を探す。


808 : ◆g33OtL8Coc :2015/01/13(火) 23:47:26 MpARLUbA0
投下終了です。
有難うございました。


809 : ◆3SNKkWKBjc :2015/01/14(水) 08:10:28 P1/l.roo0
皆さん投下乙です。
マスター被りしてしまいましたが、投下させていただきます。


810 : 岸波白野&アサシン ◆3SNKkWKBjc :2015/01/14(水) 08:11:21 P1/l.roo0


 サーヴァントを選んで下さい。


 セイバー
 アーチャー
 ランサー
 ライダー
 キャスター
>アサシン
 バーサーカー
 ????



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


意識が浮かぶ。
広大なデータの海の中、徐々に周囲の様子が把握できた。
そして、薄れかかった記憶も取り戻しつつある。

やはり聖杯に触れる事は叶わなかったのだ。
不正なデータとして扱われた自分はこうしてデータの海に沈み続けている。
覚醒するまで、一体どれほど沈んでしまったのか。
一筋の光すら望めない深淵ばかりが広がり、左右どころか上下の平衡感覚すら掴めない。

深い闇の底。
果たして何が待ち受けている事か……


いや、待って欲しい。

どうして意識がある?
どうして視界が見える?
どうして体がある?

―――終わっていない。まだ、まだここにいる。

理屈はサッパリだが、聖杯によって完全に解体された訳ではないらしい。
データの海で彷徨い続けているのだ。


「――誰か、いるのか?」


!?

漠然とした輪郭しか捉えられないが、確かに自分以外の『誰か』がそこにいた。
こうして会話を交わせるだけで、不思議と安堵を覚える。
……だが、誰なのか?
ここはデータの墓場のような場所。そこにいる存在とは――


「くくく、なるほど。お前もオレと同じようなものか」


同じ……?
そうか……意思を持ったNPC。もしくは不正と認識されたデータ。
驚きはしない。
むしろ、自分のような存在がいる時点で『ありえない類』ではないと受け入れられた。


「残念だな。オレと同じ、辛うじて存在しているようだが意味はない」


サーヴァントもいない。
もう、聖杯戦争は終わりを告げた。
辛うじてここにいる。もしかしたら、あと数秒で消えてしまうかもしれない。


>諦めない
 諦める


諦めない。諦めたくない。
たとえ、何があったとしても確かに存在している。
聖杯戦争で散った人、聖杯戦争であった事、自分の想い全てを無駄にさせない。


811 : 岸波白野&アサシン ◆3SNKkWKBjc :2015/01/14(水) 08:12:14 P1/l.roo0


「随分と強情だな。だが、何ができる?」


確かに何もない。
残された手札なんて一つもない。何も始められなかった。
抗おうにも、その手段が一切ないのだから。
果たして何ができる? この状況でどうしろと?


>それでも諦めない
 やっぱり諦める


やはり諦められない。何かできるはずだ。

……!?

ドクンと体に熱が籠る。
久しぶりの感覚だが……忘れた事はない。まさか……

令呪。

正しくは『前回の聖杯戦争』で使い残した令呪。
最後まで使うことのなかった一画の令呪が深淵の闇の中、一筋の光となって輝いている。
もしかしたら……


「それは……?」


そこにいる相手に手を差し伸べる。

一緒に行こう。ここから抜け出せるかもしれない。力を貸して欲しい。

向こうは沈黙を数秒だけ広げた。


「オレたちのような出来底ないが抗って何がある?
 第一、見ず知らずの相手に協力を求めるのもどうかしているぞ」


尤もな意見だ。
完全に信用できる相手かも理解していないのに。
ただ一つ。

この巡り合わせは『運命』のはずだ。『運命』を信じよう。


「オレを助けた事を後悔させてやろう」


812 : 岸波白野&アサシン ◆3SNKkWKBjc :2015/01/14(水) 08:13:27 P1/l.roo0

◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


再び意識を取り戻した時、舞台に到着されていた。
『東京』
正しくは『聖杯によって再現された東京』
即ち、再び聖杯戦争へ参加することとなったのだ。

一度は聖杯によって消去されたが、これといった不具合を感じる事はない。
令呪を確認するとしっかり浮かびあがっている。
ただし、一画のまま。
本来ならば三画刻まれるそれは、最初から一画の状態だった。

漠然とした気持ちで令呪を眺める。
状況の理解が追いつかないのもあるのだが……
恐らく、イレギュラーとして聖杯戦争に参加してしまった……その可能性を感じていた。
複雑な感情を渦巻きながら座り込んでいると――


「ようやく起きたか。数秒後には臓物を取り出していたところだ」


急に物騒な事を言われてたので、慌てて立ち上がった。
そこには共に『東京』へ至った………

……?

美しいドレスを纏った女性がいる。
違う、そうじゃない。
今まで言葉を交わし合っていた声は『男』だったはず……?


「改めて問う。お前がオレのマスターか?」


と、『女性』が『男の声』で尋ねた。
男声の女……ではなく、正真正銘の男である。
つまり女装している男――がサーヴァントらしい。


 そうだ
 人違いです
>そんな格好で恥ずかしくないんですか?


「さっきからの腑抜けた表情……オレの姿に対するものなのか?」


むしろ気にしない人間はいない。
黙っていれば女らしい。
そう、黙っていればの話だが。


813 : 岸波白野&アサシン ◆3SNKkWKBjc :2015/01/14(水) 08:14:12 P1/l.roo0


「これは警察(ヤード)の目を欺く為だ。男が女を無差別に殺すならば道理にかなっているが
 女が女を無差別に殺す印象は世間体の意識としては低い。分かるだろう?」


一概に間違ってはいないのかもしれない。
それはそうと――物騒な発言からして彼は猟奇的な面が垣間見える。
何の英霊なのか?
女を無差別に殺すなど『切り裂きジャック』を連想させるが、似通った英霊に心当たりはない。


「なんだ、オレを知っているじゃないか。いかにもオレは『切り裂きジャック』
 アサシンの座とし召喚された『切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)』だ」


『切り裂きジャック』……!?

それは――英霊よりかは恐怖の概念だ。
童話の概念が英霊化したように、恐怖の概念が英霊化したような。
俄かに信じがたい。

……その『切り裂きジャック』が何故『あそこ』にいたのだろう。


「……とは言え、オレはお前と同じ『ゲーム上のキャラクター』だったのさ。
 本物の『切り裂きジャック』ではないが『切り裂きジャック』としての立場があった」


ゲームに登場した『切り裂きジャック』
それが本物と誤認され、サーヴァントとして召喚された?
全てが異常極まりない。
異常の始まりは――恐らく岸波白野だ。

異常まみれの主従が『東京』の聖杯に導かれた。
ならば『東京』の聖杯も……異常なのか?


「ところで――お前は聖杯が欲しいのか」


 欲しい
 欲しくない
>まだ分からない


『東京』の聖杯はムーンセルの聖杯とは違う。これだけは断言できた。
もしかしたら聖杯に触れる事が叶うかもしれない。
それ以上に『東京』の聖杯は異常の塊かもしれない。
正常な願望機かも――分からない。

だが、前回の聖杯戦争を無意味にしない。諦めない。
それだけは譲れない。


「急に表情が変わったな。今更、オレを助け後悔したか」


>これからよろしく。アサシン


「……」


気使ったつもりだが、アサシンは前触れもなく霊体化してしまった。
機嫌が悪くさせてしまったらしい。
まだ彼のことを知らない。うまくやっていきたいものだが……


新たな月で聖杯戦争が幕を上げた。


814 : 岸波白野&アサシン ◆3SNKkWKBjc :2015/01/14(水) 08:15:38 P1/l.roo0
【マスター】岸波白野(男) @Fate/EXTRA

【参加方法】
異常な手段をもって聖杯戦争へ導かれた

【マスターとしての願い】
明確には不明。聖杯を見極める?

【weapon】
なし

【能力・技能】
魔術師としての才能は平凡。

【人物背景】
Fate/EXTRAの主人公(性別はプレイ開始時に選択可能)。
ムーンセルに解体されたはずだが、辛うじて完全に消える事はなかった。
相変わらずの往生際の悪さを発揮させ、アサシンと共に聖杯戦争へ参加することにより完全なる抹消を逃れられた。
前回の聖杯戦争の令呪を引き継いでおり、令呪を凛・ラニ戦にて二回使用した令呪一画の状態。



【クラス】アサシン
【真名】ジャック・ザ・リッパー@名探偵コナン ベイカー街の亡霊
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:A 魔力:D 幸運:A 宝具:E

【クラススキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。

陣地作成:A
 魔力を消費し、周囲に霧を展開させる。
 作成に時間を必要とせず、瞬時に発動可能。

道具作成:E
 魔力を帯びた器具の作成。
 アサシンの場合はナイフや爆弾など近代的な凶器に特化している。


【保有スキル】
犯罪の美学:A
 急所を狙う方法、逃走経路を瞬時に計画。
 どのように爆弾を設置すれば効率的か。
 犯罪に関する知識の豊富さを示す。同ランクの『直感』スキルを発揮する。
 
女装:D-
 一種の変装。女装し、なおかつ男性であると判明されるまで
 ステータスの隠蔽が施され、NPCと同等の気配しか与えない。
 声だけは隠蔽できない。

仕切り直し:C
 戦闘から離脱する。戦闘中でも即座に離脱行動に移る事が可能。

二重召喚:C
 アサシンとキャスター、両方のクラス別スキルを獲得して限界する。


【宝具】
『ベイカー街の亡霊(オールド・タイム・ロンドン)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1~10 最大補足:1人
陣地に侵入した対象一人に発動可能。戦闘開始時一回しか発動しない。
いかなる宝具・スキルも妨害し、必ず先手で攻撃を仕掛けることができる。



【人物背景】
浮浪孤児になっていたところをジェームズ・モリアーティーに拾われる。
彼から犯罪者としての英才教育を施され『切り裂きジャック』として名を轟かせる殺人鬼となった。
当初は母親を殺す為だけを目的としていたが、母親に似た女を殺し続け歯止めが効かなくなる。
最終的に彼が望んだのは『切り裂きジャック』の血を現代へ残す事。

とある人工知能が作り出した『切り裂きジャック』のキャラクター。
最終的に人工知能は自らを消去し、その際ゲームそのものも抹消した
……が『切り裂きジャック』は残り続け、岸波白野と接触した。

本来『切り裂きジャック』は誰でもあって誰でもない存在。
しかし、この『切り裂きジャック』は独自の世界観の中だけとはいえ明確な正体を持つ。

ロリショタ集合体の『切り裂きジャック』ではなく
姿形が不定形な『切り裂きジャック』でもない
唯一個体を持つイレギュラーな『切り裂きジャック』である。


【サーヴァントとしての願い】
とくにない
ゲームキャラクターであることを受け入れており、自身の野望も無意味だと理解している。


815 : ◆3SNKkWKBjc :2015/01/14(水) 08:16:10 P1/l.roo0
投下終了です


816 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:40:42 6Nk3Y18w0
投下します。


817 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:41:18 6Nk3Y18w0

 相対的判断などどうでも良かった。紅莉栖もまゆりも、死なせたくなかった。
 紅莉栖だけが生き残るα世界線。まゆりだけが生き残るβ世界線。終着点は片方のみの、二者択一。
 どちらも嫌だった。片方だけでも切り捨てるべきなんて認めたくなかった。
 既に二人とも、岡部倫太郎にとってかけがえのない存在となっていたから。

 だから、再び足掻き始めた。β世界線に行くことなく二人を死なせない可能性は無いかと探し求めて。
 たとえ馬鹿だと見放されても構わずに、時間を何回も何十回も何百回も繰り返して。
 そして、その悉くは無駄に終わった。まゆりは何回も何十回も何百回も、死んだ。
 それでも立ち止まれはしなかった。

 いつしか、自分の中から欠落が始まっていた。
 ふと気が付けば、まゆりが死んだ瞬間に「さて次はどんな方法を試そうか」などと理性が冷静に判断するようになっていた。
 あれほど大切に想っていたまゆりの死を何回も目の当たりにしておきながら、否、辟易するほど経験しているからこそ、死さえも機械的に受け止めるようになっていたのだ。
 抜け落ちていく、欠けていく……狂っていく。人としてのまともな感覚が失われていく。
 それを自覚してなお、諦めるなんて道を選べなかった。

 足掻き続けて。繰り返し続けて。決断の責任から逃げ続けて。
 無意味と分かり切っている旅路を往き続け、ひたすらに精神を摩耗させるだけ。
 「偶然」は、そんな岡部にまたも転機を、第三の可能性を齎した。
 0から永く不変であり続けた、ダイバージェンスメーターの示す世界線変動率の一桁目。
 ある時それが示したのは0ではなく、しかし1でもなく――6。

 此度の「偶然」が引き起こしたのは、求めた覚えの無い全く以て未知の世界線。
 何がどうしてこうなったか。そんなことはどうでもいい。
 とにかく、紅莉栖とまゆりの安否だけが重要だった。彼女達のどちらが生きどちらが死ぬか、どちらも生きるかどちらも死ぬか。
 せめてその事実だけでも速やかに確かめねばと、この世界線では何をどうやり直せばいいのかと岡部は駆け出した。

 そして幾ばくかの時を経て、ふと彼の視界に収められたのは紅。
 何十何百と見慣れた死の証明としての紅ではない。色だけは同じ、闇一辺倒の空に毒々しく輝く紅の月。
 決して有り得ないはずの鮮血色の満月を、この時の彼の瞳は「偶然」捉えてしまったのだ。

 長い長い世界線漂流の中で、願いを叶える紅い月の噂を聞いたことならあった。
 その時は根も葉もない妄言だと感じ、しかし万に一つの可能性を考え、藁にも縋る思いで噂を真実に出来ないかと動き、当然無駄骨に終わった。
 それきり、紅い月の件は無意味な選択肢としてとうの昔に切り捨てた。

 なのに、今になってあの輝きは眼前に放たれている。
 α世界線では決して拝むことの出来なかった奇跡が、未知の世界線の空の中で顕在している。

 まさか。まさか、この世界線が――


818 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:42:08 6Nk3Y18w0



 秋葉原という街は、たとえ夜を迎えても静謐さを見せない。
 昼夜を問わず営業する雑貨店やら飲食店が看板を光らせ、巷を騒がすアニメの絵面が電光掲示板の中で自己主張をする。
 秋葉原の夜景の中で氾濫する虹色の光は、彼か彼女が少し目線を下げさえすればその瞳に暴力的に突き刺さる。
 しかし、彼も彼女も見下ろさない。
 雑居ビルの屋上で冷えたコンクリートの上に立ち、静かに各々の視線の先のただ一つに集中していた。
 彼女が見上げる視線の先は夜空。
 彼が見つめる視線の先には彼女。
 二人はただただ、見続けていた。

「お前が俺のサーヴァント……ということで、合っているのか?」

 意を決したように語りかけた岡部の声は、少女の耳には届かなかったようだ。
 いや、届いてはいるのだろうが、相応しい返答が無いのでは聞こえなかったのと同じだ。
 何事も無かったかのように空を注視する少女の身体を、弱く柔らかい風が撫でた。
 靡いた桃色の長髪の隙間から見えたのは、首筋に刻まれた小さな赤い紋章。
 それは一見ごく普通のうら若い乙女でしかない少女が、阿修羅の如く戦乱を勝ち抜いた舞姫である証明であった。
 少女の顔つきに残されたあどけなさはまゆりを思わせて、さらさらと柔らかく揺れている伸びやかな長髪は紅莉栖を想起させて。
 しかし英霊たる少女は庇護されるべきあの二人と違い、心を狂気に染めたバーサーカーである。

「……なあ」

 彼女は英霊として何を望むのか。
 なぜ夜空を、満月をずっと見上げているのか。
 今も輝き続けるあの星の紅に、輪郭に、何を思っているのか。
 バーサーカーは、何も語らない。
 声の無いバーサーカーの代わりとばかりに、みゅー、とその両腕の中で鳴いたのは、猫とも狐ともつかない小動物だ。
 彼……と呼んで良いのか不明だが。優しく抱かれ身を縮こまらせる彼ならば、バーサーカーの胸の内を理解できているのだろうか。
 結局、それさえ岡部は理解できていなかった。

「……俺には、救いたい人間が二人いる。一人だけなんて選びたくない、両方を救いたいんだ」

 一方的に、岡部は語り始める。胸の中に溜め込んだ物を吐き出し始める
 耳を傾けられないとしても、岡部はバーサーカーに伝えなければならなかった。

「そのためだったら、俺は他の第三者の願いだって踏み超える。いや、今に至るまでとっくに何人も切り捨ててきた……今更、引き下がれない」

 積み重ねた思い出を消し去った。家族との幸せも奪った。一生の恋心だって無下にした。
 そして今岡部は他者の抱く願いを、それだけでなく命さえ手に掛ける。
 これまでと全く毛色の異なる行為であっても、手を染める覚悟なら、既に、

「お前はどう思う? 俺が、ここで誰かを討てと言ったら、お前は……っ」

 バーサーカーは、やはり応えてくれなかった。
 ただ、岡部の姿をまじまじと見つめ始めるだけ。


819 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:42:49 6Nk3Y18w0

 彼女の有様にいよいよ痺れを切らした岡部は、つかつかと歩み寄りバーサーカーの両肩を掴む。
 そのままぐいぐいと揺らせば、バーサーカーの首は前後に揺れる。
 か弱い少女に乱暴するなどと、この場に紅莉栖かまゆりが居れば間違いなく声を上げて怒るだろう。
 構わなかった。誰の非難を浴びようと、今は声が聴きたかった
 女の子二人救えない無力な岡部に、最後の一線を越えるための一押しが為されるか否か確かめなければならないから。

「応えてくれよ」

 岡部倫太郎は、紛れもなく弱者だ。此度の戦争で勝ち残るためには、バーサーカーに何もかも負担させねばならないほどに。
 英霊でありサーヴァントであるならば彼女が最前線に身を投じるのは当然。しかしその常識を前にしながら、岡部の心は軋む。
 バーサーカーの姿が畜生の如き異形ではなく、ただの少女であるがために。
 目の前で佇んでいるのが、まゆりのような紅莉栖のような少女。
 今から岡部は、その彼女に浴びるほどの血を流させるのだ。
 魔力の提供をするとは言えど、当の自分自身には極力危険が及ばぬようにしながら、である。
 自己嫌悪で反吐が出そうになるような真似を、しかし為さねば何も勝ち取れやしない。

「お前は、俺と戦えるのか……!?」

 バーサーカーは物言わず岡部の従者たるのか、有無も言わさず岡部を愚かと断ずるのか。
 バーサーカーは岡部の味方なのか、真の意味では敵なのか。
 岡部には、彼女を知らねばならない責務がある。

 そして。もしもバーサーカーが岡部の願望を嫌い、悲しむようであったなら。
 その時岡部は、岡部の何に代えても叶えたい願いは、祈りは――

「俺はっ……どうするんだよ……!?」

 絞り出すように、岡部は少女へと詰問する。
 怒るように。縋るように。嘆くように。
 これが決断する最初のステップにして、撤回する最後のチャンス。
 彼女の一言で、全てが決まるのに。

――お兄ちゃん。

 その瞬間のことだった。
 バーサーカーの口が、いよいよ開かれた。
 兄、と確かに誰か呼んだ。岡部のことを呼んだのか。はたまた此処にいない誰かを想ってか。
 その真相を確かめられないかと、吐息がかかりそうな距離まで顔を覗き込む。

――お父さん。
――碧ちゃん。
――舞衣ちゃん。

 次々と唱えられた名は、きっとバーサーカーのかつての知人なのだろう。
 父は彼女の親であり、それ以外の名前が指すのは姉妹か、あるいは友人か。
 先程呼ばれた兄の名は、やはり彼女にとっての知己の人物だったのだろう。
 ぼそぼそと動いていたバーサーカーの口は、一度ぴたりと止まる。
 岡部の瞳と、空虚なバーサーカーの瞳が今また交錯した。

――ごめんなさい。

 瞳を仄かに潤ませ、揺らしながら。
 今にも途切れてしまいそうなほど小さく、か細い声で。
 バーサーカーは、謝罪の言葉を吐き出した。

「――……お前は、」

――私、頑張るから。

 そして紡がれたのは。弱々しくも、強い決意の表明。


820 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:43:27 6Nk3Y18w0



 嗚呼。そうか。そういうことか。
 だから、岡部の下へ召喚されたのはバーサーカーだったのか。

 想う人々の名前。零された贖罪。決意。
 一つ一つを連ねたところで、理論的に解答を導くには情報量が到底足りない。
 それでも、岡部は確信すら持てる気がした。

 誰かを切り捨てざるを得なかった悔恨。取り戻したい過去。
 他者の望みをまた切り捨て、自らの正気すら捨ててまで、再び戦う覚悟を固めてしまった彼女。
 それ故の狂気。大切な人々のためだけの、狂気。
 儚げな顔は、どうしようもなく似ていると思えた。

 きっと彼女は、ほんの少しだけ未来の彼だから。

「……ふっ、ふフッ」

 直感する。今こそ、仮面の狂人の出番なのだと。

「…………フウゥウウーーーハハッハハハハハァッ!!」

 大仰に両腕を振りかぶり、馬鹿みたいな大声で高らかに笑う。
 可笑しくて自然に笑えてくるのではない、彼女に意思を示すために自ら笑うのだ。

「バーサーカーよ、今理解したぞ。貴様はこの俺、狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真と覇道を共に往くに値する存在だ! 故に! 聖杯に至るまでの旅路、貴様にも同行を命じる、拒否は認めん!」

 びし、とバーサーカーを指差す時も、極めて尊大な自分を演出する。
 本来の性分を覆い隠した鳳凰院凶真として、名乗りを上げてみせる。
 勿論、こんなものは妄想だ。ただの設定だ。
 それでも、あの雨の日から今この瞬間までの岡部倫太郎を培ってきた、紛れも無い自己の一部。
 そして聖杯戦争に臨むに相応しい人格は、狂気に満ちたこちら側。
 バーサーカーが狂気を武器とするなら、自らもまた仮初でも狂気に身を委ねるのだ。


821 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:43:51 6Nk3Y18w0

「だが忘れるな。貴様の抱く願いが聖杯によって叶えられたとして、それはマスターたる俺から恵まれだ褒美に過ぎない。そう、全ては俺の命令。誰の祈りが摘み取られ、誰の祈りが叶えられたとしても、全てがこの俺が引き起こしたものであると心得よ……貴様の犯す罪は、まず俺の罪なのだとな!」

 鳳凰院の仮面を被り、エゴを貫くためにこれから他者を踏み台にする。
 その口でバーサーカーに人殺しを命じ、設定ではない本物の狂人の所業に手を染める。
 到底、ラボメン達には見せられないような姿。だが、構うものか。
 二人の少女を生かすと決めたのだ。そのための犠牲ならいくらでも払うし、ラボに居場所が無くなるというなら安いものだと受け止める。

 そう。真に道を外す人間など、紅莉栖にもまゆりにもラボメン達にも似つかわしくない。
 故に、バーサーカーこそ岡部の仲間。ラボメンナンバーを持たない彼女だけが、今の岡部の唯一の味方。
 たとえ口先だけでしか実現できないとしても、二人は共犯者であろうではないか。

「見せてもらうぞバーサーカー。貴様が正気と引き換えに得た実力、宝具、そしてその意志を貫く気高い雄姿を……! そして共に聖杯を掴み取り、俺達の愛する者達を奇跡に満ちた理想郷……運命石の扉(シュタインズゲート)へと誘ってやろうではないか! フゥーーハハ、ハハハハハァッッ!!」

 宣誓は済んだ。腹は括った。
 これを以て戦争が始まり、前哨代わりに天を仰いで岡部は嗤う。
 紅莉栖とまゆりのための、二人以外を切り捨てるための戦争が始まる。
 苦痛だって、困難だってあるだろう。きっと、罪悪感も抱くだろう。

 それでも。彼女達の笑顔だけは、救ってみせる。
 岡部倫太郎の、全てに代えて。


822 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:44:12 6Nk3Y18w0



 天上に凛然と存在するのは、かの媛星にも似た紅く強く輝く月。
 彼女が此の地に召された理由は、宛らあの惨い殺し合いの儀式の再現。
 滲む、視界。

 かつて恋い焦がれた一人のために、それ以外の愛も情けも塵屑のように切り伏せた。
 そんな二者択一など、望んだわけじゃなかったのに。
 選ばなければ何もかも終わっていたからと言い訳して、片方の選択肢を選び取り残りを捨てた自分に、悔いなど無いわけがなかった。
 真っ当な生を捨て、英霊の如き存在に成り果てたのは贖罪のため。素知らぬ顔で続く未来を生き抜くなど、脆い心で耐えられるわけがなかったから。
 最後の一人となった姫巫女の逸話は貴く尊い英雄譚などではなく、紐解けばこんなもの。気弱な少女が一人、罪深さに押し潰されたというだけの話。
 狂気に呑まれながら、哀しいほどに彼女は正気だったから。

 あの日選んだ一人と選ばなかった大勢を、もしも両方とも選べていたならば。
 聖杯は、そんな我儘であり祈りである想いにも成就の機会を齎した。
 ただし代償は、再びの戦。
 かつて涙を流させた全ての人達のため、またそれ以外の誰かの想いを踏みにじらねばならない宿命。
 二者択一を嘆いたが故に、新たに示された三者択二の道。
 矛盾している。意味が無い。これこそただの二の舞だ。
 それでも、悲しませると分かっていても、彼女は奇跡に縋らずにはいられなかった。
 悲しませた親しき者達の顔が、脳裏に焼き付いてしまっていたから。

 そして彼女が不幸にして幸福だったのは、主人(マスター)となった男が彼女に近い願いを持っていたこと。
 自らの引き起こした災厄を贖うため、大切な二者のどちらも切り捨てないため。
 似た境遇は共感を呼び、そして第三者を切り捨てる覚悟を生んでしまった。
 共に堕ち往くと言ってくれた安堵は、一歩を踏み出させるに十分であったから。

 岡部倫太郎が、ひたすらに嗤い続ける。
 大袈裟で、高圧的で、それでいてどこか痛ましくもある彼の姿は、どこか似ていると。微かに残る正気で、バーサーカーは思っていた。

 誘われるように、バーサーカーの口元が薄く、儚く、哀しく――笑った。


823 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:45:00 6Nk3Y18w0



【マスター】
岡部倫太郎@STEINS;GATE

【マスターとしての願い】
紅莉栖もまゆりも死なない世界線に到達する。

【weapon】
・携帯電話
ごく普通の携帯電話。「機関」について同志と話すための必須アイテム。

【能力・技能】
インドア派の大学生であり、身体能力は一般的な男性を下回る。
・運命探知(リーディングシュタイナー)
世界線を移動した際、移動前の世界線における過去の記憶を完全に引き継げる。
しかし、その代わりに移動後の世界線での過去の記憶は全く引き継げない。

【人物背景】
秋葉原の東京電機大学に通う大学生。常に白衣を着用している。
重度の厨二病患者で、狂気のマッドサイエンティスト「鳳凰院凶真」を自称している。
普段の尊大な振る舞いによって誤解を招いているが、根はお人好しかつ仲間想いでヘタレ。
とある雑居ビルに「未来ガジェット研究所」というサークルを設立し、サークルのメンバー、通称ラボメンとして迎え入れた友人達と共に発明活動に勤しんでいる。
ある日、偶然にも過去の時間に送信できるメール「Dメール」を発見し、これを研究していき時間跳躍(タイムリープ)の技術を得た。
しかし、岡部はそのDメールを切欠に世界線が幼馴染の椎名まゆりの死という運命が確定したα世界線に至っていたと知る。
その運命を覆すためにタイムリープを駆使して世界線を本来のβ世界線に戻そうとするが、到達直前になってβ世界線が仲間である牧瀬紅莉栖の死ぬ世界線であると知る。
紅莉栖とまゆりのどちらを見捨てることも出来ず、岡部はα世界線で無意味なタイプリープを繰り返し続けた。
本来ならこの後に一つの決断をするのだが、ここでは割愛する。

【方針】
聖杯を手に入れる。


824 : 三者択二のプレギエーラ ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:45:45 6Nk3Y18w0



【CLASS】
バーサーカー

【真名】
天河朔夜@舞-HiME 運命の系統樹

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷D 魔力C 幸運E 宝具B

【属性】
中立・狂

【クラススキル】
・狂化:D
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。
Dランクでは筋力と耐久が上昇するが、言語機能が単純化し、複雑な思考を長時間続けることが困難になる。

【保有スキル】
・戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。
・HiME:A
かつての星詠の舞と呼ばれる儀式における姫巫女達の戦いをスキル化したもの。
星詠の舞が擬似的に再現されたと見なされる状況に置かれる時、即ち「使い魔あるいはそれに類する存在を使役する女性」と対峙する時、ステータスが上昇する。
(例:「使い魔を使役する女性サーヴァント」「サーヴァントを従える女性マスター」等)
加えて、対峙した女性が戦いへ懸ける感情を「特定個人への愛情(恋愛に限らず、家族愛や友愛等も含む)」であると認識した時は更に上昇する。
後述の宝具が破壊された場合、このスキルは消滅する。

【宝具】
・『月夜の風に悲恋を詠みて(ツキヨミ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:5人
バーサーカーが星詠の舞にて召喚したチャイルド(=HiMEの想いの力によって具現化した魔獣)が宝具と化した。
巨大な狐型の獣であり、爪による斬撃や翼によって発生させる突風を主な武器とする。
バーサーカーが星詠の舞で挙げた戦果の殆どがチャイルドとの連携によるものだったこともあり、戦闘の際にはほぼ必ずこの宝具が解放される。
チャイルドの特性の再現として、スキル「HiME」が有効となった場面で相手の使役する存在を倒す度にその魔力を吸収し宝具としての性能を上昇させていく。
非戦闘時には肉体を小型化させた状態で具現化しているが、この時の魔力消費は極めて少量で事足りる。

【weapon】
・紅月鎌(こうげつれん)
エレメント(=HiME固有の武具)として使用する紅い大鎌。
破壊されても少量の魔力で再生成可能。ただし装備できるのは一度に一振りのみ。
宝具が破壊された場合はその時点で消滅し、再生成も不可能となる。

【人物背景】
私立風華学園高等部1年に所属する高校生。
風華町で暮らすごく普通の少女。性格は自分に素直で行動的、そしてやや天然気味。
学園の友人達や恋い慕う高村恭司に囲まれ、幸せな日々が穏やかに、楽しく過ぎゆくはずだった。
星詠の舞と呼ばれる儀式のはじまりを告げられる、その時までは。
300年に一度地球に衝突せんと迫る媛星を再び宇宙に還すために行われる、12人のHiME達の戦い。
想い人を触媒として生まれたチャイルド同士を殺し合わせ、最後の一人を決めねばならない運命。
それは、愛故の戦いの物語。
朔夜はこの運命を避けられないかと努めるも、想い人である高村の喪失への恐怖に打ち勝つ意志は持てず、かと言って愛に殉じ全てを割り切る強さを持つこともできなかった。
結局は他のHiME達を倒し、罪悪感と共に最後のHiMEとして勝ち残る結末を辿る。
そして最後に朔夜が望んだのは、媛星を還す際にHiMEを封印することで副次的に得られるエネルギーを使っての、自らが傷付けた人々への贖罪だった。
朔夜を哀れんだ想い人の高村が望んで共に封印されたことをせめてもの救いとして、天河朔夜の物語は幕を閉じた。はずだった。
聖杯戦争のはじまりを告げられる、その時までは。

【サーヴァントとしての願い】
傷付けて、死なせて、悲しませた皆への償いを。


825 : ◆T9Gw6qZZpg :2015/01/15(木) 18:47:32 6Nk3Y18w0
投下終了します。


826 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 22:55:06 6rRbWcnA0
投下します


827 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 22:55:42 6rRbWcnA0
―――生まれ変われるとしたらなにになりたい?

   他愛のない話。
   お金持ちの家の子どもに生まれてみたいとか。
   異性に生まれ変わりたいとか。
   鳥になりたいとか。
   そんな答えが返ってくる。

―――生まれ変われるとしたらなにになりたい?

   私は、生まれ変わりたくなんかない。
   生まれ変わるということは、今を諦めて死を選び、次の死へと歩き出すということ。
   人生に納得している人間ならそれでもいい。
   でも、私はまだ納得なんかしちゃいない。

   何度も殺された。
   何度も何度も殺された。
   何度も何度も何度も殺された。
   わけも分からず、何度も何度も殺された。
   その度に思った。何故私が死ななければならないのか、と。

   月よ、月よ、紅い月。

   もう十分に死んだはずだ。
   もう十分に苦しんだはずだ。
   もう十分に涙を流したはずだ。

   もし本当にあなたが願いを叶えてくれるというなら。

   ちょっとだけでいい。
   この前より後数分でいい。
   いつもより後数時間でいい。
   運命の先の後ほんの数日でいい。
   もし、本当に願いが叶うと言うなら。
   『私が私として納得する形で死なせて欲しい』。

―――生まれ変われるとしたらなにになりたい?

   私は生まれ変わりたくなんかない。
   私は、私として生きたい。
   私は、私として死にたい。

   ぎゃあぎゃあとわめく烏の声。
   冷たくなっていく躰。
   血と一緒に大事なものが抜けていく。この世と私とを結ぶ何かが消えていく。

   もうなにも映さないはずの瞳に捉えた深紅の満月。
   「新月の夜に現れて、願いを叶える深紅の満月」。
   誰かがそう呼んでいた、存在するはずのない満月。
   神社の天井に浮かぶ、有り得ないはずの満月。

   月よ、月よ、紅い月。
   私の願いを叶えて頂戴。

  * * *


828 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 22:56:17 6rRbWcnA0









            古 手 神 社








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829 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 22:57:02 6rRbWcnA0
「梨花ちゃま、梨花ちゃま」

「はい、なんでしょう?」

  境内の掃除をしている私に参拝客NPCが話しかけてくる。
  そこから始まる他愛のない話。
  どこの店のなにが美味しかったとか。
  自分の孫が自分にどれだけやさしいかとか。
  本当に下らない話。
  だが、神社の巫女としての役割を与えられた以上、彼らの与太話にも付き合わなければならない。

「呑気なものだな」

  そうしてのんびりと過ごしていると、急に派手な髪色の男が物陰から現れた。
  ピンクの髪に緑の斑点。
  布地より肌色の方が多い鎖帷子を薄手にしたような上着。
  血色の悪い肌に視認のように虚ろな目。
  およそ常人とは思えない風体に、参拝客がざわめきだす。
  まあ、そうなるだろう。私も彼を初めて見た時はそうだった。

「みぃ……心配しなくても大丈夫なのです。あのおじさんはああ見えて、悪い人ではないのですよ」

  無論嘘だ。
  彼のことは彼のマスターである私自身がよく知っている。
  人は殺す。麻薬は流す。生まれ故郷に火は放つ。なんでもありの大悪人。『だった』。
  その後彼も紆余曲折あり、英霊になり、聖杯戦争でサーヴァントとして私の召喚に応じた。

「フレデリカ」

「はい、今行きますです」

  参拝客に深々とお辞儀をして、にぱーと笑って彼らに背を向ける。
  そして後ろで待っていた彼の手を握ってそのまま神社の方へと歩き出す。

「なんのつもりだ」

『格好だけよ。警戒されて通報されてそれで終わり、なんてのは困るでしょ』

  そう彼に念話で伝え、少しだけ身を寄せる。
  これで警戒が解ければいいのだけど……
  確認ついでに振り返って手を振ると、参拝客は皆一様に不思議そうな顔はしていたが、それでも疑念は晴れたような顔をしていた。


830 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 22:58:40 6rRbWcnA0
  ***

「貴方はどうしてそう空気が読めないのよ」

  返答はない。

「それと、私の名前は古手梨花。いい加減覚えなさい。スペランカー」

  やはり返答はない。
  稀代の大悪人。
  ただの変質者。
  死に続ける男。
  そして私のサーヴァント・『スペランカー』、ディアボロは鼻を鳴らすと吐き捨てるようにこう言った。

「記憶を取り戻して以降もNPCとしての生活を送っているのは何故だ」

「機を見計らってる、って言ってくれないかしら」

  スペランカーは難儀なサーヴァントだ。
  神社から出れば死の危険に襲われることになる。
  だが、神社を出なければ戦うことすらままならない。
  そのため勝負に出るタイミングは慎重に選ばなければならない。

「長生きしたいとは言わない。もう飽きるほど生きたわ。でも、『わけも分からず殺される』のだけはごめんなの」

  私の願いはただひとつ。
  『納得の行く死』それだけ。
  なにも分からず死ぬというのはもう飽き飽きだ。
  誰かに殺されるなら、自分の非を償う形で死にたい。
  どうしても死ななければならないというなら、死の原因をきちんと理解した上で死にたい。

「難儀な願いだ」

「お互い様じゃないかしら」

  そんな願いが呼び寄せたのが、エクストラクラス『無謀な挑戦者(スペランカー)』。
  私と彼を繋ぐのはそれぞれを取り巻く不条理に対する反抗心。
  結果にたどり着きたい。それが死だろうと、生だろうと、『納得』できればそれでいい。

「でも、そろそろ動き出すべきね」

  街の雰囲気は変わらない。
  いつまでも、いつまでも、優しい時間が過ぎていく。
  そんな空気だからこそ、今動く。
  誰も動き出していないだろう今動き出して、少しでも生き延びる可能性を上げる。

「余生は五回、ね。お互い悔いの残らないようにいきましょう」

「お前は一回だ」

  そうだったわね、と言って神社の裏口の戸を開ける。
  さあ、大冒険の始まりだ。


831 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 22:59:27 6rRbWcnA0
【クラス】
スペランカー

【真名】
ディアボロ@ディアボロの大冒険

【パラメーター】
筋力E〜A 耐久E〜A 敏捷E+++ 魔力E 幸運EX 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
無謀な挑戦者:B
スペランカーの『∞回死に続けた』逸話がクラススキルになったもの。
彼は四回まで『死亡判定』を回避し、スキル『リスポーン』を発動することが出来る。
死亡判定に含まれるのは以下のものである。
・死ぬ程度の致命傷を受ける
・即死系の攻撃・宝具が発動される
・空腹状態で30分経過
・リスポーン地点を除く「部屋」に二時間以上滞在する

リスポーン:C
上記無謀な挑戦者で『死亡判定』を受けた時に発動するスキル。
このスキルが発動すると、スペランカーはマスターとともにリスポーン地点(神社)に戻る。
クラスランクCではレベルの引き継ぎはなく、アイテムもピザ一枚を残して全て喪失。更にリスポーン地点を変更することが不可能である。

【保有スキル】

空腹度:E
スペランカー三大クソスキルが一。彼の行動には『空腹度』の概念が付き纏う。
だいたい6時間に一回食事をしなければ『空腹』状態になり徐々に体力が減り始める。
そして30分後までに食事をしなければその場で餓死する。
空腹を紛らわせる能力や満腹度の上昇などで時間を増やすことが可能である。

不思議なマッピング:-
スペランカー三大クソスキルが一。彼が足を踏み込んだ場所は「ダンジョン」扱いとなり、以下の性質を新たに獲得する。
・マップ変更……スペランカーが踏み込む前と踏み込んだ後とでは施設内の部屋割りが変更される。これは階層移動などにも適用される。
        さらに「撤退のための通路」が消滅、一度踏み込んでしまうと屋上か最深部にたどり着かない限りは外に出られなくなる。
・ランダム店舗……部屋の中に「店舗」が一箇所紛れ込む可能性がある。また、大型ショッピングモールなどでは店舗が一箇所まで減少して他の場所はただの空き部屋に変わる。
・アイテム散乱……一フロアに六つずつアイテムが設置される。
・トラップ設置……一フロアに三つずつトラップが設置される。店舗がある場合は店舗に固定で一つ設置される。
なお、設置されたトラップはスペランカーが発見するまで巧妙に隠されており、スペランカー以外に影響は及ぼさない。
ただしスペランカーが発見した後は参加者・NPCを問わず全ての人物ユニットに影響を及ぼすようになる。
なお、ダンジョン扱いが適用されるのは学園やマンションといった大型施設のみであり、道路や小型施設は『通路』扱いになる。
そのため道路や小型施設にトラップは設置されないが、アイテムも落ちていない。

永パ禁止用トラップ:EX
スペランカー三大クソスキルが一。彼はリスポーン地点と通路(道路)を除く全ての「部屋」に二時間以上滞在することは出来ない。
もし二時間同じ場所にいつづけた場合、どこからともなく十字架型の岩が落ちてきて死ぬ。
一時間半の時点で警告が聞こえてくるのですみやかに階層移動もしくはダンジョンからの脱出が必要になる。

収納上手:B
収納上手な男。体の何処かにアイテムを仕舞いこむことに長けている。
彼は拾ったアイテムを情報状態に変換し、自身の体にしまい込める。上限は30。
更にこのスキルと『リスポーン』を併せ持つ場合、リスポーン地点に倉庫(彼の場合はココ・ジャンボ)が現れる。収納上限は20。
ただし「ものもちのしおり」などで自分の収納箇所を拡大することは不可能である。

真名看破(死):B-
スペランカーが他者に殺された瞬間、彼の記憶にその人物の真名と自身の死因が刻み込まれる
【例:ギルガメッシュに王の財宝を見せびらかされて死亡、エミヤシロウに壊れた幻想を使われて死亡等】
表示されるのは「殺害した人物の名前」、死因は「直接死因」となる(宝具で殺された場合は宝具、通常武器のゴリ押しで殺された場合は通常武器の名前のみ、仮に洗脳NPCに殺された場合はNPCの名前と殺害方法が表示される)
ただし、彼が盲目状態で殺された場合死因は「わけもわからず死亡」、ドッピオ状態で死んだ場合死因は「電話待ってます」で固定となる。


832 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 23:00:33 6rRbWcnA0
【宝具】
『我を苛むは黄金の鎮魂歌(ゴールドエクスペリエンスレクイエム)』
ランク:EX 種別:対ディアボロ レンジ:1 最大補足:1
他者によってスペランカーに掛けられた『結果に辿りつけない』という最早宝具クラスの呪い。
この宝具は発動に魔力を消費しない代わりに常時発動し続け、彼に様々な効果を及ぼす。
この宝具が発動されている間、スペランカーは
・無謀な挑戦者
・リスポーン
・空腹度
・不思議なマッピング
・永パ禁止用トラップ
・収納上手
・真名看破(死) のスキルと
・ディアボロの大冒険 の宝具を得る代わりに
・通常クラスで召喚された際に得られたスキル
・我が最愛の下僕
・その未来に墓碑銘を刻め
・我に傅くは真紅の帝王 の宝具を封印される。
そしてスペランカーの意思でこの宝具を解除するのは不可能である。

『ディアボロの大冒険』
ランク:EX 種別:対ディアボロ レンジ:1 最大補足:1
ゲームシステムがそのまま宝具と化したもの。
この宝具によってディアボロは拾ったアイテムはなんでも使用できるようになる。
ディスクの装備、記憶ディスクの再生、ヤバいものの利用などが可能。
更に英霊として召喚された事によって地面に落ちていれば他者の宝具や武器も一時的に使用できるようになり、食事も特定のもの以外でも可能になる(ただし回復はカエル)。
そして、彼は時間経過で体力の回復と状態異常の治癒が行える。
たとえ死にかけ(HP1)であってもターンが経過すれば完全回復が可能。
状態異常は最長でも20ターンで完治。
アイテムとその効果は全て出典ゲーム、製作者最終更新のver0.13(ヴァレンタイン大統領追加前版)に準拠のものとする。

『我が最愛の下僕(ヴィネガー・ドッピオ)』
ランク:E 種別:秘匿 レンジ:1 最大補足:1
スペランカーのもう一つの顔、『ヴィネガー・ドッピオ』が宝具と化したもの。
この宝具を発動することで彼はヴィネガー・ドッピオと交代することが出来る。
宝具の発動中はNPCとみなされ、宝具の発動や現界にかかっている魔力反応も隠匿される。
さらにこの状態で他マスターに視認されても決してステータスがバレることはない。
そしてこの宝具の発動中も『墓碑銘』と『真紅の帝王』の右腕を用いることが可能である。
この宝具を解除するには10ターン以上必要。
ただし、この宝具は『我を蝕むは黄金の鎮魂歌』によって封印されており、記憶DISCを介した限定発動しかできない。

『その未来に墓碑銘を刻め(エピタフ)』
ランク:C 種別:観測 レンジ:1 最大補足:1
スペランカーがもともと持っていた生命エネルギーのヴィジョン『スタンド』が宝具と化したもの。
直近十数秒の未来を観測することが出来る。
この宝具で観測された未来は『我に傅くは真紅の帝王』でのみ覆すことが出来る。
ただし、この宝具は『我を蝕むは黄金の鎮魂歌』によって封印されており、スタンドDISCを介した限定発動しかできない。

『我に傅くは真紅の帝王(キングクリムゾン)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:1〜30 最大補足:1〜50
スペランカーがもともと持っていた生命エネルギーのヴィジョン『スタンド』が宝具と化したもの。
このスタンドの能力によって時間を『吹っ飛ばす』ことが可能になる。
ここで言う『時間を吹っ飛ばす』とは以下の解釈とする。
・発動後10秒程度の時間に関してスペランカー以外には感知できないようにする
・発動中スペランカーに対して全てのものが干渉することはできない
・発動中スペランカーは全てのものに干渉できる
・連発は不可能。6ターンに1回が最短である。
ただし、この宝具は『我を蝕むは黄金の鎮魂歌』によって制限されており、スタンドDISCを介した限定発動しかできない。


833 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 23:01:19 6rRbWcnA0
【weapon】
拾ったものなら金でも武器にできる。

【人物背景】
ジョジョ
ってかっ
けーなー
だけどス
ピードワ
ゴンがス
トレイツ
ォにころ
されてい
ったいど
うなるん
だろうジ
ョジョは
おれのト
モダチ


【マスター】
古手梨花

【マスターとしての願い】
『納得』のいく結果を手に入れる。

【能力・技能】
なし。
戦闘能力はからっきし。鉈女戦もずっと部活で一緒に居たレナだから対応できただけ。
強いてあげるならば人生経験。

【人物背景】
彼女は「東京」に殺された。

【方針】
わけもわからず死ぬのはごめん。
とにかく歩きまわって道具を集めて戦力を整える。
時々リスポーン地点(古手神社)に帰還してアイテムを蓄える。


834 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/15(木) 23:01:47 6rRbWcnA0
投下終了です


835 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:15:35 N44eRWl20
投下します


836 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:15:48 N44eRWl20




「ねぇ、死神様ってしってる?」


837 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:16:00 N44eRWl20






カチ。

シャープペンシルがノックされる音。

カチ。カチ。

私の目の上で芯が伸びていく音。

カチ。カチ。カチ。

目を閉じる。

カチ。カチ。カチ。カチ。

無理やり、目を開けさせられる。

カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。

「しけい」

カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。

や、え

グヂュ。


838 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:16:31 N44eRWl20



「では今日は、転校生を紹介します」
都立某小学校――六年二組は、極一般的な小学生の集まった教室である。
つまり、人を殺さず、性交をせず、窃盗、その他犯罪行為には手を出さず、見える範囲でのいじめもなく、生徒全員で授業のボイコットをすることもない。
そんな平和な六年二組に、この時期になって転校生が訪れた。
「えっ、どんな子?」
「かっこいい?」
「女子だろ、俺見たんだぜ」
思い思いに声を上げながら、生徒の誰もが皆、廊下で待機する転校生を盛大な拍手を送る。
手製の打楽器に迎えられて、ざっ――と、音を立てて扉が開く。

「はじめまして――」
息を呑む。
時が止まる。
どのように形容すべきだろう、彼らは皆、十二歳の少年少女でしかなかった。
美しい――たった、それだけのことを表現するだけだというのに、脳髄のどこを探しても彼女を形容するに相応しい言葉が浮かばない。

「蜂屋あいです」

パチ。パチ。パチ。
まばらな拍手が響き渡る。
手を動かす余裕など無かった、それでも彼女に嫌われぬために意識を振り絞って拍手を行ったのだろう。
少年少女の全ては、彼女を瞳に焼き付ける――ただ、それだけのために、捧げられていた。

彼女が微笑む。にこり、と。
担任教師に案内されて、己の席へと向かう。
歩く度に、異邦人を思わせるストロベリーブラウンの髪がゆれる。
匂う。
甘い、甘い、匂いが。
理性を狂わせる毒の匂いが。

教室中の全ての目を奪って、歩く。
誰かが呟く。

「……天使様」

言った本人は、己の発言の後に気づいた後、顔を赤らめ、ぶるんぶるんと首を振った。
だが、それは的を射た発言だったのかもしれない。
神秘学【オカルティズム】が、人に理解出来ぬ現象を仕舞いこんでおくための箱であるというのならば、
彼女という存在もやはり、人に永遠に理解できぬ天使という括りに入れてしまうべきだったのだろう。

彼女が、微笑む。

まさしく、それは天使の微笑みに他ならなかった。

酩酊から覚めたかのように、素面へと戻った少年少女達は天使――蜂屋あいを取り囲む。
転校生とはすなわち、六年二組にとっての異邦人である。
分解されぬ未知は恐怖に他ならない。
質問が飛ぶ、蜂屋あいは笑って質問に答える。
それは、好きなテレビ番組の話であり、好きな本の話であり、好きな料理の話であり――だが、大した話ではない。
ただ、彼女も同じ人間だと確認し、彼女を分解するための取っ掛かりを見つけ、そして彼女を理解していくための必須手順。
そして、蜂屋あいはクラスに馴染んでいき、いつしか転校生であるという彼女の特異性も薄れていく。
それだけの話である。
それだけの、ただそれだけの、つまらない、話。


839 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:16:42 N44eRWl20
一週間が、経過した。
蜂屋あいは六年二組に馴染み、六年二組もまた、彼女を受け入れた。
もう時間は残り少ない、それでも一緒に思い出を作っていこう、と。
彼女は微笑んだ。

放課後、夕日は世界を丸ごと焼きつくしてしまいたいかのように紅く燃えていた。
冬だった、あるいは凍てついた世界を否定したいのかもしれなかった。

「……ぐすん」
六年二組、教室の隅、ロッカーに寄りかかって、一人の生徒が泣いていた。
六年の冬、初恋で失恋だった。
彼女は同じクラスの男子生徒に惚れていたが、その男子生徒が他のクラスの女子とキスするのを見てしまった。
燃えるような思いは、失恋の衝撃で彼女の心をどろどろのケロイドハートに変えていた。
彼女とその男子生徒の家は隣同士だった、帰りたくなかった。
排出される涙と一緒に自分もどこかに流れてしまいたかった。
泣く、泣く、泣く、泣く、泣く。

「どうしたの?」
見られていた、元々真っ赤になって泣いていた顔が、さらに赤くなる。
振り返る、涙で視界がぼやけていた。
ただ、目の前の少女が白いワンピースを着ていたことしかわからなかった。
涙を手で拭う、ハンカチが差し出されていた。
ありがとう――そう言えたかはわからなかった、涙と鼻水で声までぐじゅぐじゅだった。
ハンカチで、涙を拭う。
白い、白い、ハンカチ。

「……ありがとう」
今度ははっきりとお礼を言うことが出来た。
「ううん、いいの」
相手は、蜂屋あいだった。
やはり彼女は天使なのかもしれない、と少女は思った。
夕日を背に立つ彼女は――まるで、宗教画のように神々しかった。

「わたしでよかったら、おはなし聞くよ?」
思いがこみ上げてきて――少女はもう一度泣いた。
そして、いかに幼馴染の少年のことが好きだったかを、切々と語った。
蜂屋あいは、何も言わず、頷くだけだった。

話し終えると、もう一度ハンカチを借りるまでもなく、少女はいつの間にか泣き止んでいた。
もう、どうにもならないけれど、吹っ切っていけるような、そんな気がした。



「ねぇ、死神様ってしってる?」



天使の――その言葉を聞くまでは。


840 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:16:55 N44eRWl20



死神様は、最近この小学校を中心として広まるようになったうわさ話だ。
その内容はありふれたもので、つまり殺したい人間を死神様が殺してくれるというものである。

少女は、蜂屋あいの言葉を聞いた瞬間、走りだしていた。
「何で気付かなかったんだろ!私、私、私、私、まだ、間に合う!」
恋人がいなくなれば、自分にもチャンスが生まれる――至極簡単な帰結だった。
再び着いた恋の炎が、彼女の倫理観を燃やし尽くす。

殺してでも、愛されたい。

死神様を呼ぶのに必要なものは、死体だ。
猫、犬、虫、何でも良い。
とにかく、死体を十三個集めて、校舎裏にある動物の墓に供え、死神様と三回呟いた後、殺したい人間の名前を大声で三回言う。そして最後に殺して、と叫ぶ。
そうすると、死神様が殺してくれると、そういう噂だ。

何故、死神様という噂が誕生したのか、その由来は明らかになっていない。
だが、飼育小屋のウサギだけに留まらず、とにかく場所に困った動物を埋葬する、この場所が、
あるいは近年、起こっている奇妙な事件が、
または、そのような噂を作り、信じこまなければならなかった程の誰かの憎悪が――そのような噂を作ったのだろう。

死体は全て、虫だった。
首無し死体の方が効力が良いという噂を聞き、首は足で潰しておいた。
少女は虫を嫌っていたが、それ以上に幼馴染を奪った少女が嫌いだった。

「死神様」
自分の恋が叶う、そう考えると人を殺すというのに奇妙な高揚感すらあった。
「死神様」
息が荒くなる、息が荒くなる、息が荒くなる、心臓が高鳴る。
「死神様」
とうとう、言う。
告白の言葉は言えなかったけれど、この殺し文句は確実に言い切る。

「森小春!」
自分から幼馴染を奪った、憎い相手。
「森小春!!」
死んでしまえば良い、私が想像も出来ないような苦しい死に方で。
「森小春!!!」
彼の隣にいるべきは私なんだ!!

「殺してッ!!!!!」

「まかせて」
ぞう――と、鳥肌が立つ。
周囲を見回しても、誰もいない。
しかし、声だけはあったのだ。

それでも、少女は笑った。

「やったあ」

死神様はいたのだ。



翌日、森小春という少女が刃物でめった刺しにされて死んでいた。
しかし、休校にならなかったのは他でもない。
彼女の家族も皆死んでいたために、誰も学校に連絡するものがいなかったからだ。
翌々日、担任教師の訪問で、事件は発覚することとなる。


841 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:17:06 N44eRWl20



森家の葬式が終わり、幾日かの臨時休校も終わり、それでも日常には戻れない。
森小春の恋人だった少年は、涙ごと心まで流し尽くしてしまったようだった。
そんな彼を慰めようとする、幼馴染にも何も思えない。
ただ、時間が解決するその時まで、彼は機械のように生活を続ける。

「ねぇ、死神様ってしってる?」

そのはずだった。
隣のクラスの死んだ彼女の机の上に置かれた花瓶、
集団下校のための教室移動の途中で、彼はそれを見るために2分程、ぼう――と立ち止まる。
それを憎々しげに見る隣の幼馴染にも気づかずに。
少年の手を取り、無理にでも連れて行こうとする少女の手を払い、彼はただ、立ち尽くす。
何度かそのやりとりを繰り返した後、少女と共に教室へ向かうはずだった。

その日、少女は風邪を引いて学校を休んでいた。
だから、少年はぼう――としていた。
そんな、少年を見て天使が――蜂屋あいが近づく。

「ねぇ、死神様ってしってる?」

それだけで、十分だった。
少年は、少女の死が発覚する前日、担任教師が朝礼で死神様のことを注意していたことを思い出した。
くだらない噂に踊らされて、命を玩具にするな、と。

何故、忘れていたのだろう。
いや、恋人が死んだのだ――細かいことなど覚えていられるはずがなかった。

それは小学生らしいあまりにも突飛な発想であった。
死神様の儀式が行われていた、だから恋人と家族が死んだ。
あまりにもバカバカしい、イコールで結ばれるはずがない。

だが、彼は真実がどうであれ、それを真実と決めつけた。
何故ならば、彼は少年だからだ。
彼女の仇を取ろうとするならば、自分の手に負える相手でなければならないからだ。

蜂屋あいの言葉に、少年は返答もせずに駆け出した。

死神様を行った犯人を、絶対に見つけ出して――殺す。
ただ、それだけしか考えられなかった。

天使は笑った。


842 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:17:17 N44eRWl20



翌日の放課後、少年とその友人達、蜂屋あい、そして少年の幼馴染の少女は橋の下に集まった。
いや、幼馴染の少女に関しては呼び出された――という方が正しいか。
少年の友人達が集まったのは、まさしく正義のためである。
腑抜けていた少年が犯人を探すと言い出した、ならば友人のためにも、そして亡くなった少女のためにも、
そして、どこかワクワクする非日常感のためにも、犯人探し、そしてクライマックスに協力するのが筋というものだろう。

「お前が――死神様を呼んだのか」
「ちがう……私じゃない!」
少女が儀式を行った姿は誰にも見られてはいない、ならば誰もその犯行を特定できないはずである。
しかし、虫を集める彼女の姿を目撃した者は何人かいた。
疑わしきを罰する――例え、幼馴染だといっても、それが全てだ。
重要なのは、犯人が裁かれることだ。

「お前だろ」
「虫取ってたろ」
「謝れよ」
「死ね、ブス」
「そうだ、死ねよ、死神様呼んだんだろ」
「死刑だ」
「死刑」
「しーけーい」
「しーけーい」
「しーけーい」
「しーけーい」
「しーけーい」

「まって」
柔らかな声が、少年たちを止めた。
蜂屋あい――天使の言葉だ。

「魔女狩りって、しってる?」
まるで、童話を語るかのような優しく甘い声だった。
「魔女はみずにうかぶんだってね」

丁度、川の側で、橋の下だった。
行わない理由が無かった。

「わかったよ、俺信じるよ、お前のこと」
「ほ、本当……?」
これほど空虚な信じるもないだろう、それ程に少年の瞳は乾ききっていた。
だが、それを信じなければならないほどに、少女は恐れていた。
魔女狩りという響きを、自分が辿りかねない運命を。
だから、少年の言葉に信じて媚びなければならなかった。

「抑えつけろ」
少年の言葉と同時に、少女は逃げ出そうとした。
だが、少年の友人がまっさきに掴んだのは少女の腕だった。
犬がリードの範囲以上に走れないように、少女もまた囚われた。

「信じるから、川に顔付けろよ……浮かばないように、ずっと、ずっと」
「えっ、ちょっ……」
少年の友人達に抑えこまれ、少女は川の中に顔を沈めることとなった。
息が出来ない、力尽くで抑えこまれているため、顔を上げることも出来ない。
いや、必死に暴れて顔を上げようとすれば、もしかしたら、水から抜けられるのかもしれない。

そして、それは浮く、ということになる。
浮けば魔女で、沈めば魔女ではなくなる。

いつまで息が持つかはわからない、それでも精一杯頑張ろう、と少女は思った。
少年に信じてもらいたい――それだけが望みだった。



あんな女のために、少年に嫌われてたまるか、そう思った。


843 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:17:29 N44eRWl20






「ぶく」
「ぶく」
「ぶく」


「ぶく」







「ぶ」








息が、1分も持たなかったこと。
そして、少女はそのために酷く暴れたこと、そこまでは覚えている。


「やっぱ、お前じゃん……死ねよ、ヒトゴロシ」


それ以降は、少女の記憶に無いし、刻み込まれることもない。


844 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:17:44 N44eRWl20



蜂屋あいは、人の心の色が見えた。
青く燃える炎の色、蝋燭の炎のようにきらめくオレンジ、そして黒色。どす黒い闇の色。
心が揺れると、その色もそれに合わせてゆらゆらと変わる。

だから、少女は人の心を変えるために――教室を作った。

少女は決して、直接手を下すこと無く、命令することもなく、扇動することで誰かがいじめられ続ける教室を。
しかし、表面上では完璧で優秀な教室を。

小学生の行いではなく、
いや、人間の行いでも無かったのだろう。

彼女は悪魔だった。
天使のような微笑みを浮かべた、悪魔だった。

だが、悪魔はある少女――黒い天使によって、とうとう表舞台へと引きずり降ろされることとなる。
詳細は語るまい、少女たちは戦い――そして、結果は黒い天使の勝ち、ということになるのだろう。
彼女の意思を引き継ぐ者、彼女の作ったシステムを残し、彼女は奈落へと消えた。

闇の中、彼女は紅い月を見た。

そして、彼女は――別のシステムを作った。
死神様――願うことで、好きな人間を殺すことが出来るシステム。

聖杯戦争が本格化すれば、このシステムを稼働し続けることが出来なくなるだろう。
それでも、彼女のサーヴァントと利害が一致した。

彼女のサーヴァントは人を殺したがっている――おともだちを欲しがっている。
彼女はこのシステムによる心の変化が見たい。


「だから、アリスちゃん。わたしたちきっと、いいおともだちになれるわ」
「うん、きっとね」


845 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:17:54 N44eRWl20


「きょうのことはぜったいにないしょだよ、バレたら……どうなるのかな」


846 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:18:07 N44eRWl20

【クラス】キャスター
【真名】アリス@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)
【属性】中立・悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:A 幸運:C 宝具:E

【クラススキル】
陣地作成:A
 魔力及び死者のマグネタイトを利用することで、彼女のための不思議の国(ワンダーランド)を形成することが出来る

道具作成:C
 魔力及び死者のマグネタイトを利用することで、トランプの兵隊、偽アリスを生産することが出来る
 また、このスキルによって拷問具(アイアンメイデン等)を召喚することが出来る

【保有スキル】
屍体蘇生術:A
 彼女は堕天使ネビロスの寵愛を受けているために、屍体を蘇生し彼女のおともだちにすることが出来る。

精神汚染:E
 彼女の常識を、人間のそれと思ってはいけない。

単独行動:D
 彼女は保護者である魔王と堕天使から離れて、たった一人ワンダーランドで過ごしていた。

【宝具】
『不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
彼女が創りだすは不思議の国の遊園地、女王様は当然アリス。陣地作成スキルによって作り出される遊園地。
完成が進むにつれて、陣地作成、道具作成に有利な補正がかかり、陣地作成ならばミラーハウスやメリーゴーランド、
道具作成ならば、大量のトランプ兵やアリスを生み出すことが出来る。
また、彼女の逸話から偽りの東京内で死者が増えれば増えるほどに、この宝具が完成するまでのスピードが早くなる。

【人物背景】
魔王と堕天使の寵愛を受けた永遠の少女

【サーヴァントとしての願い】
おともだちをつくる


847 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:18:17 N44eRWl20
【マスター】
蜂屋あい@校舎のうらには天使が埋められている

【マスターとしての願い】
みんなの心の色を見る

【weapon】
特になし

【能力・技能】
小学生離れした身体能力と知能を持つ。

【人物背景】
人間の心を「色」に例えて見る感受性の持ち主であり、
いじめによってクラスメート全員の心を弄ぶことで「心の色」が次々変わっていくことを楽しんでいた。
 
【方針】
色を見る


848 : 少女地獄 ◆lnFAzee5hE :2015/01/16(金) 02:20:20 N44eRWl20
投下終了しました


849 : ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 03:56:38 l77SxISg0
投下します


850 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 03:57:37 l77SxISg0






「厄いわね」

赤い瞳が紅い月を眺めていた。








851 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 03:58:05 l77SxISg0

「ねぇ、みどろさん」

最近転校してきた、不可思議な少女が居た。
頭脳明晰、容姿端麗……しかし、どこか、精神的な寒さを感じさせる少女。
少女の名は深泥といった。
長く美しい前髪によって、どの角度からでも左目が隠れて見える。
普通、長い黒髪は不気味な重さを感じさせるが、みどろにはそれがなかった。
ただ、なにか作り物のように美しさがあった。
ひたらすらに、不思議な少女だった。

「みどろさんって、雛人形に詳しいって聴いたけど……本当?」

少女は雛人形の、いわば、コレクターであった。
富豪である親の財力に物を言わせ、雛人形を買い集める。
仏蘭西人形はもちろん、他の日本人形でも満足できない。
ただ、雛人形だけを求めていた。

「ええ」
「そうなんだ!」
「雛人形の原型は、流し雛と言ってね、自らの穢れを祓い人形――――今で言う雛人形に預けて、河に流すの。
 一種の厄祓いね」

厄祓い。
自らの内に纏う『良くない物』を自らの外に出すための儀式だ。
鞄に教科書を仕舞いながら、みどろは語り続ける。

「人形、すなわち人の形を模したものは、元々代替物なの。
 こけし人形が子供を亡くした親が子供の代わりにつくった物、あるいは成仏できるための形代だったり……
 古墳に埋められる埴輪などもそうね」
「そういうのはいいの!」

少女は止まらないみどろの語りを遮る。
みどろは目を丸くして、あら、とだけ言った。

「私は雛人形が好きで、その、そういうのには興味はないから」

そう、と薄く笑った。
酷薄な笑みとは、このことを言うのだろう。
恐怖を覚えたが、不思議と親しみの持てる笑みだった。
それを、悪魔の笑みというのかもしれないが。


852 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 03:58:49 l77SxISg0

「ねえ、みどろさんは知っている?」
「話の流れからすると、例の国宝の話かしら?」
「そうそう!
 いいよねぇ……見に行かない? 私、友達とそういう話したいんだ!」

近々開放される国宝の雛人形。
時期を照らしあわせ、雛人形の話題を振ってくることから、どこに着地させたいのかは明白だった。
みどろは薄く笑った。
少女の瞳の中にある欲望を見逃さなかった。

「それもいいけど、貴方、欲しくない?」
「えっ?」

その欲望を唆すように、みどろは口にした。
少女は戸惑いながらも、頬を緩ませた。
どこか、おねだりが成功した少年のような顔だった。

「世界最高の雛人形……そんなものが、欲しくない?」
「えっ、いや、えっ? 何言ってるの、みどろさん」
「フフ……目がそう言ってるわよ」

願望はあるが、現実味がない。
そう告げる瞳に、ただ笑みを返す。
少女は求めていた。
現実から離れているものを。
感づいていた。
それがみどろにあることを。

「貴方、本当はどんなことをしてでも欲しいんでしょう?
 最高の雛人形が……それこそ、何をしてでも……」

顔を近づける。
不気味さと、興奮が胸の内を支配した。

「良かったら、私の家に来ない?」

一言だけ告げて、教室を出た。
少女はその背中を追った。
目の前の少女は違う。
初めて出会った時から、そう思っていた。
現実的に言うならば、恐らく、自らをも超える大富豪なのではないだろうか。
そういった選ばれたものだけが持つ不思議な魅力を、自分は感づいているのではないだろうか。

「そういえば……」

そこで、ふと気にかかったことが思い浮かんだ。



「みどろさんって、何時転校してきたんだっけ?」







853 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 04:00:38 l77SxISg0


「凄い……この、この雛人形……!」

少女の予想は的中した。
みどろの邸宅は、豪奢と呼ぶのも憚れるほどの豪邸だった。
その中に眠っていたもの。
それは、少女が自身の目を疑うほどの出来の雛人形が眠っていた。

「これでもまだ世界最高の雛人形ではないわ。
 流し雛にもせずに置いてるから、厄は溜まりに溜まってるけどね」

そう言いながら、みどろは紅茶を差し出す。
しかし、少女は紅茶には手を出さずに雛人形を眺め続ける。
自分の持っている多数の雛人形が、玩具に思えるような出来だった。

「これより、凄いのがあるの……?」
「私にはないわ……でも、貴方なら手に入れられるかもしれないわね」
「えっ?」

ふふ、とみどろは笑った。
背筋に悪寒が走った。

「必要な物は、貴方の持つ全ての雛人形よ。
 どうやら、厄を貯めに貯めこんでいるようだしね」
「私の雛人形……?」
「その雛人形で、魔法陣を描くの」

だが、同時に黄金の色を見た。
その先にある、最も欲するものを見たのだ。

「紅い月の伝説は、知ってるかしら?」





854 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 04:01:57 l77SxISg0

「貴方はこの棒を持って、ただ、『廻れ、廻れ』と唱え続けなさい」
「まわれ……?」
「棒に刻んでおいた梵字と合わせて、流転の意味を持つ呪言よ。
 雛人形にかぎらず人形は元々――――」
「あっ、そういうのは、もういいから」

語り始めようとするみどろの言葉を遮り、さっさと始めようと言った。
こんなことには興味が無いはずだった。
だのに、この儀式を行う気にはなっていた。
その先に、自分が求めるものがある。
少女は、みどろの雰囲気にのまれていた。
みどろは、ふふ、と笑った。
少女は、知らずに口を曲げていた。
狂気が伝染していた、あるいは、眠っていたものが目覚めていた。

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には涅槃で淀みし深泥なる欲の主。
 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

みどろの呪言と同時に、風が強く吹く。
しかし、円を描くように並べた雛人形は微動だにしない。
少女はそのあまりにも異様な光景に体を震わせ、ただ、ひたすらに『廻れ、廻れ、廻れ』と唱え続ける。


   みたせ   みたせ   みたせ   みたせ   みたせ
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
 繰り返すつどに五度。
 ただ、満たされる刻を破却する」

呪文を唱える。
『廻れ、廻れ、廻れ』
呪文に応えるように、雛人形が揺れ始めた。
『廻れ、廻れ、廻れ』
ガタガタと、雛人形が揺れ始める音を聴きながら、ひたすらに唱え続ける。
『廻れ、廻れ、廻れ』
恐怖はなかった、狂気だけがあった。

「―――――Anfang」
「――――――告げる」
「――――告げる。
 汝の欲望は我が下に、我が災厄は汝の剣に。
 業を流転させ、涅槃の姫に従い、この意、この理に従うならば応えよ」


その時、目を疑う光景が現れた。
新月の夜、月が浮かぶはずのない空に、満月が出ていた。
ただの月ではない。
まるで、血を浴びたような、紅い月。
雛人形が、雛人形に照らされていた。


「誓いを此処に。
 我は常世総ての善と成る者、
 我は常世総ての悪を敷く者。


――されど汝はその身にこの世の災厄を纏いし臨むべし。汝、穢れの渦を巻きし者。我は彼の渦を観つめる者――


「我が名は、涅槃姫みどろ。
 我が涅槃よりの叫びに応え、紅い月よ。ここに姿を――――


.


855 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 04:03:24 l77SxISg0

その瞬間だった。
手に握ったあらゆる梵字の刻まれた鉄の棒を、少女はみどろの頭へと叩きつけた。
紅い月が見えていた。
月が放つ赤紅の光に照らされた、年代物の雛人形。
少女は、その雛人形に心を奪われていた。
『世界最高の雛人形』を手に入れるという願いを忘れたわけではない。
ただ、目の前の雛人形こそが『世界最高の雛人形』だと認識しただけなのだ。
棒を投げ捨て、雛人形を抱えて走り始めた。

扉を開き、階段を駆け下り――――ることが出来なかった。
脚を踏み外したのだ。
少女は、階段を『滑り落ち』る。
その際に階段の段差に頭をしたたかに打ち付け、悶え撃つ。
悶え打ちながら、拳を壁へと打ち込んだ。
その衝撃によって、脆くなっていた木製の手すりの一部が崩れ落ちた。
手すりは少女の外部はやわらかな、しかし、内部は硬い眼球を貫く。
肉とも呼べるやわらかな部分だけを抉られ、痛みだけが残る。
赤い涙を流しながら身悶えていると、手すりの横壁が壊れる。
そのまま、彼女は階下へと落ちていき、死んだ。

「ふふ、言ったはずだったのに……」

そんな中を、コツコツと古びれた旧校舎の階段を叩きながらみどろが降りてきた。
先ほどまで頭から流していたはずの血は、すでにない。

「この人形は、『厄が溜まってる』って」

フフ、と笑ってみせた。
本来ならば、ここでこの話はおしまい。
今日もまた、欲望に溺れた人間が厄に落ちただけの話。
しかし、みどろは一つ、別の話を介した。
笑みをそのままに、みどろは新月の空を眺めた。
そこには、一つの紅い月。

「厄いわね」

赤い瞳が紅い月を眺めていた。





856 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 04:04:39 l77SxISg0


「あらあら」
「あんまりよろしくないなぁ」
「私は万全の準備をしただけよ。
 もしも相性というものがあるのなら、彼女にとって貴方は最高の英霊だったわ。
 願いという意味では、彼女、本当に『世界最高の雛人形』を欲していたもの」

嗤いながら、みどろは口にした。
彼女に否はない。
強いて言うならば、人が欲望に溺れていることを知っていただけだ。
無数に厄を溜め込んだ雛人形たちの厄を、自らの持つより強い厄を溜め込んだ雛人形へと移す。
それを媒体に厄神を呼び出し、聖杯戦争を勝ち抜く。
魔術師ではない少女を勝たせようと思うのならば、正攻法では無理だ。
ならば、変質的に、しかし、無敵になり得る英霊を呼ぶしかない。
厄を貯めこみ、一時的にでも無敵の力を持つものに。

「あんまり関心しないわねぇ」
「フフ」
「私は厄をもたらすんじゃなくて、引き受ける側。
 マスターとは反対なのにさぁ」
「あら、そんなことはないわよ」

笑った。
瞬間、キャスターのサーヴァント――――厄神様・鍵山雛はみどろの左目を見た。
紅い月のように、赤い瞳だった。

「貴方、厄いわね」


【クラス】
キャスター

【真名】
鍵山雛

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E〜A++ 幸運E(A++) 宝具B

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:A
厄神として、自らに有利な陣地を作り上げる。
人々が抱える厄や不幸を自らへと呼び寄せることが出来る。

道具作成:-
道具作成のスキルは持たない。

【保有スキル】
無辜の怪物:C
本人の意思や姿とは関係なく、風評によって真相をねじ曲げられたものの深度を指す。
雛の場合は“災厄への恐れ”である。
自らの厄を押し付けることに恐怖と敬意が捧げられている。
信心深い人間ならば、自然と雛への敬意と、厄を押し付けたことに寄る後ろめたさを抱く。

弾幕:C
自らの魔力を一つの形にして、弾幕を創りあげることが出来る。
弾幕ゲームでは、弾幕の美しさ自体も意味があるが、今回は弾幕ゲームではない。


【宝具】
『災厄の断片(アンリ・マユ;アバター)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:上限なし
厄を貯めこむ程度の能力。
この宝具はすなわち、人々から押し付けられる人々の厄そのもの。
雛は流れてくる厄を自らの力へと変えることが出来る。
他の人々は不幸を避ける事が出来、鍵山雛は自らの力を蓄える。
鍵山雛の信仰される厄神としてのあり方そのものである。
人々が幸福になればなるほど強くなる。


857 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 04:05:49 l77SxISg0

【weapon】
弾幕

【人物背景】
普通の神ではなく妖怪の一部、信仰を求めない(『東方求聞口授』)。
「悲劇の流し雛軍団の長。厄払いで払われた厄を集めては、周りにため込んでいく。
その為、彼女の周りには素人目にみても判るぐらいの厄が取り憑いている。
彼女の近くでは、如何なる人間や妖怪でも不幸に会う。
しかし、彼女自体は決して不幸にはならない。
厄が再び人間の元に戻らないように見張っている(『東方風神録』キャラ設定.txt)。

近くに居るだけで人間も妖怪も不幸にするが、悪意はまるで無い。
むしろ人間に対しては友好的な方で、厄を溜め込むのも人間に厄が行かないようにする為。
この神について余り言及しても不幸になるという。
彼女に対するタブーは「見かけても見てない振りをする事」「同じ道を歩かない事」「自分から話題に出さない事」等多数ある。
それを破ると厄が降りかかる。
その場合はえんがちょ(人差し指と中指を交差させて「えんがちょ」と叫ぶ)しかない(『東方求聞口授』)。


【マスター】
みどろ@涅槃姫みどろ

【マスターとしての願い】
代理よ、代理。

【weapon】
ふふ。

【能力・技能】
厄いわ。

【人物背景】
永遠の転校生。

【方針】
この東京、厄いわね。


858 : 涅槃に渦巻く紅い欲と赤い厄  ◆0lntQpQ3/6 :2015/01/16(金) 04:06:08 l77SxISg0
投下終了です


859 : 名無しさん :2015/01/16(金) 09:07:12 WyV3wB/o0
dパール <イケてるわ


860 : ◆arYKZxlFnw :2015/01/17(土) 00:25:43 fUNx4pAs0
投下させていただきます


861 : ◆arYKZxlFnw :2015/01/17(土) 00:26:13 fUNx4pAs0
 聖杯の力によって構築された、2010年代の様相を模した東京。
 この結界の光景を見るたび、狡噛慎也は常に思う。
 歳上の同僚が生きていた、シビュラシステム以前の街は、こういう感じだったのかもしれないと。
 一見するとレトロなだけの、ただの街並みにしか見えない。
 それでも一皮剥いてみれば、そこに渦巻いているものは、ナマの悪意と欲望だ。
 少し夜道を出歩けば、いかがわしい商売の現場を、いくらでも見つけることができる。
 日の昇っている時間にも、汚職や闇取引といった、どす黒い噂が耳に入ってくる。
(シビュラが目を光らせてる今では、さすがにこうはいかないからな)
 無論全くのゼロではないが、ここまで露骨でもなかったはずだ。
 今の東京を回想しながら、狡噛は口から煙草を離し、ふぅっと煙を吐き出した。
 現代よりずっと過去の街だ。彼が好んでいた銘柄は、未だ発売してすらいない。
 それでも喫煙という習慣は、その程度で辞められるものではないらしい。
「そういや、ケムリは平気だったか?」
 と、そこまでしたところで、同席者のことを思い出し、尋ねる。
 一応顔を背けはしたが、それでも煙草そのものを嫌い、ストレスに感じる者はいるはずだ。
 そういうことはなかったかと、狡噛は向かい側の席に座る、1人の少女へと問いかけたのだった。
「煙じゃないが、火の扱いには慣れてる。人の焼けた時のに比べれば、どうってことないさ」
 物騒な返事を返したのは、日焼けした褐色肌の少女だ。
 顔立ちから推し量れる年齢は、十代後半に差し掛かった頃だろうか。
 白地に「踊り子号」とだけ書かれた、センスの悪いTシャツを押し上げる、年齢には似つかわしくない乳房が目を引いた。
「そりゃごもっともだ」
 異臭を伴うわけではないが、伴う生理的嫌悪感は、副流煙の比ではない。
 もっとも、のどかなファミレスの喫煙席には、あまりにも似つかわしくない表現だ。
 それがおかしいやら何やらで、狡噛は思わず苦笑した。
「しかし、あんたも変わった奴だな。召喚されてすぐに『腹が減った』とは」
「何しろここ最近、ろくなものを食べてなくってな」
 そういう「設定」なんだ、と言いながら、少女は目の前に置かれた、熱々のハンバーグにナイフを入れる。
 ともすれば粗野な印象を受ける出で立ちだったが、そうした容姿には似合わず、意外と所作は丁寧だ。
 見た目よりも育ちがいいのか。英霊と呼ばれるくらいなのだから、そういうものなのかもしれない。
 自らが引き当てたサーヴァント――焔と名乗ったアサシンを見ながら、狡噛はコーヒーを口にした。
「英霊なんていう割には、苦労してるんだな」
「少なくとも、『今』の私はな。未来がどうなのかは知らないが、英霊なんて呼ばれる柄じゃない」
 苦笑するアサシンの瞳は、暗い。
 本来サーヴァントとは、その生涯を全うし没した英霊が、生前の姿を再現されて生まれるものなのだという。
 しかし狡噛のもとに現れたアサシンは、現在の姿よりも先の記憶を、全く持っていないと言うのだ。
 恐らく何らかの要因により、その頃までの情報のみしか、アサシンには与えられていないのだろう。
「魔術師の戦争と言ったが、生憎と俺はオズじゃないし、エメラルドの都の生まれでもない。
 恐らく俺の力不足で、その歳までの姿でしか、呼ぶことができなかったんだろう」
「かもな。でなけりゃ抜忍風情の私が、ここに呼ばれるはずもないんだ」
 アサシンのサーヴァントは忍者だった。
 彼女の暮らす世界において、平成の世まで息づいてきた、忍と呼ばれる戦士の1人だった。
 とはいえそれも少し前までのことで、現在の年齢の彼女は、組織を抜け同胞に追われる、抜忍と呼ばれる存在なのだという。
「私の勝手な裏切りに、仲間達まで巻き込んで、苦労を強いてしまってる……とんだ駄目リーダーだよ、私は」
 自虐し、アサシンは付け合わせの人参を、フォークで口元へと運んだ。
「……似た者同士、というやつか」
 あるいはそれが、未熟な俺が、あんたを呼び寄せた理由なのかもしれないと。
 一拍の間を置いたのち、狡噛がそう独りごちる。
「似たもの?」
「俺もあんたと同じように、追われる裏切り者ってことだ」
 狡噛慎也は元刑事だ。
 しかし己の復讐のために、彼は組織を離反した。
 公安局の目をくぐり、忌むべき仇を追いかけて、遂に追い詰め命を奪った。
 そして殺人の罪を犯した瞬間、彼も追われる犯罪者となり、日本から逃げ去る羽目になった。
 お尋ね者の根無し草――それがアサシンのサーヴァントと、狡噛慎也の共通項だった。


862 : 狡噛慎也&アサシン ◆arYKZxlFnw :2015/01/17(土) 00:26:51 fUNx4pAs0
「でも海外に逃げてしまえば、ある程度追っ手も振り切れるだろ?」
「逃げ場所に恵まれてなかったのさ、俺の時代は。結局安息と平和なんてのは、シビュラの檻の中にしかなかった」
 西暦2100年代は、文字通り暗黒の時代だ。
 貧富の差は取り返しのつかないところまで拡大し、倫理や道徳までもが蝕まれ、世界は戦乱の炎に包まれた。
 今や平和だと言える国は、完全管理社会と化した日本くらいのものだ。そしてそんな状況に陥って、もうすぐ100年にもなろうとしている。
 そんな地獄の中で、静かに暮らせる場所を探すことが、どれほど困難なことか。
「嫌な未来だな」
「だからあんた達で変えてくれ。若者には時間も可能性もある」
「無責任な。大人の言うことじゃないだろ、それ」
 励ましにしてはあんまりな言葉に、アサシンは思わず噴き出していた。
 だがそのおかげで、すっかり落ち込んでしまったムードも、いくらか和らいだようだ。
「でも、そうなると、それがマスターの願いってことか?」
 そうして心が落ち着けば、新たに気づくこともある。
 安息の地を欲する心が、紅い月へと導いたのかと、アサシンは狡噛に問いかけた。
「悪いか?」
「いや。私に否定できることじゃない」
 あっけらかんとした狡噛の問いに、アサシンもまたさらりと答える。
 先程も狡噛が言ったように、根無し草なのはお互い様だ。安住を求めるその心が、どれほど真剣なものなのかは理解できる。
 だからこそ、それは問い返すまでもない。
 そう言わんばかりの表情で、アサシンはまたハンバーグに手をつけた。
「俺もそれは否定しない。……といっても、聖杯なんてものにすがって、追い求める気分にはなれないが」
 狡噛はそう言うと、すっかり火の消えてしまった煙草を、灰皿に押し当てすり潰す。
 人を無差別にさらって、街に閉じ込めた聖杯は、あのシビュラシステムと同類だ。
 否、強いるのが殺し合いである以上、聖人気取りのシビュラよりも、なおタチが悪いと言っていい。
 刑事ではなくなった狡噛だが、正義感とプライドすらも、ドブに投げ捨てたつもりはない。
 泥沼を這いずる狡噛にも、死んでも甘えたくないものはある。死んだ方がマシなものがある。
 だからこそ狡噛慎也は、聖杯を拒絶し、その存在を否定した。
 聖杯戦争に招かれながら、そのルールに従うことなく、歯向かう道を選んだのだ。
「聖杯に従うつもりはない、か」
「むしろその辺に投げつけて、叩き壊すかもしれないな」
 コーヒーカップの取っ手を掴み、ゆっくりとした動作で振って、投げ捨てるようなジェスチャーを取る。
「あんたには悪いとは思うが、俺は聖杯には従わない。この馬鹿げた催しをぶち壊すために、立ち回らせてもらうことにする」
「見くびるなよ。私はマスターのサーヴァントだ。
 それに実際のところ、私自身も、聖杯が欲しいってわけでもない……願いは自分の手で掴んでこそ、だからな」
 だから自分はサーヴァントとして、マスターの意志を尊重すると。
 狡噛の宣言に対して、アサシンもまた同意を示した。
「……やっぱりあんたなら、未来を変えられる気がするよ」
 どん底で苦しみ続けてなお、そう言い切れると言うのなら。
 願いだけでなく、平和な未来も、その手で掴み取れるかもしれないと。
 そう言って狡噛は、感謝の代わりに、笑みを浮かべ返したのだった。


863 : 狡噛慎也&アサシン ◆arYKZxlFnw :2015/01/17(土) 00:27:26 fUNx4pAs0
【マスター】狡噛慎也
【出典】PSYCHO-PASS
【性別】男性

【マスターとしての願い】
どこか心休まる居場所が欲しい

【weapon】
なし

【能力・技能】
犯罪捜査
 元刑事。鋭い洞察力と推理力、直感力を持つ。本人曰く「デカの勘」。

体術
 身体を鍛えることには余念がない。東南アジアの格闘術である、シラットを体得している。

カリスマ
 ランクD-相当。軍団を指揮する天性の才能。
 本人は自覚的ではないが、彼の言動は他者に信頼と憧憬を抱かせる。
 狡噛の意志の強さに由来するものであるため、このスキルは、彼が自らの意志で主体的に行動している時にのみ見られる。

【人物背景】
元公安局刑事課一係の執行官。
過去の事件において部下を殺されたことから、その黒幕である槙島聖護を憎悪し、彼の行方を探っていた。
しかしその過程で犯罪係数(犯罪者になる危険性を表した数値)が上昇し、潜在犯認定を受け執行官へと降格している。

ぶっきらぼうな言動が目立つが、内に秘めた正義感は強い。
何だかんだ言って面倒見が良く、新人監視官の常守朱の良き先輩であった。
安息を求めてこそいるが、その本質は猟犬のそれであり、敵を追いかけ求めずにはいられない人間であると言われている。

物語後半において、逃亡した槙島と決着をつけるため公安局を出奔する。
一係の面々との競争を経つつも、最後には槙島の元へと辿り着き殺害。部下の仇討ちを果たした。
その後は日本を離れ、静かに暮らせる場所を探しているものの、未だ安息の地を見つけられずにいる。

【方針】
人殺しを強いる聖杯の存在は認められない。聖杯戦争を止める手立てを探す。


864 : 狡噛慎也&アサシン ◆arYKZxlFnw :2015/01/17(土) 00:28:12 fUNx4pAs0
【クラス】アサシン
【真名】焔
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性
【属性】混沌・中立

【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を断てば発見する事は難しい。

【保有スキル】
抜忍:B
 組織に縛られない代わりに、他の忍から命を狙われるはぐれ者の忍。
 焔は高いスキルランクを誇っており、周囲を忍以外から隔絶する忍結界を使用することが出来る。
 また、忍転身を用いることで、一瞬で衣服を忍装束へと変化させることが出来る。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

反逆の炎:C
 己の信じるもののため、過去を断ち切らんとする力。
 それまでの人生で二度裏切られた焔だが、どちらに対しても相応の報復を果たしたことにより備わったスキル。
 直前まで味方だった者を、正しい意志の下に裏切った時、与ダメージにプラス補正が加わる。

【宝具】
『いざ、紅蓮の如く舞い散れ(えんげつか)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:30人
 六刀流を修めた焔が、最後の切り札とする七振り目の刀。秘伝忍法「紅」によって発動する。
 真に強き忍にしか、抜くことは叶わないと言われる名刀である。
 その力に引きずられる形で、焔自身の潜在能力も解放され、全パラメーターが1ランクずつ上昇する。
 残る六本の刀はサイコキネシスのような力で、自在に宙を舞い敵を切り刻む。
 強力だが魔力消費量も多いため、長時間の発動には適さない奥の手。

【weapon】

 背中に背負った七本の日本刀。
 平時は『いざ、紅蓮の如く舞い散れ(えんげつか)』を除く六本を、片手に三本ずつ、鉤爪のように構えて用いる。

【人物背景】
秘立蛇女子学園を出奔し、現在は焔紅蓮隊を率いる抜忍の少女。17歳。
スリーサイズはB87・W57・H85。

好戦的で向上心が強い。
敵には厳しいが味方には優しく、仲間達に過酷な境遇を強いている現状には、心苦しいものを感じている。
荒っぽい態度が目立つが、前述通りの由緒ある家系の生まれであるため、意外にも礼儀作法には明るい。
実は機械とオカルトが苦手。

元は善忍の家系の生まれだったのだが、自分を騙した悪忍を殺害手前にまで追い込んでしまったことにより、
善忍としての資格を剥奪されてしまう。
その後家を追われさまよっていたところを、蛇女子学園に拾われ入学した。
当時は忍学生筆頭を務めていただけあり、戦闘能力は非常に高い。
炎を纏う六刀流を操り、素早い身のこなしから放たれるラッシュは、立ちはだかる全てを敵を燃え散らす。
必殺の秘伝忍法は、最大戦速で敵をなぎ払う「魁」と、『いざ、紅蓮の如く舞い散れ(えんげつか)』を抜き放ち立ち回る「紅」。

マスターである狡噛とは、「己の主義のために組織を離れ、野に放たれた者同士」ということで引かれ合ったが、
当の狡噛の魔力量が足りなかったため、全盛期とは言いがたい10代の頃のデータが反映されている。

【サーヴァントとしての願い】
特になし


865 : ◆arYKZxlFnw :2015/01/17(土) 00:29:45 fUNx4pAs0
投下は以上です
狡噛さんの参戦時期は1期終了後〜劇場版開始前、
焔ちゃんの参戦時期は紅蓮隊ルートで新蛇女の存在を知るよりも前ってことでお願いします
絶秘伝忍法は使えないやつです


866 : ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/17(土) 10:45:51 kBZtgc0g0
投下します


867 : ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/17(土) 10:48:01 kBZtgc0g0
ねえねえ知ってる?
渋谷にあるコインロッカーの噂。

え、何それ?

渋谷にあるどこかのコインロッカーね、その中で昔、赤ん坊の死体が見つかったんだって。

何よそれ、怖〜い。

それでね、その赤ん坊の怨念がずっとそのロッカーに取り付いてて、使った人を呪い殺しちゃうんだってー!

やだもう!止めてよ!そういう話嫌いなの分かってるでしょ!

あはははははは、ごめんごめん。だけどね、呪いがどうってのは置いといて、赤ん坊の死体が見つかったってのは本当だったらしいよ。

それってどこのコインロッカーなの?

うーん、それは結局分からなかったんだよねぇ。もしかしたら、あんたがさっき使ってたコインロッカーだったりしてー!

止めてよ〜!

あははは、冗談だって。それじゃあ夜も遅いし、また明日ね。バイバイ。



部活を終えた一人の高校生女子が、友達と別れ家へと帰宅して数時間。

部屋の中でPCを起動させ、いつものようにネットサーフィンに興じる。

オークションサイトやショッピングサイトで様々なグッズや衣類を漁る、いつも通りの時間。

「ん?」

そんな時だった。
ふと画面が切り替わったのは。

何も描かれていないHPのような真っ白なページ。

”あなたは  好きですか?”

その中心に、そんな文字だけが書かれている。

「やだ、何これ。何か変なところ踏んじゃった?」

マウスをクリックし×を連打するも画面は消えてはくれない。
諦めてページ内を色々と触れてみるも、どこも選択するところがない。


868 : ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/17(土) 10:48:32 kBZtgc0g0

「やっちゃったかなぁ、これは」

ウイルスか何かにやられたのかもしれない。
そう諦めて少女はPCを強制的に終了させるために電源ボタンを押し、画面を落とす。

そして真っ暗になった画面に反射した室内が映り込んだ。
その中に。

ちょうど自分の後ろに位置する壁に。

もたれかかるように一人の髪の長い少女が見えた。

「……!?」

思わず振り返る少女。
しかし、そこには壁があるだけ。
いるはずのない何者かの姿など、当然そこにはない。

「…気のせい?」

胸を撫で下ろして振り返った少女。

その時だった。
電源を切ったはずのPCの画面が不意に明るくなったのは。

「えっ、何なの、これ?」

切る直前に写っていたHPの画面は残ったまま。
ただ、そこに記された文字が増えていた。

”あなたは赤い部屋は好きですか?”

その文字を口にした瞬間、部屋の電気がいきなり落ちた。

「何!?停電!?ブレーカー落ちたの?!」

慌てる少女。しかしおかしい。
停電やブレーカーが落ちたというのであれば、PCの電源も同じく落ちるはずだ。
なのに、PCだけは爛々とその文字を映していた。

わけも分からず、しかしPCに縛り付けられるように座り続ける少女の、その背後から。

『―――あなたは赤い部屋は好きですか?』

しわがれた老婆のようにも、幼い子どものようにも聞こえる声が響いた。



部屋の電灯が光り、室内を明るく映しだす。
しかし、そこには部屋の主の少女の姿はなく。

ただ、真っ赤な鮮血だけがその室内を彩るように至る所に飛び散っていた。
さながら、部屋を赤く染めるかのように。






869 : 浅倉威&キャスター ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/17(土) 10:49:35 kBZtgc0g0

人通りのほとんどない路地裏。
そこに一人の男が佇んでいた。

濡れた地面に直接座り込むように。

「ああ、やっぱりこいつだ…。クソの臭いが少しは和らぐ…」

壁に背を預けて、まるで清涼な空気を吸うかのように深呼吸をする。
それだけの光景だ。

地面にあるものが、腹を裂かれ事切れた少女の死体で。
地面を濡らすものが真っ赤な血であることを除けば。
その少女がついさっき友人と別れたばかりの、コインロッカーの話をしていた者の一人であることを、男は知る由もなく。

周囲に充満するのは吐き気のするような血の匂い。
しかし男にとってはその匂いこそが癒やしだった。

連続殺人鬼、浅倉威。

それが少女を殺した男の名前だった。

裂いた腹の中の臓物を引きずり出し、周囲に撒き散らしてはさらに血の匂いを広げる。
そんな異常者としか言いようのない光景。

そこへ、静かに歩み寄ってくる一人の少女がいた。

歳は小学生低学年ほどだろう、髪の長い少女。
夜も更けた時間帯、親も傍にいない。
目の前にいるのは凶悪な殺人鬼。

浅倉はこちらへ歩いてくるそんな少女をチラリと見て。
ニヤリ、と不気味なほどに釣り上がった笑みを浮かべ。

静かにその少女に手を差し出した。

「…食うか?」

その手に握られているのは血を滴らせた真っ赤な塊。
浅倉が少女から引きずりだした心臓だった。

差し出された少女は、ゆっくりと浅倉の元に早歩きで駆け寄る。
そしてその心臓を受け取り。

グチャグチャ、と。生々しい音を立てながら、それを咀嚼した。
まるで一仕事終えた後の一服のように。

「ハハハハハハハハ!いいなお前は!お前といるとクソの臭いが全然しねえ!気に入ったぜ!」

異常としか思えない光景を見ながら笑い続ける異常な殺人者。
その声につられるように、心臓を食べ終えた少女は。

「アハ、アハハハハハハハハハハハ」

顔を上げて、長い髪を振りかざしながら笑い声を上げた。
無邪気に、しかし聞くものの精神を不安定にするような不気味な声で。

緑色に腐乱した顔に笑みを浮かべて。




870 : 浅倉威&キャスター ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/17(土) 10:50:47 kBZtgc0g0
かつて渋谷のコインロッカーで一人の赤ん坊の死体が見つかった。
それは母親が公衆トイレで出産した赤子を、コインロッカーに遺棄したもの。
闇の中、一人閉じ込められた赤ん坊はそのまま餓死し、警察に発見された時には異臭を放つ腐乱死体となっていた。

死んだ赤ん坊の魂は水子の霊として彷徨い続け。
悪霊へと昇華したその霊は、多くの人々に語り継がれていき。
やがてコインロッカーベイビーという都市伝説を生み出し。
そこから派生するかのように、様々な噂を、怪異譚が創りだされた。

故に少女は英霊ではなく悪霊であり。
だが東京、渋谷という土地に巣食う都市伝説そのものとして再現された東京に顕現した。
そこにクラスというものを当てはめるならば、渋谷という土地に地縛霊として陣を敷き派生した怪異を使い魔として放つ、さながら魔術師(キャスター)の属性を与えられた。

その悪霊には、親から与えられた名前はない。
しかし、死体で発見された赤ん坊に警察が便宜上与えられ、それを元に語り継がれ都市伝説となってきた名が彼女にはあった。

苗字も名もない。アダ名のような呼び名。

『サッちゃん』という名が。


【クラス】キャスター
【真名】サッちゃん
【出典】渋谷怪談シリーズ
【性別】女性
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:A+ 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
陣地作成:-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
しかし彼女は魔術師ではないため陣地自体を新しく作成することはできない。
このキャスターは保有スキルをもって陣地作成の代用としている。

道具作成:C
魔力を帯びた器具を作成可能。
都市伝説に纏わるアイテム、呪具を作り出せる。



【保有スキル】
地縛霊:A
土地に縛られし悪霊であることを示すスキル。その自身が縛られた土地を自らの陣地として扱うことができる。
彼女の場合、渋谷にいる間は魔力消費が大幅に抑えられ、下記に示す宝具のランクも上昇し最大限の効果を発揮することが可能。
このキャスターはこのスキルをもって陣地作成の代用としている。
反面、この加護を受けられる土地から離れてしまうと魔力値や宝具ランクが低下する。


精神汚染:EX
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術をほぼシャットアウトする。
このスキルを所有している人物は、目の前で残虐な行為が行われていても平然としている、もしくは猟奇殺人などの残虐行為を率先して行う。
また規格外の狂気を秘めた彼女自身から放たれるそれはまともな精神を持っているものであれば同行しているだけで気を触れさせる。


変化:C
変身する能力。
彼女の場合、腐乱した肉体を隠すために一般的な少女の体へと身を偽装させることができる。
その状態のキャスターを物理的・魔術的手段で見つけることは困難だが、勘のいいものは直感によって気付くことがある。


【宝具】
『渋谷怪談』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大補足:4
渋谷に語り継がれる都市伝説。
ベッドの下の男、チェーンメール、隙間男、三本足の人形など、語り継がれる都市伝説を再現して襲う能力。
各々を使い魔のように放つことも可能な怨霊である。

個々の能力は大したものではなく、サーヴァント相手はおろか人間でも戦い慣れした者には敵わぬことがある。
しかし以下の宝具と組み合わせることで神出鬼没の呪いにも変化する。


871 : 浅倉威&キャスター ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/17(土) 10:52:35 kBZtgc0g0

『少女の怨念は閉所の倉から(コインロッカーベイビー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1人
サッちゃんの捨てられたコインロッカーに詰められた呪いであり、上記の宝具の中でも彼女の核を成すもの。
使用したものに対し死の宣告の呪いを発動させるもの。
本来は1つしかないはずのものだが、サーヴァントとして宝具化したことで渋谷にある全てのコインロッカーを効果圏内とすることができる。
また、これが発動した場合特に用がない場合などでもコインロッカーを使ってしまう暗示にかかる場合がある。

この宣告を受けた者はその日の夜のうちにサッちゃん本人、あるいは上記宝具による怨霊が現れ、対象を殺害する。
サーヴァントに対しても発動は可能だが、その場合力量自体は低ランクの彼女達は撃退される可能性が高いためもっぱらマスターを狙うための宝具。
宝具となったこの呪いの有効期間は発動後の夜明けまでであり、期間中は結界などのあらゆる魔術的、物理的防壁をすり抜けて襲いかかる。
もし発動した場合、有効時間を過ぎるまでサーヴァントが一時も気を抜かずに警戒し、襲い来る度撃退するしかない。


なお、自身の墓標となる本当のコインロッカー自体も持っているため渋谷外で発動させることも可能だが、その場合ランクは2つほど低下し成功率(サーヴァントの妨害が無いことが前提)も大幅に下がる。


【人物背景】
外見は8歳くらいの少女。
生まれた直後母親に渋谷のコインロッカーに捨てられた赤ん坊の怨念が成長した悪霊。
サッちゃんという名は警察が発見の際便宜上付けたもの。

呪いの塊といっても差し支えない存在であり、一切の倫理観や常識を持たず、コインロッカーを通して関わった者全てを呪い殺す。

普段は少女の外見で人目を誤魔化すこともできるが、本当の姿は全身の肌が腐乱している。


【サーヴァントとしての願い】
アハハハハハハハハハハハハハハ
アハハハハハハハハハハハハハハ



【マスター】浅倉威
【出典】仮面ライダー龍騎(小説版)
【性別】男性

【マスターとしての願い】
クソの臭いを消したい

【能力・技能】
特殊な能力は特に無し。
しかし残忍で凶暴な正確をしており、息をするように人を殺すことができる。
また、不意打ちとはいえ自身を捉えに来た警官隊をも一人で壊滅させられる。


【人物背景】
凶悪殺人犯。

生後間もなく母親にボットン便所に廃棄されるも糞尿を糧に生存し母親を殺害。
幼少期は養護施設やホームレス街を転々としながらも殺戮を続けながら生活していた。

大人となったある時警察に逮捕されるも、刑務所内で神崎士郎に契約を持ちかけられたことで仮面契約者(ライダー)王蛇へと変身し脱獄。
同じ仮面契約者の多くをその手で葬っていくが龍騎、ナイト、ファムの3人によって打ち倒され死亡する。


生まれた直後に便所に捨てられたことでその嗅覚には糞尿の匂いが絶えず染み付いており、その臭いを消すために人を殺すことで出る血の臭いで紛らわしている。
その精神は、担当した精神科医が逆に精神を病むほどの異常性を持っている。


【方針】
とにかく糞の臭いを消すために殺す。
このガキ(キャスター)はその臭いがしないから気に入っている。

聖杯戦争を理解しているかは不明。


872 : ◆4SSSSSSSS6 :2015/01/17(土) 10:53:06 kBZtgc0g0
投下終わります


873 : 愚地独歩&セイバー ◆wgOIRwTFb6 :2015/01/17(土) 13:15:52 8M.keSgw0
投下します。


874 : 愚地独歩&セイバー ◆wgOIRwTFb6 :2015/01/17(土) 13:16:10 8M.keSgw0
「アンタが誰かなんて聞きやしねえ。
 アンタにこう名乗るのはおこがましいのかもしれんが、武神と呼ばれた身でね……。
 どういうことかはさっぱり分からねぇが、アンタが誰かは分かる。会えて光栄に思うぜ」
「ふむ」
「とはいえ、オイラの自慢の空手でも幽霊なんてぶっ叩けるものかねぇ」

「だから、こうさせてもらうぜえッ!!」

男の五体は凶器であった。
男が腕を振ると、木は裂けた。足を振るうと、コンクリートは砕けた。
鉄骨を叩けば鉄骨は歪み、折れ、たまたま入った廃墟の一室が、さらに文句の付けようも無い廃墟になるまで、時間はかからなかった。

「名乗らせてもらうぜぇ」

そして残心。油断無き構えを取り、男は彼の破壊を見ていたもう一人の男と対峙する。


875 : 愚地独歩&セイバー ◆wgOIRwTFb6 :2015/01/17(土) 13:16:44 8M.keSgw0
       ∨       / メ   ヽ〉ん)   , '"´ ̄ ̄ ̄`/、  ノ   ,. -― 、
       |   、 f{ /   rt_  ハミ∧__/        /  `ー/ヽ、 イ     ノ
  で  愚 |  'ヘ〈 / ,r-‐'^,`ィヽ  )ソ j/          ハ、__/ /   >- ´
  す   地 |ァ_,r=x_メ j! ,rtチン′{!イ入 |        /}、  jイ `ーァ'´_,. -―― 、
   ・  独 |、r―┴キ;..' _´三- 、ト、ノノ |       ノ丶`_ 久>、_ノ`´ 、  〈__ノ
   ・  歩 | ヾ、:::::::ノ r ´、)ー一'フ〉} }ソ ∨}      /  、 丶、__   ヽ、__>く
   ・     \ メ「,ィr、`ニ´=ァァ' //イ  /    __,. ィ ‐、、`ー- 、 `ヽ、  〈 ,-ヽ、
\___/ ̄/ `丶ゞ゙`こニノ、_ / {!,イ   (     〉_ノ    )   丶、_X,r rへ、
        /    「{丶xf_'ン′jレ'      ` -- イ /ヽー<ニ丶、__ ノ \ `¨´)
       /   ,/ ヾヽ、   >'´           ヽ!  、  `ヽ、`   ;    } ̄´
        {    {i     ` ̄´    (`てフ)     丶、入     \  ノ    /
       丶   W!         _ノこフ「         \    ノ_ ノ


876 : 愚地独歩&セイバー ◆wgOIRwTFb6 :2015/01/17(土) 13:17:33 8M.keSgw0
               _,.z=x、,..,,__
              ,ィ彡ミミW彡シ≧z_
             /ィ彡-=ミ_彡=-ミミミヽ、      ぶっ
           、_ノノィ'"   f    ヾミミ=イ
           ffン彡,`"¨ヽ } ノ¨"''、ゞミミそ      武と云うよりは舞
   r―  , 、    川f^i ヾ´o)ヽ ノfo_ン’ fヘミミリ
   `ー<_ノ\  ノリハ({、 `ン,. { } .,ヽ、  }jリミミ{!     舞踊だな
   ry'´ ヽ__ノヾ{{川jソ Τ `゙ニ゙´  Τ´ソリハミゝ、
  ノ, 〈  ゝ-r'⌒ヾリイ ヾ',;;'∠二ヾ';;,f;ッ' {刈リメ ))    しかしなぜ壁や家具を……?
  〈 〈  `7(_j__,. -‐ノ/ |  ヾ;,`¨III¨´,;シ′ トミイ(
  ゝニフ′>‐ァイ/  !   `'ー'-'‐'"  /  〉`ニ=--―-- 、
 /  「¨´ /  {{  ヽ  丶  /   /  /         \


877 : 愚地独歩&セイバー ◆wgOIRwTFb6 :2015/01/17(土) 13:17:59 8M.keSgw0
     /      ヽ    /  ヽ 、;i jt  /
   {  て  な }   ノ,.--、.. !  j!  ,イ ,.  xメ  メ
   }   め   ん {  ,イ   ヾt、〈/j  j{    , vx
   {.  ェ   だ. }  fト}r―-- x'´}  `ァ'^`ー '´ tt、
   }   ・  ァ  {  {ンjヾ:::::::::::::::ヽ f'′_zt=テチ' ,リ
   {   ・  ?  =-∨  >、:::::::ノ!キ- 、`二ニ´  f′
  丶   ・     ノ  `ヽ/_, `¨_,rj-:.、 ‐ 、 ー-- y'′
    ` ─── ´    ,{∨f´rx`、__ノ一'`¨´ ̄`) に_
              /ヽ }、`'くヨ>===ニテァ'´/ イ  ノ
          ,.  -┤  ヾ} ヽこ二二ン´ノ/ノン'´
        /   /}    ゙、 ,. -―- _x、' /イ
       /     /ノ    丶メ__F_ン′


878 : 愚地独歩&セイバー ◆wgOIRwTFb6 :2015/01/17(土) 13:18:30 8M.keSgw0

【クラス】
セイバー

【真名】
宮本武蔵@刃牙道

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運A 宝具A

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
セイバークラスとしては標準のランク。

騎乗:B
騎乗の才能。某高名な武術家曰く、戦国時代の人間の嗜み。
魔獣、神獣ランクの獣は乗りこなせない。


【保有スキル】
無刀の斬撃:A
武器を持たずとも殺気による斬撃の攻撃判定を行える。
技量による防御判定に敗れた場合、一定時間スタンし、さらに正気度減少判定のペナルティを受ける。

心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
また、後述の挑発スキルと併用する事で相手を自分のペースに引きずり込むことができる。

挑発(真):A
虚偽の妄言ではなく、相手の性質を見抜き正論をぶつけ怒らせる弁術。

無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全に近い合一により、いかなる地形・戦術状況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

【宝具】
『二天一流』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
宮本武蔵の代名詞とも言える剣技。その土地での知名度によりランクが変わり、日本に於いては最高のランクとなる。
『刀剣』の使用において同ランク相当の神秘を与えることができるが、神秘を秘めるに値しない刀剣は破壊される。

【weapon】
日本刀。右手に大太刀、左手に小太刀を持つ。
当時の剣豪は複数の刀を所持するのが当然であったため、破壊されても仕切り直せば修復を待たず別の刀を持ち出すことができる。

【人物背景】
日本でも頭から数えた方が早いと思われる高名な武術家。書などの芸術方面でも知られる。
日本では彼に関する創作は数え切れないほどあるが、今回はチャンピオンにて絶賛連載中(2015年1月現在)の『刃牙道』からの出典。
彼の墓を暴いて手に入れた骨髄からクローンを作りだし、
そのクローン体と降霊術のババアとのディープキスにより復活という実に読者の目に悪い衝撃的な登場を果たす。

【マスター】
愚地独歩@グラップラー刃牙シリーズ

【マスターとしての願い】
喧嘩がしたい

【weapon】
空手。

【能力・技能】
空手。自らの五体を凶器と化す。

【人物背景】
刃牙ワールドの誇るクレイジーカラテハゲ。
土管に入っては空手をし、右手を切断されてはそのまま空手をし、後でくっつけてやっぱり空手をし、
遊園地に行っては空手をし、家を燃やされては空手をし、負けようが片目を失おうが顔面を爆破されようが心臓が止まろうががやっぱり空手をする。
結構な高齢で何度も死にそうな目に遭っているのにとっても元気。健康の秘訣はきっと空手。

【方針】
セイバーを殴る。


879 : 名無しさん :2015/01/17(土) 13:19:12 8M.keSgw0
投下終わります


880 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:20:36 Rw1HnsFI0
ここまで集まった主従をクラス別に纏めてみました。
その前に、まず最初は>>1さんが定めた聖杯戦争の主催者から。

【魔人アーチャー @ Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚】 ◆devil5UFgA(>>2->>7
【カイン(直哉) @ 女神異聞録デビルサバイバー】 ◆devil5UFgA(>>666->>670


881 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:20:50 Rw1HnsFI0
【マスター】&【セイバー】 16組


【ナンシー・リー @ ニンジャスレイヤー】&【アーサー王 @ 実在性ミリオンアーサー】 ◆devil5UFgA(>>21->>26

【真島誠 @ ドラマ版池袋ウエストゲートパーク】&【大神一郎 @ サクラ大戦】 ◆CKro7V0jEc(>>29->>34

【織作茜 @ 『絡新婦の理』及び『塗仏の宴』】&【沖田総司 @ Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚】 ◆Ee.E0P6Y2U(>>122->>129

【ユウキ @ ソードアート・オンライン】&【冴島雷牙 @ 牙狼-GARO- 魔戒ノ花】 ◆arYKZxlFnw(>>188->>193

【風海純也 @ 流行り神 警視庁怪異事件ファイルシリーズ】&【奴良リクオ @ ぬらりひょんの孫】 ◆CRqDK4Bsjw(>>317->>323

【桂木弥子 @ 魔人探偵脳噛ネウロ】&【ウィラード・H・ライト @ うみねこのなく頃に散】 ◆3SNKkWKBjc(>>336->>338

【木之本桜 @ カードキャプターさくら】&【真宮寺さくら @ サクラ大戦シリーズ】 ◆CKro7V0jEc(>>397->>403

【ロット王 @ 実在性ミリオンアーサー】&【アルトリア・ペンドラゴン @ Fate/stay night】 ◆OSPfO9RMfA(>>414->>417

【ペニスマン @ THE PENISMAN】&【テイルレッド/観束総ニ @ 俺、ツインテールになります。】 ◆TAEv0TJMEI(>>530->>536

【雪城ほのか @ ふたりはプリキュア/ふたりはプリキュアMax Heart】&【イクサー1 @ 戦え!!イクサー1】 ◆CKro7V0jEc(>>584->>592

【鹿狩雅孝(神狩屋) @ 断章のグリム】&【カーズ @ ジョジョの奇妙な冒険】 ◆yy7mpGr1KA(>>659->>663

【エリザベス @ ペルソナ3】&【柊蓮司 @ ナイトウィザード】 ◆ACfa2i33Dc(>>701->>706

【マエリベリー・ハーン @ 東方project(秘封倶楽部)】&【宿命の子 @ ロマンシングサ・ガ3】 ◆R1q13vozjY(>>735->>751

【ズェピア・エルトナム・オベローン @ MELTY BLOOD】&【口裂け女(オロチ) @ 地獄先生ぬ〜べ〜】 ◆yy7mpGr1KA(>>754->>759

【桜塚星史郎 @ 東京BABYLON】&【獅堂光 @ 魔法騎士レイアース(漫画)】 ◆GM1UsJ3g8(>>794->>798

【愚地独歩 @ グラップラー刃牙シリーズ】&【宮本武蔵 @ 刃牙道】 ◆wgOIRwTFb6(>>874->>878


882 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:21:10 Rw1HnsFI0
【マスター】&【アーチャー】 7組


【零崎曲識 @ 人間シリーズ】&【雑賀孫市@戦国BASARA】 ◆3SNKkWKBjc(>>132->>136

【ジョン・マクレーン@映画「ダイ・ハード」シリーズ】&【ジョン・ランボー @ 映画「ランボー」シリーズ】 ◆CKro7V0jEc(>>139->>144

【南ことり @ ラブライブ!(アニメ)】&【ヴィンセント・ヴァレンタイン @ FINAL FANTASY Ⅶ】 ◆devil5UFgA(>>147->>153

【呉島貴虎 @ 仮面ライダー鎧武】&【橘朔也 @ 仮面ライダー剣】 ◆sIZM87PQDE(>>249->>259

【インデックス @ とある魔術の禁書目録】&【ジャンゴ@ボクらの太陽シリーズ】 ◆dM45bKjPN2(>>406->>411

【白瀬芙喜子 @ パワプロクンポケット14】&【師匠@キノの旅】 ◆7bpU51BZBs(>>426->>431

【園田海未@ラブライブ!(アニメ)】&【加賀 @ 艦隊これくしょん】 ◆4SSSSSSSS6(>>603->>608


883 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:21:25 Rw1HnsFI0
【マスター】&【ランサー】 13組


【獅子丸 @ ライオン丸G】&【虎錠之介(タイガージョー) @ 快傑ライオン丸】 ◆CKro7V0jEc(>>64->>73

【霧島董香 @ 東京喰種】&【後藤 @ 寄生獣】 ◆devil5UFgA(>>221->>230

【姫川友紀 @ アイドルマスターシンデレラガールズ】&【バッファローマン @ キン肉マン】 ◆HELLmKU1MQ(>>448->>450

【インテグラ @ HELLSING】&【ヴラド三世 @ Fate/EXTRA】 ◆3SNKkWKBjc(>>453->>456

【ウェイバー・ベルベット @ Fate/zero】&【マーラ様 @ 女神転生シリーズ】 ◆lnFAzee5hE(>>459->>460

【エイサップ鈴木 @ リーンの翼】&【バロン・マクシミリアン(アノーア・マコーミック) @ ブレンパワード】 ◆Ee.E0P6Y2U(>>471->>476

【花村紅緒 @ はいからさんが通る】&【南城二 @ 宇宙の騎士テッカマン】 ◆CKro7V0jEc(>>488->>492

【御神苗優 @ スプリガン】&【写楽保介 @ 三つ目がとおる】 ◆q4eJ67HsvU(>>503->>509

【神原駿河 @ 花物語】&【相羽シンヤ @ 宇宙の騎士テッカマンブレード】 ◆arYKZxlFnw(>>611->>617

【衛宮切嗣 @ Fate/zero】&【獣の槍 @ うしおととら】 ◆lnFAzee5hE(>>634->>639

【渋谷凛 @ アイドルマスター・シンデレラガールズ】&【アドルフ・ヒトラー(ニャルラトホテプ) @ ペルソナ2 罪/罰】 ◆Y0s8yQbTc2(>>709->>715

【緋村剣心 @ るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】&【武藤カズキ @ 武装錬金】 ◆OSPfO9RMfA(>>769->>770

【安藤まほろ @ まほろまてぃっく(原作漫画版)】&【人類戦士タケハヤ(タケハヤ シン) @ セブンスドラゴンシリーズ】 ◆TAEv0TJMEI(>>773->>780


884 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:21:41 Rw1HnsFI0
【マスター】&【ライダー】 10組


【安藤崇(キング) @ ドラマ版池袋ウエストゲートパーク】&【セルティ・ストゥルルソン @ デュラララ!】 ◆CKro7V0jEc(>>166->>170

【火倉いずみ @ 夜が来る! -Square of the Moon-】&【葉隠覚悟 @ エクゾスカル零】 ◆devil5UFgA(>>286->>294

【松下一郎(悪魔くん) @ 悪魔くん千年王国】&【ザイン @ 真・女神転生Ⅱ】 ◆lnFAzee5hE(>>434->>440

【法月仁 @ プリティーリズム・レインボーライブ】&【オンバ @ ブレイブ・ストーリー〜新説〜】 ◆W91cP0oKww(>>443->>445

【金田正太郎 @ AKIRA】&【時祭イヴ @ メガゾーン23】  ◆q4eJ67HsvU(>>479->>485

【峯岸一哉 @ 女神異聞録デビルサバイバー】&【バビル2世 @ バビル2世】 ◆devil5UFgA(>>512->>517

【宇佐見蓮子 @ 東方project(秘封倶楽部)】&【伝説のモグラ乗り @ パワプロクンポケット10 装甲車バトルディッガー編】 ◆R1q13vozjY(>>560->>569

【Zちゃん @ ロボットガールズZ】&【兜甲児 @ 真マジンガーZERO】 ◆MoyrepToUg(>>651->>656

【姉帯豊音 @ 咲-saki-】&【アーカード @ HELLSING】 ◆3SNKkWKBjc(>>680->>685

【マエリベリー・ハーン @ 東方project】&【十四代目葛葉ライドウ @ 葛葉ライドウシリーズ】 ◆g33OtL8Coc(>>801->>807


885 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:21:56 Rw1HnsFI0
【マスター】&【キャスター】 14組


【ふうまの御館 @ 対魔忍アサギ 決戦アリーナ】&【加藤保憲 @ 帝都物語】 ◆devil5UFgA(>>13->>18

【七原 秋也 @ バトル・ロワイアル(原作小説版)】&【操真 晴人 @ 仮面ライダーウィザード】 ◆Y4Dzm5QLvo(>>83->>88

【東條希 @ ラブライブ!】&【モハメド・アヴドゥル @ ジョジョの奇妙な冒険】 ◆e83YoP7QSA(>>100->>104

【槙島聖護 @ PSYCHO-PASS】&【フェイト・アーウェルンクス(テルティウム) @ 魔法先生ネギま!】 ◆nEZ/7vqpVk(>>159->>163

【森沢優 @ 魔法の天使クリィミーマミ】&【ミンキーモモ @ 魔法のプリンセス ミンキーモモ(1982年版)】 ◆CKro7V0jEc(>>268->>272

【矢車想 @ 仮面ライダーカブト】&【輿水幸子 @ アイドルマスターシンデレラガールズ】 ◆tHX1a.clL(>>275->>283

【アドルフ・ラインハルト @ テラフォーマーズ】&【フェイト・テスタロッサ @ 魔法少女リリカルなのは】 ◆W91cP0oKww(>>306->>309

【東方仗助 @ ジョジョの奇妙な冒険】&【武藤遊戯 @ 遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】 ◆7PJBZrstcc(>>341->>345

【志筑仁美 @ 魔法少女まどか☆マギカ】&【桔梗 @ 家庭教師ヒットマンREBORN!】 ◆3SNKkWKBjc(>>573->>575

【アカツキ @ アカツキ電光戦記】&【隼鷹 @ 艦隊これくしょん】 ◆HQRzDweJVY(>>620->>623

【灰原哀 @ 名探偵コナン】&【柊蓮司 @ ナイトウィザード】 ◆devil5UFgA(>>626->>631

【蜂屋あい @ 校舎のうらには天使が埋められている】&【アリス @ デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)】 ◆lnFAzee5hE(>>836->>847

【みどろ@涅槃姫みどろ】&【鍵山雛@東方project】 ◆0lntQpQ3/6(>>850->>857

【浅倉威 @ 仮面ライダー龍騎(小説版)】&【サッちゃん @ 渋谷怪談シリーズ】 ◆4SSSSSSSS6(>>867->>871


886 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:22:20 Rw1HnsFI0
【マスター】&【アサシン】 12組


【ハンニバル・レクター @ ハンニバルシリーズ】&【月山習 @ 東京喰種】 ◆lnFAzee5hE(>>37->>41

【折木奉太郎 @ 氷菓(アニメ版)】&【ロート・シュピーネ @ Dies irae】 ◆Gnjocyz9X2(>>173->>178

【雨宮桂馬 @ 街〜運命の交差点〜】&【カナン @ 428〜封鎖された渋谷で〜/CANAAN】 ◆CKro7V0jEc(>>204->>208

【谷川 柚子(ユズ) @ 『女神異聞録デビルサバイバー』及び『デビルサバイバー オーバークロック』】&【復讐ノ牙・明智光秀 @ アニメ版『戦国コレクション』】 ◆Ee.E0P6Y2U(>>233->>238

【ジオット・セヴェルス @ パワプロクンポケット14】&【詠@閃乱カグラ】 ◆devil5UFgA(>>326->>332

【ゲーニッツ @ ザ・キング・オブ・ファイターズシリーズ】&【ヴァニラ・アイス @ ジョジョの奇妙な冒険】 ◆kRh/.U2BNI(>>349->>354

【相良宗介 @ フルメタル・パニック】&【ネイキッド・スネーク @ メタルギアソリッド3 スネークイーター】 ◆X5hLCZajsg(>>463->>468

【コロマル @ Persona3】&【ストライダー(タロウイチ) @ ニンジャスレイヤー】 ◆devil5UFgA(>>495->>500

【園原杏里 @ デュラララ!!】&【神埜歩未 @ ルー=ガルー 忌避すべき狼】 ◆7bpU51BZBs(>>595->>600

【アート @ Re:_ハマトラ】&【キルバーン @ DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】 ◆9u1Bq1HCTk(>>673->>677

【岸波白野(男) @ Fate/EXTRA】&【ジャック・ザ・リッパー @ 名探偵コナン ベイカー街の亡霊】 ◆3SNKkWKBjc(>>810->>814

【狡噛慎也 @ PSYCHO-PASS】&【焔 @ 閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】 ◆arYKZxlFnw(>>861->>864


887 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:22:32 Rw1HnsFI0
【マスター】&【バーサーカー】 11組


【朱鷺宮神依 @ アルカナハート】&【壬無月斬紅郎 @ サムライスピリッツ】 ◆q4eJ67HsvU(>>45->>49

【ジョーカー @ ダークナイト】&【ギーグ @ MOTHER】 ◆devil5UFgA(>>91->>97

【東兎角 @ 悪魔のリドル】&【金木研 @ 東京喰種】 ◆huhjqa4LDA(>>261->>265

【岩田狂天 @ 稗田のモノ語り 魔障ケ岳 妖怪ハンター】&【人修羅 @ 真・女神転生III-NOCTURNE】 ◆lnFAzee5hE(>>312->>314

【美樹さやか @ 劇場版魔法少女まどか☆マギカ [新篇]叛逆の物語】&【バイオレンスジャック@バイオレンスジャック】 ◆FFa.GfzI16(>>376->>388

【黒崎一護 @ BLEACH】&【北方棲姫@艦隊これくしょん(『アリューシャン・ダッチハーバー』)】 ◆3SNKkWKBjc(>>392->>394

【阿万音鈴羽 @ STEINS;GATE】&【平和島静雄 @ デュラララ!!】 ◆GOn9rNo1ts(>>539->>557

【ジョン・シルバー @ 宝島(アニメ版)】&【ノロイ @ ガンバの冒険】 ◆OzO3NU97wY(>>578->>582

【殺生院キアラ @ Fate/EXTRA CCC】&【エンジェル<ルシファー> @ クォンタムデビルサーガ・アバタールチューナー】 ◆Ee.E0P6Y2U(>>642->>648

【美国織莉子 @ 魔法少女おりこ☆マギカ】&【呉キリカ @ 魔法少女おりこ☆マギカ】 ◆arYKZxlFnw(>>688->>698

【岡部倫太郎 @ STEINS;GATE】&【天河朔夜 @ 舞-HiME 運命の系統樹】 ◆T9Gw6qZZpg(>>817->>824


888 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:22:50 Rw1HnsFI0
【マスター】&【エクストラクラス】 17組


【桐山和雄 @ バトルロワイアル(漫画)】&“ザ・ヒーロー”【ザ・ヒーロー @ 真・女神転生】 ◆devil5UFgA(>>52->>60

【私 @ 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド】&“シップ”【駆逐艦・時雨改二 @ 艦隊これくしょん】◆Ee.E0P6Y2U(>>76->>81

【両備 @ 閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-】&“キーパー”【ハービンジャー @ 聖闘士星矢Ω】 ◆arYKZxlFnw(>>107->>112

【無常矜侍 @ スクライド】&“モンスター”【メンタリスト @ ニンジャスレイヤー】 ◆ninjMGPkX6(>>181->>185

【赤木信夫 @ 非公認戦隊アキバレンジャー】&“キャプテン”【キャプテン・マーベラス @ 海賊戦隊ゴーカイジャー】 ◆CKro7V0jEc(>>198->>201

【ディアボロ @ ジョジョの奇妙な冒険】&“コマンダー”【冥界女王メデューサ @ 新・光神話 パルテナの鏡】 ◆dM45bKjPN2(>>211->>216

【一ノ瀬はじめ @ ガッチャマンクラウズ】&“セイヴァー”【千手柱間 @ NARUTO】 ◆3SNKkWKBjc(>>241->>245

【両儀式 @ 空の境界】&“デス”【キャシャーン @ キャシャーン Sins】 ◆arYKZxlFnw(>>297->>303

【暁美ほむら @ 劇場版魔法少女まどか☆マギカ [新篇]叛逆の物語】&“ビースト”【不動ジュン@デビルマンレディー(アニメ版)】 ◆devil5UFgA(>>358->>363

【九頭竜天音 @ 女神異聞録デビルサバイバー】&“デウスエクスマキナ”【アヤトゼフォン@ラーゼフォン】 ◆q4eJ67HsvU(>>367->>373

【“マスター不在”】&“インベーダー”【ヘルヘイムの森@仮面ライダー鎧武】 ◆HQRzDweJVY(>>420->>423

【ベム @ ドラマ版妖怪人間ベム】&“ピノキオ”【ジロー @ 漫画版人造人間キカイダー】 ◆devil5UFgA(>>521->>527

【岸波白野(女) @ Fate/EXTRA】&“ネバーセイバー”【渋谷凛 @ アイドルマスターシンデレラガールズ】 ◆q4eJ67HsvU(>>718->>722

【矢澤にこ @ ラブライブ!】&“ダークヒーロー”【アクターレ @ 魔界戦記ディスガイアシリーズ】 ◆kRh/.U2BNI(>>725->>732

【藤宮紅葉 @ BLUE SEED】&“ノービス”【俵文七 @ 天上天下】 ◆nEZ/7vqpVk(>>762->>766

【リエンス王 @ 実在性ミリオンアーサー】&“ダッジャール”【カオスヒーロー @ 真・女神転生Ⅰ】 ◆lnFAzee5hE(>>783->>791

【古手梨花 @ ひぐらしのなく頃に】 “スペランカー”【ディアボロ @ ディアボロの大冒険】◆tHX1a.clL(>>827->>833


889 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:24:17 Rw1HnsFI0
以上、現在までに90組近くになります。
お目汚しすみませんでした。


890 : 名無しさん :2015/01/17(土) 14:25:28 Rw1HnsFI0
すみません、100組でした。


891 : ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:00:10 2vS7s6KQ0
投下させていただきます。


892 : Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:01:33 2vS7s6KQ0
月のない夜に現れる赤い月をみた者には願いがかなう。
されど、強き願いをもつ人間は月に囚われ姿を消してしまう。

まことしやかにささやかれるこの噂話は誰とはしれない友人たちから伝え聞いた話だ。

都市伝説。
それは誰かの作り話かもしれない。

しかし、噂話は人の心を映す鏡。
そこには「なにか」からのメッセージが隠されていることがある。

探偵、白鐘直斗はとある事件を追っていた。
ある日を境にこの東京や各地で起こり始めた連続失踪事件だ。
事件が起こる日。決まってそれは新月――月のない闇夜だった。
被害者の年齢、性別、職業に一致はなく、複数箇所にて同時に起きている。

単独犯でないならば複数犯いや…

これは「人」ではなし得ない。

噂話と失踪事件。
白鐘直斗にとって身に覚えのあるキーワードだった。

かつて、とある地方の町で起こった殺人事件と失踪事件に直斗は深く関わることになったのだが、この事件の発端と解決の鍵は一つの噂話だったのだ。

しかしながら、この事件においてもっとも重要視されるべきことは、公にされることの無かったもう一つの世界の存在だ。
犯人はこの世界を利用し、卑劣な犯行を行った。
隣り合わせに存在する世界を知る何者かが、犯行を模倣した可能性があるのではないだろうか。


探偵、白鐘直斗が導き出した結論は一つ。
赤い月はもう一つの世界へ繋がる<鍵>であると。


893 : Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:02:33 2vS7s6KQ0
▽ ▽ ▽


「次は新宿ー新宿ー…Next…」

スピーカーから発せられた車内アナウンスによって、思考の世界から現実へと呼び戻された。
時計をみると高校生が出歩くには遅すぎる時間をとうにすぎている。
警察への協力をしている探偵とはいえ、普段は学業を生業とする学生なのだ。
無理を言って警察署で事件の資料を読ませてもらっていたが、ここまで遅くなってしまうなんて。
事件の間は家に帰らずホテルを使うことも多いが、家には祖父と祖母がいる。
連絡がなければきっと心配していることだろう。

携帯電話に取り出し、視線を落とした。
画面には共に戦い、ともに笑い、心からの友となった仲間たちとの写真。
花村先輩とクマくんは相変わらず兄弟みたいな掛け合いをしているだろうか。
巽くんも混ざって男子たちで騒いでいるのかもしれない。
天城先輩と里中先輩は今でも直斗のことを気にかけて連絡をくれるし、久慈川さんもアイドルとしての仕事が忙しい中息抜きに誘ってくれる。
結局は彼女のショッピングに付き合うことになってしまうのだが。
鳴上先輩も夏休みには稲羽市に戻ってくるといっていたから、こちらも仕事の調整ができればいいが…。

このところ顔を合わせることもできていないが、彼らは確かに直斗の心の拠り所となっていた。



携帯に表示された日付をみてふと思い出す。
今日は新月の日ではなかったかと。

向かい側の車窓に目を向ける。
――月はない。

振り向いて座席越しに空を見上げる。
――月は…


894 : Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:03:43 2vS7s6KQ0
▽ ▽ ▽


目にした瞬間に思わず息を飲んだ。

月の器に注がれた血が滴り落ち、東京がさびた鉄色に染まっている。
夕焼けではない。これは赤い月の光に包まれているのだ。

はっとして周りを見渡す。
いない。満員とはまではいかないが電車内に乗り合わせていたはずの酔いつぶれたサラリーマンや残業続きだったのか疲れきった顔をしていたOLも。

一人取り残されている。
いや、一人だけ足を踏み入れてしまったというほうが正しいのかもしれない。

キィと耳障りな音を立てながら、電車は動きを止めた。
ドアが開かれ、駅のホームへと降り立つ。
あたりの様子をうかがうが、眠らない街にいるというよりも田舎の無人駅にいるかのように閑散としている。
まるで世界が時を止めたかのように。
胸ポケットに潜めていた銃を取り出すと、ゆっくりと改札へ向けて歩を進めた。

そのとき、誰もいなかったはずの背後から低い声が響いた。

「お前が俺の主<マスター>か」

ゆっくりと声のした方へ顔を向ける。
暗がりから月の光のもとに現れた人影。
見上げてしまうほどの長身。凛として彫りの深い顔。
偉丈夫と呼ぶにふさわしい大男がそこにいた。
視線が合うと男は深々と礼をした。

「魯粛、字を子敬と申す」


895 : Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:04:38 2vS7s6KQ0

▽ ▽ ▽

「神の血を受けた聖なる杯。それを手に入れた者には願いが叶うというわけですか。
 かのアーサー王や旧ドイツ軍も捜し求め、見つかることのなかった聖遺物がここに存在すると」

紅い月に魅入られた人間が集い、杯を手に入れるために戦いあう。ここは決戦の地だと男は語る。
ムーンセル――ここは間違いなく直斗のいた世界ではない。
現実とは異なる世界だとすれば、この世界に聖杯が存在することも否定できない。
しかし、直斗が呼ばれた時点でいまだ存在するということは、手にした人間が存在しないという可能性も十分にある。

「どんな願いもかなう――なんて、都合のいいものが簡単に存在するとは僕には思えない。
 何者かが戦いを生むために描いた絵にも見えます。
 聖杯が真実にせよ虚構にせよ…証明するためのピースが今は足りない。
 これは、あなた自身にも言えることですが」

<魯粛>と名乗ったこの男。
直斗の記憶に間違いがなければ、彼は中国古代、後漢末期(俗に言う三国時代)の人間である。
三国志というのは日本でも有名な物語のひとつで、後に蜀の皇帝となる劉備の立身出世と戦いを描いたものだ。
それを献身的に補佐した諸葛亮の神算鬼謀もよく知られている。
ところで、彼といえば脇役の中の脇役で、諸葛亮に振り回される気弱な男である。
名を借りた別人としか思えない。

「はっはっは!おもしろい。
 お前は聖杯の存在を疑問視するというのだな。
 女性(にょしょう)とはいえこれほどの思慮深さとは恐れ入った。
 少しばかり甘くみていたことを許してくれないか」

男は直斗の疑念さえ笑い飛ばすように豪快に声を上げた。
正直なところ、馬鹿にされていたということよりも、女であることに気づいた眼力に舌を巻く。
今はもう女であることを隠すつもりもないが、探偵王子などとあだ名される直斗のことを未だ少年だと信じている者もいるからだ。
彼は直斗へのマイナス印象さえ臆面もせずに告げている。
確かに切れ者ではあるだろうが、さっぱりとした性格は好感がもてる。

「いえ…僕もあなたのことを偏った見方をしていました。気にとめる必要はありませんよ」

直斗は空を見上げる。紅く輝く月。いや…あれは本当に月を模した聖杯なのかもしれない。

「白鐘家の探偵として、僕は誇りをかけて<聖杯>の謎を突き止めたい。
 だからこそ、あなたに改めて問います。
 僕の右腕<サーヴァント>になってくれますか、ライダー」

「お前が真実を求めるというのであれば、最期まで付き合ってやろう」

そういうと彼は無造作に手を伸ばしたかと思うと直斗の頭をぽんと叩いた。

「な、何をするんですか!急に」

斜めになってしまった帽子を慌ててかぶりなおす。
動揺を隠せない直斗の姿をみるや、ライダーはまた声を立てて笑い、眩しそうに目を細めた。
どうやら子ども扱いをやめる気はないらしい。

「俺の前で背伸びする必要はない。
 お前はただ前だけを見ていろ。道を作るのは俺の役目だ」

ブンと腕を振り上げ、ライダーは自身の得物――九歯金巴を構えた。
指し示すのは天に捧げられた聖杯。


896 : Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:05:14 2vS7s6KQ0

▽ ▽ ▽


赤く染まる空を見たことがある。
太陽の光ではない。
月の光でもない。

あれは大河を焼き尽くす船団の炎。
吐く息さえも焦がしてしまうほどの一面の炎。

やがて、天をつかむであろう一人の男はこぶしを掲げた。
その後ろ姿を少女と重ね合わせる。

赤は始まりの色。
そして勝利の色だ。

紅き猛虎は月を呑み込み天高く吠えた。


▽ ▽ ▽



視界にノイズが走る。
目を開くとそこにはいつもと変わり映えのしない東京の姿。
幾万もの摩天楼の光にあふれ、月は青白い光をたたえていた。
行き交う人々の姿。

直斗は大きく深呼吸をし、歩き始めた。


午前0時。
魔都――東京


▽ ▽ ▽


897 : Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:06:47 2vS7s6KQ0
【マスター】白鐘直斗@Persona4

【マスターとしての願い】聖杯を見極める

【Weapon】拳銃(でいだらのおやじの美術品のため殺傷能力は低い)

【能力・技能】 ペルソナ召喚(スクナヒコナ)
心の形を具現化したもの。魔術師ではないが、多少の魔術行使が可能。
即死系(ハマ・ムド)が得意ではあるが、魔術素養のあるマスターや対魔力のあるサーヴァントには無力。

【人物背景】
白鐘家の5代目探偵。
警察とは捜査協力をしている。公安警察にもパイプを持つ。
容姿端麗で冷静沈着。探偵王子の異名を持つ。真面目で礼儀正しいが、人付き合いは苦手。
小柄な体格で、キャスケット帽がトレードマーク。実は男装の女子なのでボクっこ。
女性であることにコンプレックスを抱いていたが、稲羽市にて起きた連続殺人事件を追う仲間たちと出会い、変わっていく。
P4U2の後(ゴールデンウィーク後)を想定。

【方針】聖杯についての情報を集める



【CLASS】ライダー

【真名】魯粛@真・三國無双7

【ライダー】筋力C 耐久C 敏捷E 魔力C 幸運D 宝具A

【クラススキル】
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
北方の出身のため騎馬の心得もあり、呉の都督(総軍司令)でもあるため船団の指揮も可能。

対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【属性】 混沌・中庸

【保有スキル】
軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

話術:A
言論にて人を動かせる才。 国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
赤壁の戦いでは劉備との同盟の他、降伏論に傾きかけていた軍を開戦へと導く。

勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

無辜の怪物:D 
本人の意思や姿とは関係なく、風評によって真相をねじ曲げられたものの深度を指す。
三国志演義でのお人好しで諸葛亮に振り回される人物ととらえられることが多い。
一部スキルやステータスにマイナス補正あり。
  
【宝具】
『単刀赴会』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:99 最大補足:ー
単身で敵地に乗り込み、現代では軍神ともたとえられる関羽と正面から堂々と交渉した荊州の地を取り返した逸話に基づく。
故事成語で伝えられている単刀赴会は三国志演義からのもので逆の内容だが、正史では上述の通りである。
効果範囲内における宝具の使用を無効化および一切の攻撃を中止させることが可能であるが、自らも相手への攻撃が無効化される。
使用条件としてマスターを除いて効果範囲内に共闘者がいないこと。効果範囲内にいる第三者も強制的に戦闘行動が中止される。

『孫呉大都督』ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
赤壁の戦いにて曹操軍を打ち破った孫呉の誇る大船団と兵卒達を召喚する。
兵卒たちは数時間の現界が可能(魔力消費あり)。火計を得意とし、遠方からの火矢にて一面を焦土と化す。
二代目都督(総軍司令)とされ赤壁の戦いへの参軍はしているが、周瑜よりも使用時のランクは落ちる。
 
【Weapon】
九歯金巴(きゅうしは)※金+巴で一つの漢字。
鍬のような長物。西遊記にでてくる猪八戒の武器と同等。
地形により発動する力が変化する。地面を隆起させるなどの攻撃も可能。
史実では撃剣の心得の他、盾を射抜くほどの騎射の技術を持つとされるが適正が下がっている。

【人物背景】
後漢末期の人物。周瑜に見いだされ、後の呉の皇帝孫権に仕える。
若きころから先見の明があったが、周りからは理解されず、「狂児」(変わり者)とあだ名された。
もともとは土着の豪族であり、周瑜に蔵ごと食料をわけあたえたとの逸話もある。
また、いち早く天下二分、そして三分を唱えたことでも知られる。
物語としての三国志における気弱な印象とは異なり、豪放磊落な男である。
上背は高く、筋肉質。豪胆で武術の心得もあるが、戦うよりも交渉に持ち込むような駆け引きが得意。
稀代の軍師と称される諸葛亮にも一目置かれている。
後輩からも慕われる、頼れるおじさん。


898 : Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA :2015/01/18(日) 00:07:23 2vS7s6KQ0
投下終了します。


899 : ◆devil5UFgA :2015/01/18(日) 03:47:41 UDPg5c6E0
皆様投下乙です!
私も投下させていただきます!


900 : ◆devil5UFgA :2015/01/18(日) 03:49:03 UDPg5c6E0



――――かつて、銀は月からこぼれ落ちた雫を集めて作られたと言われてきた。


それは現実とは異なる美しい夢物語として伝わり、いつの間にかお話の中だけの世界として消えていった。
どんな願い事も叶うという不思議な銀の糸。
古来より、月はそう言ったものだった。
夜にだけ姿を見せ、妖しく白銀に光る月。
それに恐怖を抱き、同時に、超越者としての願望を抱いた。
不可思議な銀、人を殺す刃と同じ色。
そんな銀へと、人は幻想を見た。

ならば、紅はなにから生まれたのであろうか。
人の源であり、人が忌み嫌う色。
人が飾り立て、人を人たらしめる色。
朱い月よ、かつて繁栄を誇った異星の王よ。
紅い月よ、幻影を照らしつける偽りの月よ。
お前たちは、何を示す。
お前たちは、何を落としてこの朱紅を創りあげた。


お前たちは、お前たちは……なぜ、我らに希望を与えのだ。

.


901 : 佐々井夕奈&ランサー ◆devil5UFgA :2015/01/18(日) 03:50:06 UDPg5c6E0





ランサーのサーヴァント、クイーン・ミラージュは目を覚ました。
小さなソファーで眠っていた彼女は、ソファーに脚と腰をかけ、上半身を床に投げ出した状態だった。
鏡が見える。
吊るされた女としてランサーを映し出すはずの鏡は、彼女を正しく映していた。
吊るされた女の逆位置だ。
この歪んだ鏡こそが、彼女の宝具なのだ。

浅い眠りだった。
思えば、自らが怪物となった瞬間から、少女の頃を夢で見続けていた。
彼女は常に怪物として観測されている。
少女であり、英雄であった頃の彼女はすでに消え去っている。
どのようなことがあっても、余程の例外でなければ。
彼女は『光の戦士・キュアミラージュ』ではなく、『災厄の女王・クイーンミラージュ』として顕界する。
特上のスキルランクを誇る無辜の怪物によって、己が精神すらも時を止めて。

「……」

人々が、ムーンセルが、世界が焼き付けた少女の姿。
それは世界を災厄の渦に貶めた罪の姿であり、強烈な乾いた願いの末路だった。
失われた愛から生まれる悲哀と憎悪が、彼女を焚き付けていた。
鏡を見る。
そこには、歪んだ己が映っていた。

「起きましたか、ランサー」

ランサーのマスターから声をかけられる。
マスターは長い、銀のように薄い色素の髪をしていた。
瞳は充血しているかのように赤みがかっていた。
古めかしい給仕服を身に纏っている。
ランサーはその少女の内に眠る狂気に気づいていた。
自らのものと、同質だったからだ。
裏切りから生まれる悲哀と憎悪、マスターとランサーが共有している感情は、まさしくそれだった。
銀の紐を握っていた。
少女の運命を弄んだ、願望器だった。
ふと、鏡を見た。
鏡は、『災厄の幻影<ディープ・ミラー>』は、ランサーの宝具であった。
そこに写されるものは災厄が現実を蹂躙する、最悪の未来。
彼女は鏡から力を引き出し、人々を自らが使役する『最悪の災厄』の化身へと変える。
世界を侵食する、災厄の力だ。

「貴方の夢を見たわ」
「……そう」

瞬間、マスターである少女、佐々井夕奈から柔らかな色が消えた。
若くして洋食屋を切り盛りする落ち着きと溌剌とした雰囲気を併せ持つ少女の顔が消えた。
憎しみに色を染めた顔だった。
妹を憎む顔。
己の恋人を奪った裏切り者。
その恋人すら、歪んだ願望器によって妹が呼び寄せた、己の幸せとは異なる幸福を呼び寄せた裏切り者。
憎しみ。
募り始める、憎しみ。


902 : 佐々井夕奈&ランサー ◆devil5UFgA :2015/01/18(日) 03:51:30 UDPg5c6E0

「貴方の願いは、あの夢を消し去ることかしら」
「願いなんてないわ」

唾棄するように、夕奈は言った。
願いに、夕奈は弄ばれた。
己の心のすべてを、弄ばれた。
そこから生まれる強烈な、願望器に対する嫌悪。
ここに来る前、夕奈は妹に裏切られた。
己の愛した男性を、妹に――――
願いを叶える、父母の形見を持った妹に――――
誰よりも愛した妹に、裏切られた。
願望器に、裏切られた。

だから、夕奈はここに来るまで、裏切り者への殺意と同時に、考え続けた。
願望器を破壊することだけを考えて。
運命を弄んだ願望器の嫌悪だけを抱えて。
己以外の全てを憎んで。
それが、憎み続ける願望器――――銀の糸によって捻じ曲げられた想いだとしても。
憎み、憎み、憎み。
その結果、彼女の憎しみは巨大な願望へとなった。
願望は、紅い月に観測され。
彼女は紅い月を観測した。

故に、彼女の願いは、願いを侮蔑すること。
願望器にすがった裏切り者を、侮蔑すること。

「強いて言うなら……死んでいく人の前で、肉を吐き出したいわ。
 母から教わったように、ゆっくり、噛み続けるんです。
 ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと咀嚼して――――まずそうに吐き出すの」

裏切り者の肉を口に含み、吐き出す。
お前の肉は、そう言ったものだ。
栄養にする価値もない、生命の円環の中にすら存在しないものだと。
そう宣言するために、吐き捨てるのだ。

「聖杯を手に入れて、聖杯に唾を吐きかけてあげるの」
「……」
「万能の願望器、軽々しく願いを抱いたあの裏切り者の全てを否定してあげたいわ」

空虚な瞳のまま、頬を釣り上げた。
憎しみだけに囚われていた。
だのに、願望器の欠片である銀の糸を手放そうとしなかった。

「死んでも許してあげない」
「……いいわ、マスター。幸い、私にも願いがない」
「あら」

そうだ、願いなどない。
ランサーの裏切り者は、裏切ったランサーの幸せすらも願っている。
ならば、幸せになどなってやらない。
私<ミラージュ>を愛していないくせに、私<人>を愛している神。
その全てを、あの青い星を蹂躙してやり。
最後には、自分が不幸になってみせる。

「愛は幻」
「幸福は仮初」
「望むものは『私から生まれるもの』じゃない」
「私達から捨てられるものが、裏切り者の苦しみを生みだすのなら」
「私達は、願いを唾棄する」

少女たちは、思わず笑った。
少女たちの純な想いは、捻じ曲げられ、怪物となった。

銀の月が落とす雫の塊は、仮初の願望。
紅い星が落とす雫の塊は、偽りの憎悪。


903 : 佐々井夕奈&ランサー ◆devil5UFgA :2015/01/18(日) 03:52:47 UDPg5c6E0

【クラス】
ランサー

【真名】
クイーン・ミラージュ

【パラメーター】
筋力B+ 耐久C 敏捷A+ 魔力A 幸運E 宝具C+++

【属性】
混沌・悪(秩序・善)

【クラススキル】
対魔力:A
旧神から授かった力と、星神から与えられていたかつての力の残効によって、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

【保有スキル】
無辜の怪物:A+++
生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられなった怪物。能力・姿が変貌してしまう。
このスキルは外すことができない。
かつて人知れず地球の対惑星を支配する旧神の脅威から人類を救ったプリキュアではありながら、
恋慕と憎悪の果てに地球という星を『最悪の災厄』という旗を翳して地球の半分を征服した『災厄の女王』クイーン・ミラージュ。
彼女はもはや最悪と災厄の代名詞であり、プリキュアとして召喚されることはない。

星神の加護:-(A+++)
今なお輝く青い地球の神、ブルーから授けられた光の戦士へと変身するためのスキル。
神の愛を受けたミラージュは、かつて人類最高のスキルを誇っていた。
しかし、無辜の怪物スキルによってこのスキルの効果を発揮することが出来ない。

旧神の宣託:A(-)
もはや失われた赤い星の神、レッドによって授けられた憎しみという神託。
憎悪の神であるレッドに選ばれた巫女であるミラージュは憎悪を力へと変える。
ミラージュの本来持ち得る穏やかで慈悲深いミラージュをミラージュたらしめる精神性が反転している。


【宝具】
『災厄の幻影(ディープ・ミラー)』
ランク:A 種別:対星宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:上限なし
最悪の災厄によって星を蹂躙するための鏡。
その正体はかつて滅びを迎えた朱い地球の神、レッド。
ミラージュを誑かした赤い星の神、レッドのアバターとして再現されている。
ミラージュの憎悪が歪んだ時、ミラージュの憎悪を呼び覚ますように動き続ける。
ミラージュの姿を常にハングドマンの逆位置として映し出す。

<吊るされた男・逆位置>
徒労、痩せ我慢、投げやり、自暴自棄、欲望に負けるの意。


【weapon】
自らの憎悪の暗黒を邪なる力へと変換させることが出来るミラージュ。
その力をコントロールする王翦が兵装だが、刃物としても扱うことが出来る。

【人物背景】
世界を救うために神の愛に選ばれた存在、光の戦士プリキュアであった少女。
失われた赤い地球を支配する憎悪の神との戦いを続けていく内に、少女は神へと愛を抱くようになった。
しかし、神は神であるために人である少女の愛を受け入れなかった。
そこに生まれた哀しみを、倒したはずの憎悪の神によって付け込まれることとなる。
この瞬間こそが、光の戦士を災厄の女王へと変えた瞬間であった。
届かない愛を憎悪の神に誑かされた彼女は、狂気に侵される。
その狂気の激しさと危うさがために、己が愛した神によって封印されることとなった。
三百年の間、彼女は失った愛の悲しさと抱いた憎悪の激しさに泣き続けていた。

世界各国を『最悪』の名を冠する災厄によって蹂躙し続けた。
自らの幸福すらも願っておらず、かつて愛を捧げた神が愛する地球を破壊するためだけに


904 : 佐々井夕奈&ランサー ◆devil5UFgA :2015/01/18(日) 03:53:55 UDPg5c6E0
【マスター】
佐々井夕奈@銀色・完全版

【マスターとしての願い】
裏切り者への復讐

【weapon】
全ての願いを歪んで叶える銀色の糸を持っている。

【能力・技能】
夕奈は特殊な技能を持たない普通の少女だった。
銀色の糸によって、弄ばれただけなのだ。

【人物背景】
父母を亡くした佐々井夕奈は妹とともに形見となった洋食屋『佐々井亭』を切り盛りしていた。
しっかりとした性格で、残された肉親である妹を大事に思っている。

女手で父が遺した店を切り盛りする夕奈を手伝う妹の朝奈。
そんな日々に忙殺され女としての幸せ、即ち色恋に無縁になってしまっている姉を想うあまり母から託された「銀糸」に願いを掛けてしまう。
願い通りに、店に来客した青年、鍋島志郎を意中の人として夕奈は思慕を募らせていく。
だがどんな願いも叶えてしまう「銀糸」の負の力により夕奈は豹変してしまい、姉妹の関係は取り返しの付かない結末へ向かっていくのだった……

【方針】
彼女たちは憎しみに囚われている。
しかし、彼女たちを囚える憎しみは愛から生まれたものなのだ。


905 : 佐々井夕奈&ランサー ◆devil5UFgA :2015/01/18(日) 03:54:05 UDPg5c6E0
投下終了です


906 : ◆Cb.PWiR... :2015/01/18(日) 15:57:14 D2WVbr2I0
投下します


907 : ◆Cb.PWiR... :2015/01/18(日) 15:58:21 D2WVbr2I0
「ああ」

消えた。
自分の指先一つで、何百という人間が消えた。
罪の無い人も。護ると誓った人も。
一人残らず、消え去った。

「───僕は、間違っていたのか」

それは、一つの諦め。
追い続けた尊い理想を棄て、醜い現実を直視した男の言葉。

「必要なのは『過程』じゃないんだ。
そんなものに、意味はないよ」

それは。最も軽蔑していた友の、忌むべき思考。
たとえそこまでの道程が血と怨念で塗れていようとも。
望んだ『結果』があればいい───手段を選ぶことのない外道の道。

「なら僕は、結果を取るよ。
憎まれようと、蔑まれようと、歩いた道程が間違いだったとしても」

『聖杯』を手に。
日本をブリタニアから救済する。
支配された国ではなく───ブリタニア人だけではなく、日本人も安全に暮らせる国を。
ユフィの願いを叶える。
数多の魂を糧に顕現する聖杯を手にし、多くの人間の尊厳を踏み躙り、願いを叶える。
我がサーヴァントと共に───勝ち残る。

「だから、力を貸してくれ───マスカー」
「ええ、喜んで。……それぐらいならお安い御用ですよ」

カシャリ、と音がする。
巨大な荷物。ソレに幾重にも備え付けられた仮面。
それ一つ一つが、とてつもない神秘を秘めており───その全てが彼の宝具である。
そう、この人物が。
数多の英霊の中でも数える程しか該当する者がいないというクラス……マスカー、仮面のサーヴァントである。

「ええ、貴方なら出来る出来る。貴方の力を信じなさい。
私の仮面を使えば───貴方に不可能は無くなるでしょう」

フォッフォッフォッ、っと薄気味悪い声が辺りに響く。
彼の手元には幾つもの仮面が。
彼が持っていたものから、時の勇者が集めたものまで。
様々なら仮面が彼の手の内に出現する。

「残念ながら私はコレしか能がないサーヴァントでしてね……私が戦うことは出来ません。
私が出来るのは───こうして、お面をお貸しするのみ。
顔を隠す仮面と、力ならば私が貸しましょう。手を降すのは、貴方です」
「ああ……わかっている」

ニヤニヤと不気味な笑みからは、感情が読み取れない。
それでも、少年───枢木スザクにはこの手しかないのだ。
仮面を被り。不可思議な能力を得て他人を殺す。
忌み嫌った友……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと酷似したその姿で戦争に赴く。
この度、枢木スザクは修羅となる。
愛した人と護るべき人の、今は亡き二人の理想を叶えるべく。
心を仮面で隠し、全てを殺す───








▲ ▲ ▲


908 : ◆Cb.PWiR... :2015/01/18(日) 15:59:02 D2WVbr2I0
───マスカー。仮面のサーヴァント。
その真名を、『お面屋』という。
本名。目的。全てが不明───挙げ句の果てには真名すら個人の名称ですらない。
故に、このサーヴァントには真名が無い。
あるのは『お面屋』という記号のみ。
この場にサーヴァントとして召喚された理由すらも不明。
サーヴァントとしての願いすらあるかどうか。
しかし、不明だからと言って甘く見てはいけない。
仮面とは顔を隠すもの。
仮面とは表情を隠すもの。
仮面とは心を隠すもの。
───もしかするとマスカーは重大な何かを狙っているのかも、知れない。


909 : ◆Cb.PWiR... :2015/01/18(日) 16:00:27 D2WVbr2I0
【クラス】
マスカー

【真名】
お面屋@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A+ 幸運C 宝具A

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
仮面:EX
仮面のサーヴァントのクラススキル。
『仮面』に関することならば彼に知らないことなど何一つない。

【保有スキル】
他者変化:A
他者の姿を変えるスキル。
このスキルのおかげで、己のマスターや他者に宝具を装着させることで相手が何者かに関係なく強制的に姿を変えさせる。

真名消失:A
彼の真名は「お面屋」という記号のみ。
個人を指す真名は不明なため、正体を特定することは極めて難しい。
【宝具】
『姿を変えし千差万別の仮面』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

彼がマスカーたる所以の宝具。
数多くの種類があり、被るとそれぞれの能力を発揮し、筋力C、耐久C、俊敏Cの能力を得る。
例えば「ウサギずきん」ならば俊敏がAにまで上がり、「ゴロンの仮面」ならば筋力がAにまで上がり、「デクナッツの仮面」を被ればC相当の千里眼スキルを得る。
他にも様々な仮面があり、様々な能力がある。
しかしこの宝具はマスカー本人は被ることはできない。
あくまでマスカーは保有者であり、使用者ではないのだ。

『仮面被りし鬼神の風貌』
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:- 最大補足:-

彼の時の勇者が使用したと言われる仮面。
被るとを筋力A 耐久B 俊敏Aを取得し、両手剣を出現させることができる。
しかし案の定、こちらもマスカー本人は被ることはできない。

『ムジュラの仮面』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

───ある地方で呪術に使用されていた仮面。
元はマスカーのものらしいが、現在は「ムジュラの仮面」自体が英霊として存在しているため呼び出すことができない。
「ムジュラの仮面」を呼び出すにはまさに、それ相応の奇跡を必要とするだろう。

【weapon】
なし

【人物背景】
お面屋。
本名。年齢。住所。全てが不明。
願いすら不明の仮面持ち。


910 : ◆Cb.PWiR... :2015/01/18(日) 16:01:38 D2WVbr2I0
【マスター】
枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュR2

【マスターとしての願い】
聖杯にてユフィとナナリーの願いを実現させる。

【weapon】
騎士としての剣

【能力・技能】
銃弾の嵐を避けられる程度の運動性能。
かつて友人より与えられた『生きろ』のギアス。

【人物背景】
イレブンと呼ばれる、かつての日本人。
「結果より過程」「間違った方法で得た結果に意味はない」と考えておりブリタニアに支配された日本をブリタニアの中から変えるという理想を持ち、ユーフェミア皇女の騎士として任命されたが日本の仮面の英雄・ゼロが何らの力によりユーフェミアを日本人虐殺の奇行に走らせ射殺する。
それをギアスの力と知ったスザクはゼロを追い詰め、その正体を暴く。
その正体が親友、ルルーシュだと知ったスザクはルルーシュをシャルル皇帝に売り、自らの地位を帝国最強の騎士の七番目、ナイト・オブ・セブンへとしょうかくさせる。
しかし様々なことが要因でゼロが蘇り、その後の戦争で死に瀕したスザクは「生きろ」というギアスが発動、生存のためだけに殲滅兵器・フレイヤで東京の一角を焼き払ってしまう。
今回はその後より参戦。
もはや過程などに執着している余裕はない。
ルルーシュと同じ思想のもと、ルルーシュと同じ様に仮面を被り彼は外道に堕ちる。

【方針】
スザクが戦いスザクが殺す。
お面屋は仮面を貸すのみ。


911 : ◆Cb.PWiR... :2015/01/18(日) 16:02:41 D2WVbr2I0
投下終了です。
枢木スザク&マスカー(エクストラクラス)でした


912 : ◆GOn9rNo1ts :2015/01/18(日) 19:43:55 zk5qn57c0
皆さん投下乙です!
こちらも投下しますね


913 : Ruler and Dominator ◆GOn9rNo1ts :2015/01/18(日) 19:44:27 zk5qn57c0

「弁明を聞こうか」

「弁明する事柄について、心当たりがないわ」

公安局、執務室。
東京の治安を維持するため活動を続けるその組織の、最も深き場所で。
静かに、睨み合いは始まった。

「それでは言い方を変えるとしよう。
昨日発生した執行者に関する顛末について、説明を」

「……貴女から執行者の発生を知らされた私は、執行官数名を連れて現場に急行。
対象を『秩序施す執行』(パラライザー)により無力化、拘束して本部に移送。以上」

「なるほど。確かにそれだけならば、君の行動は賞賛さえ受けるものだろう。
迅速な行動、怪我人も出さずに執行者を確保、大したものだ。
――――しかし、今、私が問題にしているのは君が『敢えて話していないこと』なのだよ」

監視官、常森朱は沈黙する。

「君は執行者の犯罪係数が300をオーバーしたにも関わらず説得を続け、300以下になってから鎮圧した。
執行ではなく、鎮圧を選んだ。大した活躍だったそうじゃないか。
人の口に戸は立てられぬよ、常森監視官。それが武勇伝ならなおさらだ」

「それの何が悪いことなの?たとえ――」

「たとえNPCだからといって、命をむやみに奪う必要はない。そう言いたいのかね、君は」

目は口程に物を言う。
朱は真っ直ぐにこの部屋の主、公安局局長である禾生壌宗を見つめ返した。

「君とて、現状を理解しているものだと思っていたがね。
私たちが現在相手にしている『執行者』は、今までのものとは危険度が違う。
万が一逃亡、いや、取り逃がさずとも町の中心で声高に主張されてみろ。
『この世界は偽物で、私たちは作られた存在なのだ』などと。
エリアストレスの拡大、などというレベルでは収まりきらない」

「だから、『この世界の真実に気付いてしまった』NPCは有無を言わさず執行するべきだと?」

「少し違うな。『聖杯戦争に悪影響を与える可能性のある存在』は誰であろうと、有無を言わずに執行するべきなのだ。
それこそ聖杯が『ルーラー』、シビュラシステムに与えた役割なのだから」

この世界において、犯罪係数は『聖杯』の意志によって変化する。
この世界において、罪とは『聖杯戦争を阻害すること』に他ならない。


914 : Ruler and Dominator ◆GOn9rNo1ts :2015/01/18(日) 19:44:47 zk5qn57c0

「そもそも、数百万の人が流動し全国各地に物品が流通する都、東京を隔離すること自体に無理があったのだ。
どれだけ嘘に嘘を塗り重ねようとも、どこかで必ず綻びが出る。
マスターやサーヴァント、こちらの管理しきれない存在がいるのならば尚更だ」

「要は、私たちは聖杯の尻拭い役というわけね」

「そう、気を悪くしないでもらいたいものだ。
貴重なリソースを割いて君を召喚しているのも、この状況下で一番『不慮の事態に対処できる』人物だと私たちが判断したためだ。
こちらとて、支援は惜しまんさ。執行官には選りすぐりのNPCをつけるし、君の希望通り敗退したマスターをこちらで保護する準備も整えつつある」

だからこそ、と釘を押す。

「今回のような対処法は困るのだよ。
都市伝説、謎の失踪、怪死。現時点でも市民たちのストレスは相当なものだ。
本日、全てのサーヴァントが出揃い、聖杯戦争が始まったことは聞いているな?よろしい。
これからは今までの比ではない規模の混乱が予想される。
執行すべき時は躊躇わず執行し、貴重な時間を無駄にしないよう心掛けたまえ」

あまり納得のいかぬ様子の朱に、『ルーラー』は駄目押しの一言を投げかけた。

「忘れるな、常森監視官。君は唯一、暴走したサーヴァントを執行できる存在だ。
宝具の使えぬNPCの執行官など、サーヴァントにかかれば魂食いの餌に過ぎない。
君が消えれば、私が新しい執行官、監視官を召喚する間にどれだけの被害が及ぶか、分からぬ君ではないだろう?」

君の愛する市民たちを守るために、まずは君自身を大切にしたまえ。
そんな、まるで血の通った通り文句を投げる。

「……最大限、努力はするわ」

「よろしい、下がりたまえ。これから忙しくなる。今日はもう休みたまえ」

「ずいぶん、人間のフリが様になってきたわね」

己の『使い魔』の精一杯の皮肉に、秩序の怪物は頬一つ動かさずに言葉を返した。



「サーヴァントとして召喚された以上、少なくとも聖杯は私たちを『人間』とみなしているようだね」



◇ ◇ ◇



常森朱が退出してから、幾ばくか。
誰もいないはずの、執務室で。
彼女は、誰かと何かを喋っていた。


「……ああ、分かっているさ。
『鉄砲玉』は最大限、使い潰さねばね」


「そちらの件は……既に準備が整っている。
殺すわけなどないだろう、貴重な『魔力タンク』を」


深い、深い、闇の中。
シビュラシステムは禾生壌宗の皮を、醜く歪ませた。


915 : Ruler and Dominator ◆GOn9rNo1ts :2015/01/18(日) 19:45:15 zk5qn57c0

【クラス】ルーラー
【真名】シビュラシステム
【出典】PSYCHO-PASS -サイコパスシリーズ
【性別】不明
【属性】秩序・悪

【パラメーター】
筋力:- 耐久:- 敏捷:- 魔力:- 幸運:- 宝具:EX

【クラススキル】
真名看破:?
認識したサーヴァントの真名・スキル・宝具などの全情報を把握する。
シビュラシステムはドミネーターを通じて対象を認識し、把握する。
一方、常森 朱をはじめとする監視官、執行官の場合は腕時計型交信器よりシビュラを通じて情報が送信されてくるため、出会って即座に把握というわけにはいかない。
また、真名を秘匿する効果がある宝具を持っていれば、このスキルの効果を防ぐことが出来る。

【保有スキル】

免罪体質:B
シビュラシステムは犯罪係数が一定以上は上昇しない、約200万人に1人の特異体質者の集合体である。
同ランク以下の精神に干渉する宝具、スキル、その他諸々を完全にシャットアウトする。

魔力変換(電気):C
供給される電気を魔力に変化する。
シビュラシステムは生身の肉体を捨てているため、食事を必要としない。
『ルーラー』は東京の余剰電力を密かにシビュラシステム本体の設置されている設備に供給している。

執行命令:D
聖杯より与えられる索敵能力。執行者の発生を察知できる。
執行者の発生から監視官、執行官にその情報が届けられるまで幾ばくかのタイムラグがあるため、捜査が後手後手に回ってしまう欠点がある。
また、対象者が魔術的、科学的なジャミングを使用していた場合などは聖杯が執行者の発生を察知できない場合がある。
更に『帝都物語』の影響により東京は聖杯の管理が行き届かない場所に変貌しているため、正確な察知は難しいだろう。

秩序の番人:C
シビュラシステムは偽りの東京において『禾生壌宗』という名義で公安局局長の身分を持つ。
また、魔力を消費し公安局職員を使い魔として召喚することが可能。
但し、彼らは宝具を使用するために疑似サーヴァントレベルにまで高度な存在として召喚されるので、それ相応の魔力を消費し続けることになる。
更に、彼らは生前においてあくまでも鍛えた人間程度の力しか持たなかったため、戦闘力はサーヴァントに大きく劣る。
後述の宝具を使用しなければ相手にさえならないと思われる。

科学の叡智:B
シビュラシステムは有事の際に近未来の捜査道具であるドローン、ダンゴムシ等を遠隔操作で使用することができる。
このスキルのランクが高いほど、そのサーヴァントの持つ神秘性は薄れていく。


916 : Ruler and Dominator ◆GOn9rNo1ts :2015/01/18(日) 19:45:34 zk5qn57c0
【宝具】

『神亡き正義に法は来たりて』(シビュラシステム)

ランク:E
種別:対罪宝具
レンジ:∞
最大補足:∞

シビュラシステムそのものがサーヴァント、『ルーラー』であると同時に宝具。
国を、人を、数値化した秩序によって統治したという逸話により、『ルーラー』と対峙したサーヴァントの属性が混沌である場合、
もしくは生前に大きな罪を犯していた場合は後述宝具の威力が上がる。
逆に、属性が秩序のサーヴァント、生前に善行を重ねていたサーヴァントに対して後述宝具の威力を大幅に下げる。
また、人々に真実を隠し続けながら日本を支配してきたシビュラシステムは数百の脳という巨大なサーヴァントの気配を外部に漏らすことなく活動することができる。
ランクがEなのは神秘という存在を排除し科学的合理性のみによって成り立つ宝具のため。

『執り行うは聖人の白』(ドミネーター)
『執り行うは罪人の黒』(ドミネーター)

ランク:E〜EX
種別:対人宝具
レンジ1~3
最大補足:1

銃口を向けた相手の犯罪係数を計測し、その数値によって形態を変える近未来の拳銃。
原作では秩序の怪物たるシビュラシステムによる判断が行われていたが、今回の聖杯戦争では管理者たる東京聖杯の判断を基準に置き、対象の犯罪係数が変化する。
聖杯からのバックアップにより命中判定に大きく補正がかかる。
監視官が使用する場合の真名は『執り行うは聖人の白』
執行官が使用する場合の真名は『執り行うは罪人の黒』

形態

『秩序施す執行』(パラライザー)
電気ショックを与え対象を痺れさせる弾丸。ドミネーターより発射される。
聖杯により軽度の執行対象とみなされた場合、このモードが選ばれる。主に鎮圧用。

『秩序与える執行』(エリミネーター)
対象を内側から膨張するように破裂させる弾丸。ドミネーターより発射される。
サーヴァントの霊核そのものを破壊出来るため、当たり所が悪かった場合再生不可能。
聖杯により重度の執行対象と判断された場合、このモードが選ばれる。

『秩序齎す執行』(デコンポーザー)
元々は人間ではなく対物用。ドミネーターより発射される。
本来は対象にスイカ大の風穴を開ける程度の破壊力の弾丸。
しかしサーヴァントが超常の存在である以上、スイカ大の風穴では威力不足となる可能性がある。
そのため、今回は聖杯よりバックアップを受け威力は『無制限』である。EX級の宝具、耐久さえ貫き破壊することが可能。
それ相応の魔力はドミネーター使用者自身も消費するものとする。EX級を執行した場合、使用者の現界は保証できない。
エリミネーターでは対象を執行しきれないと聖杯が判断した場合、このモードが選ばれる。

【weapon】
携帯型心理診断鎮圧執行システム(ドミネーター)
詳しい性能は宝具の項参照のこと。

【人物背景】

西暦2112年の日本で運用されている社会制度。管轄は厚生省。
サイマティックスキャンにより読み取った人々の生体力場を解析しそれをPSYCHO-PASSとして数値化し
それをもとに精神の健康状態、個人の能力を最大限生かした職業適性を示し人々が最適で充実した人生を送れるように支援を行う包括的生涯福祉支援システム。



その本質は免罪体質者と呼ばれる他者への共感をせず物事を俯瞰して判断できる人間の脳を大量に使用して成り立つバイオコンピューター。
市民にこの事実は知らされていない。


【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を聖杯の意志に従って進行する(?)


917 : ◆GOn9rNo1ts :2015/01/18(日) 21:43:49 zk5qn57c0
投下終了します


918 : ◆q4eJ67HsvU :2015/01/18(日) 23:41:07 QGi5ekSo0
短いですが、投下します。


919 : 鹿目まどか&アサシン  ◆q4eJ67HsvU :2015/01/18(日) 23:41:42 QGi5ekSo0



 ――これは、ひとりの少女の物語です。



 少女の名前は、鹿目まどか。

 彼女は極普通の、どこにでもいるような女の子でした。

 ある日まどかは、白くて可愛らしい生き物を見つめます。

 名前はキュゥべえ。まどかは、キュゥべえからお願いをされます。

 それは魔法少女となって、この世界を脅かす魔女と戦ってほしいというものでした。

 魔法少女になりさえすれば、どんな願いもひとつだけ叶えてもらえる。

 まどかは考えます。そこまでして叶えたい願いってなんだろう、と。

 しかしまどかが迷うだけの時間は、悲しいことに与えてもらえませんでした。

 まどか達が出会った魔法少女の先輩、巴マミ。

 想い人を救うために契約したまどかの親友、美樹さやか。

 隣町からやってきた歴戦の魔法少女、佐倉杏子。

 彼女達は、定めと呼ぶにはあまりに哀しい宿命に翻弄され、散っていきました。

 そして、暁美ほむら。

 まどかを陰ながら見守り続けてきた、謎めいた少女。

 彼女の戦う目的、その意味を、ついにまどかは知ります。

 ほむらが幾度となく同じ時間を繰り返し、自分を守るために孤独な戦いを続けていたことを。

 ほむらにとってまどかは、初めて出来た大切な友達だということを。

 自分のことすらまだ知らないまどかのために、これからも戦っていくことを。

 まどかは自分だけが守られていたことを知りました。

 そして、「わたしの最高の友達」のために、何が出来るのかを考えました。

 外は大嵐。

 最後の舞台装置の魔女「ワルプルギスの夜」が見滝原へと襲来したのです。

 今もほむらは、まどかと見滝原を守るためにたった一人で勝ち目のない戦いを続けているでしょう。

 まどかは決意しました。

 そしてほむらの、キュゥべえの元へ、ワルプルギスの夜が起こす嵐のほうへと、歩みを進めて――


920 : 鹿目まどか&アサシン  ◆q4eJ67HsvU :2015/01/18(日) 23:42:12 QGi5ekSo0







 ――その時、通りすがりの特異型ヘルヴォールが『殺戮魔剣#13(スリータイムブレード)』を繰り出してワルプルギスの夜を一刀両断しました。








 こうして全ては救われたのです。めでたし、めでたし。







   《エンディングテーマ『悲しみキャブリケーション』》
        歌:妄想キャリブレーション 
    作詞:利根川貴之 作曲:利根川貴之 坂 和也
       編曲:坂 和也&Wichy.Recordings


(イントロ)テレテレッテレレレ テッテテレレッ

      テレテレッテレレレ テッテテレレッ

      チャラララッチャララ チャラララッチャララ チャーチャラッチャララチャラッチャー

      チャラララッチャララ チャラララッチャララ チャーチャラッチャララ(ピロピロピロピロピロピロピロピロ)

      チャラララッチャララ チャラララッチャララ チャーチャラッチャララチャラッチャー

      チャラララッチャララ チャラララッチャララ チャーチャラッチャララ(ピロピロピロピロピロピロピロピロ)テテッテー



( う た )君が目指した デスティネーション

      最後の言葉 スローモーション 

      聞きたくない 知りたくもない

      ちぐはぐになる コンビネーション

      泣き出しそうだ グラデュエーション

      私どんな顔でいればいいかな

      冗談だよね?

      「好きだよ」って言ってよ!







      《 AVALON NETWORK 》


921 : 鹿目まどか&アサシン  ◆q4eJ67HsvU :2015/01/18(日) 23:42:30 QGi5ekSo0
【クラス】
アサシン

【真名】
特異型ヘルヴォール@実在性ミリオンアーサー

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷A 魔力D 幸運C 宝具B


【属性】
中立・中庸


【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントはおろか猿でも発見することは非常に難しい。


【保有スキル】
湖の騎士:C
断絶の時代の技術により「因子」を使って「湖」によって製造される、アーサーに使える騎士。
ランクが高いほど優秀に調整された騎士であることを示す。

心眼(偽):C
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
騎士の因子としてマーリンに組み込まれたものであり、本人の才能ではない。

アヴァロンネットワーク:?
このスキル情報は検閲を受けています。
このスキル情報は検閲を受けています。
このスキル情報は検閲を受けています。

【宝具】
『殺戮魔剣#13(スリータイムブレード)』
ランク:B 種別:対譚宝具 レンジ:- 最大補足:1人
物語に介入し、結末を「暗殺」する特異型ヘルヴォールの必殺宝具。
対象が持つ過去の物語へと入り込み、その中で登場人物を一刀両断することでその過去、そして現実を改変する。
ただしひとつの物語に入れるのは一度だけであり、暗殺できる登場人物も一度の介入につき一人のみ。
また、その物語の語り部――つまりその記憶の持ち主だけはこの宝具で暗殺することは出来ない。

【weapon】
両刃の長剣。

【人物背景】
ブリテン昔話「さるかに合戦」に登場する、物語の結末で猿を一刀両断した通りすがりの騎士。



【マスター】
鹿目まどか@劇場版魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
 不明。

【weapon】
なし。

【能力・技能】
膨大な因果量を持つが、魔法少女としては未契約。

【人物背景】
 見滝原中学校に通う中学二年生。ある日キュゥべえの『声』を聞いたことで、魔法少女の戦いに巻き込まれる。
 (この時間軸の)まどか自身は知らなかったが、魔法少女暁美ほむらの時間遡行の影響で膨大な因果を抱え込んでいる。
 心優しいが臆病で一歩を踏み出すことの出来ない性格であり、周囲の魔法少女達の破滅を前にしても何も出来ないでいた。
 しかしほむらの戦う理由、この世界の魔法少女達の歴史と運命を知り、世界の理を変えるためにひとつの決断をする。
 そして最後の一歩を踏み出した直後に赤い月に召喚され、アサシンによって「物語」を改変された。
 
【方針】
 不明。


922 : ◆q4eJ67HsvU :2015/01/18(日) 23:42:52 QGi5ekSo0
投下終了しました。


923 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:49:20 DEomqvMA0
私も投下します


924 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:50:11 DEomqvMA0

空が好きだった。
どこまでも続く、自由な空が。

「絶対に、共に生きて帰りましょう」

そんな空を自由に流れる雲を見て、自由な生き方に憧れた。
飛行機に乗って、ただ空を自由に飛びたかった。

「ああ」

そう思ってから、どれだけの月日がたったのだろう。

「この任務さえ達成できれば、大手を振って帰れるさ」

どこまでも続くこの空は、故郷の空にも繋がっている。
そう信じて、そう周囲に――そして自分に言い聞かせて、何とか前へと進んできた。

「そうしたら、また、見られるようになりますよね」

信じていた。
どこまでも、この空は繋がっているって。
どこまでも、この空は自由だって。

「ああ。そうしたら、いつだって見られるようになるさ」

だから自分も、この空の下を歩き続ければ、いつかは故郷に帰れるって。

「故郷に咲いた、あの綺麗だった花達を、いつだって――」

嘲笑うような青空は、私達を見下し続けたあの空は、どこにも繋がってなどいなかったというのに。


925 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:51:56 DEomqvMA0






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






「……なるほど」

召還されたヘルガの目に、巻き毛の男の姿が映る。
さして驚く様子もなく佇んでいるところを見るに、彼こそが自分を召還した張本人なのだろう。

「貴様が私のマスターか」

分かってはいても、改めて問い質す。
不遜なヘルガの出方に対し、気分を害した様子もなく、男はゆっくり口を開いた。

「私の名は、ファニー・ヴァレンタイン」

肥満体型のようでいて、筋肉質のようでもある。
非常に不思議な体格だった。
骨格の情報から戦士であるのかどうか窺うことができない、群衆に潜伏するのに向いた体格だと言えよう。
もっとも、隠す気のない殺気によって、戦士であることは分かっているのだけれども。

「合衆国大統領だ」

合衆国。
それがどの国を指しているのかヘルガには分からなかったし、事実ヴァレンタインが大統領を勤める『アメリカ合衆国』をヘルガは知らなかった。
しかし――その単語は、ヘルガの体を突き動かすには十分な力を持っていた。


926 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:52:52 DEomqvMA0

「…………ッ!」

その行動は、単なる反射に近かった。
ヘルガの国の戦争相手が『合衆国』で、そのトップが『大統領』と呼ばれていた。
それだけだ。

ただ、それだけ。

ただそれだけのことが自身を突き動かしたことに、ヘルガ自身が驚いていた。
もっとも驚愕を自覚したのは、愛用のナイフをヴァレンタインの喉へと突き刺した後だったのだけれども。

「なん……だと……!?」

何度も何度も洗脳のように擦り込まれていた反合衆国教育が(ついでに言うならあれほどまでに嫌っていた洗脳教育が)
予想以上に体に染み着いていたことには、大いに驚かされた。

そして、偽物である可能性や冗談である可能性を考慮しながらも襲いかかってしまう自身の思慮の浅さや、
護衛の存在も無視して挑みかかった自身の捨て鉢具合にも驚いた。

そんな状況にも関わらず、銃よりも少ない手順で命を奪えるナイフを武器に選べたことにも、僅かながら驚いている自分がいた。
まるで初めて見に行った『ぱれぇど』のように、この一瞬には驚きが詰まっていた。

しかし、何より驚いたのは――

「ばっ……」

――死体が、忽然と消えたことだった。

「馬鹿なッッ!!」

刺してしまった以上、相手の正体が何だったにせよ、とどめを刺すしかないだろう。
仮にもマスターだったのだが、過ぎたことはしょうがない。
冷静に殺し切ってしまうより他ないのだ。
そう思っていたというのに。

「何故死体がッッ……!」

死んでいなかったとしても、それはさほど不思議ではない。
聖杯戦争に参加しようという猛者なのだ、そのくらいは『不思議』に入らないだろう。
仮にそれで反撃を喰らい消滅させられるようなことになったとしても、自業自得だと割り切れる。

だがしかし、仮に死んでいなかったとしても、こうして突然体が消えるということはありえない。
まるで遺跡のワープ装置を踏んだ時のようだが、生憎それらしき装置は見当たらなかった。
床にあるのは、奇襲の勢いで倒されたヴァレンタインの腰掛けていた椅子だけだ。


927 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:54:28 DEomqvMA0

「いい反応だ」

そう――生きていたこと自体は驚くに値しないのだ。
こうして瞬間移動さえしていなければ、仕留め損なったこと自体に疑問などない。
何せ相手はあの『合衆国』大統領だ。
反応が超人じみていようが、異常に頑丈だろうが、それこそ仕留めたのが影武者で背後から本物が現れようが「なるほど」で済む。

「実に気に入った」

しかし、しかしだ。
死体が忽然と消えて、背後にこうして無傷の姿で立っていることは解せなかった。
仮に先程襲撃したのが偽物だったとしても、その偽物が転がっていないのはおかしい。
確かに肉を抉る感触はあったことから、あれが幻覚の類でないことは間違いないというのに。

「どこの国の軍人かは、この際いい」

あまりの事態に、声のした方に銃撃を行えなかった。
思考が固まり、致命的な隙を生んだのだ。
こうなった以上、上下関係は――主導権の持ち主は明白。
下手な動きを取れなくなった。

「何故攻撃を加えてきたかも、尋ねないでおくとしよう」

下手な動きを取れなくなった――そんなことを考えた自分に、思わず自嘲の笑みが漏れる。
どうせなら、無思慮な突撃を行って、華々しくお国のためにの名の下死んでしまえればよかったというのに。

「そんなことはブレックファストのパンに何を塗るのかどうかという論争のように“どうでもいいこと”だ」

この期に及んで、まだ生き永らえようというのか。
大事な戦友達は皆、もうこの世にはいないというのに。

「大切なのは“我が国にとってその腕前が必要かどうか”という一点」

名誉の戦死などという巫山戯た行為に殉じることは、とうとう出来ず終いだった。
かと言って、私達を裏切ってでも帰ろうとしたオクノ中尉のような真似も、自分には出来なかった。

「我がサーヴァントとして認めよう」

結局、私は、何がしたかったのだろう。
私は、何が出来たのだろう。

「どうやら敵対国の兵士のようだが、悪いようにはしない」

せめて誇り高くあるように。
せめて人として国に帰れるように。
せめて部下達に何かしてやれるようにと、血反吐と絶望でぬかるんだ道をひたすら進んできたはずなのに。

「国が大事で、我が合衆国のためには闘えぬというのならば、それでもよい」

もがき苦しみ、あがくことすら疲れたヘルガに、ヴァレンタインが確固たる意志を宿した瞳を向ける。
逸らしてしまえば楽だと分かっていながらも、その視線から瞳を逸らすことが出来なかった。

「合衆国が聖杯を手にした暁には、そちらの国に多大な利益をもたらすことを約束しよう」

ヘルガには、もう、何をすればいいのか分からなくなっていた。
かつてはヘルガにも、ヴァレンタインのような確固たる意志が宿っていたかもしれない。
けれどもいつしか意志は泥にまみれてしまい、単なる妄執へと成り下がった。
今ではもう、最初の時に何を掲げていたのかすら、思い出すことができないでいる。

「個人的な望みでも構わん。我が国に害を成さぬ範囲で、望みを叶えてやろう」

その聖杯に願うものすら、何もない。
何を願えばいいのかすら分からない。
何が願いだったのか、もう、自分にも分からない。

「わたしには、合衆国が“すべて”だ」

だから、少しだけ、ヴァレンタインの瞳が眩しく見えた。
己の正当性を疑わず、ただ真っ直ぐに、国に全てを捧げている。
そしてそのためならば、多くの命を手にかける覚悟すらある。

「合衆国に聖杯の恩恵を与えるためなら、有能な者の国籍は問わん」

だから、少しだけ、ヴァレンタインの目を見るのが辛かった。
眩しすぎるというわけではない。
その国に対する強い想いと、茨の道を突き進む姿が、国の教育に思考を奪われたかつての部下を見ているようで。
少しだけ、真っ直ぐ瞳を見つめ返すのが辛かった。

「国のために敵国大統領に挑んでの討ち死に――」

立ち尽くすヘルガに、ヴァレンタインが歩み寄る。
手を伸ばせば殴りつけられる距離を超え、とうとう顔が数センチの所まで近づいてきた。

「それが成せなかった時点で、こちらについて国に利益を持ち帰る他、選択肢はない」

その通りだ。
本当なら、すでに終わったこの命、自称大統領の首を獲るのに使うべきだった。
もしも獲れれば部隊の皆の名誉も回復できるし、もしも駄目でも部下同様戦って散ったと言うことが出来た。


928 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:55:59 DEomqvMA0

「ヴァレンタイン、と言ったか」

だが、それももう駄目だ。
仮に今反抗しても、それは単なる無駄死でしかない。
多くの部下の屍の上に立っている以上、何の意味もなく死ぬことは許されない。
かといって、止まることも、もう許される立場ではないのだ。

「お前の望みは何だ」

国のため。
ヴァレンタインはそう言っていた。
それがどういう意味なのか。果たして何を望み、何をしようというのか。
返答しだいでは、無駄死と分かっても挑まなくてはならなかった。
もしも母国に害が及ぶようなものならば、無駄死と分かって挑まなくてはならなかった。
あの国は、アヤカが、皆が、守ろうとしたものなのだから。

「……私はずっと、ナプキンを取るべく聖なる遺体を集めていた」

言うと、くるりとヴァレンタインは背を向けた。
一見無防備ではあるが、不思議と襲いかかろうという気にならない。

「勿論聖なる遺体も頂く。それも聖杯の力抜きでだ」

そう言うと、ヴァレンタインは部屋の隅に置かれていた袋から、何かを取り出しテーブルへと並び始めた。
円形のテーブルの端にそって、等間隔で並べられているソレを、ヘルガが見つめる。

「ナプキンは――君の国にもあるか?」

ヴァレンタインの口調が、少々砕けたものとなる。
自然と距離を詰めることで、心を掴もうということか。
それを知ってか知らずか、ヘルガは並べられたものを見つめるだけで、特に返事はしなかった。

「まあ、いい」

それを見、特に不機嫌になるでもなく、ヴァレンタインはテーブルへと向き直った。
そして先程倒した椅子を持ち上げると、テーブルの正面に置く。

「ナプキンとは、食事の際に一人一つ使うものだ」

テーブルへとヘルガもまた歩み寄る。
丁度テーブルに置かれたモノの間に来るよう、ヴァレンタインは腰掛けていた。

「その際、右のナプキンを取るか、それとも左をナプキンを取るか、どう思う?」

ヘルガは決して愚かではない。
質問の意図することは凡そ分かっていたし、それに何より、ヘルガの国ではこういう場合は――

「最も偉い人間が最初に取り、下は全てその者に倣う、か?」
「その通り」

言うと、ヴァレンタインは右手側に置いたナプキンを手にとった。
そして、ヘルガに向き直ると、力強く宣言する。

「そして最初にナプキンを取らせる力が、先程言った“聖なる遺体”にはある」

握りつぶされたナプキンが、その握力でその身を歪める。
サラサラでふわふわなボディがすっかりしわくちゃである。
よもやさらふわがしわくちゃに進化するとは、これは怒った業界人に伝説の暗殺者さらっさらのサラ13を差し向けられても文句は言えない。

「そして――聖杯が持つ力がこれだ」

今しがたくしゃくしゃにしたナプキンを、ヴァレンタインがヘルガに向かって投げ捨てた。
さらさらのふわふわで夜も漏れないパーフェクトボディが、見るも無残な姿と化している。

「わたしの国では、ナプキンとはもっと違う形状をしていた」

ちなみにこの国でもテーブルの上に置くナプキンはそんな形状をしていない。
それは女性が股間に装備する武具だ。

「しかし、この国ではコレをナプキンと認識している」

そんな事実はない。

「これを盗って来た裏手の店でも、コレをナプキンとして売っていた。
 少なくとも、この国の人間はコレをナプキンと思い、そして疑うことすらしない」

繰り返すが、決してそんな事実はない。

「聖杯とはそういうものだ。ナプキンというものへの認識を捻じ曲げる力を持っている」

その能力は人智を超え、願いを叶える。
世界の常識すら捻じ曲げるし、願いを叶えた者以外誰一人として違和感を抱くことはないだろう。
こうしてナプキンと書かれた生理用品を再度握りしめているヴァレンタインのように。

「この力は、勿論我が合衆国のために用いる」

その言葉に、具体性は無い。
傲慢さを感じ取れるし、そのために腹に何かドス黒いものを秘めていることも分かった。

「“聖杯”と“遺体”――両方を得るのは、我が合衆国だッッ」

しかし――もう、どうでもよかった。
この大統領が自身の国のために全てを捧げるつもりなのが分かれば、もう、後はどうでもよい。
例え聖杯を用いた結果、世界の認識が歪み故郷が少しおかしくなっても、今のヘルガには関係がない。
何せ元々狂った国だ、多少なりとも狂った所で変わりはあるまい。
いや、むしろ、少し正常になる可能性すらあった。

直接的で分かりやすい害がないのなら、もう、どうでもよくなっていた。


929 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:57:23 DEomqvMA0

「わたしは答えたぞ、次は君が願いを答える番だ」

願いは、あった。
部下が、そして自分自身が幸せになれることだ。

「……願いは、ない」

願いは、あった。
けれどもそれは、過去のこと。

「それこそ、国がどうなったとしても、もう、私には関係がない」

あの日、モグラ乗りに敗れた時。
あの日、信頼していたオクノ中尉に背後から撃たれた時。
自分の生は終わったのだ。
戦争は、終わったのだ。
国に帰る事もできぬまま、確かにあの時終わったのだ。

「帰る場所も守るべき場所も、今の私には、もう無い」

だから、本当ならば、大統領を仕留めることで、せめて部下への餞にしたかった。
せめて大統領の手にかかって死ぬことで、再度部下の元へと行ってしまいたかった。
けれどももう、その2つともが望めない。
それをしても意味がないことを理解できるほど、冷静になってしまっている。

「聖杯の力は不要、と?」

聖杯の願いを使えば、確かにあの日に戻ることができるかもしれない。
しかし、戻ってどうする。
あの辛く苦しい地獄の日々に舞い戻り、再び部下に終わりの見えない苦行を強いると言うのか。

「……ああ」

聖杯の願いを使えば、平和な祖国を作ることも、部下に居場所を作ることも出来るかもしれない。
しかしそれは、自分が、そして部下達が願った『故郷』ではない。
皆が求めていたものは、狂っていても幸せそうに笑っている故郷の家族が、自分達を受け入れてくれる光景だ。

例えばゴンダが家族の元に笑って帰れる世界があったとしよう。
でもそれは、ゴンダの愛した家族ではない。
ゴンダが帰ってくることで破談するような世界を、ゴンダが帰って喜ばれる世界に帰るということは、
家族や故郷を『同じ見た目の別の何か』にするということなのだ。

「ならば、居場所を用意しよう」

聖杯を手に入れ、大手を振れるようになっても、もうゴンダ達は還らない。
皆死んでしまったのだ。
それを蘇らせることは自然の摂理に反しているし、蘇らせたらきりがなくなる。
ついでに言うと、自分に死の記憶があるということも、躊躇の理由の一つだ。
もうあんな想い、皆にはさせたくない。

「我が合衆国の中に」

それに、皆の家族ももう亡くなっているだろう。
少なくとも、外の景色を見る限り、自分が命を落としてからそれなりの時が経っているようだ。


930 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:58:25 DEomqvMA0

「……ああ、そうだ」

窓の外、ビルに阻まれて狭い空を見上げながら、ふと一つの願いが浮かんだ。

「一つだけ、願いがある」

生きる屍のようにひたすら足を動かしていた時から、ずっと心にあったこと。
妄執と疲労に追いやられ、いつしか自覚することも忘れていた感情。

「あいつらの――部下達の、墓を立ててやってくれ」

死んでもいないのに国葬された、あんな立派なハリボテでなく。
質素でいいから、心からの追悼を込めた、ささやかな皆の墓を。

「故郷の、あの花が咲き誇る場所に」

――どうか、戦い抜いた彼らの魂が、少しでも安らかであるように。

「ああ、いいだろう」

それが、それだけが、ヘルガの願うことだった。
自身のことなど、もう、どうでもいい。
何も出来なかった愚かな大将のせいで命を落とした彼らが、どうか安らかに眠れるように。

「“約束”だ」

傷だらけになった羽は、もはや動かせないけど。
心はもはや空っぽだけど。
せめて最後に部下達に何かしてやるために、もう一度だけ走り出そう。
もう二度と飛べないけれど、せめて遠くまで跳べるよう、命尽きるまで前へ進もう。

「……ならば、このアーチャー、マスターに忠誠を誓おう」

跪きながら横目に見た窓の向こう。
窓枠とビルに狭められた空は、嘲笑うような青空だった。


931 : 名無しさん :2015/01/18(日) 23:59:27 DEomqvMA0

【クラス】
アーチャー


【真名】
ヘルガ@パワプロクンポケット10(バトルディッガー編)


【パラメーター】
筋力D 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具B


【属性】
秩序・中庸


【クラススキル】
単独行動:B
前線に出るのは歩兵であり、総大将は安全な場所に控えているものである。
そのことをよく分かっているからか、基本的に単独行動をものともしない。

対魔術:E+
基本的に人智を超えた能力に対しては無力。
しかし機転を利かせ戦略で部隊の全滅を避ける力には長けている。


【保有スキル】
戦いの歌:C
仲間の攻撃力を上昇させることができる。
無理矢理士気を高揚させるものに過ぎないが、しかしヘルガとその部下達には欠かせないものだった。

ワンショットキル:D
正確な急所射撃で通常より大きな威力のライフル狙撃を行う。
ライフルによる攻撃で集中力を要するため、オブイェクトに指示を出しながらでは使えない。

ピアシングショット:D
貫通性能のあるライフル狙撃を行う。
ライフルによる攻撃で集中力を要するため、オブイェクトに指示を出しながらでは使えない。


932 : 名無しさん :2015/01/19(月) 00:02:17 3CUQPejQ0

【宝具】
『Объект(オブイェクト)』
ランク:B 種別:対城宝具 レンジ:運転手の技量があがるにつれ増える
ヘルガ達独立576中隊最後の切り札。
122mm砲など強力な武装を搭載しているが、その分小回りは効かない。
一撃で戦況を動かす威力を誇るが、その大きさは下手な運用をすると単なる的である。

ヘルガ一人では動かせないが、生前のように指示を飛ばすことで、生前のように動かすことが出来る。
しかしながらオブイェクトと共に命を落とした部下への負い目からか、ゴンダ達乗組員のNPCは配置されておらず、
生前通り指示で動くにも関わらず部下の姿は一切ない。

また、事前に指示を出しておけば、その通り自動で行動させることができる。
その際別行動を取ることは可能だが、その条件は『オブイェクトを別働隊として運用する作戦に自分も参加していること』である。
ヘルガのみ安全な場所でオブイェクトを運用する、ということは不可能。
また、遠隔で細かい指示を飛ばすことは出来ず、詳細な指示を飛ばすには乗り込む必要がある。

余談ではあるが、本来ならば戦車から戦闘機まで戦闘力を有する機体を乗りこなすヘルガは、ライダーのサーヴァントであった。
しかしながらバトルディッガーという戦車に乗るときはライフル狙撃担当で運転をせず、
飛行機乗りとして新たな生を送ることも諦めてしまったため、アーチャーとなっている。
そのこともあってか、オブイェクトの使用にはあまり積極的とは言いがたい。


『捨て駒(ドクリツゴーナナロクチュウタイ)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:不明
後世に名すら残らなかった者達を呼び出し、指示を与えることが出来る。
ゴンダ軍曹、アヤカ曹長、イワノフ大尉、アキラ二等兵といった面子を始め、バドルディッガー編開始時に存命していた576小隊の面々を呼び出すことが可能。
オクノ中尉を含む裏切り者達の部隊ですら、呼び出すことは可能である。
召喚した兵士達は別段強化されておらず、普通の歩兵程度の能力しか持たないが、その数と戦闘経験を活かして作戦行動を取らせることが可能。
死んでも再度召喚が出来るが、万全な状態で呼び出すには傷に応じた休養時間を要する。
部下の魂の安らぎというヘルガの目的の対極に位置する宝具のため、極力使用したくないとヘルガは考えている。


【weapon】
ライフル銃。
量産された兵士用の銃。
ヘルガの愛用で手入れは行き届いており、揺れる戦車に乗りながらでも正確な射撃を行える。


【人物背景】
ムーングロウ帝国の軍人、少佐。独立576中隊指揮官。
かつては戦闘機乗りで国民的英雄にもなったが、英雄の戦死を避けるため女性だけのプロパガンダ部隊の隊長にさせられた。
その部隊が奇襲を受け捕虜になった際、帝国では全滅するまで勇敢に戦った英雄として国葬が行われていた。
逃げ延びた彼女に居場所などなく、今度こそ本当に命を落としてもらうため、同じような“生きていては国が困る連中'を集めた576部隊の指揮を取ることになる。
戦争は合衆国に敗れ終結していたが、それを認めぬ将軍を頭に、彼女達はまだ戦争を続けている。
将軍を皇位につかせ、その口添えで故郷に大手を振って帰るため、3つ揃えると願いが叶うという球を集めていた。
最終的には伝説のモグラ乗りを有するレッドドラゴンを襲撃するも、多くの仲間を失った末、味方であるオクノ中尉の弾丸に倒れた。
オクノ中尉は、ようやく自分もヘルガも皆解放されたと言っていたが――

もしも伝説のもぐら乗りが、彼女達ホワイトタイガーと共に球を集めていたら、未来は変わっていたかもしれない。


【サーヴァントとしての願い】
分からない。
せめて、犠牲となってきた部下達の魂が、安らかに眠れるようにしたい。


933 : 名無しさん :2015/01/19(月) 00:07:06 3CUQPejQ0

【マスター】
ファニー・ヴァレンタイン@スティール・ボール・ラン


【マスターとしての願い】
“聖杯”は我が合衆国が頂くッッ!!


【weapon】
聖なる遺体の心臓部。
同じくアメリカにある聖なる遺体と惹かれ合い、全部集めるとナプキンが取れる。
しかしここは日本だし、遺体なんぞない。


【能力・技能】
スタンド『Dirty deeds done dirt cheap(D4C)』
『いともたやすく行われるえげつない行為』とも呼ぶ。
何かに挟まれることで平行世界を行き来して、そこから武器を持ってくることも可能。
平行世界の同一人物と遭遇した場合、ヴァレンタインを除く全ての人間は対消滅を起こす。


【人物背景】
アメリカ合衆国大統領。
聖人の遺体の心臓部を手にしており、残りの遺体の回収を目論んでいる。
そのカリスマ性を用い、大陸横断レース『スティール・ボール・ラン』を開催。
黒幕として、合衆国が遺体を手にするべく多くの部下をさしむけた。
非情な側面やおちゃめな側面を併せ持つ。
最終的には自ら戦地に赴くなど行動派。

今回はスティール・ボール・ラン開催直前で多忙な時期だというのに、聖杯のために東洋くんだりまでやってきた。
(しかし大した苦労ではない。合衆国が聖杯を手に入れられるのなら、こんなもの苦労の内には入らない)


【方針】
策を弄し、確実に聖杯を頂く


934 : 名無しさん :2015/01/19(月) 00:13:16 3CUQPejQ0
投下終了です


935 : ◆nEZ/7vqpVk :2015/01/19(月) 00:29:59 tud4DSz.0
#lunchex2

投下乙です。
私も投下させて頂きます。


936 : ◆waFa5fGgBM :2015/01/19(月) 00:31:22 tud4DSz.0
申し訳ありません、こちらの酉=◆nEZ/7vqpVk でお願いいたします。


937 : 石田三成&エクストラクラス(アヴェンジャー)  ◆waFa5fGgBM :2015/01/19(月) 00:32:14 tud4DSz.0

―――泣いても秀吉様は戻らぬ。
俺には俺のやることがある。


山道を歩き、俺は佐和山を目指している。
俺を逃がす為に盾となった兵達は、既に一人も残っていない。


兼続は、約束通り家康を引きつけて、かつ家康の兵の一部を関東に残させた。
幸村は、中山道を攻め上った徳川軍の主力を上田城で足止めしてくれた。
左近は、俺を守ろうと関ヶ原で奮戦し、戦場の露と消えた。
そして吉継は、あの裏切り者が率いる三十倍の兵を一度押し返し、散った。

俺だけが、絆に応えることができず。
こうして無様な醜態を晒している。


だが……それでも俺は、生きねばならん。
裏切りによって築かれた世など治世とは呼べない。
義や信を軽んずる世となってしまうだろう。

時流に逆らってでも、俺は秀吉様が作り上げた治世を守りたい。


佐和山までもうすぐのはずだ……。
そうすれば再起も叶う。
大阪城には七手組の近衛軍も、毛利の本隊も無傷で残っている。
そして何より、秀吉様の遺児秀頼様がいる。
なんとしてでも……。


「―――この山に人影を見たと報告があった!草の根分けても探し出せ!!」


……近くまで追手が来ているようだ。
だが、諦めるわけにはいかない。
せめて月が出ていなければ隠れやすいのだが……。


空を見上げると、月が。赤く光っていた―――





938 : 石田三成&エクストラクラス(アヴェンジャー)  ◆waFa5fGgBM :2015/01/19(月) 00:32:57 tud4DSz.0


―――上野寛永寺。
江戸城の鬼門の守として建てられた寺。

その鬼門の位置に俺が呼び出されたのは何の因果だろうか。

根本中堂のまわりに人はなく。
閑静な佇まいを見せている。

「あのケチ狸が祀られるに相応しい、質素な佇まいだな」

すると、隣に控える、銀色の前髪を垂れ下げた痩身の男が激昂する。

「神だとッ……!あの家康が神だとッ……!
 秀吉様を差し置いて、あの男が神などとッ……!!
 誰もが家康を見、家康を思い、家康を中心に動いていたというのかッ……。
 私から全てを奪った貴様に、世界の全てが注がれていたとでもいうのか……ッ!!」

男が左手に刀を現出させ、そのまま抜刀して中堂に斬り付けようとした。
俺は咄嗟に鉄扇でその刃を受け止める。

ギィィィィィィン!!と鉄と鉄とがぶつかり合う音が響いた。

「貴様ぁぁぁぁ!!家康を守るつもりかぁぁぁぁ!!」
「……馬鹿かお前は。いきなり騒ぎにさせるつもりか」

視線がぶつかり合う。



―――この銀髪の男は、サーヴァント・アヴェンジャーという。

聞けば、こいつの名は石田三成というらしい。

全く聖杯とやらは馬鹿げたことをしてくれる。

ありえたかもしれないもう一人の自分、というわけだろう。
だが、これではむしろ正則辺りの直情ではないか。


もし仮に、秀吉様が病魔ではなく、他者により殺害されたとしたら。

>「三成、てめえ何でそんな涼しい顔してやがる!!」
>「なぜ今泣かない……その賢い頭、泣き方すら忘れたか」
>「泣けよ三成…!泣けるだろ、三成……」

この男のように、虎之助や市松のように、真っ直ぐに泣けたのだろうか。


939 : 石田三成&エクストラクラス(アヴェンジャー)  ◆waFa5fGgBM :2015/01/19(月) 00:33:11 tud4DSz.0


「どけ!!家康に纏わるもの、悉く斬滅させるッ……!!
 秀吉様の、秀吉様のご無念を思えばッ……!!」

刃をかまわず押し込んでくるアヴェンジャー。

「チ。何度も言わせるな。
 貴様、秀吉様を復活させたいのだろう!」

鉄扇に両手を添え奴の刃を受け切りつつ。

「その復讐のやり方で、お前も家康を討ち果たせなかったのだろう。
 俺自身もそうだ。
 家康に正面から打ち破ることはできなかった。
 ならば、お前と俺。二人合わせて家康に再度挑むしかないだろう」

剣圧で辺りの木端が吹き飛ばされていく。

「手を貸せ、アヴェンジャー。
 そして、俺もお前に手を貸してやる。

 秀吉様のため。
 ……いや。

 自分自身の、ためにな」

しばし視線が交錯する。
アヴェンジャーは俺の目をずっと睨むと。

「……フン。その約定、違えるなよ」

刀を手元に戻し。
パチン、と。鞘へと収めた。

「ああ。
 ……もう約束を破るのは御免だからな」


940 : 石田三成&エクストラクラス(アヴェンジャー)  ◆waFa5fGgBM :2015/01/19(月) 00:33:31 tud4DSz.0

【マスター】
石田三成@戦国無双シリーズ

【マスターとしての願い】
関ヶ原の敗戦から生き延びて再起する

【weapon】
鉄扇、地雷

【能力・技能】
戦国武将としては並以下程度の戦闘力。
己の武よりは知略を使って勝利を目指す。
軍師ビームは出せないものとする。

【人物背景】
関ヶ原の戦いにおける西軍の中心人物。
秀吉子飼いの将で沈着冷静な天才。
才に恵まれ判断も的確だが、言動に謙虚さが欠ける上に他者への接し方にも問題があり周囲から嫌われやすい。
本人に悪気はない一方、自身のその傾向への自覚も持っており、その欠点に悩まされている。
根は実直で忠義溢れる人物であり、三成をよく知る人物達との絆は厚い。

関ヶ原の戦いで徳川家康率いる東軍に敗戦し、その逃走中に聖杯に呼ばれる。

【方針】
聖杯戦争に勝利する。
勝ち抜くためであれば他組との同盟等も視野にいれる。
女子供が相手でも聖杯主従であれば手は抜かない。
ただし、民には極力被害を出さない。


941 : 石田三成&エクストラクラス(アヴェンジャー)  ◆waFa5fGgBM :2015/01/19(月) 00:33:47 tud4DSz.0

【クラス】
アヴェンジャー(エクストラクラス)

【真名】
石田三成@戦国BASARA3

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力D 幸運E 宝具C

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
復讐者:A
 復讐対象者との対峙の際、全てのパラメータが1ランクアップする。
 ただし、敵対者が複数であっても復讐対象者を優先的に狙ってしまう。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】
精神異常:A
アヴェンジャーの全てである主君秀吉を殺されたため、精神を病んでいる。
バーサーカー化による狂化ではなく、周囲の空気を読めなくなる精神的なスーパーアーマー。
コミュニケーションを取ることは可能。

対家康:A
『徳川家康』に纏わる人・物を斬滅することで魔力を回復できる。

刹那:B
瞬時に相手との間合いを詰める移動術。
多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。所謂縮地。

戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

【宝具】

『君子殉凶・凶王三成』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
刀につけた装具により、自身に黒き憎悪の力を纏わせる。
宝具発動中、何かを『斬る』度に憎悪の力を増し、敏捷値が際限なく上がっていく。

【weapon】
無名刀:鍔が二つある長刀

【人物背景】
関ヶ原の戦いにおける西軍総大将。
豊臣秀吉に取り立てられて以来、秀吉を神のように崇め慕っていた。
当時豊臣軍に所属していた徳川家康の反乱により秀吉が殺された後、復讐の狂気に取り憑かれる。
他者に対し、非常に攻撃的。
己の感情に嘘をつくことができず、とにもかくにも融通が利かない。
天下の趨勢など目に入らず、家康を惨殺することだけを目的としている。

【サーヴァントとしての願い】
過去に戻り秀吉様の殺害を阻止する。


942 : ◆waFa5fGgBM :2015/01/19(月) 00:34:27 tud4DSz.0
以上で投下終了です。
酉の件でお見苦しいところがあり、申し訳ありませんでした。


943 : ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 16:55:41 nrHnsmTs0
投下乙です。
自分も投下させてもらいます。


944 : ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:06:54 nrHnsmTs0
「ホストクラブどうですか〜」大通りには様々な人が忙しなく行きかう。そん
な中若い男性が毛皮コートを着た声をかけるが、女性たちは男を一瞥した後に
ゴミを見るような目を向け男から足早に去っていく。普通の男性ならそのよう
な扱いを受ければ精神に多大なダメージを受けるが、その男は特に気にしない。


男にとってそのような扱いはチャメシインシデントだからだ。男はすぐ様に別
の女性に声をかける「ホストクラブどうですか〜」彼の職業はホスト。そして
ニュービーホストだ。ニュービーはキャッチと呼ばれる行為をしなければなら
ない。


キャッチとは人の出入りが多いところでホストクラブに来るように誘うことで
ある。ニュービーはかならずキャッチをやらなければならず、キャッチで成果
を上げることで初めて店内で働くことが許される。だが客を店に呼ぶことがで
きなければ待っているのは暴力的制裁であり、最悪の場合はケジメだ。

現時点で男はまだキャッチを成功していない。しかもこの数日で客を呼べてお
らず、このままではケジメは免れない。ケジメとは自主的に指を切断する行為。
ケジメによる痛みを想像してしまい身震いする。そんな時にふと頭にこの
ような言葉が過る。「沢山撃つと実際当たりやすい」


誰が言ったかは忘れたが、その言葉が世界の真理のように思い始め、男はケジ
メを避けるべく目につく女性を片っ端から声をかける方針に切り替える。その
時に男の視界に一人の女性が入ってきた。その女性、いや少女は黒髪のセミロ
ングで上下のサイバージャージを着ている。その胸は平坦だった。


明らかにこの場所に似合わしくないアトモスフィアを醸し出しているが、男は
特に気にしない。「ホストどうですか〜」一見親しげに話しかけているように見
えたが、明らかに何かしら良からぬ企みを持っていることが感じられ少女は不
快感を覚えた。


しかしそれを表情に出すのはシツレイであり、奥ゆかしくない。不快感を出さ
ないように申し出を断ろうとする。「別にいいです……」しかし男は引き下がら
ず、「そんなこといわずに、楽しいですよ!」「アタイ興味ないです」「一回騙さ
れたと思って!」あまりにしつこさに少女はほんの少しだけ語気を強める。


「いいです」それを聞いた男はある出来事を思い出した。かつてあるヤクザク
ランのグレーターヤクザに絡まれた。その時は失禁しながらドゲザをすること
で難を逃れた。そしてあの時に悟ってしまった。ヤクザは絶対的強者であり、
今後は自分とヤクザの力関係は覆ることがないと。


しかし今目の前にいる少女からかつてのグレーターヤクザより数十倍危険なア
トモスフィアを感じた。呆然自失している男をしり目に少女はその場を後にし
た。少女の名前はヤモト・コキ。シ・ニンジャのソウルが憑依したニンジャで
あり、そして今はセイバーのクラスのサーヴァントだ。


945 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:12:18 nrHnsmTs0
今ヤモト・コキはこの聖杯内で再現された東京の歌舞伎町に現界している。周
りを見渡すとネオン看板が、「金利が安い」「取り立て猶予長い」「みんな借りて
いる」など欺瞞的な広告が怪しく輝く。そして先ほどのニュービーホスト以外
にも様々な呼び込みの声が聞こえる。

レズ、ゲイ、ホスト、キャバ嬢、ヤクザなど様々な職業、人種がごった返しで
入り乱れる猥雑な街、東京最大の娯楽街それが歌舞伎町。ヤモトはこの街のア
トモスフィアに覚えがあった。そうニチョーム・ストリートだ。ニチョームと
はネオサイタマにある特殊歓楽街である。

セクシャルマイノリティのニルヴァーナめいた街であり、この歌舞伎町以上に
猥雑な街。しかしヤモトはこのアトモスフィアはニチョームとは似て非なるも
のであると気づく。耳を澄ませば、ぼったくりバー店員の客への恫喝、薬物売
人の密談交渉の声が聞こえてくる。


街のアトモスフィアを悪くするこのような行為はニチョームであれば自警団め
いた存在であるネザークイーンによって即取り締まられる。しかしこの歌舞伎
町でこのような存在は黙認される。何よりマイノリティへの拒絶めいた何かが
充満しているのを感じ取れてヤモトにとって不快だった。


(まずマスターを探さなきゃ、近くにいるはずだけど)ヤモトはこの地に現界
した時点で聖杯戦争の知識はインプットされている。この偽りの東京で最後の
一組になるまで戦う。これが今回の聖杯戦争。マスターを探すべく当てもなく
歩きだすと前方に女子高生らしき人物が見える。


ヤモトは直感的にあの女性がマスターだと理解した。そしてアイサツをおこな
う。「ドーモ、マスター=サン。セイバーです」


946 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:16:41 nrHnsmTs0

◇ ◇ ◇


「ドーモ、マスター=サン。セイバーです」

「えっと……人違いじゃないかな……」

「いや、貴女がアタイのマスター」

「晴の名前は一ノ瀬晴です……マスター?さんという名前じゃないよ……」

一ノ瀬晴は困惑していた。マスター?セイバー?今まで会ったことのない人物からマスターという自分とは違う名前を呼ばれている。

普段ならある程度落ち着いて対応できたかもしれないが、今、一ノ瀬晴がおかれている状況で冷静に対応することは難しいと言わざるを得なかった。

桜が並木道一杯に咲き誇っていたあの日。一ノ瀬晴は黒組から卒業した。
東兎角。晴にとってかけがえのない友人。
晴は兎角と二人で黒組での様々な苦難を乗り越えていった。そしてこれからも二人で日向の道を歩んでいこうと決めいていた。

卒業式が行われたその日の夜。二人はとある宿に宿泊する。
ふたりは就寝前に黒組での思い出やこれからのことについてなどについて語り合っていた。
晴はふと窓の外を見ると見事な満月が目に飛び込んでくる。赤い満月が。

「キレイな満月だね兎角さん。でも何で赤いんだろう?」
「赤?どう見ても赤には見えないが」

晴は兎角の返答に驚いていた。その目に映る月はどう見ても赤色にしか見えなかった。
その赤色の月が異常であると認識した瞬間から目を離せなくなっていた。
そして月を見ることに一瞬意識を奪われ、気が付いた瞬間には聖杯で再現された東京の歌舞伎町に立っていた。

「聖杯戦争のこと本当に知らない?」
聖杯戦争について何一つ知らない晴の様子に不安を覚えながらもヤモトは尋ねる
「聖杯?」

見知らぬ土地で見知らぬ人物に声をかけられて混乱していたが、落ち着きを取り戻すために晴は大きく深呼吸を行った。スゥーハァー、スゥーハァー。
深呼吸のおかげか少しだけ心が平静になっていくのを実感する。そして依然聞いた都市伝説のような話が頭に過っていた。

願いを持った人たちが赤い月を見た時、こことは違う土地に呼ばれ、呼ばれた人物とその土地に住んでいる人物とペアを組んで同じようにペアを組んだ人たちと聖杯を求めて競い合う。勝利したものが願いを叶えることができる。その競い合いの名前は聖杯戦争。

◇ ◇ ◇


「まさかこれがあの聖杯戦争……」

晴も自分の考えがバカバカしいとは理解している。だが聞いた話と今の状況は合致している部分が多い。自分はあの都市伝説みたいな聖杯戦争に参加しているのではと考え始めていた。

「そう聖杯戦争。マスター=サンとアタイでこの聖杯戦争を勝ち抜かなきゃならない」

「えっとセイバーさん?晴とセイバーさんはここで何をすればいいの?」

聞いた話では他のペアと競い合うと聞いていたが何を競いあうのかは全く知らない。

「この東京で最後の一組になるまで殺し合い」

ヤモトは顔色一つ変えず聖杯戦争の事実を告げる。


947 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:20:05 nrHnsmTs0
「えっ?」

晴はそれを聞いて動揺を隠せなかった。競い合うというからには何かスポーツ的な何かをするものかと思っていたが、まさか殺し合いとは予想もしていなかった。

幼少期から命を狙われ続け、12人の暗殺者に命を狙われた黒組を卒業し、命を狙われることなく、兎角と一緒に日向の道を歩けると思ったが、今度は矢先に見知らぬ土地で殺し合いを強要される。

この事実を聞かされ晴の顔色は明らかに悪くなっていた。


動揺している晴を心配しながらもヤモトは話を続ける。

「そして残った一組が聖杯の力で何でも願いを叶えられる。マスター=サンは何を願うの?」

動揺しながらも願いという言葉に反応する。願い?自分の願いとは?その時ふと晴の家族の姿を思い出していた。自分が笑って生きるために命を犠牲にしてまで守ってくれた家族の姿を。願いで家族が生き返るかもしれない。それなら。

「生きて帰ること……晴は生きて元の世界へ帰ることを願います。兎角と一緒にあの世界で生きることを」

しかし晴は家族の生き返りを願いにしなかった。本当に生き返るかもしれない、しかし家族は自分が笑って生きるために命を犠牲にしてまで守ってくれた。だからこそ一ノ瀬晴は今も笑って生きている。
だが、もしかしたら生き返らせたら家族の行為を無碍にしてしまうのではないかと晴は考えていた。
その考えは自分の傲慢なのかもしれない。だが多くの死を見続けてきた晴だからこそ生きること尊さ、そして死者が生き返ることはあり得ないと理解していたのだ。

「トカク=サンって?マスター=サンの知り合い?」

ヤモトは兎角という言葉を発した瞬間に今まで険しかった晴の表情が一瞬和らいだのをニンジャ観察力で察知し問いかける。

「うん。晴の一番の友達。一緒にお買いものをしたり、映画観たりして、もっと兎角と一緒に過ごしたい。だから晴は元の世界に帰ります」

晴の言葉を聞いてヤモトは友人であるアサリのことを思い出していた。空っぽだった自分にユウジョウを入れてくれた一番の大切な友人を。

ヤモトがネオサイタマにあるアタバキ・ブシド・ハイスクールに転校し、転校生のヤモトに優しく接してくれたのがアサリだった。
その後親交を深めていったが、ニンジャソウルが憑依したことで自分の周りには悪意のあるニンジャが群がってくる。
そのことでアサリに害を及ぶことを恐れたヤモトは奥ゆかしくアサリの前から姿を消した。

短い時間だったがアサリと過ごしたオリガミ部での日々、そしてタラバ―・歌カニでのあの時間はヤモトにとっては宝物であり、一生忘れることはないだろう。
その後偶然にもアサリと再会することができたが、積極的には自分からアサリと会いに行くことはない。またヤモトを争いに巻き込んでしまうことを恐れているからだ。

ヤモトは時々思うことがある。もし自分にニンジャソウルが憑依しなかったら?
そうなれば気兼ねなくアサリと会うことができ、もっと長い時間アサリと共に過ごせたのかもしれない。

そして目の前に一番の友人ともっと交流を深めたいという少女がヤモトの目の前に現れた。
自分はニンジャであるゆえに一般人である友人と距離を置かざるをえなかった。でもこの少女は元の世界に帰れば気兼ねなく一緒に過ごせる友人が待っている。

ならばこの少女には自分ができなかったことをやってもらいたいヤモトはそう願う。


948 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:23:12 nrHnsmTs0
「じゃあ聖杯戦争を勝ち抜こう。アタイがやるから、マスター=サンは見ているだけでいい」

ならばすべての参加者を倒して晴を元の世界に返すのみ。ヤモトは戦いに向けての覚悟を決めたが。

「晴は殺し合いをしません。他の参加者に会って戦わないように呼びかけます。そしてみんなで力を合わして元の世界に帰ります」

帰りたいが殺しあわない。このルールを無視した無謀でワガママと言える提案だが、晴には晴なりの考えがあった。

これはかつて自分が体験した10年黒組のシステムに似ている。報酬を求めてターゲットの晴を殺す。違いは自分一人を殺すか、自分以外のものを全員殺すかの違い。

もし参加者を全員説得して戦いがおきなければそうなればゲームは成立しない。そうなれば?ゲーム不成立で参加者は強制的に元の世界に返されるかもしれないと考える。

しかしこれはなんの根拠もない晴の希望的推測だ。そのようなことになることはほぼ0パーセントである。それでも晴は他者を殺すことを拒絶する。

しかしヤモトは晴の考えを理解できなかった。大半の参加者は願いを叶える為に積極的に殺し合うだろう。その中で殺しあわず説得する?何より優勝する以外に元の世界へ帰る方法があるのか?ヤモトは問い質せずにいられなかった。

「もし他の参加者が殺す気で襲ってきて、逃げられない状況だったら?」
「……戦います」

「もしどうやっても聖杯戦争で勝ち抜く以外に元の世界に帰る方法がなかったら」
「……最後の一人になるまで勝ち抜きます」

晴は険しい表情を作りながらもはっきりと口にして意志を示した「戦う」と。
命を狙われ続けたからこそ命の重さを理解しており、他者の生存を願っている。だからこそ戦わないという方針をヤモトに告げた。
ただ極限状態であれば、戦い相手の命を奪うことを辞さない。家族や犠牲になった人たちのためにも晴は最優先事項を自分の生存であると位置付けた。

「わかった」
ヤモトはしめやかに頷く。晴の意志を肯定するように。そして。

「アタイがアナタを守る」

ヤモトにはサーヴァントとしての願いは無かった。ただ晴と出会って願いができた。
晴が元の世界へ帰るまで守り抜く。そして晴が友達と一緒に幸せに過ごしてもらう。それが今の願い。

「でもそれは本当に本当の最後の手段。晴は諦めが悪いから!」

そう言うと晴はヤモトに満面の笑みを見せる。自分は大丈夫とヤモトに安心させるかのように。

それの笑顔を見たヤモトも微笑み返す。そして晴に感心していた。殺し合いしか手段がない状況で他者の生存を考える優しさに。もしこの場にアサリが居たら晴と同じような行動を取っていたかもしれない。
だが極限状態であれば他者を殺して自分が生きると決断的に宣言した。晴から発するアトモスフィアから口だけではなく本当に実行するだろうと予測できる。

そしてもし晴が言う本当に本当の最後の手段を取らざるえない状況になったら。その時は自分がすべてやろうと決意する。晴に手は汚させない。自分はニンジャで、彼女はモータル。手を汚すのは自分だけで充分であると。


949 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:24:19 nrHnsmTs0
「じゃあ改めてよろしくお願いね。セイバー」

『アナタを守る』このセリフに懐かしさを覚えながら、晴は笑みを浮かべて手を差し出す。友愛の意味を込めて、これから二人で頑張ろうという意味をこめて。

「よろしくおねがいします。マスター=サン」

ネオサイタマには握手の文化はないが、晴から感じるアトモスフィアから好意めいたものを感じ取れたので恐る恐る手を伸ばす。そしてヤモトの手を晴は握りしめた。

「よろしく。でも呼び方がマスターじゃなくて晴って名前で呼んでほしいな」

晴は提案するがヤモトが住んでいたネオサイタマにおいて人物の呼称は名字の後に=サンをつけるのが原則である。=サンをつけずに、さらに名前で呼ぶという行為は晴が考えている何十倍以上に失礼な行為なのである。

ヤモトは晴が一ノ瀬晴と名乗っていたのを思い出し、名前が晴ということは名字は一ノ瀬であると仮説を立てた。

「じゃあ……イチノセ=サンで……」

ぎこちなく自分の名字を呼ぶヤモトの姿がおもしろかったのか、晴はクスクスと笑う。

「晴でいいのに、それでセイバーは本当の名前なの?」

ヤモトの姿から自分の知っている日本人と変わらないのでセイバーとは違う本当の名前があると判断して質問をなげかける。

「セイバーはクラスの名前。本当の名前はヤモト・コキ。でも真名が相手に知られることは実際アブナイ。だから人前ではセイバーと呼んで」

「うん。わかったよ。セイバー」
本当の名前を教えてくれたことに晴は嬉しさを覚えつつ、ヤモトの言いつけ通りにセイバーと呼び。

「じゃあとりあえずご飯食べよっか。晴はお腹がすきました……」

そう言うと晴は恥ずかしそうに腹を押さえながら提案する。
「うん」
ヤモトも同意して二人は食事を摂るために歌舞伎町の街並みに溶けていく。

ヤモトと肩を並べながら歩きながらも晴は一抹の不安を感じていた。
出会ってから少しだけの時間だがヤモトの人柄に好意を感じており、ヤモトも敵意ではなく好意を持っていると感じていると思っていた。
しかしこの好意がヤモトの本来の意志ではなかったら?

―プライマー能力―

本人が無意識に他人を魅了し、操る能力。晴はその能力を持っていた疑いがあった。
その能力で家族を操りその身を犠牲にさせることで幼少期を生き残り、黒組でも一番の友人である東兎角を操り自分を守らせたのではないか?その疑念に晴は苦しんでいた。

だが東兎角は晴がプライマー能力を持っていないことを証明することにある行動を取った。『プライマーで操作されている人物がプライマー能力者を殺すことはできない、もし殺せればプライマー能力で操られていることではない』

そして東兎角は晴の胸をナイフで刺すことに成功する。
だがそれは東兎角が考えるプライマー能力の否定であり、プライマー能力の存在を証明することは誰にもできない。

晴は兎角が苦渋の想いで証明した結果を信じている。それでも自分のプライマーがヤモトに作用しているのではという考えを完全に拭うことは出来なかった。

だが晴は信じる。自分にはプライマー能力はなく、ヤモトとも兎角と同じように女王蜂と働き蜂ではなく友人同士の関係を築けることを。


こうして偽りの東京の地でひとりの少女とひとりの守護者の物語が始まる。


950 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:26:57 nrHnsmTs0
【クラス】
セイバー

【真名】
ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー

【パラメーター】
筋力C 耐久D スピードB 魔力D 幸運B 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する守り
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力

騎乗:E
騎乗の才能。しかし騎乗に関する逸話がないため申し訳程度
バイクや自動車を乗りこなせる程度のスキル

【保有スキル】

サクラ・エンハンスメント・ジツ:C
ユニーク・ジツの一つ。物質にエンハンスメントを込めることでサクラ色に輝き、只の道具でもサーヴァントにダメージを与えることも可能になる。またある程度の軽い物質ならサイキックめいて操作することが可能

心眼(真):C
カラテ、ニンジャ感覚、数々の戦闘の経験によって培われた洞察力
窮地において自身の状況と敵の能力把握し、その場に残された活路を導き出す戦闘論理

アイサツ:D
アンブッシュで相手を仕留めきれなかった際、相手が名乗った場合に自分の名前を名乗らなければならない。
名乗らない場合にはステータスが大幅に下がる。
ニンジャにとってアイサツは絶対である。古事記にもそう書かれている。

魔力補給:D
スシを補給することにより通常の食事より多くの魔力を回復することができる。
特にオーガニック・スシの大トロは普通のスシより多くの魔力回復が見込める

【宝具】

『折紙誘導弾(オリガミ・ミサイル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ1〜10 最大補足人数:1〜10

ヤモト・コキの象徴的なジツが宝具化したもの。
オリガミにサクラ・エンハンスメントを込めてツル、紙飛行機などの形に折りそれを操作して相手にぶつけるジツ。オリガミはぶつかると爆発する。
操作は自由自在。相手にぶつけずオリガミを宙に浮かすことにより機雷、地面に設置することで地雷めいた運用。またオリガミを足場にして跳躍、また爆発する性質を生かして加速に利用することもできる。
普段は紙が無ければオリガミ・ミサイルは使えなかったが英霊として召喚されたことにより自分で紙を作りオリガミ・ミサイルを使うことが可能になった。
但し、通常の普通の紙にエンハンスメントを込めてオリガミ・ミサイルをぶつけるのに比べて魔力消費は多大になる。

『折紙桜色蝶(サクラ・エンハンスメント・デバフ)』

ランクC 種別:対人宝具 レンジ1 最大補足人数:1

オリガミ・ミサイルが違う形に変化したジツ。
蝶々に形になったオリガミが相手に纏わりつき、相手の攻撃の射線上に蝶があり破壊された場合は小爆発をおこし勢いを削ぐことができる。
また蝶が破壊された様子からヤモトの培ったカラテによって攻撃の先読みを容易にする。
また蝶が纏わりついた物質はヤモトによってある程度の操作が可能。武器に纏わりせれば武器の軌道を変えることができ、さらに相手の得物も奪うことができる。
普段は紙が無ければオリガミ・ミサイルは使えなかったが英霊として召喚されたことにより自分で紙を作りオリガミ・ミサイルを使うことが可能になった。
但し、普通の紙にエンハンスメントを込めるのに比べて魔力消費は多大になる。

【weapon】
カロウシ、ナンバン
刀匠キタエタの逸品たる双刀

【人物背景】
ある学生の自殺に巻き込まれ瀕死になった際にシ・ニンジャのソウルが憑依してニンジャとなる。ニンジャになったことにより運命は大きく変わる。多くの人と出会い別れながらも人間と成長し、マッポー都市ネオサイタマで懸命に生きていく。

【サーヴァントとしての願い】
願いはなかったが、晴と出会い晴を元の世界に帰すことが願いになる


951 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:28:20 nrHnsmTs0
【マスター】
一ノ瀬晴@悪魔のリドル

【マスターとしての願い】
元の世界へ帰る

【能力・技能】
戦闘能力はないが数々の暗殺者から狙われたことにより修羅場慣れしており、常人より生存能力は高い。

プライマー
意識的あるいは無意識に人を引き付け魅了し支配し操作する能力。しかし一ノ瀬晴がこの能力を持っていたかそうではないかは作中でも完全に判明していない。

【人物背景】
幼少期からある事情で命を狙われ続けた少女。家族、親しい人物は晴を守り、また巻き込まれて死んでいき天涯孤独。
そんな壮絶な人生を歩みながらも性格は明るく天真爛漫。そしてお人よし。
基本的に人の言うことは疑わないので、騙されて窮地に立たされることがしばしば有る。

【方針】
聖杯戦争を中止させみんなで協力して元の世界へ帰る。
ただ最後の一組になるまで元の世界に帰る方法が無いと分かれば方針を勝ち残りに変更する可能性は十分にある


952 : 一ノ瀬晴&セイバー ◆7DVSWG.5BE :2015/01/19(月) 17:29:28 nrHnsmTs0
以上で投下は終わりです。


953 : ◆ACfa2i33Dc :2015/01/20(火) 00:17:36 SGe0y06.0
投下いたします。


954 : 神隠しの物語・再 ◆ACfa2i33Dc :2015/01/20(火) 00:18:08 SGe0y06.0


 昔**の国(後の**県)の村に住む若者が、山菜を採る為に山へと入った時にこんな事があった。
 若者が山を分け入る内に、見た事もない豪華な屋敷に行き遭った。
 この山の事は隅々まで知っている筈の若者が知らない屋敷に、いぶかしみながら周囲を探ってみたが、人の気配がまるでない。
 中を覗いてみたところ、居間の囲炉裏は赤々と炭火が起こっていた。
 ますます怪しんで中へと入り、屋敷の中を見て回ったが、人の姿はどこにもない。
 だと言うのに、屋敷の中はまるで直前まで人が住んでいたかのようで、座敷には食事の準備まで整えられていた。
 まるで神隠しのようだと思った若者は恐ろしくなり、一目散に屋敷から逃げ出し、どこをどう走ったかもわからないまま、ようやく見知った道へと着く事ができた。
 村へと帰った若者は村人に山奥の屋敷について聞いて回ったが、誰も知っている者はいなかった。
 若者はそれからも何度も山奥へと入ったが、あの屋敷も神隠しにあったかのように、ついに見つける事はできなかったということだ。

 ――**県の民話


 妖怪らしい妖怪と言えば、まず八雲紫の名前が挙げられるだろう。
 この妖怪は、根源に関わる能力の危険さもさる事ながら、神出鬼没で性格も人情に欠け、行動原理が人間とまるで異なっている事等、まず相手にしたくない妖怪である。
 姿は特に人間と変わりはない。派手な服装を好み、大きな日傘を使う。
 主な活動時間は夜で、昼間は寝ている。典型的な妖怪である。
 また、冬は冬眠していると言われるが、本人の談だけで実際は何処に棲んでいるのか確認取れていないので、真偽の程は定かではない。
 古くは、幻想郷縁起阿一著の妖怪録にも、それらしい妖怪が登場している。その時代にあった姿で現れるという。


 ――稗田阿求『幻想郷縁起』より抜粋


955 : 神隠しの物語・再 ◆ACfa2i33Dc :2015/01/20(火) 00:18:35 SGe0y06.0


     *

 桜が散っていた。
 ビルの合間を縫って吹いた風に乗って花弁が散り、宙を舞う。


 ざわ、


 と桜の香を乗せた風が、東京の街を吹き渡っていく。
 全ての者が足早に通り過ぎ、見る者のない東京の片隅で繰り広げられる一種幻想的な光景。

 その桜の樹の根元に、空目恭一は凭れ掛かっていた。

「想定外だ。そもそも、想定も何もあった展開ではないが」
「ご不満かしら?」
「当然だ」

 空目の周囲に、人の姿はない。
 ……だというのに、その言葉に答える声があった。
 声はおそらくは成人した女性のもので、その女性の持つであろう蠱惑的な雰囲気を声だけでも感じ取る事ができる。
 しかしそれと同時に、その声だけで『まともな存在ではない』と理解できてしまうのだった。

「聖杯戦争。魅力的な話だとは思えなくて、魔王陛下?」
「一言で言えば胡散臭い。存在そのものが疑わしい」

 くすくすと笑う女性の声の聴こえる方へと顔を向けて、空目は鬱陶しげに言葉を放つ。

「“聖杯”。聖書における“主の血を受けた器”の事だ。
 “聖杯伝説”は中世西ヨーロッパを中心に、世界中に存在する。騎士物語の定番のモチーフだ。
 だが、“聖杯戦争”……あるいは、それに類似した物語は聞いた事がない」
「ですから信憑性がない……と、そういうわけかしら?」
「無論俺がこうしてここにいる以上、何らかの超常的な現象が起きているのには否定の余地がないだろう。ただし、それが“聖杯”であるかは大いに疑問符が付く。
 聖杯戦争そのものは“聖杯を手に入れる為の苦難”をモチーフにしているのかもしれないが、しかしそれが目的ならば競争式であれど殺し合いである必要性はない。
 “閉鎖空間における殺し合い”である事に意味があるとするならば。その最も安直なモチーフは、“蟲毒”だ」
「私達は、誰かに壷に放り込まれた蟲であると?」
「その可能性はあるという事だ。どの道聖杯が本物であるとして、今ではもう興味もないがな」
「あら、淡白。クールに見えて、こんなところに連れて来られて怒り心頭なのかしら?」
「勘違いをするな。不満を持ってはいるが、怒ってはいない。
 更に言えば、俺が不満なのはこのような場所に連れて来られた事ではない。俺といる“神隠し”が、お前である事だ」

 空目がそう言った時、気配が


 くすり、


 と笑った。……そして次の瞬間、目の前の空間が『割れた』。
 まるで、空間の『隙間』を開いて世界の裏側を開いてしまったかのように。
 そして、その『隙間』の向こうには、一人の女性の姿が見えていた。派手な衣装に、大きな日傘。ある種の人間離れした、金髪の美貌。年頃は少女にも、あるいは老婆にも見える。

「あら、フラれてしまいましたわ」

 その女性は先程までの声と同じように、くすくすと笑いながらそう言った。
 妖艶な笑みだった。それがこの世のものではないと知りながら、それでも惹かれてしまう者がいるような、そんな笑みだった。

「当然の話だ。あれは俺の所有物だ、勝手に持っていかれる謂れはない。そもそも、お前に俺の道案内はできないだろう」
「くふ、それは道理ね」

 そんな笑みを浮かべる女性に、空目はにべもなく拒絶に近い言葉を言い放つ。女性はしかし、残念そうな素振りもしなかった。

「幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは残酷な話ですわ」
「“神隠し”に誘われ、“隠れ里”に辿り着く、か。あまりにもそのままだな」
「あなたは道案内がいるから不要かしら?」
「何にしろ、その道案内を探さなければならん」

 そう言うと、空目はむくりと起き上がった。
 痩身に纏った黒いコートが、風に靡く。

「こうなった以上、お前にも手伝ってもらう。いいな? アサシン」
「仰せのままに、魔王陛下」

 空目恭一と、八雲紫。
 『神隠しの被害者』と、『神隠しの主犯』。

 彼らが求めるのは、『神隠し』。


 ――枯草に鉄錆の混じった匂いが鼻に届いた気がして、空目は鼻をすん、と動かした。


956 : 神隠しの物語・再 ◆ACfa2i33Dc :2015/01/20(火) 00:19:37 SGe0y06.0
---

【クラス】アサシン
【真名】八雲紫@東方Project
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具?
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
気配遮断:A++
 『神隠し』。
 自身の気配を消す。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
 ただしスキル『神隠しの主犯』との組み合わせで、特定の行動に限り気配遮断のランクを保ったまま行動できる。
【保有スキル】
神隠しの主犯:A++
 幻想郷で神隠しと呼ばれる現象を境界を操作して起こす犯人。
 神ではなく、妖怪少女の仕業。
 宝具である『境界を操る程度の能力』を使用する時に限って、気配遮断の効果を持続させたまま行動する事ができる。
妖怪:A
 人間に畏れられ、人間に退治される存在。
 与えられる物理ダメージを低減し、その代わり精神干渉を受けた場合ダメージ化する。
 また、ある種の信仰を集める存在である事から、Eランク相当の『神性』スキルの効果を内包する。
飛行:C
 空を飛ぶ能力。
 ふわふわと浮遊するように飛翔する。
【宝具】
『境界を操る程度の能力』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:?人
 八雲紫の持つ、『「境界」と名の付くものならほぼ何でも支配下に置く事が出来る』程度の能力。
 本来は『全ての事象を根底から覆す能力』、『論理的創造と破壊の能力』であるらしいが、アサシンはマスターにより『神隠し』の面を強く現界させられているため、『空間の境界を操ってスキマを作る』という用途にしか使用できない。

 このスキマの中は一種の亜空間のようになっており、多数の目が見える。これは外の世界の「欲望が渦巻いている様子」と言うイメージの表れ。また道路標識などの漂流物が漂っている事もあるが、これも「外の世界の役に立たない物」としてのイメージから来るもの。
 これにより離れた空間を繋げる事が可能。
『神隠奇譚(ネクロ・ファンタジア)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:? 最大補足:?人
 アサシンの持つ『神隠し』という特性が、マスターである『神隠しの被害者』空目恭一により偏向され、希釈され、そして尖鋭化した事により発生した宝具。
 『アサシンの真名を知っている犠牲者』を、『異界』へと連れ去る。
 この『異界』はアサシンによって作成される限定的な陣地であり、『赤い空』をした現世と同じ場所に同じ状態で重なり合って存在している。
 脱出はアサシンと同じように空間を操る術か、あるいは結界破りの術がない限り不可能である。
 『真名を知っている者に害を与える』という、聖杯戦争の常識の逆を行く道具。
【weapon】
『なし』
 ただし、前述したスキマの中に漂う物体を武器として扱う事ができる。
【人物背景】
 神隠しの主犯。スキマ妖怪。

 本来のクラスはキャスター。このため式神や自在に扱える結界のスキルを失っている。
【サーヴァントとしての願い】
 女性には秘密があるものですわ。


【マスター】空目恭一@Missing
【参加方法】不明。
【マスターとしての願い】ない。
【weapon】ない。
強いて言うならば豊富な知識。
【能力・技能】
“異界”の匂いを覚えている嗅覚。
【人物背景】
神隠しの被害者。
【方針】
あやめを探す。


957 : ◆ACfa2i33Dc :2015/01/20(火) 00:21:01 SGe0y06.0
投下終了です。


958 : 名無しさん :2015/01/20(火) 03:52:02 h88xcRmsO
戦国BASARAの家康が無双の秀吉みたいに皆が笑って暮らせる世の中にしたいと心の底から思ってることや、BASARAの三成は民をどうでもいいと心底思っている無責任な存在であることを無双の三成が知ったらどう思うのだろうか・・・


959 : 神様のレシピ ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 17:18:24 Yi.V6daM0
投下します。


960 : 神様のレシピ ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 17:18:52 Yi.V6daM0

とある高層ビルの一室、ソファに腰掛けてテーブル越しに二人の人間が向かい合っている。
アンドロギュノス――そう表現するしかないだろう、互いが互いに両性の美を併せ持っている、
男といえば男であるが、女といえば女であるように思えた、いや、自分の望む性別に彼らは自在に変化出来るのではないか、
ああ、そのような稚児じみた思いさえ抱かされる。
現実とは思えぬ――まるで、絵画に描かれたあり得ぬはずの美の光景が、現実世界にそのまま抜け出してきたようであった。

「サーヴァントとして……君は何を望む?」
片方の人物が、声を放つ。高くも――低くもない。だが、解る。男の声だ。
悪魔がその言葉で人間を躍らせるというのならば、男の声はまさしく、扇動者のそれだった。
その妖艶な紫の唇から発せられる言葉は、心に染み入り――その動きを沸き立たせるような、あまりにも妖しく、そして真っ直ぐな声だった。

「……私には欲しいものがある」
返したのは、凛とした――涼やかで、それでいて熱量のある声だった。やはり、声は男のそれであった。
片方の男が、扇動者のそれであるというのならば、この男の声は先導者のものだろう。
両方に差異は無い、ただ戦い方にささやかな違いがあるだけだ。

「それは」
「国――」
「言葉を失い、肉を失い、血を失い、仲間を失い、命を失い――それでも、英霊となっても、まだ私の中の原風景が、歩を進めろと急き立てるのです。
私の国を手に入れろ――と。故に私は――サーヴァント、セイバーとしてここにいるのです」
「なるほど」
サーヴァントであると、セイバーであると、そう語った男が、死んでもなお絶えることのなかった野望を語ると、もう一人の男は口元に微笑を浮かべた。
それは、全てが上手くいっている男の笑みだった。完全なる勝利者は、そのように笑う。
「あなたの願いは?」とセイバーが尋ねる、男の笑みは変わらない。

「未来は――神様のレシピで決まる」
変に構えるでもなく、騙そうとするでもない、1+1=2であると言うような、常識を語るかのような口ぶりであった。
だが、その瞳には強い意志が宿っていた。
神様のレシピ――完成する未来のためのメイン食材は人間、調味料は諸々の要因。
人間はただ神様のレシピのままに食卓に並べられるに過ぎない、それでも尚――自分は神に選ばれているとでも言うかのように、
「僕の願いは、聖杯という奇跡に頼らなくても叶えることの出来る――けれど、ここでは絶対に叶えることの出来ない願いだ。
この戦争は――試練だ、僕は再び試されている。ここで死ねば、僕はそこまでの人間なのだろう。
けれど、命を奪われることなく、無事に帰ることが出来たのならば――僕の願いは、きっと叶えられる」
「あなたの願いは?」

セイバーの質問の言葉は先程と何一つ変わらない。
だが、空気は先程と比べて明らかに変質していた。


961 : 神様のレシピ ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 17:19:02 Yi.V6daM0
――みんな大きな流れに身を任せているだけだ運命とかなんとかいうやつに
――そしてみんな消えて行くのさ命を使いはたして自分が何者なのかさえ知ることもなく

――この世には人の定めた身分や階級とは関係なく世界を動かす鍵として生まれついた人間がいる
――それこそが宇宙の黄金律が定めた真実の特権階級……神の権力を持ちえた者だ!!
――オレは知りたい!!この世界においてオレはなんなのか何者で何ができ……
――何をするべく定められているのか…不思議だな……こんなこと話すのはおまえが初めてだよ

かつて、ある男と交わした会話が蘇る。
その男は己にとって、何だったのだろうか。
あらゆる言葉を持ってしても言い表せないようで、子供でも知っているような単純な言葉で言い表せることが出来そうでもあった。
ただ、大事な男だった。
それこそ男の喪失を切っ掛けに――全てを捨て去ってしまう程に。

目の前の男は、あの男には似ていない。
似ているというのならば、己に似ている。
ならば、目の前の男を通じて答えを出そうとしているのか。
いや、違う。これはただの好奇心だろう。

答えは己で出せば良い。
偽りとはいえ、そのために命が与えられたのだ。

「――世界を変える」

立ち上がったセイバーの白銀の長髪が、ふうわりと揺れた。

「出来ると思うか」
「きっと――そうなる」

立ち上がった男の青みがかった灰色の長髪が、さらさらと揺れる。

「犬養舜二だ、よろしくセイバー」
「ああ」

差し出した犬養の手を、セイバーは握り返す。
ここにあるのは主従の契約ではない、互いが互いの夢を叶えるまでの同盟関係だ。

そして、自警団――グラスホッパー団長、犬養舜二と――

「きっと――そうなる」
セイバーは口の中で、その言葉を転がした。
胸から下げた覇王の卵が――蠢いたような気がした。


――傭兵団――鷹の団団長グリフィスの聖杯戦争は始まった。


962 : 神様のレシピ ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 17:19:23 Yi.V6daM0

【クラス】セイバー
【真名】グリフィス@ベルセルク
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷C++ 魔力E 幸運A+ 宝具EX
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:D
工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
カリスマ:A
大軍団を指揮・統率する才能。
鷹の団を率い、百年戦争においてミッドランドに勝利をもたらした彼は人間としては、最高位のカリスマの持ち主だろう。
また、鷹の団の団員は彼のために命を捧げるほどに彼を愛した。

制圧:A
百年もの間誰も攻略することの出来なかった難攻不落の要塞、ドルドレイ城塞を制圧した逸話から生まれたスキル。
鷹の団を率いることで制圧した陣地を、己のものとして扱うことが出来る。

軍略:A
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

【宝具】
『鷹の団』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:∞
セイバーであるグリフィスの剣。
NPC、マスター、サーヴァントを問わず、グリフィスに忠誠を誓った者は、鷹の団としての属性が付与される。
また、彼のマスターである犬養に忠誠を誓う者も、犬養が許可すれば鷹の団として扱うことが出来る。
ただし、鷹の団への所属はグリフィスのスキルの影響下に置かれるのみであって、特別に強化されることはない。

『覇王の卵』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:??? 最大補足:???



         ただ、その時を待つ。




【weapon】
『サーベル』
柄に宝石が埋め込まれた業物のサーベル、
グリフィスは卓越した剣技でそのサーベルを扱う。

【人物背景】
「白い鷹」の異名を持つ貴公子然とした騎士で白銀の長髪を持ち、純白のマントを羽織る。
柄に宝石を埋め込んだ業物のサーベルを愛用する。容姿、知略、剣技、指揮、人望、統率力等のあらゆる面において並ぶ者がないとさえ謳われる天才。
時折、子供のような無邪気な言動をする反面、鋭い洞察力と人心を掌握、
操作する才能に長けるが支配欲が強く、一度手中にしたものを失いかけると、表情にこそ出ないが激しい執着を見せる。
平民出だったがいつしか自分が世に生を受けた意味と意義を問い、「自分の国を持つ」という壮大な夢を持つに至って傭兵団「鷹の団」を結成。
数々の戦での常勝無敗の戦功と、権謀術数を駆使することで、一介の傭兵団長からミッドランド貴族階級に列されるまでに伸し上がる。
百年戦争終結時には戦功が讃えられ「白鳳将軍」の地位を与えられる予定だった。
しかし、グリフィスの中で無二の存在となっていたある男を失い、自暴自棄に陥り王女と密通、処女を奪ってしまう。
その後、国の反逆者として牢獄に閉じ込められ、虜囚となる。
1年後に鷹の団残党の働きで牢獄から救助されたが、長期に渡る拷問によって再起不能となる。自害しかけて絶望したグリフィスの目の前に【エラーが生じました】
そして、グリフィスは死亡し、英霊として呼び出された――ということになっている。


963 : 神様のレシピ ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 17:19:33 Yi.V6daM0

【マスター】
犬養 舜二@魔王 JUVENILE REMIX

【参加方法】
空を見上げれば、紅い月が浮かんでいた。

【マスターとしての願い】
この聖杯戦争を己の試金石とする。

【weapon】
無し。

【能力・技能】
圧倒的カリスマと煽動する才能。

【人物背景】
自警団「グラスホッパー」の代表取締役。ユニセックスな容姿をしている美形。
型破りかつ強い意志を感じさせる言動で大衆からはカリスマ的人気を持つが、
裏では自身の望む街の改革に邪魔な存在を暴力で排除するという残忍な一面を持つ。
「未来は神様のレシピで決まる」という理念を持ち、自分は世界を変える役目をもっていると考え、運命をあるがままに受け入れようとしている。
彼の周囲には超能力を持つ人間がいるが、彼自身はそのような能力は持っていない。

【方針】
神様のレシピ次第。


964 : ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 17:19:43 Yi.V6daM0
投下終了します


965 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:22:08 iSFReJoI0
投下します


966 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:22:58 iSFReJoI0
  図書館。
  揺れるアフロがひとつ。
  知識の山の中にアフロがひとつ。
  軍記、伝記、日常生活のマナーハウツー本、雑誌、ゴシップ誌、地図、新聞。
  絵本、小説、漫画、エッセイ、コラム。
  その他「現代の基礎知識」の本の数々。
  それらによって築かれた山の中心にアフロの主は身を埋め、それぞれの本に目を走らせていた。

「ファバロ、ファバロ」

  そんなボンバーヘッドのそばに、艶やかな女性が一人。

「つまんないでござる」

  浅黒い肌にかなり官能的に着崩した紺色の着物。豊満な胸の上には金色の鈴。
  流れるような青髪に、ぴんと跳ねた犬耳を思わせるくせ毛。
  特徴的なござる口調を除けば、文句なしの美女だった。

「待て、待て。今いいとこなんだよ。成程、それで兵器が更に進化してるってんだな。おっかねえなあ。
 ……げっ、なんだこりゃ、こんなもんぶっ放されたらクロスボウ程度じゃ太刀打ちできねぇぞ……」

  しかしファバロと呼ばれた青年はなあなあな返事をして読書を続ける。
  今しがた読んでいたマンガには、ファバロの知る『銃器』をはるかに上回った兵器が登場していた。
  近代科学の粋、これを使われれば流石のファバロも勝ち目なしだ。

「こんなのにも警戒しなきゃなんねえのか……ヤベぇな、この世界」

「種子島でござるか。それなら鈴女でも避けられるでござるよ」

「タネガシマぁ? ……ああ、さっき見たな。火縄銃ってやつか。バッカ、おめえ、こいつぁなあ! 2km先の相手を撃ち殺せんだぞ!!」

「むむ、それはヤベぇでござるな」

  わざとらしく言い回しを真似てみせ、それでもまだ暗雲晴れずというふうに顔を曇らせる。
  当然出てくる言葉はひとつ。

「ファバロ、つまんないでござる」

  ファバロは少しだけ溜め息を吐いて、自分のことを鈴女と呼ぶ美女の暇つぶしに付き合った。


967 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:23:37 iSFReJoI0
  いくつかの話を交える。
  鈴女の世界の話。
  ファバロの世界の話。
  美味しい物の話。
  危険な動物の話。
  そして鈴女の話。

「……そういやお前、願いあんのか?」

「んー……特にないでござるなぁ。ぶっちゃけ、ファバロが騒いでるのが面白そうだったからつい降りてきちゃっただけでござるし」

  下らない理由で召喚に応える英霊も居るもんだ、とファバロが笑う。
  鈴女は特に気にした様子もなく彼に対してこう聞き返した。

「ファバロは何をお願いするつもりでござるか?」

「俺か? 俺ぁ……あー、なに願ったんだったかな」

  ファバロ自身、願いに関する記憶は何もない。
  きっと酔っ払って判断能力が下がった時に月を見上げて願いを叫んだのだろう。
  それを裏付けるように、ファバロの元の世界での記憶は酒をしこたま飲んだあとでぷっつり切れている。そして目が覚めたら、この世界に居た。
  酔いつぶれた時に願ったのだ。どうせ「大金持ちになりたい」とか「美女を侍らせたい」とかそんな感じのはずだ。
  まあそれも実際捨てがたい。というより願いが叶うならだいたいどちらか。
  だが、この場において、この場を知ってもう一つ願いが増えた。

「そーだなー……実物の東京に住みたい、とか」

  メシが美味い、酒も美味い、女は綺麗。露出度も高い。
  命を狙われる心配もないし、金を稼ぐのも簡単。娯楽も多い。
  殺風景だがこの街はこの街で味がある。
  常識はずれなことも多々あるが、それでも面白おかしく過ごせそうだ。
  ここの元になった場所に行く、というのもありかもしれない。

「ま、そんなもんかな」

  そしてファバロは思い出す。
  この世界との出会い、自身のサーヴァントとの出会いを。


968 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:24:52 iSFReJoI0
***

  賞金首を一人誅し、金をいただき、その金で勝利の美酒に酔った帰り道。
  ファバロは真紅の月になんらかの願いを捧げ、月はそれに応じて彼を夢に誘った。

  そして、NPCとしてファバロが行動を始める日々が始まる。
  彼に与えられた役割は『飛び込み営業の社員』。
  午前七時、今日も会社員としての日常が始まる……はずだった。

「ええええええええええええええええええええええ!?」

  この柔らかいベッドはなんだ。
  このけたたましく鳴き声を上げている時計のようなものはなんだ。
  このよくわからない柔らかい布で出来た服はなんだ。
  というより、ここはどこだ。
  慌てて自身の無事を確認する。
  服以外特に変わった部分はない。自由が効いているので誘拐もない。
  だが、その身を包むのは余りにも壮絶な違和感。

「おっ、おぉっ!? お、えええええええええええええええええええええ!!?」

  勢いそのままに部屋の外に飛び出し、その景色に再び驚愕する。
  見たこともない建物の山、山、山。
  舗装された大地にちょぼちょぼと生えているだけの緑。

「ぬ、ぬわぁんじゃこりゃあああああああああああああああ!!!!」

  全てが彼の許容量をはるかに上回っていた。
  頭を抱え、身を震わせる。
  夢ではない。地面に触れている素足の感触はまさに
  呑み過ぎや記憶喪失では説明が付かない。これは最早別世界じゃないか。
  そしてファバロは、NPC生活一日目の起床時に一発で記憶を取り戻した。
  次いで右手に熱が走り、痣が浮かび上がる。

「あだ、あだだだだだだ!? 今度はなんだぁ!?」

「令呪でござるよ。鈴女との契約が成立したしょーこでござるな」

  そして、誰も居ないことを確認したはずの部屋から、目が覚めるほどの美女が現れた。

「だ、誰だテメェ……って、ニンジャ? なんだこれ」

  彼女の体に浮かび上がるのはクラス名とパラメータ。
  そして思い出す。知らないはずの情報を思い出す。
  聖杯戦争についてのいくつかのことと、サーヴァントについてのこと。

「ニンジャ鈴女。定刻通りに只今参上でござる、ににんにん!」

  可愛らしく指を立ててびしっとポーズを決める。
  唐突にやって来て、唐突にぶち壊され。唐突に巻き込まれた。
  それが、ファバロ・レオーネの聖杯戦争の始まりだった。

***


969 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:26:08 iSFReJoI0
  そうこうあって記憶を取り戻し。
  まずはなによりも情報と図書館に向かい始めたのがついこの間。
  それから何日も通いつめ、知らないことを片っ端から調べあげた。

  そしてまた、知識の貯蔵で一日の半分が終わり昼が来る。

  小腹も空いたことだし、ファバロは人目につかない道を選んでぶらぶら呑気に歩きながら、馴染みになった定食屋に向かった。
  幸い、目覚めた時既に貯金が幾らかはあったので聖杯戦争中に豪遊でもしない限り資金が尽きることはないだろう。

「今日も色々分かったでござるか?」

「んー、まあ、色々なぁ」

  知識を蓄える前は目につく物全てが輝いて見えたものだが、今となっては別段驚きもしない。
  ビル、マンション、アスファルト、ブロック塀、ライト、信号、横断歩道。あれもこれも概要は理解した。
  自動車、バス、救急車、新幹線、電車、バイク、自転車、移動手段も押さえた。
  自動ドアにはまだ少しビビるが、それもあと何度かだけだ。
  必要そうな情報はかたっぱしから飲み込んで、蓄える。
  全ては聖杯戦争に勝つために。「文明レベルが大幅に劣る世界から来た」という巨大なハンデを埋めるために。

「よし、今日まででだいたい知識も揃ったし、そろそろ俺たちの話でもするか」

「鈴女たちの話、でござるか」

「簡単な現状確認さぁ。まず一ぉつ、俺たちは弱い。直接戦闘だとたぶんすぐ負けて終わりだ」

  鈴女が頷く。

「だが二ぁつ、お前の能力を全力で使えれば、全く勝ちの目がないってわけでもねえ。
 と、いうよりも。建物やその辺歩いてる奴らを上手く利用すればどんな状況からでも勝ちが拾えるだろう。
 あとは俺の頭とお前の使い方次第って感じだが……このよく分かんねー『東京』に関する基本的なことはだいたいは覚えた。これでちょっとはマシな指示が出せるはずだ」

  鈴女が再び頷く。

「そして三ぃっつ、今から令呪を一画使わせてもらう」

  鈴女が問うより先に令呪を放つ。

「令呪を持って命じる。『マスター・サーヴァントの情報を手に入れた場合、ファバロ・レオーネに隠さず伝えろ』」

  右手に宿った令呪が一画空に消え、執行される。
  特に見た目に変わりはないが、これで間違いなく『鈴女がサーヴァントの情報を手に入れた場合、ファバロに伝えられる』ようになった。

「その程度でいいでござるか?」

「その程度、が重要なんだよ。一画失うのは惜しいが、それでも連絡ミスで下手打つよりゃましだ」

  へらへら笑って手を振ってみせる。
  あくまで自然に、令呪の裏に隠した意図には気取られないように。


970 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:27:10 iSFReJoI0
  ファバロは抜け目ない。
  勿論、鈴女に言ったことも真実だ。
  パラメータの低い鈴女と共に戦うならば、情報を共有して戦略を立てやすくしておく必要はある。
  鈴女は戦略によって1にも100にもなる性能をしている。
  生き延びたいなら100にどれだけ近づけるかが重要になってくる。そのカギを握るのはファバロ自身だ。
  情報を収集し、的確な判断を下すことこそがこの聖杯戦争でのファバロに求められる役割だろう。
  ならば当然、伝えられる情報を100にしておく必要がある。
  どんな些細な事でもいいから、取りこぼさないように注意しておく必要がある。
  鈴女自体がかなりちゃらんぽらんな性格をしているため、重要な事実を入手してても「そういえばそうだったでござる」「忘れてたでござる」と言い出しかねない。
  それをなくすため、というのも理由の一つ。

  しかしもう一つ理由がある。
  それはずばり不確定要素を潰すため。
  不確定要素とは即ち、彼女自身は無いと言った『鈴女の願い』。それに対応するため。

  記憶が戻ってまず、彼は図書館に向かって自分の知らない常識の数々と『鈴女の逸話』を調べた。
  彼女の宝具やスキルの全容も理解した。
  そして彼女が『ランス』という人物をとても慕っていたのも知った。
  普通ならこの点に特に問題はない。
  ただ、色々と条件が整ってしまえばかなり面倒になる。

  例えば『ランス』が参加者としてこの東京の地に居た場合。
  ちゃらんぽらんな彼女が自分を裏切ってランス側に寝返らないとは言い切れない。
  可能性としては低い。が、手を打てるなら打っておくべきだ。
  先ほどの令呪によって、もし鈴女が『ランス』に出会った場合。その情報はファバロに包み隠さず伝えられる。

(もし居たらまあ、同盟を持ちだして……んで、テキトーなとこで英霊の交換でも申し出るかな)

  殺せない相手が居るサーヴァントと組むなんて、崖の縁でタップダンスを踊るようなものだ。
  自身を殺せないように上手いこと令呪を使った上で『ランス』に渡せばそれで十分だ。

(上手く令呪が働いてくれれば情報も得られるし厄介払いもできる、万々歳ってな!)

  そう、ファバロは先ほど令呪を持って『情報をファバロに伝える』ことを命令した。
  令呪の強制力がどの程度働くかは分からないが、もし契約終了後にも続くようなら。
  鈴女は新たな情報を得たらファバロのところに来て、そしてその場で退場となる。


971 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:28:40 iSFReJoI0
(……まだ誰にも会ってねーってのに、考えすぎかぁ? ……ま、なんも考えないよりはマシか)

  令呪の数が多いに越したことはない。鈴女の宝具である『暗殺2』は令呪がないと発動できないのだから。
  だが、不測の事態で足元を救われて死ぬ、なんてマヌケを見せるくらいなら警戒するほうがマシだ。
  必要があると判断すれば、その時に迷わず使う。
  惜しんで命を手放すくらいならその方がマシと割りきらなければならない。
  今回の令呪も必要なもの。悔いる必要はない。そう割り切って前を向くと、ちょうどファバロの顔を覗きこんでいた鈴女と目があった。

「……ファバロ、なにやらよからぬことを考えてるでござるな」

「なぁ!? んなわけねーだろ!! なんでそうなンだよ!!」

  一瞬令呪に関する思惑を感付かれたか、と思ったがそうでもないらしい。
  逸話から察するに勘がいいようだから、それでなんとなく言っただけだろう。
  ファバロはあからさまに大げさに驚いて見せ、騒ぎ立てる。

  鈴女がふんふむ言いながらそれ以上追求しないのを確認して、ファバロは胸をなでおろした。
  どうやら黙りこくっているのが気になっただけで、令呪自体に警戒は抱かれてないようだ。
  すかさず畳み掛けるようにおどけてみせる。

「俺の目を見ろ!! この目が良からぬことを考える目に見えるか!?」

  しばし見つめ合う二人。
  そしてファバロは、おもむろに目を閉じると唇をつきだした。
  まるで熱いベーゼを求めるように。
  近づく口と口、触れるかと思ったところでファバロのでこに衝撃が走った。
  デコピン、と呼ぶには威力が高過ぎる一撃。
  ファバロがでこを擦りながら目を開くと、そこには人差し指を突き出して笑う鈴女の姿があった。

「いってぇ!! なにすんだ!」

「むほほ、てんちゅーでござるよ」

  楽しそうな笑い声と楽しそうな怒鳴り声が東京の街角で上がった。


972 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:29:57 iSFReJoI0
【クラス】
ニンジャ

【真名】
鈴女@戦国ランス

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運A 宝具E

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
気配遮断(忍):A+
気配を遮断することが出来るというスキルが創作忍者用に改変されたスキル。
ニンジャは通常状態では目立つし一発でサーヴァントだと感付かれるが、相手に目視されない限りその存在を気づかれることはない。
Aランクともなればたとえ天井裏だろうが床下だろうが標的の背後だろうが存在が認知されてなければ魔力・気配ともに完璧に遮断し、一切気づかれない。
更にスキル『稀代の天才忍者』によって変装中もこのスキルは発動され、変装が見抜かれない限りはその気配遮断が解けることはない。
ただし、このスキルを持つものは真名秘匿ができず、それどころかクラス名と一緒に真名を名乗ってしまうことがある。

【保有スキル】
稀代の天才忍者:A
基本的な忍術(分身・変装・変わり身など)ならば全てを高練度で使用することが可能である。
特に変装は高度であり、老若男女問わず体格・顔つき・声色まで全てトレースが可能。返送中は同ランク以上の看破スキル持ちでなければ彼女の正体を見ぬくことは不可能である。
また、他者がニンジャの知らない忍術を使用した場合、その忍術をトレースすることが出来る。
ちなみに、彼女の分身はわりと常識的な分身であるため分身を変装させることや分身だけを偵察させることは不可能である。

JAPAN一のくのいち:-
彼女の居た世界では、世界中探しても彼女と同等以上のくのいちは存在しない。
ニンジャは敵対者が「女性」かつ「アサシン」、もしくは「くのいちの逸話持ち」の場合、敵対者に有利な判定を下すスキル・宝具を全て打ち消す。
更に上記敵対者のパラメータが自身より高い場合、自身のパラメータをその戦闘中のみ彼女らよりも高くすることが出来る。

気配察知:A---
マスターに危害を加えようとしている人物の存在を的確に把握できる。
生まれついての素質と教育の賜物であり、その察知能力は最早未来予知の域である。
ただしこのスキルはマスターのそばにいる時にのみ発動し、少なくとも10m離れていると発動しない。

諜報:A
敵情を探ることに特に優れている。
彼女がサーヴァントを視認した場合、そのパラメータと彼女が見ている間に発動されたスキル・宝具情報を見ることが出来る。
ただし相手が秘匿系の能力を持っていた場合はその限りではない。

気まぐれ:C
気に入っている人物には忠誠を誓うが、それ以外の人物のいうことは例え師匠でも聞かない。
聖杯戦争中マスターの命令も「それなりに守る」程度であり、興味関心次第で寄り道や道草を挟む可能性は高い。
このスキルはマスターがランス@ランスシリーズの場合のみ外れる。

【宝具】
『鈴女スペシャル』
ランク:E 種別:対雄 レンジ:1 最大補足:10
必殺の房中術。
相手が雄であり、鈴女に対して性的興奮を覚えている場合にのみ発動が可能。
この宝具が発動された場合、その対象は為す術無く文字通り絞り殺される。もしくは毒殺される。
この宝具によって絞り取った精液を魔力に還元して鈴女の魔力を回復することが出来る。
そしてこの宝具は相手を選ばない。必要とあればNPCに対しても発動が可能である。

『ちゅんちゅん手裏剣』
ランク:E 種別:対魔術 レンジ:1〜30 最大補足:2
鈴女お手製ちゅんちゅん手裏剣を投げる。
この手裏剣があたった場合、当たったものに対して発動中の魔術を全てキャンセルする。
対象は人物・物体を問わず、人物の場合詠唱もキャンセル出来る。
敵がキャスターかつ陣地作成済みだった場合陣地は消滅する。陣地自体が形を持っている場合、陣地に当てても陣地を消滅させられる。

『暗殺2』
ランク:E 種別:対弱者 レンジ:1 最大補足:1
暗殺を行う。
パラメータの総数値が自分以下のサーヴァント、もしくはサーヴァントと別行動をとっているマスターを確実に殺すことが出来る。
敵が不死であっても、特殊攻撃以外で死なないとしても、仮にAランク以上の攻撃で十二回殺さなければならないとしても、条件が整った場合その因果を覆し確実に一撃で殺し、聖杯戦争から退場させることができる。
ただし条件として気配を察知されず至近距離まで近づくことと一回につき令呪を一画使用することが必須。
ちなみにパラメータの総数値が自分より上のサーヴァントを相手にこの宝具を発動する場合、令呪は三画必要になる。


973 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:31:34 iSFReJoI0

【weapon】
手裏剣、短刀、毒物など忍者の標準装備。
女性器にはそれぞれ一発で雄を殺す毒が仕込んである。
さくーっとやっちゃうでござる。

【人物背景】
ににんにん!
成仏したと思ったら英霊の座に取り込まれていたでござるの巻

【願い】
なし。全力で叫ぶ赤アフロという絵面が面白かったから見に来た。ランスにもう一回会いたい……?



【マスター】
ファバロ・レオーネ@神撃のバハムートGENESIS

【参加方法】
酒を飲んだ帰り道で紅い月に何かを叫んだ……はず。

【マスターとしての願い】
大金持ちか、ハーレムか。東京暮らしも憧れる。

【weapon】
いつものクロスボウ、いつもの短剣、調剤器具他本編で使った装備一式

【能力・技能】
観察能力と判断能力。
特に地の利や環境を用いた奇襲奇策に優れている。
下調べの入念さにも長けており、出来る限りの対策を打って最高の勝算を確保してから勝負に臨むタイプ。
また、武器の扱いにも慣れておりボウガンの腕はなかなかのもの。作中では十数m先の紐を狙い違わず射抜くような精度を見せる。
そしてなにより悪知恵が働く。
だがお人好し。

【人物背景】
やるときはやるボンバーヘッド。
作中一話、酔っ払った帰り道から登場。
なので尻尾は生えていないしカイザル以外とは面識がない。

【方針】
「異世界の常識」と「敵」の情報収集。
必要とあらば令呪の使用も躊躇しない。


974 : ◆tHX1a.clL. :2015/01/20(火) 20:31:45 iSFReJoI0
投下終了です


975 : ◆3SNKkWKBjc :2015/01/20(火) 21:30:45 gPtAWZlA0
皆さま投下乙です。投下させていただきます。


976 : 言葉は剣より強し ◆3SNKkWKBjc :2015/01/20(火) 21:31:46 gPtAWZlA0

言葉には力がある。
日本古来では言葉には霊力が宿り、言葉により森羅万象が成立していると称された。
それを『言霊』と呼ぶ。


神道や呪術など、呪文を唱える行為も言霊を使用すると同じ。
親しまれたたとえを挙げるならば『陰陽師』が真っ先に思い浮かぶだろう。


『陰陽師』とは安易に表現すると悪寮の退治屋、霊媒師。
即ち。
西洋風に表記すると――『エクソシスト』なのだ。


◆ ◆ ◆


部屋の隅で一人の少年が震えている。
彼もまた『紅い月』を目撃し、聖杯戦争に参加した……させられたの方が正しいか。
とにかく、マスターの1人だ。

彼は恐怖していた。
当然だろう。数多のサーヴァントとマスターが自分を殺しに来るかもしれないのだから。
彼の反応はごく一般的な常識人としてのものである。


『安藤クン』


そんな彼――安藤に囁くのはサーヴァントの声。
ハッキリとした自信に溢れた声で告げる。


『希望は捨てちゃ駄目だ』

『希望があれば、どんな困難にも立ち向かえられる』

『ボクがそうだったように』


サーヴァントの助言は不思議と心に響く。
しかし、安藤はちっぽけな人間に過ぎないのだ。
英霊となったサーヴァントとは違い、正しき心を持った英霊に相応しい存在ではない。

安藤に出来る事は――考える。
ただ、それだけ。
だがしかし、彼は人並みより、もしかしたら誰よりも考えているかもしれなかった。


977 : 言葉は剣より強し ◆3SNKkWKBjc :2015/01/20(火) 21:32:16 gPtAWZlA0
情けない事に体の震えは止まらない。
それでもハッキリと安藤は言う。


「俺……他の人たちを殺さない。障害になるような相手以外は殺さない」
『それは――殺人に罪の意識を感じるってことかな』
「違う! そうじゃない! だっておかしいだろ!?
 急にここへ連れて来られて、殺し合いしろって、そしたら願いが叶うから
 聖杯戦争をしようって……そんなの何も考えていないのと同じだ!」


安藤は躊躇っていた。
願いが叶う聖杯を得る為の戦争という大きな流れに飲み込まれる事を。

本当にそれでいいのか?
どうして、何も考えないんだ?
願いを叶うからって、殺し合わせようとする聖杯の事を微塵も疑わないんだ?
――と。


「理由なんて分からないし、聖杯が何をしようとしてるかも分からない。
 ただ……そうさせようとしているんだ。何か絶対ある。だから殺さないつもりでいる」
『わかったよ、安藤クン』
「……苗木は俺の考えが間違っていると思わないのか?」
『安藤クンは――何かが切っ掛けになって聖杯戦争が変わって欲しいと願っているんじゃないかな』


そうだ。それなんだ。
何故、殺し合うことでしか聖杯を求められないのか。
聖杯――お前は本当に『考えた末に』戦争を起こしているのか。

安藤の想いを汲み込んでくれるサーヴァント・苗木に安心感を覚えた。
彼は黒い想いを抱え込み苗木に応えた。


「俺は聖杯戦争を変えたい、力を貸して欲しい。苗木」
『うん。ボクはサーヴァントとしてキミを守るよ』
「……ありがとう」


最悪、無思考な聖杯を破壊する。
その野望を持つ魔王は、聖杯戦争の舞台――『東京』へ降臨した。


978 : 言葉は剣より強し ◆3SNKkWKBjc :2015/01/20(火) 21:33:30 gPtAWZlA0
<エクストラクラス:エクソシスト>
妖怪、怨念といった邪気を退治する存在。
日本ならば『陰陽師』西洋ならば『エクソシスト』
これらの起源となった言霊、神道に精通するものにも適用されるクラス。
代用的な英霊を挙げると、安倍清明、アレン・ウォーカー、デミアン・カラス、無名の戯言遣い。
マスターの安藤もこのクラスの英霊になる素質を持つ。



【クラス】エクソシスト
【真名】苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
【属性】中立・善

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:EX 宝具:D

【クラススキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
 事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

対霊神:C
 妖怪などの邪気を持つ英霊の全パラメータを、1ランクダウンさせる。


【保有スキル】
超高校級の幸運:EX
 低確率で発生する事態を引き寄せるスキル。
 危機的な活路を発見する才能。

超高校級の希望:A
 精神干渉系の類を全て無力化させる。
 敵意のない仲間と共にいれば魔力回復、魔力貯蔵が進む。


【宝具】
『言弾(コトダマ)』
ランク:D~A 種別:対人 レンジ:1~50 最大補足:16人
本来は矛盾を論破する言葉。故に『言弾』。
語源とされる『言霊』は日本古来より言葉に霊力が宿ると云い伝えられた力。
神道や呪術にも適用され、日本のエクソシストと呼べる陰陽師が使用したのも例外ではない。

言葉を弾丸に変化させ、敵に打ち込む。
苗木誠自身の言葉でも構わないし、他者の言葉を弾丸にすることも可能。
その言葉が敵にとって心に響く言葉であればあるほど威力が増す。


【人物背景】
才能溢れる高校生しか入学出来ない希望ヶ峰学園に抽選で選ばれた『超高校級の幸運』。
そこで行われたコロシアイに絶望することなく仲間たちと共に希望を見出す。
彼は『言葉』の力だけで希望を作り、絶望を打ちのめした。

お人好しで心優しい性格の平和主義な常識人。
諦めない意思の強さと前向きさによる力強さであらゆる困難にも立ち向かえる。



【マスター】安藤@魔王 JUVENILE REMIX

【参加方法】
偶然、紅い月を目にしてしまった。

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を変える。
あるいは、聖杯の破壊……?

【能力・技能】
『腹話術』
 安藤を中心に半径30歩圏内にいる人間に自身の思った事を喋らせる。
 能力を受けた人間は意識が少し途切れる。
 ただし、使いすぎると呼吸困難の副作用を受けてしまう。

特殊な能力を保有する為、多少の魔力はあるだろう。


【人物背景】
能力を持つ以外は、ただの高校生。
ちっぽけな人間に過ぎないが、神にも逆らう魔王として覚醒する意思を持つ。


979 : ◆3SNKkWKBjc :2015/01/20(火) 21:34:02 gPtAWZlA0
投下終了です


980 : ◆weU1zR4Bn6 :2015/01/20(火) 22:14:57 YSUa0Z1U0
投下します


981 : ◆weU1zR4Bn6 :2015/01/20(火) 22:15:29 YSUa0Z1U0

 閃光が瞬く。
 光が照らすのは凄惨な殺人現場。
 一面血の海となった路地裏から歩み出てきた男は、懐から携帯電話を取り出した。

「……もしもし」
「やあ、フランク。どうだった?」

 聞こえてきたのは快活な男の声だ。
 プレゼントを待ちきれない子供のような感触を覚える。

「ハズレだ。こいつはサーヴァントの仕業じゃない」
「そっかー、まあさすがにそんなヘマをする間抜けはいないよね。
 とりあえず一旦戻ってきてよ。池袋でカラーギャング同士の抗争が起こりそうなんだ」
「ギャングの抗争ねえ。本気でそんなもんにサーヴァントが噛んでると思うのか?」

 通話相手は彼の雇い主だ。
 現在、男――フランク・ウェストは、このクライアントの依頼で街を駆け回り、スクープを探している。

「まさかぁ。そこまで単純に考えちゃいないよ。でも大きな事件になることは間違いないからね。
 後々何かに使えるかもしれないだろ? どうせ今は他にやることもないしさ」
「そりゃそうだ。了解、ボス。すぐに戻る」

 通話を切り、携帯をポケットへ落とす。
 ちょうど近くに止まっていたタクシーを捕まえ、池袋へ向かわせる。

――イケブクロ……日本か。こんな形で来ることになるとはなぁ。

 フランクの役目はフィールドワーク、現場担当だ。
 彼が足で集めた情報を雇い主が精査し、価値ある情報に整理して他者へ売る。
 彼のボスはいわゆる情報屋なのである。そしてフランクはジャーナリストだ。雇い雇われる関係は自然に成立した。
 フランクは生前、フリーのカメラマンだった。企業に属する社員ではなく、自分の腕のみを頼る一匹狼。
 タクシーの窓から往来を眺める。そこには平和な街並みが映っていて、戦争の気配など微塵もない。

――聖杯戦争……生存競争。ただし相手はゾンビじゃあない、か。

 思い出すのは、フランクの人生を決定づけた事件だ。
 ある郊外の街で起きたバイオハザード。閑静な街が一夜にして地獄へと様変わりしたあの『ウィラメッテ事件』。
 人間を動く死体――ゾンビへと変貌させる悪魔のウイルスがばら撒かれ、多数の死亡者が出た。
 コロラド州の地方都市で生まれた種火は瞬く間にアメリカ全土に広がり、世界中を巻き込んだ有史以来最悪のバイオテロとなった。
 フランクはスクープをモノにすべくその地獄へと飛び込み、事件の真相を掴み報道した。しかしその時には既に、世界中にウイルスが拡散していた。
 世界は瞬く間に人間とゾンビの生存競争に呑み込まれた。

――まあ、いいさ。俺のやることはいつだって変わらん。

 フランクがどう生きて、どう死んだか――それは今、語るべきことではない。
 肝心なのは、フランクが今、ここにいるということだ。自由に動く身体があるのなら、フランクがするべきことは一つしかない。
 目的地に着いたタクシーから降りて、寂れたビルの階段を登る。


982 : ◆weU1zR4Bn6 :2015/01/20(火) 22:16:03 YSUa0Z1U0

「おかえりフランク。どうだった? 初めてのニッポンは」

 出迎えたのは痩せた若い男。このビルを拠点にして活動する情報屋にして、フランクの雇い主だ。
 そしてサーヴァントたるフランク・ウェストの、マスターでもある。

「おや、浮かない顔だね。君にはゾンビが徘徊してないと物足りなかったかい?」
「まさか。久しぶりに平和ってやつを満喫させてもらったよ」

 マスターの名は折原臨也。
 人の好さそうな笑みを浮かべているが、その実決して内心を悟らせない仮面のような表情だとフランクは思う。

「渋谷の殺人事件は無関係……と。でもこれはこれで物騒な世の中だよねえ」
「ニッポンは平和な国だと聞いていたんだがな」
「そりゃ銃社会の君のお国と比べたらねえ、平和だと思うよ。でも一皮剥けばどこだってこんなもんさ。
 国が違ったって人の本質は大して変わりゃしない。そこが良いと俺は思うんだけどね」

 マスターが広げた地図に×印を書き込んでいく。これで四ヶ所目だ。
 臨也はこうやって、街で起きた異変を虱潰しに調べて情報を入手し、それを必要としている者に売る。あるいは、自分の望む結果になるように誘導する。

「……俺が言うのも何だが、こんなことしてていいのか? やる気のやつはもうおっ始めてる頃だぞ」
「んー? だってフランク、俺たちに勝ち目があると思ってる?」
「いや、ないな。その点は申し訳なく思うが」

 さほど悪びれもせずフランクは答える。
 彼の本業はジャーナリストであり、軍人でも格闘家でも殺し屋でもない。
 従って、バリバリの本職を相手に勝ち抜ける可能性など万に一つもない。それは召喚された時点で臨也には説明していた。

「なんて言うかねえ、俺ってそういうキャラじゃないし。手当たり次第に喧嘩ふっかけて回るってのは、シズちゃんみたいで嫌なんだよ。
 幸い、俺とフランクって相性良いじゃない? だったらここでもいつも通りにやるだけさ」

 という臨也のスタンスは、正直な話フランクにもありがたいものではあった。
 フランク自身、最初から勝ち抜こうなどとは思っていない。死んだ後にまで叶えたい願いというものもない。
 あるとすれば骨の髄まで染み込んだジャーナリストとしての欲求だけだ。つまりは、誰よりも早く情報を取材して民衆へと報道すること。
 その点臨也は、フランクに戦闘力ではなく情報収集力を求めている。フランクの欲求と合致する行動方針を掲げ、自由に動いていいと言う。
 臨也の人間性はともかくとして、確かにフランクとは相性のいいマスターであると思える。

「ああ、楽しみだなあ。楽しみだなあ。一体どんな奴がいるんだろう。どんな事件が起こるんだろう。
 サーヴァントにはセルティやシズちゃんみたいな奴がいっぱいいるのかな?
 人外の化け物は勘弁だけど、もしかしたら歴史上の偉人と会えるかもしれない。
 世の中には俺が知らなかったことがまだたくさんあって、この東京で俺が予想もしなかったバカ騒ぎが起きるんだ!」

 と、臨也は自分が死ぬリスクなどさらさら考えていないように目を輝かせている。
 臨也とフランクは、間違いなくこの聖杯戦争で敗れ、死ぬだろう。そもそも戦う状況になった時点でゲームオーバーは確定だ。

「頼りにしてるよ、フランク。一緒にこの聖杯戦争で起こる出来事を楽しもうじゃないか」
「オーケー、ボス。それが俺の仕事だからな」

 それでも臨也は、自分を曲げることはないだろう。絶命するその瞬間までやりたいようにやる、そういう人種だ。
 ならば、フランクもそれに付き合うだけ。臨也が何かを企んでいるのだとしても、どうでもいい。
 フランクの仕事は、カメラで真実を写し出すこと――ただそれだけなのだから。


983 : 折原臨也&ジャーナリスト ◆weU1zR4Bn6 :2015/01/20(火) 22:17:34 YSUa0Z1U0

【クラス】
 ジャーナリスト
【真名】
 フランク・ウェスト@デッドライジング
【パラメーター】
 筋力:D+ 耐久:D++ 敏捷:E 魔力:E 幸運:C 宝具:D
【属性】
 中立・中庸
【クラススキル】
 気配感知:B
  気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境・スクープを認識する。
 気配遮断:D+
  スクープ対象に気取られないよう自身の気配を消す能力。
  また、ゾンビで溢れ返るウィラメッテで生存者を安全な場所までエスコートした逸話から、同行者1名にもその恩恵を与えることができる。
【保有スキル】
 仕切り直し:C
  戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
 不死:D
  ゾンビウイルスに感染し、不完全ながらゾンビとなったフランクの特異体質。
  決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお普段通りの行動が可能となる。
  生きながら死んでいる状態のため、洗礼詠唱など浄化作用のある攻撃には倍のダメージを受ける。

【宝具】
『シャッター・チャンス』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大捕捉:10人
 ジャーナリストであるフランクは、カメラでサーヴァントを撮影することにより被写体の情報を入手する。
  「DRAMA」(ドラマ性がある写真)…他者(NPC含む)を庇ったりしている瞬間など
  「HORROR」(恐ろしい写真)…他者(NPC含む)を殺傷している瞬間など
  「OUTTAKE」(こっけいな写真)…驚いている表情など
  「EROTICA」(セクシーな写真)…男女問わず、肌を露出させた瞬間など
  「BRUTALITY」(暴力的な写真)…戦闘時など
  「SPECIAL」(特別なシチュエーションの写真)…宝具開放時など
 撮影した写真は以上六つに類別される。
 この内一つを撮影した場合はクラス、二つでは保有スキル、三つで宝具情報+真名をそれぞれ入手する。
 四つ、五つ、六つめからは、対象サーヴァントと戦闘を行う際に相手のステータスをそれぞれ1、2、3ランク下げる効果となる。
 被写体に何らかの干渉を行う行為ではないため、相手が高ランクの直感や気配察知スキルを保持していなければ、宝具の使用を察知されることはない。
 この宝具を用いて撮影した写真は、情報を隠蔽・抹消する系統のスキル・宝具の影響を受けない。

『デッド・ライジング』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自分
 死から起き上がってきた者。因果の逆転による存在消滅の否定。
 フランクが死亡した際自動的に発動するが、この宝具を使用できるのは一度きり。
 ゾンビの因子を一時的に強化し、たとえチリひとつ残さず消し飛ばされたとしても蘇生することができる。
 このとき、蘇生する場所は死亡現場ではなくマスターの現在地となる。


984 : 折原臨也&ジャーナリスト ◆weU1zR4Bn6 :2015/01/20(火) 22:18:10 YSUa0Z1U0

【weapon】
 カメラ…愛用のカメラ。破損しても修復が可能。攻撃力はないが強力な閃光で敵の目を眩ませる。
 スケートボード…乗り物としても鈍器としても使用可能な金属の板。破損しても修復が可能。
 格闘…ゾンビの海を駆け抜ける中で鍛え上げた我流格闘技。首をねじ切る、拳を突き刺して内蔵を引きずり出すなど、殺傷力は高い。
【人物背景】
 コロラド州ウィラメッテ市で起きたゾンビのアウトブレイクをスクープすべく、カメラ片手に単身乗り込んだフリーのジャーナリスト。
 一般人ではあるが従軍経験があり、頑健な肉体と柔軟な発想を武器にゾンビをばったばったと蹴散らしていく。
 その肉体はおよそ常人の範疇を超えており、ライフルで武装した特殊部隊を素手で相手にしても全く引けをとらない。
 やがてフランクはアウトブレイクの真相にたどり着くが、そのとき既に彼の身体はゾンビウイルスに蝕まれていた。
 事態を収拾した後、ゾンビ化はかろうじて抑制できたものの、抗ゾンビ薬が手放せない体になってしまう。
【サーヴァントの願い】
 ジャーナリストとして活動する。
【基本戦術、方針、運用法】
 自衛程度の力はあるものの、基本的に戦闘向きではない。
 特ダネを見逃さない嗅覚で他のサーヴァントを発見し、相手に悟られないよう気配を断って撮影を行う。
 索敵・撤退に秀でた、諜報活動に特化したサーヴァント。


【マスター】
 折原臨也@デュラララ!!
【マスターの願い】
 今はない。聖杯を手に入れられたら考える。
【weapon】
 折りたたみナイフ
【能力・技能】
 パルクール 特別な道具を使うことなく、人工物または自然の障害によって動きが途切れることなく、効率的に目的地へ移動するための技術。
【人物背景】
 新宿を拠点に活動する情報屋。作中で起こった多くの事件の黒幕。
 人間観察を趣味とし、人間を愛していると公言するが中身は清々しいほどの外道。
 友人はほとんどいないが弱みを握った協力者・または信奉者は数多く、直接ではなく間接的に事件に干渉する頭脳派。
 情報処理に優れ、また弁舌も達者。優れた洞察力を持ち、人心掌握にも長ける。
 頭脳面に優れるが運動神経も秀でており、池袋最強と謳われる平和島静雄につけ狙われても何度も切り抜けている。
 全ての人間を愛するが、天敵である平和島静雄は唯一の例外。また、人外の存在も嫌悪の対象である。
【方針】
 情報屋として活動する。


985 : 名無しさん :2015/01/20(火) 22:19:00 YSUa0Z1U0
投下終了です


986 : 巻き込むんじゃねぇ! ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 22:20:01 Yi.V6daM0
投下します


987 : 巻き込むんじゃねぇ! ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 22:20:16 Yi.V6daM0


「ほう……キミが、私を召喚したマスターか」
「何だァ、お前は」

マスター、そう呼ばれた男は黒い帽子の下に瞳を隠し、暗きタキシードにその四肢を詰め込んでいた。
住居は公園のベンチ――近隣住民からの苦情は3日連続で受け流し、警察としてもお手上げ。
社会性――限りなく零!
その男に対するは、特撮を思わせる何らかの特殊部隊らしき制服を着た中年の男。
その気配、只者でなし!
そう、お察しの通り、彼こそがこの聖杯戦争のために呼ばれた英霊が一人――アーチャーなのである。

「さて……状況を一切察せず、都会ど真ん中サバイバル一本勝負を決め込もうとしているお馬鹿様なキミに教えてあげよう、
私こそッ!アーチャーのクラスで顕現した、キミのサーヴァントッ!地球を……いやッ!時系列を超越して全宇宙を支配する男!!!!マーティン=ジグマールだッ!」
「知るか、オレはただ静かに寝ていたいだけだ」
「ふふふ……その態度まさしくお馬鹿!!どこぞのお馬鹿様達を思い出させるッ!
だ……が、サーヴァントはサーヴァントでなければ倒せない!そしてこの私、マーティン=ジグマールを倒せるサーヴァントは、あの3人が揃いでもしない限りはいなぁい!
よってぇ!令呪の使い方も知らないキミに、英霊的教育をぶち決めようじゃないか!」
その瞬間、ジグマールの姿が消えた。
超を超えた超超高速移動か、否。瞬間移動――すなわち、人間ワープ!
それこそが、彼のアルター能力、英霊として召し上げられる程の超神秘的能力なのである。

「スーパー光線銃!」
そして、これこそが彼がアーチャーとして顕現されるに至った理由――宝具「スーパー光線銃」である。
よくわからん最新鋭の科学技術によって製造された、よくわからん兵器であるこれは、よくわからん威力で、敵対者を苦しめた。
その超威力が今、マスターに牙を剥かんとす!

「よくわかんねぇが、テメェをぶっ飛ばさねぇと安眠出来ねぇ!」
しかし、スーパー光線銃がマスターに向けられた瞬間、銃には銃と言わんばかりに、マスターの左腕が隆起し、タキシードを破った。
見よ、その異形の姿を――その左腕は銃と化しているではないか!
そして気がつけば、彼は右手に蛮刀を持っている。

「この銃……そして、蛮刀!お前はもしや……ガンソードのヴァン!?」
マーティン=ジグマール、これ程の男ですら知るというヴァン――彼は一体何ものなのか。

「ある時は、100人規模の殺し合いに巻き込まれ、参加者、観客、運営、主催、全員を皆殺しにした全滅エンドのヴァン!」
「また、ある時は……巨大ロボを欲望の力で完全粉砕せしめた欲望チャンピオンのヴァン!」
「そのほか、神と悪魔の戦争において、両方の勢力を皆殺しにした喧嘩両成敗のヴァン!」
「ラスト五秒の逆転ファイターヴァン!」
「時そばのヴァン!」
「絶対必殺占いのヴァン!」
「連帯連帯連帯保証人のヴァン!」
「だが!それらの伝説にはいつも共通することが一つあった!左手に銃!右手に刃!すなわち……ガンソードのヴァン!!!」

――男笑い!!
まさしく、マーティン=ジグマールが浮かべたのは不敵な笑みであった。
自分の持つ圧倒的な力から来る自信!力を持ったマスターが来たことから優勝を確実のものとした余裕!

「フフフ……そして、バカ頭のヴァン。
キミを躾けようとしたことは謝罪しよう、そして今から私が出す提案にイエスと言うんだ……私の仲間になれ!!」
「ノゥ!!」
銃撃が飛ぶ、だがしかし、ジグマール――ここは人間ワープで余裕の回避!

「イエスと言え!!」
「絶対にノゥ!!!」
再び銃弾――それ自体がフェイント、斬撃が舞うが、やはり人間ワープ――マーティン=ジグマール圧倒的な余裕か!

その時、帽子に隠れていたヴァンの目を――その鋭い眼光を!
マーティン=ジグマールは見た!

「ふふふ……その眼、敵対を止めぬ眼……ならば体裁を取り繕う必要はないな……
威厳を得る為に変えていた……この顔でいる必要もない!!! そうだ……これが本当の私ッ!」
その時、真夏の陽光が如き激しい光が――マーティン=ジグマールを包み込んだ。
これこそが、マーティン=ジグマールの真の姿!

「マーティン=ジグマール!!設定年齢19歳――蟹座のB型ッ!!!!」

美――


988 : 巻き込むんじゃねぇ! ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 22:20:28 Yi.V6daM0



ー‐-、    .‖            /l ,!,!   !、
. ___,,,,`ヽ -※-       __,.  / ,! ,!,! 、    \
{  `” }} ‖   ___,.-‐''"" _,. // / //  |ヽ\  /
`ー、,,,,,ノ ,.;',.-彡''"-‐'''"_,.-''"'ノノ ノ/ /  { ハ  / 
//  /,,.====-,,,, -==≡≡フ''ノ ,/,// ,,,,,{ |、}  .j
,//-<{ { ` ,,,,,,,,,,;;;;;;;;;__ ///,,,,,,〃"7}}j } /
{{ノ | | ( ,ス_ヽニ.ノ''フー`//k-=ラ'''7'/'' |.|/ ,.イ
ヽヽ ノ| |ヽヽ  '`ー‐'''"   {{. |` ー‐'"lj ノ /,/   ━━━━━美形だっ!!!
/\` `|ミ、`-        {{ |    // /×
//l.\ |ヽミ_           ヽ  / / / ヽ
| |、从|~ | `ー          〃  /{/ |  | \
| |从| ト、\     ー、..__,..   /_{,..!--- 、_ヽ `、
.| |∧{ヽ `ヽ \   ヽ`ー一’j  / jー,!二ニ、ヽ`ヽ、\
ヽ|j'ヽヽ,     \    ̄ ̄  /くノ ノ メ、-、ヽヽ } ゝ\
、`j`-、ヽヽCヽ___  \    / | / / {ヽヽン 冫} ,!}、  \
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 ヽヽ、   ヽ___.ノ  / /,/;;;; ; ; 、=`ーヽ..ヽ,.-‐" |  |  |

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{{ノ |  ̄7'' ―― ___ ―― 戈 ̄/'' |.|/ ,.イ
――― 从,,i ;         `. 、 .尢r、――――――
/\` `|/\じ'jl|此ト=メ i;_,,爻,,i| 刈ゞメ// /×
//l.\ |ヽミ``‐ヾ:;!Iヅ 〃!iメト辷-" ^ / / / ヽ
| |、从|~ | `ー          〃  /{/ |  | \
| |从| ト、\     ー、..__,..   /_{,..!--- 、_ヽ `、
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ヽ|j'ヽヽ,     \    ̄ ̄  /くノ ノ メ、-、ヽヽ } ゝ\
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|ヽ、  ̄`ー'',ニ、 `ヽ___`ー一1  ト{ヽ<`=='// j { ヽ  {
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「アホか」
変身直後の隙を突き、ヴァンは弾をぶち当てる。
これこそがヴァン――情け一切容赦なしのヴァン!
隙あらば毒までのヴァン!


989 : 巻き込むんじゃねぇ! ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 22:20:39 Yi.V6daM0
【クラス】アーチャー
【真名】マーティン=ジグマール@スクライド(漫画版)
【属性】秩序・悪

【パラメーター】
筋力:C 耐久:D 敏捷:C+ 魔力:C+ 幸運:B 宝具:C

【クラススキル】
単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクの場合、魂に致命的損傷を受けても短期間ならば生存できる。

対魔力:D
工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
変身:D
自らの形を変えるスキル、この姿によってアーチャーは威厳を保つための中年の容姿と、
本来の姿である設定年齢19歳、蟹座のB型。美――美形の姿のどちらも自由に取ることが出来る。

人間ワープ:A
彼のアルター能力によるテレポーテーション、瞬間移動、あるいは人間ワープ。
他人ワープを行うことは出来ない。

【宝具】
『スーパー光線銃』
ランク:E 種別:対人 レンジ:1〜10 最大補足:1人
最新鋭の科学により製造された、よくわからない二丁の光線銃。
化学兵器のために神秘は薄いが、その点魔力消費は少ない。
また、真名を開放することで即死光線銃を使うことが出来る。

『ギャラン=ドゥ』
ランク:A 種別:対人 レンジ:1〜10 最大補足:1人
マーティン・ジグマールのアルターでありながら自分の意志を持ち、人語も普通に話す。
ジグマールを利用しており、彼に宇宙船型のタイムマシンを作らせ、アルターだけの世界を作ろうとしていた。
単独行動:A+を持っており、召喚することによって場合によってはマーティン=ジグマールを裏切りうる。
また、生前のマーティン=ジグマールを殺害したのはギャラン=ドゥであるため、マーティン=ジグマールとしてもこの宝具の使用を避けている。

『タイムマシン(宇宙船じゃねーか)』
ランク:A 種別:対時 レンジ:1〜10 最大補足:100人
カッコイイだろう!!!
使用不可。

【人物背景】
普段は中年の容姿をしているが、それは威厳を保つための物であり、本来の彼は設定年齢19歳の美形、蟹座のB型。
自身のアルター能力を使って全宇宙を支配するという壮大な野望を抱いている。「人間ワープ」と「スーパー光線銃」を使いこなす。
最期は、自らのアルター・ギャラン=ドゥに泣きつくも、ギャラン=ドゥによって殺害される。というものだった。

【マスター】ヴァン@ガンソード(漫画)

【参加方法】
どこかで紅い月を見た。

【マスターとしての願い】
己の欲求を満たす、今は寝る。

【能力・技能】
『武装化(ヨロイ)』
左腕を銃に変える武装化(ヨロイ)、またその際右腕では蛮刀を扱う。

【人物背景】
人間の三大欲求、特に食欲に従順な生き物、天上天下唯我独尊。
彼が行くところ、さまざまなトラブルにより新たな通り名が生まれるが、共通の通り名として「ガンソードのヴァン」と呼ばれている。
アニメ版とは全くの別人物であり、同姓同名同姿の他人である。


990 : 巻き込むんじゃねぇ! ◆lnFAzee5hE :2015/01/20(火) 22:20:52 Yi.V6daM0
投下終了します


991 : 名無しさん :2015/01/21(水) 00:08:46 llPXFIww0
>>888以降の追加された主従纏め。14組がエントリー。このスレもあと一組で終了かな。

【マスター】&【セイバー】
【一ノ瀬晴 @ 悪魔のリドル】&【ヤモト・コキ @ ニンジャスレイヤー】 ◆7DVSWG.5BE(>>944->>951
【犬養 舜二 @ 魔王 JUVENILE REMIX】&【グリフィス @ ベルセルク】 ◆lnFAzee5hE(>>960->>963

【マスター】&【セイバー】
【ファニー・ヴァレンタイン @ スティール・ボール・ラン】&【ヘルガ @ パワプロクンポケット10(バトルディッガー編)】(>>924->>933
【ヴァン @ ガンソード(漫画)】&【マーティン=ジグマール @ スクライド(漫画版)】 ◆lnFAzee5hE(>>987->>989

【マスター】&【ランサー】
【佐々井夕奈 @ 銀色・完全版】&【クイーン・ミラージュ @ ハピネスチャージプリキュア!】 ◆devil5UFgA(>>900->>904

【マスター】&【ライダー】
【白鐘直斗 @ Persona4】&【魯粛 @ 真・三國無双7】 ◆CVsYM00PVA(>>892->>897

【マスター】&【アサシン】
【鹿目まどか @ 劇場版魔法少女まどか☆マギカ】&【特異型ヘルヴォール @ 実在性ミリオンアーサー】 ◆q4eJ67HsvU(>>919->>921
【空目恭一 @ Missing】&【八雲紫 @ 東方Project】 ◆ACfa2i33Dc(>>954->>956

【マスター】&【エクストラクラス】
【枢木スザク @ コードギアス 反逆のルルーシュR2】& “マスカー”【お面屋 @ ゼルダの伝説 ムジュラの仮面】◆Cb.PWiR...(>>907->>910

【“マスター不在”】&“ルーラー”【シビュラシステム @ PSYCHO-PASS】 ◆GOn9rNo1ts(>>913->>916

【石田三成 @ 戦国無双シリーズ】&“アヴェンジャー ”【石田三成 @ 戦国BASARA3】 ◆waFa5fGgBM(>>937->>941

【ファバロ・レオーネ @ 神撃のバハムートGENESIS】&“ニンジャ”【鈴女 @ 戦国ランス】◆tHX1a.clL.(>>966->>974

【安藤 @ 魔王 JUVENILE REMIX】&“エクソシスト”【苗木誠 @ ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】 ◆3SNKkWKBjc(>>976->>978

【折原臨也 @ デュラララ!!】&“ジャーナリスト”【フランク・ウェスト @ デッドライジング】 ◆weU1zR4Bn6(>>981->>985


992 : ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 01:29:22 BtcIionI0
新スレを立てさせていただきました、以降の投下はこちらで

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1421771147/


そして、登場話候補コンペを

――1/25(日) 24:00まで――

とさせていただきます


993 : ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 01:29:39 BtcIionI0
そして、こちらは埋め代わりに投下させていただきます


994 : 聖杯戦争炎上 ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 01:30:38 BtcIionI0




「あの人がどんな人だったか、だって?」

「アンタだって知ってるだろ、今でも追悼番組が作られるほどだぜ?」

「古事記に記されたマッポーの世に舞い降りた聖人。
 約束された千年王国へと人々を導く救世主。
 やっと、聖人の認定を受けたその時、しかし、卑劣なテロリストに殺された悲劇の英傑」

「ん? 俺の意見を聞いてるのか?」

「それこそ、特集番組で耳にタコが出来るほどに言っただろう」

「あの人は悪魔さ、聖人認定されようがね」

「俺は無神論者だがね、それでも信じざるをえない存在ってのもある。
 あの人に会って、俺はそう思ったんだ。
 あの人は俺なんかとは違う、別格さ」





「ラオモト=サンは実際神様さ、なのに、人間なのさ」




――――だから最高に悪魔なんだ、人間なのに神様だからね。




.


995 : 聖杯戦争炎上 ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 01:31:01 BtcIionI0



「ムッハハハハ!」

諸君らは聖ラオモトという聖人をご存知であろうか。
かつて、聖人認定を受けたその日、卑劣なテロリストニンジャに暗殺された悲劇の聖人だ。
マッポーの世に舞い降りた聖人、ラオモト・カン。

「も、申し訳ありません、ラオモト=サン!」

その聖ラオモトへと跪く一人のニンジャ。
ニンジャ……?
そう、ニンジャだ!
聖ラオモトは神話的怪物であるはずのニンジャを跪かせているのだ!
これもまた聖人たるラオモトの威光か!?
答えは、否だ。
ニンジャはラオモトの聖なる後光に跪いているのではない。
ラオモトが宿す七つのニンジャソウルと、ラオモト自身が持つ比類なきカラテに跪いているのだ!
そう、聖ラオモトはニンジャ……ニンジャなのだ!

「気にするでないヘルカイト=サン!」
「ハ、ハハー!」

ラオモトの赦しの言葉を聞いてもニンジャ―――ヘルカイトはただひたすらに平伏していた。
その瞳には恐怖だけが浮かんでいた。
ヘルカイトはラオモトがただの聖人でないことを知っている。
いや、恐らくこの世で聖人から最も遠い存在。
暴君、己以外の民から全てを吸い取る者なのだ。
マッポーの時代の都市、ネオサイタマはラオモトのための都市だった。
その世界でラオモトは君臨していた、一人の狂った死神が現れるまでは。

「立つが良い、間違いは誰にでもあるコウボウ・エラーズと言うではないか」
「ハハー!」

そう言われてもなお平伏し続けた。
ヘルカイトは恐ろしさの中に、敬意を抱いているからだ。
ラオモトの前で無礼な真似は出来ない。

「確かにヘルカイト=サン、オヌシが運んできた案件、多くのシックスゲイツ・ニンジャが犠牲となった。
 オヌシの偵察任務の不十分な結果と言えるだろうが。
 しかも、この火災……聖杯はなんとも言わんが、オヌシの隠蔽工作であろう?
 NPCもそこそこ死んでしまったのではないか」
「オ、オユルシヲ、オユルシヲ! ラオモト=サン!」
「ムッハハハ! 気にするでない、ヘルカイト=サン!」

おお……なんたることか。
この二人は『そこそこ』という言葉で片付けられるNPCたちの魂なき哀しみを理解していない!

「泥棒がバレたら火をつけろと、かの英霊ミヤモト・マサシも言っておる!
 聖杯=サンもルーラーたるワシの手足のオヌシの行動になんの問題提起も行わん!
 テすなわちワシから生じる行動は聖杯の意思、すなわちワシこそがルール!
 この場でムーンセルとのパイプを作り……また別の聖杯戦争において、ルーラーとして召喚されようではないか!
 ワシこそがルール! すなわち、ワシこそが聖杯! ワシのために戦わす!
 そして、憎きニンジャスレイヤーが現界した際には弄ぼうではないか!」
「さすがですラオモト=サン!」
「ムッハハハ!」

これが、これが願いを計る天秤の所業だとでも言うのか!
ラオモトはルーラーであるその立場を良いことに、私腹を肥やしている!
死してなお尽きぬその欲望!

「ムッハハハ!では、ヘルカイト=サン、良きように、の!ムッハハハ!」
「ヨロコンデー!」

そう言って偵察任務に秀でたヘルカイトは飛びだっていった。
ラオモトにとって、聖杯戦争もまた児戯だ。
死して見つけたある種の世界。
その世界を漂うラオモトは聖杯によってルーラーとして招かれた。
この偽りのサツバツ都市に跋扈するサーヴァント。
彼らを殺し、魂を食らう。
ラオモトにはそれが可能であった。


996 : 聖杯戦争炎上 ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 01:31:46 BtcIionI0

【クラス】
ルーラー

【真名】
ラオモト・カン@ニンジャスレイヤー

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力A++ 幸運A+ 宝具C

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
真名看破:B
「ルーラー」のクラス特性。
直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・宝具などの全情報を即座に把握する。
あくまで把握できるのはサーヴァントとしての情報のみで、対象となったサーヴァントの思想信条や個人的な事情は対象外。
また、真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなど隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、幸運値の判定が必要となる。

【保有スキル】
自己改造:D
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
他者のニンジャソウルを奪い取ったラオモト・カンは自己改造スキルを持つ。

直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
すなわちカラテだ。

カリスマ:A(B)
大軍団を指揮する天性の才能。
Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。
本来Bランクであるカリスマスキルを聖人スキルを使って1ランク上昇させている。

聖人:-
聖人として認定された者であることを表す。
聖人の能力はサーヴァントとして召喚されたときに"秘蹟の効果上昇"、"HP自動回復"、 "カリスマを1ランクアップ"、"聖骸布の作成が可能"から、一つ選択される。
ラオモトはカリスマを1ランクアップを選択した。

【宝具】
『葬界六門(ソウカイ・シックスゲイツ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1 最大捕捉:上限なし
クロス・カタナ・エンブレムを代紋に活動する、非合法ニンジャ組織の威力部門担当ニンジャを召喚する。
最強のイーグルである己が動くことを是としないラオモト・カンの手足のような存在。
『シックスゲイツの六人』とそのアンダーガードに名を連ねたことのあるニンジャならば、ラオモトは例外なく召喚できる。

『慾張計画(デモリション・ニンジャ)』
ランク:C 種別:対魂宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ラオモトはリー先生の「ヨクバリ計画」によって、元々の憑依ソウルである「ブケ・ニンジャ」に加えて六つのニンジャソウルを宿す事に成功した特異体質である。
常ならば一人に一つしか宿らないソウルを複数所持している。
ということは、それぞれのソウルの特性を引き出して、カラテ中にいきなり全く別の戦い方が出来るということ。
当然相手はラオモトが宿すソウルを知り得ないため、圧倒的なカラテも相まって非常に強力。

【weapon】
かの英霊ミヤモト・マサシが所持していたナンバンとカロウシ、二本の刀を所有している。

【人物背景】
ソウカイ・シンジケートのドンにして、七つのニンジャ・ソウルを同時に憑依させた悪魔的存在「デモリション・ニンジャ」。
平安時代の伝説的剣豪ミヤモト・マサシを崇拝し、彼が使ったとされる双子の刀「ナンバン」「カロウシ」を持つ。


997 : 聖杯戦争炎上 ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 01:32:06 BtcIionI0
投下終了です


998 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 02:42:13 BtcIionI0




――――我が名を讃えよ。



――――我が栄光に満ちた、並ぶ者無き我が名を讃えよ。




――――頼るもの、縋るものなく、生きていけるほど、人は、強くない。



――――人が、我に救いを求める度に、宇宙の大いなる意志は、何度でも我を生みだすであろう。







999 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 02:42:59 BtcIionI0


曰く、願いを叶える月が紅い理由は、血と欲望に染まっているからだ。


願いには代償が必要だ。
代償すら容認する、強い願い。
そんな願いを、時を限りなく薄めた一瞬にでも抱いた瞬間。
聖杯はそこに現れる。
人は願いを求めることを辞めない、弱い生き物だ。
己の力で為すべきだと心得ても、人は奇跡を求める。

例え、月がなくとも。
例え、空がなくとも。
例え、例え、満月が紅い月を隠そうとも。

例え、例え、例え――――お前が願いを抱かずとも。


――――『お前』が求める限り、紅い月は、お前を見ているぞ。






1000 : 聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 ◆devil5UFgA :2015/01/21(水) 02:43:45 BtcIionI0



曰く、紅い月の嘲笑の奥には眠る聖杯を争う戦。
曰く、願いを求める魂に血塗られた紅い月。


赤い月にて、聖杯戦争は開かれる。


――聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 第二幕――


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