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二次キャラ聖杯戦争・獅子王杯
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このスレは版権キャラで聖杯戦争を行う企画となります
個人的な文章のリハビリを目的としたものであるため、ひとまず非リレーのスレとさせていただきます
一部ルールは「第二次二次キャラ聖杯戦争」を参考とさせていただいております
(同スレと本スレは一切関係ありません。ご了承ください)
また、一部参戦キャラクターは、同スレにて自分がOPコンペに出したキャラを、一部流用しています
キャラクター名簿は、全員の登場話を投下した後に、改めて公開させていただきます
それではまず最初に、オープニングを投下します
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それは小さな染みだった。
初めにそこに生まれたものは、ほんの小さな黒点だった。
やがてそれは数を増やし、少しずつ大きくなっていった。
――それが全てを飲み込んだ時、異変は始まったのだった。
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◆
真っ暗な場所だった。
光源は何一つなく、窓や穴も見当たらない。光が差し込む余地はなく、視認できる物は何一つなく。
であれば、闇ではなく、黒だ。
境界すら曖昧になった視野の全てが、黒一色に塗られたような、そんな場所に立っていた。
唯一確かなものと言えば、自分が「立っている」と認識できる、その身体感覚くらいのものだ。
「――ようこそ、新たなマスター君」
凜、と響く声と共に。
不意に視界に白が生まれる。
さながらスポットライトのように、天井から光が降りてきて、目の前の一点を照らし出した。
そうした形の光によって、ここが屋内だったのだと、何となくだが今更ながらに認識した。
「急なことで驚いたかもしれないが、だとしても喜ぶといい。君は我らが執り行う、『聖杯戦争』への参加権を得た」
眼前でライトを浴びているのは、陣羽織を着た長身の男だ。
ポニーテールのようにまとめた長い緑髪は、武士のちょんまげのような印象を受ける。背負っているのは、身の丈ほどもある大剣だ。
「思い出してみるといい。ここで目を覚ます直前、君は何かに触れていたか、あるいは何かを手にしていたはずだ」
和装の青年は続ける。
言われて回想してみれば、確かに彼の言うことには覚えがあった。
自分は何かに触れた瞬間、眩い光を目に感じたのだ。そこで記憶が途切れているのは、恐らく意識を失ったからだろう。
「それこそが方舟のチケットだ。君を戦いの地へ誘うため、世界にばら撒いた『ゴフェルの木』だ」
それは木材という姿に限ってはいるが、様々な形で世界に撒かれ、偏在するものであるのだと。
それに触れた者のうち、資格を得た者だけを選び、今いる場所へと導いたのだと。
「あとはこの『ノアの方舟』が、君の戦うべき地へと、誘ってくれるというわけだ。……さて、詳しい説明をしよう」
青年が言うには、こうだ。
聖杯戦争とは文字通り、聖杯と呼ばれる魔術的なアイテムをかけて、参加者達が戦い合う儀式である。
参加者にはサーヴァントと呼ばれる、歴史上の英霊達の魂を持った使い魔が与えられ、それを用いて戦うことになる。
聖杯とは万能の願望器と呼ばれるものであり、手にした者のあらゆる願いを叶える機能と能力がある。
「つまりこの戦いの先に、君はあらゆる願いを叶える力を、その手に獲得することになる。万象を実現しうる『王の力』だ」
そこに至るまでの道のりは険しいが、決して損な話ではないはずだと。
青年は聖杯戦争の説明を、そのようにして締めくくった。
自分にだって人並みに、欲望というものは存在する。
それを叶えることができるというのは、確かに魅力的な話だとは思う。
しかしその願いを叶えるためには、他の参加者達と戦い、勝ち残らなければならないということか。
「さて……この聖杯戦争には、まず予選というものが存在する」
いきなり大勢で戦い始めても、収拾がつかなくなってしまうからなと。
そんな考えはまるきり無視して、和装の男は話を続けた。
英霊というのはよく分からないが、ひょっとするとこの時代錯誤な男も、そういう存在なのだろうか。
「これから君が降り立つのは、我々が用意した仮想空間だ。
ここまで辿り着いた時点で、相当な資質の持ち主ではあるが……まずはそこで君のそれを、もう一度見極めさせてもらう」
そこまで言い終えると青年は、髪を揺らして振り返った。
視線の先に、光が降りる。
次なるスポットライトが灯り、部屋の壁らしき場所を照らす。
そこにあったのは1つのドアだ。
先ほどまでは気付かなかったが、この暗い部屋に存在する、自分と男以外の唯一のオブジェクトだ。
「君がここでの出来事を、もう一度思い出した時……それが予選突破の合図となるだろう」
ちょっと待て。それは一体どういうことだ。
思い出すということは、ここで起きた出来事を、忘れるような事態に追い込まれるということか。
「君の健闘を祈っているよ」
それすらも尋ねる暇もなく、照らされた扉が開かれた。
そしてドアの向こうからは、またしても眩い光が走り、意識はその奥へと消えていった。
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◆
かくて物語は始まる。
王の聖杯を巡るための、戦いの火蓋が落とされる。
剣を振るいし英霊、セイバー。
弓を番えし英霊、アーチャー。
槍を携えし英霊、ランサー。
手綱を手繰りし英霊、ライダー。
魔術を唱えし英霊、キャスター。
闇夜を駆けし英霊、アサシン。
狂気を叫びし英霊、バーサーカー。
それらの椅子(クラス)が2つずつ。
此度の聖杯戦争に、用意された椅子は14。
そして14のサーヴァントを取り合う、予選の舞台は偽りの町。
偽の記憶を植え付けられ、偽の隣人の中で暮らす、仮初ばかりの幻の町。
その幻を払いし者は、真なる奏者の資格を手にする。
英霊の魂を従える、マスターとなる資格を得る。
彼らの本当の戦いは、本当の自分を取り戻した、その時にこそ始まるのだ――
【二次キャラ聖杯戦争・獅子王杯 開幕】
・主催
【榊(ルーラー)@.hack//G.U.(小説版)】
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【ルール】
・舞台は電子的に構築された仮想空間です。構造は冬木市@Fate/stay nightをモデルにしています。
・参加者はほとんどの場合において、偶発的に参加させられています。
聖遺物『ゴフェルの木片』に触れていることが条件です。外見が木であること以外は、どんな物であるのかは不明です。
・マスターの所持品や武器・礼装の持ち込みは可能です。
・全てのマスターは最初記憶を封印されており、その違和感に気付き記憶を取り戻すまでが予選になります。(Fate/EXTRA準拠)
・記憶を取り戻すと同時に令呪を入手、サーヴァントの契約に移ります。取り戻す記憶には聖杯戦争のルール等も含まれます。
・NPC(モブキャラ)が存在しており日常生活を送っています。どう扱うかは自由です。
・令呪に関して、三画全て失ったとしてもサーヴァントとの契約が維持できる場合は消去されることもありません。
逆にサーヴァントとの契約を失った時点で消去がはじまります。
・監督役のルーラーは原作通り、各サーヴァントへ命令可能な令呪を持っています。
・14人のマスターが出揃ったのが確認された後、決勝戦が始まります。時間帯はだいたい深夜スタートです。
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というわけで、OPの投下は以上です
ひとまず今夜は3話分だけ、登場話を投下させていただきます
まずは最初に、キャスター(1組目)から
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「くッ……!」
穂群原学園の校舎裏を、1人の少女が疾駆する。
女子制服を揺らしながら、建物を陰を縫いながら。
しきりに後ろを気にしながら、それでも一滴の汗も流さず、少女――立花響は走っていた。
「ッ!」
どぉん、と横合いから轟音。
どうっと押し寄せる粉塵を、思わず両手で防ごうとする。
クロスした袖の合間から、響は音の主を見た。
灰色の壁に穴を開け、もうもうと煙をたなびかせるのは、身の丈2メートルにも迫る巨体だ。
筋骨隆々とした肉体から、禍々しい気配を漂わせ、響を睨む巨漢の姿だ。
「ちょこまかと逃げやがって! やれ、バーサーカー!」
その男の更に向こうから、苛立った少年の声が聞こえる。
その声が男の足を動かし、塵を払わせ前進させる。
きっかけはほんの些細なことだった。
職員室に呼び出され、たまたま帰りが遅れた響は、教室でそれを見てしまったのだ。
クラスメイトの少年が、怪しげな巨漢と一緒にいる姿を、偶然見かけてしまったのだ。
ほんのそれだけがきっかけだった。
それだけで少年は血相を変え、自分の命を奪おうとしてきたのだ。
「ウォオオオーッ!」
男が腕を振り上げる。血塗れの拳を下ろそうとする。
その名の通りに叫び狂いながら、響目掛けて襲いかかる。
逃げ回る中、部活上がりの生徒達を、何人か殺してきた相手だ。このまま無抵抗でいれば、自分も確実に死ぬだろう。
かといって、逃走する余裕はない。ならここは賭けに出るしかない。
それだけの思考を一瞬の間に、自然と張り巡らせている自分がいた。
「ふッ!」
そんなことにも疑問を抱かず、響は両足に力を入れた。
どんっ――と大地を震わせる衝撃。
ひっくり返る砂利の中、しかしそれをすり抜ける影。
バーサーカーなる者の拳を、最小限のステップでかわし。
着地の勢いで大地を蹴って、そのまま相手の間合いへ飛び込み。
「とおりゃあぁぁッ!」
スカートがめくれるのも気にせず、空中回し蹴りを叩き込む。
いくら護身術を身につけていたとはいえ、一介の高校生ごときでは、絶対に選択し得ない行動。
それを響は実現し、反撃で狂戦士の顔面を捉えた。
無謀とも言えるカウンターを、直感と冷静な判断をもって、過たず実行してみせたのだ。
「ッ!?」
しかし、その顔は驚愕に染まる。
全力のキックを顔に受けながら、それでもなお微動だにしない、その敵の姿に驚かされたのだ。
「………」
あり得ない。
何だそれは。
脳震盪必至の一撃だった。昏倒は避けられなかったはずだ。
それが無傷とはどういうことだ。
気絶して倒れ込むどころか、身じろぎすらしないとは何の冗談だ。
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「馬ぁ鹿! バーサーカーにそんなのが効くか!」
勝ち誇ったクラスメイトが、壁の向こうで嘲笑する。
そうだ。確かにその通りだ。
霊体たるサーヴァントの体には、神秘性や霊格を持った者でしか、有効なダメージを与えられない。
(……サーヴァント……?)
そう考えて、ようやく気付いた。
知っているはずのない単語を、ナチュラルに連想したことで、ようやく響は違和感を覚えた。
何だそれは。そんなこと、私は知らなかったはずだ。
そもそも今の飛び蹴りも、そこから立ち直った動作も、ただの高校生にしてはいやにこなれていた。
確かにやたら強い隣人から、護身術を習ってはいる。それでもここまでの動きをするには、それなりの実戦経験が必要なはずだ。
「あぐッ……!?」
瞬間、痛みが頭を襲った。
頭痛に一瞬よろめきながら、それでもなお呆けることなく、響は姿勢を持ち直す。
鋭く刺すような痛みと共に、湧き上がってくるのは記憶だ。
経験していないはずの苦しい過去。
見覚えのないはずの怪しい敵。
纏ったこともないはずの戦闘装束。
そしてそれらの情報が、まるで昔から知っていたかのように、しっくりと意識に馴染んでいく。
「今だ、やっちまえ!」
敵はその隙を見逃してくれない。
少年はバーサーカーに指示を出し、今度こそとどめを刺さんとする。
低い唸りを上げながら、巨漢が再度構えを取る。
あれに対向する手段――神秘性を伴った攻撃は、確かに自分にもできなくはない。
力が足りるかどうかはともかく、この状況に立ち向かう手段を、立花響は「知っている」。
(それでも……)
しかしそれは諸刃の剣だ。
「アレ」を発動してしまえば、自分も無事では済まないかもしれない。
元からぼんやりとしか覚えていないが、今や自分のあの力は、己が命すら削りかねない、危険なものへと変わってしまった。
前回は一命を取り留めたが、それでも今回も同様に、生きて帰れるとは思えない。
「……だとしてもだッ!」
だが仮にそうだったとしても、引けない戦いというものがあった。
僅かな可能性に賭けてでも、確実な死に挑まねばならない――響にはそれだけの理由があった。
守らねばならない世界がある。
共にいたい大切な人達がいる。
「この世界」の壁を打ち砕き、死んでも生還せねばならない場所がある。
だから後退は許されなかった。
不可能な選択肢を迷わずに切り捨て、右の拳を振りかざし、響は正面きって特攻を仕掛けた。
「Balwisyall Nescell gungnir――……ッ!」
唱えるべき言葉は知っていた。
歌うべき歌はこの胸にあった。
心臓に宿ったその力を、唸りを上げる拳に載せて、旋律と共に解とうとした瞬間――
【――いけない】
「……ッ!?」
唐突に響いたその声に、両の目が大きく見開かれた。
頭の中に浮かんだ言葉に、聖なる歌声は遮られた。
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割り込む声に驚愕しながらも、しかしその勢いは死なず、拳は巨漢の腹筋を打つ。
握った右手のその甲に、瞬間光と痛みが走った。
淡い光を放ちながら、僅かに血液を滲ませながら、現れたのは赤い痣だ。
まるでタトゥーか何かのような、三角の紋様から構成される、異様な痣が浮かび上がった。
「――!」
どんっ、と音が響き渡る。
気付けば自分のその拳と、並ぶように伸びた拳がある。
狂戦士の肉体に触れたのは、黒光りする漆黒の拳だ。
金属の光沢をまばゆく放つ、鋼鉄のグローブを嵌めた右拳だ。
瞬間、風が吹き荒れた。
ぎゅん――と空気を切り裂くように、鋭い音が鼓膜を揺らした。
黒いグローブが唸っている。
その腕に備え付けられた、2つの白銀の歯車が、風を纏いながら轟転している。
「グァアアアッ!」
瞬間、巨体が宙を舞った。
身の丈2メートルもの体躯が、たった一撃の右ストレートで、為す術もなくふっ飛ばされた。
ややあって、どん、と音が鳴る。
肉弾と化したバーサーカーが、壁を貫く音がする。
「この気配……陣地、作成……!? キャスターのサーヴァントかっ!?」
狼狽するクラスメイトの声に、ようやく響は我に返った。
そして思い出したように、自分の右側へ視線を向けた。
そこには、新たな人影がある。
日陰にあっても眩く光る、白と青色が立っている。
衝撃にばたばたとはためくのは、特徴的な戦装束だ。
上着は短く、腰布は長い――アンバランスな丈の衣装は、記憶の中の自分とも違う。
明るい色合いの目立つ中で、右手と両足の鋼鉄だけが、鈍色の異彩を放っていた。
「低ステータスのバーサーカー……霊格で劣る英霊を、狂化でパワーアップさせようとしたみたいだね。
でもまぁ、このくらいだったら、即席の陣地でも何とかなるかな」
「ひょっとして、貴方が……?」
心当たりがあった気がした。
傍らに立ったその姿を、知っているような気がした。
もちろん、初対面の相手だ。しかし知っているのはその人ではなく、その人に与えられた身分だった。
聖杯戦争――願いを叶える聖杯を、複数の参加者で奪い合う戦い。
そこに足を踏み入れた者には、戦争を戦い抜くための、意思を持つ兵器が与えられる。
古今東西の英雄を模し、仮初の霊体と共に現世に降ろした、サーヴァントという下僕がいる。
「そうだよ。待たせてごめんね――マスター!」
与えられたクラスは魔術師(キャスター)。
割り振られたマスターは立花響。
太陽のような笑顔を浮かべ、響の問いに呼応する、歳上の女性の姿があった。
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現界したキャスターのサーヴァントの力は、文字通り圧倒的だった。
拳と脚を次々と繰り出し、敵を攻め立てるその姿は、自分のファイティングスタイルともダブって見えた。
それでも、その習熟度は段違いだ。
戦場の最前線において、幾度となく戦ってきたかのような、そういった強さと淀みなさがあった。
これがサーヴァントというものか。
伝承に謳われた英霊とは、これほどの力を持っているのか。
そう考えているうちに、相対したバーサーカーのサーヴァントは、呆気なくトドメを食らって消滅した。
いよいよ狼狽えたクラスメイトは、情けない声を上げながら、一目散に逃げ出していった。
そうして事を済ませた後、響とそのサーヴァントとは、自己紹介と状況確認を行った。
響が巻き込まれることになった、聖杯戦争という戦いのこと。
その舞台として用意された、この偽りの方舟のこと。
そして今後聖杯戦争を、どのようにして戦うかということ。
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「――どうしても、駄目ですか」
無駄と分かっていながらも、響は聞かずにはいられなかった。
「うん。戦いはあたしに任せてほしい。今の響の状態じゃ、戦うのはちょっと危険すぎるからね」
キャスターから返ってきた返事は、予想の範囲内だった。
「でも、誰かにばっかり戦わせて、自分は後ろで見てばかりだなんて――」
「ホントは響の方がよく分かってるんでしょ? 次にそのギアを纏ったら、その場で死んじゃうかもしれないって」
立花響は病気だった。
槍型聖遺物・ガングニール――体に融合したそれの、強すぎる力に苦しめられていた。
適度に運用していたのであれば、人々を助けるために使える、頼もしく心強い力だった。
しかし神々の遺産は、人の身に余る力を発揮して、響を蝕んでしまっていた。
このままでは力関係が逆転し、自分が槍の一部として、物言わぬ石塊となってしまうかもしれない。
先ほどの戦いにおいてもキャスターは、それを危ぶんで制止したのだ。
戦いは自分だけでするから、響はシンフォギアの力を使わず、後ろで見守っていてほしいと、今この時もそう言ったのだった。
「………」
それはとても耐えられないことだ。
誰かが傷ついている姿を、黙って見ていることなどできない。
自分が何もしないせいで、誰かが傷つくことになるなど、到底受け入れられたことではない。
「……まぁ、気持ちは分かるよ」
そう思い悩む響の心を気遣ったのも、また同じキャスターだった。
「あたしもさ、黙って見てるってのは性分じゃないから。
助けられたかもしれない人が、目の前で傷つくのは耐えられないって……あたしもそう思うから」
「キャスター……」
「だけど響には、帰りを待ってる人がいる。命を懸けるべき場所は他にある。そうでしょ?」
言いながら、キャスターの右手が響に伸びる。
ぽんと頭の上に置かれ、髪の毛を優しい手つきで撫でる。
「その人のことを思うなら、この場の戦いはあたしに任せて。あたしがその人達のためにも、必ず響を守るから」
まるで母や祖母のように――否、年齢的には姉のように、か。
兄弟姉妹はいなかったが、もしいたらこんな感じなのだろうか。
にっこりと笑うキャスターを見ながら、響はそう思っていた。
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「……どうして、キャスターは……」
それでも、分からないことがある。
どうして初対面である自分のことを、そこまで思ってくれているのだろうか。
それが気になって、我知らず、そんなことを呟いていた。
「君がマスターとして目覚めた時、君のことがちょっとだけ見えた」
キャスターはその問いかけに、そう返していた。
「似てると思ったんだ。あたしと君とは」
多くの人間が犠牲になった。その屍の上に立ち、結果生き残った命だった。
片方は自分に備わった暴力で、他人を傷つけることを恐れた。
片方は生き残ったことを責められ、犠牲の重さに押し潰された。
そしてそれぞれが立ち直り、誰かを守るための力を欲した。
その手を窮地の最中へと伸ばし、救いを求める者を救うためだ。
二度と犠牲を増やすことなく、全てを救うための道を、真っ直ぐに一直線に切り拓くためだ。
そして2人はそのために、茨の道を歩み続け、幾度となく傷つき続けてきた。
「だから、ほっとけないと思った。響を助けて、この戦いを生き残って……元の世界に帰してあげたいと思った」
だからこそ召喚に応じて、ここへやって来たのだと、言った。
「それに、あたしには弟がいるんだ。血が繋がってないから、弟分、みたいな感じだけど」
今の姿の自分から見れば、響と同じくらいの歳の差だったと。
その弟と響の姿が、ダブって見えたのかもしれないと。
キャスターは最後に、そう付け加えた。
「……正直、私はまだ迷ってます」
一拍の間を置いて、響が答える。
「何でも願いを叶えてくれる……その聖杯が欲しくないと言えば、嘘になります。
その力があれば、胸のガングニールを、元に戻すこともできるかもしれない……」
シンフォギアの融合を抑えられれば、また昔のように戦うことができる。
そうすれば皆の力となって、守るべき人々を守ることができる。
あらゆる願いを叶える願望器なら、それを実現できる可能性がある。
「だけど、そのために他の人達と戦うことが、本当に正しいことなのか……」
「他の人を傷つけてまで、自分の願いを押し通すのが、本当に許されることなのか」
言葉を続けたキャスターに、響は無言で頷いた。
「……そのことも、私の体のことも含めて、今後どうするかはまだ分かりません。
どうしても必要だと思った時には、私も胸のギアを纏って、戦いに出ることがあるかもしれない」
それでも。
本当の窮地が訪れない限りは。
同時に万能の器を、この手に掴みたいと決めた時には。
「それでも、私の中で納得ができて、力を借りたいと思った時には……
キャスター、いえ、スバルさん。私は貴方を頼ります。貴方の力と心を信じます。
どうかその時には、私に力を貸してください」
それだけは迷うことなき本心だった。
毅然とした瞳で、己がサーヴァントを真っ直ぐに見据え、右手を目の前に差し出した。
この人ならば信じられる。
同じ想いを胸に抱いた、この人と共になら戦える。
響はそう確信し、心を繋ぐための手を、キャスターに向かって差し出した。
「……オーケー、マスター。君の願いはあたしが叶える。君の道はあたしが拓く」
最速で最短で一直線に。
その先にある希望を信じて。
「だけど、貫くものは君の意志。あたしはそれを尊重する」
キャスターのサーヴァント、スバル・ナカジマ。
呪われた体を持って生まれ、その力で人を救えると信じ、そのために戦い続けた女性。
陸の守護者と謳われて、命の最前線に立ち、多くの人々を救ってきた、生まれながらのレスキューフォース。
「だから、一緒に頑張ろう」
その暖かな右手が、力強く、響の手を握り返した。
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【マスター】立花響
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。未来との外出中、町の中で木片が混入したものに触れた
【マスターとしての願い】
ガングニールの過剰融合を抑えたい
【weapon】
ガングニール
北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。
本人の潜在意識により、アームドギアは具現化せず、四肢のパワージャッキを活かした格闘戦を行う。
通常のシンフォギアと異なり、響の肉体と融合している。
【能力・技能】
融合症例第一号
シンフォギアと人体が融合した状態を指す。
起動や運用方法については、通常のシンフォギアと変わらないが、
聖遺物のエネルギーが直接人体に行き渡っていることもあり、通常以上の出力や回復力を発揮している。
しかし現在はその融合が、必要以上に進行してしまい、
変身することで逆にシンフォギアに取り込まれてしまう危険性を孕んでいる。
シンフォギア適合者
神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。
本人には元より適合する資質があったのだが、現在はシンフォギアと融合しているため、あまり重要なスキルではない。
格闘術
師匠・風鳴弦十郎の下で磨き上げた格闘術。
元々弦十郎の格闘術自体が、映画のアクションシーンを模倣・再現したものなので、特定の流派に依るものではない。
ボクシング、ジークンドー、果ては中国拳法の八極拳まで、様々な拳法のスタイルがごちゃ混ぜになっている。
【人物背景】
「私は立花響、16歳ッ!
誕生日は9月の13日で、血液型はO型ッ! 身長はこの間の測定では157cmッ!
体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげるッ! 趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはんッ!
後は……彼氏いない歴は年齢と同じッ!」
特異災害対策機動部二課に協力する、第3号聖遺物・ガングニールのシンフォギア装者。
2年前のツヴァイウィングのライブに際し、胸に聖遺物の破片を受け、融合症例第一号となる。
その後は誤解から迫害を受け、心にも深い傷を負ったが、
友人・小日向未来の献身もあり、反対に「人のぬくもり」の尊さを知ることになった。
かつてのトラウマは乗り越えており、底抜けに明るく元気な性格。
困っている人を放っておけず、率先して誰かの助けになろうとするタイプ。
しかしその性質は、ライブ会場で他の犠牲者の代わりに生き残ってしまったという認識に端を発しており、
戦いから遠ざけられた時には、反動で強い無力感に囚われてしまう。
【方針】
聖杯に魅力は感じるが、そのために聖杯戦争に乗るのが正しいのかどうかは悩み中
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【クラス】キャスター
【真名】スバル・ナカジマ
【出典】魔法少女リリカルなのはForce
【性別】女性
【属性】中立・善
【パラメーター】
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:B 魔力:A 幸運:C 宝具:C
【クラススキル】
陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な”工房”の形成が可能。
道具作成:C
魔力カートリッジなど、魔術的な道具を作成する技能。
【保有スキル】
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
魔力放出:C
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、
瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
振動破砕:C
戦闘機人・タイプゼロセカンドのIS(インヒューレント・スキル)。
四肢を超速振動させ、破壊力を向上させることができる。
発動時には打撃攻撃力に補正が生じ、特に無機物に対しては、その補正値が2倍となる。
【宝具】
『進化せし鋼鉄の走者(マッハキャリバーAX)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
スバルが魔術を行使する際に触媒とする、ローラーブレード型のインテリジェント・デバイス。
並外れたスタミナを持つスバルの体質に合わせてチューンされており、
燃費を食う分高い出力と強度を実現している。
スバルとマッハキャリバーのAIとの絆は深く、グリップ制御や足場形成のタイミングなど、
一部の判断をAIに委ねており、状況に応じた高い対応力を発揮している。
更にフルドライブ「ギア・エクセリオン」時には、瞬間突撃システム「A.C.S」を展開。
更なる加速力を得ると同時に、魔力・戦闘機人エネルギーの同時発動も可能となる。
魔力の使用効率を向上させるための宝具であり、これ自体が特別な性質を持っているわけではない。
彼女が使用できる魔法は、以下の通り。
・リボルバーキャノン
右拳に魔力を纏い、威力をアップさせる。
・リボルバーシュート
リボルバーキャノンの魔力を弾丸とし、右拳から発射する。
・ウイングロード
魔力で空中に道を形成し、限定空戦を可能とする。
・プロテクション
魔力バリアを展開する防御魔法。
・バリアブレイク
敵の防御術式に介入し、破壊することに特化した魔法。
・ディバインバスター
右拳から魔力の奔流を発する砲撃魔法。
スバルには適性がなかったため、10メートルほどの射程しかなく、主にゼロ距離発射する形で用いられる。
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【weapon】
リボルバーナックル
スバルの右前腕に装着される、グローブ型のアームドデバイス。「進化せし鋼鉄の具足(マッハキャリバーAX)」発動時に、同時展開される。
スバルの攻撃の要であり、同時に魔力カートリッジの運用を受け持っている。AIは搭載されていない。
魔力や衝撃波を発する補助装置として、「ナックルスピナー」と呼ばれるタービンが搭載されている。
ソードブレイカー
スバルの左前腕に装着される、長手袋型の装備。「進化せし鋼鉄の具足(マッハキャリバーAX)」発動時に、同時展開される。
「格闘戦技使用者向けの防衛装備」とされており、装備者のエネルギーを体内循環させることで、防御力を効率的に高めることができる。
更には、スバルの振動破砕をチューニングすることによって、敵の武器を破壊し、武器攻撃に対する迎撃効率を高めることが可能。
【人物背景】
時空管理局員で、ミッドチルダの港湾警備隊防災課特別救助隊セカンドチームに所属する防災士長。21歳。
コールサインはソードフィッシュ1。
ソードフィッシュ隊の分隊長を務めているが、これは単独行動をしやすくするための措置であり、事実上のワンマンアーミーである。
優れた身体能力と魔力は、「人命救助のために生まれ育った」とすら称されている。
純粋な人間ではなく、生まれつき機械改造を施された「戦闘機人」であり、要するにサイボーグである。
明るく社交的な性格で、誰とでも打ち解けることができる。
10代の頃にはやんちゃな側面もあったが、この頃にはやや落ち着いており、面倒見のいいお姉さんといった様子になっている。
一方、元々は気弱で臆病な性格だったこともあり、精神的な打たれ弱さは、未だに尾を引いている部分がある。
そのため、レスキューの現場で助けられなかった人間に対する後悔の念は強く、犠牲が出る度に無力感を覚えている。
おまけにそうした苦しみを、あまり人には見せず1人で抱え込もうとするため、かえって周囲を心配させてしまうことも。
人が傷つくくらいなら、自分が代わりに傷つくことで、その人を守ることを選ぶタイプ。
表向きには切り替えは早い方であり、後悔をバネに更なる研鑽を積み、1人でも多くの人を助けられるよう努めている。
格闘技法「シューティングアーツ」を駆使した、近接戦闘型の魔導師で、特に打撃のパワーに優れる。
魔力により肉体を強化し、一気呵成に攻め立てるスタイルを取っている。
【サーヴァントとしての願い】
響を支えたい。聖杯を自分で使うのではなく、響に使わせてあげたい
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第1話は以上です
マスター:立花響@戦姫絶唱シンフォギアG
キャスター(1人目):スバル・ナカジマ@魔法戦記リリカルなのはForce
となります
続いて第2話を投下させていただきます
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2人の人間が戦っていた。
それぞれの人間が手下を操り、自らに代わって戦わせていたようだった。
常人とは思えない、凄まじい身体能力で戦う手下達は、いわゆるサーヴァントというものだった。
片方は透き通るような槍を振るい、果敢に相手を攻め立てている。
片方はちょこまかと駆け回りながら、無数の武器を繰り出している。
前者はランサーで確定だろう。後者は立ち回り方からしてアサシンだろうか。
直接戦闘に向いているのはランサーの方だ。
故にそちらが優勢ではあったが、アサシンもまた負けず劣らず、必死に食らいついていた。
そもそもの事の起こりは、こうだ。
まずアサシンのマスターが、己のサーヴァントを手に入れた。
しかし彼はその現場を、他の人間に見られてしまった。
彼はサーヴァントを秘匿するため、アサシンにその少女を攻撃させた。
しかし彼女もまたマスターだった。ランサーのサーヴァントを従えていたのだ。
こうして予選も終わらぬうちから、意図せず始まった戦いは、幕を開けることになったのだ。
やがてランサーの持つ槍が、眩い光を放ち始めた。
宝具の力を解放し、一挙にとどめを刺すつもりのようだ。
アサシンもその気配を察知し、身構えるようにして間合いを取った。
ランサーの槍を握る手に、一際力がこもった瞬間。
ずどん――と響いた音と共に、両者の動作は停止した。
アサシンの姿が消えていく。
ダメージを受けていないにもかかわらず、暗殺者のサーヴァントが消滅する。
そして困惑するランサーをよそに、もう一発、ずどんと音が響いた。
そうして今度はランサーの方が、瞬く間に姿を消してしまった。
彼らを従えていたはずのマスターもまた、いつの間にかいなくなっていた。
サーヴァント達が戦っている間に、何者かに殺されていたのだ。
英霊同士の戦いは、第三者の遠距離狙撃という形で、呆気なく幕を閉じたのだった。
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◆
「……とまぁ、ざっとこんなもんだ」
ビルの上から全てを見下ろし、機械の弓矢を構えていたのは、異形の鎧を纏う男だった。
薄緑色のスーツの上から、更に赤い装甲を被ったような、独特なフォルムをしている。
両の手足についた毛皮は、さながら雪国の狩人のようだ。
アーマードライダー・シグルド――竜殺しの英雄を冠したその名こそが、鎧に与えられた称号だった。
「どうだ? これで俺の実力ってもんが分かっただろ?」
かつんかつんと音が鳴る。
手にした弓を肩にかけ、おどけた動作で鳴らしてみせる。
正確無比な狙撃によって、一度にマスター2人を倒した男は、背後の人影に向かって問いかけた。
男はアーチャーのサーヴァントだったのだ。
そしてサーヴァントである以上は、そのマスターが存在する。
「ああ……見た目以上には使えそうだ」
宵闇の中に潜むような。
暗色の襤褸を纏った男こそが、このアーチャーのマスターだった。
プラチナブロンドの長髪は、その高貴な色合いとは裏腹に、まるで獣のようにごわついている。
鋭く伸びた犬歯も、ぎょろりとした金眼も、全てが人ならぬ野獣のようだ。
それもそのはず、この男は、ただの人間ではなかった。
螺旋王ロージェノムによって生み出された、獣の力を持つ人造人間――獣人。
その獣人軍団の中でも、かつて極東方面軍を率いていた男、ヴィラル。
それが闇の中から英霊を覗く、金髪の男の正体だった。
「ま、英霊なんて言われても、俺はこいつがなかったら、ただの一般人だからなぁ」
言いながら、アーチャーが己の腰に手を伸ばす。
ベルトの部分についていた、小さな機械を取り外す。
それはサクランボのマークのついた、さながら錠前のようなアイテムだった。
それがベルトから離れた瞬間、鎧は立ちどころに消滅し、髭面の男が姿を現した。
これがシグルドの正体だ。
パラメーターはほとんどがE――何ら特別な力を持たない、吹けば倒れそうなこの男が、アーチャーのサーヴァントだったのだ。
「お前のような下品な男が、英霊に名を連ねていることの方が驚きだ」
「おいおいそりゃねぇだろ。わざわざ俺を疑うマスターに付き合って、こうして力を見せてやったんだぜ?」
こんなに心の広い奴はいないだろうと、アーチャーはヴィラルに向かって言う。
そういうところが気に食わないのだと、そう言いかけた言葉を飲み込んで、ヴィラルはふんと鼻を鳴らした。
こんな奴を英霊として送りつけるとは、聖杯戦争を仕掛けた連中の程度も知れるというものだ。
「まぁ何だ。せっかく聖杯戦争なんてもんに参加してんだから、優勝目指して頑張ろうぜ」
帽子を被った髭面の男は、ヴィラルに向かってそう言うと、階段の方へと歩いて行った。
(聖杯戦争……か)
ヴィラルは静かに思考する。
己の置かれた状況を、目を伏せ改めて考え直す。
この聖杯戦争に勝ち抜いた者は、万能の願望器を手に入れ、願いを叶えることができるという。
(そうは言われても、な)
それでもヴィラルには、願いがなかった。
正確には何を叶えるべきなのか、明確に定まらなかったのだ。
螺旋王という寄辺を喪い、新政府にも馴染めない身には、世界のどこにも居場所がなかった。
地上に100万の猿が満ちた時、地上に現れるという何か――それも気にはなるものの、だからとてどうすることもできない。
その中で何をどうしたいというのが、何も思いつかなかったのだ。
(まぁ、後から考えれば済むことだ)
これ以上考えても仕方があるまい。
そう考えると獣人は、それまでの思考を打ち切った。
勝ち残った後にどうするかというのは、後から考えるべきことだ。
まずはこの戦いを生き残ることを、何より優先して考えるべきだ。
ここは電脳空間とのことだが、ここで脱落した場合、現実の自分がどうなるのか、まるで分かったものではない。
目的のない人生だが、生憎と死ぬことは御免だ。故に生き残ることを優先し、上手く立ち回る必要があった。
戦わなければ生き残れない。であれば戦う他に道はない。
そうしてヴィラルは闇の中で、静かに牙を研ぎ澄ませていた。
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◆
(あんな調子で大丈夫なのかね)
シグルドの変身者――シドは、内心でヴィラルを笑っていた。
一応状況は認識しているようだが、どうにも覇気が感じられない。
何が何でも勝ち残るというより、死にたくないから生き残るという、そういう受け身の気配を感じる。
その程度の低い志で、聖杯戦争に勝てるのかと、己がマスターを嘲っていたのだ。
(ま、それならそれで構わんさ。奴さんが要らねぇっていうのなら、俺が聖杯を使うまでだ)
シドには聖杯にかける願いがある。
生前からずっと抱き続けてきた、成し遂げたいと思う悲願がある。
彼は服従を嫌っていた。
人間を超えた存在となり、誰にも指図されることのない、自由と力を手に入れたかった。
彼はそのために異世界の力――願いを叶える「知恵の実」を欲した。
願望器を求める戦いは、これで二度目だったのだ。
(もう一度チャンスが巡ってきたんだ……今度こそはしくじったりしねぇ)
異世界ヘルヘイムの森にある、あらゆる願いを叶える力。
シドはそれを手に入れるため、森に挑む力を欲し、森の怪物達とも戦った。
しかしその戦いの果てに、怪物の王の力に屈して、あえなく命を落としてしまった。
目前まで近づいておきながら、あと少し伸ばせば届く手が、知恵の実に届かなかったのだ。
二度目を生を受けてみて、改めて考えたからこそ分かる。あれはこの上ない屈辱だった。
もう二度とミスは繰り返さない。次なる願望器は何が何でも、この手に掴み取ってみせる。
(俺は今度こそ人間を超える……誰にも文句を言わせねぇ、超然の存在になるんだ!)
常にシニカルな仮面を被り、周囲を嘲笑ってきたシド。
それでもその時彼が浮かべた、獰猛さを笑みだけは、彼の素顔であるように見えた。
【マスター】ヴィラル
【出典】天元突破グレンラガン
【性別】男性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。獣人のコミュニティの物資に、木片を使った雑貨が紛れていた
【マスターとしての願い】
模索中
【weapon】
なし
【能力・技能】
獣人
獣の力を与えられた人造人間。螺旋力は持っていないが、五感や身体能力が、通常の人間よりも高められている。
不死身の体
ロージェノムの改造によって得た体。
常識外れの治癒力の他、獣人共通のデメリットである、冬眠を必要としなくなっている。
格闘術
生身での格闘戦闘術。徒手空拳の他、刀剣を使った戦いに長ける。
ガンメン操縦技術
大型機械兵器・ガンメンを操縦する技術。
【人物背景】
螺旋王ロージェノムに仕える獣人軍団の所属で、元人間掃討軍極東方面部隊長。
獣人に反旗を翻す大グレン団とは、幾度となくぶつかり合い、グレンラガンと死闘を繰り広げた。
その中で獣人より弱い体を持ちながら、自分達に食い下がる人間達に興味を抱き、「人類とは何なのか」とロージェノムに問いかける。
ロージェノムはその答えとして、獣人の領域を超えた不死身の体を与えるのだが、
それは自らが死んだ後、その生き様を永劫に語り継ぐ、「語り部」としての役割を求めたからに過ぎなかった。
彼の真意を知り、同時にロージェノムを喪ったヴィラルは、世の中に馴染むこともできず、反政府ゲリラに見を落としたのだった。
正々堂々とした戦いを好む武人であり、卑怯な作戦を好まない。
しかしやさぐれてしまったためか、現在はぶっきらぼうな態度と、斜に構えたような発言も目立っている。
【方針】
何を願うかは未定。しかし死にたくはないので、勝ち残るために戦う。
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【クラス】アーチャー
【真名】シド
【出典】仮面ライダー鎧武
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:E(C)
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
『赤き眼光の狩人(チェリーエナジーアームズ)』発動時にはCランクに変化し、第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
【保有スキル】
千里眼:B
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
話術:D
言論にて人を動かせる才。
交渉から詐略・口論まで幅広く補正が与えられる。
【宝具】
『赤き眼光の狩人(チェリーエナジーアームズ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:B
異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・シグルド」へと変身する。
チェリーエナジーロックシードにより発動するこの力は、初期型とは一線を画した性能を持つ新世代のライダー。
弓型の武器・ソニックアローは、両端に刃が備えられており、接近戦・遠距離戦共に威力を発揮する。
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【weapon】
ゲネシスドライバー
上級のアーマードライダーに変身するためのベルト。チェリーエナジーアームズに対応している。
シドロックシード
特定のモチーフが存在しない、シド専用にチューンされたと思しきロックシード。
他のロックシードを遠隔操作する機能があるらしく、劇中ではスイカロックシードを同時に4つ操作していた。
スイカロックシード
向日葵の種を象ったロックシード。合計2つ用意されている。ゲネシスドライバーに対応していないため、変身に使うことはできない。
大玉モード・ヨロイモード・ジャイロモードの3形態を持つ大型ロックシードであり、その性能は新世代ライダーにも引けを取らない。
エネルギー消耗が激しく、戦闘後はしばらく使用できなくなる。
【人物背景】
沢芽市にてインベスの監視実験を行っている、ユグドラシル・コーポレーションのエージェント。
戦極ドライバーのテストの際には、錠前ディーラーとして町にロックシードおよびドライバーをばら撒く役割を担っていた。
テストが終了した後は、ゲネシスドライバーを支給され、アーマードライダー・シグルド(仮面ライダーシグルド)へと変身する。
戦極凌馬から知恵の実の存在を知らされており、自分の願いを叶えるためにそれを追っていた。
口の悪い皮肉屋であり、同時に自信家でもある。
ビートライダーズの若者達を子供扱いして見下しており、度々自らを「大人」と称して、彼らとは違うということをアピールしていた。
しかし彼が知恵の実にかけた願いは、「誰の言いなりにもなりたくない」というものであり、本質的には子供っぽさを捨てきれていない。
知恵の実確保の最大の障害と見なしていた、呉島貴虎を始末した後は、ヘルヘイムの森への入り口を破壊した上でユグドラシルを離反。
単身森へと飛び込んで、オーバーロードの本陣へと殴り込みを仕掛けた。
しかしオーバーロードの王・ロシュオ相手には歯が立たず、ベルトを破壊された末、壮絶な最期を遂げている。
戦闘時にはソニックアローを弓矢として用いた、遠距離戦闘を行うことが多い。
本人の戦闘スタイルも容赦のないものがあり、敵を一方的にいたぶろうとするような場面が目立っていた。
【サーヴァントとしての願い】
人間を超え、誰からも指図されない存在になる。
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第2話の投下は以上です
マスター:ヴィラル@天元突破グレンラガン
アーチャー(1人目):シド@仮面ライダー鎧武
となります
最後に第3話の投下を行います
ランサー(1組目)です
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決して望んだ道ではなかった。
戦わなくてもいいと言われていたなら、間違いなくこの道は選ばなかった。
マリア・カデンツァヴナ・イヴとは、そういう奴なのだと断言できた。
世界を暴き救うための、偽悪のテロ組織・フィーネ。
育ての親に近いナスターシャ教授から、その首魁となることを求められたのは、ひとえに組織を維持するためだった。
非正規のシンフォギア装者3人と、老い先短い科学者1人――世界を相手取るにしては、フィーネはあまりにも脆弱だった。
新たな人材を得るためには、ナスターシャの研究成果が必要だった。
故にマリアは己を偽り、ウェル博士を組織へと招き入れた。
世界全土を敵に回し、屍の山に立つことを選んだのは、そうした経緯からだった。
要求を受け入れたこと自体は、仕方がなかったとは思う。
あの時自分が拒んでいたなら、代わりに祭り上げられていたのは、僅か15歳の子供達だったのだ。
決して見過ごせたものではなかった。
自分の臆病風に押されて、彼女らが修羅道に誘われることは、絶対にあってはならかった。
それでも、どうしても思ってしまう。
もう投げ出してしまいたいと。
こんな苦しみを味わうために、立ち上がったわけではなかったのにと。
戦いの矢面に立つ重圧と恐怖は、絶えずマリアの胸を苦しめた。
見捨ててしまった者達の亡霊は、絶え間なくマリアを苛み続けた。
どだい無理な話だったのだ。こんな重責に耐えられるほど、マリア・カデンツァヴナ・イヴは強くないのだ。
いっそ何もかも忘れて、あの安らかな幻の中で、滅びを迎えられたなら――
「――下らないな」
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◆
方舟の街の中にいた方が、元の世界よりもマシだったのかもしれない。
河川敷の橋の下に立つ、ランサーのサーヴァント――カイトと名乗った青年は、そんなマリアの告白を一蹴した。
「どれほど甘く優しかろうと、所詮は見せかけだけを繕ったまやかしだ。現実が変わるわけではない」
「ええ……分かってるわよ、それくらい」
サーヴァント(従者)にあるまじき不遜な態度に、マリアは微かに眉をひそめる。
理性で分かってはいたことだ。
自分だけが幻に逃げても、現実に残された子供達が、変わらず苦しみ続けるのは間違いないだろう。
だとしても、それほどにはっきりと言い切られては、さすがに心にくるものがある。
「まったく、笑えない冗談もあったものだな。この俺にあてがわれたマスターが、こんな腰抜けだなんてのは」
「……否定はしないわ」
「お前のような奴を頼るようでは、その教授とやらもタカが知れている」
「ッ! マムを悪く言わないでッ! 何も知らないくせにッ!」
「もっともだな。俺はそいつのことを知らない。だからそいつを評価しろと言われても、困る」
思わず声を荒らげたマリアに対し、ランサーは失笑しながら肩を竦めてみせた。
何故こんな奴が、というのはこちらの台詞だ。
こちらの痛いところばかりを、遠慮なくずけずけと抉ってくる。
自分の想いを正当化するつもりはないが、さすがにここまで無遠慮になじられるとは思ってもみなかった。
こいつとは気が合いそうにはない。まったく何でこんな奴が、自分のサーヴァントとしてあてがわれたのだろう。
「……さて、戯言はこの辺で終わりだ」
結局自分から煽っておきながら、勝手に切り上げたのもランサーだった。
表情を元の仏頂面に戻し、青年は真っ向からマリアを睨む。
「最初に言っておくが、俺は聖杯には全く興味がない」
願いを自分で叶えようとせず、他人任せにするなど馬鹿げている。
そんな弱者のためにあるような装置に、かけるような願いなどないと、ランサーはきっぱりと言い切った。
「故にこの戦いで通すべきは、俺ではなくマスターであるお前の意志だ。
期待はしないが聞かせてもらおう。お前はこの戦いの先で、聖杯に対して何を願う?」
よく言う――とマリアは内心で思う。
その問いに答えるということは、自分が彼の言う「弱者」だと、認めるようなものではないかと。
とはいえ、自分が強者だとは言えない。叶えたい願いがあるのも確かだ。
「私は……月の落下を止めたい。これ以上の戦いも悲劇も、決して増えないようにするためにも」
「そして他ならないお前自身が、戦いから逃れるためにも、か」
図星だ。
マリアは沈黙で返した。
全く考えなかったとはとても言い切れない。
「……まぁいいだろう。お前らしい願いだ」
どういう意味だ、と聞くのはやめた。もう今更だと諦めていた。
「戦いから逃げ出すために戦いに臨む……そんな私を愚かだと思う?」
「間違ってはいないだろう。戦いから逃れる方法は2つに1つ。
負けて死ぬか……あるいは全ての敵を倒して、さっさと戦いを終わらせるかだ」
お前は後者を選んだに過ぎない、と。
そう言って羽織ったコートを翻し、ランサーはマリアに背中を向けた。
「そうと決まったからには準備だ。ぐずぐずするのは性に合わん」
言いながら、ランサーはマリアを置いて、ずかずかと土手を上っていった。
マリアは少し慌てた調子で、早足でその後に続く。まるで主従が逆転したような光景だ。
そしてそんな中、マリアは目の前の男について、しばし思考にふけっていた。
(なんとなく、分かってきたような気がする)
きっとこいつは自分とは、まるきり正反対の人間なのだろう。
どうせ自分なんか、という考えが、この男にはまるでない。
むしろ自分は強者なのだと、何物にも屈したりはしないのだという、強い自信の持ち主に見える。
どんな苦境や困難にも、決して泣き言を漏らさず立ち向かう――きっとこいつは、そういう男だ。
(私もそうあれるだろうか)
今までの自分にはできなかったことだ。
そうあらねばと念じながらも、今日まで貫けなかった生き様だ。
この戦いの中でこそ、自分は己の弱さを捨てて、敢然と戦うことができるのだろうか。
そんなことを考えながら、マリアはランサーの後に続いていた。
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【マスター】マリア・カデンツァヴナ・イヴ
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。エアキャリアーの備品に、たまたま木片を材質としたものが紛れていた
【マスターとしての願い】
月の落下を止めたい。聖杯の力で組織の目的を果たし、戦いを終わらせたい
【weapon】
ガングニール
北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。
その由来の通り、槍型の武器(アームドギア)を用いる。
また、羽織ったマントは自在に操ることができ、中距離攻撃やシールドとして使うことが可能。
必殺技は、槍の先端からエネルギーを解放し、ビームのようにして発射する「HRIZON†SPEAR」。
白銀のシンフォギア
実妹セレナ・カデンツァヴナ・イヴの遺品。
彼女の死亡および、本シンフォギアの破損により、登録データは全て抹消されてしまっている。
そのためいかな聖遺物に由来するものなのか、どのような性能を持っているのかなど、ほとんどの情報が不明。
起動聖詠には「アガートラーム」というフレーズが盛り込まれており、それがシンフォギアの名称であるということは推測できる。
相応の覚悟と意志により、「奇跡」を手繰り寄せることがない限り、決して起動することはない。
【能力・技能】
シンフォギア適合者(偽)
神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。
しかし彼女自身の適合率はあまりに低く、制御薬・LiNKERの服用なしには、シンフォギアを纏うことはできなかった。
初期状態では効力が切れているため、シンフォギアを纏って戦うためには、まずLiNKERを確保しなければならない。
【人物背景】
かつてアメリカの実験機関「F.I.S」に囚われていた、レセプター・チルドレンの1人。
月落下の事実を世界に公表し、完全聖遺物・フロンティアによる状況打開を行うため、武装組織「フィーネ」の首魁として蜂起する。
しかし彼女自身は争いを恐れており、現在の立場も組織の維持のため、ナスターシャ教授に依頼されて受け入れたものだった。
2歳歳下の妹・セレナを喪っており、妹の悲劇を繰り返したくないという想いが、彼女の心を繋ぎ止めている。
表向きには強気に振舞っているものの、本来は消極的な性格。
そのため、テロ組織として戦うことによる良心の呵責や、組織の代表を求められる重圧により、心を擦り減らしていった。
それでも、優しく面倒見のいいお姉さん基質でもあるため、周囲の人間からの信頼は厚い。
表向きには歌手活動をしており、そちらの方面では、僅か2ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に立つほどの才能とカリスマを有している。
【方針】
迷いはあるが、一応優勝狙い。
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【クラス】ランサー
【真名】駆紋戒斗
【出典】仮面ライダー鎧武
【性別】男性
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:D 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:E〜C
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
『唸る騎士の黄槍(バナナアームズ)』『轟く闘士の赤槌(マンゴーアームズ)』発動時にはDランクに変化し、一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
『勝利せし黄金の覇王(レモンエナジーアームズ)』発動時にはCランクに変化し、第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。
【保有スキル】
執念:A
勝利への強い執着心。
いかに困難な状況だろうと、どれほどの実力差を突きつけられようと、決して負けを認めない。
このランクまで来るともはや病気のレベルだが、それ故に逆境に気後れすることはあり得ないと考えていい。
また、一度敗れた相手と戦う際には、その強い対抗意識により若干のステータス補正も見込める。
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
軍略:C
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
団体戦闘における指揮能力や、逆に敵集団への対処に有利な補正がつく。
話術:E
言論にて人を動かせる才。
交渉から詐略・口論まで幅広く補正が与えられる。
このランクだとほとんど有利な補正は得られないが、良くも悪くも話し相手の意識を、戒斗に向けることができる。
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【宝具】
『唸る騎士の黄槍(バナナアームズ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具:C
異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・バロン」へと変身する。
バナナロックシードにより発動するこの力は、走攻守のバランスに優れた基本形態。
槍型の武器・バナスピアーを使い、敵を着実に追い詰める。
必殺技は、槍からオーラを発して敵を貫く「スピアビクトリー」。
『轟く闘士の赤槌(マンゴーアームズ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B+ 耐久:B 敏捷:D 魔力:D 幸運:C 宝具:C
異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・バロン」へと変身する。
バナナロックシードにより発動するこの力は、敏捷性を犠牲に筋力・耐久を高めた強攻形態。
メイス型の武器・マンゴパニッシャーを使い、パワーで敵を圧倒する。
必殺技は、メイスからエネルギー弾を放って敵を砕く「パニッシュマッシュ」。
『勝利せし黄金の覇王(レモンエナジーアームズ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B+ 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:C 幸運:B 宝具:B
異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・バロン」へと変身する。
レモンエナジーロックシードにより発動するこの力は、他の形態とは一線を画した力を持つ進化形態。
弓型の武器・ソニックアローは、両端に刃が備えられており、接近戦・遠距離戦共に威力を発揮する。
【weapon】
戦極ドライバー
アーマードライダーに変身するためのベルト。バナナアームズ、マンゴーアームズに対応している。
ゲネシスドライバー
上級のアーマードライダーに変身するためのベルト。レモンエナジーアームズに対応している。
既に戦極ドライバーで変身している場合でも、素早くベルトを付け替えれば、変身を解除せずアームズだけを切り替えることができる。
ヒマワリロックシード
向日葵の種を象ったロックシード。合計3つ用意されている。変身に使うことはできない。
宝具発動時に使用すれば、ヘルヘイムの森に巣食う怪物・初級インベスを召喚・使役することができる。
(一応生身でも召喚はできるが、競技用にリミッターがかけられるため、能力は雀の涙ほどしか発揮できない)
エネルギーはロックシード自体のそれに依存するため、戒斗本人およびマスターに負担がかかることはない。
更に戦極ドライバーにセットし使用すれば、少量ながら、戒斗本人への魔力補給も可能。
トランプ
何の変哲もないトランプ。52枚セット。
戒斗はこれを投擲武器として使うことが多い。
【人物背景】
沢芽市で活動するダンスチーム「チームバロン」の元リーダー。
戦極ドライバーおよびゲネシスドライバーにより、アーマードライダーバロン(仮面ライダーバロン)へと変身する。
幼少期に大企業・ユグドラシルコーポレーションによって、実家の町工場を潰されており、「弱肉強食」という概念を強く意識している。
傲慢不遜な性格であり、他者との協調性は低い。
常に「強者」たらんとしており、強者にへつらう「弱者」を嫌悪している。
一方で、その突き抜けるところまで突き抜けたプライドは、いかな苦境にも屈しない精神力へと繋がっており、
自分を曲げることを知らず、どんな困難にも立ち向かうことができる。
もっとも強さにこだわる理由は、あくまで「敵を倒すことが自分を守ることに繋がる」と考えているからであり、弱い者いじめを楽しんでいるわけではない。
幼少期から持っていた元々の性分なのか、なんだかんだで情のある人物でもある。
真っ向勝負を好む傾向があり、立ちはだかる敵は正面から粉砕しようとする。
姑息な策略は彼にとって、最も唾棄すべきものだが、ルール上認められている行為は、最大限利用するタイプでもある。
あまりにも無謀かつ無意味な戦闘は避け、迂回路を取ろうとするなど、最低限の冷静さと戦術眼を兼ね揃えてはいる。
小規模ながらも組織の頂点に立つ者であるが故か、数の優位性を正確に認識しており、可能であれば組織戦を展開することもある。
【サーヴァントとしての願い】
他者に願いを委ねることなどあり得ない。強いて言うなら、英霊達と戦うことで、より強い力を身につけたい。
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第3話の投下はこれで以上です
マスター:マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG
ランサー(1人目):駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武
です
本日の投下は、これで以上となります
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それでは今夜も投下させていただきます
今夜は第4話・5話の合計2回です
まずは第4話のライダー(1組目)から
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かちゃかちゃという金属音が、絶えず室内に響いている。
フォークを皿に置いたかと思えば、また次の皿に手を伸ばし、フォークを持ち直してそちらへ向ける。
テーブル狭しと並べられた、色とりどりのスイーツ達は、かちゃかちゃと音を立てながら、次々と姿を消していく。
ショートケーキも、シュークリームも、ゼリーもムースもモンブランもだ。
全てがその男の口へ運ばれ、むしゃむしゃと咀嚼されながら、美味しく味わわれて食道へと消えた。
「ホンットによく食べるわね、あんた」
そしてその男の様子を、呆れた目線を向けながら、遠坂凛はそう評した。
「まぁ大目に見といてよ。これで魔力が得られるんだからさ」
そんな気配も物ともせず、満面の笑みを浮かべながら、男はそのように返した。
小汚い黒コートに身を包んだ青年は、今回の凜のサーヴァントだ。
ライダーのサーヴァント・涼邑零――それが赤いアーチャーに代わる、彼女の新たな駒だった。
「それにしても、今度は私が巻き込まれることになるとはね……」
ため息をつきながら、凜が言った。
現状に至る経緯は、こうだ。
冬木市の聖杯戦争が終結してから、一月程が経過した後。
その日の凜は魔術師らしく、実家の礼装を整理しながら、魔術の修練に勤しんでいた。
そしてちょうどその中で、名高き方舟にも使われたという、ゴフェルの木片に触れたのだ。
瞬間凜の意識は掻き消え、あの和装の男と顔を合わせ、気付けばここにいたというわけだった。
冬木市から飛ばされたかと思えば、またも冬木市にいたというのは、何とも奇妙な話ではあったが。
「はは、マスターも運がなかったな」
チーズスフレを飲み込むと同時に、ライダーがそんな感想を述べた。
実際は不運というよりも、うっかりミスが多いというのが、凜の本質だったのだが。
どちらにせよからかわれていることには変わりない。凜は一層機嫌を悪くし、ジト目でライダーを睨んだ。
「……だいたい、この聖杯戦争自体がおかしいのよ。
本来聖杯戦争といったら、冬木市に集った魔術師達が、自発的に参加するものと相場が決まってるの」
巻き込まれを前提としたルール構成など、本来ならば有り得ないと。
ライダーの近くから皿を引ったくり、チョコレートケーキを頬張りながら、凜が言う。
「本来の聖杯戦争、ねぇ。そんなもんがあったのか」
「おまけにあのサムライ男、魔術って言葉を一度も使ってなかった。
これじゃ魔術師の儀式って部分も、守られてるかどうか疑わしいわ」
「でも俺とマスターとは、ちゃんと魔力バイパスで繋がってるぜ?」
「そこが訳分かんないのよ」
何から何までぐちゃぐちゃだ。
杜撰なのか裏があるのか、どちらとも取れないカオスの中で、頭がどうにかなりそうだった。
ケーキを飲み込んだ凜は、さながら不貞寝するかのように、机に突っ伏して頭を抱えた。
「まぁでもさ、それって要するに、魔術師やってるマスターが、圧倒的に有利ってことじゃん?」
エクレアを食べながら、ライダーが言う。
少しはみ出たクリームを、紙ナフキンを取ってさっと拭う。
確かに凜の推測通りなら、正規の(という表現も変だが)魔術師マスターは、かなり数を減らすことになる。
そうなれば魔術のいろはも知らない、素人マスターの数が増える。同じマスター相手ならば、そちらと戦う方が容易いはずだ。
「そりゃまぁ、そう考えられなくもないけど……」
「どうせ行く先不明瞭なら、ポジティブに考えていこうぜ。その方がマスターの『やる気』にもなるさ」
いつの間にかライダーは、無数のスイーツを完食していた。
立ち上がり皿の山を背に、ぽんと凜の肩を叩くと、ライダーは出口の方へと向かう。
「だからしゃんとしろよ。俺も奢ってもらった分だけ、きちんと働くつもりだからさ」
「……分かったわよ、やればいいんでしょやれば!」
こうなったらもう自棄糞だ。
半ば捨て鉢に叫びながら、凜もまたテーブルを立った。
気になることはたくさんある。
この紛い物の聖杯戦争は何なのか。汚染された冬木の聖杯と、何か関係はあるのか。
それでもあれこれ考えた結果、それらを解決するためには、この戦いを勝ち残ることが、何よりの近道であるように思えた。
それこそライダーが言うところの、ポジティブシンキングというやつだ。
やるからには勝ち抜いてやる。最後の最後まで戦い抜いて、真実を見極めてやる。
そう心に決めた遠坂凜は、懐の財布に手をやりながら、ずかずかとレジへ歩いていった。
-
.
「……ところでライダー。今の食事であんたの魔力、だいたいどれくらい回復したのよ?」
「え? そんな大した量じゃないよ。だいたいこんなお手軽なスキルで、大魔力を得られたら苦労しないって」
「はぁああああああっ!?」
食べ放題のバイキングといえど、決して代金は安くない。
無駄金を平然と使わせた従者に、それこそ無駄だと理解しつつも、凜は鉄拳を浴びせずにはいられなかった。
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【マスター】遠坂凛
【出典】Fate/stay night
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。遠坂家の所有していた『ゴフェルの木杭』に触れた
【マスターとしての願い】
聖杯にかける願いはないが、聖杯の正体は見極めたい
【weapon】
宝石
宝石魔術に用いるための、魔力を込めた宝石の数々。
【能力・技能】
魔術
魔力を用いて人為的に神秘・奇跡を再現する術の総称。
凜が専門とするものは、宝石に蓄積した魔力を利用する「宝石魔術」。
更に魔術の五大属性全てをマスターした、「五大元素使い(アベレージ・ワン)」と呼ばれる天才魔術師としても知られている。
得意技は初級魔法・ガンドを、物理的破壊力を持つまでに昇華した「フィンの一撃」。
【人物背景】
穂群原学園に通う高校2年生の少女。
冬木の管理者・遠坂家の六代目継承者であり、自身も強力な魔術師である。
表向きには容姿端麗、文武両道、才色兼備の優等生。
しかし本来は勝ち気でプライドの高い性格であり、「競争相手がいるならば周回遅れにし、刃向かう輩は反抗心をつぶすまで痛めつける」とのこと。
「やるからには徹底的に」を信条としており、第五次聖杯戦争にも、全力で臨む決意を固めていた。
反面、何だかんだ言ってお人好しな人物でもあり、素人マスターであるはずの衛宮士郎と、最後まで共闘関係を結んでいる。
第五次聖杯戦争には、アーチャーのサーヴァントを召喚して挑んだが、バーサーカーとの戦いで脱落。
以降は士郎をサポートし、最終局面においては、アゾット剣を託して背中を後押しした。
【方針】
どうせやるなら優勝を狙う。この聖杯戦争の正体を探る
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【クラス】ライダー
【真名】涼邑零
【出典】牙狼-GARO-シリーズ
【性別】男性
【属性】混沌・善
【パラメーター】
筋力:D+ 耐久:E+ 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:E (C)
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
『銀牙騎士・絶狼(ゼロのよろい)』発動時にはCランクに変化し、第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。
【保有スキル】
無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神干渉の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。
魔力回復:E
甘いものを食べることにより、多少の魔力回復を行うことができる。
生前のライダーは甘党かつ大食漢であったと言われており、その逸話がスキルとなったもの。
【宝具】
『銀牙騎士・絶狼(ゼロのよろい)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:C
光あるところに、漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた。
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ。
――古より人を襲ってきた、魔界の怪物・ホラー。それと戦う力を身につけた、魔戒騎士の鎧である。
この鎧には活動制限時間が存在しており、人間界では99.9秒間しか纏うことができない。
セイバーの纏う「絶狼の鎧」は、銀色の光を放つ鎧であり、二刀流による俊敏な戦闘スタイルを有している。
更に青い魔導火を纏うことにより、攻撃力を底上げする「烈火炎装」を発動することが可能。
『魔導馬・銀河(ギンガ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大補足:50人
100体のホラーを狩った者にのみ与えられる、馬の姿をした魔戒獣。ライダーのサーヴァントたる所以。
この宝具に騎乗することにより、絶狼の筋力・耐久の値が1ランクアップする。
更に魔戒剣に力を与え、大型の「絶狼斬馬刀」へと変化させることが可能。
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【weapon】
魔戒剣
ソウルメタルによって鍛え上げられた、魔戒騎士のための剣。
修行を経た者はこれを自在に操ることができるが、そうでない者には持ち上げることすらできない。
零の魔戒剣は短めの直刀で、これを二振り握って、二刀流の戦闘スタイルを取る。
魔導火
正確には魔導火の込められたライター。
これでホラーを識別したり、烈火炎装発動のキーとしたりする。
【人物背景】
魔戒騎士の系譜に存在しない独自の称号・銀牙騎士を自称した魔戒騎士。
本名は「銀牙(苗字不明)」だが、魔戒騎士となった時にその名を捨てたため、サーヴァントとしては「涼邑零」が真名となる。
魔戒騎士の中でも社交的な部類で、飄々泰然とした態度を取っている。しかし心の底では、冷静な戦闘者としての顔を併せ持つ。
婚約者と師匠を「黄金騎士に似た太刀筋を持つ魔戒騎士」に殺害されており、
その復讐を果たすため、当時の黄金騎士・冴島鋼牙を付け狙っていた。
しかし自らの仇の正体が、先代黄金騎士に師事していた暗黒騎士・バラゴだと知って以降は和解。
鋼牙の無二の戦友として、そして最大の好敵手として、人類を守るために力を合わせている。
魔戒騎士としての実力は非常に高く、魔戒騎士の闘技大会・サバックでは、見事優勝を果たしている。
『銀牙騎士絶狼(ゼロのよろい)』を纏った際、手にした二振りの魔戒剣は、「絶狼剣」と呼ばれる剣へと変化。
柄の両端を連結させ、「銀牙絶狼剣」と呼ばれる形態にすることで、ブーメランのように扱うことも可能となる。
【サーヴァントとしての願い】
特になし
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第4話は以上です
絶狼斬馬刀は劇中で披露されていませんが、多分使えるだろうと思って盛り込みました
続いて第5話、アサシン(1組目)分を投下します
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「いやぁしかし、驚いたよ」
路地裏でからからと笑うのは、黒髪をショートヘアにした少女だ。
ネコ科の獣のような金眼には、恐怖や緊張の色はない。この状況下で平然としていられるのは、大した器だと言えるだろう。
「聖杯戦争なんてのもそうだし、まさか私のサーヴァントとやらが、君のような奴だったとはね」
「ああ、それは同感だ。おれだってお前のようなやつと、言葉が通じるようになるとは思わなかった」
何よりその光景を、異様なものとして印象づけるのは、彼女の傍らに立った存在だ。
驚くなかれ、ライオンである。
浅黒い体毛を全身に纏い、緑の瞳を怪しく光らす、雄のライオンがいたのである。
しかもそれが黒髪の少女と、人間の言葉を使いながら、平然と談笑しているのだ。
そんな光景が成立するのは、彼らが戦争のルールに定められた、主君と従者の間柄だからだ。
アサシンのサーヴァント・スカー――この1頭の獅子こそが、呉キリカという少女に与えられた手札だった。
「人間の言葉を話すライオンなんて、どんなサーカスでも見られないだろうねぇ。それも方舟とやらの力なのかな?」
「おれに聞いてくれるなよ、マスター殿。所詮は草原暮らしのけだものなんだ。人間様の文明のことなど、知る由もない」
「まぁいいか。大事なのは君が強いかどうかだ。そこのところはどうなんだい?」
「知恵比べなら自信はあるが、直接戦えと言われれば……まぁ、まず勝ち目はないだろうな。
神にも悪魔にも縁遠い身だ。ライオンの領分以上のことはできん」
「なーんだ、そうなの」
果たして知恵比べというものは、その「ライオンの領分」に当たることなのだろうか。
それだけは気になったものの、すぐに落胆の方が勝った。
一応キリカは魔法少女なのだから、自分で戦うこともできる。
しかしそれでも、サーヴァントとのタッグを組めた方が、より勝利は確実なものとなったはずだ。
それがかなわないとなれば、どうしてもがっかりしてしまう。
「おいおいそう落ち込むなよ、マスター。爪と牙が役に立たずとも、頭を使えば勝機はある。
他の参加者は大勢いるんだ。だったらそいつらを潰し合わせれば、おれが弱くとも問題はあるまい?」
「潰し合わせる? そんなことができるのかい?」
「ちょっと頭を使えばいい。人の心を操ることなど、コツさえ掴めば簡単なことだ」
本当にそんなことができるのだろうか。
自信げに語るアサシンの言葉に、キリカはすっかり聞き入っていた。
ライオンが人を操るなど、眉唾ものとしか思えなかったが、なるほど確かに、こいつは非常に口が上手い。
こうして耳を傾けていると、あるいはそんなことすらも、可能なのではとすら思えてくる。
「まぁそっちはおれに任せておけ。おれはマスターの忠実な下僕だ。
言うとおりにしていれば悪いようにはしない。必ず聖杯をプレゼントしてやるとも」
「そうだね……まぁ駄目で元々だ。君に任せてみることにするよ」
上手くいったらお立ち会い。駄目なら自分で戦うまで。
元より自分は考えるのが苦手だ。だったらここは無い知恵を絞るより、アサシンに賭けてみた方が気も楽だろう。
(待っててね、織莉子。必ず聖杯を持って帰るよ)
そう心に決心を固め、キリカは行動を開始した。
実のところ、彼女には、聖杯を使うつもりはなかった。
願望器の力を必要としているのは、自分ではなく友人の方だ。
ここにはいない親愛なる友――世界の救済者・美国織莉子。
世界を滅亡から救わんとする彼女には、聖杯の願いを叶える力が、きっと助けになることだろう。
どうせ自分が使おうとしても、大金や山盛りのお菓子くらいしか、願いのレパートリーはないのだ。
だったら自分が使うより、相応しい使い手の元に持ち帰って、プレゼントした方が万倍いい。
忠実なる愛の下僕・キリカは、獣の従者を伴って、愛する者のために歩みを進めた。
-
◆
(ふふん、せいぜい図に乗っているがいい)
そしてそんな背中を見つめて、内心で笑う獣が1頭。
傷のある目元を妖艶に歪め、嘲笑するかのように見送るのは、アサシンのクラスを冠した獅子だ。
(今はお前に従ってやる。だが然るべき時が来たら……その時に笑うのはこのおれだ)
アサシンはこのキリカという少女に、聖杯をくれてやるつもりなど毛頭なかった。
自分にも願望器にかける願いがあり、故に聖杯を使うべきは、マスターではなく自分だと考えていたのだ。
令呪とやらが自分を縛る限り、キリカを殺すことは許されない。
それに魔力の供給源を殺せば、自分は体を維持することもできず、立ちどころに消滅するだろう。
だからこそ、動くべきは最後の最後だ。
言葉巧みにキリカを騙し、奴が願いを言うよりも早く、自分の願いを聖杯に告げるのだ。
(そしておれは王として、再びプライド・ランドに返り咲く……そうとも、今度こそは上手くやるさ)
生前追い落とされた地位を、聖杯の力で取り戻す。
生意気な甥っ子を抹殺し、あのプライド・ロックの頂に、もう一度自分が上り詰める。
確かに振り返ってみれば、生前の統治は失敗だった。
甥のシンバを殺し損ねたことも、ハイエナを野放しにしたこともそうだ。
特に後者はよくなかった。無軌道な馬鹿共の食欲は、たちまち大地を枯れ果てさせてしまった。
しかしもう一度やり直すからには、二度と愚行は犯さない。自分を殺した裏切り者など、まとめて処分してしまえばい。
(まぁ、確かにおれに力はない。それでもやりようはいくらでもある)
そしてその願いを叶えるためには、まずこの聖杯戦争を勝ち抜くことだ。
確かにアサシンたるスカーは、英雄でも神でもないただのライオンである。
その上老いた身とあれば、直接戦闘で生き残ることは、到底不可能と言っていい。
だとしても、アサシンに不安はない。
そんな絶望的な状況だろうと、全く気後れしていない。
(要は余計な戦いなど、残らず捨ててしまえばいい。必要なのはただの一撃……マスターの喉を裂く爪の1本だ)
アサシンのクラスの基本戦術は、その名の通りの暗殺である。
相手に気づかれることなく殺す――そのために特化したスキルを駆使し、サーヴァントとの戦闘を避け、直接マスターを抹殺する。
そしてそれを行うための準備は、もちろん彼にも備わっていた。
それが他者を利用するための話術であり、彼に授けられた宝具だ。
対獣宝具「偽・百獣の王(キング・オブ・プライド)」――NPCの獣を洗脳し、支配下に置くための宝具。
同時に最大50もの動物を、意のままに操ることを可能とする力だ。
さすがに戦力としてはあてにならないが、小回りが利く上、外から判別もつかない分、使いようはいくらでもある。
偵察によし、誘導によし。人間であるマスター相手なら、とどめの一撃に使うもよしだ。
(ハイエナを操れないというのは、少しばかり気に食わんがな)
もっともこの宝具にも弱点はある。ハイエナを含むイヌ科の動物には、効力を発揮しないのだ。
しかしこの方舟にいるのは、何も犬に限っているわけではない。
他の動物が使えるのなら、その穴くらい埋めることは容易だ。
(ともあれ、王たる者はこのおれだ。他の奴らに聖杯は渡さん。
最後に聖杯の前に立つのは……はは、他の誰でもないこのおれなのだ)
高笑いを上げたくなる衝動を、必死に抑え込みながら。
野心を己が胸に隠して、アサシンはマスターに付き従う。
全ては真の王として、あの月に君臨するその時のため。
万能の願望器の前に立ち、その時にこそ笑うため、アサシンは今はただ静かに、策謀を張り巡らせていた。
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【マスター】呉キリカ
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木』による召喚。美国邸の庭園にたまたま木があった
【マスターとしての願い】
自分で聖杯を使うのではなく、織莉子にプレゼントしたい
【weapon】
ソウルジェム
魂を物質化した第三魔法の顕現。
千歳ゆまを始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、濁りきると魔女になる。聖杯戦争内では魔女化するかどうかは不明。
【能力・技能】
魔法少女
ソウルジェムに込められた魔力を使い、戦う力。
武器は鉤爪で、劇中では主に3×2=6本の爪を展開して戦っていた。
固有魔法は速度低下。有機物・無機物問わず、あらゆるものに対して発動が可能で、対象の運動速度を低下させられる。
劇中では魔女結界にこの魔法をかけ、消滅を遅らせるなどしていた。
反面、攻撃に魔力を割きすぎると、この魔法の制御が難しくなり、視認できる範囲にしか効果を維持できなくなるという欠点がある。
必殺技は爪を投擲する「ステッピングファング」、膨大な爪を縦に連ねて操る「ヴァンパイアファング」がある。
爪とキックを交互に繰り出す、アクロバティックな戦闘を得意としている。
【人物背景】
魔法少女・美国織莉子の友人にして、忠実な下僕。
世界を滅ぼす魔女の出現を防ぐため、その元となる魔法少女を殺すべく暗躍している。
キュゥべえの目を逸らすために、他の魔法少女を次々と殺害しており、高い戦闘センスを持っていると推測される。
明るく社交性の高い少女だが、全ての価値判断は、あくまで織莉子最優先。
織莉子に捧げる「愛」を神聖視しており、半端に口出ししようものなら、激昂し物凄い勢いでまくし立ててくる。
戦闘中にも狂っているかのような言動が多く、対戦した巴マミからは、「壊れている」と評されていた。
もっとも、何もない時には、冷静に戦況を分析したりもしており、全くの狂人というわけではない。
本来は過去のトラウマから、人間不信に陥っていたこともあり、他人と打ち解けられない内向的な性格だった。
しかし、偶然織莉子と出会った時に、彼女に惹かれる何かを感じ、彼女に声をかけられるようになるため契約。
「違う自分に変わりたい」という願いで、現在の性格へと変貌を遂げた。
この時「変わる前の自分」が持っていた願いを忘れてしまったのだが、この聖杯戦争に参加した時点では、何らかのきっかけにより思い出している。
本人はこの契約に対して、「織莉子を自分のウソに付き合わせた」と語っており、ある程度の負い目を感じていたものと思われる。
【方針】
優勝狙い。細かい作戦はアサシンに任せてみる
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【クラス】アサシン
【真名】スカー
【出典】ライオン・キング
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:D 耐久:E 敏捷:D+ 魔力:E 幸運:E 宝具:B
【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
話術:B
言論にて人を動かせる才。
国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
弁論において、窮地にあっても挽回の可能性を手繰り寄せる。
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。
カリスマ:E
軍団を指揮する天性の才能。統率力こそ上がるものの、兵の士気は極度に減少する。
【宝具】
『偽・百獣の王(キング・オブ・プライド)』
ランク:C 種別:対獣宝具 レンジ:1 最大補足:50匹
一時とはいえ、プライド・ランドの王として君臨した、その生き様が宝具と化したもの。世にも珍しい対獣宝具。
NPCの動物を、話術をもって洗脳し、自らの一部として操ることができる。
サーヴァントの一部であるため、他のサーヴァントを攻撃できるだけの神性も付与される。
ただしスカーの王としての器は、名君と呼べるほどのものではなく、その効力は半減している。
(然るべき王者が『百獣の王(キング・オブ・プライド)』を備えていた場合、操れる最大数は100匹となる)
また、スカーはハイエナに恨まれながら死んでいったため、同じイヌ科の動物を操ることはできない。
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【weapon】
なし
【人物背景】
サバンナに存在する動物達の王国「プライド・ランド」の王族で、ムファサ王の弟でもあった雄ライオン。
狡猾な野心家であり、王の地位を狙っていたのだが、ムファサに王子・シンバが生まれたことによって、王位継承のチャンスが遠のいてしまう。
これを快く思わなかったスカーは、蛮族であるハイエナ達と結託し、ムファサを暗殺。
シンバをも始末するよう仕向けたことにより、ムファサの王位を継承し、プライド・ランドを治める暴君となった。
しかしシンバは生きており、成長した姿でプライド・ランドへと舞い戻ってくる。
スカーは敗北しプライド・ランドを追いやられ、
最期には「ハイエナが全てを企んだのだ」と言い訳したのを聞かれていたことがきっかけとなり、そのハイエナ達によって殺されてしまった。
獣でありながら策を弄し、身内の殺害にまで及んだ、狡猾さと残忍性を併せ持つ反英霊。
その悪知恵と人心掌握術は獣の領域を超えており、他種族であるはずのハイエナの群れを、意のままに操ったと言われている。
反面、彼らを継続的に管理することは難しかったらしく、プライド・ランドを荒廃させており、王の資質はややマイナスに傾いている。
本人の戦闘能力は、ただのライオンであることもあり、ライオンなりのものしか持たない。
そもそも生前にムファサに対して、「爪と牙を使った戦いではムファサに勝てない」と語っており、
あまり力には恵まれていなかったものと考えられる。
【サーヴァントとしての願い】
プライド・ランドの王として再び返り咲く。そのためにキリカを利用する
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投下は以上です。本日投下分は、
マスター:遠坂凛@Fate/stay night
ライダー(1人目):涼邑零@牙狼-GARO-シリーズ
マスター:呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ
アサシン(1匹目):スカー@ライオン・キング
でした
……獅子王杯と銘打っているこのスレですが、別にスカーとは深い関係はありません
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第6話および第7話の投下を始めます
一発目はバーサーカー(1組目)です
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――狂戦士(バーサーカー)。
元は格の低い英霊にも、理性と引き換えに高いステータスを与える、弱者救済のためのクラスであった。
しかし現実は違った。
狂気に堕ち加減を忘れたサーヴァント達は、マスターの魔力を食い潰し、次々と自滅に追い込んでいった。
そのためいつしか、聖杯戦争においても、最も扱いの難しいクラスの1つとして、認知されるようになっていった。
弱い英霊しか手に入れられずとも、高い戦闘能力を得られる。
代わりにその狂気を御することができなければ、振り回され破滅へと転がり落ちていく。
このクラスを選択することは、逆転か死かを秤にかけたギャンブルを、開戦前から強いられることを意味した。
-
◆
「――狂気というものには、源泉があります」
誰かの声が聞こえている気がする。
胸糞が悪くなるような、猫撫で声が聞こえる気がする。
「貴方が狂ってしまったことには、必ず理由が存在するはず。何の理由も持たずして、勝手に狂うことは有り得ない」
目の前にいるのは、人間の女か。
随分と背が低く見えるが、何かに座っているのだろうか。
一見して年齢も分からない、茫洋とした印象の女だった。
金髪の放つ淡い光が、霞のようにさえ見えていた。
「聞かせてください。貴方の狂気を。貴方を駆り立てる源泉を」
女の両手が俺に伸びた。
細い指先が頬に触れた。
薄気味悪い手つきをしながら、白い指先で俺をなぞった。
「―――」
俺を駆り立てるものだと――?
そんなものは決まっている。今更問われるまでもない。
俺が唯一望むものは、あの忌まわしい男の命だ。
金も名声も必要ない。安息すらも求めていない。
俺の愛する者を奪った、あいつの心臓をぶち抜いてやるまで、俺に幸福など訪れない。
仮に幸福などなかったとしても、あいつを冥府に叩き落とすまでは、不幸から逃れることなど有り得ない。
「――なるほど。つまり、復讐ですか」
たった5音で片付けられた。
それだけのシンプルな動機だった。
しかしシンプルであればこそ、貫く意義もあるというものだ。
それだけが果たせるのなら、それでいい。
それだけで悪夢が終わるなら、俺はそれで構わない。
「でしたら喜んでください。貴方の願いは叶います。私が願いを叶えてあげます」
金髪の女はそう言った。
自分は聖杯と呼ばれる、万能の願望器とやらを探しているのだと。
その聖杯の力を使えば、憎き仇を殺すことも、容易く成し遂げられるのだと。
「しかし、それを阻む者がいます。貴方が仇と思う人が、貴方の願いを妨げています。
その者の放った刺客達が、貴方と私を亡き者にしようと、目前にまで迫ってきています」
なるほど、つまりこういうことか。
ここが決着の地というわけか。
少し前に聞いたこととは、何かが違うような気がするが、そんなことはどうでもいい。
「誰の言葉にも耳を貸してはいけません。私だけが貴方の味方です。
私の指示に従っていただければ、貴方の狂おしいまでの悲願を、叶えてあげると約束しましょう」
いいだろう。
お前の提案に乗ってやる。
俺は刺客達を皆殺しにし、聖杯の力を手に入れる。
その力をもって憎き仇を、俺の目の前に引きずり出してやる。
奴の命までは願わない。他人に始末を委ねたのでは、復讐をする意味がない。
奴を殺すのはこの俺だ。
真正面から相対して、命を奪うのは俺の引き金だ。
俺自身のこの指先で、殺らねばならない相手なのだ。
「さぁ――共に行きましょう」
恨みがこの身を駆け巡る。
憎しみが胸を満たしていく。
復讐するは我にあり。我は憎む、故に我あり。
この血肉と魂の一片までも、殺意の動力と変えてやる。
最大の怨敵を打ち倒すために、全てを投げうってでも戦ってみせる。
叫べ、願いを。
俺の魂の動機を。
奴に制裁を与えるために、叫びと共に邁進せよ――!
「……ゥウオオオオオオオオ――ッ!!」
-
◆
静まり返った深夜の墓地に、鋭い銃声が響き渡った。
バーサーカーが腰に差していた、奇妙な形状のマシンガンが、唸りを上げて鉛弾を放った。
銃弾は硝煙の匂いを纏いながら、次々と地面に放たれていく。
立ち上がったバーサーカーの周囲を、円形に取り囲むように、大地に弾痕を穿っていく。
「素晴らしい……」
ほうっとため息をつくように、ラケル・クラウディウスは呟いていた。
車椅子に座った金髪の女性は、怒れる金髪の男を前に、恍惚とした表情を浮かべていた。
彼の憎悪は本物だ。
自分の目的のためなら、たとえどんな困難であろうと、恐れず立ち向かう意志がある。
これほどの意志の持ち主だ。きっと「ブラッド」の若者達のように、ラケルの抱く大望のため、真っ直ぐに突き進んでくれるだろう。
凶悪なバーサーカーのクラスであろうが、その思考は極めて単純だ。
方向性さえ与えてやれば、遠慮を知らない狂気であろうと、御することは非常に容易い。
彼は自分の吹き込んだ嘘を、愚直なまでに信用し、思うままに動いてくれることだろう。
「Sanc――tions――charge――!」
呻くような声だった。
言語を失ったバーサーカーが、それだけでもと絞り出すように、言葉を口から発していた。
瞬間、響いたのは地鳴りだ。
突如として大地が鳴動し、英霊は地の底へと消えた。
地面は轟然と隆起する。
ぐらぐらと音を立てながら、凄まじい勢いで盛り上がっていく。
慌てた様子を見せることなく、ゆっくりと車椅子を後退させながら、ラケルはその姿を見た。
大地を豪快に突き破り、その姿を月下に晒した、巨大で歪な人型を見た。
墓を暴いて現れたのは。
月光を受けて輝くのは機械だ。さながら巨人の纏う鎧だ。
赤銅色のずんぐりとした巨躯に、殺意の銃火器を構えて、鋼の巨兵がそびえ立っていた。
オレンジ色に光る瞳は、パイロットの憎悪を映し出す。
はためくマントの奥から覗く、爛々とした眼光は、ここにいない仇敵を見据えている。
「――ヴォルケインッッッ!!!」
バーサーカーのサーヴァント。
真名――レイ・ラングレン。
鋼鉄のヨロイ・ヴォルケインを操り、復讐のために疾駆する戦士。
憎悪の丈を込めたその名は、おぞましく濁った響きと共に、鋭く大気を震わせていた。
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【マスター】ラケル・クラウディウス
【出典】ゴッドイーター2
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。偶然確保していた研究材料に触れた
【マスターとしての願い】
終末補喰を加速させたい
【能力・技能】
科学知識
アラガミおよびゴッドイーターに関する科学知識。
P73偏食因子
脳死したラケルを救うために、投与されたアラガミ因子。
これによりラケルは蘇生したものの、その精神はアラガミと一体化してしまった。
【weapon】
車椅子
厳密には武器ではない。下半身不随のラケルは、これがなければ動くことができない。
【人物背景】
フェンリル極致化技術開発局「フライア」の副開発室長。
「ブラッド因子」の発見者であり、その運用部隊である、特殊部隊「ブラッド」を創設している。
児童養護施設「マグノリア=コンパス」の院長でもある。
穏やかながらもミステリアスな雰囲気を持った女性。常に敬語で話している。
しかしその意識は、幼少期にアラガミと一体化しており、世界のリセットである「終末補喰」のために暗躍する。
そのために人間を利用することには躊躇いがなく、非道な人体実験も辞さない。
【方針】
優勝狙い。バーサーカーの狂気を制御し、上手く立ち回る。
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【クラス】バーサーカー
【真名】レイ・ラングレン
【出典】ガン×ソード
【性別】男性
【属性】混沌・狂
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:E- 宝具:B
【クラススキル】
狂化:C
幸運と魔力を除いたパラメーターをランクアップさせるが、
言語能力を失い、複雑な思考ができなくなる。
【保有スキル】
無窮の武練:B
たった1つの動機のために、鍛え続けた戦闘技術。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の操縦技術を発揮できる。
生身での戦闘においては発動しない。
精神汚染:C
深い憎悪に囚われた心。精神干渉系の魔術を中確率で遮断する。
騎乗:D
騎乗の才能。
「狂化」の影響下においても、「Sanctions Charge(ヴォルケイン)」のみは完璧に操ることができる。
いかな狂気に冒されようと、ただ1つ遺された相棒だけは、決してバーサーカーを裏切らない。
千里眼:D
視力の良さ。遠方の標的の捕捉距離の向上。「狂化」により弱体化している。
【宝具】
『Sanctions Charge(ヴォルケイン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:100人
惑星エンドレス・イリュージョンを闊歩する鋼の巨人「ヨロイ」。
このヴォルケインは、銃火器で武装した遠距離戦闘型である。
脚部のローラーダッシュで自在に間合いを取り、火力をもって一気に敵を殲滅するスタイルを得意とする。
また、本機は「オリジナル7」と呼ばれるヨロイが持つ光学兵器の、テストモデルとして開発された経緯を持ち、
そのため一般のヨロイとしては珍しく、全ての武器が光学兵器となっている。
搭載された装備は、手持ち式ガトリング砲のトライガトリングライフル、
大口径拳銃型のエナジーブリットキャノン、頭部のバルカン砲。更に羽織ったマントは、エネルギー攻撃を拡散・反射できる。
超大型ビーム砲のロングバレルビームランチャーは、移動基地ジングウとの連携を前提とした装備であるため、
ジングウを使えないこの聖杯戦争では、使用することができない。
【weapon】
銃
刀のような形状をしたサブマシンガン。「Sanctions Charge(ヴォルケイン)」の発動モーションにも用いられる。
【人物背景】
死別した妻・シノの仇を取るため、惑星エンドレス・イリュージョンを駆けるヨロイ乗り。
妻を殺したカギ爪の男に対する憎悪は深く、彼を殺すためならば、全てを投げうつ覚悟を持っている。
生身・ヨロイ操縦共に銃撃戦を得意としており、達人と呼ぶに相応しい技量を持つ。
性格は冷静にして沈着。邪魔者を排除するためならば、非情な判断を取ることも辞さない。
一方、仇敵であるカギ爪の男を目の前にした時には、念願の叶った喜びと、積年の憎しみとが入り混じった、凶悪な笑顔を浮かべていた。
しかしこの性質のほとんどは、「狂化」によって塗りつぶされてしまっている。
既に死亡した英霊ではなく、生前のレイ本人がそのまま召喚されたサーヴァント。
そのため霊体化することができない。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力でカギ爪の男を引きずり出す
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第6話の投下は以上です
続けて第7話、セイバー(1組目)の投下を開始します
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立花響が学校を休んだ。
それは幼馴染でありクラスメイトである、小日向未来という少女にとって、非常に大きな出来事だった。
何しろ健康優良児である。
護身術を身につける前から、それだけが取り柄と言えるような、底抜けに元気な子だったのである。
それが何の兆候もなく、ある時突然に欠席した。
おまけに自分に対しても、何の連絡もすることなくだ。
ごくたまに病気で休む時には、プリントや連絡事項などを頼む意味でも、必ず連絡をよこしてきたというのに。
こんなことは今までになかった。
たまたまだったかもしれないが、それでも前例のない経験は、公園のブランコに座る未来を不安にさせていた。
(いや、でも……)
ちょっと待て。
不意にそんなことを思う。
本当にこうした経験は、今までなかったのだろうか。
響はこれまでに何度となく、こんな突然の欠席を、繰り返してきたのではなかったか。
突拍子もない考えだったが、自然とそんな風に思えていた。
であれば、そうだったのはいつだ。
そんなことがあったのは、一体いつの話だった。
いいやそれがあったのは――本当にここでの話だったのか。
(……ッ!)
違和感がぐるぐると渦を巻く。
知らなかったはずの記憶が、次々と浮かんで混ざり合う。
それら全ての未知の記憶を、昔から知っているような、そんな懐かしさを感じる。
これは一体何の記憶だ。
自分は穂群原学園1年生の、小日向未来ではなかったのか。
何度も何度も頭に浮かぶ、私立リディアン音楽院という名は、一体何を意味しているのだ。
「―――」
その時、不意に風がそよいだ。
オレンジ色の気配の中に、銀色の風が吹いた気がした。
はっとして振り返った瞬間、背後のそれと目を合わせた瞬間、小日向未来の認識は、光が広がるように弾けた。
「あ……」
そこに立っていた者は、1人の若い男だった。
銀髪と金眼を光らせた、さながらお伽話から飛び出したような、艶やかな魔性を宿した美男子だった。
現実離れした美貌と、尋常ならぬ異様な衣服が、彼がこの場の者でないことを、雄弁に物語っていた。
すなわちこの世界とは違う、別の世界から現れたか。
あるいはこの時代の常識が通じない、別の時間から現れたかだ。
「私の……サーヴァント……」
そしてその存在を、小日向未来は知っていた。
初対面のはずの男が、一体何者であるのかを、彼女は既に知っていたのだ。
-
◆
「あ……あの、えっと……」
未来は困惑の表情を浮かべたまま、かれこれ3分ほど立ち尽くしていた。
原因は彼女のサーヴァントだ。自分を一瞥するや否や、一言も言葉を発しようとしない。
最初のうちこそ、その容姿に息を呑んだものだったが、そんな態度を取られていては、イケメンもへったくれもない。
むしろ無言のプレッシャーの方が勝り、どう対応していいのか分からず、ひたすらあたふたし続けていた。
「……その……ちゃんと、話してくれませんかッ……!?」
どうにかこうにか、そう言った。
「………」
背を向けるサーヴァントは沈黙したままだ。無視されたのかもしれない。
そう思っていたのだが、次の瞬間、サーヴァントは、突然こちらへと向き直った。
どうしても、びくっ、としてしまう。
望んだ結果であるはずなのに、どうしても驚かされてしまう。
「……どうやら貴様に従わぬことには、私もここから出られんらしい」
見とれるほどの美男子だった。
膝裏まで届く銀髪は、さらさらと風に揺れながら、淡い光を放っている。
切れ長の瞳は金に輝き、こちらをじっと見つめていた。見ているとそのまま吸い込まれそうで、直視することができなかった。
その身に纏った白い和服は、日本の英霊であることの表れだろうか。
右肩にかかった大きな毛皮が、銀髪と一緒に揺れていて、ひときわ存在感を放っていた。
クラスはセイバー――剣士のサーヴァント。
7つ存在するクラスの中でも、最優と謳われるクラスだった。
もっとも、声をかけるのにも手こずったことを考えると、あまり素直には喜べなかったが。
「えっ、あの……」
「貴様の願いを言ってみせろ。叶える気がないとは言わせん」
有無をいわさぬ口調だった。
低く、しかし良く通る声で、セイバーはそう命令してきた。
「わっ、私の願い、ですかッ!? 私は、その……」
これでは主従があべこべだ。
とはいっても、黙っているわけにはいかない。
聖杯戦争を勝ち抜き、叶えたい願いは何なのか。
考える余裕もなかったことを、未来は必死に考える。
「……友達を、守りたいんです。あの子が戦わなくてもいい世界……そんな世界を作りたい」
それでも思いつくまでには、それほどの時間はかからなかった。
願うことなど最初から、たった1つしかなかった。
小日向未来の願いとは、立花響の身の安全だ。
本物かどうかは分からないが、昨日まで穂群原学園で共に学んできた、親友の顔を思い出していた。
彼女は世界を守るため、大勢の人を救うため、幾度となくその身を傷つけてきた。
命の危機に貧しようとも、その歩みを止めようとすることもなく、この左手をすり抜けていった。
そんな彼女を、放っておけない。
これ以上苦しむ姿を見たくない。
響が戦わなくてもいい世界――いかなる脅威もない世界。あらゆる願いが叶うなら、そんな世界を作りたい。
それは未来の唯一にして、絶対的な願いだった。
「ならば行くぞ」
「えっ?」
返すセイバーの言葉は、たったそれだけの言葉だった。
その6文字だけを口にすると、踵を返して歩き出した。
それだけ聞けば十分ということか。その願いを叶えるために、倒すべきマスターを探しに行こうということか。
「あ、あのッ! ……セイバーには……叶えたい願いは、ないんですか?」
それは自分自身が叶えたい願いは、他にないということか。
それがどうしても気になった。答えを聞きたいと思って、白い背中を呼び止めた。
聖杯に願いをかける権利は、サーヴァントにもあるはずだ。
それなのに目の前のセイバーは、未来の願いを聞き入れた。己の願いを口にせず、黙って進むことを選んだ。
それは聖杯を使う権利を、必要としていないということか。
「……願いなどない」
返ってきた言葉は、あまりにも短く。
しかし一点の曇りもない、確信に満ちた言葉だった。
「他人に乞うべき願いなど、この殺生丸は持ち合わせていない」
-
【マスター】小日向未来
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。炎上するタワーの中で偶然触れた。
【マスターとしての願い】
響が戦わなくてもいい世界が欲しい
【能力・技能】
走力
元陸上部の経歴を持つ。タイムが伸び悩んだため引退したが、未だに走力とスタミナは高い。
【weapon】
なし
【人物背景】
主人公・立花響の親友。同じ私立リディアン音楽院高等科に通っており。
響が迫害されていた頃を知っており、それ故か響に対して、かなり過保護な部分がある。
やや控えめな部分はあるが、しっかり者であり、響の良き女房役。
過去に彼女がどん底にあった頃を見ており、それ故に響を支えなければという想いは強い。
【方針】
優勝狙い。とりあえずちゃんと戦ってもらうためにも、セイバーとコミュニケーションを取りたい。
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【クラス】セイバー
【真名】殺生丸
【出典】犬夜叉
【性別】男性
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:A 耐久:C+ 敏捷:A 魔力:B 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の動物の他、手懐けた妖怪であれば乗りこなすことができる。
乗り物は乗りこなすことができない。
【保有スキル】
直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
変身:B+
自らのカタチを変えるスキル。
自分本来の姿である、巨大な山犬の姿に変身することができる。
ただし、爆砕牙で戦った方が強いため、ほとんど使われる機会はない。
毒華爪:C
強力な毒を持った爪。引き裂いた相手を瞬時に溶解させることができる。
また、その副次効果として、自身の毒より弱い毒を無効化することができる。
【宝具】
『爆砕牙(ばくさいが)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大補足:1人〜50人
膨大な妖気を帯びたセイバーの妖刀。自らの体より生じた刀であり、彼自身の資質の表れでもある。
破壊力の高さもさることながら、その最大の特性は、妖気が斬られた部分に残留することにある。
このため妖気が消えない限り、斬りつけた対象に、半永久的にダメージを与え続けることができる。
-
【weapon】
なし
【人物背景】
偉大な犬妖怪を父に持つ大妖怪で、主人公・犬夜叉の腹違いの兄。
自らの血統に絶対的なプライドを抱いており、人間の血を持つ犬夜叉のことを蔑んでいる。
同時に、父の持つ破壊の妖刀「鉄砕牙」が、自分ではなく犬夜叉に遺されたことに対して、強い不満を抱いていた。
当初はあの手この手を使って犬夜叉をつけ狙い、鉄砕牙を奪おうとしたのだが、その度にことごとく失敗。
その最中、気まぐれに人間の童女・りんを救い、傍に置いたことによって、若干の変化が生じるようになる。
やがて鉄砕牙の目的が、犬夜叉の妖怪の血を制御することにあったことを知ると、徐々に鉄砕牙に対する執着も薄れていった。
後に、自分に遺された「天生牙」ですら、鉄砕牙の持つ危険な力・冥道残月破を切り離したおまけに過ぎず、
それも将来犬夜叉に与えるものとして用意されていたと知った時には、真意を見極めるために犬夜叉と対決。
最終的には父への執着と完全に決別し、犬夜叉に冥道残月破を与えた。
後にこのことがきっかけとなり、誰のものでもない己自身の力を求めた殺生丸は、遂に鉄砕牙をも超える刀・爆砕牙を発現。
父は己を超える潜在能力を持った殺生丸に期待し、敢えて父への執着を捨てるよう試練を与えていたのだと、その真意を理解するのだった。
冷酷非情を絵に描いたような男で、敵には一切手加減をしない。
しかしりんと出会って以降は、徐々にその心の中にも、優しさが芽生えていったような節が見られる。
非常にプライドが高いため、自分を貶めようとした者は決して許さない。
優れた血統の下に生まれたこともあり、その戦闘能力は凄まじく高い。
その身は残像を残すほどの速度で飛翔し、その爪は怪力と猛毒により、あらゆる敵を葬り去る。
原作者・高橋留美子によれば、「純粋な妖怪の中では当代最強クラス」とのこと。
ちなみに彼の持つもう一振りの刀・天生牙だが、聖杯戦争の原則を根底から覆しかねない刀であるため、没収されている。
【サーヴァントとしての願い】
この殺生丸に願いなどない。茶番はさっさと終わらせるのみ。
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本日の投下は以上です。本日投下分は、
マスター:ラケル・クラディウス@ゴッドイーター2
バーサーカー(1人目):レイ・ラングレン@ガン×ソード
マスター:小日向未来@戦姫絶唱シンフォギアG
セイバー(1人目):殺生丸@犬夜叉
でした
既存の話オンリーですが、次回からは全て新作となりますので
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第8話・第9話を投下します
第8話はランサー(2組目)です
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地方都市に当たる冬木市だが、決して田舎というわけではない。
たとえば新都の方は夜にもなれば、眩いネオン街へと姿を変える。
赤青黄色の光の中を、仕事帰りの車が行き交う――それが午後7時の光景だった。
「しかし俺が、鉄工場の社長とはな……」
株式会社神重工の社長・神隼人の車もまた、その中の1台だった。
悪くない肩書きではあるが、地球の存亡をかけて戦ってる自分が、随分と呑気なことをしていたものだ。
そんなことを思いながら、運転席で苦笑を浮かべる。
本来の隼人の役割は、地球外生命体・インベーダーを殲滅することだ。
そのために荒れ果てた世界で、反抗勢力を束ねて、大部隊を組織し戦っていた。
この仮初の世界の中で、そのことを思い出したのは、つい半日前のことだった。
「いーんじゃねえの。いい休暇になったと思えばさ」
そのきっかけとなったのが、後部座席に座る少女だ。
赤い髪をポニーテールにした、おおよそ中学生くらいの娘だ。
けらけらと笑うその瞳には、しかし鋭い光がある。強面の隼人にも気圧されない態度は、並の中学生のそれではない。
「でもいいのかよ? せっかくの会社を引き払っちまうなんて」
「どうせ偽の肩書きだ。窮屈な会社業務というのも、戦うためには邪魔になる」
だったら金に変えてしまった方が、軍資金の足しにもなると。
赤信号を前に車を止め、胸ポケットから煙草を出しながら、言った。
どう聞いても親戚同士の会話ではない。それくらいの歳の差はあるが、それにしてはあまりにも物騒だ。
「軍資金、ねぇ」
「お前のステータスはそれほど高くない。聖杯戦争とやらを勝ち抜くためには、俺が出張る必要もあるだろう」
「言ってくれるよ」
辛辣な隼人の評価を受け、少女は肩をすくめながら言った。
彼女はサーヴァントだったのだ。
偽りの冬木市に召喚された、2人目のランサーのサーヴァント――それが佐倉杏子だった。
「そのための軍資金だ。マスターなら弾が当たれば死ぬが、サーヴァントはそうもいかんらしいからな」
特殊な戦いであるのなら、装備の整え方も変わってくる。であればそれだけの金が要る。
そう言いながら、隼人は煙草に火をつけると、窓を開け紫煙をくゆらせた。
「歴史に名高き英霊サマにとっては、お気に召さないようなことも言うかもしれんが、諦めて俺の指示に従ってもらうぞ」
「いいよ。これでも汚れ役は慣れっこだからな」
そこまで話したところで、信号が赤から青へと変わった。
アクセルを踏む足に力を入れ、黒塗りの高級車を発進させる。
光沢のある車体がネオンを反射し、色とりどりに輝きながら、喧騒の中を進んでいった。
(にわかには信じがたい話ではあるが……)
万能の願望器・聖杯を思い、隼人は静かに思考する。
サーヴァントという存在も含めて、ここに至るまでの状況は、まるでファンタジー小説のようだ。
常識を超えた事象の前には、勢い、身構えざるを得ない。
(まぁ、俺の常識も大概ではあるがな)
しかし聖杯がファンタジーの産物であるなら、自分の世界を取り巻く状況も、出来の悪いSF小説のようなものなのだ。
謎の超エネルギー・ゲッター線に、巨大兵器ゲッターロボ。おまけに侵略宇宙人ときた。
それを思えば、こういうことも、有り得なくはないのかもしれない。
(利用できるならそれに越したことはない)
いずれにせよ、聖杯の力が本物なら、インベーダー対策としてはうってつけのアイテムだ。
年齢も能力もやや頼りないが、勝ち取るための戦力もある。狙っておいて損はないだろう。
(それにこんな訳の分からない状況で、黙って殺されてやるのも癪だからな)
生きるためには勝つことだ。どんな手段を使ってでも、この戦いを勝ち残ってみせる。
短くなった煙草の火を、灰皿で揉み消しながら、隼人はそう意志を固めた。
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【マスター】神隼人
【出典】真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日
【性別】男性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。タワー内の雑貨に入っていた。
【マスターとしての願い】
使い道はまだ決めていないが、インベーダー対策に使えるなら利用したい
【weapon】
なし
【能力・技能】
銃器取扱
銃を扱う技術。
40代だが素の身体能力も非常に高く、片手でクルクルと遊ばせながら、ライフル銃を連射するという芸当を見せている。
ゲッターロボ操縦技術
大型機械兵器・ゲッターロボを操縦する技術。
軍略
司令官として作戦指揮を行う能力。
【人物背景】
真ドラゴン討伐隊司令官。かつてはゲッターチームに所属し、ゲッター2の専属パイロットを務めていた。
インベーダーおよび真ドラゴンを撃滅するため、世界中の反抗勢力を結集させ、その動向を追っている。
そうしたあまりに大きな責任を背負ったことから、前線に出ることはできなくなり、そのことを流竜馬に咎められたこともあった。
性格は冷静沈着で、時には冷酷な判断を下すことも辞さない人物。
荒くれ揃いのゲッターチームの中でも、竜馬とはまた違った意味で危険な男である。
もっとも、曲がりなりにも人類を守る側の人間であり、相応の意識は持っている。
【方針】
あらゆる手段を駆使して優勝を狙う。自ら戦うことも辞さない。
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【クラス】ランサー
【真名】佐倉杏子
【出典】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女性
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:C 耐久:D+ 敏捷:B 魔力:B 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
【保有スキル】
戦闘続行:B
魔法少女の肉体は、ソウルジェムが破壊されない限り死ぬことがない。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、肉体が完全消滅しない限り生き延びる。
ランサーは治癒魔法が不得意であり、損傷箇所の治癒はやや遅い。
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。
幻術:C
魔術系統の一種。偽装能力。ランサーの師匠からは「ロッソ・ファンタズマ」と名付けられている。
自身の姿をした幻影を生じ、敵を惑わすことができる。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
【宝具】
『福音告げし奇跡の紅玉(ソウルジェム)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
魂を物質化した第三魔法の顕現。
佐倉杏子を始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、本来ならば濁りきると魔女になるのだが、既に死亡しているランサーはその限りではない。
ランサーの固有武器は槍であり、これは多節棍状に変形した武器・鉄砕鞭として扱うこともできる。
固有魔法は幻術。
この力は、かつて彼女が自分の願いを否定したことにより、使用できなくなっていたのだが、
数奇な人生を辿った末に、再び自分の理想を肯定した彼女は、死後になってこの力を取り戻している。
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【weapon】
なし
【人物背景】
風見野市および見滝原市にて活動していた魔法少女。
新興宗教を立ち上げた父親を助けたいと思い、「みんなが父の言うことを聞いてくれるようにしてほしい」と願って契約を果たした。
しかし父親はそれを快く思わず、むしろ精神を病んでしまう。
彼が心中を選んだことにより、杏子は天涯孤独の身となった。
これ以来、「勝手な善意や正義感を持っても、碌な結果を生まない」と考えるようになった杏子は、
師匠でありパートナーでもあった魔法少女と決別し、自らを生かすだけの利己的な戦いに身を投じるようになった。
過去のトラウマがきっかけとなり、斜に構えた態度を取るようになっている。
しかし根底では優しさを失っておらず、何だかんだ言って他人を放っておけないタイプ。
幼少期から貧乏な生活を送っており、特に食べ物に対する執着心は強い。
師匠の死を聞きつけた杏子は、彼女の管轄していた見滝原に縄張りを敷くため、魔法少女・美樹さやかを襲う。
しかし魔法少女の体の真実を知ってなお、正義のために戦うと宣言する彼女を見た杏子は、
次第に過去の自分の記憶を揺り起こされるようになっていった。
やがてさやかが絶望し、魔女となった後には、かつての正義をもう一度信じ、彼女を救うための戦いに身を投じる。
それでもその声は届かず、さやかを救えないと悟った杏子は、自分自身で決着をつけるために、諸共に爆風の中へと消えたのだった。
小回りを重視した、スピード型の戦闘スタイルを取る。自在にしなる鉄砕鞭は、トリッキーな軌道を描き、敵に動きを悟らせない。
更には鎖を編み込んだような形をした、縛鎖結界と呼ばれる魔法壁を展開し、敵を封じ込めることも可能。
これらと幻術を駆使し、敵を翻弄しながら徐々に追い詰める戦い方を得意とする。
【サーヴァントとしての願い】
特になし
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第8話は以上です
続いて第9話・アーチャー(2組目)を投下させていただきます
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聖杯戦争などと言われても、難しいことはよく分からない。
年端もいかないどころか、両手で数えられる程度にしか生きていない彼女には、そこまでの考えは回せない。
少女――千歳ゆまにとって重要なこととは、殺し合いでも願望機でもなく。
自分が過ごしていたこの場所が、本来自分がいた場所ではない、ただの虚構でしかなかったことだった。
「方舟」の中で過ごした時間は、とても穏やかなものだった。
心優しい母親と、面倒見のいい父親に囲まれ、毎日を健やかに過ごしていた。
たまに田舎の祖父母から、新鮮な野菜が送られてきては、日々の食卓を彩っていた。
そんなあまりにもありふれた、しかし幸せな時間を、ゆまは「方舟」の中で過ごしていた。
しかし、それは所詮虚構だ。
現実には得られなかった幻だ。
父は毎日出かけてばかりで、ろくに家にも帰ってこず。
母はその苛立ちを、ひたすらにゆまにぶちまけて。
そんな最低な両親も、たまたま2人揃った時に、まとめて怪物に食われてしまった。
自分が生きていく居場所ですらも、魔女と呼ばれる化け物に、無惨に食い散らかされてしまった。
「キョーコ……」
何より、ここには「キョーコ」がいない。
魔女から自分を救ってくれた、佐倉杏子という少女がいない。
家族を喪った自分にとって、杏子とは姉のような存在であった。
なんだかんだと言いながらも、行き場のない自分を伴って、生きていく術を教えてくれた。
彼女を外敵から守るために、彼女が魔女を倒したのと同じ、魔法少女の力にも手を伸ばした。
そんな彼女から引き離されて、気付けばこんな所に閉じ込められた。
叶わない幻を見せつけれられて、勝手に記憶を封じ込められて、最愛の人を見失った。
それ以上に重要なことなど、一体どこに存在する。
「キョーコ」を奪われたこと以上に、一体何を気にする余地がある。
「――随分と可愛い子なんだな。オレのマスターというのは」
突然、声が聞こえてきた。
失意に沈む意識の中に、低い声が響き渡った。
はっとした拍子に、闇が晴れる。
深層心理の暗闇の中から、意識が揺り起こされていく。
仮想空間の中にありながら、確かに本物だと思える自意識を、ゆまは急速に覚醒させた。
-
◆
放浪の末に行き着いた、夜中の冬木中央公園。
覚醒したゆまの目の前に立っていたのは、黒髪を揺らす男性だった。
自分や杏子よりも遥かに長身で、ノースリーブとジーンズの体には、逞しい筋肉が盛り上がっている。
その中で特に目を引いたのは、体のあちこちに点在する、奇妙な「闇」の存在だった。
肩や腕に浮かび上がっていたのは、夜空のような暗黒だ。
その部分の皮膚だけが消失し、別の空間が投影されているかのように、黒い闇が浮かんでいるのだ。
「それでも小宇宙(コスモ)を……いや、魔力を感じる。どうやらその見た目以上に、強い力を持っているようだな」
男が語りかけてくる。
茶色い瞳は、ゆまの左手に嵌められた、ソウルジェムの指輪を見ている。
「あなたが、ゆまのサーヴァント……?」
コスモとかいう単語には聞き覚えはないが、彼の存在には心当たりがある。
聖杯戦争を勝ち残るため、参加者に付き従い戦う戦士――確か、サーヴァントといったはずだ。
それを操る参加者は、マスターと呼ばれるのだという。
であれば目の前にいるこの男が、自分の従者というわけだ。
「『アーチャー』というクラスで召喚されている」
落ち着いた物腰の男だった。
太い眉毛ともみ上げは、力強い印象を与えるが、その表情は静かなものだ。
「マスターである君に問おう。ゆまはこの聖杯戦争のルールについて、既に知らされてはいるんだな?」
男の問いかけに、無言で頷く。
既にというよりは一瞬前のことだが、知っているのは間違いない。
どの程度関心を持っているのかは、別問題だが。
「ならばゆま、君はどうする? 万能の願望機とやらに、君はどんな願いを託す?」
男の語気が、少し強くなった。
静かだった男の声に、少し厳しさが込められた。
正確な意図は分からない。悪いことに使ったら許さない、だとか、そんなニュアンスなのかもしれない。
「ゆまは……」
一瞬、ゆまは考え込んだ。
どんな願いも叶えられるという、聖杯の存在を意識した瞬間、どうしても考えてしまった。
何でも叶うというのなら、自分は何に使いたいのだろう。
願いの候補はいくつか挙がった。
杏子と自分が安心して暮らせる、2人の家が欲しいと思った。
あるいは両親を生き返らせて、仲直りさせてみたいとも思った。
どんな生き方も選べるような、たくさんのお金が欲しいとも思った。
「……わたしは、帰りたい……!」
それでも、所詮は瑣末な願いだ。
本当に叶えたい願いは、願望機に託すものよりも、もっと先にあるものだった。
「願い事なんてわかんない! それよりキョーコの待ってるところに……もとの場所に帰りたいよ!」
心からの叫びだった。
どんな願いを叶えたとしても、杏子がいなければ意味がなかった。
杏子の元に帰りたいというのは、聖杯に願うべき願いでもなかった。
優勝賞品のことなど、今はどうだって構わない。それを持ち帰る場所の方が、ゆまには重要だったのだ。
そんなことを考える前に、この異様な戦いを終わらせ、最愛の人の元へ帰りたかったのだ。
-
「……それを聞いて安心した」
目の前の男から返ってきたのは、そんな言葉だった。
一瞬前の硬い語気は、幾分か軟化したようだった。
「あらゆる願いを叶える万能の器……それを邪心を以って利用する者には、オレの力を貸すわけにはいかない。
だが……愛する者と共にいたいと、そう心から願える君となら、オレも安心して戦えそうだ」
言葉の意味はよく分からない。
大人の使う難しい言葉には、小さなゆまはついていけない。
それでもどうやら、自分はこの人に、褒められているらしいということは分かった。
出会ったばかりの大人の男に、認められているようなのだ。
「オレも君と想いは同じだ。オレには帰るべき場所がある。オレの戦うべき戦場がある。
志を共にするなら、オレは君のサーヴァントとして、喜んでこの力を貸そう」
言いながら男が取り出したのは、きらきらと輝く宝石だった。
どうしても目線が低いから、じっくりと見ることはできなかったが、それだけは認識することができた。
「――『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』ッ!」
男が叫んだ。
瞬間、世界に光が満ちた。
目も眩むような激しい光が、彼の手の宝石から迸った。
一瞬のホワイトアウトの後、ゆまは恐る恐る視線を戻す。
思わず手で覆い逸らした目を、ゆっくりと男の方へと戻していく。
そこにあったのは――黄金の光だ。
いつの間にか、男の体を、金色の鎧が覆っていた。
ボディラインにフィットしたそれは、一見すると布のようにも見える。
それでも、その身が放つ光沢が――神々しいまでの黄金の輝きが、確かにそれが金属なのだと、雄弁に物語っていた。
男の背中に羽ばたいたのは、猛禽のように巨大な翼。
男の首元からたなびくのは、マフラーのような長いスカーフ。
「改めて、オレの名を名乗ろう。オレは射手座の黄金聖闘士(ゴールドセイント)――」
その身に金の風を受け、黒髪と白いスカーフを揺らし、男は真名を口にする。
スポットライトに照らし出された、舞台上の役者のように。
勝利の暁をその身に受けた、勇ましき英雄がそうするように。
黄金の鎧を身に纏い、神々しき光を湛えながら、男はその名を宣言した。
「――射手座(サジタリアス)の星矢!!」
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【マスター】千歳ゆま
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。巴マミと会った公園の遊具に、木片が入っていた。
【マスターとしての願い】
今のところはなし。キョーコの元へ帰りたい
【weapon】
ソウルジェム
魂を物質化した第三魔法の顕現。
千歳ゆまを始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、濁りきると魔女になる。聖杯戦争内では魔女化するかどうかは不明。
【能力・技能】
魔法少女
ソウルジェムに込められた魔力を使い、戦う力。
武器として杖を持っており、先端の大きな球形部分を使って、ハンマーのように殴りつけて攻撃する。
固有魔法は治癒。自他の傷を癒やす魔法を得意としており、四肢をもがれた状態からも、一瞬で回復させることができる。
魔法少女になってからは日が浅く、杖の威力に任せた、力任せな戦闘スタイルを取っている。
【人物背景】
「魔法少女まどか☆マギカ」とは別の時間軸で、佐倉杏子が出会った童女。
夫婦仲の悪化が原因で、母親から虐待を受けており、あまりいい印象を抱けなくなっていた。
そんな中、両親共々魔女の結界に取り込まれ、ゆま1人だけが生き残ったところを、偶然杏子に助けられる。
紆余曲折を経て杏子について行き、1人で生きるための術を学んでいったゆまは、その中で杏子を救うために、自身も魔法少女となった。
杏子と出会って以降は、歳相応の天真爛漫な振る舞いを見せている。
反面、「ゆまが役立たずだから父親が家に寄り付かなくなった」と母親から言われており、
そのトラウマから「役立たず」として見捨てられることを恐れている。
【方針】
とにかく聖杯戦争から脱出したい
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【クラス】アーチャー
【真名】星矢
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】男性
【属性】秩序・善
【パラメーター】
筋力:B 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:A+ 幸運:B 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:E
魔力への耐性。無効化は出来ず、ダメージを多少軽減する。
本来ならばBランク相当のものを持っているのだが、魔傷の影響によりランクが下がっている。
単独行動:D
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Dランクならば半日程度の現界が可能。
本来ならばCランク相当のものを持っているのだが、魔傷の影響によりランクが下がっている。
【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
人間の六感を超えた第七感。
聖闘士の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
アーチャーの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。
魔傷:B
マルスとの戦いでつけられた、呪いに近い力を帯びた傷。
小宇宙の燃焼を阻害する力を持っており、小宇宙を大きく燃やした際には、アーチャーの生命力さえも削ってしまう。
アーチャー本人のスキルではなく、後付けで備わったもの。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。
カリスマ:D
黄金聖闘士としての風格。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
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【宝具】
『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・射手座(サジタリアス)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
またこの射手座の聖衣には、黄金の弓矢が備えられており、聖衣を一撃で貫くほどの威力を持っている。
この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・敏捷・幸運のパラメーターが1ランクずつアップする。
本来のランクはA+なのだが、アテナとアプスの小宇宙が衝突した際の影響で、
聖衣石(クロストーン)と呼ばれる形態に変質してしまっており、若干のランク低下が見られる。
また、マルスとの決戦の際に、左腕部の一部パーツが損壊している。
『天翔ける希望の流星(ペガサスりゅうせいけん)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:50人
黄金のペガサスが誇る必殺拳。
アーチャーが聖闘士となったその時から、頼りにし続けてきた奥義である。
聖闘士の拳速を最大限に発揮し、敵に連続してパンチを叩き込むというシンプルな技。
数多の敵との戦いで用い、ペガサス星矢の名と共に語り継がれたことによって宝具化した。
【weapon】
なし
【人物背景】
88の聖闘士の中でも、最高位に位置する黄金聖闘士の1人。
元は天馬星座(ペガサス)の青銅聖闘士であり、長きに渡って地上の神・アテナを脅かす敵と戦ってきた。
数多の神々との戦いの中で培った力は、聖闘士の中でも最高クラスであり、生きながらにして伝説となっている。
本来の性格は血気盛んな熱血漢。
しかし、聖闘士を代表する黄金聖闘士となって以降は、周囲の者に示しをつけるため、落ち着いた態度を見せるようになった。
かつてはやんちゃな部分もあったが、有事の際には地上の愛と平和を守るために戦える、正義の心を宿した戦士である。
13年前、火星の軍神・マルスが決起した際には、彼もまたアテナの戦士として参戦。
神であるマルスと直接拳を交え、二度に渡る激戦を繰り広げた。
しかしその最中、星矢はマルスの闇の小宇宙に呑まれ、彼の元に幽閉されてしまう。
それはマルスが闇の神・アプスの到来を恐れ、自分が敗北した時に、代わりに戦わせるための措置だった。
囚われの身となった星矢は、新世代の聖闘士・光牙らに望みを託し、時に彼らをサポートする。
この聖杯戦争には、幽閉されている最中に召喚された。生きたまま召喚されているため、霊体化することはできない。
上述した通り、その力は聖闘士の中でも群を抜いている。
セブンセンシズに目覚めた拳は、光速(マッハ90弱)にすら到達するほど。
両肩と右前腕、左二の腕、右太もも、左足首に魔傷を負っており、13年間の幽閉生活の中で消耗しているが、
それでも小宇宙の分身を飛ばしマルスを食い止める、新世代の聖闘士達が束になってもかなわなかったアプス相手に食い下がるなどしている。
必殺技として、宝具にもなっている「ペガサス流星拳」、その拳打を一点に集中する「ペガサス彗星拳」、
敵を羽交い締めにしてジャンプし、諸共に地面に激突する「ペガサスローリングクラッシュ」を持つ。
更に先代射手座・アイオロスの技を継承したものとして、拳から小宇宙の衝撃を直射する「アトミックサンダーボルト」を使うことができる。
【サーヴァントとしての願い】
特にない。元の世界に戻り、地上を守るために戦いたい
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投下は以上です。今回の投下分は、
マスター:神隼人@真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日
ランサー(2人目):佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ
マスター:千歳ゆま@魔法少女おりこ☆マギカ
アーチャー(2人目):星矢@聖闘士星矢Ω
でした
……先日「既存話はこれで終わり」と言いましたが、星矢の回があったのを忘れていました
申し訳ありません
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投下乙です!
改めて見ると、ゆまはいいサーヴァントに巡り合えましたね。
そして星矢も純粋なゆまに出会えて、これからがとても楽しみになりました。
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>>67
ありがとうございます! 非常に励みになります
星矢もゆまも好きなキャラクターなので、期待に沿えるよう書いていきたいと思います
それではこれより、第10話の投下を行います
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夜の学校とは静かなものだ。
深夜を迎えた穂村原学園は、昼間の喧騒とはうってかわって、ひっそりと静まり返っていた。
いわゆる学校の怪談というものは、この静謐さにこそ端を発している。
ギャップが大きければ大きいほど、その静寂は不気味さを増し、ありもしない怪物の息遣いを喚起させるのだ。
「――ごちそうさまでした」
この瞬間に限っては。
それでも今夜においてだけは、この学園は異界と化していた。
月の光が差し込んだだけの、薄暗い体育館の中。
そこにごろごろと転がっていたのは、幼さすらも覚えるほどの、若い少女達だった。
一様に空ろな目をしており、まるで魂を抜き取られたかのように、ぴくりとも動かず倒れている。
「いやぁ、若い女の子はいいですね。どんな形であったとしても、やはり味わうなら男より女だ」
そして体育館のステージには、1人の男が座っている。
煌びやかな黄金の鎧が、壇の上に腰掛けながら、にやにやと笑みを浮かべている。
短い金髪を逆立たせた、童顔とも言える美形の男だ。
軽薄な物言いと相まって、ホストのような印象を受けた。その着込んだ鎧さえなければ、という条件付きだが。
「気は済んだのか?」
そして舞台の下手から、もう1人の男の声がする。
すたすたと歩いて現れたのは、少女達と同年代の、銀髪の少年の姿だった。
金色のにやけ面とは対照的に、クールな無表情を保っている。少年は目の前の男に、幾分か冷ややかな目を向けているようだった。
「ええ、今夜はこれくらいにしておきましょう。続きはまた後日ゆっくりと、ね」
「随分と食い意地の張ったサーヴァントもいたものだ」
倒れている少女達は20名を超える。しかしこれだけの数を集めてもなお、男はまだ飢えているらしい。
自らの召喚したサーヴァント――キャスターの物言いに呆れつつ、アイズ・ラザフォードはため息をついた。
この場で行われていたのは、サーヴァントによる魂の捕食だ。
サーヴァントの力である魔力を、NPCの人間達から摂取するため、その魂を食らったのだった。
倒れた穂村原の女子生徒達は、電子的に設定されたNPCである。しかしそれを襲ったサーヴァントもまた、電子的に再現されたPCだ。
神秘の産物であるはずの魂の捕食も、それが電脳同士であるならば、データのやり取りという形で表現される。
「私とて、好きでやっているのではないのですよ? 私の最大宝具の発動には、莫大な魔力が必要ですから」
貴方の魔力では不足だから、仕方なく外部から補給しているのだと。
「どうだか。その割には随分と楽しそうだ」
「それはそうですよ。どうせなら楽しまなければやってられませんから。それは貴方もそうでしょう?」
一瞬、ラザフォードは返事に詰まった。
アイズ・ラザフォードは殺人鬼だ。同胞を守るためとはいえ、大勢の外敵を殺してきた、その事実だけは変わらない。
何より自らの血の暗示――ブレードチルドレンのスイッチが入れば、彼のような快楽殺人者になる可能性も、否定することはできないのだ。
「俺はお前とは違う」
「今のところは、でしょう?」
強がりから口にした言葉を、黄金のキャスターは否定した。
サーヴァントとマスターとは、魔力パスで繋がっている。故に互いの過去や人格を、それを通して見ることがあるという。
この男は既に知っているのだ。
ラザフォードらブレードチルドレンが何者なのかを。ミズシロ・ヤイバの遺した呪いを。
「マスターが恐れているものが、遺伝的な基質か単なる暗示か……そこまでは私にも分かりません。
ですが貴方が私と同じ、破壊と殺戮にまみれた道から、逃れられないということは分かっています」
「………」
「でしたらせめて楽しまなければ! どうせなら謳歌しましょうよ、自らの歩む『闇の道』を!」
芝居がかった身振りを取って、キャスターは高らかにそう言ったのだった。
「……長居すると気付かれる。撤収するぞ」
結局言い返すこともできず、ラザフォードははぐらかすようにして、キャスターにそう指示を出した。
言いながら壇上から飛び降り、出口に向かって歩いていく。
キャスターの態度はともかくとして、その力を使いこなすためには、魂食いが必要なのは確かだ。
強力だが燃費の悪いサーヴァントを使いこなすには、自分に割り当てられた魔力量では足りない。
しかしあまり派手な行動を起こすと、他のマスターに勘付かれてしまう。次回以降は、ここを使うことはできないだろう。
-
(結局この手を血に染める他に、俺にできることはないということか……)
皮肉なことだ。
自分達の救いを求めるために、こうして何も知らない他人の命を、奪い続けている自分がいる。
確かにここにいる少女達は、作り物のNPCかもしれない。
それでも実物と遜色ない、あまりにリアルなモデリングは、どうしても生身を意識せずにはいられない。
おまけに彼女らの中には、未だ記憶を取り戻していない、マスター候補者がいるかもしれないのだ。
こんな局面になってなお、殺戮を繰り返している自分に、反吐が出そうな思いになる。
あの猟奇的なキャスターが割り当てられたのも、ある意味お似合いだったのかもしれない。
(それでも)
だとしても、あいつは自分とは違う。
ブレードチルドレンのために戦っている、1人の少年の顔を思い出す。
神の弟――鳴海歩。ヤイバと同等の天才・鳴海清隆と同じ才能を持ち、しかし同一の存在ではない男。
倒すべき宿敵を持ちながらも、それでもなお違う道を進まんと、あがき続けている男。
自分にはこんなことしかできなくても、本気で全てを救おうとしている、あいつのような男もいるのだ。
(だとしたら、あいつの力になることが)
それこそが自分のなすべきことだ。
あいつは嫌がるかもしれないが、それが力になるというのなら、聖杯の1つでも持って帰ってやるべきだ。
たとえどれだけ手を汚したとしても、それしかできないというのなら、迷うことなくこの道を進む。
それが救いに繋がるのなら、これまでそうしてきたように、修羅の道を進んでみせる。
決意を固めたラザフォードは、体育館のドアに手をかけた。
◆
(やれやれ)
もったいない奴だとキャスターは思う。
魅惑と導きを司る黄金聖闘士(ゴールドセイント)――魚座のアモールは苦笑する。
もう少し吹っ切れることができれば、その力を殺戮のために、存分に使うことができるというのにと。
確かに目的のためなら、手段を選ばない非情さはある。
しかしその裏に残された、ほんの一欠片の優しさが、彼を寸手のところで縛っている。
ヤイバの血の呪いとやらを恐れているのが、何よりの証拠だ。
こんな殺し合いの場では、そのスイッチが入るくらいの方が、生存率も上がるというのに。
(まぁいい。こちらに文句をつけないのであれば、やりやすいマスターではある)
下手に人殺しを忌避されるよりは、十分当たりのマスターだと言えるだろうと、今はそう考えることにした。
魔術適性のなさに関しても、こうやって補えないわけではないのだ。
いざという時には駒にも使える。工作活動を行えるくらいの、体と頭の力はある。
せいぜい自分の目的のために、上手く立ち回ってもらうとしよう。
(そう……真なる闇の世界を成就するために)
このアモールが支配する、闇の楽園を築き上げるためにだ。
実の弟を裏切った、あの忌まわしいメディアはいない。
結局蘇ったのは自分だ。あの魔女ではなく自分こそが、世界の支配者となるに相応しかったのだ。
(見ていますか姉上……結局世界は貴方でなく、この私を選んだのですよ!)
抑えた笑い声を上げながら、アモールは壇上から降り立ち、マスターの後に続いたのだった。
-
【マスター】アイズ・ラザフォード
【出典】スパイラル〜推理の絆〜
【性別】男性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。
【マスターとしての願い】
ブレードチルドレンを救うために使いたい
【能力・技能】
破壊工作
拠点および部隊を制圧するための工作活動。
ラザフォードは長きに渡って「ハンター」達と交戦している。
銃器取扱
銃を扱う技術。
【weapon】
なし
【人物背景】
世界的に有名な、17歳の少年ピアニスト。
同時に新人類を導かんとした、ミズシロ・ヤイバの血を引く息子――ブレードチルドレンでもある。
彼らを排除する「ハンター」から、仲間達を守るために、大勢の敵を殺してきた実績を持つ。
現在は鳴海歩の存在を認め、彼の力になろうとしている。
非常にクールでドライな性格。
しかしブレードチルドレンの仲間を想う気持ちは強く、中でもカノン・ヒルベルトに対しては、正しく「兄弟」の絆を感じている。
一方で、どこか世間ズレしたところがあるのか、シュールな行動に出ることも。
【方針】
優勝狙い。他のマスター達にバレないように、魂食いを進める。
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【クラス】キャスター
【真名】アモール
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”の形成が可能。
道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
人間の六感を超えた第七感。
聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
アモールの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。
闇の小宇宙:A
アモールが持つ小宇宙の属性。アテナの小宇宙と相反する性質を持つ。
本来聖闘士とは相容れぬ属性の力であり、対戦する聖闘士の力を鈍らせることができる。
話術:C
言論にて人を動かせる才。
国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
挑発に優れ、相手を怒らせ冷静な思考を阻害する手段に長ける。
仕切り直し:C
相手を煙に巻くスキル。戦闘から離脱することができる。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
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【宝具】
『魚座の黄金聖衣(ピスケスクロス)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・魚座(ピスケス)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・敏捷・幸運のパラメーターが1ランクずつアップする。
本来のランクはA+なのだが、アテナとアプスの小宇宙が衝突した際の影響で、
聖衣石(クロストーン)と呼ばれる形態に変質してしまっており、若干のランク低下が見られる。
『輪廻結晶(りんねけっしょう)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:-
マルス軍最強を誇った火星士(マーシアン)達・マルス四天王を召喚する呪法。莫大な魔力を必要とするため、マスターにかかる負担は大きい。
本来の実力は黄金聖闘士をも凌ぎ、数多の神々と戦った伝説の青銅聖闘士(ブロンズセイント)達とも、互角の戦いを繰り広げたと言われている。
しかし現在の彼らは、アテナの小宇宙によってその力を封じ込められており、当時よりも弱体化している。
とはいえその状況下においても、セブンセンシズに覚醒した聖闘士達を追い込むほどの力を有しており、リスクを負うだけの価値はある。
マルス四天王の面々の内訳は以下の通り。
・バックス
筋力:B+ 耐久:B 敏捷:C 魔力:A 幸運:E
水属性の力を操る火星士。四天王随一の怪力を誇り、持ち歩いた酒を飲めば飲むほど強くなる。
・ロムルス
筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:B 魔力:A 幸運:E
土属性の力を操る火星士。四天王の中でもリーダー的な立場にいたと言われている。
・ウェルカーヌス
筋力:C 耐久:B+ 敏捷:B 魔力:A 幸運:E
火属性の力を操る火星士。絶対零度の凍気すら上回る、炎の鎖鎌で敵を追い詰める。
・ディアーナ
筋力:C 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:A 幸運:E
風属性の力を操る火星士。四天王の紅一点であり、風の弓矢はいかな標的をも狙い撃つ。
【weapon】
なし
【人物背景】
88の聖闘士の中でも、最高位に位置する黄金聖闘士の1人。
しかしその正体は、聖なる魔女メディアの弟であり、アテナと敵対する軍神・マルスの義弟に当たる反英雄である。
彼は時が来るまで身を隠しており、黄金聖闘士を選定したイオニア以外からは、「魚座の黄金聖闘士は空席なのでは」とすら噂されていた。
姉に付き従い、その野望のために尽力したが、最後には切り捨てられており、そのまま闇の神・アプスの攻撃を受けて死亡している。
彼とメディアは闇の小宇宙を持って生まれており、それ故に周囲の人間から、邪悪な存在として迫害されていた。
メディアは自分達の居場所を作るため、アプスが支配する闇の世界を作らんとし、アモールもまたそれに賛同・協力した。
……と本人は語っているが、直後に全て嘘だと言っており、戦う理由も「破壊を楽しみたいだけ」と訂正している。
しかしメディアの発言を見るに、この作り話の中にも、幾分かの真実が織り込まれている可能性もある。
上記の通り人を食ったような態度が特徴的な、飄々として掴み所のない人物。
また軟派な性格であるらしく、敵であり自分の甥っ子ほどの歳であるはずのユナを、「理想の足をしている」と口説いていた。
小宇宙の属性は闇と水。
水属性の小宇宙を用いた場面は、水流の障壁「サイレント・ウォーター」の発動時しか見られず、基本的には闇を操って戦う。
その実力は圧倒的で、同じ黄金聖闘士であるはずのミケーネを瞬殺するほどの力を誇る。
闇の鞭を振り回す「ブラッディ・ワルツ」、闇のダガーを複数発射する「ブラッディ・カノン」、
闇の小宇宙を直射する「ブラッディ・バレット」、闇の楔で敵を拘束する「アレステッド・ジャッジメント」を得意技とする。
最大の奥義は、闇の指揮棒の動きに合わせて、重力を操り敵を翻弄する「グラビティ・コンツェルト」。
余談だが、魚座の黄金聖闘士が伝統的に修めている、毒薔薇を用いた闘法は、マルスが十二宮ごと薔薇園を消し飛ばしたこともあり修得していない。
【サーヴァントとしての願い】
真なる闇の世界の完成
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投下は以上です。今回の投下分は、
マスター:アイズ・ラザフォード@スパイラル〜推理の絆〜
キャスター(2人目):アモール@聖闘士星矢Ω
でした
-
こんな時間ですが投下を行います
今回はセイバー(2組目)です
-
あのうだるような夏が過ぎ、半年ほどが経とうとしていた。
今ではもう春休みだ。当時は落第寸前だったが、必死に勉強した甲斐もあって、何とか無事に進級はできた。
当時の仲間達との交流は、今でもちゃんと続いている。
ネットの広まった世界では、音信が途絶えるような事態は、そうそう起きなくなっていた。
「――AIDA事件が再発してるかもしれないって?」
それでも当時の事件のことを、今更になって思い出すことになるとは、三崎亮も想像していなかった。
『そう。さすがに当時に比べると、被害者の数は少ないのだけれど……当時と同じような症状の、意識不明者が何人か出ている』
携帯電話の向こうから聞こえるのは、佐伯令子という女性の声だ。半年前の事件の時には、パイという名を名乗っていた。
亮がハセヲであった頃の話だ。
彼女とはネットゲーム「The World R:2」を舞台とした、ネットワーク・クライシス――AIDA事件と呼ばれる事件で、共に戦った間柄だった。
「原因不明の昏睡状態ってやつか」
『中には1人、当時のように、The Worldをプレイしている最中に意識を失ったケースもあってね……
さすがに無視できないってことになって、調査することになったのよ』
「でも、本当にあり得るのか? AIDAはあの時――」
オーヴァンが、と名前を言いかけて、亮は一瞬言葉に詰まった。
AIDA事件とはその名の通り、知性を持った突然変異ウィルス・AIDAに端を発した事件だ。
亮のかつてのギルド仲間であり、尊敬すべき相手でもあった男――オーヴァンが、
それを悪用したことにより、甚大な被害を及ぼした事件であると言われている。
しかし彼の目的は、むしろ自らの用いたAIDAを、The Worldから根絶することにあった。
結果として彼の目論見は成功し、その犠牲とAIDAの完全消滅によって、事件は解決したはずだ。
『忘れたの? AIDAは人為的に作られたものではなく、突然変異的に生まれたウィルスなのよ』
「ってことは似たようなウィルスが、偶然発生したとしても……」
不自然ではない、ということか。
『もちろん可能性としては低いわ。ゼロではないとしか言えない』
だとしても無視することはできない。
あの最悪のコンピューター・ウィルスが復活したとすれば、その影響力は計り知れないはずだ。
だからこそAIDAの対策チーム――プロジェクトG.U.の一員であった亮に、こうして連絡したのだと、令子は言った。
「どこまで進んでる?」
『調査の結果、拠点と思しきサーバーを見つけることはできたわ』
本拠とは限らない、ということだ。
データなどというものは、いくらでもばら撒くことができる。
感染したコンピューターを見つけたところで、それがイコールで出所とは限らない。
『どういうわけか中のデータは、The Worldのエリアサーバーに、極めて近いデータ構造をしていた』
「一気に可能性が高まったな」
半年前のAIDAは、エリアサーバーのデータをコピーし、AIDAサーバーと呼ばれるデータ領域を形成したことがある。
それを踏まえた上でこれだ。因縁を感じざるを得ない。
『それで調査のために、昨日The WorldのPCデータを使って、香住君にアクセスしてもらったのだけれど……』
「クーンにか? それで、どうなった?」
香住という名前は、やはりかつてG.U.に所属し、共に戦った仲間のものだ。
碑文使いPC・クーン――それを操る香住智成とは、事件の比較的初期段階から、つるんだりぶつかり合ったりしていた。
フリーターとはいえ社会人だ。今回の件について、高校生の亮より先に声がかかるのも、当然と言えば当然だろう。
-
『……それが、ついさっきアクセスが途絶えたの。本人も意識を失ったわ』
「何っ!?」
思わず亮は立ち上がった。
信じられない報告を受け、座っていた勉強机の椅子を蹴っ飛ばした。
香住智成が、未帰還者になった。
確かに彼がAIDAに感染したことはある。それでも覚醒した碑文使いの中から、未帰還者が出たのは初めてのことだ。
そして何よりそれ以上に、仲間が犠牲になったという事実が、胸に深く突き刺さる。
『碑文使いですら返り討ちに遭う……内部の状況は不明だけれど、危険な戦場であることは間違いない』
それでも放置はできないと、令子は言う。
「……当然だ。今更ビビってなんかいられねぇ」
ショックの後に湧き上がったのは、決意だ。
何が起こっているかは分からないが、それでも何とかしなければという、力強く真っ直ぐな意志だ。
何より仲間を傷つけられて、黙って聞かないふりができるほど、亮は大人しくなったつもりはない。
「すぐ行く。CC社でいいんだろ?」
『私と火野さんでバックアップする。頼むわよ、三崎君』
受験勉強は中断だ。
今一度碑文使いとして、戦う時がやって来た。
《死の恐怖》スケィスの適格者。モルガナ八相の因子を受け継ぎし者。
三崎亮でなくハセヲとして、再び立ち上がるべき時がやってきたのだ。
準備もそこそこに上着に袖を通すと、亮は部屋のドアを開け、一階への階段を降りていった。
◆
何かがおかしいと感じていた。
穂村原学園に通う少年・桐ヶ谷和人は、漠然とした違和感を抱えたまま、何となく日々を過ごしていた。
「………」
学友達とふざけ合いながら、青春を謳歌する日々は悪くない。
それでも何となく自分は、そういうキャラではなかった気がする。
そして何よりも自分は、こんなことをしているような、そんな余裕はなかった気がする。
そんなことを考えながら、午後の授業を放り出して、屋上で寝転がっていた。
(俺は……)
そもそも和人という名前自体、どうにもしっくりこないのだ。
本名には違いないのだが、今の自分には名乗るべき、別の名前があったはずだ。
馬鹿なことを考えている。そんなことは分かっている。それでもどうにも引っかかる。
「……何考えてんだろうな」
どうにも気持ちがまとまらない。
こんな日は家で寝てしまおう。
苦笑を浮かべながら立ち上がり、和人は荷物を取りに戻るため、下り階段へ向かおうとする。
「――え?」
そうして振り返って、立ち止まった。
目の前にあったそれを認識するのに、一瞬判断のブランクを要した。
-
「お前が俺のマスターだな?」
そこに立っていたのは、漆黒の影だ。
全身を刺々しい龍鱗で覆った、禍々しい気配を漂わせる魔人だ。
その中でたった一点だけ、首から上の顔だけが、同年代の少年のそれだった。
銀髪を風に揺らしながら、赤い瞳で睨む姿は、あまりにも現実感に欠けている。
まるでファンタジーゲームのキャラクターだ――それこそ普通であったなら、イカれたコスプレ野郎にしか見えなかったかもしれない。
「あ……」
それでも、少年はマジだった。
銀髪と黒装甲の魔人は、冗談でも仮装でも何でもない、本気の視線を向けていたのだ。
そしてその真剣さを、何故か違和感なく受け入れている自分に気付き、再び和人は困惑した。
「俺を引き寄せたってことは、とっくの昔に分かってんだろ?」
ここが偽りの世界だということも。
自分が偽りの記憶の中にあるということも。
「いつ、わり? ……ぐっ!?」
不意に、体を痛みが襲った。
鋭い痛みが右手に走り、ややあって鈍い頭痛に襲われた。
突然身に起きた不調に、和人はぐらりと膝を折る。
崩れ落ちた態勢で、はあはあと荒い息を吐く。
何だこれは。何が起きた。
漠然としていたはずの違和感が、不意に鮮明になっていく。
脳の処理限界を超えんばかりの、膨大なまでの情報量が、記憶の底から蘇ってくる。
赤く光る刻印を、その視界に捉えた瞬間、和人は否応なしに理解させられた。
右手に刻まれた紋章を見た時、自分は桐ヶ谷和人ではなく――キリトであったことを思い出した。
「ちゃんと思い出したみたいだな」
「……ああ、何とかな」
愉快な記憶ではなかったが、と。
最後にそう付け足しながら、和人は未だよろめく体を、ゆっくりと立ち上がらせる。
同時に刻印の右手を伸ばし、何もない空間を指先でなぞった。
一瞬、青白い光が浮かんだ次の瞬間、和人の体はそれ以上の、眩い光に包まれた。
まばたきと共に、光が消える。再び現れた和人は、学園の制服姿でなく、黒いロングコートを纏っている。
その背で煌きを放つのは、黒と緑の双剣だ。目の前の銀髪ほどではないが、十分に現実感のない装備だ。
そしてそんなゲームキャラじみた、冗談のようなコスプレ姿で――キリトはマジになっていたのだ。
「セイバーのサーヴァント……俺がお前のマスター、キリトだ」
◆
(よりにもよって、こっちかよ……)
三崎亮――PC名・ハセヲは、内心でため息をついていた。
どんなからくりかは知らないが、聖杯戦争なる催しの情報は、脳内に刻み込まれている。
それはそれでいいのだが、自分がマスターではなく、それに従うサーヴァントというのは、一体何の冗談だ。
だいたい、サーヴァントというのは、このサーバーに登録された、歴史の英雄達から選ばれるのではなかったか。
それでいいのかAIDAサーバー。若干の頭痛を感じながら、ハセヲは眉間を指で押さえた。
-
「どうしたんだよ、セイバー?」
「いや、別に」
首を傾げるマスターに対して、何でもないとハセヲは言う。
桐ヶ谷和人――キリトと名乗った少年は、既に先ほどの衣装を解いて、元の学生服に戻っていた。
何でも彼は、The Worldと同じネットゲーム「ソードアート・オンライン」の世界に、意識を取り込まれてしまったのだという。
そこから脱出するために戦っているうちに、いつの間にかこの場所にいて、高校生を演じていたのだそうだ。
まるでAIDAサーバー事件だ。他人事ではないような気がして、共感めいたものを感じていた。
(ただ、問題はそこじゃねえ)
それでも、彼の言葉には、どうしても引っかかるものがある。
ソードアート・オンラインというゲームは、全くの初耳だったのだ。
おまけにそのジャンルである、VR(ヴァーチャル・リアリティ)MMOというのも、まるで聞いた覚えがない。
ネット世界に意識をダイブさせ、仮想現実を完璧に体感するなど、The Worldでも出来やしない。それこそAIDAの暗示でもなければ不可能だ。
今のところキリトには、自分の素性は明かしていない。
ハセヲが外部からこの空間に侵入し、何の因果かサーヴァントの役割を与えられたことを、キリトは未だ聞かされていない。
事を荒らげたくなかったが故の措置だったが、この状況を見る限りだと、もう少し黙っていた方がいいだろう。
(それにしても、聖杯戦争か……)
ひとまずゲームの件は後回しにして、ハセヲは現状へと目を向けた。
14騎のサーヴァントを操るマスター達が、願いを叶える聖杯を求め、互いにぶつかり合うバトルロイヤル。
歴戦の英霊の魂達が、電子的に構築された空間で、凌ぎを削り合う戦いだ。
状況を考えると、クーンはこの戦いに敗北し、リタイアを余儀なくされたということなのだろうか。
(またこいつで戦うことになるとはな)
サーヴァントには宝具というアイテムがある。
ハセヲに登録されたそれは、自らの巫器(アバター)・憑神鎌(スケィス)だ。
AIDAの世界観に合わせてなのか、『第一相碑文・死の恐怖(スケィス)』などという、ご大層な漢字が当てられている。
もう二度と使わないだろうと思っていた力だった。
巫器とは喪失を埋めるための力だ。七尾志乃という虚を埋め、悲願を達成した今のハセヲには、巫器にかけるべき想いがなかった。
大切な自らの分身だが、健全にネットゲームをプレイするには、仕様外の力は邪魔になる。
それもあって、この力は、二度と使うまいと思っていたのだが、結局AIDA事件は再発生し、憑神鎌は再び日の目を見た。
(後々のことを考えると、あんま派手に動きたかねーけど……)
それでもせっかくのこの力、いっそこのマスターの願いのために使うのも、悪くないかもしれないと思った。
『俺は聖杯の力で、SAO事件を終わらせたい。あそこには救いたい仲間達が……大切な人が閉じ込められているんだ』
キリトはハセヲにそう言った。
彼は真剣に聖杯を求め、戦いに臨もうとしていたのだ。
正体を隠している手前、それを止めることはできない。聖杯なるものの信憑性を説くことも、口が裂けてもできやしない。
何よりあれだけ真剣な想いを、無碍にすることはできなかった。
ネットに囚われた人々を救いたい――キリトが抱いていた願いは、かつての自分の写身だったのだ。
単純な字面だけでなく、そこに込められたものの強さも含めてだ。
(……何にせよ、調査が必要だな)
とはいえ、まずは情報がいる。
AIDA事件を解決するにせよ、ついでにキリトの願いを叶えるにせよ、それがなければ話にならない。
こういうのは得意分野ではないのだが、自分は佐伯令子や火野拓海と違って、残ってオペレーターをやることもできないのだ。
スキルのないガキができることといったら、せっせと足を使うことしかない。
とりあえずまずは、クーンの脱落現場を見た者がいないか、探ってみるのがいいかもしれない。
小さなことからコツコツと、だ。幾分か呑気すぎやしないかとも思ったが、とにかくも方針を決定し、ハセヲは聖杯戦争に臨んだ。
-
【マスター】キリト
【出典】ソードアート・オンライン
【性別】男性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。友人から購入したアイテム(木製)に偽装されていた。
【マスターとしての願い】
SAO事件を解決したい
【能力・技能】
ソードスキル
ソードアート・オンラインの戦闘スキル。
一介の学生に過ぎないキリトだが、このスキルを使用することによって、刀剣を使った戦闘を行うことができる。
二刀流
汎用のスキルとは異なる、発言したそれぞれのプレイヤーにしか扱えない固有スキル。
キリトのそれは二振りの武器で戦えるようになるスキルであり、発動時にはパラメーターにプラス補正が加わる。
バトルヒーリング
HPの自動回復スキル。低い防御力を補うためのもの。
コンピューター知識
コンピューターに関する天性の才能。ハッキングやプログラミングに明るい。
反射神経
ソードアート・オンライン内においても、最高クラスの反応速度。
突き詰めればいちゲーマーでしかないキリトだが、これだけは本物の戦士にも遅れを取らない。
【weapon】
エリュシデータ
ダークリパルサー
戦闘時に用いる双剣。黒いエリュシデータがメイン武器であり、白いダークリパルサーがサブ武器である。
キリトは攻撃力に秀でた武器を愛用しており、見た目の割に重量は高め。
黒コート
正式名称不明。SAOにおける防具。双剣共々普段は隠しているが、ワンタッチで出現させることができる。
【人物背景】
VRMMO「ソードアート・オンライン」にて発生した、SAO事件に巻き込まれたプレイヤー。
最前線で過酷なソロプレイに身を投じた結果、
1万人のプレイヤーの中でも最高クラスのステータスを獲得しており、「黒の剣士」という通り名で呼ばれている。
言動は飄々としているが、本来は人との距離を測るのが苦手。
それでも根の部分では優しく、何だかんだ他人の世話を焼くことも多い。そのため女子プレイヤーにモテる。
ステータスは攻撃力・回避力・防御力の順に高く、一撃必殺の突撃戦に特化している。
また多くのサポートスキルを有しているのだが、本聖杯戦争では公平を期するため、バトルヒーリング以外のほとんど全てが封印されている。
【方針】
優勝狙い。
-
すいません、>>80をこちらに差し替えます
【マスター】キリト
【出典】ソードアート・オンライン
【性別】男性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。友人から購入したアイテム(木製)に偽装されていた。
【マスターとしての願い】
SAO事件を解決したい
【能力・技能】
ソードスキル
ソードアート・オンラインの戦闘スキル。
一介の学生に過ぎないキリトだが、このスキルを使用することによって、刀剣を使った戦闘を行うことができる。
二刀流
汎用のスキルとは異なる、発言したそれぞれのプレイヤーにしか扱えない固有スキル。
キリトのそれは二振りの武器で戦えるようになるスキルであり、発動時にはパラメーターにプラス補正が加わる。
バトルヒーリング
HPの自動回復スキル。低い防御力を補うためのもの。
コンピューター知識
コンピューターに関する天性の才能。ハッキングやプログラミングに明るい。
反射神経
ソードアート・オンライン内においても、最高クラスの反応速度。
突き詰めればいちゲーマーでしかないキリトだが、これだけは本物の戦士にも遅れを取らない。
【weapon】
エリュシデータ
ダークリパルサー
戦闘時に用いる双剣。黒いエリュシデータがメイン武器であり、白いダークリパルサーがサブ武器である。
キリトは攻撃力に秀でた武器を愛用しており、見た目の割に重量は高め。
黒コート
正式名称不明。SAOにおける防具。双剣共々普段は隠しているが、ワンタッチで出現させることができる。
【人物背景】
VRMMO「ソードアート・オンライン」にて発生した、SAO事件に巻き込まれたプレイヤー。
最前線で過酷なソロプレイに身を投じた結果、
1万人のプレイヤーの中でも最高クラスのステータスを獲得しており、「黒の剣士」という通り名で呼ばれている。
言動は飄々としているが、本来は人との距離を測るのが苦手。
それでも根の部分では優しく、何だかんだ他人の世話を焼くことも多い。そのため女子プレイヤーにモテる。
ステータスは攻撃力・回避力・防御力の順に高く、一撃必殺の突撃戦に特化している。
また多くのサポートスキルを有しているのだが、本聖杯戦争では公平を期するため、バトルヒーリング以外のほとんど全てが封印されている。
本名は桐ヶ谷和人。事件に巻き込まれた当時は中学2年で、現在は16歳になっている。
幼い頃に両親と死別しているが、現在の家族からはそのことを隠されて育ってきた。
しかしある時、それを知ってしまったため、上記のように上手く人付き合いができなくなっている。
【方針】
優勝狙い。
-
【クラス】セイバー
【真名】ハセヲ
【出典】.hack//G.U.(小説版)
【性別】男性
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】
筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
【保有スキル】
死の恐怖:B
かつてPKKとして名を馳せていた逸話がスキル化したもの。
反英雄に対してダメージが向上する。
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
専科百般:C
「The World R:2」におけるジョブ「錬装士(マルチウェポン)」をスキル化したもの。
双剣・大剣・大鎌の、計3種類の斬撃武器を、自在に使い分けることができる。
【宝具】
『第一相碑文・死の恐怖(スケィス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:20人
かつて「The World」に存在した8つの自律プログラム「モルガナ八相」の力を、PCに移植し行使可能とした「巫器(アバター)」の1つ。
この宝具はその名の通り、第一相・スケィスのデータが元となっている。形状は黒い大鎌。
八相は人間の8つの感覚に対応しており、スケィスは第7感覚・我識を司っている。
このためセイバーは自意識が肥大化されており、無意識に「自分」というものを強く意識させられている。
『死ヲ刻ム影(しをきざむかげ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1人
モルガナ八相にはデータドレインという機能が与えられており、敵のデータに強引に介入・改竄することができる。
『死ヲ刻ム影(しをきざむかげ)』はこの機能が宝具化したものであり、発動し斬りつけた相手に、このデータドレインを行使することができる。
-
【weapon】
回式・芥骨
大剣・大百足
大鎌・首削
セイバーが使用する武器。上から双剣、大剣、大鎌となる。
これら全ての特徴として、チェーンソーとしての機能が与えられていることが挙げられる。
【人物背景】
巨大ネットゲーム「The World R:2」のプレイヤー。
「死の恐怖」という二つ名を持った、百戦錬磨のPKK(プレイヤーキラー・キラー)として知られている。
また、その名と同じ称号を持つ、スケィスのデータを宿した碑文使いであり、AIDA事件解決のために尽力した。
当初は取り立てて目立ったところのない、いちプレイヤーに過ぎなかったのだが、
ギルド仲間である志乃がPKに遭い、意識不明となったことを受け、必ず犯人を見つけ出すと決意。
尋常ならざる廃プレイの末に、レベル133という超高スペックを得て、犯人と目される三爪痕(トライエッジ)と退治した。
しかしハセヲはこの戦いに敗北し、全データを初期化されてしまう。
その後AIDA対策チーム・プロジェクトG.U.に保護されたハセヲは、
自らのPCに眠る力に目覚め、改めて志乃を救うための戦いに身を投じたのだった。
本聖杯戦争においては、会場に不正アクセスし、サーヴァントとしての能力を与えられて参加している。
修羅と化したPKK時代の影響もあり、ガラの悪い口調をしている。
しかし根っこの部分では、純粋さを捨て切っておらず、何だかんだ面倒見の良さを見せることも。
本名は三崎亮。東京都在住の高校2年生である。
有名進学校に通っていたが、The Worldに入れ込むあまり、成績を随分と落としてしまっていた。
本人は記憶を失っていたのだが、彼がハセヲより前に使っていたPCは、
スケィス誕生の母体となったものであり、亮自身がスケィスの生みの親とも言える。
【サーヴァントとしての願い】
なし。聖杯戦争について調査し、裏にいるAIDAと思しきウィルスを駆除する。
-
投下は以上です。本日の投下分は、
マスター:キリト@ソードアート・オンライン
セイバー(2人目):ハセヲ@.hack//G.U.(小説版)
でした
-
歩くような速さで頑張れ二人共!ハセヲが小説版ということは聖騎士みたいな姿になったりするんだろうか?
-
いつの間にか死んでるクーンに草
-
投下乙です
キリトとハセヲの電脳コンビ、好きです
キリトくんなにげにマスターの中でも上位に入るのかな
-
ここのところ書けていませんが、生存報告も兼ねて書き込み
今週「仮面ライダー鎧武」原作にて登場した、戒斗の変身態・ロード・バロンの扱いについてですが、
本作では無理に出すことはせず、以下のように扱いたいと思います
『狂奔する絶対の王者(ロード・バロン)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:A+ 耐久:A 敏捷:A 魔力:B 幸運:B 宝具:A
異界の毒をその身に受け、ヘルヘイムの果実を直接口にしたことにより覚醒した力。
ヘルヘイムの森に巣食う上級怪人・オーバーロードの力を発動し、「ロード・バロン」へと変身する。
常軌を逸したその力は、あらゆる敵を打ち砕き、血染めの覇道を切り拓くという。
……ただしこの宝具を発動するには、駆紋戒斗がバーサーカーのクラスで召喚されていなければならない。
そのため今回の聖杯戦争では、ランサーはこの宝具を発動できない。
-
>>85
本文中にも書いた通り、巫器にかける想いが満たされた今では、本来の力は発揮できないだろうと思ったため、
小説版Xthフォームはオミットする方向で行こうと考えております
それではこれより、第12話の投下を行います
本日はアサシン(2組目)です
-
時刻は午後4時半を回り、間もなく夕暮れが見えるかというところ。
部活動の活気の中、穂村原学園の屋上に、ひっそりと降り立つ影があった。
それはさながら幽鬼のような。
虚空からすうっと姿を現し、黒い両翼を広げながら、ゆっくりと着地したものは、全身漆黒の魔人だった。
大きくアーチを描くように、後頭部に突出された二本角は、さながら伝承の鬼の姿だ。
「―――」
一呼吸と共に、姿が変わる。
黒き鬼の姿は消えて、人間の姿が露わになる。
異形の変身を解いて現れたのは、黒いロングコートを羽織った、十代後半ほどの青年だった。
短く切られた紫の髪が、鋭く怜悧な眼差しの上で、午後の風に揺られている。
「今更この力を使うことになるとは、な」
誰にというわけでもなく、独りごちた。
アサシンのサーヴァント――輝島ナイトは、自らの行使したその力を、ため息をつくようにしてそう振り返った。
大宇宙より飛来した、7つの超能力を持つ鉱石・セイクリッドセブン。
体にその片鱗を宿した、セイクリッドテイカーの力――セイクリッドナイトの姿。
かつて研美悠士との戦いで、力を根こそぎ吸い取られ、失ったはずの姿だった。
仮に取り戻したとしいても、戦いに明け暮れた日々から抜け出したからには、二度と使うこともないだろうと思っていた。
それが死んだ後になって、こうして再び使うことになるとは、全くよく分からない因果もあったものだ。
(少なくとも、副作用がなくなったのは助かるが)
本来セイクリッドテイカーの力は、人間の手には余る力だ。
暴走するエネルギーを制御するには、他のセイクリッドテイカーから抽出した、血清剤が必要だった。
ところがサーヴァントとして呼ばれた今は、そのリスクがなくなっているらしい。
死んでから暴走現象に悩まされるというのも、それこそ想像してみれば、今更の一言に尽きる光景だったが。
(まぁいい)
とはいえ、それは今となってはどうでもいいことだ。
癪な話だが、今の自分には役目がある。
サーヴァントとして召喚されたからには、マスターの力とならなければならない。
聖杯などには興味はないが、だからとて自由の利く体ではないのだ。諦めて仕事をするしかないだろう。
そう考えるとアサシンは、下へと降りる階段へ向かった。
◆
穂村原学園新聞部。
とはいってもその部室に出入りしているのは、部長を自称している生徒1人だけだ。
活動実績こそあるものの、部員の最低人数は明らかに満たしていない。
それでも部活として成立しているからには、何か汚い手を使ったのではないかと、校内でも度々噂されていた。
そういう設定だ。
(といっても、現実とさほど変わりませんけどね)
そんなことを考えながら、新聞部の部室では、1人の少女がパソコンに向かっていた。
1人だけの部屋の中で、無機質なキーボード音とクリック音だけが、かちゃかちゃと鳴り続けている。
静寂の中で彼女が見るのは、画面に映された無数のデータだ。
文書ファイルには人物名や日付と共に、いくつかの画像データが添付されている。
そしてそのいずれにも、この現代日本には似つかわしくない、異様な風貌の者達が映されていた。
「戻ったぞ」
その時、不意に声が響いた。
少女の背中に向けられたのは、先ほど屋上にいた男の声だ。
いつからそこに立っていたのか。
過程の一切を省略し、黒いコートのアサシンが、新聞部の部室に姿を現していた。
-
「新たに召喚されたサーヴァントは1騎だ。ついでに別の場所で、1騎のサーヴァントが敗退していた」
言いながら、アサシンがパソコンのデスクに手を伸ばす。その手に握られていたのは、銀色に光るデジタルカメラだ。
「ご苦労様です」
そう言って少女はカメラを受け取り、デスクに置かれていたケーブルを取って、慣れた手つきでパソコンに繋いだ。
まとめられていたデータは、サーヴァントの情報だったのだ。
聖杯戦争の参加資格を得た瞬間から、彼女とアサシンは情報収集に徹し、隠れて他のサーヴァントを探っていたのである。
1騎が増えて、1騎が減った。これで彼女の把握しているサーヴァントは、合計7騎ほどになった。
もちろん彼女らが知らないサーヴァントも、何組かは存在するだろうが、これだけの数を知っているのは大きな強みだ。
「ははぁ、アッテンボローが脱落ですか」
マスターの名前を呟きながら、入力していたデータを消す。
身辺調査は済ませていたが、落ち着きがない印象を受ける男だった。どの道長く生き残れるタイプではなかっただろう。
「本戦も始まっていないというのに、血の気の多い連中だ」
「ええ。だからこそ私達も、気を引き締めなければなりません」
「分かっている」
少女の言葉に、アサシンが肩を竦めた。
特殊能力こそ便利だが、暗殺者として召喚されたアサシンは、直接戦闘能力に乏しい。
既に把握しているサーヴァントの中でも、たとえば銀髪のセイバーなどと対峙すれば、瞬く間に倒されてしまうだろう。
故に情報が必要だ。
敵の行動パターンを探り、確実にマスターを仕留められるよう、準備する必要があった。
それにそうした用途に使えずとも、情報とは立派な財産だ。使いようはいくらでもあった。
「窮屈な思いをするかもしれませんが、そこは私のサーヴァントになったのが運の尽きです」
「そのようだ」
「ですから、諦めて付き合ってもらいますよ」
そう言って少女は振り返ると、にっこりと笑みを浮かべたのだった。
◆
参加者データの整理を終え、学校を出ようとする頃には、既に日が傾いていた。
自分が普段使っているものよりも、いくらか新しいパソコンの電源を切り、荷物を通学鞄にまとめる。
(こんな所まで来ても学生生活とは、奇妙な縁もあったものですね)
そんな風に思考しながら、マスターの少女――結崎ひよのは、苦笑気味な表情を浮かべた。
厳密に言うとこの少女は、「少女」と呼べるような年齢ではない。若いどころか幼く見えるが、既に立派に成人している。
高校2年生・結崎ひよのという身分は、彼女がある任務を遂行するために、不正にでっち上げたものだ。
この聖杯戦争においても、偽名であるひよのの名で登録されていたのは、ある意味ありがたい話ではあったが。
(願いを叶える聖杯、か……)
鞄を手に持ちながら、思いにふける。
戦いの先に待ち受けている、万能の願望器の存在を思う。
願いを叶えるアイテムと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは、自分が受け持っている少年の顔だ。
神の弟、鳴海歩。
類稀なる才能を持ちながら、それをも超える兄の影に隠れ、卑屈に背中を丸めていた少年。
それでも度重なる戦いの中で、前を向き立ち上がる覚悟を決め、運命に対峙した少年だ。
常に彼の傍らに立ち、最大の味方として協力する――それがひよのの名と共に、彼女に与えられた任務だった。
同時に任務という枠を超え、歩という少年に期待し、心から力になりたいと思うようにもなっていた。
(鳴海さんは必要としないかもしれませんが)
歩が頼りにするものは、何も持たざる者の力だ。
あらゆる可能性も信じないかわりに、あらゆる絶望も信じない。
全ての障害を疑い、誰にも弱みにつけ込ませることなく、真実に手を伸ばすための力だ。
そんな彼の進む道には、聖杯というとてつもない力は、むしろ不要なものであるかもしれない。
(それでも)
だとしても、ひよのが何よりも願うのは、彼の勝利と幸福なのだ。
この戦いに必ず勝つ。
たとえ不利な手札であっても、その特性を使いこなし、必ず聖杯を持ち帰ってみせる。
そう覚悟したひよのは、部室の鍵を手に握ると、新聞部の部屋を後にした。
-
【マスター】結崎ひよの
【出典】スパイラル〜推理の絆〜
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。新聞部の備品に木片が混ざっていた。
【マスターとしての願い】
歩を助けるために使いたい
【能力・技能】
諜報活動
情報を収集するための能力。
合法・非合法を問わず、ありとあらゆる手段を駆使して、必要な情報をたぐり寄せる。
工作技術
手先が器用。
安物の手錠をこじ開けてみせたり、スタンガンを違法改造したりしていた。
【weapon】
なし
【人物背景】
神と謳われた青年・鳴海清隆の下で働くエージェント。
現在は私立月臣学園に入学し、高校2年生の少女・結崎ひよのを演じている。
その目的は清隆の弟である、鳴海歩を補佐することで、清隆に立ち向かう力を与えること。
しかし、「土壇場で裏切らせて歩を絶望させる」という最終的な目的は、この時点では知らされていない。
本名や正確な年齢は不明だが、少なくとも19歳以下ではないとのこと。
天真爛漫で騒がしく、何かと甲斐甲斐しく世話を焼くタイプ。
正体が露見した最終話においても、こうした態度で歩に接しているため、元からこういう性格なのではないかと思われる。
一方で荒事となった時には、日頃の様子が信じられないほどに、冷静な表情を見せることも。
【方針】
優勝狙い。他のマスター達の情報を収集し、状況に合わせて有効活用する。
-
【クラス】アサシン
【真名】輝島ナイト
【出典】セイクリッドセブン
【性別】男性
【属性】混沌・善
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:D 宝具:B
【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
【保有スキル】
仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。
逃走に専念する場合、相手の追跡判定にペナルティを与える。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
対魔力:-(D)
『輝石の黒騎士(セイクリッドナイト)』発動時にのみ発動する。
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【宝具】
『輝石の黒騎士(セイクリッドナイト)』
ランク:C+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:D
宇宙より飛来した、特殊な力を宿す7つの石――セイクリッドセブン。
アサシンはその力により、黒き超人・セイクリッドテイカーへと変身することができる。
セイクリッドナイトが保有する力は、「物質を変化させる力」。
これにより手で触れた物質(生体は不可)を自在に変形させることができる。
また、背中に生えた翼により、飛行することも可能。
生前のアサシンは更なる力として、セイクリッドナイト・リベレイターという姿にも変身することができたのだが、
そのためには藍羽アオイの協力が必要となるため、聖杯戦争にて用いることはできない。
-
【weapon】
なし
【人物背景】
セイクリッドテイカーの力を持って生まれた少年。
両親に売られて研究機関に引き取られており、セイクリッドセブンの力を分析するための実験台にされていた。
しかしその責任者である研美悠士が、研究成果を悪用しようとしていることに気付き、研究機関を脱走する。
以降は研美の命を狙い、同じセイクリッドテイカーの丹童子アルマと共に、遂にこれを打倒した。
性格は無愛想でぶっきらぼう。その境遇からか、警戒心が非常に強い。
しかし同じ研究機関からの脱走者である、劉翡翠にだけは、優しさを垣間見せている。
持って生まれたセイクリッドセブンの力は、「物質を変化させる力」。
劇中では主に手持ち剣の生成、壁抜けなどに用いられていた。
素早い身のこなしから放たれる、剣術・体術の数々は、セイクリッドアルマ・リベレイターにも引けを取らない。
一方で生前は、本来不安定であるセイクリッドテイカーの力を制御するために、血清剤を投与しなければならないという制約があった。
【サーヴァントとしての願い】
特になし
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投下は以上です。今回の投下分は、
マスター:結崎ひよの@スパイラル〜推理の絆〜
アサシン(2人目):輝島ナイト@セイクリッドセブン
でした
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13話目の投下を行います。今回はライダー(2組目)です
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深夜の冬木市の港は、赤く光を放っていた。
元々この時間この場所には、2組の暴走族がいた。
どこにでもある縄張り争いだ。一触即発となった両陣営は、互いに罵詈雑言を飛ばしぶつかろうとしていた。
「ぁ、ああ……」
その時に現れたのが、その男だった。
男は両者の真ん中に、突如姿を現したのだ。
全身を包帯で覆った、異様な風体の男だった。まるでエジプトの墓に収まった、古代のミイラが蘇ったようだった。
そして現れたその男は、2組の暴走族のうち、片方だけを皆殺しにした。
総勢30はいようという軍団を、たった一振りの日本刀で、次々と虐殺してみせたのだ。
「弱ェな」
どぅっ――と音が轟いた。
地に走る炎に引火したバイクが、烈音を伴って爆発した。
「どうせゴロツキ崩れだろうが、まるで話になりゃしねえ。そこらの山賊の方がマシなくらいだ」
淡々と呟く男の剣が、赤い光に燃えている。
荒くれ者達を斬り裂いた、ミイラ男の切っ先が、盛る炎を纏っている。
血と炎の海の只中で、赤い照り返しを受ける体が、闇にその存在を主張していた。
「よぅ――」
「ひっ!」
低く、しゃがれた音だった。
地の底から響くかのような、魔物の唸りのような声だった。
ミイラ男に声をかけられた、強面の暴走族達が、情けなくびくりと震え上がる。
虚勢で固めたファッションも、全てがハリボテに過ぎなかった。真に恐るべき強者の前では、何の威嚇にもなりはしない。
「俺が何でお前らのことを、殺さずに生かしておいたと思う?」
刀を鞘へと納めながら。
包帯から覗く口元に、ニヤリと笑みを浮かべながら、男は彼らへと歩み寄った。
舞い散る火の粉を素通りし、引きちぎれた死体を足蹴にしながら、一歩一歩と近寄った。
「ほっとけば殺られてたのはお前らだからだ。あの数の差を覆せるほど、お前らは強そうには見えなかった」
アスファルトにへたり込む者達の数は、ざっと数えても20ほどか。
実を言えば彼らの勝負は、戦う前から決まっていた。
一山いくらのチンピラ風情だ。個々の実力差はたかが知れている。
だからこそ数の多い方が、圧倒的に有利だった。そのパワーバランスが傾くような、そんな次元の世界には、彼らは住んでいなかったのだ。
「弱ェお前らは戦っていれば、まず間違いなく負けていた。俺1人に命運を動かされるような、そんなちっぽけな存在なのさ」
それは奴らも同じこと。
そこでくたばっている連中も、その程度の力しかないからこそ、この俺に呆気無く殺されたのだと。
「所詮この世は弱肉強食……強ければ生き、弱ければ死ぬ。お前らより強ェ俺だからこそ、選ぶ権利もあるってわけだ」
それを知らしめんがために、敢えて弱いお前達こそを、選んで生かしておいたのだと、言った。
教訓としては効果てきめんだ。
自分達より強いのだと、そう断言した連中を、こいつはあっさりと殺してのけた。
であればこのまま呆けていれば、それこそ自分達の末路は、火を見るよりも明らかだ。
奴は間違いなくやってのける。涼しい顔を保ちながら、まばたきもせぬ間に自分達を殺す。
暴走族の生き残り達は、最悪の未来を想像し、全身に汗を滲ませた。
-
「――だがよ」
しかし。
されど男は剣を抜かず、彼らの前にしゃがみ込む。
視線を彼らに合わせながら、今度はなだめるような口調で、怯える不良達へと語りかける。
「俺も命が欲しいんじゃねぇんだ。少し人手が必要でな」
それこそがわざわざお前達を選んで、生かした真の理由なのだと。
「お前ら、俺について来い。そうすれば死ぬ側のお前らに、生き残る強さを与えてやる」
俺がお前らを強くしてやると、ミイラ男はそう言った。
命令口調ではあったが、強制するような語気ではなかった。
だとしてもその言葉には、抗いがたい何かがあった。首を縦に振らずにはいられない、そんな言霊が込められていた。
もちろん、そこには恐怖もある。
されどそれ以上に大きなものを――不思議な安らぎのようなものを、暴走族達は感じていたのだ。
「俺の名前は志々雄真実」
一緒にデカいことをしようじゃねえかと。
いつしか、そう誘う男につられて、彼らも、引きつった笑みを浮かべていた。
◆
「食えよマスター。あまり食ってるって顔してねぇぞ」
凄惨な殺戮劇が起きた、冬木の港のその波止場で。
包帯男――志々雄真実は、そう言って手にしたものを投げた。
神代凌牙が受け取ったのは、コンビニで売っていたフライドチキンだ。
和装の志々雄に似合わぬそれは、彼が買ってきた物ではない。彼の従えたゴロツキの1人が、つい先程買ってきたものだ。
「チッ……」
偉そうに、と舌打ちしながら、凌牙はチキンにかぶりつく。
いかにもファストフードといった風情の雑な味だ。
もっとも江戸だか明治だかを生きた、この英霊様にとっては、珍しい贅沢品なのかもしれないが。
志々雄は凌牙のサーヴァントだった。ライダーのクラスを得て現界した、過去の英霊の写し身だったのだ。
「不満そうだな」
「昔の人は食うものにも困ってたんだぞ、って説教でも垂れるか?」
「……なるほど、真理だな」
皮肉のつもりで言った言葉だった。
しかし意外にも、志々雄――ライダーのリアクションは、感心したといった様子だった。
「弱ェ奴らは奪われるしかねぇ。飯も食えねぇのも当たり前だ。
だが逆に言えば、その奪う連中に逆らえねぇ弱者は、ほとんどが食うものも食えねぇ連中と相場が決まってたな」
食わなきゃ強くなれねぇとはよく言ったものだと、ライダーはくつくつと笑いながら言った。
そんな態度が気に食わなくて、凌牙はふんと鼻を鳴らした。
「何だってまたこんなことを続ける」
こんなこと、と凌牙が評したのは、先ほどの衝撃的なスカウトのことだ。
ここまで過激ではなかったが、こんなことは初めてではなかった。
既にこの包帯のライダーは、チンピラや暴走族のような荒くればかりを、100人近く支配下に置いていた。
神秘性を持たないNPCなど、マスター同様サーヴァント相手には、傷ひとつつけられないというのにだ。
あんな連中を集めたところで、敵に有効打を与えられない以上は、烏合の衆に過ぎないのではないかと。
「そう言うなよ。アレはアレで使いでがある」
返すライダーの返答が、それだ。
別にサーヴァントを殺せずとも、人が群れているというだけで、使い道はいくらでもあると。
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「まぁ、目下の用途としちゃアレだな」
言いながら、ライダーが海上を指さした。
そこにあったのは1隻の船だ。幾分か時代がかってはいたが、月下に鉄の光沢を放つ、立派な戦艦の姿だった。
大型甲鉄艦・煉獄――ライダーの騎乗兵(ライダー)たる所以。
彼がサーヴァントになったことで、宝具化し己が武器とした、鋼鉄製の巨大戦艦である。
「操舵くらいなら俺にもできるが、他の作業には人手がいる。動かす人間がいねぇことには、宝の持ち腐れでしかねぇのさ」
恐らく方治が使っていたなら、多少は変わっていただろうがと。
ここにいない誰かの名前を出して、ライダーはそう締めくくった。
(涼しい顔していやがるが……)
そんなライダーの横顔を、神代凌牙はじっと睨む。
このサーヴァントは危険だ。
事も無げに軍団を築いてはいるが、それを成し遂げた彼の資質は、間違いなく危険なものだった。
幕末の人斬り、志々雄真実。
その後明治の時代において、一大軍団を結成し、政府に反旗を翻した男。
それだけの荒くれ達を束ねた、この包帯まみれの男には、邪悪なカリスマとでも呼ぶべきものがある。
人々の心を巧みに束ね、血みどろの動乱へと駆り立てる、そうした才を持っている。
たとえばナチのアドルフ・ヒトラー――第二次世界大戦を牽引した、ドイツ軍の指導者のような。
もっとも中学生の凌牙には、ヒトラーの起こした戦いが、貧困を打開するための必要悪に端を発していたことまでは、理解できていなかったが。
(下手すりゃ俺すらも取り込むような、そういう類の男だ、こいつだ)
隙を見せれば染められてしまう。
彼の放つカリスマに、主人であるはずの自身が呑まれ、体よく利用されてしまう。
どうしてなのかは分からないが、直感めいた不思議な感覚が、凌牙にそう警告を発していた。
「いっそ普通に受肉して、この時代を支配してやるのも、悪かねぇかとも思ったが……生憎と今の世はぬるすぎだ」
あの程度の連中がデカい顔をしているようでは、平成の程度もたかが知れていると。
凌牙の警戒など知りもせず、ライダーは海風を受けそう呟く。
包帯の隙間から覗いていた、数本の細い黒髪が、夜の潮風に揺れている。
「やはりこの国は明治の時から、この俺がやり直してやるしかねぇようだ」
だからこそ聖杯に望むのは、生前の時代への遡行だと。
もう一度かつての国盗りに挑み、今度こそ日本を手中に収め、覇道を歩ませることこそが必要なのだと。
不敵な笑みを浮かべながら、誰を恐れることもなく、ライダーはそう言い切ったのだった。
(冗談じゃねえ)
面白くないと思うのは凌牙だ。
こんな男に聖杯はやらない。願いを聞き入れてもらう権利は、主人である自分にこそあるのだ。
ワールド・デュエル・カーニバルを経て、妹・璃緒を巡る因縁には、一応の決着をつけることができた。
それでも、まだ全てが終わったわけではない。意識を失った肝心の璃緒は、未だ目を覚ましていないのだ。
この聖杯戦争を勝ち抜き、必ずや願望器を手に入れる。
そしてその奇跡の力で、今度こそ妹の目を覚まさせる。
そのためにはたとえ誰であっても、邪魔をさせるわけにはいかない。
さながら鮫の牙のように。
内側に決意を固めながら、凌牙は鋭く目を光らせた。
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【マスター】神代凌牙
【出典】遊戯王ZEXAL
【性別】男性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚
【マスターとしての願い】
璃緒の意識を取り戻したい
【weapon】
カードデッキ
デュエルモンスターズのカードデッキ。40枚のメインデッキと、数枚のエクストラデッキで構成されている。
【シャーク】と名のつくモンスターを主体とした、水属性モンスターデッキ。
特殊な力を持ったカード・《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》を所有しているが、
他のマスターがデュエルモンスターズをプレイしない以上、その力は意味をなさない。
【能力・技能】
バイク運転
免許を持っているのかどうかは不明だが、バイクを運転することができる。
バリアンの皇
死した魂が行き着く場所・バリアン世界。
凌牙にはその支配者である、バリアン七皇の一角・ナッシュの魂と力が乗り移っている。
しかし当時の記憶は封じられており、事情に通じたものでなければ、それを解き放つことはできない。
【人物背景】
ハートランドに住む中学生。14歳。
カードゲーム・デュエルモンスターズをたしなむ決闘者(デュエリスト)であり、その実力は全国クラス。
しかし妹・神代璃緒が意識を失い、精神的に追い詰められた彼は、全国大会の舞台で不正を犯し、表舞台を追われてしまう。
以降は不良と化していたが、九十九遊馬らとの交流の中で、次第に心を開いていった。
ワールド・デュエル・カーニバルにおいては、かつての全国大会での対戦者とも対峙し、その因縁を乗り越えている。
ガラが悪く喧嘩っ早い、典型的な不良。
一方、元は妹思いの兄貴であったこともあり、何だかんだで義には厚い。
【方針】
優勝狙い。ライダーに利用されないよう警戒する。
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【クラス】ライダー
【真名】志々雄真実
【出典】るろうに剣心−明治剣客浪漫譚−
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:B 敏捷:C 魔力:E 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
【保有スキル】
炎の呪縛:B
全身に火傷を負ったライダーは、発汗機能のほとんどを喪失しており、体温をコントロールすることができない。
そのため15分以上直接戦闘を行うと、体温の異常上昇により、命に関わる苦痛を味わうことになる。
しかし同時に、体温の上昇に伴って身体機能が活性化し、筋力・敏捷に段階的にプラス補正が与えられる。
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。
カリスマ:E+
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
普通の人間にとっては恐怖の対象でしかないが、無法者や荒くれ者に対してのみ、絶大な効力を発揮する。
【宝具】
『大型甲鉄艦・煉獄(れんごく)』
ランク:C 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
志々雄が全財産の五分の三を投入して手に入れた、志々雄一派の切り札。
過去の歴史をなぞり、東京湾洋上から東京を砲撃することを目的として調達された。
一応ライダーの意志による操舵が可能だが、砲撃などそれ以外の動作には、相応の人員を必要とする。
地上戦がメインとなる聖杯戦争では、自由に動き回ることはできないが、固定砲台としては十分過ぎる威力を発揮する。
本来はこの戦艦を直接調達した、佐渡島方治の宝具だが、志々雄がライダーのクラスで召喚されたことにより、使用が可能となった。
なお、この戦艦は実戦投入された記録がないため、当時のカタログスペックが、そのまま性能として反映されている(ランクが低いのもそのためである)。
『終の秘剣・火産霊神(カグツチ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1人
ライダー最強の秘剣。
無限刃の全ての発火能力を解放し、刀身そのものを燃え上がらせることで、絶大な火力を発揮する
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【weapon】
無限刃
新井赤空作最終型殺人奇剣。
絶対に刃こぼれしない刀として打たれており、その刀身には事前に鋸のような無数のこぼれが施されている。
しかしそれ故に、切れ味の最大値が犠牲になっており、同等の達人同士の戦いにおいては、とどめの機会を逃してしまう可能性もある。
この刀身にはライダーがこれまで斬ってきた、無数の人間の脂が染み付いており、
これが発火することによって、「壱の秘剣・焔霊」および「終の秘剣・火産霊神」が発動する。
手甲
火薬の仕込まれた手甲。
これを「壱の秘剣・焔霊」によって引火・炸裂させることで、掴んだ相手に爆発ダメージを与える、「弐の秘剣・紅蓮腕」が発動する。
【人物背景】
幕末において長州藩に所属し、闇の処刑人を務めていた剣客。
しかし彼が請け負った暗殺の中には、明治政府の根底を揺るがすものもあり、用済みとなったことで処刑されてしまう。
そうして全身火炙りに遭いながらも、一命を取り留めた志々雄は、明治政府に不満を持つ者達を束ね、政府に反旗を翻すべく挙兵した。
最期には志々雄の先任に当たる剣客・緋村剣心との戦いの中で、自滅という形で命を落としている。
その性質から英霊ではなく、反英霊にカテゴライズされている。
「弱肉強食」を信条として掲げており、彼が政府を倒そうとしたのも、自らの支配する強い日本を作ろうとしたためである。
大胆不敵な野心家であり、自らの強さを信じて疑わない。
自信家であるが故か劇場型の傾向があり、作戦の際には様式美にこだわるタイプ。
とはいえ堅実な物見ができないわけではなく、一軍を率いるに相応しい、頭脳のキレを見せる男でもある。
剣術戦においては無双を誇り、その力は幕末を生き抜いた剣豪達を、次々と返り討ちにするほど。
しかしかつての処刑において、全身に火傷を負い発汗機能を失った志々雄は、15分以上戦闘を行うと、体に異常を来たしてしまう。
それでもなおその苦痛を、涼しい顔で抑え込むほどの精神力は、まさに驚嘆に値する。
本来はその逸話から、セイバーないしアサシンのクラスで召喚されるべきサーヴァントなのだが、
今回はライダーとして召喚されたことにより、例外的に宝具『大型甲鉄艦・煉獄(れんごく)』を使用できるようになっている。
【サーヴァントとしての願い】
明治時代で復活し、国盗りを再開する。
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投下は以上です。今回の投下は、
マスター:神代凌牙@遊戯王ZEXAL
ライダー(2人目):志々雄真実@るろうに剣心−明治剣客浪漫譚−
でした
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モンスターが実体化したりしないのか・・・
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だってシャークドレイクは一から十までトロンに仕込まれただけのNo.だし…そう考えると前世といい反逆されるのには慣れっこだなシャークさんw
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シャークさん参戦!
確かにこのサーヴァントは危険やでえ
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>>104
ちょっと考えたのですが、枚数が多くて把握が難しすぎるのと、自由度が高すぎるのとがあったので、却下しました
遊戯王シリーズには十代やアキなど、それを実行できることをアイデンティティとしているキャラもいるので、
だったら他のキャラでもやっちゃうのはちょっと違うなとも思ったので
それでは最後の1組である、バーサーカー(2組目)を投下します
今回の投下後は、本戦開始宣言の話も、連続して投下したいと思います
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時刻は既に丑三つ時だ。
夜更かしをしては翌日に響く。良い子は帰って寝なければならない。
にもかかわらず、その少女は、石畳を全力で走っていた。
穂群原高校1年生・未来は、柳洞寺へと向かう階段を、一心不乱に駆け上がっていた。
(あたしには分かる!)
右手に令呪の浮かんだ腕を、精一杯振って上へと進む。
短い手足を懸命に使い、幼い体躯とは思えない速さで、山道を一挙に踏破していく。
失われた記憶を取り戻してなお、彼女の元に来訪者はなかった。与えられるべきサーヴァントが、その場に現れなかったのだ。
しかし未来には分かる。未来にはその声が聞こえている。
もっと力を――そう求める声が、彼女の意識に響いている。
(声の聞こえてきた方向はこっちだ! この寺にあたしのサーヴァントがいる!)
未来のサーヴァントが現れなかったのは、未来が見放されなかったからではない。
そのあまりに強大な力ゆえに、未来の持っている呪力だけでは、目覚めさせるには不足だったからだ。
裏を返せば、この先に待つのは、それだけの力を持った大英霊だということだ。
確かにあの寺に近づいてから、妙な気配を感じている。足元にエネルギーが渦巻くような、そんな感覚を覚えている。
であればこの場所は当たりだ。これだけの力に満ちた場所なら、その先には必ず奴がいるはずだ。
「さぁ、来たわよ……さっさと姿を見せなさい、あたしのサーヴァント!」
遂に石段を上りきった。
最後の一段を大ジャンプで飛び越え、未来は高らかにそう叫んだ。
無人で放置された寺に、黒髪の少女の絶叫が、ハウリングを伴って響き渡った。
「っ!?」
その、瞬間だ。
どぅっ、と轟く音と共に、突風が巻き起こったのは。
煽られそうになるのを何とか堪えて、未来は地面に着地する。
突如として吹き荒れた烈風の先を、真紅の隻眼で見据える。
風の中心に光るのは、ファンタジー作品でよく見る魔法陣だ。
眩い光を放つそれが、エネルギーの旋風を巻き起こし、光と音とをばら撒いていた。
同時にその中心から感じるのは、とてつもないまでの存在感。
呪力――魔力と言うのだったか――それが一点に集中し、巨大な質量を形成する感覚だった。
これはさすがに予想外だ。未来は無言で息を呑む。
これだけの力から生まれるものは、もはや人間大の域には収まらない。
聖杯戦争で用いられるサーヴァントとは、人間の時代を生き抜いた、人間の英霊ではなかったのか。
「ぬぅぅおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ……ッ!!」
地の底から響く地鳴りのように。
魔法陣のその更に下から、その声は響き渡っていた。
旋風の雑音の中にあって、なおもそれすらも押しのけるような、力強い唸り声だった。
やがて光が炸裂し、魔法陣の中心部から、それは姿を現した。
地中深くから浮き上がるように、大地を穿ってこじ開けるように。
無人の柳洞寺の敷地を、鈍く振動させながら、それは未来の前に顕現した。
一瞬桃色と見まごうかのような、薄紫に染まった巨体だ。
されどその色の印象とは対照的に、その全身を象る衣装は、攻撃的な刺々しさに満ちていた。
片膝をついた姿勢ではあったが、それですら並の人間に倍するほどだ。直立した姿を想像すると、くらくらとしてくるような心地だった。
何より異質に思えたのは、その全身を包む金属の光沢だ。
人間の英霊ならまだ分かる。半獣や竜人の類であっても、生体ならギリギリ許容できる。
しかしあの姿は一体何だ。鋼鉄のように光る皮膚と、機械的な関節は、まるでロボットのようではないか。
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「答えよ、小娘……お前が俺様を呼び寄せたのか」
緑の光が未来を射抜く。
人間の顔を象ったような、頭部部分に備わった両目が、小さな未来の体を見下ろす。
「そ……そうよ! あたしがアンタのマスターよ! そういうアンタこそ名乗りなさいよ!」
思わず気圧されそうになった。
それを隠さんとした結果、自然と語気が荒くなった。
冷や汗をオーバーリアクションで振り落としながら、未来はサーヴァントに向かって叫ぶ。
腕を振り大仰な動作を見せながら、巨大な機械の怪物へと問う。
お前は一体何者なのだ。
一体いかなるクラスを持って、この偽りの世界へ現界したのかと。
「フン! 知らぬというなら答えてやろう……俺は破壊大帝ガルバトロン!
バーサーカーのクラスを得て、再び現世に蘇った、この宇宙の覇者となる男よ!」
びりびりと大気が振動した。
がさがさと周囲の樹木が騒いだ。
さながら世界そのものすらも、一斉の元に従えるかのように。
狂戦士のクラスを冠したサーヴァントは、高らかに己が名を宣言した。
バーサーカー――それは確か、狂化現象と引き換えに、高いステータスを得て現界する英霊だったはずだ。
言うほど狂っているようには見えないが、確かにその不遜な佇まいからは、それ相応の覇気が感じられる。
身の丈5メートルほどはありそうな、紫色のその巨体は、それだけのパワーを発している。
「小娘、貴様こそ名乗ったらどうだ。破壊大帝に対して無礼であろう」
「なっ!? 何よ、アンタこそ無礼じゃないの!? あたしの奴隷(サーヴァント)のくせに!」
しかしその態度だけは癪に障った。
あまりにも無礼なその物言いに、未来はいよいよ激昂した。
こいつは自分の手下ではないのか。それが主人に対して命令するとは、一体どういうことなのだ。
「お前のような小娘などに、忠誠を誓う義理はないということだ」
「何ですってぇ……!」
わなわなと肩を震わせながら、未来は眉間にしわを寄せる。
ファッションで身につけていた眼帯が、表情の動きに合わせてズレる。
許せない。絶対に許せない。
どれほど強いかは知らないが、奴隷の分際で主君に歯向かうなど、到底許容できるものではない。
分からせなければ。マスターとサーヴァントの絶対的な差を、こいつには知らしめてやらなければ。
「アンタなんか! アンタみたいなサーヴァントなんか、絶対にあたしには逆らえないんだから! この令呪がある限りはね!」
ばっと突き出したのは左手だ。
その甲に刻まれた赤い紋章だ。
サーヴァントを従えるマスターには、三角の令呪が支給される。
その強制力を発揮すれば、たとえどんな命令であろうと、意のままに下すことができるという。
人間より遥かに強い英霊が、人間であるマスターに従うのには、この令呪という存在が大きかった。
「おうやってみせろ! だが分かっておるだろうな!?」
されど狂戦士は一喝した。
巨木のような足を踏みしめ、地面を揺らせながら叫んだ。
地震のような衝撃が、大地を伝って未来へ伝わり、その身をびくりと震わせた。
「その3つの令呪を使い切った時、その時お前がどうなるか……!」
脅迫だ。
それこそ従者にあるまじき行いだった。
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「……っ!」
それでもその時の未来には、それを咎めることはできなかった。
その言葉の後に続く意味を、否応なしに理解させられたからだ。
令呪を使い切った時――すなわちマスターたる未来が、サーヴァントへの強制力を失った時。
恐らくその時バーサーカーは、躊躇わず自分に牙を剥く。
その圧倒的な巨体から、暴力的なまでの力を解き放ち、間違いなく自分に襲いかかるだろう。
そうなれば待ち受けているのは破滅だ。
皮肉にも期待した通りだったが、恐らくこいつは凄まじく強い。
他の悪忍の仲間達や、蛇女の教師相手にすら、ここまで気圧されたことはない。
仮に選抜メンバーの全てが揃い、全員で挑んだとしても、返り討ちにあうのではないか――そこまで思わせる迫力が、彼にはあった。
破壊大帝ガルバトロンを名乗る、この巨大なバーサーカーには、それだけの存在感があったのだ。
「分かったらせいぜい協力してもらうぞ。このガルバトロンが聖杯の力で、真の意味で復活を遂げるためにな」
言い返すことはできなかった。
いっそのこと令呪の力によって、自殺を命じることもできた。そうすればこの怪物に対しても、対抗することは可能だ。
それでもその手段を取ってしまえば、聖杯戦争の勝利そのものが不可能となるという、本末転倒な結果を迎えることになる。
恐らくバーサーカーはそれも知った上で、先の脅迫を仕掛けたのだろう。
全く、何が狂戦士だ。わがままな上頭も回るとは、あまりにも厄介極まりないではないか。
「……未来よ。それがあたしの名前。そんなに聖杯が欲しかったら、せいぜい成果を上げてみせなさい」
結局未来はバーサーカーに対し、素直に自分の名前を明かした。
そうすることしかできないままに、破壊大帝の要求を呑んだのだ。
(確かにこいつは強いけど……でも、思い通りにはさせない)
その裏でなお、思いは巡る。
こいつの言われるままにはならないと、強く決意を胸に抱く。
何より万能の願望器は、自分達蛇女にこそ相応しいものだ。
それを奴隷風情に渡すなど、絶対にあってなるものか。
当面はその強大な力を利用し、聖杯戦争を勝ち抜かせてもらう。
そして聖杯を手にする瞬間、令呪によって自由を奪い、聖杯を使わせないようにする。
それまで令呪は温存だ。自分が聖杯を持ち帰るために、せめて最後の1個だけは、使うことなく取っておくのだ。
(見ててよ、みんな……未来は絶対に負けないから!)
屈するものか。
他の参加者達相手にも、自分の手駒であるバーサーカーにも。
必ず聖杯を手に入れて、蛇女と仲間達のためにこそ、その願望の力を使うのだ。
令呪の宿った左手を、固い意志と共に握って、未来は内心でそう宣言した。
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【マスター】未来
【出典】閃乱カグラ(アニメ版)
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。本人の私物に紛れていた。
【マスターとしての願い】
よく分からないけれど、蛇女のために使いたい。
【weapon】
仕込み傘
銃器を仕込んだ西洋傘。これに呪術を付与して戦うのが基本スタイル。
ガトリング砲
秘伝忍法発動時に用いる、巨大なガトリング砲。
スカートの下に隠しており、なんと股間からせり出すような形で使用する。
【能力・技能】
忍
日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
蛇女子学園の選抜メンバーとして、ひと通りの忍術をマスターしている。
更に未来は呪術を修得しており、攻撃に呪いの力を付与している。
忍結界
忍同士の決闘時に発動される結界術。未来の結界は雪の舞う荒野。
忍転身
現代の忍の戦闘形態。この術を発動した未来は、ゴスロリルックスへと変貌する。
この下にはスクール水着を着用しており、攻撃で衣装が破れた時には、水着姿を晒している。
【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を要請する機関である、秘立蛇女子学園の生徒。15歳の1年生。
未だ荒削りな部分は目立つが、1年生にして最強の選抜メンバー・五人衆に名を連ねる実力者である。
また、元は悪忍と相反する正統派の忍・善忍の家系に生まれた子供だったが、
幼少期にいじめられたことを受け、いじめっ子に仕返しする力を得るために悪忍へと鞍替えした。
15歳にしてはかなり幼い容姿をしており、そのことがコンプレックスになっている。
そのため大人ぶった態度を取ることが目立つが、未だ子供っぽさを捨てきれておらず、ムキになる場面もしばしば。
意外と仲間達への情は深く、皆の力になろうと懸命に戦っている。
いじめられっ子時代のトラウマから、他人に無視されることが嫌いで、
初戦闘時に自分を気に留めなかった柳生のことを憎悪し、因縁の相手として付け狙っている。
得意技は銃火器を用いた攻撃だが、本人が呪術を身につけているため、サーヴァントにもダメージを与えられる。
必殺技である秘伝忍法は、巨大なガトリング砲を乱射する「ヴァルキューレ」。
【方針】
優勝狙い。バーサーカーが勝手に動かないように、上手く手綱を引く。
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【クラス】バーサーカー
【真名】ガルバトロン
【出典】ビーストウォーズⅡ 超生命体トランスフォーマー
【性別】男性
【属性】秩序・悪
【パラメーター】
筋力:A 耐久:A+ 敏捷:C 魔力:A 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
狂化:E
厳密には後付のスキルではなく、彼自身が持っていたバーサーカーの適性。
圧政による宇宙平和を標榜する彼には、生まれついての暴君の資質がある。
通常時は狂化の恩恵を受けない。その代わり、正常な思考力を保つ。
【保有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
機械生命体であるバーサーカーも、便宜上「魔物」にカテゴライズされている。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
変身:E
トランスフォーマー固有の機能・トランスフォーム。
体を変形させることにより、ロボットモード・ドリル戦車モード・ドラゴンモードの3形態を取ることができる。
【宝具】
『突き抜ける撃滅の轟槍(ドリルデストロイヤー)』
ランク:B 種別:対城宝具 レンジ:1〜20 最大補足:20人
ドリル戦車モードの必殺武器。文字通りの巨大なドリルを用いた突撃である。
その絶大な破壊力は、あらゆる敵を破砕する。
『万象包みし破滅の業火(アンゴルモアファイヤー)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:50人
ドラゴンモードの必殺武器。
惑星ガイアに眠っていた力・アンゴルモアエネルギーを、炎と変えて直接吐き出す技。
この技で全てを焼き払う姿は、まさしくガイア最強の生命体そのものである。
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【weapon】
ガルバアックス
ロボットモード時の武器。2本の手斧。
ガルバトリング砲
ロボットモード時の武器。両膝に設けられたガトリング砲。
アックスミサイル
ドリル戦車モード時の武器。尾部についたガルバアックスを、射撃武器として発射する。
シザーハンド
ドラゴンモード時の武器。鋏のように展開する翼。鋸状になっており、敵を切り裂くことができる。
【人物背景】
ロボットの体を有した超生命体・トランスフォーマーの1体。
ガルバトロンはその中でも、悪の心を持った種族・デストロンに生まれている。
彼はデストロン機甲部隊を編成し、「圧倒的な力による平和の維持」のため、武力による宇宙支配へと乗り出した。
その後は善のトランスフォーマー・サイバトロンと激しい戦いを繰り広げ、
最期にはライオコンボイと呼ばれるトランスフォーマーとの決戦により、命を落としている。
非常に頑固で気難しい印象を受けるが、意外にも人間的な度量は大きく、部下達からの信頼は厚い。
弟のメガストームの反抗には頭を痛めていたが、「愚かだからこそ可愛くもある」と考えており、
ゆくゆくは自らの後継者として成長することを期待していた。
また、エネルギー酔いが酷く、度数の高いオイルで酔っ払い、大暴れしたことがある。
惑星ガイアと呼ばれる星の、最強の兵器と生命体の姿を我が物としており、それに見合った凄まじい戦闘能力を誇る。
基本形態のロボットモード、突撃戦を得意とするドリル戦車モード、
最強の格闘戦闘力を誇るドラゴンモードの3形態を持ち、それらによって他の追随を許さない破壊力を発揮する。
【サーヴァントとしての願い】
現代に受肉し、再び破壊大帝として君臨する。
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バーサーカー組の投下は以上です。最後の1組は、
マスター:未来@閃乱カグラ(アニメ版)
バーサーカー(2人目):ガルバトロン@ビーストウォーズⅡ 超生命体トランスフォーマー
でした
では続きまして、本戦開始宣言話を投下します
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「――いよいよこの時が来たな、諸君」
気づいた時には誰も彼もが、真っ暗な部屋の中にいた。
そして気付けば自分自身と、他にいた人間達の体が、スポットライトで照らされていた。
周りの人間達の顔は、見えない。
何故か漫画のシルエットのように、彼らの姿だけが影となっていて、その容姿を伺うことはできない。
「つい12時間前、規定数である14人のマスターが、君達のいる仮想空間に満たされた」
そして新たに現れたのは、見覚えのある人影だ。
影達の中心に立つようにして、スポットライトを浴びた侍が、自分達の前に現れていた。
青年を囲う影は、13――自分自身を含めれば14。
つまりここに揃った者達が、予選を勝ち残ったマスター達ということだ。
「よって今ここに改めて、聖杯戦争の開催を宣言しよう」
マスターの資格を得た自分には、目の前の青年の正体が分かる。
自分の従える者と同じ、サーヴァントであるということが、今の自分には理解できる。
認識したクラスは、ルーラー。
これまでの説明にはなかったはずのクラスだ。
管理者(ルーラー)という名前であるからには、聖杯戦争の審判役として、特別に用意されたクラスだということか。
何より最大の特徴は、真名が開示されていることにあった。
自分のサーヴァントですら表示されない、英霊としての真の名前を、この男は公開していたのだ。
そこに示された名前は――榊といった。
「今より9時間後……深夜0時より、聖杯戦争の本戦を行う。
これまで通り基本的には、禁止事項は一切なしだ。聖杯の所有者を決めるため、最後の1組になるまで戦ってほしい」
榊は淡々と説明を続ける。それだけは最初と変わらない。
どれほど状況が変わっても、その涼しげな態度だけは、一切変わることがなかった。
気にするほどの神経がないのか、あるいは気にも留めないほどの高みから見下ろしている気なのか。
いずれにせよその冷静な態度が、その場に集った者達の神経を、大なり小なり逆撫でした。
「それでは健闘を祈るよ――願いを叶える権利者諸君」
そしてその言葉を最後に、マスター達の意識は暗転した。
最初に冬木市へ送られた時のように、認識は強制的にシャットアウトされ、元の場所へと戻されたのだった。
◆
かくして各々が暮らす場所で、マスター達は目を覚ます。
実時間では一瞬でしかなかった、暗黒の空間での説明が終わり、元の冬木市へと戻される。
誰もに共通していたのは、この先に待ち受ける戦いへの覚悟だった。
ある者は願いを叶えるため、ある者はその願いを見つけるため、ある者はそれすら願わずただ脱出するため。
それぞれの想いを胸に抱き、人々は9時間後を意識する。
午後3時を告げる時計を見ながら、それが0時を指した瞬間を、それぞれの念の元に思い描く。
万能の願望器・聖杯を巡る、総勢14組の聖杯戦争。
それが開催されるまで――あと、9時間。
【9月9日・0:00――――――聖杯戦争本戦・開幕】
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これにて本日の投下は終了です
そしていよいよ本戦参加メンバーが確定したため、本聖杯戦争の名簿を公開したいと思います
小日向未来@戦姫絶唱シンフォギアG(マスター)/殺生丸@犬夜叉(セイバー)
キリト@ソードアート・オンライン(マスター)/ハセヲ@.hack//G.U.(小説版)(セイバー)
ヴィラル@天元突破グレンラガン/シド@仮面ライダー鎧武(アーチャー)
千歳ゆま@魔法少女おりこ☆マギカ(マスター)/星矢@聖闘士星矢Ω(アーチャー)
マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG(マスター)/駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武(ランサー)
神隼人@真(チェンジ!!)ゲッターロボ〜世界最後の日〜(マスター)/佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ(ランサー)
遠坂凛@Fate/stay night(マスター)/涼邑零@牙狼-GARO-(ライダー)
神代凌牙@遊戯王ZEXAL/志々雄真実@るろうに剣心−明治剣客浪漫譚−(ライダー)
立花響@戦姫絶唱シンフォギアG(マスター)/スバル・ナカジマ@魔法戦記リリカルなのはForce(キャスター)
アイズ・ラザフォード@スパイラル〜推理の絆〜(マスター)/アモール@聖闘士星矢Ω(キャスター)
呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ(マスター)/スカー@ライオン・キング(アサシン)
結崎ひよの@スパイラル〜推理の絆〜(マスター)/輝島ナイト@セイクリッドセブン(アサシン)
ラケル・クラディウス@ゴッドイーター2(マスター)/レイ・ラングレン@ガン×ソード(バーサーカー)
未来@閃乱カグラ(アニメ版)(マスター)/ガルバトロン@ビーストウォーズⅡ 超生命体トランスフォーマー(バーサーカー)
以上14組によって、本スレの聖杯戦争を執り行いたいと思います
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つい先程、本作のWikiが完成しました
これでひと通りの準備ができましたので、いよいよ本戦の執筆に入ろうと思います
ttp://www63.atwiki.jp/leoncup/
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こんな時間ですが、第1話を投下させていただきます
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二度目の榊との対面から、数時間ほど経った頃。
「いつまでこうしているつもりだ?」
いつも通りの授業を終えて、新聞部の部室にいたひよのは、アサシンからそう問われていた。
「明日からは本戦が始まるんだ。いつまでも引きこもっているわけにもいかんだろう」
無愛想なサーヴァントの声には、微かに苛立ちが浮かんでいる。
結局この1週間近く、ひよのはひたすら情報収集に徹し、それ以外に何もすることはなかった。
結果として彼女の手元には、既に13騎のサーヴァントの、過半数近くの情報が集められている。
だが、それだけでは意味がない。
売り出すにせよ自分で使うにせよ、行動しなければ宝の持ち腐れだ。
今まではまだよかったが、まさか本戦になってなお、こうして立ち止まっているつもりかと、アサシンは問いかけたのだった。
「もちろんです」
対するひよのの答えが、それだ。
ただ引きこもるだけではなく、いよいよ動くべき時が来たのだと、彼女はそう言ったのだ。
「といっても、アサシンさんのステータスでは、闇雲に突っ込んでも勝ち目はありません。
たとえマスターを狙って、懐に忍び込んだとしても、決して無傷では済まないでしょう」
「だろうな」
マスターの無慈悲な分析に、ため息をつきながら同意する。
もとより輝島ナイトは暗殺者(アサシン)ではないのだ。
たまたま隠密性に優れた能力を持っていただけで、専門的な訓練を受けていたわけではない。
そのため気配遮断のスキルも、どうしても精度が低いものになってしまう。
情けない話だが、このランクでは、攻撃の瞬間に隙ができてしまったとしても、止むなしといったところだろう。
そして英霊サーヴァントは、その隙を見逃すような凡夫では、ない。
「倒すべき敵は13人もいる。いちいち危険を冒していては身が保たん」
「ですからまずは、同盟を組むことを考えます」
言いながら、ひよのはパソコンへと向かった。
マウスのボタンを人差し指で叩き、次々とファイルを開いていく。当然呼び出すのはマスターの情報だ。
情報は自分で使うだけのものではない。他人に漏らすことによって、戦いを加速させることもできる。
更にそうした情報を、優先して与えると約束すれば、役立っている間は殺されることもないというわけだ。
「既に何人か候補は見繕っていますが……」
とはいえ、誰でもいいわけではない。
交渉に応じる気がありそうな人間というものを、正確に見抜いて選ぶ必要がある。
巻き込まれた被害者気取りなのは論外だ。たとえ武器を与えても、当人に使う気がなければ、無用の長物と言うほかない。
あからさまな危険人物も、避けた方がいいだろう。話も聞かず殺しにかかってくる可能性がある。
「……やはり、ここは彼女ですかね」
選んだデータに添付された写真は、飲食店で若い男相手に、怒りの形相を浮かべる少女だった。
黒髪と赤い長袖の少女は、同級生の遠坂凜――ライダーのサーヴァントを従えるマスターだ。
サーヴァントのステータスには不安もあるが、本人のやる気は申し分ない。
何よりこのマスターには、個人的に聞いてみたいこともある。
「そいつは確か、学校には来ていないんだったな。ならさっさと家に行くぞ」
「その前に、やっておくことが1つ」
部室を出ようとするアサシンを、制止した。
厳選に厳選を重ねた結果が凜だが、万一の読み違えという可能性もある。
危険な状況になった時のために、打てる手は打っておかなければならない。
「……おい、何をやっている?」
ひよのはスクリーン上に並んだ、参加者情報のファイルを、左クリックで掴んでドラッグした。
-
◆
会場として用意された冬木市は、現実とは異なる歴史を歩んだ、ifの世界観の町だったらしい。
それがこの予選期間を通じて、遠坂凜が調べ上げた末の結論だった。
この冬木市には現実と違って、魔術及び聖杯戦争の痕跡が、欠片も見当たらなかったのだ。
たとえば遠坂邸にあるはずの、魔術関連の蔵書やアイテムは、全て姿を消してしまっている。
魔術師の家という事実は消滅し、単なる古びた洋館というのが、この世界の遠坂邸だった。
更には第4次聖杯戦争の最終決戦の場となったという、冬木中央公園にも、同様の変化が生じている。
そこは公園の形を保ってはいるものの、以前に火事があったという事実は、どれだけ調べても見当たらなかった。
柳洞寺に至っては、どういうわけか、無人の寺と化してしまっていた。
人間関係に生じていた変化も同様だ。
同級生の衛宮士郎は、衛宮でない別の苗字を名乗っている。友人と一緒にいる機会が多いようだが、人格にも変化が生じているのかもしれない。
また妹の桜に至っては、遠坂家との血縁関係が完全に消滅し、最初から間桐の家に産まれた子となっていた。
要するに赤の他人になったのだ。姉であるはずの凜にとっては、これが一番の衝撃かもしれなかった。
もっとも彼らは本人ではなく、それっぽく繕った偽物であるということは、重々承知しているのだが。
「うーん……」
夕食を早々に済ませ、片付けて一息ついた頃。
テーブルにルーズリーフを並べ、それらを一つ一つ見やりながら、凜は小さく唸っていた。
それぞれに記されているのは、これまでの調査結果の数々だ。
全て手書き文書になっているのは、当然機械嫌いが原因である。パソコンの前に座り込んで、これだけの書類を作るなど、考えただけで気が狂いそうだ。
「また変なことで悩んでんなぁ、凜ちゃんは。0時から本戦なんだぜ? そっちに集中しなくていいの?」
言いながらどっかと隣に座ったのは、黒コートを羽織ったライダーだった。
思えばこのサーヴァントの態度も、随分と馴れ馴れしくなった気がする。いつの間にか呼び方も、マスターから名前に変わっていたくらいだ。
「うっさいわね。あんたも悩みの種なのよ、悩みの」
「俺が?」
「ホントは出てくるはずのない英霊なのよ、あんたは」
ジト目でそう言いながら、凜は資料の1枚に手を伸ばす。
本来の聖杯戦争との矛盾点――そう記されていた文書には、以下のように書かれていた。
サーヴァントとは本来、歴史や伝承に名を残す英霊でなければならない、と。
「俺が歴史に残ってないってこと?」
「涼邑零なんて名前は、どれだけ調べても見つからなかった」
ライダーのサーヴァントの真名は、歴史にも伝承にも残っていなかったのだ。
「そりゃそうかもしんないな。ホラー狩りってのは総じて、人目につかないようにやるもんだから」
「そこの時点でおかしいのよ。魔物を狩っていたっていうなら、必然聖堂教会なんかとは、かち合ったりするもんでしょ?」
であればそこから間違いなく、記録は残されるはずだと、凜は言った。
ホラーなるものの件について気にしているのは、この場で調べられないということではない。
そのホラーという分類に属する魔物を、これまで魔術師を続けてきた凜が、一度も聞いたことがないということだ。
ライダー達魔戒騎士なる存在も同様で、聖堂教会以外に異端狩りを行う組織があるなどとは、これまでに聞いたこともない。
「確かになぁ。俺も教会なんてのは聞いたことないし」
「ねぇ、あんたホントに何者? ホントにこの世界の英霊なんでしょうね?」
どうにも情報を交わせば交わすほど、食い違いこんがらがってくる。
ひょっとするとこの英霊は、最初から凜の世界には存在せず、むしろあちら側の別世界からやって来たのではないか。
荒唐無稽とも言えるが、そんな仮定さえ浮かんでくるほどだった。これが冬木の聖杯戦争なら、地名度補正もガタ落ちだ。
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「――なるほど。さすがによく調べている」
その時だ。
不意に第三者の声が、窓の方から聞こえてきたのは。
「!?」
反射的に、そちらを向く。
じゃきんと鋭い音を立て、ライダーが双剣を構える。
シルエットだけを見れば、かつて従えたアーチャーのようだ。もっとも性格もコートの色も、あの皮肉屋とは大違いだったが。
「敵襲……!?」
開かれた窓から覗くのは、黒い異形の顔だった。
牛か鹿かのそれのように、その漆黒の頭部から、曲線を描く角がせり出している。
赤い瞳を爛々と光らせ、こちらを伺うその様子は、鬼か悪魔を連想させた。
明らかに常人の姿ではない。コスプレ野郎の悪ふざけでもない。
だいたい地上2階の窓に、そんな奴が貼り付けるはずもない。
であれば敵のサーヴァントだ――凜は警戒を込めて標的を睨む。
認識されたクラスは、アサシン。隠密と暗殺に特化した、先の聖杯戦争では戦わなかったサーヴァントだった。
「これは失敬。しかしご心配なく。我々は戦いに来たわけではありませんから」
その時、新たな声が響く。
ちょうどアサシンのいる辺りから、明らかに声色の違う声が聞こえる。
黒鬼がその体を浮かせた。高度が上がったことによって、その上半身が露わになった。
そこにサーヴァントが抱えていたのは、穂群原学園の制服を着た、おさげ髪の少女の姿だ。
同じ学園に通う女子生徒。しかも大きな2つの三つ編み。
記憶を取り戻す前の凜は、彼女を既に知っていた。あまりに有名人であったが故に、知らずにはいられなかったのだ。
「あんたまさか、新聞部長……!?」
「はい。アサシンのマスターをしております、結崎ひよのと申します」
そう言ってにっこりと笑う制服の少女は、アサシンの手からするりと抜けて、窓へと足を引っ掛けた。
スカートがめくれないよう抑えた動作で、そのまま室内へと入ってくる。
どこか妙に手慣れた所作だ。凜も――そして横のライダーもまた、そのあまりにシュールな光景に、すっかりと毒気を抜かれていた。
「まだ本戦開幕の手前ということもありますし、今日はただ、情報交換をできればと思いまして」
「情報交換……? 他のライバルの情報のこと?」
「いえ。私がお持ちしたのはそういうものですが、貴方にお聞きしたいことは別にあるのです」
言いながら、ひよのは丁寧に靴を脱ぐと、窓の外に出して土を払った。
それを室内へと戻すと同時に、アサシンのサーヴァントが部屋へと入る。
漆黒の鬼を従えた、愛らしいおさげを揺らす少女は、そうして凜へと向き直ると、
「遠坂凜さん。貴方は今回のものとは別の聖杯戦争――前回の聖杯戦争からのリピーターですね?」
満面の笑みを浮かべながら、そう確認したのだった。
◆
厳密には今回の聖杯戦争は、冬木のそれとはイコールではない。
魔術師であることが参加条件になっていないなど、重要なところからどうでもいいところまで、随所に細かな違いがある。
そのことを凜はひよのに対して、包み隠さず正直に話した。
魔術師でないらしいひよのにとっては、大したアドバンテージにはなり得ないからだ。
こんなところで事を荒らげるよりは、無駄な争いを避けた方が、この場は得策であると考えた。
もちろん直接戦闘向けでないアサシンなど、ライダーの宝具の力を使えば、たやすく倒せる自信はあったが。
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「それにしてもあんた、どこでそんなことに気付いたのよ?」
不機嫌そうな顔で凜が問う。
今回のひよのの問いかけは、机に散らばった資料を見て、咄嗟にしたものとは思えない。
間違いなく以前より情報を収集し、聖杯戦争の関係者であると確信した上で、それを聞くためにやって来た者の態度だ。
「それは企業秘密です♪」
そんな凜の問いかけに対し、これ以上ないほどに快活な笑顔で、ひよのはそう答えたのだった。
アサシンは先ほどああ言っていたが、よっぽどこいつの方が「よく調べている」。
その底の見えない態度を見て、凜は癪に感じながらもそう評していた。
「……それで? あんたも情報を持ってきたって聞いたけど、それはちゃんと使えるものかしら?」
「ええ。私は今日までの時点で、既に8騎のサーヴァントを確認し、うち6騎のマスターの身元を割り出しています」
「はっ……!?」
思わず声が上がってしまった。
8騎。8騎と言ったか。せいぜい1騎か2騎くらいを見たことがあるんだろうと思っていたが、そこまでいくか。
「もちろん、これまでに何度かごたごたが起きているようですから、その中には既にリタイアしている人もいるかもしれませんがね」
ああでも、確かにこの女なら、やってのけるかもしれない。
事も無げにそう言うひよのを見て、凜はがっくりと肩を落としながら、思った。
どうもこいつと話していると、随分と体力を消費してしまう。
掴み所のない態度と、さらりと爆弾発言を放ってくるのとが、想像以上に精神にクる。
「ですから、今後貴方が私と協力関係を築き、不可侵の関係を約束してくれるというのなら、私は喜んで貴方のために、情報を提供させていただきますよ」
聖杯戦争の情報を聞いたばかりだが、ついでにそれくらいは求めさせてもらうと、言った。
『どうする?』
直後に声を発したのは、ライダーだ。
もっともそれは肉声ではなく、パートナー間でのみ通じる、念話による問いかけだったが。
『信用できるとは思うわ。多分こいつの地獄耳なら、その半分くらいの数は調べられる』
返答は肯定だ。凜は情報収集能力という一点において、この来訪者を信用した。
もとより学園中の人間の弱みを握っていると、悪名が轟いていた新聞部長だ。
その上ライダーとの会話でしか口にしていない、冬木の聖杯戦争について、正確に認識してきている。
盾とするだけの価値がある情報を、こいつが握っているというのは、間違いないと見ていいだろう。
「……あたしがあんたをここで殺して、データを盗み取る可能性は?」
であれば次に考えるのは、それをいかにして手に入れるかだ。
同盟締結以外の形で、手っ取り早く入手できるか。それが何よりの気がかりだった。
「あり得ませんよ。私は既に手持ちのデータを、全て消去していますから」
「っ」
「これまで収集したデータは、全てここに納めています」
逆にこの命が失われれば、ここに集めてきたデータは、全て闇に葬られるのだと。
己が頭を指しながら、ひよのが言った。
ハッタリかもしれない。しかしリアリティもある。
6人分くらいの住所氏名なら、確かに暗記できてもおかしくはない。こちらを牽制するために、データを消すという可能性もあり得る。
彼女の言うとおり、彼女を殺せば、情報が失われるという可能性は、十分にある。
「じゃあ、あんたを捕まえて拷問して、情報を吐かせるという可能性は?」
「それこそあり得ん。サーヴァントである俺がそれを許さん」
そこで睨みをきかせたのが、背後に立ったサーヴァントだった。
黒鬼姿のアサシンは、既にその変身を解いていた。素肌むき出しの上半身に、黒いロングコートを羽織っているという、独特なルックスの青年だ。
確かにマスターに対しては、監禁し拷問を加えるという行為は意味をなさない。
何故なら令呪さえあれば、どこからでも強制的にサーヴァントを引き寄せ、対処させることができるからだ。
とてもそんな状況では、拷問に専念することなどできそうにない。
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「……まぁ、そうでしょうね」
故に凜もこれに関しては、素直にそう言って引き下がった。
「分かったわ。あんたのことは見逃してあげる。その代わり新情報が入ったら、逐一あたしに知らせなさいよ」
「ええ、それはもちろんです。今後とも良きパートナーとして、末永くよろしくお願いしますね」
きっとこいつの魂胆としては、自分に他のマスターを、できるだけ多く倒させるつもりなのだろう。
情報を与えることで戦況を加速させ、労せず共倒れへと持ち込む――そうして自分を利用する気だ。
それでもこいつのちらつかせる餌が、十分に魅力的なのは事実だ。そしてどの道他のライバルは、全員蹴散らさなければならないのも確かだ。
いいだろう。毒を食らわば皿までとも言う。
お望み通り提案に乗って、踊ってみせようではないか。
不本意ではあるが、覚悟を決めて、凜はひよのの要求を呑んだ。
「では早速、この近くのサーヴァントについて、情報を提供させていただきますね」
言いながら、ひよのは懐へと手を伸ばす。ごそごそとポケットから取り出したのは、何枚かの写真だ。
ちくしょうめ。結局残ってるじゃないか。
まぁ確かに容姿などは、口頭で他人に伝えることはできないから、これだけは保管していてもおかしくはないかもしれないが。
「ちょうどこの近辺に拠点を置いているのが、このアーチャーのサーヴァントです」
差し出された写真に写っていたのは、これまた異形の鎧だった。
生身の部分が全く見えない、全身鎧ずくめといった様子だ。あるいはひよののアサシンのように、変身するタイプの英霊なのだろうか。
「それでこいつのマスターなんですけど、これが先ほど申し上げた、素性の分からないマスターでしてね……」
そこまで言っておさげの女は、不意にその先の言葉を濁した。
これまで自信満々な彼女にしては、随分と似つかわしくない口ぶりだ。
そもそもここまで特定しておいて、素性が分からないとはどういうことなのだ。
サーヴァントだけでなく、マスターすらも、別の写真に写しているというのに。
「……家がないみたいなんですよ、この人……」
「………………は?」
続く言葉を理解するのに、一瞬の間を必要とした。
ぼさぼさの金髪を腰まで伸ばし、ボロ布に身を包んだマスターを、結崎ひよのはそう紹介した。
【開幕1日前・夜/遠坂邸】
【遠坂凜@Fate/stay night】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:無し
[道具]:宝石魔法セット一式、本聖杯戦争に関する調査メモ一式
[所持金]:貧乏(ギリギリ一人暮らしを維持できるレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.今回の聖杯戦争に違和感。その正体を知りたい
2.ひよのと同盟を組み、情報を提供してもらう
[備考]
・アサシン(輝島ナイト)のパラメーターおよび宝具を確認済。
・本会場と現実の冬木市との差異を調査済。
【ライダー(涼邑零)@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣×2
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:特になし。マスターに従う
1.凜ちゃんを守る
[備考]
無し。
-
【結崎ひよの@スパイラル〜推理の絆〜】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:無し
[道具]:通学鞄、サーヴァントの写真
[所持金]:普通(一人暮らしをできるレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.他のマスターに情報を提供し、潰し合いを加速させる
2.凜と同盟を組み、ターゲットから外してもらう
[備考]
・ライダー(涼邑零)、アーチャー(シド)を含む8騎のサーヴァント、および遠坂凛を含みヴィラルを除く6人のマスターの身元を確認済。
・ライダー(涼邑零)のパラメーターを確認済。
・新聞部室PC内のデータを破棄。
・冬木市の聖杯戦争の存在を認識。
【アサシン(輝島ナイト)@セイクリッドセブン】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デジタルカメラ
[思考・状況]
基本行動方針:特になし。マスターに従う
1.ひよのを護衛する
[備考]
無し。
-
投下は以上です
-
投下乙です!
何か波乱があるかと思いきや、ここは一旦同盟を結びますか。確かにその方が、双方にとってメリットがありますしね。
それにしても、考えて見たらこの二人のサーヴァントはどちらも凄い経歴の持ち主なのですよね……
-
投下乙です
両方とも優勝狙いで一旦同盟を結ぶとかやっかいなあ
まだ途中で仲違いの可能性はあるがこのコンビとして機能し出すと対主催が苦戦しそう
-
ここ最近ゲームを買ったため、若干執筆が滞り気味です。申し訳ありません
それではこれより、第2話を投下します
-
頭とはいえ9月ともなれば、夜風も涼しくなってくる頃だ。
ましてや未遠川のせせらぎを耳にし、対岸に新都を望む河川敷では、なおのことの話だった。
「しっかし何とも笑える話だわなぁ」
それでも超越者たるサーヴァントは、寒さに震えることもない。
帽子頭のアーチャーは、焚き火に当たるマスターを見下ろしながら、からからと笑い声を上げて言った。
「こんな所に閉じ込められてまで、与えられた役目がホームレスだもんな。うちのマスターは」
「外の世界でも似たようなものだ。今更気にするつもりもない」
眉ひとつ動かす素振りも見せず、ヴィラルは事も無げに言い放つ。
襤褸から手を伸ばし、焚き火で焼いていた川魚を取ると、鋭い牙で貪った。
マスター・ヴィラルには家がない。この河川敷の周辺で、段ボールを被って眠る浮浪者だ。
どういう経緯でそうなったのかはボカされていたが、海外から流れ着いた人間だったので、身分を特定する戸籍もない。
彼が結崎ひよのの探索を逃れ、個人情報を掴ませていなかったのには、そういった理由が存在していた。
「といっても、これはこれで便利なもんかもなぁ」
言いながら、アーチャーが足元の石を拾い上げ、川に向かってひょいと投げる。
ぼちゃんと響いた音と共に、水面には小さな波紋が生じた。
ホームレスであることのメリットは、戸籍がないことだけではない。
社会的立場を持たないということは、一日の全てを聖杯戦争に費やし、自由に行動することができるということだ。
おまけに知り合いもいないから、態度の変化や令呪の出現を、誰かに見咎められることもない。
事実として、予選で他のサーヴァントを葬るという、派手な行動を起こしてなお、今日まで何の襲撃も受けなかった。
あとは下手を打たない限りは、このまま身軽さを活かして、のらりくらりと立ち回れるはずだ。
「そろそろだな」
その辺で手に入れた時計を見ながら、ヴィラルがそう独りごちる。
深夜0時を間近に控えてなお、彼の顔色に変化はない。生体改造を受けた彼は、睡眠を必要としないのだ。
これもまた、彼のフットワークの軽さに拍車をかけている要素だ。
あとは本人のやる気と、魔術師適性さえあれば、完璧なマスターだと言えるのだろうが、どうやら贅沢は言えないらしい。
「で、どうする? 本戦が始まったとあれば、他のマスターも一斉に動き出すぜ」
「何事も先手必勝だ。こないだの戦いと同じように、こちらを認識されるより早く、遠距離からの狙撃でケリをつける」
「サーヴァント同士で戦ってるところに、横からこっそり忍び寄れば、警戒されることもないってわけね」
こないだ、というのは言うまでもなく、アーチャーが力を示すために、他のサーヴァントを襲った戦いだ。
あの時は他陣営同士の交戦を目印に、ターゲットを探し出し殺害した。
あの手を継続して使えるのなら、確かに楽に事を運べるだろう。元よりアーチャーは遠距離戦が本分のクラスだ。反対する理由もなかった。
「――そっか。なら残念だけど、その作戦はご破産だな」
と。
その時だ。
不意に夜風の向こうから、知らない声が響いてきた。
はっとそちらの方を向く。ヴィラルとアーチャーの双方が、同時に声の主を睨む。
「なんたって先手を取るのは、お前らじゃなく俺の方だからな」
いつからそこにいたというのか。
土手からこちらを見下ろしているのは、黒コートを羽織った若い男だ。
闇の奥から湧き出るように、突然姿を現した男は、両手に双剣を握り締めていた。
サーヴァントの気配だ。それほど強そうには見えないが、生身では何の力もないアーチャーよりは、いくらか動けそうではある。
-
「ライダーのサーヴァントか……」
「ご名答。もうすぐ0時を回るからな。さっそく第1戦、取らせてもらうよ」
律儀に本戦開幕の時間を狙ってきたということか。
芸が細かいというべきか、余裕ぶっているというべきか。どうせこれ以上マスターは増えないのだから、さっさと襲ってしまえばよかったのに。
そう思いながらもアーチャーは、懐のアイテムへと手を伸ばす。
相手が開戦まで待ってくれるというのは、ありがたい話には違いないのだ。
何せ自分が戦うには、宝具発動のプロセスが要る。それも何もない所から、突然取り出すわけにはいかない物なのだ。
「やれやれ。俺なんか正面から来れば余裕だってか?」
取り出したのは金属の光と、月光に透けるクリアーパーツだ。
赤と銀色のメタリックは、腰に巻かれてベルトとなる。
水色の透明な錠前に備わった、桜桃の模様が光を放つ。
『Cherry Energy!』
音声と共に、夜空が裂けた。
さながらジッパーを下ろすかのような、独特な現象を伴って、空間に穴が空いたのだ。
そこから姿を現したのは、巨大なサクランボとしか言いようのない、何とも奇妙な物体だった。
「ひゅう」
これにはさすがに驚いたのか、ライダーのサーヴァントが口笛を鳴らす。
驚くなかれ、これこそが、アーチャーのサーヴァント――シドの宝具だ。
異界の果実・ロックシードを、人の纏う鎧へと変えた、「赤き眼光の狩人(チェリーエナジーアームズ)」なのだ。
「変身」
『Lock on!』
帽子を目深にかぶり直し、宝具の発動を宣言する。
腰へと巻いたベルトが光り、頭上のサクランボを誘導する。
『Soda.』
けたたましい電子音声と共に、それが落ちた先はアーチャーの頭部だ。
巨大なサクランボが光を放ち、すっぽりとアーチャーの頭を飲み込んだのだ。
これだけなら冗談で終わったかもしれない。しかし彼が戦った舞台は、神話であって喜劇ではない。
ルビーの光を放つ果実は、神秘の鎧へと姿を変える。
『Cherry Energy Arms!』
文字通りの変身だった。
鋼のサクランボは変形し、鎧のような形に展開されたのだ。
アーチャーの全身をフィットスーツが多い、更にその上に鎧が重なる。
サクランボの下から現れた頭部は、異形の複眼を備えた、フルフェイスの兜へと変貌する。
パラメーターが跳ね上がった。更に手には弓矢が現れた。
アサシン・輝島ナイトがカメラに収めた、赤い鎧の男の姿だ。
これこそがシドの戦闘形態――アーマードライダー・シグルドである。
「あんま調子に乗ってると、足元掬われて怪我するぜ」
挑発に挑発で返しながら、赤い瞳は周囲を探る。
黒服のサーヴァントのマスターは、未だ姿を現していない。ということはどこかに隠れて、こちらを窺っているということだ。
「千里眼」なるスキルの恩恵なのだろうが、サーヴァントとして召喚されてから、えらく目が冴えている。
であれば近距離に隠れていれば、十分に目視での捜索は可能だ。
「……そこだ!」
標的はすぐに見つかった。
すかさず真紅の弓を構え、エネルギーの矢を放った。
強化型アーマードライダーの共通装備・ソニックアロー。その光の鏃が唸りを上げて、街路樹目掛けて殺到する。
瞬間、着弾。そして炸裂。
轟然と響く爆発音と共に、赤い炎が光を放つ。
「っ!」
刹那、飛び出す影があった。
爆炎の逆光を浴びながら、はためく黒髪を視界に捉えた。
ライダーのマスターは生きている。
赤い長袖を纏った、ツインテールの少女が飛び出してくる。
この瞬間、まさしく0時00分。
聖杯戦争本戦の開幕と同時に、第1回戦の火蓋が切って落とされた。
-
◆
さすがに狙撃を得意としているだけあって、大した眼力と注意力だ。
爆風に煽られ跳躍しながら、遠坂凛はアーチャーを睨む。
このまま隠れて指示を出し、事を安全に運ぼうかと思ったのだが、それはご破産に終わったようだ。
ライダーが言った先ほどの言葉が、そのまま跳ね返ってきたことになる。
(冗談じゃない!)
だからとて終わりにはさせない。
このままやられてやるわけにはいかない。
「はっ!」
指先から黒き光を放った。
凛の得意とするガンド撃ちだ。超高濃度の魔力により、物理的破壊力を伴ったそれは、フィンの一撃と呼称される。
もっとも、一撃で終わらせるつもりなどない。文字通り雨あられを食らわせてやる。
連続発射した魔力の弾は、アーチャーの背後に立つ男へと向かう。
すなわち襤褸布に身を包んだ、金髪のマスターに向かってだ。
「ふっ!」
しかしながら、相手も素早い。
最小限のバックステップで、ガンドの一斉掃射をかわす。
あまつさえ弾け飛ぶ光を掻き分け、こちらへと突っ込んできたほどだ。
「させるか!」
「そりゃこっちの台詞だわなぁ!」
ライダーの剣が敵マスターを狙った。
しかし双剣が触れるよりも、アーチャーが動くのが早かった。
素早く間合いを詰めた鎧が、弓を振り回し攻撃を阻む。先端に備わった刃が、ライダーの斬撃を受け止める。
そしてその脇をすり抜けるように、マント姿のマスターが迫った。
低く構えたその姿勢は、まるで肉食獣のようだ。
「ちぇりゃぁぁっ!」
奇声と共に、鋭く一閃。
鈍色に光る斬撃を、反射的な動作で回避。
「たぁっ!」
跳び退る勢いで体をひねり、空中回し蹴りでカウンターを仕掛けた。
それを左腕で防がれる。掴まれる前にすぐ飛び退く。
河原に着地しながら標的を見やった。一瞬のやり取りを繰り広げた、敵マスターを見定めた。
右手で振り下ろした刃は、ホームセンターで買ったような鉈だ。どうしてそれを選んだのは不明だが、危険な刃物であることは間違いない。
身体能力に物を言わせた、ラフな格闘戦スタイルは、魔術師のそれには見えなかった。
持久戦に持ち込めば、魔力で勝るこちら側が、サーヴァント戦で勝利できるだろう。
しかし、それには距離が詰まりすぎている。
生憎と拳法はかじった程度だ。まともにあのスピードを相手していては、いずれ追い詰められてしまうだろう。
「ライダー! 全宝具の解放を許可するわ! 一気に仕留めてやりなさい!」
であれば狙うは短期決戦だ。
生憎とアーチャーのパラメーターは、生身のライダーを凌駕している。
あれを速攻で叩き潰すには、宝具の解放が不可欠だ。賢い手とは言えないが、ここはそうする他に安全策はない。
-
「了解だ!」
言いながら、ライダーが四肢に力を込めた。ふんばりで瞬発的に力を引き出し、アーチャーの刃を弾き飛ばした。
バックステップで下がると同時に、両手の刃を高く掲げる。頭上でぐるりと円を描き、天空に白い軌跡を描く。
光るゲートから飛び出したのは、銀色一色の甲冑だ。
それらがまたたく間に装着され、最後に狼の面が頭部を覆った。
アーチャーのそれとは対照的に、変身は一瞬で完了した。
その名も銀牙騎士・絶狼(ゼロ)。宝具「銀牙騎士・絶狼(ゼロのよろい)」を纏って顕現する、退魔の魔戒騎士である。
「おっとぉ!」
一瞬驚くような声が上がった。
それでもやはり慣れているのか、アーチャーの動作に淀みはなかった。
すぐさま弓矢を構え直し、再び光の矢を放つ。
吹き荒れる閃光の嵐の中、しかしライダーはものともせずに、その渦中へと飛び込んだ。
「はっ! うらっ!」
双剣・絶狼剣が唸りを上げる。
白銀に煌めく双刃が、迫る赤熱を切り払う。
斬斬斬、と音を立て、閃光の矢を叩き落としていく。
あっという間に距離は詰まった。近距離戦はライダーの間合いだ。
「らぁぁっ!」
両の刃を振り上げて、跳躍と同時に叩き下ろす。
速度と重力を従えた、文字通り渾身の一撃だ。同格の敵が相手であれば、おいそれと受け止められるものではない。
アーチャーもそれを察したのだろう。最小限の動作でそれを回避し、追撃の刃で斬りかかった。
「ふん!」
真紅の斬撃を受け止める。火花と共に反発し合う。
無論それだけでは止まらない。闇夜に走る銀の剣閃は、次の瞬間流星雨と化した。
横薙ぎ、縦斬り、続いて突きだ。二刀流の手数を活かした、目にも留まらぬ連続攻撃だ。
手数の差もある。適性もある。ライダーの怒涛の攻撃を前に、たちまちアーチャーは防戦一方となった。
「舐めてくれんなよ……!」
『Cherry Energy Squash!!』
その瞬間何が起きたのか。敵マスターの攻撃をかわしながら、ちらちらと戦況を見ていた凛には、完全な把握はかなわなかった。
しかし電子音声が響いた次の瞬間、アーチャーの握る弓の刃が、ただならぬ光を放ち始めたのは、正確に視認することができた。
「おっらぁ!」
「どわっ!」
力任せに、刃を振り抜く。
炸裂する光が破壊力を伴い、絶狼剣へと襲いかかった。
爆発的に上がった威力は、刀ごとライダーを吹き飛ばす。眩い赤光が周囲に満ち、膝をつく甲冑を照らし出す。
「ハハッ! どうした、それで終いかぁ!」
アーチャーはなおも追撃を仕掛けた。
矢を放ちながらライダーに駆け寄り、更なる斬撃を仕掛けんとした。
態勢を立て直しながら、ライダーは辛うじて矢を叩き落とす。振り下ろされるアーチャーの刃を、両の剣を構えて防ぐ。
攻勢に変わったことに気を良くしたのか、アーチャーは更に追撃を仕掛ける。
乱暴な構えで斬りつける様は、チンピラが木刀を振り回すかのようだ。
-
「来い、マスター!」
斬撃を耐え凌ぎながら、ライダーが凛に向かって叫んだ。
「銀牙騎士・絶狼(ゼロのよろい)」には制限がある。タイムリミットの99.9秒は、間もなく消化しきってしまうだろう。
その状況で、この指示だ。であればライダーはもう1つの手を――最大宝具を発動する気だ。
「はぁぁっ!」
雄叫びと共に振るわれる、敵マスターの刃をかわす。
そのままライダーの元へと、脇目もふらず駆け抜ける。
「――『魔導馬・銀河(ギンガ)』 ァッ!!」
刹那、叫びと共に光が奔った。
ライダーの絶叫に呼応し、銀色の閃光が炸裂した。
「ぬおっ!?」
吹き荒れる莫大な魔力が、アーチャーの攻め手を吹き飛ばす。
よろめく複眼に映るのは、唸りを上げる霊獣の姿だ。
白銀の甲冑を全身に纏い、ライダーを乗せて吠え猛る、銀色の巨大な一角獣だ。
「Whinnyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」
これぞ「魔導馬・銀河(ギンガ)」。
100体の魔獣・ホラーを断ち、その力を示した魔戒騎士のみに与えられる、魔戒騎士専用の騎馬である。
同時にこの魔導馬こそが、ライダーとして召喚された涼邑零を、騎兵(ライダー)たらしめている宝具でもあった。
ライダーの後方につく形で、「魔導馬・銀河(ギンガ)」の背中へと飛び乗る。
銀牙騎士の背中を見やり、改めてそのステータスを認める。
確認できた筋力値はA。耐久値はB+へと向上していた。
この馬に乗ったライダーのステータスは、更に1ランクのパワーアップを果たすのだ。
加えて「魔導馬・銀河(ギンガ)」自体の力もある。この奥の手を使ったからには、もはや狙撃手など敵ではない。
「んの野郎っ!」
ようやく態勢を立て直したアーチャーが、再び例の矢を放った。
身をかわすまでもない。正面はサーヴァントが守ってくれる。
馬上で振り回された絶狼剣が、迫る光を次々と切り裂く。
「はっ!」
両足が腹を叩いた瞬間、一角獣は唸りを上げた。
夜を駆け抜ける彗星のように。
一条の光明とかした「魔導馬・銀河(ギンガ)」が、敵目掛けて猛然と突進した。
「どわぁっ!」
100体のホラーを狩った末に得られ、1000体のホラー相手にも立ち回った名馬だ。
ユニコーンの突撃を止めるには、アーチャーは役者が足りなかった。
竜巻のごとき勢いをまともに受けて、弓兵はみっともなく吹き飛ばされる。未遠川へと落ちた赤い鎧が、ばしゃんと盛大な水音を立てる。
それを見逃すライダーではない。ばしゃばしゃと足音を立てさせながら、「魔導馬・銀河(ギンガ)」を川の方へと向ける。
次は突進だけではない。刃を伴う本気の一撃だ。
「はぁああああっ!」
二刀を連結した刀が唸る。
銀牙絶狼剣と化した刃が、渦を巻いて闇夜に吼える。
その斬撃は過たずして、アーチャーの赤い鎧を捉えた。
「がぁああっ!」
斬――と降ろされた一撃が、深々とその装甲を抉る。
赤い破片をばら撒きながら、悲鳴と共に膝をつかせる。
一瞬の交錯の末に放たれた一撃。たった一打の剣閃であっても、その破壊力は十二分だ。
速度も重量も何もかも――全てを増した渾身の技は、先ほどまでの比ではない。
-
「後退だ! 退くぞアーチャー!」
そして敵のマスターも、勝敗が決したことを悟ったのだろう。
川岸から自らのサーヴァントへ、大声で撤退命令を下す。
「チッ……悪いなマスター、こっちも奥の手使うぜ!」
意外にも、アーチャーの行動は素早かった。
意地の悪そうな様子に反し、素直に引き際を見極めると、鎧は新たなアイテムを取り出した。
「S」の一文字が刻み込まれた、錠前のような物体だ。それを弓へと接着させると、今度は別のものを放り投げる。
『Connecting.』
電子音声と共に放たれた矢は、ライダーではなくそちらへと向いた。
『スイカアームズ! 大玉・ビッグバン!』
刹那、ふざけた音声と共に、投げたアイテムが巨大化した。
馬鹿でかいスイカが現れたかと思いきや、それががちゃがちゃと変形し、鎧武者のような形へ変貌したのだ。
「はぁ!?」
思わず、そう叫んでしまった。
一体何なのだこいつは。サクランボときて今度はスイカか。
どうしたらそんなふざけたものばかり、次々と繰り出すことができるのだ。
ばしゃんと盛大に水しぶきを上げ、眼前に立ちはだかるロボットを前に、凛はくらくらとした目眩を覚える。
「悪いがずらからせてもらう!」
そうしている間にもアーチャーは逃げ出し、みるみると遠ざかっていく。
やがてマスターを抱えると、そのまま土手へと飛び上がり、街頭へと消えていってしまった。
「待てこの!」
ライダーが「魔導馬・銀河(ギンガ)」を走らせて、その影を追いかけようとする。
しかしそこに立ちはだかったのが、先ほど現れたスイカ武者だ。
ロボットは巨大な刀を振り上げ、猛然と斬りかかってくる。
それを何とかいなしたものの、さすがに敵の奥の手もしぶとい。返された刀を構え直し、なおも追撃を仕掛けてきた。
「どうする!?」
「鎧の時間が残ってない! 悔しいけどここはこっちも撤退するわよ!」
ライダーの問いかけに対して、凛が下した決断が、それだ。
「銀牙騎士・絶狼(ゼロのよろい)」の制限時間は僅かだ。それが解かれれば戦力は落ちるし、「魔導馬・銀河(ギンガ)」を維持することも不可能になる。
そうなれば敵を追いかけることも、鎧武者を退けることもできない。であればこんな奴相手に、いちいち構ってもいられないということだ。
「仕方ない、了解だ!」
そうと決まれば話は早かった。元よりライダーの方も、そのつもりで構えていたのだろう。
騎馬に踵を返させると、そのまま川を下るようにして、水面を勢いよく走らせた。
そうして大きく迂回しながら、巨大なスイカ武者をやり過ごすと、鎧を解き戦線を離脱したのだった。
「まったく、幸先が悪いわね……!」
着地と同時に凛が走る。武者の視界から逃れるように、馬から降りて道路を走る。
口に出すのは簡単だが、実際とんでもない痛手だ。
奴は本戦が始まる前、地上で戦うマスター達を、ビルの上から狙撃したという。
そんな奴にこの戦いで、顔を覚えられてしまったのだ。であれば、町を歩いている最中に、報復を受ける可能性は、十分に有り得ると見ていいだろう。
(これがアーチャーを相手にするということか)
我ながら、改めて思い知る。
敵に回したことで初めて、かつて使役していたサーヴァントの――弓兵(アーチャー)の恐ろしさを理解する。
第5次聖杯戦争の際には、イレギュラーたる士郎を守ることに気を取られて、ろくな立ち回りができなかった。
故にあの赤コートのアーチャーも、アーチャーらしい使い方をしてやることが、ほとんどできなかったのだ。
そのつけが回ってきたということか。
知っていれば最初から、全開で奴を叩き潰し、逃げる機会など与えていなかった。
優勢に事を運んでいたというのに、こちらが敗北したような心地だった。
(こんなミスは繰り返せない)
これ以上無様な失敗はできない。
がんじがらめになる前に、確実に結果を出さなければ。
失敗の味を苦く噛み締め、凛は決意を固め直しながら、ライダーを伴い家路へと向かった。
-
【1日目・深夜/深山町・未遠川周辺】
【遠坂凜@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(2割)、疲労(小)
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:宝石魔法セット一式、本聖杯戦争に関する調査メモ一式
[所持金]:貧乏(ギリギリ一人暮らしを維持できるレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.今回の聖杯戦争に違和感。その正体を知りたい
2.ひよのと同盟を組み、情報を提供してもらう
3.アーチャー(シド)を警戒。狙撃に対して注意を払う
[備考]
・アサシン(輝島ナイト)のパラメーターおよび宝具を確認済。
・アーチャー(シド)のパラメーター、宝具、スイカアームズを確認済。
・本会場と現実の冬木市との差異を調査済。
【ライダー(涼邑零)@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:魔戒剣×2
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:特になし。マスターに従う
1.凜ちゃんを守る
[備考]
無し。
-
◆
拾った灰色の錠前は、立ちどころに姿を消してしまった。
恐らくは持ち主の元へと戻ったのだろう。アサシン――輝島ナイトはそう仮定する。
(あれがライダーの宝具か……)
なるほど凄まじい力だと、手にしたデジタルカメラで確認しながら、先の戦闘を回想する。
遠坂凛のことは知っていたが、実際に戦闘を目の当たりにしたのは、この戦いが初めてだ。
故にアーチャーとの戦いの様子は、一部始終を逃すことなく、空中からカメラへと納めさせてもらった。
本音を言うなら逃がすことなく、この場でアーチャーを仕留めてもらいたかったが、この際贅沢は言わないようにしよう。
それを言うなら、逃げた彼らを追いかけて、とどめを刺すことをしなかった自分も悪い。
(奴はここへは戻らないだろう)
随分と派手な戦いになった。
あるいは自分だけでなく、他のマスター達にも知られたかもしれない。
そうなればアーチャーのマスターは、ここには戻ってこないだろう。
追手を振り切ることを考え、縄張りを別の場所へと移すはずだ。逃してしまったということは、それも調べ直しということだ。
生前根無し草だったアサシンの言えることではないが、ホームレスの身軽さとは面倒臭い。
(まぁいい)
それについてはどうせ後から、己がマスターからも指示されるはずだ。それから考えればいいだろう。
そうやって思考を打ち切ると、アサシンは自らの宝具を発動し、翼持つ黒鬼へと姿を変えた。
そのまま透明な霊体と化すと、気配を断った隠密は、文字通り世界から消え失せたのだった。
【1日目・深夜/未遠川上空】
【アサシン(輝島ナイト)@セイクリッドセブン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デジタルカメラ
[思考・状況]
基本行動方針:特になし。マスターに従う
1.ひよのを護衛する
2.ひよのの元へ情報を持ち帰り、指示を仰ぐ。
[備考]
・アーチャー(シド)のスイカアームズを確認済。
・ライダー(涼邑零)の宝具を確認済。
・今後アーチャーのマスター(ヴィラル)は、縄張りを別の場所に移すだろうと考えました。
-
◆
「やれやれ、とんでもない目に遭ったぜぇ……!」
ぜいぜいと息を切らす様子には、普段の余裕は見られない。
まさに命懸けの逃避行だったわけだ。汗を浮かべるアーチャーを見やり、ヴィラルは状況を分析した。
(今後こんな展開が、山ほどあるということか)
狼の鎧を纏ったライダーは、恐ろしいまでの強敵だった。最後に召喚した馬を含めれば、宝具の性能はこちら以上だ。
奴が特段に強いのか、アーチャーが特段に弱いのか。あるいはどちらでもないのかもしれない。
しかしこういったケースが、今後二度と起こらないとは、とても断言はできなかった。
聖杯戦争とは、予想以上に厳しい。
改めて認識しなければならないことだ。
この事実を重く受け止めなければ、生き残ることなど夢のまた夢だ。今後は一層気を引き締めて、戦いに臨まなければならなかった。
「……ん?」
と、その時だ。
不意に妙な違和感を生じて、街頭の電柱を見上げた。
そこには特に何もない。3羽のコウモリが留まっているだけだ。
しかし3羽並んだそれらのうち、真ん中にいた1羽だけが、自分と目を合わせていた。
何故か知らないが、そのことが、妙に気がかりな気がした。
「おい、どうした大将?」
「いや……何でもない」
些細なことではないだろう。あるいは追い詰められたおかげで、ナーバスになっているのかもしれない。
その時はそんな風に考え、道端の石ころを拾うと、投げてコウモリを追い払った。
紛らわしい奴め、と思いながら、ヴィラルは襤褸を翻すと、そのままその場を後にしたのだった。
【1日目・深夜/深山町南部】
【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:魔力消費(3割)
[令呪]:残り三画
[装備]:鉈
[道具]:なし
[所持金]:超貧乏(ほとんどゼロ)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る
1.ライダー(涼邑零)の追求を逃れる
2.元の寝床には戻れないだろう。他の行動拠点を探す
[備考]
・ライダー(涼邑零)のパラメーターおよび宝具を確認済。
【アーチャー(シド)@仮面ライダー鎧武】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:ゲネシスドライバー、シドロックシード、スイカロックシード×2(片方充電中)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手にして人間を超える
1.今はヴィラルに従う。聖杯を取り合うことになったら裏切る
2.ライダー(涼邑零)およびそのマスター(遠坂凛)に対しての憎悪。次に会ったら今度こそ仕留める
[備考]
無し。
-
◆
場所は大きく変わり、民家。
そこに住まう少女の部屋は、既に真っ暗になっている。
明かりを落とした住民は、ベッドに体を横たえながら、すやすやと夢の世界に没入していた。
「ほう」
そんな中で異彩を放つのが、床に伏せた雄ライオンの巨体だ。
もう1匹のアサシン――スカー。彼のマスターである呉キリカが、この家この部屋の主だった。
アサシンに相対するのは、1羽のコウモリだ。彼が「偽・百獣の王(キング・オブ・プライド)」によって、支配下に置いていた動物だ。
既に彼は10匹近い獣を、自らの縄張りへとばら撒いている。何か状況が動けば、逐一自分に知らせるよう、彼らに暗示を刷り込んでいる。
そしてそんな密偵の1羽が、遂に情報を掴んだのだ。町の南方で発生した、サーヴァント同士の戦いを見つけ、アサシンへと報告しに来たのだ。
「ご苦労。下がっていいぞ」
前足でジェスチャーをしながら、コウモリを配置へと戻らせる。
ちょうどいいタイミングでちょうどいい情報が手に入った。これなら「手土産」としては申し分ないだろう。
であれば例の「訪問」も、もう少し早めてもいいかもしれない。
幸いにして先方は、夜に活動することを好んでいるようだ。まだ1時を回ったばかりの今なら、きっと起きているだろう。
ならば善は急げというやつだ。今すぐに足を運ぶとしよう。
「おい、起きろマスター。出かけるぞ」
「ん〜……? 何だいアサシン、こんな時間に……」
むにゃむにゃと寝ぼけ眼をこするキリカを、無理やりに揺らして叩き起こす。
情報が漏れるようなことをしていない以上、いきなり攻め込まれることもないだろうと、そのまま寝かせておいたマスターだ。
それを反故にしているのだから、機嫌を悪くするのももっともだろう。
それでも、今は起きてもらう。情報が鮮度を保っているうちに、迅速に行動を起こさなければ。
「ほら、さっさと着替えるんだ。向こうまではおれが乗せてってやる。だから早く準備しろ」
自然を離れた動物というのは、こうもだらけてしまうものなのか。
そんなことを考えながらも、未だ覚醒しきっていないキリカを、アサシンは急かしたのだった。
【1日目・深夜/深山町・呉家】
【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:寝ぼけ
[令呪]:残り三画
[装備]:パジャマ
[道具]:なし
[所持金]:貧乏(子供の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.難しいことはアサシン(スカー)に任せる
2.アサシン(スカー)が出かけたいようなので、ついて行く
[備考]
無し。
【アサシン(スカー)@ライオン・キング】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手にしてプライド・ランドに返り咲く
1.真っ向から戦うことはしない。能力を活かし、闇討ちに専念する
2.今はキリカを立てておく。聖杯を手に入れる瞬間には蹴落とす
3.とある人物に会うために出かける
[備考]
・アーチャー(シド)のパラメーター、宝具、スイカアームズを確認済。
・ライダー(涼邑零)のパラメーターおよび宝具を確認済。
-
投下は以上です
時間も時間なので、Wiki更新はまた後から
-
投下乙です
零は初戦の勝利おめでとう!
凛も聖杯戦争経験者で優秀な魔術師だし、この陣営はスタンダードに強いなあ
シドはさすがに相手が悪かった、先に発見されたことが一番の敗因かな
そして暗躍するナイトとスカー、今回一番得したのはこの2陣営かな?
-
随分久々になってしまいましたが、第3話の投下を行います
-
ざあざあと響くシャワーの音が、今は雨音のように聞こえる。
そんな風に思えるのは、本人の気分が沈んでいるからか。
起伏に富んだグラマラスな肢体を、温かな雫で濡らしながら、マリア・カデンツァヴナ・イヴは思考していた。
「………」
とうとう始まってしまったのだ。
サーヴァント同士を争わせる戦い――聖杯戦争というものが。
自分の命を狙っている、素性の分からない参加者達が、この場には13人もいる。
その上LiNKERのない現状では、身を守るためのシンフォギアも、起動させることすらできない。
深夜を回ったこの時間まで、眠れずに起きていた神経の細さには、ため息の1つでもつきたくなる。
(結局、私は)
まだ覚悟を固めきれていないのか。
この期に及んでなおも自分は、戦いに恐怖し続けているのか。
世界を敵に回すよりも、たった14組のバトルロイヤルの方が、遥かにマシなはずだというのに。
「………」
蛇口をひねり、シャワーを止める。
狭いが廃病院の薄暗いそれに比べれば、天国のようなバスルームだ。
この戦いさえなかったならば、もう少しは穏やかな生活を、満喫できたのかもしれないと。
そう考えながら、マリアは、ひたひたと足音を立て脱衣所に向かった。
◆
部屋ではベッドに座り込みながら、自分と同年代くらいの男が、テレビのリモコンをいじっている。
次々とチャンネルを切り替える様は、面白いと思える番組が見つからず、退屈しているように見えた。
こんな状況下でこれとは、さすがに英霊だけあって、場慣れしているということか。
「言いつけ通り、覗きに来なかったのは感心するわ」
タオルで髪を拭きながら、パジャマ姿のマリアが言った。
サーヴァントには霊体化の能力がある。透明化しあらゆる知覚から逃れ、あらゆる物体をすり抜ける力だ。
うら若き乙女1人の入浴シーンなど、覗き見ようと思えば簡単にできる。
「要らん心配だと言っただろう」
それを顔色1つ変えず、やらないと宣言していたのは、やはり英霊だからなのだろうか。
少しむっとした表情を浮かべ、自身のサーヴァント・ランサー――駆紋戒斗はそう言った。
「しかし、えらく長かったな」
「女は男と違って、時間がかかるものなのよ」
髪の毛1つの手入れのためにも、随分と手間がかかるのだからと。
言いながらマリアは、向かい側にある椅子へと腰掛け、小さなテレビの映像を見やる。
仮想空間の中では、留学してきた女子大生という身分を与えられた彼女だ。
課題やレポートの作成のため、腰を据え臨む机と椅子は、ちゃんと部屋に用意されていた。
「どうだか。それだけではなさそうにも見えるがな」
見透かされているのか。
ランサーからかけられた言葉に、ぎょっとした顔を浮かべる。
図星をつかれたマリアは、どう答えていいか分からず、言葉に詰まった。
「その、カイ――あ、いえ、ランサー」
「家でくらい呼びやすいように呼べばいい。怯えずとも、ここには敵の目はないはずだ」
目立つことはしていないからなと、ランサーが言った。
「……悪いわね、情けないマスターで」
表情を曇らせて、うつむく。
本戦が始まるまで間はあった。それでも覚悟を固めきれずにこのざまだ。
こんな情けないマスターでは、失望されて当然だろう。
-
「だとしても、勝つためには必要な存在だ」
マリアの言を否定はしない。
それでも存在までは否定しない。
情けないが無用ではないと、ランサーは言った。
「……? 貴方、聖杯は要らないんじゃなかったの?」
「だからと言って負ける気はない。どんな戦いであっても、敗北は俺のプライドが許さん」
リモコンをベッドへと置いて、拳を握りしめながら、言う。
相変わらず、自分とは正反対の男だ。自身の矜持を押し通すことに、微塵の恐怖も感じていない。
同じサーヴァントが相手なら――否、たとえ自分より強いサーヴァント相手でも、こいつは躊躇うことなく立ち向かうだろう。
癪に障る態度ではあるが、それが羨ましくもあった。まるきり同じになりたいとまでは思えなかったが。
「強いのね、カイトは」
自分とは違って、という意味を込めて。
素直に、マリアはそう口にしていた。
「……本当に強い奴は別にいる」
それでもその時のランサーは、意外にも肯定をしなかった。
どこか遠くを見るような目で、ぽつりとそう呟いていた。
「え……?」
不思議と、そのことが気になった。
彼の発したその言葉には、何か特別な意図と響きが込められているような気がしてならなかったのだ。
これまで強い態度でいたあのランサーが、そのたった一言を口にした時だけ、明らかに態度を変えたのだから。
「出歩く気がないのならさっさと寝ろ。寝不足では勝てる戦いも勝てなくなるぞ」
それでもランサーはその件について、それ以上言及することはなかった。
テレビを消して立ち上がり、部屋の照明を落とすと、自身は廊下へと消えていった。
「………」
真っ暗になった部屋の中で、マリアはランサーの背中を追う。
サーヴァントは睡眠を必要としない。多少の魔力回復にはなるが、そもそも消耗をしていない。
恐らくは自分が寝て起きるまでの間、夜風にでも当たろうとしているのだろう。
視線を感じて寝づらいと、マリアが彼に訴えて以来、ランサーはそうするようにしていた。
(……寝るか)
結局マリアは言われた通り、睡眠を取ることにした。
明日の講義の始まりは遅い。目覚まし時計は要らないだろう。
男の暖かさが残る布団に、己が身を横たえて、瞳を閉じる。
「セレナ……」
こんな時にも縋ってしまうような、情けないお姉ちゃんでごめんね、と。
そんな意図を込め呟きながら、亡き妹の笑顔を想った。
セレナの悲劇を繰り返さないよう、平和な世界を作りたい。そう思っている間は、何とか戦えそうな気がする。
それに部屋の外ではランサーが、外敵が来ないよう見張ってくれている。
そのことを思えば、多少ばかりは、安らかに寝付けそうな気もした。
-
◆
「滑稽か?」
弱腰なマスターの下について、命令を受け戦うことしかできない自分は、そんな風に映るのかと。
星空の向こうに視線を向けて、ランサーは1人そう呟く。
「いや……お前はそうは笑わんのだろうな」
あいつはそういうタイプではない。
だからこそやきもきもさせられたし、そしてそれを貫いたからこそ、強者として認めることができた。
近所のビルの屋上に立ち、夜空を見上げるランサーは、しばし過去へと思いを馳せる。
(葛葉)
始まりの男、葛葉紘汰。
アーマードライダー・鎧武を名乗る男。
同じアーマードライダーとして、時にぶつかり時に共闘し、最後には世界の在り方を賭け、壮絶な死闘を演じた相手だ。
どれほどの困難と絶望に、心を傷つけすり減らそうとも、それでも決して逃げることなく、泣きながらでも前に進む。
自分がとどめを刺した男に、泣きながらそう宣言した彼こそ、本当に強いと思える男だった。
それは並大抵のことではないはずだ。痛みや躊躇いなど感じたことのない、自分のようなタイプの男には、想像もつかない苦しみであるはずだ。
それでも彼は屈することなく、痛みや苦しみをこらえながらも、必死に前へ進み続けた。
時にはそんな姿勢こそが、痛みを知らない者よりも、強く尊く映ることもある。
(あいつはどうだ)
そんな彼や自分と比べて、彼女は――マリア・カデンツァヴナ・イヴはどうだ。
彼女は自分や紘汰と似ている。生い立ちや今の有り様に、共通している部分が見られる。
東欧の紛争地帯に生まれ、両親と家を失った経歴は、程度の違いこそあれど、ランサーのそれと共通していた。
自分では敵わない力を前に、寄辺や大切なものを奪われた。その一点でランサーとマリアは、近しい部分があると言えた。
そして紆余曲折を経て、今現在彼女が身を投じているのは、誰かを守るための戦いだ。
自分より年下の少女達を、彼女らだけで戦わせることがないよう、マリアは戦場に立つことを選んだ。
そうしなければ少女達は、組織の矢面に立たされて、今以上に辛い立場になったからだ。
(まぁ……あれが普通なんだろう)
それでも彼女には自分とも、紘汰とも違うところがある。
戦う覚悟というものが、決定的に欠けているのだ。
生来気弱なのだろう。他者と戦うということに対して、腰が引けてしまっている。
いいやあるいは、そうしたことに対して、臆せず立ち向かえた自分の方が、異常に図太かったのかもしれない。
思えばあの紘汰ですらも、戦う覚悟を固めるまでに、随分と回り道をしていたのだ。
(まぁいい。あくまで戦うのは俺だ)
それでも、刃を交えるのは彼女ではない。
サーヴァントと戦うのはマスターではなく、同じサーヴァントである自分の仕事だ。
己さえ倒れることがなければ、戦い続けることはできる。
であればそうすればいい。彼女でも誰でもない自分こそが、前線で立ち続ければいい。
そう思いながら、周囲を見渡し、敵の姿がないかを探った。
新都の中でも北側に位置する場所だ。少し高い所へ上れば、海も見えてくるだろう。
既に準備は整えてある。この周辺の地形は予習済みだ。
どこから攻めて来られても、逆にどこから攻めるとしても、十分に対応することができる。
(誰にも遅れを取るつもりはない)
ここがどこでも、どんな戦でも、俺の前を走らせはしない。
固く心に決めながら、ランサーは冬木の町を見下ろした。
-
【1日目・深夜/新都北部・マリアのアパート】
【マリア・カデンツァヴナ・イヴ@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]:健康、睡眠中
[令呪]:残り三画
[装備]:白銀のシンフォギア
[道具]:シンフォギア(ガングニール)
[所持金]:普通(一人暮らしをできるレベル)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.明日は大学に行く。目立つところの方が、奇襲を受ける確率は低いかもしれない
2.具体的に何をどうすればいいかは分からない。まだまだ模索中
3.戒斗に迷惑をかけているとは思う。何とかしたい
[備考]
無し。
【1日目・深夜/新都北部・ビル屋上】
【ランサー(駆紋戒斗)@仮面ライダー鎧武】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:戦極ドライバー、ゲネシスドライバー、ヒマワリロックシード×3、トランプ
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い。全てのサーヴァントを倒し勝利する
1.素質は感じるが、今のマスターではまだ当てにできない。自分が頑張るしかない
[備考]
無し。
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投下は以上です
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第4話の投下を行います
-
「榊を知ってるだって?」
自室で目を丸く見開きながら、キリトが素っ頓狂な声を上げた。
「ああ……その、生前に戦り合った相手なんだ」
対するセイバーのサーヴァント・ハセヲは、居心地の悪そうな顔でそう返す。
生前、という表現は嘘だ。
ハセヲ――三崎亮は死人ではない。あくまで生きたままハッキングをし、この場に侵入してきたに過ぎない。
わざわざ嘘をついているのも、そうした特殊な立場であることがバレて、悪目立ちすることを避けるためだった。
だいたい、当のハセヲ自身ですら、現状を飲み込みきれているわけではないのだ。
正直に身の上を話したところで、どう説明すればいいというのか。
「ってことはあの榊って奴も、セイバーと同じ所から来た英霊ってことか……」
同じ所、というのは、英霊の座だとかいう場所だったか。
何でも世の中には、歴史上の英雄の魂が逝き着く、死後の世界のような場所があるのだそうだ。
それが現実にあるものなのか、この世界観の設定なのかは、ハセヲの知るところではない。
「どうだかな……」
ハセヲの口を突いたのは、否定の言葉だ。
しかしその要因は、英霊の座という存在について、懐疑的だったからというわけではない。
「? どういうことだよ?」
「どうも違和感が拭えねぇ。アイツは、あんな大人しいタマじゃなかったはずだ」
過去に戦った榊とは、感じが違うような気がしたからだ。
The World R:2のプレイヤー・榊は、リアルでは役者をしていたと聞く。
しかし一向に売れる気配もなく、満たされずにいた自己顕示欲を、ネットゲームで発散していたのだそうだ。
実際彼の言動は、日頃からAIDA感染した時に至るまで、徹頭徹尾芝居がかったものだった。
無論先の登場時も、そうした気配があったことは否定しない。
だが自己顕示欲の塊である榊が、あんな地味な振舞いで満足するのだろうか――そこがどうにも引っかかっていたのだ。
「つまり、偽物ってことか? 本人を真似して作った、人工知能みたいな」
「かもな。作り物の生命を、サーヴァントとしてでっち上げるくらい、聖杯の力ならワケねぇだろ」
言いながら、ハセヲは後頭部で腕を組むと、座っていた椅子にもたれかかった。
実際問題、この世界は、聖杯を名乗る存在によって構築された仮想空間だ。
ここに生きている命は、14人のマスターを除けば、全ては作られた偽物でしかない。
それであっても、見たところ、生きた人間の立ち振舞いを、完璧に再現しているのだ。
であれば、榊をコピーした贋作を作ることも、難しくはないだろうと思えた。
もちろん、あの榊を裏で操作している、偽物のプレイヤーがいるのかもしれないが。
(何にせよ、これで可能性は高まった)
元々情況証拠は多かった。
昏睡事件の状況は、かつての未帰還者のそれに近かったとのことだ。
加えてこの空間の構成もまた、The World R:2に近しいものだという。
そこへ榊だ。AIDA事件に深く関わった、あの男が駆り出されてきたのだ。
この聖杯戦争とやらには、AIDAが関与しているかもしれない――その可能性はここにきて、ぐんと高まったことになった。
「つっても、普通に聖杯戦争で戦う上では、あんま関係ねぇ話ではあるんだけどな」
とはいえそこを気にしているのは、あくまでキリトではなくハセヲだ。
これ以上話したところで、マスターであるキリトには何の意味もない。
どころかあまりくどくどと話すと、自分の正体について、要らぬ追及をされるかもしれない。
なのでこの話題については、そこまでで打ち切ることにした。
-
「そうだな……いよいよ、聖杯戦争が始まったんだな」
言いながら、キリトは壁にかけた時計を見やる。
時刻は既に0時を回り、長針は3の字を過ぎていた。
話し込んでいるうちに、いよいよ本戦が始まったということだ。早ければこの町のどこかで、既に戦いが起きているのだろう。
「前にも話したが、狙うなら標的はサーヴァントに絞った方がいい。直接マスターを殺せば、どうなるか分かったもんじゃねえからな」
「ああ、それは分かってる……俺もできれば、人殺しまではしたくない」
デスゲームに参加させられていた男だ。やはり強いられた殺人というのには、思うところがあるのだろう。
ハセヲの言葉を聞いたキリトは、顔を曇らせて、同意した。
サーヴァントを失い消滅したマスターが、リアルではどうなるかというのは、説明の中では伏せられていた。
しかしハセヲは現実の世界で、この事件に関わった香住智成が、意識を失ったということを知っている。
彼がサーヴァントだったのか、マスターだったのか。それは未だ定かではない。
それでも、この世界で直接殺された人間が、未帰還者になるという可能性が、非常に高いのは確かだった。
それよりは、普通ならプログラムに過ぎないサーヴァントの方が、安全であるのは間違いなかった。
「とりあえず今夜は寝るとして、明日からどうする?」
「学校に行くよ。もちろん、令呪も隠す。人目につく所にいた方が、襲われる可能性も低そうだしな」
「だな」
キリトの言は正論だ。素直にハセヲも同意した。
いつどこから敵が攻めてくるか分からない状況で、どのように立ち回るの正解なのか。
その答えを出す時には、まず自分が攻める立場だったなら、どのように行動するのかを考えるのが近道となる。
敵の正体が分からないのは、こちらだけでなく相手も同じだ。であれば、みすみす身分を明かすことは、避けたいと考えるはずだ。
だからこそ攻撃を仕掛ける際には、人目につかない場所を選ぶ。目立つ場所で行動を起こせば、噂話や報道などから、顔が割れる可能性がある。
故に日中は襲撃者が嫌がる場所に立ち、攻撃をやり過ごすことこそが正道なのだ。
そういう意味では学校は、ちょうどいいスポットであると言えた。
ついでに生活リズムを崩さなければ、周囲から変化が悟られにくく、怪しまれにくいということもある。
「ま、ただでさえ無茶の利かない身の上なんだ。慎重に立ち回るに越したこたねぇだろ」
ハセヲの言った言葉に、キリトは面目なさそうに苦笑した。
ソードアート・オンラインなるゲームのPCボディを持ったキリトだが、ファンタジー系のキャラにしては、彼の魔力量は極端に低い。
どうもそのゲーム自体、魔法という概念が存在せず、MPゲージもなかったということが、その原因なのかもしれないという。
(The Worldのプレイヤーだったら、まだマシだったんだけどな……)
いかに高レベルなPCであっても、いかに高い戦闘スキルを持っていたとしても、サーヴァントを使いこなせないようでは意味がない。
おまけに魔法や神秘を扱えないのなら、それだけの攻撃能力をもってしても、サーヴァントに傷をつけることすらできない。
強いのか弱いのかよく分からないというのが、PCキリトに対して抱いた、ハセヲの正直な感想だった。
「まぁでも、勝たなきゃいけないことに変わりはない。どうにかやってくさ」
そう言って、キリトは部屋の電気を切ると、ベッドに向かい寝転がった。
明日の準備は完了している。あとは朝まで待つだけだ。
サーヴァントに睡眠は不要だが、無駄に起きていても暇を持て余すだけだったので、ハセヲも適当に寝ることにした。
そうだ。どんな条件であったとして、勝たなければならないというのがキリトの立場なのだ。
彼の願いは叶えてやりたいと思うし、向かってくる敵に対処しなければ、こちらもヤバいということは理解している。
(俺がどうにかするしかないか)
魔力や奇跡がないのなら、キリトには敵マスターの足止めを頼めばいい。
そのかわり敵のサーヴァントは、責任持って自分が倒す。
それでいいだろうと結論づけて、ハセヲは勉強机の椅子に座ったまま、その場で目を閉じ眠りについた。
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【1日目・深夜/深山町中心部・桐ヶ谷邸】
【キリト@ソードアート・オンライン】
[状態]:健康、睡眠中
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:エリシュデータ、ダークリパルサー、黒コート
[所持金]:貧乏(学生の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.殺すならサーヴァントに限る。マスターは足止めに留める
2.明日は学校に行く。その方が人目を避けられると思う
[備考]
無し。
【セイバー(ハセヲ)@.hack//G.U.(小説版)】
[状態]:健康、睡眠中
[装備]:無し
[道具]:回式・芥骨、大剣・大百足、大鎌・首削
[思考・状況]
基本行動方針:AIDA事件を解決する
1.基本的にはキリトに協力する。その上でこの世界の謎を解く
2.クーンが意識を失った経緯を知りたい
3.キリトがサーヴァント戦に不向きである以上、自分が責任持って戦うしかない
[備考]
・本聖杯戦争にAIDAが関与していると考えています
・ルーラー(榊)が偽物ではないかと考えました
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投下は以上です
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ここのところ投下が滞って申し訳ありません
これより第5話の投下を行います
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暗い港の倉庫の中で、紫煙を燻らす男が1人。
差し込む月の明かりに照らされ、キセルの金具を光らせながら、包帯男のライダーは、1人静かに佇んでいた。
外からがやがやと届いてくる、ゴロツキ連中の騒ぎ声が、随分遠くに聞こえるような、そう錯覚させる静寂だった。
「……駄目だな。待ってはみたが、それらしい報告は上がってこねぇ」
そんなライダーの傍らで、苛立たしげに吐き捨てたのは、マスターである神代凌牙だ。
右手に握ったスマートフォンには、ライダーの私兵達の連絡先が、一通り登録されている。
彼らが他のサーヴァントの戦闘に気付き、報告してくれることを期待していたのだが、今のところ情報はなしだ。
まだ始まったばかりで戦闘そのものが起きていないのか、はたまた気付けないような無能ばかりの集まりなのか。
「まぁ、そんなもんだろうよ」
対するライダーの呟きは、そのどちらの意味も含んでいるように聞こえた。
「で、結局どうすんだ。このままだんまり決め込んでるわけにもいかねぇだろ」
かといって凌牙からすれば、そんなもんで済まされるものではない。
戦わなければ聖杯は手に入らないし、そもそも相手が見つからなければ戦うこともできないのだ。
「そこを決めるのがマスターの仕事なんじゃねえのか?」
「それは……そうだけどよ」
そのためライダーに意見を求めたのだが、正論で返されてしまった。
といっても他人に尋ねたということは、自分では考えもつかないということだ。
さしたる具体案も思い浮かばず、凌牙は返す言葉を濁した。
「冗談だ。そう拗ねるなよ」
その姿がツボにハマッたのか。
くつくつと抑えた笑いと共に、ライダーが凌牙へと言う。
その様子がいっそう気に食わなくて、凌牙は更に不機嫌そうな顔を作った。
「そうだな。いっそ火でも放ってみるか?」
京都大火なんてハッタリを打ったのを思い出すな、とライダーは続ける。
街を丸ごと炎に包めば、たまりかねたマスター達が、勝手に飛び出してくるのではないかと。
「馬鹿言え。そしたら俺らの逃げ場までなくなるだろうが」
それに対する凌牙の返答は、否定だ。
中途半端に火事を起こすだけでは、悪目立ちしてこちらが損になる。
かといってライダーの言う通り、あまりに大きな火を焚けば、今度は炎そのもので、凌牙が危険に晒されかねない。
「となると今のところは、やはりアイツらに探らせとくしかねぇってことだな?」
「人海戦術の有用性は否定しねぇよ。問題はその人海が、もう少し使える奴らだったらってことだ」
言いながら、凌牙は顎に手を当て思考する。
確かに人数は多いが、烏合の衆ばかりには任せておけない。自分達ももう1つ、何か行動を取る必要がある。
あるいはそうした協力者が、もう少しまともな連中であったなら、状況も好転するかもしれない。
であれば、これからどうすべきか。
敵を探す手を考えるのが先か、組織の体制を見直すのが先か。
そこまで考えた時、不意に。
「――ほう、どうやらちょうどいい時に来れたらしいな」
低く、されどよく通る声が。
倉庫の天井の方から、これまでに聞いたことのない、第三者の声が響き渡った。
「誰だ!?」
はっとした顔で、そちらを見上げる。
条件反射的な動作と共に、凌牙は侵入者を問い詰める。
外にはまだ不良共がいるはずだ。それらに気付かれることなく、ここまで潜り込んできたということか。
誰何に対する答えの代わりに、倉庫に響いたのは金属音だ。
積み上げられたコンテナを、上から下へと飛び移る影が、こちらへ近づいてくる音だ。
まるで獣のような動作と共に、凌牙の前に現れたのは。
「なっ……!?」
黒いたてがみを蓄えた、正真正銘の猛獣だった。
-
一瞬、凌牙は己が目を疑う。
そして天井から颯爽と降りてきた、緑の瞳の獣の姿を、驚愕と共に受け止める。
「そう驚くな。気配を消せずに忍び寄れる者が、人間であるわけがないだろう?」
それは分かっている。
聖杯戦争のマスターである己が、目の前のそれをサーヴァントであると認識している。
しかし、それにしたってだ。
「ククッ、随分とでけェ猫だな」
「ライオンを見たのは初めてのようだな? まぁ国が違えばあり得る話か」
それにしたってその姿は何だ。
侵入者――アサシンのサーヴァントの見た目は、明らかにライオンではないか。
屈強な四本足で立ち、たてがみと毛皮で全身を多い、くつくつと笑っている姿は、どう見たって百獣の王だ。
まさか動物の英霊なのか。そんなものが存在したのか。というか人間の言葉を喋れるのか。
数多の疑問が脳裏に渦巻き、パニック寸前になった凌牙が、辛うじて口にした言葉が。
「どうやって、ここが分かった……!?」
それら全てを後回しにし、この場に自分たちがいたことを、どのようにして突き止めたのかという問いだった。
「大型鉄甲艦・煉獄(れんごく)」運用の訓練は、人目につかない深夜を狙って、細心の注意をもって行っている。
実際これまでに他のマスターに、存在を気取られた様子はなかった。
にもかかわらずここがバレた。それは一体どういうことだ。
「おれのしもべが教えてくれたのさ。幸いにしてこいつらは、隠れんぼが大の得意でな」
言いながら、アサシンが視線を落とす。
そこにちょこちょこと駆け寄ったのは、小さなネズミとトカゲだった。
しもべというのは、こいつらのことか。このサーヴァントは小動物を操り、情報を得る力を持っているということか。
なるほど確かにこいつらならば、気付かなくても無理もない。隠密任務の実行員としては、まさに完璧な適任者だ。
「手の内を明かすとは余裕だな。一体何を考えてる?」
ライダーがアサシンに尋ねた。
この状況でも包帯男は、余裕の笑みを崩していない。
頼もしいと言うべきか、はたまた不気味と言うべきか。いずれにせよこの場においてはライダーの方が、凌牙よりも冷静なのは確かだった。
「前置きがお嫌いならシンプルに言おう。おれはアンタと手を組みたい。そのためにこうしてここへ来た」
「ほう、同盟を所望か」
「ついさっきも話した通り、おれは獣を支配下に置き、自在に操ることができる」
既にこの街のあちらこちらに、おれのしもべを潜ませていると、アサシンのサーヴァントは言った。
誰にも気づかれない動物達なら、この街で起こる様々な出来事を、確実に把握することもできるのだと。
「事実として既におれ達は、他のサーヴァント2人の顔を知った。縄張りはここから少し遠いがな」
「その能力をもって俺達に、自分を売ろうというわけか。確かに願ったり叶ったりだが、何故交渉相手に俺を選んだ?」
他にも強いサーヴァントもいただろうと、ライダーはアサシンへと尋ねる。
アサシンは直接戦闘には向かない。他者に同盟を持ちかけるということは、その不足した能力を、補うことが狙いだろう。
であれば、本来声をかけるべきは、セイバーなどの三騎士のはずだ。
わざわざライダーを選ぶというのは、悪い選択肢ではないが、自然ではない。
「信用できると思ったんだよ。アンタはおれと似ているからな」
「ほう?」
「おれもアンタもお互いに、人の上に立つ者同士……人を利用する者同士だ。そう思ったからこそアンタを信じた」
アンタは価値を切り捨てない。
利用する価値がある限り、不用意に殺すことはなく、仲間として使い倒すタイプだと。
そういう者同士だからこそ、一時的な関係とはいえ、つるむこともできると踏んだのだと、アサシンはそう言ったのだった。
何の取り繕いもなく、平然とそう言ってのけたのだ。
-
「………」
しばし、ライダーは沈黙する。
浮かべていた薄ら笑いを消して、静かに獣の瞳を見やる。
凌牙ももとより蚊帳の外だ。ライダーが喋ることをやめた時、倉庫は静寂で満たされた。
(信用、か)
凌牙がアサシンに向けた目は、疑念だ。
見た目がどうのこうの以前に、こいつは明らかに胡散臭い。
こちらを利用するつもりだと、隠すこともなく口にしている。
そいつを仲間に抱き込むというのは、いつ背中を狙われてもおかしくないという、そういうリスクを背負うということだ。
情報収集能力があるというのは、確かに魅力的な話だが、どうしてもそうした懸念が消えない。
「………」
果たしてこのサーヴァントは、薬となるか毒となるか。
緑に瞳を光らす獅子は、自分達に何をもたらすのか。
時間の流れが何倍にも引き伸ばされたような、そんな心地に冷や汗を流す。
静かな緊張感が肌を炙る中、ライダーのサーヴァントが出した答えは。
「……面白ェ」
静かに、されど、黒々と。
焔のような赤光を、包帯の隙間の瞳に湛えて。
これまでにない獰猛な笑みを、にっかと口元に浮かべて、志々雄真実はそう言った。
◆
表のゴロツキ共に見つからないよう、気配と姿を消しながら。
アサシンは倉庫を後にして、物陰のマスターの元へと向かう。
見ればキリカは相変わらず、うとうとした様子で立っていた。
寝ていたところを叩き起こしたからには、確かにさもありなんとは思うが、それにしたって危機感のない奴だ。
「終わったぞ、マスター」
若干の棘を込めながら、アサシンはキリカにそう呼びかけた。
「んー、そうかい。じゃあもう寝ていいんだね?」
「家に帰ったらな。もう少しだけ我慢しろ」
「こんな時間に起こすのが悪いよ。レディを無理やり連れ出すなんて、とても紳士の振る舞いじゃない」
「そいつは悪かったな。生憎と育ちが悪いんだよ」
皮肉を口にしながら、王家の獅子は背中を差し出し、のろのろと歩くキリカを乗せる。
寝ぼけ眼のマスターが、しがみついたのを確認すると、アサシンは勢いよく大地を蹴って、倉庫の天井へと飛び上がった。
「でぇ? なんか収穫はあったわけ?」
「ああ、交渉は成功だ。あくまでも今のところはだが、心強い味方が増えた」
建物と建物の間を飛び交い、夜の闇夜を縫いながら。
間延びしたキリカの問いかけに対し、アサシンはようやく笑みを浮かべる。
包帯姿のライダーは、同盟の締結を承諾した。
お互いの命を脅かすことなく、情報と戦力を共有し合って、ライバルを減らすことを約束したのだ。
もちろん、こちらも見返りは与えた。未遠川で起きた戦いの様子は、包み隠さずライダーに教えた。
これで直接的な戦闘能力のなさも、多少は補うことができるだろう。
(そしていずれ邪魔になったなら、その時に消してしまえばいい)
そのためのスキルは持っている。不意を打てるのはこちらの方だ。
他のサーヴァントを殺す力と、確実に殺せるターゲットとを、同時に手に入れたというわけだ。これで笑わずにはいられない。
収穫の喜びを噛み締めながら、アサシンは宵闇へと消えていった。
-
【1日目・深夜/新都・港周辺】
【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:寝ぼけ
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:貧乏(子供の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.難しいことはアサシン(スカー)に任せる
2.家に帰って寝直す
[備考]
無し。
【アサシン(スカー)@ライオン・キング】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手にしてプライド・ランドに返り咲く
1.真っ向から戦うことはしない。能力を活かし、闇討ちに専念する
2.今はキリカを立てておく。聖杯を手に入れる瞬間には蹴落とす
3.家に帰る
4.ライダー(志々雄)は利用できるだけ利用し、切り時となれば容赦なく殺す
[備考]
・ライダー(志々雄真実)との同盟を締結。パラメーターおよび「大型鉄甲艦・煉獄(れんごく)」を確認済。
・アーチャー(シド)のパラメーター、宝具、スイカアームズを確認済。
・ライダー(涼邑零)のパラメーターおよび宝具を確認済。
-
◆
「あれで本当によかったのか」
来客の去った倉庫の中で、凌牙はライダーへと問いかける。
「俺の考えも奴と同じだ。利用価値がある限り、奴は俺を裏切らない」
その点においては信用できると、ライダーは問いかけに答えた。
一点の曇りもない自信だ。自分が見限られる弱者だとは、微塵も考えていないようだった。
そして同時に、裏切られたとしても、絶対に黙って殺されはしないと、そう言っているようにも聞こえた。
「………」
正直なところ、凌牙の方は、今もその正しさを疑っている。
万一のことがあるかもしれないと、そう考えている自分がいる。
それでも、受け入れてしまったものは仕方ない。
相手は気配を消せるアサシンだ。今更後を追いかけて、同盟を破棄すると言うことはできないだろう。
であればせめて凌牙の方が、奴を警戒しなければならない。
黙って殺されないようにするためにも、目を光らせていなければならないのだ。
「人の上に立つ者、か」
ぽつり、と。
不意にライダーがそう呟く。
彼が口にした言葉は、他ならぬアサシンの言葉だ。
他人の上に立ち、支配し操る。その点において、ライダーと自分は、似た者同士であるのだと。
「本当にそうなら、人を使うのに、技なんざ必要としねぇよ」
その言葉に込められていたのは、微かな軽蔑の響きか。
包帯から覗く口元は、今度は嘲笑の色を込め、緩められているように見えた。
【1日目・深夜/新都・港周辺】
【神代凌牙@遊戯王ZEXAL】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:スマートフォン、カードデッキ
[所持金]:貧乏(子供の小遣い程度)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1.ライダー(志々雄)を警戒。いいように利用されないように気をつける
2.アサシン(スカー)は信用しない。裏切りを警戒する
3.ひとまず情報を収集し、他のマスターを探す
4.今夜はそろそろ家に帰って寝る
5.アーチャー(シド)およびライダー(零)をどうすべきか考える
[備考]
・アサシン(スカー)との同盟を締結。パラメーターおよび宝具を確認済。
・アーチャー(シド)の外見および大まかな所在を確認済。
・ライダー(涼邑零)の外見および大まかな所在を確認済。
【ライダー(志々雄真実)@るろうに剣心−明治剣客浪漫譚−】
[状態]:健康
[装備]:無限刃、手甲
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手にして、明治時代に復活する
1.手駒達を使って情報を集め、他のマスターを探す
2.アサシン(スカー)は利用できる限りは利用する
3.アーチャー(シド)およびライダー(零)をどうすべきか考える
[備考]
・アサシン(スカー)との同盟を締結。パラメーターおよび宝具を確認済。
・アーチャー(シド)の外見および大まかな所在を確認済。
・ライダー(涼邑零)の外見および大まかな所在を確認済。
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投下は以上です
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すみませんが、諸々の事情に伴い、参戦キャラクターに一部変更を加えさせていただきます
小日向未来(戦姫絶唱シンフォギアG)&殺生丸(犬夜叉)組
神隼人(真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日)&佐倉杏子(魔法少女まどか☆マギカ)組
ラケル・クラウディウス(ゴッドイーター2)&レイ・ラングレン(ガン×ソード)組
上記3組を参戦キャラクターから除外
未来(閃乱カグラ(アニメ版))&ガルバトロン(ビーストウォーズⅡ 超生命体トランスフォーマー)組のうち、
未来の参戦作品を「閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-」へと変更
以上の通り変更させていただきます
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本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。
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