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PSYREN聖杯戦争

1 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 01:32:19 wrlOeeYo0

このスレは版権キャラで聖杯戦争を行う企画となります。
細かい設定等曖昧な点や定まっていない部分もありますのでご了承ください。
タイトルにPSYRENと書かれていますが把握していなくても書けます、と思います。

それではOP(二次二次聖杯にて過去に投下した物)を投下いたします。


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2 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 01:34:10 wrlOeeYo0

 此処は暗い暗い闇の中。
 気が付くと深い闇の中にポツリと座っている感覚だった。
 でも周りに人がいる感覚はずっとある、余計に気持ち悪く感じてしまう。
 誰なのだろうか。「彼」「彼女」「少年」「少女」――その景色は多種多様。

 ふぅ、風が冷たく肌を撫でていく。
 風を体感すると思考が追い付く前に景色が明るくなり周りが見える。
 此処は屋内ではなく外、それも空気は淀み大地は荒れている殺風景で無慈悲な此処。
 他の人も驚いていた……何人かは悟った表情や顔色一つ変えない人もいるようだ。


 頭に透き通るように声が響き全員が視線を一つにする。
 解りやすく台座のような物の上に男性が立っており見下ろしていた。
 その男性は髪が長めで顔に刺青のような物が入っており目の辺りに何か付けているのが特徴的だ。
 マイクや拡声器は使用していないが声は自然な程耳に残りまるで脳内に響いてくる感じがする。

「お前達は運命を信じるか?」

 男性はその場にいる人々全員に問を投げる。
「運命を信じるか」。詩人が好みそうな憧れや理想を刺激する台詞だ。
 実際に考えてみる、運命とやらを。
 今までの人生に奇跡は大小問わず存在はしていた、それを偶然と取るか必然と取るか。
 何にせよ価値観は人によって大きく異る、問いを投げても返却される解は全て同一にはならない。


 自分には自分なりの答えがある。
 状況が全く掴めないが質問に答えるのは自然で当たり前。
「彼」「彼女」は男性に答えを伝えようと口を動かす。
 この時点で口の動きが人によって全く異なる、そもそも男性に声は届くのだろうか。
 届くには届くのだが声を発する人々全員を聞き分けられるとは思えない。

 そうでもないようだ。
『声が出せないのだ』。口は動かせても『発声が出来ない』。
 多くの人々が困惑する中男性はその顔をニヤつかせていた。


3 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 01:35:09 wrlOeeYo0

 見下すようにニヤつく男性、不信感が高まってしまう。
 そもそも何故こんな荒野のような所に居るのか、謎が在る。
 目が覚めたら。そんなお伽話のような感覚は現実のようで夢の世界ではない。
 声を送ってきた男性ならば何か知っている、そんな気がしてならないしそのような素振りを見せる。

「俺の名前は天戯弥勒……一つよろしく頼む」

 男性は名乗る――あまぎみろく、と。
 確かに彼の名前を気にしている人もいたが問題は其処ではない。

「言いたいことは分かる。お前達は『選ばれた』」

 天戯弥勒は言葉を紡ぎ続ける。
 全てを見透かしているようで説明してやる、上から人を見下しているニュアンスで彼は言う。
 選ばれたと言われても心当たりはない。何人か思い当たる節があるような表情をするが。


「これは聖杯戦争だ。勝ち残った者には願いを叶える権利が得られる……人生に因果を持たせる」


 天戯弥勒が言った言葉は解りやすい、理解出来るかどうかは考えない。
 人には夢が存在するのが大半であり一度はその夢を目指して走り続ける。
 夢や目標、それぞれ大小多種多様だが誇れるものであり生きる原動力にもなる。
 壁に当たり諦める者も現れれば実現する者もいる、運命のように。
 天戯弥勒はその『夢や願いといった憧れ』を叶える権利を与える、そう言った。

「だが勝ち残らなければ聖杯は真意を見せない……つまり『殺し合え、最後の一人になるまで』」


 暗転。
 美味い話には裏があるとは正にこの事か……彼はその手を非道に染めろと言い放つ。
 殺害と言う概念は抱くことはあれど実行するには人として一定の線引を誤らなければ出来ない。
 彼はそれを楽々飛び越える発言、非道を促しているのだ。


「脱落と言った方が聞こえは良いかもしれないな。お前らにはサーヴァントと対になってこの世界を生き抜いてもらう」

 脱落。
 実際に命を落とすかどうかは解らないがこの方が言われる通り聞こえは幾分かマシだ。
 サーヴァントと呼ばれるモノに心当たりはない……在る者もいるらしく反応はこれも多種多様。
 辞書で当て嵌めるならば『召使』……相棒やパートナーと表せばいいのか。


「意味を理解していない者もいるが解っている者もいる……『選ばれた奴』には『共通点』がある」

 どうやら理解していない事が仲間外れ、と言う事ではないようだ。
 選ばれた件に関しては全く持って謎なのが本音であり解を求めていた。


4 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 01:36:26 wrlOeeYo0


 様々な人が集められている中での共通点。
 外見的な特徴では無い事は分かるが何が正解なのか。
 顔見知りでも無ければ同じ国籍でも無いのは確定的。


「『願い』だ――全員『願い』を持っている」


 霧が掛かっていた心はこの一言で『覚された』。
 夢、憧れ、願い、目標、願望――「僕」「私」にそれは存在している。
「俺」「自分」には叶えたい願いが在る、叶えなければならない夢がある。

「これで全員理解したな? ならば『最後の一人になるまでその手を汚せ』」

 この非日常の出来事は運命にどのような影響を与えるのか。
 それは必然か偶然か、捉えるのは各々の価値観に委ねられた。
 見たこともない世界、聞いたこともない争い、訪れない奇跡。
 何の因果が束ねられたかは不明、しかし平等の手段が与えられたのは現実。

「解らないことも在るかもしれないが目覚めれば解るはずだ。
 近くにいるサーヴァントや他のマスターに聞けばいい、無論敵同士の可能性も高いがな。
 最悪の場合は俺を探し出し直接聞きにくればいい……忘れていた事が一つあった。
 聖杯は願望を叶える器だと思えばいい、それだけだ」


 彼が言うには目が覚めれば全てが解る、つまり起きたら情報がインプットされているのだろうか。
 そして覚める、再び意識が闇の中に吸い込まれるのも確定的だ。
 闇に光が射した時が全ての幕開けになる……それまで束の間の休息と捉えるべきか。


「再び会える事を期待している――人殺し」


 天戯弥勒のこの一言を最後に意識は再び闇の深い底まで吸い込まれていく。
 願いを叶える戦争、それが聖杯戦争だ。
 戦争を体感した者もいれば聞いたことしか無い者もいる。
 彼らが何十の螺旋にも絡み合って紡ぐ戦争は世界に何を刻むのか。


「天戯弥勒ゥウウウウウウウウ!!!!!」


 一人の男の声が木霊して。


 長くて短い一つの戦争が幕を開けた――。




 主催
【天戯弥勒@PSYREN -サイレン-】


5 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 01:37:46 wrlOeeYo0

【備考】
・舞台はPSYRENの世界と位置づけします。
(原作のような荒れた未来ではなく一般的な世界と変わりません、ただ『別の時空』と考えてください。)
・NPCも存在しており、その世界の建造物などは各参加者版権作品の物も存在しているかもしれません。
・マスターは巻き込まれた人もいれば意図的に参加した者もいます。
(共通点は願いが在ることです)
・マスターとサーヴァントは初めて出逢うかもしれませんし既に召喚してからある程度時間が過ぎている可能性もあります。
(登場話で好みのシチュエーションをお選びください)
・開始時間は深夜辺りをお願いします。

・参加者には赤いテレホンカードが支給(勝手に)されています。
・サーヴァント消失6時間以内に公衆電話にでテレホンカードを使用すると現実世界へマスターは帰還できます。
・逆に未契約で6時間を経過するとマスターは灰になり、死亡します。
・ルーラー的立ち位置は現段階では未定、ですが流れだと天戯弥勒達が濃厚。
・別にサイレン知らなくても書けます←重要!

・現段階ではこのように……詰めが足りない所は今後次第、の形で。


【企画的なお話】


・ごめんなさい、上の通り全部が全部カッチリ決まっているわけではありません。
・確定しているのは『14組』で聖杯戦争を行う、ことです。
・まずは私が今月〜8月第一周辺りまでに7騎投下(再利用含む)出来るよう努力します。
・タイトルにサイレンとありますが、知らなくても歓迎、興味が出たら読んでみては?程度ですので……
・OP的には聖杯戦争よりもパロロワ色が強い、と個人的に思います。

・その後皆様に……
・「こんな組み合わせどうかな?」「これ出したい」「これ書いて」
・「二次二次聖杯で落ちたこの組を出したい」「うるせぇ、投下させろ」

・など意見を聞ければなぁ、と思います。

・とまぁ、全然ブレブレな>>1で申し訳ありませんがよろしくお願いします。

(wikiはその内こちらで用意します)


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6 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 01:49:13 wrlOeeYo0
とりあえずこの夜は投下、ありません。
二次二次聖杯スレに投下したOPとの変更点は男の叫び声が追加された、一点です。

明日(本日の夜)には夜科アゲハを登場させる話を投下します。
(出来ていなければ申し訳ありません)


7 : 名無しさん :2014/07/26(土) 01:53:39 zKPcXWpM0
これって没ネタを再利用だけじゃなく新たに主従を作っても良いという事ですか?


8 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:03:45 wrlOeeYo0
書き込みありがとうございます。

>>7
現段階で決めていることは
私が七作投下する、残りの七組をどうするか、です。

今の私の中では
「皆様の中で出したい組はいますか?」という問を投げる形になるかなぁ、と。
それは二次二次聖杯にて惜しくも本戦に出れなかった品や新しい作品、お蔵入りとなった作品。
たくさんのアイデアを募集したいと思います。

もし私の予想より多くの作品案が来たら……。
投票はあまり考えていません。おそらく私の独断になってしまうかもしれません。

まとめると
「なんでもあり!好きな組み合わせや見たい、書きたい組み合わせを教えて下さい!!」
※ただ、私が投下するまでお待ちください、申し訳ありません……。

ということになります


9 : 名無しさん :2014/07/26(土) 02:08:06 zKPcXWpM0
なるほど把握しました
投下楽しみに待ってます頑張って下さい


10 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:11:27 wrlOeeYo0
善は急げ、投下します。


11 : 夜科アゲハ&セイバー ◆F61PQYZbCw :2014/07/26(土) 02:13:45 wrlOeeYo0



 ガコン。
 公園に備えられている自動販売機から出てくる缶の音は深夜に響く。
 男は炭酸の缶を取り出すと自動販売機の前でそのまま口に含む。
 最後まで一気に飲み干しゴミ箱に缶を投げ込み、缶はそのまま箱の中に落ちていった。


「天戯弥勒……アイツはどのアイツ何だ……」


 男は手で頭を押さえながらため息と共に愚痴を零す。
 彼はかつて世界の運命を変えるためにその身を糧にした男。
 天戯弥勒とは現代、未来と何度も交戦しており彼にとってよく知る人物だった。
 その結果、現代の彼らは世界の運命に対して――。



「俺は全てを終わらせた……天戯弥勒だって俺達と一緒に……ならもう一度やるしかねぇ、な」


 青年の名前は夜科アゲハ。高校生でありサイレンドリフトの資格を持っていた。
 サイレンのゲーム――荒廃した未来の世界を舞台にした最悪の遊戯。
 赤いテレホンカードを公衆電話に使用したら日常との別れ、長い長い闇の中に巻き込まれてしまう。
 未来の世界は荒廃しているだけでなく怪物と表現できる種族に襲われる事もあり死ぬことなど造作も無い。
 絶望の中でも青年は仲間と共に戦い、修行、出会い、別れ……様々な運命を乗り越え塗り替えてきた。
 そして遂に終止符を打つ寸前まで辿り着くも青年は力の代償に深い眠りに陥ってしまったのだ。
 その後目覚める直前まで来ていたのだが……目覚めた先は見知らぬ場所。
 脳に走る知識は摩訶不思議、だがサイレンに参加していた影響か混乱はしていない。


「他の参加者を殺す……か。いや、殺さなくてもいいのか……?
 分かんねぇなおい……『聖杯』ってのに辿り着かなきゃ駄目っぽいな」


 真実に辿り着くには全てを終わらせるのが一番の近道だろう。
 アゲハ自身は別に聖杯戦争に興味はないが人が死ぬゲームの存在を知ってしまったら見過ごす訳にはいかない。
 クソッタレな遊戯はぶっ潰す――誰もが皆運命に踊らされる必要なんて存在しない。
 最後の一人になるしかないのなら別の法則を見つけ出し世界を暴く。
 もしそれも見つからないのなら――。


「願いが叶うってのを信じるしかねぇな……」


 自分が最後の一人になればいい。
 他者を切り捨てることは心が痛む、けれど『出来ない訳ではない』のだ。
 アゲハはお人好しの分類だ。だが偽善者ではない。選択が出来る人間である。
 答えが一つしか無い迷路ならば自分が出るしか無いのだ。甘えなんて許さない。


「悪く思うなよ、俺はもう一度世界を救う……いや、明日が欲しい」


12 : 夜科アゲハ&セイバー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:15:41 wrlOeeYo0

 腕を広げるとその筋に走るは黒い閃光。
 稲妻のような擬音が似合うソレを広げながら不敵に笑うアゲハ。
 少量を自動販売機に当てると狂ったように何本も缶を吐き出してしまった、中身を弄ったのだ。
 電子機器はそのまま全てを出し切るまで止まらず、自動販売機の下には大量の缶で溢れていた。
 その力は超能力に分類される通称『PSI』、その中でもアゲハの力は暴王の月と呼ばれている。


「随分と面白い事してんじゃあねぇかよ、アゲハ」


 犯罪を普通に犯してしまったアゲハを咎めること無く寧ろ共感する女性。
 彼の事を名前で呼んでいることからそれなりに親しい仲のようだ。
 だがアゲハはこの空間に巻き込まれた存在であり知り合いは今の所誰にも出会っていない。
 此処は聖杯戦争の舞台でありアゲハには令呪が宿っている、つまりマスターである。
 ならばその相棒であるサーヴァントが存在する、つまり……。


「マスターって呼ばないのか?」


「嫌だって言ってのはお前じゃないか、お互い様だろ?」


「ああ、違わなぇな!」


 スカジャンを羽織りジーンズを履いた女性は口悪そうにアゲハに言葉を返した。
 姿こそ悪さに憧れている学生に見えるがやりとりから連想するにアゲハのサーヴァントのようだ。
 バイクに跨がりながら笑っているとアゲハから一本の缶ジュースが投げられた。
 さんきゅ。軽く呟くと速攻で飲み干しゴミ箱に缶を投げる……アゲハと同じように収まった。


「で、お前は何してんだ? それとバイクはどうした?」


「別にどうってことはねぇよ、ただパクっただけだぜ?」


 マスターとサーヴァントが似通うかどうかは分からない。
 アゲハとセイバーに共通している事の一つはこれで分かってしまう。
 この男女、どちらも不良と呼ばれる種族のようだ。


 エンジンを吹かし不敵に笑う女、言葉を語らずとも意図を感じた男もまた不敵に笑う。
 似たような思考回路をしているらしく全部吐き出させた自動販売機に興味は既に無くっていた。


「乗れよ、適当に走って帰ろうぜ」


「メットあんのか? 不良女?」


「不良はお前だろ……いやあたしもか……メット何ていらねぇ、違うか?」


 女の問に答える事無く無言で後ろに跨ったアゲハ。
 ポケットから缶を取り出しサーヴァントに一本譲りこむと煽るように言葉を放つ。


「んじゃ、さっさと行こうぜ? まさか後ろに男乗せて緊張するような奴じゃないよな?」


13 : 夜科アゲハ&セイバー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:16:20 wrlOeeYo0

 アゲハから発せられた言葉に鼻で笑う女、コイツは何を言っている、そんな仕草。
 ハンドルを握り無言で車体を走らせ彼を驚かせる、虚位を突かれたアゲハだがテンションは上がっていた。
 誰もいない公園をそれなりの速度で走り切る男女の姿は正に不良、それにしか見えない。
 女を気遣い身体にしがみついていないアゲハだがそろそろ安定を取るのは難しくなっている。
「変な気遣いすんなって、ほら腕回せって」
 男勝りな女は気にすること無くアゲハに身体に腕を回すよう促す。
 彼は彼なりに気を遣っていたがここは言葉通りにするしかないようでそもそも抗うこともない。
「……わりぃ」
 小声で呟くアゲハの顔は夜でも分かるほど赤く染まっていた。
 彼もまだ高校生であり思春期の最中、女性の身体に触れる行為は緊張してしまうのだ。


「そ、それでいいんだって……そ、速度上げるからな! 落とされんなよ!?」


「何で公道で落とされなきゃならねぇんだよ!!」


 サーヴァントである女も英霊ではあるがその姿は女子高校生だ。
 男勝りでアゲハと接するも異性に身体を触れられるのはどうも緊張、胸を焦がす感情になってしまう。
 促した手前。此方が恥ずがしがる訳にもいかず誤魔化すように速度を上げ始めた。
 そのまま空気を変えるよに彼に発破をかけそのまま公道に入り夜の街を爆走し始める。


 速度こそ規律を超えてしまってはいるが信号は全部守る。
 音も無闇に鳴らさず、無駄にエンジンを吹かす事も行わない、不良でありながら一定の線引はしている。
 何も関係の無い人を巻き込まない、二人に共通している事の一つだ。


「しっかしお前も目覚めたら聖杯戦争って漫画か何かか?」


「るせぇ……俺だって理解してねぇってのによ、なんだよ英霊って」


 適応はそれなりにしているし知らない知識も頭の中にインプットされていた。
 頭では分かるが本質は理解出来ない、感じてはいるがその先にある意思が全く見えて来ないのだ。
 アゲハは死ぬつもりはない。甘い考えも持たないつもりだ。
 他の参加者が全員ロクでもない人間ならば全員ぶっ潰す覚悟と意思は持っている。
『怖くて戦えない、誰かを傷付けたくない、助けてもらいたい』そんな考えはないのだ。
 無論他者を傷付けることを一番と捉えているわけではないが襲ってくる奴に手を抜くつもりはない。
 この考えはサーヴァントも共感しており敵を倒すことに問題は感じていない。
 そして現実をしっかりと捉えているのだ、切り捨てる覚悟も持ち合わせている。


「それはあたしにも分かんねぇ、いや知ってるぞ?
 でもよぉ、どうでもいいんだ……前にも言ったろ?あたしはもう願いが叶っちまった。
 だからお前を居場所に帰る手伝いをしてやる、ナンカの縁だしな!」


14 : 夜科アゲハ&セイバー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:17:21 wrlOeeYo0
サーヴァントのクラスはセイバーだ。その素質はサーヴァントの中でも上の部類を堂々と走る。
 そんな彼女に願いはあった。それは別れてしまったとある存在との再会だ。
 しかしその願いは叶ってしまったのだ――会いたい存在は宝具となって彼女の下に帰ってきたのだ。
 それだけで彼女は満足だった。ならばやるべき事はサーヴァントとしての役目である。
 つまりマスターであるアゲハのために戦うことだ。


「あたしはお前のサーヴァントだ……これ自分で言うと結構恥ずいな……まぁいいか。
 だからよ、変な気遣いはいらねぇからな? お前のサーヴァントになったおかげでアイツにも再会出来たんだ。
 お前のおかげかどうかは分かんないか! わりぃわりぃ……絶対勝ち残るぞ」


 女でありながらその言葉には惹かれる強さがある、英霊何て関係無く彼女は強い。
 その意思が存在したからこうして英霊となって聖杯に招かれたのかもしれない。
 生前の彼女は運命の糸に螺旋のように何十にも絡まれてしまった。
 その中から真実に辿り着くために何本もの糸を断ち切り、手繰り寄せきた。
 運命の試練は出会い、対立、真実、別れ……彼女は高校生でありながらアゲハと同じように抗ってきた。
 だから彼の事を簡単に見捨てることなど出来ないのだ、サーヴァントもマスターも関係ない。
『運命に抗う奴を笑うなんてあたしが許さねぇ、断ち切れない絶対なんて存在しねぇ」と。


「へっ……下僕の女にここまで言われるとは俺も落ちぶれっちまったか?」


「誰が下僕だ!! ぶっ殺すぞ!!」



 言いたい言葉はそんな煽りではない。
 面を向かって感謝を告げるのは人間という種族にとっては一部難しいと感じてしまう層がある。
 アゲハは恥ずかしい、それも女に言う、と云うのは彼なりの男としてのプライドに触れてしまう。
 その事をセイバーである彼女も理解している、言葉に表さなくとも伝わっている。


「ありがとな……暴王の月で俺は戦えるから極力お前に迷惑や負担を掛けるつもりはない。
 PSIもどうやら魔力って奴に分類されてるからお前がもし戦う時は気にせず存分に暴れろ」


「何小せぇ声でボソボソ喋ってんだよ? 
 そんな小せぇ男があたしを従えると思ってんのか?
 お前の好きな通りにしろ、あたしはそれを全開で協力してやるからな……マスターさんよぉ!!」


 困りながらも自分の気持を彼女に伝えたアゲハだが肝心のサーヴァントに煽られてしまった。
 煽りではない、彼女はアゲハの気持ちを理解しているのだ……だが彼女も思春期の最中だ。
 そのまま礼を言い返すのも気恥ずかしいためこうして言葉で濁らせるしか無い。
 どちらも不器用な存在だ、だが共通項は存在していて通じ合っている。
 言うならば背中を任せられる存在同士、戦場においてこれ程頼もしいことはない。
 セイバーは天戯弥勒に困惑しているアゲハを励ます、決してソレは伝えずに。
 

 彼女の言葉を受け思考が止まってしまうアゲハだがそれは一瞬だ。
 気付けば自然と顔は笑っていた。『可愛く無い奴だ、他に言葉が無かったのか』そう思っている。
 元の世界に帰りたい一心と全てを投げ出した形になってしまった自分に焦っていたようだ。
 此処が聖杯戦争だと言うならば儲け物だ、そう捉えよう、そう捉えればいい。
 最後の組になれば願いが叶う……いい手土産だ、彼の帰還に相応しい代物だ。
 ならば変に気負う必要も、焦る必要もない。今まで通り戦うだけだ。


「そうだ……そうだったな!
 あの天戯弥勒がどの天戯弥勒だろうが関係ない……辿り着いてぶっ飛ばす、邪魔する奴もぶっ飛ばす……ッ!」


「それでいいんだよ、走っていりゃ何時かは土台がしっかり固まるさ。
 あたしだって負けるつもりなんて微塵も思っちゃいねぇからな、やるからには全員潰すぞ!」


 こうして夜の街を男女は走り続ける。
 迷いなんて無い、覚悟は在る、甘さも捨てる時には切り捨てる心も在る。
 運命の意図何て関係ない、全て断ち切るだけだ。


 敵も思惑も何もかも――。


15 : 夜科アゲハ&セイバー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:18:08 wrlOeeYo0

【マスター】夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-

【参加時期】原作最終巻、力を使い果たし目覚める寸前(起きろアゲハ直前)

【マスターとしての願い】皆の元へ帰る。
            
【weapon】
PSIと呼ばれる超能力を扱う、また力の酷使は脳に多大な影響を与える。
   
  
【能力・技能】
 彼はPSIと呼ばれる超能力を扱う。
 特に扱うのライズと呼ばれる身体能力の強化。これにより超人的な体術と運動技能を得る事ができる。
 彼の代名詞と呼ばれる力が暴王の月(メルゼズ・ドア)と呼ばれる力。
 黒い球体を召喚しその球体は周囲のPSIに反応し無差別で全てを消し去る力を持つ。魔力などを吸収する性質も持つ。
 燃費が悪すぎるためアゲハそれをプログラムによって幾つかの技として扱う。
 主に扱うのは暴王の流星(メルゼズ・ランス)と呼ばれる遠距離攻撃である。
 相手の魔力を自動で数回に別けて追尾する矢のような攻撃、しかし魔力が一帯に充満していると追尾プログラムは失われてしまう。

       
【人物背景】
 学校一のトラブルバスター(+メーカー)と呼ばれていた俗にいう不良少年だった。ある日偶然赤いテレホンカードを手に入れ運命を歪められた。
 サイレンゲームと呼ばれる未来の荒廃した世界で行われる悪趣味な遊戯に巻き込まれるが仲間と共に乗り切っていた。
 その中で超能力であるPSIを学び戦力を増しつつ来たる最終決戦に備えていた。    
 そして己の力えお全て出し切り一つの区切りを付けたが本人は力の行使により眠ってしまう。
 そして自身を呼ぶ皆の声に導かれるように目を覚ますが――今宵、月の聖杯戦争に招かれる。


【方針】
 セイバーと共に天戯弥勒の元へ辿り着く。


16 : 夜科アゲハ&セイバー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:18:51 wrlOeeYo0

【マスター】夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-

【参加時期】原作最終巻、力を使い果たし目覚める寸前(起きろアゲハ直前)

【マスターとしての願い】皆の元へ帰る。
            
【weapon】
PSIと呼ばれる超能力を扱う、また力の酷使は脳に多大な影響を与える。
   
  
【能力・技能】
 彼はPSIと呼ばれる超能力を扱う。
 特に扱うのライズと呼ばれる身体能力の強化。これにより超人的な体術と運動技能を得る事ができる。
 彼の代名詞と呼ばれる力が暴王の月(メルゼズ・ドア)と呼ばれる力。
 黒い球体を召喚しその球体は周囲のPSIに反応し無差別で全てを消し去る力を持つ。魔力などを吸収する性質も持つ。
 燃費が悪すぎるためアゲハそれをプログラムによって幾つかの技として扱う。
 主に扱うのは暴王の流星(メルゼズ・ランス)と呼ばれる遠距離攻撃である。
 相手の魔力を自動で数回に別けて追尾する矢のような攻撃、しかし魔力が一帯に充満していると追尾プログラムは失われてしまう。

       
【人物背景】
 学校一のトラブルバスター(+メーカー)と呼ばれていた俗にいう不良少年だった。ある日偶然赤いテレホンカードを手に入れ運命を歪められた。
 サイレンゲームと呼ばれる未来の荒廃した世界で行われる悪趣味な遊戯に巻き込まれるが仲間と共に乗り切っていた。
 その中で超能力であるPSIを学び戦力を増しつつ来たる最終決戦に備えていた。    
 そして己の力えお全て出し切り一つの区切りを付けたが本人は力の行使により眠ってしまう。
 そして自身を呼ぶ皆の声に導かれるように目を覚ますが――今宵、月の聖杯戦争に招かれる。


【方針】
 セイバーと共に天戯弥勒の元へ辿り着く。


17 : 夜科アゲハ&セイバー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:21:36 wrlOeeYo0

【クラス】
セイバー

【真名】
纏流子@キルラキル

【パラメータ】
筋力B 耐久A 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具B+

【属性】
秩序・中庸

【クラス別スキル】
 対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない
 騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
 
生命繊維:A
彼女の心臓は生命繊維と呼ばれる物で構成されており厳密には人間ではない。   
 そのため心臓を外部に晒しても生存が可能であり、普通の人間が致命傷レベルの傷でも問題なく動ける。
 英霊となった今では驚異的な打たれ強さを得るため戦闘続行能力も兼ねる。
 だが痛みを伴うのは変わらないため強くなった訳ではない。 
 
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。
 
ラーニング:D
戦闘の最中に相手の行動から自分の攻撃手段に応用する力。  


【宝具】


『片太刀バサミ』
 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1〜50人
 巨大なハサミであり普段は片方のみを獲物として扱うが場合によっては二刀流の時もある。
 扱い方としては剣と変わらず『武滾流猛怒(ぶった切るモード)』になると更に刀身が伸びる。
 生命繊維を断ち切る力を持っておりマスターからの魔力供給にブーストを掛ければ一部魔術等を断ち切ることが可能である。


『神衣鮮血』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 一言で表わすならば喋るセーラー服である。
 生前の流子の相棒であり彼を着こなす事によって戦う力を得て運命に抗ってきた。
 着ることにより身体の露出は増えるが戦闘能力は上昇する。
 また、形態を変えることによって飛行能力を得るなど応用性も高い。
 鮮血は流子から魔力を吸収する特性がある。
 

『鮮血更衣』
 ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 生命繊維を吸収した鮮血の更なる姿、その力は大気圏を単騎で突破可能である。
 この姿により流子はセイバーとして本来のポテンシャル以上の力を引き出せる。


【weapon】宝具に依存する。


【人物背景】
 父も母も居らず唯一残った手掛かりであるハサミを頼りに仇を探していた。辿り着いた本能寺学園で自分の運命に大きな転機を迎える。
 喋るセーラー服鮮血との出会い、真実を知るとされている鬼龍院皐月との対立、それを拒む四天王、暗躍する裸の猿……。
 その先には『服』と呼ばれる概念との戦い、世界を守るために彼女達は運命の意図に抗っていた。

【サーヴァントとしての願い】
 鮮血との再会が願いだったが彼が宝具として現れたため願いは叶った。
 マスターであるアゲハに聖杯を捧げるためその力を振るう。

【基本戦術、方針、運用法】
 向かって来る奴に容赦はしない、コソコソ隠れるつもりもない、正面から断ち切るだけ。


18 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:23:38 wrlOeeYo0
投下終了です。

このように二次二次にて落ちてしまった作品を使う事もあります。
(木片やOPの変更に伴い変えている部分もありますが)

一先ずこの感じで七騎投下させていただきますので、
企画を始めておいて申し訳ありませんがしばしお待ちください。


19 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 02:29:38 wrlOeeYo0
(七騎も投下しないかも……)


20 : 名無しさん :2014/07/26(土) 10:49:02 2rA54DVk0
木片の代わりにテレカを持たせれば自主参加可能な感じかな?
没話とか落選話とか推敲して待ってます


21 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 10:54:01 wrlOeeYo0
書き込み有り難うございます

>>20
自主参加の場合は「通常通りサーヴァントを召還」になります。
聖遺物の媒体を用いてサーヴァントを召還、その後イレギュラーに巻き込まれ聖杯戦争、そんな感じです。


22 : 名無しさん :2014/07/26(土) 11:52:29 2rA54DVk0
>>21
返信ありがとうございます
巻き込まれならある程度自由にしちゃっていいんでしょうか?


23 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 12:26:17 wrlOeeYo0
>>22
自由にしてもらって大丈夫です。

パロロワの登場話だとイメージするのが一番かもしれません……w
ロワの主催がサイレンのキャラ、この考えで問題無いと思います


24 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 12:57:29 wrlOeeYo0
二クラス分投下します
それとちょっと企画的に動かします(最後に書きます)

間桐雁夜、バーサーカーで投下します。


25 : 間桐雁夜&バーサーカー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 12:58:03 wrlOeeYo0

 全てを投げ捨てた。
 己を犠牲にしてまで救いたい、そう願っていた。
 迫る運命は己の身体を蝕み、それでも終盤まで生を保った。
 

 男は本能だけで足を動かし彼女の元へ辿り着く。
 明確な意識など無く深層心理に堕ちている感覚だけが彼を突き動かしていた。
 伸ばした腕は報われない、少女は腕を認めない。


 最後の希望も途絶えた今、男は薄暗い空間の中蟲で構成された闇に沈んでいく。
 哀れな男だ。自分を特別化しようと見栄を張った結果がこうである。
 黙って生活していれば一定の幸福を得たのだろう。今となっては無駄な結果論に過ぎないが。


 だが救いたい心は本物だった。
 彼は不器用な男だ、己を犠牲にし強制的に英雄に見立てる事でしか決断が出来なかった。
 聖杯戦争。一度魔術師の道を踏み外した彼が正当に生き残れる訳など初めから存在しないのだ。
 辛い修行と題した生命の消耗――彼の寿命などとうに残っていない。
 追い打ちを掛けるように召されるは狂戦士、彼の身体は現界を突破していた、だが終盤まで生き残った。
 それだけで奇跡、男は結果として意味の無い人生を送ったが見世物としては一級品と呼べるだろう。


「さ……ら、ちゃ……」


 飲み込まれていく身体、消えていく心と信念。
 伸ばした腕も蟲の中に消えてしまい、間桐雁夜はこの世界線から姿を消した――。





 目覚めると見知らぬ天井。
 壁はコンクリートで構成され薄暗い廃墟のようだ。
 ひんやり冷たく感じる空気は身体に悪い、だが間桐雁夜には似合う。
 身体の中には刻印虫、何故今になっても彼の身体を蝕んでいるのか。
 しかし、今重要な事はそれではない。


「天戯弥勒……あいつは何者なんだ……?」


26 : 間桐雁夜&バーサーカー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 12:59:07 wrlOeeYo0

 身体を起き上げると彼はどうやらソファーの上で眠っていたらしい。
 腕で頭を支えると彼は思考の梅に沈んで行く、全てを確かめるのだ。
 ガラクタの中から思い出を漁り出すと天戯弥勒という男が聖杯戦争を宣言した事は覚えている、それだけ。
 箱の中に収まっている記憶には聖杯戦争、彼が知っている物が単語一覧となって表示されている。
 一つ一つ積み木を重ね上げるように丁寧に積み立てていくと一つの城【意味】が見えてくる。


「聖杯戦争……俺はもう一度夢を追いかけてもいいの……か」


 願いに縋った一つの戦争、そして始まるもう一つの戦争。
 この戦いに時臣は存在するのだろうか、傲慢な王は笑っているのだろうか。
 分からない、そもそも現実かどうかも理解出来ない。ならば――。
 腕を見ると其処には見慣れた令呪が宿っている、ランスロットの真名を持つ英霊ではないようだが。


「何だっていい。俺は桜ちゃんを救うんだ、一緒に葵さんの所へ戻って凛ちゃん達と笑顔で……」


 勘違いするな、其処に貴様の居場所など存在しない、哀れな男よ、甘い夢を見過ぎるな。

 
 間桐雁夜の願いの先にある風景は理想だ、それも己にとって最高の状態、誰も追い付けぬ遥か遠い理想郷。
 昔一瞬だけ噛み締めた甘さを何時迄も吸い続けた男は大人になった今でも蜜を貪る、情けない。
 不器用などではない。人間として欠けているのだ。現実を受け入れる覚悟が感じられない。
 そんな男に聖杯を授けた所で訪れる未来に価値はあるのだろうか、ある。
 奇跡だ。どんな形でも、他人の願いを笑う事は外道の所業。求める事は罪ではない。
 過程など関係ないのだ。表の歴史に刻まれる事のない聖杯戦争、結果だけが全てを物語る。


「お前は俺に、最期のチャンスを与えてくれるのか――バーサーカー」


 視線の先には彼と同じように白髮の男が一人、青年は細い、だが英霊だ。
 そしてクラスは狂戦士、強さは申し分ない――バーサーカーに雁夜は縁があるようだ。


27 : 間桐雁夜&バーサーカー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 12:59:37 wrlOeeYo0
バーサーカーも雁夜と同じくイスに腰掛けているが理性や言語能力は存在しない。
 狂化の力によって底上げされた能力、魔力の消耗に拍車を掛けるがそれは強さの代償。
 端くれだが魔術師、雁夜の魔力でも速攻で消滅、その段階には達していない。
 長期的な戦闘はマスターの生命を削る。ランスロットの時のように長生き出来る保証など無い。


「俺は救いたいんだ、そして幸せになりたい――力を貸せバーサーカー」


 一度は終わった奇跡への道、それが奇妙な運命で今もう一度開かれようとしている。
 バーサーカーは不敵な笑顔、腕を大きく広げ笑いを上げる。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」


 その言葉は不明な単語の羅列にしか聞こえない。単語と明言出来る訳でもない。
 狂戦士は理性を失い戦いを貪る危険な人形になる、それが運命。
 このサーヴァントも救いたい存在が居る。


 どうしようもない屑、だが夢は、平穏を、周囲のために動く心は在る。
 理性が失われようと彼はマスターを笑ったりなどしない、本質では力になりたいと思っている。
 嗚呼、狂戦士でなければ彼らは共に夢を望む戦士として聖杯戦争を駆けていただろう。
 守りたい存在――彼らの原動力は根源的に同じ、方法や出口は違えど似た境遇の持ち主。
 雁夜にそれを知る術などない。狂戦士にそれを話す道理もない。


 彼らに光の道など似合わない。もう一度光を浴びれると思うな。


 何故闇に染まった人間が光を求める、未練が在るなら何故その道を往った。


 救い、救済――偽善を成し遂げた段階では光の道を歩む資格にはならない。


 何度だって告げてやる、貴様らに光など似合わない。


 求める行いを止める事などしない、誰も止めないのだ、他人の破滅に己を犠牲にする必要も無かろう。


 その道は一方通行だ。


 今更引き返すなど都合が良すぎる。


 守りたい存在を利用して己を崇めようなど狡い人間だ。


 もしもう一度、光を浴び、平和を求めるならば。


 染まった闇を深くして。


 聖杯を勝ち取る他に方法など無い。


28 : 間桐雁夜&バーサーカー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:00:26 wrlOeeYo0

【マスター】
 間桐雁夜@Fate/Zero



【参加時期】
 原作終盤死亡寸前



【マスターとしての願い】
 間桐桜を救い出す。



【weapon】
 蟲を使役する。
 即席のため本家である魔術師には及ばない。



【能力・技能】
 間桐の人間による蟲の使役を用いる。聖杯戦争に間に合うために行った調整では本来の力は出し得ない。
 しかし蟲と言う存在は人間に無意識で不快感を与える、そして力が無い訳ではない。


【人物背景】
 間桐の家に生まれるが、それを嫌い家を飛び出し一般人として生活を送っていた。
 好意を寄せる幼馴染がいたが彼女の幸せを案じ手を出さないでいたがその娘が間桐の家に養子に出されていることを知る。
 雁夜はその娘を救うために己の身体を犠牲にしながら魔術師の道をもう一度歩む……即席ではあるが。
 寿命を削られた男は少女を救うべく戦う。聞こえはいいが自分のためである。
 しかし少女を救う気持ち、これだけは真実だ。


【方針】
 自分に残されている時間など無い。バーサーカーの魔力消費を考えると尚更。
 聖杯に辿り着くためには構ってなど居られない、全力で勝ちに行く。


29 : 間桐雁夜&バーサーカー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:01:02 wrlOeeYo0
【クラス】
 バーサーカー



【真名】
 一方通行@とある魔術の禁書目録



【パラメータ】
 筋力A 耐久A+ 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具A
(宝具の影響が大きいです)



【属性】
 秩序・狂



【クラス別スキル】
 
狂化:B
 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。


【保有スキル】
 絶対能力:A
 生前彼は学園都市最強と呼ばれる超能力者の頂点に君臨していた。
 狂戦士となり理性を失った今でも高度な計算や演算を可能にさせる能力。

 戦闘続行:C
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

 歩む道:A
 彼の感情は揺れ動く、闇に光が差し込んだから。
 だが今更素直にはなれない。彼は苦悩しながらも己の道を進み続ける。


【宝具】


『一方通行』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 学園都市一位の座に君臨する彼の力は「ベクトル操作」。
 触れた全ての事象を反射するその力に単純な物理攻撃は通じなく反射は自動的に行われる。
 生前未知なる魔術の前では初見で反射は不可能だったが英霊となった今ではランクD相当の魔術ならば初見で反射可能。
 単純な跳ね返しだけではなく、ベクトル操作により飛行性能を得るなど多種多様の戦法を可能にする。


『黒キ翼』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 その力は本人にも理解出来ない。圧倒的な黒い翼を生成する能力。
 この世に存在する全ての事象にベクトルを与え強制的に配下に置くことが出来る能力。
 魔力供給の関係上、連発可能な代物ではない。


【weapon】宝具に依存する。


【人物背景】
 学園都市最強の超能力、第一位の一方通行。
 一流の悪党と称したその生き様は闇に染まっている、虐殺も行ってきた。
 言い訳は行わない、彼は悪党、だった。


【サーヴァントとしての願い】
 バーサーカーのため不明、彼にも守りたい存在は居るようだが――。


【基本戦術、方針、運用法】
 自身の能力(宝具)により戦闘を行う。狂戦士に計画など無い。


30 : 間桐雁夜&バーサーカー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:02:02 wrlOeeYo0
投下終了です(二次二次聖杯再利用です)

続いて鹿目まどか、ライダーで投下します


31 : 鹿目まどか&ライダー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:02:52 wrlOeeYo0


 何も理解出来ていなかった。
 する気も無かった、今ならこう思うだろう。
 気付けば知らない場所に居て周りには見たこともない他人、そして話す男。
 天戯弥勒――最後に叫んだ男の声が印象に残る。知り合い……訳有の関係だろうか。
 

「私……私は」


 記憶は在る。それも聖杯戦争に関する知識も何故か頭の中に眠っている。
 この少女は聖杯戦争とは無関係であり知りもしない、世界も違えば時代も違う人間だ。
 知識だけ手に入っても彼女に行動する起源が生まれる訳でもなく悩むしか無い――そうだろうか?


「私が頑張れば皆を救える……?
 マミさんと杏子ちゃん、さやかちゃんも……そしてほむらちゃんも……」


 交わした約束は必ず叶えるべき事象ではない。
 これまで死んでいった魔法少女の未練を無くす義務も彼女、鹿目まどかには存在しない。
 他人を殺してまで叶える願いで彼女達は、幾多の魔法少女達は鹿目まどかを受け入れるのだろうか。
 人々に不幸を振り撒く存在の一歩手前、これ以上魔法少女関係者が世界を闇に染める必要があるだろうか。


 願い。
 宇宙からの使者との契約で少女たちは願いと引き換えに魔法少女の力を手に入れた。
 その響きは幼いころ多くの子どもたちが憧れた正義の英雄、それが理想。
 現実は悍ましい姿である魔女と戦わなければならない、戦わなければ生き残れない状態だ。
 彼女達の魂はソウルジェムと呼ばれる宝石に移り変わる――つまり人間ではない。
 身体が壊れようが失おうがジェムの輝きがある限り彼女達は死なない、言わばゾンビ。
 少女たちは宇宙存命のために人生を歪められ運命のレールから弾き出されてしまったのだ。


「でも人を殺すなんて間違ってる……こんなの絶対おかしいよ……ッ」


「当たり前だろ!!」


 誰かを犠牲にする願いに意味など有るのか。
 当たり前だ、存在するに決まっている。甘いことを抜かすな。


 それでも、それでも、だ。
 彼女はそれを否定する。誰もが安心して暮らせる優しい世界を彼女は望む。


 彼は否定する。
 この世界に窮屈な鎖は必要ない、誰もが自由に生きるのが当たり前だ、と。


32 : 鹿目まどか&ライダー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:03:44 wrlOeeYo0
鹿目まどかの意見に同調した男、今宵の聖杯戦争ではライダーのクラスを授かった彼女のサーヴァントだ。
 麦わら帽子が特徴的な男は胸を張りまどかを後押しする。


「どんな理由でも人を殺す理由にはならないだろ!!」


 彼は世間で言う悪だ、それも大罪人である海賊。
 死刑囚を一人救うために世界政府に喧嘩を売り、牢獄に侵入もした。
 その後処刑場にも乗り込み、彼は死刑囚である兄一人を救うため数々のモノを犠牲にしたのだ。


 正義の形に定義など無い。
 周りを見てみれば分かるだろう。現実やネットの世界でも正義について語る輩が存在する。
 それは本質でもあれば、周りを茶化す言葉でもあり、己に注目を集めたいだけの発言でも在る。
 人はそれぞれ己の正義を持っている。海賊であるライダーも根からの悪ではなく正義の心を持っているのだ。


「ライダーは聖杯に何を願う……聞いてもいいですか?」


「ない。俺は海賊王になるけど自分で頑張るから聖杯何ていらねえ」


 願いの形だって人それぞれである。
 自分の力だけで叶えたい者もいれば、聖杯など因果を変えて叶えたい者も居る。
 どれもが正しくて、どれもが誤っている。絶対的な正解なんて存在しないのだ。
 彼は一度言った。
『この海で一番自由な奴が海賊王』ならば彼は今宵の聖杯戦争に置いても自分の信念に基づき行動するだろう。
 マスターと共にこの戦いを彼らしく生き残る――何も間違ってはいない。 
 戦いを止める行為は真剣に聖杯を求める人間に対して失礼極まり無い行為だ。
 彼は止めはしない、戦う時が来れば戦う、それが彼の選択でありマスターの選択でも在る……かもしれない。


「じゃあ飯でも食いにいくか! まどか!!」


 腹が減っては戦は出来ぬ。
 見通しの良い草原から動き出す提案をしたライダーはそのまま彼女の答えを待たずに歩き出した。


33 : 鹿目まどか&ライダー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:06:02 wrlOeeYo0
 ライダーは鹿目まどかが悩んでいる事を見抜いていた、いや誰でも分かる。
 彼女は叶えたい願いは在る、だが他人を殺す勇気も人殺しの業を背負う覚悟も持ち合わせていない。
 巻き込まれた存在ではあるが彼女もまた、無関係ではなく願いのために悩んでいた。
 それを感じたライダーはマスターである鹿目まどかを気遣い出来るだけ笑顔にさせる。


「ありがとう……」


 俯きながら小声で礼を述べると彼女もライダーの後を続くように歩き出す。
 心が楽になった訳ではない、だが今だけは笑顔でいたい。


 幕を開けられた聖杯戦争。
 集められた役者は色も違えば筆も違う。
 彼彼女らが演じる今宵の舞台に台本など存在する筈も無く筋書きは想定不可能。
 最後に笑う存在も不明、解る事を述べるとすれば希望など存在しない――これだけだ。



【マスター】鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ


【参加時期】不明。少なくとも杏子とさやか死亡以降。


【マスターとしての願い】不明。悩んでいる様子


【weapon】なし


【能力・技能】
 最強の魔法少女になれる素質は持っているが現段階では普通の少女である。
 また、一般人よりも魔力の量は大きいようである。


【人物背景】
 普通の女子中学生であった鹿目まどかの運命は転校生である暁美ほむらとの出会いにより大きく変動する。
 いや、彼女の知らない所で運命は既に大きく動いていた。 


【方針】
 悩んでいる。他人は殺したくない。


34 : 鹿目まどか&ライダー ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:08:51 wrlOeeYo0
【クラス】
 ライダー


【真名】
 モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE


【パラメータ】
 筋力B+ 耐久B+ 敏捷C+ 魔力E 幸運E 宝具C+


【属性】
 秩序・善


【クラス別スキル】
 
 騎乗:D
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

 対魔力:E
 魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。


【保有スキル】
 
 悪魔の実の能力者:A
 悪魔の実を食べたことにより異能の力を手に入れた者に与えられるスキル、彼はゴムゴムの実。
 身体がゴムのようになる力を手に入れているため打撃や雷撃に対して驚異的な耐性が在る。
 能力者は全員泳げない特性を持っており、海に由来する宝具や力の前には弱くなってしまう。

 覇王色の覇気:EX
 数百万人に一人しか身につけることができない、特殊な覇気。天性的な物である。
 圧倒的な実力の差が存在する相手は戦うこと無く気絶してしまう。
 この覇気は王の素質を持つ者にしか訪れないとされておりカリスマ:Dも兼ね備える。
 またランクC相当の戦闘続行、勇猛、直感スキルも兼ね持つ。


【宝具】


『ギアセカンド』
 ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 両足をポンプのように使用し血流を加速させるドーピング。
 発動すると身体から蒸気が吹き出す。普段よりも素早く動けるようになる。


『ギアサード』
 ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 骨を膨らませ体の一部を巨大化させる宝具。
 巨大化した圧倒的な力で相手を殲滅させる。
 また、体積の増加によりギアセカンドとは異なり速度は大きく落ちることになる。


『旅の欠片こそが財宝(麦わら海賊団)』
 ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大補足:――
 生前海賊であった彼とその仲間たちの航海や冒険、生き様を心情風景とし一味で展開させる固有結界。
 発動者の後方に大きな海を展開させ、仲間である麦わらの一味と海賊船を召喚する。
 ライダーは魔術師はないが一味全員で術を展開することにより固有結果の発動を可能にしている。
 また、マスターである鹿目まどかの魔力量もあるためある程度大雑把に展開できる。


【weapon】ゴムゴムの実を用いた戦法。


【人物背景】
 ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%BBD%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3


【サーヴァントとしての願い】
 マスターに全てを捧げる。


【基本戦術、方針、運用法】
 マスターのために戦う。


35 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:12:00 wrlOeeYo0
投下終了です。
それで規格的なお話ですが、最初は私が七作投下した後募集する、お話でした。

熱が冷めぬ内に動け、ということでもう募集します。
来週の土曜、つまり8月2日いっぱいまで募集です!

詳しいのは次の書き込みで


36 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:20:48 wrlOeeYo0
・募集するのは残りの11作です。セイバー、ライダー、バーサーカーは一作。
・ランサー、アサシン、アーチャー、キャスターは各二組ずつ募集します。

・二次二次聖杯再利用の場合はトリ付きでお願いいたします。(念のため)
・URL貼り付けでもいいですし、OP改変に伴う書き直し投下等何でも歓迎します。
・「○○&○○みたい」「エミヤ出したい」「美樹さやかちゃん&バーサーカー出そうぜ!」
・などなどどんな書き込みでも歓迎します。

・このスレに8月2日(土)期間内に書き込まれた中から日曜中に私が選出します。
・投票は……申し訳ありませんがご了承ください。そこは俺ロワということでどうか……。
・雑談や質問はどんどん書き込んでください!

・重ね重ね申し訳ありませんが地図は募集します!すいません!
・現段階ではここまで、どうかよろしくお願いします!


37 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:22:49 wrlOeeYo0
ではここからは募集期間となりますのでよろしくお願いします。


38 : 名無しさん :2014/07/26(土) 13:28:29 5k0vmYqM0
質問です

原作で死んだ人物を死後から出すのはありでしょうか?
テレカで現実に帰還というのができないってことになるんですが


39 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:35:46 wrlOeeYo0
>>37
死亡後参戦はありです。ですが現実への帰還は不可能です。
サイレン世界では形を得ていても現世に肉体はない、死んだまま。
の解釈でお願いします。

ですので死亡後参戦キャラは生き残らなければ現実での生は得られません


40 : 名無しさん :2014/07/26(土) 13:44:02 2rA54DVk0
キャラ候補だけ書けばいいんでしょうか?
それとも登場話的なもの書いた方がいいんでしょうか?


41 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 13:49:30 wrlOeeYo0
>>40
出来れば登場話だと嬉しいです


42 : ◆ACrYhG2rGk :2014/07/26(土) 13:56:00 5k0vmYqM0
では使い回しですが投下させていただきます


43 : 遠坂時臣&ライダー ◆ACrYhG2rGk :2014/07/26(土) 13:57:11 5k0vmYqM0

つらつらと景色が流れていく。
夜の街。煌めくネオン、若い女の嬌声、若い男の怒鳴り声、すえた臭い。
優雅とは程遠い、まさしく混沌と評する以外にない光景が、目の前をスクロールしていく。

「……で、答えは出たか?」

問いを投げかけられる。
その主は、斜め前に座ってハンドルを握っている男。
何の因果か自分は今、機械文明の手先たるこの鉄の箱に乗って走っているのだ。
聖杯戦争御三家の一角である遠坂家、その当主であるこの遠坂時臣が。

「悩むのは構わんが、目的のないドライブにそう長くは付き合えん。
 やるならやる、やらないならやらない。ここらではっきりさせろ」

時折りハンドルを切り、信号に止まり、法定速度を決して違反しようとしないこの男。
見た目はいかにもなタクシードライバーだが、これでもれっきとしたサーヴァントなのだ。
ライダー。それが今回の、時臣のサーヴァント。

時臣はふと、以前契約していたサーヴァントを思い出す。
傲岸不遜を絵に書いた――と言うより、その語源となったと言われても驚かない、ひたすらに我が道を行く黄金のサーヴァントを。
同じサーヴァントという存在でも、「アレ」と「コレ」とはまったく違う。
あのアーチャーは喩えるなら太陽だ。天上に在り、眼下全てを睥睨し、裁く。唯一無二故に正しく、また傲慢である。
このライダーは喩えるなら巨木だ。大地にしっかりと根を張り、どっしりと出迎える。雨にも風にも小揺るぎもしない、太い意志を感じる。

「……私には娘がいてね。二人だ。姉妹。
 まだ小学生だが、二人とも聡明で……優秀でね。私などでは辿り着けない高みへ行けるのではないかと思っている」

英雄王にはそんな事情など話す気にはならなかったが、このライダーに対しては口が勝手に動いていた。
理由というには弱い。だが、時臣はこの男にどこか自分と近いものを感じずに入られなかったのだ。

「違うな、思っていた、か。私はあの子たちを残したまま、道半ばで倒れてしまってね。
 死ぬ覚悟はしていたとはいえ……いや、本当のところは、覚悟など無かったたのかもしれないな。
 だから今、私は死ぬことも生きることもできないままこんなところにいる」
「俺を召喚したということは、まだあんたには願いがあるということだ。
 あんたが死んだ聖杯戦争……この聖杯戦争とは少し違うようだが、やることは変わらない」

キッ、とライダーがサイドブレーキを引き、タクシーを止める。
ドアが開く。目を向ければ、そこは人の溢れる駅前ターミナルだ。

「あの駅から電車に乗れば、あんたはあるべき運命に戻る。
 だが、他の奴らと違ってあんたは死んでここに来た。つまりこの戦いを降りればあんたは死ぬ
 選べ。戦うか、降りるか。あんた次第だ」
「君はそれでいいのか? 私が拒めば君も聖杯戦争には参加できんだろう」
「俺は別に聖杯なんぞ求めちゃいない。あんたがやらないのなら俺も消える、それだけだ」

鋼の如く冷えた眼光を向けられ、時臣は竦む。
その目は何度となく死地をくぐり抜けてきた者のみが放つ輝き、殺気を放っている。
それでいて冷たい感じはしない。全てを受け入れ、そして乗り越える――不可能に挑む益荒男の顔だ。


44 : 遠坂時臣&ライダー ◆ACrYhG2rGk :2014/07/26(土) 13:57:39 5k0vmYqM0

「……私は、魔術師として戦い、死んだ。そこに後悔はない。
 綺礼が私を裏切ったのも……彼を責める気はない。彼が秘めていた歪みを見抜けなかったのは私の不徳だ。
 私に後悔はない。だから、二度目の聖杯戦争などという優雅ではない行いは……」
「魔術師として後悔はない。それはいい。だが、父親として、後悔はないのか?」

ライダーから放たれた問いはまさしく矢のように時臣を貫いた。
聖杯戦争に挑む以上、自身の死は起きてしかるべき結果に過ぎない。
遺される娘たちの処遇もすでに手配済みだ。
長女・凛は遠坂家を継ぎ、言峰綺礼を後見人に。
次女・桜は遠坂家と同じ名門である間桐家に養子に出す。
類稀なる魔術の才を無駄にすることなく、この采配こそ二人の未来を輝かしいものに――

「親がいなくなった子どもってのはなあ……寂しいもんなんだよ」

ポツリと呟かれたたライダーのコトバによって、カガヤカシイミライは一瞬で色褪せた。
凝然とライダーを見る。その言葉はけして一般論でも何でもない、言葉に出来ない深みがある。

「覚悟はしてた、魔術師はそういうもんだ、つってもな。
 胸の真ん中にポッカリ空いた穴は、他の何でも埋められねえ……一生抱えて生きていくしかねえ傷になる。
 俺はその痛みを知ってる。だからあいつら、遥や子どもたちの痛みを受け止めてやりたかった」

遥、というのが誰かは知らない。が、この流れで言うのだ、ライダーの子か、それに近い関係なのだろう。
共に子を持つ父親。時臣がこの男に感じていた奇妙な親近感の正体はそれだ。
そしておそらくこの男は、親を失ったか子どもを残して死んでしまったか、あるいはその両方か。
残される痛み、そして残す痛みを知っているのだ。

「あんたは魔術師として戦い、死んだ。
 なら今度は魔術師じゃなく父親として、子どもたちのために生きてみちゃどうだ?」
「そのために、戦えと?」
「無理強いはしねえさ。俺が果たせなかった夢を、あんたに押し付けてるだけなのかもしれねえからな。
 俺はあいつらと一緒にいるとき、生きていると感じていた。この子たちを守るために今まで生きてきたんだって確信できた。
 あんたはどうだ? 父親として、子どもたちになにか誇れることをしたか?」

夢――この男の夢は、子どもたちと穏やかに生きていくことだったのだろう。
自分の夢は、言うまでもなく根源への到達だ。
だがこれは、この夢は、言うまでもなく父親・遠坂時臣としての願いではない。
魔術師・遠坂時臣としての願いだ。子どもたちを魔術師としてしか認識していない、父親としては失格の。

「凛……桜……」

思えば、市井の家族のように子どもたちと遊んだことはあっただろうか。
娘たちに手を引かれ、妻が微笑み、家族みんなで笑い合うような時間が。
考えるまでもない。一度だってなかった。
時臣が娘に接するのは常に魔術というフィルター越しだった。
一度だって、娘たちを父親として抱きしめたことはない。
手間など無かったはずだ。友達はできたか、テストの成績はどうだった、好き嫌いはするな。そんな他愛無い言葉でよかったのだから。
気がつけば、涙を流していた。


45 : 遠坂時臣&ライダー ◆ACrYhG2rGk :2014/07/26(土) 13:58:51 5k0vmYqM0

「……そうか。私はこんな……こんな、簡単な事を、今まで……」

今になってようやく、間桐雁夜があそこまで自分を憎んできた意味がわかった。
何の事はない。彼のほうがよほど人間として、父親として正しかったというだけだ。
凛と桜が魔術師としてではなく、ただ人として健やかに生きていけるために戦ったのだ。

「雁夜……済まないな、いまさら遅いと怒るだろうが、謝罪するよ。
 そしてありがとう。君はあの子たちを守ろうとしてくれたんだな……」

涙とともに、時臣が今まで魔術師として積み上げてきたものが崩れ落ちていく。
誇りも、血統も、名誉も、賞賛も、何もかもがもういらない。
この両の手に娘たちを抱きしめられるのなら、他には何もいらない。
そう思っただけで、ひどく肩が軽くなった感じがする。あらゆる重圧が消え去り、晴れやかな気分になった。
時臣は、開け放たれていたドアを掴んで乱暴に閉めた。

「出してくれ、ライダー。まずは市内を回る」
「……いいのか?」
「ああ。決めたよ、私は戦う。どうせ一度死んだ身だ、これ以上失うものなどない。
 私は魔術師としてではなく父親として、凛と桜を迎えに行く。そのために君の力を貸してくれ、ライダー」

ライダーの瞳をしっかりと見据える。先ほどと違い、もう竦みはしない。
今、時臣の中には芯がある。このライダーと起源を同じくする強靭なシャフト。
家族を守らんとする父親の、愛という名の芯が。

「良い目になったな」

ニヤリと笑い、ライダーが計器を操作する。
空車、から予約車へ。
この瞬間を以って、時臣は初めてライダーと契約したのだ。
だがまだ、このライダーの真名を聞いていない。
戦略上重要というのももちろんだが、時臣に父親のあるべき姿を教えてくれたこの男の名を知りたいと思った。

「私の名は遠坂時臣。ライダー、君の名を教えてくれ」

ライダーは、かぶっていた制帽を脱ぎ、助手席に置く。
そして振り返り、言った。


「元東城会四代目、桐生一馬だ。飛ばすぜ、お客さん」


踏み込まれるアクセル。
タクシーは、猛スピードで夜の街を走り抜けていく。


46 : ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 13:59:26 2rA54DVk0
とりあえず設定いじるのしんどいから作貼ります.
使ってもらえたら大歓喜
採用候補あったらOPに合わせて話いじります

ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/25.html
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/32.html
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/60.html
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/204.html


47 : 遠坂時臣&ライダー ◆ACrYhG2rGk :2014/07/26(土) 13:59:48 5k0vmYqM0


【マスター】
 遠坂時臣

【出展】
 Fate/zero

【マスターとしての願い】
 父として二人の娘に償いをする

【weapon】
 大粒のルビーを先端にはめ込んだ杖

【能力・技能】
 遠坂流魔術

【人物背景】
 遠坂家五代目継承者。
 もともと魔術師としてはさほど才覚豊かな人物と言うわけではなく、歴代の遠坂の中でも凡庸な人物であった。
 しかし、その克己と自律は強固なもので、必要とされる数倍の修練と幾重もの備えをもって事に当たり、常に結果を出してきた。
 その結果、家訓「常に優雅たれ」に忠実な人物として、魔術師達からも一目置かれる存在となっている。
 第四次聖杯戦争には監督役である言峰璃正とも通じ、アサシンのマスターである言峰綺礼を幕下に加えるなど幾重にも策謀を巡らせた上、英雄王をサーヴァントとして召喚し、満を持して臨む。
 ……が、弟子であった綺礼、そしてサーヴァントであったギルガメッシュに裏切られ、暗殺される。

【方針】
 ライダーの宝具を利用し、偵察に出る。
 情報が充分に集まったところで行動を開始する。


48 : 遠坂時臣&ライダー ◆ACrYhG2rGk :2014/07/26(土) 14:00:41 5k0vmYqM0

【CLASS】
 ライダー
【真名】
 桐生一馬
【出展】
 龍が如く5
【パラメーター】
 筋力B 耐久B+ 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A
【属性】
 秩序・任侠 
【クラススキル】
 騎乗:C 乗り物を乗りこなす能力。タクシーなどの自動車を運転することに特化しており、バイクや生物は運転できない。
 対魔力:C 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
 伝説の極道:EX かつて堂島の龍と呼ばれた伝説の極道。その偉業は神室町にとどまらず、日本全国のアンダーグラウンドに雷鳴の如く鳴り響いている。
            ライダー本人は紛れもなく人間だが、その圧倒的な強さと背中に彫った応龍の刺青が見る者に天に昇る龍を想起させる。そのため竜の因子を有する。
 天啓:C 何気ない日常の中に武芸の真髄を見出す一瞬の閃き。直感と心眼(偽)の複合スキル。
 古牧流古武術:A+ 戦国期より伝わる古牧流古武術。拳法のみならず武器にも精通し、対武器戦闘をも得意とする。
             正統継承者である古牧宗太郎が常にアレンジを加え進化し続けているため習得の難易度が高く、Aランクでようやく「修得した」と言えるレベル。
             接近戦において敵の攻撃にカウンターを取りやすくなり、また格闘ダメージを向上させる。

【宝具】
「福岡最速のタクドラ(ドラゴンタクシー)」
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:50人
 桐生一馬が福岡で乗り回していたタクシーを召喚する。
 対軍宝具ではあるがこの宝具自体に攻撃力はない。ただひたすらに速く、ひたすらに頑丈なだけ。
 桐生はタクドラという仕事にプライドを持っているため、決してタクシーで人を轢くことを良としない。そのためこの宝具の使い道はもっぱら移動用である。
 攻撃力が皆無な分、乗車中はマスター・サーヴァント共に高ランクの気配遮断を付加し、外側からは魔力も感知できなくなる。
 街中を法定速度を守って走っていればまず発見されることはないだろう。

「神室町に吹き荒れる嵐(ヒートアクション)」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1人
 神室町で日常的に起こる殺し合い一歩手前のケンカを擬似的に再現する固有結界。
 この結界内では建築物や路上に落ちている物、地形などあらゆるものをDランク相当の宝具とし、戦闘に活用できる。
 この宝具を発動中に敵のサーヴァントを掴みガードレールに頭を叩きつける、川に投げ込むなどするとダメージを与えられる。
 桐生を中心に10メートルほどと効果範囲は極めて狭いが、桐生が移動することで結界も動くようになっている。

「怒龍の極み(クライマックスドラゴンヒート)」
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 自分に対して発動する宝具。
 戦闘でダメージが蓄積すると同時に桐生の怒りのボルテージも溜まっていき、怒りが限界を突破したときに初めて使用可能となる。
 一時的にあらゆるダメージを2分の1に減少させ、敵の攻撃で怯まなくなり、負ったダメージ分の数値を攻撃力に加算する。
  (わかりやすく言うなら防御力二倍・スーパーアーマー・バリアントナイフ装備)
 繰り出される怒涛の連撃はさながら龍の息吹の如く。背中の刺青が光り輝き、応龍の力を宿す。竜殺しの属性を持たない者にはダメージ追加判定がある。

【weapon】
 怨龍の鉄拳・改
  桐生が愛用するメリケンサック。刃物や銃弾をガードできる。

 桐生は本来、刀、短刀、棒、トンファー、ヌンチャク、カリスティック、拳銃、対物ライフル、ショットガンに衛星ビーム砲などあらゆる武器を扱えるマルチな才能を持つ。
 そのためライダー以外にもセイバー、ランサー、アーチャーのクラス資質を有するが、ライダーとして現界しているためこれらの武器を宝具として持ち込むことはできなかった。
 ただし桐生の基本的な戦闘スタイルは拳や蹴りを用いた格闘であるため、メリケンサックはすべてのクラスで所有している。


49 : 遠坂時臣&ライダー ◆ACrYhG2rGk :2014/07/26(土) 14:01:24 5k0vmYqM0

【人物背景】
 関東一円を支配する日本最大規模の広域暴力団「東城会」の元四代目総長。
 東城会傘下の堂島組に籍を置いていたときから傑物と噂される剛の者であり、また人情にも篤く、その生き様で多くの極道たちを心酔させる。
 背中に彫られた刺青は東西南北を守る四神(朱雀・玄武・白虎・青龍)の長、「応龍」。
 巨大歓楽街「神室町」を襲う災厄に幾度も立ち向かい、並み居るヤクザ・マフィア・チンピラ・虎・ゾンビを殴り倒し撃ち倒してきた、いわばジャパン製のターミネーター。
 自らが孤児でありその寂しさを知っているため、四代目に就任すると同時に引退、沖縄にて孤児院を開き孤児たちの面倒を見る。
 その後色々あって福岡に移住、名前を変えてタクシードライバーとして生計を立てる。
 地元の走り屋を次々とタクシーでぶっちぎり、名実ともに福岡最速のタクシードライバーとして認知されている。
 神室町を襲う陰謀と戦う中、銃撃され重症を負うも負傷を押して黒幕を倒すが、ついに力尽き倒れてしまう。 

 今回の聖杯戦争に参加する桐生は、上述の事件で死亡したという設定。原作ではおそらく生きている。
 ちなみに前世は宮本武蔵だったり斎藤一だったり坂本龍馬だったりする。


【サーヴァントとしての願い】
 時臣が父親として娘の元へ帰れるよう助力する。自身も可能なら遥や子どもたちのところに戻りたい

【基本戦術、方針、運用法】
 ライダーの乗り物は戦闘には使えないが、使用中は一般人と識別が困難になる。そのためまずは情報収集が得策。
 ライダー本人はタイマンの殴り合いに特化している。そのためアーチャーやキャスターといった遠距離攻撃を主体とするサーヴァントには苦しい展開を強いられるだろう。
 タクシーを利用して身を隠しつつうまく一騎打ちに持っていくことが重要。マスターをタクシー内に隠しておけば戦闘中も安全。
 ただし、時臣はおそらく運転免許を持っていないのでタクシーを移動させることはできない。あらかじめ戦闘に巻き込まれない場所を確保しておこう。
 運転教習所に通わせるのもカムフラージュになっていいかもしれない。


50 : 名無しさん :2014/07/26(土) 14:03:41 5k0vmYqM0
投下終了です
場をお貸しいただきありがとうございました


51 : 名無しさん :2014/07/26(土) 14:04:31 5k0vmYqM0
と、書き忘れてました

>>39
返答ありがとうございます
虹虹に投下したものに微修正して投下させていただきました


52 : 名無しさん :2014/07/26(土) 14:05:06 2rA54DVk0
投下乙です

間に入ってしまって申しあけありません…
ちゃんと更新して確認を心がけます


53 : 名無しさん :2014/07/26(土) 14:51:08 k8HdYLks0
一つ、質問をよろしいでしょうか。
作品を再利用したいのですが、序盤でサーヴァント(モブ)と戦闘させているのですが変えた方がよろしいでしょうか?


54 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/26(土) 16:27:11 wrlOeeYo0
>>53
そうですね……。
このOPの場合は予選的ポジションはないので、モブとの戦闘は変更してもらえれば有難いです。


55 : 名無しさん :2014/07/26(土) 17:55:54 Jq5S2euE0
桐生ちゃんのヒートアクションの最大補足数3くらいでも良いんじゃない?
多人数攻撃できる人柱戯の極みとかもあるし


56 : 名無しさん :2014/07/26(土) 19:31:27 k8HdYLks0
>>54
回答ありがとうございます、では書き直してから参加させていただきます!


57 : ◆oLzajvgbX6 :2014/07/26(土) 21:57:24 uBpZjCwg0
一応投下します
使う、使わないは皆さんの判断にお任せします


58 : ◆oLzajvgbX6 :2014/07/26(土) 21:59:08 uBpZjCwg0
お洒落な洋館で、お茶会が開かれていた。

森のざわめきが空気を揺らすが、洋館はそしらぬ顔で顕在する。
風や音をこの洋館が無視するのは、中に人外魔境を潜ませているからか。
夜の闇の中で映えるその姿は、まるで吸血鬼でも住んでいそうだった。

そして、洋館の大広間では座って紅茶を飲む少女と、その後ろに立って静かに彼女の反応を伺う老人がいた。
大広間の壁には豪壮な雰囲気の掛け時計が設置され、静かに時を刻んでいる。
絵画もいくつか掛けられているが、いずれも著名な画家達に描かれた何百万もする高級品だ。
天井には豪華だが、決して悪目立ちはしないような、上品なシャンデリアが部屋を照らしている。
床には重厚な絨毯が敷かれ、その模様は見るものの心を楽しませる。
そして、部屋の真ん中に華美だがどこか場違いな椅子に座って、少女は紅茶を飲んでいた。これは、傍で控える老人が別の部屋から持ってきたものだ。ゆえに、部屋の調和にどこかそぐわない印象を与える。

紅茶を飲む少女は名を、レミリア・スカーレットと言った。吸血鬼、である。
この度、ランサーのサーヴァントとして召喚された彼女だが、手元に槍は持っていない。かの吸血鬼、ドラキュラ伯爵の末裔だと嘯き、妖怪や神が存在する「幻想郷」では、「紅魔館」の主をしていた彼女は、この部屋の雰囲気に呑まれるどころか、まるでもうこの館に住んで50年は経っているといった顔で見事に君臨していた。
外見は10歳前後。一部の特殊な性癖者が見たら喜びそうな姿かたちをしている。しかし、年齢は500歳を超えていた。実は、傍で控える老人より遥かに年上なのだ。

一方、老人は人間だった。吸血鬼でもなければ、魔術師でもなく、ホムンクルスでもない。
普通に怪我をして、普通に年をとり、普通に死ぬただの人間だ。

しかし、何百もの吸血鬼を殺し続けた、恐るべき人間だった。
鋼線(ワイヤー)を使い、吸血鬼をバラバラにするその姿は、戦場では死神と形容された。

「悪くはないわね」

紅茶を飲み終わって、レミリアはそう言った。
この紅茶はウォルターが淹れたものだ。

「いいえ、この言い方だとさすがに酷ね。美味しいのだけれど、ただ美味しいだけね。私好みじゃないわ」
「申し訳ございません」

丁寧に謝るウォルター。

「別に謝らなくていいわよ。美味しいのは事実だし」

レミリアは上機嫌に答えた後、ふと表情を変えて、ウォルターのほうを見た。

「ねえ、ウォルター。貴方は聖杯に何を願うの?」


59 : ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ◆oLzajvgbX6 :2014/07/26(土) 22:00:43 uBpZjCwg0
この聖杯戦争に参加しているマスターは、ほとんどの者が何か願いを抱えている。そこに老若男女の区別はない。
ある者は、名誉を求めて。
ある者は、やり直しを求めて。
ある者は、大切な人の蘇生を求めて。
ある者は、世界の平和を求めて。
そして、ウォルターも同様だった。

「若返りですよ」
と、ウォルターは簡潔に言った。

それはこの男の経歴から考えれば、あまりにも小市民的な言葉だった。
あら、とレミリアは意外そうな顔をする。おそらく、彼女はもっと大きくて、狂った回答を期待したのだろう。

「私が言うのも変な話だけれど、あなたは老いた自分を楽しんでいるように見えるわ」
「ははは、年老いた自分が嫌いなわけではありません。ただ、今の私では勝てない相手がいるのです。この衰えた体では到底敵わない、地獄のような化物がいるのです」
「あら、あなたでも歯が立たないなんてそんな私みたいな奴がいるのね」
「はい、その男は恐ろしく強いうえに、不死身なのです。しかし、私は死ぬ前に、彼にどうしても挑みたい」
「だから、聖杯を求めると。ふーん、興味深い話だわ。あなたがそうまでして、戦いたい、倒したい相手っていたい誰なの」

再び、紅茶を口にしながらレミリアはそう言った。
その言葉にウォルターは意地悪く笑った。

「ドラキュラ伯爵です」

レミリアは、紅茶を吹き出した。


◆ ◆


「本当によろしいのですね?」

洋館の入口に向かって歩きながら、ウォルターはそうレミリアに問いかけた。

「ええ。別にあなたがご先祖様を倒したからといって、私には何も関係ないことだわ。むしろ、人間でありながら吸血鬼の真祖に挑もうとするあなたに興味がわいた」
「ふふ、意外と多いのですよ。そういう愚かな人間は」

一瞬、ウォルターの脳裏に様々な人物が揺らめいた。

「OK、OK。私はランサーのサーヴァントとしてあなたに聖杯を贈るわ。ドラキュラの末裔の力を借りて、ドラキュラを倒す力を得る。中々面白い冗談じゃない?」
「まったくです。三流の劇作家が考えそうなシナリオだ」
「さあ、行くわよウォルター。私たちの戦いを、一片の救いのない地獄を、紅に彩られた戦争を、始めましょう」

そして、扉は開かれ、吸血鬼と死神は野に放たれた。


60 : ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ◆oLzajvgbX6 :2014/07/26(土) 22:01:31 uBpZjCwg0
【クラス】 ランサー
【真名】 レミリア・スカーレット
【属性】 混沌・善

【ステータス】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A 宝具:B
 
【クラススキル】
 対魔力:B 第三節以下の詠唱による魔術を完全に無効化。大魔術、儀礼呪方等の大掛かりな魔術を持ってしても傷つけることは難しい。
 

【保有スキル】
 吸血鬼:C
 人あらざるもの、吸血鬼としての特徴を纏めた複合スキル。
 レミリアはツェペシュの末裔を名乗っているが、確たる証拠はなく、吸血が下手で、眷属を作らないため、ランクは低い。また日光や炒った豆、流水は苦手だが十字架やニンニクは平気。全身を蝙蝠に変化させ、蝙蝠一匹分でも残っていれば再生が可能。

カリスマ(偽):C
 個人としての魅力。
 軍団の指揮や団体戦闘には何ら寄与しないが、他者を惹きつける。
 
飛翔:B
 自前の翼による飛行能力。
 飛行中の判定における敏捷はこのスキルのランクを参照する。

【宝具】
 『神槍「スピア・ザ・グングニクル」』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:5〜40 最大捕捉:50人
 魔力を練り上げて作り出した巨大な槍。投げれば相手に必ず当たる性質を持つ。絶大な破壊力を持っているため、直撃すれば並のサーヴァントに大きなダメージを与える。

『紅魔館(スカーレット・ハウス)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:100 最大補足:100人
真名開放をすることで発動する、結界宝具。周囲を「紅魔館」へと変化させ、敵サーヴァントとマスターを閉じ込める。脱出するにはレミリアを撃破するか、マスターを宝具が維持できなくなるまで消耗させる必要がある。しかし、内部にはレミリアに忠誠を誓った人妖がサーヴァントとして召喚されているため、一筋縄ではいかない。ウォルターが魔術師ではないため、数分しか発動できない。

『紅霧異変(スカーレット・ミッド)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:100 最大補足:100人
周囲に紅い霧を発生させ、太陽の光を遮る。これにより、レミリア・スカーレットは昼間でも制限無しで戦うことができる。本来なら範囲は幻想郷全てを包み込むほど大きいが、ウォルターが魔術師ではないことからレンジや最大補足が大きく減少している。

【weapon】
『お気に入りの日傘』
レミリア・スカーレットが所有している普通の日傘。これで日光を遮れば、昼間でも外で活動できる。

【人物背景】
 ゲーム「東方PROJECT」に登場するキャラクター。「紅魔館」の主として君臨する吸血鬼。500年以上生きているが外見は10歳くらい。大人びた言動をとるが、行動原理は意外と子供っぽい。自称ツェペシュの末裔を名乗っているが、実際は違うらしい。運命を操る程度の能力を持つと言われているが、明確にこの能力が使われたことはないため、詳細不明。

【サーヴァントとしての願い】
 不明。ウォルターに協力して聖杯を与える。

【基本戦術、方針、運用法】
 ステータスが非常に高いため、夜は積極的に他陣営を襲うべき。昼間は魔力に余裕があれば、『紅霧異変』を発動させながら戦闘を続行するが、そうでない場合は日光の当たらない場所で魔力と体力の回復に努めるのが吉。『神槍「スピア・ザ・グングニクル』は必中の宝具のため、戦闘では重宝する。逆に、『紅魔館』は魔力消費が非常に多いため、一度使ったら、一日は休まなければならないだろう。まさに、奥の手といったところか。


61 : ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ◆oLzajvgbX6 :2014/07/26(土) 22:02:22 uBpZjCwg0
【マスター】
ウォルター・C・ドルネーズ
【参加方法】
何らかの方法で『ゴフェルの木片』を入手。

【マスターとしての願い】
全盛期の力を取り戻す (若返り)。その後帰還してアーカードと対決。

【能力・技能】
全盛期と比べると衰えたが、それでも鋼線(ワイヤー)を使って武装したグールや吸血鬼を圧倒できる。少年の頃から戦場で戦ってきたため、戦闘経験は非常に豊富。また、執事としても万能。

【weapon】
『鋼線(ワイヤー)』……ウォルター・C・ドルネーズが使用する鋼線。全盛期の彼が使えば、ビルを両断できるほどの強度を持つ。

【人物背景】
「HELLSING」に登場するキャラクター。ヘルシング家二代に使える執事。物腰は穏やかだが、昔は「ゴミ処理係」として多数の吸血鬼や、ヘルシング家に仇名す人間を殺してきた。
先代ヘルシング家当主アーサーが没した直後、次期当主の座を狙う実弟リチャード・ヘルシングが凶行に至る確信を即座に見抜き、リチャードによるインテグラ襲撃に際して封鎖されていた地下深層に続く道を逃走経路の要点となるよう計画し、インテグラとアーカードの邂逅させる。その時から、アーカードと戦うことを考えていたらしい。
本来の正史ならば、後に、彼はロンドンで手術を受け、不安定な人口吸血鬼になりアーカードに挑戦するが、結局勝つことはできなかった。

【方針】
レミリアが活動できる夜間は「目敵必殺(サーチアンドデストロイ)」で一片の容赦なく敵を仕留める。昼間でも、チャンスがあれば積極的に殺していく。


62 : ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ◆oLzajvgbX6 :2014/07/26(土) 22:02:46 uBpZjCwg0
以上で投下を終了します


63 : ◆DpgFZhamPE :2014/07/26(土) 22:33:17 k8HdYLks0
では、投下させていただきます。
前半サーヴァントとの戦闘を入れていて変更したので、お願いします


64 : 朽木ルキア&ランサー ◆DpgFZhamPE :2014/07/26(土) 22:34:16 k8HdYLks0
冷たい風が、美しい黒髪を撫でる。
そのどこか気品が漂う風貌の彼女は、掌を握り離しを繰り返していた。

「───ふむ、特に問題はなく魔力供給とやらは出来ているらしい。
霊力でも代用できるのだな、魔力というものは」

灰色の制服を纏った少女───朽木ルキアは、そう呟く。
彼女がこの場に呼ばれてからまず行ったことは、現状確認。
死神たるもの、ある程度の危機には慣れている───が流石にここまでのことは想定外だが。
ポケットに閉まってある伝令神機もこの場では機能しないらしい。
尸魂界との通信も、完全に断たれていた。

「天戯、弥勒・・・!!」

ルキアとしてはあのような人物を許すつもりはない。
死神として、このような暴虐を見過ごせはしないのだ。
しかし。

(今の私に、そこまで行える力があるのか・・・?)

───今のルキアは、死神の力を失っているのだ。
微かには残っている。
威力は下がるものの、鬼道も問題なく使用できる。
しかし、霊力が一向に回復する気配を見せないのだ。
今彼女が使用している肉体は、本来『義骸』と呼ばれる物だ。
霊体である死神が、力が弱った場合などに使う仮の肉体───それを使い、身体を休め、回復を待つのだ。
しかし、結果はこの通り。
そして、ルキアにはもう一つの問題がある。

「そう思い詰めた顔しなさんなって。
命短し、人よ恋せよってな。
悩んでる時間なんか勿体無ぇっての」

───この、能天気なサーヴァントのことだ。
黄色の着物に虎の毛皮、見るからに派手なこのサーヴァントは、命が懸かっているこの状況でもずっとこの調子なのだ。

「たわけ、全員が全員貴様のような能天気な訳ではないのだ」
「意地っ張りだねえ、全く」
「貴様が能天気過ぎるのだ・・・!!」
「そりゃ、嫌なことはさっさと考えないようにして楽しく生きるのが一番なのよ」
「・・・まあよい」


65 : 朽木ルキア&ランサー ◆DpgFZhamPE :2014/07/26(土) 22:35:04 k8HdYLks0
怒りはまだ収まらないが、とりあえずひと段落。
この目の前のサーヴァントについても聞かなければならない。
勝負の基本は己を知ること。
己を知り相手を知れば百戦危うからず、とは誰が言った言葉かは知らないが、まさにその通りである。

「貴様のクラスは───見たところ、セイバーか?」

ルキアは目の前の大男が背に負う大きな刀を見て問う。
これほどの大刀、誰が見てもセイバーのクラスと思ってもおかしくはない。

「いんや。俺はランサー、槍兵のクラスだ」

大男は、ランサーと名乗った。
ランサーと言えば、槍を主武装にするクラス。
とてもじゃないが、目の前の大男がランサーとはとても信じられなかった。

「む・・・?じゃあその大刀は何だ」
「ん?話すより見せた方が速いな。んじゃあちょっくら見せてやるよ、ッと!」

抜かれる大刀。
───その名も、超刀。
ルキアの体躯など軽く越えるソレは、まるで重みなどないかのように軽々しくランサーの腕力で自由自在に動き回る。
そのまま超刀の柄に、超刀と仕舞うだけの大きさを持った鞘を差し込む。
───これが、ランサーが槍兵として召喚された由縁。
あり得ないほどに巨大な槍、『朱槍』である。

「───大きいな。こんなものを振り回せるのか?」
「当ったり前よ!これしきのモン、軽い軽い」

ドンッ!と地面を揺るがすほどの音と共に、朱槍を地面に差し、自立させる。

「で、マスター。アンタの願いはなんなんだ」

ランサーの瞳がルキアを射抜く。
そう、この聖杯戦争は───願いのある者しか呼ばれない。
天戯弥勒とやらも、そう言っていたではないか。
ルキアとしても、願いが無いと言えば、嘘になる。

「私は───力を取り戻したい。
緊急事態だったとはいえ、あるヤツに力を譲り渡してしまってな。
あやつ一人に戦わせるのは私としても嫌なのだ」

正直に、全てを曝け出した。
しかし、ルキアとしても人を犠牲にしてまで叶えるべき願いだとは思わない。
そのような方法で手に入れた力では兄様に、海燕殿に───何より、黒崎一護に合わせる顔がない。

「力ァ?お、なら丁度いいね」

ランサーはいともたやすく、言い放つ。
その顔には、祭りを楽しむような笑顔があった。

「力が欲しいなら丁度いい。ここは聖杯戦争、猛者の中の猛者が集まる大喧嘩の大祭りよ!
踊る阿呆に見る阿呆、こんだけのヤツらがいるんだ、踊って楽しんで強くなりゃいい!」

聖杯などに頼むより。
己の力を聖杯戦争の最中で磨けと。
ランサーは、そう言い放った。

「幸い、相手にゃ困らねぇ。鍛えたいってんなら俺が鍛えてやるよ」

そう、これがランサー。
祭りと喧嘩をこよなく愛し、恋と愛を掲げ戦場で踊り狂う。
天下一の傾奇者。

普段なら一蹴しているほどの、無茶な理論。

「───滅茶苦茶だな、貴様は」
「無法天に通ず、ってのはこういうことよ」

だが、今回ばかりは───その姿が、その声が『彼』に似ているからだろうか───この男を、信じてみたくなった。

「ではランサー・・・私を、強くしてくれるか?」
「おうよ、任せとけっての!」
ランサーは笑顔で言い放つ。
ここに。
力を失った死神と、天下一の傾奇者の主従が誕生した。
地に突き立てた朱槍を引き抜き、空へと掲げる。
未だ見ぬ強敵との大喧嘩に胸を踊らせ、彼は決意の一言を言い放つ。

「サーヴァント・ランサー───前田慶次。
此度の聖杯戦争にて、いざ、罷り通る───!」


66 : 朽木ルキア&ランサー ◆DpgFZhamPE :2014/07/26(土) 22:35:53 k8HdYLks0
【CLASS】
ランサー
【真名】
前田慶次
【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具C
【属性】
 秩序・中立
【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
傾奇者:A
ランサーの生前の行いによって追加されたスキル。
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。

恋のかけひき:B
ランサーの戦闘技術。
あらゆる行動を途中キャンセルし、動きの異なった攻撃を放つことで相手の反応外からの攻撃を可能にする。

不殺:B
ランサーの誓いがスキルとなったもの。
如何なる時も彼の戦いは喧嘩であり、戦ではない。
相手を戦闘不能・撤退を選ばせる絶妙なラインを見定め相手を攻撃することが可能になるスキル。
しかし、相手を殺害したorしようとした場合、俊敏以外のステータスが一時的に一段階ダウンする。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

【宝具】
『喧嘩よ恋よの大回転 魅せるは前田の傾奇者』(バサラワザ)
ランク:C 種別:大軍宝具 レンジ:5〜40 最大補足:50

朱槍を掲げ、目にも留まらぬ大回転を行う。
一度受けたら最後、嵐のような大回転による連撃によって防御、逃走も許さず相手を斬り伏せ叩きのめす。
その威力、素早さ、範囲は凄まじい者があり、生前はこの技で多くの武士を戦闘不能に追いやったという。

『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地』(ゆめごこち)
ランク:D 種別:− レンジ:ー 最大補足:ー

ランサーの急速な自然回復能力が宝具にまで昇華されたもの。
その場で休息(睡眠)をとることにより、体力・魔力を大幅に回復することが可能。


67 : 朽木ルキア&ランサー ◆DpgFZhamPE :2014/07/26(土) 22:36:51 k8HdYLks0

【weapon】
超刀
ランサーの主武装。身の丈以上の大きな刀で、重量もかなりある。
しかしランサーはこの超刀を振り回し突き立て薙ぎ払い、アクロバティックな動きで強烈な一撃をお見舞いする。
朱槍
超刀の柄に鞘を合体させたもの。巨大な槍となり、威力も更に跳ね上がる。
【人物背景】
前田夫妻の甥っ子で、前田家の風来坊。
自由をこよなく愛し、戦よりも喧嘩好き。
京の都では、老若男女問わず彼を慕う者も多く、慶次の舞う舞は絶品だとも言われている。
束縛を嫌い、普段は前田軍に属しておらず、京都で自由に暮らす遊び人として扱われている。
京の町人からは老若男女問わず人気があり、京の遊び人達を仲間として連れている。
戦場では敵を殺さないが、これは彼の卓越した戦闘技術が成せる技であり彼が戦場で戦った相手は皆撤退扱いとなった。
行く行くは「新生・前田軍」の総大将となり謙信の依頼を受けて将軍・義輝との謁見に臨む。
今回は朱槍を扱っていたことがランサーとしての適性となり、現界した。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争、この祭りを楽しむしかない。
殺しはしない。

【基本戦術、方針、運用法】
戦闘力・技術、共に高水準のサーヴァント。
基本は一対一。大勢の敵とも戦ったことがあるので二対一でもいけるだろうが少し厳しいか。
漢らしく一対一に持ち込み、傾奇者らしいトリッキーな動きで敵を翻弄し、強烈な一撃を叩き込もう。
相手を撤退・戦闘不能に追いやることに特化しているが、殺しをしようとしないのが最大の難点か。
拠点や集団を組んで安全な場所で『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地』にて回復を狙うのも一つの手だ。
使い方によっては色々な戦法が取れるサーヴァントであり、非常に万能である。


68 : 朽木ルキア&ランサー ◆DpgFZhamPE :2014/07/26(土) 22:38:24 k8HdYLks0
【マスター】
朽木ルキア@BLEACH
【参加方法】
ゴフェルの木片の伝承(願いを叶える)ことを聞き、浦原商店から盗み出す
【マスターとしての願い】
死神としての能力の復活
しかしランサーの提案により、この場で強くなれるのなら優勝して叶えなくてもいいと思い始めている
【weapon】
鬼道
【能力・技能】
死神の頃に培った身体能力。
主に鬼道を使用する。
死神の能力は殆ど失われているため使用不可。
使える鬼道は以下記載
破道の四 白雷
・白い雷をビーム状にして発射 貫通力に特化している
破道の三十一 赤火砲
・対象に向け火の塊を飛ばす。直撃すると爆発・炎上。
破道の三十三 蒼火堕
・蒼い炎を発射する。並の虚なら一撃の威力らしい
破道の七十三 双蓮蒼火堕
・蒼火堕の更に上の技。威力も桁違いに上昇している。
縛道の一 塞
・四肢を己の背中で固めさせる。身動きが取れなくなり、その場で地面に伏せることとなる。
縛道の四 這縄
・指先から紐上の光を発射。敵に絡ませ動きを鈍くする。
縛道の六十三 六杖光牢
・六つの光の杖が、敵に突き刺さり動きを完全に止める。ダメージはないが身動きが取れなくなる。

威力は死神の力を殆ど失っているため、威力は下がりサーヴァントにはほとんど効かない。
対魔力Cもあれば完全に防がれてしまう。
しかし、人間に対しては十分の威力を持っている。
【人物背景】
護廷十三隊の十三番隊に所属し、物語開始時に初めての現世駐在任務として、本来は一ヶ月程の短期予定で空座町を担当していた死神。口癖は「馬鹿者」「たわけ」。
黒髪のセミロングで後髪がはね、真ん中辺りの前髪が鼻の付け根を通って左斜め下に向かって伸びている。
外見は小柄で、初期の頃は小学生だった一護の妹の遊子のパジャマがちょうど合うほど。
恋次曰く「どこか気品が漂っている」。
基本的にやや古風な固い言葉遣いで話し、男勝りで気が強いが、常に自分より相手を気遣う優しい性格。
一話目で一護の10倍近く生きていると言っているため、年齢は少なくとも150歳弱。
黒崎一護との接触の際、虚に襲われ重傷を負う。
家族を、ルキアを助けたいと願う一護に力を授けるが、その代わり自分の力を失ってしまった。
戦闘が続くにつれ、大虚などの強大な敵と戦う一護を見て「力があれば」と思うようになる。
そして今回の聖杯戦争に巻き込まれ、戦場で出会ったサーヴァントは、背が高く身の丈ほどの大刀に漢らしい声。
───どこか黒崎一護を思わせる青年だった。
【方針】
まずは情報収集。
力をつけるための手段も探す。


69 : 朽木ルキア&ランサー ◆DpgFZhamPE :2014/07/26(土) 22:39:26 k8HdYLks0
投下終了です。
宜しければ、お願いします


70 : ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:25:09 YCgu31W60
>>46ですが、一つ修正したので改めて投下します


71 : 虹村刑兆&ライダー ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:27:28 YCgu31W60
装飾の少ない部屋に学ランを来た大柄な青年が一人。
飾りと言えるのは壁にかかった古い木製の弓くらい。机もベッドも本棚も壁の角にあわせられており、シーツはキチンと。本は上下正しく、順番通りに。机の上も整頓されている。持ち主の几帳面さがうかがえる。

その部屋の主であろう青年は壁の方を向いている。視線の先にあるのは『弓』。それをまるで親の仇でもあるかのように睨みつける。 そして視線を振り、本棚の中身を検める。

文庫の小説。……ドラキュラ。この段は吸血鬼関連の本や資料があふれている。埋葬機関、アトラスの錬金術……吸血鬼の滅ぼし方について執着しているようだ
ハードカバーの学術書。……ウイルス進化について。病から生還し超脳力を得たもの、血液感染する病人こそ吸血鬼の原初?トンデモ学者の妄言だろうか
古文書らしき古い文献。……古代アステカのものらしい。不気味な仮面に赤いしるしがしてある
分厚い本。……アーサー王物語にパルジファル。聖杯に関する書物がまとめられている
後ろの方が破られた薄いノート。天国に至る方法と書いてある

そのノートを手に取り、何度も読み込んだ痕跡のあるページを再び熟読する。

(聖杯戦争……万能の願望器、それを手にするための闘争。天国……人類すべてが覚悟を決めた幸福な未来。サイレン……文明が崩壊し、天国へと至れなかった可能性の未来、それを覆すゲーム。そして全てを繋ぐ赤いテレホンカード、か)

英語で書かれた文章はかすれ、内容の難解さもあってほとんど理解は進まなかったが、概要は掴んでいる。そして、目的のためのカギもまた、この手に掴んでいる。

(神隠しのきっかけになる赤いテレホンカード、その欠片ね。眉唾もんだが、こいつからは弓と矢のような何かを感じる気がするぜ)

ノートとテレカの欠片を手に部屋を出る。廊下を歩き別室に向かっていると

「なあ、兄貴……本当にやるのかよ?」
父親を追いやった弟が心配げに声をかける。

「くどいぞ、億泰。お前はおやじとここで待っていろ」
足手まといはいらない、そうも口にしようとするが……

「お前が来たところで死ぬだけだ」

予測を口にするにとどめ、態度と言葉で来るな、部屋に戻れとそう伝える。
そして自身は先ほどまで父のいた部屋に入り、魔方陣を敷く。

(ち、床の傷が邪魔だが……俺たち家族の意思の篭ったこの部屋が、化物の痕跡のある空間こそが最も魔力に満ちている。召喚するならここだ。召喚される英霊があのくそ吸血鬼に成りかねねェのが警戒点だが……おれとあいつが性質的に似通っているとは思いがたい)

ノート片手に吸血鬼……父親の血を混ぜた鶏の血で陣を描き、そして文言を唱える。

「素に銀と鉄。素に石と契約の大公」

憎らしげに、しかし闘志を籠めて英霊を呼ぶ。

「祖には我が敵、ディオ・ブランドー」
「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ満たされる時を破却する」

思い浮かべるのは化物となった父の姿。在りし日の姿が目に浮かぶ。

「告げる。汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら答えよ。誓いをここに。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷くもの。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ……天秤の守り手よ!」


72 : 虹村刑兆&ライダー ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:29:09 YCgu31W60
手の甲に輝きとともに何かが浮かびあがる。髑髏と、交差した二本の骨……海賊旗の如き三画の令呪だ。
そして現れたのは青年と比してなお大きい老年の男。常人の倍はあるか。素肌の上半身に丈の長いコートと三日月状のひげ、そして何より放たれるその王気(オーラ)が特徴的だ。

「お前が俺のサーヴァントか」
手にした令呪を確かめ、サーヴァントと向き合う。
英霊と対峙してなお恐れず、それを品定めするような視線は几帳面さゆえか、冷徹さゆえか。

「おォ、ライダーのサーヴァント、エドワード・ニューゲートだ。海賊白ひげって言った方が通りはいいか?」
「白ひげ?黒ひげじゃなくてか?」
「あァ?ティーチのバカのことは知ってんのに俺のこと……あぁ並行世界ってやつか」
自分を知らないという青年の態度に些かの苛立ちを見せるライダーだったが、思い当たる節があったのか落ち着きを見せる。黒ひげという通り名がありふれたものであるのにくわえ、何かを【聴いた】ようにも見えた。

「……海賊エドワード、か。俺の知る黒ひげと同じ名だ。ティーチだかサッチだか言う姓だった気がするが、まあどうでもいい。ステータスは…まあまあかな」
「グララララ!!言うじゃねェか、若僧が。名は?」。
「虹村刑兆」
「こんなとこ来てまで聖杯に何を望むってんだ?若ェのに急ぐ必要は無ェだろ」
「……ヒントはこの部屋にあるぜ。当ててみろよ」
引き続き己が使い魔を見定めようとするマスター。
対して因縁ある名を聞いても揺らがず、こちらも年若いマスターに問いを投げる
まるでマスター……刑兆を通じて別の誰かを見るように。
そして生意気な口叩きやがる、とぼやきながらほとんど物のない部屋を見て回るライダー。
唯一の装飾品らしき箱の中身を確認して、部屋の隅の鎖の跡、床に付いた傷を確かめる。
部屋を探し回るライダーはまるで宝探しをする少年のようにも見えた。

「……この箱の中身は写真の欠片だな。箱にしまう宝としちゃ上等だ。で、箱の周りにひっかき傷が多い。傷の並びからして五本指の霊長類、おそらく人間で立って歩くことか思考に何らかの障害がある。その障害を治してやりたいってとこか?」

推論を述べるライダー。それを聞いた刑兆は少々驚いたように

「箱の中身は俺もしらねぇが、他はいい線行ってるぜ。肝心なとこが違うがな」
「海賊だって言ったろ?興味は薄いが宝探しの経験は豊富なんだよ。で、答えは?」

自慢げなライダーの評価を内心向上し、悩んだ末に答える。

「……不死身になっちまったうえに、知性や尊厳をなくしたおやじを、フツーに死なせてやりてぇのさ」

それを聞いたライダーは先ほどとはくらべものにはならない怒りを露わに
「仮にも親に殺意向けるとはとんでもねェバカ息子じゃねぇか!!それでも家族か!?」
猛る英雄を前にして刑兆も怯まずに言葉を返す。10年分の悲哀と怒りと僅かの家族愛を籠めて叫ぶ。

「ああ…そうだよ…実の父親さ…血のつながりはな…だが、あいつは俺や弟に暴力を振るう最低のクズ!おまけに化物に魂を売った自業自得の男さッ!だからこそやり切れねーんだよ!フツーに死なせてやりてぇと思うんだよ!それが終わったときやっと俺の人生が始まるんだッ!」

情念の籠められた言葉にライダーも思うところがあったのか矛を収め、改めて問う。

「治すんじゃあダメなのか?」

その言葉には家族を想う男の優しさが込められていた。
息子に殺されようとする父親への思い。父に刃を向けようとする息子への思い。
刑兆もその言葉にすがりたくなるようなものだったが

「おれは何があろうと後戻りすることはできねえんだよ…もう何人も殺しちまった。弟すら利用したクズがまっとうに生きようなんざ虫のよすぎる話だ…」

掲げた目的を失っては奪った命に申し訳が立たない。億泰のためにも、俺の納得のためにも引き下がるつもりはない。
涙を浮かべ、決意を口にする。


73 : 虹村刑兆&ライダー ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:30:06 YCgu31W60
するとライダーは

「グラララ…!若ェくせに知ったような口叩いてんじゃあねぇよ。正義掲げた海軍にだって人殺したやつなんざいくらでもいる。それに聖杯に願わなくともお前の親父をどうにかできる能力者もいるかもしれねェ。身の振り方をいろいろ考えてみるいい機会じゃねェか、この戦場はよ」

改めて誓う。

「俺自身に聖杯に託す願いはねェ。息子たちやロジャーの意思の結果、そして聖杯を手にした奴が世界をどう変えるのか見に来ただけだ。そういう意味じゃどうなるか読めねェお前の未来は偉大なる航路の船旅みたいで面白そうだ。付き合ってやるよ、最後までな」

主従の契りを結ぶことを。願わくはこのマスターの旅路を見届けることを。
誓いを聞き届けたマスターは涙をぬぐい

「老人らしー枯れた考えだかロマンあふれてんだかわかんねーな、てめーはよ。まあ願いがねーなら丁度いい。せいぜい役に立ってくれよ、ライダー」

子供のように強がり、闘いに臨む。

「俺に指図するなんざ100年早ェよ、アホンダラ」

ライダーのその笑顔はまるで子を見守る父親のようだった。

「……それじゃ、行こうぜライダー。戦争の始まりだ」

そういって赤いテレホンカードと携帯電話を手に取った次の瞬間……



二人の姿はどこにもなかった。

【クラス】ライダー
【真名】エドワード・ニューゲート@ONE PIECE
【パラメータ】筋力B+ 耐久C 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具EX
【属性】混沌・善
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力

【保有スキル】
嵐の航海者:A
船と認識されるものを駆る才能。軍団のリーダーとしての能力も必要となるため、Bランク相当の軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。
生前の逸話より船に加えて不死鳥種、巨人種に騎乗することも可能。

悪魔の実の能力者:A
悪魔の実を食べたことにより異能の力を手に入れた者に与えられるスキル、彼はグラグラの実。
体から震動を発し、建物を倒壊させたり海震を発生させるなど地震をおこすほか、薙刀の先から衝撃波として放ったり拳に纏い威力を収束させるなどの応用も可能。
本来なら島一つひっくり返すような威力だがサーヴァント化に伴い建築物を倒壊させる程度が限界。
動かずとも震動を発することが出来るため氷漬けや気圧による拘束などからは容易に脱出できる。
能力者は全員泳げない特性を持っており、海に由来する宝具や力の前には弱くなってしまう

覇気:C
全ての人間に潜在する気配・気合・威圧、それらを極めた技能。ただし老いと病により今の体では十全に効果を発揮できない。
見聞色は気配をより強く感じる力。かつては就寝中の攻撃や不意打ちも感知できたが、ほぼ使用できなくなっている。
武装色は気合を鎧のように纏う力。筋力や耐久、武器の威力を1ランク向上させることが出来、実体を捉えることで液体化や気体化はもちろん霊体化したサーヴァントへの攻撃も可能となる。
覇王色は使用者の気迫そのもの。数百万人に一人しか身につけることができない、特殊な覇気。天性的な物である。圧倒的な実力の差が存在する相手は戦うこと無く気絶してしまう

心臓病:B
自身と家族の死の遠因となった病。一部のスキルの効力とステータスが低下し、あらゆる行動のファンブル率が上昇する。


74 : 虹村刑兆&ライダー ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:32:09 YCgu31W60
【宝具】
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:20〜40 最大捕捉:前方展開20船
長きにわたり白ひげ海賊団を支えた船。
海戦に対応した武装、コーティングによる海中移動、外輪による陸走などが可能。

『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:0〜5 最大捕捉:上限なし
多くの海域や島を庇護した逸話の再現。ジョリーロジャーを掲げ、彼の庇護下に入った土地の龍脈やNPCから膨大な魔力を供給可能になる。
NPCを庇護しなければ一切の効果を失うが、庇護対象の護衛戦においては全ステータスが1ランク上昇する。

『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』 ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
死してなお白ひげに忠誠を誓い、船長とともに英霊化した海賊団をサーヴァントとして現界させ、白ひげ海賊団および傘下の43の海賊団が集結したマリンフォード頂上戦争を固有結界として再現する。召喚されるのはいずれもマスター不在のサーヴァントだが、それぞれがE-ランク相当の『単独行動』スキルを保有し、 最大30ターンに及ぶ現界が可能。
この宝具は忠誠を誓うすべての海賊を召喚するもののため、海軍や七武海はもちろん多くのインペルダウンの脱獄囚らも現れることはないが、海侠のジンベエや4番隊長サッチ、2番隊長エースらは馳せ参じる。

『時代は変わる(ニューゲート・トゥ・ネクストエイジ)』 ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
マリンフォード頂上戦争の最終局面、ライダーが殿となった撤退戦を固有結界として再現する。この宝具の使用中にマスターの魔力は用いず、自身と『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』でつながる息子たちの魔力を用いる。
発動中はEXランクの単独行動スキルと戦闘続行スキルを獲得する。ライダーの前面に敵を置き、背後に地割れを発生させ不退転の戦いを繰り広げる。
この地割れは宝具の効果により空間的に断絶されており、対界宝具か高ランクの追撃系スキルを使わなければ抜けることは不可能。
この宝具の終了とともにライダーも消滅し、味方として逃がした全ての者の幸運をEXランクに上昇させる。また自身のマスターだった者はサーヴァント不在時の消滅期限が6時間から12時間になる。

【人物背景】
‘偉大なる航路’後半の海‘新世界’に皇帝のように君臨する海賊『四皇』の一人、その筆頭。通称「白ひげ」「世界最強の海賊」「ひとつなぎの大秘宝に最も近い男」「海賊王とわたり合った伝説の怪物」。
若いころから海賊であり、自身が独立して船長となったのちは「海賊王」ゴール・D・ロジャー、「海軍の英雄」モンキー・D・ガープをはじめとする同時代の海の男たちとしのぎを削りあい、名をあげていった。
財宝や名誉以上に家族を求めており、気に入ったものを敵味方や種族を問わず船員(ムスコ)として勧誘し、大切にする懐の深さはまさしく船長(オヤジ)。
その威厳はすさまじく、白ひげのナワバリや船員に手を出す者はまずなく、魚人島など多くの島を自身の名で庇護するなど一海賊でありながら、その戦力と影響力は世界の平穏に大きく関与していた。
しかし船員の一人、マーシャル・D・ティーチが同じく船員のサッチを殺害、船を降りる。ティーチの上官的立場であったポートガス・D・エースもそれを追うため独断でとび出すも返り討ちに合い、海軍のもと公開処刑が宣言される。
エース救出のため一味総出で海軍と開戦、モンキー・D・ルフィをはじめとするインペルダウンの脱獄囚なども交えた『マリンフォード頂上戦争』となる。様々な思惑や戦力の交差する戦場で一時はエース救出に至るも、海兵の挑発と弟をかばったためにエースは命を落とす。それでも船員(ムスコ)たちを未来に送り届けるため、ここを死に場所として奮戦。‘ひとつなぎの大秘宝’の実在を宣言し、家族への感謝を胸に72年の人生を閉じた。
死後にその遺志は息子たちに、意思なき力はかつて息子と呼んだティーチに受け継がれた。
本来サーヴァントは最盛期の肉体で呼び出されるものであり、海賊エドワードの全盛期は当然若かりし頃であろうが、海賊白ひげとしての最盛期はサッチ、エースといった息子たちとともに生きた頃であると望んで老齢で参戦した。ステータスやスキルでは寄る年波による影響があるが、宝具として固有結界を持つ。固有結界が二種類あるのはマリンフォードという一つの地を1人の海賊としてみるか、船長としてみるかで見え方が変わってくるからであり、複数の心象風景を有するわけではない。


75 : 虹村刑兆&ライダー ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:33:26 YCgu31W60
【weapon】
無銘・大薙刀
ライダーの巨躯と比してなお大きい薙刀。
覇気を纏わせればマグマの塊に触れても、巨人族の袈裟切りを受けても刃こぼれすらしない強度を持つ。その逸話から対熱、巨人殺しの概念を僅かにもつ。
『大地を震撼させる悪魔の力(グラグラの実)』の振動を飛ぶ斬撃のごとく放つことも可能。

【基本戦術、方針、運用法】
近〜遠距離全てにおいてグラグラの実と薙刀で戦えるオールラウンダー。ステータスはアベレージといったところなので燃費のいい武装飾の覇気と震動を中心に戦いを組み立てる。
覇王色の覇気による無力化も有効だろうが、条件的にほぼサーヴァントには通用しないだろう。本人の希望的にも打って出ての接近戦が中心になる。
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』はサイズ的に市街戦には不適。本来帆船の操作には多くの船員が必要だがスキル:嵐の航海者により魔力によって動かすことが可能となっている。
‘ナワバリ’を示威すればNPCや土地から魔力を徴収できるが、真名ばれのリスクが格段に上昇する。燃え落ちた船や病など弱点の逸話がばれることを考えると安易には使えないか。またNPCを庇護する必要があるので動きが制限される欠点も。
固有結界はとっておきの手。王の軍勢のパク……オマージュ。
格上の相手や集団を相手にするときに『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』、死に場所を見出したなら『時代は変わる(ニューゲート・トゥ・ネクストエイジ)』 。

【マスターステータス】

【名前】虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険

【参加方法】
DIOの手記や都市伝説より聖杯戦争とサイレンドリフトのことを調べ望んで参戦。

【マスターとしての願い】
DIOの影響で怪物となってしまった父親に尊厳ある死を与えてやりたい。

【能力・技能】
スタンド使い。群体型のスタンドであるバッド・カンパニーを有する。
肉体的には長身で相応に逞しい。男子高校生を引きずって二階まで即座に上るだけの体力はある。
また長年『弓と矢』を用いてきたため、中距離における弓術はなかなかのもの。

【weapon】
スタンド名・バッド・カンパニー
破壊力:B スピード:B 射程距離:C 持続力:B 精密動作性:C 成長性:C
歩兵60名、戦車7台、戦闘ヘリアパッチ4機からなる軍隊のスタンド。
サイズはミニチュアだが威力はまともに当たれば手足は吹き飛ぶ破壊力。
群体型のスタンドであるため、歩兵の数体程度ならつぶされても本体への影響はほぼない。
地雷の設置、ミサイルなど装備も戦力も本物の軍隊さながら。
おそらく軍略スキルの影響を受けると考えられる。
群体系のスタンド保持者は精神的な欠落を抱えており、刑兆は目的のために手段を選ばず、また家族の愛に飢えている節がある。


76 : 虹村刑兆&ライダー ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:34:08 YCgu31W60
【人物背景】
S市杜王町に住む男子高校生。家族構成は父親と弟1人。
幼少期、父親は膨大な借金を抱えており母親も病で帰らぬ人となっていた。
そのさみしさか金のためか、父親は世界を掌握しようとした吸血鬼DIOの手下となっており、吸血鬼の体細胞を埋め込まれていた。DIOの死後にその細胞が暴走、一年足らずで息子のこともわからない怪物になってしまう。
刑兆は父の遺産を使い10年かけてすべてを調べ上げた。「スタンド」のこと、「DIO」のこと、「DIOを倒した男」のこと、スタンドを目覚めさせる「弓と矢」のこと。
そして父親がもはやどうしようもない状態になってしまったことを確信し、父のためにも殺害を決意。
自身と弟もスタンド能力に目覚め殺害を試みるも失敗。協力者を作ろうと町民含む多くの人物を「弓と矢」で射抜き、スタンドに目覚めさせたり殺害したりする。
スタンド能力については調査を続け、凶悪な犯罪者ほど目覚める強い魂を持ち、能力に目覚める可能性が高いことをDIOの手記より知る。それは何かの下書きらしく『天国へ至る方法』の候補がいくつ書かれており、採用案は破り取られていたようだが選択肢の一つとして願望器、聖杯のことと失われた未来、サイレンのことが記されていた。
神の敵である吸血鬼の呪いをこえるため、聖遺物を手にして目的を果たすために参戦を決意。

【方針】
聖杯で願いをかなえるつもりだったが、ライダーの言葉にあるようにおやじを殺せる能力者なら同盟を組んでの生還も視野に入れる。
治す能力者の場合は保留。
打って出るよりもナワバリにこもってバッド・カンパニーによる暗殺の方が戦術的には好みだが、軍略に精通したライダーの意見をないがしろにするつもりはなく、それなりに動くつもり。

【その他】
赤いテレホンカードが本物とは限りません。パチモン掴まされ、召喚成功には関与していない可能性もあります


77 : 虹村刑兆&ライダー ◆A23CJmo9LE :2014/07/26(土) 23:36:46 YCgu31W60
投下完了です。この登場話の後、OPにつながる感じで……
よろしくお願いします


78 : ◆VYr1mStbOc :2014/07/27(日) 00:18:53 s9uBFb/c0
自分も投下させていただきます


79 : ジョナサン・クレイン&アーチャー ◆VYr1mStbOc :2014/07/27(日) 00:20:31 s9uBFb/c0


私は大学の教授。生徒にも慕われている
――違う


同僚からの信頼も厚く、ベテランの博士たちからも認められる天才
――違う


毎日が楽しく、幸福に溢れている
――違う


皆が私を認めてくれる
――違う


違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

なにもかもちがつそうじゃないのですね私はジョナサンいえジョナサン先生は外出中で私は伝言をお願いします
わたたたしははへジョナサン・くレレレいいいいいん伝言をお願いします
わたしはわたしじよジョナサンジョジョジョジョジョジョジョジョ奴ら
私を私を私は奴はジョナサンで怖い怖い怖い恐怖で怖い

ジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンジョナサンいやクレイン先生はお留守です伝言をどうぞ

誰もわわわわわわたしを認めない認めクレイン先生はお留守です伝言をどうぞ伝言をどうぞ伝言をどうぞ伝言をどうぞ
私は奴は私は奴は私は奴はわわわわわわわははははは

誰も認めてくれない私は私はジョナサンジョジョジョジョジョジョジョジョくレレレレレレレレレレレレ

私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私はジョナサンいやクレインで私は私はジョナサン私は私は











私はスケアクロウだ。


80 : ジョナサン・クレイン&アーチャー ◆VYr1mStbOc :2014/07/27(日) 00:23:04 s9uBFb/c0




「キミガ僕ノマスターカゐ?」




そのサーヴァントは何とも独創的な口調で話しかける。
口元を覆う棘の付いたマスクが、その声を若干曇らせているように思える。
腰まで届くほどの黒髪に、背筋を凍らせるような不気味なオーラ。
さながらホラーと呼ぶべきものだろう。
その虚無の瞳は、じっとマスターを見つめている。


「……ああ、私が君のマスターだ」


それに答えるものも、サーヴァントと同じく独創的だった。
一見理知的な応答に見えるその言葉の裏には、微かな狂気が見え隠れしている。
ボロ布を纏ったその姿は、さながら案山子のようであり、事実男――ジョナサン・クレインは案山子(スケアクロウ)だった。

ジョナサンは悪徳の街ゴッサムで暗躍する、代表的なヴィランのひとりだ。
ひ弱でいじめられっ子であったジョナサンは、心理学の分野で成功した後にも、過去のトラウマを忘れることができず、恐怖の研究に没頭した。
結果、彼は自らの恐怖を克服するためにも、恐怖を与える存在になろうと考え、徐々に常軌を逸しっていく。
そしてその振る舞いが祟り、大学を解雇されたことを切欠として、完全に精神が破綻したジョナサンは、他者の潜在意識化にある恐怖の幻覚を引き出す恐怖ガスを使い、自身を解雇した大学関係者を次々と殺害。
その後も犯罪を繰り返す、「スケアクロウ」へと覚醒した。




「ワカッタ。タシかニまスターのヨうダナ」

「ボクハアーチャーのサーヴぁント"エス・ノト"ダ」

スケアクロウの返答を聞き、少しの空白。
サーヴァントは静かに名乗った。
スケアクロウは、案山子のマスクの下から、エス・ノトと名乗ったアーチャーを見据える。

同じく、エス・ノトも、スケアクロウを見据え、視線を返す。
その目からは、何も読みとれない。
それは妙な感覚だった。
いや、今まさにそもそもが聖杯戦争と言う奇妙な状況の渦に居るわけだが、それとはまた別種のものだ。シンパシーとやらだろうか


「サテ……サイショにヒトツキキタイコトガアる」
「……なんだ」

アーチャーは試すような口調で、そして微かな好奇心を宿し問いかける。





「恐怖トハナンだと思う?」


81 : ジョナサン・クレイン&アーチャー ◆VYr1mStbOc :2014/07/27(日) 00:23:30 s9uBFb/c0
人の生キル上で最モ重大ナ感覚は“恐怖だ”。
半端な強者ハよク錯覚スる。恐怖ハ経験デ乗リ越エラレル”と。
“理由の在る恐怖”は優しい
それは意志や経験で乗り越えることができる。
ダガ真の恐怖ニハ理由がない。
それは感情ではなく本能だからだ。
真の恐怖とは理由も際限もなく体を這い上る夥しい羽虫のようなもの


語るアーチャーに、スケアクロウは答えない。ただ静かに聞いている。

「本能カラ逃レラレナヰモノ、そレガ恐怖……」
「違うな」

スケアクロウは初めてアーチャーの言葉を遮った。
そして語られた言葉は、恐怖をよく知るアーチャーにとっても予想外なものだった。


「恐怖とは……救いだ」


アーチャーは固まった。



ジョナサンにとって、恐怖とは当初克服するべきものだった。
しかし、スケアクロウは違う。
スケアクロウは他者に恐怖を与えることが目的としたヴィランであり、行動の指針でもある。
それゆえの、言葉だ。





「アハ、アハ、ハハハ、アハハハハハハハハハハ」



アーチャーは笑った。なるほど、救いか。これは予期していなかった回答だ。
一見してから同類だと思っていたが、少し違っていたようだ。




恐怖を伝染させる滅却師エス・ノト
恐怖を与える案山子スケアクロウ




この瞬間、どこか歪なふたりはお互いをパートナーとして認めた


82 : ジョナサン・クレイン&アーチャー ◆VYr1mStbOc :2014/07/27(日) 00:27:44 s9uBFb/c0
【クラス】
アーチャー

【真名】
エス・ノト@BLEACH

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B+ 魔力B 幸運D 宝具A

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:B
ある程度の魔術を防御できる

単独行動:A
マスター不在でも行動できるが宝具が一部使用不能になる

【保有スキル】
気配遮断:B
まったく気配を感じさせずに対象に接近できる

自己改造:B
エス・ノト自身の恐怖を具現化したような巨大で醜悪な異形に変貌する

【宝具】
『F(恐怖)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2 最大補足:10人
光の棘を出現させ、それに接触したものに黒い液体のような"恐怖"を侵食させる。
この"恐怖"はエス・ノト曰く鍛練や実力で打ち勝てる「理由のある恐怖」ではなく、本能的で克服不可能な「理由のない恐怖」であるために、一度触れてしまえば生きている存在には防ぐことはできない。壁や盾で棘を防いでもそこから恐怖が侵食する

『神の怯え(タタルフォラス) 』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:5 最大捕捉:1
一種の固有結界
ノトの持つ滅却師完聖体が宝具に昇華したもの。
この宝具を発動すると茨のような光輪と翼が発生し、マスクが取れて唇が削ぎ落とされた口元が露わとなる。
また白目を剥いていて尚且つ目の下には血涙のような模様が現れており、非常に不気味な姿に変貌する能登こわいよ能登。
無数の眼のついた幕で囲い、自身を見た者に視神経を通して恐怖を捻り込む。
幕の中で周囲に無数の眼を展開させるため、どちらを向いても有効となり一度見てしまえば目をつぶっても意味はない
自身の体温を氷点下にまで下げ細胞の活動を停止させることで完聖体になる前のノトの恐怖攻撃を無効化出来ていたルキアですらこの能力からは逃れられなかった。
また視神経を通して襲い掛かる恐怖から逃れるために目を閉じると、過去の記憶がフラッシュバックして更に恐怖は増大する。

【weapon】
命中すると相手に絶大な恐怖を味わせる光の棘のような矢を放つ。

【人物背景】
「見えざる帝国」(ヴァンデンライヒ)で編成されている星十字騎士団(シュテルンリッター)の“F(恐怖)”。
朽木白哉から卍解を奪った。
一人称は「僕」。平仮名やカタカナ、漢字が入り混じった特徴的な喋り方をする。笑顔が異常に不気味。
自身の能力と奪った千本桜の力で朽木白哉を圧倒し瀕死に追い込んだ
見た目がかなりヤバい。愛称は能登さん。武器は周りに浮く光の棘。
怖いものは「陛下の怒り」と「地獄」。
元は重病を患っており、力を与えられ滅却師となることで生き延びた。
済まぬさんを頼むさんへ進化させ斃した。総隊長に奇襲を仕掛けるも 丸焦げになり玉☆砕…したがまさかの生還を果し再登場した。
しかし今度はルキアの卍解の餌食となり、身体の芯から氷漬けにされて死の恐怖に怯えながら死亡

【サーヴァントとしての願い】
死の恐怖や苦しみを無くしたい

【基本戦術】
優勝狙い。スケアクロウをサポート
直接的な格闘ではなく、光の棘を飛ばし恐怖を伝染させるなどの直接精神を攻撃する戦法をとる


83 : ジョナサン・クレイン&アーチャー ◆VYr1mStbOc :2014/07/27(日) 00:29:22 s9uBFb/c0
【マスター】
ジョナサン・クレイン@バットマン

【参加方法】
巻き込まれ系

【マスターとしての願い】
恐怖を与える。人に認められたい

【weapon】
「恐怖ガス」
スケアクロウが発明した他者の潜在意識化にある恐怖の幻覚を引き出す特殊ガス

【能力・技能】
長い手足を生かしてカンフーのような動きで戦うこともあるが、それほど肉体能力は高くない。人を恐怖に追い込む心理的な罠などを得意とする策士である。

【人物背景】
元はゴッサム大学の心理学教授で、恐怖症の研究をしていたが、学生達を使った行き過ぎた人体実験が原因で解雇され、それを逆恨みして犯罪者となった。様々な恐怖症を発症させるガスが武器。カカシ(Scarecrow)を模したコスチュームをまとう。
彼自身は鳥恐怖症。だが作品によっては、なぜかカラスの「Craw(もしくはNightmare)」を飼っており、おそらく唯一恐怖の対象にならない鳥なのではないかと思われる。

【方針】
今のところは未定だが、他者に恐怖を与える事を重点に置く


84 : ジョナサン・クレイン&アーチャー ◆VYr1mStbOc :2014/07/27(日) 00:29:52 s9uBFb/c0
投下完了です
よろしくお願いします


85 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/27(日) 16:24:25 JICAFGhw0
皆様投下お疲れ様です!

投下された作品についてですが、二次二次様から再利用して投下された作品では当スレのOPと矛盾が生じてしまいます。
選ばれた作品の作者様には後日作品の修正について求めることとなりますがご了承ください。

>>36
ここでは募集期間を8月2日(土)中となっておりますが間違いです。
8月3日(日)一杯を募集期間といたしまして、4日(月)の何処かで発表の形を取らせていただきます。
途中で申し訳ありません。期間が短いなど意見や質問等ありましたら書き込みをお願いします。

募集期間ですが投下された作品への感想や雑談の書き込みなど何でも歓迎です!
よろしくお願いします。


86 : 名無しさん :2014/07/27(日) 16:29:50 2bglCoyA0
地図は二次聖杯のと同じでもいいんじゃないですか
あれ元々ゲームマップの流用ですし


87 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/27(日) 19:03:33 JICAFGhw0
>>86
なるほど……ご意見ありがとうございます。
期間内に地図の投下がなかった時に参考にさせていただきます。


88 : 名無しさん :2014/07/27(日) 19:52:01 DHQu0zkM0
質問なんですが、サーヴァントはどこから来て、敗北した場合どうなるんでしょうか?
英霊の座から来て英霊の座に戻るのか、データベースからの再現で消滅するのか
それともまったく別の方法で召喚されているんでしょうか?


89 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/27(日) 20:15:20 JICAFGhw0
>>88
申し訳ありませんが深く設定を考えていません。
召還を行うならば英霊の座から、巻き込まれ系ならば惹かれ合った。
データベースでは無いです。


90 : ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:15:43 C.vOw/1Q0
投下します


91 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:16:42 C.vOw/1Q0
世界が変わった。理がなした世界に悪魔が叛逆して新しい世界が生まれた。










見滝原中学の通学路で対峙する私とかつての仲間。

「だとしてもこれだけは忘れない!暁美ほむら、あんたが…悪魔だってことは!」

そうだ。忘れてやるもんか。世界が変わっても……………………もしあいつが何をしたのかは忘れても。暁美ほむらが私の敵だってことは。










再び、三度、世界が変わった。









「天城弥勒……ね」
胡散臭い奴だった。あの白い獣を思い出すいやな感じ

「バーサーカーはどう思う?」
傍らにいるはずの、霊体化したパートナーに問う

「数秒程度の邂逅じゃあ何とも言えん。あいつの知り合いならともかくな。本来ルーラーは高名な英霊がやるはずだし、監督役というやつなのか、聖杯の器を用意した魔術師なのか?さやかの言うように聖杯に信が置けるかどうかは怪しいと言えば怪しいな」

私に与えられた知識とバーサーカーの知識の差異が何かヒントになればいいんだけど

「うーん、じゃあこのテレホンカードでの脱出ルールってやつはどう思う?殺し合えっていう割には親切だよね」
親切な殺し合い、なんて物があるならの話だが。

「サーヴァントを失ったマスターは中立地点において庇護を求める、そのルールの再現だろう。あくまでそれだけではないか?」
「前に聞いた既存の聖杯戦争のルールに縛られてる、のかな?でもなんで電話?」
魔法っぽさが薄いというか、異端な雰囲気がある

「魔術師が電話など文明の利器を使うのは想像しがたいが、理論が明確に分からない物には未知という神秘、恐怖という信仰が宿る。グレムリン、メリーさん、怪人アンサー、呪いのビデオ、あの世からの交信。そういったものを扱う近代の魔術師なのではないか」

ふむふむ。

「そう考えると全知たる怪人アンサー、異世界との交信など応用すれば願望器となり得る術式ではあるな。あくまで俺の予測だが」
「……ホント、バーサーカーの割には博識だね」
「デーモン……怪物に関するものならな。あるいは聖杯に贔屓されたかもな、信仰の加護ゆえに」

知識面では当たりの部類の相棒だと思う。あのペテン師に少しは感謝してやってもいいかもしれない


92 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:17:18 C.vOw/1Q0



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「僕の召喚するサーヴァントと契約して、聖杯戦争のマスターになってよ!」

「は?」
半分に欠けた月の下、私は見慣れたマスコットモドキと話をしていた

「聖杯は手にしたものの願いをなんでも叶えてくれる。暁美ほむらのように世界改変だって可能なはずだ。聖杯戦争っていうのはそれを取り合う争い。過去の英霊をサーヴァント…使い魔として従えてお互いに戦うんだ」
「ちょ、ちょっと待って……」

相変わらず淡々と述べるインキュベーター。こっちは苛立ちと困惑にのまれてろくに話が出来ない

「聖杯は一つしかないから当然奪い合い、殺し合いになるだろう。でも願いを叶えるということにどんな対価が必要か、君なら言わなくてももうわかってるはずだ」
「待てって言ってんでしょうが、このペテン師!大体あんたと契約なんて今更するわけないでしょうが!」
もうこの体についてグチグチ言うつもりはないけど、それでもこいつとの契約なんて死んでもごめんだ

「ちがうよ、さやか。契約するのは僕とじゃなくサーヴァントとだ」

何を言っても堪えない。しれっとしてホントむかつく

「信用できないって点じゃ同じようなもんでしょ」
「うーん…僕に対する感情はいったん横に置いてほしいな。暁美ほむらがああなった以上、かつての記憶を持つ僕たちは手を取り合うべきだと思うんだ。彼女の持つソウルジェムではない何か。あれが僕たちの知る奇跡を上回る以上こちらも聖杯クラスの奇跡が必要だ。それに聖杯の成り立ちや歴史に僕らは関わっていないのだし、そう邪険にしないでほしいな」

「……その聖杯ってそもそも何?宗教的な道具じゃないのは察しが付くけど」
文明の成り立ちに関わってきたコイツならオリジナルの聖杯もマリア様とかといっしょに見てそうだけど

「すまないけど詳細な情報は解らない。暁美ほむらの口から可能性世界の話を聞いて以来、僕たちはそれを観測しようと様々な試みを行った。断片的な情報しか得られなかったが、そのなかにあったんだ。万能の願望器と、超能力者の手によって荒廃した可能性世界の存在に関する情報が」
「そんな胡散臭い話にのれと?ふざけないで」
ただでさえ信用できない相手なのに詳細不明の契約なんて結ぶわけがない

「詳細が不明なのはその未来が確定してないからなんだ。まるでシュレディンガーの猫のように。だが願望器が存在すること、これは間違いのない事実だ。しかし残念ながら強い願望も戦闘能力も持たない僕では参戦は難しい。故郷への脱出があくまで目的意識にしかなり得ない僕では。だからこそ君に頼むんだ。この宇宙を、円環の理を想う君に!さあ、僕の召喚するサーヴァントと契約して聖杯戦争のマスターになってよ!」
こいつは隠し事はするけど嘘はつかない。願望器の話とかは事実なんだろうけど…

「……私だけ戦わせてあんたは高みの見物ってちょっとムシがよくない?」

コイツのために危機に飛び込むのはちょっと…

「僕がいなければ聖杯戦争のことを知ることはできなかったろう?戦場に赴くのにも僕が協力する。何よりサーヴァント。おっと、サーヴァントの説明が不足していたね。聖杯戦争はサーヴァントの性能ですべてが決まるといっても過言じゃない。いいサーヴァントを引けるかは運によるものも大きいけど、触媒を使えば話は別だ。英霊に所縁のあるものを召喚時に用いればその英霊をサーヴァントとして従えることが出来るんだ。僕は古今様々な英雄に所縁があるよ。魔法少女に限るけど。それを従えることができれば少なくともはずれのサーヴァントを引くことは避けられるはずさ。サーヴァント自身も聖杯に願うものがある以上、余計な衝突は避けるべきだしね。こうした事前準備は聖杯戦争では難しいのだけど僕らの星の技術を総動員してでも、君を援助すると約束しよう。ひとまずグリーフシードを5つ用意してある」
「……本気らしいね」
「五里霧中なのが不安なのはわかる。ではサーヴァントを呼び、その詳細を聞こうじゃないか。最悪君が自害を命じれば離脱は可能だ」

英霊に対する敬意とかないのかコイツ。ないだろうな。けど情報がほしいのは事実だし
「いいよ、やってみて」
「じゃあ……」

言葉とともに多くのインキュベーターが現れ、その身をもって魔方陣を描く。組体操みたい。そしてその中央にいる5体のインキュベーターが文言を唱え始めた


93 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:18:55 C.vOw/1Q0
「素に銀と鉄」
「素に石と契約の大公」
「祖には我らがインキュベーター」
「閉じよ」
「閉じよ」
「閉じよ」
「閉じよ」
「閉じよ」
「繰り返すつどに五度」
「ただ満たされる時を破却する」

「「「「「告げる」」」」」
「汝の身は我らが下に、我らが運命は汝の剣に」
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら答えよ」
「誓いをここに」
「我らは常世総ての善と成る者」
「我らは常世総ての悪を敷くもの」
「されど汝はその目を混沌に曇らせ侍るべし」
「汝、狂乱の檻に囚われし者」
「我はその鎖を手繰るもの」
「汝三大の言霊を纏う七天」
「抑止の輪より来たれ」
「「「「「天秤の守り手よ」」」」」



「ッ!痛ッ!」
右手の甲に痛みが走る。そこには三画の紋章……演奏記号、フォルテ・フォルテッシモ。
そしてインキュベーターに囲まれ、現れたのは……男の人。あれ?魔法少女じゃなくない?

「うん、予想とは違うが召喚には成功した。それじゃあ聖杯戦争について聞いてきゅっぷい!?」
現れた男の人がインキュベーターを踏みつぶした!さらに周囲すべてのインキュベーターを何らかの力で薙ぎ払う!

「「「「「「「「「「わけがわからないよ」」」」」」」」」」
一瞬で全滅……これがサーヴァントの力……

「フン、バーサーカーとして呼んでおいて説明しろとは随分だな。あの子をだまして参戦させようってか?恍けた面してやることは悪魔のそれだな」
そういってこちらを向くと

「問おう。お前が俺のマスターか?」

え、と

「おっと詳細が分からないのだったな。では聖杯戦争のルールから話そうか」
そう言って色々教えてくれた。七つのクラス、令呪の意味、願望器の存在などなど。さらにバーサーカーの技能や宝具についても聞いた


94 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:19:28 C.vOw/1Q0
「こんなところかな、マスター。そういえば名乗ってなかったか。改めて俺はバーサーカーのサーヴァント、不動明だ」
質疑応答ばっかりだったので改めて自己紹介、の流れになる

「美樹さやか、です」
「ミキ……サヤカか。漢字を聞いても?俺は不動明王から王を欠いてフドウアキラだ」
あれ?何だか複雑な表情。まさか同名の人物に殺されたとか?地雷くさいし…突っ込まないでおこう

「へー、カッコいい字ですね。私は美しい樹木のジュに平仮名でさやかです」
「ああ、敬語はいらない。ではさやか、君はこの聖杯戦争どうする?」

少し不安げに問うバーサーカー。聖杯に託すほどの願いがあるんじゃ…無理もない

「じゃあ……最後に二つ聞かせて。あなたの願いと、聖杯が本当に信じるに足るものなのか、その意見」

やっぱり『何でも願いをかなえる』っていうのには個人的なトラウマというか、あまり信じられないものがある

「サーヴァントは聖杯に願いを託す、そのために召喚に応じるものだ。信じざるを得ない、といったところか。俺の願いは……」

迷いが浮かぶけど……少しずつ話し出す

「かつて俺は人間だった。しかし、親友に頼られ、なにより人類を悪魔から守るために人間をやめた。戦いに明け暮れたが、友がいるならそれでよかった。しかし……親友は悪魔の一員、それどころかその上を行く魔王、サタンだったんだ。結局俺たちは殺し合い、今に至るのだが……」

苦しげに。憎らしげに。でもどこか寂しげに語る

「最期の瞬間のあいつの顔が忘れられない。悲しみと失望に満ちたようなあの顔が。なぜあんな表情になったんだ?そもそもあいつはなぜ俺をデビルマンにした?何がしたかったのだ?その答えを奴と会って直接問う。答え次第では再び戦う……それが俺の願いだ」

「……」
似ている。人を守るために人をやめた。内に秘めた怪物。仲間の裏切り。悪魔を超越した悪魔との敵対。その真意を、決着を求めていることも。
サーヴァントは性質的に似通った者が呼び出されるらしいけど、納得だよ

「わかった。行くよ、聖杯戦争」
「……同情は命を懸ける理由には薄いぞ、さやか」
うん、この人はまぎれもなく英雄だ。それに悪魔なんかじゃない。少なくとも優しい人の心を持ってる

「私にも願いはある。魔女を超えて、悪魔になった昔の仲間をどうにかしてやんなきゃいけないんだ。そのためには聖杯クラスの奇跡がいる……ってのはさっきの白いのの言葉だけど、それは事実」
「真偽の定かでない物を求めると?」
「ない、と証明されたわけでもないでしょ。やっぱり疑わしいけど。一応途中離脱のルールはあるみたいだし、万一本物だったなら渡しちゃいけない奴ってのはいる」
救う価値のあるかわからない人間が、とんでもないことをやらかす悪魔が、人をだます宇宙人がいることを私は知っている。

「だから……行こう、バーサーカー」
そういうと私たちはどことも知れぬ空間に飛ばされ。
あの男の話を聞く羽目になった。


95 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:20:07 C.vOw/1Q0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

狂気を呼ぶ声がした……それも真実を秘匿した、悪意あるものだ。
悪魔を呼ぶ声がした……誰かのために人をやめた戦士のものだ。
ゆえに狂戦士となれど狂化せぬ、人の身で悪魔の力を手にした自身が応じ、吐き気を催す邪悪を処断した。

そして今、聖杯を奪い合うこの戦場で俺は少女を主君としている。

「ねー、バーサーカーの友達ってサタンだったんだよね?もしかしてすごい昔の英霊なの?歴史的発見だったりする?」
「俺はいわゆる並行世界の英霊だ。古代に生きた悪魔が現代に復活し、それと戦ったのが俺が座に招かれた功の一つだからな。現代に再びサタンが蘇ったわけだから、生憎と聖書に改訂を求めることはできんな」

他愛のない会話を念話でし、周囲を警戒しながらもあどけない少女を見る。
経歴は俺に近しいものがある。しかしその振る舞いと名は彼女……牧村美樹によく似ている。その名はジンメンに囚われた少女も思いださせる。
彼女を見ていると見失っていた初心を思い出す。……人間をやめても、人間でいることはできるのだ。
人の体を持ちながら、悪魔の所業をした外道ども。俺もマスターも奴らとは違う。人であることはやめたが、人の心まで失いはしない。
やはり俺は人間を守りたい。今度こそ……守ってみせるぞ


【クラス】バーサーカー
【真名】不動明(アモン)@デビルマン(漫画)
【パラメータ】筋力B 耐久B 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具A
【属性】混沌・善(狂)
【クラス別スキル】
 狂化:―(B)
理性と引き換えに全ステータスをワンランク上昇させる。ただし狂化しているのはアモンの人格のみであり、不動明が主人格である限り効果を発揮しない。
ステータス上昇の恩恵は得られないが、魔力消費や意思疎通も通常のままでいる。
アモンの人格が目覚めた時には効果を発揮する。

【保有スキル】

自己改造:EX
自身の肉体・魂に別の属性を付加する。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
デーモン族の持つ合体能力であり、生物無生物を問わずその身に取り込みその能力や特徴、知識を得ることが出来る。またちぎれた四肢を繋ぎなおすことなどの応用も可能。
両者の同意があれば一時的にのみ合体し、再度分離することも可能。
この能力でアモンは不動明を乗っ取ろうとしたが、逆に主導権を奪われ人間の知性と悪魔の力を持つ戦士が生まれた。

信仰の加護(真):C
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。彼の場合人間の善性と正義を信じる心の強さとルシファーの愛。
信心から生まれる自己の精神・肉体の絶対性に加え、神性を持つものからのダメージを1ランクダウンさせる。
このスキルによってアモンに乗っ取られずにいる。
本来のスキルは信仰の加護であり神への耐性は持ちえないのだが、悪魔の誘惑をはねのけ、天使に愛された逸話があるためサーヴァント化に伴い昇華した。
人の善性を信じられなくなったときこのスキルは効果を発揮しなくなる。

戦闘続行:B
不屈の闘志と頑健な肉体。
瀕死の傷であっても戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り勝利を諦めることはない。


96 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:20:46 C.vOw/1Q0
【宝具】

『悪魔の体に人の心持つ戦士(デビルマン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
アモンを宿すことで得た特殊能力と頑強な肉体そのもの。
口からの火炎放射、細胞から放つ電撃や熱線、翼による飛翔など様々な超能力を使うデビルマンに変身する。
デーモン族の変身能力によって平常時は人の形を保っており、デビルマンの姿では宝具と幸運を除くステータスが1ランク上昇するが魔力消費も増す。
人の姿でもテレパシーや翼での飛翔など一部の能力は使用可能。

『目覚める地獄の野獣(アモン・アウェイク)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
内に秘めたアモンが主人格になる。真名解放するものではなく、何らかの外的要因やスキル:信仰の加護(真)を失うことで発動する。
変身した理由に関わらず、この宝具発動中は信仰の加護(真)は効果を失い、Cランクの反骨の相スキルを得る。またアモンの人格が表に出るため狂化スキルが効果を発揮する。
またこの宝具発動中はスキル:自己改造によりマスターを除いて無差別に周囲のものを取り込み、魔力源にしたりパワーアップしたりする。


【人物背景】
悪魔をその身に宿し、人間のために悪魔と戦った戦士デビルマン、その筆頭。人間の醜悪さに絶望してもなお同族のために戦い続ける優しさは失われなかった。
ある日親友の飛鳥了に自宅に案内され、人類を滅ぼそうとする脅威、デーモンの存在について知らされる。そこでデーモンの襲撃を受け、飛鳥家の地下室に避難、地下室でサバトに参加し、デーモンの勇者アモンと合体、人の心を持ったデーモンである『デビルマン』となることに成功する。
アモンと融合した後は人間離れした筋力をほこり、変身しなくてもある程度の超能力を使うなど戦闘能力が高くなっており、生命力も普通の人間に比べてかなり高い。性格も内気なものから粗暴なものに変化した。
デビルマンとなった後は、人類を守るために、人知れずデーモンと戦いを繰り広げていく。デーモンが組織的な攻撃を仕掛けてくるようになると同族を集め、纏める対応力も見せた。
しかし親友飛鳥了が正体、魔王サタンとしての記憶を取り戻すとその計略によりデビルマンやその疑いあるものが人類によって迫害される『魔女狩り』が起こる。
『魔女狩り』によって想い人、牧村美樹とその家族やともに戦う同朋が惨殺され、人間の悪魔じみた所業に絶望。多くの人間を殺害し、『デビルマン』という種族のためデーモンとの最終戦争に挑む。その戦争におけるサタンとの戦いで致命傷を負い、サタンに看取られて絶命した。
不動明は数多の並行世界で異なる歴史を歩んだ英雄だが、この不動明は『魔女狩り』においてアモンに乗っ取られることなく、最終戦争で命を落とした時点の不動明である。
宿す悪魔アモンはかつて地球で繁栄したデーモン族の戦士であり、グリモワールなどにある大悪魔アモンと同一であるかは不明。そもそも不動明という英雄の存在自体、何者かの世界改変によって隠されているようだ。

【サーヴァントとしての願い】
再びサタンと会い、語らうことが聖杯に託す願い……だったのだが、『美樹ちゃん』『さっちゃん』のことを考えると揺らいでいる。
だが少なくともマスターでもある彼女のことは守り抜いて見せる。
もう一つの人格、アモンは主人格不動明の排除を願うだろう。

【基本戦術、方針、運用法】
積極的な戦闘はマスターの方針的にNGだが、聖杯を渡してはならない相手と判断した場合闘争を戸惑うことはない。
実際の戦闘では『悪魔の体に人の心持つ戦士(デビルマン)』に変身して中〜近距離でビーム打ったり、火吐いたり、殴ったり蹴ったりが基本。
不利と判断したなら飛翔能力などを用いての撤退、不意打ちも視野に入れる。
信仰の加護(真)と戦闘続行によりどつき合いでは強力な部類。
また自己改造により敵やNPC、宝具などを取り込めばクリーチャー化して強くなるし、魔力の心配もない。ビジュアル的にもやってることもラスボス化するのが欠点か。
また合体もできるのでさやかちゃんや同盟したサーヴァントと一体化して戦うことも可能。
『目覚める地獄の野獣(アモン・アウェイク)』は狂化というより闇落ち。令呪で命じれば意図的に使えるだろうが、本人はまず使いたがらない。ただし、マスターが魔女になりかねないのと同様何らかのきっかけがあればアモンは目覚め暴れ狂う。一歩間違えば主従ともに理性のない怪物になりかねない危険なコンビと言える。


97 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:21:21 C.vOw/1Q0
【マスターステータス】

【名前】美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語

【参加方法】
インキュベーターの手引きにより参加

【マスターとしての願い】
悪魔となった暁美ほむらに対抗する術を手に入れる。ただし主催が信用ならない場合叛逆する

【能力・技能】
魔法少女として培った戦闘技能と魔法(魔術)。主に刀剣生成と癒しの魔法を得意とする。
刀剣は複数生成しての投擲なども可能とし、刀身の射出や分割などのギミックも有するが、基本的にスピードを生かした一撃必殺のスタイル。
癒しの魔法は本来の領分。癒しの願いで魔法少女となったため、自身のダメージは魔法少女の体質もあって即座に回復可能。他者の治療も一応できる。
円環の理として活躍した時期は自身の血から魔女ゼッケンドルフを召喚したり、他の魔女の使い魔を使役したりできたが、暁美ほむらの世界改変の影響で今はできない。記憶を取り戻した後使用できるかは不明。

【weapon】
ソウルジェム

魂を物質化した第三魔法の顕現。美樹さやかをはじめとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、濁りきると魔女になる。本来なら円環の理が機能していたが、この地まで円環の理がたどりつけるか、そもそも魔女化するのかは不明。

【人物背景】
平凡な見滝原中学校に通う2年生だったが、宇宙のエネルギー量を憂う外来種インキュベーターと契約し、『魔女』と戦う魔法少女となった女の子。
思いを寄せる幼馴染の腕を治す、町の人々を守るために戦うなど優しさと善性ある少女だが、年相応の危うさも秘めている。
実際に多くの可能性世界で失恋や自身が人間でなくなってしまったことなど不運や悲報が重なり、絶望して自身が『魔女』となってしまうこともあった。
しかし鹿目まどかが魔法少女を救済する円環の理となり、導かれると想い人が夢へと歩んでいる姿に初心を思い出し満足して現世を後にした。

その後は自身も円環の理の一部となり、世界の外側から活動。並行世界の自分や暁美ほむらの道程を知り精神的な成長を見せる。
ほむらがインキュベーターに囚われるとそれを救済するためまどか・百江なぎさとともに再び現世に降臨。くるみ割りの魔女を倒しインキュベーターの支配から脱出するもほむらが叛逆。ほむらの世界改変に巻き込まれ円環の理に帰れなくなり、再び現世で生きていくことになる。この際に円環の理としての能力や記憶の一部を徐々に失っている。


【方針】
まずは聖杯の真偽を確かめるため情報収集と危険人物の排除。特に天城弥勒のことを知る人物の話が聞きたい。同盟などは積極的にするつもり。
聖杯が信用できると判断した場合取りに行くが、疑わしい場合は反抗するつもり。
取りに行く場合もマスターの殺害はなるべく避けたい。


98 : 悪魔の証明 ◆A23CJmo9LE :2014/07/27(日) 21:23:00 C.vOw/1Q0
美樹さやか&バーサーカーの一番槍投下終了です。
よろしくお願いします


99 : 名無しさん :2014/07/27(日) 22:04:33 DHQu0zkM0
>>89
わかりました
ありがとうございます


100 : ◆Hh34ItOPEw :2014/07/27(日) 22:30:11 947XYHi20
投下します


101 : キミを悪夢(ユメ)から覚ます ◆Hh34ItOPEw :2014/07/27(日) 22:30:26 947XYHi20
    ピンクの悪魔をサーヴァントににするにあたって
        留意すべき点は以下の五点である。
                 (1)
    マイクを持たせるのは全くの厳禁。令呪を使用してでも絶対に回避すること。
                 (2)
    大きな衝撃・振動は突発的吸い込みを招くので注意する事。
                 (3)
      毛虫が苦手なのでなるべく近づけないよう計らう事。
                 (4)
  好物はスイカとトマト、与えると非常に喜ぶので定期的に与える事。
     後は、食べられる辛過ぎない食べ物なら大体なんでも好む。
  
               そして…
                (5)
できれば……サーヴァントにするのは止めておく事。
    
   (とあるサイレンドリフト著、危険サーヴァント取扱いマニュアルより)


102 : キミを悪夢(ユメ)から覚ます ◆Hh34ItOPEw :2014/07/27(日) 22:31:25 947XYHi20
「でさ、俺の女好きの相棒はどうやらドレスコードに引っ掛かっちまったみたいだ。
だから、ソイツの代わりに俺と一緒に唄ってもらえるかい?ライダー、いやカービィかな?」
「ポヨッ!」

そう言って少年が背後を振り返るとピンクのまんまるな英雄は力強く答える。
その姿は愛らしいのに、どこか凛々しさを感じさせる。
……少年が与えたチョコの山に埋もれていなければ、だが。

「…星をも盗む王ドロボウの相棒がピンクのポルヴォ−ラみたいな姿の戦士とは
聖杯ってヤツは中々、人選(ジョーク)にスパイスがきいてる」

自分のサーヴァントがどう見てもチョコに埋もれたピンクボールにしか見えなくても彼が己を見失うことは無い。
何故なら彼の目的は殺伐とした殺し合いを勝ち抜く事ではないからだ。

「でも、いくらジョークとギフトが良くても余興が悪夢のような三文芝居じゃ
 パーティは盛り上がらないぜ天樹弥勒、それに招待状が無いのも頂けない」

そう、彼の目的は―――

「とは言え、こんなしがないドロボウまで招待感謝するよ。お礼と言っちゃなんだけど
 俺とライダーが主催の席と聖杯を頂いた後、残った参加者はこの不肖王ドロボウが主催で
星の戦士が主賓の、聖杯を囲む“二次”会でまとめて面倒みてやるよ」

―――聖杯を、悪夢のようなパーティの主催役を、盗むこと。ドロボウはどこまで行ってもドロボウなのである。


103 : キミを悪夢(ユメ)から覚ます ◆Hh34ItOPEw :2014/07/27(日) 22:31:44 947XYHi20
そんなささやかな初心表明の後、彼はカービィに改めて向き直る。

その時には、もう彼が与えたチョコはもう消え失せていた
だが、カービィはまだ満足していないのか、もっとよこせと言わんばかりにつぶらな
瞳でジンを見つめる。

だがジンは少し苦笑すると、

「あいにく儲からないチョコ屋は店仕舞い。王ドロボウは手品師に転職したのさ」

そう答えて指を鳴らした。

すると、カービィを不思議な感覚が襲った。
満腹ではないのに、何かを食べようとする気が霧散したのだ。
まるで、食“欲”が消え失せたような。

「行きがけの駄賃……星の戦士の無限の食欲ちょっとだけ頂きました。
   タネもシカケもございませーん」

そう言って悪戯が成功した子どもの様にジンは微笑む。

「ポヨ……」
「驚いてるトコ悪いけど、パーティーに招待された分、早いトコ同じ招待者がみんな楽しめるよう、取り仕切らないといけないからそろそろ行くぜ、ライダー
―――目にも止まらぬ速さでね!」

まだ違和感を感じているカービィをそう言って宥め、ジンは小脇に抱きかかえた。
そして、そのままビルの淵まで歩き……飛び降りる。
ビル程の高さのその建物から飛び降りれば彼を待っているのは確実な死。
だが、

「来い、ワープスター!!!」

落下しながら、少年は虚空に高らかに叫ぶ。


104 : キミを悪夢(ユメ)から覚ます ◆Hh34ItOPEw :2014/07/27(日) 22:54:08 947XYHi20
【マスター】
ジン@王ドロボウJING

【参加方法】
願いの都「タイプムーン」で盗んだお宝がサイレンのテレカだった。

【マスターとしての願い】
聖杯を盗み出す。そして、聖杯を囲むパーティを、他の参加者を呼んで開催する。

【weapon】
右手に装備された石像もえぐれる仕込み西洋剣。
【能力・技能】
人間そのものとも言える『欲』を自らの手足のように操ることが出来る。
 ちなみに、自分の欲だけでなく、他者(化け物のようになった亡者すら)の欲も自在に操る事が出来る。これは、宝への欲望に負けぬよう自身の欲を支配する歴代の王ドロボウに伝わる能力。
これを使ってカービィの食欲をコントロールした。だが、参加者の願いの根幹に関わる欲は干渉できない。

【人物背景】
盗むことを宿命づけられた王ドロボウの一族の末裔。
自分の私腹を肥やすことが目的なのではなく、盗むことそのものが目的。
太陽や神の嫁さえも盗んだ実績の持ち主。
不思議な魅力の持ち主で、作中彼と会った女性のほとんどが彼に心を盗まれている。
しかし本人は色恋沙汰に興味が無いのか、盗みが終わればその国から姿を消す。

【方針】
天樹弥勒から主催の席と聖杯を盗み出す。
そして、参加者とサーヴァント、誰もがハッピーになれる二次会を開催する。


105 : キミを悪夢(ユメ)から覚ます ◆Hh34ItOPEw :2014/07/27(日) 22:54:51 947XYHi20
【クラス】
ライダー

【真名】
カービィ@星のカービィシリーズ

【パラメーター】
筋力B 耐久C+ 敏捷C魔力D 運A 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。


騎乗:A
 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

【保有スキル】
言語不能:B
会話はできないが一定の言葉は話すことが可能。固有名詞や口癖など。
だが、マスターや長く一緒にいた者なら会話できるようになるかもしれない

星の戦士:A
銀河をまたに駆けた戦士の証。
どんな絶望的な状況下でも勝利を手繰り寄せる天性の才能。
相手のサーヴァントの動きを直感で見切り、有利に対抗できる。
味方の士気も向上させる力も持つ。

はるかぜとともに:E
どんな者も親しみやすいカービィの容姿。
女性に対しては男性よりも強い効果を持つが、可愛がられる程度。
また、カービィの実力の隠ぺい効果も持つ。

無限の食欲:EX
あらゆるものを吸い込み消化してなお尽きぬその食欲。
ある程度食事をしている限りこのスキルが発動することは無いが、いったん発動すると
マスターですら吸い込みかねない。


【宝具】
『銀河制覇す星の箱舟(ワープスター)』
ランク:D種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:-
カービィが愛用する星形の船。
高速で飛行ができ、マスターも操縦できるが、攻撃には使用できない。
だが、宝具となった事で耐久性は上がっている。

『我が血肉となりし森羅万象 (コピー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
吸い込んだ事象を力とし、宝具の域にまで高められる能力。
しかし、ライダーのクラスなので大幅に劣化しておりミックスコピー等特殊なコピーはおろか
他の七騎士に該当する武器を使いこなすコピーは使えない。
勿論相手のサーヴァントや宝具を吸い込むことはできない。
だが、吸い込んだ事象に宿る僅かな魔力も取り込む事ができるので魔力消費は少なく済む。

『天空翔ける虹の龍星 (ドラグーン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
かつて異世界の侵略者が操った鋼鉄の空中戦艦を一撃で撃破したとされる伝説の
エアライドマシン。その限界まで高められた飛行能力で遥か上空まで飛翔した後は
まさに流星の如く相手を貫く。

【weapon】
吸い込んだ事象で得られるコピー能力。

【人物背景】
呆れ返る程平和な国プププランドに移住してきたピンクのまあるい英雄。
自由気ままで、優しくて、食べることが大好きな星の戦士。
年齢、性別は諸説あるが「わかもの」とのこと
体長はリンゴ3つ分の20cmで、座右の銘は「明日は明日の風が吹く」
強い星の戦士だがゴルドーと毛虫にだけは頭が上がらない。


【サーヴァントとしての願い】
食べきれない程のスイカとマキシマムトマト食べたい。


【基本戦術・方針・運用法】
劣化しているとは言えど、戦略如何ではコピー能力の多彩さで十分立ち回れる。
ただしそれだけでは相手の宝具次第では完璧に火力不足になるので
タイミングを見極めて高威力のドラグーンを使わなければならない。
うまく使いこなせれば完璧なトリックスターとして活躍できるだろう。


106 : ◆Hh34ItOPEw :2014/07/27(日) 22:59:40 947XYHi20
投下終了ですが。すいませんss本文最後の部分がしたらばのNGワード関連に引っ掛かってしまったようで
後日修正したものを投下していいでしょうか?


107 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/27(日) 23:10:05 JICAFGhw0
>>106
投下お疲れ様でした。
再投下や修正は適宜行ってもらって構いませんのでお待ちしております。

それと此方から質問を一つ(優柔不断で申し訳ありません)
募集期間を8月3日(日)までとしていますが短いでしょうか?
返答してもらえれば幸いです。

もう一つ。
最終的な決定権は私に有りますが……そこで一つ。
私から把握している作品を書き込むことは極力したくありません。
そこで「○○(作品名)知ってるか教えろや」的な書き込みには返答しようと思います。

私が把握している作品が選ばれる、把握されていない作品は選ばれない、ということではありません。

よろしくお願いいたします。


108 : 名無しさん :2014/07/27(日) 23:42:56 rc9P4lQo0
では質問よろしいでしょうか!
>>1殿はプリズマイリヤを把握してらっしゃいますでしょうか・・・?


109 : 名無しさん :2014/07/27(日) 23:46:22 TnqAC9SQ0
実際そこまで待ってみて、満足な聖杯戦争できそうになかったら延期すればいいんじゃないでしょうか
土日挟めば推敲はできそうですし、本家以外にも300作品あったわけですし


110 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/27(日) 23:55:07 JICAFGhw0
>>108
申し訳ありませんがイリヤは把握はしていないです……
やはりイリヤはこの媒体だと大きく違う感じなんでしょうか?
それともっと楽な感じで構いませんw私はスレ主ですけど偉くはないので……。

UBWアニメ化、イリヤルート映画化おめでとうございます。

>>109
ありがとうございます。
状況を見て判断させていただきます。


111 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/28(月) 00:01:42 FlUcOO8E0
イリヤじゃない桜でした、一応の書き込みで


112 : ◆DpgFZhamPE :2014/07/28(月) 00:12:03 FjiCkrNs0
>>110
すいません、鳥忘れてました。
回答ありがとうございます!
プリズマイリヤのイリヤは、本来のイリヤとは違い外見相応の歳の小学生なので、普通の女の子のようになってます。
残虐な面や大人っぽい雰囲気が消えてるので、結構違う感じですよー


113 : ◆lb.YEGOV.. :2014/07/28(月) 00:53:23 UgHAxvhQ0
お疲れさまです。
二次二次に投下してない作品ですが、投下させていただければと思います。


114 : タダノヒトナリ&アーチャー ◆lb.YEGOV.. :2014/07/28(月) 00:55:19 UgHAxvhQ0
ぎしり、ぎしり、と隣の部屋からベッドの軋む音が響く。
甘ったるい嬌声と獣の様な男の声をBGMに、僕は煙草を燻らせる。
きっとNPCの彼は人間の女が相手では決して味わえない快感を味わっている事だろう。
たとえ、その先に待っているのが己の死だとしても、もう彼は止まらない。
そうやって死んだ人間はあの地獄でいやという程見てきた。

一際大きな嬌声と共に隣室から一切の音が消えた。おそらくは終わったのだろう。
ギィ、と扉が開く音と共に僕のサーヴァント、アーチャーが姿を現した。
横目に見た乱雑に散らかった室内には彼女の姿しかいない。
つまるところ、彼女の『食事』は終了したという事だ。

「随分と不服そうだね」
「当たり前よ」

デニムのパンツにワイシャツという酷く扇情的な格好をしたアーチャーは、如何にも物足りないといった表情で向かいの椅子へと座り込む。
眉根を歪めた姿まで、美しく感じるというのは、男を誘い文字通り食い物にする彼女たちサキュバスの生まれ持った特性だ。
あのミッションで時に仲魔として、時に敵性存在として彼女の同種と関わりあった経験がなければ、おそらくは僕も彼女の魅力に溺れきっていただろう。

「やっぱり、NPCは駄目ね。魔力自体は補給できるけど、魂が美味しくないのよ」

所詮は養殖ものねとアーチャーが毒づく。
そんなものかと尋ねるとそんなものよと返しながらアーチャーが気だるげに伸びをする。
それを横目にしながら、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
魅了されて部屋へと連れ込まれ、彼女に食われた青年が脳裏に浮かぶ。
魂を持たない、プログラム通りの行動しか起こせないデータ状の存在とはいえ、なんの罪もない人間を戦争に勝つために犠牲にしたというのに、僕の心に後悔の念は湧いて来なかった。
自分達の明日を勝ち取る為に誰かを殺す事など、既に慣れっこになってしまっていた。

ゴア隊長は僕達に全てを託して消えていった。
そして、人が人として生きる明日を守る為に、立ち塞がる者は全て殺した。
僕達の仲間を何人も殺したジャック部隊も、
悪魔との合体を果たし原初の世界を作ろうとしたヒメネスも、
天使へと変貌を遂げ法と秩序に管理された世界を作ろうとしたゼレーニンも、
そして彼らの思想に迎合し離れていったかつての仲間達も、
神の使途も、悪魔の化身も、人のエゴも、全て淘汰して得た明日は眩しかった。
そして、それと共にその眩しさを分かち合う筈だった戦友達が傍らにいなかった事が、酷く寂しかった。

もう一度、彼らと共に歩めたら。
意見がぶつかる事もあった。
極限状態での喧嘩なんて茶飯事だった。
それでも、互いに力を合わせて壁を乗り越え、笑いあったあの日々は、決して嘘偽りなんかじゃなかった。
かつての記憶が脳裏を駆け巡る。
不意に、甘い匂いが鼻をくすぐった。


115 : タダノヒトナリ&アーチャー ◆lb.YEGOV.. :2014/07/28(月) 00:56:24 UgHAxvhQ0
「何をしている?」
「あら、つれないわね」

咄嗟に傍らの銃を、テーブルの上に四つん這いになりながら、今にも唇を重ねようとしていたアーチャーへと向ける。
見つめられただけで、並の男であれば心を奪われそうな蟲惑的な瞳と視線が合う。
クスリ、とアーチャーが悪戯っぽく微笑む。

「折角食べるのなら美味しい物を食べたいと思うのは当然でしょ」
「それが僕だと?」
「良質な天然ものですもの」

銃口が額を指しているというのに、さして気にも留めず艶めかしい笑顔を浮かべたままのアーチャー。
彼女の陶磁器の様に滑らかで白い指が僕の喉元を這う。
ゾクリとした怖気が走り、嫌な汗が背中を流れる。

サーヴァントには神秘の通わぬ攻撃は効かない。
僕と共にこの戦争に呼び出されデモニカスーツと装備一式ならば、悪魔達を殺す事はできる。
だが、同じ悪魔とはいえ、こちらの攻撃が彼女に通用するかと言えば、自身はない。
おまけにこのスーツや装備はかつてのミッション終了と共に初期化され、最低限の装備しかない。
これで、眼前の魔王を倒せるかと言えば否だ。仮に倒したとしてもそうすればサーヴァントを失った僕は消える身だ。
だからといって、なすがままにされる必要はない。
抵抗の意志。それだけは彼女に向けて見せつけてやらねばならない

「本当に、堅い人」

睨み合いに折れたのは彼女だった。
肩をすくめてテーブルから降りる。
本懐は遂げられなかったとはいえ、僕とのやりとりはそれなりに彼女にとってはいい刺激になったのだろう。
こころなしか、さっきよりも表情が活き活きしていた。

「当分はマズいご飯でも我慢してあげるけど、私って我慢は得意じゃないわ。そこのところは――」
「ああ、わかっているよ」

どちらにしろ、ここから先は僕と同じ様に願いを叶える為に人を殺す事を選んだ人間達との殺し合いだ。
だからこそ容赦はしない。

「敵対的な相手であれば、容赦なく食べてしまっていい。戦争はもう始まっているんだ、近い内に沢山の『天然もの』とやらにも会えるだろうさ」

懐かしきセピア色の思い出を取り戻す為に。
僕はまた、スーツを纏う。


116 : タダノヒトナリ&アーチャー ◆lb.YEGOV.. :2014/07/28(月) 00:58:06 UgHAxvhQ0
『クラス』アーチャー
『真名』モリガン・アーンスランド@ヴァンパイアシリーズ
『パラメーター』

筋力:C 敏捷:B 耐久:D 魔力:A 幸運:B 宝具:A

『属性』
 混沌・悪 

『クラススキル』
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

『保有スキル』

飛行:A
飛行能力。
魔力を消費せずに自力で自由自在に飛行が可能

魅了:C
男を性欲の虜にする夢魔としての本領。
アーチャーと対峙した異性は、彼女に対し強烈な性欲を抱く。
対象の精神状態によっては無効化可能、また、同ランク以下の精神耐性に類するスキルがあれば完全に無効化できる。

サキュバス:A
精神的或は肉体的刺激が生命に直結する淫魔の種族特性。
長時間刺激が得られなければ生命力が著しく減衰し、2日間その状態が持続した場合アーチャーは死亡する。

精気吸収:C
性行為、あるいはキスによって相手の生命力・魔力を吸収する事が可能。
この効果はアーチャーの魅了の影響下にあるか、または行動不能の状況になっていなければ発動できない。

使い魔:D
使い魔として小型の蝙蝠を使役できる。戦闘能力はないが斥候などに利用可能

『宝具』

闇より出し幻影の半身(アストラルヴィジョン)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
対象を挟み込む様にして自身の分身を召喚し、同時攻撃を行なう。
分身が出現している最中は常時魔力を消費する。

月夜埋め尽くす蝙蝠の弾丸(フィニッシングシャワー)
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足100人
アーチャーの羽から無数の弾丸を形成し対象目掛けて斉射を行なう。この効果は『闇より出し幻影の半身』中にも使用可能だが、その場合魔力の消費が倍となる。

闇夜穿つ魂の奔流(ソウルイレイザー)
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2~99 最大補足300人
自身の羽をレーザーキャノンに、使い魔の蝙蝠を小型オプションへと変化させ、魔力を一斉に照射する。この宝具は『闇より出し幻影の半身』中には使用できない


117 : タダノヒトナリ&アーチャー ◆lb.YEGOV.. :2014/07/28(月) 01:01:46 UgHAxvhQ0
『wepon』
蝙蝠を模したスーツ
アーチャーの意志によって自由自在にその姿を変えるセクシーなスーツ。
羽部分を刃に変形できたりができる。
詳しい技の数々についてはttp://www30.atwiki.jp/niconicomugen/pages/765.htmlを参照の事

『人物背景』
魔界の三大貴族アーンスランド家の当主であるサキュバス、だが本人の当主という自覚は一切無く、刺激を求めて人間界に足しげく通っている。快楽的・刹那的・楽天的な性格で基本的に『自分が楽しめればそれでいい』が彼女の行動スタンスである。

『サーヴァントの願い』
このイベントを楽しむ、タダノを自分の虜にする

『基本戦術、方針、運用法』
広範囲を攻撃できる『月夜埋め尽くす蝙蝠の弾丸』『闇夜穿つ魂の奔流』に加え、奇襲も可能な『闇より出し幻影の半身』と宝具が充実している反面、消費も激しく、魂食いなどでの魔力貯蔵と補給は必至。また、魅了の効果が決まれば精気吸収によって魔力を補給しながら対象を一方的に搾り殺せるので、可能であれば狙って行きたい。閉所に1人で閉じ込められると急速に生命力が失われて行くので分断・隔離されないように気をつけよう。

【マスター】
タダノ・ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY

【参加時期】
原作トゥルーエンド後

【マスターとしての願い】
敵対した皆と共に歩んで行ける世界を作る。

【weapon】
資材班試作ナイフ
起動班標準マシンガン
 自身の魔力を消費して火炎の属性を纏った銃弾を発射可能。
デモニカスーツ:タクティカルベスト
アプリ:エネミーアピアランス
 デモニカスーツ内蔵アプリ。気配遮断等、姿を隠すスキルを持っていない相手が接近した場合、自動的に接近を感知する。

【能力・技能】
軍人としての一通りのサバイバル技術

【人物背景】
南極に現れた謎の空間シュバルツバースの調査に参加したエリート兵士。
寡黙でもの静か。シュバルツバースに呑み込まれ、悪魔達や神々の思惑に翻弄されながらも、彼を信じてついて来てくれた隊員達とともに人々の明日を勝ち取った。

【方針】
話が分かりそうな相手に対しては交渉。
危険人物に対しては容赦なく攻撃を開始する。
また、魔力補充の為に定期的に魂喰いを行なう。


118 : ◆lb.YEGOV.. :2014/07/28(月) 01:05:49 UgHAxvhQ0
以上で投下を終了します。

今回投下した二人の出典について把握されていましたら幸いです。
どうぞ、よろしくお願いします。


119 : 名無しさん :2014/07/28(月) 03:55:49 hv7htw3Q0
おおー、まさかヴァンパイア勢から参戦するかもしれないとは
期待大ですなすなすな


120 : 名無しさん :2014/07/28(月) 06:27:37 QpXob5vI0
おお、モリガンさん!
正統派サキュバスが来ましたか


121 : 名無しさん :2014/07/28(月) 20:49:43 Biow.GPc0
修正
>>103,>>104の間に入ります



「いやー、星をも盗むが俺の代名詞だけど、星で遊覧飛行するのは初めてかも。
パーティに招待された上に、貴重な経験させてもらった後は、お礼状を目立つところにね。」


そう言って、“星”に乗った少年は一枚の紙を取り出し、彼のサーヴァントに見せる。


「ポヨ?」


残念ながらカービィは理解できなかった様だが、その紙にはこう書かれていた。


『 狂宴招きし月の杯 
もらっちゃいます 
HO!HO!HO!
夜更かしの王ドロボウ』


「ポヨポヨ?」
「これはな、ライダー。お楽しみはこれからって意味さ!」
「ポヨ!」


その言葉で、何となく紙に書かれた事が理解できたのが嬉しいのか、花の様にカービィは笑った。
相棒が自分達のやる事を大体把握した所で、ジンはまだ見ぬ参加者に語りかける。


「さーて、聖杯はこの王ドロボウが盗ませて頂く訳だけど、同じく月に呼ばれちまった紳士淑女の皆さんは泣くことは無いのさ。
だって、月も太陽も紛い物だけど、王ドロボウの民は飢えて死ぬことは無いんだから」


それに、とジンは付け足す。


――こっちは―人一倍夢見がちな年頃の少年なんでね。皆の夢(願い)も欲しいのさ。


彼にとって、盗むものがある限りそこは彼の故郷で、そこに居るもの達は彼の民なのだ。


願いは宝石。命は財宝。凄惨な宴は極上のパーティ。ならば盗んで見せます王ドロボウ! 
     今度の大“盗り”物伝説は聖杯戦争にて開幕!


122 : 名無しさん :2014/07/28(月) 20:52:05 Biow.GPc0
すいません>>121、自分です
どうしてもNGワードで引っ掛かってしまったので二次二次に投下したものを
そのまま投下させていただきました。


123 : ◆Hh34ItOPEw :2014/07/28(月) 20:55:06 Biow.GPc0
ほげえええ、二度もトリ付け忘れ……
色々迷惑と混乱をかけてしまいすいません121,122どちらも自分です。本当にすいません


124 : 名無しさん :2014/07/28(月) 22:19:11 XUKceUc20
流子ちゃんとモリガン……いけるな!


125 : 名無しさん :2014/07/29(火) 00:18:49 gibvOg320
ほむほむに合うサーヴァントってなんだろう


126 : 名無しさん :2014/07/29(火) 00:29:56 e2MpSGQI0
そりゃあお前、ほむほむよ


127 : 名無しさん :2014/07/29(火) 02:39:34 EXf/.tHo0
めがほむだとまっとうな正義の味方
ほむほむだと緑茶みたいなひねくれ者と組んでるイメージがある


128 : 名無しさん :2014/07/29(火) 04:24:46 uX39KHew0
複数の質問があります
PSYRENのことはよく知らないのですが、
PSYRENの世界に行くにはマスターとサーヴァントがテレホンカードを手にする必要があるのですか?


129 : 名無しさん :2014/07/29(火) 04:25:44 uX39KHew0
複数の質問があります
PSYRENのことはよく知らないのですが、
PSYRENの世界に行くにはマスターとサーヴァントがテレホンカードを手にする必要があるのですか?


130 : 名無しさん :2014/07/29(火) 04:30:37 uX39KHew0
>>128-129
連続誤爆申し訳ない

もう一つの質問は、PSYRENの世界にはNPCが暮らしているとのことですが、
そのNPCは学生やリーマンに加え、ヤクザみたいな裏組織も存在していますか?

質問多くてすいません


131 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/29(火) 06:57:43 ITiUM1dQ0
投下お疲れ様です。

>>125
ほむほむ……引っ張ってくれる存在でしょうか、それか裏に闇の一面を持つキャラとか。

>>128
>>130
サイレンの世界に行くのにテレカの所有はお任せします。
巻き込まれ系の場合はテレカは気付けば手元にあった、ぐらいの認識で構いません。
ですので、登場話でテレカの描写は必須ではありません。

NPCについてはお任せします。
具体的な企業名や構想、規模は企画として動いている中で肉付けされていくと思っています。


132 : 名無しさん :2014/07/29(火) 07:46:14 wbwEB09M0
>>125
ほむほむ(腐界に眠る王女のアバドーン)とかいいと思うね
クラスはキャスター
陣地作成EX持ちでNPCをどんどん化け物に変えていく厄ネタ


133 : 名無しさん :2014/07/29(火) 11:26:19 Ghv3hjjY0
ほむほむ…
いずれ怪物になる運命から、メデューサとか一部の仮面ライダーとか
或いはループして戦い続けるデモべ勢とか


134 : 名無しさん :2014/07/29(火) 12:14:09 d.IkM4vo0
大切な人の為に躊躇なく世界を敵に回したり、犠牲をいとわないキャラなんかは引き合いそう。
問題はそいつと性格面で相性が合うかだが


135 : 名無しさん :2014/07/29(火) 15:20:38 M3dshQq2O
タッグフォースのコナミ君なら大丈夫だな


136 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/29(火) 23:26:39 ITiUM1dQ0
皆様お疲れ様です。
新しい投下が来たり雑談が行われている所を見るととても元気になります(唐突)

このスレの名前にも入っているPSYRENについてです。
過去に週刊少年ジャンプで連載されていた漫画になります。

何回か書き込んでいますが「PSYRENを把握していなくても当分は問題有りません」。
ロワで表すと「○○ロワの主催陣営が@PSYRENのキャラ」の認識で大丈夫です。
後半や終盤に企画が進むと聖杯戦争というよりも主催VS対主催的な構図になるかもしれませんが……。

ttp://www23.atwiki.jp/psy_ren/
サイレンの各項目について書かれているサイトになります。
気になる方はどうぞ!

解説、説明が遅くなってしまい申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。


137 : 名無しさん :2014/07/30(水) 04:11:02 CyAXGn9g0
>>136
乙です

現在登場話を執筆中でその展開について質問なんですが、
「本来マスターになるはずであった人物が死に、
残ったサーヴァントが関係のない人物にテレホンカードをつかませてその人物をマスターにする」
という展開は可能ですかね?

サーヴァントは魔力が尽きる数分間の間にその人物を見つけ出してます


138 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/30(水) 10:04:00 54rz/cUw0
書き込みありがとうございます。

執筆中……大変嬉しいです!

テレカについてですが、それはかのうです。

私の説明が下手で申し訳ありません。
テレカの描写は必須事項ではありません。
ロワでいう基本支給品の認識で。

よろしくお願いします


139 : ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:01:34 CyAXGn9g0
>>138
いくつもの質問に答えていただきありがとうございます
おかげさまでマスターのデータ表は未完成ですが
それ以外の部分で作品ができましたので
善は急げということで投下させていただきます


140 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:02:29 CyAXGn9g0
深夜――人気はなく、その闇を街灯が照らしているだけである。
その路地には音もなく、ただ風が吹く音が通り過ぎるだけ・・・だったのだが。
暗がりの中にある、どこにでもあるような一軒家から、銃声と人が騒ぐ声が鳴り響いてきた。
しかし、そんな騒音も数分でやんだ。
聞いた者はいない。ここには通る者がおらず、近くに住む者は夢の中だ。

「・・・こんなところか」

その家の中には死体が散乱していた。そんな地獄絵図の中、そこに立つ者がいた。
その男の顔は、一目で『外国人』だとわかるだろう。

「どいつもこいつも『殺すぞ』だァ?オレはお前らがそうやって『殺す』『殺す』って言い合って慰め合っているような弱虫共の世界で生きてねーんだ」

しかし、その男はこの家の住人ではなかった。この男が一人で片付けたのだ。


このギャング達を―――いや、ジャポーネの言葉でいうと「ヤクザ」だったか。


「おい...入ってきていいぞ...凛」

その言葉に呼応するように一人の人物が入ってくる。
その姿は小柄で、仔猫のよう...いや、この世界では仔猫同然であった。
まぎれもない、ただの少女だったのだから。

「本当に殺しちゃったのにゃ...?」
「コイツらはNPCだ...殺しても罪になりゃあしないし、何よりもここは―――」

「聖杯戦争――殺し合いの場だ」


アサシンが襲撃したのはヤクザのアジトだった。中には10人弱の人間がいて入るや否や「殺すぞ、ゴラァッ!!」と威嚇してきたが、
アサシンは獲物のリボルバー式拳銃で全員を難なく殺害し、このアジトを乗っ取ることができた。
アサシン・・・その真名はプロシュートという。イタリアのギャング組織にて暗殺チームに所属していた経歴を持つ男。
対して、そのマスターの名は星空 凛。魔術師でもなければ死神でもなく、犯罪者でもない。ただのスクールアイドルをしている女子学生である。

(まぁ...この世界に来てからの当面の目標は達成できたな...)

アサシンは心の中でひとりごちる。
ヤクザのアジトを襲撃したことには理由があった。
第一に、ただの一般人である凛は魔力が乏しい(アイドルとして活動していたことによりファンからの信仰が魔力となっていて少しはマシなようだが)。
そのため、どうしても魔力が枯渇しがちで、NPCの魂を吸収する必要があった。
第二に、凛は戦う力を持っていなかった。それを少しでも補うために武器が必要であった。

「よし、魔力は当分は問題ねーな。武器も予想以上にある。寝床や金も申し分ない」

              ・・
「ただ一つ残念なことは...『掃除』が大変なことと当分は血生臭いにおいが消えねーことくらいか」
「ねえアサシン、本当によかったのかな...」

凛が近づいてきて不安な表情で問うてきた。

「凛はアサシンを見捨てて元の世界に帰るのも嫌だけど・・・関係ない人を殺すのも――」
「凛...オメー『オレを切り捨てずに聖杯戦争を生き残りたい』っていってたよな?...いいか?俺達は『マスターとサーヴァント』の関係・・・一心同体だ。目的である聖杯をゲットするために『オレ達』は生き残らなくっちゃあならねぇ。そのためにオレは全力を尽くす。オメーに必要なことを教える。銃の使い方も含めてな」
「っ...!」

凛の表情がさらに強張る。その目には涙が浮かんでおり、恐怖を隠せない様子が見て取れる。
                                              ・・・・・・
「オメーがそれでいいなら『令呪』を使ったっていい。ただ、覚えとけ...聖杯戦争に関わることは『そういうこと』...オメーにも危険が及ぶ可能性だって十分にある。オレがこれから教えていくことはオメーが自分を守ることにつながるんだ」
「アサシン...」
「まぁ―――」




「凛を無理やり巻き込んだオレが偉そうに言える立場じゃあないんだけどな」

そう、凛がなぜ戦う力がないのかというと『巻き込まれた』のだ。

時間は数時間前にさかのぼる...。


141 : ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:05:29 CyAXGn9g0
>>140
やっちまった・・・
すいません、清書じゃない方を投下してしまった
次のレスからが正規版です


142 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:06:44 CyAXGn9g0
深夜――人気はなく、その闇を街灯が照らしているだけである。
その路地には音もなく、ただ風が吹く音が通り過ぎるだけ・・・だったのだが。
暗がりの中にある、どこにでもあるような一軒家から、銃声と人が騒ぐ声が鳴り響いてきた。
しかし、そんな騒音も数分でやんだ。
聞いた者はいない。ここには通る者がおらず、近くに住む者は夢の中だ。

「...こんなところか」

その家の中には死体が散乱していた。そんな地獄絵図の中、そこに立つ者がいた。
その男の顔は、一目で『外国人』だとわかるだろう。

「どいつもこいつも『殺すぞ』だァ?オレはお前らがそうやって『殺す』『殺す』って言い合って慰め合っているような弱虫共の世界で生きてねーんだ」

しかし、その男はこの家の住人ではなかった。この男が一人で片付けたのだ。


このギャング達を―――いや、ジャポーネの言葉でいうと「ヤクザ」だったか。


「おい...入ってきていいぞ...凛」

その言葉に呼応するように一人の人物が入ってくる。
その姿は小柄で、仔猫のよう...いや、この世界では仔猫同然であった。
まぎれもない、ただの少女だったのだから。

「本当に殺しちゃったのにゃ...?」
「コイツらはNPCだ...殺しても罪になりゃあしないし、何よりもここは―――」

「聖杯戦争――殺し合いの場だ」


アサシンが襲撃したのはヤクザのアジトだった。中には10人弱の人間がいて入るや否や「殺すぞ、ゴラァッ!!」と威嚇してきたが、
アサシンは獲物のリボルバー式拳銃で全員を難なく殺害し、このアジトを乗っ取ることができた。
アサシン―――その真名はプロシュートという。イタリアのギャング組織にて暗殺チームに所属していた経歴を持つ男。
対して、そのマスターの名は星空 凛。魔術師でもなければ死神でもなく、犯罪者でもない。ただのスクールアイドルをしている女子学生である。

(これでこの世界に来てからの当面の目標は達成できたな...)

アサシンは心の中でひとりごちる。
ヤクザのアジトを襲撃したことには理由があった。
第一に、ただの一般人である凛は魔力が乏しい(アイドルとして活動していたことによりファンからの信仰が魔力となっていて少しはマシなようだが)。
そのため、どうしても魔力が枯渇しがちで、NPCの魂を吸収する必要があった。
第二に、凛は戦う力を持っていなかった。それを少しでも補うために武器が必要であった。

「よし、魔力は当分は問題ねーな。武器も予想以上にあるし冷蔵庫もある。寝床や金も氷も申し分ない」

             ・・
「ただ、残念なことは...『掃除』が大変なことと当分は血生臭いにおいが消えねーことくらいか」
「ねえ兄貴、本当によかったのかな...」

凛が近づいてきて不安な表情で問うてきた。

「凛は兄貴を見捨てて元の世界に帰るのも嫌だけど・・・関係ない人を殺すのも――」
「凛...オメー明るそうに『オレを切り捨てずに聖杯戦争を生き残りたい』っていってたよな?...いいか?俺達は『マスターとサーヴァント』の関係・・・

一心同体だ。目的である聖杯をゲットするために『オレ達』は生き残らなくっちゃあならねぇ。そのためにオレは全力を尽くす。オメーに必要なことを教え

る。銃の使い方も含めてな」
「っ...!」

凛の表情がさらに強張る。その目には涙が浮かんでおり、恐怖を隠せない様子が見て取れる。
アサシンはここに来る前はここまで弱気になることはなかったのにと思いつつ怯える凛を諭す。
                                              ・・・・・・
「オメーがそれでいいなら『令呪』を使ったっていい。ただ、覚えとけ...聖杯戦争に関わることは『そういうこと』...オメーにも危険が及ぶ可能性だって

十分にある。オレがこれから教えていくことはオメーが自分を守ることにつながるんだ」
「兄貴...」
「まぁ―――」




「オメーを無理やり巻き込んだオレが偉そうに言える立場じゃあないんだけどな」

そう、凛がなぜ戦う力がないのかというと『巻き込まれた』のだ。

時間は数時間前にさかのぼる...。


143 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:07:42 CyAXGn9g0
「オメーが俺のマスターだと?」
                       ・
東京都千代田区にある廃工場...そこでアサシンは男に召喚された。

「ああそうだ。俺の名前は...と言いたいところだが時間がねぇ。追手がここまで来ているかも...」

その男はひどく焦っていた。もとはヤクザだったが、薬を売ったところ、そこで手に入った金のあまりの巨額さに目がくらみ、それを組織に渡さずに逃げ出

した。そして現在、組織に追われているわけである。

「このテレホンカードさえあれば...金は俺のモンだぁ...向こうの世界に言ったら全員ブチ殺して...ヒヒヒ...」
「......」

プロシュートは呆れて物も言えなかった。
まさかこんなマンモーニ(ママっ子)にも及ばねえ弱虫に召喚されるとは...。
内心では腹が煮えくり返る思いだった。
男がテレホンカードを見てそうこうしているうちに、廃工場の外で何台もの車のエンジン音が鳴り響いた。

「...ヒィ!!お、追手が...」
「...とにかく、隠れるぞ」

気分を悪くしながらも、軽蔑さえ交じったそっけない口調でアサシンは男を誘導する。
隠れて様子を見ていると、男の言う追手が工場の中に入ってきた。
しばらく男はその様子を見ていたが、アサシンの意識は別の方向にあった。
この男は恐怖のあまり、『テレホンカードを使って別世界に逃げるという選択肢』すら失念している...。
そのことや『忘れ物』のことをアサシンが言わなかったのはこの男を軽蔑していて死んでほしいとすら思ったからかもしれない。

「ああ!!!俺の金!俺の金があああ!!」

男が奪ってきたと思われる金を入れたアタッチケースが元いた場所に置いたままであった。
追手が来ていることを忘れ、男は揺れる布を見た闘牛のように向かっていく。
当然、轟いたのは何十発もの銃声。男は聖杯戦争に参加することなく死んだ。

「チィ...ッ!」

ただ、歯噛みするしかなかった。数十秒の間で男の遺体は回収され、1分が経つ頃には既に男の追手はいなかった。
アサシンは咄嗟に男が落とした赤いテレホンカードを手に、アサシンは切迫した表情で走り出す。

(いつオレの魔力が切れるかわからねぇ...あと1分、いや30秒...?とにかく時間がねぇ!)

このままでは魔力が尽きて現界できなくなり、消滅してしまう。
そんな最期だけはアサシンのプライドが許さなかった。
新しいマスターを誰でもいいから見つけなければッ!!


「新しいレストランがオープンするんだって!凛ちゃんも真姫ちゃんも今度3人で行ってみようよ!きっとおいしいお米を仕入れているんだろうなぁ...」
「それはダメにゃ!その前に新しいラーメン屋にいってからにゃ!」
「どっちでもいいけど、二人とも食べ過ぎないでよ?」

廃工場からそう遠くない歩道を、3人の少女が歩いていた。
この時、凛は下校中で楽しそうに親友の真姫と花陽とおしゃべりをしていた。
どうやら空いた時間に行く店について話をしているらしい。
しばらくして、花陽が歩道の向こう側から猛スピードで向かってくる影を見つける。

「あれ...あの人なんかこっちに向かってくるよ...?」

花陽が示した方向を見てみると、黒いスーツを着た怪しい男の人がスゴイ顔をしてこっちに向かってくる。
そして

「オイッ!誰だっていい!今すぐこのテレホンカードを手に取れ!」
「え...な、何するの?」
「な、なによあなた!いきなり凛の手をつかんで!ちょっと!凛から離れなさい!」


アサシンは迷うことなく凛の手首をつかみ、その手をテレホンカードに近づける。

「いいから取るんだ...時間がないッ!」
「ひっ、は、はい」

凛はあまりに突然な出来事に気が動転してしまい、正確な判断を下せなくなっていた。
真姫のアサシンへの抗議やおろおろする花陽も認識せずに、テレホンカードを受け取ってしまう。




その瞬間、凛とアサシンの姿は消えていた。

「え...?」
真姫と花陽はなにが起こったのかが理解できなかった。

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「凛が男に手首をつかまれて『男が持っていた何かを取ったと同時に消えていた』...何が起こったの...!」
「凛ちゃん...どこにいるの...?」

その言葉を聞く者はいなかった。


144 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:10:25 CyAXGn9g0
「ん......え...?」

凛は目を覚まし、妙に気だるい体を起こすとそこは見知らぬ世界だった。
景色はがらりと変わり、下校中の夕方ではではなく真っ暗な夜。辺りは空地の草原のようで、自分は地面で寝ていたらしい。
制服が汚れるとかどうしてこんなに長い時間を眠っていたかなど様々な考えが頭に浮かんだが、

「目を覚ましたか...『マスター』」
「にゃアア!?」

隣にいたいかにも裏社会に通じていそうな男の人に声をかけられ、眠たげだった精神が完全に覚醒する。
そんな凛の隣にいたのは先ほど自分の手首をつかんでよくわからないことをしていた外国人の男の人。
確か放課後のμ'sでの練習が終わって友達と何気ないおしゃべりをしていて...気づいたらここで寝ていた。

この人がマジックで凛をワープさせたのかな?
本当はそんなチャチなものでは断じてないのだが、混乱のあまりに間抜けな思考が頭を通り過ぎる。
とにかく、自分に何をしたのかを聞かねばと思い、苦手な英語の知識を駆使して、

「え、ええと...あ、あいあむ...凛――」
「安心しろ、言葉は通じる」

英語で話しかけようとしたところ普通に日本語で返された。そういえば自分が目が覚めた時も日本語で話していた。
そこで、凛は改めて話そうと思ったが、その前に外国人の男が口を開いた。

「いいか、よく聞け。『マスター』は今、聖杯戦争の場にいる」
「聖杯戦争...?」

聞いたことのない単語を聞かされ、オウム返しをするしかなかった。








「以上が聖杯戦争について俺が知っている情報だ。...オイ、聞いてんのか?」
「うっ...ひっぐ...」

凛は泣いていた。それも無理もないだろう。いきなり聖杯戦争という殺し合いに参加させられたら泣きたくなるものである。
ましてや泣き虫なきらいがある女子学生の凛なら当然である。

「ひどいにゃ!凛はこんなとこ全然来たくなかったのに!」

目に涙を溜めながら凛は反発する。
だが、アサシンが凛以外の誰かをマスターにするかそのまま消えていれば...とは言えなかったし、そう考えようともしなかった。
もし凛以外をマスターに選んでいたら、確実に親友の花陽か真姫が巻き込まれていただろう。
また、アサシンはなぜ新しいマスターを何としてでも見つけようとした理由にも共感するところがあったからだ。
誰だって夢を果たせずとも無様な死に方をしたくはない。
凛も、例えば友を守るために死んでいくキャラクターのような死に様は美しいと思っていたし、
漫画で何回も読んできた(さすがに現実では死に様どころか人が死ぬ場面も見たことがないが)。

「それは悪かったな。謝っておく。すまない」
「...」
「もとの世界に...どうやったらみんなにまた会えるのにゃ?」

しかし、やはり凛はこんな世界から早く帰りたかった。早くμ'sのみんなに会いたい。その願いだけが凛を支配していた。


145 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:11:07 CyAXGn9g0
「それなら...オメーの右手を見てみろ」

その言葉のままに右手を見てみると、そこには特徴的な形をした印が浮き出ていた。

「それは『マスター』の令呪だ。それを使えば『サーヴァント』である俺にどんな命令も聞かせられる」

「その令呪を使ってオレに自殺させろ。そしたらオメーは6時間以内にそのテレホンカードで電話をかければ元の世界に帰れる。そもそも、『マスター』が

ここにきた原因はオレにある。悔いはないといえば嘘になるが...最悪の死に方はせずに済んだからな」
「そ、そんなこと...」
                                                
できるはずがない。先ほどのアサシンの説明の中に魔力の供給とあった。その魔力がなければアサシン曰く『あっけなく消えちまう』とのことだ。
凛はアサシンがたとえ初対面のギャングでも切り捨てることはできなかった。

「それができねえのなら、この聖杯戦争を生き残っていくしかねえ。どうする、『マスター』?」
「...その前に、聞かせてほしいことがあるにゃ」
「なんだ?」
「聖杯って願い事がなんでも叶うって言ってたけど...アサシンは何を叶えたいのにゃ?」

アサシンはしばらく黙りこんで...こう言い放った。

「復讐だ」
「復讐...?それって今までのことをもう一度勉強する『復習』じゃあ――」
「ない。あまりオレ自身のことはいいたくはねぇんだが...オレはギャングの暗殺チームに入っていた。が...そのギャングのボスを探っていた仲間が殺され

た。その復讐だ」

凛は、あまりの生々しさに何も言えなかった。ただ、『絶対に負けるわけにはいかない』。そんなアサシンの持つ覚悟を感じることができた。

「逆に聞くが『マスター』はどんな願いがあるんだ?」
「願い...」

凛は確かに夢がある。μ'sの仲間と一緒にラブライブで優勝するという夢が。
しかし、凛はそれを叶えようとは思わなかった。この願いは自分で叶えてこそかけがえのない価値があるのだから。

「ないにゃ」
「...まぁ予想はしていたがな。もとはただの通りすがりだったわけだからな」
「だから...凛はアサシンを見捨てずに生き残りたい。聖杯戦争に参加するにゃ!」
「それはありがたいが...お前自身、どんな能力がある?あまり期待はしねーがな。もう一度言うがこれは聖杯戦争...つまり、殺し合いだ。生半可な強さじ

ゃあ勝てねぇぞ」
「う...た、体力に自信があるにゃ!自分でいうのも恥ずかしいけど...運動神経がいいにゃ!」
「他には?」
「そ、それだけにゃ」

アサシンは目を閉じてため息をつく。それを失望と見たのか、凛は心配そうにアサシンを見ていた。

「オレから巻き込んどいていうのも癪だがよォ...同情して聖杯戦争に参加しようっていうんなら願い下げだぞ?」

その言葉を聞いた凛は、先ほどのアサシンのように目を閉じた。しかしため息をつくことはなく、やがて目を開き、アサシンを見つめるとともに静かに口を

開く。

「凛には夢があるにゃ。凛はスクールアイドルっていう、学校の部活でアイドル活動をしているにゃ。こっちの世界にはラブライブっていうスクールアイド

ルの大会があって、それに優勝したい。今はそれに向けてみんなと頑張ってるにゃ」

「けれど...それを聖杯で叶えたくなんかないにゃ。アサシンは同情っていってたけど...そんなことないにゃ!凛はただ、アサシンを切り捨ててまで元の世

界に帰りたくないだけにゃ!凛は確かに願いがないといった...けど、それは『聖杯で叶えたくない』ってことッ!この凛には夢があるッ!それを自分の、

『自分達』の力で叶えたいッ!このことも同じ...凛は令呪に頼らずに、アサシンと生き残ってもとの世界に帰りたいにゃ。だからッ!凛と一緒に戦ってほ

しい!」

凛は真剣な顔つきでアサシンを見た。アサシンは何も言わずに黙って凛を見つめていたが...やがて、

「これからよろしくな...『マスター』」

と短く答えた。それを聞いた凛の表情が明るくなり、「うん!」と大きく首を縦に振った。


146 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:13:48 CyAXGn9g0
また、冒頭でのヤクザの家に向かっている途中のことである。

「アサシン...『アサシン』ってなんだか呼びにくいにゃ。やっぱり『プロシュート』って呼んだ方が――」
「バカ言うな。真名を呼ばれることは弱点をさらけ出すのと同じって言っただろ」
「でもこっちの世界からすると物騒で呼びにくいにゃ〜。じゃああだ名にする?『プロシュー』?『潰シュー』?『相手のゴールにシュー』?あまりしっく
りこないにゃ〜」

凛がなにやら馬鹿げたあだ名をつけようとしているらしい。確かに真名がばれなければ特に問題はないが...「潰シュー」みたいな潰れたシュークリームみ
たいなあだ名で呼ばれたらこっちの調子が狂ってしまう。
そのため、アサシンはかつての弟分が自分を呼ぶ際に使っていた名前を差し出した。

「『兄貴』...そうだ、俺のことは『兄貴』って呼べばいい」
「『兄貴』...うん、わかったにゃ、『兄貴』!それと、凛の名前は『マスター』じゃなくて『星空 凛』て名前があるんだから、『凛』って呼ぶにゃ!」
「あいよ、『凛』...」






そして、現在に至る。

(出発したときはあんなに明るかったんだがな...)


そんな凛も、いざ『その手のこと』に関わるとなるとやはり気後れしてしまうようだ。
現在、凛は銃を持っている。あれから外に出て、基本的な銃の扱いを教えるために人気のない場所を探し、先ほどの空地へたどり着いた(鍵はかけてきた)

さて、これからどう戦うか。マスターの魔力も少ない、自分はアサシンだから直接対決は不得手、さらに戦うためには宝具のスタンド『ザ・グレイトフル・
デッド』の使用が必要。問題は山積みだ。だが...『栄光』を掴んでみせる。アサシンは静かに決意した。

「あ、兄貴ィ〜」
「どうした、凛?」
「この銃、撃てないにゃ...」

アサシンが銃を見てみると、発砲するためのあるプロセスを凛はすっ飛ばしていたことに気づく。

「凛、オメー...」












「安全装置を知らないのか?」


147 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:15:45 CyAXGn9g0
【真名】
プロシュート@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメータ】
筋力C 耐久C+ 敏捷A- 魔力C 幸運D 宝具B+

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:C+
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てばサーヴァントでも発見することは難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
 
兄貴:C+
共に行動する者の能力を向上させる。スキル『カリスマ』に似たスキル。
弟分(妹分)に対しては厳しくも面倒見がいいプロシュートの一面。
その人物の持つ弱さを指摘しつつも、強い部分を評価して
「お前ならできる」と鼓舞する姿はよき兄貴分であり、師匠でもある。
彼と行動を共にし、彼の「覚悟の強さ」を見た者はどんなマンモーニ(ママっ子)でさえも
その弱さを捨て、驚異的な成長を遂げる。

戦闘続行:B
覚悟の強さ。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。
瀕死の状態でもスキル・宝具を平常時と同等以上のレベルで使える。
目的を達成するためならば、腕をとばされようと脚をもがれようと行動を続ける(能力を解除しない)。
耐久力:C+のプラス補正は生前に瀕死の重傷を負いながらも能力を使い続けたことに由来しており、
どれだけ致命傷を負わせても彼を死に至らしめるのは難しくなっている。

心の中の行動:D
プロシュートがかつて弟分に暗殺者として教えていた言葉がそのままスキルに昇華したもの。
心の中で思った行動を反射的に実行することができる。
そのスピードは心の中で思ったと同時にその行動がスデに終わっているほど速い。
俊敏:Aはこのスキルに由来するものであり、移動速度的な意味合いでの俊敏はC相当である。

心眼(真):B
暗殺チームの一員として数々の戦闘の経験で培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
このアサシンの場合、戦闘時でなくとも敵の様子を見て状況を推量することができる。

【宝具】

『偉大なる死(ザ・グレイトフル・デッド)』
 ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜200 最大捕捉:1000
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。聖なるビジョン『スタンド』。
目が全身のあちこちにあり、巨大な2本の腕だけで身体を支えている下半身のないスタンド。
全身の目玉から広範囲に周囲の生物を老化させるガスを噴射する。植物や果物にも効果がある。
その老化ガスを浴びた者は肉体のみならず精神力、記憶力、魔力までも減衰してしまう。
本体であるプロシュートが直接対象に触ることにより、老化スピードを急激に上昇させることが可能。
極限まで老化させられた場合、自力で動くのが困難なレベルになってしまい、寿命が尽きて死ぬ。
ただし、体温が低ければ老化のスピードが遅くなる。そのため、若干体温が低い女性には効果が薄い。
さらに無差別にガスをまき散らすため敵味方の区別はできず、あらかじめ氷などで体を冷やすなど対策を取っておく必要がある。
また、この能力を応用して、自分を老化させて老人に変装することができる。
『気配遮断』と組み合せばサーヴァントとして気づかれずに容易に接近することができる。
スタンドビジョンのダメージは本体にフィードバックされる。


『偉大なる栄光(ザ・グレイトフル・グローリー)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 死ぬ直前まで、たとえ瀕死のダメージを負おうとも
 スタンドを解除せず戦ったエピソードから生まれた宝具。
 アサシンは例え霊骸を破壊されようと、十数ターンの間『偉大なる死』を発動し続ける。


148 : 星空凛&アサシン ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:16:32 CyAXGn9g0
【weapon】
・ミスタ愛用のリボルバー式拳銃
『偉大なる死』により戦闘不能にしたグイード・ミスタから奪った拳銃。威力はそこそこ。

・宝具『偉大なる死』のスタンドビジョン
ステータスは破壊力:B スピード:E+++ 持続力:A 精密動作性:E 成長性:C相当。
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ただしスピードにプラス補正がかかるのは移動を伴わない動作をしているときのみ。
直接戦闘では相手が老化していることが前提となるため、
たとえ能力ランクA以上の相手でも老化の進行次第で互角以上に戦える。

【人物背景】
イタリアのギャング組織「パッショーネ」の暗殺チームに所属するイタリアンギャング。
目的のためならばたとえ無関係の人を巻き込もうとも躊躇しない強い覚悟の持ち主である。
しかし面倒見がいい一面があり、弟分のペッシが恐怖でスタンド能力を解除した時は
ペッシの精神の弱さを厳しく指摘しつつも、ペッシが自分の勘に自信を持てない時は「自信を持て」
「お前の能力はその気になればだれにも負けない」「ここが正念場だ」と鼓舞していた。
生前はペッシとともにフィレンツェ行の特急列車にて乗客ごとブチャラティ一行を襲撃。
その目的はパッショーネのボスに仲間のソルベを惨殺されたことへの復讐をするために、
ボスの情報を得る手がかりとなるボスの娘・トリッシュの身柄を確保することだった。
しかし、ブチャラティとの戦闘の末、列車の外へ放り出されスタンド能力が解除されたため死亡した・・・
かに見えたが、列車の車輪の間に入り込み、致命傷を受けながらも生き延びていた。
以降は、スタンド能力を再発動し、列車に残ったペッシのブチャラティとの戦闘を援護。
そのスタンド能力はプロシュートが死ぬまで解除されることはなく、
ペッシはプロシュートの覚悟の強さを見て成長を遂げ、
「10年の修羅場を潜り抜けたスゴ味と冷静さをもつギャング」へと変貌、ブチャラティを震撼させた。


【サーヴァントとしての願い】
 仲間のソルベを殺したボスに復讐する。

【基本戦術、方針、運用法】
 ステータスは全体的に平均程度だが、単純なステータスにおいては
 近距離戦では筋力・耐久で劣るセイバーやライダーなどに、
 遠距離戦では宝具が直接攻撃に向いていないためアーチャーやキャスターに劣るため、
 他のサーヴァントとの正面対決ではどうしても不利になりがちである。
 しかし、アサシンらしく気配を消すことで近づき、
 最大で半径約200mにも及ぶ範囲の老化ガスをまき散らし、相手を弱体化させることで全クラスに優位に立てる。
 そのため、相手を老化させ、戦力を弱めるのが基本戦術。
 アサシン自身が老人に扮して相手のマスターを数秒で老人にし、魔力を枯渇させて再起不能にするという芸当も可能である。
 たとえ氷などで対策を打たれても、体温さえ上がれば誰にでも効くので何としても老化させたい。
 
 しかし、何よりもの問題点は宝具を使わないと真価が発揮できないこと。
 幸い範囲は広いものの、迂闊に宝具を使うと弱点をさらけ出すことになるため使いどころを見極めよう。
 さらに、マスターがただの巻き込まれた一般人であること。
 これは致命的で、NPCを殺すなどして魔力を温存しておかないとすぐに魔力が枯渇してしまう。
 幸い女性なので宝具の影響は少ないが、本人が戦力になることが難しい分、
 なんとしてでも先手を優位に立ちたい。
 マスターには必然的にサポート役に回ってもらうことになるだろう。
 NPCから武器を奪ってそれを使わせるのもいい。

 弱点は多いものの、スキルは有用なものがそろっており、
 戦闘においては『心眼(真)』の知略が光り、特に咄嗟に相手の体温を上げる方法を思いつくのにも役立つ。
 移動速度的な意味での俊敏は並クラスだが、『心の中の行動』でかなり素早い判断と行動も可能。
 耐久性もC+だが、スキル『戦闘続行』などで重傷を負っても問題なく戦える上、
 重傷を負うと必ずといっていいほど+補正がかかるのでかなりタフ。
 スキル『兄貴』で一般人のマスターも強化できなくはないので、自分は相手の老化に徹して
 (少々酷だが)武器を持たせて相手のトドメを任せるのも選択肢としてアリ。


149 : ◆VUBZx4BclE :2014/07/30(水) 22:19:26 CyAXGn9g0
以上で投下は終了です。
パロロワで初めてSSを投稿しているので矛盾がないかヒヤヒヤしています
サーヴァントのステータス表ではほかの方のものを参考にさせてもらったところもあります

投下している途中に気づきましたが、文字の上に「・」がうまくきていないorz
また、ちょっと改行が変なとこもあります、すいません

至らない点もあるかと思いますが、よろしくお願いします


150 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/30(水) 23:58:45 YehXzQf60
皆様お疲れ様です、投下お疲れ様です。

こうして新規投下が来ると、それも初投下の方が現れるととても嬉しいです。
これだけでスレを建てて良かった、と思えるかもしれません。

現時点の投下をまとめてみました。
(なお、実際に投下された作品のみです)

【セイバー】
★夜科アゲハ&纏流子

【ランサー】
○ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア・スカーレット
○朽木ルキア&前田慶次

【アーチャー】
○ジョナサン・クレイン&エス・ノト
○タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド

【ライダー】
★鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ
○遠坂時臣&桐生一馬
○虹村形兆&エドワード・ニューゲート
○ジン&カービィ

【キャスター】

【アサシン】
○星空凛&プロシュート

【バーサーカー】
★間桐雁夜&一方通行
○美樹さやかちゃん&不動明


となっております。
当初に書き込んだ通り投下意外にも雑談(例:ほむほむ)なども採用範囲内です。
もし一部クラスが投下されなかったなどの場合については私の作品を流用しようと思います。

投下いただいた作品を私の独断で落としてしまうかもしれないことは誠に申し訳ありません。

募集期間は今週の日曜日一杯まで、ですので、よろしくお願いいたします。


151 : ◆vE7Jb4ucI6 :2014/07/31(木) 00:31:17 .XzPy8Z60
>>1さんに質問です。

サイレンカードにクレジットカード機能は無く、
参加者の経済力は基本的にNPC時代のそれに依存すると考えてよろしいでしょうか?


152 : ◆wd6lXpjSKY :2014/07/31(木) 00:43:24 PgWjkF2I0
>>151
赤いテレホンカードはテレホンカード以外に効果はありません。

そうですね……参加者の所持金は本来の所有額に依存します。
学生ならば相応のお金が財布に入っていて、社会人なら額は大きい、といったふうに。

原作の財力に依存してクレジットカードを支給するかもしれません。

すいませんが、現段階ではあまり具体的な回答は行えないようです。


153 : 名無しさん :2014/07/31(木) 08:38:48 wFpZk.8k0
アイドルとしての信仰が魔力とか型月っぽくて面白いですね


154 : ◆VUBZx4BclE :2014/07/31(木) 17:22:39 QCxQTb6w0
まだ上げていなかったマスターのデータ表です


【マスター】
 星空凛

【出展】
 ラブライブ!

【参加時期】
 アニメ二期の2話以降で5話より前

【マスターとしての願い】
 兄貴(アサシン)を見捨てずにこの聖杯戦争を生き残る

【weapon】
 ヤクザのアジトにあった銃など

【能力・技能】
 運動神経が優れていて体力がかなり高いくらいしかない。
 アイドルとして歌ったり踊ったりできる。

【人物背景】
 音ノ木坂学院一年生で、μ'sに所属。高坂穂乃果の後輩にあたる。
 趣味はスポーツ全般、特に陸上系。バスケのシュートが特技で本人曰く、「鼻もきく」とのこと。
 μ'sの中では比較的小柄で、胸の大きさもワーストクラス。
 チャームポイントはキュッと上がったお尻。
 好きな食べ物はラーメン。だが、料理は苦手なのでカップラーメンくらいしか作れない。
 体育会系で明るく、面倒見がいいが、泣き虫なところも。
 小学生のころによく女の子っぽくないとからかわれていたためか、
 ライブでセンターを務めるときは自信を持ちきれなかったという弱気な面がある。
 また、「〜にゃ」という語尾を付ける癖がある。
 今回の聖杯戦争では、マスターを失ったアサシンに半ば強引に契約させられ、参戦することになった。
 魔術師でもなくただの人間のため魔力はかなり低いが、
 アイドルとして活動していたことにより、
 ファンからの信仰が魔力になっていて、少しはマシなようである。
 本人の希望で、アサシンのことを「兄貴」と呼んでいる。
 聖杯戦争のルールは理解したが、実際にどんな人たちが参加しているかわかっていない。
 
【方針】
 アサシンと共に生き残る。そのためにアサシンから戦う術を学ぶ。
 確かに学ぶといったが、いざ銃を握ると、
 殺し合いの場にいることが現実味を帯びてきて怖い。


155 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/01(金) 00:51:53 yKGs/oYA0
ステータスの投下お疲れ様です。

予約解禁だったり登場話締め切りなどありますが
当ロワ(聖杯戦争)は日曜一杯まで登場話候補の募集を行っていますので
よろしくお願いいたします。


156 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:13:26 9ODFiBCY0
美樹さやかとアーチャー投下します


157 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:13:45 9ODFiBCY0

あたしって、ほんとバカ。



何が正義の味方か。
何が魔法少女か。

結局あたしは、美樹さやかは――マミさんのような本当の正義の味方には、なれなかった。
望んで魔法少女になったはずなのに。
一人で勝手に絶望して、ヤケになって。
まどかや杏子にもたくさん迷惑をかけた。
まどかはずっとあたしを心配してくれてたのに、ひどいことをたくさん言ってしまった。
杏子は何の関係もないあたしを助けようとして、命を捨てた。
二人とも、キュウべえの言うことを鵜呑みにして間違ったこんな馬鹿なあたしを、助けようとしてくれたのに。
結局、二人を裏切ってしまった。



もう何もかも嫌になった。
投げ出して、放り捨てて、消えてしまいたい。

なのに、何故。
まだ生きているんだろう。

答えはわかっている。
あたしの中には未練があるからだ。
諦めきれない、生きていたいっていう欲望……。
この聖杯戦争に勝ち残れば、全部やり直せる。
それに惹かれてしまったんだ。

でも、あたしにはもう立ち上がる力はなかった。
最期の瞬間ははっきりと覚えている。
魔女になったあたしを止めるために杏子が死んだ。
あたしが殺したのといっしょだ。
あの光景は、魔女になっていてもはっきりと覚えていた。

聖杯を手に入れれば全部なかったことにできる。
そうとわかってはいても、戦う気力なんて湧いてこない。
だって、あたしはもう、一人なんだから。
まどかも杏子も、ここにはいないのだから。


158 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:14:03 9ODFiBCY0

「しかし、私がいる」

俯き、膝を抱えていたあたしの頭上に影が落ちる。
それは、あたしに与えられたサーヴァント。
岩のように逞しい体の巨人。
その巨人が、あたしを見下ろしている。

「少女よ、そなたは一人ではない。そなたには私が……このヘラクレスがいる」

アーチャー、ヘラクレス。
それがあたしのサーヴァントの名前。
ヘラクレスといえば、有名なギリシャの英雄だ。
世界史がさほど得意ではなかったあたしでも知ってる。
実際……相当、強いんだろう。
サーヴァントの強さなんてあたしにはわからないけど、ほとんどのステータスがAで埋まってる。
それに、こうして向かい合って感じる圧力は下手な魔女の比じゃない。
それこそあたしが魔法少女の力で本気で戦ったって、勝負にもならないんだって確信できる……。

「望むなら、私はそなたの剣となろう。
 必ずや聖杯を掴み取り、そなたに捧げると誓おう」

ヘラクレスさんはあたしに戦えって言う。
でも、あたしはそれでも、立ち上がる気にはならなかった。
仮に聖杯で生き返ることができたとしても、あたしが魔女になった事実を消せたとしても。
あたしが覚えているのだから。
まどかを裏切ったこと、杏子を裏切ったこと、そしてマミさんをも裏切ったってことを。
いまさらどんな顔をしてまどか達に会えるって言うの。
あたしはもう、救いなんて信じない。
このままここで、ひっそりと消えていく。それでいいんだ。

「やり直せばいい。聖杯はそれを可能にする」

それは、ヘラクレスさんにも叶えたい願いがあるから、あたしが戦わないと困るんだろう。
でも、あたしはもう無理。
誰か他の人を当たってほしい。
たとえやり直せたって、こんな惨めな思いをずっと抱えていかなきゃいけないのは嫌。

「そうではない。裏切ったのなら、詫びれば良い」

詫びる……謝る?
そんなことしたって、許されるわけないし。
あたしのせいで杏子は死んだ。聖杯で生き返ったって、はいそうですかって水には流せない。

「許されなければ頭を下げられんか。そなたにとって、友とはその程度の価値しかないか」

……なによ。
なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ。


159 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:14:18 9ODFiBCY0

「過去を悔いているのなら、未来でそれを塗り替えるしかないのだ。
 たとえ許しを得られずとも、まずはそこから始めなければそなたはどこにも辿り着けぬ」

だから、なんであんたに説教されなきゃいけないのよ!
あたしは別に許してもらいたくなんて……!

「これは、本来有り得べからざる奇跡だ。
 そなたは今一度やり直すことができる。もう一度、友と向かい合うことができる。
 それはきっとそなただけではなく、そなたの友にとっても救いとなるのではないか?」

……っ、それは。
まどかと、杏子。二人にとっても……?
そうだ。考えてみれば当然だ。
二人はあたし以上に傷ついたはずだ。
あたしだけが被害者みたいな顔してたけど、二人はもっと辛い思いをしたはずなんだ。
心ない言葉で傷つけたまどか。
命を投げ出した杏子。
あたしが今、しなきゃいけないことって、一つしかない。

「二人に……謝りたい……!」

あたしってほんとバカ。
いつもいつも自分のことばっかりで、あたしを心配してくれる人のことを考えもしないで!

「ごめん……ごめん、まどか、杏子。ごめん……」

ボロボロと涙が溢れる。
こんな簡単なことからずっと目を背けてきた。
でも、気付いてしまったからにはもう、いじけてなんかいられない。
震える両足に力を込める。
赤ん坊みたいに手をついて、ゆっくり身体を起こしていく。
立つ。立てる。
もう、立てる……ってことはつまり、戦えるってことだ。
ヘラクレスさんを見る。
あたしのサーヴァントは、ここに現れた時からずっと同じポーズを取っている。
あたしに手を差し伸べたまま、動いてない。

「……ヘラクレスさん。あたし、やっぱり戦う。絶対に諦められない願いがあったって、思い出したから」
「ならば、この手をとれ。戦うのは私の役目だ。
 しかし一人では戦えない。私も、そなたも。
 我らは二人で一つ。故に、そなたが自らこの手を取らねば私もまた戦えない」

思えば、この人はずっとあたしが立ち上がるのを待ってくれていた。
強制されたからじゃなく、諦めからでもなく、あたしが自分の意志で立ち上がるのを。
この人なら……信じられる、かもしれない。
あたしは、ヘラクレスさんの手を取った。

「ここに契約は成った。
 我が名はヘラクレス、大神ゼウスの子なり。
 勝利をそなたに捧げると誓おう!」

雷かと錯覚するような声でヘラクレスさんが叫ぶ。
でも不思議と怖さや恐ろしさは感じない。
どこか温かい、安心できる声だった。
この人となら、あたしは……戦い抜けるかもしれない。
今度こそ、絶望に負けずに。


160 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:14:32 9ODFiBCY0

【マスター】
 美樹さやか

【出展】
 魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
 魔女もキュウべえもいない世界で、まどかと杏子に謝りたい

【参加時期】
 魔女化して杏子と相打ちになった瞬間

【weapon】
 ソウルジェム

【能力・技能】
 回復魔法を得意とする魔法少女。
 使用する武器は魔力で生成したサーベル。何本でも生み出せる

【人物背景】
 見滝原中学校に通う2年生で、鹿目まどか?と同じクラスの親友。
 幼馴染の上条恭介に一途な想いを寄せており、治療不可能な怪我によってバイオリン奏者になる夢を絶たれた恭介を救うため、巴マミの死後、キュゥべえと契約を交わして魔法少女となる。
 恭介と親友の志筑仁美との三角関係に直面したことをきっかけに、人間ではなくなってしまった自分は恭介と結ばれることができないと思い詰める。
 その後はまどかや杏子の言葉にも耳を貸さず、心身共に消耗しつつ無謀な戦いを続け、結果急速にソウルジェムに穢れを溜め込み、信念も見失った末に「人魚の魔女」へと変貌。佐倉杏子と相討ちになり消滅した。

【方針】
 ソウルジェムの汚染を避けるため、自分はできるだけ身を隠して戦闘は極力アーチャーに任せる。


161 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:14:51 9ODFiBCY0

【クラス】
 アーチャー
【真名】
 ヘラクレス@Fate/stay night

【属性】
 秩序・中庸
【パラメーター】
 筋力B 耐久A 敏捷A 魔力A 幸運A 宝具A

【クラス別スキル】
 対魔力:B…魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
         Bランクは魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 単独行動:C…マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。Cランクならば1日は現界可能。
【保有スキル】
 神性:A…生前は半神半人で死後は神に迎えられた為、最高レベルの神霊適正を持つ。
 千里眼:B…視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。
 パンクラチオン:B…拳闘と組技を複合させた世界最古の総合格闘技。ヘラクレスの師であるケイローンが得意としていた武術であり、極めればセイバーの斬撃すらも受け流せるほど。
            刃物を通さない魔獣「ネメアーの獅子」を裸で絞め殺したことからスキルとして付与された。

【武器】
「ヒュドラの毒矢」
 ヘラクレス愛用の弓矢にヒュドラの毒を塗ったもの。弓はヘラクレスの身長ほどもある大型の弩弓。
 かつてヘラクレスは九つの頭を持った水蛇ヒュドラを討伐した。ヘラクレスはこのヒュドラの血が猛毒であることを知り、矢に塗って使うようになった。
 その後ヘラクレスは妻デイアネイラを襲おうとしたケンタウロスのネッソスをこの毒矢で射殺する。ネッソスの血はヒュドラの毒が回り、同じものとなった。
 ネッソスは絶命の間際、デイアネイラに自分の血は媚薬になること、ヘラクレスが浮気しそうだと感じたら使うようにと言い遺した。
 デイアネイラはこれを信じた。ヘラクレスがオイカリアの王女イオレーに心を奪われたとき、ネッソスの血を媚薬と信じて使用した。
 ヘラクレスはヒュドラの毒に侵され、癒やすこと叶わず死亡した。また、ヘラクレスの師ケイローンの命を奪ったのもこの矢とされる。


162 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:15:26 9ODFiBCY0

【宝具】
「十二の試練(ゴッド・ハンド)」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自分
 生前の偉業で得た祝福であり呪い。十二の難行を乗り越えた褒美として、神の祝福(呪い)によって得た不死性。
 正確には、十二の試練を無傷で乗り越えたという逸話が昇華したタイプの宝具。自身の肉体が屈強な鎧と化したもの。いわば肉体そのものが彼の宝具となっている。
  1 Bランク以下の攻撃ダメージを無効化
  2 致死ダメージを受けても十一回まで自動蘇生。ただしHPは半減した状態で蘇生する
  3 一度受けた攻撃に対し完全な耐性を得る
 以上三つの効果を有する。
 さらにアーチャーとして現界したヘラクレスは生前の武芸を己の意志で行使できる。そのため一度その身に受けた攻撃は見切ることが可能となり、次回からは回避率に高いボーナスが加算される。
 マスターの魔力次第では消費した蘇生回数を再度増やすことも可能だが、一般的な魔術師では一生かかってやっと一つというところ。

「龍閃・射殺す百頭(ナインライブズ・ドラゴンエッジ)」
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1人
 彼の持つ万能攻撃宝具。一つの兵装ではなく、生前の偉業「ヒュドラ殺し」で使った弓の能力を元にヘラクレスが編み出した、言わば「流派・射殺す百頭」。
 その本質は、攻撃が一つに重なる程の高速の連撃。状況・対象に応じて様々なカタチに変化する「技」であり、こちらは対人用の「ハイスピード9連撃」となる。
 一度に放つ九本の矢はそれぞれ違う軌道を辿り、ほぼ同時に敵に到達する。
   壱(いち)の矢:唐竹(からたけ)
   弐(に)の矢:袈裟(けさ)
   参(さん)の矢:右薙(みぎなぎ)
   肆(し)の矢:右斬上(みぎきりあげ)
   伍(ご)の矢:逆風(さかかぜ)
   陸(ろく)の矢:左斬上(ひだりきりあげ)
   漆(しち)の矢:左薙(ひだりなぎ)
   捌(はち)の矢:逆袈裟(さかげさ)
   玖(く)の矢:心刺突(しんぞうぬき)

「龍咆・射殺す百頭(ナインライブズ・ドラゴンブレス)」
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:900人
 彼の持つ万能攻撃宝具。一つの兵装ではなく、生前の偉業「ヒュドラ殺し」で使った弓の能力を元にヘラクレスが編み出した、言わば「流派・射殺す百頭」。その本質は、攻撃が一つに重なる程の高速の連撃にある。
 状況・対象に応じて様々なカタチに変化する「技」であり、こちらは対幻想種用の「ドラゴン型のホーミングレーザーを9発同時発射」となる。


163 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:16:19 9ODFiBCY0
【人物背景】
真名はギリシャ神話の大英雄ヘラクレス。神々や数多の怪物を倒したとされる世界屈指の英雄。
彼を奉る神殿の支柱となっていた斧剣を触媒にアインツベルンのサーヴァントとして召喚された。
アインツベルンが「バーサーカー最強!」と思ってしまっていることと、第四次聖杯戦争のことから手駒に余計な意思を持たせたくなかったためにバーサーカーとして召喚された(complete material IIより)。
神話中で何度も発狂する伝承があることから「狂戦士」のクラスへの適正はそれなりに高いが、「魔術師」以外の全クラスに当てはまるほどの武芸百般を極めた武人である。






投下終了です


164 : ◆ACrYhG2rGk :2014/08/01(金) 19:19:42 9ODFiBCY0
すみません、最後ちょっと足りませんでした
こっちに修正します


【人物背景】
真名はギリシャ神話の大英雄ヘラクレス。神々や数多の怪物を倒したとされる世界屈指の英雄。
彼を奉る神殿の支柱となっていた斧剣を触媒にアインツベルンのサーヴァントとして召喚された。
アインツベルンが「バーサーカー最強!」と思ってしまっていることと、第四次聖杯戦争のことから手駒に余計な意思を持たせたくなかったためにバーサーカーとして召喚された(complete material IIより)。
神話中で何度も発狂する伝承があることから「狂戦士」のクラスへの適正はそれなりに高いが、「魔術師」以外の全クラスに当てはまるほどの武芸百般を極めた武人である。

今回はバーサーカーではなくアーチャーとして召喚されたため、喋れるようになった。
ステータスとスキルも若干変化し、宝具に「射殺す百頭」が追加されている。
本来ヘラクレスはアーチャーのクラスで最大限に能力を発揮することができるとされ、狂化した状態では失っていた戦闘技術も完全に再現できる。


165 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 02:58:56 nTmY1Hyc0
投下乙です

では自分も浦上とキャスターを投下します


166 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 03:00:01 nTmY1Hyc0
周囲を金網で封鎖され、立ち入り禁止の看板が立てられている廃ビル。
雑草が生い茂り、中へ入ると割れた窓ガラスの破片がそこらじゅうに散乱してる荒れ果て様で
まるでお化けでも出てきそうな不気味さを醸し出していた。

そこにいるのはお化けではない。
お化けよりも遥かに恐ろしい怪物が潜んでいる。
現にその怪物によって今も犠牲者が増え続けているのだから。


廃ビルの一室でぎし……ぎし……と建物の軋む音が鳴り響く。
音のする方を見ると中にはロープで両腕を縛られた少女の姿があった。
年齢はまだ中学生ぐらいだろう幼さの残る顔つきをしていた。

すぐそばには拘束された少女を見下ろす男がいる。。
血の付いたナイフを少女に見せつけるように刃を輝かせながら

「じゃあ、やるか」

男は少女の衣類を掴むと、左右に強く引っ張って引き裂き
露出した少女の上半身を見て男は気が高らかになり殺人衝動が湧き上がると
スカートの中からチラリと見える細くて柔らかそうな太もも目がけて、ナイフを突き刺してグリグリと抉り続ける。

「ひぐっ……ぎいぃやあああああああぁーーーーーーっ!!」
「はあ……はあ……ははははっ……簡単に死ぬなよぉ」

少女の痛々しい悲鳴は男を喜ばせる好意にしかならず
苦悶の姿を見せれば見せるほど男は興奮して下腹部のそれを怒張させた。

ナイフを引き抜き太ももからゴボゴボと溢れる血を男は舐めとりながら
舌を太ももからへそまでなぞる様に舐め、そこからまだ未発達な小ぶりの乳房へ舌を這い寄らせると
男は舌の感触を楽しんだ後で乳房を口に含む。


167 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 03:00:57 nTmY1Hyc0
「ぎいゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

くっちゃくっちゃと咀嚼音を鳴らした後にゴクリと飲み込む。
男は乳房に歯を立てて噛み千切ったのだ。

「中々美味かったぜ」

男は少女に覆い被さると左手で喉を締め上げ、ナイフを持った右手で
少女の眼球を突き刺した。

「ーーーーーーーーっ!!!」

喉を絞められているために少女は言葉にならない悲鳴をあげた。
すると少女の体が徐々に灰色へと変色していった。

「おいおいおいおい!!まだ死ぬの早いって、あ〜あ〜……灰になっちまった」

少女の体が灰化して崩れ落ちる様を見て男はがっくりと肩を落とした。
落ち込む男を元気付けようと霊体化していたキャスターが姿を現す。

「ハロー♪NPCなんて沢山いるんだし、また獲物を探しに行けば良いさ」
「そりゃそうなんだけどさー。ここまで盛り上がっといて挿入る前にお預け食らうのは流石にきついぜ」

殺戮と凌辱を同時に味わうのを至上の快楽として楽しむ男には
死体の残らない世界は、後始末の手間が省けるとはいえ興醒めになるのは否めない。

「じゃあさ。そろそろ他の参加者達を狙ってみない?きっとNPCよりも生命力に溢れていて浦上も満足出来ると思うよ」
「参加者ねぇ……それもいいかもな。必死に抵抗してくれた方が殺しがいがあるしな」
「よかった。僕はどうしても聖杯が欲しいから積極的に協力してくれるのは凄く嬉しいよ」
「『人間に戻りたい』だっけ?あんたの願い。せっかく特別な力を得たのにただの人間に戻るなんて勿体無いんじゃねーの?」

人間を遥かに凌駕した強さを持ったキャスターなら悪事だって好き放題出来る。
それなのに何の力も無い人間に戻りたいというキャスターの思考は浦上には理解出来なかった。

「僕はサバトで無理やり化け物の姿に変えられて、人間じゃなくファントムとして扱われてたんだ。
 だけど僕の心は人間だった頃と何一つ変わらないし、怪物として受け入れる事なんて僕には出来なかったんだ。
 だから聖杯の力を使って、僕はファントムでは無く完全な人間として生きていきたいんだ」
「へぇ、あんたも苦労してるのね」

サバトとかファントムとか何の事か知らないけど、と脳内で呟きながら浦上は納得すると
キャスターはにこやかな表情で浦上に小石を手渡した。

「何これ?」
「魔石さ。こうやってばら撒くと…」

キャスターが魔石を放り投げると魔石からファントムが生み出され
指示を待つかのようにキャスターの傍で横一列に並んだ。

「彼らは『グール』と言って簡単な命令なら理解できるから何かあった時に使ってよ」
「結構面白いな 遠慮無く使わせてもらうぜ」

キャスターの呼んだグール達は廃ビルの侵入者が現れた時の排除を伝えると
グール達は見回りをする為にのそのそと部屋から出ていった。


168 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 03:01:39 nTmY1Hyc0
「面白い物くれた礼に、俺の特技を一つ教えてやるぜ」
「なになに〜?」
「ここに来てNPCで何度も遊んでいる内に、相手の顔を見ただけで人間とNPCの違いが分かるようになったぜ」
「どこか違いがあるの?」
「なんつーか、見た目とかじゃなくて中身が違うんだよな。
 感情もあるし、ナイフで裂けば血や内臓も出るんだけどどこか作り物っていうか……
 例えるならNPCは、見た目と味を人の形そっくりに固めた加工物なんだよね」

浦上には変わった特技があった。
沢山の人間で遊び続けていく内に、人間とパラサイトの見分けが付くようになった。
その特技はここでも遺憾無く発揮して普通の人間と外見的特徴が変わらないNPCとの区別が完全に付くようになっていた。

「それは凄い!これなら僕たちの正体を隠しながら他のマスター達を一方的に見つける事も出来るよ」
「じゃあそろそろ狩りに行こうか、加工物(NPC)ではなく天然物(参加者)の方をさ」
「OK〜」


169 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 03:02:27 nTmY1Hyc0
【真名】
グレムリン@仮面ライダーウィザード

【パラメータ】
筋力C 耐久D 敏捷A 魔力D 幸運D 宝具A
(グレムリン)
筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力B 幸運E 宝具A
(グレムリン進化態)

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】

陣地作成E−
「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
グレムリンは基本的に一つの場所に篭城せずに積極的に動き回る為
彼の作る工房は身を隠せる程度の役割しか果たさない。

道具作成D
魔力を帯びた器具を作成可能。
グレムリンはグールを生み出す魔石のみ作成可能。

【保有スキル】

精神汚染C
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
グレムリンの場合「白い服を着た長い黒髪」の女性と遭遇すると殺戮衝動が湧き上がり、他の何よりも優先して自身の手による殺害を行おうとする。

すり抜けD
物質をすり抜けて移動する能力
壁や扉等の遮蔽物が多いほど優位性を増す。

【宝具】

『賢者の石(フィロソファーストーン)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
「世界の全てを飲み込む」と言われる程の膨大な魔力を秘めた特殊な魔宝石。
生と死を逆転させるなど強力な魔法を引き寄せる分必要な魔力も膨大で、維持するだけでも定期的に魔力を供給しなければならない。
グレムリンが取り込む事で強大な力を得るが、肉体を維持するだけでも相当な魔力を消費する為に使用は控えている。

【weapon】
ラプチャー
グレムリンに変身時に使用、二本の刀として用いるだけでなく組み合わせて大鋏としも使用できる。

ハーメルケイン
グレムリン進化態時に使用、横笛と槍を組み合わせたような形状で白い魔法使いから奪った武器である。
魔石
グレムリンを召喚する、主に足止めに用いられる。

【人物背景】
サバトによって生まれたファントム。
本来はファントムになると人間の頃の記憶や人格が消滅するが、ソラだけ人格を維持したままファントム化した異質の存在。
ファントムになる以前の人間の頃から「白い服と長い黒髪」という条件の女性を見つけると殺人衝動に襲われ
数十人の女性を殺害・始末してきたサイコキラーである。
賢者の石を使えば人間に戻れると考えたソラは体内に取り込み、人間になるための魔力を集めるべく無差別に人を襲うが
仮面ライダーウィザードとの戦いで賢者の石を奪われ敗北、消滅した。

【サーヴァントとしての願い】
人間「滝川 空」として受肉する。

『基本戦術、方針、運用法』
持ち前の素早さと壁をすり抜ける能力を駆使して相手を翻弄するトリッキーな攻撃を用いる。
知略を駆使して他の参加者を罠にはめる
白い服を着た黒髪の長い女性を見ると作戦そっちのけで殺しに向かうので注意。


170 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 03:02:51 nTmY1Hyc0
【マスター】
浦上@寄生獣

【参加時期】
監視役を殺害し逃走した頃

【weapon】
ナイフ、魔石

【能力・技能】
人間とパラサイトを一目で見抜く観察眼
人間とNPCの区別も可能になった。

【人物背景】
人間を惨殺する事に快感を覚える殺人鬼。
多数の犯行によって指名手配・逮捕されており、死刑判決を免れない身。
人間を使って「遊んだ」ため、パラサイトを見ただけで判別する事ができる能力が自然と身に付いた。
衝動を抑えて生きている現代の人間こそ異常であり、自分は本能に沿って生きる正しい人間の姿だと主張した。

【方針】
参加者を見つけ出して「遊ぶ」
出来れば若い女で遊びたい。


171 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 03:03:17 nTmY1Hyc0
投下終了です


172 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/02(土) 03:10:56 Z/kQkuWI0
投下乙です
自分で登場話投下しといていうのもアレですが・・・
凛ちゃん逃げて


173 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/02(土) 11:41:45 nTmY1Hyc0
>>169
【weapon】の欄の魔石の説明にミス
Xグレムリンを召喚する ○グールを召喚する


174 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/02(土) 13:37:13 ykjju6/E0
皆さま投下乙です
二次二次聖杯戦争の候補作を修正したものを投下させていただきます


175 : 犬飼伊介&キャスター ◆BATn1hMhn2 :2014/08/02(土) 13:38:22 ykjju6/E0
とある休日の昼下がり、自家製のチーズケーキが自慢の一品であるその喫茶店は、多種多様な客で賑わっていた。
益体もないおしゃべりに興じる者、本人には聞かせられない悪口や愚痴を話す者、誰にも言えないような秘密を親友にだけ打ち明ける者と様々。
その殆どは自分たちの席の中にしか関心がなくて、他の席に座る者たちが何を話しているのかまで気には留めていない。
だが、店内に一つだけ、他の客の関心を集めるテーブルがあった。

そのテーブルで向かい合っているのは、まだ成人はしていないだろう二人の少女だ。
しかしその身体は既に成熟しており、少女とは言えない大人の女性の色香を醸し出している。
雑誌の表紙を飾るトップモデルたちと比べても何ら遜色ない彼女たちの美貌こそが、周囲の目を引く理由である。

二人とも腰までかかろうかというほどに長く髪を伸ばしている。
片方は芳醇な香りを漂わせる赤ワインを連想させる、深く重い赤髪。
もう片方は気位の高さを思わせる、一点の曇りもなく輝く金髪だ。

先に口を開いたのは、赤髪の少女だった。
くるくると巻かれたサイドロールを右手で弄りながら、声に僅かな苛立ちを含ませ、

「――で、アンタが伊介のサーヴァントってワケ?」
「そうよぉ。私がアナタのサーヴァント、キャスターよん☆」

金髪の少女は、片目ウインクにピースサインと聖杯戦争に臨むサーヴァントらしからぬ態度で問いに答える。
キャスターの瞳はまるで星のように輝いていて――マスターである犬飼伊介は、それが、ひどく気に入らなかった。
何故だか分からないが、無性に気に入らない――それが犬飼伊介が己のサーヴァントに対して抱いた第一印象だった。
とはいえ、伊介が初対面の赤の他人を気に入ることのほうが非常に稀ではあるのだが。

犬飼伊介は職業暗殺者である。つまり、殺し屋だ。
生きるために人を殺す。金のために人を殺す。
ただの仕事で、ただの殺人であるその行為について、それ以上の感情は持っていない。
だから望んだ報酬が何であろうと手に入るという殺人依頼が舞い込んできたとき、伊介は一切の躊躇なく飛びついた。

だが――ミョウジョウ学園10年黒組に転校し、ターゲットの少女を殺すというその依頼を、伊介は遂行することが出来なかった。
失敗した要因は幾つかある。同じく暗殺者側だったはずの一人が、ターゲット側に寝返り、障害になったこと。
無力なだけの少女だと思っていたターゲットが、生き残るという一点に関しては数多の暗殺者の殺意を凌駕する存在だったこと。
だがしかし、それらをいくら並べ立てたところで、伊介が暗殺に失敗し報酬をもらい損ねたという事実が覆ることはない。

(だからこそ二回目のチャンスが回ってきたときに飛びついちゃったワケだけど――
 ただでさえ誰かと組むなんてキライなのにこんなヤツと一緒になるだなんて、ほんとサイアクよねぇ?)

伊介の声と態度にはあからさまな苛々が含まれているというのに、キャスターは素知らぬ顔で微笑んでいる。
空気が読めないわけではないだろう。伊介の苛立ちに気付いた上で、その苛立ちを笑っているようにしか見えない。
それが、

「やっだ、おまえムカつくぅ〜。殺したくなっちゃう♥」

伊介にとっては、令呪を使う十分な理由となった。
無論、自害の命を下すようなことはしない。伊介とてマスターの一人、サーヴァントを失ったマスターの末路は知っている。
六時間のうちに新たなサーヴァントを見つけ出すことが出来なければ、マスターは灰となって消失する――
そして聖杯戦争を勝ち抜くためには、サーヴァントの力が必要不可欠だ。
ここはひとまず、決定権はこちらにあるのだということを分からせ、ついでに憂さ晴らしをする程度にしておこう。

「キャスター。これから私のことは、『伊介さま』と呼びなさい♥」

と、犬飼伊介は令呪を使った――はずだった。

「まったくぅー、ちょ〜っとイヤなことがあったからって大事な令呪をこんなところで使おうとするなんてダメだゾ☆」

令呪は、発動しなかった。
マスターを遥かに上回る力を持つサーヴァントを唯一服従させることが出来る絶対命令権は、キャスターに対して何の効果もなかった。
言葉もなく愕然とする伊介を尻目に、キャスターは喋り始める。

「説明の手間が省けたわぁ。これが私の能力――ホントは会話力も必要ないんだけどぉ」

キャスターの言葉通り、伊介の脳内に彼女が知らなかったはずの情報が、次々と流れ込んでくる。
学園都市――常盤台中学――超能力――レベル5――第五位――


『心理掌握(メンタルアウト)』。


176 : 犬飼伊介&キャスター ◆BATn1hMhn2 :2014/08/02(土) 13:39:49 ykjju6/E0
「私への命令力は禁止させてもらったわよぉ。令呪は貴重なエネルギー源だから勝手に使ってもらったら困るものぉ」

いつの間に取り出したのか、右手にリモコンを持ちながらキャスターは――学園都市に七人しか存在しない超能力者(レベル5)の一人、食蜂操祈は、口の端を歪めた。
片肘を突き、足を組み、笑みを浮かべながら椅子に座る様はまるで女帝のよう。
かつて常盤台の女王と呼ばれ、学内の最大派閥の長として君臨していたときと何ら変わらぬ態度で、食蜂操祈は聖杯戦争に臨もうとしている。

「――なんとなくキライだと思ってたけど……訂正するわ。伊介、アンタのことが殺したいほどキラーイ♥」
「あらぁ、キライはスキの反対じゃないのよぉ? それに私はアナタのことそんなにキライじゃないのよねぇ。
 私がその気になれば、アナタの意志力なんて欠片も残さないことだって出来るんだけどぉ……そうしないほうが、面白そうだものぉ」

キャスターは目を細め、己のマスターへ挑発的な視線を送る。
それを受けた伊介は――

「……ハァ、バカらしー。伊介、くだらないことで疲れたくないの♥
 いいわキャスター。アンタがこの聖杯戦争を勝ち抜く力を持ってるのはよ〜く分かったから――今だけはアンタの言う通りにしてあげる♥」

ただし、今だけってことを忘れないでね――と、心の内で呟いたのは、キャスターにも伝わっているだろう。
キャスターの能力は、精神の操作だ。読心、念話、洗脳、記憶消去etc……とにかく精神に関係する事柄ならば、なんだろうと操作することが出来る。
その能力を使い、伊介が令呪を使うことを禁止し、言葉にすることなくキャスターの真名と能力を理解させたのだ。

「で、それだけデカい態度取るんなら聖杯戦争に勝つための方策くらいあるんでしょうねぇ♥」
「見ての通り私の能力を使えば、マスターだろうとサーヴァントだろうが思い通りに動かせるわぁ。
 だけど、この超能力は――この聖杯戦争では魔術として扱われるみたいねぇ。
 だから対魔力スキルを持つ三騎士が相手だと、私の支配力も通じないことがあるみたい」

そこで、

「鍵になるのは――令呪よぉ☆」

令呪は、サーヴァントにとっては絶対の命令である。
キャスターが伊介の令呪を無効化出来たのは、令呪というシステムそのものに逆らったわけではなく、令呪を使おうとする伊介の精神に干渉したからだ。
一度令呪が発動してしまったならば、如何に優秀な対魔力スキルを持つサーヴァントであろうとも、抵抗することは叶わない。
そして、キャスターの能力があれば――他のマスターに令呪を使用させ、サーヴァントへの自害を命じさせることすら可能である。

「令呪が一画しかなかったら自害までは難しいかもしれないけどぉ。
 そのときは動きの抑止力くらいしかならないだろうから、マスター同士戦ってもらうことになるわぁ」
「えっ、サーヴァントなのにマスター任せ? ダサッ♥」
「……うるさいわねぇ、適材適所って言葉力も知らないのぉ?」
「もしかしてサーヴァントのくせに戦闘苦手系? マジでちょーウケる♥」

キャスターがふくれっ面になったところを、ここぞとばかりに責め立てる伊介だった。
これでもまださっきの屈辱には足りないくらい。機を見て全て倍返しだ。

「とーにーかーくぅ。これで私たちは一蓮托生ってことだから。よろしくお願いねぇ、『犬飼さん』」

「あ――やっぱアンタ、すっごく殺したい♥」



【クラス】
キャスター

【真名】
食蜂操祈@とある科学の超電磁砲

【パラメーター】
筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力A 幸運B 宝具A

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成 C

道具作成 E

【保有スキル】
虚弱 C
一般を遥かに下回る身体能力を持つ。
ジョギング程度の速度で走ることすらままならない。


177 : 犬飼伊介&キャスター ◆BATn1hMhn2 :2014/08/02(土) 13:40:14 ykjju6/E0
【宝具】
『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:200
記憶の読心・人格の洗脳・念話・想いの消去・意志の増幅・思考の再現・感情の移植など精神に関する事なら何でも出来る能力。
操作の精度によって同時操作可能人数は変わるが、プログラムに従ってオート動作をさせるだけなら三桁、全身を完全に掌握するような精密操作でも十人は同時に操作可能。
能力使用時には常に持ち歩いているリモコンのボタンに様々な命令を割り当て、それを操作することで能力を安定させている。
効果があるのは人間のみで、ロボットなどの無機物や動物に対しては無力である。

【weapon】
能力使用時に使う複数のリモコンと、それを入れているハンドバッグ。

【人物背景】
学園都市最高レベルの能力区分レベル5の一人で、常盤台中学の学内最大派閥の女王。
星の入った瞳、背に伸びるほどの長い金髪、長身痩躯、そして巨乳と中学生離れした容姿をしている。
実際に作中で「本当に中学生なのか」と問われたことがあるが、食蜂曰く彼女の能力による改竄力ならば年齢設定などどうにでも出来るとのこと。
倫理観や常識が欠けており、極めて自分勝手な性格をしている。無邪気に周囲への迷惑行為をすることもザラ。
身体能力がかなり低く、御坂美琴のジョギング程度の速度にもまるでついていくことができない。

【サーヴァントとしての願い】
不明

【基本戦術、方針、運用法】
極めて強力な宝具を持っているが、逆にこれが唯一の戦闘手段である。
もしも近接戦闘を強いられることになればキャスターに勝ち目はない。
特に対魔力を持つ三騎士クラスはキャスターの天敵であるため、サーヴァントとまともに相対することは自殺行為である。
敵マスターを宝具によって操作し、令呪による間接的な干渉を狙うくらいのことしか出来ないだろう。
手駒として利用できるマスター・サーヴァントを見つけることが出来れば三騎士との戦闘も可能かもしれない。


【マスター】
犬飼伊介@悪魔のリドル

【参加時期】
アニメ最終話後。

【マスターとしての願い】
勝ち残り、パパとママと三人で一生遊んで暮らせる富を手に入れる。

【weapon】
ナイフ

【能力・技能】
殺し屋として少なくない経験と確かな技術を持っている。
素手、ナイフを用いた戦闘が得意。

【人物背景】
ヘソ出し谷間出しの服を着ている、セクシー&ダイナマイトな美少女。
ムカつくことがあるとすぐにイラつき、当たり前のように周囲に我儘な要求をする。
暗殺依頼として学校生活を送っていたときも勉学や文化祭に対してまったく興味を抱いておらず、暗殺関係にしか興味がないようである。
家族のことをとても大切にしているがそれ以外の人間は心底どうでもいいと思っており、人を殺すことについても何の抵抗もない。

【方針】
キャスターの方針に従って勝ち残りを目指す。


178 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/02(土) 13:40:52 ykjju6/E0
以上で投下終了です。


179 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/03(日) 14:06:15 yh4m9rAQ0
投下します。


180 : 鶴喰梟&キャスター ◆A23CJmo9LE :2014/08/03(日) 14:07:21 yh4m9rAQ0
やあ。はじめまして、かな。俺の名前は鶴喰梟。恋に恋するナイスミドルさ。
今回俺が来たのは聖杯戦争。目的はいわゆる婚活ってやつ?

以前の恋は、苛烈で美人な実の姉に惚れてたんだが、苛烈すぎたんで諦めた。
優しい幼馴染と姉さんの娘なら優しくなるかと思ったんだが、その子も激烈だったんで諦めた。
じゃあ姉さんと同じ血の流れる俺の子ならどうかと思ったんだが、オスだったんで諦めた。

もうしょうがねーからそっくりな影武者でもいいかなーと思ってたらなんでも願いがかなうなんてイベントがあるらしいと聞きつけてね。
これなら理想の嫁さんが手に入りそうだと思ってきたのさ。
あの天城って野郎の説明だと殺し合いに生き残らなきゃいけないみたいだが、影武者の番人[英雄獅子目言彦]を敵に回したり星の描かれた球を七つ集めたりするよりは楽だろうし、まあいいか。

それじゃあ、俺のパートナー改めサーヴァントはどんな奴……





「うちゅーぢんだよ〜」


…………


「ぴきゃぺきょり〜ん」


…………


「……」


銀色の髪に長いひげを上下に引っ張って変顔をしているグラサンのおっさん。それが俺のサーヴァントらしい。

「ちぇー、ノリが悪ィなー、マスターよぅ」
「悪ィが、こーいうときどんな顔すりゃいいのか分からなくてね」
「笑えばいいだろ。道化が滑稽な顔をしてたら笑ってほしいとこだがね」

俺はサーヴァントのマスターにはなったが、サーカスの観客にも人型汎用決戦兵器のパイロットにもなった覚えはないんだがね。
まあしょうがねェか。俺の呼ぶサーヴァントなんざこんなもんだろ。妥協してやるよ。

「フン…マンネリだったかね。改めて自己紹介すると、キャスターのサーヴァント、白金だ。ディーンとかフェイスレスとかでも構わないよ」
「鶴喰梟。真名呼びはしねぇよ。こっちも好きに呼んでくれ。かわいい女の子ならご主人様とかがよかったが」
「女の子、ね。僕の願いはそれさ。何度も何度も振られ続けた僕の人生、聖杯でもって愛しい妻を迎えて幸せになるんだ!」


181 : 鶴喰梟&キャスター ◆A23CJmo9LE :2014/08/03(日) 14:07:52 yh4m9rAQ0

へぇ。こいつも嫁さん目当てか。さすが俺のサーヴァントだ、やっぱサーヴァントってのは似たのが召喚されるらしいな。

「気が合いそうだ、俺も嫁さん求めてここに来た」

と言うとコイツ、ニタリと笑みを浮かべて手を取りはらはらと涙を流しながら

「今僕は悩んでてね。初恋はフランシーヌって娘だったんだけど、兄さんに盗られちゃってさ。フランシーヌそっくりの人形を作ったけどそれはしょせん人形だし、その後好きになったフランシーヌに似たアンジェリーナもエレオノールも別のヤツに靡いてさ、もう最悪だったよ」

おうおう、なかなか無残で悲惨で非モテな人生送ってやがる。

「で、聖杯とったらどうしようかなって。不老不死は確定なんだけどさ、フランシーヌを僕になびかせるか、人形を人間にするか、それともあとの二人でいいか、どっかから僕好みで僕を好きになる女の子引っ張ってもらうか、悩ましいよね〜」

さっきまで泣いていたのがウソのように笑みを浮かべる。後光が見えるぜ、邪悪な後光が。
ヒクわー、こいつのテンションまじヒクわー。

「人生は妥協だ。高望みすると碌なことねーぜ?」
「いやいや、聖杯は無限の願望器だ。なんでも叶うはずだぜ、マスターの願いも。妥協なんて遠慮なんてしないで曝け出せよマスター。君は僕の同類だ」

……なんでも叶う……妥協なんかせずに。それってもしかして

「姉貴を俺好みにすることも、姪を想うがままにすることも、息子をTSさせるのもやりたい放題ってわけかよ!」

久しぶりだ。こんな高揚感は本当に久しい。目の前のサーヴァントがうわぁ、って顔してるけどどうでもいいぜ。

「もったいねえな。とにかく今は聖杯をとることだけを考えようぜ、キャスター」
「それはそうだね。ひとまずは聖杯戦争に勝てなきゃ話にならないぜ、マスター」
「「ここからは一心同体だ」」
「では行こうか、僕よ」
「ああ行こうぜ、俺よ」


182 : 鶴喰梟&キャスター ◆A23CJmo9LE :2014/08/03(日) 14:08:21 yh4m9rAQ0
【クラス】キャスター
【真名】ディーン・メーストール(フェイスレス)
【パラメーター】筋力D+ 耐久E 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具B
【属性】混沌・悪
【クラススキル】
道具作成:B+
錬金術、機械工学、医術に精通し、様々な道具を作ることが出来る。
生前は自動人形、緊糸傀儡、クローンや機械人間、人格のダウンロード装置などを作成した。
これらの知識を利用して様々な道具や生き物の『分解』、懸糸傀儡の操作を可能とする。
また自動人形らは彼が造物主であることを『理解』しており、どんな容姿であろうと鶴の一声で付き従うため、自動人形と改造人間限定で同ランクのカリスマを発揮する。

陣地作成:E
自らに有利な陣地を作り上げる。
一所に居続けることはあまりせず、工房や陣地の作成はめったに行わない。
一応研究地である工房を作ることはできる。
陣地としては機関車型の自動人形や飛行船など居住・移動を可能とする巨大な道具を作成し、拠点とすることが多い。

【保有スキル】
しろがね‐O:A
自己改造を含む特殊スキル。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
不死人しろがねの特性、体内を流れる生命の水によりあらゆる病・精神干渉にかからず、治癒能力も持つ。また生命の水を分け与えれば他者の治癒も可能。ただし、サーヴァント化に伴い、マスターや他のサーヴァントをしろがねにすることはできなくなっている。
さらに全身のほとんどを機械改造しており、身体能力の増強、痛覚の遮断や武装などがされている。
掌に仕込んだ強酸はあらゆるものを『溶解』させる。

信仰の加護:A++
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。彼の場合どす黒く燃える太陽とまで称される徹底的な自己肯定と夢への探求。
加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。
……高すぎると、人格に異変をきたす。

女難の相:B
好意を抱いた女性に好かれることはない。
女性との対人関係においてあらゆる判定にファンブル率が上昇する。人ならざるモノ、自動人形やしろがねなども例外ではない。
また魅了系スキル、魔術への耐性が大きくダウンし、二つの精神防護系スキルを持つにもかかわらず、異性からの魅了を妨げることは極めて難しくなっている。ただし、よりによってこの男を魅了しようとする物好きがいるかは分からない。


183 : 鶴喰梟&キャスター ◆A23CJmo9LE :2014/08/03(日) 14:09:02 yh4m9rAQ0
【宝具】
『絶望運ぶ白銀の機械蟲(アポリオン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:1人
ナノサイズの蟲型自動人形。大量に群がることで銀色の煙のようにみえる。
本来なら機械であるため一から精製する必要があるが、宝具として昇華したため自身の魔力によって生成するようになった。そのため対魔力系スキルおよび肉体に魔力を巡らせることなどで抵抗可能。
機械に触れると其れを解体して無力化し、体に侵入すると自律神経に異常をきたしゾナハ病を発症させるが、ある歌を聞かせること及びある周波数の電波で無力化できる。
また使い魔として使役することも可能。ナノサイズのため視覚共有などは意味をなさず、情報を受け取るモニターなどが必要。
なお自動人形の体液の主成分であるため自動人形を『道具作成』するためにはこれが相当量必要となる。


『狂クル嘲フ顔無シノ道化(フェイスレス・アルルカン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
他者に変装し、騙し続けた逸話が昇華した宝具。生前は髪の色を変えるのに薬品やウィッグを使うなど補助が必要で、また体型的に近い同性に変装するのが主だったが、宝具に昇華したことでそういった制限はほぼなくなった。
自身のステータス・素性を隠匿し、視認した相手の容姿や声などの外観的特徴と気配を模倣する。スキルや技能はまねできない。

【weapon】
改造した肉体の兵器(強酸による溶解、触手のように伸びるコード、腕をハンマーに変形させるなど)
スパナやペンチなど工具(人体及び機械を分解する)

ともに魔力供給で補給可能

【人物背景】
中国の人形繰りの家、白(パイ)家の二男、金(ジン)。兄の白銀(パイイン)と共に錬金術を学び人形に命を吹き込もうとする仲の良い兄弟だったが、恋した女性フランシーヌが兄と結ばれたことで仲違い。フランシーヌをさらい、兄から離れる。
しかしフランシーヌの心までものにすることはできず、病に倒れた彼女を救うことも叶わず先立たれる。
その後も彼女そっくりに作った人形、彼女の親族(とは知らないが)の女性など、彼女の面影を名を変え肉体を変え追い求めるも、生涯一度もその恋は実らなかった。
こう書くと悲劇的に見えるかもしれないが、要らなくなったものはたとえ人でも――かつては愛したフランシーヌ人形やアンジェリーナであっても――容易く捨てさり、時には自ら殺害するその自己中心的な性質は人に好かれるはずのない邪悪なものである。
二つ目のフェイスレスとしての肉体を捨てたのちに、自らの過ちを認め生涯を終えたが、このキャスターはその二つ目の肉体の白金、ディーン・メーストールであるため己が悪行を一切悔やんでいない。

【サーヴァントの願い】
とりあえず不老不死。あと愛する妻がほしいがなかなか悩ましい。

【基本戦術、方針、運用法】
まずは『絶望運ぶ白銀の機械蟲(アポリオン)』を飛ばして情報収集。場合によりゾナハ病の蔓延も考えるが大多数のマスターに効き目は薄いと考える、サーヴァントには言わずもがな。
並行して拠点を作り、自動人形の量産体制に入りたい。軍団作成しなければ勝機は薄い。
人形の戦力はピンキリだが、最低限で海魔や竜牙兵くらい、最後の四人全員掛かりならサーヴァントと防戦ならできるくらいを想定。
肉弾戦はキャスターにしてはマシな部類なのに加え、『狂クル嘲フ顔無シノ道化(フェイスレス・アルルカン)』で攪乱もできるためアサシン的立ち回りも可能だが、騎士クラスには勝てないうえ、撤退に適したスキルや宝具もないため篭った方がいいだろう。
非常時に備えて人格ダウンロード装置や生命の水でNPCに自分のスペアを作ることも視野に入れる。
原則キャスターらしくひきこもり、道具作成により人形や武器を量産して勝利に向かう。
なお、魅了持ちの女性サーヴァントは三騎士以上の天敵となるので注意。


184 : 鶴喰梟&キャスター ◆A23CJmo9LE :2014/08/03(日) 14:09:35 yh4m9rAQ0
【マスター】鶴喰梟

【参加方法】
願望器のことを調べあげた。普通ならそれだけじゃ参戦はできないが、『だからこそ』巻き込まれ参戦した。

【マスターとしての願い】
結婚を前提とした彼女がほしい。姉貴の代用品で妥協するつもりだったが、色々悩ましい

【weapon】
特になし。後述の能力に依存する。

【能力・技能】
言葉を武器とする「言葉(スタイル)使い」、その開祖であるため作中に登場した全てのスタイルを使用可能。言葉が通じるもの相手ならば効果がある。逆に言えば、言葉が通じない相手(コミュニケーションが取れない赤子)や逆上して「相手の話を聞かない」状態になると効果がなくなる。また、スタイルは「パターン」であるため、振動として一時的にスタイルを伝授することができる。
彼は音の振動を利用してすでに死んだ肉体に血を巡らせかろうじて生きて?いる状態。
加えてサーヴァントの維持に現在二つのスタイルを同時に使っているためサーヴァントを維持する限り他のスタイルは一切使用不能となっている。

「漢字使い」
常用漢字を支配下に置く。
九個と十個の石で氷の鎧を砕く(石+九+十=砕)、石で皮を破く(石+皮=破)、炎を水で淡く(氵+炎=淡)、氷点下で氷をただの水に(氷−ヽ=水)など、のような漢字の部首の足し算・引き算を現実のものにする。傾く(かぶく)ことで飛行機を傾け(かたむけ)たり、「拳」で攻撃された時、「挙」という字と似ているという理由で強制的に挙手の状態にするなど、音読み・訓読み・意読・誤読まで支配下に置く。
このスタイルによって『魅力』を『魔力』に誤読させサーヴァントを維持している。
なおあまり魅力的とは言い難いおっさんなので供給は少ない。

「逆説使い」
「だからこそ」のひと言に特化したスタイルで、「相手が強い『だからこそ』勝てる」、「強固で巨大な物体『だからこそ』斬れる」、といったように確率が低いマッチほど「逆説的」に実現させるスタイル。因果や優劣、上下や強弱を逆態接続するスタイル。
マスター適性が低く魔力も少ない、だからこそキャスターを十分に使役できる。

見てのとおりかなり無理のある魔力供給なのでこれの維持で精いっぱい。例にあるような戦闘は全くできなくなっている。
今の彼はただでさえ冴えないおっさんが魅力を削ってサーヴァントを維持している現状なので、本当に一切の戦闘能力のないしょぼいおっさんでしかない。

【人物背景】
ttp://www43.atwiki.jp/medakabox/pages/163.html

申し訳ないですがコイツの変態っぷりは私の文才では表現しきれないのでwiki参照

【方針】
キャスターと一緒に引きこもる。


185 : 鶴喰梟&キャスター ◆A23CJmo9LE :2014/08/03(日) 14:10:26 yh4m9rAQ0
投下完了です。


186 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/03(日) 17:37:08 lLOEHf6k0
今日が募集期間締め切りとなっております。
もし都合上で投下が間に合わない、という方は書き込みをお願いします。
俺ロワのため、ある程度は幅を利かせることが出来ると思いますので。

今までの投下を下記のとおりまとめました。
キャスターが0から連続で投下されて……嬉しい限りです。
都合上必ずしもこの中から選ばれるかどうかは不明です。

ですが投下された作品、この中から選ぶにあたって
相応の責任を持って選出させていただきます。



【セイバー】
★夜科アゲハ&纏流子

【ランサー】
○ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア・スカーレット
○朽木ルキア&前田慶次

【アーチャー】
○ジョナサン・クレイン&エス・ノト
○タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド
○美樹さやか&ヘラクレス

【ライダー】
★鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ
○遠坂時臣&桐生一馬
○虹村形兆&エドワード・ニューゲート
○ジン&カービィ

【キャスター】
○浦上&グレムリン
○犬飼伊助&食蜂操祈
○鶴喰梟&ディーン・メーストール(フェイスレス)

【アサシン】
○星空凛&プロシュート

【バーサーカー】
★間桐雁夜&一方通行
○美樹さやかちゃん&不動明


187 : ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:53:36 weSy/TO20
キャスターのクラスで、投下を開始します。

これから投下するSSは、二次二次聖杯戦争の候補作の続きです。
候補作は↓のアドレスより御覧ください。

ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/259.html


188 : マルチェロ&キャスター(鬼人正邪) ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:54:34 weSy/TO20
人もまばらな深夜の市街地。
スーツを着た背の高い男と、修道服に身を包んだ少女が歩いていた。
二人共、幾つもの紙袋やビニール袋を両腕にぶら下げていた。

「なー、マスタぁー。なんで妖怪の私が聖職者のカッコなんかしなきゃなんないんだよー」

修道服の少女、キャスターのサーヴァントである鬼人正邪はいかにも不快といった様子である。

「……私がこの街で生活していることになっている所には、女物の衣服はそれしかなかったのだ。
 あの妙ちくりんなデザインの服でこの街中を出歩くわけにはいかんだろう」

「けどよー。なんかこの服、ジンマシンがでるぜ」

正邪はしきりに胸の辺りをつまんでパタパタしたり、腕や脚を掻いたりしている。
天邪鬼(アマノジャク)の妖怪……魔の物に属する彼女に修道服は少々肌に合わないようだ。

そんな彼女が頭を掻こうと黒いベールをずらし、彼女の頭に生えた小さなツノが露わになろうとした所で
スーツの男・マルチェロが少女の頭を押さえ、止めにかかった。

「まったく……家に着くまで我慢しろ。
 新しい衣服なら今買ったところだろう、キャスター」

「へいへい」

マルチェロの言葉に、気のない返事を返す正邪。
だが両腕にぶら下げた紙袋の中身を見て、正邪はすぐに機嫌を直した。
紙袋の中には、何着もの帽子や女物の衣服が詰め込まれている。
この街で購入した正邪のための衣服だ。

人ならざる妖怪である正邪の頭には、一対の小さなツノが生えており、
人ならざる妖怪であることをアピールして生きてきた正邪の衣服のデザインは、現代日本では少々前衛的すぎる。
霊体化せずに街中を行動するには、悪目立ちしない『普通の服装』が必要だった。


189 : マルチェロ&キャスター(鬼人正邪) ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:55:00 weSy/TO20

(…………♪)

……という実用上の理由ではあるが、キャスターはこれらを着てみるのが少し楽しみだった。
袋の中を覗き、実際に着てみた時の自分の姿を想像してニヤニヤと笑顔を浮かべている。

量販店で買った安物だが、なかなか可愛らしいデザインの服がバリエーション豊かに揃っていた。
破れたり汚れたりするかもしれないなどと理由をつけて、多めに買わせてしまった。
……妖怪といえど、『少女』であるがゆえの本能からは逃れられない、ということか。

その時、閑散とした道路の向こうから、バイクのエンジン音が響いてくるのに気付いた。
ヘッドライトの光が二人を照らし、そのままキャスターたちの脇を猛スピードで通り過ぎていった。
キャスターの傍の標識、『40』という数字を明らかに無視したスピードだ。
おまけにバイクに跨った二人組はヘルメットを被っていなかった。
被っていなかったためか、『気付いて』しまった。

彼らも、このゲームの参加者だ。
マスターが『念話』で声を掛けてきた。

『キャスター……今の二人、気付いたか?』

『ああ……マスター。クラスと能力値は読み取れたか?』

『クラスは、セイバー。能力は……キャスターのお前じゃ逆立ちしても勝てん』

『向こうにもこっちを気づかれたかも知れない』

『どうだかな。……ところでキャスター、あのセイバーの知り合いか?』

『知らないな。確かに髪型はちょっと似てたけどさ』

そう言ってキャスターは自分の前髪の、一房だけ赤い部分に触れる。
あのバイクを運転した少女……セイバーのサーヴァントも、
同じように前髪の一部分だけが赤かった。
奇妙な偶然に感じたが、それだけだ。特に親近感を覚えたりはしない。

「キャスター、行くぞ。いずれは奴らも倒さねばならん』」

「ああ、帰って作戦を練らないとな。
 ……あれ? 家ってどっちだっけ」

「こっちだ。……確か『天樹教会』とかいう名だったか。
 私はここに住み込みで勤める神父……ということになっている』


190 : マルチェロ&キャスター(鬼人正邪) ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:55:33 weSy/TO20

【クラス】キャスター
【真名】鬼人 正邪 (キジン セイジャ)
【出典】東方project(東方輝針城、弾幕アマノジャク)
【性別】女性

【パラメーター】
筋力E 耐久C- 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具A-

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
道具作成:C
『ひらり布』、『呪いのデコイ人形』などのマジックアイテムを作成可能。
作成できるのはキャスターが生前、幻想郷中の人妖から追い回されていた際に使用した物に限る。
その経緯から、生成できる道具は防御・回避に関係するものが多い。

陣地作成:A-
宝具『輝針城』による陣地作成が可能だが、
追手から逃げ回る根なし草だった彼女はあまり陣地作成を行わない。

【保有スキル】
妖怪:C
キャスターが人ならざる者、『妖怪』であることそのものがスキル化したもの。
『妖怪は人間より肉体が頑丈であり、五体がバラバラになる様なことがあっても、すぐに治癒する』
という謂われから、キャスターとしては高い耐久(Cランク相当)を有している。
一方で、『妖怪』『悪魔』『魔物』などに対して有効な攻撃からは、通常より大きなダメージを受ける他、
人とは異質の独特の気配を発するために、妖怪退治の専門家などには存在がバレやすくなる。

矢避けの加護:C
飛び道具に対する防御スキル。キャスターのもつそれは後天的に身につけたテクニックである。
生前、数多くの不可能弾幕をくぐり抜けて生き残ってきたキャスターの弾幕回避技術。
目視可能な飛び道具なら瞬時に回避方法を見出して、実行することが可能。

仕切り直し:C
戦闘の場を一旦離れ、アイテムを換装して出直すことが可能。

飛行:D
魔力を消費して空中戦闘が可能。
飛行速度はあまり速くないが、燃費は良好で、小回りが利く。

単独行動:E
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Eランクはマスターに内密で勝手に行動するに留まる。


191 : マルチェロ&キャスター(鬼人正邪) ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:55:54 weSy/TO20

【宝具】
『何でもひっくり返す程度の能力』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大補足:10
キャスターが『妖怪・天邪鬼』として持つ能力が宝具と化したもの。
対象範囲内の『何か』を逆転させる。
逆転可能なのは、移動方向、位置関係、左右の認識、重力など、多岐に渡る。
物理法則など、影響の大きいものを逆転させようとすると大きな魔力を必要とする。


『輝針城』
ランク:A- 種別:対城宝具 レンジ:100 最大補足:500人
空に逆さまに浮かぶ和風の城。
ただでさえ空中に浮いている上、魔力が潤沢ならば周囲に嵐を巻き起こすことさえ可能。
おまけに内部では魔力弾を放つ妖精たちが自然発生するため、攻略は非常に困難。
ただし、設備から何からがすべて上下逆転しているため、居住性は劣悪。
起動には尋常でない量の魔力が必要である。
マスターであるマルチェロは高い魔力を有するが、
それでも個人レベルの魔力で輝針城を出現させるのはまず不可能と考えて良い。

【weapon】
・弾幕
魔力の弾丸を連射する攻撃。
魔力消費が小さく速射性が高い一方、一発の威力は小さい。
対魔力の高い相手にはダメージを与えられないだろう。

・スペルカード
魔力の弾幕を『技』としてパターン化したもの。
発動の際は、スペルカード宣言を行う必要がある。
上述の宝具『何でもひっくり返す程度の能力』と組み合わせた攻撃パターンの他、
欺符「逆針撃」など、純粋に弾幕だけを用いたパターンの攻撃もある。

・反則アイテム
上述の道具作成スキルで作成したマジックアイテムを使いこなす。
以下に主なアイテムと、その効果を記す。

ひらり布:僅かな時間だけ身を隠し、攻撃をやり過ごす。
呪いのデコイ人形:一定時間使用者の身代わりとなって、攻撃を引きつける。
打ち出の小槌(レプリカ):かの有名な『打ち出の小槌』のレプリカ。
 魔力を帯びた一撃を目の前に見舞う、数少ない攻撃用アイテム。

他にも、数々の反則アイテムが存在する。
熟練度によって効果が増す、
メインとしての効果の他にサブアイテムとしての効果も有する、
などといった細かい部分は、のちの書き手さんにお任せします。


192 : マルチェロ&キャスター(鬼人正邪) ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:56:19 weSy/TO20

【人物背景】
妖怪、天邪鬼(アマノジャク)の少女。
実力ある者が支配する土地である幻想郷をひっくり返すため、
小人族の末裔・少名針妙丸(スクナシンミョウマル)をそそのかして異変を巻き起こした。
早い話が『東方輝針城』原作の黒幕である。
その行動はまさに外道にして下衆。
ゲスなロリっ娘、略してゲスロリ。

次回作『弾幕アマノジャク』では案の定、幻想郷中の人妖から追い回されることになる。
生死不問、ルール無用の不可能弾幕を、数々の反則アイテムを駆使して潜り抜けてきた。

性格は、人が嫌がる事を好む、人の命令は絶対に聞かない、嫌われると喜ぶ……
というあまのじゃくそのものだが、原作中では割とまともに会話を成立させているし、
サーヴァントが人の命令は絶対に聞かない……ではちょっと困ったことになる。
書き手のさじ加減次第だろう。

【サーヴァントとしての願い】
既存の仕組みがひっくり返る様を見たい。

【基本戦術、方針、運用法】
キャスターの直接戦闘は避けるべき。
マスターはとても強いが、それでも三騎士やバーサーカー相手には分が悪い。
最初は目立たないようにしながら戦闘向きのサーヴァントと手を組んで、
ライバルを減らしていく方針でいこう。


193 : マルチェロ&キャスター(鬼人正邪) ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:56:51 weSy/TO20

【マスター】マルチェロ
【出典】ドラゴンクエスト8
【性別】男性
【参加方法】
神鳥の杖に封じられた暗黒神の呪縛を自力で打ち破った直後。
サイレンカードをいつの間にか入手していた。

【マスターとしての願い】
血縁や生まれによって人の地位が定められる社会を破壊し、
実力あるものが覇権を握る社会を創ること。
当然、自分がその頂点に立つつもりでいる。

【weapon】
・細剣(レイピア)
マルチェロが腰に差している細剣。
造りは上質だが、特殊な効果はない。

・聖堂騎士団長の指輪
聖堂騎士団長の証である指輪。
装備者の攻撃力と素早さを少しだけ強化する。
(二次二次聖杯戦争での設定)
神の加護が装備者に僅かながらの『神秘』を付与し、
素手や手足に付けた武器での直接攻撃で、サーヴァントにダメージを与えられるようになる。
銃や弓矢などでの攻撃に神秘を付与することはできない。

・神鳥の杖
『暗黒神ラプソーン』の魂が封じられた杖。
暗黒神の魂が手にした者を問答無用で操り、暗黒神復活のための操り人形とする。
本来ならしかるべき場所に封印されるべき代物である。
(二次二次聖杯戦争での設定)
この世界に呼び出された本品にラプソーンの魂は込められていない。
頑丈で、魔力の媒介としやすいだけのただの杖と考えて良い。


【能力・技能】
・剣術
主に、レイピアなどのような細剣を用いる。
若くして聖堂騎士団長を務め、政敵さえも認める彼の腕前は超一流の域に達していると言って良い。
原作で素早さと回避率が高めに設定されているマルチェロは、
スピードを重視した戦いを得意とする様だ。
上述の『聖堂騎士団長の指輪』の効果もあって、直接戦闘を得意としないサーヴァントになら遅れはとらないだろう。


194 : マルチェロ&キャスター(鬼人正邪) ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:57:37 weSy/TO20

【能力・技能】
・特技
剣術の他にも、マルチェロは優れた魔術・体術を持つ。
以下に述べるのは、聖地ゴルドでマルチェロがククールたち一行と戦闘した際のもの。

メラゾーマ:大型の火炎弾を敵単体にぶつける、炎の呪文。
ベホイミ:味方一人の傷を中程度癒やす、回復呪文。
かまいたち:敵単体に向けて、風の刃を飛ばす体術。少量の魔力を消費することから、魔術の一種ともいえる。
 威力は使い手の技量(レベル)に依存する。彼が右手パッチンで放つそれは上級呪文に匹敵する。
凍てつく波動:魔術による効果を無効化するオーラを放つ。
 原作ではどれだけ強化を重ねても一発で無効化するが……。
 この聖杯戦争でどの程度の魔術を無効化できるかは、後の書き手さんにお任せします。
グランドクロス:聖なる真空の刃で敵グループを討つ、マルチェロ最大の攻撃。
 不死者など、聖なる力を苦手とする対象には追加ダメージがある。

その他、メラ系やホイミ系の下位呪文などの習得の有無は、後の書き手さんにお任せします。

・精神力
神鳥の杖に宿った暗黒神の支配を自力で振り払うほどの精神力を持つ。
半端な精神干渉は彼に通用しない。


【人物背景】
マルチェロはマイエラ地方の領主とメイドの間に生を受けた。
だがその後領主が本妻との間にククールをもうけると、マルチェロは母と共に屋敷を追い出されてしまう。
母を亡くした後はマイエラ修道院に引き取られる。
養父・オディロの元、不遇に負けず心優しい青年として育ったマルチェロは、
両親を喪ったククールがマイエラ修道院に引き取られた際も最初は優しく接する。
だがククールの素性を知るや態度を一変。
母と自分の居場所を奪った原因であるククールを逆恨みし、厳しい態度を取り続ける。
こうして彼は、「二階からイヤミ」「どこでもイヤミ」と評される歪んだ性格に育ってしまった。

聖堂騎士団に入団後は、高い実力に加えて収賄・弾圧など、手段を選ばずにのし上がってゆき、
マイエラ修道院長・聖堂騎士団長・法皇の警護役を兼任する。
さらに最終的には法皇をも謀殺し、何食わぬ顔で次の法皇に就任するまでになる。

彼をそこまで突き動かしたのは何だったのか。
聖地ゴルドでの法皇就任演説の内容から察するに、
彼の人生を翻弄し続けてきた
「血縁や生まれによって成り立つ社会の仕組み」
を破壊したかったのだと推測できる。


【方針】
優勝を狙うが、最初は潜伏し、情報集めや手を組む相手を探す。


195 : ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 20:59:04 weSy/TO20
以上で投下を終了します。

タイトルは、『いわゆる一つのカップやきそば現象』です。


196 : ◆vE7Jb4ucI6 :2014/08/03(日) 21:07:06 weSy/TO20
それともう一つ、セイバーのコンビを投下する予定でしたが、
今日中の投下が不可能という状況です。

投下予定の主従も二次二次聖杯戦争の候補作↓の続きです。

ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/267.html

↑の続きの作品をこちらに投下し、こちらでの登場話とする予定ですが
もしこのセイバーのコンビが採用となって、私の登場話が間に合わない状況なら、
↑の候補作を登場話ということにしていただけませんでしょうか?


197 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/03(日) 22:02:12 lLOEHf6k0
投下お疲れ様です。

構いません、その時にはよろしくお願いいたします


198 : 名無しさん :2014/08/03(日) 23:03:11 ko8C7Qh20
今日で最後か


199 : 名無しさん :2014/08/03(日) 23:55:14 ko8C7Qh20
途中送信していることに気づいた
今日で最後ですが延長頼めますか?


200 : ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/03(日) 23:57:24 HYbYdoQY0
投下します


201 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/03(日) 23:57:50 jG00p38Y0
かなりギリギリになってしまいましたが投下しようと思います
かなり急ぎ足で書いたので誤字等はご容赦を


202 : 暁美ほむら&キャスター ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/03(日) 23:58:15 HYbYdoQY0


『……皆様、今宵は当サーカスにお越しいただき誠にありがとうございます』


『此度のサーカスを彩る役者は、「地獄の機械」に運命を操られた一組の男女』


『片や叶わぬ愛を追い続け、片や救われぬ者に手を差し伸べる哀れな操り人形達』


『今回お送りしますは、その二体の人形の出会いの記録でございます』


『……おっと、そう身構えなくても結構。何しろ今宵演じられますは出会いの記録。皆様の心を砕くものは何処にもありません』


『どうか皆様、肩の力を抜き、ごゆっくりお楽しみ下さいませ――――』





□ □ 
□ □ □
□ □ ■ ■
■ ■ ■
■ ■




 何度も、何度も、何度も、何度も繰り返した。
 数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程、同じ時間を何度も遡ってきた。

 幾度も、幾度も、幾度も、幾度も魔女と戦い続けた。
 見飽きるくらいに、幾度も同じ姿の魔女を狩ってきた。

 何回も、何回も、何回も、何回も仲間を殺した。
 ある時は魔女と化した同胞を、時にはまだ絶望して無い者さえ何度も殺してきた。

 そうして、何度も、幾度も、何回も戦い続けて。
 暁美ほむらは、果たして大切な者を救えただろうか?

 答えは「否」だ。
 彼女は、一回たりとも願いを果たせていない。
 これまで渡った全ての世界で、失敗だけを積み重ねてきた。

 心をすり減らしながら戦っても、愛しの少女は憎きあの獣共と契約してしまう。
 魔法少女になったら最後、最早その先に待ち受けるのは絶望だけだというのに。
 それでも、あの優しい少女は、誰かを救う為に自分を犠牲にしてしまった。

 策をいくら巡らせても、理想に辿り着けない。
 どう立ち回ったとしても、驚異に抗えない。
 気付いた頃には、世界は自分の夢とは異なる方角に舵を切っている。

 まるで、地獄の誰かが造った機械に操られているかのように。
 暁美ほむらの運命は、いつも最悪の形で狂ってしまうのだ。

 そして、今回も。
 ほむらは立ちはだかる絶望に敗北した。

 瓦礫の山と化した街の上空では、今も魔女が嗤っている。
 ワルプルギスの夜は、全ての元凶となったあの悪魔は、未だ健在だった。

 一方のほむらは、それとは逆に満身創痍の状態であった。
 瓦礫を背にして座り込む彼女の姿は、生傷ばかりがよく目立つ。

 この瞬間に至るまで、ほむらは自分の持てる全てを以て戦った。
 ワルプルギスの夜を打倒する為に、たった独りで戦いに臨んでいた。
 今までで最も強力な武装と、今までで最も強固な決意。
 それを携えて挑んでも、それでもワルプルギスの夜には勝てなかった。

 魂の揺り籠が――ソウルジェムが濁り始める。
 絶望が魂を浸食し、自己を塗り潰さんとしている。
 このままでは、数分もしない内に暁美ほむらという個は消滅するだろう。

 ほむらにとって、諦めとは絶望と同義だ。
 足を止めたその瞬間、彼女は死を迎える運命にある。

 最早、どう足掻こうと無駄なのだ。
 ワルプルギスの夜は倒せず、まどかを救う事も出来ない。
 それが世界の選択であり、決して抗えない宿命なのだ。


203 : 暁美ほむら&キャスター ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/03(日) 23:59:24 HYbYdoQY0

 堰を切った様に溢れ出るのは、絶望の言葉達。
 それらに込められた負の感情で、ソウルジェムが黒く染め上がる。

 魂が完全に濁り切った時、ほむらは魔女へと姿を変える。
 だが、そうなってしまっても構わないとさえ、彼女は考えていた。
 ワルプルギスの夜と同じ様に、絶望の権化として呪いを振り撒くのも悪くないかもしれない。
 どうせもう、自分に打つ手など何も無いのだから。

 そうして、ほむらが全てを諦めようとした、刹那。
 彼女の指先が、何か堅い物に触れた。

 手に取ってみれば、それはテレフォンカードだった。
 血の様に赤いそれは、一見ただの道具にしか見えない。
 だがほむらには、これがただのカードでは無いと、何故だか思えてならなかった。

 ほむらの脳裏に、一つの噂が浮かび上がる。
 得物となり得る銃器を調べる内、自然と耳に入ってきた都市伝説。

 それは、次元を超えた先にある闘争の物語。
 永い戦争の先にあるのは、あらゆる願いを叶える万物の願望器。
 そして、戦場の片道切符となるのが、赤いテレフォンカード。

 もしかしたら、都合のいい作り話でしかないのかもしれない。
 聖杯など所詮空想の産物で、手にしたカードは無用の長物かもしれない。
 それでも、ほむらは願わずにはいられなかった。

 聖杯が齎す万能の力で、彼女を救う事が出来るというのなら。
 願わくば、その魔法の様な奇跡に縋らせてほしい。

 赤いテレフォンカードは、言うなれば地獄の底に垂らされた蜘蛛の糸。
 カンダタがそうだった様に、時の牢獄の中でもがく少女もまた、その一本に手をかける。



■ 
■ ■ 
■ ■ ■
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□ 



 暁美ほむらは、独り草原で立ち尽くしていた。
 ひどく懐かしさを覚えるのは、その風景が見滝原にも存在していたからだ。
 相違点を上げるとすれば、視線の先に崖が存在している所か。

 崖の手前に、椅子が一つ置いてある。
 シンプルな造りをしたそれに、男が座っていた。
 漆黒のローブを纏い、見事な髭を蓄えた銀髪の老紳士。

「貴方が私のサーヴァントかしら」

 この世界に投げ出された瞬間、無数の単語が頭に流れ込んできた。
 聖杯戦争、サーヴァント、令呪――今となっては、それらの具体的な意味さえ把握できる。
 だから、今椅子に座った老人がほむらの僕である事も、すぐに判断できた。

 都市伝説は――聖杯戦争はたしかに実在していた。
 希望はまだ、全て潰えてはいなかったのである。

「おやおや、これまた随分と可愛らしいマスターじゃないか」

 その言葉と同時に、老人の口元が三日月に歪む。
 酷く薄気味悪い彼の笑顔を前に、ほむらは僅かに眉を顰めた。

「その言葉、貴方で間違いないようね」
「ああそうだとも。君が僕のご主人様ってワケだね」


204 : 暁美ほむら&キャスター ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/03(日) 23:59:50 HYbYdoQY0

 賞賛のつもりか、老人はパチパチと手を叩いてみせた。
 本人にその気があるかは知る由も無いが、ほむらからすれば茶化している様に思えてならない。

 ほむらは、最初に出会った天戯弥勒という男を知らない。
 彼女が認識しているのは、あくまで万物の願望器とそれを巡る戦いだけであり、
 聖杯戦争が具体的に誰によって管理されているかなど知る由も無い。

「……まだ、まどかを救えるのね」

 だが、誰が管理しているかなど、ほむらにはどうでもいい話だ。
 例えその裏にどんな思惑が隠されていようが、彼女は願いを叶えられればそれでいい。
 大切な人を護るという、たった一つの純粋な祈りを実現できれば、それだけで構わない。

「どーしたんだい、さっきから表情硬くしちゃって。もっと笑いなよ」

 間の抜けた声でそう言うと、老人は椅子から立ち上がり、ほむらの元に歩み寄る。
 彼女の丁度目の前にまで近づいた瞬間、彼は顎と髪の毛を引き伸ばし、

「うちゅーーぢんだよ〜〜〜〜ぴきゃぺきょり〜〜〜ん」

 唐突に始まった悪ふざけを前に、ほむらの瞳が細まる。
 それを目にした老人の顔は、先程とは打って変わって露骨に萎えていた。

「……リアクションうっすいなァ。つまんねーの」
「悪いけど、そういう冗談は嫌いなの」

 「そうかい」とだけ言って、老人はほむらに背を向けた。
 抑えきれない不安感からか、ほむらは思わず問いを投げかける。

「貴方、本当に聖杯を獲る気があるの?」
「あるさ。獲る気無いなら最初から呼ばれる訳ないだろ?」
「私にはそう思えないけど」
「ひっどいなァ君。僕だって聖杯欲しくて仕方ないのにさ」

 会話の途中で、老人は先程まで座っていた椅子のすぐ近くにまで来ていた。
 彼は椅子を片手で持ち上げると、頭上高く放り投げる。

「安心しなよ。僕は――もの凄いんだからさ」

 その時、投げられたのは確かに椅子だった。
 しかし、宙を舞ったのは、椅子では無く、用途の無い木材の群れ。
 接合されていた筈の椅子が、バラバラに"分解"されていた。

「いつだって本気だったよ。200年間本気で恋して、本気で惚れて、本気で愛して。
 でもぜーんぜん駄目、誰も僕に振り向いちゃくれない。200年間僕はずーっとフラれっぱなしだったのさ」

 空に浮き上がった木片達は重力に従い、草原へと落ちていく。
 そうして地に伏したそれらを踏みつけながら、老人は再度ほむらに歩み寄る。

「僕はね、好きな人に愛されたいだけなんだよ。だけどさ、どーも聖杯じゃないと駄目みたいでね」

 「ひっどいよなァ、ホント」と大きく溜息をつく老人に対し、ほむらが抱いたのは狂気だった。
 好きな人に愛されたいだなんて、ただそれだけの理由で。果たして人間は、200年もの歳月を費やせるものなのか。

「ま、どんな願いがあるか知らないけど、僕は強いからもっと自信持っていいのさ。
 言うだろ?自分を信じて前向きにならなきゃ、叶う夢も叶わないってさ」

 にたり、と。不気味な笑みが、またもほむらに向けられる。
 瞬間、彼女の全身に走るのは怖気。
 言い様の無い、理由の無い嫌悪感が、全身を這いずり回る。
 例えるならそれは、初めて魔女をこの目で見た時の感覚によく似ていた。


205 : 暁美ほむら&キャスター ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/04(月) 00:00:16 x7hDRT860
「これから仲良くしようよマスター。
 僕はフェイスレス……ああ、キャスターって名乗った方が良いのかな?」
「……暁美ほむらよ」
「ほむら、ね。いい名前じゃないか。こう、燃え上がれーって感じでさァ」

 そう嘯いた後、キャスターはケタケタと嗤ってみせた。
 嗤い声が草原に響く中、ほむらの胸中から湧き出るのは――怒り。

 ほむらが護りたかった少女も、丁度このサーヴァントと同じ事を言っていた。
 まだ魔法少女ですらなかった頃、彼女はそうほむらを元気づけ、朗らかに、優しく笑ったのだ。

 拳を強く握りしめ、滲み出る怒りをどうにか抑える。
 例えどれだけ軽率な意思だったとしても、それだけは口にしてはならなかった。
 誰よりも救いたい少女との思い出を、下賤な笑顔で汚された。

「貴方なんかが、まどかと同じ事を言わないで……ッ」
「んん?なんか言ったかい?」
「……なんでもないわ」

 そうだ、今はまだ抑えるべきなのだ。
 怒りを曝け出すのは、聖杯を手にしてからでいい。
 聖杯戦争を勝ち残る為には、不愉快ではあるがこの男の力が必要不可欠なのだから。

 不気味な笑みを目にした時の嫌悪感も。
 まるで道化師の様なふざけた言動への苛立ちも。
 負の感情は偶然のものではなく、きっと生まれるべくして生まれたのだろう。 
 だから、今ならはっきりと言える。



(私は、こいつが嫌いだ)






□ □ 
□ □ □
□ □ ■ ■
■ ■ ■
■ ■






『……さて皆様、誠に申し訳ないのですが、今宵お送りするのはここまでとなっております』


『果たして、壇上で踊る人形達は、見事運命を覆せるのか……』


『この先の物語、それを目撃するか否かもまた運命――即ち、「地獄の機械」が決めるのです』


『では皆様、機会があれば、またこのサーカスで御会いしましょう』


『それでは、一時閉幕となります……』




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206 : 暁美ほむら&キャスター ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/04(月) 00:00:55 x7hDRT860
【出典】からくりサーカス
【CLASS】キャスター
【マスター】暁美ほむら
【真名】フェイスレス(白金)
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:E 宝具:A

【クラス別スキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利の陣地を作り上げる。
彼の造る工房は自動人形の製造に特化しており、その在り方は製造工場に近い。

道具作成:A
魔力を帯びた道具を作成出来る。
フェイスレスは人形制作に特化しており、意思を持ち自立稼働する人形を製造可能。

【固有スキル】
三解:A
フェイスレスが持つ「自動人形を沈黙させる三つの術」の総称。
「分解」は内蔵した工具であらゆる物体を"分解"する。人体の骨格も例外ではない。
「溶解」は掌から溶解液を発射し、対象を"溶解"する。神秘の塊であるサーヴァントには効き目は薄い。
「理解」は自動人形達に自らが創造主である事を"理解"させる。全ての自動人形はフェイスレスの支配下にある。

精神汚染:D
夢の成就の為に身を捧げた狂人。一切の悪行に罪悪感を抱かない究極の自己中心主義。
「ドス黒く燃える太陽」とまで評されたその精神を、常人が理解するのは不可能と言っていい。

変装:C
顔の形はおろか声質さえ自在に変化させられる特技。
ただし、髪の色だけは自力では変えられない。


【宝具】
『最後の四人(レ・デルニエ・キャトル)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜? 最大補足:?個
フェイスレスが自らの手で造り上げた最後の自動人形にして第一の僕。
彼の側近を務めた、言わば幹部格の自動人形であり、それらどれもがサーヴァントに匹敵する性能を誇る。
単独召喚は勿論の事、十分な魔力さえあれば四体全員の一斉召喚も可能。

・ハーレクイン
筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:B 幸運:E
全身タイツの自動人形。
常におちゃらけた態度をとる自称「道化師」だが、逆鱗に触れた者には激情を露わにする。
側頭部に装備された角を模した装備を用いる事で、様々な天候を自在に操る事が可能。
肉弾戦においても、ブリゲッラの背後からの攻撃を軽くいなしていた事から、相当の実力者だと判断できる。
口癖は「○○の△△にかけて」(例:「そりゃもう、娘っこの白い足にかけて!」)なお、これ自体に深い意味がある訳ではない。

・ブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナ
筋力:C 耐久:B 敏捷:B 魔力:E 幸運:D
コートと目深に被った帽子で全身を包んだ自動人形。
人間の武術に強い興味を示しており、戦闘時に置いてもその武術のみで闘う。
高い破壊力を誇る小型ミサイルを全身に装備しているものの、当の本人はこの武装を嫌悪している模様。
事実、やむなくミサイルを使用した後はその破壊力に快感を覚えてしまい、それが間接的な死の原因となっている。

・カピタン・グラッツァーノ
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:D 幸運:C
中世の軍人を意識した衣装を纏った自動人形。
剣技を得意としており、必殺技は電流を纏った剣で相手を貫く「血と雷(サングレ・イ・フェーゴ)」
また、足裏に装備されたジェット噴射器で空を飛ぶ事も可能。
由緒正しき軍人の家系を自称し、暇さえあれば自慢話を語っているものの、それらは全て法螺話に過ぎない。

・ディアマンティーナ
筋力:E 耐久:D 敏捷:B 魔力:C 幸運:B
ゴスロリ服を着た自動人形。
刃物や爆弾等を内蔵した熊の人形と、頭部の欠落した小鳥型の人形を多数所有している。
それらはディアマンティーナの命令で機動し、熊の人形は攻撃、小鳥の人形は防御の役割を担っている。
創物主であるフェイスレスに恋心を抱いており、二人は相思相愛だと信じて疑わないが、その片思いの相手は、彼女をさして重要視はしていないのが現実である。


207 : 暁美ほむら&キャスター ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/04(月) 00:01:23 x7hDRT860

【weapon】
『無銘』
頭部を除く全身を機械化しており、そこには様々な武装が内蔵されている。
「三解」のスキルの欄で説明した工具と強酸、そして左腕には大型のニードルを発射する装置を搭載している。
また、例え腕を切断しても、そこから無数のコードを触手の様に伸縮させる事も可能。

【人物背景】
奇病を振り撒く自動人形を破壊する「しろがね」の内、肉体の一部をサイボーグ化した「しろがね-O」の首領。
その正体は、その自動人形が誕生した原因を造りだした言わば全ての元凶である。
本名は白金(バイジン)。正確に言えば彼の人格と記憶を移した個体がフェイスレスであり、フェイスレスとしての本名はディーン・メーストル。
片思いしていたフランシーヌ、そして彼女と瓜二つの女性達を我が物にする為、200年にわたって彼女らを追いかけ回す狂人。
普段はふざけた口調と態度をとるものの、それらはあくまで演技であり、本来は利己的かつ冷酷な性格。
自分の考えこそが絶対だと信じて疑わず、過程で「ゾナハ病」なる世界最悪の奇病をばら撒こうが、彼は一切の罪悪感を抱いていない。
そんな彼を、ある少年は「全てを燃やし尽くして平然とゆらぎもしない、どす黒く燃える太陽」と形容している。

【サーヴァントとしての願い】
今度こそ、フランシーヌの愛を手に入れる。

【基本戦術、方針、運用法】
キャスターにして珍しく肉弾戦もこなせるが、本質はやはり自動人形達を利用した戦術だ。
戦闘、諜報、暗殺等、自動人形には様々な種類が存在し、それらを生かした戦術を組み立てるのが常套手段である。
量産した自動人形による人海戦術、諜報に優れた自動人形を利用しての奇襲など、搦め手で敵を撃破するのが利口だろう。



【マスター】暁美ほむら
【出典】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女性

【参戦時期】
ワルプルギスの夜に敗北した直後。

【マスターとしての願い】
鹿目まどかの救済。

【weapon】
盾の中に銃火器が収納されている。
詳しい内訳は不明だが、制限でミサイル等の大型兵器は没収されている模様。
グリーフシードの所持の有無については現状では不明。

【能力・技能】
魔法少女に変身が可能。固有能力は「時間制御」。
本編では時間停止を主に使用しており、魔力が残っている限り永続的に時間を停止できると思われる。
ただし、今回は制限によって停止時間に限度がかけられている。

【人物背景】
魔女と戦い続ける宿命を背負う代わりに願いを叶えた魔法少女の一人。
才色兼備の美少女だが、人を寄せ付けない雰囲気を纏っている。
まどかに対しては謎めいた忠告を繰り返すが、それ以外に対しては突き放したような態度を取る場合が多い。

その正体は、異なる未来の時間軸から時を遡ってきたまどかの親友。
元々の時間軸では病弱かつ引っ込み思案な少女だったが、ワルプルギスの夜との戦いで死亡したまどかを救う為に、
「鹿目まどかとの出会いをやり直し、彼女を守る私になりたい」という願いでインキュベーターと契約。
「時間遡行」の能力を持った魔法少女となり、まどかを救おうと何度も時を遡ってきた。
当初はまどか達と共にワルプルギスの夜の打倒を目指していたが、三度目のループの際、
まどか本人から「キュゥべぇと契約した私を助けてあげて」と懇願され、それからはまどかの契約自体を阻止する為に行動する様になる。

【方針】
優勝狙い。ソウルジェムの関係上、魔力の過剰消費は抑えたい様子。


208 : ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/04(月) 00:02:22 x7hDRT860
投下終了となります。
あと1,2作投下したい作品があるのですが、延長をお願いしてもよろしいでしょうか?


209 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/04(月) 00:07:26 QJeGaNow0
投下お疲れ様です!

此方としては予告も何もなしに始めた企画ですので構いません!
既に延長のお願いも出ているので……そうですね。

たしかしたらばメンテもありますので最低でも8月7日(木)までは伸ばします。

おそらく8月10日(日)まで伸ばすかもしれませんが、とりあえず7日まで延長です。

皆様、よろしくお願いいたします


210 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:12:42 MTw/Ylsc0
投下しようと思ったら別の方が投下始めてましたので待ってました
今から投下します


211 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:14:23 MTw/Ylsc0
「貴様が私のマスターか」

「あー・・・えっと、え、ええ!そうよ!ま、せいぜい頑張りなさい、セイバー」

ここは港。海には月明かりが反射し、夜だというのに輝きを放っている。
周りには波の音が静かに木霊している。
そんな環境で、日本刀を携えた軍服を着た男に「マスターか」と聞かれ、制服の少女は辟易してしまう。
なぜなら彼女にとって、このやり取りをするのは逆の立場であるはずだからだ。
彼女・・・叢雲は本来、艦娘と呼ばれる者達の一人であった。

(なんか慣れないわね・・・私はこの方がやりやすいんだけどさ)

叢雲は普段、提督に使役されるサーヴァントに近い身であるがゆえに少し驚いたが、
もともとプライドが高く、高圧的な態度を取ることが多かった彼女が慣れるのに時間を要さなかった。
まずはサーヴァントとなった者の情報を聞いておくことにした。

「私は叢雲。あんたの名前は?」

叢雲が聞いた途端、セイバーの顔がピクリと動き、驚いているのが分かった。
いきなり話しかけたので、このセイバーは人付き合いが苦手なのかと思ったが、理由は別のところにあった。

「叢雲・・・か。私はセイバーであり――真名は『ムラクモ』だ」
「・・・えぇ!?」

叢雲は驚きを隠せなかった。
この私と同じ名前のヤツが、サーヴァントでしかも老け顔の男だったとは。
しばらく叢雲が混乱していると、

「貴様・・・その艦装を見るに海軍の者か?そのような装備の類を見たことがある」

とセイバーは問うてきた。

「まあ、そうね、私は艦娘で深海棲艦共と戦ってたから
そういうあんたは陸軍の連中なの?その軍服。いかにも戦時の人って感じがするんだけど」
「陸軍に所属していた時期もあった・・・とでも言っておこうか」

ふーん・・・と叢雲は興味なさげに身体を海に向ける。
あの天戯とかいう男・・・本当に願いを叶える気はあるのだろうか?
確かに、叢雲の世界から深海棲艦を消し去ることができれば万事解決だ。
ただ、この殺し合い――聖杯戦争の場に来た叢雲はこれからどうすればよいのかわからなかった。
今まで作戦等の指揮は提督や旗艦を担当した艦娘に任せっきりだったからだ。
セイバーは陸軍に所属していたという。ならば・・・

「セイバー、あんたって軍を指揮したこととかある?」
「軍を動かしたことか。なくはないが・・・組織を動かしていたことの方が記憶に新しいな」
「なら・・・私はどうすればいいと思う?」
「指揮権を私に委ねるのか」

そういわれて、叢雲は否定できなかった。

「まあ良い、貴様がそれでいいのなら私のやるようにやらせてもらおう」
「勘違いしないでよね。私はただ、何をしたらいいのかわかんないだけだから。
あんたにマスターやれって言ったわけじゃないのよ?私がマスターであんたがサーヴァント。
そこんとこ、ちゃんと覚えといてよ」

叢雲は釘を打ったが、それに対してセイバーは何も言わなかった。


212 : 叢雲&セイバー ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:15:45 MTw/Ylsc0
(まさか私がサーヴァントとして転生するとはな)

ゲセルシャフトの基地最深部にてある男に敗れたセイバーは、
転生の法により別のクローンに転生するはずであった。
目を覚ますとそこは夜の港。
セイバーはサーヴァントとして転生しており、聖杯戦争の情報はいつの間にか記憶の中にあった。
目の前には制服を着た、海軍の戦艦を彷彿とさせる装備がある少女がいた。

(聖杯――願いを叶えることができる・・・か)

やはり、天は私を選んだ。セイバー――ムラクモは再度確信した。
この聖杯戦争を勝ち残り・・・復活する。そして、人口を殺戮によって調節する。
セイバーには『殺してでも増えすぎた人類を減らすべき』という思想があった。
その思想を現実のものとするために。現人神として降臨するために。
セイバーは聖杯を手にするために動き出した。



(産業革命以前、人類の繁殖限界はせいぜい数億だった)

(六〇億にまで膨れ上がった現状が如何に異常であるか)

(そしてこの先に待つのが破滅である事は論を俟たない)

(――人間に価値は無い―― 殺してでも減らすべきだ)

(しかし人々はその事実からずっと目を背けてきた)

(ならばこの星の未来の為に。自律出来ない愚民の為に)

(この私が神となり最終戦争という名の救済を授けよう)

(無論、私は国籍や肌の色、老若男女貴賎を区別しない)





(皆平等に殺して差し上げる・・・)


213 : 叢雲&セイバー ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:17:20 MTw/Ylsc0
【クラス】
アサシン

【真名】
ムラクモ@アカツキ電光戦記

【パラメータ】
筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運B 宝具A

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:C
騎乗の才能。
大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
 
魔術:A-
他者の身体を乗っ取って復活する「転生の法」という高度な魔術を習得している。
ただし、得意分野以外の魔術を使用することはできない。

単独行動:A-
マスター不在でも行動できる。
「転生の法」により『複製體』を媒介にして現界し続けられる。
『複製體』一体当たりの現界可能時間は一日程度。
ただし、マスター不在だと身体に電光機関使用による負荷がかかり、
現界時間が短くなるので乱用は禁物。

カリスマ:A-
大軍団を指揮する天性の才能。
しかし油断していると部下の反乱が起こるので注意。

軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。


214 : 叢雲&セイバー ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:18:28 MTw/Ylsc0
【宝具】

『電光機関(でんこうきかん)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:1人
ムラクモが身に着けている電光服(軍服)に装着されている特殊機関。
チベットの秘境で発掘された古代文明アガルタの超科学技術を元に開発された。
強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
電光服と組み合わせることにより使用者に超人的な身体能力をも与える無敵の兵器。
電光機関の電気は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、
使い続けた者は死んでしまうという欠点を持つ。
しかし、ムラクモはサーヴァントであるため、マスターから供給される魔力で
その電気を代用可能。消耗無しで性能を引き出せる。
ただし、単独行動中はその恩恵を受けられない。


『複製體(ヨリマシ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:1人
ムラクモのクローンを召喚する。
ムラクモの魔力が続く限り無尽蔵に召喚することができる。
ただし、ある程度の集中が必要で戦闘中に作り出すことはできない。
クローンはNPCの社会に溶け込ませることができる。


『転生の法(アオフ・エアシュテーウング)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:1人
ムラクモが戦前から生き延びた際に使われた秘蹟。
たとえムラクモが消滅しても『複製體』がどこかに存在する限り、
『複製體』の身体を乗っ取って復活することができる。


『電光私兵(エレクトロゾルダート)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1人
ムラクモが設立した秘密結社・ゲセルシャフトの私兵であり、ある人物のクローン兵士。
ムラクモの魔力が続く限り無尽蔵に独立サーヴァントとして召喚することができる。
ただし、ある程度の集中が必要で戦闘中に作り出すことはできない。
一人一人召喚する必要があるため、手間はかかるが、
それぞれがCランク相当の『単独行動』スキルを保有し、1日程度の現界が可能。
個体差は少なく、共通して攻撃的な性格や上司、「祖国」への高い忠誠心を示すといった性質を持つ。
個体ごとに電光機関と電光服を所持しているが、
全力でそれらを使用すると1時間程度で力尽きてしまう(なお、そのことをゾルダート達は知らない)。
また、かつてエレクトロゾルダートが自我を持ち、裏切った事例が1〜2例報告されているため、注意が必要。
彼らは以下のステータスを持つ。
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運E


『電光戦車(ブリッツタンク)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:10人
「禁断の決戦兵器」の異名を持つ自立駆動の戦車。電光機関を動力源とする。
電光機関による強力な電磁波での電子機器の無力化、光学兵器での誘導弾の撃墜が可能であり、
戦争形態を戦車が最強であった第一次世界大戦前後まで逆行させる事ができる兵器である。
電光機関は生物の生体エネルギーが不可欠である。自立駆動で動く戦車へのエネルギー源は人間でなければならない。
電光戦車は材料として生きた人間を使っている。
ムラクモは、『電光私兵』やNPC約10人と引き換えに電光戦車を召喚することができる。
また、かつて電光戦車が暴走して自我を持った事例が報告されているため、注意が必要。
それらは以下のステータスを持つ。
筋力A 耐久A 敏捷E 魔力E 幸運E


215 : 叢雲&セイバー ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:19:03 MTw/Ylsc0
【weapon】
・日本刀
ムラクモの愛刀。
この刀に電気の力を込めることで徹甲斬という斬撃を放てる。

・電光服
ムラクモが装備している最新式の六〇式電光被服。
電光機関と組み合わせることにより超人的な身体能力や電撃を操ることができるようになる。
ムラクモのものはこの他にも、分身を作り出して相手のかく乱や、
光学迷彩のごとく姿を消してのワープを行うことも可能。

【人物背景】
元帝国の駐独陸軍武官であり、戦前の人間。第二次世界大戦に視察団としてドイツを訪れ、
その在任中に「ペルフェクティ教団」と接触し、軍技研究機関として「ゲゼルシャフト」を設立。
その後、べルリン陥落時に死亡したかに思われたが、
秘蹟「転生の法」と複製體(クローン)技術と組み合わせる事で蘇り、
冬眠制御によって現代まで生きながらえる事となる。
完全者の持つ秘蹟「転生の法」に加え、確立されたクローン技術と電光機関のノウハウを手にした事で、
「天が自分を支配者として選んだ」と確信 。電光機関の独占を目論みアカツキらを抹殺するつもりで北極航路に送り出した。
現代に降り立った彼は「増えすぎた人類は殺してでも減らすべき」という思想の元、全世界に最終戦争を仕掛けようとする。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯を手にすることで受肉し、現人神として殺戮により人口を調整する。

【基本戦術、方針、運用法】
 ステータスは全体的に高く、正面対決もできなくはないが宝具が直接攻撃に向いていないため、
 まずは地盤を固めることから始めたい。
 十分な数のクローンを作り出して転生先を作っておき、
 エレクトロゾルダートを召喚して偵察などに使うのが吉。
 怪我をして使い物にならなくなったエレクトロゾルダートは
 NPCと共に電光機関の材料になってもらおう。
 また、裏切りには十分な注意を払う必要がある。


216 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:19:57 MTw/Ylsc0
投下終了です
何度もすいません、マスターのステータス表はまた後日上げさせていただきます


217 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/04(月) 00:21:38 MTw/Ylsc0
>>213
誤字がありました。【クラス】がアサシンではなくてセイバーです
失礼しました


218 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/04(月) 00:29:26 ZS4ItT/A0
ほーむレスがキター

上で書いた鶴喰梟&フェイスレスですが、棄権扱いにしてください
冴えないおっさん書くよりはほむらちゃん通った方が好みなので


219 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/04(月) 00:34:16 QJeGaNow0
皆様投下お疲れ様です。
>>216
ステ投下お待ちしております。
>>218
了解しました。残念ですが本人の意見が一番ですので。

それではここまでの投下をまとめてみました。
今回はURLも含めて。

【セイバー】
★夜科アゲハ&纏流子
○レックス&少名針妙丸
○叢雲&ムラクモ
○狛枝凪斗&ゴールドマン

【ランサー】
○ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア・スカーレット
○朽木ルキア&前田慶次

【アーチャー】
○ジョナサン・クレイン&エス・ノト
○タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド
○美樹さやか&ヘラクレス

【ライダー】
★鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ
○遠坂時臣&桐生一馬
○虹村形兆&エドワード・ニューゲート
○ジン&カービィ

【キャスター】
○浦上&グレムリン
○犬飼伊助&食蜂操祈
○マルチェロ&鬼人正邪
○暁美ほむら&フェイスレス(白金)

【アサシン】
○星空凛&プロシュート
○シド&シェードマン

【バーサーカー】
★間桐雁夜&一方通行
○美樹さやかちゃん&不動明

抜け落ち等ありましたら申し訳ありません。
……私も何か書きたくなってきました……それはそれとして。

帰還は現在7日(木)までですので、よろしくお願いいたします。


220 : 名無しさん :2014/08/05(火) 00:54:35 ROFj6hxcO
いつのまにかこんな企画が!アゲハ組初め、見たかった組が沢山で楽しみ

そしてセイバーでムラクモ来たかー、うんセイバーだな
と言うかアカツキも何げに人気ですね

顔無し司令の参戦もうれしい
鶴喰父マスターの方も、アポリオン宝具かつ違った方向性の戦法ですげー面白かったけど、作者さんの意向なら仕方がない。ほむら顔無しも応援してた組ですので、これも楽しみに見守らせて頂きます


221 : 名無しさん :2014/08/05(火) 15:18:26 tHaTW1V.0
叢雲のステータス表です。
本来、叢雲の夜戦では主砲と魚雷の混合装備はオススメされていないのですが
weaponは立ち絵の装備準拠にしました

【マスター】
 叢雲

【出展】
 艦隊これくしょん

【マスターとしての願い】
 深海棲艦をこの世から駆逐する

【weapon】
 『12.7cm連装砲』
 駆逐艦の初期装備。叢雲のバックパックから伸びるアームで連装砲を保持している。
 仰角をカバーすることができないため、対空戦にはやや不向き。

 『61cm三連装魚雷』
 左手に手甲状の魚雷発射管を装備している。魚雷戦や夜戦で重宝する。


【能力・技能】
 艦娘なので、水上を自力で走行できる。
 そのため、水上では本来の実力を十二分に発揮できる。
 彼女は駆逐艦に分類されるため、耐久や火力には乏しいが回避能力が高い。
 また、夜戦では能力が大幅に向上する。

【人物背景】
 艦隊これくしょんに登場する吹雪型駆逐艦5番艦をモデルにした艦娘。
 性格はプライドが高く、常に上から目線で、好戦的。ツンデレな一面もある。
 艦隊これくしょんでは最初に選択できる艦娘の一人であり、
 その性格からドM又は強気な娘ほど指導し甲斐があるというドSな提督から需要がある。
 
【方針】
 とりあえずセイバーに任せてみる。
 ただし、叢雲本人は指揮権を完全に委ねたつもりはない。


222 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:40:46 G1p.Lh9Q0
修正した狛枝凪斗&セイバー投下します。


223 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:44:46 M3p0f4DU0
青い空に白い雲、青い海に白い波。これぞまさに南の島!という楽園のような光景が広がっている。
ここは世界的なリゾート地、ジャバウォック島。ウサミというぬいぐるみ?に突然連れてこられて参加者同士絆を深めろという企画……どっきどき修学旅行。
船も飛行機も迎えも連絡手段もなく、生活に必要な物資はあるけど……殆ど娯楽のないこの島で数少ない楽しみといえば

「お、育ちきったね。今回は……ゴリミかぁ」
歩数に応じて成長する電子ペットと
「それじゃあ回してみようか」
育てたペットの種類に応じて手に入るメダルで回せるガチャガチャ、モノモノヤシーンくらい。さて、今回は何が出るか……

「あれ、これは初めて見るな」
出てきたのは赤いカード。用途もわからぬものが出てきて、どうせならもっと強い希望を感じさせてくれる物がよかった、などと考えていると

「……カードが、光っ――――?」




「狛枝のアバタ―が消失した?おいどういうことだ説明しろ苗木」
「モノモノヤシーンをやっていたところまではログが残っているけど……どうなったかわかる?アルターエゴ」
「えっと、モノモノヤシーンで引いた端末を操作して偶然どこかにハッキングしちゃったみたい……そんなもの入っているはずないし、ジャバウォック島の外に回線は繋がってないはずなのに……どこに行ったかはわからないや……ごめんねぇ」


「聖杯戦争、ねぇ」
わけのわからないところに飛ばされて意味不明な説明を受ける。あの天城という男もウサミの仲間なのかと最初は思ったが、どうやら別の催しに巻き込まれてしまったらしいことが新たに埋め込まれた知識でわかる。
そのルールの一つ、刻まれ始めた令呪を眺め一人ごちる。

「しかしこのデザインはいただけないなぁ」
左手の甲に描かれた666という三画の文字……獣の数字、悪魔の暗示。

「まるでボクの左手が絶望を宿しているみたいじゃないか」
いくらボクが劣等生でも絶望呼ばわりは勘弁してほしいなぁ、などとぼやいていると

「お前が我がマスターか。ひとまず最低限の魔力はあるようだな。私はセイバー、名を聞こうか、マスターよ」

現れる白銀の肉体に角の生えたマスクをした大男。この戦場のルールの真骨頂、一蓮托生のパートナーとの初邂逅だ。

「よろしく、ボクは狛枝凪斗だよ。幸運には自信があるけど、それ以外は誇るようなものは何もないゴミクズだよ?魔力なんて……ところでキミは英霊としてどんな才能を持っているの?」

超高校級をも超えうる伝説の英霊。マスターとしての眼力で垣間見えるスキル、そして宝具、才覚に胸躍らせる狛枝凪斗。一方、マスターの自虐を謙遜ととらえたか、問いに答えるセイバー。
「手の内はいずれ戦闘で見せるが、リングとその上で闘う技こそが全てだ。素性を言うなら超人、お前たち人間とは異なる種族……そのなかでも悪魔超人と呼ばれる一派の首領が私だ。名をゴールドマン、もしくは悪魔将軍」
「超…人?人を超えた存在……悪魔……いうなれば超人級の絶望か……」

希望を信じる彼に悪魔なる存在は受け入れがたいものだったか。いや……

「すばらしいよ!!」
感嘆の声を上げる希望厨。死んだ異教徒はいい異教徒らしい。


224 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:45:31 M3p0f4DU0

「ボクは希望を信じている。最後には希望が勝つ!そう確信しているんだ!現にキミが今こうして英霊としているということは、超人級の絶望と言えど希望に敗れたってことでしょ?」
「確かに私は正義超人に破れている。しかし敗れようと屈しないのが超人というものだ」
「へーえ、察するところ聖杯には復活を願うのかな?」
「聖杯などに頼るつもりはない。手にすれば願いがかなう願望器……そんな物の存在は生きとし生けるものの繁栄において邪魔でしかない。自らを高めることを怠る存在に未来はない。怠惰、それを誘発する聖杯、偽りの希望などこの手で破壊するのみ」
「つまり、他の参加者と協力してあの天城という男に反抗すると?」
「協力者など不要。あくまで聖杯を手にし、そのうえで破壊するつもりだ」

技能、願い、方針、サーヴァントのそれらを聞き届けたマスターは……

「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!
超人級の英雄が力を合わせて悪魔という絶望に立ち向かう!ああ、なんて素晴らしくて美しいんだろうね!」」

高らかに笑う。その目に宿るは狂喜、狂気、正気、瘴気。己がサーヴァントの信念に触れ、その絶望的な希望に歓喜する。

「キミはとても優れたサーヴァントだね。最優のクラス、セイバーであるのに加えて自らの有利なフィールドに敵を無理やり引きずりこむことが出来る。魔力消費もボクのような劣悪なマスターでも十分なくらい扱いやすいみたいだ。英雄としての誇りもある。そんなキミが聖杯の前に立ちはだかるなんて本当に絶望的だよね……。だからこそ、希望の象徴と言える超人級の英雄が聖杯をとるための踏み台に相応しいとも言える」

己が敗北の可能性を語られようと白銀の悪魔は余裕を崩さない。むしろ目の前の男を試すように語りかける。

「踏み台、か。お前自身は聖杯を求めないと?それだけ希望を求めるというのに。ましてや正統なる英雄が悪魔に敗れるのも、私が敗れお前が消えても構わないというのか?」
「それなら仕方ないよ。なにせボクは決定的に最低で最悪で愚かで劣悪な何をやってもダメな人間なんだ。敗退するのは仕方ないし、所詮、ボクらという踏み台を乗り越えられない程度でしかない英霊なんて希望足り得なかったということなんじゃあないかな?ボクらが手にできるということは、キミの言う通り聖杯は偽りの希望でしかないんだろうね。そんなものに興味はない。破壊されたところでなんということはないね」

自己犠牲はおろか他者の命すらなんということはないと語る。希望のためならいかな生贄でも捧げるといわんばかりだ。

「正義の味方の活躍には悪役が欠かせない、そして勝者こそが正義、というわけか。その歪み、なかなかの悪魔の才覚だ。運が良かったな、マスター。この時点で揉めていれば私はお前を殺していたぞ?」
「言ったでしょ?幸運には自信があるんだ。なにせボクは超高校級の幸運だからね」

彼がこの地を訪れたのは幸運なのか、不運なのか。それはきっと幸運の女神のみぞ知る……


225 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:45:59 M3p0f4DU0
【クラス】セイバー
【真名】ゴールドマン(悪魔将軍)@キン肉マン
【パラメータ】筋力B 耐久E+++ 敏捷C 魔力E 幸運C+ 宝具EX
【属性】混沌・悪
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。悪魔サタンや完璧超人始祖と深いつながりを持ち、自身も悪魔霊術という特異な呪術の使い手であるため、魔なる者には強い耐性を持つ。
ただし悪性のものであり、また神の加護を捨てているため本来のものより低くなっている。

騎乗:C+
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。ただし悪魔に類する魔獣ならば乗りこなせることもある。

【保有スキル】
恐怖の将:B+
対峙するものに恐怖を抱かせ、敏捷をワンランク低下させる。またファンブル率を上昇させる精神干渉スキル。
属性:悪のものには同ランクのカリスマを、中庸および善のものには同ランクの反骨の相を発揮する特殊スキル。

超人レスリング;A+++
超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。Aランクでようやく一人前と言えるスキルでありA+++ランクともなれば宇宙でも指折りの達人の域。
リングの上では全ステータスがワンランク向上し、スキル:戦闘続行を得る。

魔術:E−
悪魔霊術という特異な呪術様式。将軍復活、地獄のキャンバス、ブラックウィザードなど様々な呪いを習得していたが、セイバークラスで現界しているため最低限しか扱えない。せいぜいNPCや霊地から効率よく魔力を奪える程度である。

神性:−
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。超人の神に最初に同朋として選ばれ、その力の一部を分け与えられたゴールドマンは高位の神性を持つのだが、彼自身が神を嫌い、悪魔に身を落としたためこのスキルは失われている。

【宝具】
『金剛よりも固きもの、金剛よりも砕けぬもの(ダイアモンドオアスネークボディ)』 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
肉体の超人硬度を0〜10まで自在に変える。超人硬度10のダイアモンドボディならサファイアの鎧も容易く切り裂き、あらゆる打撃をはじく。硬度0のスネークボディなら頭さえ通るならどんな隙間も抜ける軟体となり、どんなサブミッションも効かない。
またスネークボディになり体の組成を組み替えることで物理的なダメージはリセットすることも出来る。
この宝具によりステータスの耐久値を自在に変換でき、耐久を低下させることで魔力消費を大きく抑えることが出来る。

『地獄の断頭台』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
ゴールドマンがセイバーとして呼びだされた所以であり、悪魔超人界最強にして最恐の刃と言える彼のフェイバリット。
スピン・ダブルアームで相手が垂直になったところ上空に投げ飛ばし、逆さになった相手の首にダイアモンドボディとなった自分の膝を落とし、そのままリングに叩き付ける技。この技を止めるにはダイアモンドボディとなったゴールドマンを上回る神秘に加え、彼とわたり合える格闘技能が必要となる。
この技を受けたものはスキル:恐怖の将による影響をより強く受け、ファンブル率が大きく上昇する。


226 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:46:25 M3p0f4DU0
『正義と悪魔の決戦の地(ジェネラル・パラスト・デスマッチ』
ランク:B 種別:対陣宝具 レンジ:0〜10 最大捕捉:15人、NPCのみ上限なし
生前に考案したリング、ジェネラル・パラストを魔力によって形成・再現する固有結界とは似て非なる大魔術。リング上の赤コーナーにゴールドマン、青コーナーに敵サーヴァントを置き、各々のマスターはセコンドコーナーに配置される。セコンドコーナーにはリング上からの攻撃は結界により基本的に通らず、例外としてリングコーナーの鉄柱を投げつけるなどリング上の設備を利用した攻撃のみが可能である。ただし外部からリング上への攻撃および乱入に制限はない。
最大で3対3の変則タッグマッチ、6人参加のバトルロイヤルまでが可能である。この場合リング外にいるサーヴァントもセコンドコーナーには攻撃できない。
闘う者以外にレフェリーと実況、解説を1人ずつ固有結界内に取り込むことも可能。このポジションは捕捉範囲内のマスターやサーヴァントはもちろん、会場内のNPCをランダムに連れ込んだりすることも可能。またパラストによっては観客席が存在するものがありNPCをそこに大量に連れてくることも可能。NPCは宝具の射程に依存せず、どこからでも連れてこられる。
レフェリーや観客を守る結界などはないが、リング上では精神干渉の効果があり何となく攻撃しちゃいけない雰囲気になる。この精神干渉に抵抗するには精神系スキルではなくルールを無視できる悪辣さが必要になる。
なお各ジェネラル・パラストは出入り口が存在し、属性が混沌または悪の者ならばパラストへの侵入も脱出も自由。ただしパラストの鍵を使えば誰でも通行可能になる。現実世界での出入り口はゴールドマンが結界を発動したところにどこでもドアのように扉だけポツンとある。
なお逃亡したものはスキル:恐怖の将の影響を今後強く受け、ファンブル率が大きく上昇する。
決着のゴングが鳴り響いた場合サーヴァントの生死を問わず解除される。
パラストの外にモニターのようなものを表示し、中での闘いを外に知らしめることも可能。
再現できるパラストは以下の通り。

〈悪魔の涙(ジェネラル・ラクリマ)〉
満天の星空の下にリングがある。特に仕掛けはない。出入り口は青コーナー後方。

〈悪魔の尊顔(ジェネラル・フェイス)〉
海上の孤島に存在するリング。リングの外で水上戦、水中戦が可能。泳いで島から離れる事ことで脱出可能だが、ある程度進むとゲートバリアーにより先述の条件を満たす者以外通れない。

〈悪魔の脚部(ジェネラル・フット)〉
多数の階段を上った先に存在するリング。リング外との高低差を利用した闘いが可能。また魔界の嘘発見器「鬼だしの窯」が設置されており、対戦者以外のものに対し使用可能。階段の一番下が出入り口になっている。

〈悪魔の五角形(ジェネラル・フィンガー)〉
岩盤でできたリングであり、リング上の人数に応じて大きさの違うリングが使用できる。多人数戦ならばこのリングがいいだろう。また観客席の存在するパラストである。リングから離れることで結界からの脱出可能。ただしゲートバリアーは存在する。

〈悪魔の肋骨(ジェネラル・リブ)〉
リング上に肋骨を模した岩のオブジェが存在する。また観客席が存在する。出入り口は青コーナー後方にあるが、船を漕がなければ出られないためある意味最も脱出困難なパラスト。

〈悪魔の胎内(デーモン・ウゥーム)〉
ゴールドマンが殺害してきた超人に加え、これまでに命を落としたNPCおよび参加者が文字通り人柱となった脊柱の上に設置されたリング。脊柱による高低差を利用することも出来るが、脊柱内に囚われた死者たちの断末魔こそがこのリングの真骨頂。ひょっとしたら死した者たちの協力を得ることも出来るかもしれないが……。脊柱を降りて進んだところに出入り口がある。

この宝具の発動及び維持を行っている間はそれに魔力を消耗することはなく、結界が閉じたときに徴収される。そのときにゴールドマンに敗北、または逃亡を行った敵がいる場合その消耗を等分する。
シングルマッチで勝ったなら敵と半分ずつ負担し合い、タッグマッチで勝てば自身と敵二人で三等分することになる。


227 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:47:02 M3p0f4DU0
【weapon】
なし。鍛え上げた自らの肉体のみが超人の武器である。ただしリングの鉄柱やパイプ椅子の使用は超人レスリングではよくあること。
地獄のメリー・ゴーラウンド?あれは技だ。ウォーズマンのベアークローやロビンマスクのアノアロの杖よりは能力っぽいだろう。

【人物背景】
生まれついて卓越した力を持つ種族、超人であり、その中でも悪魔超人と呼ばれる一派の首領にして最強のファイター、悪魔将軍。
その正体は太古の時代、神による超人の大粛清の際に、かつて神だった超人によって救われた十人の「完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)」の一人「完璧・壱式(パーフェクト・ファースト)」である超人、ゴールドマン。しかし完璧超人らは自分たちこそが特別であるという妄想の下で増長し、本来あるべき進化を止めたと考え、決裂。弟のシルバーマンと共に地上に降り立ち、大魔王サタンと手を組み悪魔将軍となった。
正義超人と幾度も争っており、一時的に地球の支配に成功したこともあった。この際に処刑と娯楽を兼ね備えた様々なデスマッチリングを遺跡として残している。
何度目かの争い、正義超人キン肉マンらアイドル超人との闘いに敗れ命を落とすも、キン肉マンをもってしても彼の必殺技は破れず、強烈なトラウマを刻んだ。部下の離反や黄金のマスクの改心などがなければキン肉マンでも勝利は難しかったと考えられる、作中最強の悪行超人候補。
幾度も生と死を繰り返す亡霊超人であるため、一応死んでおり英霊として召喚された。自力で再生はできるため聖杯に復活を願うつもりは微塵もなく、むしろ「願いをかなえてやる」などという傲慢さに完璧超人たちと同じものを感じ、反発している。

【サーヴァントとしての願い、方針】
まやかしの希望など不要。聖杯は破壊する。
ただし正義超人やそれに類する者どもと手を組むつもりは一切ない。気に入ったものは部下にしてやってもよいし、協力も考えるが基本聖杯戦争を勝ち抜くつもりで行く。

【基本戦術、運用法】
出会ったサーヴァントに片っ端から『正義と悪魔の決戦の地(ジェネラル・パラスト・デスマッチ』で超人レスリングを挑む。維持に魔力を消費することはないため縛りなく闘うことが出来る。
リング上ならアサシンやキャスターはまず完封できるだろう。他のクラスは個人差があるだろうが、ステータスでは負けないだろうし、超人レスリングの達人としてうまく観客を味方につけよう。武器を持ってるやつに「空気読めー」と空き缶を投げたり、パラストから逃げようとしてる敵に「空気読め−」とごみを投げたりする原作さながらのマナ悪な観客がいれば精神的に優位に試合を運べるかもしれない。
モニターやパラストのカギは誰かを誘い込んだり決闘を挑んだりするのに使えるだろうが、戦略的にはあまり賢くない。でもこの主従なら使う機会はあるんじゃないかと思う。
消耗を抑えるためリング上での闘いでは敵を消滅させず、試合での勝利を狙い殺害は試合終了後リングの外で行うのが賢明。超人たるものリング上では紳士に振る舞うこともあろう、ただしだからと言って殺さないとは限らないのがこの男の恐ろしいところだが。
ほか二つの宝具、というか技はほぼ魔力消費もなく使えるので普通に戦って普通に使おう。
マスターは魔力供給に関して優秀とは言い難いが、燃費は良く、実力も十分。連戦は厳しいが、敵サーヴァントやNPCを利用して消耗を抑えれば十分に戦える。

【マスターステータス】
【名前】狛枝凪斗@スーパーダンガンロンパ2

【参加方法】
モノモノヤシーンからなぜかテレカが出てきて参戦してしまった。

【マスターとしての願い】
聖杯戦争の過程でより強く輝く希望を見る。聖杯にはあまり興味がないつもり。

【能力・技能】
幸運EX
超高校級の幸運。不運の引き換えに幸運が、幸運の引き換えに不運が訪れるプラマイゼロの幸運。不運が大きいほど幸運も大きなものが訪れる。逆もまたしかり。幸運だが、幸福とは限らない。いつか必ず訪れる揺り戻しは良くも悪くも幸運EX

スキル:信仰の加護A+++
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。彼の場合希望への絶対的信仰と、絶望への病的なまでの嫌悪。
加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。……高すぎると、人格に異変をきたす。

自身を幸運以外誇るところのないゴミクズと自虐するが、推理力・洞察力は優れている。
電脳のアバタ―という異常な形での参戦が幸いしてか維持程度の魔力供給は辛うじてできている。原作士郎がアルトリアを従えていた程度の最低限。
テレカでの脱出が出来るかは不明。

【weapon】
なし。しいて言うならゴミクズのような自身の唯一の才能、幸運。


228 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:48:17 M3p0f4DU0

【人物背景】
超高校級の才能の持ち主のみが入学を許可される希望ヶ峰学園に抽選枠である「超高校級の幸運」として招待された少年。これは他の候補生と違い才能が買われたためでなく、完全にランダムの枠に幸運にも選ばれたものである。
性格はのんきでマイペース。驚異的なポジティブシンキングで、どんな状況でも「絶対的な希望」を信じ、自身の持つ「超高校級の幸運」に関しては絶対の自信を持つ。その反面、自身のことは優れた才能を持つ者と比べると「所詮ただの幸運」とネガティブに低く評価し、極めて自虐的で卑屈な態度をとる。
しかしその幸運はバカにできたものではなく、生まれついてすさまじい強運をもつ。
不運にも飛行機テロに合った。しかし幸運にも隕石が落ちてきてテロリストは死んだ。しかし不運にも隕石のせいで飛行機は墜落し、両親含む乗客は自分以外全滅した。しかし幸運にも両親の遺産が一生食うには困らないだけ転がり込んだ。しかし不運にも遺産目当ての誘拐にあった。幸運にも逃げ出せたが、不運にも逃げついた先はゴミ箱の中。そのゴミ箱の中で握りしめていたゴミが幸運にも当たりの宝くじであり、さらに金銭面には困らなくなった。制御の難しい自らの才能に翻弄され続ける人生を過ごしていたため、「絶対的な希望」に対して異様な執着を見せるなどその価値観には少なからぬ歪みがある。どんな不運も乗り越えれば幸運が必ず待っている=絶望を乗り越えた先にはより強い希望があると信じ、また生まれ持った才覚である幸運を乗り越えられるのは同じく生まれ持った才覚のみであると信仰するようになっており、いわゆる才能至上主義者、本人風にいうなら「超高校級の超高校級マニア」である。
そのため才能を持ち合わせない者には冷たく当たり、才能ある者に対しては極めて自虐的に接する。そしてより強い希望を見るためなら一切の犠牲を考慮しない。自身の命はもちろん他者の命の犠牲にすることもいとわない狂信者。
彼が召喚されたのは希望ヶ峰の卒業生が企画したどっきどき修学旅行の最中。赤いテレカを引き当て、聖杯戦争に参加し、ゴールドマンという超高校級ならぬ超人と出会ったのは幸運かはたまた不運か。

【方針】
希望の踏み台になるためなら手段は択ばない。暗殺、襲撃、謀略なんでもやる。
戦闘は完全にサーヴァントに任せ、希望の踏み台になってもらう。優勝してしまったなら自身とそのサーヴァントで偽りの希望、聖杯を破壊する。
なお、より強い希望を感じるものがあるなら他のサーヴァントに乗り換えることも当然いとわない。


229 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/05(火) 21:49:56 M3p0f4DU0
投下完了です。二次二次投下時からステも少々変更しました

誤爆とかめげるわ…


230 : 名無しさん :2014/08/06(水) 00:31:10 ZF2uZ96g0
投下乙です
同じルールに引き込んで戦わせる...面白い能力ですね!
自分もノーゲーム・ノーライフの空白を二人一組のサーヴァントにして
お互いに暴力なしのゲームで戦う能力持たせるとこまで妄想したけど自分には無理だったよ...


231 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/07(木) 00:05:53 gy966Iuo0
投下お疲れ様です。

候補募集期間は今日までとなっております。
延長等が在る方はご相談を。

よろしくお願いいたします。


232 : 鈴仙 優曇華院 イナバ&バーサーカー :2014/08/07(木) 18:14:31 AlwXtBM20
投下します。


233 : 鈴仙 優曇華院 イナバ&バーサーカー :2014/08/07(木) 18:14:52 AlwXtBM20

 彼女は決して世界に不満があった訳では無かった。
 苦労はあるが、仕えるべき人間に仕え、師でもある上司に遣われ、仲間や先輩とともにそれなりに愉快に過ごしていた。
 だが、地獄に堕ちるとも言われた過ちに、忘れられない過去の後悔に彼女は縛られていた。
 それ故に。ほんの軽い気持ちで、彼女はなんでも願いが叶うなどという胡散臭い漂流物に手を出した。
 幻想があり、信仰があり、怪異がある。
 それ故に臆病者で真面目な彼女は、ほんの軽い気持ちで、過去と怪異を天秤に懸けた。


234 : 鈴仙 優曇華院 イナバ&バーサーカー :2014/08/07(木) 18:15:18 AlwXtBM20


「うどんげェ! お前の前の棚のオレオとってオレオ!」

 
  イケメンが
     開口一番
       これである


       鈴仙 優曇華院 イナバ          


「いやあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


235 : 鈴仙 優曇華院 イナバ&バーサーカー :2014/08/07(木) 18:15:52 AlwXtBM20


『波長を操る程度の能力』

 これが鈴仙 優曇華院 イナバの能力である。彼女はあらゆる波長に有為に無為に干渉する。
 もちろん、赤いテレホンカードを介し、聖杯にも干渉する。
 干渉してしまったのである。

「……その結果だろうな、マスター」
「……はい」
「元来、残念だが、オレにバーサーカーとしての適性は無い。それどころか英霊として祀られる霊格を持つかどうかすら……。
 これは、マスターの得意とする狂気の発露が聖杯に干渉したためと考えられる。」
「……はい」
「幸い、本来持ちえぬ物を無理矢理負荷させたためか、令呪2画で封ずることができた。
 ただし、切り札とも言える令呪を2画無駄に消費したとも言い換えられるが」
「……はい」
「落ち込むのは分かるが、貴方がその調子ではこちらも困る」
「……はい」

 鈴仙 優曇華院 イナバは聖杯戦争を始めてすぐ、令呪を2画失った。
 そのサーヴァント、バーサーカーは召喚されてすぐ、クラススキルを失った。


236 : 鈴仙 優曇華院 イナバ&バーサーカー :2014/08/07(木) 18:17:19 AlwXtBM20
【クラス】バーサーカー

【真名】うちは イタチ

【パラメーター】
 筋力C 耐久D 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具B

【属性】
 中立・善 

【クラススキル】
 狂化:--(EX)
  本来バーサーカーとしての適性はもたないが、事故により異世界の謂れも無い伝承を被せられ召喚され得た狂気。
  バーサーカーは犠牲になったのだ……古くから続く多元世界の伝承……その犠牲にな……
  言語を発し、コミュニケーションのような何かを求めてくるが、会話は通じなく、本来の狂化スキルによるステータスアップの恩恵も無い。
  本来持たない故に、令呪2画で容易に取り除くことができた。
  とはいえ、クラス自体が本来保有するスキルのため、未だ言動に何らかの影響を受けるおそれはある。

【保有スキル】
 写輪眼:C
  動体視力が強化され、魔力の流れを視覚として感知する魔眼。
  同クラスまでの体術・魔術の仕組みを看破でき、それが己の技術で再現できる物ならば、模倣も可能。
  また、目を合わせた者に幻術・催眠術を掛けることができる。
  この瞳を一つ犠牲にすることで、事実を夢の世界に置き「無かったことにする」魔術、『イザナギ』と、
  相手の精神が正しい答えを見つけ更生するまで特定の時間を切り抜いた幻術世界のループに閉じ込める『イザナミ』を使える。

 忍術:C(--)
  バーサーカー本来の世界における魔術。詠唱ではなく手で印を結ぶことで現象を起こす。
  狂化の犠牲として失われていたが、理性とともに取り戻した
  とはいえ、狂戦士のクラスであるため幾分か劣化している。
  本来彼の印を結ぶ早さは写輪眼でも追い切れない程であり、適合するクラスであればさらに上のランクだっただろう。  
 
 気配遮断:A(--)
  自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
  狂化の犠牲として失われていたが、理性とともに取り戻した
  本来、バーサーカーは13歳で暗部の部隊長を務める程に隠密行動に長けている。    

 火の意思:A(--)
  忍者としての精神力や気位。精神干渉に対する強い抵抗力をとなり、詐術も看破できる。
  狂化の犠牲として失われていたが、理性とともに取り戻した。
  彼は忍の神と謳われた忍者も認める火の意思の持ち主であった。  
  
【宝具】
『万華鏡写輪眼(まんげきょうしゃりんがん)』
 ランク:B 種別:対己宝具 レンジ:-- 最大補足:1人
  うちは一族の伝承で語られる、親しい人間を犠牲にすることで開眼する呪われた魔眼。
  左右の瞳にそれぞれ固有の神秘を宿し、行使することができる。
  彼の場合は右の瞳に漆黒の炎を操る『天照(あまてらす)』、左に瞳に彼が全ての法則を操る幻術世界に対象の精神を取り込む『月読(つくよみ)』を宿す。
  また、絶大な耐久、対魔力と固有の神具を持つ持つ巨人『須佐能乎(すさのお)』で己の周囲を覆うこともできる。  
  それぞれが強力な能力を持つ半面どれも魔力の消費は高く、能力を解放し続けるのは難しい。

【weapon】
『手裏剣』
  バーサーカーは手裏剣術の達人であった。
  もし理性を取り戻していなければ、オレオを犠牲にして投げていただろう。

【人物背景】
 『NARUTO』に登場するうちはというエリート一族出身の優秀な忍者。火の国木の葉隠れの里出身。
 ある日、一族を弟を除き皆殺しにし、里を出奔する。そのため彼は本来英雄ではなく大罪人として記録されている。
 だが、彼の罪の真実を知る人間ならば、話は違ってくるだろう。
 彼は己を犠牲にし、里と弟を守ったのだ。
 何の因果か、別の世界でも彼は真実では無い伝承に弄ばれることになる。
 
【サーヴァントとしての願い】
 今回の聖杯は性質上願いを持たないサーヴァントは本来招聘されないはずだったが、それすらも狂ってしまっている。
 敢えて言うならば、オレオを求めて来たのだろう。
 
【基本戦術、方針、運用法】
 適正でないクラスで呼ばれたためか色々犠牲になっている。
 とはいえ、彼の強みは冷静さと分析力にあるため、情報を集めれば有利に立ちまわれるだろう。


237 : 鈴仙 優曇華院 イナバ&バーサーカー :2014/08/07(木) 18:17:45 AlwXtBM20
【マスター】
 鈴仙 優曇華院 イナバ(れいせん うどんげいん いなば)

【参加方法】
 外の世界から流れ着いたカードを盗んだ。

【マスターとしての願い】
 過去をやり直す。
 聖杯が有ればどのような改変も可能だろう、と都合よく解釈しているため実際どのようにやり直すかはノープラン。

【weapon】
 『あざとさ』
  新参ホイホイとも呼ばれていたほどのあざとさ。

【能力・技能】
 『波長を操る程度の能力』
  物事には必ず「波長」が存在しており、その長短を操る事で様々な現象を起こす。
  瞳から視覚に干渉し感情の波長を乱す事で対象を狂気に陥れ幻惑するのが主な使用法。
  光や音の波長を操り幻覚や幻聴を引き起こす事や、位相をずらすことで相手と全く干渉しなくなる事も可能。
  本人の周囲も常に波長が乱れているのか、光や音など波長に関する能力の相手とは滅法相性が良い。
  ただし、そのために今回の召喚で事故った。

【人物背景】
 『東方project』のキャラクター。
 幻想郷の永遠亭で暮らす兎の妖怪。真面目で陽気で苦労性な臆病者で人見知り。
 だが、その臆病さ故に月に人間が到達すると恐怖し、逃げた。
 真面目ではあるのだが、どうも自分本位の解釈で先にある利を勘定して動いている節がある。
 故に彼女は気苦労に悩まされるのだろう。

【方針】
 優勝して過去をやり直す。


238 : 鈴仙 優曇華院 イナバ&バーサーカー :2014/08/07(木) 18:18:16 AlwXtBM20
投下完了しました。


239 : 名無しさん :2014/08/07(木) 19:58:06 wN3nglIU0


なんでその組み合わせにした! 言え!(称賛の言葉)


240 : 名無しさん :2014/08/07(木) 20:22:15 S8u3z2CM0
くそ、最初のセリフでやられたww
これもある意味風評被害か


241 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/07(木) 21:23:32 3YZHd6XU0
イタチさん…あなたならアサシンとかキャスターとかあるだろうになんでよりにもよってそこなんだ…
手裏剣アーチャーとか草薙の剣セイバーとかもあるやろ(足立区の方言で投下乙の意)

URL貼っていたシド&アサシンは非電脳ではかなりの改変が必要となるため破棄し、別のアサシンを投下します。


242 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/07(木) 21:24:57 3YZHd6XU0
「聖杯戦争ねぇ、面白そうなゲームじゃないか」
左手に金色の錫杖を、右手に三画のウジャト眼を、口元に歪んだ笑みを浮かべる。

「あの天戯ってやつ、上から目線は気に入らねぇが、センスは悪くない。パーティー会場と食材の準備には礼を言う……」

父上、主人格サマ、孔雀舞、城ノ内勝也……これまでに闇に堕としてきたやつらの姿が浮かぶ。そして先ほどまでいた場所の面白そうなオモチャを思い出す。怯えながらも強い意志を持った桃色の髪の少女、死にかけながらも何かを求めて虫けらのようにもがいている男。
恐らく他にも気に入るやつはいるだろう、やりがいのある獲物はまだあるだろう。
一人ずつ、俺が闇への生贄にしてやる…!絶望という名のスパイスを効かせた最高のディナーにしてやる…!

「闇のゲームの始まりだ。楽しみだ、なぁ?」

傍らに立つ仮面の大男……己がサーヴァントに語りかける。

「……」

フシュゥゥ、と呼吸音のみを立て言葉を返さぬサーヴァント。闘志と殺意を宿した仮面の奥の瞳がギラリと光る。





―――ロデム……ロデム……さあ、全ての敵を殺せ―――
心中に響く義父の声。
暗殺者は語らない。狂戦士は語れない。ただ淡々と、狂々と獲物を狩るのみ。

【クラス】アサシン
【真名】ロデム(マルコ)@嘘喰い
【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具D
(狂化による上昇含む)
【属性】
中立・狂(善)

【クラススキル】
気配遮断:B+
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる

狂化:C
幸運と魔力を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考ができなくなる。

【保有スキル】
肉体改造:B
外法の手術による体質の変化。このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
薬物投与などで脳にも影響を受け、強靭な肉体と戦闘技術を得たが、代償として精神・知能の面では幼いままであり、解離性同一症の一因にもなっている。

二重召喚:D
アサシンとバーサーカー、両方のクラス別スキルを獲得して現界する。
ごく一部のサーヴァントのみが持つ希少特性だが、前述の肉体改造により優れた暗殺者と知性なき狂戦士の相反する両面を併存させている。

無窮の武練(偽):C+
様々な精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。ロデムの人格の場合、恐慌状態に陥った場合は難しい。
先述の肉体改造によって知性を対価に得た戦闘技術、その発露。

勇猛:A+
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
様々な問題や不条理を正面から受け止め、苦悩しているマルコの人格のみが持ちえるスキルであり、打たれ弱いロデムの人格ではこのスキルは機能しない。

【宝具】
『悪魔の巣食う廃ビル(ロデムズ・キリングフィールド)』
ランク:D 種別:対城宝具 レンジ:0〜30 最大捕捉:50人
ロデムの人格のみ発動可能。
密閉空間(家屋や洞窟内など廃ビルに限らない)にいる場合自動発動する宝具。敵が空間内に侵入してきたときそれを感知し、施設の中央(6階建てビルなら3階、全長400mの洞窟なら200m地点)に転移させる。さらに気配遮断のランクを1ランク向上させ、自身とマスター除くすべての者は出入り口以外からの脱出を封じる、施設そのものを対象とした宝具。
窓ガラスを割るなど安直な脱出は不可能だが、高位の神秘による設備破壊及び脱出は可能。

『迷い翔ける極上の戦士(マルコズ・ブレイブハート)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉
ロデムが戦闘において恐怖を感じたとき自動発動する宝具。
狂化によるステータス向上はそのままに理性ある人格マルコが目覚め、スキル:戦闘続行を得る。マルコの人格ではスキル:勇猛が機能し、マスターの言葉も理解できるので戦術性及び格闘ダメージが増す。

『迷宮に潜む怪物(コード・オブ・ミノタウロス)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ0〜20 最大捕捉:2人
マルコの人格のみ発動可能。
敵がレンジ内に存在する場合、自身と敵一人を転移させ5m四方の結界で囲む。結界は1分間保持され、一対一での接近戦を余儀なくされる。
本来ならMゲームを再現する対陣宝具なのだが、マルコがゲームのルールをイマイチ理解していないためただの決闘を行う宝具に劣化している。


243 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/07(木) 21:26:05 3YZHd6XU0
【weapon】
『無銘・ナイフ』
いわゆるサバイバルナイフ。最低限の神秘を宿し、サーヴァントへの攻撃も可能。
魔力供給により補給可能。

持ちこめてはいないが、銃の使用やワイヤートラップの作成など、一通りの軍事技術は習得し、再現可能。もちろん徒手格闘も達人の域。

【人物背景】
もともとは戦地の原住民であったが、九重太郎という傭兵(以下Q太郎)に住んでいた集落を襲撃された折りに連れ去られ人体実験を受ける。薬物投与などによる肉体改造を受け常人離れした身体能力を手に入れたが、脳に影響を与える実験であったため知能を失い、精神年齢・知能的には子供のままである。また、度重なる実験のストレス・副作用からか、体に注射を受けると殺人鬼の別人格「ロデム」が現れるようになった。マルコにとって彼は義父であり、殺人術の師匠であり、ロデムにとってはある意味で実の父ともいえる。
マルコとしての人格は、敵の命にすら気遣い闘うほどの優しさと、悪行を憎む正義感、人を疑えない純真無垢な心を持つ。人格がマルコの状態でも非凡な戦闘能力を持つが、殺す覚悟の無さにより、自分より格下の相手にも惨敗を喫することがある。しかし様々な問題や不条理を正面から受け止め、苦悩しているため、ロデムよりも精神的に強く、どんな苦境にあっても屈しない。
ロデムとしての人格は、人を殺す事を心から楽しんでおり、自分の人格の中に形成した「仮想Q大郎」の指示に従って行動する。Q大郎の下で殺戮を繰り返してきた時の癖で、仮面をかぶって戦う事を好む。改造された頑強な肉体と、殺人に全く抵抗を感じない凶悪な精神を兼ね備えているが、圧倒的な戦闘能力で一方的な殺戮を楽しんでばかりだったため、傷を負う事を知らず、ダメージに対して非常に脆いという弱点がある。
本来平常時は穏やかなマルコの人格で過ごし、必要なときは注射をさしてロデムにスイッチすることが多かったが、狂戦士の一面も持って召喚されたためか、マスターの人格との相性ゆえか、ロデムが基本的に表に出る。仮にマルコの人格が目覚めても闇マリクがマスターである限り再びロデムが現出することになるだろう。

【サーヴァントの願い】
ロデムはただ殺戮を、マルコはそんなロデムを止めることを願っている。

【基本戦術、方針、運用法】
狂化しているため通常のアサシンのように動いての暗殺など頭を使うのには適さないし、ステータスはそれなりでも優れた武器に欠くため、バーサーカーとして戦場で暴れるのもベストとは言い難い。どこか密閉空間に根を張り、『悪魔の巣食う廃ビル(ロデムズ・キリングフィールド)』によるマスター暗殺を狙う待ちの戦法になるだろう。いざ密室での暗殺となれば高いステータスに気配遮断、無窮の武練とかなり恐ろしいアサシンになる。燃費的にもそちらの方が効率的。
侵入を防ぐのではなく敵を逃がさないためにブービートラップを作成しておくのもよい。闇マリクの趣味とも合うだろう。
ただしマルコの人格は闇マリクとの相性が悪いためあまり前面に出てこないよう、三騎士など格上との真っ向勝負は避けた方がよい。


244 : マリク・イシュタール&アサシン ◆A23CJmo9LE :2014/08/07(木) 21:26:58 3YZHd6XU0
【マスター】
マリク・イシュタール@遊☆戯☆王

【参加方法】
不明。偶然巻き込まれた?

【マスターとしての願い】
このゲームを楽しむ。

【weapon】
『千年錫杖(ロッド)』
盗賊の村、クル・エルナ村の住民を冥府への生贄として黄金と一緒に溶かして製作した7つの千年アイテムの一つ。全ての千年アイテム共通の能力として闇のゲームをしかけ、敗者に様々な罰ゲームを与えることが出来る。
千年アイテムを所有できるのは一部の者のみであり、それに値しない者は生贄の憎悪により魂を焼かれ死に至る。
ウジャト眼の紋章の入った錫杖で、杖の部分のカバーを外すと鋭い刃物のようになっている。人の心に自分の意思を植え付け、記憶を支配して精神と肉体を操る能力を持つ。ただし、洗脳するには杖で対象に触れる必要がある。他者と心を通じているため完全な意思疎通を図る事もでき、念話も可能となる。
また人の心に宿る魔物を石板に封印する能力もある。

『決闘盤とデッキ』

所持するデッキは闇マリクのものであり、テーマを「不死」、切り札をラーの翼神竜とした、いわゆるロックバーンデッキ。
実際にデュエルしてよし、闇のゲームに用いてよし、ソリッドビジョンによる威嚇などもできるだろう。また決闘者にとってカードは剣で決闘盤は盾である。一流の決闘者ならば決闘盤で剣戟を受け止めることや、カードを手裏剣のように用い、拳銃を無力化することなども可能。原作に描写はないが、マリクもまたそういった技術を習得していておかしくないだろう。

【能力・技能】
千年ロッドを十全に使いこなし、洗脳や闇のゲームによる罰ゲーム等が可能。また優れた決闘者である。ただし主人格の表マリクはどちらも闇マリクほど巧みではない。
千年アイテムを扱う異能者であるため、それなりの魔力供給が可能。

【人物背景】

ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AB

現在表出しているのは裏人格、いわゆる闇マリク。通称顔芸。

【方針】
どこかに根を張り、アサシンで獲物を狩る。千年錫杖でNPCを洗脳して敵を誘い込むのとか面白そう。待つのに飽きたら適当に打って出る。


245 : マリク・イシュタール&アサシン ◆A23CJmo9LE :2014/08/07(木) 21:27:52 3YZHd6XU0
投下完了です。途中までタイトル入れ忘れた…


246 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/07(木) 23:54:22 73WEJjzA0
すいません、>>209にあるようにもうすこしだけ延長させてください。
ちなみに投下予定はセイバーとアサシンです。無理なようならば諦めます


247 : ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/07(木) 23:58:00 F1ligdcU0
投下開始


248 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/07(木) 23:58:37 1o/Z.35o0
投下お疲れ様です。
>>246
了解です。もし投下できそうな日にちとか分かれば書き込みお願いします。


249 : ザ・ヒーロー&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/07(木) 23:58:51 F1ligdcU0


 少年には、名前が無かった。
 持つべき名前を失った、名無しの戦士だった。

 少年もかつては、ごく一般的な人間として生きていた。
 愛犬の世話をし、友人と他愛もない会話を行い、母親の手料理を平らげる。
 そんな普通の生活を営み、そしてそんな生活をこよなく愛した男だった。

 だが、その平穏はある日を境に激変する。
 「悪魔召喚プログラム」と呼ばれるパンドラの箱が、少年の全てを変えてしまった。

 母親は悪魔に喰い殺された。
 故郷はICBMで廃墟と化した。
 幼馴染はゾンビとなっていた。
 道を違えた友人達は憎み合っていた。

 何もかもが、変わってしまった。
 目の前に広がるのは、悪魔が闊歩する地獄の様な世界だけ。
 少年が愛した平穏は、一片の欠片も残さず消滅していた。

 だが、地獄を目の当たりにしてもなお。
 戦いの果てに平穏が掴める筈だと、少年は信じ続けていた。
 神や悪魔の支配を受けない、人間が生み出す平穏な世界を夢見ていた。

 故に、少年は戦い続けた。
 人間の平穏は人間の手で掴むべきだ、と。
 その信条の元、人外達を容赦なく殺し尽くした。

 混沌を正義とする悪魔を殺した。
 スルトの四肢を捥いだ。
 アスタロトの頭を吹き飛ばした。
 アリオクの臓物を抉った。

 秩序を絶対とする天使を殺した。
 ウリエルの首を刎ねた
 ラファエルの心臓を穿った。
 ガブリエルの胴を断った。

 理想を追い求めて、ただひたすらに。
 斬って、撃って、殴って、殺し続けた。

 されど、運命の歯車は少年を嘲笑う。
 人々は彼の意に反し、神々の統治を望んだのだ。
 少年が思うほど人は強くなく、故に彼等は超常の指導者を望む。
 天より来たる神々を迎え入れ、出現するのはミレニアム。
 人類は天使への隷属を誓い、虚偽の繁栄を貪り始めたのだった。

 少年の戦いは、全て無駄に終わった。
 走り続けた先にあったのは、理想とは程遠いディストピア。
 流した血も、絶った絆も、奪った命も、何もかもが無意味だった。

 それでも、少年は剣を捨てなかった。
 戦場がコロシアムに、相手が人間に変わっても、彼は戦い続ける。
 さながら修羅の如く闘争を続け、挑みかかる人間をひたすらに殺していく。

 もう、少年には何も残っていなかった。
 故郷も、肉親も、親友も、恋人も、仲魔も、名前さえも。
 一つ残らず失った彼には、戦う理由など何処にもありはしない。
 しかし、全てを失った彼には、戦う以外の選択肢が残っていなかった。

 そんな少年を目にした人間達は、彼に一つの称号を託した。
 天使と悪魔を同時に相手取り、今も戦いを止めない悪鬼の様な男。
 それでも、彼が天使と敵対する悪魔を滅ぼした事に変わりは無い。
 世界革変の切っ掛けとなった少年には、まさに"英雄"の名が相応しい。

 "英雄(ザ・ヒーロー)"。
 それが、敗北者たる少年に与えられた称号だった。


250 : ザ・ヒーロー&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/07(木) 23:59:50 F1ligdcU0
□ ■ □


「僕は今までずっと戦ってきた」

 真夜中の公園のベンチに、ザ・ヒーローは腰かける。
 そして、誰に言われるまでも無く、自身のサーヴァントに語りだした。

 ザ・ヒーローが引き当てたのは、甲冑を身に纏った狂戦士の英霊。
 赤く刺々しいその外観は、さながら竜を思わせる。
 兜で顔をすっぽり覆っているせいで、表情はまるで読み取れない。

「戦って、戦って、戦って……何の理由も無いのに、戦ってきたんだ。
 天戯弥勒、だっけ。"参加者には全員願いがある"なんて言ってたけど……僕にはそれさえ分からない」

 笑っちゃうだろと付け加え、ヒーローは自嘲する。
 戦い始めた理由なら、たしかにあった筈なのだ。
 だが、何時の間にか理由を何処かに置いてきてしまった。
 理性こそ保っているが、その在り方は目前の狂戦士と何ら変わりない。

 いつも通り、理由もなしに暴れ回る事だって出来たかもしれない。
 だが、天戯弥勒の発したあの言葉が、その選択肢に異を唱えている。
 「参加者は皆願いを持っている」という、彼のたった一言が、ヒーローを縛り付ける。

 聖杯戦争が願いの為の戦いならば、自分の抱える願いとは果たして何なのか。
 碌な理由もないまま闘争に身を委ねるのは、許されざる行為の様に思えてならなかった。

「……此処にいるって事は、君にもきっと願いがあったんだろうね」

 今でこそ理性を失っているが、バーサーカーもれっきとしたサーヴァントだ。
 元々は他者と同様の理性を持っており、そして願いもまた抱いていた筈である。
 だから、そう考えたからこそ、ヒーローは一つの決断を下す。

「令呪を以て命ず――バーサーカー、君の願いを教えてほしい」

 自分には秘めた願いが分からない。
 だが、目の前の英霊にはきっと叶えたい望みがある。
 もしかしたら、彼の願いが自分の願いを思い出すヒントになるかもしれない。

 バーサーカーの剥き出しの威圧感が身を潜めていく。
 それは即ち、彼の狂化が一時的に収まったという証だ。
 今ならば、この狂戦士は理性を保った一人の戦士でいられる。

 顔を覆う兜の奥から、男の声が流れ出る。
 言語を取り戻した狂戦士が語るのは、己の根源(ルーツ)であった。


251 : ザ・ヒーロー&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/08(金) 00:00:22 9GpQP4Yg0
□ ■ □


 バーサーカーには、名前が無かった。
 持つべき真名を持たない、名無しのサーヴァントだった。

 かろうじて、「ハンター」という肩書きなら持っている。
 依頼された場所に向かい、そこで屯する怪物を討伐する者達。
 バーサーカーは、そんな狩猟者の一人として戦い続けてきた。

 その中でも、バーサーカーは飛び抜けて優秀だった。
 手にした大剣は龍の翼を引き裂き、獣の角を切断する。
 無数の屍の山を築いた彼の戦いは、多くの同業者に広まっていった。

 曰く、まさしく狩りをする為に生まれた男。
 曰く、数十年に一人現れるかどうかの天才。
 曰く、龍との闘争を至上の喜びとする悪魔。

 良くも悪くも、バーサーカーの逸話は周知のものとなっていく。
 だが、そんな事には目も暮れずに、彼は狩猟を続けていた。
 まるで戦わなければ死ぬと言わんばかりに、戦いに明け暮れていた。

 やがて、バーサーカーは強大な力を持つ古龍さえ打倒する。
 誰一人として倒せなかったその敵に、たった独りで勝利してしまった。
 それは紛れも無く偉業であり、その瞬間、彼は英雄の肩書きを得たのであった。

 英雄である彼の物語は形を変え、偉業として祀り上げられる。
 「あるハンターの伝説」として、バーサーカーの逸話は歴史に刻まれた。

 歴史に刻まれたのは、逸話"だけ"だった。
 誰一人として、バーサーカーの名前を歴史に刻めなかったからだ。

 ひどく寡黙なそのハンターの素性を、誰も知ろうとしなかったから。
 人々の記憶にあるのは、「名無しのハンター」の逸話だけとなる。
 英雄の名前を知る者は、世界にはもう一人として残されてはいなかった。

 そしてバーサーカーもまた、自分の名前を忘れてしまった。
 "逸話"から再現された存在であるが故に、彼は名無しの英霊となる。
 歴史からさえ名前が抹殺された今、彼が持つのは武器と技術のみ。

 名無しのハンターが求めるのは、自分の名前だ。
 生まれて最初に授かった、自らの真名を取り戻したい。
 ただそれだけの理由で、彼は万物の願望器を求める。


252 : ザ・ヒーロー&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/08(金) 00:02:52 9GpQP4Yg0
□ ■ □


「そうだ」

 名も無いバーサーカーの話を聞き終えた少年は、思い出したかの様に呟いた。
 いや、事実思い出したのだ――自分にもたしかに願いがあった事を。
 無意識の内に抱き、しかし闘争の最中に放り投げてしまった願いが。

「僕にも名前があったんだ。ヒーローなんて肩書きじゃない、母さんがくれた名前が」

 人間が生まれてから、最初に受け取る愛の形。
 それこそが"名前"であり、その人がその人たる証だ。
 奇しくも、この主従は二人とも自分の名を忘れていた。

「名前……僕は名前が欲しかったんだ」

 ヒーローにはもう、何も残ってない。
 かつて手にしたものを取り戻す事も、ましてや思い出す事さえ出来ない。
 だが、せめて最初に受け取った自分の"名前"だけは。
 時間が奪い取ってしまったその一つだけは、自分の手で奪い返したかった。

「ありがとうバーサーカー。これで、また戦える」

 今となっては、もうバーサーカーにその言葉は伝わらない。
 令呪の効果は既に切れ、彼は元の狂戦士に戻ってしまったからだ。
 しかし、それでもヒーローは感謝を示さずにはいられなかった。
 彼がいなければ、自分は蹲ったままだったかもしれないのだから。

 これから、自分は幾つもの修羅場を通り抜けるのだろう。
 自分と同じ願いを持つ者と戦い、勝利し、そして殺していく。
 召喚された狂戦士と共に、全ての願いに死を齎すのだ。
 止まる気はない。止まれたのなら、当の昔に止まれている。

 やる事は結局、元いた場所となんら変わりないのだ。
 賞品が万物の願望器となっただけで、他にはほとんど同じに過ぎない。

 ただ、今のヒーローには隣に相棒がついている。
 それが数少ない違いの一つで、最も大きな違いだった。
 彼がこうして誰かと共に戦う事など、本当に久しぶりなのだから。

 バーサーカーが――自分の仲間が隣にいる。
 ただそれだけで、何故だか酷く懐かしさを覚えてしまって。
 頬に一筋の涙が伝うのを、ヒーローは止められなかった。

----


253 : ザ・ヒーロー&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/08(金) 00:03:33 9GpQP4Yg0
【出典】モンスターハンターシリーズ
【CLASS】バーサーカー
【マスター】ザ・ヒーロー
【真名】無銘(ハンター)
【性別】男性
【属性】中立・狂
【ステータス】筋力:A+ 耐久:A 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:C(狂化時)
【クラス別スキル】
狂化:C
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
Cランクの場合は魔力と幸運以外が上昇するが、言語能力を失い、複雑な思考ができなくなる。

【固有スキル】
調合:-
その場で材料を組み合わせる事で、新たな薬剤等を調合できる。
バーサーカーは本来Aランクの調合スキルを保有しているが、狂化によって喪われている。

心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

直感:A
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。Aランクの第六感はもはや未来予知に近い。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

無窮の武練:A
如何なる精神状態でも十全な武芸を見せる。
このスキルのおかげで、狂化していても優れた技の冴えを見せることが可能。

【宝具】
『雄火竜の装甲』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1個
雄火竜「リオレウス」の素材を利用した装備一式。
生前のバーサーカーが最も愛用していたとされる防具。
火に対し強い耐性を持つが、反面水や龍の因子への耐性が薄い。

『炎剣リオレウス』
ランク:C 種別:対獣宝具 レンジ:1〜? 最大補足:?個
雄火竜「リオレウス」の素材を使用した大剣。バーサーカーが生前最も愛用していたとされる武器。
リオレウスの翼を模して作られた剣であり、火竜の翼爪を取り付けた分厚い刀身は焔の様に赤い。
刀身に仕込まれた火炎袋と、表面に塗られた発火性のある火竜の体液が特徴であり、振り抜く度に爆炎を巻き起こし、飛竜の翼撃の如く対象を吹き飛ばす。
「斬り裂く」ことより「焼き薙ぐ」ことに重点を置いた武器であり、火に弱いモンスターには絶大な威力を発揮する。

【weapon】
「宝具」の欄を参照。

【人物背景】
人間を脅かす怪物の狩猟を生業とするハンターの一人。
ある時は村の為、ある時は国の為、またある時は自分の為に戦い続けた男。
たった独りで怪物に挑み、そして勝利してきた彼の逸話は、多くの人々の記憶に刻まれる。
しかし、逸話は数あれど、寡黙なハンターの素性を語る者は誰もいなかった。
やがて時は経ち、残ったのは数々の英雄譚と、それを為した「ハンター」という肩書きだけ。
彼の名前は、いつしか何処かへ消えてしまっていた。

【サーヴァントとしての願い】
自分の名前を知りたい。

【基本戦術、方針、運用法】
「狩る」。それだけ。


254 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/08(金) 00:03:34 wsR1WA3.0
投下します
また、今回はダンガンロンパのネタバレを多分に含んでますのでダメな方は注意です
もはやバーサーカーじゃない気もしますがその可否の判断はお任せします


255 : ザ・ヒーロー&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/08(金) 00:04:50 9GpQP4Yg0
【マスター】????(ザ・ヒーロー)
【出典】真・女神転生
【性別】男性

【参戦時期】
原作終了後の、少し未来。

【マスターとしての願い】
せめて、自分の名前を取り戻したい。

【能力・技能】
超人的な身体能力を持つ。また、剣技と射撃の才能がある。

【weapon】
特筆事項無し。
かつては悪魔召喚プログラム等を所有していたが、戦いの途中で全て失ってしまった。

【人物背景】
天使と悪魔に戦いを挑み、勝利した人間。
そして、戦いの果てに全てを失った敗北者。

【方針】
「戦う」以外に道は無い。これまでもそうだったし、これからもそうなる。


256 : ザ・ヒーロー&バーサーカー ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/08(金) 00:05:11 9GpQP4Yg0
投下終了となります


257 : エルメェス・コステロ&バーサーカー ◆VUBZx4BclE :2014/08/08(金) 00:06:30 wsR1WA3.0
あたしのせいだ。あたしが逃げたから、グロリアは――姉は死んだ。
あの夜は『いつもの』ことだった。
グロリアがレストランの手伝いをしろだのくどくどとあたしに小言をぶちまけてきた。
いつものようにあたしは飛び出した・・・けど、いつもとは違う、あってはならない闇がそこにはあって。
グロリアは警察に通報しなければならなかった。
あの時・・・あたしがあの野郎の殺人現場を通り過ぎたから姉はあたしを庇ったんだ。
警察は家族を完全に保護するとか言っておきながらドジった。
その事件の数週間後・・・グロリアはドブ川の中で見つかった。
そのおかげでレストランを閉めざるを得なくなり、オヤジも病死。
あたしはすべてを失った。

あれから数年。あたしは『ワザと』あの野郎と同じ刑務所に入った。
復讐をするために。自分の人生に決着をつけるためにッ!

「そんな願いがあたしにはある。けどな――」

「あたしには天からの『啓示』がある・・・!これ以上の手助けなんていらねぇんだよ!」

刑務所に入ってふとした切っ掛けから発現したあたしの『能力』・・・。
あたしはこの『能力』を天からの啓示と受け取った。
あの憎きスポーツ・マックスに姉のことを思い出させるための!
それなのに、あの天戯弥勒という男が語っていた聖杯戦争という願いを叶える便利道具の争奪戦――
余計なお世話にも程がある。
いや、刑務所から離れることになって復讐の機会が遠のいたもんだからもっとタチが悪い。


そういえば、ここは刑務所ではなかった。
久々の刑務所の外だから心なしか空気が澄んでいて心地よい。
思わず腕からつま先までを広げて伸びをしたかったところだが、
そうもしていられない異様な光景があたしの前に広がっていた。

「お主が我がマスターか?」

コイツ・・・鬼?赤黒い肌をしたマッチョな女(?)がいた。
スカートをはいてるから女。
青と白が目立つ服・・・少なくとも刑務所に入っているヤツの服装じゃあなさそうね・・・。
静かに腕組をしていてこっちを見てる。
あたしでも怯みそうなほど威圧感がスゴイ。
マスターという単語が出た。あたしが『マスター』なんだろう。
そしてこいつが・・・

「おまえがあたしのサーヴァントか」
「ここには人がいない・・・ならば必然的に」
「あたしがおまえのマスターで」
「我がお主のサーヴァント。我はバーサーカークラスのサーヴァント・・・『大神さくら』だ」
「あたしはエルメェス・コステロ!おまえのことは・・・バーサーカーって呼べばいいんだな?」


258 : エルメェス・コステロ&バーサーカー ◆VUBZx4BclE :2014/08/08(金) 00:07:26 wsR1WA3.0
「あたしはこの聖杯戦争には乗らない。確かに願いはあるがな・・・その願いはあたし自身の手で叶えるからいい。聖杯にくれてやる願いなん

てなにもないんだ」

エルメェスは聖杯を奪取するためにほかの参加者を蹴落とそうとは思わなかった。
エルメェスの願いである復讐。それはエルメェスが自身の手で成し遂げることにこそ意味があるからだ。

「ならば、エルメェスよ。これからどのように動くつもりだ?」
「とりあえず、ほかの参加者に会ってみることにする。どんなヤツが参加しているかまだハッキリとはわからねーからな。
そいつが危険なヤツだったら倒すし、戦う力がねーヤツだったら保護する」

エルメェスがこの地に来る前、姿は明確には写らなかったが、無力な少女のような者もいたことがわかっている。
もしそのような無力な者がいたとしたら、この聖杯戦争では生き残れないだろうとエルメェスは確信していた。
少女でも自分や彼女の親友・徐倫のようなタフな精神の持ち主とは限らない。
たとえ敵対したとしても・・・『聖杯』に踊らされている者ならば・・・
敵だったフー・ファイターズを助けた徐倫のように、
できる限り助けてやりたいとエルメェスは思っていた。

「・・・いいだろう、我もそのために全力を尽くそう」


『戦う力がない者は保護する』

それを聞いたバーサーカーは笑みを浮かべた。
エルメェスの言葉は、バーサーカーを心から安堵させていた。
バーサーカーは、サーヴァントとなったことにより、この拳で罪のない者を容赦なく傷つけることになるのではないか。
そんな不安が心の中で渦巻いていたのだ。
もう、自分のせいで親友が泣くところなど見たくはない。
せめて、この聖杯戦争の地では友を、仲間を守ってみせるとバーサーカーは誓った。

そう心に決めたものの、

(しかし、自分が死んだ後・・・生き残った皆は大丈夫であろうか?)

バーサーカーの心にはまだ、迷いがあった。
自分が死んだ後の仲間達のことだ。
彼女が遺した遺書を読んでくれていたならば、もう心配はいらないだろうが・・・。

(聖杯で願いが叶うならば、仲間をあの地獄から救い出せるのではないか?)
(ケンイチロウの病も聖杯で治るのならば――)

いや、もうそのことで考えるのやめた方がいい。
バーサーカーはまだ見ぬ仲間達のためだけに拳を振るのだから。


259 : エルメェス・コステロ&バーサーカー ◆VUBZx4BclE :2014/08/08(金) 00:11:39 wsR1WA3.0
【クラス】
バーサーカー

【マスター】
エルメェス・コステロ@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン

【真名】
大神さくら@ダンガンロンパ

【パラメータ】
筋力A+ 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
狂化:E+
通常時は狂化の恩恵を受けないが、その代わりに正常な思考力を保つ。
彼女の"友人と認めた者"がダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗すると魔力と幸運を除くステータスが上昇し、暴走する。
バーサーカーは常識人かつ良識人で、簡単には暴走しないが、自らの大切な人が傷つけられたときはその限りではない。

【保有スキル】
 
勇猛:A
黒幕に自分の家族を人質に取られても屈さずに友を守ろうとしたバーサーカーの覚悟。
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
バーサーカーは正常な思考を保っているため、このスキルは十分に機能する。
ただし、狂化した際はその意味を失い、効果がなくなる。

無窮の武練:B
異国の地で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
狂化で暴走していても卓越した格闘術を使用できる。

戦闘続行:B
倒すべき者に必ず一矢報いてみせるという思い。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

守るべきもの:B
バーサーカーの持つ友や仲間を守ろうとする思い。
バーサーカーは己のことよりも仲間の無事を最優先に考え、行動する。

地上最強の女子:B
地上最強の女子と謳われたバーサーカーが纏う覇気。
猛獣の如き威圧感を発し、対峙した相手に強い恐怖を抱かせる。
親しい者には影響がないが、本人の攻撃の意志の有無に関わらず恐怖を与えてしまうので注意。


260 : エルメェス・コステロ&バーサーカー ◆VUBZx4BclE :2014/08/08(金) 00:12:11 wsR1WA3.0
【宝具】

『超高校級の格闘家(オーガ)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:自分
彼女が希望ヶ峰学園に入学したことから与えられた称号。
高校生ながら桁外れの才能を持っていることを称えて超高校級とつけられる。
格闘家として数々の人間離れした逸話から生まれた宝具であり、彼女の肉体そのもの。
バーサーカーはもとは人間であり、鈍器で殴られたら普通に血を流すなど、特に耐久面では人間の範疇を出ないが、
この宝具は彼女の肉体を本当に人間離れさせ、魔力・幸運を除くステータスが狂化とは別に2ランク上昇する。

『万能の秘薬(プロテインコーヒー)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 バーサーカーがかつてプロテインコーヒーが万病に効くと信じていたエピソードから生まれた宝具。
 これを飲んだ者が受けたダメージはすべて回復し、ステータス異常も完治する。
 この宝具がバーサーカーのみではなくマスター含む他人にも効力を発揮するのも、
 バーサーカーが持つ優しさが偽りではないことを証明している。

『皆へ託す遺書(エントラスト・トゥ・フレンズ)』
 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大補足:10人
 バーサーカーが仲間の疑心暗鬼や争いをなくすために毒杯を仰ぎ、自殺したエピソードから生まれた宝具。
 バーサーカーが消滅した際に効果を発揮する。
 彼女の消滅を知った仲間達はお互いに団結し、倒すべき相手に立ち向かう勇気を得て、精神干渉を12時間の間、完全に無効化する。
 また、彼女のサーヴァントであった者は消滅期限が6時間から12時間に延長される。

【weapon】
己の肉体。

【人物背景】
希望が峰学園に「超高校級の格闘家」として入学した高校生。
その外見は男性と見紛うほど隆起した筋肉質な肉体に、
肌は赤みがかった褐色で、顔や腕にはおそらく長年の闘いの中で付いたであろう複数の傷が存在する。
そんな近寄りがたい外見をしているが、彼女はれっきとした女性で、セーラー服を着ている。
彼女の実家は300年続く道場で、
その後継者たる所以から乳母車に乗る前から戦いを始めたという伝説を持ち、
幼少時から様々な格闘技の金メダリストや達人たちを乗り越えてきた。
そんな見た目と経歴に反して性格はかなりの良識人で、良識人であり、実直で質実剛健を絵に描いたような性格。
寡黙なタイプではあるが、友や仲間を思う気持ちは強い。
プロテインコーヒーは万病に効くと本気で信じているお茶目なところや、
唯一無二のライバルであり初恋の相手がいるなど乙女な一面も併せ持つ。

【サーヴァントとしての願い】
 基本的にはエルメェスについていき、無力な者や、仲間になった者を保護する。
 ただ、
 学園に残してきた仲間を助けたい。
 個人的には、初恋の相手・ケンイチロウの病を治してもう一度戦いたい。
 という願いがあり、叶うならば叶えたい。

【基本戦術、方針、運用法】
 人間の範疇を出ないとはいっても筋力・俊敏・耐久が非常に高く、タイマンの勝負ならどんな相手とも渡り合えるだろう。
 さらに宝具でその身体を強化した時には鬼の如き強さを発揮する。
 さらにさらに狂化のランクがEであるため、本人と意思疎通ができて制御できるのがとてもおいしい。
 宝具の『万能の秘薬』も非常に強力だが、バーサーカーが仲間の無事を最優先に行動するという特性上、
 他人に使用してしまうことがよくあるので、それが得策かどうかの判断が重要。
 なお、スキル『地上最強の女子』により攻撃の意志がなくとも相手から異常に警戒されることがよくあるので注意。


261 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/08(金) 00:22:33 wsR1WA3.0
以上で投下終了です
せっかくだからジョジョ三大兄貴を揃えたかった
後悔はしていない
ちょっとミスがあったのでエルメェス兄貴のステ表は少々遅れます


262 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 00:23:53 OuHH7RRk0
みなさん投下乙です
ステ表未完成なんですが本文だけでも滑りこませていいでしょうか
とりあえず投下します


263 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 00:25:32 OuHH7RRk0
10月26日に世界が変わってしまったことは、世間の常識になっている。
長いこと続いていて、誰とどこと戦っているのかもみんな分からなくなっていたような、いつの間にか日常の一部として溶け込んでいた戦争が終わったのが、その日だった。
10月25日が終わって10月26日に変わったばかりのころ、夜中だというのにテレビの向こう側で大勢の人間が大騒ぎをして、戦争が終わったのだと叫んでいた。
それを見て本当に戦争が終わったんだという実感を得た人間は多かったものの、本当のところ何が起きたのかを知っている人間は少ない。
浅羽直之は知っている側である数少ない人間だったけれど、浅羽が知っていることだって真実のほんの一部分なんだろうと、彼は思っている。

――10月26日の夕方。浅羽直之は大好きだった女の子が戦場に向かうのを止められなかった。
伊里野加奈が戦いを嫌って、逃げ出して、傷付いて、たくさん泣いてきた女の子だということを知っていたのに。
世界が滅ぼうとも彼女のことを守ってやると、大見得を切ったというのに。
伊里野は浅羽が住む世界を守るために、最新鋭の技術を用いて作られたという真っ黒でへんてこな形をした飛行機に乗り込んで、そのまま帰ってこなかった。
それが浅羽にとっての世界の真実で、テレビ越しに騒がれていた虚偽まみれの情報とは比べ物にならないくらいリアルで確かな経験で、ただの中学二年生にはどうしようもない現実だった。

あのときの浅羽は世界で一番格好悪くて情けない男だったに違いない。
好きな女の子ひとり守ることも出来ず、彼女をそこまで追い詰めた大人たちに何の仕返しも出来ず、出来ない出来ない出来ない尽くし。
きっとそれが普通の中学二年生の姿なんだろう。世界の敵になってでもヒロインを守る少年なんて、フィクションの世界でしかありえないんだろう。
浅羽がそれを無理やりに納得させられて、自分がどんなにちっぽけな存在だったかを分からされたとき。

伊里野は空に帰っていって、UFOの夏は終わった。


夏が終わって秋も過ぎて、冬が訪れてまた去っていく。
季節が一周りして浅羽の学年も上がり、晴れて中学三年生になった彼は、園原中学校非公認部活動である園原電波新聞部の部室へと歩を進めていた。
口喧しかった元部長の姿はもうない。中学校を卒業したあとどこかに行ってしまって、それきりだった。
便りがないのは良い便りという言葉もあるけれど、本当に音沙汰なくなってしまったのは逆に不気味だ。
信じられないくらいのエネルギーを持っていた彼のことだから何をやっているのか噂の一つくらい聞こえてきてもいいものだけど。
もしかしたら本当にCIAにでも入ってしまって、身を隠さなくてはならない仕事でもやっているのかもしれない。

部室の扉を開けると現部長の須藤晶穂が眉を吊り上げて浅羽の方を睨んでいた。

「おっそーい!」
「遅くないよ。これでも急いできたんだ」

嘘だった。本当は帰りのHRが終わってからゆっくりと帰り支度をして、ちんたらと歩いてきたところである。
晶穂は文句を言い足りなさそうな顔をしていたが怒りを呆れが上回ったのかそれ以上の追求はしてこない。
代わりに晶穂の口から出てきたのは、

「そういえば浅羽、次の記事のネタは決めた? あ、その顔じゃ決めてないか。
 だったら調べてほしいって要望が多いネタがあるんだけど」

園原電波新聞は今も学内外のあれこれを記事にして園原中学の生徒たちの注目をそれなりに集めている。
けれど元部長がいなくなってからオカルトめいた記事は少なくなってしまっていて、園原の隠れオカルトファンは寂しい思いをしているという。
今では紙面の八割は晶穂が書いていて、浅羽は残りの二割を差し障りの無い至極普通の記事で埋めてお茶を濁している。

「――赤いテレホンカードって、知ってる?」

おやおやこれは意外な単語が出てきたぞと浅羽は思った。
生憎ながら浅羽はその話について聞いたことがなかったけれど、赤いテレホンカードだなんてあからさまに怪しい響きをしている。
以前紙面の大半を占めていたオカルト記事を毛嫌いしていた晶穂の口からそんな単語が出てくるだなんて。


264 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 00:26:04 OuHH7RRk0
「さぁ、聞いたことがないなぁ。何かのおまじない?」

「だったらいいんだけどね。ちらっと聞いた話だと神隠しに関係してるとか願いがなんでも叶うだとか……噂にしても支離滅裂で滅茶苦茶なのよ。
 誰も噂の全容を知ってる人はいないんじゃないかってくらいで、うちに調べてくれって声が結構あるのよねー。
 だから浅羽、あんたの仕事はその赤いテレホンカードについて調べて、一つの記事にまとめあげること。分かった? 締め切りは来週の末ね」

「ちょ、ちょっと、それはあんまり横暴が過ぎるんじゃないか? 晶穂が頼まれたんなら晶穂が書くのが筋ってものじゃない?」

「あたしは別の記事を書かなくちゃいけないの。浅羽、あんた最近気ィ抜きすぎ。
 このままじゃあたしが一人で作る個人新聞になっちゃうから浅羽にも仕事を割り振ることにしたわけ。
 文句があるんだったら自分で一つ記事をあげてから言いなさい」

ぐうの音も出ない正論だった。事実、浅羽は今月に入ってからまともな記事を一つも書いていない。
割り振られたスペースを埋めるために締切直前に作ったクロスワードパズルは九割が他紙からの引用で、モラルや著作権意識の欠片もない完全にやる気の枯れ果てたものだった。
とりあえずあたしが聞いた話はまとめてあるから、と晶穂から渡された紙束には怪しげな単語がいくつも並んでいる。
秘密結社サイレン。サイレンの使者、ネメシスQ。なんでも願いが叶えられる楽園。

「なんでも願いが叶えられる、か……」

浅羽は、この噂について調べて欲しがっていたという彼や彼女のことを想像した。
きっと彼らには願い事があるのだろう。中学生の願い事なんてだいたいはお金と異性の二つに集約される。
一生遊んで暮らせるほどの大金が欲しいだとか、好きなあの子と付き合いたい、あわよくばエロいことをしてみたいとか。
だけど、その手の願いは叶えようと思えば叶えられる夢だ。魔法を使わなければ絶対に叶えられないような夢じゃない。
どうせ願いが叶うのだとしたら、絶対に実現不可能な願いが叶うほうが、きっといいのだと思う。

急に胸のあたりが痛くなって、浅羽はそのまま机に突っ伏した。
晶穂が怒鳴る声が頭の上のあたりから聞こえてくるけども全部無視することにする。
……会いたい。伊里野に会いたい。その欲求は時折こうして激しく浅羽の身体の中を駆け巡って、そのたびに浅羽はどうしようもなくなってしまう。

あの夏は、終わったはずだった。浅羽ひとりで園原基地の裏山に大きな「よかったマーク」を刻んで、夏を終わらせたはずだった。
なのに今でもこうやって、引きずっている。結局のところ、浅羽はあの夏が忘れられないのだ。
瞳を閉じればいつだって伊里野の姿が浮かんでくる。浅羽が切った、白くて綺麗な髪の感触が蘇ってくる。

――浅羽が目を覚ましたとき、晶穂はもういなくなっていた。
机に突っ伏したまま、眠ってしまっていたらしい。
何年前から部室にあるのか分からないほど古びた壁掛け時計の短針は、最後に見たときよりも30度ほど進んでいる。

「……帰るか」

夕陽は完全に沈んでしまっていて、わずかに残ったオレンジの光が青みがかった薄暮と混じりあって淡い紫色になっている。
窓から入ってくる光量は外でじじじと変な音を立てる電灯の分だけで、それは勿論廊下を照らすには不十分だから階段を降りるときには足を踏み外さないように慎重に歩かなければならなかった。
一階の正面玄関のすぐそばまで来たときに――浅羽の耳が、聞き慣れない音を捉えた。


265 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 00:26:34 OuHH7RRk0
じりりりりり、じりりりりり。音は、来客受付用の窓口のすぐ横に設置されている公衆電話から鳴っていた。
公衆電話にも固有の電話番号は設定されているから、その番号に電話をかければ公衆電話が着信音を鳴らすことだってあるというのは雑学の一つとして知っていた。
だけど実際に公衆電話が鳴っているところを見るのは初めてで――

ごくり、と音がした。浅羽がつばを飲み込んだ音だった。

三台並んだ公衆電話の、一番右端。音はそこから鳴っていた。浅羽は恐る恐る近づいていく。
浅羽が目の前まで来た途端に、公衆電話は、りん、と小さな音を最後に沈黙した。
公衆電話の排出口には、一枚のテレホンカードが残っている。浅羽はそれを一気に引き抜いた。

「赤い……テレホンカードだ」

浅羽の手に握られたテレホンカードの色は赤。そこに書かれていた文字は、

「PSYREN……? なんて読むんだろうこれ。プシ……違う、PSYはサイキックのサイと同じだから……サイレン?」

これが――これが、なんでも願いを叶えてくれるという赤いテレホンカードなのだろうか。
浅羽はもう一度、ごくりと息を飲んだ。これをどう使えば願いが叶えられるのだろう。
テレホンカードの表面を見てみても、PSYRENという文字の他には目立った特徴はなかった。
だけどこれがテレホンカードならば、その使い道は、一つしかない。分かりきっている。

浅羽はゆっくりと、テレホンカードを公衆電話のスリットに挿し込んだ。
当たり前の話だけれど、電話というものは電話番号を入力しないとどこにも繋がらない。
赤いテレホンカードには電話番号なんてまったく書かれていなかった。願いを聞いてくれるという割にはすごく不親切だ。
だけど浅羽は、何の迷いもなく銀色のボタンを押した。

#、0、6、2、4。

伊里野の持っていたグレーのテレホンカードを使って、たった一度だけかけたことがある番号だった。
あのときも一階の正面入口に並ぶ公衆電話の、一番右端――つまり、今使っている公衆電話とまったく同じ場所だったことを思い出す。
これは何かの偶然なんだろうか。それとも必然なんだろうか。
どくんどくんと心臓が脈打っているのが分かる。その鼓動はいつもより早くて、強い。

「おはようございます! 世界はつ・な・が・る――サイレン入国管理センターです」
「あ、」

ボタンを押し終わって、呼び出し音の一つも鳴らないうちに受話器の向こうから聞こえてきたのは女の人の声だった。
いきなりのことに驚いた浅羽が意味を持たない単音を発しても、受話器の向こうの相手はまるで浅羽の困惑なんて無視して喋り続ける。

「――それではこれから入国審査を行います。質問にお答えください」
「あ……は、はい!」

浅羽の了解の返事が終わらないうちに、受話器越しの質問は始まった。


266 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 00:27:07 OuHH7RRk0
「第1問――12歳以上の日本人である」
「はい」
「第2問――この国の未来に絶望している」
「……はい」
「第3問――過去に脳に傷を負った事、あるいは疾患があると認められた事がある」
「いいえ」
「第4問――慢性的な呼吸困難、もしくはこの星の空気が息苦しいと感じる事がある」
「いいえ」
「第5問――喋る羊の夢を見た事がある」
「はい」
「第6問――宇宙人はいると思う」

どきりとして背筋がすっと冷たくなった。浅羽の答えは、YESだ。
宇宙人はいる。伊里野がずっと戦ってきた相手が、宇宙人なのだ。
伊里野は宇宙人と戦って、そして帰ってこなくて――

「第8問――1から30までの数字の間に素数はいくつありますか」

浅羽の答えを聞かずに、受話器の向こうの相手は次々と質問を投げかけてくる。

「第14問――球型プラズマ、蜃気楼、観測気球。あなたが写真に撮るとしたらどれ?」
「これは、」
「第15問――マンテル。チャイルズ=ウィテッド。その次は?」
「ゴーマン」

マンテル大尉墜落、チャイルズ=ウィテッド目撃、ゴーマン空中戦。
UFO目撃史上における三大事件だ。

「第29問――自分の手の指や七本あるように思えたり、誰かがあなたの臓器を抜き取る相談をしている声が聞こえたりはしなかった?」

「第32問――螺旋アダムスキー脊髄受信体って言葉に聞き覚えがある気はする?」

「第41問――ラジオのノイズから金星人の声が聞こえたことはある?」

「第45問――太陽をじっと見つめていると霊体ミミズが視界に入ることは?」

「第46問――さっきからずっとあなたの後ろにいるのは誰?」

ごくりとつばを飲み込もうとして、飲み込む唾液もないくらいに口の中がからからに渇いていることに気付いた。
放課後の校舎の中で電話をしているだけだというのに、見知らぬ異世界に放り込まれたような違和感しかない。
体温が低くなって、なのに心臓の鼓動だけは早鐘のように鳴り続けて、頭がぼうっとしてくる。

「第53問――『アルミホイルで包まれた心臓は六角電波の影響を受けない』というフレーズに聞き覚えがある気はしませんか?」
「、椎名先生、あなたなんですか」

これと似た質問をされたことがある。あの夏の間だけ園原中学校の保健教諭になっていた椎名真由美が、かつて浅羽にした質問とそっくりだった。
当たり前のように浅羽の質問は無視されて、受話器から聞こえる女性の声は機械か何かが喋っているんじゃないかと思うほどに一定の速度を保ったままだ。

「第54問――猫すき?」

頭をハンマーで思い切り殴りつけられたような衝撃を感じて、浅羽は目眩を覚えた。
この質問は――二人しか知らないはずなのに。
伊里野と二人だけで話した、秘密だったはずなのに。


267 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 00:28:00 OuHH7RRk0
「まさか、伊里野、」
「第55問――UFOの夏は、もう終わり?」
「……終わらない、終わらせない!」

反射的に叫んでいた。お腹の底の方から何かが込み上げてきて、身体中が熱くなってくる。
#0624は、6月24日は、全世界的にUFOの日なんだ。
伊里野が空から帰ってきて、UFOの夏はいつまでも終わらない。それがぼくの望みなんだ。
ぼくはビターエンドに納得できるほど大人じゃないんだ。
ちん毛がぼーぼーになったって、髭を毎日剃らなきゃいけなくなったって、我儘を言いたいだけの子どものままなんだ。
赤いテレホンカード、お前がなんでも願いを叶えてくれるというなら、


「ぼくは、伊里野にまた会いたい……!」
「――審査が終了しました。ようこそ、サイレンの世界へ」


ジリリリリリリリリリ。呼び出し音が鳴る。


 ◇ ◇ ◇


「再び会える事を期待している――人殺し」


 ◇ ◇ ◇


現実離れした経験を済ませた浅羽は、ひとまず自分の頬をつねってみることにした。

「……痛い」

痛覚はきちんとある。もう少し強くつねってみると、痛みも増していく。
なのに夢から覚める気配は全然なかった。だからきっと、これは全て現実なのだろう。
最後の一人が決まるまで、これは――聖杯戦争は、続けられると、天戯弥勒を名乗った男は言った。
そして聖杯戦争には、対になるサーヴァントという存在と共に臨むことになるのだとも。
ならば、浅羽の目の前に傅いている男こそが、

「あなたが……ぼくのサーヴァントなんですか?」

眉目秀麗という形容がよく似合う、まだ成人もしていないだろう若い男は、こくりと頷いた。

「クラスはアーチャー――主の矢となり、敵を打ち貫く弓兵だ。真名は――」

穹(いしゆみ)と、アーチャーは名乗った。穹徹仙というのが、アーチャーの真名――つまり本名らしい。
これ以上ないほどに弓兵のクラスに相応しい名前だと浅羽は思った。

浅羽は、国語の成績は人並みだった。あまり本を読まないし、漢字の読み書きは得意ではない。
だからアーチャーの真名が持つ、もう一つの意味に気付くことがなかった。
穹――この字には、天空という意味が含まれている。
伊里野が帰っていったあの場所と、同じ意味が込められている。


【クラス】アーチャー
【真名】穹徹仙@天上天下

【マスター】浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏


268 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 00:29:24 OuHH7RRk0
以上で投下終了です
ステ表全然間に合ってなくてごめんなさいーーー!


269 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/08(金) 00:40:40 /fRKZ0YI0
期限に遅れましたが二次二次で投下したSSを修正したのを投下します


270 : 保登心愛&アサシン ◆HHvly5T5Xo :2014/08/08(金) 00:43:16 /fRKZ0YI0
私の住むこの町には最近、ある都市伝説の話題が広まっていました。
この世界のどこかで散らばっている赤いテレホンカード、それを公衆電話に入れて使えば
『サイレン』と呼ばれる謎の異世界へ連れて行かれ
その場所で試練を乗り越えた物だけがどんな願いも叶えられる。
そんな噂が広まっていました。
話を聞いた私はもちろん、それが真実だとはとても思っていませんでした。
あの時の出会いが起こる前までは―――







「材料も買ったし早くお家に帰らなきゃ〜」

少女の名前は保登 心愛(ほと ここあ)

パンを焼くための食材を買い終えて、これから家まで帰ろうとした時のことである。
足取りの付かないフラフラした歩き方で急いで進もうとする男の姿があった。
息も切らしており、まるで何かから必死に逃げてる様に思えた。

「………たくない……もう……戦い………くない……」

ボソボソと男が独り言を言いながら逃げていると、足がもつれて男は盛大に転んだ。
拍子に、男の手に持っていたカードがするりと抜け落ちてココアの足元にヒラヒラと舞い落ちた。

「あのう、お兄さん!これ落としましたよ!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!!」

ココアが呼びかけただけなのにも関わらず男は情けない悲鳴をあげた。
まるでココアが恐ろしい物に見えたかのように男の目は心の底から恐怖で怯えきっていた。

「あんたは俺を殺しに……それは、無いよな……俺は帰ってきたんだ……この世界に……」
「お兄さん……?」
「このカードはあんたにやる!!俺はもう願いなんていらない!!これ以上戦いたくないんだぁぁぁぁ!!!!」
「お兄さーーん!?……行っちゃった。どうしたんだろう?」

男はもう既に視界に映らない所まで逃走していった。
ココアは男の落とし物をよく見てみると、それは赤いテレホンカードだった。


271 : 保登心愛&アサシン ◆HHvly5T5Xo :2014/08/08(金) 00:44:10 /fRKZ0YI0
「もしかしてこれって、都市伝説の?」

それが実在しているなら、このテレカを使えば本当に異世界へ連れて行かれるのだろうか?
さっきのお兄さんも異世界へ言って来たのだろうか?

周りを見ると、そこは偶然にも公園だった。
ベンチに公衆トイレにそして公衆電話も備え付けられていた。
幸か不幸かすぐ近くに都市伝説の真偽を確かめられる条件が揃っている事に運命を感じずにはいられない。
だがもし本当だったら……すごく怖い目に遭うんじゃないか。
さっきのお兄さんの姿を見ても明らかに普通じゃないのは分かった。
ココアが頭を悩ませていると誰も座っていないベンチの方から

『女も度胸さ 何でもためしてみるのさ』

今なにかが心から語り掛けてきた気がするけどきっと気のせいだ。
自分に言い聞かせたココアは雑念を振り払って公衆電話へ入り赤いテレカを入れた。
―――そしてココアは『サイレン』の世界に足を踏み入れた。







「それでね。ここに来る前は、チノちゃんに『お姉ちゃん』と呼んでもらうのを願いにしてたんだけどね
 天戯さんの話を聞いている内に別の願いを叶えたいと思ったの」

サイレンの世界で天戯弥勒という男と出会い、聖杯戦争のルールを教えられたココアは
己が望みを叶えるために他者を殺すという非道な行為を否定した。
どんな願いを叶えてもらうにせよ、他の人達の命を奪うなんて出来ないし誰にもさせたくなかった。

「他の皆や天戯さんを説得してこの聖杯戦争を止めたい。それが私の願い
 ねえアサシン!私と協力してほしいの!!」

ココアのサーヴァントであるアサシンはココアの話を聞き、そして出た答えは……


272 : 保登心愛&アサシン ◆HHvly5T5Xo :2014/08/08(金) 00:44:49 /fRKZ0YI0
「ワン!」

とアサシンは吠えて返事をした。
ココアが召喚したサーヴァントはシベリアンハスキーの犬であった。

「本当に協力してくれるの!?ありがとう!!」

アサシンの表情と吠え方からして肯定していると捉えたココアは
喜びのあまりアサシンに抱き付きひたすらモフモフしていた。

「初めて見た時はアサシン(暗殺者)?と思ったけど、とっても賢くておとなしくて
 きっとワンダフルな凄いわんちゃんなんだと分かったよ〜。一緒に頑張ろうね!アサシン♪」
「くぅん」

争いを止めるという事は誰の願いも叶わなくなるかもしれない。
そしたら私のサーヴァントは怒って反対するかも、と内心は不安だった。
だけどこの犬はそんな事無く快く協力してくれた。
このサーヴァントが本当に戦えるのかは分からない。
それでもココアにとってこのサーヴァントは掛け替えのない大切なパートナーだと心の底から思えた。







この犬のサーヴァントはココアの心情とは遥かに違う考えを持っていた。
犬は人間に懐き忠誠を誓う生き物である……と『それ』は理解していた。
だからマスターに懐いた犬として行動していた。
『それ』は犬ではない。
犬の姿に擬態した『それ』は一つの目的の為に行動をしている。


その目的とは他の生命体との同化、それだけである。


273 : 保登心愛&アサシン ◆HHvly5T5Xo :2014/08/08(金) 00:45:37 /fRKZ0YI0
【マスター】
 保登心愛@ご注文はうさぎですか?


【参加時期】
 アニメ本編終了後


【マスターとしての願い】
 聖杯戦争を止める。


【weapon】
 無し


【能力・技能】
 パン作り


【人物背景】
 下宿先である喫茶店『ラビットハウス』で働く女子高生。
 とても前向きで明るく朗らかな性格をしているが、少々ドジなところがあるためチノやリゼにフォローされることも多い。
 可愛い物やモフモフしたものが大好き。
 実家では4人兄妹の末っ子だったことから自分より年下の妹に憧れており、チノのことを実の妹のように可愛がっている。
 家業がパン屋のためパン作りに懸ける情熱は誰よりも強く
 また知識や技術も持ち合わせているため、ラビットハウスの看板メニューとしてティッピーパンを焼き上げた。


【方針】
 協力者を探して、一緒に聖杯戦争を止める仲間を作る。


274 : 保登心愛&アサシン ◆HHvly5T5Xo :2014/08/08(金) 00:46:47 /fRKZ0YI0

【クラス】
 アサシン


【真名】
 X@遊星からの物体X


【パラメータ】
 筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具C
 (寄生体によってステータスは変動)


【属性】
 混沌・中庸


【クラス別スキル】
 気配遮断:E
 「暗殺者」のクラス特性。
 自身の気配を消す能力。ただし対象となるのは、あくまでX自身のみで寄生体の気配を殺す事は出来ない。
 攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる他、直感が優れていると看破が可能になる。


【保有スキル】
戦闘続行:A++…名称通り戦闘を続行する為の能力。細胞単位で独立して生きている為、肉片や血液だけの状態でも活動が可能


 変身:C…自らのカタチを変えるスキル。異形の怪物となり強大な力を得るが宿主の自我は消滅、変身中は知性を失い本能でしか行動出来なくなる代償を払う。


 記憶吸収:D…寄生した人物の記憶を読み取り学習する能力。宿主が持つ知識や技術を利用する事が可能。


【宝具】


 『浸食し同化する物体(ザ・シング)』
 ランク:C 種別:対生物宝具 レンジ:1 最大補足:1人
  他の生物と同化する能力。Xの皮膚や体液に接触すると感染し徐々に同化する。
  寄生した人物の自我を消して肉体を奪う事も、乗っ取られた事に気づかないまま自我を残す事も可能
  Xというサーヴァントは一体だが、複数の生命体と同化して行動が可能で、同時に多数の肉体を所持する事が出来る。
  意志は統率されておらずそれぞれが独立して行動している為、統率性は無い。
       
 


【weapon】
 無し


【人物背景】
 洋画、遊星からの物体Xに登場するクリーチャー
 約10万年前に寄生した宇宙人と共に南極へ墜落し氷漬けになっていたが1982年にノルウェー隊に発見され
 基地まで回収された所で目を覚ます。
 ノルウェー隊の人間達を次々と感染させるが決死の抵抗により犬一匹を除いて駆逐され
 アメリカ南極基地まで逃走した。
 試算によれば、人間社会に辿り着いたそれが全人類を同化するまでに必要な時間はおよそ2万7000時間とされている。


【サーヴァントとしての願い】
 他の生命体との同化、Xには理性が無いので願いというより本能と言った方が正しい。


【基本戦術、方針、運用法】
 隙を見て他のマスターやサーヴァントと同化する。
 暗がりなので、主に夜や室内で活動を開始する。
 不死性と感染力で非常に倒しにくい特性を持っているが
 Xがサーヴァント以外の肉体に寄生した状態であり
 霊体化が出来ない他、神秘性を持たない攻撃も通用するほどに耐久が低い


275 : ◆HHvly5T5Xo :2014/08/08(金) 00:47:59 /fRKZ0YI0
投下終了です


276 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/08(金) 00:52:07 hPK1qf9A0
投下お疲れ様です!

投下終了後に大変恐縮ですが◆S2NYXu2lPk氏及び◆BATn1hMhn2氏にはどれくらいかかりそうか書き込みをお願いしたいです。
目処程度でいいので教えてもらえれば大変助かります。

そして現段階の状況です。抜けがありましたらご指摘を、そして申し訳ありません。


【セイバー】
★夜科アゲハ&纏流子
○レックス&少名針妙丸
○叢雲&ムラクモ
○狛枝凪斗&ゴールドマン

【ランサー】
○ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア・スカーレット
○朽木ルキア&前田慶次

【アーチャー】
○ジョナサン・クレイン&エス・ノト
○タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド
○美樹さやか&ヘラクレス
○浅羽直之&穹徹仙

【ライダー】
★鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ
○遠坂時臣&桐生一馬
○虹村形兆&エドワード・ニューゲート
○ジン&カービィ

【キャスター】
○浦上&グレムリン
○犬飼伊助&食蜂操祈
○マルチェロ&鬼人正邪
○暁美ほむら&フェイスレス(白金)

【アサシン】
○星空凛&プロシュート
○マリク・イシュタール&ロデム
○保登心愛&X

【バーサーカー】
★間桐雁夜&一方通行
○美樹さやかちゃん&不動明
○鈴仙 優曇華院 イナバ&うちはイタチ
○ザ・ヒーロー&無銘(ハンター)
○エルメェス・コステロ&大神さくら


277 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/08(金) 00:56:27 wsR1WA3.0
>>257-260エルメェス・コステロ&バーサーカーでの、
エルメェスのステ表です。
それにしても最後の最後でバーサーカーラッシュがきちゃいましたね

【マスター】
 エルメェス・コステロ

【出展】
 ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン

【参加時期】
 6巻でスポーツ・マックス戦に突入する前

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争には乗らない。
 願いは自分自身で叶える。

【weapon】
 『キッス』のスタンドビジョン
 破壊力:A スピード:A 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:C 成長性:A
 スタンドで格闘戦を行うことが可能。
 繰り出されるパンチは非常に強力。

【能力・技能】
 スタンド能力『キッス』
 手からシールを出す事ができるスタンド。
 シールの性質は以下の通り。
 1、シールを貼った物体を2つに分離させる。物や生物、霊体を問わず有効で、全く同じ性質のものが2つできる。
 範囲指定も可能で、その物体の一部だけを分離させることもできれば、その物体の全体を分離させて完全に2つにもできる。
 2、シールを剥がすとお互いに引き合った後、元の1つに戻る。
 3、その際、対象には多少の破壊が伴われる。
 シールを剥がして物を引き寄せる、相手にシールを剥がさせトラップとして利用する、
 ダメージ覚悟で自分や味方に貼る、とさまざまな使い方ができる応用力の高い能力。
 基本的には近距離パワー型のスタンドだが、シール自体の射程や持続時間は非常に長い。

【人物背景】
 グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所に服役する女囚。
 囚人番号はFE−40533で、罪状はコンビニ強盗(前科あり)。
 メキシコ移民の父が開業したスラム街のメキシコ料理屋で暮らしていたが、姉・グロリアがスポーツ・マックスの犯罪を目撃。
 エルメェスを守るために警察に通報したグロリアは、報復として殺害されてしまう。
 復讐のためにエルメェスはわざと罪を犯しグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所に潜入。
 その際、同時期に収監された空条徐倫と親友になる。
 額と顎に刺青があり、豊胸手術をしているので巨乳(中には看守の賄賂に使う金が入っている)。
 エルメェスは女性だが、ジョジョ三大兄貴の一人に数えられている。
 男らしい台詞の数々、義理堅く頼りがいのある性格、刑務所で会って間も無い徐倫への面倒見の良さ等、
 兄貴と呼ばれるにふさわしい風格を見せる。

 
【方針】
 とりあえず、ほかの参加者に会ってどんな人がいるのかを見極める。
 危険な者は排除し、無力な者は保護する。
 たとえ敵対しても、黒幕に踊らされているだけの者は助けたい。


278 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 01:16:16 Ars/uRBk0
>>276
浅羽アーチャーのステ表は明日、遅くとも明後日までには投下します
期限超過申し訳ありません


279 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/08(金) 01:20:09 KU4I.c1k0
セイバーは今日中、アサシンは明日までには投下する予定です
遅筆で申し訳ありませんがもうすこしお待ちください


280 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/08(金) 01:23:32 hPK1qf9A0
両氏回答ありがとうございました。
それでは募集期間は「両氏の投下が終了した時点で終了」とさせていただきます。
それまでは他の方も投下は歓迎です!

形だけで全然いじれてはいないですがwikiを用意しました。
まだ投下された話の殆どを収録していない状態で申し訳ありません。

ttp://www60.atwiki.jp/psyren_wars/


281 : ◆iDawWxUUzg :2014/08/08(金) 03:52:31 jLkeUbNY0
投下します。


282 : 人吉善吉&アサシン ◆iDawWxUUzg :2014/08/08(金) 03:53:08 jLkeUbNY0
       


「傑作だな、聖杯戦争」



 ◇ ◇ ◇



生まれた時から、彼女は総てにおいて満たされていた。
恵まれた家庭環境、才覚に溢れた身体と頭脳。
他の人ができないことを簡単にやってのける彼女を、尊敬していた。
それが、眩しくて、愛おしくて――少しでも追いつこうと努力した。

「子供の頃から、めだかちゃんの横に並び立てる男になりたいと俺は努力していた」

いつかはきっと。
その想いを胸に、ひたすらに前を向いてきた。
あらゆる知識を頭に詰め込んで、あらゆる武術をかじり、自分に適応するモノを極めて。
ただ一人、彼女の為に。そして、何よりも誰に対しても真っ直ぐでいられる自分で在り続ける為に。
人吉善吉は、努力の最果てまで辿り着いたのだ。

「だけど、もっと見るべきもんもあったんだよな。言ってやるべきだった、めだかちゃんに」

だが、その最果てで見た景色は、違った。
絶対に正しいと信じていた彼女は歪で、救われない女の子だった。
何処にでもいるありふれた少女。正しさに動かされているだけのか弱い女の子だった。

「ナメてんなよ、バーカ。お前が全部背負う必要なんざ何処にもありやしねぇってな」

そして、善吉は気づいてしまった。
間違いを正さないと――彼女は破綻する。
黒神めだかはどうしようもなく報われず、救われない。

「聖杯戦争。万感の想いも世界へと響かせる聖杯なら、めだかちゃんの呪縛も無くなるのかねぇ」

そうして、善吉はめだかに期待することを諦めた。
立たないといけない。振るわないといけない。
彼女を抜きに、自分が正しいと思える拳を。

――それなら、これを使うといい。

安心院なじみはそんな善吉を、くつくつと嗤いながらも、認めた。
これまでの『主人公』を押しのけてでも。めだかと敵対することになってでも。
自分だけの想いを貫く覚悟をついに得たことを。
オリエンテーションで打ちひしがれていた善吉に差し伸べられたモノは赤いテレホンカード。

「ま、取れる手段は何でも取らないといけねぇか」

願いを叶える戦争へと誘う魔性の宝具を、善吉は手に取ることを選んだ。
命の保証はない。もしかすると、何も得ることができず死にゆく結末がまっている可能性だってある。
そんな、なじみの優しい忠告をはねのけ、善吉は頬を釣り上げて笑った。

――命ぐらい懸けれなきゃ、俺は一生めだかちゃんに追いつけねぇよ。

この決意は、間違いなんかじゃない。
人吉善吉が一人で考え、一人で決めた願いの意志。
だから、

「つー訳だ、力を貸せッ!」

彼は迷いなく、テレホンカードを公衆電話の差し口へと押し込んだ。


283 : 人吉善吉&アサシン ◆iDawWxUUzg :2014/08/08(金) 03:53:35 jLkeUbNY0
       


 ◇ ◇ ◇



「いいや、戯言だね。聖杯戦争」



 ◇ ◇ ◇



「よう、愉快なお祭り騒ぎへの招待状――確かに受け取ったぜ」

そして、天戯弥勒の開催宣言を経て、人吉善吉は此処にいる。

「……えーっと、アンタがサーヴァントでいいのか?」
「ったりめーだろ。どっからどう見てもサーヴァントじゃねーか」
「いや、見るからに普通の男子高校生なんだけどよ……」

善吉の前に現れたサーヴァントは一見しても、化け物じみた雰囲気を出さない普通の青年だった。
茶色に染めた髪、胸元を開けた制服に、鋭い目つき。
年齢的には、自分とそこまで変わらないだろう。

「おいおい、心配すんなって。見た感じ、強そーじゃねーって自覚はある。
 だが、肝心なのは中身? そうだろうが、つーかそうだから」
「そういう意味じゃなくてさ。俺と同年代の奴が出てきて驚いただけだっての。
 こっちは最初から信じてるよ、アンタのこと」

そんな心配を読み取ったのか、サーヴァントは皮肉げに笑った。
最後の一人になるまで生き残る。その果てに、聖杯は産声を上げるらしい。
全く、大した苦難の道程だ。
もっとも、相対するサーヴァントはそんなこと知ったことではない。
サーヴァントが求めているのは何が何でも勝ち抜く決意。何を切り捨てて、何を掴み取るかを決める一歩なのだ。

「……そういう照れることを真正面から言うかねぇ。お前、人誑しだな?」
「は、はぁ?」
「ま、ともかくだ。呼ばれたからには勝ちに行きたいね」

願いを叶えるには代償が存在する。重複した願いは、争いを生む。
聖杯戦争ではありふれた茶飯事であり、常識とさえ言える絶対のルールだ。

「ああ。というか、アンタにも願いがあるんだな」
「当然だろ。願いがあるからこそ、サーヴァントになってんだ。
 何事にも報酬ってのは必要だぜ? 生憎とボランティアは嫌いなんでね」

だから、迷うな。一直線に聖杯を勝ち取るべく、駆け抜けろ。
サーヴァントは善吉に対して言外に伝えているのだろう。

「そんで、俺の願いが聞きたいってか。言ってしまえば簡単なんだけどよ。
 つまるところ、リベンジマッチだ。もう一度、やり返したい奴がいるんだよ。
 無様に負けちまったから、今度こそ俺は勝ちたい。負け犬のまま終わるのは御免なんでね」

サーヴァント――垣根帝督のすることは英霊になる前と変わらなかった。
上へと登り、自分こそが最強だという証明を勝ち取るのだ。
例え、マスターに理解されずとも、知ったことか。
彼の根本は英霊になろうとも、揺らがない。

「へっ、シンプルでいいじゃねぇか。それに、そういうのわかるぜ。
 俺も負けたまま終わるのは嫌だ。どうせなら、勝ちに行きてぇよ」

だが、今回当てられたマスターは――少し違った。
彼の願いを馬鹿にせず、笑って肯定してくれる変わった奴だ。
それが、帝督の頭に強く残った。


284 : 人吉善吉&アサシン ◆iDawWxUUzg :2014/08/08(金) 03:54:01 jLkeUbNY0
    


【マスター】人吉善吉@めだかボックス

【参戦時期】第一回オリエンテーリング終了後。

【マスターとしての願い】黒神めだかを打ち砕く。

【weapon】なし

【能力・技能】

『欲視力』
他人の視界を覗くスキル。

『サバット』
大抵の武術はかじった善吉だが、その中でも足技を多用するサバットを一番の得手としている。
また、銃火器対策も積んでいる。

『???』
なぜかは知らないが、異常性を持った人物に好かれる。
ある意味、人誑し。

【人物背景】
めだかボックスの主人公。箱庭学園の第98・99代生徒会庶務を務めている1男子生徒。
ヒロインであり、主人公でもある黒神めだかとは2歳の頃からの幼馴染。
昔からめだかの正しさを信じ多大な好意と信頼を寄せていたが……。

【方針】

聖杯を取る為にも、生き残る。



【クラス】
アサシン

【真名】
垣根帝督@とある魔術の禁書目録

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 運D 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:D
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】

見切り:B 
敵の攻撃に対する学習能力。
相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。
但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。

生存:B
暗部に長くいる経験からか、戦場にて生還する事に長けている。

対魔力:C
精神汚染系の魔術に対する強い耐性を持つ。物理的耐性にも強い。
未元物質を纏うことで得られるスキル。

【宝具】

『未元物質』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
学園都市第二位のレベル5であった垣根帝督が有する、 「この世に存在しない素粒子を生み出し(または引出し)、操作する」能力 。
及びそれによって作られた「この世に存在しない素粒子(物質)」。
能力仕様の際は基本的に天使のような白い6枚の翼の形になる。
これらの能力を活かし、飛行や防御・打撃・斬撃・烈風・衝撃波・光攻撃に応用が可能。
また、未元物質を利用し、体の傷を癒やすことも出来る為、かなり万能である。

【Weapon】

拳銃。

【人物背景】
学園都市で暗部組織、『スクール』のリーダーを務めていた青年。
能力『未元物質』を所持する、学園都市第2位の超能力者(レベル5)。
基本的に敵でない一般人は攻撃しないし、敵を許す寛容さもあるが、逆上すると周りに気を使わなくなる。
それでも裏社会ではまだ人間味のある方だが、一方通行にはチンピラと酷評されるレベル。

【サーヴァントとしての願い】

再誕。一方通行へのリベンジ。

【基本戦術、方針、運用法】
宝具を活かした機動戦、もしくはトラップ主体の待ち戦術。
正面戦闘もこなせるが、長期的な戦いを踏まえ、消耗は避けたい。


285 : 人吉善吉&アサシン ◆iDawWxUUzg :2014/08/08(金) 03:54:15 jLkeUbNY0
投下終了。


286 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/08(金) 22:17:47 DQ3p.Sf60
>>280
こちらが浅羽直之&穹徹仙のステータス表になります。よろしくお願いします。

【マスター】
浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏

【参加時期】
原作終了後(中学三年生に進級済み)

【マスターとしての願い】
伊里野加奈ともう一度会う

【weapon】
なし

【能力・技能】
なし

【人物背景】
イリヤの空、UFOの夏の主人公。これといって特徴も得意なこともない普通の男子中学生。
周りに流されやすく奥手な性格だが、時折突飛な行動力を見せることもある。
実家が理髪店を経営しているため散髪が得意で、校内で生徒相手に散髪をして小遣い稼ぎをしている。
中学二年生の夏休み最後の日に伊里野加奈と出会ったことで、彼の運命は大きく変わってしまう。

【方針】
伊里野と会うためならなんだってやってやる


【クラス】
アーチャー

【真名】
穹徹仙@天上天下

【パラメータ】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具D

【属性】
混沌・善

【クラス別スキル】
対魔力:E
単独行動:B

【保有スキル】
白羽(穹):A
太古の昔より磨かれてきた武芸を受け継ぐ。穹は弓を司る血筋であり、アーチャーは穹家の現当主である。

龍門:E
氣を操るスキル。龍に喰われた故事により、大幅に弱体化している。

【宝具】

『蒼穹一矢』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1
太古より弓術を司ってきた穹の武の結晶ともいえる一擲が、宝具へと昇華した。

【weapon】
ダーツの矢

【人物背景】
非常に美しい容姿の男。一人称は「僕」「俺」。
近代の科学技術を応用した技を使う他、水龍の龍門を持ち、水滴に氣を込めて、弓の如く投射する術を持っていた。
しかし異能の力を喰らう龍拳に龍門を喰われ、能力を喪失してしまう。
主である高柳光臣に忠誠を誓っており、彼の人柄に惚れ込んでいる。
実は仮面ライダーマニアで、昭和も平成も両方を愛する主義の持ち主である。

【サーヴァントとしての願い】
主であるマスターの願いを叶えるために自らの力を奮う。
出来ることならばもう一度光臣のために力を使いたい。

【基本戦術、方針、運用法】
正面切っての戦闘で他のサーヴァントより優位に立つことは難しい。
アーチャーの本分である狙撃とクラス特性の単独行動を有効に活用し、勝つことではなく生き残ることを優先すべきだろう。


287 : 名無しさん :2014/08/08(金) 22:21:58 LW0Vp45E0
まだ投下って大丈夫でしょうか・・・?


288 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/08(金) 22:27:08 hPK1qf9A0
ステ投下お疲れ様です。

>>287
投下は大丈夫です、大歓迎です!
期間としては>>280のとおりとなっています。
ので、最速でアスの9日(土)辺りが締めですね


289 : ◆DpgFZhamPE :2014/08/08(金) 23:39:37 LW0Vp45E0
>>288
ありがとうございます!
では
紅月カレン&セイバー、投下します


290 : 紅月カレン&セイバー ◆DpgFZhamPE :2014/08/08(金) 23:40:24 LW0Vp45E0
「───何でも願いが、か」

カツン、と靴音が鳴り響く。
コンクリートの床を踏み締めて、彼女は歩く。

───黒の騎士団。
───英雄、ゼロ。
そんなものは存在しなかった。
あいつはルルーシュで。
あいつは私たちを利用して。
あいつは───偽善者だった。

「もう、日本を取り返すには」

これしかないのかもしれない、と。
口の中で呟く。
修羅に身を堕とし、あらゆる命を踏み躙り、聖杯をこの手に。

「・・・うん、私、やるよ」

その若き身に宿した決意は如何程のものか。
母親と安全に暮らせる世界を。
兄が臨んだ日本を。
国を、取り戻したい。
その願いは、その若き彼女にはとても大きすぎる願いで。

「勝ち残りたい。もう私には───この手段しか、ない」

ゼロはルルーシュだった。
黒の騎士団も殆どが敗走し、捕らえられただろう。
時間もない。手段もない。
もう、彼女には聖杯に縋るしかないのだ。

「だから、お願い」

赤いパイロットスーツに身を包んだ彼女は、手を伸ばす。
その手の先には───緑の衣服に身を包んだ、青年がいた。
その青年は喋らない。
無口なのか、何なのかはわからない。
それでも彼は、コクリと頷いた。
共に修羅の道を歩むと。
願いのために、あらゆる命を無惨に斬り捨て道を開こうと。
この身は、この聖杯戦争に限り───マスター、紅月カレンの剣になると。

「ありがとう、セイバー」

差し出された手を握る。
緑の衣服のサーヴァント───セイバーは、ニコリと笑った。
カシャリ、と拳銃の音がする。
セイバーだけには戦わせない。
セイバーにサーヴァントを任せて───マスターは、私が殺す。
KMFで、紅蓮で何度もやったこと。
今更迷うことはない。

「・・・?」

その時、音楽が聞こえた。
鳴り響く、森林の奥にいるような感覚を持たせるその音楽。

「セイバー?」

それは、オカリナだった。
水色の、透き通るような美しさを持ったオカリナ。
セイバーの、宝具の一つ。
気負いするな、と。
気を病んでいては勝てる勝負も勝てなくなるぞ、と。
まるでそう伝えるかのように、彼は心を癒す優しい音楽を奏でる。

「うん、そうだね。
こんな後ろ向きじゃ、何もできないか」

パンッと頬を叩く。
気合いを入れるためのその行動は、彼女の腑抜けた気持ちを消し去った。

「じゃあ行くよ、セイバー!
この戦い───勝ち抜こう」

カレンが歩き出したその後に、セイバーも続く。
銃はある。セイバーもいる。
紅蓮はないけれど───やってみせる。
その願いを心に秘め。
彼女は、彼女の剣は、全てを断ち切る。


291 : 紅月カレン&セイバー ◆DpgFZhamPE :2014/08/08(金) 23:41:07 LW0Vp45E0
◆ ◆ ◆

ハイラルにおける時の勇者。
魔王を討ち、平和を齎す緑衣の勇者。
退魔剣を掲げ、あらゆる武具を使いこなし、数多くの魔物を斬り捨てる、伝説の勇者。
しかし。
この歴史において。


───時の勇者は、敗北した。
ハイラルを巡る最後の決戦において、時の勇者は戦死した。
彼が最後に見たのは、魔王ガノンドロフが六賢者によって封印された、その光。
彼は、救えなかった。
彼は、守れなかった。
素晴らしき世界を。
美しかった街を。
愛すべき人々を。
信じるべき仲間たちを。
救えなかったから。
助けたいと願った。
───そのために、戦うと決めた。
修羅に身を堕としてでも、助けたかったものを助けると。


───そうして、時の勇者は今回の聖杯戦争において召喚された。
同じ、祖国を守りたいと願う少女のもとに。
誇りも、大義もないこの殺し合いに身を堕とす少女の願いも叶えてみせると。
恐らく戦いは厳しく、今まで経験した何者よりも強敵揃いだろう。
あの魔王よりも、強敵が存在しているかもしれない。
それでも、時の勇者は諦めない。


───全ては、祖国の救済のために。


292 : 紅月カレン&セイバー ◆DpgFZhamPE :2014/08/08(金) 23:42:30 LW0Vp45E0
【マスター】
紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ
【参加時期】
ゼロの正体がルルーシュだと判明したその直後
【マスターとしての願い】
日本奪還
【weapon】
拳銃
いたって普通の拳銃。
仕込みナイフ
ポーチに見せかけたナイフ。手動で刃が飛び出すため、一見女の子が持つ普通のポーチにしか見えない
【能力・技能】
KMFを操縦し、多くの敵を排除しエースパイロットとなったその操縦技術・動体視力はかなりのもの。
肉弾戦でもそれは現れており、ナイフ、拳銃の扱いにも長けている。
ゲリラ的な活動もしていたため、この聖杯戦争のような場所での立ち回りも中々のものを見せてくれるだろう。
【人物背景】
黒の騎士団の女性エースパイロット。日本人の母とブリタニア人の父を持つハーフ。
ブリタニアによる日本占領後は父の生家である名家・シュタットフェルト家に引き取られ、「カレン・シュタットフェルト」としてブリタニア国籍を持った。しかし、カレン自身はブリタニア人ではなく日本人であることを選択し、反帝国グループのリーダーだった兄のナオトが生死不明になった後、兄の遺志を継ぎ自らも「扇グループ」に加わり反帝国活動を始める。黒の騎士団では、ゼロの親衛隊である零番隊隊長に任命される。
最初はゼロに不信感を持っていたが、次第に彼に対し信頼と好意を抱くようになる。反帝国活動に身を投じていた当初は兄の遺志を継ぐという決意を抱いており、エリア11を母親と安心して暮らせる国にするという目的を持つようにもなった。
しかし、神根島において信頼していたゼロがルルーシュだったということが判明。
更に利用されていたことを知る。
「結果的には日本は解放される。文句はないだろう」。
ルルーシュが言い放ったその言葉は、心酔していたゼロの姿を打ち砕くものであり、その場で戦意を喪失、ルルーシュを救出せずに逃げ出してしまう。
───その時点で、この場に呼ばれることとなった。
ここに呼ばれることがなければ自分なりの答えを見出し、新たに日本解放へと望むことになるが、それはまた別の話。
心酔していた日本解放の象徴・希望を失い、彼女は脆い心のまま聖杯戦争に臨むこととなる。
【方針】
まずは戦闘の準備を。
出来次第、攻勢に移る。


293 : 紅月カレン&セイバー ◆DpgFZhamPE :2014/08/08(金) 23:43:05 LW0Vp45E0
【CLASS】
セイバー
【真名】
リンク@ゼルダの伝説 時のオカリナ
【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
緑衣の勇者:A
世界の歴史において、受け継がれてきた勇者の魂。
同ランクまでの精神干渉を無効化し、罠の類を見抜く。

勇気の黄金三角形:A
神々より与えられし三つの黄金三角形、その一つ。
どのような状況下においても十全の戦闘能力を発揮し、その心が折れることはない。

武芸百般:C
どのような武器でも操り続け、使いこなした逸話から得たスキル。
あらゆる武器において、Cランク程度の熟練度を得る。
【宝具】
『受け継がれた退魔の剣』(マスターソード)
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:10

その剣は、あらゆる魔を斬り伏せる。
混沌、または悪の属性を持つものに本来以上の力を発揮し、追加ダメージを与える。
尚、この宝具の恐るべきところは、宝具自体の性能でもなく───それを操る、セイバーの剣技である。

『時を操りし王家の秘宝』(ときのオカリナ)
ランク:B 種別:ーーー レンジ:ーーー 最大補足:ーーー

彼が生前、その音色と共に持ち歩いたオカリナ。
様々な音色を奏で、様々な効果を齎す。
時には嵐を巻き起こし、時には炎を呼び起こし、時には闇で相手を捉える。
(イメージとしてはゼルダ無双のシーク(ハープ)の紹介動画のような)
一番の特徴である、時を操る能力は、制限されている。

【weapon】
リンクの旅道具
時のオカリナで使用したバクダンや弓、フックショット、ハンマーなどの武具。
しかし宝具ではないため、威力は低め。
【人物背景】
コキリの森で育った少年。
生まれながらにそれぞれ自分だけの妖精を持つコキリ族の中で、唯一妖精を持っておらず、ミドからは半人前とからかわれてきた。ある日、森の守り神であるデクの樹サマからようやく彼の許に妖精が遣わされたが、実はリンクはコキリ族ではなくハイリア人で、コキリ族以外にとって禁断である森に戦火を逃れて入り込んだ母親が、死に際にデクの樹に託した子供だったと明かされる。そしてデクの樹サマの言葉に従い、ハイラルの運命を背負うべく森を後にする。やがて冒険の中で時の神殿に辿り着き、マスターソードを抜いて7年間の眠りについたリンクは、「勇気のトライフォース」に選ばれ、「時の勇者」として覚醒。以降はマスターソードを抜き差しすることでおとな時代とこども時代を行き来しながら、時を超えた冒険を繰り広げる。
ゼルダの伝説は、この物語からみっつの世界へ分裂することになっている。
一つは、時の勇者が全てを救ってもとの時代へ帰った後の世界。
もう一つは、もとの時代へ帰ったリンクがガノンドロフの反逆を未然に防いだ世界。
そして最後の一つは───時の勇者がガノンドロフに敗れ、七賢者による封印戦争が巻き起こった世界。
七賢者及びハイラルの騎士団とガノンドロフ及びその配下の魔物の全面戦争。
幾つもの命の犠牲を払い、聖地にガノンドロフは封印された。
このリンクはその世界のリンクである。
【サーヴァントとしての願い】
最初からガノンドロフの存在を消し、ハイラルに平和を。
【基本戦術、方針、運用法】
正面から敵は斬り伏せる。
あらゆる道具を使用して、敵の隙を作り、攻撃を当てていく。


294 : 紅月カレン&セイバー ◆DpgFZhamPE :2014/08/08(金) 23:44:30 LW0Vp45E0
投下終了です


295 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/08(金) 23:55:37 KU4I.c1k0
ギリギリになりましたが投下します


296 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/08(金) 23:56:24 KU4I.c1k0
「それにしても、今日は天気が悪いね……ゴロちゃんの顔が、見えないよ……」

 口にされた言葉に返事が出来なかった。
 外を見れば、雲ひとつ見当たらない晴天から陽光が降り注ぎ事務所内を照らしている。
 先の発言との矛盾が嫌でも現実を突きつけていた。
 もう、この人は死ぬ。
 まだまだ恩を返し切れていないのに、もっとしてあげたいことが沢山あるのに、自分の主は居なくなってしまうのだ。
 いずれは訪れると覚悟していたはずなのに、いざその瞬間になると自らの無力を嫌でも実感してしまう。
 そうやって立ち尽くしている間に、彼は自分の横を通り、最後の戦いにおもむこうとしている。
 勝敗を度外視した、ただ無念を残さないで逝くために行う、宿敵とのけじめの戦い。
 やはり無理にでも止めるべきかと振り返ったと同時に、何かが床にぶつかる音。
 次に自分の目が捉えたのは、前のめりに倒れ伏した自分の主――北岡秀一の姿だった。

 ■  ■  ■

「先生!」

 忘れたくても忘れられない主の最期を突きつけられたところで、由良吾郎は跳ね起きた。
 続いて勢いそのままに辺りに目を走らせていく。
 視界に映るのは錆が浮いた機械に、うち捨てられた廃材の数々や地面に積もる砂埃ばかり。
 天井を見てみれば、何カ所も空いた大穴から月と星空が窺えた。
 どうやら自分が今まで倒れていたのは、見覚えのない廃工場の中のようだ。

(確か、事務所に居たはずなのに)

 まさか全ては夢だったのかと思ったが、その考えは右手に握られたものに目を移した途端に消え失せた。
 緑色のプレートの中央に黄金の牛を模したレリーフがあるカードデッキと、半ばまで差し込まれた赤いテレホンカード。
 それを認識した途端、吾郎の脳裏に意識を失う前の記憶が思い起こされた。
 あの後、北岡の遺体を簡単に弔うと、吾郎は自然と遺されたライダーデッキを手に取っていた。
 北岡の無念を代わりに晴らそうとしたのだが、次の瞬間にはあの天戯弥勒の居た空間に移動していたのだ。
 予想外の事態に呆気に取られていると、弥勒の口から今回の催しについての説明が始められていた。
 聖杯戦争という名の最後の一人になるまで行われる殺し合い。
 いきなりこのようなことを強要されれば普通は取り乱したりするのだろうが、吾郎は逆に冷静になっていった。
 なぜならば、弥勒の語った内容は北岡の参加していたライダーバトルとよく似ていたからだ。
 サーヴァントをミラーモンスターに置き換えれば、ほぼ一緒といってもいい。
 それでも異常事態なのに変わりはないが、まったく未知なものに対するよりは落ち着けた。
 そして、説明が終わるとまたしても視界が暗転し、今に至るわけだ。


297 : 由良吾郎&セイバー  ◆S2NYXu2lPk :2014/08/09(土) 00:00:59 06Dvup5k0
「目が覚めたか」

 段々と記憶がはっきりしてきたところで、唐突に声が掛けられた。 
 そちらに振り向くと、物陰から一人の男が姿を現す。
 まず目に付いたのは、左頬にナナメに走る傷跡と、オールバックに纏められた黒髪。
 下に視線をずらせば右腰に携えられた二本の刀と、よく鍛えられた胴体や手足を覆う装具。その上には茶色の陣羽織を纏っている。
 厳つい顔つきと見るものを射殺しかねない鋭い視線は、男がただ者でないと示していた。

「あなたは……」
「片倉小十郎。一応セイバーのサーヴァントってことになってる。お前は?」
「由良吾郎です」
「吾郎か。まあ、よろしく頼む」

 吾郎が立ち上がるのに合わせて、セイバーは堂々とした足取りで近づいてきた。
 距離が近くなるのに従って、男の身に纏う雰囲気が嫌でも感じ取れていく。
 肌がピリピリし、少しでも気を抜いたら後退ってしまいそうだ。
 吾郎が今までに相手にしてきたチンピラたちとは比べものにならない凄みと威圧感を、セイバーはかもし出していた。

「それでな吾郎。早速だが、オメェは聖杯に何を願うんだ?」
「願い、ですか?」
「何かあるんだろ。そうじゃなきゃこんなところには居ねえさ」

 問われて、気付く。
 天戯弥勒は言っていた。お前たちは願いがあるから呼ばれたのだと。
 では、吾郎の願いとは何だろうか。
 北岡の代わりに浅倉威と決着を付ける? それは目的ではあっても願いではない。
 では何か。少し考えてみると、答えは簡単に出てきた。
 由良吾郎が戦う理由なんて決まっている。すべては北岡のためだ。

「俺は……ある人を生き返らせたいんです」
「死人の蘇生、か……」

 吾郎の願いを聞いたセイバーは、目を閉じてひとつ息を吐く。
 浮かべる渋面が現しているのは失望というより、どう答えるべきか悩んでいるようだ。
 気持ちは分かるが、賛成は出来かねるといったところか。
 どうやら堅物な見た目にたがわず、目の前の男は生真面目な性質らしい。

「当たり前だが人はいずれ死んじまうもんだ。その道理を覆したいなら確かに聖杯にでも縋るしかねえわな。
 だが、分かっているんだろうな。この戦を勝ち残るなら他の奴らの願いを踏みにじっていくことになる」
「……はい」
「オメェ、人を殺した経験は?」
「……ありません」
「できるのか? 参加してる連中には女子供だっているかもしれねえ。そいつらが刃を向けてきたら、殺せるのか?」

 セイバーの問い掛けに、吾郎は言葉に窮した。
 確かに、セイバーの言うとおりの弱者や、自分のように願いはあっても巻き込まれて参加している者たちも居るかもしれない。
 いや、もしかしたら全員が強制的に参加させられている可能性もある。
 そのような人々を自分は撃てるのかと考えてみるが、今度はすぐに答えは出てこない。

「迷うような半端な覚悟だったら止めときな。そのまま戦ったところで途中でくたばるか、願いの重みで潰されるだけだ。
 第一、命なんてもんは迷いながら奪っていいもんじゃない。
 運がいいことにオメェはその赤い板きれを使えば元の世界に帰れるんだからな」

 セイバーの諭すような言葉に、吾郎は促されるまま右手に握りしめていたカードデッキを見つめる。
 そこに差し込まれたままだった赤いテレホンカードを取り出し、眼前にかざす。
 注視しなくても、アドベントカードとは大きさもデザインも異なっているのは明らかだ。
 このカードがいつ差し込まれていたのかは分からない。
 だが、今なら分かることもある。これに触れたから自分は聖杯戦争に巻き込まれたのだ。

(これを使えば帰れる……帰る?)


298 : 由良吾郎&セイバー  ◆S2NYXu2lPk :2014/08/09(土) 00:01:40 06Dvup5k0

 そこで新たな疑問が生まれる。帰ってどうするのだ。
 戻れば改めて浅倉との戦いに挑むことになるだろう。
 だが、もし浅倉を倒したとしてもその後はどうする。
 結局、そのまま最後の一人になるまでライダーバトルを戦い続けるだけだ。しかも今度は顔見知りである城戸真司や秋山連とである。
 どの道、カードデッキを手にした時点で、自分は引き返せない道に入っていたのだ。
 この事実を理解したならば、迷う必要はない。

「セイバーさん、俺の話を聞いてくれませんか」

 そうして、吾郎はセイバーに語る。
 北岡との出会い、自分が秘書になった経緯、北岡が冒された病と、それを治すために身を投じたライダーバトル。
 自分が伝えられる限りのことを熱と思いの込められた口調で語っていく。
 最後に、北岡が自分の目の前で息絶えたと伝えると、吾郎の話は終わった。
 ありがたいことに全てを黙って聞いてくれたセイバーは、今度は大げさに溜息を吐いた。

「オメェにとっちゃ、進むも地獄引くも地獄ってわけか。それで、結局どうするんだ」
「ここで戦います」
「知り合いよりは他人と殺し合う方が楽ってことか?」
「違います。ここにはライダーバトルと違ってこれがある」

 吾郎がセイバーに見せたのは、脱出するための赤いテレホンカードだ。
 聖杯戦争とライダーバトルはよく似ている。
 だが、大きな相違点もあった。
 ライダーバトルは参加したならば死ぬまで止められないが、聖杯戦争は途中退場できる点だ。

「なるほど。差し詰めサーヴァントだけを倒してマスターを無力化させて、それで無理矢理送り返す算段か」
「はい」
「悪くはねえが、いかんせん見通しが甘いな。そもそも、願いを踏みにじるのには変わりない」

 セイバーの指摘はもっともだ。
 当然だが相手にだって譲れない願いがあるだろう。
 それを諦めさせるのは簡単ではないだろうし、苦労して送り返しても吾郎たちには何のメリットもない。
 完全に自己満足だ。
 

「それでも、俺はこうやって戦いたいんです。いえ、こうじゃなきゃ戦えないんです」
「……そうか」

 吾郎の答えを聞いてもう何を言っても無駄と悟ったのか、セイバーは思案顔になる。
 この提案に乗り、マスターと組むべきか考えているのだろう。
 見るからに戦場で生きてきた彼にしてみれば、吾郎の考えは偽善でしかない。
 むしろこうやって一考してくれているだけでも、幸運と思わねばならないだろう。

「吾郎」

 しばらくして考えが纏まったのか、セイバーは吾郎を真っ直ぐに見つめてくる。
 その目には一切の曇りは見えず、こちらの奥底まで見透かされそうな深さを湛えていた。
 この目から視線を逸らしてはいけない。ここで逸らしたら負けだと吾郎もジッと彼と視線をぶつける。

「どう考えてもオメェの考えは甘い。無謀といってもいいさ。だがな……無闇矢鱈に殺し回ろうなんて輩よりはよっぽどマシだと俺は思うぜ」
「それじゃあ、協力してもらえるんですか」
「ああ、手を貸してやるよ。願いの是非はともかく、テメェの忠誠心に付き合うのも悪くはねえからな」

 ぶっきらぼうな言いようではあるが、セイバーの協力を得られることに変わりはない。
 もしも彼に拒絶されていれば、吾郎は諦めて元の世界に戻るつもりだった。
 いくらカードデッキの力があるとはいえ、目の前のサーヴァントのような存在に勝てるとは思えないからだ。
 そうなれば、その前にせめてセイバーの代わりのマスターを捜すぐらいはするつもりでもあった。
 自分だけ帰還し、彼をそのまま消滅させては、あまりにも申し訳ないからだ。

「そうと決まりゃ、こんなところに長居していても仕方ねえ。さっさと街にでも行くとしようぜ」

 そう言って足早に歩き出したセイバーを、吾郎も慌てて追いかける。
 吾郎が横に並んだところで、セイバーの顔がそちらに向けられた。

「吾郎、ひとついいか」
「何ですか?」
「今更だが、俺はオメェをマスターとは呼べない。例えサーヴァントになろうと、俺が主とするのはただ一人と決めているからな」
「別に構いませんよ。俺もマスターなんて呼ばれるのはこそばゆいんで」
「礼を言うぜ」

 それだけいうと、あとは何も言わずに二人は外に足を踏み出す。 
 主の居ない、腹心だけの聖杯戦争が始まろうとしていた。


299 : 由良吾郎&セイバー  ◆S2NYXu2lPk :2014/08/09(土) 00:02:40 06Dvup5k0
【CLASS】セイバー

【真名】片倉小十郎@戦国BASARAシリーズ

【パラメーター】
 筋力:B+ 耐久:B 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具B

【属性】
 秩序・善 

【クラススキル】
 対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

 騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】

 竜の右目:C
 同ランクのカリスマ+軍略の効果。
 常に主君を陰日向に補佐し、主君が戦えない際は自ら一軍を指揮し陣頭に立つなど、主の見えない範囲を補う。
 彼が健在な限り主君が不在でも味方の指揮は衰えない。

 戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 勇猛:B
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

 心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

【宝具】
『輝夜』
 ランク:C〜B 種別:対人宝具 レンジ:2〜4 最大補足:1人
 刀で円を描いて精神を集中し、そののちに敵を一刀両断する。
 発動には溜めが必要で、溜め無し・溜め途中から出した場合は正面斬りを、満月が浮かび上がるまで溜めた場合は一撃必殺の袈裟斬りを放つ。
 ちなみに発動から最大タメまでの時間は5秒。

『鳴神/霹靂』
 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:5〜10 最大補足:20人
 前方に強力なビーム状の雷撃を放つのが鳴神。力を溜め、二刀を合わせて巨大な雷閃を放つのが霹靂。
 霹靂は鳴神よりも溜めが必要である。 

【weapon】
『黒龍』
 小十郎の愛刀。
 刀身には「我成独眼竜右目唯生涯」あるいは「梵天成天翔独眼竜」と刻まれている。

『無銘』
 小十郎のもう一本の刀。
 銘は不明なので無銘とする。

【人物背景】
 竜の右目という異名を持つ、独眼竜・伊達政宗の右腕にして伊達軍の副将を務める男。属性は雷で原作では唯一の左利き。
 激昂しやすい正宗に対して、冷静に厳しい諫言をする兄的存在かつお目付け役でもある。
 一本筋を通す義理堅い性格で、伊達軍を支える縁の下の力持ちとして、人格・実力共に自軍だけでなく敵方からも評価が高い。
 剣の腕は達人級であり、その華麗さに伊達軍兵士からは「踊っているよう」と賞賛され、島津義弘からは独眼竜をも凌ぐ腕前と評された。
 普段は冷静だが怒りが頂点に達すると平静な言動が一変し、頬傷・オールバックに日本刀所持という風貌も相まってヤクザにしか見えなくなる。
 伊達軍の副将として自分を律してはいるが、武人として強者と戦いたいとは常に願っている。
 刀は二本帯刀しており、通常は一刀目だけだが固有技・固有奥義では二刀目も扱う。
 厳つい外見に反して趣味は畑いじりで、彼の育てた野菜(特に人参)はとても美味しいらしい。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯にはない。
 ただ生前は一人の武人として強者との戦いを望んでいたので、聖杯戦争に参加した時点で望みはほぼ叶っているともいえる。

【基本戦術、方針、運用法】
 基本的に小十郎が前線を担い、ゾルダに変身した吾郎が後方からの援護を担当する戦法になる。
 ただし吾郎自身は仮面ライダーとしての戦闘経験は無く、重火器の扱いにも慣れていない。


300 : 由良吾郎&セイバー  ◆S2NYXu2lPk :2014/08/09(土) 00:02:57 06Dvup5k0

【マスター】由良吾郎@仮面ライダー龍騎

【マスターとしての願い】
 北岡秀一の健康な状態での蘇生。
 方針としてはサーヴァントのみを倒し、マスターは無力化して送還したい。

【weapon】
『ゾルダのデッキ』
 仮面ライダーゾルダに変身できるカードデッキ。
 契約モンスターであるマグナギガは呼び出せるが、この世界で自身も鏡の中に入れるかは未確認。

【能力・技能】
 中国拳法に似た我流の格闘技を会得しており、その実力は屈強な男五、六人を一人で相手にできるほど高い。
 更に料理はプロ級の腕前であり、他にも散髪や怪我をした北岡の代理として依頼人との商談を任されるなど、何でもそつなくこなす。
 作中で判明した唯一の苦手として口笛を吹けなかったが、後に克服している。

【人物背景】
 スーパー弁護士北岡秀一の秘書兼ボディーガード。
 とある傷害事件に巻き込まれたところを北岡の弁護で救われるが、その直後に彼の不治の病が発覚。
 自分の弁護を引き受けなければもっと早く病を発見できたのではとの罪悪感と恩返しの気持ちから、彼の秘書となる。
 その後は北岡の右腕として仕え続け、彼の知り合いで唯一ライダーバトルの存在を明かされるほどに信頼される。
 吾郎自身も恩返しの範囲を超えて北岡を慕っていき、その忠誠心は北岡の宿敵である浅倉威を一度は轢き殺そうとしたほどに強い。
 長身、強面、無愛想、寡黙と警戒しかされない外見をしているが、その内面は誰にでも優しい好青年である。


301 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/09(土) 00:03:16 06Dvup5k0
投下を終了します


302 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/09(土) 00:05:56 svH9tC7M0
投下お疲れ様です!

投下終了後、早い話で恐縮ですが起源の話です。

投下は『本日中の9日いっぱい』とさせていただきます。
時間ギリギリで投下が重なってしまった場合などは過ぎても大丈夫です!

よろしくお願いいたします。


303 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/09(土) 23:57:08 06Dvup5k0
投下します


304 : 名無しさん :2014/08/09(土) 23:58:05 bcb0Qlfg0
組ませるマスターが思いつかず登場話は間に合わなかったけれどステ表だけでも供養投下


【クラス】ランサー
【真名】球磨川禊@めだかボックス
【パラメータ】
筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力E- 幸運E- 宝具EX

【属性】混沌・悪

【クラス別スキル】
対魔力:D

【保有スキル】
過負荷:EX
欠点にしかならない特異なスキル。強烈な劣等感に苛まれ、他人の不幸を願うようになる。
混沌・悪の属性か過負荷を持つ相手に対して同ランクのカリスマと同じ効果がある。
また、勝負事に絶対に勝てなくなる。EXともなると呪いの領域に達している。

心眼(負):A
あらゆる弱さという弱さを知り尽くしているため、相手の肉体・精神的弱点を探ることが出来る。
高確率で相手の弱点を見抜くことが出来る。

【宝具】
『大嘘憑き(オールフィクション)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:− 最大捕捉:−
現実(すべて)を虚構(なかったこと)にするスキル。
因果律に関与し、あらゆる事象を「なかったこと」にする。
ただし一度「なかったこと」にしたものをさらに「なかったこと」にすることは出来ない、
スキルや宝具などを完全に「なかったこと」には出来ないなど、いくつかの制約がある。
ただしそれ以外なら死を「なかったこと」にして蘇生させる、相手の五感を「なかったこと」にして消失させるなどかなり強力。

『却本作り(ブックメーカー)』
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1
『大嘘憑き』を破棄するか令呪による魔力ブーストを行うことで初めて発動可能な、通常時は封印された宝具。
マイナス螺子で貫いた相手の肉体・精神・技術・頭脳・才能の全てのレベルをランサーと同等の弱さになるまで引き下げる。

【weapon】
『螺子』
ランサーの主武装。手のひらに収まらないほど巨大な螺子をどこからともなく取り出す。

【人物背景】
混沌よりも這いよるマイナス。詳しくはWEBで
ttp://dic.nicovideo.jp/id/4482526

【サーヴァントとしての願い】
過負荷(マイナス)のまま勝つ。

【基本戦術、方針、運用法】
『大嘘憑き』という極めて強力な宝具を持つが、過負荷の影響で勝つことが出来ない。
しかし勝たずとも相手の心を折り、再起不能にすることはランサーの十八番である。


305 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/09(土) 23:59:48 06Dvup5k0
 世界を埋め尽くしていく白い雪の中に混じる一点の赤。
 窓の外でひらひらと舞い落ちるそれを認識した瞬間、直枝理樹は駆けだす。
 何度も繰り返される6月20日という一日。
 その中で起きた小さな変化に、体は自然と反応していた。
 もしかしたら自分が気付いていなかっただけで、あの赤はいつもこの時間帯に落ちていたのかもしれない。
 それでも、この世界の異常はもうどうしようもないと思い知らされた少年にとっては、その赤いカードは闇の中に差した光に違いなかった。

 ■  ■  ■

 生暖かい夜風が吹き付ける学校の屋上にて、二人の少年は対峙していた。
 同年代に見える二人の姿は、端から見れば深夜に学校に忍び込んだ悪ガキに見えなくもない。
 だが、一方の少年の藍色の着物に日本刀という場違いな格好が、その場を異様な雰囲気にしていた。

「えっと、君が……僕のサーヴァント?」

 失礼だとは思ったが、理樹は思わず疑問系で問い掛けていた。
 左手に刻まれた令呪からは確かに彼との繋がりを感じる。
 他に人影も見当たらない以上、目の前の少年が自分のサーヴァントなのは間違いないだろう。
 腰に差した日本刀や頬に刻まれている十字傷、友人である宮沢謙吾に似た佇まいから、腕に覚えのある人物なのも何となくだが分かる。
 それでも確信が持てなかったのは、彼が男性としては小柄な部類に入る理樹よりも更に一回り小さかったからだ。
 理樹の女友達と比べても下から数えた方が早いくらいだろう。
 付け加えるならば、中性的で幼い顔立ちをしていたのも疑問に拍車を掛けた。
 人は見た目ではないといっても、どう見ても自分より年下の少年にしか見えない彼が、英霊という超常の存在だとは思えなかった。
 そのような理樹の戸惑いと疑問を見て取っても、少年は表情を変えずに淡々と口を開いた。

「左様。あさしんのさーう゛ぁんと、緋村剣心。ここに参上しました。
 貴方が、俺のますたーか?」
「……無理にカタカナ語を使わなくてもいいよ」

 何故か発音が怪しい彼の姿に仲間の一人を重ねながら、理樹はマスターとして最初の指示を行った。
 どうやら聖杯でも治せないものはあるらしい。

 ■  ■  ■


306 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/10(日) 00:02:44 1RVSPO6c0
 アサシンと簡単な情報交換を終えた理樹は、ひとまず校内に入った。
 夜の学校に忍び込んだことは何度かあるため足取りは慣れたものだ。
 万が一自分の学校のように侵入者対策のセンサーが仕掛けられていても、アサシンが一緒ならば逃げられるだろう。
 誰もいない廊下を歩いていると、理樹はふと立ち止まって窓の外に目を向けた。
 目に映るのは煌々とした月明かりを放つ満月と、満天の星々。
 照らされた地上を見ても白一色に埋め尽くされているなんてことはない。
 ここしばらくどんなに願っても見られなかった明るい夜空が、そこにあった。
 この調子なら、朝になれば久しぶりの太陽と青空を拝むことも出来るだろう。

(でも、ここには僕しかいない……)

 空を見られた安堵感と共に理樹の心中を埋めたのは、孤独感だった。
 この場所には頼りになる仲間たちや、最愛の人はいない。
 元の世界に異常が起こってからは彼らもおかしくなっていったが、存在自体はしていた。
 だが、ここには自分一人きりだ。
 これほどの孤独を味わったのは、両親を亡くしたとき以来かもしれない。
 だとしても、挫けるわけにはいかない。
 そのような弱い気持ちでは、とても聖杯戦争を勝ち抜けはしないからだ。

(これから、僕は人殺しになる)

 普段の理樹ならば、決して殺し合いになど乗らないだろう。
 だが、彼の居た世界はどうしようもなくおかしくなってしまった。
 この場に至る直前まで、散々抗ってももう手遅れだと分かった諦観が理樹の心を満たしていたのだ。
 そんなところに差し出されたのが願いを叶えられる殺し合いの舞台。
 このままだと迎えるだろう終りを防げるならばと、理樹は自らの手を汚すと決めていた。
 しかし、まだ迷いは残る。
 一人でも殺してしまえば、二度と仲間たちと笑いあえないかもしれない。
 それでも、あのまま終わるよりは余程マシだ。
 だから、理樹は迷いを振り払うためにある言葉を口にすることにした。
 それは彼の尊敬する少年がいつも口にしていた言葉。
 殺し合いを始めるために使うことを彼に謝りながら、理樹はその言葉を口にした。

「ミッション、スタートだ」


307 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/10(日) 00:04:24 1RVSPO6c0
【CLASS】アサシン
【真名】緋村剣心(抜刀斎)
【パラメーター】
 筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:E 幸運:D 宝具:B
【属性】
 中立・善 
【クラススキル】

 気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】

 飛天御剣流:A+
 戦国時代に端を発する古流剣術。
「剣の速さ」「身のこなしの速さ」「相手の動きの先を読む速さ」という三つの速さを最大限に生かし、
 最小の動きで複数の相手を一瞬で仕留めることを極意とする、一対多数の戦いを得意とする実戦本位の殺人剣である。
 その使い手は天空を飛翔するかのごとき跳躍力を持ち、相手のはるか上空から斬撃を放つこともしばしばあり、
 体さばきや斬撃の速さは「神速」とされる。

 戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 直感:D
 戦闘時、つねに自身にとって有利な展開を”感じ取る”能力。
 攻撃をある程度は予見することができる。

【宝具】

『九頭龍閃』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:一 最大補足:
 奥義・天翔龍閃の伝授の試験のために開発された技のはずだが、こちらこそが奥義だという説もある。
 定説では天翔龍閃習得時に会得したとされていたが、東京に戻った際に既に使用していたという伝承もあるので使用可能となった。
 神速を最大に発動させ、剣術の基本である9つの斬撃「壱(いち):唐竹(からたけ)、もしくは切落(きりおろし)」
「弐(に):袈裟斬り(けさぎり)」「参(さん):右薙(みぎなぎ)、もしくは胴(どう)」「肆(し):右斬上(みぎきりあげ)」
「伍(ご):逆風(さかかぜ)」「陸(ろく):左斬上(ひだりきりあげ)」「漆(しち):左薙(ひだりなぎ)、もしくは逆胴(ぎゃくどう)」
「捌(はち):逆袈裟(さかげさ)」「玖(く):刺突(つき)」を同時に繰り出す乱撃術にして突進術の技。
 九つの斬撃それぞれが一撃必殺の威力を持っており、技の性質上、神速を超えるか使用者の技量を上回る実力がない限り、
 防御・回避ともに不可能とされている。だが小柄の剣心では重量、腕力が足りず技本来の威力を発揮できない。 

『天翔龍閃』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:一 最大補足:
 剣心の隠し宝具。習得したのが抜刀斎時代以降のため上記の九頭龍閃がメインの宝具となる。
 逆刃刀・真打ちでのみ発動できる。
 飛天御剣流奥義にして超神速の抜刀術。
 右足を前にして抜刀する抜刀術の常識を覆し、抜刀する瞬間に絶妙のタイミングで鞘側の足、
 つまり左足を踏み出し、その踏み込みによって刀を加速し神速の抜刀術を、超神速にまで昇華させる。
 初撃をかわされたとしても、超神速の刀が空を切ることで弾かれた空気が敵を打ち据えて行動を阻害し、
 さらに空気が弾かれてできた真空の空間が元に戻ろうとする作用で相手を引き寄せ、
 回転による遠心力と更にもう一歩の踏み込みも加えた強力な二撃目で斬る、二段構えの抜刀術。
 しかし、この宝具で人を殺めたという伝承がないため使用しても『絶対に相手は死なない』という因果の逆転が起きる。


308 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/10(日) 00:05:59 1RVSPO6c0

【weapon】

「日本刀」
 剣心が抜刀斎時代に使用していた日本刀。
 全刃刀と呼ばれる刀を使っていたとの伝承もあるが、今回はこの刀を使用する。

「逆刃刀・真打ち」
 宝具『天翔龍閃』使用時に使う刀。幕末の刀工・新井赤空の最後の一振り。
 その名のとおり通常の刀とは刃と峰が逆向きに打たれた構造のため、
 普通に使用すれば常に峰打ちの状態となり殺傷力を持たない非致死性兵器として機能する。

【人物背景】
 るろうに剣心の主人公。短身痩躯で赤髪の優男。中性的な顔立ちをしており左頬にある大きな十字傷が特徴である。
 幕末時代に派維新志士にして伝説の剣客「人斬り抜刀斎」として名を馳せ、修羅さながらに殺人剣を振るい数多くの佐幕派の要人を殺害してきた。
 とある事件にて妻を失ってからは暗殺稼業を止め、先陣を切って幕臣達と戦う遊撃剣士として働く。
 鳥羽・伏見の戦い以降は不殺を誓い、逆刃刀を携えながら流浪人として全国を放浪していた。
 明治十年に東京に戻ってからは数々の強敵との激闘に身を投じることになり、結果的に日本を救い、過去の因縁とも決着を付けた。
 しかし、死後に英霊の座に昇ったのは人々を救った流浪人としての彼ではなく、あまりにも有名となった人斬り抜刀斎としての彼だった。

【サーヴァントとしての願い】
 自身にはない。

【基本戦術、方針、運用法】
 マスターである理樹には持病があるため、もし戦闘中に発作が起きた場合、剣心は意識を失ったマスターを守りながら戦わねばならない。
 このような事態を避けるために正面からの戦闘はできる限り避け、アサシンらしく不意打ちからの一撃離脱が主な戦法となるだろう。

【マスター】直枝理樹

【マスターとしての願い】
 おかしくなってしまった世界を元に戻したい。

【weapon】
 なし。

【能力・技能】
 これといって特殊な能力はない。
 強いてあげるならば幼少時より鍛えられたツッコミスキルだろうか。
 マイナス点としてナルコレプシーという持病を患っており、発作を起こすと日中において場所や状況を選ばずに眠ってしまう。

【人物背景】
 リトルバスターズ!の主人公。俗に言う女顔で男性メンバーでは一番背が低い。
 称号は異様に賑やかな青春を送る普通の少年。口癖は「いやいやいや」
 幼いときに両親を亡くし塞ぎ込んでいたところを、棗恭介少年率いるリトルバスターズに手を差し伸べられメンバーに加わった。
 基本的に温厚かつお人好しな性格で、荒事は苦手で少々気弱な面もある。
 しかし、理不尽な事に対しては自分より強そうな相手に対しても声を荒らげる勇気も持ち併せている。
 リトルバスターズのメンバーの大半はボケ体質なため、常識人であり貴重なツッコミスキルを持つ彼の存在は欠かせないものになっている。


309 : ◆S2NYXu2lPk :2014/08/10(日) 00:07:37 1RVSPO6c0
投下終了。
剣心の宝具ですが抜刀斎時代なのに天翔龍閃が使えることに問題があるなら、キネマ版の天翔龍閃に修正します


310 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:10:10 JddF90Rg0
投下お疲れ様です。

アサシンで投下します。


311 : エレン・イェーガー&アサシン ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:11:26 JddF90Rg0





『この世界は残酷なんだから』





 コンビニから出て来た少年の右手には買い物袋が握られている。
 その中身は主にパンと飲料水、年頃な少年らしく量も多目であった。
 少年はそのまま近場のベンチに腰を降ろすとまずは喉を潤すべく水分を体内へ。
 周りに音が聞こえるように吸い込む光景は他者に水分補給を勧めるが如くの勢いだった。


 喉を潤すと少年はパンの包装を荒く破り口に放り込む。
 中から溢れるカレー、それを荒くも大切に体内へ取り込むともう一度水分を。
 それらを何度も繰り返し、繰り返し……少年は生命の意義を感じ取っていた。


 少年の説明をしよう、名をエレン・イェーガー。
 巨人を駆逐する野心を抱えた一人の少年――その運命はやがて世界の鍵を握る事になる。


「美味ぇ……美味ぇ……」


 彼の住んでいた世界は巨人に怯えていた、この空間の時代の人間ではない。
 人々は巨人に恐怖を抱きながら生活しておりその圏内は壁の中にしか存在しない。
 調査兵団と呼ばれる巨人討伐組織も存在はするが毎回目立った戦果を挙げられず帰還。
 むしろ遠征の度に人数が減っておりその打撃は組織において大きな損傷となっていた。


「こんな美味いパン……固くない、よく分かんねぇけど美味ぇ味だ」


 エレンは幼い頃から調査兵団に憧れていた。
 当時見た調査兵団出陣の光景は彼の脳裏に焼きつきその少年心を虜にされていたのだ。
 時が流れたある日、エレンは幼馴染であるミカサと言う少女とアルミンと呼ばれる少年と遊んでいた。
 何も変わらない日常、打開されること無い現状、それでも笑顔な表情――その時までは。


「こんな……こんな事があっていいのかよッ」


 震撼する大地、覆う影、見上げる視線。
 聖域を守る壁には巨人の顔、規格外な大きさを誇る超大型巨人。
 硬い壁をその身で突き破る鎧の巨人、そして穴から群がる無数の巨人たち。
 

 たった一瞬の出来事で偽りの平穏は破られた。


312 : エレン・イェーガー&アサシン ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:14:12 JddF90Rg0

 彼らの移住区に押し寄せる巨人、逃げる人々、喰われる餌。
 駐屯兵団と呼ばれる在駐兵士はいるもののその戦力は調査兵団に大きく劣る。
 対巨人駆逐組織である調査兵団が満足に巨人を狩れていないならば、劣る駐屯兵団が叶うはずもない。
 一般市民が喰われる中で兵士も喰われて行き人口の現象など止める術も無かった。


「俺達が巨人に怯えている中、あの天戯弥勒とか言う男や他の人間はこんな生活をしている……クソッ」


 エレンも例外ではなく、巨人から逃げようと必死だった。
 その中で彼は自分の家が崩れていることを知る、そして母が埋もれている事実も見てしまった。
 何とか救おうと頑張るが人間、それも子供の力では無理があったのだ、助からない。
 駐屯兵団の兵士も巨人に立ち向かおうとするが戦意喪失、そのままエレン達を連れて逃走。


 抱えられた少年が最後に見た母の光景は巨人に喰われる哀れな姿だった。


「……してやる、ああしてやるよ。
 願いが叶う何て馬鹿げている、でも俺が此処に居ることの説明になっちまってる……クソッ!
 俺が手を汚せば! あいつらが! 人類が! 助かるってんならやってやる……もう綺麗事は言わねぇ」


 そして少年エレンは困難を乗り越え念願の調査兵団に入団する。
 しかしそれは終わりでもなければ着地地点でもないのだ、既に巨人に仲間の多くは喰われている。
 選んだ運命の途中にも満たない、分岐点はおろか出発にも居ないかもしれない。


 調査兵団に入団した後でも仲間は死んだ、先輩も死んだ。
 仲間それも同期が裏切り者なのも知ってしまった、この世は残酷だ。
 それでも何処かに美しさを、愛着を得ている、簡単に諦められるほど彼は大人じゃない。


「俺のために何人死んだんだ……ジャンも言っていた『俺にどれだけの価値が在るか』。
 今更甘いこと何て言えねぇよ、俺がこうしている間にもミカサは、アルミンは、あいつらは!
 ――巨人と戦っている、なら俺は帰る……それも『聖杯』って奴を引っさげて」


313 : エレン・イェーガー&アサシン ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:16:25 JddF90Rg0
エレンに聖杯のビジョンなど存在しない、分かるのは天戯弥勒が言った『願いが叶う』一点のみ。
 それでも彼は求める、例え願いが叶わなくても彼は帰る、そのためには天戯弥勒に会う必要がある。
 ならば勝ち残り生き残れ、お前は此処で死ぬ存在か――残された者を考えた時、彼の命は彼だけの物では無い。



 食事を終えたエレンは袋を持ち立ち上がる、此処に用がないならば今の居住居に帰る。
 少年に与えられたのは普通のマンション一室、所持金は調査兵団時代のモノ――この世界用に換算されている。
 幾ら程の額かは不明だがこの世界で一年、その期間は生活出来るだけの資金を持っていた。


「――泣き止んだか?」


 突然聞こえる声、そのとおりに少年は涙を無意識で流していた。
 辛かったのだろう。今までの生活が、残された仲間を考えると自分だけ悠々と過ごしている時間に押し潰される。
 罪悪感と幸福感、二つの感情に挟まれた少年は無意識に涙を流していた。


「……済まないアサシン」


 霊体となっていた彼のサーヴァントが形をもって現界する。
 その姿は黒い、一言で言うならば『死神』が当て嵌るだろう。
 年齢は外見からすれば若い、最も英霊に関係はないのだが。


314 : エレン・イェーガー&アサシン ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:17:06 JddF90Rg0
アサシンはエレンに背を向けたまま言葉を紡ぐ。
 英霊――そのクラスがアサシンならば彼も日の当たる人生では無かったのかもしれない。
 

「足を止めるな――お守りは好きではない」


 例えマスターであろうと彼は言葉を丁寧に選ぶつもりは無いようだ。
 冷たく、それも強気な言葉でエレンに発破を……掛けているのかもしれない。
 対するエレンはアサシンの言動には馴れてしまい特に返す言葉も無いようだ。


「俺は聖杯が欲しい――力を貸せ、アサシン」


 その言葉を背中越しでアサシンに伝えると彼は歩き出す。
 アサシンの言う通り足を止める訳にはいかない、せめて心だけでも前を向かなくては。
 袋を握る力が自然と強まる、彼はやる、殺らなければならないのならば。


「……勝手にしろ」


 一言呟くとアサシンは姿を消す、まるで最初から存在しなかったように。
 その姿、振る舞いは死神そのもの、されど力は英霊に恥じぬ物を持っている。


 少年は夢に憧れ現実を知り、運命を告げられ、闇の中を駆け抜けていた。


 英霊は現実を知らなければ夢も持たず、指令通りに動く機械だった。


 けれど彼らは人々の出会い、触れ合いにより少しずつ変化を伴った。


 彼らにはまだ――待ってくれている人が存在しているのだ。
 


【マスター】
 エレン・イェーガー@進撃の巨人

【参加時期】
 不明(ライナー達の正体が巨人だとは知っています)

【マスターとしての願い】
 聖杯を手に入れ帰還する。その願いは巨人の完全なる駆逐。
            
【weapon】
 立体機動装置。
   
  
【能力・技能】
 訓練兵時代、調査兵団時代に叩きこまれた技術が彼の武器となり活路となる。
 対人訓練を彼は怠っていないため武術に心得のない者に遅れを取ることはない。
 また、彼の真の覚醒は巨人になること。己の理性を吹き飛ばし感情に身を任せることによって多大な力を得る。(理性が失われる訳ではない)
       
【人物背景】
 調査兵団に憧れる少年だった彼は超大型巨人の襲来により運命を大きく動かされた。
 最初から決まっていたかもしれない、調査兵団入団前に巨人に襲われた訓練兵である彼らは立ち向かう。
 その中で死んでいく仲間、エレンも例外ではなく巨人に喰われた――そこで彼は覚醒する。
 巨人に変身する力に気付いた彼はその力を世界のために使う――否、世界のために使われていた。
 彼の意思も所詮は野論だ。裏に巣食う悪意とも戦いながら彼は巨人に立ち向かう、それが例え叶わない夢であっても。

【方針】
 他人を殺すことに容赦はしない。だが彼は甘く、脆い。
 実際に人を殺す状況になった時、彼は手を止めてしまうだろう。
 だが殺せないわけではなく、殺る時は殺る。


315 : エレン・イェーガー&アサシン ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:17:53 JddF90Rg0

【クラス】
 アサシン

【真名】
 ジャファル@ファイアーエムブレム烈火の剣

【パラメータ】
筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具C

【属性】
秩序・中庸

【クラス別スキル】
 
 気配遮断:A
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる
【保有スキル】

 対魔力:E
 魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

 直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

 単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

 死神:A
 彼の代名詞。
 その力は闇の中ならば相手に気配を更に気付かれにくくなり、背後を取るのが容易になる。
 

【宝具】


『死神』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1〜50人
 この宝具は彼が戦闘態勢に入った時に常時発動する言わば『現象』の一種。
 その力はある一定の確率、それも極稀に起こる現象であり効果は『必殺』。
 発動された時には彼の剣に斬り裂かれた相手は絶命す唯一無二の技である。
 その確率は彼と相手の幸運に大きく左右される。


【weapon】
 彼の武器は剣。


【人物背景】
 ネルガルと呼ばれる悪に拾われた彼は殺人兵器として育てられた。
 その性質は冷徹、機械のように感情を消し暗殺こなす黒い牙のアサシンとして活動を行う。
 在る時彼は任務において致命傷を負うがニノと呼ばれる少女に助けられた。
 彼は後にニノと共にとある国の王子を暗殺する任務に取り掛かる、此処が運命分岐点。
 彼女は暗殺を拒むが彼をそれを拒否、しかし声を聞かれており、彼らは裏切り者として見なされ包囲。
 彼は少女を逃すべく今までの組織に敵対し孤軍奮闘――其処に加勢に入ったのは皮肉も敵対していたエリウッド達だった。
 
 ここまでが彼の伝記に共通している部分であり、この先は伝記によって大きく異なっている。
 彼がどの文献の彼かは不明だがその心は冷徹な殺人機械――変化が訪れているようだ。


【サーヴァントとしての願い】
 不明。


【基本戦術、方針、運用法】
 伝記でもアサシンと呼ばれている彼の生業は暗殺、故に獲物の命を気付かれるまでもなく狩る。
 闇に行動を主に置き、日が明るい内は行動を控える。
 なお、正面からでも戦える力は持っている。


316 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:20:33 JddF90Rg0
投下終了です
(若干の遅刻、申し訳ありません)

これにて募集期間を終了したいと思います。
ので、今日中に選出を発表したいと思います。

その後細かいルールなど決めれれば、と思っております。

「まだ投下したい」という方はお早めに投下願います。
(私の発表前なら勝手に投下してくださって構いません)

たくさんの投下、ありがとうございました!


317 : 名無しさん :2014/08/10(日) 00:22:21 y33G0sxY0
投下乙です
参戦するサーヴァントは全クラス2騎ずつの14騎で変わりないですか?


318 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 00:42:28 JddF90Rg0
>>317
そうですね、もしものことがない限りは予定通り各2騎系14騎で行きたいと考えております。


319 : 名無しさん :2014/08/10(日) 00:44:08 .FsMg2fA0
戯言ですが力作いっぱいですし、採用数増えたら嬉しいなー、なんて


320 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 01:29:41 JddF90Rg0
暫定ルールです。

・舞台はPSYRENの世界と位置づけします。
(原作のような荒れた未来ではなく一般的な世界と変わりません、ただ『別の時空』と考えてください。)
・NPCも存在しており、その世界の建造物などは各参加者版権作品の物も存在しているかもしれません。
・時間の区切り及び表記は下記のとおりとして扱い願います
 ○時間表記/未明(0〜4)早朝(4〜8)午前(8〜12)午後(12〜16)夕方(16〜20)夜(20〜24)

・参加者には赤いテレホンカードが支給(勝手に)されています。
・サーヴァント消失6時間以内に公衆電話にでテレホンカードを使用すると現実世界へマスターは帰還できます。
・逆に未契約で6時間を経過するとマスターは灰になり、死亡します。
・死亡後参戦の場合は帰るべき場所に肉体が行けないため、死亡扱いとします。
・ルーラー的立ち位置は現時点で天戯弥勒です。ですが厳しく取り締まる気配はありません。
・所持金は原作の職及び立場に準ずる金額を支給されています。(後に救済要素をつけるかもしれません)

・イメージ的には月の聖杯戦争よりも冬木のイメージに近いと思います。

【企画的なお話】

・予約期間は1週間+延長1週間を予定です。
・時間が進めばロワにおける放送的な話を追加したいです。
・ゲリラも可ですが、予約なしでも書き溜めしている人もいるので予約推奨です。

まだまだ在ると思いますが、とりあえずここまで。


321 : 名無しさん :2014/08/10(日) 03:04:03 1MH85QU20
>>276に追加
とりあえずランサーは確定ですね

【セイバー】
★夜科アゲハ&纏流子
○レックス&少名針妙丸
○叢雲&ムラクモ
○狛枝凪斗&ゴールドマン
○紅月カレン&リンク
○由良吾郎&片倉小十郎

【ランサー】
○ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア・スカーレット
○朽木ルキア&前田慶次

【アーチャー】
○ジョナサン・クレイン&エス・ノト
○タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド
○美樹さやか&ヘラクレス
○浅羽直之&穹徹仙

【ライダー】
★鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ
○遠坂時臣&桐生一馬
○虹村形兆&エドワード・ニューゲート
○ジン&カービィ

【キャスター】
○浦上&グレムリン
○犬飼伊助&食蜂操祈
○マルチェロ&鬼人正邪
○暁美ほむら&フェイスレス(白金)

【アサシン】
○星空凛&プロシュート
○マリク・イシュタール&ロデム
○保登心愛&X
○人吉善吉&垣根帝督
○直枝理樹&緋村剣心
★エレン・イェーガー&ジャファル

【バーサーカー】
★間桐雁夜&一方通行
○美樹さやかちゃん&不動明
○鈴仙 優曇華院 イナバ&うちはイタチ
○ザ・ヒーロー&無銘(ハンター)
○エルメェス・コステロ&大神さくら


322 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 11:04:16 JddF90Rg0

皆様おはようございます。


各キャラの選出が終了しましたので、書き込みます。
たくさんの投下、ありがとうございました。


【セイバー】

★夜科アゲハ&纏流子
★紅月カレン&リンク

【ランサー】

★ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア・スカーレット
★朽木ルキア&前田慶次

【アーチャー】

★タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド
★浅羽直之&穹徹仙

【ライダー】

★鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ
★虹村形兆&エドワード・ニューゲート

【キャスター】

★犬飼伊助&食蜂操祈
★暁美ほむら&フェイスレス(白金)

【アサシン】

★エレン・イェーガー&ジャファル
★人吉善吉&垣根帝督

【バーサーカー】

★間桐雁夜&一方通行
★美樹さやか&不動明



と、させていただきます。
今回の登場話募集に置いて、作品を投下してくれた方々には大変感謝しております。
また、私の一存で作品の当落を決めてしまい大変申し訳ありませんでした。
当企画において責任をもって取り組ませてもらいます。

投下してくださった作者様及び作品に再度お礼を述べさせていただきます。
ありがとうございました。


323 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 12:26:35 JddF90Rg0
登場話と一緒に地図の募集をしておりました。
その中でゲームのモノを流用すればいい、と言う意見をもらいまして。

そこで各施設を消したり追加したり……。
恥ずかしながら地図編集、画像編集には疎いです。

何方か編集等やってくださる方がおりましたらよろしくお願いします。


324 : 名無しさん :2014/08/10(日) 13:46:26 SWkeoT6oO
乙です
こっちも面白い面子が揃ったなあ
本編を楽しみにしてます


325 : 名無しさん :2014/08/10(日) 15:06:46 y33G0sxY0
お疲れ様です
面白い組み合わせになりましたね
しかし落ちてしまったのが惜しいサーヴァントも多数・・・


326 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/10(日) 20:15:10 3kBHm9K60
地図スレに作成依頼を出してきました。
此方の要望としてはゲームの地図から施設を消して施設を追加してもらいたい、と考えております。
頼む側で注文をつける事になってしまい申し訳ありません。

176 : ◆wd6lXpjSKY:2014/08/10(日) 20:12:42 ID:oLJCrMEo0失礼致します。
トキワ荘に建たせていただいたPSYREN聖杯戦争から来ました。
大変恐縮ですがこちらの方に地図作成依頼を出させていただきたいと思っております。

作成してもいいよ、という方がいましたら書き込みをお願いいたします。
↓スレです。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1406305939/


327 : 名無しさん :2014/08/11(月) 18:05:14 8DDwuXfY0
乙です!
中々面白そうなメンツですね!


328 : 名無しさん :2014/08/11(月) 23:34:22 w0gI9YtQ0
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5247682.png

施設なし版
どういった施設がいいとか希望があれば


329 : 名無しさん :2014/08/11(月) 23:35:01 j5X3cYVI0
地図待ちか


330 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/11(月) 23:49:28 J7ikUorM0
>>328

おおおおおおおおお!ありがとうございます!!
すごく嬉しいです!

施設の話ですが用意してもらっている立場で申し訳ありません。
「病院」「学園」「図書館」「遊園地」「ホテル」「ショッピングモール」「温泉」
をお願いしたいです。後は好きに追加してもらって結構です!

それと、適当に線引をお願いしてもよろしいでしょうか?(区分けです)

最後に、注文が多くて申し訳ありません……。
マップに小さい赤い○を何個か散らせてもらってもよろしいでしょうか?
(公衆電話にしたいと考えております)

用意してもらった身で注文をつけるのは大変恐縮ですが
よろしくお願いいたします。


331 : 名無しさん :2014/08/12(火) 00:40:20 K1NgTCIkO
地図作成の方乙です
早いなあ


332 : 名無しさん :2014/08/12(火) 01:23:29 nvhcF38Q0
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5247977.jpg

小さな赤い丸ってことでしたが小さいと正直見えにくいので少し大きめにしました


333 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/12(火) 06:37:12 4/L/ZK0k0
おはようございます。

>>332
うおおおおおおお!ありがとうございます!!
こんなにも早く、それも施設を各出展作品に寄せていただけるとは……!
公衆電話の位置付けも本当に……ぜひ使わせていただきます!ありがとうございました!!


334 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/12(火) 06:51:50 4/L/ZK0k0
それで、今後のお話です。

いつ予約解禁だったりのお話の前に……登場話を採用させていただいた作者様方へ。

作品の各修正だったり、ステや宝具の修正・変更等ありましたらご自由に書き込みをお願いいたします。

(予約解禁は最速で水曜からですが、木曜解禁ぐらいが目処かな、と個人的に思っております)


335 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/12(火) 12:05:24 Qg5ixv7k0
白ひげ親子とバーさやかー書いたものです。
採用ありがとうございます、めっちゃ嬉しいです
今日ちょっと家に帰るのが遅くなるので修正など遅くなります
参戦時期など追記するくらいのつもりですが、他に何か指摘あればお願いします
特に白ひげはルフィと類似したスキルが多いので、修正要求あれば弄るつもりです


336 : 名無しさん :2014/08/12(火) 17:59:32 pBM.9Nwk0
把握を始めようと思ってるんですが、全ての作品を完全に把握しようとすると時間的にも金銭的にも膨大になってしまうと思います
このキャラを把握するにはこの巻を読めばいいだとか、原作把握に有用な情報をみんなで共有しませんか?


337 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/12(火) 20:47:15 1ZwI.0E20
>>335
この度はありがとうございました。
修正お待ちしております。
白ひげのスキルですが現時点で問題無いと思われるので現状で良いと私は思います。

把握に関しては……そうですね。
書き込める方or書き込んでもいいと思っている方はお願いいたします。


338 : ◆DpgFZhamPE :2014/08/12(火) 22:24:51 q1xPMJ6k0
カレン&リンク、ルキア&慶次を書いたものです。
採用ありがとうございます。
リンクの旅道具の辺りを少し追記させていただきたいと思います

把握は・・・そうですね、ルキアは死神代行編から参戦なので単行本1〜8巻を、カレンはギアス一期終了後なのでそこまで把握は難しくないと思われます。
問題はリンクと慶次ですが・・・有名なゲーム作品なので動画サイトを探せばありそうですが、どうなんでしょう


339 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/12(火) 22:57:10 1ZwI.0E20
皆様お疲れ様です。

見辛いし分かりにくいと思いますが
私の投下分の把握に関しまして↓


夜科アゲハ
原作はジャンプコミックスで全16巻で参戦時期も最終盤となっています。
喋りの特徴や原作の雰囲気ならVOMICがあります。
能力や全体的な解説はPSYREN WIKIを参照願います。

PSYREN VOMIC
ttp://vomic.shueisha.co.jp/psyren/

PSYREN wiki
ttp://www23.atwiki.jp/psy_ren/

纒流子
原作はオリジナルアニメ全24話で現段階ではBDは8巻(23話)まで出ています。
戦闘シーンに関しましては動画サイトにてまとめがあるので、そちらを参照願います。
漫画版もあるのですが私は2巻までしか持っていません。2巻の時点ならアニメの展開を9割です。

戦闘シーン例(投稿者コメントから全話バトルシーンに飛べます)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm22739908

鹿目まどか
オリジナルアニメですが漫画版(全3巻)とストーリー自体は大きく変わりません。
参戦時期としては名言はしていませんが後半(7〜)辺りです。

ルフィ
コミックはかなりの数が出ておりアニメも相当進んでおります。
参戦時期もとい能力、宝具から最初から読むとかなりの時間が掛かると思われます。
宝具の把握に関しては「ギア」はウォーターセブン篇及びエニエス・ロビー篇を。
しかし固有結界の関係上仲間を召喚しますので何方にせよ拘束期間(把握時間)は長いかと思われます。

エレン・イェーガー
コッミクは現段階で14巻、アニメは2クール分。
参戦時期の関係上、単行本は10巻付近が目安です。

ジャファル
原作はゲームです。
このゲームは主人公が三人いますが彼に関するストーリーを見るには二人分で結構です。
またその二人も大方ストーリーが重なっているのでプレイするならばエリウッド篇からのプレイで足りると思います。
しかし彼が出てくるのは中盤、フラグ及び彼にスポットが当たるのは後半となっています。
ですので、手元にゲームがない場合は「支援会話」を検索して見ると、彼の喋りや境遇がわかると思います。
(また、彼はとあるロワに出ていますのでそちらの方を参照するといいかもしれません)

間桐雁夜
雁夜おじさんは読むなり見るなり……w。
参戦時期としては最終話(アニメ基準で)となっております。

一方通行
彼の描写から原作14巻辺りまでが最小だと思います。
(黒い翼関連や彼の掘り下げなどはその後のロシア篇などを読むことをおすすめします)

まとめる、説明が下手で申し訳ありません。


340 : ◆lb.YEGOV.. :2014/08/13(水) 01:29:05 Nlqqqv1A0
タダノ&モリガンを書いた者です。
採用していただきまして、ありがとうございます。

キャラ把握なんですが、
まず、タダノについては同会社のペルソナシリーズのように選択肢での個性付けも殆どされていない、かなり無個性なキャラになっています。
ゲーム上の設定としては日本生まれでエリート軍人くらいしか固められてないです。
一応味方との会話で堅物と思われてる描写があったりしています。
ゲーム開始からニュートラルルートクリアまでの一連の流れは台詞wikiがありますので、
そちらを参考にしていただければと思います。
ttp://www21.atwiki.jp/sjwiki/

原作終了後の出典ではありますが、プレイヤーの強さ=デモニカスーツの強さという設定があるので、
ゲーム初期装備で参入したタダノの身体スペックは、油断をすればスライムやピクシーに囲まれて嬲り殺しにされるレベルと考えていただければわかりやすいかと思います。

次にモリガンですが、
大まかなキャラ設定は、以前に投下したモリガンのデータに貼っているニコニコMUGENwikiの解説が一番詳しいかと思います。
キャラクターの言動については動画サイトなどで、各モリガン参加作品でのEDや
ナムコクロスカプコン、プロジェクトクロスゾーンといったクロスオーバーゲームの掛け合い集なんかが参考になるかと思います。
書籍としてはかなり昔の物になりますが、
・ガンガンWINGコミックス ヴァンパイアセイヴァー~魂の迷い子~ 全4巻
・ファミ通文庫 ヴァンパイアセイヴァー 上下巻
このあたりが参考になるかと思います。

また宝具として搭載している技の中で『闇夜穿つ魂の奔流(ソウルイレイザー)』だけ、
マーヴルVSカプコン限定の必殺技ですので、戦闘描写がどんなものか把握される場合にちょっと面倒かもしれません。


341 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/13(水) 14:15:03 7dJoSoeg0
wikiにおいて、修正入れてきました。
・美樹さやかに関して
参戦時期とグリーフシードについて追記

把握は鹿目まどか、暁美ほむらのついでに本編(アニメでも漫画でも可)に目を通し、そのあとで叛逆の物語に触れてもらえれば。
叛逆の物語はここに参戦している3人の魔法少女が結構重要な位置、加えてさやかとほむらはだいぶ本編と印象が変わるので。

・不動明に関して
宝具『目覚める地獄の野獣(アモン・アウェイク)』から後半二行(この宝具発動中はスキル:自己改造によりマスターを除いて無差別に周囲のものを取り込み、魔力源にしたりパワーアップしたりする)をカット。
ただし効果として消えたわけではないです。普通にバーサーカーすることもあるし、周りを飲み込み始めることもある感じで。

把握は漫画版(全5巻)で。アニメや映画、デビルマンGなどは並行世界の不動明です。
キャラや戦闘は1巻だけでも。ただしさっちゃん、牧村美樹、サタンらとの関係を考えると全巻。
それだけで十分ですが、近似の願いを持った不動明とサタンの関係がデビルマンレディー(漫画、全16巻)で描かれているので参考程度に。これもアニメは並行世界。
AMONデビルマン黙示録は宝具『目覚める地獄の野獣(アモン・アウェイク)』のイメージ元なので、普通のバーサーカーじゃなくカットした部分の効果を表現してもいいという聖人のような人がいましたらこちらも。

・虹村刑兆について
参戦時期、スタンドエネルギーを魔力として使用することを追記。
テレホンカードについてあいまいな物言いを削除。

把握はジョジョの奇妙な冒険30巻を読めばOKです。弟の回想で46巻にも数コマほど出ますが、基本30巻で十分です。
DIOとの因縁や作風など1〜29巻を読んだ方が分かりやすくなりはなりますが、刑兆のためだけに読むほどではないです。

・エドワード・ニューゲートについて
宝具『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』のレンジを0〜50に変更。さすがにレンジ5は短すぎた。犬のナワバリじゃあるまいし。

把握はルフィのついでにある程度は拾えると思います。
マリンフォード頂上戦争が56〜59巻なのでそこだけで白ひげは書けます。他に25巻、45巻に数ページですが登場します(抜けがあるかも)。
宝具『白ひげという名の時代』でエースの戦闘なども書く人は46巻に戦闘が、59〜60巻に過去エピがあります。同様にジンベエは55〜59巻で戦闘、63〜66巻で掘り下げがされています。もちろんそこまで細かく描写する必要もありませんので、あくまでおまけ程度。


342 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/13(水) 20:02:11 vM6ZGWvc0
皆様お疲れ様です。

>>320
現段階でルールはこれで行こう、と思っております。(wikiに入れておきました)
※ttp://www60.atwiki.jp/psyren_wars/pages/36.html
時間は未明or早朝スタートでお願いいたします。

また、NPCに固有キャラを出す場合は参戦作品内からでお願いします。

予約開始は……15日(金)から、と考えております。
意見等ありましたら書き込みをお願いします。


343 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/13(水) 21:07:50 X09kJXH20
遅くなりましたが、採用に感謝します!
把握に関してですが、二人とも漫画でだいたいの把握ができると思います。

マスター:ウォルター
・ヘルシングは全10巻ですので、ファンとしてはぜひとも全巻読んで欲しいのですが、この聖杯戦争に参加している老人ウォルターの戦闘方法は原作2巻、またはOVA2巻で把握できると思います。
心情や設定に関しては、2巻、7巻、もしよろしければ番外編がオススメです
OVAは原作に忠実に作ってあるので、こちらで把握してもまったく問題ありません。
しかし、アニメ版はストーリーが大きく異なっているので、注意してください

サーヴァント:レミリア
・キャラの雰囲気を掴むのでしたら、「東方儚月抄」がオススメです。全3巻なので、負担も少ないと思います。また、「レミリア セリフ」で検索すれば彼女のセリフ集が出てくると思うので、もしよろしければそれも参考に
・『神槍「スピア・ザ・グングニクル」』は、格ゲーで使った技です。プレイ動画で把握してくれたら幸いです。最悪、MUGENでの把握も有りかと。アレンジが加えられている可能性が高いので、あまりオススメはできませんが……。
・『紅霧異変(スカーレット・ミッド)』は「東方紅魔郷」をプレイしていただく、もしくはプレイ動画を見ていただければ、よろしいかと。簡単に言えば、太陽の光を遮る赤い霧です。
・弾幕に関してですが、これもプレイ動画で把握できると思います。しかし、「弾幕」は
彼女にとって「遊び」なので、この聖杯戦争で使わなくても違和感はないです。書いてくださる時はその書き手さんにお任せします。


344 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/13(水) 21:30:06 kVBp6u1w0
みなさんお疲れ様です。

虹村刑兆に関して追記です。スタンドの件ですが、
本来スタンドはスタンドでしか干渉できず、スタンド使いにしか視認できないが、幽霊に近い精神のヴィジョンであるため、英霊であるサーヴァントとパスをつないだマスターやいわゆる霊能者ならば視認可能。同様に英霊に干渉できる、高い神秘を持つ手段ならばスタンドへの攻撃も可能である。
の一文を加えました。この設定に異見があればお願いします。


345 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/13(水) 21:58:16 A/IxMlgs0
採用ありがとうございます。本編も書けるように尽力したいと思っております。
私が投下したキャラの把握方法についてまとめてみました。

【犬飼伊介&食蜂操祈(キャスター)】
・犬飼伊介@悪魔のリドル
原作漫画一巻に彼女の過去、背景についての描写があり、この巻を読むだけでも把握が可能です。
漫画、アニメともに露出が多く、性格、口調などのブレが少ないキャラですのでセリフなどのトレースは難しくないと思います。
アニメ8・9話に戦闘シーンがありますのでバトルを書く際にはそちらを参考にしていただければ。

・食蜂操祈@とあるシリーズ
「とある科学の超電磁砲」の大覇星祭編(7〜10巻)を読んでいただければ把握出来ます。
アニメでは1シーンだけ登場しておりますが本筋にはまったく絡まないのでキャラ把握には使えません。
声がついたことでイメージを膨らませる手助けにはなるかもしれません。
「とある魔術の禁書目録」本編にも登場しているようですが実は本編のほうは未把握でして……他の方に補足説明していただけると幸いです。
10月に発売予定の「新約とある魔術の禁書目録(11)」が食蜂操祈メインの巻になるようです。

【浅羽直之&穹徹仙(アーチャー)】
・浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏
原作小説全4巻での把握を推奨します。アニメ版は尺の関係で削られているエピソードが多いので。
漫画版は未見なので把握に有効かどうか分かりません……すみません。
個人的に「イリヤの空、UFOの夏」の魅力は秋山瑞人の文章に詰まっていると思っていますのでぜひ原作小説で秋山氏の文章に触れていただきたい……!

・穹徹仙@天上天下
ただいま原作が手元にない状態ですので細かい巻数などが調べられません。申し訳ありません。
記憶が確かなら穹の登場は9〜13巻に集中しており、それ以前にもそれ以後にもまったく登場していないはずです。
アニメ版は穹関係の描写が皆無ですので見る必要はありません。
後日原作を再確認したあとに説明を追加したいと考えております。


346 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/13(水) 22:57:44 vM6ZGWvc0
皆様お疲れ様です。
作者様ではありませんが少し書き込んでみたいと思います。


人吉善吉
現在手元に単行本がなく、不安定な情報で申し訳ありません。
この時期から察するに13〜14巻辺りまでだと思います。
後日確認出来たら書き込みます。

垣根帝督
原作14巻で全て把握が可能です。
喋り、戦闘、性格、思想、最後……全部この巻で大丈夫だと思います。
(その後は所謂冷蔵庫となっており、彼に関しては読まなくても支障はありません。
 新約とある魔術の禁書目録で復活を果たしますが、この垣根帝督は14巻までで大丈夫、だと思います)


347 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/13(水) 23:38:28 vM6ZGWvc0
申し訳ありません!

一方通行(バーサーカー)及び垣根帝督(アサシン)の把握についてです。
私は「原作14巻」と書き込みましたが間違いでした。
「原作15巻」が正しいです、こちらでお願いします。


348 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/14(木) 12:39:44 L1rE9b6U0
皆様お疲れさまです。

皆様の協力もあり、把握情報も多く寄せられ大変嬉しいです!ありがとうございます!
 
それで>>342で書き込んだとおり15日から予約解禁をしたいと思います。(日付が変わったら)

よろしくお願いいたします。


349 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 14:39:16 XcfLK.zg0
了解しました!
期限ギリギリになってしまいましたが修正作を投下します


350 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 14:39:54 XcfLK.zg0
お洒落な洋館で、お茶会が開かれていた。

森のざわめきが空気を揺らすが、洋館はそしらぬ顔で顕在する。
風や音をこの洋館が無視するのは、中に人外魔境を潜ませているからか。
夜の闇の中で映えるその姿は、まるで吸血鬼でも住んでいそうだった。

そして、洋館の大広間では座って紅茶を飲む少女と、その後ろに立って静かに彼女の反応を伺う老人がいた。
大広間の壁には豪壮な雰囲気の掛け時計が設置され、静かに時を刻んでいる。
絵画もいくつか掛けられているが、いずれも著名な画家達に描かれた何百万もする高級品だ。
天井には豪華だが、決して悪目立ちはしないような、上品なシャンデリアが部屋を照らしている。
床には重厚な絨毯が敷かれ、その模様は見るものの心を楽しませる。
そして、部屋の真ん中に華美だがどこか場違いな椅子に座って、少女は紅茶を飲んでいた。これは、傍で控える老人が別の部屋から持ってきたものだ。ゆえに、部屋の調和にどこかそぐわない印象を与える。

紅茶を飲む少女は名を、レミリア・スカーレットと言った。吸血鬼、である。
この度、ランサーのサーヴァントとして召喚された彼女だが、手元に槍は持っていない。かの吸血鬼、ドラキュラ伯爵の末裔だと嘯き、妖怪や神が存在する「幻想郷」では、「紅魔館」の主をしていた彼女は、この部屋の雰囲気に呑まれるどころか、まるでもうこの館に住んで50年は経っているといった顔で見事に君臨していた。
外見は10歳前後。一部の特殊な性癖者が見たら喜びそうな姿かたちをしている。しかし、年齢は500歳を超えていた。実は、傍で控える老人より遥かに年上なのだ。

一方、老人は人間だった。吸血鬼でもなければ、魔術師でもなく、ホムンクルスでもない。
普通に怪我をして、普通に年をとり、普通に死ぬただの人間だ。

しかし、何百もの吸血鬼を殺し続けた、恐るべき人間だった。
鋼線(ワイヤー)を使い、吸血鬼をバラバラにするその姿は、戦場では死神と形容された。

「悪くはないわね」

紅茶を飲み終わって、レミリアはそう言った。
この紅茶はウォルターが淹れたものだ。

「いいえ、この言い方だとさすがに酷ね。美味しいのだけれど、ただ美味しいだけね。私好みじゃないわ」
「申し訳ございません」

丁寧に謝るウォルター。

「別に謝らなくていいわよ。美味しいのは事実だし」

レミリアは上機嫌に答えた後、ふと表情を変えて、ウォルターのほうを見た。

「ウォルター。貴方は天戯弥勒を知っているかしら?」
「いいえ、存じておりません」

ウォルターもレミリアも、天戯弥勒のことは何一つ知らないのだ。
名前の響きから日本人であることは分かるのだが、それ以外の情報は一切不明。
果たして、そんな彼を信用できるのか?情報がほとんど無い男の話を鵜呑みにして、彼らは皆殺しを選択するほど愚かなのか?

「関係ないわね」
「ええ、関係ない」

そんなことは二人にはどうだっていいのだ。
彼らだって、天戯弥勒の完全には信用していない。
しかし、そこに利益があり、周りが敵だというならば彼らは戦える。殺せる。


351 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 14:40:51 XcfLK.zg0
ねえ、ウォルター。貴方は聖杯に何を願うの?」

この聖杯戦争に参加しているマスターは、ほとんどの者が何か願いを抱えている。そこに老若男女の区別はない。
それは、ウォルターも同様だった。


「若返りですよ」
と、ウォルターは簡潔に言った。

それはこの男の経歴から考えれば、あまりにも小市民的な言葉だった。
あら、とレミリアは意外そうな顔をする。おそらく、彼女はもっと大きくて、狂った回答を期待したのだろう。

「私が言うのも変な話だけれど、あなたは老いた自分を楽しんでいるように見えるわ」
「ははは、年老いた自分が嫌いなわけではありません。ただ、今の私では勝てない相手がいるのです。この衰えた体では到底敵わない、地獄のような化物がいるのです」
「あら、あなたでも歯が立たないなんてそんな私みたいな奴がいるのね」
「はい、その男は恐ろしく強いうえに、不死身なのです。しかし、私は死ぬ前に、彼にどうしても挑みたい」
「だから、聖杯を求めると。ふーん、興味深い話だわ。あなたがそうまでして、戦いたい、倒したい相手っていったい誰なの」

再び、紅茶を口にしながらレミリアはそう言った。
その言葉にウォルターは意地悪く笑った。

「ドラキュラ伯爵です」

レミリアは、紅茶を吹き出した。


◆ ◆


「本当によろしいのですね?」

ウォルターはそうレミリアに問いかけた。

「ええ。別にあなたがご先祖様を倒したからといって、私には何も関係ないことだわ。むしろ、人間でありながら吸血鬼の真祖に挑もうとするあなたに興味がわいた」
「ふふ、意外と多いのですよ。そういう愚かな人間は」

一瞬、ウォルターの脳裏に様々な人物が揺らめいた。

「OK、OK。私はランサーのサーヴァントとしてあなたに聖杯を贈るわ。ドラキュラの末裔の力を借りて、ドラキュラを倒す力を得る。中々面白い冗談じゃない?」
「まったくです。三流の劇作家が考えそうなシナリオだ」
「さあ、ウォルター。戦争を始めましょうよ。栄光へと、更なる闘争へと続く戦争を」
「そうですね」

ウォルターは窓から外を見る。すでに空は明るみ始めている。しばらくすれば日が昇るだろう。

「夜まではここでのんびりするのもいいのでは?」
「あら、日傘をさせば大丈夫よ。ハンデとしてはちょうどいいのだと思うのだけれど」

確かにレミリアのステータスは高い水準だ。他の三騎士のクラスとも十分に戦えるだろう。
しかし、常に日傘をさしながら戦うなど、正気の沙汰とは思えない。

「レミリア様、油断は禁物です。ここにいるのは有象無象の雑魚ではなく、一騎当千の怪物ですよ」
「臆することはないわ、ウォルター。私も貴方も一級品よ。……まあ、いいわ。待ち構えるのも私らしいし」

そう言って、レミリアは屋敷の内部へと再び足を進めた。
ウォルターは小さくため息をつく。
彼はサーヴァントほど、自分たちの戦力を評価していなかった。
ランサーはステータスは高水準で、宝具も強力だが、日光が弱点というのは中々大きい短所だ。しかも自分のよく知る男と違い、物理的なダメージを負うらしい。
即消滅ではないらしいし、それをカバーする宝具も備わっているが、魔術師ではないウォルターからすれば常に宝具の展開などたまったものではない。
自分だって、並の人間、いやたとえ魔術師でも容易く屠れる自身があるが、あのイスカリオテの狂信者のような奴が相手では分が悪い。

「聖杯、容易くはとれんだろうな。だからこそ面白い」

ウォルターの顔が獰猛に歪む。
赤いテレフォンカードを拾った時、彼の運命は大きく変わりだした。
本来の正史ならば、後に若い肉体を手に入れ、されどもついに勝利はできず、炎の中で消えるはずだった彼は。
今、違う未来を歩みだした。

「ウォルター。もう一杯紅茶を貰えるかしら」
「了解しました」

そう慇懃に答えて、ウォルターも体を翻し、屋敷の内部へと消えていった。


352 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 14:42:18 XcfLK.zg0
【クラス】 ランサー
【真名】 レミリア・スカーレット
【属性】 混沌・善

【ステータス】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:A 幸運:B 宝具:B
 
【クラススキル】
 対魔力:B 第三節以下の詠唱による魔術を完全に無効化。大魔術、儀礼呪方等の大掛かりな魔術を持ってしても傷つけることは難しい。
 

【保有スキル】
 吸血鬼:C
 人あらざるもの、吸血鬼としての特徴を纏めた複合スキル。
 レミリアはツェペシュの末裔を名乗っているが、確たる証拠はなく、吸血が下手で、眷属を作らないため、ランクは低い。また日光や炒った豆、流水は苦手だが十字架やニンニクは平気。全身を蝙蝠に変化させ、蝙蝠一匹分でも残っていれば再生が可能。

カリスマ(偽):C
 個人としての魅力。
 軍団の指揮や団体戦闘には何ら寄与しないが、他者を惹きつける。
 
飛翔:B
 自前の翼による飛行能力。
 飛行中の判定における敏捷はこのスキルのランクを参照する。

【宝具】
 『神槍「スピア・ザ・グングニクル」』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:5〜40 最大捕捉:50人
 魔力を練り上げて作り出した巨大な槍。投げれば相手に必ず当たる性質を持つ。絶大な破壊力を持っているため、直撃すれば並のサーヴァントに大きなダメージを与える。

『紅魔館(スカーレット・ハウス)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:100 最大補足:100人
真名開放をすることで発動する、結界宝具。周囲を「紅魔館」へと変化させ、敵サーヴァントとマスターを閉じ込める。脱出するにはレミリアを撃破するか、マスターを宝具が維持できなくなるまで消耗させる必要がある。しかし、内部にはレミリアに忠誠を誓った人妖がサーヴァントとして召喚されているため、一筋縄ではいかない。ウォルターが魔術師ではないため、数分しか発動できない。

『紅霧異変(スカーレット・ミッド)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:100 最大補足:100人
周囲に紅い霧を発生させ、太陽の光を遮る。これにより、レミリア・スカーレットは昼間でも制限無しで戦うことができる。本来なら範囲は幻想郷全てを包み込むほど大きいが、ウォルターが魔術師ではないことからレンジや最大補足が大きく減少している。

【weapon】
『お気に入りの日傘』
レミリア・スカーレットが所有している普通の日傘。これで日光を遮れば、昼間でも外で活動できる。

【人物背景】
 ゲーム「東方PROJECT」に登場するキャラクター。「紅魔館」の主として君臨する吸血鬼。500年以上生きているが外見は10歳くらい。大人びた言動をとるが、行動原理は意外と子供っぽい。自称ツェペシュの末裔を名乗っているが、実際は違うらしい。運命を操る程度の能力を持つと言われているが、明確にこの能力が使われたことはないため、詳細不明。

【サーヴァントとしての願い】
 不明。ウォルターに協力して聖杯を与える。

【基本戦術、方針、運用法】
 ステータスが非常に高いため、夜は積極的に他陣営を襲うべき。昼間は魔力に余裕があれば、『紅霧異変』を発動させながら戦闘を続行するが、そうでない場合は日光の当たらない場所で魔力と体力の回復に努めるのが吉。『神槍「スピア・ザ・グングニクル』は必中の宝具のため、戦闘では重宝する。逆に、『紅魔館』は魔力消費が非常に多いため、一度使ったら、一日は休まなければならないだろう。まさに、奥の手といったところか。


353 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 14:42:53 XcfLK.zg0
【マスター】
ウォルター・C・ドルネーズ
【参加方法】
何らかの方法で赤いテレフォンカードを入手。詳細不明。

【マスターとしての願い】
全盛期の力を取り戻す (若返り)。その後帰還してアーカードと対決。

【能力・技能】
全盛期と比べると衰えたが、それでも鋼線(ワイヤー)を使って武装したグールや吸血鬼を圧倒できる。少年の頃から戦場で戦ってきたため、戦闘経験は非常に豊富。また、執事としても万能。

【weapon】
『鋼線(ワイヤー)』……ウォルター・C・ドルネーズが使用する鋼線。全盛期の彼が使えば、ビルを両断できるほどの強度を持つ。

【人物背景】
「HELLSING」に登場するキャラクター。ヘルシング家二代に使える執事。物腰は穏やかだが、昔は「ゴミ処理係」として多数の吸血鬼や、ヘルシング家に仇名す人間を殺してきた。
先代ヘルシング家当主アーサーが没した直後、次期当主の座を狙う実弟リチャード・ヘルシングが凶行に至る確信を即座に見抜き、リチャードによるインテグラ襲撃に際して封鎖されていた地下深層に続く道を逃走経路の要点となるよう計画し、インテグラとアーカードの邂逅させる。その時から、アーカードと戦うことを考えていたらしい。
本来の正史ならば、後に、彼はロンドンで手術を受け、不安定な人口吸血鬼になりアーカードに挑戦するが、結局勝つことはできなかった。

【方針】
レミリアが活動できる夜間は「目敵必殺(サーチアンドデストロイ)」で一片の容赦なく敵を仕留める。昼間は、拠点にこもり様子見。彼一人で調査に行く可能性もある。


354 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 14:45:49 XcfLK.zg0
本文、サーヴァントのステータス、マスターの方針を一部変更しました
これで投下を終了します

ウォルターの参戦時期ですが、原作2巻〜3巻の辺りを意識しています。


355 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 21:36:32 XcfLK.zg0
連投失礼します
一つ質問なんですけど、NPCの大量殺害はこの企画では有りですか?
四次のキャスターのようなことをしてもお咎めなしなのか、一人殺しただけでも何らかのペナルティが発生するのか……


356 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/14(木) 21:50:50 mkqREKAY0
>>355
一言で言えば「アリ」です。
限度というものがありますが少なくとも一人殺してペナルティ的な何か、はありません。
勿論大量な行いは他の参加者に気付かれる大きな要因となりリスクは発生します。
監視役である天戯弥勒達はある程度ならば動きません……のつもりです。
大量といっても度合い、というかこの会場でも日常は存在するので、お願いします。

それと此方側から一つ。

予約の時は初期のみ場所の追加をすればある程度書きやすい、共有しやすいと思います。
そして時間帯は未明m早朝でお願いします。


357 : ◆oLzajvgbX6 :2014/08/14(木) 22:12:38 XcfLK.zg0
対応ありがとうございます!
場所の追加も了解しました!


358 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:00:05 ATwlT4uA0
夜科アゲハ、セイバー(纏流子)、人吉善吉、アサシン(垣根帝督)で予約します。
場所は【A-3】アッシュフォード学園です。


359 : ◆DpgFZhamPE :2014/08/15(金) 00:10:48 oQH3FOJs0
鹿目まどか、ライダー(ルフィ)、間桐雁夜、バーサーカー(一方通行)
D-4で予約します


360 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/15(金) 00:15:41 oQH3FOJs0
>>359です
トリップは今後こちらに変更したいと思います


361 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:27:20 ATwlT4uA0
予約ありがとうございます!
それでは投下します。


362 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:28:44 ATwlT4uA0

 彼らは聖杯を求める、例え不本意な戦争への参加でも願いは在るのが人間。
 故に争い、傷つけ合い己の欲に囚われる輩も少なからず存在するだろう。


 この空間に存在するのは選ばれた彼らだけではない。
 NPC――現実とは異なる今宵の会場には一般市民とも呼べる彼が存在している。
 それは限りなく近く、極めて遠い。普段の生活サイクルと変わらない多数の人間。
 天戯弥勒の計らいか、それとも嫌がらせかは不明だが参加者は戦争だけを行っていればいいものではない。
 学生ならば勉学に励み、社会人ならば生きるために働く……彼らもサイクルに身を置かなければならない。


 アッシュフォード学園、例外に漏れず此処にもNPCそして学生参加者が集まる場所だ。


 構成は中等部と高等部に別れておりその規模は予想よりも遥かに大きい。
 参加者の全学生が此処に学籍を置いているかは不明だが、零ではない事は確かである。
 その一人、人吉善吉もまたアッシュフォード学園に籍を置く高校生である。
 本来の彼は箱庭学園に通う生徒であり高校一年生であったがそれはアッシュフォード学園でも変わらない。
 

 学園には多数の生徒で構成されているため制服にも統一は無く様々制服が許されている。
 これによりアッシュフォード学園の生徒ではない善吉も箱庭学園の制服で通うことが可能だ。
 元々可能だが一人だけ異なっている制服だとどうしても目立ってしまう。
 もし学園に他のマスターが居れば遅かれ早かれ警戒されてしまうのが現実だろう。
 ……最も彼の制服の着こなしは中にジャージを着こむ、曰く「デビルスタイル」なため何方にせよ目立ってしまうが。
 そして何かの縁か彼のアッシュフォード学園での役割は本来の彼と同一だった。
 つまり、アッシュフォード学園生徒会庶務の座に位置していた。


 天戯弥勒の用意したと仮定されるこの世界ではある程度参加者の現実が反映されるらしい。
 けれど此処は彼の在籍していた学園ではないため、生徒会の構成メンバーも大きく異なるだろう。
 人吉自身も生徒会にどんな人物が居るかは把握出来ておらず、現在分かるのは生徒会長のみだった。
 無論彼の知っている生徒会長ではなく、もし「彼女」がNPC或いは参加者であったならば。
 彼は全力で彼女に挑んでいた事だろう……この学園では『生徒会長が二人存在』していた。
 

 していた、である。
 その一人は現在留学中である。事の始まりは選挙に置いて二人の女性が同率一位となってしまい現在に至る。
 仲は悪くなく、互いが互いに協力し別の方向から学園を支え、アッシュフォード学園を運営していた。
 最も彼女らの下の派閥――簡単に表せば下っ端な信者たちは何時も争っていたらしいが。


363 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:30:23 ATwlT4uA0

 人吉の記憶にはこの生徒会長に纏わる記憶は残っていたらしく、顔と名前までハッキリと解る。
 留学中の生徒会長はミレイと呼ばれる女性でとても魅力的な、行動力溢れる女性だった事は覚えている。
 しかし会長を除く副会長や書記の名前や顔は全く覚えていないため、早急に把握する必要があった。


「そのために朝早めに来て机上札でも見ようと思ったけど……ないな」

「ああ、ないな、あぁ……眠ぃ」


 普段より早め、と言っても数十分程度だが人吉は学園に足を運び生徒会メンバーを把握しようとしていた。
 しかし席はあるものの肝心の名前が記されているものが無く、無意味、それも自分の席すら解らない。
 これでは何一つ解らなく、彼がする事と言えば日課である咲き誇る花達の手入れだった。


「お前、案外メルヘン好きか? デビルとか言いながら頭ン中はファンタジーってか?」

「そんなんじゃないから。
 ……まぁ花を手入れする……カッ! 結構な設定じゃねぇか!」


 アサシンもまたマスターである人吉に同行し学園に足を運んでいた。
 やはり他の生徒にマスターが混じっている可能性は否定出来ないため護衛として、サーヴァントとしての役目を。
 聖杯に至るにはマスターの護衛も重要な点であり、彼を一人にする事は無謀だ。
 その間にマスターがサーヴァントに襲われたならば……結果は見えている。最もアサシンである垣根帝督は興味半分で学園に付いて来たのだが。
 

「設定? あぁお前は本来この学園の生徒じゃないんだったな」


 そう呟くと乾いた嗤いの後、アサシンは再び霊体に戻る。
 人吉善吉はアッシュフォード学園の生徒会にて庶務。
 その職務の一つに花達の手入れ……これはまるで彼が知る本来の生徒会長だった。
 多くは語らないがその存在は彼にとって「最愛で最大な最も近しい存在」だった。そう、だった。


「まぁ悪くはない……かな?」


 何の因果かそれはめだかちゃんの――そうか、此処にめだかちゃんは居ない、か。
 それだけ解れば彼には収穫と言えるかもしれない、情報はまた集めればいい。


「朝からご苦労だな、人吉善吉」


364 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:32:20 ATwlT4uA0

 花の手入れをしていた人吉、彼はアサシンと二人で生徒会室に居た。
 気が付けば時間も大分過ぎており遅刻ギリギリ組以外は登校していても可怪しくない時刻だ。
 聞こえた声の持ち主は女性、それも人吉が把握している数少ない情報の生徒会長だった。


「手入れも大切だが遅刻するなど本来の役目を忘れるな、早く教室へ向かえ」

「解りました、鬼龍院生徒会長」

 
 白いセーラー服……と表わすのが一番だと思われる制服を着た女性。
 彼女こそが生徒会長の一人であり、ミレイ会長が留学している今、実質的な学園のトップ。
 その名も鬼龍院皐月、長い黒髪の女性、そこには「凛」と言う文字が似合うかもしれない。
 

「ならば早く教室へ……鍵は私が閉めておく」

「お言葉に甘えさせてもらうぜ、生徒会長さん!」

「――待て」


 高圧的な印象を与える彼女だが実際は優しい一人の学生だ。
 しかし昔、人吉には解らないが中々の恐怖政治を行っていた噂もあったらしいが……。
 そんな彼女は人吉を引き止める、勿論彼に心当たりなど存在しない。
 学園での役割は生徒会庶務、しかし彼が彼の自覚を持って学園に通うのは今日が初めてだ。
 今までの人吉という存在が何をしていたか、把握出来ているはずない。


「今――お前以外に誰か居なかったか?」

「き、気のせいじゃないっすか? んじゃ、お先に失礼するぜ!」


 サーヴァントの気配でも感じ取ったのだろうか、鬼龍院皐月は空間の所在を問うた。
 人吉の回答は否定、まさか鬼龍院皐月はマスターで心理戦を……令呪が見えないため違う、と思いたい。
 人吉の令呪は腕をなぞるように宿っており制服を着ていれば隠せる。
 逆に彼は鬼龍院皐月からサーヴァントの気配を感じないため彼女をマスターから除外した。
 そして時間も危ういため早足で教室へ向かった。


「気のせい――か。そうだろうな、私は何を言っている……」


 そして鬼龍院皐月はマスターではなくNPCである。
 この空間では主役になれないモブに過ぎない舞台の演出装置が限界。
 彼女の元、オリジナルの鬼龍院皐月の強すぎる力が何か感じ取ったのだろう、無意味だが。


 そして彼女も生徒会室に鍵を閉め、この場を後にした。





365 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:34:15 ATwlT4uA0


「おい、遅刻するって! もっと速度出ないのかよ!? お前それでも英霊か!?」

「るせぇ!! あたしはテメェの執事じゃねぇんだよ! ほら、学園は目の前、とっとと走れ!!」


 時刻は始業まで時間が少なく呑気に歩いていたら遅刻は確実だった。
 バイクを走らせ罵倒しあう男女、女性が運転し男は学園に近づくと飛び降りた。
 彼らもまた聖杯に召された――いや、天戯弥勒に召されたと表現するのが正しいか。
 マスターである夜科アゲハ、そしてセイバーである纒流子だ。


「まぁ礼は言っておく! ありがとな! それとくたばれ纏!」

「そっくりそのまま返すぜ、アゲハ……ケッ!」


 彼らは主従関係ではあるが本人達の意向によりその壁を失くしている。
 同じ志を持ち、共に戦い抜くならば、より対等な立場で望むのが彼らには合うようだ。
 最も実際に「セイバー」だの「マスター」だの呼んでみたら何だが痒くなってしまい止めたのが一番の理由だが。


 セイバーのクラススキルである騎乗によりバイクの運転も――纒流子は元々バイクの運転技術を持っていた。
 それはアゲハのを軽く超え、アゲハに免許は無いがセイバーに運転して貰う方が圧倒的に時間の短縮が出来た。
 互いに互いを煽り合いながらも絆は存在しているようだ――恥ずかしくて表には出さないが。


「さて……こっからあたしはどうっすかな」


 アゲハを送り届けた纒流子はこれからの予定を考えていなかった。
 本来ならば霊体となってマスターの傍に居るべきだが……。


『霊体になるってあんま好きになれねえんだよなぁ』

『外から見えないのに傍に居るって怖くね?』


 これも本人達の意向で――最も遅かれ早かれ纒流子は学園に向かうのだが。


366 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:34:46 ATwlT4uA0

 何か合ったら駆け付ける。これがアゲハ達の指針である。
 そのため早く学園に向うべきだが、別に急がなくてもいい、纒流子はそう思っている。
 根拠は無い、無理矢理つけるとすればこの空間を走り回り把握する事だろうか。


 土地勘が無いため夜間の戦闘などで不備が生じるかもしれない。
 勝ち抜く、生き残るためにはどんな手段でも使わなければならない。
『野望のためならばどんな手段でも使う』――彼女の姉の言葉だ。
 ならば纒流子もその言葉通りこの聖杯戦争を生き残るためにどんな手段でも使うだろう。
 厳密に言えば彼女に願いはなく、あるとすればアゲハに聖杯を捧げる事。
 それでも、それでもだ。彼女は止まらない。


「んじゃ、適当に時間潰してから教室に向うとするか」


 バイクに跨ると、彼女は再び走りだした。


【Aー3・アッシュフォード学園前/一日目・早朝】

【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]バイク@現地調達(盗品)
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.適当に時間を潰す。
2.その後学園に向かい、アゲハの傍へ。
[備考]


 そもそも何故アゲハは遅刻になりかけているのか。
 それは昨夜に原因が在った。





367 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:36:03 ATwlT4uA0


「ったく……さっさと寝るわ」

「その前にシャワー貸してくれよ」

「おう……って英霊はシャワー浴びるのか?」

「当たり前だろあたしだって女だ、殺すぞ」


 深夜の中バイクを意味も無く走らせていたアゲハと流子。
 満足したのか、家に帰宅して早々自分達が犯した行為なのに愚痴を零す。
 シャワーを浴びる事一つに関しても煽り合っている現状、言葉は汚いが居心地は何故か悪くない。


「なーにが殺すぞ、だ。殺せるモンなら殺してみやがれってんだ」

「なら私がブッ殺す」


 煽り言葉に煽り言葉。
 終わらないこの問答、在るとすれば両者が飽きた時だろうか。
 だが考えてもらいたい。流子の一人称は「あたし」である。
 先ほどのブッ殺す発言の一人称は「私」だ。誤字ではない、では誰が?
 このマンションはアゲハが住んでいたマンションと同じ構造をしていた。
 そのため違和感なく帰宅をしていた、流子を霊体にさせること無く。
 
「あ、姉貴……なんでッ!?」

「此処が我が家だからに決まってんだろォ!
 こんな時間まで彷徨いて女の子連れ込んで殺す?
 そんなん私が先にお前をブッ殺すぞォ! 歯ァ食いしばれェ!!」


 夜科フブキ、夜科アゲハの姉でありこの家の現トップである。
 父は仕事で不在、母は他界。今はアゲハの母親代わりとして教育を。
 アゲハは鉄拳をモロに受けそのまま倒れる、何故姉貴が此処に居るのか。
 NPCの存在は知っていたがまさか同一個体、それも近しい人物が居るとは想定外だった。


「結構可愛い子じゃん……私はソイツの姉のフブキって言います。
 うちの馬鹿が迷惑を掛けたようで申し訳ないねー……それで彼女?」

「「誰が彼女だッ!!」」

「おー息ぴったり」


 両者共に赤面しながら叫んでいた。


368 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:36:57 ATwlT4uA0

 その後アゲハが説明したのは流子が昔転校した友人だと説明。
 姉に「そんな子いたっけ?」と言われるが飛竜の影に隠れていた、と適当な虚位を含み流す。
 遊んでいた理由も久しぶりに会ったから、今度からアッシュフォード学園に通う、嘘に嘘を重ねる。


 そのまま今後のために流子は家が無い、親も他界している設定で話を進める。
 元々流子の両親は既に他界しているがアゲハ知らない、それでも話を進め何とか姉の了承を得た。


「分かった、分かった! 流子ちゃんは家に住みなよ!!
 今は親父も居ないしこんな可愛い子がアゲハの彼女なんて……母さんも喜んでいるだろうな」

「「彼女じゃない!!」」






「昨日あの後姉貴と纏の奴……散々意気投合して暴れやがって……!
 お陰でこっちは寝不足で遅刻コースまっしぐら……チクショー……」


 全力ダッシュで校門へ向うアゲハ。
 本来ならば言葉一つ漏らしたくは無いが、この不満を止めておく方が圧倒的に身体に悪い。
 彼はやむを得ずPSIの一つ――ライズを発動し己の身体能力を一時的に高める。
 PSIとは超能力の一種でありライズは身体能力の強化を意味する。
 飛躍的な脚力で校門が閉まる前に滑り込む事に成功したアゲハはそのまま玄関へと向う。


「遅い、遅いぞ貴様らァ! 何を弛んでいる、学生の本分を思いだせェ!!」


 過ぎ去った校門の方角から女の声が聞こえるが関係ない、そのまま教室へ向う。


369 : LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:37:48 ATwlT4uA0

 呼吸を整えながら教室の扉を開ける、やはりNPC達の記憶は特に思い出せない。
 だが生活をしていく中で日常を潜らなければならないのだ。
 学園を不自然に休めば感付かれるかもしれない、学園に行かなければ姉貴に怒られる。
 様々な事情を抱えたアゲハ一定のリスクを背負いながらも学園に通うことを決断。
 

 席に付くと取り敢えず「うーす」「おはよー」など他愛ない会話を吹き掛ける。
 それに対し他の生徒も言葉を返してくる、やはりNPCと言え、普通の人間と大差はないようだ。

「なぁ、一限目はなんだっけ?」

「社会だぞ」

「……あ、忘れちまった」


 隣の席の男に次の教科を尋ね鞄を漁るも社会の教科書や参考書の類は入っていない。
 そもそも予定が解らなく適当に教科書を鞄に入れたのが問題だった、確率はそう低くないのだが。
 適当にやり過ごすか隣に見せてもらうか。手段を考えていると隣の男が席を寄せてきた。


「しゃーねぇな! 見せてやるぜ、アゲハ」

「お、おう……さんきゅー」


 とても好意的で有り難いのだが名前も解らなければ完全に初見だ。
 この生徒にお礼を言うにも何も情報がない。
 しかし名前を知らないのは失礼だ、だが聞くのは更に失礼に当たる。
 アゲハは座席表に目を凝らし彼の名前を探し始め、読み上げる。


「ひ・と……ありがとな、人吉!」


 人吉善吉――覚えた、特徴的で覚えやすい名前なのは有り難い。
 この学園生活の中で、いや人世の中で友の存在は重要である。
 聖杯を目指そうが天戯弥勒に辿り着こうが日常が存在しなくては有り得ないのだ。
 

 まずは日常から。
 例え天戯弥勒の掌で踊らされていようが今は演じるしか無い。
 聖杯戦争だろうが、NPCだろうが彼らは全員生きているのだ、英霊も関係ない。
 今だけは、今だからこそ。
 日常を噛み締めながら前に進むしか無い――。


【Aー3・アッシュフォード学園・2-A/一日目・早朝】

【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.学園での生活を過ごしながら他のマスターを探す。
2.夜になったら積極的に出回り情報を探す。
[備考]
※人吉善吉がマスターであると知りません。


【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]健康
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く。
1.まずは学園生活。
2.放課後は生徒会に顔を出す。
3.学園に他のマスターがいないかどうか調べる。
[備考]
※夜科アゲハがマスターであると知りません。
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。


【垣根帝督@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康、霊体
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:他の奴らを潰し聖杯戦争を勝ち抜く。
1.学園では霊体となりマスターの護衛に務める
2.その後はマスターの意向に従う。
[備考]
※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。


370 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 00:40:23 ATwlT4uA0
以上で投下終了です。

そして、カレン、セイバー(リンク)、アーチャー(モリガン)で予約します。
場所は【B-2】です。


371 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 01:00:48 ATwlT4uA0
念の為にNPCのページをwikiに作成しました。
(あくまでNPCですのでよろしくお願いします)

投下された作品or投下した作品のNPCについて情報がある場合はお願いします

ttp://www60.atwiki.jp/psyren_wars/pages/42.html


372 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/15(金) 04:01:33 xKq0YZSU0
確認しておきたいのですが、
エレンみたいな普段学校に行っていない者も学園に通うことは可能でしょうか

また、EXTRAの参加者みたいに
聖杯戦争の開始時点から学園に通うことになっているという認識でよろしいでしょうか


373 : 名無しさん :2014/08/15(金) 04:13:17 tzP3SidoO
投下乙です!
いよいよ動きだしましたね。始まりは学園風景からか……善吉は今回やる気のようだし、今は互いに気付いてないとはいえどうなるか……アゲハと流子の掛け合いは微笑ましいなあwフブキ姉ちゃん懐かしい。
そして皐月様ww


374 : 名無しさん :2014/08/15(金) 06:24:47 CA9S6lYw0
NPCになっても存在感すごいな皐月様ww
そしてアゲハと人吉邂逅か……
戦闘になったら、サーヴァント連れてきてる人吉が有利かな?
流子が間に合うかどうかが分かれ目な気がします!


375 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/15(金) 10:02:25 NUn0vd/w0
皆様お疲れさまです!
そして感想ありがとうございます!
嬉しいです!

>>372
年齢的に学制ならば通っても問題はないと思います。

学園に通い始めるか既に通っているかはおまかせします。


376 : 名無しさん :2014/08/15(金) 11:21:52 qAI5drMw0
投下乙です
やる気な善吉ってのも珍しい気がするなぁ
学園生活といい、思ったより聖杯戦争してる
しかしマスターに学生候補多いなw
最大11人かな?ホテルより学園が危ない


377 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/15(金) 21:12:02 xKq0YZSU0
>>375
ありがとうございます
では、エレン、アサシン(ジャファル)で予約します
場所は【A-3】のアッシュフォード学園です。


378 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/16(土) 00:00:20 SZ14x81I0
美樹さやか、バーサーカー(不動明)を予約します
場所は【C-7】の病院を予定しています


379 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/16(土) 00:15:45 tjpR16Wg0
複数の予約、ありがとうございます!
申し訳ありませんが三点ほどお話を……。

1私が投下しました「LIKE A HARD RAIN 」について。
 人吉善吉の備考に「相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています」を追加いたします。

○鬼龍院皐月に戦闘能力はありません、常人離れした運動神経だけです。
 純潔もただのセーラー服です。

2ルールの「•サーヴァント消失6時間以内に公衆電話にでテレホンカードを使用すると現実世界へマスターは帰還できます。」
 はマスター及びサーヴァントは『知りません』

36時間おきに天戯弥勒(主催者)からの放送的な物を挿入したいと考えています。

以上です、企画が動いてからの提案で申し訳ありません。
何か意見等ありましたら、お願いいたします。


380 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/16(土) 00:49:45 hC2kpfFg0
>>379
さやかちゃん&不動明、テレカについて登場話で考察させちゃったんですが改めた方がいいでしょうか…?
インキュベーターによるイレギュラーな召喚とか本文中にあるように信仰の加護(真)によるものとか無理やりな解釈はできなくはないですが…


381 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/16(土) 00:53:10 tjpR16Wg0
>>380
これは私の不手際です。修正の必要はありませんです……。
>>379の2を撤回いたします。

大変申し訳ありません。


382 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/16(土) 01:08:01 hC2kpfFg0
>>381
いえ、採用されるかわからない登場話でそこまで触れた私の方もなんでしたし

お詫びになるかわかりませんが、虹村刑兆&エドワードニューゲート、ウォルター・C・ドルネーズ&レミリア、B-2で予約したいと思います。


383 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/17(日) 00:26:48 GHdOJodM0
投下します。
なんかPCの調子悪いので30分くらい空いたらイカレたと思ってください


384 : Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE :2014/08/17(日) 00:32:25 GHdOJodM0
夜道を歩く男が一人、深夜にもかかわらず学生服を纏っている。

『天戯弥勒か、またうさんくせーのが出て来たな。おまけにうっとおしい立場まで与えてくれやがって』

暗闇の中で語られた聖杯戦争の概要。それは予想したものと大きく違う物ではない、そう思った。実際聖杯なんて物に縋るロクデナシども…ましてや親殺しなんて考えるおれのような奴が集う殺し合いなんて、殺伐としたものだと思っていたが……

『アッシュフォード学園の生徒だぁ?ちんたら学生生活送れってのかよ』

おまけにこのテレホンカードを使えば途中棄権可能ときた。存外ヌルイじゃねえか。

『本当に殺し合わせる気あんのかね、あいつ』
『おそらく何か意味があるんだろうよ』

念話での独り言に律儀に答えるライダー。生前の彼はなんだかよくわからないもの…‘ひとつなぎの大秘宝’を求めた者たち、そしてそこに眠る意思を知っている。ロジャーの遺志、Dの意思。聖杯もおそらく同じ、天戯のやつは何か目的をもっている。

『聖杯に必要なのか、あいつの目的に必要なのかは分からねェがな』
『邪魔なルールが多すぎるぜ、こいつは』

学生生活など今更送るつもりはない…ないが、欠席している生徒というのはあまりにも露骨にマスターだとばれるのではないか?真っ向からのバトルロイヤルを考えていた身としては回りくどくて仕方ない。
それにこのテレカ。おやじを殺せる能力者なら協力を求めるつもりだったが……これでどこぞに帰られちゃ人材確保は難しいんじゃないか?いっそ公衆電話の類をぶっ壊すか?
いや、それより聖杯をとることを考えるべきなんだろう……

『いくぞ、ライダー。学園とやらの下見だ。お前の戦闘は目立つようだからな』
『ああ、それで出てたのか。月も綺麗だし散歩かと思ったぜ、グラララ。戦闘なら海に行きたいもんだがそうはいかねぇか』

戦地で、すでに開戦したというのに散歩などと言ってのける男は器が大きいのか呑気なのか。
強力なサーヴァントゆえの自負でもあろうが、大型船の召喚に地震とその分目立つ。敵に目をつけられないためにも戦地は選ぶべきだろう。
敵がどのくらいいるのか、学園に登校した場合不利にならないか、それを考えるためにも戦地の偵察に二人は動いた。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゆらゆらと、夜闇に溶ける黒衣の男……学生服の青年と、執事服の老人が夜の町で向かい合う。

「よい夜ですな、若僧(ボーイ)?」

語りかける執事(バトラー)。その目はすでに殺意でぎらついている。

「本当にいい夜。こんな夜ですもの、血もたぎるというもの。静かで…本当にいい夜」

継いで語る女吸血鬼(ドラキュリーナ)。学生服の男の傍らに感じる戦士のにおい……それを感じて霊体化を解き、彼女も闘争心をたぎらせる。
それを受けて伝説の海賊もまた姿を現す。

「コウモリのような翼、白い肌に赤い眼……お前、まさか吸血鬼か?」
「あら、よく分かったじゃない。そう、私はツェペシュの幼き末裔、永遠に紅い幼き月。此度はランサーのクラスとして現界したわ。あなたは…海の男ね?焼けた肌がとてもキレイ」
「あァ、それなりに名の通った海賊さ。おれはさっきまでマスターと吸血鬼について話してたんで分かったが、そっちはいい目してやがる」

穏やかに言葉を交わしながらも確かに戦意を酌み交わす。ただ在るだけで威厳に満ちた王のやり取りは多くの英霊が集うこの地でも希少なものだろう。

「吸血鬼の嬢ちゃん、聞きたいことがある」
「何かしら、人間?」

王の問答に割り込むはこの場で最も年若い青年。その目に宿す殺意の先は目前の敵か、遠き父か。

「吸血鬼の一部を取り込み不死身になっちまった奴を殺す方法、わかるかい?」

かつて尊属殺と言われた重罪を、罪人カインの子吸血鬼に問う。王の問答はとたん罪人同士の血なまぐさい会話に堕ちていく。場に満ちた殺意がそれをさらに醜く彩る。

「餓鬼が妙な質問するのね。日光や白木の杭じゃ死なない、のよねぇ。ただ吸血鬼に成ったわけじゃないなら、私少食だから眷属いなくてよく分からないわ。ドラキュラ殺しの執事なら何かわかるかしら?」

かわいらしい笑みを浮かべ、しかし残虐な文言を吐く。人がパンを食すように血を飲むのが吸血鬼(ミディアン)、吸血姫(ミディアン)、化物(ミディアン)。
彼女は執事にして主君である男に罪人の問いを渡すと

「ドラキュラ曰く、不死身の化物(フリークス)など存在しない。くたばるまで殺してやるのがただ一つの手段かと」

ただ、殺す。死神の回答は至ってシンプル。


385 : Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE :2014/08/17(日) 00:35:35 7gPrBDGk0

「よく分かったよ。ありがたい助言(アドバイス)に礼を言うぜ、役立たず(ボンクラ)ども」

頭をつぶそーとも、粉みじんにしよーとも、削りとろーとも、死ななかったおやじがそれで死ぬなら苦労はない。
決別。その言葉を合図にするように4人は戦闘態勢に入る。

「こんなに月も紅いから、本気で殺すわよ」

宣言と共に飛びかかる吸血鬼。狙いは敵マスター、虹村刑兆。
その速度は最速のクラス、ランサーに恥じぬものだが

「!」

目前に大きな薙刀が振るわれ、軌道を変える。薙刀を構えたライダーがこちらを睨むと


どん!!!


と音が響いたような気がした。
それは数十万人に一人のみが持つ天賦の才、覇王色の覇気…その強大な気迫。ライダーと圧倒的な実力差があるものは意識を保つことすら適わずその身を折るが

「ふん」

レミリア・スカーレットは意に介さない。彼女は屈する側ではなく膝をつかせる側だ。
己がマスターである虹村刑兆に効果を及ばさないくらいは老いた身でも難しくない。
残る一人は……

「ウォルター・C・ドルネーズ。ヘルシング家、およびランサー(お嬢様)の執事(バトラー)。元国境騎士団(ヘルシング)ゴミ処理係。行くぞ」

高らかに名乗りを上げ、刑兆に戦いを挑む。本来なら老いた彼では覇気に完全には耐え切れず一瞬ふらつく位の影響はあっただろう。
だが、カリスマ……ヒトラーに従う兵隊のような気持ち!邪教の教祖にあこがれる信者のような気持ち!
レミリアの持つそれは本来のものではないため団体戦闘において意味を持たず、人を引き付けるのみ。だが、その魅力は主君のため戦いに臨む執事の戦意の原動力となる。
ゆえに。あるじ(レミリア)と共にある限り、執事(ウォルター)は伝説の大海賊に対しても気圧されることはない。
それを確かめたライダーはマスターに視線を軽く送ると

「おれが相手してやろう。永い夜になりそうだな……!!」

ランサーの前に立ちふさがって、薙刀から震動を放ちつつ切りかかる。当然ランサーは回避し、二人ともマスターから距離をとって闘い始めた。

「バッド・カンパニー!」

マスターたちもまた戦闘を始める。飛ばしてきたワイヤーをグリーンベレーに防がせる刑兆。

「おもちゃの兵隊…?奇妙なものを…」
「見えて…いるのか?」

互いの呟きに疑問を覚えるも戦場は動く。
ワイヤーを飛ばし、切り刻もうとするウォルター。それに対して刑兆は後手に回るざるを得ない。
体にグリーンベレー含む多くの歩兵を纏わせて防ぎ、アパッチのローターでの防御も行う。時折戦車や兵隊からの銃撃を行うも容易く回避すされてしまった。

(小さな軍隊…なんだ?ワイヤーを防ぐ瞬発力はあるらしい。吸血鬼や魔術師が扱うという使い魔か…?こちらからの攻撃は効かないくせにあちらの攻撃は十分な威力がある、当たれば少々厄介だ)
(ワイヤーを飛ばす速度自体は人間のそれだ。スタンド…ザ・ハンドなんかに比べれば遅い。遅いが…技量が半端じゃないし、人としてはかなりの速さだ。銃撃のタイミングも読まれているし、こちらは回避で精いっぱいだ。そもそもなぜスタンドが見えている?)

衰えたウォルターの技量と力では仕留めきれない。経験と速度の足りない刑兆もまた決定打に欠く。若さがあれば、億泰がいれば、とお互いにないものを求めてしまう。
膠着した状況を動かすのはサーヴァントの闘いと考え、闘いつづけながらもそちらの様子をうかがう二人。

巨躯の老人と殴り合う幼き少女。それは字面だけ見ればいろんな意味で警察沙汰だろうが…
小柄と翼から生じる音にも迫る速度を生かし、近接戦で体格の勝るライダーと渡りあうランサー。槍は用いていないが、得物の大きさゆえに近接戦に不利が生じるライダー相手には好判断と言えるだろう。吸血鬼の怪力でもって殴る、殴る、殴る、殴る。
だが対するライダーも歴戦の英雄。周囲を飛び交うランサーの攻撃を得物で、肘で、柄で受け、受けきれないものは震動と武装色による硬化、そして彼女を上回るパワーでいなす。僅かのダメージを受けつつも時折震動を放ち牽制する。回避は容易いが、これをマスターに向けて撃たれてはたまらないと攻めを急ぐランサー。
速度で勝るランサー、力で勝るライダー。夜の女王と海の皇の闘いは、侵略する女王と守る皇の形ではあるがこちらも概ね互角。開戦時の言葉通り、【永い夜】になるかと思われたが


386 : Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE :2014/08/17(日) 00:36:34 7gPrBDGk0

「バッド・カンパニー!」

戦局が双方互角ならば、有効的な援護を決めた方が勝つ。ライダーの懐から現れ援護射撃を行うスタンド……視線と交換でマスターから借りていた隠し兵器。
レミリア・スカーレットは優れた戦士である。幻想郷という閉ざされた世界とはいえ鬼や天狗、様々な妖怪と闘い、数百年単位で積み上げた経験は人間の英霊では届くものではない。
しかし彼女が振るうは個の武勇。家族、仲間、友人、部下、様々な関係の者と肩を並べはしたが軍隊(カンパニー)を率いる闘いならばこの聖杯戦争においてエドワード・ニューゲートに並ぶものはない―――!

(避け―――――きれない!?)

必死に回避の姿勢をとろうとするが指揮が巧みか、銃手の腕かその軌道は見事に心臓に届く……かと思われたが

(何とも…ない?)

確かに直撃した。だがダメージはない。
バッド・カンパニー……スタンドは精神エネルギーのビジョンであり、幽霊ひいてはサーヴァントへも干渉可能である。しかしBランクの対魔力を持つランサーにダメージを与えるほどの高位の神秘を宿すには至らなかった。
しかしその銃撃は無意味ではない。

(くそっ、体勢が、まずい!弾幕を避ける癖が仇になった!)

一度回避のために崩れた姿勢は戻らない。その隙をつき、震動を纏った拳を

「ウェアアアアア!!!」

打ち放った。

「うぐっ…う…」
「お嬢様!!」

直撃を受け、吹き飛ばされるランサー。本人の飛翔スキルによる減速とウォルターの助力を受け、どうにか静止、体勢を立て直す。
それを見た刑兆は放たれたウォルターの牽制をいなし、ライダーの下へ合流する。形勢はライダー主従に傾いた。
戦局が変わった以上今までと同じ戦術はとれない、機動力の落ちたランサーでは今度は五分にならない可能性が高い。

(弾幕での遠距離戦?いや、あちらは衝撃波を放てるし、マスターの方もあの大量のヒトガタで援護が出来る。ウォルターが遠距離攻撃できない、加えて魔術師ではない以上、手数でこちらが不利。ウォルターをかばうのも厳しくなるうえ、奴はライダーのはず。対魔力で弾幕が効かなかったらこちらが詰み)

(今のような不意打ちが何度も使えるわけがねェ。遠距離戦に持ちこんでもいいが、奴がそれに対応した武器があると厄介、また千日手になる。ランサーを名乗りながら武器を見せてねェのも気にかかる)

((宝具を使うか…?))

かたや逆転のため、かたや決定打のため、切り札の開帳を考える。
運命を操る必中の槍を。長き旅を共にした乗機を。己が居城の再現を。己が家族の助力を。

こんな緒戦から…?

『退くわよウォルター、序盤から消耗は避けたい。いったん撤退して傷を癒す』
『認識しました、レミリアお嬢様(ヤー、マイマスター)』

飛翔スキルでもってウォルターを抱え、あさっての方向へ飛び立つランサー。騎兵の本懐を見せていないのは気になるが…海賊というなら陸上で有効な乗機が出るとは考えにくい。
それを見て震動波による追撃を考えるライダーだが

「よせ、あの市街地吹っ飛ばす気か?消耗してんのにこれ以上目だって敵を引き寄せると厄介だ。おれ達も引くぞ」

それを聞き、矛を収めるライダー。確かに、生前は無制限に放つことが出来た震動もサーヴァントの身では魔力を消費する。そこに慣れていなかった。
威力の割に燃費はいい部類だが、威力もだいぶ落ちている。随分使い勝手が悪くなったものだ。

「グララララ…悪ィな、調子に乗っちまった。で、どうするよ?偵察なんて空気じゃなくなっちまったぜ」
「とにかく離れるぞ。騒ぎを聞きつけられて連戦なんざごめんだ。いったん帰って、色々考えることがありそうだ」
「学校とやらはどうすんだ?」
「なるようになる。行くぞ」

学生の身分なんて邪魔でしかないが、拠点が準備されているのは悪くねェ。
だが、思ったより疲れた。スタンドとサーヴァントの同時行使は慣れないとキツイな。


387 : Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE :2014/08/17(日) 00:37:21 7gPrBDGk0

【B-2/街外れ/1日目 未明】

【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(小)、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
0.まさかいきなり吸血鬼に会うとはな…
1.帰宅し、まず休養とそれから考察。
2.登校するかどうかは気分次第。
3.公衆電話は破壊する…?

[備考]
バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
明朝登校するかどうかは後続の方にお任せします。

【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.刑兆と共に帰宅、考察。
2.できれば海に行きたい

[備考]
NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。

[共通備考]
ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。
B-2の現在地から歩いて少しのところにこの世界における自宅があります。具体的なことは後続の方にお任せします。

[地域備考]
B-2市街地の外れで戦闘を行いました。バッド・カンパニーの銃声が響き渡り、グラグラの実の震動が伝わりました。ただし銃声はスタンドのものであるためNPCには聞こえなかった可能性が高いです。





『あなたの言う通りだったわね、ウォルター。日傘片手に勝てる楽な闘争じゃあない』
『ええ、ですがこのくらいなら苦境の内にも入りません。我らならば勝てる戦です』

街外れを飛び、戦地を離れる主従。執事の諫言をうけ、昼の外出を避けたのは妙手だったと思い返す。
反省はしているようだが、戦意が萎えることはない。
そう、戦意は失わない。だが……

(あの年老いたサーヴァント…アーカードなどのような人外ではなく、人間のようだった。それがレミリアお嬢様…吸血鬼と互角にわたり合っていた……老いた身で)

なぜ老年なのだ?サーヴァントとは全盛期で召喚されるものではないのか?何か理由が?
胸中を占める疑念と……僅かな嫉妬。詮無いことと分かっていながら先の戦闘で己の衰えを自覚した分、負の思いを感じざるを得なかった。

『さすがに疲れたわ。ダメージも小さくないしどこかで血がほしいわね』
『ふむ…』

余計な思いはいったん横に置く。
戦闘を終え、気が抜けたか外見相応の面が出たようだ。聖杯戦争の参加者以外の一般市民もいるようだしそれを頂くか…?しかし先の主従に吸血鬼とばれてしまっている以上目立つマネは避けた方がいいだろうか。病院から輸血用血液を確保することを考えるか…?

『早く行きましょ。ちなみに私はB型が好みよ』



【B-2/市街地上空/1日目 未明】

【ウォルター・C・ドルネーズ@出典】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.レミリアの食事(血)の確保と休養。
2.打って出るのは夜間のみ。
3.ライダー(エドワード・ニューゲート)に対して僅かな嫉妬と疑念。



【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]ダメージ(中、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中)、魔力消費(小、現在進行形でダメージの回復に消耗中)、若干の空腹
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く
1.食事と休養。ウォルター、はやくー
2.もう日傘片手で勝てるとは考えない。全力で行く。

[共通備考]
虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。
現在B-2の上空ですが、どこに向かって飛んでいるのか、レミリアの食事のためNPCを襲うか、病院やそれに準ずる施設に向かうか、そもそも施設の有無を知っているのかなどは後続の方にお任せします。


388 : Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE :2014/08/17(日) 00:38:52 7gPrBDGk0
無事投下完了です。
誤字、他指摘などあればお願いします。


389 : 名無しさん :2014/08/17(日) 06:09:34 SSVP5QvA0
投下乙です!
ついに初バトル!
読んでてワクワクしました!どのキャラも魅力的に書いてあってすごい!
自分の書いた主従が他の人にリレーされる、こんなに嬉しいことはありません!


390 : 名無しさん :2014/08/17(日) 12:31:55 7hdCRYf6O
投下乙です!
白ひげ組とレミリア主従が激突! レミリア、白ひげの、互いの手を探りながらの実力者ならではのぶつかり合いももちろん、マスター同士の駆け引きも手に汗握りました。
バッド・カンパニーはやっぱ面白いスタンドだなあ。本編ではわりとすぐに退場してしまった分、これからの立ち回りが楽しみ。
白ひげは堅実で頼りになるけど、やはりグラグラの大規模さや騒がしさがネックかー。
老ウォルターの、白ひげに抱く嫉妬もどう動いていくか……気になります。
あと、執事にごはんをねだるお嬢様が可愛いw


391 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/17(日) 13:57:53 wsVsyKGM0
ごめんなさい、前の予約と場所被ってたのに今気づきました
不注意で申し訳ない…
戦闘を行っていた場所をC-3に変更します


392 : 名無しさん :2014/08/17(日) 16:00:31 uWkrJD6w0
投下乙ですー
場所については修正とのことで
いきなり強烈な接触ですが、両陣営さすがに今後を見越して様子見か
サーヴァントの肩書や逸話から考察をしていく戦法もさっそく発揮されてて面白かったです
形兆のスタンドのバランスもわかりやすい
ウォルターは大海の老豪傑に興味を抱きましたかー


393 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/18(月) 22:38:40 qGA8kXkE0
投下お疲れ様です!

初戦は白ひげとレミリア、どちらも宝具を使用していませんが結果だけをみれば白ひげ。
どちらも全開を出していないのに迫力ある戦闘、マスターも戦いを進めていて……。
スタンドはやはりサーヴァントに対して決定打には届かなかったか、いや届いたら色々と……w
互いに顔が割れた今、次に合う時の時間と情報量が影響しそうですね。

それと場所の変更確認しました。
わざわざありがとうございます。
私も明日の夜には投下できそうなので頑張ります。


394 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/19(火) 00:55:43 hHh556QQ0
感想ありがとうございます、励みになります
場所に関しては此方の不手際ですので…
収録してくださった方もありがとうございます。此方で場所だけ修正しておきましたので確認頂ければ。

犬飼伊助&キャスター(食蜂操祈)、朽木ルキア&ランサー(前田慶次)、A-3のアッシュフォード学園で予約します


395 : ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/20(水) 02:30:10 hlZzIUKs0
皆様投下乙です。
暁美ほむら、キャスター(フェイスレス) 【B-6】で予約します


396 : 名無しさん :2014/08/20(水) 06:41:03 Z7IkQlboO
がんがん予約来るなあ
楽しみ


397 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:29:02 e.a4hdHs0
皆様投下乙です。
このような名作の後に拙作を投下するのは非常に緊張しますね・・・
それでは私も間桐雁夜&バーサーカー
鹿目まどか&ライダー
投下します


398 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:30:14 e.a4hdHs0
「学校、かぁ・・・」

ゴゾゴソ、とポケットを探るとそこには学生証がきっちりと収まっていた。
裏を見ればこの殺し合いの場での自分の住所と、表には通っている学校が記載してあった。
学校の名をアッシュフォード学園───知らない名前だ。
この殺し合いの中でも学生は学園に通えと。
学生の本分を果たせと、天戯弥勒は言いたいのだろうか。
ふるり、とその小さな肩が震える。
どこにマスターがいるかわからない。
もしかしたら学園の中で狙われるかもしれない。
そうなったら、相手を、どうすれば───と、その時。
思考がマイナスに傾きかけた時、傍らのライダーが声をかける。

「いはならへふにいかなひゃいいひゃねぇか(嫌なら別に行かなきゃいいじゃねぇか)」
「・・・あの、食べ終えてから言って貰ってもいいですか?」
「ぼべん、ぼーばな(ごめん、そーだな)」
「・・・」

ずぞぞぞぞ、と残りの弁当を吸い上げて口に含むライダー。
ぷくりと膨らんだその頬は、例えるならばリスのようだった。
まず彼らがスタートしたのは、森の中だった。
当たりを見回せば木、木、木───とりあえず森を出ようとした結果、森を抜けた先にあったのは24時間営業の、頼れる味方コンビニエンスストアだった。
腹が減っては戦は出来ぬ。
ライダーも腹ごしらえがしたいと言うので、とりあえず早めの朝ご飯にと鹿目まどかはそのコンビニエンスストアに立ち寄ったのだ。
購入したのは、まどかのコンビニ弁当一つとお茶のペットボトル一本と───ライダーの弁当六つ。
学生には痛い出費だったが、これでもライダーに我慢して貰ったぐらいなのだ。
とりあえず弁当を山ほど抱えてレジに持っていこうとしたライダーを、まどかは慌てて阻止したのだ。
そんなに買われては金が幾らあっても足りない。
殺し合いよりも先に食費をどうにかしなければいけないのかもしれない、と少し思ったほどだ。
何とか六個で我慢してもらい(ここに彼女の並々ならぬ努力と説得の物語があったことは彼女の名誉のために明記しておく)、今それを一緒に食している途中なのだが、まどかが半分も食べ終わらない内にライダーは全て食べ終えてしまった。

「はー・・・嫌なら別に行かなきゃいいじゃねぇか」
「でも学校にマスターがいたら、疑われるし───」
「んじゃそのがっこう、ってのに行ってサーヴァントをブッ飛ばせばいい!そんで仲間にしよう!」

にしし、と笑うライダーの顔には、一点の曇りすらない。
本気で倒した後に仲間にすればいいと思っているのだ。
荒唐無稽だ。
出来るはずがない。
マスターとサーヴァントも、ここには願いがある人間が呼ばれているのだから。
───でも。
ライダーのその言葉は、何故かとても頼もしさがあり。
まどかは心の何処かで『もしかしたらこのライダーならばやってのけるかもしれない』と、考え始めていた。

「じゃあ、ちょっと行ってみようかな・・・学校」
「おう!」

空を見上げる。
まだ星が瞬き、お月様が空で輝いている、そんな時間。
学校まではまだ時間がある。
ならばちょっと、このライダーと辺りの散策でもすると、面白いかもしれない───











○○○ ○○○


399 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:31:39 .9zx1kSw0
「ハァッ、ァア、ハァッ───」

彼の聖杯戦争が始まった地点───間桐邸にて、彼は荒い息で胸を抑えていた。
魔術回路の代用品として働いている体内の蟲は、現在は大人しくなっている。
比較的身体も落ち着いた状態。
しかし、これも長くは続かない。
もとより身体は長くは持たないのだ。
マスターを見つけ次第、早々に消さなければ───長期戦になればなるほど、間桐雁夜の聖杯は遠のくのだ。
選ぶ戦法はただ一つ。
見敵必殺。
Search & Deathtroy。
発見次第、障害は全て叩き潰す。
バーサーカーは現在霊体化させている。
魔力消費を抑えるためだ。
こちらは無駄に使える魔力はない。

(とりあえず、マスターを探そう)

みすぼらしく白く染まった頭髪と、引きつった顔面をフードで隠し、彼は立ち上がる。
ガタン、と椅子が揺れる。
まず、何処からマスターを探すかと窓から外を覗いた瞬間───彼の目に入ったのは。
平凡で気弱そうな少女と。
あの威圧感、そして霊体化しているバーサーカーが反応していることから───サーヴァントであろう、麦わら帽子が特徴的な胸に傷を持つ男。

───ああ、ちょうどいい。
此方から探さずとも、餌が向こうから歩いてきてくれたのだ。
暴虐の限りを尽くして、あのサーヴァントを消す。

「■■、■■■」

その唸り声は、果たして何を意味するものなのだろうか。
実体化したバーサーカーから漏れるその言葉は、誰にも理解できない。

「行くぞ」

軽く声をかける。
戦闘の始まり。
それを理解したのか、バーサーカーの口が三日月のようにニヤリと歪む。
ああ、殺そう。
相手がマスターなら、サーヴァントなら容赦はしない。
徹底的に捩じ伏せ、引き千切り、地面に刻む愉快なアートになるまで叩きつけよう。
目の前のサーヴァント潰し、そのマスターの願いを踏み躙り、ありとあらゆる残虐な行為を行い、その命を生贄に───求める『光』を守り通そう。
そう、それが彼等。
───『悪党』という、存在なのだから。

「殺せ───バーサーカー」
「■■■■■■■■■■■■───!!!」














○○○ ○○○


400 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:32:50 .9zx1kSw0
「んでまどか、学校って何だ」
「え、知らないんですか?」
「ああ、知らねぇ」

ライダーの問いに、さてどう説明したらいいものか、とまどかは頭を捻る。
ライダーが知らないのも無理はない。
ライダーが生きた時代と、今ここの時代では世界の構造そのものが違うのだ。

「えっと、大きい建物で、そこで皆で勉強したりするんです」
「勉強ォ?」
「例えば国語とか、数学とか社会とか理科とか・・・」
「???」
「んーと、理科なら、何て説明すればいいのかな、植物の中とか動物の細胞とか勉強するんです」
「ああ、つまり不思議動物ってことか」

・・・本当に理解したのだろうか。
ある程度歩いていると、住宅地なのだろうか、ぽつぽつと家屋が発見できた。
何の変哲のない、一般的な家屋ばかりだったが、その中で一つだけ。
悪い意味で一際目立つ、大きな屋敷があった。
数世代が楽に暮らせそうなほどの大きさの西洋風の館。
きちんと手入れされていれば、女の子なら一度は住みたいと夢見るであろう屋敷。
しかし実際は窓は割れ、カーテンは千切れ、中からは明かりすらついている気配はない───例えるならば、お化け屋敷のような風景だった。
まどかの背筋にゾクリとした感覚が駆け巡る。
嫌な予感がしたからなのか、それともその雰囲気に恐怖したのか───それはわからないが、近寄って得はしなさそうだった。

「ライダーさん、ちょっとあっちの方に行きま「おじゃまします」えー・・・」

とりあえずここから離れよう、と提案しようとしたまどかよりも先にライダーは、屋敷のドアを開いていた。
速い。そして不用心。何より失礼。

「え、ちょっと、ライダーさん知らない人の家なのに・・・!?」
「バカだなまどか、これはどう見ても不思議家じゃねえか。だったら冒険するのが普通だろうが!」
「訳がわからないよ・・・」

謎の理論と謎の迫力に気圧され、何処かで聞いたような言葉を漏らしてしまう。
ライダーのこの自由奔放さは生前から受け継がれているもの───彼と旅を共にした仲間も、彼の自由さには困らせられたのだ。
それはこの場においても、変わりはなかった。
この場が聖杯戦争でも、相手がマスターだったとしても───彼は変わらない。
この世で一番自由なヤツが海賊王。
その持論は、今でも変わらない。

「もしかしたらなんかブルックみてぇなのもいるかもしれねぇしな」

にししと笑う彼の笑顔に釣られて、まどかも笑顔が零れるが───それとこれは別、人様の家に乗り込む前に止めなければいけない。
手をちょいちょい、と招き猫のように動かし、ライダーに告げる。

「ライダーさん、でもそっちは人の家だか、ら───?」

その時、見えた。
いや、見えてしまった。
快活に笑うライダーのその背後。
何かが、見えた。
最初は赤い二つの点だった。
何かのライトだろうか、と思っていた。
───しかし、それが勘違いだと気づいた瞬間には、もう遅かった。
次に見えたのは、白熱し、白濁し、白狂したその姿。
白い頭髪。白い肌。細い身体。紅い瞳。
そしてその白い腕がゆっくりと振り上げられ───

「───ライダーさん、後ろッ!!」
「へ?」
「■■■■■■!!」

ドゴン!と。
まるでダンプカーが追突したかのような、人体が発するべきではない轟音をあげながら、ライダーはその身体を弾丸のように吹き飛ばされた。


401 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:33:48 .9zx1kSw0
吹き飛ばされたライダーの体は、そのままの勢いを保ちつつ───屋敷の正面の民家へと突っ込んでいく。
ガラガラ、と音を立てながら、ライダーが突っ込んだ民家が崩落する。
───それがほんの、数秒の出来事だった。

「ライ、ダー、さん・・・?」

恐る恐る、ライダーが吹き飛ばされた民家へと声をかける。
返事は、ない。

「ライダー、さん・・・?
ライダーさん、ライダーさん!ライダーさんッ!!」

幾ら呼びかけても、幾ら叫んでも返事はない。
まさか───死んでしまったのか。
こんな、簡単に。
こんな、呆気なく。

「■■■、■■■」

ニヤリ、とその顔面を愉快に歪ませながら、ライダーを吹き飛ばしたサーヴァント───バーサーカーは、まどかにゆらりと近づく。
ゆらり、ゆらり、と。
まるで、夢遊病者のように。
悲痛に叫ぶ少女を見て、楽しんでいるかのように。

「ぁ、いや、こないで・・・」

近寄るバーサーカーに気づいたのか。
まどかはじりじりと、後ずさりする。
そして、すとん、と。
恐怖でその場に腰が抜けて、座り込む。
そんなまどかをお構いなしに、バーサーカーはその腕をゆっくりとまどかに近づける。
バーサーカーの腕は触れただけで人を殺す。
血流を、生体電気を逆転させるのだ。
それだけで───人は簡単に死ぬ。
それを可能とする腕が、今、まどかの体に触れようと───

「■■■■■■、■■■───!!」




「───何やってんだお前ェッ!!」

───怒号。
その声量に、バーサーカーが腕を止める。

「ゴムゴムの、”回転弾”ッ!!」

次に飛来したのは、回転力とゴムの性質を利用した反動の威力を秘めた、必殺の拳。
しかし、バーサーカーには当たらない。
軽く地面を足で叩いただけで───バーサーカーの身体は、遥か後方に跳ねて行ったのだ。
ライダーの拳は虚しく空を切る。
倒壊した家屋の中から現れたライダーはパンパン、と己の体を叩きながら、言う。

「ライダー、さん・・・?」
「おう、大丈夫か?」
「え、あ、はい」
「ちょっと下がってろ。───あいつ、ぶっ飛ばしてくる」

未だ状況の把握が出来ていないまどかを置いて、ライダーはその莫大な脚力を使って、バーサーカーの元に飛び掛かる。
ポツリ、と残されたまどかは、たらだ呆然とするのみだった。

「ゴムゴムのォォォ、”スタンプ”!」

飛び掛かったライダーから放たれるは、神速の蹴撃。
並の存在ならば、一撃で意識を刈り取るであろうその蹴撃。
───しかし。
バーサーカーには、通じない。

「■■■■───!!」
「うおっ!?」

その蹴りが、バーサーカーに触れた瞬間。
蹴りの威力がそのまま、ライダーの脚部に返ってきたのだ。
常人ならば、その時点でその脚部は砕け、自立歩行すら不可能になるが───しかし、ライダーはゴム人間なのだ。
打撃の類いが、効くはずもない。

「と、”槍”ッ!」

足裏を合わせ、刺突。
あらゆる物を貫くそれは、バーサーカーにはやはり届かない。
しかし、それだけでは終わらない。
反射されたその勢いを利用し、跳躍。
そして。


402 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:34:56 .9zx1kSw0
「なら───ゴムゴムの”銃乱打”!!」

一撃が返されるならば、数でカバーしてやろう、と。
拳の数が増えたのではないかと錯覚するほどの拳の連打をバーサーカーに放つ。

「■■■■!!」

しかし、それも通らない。
バーサーカーに触れた瞬間、全ての『力』は反射されてしまうのだ。
そして。
バーサーカーも、黙って攻撃を受けてくれるほど優しい存在ではない。
少し大袈裟に、腕を振るう。
そうしただけで───巻き起こるのは、全てを切り刻む鎌鼬の旋風。
ライダーの打撃の無効化を理解し、斬撃に移行。

「危ねぇっ!」

すんでのところで回避する。
そのままの勢いでゴロゴロと転がるライダー。
回避だけでは終わらない。
更に連撃を叩き込もうと、体制を立て直す。
そして。
バーサーカーも、ただ突っ立っているだけではない。

「■■■■■■───!!」
「うわやべ、きたっ!」

バーサーカーが行ったのは、突進。
何の力をどう変換したのかは不明だが───その体が、弾丸のような速度でライダーに迫る。
体制を立て直したばかりのライダーでは避けられない。
いくら打撃が効かないとはいえ、限度はあるのだ。
規格外の質量で押し潰されれば、ゴム人間と言えどひとたまりもない。
それを、バーサーカーは理解していた。
いや、理解というより『計算』と言った方が正しいかもしれない。
スキル───『絶対能力』。
狂気に堕ちて尚その頭脳は、レベル5としての威厳を保っているのだ。
能力行使に必要なあらゆる演算を可能にし。
己が選択できる戦法から相手を殺せる方法を選び抜き。
その方法を、確実に、叩き込む。
クソッタレな世界と戦い続けた彼の能力は───狂気に染まって尚、未だに猛威を振るい続けるのだ。
ググ、と握ったその拳に、あらゆる力のベクトルが収束される。
一点集中。
この一撃にて、ライダーを貫く───!

「にしし、きたきたッ!」

しかし。侮ることなかれ。
優れているのはバーサーカーだけではない。
それと対峙するライダーも───万夫不当の豪傑、海賊の英雄なのだ。
簡単にやられるほど、柔な存在ではない。

「ゴムゴムの───”網”!」

バーサーカーの視界に浮かび上がる、それは。
異様なほどにまで伸びた、ライダーの交差した指。
丁寧に網目にしてあるその指のその隙間にバーサーカーは飛び込む。
一撃に込めた必殺の威力も───当たらなければ意味がない。
バーサーカーのその拳は、ライダーには届かない。
ベクトルが集中したその拳には触れず、ライダーの網はバーサーカーを優しく絡め取る。
力をそのまま跳ね返されるのならば、優しく掴めばいいのだ。
勿論、そのような簡単な戦術で打ち破れるほど、バーサーカーの能力はチャチなものではない。
この網が鉄製や鋼製のものだったなら、即座に引き千切っていただろう。
しかし、彼を絡め取ったその網は───ゴムなのだ。
ある程度の衝撃───ライダーが優しく掴んだ力を返された程度の衝撃ならば、吸収してしまう。
そして。
その絡め取ったことにより生まれた一瞬の隙を、ライダーは見逃しはしない。

「大漁大漁っ!殴って効かないなら、このまま投げてやるっ!」

ギュルギュルギュルッ!と。
その場で猛回転し、体を巻いたのだ。

「ゴムゴムのォォォォォッ!!」

そして。
次に起こったのは───ゴムの性質を生かした反動、遠心力。
伸びたゴムは、元の形に戻ろうとするのだ。
回転した数だけ倍増していくその威力は、最大にまで溜められ───その力を、解放した。

「”ボーガン”ッッ!!」

大地が、揺れた。
地面に叩きつけられたバーサーカーの衝撃が、地面を伝わりそれでも尚打ち消し切れずに大地を揺らしたのだ。


403 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:36:09 .9zx1kSw0
「にっしっし、どーだ!今のは痛ェだろ」

スタリ、と地面に着地し笑顔で語りかけるライダー。
並の英霊ならば、この時点で既に立てない筈のダメージを負っているはずなのだ。
ライダーもそれを理解している。
理解しているからこそ───目の前で立ち上がったその存在を、理解できなかった。

「■■■───」

ゆらり、と立ち上がったバーサーカー。
その体に傷は無いどころか───埃一つ、ついてはいなかった。

「なんだアイツ・・・こっちの攻撃全部跳ね返されちまう」
「■■■、■■■」

バーサーカーは答えない。
答える理性など、最初から存在していないのだ。
ただ此方を見定め、あらゆる演算能力を利用し、殺害方法を導き出すのみ。

「・・・そうだ。跳ね返されちまうなら───」

そのバーサーカーの様子を見たライダーは、すうっと勢い良く息を吸い込む。
そうだ。
攻撃をして跳ね返されるならば───その逆をすればいい。

「ゴムゴムのぉ・・・”たこ”」

だらーん、と。
その場で全身の力を抜いた。
攻撃をして跳ね返されるのならば───しなければいいのだ。

「・・・”たこ”」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・ダメだ、これ俺も攻撃できねぇ」
「今更・・・?」

逃げる訳にもいかず、観戦していたまどかからささやかなツッコミが入ったところで、ライダーの四肢に力が戻る。
それと、タイミングは同時だった。

「■■■■、■■■───」

すううぅぅ───と。
バーサーカーのその姿が、消えたのだ。
霊体化───つまり、逃げられたのだ。

「あれ?アイツどこ行った」
「なんか、逃げちゃったみたい・・・」
「えー!俺まだアイツぶっ飛ばしてねぇぞ!」
「そんなこと言われても・・・」

悔しいのか、不機嫌そうな顔で叫ぶライダー。
それも当たり前だろう。
億を超える賞金首として数々の海を冒険し、磨いたその技術で一切ダメージを与えられなかったのだ。
宝具を使用していないとは言え、勝てなかったことに変わりはない。

「よし、まどか。俺決めたぞ」
「決めたって、何を・・・?」
「次あったら、あの真っ白バリアは俺がぶっ飛ばす」

パシン、と拳を握る。
ああ、そうだ。
やられっ放しは───性に合わないのだ。







○○○ ○○○


404 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:36:55 .9zx1kSw0
───間桐雁夜は、『聖杯戦争』を学んだ。
この本来とは異なる場所での聖杯戦争において、それは最大の利点だった。
経験、というものがあるのは何よりも有利。
聖杯戦争を一度経験した雁夜は、バーサーカーとライダーの戦闘を観察し、撤退を選んだのである。
何故か。
何故か───それは、明らかに相性の悪いサーヴァントだということが、魔術師としては並以下の雁夜でもわかったからだ。
あのサーヴァントは、打撃に関する攻撃が一切通じていなかったのだ。
そして、攻撃が跳ね返されたことによるダメージも受けてはいなかった。
最初はライダーの攻撃を一切受けつけないバーサーカーの戦力に歓喜したが───それがむしろマイナスに働いていると気づいたのは、魔力の消費により活性化した体内の刻印虫が己の肉を食い始めた時だった。
バーサーカーの反射は、ライダーには通じない。
ライダーの攻撃は、バーサーカーに通じない。
バーサーカーの打撃攻撃は、ライダーには通じない。
しかし、バーサーカーには風を操作した切断攻撃や他にも色々な戦術がある。
その中なら、あの何故か打撃の効かないライダーにも通じる技もあるだろう。
しかし───打撃攻撃という攻撃手段の一つが封じられた以上、長期戦は避けられない。
長期戦になったら不利なのは、此方なのだ。
だから、撤退を選んだ。
しかし、無策に撤退した訳ではない。

(そうだ───バーサーカーと相性が悪いなら、他のヤツらにあのライダーを殺させればいい)

苦手なヤツなら別に相手をする必要はないのだ。
他のサーヴァントにでも殺させておけばいい。
ライダーのマスターが遠坂時臣だったなら───間違いなくそんな冷静な思考はできなかっただろうが、幸運なことにマスターは気弱な少女だったのだ。

「行こう、バーサーカー」

霊体化し、己の元に帰ってきたサーヴァントに告げる。
返答はない。

「待ってろよ」

ズリズリと、その足を引きながら、彼は歩く。
彼の願いの根底はとても醜く───とても利己的なものだ。
あったはずの道に背を向け。
届かないはずのものに憧れ。
他人の幸せを手に入れようと、その手を伸ばした。
どうしようもない『悪』。
蔑まれることはあれど、賞賛されることはないであろうその存在。
しかし。

「───桜」

この気持ちだけは、本物なのだ。
己の幸せのためでもある。
己の自分勝手な理想のためでもある。
様々な下心も否定はできない。
だが。
あの少女を、あの地獄から救いたいと思ったこの心だけは、その想いだけは───本物なのだ。

間桐雁夜は闇へと歩き出す。
その道は、茨の道だ。
『悪党』に相応しいのは、醜い闇に染まった泥の道。
しかし。
間桐雁夜は、止まらない───止まることなど、今更あり得ない。
彼の道は、既に一方通行なのだ。
引き返す道など、もう存在しない。


405 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:39:00 .9zx1kSw0
【D-4・間桐邸裏(少し離れている)/一日目・未明】

※間桐邸正面の家屋が倒壊しました。

【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.見敵必殺。見つけたサーヴァントから攻撃。
2.ライダー(ルフィ)相手は不利、他のヤツに倒されるまで待つ。
3.この場から離れる。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。

【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。

【D-4・間桐邸前/一日目・未明】

※間桐邸正面の家屋が倒壊しました。

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康、腹八分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:叶えたい願いはあるが人を殺したくないし死にたくもない。
1.聖杯戦争への恐怖。
2.学校へ行く・・・?
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。
表に学校名、クラス裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※登校するかは思案中です。
しかし今は少し登校する側に傾いています。

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康、腹二分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
2.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
3.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。


406 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/20(水) 20:39:35 .9zx1kSw0
投下終了です。


407 : 名無しさん :2014/08/20(水) 20:53:26 z792LuzQ0
投下乙です!
相性悪い奴ら同士だと確かにおじさん不利だよねえ……
ルフィ&まどかはルフィをどんだけまどかが制御できるかだな
ナミみたいに強気で行かないとどんどん引っ張られるぞww


408 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 20:55:28 rWZ3oHjs0
予約、そして投下お疲れ様です!

ぶっ飛ばして仲間にする。ルフィらしい行動ですね。
振り回されるまどかも麦わら一味のようで微笑ましいです。
そんな初陣はバーサーカーな一方通行。
お互いの相性関係もあり致命傷は負いませんでしたが響くものはあります。
雁夜おじさんの願いに縋るスガタが想像できます。

それでは、私も投下します。


409 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 20:58:07 rWZ3oHjs0

 真実を手に入れるには求めなければならない。
 これは摂理であり決して難解な事ではなく当たり前の事象に過ぎない。
 行動を起こさなければ、それは己だろうが他者だろうが関係ないのだ。
 手を伸ばさなければ、真実にも、夢にも、憧れにも――決して辿り着くことは出来ない。


 紅月カレン――赤い髪をした彼女もまた真実を、夢を追い求めている。
 追い求めている、この表現では語弊があるかも知れないが彼女は日本の解放を掲げ戦っていた。
 彼女の世界の日本はブリタニアと呼ばれる国の植民地、実質的な支配を受けていた。
 対向するために黒の騎士団と呼ばれるレジスタンス組織にて彼女達は戦い続けた。
 だが組織と国家の争いでは規模が何もかも違う、ジリ貧であり勝利と呼べる物は手に入れられてない。
 過去に一度、とある男が奇跡を成し遂げたらしいが彼女達には全く関係がない、『今』勝たなければならなかった。


 そしてある日。彼女達の元に一人の魔人が訪れた。
 名をゼロ、仮面で己を隠す記号、されどその手腕は一級品であり彼が来た事により圧倒的に基板を覆した。
 魔術や奇跡。そのような記号でしか表せないような戦果を上げ――彼は――。


「ルルーシュ……」


 記号を取り除いた仮面の主の真意は計り知れない、術もない。
 己のためなのか、大義のためか世のためか。それすら解らないが言えるとすれば唯一つ。
 利用されていたのだ、真意こそ不明だが日本解放という大義の元でカレン達は手駒にされていた。
 

 果てしない闇の中で見えているかも解らない光を追い求めていた。
 光刺す空間が崩壊した今、カレンには今までのように黒の騎士団を、いやゼロを見ることは出来ない。
 タイミングが良かった――こんな一言で運命を片付けるのはどうかと思うが重なったのだ。
 彼女が求めた時期と聖杯に召された時期が。


 まるで最初から仕組まれていたように、彼女を誘うように。
 天戯弥勒の声が響き、彼女はこの世界に降り立った。


410 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 20:59:35 rWZ3oHjs0

 そんな彼女に与えられた役職は学生、それも何の皮肉かアッシュフォード学園の生徒だ。
 元々学園の生徒であるカレンにとってこれは苦痛か幸福か。
 解放活動で登校頻度が少なくなっていた学園に登校出来る喜び。
 こんな状況で与えられた仮初めの平和に浸る……今も戦っているであろう仲間に対する罪悪感。
 揺れ動く感情は彼女を必要以上に責め立てていた。


 足は重い、しかし学園に通わなければ違和感を覚える。
 出来る事を自分勝手な理由で行わないのは失礼であり、意味の無い行為だ。
 やれる時に出来る事を。其処に理由を付け足すならば不信感を無くすためだ。
 もし学園に他のマスターがいれば。急に不登校になった生徒に対し疑問を抱くだろう。
 NPCならば問題はないのだが情報収集を含め学園に顔を出す必要がある。


 もしアッシュフォード学園が、彼女の知っている学園が構成されているとしたら。
 天戯弥勒の用意した仮初めの世界でも――細やかな幸せとなるかもしれない。


「ん……?」


 朝は少し早めに出ていたため人通りは若干少ない。
 そのため通る人々はそれなりに顔を覚えているのだが目の前の女性は印象強い。
 ホットパンツにタンクトップ、引き締まった身体に強調される胸部……朝からだ。
 カレンはその美貌に一瞬目を奪われるが、登校中でもあるし趣味もないためそのまま歩く。


 踵を数回トントンと。姿勢を正し視線を前に。
 通り過ぎる人には視線が合えば挨拶を、彼女の人の良さが解る一場面だ。


「あら、可愛らしいお嬢さんじゃない」


411 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 21:00:30 rWZ3oHjs0

 通り過ぎるカレンに対して派手な女性は声を掛ける。
 緑の長髪に女の武器を全面に出したその服装。
 カレンも十分なスタイルと美貌を持ち併せているが、目の前の女性の方がミステリアスな雰囲気を出している。
 

 可愛らしい、と言われ反応に困るが小声で「ありがとうございます」と呟き去ろうとする。
 褒められるのは嬉しい事では在るが、情報も少なく、マスターである彼女は不用意に接触を起したくはない。
 自分の存在を確立すればする程狙われる確率があるからだ。


「あらあら……ちょっとお姉さんとお茶? とかどうかしら」


 颯爽と通り過ぎるのが理想だったが足を止められてしまった。
 近くだと更に解るが纏っている空気や言葉と共に吐出される息は人のナニカを煽るようだ。
 生憎お茶をする時間はない、在ったとしても今は不用意な接触や不安な懸案は避けたいのが本音。
 カレンは会釈を済ますともう一度通りすぎようとするが女性が其れを止める。






「もう――肩の力を抜かないと簡単に負けちゃうわよ?」







「セイ――」


「ここじゃダメ、よ」


 女性の言葉にカレンの警戒態勢は一瞬で最高潮にまで登り上げた。
 この女は聖杯戦争の参加者だ、気付いた今ならば解る。この力は『人間』じゃない。
 魔力などと呼ばれる概念に知識はないが目の前の存在が規格外であることは本能が理解している。
 咄嗟に霊体であるセイバーを現界させようとするも静止を喰らう。


 女はカレンの唇に人差し指を押し当て言葉を止める。
 唇から首筋を辿るように指を降ろしていく女性。
 カレンの身体には謎の刺激と悪寒が走るが女性は全く気にしていない。
 首から指を離すと女性はその指を自分で咥え、堪能した後に言葉を紡ぐ。


「こんな所で始めちゃったら周りがうるさい……ふふっ。
 初めては誰にも邪魔されない方がイイものよ?」





412 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 21:01:40 rWZ3oHjs0

 女のサーヴァントに招かれるまま路地裏に入るカレン。
 敵の誘いを鵜呑みにするのは気が引けるがあのまま戦闘すれば目立つのは確実だった。
 そのため結果としては好ましい展開だがもし女がキャスターならば。
 カレン自身にサーヴァントに対する知識は豊富ではないが、もし結界を貼られていたら。
 相手の得意な戦場に入り込むのはナンセンス、戦いをするに置いて余程の自信が無ければ出来ない。


「さぁ、此処ならいいんじゃないかしら? 焦らしてごめんなさいね」


 女が誘ったのはビルに囲まれた空き地のような場所だった。
 広い、とは言えないが対人戦闘を行うには十分過ぎる空間であり問題はない。
 ビルもどうやら廃墟ビルらしく数分の間は誰にも気付かれることはないだろう。


「サーヴァントを出して、速く。
 お姉さん、あんまり遅いと此方からイクわよ?」


 出せ、と言ったにも関わらず女は言葉と同時に魔力を放出させる。
 放出、と言っても衝撃波の類ではなく自身を闇に包み、闇が晴れると姿が変わっていた。
 ホットパンツにタンクトップの格好から大胆に胸を強調し上半身全体的な露出。
 下半身はレオタードのようになっておりその姿、異性を虜にするには十分過ぎる容姿であった。


「お言葉通り出してやる――セイバーッ!!」


 挑発に乗るように叫ぶカレンの声に反応して何もない空間に何かが集まる。
 その現象の終着点はサーヴァントの具現化。一刻前まで霊体化していたセイバーの現界。
 その姿は緑を纏った一人の勇者だ。その蒼い瞳に迷いなど存在しなく無言で剣を構える。


「ふふっ、焦らしちゃってごめんなさい――ねッ!!」


 妖艶なサーヴァントはセイバーの構えに対し己を動かす。
 その奇抜な服装でカレンの視線は一点に固まっていたが相手は翼が生えている。
 低空飛行で滑空するようにセイバーの元に迫る。


 セイバーはマスターであるカレンを退かせると盾を構え女を見つめる。
『ゾクゾクしちゃう』そんな事を呟きながら繰り出される蹴りを盾で防ぐ。
 響く重音は静かな空間に反響し、カレンは察する。『目の前の戦いは並の人間ではない』と言うことを。


 盾から覗き込み相手である女が離れていることを確認したセイバーは大地を駆ける。
 剣を握り締め立ち向かう姿は勇者の風格を漂わせている。
 相手に近づくと横に一閃、しかし女は空中に移動し回避成功。


413 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 21:02:50 rWZ3oHjs0

(あの剣は宝具――だけど真名は開放していない、ってとこかしら)


 何やら考えている様子だがセイバーには関係など無い。
 再び地上に降りてくる女目掛け距離を詰める。


(マスターも見えないし、それにあの女……クラスは一体?)


 カレンはセイバーの戦闘を見ながら相手に対して考察を始めようとしていた。
 セイバーの戦闘力は見れば安心出来る程、これなら考察に意識を回せると思っていたが情報量が少ない。
 相手のマスターも近くに確認出来なければクラスも確認出来ないのが現状だった。


「――ッ!!」


 セイバーは剣を振るう直前に一歩力強く踏み込み相手に自分の攻撃の機を狂わせる。
 突然な縦の動作に普通の相手ならば気が引かれ注意を逸らさせるが英霊は伊達ではないようだ。
 相手の女はそのタイミングに合わぜ身を低くし迫っていた。


「シャドウブレィッ!!」


 その翼を鋭利な形状に代えセイバーの喉元を斬り裂かんと下から上に飛ぶように振るう。
 セイバーはその翼を剣で受け止めるも、無理な体勢からか後ろによろけてしまう。
 女は剣の上を滑走し上空へ、更に追い打ちを掛かんと腕を突き出す。


(私の能力を無効にする――折角の逸材なのに勿体無いわね)


「ソウルフィィスッ!!」


 突き出された腕から放たれるは波動、その生業は蝙蝠。
 セイバー目掛けて放たれた攻撃を簡単に避ける、そして此方から攻めようとするも――失敗だ。
 避けたのは正解だが避けただけでは波動は沈まない。
 そのまま進み続ける波動はセイバーではなくマスターであるカレンに迫っている。
 カレンは気付くも避けられない、サーヴァントの攻撃に生身の人間が回避するには無茶がある。
 規模にも影響されるが不意を突かれた今、自力で避けるのは不可能だった。


414 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 21:04:53 rWZ3oHjs0

 咄嗟に腕を交差するように前に出すが気休めにもならないだろう。
 この攻撃を受けて生きているかどうかは解らないが痛いのは確実、それも度を越している。
 真実を求めるまでは死ねないのだが――死ねない。


「え――!?」


 気付けばカレンは宙に浮いている、これは現実だ、聖杯戦争も含めて現実だ。
 まるで魔法使いのように空中に浮いているが自由には動けない。当然だ。
 その身体を支えているのはセイバーだ、マスターであるカレンの身体を片手で抱く形で支えていた。


「あ、ありがとう……」


 抱き抱えられる状況に赤面しつつ小声で礼を言うカレンだが安心は出来ない。
 セイバーは己の道具であるフックショットを使用し壁に張り付いている形だ。
 壁に叩きこまれたチェーンを辿り其れを基点にし身体を支えているのだが、対する女は浮いている。
 相手は自由に飛行能力を駆使出来るため相手側が有利、カレンはお荷物になっていた。
 このまま攻め入られればセイバーが不利なのは確実だが相手は攻めてこないようだ。


 疑問を抱きセイバーに視線を送った後、女にも視線を送るカレン。
 状況は何一つ理解出来ていなかったが一つだけ、一つだけ理解出来た事がある。
 セイバーも女も――笑っていた。


「私はアーチャーよ……ふふっ、覚えた?
 貴方達の事は覚えたわ、これからもよろしくね――憎いほど好きよ」


 ウインク。
 何の意味を含ませているかは計り知れないが目の前のサーヴァントはアーチャーと名乗った。
 ならばあの蝙蝠の波動が宝具なのだろうか――それは違うだろう。
 けれどセイバー、アーチャー互いに宝具を発動することはなく戦いは終わる。


 カレンの初陣、その締めは一つの影で終わる。
 アーチャーの頭上には一つの球体――爆弾が落ちかかっている。
 これはセイバーの道具であり、フックショットを用いカレンを救出に向かう寸前に頭上に投げていた。
 それがアーチャーの頭上に落ちるようにある程度角度を考えて投擲したが狙いは的中したようだ。
 爆発の寸前、アーチャーは再度笑っていた――。


415 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 21:05:41 rWZ3oHjs0

 爆風が晴れた先にアーチャーの姿はない。
 死んだ、その可能性は零だろう。セイバーも首を横に降っている。
 手応えを感じていないらしく、この戦闘は互いに傷を追う事無く終了したようだ。


 カレンにとってはサーヴァント同士の戦いに自分が割って入れないことを確認出来た良い教訓になった。
 これから先。学園にも敵のマスターやアーチャーのマスターが潜んでいるかもしれない。
 やはり何事にも今は情報を欲している。学園終了後には図書館に行ったり街を歩くなど行動をした方が無難だろう。


「助けてくれてありがとう、セイバー」


 礼を再度告げるとセイバーは微笑み霊体に戻る。
 セイバーから直接的な言葉は今まで無くカレンは彼と会話を成立させた事はない。
 だが言葉は無くともその瞳からは絶対的な安心感を得ていた。



【B-2/市街地路地裏/1日目 早朝】

【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.学園に向かい情報を集取する。
2.学園終了後、街を探索。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。



【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。


416 : ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 21:10:25 rWZ3oHjs0

 セイバーとの戦闘を終わらせたモリガンは再度ホットパンツにタンクトップな姿になり街を歩いていた。
 爆弾が爆発する前に先頭領域から離脱していた彼女は実質無傷で初陣を完了した。
 無論相手であるセイバーも無傷に近い形になってはいるのだが。


 モリガンのこれから行うべき行動はマスターの元への帰還である。
 情報収集を目的に動き適度に魂を喰らっていたが収穫はセイバーの情報のみ。
 ある程度辺りの地形を把握したのも有益な情報となるだろう。


 相手のセイバーの実力はクラスに恥じない物だった。
 モリガン自身の魅力を、スキルを無効化していた辺り見えない所でも強い勇者に違いない。
 お互いに宝具は発動していないが正面から戦っては分が悪いのは確かだった。


「此処なら私を絶頂へ誘ってくれる程の刺激がありそうね」


 足取りはマスターの元へ。
 しかし男共はモリガンを自由にさせない、彼女の魅力の虜となっている。
 あらあら、指を咥えながらモリガンは一人の男と共にビルの中へ消えていった――。



【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]タンクトップ、ホットパンツ
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.NPCと遊ぶ
2.マスターの所へ戻る
[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※現在の外見はポイズン@ファイナルファイトシリーズ(ストリートファイターシリーズ)に近いです。


417 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 21:13:55 rWZ3oHjs0
以上で投下を終了します。
皆様の沢山の投下、予約は大変嬉しいです!

それで、一つ。

纒流子の宝具『鮮血更衣』について『本来以上のポテンシャル』という曖昧な記述がありました。
ので、目安としてパラメータを加えてみました。(あくまで目安ですので……)


418 : 名無しさん :2014/08/20(水) 21:17:39 FJ0u1wPI0
皆さん投下乙です
おおう、投下が次々と・・・自分も期限までに仕上げねばなりませんね


419 : ◆lb.YEGOV.. :2014/08/20(水) 22:14:23 Ui3o.yZQ0
皆様投下お疲れさまです。
自分が出したキャラを書いていただけるのは光栄な事ですね。
まどか、ルフィ、タダノ、モリガンの4人で予約させていただきます。


420 : 名無しさん :2014/08/20(水) 22:18:58 Z7IkQlboO
投下乙です!
まどか組、雁夜組も交戦か……ルフィはマジでマイペースだなwそれでもただの能天気じゃなく、天性の勘で臨機応変に戦いに興じる姿は彼らしい。果たしてまどかは御しきれるか。
一方通行、狂化してても計算演算は高度ってのが厄介ですな。消費激しいあたり雁夜の判断は正しそうだけど……

そしてモリガン姐さんとリンクもバトると。黙してカレンの剣となり盾となるリンクがかっこいい。シンプルな強さにアイテムの対応力が光りますね。そして一戦後リフレッシュとばかりに男どもを侍らせ闇へとしけこむモリガンがモリガンすぎる。短いながらあのボイスが聞こえてくるような戦いでした。


421 : 名無しさん :2014/08/20(水) 22:22:53 zGvz4AQU0
皆さん投下乙です!
白ひげVSレミリアに続き、一方通行VSルフィにモリガンVSリンクと好カードが続きますね!
ルフィはどこまでもルフィですね
ワンピ勢の戦闘は派手だなぁ、間桐邸が…w

戦場でもモリガンは気ままに、リンクは誠実に。みんならしい振る舞いですね

質問なんですが、ここの聖杯戦争では原作通りサーヴァントはお互いの気配を感じたりできるのでしょうか?あとマスターはステータスやクラスの視認は可能ですか?


422 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/20(水) 22:44:55 rWZ3oHjs0
たくさんの感想と予約、ありがとうございます!
励みになります!

>>421
サーヴァントはお互いの気配を〜→感知出来ます。

マスターの視認について。
これは他の方の意見を仰ぎたい所です。
私の投下した話では「カレンは魔術、魔法的な知識に疎いため敵サーヴァントのクラスが見抜けなかった」
このような認識です。
誰が見えて誰が見えない、だとか知識が増えれば確認できる、全員最初から解るなど……。

>>1として頼りない部分、申し訳ないですが意見等お願いいたします。


423 : 名無しさん :2014/08/20(水) 23:08:22 blzJ3vLE0
原作ではステータスは見えて、クラスはわからなかったと思います

宝具を視認するとそれのランクは分かる。例えばアルトリアなら目視した時に宝具除くステが分かって、風王結界を見れば宝具がCだと分かる。その後カリバーを確認したらA++だと分かる、感じだったと思います。
昔の記憶なんで曖昧ですが

スキルも視認すれば分かるみたいな話聞いたことがありますが、魔力放出とかはともかく千里眼とかどーすりゃえーねんみたいな感じなので>>1さんが基準決めちゃっていいんじゃないでしょうか

長文失礼しました


424 : ◆lb.YEGOV.. :2014/08/21(木) 00:43:55 CYNJUHIc0
あ、すみません、場所出し忘れてました。
地域は【C-4】です


425 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/21(木) 10:06:49 iqR8xqgs0
皆様お疲れさまです。

それではマスターの視認について、
サーヴァントのステータスは視認可能
クラスの視認は原則不可、とさせていただきます。


426 : 名無しさん :2014/08/21(木) 23:24:52 8c./e/m20
予約が多い!


427 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/22(金) 18:50:03 YPhGAR8I0
いきなりで申しわけないですが延長お願いします
明日には投下出来ると思います


428 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/22(金) 20:44:01 1.XigZ160
すいません、長期間キャラ拘束してて申し訳ないのですが、
私も延長をお願いします


429 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/23(土) 12:25:54 4gKpHmBw0
投下します


430 : Bとの邂逅/ネジレタユガミ ◆A23CJmo9LE :2014/08/23(土) 12:27:33 4gKpHmBw0
黒塗りの高級車が校門近くに着ける。そこから降りてきたのはアッシュフォード学園の通常の制服ではなく、ヘソ出し谷間出しの妖艶な装いを纏ったスタイル抜群の女生徒。

「ご苦労さまー❤帰りもよろしくー❤」

ばーい、と手を一振り、校舎に目を向け堂々と歩く。まだ殆ど生徒のいない早朝の登校だ。
自分の足で登校なんて面倒な真似はイヤ、と主従で意見が一致したため適当に調達したNPCのアッシー君だ。もちろん向こうの生活なんて考慮しちゃいない。

「んー思ったより早く着いちゃったわねー、いい車乗ってるじゃない❤」

所要時間なんて考えもせずに出て来た……そもそも彼女自身は登校などするつもりはなかったので当然と言えば当然だが。そんな彼女がなぜ来たくもない学園に登校したのかというと

『犬飼さぁん、クラスはどっちかしら☆』

このサーヴァント、キャスターの進言によるものだ。曰く、規則から外れた行動をすると疑われてマスターだとばれかねない、学生という画一的な動きをする集団は手駒にしてもばれにくい、情報収集のためにもいくべき、そもそもこの時間、外を歩いて警備員や風紀委員に見つかると面倒と意見を述べた。それらすべてを「面倒臭い❤」の一言で切って捨てようとすると、呆れたようにため息をつきながら「あなた本当に聖杯戦争に勝つ気あるのぉ?そもそもサボりはよくないんだゾ☆」と説教染みたセリフを吐くので仕方なく登校したというわけだ。

『高等部一年のB組よ、あと伊助様』
『あれ、一年生なんだ。それじゃあ行きましょ、高校デビュー☆』

言動の一つ一つがイラッとするサーヴァントだがいちいち気にしていても仕方がないと短い付き合いで学んだ。無視して靴を履き替え、一応教室へ向かう。

『そ、れ、で❤アンタがうるさいから来たけど、どーするの?まさか何もしないとか、言わないわよねぇ❤』
『もちろんよぉ、ちょっと人数力が少ないけど…』

確実な洗脳を行う為にはリモコンによる微調節が欠かせないため、念話と共に実体化してその姿をさらす。制服着用の義務もなく、そもそも認識干渉のできるキャスターに意味は薄いが、念のため伊助の使っていないアッシュフォード学園の制服を纏っている。雰囲気というか気分は潜入している感じで盛り上がるらしい。「その制服、可愛いから貸してほしいな☆」「そんなクソ学校の制服なんて着ないし、勝手にすれば?返さなくていいよ、アンタが着たのとかマジいらないから❤」などというやり取りの結果だ。
えいっ☆、と可愛いらしい声と共にリモコンをプッシュ。まだ早いため人数は少ないがこれでクラスの全員を手中に収めた。複雑な命令を下すのは難しいが、日常生活の中で索敵くらいには使える。

『やっぱりちゃんとした人間と比べると抵抗力ひくーい☆とりあえず手駒確保して、他のマスター探させたり、いざとなったら盾にしたり、ね☆』

と言うと同時に皆一斉に学校中に散らばっていく。早速命令を実行するようだ。

『わあおー、大言壮語じゃなかったんだ❤とりあえず勝利に向けて一歩リードってカンジ?』

ムカつく上に弱いサーヴァントだが、使えないわけではない。それを再確認できればまあ上々、と教室を出る伊助。

『どこ行くのかしらぁ?』
『サ・ボ・リ❤学校からは出ないから安心してよ、伊助はこんな戦争終わらせて早く帰りたいの。授業とか性に合わないし教室の奴は洗脳でもして誤魔化しといて❤』
『ちょっと、待…』

「おっと…おはようございます」

扉の前でぶつかりそうになる、黒髪にセミロングのどこか気品のある女生徒。彼女が教室内に入り、キャスターの姿が視界に入ろうかという瞬間

「マスター、そこな女サーヴァントだぜ。こんな早くから姿現すたぁ大胆ないい女だ。惚れちまいそうだよ」

派手な着物をまとった武人が姿を現す。主従のやり取りとNPCへの干渉に気をとられて気づけなかったのは失態だったと渋面を作るキャスター。マスターの視界を除くとステータスも軒並み高い…三騎士のいずれかだろう。位置関係的に敵マスターへの干渉も出来なそうだが…


431 : Bとの邂逅/ネジレタユガミ ◆A23CJmo9LE :2014/08/23(土) 12:29:48 4gKpHmBw0
「男子力高いヒトに褒められるのは嫌いじゃないわぁ。よければ人目につかないところで少しお話しません?」

交渉を持ちかける。生憎と前線に立つ戦士ではなかったため、殺気だのなんだのといったものはよく分からないが、戦意があるならこの場で即切って捨てることも出来たはず。

「ええ、よろしいですわよ。では屋上にでも移動しましょうか」

強力なサーヴァントを従えるが故の主導権を行使し、笑顔で場所替えを提案する黒髪の少女。その発言は背後に確かな力あってのものだが

(あ、どうしようすっごくイラッとした❤)(うん、私も☆)

傲慢な主従がそれに従うわけはなかった。

「大丈夫ですよ、ココで☆」
「いえ、教室では人目が…」
「だーかーらー、ココで☆」

丁度登校してきた生徒にリモコンを向け、能力を行使。それと同時に今まで洗脳した生徒全員も軍隊のように整列して教室に入り、不気味なほどに毅然と席に着かせる。全ての生徒が画一的に無言でただ座っている光景は異常としかいいようがない。

「ね、これなら問題力ないわよぉ☆」

異様な光景にさしもの傾奇者も嫌悪と怖気を隠しきれない。そのマスターもまた同じく。
これは示威行為だ。交渉においてナメられないというのは大切なこと。能力の行使により自身が脅威であると思わせる、交渉のテーブルにつく力があると認めさせる。
相手に直接作用させることはできなくとも、自身も含めた人の一挙手一投足により精神的に優位に立つことくらい容易い……あらゆる意味で心理を支配してこそ『心理掌握(メンタルアウト)』。

「……いいだろう、確かにこれなら問題ない。ランサーのマスター、朽木ルキアだ」

素に戻り蓮っ葉な話し方をするルキアだが、それは打ち解けたというよりむしろ警戒の表れ。ランサーを前に置き、いつでも開戦逃亡どちらにも対応できるようにする。

「やーだー、猫かぶり?それともキャラづくり?まあいいけど❤犬飼伊助、いがみっつ。ところでそっちの…お侍さん?年いくつ?」
「俺かい、さて70ちょいまで生きたはずだが、今の体は若いころ…20かそこらじゃないか。恋をするにはいい年頃だ」
「もう、話がそれているゾ☆私は察してると思うけどキャスター、よろしく☆で、お話というのは手を組まないかってことね」

マスターが何か言いたげな顔をするが、視線を送りここは私のステージだと主張。交渉を進める。
敵にチカラを示し、警戒を引き出したところで協力を申し出る。交渉の材料は見せたし、自らの能力でさらに必要な材料は掴みとっている。対魔力持ちのサーヴァントならできずとも、並のマスターの記憶を軽く読むくらいならリモコンによる調整がなくともやれないことはない。

「見ての通り支配力なら負けない自信あるけどぉ、野蛮力には自信がなくって☆お姉さんとお侍さんはお祭りの会場と経験値力が欲しいみたいだからぁ、私が目になってアゲル。見つけた敵はアナタ達に譲るわ。そういう同盟☆」

己が心中を見透かしたような、否、実際に覗いていなければ出ないような都合のいい同盟に警戒と嫌悪を強めるルキア。確かに目的は果たせるのかもしれないが、こちらが一方的に危険を蒙るようなものを容易く受けたいとは思わない。

「それではあまりにも――」
「簡潔にまとめてもらえるかい。そっちが提供するもの、こっちに求めるもの」

切って捨てようとするマスターに対して話を続けろ、と求めるサーヴァント。その表情は一軍を纏めた大将のもの……傾奇者といわれた男だが、それでも歴史に名を刻んだ武将なのだ。
それを見て対する少女も態度を改める。

「こちらが用意できるのは兵力。決して逆らわず、何にも怯えぬ忠実なる駒を。そして……」

ちらり、とマスターをみて

「腕利きの暗殺者と、心を操るサーヴァント。求めるのは優れた武人…私たちの見つけた敵を正面から打ち倒せる実力の持ち主」

先ほどまでの気儘な様子は鳴りを潜め、科学の都市で5本の指に入る頭脳をもつ才女の面を露わにする。経験はないが、さながら軍師のごとく槍兵の走る戦場を整えることを提言する。その様子は英霊ならざる二人は割って入るのを戸惑うほど。


432 : Bとの邂逅/ネジレタユガミ ◆A23CJmo9LE :2014/08/23(土) 12:30:32 4gKpHmBw0

「……上等!祭りは人数が多い方がいいってもんだ、一緒に踊ろうじゃあないの!」
「ふふっ、前向きな返事がもらえて私も嬉しいんだゾ☆」

重くなった空気を吹き飛ばすように再び陽気な振る舞いを見せる2人のサーヴァント、握手なんてしている。

「お、おいちょっと待て!私を抜きで勝手に話を進めるな!」

蚊帳の外だったルキアが従僕に苛立ち露わに掴みかかるが

「マスター、一度決まったことを翻すなんて無粋な真似はよしなよ。ほらほら、一緒に笑って笑ってぇ!別嬪が台無しだぜ?」

軽くいなされてしまう。こちらを責めても甲斐はないと踏んで、こうなれば相手の非をつけないかと睨めつける。

「ぐ、ならお前たちの願いを教えてもらおう。それ次第では共闘はできん」

ランサーは殺しを良しとしないし、自分もまた咎なき命を奪いたくはない。参加者でないとはいえ、クラスメートを操るというのも…甘いかもしれないがいい気持ちはしないのだ。他称暗殺者と倫理観のかけたサーヴァント、その願いが犠牲を強いるものならばランサーとて前言の撤回を考える、と思ったが

「え〜、乙女の願いを知りたがるなんて野暮なんだゾ☆」
「伊助はー、パパとママと幸せに過ごすだけのお金が欲しいなーって❤」

片や無回答、片や身勝手ではあるが否定はしにくい願い。これでは協力関係の破綻に直接は繋がらないだろう。力を分け与えた死神代行のごとく眉間にしわを寄せるが

「…いいだろう、私の願いはそこのサーヴァントがさっき話した通りだ。よろしく頼む」

ひとまず同盟関係を受けいれるしかない、と諦めた。それを見て内心安堵の息を突くキャスター……そしてランサー。

(よかったよかった。窮地、とまではいかねえが面倒事は避けられたな)

圧倒的優位にあったはずのランサー。確かに彼はCランクの対魔力に加え傾奇者という高ランクの精神耐性スキルを保持しており、このキャスターは脅威となり得ないが、マスターは別だ。マスター、ひいては令呪を掌握されては自身も危ない。そのため怪しいそぶりを見せたら即座に対応できるよう前に出ていた。
それでも敵の能力を正確に把握するためあえて生徒への使用を見逃したところ、その脅威を正確に認識した。この女はキャスターを冠するに相応しい難敵だと。
そして交渉の中で忍ばせた暗殺者という単語。味方につければ優秀な手札となるが…敵に回せば厄介な毒になるのは明白。もし同盟を蹴っていればどうなったか。周囲のすべての人間、暗殺者の脅威とキャスターの術が敵に回るぞ、と脅してきたのだ。10や20の人は問題ない、生前もそれくらいなら軽く打ち負かしてきた。しかし手の内定かでない二つの要素からマスターを守れるか不安はあった。しのいだとしても万一取り逃がせば洗脳された無数の敵と腕利きのマスターによる暗殺の危機だ、そいつは避けたい。ならば協力関係を結んだ方が当面の利益にはなる。

(まったく巧みなかけひきだ。この戦は痛み分け、ってな)

だが、油断はならない。まだかけひきは続いている。

(求めるものは優れた武人…そこにマスターは必要なく、また俺の人格も不要なんだろ?生き残るのが一組な以上当然だが背中に注意っと)

考えが読まれているのを確かめた以上、下手にマスターに相談もできない。離れずに護衛に着いた方がいいだろう。
それに相手が他に何が出来るのか把握しなければ後手にまわる羽目になる。ひょっとすると自分も操られてしまうかもしれない。

(ふむ…能力の行使に使っていたカラクリ、リモコンってやつか?遠くのものを操る道具だったか?それに制服ってやつを着こなしているし、装身具もなかなかハイカラだ。ナウなヤングって奴か。近現代の英霊と見たぜ)

詳しく絞ることはできないが考察を進める。能力の隙を見出し、この喧嘩に勝つためにも

(さあ、一丁、知恵比べとしゃれ込もうか)


433 : Bとの邂逅/ネジレタユガミ ◆A23CJmo9LE :2014/08/23(土) 12:32:16 4gKpHmBw0

そんなランサーを見つめる少女、犬飼伊助。

(んー見た目はハタチ、頭脳はベテランかー。アリかナシか微妙なとこね❤)

キャスターとのかけひきで見せたあの目付き…あれは東はおろかママでもできはしないだろう。それと張り合って見せるキャスターを少なからず見直したのは事実だが

(やっぱムカつく❤あたしのこと無視して話進めちゃって)

こっちは戦えないキャスター、対して優秀なステータスのランサーが目の前にいる、加えてそれがちょっとだけアリ?と思えなくもない男なら

(「目移りするなっていうのが無理なハナシよね❤」なんて考えてるのもお見通しだゾ☆)

マスターもそれは承知の上なのだろうからわざわざ伝えはしない。
彼女の勝手な行動のせいでランサーの接近を許す羽目になるし、敵マスターは同盟に反対するし、必死の交渉は評価されてはいるようだが賞賛はされてないし、気疲れした。

(そうだ、ちょっとイタズラしちゃおうかしらぁ☆)

朽木ルキアへの軽い精神干渉。これは…そう、警告だ。私の能力に反旗を翻そうとしたらすぐに対応できるんだゾ☆という証明。けっしてやつあたりではない。違うったら違う。

(とりあえず…あの人女好きみたいだし、スカートの中身でもサービス☆)

ただの人間の腕の動きをちょっと操作するくらいならリモコンもいらない。バサッとお披露目してネタバラシ、のつもりだったが

(……あれ?)

手ごたえがおかしく、操作できなかった。思考を読むのは問題なくできたのに……

(ふぅん、ランサーだけじゃなくてあの娘も当たりだったかな?)

もし彼女が精神操作に耐性があるなら同盟を組めたのは正解だったかもしれない。自身の幸運に感謝するとともに敵になるであろう協力者への警戒力を引き上げた。



かくして歪な同盟はなる。謀略の中心は間違いなくキャスター、しかし他の3人もまた己が胸の内に願いと思いを秘め、聖杯戦争に挑んでいく。


434 : Bとの邂逅/ネジレタユガミ ◆A23CJmo9LE :2014/08/23(土) 12:33:07 4gKpHmBw0

【A-3/アッシュフォード学園内、高等部一年B組/1日目 早朝】

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
2.ただし同盟にはあまり乗り気ではない。何かきっかけがあれば解消したい

[備考]
外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。

【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]健康
[装備]超刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1. ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
2.ただし心底信頼はしない。マスターから離れず護衛をし、隙を突くためにも考察と情報収集

[備考]
キャスターを装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
読心の危険があるため、キャスター対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。

[共通備考]
犬飼伊助&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。


【犬飼伊助@悪魔のリドル】
[状態]健康、ただし『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ない
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0.ランサーもイイかも❤
1. ひとまずランサーたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
2.授業はあんまりやる気しない

[備考]
ランサーに対してはほんの興味程度であり、キャスターのことはある程度評価しているのでサーヴァント替えはまだ本気ではありません。

【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]健康、魔力消費(小)
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]ハンドバック(内部にリモコン多数)
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
0.へぇ、効かないんだ
1. ひとまずランサーたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
2.まずは洗脳した生徒を使って索敵
3.一応ランサーたちへの警戒は怠らない

[備考]
高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。あまり一所から集めるとばれる危険が高まるため、他のクラスや学年からも集めるつもりです。
ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。

[共通備考]
車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、伊助が授業に出席するのかも含め、具体的な動きは後続の方にお任せします。


435 : Bとの邂逅/ネジレタユガミ ◆A23CJmo9LE :2014/08/23(土) 12:34:48 4gKpHmBw0
投下完了です。
誤字や他指摘等あればお願いします。

皆さんの作品も楽しみに待ってます。


436 : 名無しさん :2014/08/23(土) 15:50:37 ympQfGuQO
投下乙です!
ガチンコ戦闘ラッシュに続いて来たるは、腹の探り合いと駆け引きか!

能力をきっちり生かした食蜂の作戦の組み立て、それに相対する慶次の読み、話の捌き方にわくわくします。
犬飼組はやらしーわ、色んな意味でw
だからこそ、ただの傾奇者でなく戦乱の世の将でもある慶次の腹の据わり方が頼もしい。
鯖の特徴や背景に対する考察なんかも互いに活用されてるのがいいなー。

地味に各者間の関係にもあれこれ積まれ始めて、今後がさらに楽しみになる話でした。


437 : 名無しさん :2014/08/23(土) 23:54:33 2IpC98.o0
投下来てた!乙です!
慶次かっけええー!!ルキアはまだ呼吸を合わせ切れてないようだけど、カバーはしっかりされてますね
そして食蜂さんと犬飼のコンビも、うまいこと能力を活用して先手を打っていく
場合によっちゃ乗り換えも視野に入れた関係ってのが不穏でいいな

この接触と駆け引きがどう転がっていくのやら……


438 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/24(日) 00:20:29 zm6UE3eU0
あれ、アッシュフォードの場所間違ってる…
なんでA-3だと思ったんだろう……また場所の修正ですが、C-2にさせてください、ほんとすいません


439 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/24(日) 09:39:05 kjx76dZE0
投下お疲れ様です!

みさきちが先手を取って手駒の生成で波乱を呼びそう
同盟を組めたのは良いことですが上手くいくとは限らないなぁw
ルキアが真剣に聖杯を取りに行くか否かで十分境遇が変わりそう
慶次もみさきち達の腹を探っているし一筋縄では終わりそうにないですね。

流子、雁夜おじさん、一方通行で予約します


440 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/24(日) 10:19:57 tq2T6xoY0
投下乙です!
謀略得意のキャスター相手に痛み分けに持ち込めたのは中々の快挙ですね、慶次
ルキアの義骸は浦原さん特性のものですし、そこら辺の事情もあるかもしれませんね
そして伊助様とみさきちの主従は厄介だなぁ・・・
人心制御で令呪の使用されたらヤバいですな

では私も
紅月カレン、セイバー(リンク)予約します


441 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/25(月) 02:51:39 QtsmLwPM0
投下します


442 : だからね、あたしは大丈夫だよ ◆BATn1hMhn2 :2014/08/25(月) 02:53:14 QtsmLwPM0
地図でいうC-7に位置する病院――その屋上で一組の主従が柵にもたれかかり、地上を歩く人々を眺めている。
時刻は午前七時三十分。通勤や通学のために多くの人達が道を行き交っていた。
ぼんやりと地上の人々を眺めるマスター――美樹さやかに、バーサーカーは声をかける。

「さやか。きみは学校に行かなくていいのか?」
「うーん……本当なら行かなくちゃいけないんだろうけど、気分じゃないんだよね。
 ったく、殺し合いをしろって言ってるのに学校にはちゃんと行きなさいだなんて、天戯ってやつもヘンなとこでマジメというかなんというか……」

ぶつくさと文句を言うさやかを見て、バーサーカーは微笑んだ。
美樹さやかという少女は、その小さく細い身体に見合わないほど巨大で苛酷な運命を背負わされている。
少なくともバーサーカーには、そのように見えていた。
だからさやかが歳相応に、学校になんか行きたくないと軽口を叩きだしたのを見て、少し安心したのだ。

(――まだこの子は、摩耗していない。この子の心は、きっとおれが守ってみせる)

かつて守ることが出来なかった『美樹』と再び巡り合ったのは、誰が仕組んだ運命か。
だが、誰が何を考えていようと関係ない。今度こそ『美樹』を守ってみせると、バーサーカーは決意を新たにする。

一方で、さやかはこの聖杯戦争を仕組んだ男の真意を考えていた。
日常生活を送りながら殺し合いをしろという天戯弥勒の真意は一体何なのか。

「ねぇバーサーカー。あなたが知っている聖杯戦争は、こんな風に学生の真似事をしなくちゃいけないようなものだった?」
「いや、違うな。そもそもおれの知識にある聖杯戦争には、異なる地の人間を召喚するような仕掛けはなかったぜ。
 聖杯を求める魔術師は己の意志で冬木に集い、聖杯戦争に臨む……
 マスターであると周囲に気取られぬように魔術師であること、サーヴァントを従えていることを秘匿し、目立たぬ生活を送るのは確かに基本戦術の一つだ。
 だけど遠く離れた地から召喚され、新たに与えられた身分と役柄を演じる必要があるなど聞いたことがないぜ」

バーサーカーの説明のおかげで、さやかの中で違和感は一層強くなる。
既存の聖杯戦争の形式を崩さないために新たに設けられたルールだと言われれば納得するしかないだろう。
しかしこのままでは、ただでさえ信用出来ない天戯弥勒――ひいては聖杯そのものに対しても不審の目を向けざるを得なくなる。

だからさやかは、敢えて学校に行かないという選択肢を選ぶことにしたのだ。
もしさやかの行動に対して天戯弥勒が干渉してくるのならば、与えられた役柄を演じることに意味があるということになる。
だが、さやかの行動を見過ごすようであれば――

「どちらにしろ、天戯弥勒が何を考えてるかはっきりしないとあたしたちも動きようがないかぁ」

天戯弥勒の真意をはかりかねて、さやかは嘆息した。
さやかの目的はあくまでも悪魔になった暁美ほむらに対抗する手段を見つけることなのだ。
聖杯がその手段になるというのなら聖杯を手に入れるのも吝かではないが、如何せん聖杯の存在自体が怪しすぎる。

「……さやか。猿の手という話を知っているか?」

さやかの焦燥を見透かしたかのように、バーサーカーはさやかに語りかける。
猿の手――さやかも聞いたことがある。願いを何でも叶える、猿の手のミイラを巡る話だったはずだ。
猿の手は願いを三つまで叶えてくれる。だが、猿の手が叶えるのはあくまでも持ち主の願いの『結果』だけだった。

金が欲しいと願えば、息子が事故死し代わりに僅かな賠償金を貰い。
息子を生き返らせて欲しいと願えば、死んだはずの息子は怪異――おぞましい何かになり、家の門を叩く。
最後の願いで息子を再び墓に戻し――猿の手の持ち主は、多大な犠牲を払うことで元の日常を取り返した。

「バーサーカーは、天戯弥勒の言う聖杯は猿の手のようなものかもしれない――って言いたいの?」
「その可能性もあるという話だ。さやか、きみにどうしても叶えたい願いがあることはおれも分かっている。
 だけどな、願いを叶えるその過程は、けっして間違えてはならないんだ。歪んだ手段で手に入れた結果は、また歪んでいく――」


443 : だからね、あたしは大丈夫だよ ◆BATn1hMhn2 :2014/08/25(月) 02:53:44 QtsmLwPM0
――知っていた。さやか自身、願いを叶えるために犠牲を払ったことがあるのだから。
そのときさやかが支払った代償は、人間をやめること。
魂をソウルジェムという器に移し替え、やがて魔女になることを約束された魔法少女になることでさやかは己の願いを叶えたのだ。
魔女と魔法少女の真実を知り、苛酷な現実に心身を擦り減らし魔女へと堕ちたこともあった。
身を引き裂くほどの悲嘆と絶望の中で、自分の選択を呪ったこともあった。

マスターであるさやかとリンクしたバーサーカーは、彼女の過去を感じ取り、己と重ね合わせる。
バーサーカーもまた、人間としての生を捨て人類を脅かすデーモンと同じ姿となり戦い続けてきたからだ。
だが、守るべき存在だったはずの人類は、デーモンの恐怖に錯乱し、残虐な暴徒と成り果てた!
暴走した人類は悪魔狩りと称し、同じ人間を拷問し、殺し始めたのだ。
そして『美樹』は――悪魔狩りの犠牲となり、その生命を散らしたのだ。

「――おれは、きみが傷つく姿を見たくないんだ」
「……ありがとう。心配してくれるのは嬉しいよ。だけどねバーサーカー。
 あたしは――もちろん、人間やめちゃったことはショックなんだけど、それでも――魔法少女になったことは、後悔してないんだよ」

魔法少女になってしまったことを思い悩んだときもあった。
だけど今、さやかは魔法少女になってよかったと、そう思っている。

「あたしはさ、誰かを守りたい、救いたいと思って魔法少女になったんだ。それがあたしの根源なんだ」

さやかが得た力で、誰かが救われる。それだけでさやかは、魔法少女になった選択は間違いじゃなかったと思うことが出来る。

「だからね、あたしは大丈夫だよ」

そう言って、さやかは笑ってみせた。
バーサーカーにはその笑顔が、とても尊いものに見えた。

「……そうか。きみは強いんだな、さやか」
「そうだよっ! へへっ、なんたってあたしは、みんなの憧れ魔法少女なんだからね!」

――たとえその身体が既に人間ではなくなっていたとしても。さやか、きみの心は間違いなく人間のそれだ。
誰にも伝えることなく、ただ自分の胸中でバーサーカーは呟く。

「さて、それじゃあそろそろ行きますかー」

んん、と背伸びをして、さやかは屋内へと続く扉に手をかけた。

「学校に行く気になったのかい?」
「ぜーんぜん! でも何もしないわけにはいかないでしょ。だったらとりあえず動こうよ」
「フッ、そうだな」

こうして、美樹さやかとバーサーカーの聖杯戦争は動き出したのだ。


【C-7・病院/一日目・早朝】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.とりあえず動いてみる
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことで、天戯弥勒の出方を見る
[備考]

【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.とりあえず動いてみる
2.マスターを守る
[備考]


444 : ◆BATn1hMhn2 :2014/08/25(月) 02:57:30 QtsmLwPM0
以上で投下終了です

他の方たちの投下もすごくワクワクするものばかりで読み手としてもかなり楽しませてもらってます
派手なバトルに策謀戦と序盤からどんどん話が動いていく予感が!
今後が楽しみです


445 : 名無しさん :2014/08/25(月) 05:48:37 5qqXiZ2QO
おお、さやか組が!投下乙です

なるほど、登校拒否にはそういう意図が……色んな目に遭ってきただけあって、さすがに慎重というか懐疑的というか、やはり単に乗るだけではないか。
デビルマンの顛末を知ってると、明の決意も重い。皮肉すぎる「猿の手」の例えも。
しかし、それぞれの地獄を見ているこの主従だからこそ、簡単には折れないだろうと思わせてくれる強さを感じます。


446 : 名無しさん :2014/08/25(月) 08:17:55 1PRiyirg0
投下乙です!
叛逆出展だけあって慎重なさやかちゃん、なんだか新鮮な感じ
相方も知識豊富なバーサーカーとイレギュラー風味で、今後他キャラとの絡みも楽しみです


447 : 名無しさん :2014/08/25(月) 22:31:44 aiUpPC.60
投下乙ですー
デビルマン組来たかあ
確かに慎重なさやかって新鮮だなw
人間による人間狩りはトラウマ過ぎる……今回は、明の意志は届くのだろうか


448 : 名無しさん :2014/08/26(火) 21:34:08 99.fQ7ZAO
投下乙です

まあ、QBとかいう最悪の前例を身どころか命を以て知ってるし冷静に考えたら疑ってかかるよなあw


449 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/26(火) 21:36:11 kjKGPRYk0
投下お疲れ様です!
叛逆のさやかは普通の少女と違って成長しましたからね!
聖杯戦争に対する見解も全部を信じず疑い、慎重に動く辺り立派に。
次の行動で彼女達はどのように動いていくことになるのか……。
こんな状況でも明るく振る舞うさやかちゃんが素敵でした。

それで、申し訳ないのですが>>439の予約を延長させていただきます。


450 : ◆WRYYYsmO4Y :2014/08/27(水) 02:11:39 2SKOGeU20
延長します


451 : ◆lb.YEGOV.. :2014/08/28(木) 00:18:04 HgHHcDdI0
のっけからで大変申し訳ないのですが、期間中での完成が難しそうですので延長をお願いします。


452 : ◆VUBZx4BclE :2014/08/29(金) 22:30:31 3XsrxO1M0
ごめんなさい、予約を破棄します
長期間キャラ拘束しておいて破棄してしまい申し訳ないです


453 : ◆dM45bKjPN2 :2014/08/30(土) 20:19:09 HWJRxM4E0
申し訳ないですが、延長を申請します


454 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/31(日) 21:30:27 9nsyBnzE0
皆様お疲れ様です。

予約分、投下します。


455 : 気絶するほど悩ましい ◆wd6lXpjSKY :2014/08/31(日) 21:32:18 9nsyBnzE0

 バイクを走らせるには絶好の天気、快晴の中で風を切る。
 マスターである夜科アゲハを学園に送っていた後、セイバーは街を走り始めたのだ。
 建前は土地勘を把握し今後のために情報を集めることだ。
 本音は暇だから取り敢えずバイクで走る……自由気ままなドライブだ。

 聖杯戦争、何時何処で他の参加者に襲われるか分からない現状で単独行動は好ましくない。
 サーヴァントの能力は規格外であり生身の人間では一矢報いることすら難しい。
 幸いセイバーのマスターはPSIと呼ばれる能力を持っているため戦闘能力は存在する。
 だがサーヴァント相手には不利を通り越している、通ったとしても正面からの戦闘は自殺行為に近い。
 何故単独行動をしているのか、実は深い意味や作戦は無いのだ。

『霊体化って透明人間みたいで気持ち悪りぃなおい』
『あたしに言うなよ、魔力消費ってモンを抑えれるし効率はいいらしいぞ?』
『らしいぞ? って何で疑問形なんだよ……まぁいいや。んじゃ学園に行っている間も霊体化で待機だな』
『おう、少し時間潰してから行くわ……霊体化って何か慣れないんだよ』

 戦術的な概念ではなく本人たちの意向による物である。
 互いの意見が合致し採用していることは関係が好ましく良い事だが戦術としては悪い。
 サーヴァントが出歩けばマスターは無防備だ。
 その事を理解した上でセイバーは単独行動をしているが時間は掛けたくない。
 ある程度走らせたためそろそろ学園に戻ろうと車体を入れ替えた。


 セイバーのマスターである夜科アゲハは天戯弥勒と唯一面識のある聖杯戦争参加者だ。
 彼らは他の参加者を把握はしていないがサイレンドリフトは彼だけである。
 元々都市伝説であったサイレンに参加した夜科アゲハは謎の荒廃した世界で彷徨っていた。
 其処には同じ参加者である人間と禁人種と呼ばれる異形の存在が徘徊しているだけ。
 彼らは脱出するために危険な道を歩み、鍵と門になる公衆電話を目指す、これが一連の流れだ。

 その中で夜科アゲハ達は脳に痛みが走る、それが超能力の知らせだった。
 名をPSI、一般的な印象のあるテレパスやサイコキネシスと呼ばれるあの能力に彼らは目覚めた。
 修業を重ね生き残るために能力を極めるアゲハ達。
 戦う力が無ければ生き残れない――そしてサイレン世界を生き抜いていた。


456 : 気絶するほど悩ましい ◆wd6lXpjSKY :2014/08/31(日) 21:34:11 9nsyBnzE0

 彼らがサイレン世界を彷徨う中、その世界が未来の日本である事を偶然知ってしまう。
 そして其処にはWISEと呼ばれる謎の組織の影が存在していた。
 それが天戯弥勒、実験に人生を歪められた、いや最初から歪んで存在を確立された男。
 現代と未来。二つの世界の中で夜科アゲハ達は世界を救うために彼らと交戦を重ねていった。

 
 これがセイバーである纒流子がマスター、夜科アゲハから聞いた出来事の一欠片。
 軽口を叩いてはいるが夜科アゲハの心境は人一倍重い。
 彼は天戯弥勒の元へ辿り着く義務がある、だがそのために他の参加者を殺すことが最善なのか。
 そもそも聖杯戦争にはアゲハのように巻き込まれた参加者だけなのか、自分の意志で参加した者も居るのか。
 本当に殺さなければ、上手くサーヴァントだけを始末してマスターを現代に帰すことは出来ないのか。
 セイバーと話した結果一つの結論が生まれた。

『そんなのやってみなくちゃ分かんねぇ』

 纒流子とてアゲハの気持ちが分からない訳ではない。
 彼の悩みと使命を感じる責任感、生命の狭間で揺れる悩みを分かっている。
 そして夜科アゲハは悪人の命を仕留める事が出来る人間だ、簡単に決断してしまっては危険だった。
 故にセイバーは己の意見でマスターの意思を線路に走らせる事を選ばなかった。
 励まし……ではないだろうがそれが一番近いだろう。
 
『ワケが分かんねぇぐらいがちょうどいい、ってことだよ』

 マスターに聖杯戦争の知識は無いがサーヴァントである纒流子にはある程度存在している。
 ……最も纒流子自身は自分が英霊になったつもりは無かった。
 自由気ままに、父の仇を追い続けた彼女はまさか自分が座に位置する存在になるとは微塵も思っていなかった。
 自分が亡くなった時の記憶も曖昧で、闇に溺れているようだ。
 実際の所、天戯弥勒が主催する聖杯戦争はイレギュラーだ、それは誰もが把握している。
 故にセイバーはワケが分からない、そう表現しているのだ。


457 : 気絶するほど悩ましい ◆wd6lXpjSKY :2014/08/31(日) 21:35:29 9nsyBnzE0

 考えても何も見えて来ない。正確には天戯弥勒に話を聞かない限り正しい解は得られない。
 ならどうするべきか、簡単だ、会いに行ってぶん殴ればいいだけ。
 聖杯戦争を行う中で。構成された現実とは異なるこの空間で日常を過ごしつつ勝ち抜けばいい。
 言葉にするだけなら簡単だ。だが、立ち止まっていても何も始まらないのだ。
 アゲハは学園に通い、流子は街を走り情報を集めている――既に戦争の幕は開いている。

 バイクを学園に向け走らせていると目の前で渋滞が起こっているらしく車が多数密集している。

(めんどくせー……)

 セイバーは脇道に逸れるとそのまま突っ走り強引に進んでいく。
 ジャリジャリとタイヤを擦らせながらビルの間を走ると光が見える。
 挟まれた道から抜けだすとそこは公園だった、前にマスターと訪れたことのある公園だ。
 あの時は気にしていなかったが学園からそう遠くはない所に位置している。
 ……と言ってもバイクで換算した感覚であり、徒歩で想定すると充分遠い距離なのだが。


 公園には平日の影響もあり遊んでいるのはまだ幼稚園や保育園に通う前の幼い子供と親しかいない。
 その中に爆走する訳にもいかないので流子はバイクを押しながら徒歩で進む。
 すると少し遊具や遊び場から外れた気の麓に一人の男が疲れるように身体を預けていた。
 息は切れ切れ、フードを被っているがその隙間から見える顔には血管が一部浮き上がっている。
 とても健康体には見えず今にも死にそうな印象を与えていた。


(……あぁ、んだよもう……)


 満身創痍の男を見ていると昔の自分を重ねてしまう。
 父の仇を取るために焦り鬼◆◆皐◆に敗北を喫したあの時を。
 
 一度勝利したが故に油断し四天王の一人である◆投山◆に敗北を喫したあの日を。

 真の仇である◆◆縫が現れ――考えれば考えるほど浮かんでしまう。


 目の前で死にかけている男がどんな理由で満身創痍になっているかは分からない。
 だが見捨てることも出来ない――しかし彼女はサーヴァントだ。
 聖杯戦争に参加している今不要な接触は逆に危険に巻き込んでしまう可能性もある。

 ポケットに手を突っ込むと小銭がジャラジャラと音を立てる。

「仕方ねぇな……ちょっと待ってろよ」

 男に聞こえない程度の大きさで言葉を呟くと彼女は公衆電話に向かう。
 救急車を呼べば何とかなるだろう、彼女なりの優しさだった。
 バイクを近くに止めると十円玉を入れ、ダイヤルを押し連絡を行った――。





458 : 気絶するほど悩ましい ◆wd6lXpjSKY :2014/08/31(日) 21:39:32 9nsyBnzE0
ライダーの戦闘を終えた間桐雁夜はその場に留まらず移動をしていた。
 戦闘の余波で間桐邸の前方にあった家屋は崩壊してしまった、その場に居れば間違いなく疑いを掛けられる。
 無論この場合は雁夜のサーヴァントであるバーサーカーに原因があるため警察に見つかっては好ましくない。
 唯でさえ彼の知っている聖杯戦争とは異なり、狂戦士という魔力が枯渇するサーヴァントを従えているのだ。
 無駄な争いや力を消耗する事は避けたい、故に麻痺している身体に鞭を打ち込み移動をしていた。

 戦闘の相手であったサーヴァントは身体を伸ばし打撃戦を主体にしていた。
 バーサーカーの能力であり宝具であり存在意義である反射では相性が悪かった。
 単純に打撃戦ならばバーサーカーが圧倒的な優位に立てる、だがあのサーヴァントは違った。
 あらゆる打撃を無効にしていた、無効までは辿り着いていないかもしれないがそれでも損傷を与えてる感じはしていない。
 このままでは無駄に魔力を消費するだけだ、故に撤退を選択する。

 しかしバーサーカーの戦闘で彼の想像よりも魔力を消費してしまったらしい。
 身体に痛みが走り中に巣食う蟲共が騒ぎ出し彼の身体を永久に蝕んでいく。
 元々冬木の聖杯戦争で死の淵に位置していた彼だ、その身体に未来など残っている筈もない。
 公園に辿り着くも身体を休めるために彼は到着後直ぐに腰を下ろした。

 距離に換算すればそれ程歩いてはいないが彼にとっては多大な運動だったらしい。
 そのため息は続かず、声を出そうにも胸が苦しく、出来るなら動きたくない、と言うのが理想な状態だった。

 眠れるなら眠りたいが此処で目を閉じれば確実に危険だ。
 この聖杯戦争は彼の知っている聖杯戦争ではない、天戯弥勒が起こしたイレギュラーだ。
 何処に何が潜んでいるかも分からないため、心を無防備にすることは死を意味している。

「これでも飲んでゆっくりしとけ……してください。
 余計かもしれないけど救急車を呼んだんで直に迎えが来ると思うんで」

 顔を上げフードの隙間から覗きこむと声の持ち主が立っていた。
 年齢は女子高生程度、革ジャンを着ている、この時間帯ならば学校に通わない生徒、もしくは大学生と言ったところか。 
 そのNPCは何と救急車を手配し自分にお茶を自販機で買ってくれたらしいのだ。
 AI……と呼べばいいのか、天戯弥勒の力は彼が知る魔術とは違うかもしれない、そんな予感がしていた。


459 : 気絶するほど悩ましい ◆wd6lXpjSKY :2014/08/31(日) 21:41:25 9nsyBnzE0

 差し出された飲み物を受け取ると雁夜は口を動かす。
 身体は苦しいが助けを貰い礼の一つも言わないのは礼儀に反する。
 人の道を外れた彼にも礼儀の作法が、人を形成する人間性は残っている。

「ありがとう……だけど俺は大丈夫だから、救急車はいいよ。
 ……でも、その心は素直に受け取るから、ありがとう――ッ!?」

「どういたしまして、それじゃあたしはこれで……近頃は物騒だからアンタも気をつけてなっと!」

 お茶を受け取られるのを確認すると女性はバイクに跨りこの場を去った。
 しかし男にはまだ用があった、いや、用が生まれてしまった。
 声を叫ぼうにも疲れきっており叫べない。
 あの女性は――。

「サーヴァント……ッ」

 疲労の影響か、気づいていなかったが間違いなくあの女性はサーヴァントだ。
 魔力の反応が通行人の比ではなく、その体感は冬木の聖杯戦争並だった。

 しかし現状の彼では再びバーサーカーが戦闘を起こすと非情に身体が危険になってしまう。
 死んでしまえば願いも何もかもその場で砕け散ってしまう、この判断は正解だったかもしれない。
 無論、判断ではなく流れで現状を招いたのだが。

(戦闘が始まれば俺の身体が保たない……今は休める事を考えるべきか)

 間桐雁夜は己の魔力と身体を回復、休める方針を選択する。
 バーサーカーの関係上聖杯戦争が長引けば長引く程彼は不利になってしまう。
 だが戦える時に戦えなくては意味が無いのだ。

 彼が休める場所――それは間桐邸だ。
 今は警察が屯しているため、彼らの目を掻い潜る必要がある。
 見つかっても問題は無いのだが、彼の容姿だけで職質を喰らう可能性もある。

 此処は穏便に戻るべきだ――聖杯戦争はまだ始まったばかり。



【D-4・公園/南西・一日目・早朝】

【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]お茶(ペットボトル)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.見敵必殺。見つけたサーヴァントから攻撃。
2.ライダー(ルフィ)相手は不利、他のヤツに倒されるまで待つ。
3.間桐邸に向かい休息を取る
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。



【Cー3・一日目・早朝】


【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]バイク@現地調達(盗品)
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.学園に向かう。
2.霊体化しアゲハの傍に居る。
[備考]
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。


460 : ◆wd6lXpjSKY :2014/08/31(日) 21:42:43 9nsyBnzE0
投下終了です。


461 : ◆A23CJmo9LE :2014/08/31(日) 23:02:30 qCtLN3zw0
投下乙です
英霊になっても自分のペースを失わない流子ちゃん、いいですね!
その親切心が知らないうちに敵との接点になっていますが、これが吉と出るか凶と出るか…
おじさんは序盤から死にそうでマジおじさん

美樹さやか&不動明予約します


462 : 名無しさん :2014/08/31(日) 23:26:13 dA/lRm0c0
投下乙です!
おじさんはなかなか慎重に鯖運用してますな、体考えれば当たり前だけど
りゅーこちゃんとアゲハの彼ららしい方針は、どう作用していくか。
とりあえずおじさんの目には危険な敵としか映ってないか
今後がますます気になってきますね


463 : 名無しさん :2014/09/01(月) 22:03:32 LWO7HMT20
おお、投下来てた。乙です
アゲハ組はあくまで、主従以前に個々の関係を貫くのね
流子ちゃんはいい子だなあ。自然に義理人情と言うか
そしてぶち当たったのがまどか組とぶつかって絶賛蠢動中のおじさんという……w
おじさんは慎重に行くつもりみたいだけど、ひとまずでも平穏に済むのやら


464 : ◆WRYYYsmO4Y :2014/09/03(水) 02:43:22 eeq4hxlg0
少々遅れてしまいましたが投下します


465 : 開幕ベル ◆WRYYYsmO4Y :2014/09/03(水) 02:46:44 eeq4hxlg0



『……これはこれは。また御会いしましたね』


『こうして皆様の前で再びサーカスを演じられる……このピエロも感無量で御座います』


『それでは皆様お待ちかね、「地獄の機械」に繰られた男女の物語の開幕と致しましょう』


『今回もそう身構えなくて結構、この演目にはまだ一片の恐怖もありませんので』


『では皆様お静かに、開演の時間で御座います……』



□ ■ □


 「自動人形」。
 己の意思を持ち、己の意思のまま行動する生きた人形達。
 人間の言語を話し、しかし人間を蔑む殺人兵器の集い。
 世界最悪の奇病をばら撒きながら世界を練り歩く、死の道化師共。

 ほむらにとって、自動人形とは魔女と大差ない存在だった。 
 人間に死を齎すという点では、二つの存在は何ら変わりない。
 姿形は違えど、どちらも淘汰されるべき脅威以外の何物でもないのだ。

 ほむらのサーヴァントは、そんな"驚異"の生みの親とも呼べる存在であった。
 自動人形の創物主にして、彼等の最上位に君臨する男。
 "魔術師(キャスター)"のクラスで召喚された彼の真名は、フェイスレスと言う。

 そんな"創物主"がまず行ったのが、工房の確保であった。
 キャスター曰く、工房の製作は最重要事項なのだという。
 ほむらは聖杯戦争の大まかな決まりは知っていても、クラス毎の必勝法などてんで分からない。
 彼女はしばしの間、不本意ではあるがキャスターの主導で動かざるを得なかった。

 そうして選ばれたのが、つい最近閉鎖された遊園地である。
 あえて民衆の目が集まりやすい地を選ぶという判断に、ほむらは首を傾げたものだ。
 しかし、キャスターの意に反論が出来る程、彼女は聖杯戦争に詳しくは無い。
 不満ばかりが募るものの、ほむらは自らの傀儡に従う他ないのであった。

 さて、現在の遊園地では、自動人形達が悠々と闊歩している。
 キャスターの話していた"工房"とは、恐らく彼等を製造する為の施設を指していたのだろう。
 市民の寝静まっている間に、遊園地は殺人機械の工場と化したのだ。


466 : 開幕ベル ◆WRYYYsmO4Y :2014/09/03(水) 02:50:21 eeq4hxlg0

 当然ながら、ほむらの周辺でも自動人形がごった返している。
 彼女が座るベンチの先にあるメリーゴーランドを囲む様に、道化人形達が群れをなしていた。
 キャスターの造り上げた異形の群集を前に、ほむらは僅かに顔を顰める。

「どーしたんだいマスター、またひっどい顔してさ」

 ほむらに声をかけるのは、実体化したキャスターである。
 初めて出会った時と変わらない、間の抜けた調子の声。
 無意識の内に、彼女がキャスターへ向けた瞳が鋭くなった。

 ほむらのキャスターに対する評価は、最悪と断言していい。
 彼女にとっては、彼のふざけた様な態度が不愉快で堪らないのである。
 こちらは本気で聖杯を獲るつもりなのに、どうして彼はこの調子なのか。

 確かに、自動人形を大量生産する能力は間違いなく強力だ。
 手数を増やせるという点では、キャスターは優秀なサーヴァントと言っても過言ではない。
 だが、それを考慮に入れたとしても、この男への不快感は無視できなかった。

「もしかして悩み事かい?僕で良ければ聞いてあげるけど」
「どうして貴方に教える必要があるのかしら」

 辛辣な反応を示されたキャスターは、「怖いなァ」と笑ってみせた。
 その様子に、マスターを恐れる感情など何処にも見当たりはしない。

「それより貴方、どうしてこんな目立つ場所を領地にしたのか、教えてほしいのだけど」
「自分は言わない癖に僕には言えって?ハハッ、随分と傲慢だなァ君」

 皮肉を吐くキャスターに見えるように、ほむらは手の令呪をちらつかせた。
 聖杯戦争の参加者の証であり、三度のみ使用可能な絶対命令権――それが令呪。
 これを用いれば、ほむらであってもキャスターを従える事ができる。
 情報を吐かせるのは勿論、自害を強制させる事さえ可能となるのである。

「なんだい、もう令呪を使うのかい?止めた方がいいと思うけどさ」
「随分と余裕なのね。これで貴方を自害させる事だってできるのよ」
「へえ、ならやってみなよ。僕の代わりが都合よく見つかればいいけどね」

 悔しいが、キャスターの言う通りだ。
 この場で自害を命じた場合、六時間以内に新たなサーヴァントと契約しなければならない。
 もしそれが達成できなければ、待ち受けるのは敗退という結果だけ。
 確実な優勝を狙うほむらは、そんな大博打を打つ程無謀ではない。

 口を噤み、拳を強く握りしめる。
 ほむらのやり場のない苛立ちと怒りが、露骨なまでに出てしまっていた。
 そんな彼女の様子を見たキャスターは、まるで宥めるような調子で、


467 : 開幕ベル ◆WRYYYsmO4Y :2014/09/03(水) 02:52:16 eeq4hxlg0

「そんなに怒んないでよ。仲良くしてこうって最初に言ったばかりじゃないか」
「……貴方と馴れ合うつもりはない。それだけは言っておくわ」

 そうとだけ言い残すと、ほむらは踵を返してキャスターの元から離れていく。
 今の彼女の苛立ちの具合は、背中からでも察せられた。

「そーいえばさ、学校には行かなくていいのかい?」
「必要ないわ」

 与えられた役割をこなす必要性を感じないが故の判断だ。
 ほむらは学校にも、ましてや家に帰るつもりすらない。
 寝床についても、当分は野宿で構わないとさえ考えていた。

「ふーん、まっ、好きにしなよ。必要なら呼んで構わないからさ」

 背中から聞こえてくる声になど目も暮れずに、ほむらは独り歩いていく。
 当てがある訳でも、かといって目的地がある訳でもない。
 ただ単に、この老いたサーヴァントから一刻も早く離れたかっただけだ。

 あの男はあくまで利害の一致で組んでいるだけに過ぎない。
 快を分かつ事が致命的になるだけであって、可能であればすぐにでも縁を切るつもりだ。
 そうでなければ、あんなふざけた男と共闘などするものか。

("私が"勝ってまどかを救う……あんな男に聖杯を渡すなんて、冗談じゃない)

 令呪という武器がある以上、マスターであるほむらの優位に変わりは無い。
 どんな態度をとろうが、サーヴァントとは所詮"奴隷"でしかないのである。
 最大限利用し尽くして、最後はボロ雑巾の様に使い捨てても構わない――奴等はそういう存在なのだ。

 最終的に、最愛の人だけを救えればそれでいい。
 過程がどうであれ、結果さえ良ければ何も問題はないのだ。
 "自分だけ"が聖杯を手に入れる――その為ならば、どんな汚い手段でも取ろうではないか。

「貴方の為なら、私は何だって……ッ」

 ――独りごちるほむらの表情は、酷く険しいものとなっていた。


□ ■ □


468 : 開幕ベル ◆WRYYYsmO4Y :2014/09/03(水) 02:53:58 eeq4hxlg0


 遊園地の中枢とも言える遊園地事務所。
 そこがキャスターの住処であり、同時に指令塔である。
 ほむらと別れた後、彼はこの施設の最上階に位置する会議室で今後の方針を練っていた。

「マスターの奴、あんなにキレなくてもいいのにさ」

 遊園地を領地としたのには、勿論理由がある。
 キャスターは遊園地という土地の知名度に着目したのだ。
 既に閉鎖されたとはいえ、冬木では唯一の大型施設の集いなのだ。この地を知らぬ者は恐らくいないだろう。
 そんな場所でちょっとした噂を流してしまえば、すぐさま他の参加者が嗅ぎ付ける筈だ。
 そうして聖杯戦争の参加者をおびき寄せ、自動人形達の餌食にする……それがキャスターの戦術である。

 本来であれば、別にマスターに教えても構わない情報である。
 あえてほむらの問いをはぐらかしたのは、単なるおふざけでしかない。
 が、それが原因で彼女の機嫌を損ねてしまったのだが。

「嫌になっちゃうよなァホント、下手こかなきゃいいけど」

 キャスターは顎を元に戻した後、部屋の壁に目を向ける。
 会議室の壁一面には、大量のモニターが取り付けられていた。
 一つ残らず機能しているそれらには、冬木の街の様がを映し出されている。
 その中には、独り行動するほむらの姿も表示されていた。

 アポリオン――ゾナハ病の元凶にして、同時に監視装置となる超小型自動人形。
 キャスターは既に、冬木の各地にこの自動人形をばら撒いていたのだ。
 モニターに映されているのは、いわばアポリオン達の視界なのである。

「"お前"にはまだ死なれちゃ困るんだからさ」

 ほむらがそうである様に、キャスターもまたほむらを利用している。
 彼にとっては、自分と愛しの人以外は所詮舞台の脇役に過ぎないのだ。
 如何に使い捨てようが構わない、いくらでも替えの利く道化役。
 マスターであるほむらもまた、そんな道化師の一人でしかない。

「……んー、妙な奴らがいるね。こんな時間に男女でお話かい」

 モニターの一つを凝視しながら、キャスターはそう呟く。
 アポリオンが捉えたのは、病院の屋上で会話を交わす一組の男女。
 こんな時間に学校にも行かず、男と話をしている少女というのは中々に怪しい。
 杞憂である可能性も大いにあり得るが、かといって無視できる程でもなかった。

「どーしよっかっなー。ちょっと悩んじゃうなァ」

 ――その言葉とは裏腹に、キャスターの表情は不気味な笑みを見せていた。

【B-6/早朝】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(中)、苛立ち
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
 1.単独行動。
 2.キャスターに対する強い不快感。

【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]健康
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
 1.アイツら(さやか達)はどうしようかね。
 2.遊園地を拠点とした自動人形の製造を進める。
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 また、アポリオンの一体が病院にいるさやか達の姿を捉えています。


469 : 開幕ベル ◆WRYYYsmO4Y :2014/09/03(水) 02:54:25 eeq4hxlg0
□ ■ □


『……これはほんの序章、彼等の物語の始まりに過ぎません』


『これより二人は他者と出会い、嗤い、利用していく事となるでしょう』


『その時こそがこの演目の醍醐味……運命の歯車が回り始める瞬間なので御座います』


『その大舞台に立ち会える事を祈って、本日はお開きと致しましょう』


『それでは、一時閉幕となります……』


470 : ◆WRYYYsmO4Y :2014/09/03(水) 02:54:45 eeq4hxlg0
投下終了となります


471 : 名無しさん :2014/09/03(水) 07:23:10 9uU7SoWE0
投下乙です、ほむらフェイスレス組きたあ!
やっぱり関係最悪だよこの主従w信頼しあってたりなんだかんだ連携は取ってたりする組が多かったからなおさら際立つ……
ただ、二人とも手練だし、この最悪の距離も織り込んで戦っていくだろうなあ。
司令の不敵な画策っぷりはキャスターらしいと同時にどこまでも彼らしい。やっぱアポリオン飛ばしますよねー。
ほむほむは生まれつつある新生真夜中

『地獄の機械』がどう動いていくか、


472 : 名無しさん :2014/09/03(水) 07:27:49 9uU7SoWE0
すみません、途中送信してしまった……
ほむほむは生まれつつある新生真夜中のサーカスで、どれだけ司令の舞台に食い込めるかが味噌ですね。

『地獄の機械』がどう動いていくか、観客の一人としておののきつつ楽しみにさせて頂きます。


473 : 名無しさん :2014/09/03(水) 07:46:56 Ou7GJJf20
投下乙です
どちらも腹に一物どころじゃないあれやこれやが渦巻いてる二人が来ましたね
人形蠢く遊園地とはいい絵面、戦術的理由もあるし、フェイスレスらしい
単純な数押しだけじゃなく、種々雑多で豊富な種類を持って対応できるのがオートマタ軍団の怖さですな
ゾナハ蟲できっちり情報集めながらモニタを見つめる姿はさすが原作で「黒幕」として大立ち回りをこなした役者だけはある
子供じみた稚気に老獪さを併せ持ってるのが厄介極まりないんだよなこの人
ほむらはこのサーヴァントをどう捌いて行くのか、むしろある程度憎み合ったままシビアに動いた方が上手くいくか?
この演目からは目が離せません


474 : ◆lb.YEGOV.. :2014/09/03(水) 23:32:00 14FDyuRI0
遅れて申し訳ありません。これより投下します。
また、アーチャー(モリガン)も予約していたのですが、話の展開に盛り込めなかったので、
まどか・ライダー(ルフィ)・タダノで投下をさせていただきます。
長期間キャラを拘束した挙げ句にこの体たらくで大変申し訳ないです。


475 : 『僕と協力して同盟相手になって欲しいんだ』 ◆lb.YEGOV.. :2014/09/03(水) 23:36:06 14FDyuRI0
朝。
本来ならば穏やかな1日を告げるはずのこの時間は、家が倒壊する轟音によって始まりを迎えた。
なんだなんだと野次馬が轟音のした方角、間桐邸へと目を、あるいは足を向ける中、遠ざかる影が1つあった。

(どうしよう……)

不意のサーヴァントの襲撃とそれによる住宅の崩壊は、人々の視線と興味を集めるのに充分すぎる。
あまつさえ、別のマスターがこの騒ぎを察知したのであれば、なんらかの戦闘が起こったものとして調査に出ることもありえる。
騒動の当事者の一人である鹿目まどかは、早々にライダーを霊体化させて現場からの逃亡を決定した。
人影が少なくなってきたところで、まどかはようやく安堵のため息をつくと共にこれからの行動を考える。
つまるところ、学校へ行くか行かないかだ。
学校にいるかも知れない別のマスターとの遭遇、それが当初彼女が学校へ向かう事への懸念材料だった。
だが、今は新たな懸念材料が出来た。
それは、先ほど遭遇戦を繰り広げたバーサーカーが学校へ襲撃を仕掛ける可能性だ。
バーサーカーのマスターに自分の姿が見られたか確証はない。
だが、もし自身の姿が、アッシュフォード学園の制服を着ている姿が見られていたのであれば。
白昼堂々攻撃を仕掛けてきたバーサーカーのマスターが、学園への襲撃を躊躇う理由があるだろうか。
NPCとはいえ、無関係な大多数の人間へ被害が及ぶ可能性が、まどかの足を鈍らせる。
自身へ疑惑の目が向けられる可能性と、他者を巻き込む罪悪感が秤にかけられ揺れ続ける
だからこそ、彼女は曲がり角からやってきた自転車に気付くのが一瞬遅れてしまった。

「「危ねえ(ない)っ!」」

2つの声が響くと同時にまどかは強い力で後ろに引き寄せられた。
そのすぐ横で自転車のけたたましいブレーキ音が響く。

耳をつんざく音と急に背後から引っ張られ、おもわず目をつぶってしまったまどかが、うっすらと目を開く。
彼女の視界に映ったのは、青い制服に身を包んだ男性、警察官だった。


476 : 『僕と協力して同盟相手になって欲しいんだ』 ◆lb.YEGOV.. :2014/09/03(水) 23:36:44 14FDyuRI0
「おい、よそ見すんなよ、あぶねえな」

後ろからライダーの声が響く。
肩に置かれた手の感触から、ライダーが自身を助けてくれたのだと理解する。

「そこの彼の言う通りだな、曲がり角では注意しないと」
「あ、ご、ごめんなさい! ちょっと考え事をしてて……」

警察官に注意され、慌ててまどかは頭を下げる。
パトロールの最中だったのだろうか、警察官は乗っていた自転車から降り、しげしげと二人を見つめる。
どこか、値踏みするような油断のない視線にまどかは言い知れない不安を感じた。

「あの、私達に何か?」
「ん、ああ、すまない。実はこの先で家屋の倒壊騒ぎがあってね、そちらに向かっている最中だったんだが……」

家屋の倒壊騒ぎと聞いて、巻き込まれたとはいえ当事者であるまどかの心臓が跳ね上がる。
知らぬ存ぜぬで通すべきかと頭を回転させるまどかだが、ふと、警察官が自身ではなく、彼女の背後へと視線を向けている事に気付く。
そこで、彼女は気付く。
警察官の自転車と衝突しなくてすんだのは、ライダーが後ろから引っ張ってくれたからだ。
自分を引っ張ったということは、実体化して触れていなければならない。
つまり、家屋に吹き飛ばされた微かな擦り傷や汚れた服をそのままに、実体化したライダーは警察官にその姿を見られているという訳である。
サッとまどかの顔から血の気が引いていく。怪しまれる事は明白だ。

「後ろの君は見たところ少し怪我をしているようだが……」
「おう、そこの家で白髪が急に襲ってきたんだ。負けてはねーけどな」
「ふぇ!?」

どう言い繕うべきかを考えていたまどかをよそに、ライダーがあっけらかんと『そこで一戦やらかしてきた』と警察官に告げた。
ビキッ、という音が聞こえそうな程にまどかの顔面がひきつり、硬直する。
あまりにも予想外すぎる事態に思考が完全に停止した。

「すすすす、すいません!この人冗談ばっかり言う人なので……」
「俺は冗談なんか言ってねーぞ、今度こそあの白髪をぶっ飛ばすってお前にも言ったじゃねーか」
(ふあぁぁぁぁぁぁ!?)

まどかの必死のフォローも、ライダーの言動が悉く封殺する。
心の中で絶叫をあげるまどかに、次の手を考える精神的な余裕はなくなっていた。

「……それが本当ならば、君達には詳しく事情を聞かなければならないな」
「ん? そりゃ駄目だ。こいつ今から学校とかいうところに行かなきゃならねーらしいから」

警戒心を露にする警察官の態度もどこふく風といった調子でライダーが警察官と話し始める。
ここでライダーを止めても怪しまれる。
かといって逃げれば警察と言う大組織に怪しまれる。
一瞬の内に状況はまどかの処理能力では対処しきれないレベルに跳ね上がってしまった。
血の気が引いて真っ青になったまどかを警察官は一瞥し、溜め息をついた。


477 : 『僕と協力して同盟相手になって欲しいんだ』 ◆lb.YEGOV.. :2014/09/03(水) 23:39:13 14FDyuRI0
【C-4 朝】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康、腹八分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:叶えたい願いはあるが人を殺したくないし死にたくもない。
1.聖杯戦争への恐怖。
2.学校へ行く・・・?
3.警察官の提案に対して……
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。
表に学校名、クラス裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※登校するかは思案中です。
しかし今は少し登校する側に傾いています。

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康、腹二分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
2.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
3.目の前のマスターに対してはまどかの指示に従う
4.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。

【タダノ ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
1.白髪のサーヴァント(一方通行)を早期に対処したい。
2.目の前の少女(まどか)に協力を持ちかける。
3.協力が断られたら、職務として間桐邸に向かう。職務終了後に他の同盟相手を探す

[備考]
※ 警察官の役割が割り振られています


478 : 『僕と協力して同盟相手になって欲しいんだ』 ◆lb.YEGOV.. :2014/09/03(水) 23:42:44 14FDyuRI0
※すみません、状態表の前にこれが入ります

「随分と破天荒なサーヴァントを持って君も大変なようだな」

警察官から発せられた言葉にまどかは先程までとは別の理由で硬直する事になった。
サーヴァント。
NPCであれば決して口にする筈のない単語。
その単語を口にし、あまつさえライダーをサーヴァントだと認識しているのであれば、導きだされる結論は1つ。

「なんだ、お前マスターなのか」
「ああ、生憎と君が倒そうとしている白髪のサーヴァントとやらのマスターではないけどね」

ライダーの問いに、事も無げに答えた警察官。
いや、アーチャーのマスターであるタダノ・ヒトナリは、視線をライダーから、緊張した表情を浮かべているまどかへと向けた。

「君達を襲った白髪のサーヴァントについて話を聞きたい。了承してくれるのであれば、学校側には事故に巻き込まれてやむを得ず欠席したという旨で便宜をとりはかろう。学校で今のような状況に陥るリスクは取り除けるだろうし、悪い提案ではないと思うけど、どうかな?」

一言一言、落ち着かせるようにタダノは目線を合わせてまどかへと語りかける。
結論を急がず、恫喝する事もなく、ただ彼女が落ち着くのを待つように、じっと二つの瞳がまどかを見つめる。

「理由は……」
「ん?」
「理由はなんですか? なんで敵の私にそんな風に尋ねるんですか」

キッと、まどかの瞳がタダノを見返す。
逃げた所で状況が好転する訳でもない。まどかは覚悟を決めていた。

「君を襲ったサーヴァントを僕はできるだけ優先的に排除したい。だからそのサーヴァントの力を知っている君と手を組みたい」

単純でわかりやすいだろう?と、タダノは続ける。

「白昼堂々、周りの被害を気にせずに戦闘を仕掛けるなんてのは、暴れたいだけの危険人物か、既に後のない人間のどちらかだ。そして、そういう人間は何をしでかすかわからない。だから今の内に倒せる準備はしておきたいのさ」
「おい、さっきも言ったけど、白髪は俺が倒すんだぞ」
「もちろん、そちらのサーヴァントの意見は尊重しよう。君が決着を望むというなら、情報収集に横やりの防止、幸いにも僕のサーヴァントはその辺りは万能に動けるからね」

沈黙。
タダノの提案理由自体はまどか自身も理解できるものではあった。
だが、信用をできるかと言えば話は変わる。

「僕は強制も強要もしない。君が断るというのであれば、まあ仕方は無い。『白昼堂々暴れる白髪の危険なサーヴァントがいる』という情報だけでもそれなりのアドバンテージにはなる。別の同盟相手を探すさ」

一通り話を終えた上で、改めてタダノはまどかを見据える。
その視線は言外にまどかに対して「さあ、どうする?」と語っていた。
乗るか、蹴るか。
与えられた選択に対してまどかは――


479 : ◆lb.YEGOV.. :2014/09/03(水) 23:46:46 14FDyuRI0
以上で投下終了します。
長期拘束に加え誤爆で他所様にまでご迷惑をおかけしてしまい本当に申し訳ないです…

>>470
投下乙です。
なんというギスギス主従。
ここに絡む可能性があるのがよりにもよってさやかちゃんというのがまた……。
フェイスレスの次の一手が気になります。


480 : 名無しさん :2014/09/04(木) 00:05:43 sJubSBMw0
おお、こちらも来てた、投下乙です!
ルフィおまえwwいや、隠しごとしたりは確かにらしくないけどさw
これはある意味、まどかがまだマスターとして割りきりきれてないってとこにも起因するのかもだけど。
真剣に方針や方策を伝えれば、従わないまでも耳を傾けてくれる度量はあるはずだし。
しかし相手がタダノでひとまずは良かった……と言えるかな

モリガンはしけこんだまんまかw


481 : 名無しさん :2014/09/04(木) 00:28:39 GvyfUCFg0
ほむらとフェイスレスのギスギス感たまらないなぁ
工房をしっかり構えて搦め手も駆使して、キャスターらしいキャスターをやってくれそうだ
早速目をつけられたさやかちゃんはどうなるのか

一方でまどかとタダノは友好的に接触か
ルフィひでぇwwwwwこれこそフェイスレスみたいなやつが相手だったら酷いことになってたぞwww
怯えてばかりだったまどかだけどタダノのような保護者にもなってくれそうな協力者がいることで少しは落ち着くかな……?


482 : ◆A23CJmo9LE :2014/09/06(土) 01:52:50 OZyc/mLs0
投下します


483 : 日常に潜む妖怪 ◆A23CJmo9LE :2014/09/06(土) 01:55:05 OZyc/mLs0
『それでさやか、動くといっても当てはあるのか?』

目的地も何も言わず歩き出した少女にエレベーター内で問いかける。

『んー、どこに行っていいのか全然分からないし、とりあえず散策して地理を把握しといたほうがいいかな。一通り街を回ってみようよ』

向こう見ずというか前向きと言うか、朗らかに答える少女に微笑ましいような呆れたような笑みを内心浮かべる。

『それならまあ病院を把握できたのは悪くないか。NPCというからどんなものかと思えば設備や人員はまともそうだ。俺達が世話になる心配はあまりなさそうだが、宝具による病などがあるかもしれん。知っておいて損はない』

二人とも再生能力を持ち、さやかは他者の治癒も可能とはいえ、何が起こるかわからないのが聖杯戦争。そう考え戦略的な思考を進めるバーサーカーだが…

『ああ、うん…そうだね。そういう意味もあるかもね』

自身には思いつかなかった発想にさすがは英霊、と感心する。しかし彼女とて何も考えずにここに来たわけではない。
思い出すのは二人の姿……かつて恋焦がれた幼馴染と、今もなお尊敬する魔法少女の先輩。
彼を助けるため、彼女を遺志を継ぐために自分は魔法少女になった。病院のベッドに横たわる者、病院を守るために命を散らしたもの。
美樹さやかにとって病院はあらゆる意味で戦いの原点であり、戦争のスタート地点にこれ以上の地はない。
だからこそ覚悟を決めるためにも彼女はここから聖杯戦争を始めようとしたのだ。

『よし、それじゃあ改めて出発!』

内心の決意を新たにしながらも態度は変わらず。これも一種の才能だろうか。
患者でも見舞いでもない少女を訝しげに見る目は少なくないが気にせずロビーを出る。
そして病院近くのバス停に向かい、扉の閉まりかかるバスに霊体化したサーヴァントと共に慌てて乗り込む。
サーヴァントは無賃乗車になるが、さすがにそこまで目くじらを立てるほどではないだろう。

『ギリギリ間に合った…がどこで降りる?周遊バスではないようだが』
『所持金とかも忠実に再現されててね…女子中学生にあまり余裕はないから遠くまでは無理。幸い通学定期でバス使ってることになってるから圏内でどっか適当に降りよう。ぶらり旅ってやつ?』

お嬢様ならよかったんだけどねー、などとぼやくさやか。幸運にも自分たち以外乗客のいないバス内で席に着く。
霊体化して座る必要のないバーサーカーは前方の電光掲示を眺めると

『このバス、学校とは逆方向に向かっているが、その定期はそんなに範囲の広いものなのか?』
『えっ嘘?うわ、ホントだ。あっちゃー使い慣れてないから間違えちゃったか』

定期券をもってこまめに利用しているのはあくまで設定上のことであって、実際の彼女はほとんど利用したことがない。おまけに駆け込み乗車なんてするから、ホテルなどのある中心街からは離れていく。
道理でラッシュアワーなのに空いてると思ったよ、などと現状にも納得する。

『一つか二つで降りれば財布へのダメージは減らせるが…強行突破しても俺は構わんぞ?なにせ今は戦時中だ』
『何言ってんの!?駄目に決まってんじゃん!』

理知的に振る舞う己がサーヴァントから予想外に荒っぽいセリフが出てきて驚く。
それでも財布の寂しい身としてはその発言に惹かれるところもあって…いや正義の魔法少女がそんな真似をするわけにはいかないと自制する。

『もう、次の停留所で代金払って降りる!で、その辺散策!とりあえず公衆電話とか参加者とか探すよ!』
『わかったわかった。そうかりかりするな』

雑な対応…だがマスターの方針を軽んじるわけではないようだ。

『はぁ〜、属性善なんじゃないの?真っ当な英霊がバス代けちって犯罪行為とか勘弁してよ…』
『さて、生憎と元は不良学生でね。信心深い性質でもない。そもそも属性善と言うのは一般的な善性に限らない。俺は自分なりの正義を貫きはしたがそれが他人に、ましてや神だの聖杯だのにどう思われたかは分からん。
属性混沌というのは社会的な規範に囚われないということ。つまり俺の属性、混沌・善というのは世間一般とは重きを置く大切なものが違う者、というわけだ。
……だからさやか。今回は俺が折れるが、戦闘中や食事、宿など生き死にに関わることであれば、俺は君の倫理観やルールよりも君の命を優先するぞ』

ルールよりも重んじるものがある。他を犠牲にしても君を守る。
それはなかなかに魅力的な文句でらしくもなく照れが入ったりもしたが

「次は、終点――」

アナウンスが聞こえ、その不自然さに冷静さを取り戻す。

『なんだ、もう終点か。まだ街の真ん中のようだが』
『……気になるね』


484 : 日常に潜む妖怪 ◆A23CJmo9LE :2014/09/06(土) 01:56:05 OZyc/mLs0

よほどの田舎で停留所が離れているのかも…とも考えるが背後には大きなビル群が見える。それなりに大きなこの街でバスが先に進まないというのは些かニーズにあってない。
一つ分の代金で終点まで来たのは幸運だが、まだ随分と進めそうだ。

『行こうか。バーサーカー』
『ああ』

まっすぐ東へ歩み出す。少し歩いても変化は特に無いようだが、なおのことバスが進まないのが気にかかる。すると

「止まれ、さやか」

突然呼び止めるサーヴァント。実体化までして警戒し、後ろを振り返る。

「何かあったの、バーサーカー?」
「…正面に大きなビル群が見えるな?あれは先ほどまで背後にあったはずの風景だ」

そう言われ目を凝らすと確かにそのように見えるが、彼らは一度たりとも道を曲がっても引き返してもいない。

「うそ…バスがいつの間にか曲がってたとか、道が歪曲してたとか?」
「そんな単純なことに気づかないほど俺も君も馬鹿じゃないだろう。丁度今、突然に景色が切り替わった。つまりその疑問の答えは、この道の先にある」

そう言って二人はビル群を背に道を睨むと




突然道の先に多数のナニカが現れた。蜘蛛のようなもの、鳥のようなもの、恐竜のようなもの……共通点と言えば体に球状のものがあることくらい。
魔女のような不気味さを感じ、魔法少女の姿となって臨戦状態に入るが

「そんな警戒しなくていい。殺気はおろか戦意もないようだ。戻るぞ」
「ちょ、ちょっと!?」

そういって背を向けて元来た道を戻りだし、挙句霊体化までしてしまう。

『早くいくぞ。説明は道中歩きながらしてやる』
『……ああ、もう!』

しばらく警戒しながら後退していたが一向に動きがないので意を決してサーヴァントについていく。背を向けてもかかってこないので確かにバーサーカーの発言は正しかったようだ。

『どういうつもり?まさか逃げ出したの?』

色々と言いたいことはあるが直近のことから詰問する。すぐそばに敵がいるというのに背を向けるなどそれでも英霊なのか、と怒り露わに。

『まさか。あれの戦闘能力自体はそう大したものではない。サーヴァントはおろか腕利きのマスターなら十分勝てる。
さやか、君ならさほどの苦戦はしなかっただろう。退いた理由はあれが恐らくキャスターなどサーヴァントの手の者ではなく、また現時点では敵ではない可能性が高いということだ』

マスターの怒りをいなし、推論を述べるサーヴァント。狂戦士に似合わぬ知的な振る舞いは考察相手が怪物であるが故か。

『どういうこと?あれが敵じゃないなんてなんでわかるの?野生動物にしちゃグロテスクがすぎるよ』
『あれは俺に近似した存在、人間に何か別の生命体がとりついているものだ。近い存在だからわかる。恐らく元はNPCだったのではないか。
だが俺たちが引き返させられたのと同じかは分からんがむこうもこちらには干渉できないようだったな。まるで魚が陸上では呼吸できないように。
加えて不自然な個所で途切れたバス、先に進めない道……参加者が聖杯戦争を行う地を出ないようにしている仕掛けが今俺たちが体験したものなのだろう』

見ているものは同じでも観えているものは異なる…魔法少女と言う戦士の端くれとはいえ、英霊の経験値と洞察力には舌を巻くざるをえない。

『つまり私たちはあの先に進めないってこと?』
『脱出にはテレホンカードがある。逃げられなくとも決着すれば問題はないはずだ、楽観的に考えるなら。
もし強行突破を考えるなら、仕組みを知る必要があるな。精神干渉により無意識のうちに引き返してしまっているのか、空間が湾曲しているのか。
強力な精神耐性スキルか精神操作能力、もしくは対界・結界宝具の使い手と協力する必要があるかもしれん』

情報が少なく十分な考察とは言えないが探索の甲斐はあったといったところだろうか。

『それじゃあこれからは天戯の出方を見るの以上に他の参加者との協力も考えたいね』
『そうだな。ひとまずは天戯の名を呼んでいた男を見つけられればいいのだが…情報が増えた以上方針も変わってくるな…ん?』

道を歩み、方針を固めていると何かを聞きつけたらしく黙考し出すバーサーカー。
考えがまとまったようで実体化して道端に停めてあったバイクに近寄ると

「ちょ、何やってんの!?」

自己改造のスキルの応用で一時的に合体したのか無理矢理エンジンを起動させていた。

「救急車のサイレンだ。追うぞ、乗れ」
「え、なん…」
「いいから早く!」

慌てているわけでも切羽詰っているわけでもないが急いだように声をかけメットを投げてよこす。
仕方なくかぶって後ろに座ると途端に法定速度など知ったことかとばかりに走り出した。


485 : 日常に潜む妖怪 ◆A23CJmo9LE :2014/09/06(土) 01:57:03 OZyc/mLs0

『今度はどういうつもり?救急車って?』

高速のバイク上でメットをかぶっては会話にならないと考え念話で問いかける。
バスでの発言といい、先ほどの振る舞いと言い振り回してくれるサーヴァントにいい加減呆れ気味だ。さすがはバーサーカー、といったところか。

『こちらに向かってはいないが、救急車が出たのは聞こえた。耳は人よりいいんだ。ようするに怪我人か病人が発生したということ…聖杯戦争の会場でだ』
『なるほど。どっかでやり合ってるやつがいるかもってことね』
『そうだ。正確にはやりあっていた、だろうが。負傷したのが、救急車を呼んだのが誰かはわからんがそこで戦闘があったのなら何らかの情報が得られる可能性は高い』

戦場は刻一刻と動く。それなら急ぐのも納得だが…

『いやでもNPCの事故とか病気とか関係ない事だったらどうするの?』

当然無関係な事象である可能性は神ならざる二人には否定できない。NPCが病気するのか、事故を起こすのかも彼らにはわからないが。

『それならしかたない。あてのない散策に戻るだけだろうが、今はこの盗品のバイクが利用できるだろう。
先ほどの異形は人間に何かが憑りついたものだといったな?全てのNPCはあれの材料、つまりは天戯の手駒だと考えられんか?意に沿わぬものをどうにかするためのな。
不登校、盗難、二人乗りにスピード違反。現状俺達はかなり目立っているはずだ。何らかの干渉があってもおかしくはないだろう。
加えて言うならあえて目立つことにより天戯だけじゃなく他の参加者との接触も狙うぞ』
『な、なるほどねー』

思い返すのはバーサーカーの言葉。〈願いを叶えるその過程はけっして間違えてはならない〉、〈世間一般とは重きを置く大切なものが違う〉。
そして赤い魔法少女の姿。彼女は粗野な言動の内に優しさを秘めていたが、バーサーカーは知的な言動の裏には意外と暴力性を秘めている。
秩序を重んじるさやかには少々受け入れがたい方策ではあるが、代案も思いつかない。NPCや天戯を気遣うのもおかしな気がし、しぶしぶではあるがその策を受け入れることにした。

『患者がマスターならそのまま交渉に入る。癒しの術はいい交渉材料になるだろう。これなら病院内でも交渉は可能だからさほど慌てる必要は無い。
戦闘に巻き込まれたNPCなら周囲に聞き込みだ。おそらく野次馬や警察も来ているはずだからすぐに戦闘の跡地は分かるだろう。
関係がなければNPCとの接触を行うしかないか。警察がいれば俺達を捕えようとするだろう。もし力ずくでマスターを抑えようとするなら先ほどの異形になる可能性が高いだろう。
そこから天戯の能力や居場所のヒントを狙うなら警察のNPCと接触するのが狙い目か』

混沌たるサーヴァントの方針に多少の不満のようなものはある。それでも大切なものを見失わない、頼れる相棒と共にいるならば不安はないし、何も怖くはない。



【C-8・西部/一日目・早朝】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.救急車の後を追い、状況に応じて動く
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う

[備考]

【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]バイク(盗品)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.救急車の後を追い、状況に応じて動く
2.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
3.マスターを守る

[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タブー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タブー)の材料として配置されたと考えています
※追い駆けている救急車はセイバー(纏流子)が間桐雁夜のために呼んだものでD-4の公園に向かっています

[地域備考]
※マップ外に出ようとするといつの間にかループしたように戻ってきます。またマップ外には禁人種(タブー)がいますが、中に入ってくる様子は今のところありません。


486 : ◆A23CJmo9LE :2014/09/06(土) 01:59:51 OZyc/mLs0
投下完了です。
指摘などあればお願いします。


さやかちゃんだけでなく他のまどマギ組も頑張ってる様子。
皆どうも相棒を御しきれてないようですが、今後の関係が色々と楽しみですな


487 : 名無しさん :2014/09/06(土) 10:50:12 BwAjU4RUO
投下乙です。

おじさんは静かに暮らせない


488 : 名無しさん :2014/09/06(土) 10:52:54 01sfCMCU0
投下乙です!
基礎ルールの確認を兼ねた初期考察回。明の物言いや物事の捉え方にしっかり彼らしさが出てますね。しかし、特性上とはいえバサカとは思えない思慮だw
タヴーの存在はどう関わってくるものか……。
さやか組はやはりまどマギ勢の中でも、連携と相互理解の点では今のところ一番安定してる感じだなあ。それだけに、顔無し司令の注意を引いていることと言い、今後の交錯や接触が楽しみでもあります。


489 : ◆dM45bKjPN2 :2014/09/06(土) 19:14:32 0ek8bzo.0
皆様投下乙です。
紅月カレン、セイバー投下します。


490 : ◆dM45bKjPN2 :2014/09/06(土) 19:15:21 0ek8bzo.0
そろり、と。
抜き足差し足、気配を殺す。
目の前の建物───アッシュフォード学園を見上げる。
校舎の中からは、生徒の声は聞こえてこない。
授業中なのだろうか。
授業開始までには間に合わせるように登校する予定だったが、あのアーチャーとの交戦により遅れてしまった。

「・・・ここに戻ってくるなんてね」

恐らく、このアッシュフォード学園は本物のアッシュフォード学園ではないだろう。
アッシュフォード学園の姿形を模したもの。
要するに、きっと偽物だ。
───それでも、己の意思で別れを告げた場所には違いはない。
しかし、感傷に浸っている場合ではない。
するべきことは決まっている。
そのためにまずは、学校への登校が不可欠で───

「───待て」

そこで、声をかけられた。
ゆっくりと声の発した元を見ると───そこには、褐色の肌をした女性がいた。
頭髪は白。見るからに、日本人ではない。

「今、何時だ」
「え、え?」
「今何時だ、と聞いている」
「え、すいません、わかりません」

高圧的な態度で質問を投げかけたその女性は、とても丈夫そうな竹刀を地に突いていた。
マスターかと思ったが、こんなところで戦闘を始める訳にはいかない。
どうにかして、やり抜こう───と考えた時、女性は低い声で言い放った。

「十時だ」
(・・・だから?)

だから何なのよ、と口を飛び出しかけた言葉を無理やり押し込む。
知ってるなら聞かないでよ、とも思ったが黙っておいた。
すると女性は、左腕についている腕時計をコンコン、と指で叩きながら、

「───遅刻だ。何か言うことは?」
「え」

シュンッ、と。
紅月カレンの首筋の真横を、何かが通過する。
カレンの頭髪を数本削り取って行ったソレは───竹刀だった。

「生徒指導部教員兼警備員長───インパだ。クラス、名前、遅刻の理由、その他諸々を話してもらおう」


生徒指導部。
第一の敵との交戦の後に現れた第二の敵は、一番面倒な部類の存在だったらしい───





◆ ◆ ◆


491 : ◆dM45bKjPN2 :2014/09/06(土) 19:15:53 0ek8bzo.0
響き渡る音色。
それは何よりも優しく───儚い、追憶のメロディ。
時の流れは残酷なもの。
過去に戻ることはできず、時の流れは人それぞれ。
決して変わることのない、原則。
よって過去に起きたことは戻すことはできず───過去に救えなかったものは、救えない。
だからこそ、この戦争に身を投じた。
しかし。
今この時だけは、戦争とは無縁の空間が存在していた。
時の流れは移りゆけども、変わらぬは幼き日の記憶。
思い出の場所へと誘う調べ───『森のメヌエット』。
そこで、メロディは変わる。
変わると同時に噴き出すは───炎。
情熱の如き、赤い炎。
その炎の向かう先がサーヴァントであるならば、そのサーヴァントは決して無傷ではいられないであろう、その業火。
真実の友情は時を経て尚その熱を失わず、より強い絆として君臨する。
その熱い心は何よりも眩い光となり、正しき者の、彼の道を照らす。
そう。
この友情を、救いたいがためにこの戦いに乗り込んだ。
友と誓った者から受け継いだハンマーはこの場には持ってこられなかったが、それでも。
友との思いは、今もこの胸に。
業火を生み、その強き心を確かめる音色───『炎のボレロ』が、辺りに鳴り響く。

「───」

ふぅ、と。
彼の宝具───『時を操りし王家の秘宝』の調子を確かめるように、彼はその音色を辺りに響かせた後、その宝具を懐に仕舞う。
音色が止まると同時に、業火も姿を消す。
音色によって様々な力を呼び起こすこの宝具は、生前の彼を何度も助けてくれた。
この宝具も、この音色も、教えてくれたのは救えなかったはずの『彼女』で───
そこで、思考を切る。
そろそろ、霊体化して己がマスターの元に帰った方がいいだろう。
与えられた任務は、既に終えた。
そうこうしてるうちに───アサシンやキャスターの襲撃を受けたら、ひとたまりもないのだ。
彼の姿は、風に乗ってかき消える。
アッシュフォード学園、屋上。
もうその場には、緑衣の勇者の姿はなかった。

◆ ◆ ◆


492 : ◆dM45bKjPN2 :2014/09/06(土) 19:17:06 0ek8bzo.0
ガラリ、と扉が開く。
まず目に入ったのは、白い床。
辺りを見回すと、ベットに体重計などがその場に佇んでいた。
そう、この場は一般的な学校で言う、保健室なのだ。
保険医は不在らしい。

「追ってきてない・・・よね?」

生徒指導のインパに捕まった後のカレンは手慣れた、本来のアッシュフォード学園で使っていた演技を行った。
───そう、病弱設定だ。
はたから見れば大人しそうで、少し触っただけで壊れそうなくらいに繊細そうな病弱少女。
それを演じきることで、生徒指導の魔の手から見事逃れてみせたのだ。

「今のうちに、っと」

保健室に訪れたカレンがまず向かったのは───保険医の、教卓。
ガタリ、と音をたてて開いた引き出しには、大量の書類が入っている。

「・・・違う。これも、違う」

一つずつ、流れるように目を通し、確認する。
隅々まで読んでいる暇はない。
ほぼ流し見のようなものだ。
不要な情報と判断しては、すぐに次の書類に目を移す。
探し求めているのは、一つ。

「───あった」

カレンが見つけたのはアッシュフォード学園生徒の、健康情報が書かれた名簿。
身長、体重、視力、聴力───その他他人には見られたくない数値までが、記録されている。
その名簿をペラペラと捲り、目当てのページを開く。
開かれたページには───紅月カレンと記されていた。

「・・・ここではそっちなんだ」

紅月カレンには、名が二つある。
一つは今名乗っている日本人としての、紅月カレンという名。
もう一つはブリタニア人としての、
カレン・シュタットフェルトという名。
ここでは、日本人としての名を使うらしい。

「生徒会は───あ、所属してるのか」

役職は、会計。
どうやらここでも自分は生徒会にいたらしい。
そう、これが目的。
カレンが保健室にきたのは───この学園における、己の把握だ。
学年、クラスなどは覚えていたのだが、詳細な設定までは記憶していなかったのだ。
中途半端な記憶では、いつかボロが出る───それを回避するための、調査だったのだ。

『───』
「セイバー?」

その時、霊体化したセイバーが紅月カレンの元に帰還した。
その姿こそ見えないものの、気配は感じ取れたのだ。
己のサーヴァントの気配はわかるらしい。
マスターの特権、というものなのだろうか。


493 : ◆dM45bKjPN2 :2014/09/06(土) 19:17:42 0ek8bzo.0
「セイバー、やってくれた?」
『───』

返ってきたのは、肯定。
アクシデントなく、成功したらしい。

「じゃあ後は他のマスターが釣れるのを待つだけ、か」

カレンが呟く。
セイバーがカレンの命により先ほど行ったこと───それは屋上での、他のサーヴァントに対する牽制だった。
セイバーはこのアッシュフォード学園の屋上にて、『時を操りし王家の秘宝』の能力の一部を使用したのだ。
魔力も少しだが消費した。
本来であれば、無駄な行動。
魔力の無駄使い。
だが、しかし。
サーヴァントが近くにいるならば───この行動に、必ず反応するはずなのだ。
簡単に罠に引っかかり、のこのこと屋上に上がってくるようならば、セイバーと共に倒す。
引っかからないならば、それはそれで新たな手段を考えるまでだ。

「さて、どうなるかな───」

ボスン、と保健室のベッドに腰掛け、カレンは呟く。
恐らく戦いは激化する。
ならば、少しここで休憩するのも手だろう───


494 : ◆dM45bKjPN2 :2014/09/06(土) 19:20:16 0ek8bzo.0
【A-3/アッシュフォード学園・保健室/1日目 午前】

※屋上にてセイバーがオカリナを使用した。
学校にいるサーヴァント、マスターなら気づくかもしれません。
※生徒指導部教員兼警備員長のNPCとして【インパ@ゼルダの伝説 時のオカリナ】が存在しています。

【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]健康、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.暫くは保健室で休憩した後、学校での調査をする。
2.屋上にサーヴァントを誘い込めた場合、相手をする。
3.学園終了後、街を探索。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※学校内での自分の立ち位置を理解しました。
※生徒会の会見として所属しているようです。



【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。


495 : ◆dM45bKjPN2 :2014/09/06(土) 19:21:13 0ek8bzo.0
投下終了です。


496 : 名無しさん :2014/09/06(土) 20:01:32 A3l.UDuY0
投下乙です!
ついにカレンも動き出しましたね
ここでも病弱設定にするのかww後悔しないといいけどww

今学校にいることが確定しているマスターはアゲハ、人吉、カレンの三人かな


497 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/06(土) 21:36:38 fu0jAq8M0
皆様お疲れ様です&投下お疲れ様です!!

>>464
どちらも明確な目標がある主従、腹の探り合いはまずは味方から……w
遊園地に陣を取り人形も放たれ着実に有利に進めている辺り抜かりはないですね。
目をつけられたのはさやかちゃん、複数参加している魔法少女ですが時間軸が異なっています。
叛逆の先を知っているさやかちゃんとさやかにあまり良い印象を抱いていないほむほむ……。

>>474
ルフィは正直ですからねwいつだって前を向いているんですが情報は隠せませんね。
まどかは保護してもらうのがベストでしょうか?
ただ、彼女も願いがある限り波乱は起きそう。

>>483
地図の特徴や徘徊するタヴ―達。
イレギュラーである聖杯戦争の特徴が更に出てきましたね。
外の可能性を知っているかいないかで大きな差が生まれますね。
そして追われる救急車の先には雁夜おじさん……wバーサーカー同士が出会ったら……。

>>489
カレンの病弱設定、何処まで通用するのか……w
リンクは屋上で宣戦布告のようなものですね、学園を舞台に一悶着ありそうです。
学園にいるマスター達、アゲハと人吉は同じクラス(不明)、B組はキャスター(みさきち)の魔の手に。
普段の生活を過ごすだけでも危険と隣り合わせ、戦争なら尚更ですね。


虹村形兆、白ひげ、エレン、ジャファルで予約します。


498 : 名無しさん :2014/09/07(日) 01:40:13 jDvR/0MM0
投下乙ですー。
さやか組は状況把握から地道に地を固めていってますね。
さやかちゃんとのやり取りで、かつての明のありようがちょっと覗いて胸に来ました。

カレン組ははっきり宣戦布告か。リンクのオカリナを吹くシーンがすごくいいなあ。こちらはサーヴァントとしての彼の背景をあれこれ想像させられる。


499 : 名無しさん :2014/09/08(月) 23:46:58 3qofKq9k0
放送とか決めてますか?


500 : 名無しさん :2014/09/09(火) 13:06:52 yIF9yjRU0
読み返していて気付いたんですが、アッシュフォード学園の位置が投下によってバラバラですね……
A-3になっているものとC-2になっているものがあります
地図画像ではC-2が正しい位置になっているようなので、全てこちらで統一したほうがいいと思います


501 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/09(火) 23:04:24 aRyMNozc0
>>499
まだその段階ではないですが、一発目は私が書こうと思っています。

>>500
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。


502 : ◆BATn1hMhn2 :2014/09/12(金) 02:35:57 KvqS4dnM0
浅羽、穹、ウォルター、レミリアを予約します


503 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/13(土) 15:55:38 xyHqnIGE0
申し訳ありませんが予約延長します。
月曜には投下できると思います


504 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:16:36 h3LCv4sw0
予約ありがとうございます!

……月曜には投下できる、とは言いながらも遅くなってしまい申し訳ありません。
投下します


505 : MY TIME TO SHINE ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:19:30 h3LCv4sw0

 太陽が天から世界を照らすこの時間帯は午前十時といった所だ。
 人の通りも少なくはないが、朝の通勤や通学の時間が過ぎたため比較的大人しい。
 虹村形兆、学生の身である彼はサーヴァントとの初戦を終え自宅に帰宅していた。

 していた。現在は再び外に出ておりその理由はある物の確認だ。
 本来ならば学園に通わなければならないのだがそんな場合ではないと判断。
『体調不良で休む』この一言を学園側に伝えただけ。簡易だが無断で休むよりかはマシだろう。
 
 どうやら設定では成績は上から数えた方が早く、特に休むこともない優等生……らしい。
 聖杯戦争を行う中で無駄な行動は避けたい所、何時何処で襲われるかなど余地は不可能に近い。
 学園に趣き日常を過ごす、仮にマスターが潜んでいる場合、危険な状況に陥る可能性がある。
 学園に行かず、情報収集に務める、仮にマスターが学園に潜んでいる場合、感付かれる可能性があった。

 結果として安息な時間など存在しないのだ。気を抜けば負ける、殺される、お終い。
 選んだ道は後者、一日程度ならば問題ない、と判断し彼は表に出る。
 この用意された空間の中でも確かめなかればならない重要事項だ、ソレを確認するために彼は動く。
 
 勝ち抜く術を磨くのも必要かもしれない→一理ある。だが王道少年漫画のように都合よく覚醒はしない。
 生き抜くために無闇に動かない事が重要だ→一理ある。だが止まっていては真実に辿り着けない。
 敵を見つけたら戦わず協定を結ぶべき→一理ある。だが戦闘を必ず避けれるとは限らない。
 己の保身のためにアレを確認するべき→一理ある。だが理由は保身だけではない――。

 
 そして彼が辿り着いたのは公衆電話。
特に特徴が感じられない、緑で、ボックスの中に収まっている、あの公衆電話だ。
 だがこの公衆電話こそが聖杯戦争において重大な要素に絡んでくる、確信ではない、本能だ。


506 : MY TIME TO SHINE ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:22:24 h3LCv4sw0

 参加者――マスターは聖杯戦争に参加している、これは周知の事実であり必役の状況である。
 参加方法、と言うべきか。参加者に共通している事は紅いテレホンカードを所持していること。
 自ら手に入れた者も居れば、気付けば所持していた者も存在する。
 言い換えると、自らの意思で参加した者も居れば、巻き込まれた、状況の把握に困惑する者も存在する、と言うことだ。
 彼、虹村形兆は前者である自らの意思で参加した、言わば願いを持った参加者だ。
 
 しかし巻き込まれた者が願いを持っていない、という事実には繋がらない。
 彼は知る由もない。無論他の参加者を把握していない現状で考察など空想の域を出ないのが結末。
 唯一出会った老人と吸血鬼のサーヴァントからも参加の経緯までは考察不能に近い。
 天戯弥勒の戯言を引用するならば『参加者は選ばれた者』になる。

 この選定者は天戯弥勒か、それとも聖杯か。現段階で答えを出すべきではない。

 永遠の迷宮に迷い込んだようだ、出口の光など一切見えて来ない心理への探求。
 今行うべき行動は、違う。その妖かしに構っている時間ではないのだ。

 参加者には聖杯戦争の記憶が自然と宿っている、仕組みは不明だが天戯弥勒が仕込んだ可能性が高い。
 その中にはサーヴァントと呼ばれる召使や令呪、絶対命令権であるマスターの証……生活上必要ない知識が脳裏に刻まれている。
 
 そして、一つ。参加者に置いて把握しておくべきことが一つ。

『サーヴァントを失ったマスターは紅いテレホンカードを公衆電話で使用すれば元の世界へ帰れる』

 元の世界……つまりこの街は『世界』が違う事になる。
『世界』。忌々しい響きだが今は関係ない、必要なのは『別の世界に召還された』と言うSFな事実。
 サーヴァントが実在し現世に現界している以上、どんな謎も可能性の視野に入れるべき、そう割り切るべき。
 
 此処で重要なのは『サーヴァントを失ったマスター』。つまり参加資格を失った無力の敗者を指す。
 スタンド能力。虹村形兆に備わっている異形の力、その力は絶大ながらもサーヴァントには効かない。
 効かない、では語弊があるようだ、訂正する。想像や見た目よりも損傷を与えられないのだ。
 先の吸血鬼少女には思ったよりも効いていなくサーヴァント同士の戦闘に割って入るのは至難の業と判明。

 実戦ではマスターはマスター同士で争うのがベター、しかしサーヴァントは割って入れる。
 マスターを潰せばサーヴァントは消える、単独行動のスキルでも付加されていない限りこの世を去る。
 マスターは願いを求めるならば何が何でも生に執着しなければならないだろう。


507 : MY TIME TO SHINE ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:23:53 h3LCv4sw0

 最初から己が脱落することを視野に捉えている者が聖杯戦争を勝ち抜けるのか。
 それは不明だ。雑に説明すると運命は何が起きるか解らない。この聖杯戦争も相当な異分子に当たる。
 
 何もかもが手探りだ……もう本題に入ってもいいだろう。

 霊体化しているライダーには見張りの役目を。
 公衆電話のボックスと言う個室を攻められればとてもではないが対策の立てようがない。
 霊体化しているライダー、道端の影やコンクリートの隙間にスタンドを展開させ安全を確保、のつもりでいる。

「あぁ、今は特に何もねぇな」

 ライダーの言葉だ。
『特に何もない』此処では敵が居ない状況を指す言葉になる。
 退屈な返答、それでも言葉の響く重低音はしっかりと確認してくれているのだろう。
 その返答に反応するように軽く首を縦に動かすとボックスの扉を開け内部に踏み込む。

 密閉されていた扉を開いたためか、熱気と呼ぶ感じたくない、人間の嫌な部分を凝縮した風が彼を向かい入れる。
 こんな状況では出来る事も出来ない、そう思いつつガムを口に入れ匂いの緩和に。

 クチャクチャと音を鳴らしながら受話器を取ると無造作に紅いテレホンカードを突っ込む。
 若干苛立ちを覚えたのか、差込口から少しずれ丸みを帯びながらも押し込んだ。

「……さあて」

 今の状態はサーヴァントを失っていない正規の参加者だ。
 今回の確認事項――『サーヴァントを失っていない状態で元の世界で帰ろうとするとどうなるか』

 天戯弥勒はサーヴァントを失った、これをわざわざ宣言する事実から察するに失っていないならば――帰れないだろう。
 無論、帰る事になれば奇跡に辿り着くための足掻きも実行不可能になるため困るのだが。

 受話器を耳に当てる。
 流れてくる雑音は普段聞くようなボダンを待っている音、しかし番号など知らない。
 帰るための番号。考えてみれば『公衆電話で元の世界に帰れる』不思議な話だ、鵜呑みにするのは馬鹿か阿呆か。
 だが――何も起きない。

 適当に電話帳に載っているタクシー会社の番号を押すも繋がらない。
 この話は摩耶香しの幻想だったのだろうか? それともサーヴァントを失っていないためなのだろうか。
 答えは得られない、まだ辿り着くには早過ぎるらしく、超えなくてはならない山を飛び越えてしまったようだ。

 結論を述べると今回は時間を浪費してしまったようだ。

 受話器を強めに戻し出てきたカードを手に取る。
 通話していないため数字が減っていない新品のままだ。

 ライダー、そしてスタンドを展開し周辺を警戒していたが、敵は見当たらない。

 この場に居ても仕方がなく虹村形兆は次の行動を考えながらも公衆電話を後にした。


508 : MY TIME TO SHINE ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:24:37 h3LCv4sw0


【B-3/公衆電話前/1日目 午前】


【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
0.まさかいきなり吸血鬼に会うとはな…
1.次の行動を考える
2.登校するかどうかは気分次第。
3.公衆電話の破壊は保留。


[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。


【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]疲労(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.刑兆に併せる
2.できれば海に行きたい


[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。


[共通備考]
※ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。
※B-2の現在地から歩いて少しのところにこの世界における自宅があります。具体的なことは後続の方にお任せします。


 虹村形兆が公衆電話ボックスに入り受話器を手にしていた時。
 一つの影が人混みに紛れ、消えていく。その後姿は布を纏いし暗殺者――アサシン、ジャファル。


509 : MY TIME TO SHINE ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:26:12 h3LCv4sw0

 ジャファルのマスターはエレン・イェーガーと呼ばれる少年だ。
 容姿やネームからはドイツを連想させるが彼は壁の中の住人である。
 壁の中――天戯弥勒の言葉で表わす『別の世界』、天戯弥勒や虹村形兆とは別の世界の人間。

 天戯弥勒の世界は超能力が存在していた。
 虹村形兆の世界も超能力が存在していたが、その具現は全くの別モノ。
 エレンの世界に超能力は存在しないが巨人が蹂躙していた。

 人々を喰らう人類の敵、それが巨人。
 
 彼の願いは巨人を駆逐すること、そして選ばれた聖杯。
 人類が成し得ない奇跡をたった、ほんのたった。数人殺せば叶えることが出来る、そう、選ばれたのだ。
 エレンは人を殺せるのか――彼のために何人の人間が死んでしまったか。
 考えれば考えるだけ地獄の千手に足を掴まれ引きずり込まれてしまう。

 甘いことは言わない……つもりでいる。
 所詮は人間、固い決意も情の前では鈍り、脆く、時には己を滅ぼす。
 彼がこの先、生き残るには『悪』以外の存在を殺せるか、否か。この一点に懸かっている。

 そんな彼に与えられた役割は留学生。
 アッシュフォード学園中等部に留学生として……明日から通うことになっていた。

 学園に他のマスターが居る可能性……そんな事を考える余裕などエレンには存在しない。
 自分が今まで生活していた空間とは全く異なる世界。
 海、高層ビル、公共機関。全てが全て彼にとっては新しい、未知との遭遇。
 生活に馴れるだけでも苦しい彼に他の参加者を気にする余裕など、無い。

 サーヴァントであるジャファルは一言、冷たく一言だけ彼に告げていた。

『――偵察だ』

 その一言を残し、彼は闇の中に消えていった。

 エレンにとっては有難い、彼ならば外に出るだけで迷う可能性があるからだ。
 最近はコンビニで買い物を済ませる程度には生活に慣れてきたが適応は完全ではない。

 登校は明日、ならば今日はアサシンに情報収集を頼み自分は大人しくする、彼が辿り着いた今の解であった。


【A-4/エレン自宅(マンション)/1日目 午前】


【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]
[令呪]残り3画
[装備]立体機動装置
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り巨人をこの世から駆逐する。
0.アサシンの帰りを待つ。
1.今後の方針を考える。
2.明日になったら登校する。
3.生きている人間を……殺す?
[備考]
※アッシュフォード学園中等部在籍予定です。


510 : MY TIME TO SHINE ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:27:38 h3LCv4sw0

 マスターの命令で……ではないのだが、己の意思で偵察に足を運ぶアサシン。
 暗殺者として生きていた彼にとって気配を消すなど造作も無い。
 そして生命の灯火を根本から抉り取る事に戸惑いも存在しない。

 故に悩んでいるエレンは彼にとって理解し難い存在に近い、そう、近い。
 完全に理解出来ない、の段階には至っていないが彼の願い、境遇を聞けば喜んで聖杯に飛びつくだろう。
 他者を蹴落としても……叶えたい願いがあるならば。

 ジャファルは冷たい殺人鬼だった、だった。過去の姿。

 冷たい大地に陽気を与える太陽が彼に近づいた。
 氷はそれを拒む、溶けてしまっては己が崩れるから。
 拒んで、拒んで、拒んで……。

 それでも太陽は氷に光を与える、彼に心を開いていった。

 光に当てられた氷、溶け出す心、次第に開く、しかしそれは崩壊。
 機会的に行動を繰り返すだけの暗殺者にとって、心を持たない機械にとってそれは辛かった。

 光は心地良い、されどその光は闇にとっては許されない。
 氷は溶けたら水になる、形は残らない――彼という人間の像が崩壊する。

 ……彼に関する記述は必要ない、彼という人間が、サーヴァントが聖杯戦争に身を投げるなら。
 それは暗殺者として輝かしい、闇としての栄誉を授かるかもしれない。
 そして、もしも、もしもの可能性。再び太陽と呼べるべき存在に出会ったら……もしもの話だが。

「……」

 彼が持ち帰る情報。一つは交戦した少女と高齢の大男のサーヴァント。
 一つは奇妙な小さい兵隊を使役する学生、そして公衆電話の一部始終。

 念話もでいいだろうが背中を取られてしまっては意味が無い。
 ――彼なら背中を取られる事は無いだろうが念には念を押すべき。
 拠点へと足を動かし再び人混みの中に消えて行く。

 必要なのは確実に仕事を熟す事、過信など要らぬのだ。


【B-3/東/1日目 午前】

【アサシン(ジャファル)@ファイアーエムブレム烈火の剣】
[状態]
[装備]
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:獲物を殺す
1.情報をエレンに持ち帰る。
2.甘さは捨てろ……。
[備考]
※ランサー(レミリア)、ウォルター及びライダー(白ひげ)、虹村形兆の姿を確認しました(名前は知りません)
※奇妙な兵隊(バット・カンパニー)を視認しました。
※公衆電話の異変を感じ取りました。


511 : MY TIME TO SHINE ◆wd6lXpjSKY :2014/09/17(水) 23:29:50 h3LCv4sw0
以上で投下を終了します


512 : 名無しさん :2014/09/18(木) 10:12:05 GP2xJO4g0
投下乙です!
それぞれのキャラごとのハードな心理状態がよく表現されているなと思いました
願いのために人を殺せるか? それぞれの覚悟に差はあるけれど、それがキャラらしさを表しているなと思ったり


513 : 名無しさん :2014/09/18(木) 17:25:07 6ZSfTcFE0
暁美ほむら フェイスレス 予約します


514 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/18(木) 17:26:17 6ZSfTcFE0
すいません、トリ付けるの忘れてました
暁美ほむら フェイスレス 予約します


515 : 名無しさん :2014/09/18(木) 18:42:34 nsPoYnzg0
投下乙です!そして予約も!

形兆はそういや原作でもかなりの「几帳面さ」を見せてましたね。気になる点はできる限りはっきりさせときたいんだろうなあ。
彼のこの几帳面さがどういう結果を生むのやら。

そして、エレン・ジャファル組も始動か。エレンは出身が血で血を洗う世界といえ、まだ決心はつけきれてないんだな。淡々としたジャファルの姿と比べて対照的だ。


516 : 名無しさん :2014/09/18(木) 23:12:32 jM3Dri120
投下乙ですー

形兆兄貴が相変わらずで嬉しい限り
しかしやっぱ皆状況把握や地を固める感じですね 迂闊さはあまり感じなくていい感じ
エレン組はどうなるかなあ、エレン次第か…


517 : ◆BATn1hMhn2 :2014/09/19(金) 01:09:11 HaD1kUS60
申し訳ありません、延長お願いします


518 : 名無しさん :2014/09/20(土) 20:26:58 SOdwYep.0
今のところどこも順調だね
仲が最悪のほーむレスと消耗半端ない雁屋おじさんは先行きが不安だけど……


519 : 名無しさん :2014/09/20(土) 23:55:20 /f6KYhPg0
ジャファルの太陽ってニノか!
原作知ってるとジャファルはたしかに変わったよなぁ


520 : ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:00:52 De7V3IWg0
遅くなりました。今から投下します。


521 : あの空の向こう側へ ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:05:31 De7V3IWg0
周囲を覆っていた闇は晴れ、世界に光が満ちようとしていた。
朝の訪れに、銀髪の少女レミリア・スカーレットは顔をしかめる。
吸血鬼たる彼女にしてみれば、太陽の登場ほど忌々しいものはない。
夜の世界では彼女は並び立つ者がいない女王にして主役であるというのに、朝が来た途端にその舞台から追い出されてしまうのだ。

「ウォルター、あとは貴方に任せようかしら。
 私は次の出番が来るまで、少し休んでおくことにするわ。『ソレ』の片付けもお願いね?」
「かしこまりました、お嬢様。しかし……まだ飲み残しがあるようですが?」
「私は小食なのよ。欲望のままに食い散らかすような下品な輩と一緒にしないで欲しいわね」

そう言って妖しく笑うレミリアの口元は、紅く濡れていた。
先の戦闘で消費した魔力を補給するために、吸血鬼の食事――つまり吸血を行ったのだ。
不幸にも吸血姫のお眼鏡にかなってしまったNPCが、息も絶え絶えにレミリアの背後に横たわっている。
血の気が抜けて真っ白になってしまった肌。首すじには二本の牙の痕がぷっくりと残っているのが生々しい。
レミリアの傍らに控える執事服に身を包んだ老人――ウォルターは、NPCを一瞥し、すぐさまレミリアのほうへと視線を上げた。

「これは失礼いたしました。『後処理』は私にお任せください。
 主人の手を煩わせぬのが執事の務め――この程度、朝飯前でございます」
「侍女ばかり召しいてきたけれど、執事も悪くないものね」
「光栄でございます、お嬢様」

深々と頭を垂れる執事を前に、吸血姫は満足そうな笑みを浮かべた。
さて――と、レミリアは白み始めた空を眺める。
もう間もなく、吸血鬼の弱点の一つである太陽はその姿を完全に現すことだろう。

実際のところ、レミリアにとって陽光は致命傷になるほどの脅威ではない。
世界に残る吸血鬼の逸話には陽光を浴びた途端に全身が灰となり死んでしまうものもあるが、レミリアの場合は軽い火傷になる程度。
勿論浴び続ければ無視できないほどの酷い傷になるだろうが、それでも日傘でも差して直射日光を避ければ吸血鬼の超人的な回復力も相まって、日中だろうとなんら問題なく行動できる。

しかしレミリアは、日の昇っている時間帯は休息に充てることに決めた。
この聖杯戦争に対して、『本気』になることにしたのだ。
全力を出すことが出来ない日中にあえて行動する――なるほど、幻想郷ならばそれも有り得ただろう。
なぜなら彼処での行いの全ては、遊戯の延長に過ぎなかったからだ。
だがこれから行う闘争は――遊戯ではない。血と死を避けられぬ戦争だ。
ならば十全を発揮できるように尽力するのが道理だろう。
吸血鬼がその真の力を発揮できる夜――それがレミリアが動き出す時間だ。

知らず知らずのうちに、レミリアは口の端を歪めていた。
――『本気』を出せる。ただそれだけで、どうしようもなく興奮し、期待を募らせている自分がいることに、レミリアは気付いた。

「それじゃあウォルター、また夜にでも。……そういえば、貴方は休まなくていいのかしら?」
「老齢の身なれど、一週間ばかりなら不眠不休で動けますとも」
「あら、頼りになる執事ね。でも、いざというときに私が使う分の魔力まで無くなっていたら話にもならないわ。
 ちゃんと私の分も残しておいてくれないとダメよ?」

そう言うと、レミリアは姿を消した。霊体化し、不可視の存在となったのだ。
主人である麗しき吸血姫がこの場を去ったのを確認し、ウォルターは真っ青な顔をした哀れなNPCの方へと向き直った。
ガタガタと歯を震わせ、今にも泣き出しそうな顔をしているNPCに向かって、ウォルターは優しく微笑んだ。

「さて――不肖ながら後を任されました、ウォルター・C・ドルネーズと申します」
「た……たすけ、て……」
「ご心配なく。私は貴方を苦しめるつもりはありません」

ウォルターの言葉を聞いて、真っ青だったNPCの顔に喜色が差した。
だが――少しだけ緩んだその表情は、そのまま凍り付くことになる。
吸血姫の牙の痕が残る首に、一筋の赤い線が入った。そしてその線に沿って、ずるりとNPCの首がスライドする。
何が起きたのか分からないまま、痛みを微塵も感じることなく、NPCは絶命した。
ごろりと転がった首を一瞥すらせずに、ウォルターは踵を返して去っていく。


522 : あの空の向こう側へ ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:06:22 De7V3IWg0
「ただの食事の残り滓ならば見逃していてもよかったのですが……生憎、此度の闘争には負けられない理由がありましてな。
 敗因に繋がりかねない要素は、全て消させていただきます。
 吸血鬼が暗躍しているなどと街の噂にされるわけにはいきませんのでね」

他のマスターとサーヴァントに、レミリアの正体を知られるわけにはいかなかった。
幾つかの弱点は克服しているレミリアだったが、それでもまだ吸血鬼の伝承通りの弱点は残っている。
故に、血を吸う人外の存在がいるなどと吹聴されては困る。
戦場では何が敗因になるか分からないということを、ウォルターは長年の経験から知っていた。
万全を期すためには、ここでNPCの口封じをしておく必要があったのだ。

「さて、まずはどこから向かいましょうか」

情報は全てに先んじる――他の主従の能力、点在する施設の情報など、調べなければならないことは山のようにある。
ウォルターは幾つかの候補地を思い浮かべ、その中から病院を優先することに決めた。
他のマスターたちもウォルターと同様に見知らぬこの地に招かれたのならば、戦争に臨む準備は不足しているはずだ。
もしも負傷をした場合は、この街の施設を利用することになるはずだ。
つまり聖杯戦争が進行すればするほど病院を訪れるマスターは増えていくだろうと、ウォルターは考えた。
そうなれば病院が戦場となる可能性も高くなる――予め戦地の下見をしておく必要があった。

また、病院ならば輸血用の血液もある程度備えているだろうというのも理由の一つだった。
レミリアの魔力、体力を回復させるには吸血が有効だが、頻繁にNPCを吸血対象にすればそれだけこちらの正体や動向を他の組に察知されてしまう危険性が高まってしまう。
レミリアは文句を言うかもしれないが、輸血用血液パックで代用してもらうことも考えなくてはならないだろう。
病院の情報と、輸血用血液パックの確保の二つを目的に、ウォルターは進路を病院に定めた。

 ◆

太陽が昇った空は青く澄み渡っていた。どこまでも続く大空が、浅羽たちの頭上に広がっている。
こんなに綺麗な空を見るたびに、浅羽の胸はぎゅっと締め付けられるような感覚に襲われる。
空の向こう側に行ってしまった彼女のことを――伊里野加奈のことを思い出すからだろうか。
あのとき何も出来なかった自分を、思い出すからだろうか。

伊里野がいなくなったばかりの頃は、空ばかり眺めていた。
浅羽は、想像する。

ブラックマンタ(人類最後の希望)に乗り込んだ伊里野が、単身で敵性宇宙人の編隊を翻弄するのだ。
色んな種類の三角定規を組み合わせたようなヘンテコな形をした戦闘機は、人類の科学技術の粋を集めて作られた最新鋭の一機だ。
伊里野はそれを、自分の手足のように操る。息を吸って、吐いて、その一呼吸の間に伊里野の世界は音速を超える。

伊里野が乗るブラックマンタはどんどん敵機を撃墜していく。
しかしそれ以上に、ブラックマンタも傷ついている。敵の苛烈な攻撃によって装甲板は剥げ、限界を超えた急制動の繰り返しで燃料は残り少ない。
出発するときにありったけを積んできたというのに、弾薬も残り僅かだ。
伊里野の細くて白い髪が、汗でべっとりと濡れて彼女の小さな額に貼りついていた。

だけどその奥に光る伊里野の瞳は、光に満ちて輝いている。
伊里野は諦めていない。伊里野には、帰る場所があるからだ。
伊里野は呟く。あと、一機。
最後に残った敵の総大将と伊里野が、交錯する。

画面が、暗転する。次の瞬間、映るのは――伊里野の笑顔だ。
あれだけ感情を出すのが下手だった伊里野が、とても可愛い顔をして笑っている。
そして感動的なエンディングテーマと一緒に、伊里野は帰還するのだ。

――もちろんそんな夢想は、現実にはならなかった。
浅羽がいくら空の向こう側のことを考えたって伊里野が帰ってくることはなかったから――だから浅羽は、いつしか空を見るのが嫌いになっていた。
なのに今、浅羽は空を見つめている。この痛みを胸に刻みつけるためだ。
自分の願いをしっかりと刻み込んで、二度と忘れないようにするためだ。


523 : あの空の向こう側へ ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:07:12 De7V3IWg0
「空が好きなのかい?」
「アーチャー……さん」
「”さん”はいらないよ、浅羽くん。僕のことはアーチャーと呼んでくれてかまわない」
「す、すみません。それで、えっと、空は――あまり好きじゃないです。
 ……だけど、今見ておかないといけない気がして」

浅羽に声をかけたのは、弓兵のクラスを冠するサーヴァント――アーチャーだった。
実体化したその姿は往来を歩く若者たちと大して変わらない。制服を着ていれば学生だと言っても通用するだろう。
召喚した当初の険のある雰囲気も今はなく、男性にしては長い肩まで伸びた髪や涼しげな甘いマスクでとても女性受けしそうな風貌をしている。
中学の制服に身を包んだ浅羽と並んでいると、似ていない兄弟か先輩後輩の間柄だと思われるに違いない。

「そういえばまだ聞いていなかったね。君がいったい何のために戦っているのかを。
 きっとそれが、君が好きでもない空を見ている理由なんだろう?」

アーチャーは優しく問いかけた。
浅羽は遠い目をしながら、アーチャーの問いに答える。

「――あの空の向こうに行ったきり、帰ってこない女の子がいるんです。
 ぼくはずっと、彼女の、伊里野の帰りを待ってた。だけど伊里野は帰ってこなかった。
 ……気付いたんです。ただ帰りを待ってるだけじゃ駄目なんだって。ぼくが伊里野を探してあげなくちゃいけないんだって」

どんな願いでも叶えるテレホンカードの噂を聞いて、浅羽の中にあったその願いははっきりとした形になった。
思えばそれは、浅羽が初めて伊里野と出会ったときからずっと願っていたことだった。

浅羽直之は、伊里野加奈のために何かをしてあげたいんだ。

自己満足だとか傲慢だとか、そんなありふれた言葉で否定されてもかまわない。
ただただ純粋に、浅羽は伊里野のために行動をしたい。彼女が喜ぶ姿を見てみたい。
伊里野は自分の感情をどういう風に表現すればいいのかよく知らないから、まるで小さな子どもみたいに喜んだり悲しんだりする。
顔を真っ赤にして泣き叫んだりする。顔を真っ赤にして照れたりする。
そんな伊里野の全てが愛おしかった。そんな伊里野のために何かをしてあげたかった。

「ぼくは最後まで何も出来なかったから……だから今度こそ、伊里野を助けたいんです。
 聖杯がぼくの願いを叶えてくれるんなら、ぼくは何としてでも聖杯を手に入れなくちゃならない」

だが、浅羽が聖杯を手にするためにはアーチャーの協力が必要不可欠だ。
浅羽の願いを聞いて、それでもアーチャーは浅羽のために力を貸してくれるのだろうか。
不安と期待がないまぜになった浅羽の視線がアーチャーに向けられる。
アーチャーは少し笑って、

「君は伊里野ちゃんのことが好きなんだね」
「……はい。ぼくは、伊里野のことが好きなんです」
「君の真っ直ぐなところは嫌いじゃない。好ましいと思っているよ。
 ……少し、僕の話も聞いてくれるかな」

アーチャーは、彼がまだ穹徹仙という一人の人間だった頃の話を始めた。
彼が先祖から継いだ穹の血は、太古の昔より弓を司ってきた。
日本に武が生まれたときから幾百、幾千という永い時をかけて、その技術を磨いてきたのだという。

「武全般に言えることだけれども、武技を磨くということは殺人の技術を磨くということと同義だ。
 その中でも弓は、特に殺人に特化した武術の一つでもある」

弓は、ただ一つの目的に特化した攻撃専門の武器である。
防御を捨てたこの武器に求められるのは、相手を殺傷する能力だけだ。
敵を殺せなければ、殺されるのは自分なのだ。
人を殺せない弓に意味はない。戦場においてこそ武は真の価値を発揮すると考える者たちにとって、それは絶対の価値観だった。

「だけど僕は、殺さない技術にも意味はあると思ったんだ」

いずれ人と魔を二分する百年に及ぶ戦が起こるという伝承に従い、穹たちは各々の技術を磨いてきた。
確かに百年の戦においてもっとも重宝されるのは敵を殺す技術だろう。
だが、百年の戦が終わったあとには、武によって平定された千年の世が来るのだ。
そのときにこそ殺さない技術は必要となる――他家には一笑に付された穹の理念だったが、一人だけ、彼を認めてくれる男がいた。

「それが僕たちが目指した武の頂点に君臨する高柳家の当主、光臣さんだった」

光臣の人柄に感銘を受けた穹は、彼の矢になると誓ったのだ。
彼を高みまで押し上げる翼になるのだと。
だが――穹はとある一戦を理由に力を失い、前線を退くことになってしまう。
光臣と共に百年の戦を戦い抜くと誓ったというのに、穹は置いていかれてしまった。


524 : あの空の向こう側へ ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:08:50 De7V3IWg0
「何も出来なかった自分に腹が立ったよ。そう、君みたいにね。
 自分はいったい何のために力を磨いてきたのか何度も自問したけれど、答えは出てこなかった」

と、そこまで話したところで――穹は、己を召喚したマスターに何らかの異変が起こっていることに気付く。
いつの間にか浅羽の息は荒くなっており、顔は紅潮していた。目の焦点は合わず、虚空をぼんやりと見つめている。
立っているのもやっとというほどに浅羽の身体はふらついていて、もし穹が抱き留めるのが数秒遅れていたならその場に崩れ落ちていただろう。

「浅羽くん、大丈夫か!?」
「す、すみません。なんだか急に身体がきつくなって……」
「喋らなくていい。目を閉じて、身体の力を抜いて。安心してくれ、君は僕が守る」

意識が混濁していく中で、浅羽は自分の顔がぬるりと濡れていることに気付いた。
唇のあたりに変な感触の何かが垂れてくる。ぺろりと舌を出して、それを舐めてみた。
錆びた古鉄のような味と匂いがして、浅羽はそれが鼻血なんだと気付く。
その次の瞬間には浅羽の意識は闇の中に沈んでいった。

(敵の能力か……? いや、違う。周囲に魔力は感じない。それに攻撃が目的なら、僕が対象になっていないのもおかしい)

穹が目を凝らしても、近辺には他のマスターやサーヴァントの気配は感じられない。
気配遮断のスキルを持ったサーヴァントの仕業かとも考えたが、穹に全く悟られることなく浅羽への攻撃を完了したとは考えにくい。
それに、気になる点は他にもあった。

「浅羽くんの身体の中で……魔力が増加している……?」

浅羽と魔術的に繋がっている穹は、浅羽の中で何が起きているのかおぼろげに感じることが出来る。
パスを通じて穹に流れ込んでくる浅羽の魔力が僅かながら増加していた。
通常ならばあり得ないことだ。魔力や氣の類は、血の滲むような修練の末にようやく使えるようになるもの。
ただの一般人に過ぎない浅羽は、本来ならばサーヴァントの使役など不可能なレベルの魔力しか有していなかったはずだ。
それが今や一般的な魔術師と比べても遜色ないほどに魔力を溢れさせている。

(つまり他のサーヴァントの攻撃である可能性は薄い……この聖杯戦争が通常のそれと違うことが関係しているのか?)

そう、そもそも従来の聖杯戦争のシステムならば、浅羽のように魔術の素養がない人間がマスターになることすらあり得ないのだ。
もしかすると浅羽の不調はこの聖杯戦争を仕組んだ天戯弥勒の仕業なのだろうか。
浅羽の魔力が増えること自体は穹も歓迎したいが、その副作用がこれでは話にならないぞと苦々しく思う。

「……とにかく、このままにしておくわけにもいかないな」

穹は浅羽の荷物を物色すると、中から財布を取り出した。
中身を確認してみる。千円札が数枚と、硬貨が十枚ほど。もちろんクレジットカードやキャッシュカードの類は持ち合わせていない。
中学生の平均的な所持金そのもので、これから戦争をするには心許ないという表現では到底足りない額だ。

「でもまァ、診察代にはなるかなぁ。ここからタクシー代まで出そうにはないけどね」

穹は浅羽を背中に担ぐ。
この不調の原因が魔術に関係する何かだったならば、病院で処置をしてもらっても効果は薄いかもしれない。
だが何もせずに手をこまねいているよりはマシだろうと判断し、穹は病院に向かって駆け始めた。

「すみません……」

意識を取り戻した浅羽が、穹の背後から声をかける。その声には悔しさが混じっていた。
今度こそと決意を新たにした途端に倒れたのだ。浅羽が己の不甲斐なさを情けなく思っても仕方がないだろう。
浅羽の心情が分かるからこそ、穹は優しく諭すように言葉を返した。

「君が悪いわけじゃない。気にすることはないさ。ただ……少し、面倒なことになりそうだ」

穹の言葉を聞いて浅羽の頭の中に疑問符を浮かぶ。面倒なことっていったい何だ?
浅羽の疑問に答えるように穹と浅羽の前に現れたのは――執事服に身を包んだ老人だった。
老人の姿を確認した途端に、穹の纏っていた雰囲気が一変する。

「何か御用でしょうか、御老人?」
「わざわざ教えずとも分からないほど愚図ではあるますまい。
 ウォルター・C・ドルネーズと申します。以後お見知り置きを――アーチャーのサーヴァント様」


525 : あの空の向こう側へ ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:09:48 De7V3IWg0
ウォルターと名乗った老人は、一目見て穹のクラスを看破した。
つまり、穹のステータスを視認したということだ。
間違いなく他のマスターの一人だということを確信した穹は、さらに警戒を強めた。

(近くにサーヴァントの気配はない……マスターが単独行動しているのか?
 あるいは気配遮断のスキルを使用して、どこかに潜んでいるのか……)

どちらにせよ奇襲を仕掛けずにこうやって姿を現してきたということは、問答無用でこちらを殺すつもりはないということだろう。
相手の第一目的が戦闘ではないということが分かっただけでも随分とやりやすくはなる。
何しろこちらはマスターが倒れる寸前なのだ。
穹も並大抵のサーヴァントに後れをとるつもりはないが、浅羽をかばいながら戦闘をするのは骨が折れる。

「手荒なことをするつもりは御座いません。少しばかり話をお伺いしたいと思いましてね」
「こちらも急いでるんだ。簡潔に頼むよ」
「それでは用件だけ単刀直入に述べさせてもらいましょう。私どもと手を組むつもりはありませんかな?」

ウォルターから穹たちに提案されたのは同盟だった。
最後に聖杯を得ることが出来るのはただ一組のみだということはみんな理解している。
だが同盟を組み共闘をすることで、最後の一組になる確率はかなり上がることになるだろう。
もちろんある程度局面が進んでしまえば同盟は解消することになるだろうし、穏便に別れることは出来ないかもしれない。
だがそれらのデメリットを上回るだけのメリットが存在していることも確かだ。
どうしても聖杯を得ようと思うのならば、選択する価値は十分にある。
だが、穹の口から出てきたのは保留の言葉だった。

「すまないが、こちらのマスターは不調で判断が覚束ないところでね。
 魅力的な提案はありがたいが、マスターの回復まで返事は保留ということにしたい」
「ふむ……それは残念ですな。ならば、もう一つ。今度は貴方一人に聞きましょうか、アーチャー。
 ――その少年から私に鞍替えをするつもりはありませんかな?」
「……僕にマスターを裏切れと?」
「見たところ、その少年は戦いには向いておらぬようです。真に聖杯を望むのならば、私の側につくのが得策かと。
 私のサーヴァントはどうやら聖杯には興味がないようですので、最後に取り合うようなことにもならないでしょう」

ウォルターが目を付けたのは、アーチャーのクラススキルである単独行動だった。
穹の持つ単独行動のランクはB。これは、戦闘をしなければマスター不在であろうと数日は現界可能なランクである。
ウォルターのサーヴァントであるレミリアには、昼間はその行動を制限されるという大きなディスアドバンテージがある。
そのためウォルターたちは昼間の行動に大きな制約がついてしまう。
だがアーチャーという第二のサーヴァントを従えることが出来ればその弱点をカバーすることが出来る上に、戦闘力の面で他の組を大きく上回るおとだろう。
単独行動持ちのアーチャーならば、魔力に乏しいウォルターへの負担も小さくなる。アーチャーが相手だからこそ、ウォルターはこの提案を持ちかけたのだ。

「……一つ聞いてもいいでしょうか」
「なんなりと」
「――貴方はいったい、誰のために戦っている?」
「ふふ、愚問ですな。それは勿論己のためですとも。
 満たされぬ思いを抱えたまま、私は数十年を過ごしてきた……その悲願を叶えるために、私はこの戦争を望んだのです」

ウォルターの言葉を聞くと、穹は小さく息を吐いた。
穹の長い髪の間から覗く瞳が、ウォルターを真っ直ぐに見つめている。
次いで穹が発した言葉は――

「悪いですが、僕は貴方の下につくつもりはありません。僕の主は昔からただ一人と決まってましてね。
 それに――僕は、自分のために戦う人間よりも、誰かのために戦おうとする人間の方が好きなんですよ」
「その少年の方が私よりもいいと。振られてしまいましたか。それでは――次に会ったときは、敵同士ですな」
「年寄り相手でも手加減はしませんよ、御老人」
「まだまだ若い者に席を譲るつもりもありませんとも」

にやりと笑い――ウォルターは、穹たちの前から姿を消した。
完全に気配が無くなったのを確認して、穹は背中の浅羽に話しかける。

「君も聞いていたとおり、僕の主は昔から光臣さんただ一人だけだ」
「…………はい」
「だけど、君と僕はよく似ている。誰かのために何かをしたくて、なのに何も出来なかった者同士だ。
 だから僕たちはいい友達になれるんじゃないかと思ってるよ、浅羽くん」


526 : あの空の向こう側へ ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:10:53 De7V3IWg0
穹をはじめとした六人の武門宗家の当主たちが光臣の側に仕えていたとき、彼らは「F」と呼ばれていた。
アルファベットの六番目の文字であり、武の頂点である高柳家の家紋、飛翔鳳凰を型作る羽根(feather)を意味する「F」だ。
光臣を高みまで届かせるための翼になることが、穹の存在意義だった。
だが、穹が前線を退いているうちに百年の戦になると言われていた人と魔の戦は終わり、光臣もまた武の道を弟に譲ることになった。

――存在意義を失った翼は、ずっと羽ばたく場所を求めていた。

「君が空の向こう側まで伊里野ちゃんを迎えに行くというなら、僕が君の翼になろう。
 ……たったこれだけを伝えるために、随分と長話をしてしまったね。
 昔から、お前は名前に似合わずまわりくどい男だとよく言われてたんだ」

穹の言葉は、高熱と倦怠感で混濁した浅羽の頭にも、なぜかすんなりと入ってきた。
突き抜けるような青い空を見たとき、胸の奥の方まで涼やかな気持ちが通り抜けるように。

「――ありがとう、ございます」
「さぁ、病院まで急ごうか。どうやら少しは落ち着いてきたみたいだけど、まだ熱もあるようだし……おっと、鼻血も出てきてるよ」

穹の指摘を受けて、浅羽はずずっと鼻をすすった。血の臭いが鼻腔を刺激して、少し気分が悪くなる。
そういえば、と伊里野のことを思い出す。伊里野も、よく鼻血を出していた。
鼻血が出るだなんて全然喜ばしいことじゃないのに、伊里野と同じだと思うだけでなんだか少し嬉しく感じる自分は変態なんだろうか。
そんなことを、浅羽は思った。


浅羽は、自分の身体の中で何が起きているのかを知らない。
此度の聖杯戦争が行われているのは、かつて夜科アゲハが死のゲーム「サイレン」に巻き込まれた世界と同一の世界である。
その世界には、あるものが充満していた。
普段は九割を休眠状態にあるという人間の脳細胞の全てを活性化させ、現代科学の常識を遙かに超えた事象を引き起こす思念の力――PSI(サイ)。
その力の源が、粒子となってこの世界に満ちている。アゲハがPSIの力に目覚めたのも、サイレン世界でPSI粒子を吸引したからだ。
そして、PSIは人間の脳細胞に多大な負荷をかけるために、その副作用として身体の不調や出血などを誘引することがある。
浅羽の不調は、このPSI粒子によるものであり、穹が感じた浅羽の魔力の増加とは、浅羽がPSIの力に目覚めていることの現れに他ならない。
この不調は半日も寝ていれば勝手に治る類のものであるが、目覚めたPSIの力を浅羽が使えるかどうかは未知数である。



【C-5・市街地/一日目・午前】

【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]発熱、鼻血
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得を目指す
1.穹に連れられて病院へ
[備考]
・PSIの影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。

【穹徹仙@天上天下】
[状態]健康
[装備]NATO製特殊ゴム
[道具]ダーツ×n本
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を目指す
1.浅羽を連れて病院へ
[備考]

【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.夜になるまでは単独で情報収集
2.アーチャーたちが向かうであろう病院は後回し


【不明/一日目・午前】

【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]ダメージ(小、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く
1.夜になるまでは拠点で休息

[共通備考]
虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。
発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。


527 : ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 04:11:44 De7V3IWg0
以上で投下終了です。
誤字脱字、矛盾点など見つけられましたら御指摘頂けると幸いです。


528 : ◆A23CJmo9LE :2014/09/21(日) 22:12:38 Hww73I2o0
投下乙です。
苦戦を経てウォルター主従は慎重に、対して浅羽主従は予想外のトラブル。
動けないマスターとサーヴァントを抱えて二つの主従はどこへ向かうのか…


一応気になった点を
PSIに覚醒するのは面白そうですが、それがあるとNPCはなんで大丈夫なの?まさか全員サイキッカーなの?
となってしまうんじゃないでしょうか。
加えてレミリアやモリガン、慶次などの魔力不足を補う独自回復手段の意義や、アゲハのアイデンティティーが薄れてしまうのでは。
今後多くのマスターがPSIに目覚めて全員ダウン、聖杯戦争停止というのはどうかと思いますし、そうなった場合その間活動できるアゲハが有利すぎると思います。

PSI粒子があるのはマップ上の一部だけ、とした方がいいんじゃないでしょうか。



あと別件の質問なのですが、この聖杯戦争で令呪は三画使い切っても大丈夫でしょうか?
まだみな潤沢ですが、念のため確認しておきたいです


529 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/21(日) 22:45:50 Lbi/l.i60

投下お疲れ様です!
ただ彼女のためだけだに。思い出に手を伸ばす姿に胸を撃たれます。
全てが思い通りに行く何て在り得ないけど、それでも……。
そして同盟は保留、確かにレミリアは太陽が出ていると行動が制限されますしね!
病院と言えば雁夜おじさんの所に救急車が……w
そんでこれで全員登場!……ですよね?皆様のおかげです!ありがとうございます!

それとPSIについてですね。
世界観がサイレン世界のため、アリかナシで言うと、アリです。
でもある程度誓約というかルールというか……決めていなくて申し訳ないです。
クロスオーバー大好きな私としては歓迎ですが全部が全部通るとは限りませんので。
それで仮案みたいな物を……↓

【PSI(覚醒等)について】

・ルールにも書いている通り世界観はサイレン世界の位置付けでありPSIの力に目覚めることも可能である。
・しかし全員が全員覚醒するわけではなく、NPCには『関係無い』ものとする。
・PSIに目覚める予兆があったとしても必ず目覚めるとは限らない。
・PSI粒子が溢れているエリアはマップ上に公衆電話がある地点とする。
・(A-1、A-4、A-8、B-3、B-7、C-2、C-5,C-7,D-4、D-6)
・そのエリアに滞在している≠必ずPSIの予兆が出る、であること。
・既に異能(非日常)の力を持っていればいるほど(強ければ強いほど)覚醒し難くなる。

……このような感じでしょうか。
参加者全員が目覚め、オリジナルな強い能力を手に入れるのは、どうかなぁ、と。
そのため既に何かしら能力を持っているキャラはその分PSIを手にしにくい、ということで。
暫定なため矛盾や曖昧な点、ハッキリとさせておくべき点とあるかと思うので意見等ありましたらお願いいたします。

>>528
令呪は使いきっても大丈夫です。自分の身は自分で守ってもらいましょう。


カレン、リンク、アゲハ、流子、人吉、垣根で予約します。


530 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/21(日) 22:48:40 Lbi/l.i60
忘れていました。

カレン、リンク、アゲハ、流子、人吉、垣根で予約します。


531 : ◆A23CJmo9LE :2014/09/21(日) 23:16:11 xHQrGbRc0
>>529
PSIについて、令呪について回答ありがとうございます

PSI粒子は今のところそれでいいと思います


532 : ◆BATn1hMhn2 :2014/09/21(日) 23:30:57 9rc3A78w0
御指摘ありがとうございます。
>>529で提示していただいたルール案を下地に明日にでも修正稿を投下するつもりです。

作外で弁解するのは恥ずかしいことですが、いくつか補足説明をば。
クロスオーバー要素としてPSI≒魔力という前提で描写をしていましたが描写不足でしたね……
非魔術師がどうすればサーヴァントを使役できるかという問題についての自分なりの解答のつもりでした。
イメージとしてはPSIに目覚めてもMPの最大値が上がるだけで、会場に満ちたPSIが魔力回復手段になるという風には考えていませんでした。

また、アゲハたちも原作では相応の修業をしなければPSIを能力として使えるようにならなかったわけで、
聖杯戦争で初めてPSIに触れたキャラがサイキック能力を使いこなすことはほぼ不可能に近いのではないかと思います。
これからの展開で何人かPSIの可能性に目覚めたとしても、それがアゲハの没個性化には繋がらないと考えました。


533 : 名無しさん :2014/09/21(日) 23:59:38 QA.NkGk.0
投下乙です!
これはまた濃い……ウォルターの老練さがファンには嬉しいなあ
イリヤの空、UFOの夏はタイトルばかりで未読でしたが、すごく魅力的に心情や重なりが描かれてるので、改めて読んでみたくなりました!


534 : 名無しさん :2014/09/22(月) 00:41:29 LSeiYee20
投下乙です。
空をキーワードにつながった主従。
片や空へと昇らせる羽根、片や空に置いてきぼりにされた少年。
イリヤにとってのブラックマンタが羽根だったように、浅羽にとって、弩も羽根になるんだろうなあ。
優勝狙いだけど、王道の主従なんだよね、この二人。
空の向こうに大切なものを無くした同士が、一体どうなるのか。
ウォルターからしたら眩しくてしかたがないよなあ。


535 : ◆BATn1hMhn2 :2014/09/22(月) 23:17:22 WegpHIqk0
修正版を直接wikiのほうに収録しました
主に本文ラストの部分に>>529を元にした加筆をしています


536 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/22(月) 23:56:07 K4fkQ0y20
予約を延長します


537 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/23(火) 21:47:15 ebSCzXZ60
短いですが、投下します


538 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/23(火) 21:48:31 ebSCzXZ60
『……どうもこんばんは。今夜も貴方方に素晴らしいショーをご提供致します』



『何?この前と別人なのかって?ご安心を、物語の登場人物は今までと変わりません』



『それでは皆様お待ちかね、「地獄の機械」に繰られた男女の物語の開幕と致しましょう』



『おっと、心臓の弱い方は気をつけて……。物語の中に一部、ショッキングなシーンが御座います……』



『では皆様お静かに、開演の時間で御座います……』



暁美ほむらは、キャスターを信用していない。
故に、彼女はキャスターにほとんど自分の情報を公開しなかった。
伝えたことは自分が魔法少女であること、銃器を使った戦法を得意とすること。
そして、敗北は絶対に許されないことの三点だった。



日が昇り、遊園地を優しく照らしている。
魔法少女、暁美ほむらは手で日光を遮りながら、鬱陶しそうに太陽を睨む。

ほむら以外、生きている人間がいないこの遊園地。
人目を気にすることなく行動できることは良いのだが、視界の端にちらちらと映る自動人形が目障りでしかたがない。

そもそも、デザインが気に食わない。
彼女が扱う機能性に特化した銃器と違い、自動人形はよく言えば遊び心、悪く言えば狂気がふんだんに練りこまれた容姿をしている。

悪い冗談のような、子供の悪夢に出てきそうな怪物。
ある意味、魔法少女の成れの果てである『魔女』に似ているのかもしれない。
そういう意味では、彼女が自動人形を嫌悪するのも当然だといえた。


(いいえ、こんなことを考えている場合でもないわ)

雑念を振り払う。
暁美ほむらには試したいことがあった。

キャスターから離れている間にその考えを思いついただけで、ほむらがキャスターから離れたのは、近くにいたくないという嫌悪感だ。

もう一度、辺りを確認する。
近くにあるアトラクションは観覧車。
乗客がまったくいないそれは動きを停止させ、一つのオブジェになっていた。
視界に入る自動人形はおおよそ10体ほど。

キャスターの作った自動人形の数はさほど多くはない。
生前のような大軍団と比べたら、拍子抜けするほど少数だ。
しかし、そう感じるのは生前を知っているものだけ。
ほむらからすれば、この人数でも不気味以外の何物でもない。
そして、この軍勢は更に増え続ける。
三日もすれば、大軍団と呼ぶに相応しい規模になるだろう。

その光景を幻視しながら、彼女はその装いを変えた。
魔力によって、その装いを制服から魔法少女の衣装へと変化させる。
紫と白に彩れたそれは、魔法少女と呼ぶにはどこかクールで冷たいものだが、これが彼女の戦闘服にして、魔術礼装。
自動人形の動きを確認する。
不気味な笑いを浮かべながら徘徊しているそいつらは、こちらが『変身』したことにまだ気づいていなかった。
(間抜けな人形ね)
心中でそう呟き、彼女は盾に触れる。


539 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/23(火) 21:49:00 ebSCzXZ60
そして、ほむらは時を止めた。



全てが静止した世界。
マスターもサーヴァントも、恐らく天戯弥勒でさえも停止した、彼女だけの絶対空間。
今や、世界は彼女のものだ。

暁美ほむらの時間停止には、とあるスタンド使い達のような、特に決まった制限時間は設けられていない。
短く繰り返して、トラックに追いつくこともできるし、長期間停止させて、軍事基地から武器を回収することもできる。

極端な話をすれば、今から街に繰り出して冬木の生きとし生けるものを皆殺しにすれば、この戦争は終わりを告げる。
停止している時間内で抵抗できる者は誰もいないのだから。

だが、果たしてそんなに簡単にこの戦争は勝たせてくれるのだろうか。
それではなんのためのサーヴァントだか、分からなくなってしまう。

彼女の出した仮説は、『時間停止はできない』だった。
天戯弥勒によって、自分の時間停止は封じられている。
それが妥当だと、思っていたのだが……。

「意識だけ、というわけでもないようね」
盾から銃器を取り出しながら呟く。

「……有利に越したことはないわ」
聖杯戦争は、思ったより簡単に事が運びそうだ。

暁美ほむらは、そう結論付け。

そして、時は動き出す。



「なっ!?」
思わず顔が驚愕に歪んだ。

突如、彼女の魔法は途切れ、世界は正常な時間を取り戻した。

今まで自分の経験には、無かった出来事だ。

しかし、暁美ほむらはただの少女ではなく、魔法少女。
驚愕は一瞬で途切れ、すぐに結論を導き出す。

(なるほど……時間制限ということ)

止まった時の中の制限時間など、ふざけた言葉だが、彼女の『制限』を表すのにもっともふさわしい言葉だった。

正確にカウントをしていないが、どうやら10秒ほどがほむらが支配できる時間。
それ以上は、天戯弥勒にか、はたまた『聖杯』にか、彼女の魔法は封じられていた。

(いつもより疲労も激しい。連続で止め続けるのは、負担が大きい)

前言撤回。
大変不愉快な話だが、この聖杯戦争。
サーヴァントの助力無しでは勝ち抜けないようだ。

「あっれーマスター。いつその銃抜いたんですか〜。それに服装も変わってる」

さっきから視界に入っていた自動人形の一人が、ほむらに近づいてきた。
一応、監視はしていたらしい。
自動人形からすれば、目を離した隙にいつのまにか衣装が変わり、銃器を抜いていたのだから、驚くのも無理はない。

ほむらは無視しようかと一瞬思ったが、『確認』すべきことはもう一つある。


540 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/23(火) 21:49:27 ebSCzXZ60
「自動人形(オートマーター)。貴方は、私の命令に忠実かしら?」
魔法少女の装いのまま、彼女は醜悪な人形へ問いかける。
突然の質問に自動人形は不思議そうな顔を浮かべたが。
「へっへっへ。そりゃあもう」
と、笑みを浮かべた。

なぜ、キャスターといい、こいつらはすぐ笑うのだろうか。
しかもその笑みは必ず醜悪に歪み、見ていて嫌悪感しか湧かない。

「そう、跪きなさい」
彼女がそう言葉を発した瞬間、自動人形は崩れるように膝をついた。
流れるようなその動きは、まるで仕込まれたプログラムに従うようで。
見ているほむらも驚く程の俊敏さだった。

「本当に忠実なのね」
「俺は自動人形ですから」

どれだけ人間らしい動きをしても所詮は人形。主の命令に背くことは出来ない。
それを実感したほむらは、更なる『実験』を続ける。

「もう一つ質問をするわ。私とキャスター、優先する命令はどっち?正直に答えなさい」
「……造物主様です、マスター」
僅かに迷ったような素振りを見せるが、自動人形は正直に真実を明かす。

造物主、つまりキャスターの命令がほむらより優先度が高いということ。
自動人形はほむらよりもキャスターを優先して動くということだ。
やはり信用できないと考えながら、ほむらは撃鉄を起こした

「そう。もう一つ命令するわ。避けるな」

銃口が火を噴く。

「うぎゃああああ!何するんですか、マスター!」
弾丸は頭部に当たり、穴を開け、自動人形はそこから液体を撒き散らした。
顔をオーバーに歪ませ、目からは涙のように液体を出す自動人形を、ほむらは何の感慨もなく見つめる。

痛がっているが、機能停止にまでは至らない。単純な銃器で仕留めれるほど、自動人形の俊敏性や耐久性は低くないのだ。

しかし、ほむらが注目したのは弾丸が効いたということだった。
(自動人形には、物理攻撃も効く。この銃じゃ火力不足だけど、武器さえ選べば殺せるわね)

「大した忠誠心だわ、自動人形。最後の命令よ、自害しなさい」
そして、突然の死刑宣告が行われる。
これには自動人形の顔からは笑みが消え、驚愕と怒りが湧き上がる。
「は、はあ!?何故ですか、マスター!」
自動人形からすれば、たまったものではない。
自分の行動に何も問題は無かったはずだ。しっかりと命令には答えたし、人間が気にするであろう吸血も、この自動人形はまだ行っていない。本来なら軽く回避できる銃弾を、避けずに当たってやったのだ。

殺される理由がない。何故殺されなければならない。作られて一日の命など、あんまりだ。

暁美ほむらは語らない。
ただ、じっと解剖されるカエルを見るような目つきで、自動人形を見つめる。
ここで初めて、この自動人形は暁美ほむらの暗い殺意に気がついた。
このマスターは、自分達自動人形をゴミか何かにしか思っていないのだ。

「造物主様!造物主様!今すぐご命令を。自害を止めろと、この餓鬼を殺せと、そう言ってください!」

自動人形は天を見上げ、自分達の神であるキャスターに祈る。
もはや忠義の皮など脱ぎ捨てる。
ここまでこけにしてくれたこの人間へ復讐を!彼の思考を満たすのは憎悪のみ。

だが、自動人形に神はいない。
キャスターからの指示は、無し。
それ故に、自動人形はその任務(オーダー)を執行する。
自分で自分の胸版を引き剥がし、中身を自らの腕で外へぶちまける。
様々な部品が地面に落ち、乾いた音が遊園地に響く。
自らの顔を掻きむしり、人間の顔を模したそれを、元の鉄くずへと帰す。
泣き叫びながら自分で自分を解体していく自動人形を静かに観察する暁美ほむら。
人形にとっての悲劇であり、人類にとっての喜劇であるその演目は。
暁美ほむらの心にまったく波を立たせなかった。

自動人形が、自らを残骸に変え切った時。
『おいおい、ひどいことするな。もう裏切るのかい?』
キャスターからの念話が、暁美ほむらに届いた。


541 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/23(火) 21:49:56 ebSCzXZ60
『別に裏切るつもりはないわ。自分のできることを確認しただけ』
そう、サーヴァントのように自動人形も自害させることができる。いくつか制約があるが、これを知れたことはほむらにとって大きな収穫だった。

『あんまり壊さないでくれよ。僕らの大事な兵隊だぜ』
大事に思うのだったら、助ければ良かったのに。
ほむらはそう思ったが、念話には乗せなかった。

『そろそろ戻ってこいよ。アポリオンにいくつか面白い映像が写ったんだ。ほむらにも、動いてもらう必要が出てくるかもしれない。僕は会議室にいるからさ』
『わかったわ』
そこで、念話を打ち切る。
必要最低限の会話以外は口を聞きたくない。

それにしても、もっと怒りも見せたり、糾弾されると思ったのだが。
キャスターの雰囲気はまったく変わらなかった。
これくらいでは、奴にとっては痛くも痒くもないのだろう。

もちろん、ほむらも今からキャスターと戦うつもりはない。
一体だけなら、対立せずに穏便に済ませられると判断したからこそ、この実験を行ったのだ。

不機嫌な顔をしながら、暁美ほむらはその場を後にした。
残ったのものは、一人の哀れな自動人形の成れの果て。

そしてそれを面白い物のように見つめる他の自動人形。

彼らに倫理観は無く、彼らに仲間意識は無い。
だから彼らは人類の敵なのだ。

惨劇の前に、戦いの前に、開幕の前に、一人の魔法少女の『実験』で命を落とした哀れな人形の残骸が、日光に照らされ横たわっていた。



会議室に備わっているモニターを確認しながら、銀のキャスターは顎鬚を撫でる。
少年のような残酷さと老人のような老獪さを両方備えるサーヴァント。
クラスはキャスター、真名は白金。
生前、一人の女への歪んだ愛情で人類を滅亡寸前にまで追い込んだ、反英雄。
それが、今椅子に王のように座る、老人の正体だ。

彼がつい先刻まで気にしていたのは、病院の屋上で会話をする男女だった。
学校には行かず、されど不良のような格好をしているでもない。
どうにも怪しい、とキャスターはこの二人に当たりをつけた。

「ほむらか、もしくは『最後の4人』のうちの誰かを送るのもいいかもな」

二人は病院からバスに乗り、学校とは反対方向へ向かっていった。
向かう先は地図の端。
何故そこへ向かう。

(会場外の調査というわけか。絶対こいつら参加者だな)

真っ黒に近いグレー。
しかし、キャスターにも馴染みがある日本の諺では、『疑わしきものは罰せよ』。
罰(戦闘)か、様子見か、懐柔か。
キャスターはしばし、思索を進める。
と、同時にアポリオンから流れる映像も確認。

二つを同時に進めながら、キャスターは余裕の笑みを崩さなかった。

そして、アポリオンは一つの映像を捉えた。
映し出された映像に写っていた人物は、三名。
警官、ほむらと一緒くらいの年齢の少女、麦わら帽子の青年。


542 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/23(火) 21:50:20 ebSCzXZ60
カップルが警察から職務質問をされている図に見えなくはないが、本質は大きく異なる。
銀のキャスターにとって幸運だったことは、その瞬間をアポリオンが捉えていたこと。
麦わらのライダーにとって不幸だったことは、その瞬間をキャスターに見られたこと。

「こいつ……いきなり現れたなァ」

決まりだ。
警官、少女。
どちらか、あるいは両方がマスターだ。

こうして、キャスターの頭の中に三人の人物が浮かび上がる。
青髪の少女。サーヴァントは物騒な雰囲気を放つ高校生くらいの男。
しかし、不確定な情報も多い。
桃色の髪の少女。あるいは警官。サーヴァントの候補は、麦わら帽子の青年。
白昼堂々サーヴァントを現界させていることから、よほどの自信家なのかただの馬鹿なのか。

さて、新たに現れた三つの駒。
どう使えば、『夢』に繋がるのか、キャスターは考える。
「うーん、あいつにも相談するか。『最初は』仲良く絆を深めるべきだよな」

そう言って、キャスターはほむらが嫌悪する、醜悪な笑みを浮かべた。

太陽が登っている中、キャスターの狂気がゆっくりと冬木に牙を伸ばしている。

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(中)、苛立ち
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
 1.単独行動。
 2.キャスターに対する強い不快感。
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。


【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]健康
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
 1.アイツら(さやか達)はどうしようかね。
 2.あの馬鹿(まどか、タダノ)も面白そうだな
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 現在、さやか、まどか、タダノを捉えています



『いよいよ歯車が回りだそうとしています。少女と翁、二人の愛の求道者はどのような末路を迎えるのか』



『ただ、一つ言えることは周りの人間すればたまったものではない、ということでしょうか』



『これから二人が巻き起こす演目(ショー)を楽しみに待ちながら、本日はお開きと致しましょう』



『それでは、一時閉幕となります……』


543 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/23(火) 21:51:37 ebSCzXZ60
投下を終了します
問題点、矛盾点がありましたらどんどんご指摘お願いします


544 : 名無しさん :2014/09/23(火) 23:01:28 rsUr9XxA0
「疑わしきは罰する」は現代司法を皮肉るために使われるもじりであってそれ自体が諺ってわけではない


545 : 名無しさん :2014/09/23(火) 23:27:35 ZJA3eYF.0
投下乙
仲良くないなこいつらw
キャスターも素直に教えればいいしほむらも自害せよって……
キャスターが目につけてる候補がまどかとさやかか
ほむほむはどうするのかなぁ
でもこのほむほむは叛逆じゃないんだよなぁ


546 : 名無しさん :2014/09/23(火) 23:39:29 b0EPhOeA0
投下乙です!
こいつらが仲良くなる未来が見えねぇ……w
フェイスレスが目をつけたのはまどマギ勢か
どっちに手を出すにしてもほむらの対応がどうなることやら
制限がかかっているといっても10秒の時間停止はかなり強力だよなぁ
キャスターの能力と相まって、手段を選ばなければエグいくらい強い


547 : 名無しさん :2014/09/23(火) 23:57:27 gE5R6A2U0
投下乙です!
これはいい掘り下げ回
自動人形とフェイスレスはよく笑う、その笑顔の醜悪さ、というのがすごくなるほどと感じる表現でした
壊した人形を何の感情もなく見下ろすほむほむ……からくりサーカスのテーマの1つに「人形のような人間、人間のような人形」というのがありましたが、何となくそれを想起する雰囲気です
フェイスレスの不気味さが彼らしくてこれまたいい
遊園地が伏魔殿と化しつつあるなあ


548 : 名無しさん :2014/09/24(水) 00:01:30 UW4d4/uM0
読み返して気付きましたけど、時間と場所の表記が抜けてるみたいですね


549 : ◆oLzajvgbX6 :2014/09/24(水) 16:07:04 MM/6AAGA0
感想、指摘を書いてくれた皆さん、ありがとうございます!
とっても励みになります
うっかりしていたのですが、タイトルは「クール&スマイル」、時間は【B-6/午前】です
これからは気をつけます


550 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/24(水) 19:20:00 3ShO52CM0
投下お疲れ様です!
お互いに干渉はしてるっちゃしてるけど歩み寄らない二人ですねw
ほむほむは人形を始末する姿から願いのための覚悟が感じられました。
フェイスレスが見た情報はほむほむにとって大きな分かれ道になりそう。
前の方が書いていましたがこのほむほむは叛逆のようになるんでしょうか、ね。
まどかとの出会いが彼女の運命をまた大きく動かしそうです。

まだ期間はありますが、念のため予約を延長します。


551 : 名無しさん :2014/09/26(金) 22:45:48 zqptpzTM0
ここの影響でサイレン買ったよ


552 : ◆wd6lXpjSKY :2014/09/26(金) 23:05:53 lmkji9bE0
>>551
嬉しいです、ありがとうございます!


553 : ◆A23CJmo9LE :2014/09/27(土) 22:24:46 ZSvkE8Zw0
暁美ほむら&フェイスレス、予約します


554 : 名無しさん :2014/09/28(日) 22:31:39 09vs1EzoO
時間停止中に自動人形を動かせるかで、ほーむレス組の戦力が大きく変わりそう。


555 : ◆A23CJmo9LE :2014/09/28(日) 22:35:15 9oupwWCU0
投下します。


556 : Gradus prohibitus ◆A23CJmo9LE :2014/09/28(日) 22:36:09 9oupwWCU0
『さぁて、みなさまお立合い。数多の戦士が駆ける「アッシュフォード学園の物語」、私も楽しみにしております』



『ではその頃、遊園地で愛の求道者二人は如何にしているのでしょうか』



『サーカスとは一連の流れのあるもの…これよりしばし、そちらの方を御覧くださいませ』




□ ■ □

「来たね、マスター。まあ座りなよ。お茶でもどう?それともコーヒー?」
「いらないわ。映像というのを早く見せなさい」
「つれないなァ」

表面上だけは友好の意思を取り繕うサーヴァントと、余計な干渉は不要と切って捨てるマスター。
会議室の棚から盗ってきた安っぽいインスタントの飲み物を人形に入れさせる、所詮その程度の誠意。
この局面で毒を盛るには早すぎる…警戒はしていないが、気を許しもしない、険悪な距離感。
そんな状況はこの二人の関係と性格をよく表している。

「じゃあ本題に入るとするけど…マスターはメロンとラズベリーどっちがいい?」
「……本題に入るんじゃなかったの?いらないと言ってるでしょう」

急かしてもマイペースを崩さない男に不愉快だと表わす。
回りくどい言動も。悪趣味な人形の顔貌も。執念深いとしか言いようのないオモイも。全てが気に喰わないと彼女は思った。

「そうじゃなくってさー、映像見る順番、決めようと思って。二つあるけどいいニュースか悪いニュースか分っかんねーからそういう質問できなかったんだ。
で、メロンとラズベリーどっちが好き?」
「……強いて言うならカボチャが好きよ」
「ああ、いいよねカボチャ。シンデレラが王子様に会いに行く馬車とか、悪魔にとられないよう魂をしまっておくランタンだとか。僕もマリオネットのモチーフにしたことあるよ。
じゃあ映像の方は僕の独断でラズベリーね。ちなみにラズベリーの花言葉は愛情と、深い後悔。知ってた?」

適当にあしらったつもりが自己完結して話を進められ、さらに苛立ちを増す。
彼と違い、精神汚染スキルを持たない身ではこうなるのも仕方ないか。

そして流れ出す映像。映っているのは病院の屋上で話す男女。

(美樹さやか!?彼女もここに来ていたというの!?)

そこに映る見知った顔に内心激しく動揺するほむら。NPCの可能性も考えるが、横の男に見えるステータスにその説を否定。
直近の時間軸では彼女は魔女になって果てた…ならば別の時間軸の存在とアタリをつける。

「聞きたかったのはまずコレ。ほぼ確信してるけど、あの男サーヴァントだよね?」
「ええ。ステータスは敏捷と幸運が低め、他はそれなり。真っ向勝負は若干不利かしら。映像でもステータスは分かるのね、カメラとか気を付けなさい」

動揺を抑えてポーカーフェイスを保ち、質問に答える。
とは言え聖杯戦争の定石など分からないのだから、あのサーヴァントのステータスがどの程度の物なのかも分からない。
キャスターよりは少しばかり高いように見えるが、あれが優秀なのか、これが劣等であのくらいが普通なのか、揃って平均以下なのか。

「若干不利ね、まあ前にも言ったがキャスターは真っ向勝負は向いてない。筋力やら耐久がD以下なんてのがごろごろさ。もっとも僕は正面戦闘もそれなりにできるスゲーキャスターだけど。
あと多分カメラは問題ないよ。この映像はあくまで僕の作ったアポリオンを中継しているからね。フツーの道具越しならバレねーんじゃねーかな」

子供が自分のオモチャやテストの点数を誇るように、自慢げに語る老人。
確かに発言を信じるなら優秀な『目』だし、ステータスについても優秀な部類かもしれない。
そういったメリットを性格の悪さだけで心理的に打ち消しにできるというのもある意味で凄まじい。

「で、この二人はバスに乗って西へ。マップ外の調査に繰り出したみたいだから、あ、参加者だと確信したんだけど、そこでまた面白いことが起こったんだ。そこから聞きたいことはいくつかあるよ〜ん」

バスを降り、マップ外へと向かっていく美樹さやかとそのサーヴァントを見る。
二人がおそらくマップの端であろうと思われる地点までたどり着き、一度引き返したように見えたがすると、奇怪な怪物が現れた。
そしてそれに対して魔法少女の姿に変身し、戦闘態勢をとった美樹さやか。

「次に聞きたいのはコレ。彼女、マスターに似たようなことできるんだね〜、もしかして知り合いだったりする?」

サングラスから眼をのぞかせ、探りを入れるように問う。未知の怪物ではなく、既知の敵の情報を求める。
それは敵を知るためではなく、マスターのことを知るため。情報戦はココでも巻き起こる。


557 : Gradus prohibitus ◆A23CJmo9LE :2014/09/28(日) 22:37:30 9oupwWCU0

「ええ、よく知っているわ。向こうが私のことをどのくらい知っているかはわからないけれど」
「ふぅん、どんな子だい?できれば能力も知りたいなァ」
「名前は美樹さやか。基本的には善人だから協力体制を築くのも不可能ではないでしょう。主に剣を使った戦闘を得意にしてる」

ある程度は明かしても構わない。ソウルジェムについてはともかく、彼女個人のスペックは話してもデメリットは特にない。
むしろ、今後のことを考えるなら少しくらいは明かしておく必要があるだろう。少しだけ。

「……え、それだけかい?そんなんでよく知ってるとは言えないと思うんだけど」
「それは必要な情報かしら?あなたは前にサーヴァントはサーヴァントでしか倒せない、と言っていた。それなら彼女がどんな人物だろうと問題は無いでしょう?
逆に私はあの男には勝てないのだから、あなたはそちらについて考えるべきじゃないかしら」

とりつく島もない態度にさすがに諦めたかやれやれと首を振る錬金術師。

「わぁったよ、マスター。その様子じゃあの化物についても何も期待はできなそうだ。じゃあ次はメロンに行こうか」

バイクで移動を始めた二人から特に得られる情報もないだろうと、次の映像を流し始める。そちらに映っているのは警官らしき男と話す制服の少女と、傍らに立つ麦わらの男。
今度の映像には先ほどとは比べものにならないの驚愕、絶望を覚えた。

(まどか…!?彼女までここに……!?)

NPCだ。そうに決まっている。彼女をよく知る魔法少女が二人もいるのだからその記憶から再現されたに決まっている。
だがそれが間違っているのは見てわかる。
麦わらの男はサーヴァントだ、ステータスを見ればわかる。そしてその男の失言を庇おうとまどかは動いているように見える。

鹿目まどかは、麦わらの男を従えるマスターとして聖杯戦争に参戦している。受け入れたくない現実がそこに在った。

「おーい、マスター、聞いてる?アレもサーヴァントだろう?人形なり、『最後の四人』なり、もしくは君に動いてもらおうかと思ったんだけど、どう?
どっちに行くか、戦闘か様子見か懐柔かは決めかねるから、一応君の意見も聞いときたくてね」

苦悩は終わらないが、悩み続けてもいられない。今は戦場なのだから。
そして共にいるのは陣営を同じくするだけで、気を許せる存在ではないのだから。

「美樹さやかと同盟を組むわ。人形を一体借りるわよ」
「ッ、おいおい、今度も説明なしかい?さすがに戦場の方針くらいは聞いときたいのが人情ってもんだろう?」

いざ敵との接触となると無視はできない。自分にも影響はあるしなにより



どちらかが切り捨てられる可能性があるのだから。



「あの麦わらのサーヴァント、強いわよ。あなたも、美樹さやかのサーヴァントも目じゃないくらいね。人形を使っても陣地で戦っても不利でしょうね、断言する。
だから同様の状況であろう彼女と組むのよ。人となりは知っているから交渉は私に任せてもらうわ」
「…んー、まあそれならしょうがない、かなぁ。そこにいるやつでいい?」
「美樹さやかと接触できるなら何でもいいわ」

お茶を入れ損ねた人形が一体、部屋の隅に控えていたのでそれに指示をだすことにする。
交渉は任せる、と言ったしどう動くのが気になるので静観するフェイスレス。
すると暁美ほむらは盾から何か…グリーフシードを一つ取出し、人形に渡してこう言った。

「美樹さやかに接触してこれを渡しなさい。その上で伝言、『彼女を助けるのに協力してほしい。遊園地で待つ』と言っている魔法少女がいると」
「へ〜い」

適当な返事をして飛び立つ自動人形。バイクで動く二人を探す以上、機動力に長けたものが動くのは悪くない采配と言えよう。
モニターから離れればどこにいるかは分からなくなるが、これならどうにか接触できるだろうと少し安堵する。


558 : Gradus prohibitus ◆A23CJmo9LE :2014/09/28(日) 22:38:52 9oupwWCU0

「随分言葉少なな伝言だね。協力を求めるならもっと誠意を見せるべきじゃない?」

それをあなたが言うのか、という言葉を飲み込み一応の答えを返す。

「私は彼女のことをよく知っているけれど、彼女が私のことをどう思っているかは何とも言えないのよ。身分証は持たせたからそれで十分」
「あっそ。じゃあ麦わらのサーヴァントはどうすんの?」
「監視は続けるけれど、静観よ。そもそも美樹さやかにはあのサーヴァントを倒すための協力体制を提言するのだから、そちらと下手な接触を持ってしまったら交渉の邪魔になるわ。
余計な動きは避けて、まずは一つに集中させて頂戴。まさか聖杯戦争に勝つための動きを邪魔立てはしないでしょう?」
「はいはい、了解したよマスター」

自分が主役でない劇には興味を抱けないのか、聞くだけ聞いて途端やる気無さげに振る舞うキャスター。

「他のサーヴァントの襲撃もあり得るし、交渉失敗した場合は戦闘にもなり得るのよ?そんなに気を抜かないで」
「分かった分かった」

口頭では注意をするが、そこまでやる気は出さずにそのままでいい、と内心ほくそ笑むほむら。
周り全てが敵ならばこの男と二人、文字通り騙し騙しやっていくのも仕方ないと、やっていけると思った。
だがまどかがいるのならばそうは言っていられない。この男はまどかに対しても一片の容赦はないだろう。むしろ私の弱みを握ったと嬉々として動くだろう。
美樹さやかがいるのならばこの男で妥協する必要はない。彼女は協力者として満足いくかというと微妙だが、余計な腹芸が必要ない分今よりよっぽどましだ。

まどかのサーヴァントの情報を偽ったのはキャスターを切り捨てるため。
劣等なステータスと言うわけではないが、勝負にならないと言うほどではない。美樹さやかのサーヴァントや陣地内のキャスターで勝負にならないということは、恐らく無いだろう。
だがああ言っておけばまどかに安易に手出しはできないだろうし、美樹さやかと組む口実にもなる。
彼女との関係は険悪になることが多かったが、友好的だった時間軸もなくはない。もし険悪だとしてもまどかを守るためだと言えば交渉の余地はあるはずだ。

彼女と協力し、キャスターになり替わる私のサーヴァントを確保、その後あの男を自害させる。
この地にいるまどかも、見滝原に訪れるワルプルギスの夜含む脅威にさらされているまどかも救う。その目的で美樹さやかと同盟できれば、まどかの陣営とも協力できるはず。
彼女たちの願いも気にはなるが、私のものとそうかけ離れてはいないんじゃないだろうか。それなら、きっと大丈夫。
問題はアポリオンとかいう蟲型の人形だが、静止した時間の中には干渉できないはず。10秒あれば十分、まどかの存在とワルプルギスの排除について話せればいいのだから。
それにキャスターの胡散臭さは一目でわかる。アレを切り捨てるという判断には疑念は抱いても納得はするだろう。

もし交渉に失敗したなら…彼女のサーヴァントを貰い受け、キャスターには消えてもらう。そのための方法も考えてある。
自らの『手』に宿った令呪を見る。
『私』はソウルジェムであり、この『手』は私のものではない。外付けのハードにすぎないが、そこに令呪は宿っている。
マスターが命を落とせばサーヴァントは魔力供給を受けられなくなり消失、令呪も消える。
ならばソウルジェムが肉体から離れ、『体』が死んでしまえばそれはマスターの死と同義であり、サーヴァントは別のマスターと再契約できるはずだ。

交渉が決裂したなら時を止めてソウルジェムを奪い、キャスターを自害させてあの男と再契約。ソウルジェムを返して美樹さやかにはテレホンカードで脱落してもらう。幸い近くに公衆電話もあると蟲からの映像で確認していた。
もしそうなった場合、あの不良風のサーヴァントと良好な関係を築くのは難しいだろう。
だが、今のキャスターほど面倒な男ではない事はわかる。


559 : Gradus prohibitus ◆A23CJmo9LE :2014/09/28(日) 22:39:22 9oupwWCU0


あの美樹さやかがマップ外の確認をし、遭遇した怪物と交戦せずに戦略的撤退などと言う判断を下せるとは思い難い。
よく言えば真っ直ぐな、はっきり言って猪突猛進な彼女が冷静な動きを見せたのは、間違いなくあのサーヴァントが手綱を握っているからだ。
彼女がその方針に従うということはきっと、彼女の思う正義の味方のように強くまっすぐな、憧れる…けれどもどこか彼女に似通った英霊なのだろう。


まどかのサーヴァントもそう。まどかは自分には価値がないと勝手に自虐して誰かのために自分を犠牲にしてしまう。でもそれは他の誰にもできない強さ、誇り高さ。
あの麦わらのサーヴァントも些細だけれど、まどかが自転車にあてられないように動いていた。彼はボロボロな服装なのにまどかには傷一つついていない。
誰かを守るために自らの痛みを顧みない強さを持った、やはりどこかまどかに似た英霊なのだろう。


私のサーヴァントもそうだ。認めよう、あの男は私に似ている。事実私はまどかのためなら世界を滅ぼしかねない危うさを秘めているのは薄々自覚していた。
あの男を見ていてそれは確信に至った。あいつに向ける其れは生理的嫌悪もあるが、同族嫌悪や自己嫌悪のそれだ。
サーヴァントとマスターに近似したものがあるというのは事実なのだろう。
見滝原も、巴マミも、佐倉杏子も、美樹さやかも、時にはまどかすらも利用したり見捨てたりした私は、堕ちるところまで堕ちればあの男と完全な同類になるというわけだ。

だがそれでも構わない。まどかのためならばいくらでも腐ろう、汚れよう、堕ちよう。私はそう思う。
そして同じことをキャスターも思うだろう。そんな男と信頼関係を結ぶなどムリだ。ならせめて、正義の味方のような英霊と険悪な仲で闘う方がましと言うもの。
いがみ合いにはなるが、騙し合いにはならないだろう。

美樹さやかを死なせたくないのはその険悪な仲を少しでも穏やかにしておきたいから。
それに、彼女もインキュベーターに騙され運命に踊らされた被害者なのだから同情位はする。散々かき回してくれる彼女のことは好きではないが、一抹の友情位はある…と思う。
それはあの男と同類になりたくないというちっぽけなプライドに過ぎないだろうか。
美樹さやかと協力関係を築こうとしている私はあの男よりましだと思う。しかし、彼女のサーヴァントを奪おうとしている私はあいつと同じ穴のムジナに過ぎないのだろう。




今はもう。もうだめよ。でも構わない。それでもいい。





【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(中)、苛立ち
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
 1.美樹さやかを呼び出し、同盟を申し出る。
 2.交渉に失敗した場合、美樹さやかのサーヴァントを奪う。
 3.キャスターに対する強い不快感。
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノの姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※グリーフシードを一つ持った自動人形を美樹さやかの下へ向かわせました。伝言は『『彼女を助けるのに協力してほしい。遊園地で待つ』と言っている魔法少女がいる』


560 : Gradus prohibitus ◆A23CJmo9LE :2014/09/28(日) 22:39:46 9oupwWCU0











(あまりに怪しすぎるよ、お嬢ちゃん)

勝てないと断言する。聖杯戦争に勝つための動きを邪魔するなと念を押す。
…聖杯戦争の勝手がわからないマスターが?
強い物言いの前後には虚言が混じるというのはよくあること。
彼女は情報を伏せるだけでなく、何らかの嘘をついた。その目的は?何を偽った?

(さやかちゃんとやらについては嘘はないだろう。黙ってればいいんだから。じゃああの化物?麦わらのサーヴァント?警官?
いやいや、普通に考えてあの二人と年代の近い、『魔法少女』かもしれない、桃色髪の女の子が怪しいよねェ)

監視だけにしろと言った以上、余計な干渉はやめた方がいいだろう。彼女も恐らく余計な動きをしないよう僕を見張るはず。

(でもやれることはあるさ。監視は許されてるんだから、ね。もしかすると、『僕』も作っといたほうがいいかな…)

顔無しの名にに相応しいポーカーフェイス。気だるそうな表情の下で、笑顔の下で。彼もまた誰かを出し抜く準備に動く。
面白げに。愉快気に。可笑しげに。道化は楽しいゲームを求めるのだから。




【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]健康
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
 1.アイツら(さやか達)は取りあえずほむらに任せる。
 2.あの馬鹿(まどか、タダノ)は引き続き重点的に監視。
 3.ほむらの動きを一応警戒。
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 現在、さやか、まどか、タダノを捉えています 。
※映像越しにサーヴァントのステータスを確認するのは通常の映像ではできないと考えています。
※ほむらから伝聞で明とルフィのステータスを聞いています。明についてはある程度正確に、ルフィについては嘘のものを認識しています。




□ ■ □

『歯車はただ動くだけでは意味がありません。他のものと噛み合わなければ大きな何かを動かすことはできない』



『今までは二人で完結していた歯車ですが、ついに他の歯車と噛み合いはじめました』



『これにより動き始めるのは止まった時か、新たな物語か、地獄の機械か…私にも予想は尽きません』



『まだ見ぬ戯曲にピエロとして、観客として期待に胸膨らませることといたしましょう』



『それでは、ほんのしばらくの間、一時閉幕とあいなりまする』





















『そうそう、次より舞台に上がる演者の数も増えてくるでしょう。動きが増してくるというのにそれを見逃しては悔やんでも悔やみきれないというもの……』



『私は道化、みなさまと同じ観客にすぎませぬ。みなさまお手持ちのオペラグラスは私のいる客席ではなく、舞台に向けることをお勧めいたしますよ』



『それでは、今度こそ…この道化も失礼することにいたします』


561 : Gradus prohibitus ◆A23CJmo9LE :2014/09/28(日) 22:40:30 9oupwWCU0
投下完了です。
誤字など他、指摘あればお願いします


562 : 名無しさん :2014/09/29(月) 07:25:03 JCUqFC3I0
投下乙です!
ほむら陣営はさやか陣営に接触か
叛逆さやかだからほむらにいい印象抱いてないだろうな……


563 : 名無しさん :2014/09/29(月) 19:59:40 XBD.JJxY0
投下乙です!
おお、状況が大きく動きましたね。ほむほむがかなり思いきった決断を……サーヴァントと主の相似性を他の組にも見るか。でも、謀る相手は狂った道化役者。一筋縄では行きそうにないか……
フェイスレスのセリフ回しはいちいち楽しいなあwちらっとジャック・オー・ランターンに言及してくれたり、小ネタ効いてますね。
特性上情報戦と撹乱を得意とするサーヴァントですが、今は当の主と手札を切りあってて色々な意味で危うい。なんかまた仕掛けを思案してるし。
他組への関係が表面化した地獄の機械組の今後に期待です


564 : 名無しさん :2014/09/29(月) 21:48:11 Paiq1.Tc0
投下乙です
ついにまどマギ勢の遭遇となりそうで続きが気になる引き
他の組が絆を深めてるときに仲悪くなる一方のこいつらって……w
叛逆さやかちゃんがほむらと協力するとは思えないのがなぁ
ほむほむって一番周囲に恵まれてないんじゃないか?w


565 : 名無しさん :2014/09/30(火) 00:57:10 bf4oSKFwO
投下乙です。

ほむらの末路を知ってるさやかが、果たしてまどかの為に協力してくれるだろうか。
フェイスレスはまさか、ダウンロードできるんだろうか。


566 : 名無しさん :2014/09/30(火) 01:28:53 v.jKa3i20
投下乙!
なるほど、カボチャはジャコかw
各組の因縁が本格的に動き出しそうな回でしたね、展開がなかなか速い
ほむほむはフェイスレスとの駆け引きか。まどマギ組について知ってる事が多い分は有利だけど、司令も案の定やすやすと惑わされてはくれてないなぁ……


567 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:24:49 WhYzHLy20
投下お疲れ様です!

ほむほむが向かう先はさやか、しかしさやかにとってほむらは複雑な存在。
時間軸が違えば関わりも違う彼女達は一体どんな展開を紡ぐのか。
フェイスレスも更にマスターに疑いを掛けていく……。
どちらが先に出し抜かれるかも重要になりそうですね。

では、投下します。


568 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:26:29 WhYzHLy20

 異空間に存在する学園だが授業の内容は彼らが知っている学校の類と差異は感じられない。
 聖杯戦争のマスター資格である人吉善吉及び夜科アゲハはアッシュフォード学園1-Aにて授業を受けていた。
 両者の席は隣でアゲハが教科書を忘れたため人吉が見せるために机ごと近くに動いている。

 しかし彼らはまだ隣の人物がマスターであると気付いていない。
 隣に居るのは同じクラスの同級生で用意されたNPC、この感覚でしか無い。
 今授業している教師も、寝ている生徒、落書きしている生徒。全部が全部用意された人形。
 ゲームのような一定の行動と言動を繰り返す機械ではなく本物の人間と同じように過ごす人間。
 アゲハ達からすれば『誰がNPCで誰がマスターと見分けるのは表面的に辛い』のが現実である。
 令呪の有無や魔力と呼ばれる概念の感知など調べる材料は幾らでもあるのが幸いだろうか。

「え〜であるかしてぇ……」

 青い髪をした教師が小さな声で世界史を教えている、しかしそんな事はどうでもいい。

(纏の奴……まだ戻ってはいないな)

 夜科アゲハはノートを取るも適当に言葉を聞き流しながら今後の展開を想像していた。
 展開、彼は天戯弥勒を知る唯一の参加者だ。他の参加者を把握していないため彼は知らないが本当に唯一の存在である。
 天戯弥勒の狙いは彼の知る天戯弥勒と大差無いのならば彼を放って置くにはいかない。
 だが聖杯戦争とは初めて聞く言葉でありこの単語の全容が全く持って解らないため天戯弥勒の真意も測れないのだ。
 最後の一人になれば願いが叶う。ならば何人脱落させればいいのだろうか。
 願いが叶う。天戯弥勒ならばその力を他人に与えない。
 サーヴァント。疑いたくはないが自分のサーヴァントである纒流子が天戯弥勒と繋がっている可能性もある。


569 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:27:32 WhYzHLy20
共に戦ってきた仲間の存在有無も解らなければ置かれている状況も言うほど把握はしていない。
 やるべき事は天戯弥勒に辿り着き彼を止める――何を、世界を守るため。
 
「おい夜科、手ェ止まってるぞ?」

「あ、ああ……ちょっと眠たくてさ」

 考え事をしていたら手が止まっていたらしく隣に居る人吉から指摘を受ける。
 学園に普通に通っているこの状況も考えれば異常な選択かもしれない。
 この地区に参加者が集まってる可能性もある、つまり危険な可能性だ。
 しかしそんな事を言えば、安全地帯など存在しないため、どの道を進もうが茨に覆われているに代わりはない。

 更に言葉を投げるならば今も背中を狙われている、例えや言葉遊びではない。
 隣に居る人吉善吉はマスターだ、しかしアゲハは知らない。
 この教室にはアサシンが姿を潜めている、これもアゲハは知らない。
 そして人吉善吉とアサシンは夜科アゲハがマスターであると把握していない。
 この状況さえも未知であり日常である。故に危険であり火薬庫と表しても問題ないだろう。




 参加者がそれぞれ身の危険を感じている中でも世界の針は回り続ける。
 チクタクチクタク、狂う事無く設定された針は気味が悪い程一定の感覚で時を動かすのだ。
 早く時間が過ぎてもらいたい時も一定に。
 永遠の刹那を噛みしめたい時でさえ世界の針は止まらない。
 止めることが出来るとすれば、その力は因果に叛逆する力ぐらいだろう。

 人吉からの言葉に適当な返事をするとアゲハは窓の方を見つめそれを介し空を見る。
 蒼い、見慣れた透き通るブルー。此処が天戯弥勒の用意した世界なのだろうか。
 ならば此処はサイレンゲームの会場、つまり未来の日本なのだろうか、解らない。

「寝不足か? まぁ気持ちは解らなくもないけどちゃんと寝ろよ?」

(気持ちが解るのか……?)

 授業中の何気ないクラスメイトとの会話。
 サイレンゲームに参加し、世界のために飛び回っていたアゲハは学校という感覚を忘れていた。
 これが日常、しかし時は戦争であり非日常の中に存在する日常だ。

「……ん?」


570 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:29:06 WhYzHLy20
 視界に入る景色は変わらない青空だった。見慣れた青い空。
 だがアゲハの瞳に映ったのは青とは異なる赤、それも炎と呼べる代物。
 炎が何故視界に映ったかは不明だ、思えば訳の分からない事ばかりが周りで起きている。

 かつてアゲハが対峙したドルキ、天戯弥勒の仲間であった男は爆発系の能力を持っていた。
 天戯弥勒が健在ならば彼が生きている可能性も、その世界線の可能性も……まさか。
 
(ドルキか……? PSI使いかそれともマスター、サーヴァントって所か……)

 炎の使い手が誰か、問題は違う、観点は其処ではない。

 
 白昼堂々の狼煙は挑発だ。


 私は、俺は、此処に居る。


 黙って掛かって来い。


 上から炎が映り込んできた事を考えれば屋上辺りから炎を展開したのだろう。
 それを裏付けるように何となく、根拠はないが上から力のような物を感じる、気がしていた。
 挑発を受けたアゲハが取る行動は決まっている。

 元から他の参加者と接触して情報が欲しかった所だ、ならば出向くのが走る道。








 屋上へ向かう決意をしたアゲハは視線を教室内に配り周りを確認する。
 どうやらNPCは気付いていないらしく授業がそのまま行われている。

 見たところ不自然な反応をしている生徒も居なく先生も変わらず黒板に書いているためこの教室は白、と判断。
 ならば後は屋上へ向かうだけである、彼は席を立ち声を上げる。


「美木杉先生、お腹が痛いのでトイレに行ってきてもよろしいでしょうか!」


「おぉ〜それは大変だねぇ〜。いいよ、夜科くん……そうだそうだ」


 先生の許可を貰い颯爽と教室を出て行こうとするアゲハ。
 しかし先生は言葉を切らずに紡ぎ、彼の足を止める。
 演技にしては普段通りで元気過ぎたか……アゲハは心の中で舌打ちを行っていた。


「人吉くん、君も付いてあげなさ……あれれぇ〜もう行ってしまったかい」


571 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:30:23 WhYzHLy20

 先生の言葉が終わるよりも早くアゲハは廊下に出ていた。
 お腹が痛くてトイレに行く、勿論嘘であり授業を抜ける口実に過ぎない。
 もし誰かが付いてくれば強制的にトイレに行く事になり屋上の存在と接触が出来ない。


(保健室なら分かるけどトイレに付き添いは必要か……?)


 そんな事を思いつつ彼は階段を二つ飛ばしで駆け上がる。
 サーヴァントであるセイバーに『とっとと戻ってこい』と念話を行い、指示を出す。
 アゲハは強力なPSI使いである、しかしサーヴァント相手に通用するかどうかの話になると次元が違ってしまう。
 ノヴァを発動すれば……それでも勝つことは到底不可能だ、何が言いたいかと言うと、人間はサーヴァントに劣る。
 
 召されたサーヴァントは英霊だ、、過去に世界で名を馳せた伝説の存在である。
 その英霊にまだ己の生も終えていない若造達では相手にとって分が悪過ぎていた。

 セイバーの到着を待てばいい話だが、もし屋上の存在が世間で表わす『悪』ならば。
 その魔の手に誰かが襲われたら……善は急げ、言葉で言わず行動で示していた。


 屋上の扉を力を込めて蹴り開けると奥に人影が二つ。
 一つは紅い髪をした女、もう一人は美しい顔立ちをした緑の青年。

 アゲハの視線に気付いた彼女達の視線は優しい物ではない、けれど冷たくもない曖昧な物。
 自分を見定めているのだろう、つまり。

「招待したのはお前達だな」

「……屋上に引き返して正解だった、そうだよあたし達が呼んだ」

「来てやったぜ、お前もあるんだろ?」

 紅い髪の女性の言葉に返答するとアゲハは腕を捲り令呪を曝け出す。
 令呪は聖杯戦争に参加するマスターの証、絶対命令権である。

「わざわざ自分から見せてくれるんだ……勿論あたしもマスターだよ」


572 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:31:25 WhYzHLy20

 アゲハの言葉に嘘を騙る事もせず女性もまた腕を捲り令呪を見せつける。
 両者共にマスター、そして互いの令呪はそれぞれ三つ全て残っている事を確認。

「自分から見せるも何も誘ったのはそっちだろ? それで俺が来た」

「まぁその通りなんだけどね。で、最初に言っておくけどあたしは聖杯を手に入れる」

 女性は言葉に重みを含ませアゲハに放つ。
 その言葉は「欲しい」だとか「叶えたい」などではなく「手に入れる」だ。力が在る。
 目の前の女性は覚悟が在る、そして叶えたい願いが、切実に、存在するのだろう。

「……じゃあ俺を倒すために誘ったのか」

「……情けはないよ」

 先程とは変わり女性の言葉が少し弱くなる。
 情緒不安定や二重人格ではなく、人を殺す事を戸惑うように声を掛けている。
 アゲハも無闇に戦闘は行いたくない、彼もまた手探りであり仲間が手に入るならば嬉しい、と言った所だ。

「色々聞きたいことが山ほどあるし、お前もあんだろ……ってやる気、だなオイ」

 出来る事ならば情報交換……世界や状況の把握を行いたいアゲハだったが駄目らしい。
 女性は既に銃を構え口をアゲハに向けており、引き金に指を掛けていた。

「早くアンタのサーヴァントを出しな、でないと……死ぬよ?」

 言葉を冷たく鋭く出来るだけ相手の恐怖心を煽るように静かに最後の単語にアクセントを。
 だが生憎夜科アゲハ、この程度で怖気づく程玉が小さくなければ潜って来た修羅場も生半可な物ではない。


「悪いけど俺のサーヴァントは絶賛ドライブ中でな、困った奴だよ全く」

 
 故に退くことも、取り乱すことも無く向けられた銃口を捉えていた。
 そして嘘は騙らない、纒流子は文字通りドライブだ。

 この言葉に女性は驚きの表情。それもその筈何故サーヴァントを傍に置いていないのか。
 サーヴァントの戦闘能力が規格外なのは承知の上だ、そしてもう一つ。

「サーヴァント無しで乗り込んで来たの……アンタ馬鹿?」

 この言葉に反応するように悪い笑みを浮かべた夜科アゲハはそのまま駆け出した。





573 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:31:59 WhYzHLy20

 屋上の参加者――紅月カレンとセイバーが行った屋上での演奏。
 聖なる業火を演出に奏でられた旋律を聞いたのはアゲハだけではない。
 その音を彼の隣に居た人吉善吉もまた、その耳に聴いており魔力を感じていた。

 白昼堂々の行動に一瞬驚くも他の参加者と接触する絶好の機会であり逃す手はない。
 彼は聖杯を本気で手に入れるつもりだ、そのために他の参加者を倒す気でいるのだ。


 倒すつもり。


 殺しではない。


 彼は聖杯戦争をゲームの一種と認識している節がある。


 天戯弥勒の言葉を聞き流していた訳ではない。


 だが現実味を帯びない日常の空気が彼にとって悪い様に作用しているだけの話。


 ならば屋上へ向かう、行動を始めようとする人吉だが先手を打たれた。
 それは隣に座っていた夜科アゲハだ、彼はお腹が痛くなりトイレに行く、そう宣言した。
 人吉も同じタイミングで先生に授業を抜け出す提案を投げようとしていたため、間が流れる。

 何とか早く行きたい所で先生が一緒に行くように提案するもアゲハは既に居ない。
 教師の言葉を待たずに彼は飛び出していたのだ、やられた、と顔を顰める。

 このタイミングでもう一度授業を抜け出す提案を行ったら怪しがられるだろう。
 少なくとも自分が教師ならばサボりと疑いに掛かる、道を塞がれた。

 

 アゲハと呼ばれるNPCに機会を奪われたのだ、悪いイベントを仕組まれていた。
 

 無論彼はNPCではないが人吉がそれを知るのはまだ先、将又知ることがあるのだろうか。


574 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:32:42 WhYzHLy20

 移動を諦めかける人吉だがこの機会を逃せば次に他の参加者と出会えるタイミング、接触は何時になるのか。
 少なくても学園に他のマスターが居る事が解ったのは収穫だが……。

『心配すんな、今は大人しくしていろ』

 焦る人吉を宥めるのはサーヴァントであるアサシン、垣根帝督。
 霊体化し教室に潜んでいた彼はマスターに声を念話として飛ばしていた。
 心配するな、この言葉が何を示しているのか人吉に心当たりはない。
 しかしアサシンの方が聖杯戦争の知識が在るため従っているのがベストな選択だろう。


『そうか……やっぱ屋上に居るのって他の参加者か?』

『ん、そんなところだな。黙っていりゃまた接触の機会はあるんだ。下手に動くよりはマシだ。黙って座っとけ』


 下手に動けば潜んでいるマスターに怪しまれる、その言葉に人吉は黙って頷く。
 ならばベストな選択は大人しく授業を受けること、焦らず日常に溶けこむことだ。
 立ち上がることもしなければ声を上げることもせず人吉は黙ってノートに書き込みを始める。


(あの夜科アゲハって奴、あれじゃあ俺がマスターだって言ってるようなモンじゃねえかよ)


 アサシンは教室の後ろに座を置き全体を監視していたが夜科アゲハは黒と断定。
 認識などではなく断定だ、確定で決定、確証はないが十中八九マスターだろう。

 皮肉……かどうかは置いておいてまさか自分のマスターの隣に座るクラスメイトが別のマスターとは。
 天戯弥勒のイキナハカライなのだろうか、まぁいい、と息を吐く。

 この聖杯戦争は始まったばかりだ、焦る必要はない。
 まだ自分が身を乗り出すのは早い、潰し合ってくれるならば潰し合え。
 舞台を温めていろ、俺が登るにはまだ早え、と。


 アサシンは言葉には出さずとも確実に状況を把握していた。


575 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:33:10 WhYzHLy20

【Cー2・アッシュフォード学園・2-A/一日目・午前】



【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]健康
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く。
1.今は授業を受け、その後アサシンと相談。
2.放課後は生徒会に顔を出す。
3.学園に他のマスターがいないかどうか調べる。
[備考]
※夜科アゲハがマスターであると知りません。
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。


【垣根帝督@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康、霊体
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:他の奴らを潰し聖杯戦争を勝ち抜く。
1.今は様子見の時。
2.今後の方針を固めるのも手段の一つ。
[備考]
※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。
※屋上の異変に気付きました。
※夜科アゲハがマスターであると断定しています。


576 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:33:49 WhYzHLy20


 己の身体能力をPSIの一つであるライズで強化し距離を詰めるアゲハ。
 最初のやりとりで確信していた、目の前の女は銃を撃つつもりがないことを。
 聖杯を勝ち取ると宣言している割には何処か言葉や表情に優しが残っているように感じていた。
 無論彼女の言葉や覚悟は疑い事無き本物であると解っていると判断した上での突撃だ。

 女性は引き金を引かずに横に飛び回避に移ろうとするも身体能力はアゲハの方が上だ。
 このままアゲハは女性を無力化し何とか会話に持ち込みたいがそうはいかないだろう。

「やっぱ速えんだな……サーヴァントってよォッ!!」

 マスターを護るべく割って入るのは緑のサーヴァント。
 手にした盾でマスターの前に飛び出しアゲハの正面に飛ぶ形で登場。
 アゲハは最初からサーヴァントが割って入ると予想した上での行動、そのまま盾を蹴り上げるべく上方へ右脚を。
 盾に蹴りが命中し鈍い音を鳴らすもサーヴァントが後退することはない。
 そのまま行き場を無くした衝撃を逃すためにアゲハは盾の表面を滑らせるように右脚を最後までに蹴り抜く。

 大きく右脚が振り上がった状態になり無防備になるアゲハを逃す緑のサーヴァントではない。
 大きく距離を取った後に盾で突進し彼の体勢を崩さんとするが黙ってやられるアゲハでもない。
 盾が近づいて来るとそのまま振り上がった右脚を踵落しの要領で落とす。
 加速された右脚はそのまま盾の内側に踵を密着させる形になりアゲハは右脚に全体重を捧げる。


「ダラァッ!!」


 右脚を更に盾ごと大地に振り下げるとその勢いのままフェンスの上に飛び乗る。
 緑のサーヴァントは体勢を崩し前傾のまま数歩よろけるも体勢を即座に立て直しアゲハに視線を。
 だがその視界に入ってきたのはアゲハ、確かにアゲハだがもう一つ得体のしれない物が。


577 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:34:24 WhYzHLy20

「気を付けてセイバー!」


 女性の叫びに耳を傾ける緑のサーヴァントだが既に知っている、危険が迫っている事を。
 自分の目の前には黒い一筋の光が鋭利な形状となり此方に向かっていたのだ。
 盾で防御の体制に入り両手で支え黒い流星を防ぐ。
 ズシリ、と重みが走るが損傷は感じられない、流石はセイバーのサーヴァントだろうか。


「チッ……やっぱサーヴァント相手に効きはしないのかよ」


 黒い流星の正体はアゲハのPSIである暴王の流星―メルゼスランスだ。
 強力な能力ではあるがサーヴァント相手には効き目が薄いようである。
 つまり現時点では圧倒的に不利でありむしろ絶望に近い、だが収穫もある。


「そのサーヴァントはセイバー、か。良いことを聞いちまったな?」


「……嫌な奴ねアンタ」


「いきなり銃口向けた女が何言ってんだよ、ついでに俺は夜科アゲハ。
 聞き覚えが無いなら聞き流してくれ、ま、初対面で間違いないけど……ん?」


 相手を煽るアゲハだったが異変を感じる。
 そもそも魔力とPSIに満ちているこの屋上そのものが異質な空間なのだが。







 音が聞こえる。
 遠くから近づくように。

 近くなる。
 音は段々と聞き取りやすくなっていく。

 更に近くなる。
 音の正体は声のようだ。

 肉眼で確認出来る程近くに来る。
 ……何故彼女が居るかは不明だが。


「来てやったぜ、アゲハッ!!」


578 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:35:26 WhYzHLy20


 気付けば此方に向かい彼のサーヴァントである纒流子が跳んで来ていた。
 言っておくが彼女に飛行能力は付加されていない。
 宝具を発動すれば授かることは可能だが今の彼女は宝具を展開していない。
 なら何故飛んでいるのか――近くの建物から跳んだのだ、故に羽ばたきではなく跳躍。

 徐々に屋上に近づく纒流子だがアゲハは驚いている。
 呼んだのは彼だ、サーヴァントが駆けつけてくれた事は素直に有難いし嬉しくも在る。
 だが、何故わざわざそんな登場なのか。嫌いでは無いのだが何故、何故その選択を選んだのか。

 対峙する女性もまた驚き、よりも呆れているに近い態度。
 馬鹿にしている訳ではないが素直に表現すると「訳が分からない」と言ったところだ。
 アゲハに視線を移し「大変そうね」と若干の憐れみを示す。

 纒流子はそのまま片手に武器を握りしめたまま着地に移ろうとしていた。
 だが近づけば近づく程屋上に違和感を感じていた。

 戦闘が始まっているのだから既に日常から逸脱はしているが別のベクトルで何かを感じる。
 しかし気にしている時間もないためそのまま着に移るが――。


「……何だこれ?」


 アゲハが素直に言葉を漏らす。
 纒流子は着地に失敗した。それは足を挫いただとか転んだ、などの話ではない。
 空で止まっているのだ、彼女は空中で止まっている。

 パントマイムのように身体を貼り付けている。
 目に見えない壁に張り付くように彼女はその場で固まり不満の表情を浮かべていた。


579 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:36:33 WhYzHLy20


「他の人に気付かれたら騒ぎになるからね、結界を張っておいたって訳。
 アンタさっき名乗ったよね、アゲハって。あたしは――紅月カレン。
 名前を明かすのは正直得策じゃないけど、一度きりの礼儀って奴でね」


 敵に名前を知らせる気は無いが名乗られたら名乗り返すのが摂理だろう。
 戦闘の中でも一定の、彼女にも倫理と言うか常識と言うか……当然の行動として扱う。
 そのまま結界に張り付いているアゲハのサーヴァントを見つめる。
 手にしている獲物から察するにこの女もセイバーのサーヴァントなのだろうか。

 気にはなるが今は結界の外であり脅威は無い、そう思っていた矢先。
 彼女を護るように緑のサーヴァント、リンクは前に出る。
 纒流子はアゲハの様に結界を力の限り蹴り込み、その衝撃で宙に跳んだ。
 マスターがマスターならばサーヴァントも似るのだろうか、似たような足技である。

 空中に身を任せた纒流子は鋏を両手持ちに変え屋上を見下ろす。

「片太刀バサミィッ!!武滾流猛ォォオオオオオオオ怒ッッ!!」

 彼女が叫ぶと手に握られていた鋏の刀身が伸び獲物の真の姿を披露する。
 発言と感じる魔力から恐らく宝具の一種であろう。
 そのまま力任せに振るい結界に鋏を叩きつける纒流子。

「なっ、結界を破ろうとしているの!?」

「当ったり前よぉ、じゃあ何しているように見えんだ、アァ!?」

 カレンの疑問に煽るように返答する纒流子。
 この結界はリンクがオカリナで発動した結界だ、つまり此方も宝具である。
 何方もセイバーのサーヴァントでありその能力は本物だ。

 だが魔力の観点から見ればリンクの方が優れているのは事実。
 生前魔法に関わった彼の力、対する纒流子は己の身体と力で戦ってきたのだ。
 しかしマスターで考えるとアゲハの方がカレンより何倍も素質は優れているのだが。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 魔力や素質、願いに近況。
 そんなのは関係無い、と言わんばかりに叫ぶ纒流子。
 鋏は結界と衝突し大きな音を響かせるも壊れる気配ない――筈だった。

 次第に結界に亀裂が入り始める。
 これが鋏に隠された能力『断ち切る力』魔力を消費し全ての運命を断ち切る力。

「そ、そんな!?」

「やるじゃねぇか纏……ッ」


「うおおおおおおおおおおお……しゃああああああああああああああ!!」


 力任せに結界を断ち切った纒流子は屋上に着地すると鋏をカレン達に向ける。


「斬ってやったぜ?」


 その表情は勝ち誇っており相手にとって不快であったのは事実であろう。


580 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:37:22 WhYzHLy20


「それじゃ第二ラウンドと行こうぜ、緑のサーヴァントさんよぉ?」


 鋏を肩に担ぎ首を数回動かすと纒流子はリンクに戦闘の開始を促す。
 第二ラウンドと呼べるほど第一ラウンドを行った訳でもないが遅れてきた彼女にとっては第二ラウンドなのだろう。
 踵を地面に数回叩き体勢を整えると隣にいるマスター、夜科アゲハにアイコンタクトを起こし駆け出そうとするも――。

「――っていねぇ!? 何で!?」

「お前が結界をぶっ壊したから音が外に丸聞こえになっちまったみたいだな……。
 階段から登ってくる音が聞こえやがる……俺達も退いたほうがよさそうだな」

 聖杯戦争で名を売ることは自分を危険に晒すことに直結する。
 身元が晒されては時間を問わず襲われる可能性が大き過ぎる、安息を得られない。
 戦火に身を包むなら遅かれ早かれ安息など無くなるが最初から晒す必要はない。

 情報の漏洩を危険視したカレン達は纒流子が結界を破ると迷いもぜずに屋上を飛び降りた。
 セイバーが彼女を抱きかかえながら飛び降りたため、安全だろう。

 アゲハはフェンスに近寄り落下するカレン達を見つめる。
 この距離ならばまだ声は届くだろう、そう判断し声を上げる。

「紅月カレン、お前に『その気』があるなら昼に体育館裏に来いッ!」

 そう言い放つ、勿論カレンからのリアクションは無い。
 屋上からの目視なので詳細は分からないが無事に着地出来たようだ。

「体育館裏って告白でもすんのか?」

 自分のサーヴァントの言葉を無視しながら跳ぶ体勢に入るアゲハ。
 後ろで纒流子が文句を垂れ流しているのが聞こえるが無視で充分だ。

『その気』とは恋模様ではない、協定、謂わば仲間になる気はあるか、のニュアンスである。 
 アゲハは情報を欲している。
 それは聖杯戦争であり天戯弥勒の事でも在る。どんな些細な事でも今は欲しているのだ。
 カレンの初コンタクトの印象は最悪に近い。だが会話が出来ない、と言う訳でもないようだ。

 これから世界の針がどう動くは誰も予想は出来ない。
 ならば今出来る事をすればいい、単純明快である。

「俺達も此処から逃げるぞ」

「折角来てやったのに……しゃあねぇ、か。
 遅れたあたしも悪いしな……んじゃ、いくぜッ!」

 そして二人も屋上を飛び降りる。
 戦闘の結果は特に損傷もなく終了。
 互いに互いが名前を知ることが出来たのは収穫だった。
 もしも、もしこのまま協定を結ぶことが出来るなら。
 彼らの剣は魔を断つ剣と成り得るだろう。

 しかし物語はご都合主義だけでは構成されない。
 敵対するならば。
 
 血で血を洗う血戦なるだろう。


581 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:37:58 WhYzHLy20


【C-2/アッシュフォード学園・校庭/1日目 午前】


※屋上にてセイバーがオカリナを使用した。
学校にいるサーヴァント、マスターなら気づくかもしれません。
※生徒指導部教員兼警備員長のNPCとして【インパ@ゼルダの伝説 時のオカリナ】が存在しています。


【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]健康、魔力消費(中)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.上手く逃げ過ごした後教室に戻る。
2.アゲハの言葉通り、昼に体育館裏に……?。
3.学園終了後、街を探索。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※学校内での自分の立ち位置を理解しました。
※生徒会の会見として所属しているようです。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※昼に体育館裏に行くかどうかはきまっておりません。




【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。




【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.昼になったら体育館裏に行く。
2.夜になったら積極的に出回り情報を探す。
[備考]
※人吉善吉がマスターであると知りません。
※セイバー(リンク)を確認しました。



【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)若干苛立ち
[装備]方太刀バサミ
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.逃げる。
2.昼になったら体育館裏に向かう
[備考]
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してあります。


582 : 光の屋上 闇の屋上 ◆wd6lXpjSKY :2014/10/02(木) 00:38:50 WhYzHLy20
投下を終了します。


583 : 名無しさん :2014/10/02(木) 19:06:21 2gZP/jXk0
投下乙です
カレン組の宣戦布告がさっそく機能、アゲハが行ったか!
暴王が効かないあたりはやはりサーヴァントとの差を感じさせられるな


584 : 名無しさん :2014/10/02(木) 19:12:01 2gZP/jXk0
途中送信すみません
しかし流子の到着まで冷静に立ち回り相手を見極めるあたりはさすが。
アゲハ流子は互いのスタンスゆえの不利もありますがそれを補って余りある息の合いっぷりを見せてくれますね。
体育館裏の約束もできたし、次にどう動くのか。
善吉はまだ気づいてませんが彼のサーヴァントは察知してるし、こっちもどうなるやら


585 : 名無しさん :2014/10/02(木) 19:22:10 eiT5XsaM0
投下乙
学園パートは展開が読めないからハラハラします
マスターの中でも強めのアゲハでさえリンクと正面からは無理か
流子はとてもキルラキルらしい立ち振る舞い!
明るい内からの戦闘がどんな影響を及ぼすのか
体育館裏も一筋縄じゃいかなそう


586 : 名無しさん :2014/10/02(木) 23:41:29 dmILklMc0
投下乙です
かなり目立った戦闘の結果、学園がこれからのメイン戦場になりそうな予感が
そろそろ誰か退場してもおかしくない雰囲気だなぁ
キャラクターらしさが伝わってくる描写が良かったです


587 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/03(金) 23:45:25 PAG5Rrls0
感想ありがとうございます!
いつも言っていますが励みになります!

雁夜おじさん、一方通行、美樹さやか、不動明で予約します


588 : ◆A23CJmo9LE :2014/10/05(日) 22:18:47 POhVeJYc0
投下乙です
二人のセイバーの激突、アサシンの策謀と学園が本格的に戦場になってきましたね
アゲハは相変わらず無茶するし、流子ちゃんも突っ込むし、カレンたちも呆れ気味で…
善吉は大丈夫かな…
今後の動きが楽しみです

読み返していて気付いたのですが、拙作「Vのため闘う者」において場所の修正を行ったのですが、その際状態表の一部の修正を忘れていました。
該当箇所は「B-2の現在地から歩いて少しのところにこの世界における自宅があります」としていたところです。
もうリレーされてしまったので刑兆主従の自宅はB-2近辺にあるということで統一したいのですが、よろしいでしょうか?
何かあればお願いします。


あとタダノ&モリガン、まどか&ルフィ、刑兆&ニューゲートで予約したいと思います


589 : ◆A23CJmo9LE :2014/10/07(火) 19:05:58 vMNZ6XXk0
修正報告です。
拙作『Gradus prohibitus』においてフェイスレスがさやかたちがバスに乗って西へ、と発言していますが正しくは東です。
wikiにおいて修正しておきました。


590 : 名無しさん :2014/10/08(水) 05:40:14 YV0kwOSU0
修正乙です
形兆たちの自宅についてもその修正で問題ないと思います
投下楽しみに待ってます!


591 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/08(水) 22:35:31 vLZ2wQbo0
反応が遅れてしまって申し訳ありません。
修正了解です、お手数で申し訳ないです。


592 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/09(木) 18:59:27 8vP4ZAGQ0
予約の延長をします


593 : ◆A23CJmo9LE :2014/10/12(日) 12:35:25 dSPaLXrI0
念のため延長します


594 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:34:31 lp11s5AM0
投下します


595 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:35:54 lp11s5AM0

 肉体的疲労の影響が多い間桐雁夜は立ち上がるだけでも身体に痛みが走る、のが数十分前のこと。
 ある程度木陰で休息を取っていたため日常的な動作に不備は生じない。走る選択を選ばないことに越したことはないが。
 左手に握っているペットボトルに視線を移す。

 何の変哲も無いお茶だ、不思議な箇所は見受けられないし感じられない。
 だが入手手段に大きな問題が存在する。このお茶は貰い物だ、先ほど学生と思われる女性からの。
 女性を疑っているわけでもなく、善意を無駄にする気はないのだが簡単に口に含む訳にはいかない。


『このお茶を渡した女性はサーヴァント』この一点が切っても切り離せないほど脳内に危険信号を響かせる。


 何故サーヴァントが自分に接触してきたのか、行動を見れば善意にしか感じられない。
 どうやら間桐雁夜をマスターと認識していない節があるようだが演技の可能性もある。
 善意に甘え口に運び毒でも入っていれば一大事では済まないだろう。


(……毒の線は無い、な)


 手元にあるお茶から魔術的な概念を施された形跡は見当たらない。
 魔力を当て、感知してみるも反応は感じられない、つまり白。
 科学的な可能性も否定しきれないが。

 何にせよ敵から貰った物を疑うのは当然であり、口に運ばないのも仕方がない事だ。
 女のサーヴァントが何を狙ったかは不明だ、不意打ちや奇襲の類だろうか。
 ならばそのまま襲ってくるのが定石、と考えるのが筋なのだが。


(ゴムのサーヴァント、そして女のサーヴァント……。
 どっちも俺が戦ってきたサーヴァントではない。
 ゴムの方は女の子のマスターが「ライダー」と呼んでいた……あの豪傑ではない。
 この聖杯戦争は俺が戦ってきた聖杯戦争とは違う……確定だな)


 天戯弥勒と名乗る男が開催したと仮定するこの聖杯戦争は全てが不可思議に包まれている。
 何らかの方法で構成された聖杯戦争を行うためだけの空間。
 中立の立ち位置を取るわけでもなく願いを叶える、その一言。
 彼は一体何のために、どのような力を用いて聖杯戦争を開いたというのだろうか。


596 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:36:20 lp11s5AM0


(あのサーヴァントの言葉が正しいなら此処に救急車が来るはずだ)


 女のサーヴァントは間桐雁夜にお茶を渡した後救急車を呼んだ旨、伝えて姿を消した。
 救急車を呼んで貰った行為自体に問題はないが間桐雁夜に問題は在る。

 一つに聖杯戦争に参加している今、目立つ行動は避けたい。

 一つに蟲に侵されているこの身体を一般人の目に映ると何かと厄介事になってしまう。

 一つに何が潜んでいるか分からないこの空間、密閉空間に招かれるのは危険であるということ。

 つまり、現状はこの場から早く去らねば。


 辺りを見渡せば平日の午前の影響か子連れが少々といった具合である。
 

 足を動かしその場から離れようとするも耳に聞きたくない音が割り込んでくる。
 シャットダウンしようにも強制に響くその音は彼の心を煽っていく。
 日常生活でも一定の頻度で聞こえるその音は今、最も聞きたくない音であった。


「救急車……既に近くに来ていたか……ッ」


 女のサーヴァントが善意か悪意か将又彼の知らない所で策が張り巡らされているのか。
 決定を決めつけることは出来ないのだが、手配された救急車が近くにまで来ている。
 今運ばれると目立つ、そして身体を見られれば間違いなく彼の存在が公になってしまうだろう。
 蟲に侵された身体。自分が三流新聞記者ならばオカルト記事には持ってこいの逸材だ、軽く悪態をつく。
 バーサーカーを使役したり蟲を使えば簡単に切り抜けられるが関係のない人々を巻き込みたくない。
 しかし行動を起こさない限り事態は結局求めたくない解になってしまうため、理想だけを追い続けるのは不可能である。

 救急車を視界に捉えると車体を停めている最中であった。
 つまり人が降りてくる事を表している、そんなのは当然だ説明する必要もない。
 この場を切り抜けるには――蟲を使役するよりもバーサーカーを使う方が早いだろう。

 遠くで暴れさせて気を引けば自分から注意を反らせる、不本意だが仕方がない。

「この近くに『今にも死にそうな男が倒れている』はずだ」

「悪戯じゃないんですかねー、あの声の人多分まだ未成年だったし」

「軽口叩いてる暇があるなら手を動かせ! 何かあってからでは遅いんだぞ」


597 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:36:48 lp11s5AM0


 救急車から降りてくる会話が聞こえる。
 彼らは視界に間桐雁夜を捉えると確信付いた何かを抱きながら彼に近づく。


(やっぱ一目で分かるもんか……)


 その反応に若干の寂しさを見せるも単なる甘えにすぎない。
 間桐桜を救うという大義名分を勝手に掲げその身を好き好んで破壊したのは彼自身なのだから。
 今更被害者面など都合が良すぎるが今の焦点はそんな所ではなくこの場の対処法。
 バーサーカーを遠くに具現化させようと念話による命令を出そうとするも――。










「き、消えた……?」









 一陣の風が吹き荒れる。
 瞳を閉じた刹那の裏側、感じるは異様な風。

 再度瞳を開けた時、目の前には誰も居ない。
 救急隊員の呟きだけが残された。





598 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:37:10 lp11s5AM0

 美樹さやかはバイクに跨がり風を切っていた。
 詳細を話せば運転しているのは彼女ではない、後ろに座っているだけ。
 バーサーカーの能力の一環で融合されたバイクに乗り救急車を追っている最中だ。

 この先に誰が居るかは正直な話、不明である。
 参加者ならば何かしらの接触になると思われる。
 参加者ではなくても現状昼間から制服女子がバイクに跨っているという光景は珍しいだろう。
 NPCではなく参加者ならば不自然と感じ、接触を試みるかもしれない。

 確率を掴み取りその先に進むにはActionが必要である、ならば起こせ。

「――あ、見えてきたよバーサーカー」

「思ったよりも走ったが……公園、か?」

 救急車が走っている先は公道から少し逸れた所、車を停めようと路肩に寄ろうとしていた。
 その近くには公園、おそろく其処に患者或いは怪我人が居るのだろう。
 参加者なら儲け物、それ以外ならドライブと洒落こんで納得するしかあるまい。

 バーサーカーは救急車からある程度離れた後方にバイクを停めると己の身体と融合解除を発動する。
 光に包まれたかと思えばたった一瞬だ、光が晴れれば目の前にはただのバイクが一台。

「これって魔法みたいだね」

「正しくその魔法なんだ……」

 英霊となって具現化したサーヴァント、それを使役するマスターは少なからず魔術の因果に首を突っ込んだ形になる。
 美樹さやかは元々魔法少女なのだから魔法に驚く事も見当外れに違いはないのだが。

「あの男の人かな……たしかに辛そう」

 救急隊員達は公園の中に居る男に接触するようだ。
 フードを被っている男、隙間から覗き見える顔は衰弱しているように見えないわけでもない。
 確認するには距離が若干離れすぎているようだった。

 「バーサーカー……あの人から何となくだけど感じる、かな」

「あぁそのようだ……当たりを引いた」

 表情は確認出来ない、しかし魔術的な概念は感知出来たようだ。
 美樹さやかの魔法とは違う異質な物だが、初の他参加者による接触の機会。
 ある程度のリスクを背負ってでも、価値はある。


599 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:38:56 lp11s5AM0

 さて、どう接触するべきか。
 声を掛けるのが一番手っ取り早く単純で簡単な行動だろう。
 しかしあの男が危険人物なら先手を撃たれ劣勢になるかもしれない。
 男を考える前に、一つ、疑問が浮かぶ。

「ねぇバーサーカー」

「どうした?」

「あの人何で救急車を呼んだのかな――ッ!」

 救急車を呼んだ理由、通常ならば何か事故があったり危険な状況であったと推測出来る。
 或いは悪戯、これが日常で溢れる理由だろう。

 例えば。
 魂喰い……一般人の命を代償に己の強化を図るのが目的ならば。

 見過ごせる状況ではない、交渉や接触は二の次だ、此処で止める必要がある。
 その旨バーサーカーと会話をするつもりだったがそれも中断。


 近くで強い魔力を感じる。
 己の主張が激しく、隠すつもりが全く感じられない。
 

「これって強すぎでしょ!? ねぇバーサーカー!」

「この感じはバーサーカーに近い……聖杯戦争に同じクラスは混在しないはずだが……」

 本来聖杯戦争は七つのマスターが各クラスのサーヴァントを使役する物。
 元々天戯弥勒の存在自体が不可解、と考えれば納得出来るかもしれない、がそれでもだ。
 もう一つのバーサーカー、この情報だけでも十分収穫は在った、と言えるだろう。

「もう一度乗れ! ッ走るぞ!」

 停めていたバイクを再度己の身体と共存させるバーサーカー。
 彼が選んだ選択――マスターである美樹さやかも同じだった。

 跨った主従は公園の中をフルスロットルで突っ切る。
 風を切るだなんて生温い、彼らが一陣の風となりて突入する。
 メットを被っていないため美樹さやかは瞳を力強く閉じている。
 それでも振り落とされないようにバーサーカーにしっかりと腕を回し耐えていた。


600 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:39:36 lp11s5AM0

 バイクが目指すは男、あちらのバーサーカーのマスターを抑える。
 狂戦士と云えどマスターにその刃を向けることは無い、と思いたい。
 
 救急隊員の合間を突き抜けるとそのまま強引に左腕を伸ばす。
 その速度は一般バイクの限界速度を超えており、強風で瞳を開けることは中々難しい物が在る。
 結果、救急隊員は風が吹き荒れた感覚に襲われる、つまり人目に気づかれない。

 バーサーカーが伸ばした腕はしっかりと男を掴む事に成功する。
 そのまま抱え込むように己側に引き込み、肩を使い担ぐ形になった。

「お、おい!」

「今は口を動かすと舌を噛むぞ?」

 突然拉致されたと言っても可怪しくない状況で間桐雁夜は言葉を紡ごうとする。
 だが風で遮られ、高速で走っているこの最中口を動かす訳にもいかない。

「……あたしは美樹さやかって言います、それでこっちの男は――」


「君みたいな女の子がマスター……なのか。
 時臣も神父も……どうやらマスターやサーヴァントは違うんだな。
 でも、ごめん……君みたいな女の子が何で聖杯戦争に参加しているか分からない――バーサーカーァ!!」


 話を紡ぎ交渉を試みる美樹さやか。
 だが間桐雁夜にその言葉は届かない、いや届いてはいる。
 彼は拒んだ、それは過去の聖杯戦争の影響か否か。

 言えることは一つ。
 彼という人間は美樹さやかと戦いたくない、言い換えれば子供に手を掛けたくないのだ。

 だが矛盾が発生する。
 間桐雁夜は既に鹿目まどかと交戦をしている。
 たかが数時間で決意がブレるほどの弱い精神の持ち主なのだろうか。

 彼と呼べる本質が本能で咄嗟に飛び出した言葉、それは子供と戦いたくない、という甘え。
 決意は在る、他の参加者を殺してでも叶えたい願いが彼に在る。

 だけど、でも、だけれど、それでも。
 これを最後にするから、今だけは――。


「仕方ない、交戦するぞ」

「……うん、うん」


 この状況に対応するしか無い。
 バイクを停め、再度融合を解除、しかし間桐雁夜は近くに置いておく。
 盾代わり、と言えば酷いがこれも策だ。
 同じ狂戦士、されど正面からの対立はどちらも消費が激しく好ましくない。

 戦闘は行う、避けられない。

 だが、まだ少しだけ。
 対話が出来る機会が生まれるかもしれない、それを片隅に置いて。

 時間は正午寸前。
 彼らは知らないが数分後に戦闘を強制的に中断される出来事が発生する。

 それでも今は目の前の敵に対して抗うだけ、願いのために、血に染まれ。


601 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:39:59 lp11s5AM0


【D-4・南西・一日目・午前】


【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]お茶(ペットボトル)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.この場を切り抜ける。
2.女の子……だけど殺さなくてはならない。
3.間桐邸に向かい休息を取る
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。



【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。



【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.目の前のバーサーカーと戦う、何とか対話に持ち込みたい。
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う


[備考]


【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]バイク(盗品)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.目の前のバーサーカーと交戦する。
2.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
3.マスターを守る


[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。


602 : これって魔法みたいだね ◆wd6lXpjSKY :2014/10/13(月) 16:40:53 lp11s5AM0
投下を終了します、台風にお気をつけ下さい。


603 : 名無しさん :2014/10/14(火) 23:18:43 /L8FvzDw0
投下乙です
うおーここでもバトルの予感……!
この聖杯戦争の中でも特に戦闘能力の高いバーサーカー同士の対決ということもあって続きが気になりますな
聖杯の存在を疑うさやかちゃんと聖杯を願うしかない雁夜おじさんの対比も気になるところ

気になるといえば正午に戦闘を中断する何かがあるっていうのは放送か何かのことですか?
他の投下でそれらしきものを示唆する内容のものってありましたっけ


604 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/15(水) 19:46:18 DTV40rZ20
感想、ご指摘ありがとうございます。

投下された作品内で放送的な物を匂わせることは書いていません。
説明不足、連絡不足で申し訳ありません。

>>379
ここで6時間の感覚で放送的なのを挿れたいと思い

>>501
この時点で私が書きたい、と宣言していました。

勝手に話を進めて展開を縛るようなこととなり申し訳ありません。
上記のとおり、頃合いを見て放送を私が書きます。
感覚は6時間毎になります。


605 : 名無しさん :2014/10/15(水) 21:00:41 SbcsIU9Y0
>>604
説明ありがとうございます
恥ずかしいことに>>379の放送についての部分を36時間ごとと勘違いしていました……
だから放送があるのってまだ先だよなーってわけわかんない間違いを

今更になってしまうんですが、現在の4時間区切りの表記で6時間ごとの放送をするとなると不都合が多いと思います
表記を2時間区切りにするか、放送間隔を12時間ごとにするか変更をしたほうがいいのではないでしょうか
個人的には12時間ごとの放送になったほうがありがたかったりします
午前6時に最初の放送がなかったのも不自然ですし


606 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/15(水) 21:08:04 Hc5OKPXU0
>>605
本当に申し訳ないのですが12時間区切りのつもりで書き込んでいました……。
1日に二回放送予定だったのですが6時間だと4回も放送することになりますよね。
申し訳ないです、12時間毎に訂正させていただきます。

ご指摘ありがとうございます。


607 : 名無しさん :2014/10/15(水) 21:23:53 53.yhvC20
投下乙です!
ここでおじさんとぶつかるかあ
何気にデビルマンの戦いがすごく楽しみです
相手が相手だから一筋縄じゃ行きそうにないが…


608 : ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:37:57 V4b5DGBk0
投下します。


609 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:40:06 V4b5DGBk0
「……わかりました。その話、お受けさせていただきます」
「そうか。それはよかった」

まどかにとってタダノの提案はなかなかに魅力的なものだった。
目の前で起きたライダーと白髪のサーヴァントの闘いは、何度か目にした魔女と魔法少女の戦いを上回る危機感をまどかに植え付けた。
死への恐怖、殺人への忌避感、加えて先ほどの白髪のサーヴァントを放っておいてはいけないという義務感のようなものも生じ、誰か…さっきのサーヴァントを倒す仲間と共に居たいと感じていた。
ライダーは…確かに頼りになる男だと思っているが……

「同盟かぁ〜、懐かしいなぁ〜。トラ男との海賊同盟楽しかったなぁ〜。よろしくな、おれはル―――」
「わー!!わー!!わ―!!」

これなのだ。弁当を大量に買う羽目になったり、見知らぬ家屋にずかずかと上り込んだり、今も堂々と名乗ろうとしている。
……気苦労が絶えないのだ。
7つのクラスに英霊をあてがい、争う。名を隠し、決められたクラスで呼ぶのだから真の名を秘する重要性は何となく分かる。
特にライダーは悪魔の実の能力者と言う強力な分デメリットも大きいスキルを持っている。
海楼石?なる海の力を発する武器もあるらしく、名前がばれた場合不利が生じるだろう。聖杯戦争の定石と言うのはよく分からないが、これ位は基本事項のはずだ。

「(ダメですよライダーさん、名乗っちゃ!)」
「(なんでだよ、名前を聞くときはまず自分から名乗りなさいってマキノも言ってたぞ)」

念話ですればいいものを慌てたか小声で話し合う二人。
目の前で密談などされては通常はいい気持ちはしないだろうが、自分も奔放なサーヴァントに手を焼いているからか話の内容を何となく察し黙って見ているタダノ。

「(ここは…そう、仮面舞踏会みたいなものなんですって!だから本名は名乗っちゃダメです!)」
「(仮面…ぶとうかい…?)」

まどか自身口にしてからもう少しいい例えはなかったのかと思う。学校すら知らないらしいルフィに仮面舞踏会などと言って通じるのだろうか。
何か他にもっといい例えがないのかと頭を捻るも妙案は浮かばない。
対するルフィは聞き覚えのあるような無いような単語に必死に頭を捻っていた。
仮面…仮面と言えばそげキング…そう言えばアイスのおっさんのいる島では仮面を被る祭りが盛んだとかロビンが言ってた気がする。
ぶとうかい…武闘会?メラメラの実をとるためにサボとかレベッカと参加したっけ。ばれるとまずいからルーシーって言って…!

「(ああ〜そういうことか。わかったぞ、まどか)」
「(え、本当ですか!?)」

ポン、と手を叩き納得した様子を見せるルフィに僅かに安堵するが…

「おれはルーシーだ、よろしくな!」

そう言って右手を差し出すルフィに天を仰ぐしかないまどか。
偽名にしてももうちょっとないのか、ライダーでいいだろうなど言いたいことは色々あるが、もう好きにして…といった諦めの境地に至りつつある。
それでも嫌悪や怒りと言った感情を覚えないのは彼の人徳だろうか。

「ああ、よろしく。精悍な戦士の腕だな、ルーシー君」

そういってタダノは握手を受けた。
利き手を預けるのは信頼の証……兵士として、同盟を組んだ相手に礼儀を全うする。

「ではまずは学校の方に連絡を入れてしまおうか。学生証など連絡先のわかるものはあるかい?」
「あ、はい」

まどかの携帯を使ってアッシュフォード学園に連絡を入れる。
深山町南部において家屋倒壊事件があり、鹿目まどかはその事件の一部始終を目撃した。ついては事情の聴取で彼女に話を聞くこと、また精神的に参っているようなので本日は学校を休む可能性が高いこと。
以上をまどかの口から伝え、タダノが継いで補足する形をとった。
連絡を済ませると三人の間で情報の交換を行う。
交戦した白髪のサーヴァントの容姿と分かる限りでの能力は特に重点的に話したかったのだが、技能に関してはルフィの感覚が中心になるために情報の共有には手こずる。
幸い姿形はまどかの説明により滞りなく伝わった。

「では僕のサーヴァント、アーチャーにこのサーヴァントを探すように命じる。彼女は使い魔の使役もできるからこういったものには向いているはずだ」
「アーチャー、ですか。そういえば今は近くにいないんですか?」

当然と言えば当然の疑問。
魔法少女と魔女の戦い、サーヴァント同士の鎬の削り合い、どちらも人間のみで巻き込まれては命がいくつあっても足りはしない。
にもかかわらず一人で出歩くのは大胆なのか単に向こう見ずなのか。


610 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:40:36 V4b5DGBk0

「僕のサーヴァントも君のと同様…いや、もしかするとそれ以上に奔放でね……。今は情報収集の名目で飛び回っているが、どこでなにをしているやら。
今呼びかけてみよう。サーヴァント探しの指示に加えて、君たちに喧嘩を吹っ掛けないよう言い含める必要もある」

そういってモリガンに念話を送る。何の報告もしてこないのでこれが別れてから初のやりとりになる。
何をしているのか、何をしていたのか不安に思うところもなくはないが大してチカラを持っていかれてもいないし、さほどの心配はせずに話を切り出す。

『アーチャー、今大丈夫か?』
『あら、タダノ。お仕事はいいの?』
『麦わらの男…サーヴァントと桃色髪の少女の組と同盟を結んだ。顔合わせをしたいから一度合流してくれ。それから――』
『ごめんなさいね、今最高に昂ぶってるの。ちょっと待ってくれない?』

まさかこんな時間にまたNPCの男を喰らっているのか。あれだけ口にしてまだ足りないのか。
まったく色欲に満ちたサーヴァントだ、などと呆れて若干キツイ口調になる。

『何をやっているんだまったく……』
『白い髭がチャーミングなサーヴァントとお楽しみの真っ最中よ』
『…!?待て、なんだと!?』

何をしているという皮肉交じりの詰問に剣呑な答えを返すアーチャー。
どうやら思ったより面倒な事態になっているらしい…!




◇  ◇  ◇



公衆電話を背に今後の動きを考える。
現状公衆電話に赤いテレホンカードを通しても得るものはないという情報が得られた……今のところはほぼ無駄足。
だがこの情報も今後生きてくるはず……生かすように動いて見せる。

と言っても、やらねばならないことがあるのは分かっていても動く当てはない。
だからと言って動かないというのも情報が不足している現状できればとりたくない。
どうするか。適当にぶらつく?電話線をたどって他の公衆電話を探す?昨晩の吸血鬼と老人について聞き込み?それとも…

『刑兆。行く当てがないなら海を見にいこうじゃねえか』
『昨晩も言ってたな。お前、海に弱いんじゃねーのか?つーか泳げねえでよく海賊なんざやってたな』

悪魔の実の能力者。強力な力の対価として海に類するものが弱点となるスキルだ。ライダーの真名がばれた場合弱点として衝かれるだろう。
にもかかわらず自ら海に近づこうとするのは刑兆には理解しかねた。

『海にはおれの求める自由と家族があったからな。泳げないなんて小せェことにこだわるのが馬鹿らしいくらいに楽しかったのさ。
それにおれの宝具は一応船なんだぜ?外輪で陸走もできるが水の上が本来の戦場で、おれ自身船上戦のが多く経験してる。
戦略的にも、お前の迷いを吹っ切る意味でも海に出るのを提案してるんだよ』

召喚時に付いていくとは言っていたが盲目的に付き従うわけではないらしい。
刑兆が短期的にも長期的にも展望が見いだせていないことを見抜き、それを指し示そうとする。年の功、だろうか。

『……ここから海は遠いな。なんらかの交通手段を探すぞ』
『おう』

あてがないならとりあえず従ってみるのもやぶさかではない。
このライダーは騎乗スキルが極めて限定的で、車などは乗りこなせないという。船舶に特化し、生前の家族にいたため不死鳥及び巨人という幻獣種への騎乗も可能らしい。
希少かつ強力なのは納得したが、日常面では不便だ。巨人や不死鳥なんてそうそう会えるものではないだろう。そのため交通インフラを把握しておくのも必要なことと考える。
何となく華やかそうな方面へ歩を進め、バス停などを探してそれなりの距離を進むと、正面から女が向かってきているのが目に付いた。


611 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:42:01 V4b5DGBk0

「強者の香りが集まってるわね。フフッ、退屈しないで済みそう」

タンクトップで強調される艶めかしいボディラインが。ホットパンツから伸びたしなやかな足が。
翡翠の如く輝かしい髪と眼が。白磁のように透き通る肌が。扇情的な声が。何より放たれるその雰囲気が。
目に映るステータス以上に彼女が人ならざる存在であることを強くアピールしていた。
男ならば誰もが見入るような美しさ。美しい…百万倍も美しい!

「おい、しっかりしねぇかアホンダラァ!!」

いつの間にやら実体化したライダーにドツかれ正気に戻る。

「高位の魅了だ。気をしっかり持て」
「あ…ああ、分かった」
「いいのよ?身も心も私に委ねて」

くるりと舞い、装いを改める女。新たな服装もまた、その肢体を強調するような刺激的な物。
敵意と殺意で心を満たそうとしてもその一挙手一投足に魅入られそうになる。
ライダーも僅かとはいえ対魔力と、かつて戦場で海賊女帝の姿を目にした経験がなければ危なかったかもしれない。

「吸血鬼お得意の魅了の魔眼か?やってくれるじゃねーの」
「残念。ヴァンパイアじゃなくてサキュバスよ」

その容貌と経験から刑兆は吸血鬼と推察したが、それは外れ、推察の甲斐も薄く彼女自身がサキュバスと明かす。
刹那主義、快楽主義ゆえに几帳面な刑兆とは様々な意味で相性が良くない。

「そうかよ。それじゃあ吸血鬼のせいで化物になった人間の殺し方なんざ知らねーよな?」
「恨みか復讐か知らないけど、そんなの全部忘れて。今は堅いこと言わないで…遊びましょうよ」

その言葉を合図と捉えたか、会話から得るものはないと判断したか薙刀でもってニューゲートが戦端を開く。
覇気を纏った薙ぎ払いを飛ぶことで回避し、大ぶりの隙をついて反撃に転ずるモリガン。

「シェルキック!」

飛翔に用いた羽をドリル状に変形させて脚部に纏い、上空からニューゲート目がけて躍りかかる。
しかしさすがは時代を担った大海賊か、それを拳と震動で迎撃し、弾き返して見せる。

(瞬間的なパワーはあの緑の剣士以上かしら……厄介ね)

「ソウルフィィスッ!!」
「ウラァッ!」

弾き飛ばされ距離が出来たため互いに飛び道具を放つ。
モリガンの腕からは蝙蝠をかたどった光弾が、ニューゲートの腕からは空間にヒビを入れる震動が放たれる。
それらが空中で衝突し、高らかな音を立てて完全に相殺。それを見て双方位置を変えながら第二打、第三打を放ち牽制し合う。
そしてそこに飛び込む戦士がもう一人。

「全隊戦闘態勢ッ!」

騎乗兵の主君にして極悪中隊の指揮官、虹村刑兆。モリガンの嗅ぎつけた強者の一人。

「撃てェーーーーーッ」

整列した隊の全兵がカービン・ライフルでもって蝙蝠状の光弾へ攻撃を加える。
亜音速で飛来する鉄釘すら打ち落とす精密な銃撃ならばサーヴァントの技を迎撃とまではいかずとも逸らすくらいは可能だ。
それにより一方的な攻撃を浴びることになるモリガン。マスターがいればこうはならなかったかもしれないが、手数の差はいかんともしがたく翼でもって回避を続ける。
通常、三次元的な機動を可能とする方が戦闘では有利なものだが、ニューゲートには多彩な経験があった。
不死鳥へと転じ、空を翔ける船員≪むすこ≫がいた。万物を浮遊させ、宙を舞う強敵≪とも≫がいた。
そしてつい昨晩高速で飛ぶ吸血姫≪てき≫とやり合ったばかりだ。当てられはしないが、次第に目的の場所へとモリガンを誘導していく。

「ッ、何?」

空を飛ぶ……自由の象徴と言ってもいいその振る舞いの最中に何かが動きを阻害する。

「昔の英霊サマは知らねーかもしれねーがよォー、最近は都会じゃ凧揚げはできなくなってんだ…電線に触れたら事故起こしちまうからな!」

小鳥ならいざ知らず英霊と電線との接触など、人間が目の前に羽虫が横切る程度の些細なもの。
だが意識の外からの接触とは存外揺らぐもの。あたかも人が小石に躓くように動作に無駄が生じる。

「予定通りは気分がいい。そのまま蜘蛛の巣にかかった蝶のように仕留めてくれるぜ!全隊一斉射撃用意、撃てェーッエエエエエ」

その隙をつき、バッド・カンパニーの火器全てをモリガンに浴びせかける。ミニチュアでも威力は実際の軍隊さながらだ。
この砲火に身を晒しては並の人間なら跡形も残らないだろう。



しかし刑兆もライダーも警戒を解くことはなく、戦闘態勢を維持する。


612 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:42:37 V4b5DGBk0

「多人数から死角を同時に攻められるっていうのも新鮮で刺激的ね……クセになっちゃいそう」

案の定、硝煙と爆炎の中から姿を現すモリガン。
埃は被ったようだがその美しさに翳りはない。
纏う衣装に損害を与えはしたが、寧ろ扇情的な雰囲気を増すアクセントになっている。

「やれやれ…これじゃおれの自信ってやつの方がぶっ壊れそうだぜ」

などと嘯くがこれも刑兆達には予想の範疇。確かに弓と矢で多くのスタンドを目覚めさせ、交戦、撃退した能力に相応の自負はある。
だが昨晩ランサーに効かなかった時点で自慢の能力がサーヴァントに対しては無意味である可能性は想定してきた。あれがランサー固有のものであるか確信を得たかったため、今回も敵サーヴァントにバッド・カンパニーで攻撃を試みたのだ。
まさか自らのサーヴァントに試させる訳にもいくまい。
結果は予想通りの最悪のもの。今後サーヴァントとの戦闘においてバッド・カンパニーは有効なダメージを与える手段にはなり得ないだろうと結論を下す。

「あら、マスター。お仕事はいいの?」

何やら念話を始めたらしいが、不慣れなのか口に出している。
僅かな情報もものにしようと追撃を抑え、聞き耳を立てる刑兆たち。

「ごめんなさいね、今最高に昂ぶってるの。ちょっと待ってくれない?
今?白い髭がチャーミングなサーヴァントとお楽しみの真っ最中よ……もう、わかったわよ、ホント真面目なのね。
……はぁい、待っててくれてありがとう。マスターが急かすから、ゆっくり遊ぶのはおしまい」

そう宣言し、飛びかかるモリガン。
先ほどまではバッド・カンパニーの銃も警戒していたために一方的だったが、それが自身には効かないと分かり、弾幕戦は避けてショートレンジに持ちこむ。
これで刑兆は戦況に直接は関われなくなった。

再び殴り合う二人のサーヴァント。
膂力とリーチで勝るニューゲートの攻撃を回避し、速度で勝るモリガンが間隙を突かんと周囲を飛び回る。
そんなラッシュの攻防に飽きたか決定機を見出したか、先にモリガンが動いた。

「悪い子ね…『闇より出し幻影の半身(アストラルヴィジョン) 』!」

ニューゲートの背後に周り宝具を発動、分身に足止めをさせて背後にいたマスターを狙う。
当然巻き込まれないよう距離をとってはいたが、サーヴァントの速度ならば即座に心臓に手が届く。

(好みの決着じゃないけれど…長々と待たせて令呪で呼び出されでもしちゃかなわないからね)

「刑兆!」

マスターの危機を救おうとするも、分身が割り込み攻撃を加える。
本来は挟み撃ちにしてこそ真価を発揮するため正規の威力ではないが、それでも宝具、本体と何ら変わりない攻撃力だ。
間合いの外に回避しなければ無視できないダメージを強いられる。
しかし、ニューゲートは逆に思いっきり踏み込んだッ!
数多の攻撃をノーガードで受けながらも退かず止まらず、突き進む。
胸に穴が空くのに比べれば、顔半分失うのに比べれば、息子を亡くすのに比べればこの程度の痛み物の数ではないと。

「せっ、この、堕ちろ!」

打撃では止められないとみて投げにかかるモリガン。

「ど…きやがれェ!」

しかし逆にニューゲートの方がモリガンの美貌に掴みかかり、グラグラの実の力とともに地面に叩きつけて分身を消しさる。
少なくないダメージを負いながらも撃退に成功、刑兆を助けようとする。
だが敵は既に腕も薙刀も届かぬ領域、生き延びたくば刑兆自ら活路を切り開かねばならない。

「刑兆、あそこを撃て!」
「ちっ、バッド・カンパニー!」

自らのサーヴァントに指示を受け、生きるために足掻く。
アパッチのミサイル…外れる。
戦車の砲撃…効いていない。
背後でサーヴァントも震脚を放つ…空を舞い、回避。
最後の砦、兵隊による60近いカービンライフルの掃射。
既に分かったことだが、アーチャー…三騎士の一角たるモリガンもレミリアにランクでは劣るが対魔力を持ち、スタンド、バッド•カンパニーの銃撃はほぼ効果はない。


613 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:44:12 V4b5DGBk0

「な!?」

しかし銃口の向けられた先は彼女の翡翠の如く輝く両の眼。視界に飛び込む数多の銃弾と眩いまでのマズルフラッシュにたとえダメージにはなりえないと分かっていても、反射的に瞼を閉じ、回避行動をとってしまう。
その隙を突き、サーヴァント相手には奇跡とも言える離脱をして見せる刑兆。
だが、あくまでそれは一瞬の隙。即座に体制を立て直し改めて攻撃を加えようとする。そこへ

「オラァッ!」

視界の端に飛び込む石柱。背後で分身を倒したニューゲートが先ほどまで持っていなかった太く、長い何かを腕一本で振るい一撃を喰らわせんとしていた。
サーヴァントに神秘のない攻撃は無意味。この一撃も本来なら無視できるもののはずだが、駆け抜けた嫌な予感を信じ防御体制を取るモリガン。

「くっ!」

予想以上の硬度、威力、そして僅かながらも神秘。石柱が砕けるほどの威力にも関わらずダメージは受けずにすんだ。
しかし空中にいた故に吹き飛ばされ、刑兆から大きく離れてしまう。
なぜあんなものがサーヴァントに干渉するほどの神秘を宿している?宝具…ではない、そんな魔力は感じなかった。どこから出てきた?何だ、アレは?
様々な疑問がアーチャーの胸中に浮かぶ。周囲に目を走らせると先ほどうっとおしいと感じた電線が心無しか数を減らしており、砕けた石柱にはそれらしき黒いものが繋がっていた。まさかアレは…?

「気づいたみてぇだな。最初のアパッチのミサイルはお前を狙ったモンじゃねぇ。コイツの近くの電信柱を狙ったのさ」
「加えて言うならおれが地面を揺らしたのも柱をより早くへし折るためだ。震動はお前にも伝わっちまったみてェだがな」

地震とは波のように伝わるものである。大地を伝わらせたグラグラの実の力が近くの電信柱だけでなく、少し距離のあるアーチャーにまで影響した。
それと同様、武装色の覇気で硬化した電信柱に震動を伝わらせた故にサーヴァントにも効果を発揮する一撃をただのコンクリート塊を用いて放てたという訳だ。もっともその一撃で電信柱は耐え切れず砕けてしまったが。

「大した発想のスケールね。柱を折って片手で振り回すなんて」

やるじゃない、と飾りない賞賛の言葉を送る。
だが戦況は戻ったに過ぎない。いや、刑兆たちにとっては宝具により受けたダメージ分悪化したと言える。

『刑兆、こっちも切り札を使うぜ。状況は不利、加えて本体と互角の分身を出すなんざ間違いなく宝具だ。相手が手の内を見せた以上こっちも相応の手札を切るのがスジってもんだ』
『仕方ねえか。やるからには確実に仕留めろ』

奇しくも昨晩の戦闘とは逆に逆転のため宝具を解放しようとする。対するアーチャーはと言うと…

「ん、タダノったらせっかちなんだから、もう。早い男は嫌われるわよ?
…ふぅ、ごめんなさいね、麦わらのボウヤを待たせてるらしいの。名残惜しいけどここまでにしましょう」

そう言うと踵を返し飛び去ろうとする。宝具解放のきっかけは違えども結末は同じく、飛行による戦略的撤退。

「アーチャーよ。また遊びましょう」

最後にそう、言葉を取り残して妖艶なるアーチャー、モリガンは去っていった。継戦は不利と見てか、これ以上騒ぎ立てるのを良しとせずか追撃は控えるライダー。
戦闘が終わると自身のコンディション、そして敵戦力を二人して内心確かめる。
特に刑兆は敵の存在…サキュバスという吸血鬼と似て非なる種族に強い関心を抱いた。

(血を奪う吸血鬼、精力を奪うサキュバス。共に何らかの形で人間のエネルギーを奪う存在だ。
肉体的、物理的に殺すのではなくエネルギーを奪う形でならおやじを殺せるんじゃあないか…?)

だがそのためには少なくともあのアーチャーの協力を得ることが必要になる。
できるのか?あの見るからに制御困難なサーヴァントと協力関係を結ぶことが。
最悪令呪で命じればおやじを殺させることはできるのかもしれないが、奴の令呪を得るということは奴のマスターになるということ。
あるのか?強力かつ協力的なライダーの代わりに奴を従えるほどのメリットが。

(詳細戦力がわからねえ以上断言は出来ねえが、そこまでのものではないだろう。
何も無理にあいつに拘る必要は無え。例えば生まれついての障害や何らかの負傷を治そうとする欲求の強い奴に弓と矢を使えば、エネルギーを吸収するスタンドを身に付けるかもしれん。発想のヒントとしちゃ十分だ)


614 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:44:42 V4b5DGBk0

「お前は大丈夫か、ライダー?」
「大したモンじゃねえ、続きも出来るぜ…実際あいつの後を追ってみるのを提案するつもりだったしな」

負傷したサーヴァントの発言に驚き半分呆れ半分といった反応を見せる刑兆。
先ほど追撃をやめたのはこれ以上目立つのを避けるためだったらしい。……もうすでにかなり騒いだ後で、その気遣いはあまり意味がない気がするが。

「本気か?」
「本気だ。麦わらの男って言ってたな?サーヴァントだとしたら知り合いかもしれねえのが気になってな…
おれとは別件みてえだがお前も何か気になってるんじゃないか?」

刑兆の考えを見抜いたように問いを投げかける。
それとともにかつて邂逅した3人の麦わら帽の男を回想する。
一人は同じ時代を生きた腐れ縁にして海賊王、ゴール・D・ロジャー。
ロジャーから麦わら帽を受け継いだらしい、殺し合いでの顔なじみ、四皇赤髪のシャンクス。
そしてそのシャンクスから帽子を預かったと言っていた最悪の世代の寵児、モンキー・D・ルフィ。
いずれも相応の豪傑揃い、もしいるのなら会って酒でも酌み交わしたいところだ、エースのこともある。

「……気にかかることがないとは言わねえがよ、宝具の直撃受けて大丈夫な訳ねえだろ。
キチョーメンな性格でね、戦闘が終わったら武器は故障しないよう手入れして万全の状態にするだろう?誰だってそうする。おれだってそうする。
…そのダメージは無視できるモンじゃねえ。今は休養に充てるべきだ」
「刑兆お前、おれをナメてんのか?この程度、傷の内に入りゃしねェ。くだらねえ気ィ使ってねえで思うように動きゃいいんだよ」

休養を提案するマスターと、行動を提案するサーヴァント。二人のとる選択は……


【B-3/南東部/1日目 午前】

【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(小)、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
0.吸血鬼の次はサキュバスかよ…
1.休養をとるべきと考えているが…
2.登校するかどうかは気分次第。
3.そのうち海に行ってみるのもやぶさかではない。
4.公衆電話の破壊は保留。


[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。


【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]ダメージ(中)、疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.行動に移すべきと考えているが…
2.麦わらの男が気になる。
2.いずれ海に行きたい。


[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。


[共通備考]
※ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。
※アーチャー(モリガン)と交戦、宝具『闇より出し幻影の半身(アストラルヴィジョン) 』とサキュバスであることを把握しました。
※B-2近辺にこの世界における自宅があります。具体的なことは後続の方にお任せします。


[地域備考]
B-3の南東部にて戦闘を行いました。
モリガンとニューゲートの弾幕音、地震、バッド・カンパニーの銃声が周囲に伝わりました。ただし銃声はスタンドのものであるためNPCには聞こえなかった可能性が高いです。
電信柱を折ったため地域の一部が停電などを起こした可能性があります。


615 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:45:27 V4b5DGBk0








『…!?待て、なんだと!?』

剣呑な報告に僅かに動揺するタダノ。

『思ったより戦況は動いているらしいな…今は撤退しろ、昼日中からあまり目立ちすぎるな』
『もう、わかったわよ、ホント真面目なのね』

サーヴァントの情報は得るに越したことは無いが、派手に動き過ぎれば余計な敵を作る。それこそ、今から探そうとしている白髪のサーヴァントのように。
同盟相手に序盤から動く相手に悪印象のような言葉を送った以上、あまり戦闘を積極的に行ってほしくはない。
と、思っていると体に思わぬ倦怠感がのしかかる。チカラを持っていかれるような感覚…アーチャーが宝具を行使したためだ。
あまりにも突然訪れたためにぐらつきかけるが、足を踏ん張り再び呼びかける。

『アーチャー、早く撤退しろ。優先事項を誤るな、今はまだ手札を出し切る時ではない』
『ん、タダノったらせっかちなんだから、もう。早い男は嫌われるわよ?』

からかうような発言をするが、意固地になることはせず指示に従う。
戦いを楽しむのも好きだが、堅物のマスターで愉しむのも悪くない。

『離れたわよ。それで、何か用事があったんじゃないの?』

撤退を確認し、使い魔を放ち白髪のサーヴァントを探すよう指示を出す。加えてまどかとルーシーの容姿を伝え、同盟相手であるから手を出すなと念を押す。
そして今度はアーチャーの報告を受ける。交戦した二騎のサーヴァントと、学生らしき二人のマスターについて聞き、同盟者二人とも情報を共有する。
消耗はあったが序盤から多くの情報を得られたのは幸先良いと、戦闘行為の有意性をある程度は認める。
……アーチャーを従え、今ライダーと同盟を結んだ。
同盟者の言葉によると白髪のサーヴァントはただ唸り声をあげ襲い掛かるのみだったという。恐らくはバーサーカー。
アーチャーの交戦した一人はセイバーと呼ばれていたらしい。もう一人はクラスを明言することは無かったらしいが、薙刀を振るっていたらしいしランサーだろうか。
だとすれば視認の難しいだろうアサシンとキャスターを除くすべてのクラスを確認できたことになる。順調と言っていいだろう。

「二人とも、今後の指針だが――」
「タダノ巡査長、何をしている?」
「っと、えと…碓氷…さんでしたか」

不意に話しかけてきたのは右目に眼帯をした怪しい風貌の男。人好きのする笑みを浮かべていることの多いルフィがらしくなく警戒したか、まどかを後ろに庇おうとするくらいには怪しい。

「紹介しよう。碓氷警部、一応僕の上司になる」
「碓氷だ。君たちはこんな時間に何をしている?学生ならばもう登校していなければならない時間だぞ。
タダノ巡査長も事件はどうした?彼女たちに注意しなければならないのは分かるが、それでもやらねければならないことは他にあるだろう」

紛れもなく本物の警察手帳を提示し、三人に注意をする。よく見れば少し離れたところにパトカーが停まっていた。

「こいつうるせーなー。ぶっ飛ばしていいか?」
「ダメですよ!?」

右腕を構えるルフィを止めようと、か弱いなりに必死にその腕にしがみつく。ぶら下がり足をブンブンと振る羽目になるがまどかはその腕を離さない。
呆れたような同情するようなため息をつき、タダノがフォローを入れる。

「彼らは事件も一部始終を目撃したらしく、今話を聞いていたところなんです。ですが、御覧の通り事件に刺激されてか、警戒心が強いというか排他的になってしまったようで……
ショックを受けているようなので今日は学校は休んで、夕方にでも改めて話を聞こうと今連絡先を渡そうとしていたところなんです」
「……そうか。後で正式に報告を。私は現場を見てくるから君も合流するように」

信じたのかどうかは分からないが離れていく。警戒相手が居なくなったのを見てルフィもまどかを下ろす。
落ち着いて話が出来るようにはなったが、仮にも上司に呼ばれたとあってはタダノもまた職務に戻るざるを得ない。

「仕方ない、話は時と場所を改めよう。連絡先を書いておいたから後でそちらから発信しておいてくれ。
…それから君はルーシーと名乗ったな?名乗られた以上こちらも相応の誠意ある情報開示をしなければならないだろう。
僕のサーヴァント、アーチャーはサキュバスだ。真名は明かせないがそれだけ言っておく。NPCはともかく同盟相手が籠絡されて食い殺されては目覚めが悪いからな、注意はしてくれ」


616 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:46:54 V4b5DGBk0

すでに敵の情報や学園への連絡など多くのものを提供しているが、サーヴァントが名乗ったという行動に重きを置いたかモリガンの素性の一端を明かす。
義理堅い面が出たのもあるが、どうせ相対すれば魅了持ちなのはすぐわかる。発言に一切の偽りなく義理と利益を追求した結果のものだ。
偽名を名乗ったことに一抹の罪悪感をまどかが一人で感じていたが、それ以上に気にかかる発言がまどかの心を捕えた。

「NPCはって…もしかしてもう…?」
「サキュバスを男を誘い、喰らう。そしてサーヴァントは魂喰いにより力を蓄える。それくらいは知っているだろう?」

サキュバスの話を聞き顔に血がのぼりかけるが、それよりもNPCを殺害しているという事実に血の気が引く。

「そんな…あんまりにひど過ぎませんか…」
「プログラム上のものでしかない存在を抹消するのが、かい?生憎とそんな甘いことを言うつもりはない。
僕は聖杯をとる…最終的には他の参加者をみな蹴落とすつもりなのだから、綺麗言は言っていられない。幸いマスターを殺める必要は無いようだけどね。
サーヴァントやNPCなど、相手が無辜の民でも、ましてや人間でもないなら手を下すのを戸惑うつもりはないよ。
……君は優しい世界に生きて来たんだね。けれど、もっと『必死』にならなければ願いは叶わないと言っておこう」

じゃあ、また後で。と言い残して仕事に向かう。
後には取り残された二人の男女が残った。

この苦い感覚は知っている。
全てに絶望したさやかちゃんがただ一つ残った正義だけ守ろうと、ボロボロになって闘うのを見ていることしかできなかった無力感。
自分たち地球の人類を燃料と言い切ったキュウべえの、正論ではあるが決して相容れないだろう価値観を目の当たりにした時のやり場のない怒り。
それと近似した何かが胸中を焦がす。
闘わなければならないのだ。でなければ、何も得られない。
だが自分の願いは、思いはそこまでして叶えてもよいものなのか?人の命を奪う価値はあるのか?

「ライダー…さん…」
「ん?どうした?腹でも減ったか?おれもそろそろ昼飯が――」
「ライダーさんは人間以外の存在ってどう思いますか?」

初めて会ったときの彼はどんな理由でも人を殺す理由にはならないと高らかに宣言した。
ならば人でないなら?サーヴァントなら、NPCならどう考えるのだろう?
そしてそれがキュウべえのような宇宙人なら?……さやかちゃんやマミさんのような魔法少女なら?

「人間じゃねえヤツ?いっぱい知ってるぞ。チョッパーはトナカイだし、フランキーはロボだし、ブルックは骸骨だし、ジンベエは魚人だな。
ドリーとかブロギーのおっさんはいい巨人だし、カルーにビリーは鳥で、ラブーンはクジラだけど友達だ。それ以外にも女ヶ島の近くに動物の友達はたくさんいるぞ。
パッパグは…ヒトデなのか?あとはハチって魚人も友達だな。ケイミーとかしらほしとか、あにほしは人魚か」
「え、えっ」

出るわ出るわ、世界を回った自由を愛する男の広い人脈とそれを受け入れる器は尋常のものではない。
ココロのばーさんが人魚ってやっぱり今思い返してもイヤだなー、などと渋い顔をするルフィを横目にあふれた情報と持て余した感情にあたふたする。

「その…魔法少女、じゃなくてえっと…ゾンビの、ことはどう思いますか?」
「まほうしょうじょってのは知らねーけど、ゾンビは会ったことあるな。仲間にしたかったんだけどなー。まあブルックが死んで骨だけだから似たようなもんだろ」

満面の笑顔で、おれの仲間はスゲーだろ、と言わんばかりに語ってみせる。友達や憧れのヒーローの自慢をする少年のようだ。
きっと彼ならば愛してもらえないと言う少女の嘆きも、ゾンビのようだと言う自嘲も、うるせえ!と放り捨て、全てを受け入れることが出来るのだろう。
そして必要ならば、気に食わないならば警察官だろうと神様だろうと敵に回し、彼風にいうならぶっ飛ばすことが出来るのだろう。
自分と違って悩まず突き進める彼が羨ましくある。


617 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:47:24 V4b5DGBk0

「なあ、まどか」

沈んだ様子で問いを投げていたまどかに思うところがあったか、この聖杯戦争において初めてルフィの方からマスターへと語りかける。

「願いとか夢ってのはさ、中途半端な『覚悟』じゃ叶わないんだ。それはあいつの言うことが正しい」
「覚悟…?覚悟ってなんですか?敵ならみんなぶっ飛ばしちゃえるような、闘う覚悟ですか!?」

羨望が劣等感に転じたか、攻撃的に答えてしまう。そんな自分に嫌気がさすが、己がサーヴァントはさらに強い口調で答える。

「ちがう!夢のために、自分の命を懸ける『覚悟』だ!」

海賊王。大剣豪。世界地図。戦士。オールブルー。万能薬。真の歴史。夢の船。
悔いのない生。祖国への愛。黄金郷。母の遺した言葉とタイヨウ。
ルフィの知る夢や願いを抱えた人はみんなそのために自分の命を懸けていた。ルフィ自身、海賊王になるために戦って死ぬならば別にいいと、海軍にいる親友に語ったこともある。

『覚悟』…死ぬことも殺すことも恐れている今の自分にそれはない。
先輩たるマミは、親友たるさやかにはあったのだろうか。彼女たちが死んでしまった今では分からないが、彼女たちは町の人を守るという正義で戦っていた。それは夢だろうし、ある種の覚悟だろう。
魔女は魔法少女の、ひいては願いや夢を持った人の成れの果てだ。彼女たちは夢のため、覚悟のために人の命を奪っていたことになる。
だが人に害をもたらす魔女となった以上、彼女たちの判断を咎めることはできない。
杏子は恐らく、さやかが人に害をもたらす前にせめて彼女の覚悟だけは守ろうと、信念だけは人のままで彼女の生涯を閉ざしてくれたのだろう。
皆そのために自らの命を懸け、そして散らして。
ほむらも同様、彼女は魔女が元魔法少女であることを知っていたらしく、その覚悟はマミたちよりも強固なものだろう。
自分はできるだろうか。彼女たちのように、願いのために自分の、誰かの命を懸ける『覚悟』が。

考える。タダノの言うように白昼から戦闘を仕掛けるサーヴァントははっきり言って危険人物だ。
あの白髪のサーヴァント、そしてタダノのアーチャーと交戦した、学生が従える二騎、もしくはタダノのアーチャー自身が該当する。
NPCの命を奪っているというならアーチャーの方こそ危険な可能性が高い。
ライダーは殺すことにこだわりはしない…けれども戦いを戸惑いはしないだろう。
ならせめて人に危害をもたらす、魔女に該当する…敵は命を懸けてでも倒すべきじゃないだろうか?


【C-4/1日目/午前】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康、腹八分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:叶えたい願いはあるが人を殺したくないし死にたくもない。
1.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』を決めたい。
2.魔女のような危険人物は倒すべき…?
3.タダノさんは…
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。 表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※登校するかは思案中です。欠席連絡は入れましたが、学生マスターとの接触のため、遅刻しての登校も考えています。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうのことに少なくない抵抗感を覚えています。


【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康、腹二分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
2.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
3.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う
4.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。

[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。


618 : 戦争と平和 ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:47:53 V4b5DGBk0





きついことを言ってしまったとは思う。
だが、自ら殺めた、犠牲にした命を想うと甘い気分にはなれなかった。

『アーチャー、合流と言ったが仕事が忙しくなってしまった。慌てなくていい』
『あらそう?でももうだいぶ飛んできちゃったわ。お昼には少し早いし、どうせだから合流するわよ』

言外に消耗を補えと言ったつもりだったのだが…彼女を完全に従えるというのは早々に諦めている以上、しかたないか。

『ところで使い魔も飛ばせたけど聞いてるサーヴァント探しだけで本当にいいの?なんなら学園とかに飛ばすのもアリだと思うわよ?』

珍しく作戦に対して提案があった。まあ学生に連続して会ったから起きた些細な気まぐれだろうが。

『家屋の被害を気にしない、かつそれくらい容易くやってのけるサーヴァントだ。人目をしのぶくらいのことはするだろう。
まだこのあたりから離れてるとも思えないし、補足すれば彼女たちが倒してくれるそうだ。わざわざ藪をつつく必要は無い』

こう言っておかなければ何をしでかすかわからない。学園に行って交戦したマスターと遭遇、再戦闘なんてなるだけならまだいい。
そこにルーシーや白髪のサーヴァントが絡んで混戦になれば消耗は小さくないだろう。

『そう、分かったわ。それじゃあ最後に質問。麦わらのボウヤはどんなコかしら?いい男?』
『……手出しはするなと言ったろう。そういう意味でも、だ』



【C-4/1日目/午前】

【タダノ ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
1.D-4の間桐邸に向かい、職務に従事する。
2.まどかたちと協力し、白髪のサーヴァント(一方通行)を早期に対処したい。
3.職務終了後にまどかたちと今後のことを話し合うつもり。

[備考]
※警察官の役割が割り振られています。階級は巡査長です。
※セイバー(リンク)、カレン、ライダー(ニューゲート)、刑兆について報告を受けました。(名前は知らない)
ライダー(ニューゲート)のことはランサーと推察しています。
※ルフィの真名をルーシーだと思っています。

【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]タンクトップ、ホットパンツ
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.マスターの所へ戻る。
2.マスターの指示通り白髪のサーヴァント(一方通行)を探す。
3.麦わらのサーヴァント(ルフィ)に好奇心。

[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※現在の外見はポイズン@ファイナルファイトシリーズ(ストリートファイターシリーズ)に近いです。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※現在C-4の北東部を飛行しています。
※C-4の北東部から使い魔の蝙蝠を放ち、バーサーカー(一方通行)を探させています。
タダノから指示を受けたため、他の用途に使うつもりは今のところありません。


[共通備考]
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。


619 : ◆A23CJmo9LE :2014/10/17(金) 22:51:59 V4b5DGBk0
投下完了です。
寡黙なセイバーVS饒舌なセイバーに続き、知性に優れたバーサーカーVS理性的に振る舞うバーサーカーとは期待に胸膨らみますな

放送についても了解しました。残った早朝組がある程度動いたら放送ですかね?


620 : 名無しさん :2014/10/18(土) 00:02:25 H9nIv4OcO
投下乙です。

ハイウェイスターやチープトリックなら、親父さんを殺せるのかなあ。

ルフィって精神干渉に弱いから、モリガンとは相性悪そう。


621 : 名無しさん :2014/10/18(土) 00:25:41 XwYSt3NcO
魅了系は大丈夫じゃない?ハンコックは大丈夫だったし・・・


622 : 名無しさん :2014/10/18(土) 15:12:51 dMbmLIQ.0
投下乙です
まどかとタダノは同盟を組むも、NPC喰いをするタダノ組に少なからず忌避感を覚えるまどか
不安を抱えるまどかを支えるルフィが格好いいぜ
だんだん組の繋がりも増えてきて深みが出てきましたねぇ


623 : 名無しさん :2014/10/19(日) 14:38:19 XNqcCe1.0
投下乙です
面白いなあ、各キャラの出典のネタもふんだんに盛り込まれてて、心情の交差も濃い。碓氷さんが出たのにはちょっと笑ってしまったw
各人がそれぞれの認識範囲でベストを尽くそうとしてるし
形兆と白ひげの組み合わせが好きだわー、戦闘の進め方もかっこいい
モリガン姐さんの魅惑たっぷりな描写や互いの決め手を狙う緊張感と相俟って読み応え抜群でした
まどかに対するルフィの言葉もいい 無茶苦茶だけどでかい男だわ


624 : 名無しさん :2014/10/20(月) 01:43:19 ObluM0oI0
投下乙です!
どんどん関係が深まっていくなあ
バトルシーン面白い
まどかの逡巡とそれに対するルフィの言葉がいいな


625 : ◆wd6lXpjSKY :2014/10/26(日) 19:11:13 AvqavGgk0
投下お疲れ様です!
白ひげ組は戦闘面でライダーの能力、スタンド能力もあって凄まじい。
ルフィの強引だけど何か惹かれる姿はかっこいいです!
ただ、まどかにとって魂食いや戦闘はどんな影響が……。


626 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/06(木) 22:06:23 fAqzwqEY0
夜科アゲハ、纒流子、紅月カレン、リンク、人吉善吉、垣根帝督、朽木ルキア、前田慶次、犬飼伊助、食蜂操祈で予約します


627 : 名無しさん :2014/11/07(金) 20:01:36 aBJMgYHo0
期待してます


628 : 名無しさん :2014/11/09(日) 02:34:55 8.rdeFRo0
おお、多人数な予約が…頑張って下さい


629 : 名無しさん :2014/11/09(日) 22:54:21 gUiaFKhY0
予約きてた!楽しみ!


630 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/11(火) 00:03:33 .VufbOo.0
頑張ります!……申し訳ありませんが予約延長します


631 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:14:27 rBl8RBVw0
投下します


632 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:16:14 rBl8RBVw0


 剣を掲げし男女の英雄


 その刃に乘せるは刹那の希望、永遠の憧れ


 懸ける願いは己が夢、主への忠誠、或いは生き様


 戦場が学び舎、屋上であれど放つ衝撃は戦火の中と相変わらず。


 独裁魔術師は他者を塗り潰し己の色に染め上げる


 全ては王の為に、民を臣を極限まで使い潰す


 手を結ぶは過去の豪傑武将、その力に疑い無し


 互いに胸を明かさず、一つの点が合致しているだけの軟い同盟。


 そして潜む暗殺者。


 


 学び舎――アッシュフォード学園に現段階で座するマスターは五名。


 夢、目的、帰還……彼、彼女達は戦う理由が存在する。


 従うサーヴァントも例外なく主の駒としてその力を振るい、己が証を打ち立てる。


 誰もが退かず、協定を結ぼうが仮初であり、終点に至るのは元々一組でしかない。

 
 終点に至るのは一組、ならばその過程において朽ち果てる人形も――存在する。


 廻る廻る戦の輪、其処に予定調和など存在せず、決められた筋書きも無ければノルマも無し。

 
 あるのは舞台だけ、役者は揃って台本など読まず、求めるだけ求めるのだ、歓声を、拍手を。


 故に何処で誰が堕ちようと、舞台は変わらず、演じられる――。





◆  ◆  ◆



 

 双牙のセイバーが屋上で刃を交える中、人吉善吉は教室にて授業を受けている。
 戦火散らされる中悠々と授業を受ける彼を笑う者は、居るだろう。
 だが彼は気付いていない訳ではなく、ハイリアのセイバーが鳴らした警告を感じている。
 その挑発に乗るな、止めるアサシン。この選択が正解かどうかは不明だ。
 しかし授業を抜け出さず、全うする姿は生徒の鑑。流石生徒会、と茶化すべきか。


633 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:21:18 rBl8RBVw0


 主である人吉の行動を止めたアサシン、垣根帝督。
 不確定要素の塊である現状で、直感に任せ行動するのは危険過ぎる。
 冬場に夏タイヤでアクセルを極限まで踏み込むなど愚の骨頂、それに値する。
目の前にある危険に自ら乗り込むなど考えられず、場を見極めるならばここは静観を取るべきだ。
 
 幸い人吉は彼の進言を受け入れた。
 アサシンのクラスで現界している己に真正面からの接近戦は不利になる可能性が高い。
 彼自身負ける気など微塵も思っていなく、正面から戦える力を所有している、が。
 腐っても呼び出されるサーヴァントは大なり小なりこの世に名前を刻んだ伝説の存在だ。
 用心するに越したことはない。

 逆に屋上の挑発に乗った者も存在する、人吉の隣に在籍している生徒だ。
 名を夜科アゲハ、彼が動き出したタイミングは挑発のそれと重なっている。
 トイレと宣言し席を立ったが、十中八九屋上に行くための建前だろう。
 
 夜科アゲハが何を思い屋上に向かったかは知らないが潰し合ってくれるなら重畳。
 手を汚さないで頭数を減らすことが出来れば今後の展開に上方修正を入れる事が出来る。
 
 ああ、違う。

 手を汚すことなど別に構わない。
 人は死ぬ、英霊でも今はこの世に形を保っているならば再度、死が訪れるだろう。
 標的は全員敵だ、思惑は存じぬが参戦しているならば無関係は強調出来ない。
 手を汚すことなど別に構わない。力を温存出来る、これが全てだ。

(音が何も聞こえねぇ)

 時間は経っているが件の屋上から、学園の上から振動は何一つ伝わってこない。
 会話でもしているのだろうか。

 一つ、仮説を打ち立てよう。

 もし屋上の過剰な魔力反応が挑発ではなく、一種のアピールだとすれば。

 人吉善吉は聖杯戦争に参加している、当たり前だ。そのサーヴァントが垣根帝督なのだから。
 この当たり前の情報――これを握っている他の参加者は現段階では知らない。
 居ない、と断定出来ないのが情けない所だが、少なくても彼らは知らないのだ。

 情報収集が目的として、屋上の挑発は関係者以外気付くことはないだろう。
 つまり寄ってくるのは野次馬ではなく他の参加者だ。接触を求めるには絶好の機会である。
 無論騙し討の線もなくはないが……何にせよ全く反応が感じられない。
 
 誰かが死んだか、手を結んだか。

『なぁ……屋上から何も感じねえな』

『まぁそんなもんだろ、今は大人しくしとけ』


634 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:22:25 rBl8RBVw0


 人吉が念話で垣根に話しかけるも一言返すだけ。
 実際問題、今此処で別段動く必要も無ければ、策を張り巡らせる必要もまだ無い、だろう。
 何が起きたかは帰ってきた夜科アゲハから察すればいい。
 帰ってこなければ所詮その程度の存在だった、それだけのこと。


 だったのだが。


(――!)


『おい、アサシン! 一気に反応が膨れ上がったぞ!?』

 
 意識を離したその刹那、忘れるなと強調するかのように膨れ上がった魔力。
 彼らは知る術が無かった。時のセイバーが奏でた音色は結界となり屋上を包んだ。
 これにより外部には一切の音と反応を遮断、人吉達には何も届かない。

 それを断ち切ったのがもう一人のセイバーだ。
 宝具の名を開放し魔力を放出、彼女の一振りが時のセイバーの結界を断ち切った、それだけのこと。

 結界が無くなったことにより充満していた魔力が解放される。
 気付くのは他参加者であろうが、戦闘音が響くのも時間の問題だろう。
 静観を選択したが気配を遮断し一旦偵察に向かうのも悪くはない、そんな思考が生まれるが。


「先生、夜科が中々戻ってこないので様子を見てきます!」


 思考、そんな無駄な過程何て必要ない、そう言わんばかりの勢いで席を立つ人吉。
 活発で行動力のある若者……言葉の印象は最高だが馬鹿だ、愚かだ、死地へ向かう志願者と変わらない。
 面を喰らい溜息を零す垣根だが一応だ、言っても無駄だと思うが静止を掛ける。


『行ってどうすんだ?』


『この反応の大きさってマジで殺す気じゃねぇか、わざわざ殺す必要もないだろ。
 叶えたい願いが在るのは解るけどよ、脱落でいいんだ。
 だったら止めるさ、生徒会として、人として……同じ参加者だとしてな!』

 
 扉を開けると人吉は脇目も振らず階段へ直行した。
 垣根の反応も伺うこと無く屋上に向かい参加者との接触を図るのだろう。
 それは情報交換などと言う名義ではなく、戦闘の停止の呼びかけだった。


『……あの野郎本気でゲームか何かと勘違いしてんのか。
 ったくよぉ、馬鹿何だか人誑し何だか……』

 
 走り去る己のマスターに垣根はやれやれと言うように言葉を零した。


635 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:23:40 rBl8RBVw0


 垣根帝督には夢が在る。
 文字に起こすととても幼稚だが仕方がない、事実だから。
 彼はマスターに言った。

『もう一度やり返したい奴が居る』

 そのために彼は聖杯に願いを懸けるのだ。
 リベンジマッチだ、淡く、消えそうな灯火。
 だが信念が強ければ強い程しぶとく永劫に灯る内の炎。

 その名は一方通行。
 垣根がまだ生を得ていた頃の世界で事実上最強の座に君臨していた学園都市有数の超能力者だ。
 その力は反射、万物悉く跳ね返す絶対無敵の超絶超能力者、彼はその力に負けた。

 この願いの先に垣根の更なる願い――願いと言う表現が適切かどうかは曖昧だが目的がある。
 彼が居た学園都市のトップであるアレイスター、そう呼ばれる人物との直接交渉権だ。
 その先にある思惑は本人しか解らない、それはマスターさえも。

 だが彼の願いに大きな穴が在る、しかもその穴は落とし穴などではない。

 彼が標的としている一方通行はバーサーカーとしてこの聖杯戦争に参加しているのだ。
 もしこの世に神が居るならば、少年漫画が好きなのだろう。

『わざわざ願いを叶えなくても因縁の戦いのためにお膳立てをしてるんだから』






「……」




 
 人吉の後を追い廊下に出るも彼の姿は見当たらない。相当な走りだったのだろう。
 数歩先の角に視線を配り、彼もまた行動する。

 柄でも無いが願いが在る、それもメルヘンチックなリベンジマッチ。

 可怪しい事はない。

 願いが無い人間など傀儡や死徒と同義だから。





◆  ◆  ◆


636 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:25:07 rBl8RBVw0

 犬飼伊介は真剣に授業を受ける気は無く机に伏している。
 大方テストでも碌に書き込みもせず白紙で提出するような生徒だったのだろう。
 机に伏しているだけなのに絵になるような、どうしようもない光景。

 彼女もまた別クラスのマスターと同じく屋上の挑発に気が付いている。
 あれ程魔力を強調したのだ、力に自信があるのだろう、ならば動く時ではない。
 
 サーヴァントであるキャスターは優秀だ、声に出したくはないが魔術師としては優秀である。
 キャスターに正面から戦う力は無いがその宝具である洗脳は強大な力だ。
 現にこのクラスに在籍している生徒の七割は彼女達の駒となっている。

 その駒に命令を下す。

『屋上を見てこい』

 だが返ってきた連絡は『扉が開かない』。

 キャスター曰く結界の一種でも使用しているらしい。
 つまり他の餌が引っかかったのだろう。
 そうなればこの学園には自分も含めて四人の参加者が在籍していることになる。


「居眠りとは感心しないな」

「んー、それはあたしに言ってるのかなぁ♥」

「お前以外に誰が寝ていると言うのだ、たわけ」


 屋上挑発した参加者、これで一人。
 釣られた参加者が一人と仮定して、二人。
 自分を含めて、三人。

 そして寝ている伊介に注意を促したのが朽木ルキア、彼女もまた聖杯戦争に参加するマスターだ。
 その願いは力を取り戻す、嘗て死神の力を有していたあの頃に戻るため。
 力が欲しい、だがそれは他者を殺してまでも叶える願いではない、重々承知している。
 故に彼女は殺しを行わず、そのサーヴァントもまた殺しを行わない。
 何の因果が働いたかは不明だが神はどうも己の好みを反映している節がある。

「伊介様♥ そう呼べって言ってるだろ」

 居眠りを注意されたのが癇に障ったのか。
 伊介はお前呼ばわりされたことに釘を刺す、それも黒い笑顔で。
 その瞳に込められている感情は威嚇のそれと変わらない。

「……はぁ」

 その反応に何を思ったかは不明だが溜息を零す。
 何故このような奴と同盟を結んでいるのか、と。
 
 両者はこれでも一応同盟を結んでいる、が。
 とても柔く、脆く、崩してくれと言っているような淡い同盟である。


637 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:26:11 rBl8RBVw0


 犬飼伊介と朽木ルキアの間で結ばれている同盟。
 同盟と言っても名前だけ、利害が一致しているだけの一時的な協定だ。
 聖杯に叶えられる願いは一つ、ならば必然的に残る主従は一組であり、当然である。
 
 犬飼伊介とキャスターは朽木ルキアとランサーを捨てる気でいる。
 しかも犬飼伊介は隙があれば己のサーヴァントを変えることも視野に入れているのだ。

 キャスターの統率力は魅力的ではあるが戦闘能力は皆無だ。
 珠正面からの戦闘に関しては英霊などと口が裂けても言えないだろう。
 故に大局を長い目で見据えるならば鞘替えも充分選択の範囲に陥る。

 彼女が知っているサーヴァントは現段階で朽木ルキアのランサーのみ。
 戦闘面ではキャスターとは比べ物にならない程上を行くだろう。
 そして何より犬飼伊介は己のサーヴァントである食蜂操祈を気に入っていない。
 

『あ、ちょっと展開に異変ありだゾ☆」


 犬飼伊介が朽木ルキアに注意され機嫌を損ねていた時、風が吹いたように取り巻く空気が変貌する。

 先ほどから反応が感じられていなかった屋上から突然膨大な魔力の反応が有り。
 結界が崩壊したと見て間違いないが、さて、どう動く。


『生徒を送りなさい♥』

『解ってるわよそんな事』

 軽い念話で再び生徒を屋上に向かわせる、偵察の意だ。

「おい、今度は此方でも動かせてもらう」

「まぁ勝手にどうぞ♥」


 朽木ルキアもまた己のサーヴァントを動かす。


『おうよ! んじゃちょいと鐘が鳴り響いたら行くとしますか』


 時計をを見ると後五分程度で授業が終了する。
 余計に騒いでは他の生徒に迷惑と判断しランサーは一拍間をおいて行動を開始すると宣言。
 仮初めの世界に通う創られた生徒達だが彼らにも生活のサイクルは存在する。
 ならば、無為に巻き込む必要はない。


◆  ◆  ◆


638 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:26:49 rBl8RBVw0


「おい! さっきから此処で――っていねぇじゃん……」


 屋上に人吉が辿り着いた時、其処に人の姿は無し。
 遅かったのか、決して遅くはないが結果論を述べるとしよう。

 先に動いた夜科アゲハは他の参加者と接触した。
 出遅れた人吉善吉は誰とも接触をしていない。

 一見前者の方が正解に見えるが後者の方が利口である。
 人吉は知らないが夜科アゲハは屋上で戦闘を行い少ないながらも魔力を消費した。
 その代りに得たのが他の参加者の情報、そしてどう転ぶか不明だが再度交渉の提案をしている。

 さぁ、神が居るならばどう大局を動かすか。

 最も今の人吉にそんな情報を知る術は存在しないのだが。

 屋上を見渡すと損害は特に見当たらない。
 強いて挙げるならば床に戦痕とフェンスが少々歪んでいるぐらいか。
 何にせよ、無駄足となってしまった。





「着地成功、とっとと逃げるぞ」

「わーってるよ」

 屋上から飛び降りた夜科アゲハとセイバーはそのまま茂みの奥に移動を開始する。
 唯でさえ目立ってしまった彼ら、校庭に留まっていれば尚更注目を集めるだろう。

「で、これからどうすんだアゲハ?」

 己のマスターに提案するセイバー。
 今後の動向はどう考えているか。
 余り使いたくはないが彼女は彼の従者であり、決定権は彼にある。
 どんな命令でも素直に二つ返事で許可するつもりはないがマスターの命令は基本守るつもりだ。
 故に今後の予定について聞く必要があった。


「一応体育館裏に来いって言ったからな……まだ昼前だけど先に行こうと思ってる」

「本当に来るのかあの女ぁ? どうもあたしに似てる声で耳に付くっつーか。
 まぁいいけどよ、昼前……十二時丁度に昼飯って訳でもないよな、ならそれなりに待つことになる。
 お前も魔力消費したみたいだしあたしも方太刀バサミ使っちまって魔力を消費したしな……英霊ってのは何でこうも制限が」


 生前ならば武器の一つや二つを振るう度に力を浪費することなど無かった。
 英霊の枠は魔力となりてその力の強さ引き換えに枷を嵌めていた。


639 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:28:36 rBl8RBVw0

 茂みに身を隠すとそのまま人目に付かないように移動を開始する。
 幸い外で授業を行っていなく体育館裏までは特に生徒と出会うこと無く辿り着けそうだ。

「これであの女が仲間になるなら、まぁ楽にはなるな」

「あぁ、仲間が増えることに文句はない……けどよ」

 歯切れ悪く返答するアゲハ、それを読み取るセイバー。
 聖杯戦争に参加している者には少なからず願いが存在する、天戯弥勒も言っていた。
 
「最後に残るのは一人、だろ? んなもん気しにしてもしゃーねぇぞ。
 お前が天戯弥勒をぶっ飛ばしさえすれば願いも関係ないだろ……大体何が聖杯だよ。
 あたし達サーヴァントが居るってことは聖杯はあるんだろうよ、でも姿も見えなきゃ形も解らねぇと来たもんだ」

 天戯弥勒は願いを叶えてやる、だから殺し合え。
 簡単にまとめると参加者にこう言い放った、変えようのない事実であり既実。

 だが聖杯とは言葉ばかりだ。現にアゲハは聖杯の存在を知らないで巻き込まれている。
 総ての参加者が聖杯を知っている訳ではない、天戯弥勒の言葉でしか知らないのだ。

「俺も願いを叶える何でもマシーンがあるとは思わない、けどよ。
 それに縋りたい奴もいる……しゃーねぇんだわ、よく出来てるシステムだぜ」

 人間は甘く、脆く、愚かで。
 駄目と解っていても動いてしまう。
 結果が欲しい、理由が欲しい、反応が欲しい、誰かに見られたい、独りにしないで。
 本来ならば他者を蹴落とし己の願いを叶えるなど外道畜生の所業である。
 それすらも解らず、手を伸ばしても掴むのは光ではなく藁。道を踏み外し続ける。
 気付いた時に周りを見渡せば己に負の感情しか取り巻いていないだろう。

「つまり、だ。天戯弥勒の言葉に乗せられちまっているんだ、ムカつくな。
 聖なる盃なんだろ? 大層な響きじゃねぇか……くだらねえ。
 あたしが天戯弥勒ならテメェで聖杯の願いとやらを使うね、他人に殺させて選ばすなんて馬鹿らしい」

 そもそも何故争わなくてはいけないのか、流れに身を任せているのではないか。
 天戯弥勒の言葉に縋り在るかどうかも解らない聖杯のために……不毛だ。

 会話をしている内に特段人との遭遇もなく体育館裏に辿り着いた彼ら。
 授業中の影響もあり人の気配は一切感じられず今此処に居るのは彼らだけだろう。
 適当に壁を背にし腰を落とす、ここいらで小休止と行こうではないか。


640 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:29:22 rBl8RBVw0

「それでよぉ、あっちのセイバーだけど」

 休憩している間にセイバーが言葉を漏らす、先の戦いで合間見た敵の話だ。

「あたしにはどうも心当たりが無いんだ、あんなオカリナ? 吹いたりしてる奴ぁ」

 剣を司る姿はセイバー、それは確定だろう。
 盾を使う姿は由緒正しき騎士を連想させる。
 青い瞳に特徴的な耳、服装からして異国の出身と断定。
 更にはオカリナを奏で挑発や結界を張れる能力を持つ……これだけの情報があれば特定に到れるかもしれない。

「あれだけ特徴があんなら嫌でも耳にすると思うけど生憎あたしの耳に、周りの奴らもそんな噂は聞いてない、けどよ」

 言葉を次々と紡いでいくセイバーの話を黙って聞くアゲハ。
 彼も対峙したセイバーの所在を知らないのだ、決して勉学をサボった訳ではない。
 天戯弥勒の言葉を借りるならば『世界が複数存在』するらしい、自分が居ない世界の歴史など知る由もない。
 アゲハ自身未来を旅していたこともあり、平行世界論に違和感も意義もない。

「それでも何となく、何となくなんだけど記憶に引っかかるって言うか……アレだ。
 英霊としての記憶っつーかなんつーかよ、知らないけど知っているような気がすんだ」

「お前何言ってんだ?」

「知らん」

 セイバーの言い分は知っているが知らない、知らないが知っている。
 子供が悪巧みを隠蔽するかのような弱い言葉の羅列だ。
 真意を問いただせば知らんと一蹴、彼女は何を言いたいのか。


「サーヴァントとしての知識って奴だよ、自前じゃない。
 もう少し情報が手に入れば何となく手が届きそうって話だよ。
 放課後もし時間とか持て余すならよ、一度本なりパソコンなりで調べてみようぜ」


 セイバーとセイバーの世界は異なるため、当然ながら生前の記憶に他者の存在は無い。
 だが英霊となり現界したことで数多の世界が爻わった、そう解釈するならば。
 この空間は線と線を繋ぐ点であり、総ての知識が集約されていても可怪しくはない。
 

「なるほど。その提案に乗った、何も無い何てねぇと思うがそうしようぜ」


 相手の情報を入手しそれを基に対策を立てる、戦闘で有用な手段だ。
 悔しいが夜科アゲハの力ではサーヴァントを相手に立ち回るのは辛いものがある。
 セイバーが対魔力を有していた線もあるが、それでも辛い戦いになるだろう。
 ならば己のサーヴァントを優位に進めるためにも情報収集を行う、悪くない。


 まずは此処で紅月カレンを待つ。話はそれからだ。


◆  ◆  ◆


641 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:30:40 rBl8RBVw0


「じゃあその夜科アゲハって男が体育館裏に居るのね♥」


 廊下ではキャスターの宝具で支配下に置かれている生徒から報告を受けている犬飼伊介の姿があった。
 話では黒い髪の男が女のサーヴァントと共に屋上で交戦していた、獲物は剣だったそうだ。
 この情報で一人、剣の英雄とその主を特定出来たのは結果上々だろう。

 加えて屋上にて挑発を行ったサーヴァントもセイバーであると判明した。
 生徒の名前は紅月カレン、生徒会に所属している生徒らしい。

 この時点で二つの主従の情報を手に入れたのだ。
 本人達は特に行動もしていない、キャスターの統率力が結果を招き込んだのだ。

「じゃあ体育館裏に直行お願ーい♥」

「お前は行かないのか? その命令に従うとでも?」

 体育館裏に夜科アゲハが滞在している情報を元に犬飼伊介は朽木ルキアに命令を下す。
 同盟を結んでいるならば偏りは避けるのが定石だ、だが。

「キャスターが正面からセイバーに敵うわけないじゃん♥」

「その言い方はムカつく☆ でも此処はそちらが向かうべきじゃない?」

「簡単に言ってくれるな、お前らは……」

 キャスターの力とランサーの力。
 優劣を戦闘力として付けるならば後者が圧倒的である。
 セイバー相手ならばキャスター魔術師よりも槍騎兵の方が絵にもなる。

「伊介様って言ってんでしょ? それにランサーがどれ位強いか知りたいし♥」

「おうおう、言ってくれるじゃあないか」

 体育館裏に別の参加者が居る、この事を知れたのはキャスターの力だ。
 しかしそれを総て押し付けるのは如何なものか、朽木ルキアは思う。
 任せっきりではなく一緒に行くのが筋では無いだろうか。

「行くのに文句は無い、けどよ。
 背中を狙うつもりってんなら先に釘刺しておくぜ?」

「こわーい☆」

 会話をするだけで疲れる、朽木ルキアの率直な感想だ。
 犬飼伊介とキャスターの言動は一々何かと癇に障る。
 まるで無理矢理素体に色を塗り潰したかのような喋り方はどうも気に入らないらしい。
 
 戦地に赴くことに依存は無いため、ランサーと共に体育館裏へ向かう。
 ランサーはこの時キャスター達に釘を刺した。

 他者を操る宝具を用いているのだ、何時奇襲されるか解った物ではない。
 
「小手先調べの偵察程度だと思え。
 お前達も何か新しい情報を掴んだら何か連絡してくれ……余り無闇に人を使い潰すなよ」

「……」

「……」

 ルキアの忠告に揃って口を動かさないキャスター陣営。
 子供のような態度に溜息を零すルキアだったが時間の無駄だと思い追求はしない。

 そのままランサーと共に体育館裏に向かうため廊下を後にした。


642 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:31:58 rBl8RBVw0


 ランサー達の背中を見つめる犬飼伊介とキャスター。
 ランサーに釘を刺された『背中を狙うな』。
 ルキアに忠告された『駒を使い潰すな』。
 どちらもキャスター陣営の武器であり魅力である決して表向きではない能力。
 戦場にて火花を散らすだけが戦ではない、彼女達には彼女達の戦い方があるのだ。

「なにあの女ぁ、ホントムカつくわね」

「まぁー別にいいんじゃないー? その通りだし♥」

 故に忠告を守る予定は存在しない。
 同盟として使えないようならば隙を見て背中を狙う。
 狙えなくてもマスターを操りこの手に収めれば詰み同然である。

 駒も同様だ。
 使えるもの総てを使い、潰し、己にとって優位な戦局を創り出し、動かす。
 此方にも願いはあるのだ。

 力が欲しい、戦いたい。
 そんなくだらない絵空事に付き合う必要など無いのだ。


「それで、もう一人の参加者については?」

「はい、キャスター様」


 此処からはランサー達は知らない時間となる。
 先に報告を行った生徒に再度情報の開示を求め始める。
 何もランサー達が居る場で総てを引き出す必要はない、無意味に与える必要が無いのだ。

「紅月カレン、同じく夜科アゲハ達と共に屋上から飛び降りてきた生徒です。
 髪は紅、生徒会に所属しているようですが……病弱な生徒と聞いておりましたが活発に見えました。
 そして彼女のサーヴァントは緑の騎士、セイバーです」

「ふーん。どいつもこいつもキャラ創ってるのね☆
 これで割れた情報はセイバーが二人……二人、ね」

 本来ならば聖杯戦争には七つのクラスに座を用意されたサーヴァントを使役する。
 その座は各クラス一つであり複数存在することなど例外中の例外だ。
 元々天戯弥勒の存在や力、思惑も未知なため総てが未知であり既視など存在しないのかもしれないが。

「じゃあ引き続きお願いね☆」

 そして偵察任務を再度言い渡し――









「ったく同窓会じゃねぇんだぞ、おい」









 無数の羽が吹き荒れると生徒の背中は突き刺された羽で覆われこの世から生を失った。


643 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:33:39 rBl8RBVw0


 状況を理解出来ていないが察知した伊介は死んだ生徒の首を掴み己の前方に引き込む。
 攻撃してきた男はサーヴァントだ、もう一度同じ攻撃を仕掛けられては対処のしようがない。
 横に広さが確保されていない廊下で直線上の攻撃は回避する機会も限られてしまう。
 故に取る行動は盾の確保だ。

「突然大胆過ぎないかしら? お兄さん♥」

「よく言うぜ、ずっとコソコソ嗅ぎ廻っていたじゃねぇか。
 どうせ屋上の奴らの情報でも握ってんだろ、寄越せ」

 伊介は言動こそ普段と変わらないが言葉に篭もる感情は違う。
 暗殺者としての威厳と黒い感情を、未知なる敵と対峙している不安な感情を。

 情報を寄越せと言われても簡単に渡す訳には行かない。
 それは此方が優勢であったり信念や正義に駆られている時の建前だ。
 明け渡したことによって安全が確保されるならばその選択も悪くない。
 何方にせよサーヴァントにはサーヴァントで対向するのが筋だろう。
 戦力は無いにしても交渉は出来る、そう思いキャスターに視線を移すが――。


「い、居ない……はぁ!?」


 其処にキャスターの姿は見当たらない。
 先程まで隣に居た筈、しかし其処には無の空間があるだけ。
 霊体化でもして遠くに移動したのか、だどしたら何故だ。

 思考が回らない中、目の前の男は不敵に笑っている。
 最初は我慢していたようだが堪え切れなくなり周囲に笑いを零す。


「テメェのマスターがピンチって奴だぞ? なのに黙り決め込むか。
 悪いとは言わねーよ、けど身の振り方を考えたらどうだ? 何時迄も駒が在るとは限らないぜ」


 彼の言っていることは総て正しい。
 主の危険に己の身を案じて逃走するなど従者失格である。
 その振る舞いもいずれは誰一人として信用しなく、虚無の存在になるだろう。

 此処で恐ろしいのは目の前のサーヴァントの洞察、観察力だ。
 偵察を行わせた生徒を傀儡だと睨み、追尾して此処まで来たのだろう。


644 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:35:02 rBl8RBVw0
一瞬で見抜いたか、何か力を作用させたかは知らぬがキャスターの絡繰を見抜いている。
 目の前の男はホストのようなスーツを纏い、その見た目から年齢は学生程度に感じる。
 先の攻撃は羽、これが彼の能力、或いは宝具と仮定する。しかしこれだけではクラスの断定まで辿り着かない。

「他人を操るのは充分強力な部類だと思うぜ。でもよ。
 俺には通じないな、簡単な数字の優劣でもそうだろ? 俺に常識が通用しないってのは知っているよな?」

 対魔力のスキルでキャスターの宝具は封じれるようだ、これは前もって聞いてある。
 その他にも特殊なスキルで阻まれる可能性も在るらしく、特に三騎士相手には武が悪過ぎる話だ。
 故にランサーと同盟を結べたのは幸先良いスタートであった。

 ランサーに連絡を行うにも携帯のような連絡手段は使えない、単純に知らないのだ。
 交換でもしとけば良かった、後悔しても遅い。キャスターが線を繋ぐ点となっていたから。
 そのキャスターが居なくては連絡も取れない、ならば何とかするしか無いのだが……無理な話だ。

 そもそも何故キャスターは逃げたのか。
 仮に此処でマスターである伊介が死ねば彼女も消滅する。
 立ち向かうのが筋であり定石ではある。しかし逃走。

 立ち向かったとしても相手は此方の力を見抜いているため状況は最悪だ。
 願力で覆せるような状況ではなく、早くも絶体絶命と言った所だ。


「出てこいよ、第五位。
 出て来ないならここでお前のマスターも、お前自身も脱落だぜ……っと」


 言葉を紡いだ男の背中には不釣り合いな翼が誕生する。
 その白き輝きを放つ翼、そこから放たれる羽で駒を殺害したのだろう。
 突然の変異に驚くがそれ以外にも驚くべきことが紡がれていた。


「――キャスターの知り合い?」


「知り合い……ねぇ、簡単に言えば同じ世界出身ってとこか。
 ついでに同じ地域に滞在していたって言ってもいいぜ。何で無数に枝分かれる英霊から知り合いを引くんだか」


 やれやれと謂わんばかりに愚痴を零す男。
 キャスターの知り合い、それならば能力を見抜いたことも納得出来る。
 そして言葉から察するにキャスターよりも上を行く存在なのだろう。
『簡単な数字の優劣』つまり彼女は彼よりも下、故に逃走を選択したのか。

 理解は出来るが認識したくない事実だ。

 使えない、鞘替えをしたい、ランサーにでも乗り換えれば良かった。

「それで、伊介を此処で殺すの? あたしだって死にたくないし死ぬつもりもないけど」

「別に殺す必要は無い……まぁ関係者なら即効殺してもいいけどよ。
 持ってんだろ、テレカ。そいつ使って帰るなら文句は言わねーよ、でも、しねぇだろ」


645 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:35:59 rBl8RBVw0

 顔や身体全身に汗が走り出して行くのが気持ち悪いほど解る。
 決してゴールなど甘い終着点は無く此処で命が散るかもしれないという不安が永遠のマラソンを継続させる。

 男の提案であるテレカの使用。
 サーヴァント消失後六時間以内ならばテレホンカードを使用し元の世界へ帰還するルールがある。
 別の世界、この単語が有る時点で状況は超弩級のメルヘンチックだ。

「しなーい♥ 願いは此方にもあるの」

「そうか、まぁそうだろうな。
 俺のマスターも願いは在る。柄じゃねぇけど力になってやってもいい。
 生徒会何ぜ無駄な肩書背負って恋に生きるってのは学生らしい、眩しく見えちまう……ってどうでもいいな。
 隣に座ってた奴もマスター何て随分と出来上がってる話なんだわ、これがよ。それに第五位まで来やがった。
 もしかしたらアイツも居るかもしれない……長話悪いな、で、決まったか?」

 一息付くと垣根は伊介に決断の有無を問い正す。
 死ぬか、キャスターを放棄しテレカを使う実験材料となるか。
 暗部の彼にしてみれば生存の選択を与えているだけ充分マシな問になっている。

 何も言われず殺されていた可能性も在るためこれは好機、だが。



「神様って居るかもしれない……まさか、ね♥」



 黒い笑みを零す伊介、それは死を悟った哀れな感情ではない。
 彼女の視線の先、つまり垣根帝督の背後になる。
 彼女はどうやら愛されているらしい、まだ生き延びる事が出来そうだ。

 つまり――。


「新手か――ッ!」


 その視線に感づいたのか背後に振り向き確認を行う垣根帝督。
 其処には叩き斬らんとばかり剣を振るう緑のサーヴァントの姿あり。

 その一撃を翼で己を囲むように重ね防ぐ、衝撃を殺すと翼を広げ風圧で弾き飛ばす。
 相手のサーヴァントは見た目とは反して重量に自信があるのか、床を後退るように後退した。


646 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:37:05 rBl8RBVw0


 そのサーヴァント、時の勇者、ハイラルの英雄。その名をリンク。
 屋上で挑発を行った本人であり、此度の聖杯にセイバーとして招かれた紅月カレンの従者である。 
 騒ぎを聞きやって来た……キャスターが情報交換のために人払いをしている。
 元々廊下の奥側、移動教室の中でも特に使われないような場所を選んだため騒ぎになることはない。
 戦闘音と言っても垣根帝督はアサシン故か音を殺していたため漏れはない。

 結果だけ述べるとキャスターが駒に命令し生徒会である紅月カレンに伝えたのだ。

『とある場所で暴れている不審な男が居る』と。


「助ける義理は無いよ、でも関係ない生徒を殺す奴の方が敵だ」

 
 伊介の傍に駆け寄った紅月カレンはそう告げる。
 何故伊介がマスターだと解ったのか、単純にサーヴァントに襲われているからだ。
 彼女のサーヴァントが見えないのは恐らくやられてしまった、そう認識している。

「じゃあ……お願いねッ!」

「――な」

 そう聞くと近くに堕ちていた垣根の羽を掴む、そして走りだす。
 カレンの横を通り過ぎる時にはそのまま脇腹を切り裂くように羽を腕ごと伸ばす。
 不意打ち奇襲突然動揺、カレンは対処する暇もなく脇腹を抉られた。

「っあぁ……っあぁ!」


647 : 名無しさん :2014/11/17(月) 00:38:36 rBl8RBVw0

 即座に抉られた傷口を腕で抑え始める。
 深くはない、致命傷にもならないが傷に変わりないし、血が出ているのも確かだ。
 死にはしない傷だが出血量は傷口に反比例し多く、まるで一番血が出る部分を狙われたかのように。

「じゃあね♥ 紅月カレン、次会ったら謝ってあげる♥」

 窓ガラスを蹴破るとそのまま伊介は外に飛び出し逃走を図る。
 高さは二階、死ぬ事も無ければ着地に失敗するような高さでもない。

「――ッ!」

 己のマスターに傷を負わせた、これは従者として失格だ。
 言葉には出さないが表情が物語っており、リンクの顔は明るくはない。
 黙って逃がす訳もなく逃げる伊介の足を狙い矢を放つ。

 一直線に吸い込まれるように飛んで行く矢だが当たらない。
 手元が狂った訳ではない、どうやら犬飼伊介という生徒は何かしらの力を持っているようだ。

 手に握りしめていた垣根の羽――宝具である未現物質の残骸で矢を相殺させていた。

 そのまま消えるように逃亡。

 結果として傷を負ったのが紅月カレンだけだ。馬鹿らしい。 
 加勢に入ったお人好しは裏を欠かれ逃げるための駒にされてしまった。
 犬飼伊介、どうも頭が回る小悪党らしい。



◆  ◆  ◆



「これはこれはお二人さんお揃いでぇ、邪魔したかい?」


 
 時計の針はまだ昼じゃない、けどやって来た奴は紅月じゃなくてデッケー男だった。


648 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:40:18 rBl8RBVw0


 俺と纏が余裕を持って体育館裏で休憩していた時、コイツが現れた。

「紅月の……仲間か何かか?」

「紅月? 聞いた事無い名前だけど待ち人かい兄ちゃん」

 俺の投げた質問にこの男はチャラチャラした回答を寄越しやがった。
 そんな訳ないだろ、まぁ体育館裏って状況を考えれば解らなくもないけど。

「お前……マジか?」

 何でお前が引いてんだよ纏。俺と紅月って屋上で戦ってただろ。
 そっから始まる恋模様何て火薬と硝煙の匂いしかしねぇ。それに俺には雨……ったく。

「そう思うなら一人で待ってると思うけど?
 そんな事言いに来たんじゃないんだろ、馬鹿長い刀担いで現れやがって」

 自分の身長より長い刀、こんなの担いでる奴ってのは聖杯戦争中なら確定に決まってんだろ。
 紅月のセイバーもそうだが、纏を含めてこの学園にセイバーが三体も揃ってんのかよ……ん?


「なぁ、聞きたいんだけどよ、サーヴァントってのは同じクラスは何体まで大丈夫なんだ?」


 出会うサーヴァントが全員セイバーってのは出来過ぎな話だ。
 これじゃあ全員セイバーかも、そんな事も思っちまう。
 どっちでもいいから早く答えてくれ、同じ英霊なら聖杯戦争の仕組みぐらい解るんだろ?


「お前……各クラス一人に決まってんだろ」


「其処のお嬢ちゃんの言う通りだ……ん?」


 だろ、そりゃあ疑問も生まれるよな。
 俺達が対峙した紅月のサーヴァントはセイバーだった。そして纏も。
 この時点でセイバーが二組、複数居ることになるんだ。
 仕組みが違うなら天戯弥勒が手を加えたんだろうか、アイツは一体何を考えていやがる。


「なるほど、なるほどね! つまりお嬢ちゃんはセイバーで他にもセイバーが居たんだな?」


「そう言うこった、あんたも戦いに来たんだろ? 今あたしはちょっと身体を動かしたいんだ」


649 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:41:05 rBl8RBVw0


 纏は武器であるハサミの片割れを取り出して構え始めやがった。
 俺はまだ何も言ってねぇ、戦う事に異存はないけど。

 その構えを見て男も馬鹿長い刀を抜いた。
 
「じゃあいっちょ始めますか、この聖杯戦争の初陣、罷り通らせてもらう! この前だ――ってはいはい」

 豪快に刀を振り回して、まるで戦が始まるように気合を入れていたのに止まっちまった。
 何があった、何てどうでもいいや。纏もやる気だ。
 俺だって――まずはこいつのマスターを探すのが先だな。
 こいつもセイバーなら悔しいが俺のPSIは通じないと考えたほうがいい、今は出来る事をやるだけだ。


「悪い悪い! 名乗りそうにしてたら主に怒られちまった! んじゃあ気を取り直して――ッ!」


「先手必勝って奴だよォ!!」


 男が構えを取っている最中に纏はもう走りだしていた。
 そのまま片手豪快にハサミを縦に一振り、けど防がれっちまってんな。
 まぁ何にせよ戦いが始まってんなら俺も動く。


「――暴王の流星」


◆  ◆  ◆


650 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:42:14 rBl8RBVw0

「おっと! お嬢ちゃん女の子なのに随分力があるんだねぇ!」

 
 纏流子の不意打ちを難なく刀で防ぐ前田慶次。
 彼とて歴史に名を刻んだ戦国武将だ、不意の一つや二つ、突かれた所で動揺などしない。
 縦の一撃を横に防ぎ均衡状態、しかし両者は口を動かす余裕は在る。


「お嬢ちゃんって何だよ、あたしは纏だそう呼びな」


「名前を自分から明かすたぁいいねッ! なら俺も言わなきゃ筋が通らないってもんよ!」


 英霊は伝説の存在だ。
 故に英雄の霊、過去に名を馳せた歴史の怪物である。
 その知名度故に彼らには伝記が残されていることは多々ある。
 つまり名前を明かすとそれを元に経歴や武具などを調べ上げられる可能性があるのだ。 
 幾ら伝説の存在と云えど対策を建てられては分が悪い話だろう。


『馬鹿者が! 言ったばかりであろう、名を明かすなと』


『悪いね、女が名乗ってんだ、男が気にして名乗らない何て……なぁ!』


 念話を行いマスターに確認を求める、否。無くても行う。
 このまま黙っていれば男が廃る、黒き流星を紙一重で回避し口を開く。




 この男、唯の阿呆と思う事なかれ。
 

「改めて名乗らせて貰うぜ――前田慶次が、いざ!」

 
 絢麗豪壮 天下無敵の風来坊


「前田慶次――ってそらァ!?」


 恋に生きし 色男


「あの戦国武将――!?」


「罷り通る!!」


 

 天高らかに名乗りを挙げると豪快に刀を振り払い獲物毎纏を吹き飛ばす。
 動きを止めることはなく追撃を行わんばかりと大地を蹴りあげ距離を詰める。
 今度は此方の番だ、喰らいやがれ。斜めに一閃、振り下ろす。


651 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:42:49 rBl8RBVw0

 振り下ろされた一撃は獲物の長さ、戦国武将の腕力も相まって絶大な衝撃となる。
 だが纏もこの一撃に簡単に屈することはなく、衝撃を防いでいた。
 セイバーのクラスとランサーのクラス、何方もその資質、素質、能力に偽りや虚偽なし。


「戦国武将様と戦い合う【やり合う】たぁ思ってもいなかったぜぇ、おいッ!」


 此方もお返しと謂わんばかりハサミを斜め上方に振り抜き均衡状態を崩す。
 前田慶次はそのまま後方に飛び込み大きく距離を取っている、逃すか。
 そのまま追撃を叩き込もうと距離を詰める纏、レンジまでまだ距離は在る。


「馬鹿、退け纏ィ!」


 遠くで叫ぶマスター、夜科アゲハの声が聞こえる。
 退く理由も解らなければ馬鹿と呼ばれる筋合いもない、このまま押し切るだけだが――。


「名乗りの時に言えば良かったけど……俺はセイバーじゃなくて――」


 この時纏流子の時が止まる、刹那の一時が永遠に感じる程。
 戦国武将の獲物は己よりも長い刀、その筈だった。
 だが今目の前にいる男が手にしている武器は刀ではなく、朱槍。


「此度の聖杯戦争ではランサーとして現界してんだ」


652 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:44:31 rBl8RBVw0

 纒流子は前田慶次をセイバーだと思い込んでいた。
 故に武器は刀、自分とそれ程変わらない射程範囲と認識していた。
 その獲物の長さが自分よりも勝るならばその分気にすればいい、そう思っていた。
 だが槍とは思っていない、踏み込んだ距離はまだ想定の射程範囲内ではなく、猶予があった。
 つまり、咄嗟に対応する術も、心構えも持ち併せておらず、豪快なる一撃の突きを不意で喰らう形になる。


「んなろおおおおおおお」


 片太刀バサミを強引に引き寄せると紙一重で槍の一撃に重ねる。
 直撃こそ防ぐが衝撃を総て殺すことは出来ず、体勢も取れぬまま壁に激突する。


「さぁて、あまり目立つ訳にもいかないって話は兄ちゃんも解ってるな? 此処は一つ惜しいがここらでお開きってことで」


 夜科アゲハとしても、朽木ルキアとしても、序に犬飼伊介にしても学園で目立つことを誑しとしていない。
 これだけマスターが潜んでいたのだ、洗えばまだ何人か潜んでいても可怪しい話しではない。
 元々前田慶次は小手先調べとして赴いている。
 夜科アゲハも紅月カレンが来た場合は協力体制の提案をしようと考えていた。
 戦闘の停止については両者一致している。


「その提案はいいけどよ、まだ……あいつは終わっちゃいねぇよ」


 夜科アゲハが告げると前田慶次は首を傾げながら彼の視線先へ。
 其処は纏を吹き飛ばした場所、砂塵が舞っている戦棍地。

 だが彼の顔に笑みが浮かぶ、己にとって好ましくない展開なのに。




「やっと会えたな――鮮血!」


 
 砂塵吹き荒れ霞む中 影がゆらりと聳え立つ


 その姿 唯の女子高生と思う事なかれ 世界を救った英雄也


 散った友を身に纏い 流れるままに虎をも斬る




「あぁ……久しぶりだな流子」




 喋るセーラー服を身に纏う女子高生、この姿こそ纒流子の真の姿。
「懐かしむのは後……違うか、流子?」
「ったくよぉ……その通りだ鮮血、んじゃ、いっちょ行きますか!」
 赤く染まる手の甲に、伸びる糸を引き足りて、見よ、これが神衣。


「おいおいおいおいおい、随分と大胆不敵な格好と来たもんだ」


 砂塵が晴れると其処に纒流子が立っていた。
 壁に激突したダメージなど蓄積されておらず、その姿は健全だった。


「神衣――鮮血!!」


 その身体を半ば半裸に開けさせ、纒流子真の姿となってこの聖杯に望む。



◆  ◆  ◆


653 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:45:06 rBl8RBVw0
屋上に無駄足を運んだ人吉は仕方がなく教室に戻っていた。
 保健室に顔を出したが夜科アゲハの姿は見当たらなく、総てが空回りしていた。
 後手に回った事が失敗だったのか、成果や結果が付いて来ない。

 アサシンに念話で語りかけるも、返答はなし。取り込んでいるのだろうか。
 仮に取り込んでいるならば、それは聖杯に関係している事であり、自分は此処にいていいのか。
 考えても仕方が無いのだが、どうも置き去りにされているような気がしていた。

 現に彼は学園を取り巻く騒動に関係している筈だが今一つ線と線が交わっていない。
 平穏に過ごせれば越したことはない。しかし聖杯に辿り着くことは難しいだろう。

 そんな彼にも転機が訪れる。

「人吉さん……生徒会所属の貴方にお願いがあります」

 自分に訪れた生徒はどうやら頼みがあるようだ。
 人吉に彼女がどんな生徒かは記憶はない、しかし頼みを断る程駄目な男でもない。

「俺に出来ることなら、で、なんだ?」

 生徒会に頼む事、学園の設備についてだろうか。
 器物破損は多い、廊下で騒いでいる生徒の影響で校内は見た目よりも傷ついている事が多いのだ。
 流石に箱庭学園のような摩訶不思議な願いは来ないと思っているが。


「二階の廊下で暴れている不審な男が居るんです!」


 女生徒が告げた一言は彼の脳を一時停止させる。
 先程までは問題なく動いていた機器が急に止まり始めるように彼の思考も止まる。
 一拍間を置いて言葉を紡ぎ出す。


「そ、それは先生に言ったほうが」


 正論。


「でもその男は人吉さんの知り合いだって……アサシンがどうのこうの」


 心臓が飛び出そうになる。


654 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:46:00 rBl8RBVw0


 女生徒が言うにはアサシンと名乗り人吉と関係が在る、と言っていた男が彼を呼んでいるらしい。
 しかも暴れている、そんなキャラでは無いと思っていたが何が正しいのかも判断できない。
 女生徒に場所を聞くと彼は走りだす、授業には遅れるが此方が優先だろう。
 めだかちゃんだってそうする、ならこれが俺達【正ト解】って奴だ、そう思っている。

 角を曲がり階段を曲がろうとすると一人の女生徒が見える。
 廊下を走るのは規律違反、減速し歩き始める人吉。
 そのまま女生徒をスルーし再度走ろうとするも止められる。

「ねぇもしかしてお兄さんが人吉善吉?」

 その女生徒は見た目同年代、しかし胸は比例せず豊かな印象を受ける。
 白い手袋のような物を履いており、若干上目遣いで語りかけていた。

「そうだけど……?」

 名前を聞かれ偽りではないので返答する。
 急いでいるため早く要件を言ってもらいたい所だが女生徒は別の言葉を喋り出す。

「やっぱり☆ 噂通り鍛えた身体だね」

 言いながら人吉の右腕を抱き抱えるように己に惹き寄せる。
 抵抗しようとする人吉だが腕が胸に当たり言葉が出そうで喉元に詰まっている。
 美少女に身体を触られるのは悪くない、だがめだかちゃんの顔が浮かび罪悪感に襲われる。
 引き離そうとすると、耳を疑う一言が聞こえた。




「やっぱ令呪もあるね、これがあの第二位垣根帝督への絶体命令権かぁ☆」



 何で垣根帝督の事を知っている。
 何故令呪の事を知っている。
 そもそもお前は誰だ。
 何で居る。
 謎だ。
 何者なんだ。
 何が狙いなんだ。
 全く見えて来ない。
 お前は何をしようとしているんだ。



「じゃあその力、使わせてもらうね。そうでもしないと流石に犬飼さんに悪いかも☆」



◆  ◆  ◆


655 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:46:45 rBl8RBVw0

 犬飼伊介を取り逃した垣根帝督と紅月カレンは屋上に移動していた。
 廊下では生徒の死体にガラス破損、あの場に留まっていては何もかもが裏目に出る。
 情報交換と行きたいところだが紅月カレンは生徒の命を奪った垣根帝督を許すつもりはない。


「キャスター……食蜂操祈は他人の心を操る、質の悪い傀儡師みたいなモンだ」


「だから悪いのは殺した自分ではなくて操っていたキャスターってこと?
 そんな子供の言い訳が通ると思ってるんなら英霊も馬鹿ばっかって話だね」


「言うじゃねぇか……ったく、此方としてはもうどうでもいいんだ。
 あの女狐化狸共を取り逃した、それだけだ。まさかお前は死者が誰も出ない、なんてメルヘンなファンタジー思い描いてないよな」


 聖杯戦争には願いを懸けている者が招かれている。
 そのために人殺しとならなければ敵う願いなど無い、故に死者は避けられない。
 解ってはいるのだ、誰も死なない戦争何て存在しない、だが目の前の壁として聳え立つと。


「……思ってはいない」

「思ったよりも利口な奴だ、話が早くて助かるわ。
 つまり、だ。食蜂操祈には近づくな。あいつに操られちゃあ一瞬で詰みだ。
 俺は幸い能力――宝具で何とかなる、お前のサーヴァントもスキルでどうにかなる筈だ。
 けど、お前自身はどうしようない。操られたら終わりだ。だから先に片付ける必要がある」

 
 垣根帝督は学園都市第五位の力を甘く見ていない。
 単純な戦闘能力なら第五位は第七位にも劣る、それ程に弱い。
 だが駒となる人間を手に入れた組織力と統率力。
 令呪のシステムがある以上マスターを狙われては一溜りもない。


656 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:47:33 rBl8RBVw0
 
 垣根帝督は一時的な同盟を提案している。 
 食蜂操祈と言う厄介な害悪を除外するための戦線協定だ。
 害悪糞女は先に滅して置かなくば聖杯戦争を裏で永遠に掻き乱される恐れがある。
 
「解った……でも先にあんたのマスターを呼んで」

「心配ご無用、呼んでるから、まぁもうちょいだろ」

 トントン拍子で進んでいく協定だが肝心のマスターが居なくては話にならない。
 此方のサーヴァントであるセイバーは既に見られているため霊体化させている。
 しかしアサシンのマスターが見えない、潜んでいる可能性も在る。
 
「ほら、来たぞ」

 垣根帝督が顎を指す。
 振り向くと其処には学園の生徒、それも同じ生徒会に所属しているらしい人吉の姿があった。
 これで役者は揃う、食蜂操祈を殺すための役者が。

 マスターを狙うのは最終手段、とカレンは思っている。
 垣根帝督は最初から狙う気でいるが。作戦なんて存在しない。

 キャスターだ、それも病弱でサークルの姫のような存在。
 正面からの戦闘で挑めば此方が負ける可能性など無に等しい。

 だが食蜂操祈の能力は絶大で強力な最低である。
 マスターを近寄らせるわけには行かないのだ。

 故にセイバーが前線に趣き、アサシンが闇に潜み狩る――これが作戦。

 念話である程度事前に人吉に話しているためスムーズに自己紹介が進む。

「まさか同じ生徒会の奴がマスターだったってか」

「あたしも、ね。会ったことは無いんだけど」

「まぁ何かの縁だろう。令呪を持って命ずる、アサシン――自害してくれ」

「そうだね……でも一時的だよ、最後に残るのは一組なんだから」

 話している内容は物騒だが協定はこれにて結ばれる。
 倒すべき敵は食蜂操祈、関係ない生徒を操る女を狩るだけだ。


657 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:48:52 rBl8RBVw0
◆  ◆  ◆





「おい――テメェ今何て言った、おい……何て言ったか聞いてるだろおおおおお」





◆  ◆  ◆


658 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:50:34 rBl8RBVw0

 
 屋上で吠えるは暗部の天使。

 背中に生える翼を大いに振るい美しく飛び散る無数の羽。

 魅入る紅月カレン、だがそれは美しさにではない。

 危険を感じたセイバーは現界しマスターの前に座する。

 人吉善吉は何が在ったかは存じぬが意識を失っている。

 客観的に述べよう。


『垣根帝督に対して自害の令呪が発動された』


「ふざけんなあああああああああああ」


 広げられた翼はその存在総てを鋭利な形状に変化させる。
 それは心臓を、総て何もかも貫く地獄の処刑人だ。
 天使などと呼べるメルヘンな存在ではなく血と泥と粕しか存在しない地獄の溜まり場のチンピラだ。
 
「これって……ねぇ、死ぬの……あんた」

 状況が飲み込めないカレンは垣根帝督に疑問を投げる。
 情報は人吉が垣根帝督に自害の命令をしただけ、しかしこれが総てである。
 故に垣根帝督も同じ状況である。


「決まってんだろ……ッァアアア!!
 あの糞女め……俺を真っ先に潰しに来やがってッ……チィ!
 殺す、殺してやる……翼が俺に――ッアアアアアアアアアアアアアアアア」


659 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:53:28 rBl8RBVw0

 鋭利となった翼の断罪標的は己、垣根帝督。
 令呪の命令は絶対であり、英霊の枠に嵌められている以上逆らう事は出来ない。
 垣根帝督は最後の力を振り絞り抵抗しているのだ。
 生半可なサーヴァントならとっくに死んでいる、彼の強さが、しぶとさが生存に繋がっている。

 
 だが終いだ。 


「許さねえ、許さねえぞオオオオオオオオオオ!
 テメェは永遠に苦しめ、俺がそうさせてや――グッギィイイイイイ、
 俺が終わる? 第五位に負ける? おいおい、冗談が過ぎるぞぉ……。
 テメェは俺を怒らせた何てレベルじゃあねぇ……ぶっ殺してやる」


 垣根帝督の翼は徐々に彼自身の身体に突き刺さっており、血が流れ始めている。
 紅月カレンはこの状況に何もすることが出来ず、唯眺めているだけ。
 セイバーもまた、もう垣根帝督は助からないと判断、己のマスターを守ることを優先する。

 垣根帝督は再戦を臨んでいた。
 奇跡的にもその相手は同じ英霊として聖杯戦争に招かれている。
 狂戦士と成り果てた宿敵と対峙した時、彼は何を思うのか。悪党とチンピラ。
 出逢えばそれは永劫に語り続かれる英雄譚に成り得たかもしれない、だが。


 垣根帝督は此処で死ぬ、それだけだ。


「糞が、くそが、クソが……食蜂操祈、第五位……ようアレイスター、お前はどうせ笑ってんだろ?
 なぁ一歩通行……テメェもどっかで腹抱えて笑ってんだろ?」




 一瞬の静寂が屋上を包む。
 それを切り裂くように翼が心臓を貫いた。




「許さねぇからな……聞こえてんだろ第五位……テメェ、このくそがああああああああああああああああ」






【アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録 死亡】


660 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:54:02 rBl8RBVw0

【C-2/アッシュフォード学園・屋上/1日目 午前】


※屋上は一部破損有り


【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]疲労(中)、魔力消費(中) 、脇腹に切り傷(止血済み)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.……。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※学校内での自分の立ち位置を理解しました。
※生徒会の会見として所属しているようです。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。


【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
[備考]
※マスター同様。



【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]気絶
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く。
1.今は授業を受け、その後アサシンと相談。
2.???
[備考]
※夜科アゲハがマスターであると知りません。
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※食蜂操祈の宝具により操られていました。

※サーヴァント消失を確認(一日目午前)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。


661 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:54:54 rBl8RBVw0

 神衣鮮血を身に纏ったセイバーはそのまま自慢の脚力で距離を詰めると縦に一閃。
 これを槍で防ぐランサーだがセイバーの自力が先程よりも膨れ上がっている事実に戸惑う。
 それでも笑い、この戦いを楽しんでいる。

「まっさかぁ! 纏がそんな大胆な性格だとは思わなかったぜ!」

「勝手に言ってろ! そんなんじゃ足元を――掬われっぞォ!」

 更に力を込め強引に戦国武将を押し込む纒流子。
 鮮血から神衣の力を引き出した彼女は本来のポテンシャル以上の力を発揮する。
 たかがステータスなどと言う細かい理論的な数値で彼女を図ることなど無謀だ。

 足場毎粉砕するその一撃、訳が解らない容赦無い一撃。
 衝撃により磨り減っていく大地から距離を取る戦国武将と神衣。
 これから高度駆け引き、豪快な活劇が見られる――その筋書きだった。

「……すまん纏! マスターから撤退命令が出ちまった……申し訳ない」

「あぁ!? テメェ逃げる気かァ? 戦国武将ともあろう者が」

 実際問題として纒流子は前田慶次が歴史に刻んだ事を知らない、名前だけ知っている存在だ。
 故に彼女が使う戦国武将とは煽りのためだけの記号である。

「色々あるんだわこっちも……はぁ。一応同盟結んでるし、すまん!」

 それだけ言い残すと前田慶次は朱槍を振り回す。
 風に煽られ舞う砂塵、それが晴れた時其処には誰の影一つ存在しなかった。

「逃げやがったな……くっそ」

「まぁいいではないか、それよりも此処を離れるぞ流子」

「わーったよ鮮血、話はそれからだ」

 これだけ暴れたのだ、下手をすれば誰かに見られている。
 結局体育館裏に紅月カレンは姿を現さなかった。
 前方には敵のマスターを探しに行っていたアゲハの顔が見える。
 表情から読み取ってランサーのマスターは発見出来てないようだ。

 此度の戦闘で判明したことは戦国武将のランサーが居ること。

 
 彼らは気付いていない。
 自分達が戦闘している間に学園を取り巻く環境が劇的に変化していることに――。


662 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:55:58 rBl8RBVw0
【C-2/アッシュフォード学園・体育館裏/1日目 午前】

※大地が戦闘により凹んだりしています。
※体育館の壁が一部凹んでいます。

【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.この場から離れる
2.夜になったら積極的に出回り情報を探す。
[備考]
※人吉善吉がマスターであると知りません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。

【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲
[装備]鮮血(通常状態)
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.逃げる。
2.情報を集めるのもいいかもしれない
[備考]
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してあります。


【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]健康 、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
2.ただし同盟にはあまり乗り気ではない。何かきっかけがあれば解消したい
[備考]
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)を確認しました。

【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]疲労(小)魔力消費(小)
[装備]超刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1. ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
2.ただし心底信頼はしない。マスターから離れず護衛をし、隙を突くためにも考察と情報収集
[備考]
※キャスターを装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。


[共通備考]
※犬飼伊助&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。

※朽木ルキアは駒から『学園内に戻ってください』という伝令を聞きました。


663 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:56:43 rBl8RBVw0

 不要な役者を削ぎ落とし、舞台の裏で笑うは女王気取りの哀れな女。
 
 犬飼伊介は校庭の茂みでキャスターと合流していた。
 しかしキャスターは自分を見捨てた女だ、彼女を見る視線は鋭く冷たい物となっていた。
 結果としてアサシンを一人排除する事が出来たのは大きなアドバンテージになるだろう、なっている。
 だが、今後の主従関係を考えれば最悪極まりない状況になっている。

(こいつ……絶対殺す、殺される前に殺す)

 犬飼伊介は決心した、いや。とっくに決めていた。
 この女は最終的にマスターである自分も排除する気でいる、願いを独占するつもりだろう。
 そんな事はさせない、アサシンの時同様に令呪で先手を撃ってやる、殺してやる。

 だが今はその時ではない、使える時まで使い込み、永遠に潰す。
 キャスターの能力は魅力的で強力だ、これは変えようのない事実だ。
 ならば今は猫でも何でも被り遣り過す、その後に殺す。

 新しいサーヴァントはあのランサーにですればいい。
 序に朽木ルキアも殺せば何も問題はない。




(――って全部お見通しだぞ☆)




 それすらもキャスターは見抜いている。
 垣根帝督を見た時、彼女は死を覚悟した。
 何故居る、勝てる筈がない、逃げるしか無い。

 マスターを置いての逃走、此処でマスターが死んでいれば彼女も死んでいたが運が良かった。
 垣根帝督は余計な事を言っていたのだ。
『隣に座っていた奴がマスター』つまり、だ。
 夜科アゲハ、犬飼伊介、朽木ルキア。この三人の内の誰か一人、その隣に座っていた者が彼のマスターだと。

 犬飼伊介、朽木ルキアのクラスは略抑えているため白だ、ならば残るは夜科アゲハ。
 その隣に座っていた人物こそが人吉善吉であり、ビンゴだった。

 総てはキャスターの思惑通りになってしまった。
 本来ならば最弱のサーヴァントは統率力と組織力を持って学園を操っている。
 この牙城を崩すには彼女自身を殺さなくてはならない。


664 : 錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 00:58:37 rBl8RBVw0
以上で投下を終了します。
何かありましたらよろしくお願いいたします。

誤字、脱字等は自分でwiki収録の際に修正します。


665 : 名無しさん :2014/11/17(月) 19:22:44 IYGYL3yw0
投下乙です!
これで一応全員午前に登場はしたかな?
ついに初の脱落者が…まさかのていとくんとは
一方通行との因縁は果たせず、同郷の相手の策にはまってしまいましたな…
みさきちは実に厄介、しかしマスターとの仲に不穏な影。今後どうなるやら
そんな策謀の裏では騎士のクラスが名乗りを上げて気持ちよく戦っているとは、なんとも対比的で楽しく読ませてもらいました!

指摘になりますが、キャスター主従の状態表が欠けていますね


あとこちらは質問なのですが、善吉に令呪が残っていますが、サーヴァントのみが脱落した場合、原作御三家と同様マスターには令呪は残るということでしょうか?
令呪の再配分などはなく、その残りで再契約なども行なうということでよろしいでしょうか?


666 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/17(月) 21:24:45 rBl8RBVw0
感想ありがとうございます!

>>419
申し訳ありません、後日(明日)に状態表を投下します。

【令呪について】
その認識で大丈夫です、言葉足らずで申し訳ありません。
令呪は帰還した場合、消失する認識でお願いいたします。


667 : 名無しさん :2014/11/18(火) 11:08:04 NL1FlbIU0
投下乙です
まさかていとくんが最初の脱落者になるとは思ってなかったなぁ
一方通行とのリターンマッチがあるかと思ってた
みさきちの能力のエグさはヤバいですねぇ
単純な戦闘能力は最低レベルだから突破のしようはあるけど


668 : 名無しさん :2014/11/19(水) 18:19:55 oaZfzP6c0
投下来てた、乙です
ううむ、こうなるとは……しかし入り乱れた交錯の結果ならばさもあらん
キャスターの能力がいかんなく発揮された形か
ハマると強いなあ


669 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/20(木) 21:29:21 uMSEgOUs0
感想ありがとうございます!

遅くなって申し訳ありませんが、犬飼伊介及び食蜂操祈の状態表を投下します。




【犬飼伊助@悪魔のリドル】
[状態]疲労(小)魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0.食蜂操祈に心を許さない。
1.この場を離れる。
2.キャスターの宝具を使い上手く立ち回る。
3.キャスターを使い潰した後にサーヴァントを乗り換える。

[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。



【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]健康、魔力消費(中)
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]ハンドバック(内部にリモコン多数)
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
0.このまま上手く立ち回る。
1.洗脳した生徒を使い情報収集を行う。
2.戦闘はランサーに任せ、相手のマスターを狙う。
3.ランサー一行及び犬飼伊介には警戒する。
4.人吉善吉をどうするか……。


[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※人吉善吉に命令を行いました。現在は操っておりません。


[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵を行い、ランサーに協力、或いは命令する形になります。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。


670 : 名無しさん :2014/11/20(木) 22:49:57 /nq5TVEQ0
状態表投下、改めて乙です!
謀略のクラスとはいえ、キャスターが揃って仲悪いとは因果を感じる

午前にキャラは出揃いましたが、もう放送を待った方がいいでしょうか?


671 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/21(金) 23:59:03 fR3Q41Cw0
>>670
そうですね……では↓

急な話ですが22日(土)中に予約が入らなかった場合、日曜中に放送的なのを投下いたします。
(遅れた場合は申し訳ありません)


672 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/23(日) 21:03:41 qk4/azL20
申し訳ありません。
本日中と言っていましたが出来そうにありません。
明日以降になります。申し訳ないです。


673 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/24(月) 21:52:20 5IcfGbec0
投下します


674 : CALL.1:通達 ◆wd6lXpjSKY :2014/11/24(月) 21:55:12 5IcfGbec0

 針は決められた仕組みに従い動き続ける。
 喩え時を止められても針は我を崩さず廻り続ける。
 それは世界に刻まれた理であり、架空世界に位置付けされたこの空間にも適用。
 状況に匙を投げられようが針は止まらず、唯ひたすらに未来を追い続けている。

 終着点に至るまでの過程には点がある、彼らにとって一種の目安だ。
 行き着く先を終点と喩えるなれば之は通過点である。
 何も聖杯戦争と云えど意思関係なく拉致、放り込んで勝手に殺し合え――運営にも考えがある。

 つまり、だ。
 参加者に座する彼らに対しての情け、温情。その真意は計り知れない。
 だが彼にも考えは在るらしく、こうして語りかける――。



 ◆  ◆  ◆



 聞こえるか? 聞こえている筈だ、今の心境はどうだ。
 ……お前達にどんな力があろうと俺を感知することは出来ない、覚えておけ。
 
 俺が誰だか見当は付いていると思うが一応名乗っておく、天戯弥勒だ。聞き覚えが在るだろう。
 お前達に語りかけた男だ、今と同じように聖杯戦争の幕開けを言い放った時にな。
 俺の声はお前達の脳内に直接響いている。受話器を取っても解除されることはないぞ。
 まぁ、いい。俺の声は参加者だけ、令呪を持っているマスターとそのサーヴァントにしか聞こえん。
 最も今は主を失ったサーヴァントは居ないからな、この声は全員に聞こえている。

 何故俺が今こうして語りかけているか、だ。
 情報提供だと思えばいい、必要ないなら流せばいい、強要はしない。


 お前達参加者は他人の情報を知らない。何人参加しているか、誰が参加しているか。
 一つ教えてやる、招かれたマスターは十四人だ。もう一度言う、十四人だ。


 本来の聖杯戦争、その倍の数が今回参加している。サーヴァントも各クラスに席を二つ用意してある。
 仮に目の前にセイバーが居るとしよう。そいつを斃したとしても他のセイバーが潜んでいる訳だ。
 自分の相手として優位に立たれると面倒な相手は複数居ると言うことだ。

 そして、もう一つ。早い話だがサーヴァントが一人消えた。
 クラスはアサシン、暗殺者と云えど正面から戦える力を持っていた優秀なサーヴァントだった。
 だが終わりは呆気無い、アサシンは油断していた訳ではないが消えた、それを上回ったサーヴァントが存在していただけの話だ。
 まだマスターは消えていないがな……始まりのテレホンカードを思い出してみればいい。
 お前達がソレで帰還することに俺は干渉しない、他人の帰還が気に喰わないならば潰せばいい。
 
 この聖杯戦争にルールなど存在しない、お前達の好きなように動けばいい。
 同盟を組むのも、ただ時間が過ぎるのを待つのも、NPCを喰らい己の糧にするのにも――勝手にすればいい。
 最後に笑う奴は一組だけだ、其処に例外は無い。

 
 ――乗り遅れる事など無いよう、健闘を期待している。


675 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/24(月) 21:58:21 5IcfGbec0
投下終了です。

○参加しているマスターは十四名
○サーヴァントは各クラス二つ
○アサシンが脱落、マスターは生存

今回ので判明した主なことです。

問題等なければこのまま進行していこうと思います。


676 : 名無しさん :2014/11/25(火) 11:18:35 LuLwvFUs0
放送乙です
もう予約も解禁されてるんでしょうか?


677 : ◆wd6lXpjSKY :2014/11/25(火) 21:07:44 pwF3vov20
>>676
反応が遅れて申し訳ありません。
予約は解禁されている、ということでお願いします。


678 : ◆A23CJmo9LE :2014/12/01(月) 18:44:15 w0lBnNGc0
放送投下乙です
間桐雁夜&一方通行、美樹さやか&不動明、浅羽直之&穹徹仙で予約します


679 : 名無しさん :2014/12/06(土) 19:35:33 eNlE36Ik0
Wバーサーカーに予約!


680 : ◆A23CJmo9LE :2014/12/08(月) 00:20:59 96a0cJWU0
申し訳ないですが延長します
ご期待に沿えるよう頑張ります


681 : 名無しさん :2014/12/09(火) 20:30:13 GIFXp5Dg0
>>680
執筆頑張ってください! 期待してます

あと、語りをやっている某所から転載

1752 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2014/12/09(火) 19:57:05 ID:???0
サイレン聖杯のロワ語り当日ということなので参加者の画像一覧を作ってみました

ttp://iup.2ch-library.com/i/i1340191-1418120646.jpg
ttp://iup.2ch-library.com/i/i1340189-1418120570.jpg


682 : 名無しさん :2014/12/09(火) 21:43:23 sljHUA/Q0
おーすごい!支援イラストかっこいいなあ
書き手さんがたもご自分のペースで頑張って下さい、楽しみにしてます


683 : ◆wd6lXpjSKY :2014/12/10(水) 00:17:09 b0.69Mac0
画像ありがとうございます!
語りもありがとうございました!

エレン、ジャファルで予約します


684 : ◆wd6lXpjSKY :2014/12/13(土) 23:04:07 6UmPLWaA0
期間はまだ残っていますが予約を破棄します、申し訳ありません。


685 : ◆lb.YEGOV.. :2014/12/13(土) 23:59:57 6zS6AEFI0
ウォルターで予約します


686 : 名無しさん :2014/12/14(日) 22:19:30 .rQGOiMo0
予約破棄かー残念
でも新しい予約が……! 楽しみに待ってます!


687 : 名無しさん :2014/12/14(日) 22:50:08 ZG99tFE60
予約続いて凄い……w
>>1さんの次の予約待ってます


688 : ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:20:05 Fy9/GBEY0
予約破棄ですか、残念です……
年末はお忙しいでしょうしお体も労わってください

遅くなりましたが、投下します


689 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:22:17 Fy9/GBEY0
穹撤仙は己がマスター、浅羽直之を背負い病院に向かっていた。
止まらない鼻血、充血した眼、発熱、加えるならなぜか向上した魔力など多くの病状を発症しておりこのままでは聖杯戦争どころではないと考え、その足を早める。
病院のあるであろう都市部を目指しつつ、ついでに個人経営の医者でもないかと目を配っていた。
しかし都市部は遠く医院も見つからない。一応駆けてはいるが病人を抱えてサーヴァントの速度で全力疾走するわけにもいかず、今もなお垂れる鼻血の感触に些か焦りを覚える。

「ほ゛んとに、す゛み゛ません……」
「そんな、謝るようなことじゃないよ」

足手纏いになっていることに、血で汚してしまっていることに申し訳なさを覚えまた詫びる。
といっても背負う側としては大して気にしていない。病人を責めても仕方ないし…意味は違うが血に汚れるのもなれたモノだ。

そんな彼らの耳にサイレンが聞こえてきた。
この地へと招かれた時のような電話のベルではなく、ありふれた救急車のものだ。

「ん、救急車か…浅羽君、いったんあちらに向かうよ」
「はい…」

発熱はともかく、止まらない鼻血が尋常ではない。意識の混濁も僅かに見られ、造血剤など必要なんじゃないかと思える。
便乗などするつもりはないが、専門家の意見や処置を一足早く受けられる可能性があるならそれに縋りたい。
正確な病院の場所も把握したいところだ。

そう考え、二人はサイレンの方へと向かう。
そこで待つ狂戦士のことも、追い駆ける別の狂戦士のことも知らず。



◇  ◇  ◇

その救急車の行き着いた地、D-4地区の公園。
そこで救急車を呼び出された主従と、それを追ってきた主従が対峙していた。

「■■■■■■!!」

雄叫びをあげ、飛びかかるバーサーカーのサーヴァント、一方通行。その姿は人のそれ、しかし言動は獣のそれ。
敵の側に己がマスターがいる……人質にされようものなら勝機はない……だからこそ勝負を仕掛けなければならない。
一刻も早く敵の手の内から回収しなければ。バーサーカーらしからぬ、ずば抜けた知性の判断に従い主君に手を伸ばす。
せめて損傷を与えないよう飛び道具の使用は避け、マスターの救出と敵の殲滅のためにその力を振るわんとする。

「おおおおおおお!!」

対峙するのもまたバーサーカーのサーヴァント、不動明。宝具、『悪魔の体に人の心持つ戦士(デビルマン)』を開放し人の姿を捨て悪魔の力を露わにする。
狂戦士でありながら人を信じる強い思いで狂える人格を抑えた、理性あるバーサーカー。
心優しいマスターに従い交流を第一とするもマスターの障害となるならば、敵と判断したならば容赦はない。
突撃する敵影に合わせてカウンターの拳を合わせんとする。

規格外とも言える狂戦士二騎は向かい合い、そして互いに殺意をもって、今交錯した。
その初撃は……

「ぐうっ…!」
「■■…」

一方通行の胴体にデビルマンとなった明の拳が吸い込まれたと思いきや折れたのは明の手首。
ひるんだ明に追撃を入れようと一方通行が手を伸ばすが僅かに距離をとりそれを回避する。


690 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:22:59 Fy9/GBEY0

(耐久がEXクラスだったとしてもこうも一方的になるものか…!?)

さやかに念話でステータスを確認したいところだが戦闘のさなかに意識を裂くのは厳しい。
直接の肉弾戦を避けるために翼でもって飛翔し、敵頭上から電撃を放つ。確かに当たったと思ったが…命中寸前で軌道を変え、七色の光になって消失した。
何が起きたのかはその場にいた多くの者に理解できるものではなかったが、少なくとも一方通行にダメージはない。
事実何事もなかったかのように中空に座す明目がけて手を伸ばす。血液、生体電流、はたまた魔力か、体を流れる何かの流れを乱す魔の手が迫る。
それを横からたたきいなそうとするが、何かに阻まれ逸らすこと敵わず、しかたなく宙を舞い回避する。

(おれの超能力も効かない…触れることも叶わない、か)

自己改造のスキルでもって折れた骨を繋ぎながら思考する。一見無敵にも思える敵の能力に隙はないか考える。
どうやらバリアーのようだが本当に触れることはできないのか?通り抜けるものは何一つないのか?力ずくで破れるものか、なんらかの攻略法があるのか。

「■■■■■ーーー!」

飛翔する敵を追い自らも重力のベクトルを操作・増幅させ跳ぶ。
少しでも離れたのならばマスターの下に行きたいところだが今の一撃を見てはそうはいかない。
かつてロシアで魔術を反射した時には今のように完全に反射することはできずに乱反射する現象が起こった。
サーヴァントと化し魔力でその身を形成するようになったためか、生前よりも対応できる魔術の範囲は広がったが、敵の一撃は解析不能な能力。
雁夜のもとへ向かい、攻撃が乱反射して当たってしまう…そうなる前に奴を仕留める。
本能的な戦意と理論的な殺意が噛みあい、救出よりも戦闘を優先する。幸いか先の敵のように打撃を無効化されることはない。





「ぐ、痛ぅ………ふふ、ははは…いいぞ、殺れ、バーサーカー!」

異形の戦士に対しても優位に立ちまわる己がサーヴァントを見て高揚する雁夜。
肉体に巣食う蟲は魔力供給のために今も彼の肉体を文字通り蝕んでいるが、その苦痛も意に介さないかのよう。
先の戦闘での相手が相性が悪かったこともあってその興奮はひとしおだ。やはり俺のバーサーカーは強い、と充実感に酔う。
敵の前に身をさらしている状況は賢明とは言い難く、できるならば一方通行と合流を試みるべきなのだが、障害を抱えた身でサーヴァントの闘いに割って入ることなど望むべくもない。
しかたなく敵マスターである少女への警戒をしつつも現状に甘んじる…そこまで深い思考が出来ているかは怪しいところだが。

「待ってください!私たちにはまだ戦わない選択もあります!聖杯がちゃんと願いを叶えるものであるとまだわかったわけじゃないでしょう!?もう少し、調べて、考えてからでも……」

その少女は交戦を始めたサーヴァントをよそに未だ対話を試みようと続ける。
サーヴァントと二人論じてきた聖杯への不信論を唱え、一時休戦を申し入れる……もし聖杯が真であるならば自らの手に収めることも考えているが、いったんは話をしようとする。
それを耳にした雁夜も消耗を少しでも抑える意図あってか、戦端は開かず口を開く。

「俺には、もう時間がない……一刻も早く聖杯を手にしなければ…」

そう言ってフードをとると、その下から現れた異様な風貌に少女は驚きの声を漏らす。
顔半分の壊死しかけた皮膚には内側から切れたような出血痕もあり素人目にも尋常ならざる容体…長くはないことが見て取れた。

「それに、聖杯の真偽なんて俺にはどうでもいい。あいつは…臓硯は聖杯さえ手にすれば桜ちゃんを解放すると約束、したんだ…」

肉体精神両面から押し寄せる苦痛に耐えるように、自らに言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

「聖杯さえ渡せば、桜ちゃんを助けられるんだ。あいつはあの娘を利用して聖杯をとろうとしている……だから聖杯さえあれば彼女は必要ない。
彼女のために聖杯が必要なんだ。俺は…俺はそのために聖杯戦争に参加した!」

血を吐くように言霊を吐く。辛苦にさらされ、身を削り、生を投げだしてでも一人の少女を救おうと言うのは美しい誓いに見える。
しかしかつて近似する願いをかけたさやかにそれはある種歪に映る。

「あの、ちょっと…」

僅かなトゲ、小さな疑問、それを投げかけようとするが



――――聞こえるか?聞こえている筈だ――――



その場にいる全員の頭に響き渡る念話。
予想外の展開にマスターは問答をやめ耳を傾ける。明はもちろん、一方通行まで拳を収め一時休戦の構えだ。


691 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:23:40 Fy9/GBEY0

「うそ、もう脱落者が出てるなんて……」

出遅れた。こちらはようやく一人目の参加者と接触したばかりだというのに、他所ではもう積極的な戦闘が行われているというのか。
放送が終わり、その内容に無力感と焦燥感がこみ上げる。

「ぐぅッ、がぁぁぁぁッ…!」

それとほぼ同時に突然、間桐雁夜が悲鳴を上げる。
脱落者が出たことで安堵し、気に止めていなかった苦痛に気付かされた?否。
想定の倍いるという敵の数に絶望した?否。
ただその身の蟲が貪り喰らう速度と量を増したのだ。
脊髄を食む蟲、神経を溶かす蟲、血管をかじる蟲、臓腑を侵す蟲、蟲、蟲、蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
その身を走る苦痛と嫌悪感に耐え切れず声を上げる。

それが意味することとは…魔力供給、ひいては戦闘の激化。
それを朦朧とした意識で感じ取りサーヴァントの方に視線を向けると放送を聞き終えた二人がマスターから距離を置き再び闘争を始めていた。




蒼のバーサーカーの一撃は、宝具と狂化による上昇がなければ虚弱な一方通行には悉くが必殺の死の嵐。それらを能力ですべて無効化する。
白のバーサーカーのチカラを宿した腕は触れれば命を刈り取る死神の鎌。近接戦の戦闘技能で勝るゆえ明に回避は難しくないが、一撃受ければただでは済まない。
互いの攻撃、全てが必殺。
命を、殺意をむき出しにただの一撃を浴びせんと、千載一遇の機会をものにせんとしのぎを削り合う。



それは神話の再現であった。



かたや≪神ならぬ身にして天上の意思に辿り着くもの(レベル6のさらにその先)≫に最も近い≪最強の超能力者(レベル5第一位)≫
迎え撃つは≪かつての神の片腕(ルシファー)≫と戦乱を繰り広げた≪デーモンの勇者を宿す悪魔人間(デビルマン)≫

充分に発達した科学は魔法と見分けがつかない…超一流の魔術師にして科学者、アレイスター・クロウリーにより調整された一方通行の能力はもはや魔法の域。
神の跋扈する時代、世界は神秘に満ちていた…数百万年前に地上を席巻したデーモン族、その中でも最強の勇者を支配してのけた不動明の能力は正しく神代のそれ。
超常たる力は尋常ならざる現象を生み出す。

大地よ、裂けよ…ベクトルを操作して地を砕き、石礫を放つも飛翔により回避する明。
雷よ、あれ…再び電撃を放つが、一方通行が不完全とは言えそれを反射する。
旋風よ、あれ…一方通行が空気を操作し刃のように放つが、雷光を目晦ましとして明はそれを回避する。
炎よ、あれ…明が口腔から火炎を放ち一方通行の周囲一帯を焼き尽くそうとするも、電撃と同様乱反射されダメージには至らない。

魔術に理解ある聖杯戦争の参加者は呆けたように見入り、巻き込まれた形になるNPCの救急隊員は余波ゆえか埒外の事象ゆえか意識を失っている。


……突然炎の中から右手を突き出し白い影が駆けた!
まるでそれが有効打であったかのように炎を懸命に払い、勝負に出る。

それは『一方通行』の数少ない隙の一つ、生前格下の能力者であってもダメージを与え得た菩提樹の葉。
電気系の能力者が酸素を放電現象によりオゾンにしたように。周囲一帯が燃焼し酸素が消耗したように。
脳に十分な酸素が行きわたっていなければ能力者は十分な演算ができない…素の身体能力では劣る一方通行にとってそれは急所となる逸話だ。
そのために広範囲の火炎による攻撃には全力で対処する。
完全な反射は叶わないため、右腕に知る限りの神秘の法則を纏いそれで敵の攻撃に触れ、ひねりいなして進む…まるで憧憬するヒーローのように。
そして変わらず左腕は神秘を持たぬものすべての流れを乱す死神の鎌として振るう。

「■■■■■ーーー!」

右の好敵手、左の毒手。
触れただけであらゆる法則を乱す両の手でもって決着を狙う。
……だが拳打の戦で明が上回るのはすでに示された。最低限の動きでそれを回避し

「狂ったせいで馬鹿の一つ覚えか!?優秀な能力が泣いてるぞ!」

ゴウッ!と風切音を立てて蹴りを放った。工夫のない蹴り、このままでは『反射』され折れるだけのはずだが…
ビッ、と一方通行の頬に小さな傷が出来た。


692 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:24:08 Fy9/GBEY0

「やはり空気は通るようだな!」

視覚がある、つまり光は通る。聴覚もある、ならば振動と媒体である空気も通る。その仮説は真であった。
確信をもって手刀、足刀を続々と当らないように、掠めるように放つとそのたびに僅かに、しかし確かに傷が刻まれる。
超高速の白打によリカマイタチ現象を引き起こし皮膚を裂く。それがこの裂傷の原因だ。
空気の流れは『反射』しても引力に従い別の箇所に真空が発生するためにダメージそれ自体を回避はできない。
喉元や目と言った急所から外すことが出来ているので無意味ではないが。

ただのカマイタチでサーヴァントが傷つくのか?それは原因による。
アーサー王の風の鞘による烈風、一方通行のベクトル操作による旋風など高位の神秘を宿す事象ならばダメージとなり得る。
明の肉体は悪魔アモン、数百万年の時を刻むデーモンの力を顕現したもの。
蓄積した神秘だけならば半世紀を戦い抜いた大海賊や傾奇者も、数百年の時を生きた吸血鬼やサキュバスも凌ぐ。
加えてD-4、この地区はサイキッカーを覚醒させるPSI粒子に満ちた一種の異界だ。
ゆえに、不動明がこの地で放つ真空波は十分にサーヴァントを殺傷すると言えよう。

距離をとれば火炎、近接戦ではわずかながら裂傷。
現状は近接技能の差でわずかに明が有利、法則の把握が出来れば一方通行有利に傾くが……

「あッ、ぐ…ぅ」

長期戦はマスターの才覚的に極めて不利。魔力以上に精神肉体面での消耗が激しい。

「ッ、そのままじゃ本当に死んじゃいますよ、私の魔法なら少しなら治せるはずです。あのサーヴァントを止めてください!
これで聖杯が偽物だったら無駄死にですよ!」

明らかに苦しむ雁夜に対して癒しの術を交渉材料として話を続ける。

「必要、ぐっ…ない。数が多いなら急がないと……俺は聖杯を手に入れて彼女を助けるんだ!」

朦朧とした意識でもはっきりと否定する。容易く交渉に乗るような軟な覚悟で臨んだ戦争ではない。
根底に根付いた魔術師への差別意識もありほぼ聴く耳を持たない。

「ああ、もう!彼女のため彼女のためって!自分は無いの!?だいたいホントに彼女のためになるの!?」

拉致のあかない問答にさすがに苛立ち、感情露わに怒鳴りつける。
子供っぽく当り散らしてしまったのもあるが雁夜にかつての自分と似たものを感じたせいもある。
誰かのために身を削り尽くす…それを純粋に行うことは難しい。自分の本当の望みを見失い、誰かを救った分誰かを呪わずにはいられなかった愚か者だった故の問い。
加えて言うなら強い思いゆえに世界改変までやってのけた悪魔のこともあってだ。

「?当然だろう。彼女だけじゃない、彼女な家族だって―――」

凛ちゃんだって彼女を助ければ喜んでくれるだろう。そうでもしなければあの娘には顔向けできない。
だって俺は葵さんを……


ち が う


俺の想いが痛否定されていいはずがない痛あれが葵さんであるはずが痛ない許され痛るわけがない彼女痛のため痛に戦って痛幸せに痛なって
彼女を痛助ける痛痛ためならどんな苦しみにも痛耐えて痛俺には痛好きな痛痛人が痛彼女のことが痛何よりも大切だ痛からどんな痛こと痛も
俺は痛なんの痛ために痛痛痛誰痛のせいで痛誰だ?彼女痛痛って?桜痛ちゃんを助け痛る葵さんに痛痛痛時臣が痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛
俺の痛痛痛痛痛痛助け痛痛痛痛痛痛たかった痛痛痛痛痛彼女って痛痛痛痛誰痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛だっけ痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛

「あ、あああアアアァァァ!!!」

想いを否定する敵を理解しない女を聖杯戦争の参加者を排除する
人の持ちえるあらゆる感情が脳内に渦巻き本能的に翅刃虫の群れを放って目の前の敵を殺そうとする。

「ちょっ、なになに!?」

逆鱗に触れてしまったことは察するが、突然の攻撃に驚き慌てて迎撃。
魔法少女の姿へと転身し、剣を振るって蟲を落とす。
グロテスクな外観と不気味な羽音、顎の音に嫌悪感を覚えるが、そこは魔女退治に慣れた身。難なく撃退する。

「あ…が…あぁぁぁ…」

そんな魔術師としては半人前にも満たない術の行使でさえ彼にとっては文字通り身を削る必死のもの。
激痛に苛まれもはや体は痛みでできているのではと思える域にまで達し、耐え難い痛みで視界が白く染まるとともに、間桐雁夜は意識を喪失した。


693 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:24:44 Fy9/GBEY0




そして夢を見た。
病的なまでに白い肌、杖をついた一人の男…雁夜に従うバーサーカーのサーヴァント、一方通行が栗色の髪をした少女と歩いていた。
自分と同じく少女を大切に思っているのだと、字の如く夢うつつに考えていた。
場面が変わる。
再び白く染まる視界…今度は苦痛による明滅ではなく本当の意味での白、一面の雪景色。
そこにバーサーカーがいた。そしてその目の前には栗毛の少女が成長したような娘が

血に ま み  れ て

『……あ、な、た、の、せ、い、だ』

その言葉と共に先ほどまで頭を塗りつぶしていたあらゆる感情が、肉体を責め苛む苦痛が、自分のものともバーサーカーのものともつかぬダメージがフラッシュバックして




「うわぁァァァ!!!」

痛みによって意識を失った罪人は、悪夢によって意識を取り戻した。
現実にも夢にも安息の地がなくなった彼には

「…こ、ろせ。殺せ殺セコロセコロセ!バーサーカァー!!」

あらんかぎりの力でもって目の前の現実を否定することしかできなかった。
そしてその命をうけ、マスターの危機を知りサーヴァントが動く。

「■■…■■…mnbf殺wq」

既知の法則では目の前の敵は理解できない。
可能と不可能をもう一度再設定。
目の前にある条件をリスト化し、その壁を取り払う。

「■■■…■■■!!!」

一方通行の背からナニカが噴き出す。
黄昏よりも昏き色、宵闇よりも黒き色。『黒キ翼』、この世に存在するあらゆるベクトルを支配下に置く、科学の頂点が持つ最強の非科学。
現状の攻防でじわじわと削り合うよりは大技で決めた方がマスターへのダメージは少ないと判断し、力を開放する。
その異様な翼に、暁美ほむら/ルシファーと近似するものを感じた二人は警戒心を強めるが

ギュガッ!!

とその翼が振るわれた後には敢然たる闘いをみせていた不動明の姿はなく
彼方に吹き飛ばされた敗者がいた空間だけがポツンと存在していた。

「……………………え?」

ステータスに大きな差はなかった。事実先ほどまで互角に、むしろわずかながら明の方が優勢だった。
にもかかわらずあの翼が出た瞬間に決着はついてしまった…圧倒的な力。
絶望を通り越して放心する。

ドサリ、と人の倒れる音。
『黒キ翼』への供給で大きく消耗した間桐雁夜が今度こそ完全に意識を失ったのだ。
それを見たか、二人の方へと歩む一方通行。

「…あ」

翼はすでに収まっているが、それ抜きでも先ほどまで繰り広げた神域の闘争は記憶に新しい。
仮に抵抗しても無意味だろうが、その意思はすでに死んでいる。
可能性があるとすれば倒れた雁夜に刃を向けることだが、そうする前に一方通行なら大多数のマスターを百度は殺せる。
そうして歩み寄った一方通行は

轟!!

と腕を振るい……

間桐雁夜を支えて足裏にかかる重力のベクトルを操作しいずこかへと飛び去った。




「…………なん、で?」

そこには美樹さやか一人が取り残された。
サーヴァントを失ったマスターを殺すまでもないということか?


694 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:25:11 Fy9/GBEY0

「僕の足止めと令呪の消耗を狙ったんじゃないかな。呼び寄せるので一画、回復で二画」
「!」

背後から声をかけられ驚いて振り向く。
そこにいたのは肩まで髪を伸ばし、人を背負った美丈夫…サーヴァント。
慌てて剣を構える。

「警戒しなくていいよ。やる気なら彼は置いてきてるし、なにより…」

キュン、と音を立てダーツが地を抉る。その初動も軌跡も、人の眼には映らぬ英雄の技巧。

「話しかけずに君も彼も一撃で射抜いてるさ。いくつか聞きたいことがあってね。まず、あの救急車は誰用?空いてたりする?」
「……多分さっきまでいたあのマスターが乗るはずだったんだと思う。見るからに死にそうだったし。使いたきゃ使えば?」

ぞんざいに対応しながら隙を窺う。退避できないか…あわよくば令呪を奪い、このサーヴァントのマスターとして復帰することはできないか。

「そんなに殺気立たなくても、たぶん君のサーヴァントはまだ無事だよ。あの黒いのに対して反射的にガードしていた。いい腕だ」
「え、うそ!?」
「嘘だと思うなら自分で確かめてみなよ。令呪を通じて自分のサーヴァントのことはある程度分かるだろう?」

吹き飛ばされ、生存を絶望視していたサーヴァントが生きている。
その可能性に縋るようにソウルジェムを通じて魔力のラインをたどると…たしかにある!まだ生きている!
しかしダメージも尋常なものではなかったらしく念話に一切応じない。急いで治癒にむかおうとするが

「おっとまだだ。最後の問いが残ってる。君は、誰のために戦う?」

進路を阻み、問いかける。奇しくもその問いは先ほど美樹さやかが投げたものと、かつて友人から送られた言葉と近似している。

「…願いを阻まれた親友のため。そしてそのコに救われたあたし自身のため」

最早詳細は定かではないが自分は大きな何か…まどかが元となった何かの一部となり、その力に救われたのだ。
そしてその願いを壊したのが暁美ほむら。それを打開するために、ここに来た。
確実に願いを叶えるために、歩む道を誤ることのないよう、慎重を期して進んでいる。

「はは、願いを叶えに来たのにさっきのマスターに停戦を申し出てたり、随分とまわりくどいことをするんだね」
「うっさい。じゃあついでにこっちも同じ質問そのまま返すよ。あとなんでさっきの勝負にしろ手出ししてこなかったの?三つ巴にすれば話も出来たろうに」

明の下へ行くのを邪魔され苛立ったか雁夜に対してのように真摯な交渉とはいかない。
それでもこちらが何の情報も得ずに立ち去るわけにはいかないと考え少しだけ話をしようとする。

「僕は生前の主人、そしてこの地での主人で良き友人候補の彼のためさ。介入しなかったのは派手で見とれたのもあるのと…えと、知り合い?がタイマンの邪魔はするもんじゃないと言ってたし、僕自身マスター狙いなんて弱い者いじめみたいな真似はテンション上がらなくてね」
「…そう」

前置き程度のキャッチボールを済ませ、立ち去る用意をしながら本題に入る。
お互い怪我人病人が待っているのだからこれ以上の長話は避ける。

「私は美樹さやか。ここの聖杯が本当に信用できるか疑問に思ってるから、その真偽を確かめてから戦いを進めたいと思ってる。病院で待っててくれれば相棒拾って話に行くよ。
……それから敬虔な信者らしき私の友人のありがたいお言葉、誰かのためだけに戦うんじゃ、願いに挫折した時にその人のせいにしちゃうよ」
「僕はアーチャー、おっと二人いるのか…じゃあ、そうだな…フェザーとでも呼んでくれ」

そう言って吹き飛ばされたサーヴァントの下へ走る少女を見送る。


695 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:26:11 Fy9/GBEY0

「行っちゃったか」

最後に少し面白いことを言い残していった。彼女たちへの対応についてマスターと話したくはあるがそれよりも。

「起きて〜おじさ〜ん。患者ですよ、と」

気絶した救急隊員の一人を頬をぺしぺし叩いて起こす。

「う…むぅ…お、おい起きろ!」
「…ん、あ。あ、れさっきまでのその、えと怪物…は?」
「……何を言ってるのかは分からないけど、彼を診てもらえないかな?」

先ほどの事件とは無関係だと装いながら浅羽を降ろす。
余計なフォローを入れるよりも仕事を与えた方が人は冷静になりやすい。

「……お、おお。彼が通報にあった『今にも死にそうな患者』か!確かにすごい熱だ…」
「え?いやでもさっきの……」
「いいから!患者を運ぶぞ!」

NPCの仕様か、現実逃避したのか先ほどまでの出来事は夢の中のもの、としたいようだ。あの闘いを目にしたならさもありなん。
浅羽の治療をしてくれるならありがたいし、本来の患者があの敵マスターだったというなら余計な罪悪感もないので乗り込んでしまう。

「これは…この地域で時折ある風土病だね。お兄さんたち引っ越してきたばかり?」
「え、あ、まあそんなとこです」

病状や前後の様子など車内で話す。この地での設定がよくわからないので怪しい対応になるが。

「この辺出身の人はまずかからないんだけどね、この土地固有のものなんだ。と言っても栄養点滴して寝てればすぐ治るようなものだけどね。
あと、あくまで噂だけれど町の北部の温泉に浸かれば一時間しないうちに完治するとか。まあ医療従事者としてそんな眉唾を信じるわけにはいかないけど」
「へえ、そんなものが」

この病状が発生して浅羽君の魔力は確かに増した。そしてNPCがそれを風土病として認知しているということはコレはあの男にも予定内の事象なのだろう。
と、なると温泉とやらの話も信憑性は高いな。

話も切りあがり、あとは病院に向かうだけとなる。病院にベッドも手配できたしあとは休んでればいいだろう。

『あの、アーチャー…さん』

突然の念話。魔術の才などなかったマスターからのそれに驚く。


696 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:26:32 Fy9/GBEY0

『さんはいいって。…念話、できたんだ』
『なんか点滴受けて少し楽になってきたら、こう、糸電話の糸みたいなのを感じるようになって……』
『まだ無理はしなくていい…けどせっかくだから少し話そうか。さっきの闘いを見ていてどう思った?』

休ませた方がいいのだろうが、病人がただ寝ているだけと言うのは退屈なものだ。
すぐ治る類のようだし、話に興じるくらいならいいだろう。念話に慣れておけば連携も取りやすい。

『……正直、何が何だか。すごい、おっかないくらいしか……』

サーヴァントの闘いっていうのはあんなに凄まじいものなのか。
終ぞ目にしなかった、まさしく≪戦争≫。
救急隊員のまるで避難訓練と現実の区別がつかない振る舞いはとても無様で、滑稽で……笑えなかった。
銃弾飛び交うでもなく剣戟が交差するでもなく、まるでファンタジー染みた戦争は熱に浮かされた頭でも埒外の物と教えてくれる最高に最悪な教材だった。

『あれが聖杯戦争なんですね……サーヴァントだけじゃなくマスターまで……』

伊理野もそうだが、自分とさほど年の変わらない女の子が闘っているのを見ると無力感が強まる。
覚悟を固めようとした矢先に病院行きとなった現状もあって沈んでいると

『闘って殺すだけが力じゃないよ、浅羽君。今君はこうして僕と話している、これもまた一つの能力、力だ。君はこれを糸電話のようと例えたね。
一度放たれた矢は弓を離れたらもう二度と戻れないものだけど、僕が矢で君が弓ならばこの力は君と僕を繋ぐ絆となり得るだろう。きっと闘いを勝ち抜く上で役立つはずさ』

魔力の向上、力の覚醒。病状に見合うだけのものは得られた…はずだ。
でもまずは体を癒し、そのうえで……放送の件も含め色々と話し合おう。
特に美樹さやか……まわりくどいながらも己がため、友のために我が道を行くあの子と、闘うにしろ話すにしろ。

【D-4・北部、病院に向かう救急車内/一日目・午後】

【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]発熱、鼻血
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得を目指す
1.病院へ
2.体調が戻ったら今後の対応について穹と話す
[備考]
※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。

【穹徹仙@天上天下】
[状態]健康
[装備]NATO製特殊ゴム
[道具]ダーツ×n本
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を目指す
1.病院へ
2.浅羽の体調が戻ったら今後のことを話しあう
[備考]

[共通備考]
※美樹さやか、不動明、間桐雁夜、一方通行の戦闘を目撃しました。


697 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:27:32 Fy9/GBEY0







見つけた!

マナラインをたどりどうにかボロボロの明を見つけ、今は治癒魔術を必死に施している。
ようやく動ける程度に傷が癒え、意識を取り戻す頃にはソウルジェムは幾度も濁り、グリーフシードを一つ使い切ってしまった。

「すご…普通グリーフシード一個で何回か使いまわせるはずなのに……」
「俺の宝具の消耗もあるだろうが……それだけあの翼がすさまじかったということか。アレは英霊どころか天使の領域だったぞ…信仰の加護がなければやられていたかもしれんな」

予想以上のダメージに戦慄する二人だが、終えたことはそれまでに今後のことを話し合おうとする。
戦闘に接触、そして放送と考えることは色々あるが……

「そういえばどうしよう、これ…」

濁りの溜まったグリーフシードは魔女を孕み、いずれ孵る…いや魔女ではなく魔獣かもしれないがいずれにせよ放置はできない。
いつもならインキュベーターが食べるようにして処理してくれるのだが生憎とここにあいつはいない。

「グリーフシード…もとは人間の魂がソウルジェムになり、それが濁って魔女として果てるとそいつになる、そしてあの白いのはそれをエネルギーとしているんだったな?」
「え、うん。そうだけど…」

それを確認すると穢れきったグリーフシードを手に取って放り……噛み砕く!
穢れが怨霊のように漂うが、それも取り込むように吸い込んだ。

「やはり『魂喰い』できるな…魔力源としては微々たるものだが、まあエネルギーとして採用するのも分からなくはない」
「だ、大丈夫なの?グリーフシードってソウルジェムの負の感情を移したものなのに……」
「人間の悪意など俺も君もよく知っているだろう。今さらだ。それより、今後の動きについてだ」

と獰猛な笑みを浮かべ健常であると示すと、すぐに検討に移る。

「結論から言うと俺は今すぐにあの主従を追い、叩くべきだと考えている」
「え?っとその…言いにくいんだけどさ、今さっきふっとばされて大ダメージを負わされた相手、だよ?あの翼また出されたらキツイと思う…けど?」

おそるおそる、といった様子で反対する。
なすすべなく、とまでは言わないが最後は正しく一蹴されたといっても過言ではない。てっきりやられてしまったと思った。
あのアーチャーの言うようにガードしていたというならそれはすごいと思うし、プライドにかけてリベンジをしたいというのも分からなくはないけど…

「だからこそ、だ。あのサーヴァント…放送によると同クラスが二騎存在するようだからまず間違いなくバーサーカーだろうが。
バーサーカーのクラスは劣悪なマスターでもかなりのステータスのものを従えられるが、その代価として激しく魔力を消耗する。
あのマスターは優秀とは言い難いが、それでもあれだけの力を振るうのだ…もし強力なマスターがあれと契約し、ステータスの上昇や翼の乱打などされたら並のサーヴァントなど容易く蹴散らすだろう。
放送でアサシンが脱落した、そのマスターがまだ残っていると言っていたな。もし、そのマスターが優れた魔術師でバーサーカーと再契約、俺達の話に耳を貸さないなどとなれば最悪だ。
あの死にかけの男をマスターとしているうちに仕留める……最悪あのマスターを殺すことも考えている」
「殺…す…」

魔女を倒したことはある……アレは魔法少女だったのだからすでに人殺しは咎は背負っている。
ほむらに対抗するため、まどかの願いを無碍にしないためここにきた。それでも……

「真偽のわからない聖杯のために死ぬのは無駄死にになりかねない、か。その通りだがマスターの方に交渉の余地は無かったように映る。将来仲間になり得る誰かを守る意味でもあの手合いは殺しておくべきだ。
……まあ戦力的な不安と言うのは分からなくもない。ヤツの力についての分析や戦力増強を優先するというなら強く反対はしない」
「あ、そういえば戦力になるかは分かんないけどアーチャーが接触してきたよ。フェザーって名乗ってたけど」

話題から逃げるように報告。容姿やステータス、病院に行くと言ったことを伝える。

「ふむ、あの闘いを見ていたのか。戦力や意見を求めるのは有用ではあるな……それならヤツの能力について意見を求めるのも一つの手ではあるか。
……と、さやか、こっちへ。何か来る…!」

話を切り上げ病み上がりなりに戦闘態勢をとる明。そこへ現れたのは……


698 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:27:57 Fy9/GBEY0

「はあ〜やっと追いついた。伝達くらい何もオレを使わなくてもいいだろうによ〜」
「人、形…?」

頭に生えたプロペラで空を飛ぶ人形。サーヴァントではない、さほどの警戒は必要ないだろうか。

「へい、オレはケニス。偉大なる造物様に産み出された自動人形でさ。此度は伝令を承っております」
「オートマータね。その道化染みた悪趣味な振る舞いは造物様とやらの意向か?」

ペコリ、と慇懃無礼な態度をとる人形を明は嘲り、それに怒りを僅かに見せる人形だがぐっと堪え、命令を果たすために渡されたものと伝言を贈る。

「預かりものです。それと、『彼女を助けるのに協力してほしい。遊園地で待つ』と言っている魔法少女がいます」
「これって…グリーフシード!?」

消耗したところで都合よく補給されるそれは天恵よりも陰謀染みたものを感じる。疑いの目を人形に向けるがへらへらとした態度からは何も読み取れない。

『交渉の意図はあるようだ、派手に動いた甲斐はあったようだが……どうする?俺たちに気づき、遠方から接触してきたということは何らかの監視の目を持っているはずだ。
キャスターの可能性が高い……虎穴に入るか否か、だな。対魔力を持つアーチャーに先に接触するか、リスクを承知で飛び込むか、先の俺の提案か……さやか、君はどう動く?』
『グリーフシードを持ってる、加えてあの伝言あたしの知り合いっぽい、んだよね……』

だがこんな回りくどい真似をするような知り合いがいるだろうか?
まどかは記憶が戻ってないはずだし、杏子やマミさんはこんなことしなそうだし……渚?殆ど接点ないけどゆまとか、えーと織莉子とかいうのもいたっけ?世界の外側にいたころの知り合いとか?
まあほむらの奴ならやりそうだけど、あいつが協力を求めてくるわけないし……
じゃあ私の採る選択は……



【D-4・西部/一日目・午後】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.伝言の相手に会いに行くか、バーサーカーの言うように追撃するか、病院のアーチャーのところへ行くか……
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う

[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。



【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.さやかに従い行動
2.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
3.マスターを守る

[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です
※盗品のバイクは戦闘を行ったD-4の公園に放置してきました


[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。


699 : 誰がために命を燃やす ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:28:36 Fy9/GBEY0









「■■■……」

跳ぶ。跳ぶ。跳ぶ。
主人を抱え、安息の地を求め駆ける。

引き際の彼の行動には疑念が残る。最後に腕を振るった意味は?そもそもなぜ撤退したのか?

かつて彼のいた都市では滞空回線(アンダーライン) というナノサイズのシリコンチップが一種の監視装置として用いられていた。
間桐雁夜は半人前とは言え蟲使いの魔術師であり、一方通行はその魔力供給によって現界している。
その経験が、流れる魔力の性質が宙を飛ぶ機械の蟲『アポリオン』に気づき、それを破壊させることを可能にしたのだ。
滞空回線(アンダーライン)を確保・記録された情報を読み取るには『ピンセット』とよばれる専用の機材が必要となるが、人がミジンコを視認できるように存在をを認識し破壊するだけならば不可能ではない。
剣術の達人が額の上の米粒だけを切ってみせたように、一方通行ほどの能力者ならばナノマシンを破壊することも可能である。
監視の目があるならば潰しておかなければ撤退先に襲撃を受ける可能性があるゆえの本能的な判断。

では撤退の理由は?
穹の言うように敵を足止めさせるため?放送の意味を理解し、マスターを殺す必要がないと判断したから?
あるいは……彼の歩む道に、無辜の少女の血を流すことはしたくなかった?
それとも……

「う、うぅ……」

彼の腕の中で眠る、ヒーローにも悪党にもなりきれない罪人を守るためだろうか。
激しい消耗に疲弊し意識を失った……熱まで出ているし、鼻血もひどい。

その様を確認した一方通行が路地裏に降り立つ。
間桐雁夜の体を走査し異常を探す……この症状は尋常ではない、闘うにはまだこのマスターには生きていてもらう必要がある。
………………見つけた。脳内の一部分が異常覚醒している。まるで学園都市で能力開発を受けたかのよう。
脳内の電気信号をベクトル操作し症状を抑える……それに伴い所謂能力も覚醒し、間桐雁夜に宿る魔力量が大きく増す。

目覚めたとき間桐雁夜は自らにやどる魔力に驚くかもしれない。
一方通行の宝具を振るって余りあるその力は彼を勝利に近づけるものだ。
魔力・体力を激しく消耗した状態であの症状が長く続けば間桐雁夜の永くはない身がさらに死へと歩みを大きく進めただろう。
治癒を施した彼の判断は間違いなく正しい。

しかし学園都市の能力者が魔術を使えばどうなるかは一方通行も身をもって知っている……能力者が魔術を行使すれば、その身には大きなダメージがあるのだ。
PSI粒子によって能力に目覚めた彼にそのリスクはあるのか。そしてもしそのリスクがあったとして、身を削らねば魔術を行使できない彼がそのリスクに気付くことはできるのだろうか。


【D-4・南西部/一日目・午後】


【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(大)、精神的消耗(中)、魔力消費(小)、PSIに覚醒
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.気絶中
2.俺は……何のために……

[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。今後何らかの能力を身に付けるか、魔術行使によるダメージの有無などは不明です。
※お茶は戦闘を行ったD-4の公園に放置してきました


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
2.マスターを休息させる
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲に残っている可能性はあります。




[地域備考]
※D-4の公園で不動明と一方通行が戦闘、閃光や爆音、旋風などが発生しました。また地面には抉れた跡なども残っています。
※D-4の公園に不動明が盗んだバイク、纏流子が間桐雁夜に買ったお茶、穹撤仙の放ったダーツが残っています。
※PSI粒子による病状はNPCには風土病として認識されています。病院に行けば栄養点滴とベッドでの休養が提供され短時間で復帰できるようになります。
またA-4の温泉に一時間もつかれば治るとも言われています。


700 : ◆A23CJmo9LE :2014/12/15(月) 01:30:02 Fy9/GBEY0
投下完了です。
一方通行の能力やPSIについてなど少し踏み込んで書いたので指摘や意見などあればお願いします。


701 : 名無しさん :2014/12/15(月) 20:31:22 /E6Fs.3w0
投下乙です!
うわ、濃い……一方通行と明の戦いの描写に呑まれました!
神話の再現か、バーサーカークラス同士、そしてデビルマンとレベル5一位の戦いにふさわしい激突だ
おじさんと一方通行のフラッシュバックには思わされるものがあるなあ……この主従もある意味因縁深い

浅羽組も彼ららしく動きますね。フェイスレスまで接触してくるし……この「選択肢」感はすごくわくわくする

戦闘で魅せ、局面を動かす見ごたえのある回でした!


702 : 名無しさん :2014/12/15(月) 20:37:34 3aZTO9yk0
投下乙です!
バーサーカー同士の戦いやべぇ
互いの一撃必殺の攻撃を片や反射し、片や超耐久と超再生で耐えしのぐ
迫力満点のバトルは読み応えがありました
雁夜おじさんの悲壮感もなぁ……
さやかちゃんは原作にはいなかった雁夜おじさんを助けようとしてくれる人間なわけだけど、おじさんは原作とは違う選択肢を選ぶことはあるんだろうか

PSY粒子の扱いも面白いなぁ
型月世界の魔術とサイレン世界の超能力が一人の人間の中に宿るとき、とある世界の「魔術と超能力は共存出来ない」という法則は適応されるのか
読んでてすごくワクワクするクロスオーバーだ


703 : 名無しさん :2014/12/16(火) 18:47:50 7jn5VfB60
投下乙です!
迫力あふれるバーサーカー対決
そして介入する指令とアーチャー
雁夜おじさんにとっては原作にいなかった選択肢だよね、さやかって


704 : 名無しさん :2014/12/18(木) 00:54:44 fBItYZ5A0
投下来てた!乙です
やっぱバサカ同志の激突はやべえなあ
二次創作界隈でもあまり見れないデビルマンの戦闘がなんだか嬉しい
おじさんのフラッシュバックもきついもんがある 一方通行も…
そして浅羽たちも動くか。状況的にはどうとでも出られるようにしてるんだろうけど
さやか組に目を付けてたのは彼らだけじゃなく司令もだもんなぁ
しかしケニスか、アルレッキーノの元お付きの片割れねw


705 : ◆lb.YEGOV.. :2014/12/22(月) 01:08:52 Od40twM.0
遅れてすみません。
ウォルター投下します。


706 : ◆lb.YEGOV.. :2014/12/22(月) 01:10:27 Od40twM.0
サクリ、という小気味いい音と共に、口内に瑞々しいレタスとジューシーなビーフ、トマトの程よい酸味と、さっぱりとしたヴィネガーの味、そしってしっとりとしたパンの食感が広がる。
昼食として購入したサンドウィッチを咀嚼しながら、ウォルターはさきほど頭の中に響いて来た、主催者・天戯弥勒の報告の内容を反芻し、思考する。

(アサシンが脱落、残りは13組。暗殺の危険があるサーヴァントの内、片割れがいなくなった、事実だけを見れば喜ばしい事であるが……)
「あまりにも早過ぎる」

まだ一回目の夜明けを向かえた状況で既に脱落したサーヴァントが存在する。
脱落したタイミングとして考えうる時間帯は早朝〜現在に至るまでか。
ここで脱落したのがマスターであったのならば、ウォルターにも得心がいく。
早朝のランサーとの戦闘を経て、マスターがサーヴァントに対して有効打を持ち得る事はまずない事を経験から理解している。
加えて暗殺に特化したアサシンがいる以上、この段階でマスターを殺害されての脱落という事態は十分にあり得る事だ。
だが、脱落したのはよりにもよってそのアサシン。
それはつまる所、その短時間の内に自分達と同じ様に他のサーヴァントと衝突した陣営があり、そして脱落したという事に他ならない。

(人の事は言えぬが、随分と血気盛んな事だな)

ごくり、と咀嚼していたサンドウィッチを嚥下し、合わせて購入したミネラルウォーターを口に含む。
水質の違いからか、日本の水道水はどうにもウォルターの口には合わなかった。
ランサーに紅茶を淹れる為にもいくらか硬質のミネラルウォーターを買い足さなければならない事に溜め息を一つ。
思考を再び、脱落したアサシンと取り巻く状況への考察に戻す。

(アサシンが敗退、しかしマスターは生存。暗殺の失敗か、襲撃を受け囮となったか)

マスターが生存している以上、別のサーヴァントによるマスター殺害による脱落の線はない。
故にアサシンのみが戦闘によって脱落した。それが想定し得る状況だろう。
だが、問題になるのはアサシンと敵陣営の戦闘がこの早期に起こった事だ。
今朝方のウォルター達のように突発的な遭遇は十二分にあり得る。
だが、脱落したのが暗殺・諜報などを得手とするアサシンである事が問題だった。

天戯の発言が真であるならば、正面からの戦闘ができるだけの実力があったそうだが、
暗殺に特化したクラスが、暗殺を狙わずに直接戦闘を行なう必要性は薄い。
だが、暗殺をするのであれば、暗殺対象が誰であるかを認識する必要がある。

襲撃を受けるにしても、今朝方のウォルター達の様に突発的な遭遇があったか、一方的にマスターであるか認識されていなければ発生しない。
だが、襲撃を受けるのであれば気取られない事こそが第一のアサシンを伴っているのにも関わらず、マスターとしてのアタリをつけられたという事だ。

襲撃するにしても、襲撃を受けるにしても、それに足るだけの接触、あるいは監視の必要がある。
それが、開始から1日にも満たない状況で起こりうるだろうか?
だからこその『早過ぎる』という呟きであった。

加えて14組という参加者の数と広範囲に及ぶ会場という状況が絡んで来る。
この広大なエリアで、しかもこれだけの時間で参加者同士が接触する確率は幾ばくか。

(ふむ、無論突発的な遭遇から発展した事も考えられるが……)

ウォルターは懐からマップを取り出し、数カ所に印をつける。
印がついたのは病院、アシュフォード学園、その他大型のショッピングモールや温泉などの施設。


707 : 近くとも遠く ◆lb.YEGOV.. :2014/12/22(月) 01:11:08 Od40twM.0
(人が多く集まる所の方がそれだけ遭遇率も上がる。
その場合、施設の解放時間も考えれば接触を考えられるのは午前から正午までか)

ウォルターの視線に留まったのは彼の拠点からもそう遠く無いアシュフォード学園の文字。
その脳裏に浮かんだのは自身が遭遇した、学生服を着込んだ二人のマスターの姿。

(14人中2人は日本のハイスクール生。
そこまで参加者の年齢に偏りがあるかは定かではないが、学生であれば早朝の内からの接触も十分に考えられる、と)
「しかし、そうなると私達では入る方法がない」

溜め息を一つ吐き、トン、と地図に描かれたアシュフォード学園に指を添える。
老年の執事服の男性が学校に入れば嫌でも目につく。
レミリアであれば霊体化して侵入は可能だが、かの吸血鬼がこそこそとした密偵の真似を進んで行なってくれるとは考えづらい。
そもそもの話、彼女の活動可能な時間では学生の大半はすでに下校ずみなので潜入する意味がない。

(使い魔か、あるいはNPCでも利用できればいいのだが、
頃合いを見て監視でもするべき、か)
「さしあたっては日本のハイスクールの平均的な下校時間を調べなければいかんか、
異国の地というのはこういう時に苦労をする」

幸いにも拠点から近くの場所にあり、準備をしてから学園の付近で監視に最適なポイントを割り出す事もそう難しくはない。
他のマスターに接触出来るかは不明であるが、何らかの手を打つ必要はあるとウォルターは判断した。

(レミリアお嬢様への報告もしておくか。
何にしろ、彼女の動けるのは夜だ。
昼間の内に網を張っておく事は彼女も否とは言うまい)

飲み干したペットボトルをゴミ箱に捨てながら、ウォルターは今まで歩いて来た道に踵を返し、主であり従僕である少女の待つ館へと戻る。
その行く先に幾人の少年少女の思惑が絡み合った学園を捉え、彼らを絡めとる為の蜘蛛の巣を作り上げる為に。


708 : 近くとも遠く ◆lb.YEGOV.. :2014/12/22(月) 01:11:40 Od40twM.0
【C-5・市街地/一日目・午後】

【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.夜になるまでは単独で情報収集
2.アシュフォード学園内での情報集手段の模索
3.アシュフォード学園近隣で監視に使えそうなポイントの捜索


709 : ◆lb.YEGOV.. :2014/12/22(月) 01:12:21 Od40twM.0
短くて恐縮ですが、以上で投下を終了します。


710 : 名無しさん :2014/12/22(月) 19:13:39 ko5/qwDo0
投下乙です
ウォルターかっこいいな!
百戦錬磨、経験豊富なウォルターだからこそ説得力のある考察
サンドイッチやミネラルウォーターのくだりが好きです
短いながらも魅力的な繋ぎだなぁ


711 : 名無しさん :2014/12/22(月) 20:09:19 FnUaZhWI0
投下乙です!
ほんとにここのウォルターはいいなあ、思考の流れが自然で良い
水のくだりとか、異国人ならではの何気ない日常描写にも丁寧で読んでて楽しいし
アサシンの脱落、言われてみりゃそうだ、早すぎると判断するよねえ


712 : 名無しさん :2014/12/23(火) 15:52:29 VAFm6sHM0
投下乙です!
丁寧な描写、違和感無しのキャラ再現、繋ぎ話の見本を見た気がします


713 : ◆A23CJmo9LE :2014/12/23(火) 16:10:03 /ZaGIeII0
投下乙です
ウォルター翁貫禄の考察話
アサシンが一騎落ちたことで彼の行動範囲も広がりそう
学園がさらに混迷としそうな引きで……


>>1氏に度々の質問で申し訳ないのですが、流子の電話や浅羽の財布から察するにこの世界の通貨は円のようですが、エレンやタダノなど通貨が異なると思われるマスターは聖杯戦争のルールと同様にその知識もインプットされますか?



それとアゲハ&流子、カレン&リンク、ルキア&慶次、伊助&操祈、善吉予約します


714 : 名無しさん :2014/12/23(火) 17:30:53 anLlY1gc0
>>689
他のキャラにも言えることですがどうしても初見だと辛い物がありますよね
特に一方通行の反射はやられた側にすれば状況が飲み込めないっていう
ガンガン攻めてガンガン再生して戦う姿は狂戦士そのものでした!
雁夜おじさんに手を差し伸べる、でも素直に取れる状況ではないですよね
原作のおじさんには無かった同盟や仲間の選択肢がどうなることやら
戦闘メンツ以外にも接触を行う浅羽組、そしてフェイスレス
次に選択する手によっては全てが大きく変わることになりそうです

>>706
手札が揃わない中での脱落は早過ぎると感じるのが正しいでしょうね
特にアサシン、表に上がらないサーヴァントが落ちたとなると
通達によって判明した情報がどう転ぶことか、学園にさらなる波紋の予感
夜が来ると彼らの時間になりますしね

お二人共投下お疲れ様でした!

>>713
基本的に空間における日常生活の情報は与えられています。
ただ、戸惑うことはあると思います(文化の違い)
舞台はサイレン世界の位置付けです、原作と同じく基本文化は日本をベースに考えてもらえれば。

エレン、ジャファル、ウォルター、レミリアで予約します。


715 : ◆wd6lXpjSKY :2014/12/23(火) 17:31:37 anLlY1gc0
トリを忘れていました


716 : ◆dM45bKjPN2 :2014/12/23(火) 18:43:38 8gFBLYOI0
失礼します
カレン&リンクのクラススキルに騎乗スキルを書き忘れていたことがあったので、他の方との相談の後武芸百般の中の一つとして吸収された、ということにしました
wikiに後ほど書いておきます


717 : ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:08:14 Z/hnPp0w0
投下します


718 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:09:56 Z/hnPp0w0

 夜は人の心を自然と煽り立てる。
 光よりも闇、恐怖を感じるのは後者であり、追い込まれるのもまた同様である。
 暗さはそれだけで恐怖を演出出来る、謂わば魔法のスパイスのような物だ。
 陳腐な状況でも総てを多い囲む闇があればある程度は演出出来る筈。

 闇を生業にするのは吸血鬼、或いは暗殺者だ。
 聖杯戦争に招かれた吸血鬼――系譜を継ぐはランサー。
 その血は真なる吸血鬼であり、彼女も例外に漏れず朝日に弱く闇夜に強い存在。
 今までの交戦状況は一つ、陽が昇る今は彼女の戦場ではなく、身を潜めるだけだ。

 マスターである――執事となっているウォルターが単独行動をしている今、彼女は一つの現場を目撃する。
 元はそのまま拠点である館に帰るだけだったが思わぬ状況に遭遇、当事者ではないのだが。
 彼女が唯一戦闘を行ったサーヴァントが更なる戦闘を重ねていたのだ。
 
 老いた海賊、彼女のマスターも老体だが彼らは歳を感じさせない程の戦闘力を有している。
 海賊のサーヴァントは己の拳を振るい空を翔ける悪魔のサーヴァントを相手にしている。遅れはない。

(あの女のサーヴァント……吸血鬼とはまた違うわね)

 女のサーヴァントから感じる魔力は自分のソレに近い何かを感じていた。
 緑髪の妖艶な身体を持ったサーヴァント、まるで異性を誑かし己が糧にするような。

(遠目では判断出来ないけど……近付き過ぎてバレるのも情けない話)

霊体化の選択を取っているためその身体は表に出ていない。
 しかし近付き過ぎた結果、戦闘の余波で思わぬ事態を招くかもしれない。存在を感付かれるかもしれない。
 より近くで目視すれば小さな情報でも大きな結果に結び付けることが出来るかもしれない。
 だがその不確定な可能性に賭けて己の正体が露見しては総てが悪い事態に傾いてしまう。

 まだ時は夜ではないのだ。本来の時間、陽が在る間の時間は彼女のモノではない。
 まだ駄目よ。月は登っていない、蒼い御月様はまだ眠っている。
 無理に動く必要はない、ならば本来通り館に戻る。何も不思議な点はない帰り道だ。

 収穫があったとすれば新しいサーヴァント、魔の気配を感じる女を確認出来たこと。
 もう一つは今朝方交戦した老体のサーヴァント、どうやら震動を操る力を保持している。
 老体、海賊、震動……この単語を組み合わせた結果生まれる答えは在るのか。
 ある程度絞れる、半ば確信に持っていく事も出来るが答えを出すのは些か早過ぎる。
 
 確証が持てるまで確信してはならない、慢心は良い結果を何一つ生まない魔の言葉。
 マスターと情報を照らし合わせる、新たな情報を探る……遠回りではあるが一歩を踏み出すためには正確さが重要であろう。


719 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:11:39 Z/hnPp0w0

 少ない情報を手に取り倒すべき敵の正体を洗い出す――戦争らしい。
 口元から小さい笑みを零しその場を後にする幼き吸血鬼。
 英霊に年季など既に死に体のため関係ないかもしれないが見た目と中身が比例しない場合もある。
 現にランサーは見た目こそ幼体だが生前の年齢は五百を超えているのだ。
 同じ英霊でも見た目通り現代風な英霊もいれば、姿が全盛期で実体化している歴戦の戦士も居る筈。
 
 主観と言う外からの意見を遮断するシェルターからでは見える景色も脳内で保管してしまう。
 初見は究極のアドバンテージである。手の内を明かしていない状況で放たれる宝具は必殺の領域だ。
 しかしそれは己の敵にも言える。誰もが所有している一度限りの必殺でも在る。
 
 などと戦闘における供述をしようがそれは単なる飾りである。本番とでも呼べばいいだろうか。
 実際に戦闘が始まれば運や奇跡など総て含んだ結果が答えになる。用意した材料も強火でじっくり煮込めば結果は同じだ。
 生命は生物《ナマモノ》である。その時にならなければ真の姿を垣間見ることなど出来ないのだ。


 また情報も生物《ナマモノ》であり、今新たに強いられた主催《アマギミロク》の情報も同じカテゴリに分類される。


 彼が言う通り感知による逆探知は不可能であり、言葉が直接脳内に響いてくる。
 この力は不明だが、今の段階では個人で聖杯を用意した男だ。幾つもの手段があるのだろう。
 今の段階――天戯弥勒には総てが謎に包まれている。素性も力も目的も。

 この情報提供で解った大きな点を挙げるならば参加している組の数は十四であること。
 本来の聖杯戦争は英霊を各クラス七騎招いて争う儀式、今回の聖杯はその倍を招いた。
 そして既に暗殺者が一名脱落したとのことだ。潜む殺し屋が最初に脱落するとは何事か。
 
 何にせよ残りの敵は十二、最後に笑うのは一、やるべきことは何も変わらない。
 話しによればアサシンは正面から戦闘を全う出来る英霊だったらしいがそれを確かめる術はない。
 そもそも聖杯なるビジョンが見えない今、天戯弥勒の声をそのまま鵜呑みにするのも危ういだろう。
 だがそれでも時計の針は止まらない、次第に夜になり、やがて人数が減っていく。
 その減りゆく人数に己が含まれてしまっては聖杯に招かれた意味も無くなってしまう。


『――どうかしたのかしら、ウォルター』


 別行動を取っていたウォルター――マスターからの念話。
 疑うまでもなく天戯弥勒の伝令事項に関するものだろう。レミリアの問にウォルターは言葉を紡ぐ。

『ええ、お嬢様。先ほどの声は』

『私にも聞こえていたわ……確認かしら?』

『マスターだけに聞こえていた可能性もありましたゆえ、お嬢様に届いておれば問題有りません。それと、一つ』

 用事はそれだけか。その意味を含んで尋ねたレミリア。
 対するウォルターは確認の他にもう一つ尋ねる事項があるようだ。
 レミリアは何も答えず無言の姿勢を取る。早く述べよ、そう主が謂わんばかりの静寂。
 
『使い魔を――アッシュフォード学園に張らしてみるのはどうでしょう』


720 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:12:15 Z/hnPp0w0

 ウォルターが言うには人の集まる場所に目を配らせる事で他の参加者を見つける、と言った内容だ。
 実に効率の良い、かつ的確な判断だと思われる。現に遭遇しているマスターは学生服を纏っていた。

 レミリアはまだ知らないがウォルターが単体で遭遇したマスターも学生服を纏っている。
 残る主従は己を含んで十三、その内二組が学生だ。価値はあるだろう。

『解ったわ。ふふ、戦争らしくなってきた……ってところかしら』

『お気に召しませんか?』

『別に……そんなことはないわ。ところでウォルター、貴方はいつ頃帰るのかしら』

『日が落ちる前までには合流出来そうです』

 そう、なら続きは館で。そう告げると念話は終了された。
 日中都合よく動けないならば使い魔を派遣し情報を集める――遠回りだが実に有用な手段だ。
 勝つためには手段を選ばない、その点で見れば取る他にない手段である。
 
 聖杯に招かれたのだ。本来の己ならばこのような行為はしないかもしれない。
 だが、折角の機会でもある。今宵だけは仮の主に力を貸すのも悪くない――かもしれないだろう。

 帰ったら紅茶を淹れて貰おう。
 椅子に座りに口に含み、今後の戦況に対する打ち合わせと洒落こんでみよう。
 これは戦争、聖杯戦争。やるならばとことんどこまでも――。



【不明/一日目・午後】


【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]ダメージ(小、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く
1.夜になるまでは拠点で休息
2.ウォルターと合流後、今後の方針を決める
3.アッシュフォード学園に使い魔を……?
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。


【C-5・市街地/一日目・午後】


【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.館に向かう
2.アシュフォード学園内での情報集手段の模索
3.アシュフォード学園近隣で監視に使えそうなポイントの捜索
[備考]
※浅羽、アーチャー(弩)を確認しました。


[共通備考]
虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。
発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。


 ランサーであるレミリアがライダーとアーチャーの戦闘を見ていた。それも素性を明かさずに。
 ならばより気配の遮断において秀でているアサシンが出来ない理由も存在しない。
 夜を生業にする暗殺者、世界を裏で操っていた暗殺組織黒の牙が誇る伝説の四牙の一人、ジャファル。

 彼もまたライダーとアーチャーの戦闘を目撃していた。


   ◆  ◆  ◆


721 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:12:42 Z/hnPp0w0

 俺は何をしているんだ、部屋に閉じ籠もって。
 聖杯戦争……そうだ、俺は願いを懸けているんだ。

 でも、その願いって何だ、俺は何を求めている?

 皆の所へ帰ること、巨人を駆逐すること、真実を知ること……。

 このまま帰っても俺はまた悪夢のような日々を彷徨って巨人を駆逐して。
 その流れの過程で仲間を失って……失って……。

「あっ」

 イアンさんが死んだ。マルコも死んだ。オルオさんもペトラさんもグンタさんもエルドさんも死んだ。
 元を辿れば母さんも死んだ。トーマスもミーナも、他の仲間も多くが死んでしまった。

 失った者は決して戻る《イキカエル》ことは無い。
 
 なら聖杯に懸ける願いは――死者の生存か。
 しかし巨人を駆逐しない限り人類に未来はない、ならば奴らを消すか。
 そもそも聖杯とは何なのか、本当に存在する、生命を賭けるに値する代物なのか。

 脳を活動していると疲れが普段よりも大分残ってしまう、エレンは椅子から立ち上がりペットボトルを手に取る。
 そのままお茶を喉へ流し込む――日常の光景だが彼にとっては新鮮であり理想郷。

 巨人に悩まされている壁の中の生活でこんな安全に居場所があっただろうか。
 壁は巨人に崩され、内部では人間同士の争いも起きている。
 調査兵団は巨人を駆逐しに向かうがその遠征の中で必ず死者が発生してしまう。
 腐敗した内政、貪欲なる上層部。進む貧富の差、高騰する税。幸せとは一体どんな代物なのか。

 エレンは時々思ってしまう。
 聖杯戦争が行われているこの空間に自分達が生まれていればどんなに良かったのか。
 NPCと言われてもエレンには普通の人間にしか感じない。少なくてもコンビニの店員はそうだった。
 コンビニだって幸せの証だ。本来エレンが座に位置づけている世界ではそんな物は存在しない。
 
 この世界に皆、皆が生活していれば何一つ不自由な事は存在しない、そう思ってしまう。
 発達した文明、美しき自然、そして何よりも人類の敵である巨人が存在しない。
 この空間こそが理想郷であり、自分が住んでいたあの世界は悪夢ではないのか。


722 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:13:25 Z/hnPp0w0


「悪夢――夢?」
 
 そうだ、あの生活は、巨人は、喰われた母さんは、俺は、全部、総てが。

「夢だった――そうか、夢だ。夢。夢でいい」

 扉を開ければ其処にはミカサが居るんだ。
 ミカサだって家族と暮らしている。今日は買い物に出掛けるんだ。
 駅でアルミンと合流して秋服でも買いに行く、其処でジャンとマルコが現れるんだ。
 俺に喧嘩を売ってくる、何時もの事で、慣れっこなんだ。それでも笑い合う。
 飯を食おうとしたらサシャが急に現れて、暇してるコニーも来るんだ。
 其処にクリスタとユミルも合流して、偶然ライナーとベルトルトとアニも一緒になるんだ。
 街では休暇中のリヴァイ班の人達と出会って、兵長は機嫌悪そうにしているんだ。
 其処でオルオさんが何故か挙動不審でハンジさんがゲラゲラ笑って、オルオさんは舌を噛んで。
 呑んだくれのハンネスさんも見かけるんだ、ガキは早く帰れ、って。まだお昼すぎなのに。
 それが俺の日常、大好きな、かけがえの無い。
 皆で遊んで俺は楽しんで家に帰って母さんと父さんと――。

「出掛けないと、ミカサが、アルミンが俺を待っている」

 俺は鏡を見て適当に前髪を整えると上着に袖を通す。
 お茶を飲み込んでそのままキャップもラベルも剥がさないでゴミ箱に投げる。
 靴はいつも通りでいいや、踵を整えて、ミカサの所に。


「悪い、ミカサ! 待ったか?」









「俺は出掛けるな、そう言った筈だ」







 総てが夢。
 笑わせてくれる幻覚だ、そんな訳がない。あれは総てが現実である。
 喰われた母も、お前のために死んでいった人達も、現実である。

 ドアノブに手を掛けたエレンは声が聞こえた方向へ、後方へ振り向く。
 其処には彼が望んだ理想は存在せず、代わりに在ったのは黒を纏う暗殺者だった。

「あ、アサシ――う、ぼぉ……」

 頭が破裂しそうだ、エレンは口元を抑えその場にしゃがみ込む。
 口元から溢れ出そうになる嘔吐物を必死に抑え込むのだ。
 理想郷が壊され、彼が気付いたのは苦しくて救いようのない現実だけ。
 総てが一瞬で黒に染まった彼は思い現実に膝をついていた。


   ◆  ◆  ◆


723 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:13:57 Z/hnPp0w0

 山場を超えたエレンは顔色こそ悪いが平常心を取り戻していた。
 しかし問題があるとすれば彼は聞き逃していたのだ、全員が聞いていたと仮定されていた。

《天戯弥勒の話を彼は聞いていない》

 厳密に言えば脳内に響いていたのだが、彼は幻想に浸っていた。
 これは他参加者による攻撃ではなく彼が己の精神の甘さ故に招いた失態。
 彼は自分のために先輩《リヴァイ班》が死んだ。その時点から聖杯に招かれている。
 精神の弱さが招いた幻想、其処は理想郷であるが決して辿り着けない幻想郷であった。

「お前は出掛けなくていい、聖杯戦争が終わるまで此処で大人しくしていろ」

「――は? 俺は聖杯を手に」

「したいのなら黙っていろ。邪魔だ」

 アサシンは主であるエレンに戦線の不参加を唱えていた。
 唱えていた、優しい表現だが実際は警告に近い意義になるだろう。
 彼は邪魔と言った。エレンは戦場に必要ない、と。

「お前、それでも――ッ!」

「ならお前に何が出来る? 現に目の前も見れていないお前に何が出来る、言ってみろ」

 アサシンの言葉にエレンは立ち上がった、馬鹿にするな、と。
 しかし彼の質問に答えれない、彼が言っていることは正しい。悔しいが、情けないが、正しい。
 自分も定まらない奴が戦場に出ても死ぬだけ、足を引っ張るだけだ。

「俺は、俺は――」

「殺せるのか、無理だと思うが……まぁいい。夜は日常の用事でも外出はするな。それだけだ」

 姿を眩ませるアサシン、残るエレン。
 空っぽなエレン。その手に何が掴めるのか。帰るのか。帰らないのか。
 このまま暮らすのも悪くな――この考えだけは捨てなければならない。
 役目を思いだせ、エレン・イェーガー。お前は何と戦っている。

 お前の翼は何のために在る。無様に地を這うためでは無い筈だ。
 ならば泥に縋ってでも――さぁどうする? どうする? どうする?

 限界まで弦を引き絞るのか、標的が息絶えるまで何度も放つのか。

 選べ、お前は何がしたい、黙っているのも選択だ、それを責める《ナグサメル》者はこの空間に――存在しない。


【A-4/エレン自宅(マンション)/1日目 午後】


【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]
[令呪]残り3画
[装備]立体機動装置
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り巨人をこの世から駆逐する。
0.俺は――。
1.今後の方針を考える。
2.明日になったら登校する。
3.生きている人間を……殺す?
[備考]
※アッシュフォード学園中等部在籍予定です。
※天戯弥勒の通達を聞いていません。


724 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:15:05 Z/hnPp0w0

 ジャファルはライダーとアーチャーの戦闘を目撃している。
 天戯弥勒の放送も聞いている、だが主であるエレンへの通達はしていない。
 必要ない、彼は戦闘に参加させるには不安定過ぎる。
 本来なら帰還と同時に情報を与える予定だったが仕方が無い。

 死神と称された彼でも主が死ねばその存在は元の座へと帰還するだけ。
 逆らえない現象、主の不手際で退場しては戦える事すらままならないのだ。

 エレンの素性は知っている、彼の境遇も理解している。
 其処には己の生涯に重なる部分もある、だが情けは無い。
 戦場に出るならば全員が死ぬ覚悟を持っているはずだ、故に死ぬことに責任など存在しない。
 邪魔なだけだ、嗚呼、そうだ。
 邪魔なんだ、だから引っ込んでいろ、お荷物を抱えるのは面倒だ。

 その代り、これが最初で最後の情けに――なるのだろうか。

 黙っている間に総てを殺し戻ってくる、その後で聖杯に願いを懸ければいい。

 だから今は、大人しくしてくれ。


【アサシン(ジャファル)@ファイアーエムブレム烈火の剣】
[状態]
[装備]
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:獲物を殺す
1.夜になれば戦闘を開始する。
2.甘さは捨てろ……。
[備考]
※ランサー(レミリア)、ウォルター及びライダー(白ひげ)、虹村形兆の姿を確認しました(名前は知りません)
※奇妙な兵隊(バット・カンパニー)を視認しました。
※公衆電話の異変を感じ取りました。
※アーチャー(モリガン)を確認しました。


725 : 闇夜に生ける者達 ◆wd6lXpjSKY :2014/12/30(火) 00:15:18 Z/hnPp0w0
投下を終了します


726 : 名無しさん :2014/12/30(火) 14:51:01 DBnL33JI0
投下乙です!
レミリア&ウォルター組が一手一手進めて行ってる状況に対して、エレン&ジャファル組は若干雲行きが怪しい感じに。
ジャファルの不器用な優しさが精神的に不安定なエレンに対して今後どう作用するのかが鍵になりそうですね。


727 : ◆A23CJmo9LE :2014/12/30(火) 14:56:20 QZZY3CJo0
投下乙です
申し訳ないのですが私は延長をお願いします
今年中には書き上げようと思いますので、感想はその時にでも


728 : 名無しさん :2014/12/31(水) 18:30:41 4HLsC2uM0
投下乙です!
また対照的な二組だなあ
レミリア達は闘争の愉悦をすら覚えながら次の手を打つ、エレンはただ夢と現の合間をもがく。ジャファルの戦闘開始も気になるところです。


729 : ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:24:24 OJ.g3lRE0
あけましておめでとうございます。
前年の内に投下したかったのですが、年末年始は忙しい…
では投下します。


730 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:25:38 OJ.g3lRE0
「おかえりなさぁい、先に頂いてるわよ☆」

学食の片隅、あまり目立たないスペースに犬飼伊助と食蜂操祈は席をとっていた。
ティーカップに琥珀色の紅茶を満たし、ベージュに焼けたパンケーキを口にしている。
目立たたない一角とはいうものの昼には少し早いために学食は閑散としており、そこに美少女二人、加えて取り巻きの存在やどこから用意したのか上等そうなティーセットにお茶が学食の雰囲気とは少々そぐわない。
ソーサーにカップを置く所作、ナイフとフォークの扱い、小口な食べ方からは育ちの良さが窺がえる。
朽木家で多少は教育を受けたとはいえ、流魂街の出の自分があんパンと飲むヨーグルトを持って混ざるのにはなかなかに気後れするものだった。

「それで、なぜ呼び戻したのだ?」

道中、昼食でもとりながら腰を据えてゆっくり話したいというからこんなものまで買ってきたのだ。
まさか大した意味もなく撤退させたわけではないだろう。

「何か新しい情報を掴んだら連絡してくれって言ってたじゃなぁい?サーヴァントを一騎落としたから伝えに来たのよぉ☆」
「なに!?」

まさか。自分たちがセイバー相手に闘っている間にこの女は別のサーヴァントと交戦し、勝利したというのか?
この、ランサーはおろか自分ですら打ち勝てそうな女が?

「失礼ねぇ。確かに私は野蛮力じゃあなた達には及ばないケド☆コレの利便性は示してきたでしょう?」

ナイフとフォークを揃え、ナプキンで口元を拭い、リモコンを取り出す……力と功績を誇示するように。
それと同時に黄金の鎧の武将が霊体化を解く……主君の前で狼藉は許さぬ、と言わんばかりに。

「……私の考察力をこれで送り込んだ方が話が早いんだけどなぁ。まあそうなると思ってこの席を用意したんだけど。でも」

リモコンを向け、周囲の生徒を操作する。驚いていた生徒が本をめくり、書類に目を通し、食事をとり、歓談を何事もなかったかのように再開する。

「前準備なしに学園の真ん中で鎧をまとった大柄な男性、なんて悪目立ちするから控えてほしんだゾ☆」
「そう言うなら合議での抜刀もご法度だぜ。そいつは刀よりよっぽど危ない、しまっちゃくれねえか?」

薄氷の同盟に相応しいやり取り。それを受けキャスターはリモコンを鞄にしまってカップを傾け、ランサーも戦意を収める。

「それじゃあ話を戻すけど。もともと偵察のつもりだったんでしょう?マスターだけじゃなく、敵の宝具の外観に真名まで知れたのなら撤退には十分じゃないかしらぁ?」
「…見ていたのか」
「正確には見ていた生徒がいた、のよ。途中で私が操作しなかったらやっぱり噂になってたかもよ?むしろ感謝力がほしいところよぉ☆」

体育館裏……学園で呼び出しの場所としては定番のスポットだ。目立たない、というのは間違ってはいないがそれは平素であればだ。
刃を交わす金属音が響いていれば何かと思って窓から覗く生徒もいる。
横槍が入らないよう、情報の拡散がないよう洗脳した生徒が見つけたそれを確保しただけのこと。
そもそも……

「そもそもその時は昔馴染みのアサシンに追われてあたし置いて逃げ出すのに必死だったもんねー❤他のトコ覗き見とかしてる余裕なかったよね❤」

ガチャン、と乱暴にソーサーにカップを置き、威嚇的な笑みを浮かべる。根に持っているのが一目瞭然だ。
赤い髪に粗野な振る舞い……幼馴染を思い浮かべ、空気は悪くなったが居心地はマシになったのを自覚する。
しかしマスターを置いて逃げたという行動に不信感を強めるルキア。

「あのとき私が退いてなかったらセイバーを差し向けることもアサシンのマスターに自害を命じさせることも出来なかったって言ったじゃない、もぉ」
「だからって逃げ出す?フツー」

ぶつくさ言う伊助を横目に生徒の一人から紙を受け取ると

「ハイ、これ☆」

こちらに差し出してくる。どこから盗って来たのか、生徒名簿の一部らしい。

「夜科アゲハ、高等部二年A組。さっきあなた達が交戦したセイバーのマスター。こっちは人吉善吉、同じく高等部二年A組で生徒会庶務。私の倒したアサシンのマスター。
それから、紅月カレン、このコは生徒会の会計ね。で、屋上で夜科アゲハたちと闘ってたセイバーのマスター。現状判明してる学園のマスターよ」

多い。改めて自分たちも含め五組ものマスターが集結したこの状況は驚きだ。
全部で何組いるのかは知らないが、セイバーが二騎いるのを確認した以上とんでもない数が参加しているのかもしれない。


731 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:27:59 OJ.g3lRE0

「それでお願いなんだけど、お昼休みになったらこの紅月カレンとセイバーに襲撃を仕掛けてほしいのよぉ」
「またか……撤退しろと言ったり攻めろと言ったり、私たちはお前の部下ではないぞ」
「だから色々と考えがあるんだけどそれを送らせてくれないからぁ……」

お互い浅くため息。
小間使いのように扱われるのはごめんだ、と言う当然の欲求。能力を使えばすぐにすむのに、という怠惰で傲慢な考え。
それが対峙しぶつかり合うかと思われたが

「意図その一、まだ一度も紅月カレンのセイバーとは積極的に交戦しておらずその手の内が不明であるのでそれを探っておきたい。
その二、彼はすでにセイバー、アサシンと連戦をしており消耗はそれなりのはず。叩くなら早いほうが良いでしょう?
その三、まだ見つけていないマスターがいる場合それを炙り出したい。以上よ☆」

ひとまずは女帝が譲歩。あたかも後輩に勉強を教えるように指折り丁寧に意図を語る。

「こちらもセイバーと闘っている、万全ではないぞ」
「あなた達は宝具の一つも使ってないじゃない。対してあちらは屋上からの宣戦布告、結界の展開なんて少なくない消耗をしてるわぁ。二連戦と三連戦の違いもある。
 むこうはまだ屋上でたむろして碌な休憩も出来てない、こちらは簡素とは言え食事休憩を済ませている……有利なのはどっちか語るまでもないでしょう?」
「連戦と言ってもアサシンだぞ。その消耗などあてにならんだろう」
「あの男を甘く見ないことね☆彼のチカラは一端とは言え天上の意思に届くと言われた……未熟とは言え英霊より上、下手すれば精霊や天使の片鱗。その意味、サーヴァントならわかるでしょぉ?」

反論を悉く封殺し、その上で戦闘巧者のサーヴァントに意見を問う。
四者が交わり合議が加速する。

「攻めるのはまあいいんだが、なんで時間を置く?兵は拙速を貴ぶなんざ初歩の初歩だぜ」
「一つはさっきも言った軽い食事休憩☆私だって休みもなしに行けとは言わないわぁ。あ、敵の補給はできないようにしてるわよ?
さすがにココに来たらすぐ分かるし、購買は今長蛇の列を作らせてるから大丈夫、ちょっとした兵糧攻めだゾ☆
それに授業中ならともかく昼休みなら動きに制限は殆どないからさすがに潜伏を続ける人もいないはず。屋上、体育館裏、廊下ですでにサーヴァントが交戦しているのにさらに戦闘が起きてそれに一切干渉しないなんて慎重を通り越して愚鈍、無能と言われても反論できないわよぉ?」
「必殺の期が見えないなら潜伏もするのではないか?それに、今までの戦闘を感知できていない者もいると思うが」
「普通の魔術師ならサーヴァントの戦闘に気づかないのもそれを使い魔で監視しないのもおかしいのよ。というよりあれだけ派手にやってるのに気付いていないなら鈍すぎるしこの連戦に全く干渉しなければ出遅れは明らか。その程度のマスターなら、ねえ?」
「てかホントにまだ学園にマスター居るの?さすがに多すぎ❤」

ルキアは食事を摂りつつ、席に着く二人は時折紅茶で喉を潤わせて、傍に立つ慶次は議論に混ざりつつもすでに臨戦態勢だ。

「それじゃあここで犬飼さんに問題☆いま私たちは聖杯戦争のただなかにいるわけですが、戦争に欠かせないものと言えばなんでしょう?」


732 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:29:19 OJ.g3lRE0

は?と疑念が口をついて出るが現状把握の一環ととらえたかそれなりに考えて答える。

「食料とでも言いたいわけ?腹が減っては、ってやつ❤」
「んー70点かな☆重要な要素だけど、逆に不足した食料を求めて戦争を起こすこともあるし。じゃあ次朽木さん☆」

歴戦の暗殺者が周囲を見渡し、現状と故事をふまえた答えを不完全として今度はこの場で最年長の死神に問う。

「……兵力か?潤沢な糧食も武器も十分な兵がなければ宝の持ち腐れ。斥候や後詰など分業もできるようになる……なによりそれは同盟を組み、人を操るお前が重点を置いているのではないか?」
「そうね、個人的には満点をあげたいところだけどぉ、そこにいるお侍さんとか私の知ってる最強の超能力者とかなら単騎で戦争を勝利に導くことも出来るから85点くらいで☆じゃあ最後に本命のランサーさん、どうぞ☆」

相手の立てる戦略まで視野に入れた回答だが、規格外とは言え目前の戦士の存在がそれを完答には至らせず、そしてその戦士が答える番となった。

「敵、だな?どんな武器を用意しても兵を纏めても戦う相手がいなけりゃそいつは無用の長物だ。この戦争もまずは敵を見つけるところから始めなくちゃならねえ」
「ピンポーン☆大正解☆……都合よすぎると思わない?私たちとあなた達が、人吉善吉と夜科アゲハがクラスメートで、人吉善吉と紅月カレンは生徒会に属しているなんて。
仮初の生活を全うしようとすれば生活範囲で敵と会い、怠れば敵に情報力が奪われる。天戯弥勒がこの学園で少なからず戦況を加速させようとしているのは見て取れるわぁ。
セイバーが二騎いるというなら少なくとも十四騎、あるいはそれ以上のサーヴァントがいてもおかしくない……なら登校不登校の差異はあれどもっとこの学園にいるはずよ。
さっきも言ったように仮初の生活の縛りがなくなったというのに、この派手な動きに一切関わらないのは期を見るに敏とは言えないわよぉ?となれば動きを見せる者がいればそれが敵、いないなら欠席者に2〜3人はマスターがいると考えてまず違いない」

解答解説、および問題の意図を説明し、さらに周りの生徒の行動の意義も示す。

「あの書類もそのためよぉ☆二人以上同じクラスや部活から欠席者が出てたら当たりの確率が高いでしょうからチェックさせてるわぁ。今見てるのが高等部ので、そっちに置いてるのが中等部の」

フゥン、と鼻を鳴らしながら中等部の出欠簿を手に取りぱらぱらとめくる慶次。

「釣り上げるのには納得だ。だがもし動き出した奴がいたらどうすんだ?それの相手まで俺たちにしろってのかい?」
「心配しないで☆学園(ここ)はキャスター(わたし)の工房(モノ)よ。思うように動かせなど、決してしない」

緑のセイバーをけしかけたように。白翼のアサシンを堕としたように。
全てを『掌握』してみせようと傲慢なる女王は語る。

「……了解だ。屋上だな?ちなみにもう一騎のセイバーとかアサシンの元マスターだとか他の連中の居場所は掴めてんだよな?」
「夜科アゲハたちは購買の行列力に愕然としてるって☆人吉善吉は紅月カレンと同じく屋上にいるけどぉ、一人だけなら大したことないでしょぉ?」
「おう、それじゃ早速…お?」

天戯弥勒の言の葉が四人の脳内に流れ出す……通達の時だ。足を止め、聞き入るかと思いきや

「開戦の銅鑼代わりか、丁度いい!そこのけそこのけ俺らが通るッ!」
「なっ、おい、こら待て!」

ルキアを引きずるように駆けて行ってしまった。


733 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:30:39 OJ.g3lRE0

「…………………………ちゃんと聴いていけばいいのに☆」
「いいじゃん❤別に大したこと言ってないし」
「そう、ね……」

放送を聞き終え、加わった情報も含めて思考を進める。より勝利へと近づくように。

(数は十四、いえ既に十三騎。予想した数の中では最少、不幸中の幸いってところかしらぁ?何で七騎じゃないのかは気になるところだけど。
そもそもはガイアの怪物を御するのに守護者が七騎必要だから七騎なんだっけ?あれ、願いを叶えるのに必要な対価として五、六騎のサーヴァントを落とす必要があるんだっけ?で、世界の外側に干渉するレベルだと七騎必要とか……
となると……仮説その一、天戯弥勒はガイアの怪物以上の化物を制御しようとしており、そのために十四騎ものサーヴァントの魂を必要としている。
ガイアの怪物以上となると……宇宙からなにか来てるとか?それともあの人のところに居候してた『魔神』とか?専門外だから詳しくは分からないわねぇ……)

焦がれた人の対峙した勢力、その知識の一角。彼のために色々と調べたのがこんなところでも役立つとは。
学習という行為の有意義さと英雄の姿を思い出してにへら、と笑みがこぼれる。

「何笑ってんの?キモイ❤」
「失礼ね☆」

(仮説その二、優勝者の分と自分たちの分含めて十四騎とした。これは楽観的だけどもありえなくはない。肯定要素も薄いけど否定要素も薄い現状一番有力な仮説。
それからできれば認めたくない仮説その三、私たちは並の英霊より魂の容量が足りないので十四騎用意せざるを得なかった)

確かに垣根帝督も自分も強者ではあろうが、一方通行や上条当麻のような英雄譚の主人公《ヒーロー》と比べれば端役《モブ》であるかもしれない。
だが、結界まで張ってみせたあの多芸な緑衣の剣士が一流の英霊でないなどと言えるだろうか。
過激な衣装を身に纏いながら、堂々たる闘いを魅せた戦乙女を誰が端役と言おうか。
それに……

食堂の片隅にとある人物の伝記を読んでいる生徒がいる。
チラリと目を向けたそのタイトルは

(前田利益、通称慶次。そりゃ信長公や本多忠勝なんかには劣るかもしれないけど教養豊かな猛将として有名よねぇ。槍の達人らしいしランサーとして納得もいく。
でも日本の一武将では一級のサーヴァントとしては知名度力が足りないかしらぁ?)

戦闘を見、高らかに名乗りを上げているのを聞いた生徒がいたのでその情報は手に入れた。
図書館から本を借りてこさせて調べてはいるが、記憶の限り戦で大敗北をやらかしたというのは無かった気がするので有意性はあまりないかもしれない。
槍は朱柄の三角造で有名だけどそれが宝具としてどんな能力を持つかは不明。むしろ彼はその在り方が宝具になるタイプな気がする。
まあ他のサーヴァントのついでに調べれば仮説を補強、あるいは否定する材料くらいにはなるか。
……聖杯についても天戯弥勒についてもそう深く考えるつもりはなかったのだが。

(私の隣に対魔力持ちのランサーと精神操作に耐性あるマスター、強力とはいえ地力で劣る垣根帝督の隣にセイバー。それをしのいでも生徒会でまたセイバー。
積極的な私たちを踏み台に好戦的でない主従を戦端に放り込もうとしただけかもしれないけどぉ、それだけなら知り合いをこんなとこに置かなくてもいいじゃない……
悪意力を感じるゾ☆他にキャスターもアサシンもいたでしょうが)


734 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:31:01 OJ.g3lRE0

もしかすると……

(学園都市で開発された超能力者に何か思うところがあるとか?)

もしそうならば彼の意図を探らねば、聖杯に手が届いても何らかの干渉を受けるかもしれない。
現状、マスターも当たりとは言い難い。警戒心の足りない男に、魔術の才など微塵もない一般人上がり。
垣根帝督はそれが原因で敗退、自分は今魔力供給のために食事を摂るざるを得ない状況だ。

(あるいは超能力者と接触させたい誰かや何かがここにある?)

それもまた、仮説にすぎない。だが明確に否定されることがなければその可能性を信じるのが科学と言うものだ。
勝利が確実な盤石な体制を築くことが出来たなら

(すこーし、調べ物に時間を費やすのも必要かしら☆)

まずは第一歩。ランサーたちの帰還を待ち、周囲に動きがないか目を配ろう。

「で、なんか動きがあるなら教えなさいよ❤色々気ぃ配ってんでしょ」
「階段と外の生徒に動きはないから屋上に変化は無し。夜科アゲハは……購買の行列に並んだみたい☆」
「…並ばれたら普通に買えるんじゃない?兵糧攻めとか言ってたのに❤」
「それなら問題ないわぁ、丁度今……」

リモコンを取り出しいくつか操作。食堂内に増えてきた生徒にも宝具を行使している。

「はい、これで完売☆本日の購買はこれにて閉店☆……ついでにここの生徒は食べ終わるたびに注文した記憶と食べた記憶と満腹感を忘れさせてるから、こっちも遠からず売り切れるわぁ」

そう言っていると入り口から大量の食べ物を抱えた生徒が何人も入ってきて合流。
いくつかそれを手に取ると

「犬飼さんも食べる?あなたの解答は満点ではないけど70点の価値はあるんだから」

そう言って差し出す。どこにでもあるようなバランス栄養食から菓子パンにおにぎりまでより取り見取りだ。

「……これ全部買わせたワケ?結構容赦ないわねアンタ」
「え〜、でも一人数万円くらいだしそのくらいなら大したものでも……」
「お嬢様だとは思ってたけど金銭感覚おかしいから❤それと伊助もう十分食べたからいらな〜い❤」

そう、と相槌。大して気に止めず自分で手に取り、口にしようとするが

「いけません女王!これ以上は女王の完璧なボディラインが崩れてしまいます!」

そう言って取り上げる女生徒が一人。
少々すれてはいるがそれは確かに操祈のことを気遣ったもので彼女も笑顔で対応する。

「大丈夫よぉ、サーヴァントが太るなんてありえないから。あなたもその『なんだかよくわからないコロッケ』20個の早食いにレッツ・チャレンジ☆」

リモコンを向け、能力を利用した悪意ある対応だが。

「えげつな……」

さすがに女子として大量の揚げ物を、というのは思うところがあったか珍しく同情的な声を上げる伊助。

「NPCだし大丈夫、大丈夫。それにこれくらい彼に比べれば軽いものよぉ。彼、自分の主君を水風呂に放り込んだこともあるらしいじゃない☆
……今頃さぞや頓狂な戦を繰り広げてるんじゃないかしらぁ」




◇  ◇  ◇


735 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:31:30 OJ.g3lRE0




『聖杯戦争ご観戦の皆様、因果が歯車、願いが発条を回す不思議な戦場へようこそ』



『これよりお目にかける闘争の主な戦士をご紹介――」

何やってんだ安心院さん?


……………………


「ちぇ、せっかくこんな仮面まで用意したのに。まあいいか。オペラグラスは観客席じゃなく舞台に向けるよう言われたろう?彼が出てくることはもうないんじゃないかと思ってね。
きみも、ここも不甲斐ない(フゥがいない)状況になったとあっては僕も顔を出しておくざるを得ないだろう」

いつか来たような気がする教室で、安心院さんがピエロみたいなマスクをつけて、なんだかよく分からんことを言っていた。
ん?待てよ?またここに来たってことは俺今度はマジに……

「ああ、大丈夫だよ。きみはサーヴァントこそ失ったがこの聖杯戦争ではそれが即脱落には繋がらないし、そばにいるマスターも危害を加えてないからまだ無事だ。そこは安心していいぜ(安心院さんだけに)」

窮地なのは事実なようだがまだ闘い続けられるようで安堵する。球磨川の時みたくまた助けられちまったかな?

「僕は平等なだけの人外だ。つまり助けたわけじゃない……見せておきたいものがあってね」

いつの間にやら持っていた指示棒で示す先は教室のプロジェクター。そこで流れ始めたのは……




『糞が、くそが、クソが……食蜂操祈、第五位……ようアレイスター、お前はどうせ笑ってんだろ?
 なぁ一歩通行……テメェもどっかで腹抱えて笑ってんだろ?』

『許さねぇからな……聞こえてんだろ第五位……テメェ、このくそがああああああああああああああああ』



これは……

「そう、君のサーヴァントだった男の最期の姿さ。ある意味では《主人公》の末路だよ」

覚えが……ない。けどあの男が望まぬ形で己を殺しているのは見ていればわかる。令呪、か……

「サーヴァントが過去の英雄を再現したものだというのは知っているね?彼らは一人一人が固有の英雄譚を持った《主人公》さ。
けれどサーヴァントと言う枠に己を当てはめているため生前の力のすべてを発揮できる訳ではない……主人公(めだかちゃん)の前哨戦に制限された主人公(サーヴァント)というのは悪くないと思ったけど荷が重かったかな?
しかしこれくらいには敵わなくてはどうあれきみの願いは叶わないしねえ……さてどうする人吉くん?己が手で相棒たる英雄を殺めてしまった人吉くん?
再びテレホンカードを握って元いたところに逃げ帰るかい?黄金の意思を持つジョースターの一族のように、家族の如き海賊団麦わらの一味のように、尻尾を巻いて逃げ出すのかい?
それもまた選択肢だ。僕の立案するフラスコ計画で改めて主人公を目指すのも賢明な考えだと思うよ?」

…………カッ、よく言うぜ安心院さん。闘う意思をなくした奴が主人公(ヒーロー)になんかなれるか。
俺はここで、主人公(めだかちゃん)に勝てる(並び立てる)男になってみせるぜ。

「うん、よく言ったよ人吉くん。特に昨今は挫折する主人公と言うのは流行らないみたいだからねえ。
これできみはフラスコ計画なしで主人公になれる可能性を捨てずに済んだ。ぜひともアレは失敗だったと証明してくれたまえ。
とはいえ本物の英雄には悪平等(ぼく)も勝てない……きみにとって勝利とは、英雄とは、主人公とはなんなのかよく考えてみるといい。でなければ、本当に死ぬぜ?」

…世界が薄れる。意識が明瞭になる。
そういえば、これって結局夢の中の出来事なんだよな。俺の頭の中なのか、安心院さんの頭の中なのかはよくわからないけど

「もちろん君の頭の中のことさ。でもね、この地には『自分だけの現実』で世界を侵す能力者がいるんだ。君の頭の中で起きたことが現実じゃないとどうして言えるんだい?」




◇  ◇  ◇



夢を見た。
その内容はほとんど覚えていない。
だが確かに己が相棒の末期を見た。
視覚を共有していたのか、『欲視力』で覗いたのか、マスターがサーヴァントの記憶を夢に見るというやつなのか、それも分からない。
けどアイツの最期は、その怒りと悔しさはこの胸に残っている。

好敵手に対する悔恨、下手人に対する憤怒……操られた俺のことを恨んでないっていうのは……申し訳なくて、悲しくて、恥ずかしくて、情けなくてたまらない。
だってアイツは最期に俺のことなんか眼中になかったんだから。


736 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:32:14 OJ.g3lRE0

「……起きたんだね」
「紅月、か。悪いんだけど俺が何をやらかしたか教えてくれないか…記憶が少し飛んでるんだ」
「…そう、わかったよ」

アサシンがキャスターを倒すために同盟を提案したこと。俺が恐らくキャスターに操られ令呪で自害を命じたこと。
その他諸々、俺が来る前のことや意識を失うまでの話を聞いた。

「それで、あなたはこの先どうするつもり?」
「俺は……アイツのためにも、俺のためにも戦い続けるよ」

俺がアイツの願いを奪ってしまった。ならせめて、その意思までは奪ってはいけないだろう。
聖杯を手に、超える目標にせめてアイツの分まで手を伸ばそうじゃねえか!

「仇討っていうとなんだが、まずはキャスター相手に、その、協力してくれねえか?紅月」

めだかちゃんに一人で背負うなって言った以上、俺も単独で動こうとはしないさ……一人じゃサーヴァントにまず勝てないってのはあるけど。
いやでも自慢じゃないが俺だってデビル強えできる男ではあるんだぜ。

「そう…それじゃ、あんたはあたしの敵だ…!」
「て、おいおい待てよ!」

ここは握手とかの場面で銃を向けるシーンじゃないだろ…!

「一度キャスターに操られてたやつに背中を預けるのは、無理。何らかのきっかけで攻撃を仕掛けるようにされててもおかしくない。
もしテレホンカードで脱落するっていうなら同じ日本人のよしみで見送りくらいはしてあげてもよかったけど……え?」

…天城弥勒か!間が悪い、いや間を取り持つには悪くねえか?
…………とりあえず話を――




「お熱いねえ、ご両人。ちょいと失礼」

乱入する大柄な男…とそれに引きずられるようにした女生徒。
武装、タイミング、存在感……規格外の存在、サーヴァントにただでさえ固まっていた空気がさらに緊張を増す。

「馬鹿者!通達の最中に駆け出す奴があるか!」
「なに言ってんだマスター。戦場で伝令を足止めて聞いてられるかい…そっちの坊主が人吉善吉だな?お前さんには聞きたいことがあるからちょいと待っててくれや。
それからそっちのお嬢ちゃんにセイバー、腕試しにひとつに俺と喧嘩でも――どうだい!」

(おっぱじめやがった!)

刀とも薙刀ともつかぬ巨大な刃物を振るい、カレンの側に控えていたリンクに切りかかる。
見かけにそぐわぬ豪力でそれを受け止め、巧みな技巧でマスターから闘いつつも離れていく。
突然の状況変化にしばし唖然としていたが

「おい、あんたあいつのマスターだろ!?紅月まで戦いに巻き込む必要はないだろ、あいつを止めてくれ!」
「たわけ。初めからあいつはサーヴァントしか相手にせんし余計な殺生もせん。私も自分の力が取り戻せれば聖杯に固執するつもりもないからな」
「いやそれならはじめっから特訓とかしてろよ!」
「…………ふむ、そうだな。ではその特訓にお前が付き合ってくれるか?」

コキリと腕を鳴らし、笑みを浮かべてこちらを向いた。

(あれ?なんか地雷踏んだ?)

「あいつは私に何も述べず走り回るし、あいつらは人を部下か何かと勘違いしてるようだし、誰も特訓になど付き合ってくれそうにないのでな…!」

こちらに話してはいるようだが、その実言葉を向けているのは善吉にではない。
見るからに苛立ち、攻撃的になっている…ようはやつ当たりだ。

(やべえ!相当フラストレーション溜まってんぞこれ!しゃあねえ、欲視力で何とか見切って)

「縛道の一!塞!」
「な!?」

詠唱を破棄し、即座に放たれた鬼道によって動きを封じられ地べたに転がる。

「ふむ…さすがにこの程度は打てるか…」

満足げに呟いてるのに対してこっちは動きを封じられてる。
視線で軌道はわかっても見えない攻撃はさすがに躱せなかったか……過負荷みたいに濃い気配をしてればいけたかもだが

「ああッ!お前人が動けないのをいいことに!」
「そこで黙って見ていろ。男爵閣下」

どこらかともなく取り出したマジックで髭を書いてご満悦。
などと間の抜けたことをやっている間にもサーヴァント同士は激しくしのぎを削る。
屋上に刻まれた戦痕は数を増し、互いのマスターから大いに魔力を喰らう。


737 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:33:07 OJ.g3lRE0

「どうしたどうした!そんなもんじゃねえだろう!」

押しているのは飛び込んできた巨漢のランサー。前田慶次。
対するリンクも張り合っているが、その動きはどことなく精彩を欠く。
ギャリギャリと鍔迫り合いの音を立て、辛うじて凌いでいるといった感じだ。

(この目線、退路を探している?)

転がって見えなくなった闘争を目にしようと緑のサーヴァントの視界を覗いてみると、敵だけではなく何やら周囲に僅かながら意識を向けている。
敵の位置、マスターの位置、周りの景色を把握したと思ったら
ガァン!と鍔迫り合いを弾き大きく距離をとる。さらにバクダンを一つ、床を吹き飛ばすように叩きつける。

「おっと!やってくれるね。だがこのくらい、っとォ!」

ブンブンと得物を振るい、粉塵を晴らす。
再び敵を視界にとらえ切りかかろうと構えるが…

「あれいねえ!?尻捲って逃げやがったか!」

そこにはサーヴァントはおろか紅月カレンの姿もなく、階下からはバイクらしきエンジン音が響き渡る。
奇しくも先のセイバー戦とは逆に自分たちが敵を取り逃がした形だ。

「…逃がしたか」
「すまん、マスター。まさかあんな派手な呼び出しをやるやつが撤退するとは思わなくてよ。こいつは俺の落ち度だな……と、そっちは拘束してくれたのか。話が早くて助かるぜ」

望まぬ決着ではあるが、足まで用意していた周到な相手を不用意に追うことはしない。
空中を舞う最中に射抜かれかねないし、呼び寄せるにあたっての入念さに警戒度を内心引き上げる。
それよりも、前から来る刃よりも背後からの槍の対策をするべきだ。

「人吉善吉、ここに巣食うキャスターの真名を聞いてたら教えてもらえるかい?」

言葉尻は丁寧だが拘束され、武闘派のサーヴァントに問われているとなっては事実上の選択肢などないに等しい。
しかたなく彼は

「…知らねえ」

と、答えた。

「馬鹿な、貴様のサーヴァントから聞いていないわけがないだろう!」
「そうとも限らねえだろ、マスター。じゃあ仕方ねえ、心苦しいがよ、脱落したアサシンの真名は?お前さん、アサシンのマスターだろう?」

質問は変わっても状況は変わっていない。
それに脱落したサーヴァントの真名を教えたところで大きな影響はないと考えるはず。
ましてや自分のサーヴァントの真名くらいなら把握しているだろう。そう考えていたが……

「…知ら、ない。思い、出せない…なんでだ!?俺はアイツの名を聞いた!言葉を交わした!なのになんで…なんで!アイツとのやり取りが『なかった』みたいになってんだよぉぉぉ!」

恐慌。『なかったこと』になったのにトラウマを刺激されたか、その恐怖ゆえか縛道さら解けて震え、乱れ、暴れまわる。

「……く」
「やってくれるな、あの女狐…!」


738 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:33:31 OJ.g3lRE0

真っ当な主従関係なら、まず互いに名乗るだろう。
真っ当な同盟関係でなくとも敵に関する情報は伝えておいて損はないだろう。
人吉善吉が己がサーヴァントの名を知らないはずがない。
キャスターがアサシンのことを知っていたように、アサシンが彼女のことを知り、それを流布しないわけがない。

事実垣根帝督は自らの真名をマスターに伝えていたし、食蜂操祈の能力を紅月カレンたちに話していた。カレンが善吉に話した際に食蜂操祈の名を伏せることもわざわざしなかった。
食蜂操祈は、それを予期していた。
好戦的ととれるカレンたちには闘いを挑ませ、あわよくば己が名を墓場まで持って行ってもらおうと画策した。
厭戦的である善吉には能力を行使し『食蜂操祈』と『垣根帝督』を認識できなくしておいた。
それを察したか、唇を一文字に結ぶ慶次。そして

「……そうかい。それじゃあ、世話かけたな」

浮遊感。どうやら鞘に引っ掛けて放り投げられたらしい……景色が上に昇っていく。
世界が遠くなったかのように、音が遠のく。

「たわ――なぜ―――――ど!」
「―――いた―――ャス―――駒――――――」

「次の授業―――――――――」
「――――――――――売り切れ!?」

「地震?俺は知らな―――――――」
「停電にまで――――――いよ」

「珍しいね、鹿目さんが休――――」
「――――――暁美――も―んでる―」

「おいなんで並ぼうなんて言ったんだよ!結局売切れちまったじゃんか!」
「飯抜きでやるにも限度あんだろ!てか列の前であんな大量に買い込むとか分かるか!…っておい!あれ俺たちのバイクじゃねえか!」
「あ?ンな馬鹿な…マジかよ!?てかあれさっきのセイバーじゃねえか!おいこら待ちやがれ――え?」

ガサガサガサガサガサッ!と音を立て枝を直撃、勢いを殺されてさほどの傷は負わずに済んだ。
さっきから騒がしいのは……

「痛ってぇ。あれ…?アゲハ?」
「人吉!?何やってんだお前!?」




【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]健康、若干の恐慌状態
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服、男爵風のおヒゲ(油性)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く……?
0.痛てててて…うん?アゲハ?
1. アイツのためにも自分のためにも聖杯戦争を続ける……?

[備考]
※夜科アゲハがマスターであると知りません。
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※食蜂操祈の宝具により操られていました。
→加えて食蜂操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。

※サーヴァント消失を確認(一日目午前)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。

【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
0.あー!俺たちのバイクーー!って人吉何やってんだお前。
1.夜になったら積極的に出回り情報を探す。
[備考]
※人吉善吉がマスターであると知りません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。

【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲
[装備]方太刀バサミ
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
0.待ちやがれバイク泥棒コノヤロ…って誰だお前?
1.情報を集めるのもいいかもしれない
[備考]
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。


739 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:34:29 OJ.g3lRE0





「たわけ!なぜ投げ飛ばした!?この高さでは…」
「ここで待ってたらそれこそキャスターの手駒に何されるかわからねえぜ、マスター。ちゃんと木に落ちるようにしたし、こっちのが生き延びる可能性は高い…はずだ」

そう言われては正否はどうあれ否定はできない。
黙るマスターに、黙考するサーヴァント。

(馴染みのアサシンなんてマスターの方が漏らした上に、セイバーと人吉が同じ所にいるなんざ都合よすぎた、か。
キャスターの真名だけじゃなく、アサシンの真名にまで手を回してるたあ流石に頭の回りも早いじゃねえか。同郷のやつの名が分かれば手がかりくらいになるかと思ったが……)

犬飼伊助が愚痴っていた昔馴染み。そしてキャスターもそれの手の内を語っていたから、彼女たちを出し抜く契機を求めここに来た。
通達が来たときは驚いたが、その最中なら余計な邪魔も入らないと判断。あのキャスターの前にマスターを置いていくくらいなら自分の側で戦場に置いた方がまだ安全だ。
彼女と共に飛ぶが如くきたが、得たものは少ない。

(人吉のやつにキャスターが手を加えたのは明白。あいつが折れなきゃ信長包囲網ならぬキャスター包囲網の一角になってくれそうだが、どーだろうな。
松永のおっさんってのはこんな気分だったのかね、どうも俺には向いてねえや。男なら喧嘩も恋も自分の手でが一番だと思うよ)

人吉善吉をあえて泳がせ、キャスターの敵とする。
もし強力なサーヴァントを従えてくれれば自分も喧嘩を愉しめる……これくらいは口にせずともマスターも、キャスターも察するだろう。
だが、どちらにも告げていない腹案が一つ。
懐には付箋が一枚。

(同組織に二人以上属させて戦端を加速、か。目の付け所はいい。だがやはり近現代の英霊かな、すでにいる奴に警戒して飛び入りが怪しいって戦場のいろはに目が回ってねえ。
2年B組とかいうとこで暁美ほむらってのが休んでる。で、明日からそのクラスに新入りが飛び込んでくるらしいぜ?)

付箋にはエレン・イェーガーという名。そして明日から転入すること、名簿を明日に更新すること、非常時の連絡方法が書かれていた。

(さて、どうする?休んでるやつの情報は掴むだろうが、確認前にこれを引っ剥がした以上はこいつについては知らないはず。とはいえ明日までしかない僅かな優位点だ)

暁美ほむらについても二人以上の欠席ではないため優先的に捕捉されることはないだろう。
となるとその情報も僅かとはいえ強みになるか。しかしともに確実なマスターの情報ではないし、下手に動けば感付かれる。どうするか……?


740 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:34:49 OJ.g3lRE0


沈考する己がサーヴァントを見て朽木ルキアは自身も思考の海に身を委ねる。
だが、それは彼とは違い建設的とは言い難いもの。

彼は指示に従わず高らかに名乗りを上げた。恐らくあのキャスターはそれを聞いた者を手の内に収めているだろう。
通達が響くとともに駆け出した。おかげで自分は話半分にしか聞けていない。
今も自分を置いて思考にふけっている。
……分かっている。
あのキャスターの近くに一人残るのがどれだけ危険か。あの男を逃がした方がキャスターを出し抜く意味でも私の練磨としても有意義なことが。
でも、それでも……

(ランサー、お前は兄様と同じで何も語ってはくれないのだな……)




【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]健康 、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.慶次及び現状に疎外感と寂寥感
2.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
3.ただし同盟にはあまり乗り気ではない。何かきっかけがあれば解消したい
[備考]
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)を確認しました。
※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。

【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]疲労(小)魔力消費(小)
[装備]超刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る
2.ただし心底信頼はしない。マスターから離れず護衛をし、隙を突くためにも考察と情報収集
3.エレン、もしくは暁美に対して―――
[備考]
※キャスターを装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。
※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。
 エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。


[共通備考]
※犬飼伊助&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。


741 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:35:33 OJ.g3lRE0





「頓狂な戦って❤どう見ても名乗りを上げて堂々と戦う武人肌ってカンジじゃん❤」
「否定はしないけどぉ。ちょっとずれてるところがあるからあんまり信頼しない方がいいわよ☆」

聞き流す。どうせ自分が乗り換えをしないようにするネガティブキャンペーンだろうと気にかけない。
……それで正解だ。彼はそれなりの切れ者だ。
だが頭がそれなりに回るから誘導も出来る。

体育館裏から撤退させたのは先に述べたそれだけではない。
夜科アゲハ、彼の能力行使を僅かながら確認した。あれは学園都市のそれに近似した、しかし異なる形態の能力だ。
『原石』ならばいいのだが、もしあれが学園都市のように学習できるものならば。万一にそれが朽木ルキアの目的を果たしてしまえば。
彼女がここにいる理由はなくなる……ランサーのマスターがいなくなる。
となれば間違いなく犬飼伊助はその後釜を狙うはずだ。ランサーも積極的っではないかもしれないが、仇敵を脱落させられるなら応じる可能性がある。

夜科アゲハと朽木ルキアは敵対以外の関係を築かせてはならない。
だから別の任を与えて引き離した。
同郷のアサシンという、『食蜂操祈』のヒントを餌にして。
『垣根帝督』の近くの心理系能力者と言えば別の使い手がいたようだが、同郷から辿られてはたまらないので彼についても認識できなくしておいた。
今頃見当外れの尋問でもしているだろうか、それとも気付いて諦めているだろうか。
いずれにしても釈迦の掌を飛び回るが如く間の抜けた、頓狂な戦だ。

ただ信頼できないというのは私に限って言えば事実だ。
何を考えているのか分からない奴と組むなんて、正直言ってゴメンだ。
聖杯戦争で強力な三騎士のクラスはみな対魔力を持っている以上、御坂美琴と組んだ時のように妥協するしかないだろうが。
その点でいえば、悪意が文字通り透けて見える犬飼伊助と朽木ルキアの二人は信用できる。

(もし朽木さんが彼を見限るようなら……)

私を上回ろうと個々で動くあのふたりがどこかで噛みあわなくなったら

(うん、彼女とはキチンと同盟関係になってもいいかな☆)

犬飼もまた、まだ具体的な離反の策はできていない。放っておいても大きな障害ではまだない。
それに下手すると彼女の強みを殺しかねない。

(能力者ならともかく肉弾戦は専門外だからぁ、あんまり手を加え過ぎて私の操作必須とかになっちゃうと困るのよねぇ)

能力を制御するためにリモコンを使っている。それでも精神状態によっては操作対象を廃人同然にしてしまう可能性は否定しきれない。
先の小競り合い、紅月カレン相手の離脱は能力で操作しては無理だった……万一影響が出ては困る、まだ暫くは本格的な操作はしない方がいいだろう。
彼女の消失は自分の敗退に繋がるのだから。

能力による操作も、読心もなしに信頼できるのはやっぱり『あの人』しかいない。
さきほど人吉善吉に施したように、私を認識できなかったあの人。

(人吉くんも悪くないけどぉ、やっぱり彼には及ばないかな☆)

彼に認識されなくても特に思うところはないが、あの人に認識されていなかったのは同じようにはいかない。

幾度空想しただろう。
あの人が記憶を一度なくした後、すぐにもう一度思い出を構築できたら。
魔術を識る少女ではなく、心を知る自分が隣にいたら。
電撃を使うレベル5と過ごすではなく、心理を司るレベル5と過ごしていたら。
彼と近似した願いを重ねた聖人でも、数多の時を共に過ごした魔神でも、世界を超える電子の総体でも、心理戦最強の無能力者でも、彼女でも、あの子でも、あの人でも、あの娘でもなく。



彼の隣に最初から最後までいたのが私だったら!!!



それはきっと素晴らしい……けれどそれは叶わなかったただの夢。
だけど今の自分はサーヴァント。存在自体があやふやな胡蝶の夢。

(だから今くらい、夢を見させてほしいな…)


742 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:36:31 OJ.g3lRE0



【犬飼伊助@悪魔のリドル】
[状態]疲労(小)魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0.食蜂操祈に心を許さない。
1.キャスターの宝具を使い上手く立ち回る。
2.キャスターを使い潰した後にサーヴァントを乗り換える。

[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。



【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]健康、魔力消費(中)
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]ハンドバック(内部にリモコン多数)、購買で買い占めた大量の食品、生徒名簿
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
0.このまま上手く立ち回る。
1.洗脳した生徒を使い情報収集を行う。
2.戦闘はランサーに任せ、相手のマスターを狙う。
3.ランサー一行及び犬飼伊介には警戒する。


[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。
※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。
 それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名を聞いたかについては後続の方にお任せします。
※天戯弥勒、および聖杯戦争について考察する必要があると感じ始めました。
 今の仮説は1、ガイアの怪物以上のなにかを御そうとしている 2、参加者と主催者のために14騎いる 3、参戦しているサーヴァントは一流の英霊ではない 4、アッシュフォードに二人のレベル5がいたのには意味がある


[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵を行い、ランサーに協力、或いは命令する形になります。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせています。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確保済み。


743 : わが臈たし悪の華 ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:36:52 OJ.g3lRE0







突如現れたランサー。
彼はとても強い……業腹ながら撤退を選ばなければならない事態と言うわけだ。

思えばこの聖杯戦争は悉く予想外の事態に見舞われる。
マスターの提案である屋上での挑発も、本来ならば悪くない手だったのだろうが……
日の高いうちからアーチャーによる襲撃。このくらいなら序の口。
襲い来るセイバー。自分以外にセイバーがいるというとんでもない慮外の事態。
廊下で対峙したアサシンと、それに向かい合う敵マスター。策謀に長けた魔術師でなく、肉弾戦に優れたマスターという僅かながらもイレギュラー。
それ以上に僅かな交戦とは言え、セイバーたる己とわたり合ったアサシン。まさしく規格外。
14騎という、通常の倍の数、それに伴う想像以上に学園に集結したサーヴァント。連続した戦闘で思った以上に消耗を強いられた。
……言いにくいことだがマスターからの魔力供給は潤沢とは言い難い。
自分以外にセイバーがいなければ、アサシンが凡百の者なら、ここまで多くのサーヴァントが集ってなければこうはならなかっただろうが連戦に堪え得るとは言い難い。

ともかく悔やんでばかりではいられない。
先のセイバーは令呪によるものではなく突然地上を駆けて現れたようだ……ならば恐らく彼女が騎乗スキルでもって用いた乗機が彼女の現れた方角にあるはずだ。
もう回収されているかもしれないが、無策に撤退するよりはマシと言う物。

ガァン!と鍔迫り合いを弾き大きく距離をとる。さらにバクダンを一つ、床を吹き飛ばすように叩きつける。
その隙でもってマスターを抱え、屋上から跳び降りる。
隠されてはいたがすぐに機馬は見つかった。どんな罠も秘匿も自分ならば見抜いて見せよう。
機馬にまたがり、マスターと共に駆け出す。セイバーのクラスにあてがわれる騎乗スキル、それも自身の武芸の一環として振るう。

ひとまずこの学園から離れるのが先決だ。
マスターは日常を演じ、身分を隠そうとしていたが、学園にキャスターが陣取っていることが分かりそのキャスターにばれたとあってはこれ以上学園にとどまるメリットはないだろう。
負傷も、消耗も癒さなくては。
……最悪魂喰いも考えなければならないだろうか。ハイラルに平和をもたらすためとはいえ、敵はともかくそこまで犠牲を強いていいのだろうか。


悩む勇者の背中で少女は考えていた。
今後の振る舞いを。何より敵のことを。

(食蜂操祈、心を操り人を駒のように扱う敵……)

自らの従僕を自害させるハメになったマスター。
無辜の生徒を利用し、敵を戦場に誘い込む。
それは実に有効な策で、知的で、効率的で……どこかで見たもので、なぜか許しがたくて。

(やつあたりかもしれない。投影してるのかも。でも、あんたは私たちが倒すよ…!)



【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]疲労(中)、魔力消費(中) 、脇腹に切り傷(止血済み)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.ひとまず学園から離れる。
2.食蜂操祈に強い敵意。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※学校内での自分の立ち位置を理解しました。
※生徒会の会計として所属しているようです。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。


【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
2.ひとまず学園から離れる
3.消耗を補うためにマスターを休息させるが、最悪魂喰いも…?
[備考]
※マスター同様。




[地域備考]
※アッシュフォード学園の購買及び食堂の食品が売り切れました。搬入があるまで営業は再開しないでしょう。
※暁美ほむらのクラス名簿にエレン・イェーガー転入と付箋が貼ってありましたが貼り違いの可能性も在ります。


744 : ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 03:41:55 OJ.g3lRE0
投下完了です。
エレンにウォルター、聖杯戦争らしい夜と夢を対称的に表す面白い話でした
彼らの動きも含め学園を書いていると本当に混沌としてきているのが分かりますよ、ええ…!


745 : 名無しさん :2015/01/02(金) 04:27:38 RTQrIdDQ0
おお、こちらも投下乙!!
面白い、いやあ思惑と思索がきちんと組まれて交錯してるとこうも面白いのか……!!
みさきちの弥勒を見据えた考察も読みごたえがあるし、状況に対する各々の思いがはっきりわかる
慶次も相変わらず彼らしく強かだけど、それがルキアに疎外感を抱かせる形に…
そして、善吉にもきちんと描写が割かれてるのが良いなあ。FOUが居ないと来たかwからくり風の演出をちゃんと西尾調に落とし込んでる、こういう細かいネタも楽しい
カレン達も動くしアゲハ達も来る。

それぞれのキャラの立ち位置や考えが整理され掘り下げられ、状況は動き、と素晴らしい回でした


746 : ◆A23CJmo9LE :2015/01/02(金) 14:49:45 6CNY32VQ0
失礼、状態表に一部書き忘れがありました。

時間帯は全員午後、場所はA-3アッシュフォード学園
具体的にルキア組が屋上、犬飼組が食堂、善吉およびアゲハ組が敷地内
カレン組のみ校外
リンクの道具にバイク付記、備考にどこへ向っているかは後続の方にお任せしますを追加します


747 : 名無しさん :2015/01/02(金) 18:25:00 V6SxNSTwO
PSYって、学園都市における分類だと、超能力なのかそれ以外なのか。


748 : 名無しさん :2015/01/03(土) 22:01:10 wUfqxvnU0
投下来てたのか!乙です!
すげー、これだけ大人数の動きを、それぞれの思考を交えて書き切るとは…
みさきちの性能と言うか強みがすごくわかりやすい
正直最初見た時はあんまり強くないんじゃというか上手く話に組み込みにくいんじゃないかと思ってたんだけど、この話だけでも応用力と強さがよくわかる。
拠点を得て強いのもキャスターらしいですね
善吉もていとくん失っちゃったけどそうだよなあ、ここで終わる男でもないはずだ
今のところまだ翻弄されっぱなしだけど何とかていとくんの分まで頑張ってほしい
それと、みさきちの質問に対して一人ずつ答えて行くところがそれぞれのキャラの立場を上手く使った状況解説にもなっててすげーと思いました


749 : 名無しさん :2015/01/05(月) 18:44:11 du7y/eKQ0
学生掌握の強さを描くのがすごい上手いな
相性もあるんだろうけど強烈だわ
全員が考えて動いてるのがわかるのもすげー


750 : 名無しさん :2015/01/17(土) 01:45:33 Id4Oayu60
正直最初は「みさきち弱ぇwwwwこれすぐ脱落だろwww」
とか思っててすいませんでした


751 : ◆BATn1hMhn2 :2015/01/25(日) 17:27:06 Qi1aGSwc0
お久しぶりです
人吉善吉、夜科アゲハ、纒流子を予約します


752 : ◆wd6lXpjSKY :2015/01/25(日) 21:21:29 YBhgkKrA0
予約ありがとうございます。皆様、今年もよろしくお願い致します。

また、大変遅れてしまい申し訳ありませんが未収録登場候補話の収録を行いました。


753 : 名無しさん :2015/01/27(火) 09:09:55 JGh7K3aU0
おお予約来てた!楽しみに待ちます
SS収録も乙です


754 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/01(日) 22:58:45 CrqEr1sE0
うわ、予約日勘違いしてましたすみません!
延長をお願いします


755 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:08:17 wHv01WEs0
遅くなってしまいすみません。今から投下します。


756 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:08:45 wHv01WEs0
「どうだ纏、紅月たちには追いつけそうか? ……ちくしょう、あのバイクは結構気に入ってたのによぉ」
「いーや、見失っちまった……街中を本気で走り回りゃあ見つけられるかもしれねーけど、元々あたしたちのモンでもねえだろ。
 どうせあいつらとはまた会うことになるだろうしよ、それまで貸しときゃいいじゃねえか」
「それもそうだな。んじゃ一度こっちに戻ってきてくれ。纏も含めて三人で話したいことがある」

己のサーヴァントである纏流子との念話を終えた夜科アゲハは、彼の背後で立ちすくんでいるクラスメイト――人吉善吉のほうへと向き直った。
善吉の表情から察することが出来る彼の感情は、怒りと悔しさだった。
善吉が強く握りしめた拳が震えていることからも、それは間違いないだろう。
ならば、その感情の理由はなんだろうか。アゲハはその理由に薄々感づいている。
善吉は上空から落下してきた。軌道と勢いから予想すると、おそらく屋上から落ちてきたのだろう。
常識的に考えれば一般的な男子高校生が屋上から落下することなど、そうそうないことだ。

だが、もしも人吉善吉が一般的な男子高校生ではないとしたら?
そう、例えば善吉がアゲハと同様に聖杯戦争に参加しているマスターだとするなら、あり得ない話ではない。
先ほど屋上から再び聞こえてきた戦闘音――善吉がそれに巻き込まれていたとすれば、辻褄は合う。

しかし、善吉が聖杯戦争のマスターだとすれば、彼には足りないものがある。
マスターを守護し、聖杯を勝ち取る力となる従者――サーヴァントが、ここにはいない。
霊体化し、魔力の消費を抑えるというサーヴァント運用の基本に従って姿を消しているのかとも考えたが、屋上から落下するような激しい戦闘に巻き込まれていながら姿を現していないのは不自然極まりない。

(それに、人吉の憔悴したこの様子――もしかしたら天戯弥勒が言っていた最初の脱落者っていうのは――)

「ようアゲハ、待たせたな。で、そいつは……お前の知り合いってことでいいんだな?」

アゲハの思考は流子の到着によって打ち切られる。
流子の問いに頷きを返したアゲハは、そのまま善吉の紹介をする。

「こいつは人吉善吉。俺のクラスメイトで――」
「そいつがお前のサーヴァントか……そうか、お前『も』マスターだったんだな、アゲハ」

ぽつりと善吉がこぼした言葉を聞いて、アゲハも流子も固まった。
今、流子は実体化しており、誰の目にも見える存在になっている。
だが、一目見ただけで流子がサーヴァントで、アゲハがマスターであるということまで見抜けるのは、同じく聖杯戦争に与する者以外あり得ない。
善吉は今確かに、お前『も』と言ったのだ。つまり、善吉もまたマスターであるということだ。
流子は即座に己の獲物である片太刀バサミを取り出し戦闘態勢に移行。
周囲にいるはずのサーヴァントの襲撃に備える。
しかし、血気盛んに逸る流子を諫めたのはアゲハだった。

「待ってくれ、纏。……きっともう、人吉はマスターじゃねぇよ」
「あぁ!? どういうことだよアゲハ」

流子が戦闘態勢に入ったというのに未だに己のサーヴァントを呼ばない善吉の姿を見て、アゲハは己の推測が正解だったことを確信した。
先ほどの天戯弥勒の放送で脱落が通達されたアサシンのサーヴァント――恐らくそのマスターこそが、人吉善吉なのだろう。

「……アゲハの言うとおりだ。俺は自分のサーヴァントを殺しちまった――クソッタレのマスターだ」
「自分のサーヴァントを殺した? そりゃいったいどういうことだよ、人吉」

善吉は、自分がサーヴァントを殺すに至った過程を話した。
アサシンとしばらく離れている間に他のキャスターに洗脳されてしまったこと。
与えられた令呪を用い、己のサーヴァントに自害を命じてしまったこと。
今は亡きアサシンの仇を討つためにキャスターを討伐するつもりだが、キャスターによる洗脳の結果、キャスターやアサシンについての情報を思い出せなくなっていること。

「なるほどな。まったく、虫酸が走る話だぜ」

戦闘態勢を解いた流子も話に加わる。
流子は正々堂々とした、真正面からの戦いを好んでいる。
互いが全力を出して闘えるからこそ、その勝敗に意味が生まれるのだと考えている。
だからこそ、善吉から伝え聞くキャスターの戦法は好きになれない。
これが戦争であり、ルール無用のデスマッチだということは理解している。
しかしそれでも、こそこそと卑怯な真似をするキャスターは流子にとって許せない存在だ。


757 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:09:47 wHv01WEs0
「なぁアゲハ、コイツがキャスターを倒したいってんなら手伝ってやればいいじゃねえか。
 話を聞く限りじゃ随分といけ好かないやつみたいだしよ、どちらにしろあたしたちの敵になる可能性も高い。だろ?」

流子の言う通りである。
アゲハたちの目的は聖杯ではなく、天戯弥勒の真意を問い質し、それが悪であるならば天戯弥勒ごと叩きのめすというもの。
しかし天戯弥勒に接触する具体的な方法が見つからないために、聖杯戦争を勝ち抜くことで天戯弥勒に近づこうとしていたのだ。
ならば天戯弥勒だけではなく、他の陣営の動きにも注意を払っておくべきである。

キャスター陣営が早くも戦争を仕掛けてきているのは明らかだ。
いずれ他の陣営と接触し、戦闘になる可能性も高い。
キャスターの持つ洗脳能力と、令呪というシステムの組み合わせは強力だ。
何の対策もしていなければ出会った瞬間にサーヴァントを殺され、一方的な展開になってしまうことだろう。
出来ることならば早期に決着をつけておきたい相手でもある。

だがアゲハは、すぐに頷くことが出来なかった。

「人吉の気持ちもよく分かる。俺だって人吉の立場だったらそうしてただろうしな。
 だけどよ、人吉をこれ以上戦いに巻き込むわけにはいかねぇだろ。
 持ってるだろ、赤いテレホンカード。……それを使えば元の世界に戻れる。
 帰れよ、人吉。お前の世界に……お前の帰りを待ってる人たちのところに」

聖杯戦争は命の奪い合いでもある。今回はアサシンだけが殺され、マスターである善吉は生き延びることが出来た。
だが、この幸運がいつまでも続くとは限らない。この世界にはキャスターの他にも殺し合いを厭わない者が多く存在している。
サーヴァントという戦闘力を持たないマスターが、殺意に満ちた他の陣営を相手にして生き残る可能性は、極めて低いと言わざるを得ない。

アゲハが確認しているだけでもこの学園の周辺にはセイバー、ランサー、キャスターの陣営がいるのだ。
さらに昼休みに起きた一連の騒動は、他のマスターが聞きつければ聖杯戦争に関連したものだとすぐに気付くはず。
情報を得るため、漁夫の利をさらうために学園に近づいてくる陣営は増えるはずだ。
これだけ危険度が高いところに、善吉を置いておくわけにはいかなかった。

しかし、善吉も生半可な覚悟でキャスターの討伐に挑んでいるわけではない。
今はもう名前すら思い出せないアサシン――彼の最期の叫びは、今も善吉の耳に残っている。
彼の無念を晴らすためにも、ここは退けない場面だった。

それに、なにより、善吉にだって聖杯を求めた理由はあるのだから。

「悪いけどよ、アゲハ――俺にだって諦められない理由はあるんだ。
 どうやらお前は俺なんかよりここの事情に詳しいみたいだな。
 そういや、一番最初に天戯弥勒ってやつに集められたとき、あいつの名前を叫んでたのはお前だった。
 どこかで聞いたことがある声だとは思ってたんだ――ああ、そうか、お前は物語の始まり――オープニングから誰よりも目立ってた『主人公』ってわけか。
 それに比べりゃ俺は一番最初の脱落者、サブキャラの中でも一番地味なポジションだろうよ。
 バトルロワイアルなら天堂真弓、仮面ライダー龍騎ならシザースだ。
 だけどよ、だけど……カッ、こんなの俺というより球磨川先輩が言いそうなことだけどな――」

「『主人公』じゃなくたって、『主役』じゃなくたって。
 『普通(ノーマル)』にだって格好つけたいときはある、やらなきゃいけないときがある!
 俺の帰りを待ってる奴らに、おめおめと泣き顔晒すわけにはいかねぇだろうがよ!
 ちっぽけな意地とプライドまで捨てちまうわけにはいかねえんだ。
 だって俺は……俺は、めだかちゃんに見合う男にならなきゃいけないんだから」

善吉の願いは一貫している。
この聖杯戦争に呼ばれる以前、箱庭学園に入学する以前、そう、黒神めだかに初めて出会ったあの日からずっと。
善吉は、彼女の背中を追い続けてきた。彼女の助けになろうと生きてきた。

そして、少しだけ彼女よりも前を進んでみたいと思ったのだ。黒神めだかという存在を引っ張ってやりたくなったのだ。
彼女が道を間違えそうなら、自分が正しい道まで抱き戻してやる。
そのための聖杯だ。そのための聖杯戦争だ。だが――その道は、絶たれようとしている。


758 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:10:56 wHv01WEs0
「分かってるのか。どちらにしろ、サーヴァントを失ったお前は六時間以内に元の世界に帰る必要があるんだぞ。
 キャスターに拘れば、失う必要のない命まで落とすかもしれないんだぜ」

自らのサーヴァントを失ったマスターは、六時間以内に赤いテレホンカードを用いて元の世界に帰還しなければならない。
そうしない場合、マスターの身体は灰へと変わり、聖杯へ至る道の礎となるのだ。
善吉がサーヴァントを失ってから、既に一時間弱が過ぎている。善吉に残された時間は五時間ほど。
たったそれだけの短い時間にキャスターを討伐し、公衆電話に赤いテレホンカードを挿し込み元の世界へ帰る。
一度は完膚無きまでに敗北した相手だ。相手の圧倒的な能力の全容さえ掴めておらず、具体的な対抗策はまったく思い浮かんでいない。
そんな相手に再び挑むというだけで自殺行為だというのに、時間制限まで設けられている。絶望という二字が相応しい状況だ。

今すぐに帰るなら天国。なおも残るというのなら地獄。
百人に選ばせても誰一人として後者を選ぶことはないだろう。
だが――善吉は、後者を選ぶと即答する人物を知っている。
世界に住む七十億人のうち、六十九億九千九百九十九万九千九百九十九人が天国を望んだとしても、たった一人だけ地獄を選ぶ人間がいる。
それが黒神めだかだ。だから善吉は、地獄を選ぶ二人目になる。

「御忠告ありがたいけどよ、俺はもう決めたんだ。誰が何と言おうと、これだけは曲げられねぇな」
「そうか――なら、しょうがねぇな」

善吉の固い意志を前に、アゲハは嘆息した。どうやら人吉善吉は相当な頑固者なようだ。
いくらアゲハが言葉を重ねたところで、善吉の決心が揺らぐことはないだろう。
だから――

「――暴王(メルゼズ)」

アゲハは、言葉ではなく力で善吉をねじ伏せることを選んだ。
アゲハの周囲にPSIの力が変化した暴力の渦が発生し、善吉へと照準を合わせる。
宙に浮かぶ黒球は、一つ一つは野球ボールほどの大きさしかない。
だがその球体に秘められた力は触れたもの全てを喰い荒らす嵐に喩えられるほど強大である。
特殊な防御策を持たない善吉のような一般人が暴王の顎に喰われれば無事ではすまないどころか、命すら落としかねない。

「おい、アゲハ! 何のつもりだよ!」
「黙ってろ纏。言って分からない奴にはこうするしかねぇだろ。
 安心しろ、命までは取らねーよ。だが手足の一本や二本は覚悟してもらおうか、人吉」

流子の制止を無視して、アゲハは善吉を睨みつける。
元々アゲハは武闘派だ。言葉を用いての説得は得意ではない。
それよりも、拳という共通言語のほうがよほど分かりやすいと考えている。

「それにしたってそいつはやりすぎだろうが!」
「いいや、大丈夫だぜサーヴァントさん。どうやらアゲハは、そいつを俺にブチ当てる気なんてさらさらなさそうだからな」
「ただの威嚇だと思ってるのか? 俺は本気だぞ」
「本気じゃないさ。生憎だが、お前ほどじゃないにしろ俺にも能力があってな――お前のことはよーく『見えてる』ぜ、アゲハ」

『欲視力(パラサイトシーイング)』――それが善吉が持つ異能の力だ。
善吉はこの能力によって、他人の視界を見ることが出来る。
目は口ほどに物を言うという言葉の通り、人の目には多くの情報が詰まっている。
視線や視界は、思考と密接に関連している。人の視界を覗き見ることによって、人の思考を推測、予測することも可能になるのだ。

善吉はアゲハの視界を覗いた。そこからは善吉を傷つけようとする意志はまったく見受けられなかった。
つまりアゲハが暴王を見せつけたのは、善吉の決心を挫くためのブラフに他ならない。

「カッ、そんな見え透いた嘘で俺を騙せると思ってたのかよ?
 こっちは毎日のように大嘘つきの先輩と、何考えてるのか分からない親友と、嘘か本気か分からない大言壮語を吐く幼なじみに付き合わされてるんだ。
 いまさらお前のハッタリなんて効くわけないだろ」


759 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:11:28 wHv01WEs0
これまでキャスターや朽木ルキア、ランサーに好き放題やられてきて溜まっていた鬱憤を、善吉はここぞとばかりに吐き出した。
やれアゲハは単純でやることが分かりやすいだの、目つきが悪すぎて不良にしか見えなかったぜだのとぺらぺらとまくしたてる。

「お前がトイレに行ったきり帰ってこないからよっぽどデカいのが溜まってたのか心配だったんだぜ!」

あまりに気持ちよく調子よくしゃべり散らしていた善吉は、アゲハの変化を見逃してしまっていた。
――夜科アゲハは、キレやすい現代の若者なのだ。

「……暴王の流星(メルゼズ・ランス)ッ!」

善吉に向かって一直線に放たれた黒球の矢は、善吉のわずかに横を掠めるだけにとどまった。
しかし善吉が反射的に身をよじっていなければ、間違いなく直撃していたことだろう。

「えっ、ちょっ、洒落にならねぇだろそれはっ!?」
「”屋上”へ行こうぜ……久しぶりに”キレ”ちまったよ……」
「俺はさっきそこから落ちてきたばっかりなんだけど……おわぁっ!」

暴王の流星の二撃目もまた、善吉を狙っていた。
しかし欲視力によって事前に攻撃を察知していた善吉は、余裕を持って回避をこなす。

「ったく……! アゲハぁ! ケンカはいいが、もうそれを使うのはやめとけよ!
 ――男の喧嘩はステゴロってのが決まりだろ!」
「よっしゃ! こいつは俺と人吉の喧嘩だからな! お前はそこで黙って見とけ!」

流子ももはやアゲハと善吉の争いを止めるつもりはなさそうだ。
これは戦闘ではなく喧嘩だ。喧嘩慣れしたアゲハならこれにPYI能力を使うようなやり過ぎな真似はしないだろう。
一度キレてしまったなら、さっさと発散させてしまったほうがいい。
特に今回は、アゲハをキレさせた善吉にも責任がある。

「……しっかし男ってのは、どうしてこう単純なのかねぇ」
「流子を見ていると女もそう変わらないように見えるがな」
「あたしのこたぁいいだろ別に! ……って鮮血、起きてたのかよ」
「うむ。私がいると場が混乱すると思って黙っていた」
「はぁ……そうかい」
「それとだな、流子。男は、単純なだけではない」
「ん?」
「男は胸の内に様々なものを抱えているものだ。単純なようでいて、その奥は複雑。
 ……あの二人にも、溜めこんでいるものがあるのだろうよ」


760 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:12:17 wHv01WEs0
鮮血の視線の先で、アゲハと善吉は拳を交えていた。二人の攻防はほぼ互角。
アゲハの戦闘スタイルは喧嘩殺法。年がら年中喧嘩にあけくれ、我流で鍛え上げたもの。
それに加えPYI能力を肉体強化に用いることで身体能力は大きく底上げされている。
勿論暴王の破壊力とは比べるまでもないが、一撃は重く、直撃すれば一発でダウンしかねない。
それだけの威力を秘めた拳が、目にも止まらぬほどの拳速で迫ってくるのだ。

対する善吉は、日々の鍛錬は欠かしていないものの身体能力は一般人の域を大きくは超えず、単純な力比べならアゲハには劣っている。
しかし善吉は正規の格闘術を多く学び、自分のものにしている。一つ一つの技のキレならアゲハを圧倒していた。
欲視力による先読みもあり、パワーとスピードに勝るアゲハに対して、手数と初動の速さで対抗している。

「なかなかやるじゃねぇか!」
「お前もな!」

己が非力であるということを自覚している善吉が、少しでも強くなるために選んだのがサバットという格闘技だ。
拳撃の三倍の威力を持つと言われている蹴撃をメインに立ち回ることで、パワーの差を埋めることが可能だ。
善吉の繰り出した蹴りが、アゲハの身体を捉えた。足先から返ってくる感触が、善吉に直撃を知らせる。
だが――アゲハは、善吉の蹴りを物ともせずに猪突。
PYIにより防御力を上げているアゲハは、生半可な攻撃をいくら当てられたところで止まらない。

「そんなもんかよ人吉ィ! 力もない……サーヴァントもいない!
 それで戦おうだなんて自殺行為だってことは自分でも分かってるんじゃねぇのか!?」
「そんなもん、テメェに今さら言われなくても分かってるさ!
 だけどよ……理屈じゃどうしようもねぇことがあるだろうが!
 だいたい何なんだよ、テメェのその上から目線は!
 俺の心配してくれるのはありがたいけどやりすぎだっつーの! お前は俺の母さんか!」
「きもちわりぃこと言うなよ! 仮に俺に息子がいたとしても、そんなクソだせぇファッションセンスには絶対しねえからな!」
「なっ……! このデビルかっけぇセンスがわからねぇのかよ!」
「わからねぇよ!」

アゲハの拳が宙を切り裂いた。欲視力によってタイミングを読んでいた善吉は身を翻してこれを回避。
しかしアゲハの攻撃は、そこで終わりではなかった。
殴りつける勢いをそのまま回転の力に変え、後ろ回し蹴りを放つ。
たとえ欲視力で先が見えていたとしても、善吉の反応速度を超える攻撃がくれば回避することは出来ない――アゲハの蹴りは、善吉の脇腹に突き刺さった。

「ぐぅっ……!」

痛みに耐えかね、善吉は呼吸を乱した。結果的に生じた隙を見逃さずアゲハは追撃を繰り出す。
顔面への右フック。腹部への膝蹴り。痛烈な二撃を受けた善吉はその場へ崩れ落ちる。

「終わりだな」
「終わりじゃ……ねぇよ……ッ!」
「『終わり』なんだよ。もし俺が他の陣営のサーヴァントだったら、今のでお前は死んでたんだぞ。
 ……後の始末は俺たちに任せとけ。
 お前は元々、天戯弥勒や聖杯とは何の関係もない人間なんだろ。ここで死ぬような危険に晒させるわけには……」
「そこまで聞いちまったら、もう無関係じゃいられねえだろうがよ……!
 よぉアゲハ。お前は元の世界でも、たった一人で天戯弥勒と戦ってたのか? 違うだろ?
 俺にはよーく『見えてる』んだ――お前は誰かと一緒に戦って、強くなってきた奴なんだろう?」

善吉の指摘は当たっている。夜科アゲハはかつての天戯弥勒との戦いを多くの仲間と共に乗り越えてきた。
だが――今ここに、アゲハの仲間たちは誰一人として呼ばれていない。
それがアゲハの精神を追い込んでいた。ここでアゲハは、一人で戦わなければいけないのだと。
この聖杯戦争は、アゲハが一人で天戯弥勒と戦う物語なのだと、思いこんでしまっていた。


761 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:12:41 wHv01WEs0
だからこそ善吉がこの世界に残ることに必要以上に拒否反応を示してしまったのだ。
善吉がここに残ると決めたのならばアゲハにそれを否定する権利などない――そのことを心の奥では知っていながらも、認めることが出来なかった。

「……無関係じゃねぇか。俺とお前は今日会ったばかりなんだぞ! 赤の他人もいいところだ!」

かつての天戯弥勒との戦いでは、多くの人たちが傷ついていった。
アゲハの仲間も、敵も、その他大勢の民間人たちも、傷つき、そして時には命を落としていった。
アゲハはもう、誰かが傷つくところを見たくはなかった。
自分はいくら傷ついてもかまわない。
だが、他の誰かが傷つけられるのは自分が傷つけられる以上に痛く、苦しかった。

「全部……終わったんだと思ってた! もう誰も傷つく必要なんてないんだと思った!
 だけどまだ、終わってなかったんだ。だったらよ……俺がやるしかないだろうが」

「……俺はな、そうやって一人でなんでもやろうとしちまう人間をよーく知ってるぜ。
 そいつは本当に一人でなんでも出来たんだ。他の誰かに手伝わせるよりそいつが一人でやるほうが間違いがなかった。正しかった。
 だけどよ、その正しさは……あいつを縛りつける鎖になった。俺はずっとあいつを見てきたっていうのに、そのことにずっと気付かなかったんだ。
 だから……アゲハ。お前のことも、もう見逃せねぇよ。無関係だなんて言うんじゃねーよ。
 隣の席だろ! 社会の教科書見せてやっただろ! それじゃ足りねーのかよ!」

アゲハは何も言い返せなかった。
善吉の言っていることは間違っていない――認めるしかなかった。
諦めたように、アゲハは笑みを浮かべた。

「カッ、ようやく自分の頭の固さが分かったかよ、アゲハ」
「どうやら人吉のほうが俺より頑固者だったみたいだな」

倒れ込んだままの善吉に、アゲハが手を差し伸べる。
善吉がそれを握り返し、アゲハが引っ張り上げる。
その様子をじっと見ていた流子は一言呟いた。

「……やっぱり男ってのは、単純な生き物じゃねーか」

そう言う流子の顔にも笑みがこぼれていたのは言うまでもない。

 ◆

そして三人は頭を寄せていた。キャスターに対抗する策を考えるためだ。
誰が言い出したのか定かではないが、有力な案が一つ浮かんでいる。

「要するに、キャスターってことは魔術なんだろ? なら対魔力を持っている流子には効果が薄いんじゃねーか?」
「となると、危ないのはアゲハと善吉ってことだな。特に危ないのはアゲハだ。
 アゲハが操られて令呪を使えばあたしまで好き勝手にやられちまう」
「ならよ……」

提案されたのはコンビシャッフル。
キャスターと出会ったときにもっとも被害の拡大が予想されるアゲハは直接キャスター討伐には出向かず、善吉と流子の二人がキャスターを追う――というものだ。
これならばキャスターの能力の被害は最小限に抑えられるはず。
仮に善吉が操られることになっても、サーヴァントである流子ならば問題なく鎮圧可能だ。
キャスターとセイバーが直接対峙する状況を作れるなら、対魔力スキルを有するセイバーが圧倒的に有利。

「そんなこそこそとした戦法しか使わないやつなら、あたしが真っ正面から叩き斬ってやるさ」
「人吉と流子がキャスターと戦っている間に、俺は周囲の探索ついでに公衆電話を探しておこう。
 どうやら学校の中には公衆電話はないみたいだからな。善吉の気が済んだらすぐに帰れるように準備しといてやるよ」
「そいつはありがたいぜ。俺に残された時間は――あと、四時間ってところか」

そして四時間後には、学園の下校時刻になる。キャスターのマスターの正体も不明だが、おそらく学園の関係者――生徒か教師だろう。
下校時刻までは学園の中にいる可能性が高いが、それを過ぎてしまえば所在は分からなくなってしまう。
タイムリミットは四時間後。
学園に巣食うキャスターを討伐せよ――!


762 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:12:58 wHv01WEs0
【C-2/アッシュフォード学園敷地内/1日目 午後】

【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]健康
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服、男爵風のおヒゲ(油性)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:キャスターを討伐し、アサシンの仇を取る
1.流子と共にキャスターを捜索、討伐する

[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
→加えて食蜂操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。

※サーヴァント消失を確認(一日目午前)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。

【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.学園の周辺を探索(公衆電話を優先)
2.何かあれば流子と念話で連絡
[備考]
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。

【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲
[装備]片太刀バサミ
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.善吉と共にキャスターを捜索、討伐する
2.何かあればアゲハと念話で連絡
[備考]
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。


763 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/07(土) 00:13:30 wHv01WEs0
以上で投下終了です。
誤字脱字、矛盾点など見つけられましたら御指摘頂けると幸いです。


764 : 名無しさん :2015/02/07(土) 02:08:21 WJM2/23g0
乙です
熱い男同士の喧嘩は青春らしいなあ
アゲハの服のセンスも良くはない……w
キャスター討伐ミッションは燃える!
でもみさきちはアゲハに目を付けていたはずだし……先が楽しみ


765 : 名無しさん :2015/02/07(土) 03:27:19 aukRYpH20
おお、投下来てたー!乙です!
善吉が魅せるなあ、正直ていとくん殺っちゃったらあとは転落の一途だと思ってたが…この意地の張りかた、実に善吉らしい!
そしてアゲハの対応とぶつかり合いもすごく熱いです。すごく少年漫画してる。
あと個人的には、鮮血が男の喧嘩に一言添えてくれたのも嬉しかったw


766 : 名無しさん :2015/02/07(土) 17:11:48 JSI3sBTQ0
乙です!
アゲハの判断の速さとシビアさ、それでいて併せ持ってる熱さが実に良い感じ!
そして明らかに非合理的で不利な状況下でも意地を通したい善吉のありようもグッとくる
流子ちゃん鮮血を加えたこの「トリオ」がなんか好きになってきました


767 : ◆A23CJmo9LE :2015/02/07(土) 22:46:46 rROpU65g0
投下乙です!
学園で男二人殴り合い、何だか青春
横でセーラー服の女の子があきれ返っているのはなんともドラマ仕立てでいいですね
アゲハも善吉も自分らしくあろうとする、男の子しててぐっときました

気になるのはタイトルがないのと、善吉の落書きがスルーされてることでしょうか
シリアスな空気で突っ込みいれにくいのかもしれませんけど、ヒゲ消しちゃってもいいんじゃないでしょうか

天戯弥勒、予約します


768 : ◆wd6lXpjSKY :2015/02/08(日) 01:05:50 BdinkkuM0
投下お疲れ様です!
サーヴァントを失った人吉が腐ること無く、彼なりの意地を見せてかっこいい
情けないまま帰還するよりかは男を見せろ人吉!
アゲハも真っ直ぐだから彼らの衝突は熱くて青春らしいです
組まれた同盟もとい仲間はみんな熱くなりやすいタイプ、真正面から
キャスター討伐に期待、歯止めをかけないと学園が混沌に……お疲れ様でした。


769 : ◆wd6lXpjSKY :2015/02/08(日) 01:08:51 BdinkkuM0
それと、人吉くんのひげは有りでも無しでも構わないので◆BATn1hMhn2氏の判断に任せます。

さやかちゃん、不動明、ほむほむ、フェイスレスで予約します


770 : ◆A23CJmo9LE :2015/02/08(日) 18:48:21 37Y5Bi6I0
ちょっと予定が変わってしまったので天戯弥勒の予約を破棄します


771 : ◆lb.YEGOV.. :2015/02/09(月) 00:31:06 LIkHxjKo0
投下お疲れさまです!
まさに少年漫画の主人公同士な王道展開。
学校周りは今後も混沌として行く様相ですが、その学園を実質支配しているキャスター組や、敵対関係寄りのセイバー組への対応など今後も目が離せないチームですね。

感想ついでに、モリガン・タダノ・刑兆・白ひげで予約します


772 : ◆BATn1hMhn2 :2015/02/09(月) 23:41:44 8i2.b9hs0
皆さま感想ありがとうございます
励みになります

御指摘頂いた点についてですが、タイトルはまとめwikiに収録する際につけておきます
善吉の顔の落書きは、今回はそのまま残しておくことにします
特にこだわりがあって残すわけではないので、次回以降書かれる方が気になるならしれっと消してもらっても全然構わないですw

現在入っている予約も大変楽しみです
執筆頑張ってください!


773 : ◆wd6lXpjSKY :2015/02/14(土) 14:04:58 IVpx/A/A0
すいません、予約延長します


774 : ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:21:16 D3HvbnkM0
投下します


775 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:22:14 D3HvbnkM0









    例えどのような選択をしようと歯車は止まらない。









「遊園地……で、いいのよね?」


美樹さやかは入り口を目の前に声を漏らす。
それは確認、自分が今直面している現実を受け入れさせるように。
此処は古い土地、かつては大衆の娯楽だった跡地、今は狂気を覗かせる遊園地。
遊具の類は一切働いておらず所々に錆が目立っており、人の手が加えられていない事が解る。
しかし狂気を感じるには今一つ、問題は園内を徘徊する異形の存在。

「人形……か」

バーサーカーが言うように、あちらこちらと人形が歩き回っている。
カラクリ等一切不明ではあるが、接触を図ってきた存在も空を飛ぶ人形だった。
人形が導く先には同種が蔓延る彼らにとっての楽園。笑えない冗談だ。
別段人形に恨みなどないが、こうも当たり前のように徘徊している光景を見ると精神に来るものがある。
お伽の国に紛れ込む感覚とはコレなのか、そう解釈すれば笑みの一つや二つ零れるのだが。

「此処に居るのよね、あの女が」

「あの女って言うと身分証明書の? でしたらソイツは正解《ビンゴ》ですぜ」

美樹さやかの選択、それは人形が案内した少女との接触。
交戦したバーサーカーのマスターを仕留める。
現れたアーチャーとの接触。
彼女が直面する総ての現象を天秤に放り込み選ばれた道、それが暁美ほむらとの接触だ。

自動人形の言葉とグリーフシードだけでは魔法少女の特定は不可能だった。
ケニスと名乗る人形に問い詰めた所彼曰く「おっと写真を忘れていました」らしい。
取り出された物は美樹さやかもよく知る学園の身分証明書、其処に写るは暁美ほむらだった。

始まりの存在。
暁美ほむらが鹿目まどかと出会わなければ。

始まりの存在。
暁美ほむらが鹿目まどかの事を想わなければ。

始まりの存在。
暁美ほむらが鹿目まどかの事を諦められたならば

始まりの存在。
暁美ほむらが鹿目まどかの存在に因われなければ。

始まりの存在。
悪魔が女神を塗り替えなければ。

暁美ほむらの存在は美樹さやかにとって特別になってしまった。
言ってしまえば彼女が存在したからこそ美樹さやかはこの場に居る。
聖杯戦争に身を投げたのも原因と始まりは暁美ほむらに終着するのだ。

「もう一度聞くわ――此処に暁美ほむらが」

「居るって言っているじゃありませんか〜」

ならば言葉は不要、鎧を纏い、マントを靡かせ、剣を握る。
暁美ほむらの伝言どおりならば救いたい存在が居るらしい。
彼女にとって救済すべき存在は鹿目まどか以外に有り得ない。


776 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:23:31 D3HvbnkM0


鹿目まどかは暁美ほむらの世界、謂わば運命の中心に存在している。
その彼女を救いたい、つまり危険が迫っていると予測する。

ならば、ならばだ。

神が愚民に救いを求めるとは何事か、この世界はお前が塗り替えたお前だけの楽園ではないのか。
鹿目まどかが作り上げた平和な世界をお前は塗り潰した、彼女を楽園から追放し地獄に閉じ込めた。
彼女は神に戻る事もなければ楽園に入国する事も出来ない、それ程までに鎖で絡めていたと言うのに。

「アンタが何であたしに協力しようとしてるか何て解らない」

お前は友だ、お前は仲間だ、お前は気に喰わない奴だ、お前は魔法少女だ、お前は悪魔だ。
それでも鹿目まどかを想う気持ちは本物だ。
しかしその鹿目まどかに危険が迫っている、ならばだ。

「話を聞いてやる、まどかに危険が迫っているなら一発ぶん殴る。そうじゃなくても一発ぶん殴る」

殴れば解決するような問題ではないがそれは本人の問題だ。
スッキリすればいい、そしてその後に考えればいい。
世界の神となった暁美ほむらに対向するためにインキュベーターの手を借りて参戦した聖杯戦争。
その聖杯戦争に暁美ほむらが参加している――彼女はこの期に及んで何を願うのか。

「一人で盛り上がり過ぎだ、写真の女と関係があるのは解るが死に急ぐなよ」

「ありがとっ、でも約束は出来ない……かな。あはは」

暁美ほむらの存在は特別過ぎた。
美樹さやかにとって、総ての魔法少女にとって。
円環の理の使いとして美樹さやかの剣は悪魔を斬り裂く断罪の一振りとなるだろう。

「約束は出来ない……知り合いならば同盟を組む事も視野に入れるべきだ。
 だがその可能性は薄い、と」

「そうですぜ、マスターの誘いを断――へへ、口が出過ぎやした。
 反省しますんでその剣を引っ込めてくださいよ〜」

「ちょっと脅かしただけ。此処まで案内してくれたのは感謝してる、ありがとうね。
 でも、あたし達の関係を。魔法少女の生き様? って言えばいいのかな。
 それを知らないお人形が出過ぎた口を叩かないで、ってこと」

一言では終わらない。
暁美ほむらと美樹さやかが出会えば穏やかに終わらない。
状況も関係も因縁も運命も知らないでヘラヘラと口を動かす自動人形が許せなかったのだ。
美樹さやかは無言で剣先をケニスの喉元へ突き立て発言を抑制する。
しかしそれは脅し以外の何にでもなく、少し表情を緩めながら剣を下げた。
暁美ほむら、もしくはそのサーヴァントによって命令された使い魔だが案内役を果たしくれたのは事実。
変な話、彼以外が案内役を任命されなかった場合、この状況は発生していない可能性もあるのだ。
……そこまでいけば妄想も大概か。美樹さやかは自分で自分を笑う。

「じゃあ案内役御苦労様、えっとケニス?
 此処から先はあたし達で行くから……場所? まぁ何とかなるって!」

この先の案内は不要。
敵の根城だ、敵に従えば進む先に玉座や宝箱が在るとは思えない。
行き着く先は地獄や大地獄。体験したことのないこの世の毒を掻き集めた吐溜貯蔵池か。
とにかく貴方は必要ない。更に言葉を付けたし人形に役目の終了を促した。

「へい……へい。
 まぁマスターのご友人とあればその命令に背くワケにもいかないですね。
 ならこのケニス、お役御免! ってところですかね〜。
 創造主様に何を言われるかは解らないですがお客様の命で退任いたしやす」

何か考え事をするように無言になった後、一言では終わらない言葉を紡ぐ人形。
一人で納得し終えると彼は飛びだって行った。真意は不明である。
帰れと言ったのは美樹さやかであり、結果としては当然なのだが話が進み過ぎた。
強く発言した自覚は在る。敵の根城に赴く事から早めに魔法少女にも変身していた。
バーサーカーも霊体化させることなく、現界させ戦闘の体制は十分だった。
だが人形は立ち去った。苦労することなく事を終えたのが、どうにも腑に落ちない。

暁美ほむらのことを考えるとあの女が簡単に自分達を放置するとは思えない。
おちょくるように、脅すように、馬鹿にするように、喧嘩を売るように……何かしら先手を撃ってくるはず。
ならば彼女の下僕の案内に従ってはその行動自体が罠の可能性もあるのだ。


777 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:24:54 D3HvbnkM0


「運んでくれるって言ったくれたのに断ったのは申し訳ないかな?」

「アレに手を貸してもらう必要もない……結局バイクを回収したしな」

ケニスは空を飛べる人形であった。
接触を図ってきた時も空から来訪し、美樹さやかが向かう決意をした時も。
【なら運んであげるのも構わないですぜ】と言い放った。
流石に初対面の、しかも人形、それも暁美ほむらの元からやって来たのだ。
心を許すことは出来ず公園でバイクを回収し地上から彼を追い、此処まで来た。
結果、時間が掛ってしまい空は若干紅に染まり始め、夕方寸前にまて時計の針は進んでいた。

「あははー……色々とごめんね。でも、あいつは特別になっちゃったから」

「それは解った。
 当事者ではない俺が口を出すのも無粋だが……一方通行な思考で判断してほしくない」

「ありがとう。あいつはあたしの仲間で、友達で。
 あたしも知らない間にたくさん迷惑を掛けてたみたいなんだ――でも」

もう何度目になるかも解らない。
暁美ほむらは特別なんだ、だってあいつは。


「悪魔になっちゃったんだ」


   ◆  ◆  ◆


『遂に暁美ほむらとフェイスレスは他者の接触を行います』


『舞台に上がる役者が増え物語は加速を見せることになるでしょう』


『魔法少女の出会いは演目に何をもたらすのか……それは誰にも解りません』


『この物語に決められた筋書きは無く、脚本を彩るのは独りではない故に』


『役者、ドラマを演出する役者達の輝きを御覧ください』


『舞台は役者だけでは成り立ちません――なにせ観客が必要ですから』


   ◆  ◆  ◆


歩く、ひたすらに。
園内の遊具は何一つ動いていない――ワケではなかった。
人形が徘徊し彼らが動かしている遊具がチラホラと散見される。
客は誰一人としていなく、己の心を満たしているのだろうか。
そもそも人形に心など存在するのか……人形にだって心はあるだろう。
そう思いながら美樹さやかは己の周囲に展開する狂気に抗っていた。


778 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:26:23 D3HvbnkM0

園内で一際目立った遊具はメリーゴーランドである。
いやメリーゴーランドではない。
メリーゴーランドの人形なのだ。身体が下にあり上にメリーゴーランドがある。
文字にすると伝わり難いかも知れないが美樹さやかの目の前には狂気のメリーゴーランドが存在していた。


「人間だ」

「人間がいるぞ」

「しろがねじゃあねえよなぁ?」

「だったら仕返しだ、ギィの野郎に爆破された恨みは忘れねぇ」

「ただの人間でも、あの悪魔の代りに殺してやろうぜ」

「待て待て、あれは創造主様とそのマスターのお客さんと聞いたぜ」

「それはやめよう」

「俺達が殺されちまう〜」


その周りを彷徨く人形がこちらを見ながら好き勝手に言葉を飛ばしている。
その内容は穏やかではなく、敵の根城らしく物騒な物言いであった。

「……俺も戦闘態勢になった方がいいか?」

「いや、バーサーカーはまだいいよ。さっきの戦いのダメージだってあるし」

バーサーカー同士の激突は戦闘が終わり大分時が経過したが完全回復に至っていない。
自動人形達はサーヴァントには到底及ばないが少なからず魔力を感じる。
個体差があるようで例えばそこら辺にうじゃうじゃ居る人形よりも後ろに在るメリーゴーランドの方が魔力は高い。
数が数であるため、此処で戦闘を行っては無駄な魔力消費となり暁美ほむらのサーヴァントと対峙する時に悪影響を及ぼすだろう。
無論暁美ほむらと交戦することになれば、問答無用でこの自動人形を総て破壊しなければならないのだが。

「無視してこ? 後回し後回し」

人形達も交戦の意識は無く、ならば相手にする必要もない。
優先すべきは暁美ほむら。
人形と遊んでいる時間はない。

 
   ◆  ◆  ◆


「へぇ……参加者は十四組なんだね。マスターは嬉しい?」

「その問に答える必要性が感じられないのだけど。
 ……街の広さから考えると思ったよりも少ないと言ったところかしら」

「じゃあ嬉しいんだね。なら笑顔、スマイルしようよ!
 笑えないなら人形に芸をやらせてあげようかい?
 実は芸に向いている滑稽な旧式が四体程いるしプレゼントしようかい?」


美樹さやかが遊園地内に踏み入る少し前の会話。
天戯弥勒が行った突然のコンタクトを受けた直後である。
暁美ほむらが言うように参加者が予想よりも少ないのは嬉しい事実だ。
しかしこの主従、仲が悪く普通の会話もままならず険悪な雰囲気になってしまっている。


779 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:27:18 D3HvbnkM0

キャスターの言葉に反応せず無言でモニターを見つめる暁美ほむら。
美樹さやかがサーヴァントと共に園内へ踏み込む姿を確認していた。

(……?)

魔法少女に変身した美樹さやかに一つの違和感を感じる。
とても些細な事だが髪飾りが普段と違う――別段気にすることでもないが。
暁美ほむらが聖杯戦争に参加した時の時間軸で、美樹さやかは死んでいる。
此処に居る美樹さやかはどの時間軸から参戦しているかは彼女にとって不明。
見慣れない髪飾りのことを考えるともしや経験したことのない時間軸から来ているのかもしれない。

天戯弥勒は時間軸を超えて魔法少女を集めたのか、ならば彼も魔法に近い何かの力を持っているのか。
考えても答えは出ないがやはりと言うべきか。この聖杯戦争には不確定要素が多過ぎるようだ。

「私が彼女を此処へ連れてくるわ。だからキャスターは此処で待機……命令よ」

美樹さやかはこちらの居場所を知らないため辿り着くにはそれなりに時間が掛かるだろう。
ケニスの案内を受ければよかったものの……相変わらず手が掛かる存在だ。

それに暁美ほむらにはキャスターよりも先に美樹さやかに接触する必要が在るのだ。
《美樹さやかがどんな存在か解らない以上、確かめなければならないことが在る》

「いいよーん。でもあの女の子のところには一人派遣したけど?」

「貴方の下僕は信用ならないの」

一言言い残し暁美ほむらは扉から外へと足を運ぶ。
一人残されたキャスターはモニターを見つめながら考え事をしているようだ。

(そんなに僕に知られたくないことがあるのかね。
 このピンクの女の子を見た時の反応もそうだけど隠し事大好きみたいだね、マスターは。
 まぁ僕も長い間隠し事をしてたから文句は言えないかもしれないけど。
 さぁ〜て、マスターはあの女の子をどうするつもりなのか)


   ◆  ◆  ◆


「で、アンタは誰? 人形さんだとは思うけど」


足を進めていた美樹さやか組の前に現れた人形は一言で言うなら他の人形とは別格だった。
少々言葉が悪くなるがそこら辺の雑魚共とは桁違いの魔力を感じるのだ。
サーヴァント……と思いたいが。

『サーヴァントに近いが……何かが違う。実力は在るようだが』

『何だろうね。サーヴァントみたいなんだけど……強い人形? ならアイツのサーヴァントはかなり強いのかな』

目の前に現れた人形は男、中世の騎士を連想させる人形だ。
何か此方へ視線を向け、一呼吸を置くと天高らかに声を張り上げた。

「創造主様、第一の――カピタン・グラツィアーノ見参!」


780 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:28:30 D3HvbnkM0



「私は嘗ての聖杯戦争でこの剣を用い数々の英雄を討ち取った!
 前回の聖杯戦争ではあの征服王イスカンダルの軍勢を正面から一人で制圧したのだ!
 王と云えど創造主様に創られた私の前では所詮一介の戦士に過ぎんのだよ!!
 我が剣技はアルトリア王とも並びその一撃は約束された勝利の剣をも超える!
 我が名はカピタン・グラツィアーノ! 創造主様、第一の騎士――カピタン・グラツィアーノ!!」



「これまた……」

「強烈な奴が出て来たな」

カピタン・グラツィアーノと名乗る人形はまるで聖杯戦争を経験したがあると謂わんばかりの主張。
実際の真偽は不明だが一つだけ、一つだけ確信したことが在る。

「今、この人形も言ったよね?」

「ああ、創造主様――この人形もサーヴァントではないらしいな」

カピタン・グラツィアーノは創造主様が創り上げた人形らしい。
ならば魔力で創られた、或いは感じる魔力量から宝具の一種かもしれない。
《第一の騎士》、ならば彼クラスの人形が複数存在することも考えられる。
マスターは暁美ほむらだ。魔法少女の中でもその経験と世界の数から強力な部類だろう。
円環の理の一つと化した美樹さやかを以っても世界の変異を止められなかったのだ。
 
敵の戦力は質、量共に一筋縄ではいかないようだ。

「さぁ我らが創造主様のマスター、そのご友人よ。私の名はカピタン・グラツィアーノ。
 私の後に着いて来て貰いたい。ご案内差し上げましょう」

片手を広げ誘導するカピタン・グラツィアーノ。
この人形に着いて行けば確実に暁美ほむらの元へ辿り着くことが出来るだろう。

「お前の罠――その可能性もあるんじゃないか?」

「ほう」

バーサーカーは簡単に従わない。
狂戦士のクラスと云えどその影響は悪魔限定であり現在の彼は一端の英霊だ。
其処には知性も在れば理性も存在する。
ケニスの時と同様に自動人形の罠の可能性を勘ぐる。

「創造主様がそのような手を使うと思っているのか」

「生憎、その創造主様とやらを知らないんだ」

当然だ。
敵の根城だ。会ったこともない存在を信用する方が難しい。
カピタン・グラツィアーノは剣を取り出す。
その視線は機械仕掛けながら強く敵意を持った物だった。

「何か勘違いをしているな貴様。
 創造主様のマスターの友人だろうが別に手を加えてはならん命令は受けていない。
 その気になればこの場で貴様を倒した後で創造主様の元へ引き摺ることも可能だ」

「……やる気か」

「ちょ、此処は着いて行けばいいでしょ!? ねぇってば!」

カピタン・グラツィアーノ、不動明。
共に退かず激突寸前であり、美樹さやかは不要な交戦を望んでいない。
声を掛けるも両者は既に戦闘態勢に入っており――この戦を止めたのは意外な人物だった。


「命令よ、カピタン・グラツィアーノ。戦闘は許さないわ」


意外も何もこの園内に美樹さやかの他に人間は一人しかいない。
名を暁美ほむら。
カピタン・グラツィアーノの後方に魔法少女姿で現れたのだ。


781 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:29:45 D3HvbnkM0

まるで時が止まったようだ。
聞こえてくる声は暁美ほむらの声で間違いない。
その姿も見慣れた魔法少女の姿、暁美ほむらで間違いない。

見慣れた。

姿。

見慣れた姿なのだ。

思いだせ、美樹さやか。
お前は何故聖杯戦争に参加しているんだ。
円環の理、世界の塗り潰し、愛、悪魔、暁美ほむら。
その総ての原因であり因縁の存在が目の前に居るのだ。
言ってやれ、お前が思っている事を。
叫んでやれ、全世界、全宇宙の魔法少女の代表として。

だが。

何故だ。

見慣れた。

姿。

見慣れた姿では可怪しいのだ。


「まさかアンタ――過去のアンタだって言うの!? また時間をと――」


目の前に居るのは世界の理を塗り潰した悪魔ではない。
その姿は転校生として見滝原にやって来た運命と因果の象徴である孤独な魔法少女だった。

「貴方が何を言っているかは解らないわ――でも」





「お願いがあるの。私の時間を止める魔法は人形の前では黙っていてほしい」

「は、それってどういう意味よ――」





「これはマスター……マスターの命令ならば仕方が無い。
 カピタン・グラツィアーノ、剣を引きこの場を後にしましょう……次はないぞ、サーヴァントよ」

暁美ほむらの命令を受けたカピタン・グラツィアーノは粒子のように姿を消した。
創造主様――キャスターが宝具の維持を辞めたためであるが、美樹さやか達は知らない事実。
姿を消す技を持っているかのように錯覚している。

「久し振りね、美樹さやか」

邪魔者は消えたと謂わんばかりのタイミングで暁美ほむらは言葉を紡ぐ。
消えたと言ってもこの世界はキャスターの監視下に置かれているため邪魔者がいないワケではない。
しかし、少なくとも時間停止がバレる可能性は薄いだろう。

現に美樹さやかとコンタクトを取る瞬間、彼女は時を止めた。
時間停止がキャスターや自動人形に知られてしまうと彼女の切り札が消えてしまう。
厳重に警戒し美樹さやかに忠告、時を動き出させる時には元の場所へ戻っている。

魔法少女同士の念話が行えればいいのが生憎あれはインキュベーターの仲介が必要だ。

「久し振り――アンタは何処の時間軸から来たの?」

「貴方がソレを知っているとは驚いたわ……でも」




「私は今、ワケあってこの能力を隠さないといけないの」

「でも私がアンタに従う必要はあるの?」

「お願いよ――どうやらハズレを引いたらしい」

「ふーん……で、結局アンタは?」

「――ワルプルギスの夜に負けた後よ。何故貴方が私の魔法を知っているかはこの際後回しよ。
 その世界線があったと解釈するわ。そしてまどかのために力を貸して欲しい」

「アンタが協力をねぇ……でも、まどかのためって――」




「この場に来てくれたってことは前向きに話を進めていいのかしら」

(こいつ……本当に昔の転校生……?)


782 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:30:45 D3HvbnkM0

暁美ほむらは時間停止を間に挟めながら美樹さやかと会話を行う。

暁美ほむらから見ればこの美樹さやかは時間停止の魔法を知っているイレギュラー。
平行世界の話も知っていて、彼女が知る限り一番知性の高い美樹さやかだろう。
彼女の記憶が正しければ美樹さやかに時間停止の話をしたことはないはず。
ならば未来から――何にせよ時間停止の件を知っているなら鹿目まどかと彼女の関係も知っているだろう。
まどかの事はなるべく伏せて――キャスターに知られないように。
時間を止めながら会話を成立させるように騙すしかない。

美樹さやかから見ればこの暁美ほむらは悪魔ではないイレギュラー。
円環の理を塗り潰した悪魔ではなく懐かしさを感じさせる魔法少女の姿だ。
何故この姿かは不明だ。騙されている可能性もある。
だがこの空間に彼女の使い魔らしき存在は感じられず、魔力も昔の物だ。
ならば過去から――何にせよこの暁美ほむらは美樹さやかが止めるべき存在とは違うらしい。
その彼女はどうやらサーヴァントと馬があっていないらしい。何とも暁美ほむららしいと言えばそれまでだが。
鹿目まどかのことを聞き出したいが先程から肝心な部分は時間停止で会話を進めてくるのだ。
そこまでして自分のサーヴァントに知られたくないことでもあるのか。




「また時を止めて……」

「鹿目まどかは聖杯戦争に参加しているわ」

「……あたしとアンタが居るなら可能性はゼロじゃないわね。杏子やマミさんは?」

「確認出来てないわ。それで同盟の話なんだけど」

「まどかを守る話はアリよ。むしろ協力するべきだと思う、だって契約していないんでしょ?」

「ええ、この場にインキュベーターが居るかどうかも解らないけど。
 それで……貴方は何なの? どうも私の知っている美樹さやかとは違う」

「……本気で言ってる? 円環の理の使い、って言えば伝わるの?」

「え、円環の理……巴マミが好きそうな言葉ね」

「……マジか」

「? 貴方が何を考えているかは不明だけど私はまどかを守る戦力が欲しいだけ」

「……」

「力を貸して。貴方もまどかが死ぬ所何て見たくない……そうでしょ」





「ケニスから伝言を聞いていると思うけど……力を貸して欲しい」


再び動いた時の中で暁美ほむらは停止の世界の言葉を紡ぐ。
話が客観的に見ても通じるように。
今は役者になりきれ、キャスターを騙せ、鹿目まどかを守るために、生き残るために、願いを叶えるために。
美樹さやかが一緒に演じてくれるか不安だったがどうやら何とかなりそうだ。
暁美ほむらは知る由もないがこの美樹さやかは暁美ほむらとインキュベーターを最後まで騙し通した実績が在る。

「どうするつもりだ」

「あたしは……《彼女を助ける》ってのが本当なら……いい……かもしれない」

「歯切れが悪いわね」

「アンタのことを完全に信用出来ないの、心当たり、あるでしょ?」
 
「……謝罪なら幾らでもする」

暁美ほむらはコミュニケーション能力に欠ける。
それは彼女の身体や病気、色々な原因が存在する。
魔法少女になった後も口数の少なさや口下手なため不要な衝突や犠牲、誤解を産んで来た。
そのツケが今、まどかを守るための同盟を妨害しているのだ。

鹿目まどかを救うために生きてきた彼女に対する酷い皮肉だ。


783 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:32:40 D3HvbnkM0

美樹さやかは本当にこの暁美ほむらが昔の暁美ほむらならば同盟を組むのに文句はない。
時間停止のカラクリは知っている、ならば完全まではいかなくても対処法は存在する。

しかしこの暁美ほむらがあの悪魔ならば。
騙されて同盟を組み、背中を襲われては意味が無い、だが、それでも。

「まどかを守るなら……うん、それはいいんだ」

決断には時間が必要だ、直感では答えられない。
この回答は聖杯戦争の最後まで影響する運命分岐点だ、感じるのだ、事の重要さを。

「時間をくれないか、マスターの友達……暁美ほむら」

「私には余り、時間がないの。今もこうしている間彼女は危険な目に遭っているかもしれない」

「急に呼びつけて協力しろ……出来過ぎてないか?」

「……」

美樹さやかの代わりに会話を行うのはバーサーカー。
彼の言い分は正論であり、端から見れば暁美ほむらは急いでいる印象しか受けない。
言葉が足りないくせに結論だけを求めているのだ。
時間停止中の会話を知らないため仕方が無い話だが。

「うん、ごめんほむら。やっぱ時間がほしい。
 まどかを守るなら文句なんてない、これは本心だよ、でも。
 あたしとアンタ、色々と腹の探り合いをしなきゃなんないのは解っているよね?」

「まさか貴方にそんなことを言われるとはね。解っているわ、でも私は――」





「いいじゃん、いいじゃん。じゃあ明日のお昼までに返事ちょーだいよ、美樹さやかちゃん」




停滞していた会話に新風を起こしたのは老人。
感じる魔力は本物、つまり暁美ほむらのサーヴァントと見て間違いないだろう。
ならば彼が自動人形の創造主様なる存在。

「おっと、僕はやる気ないから拳を抑えてねー」

(気に喰わない奴だ)

敵の登場に戦闘態勢に入ろうとしたバーサーカーだがキャスターに止められる。
キャスターから敵意は感じられないがどうも言葉の端々から感じられる何とも言えない感情が癇に障る。
初対面、初会話ながら印象は巫山戯ている輩、と言って所か。

「それでいいでしょ、マスターぁ?」

「勝手に話を進めないで! 私は美樹さやかと会話をしているの」

「……解った、明日出直すよ」

「な、貴方は何を」

同盟は決裂、とまでは行かないが明日へと延長になるらしい。
この場で同盟を組めれば良し、駄目ならばサーヴァントの奪取を考えていたが中途半端になる。
キャスターを殺し、時間を止めて美樹さやかのサーヴァントを奪い、彼女を元の世界へ還させる。

(どうする、ここでやるべきなの!? でも早い、まだ早い……。
 でもまどかは今も聖杯戦争の危険に晒されて……チッ)

「……解ったわ、良い返事を期待しているわ」


   ◆  ◆  ◆


784 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:33:25 D3HvbnkM0

遊園地の入り口に戻った美樹さやか達は安堵の息を漏らす。
暁美ほむらの交渉は明日へと持ち越すことにした。
判断材料が少ない――増えることもないと思うが決断を下すには時間が欲しい。

本来ならば鹿目まどかを守るために即答するところだが暁美ほむらが提案したのだ。
彼女は世界を己の色に塗り潰した存在だ。信用する方が難しい。

だが、彼女は悪魔ではなく昔の彼女だった。少なくとも外見は。
過去の彼女ならば――此処で未来を、世界の理を再び戻せるかもしれない。

美樹さやかは世界のために、総ての魔法少女のために戦っている。
この生命は彼女だけの生命ではない。

「ありがとう、バーサーカー。おかげで助かったわ」

「気にするな……それよりも此処を離れよう、話はそれからだ」

タイムリミットは明日の正午まで。
内容は鹿目まどかを守るための同盟、断る理由はない。

躊躇う理由は――。


   ◆  ◆  ◆


「今度勝手な真似をしたら令呪を使うわ」

「おいおい、マスターは人の心を知らないのかい? この僕でさえ相手には何週間か期間を与えるんだよ」

再び監視モニターを見つめながら暁美ほむらとキャスターは会話を紡ぐ。
暁美ほむらの計画は半分失敗だ、成果を何一つ得られていない。
明日、総てが決まるが、事前に美樹さやかには人形やキャスターを見られてしまった。
彼女は鹿目まどかを守るため同盟を結ぶとは思うが、念には念を入れねばならない。

総ては鹿目まどかを守るため。

美樹さやかよ、その力と生命――寄越しなさい。


785 : 機械仕掛けの運命―回る歯車― ◆wd6lXpjSKY :2015/02/15(日) 22:35:21 D3HvbnkM0

【D-4・遊園地/一日目・夕方】


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.明日の正午までに暁美ほむらへ回答する。
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。



【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.さやかに従い行動
2.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
3.マスターを守る
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。



[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※暁美ほむらとの交渉『鹿目まどかを守るための同盟』の回答期限は2日目正午までです。
※キャスター(フェイスレス)を確認しました。



【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(中)、苛立ち
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
 1.美樹さやかの回答を待つ。
 2.交渉に失敗した場合、美樹さやかのサーヴァントを奪う。
 3.キャスターに対する強い不快感。
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノの姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※グリーフシードを一つ持った自動人形を美樹さやかの下へ向かわせました。伝言は『『彼女を助けるのに協力してほしい。遊園地で待つ』と言っている魔法少女がいる』
※美樹さやかとの交渉期限は2日目正午までです。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)



【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]魔力消費(小)
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
 1.美樹さやかの回答を待つ。
 2.あの馬鹿(まどか、タダノ)は引き続き重点的に監視。
 3.ほむらの動きを一応警戒。
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 現在、さやか、まどか、タダノを捉えています 。
※映像越しにサーヴァントのステータスを確認するのは通常の映像ではできないと考えています。
※ほむらから伝聞で明とルフィのステータスを聞いています。明についてはある程度正確に、ルフィについては嘘のものを認識しています。
※バーサーカー(不動明)を己の目で確認しました。
※暁美ほむらは何か隠し事をしていると疑っています。
※美樹さやかと暁美ほむらの関係を知りたがっています。


786 : 名無しさん :2015/02/15(日) 22:35:47 D3HvbnkM0
投下を終了します


787 : ◆lb.YEGOV.. :2015/02/15(日) 23:29:33 dY/xpef20
投下お疲れさまです!

ほむらの知らない未来のほむらのせいでこじれそうな関係の上、最悪さやかを踏み台にしようとしているほむらの心情はやっぱり危ういものを感じますね。
最後の4人最初の登場はカピタン、相変わらずのホラ話。明とちょっとした因縁もできた感じなので今後が楽しみです。
そして冒頭のフェイスレスの台詞から、もしかして最古の4人の登場フラグも?
まどかを守る方針は一致したもののお互いの確執から行く末が気になる邂逅話でした!

あとすいません、予約ですが間に合わなさそうなので少々延期をさせていただきます。
申し訳ないです。


788 : 名無しさん :2015/02/16(月) 00:22:28 aufnddkA0
投下乙です
ほむらとさやかの噛み合わなさは参戦時期を考えると仕方ないけど、そこにフェイスレスが入ってくるだけで途端に危険度が増すなぁ
二人ともまどかを助けるという目的は一致してるけど不穏だ……
同盟は結ばれるのか、決裂してしまうのか
それまでにどちらかが脱落する可能性もあるんだよなぁ


789 : 名無しさん :2015/02/16(月) 04:21:51 cZw/bXcU0

やはり聖杯戦争で最も重要なのはコミュ力ですな
フェイスレスが混じるだけで一気に危険な雰囲気になる


790 : 名無しさん :2015/02/16(月) 07:49:17 j1HCG7Ok0
おお、投下が!乙です

時期的なものもあって、さやかとほむらの接触はある意味ここのまどマギ勢でも一番の動きだよな…互いの懸念と腹の探りあい、いやがおうにも緊迫感は高まる
明が理性を持てるバーサーカーなおかげでさやかちゃんは上手くフォローされてるが…
そして、「演じる」「観客」なんかのからくりサーカス的なキーワードが引き続き絡んで来ますね。オルセンが出てきたり、稀代のホラ吹き野郎カピタンの口上聖杯verが見られたのは良かったw

司令はふざけ回してるけど抜け目がないのは原作通りだ
ほむらは二択を損ねたわけだけどそれがどう転がるか…

目の離せない一話でした!


791 : 名無しさん :2015/02/18(水) 01:22:54 GfIrKPV.0
投下乙です!
うーむ、さんざん言われてる通り司令が色々と怖い
レ・デルニエ・キャトル一番手はホラ吹き騎士どのか、相変わらずのようで安心したw
にしてもさやか、ほむらとそれぞれ複雑だな…明の懸念も最も
デビルマンが二人の魔法少女とどう絡んで行くのか、まだまだ目が離せない


792 : 名無しさん :2015/02/20(金) 00:40:36 /3PSPN3Q0
投下乙です

言いたい事は既に言われてるが…
やっぱりこの二人は相性が悪い上に参戦した時期が…
その上で司令までいるのがもう…w


793 : ◆lb.YEGOV.. :2015/02/23(月) 00:15:58 /NwK5YRY0
すみません、期間中に書き上げられそうになくなってしまったので、予約を破棄させていただきます
長期間拘束してしまい申し訳ありません


794 : 名無しさん :2015/02/24(火) 13:37:24 WhnOdzDM0
ありゃ、破棄か……期待していたので残念
次の予約も楽しみにしています


795 : 名無しさん :2015/02/24(火) 19:02:31 Z/KoJfrk0
破棄は残念だが無理なさらずご自分のペースで!楽しみにしてます


796 : ◆AX7BMVjiJg :2015/03/05(木) 00:10:36 H2xCZVUw0
てす


797 : ◆wd6lXpjSKY :2015/03/05(木) 00:11:39 H2xCZVUw0
>>793
またの予約をお待ちしております。

かりやおじさん、一方通行で予約します


798 : ◆wd6lXpjSKY :2015/03/06(金) 23:59:10 8zkP9AgY0
お疲れ様です。

予約に天戯弥勒を追加します。


799 : ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:13:25 GQDBku0w0
投下します


800 : 魔科学共存理論 ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:15:28 GQDBku0w0

魔術と科学が交差するとき、物語が始まるならば。


この物語は既に開幕済みである。



   ◆  ◆  ◆



意識を失ったマスターである間桐雁夜を休ませる。
この事を遂行するために現在バーサーカーである一方通行は行動していた。
理性無き狂戦士が他者のために動くなど理解出来ない行動だがマスターが死ねば彼も消える。
元より狂戦士は間桐雁夜に何か通ずるモノを感じているため、放っておけない可能性もあるが。


安息を取る上で一番効率が良いのは馴染みの場所だろう。
間桐邸……天戯弥勒によって構成されたと推測される架空世界でも間桐雁夜の居場所が存在する。
彼の拠点にもなっている間桐邸に戻り、休ませるのが一番だろう。
彼に必要なのは魔術的な回復ではなく、人間として根本的な体力の回復である。

PSI粒子によって影響を受けた魔術回路がどのようになっているかは不明だ。
確実に魔力の最大容量は上昇している。聞こえは良いだろう。
しかしとある一説が存在する。それはとある世界に存在する一種の共存理論。


此処で語るべき事ではない。
繰り返すが今、必要なのは間桐雁夜を休ませる事。
バーサーカーは彼を担ぎ間桐邸の近くにまで来ていた。

朝方、身体がゴムのように伸縮するライダーと交戦したため玄関の一部が崩壊している。
戦闘の影響で警察に通報され、間桐邸の周辺はテープによって立ち入り制限が設けられていた。
住んでいる雁夜が立ち入りを妨げられる事はないだろうが目立つのは危険である。
警察官が二名、当番なのか入り口を見張っていた。


801 : 魔科学共存理論 ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:16:23 GQDBku0w0

魔力の放出を限界にまで薄めていた一方通行は少し、極僅かだが左腕に魔力を集中させる。
右腕にはしっかりと間桐雁夜を担ぎ、左腕を大地に置く。


地中の中に魔力を送り込み、力の方向性に圧力を加え少しだけ地盤に波を与える。
その結果、間桐邸入口付近にだけ地震を発生させたのだ。


その震度の見積もりは四後半と同一であり、警戒するには十分過ぎる揺れである。
警察官は地震発生により、一度無線を確認するためパトカーに向かった。
その瞬間を逃さず一方通行は間桐邸に気付かれること無く入り込む。

同じバーサーカーである不動明も言っていたが狂戦士にしては芸達者なサーヴァントである。

間桐邸に入り込むと入り口はルフィとの交戦による余波のため崩れていた。
全部が全部、という訳でも無いため生活する分には何とかなるだろう。
隔離された聖杯戦争を行うためだけの住居だ。少しぐらい我慢すれば大丈夫だ。と思う。

間桐雁夜の部屋に踏み入り、彼をベッドに寝かせるとバーサーカーは霊体に戻る。
現界することで無理に魔力を消費する必要はない。
バーサーカーも戦闘を行った身であり、無傷な筈がないのだ。
魔力も消費しているため主従揃って回復に努めるのが一番理想的な展開である。

付近に潜伏している敵もいないため狂戦士もまたその血塗られた腕を休ませる。






「最初にPSI粒子の影響を濃く受けたのがアンタか」






一方通行が間桐雁夜を休ませてから何時間か経過した後、前触れもなく来訪者が現れた。
狂戦士は己を現界し戦闘態勢に入る。先制は仕掛けずあくまでマスターの防守に重点を置く。
突然現れた男の髪は橙色に染まっておりその声は参加者であれば誰でも知っている。


「身体が軽い……それにこの力は……?
 場所も俺の部屋だ、バーサーカーが運んでくれたのか――ッ!?」


目を覚ました間桐雁夜の周りは気絶前とは大きく異なっていた。
戦闘を行っていた公園付近ではなく、見慣れた己の部屋。
身体に流れている魔術回路、刻印蟲の疼きが普段よりも弱々しくなっている。
それに加え確実に魔力の量が増えている。少ない時間で整えた魔術師の体裁を上回っていた。
全ての現象に理解と処理が追いつかない。そして目の前の存在が更に状況を混沌へと陥れる。


「天戯弥勒……お前が聖杯の――」


「初めまして、間桐雁夜」


天戯弥勒。
従来とは異なる異種の聖杯戦争を開催した男が目の前に存在していた。


802 : 魔科学共存理論 ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:17:19 GQDBku0w0

間桐雁夜はベッドから立ち上がり何時でもバーサーカーに命令を下せる体勢に入る。
既に狂戦士は臨戦態勢、何時でも動ける状況になっていた。
何故始まりの男が間桐邸に居るかは不明だが良い話ではないだろう、断言出来る。


「俺は別に戦いに来た訳じゃないさ、アンタの、お前の身体が気になってな」

「……俺達にテレパシーみたいなモノを送った時と較べて大分柔らかいな」

「気取っただけさ」


天戯弥勒に対して平然を装い軽い言葉で対応する雁夜だが相手の方が軽く感じてしまう。
圧倒的情報不足の状況で間桐雁夜がこの場を回す事は不可能に近い。
受け身になるしか方法はなく、しかし後手に回れば確実に追い込まれるのが現実だ。
この状況を切り抜けるには一瞬も迷いが許されないだろう。


「俺の身体……溢れ出る魔力について知っているのか?」

「魔力か。そうだな、お前の身体はPSI粒子と本来の魔術回路が存在している」

「さ、PSI粒子? 聞いたことがないぞ」


PSI粒子。
間桐雁夜はこの言葉を聞いた記憶がない
そもそも存在している言葉だろうか。天戯弥勒の造語にしか聞こえない。
しかし身体に異変が起きているのは事実であり、本当かもしれない。


「科学の力と言った方が早いだろう」

「俺は他の魔術師と比べると……科学の知識や認識については広い方だ。
 だけどそのPSI粒子って奴は一度も聞いたことがない、それは一体何なんだ?」


間桐雁夜は魔術師としは見習いである。
系譜がある間桐の家を飛び出し魔術とは関わりを持たずに生活していた。
魔術師の多くは科学に弱い。簡単な電化製品の扱いにも戸惑う程に感心を持っていない。
だが間桐雁夜は所謂表の世界で生きていたため一般教養は魔術師の其れを上回っているのだ。
しかし一人の少女を救うために聖杯戦争に臨む事になった彼は己の身体を酷使する事になっている。


「この世界のとあるエリアに溢れている力の結晶だ。
 お前の身体は魔術回路とPSI粒子が共存し互いに助長している」

「なら、今の俺は強くなっている……?」

「魔力の容量は確実に増えている。だが、だ。
 そんな上手い話が在る訳でもない。お前も経験があるんじゃないか?」

「なん……だと……?」


無条件で魔力が強まれば聖杯戦争における生存競争率は変動する。
全員が全員PSI粒子とやらを取り込めば平行線を辿るだろう。
しかし天戯弥勒の話を聞く限りでは間桐雁夜しかその影響を受けていない。
これは彼にとって大きなアドバンテージであり、未熟でありながらも正規の魔術師と対抗出来るのかもしれないのだ。


「魔術と科学が交差すれば新たな現象が発生する。お前の身体のように」

「……」

「だがその二つは本来交差することのない異文化だ。
 互いに互いを認めず反発する――つまり、力を使えば使うほどお前の身体は崩壊する」


803 : 魔科学共存理論 ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:18:29 GQDBku0w0

天戯弥勒から告げられた事実は己の崩壊。
魔力は増えたが行使すればその分己の身体が蝕まれる。
唯でさえ間桐雁夜の身体は刻印蟲の影響で満身創痍、それに加えての崩壊。
元々風前の灯である彼の生命は更に終着へと加速する事になる。


「……それを信じると思っているか?」

「声が震えているぞ、間桐雁夜。
 気になるなら蟲を使ってみろ、何故そうしない? 確かめるんだろ?」


天戯弥勒に発破を掛けるが口論では彼の方が上手らしく間桐雁夜は言葉を詰まらせる。
現に蟲を使役しようと試みる――そう思っているが血管に謎の痛みが混入してくるのだ。
刻印蟲とは別の、新たに身体を崩壊させる信号が彼の体内を駆け巡っていた。


「心配するな。お前の身体はまだ染まりきっていない。
 サーヴァントを戦闘させるだけなら問題は何一つ発生しない」

「対処法はあるのか、教えろ」

「普段通り蟲を使役するならば最終的にお前の魔術回路は焼き切れる事になるだろう。
 それが嫌ならば今後、魔術の使用は控えるべきだな。それかゆっくり温泉にでも……冗談だ」

(魔術師としての生命は尽きた……くそ、ごめん桜ちゃん……ッ)

「もしくはお前が魔術と科学を共存させた新たな領域に踏み込めば話は別になるが、どうかな?
 この空間にはお前が知らない魔法も溢れているからな――それはそうと、この家はそっくりだろう?」


次々と出てくる未知なる単語に処理が追いついていない間桐雁夜。
それを気にしているかどうかは不明だが、天戯弥勒は話題を変更した。
この世界は彼が用意した推測されており、間桐邸は本物と全ての造りが同一である。


「お前はさっきから何が言いたいんだ……?」

「そっくりだろう、そう言ったんだ。この造りはオリジナルと何一つ変わりない。
 懐かしいだろう? またこの家に住めるんだからな。それともう知っていると思うがこの世界にはNPCが存在する。
 NPCの中にはオリジナルが存在している奴もいる――この家はお前が知っているモノと何一つ、全てが同一なんだ」


天戯弥勒が言葉を吐き終える前に間桐雁夜は狂戦士に命令を下した。
吠える狂戦士、その標的は目の前に存在する始まりの男、天戯弥勒。
彼が言った言葉は間桐雁夜の願い、謂わば聖杯戦争に懸ける全ての思いに関係していた。

その存在は彼にとっては他人だ。血の関係など存在しない。
だが、それでも。彼にとっては守るべき存在であり日常の象徴でもある。
誰も彼女を守らないならば、己が守り再び笑顔を取り戻せばいい。だから彼は再び魔道の道に戻った。


「バァアサァアアカァァアアアッッ!!」


吠える、男は吠えた。
それに応え狂戦士も己が咆哮と共にその力を天戯弥勒に放つ。
圧縮された空気を弾丸のように放ち風穴を開けんとするが天戯弥勒は右腕を翳した。


804 : 魔科学共存理論 ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:19:46 GQDBku0w0

翳された右腕の周囲に謎の光が展開され気付くと光は枝のように分かれていた。
分かれていても右腕には盾のように光の元が完成しており、狂戦士の一撃は防がれてしまう。

天戯弥勒は笑う。
解りやすい、この男は。間桐雁夜は実に解りやすいと。
まだ最後まで話し終えていないのにこの反応、この男に会いに来て正解だった。
溢れ出る感情は舞台を大きく賑やかすだろう。
台本など最初から存在しないように暴れてくれる一種の道化としてこの男は物語を創る。


「折角の家が壊れるぞ……まぁいい。お前はお前の身体に気をつけるべきだ。
 忠告はしたからな――最後の一人になるまで思う存分暴れてくれ、間桐雁夜」

「逃すなッバーサーカーァ!!」

「■■、■■■■■■■■■■■!」


消え行く天戯弥勒に対し拳の鉄槌を卸す狂戦士だが空打ちに終わってしまう。
最初から存在しなかったように、まるで蜃気楼のように消えた天戯弥勒。
拳が卸され一部壊滅している床を見ながら間桐雁夜はまるで今までが夢、そう思ってしまう。

新たな聖杯戦争。
間桐臓硯からも聞いたことがない二度目の生、二度目の聖杯。
全てがまるで――「間桐臓硯……間桐ッ!!」

全ての思考を放り投げ間桐雁夜は扉を蹴破り部屋の外に出る。
天戯弥勒の言葉の中に一つだけ引っかかった事がある。
未知なる単語で溢れているが、混乱している状況でも一つだけ、一つだけだ。

この空間はオリジナルと同じ――つまり間桐雁夜が知っている物が存在する。
この間桐邸が証拠となり、天戯弥勒は何らかの力で冬木の街を一部再現しているのだ。

それに加え彼が言った言葉。
この街に生活している聖杯戦争参加者以外の存在はNPCであること。
そしてそれもまた、オリジナルを元に造られているとするならば。

荒げた呼吸を整え、間桐雁夜は大きく目を開く。
此処が間桐邸を模した空間ならば。構成物質が全て同一ならば。何もかもが一緒ならば。
一度死んだ彼に与えられた新たな生命。二度目の生命に興味はない――いや、存在する。
どれだけ汚くなろうと、泥を被ろうと、叶えたい願いがある、救いたい存在がいる。

「……帰っていたんですね」

この声だ。
この声をもう一度聞けた。己の総てを投げ出すに値する存在が目の前に居る。
NPCだろうが関係なく、その声、容姿総てが彼の記憶と一致していた。


「泣いている……の?」

「そうだよ……おじさんは弱いんだ……ごめん、でももう悲しませないから……っ」


間桐桜。
彼が聖杯戦争に参加する動機となった悲劇の少女が確かに存在していた。
抱きしめるその少女は何一つ変わらず、再び会えた奇跡に彼は涙を流していた。

例え彼女が天戯弥勒で言うところのNPCだろうが構わない。
目の前の間桐桜は間桐桜だ。オリジナルやNPCの枠組みがあろうと間桐桜としての存在に変わりはない。
薄れて行く意識の中、蟲蔵に埋もれる中で最後に伸ばした一つの奇跡。
握り締めた二度目の聖杯戦争に彼は不安を感じていた。もう一度地獄を体験するのかと。
知らないサーヴァント。知らない力。崩壊を告げられる科学の力――だが今はどうでもいい。


目の前に希望の光が存在しているだけで今は――それだけでいい。


805 : 魔科学共存理論 ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:20:37 GQDBku0w0

【D-4・間桐邸/一日目・夕方】



【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、精神的消耗(小)、魔力消費(小)、PSIに覚醒
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2.蟲の使役に注意する。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※お茶は戦闘を行ったD-4の公園に放置してきました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。



【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
2.マスターを休息させる
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲などに残っている可能性はあります。


806 : 魔科学共存理論 ◆wd6lXpjSKY :2015/03/08(日) 02:23:32 GQDBku0w0
以上で投下を終了します。

アゲハ組、人吉、慶次組、みさきち組、カレン組、まどか組、タダノ組、ほーむレス、天戯弥勒。
上記で予約及び延長します、最初から延長で申し訳ないです。


807 : 名無しさん :2015/03/08(日) 02:50:03 ztvFN9iI0
おお、投下乙ですわ


808 : 名無しさん :2015/03/08(日) 02:52:54 ztvFN9iI0
ミス、投下乙です
ここで弥勒が接触してくるかー
ただでさえ不安定なおじさんをかき回して…
PSIと魔術の交錯と言うのは前にも出てきた話だけれども、何か狙いがあるんだろうな

そしてまさかの大規模一斉予約!こちらも楽しみにしてます!


809 : 名無しさん :2015/03/08(日) 09:51:19 mN71fTnA0
投下乙です。
確かにNPCに桜がいる可能性は充分ありえたもんなー……
彼女の存在がおじさんにとって幸か不幸になるか。
間桐邸にはタダノ組がいたこともありますし、一波乱ありそうですね


810 : 名無しさん :2015/03/09(月) 18:05:17 URPxDPQQ0
投下乙です
おじさーん! PSI粒子もNPC桜もおじさんにとってはプラスになるはずなのにまったく明るい未来が見えてこないよ……
天戯弥勒の真意も見えてこないし、どうなるんだろうなぁ
大型予約の方も期待してます


811 : 名無しさん :2015/03/10(火) 23:39:30 cRYqDuF.0
投下乙
おじさんハードモード過ぎて辛い
桜ちゃんを守れてもNPCだから辛いおじさん全部辛い……
次の学園組投下も期待してます


812 : ◆wd6lXpjSKY :2015/03/15(日) 15:06:54 /SFmG.Mk0
予約時に延長しているため期限はあと一週間あります。
延長している身で申し訳ありませんが全員予約に変更します。


813 : ◆wd6lXpjSKY :2015/03/21(土) 00:57:36 CbmcjZTU0
お疲れ様です。
期限までに投下できるよう目指しますが、超過する可能性が出て来ました。
その時には申し訳ありませんが、投下まで少しお時間をください。申し訳ありません。


814 : ◆wd6lXpjSKY :2015/03/22(日) 02:01:29 SZihXFJs0
大変申し訳ありません、本日が予約期限ですが間に合いそうにありません。
ですが破棄はしません、今月中には投下しますので、もう少しお待ちください。
よろしくお願いします。


815 : 名無しさん :2015/03/22(日) 13:24:19 89tX7IhE0
なるほど、了解です


816 : 名無しさん :2015/03/22(日) 16:16:30 ip4zQs1M0
期待してます


817 : 名無しさん :2015/03/24(火) 00:53:49 xLgkLYEY0
無理をせずに頑張ってください


818 : 名無しさん :2015/03/30(月) 01:40:31 hYwTFNR60
忙しい時期だしごゆっくり


819 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:43:56 inUvH6Fc0


「それで、まどかちゃんも天戯弥勒の声を聞いたんだね」

「はい。頭の中に響くような感じで……」


事件が発生した間桐邸の調査に乗り込もうとしていたタダノは鹿目まどかと共に喫茶店に居た。
本来ならば職務を全うするために働いてなければならないが事態は動いている。
そもそも事件を起こしたのは鹿目まどか及びそのサーヴァントであるため報告書は適当に仕上げなければならない。
聖杯戦争だけの仮初めの職だ、そこまで力を入れなくてもどうにかなるだろう。

変化を迎えた状況は二つ。

一つに天戯弥勒からの通達。
告げられた参加者は十四組の主従、早々に脱落したアサシン。
マスターは生存中らしいが十中八九テレホンカードを使い帰還するだろう。
本当に帰還出来るか怪しい部分もあるが、天戯弥勒の言葉どおりだと帰還しなければ死んでしまう。
身体が灰になる。信じるも信じないも参加者次第ではあるが、用心は必要だろう。

もう一つが署からの連絡であるアッシュフォード学園で起きた事件。
校内の破損及び屋上で爆発事故が発生したとの連絡がタダノの元へ入っている。
間桐邸の調査よりも優先の命令を下され、彼は学園に向かうことになった。

此処でタダノは考えた。
間桐邸の事故はサーヴァントの仕業であった。
ならば学園の事件もサーヴァントの仕業である可能性がある、それも高い部類と推測。
道中で別れた鹿目まどかを呼び喫茶店にてこの情報を伝えた。


「天戯弥勒の言葉は真実に近いだろう。嘘をつくメリットもデメリットもないけど。
 僕はこのまま学園に向かうつもりだけどまどかちゃんはどうする? 一緒に来るかい?」

「……行けば、戦うことになるんでしょうか」

「それは解らない、けど確率は高いだろうね」

「私は出来るなら争いたくないです。聖杯戦争に参加しているのに……ごめんなさい」


聖杯戦争に参加している者は何らかの願いを持っている――筈だ。
巻き込まれだろうが自主参加だろうが彼らは何かしら叶えたい想いを秘めている。
鹿目まどかにとっての願い。彼女は森の中を彷徨うに悩んでいた。
願いと他者の脱落を天秤に委ねた時、どちらが優先されるのか。
一般的な思考を持っているなら答えは明白である。人殺しの罪など背負いたくない。


「それでも……じっとしてるだけじゃ何も始まらないと思うんです」

「――!」


鹿目まどかの周囲は常識から逸脱している。
魔法少女、幼き子供なら誰だって憧れる夢の存在に囲まれていた。
人々を守るために魔女と戦う。お伽話のような甘い、とても甘い響きである魔法少女。


820 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:45:00 inUvH6Fc0

魔法少女――願いを叶えてもらった少女が奉仕として行う魔女退治。
人々に害を与える悪い魔女を倒す。
日曜の朝にでも放送されていそうな甘美な響きである。

魔法少女――願いと引き換えに不幸を振り撒くメビウスの輪に組み込まれた哀れな末路。
魔女を倒す理由は魔女が人々に――。










最悪だ。
宿題を完全に終わらせたが読書感想文が終わっていない。
最後の最後に忘れたくてそのまま放置していた状況が襲い掛かってくる。


(キャスター……美樹さやかに選択を迫っていたのに邪魔されるなんて)


そんな気分に暁美ほむらは陥っていた。


時は遡り美樹さやかとの交渉が終了し彼女が遊園地を後にした時。
戦力の補強、手駒の確保、捨て牌の布施……様々多種多様の糸を張り巡らせる予定だったが失敗に終わる。
総ては鹿目まどかを守るため、一つの手段として美樹さやかに同盟を持ち込むも選択を渋られた。
元々彼女は良くも悪くも等身大の少女だった。だから鹿目まどかのために簡単に交渉が終わると考えていた。

だが美樹さやかは暁美ほむらの想定よりも頭が回っているらしく、返事を渋られる。
今までの態度、行い。総てが蓄積された美樹さやかの中に存在する暁美ほむらのビジョンは色で例えれば若干の白が混じった黒。
黒は敵ではないが感じは悪く、頼み事も極力行いたくないし肩を並べられるとも思えない。そんな印象。
白はそれでも信じたい、同じ人間であり魔法少女としての、人としての感情だろうか。

美樹さやかは暁美ほむらの魔法を知っており、サーヴァントであるバーサーカーは狂化に飲み込まれていない。
寧ろ感情が高ぶった美樹さやかを抑え込める程の存在であり狂戦士とは思えない。
結果として交渉は引き伸ばされ彼女を利用した計画は光を浴びること無く再び水底に沈む。


「ねぇ、マスター。これ見てご覧」

「……なにかしら」

「左上が監視の映像でその右隣が普通のニュースさ」


計画の失敗となった要因であるキャスターにそう言われると暁美ほむらはモニターに視線を移す。
キャスターの顔が見たくないため極力頭を動かさず、視線のみの移動で。
映されているのはどちらも学園――暁美ほむらが通う予定であるアッシュフォード学園だった。


821 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:45:52 inUvH6Fc0

ニュース映像では一人の記者が学園の前にて実況を行っている最中である。
テロップではテロか何かの関連性、日本らしくない文字が映し出されていた。
聖杯戦争の会場は視界に捉えている範囲では日本を元に造られていると考察していたが何でもありのようだ。


『こちらにあるアッシュフォード学園では学園内の窓が一部破損しており、屋上では爆発があったと通報されています。
 体育館裏では地面が大きく陥没しておりクレーターのような跡が出来ているとの情報もあります。
 誰も目撃者はおらす、依然として状況は謎ですが、爆発物の関係から国外の犯行による可能性も――』


アナウンサーの発言から幾つかの情報を読み取る。
屋上で爆発――自分のように爆発物を多数所有している学生が何人も居るとは思えない。
ならばテロリスト、妄想なら確定だが此処は聖杯戦争だ。常識は通用しない。
自分のような魔法少女がマスターとして参加している。美樹さやかも同様であり鹿目まどかもきっと。
一般から逸脱している参加者は多いだろう、大半を占めていると仮定して爆発の一つや二つなら想定の範囲だ。

クレーター――痕跡も残さないとなると魔法に近い能力が必要となるだろう。
大規模な機械を使わない、一瞬で発動出来る魔法は犯罪の大きな力となる。
実際暁美ほむらの知り合いにも犯罪に手を染めている魔法少女が居る。最も人的被害は出していないが。

国外の反応――この言葉からNPCは本当に日常の一部として組み込まれていると確信する。
聖杯戦争のために用意された、言ってしまえばメタ的な存在であり聖杯戦争を認識していると仮定していた。
ならばこの事件を聖杯戦争として報道するはずだが、日常に起こった非現実的な現象として報道している。
NPCはオブジェ、日常感を出すためだけの存在に過ぎず、魂の無い容れ物と考えるのが妥当だろう。


次に監視映像を見る。


映しだされているのは学園の屋上。
男女二組の交戦と撤退を捉えており男の一人は見覚えがある。

「この男は……そう」

「知り合い? マスター、さやかちゃんもそうだけど知り合い多くない? 辛くない? 大丈夫?」

「次言ったら私は貴方に令呪を使うわ」

「それ前にも聞いた気がするよーん。違ったらゴメンね」


始まりの場において天戯弥勒へ叫んでいた男の姿が確認出来る。
サーヴァントは女、振り回している獲物からセイバーと仮定。
情報を集める事に関しては主催者の知り合いに接触出来れば効率が大きく増すだろう。
聖杯戦争は知っている、だが主催である天戯弥勒の情報は限りなく無に近い。
この男と接触出来れば――学園に赴くべきであろうか。


(今学園に向かえば確実に面倒事に巻き込まれる、それに到着は遅くなりそうね。
 なら、今日はこのまま動かない方が安全ね。明日には美樹さやかからの返答もある。
 まだ焦るべきでは……まどかが無事ならそれに越したことはない。夜も今日は大人しく待機するべき、ね)


学園に向かえば確実に情報の手掛かりが掴める、そして危険も大きく伴う。
犯行者は犯罪現場に戻る。この世界における警察の警備が張られており侵入等は難しいだろう。
魔法を使えば用意に済むが消費する魔力を考えれば無駄遣いは避けたい所。
美樹さやかのような感情で動ける人物が既に動いているだろう。鉢合わせは御免である。
故に今回は静観の方針であり、黒髪の男との接触は日を改めるとしよう。


「それでねぇマスター」


不快な笑みを浮かべてキャスターは私に話しかける。嫌な予感しかしない。


  ◆  ◆  ◆


822 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:46:57 inUvH6Fc0


「セイバー、魔力を感じるか?」

「全然解かんねえ、足で探すのが一番だろ」


亡くしてしまったサーヴァントの仇を取るために。
男の意地を貫き通すために人吉はキャスターの居場所を探している。
人の心を操る凶悪な宝具を持った女狐に対向するために人吉はセイバーと共に行動。
夜科アゲハから預かり受け、仮に自分がもう一度操られたとしても対魔力を持っているセイバーなら問題はない。
アサシンを失った時のように黙って負けるわけにはいかないのだ。

サーヴァントを失ったマスターは紅いテレホンカードを使用すれば帰還出来る、と言う話しである。
真偽は不明だが戦争から離脱出来ると考えれば実に有難い。
期限は六時間、それまでにキャスターを発見し討伐する。
それが人吉善吉の最後の使命であった。


「アサシンとキャスターは知り合いだったんだろ? そりゃあ手の内解ってる奴をほっとくワケねぇよな」

「あぁ。真命がバレたらサーヴァントってやばいんだろ?」

「対策とか取られたりすっからなぁ」

(じゃあお前とアゲハは何で隠さず名前で呼び合ってんだよ……)


夜科アゲハとセイバー改め纒流子の方針に疑問を抱くも今は置いておこう。
キャスターの居場所は掴めず、地道に校内を散策するしか手段はない。
セイバーと人吉は契約を結んでおらず、キャスターの目を欺くための格好に過ぎない。
そのため念話は行えず、セイバーは実体化して行動を共にしている。早く動けるために。

校内を彷徨いている生徒は殆ど見かけない。
先の学園戦で一部校舎が破損されたため授業は全て停止、強制下校の時間になっている。
マスコミはテロだのなんだの報道しているが、何一つ証拠が掴めていない。
監視カメラにも何一つ映っていないとなると神隠しの一種として考える輩も居るだろう。


「対策か、だったらキャスターは頭が回る奴だぜ。
 生徒が一人死んで屋上で爆発が起きてんだ。でもそこまでパニックになっちゃいねえ」

「痕跡全部揉み消したってか、人ン心操るってのは卑怯地味てんなぁオイ」


警察も全く校舎内に介入していないことを考えるとキャスターが根回しをした可能性が高い。
強制下校も校内アナウンスを終えた後に数分のホームルームだけだ。まるで機械のように。
プログラムを組み込まれた操り人形が仕組んだのだろう。
目的は不明だが学園は確実にキャスターの根城になりつつある。
この辺りで一度食い止めないと明日から学園に通うのは不可能に近くなるだろう。
わざわざ敵の本拠地に突っ込む馬鹿は多くない方が好ましい。


「生徒の気配が全然しねー。もしかしてキャスターは外にいんのか?」

「知らねえ、探すしか無いだろ」


探知能力を持ち合わせていれば探索は優位に進むだろうが現実は甘くない。
魔力の反応も乏しく、足でキャスターを探しているのが現状。
時間だけが過ぎ去って行くものの打開策は特に存在するはずもなく黙って動き回るのみ。
現に人吉善吉の生存時間は浪費され確実に死の時が迫っていた。


823 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:47:24 inUvH6Fc0

近くの扉を荒く開け教室の中を調べ回るために入室する。
セイバーは掃除用具入れを開け中にキャスターが隠れていないか覗くも居る筈がなかった。
解ってはいたが収穫が何もない状況に嫌気が差していたのだ。


「……」


人吉は教壇に上がり机に肘を付けながら教室を眺める。
アッシュフォード学園は人吉が通っている学園ではなく、名前も聞いたことがない。
生徒会の役職を与えられていても彼にとってこの学園は馴染み深いものではない。
会長も彼が知っている黒神めだかではなく鬼龍院皐月だ。
どちらも凛々しい女性ではあるが性格、態度、仕草、声色と全てが違う。異なる人物のため当然である。
もう一人の生徒会長であるミレイという人物は長期間学園を開けているため会うことはないが、勿論彼女も知らない。
会計の役職を与えられていた紅月カレンも知らず、聖杯戦争の参加者であることも先ほどまで知らなかった。

NPCと呼ばれる住人に知り合いはいない。仮初めの存在でも見知った顔がいない。
自分だけが異空間に放り込まれた孤独感と知り合いに見られないで済む安心感が鬩ぎ合う。
願いを叶えるための殺し合い、人吉は参加者を殺すつもりはないが勝つつもりでいる。
戦いの末に勝敗を決め、殺すならばサーヴァント。殺したならばテレホンカードで帰還させる。
願いのために他人を殺す――決して等価値になることのない選択を強いる聖杯戦争。
天戯弥勒が用意した聖杯は現実では行われない架空世界での戦争だ。
妄言かも知れないがテレホンカードで帰還可能の情報は少なくとも人吉を安心させるには十分過ぎる情報だった。


「キャースーター」


忘れ物と予想されるコートを捲りながら覗きこむセイバー。
キャスターは当然いない。言ってしまえば見つからないこの状況に飽きている。
椅子を引き腰を降ろすとダルそうに机へ上体を寝かせ悪態をつく。


「見つかんねーぞキャスター、お前の時間もあるってのにこれじゃあ進まねえ」

「このままタイムリミット残念無念また来てねんは避けたい、っつーか馬鹿過ぎてヤベえ」

「その通り、宣言したからにはやんなきゃ男じゃない――そうだろ?」


態度は腐っていても中身は真剣であり、セイバーは人吉に最後まで付き合うつもりだ。
笑いながら人吉の背中を押すように言葉を掛け座ったばかりだが立ち上がる。
体内に溜まった怠さを吹き飛ばすように伸びると肩を回し気分を一心させていた。

人吉はそんなセイバーを見て、どんな感情を抱くのか。
もしアサシンが生きていれば。セイバーのように解りやすい男ではなかったが悪い奴には見えなかった。
話を聞けば暗部だのクラスはアサシンだの世間体で言う闇に染まっていた人間だが力は貸してくれた。
隣に居てくれれば頼りになる存在だったのかもしれない、いや、そうだ、そうに違いない。
アサシン■■■■は人吉自身が呼び寄せたサーヴァントだ、ハズレの訳がない。
故にそのアサシンを殺したキャスターは許せない、既に死んでいる英霊の敵討と行こうじゃないか。
このまま下がれば自分は何をしに聖杯戦争に来たのか、遊びじゃあない。


824 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:47:47 inUvH6Fc0


アサシンを殺した直接的な要因は人吉による令呪の命令、審判は自害の提示。
無論人吉自身が望んだ命令ではなくキャスターによる操り、宝具による対象への傀儡命令。
人形となった人吉はアサシンを自害させ、アサシンに関する記憶は全て消去されている。
これは彼がキャスターとの知り合いであり、打開策の突破口にならないよう立ち振る舞ったキャスターの仕業である。
仮に■■■■から己の情報を人吉善吉に与えられていたら……危険因子は誰だって排除するだろう。


(俺の落ち度が一番の原因だよな……謝っても許されるとは思ってねえ、けど済まなかった)


操られていようと死因は人吉による絶対命令の行使であり、覆ることはない。
キャスターを討ち取ろうと彼がアサシンを殺した事実は消えること無く永遠に彼の中で生き続ける。
罪悪感の鎖に絡まれようが此処で腐る必要はなく、男は前に進む決断をした。
協力者もいる。夜科アゲハとその相方であるセイバー、纒流子が彼に協力しているのだ。
いつまでも自分が腐っている訳にもいかず、彼女の声に彼も立ち上がりながら答える。


「やんなきゃ男じゃない……その通り過ぎて黙っちまったぜ」

「分かりゃいいんだよ、さっさとキャスター殺して帰るぞ」

「そうだな、このまま終わるなんてデビルカッコ悪いぜ……ん?」


奮起の決意を固めた所だが窓の外に小さな異変を感じた。
小さな、それは大きさの問題と些細な違和感の表現である。
一つに校庭に小さな影が見える。背丈から察するに男、それも大柄。
もう一つは大勢の生徒が下校している中、何故校庭に立っているのか。

その男の正体を知っているため、疑問は更地のように無くなるのだが。


「アイツ……セイバー、校庭を見てみろよ」

「校庭だぁ? ンなモン見てどうすん……あァ!?」

「なんだ、お前も知ってんのか」


その姿は互いに見覚えがあった。この聖杯戦争で出会った一人の豪傑。
歴史上の人物像とは異なる砕けた喋り口。
セイバーやアサシンは現代的な英霊であるが校庭にいる男は正真正銘の歴史に眠る英雄だ。
聖杯に招かれし役職は槍兵、刀と槍を扱う男。

人吉は悪い印象を持っていない。少なくともキャスターよりは会話が通じる相手だと認識している。
屋上での会話を思い出すにキャスターの事を少しは知っている様に感じた。
ならば、接触を図り新しい情報を求めようとしよう。


「結構イイ奴だと思うけどよ、屋上から投げ飛ばすのはNGだぜ……!」


纒流子はその男と一度手合わせをしている。
男は強い。勿論自分も強い、負ける理由はない。
先の戦いは中断された。なんでも男のマスターからの命令らしい。
校庭に立っている今、キャスターの件を知らない訳でもないだろう。
現に人吉と面識があるならそれは件の後であり、事情は知っていると察する。
ならば、今校庭に居るのは何故か。それは誘っているからだろう。


「今から行くから待ってな――戦国武将さんよ」








「俺が通う学園で事件……?」


自室に篭っていたエレンはニュース番組で己が通うアッシュフォード学園の事態を目にしていた。


825 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:48:21 inUvH6Fc0

ベッドに潜り込み顔だけを露出させながらテレビを眺めていたエレン。
特にやる気も起きず時間が過ぎるのを待っていた彼はトイレ以外に布団から出ていない。
そんな状況に神様は嫌気でもさしたのか、強制的にエレンに興味を惹かせるイベントを発生させた。

テレビに表示されるアッシュフォード学園の文字は彼にどんな影響を与えたのか。
実際に学園へはまだ通っていないが、流石に名前ぐらいは把握している。
訓練生時代に通っていた物を連想していたが思ったよりも近代的、謂わば彼の世界とは程遠い。
木造が主体ではなく、文明が発達している架空世界の世界観に近い建物だった。

国外の犯行――エレンに言わせてみれば壁の住民達が身内で争っている感覚だろう。
巨人の襲来により壊滅した街の生き残りは新たな壁《保険》を求めて移住する。
その場所で起きる原住民と余所者の争い。人間同士で争っている場合ではないが生きていくためにはしかたがないことだ。

彼の世界の話は置いておき、自分の宿舎が何者かに攻められているのだろう。
許し難いことではあるが、残念ながらエレンにとってアッシュフォード学園は重要な場所ではない。
記憶も無ければ思い出も無く、別に破損しようが爆発が起きようが彼には関係ない話しである。
念の為にだが、エレンは腐っている人間ではなく、寧ろこのような事件が起きれば燃える類の人間だ。
今の彼には自ら動く意思も力も使命も。何一つ感じることが出来ず空っぽの器と呼ぶのが相応しい状態であった。


「もう昼過ぎてんのか……何か食うか」


時計を見ると針は十二を超えていた。
どれだけの時間を無駄にしたかは不明だがエレンは腹に物を入れるため布団から出る。
その足取りは軽くなく、少しよろけていて何処か心配になってしまう。

しかしこの場には彼しかおらず、誰も構ってくれる姿はなかった。

見回りから戻ってきたアサシンは一切口を動かしていない。
壁際のいぶし銀、監視するようにエレンを見つめ、外に出さないようにしている。
エレンの精神状況を考えると交戦が発生する段階で急激な所謂ショック現象に近い事象が発生するかもしれない。

巨人が巣食う悪夢から開放された少年にとって、偽りであるこの世界は優しさに満ち溢れている。
聖杯戦争の視野から逸れれば生活に不満がない、壁の中の住人にとって最高の世界だ。
永遠に住んでいても問題ない。そう思ってしまった彼はもう血腥い世界には戻れない。

だが自室に閉じ籠もっていては空気が悪い。
アサシンの特性から察するに彼が主役になる時、それは夜。
夜は死神の物語であり世界、此処まで交戦していない彼は戦闘を仕掛けに行くだろう。
つまり、夜の間は誰もエレンを止める、守る存在はいない。

外の空気を吸うなら夜だ。大丈夫、出歩いた先で敵と出会う確率などこの優しい世界なら――。







夜科アゲハは学園を後にすると付近の公衆電話を探すため街に出ていた。
地図で表記する所のB-3地点、アッシュフォード学園にも近い場所にて苦労すること無く発見した。


826 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:48:49 inUvH6Fc0

公衆電話は夜科アゲハにとって馴染み深い、本人にとっては良い思い出と断言出来ないが関わりがある。
彼が行っていたサイレンのゲームは荒れ果てた未来の世界を舞台に公衆電話の終着点を目指すものだった。
現代と未来を行き来しながら世界の終焉を回避した夜科アゲハは脳の酷使によって深い眠りにつく。
その後、旅で得た全てのふれあいと思い出の力により眠りから覚める――はずだった。

彼の意識が深く閉ざされた棺桶から脱出した時、瞳に映る光は明るい未来ではなく荒れた荒野の再臨。
おまけに最後には和解……とまではいかないがある程度歩み寄れた天戯弥勒の宣言付きである。
頭痛が痛い、よく解らないが痛いことだけは伝えたい、そんな感覚に陥った。

処理は追いつかないが脳裏に焼き付く聖杯戦争のルール。
隣に居る知らない女はサーヴァント。同世代に見えるが既にこの世から去っている過去の英霊。
学園に潜む他の参加者、新たに誕生した友も参加者、その友に絶望を与えるキャスター。

この世界も混沌に満ちている。それでも人々が日常を過ごしているのが更に狂気感を引き立たせていた。

公衆電話を見つけるとアゲハは赤いテレホンカードを問答無用で差し込む。
ダイヤルは押さず受話器を耳元に当てる。聞こえてくる音はツーツー……機械的な音声のみ。
繋がっていない。それに声も聞こえない。

聖杯戦争の参加者においてテレホンカードの本質を知っているのは夜科アゲハだけである。
時間軸の違いによっては天戯弥勒ですら赤いテレホンカードの存在を知らない可能性もある。
最も全参加者に天戯弥勒から配られている節があるため、杞憂ではあるが。


「繋がらねえ……」


受話器を戻し外の空気を吸う夜科アゲハ。
元々サイレンの赤いテレホンカードはとあるサイキッカーのPSI能力により生まれた物である。
このテレホンカードが存在しているということはそのサイキッカーも聖杯戦争に絡んでいる可能性がある。
しかし彼女は殺し合いに加担するような人間ではない、ならば何故――謎は謎を呼び新たな疑問を発生させる。
一度情報の整理が必要だろう。状況が落ち着いたら纒流子と人吉善吉に知っていることを全て話そう。


「そんじゃもう一回学園に戻るとするか」


公衆電話の設置場所は幸い学園から近い。
これならば最悪キャスターを仕留められなかった場合でも人吉を帰還させることは可能だろう。
実際に帰還出来るかどうかは不明だが初期のサイレンゲーム同様の扱いならば戻れるはず。
何とかなる、前向きに思考を置きつつアゲハは学園に向かう。


「少しいいかしら?」

「――ッ!」


此処は街で今はお昼時だ。行き交う人々がアゲハに話しかける光景は別に可怪しいことではない。
感じる魔力を除けばの話し、彼に言葉を掛けた少女はサーヴァント。
日傘をさしている少女は不思議を含んでいるような笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。


「貴方は天戯弥勒に話しかけていた人で間違いない」

「だったらどうすんだよ。今此処で俺と戦るってのか?」

「誰も戦う何て言ってないじゃない。それとも覚悟は既に完了ってところかしら?」

「何が言いたいかサッパリ解かんねぇけど敵なら――」


腕に力を、戦う力を。
神経を集中させ黒き稲妻の如く溢れるPSIを具現化させるアゲハ。
サーヴァント相手に通用しない――少なくとも屋上での戦いで緑のセイバーの盾には防がれた。
盾の特性上、特別な力が宿っていたのかもしれないがサーヴァントに己の力が通用するかどうかは正直に言って怪しい。
前田慶次にも避けられている前例があるため、彼の暴王の月では太刀打ちは辛いかもしれない。

しかしそんな事を言っていられる状況ではない。

戦わなければ死ぬ。
ならば殺される前に殺す。
世界のゲームは人間にとって優しいプログラムで構成されていない。


「血の気が多いこと……何もこっちだって戦うつもりじゃないわ」

「……は?」

「天戯弥勒について知っていること、教えてもらえるかしら?」


827 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:49:46 inUvH6Fc0

戦闘態勢準備完了バリバリなアゲハは目の前のサーヴァントの言葉に対し間抜けな返答をする。
基本マスターはサーヴァントに敵わない。英霊とは神格なる存在である。
現状、アゲハの近くにサーヴァントはいない。相手が気付いているかは不明であるが。


「……逆に聞くけどやっぱサーヴァントはアイツの事を知らないのか?」

「質問を質問で返す……まぁいいわ。ええ、知らない。貴方のサーヴァントの事も知らないけれど」


夜科アゲハは考える。彼がこの会場で出会った人々は誰一人として天戯弥勒を知らない。
つまりサイレンドリフトでもなければ、未来の世界に居たわけでもなく、再生の日を迎えた世界の住人でもない。
あの世界を知らない人間が多いのは嬉しい事である。何も生きていく上でわざわざ絶望を体験する必要もないだろう。


「俺だけ答えるのは不公平だろ」

「今すぐ貴方を殺すことだって出来る、解っているでしょ?」

「……解ったよちくしょう」


近くに纏はいない。人吉善吉の傍にいるから。
戦闘が始まってしまえば夜科アゲハは確実に負ける、そして死ぬ。
何も解らず真実に辿り着けないまま死ぬのは御免だ。
それに情報を開示したところで、目の前にいる少女のサーヴァントが敵になるとは限らない。


「天戯弥勒はサイキッカーだ」

「サイキッカーって何かしら」

「超能力者ってこと。昼に聞こえてきた声もPSIの力だと思う」

「そう……天戯弥勒は聖杯をどのようにして――」

「悪い、聖杯とかは聞いたことがねえ。そもそも願いを叶える何て有り得ねえだろ」

「……貴方の名前も」

「夜科アゲハ……俺の名前だ」


夜科アゲハが知っている天戯弥勒は聖杯の事など一切話していない。
仮に隠していたとしても願いを叶える、事実ならば天戯弥勒はとっくに使用している。


「ついでに言えばアイツが今何処に居るかも知らない、正直俺も情報がほしい」

「……じゃあ貴方も《知り合い》以外に有用な情報を持っていないのね」

「悪かったな、俺も手探りなんだ」

「まぁいいわ。超能力者ってことを知れただけでも前向きに捉えることとするわ」


大した情報も渡していないが少女のサーヴァントは納得してくれたらしい。
表面、それも薄い情報しか言っていないが。

夜科アゲハにとって問題はこれからである。
少女のサーヴァントの出方が解らない。
このまま立ち去ってくれるのが一番ベストな展開である。
協力体制を取れるなら大いに助かるが望み過ぎも良くない。

殺しの脅しをしてきた相手だ、友好な関係を築くのは難しいだろう。
戦闘になるとして先手を放ち通用しなかったら詰みだ。


「ありがとう……私のクラスはランサー。交換する情報はこれ」

「おいおい、流石にクラスは視認出来てるぜ」


適当な返答をされて尻尾を巻かれてしまえば此方側に有益な情報が入ってこない。
己の生存率を優先させようとしていたが反射的に突っかかってしまった。


「生命があるだけ感謝しなさい、それと――」


828 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:50:27 inUvH6Fc0


「夜は睡眠をしっかり取ることをおすすめするわ。
 昼が貴方達学生の時間なら夜は私の時間――出歩いていたら生命を落とすかもしれないわよ?」


クスリと一つ笑みを零すと少女のサーヴァントはその姿を消した。
一体彼女は何をしたかったのか。
夜科アゲハを発見しそのまま殺すことも可能だっただろう。だが手を出していない。
情報を聞き出してから幾らでも殺す方法はあったと言うのにも関わらずだ。


「夜は私の時間って梟か何かかよ……ッ」


忠告の類なのか。
言葉通りに受け取ると夜に出会うと殺されるらしい。
サーヴァントに単独で出逢えば昼夜関係なく殺されるとは思うが、今回は運が良かった。
夜になると活発的になる人間は存在する。あのランサーは夜行性だった英霊かもしれない。

結果とした与えた情報は天戯弥勒が超能力者と言う事と自分の名前だけ。
聞き出すならもっと引出されるかと思ったがあっさりと退いてくれた。

夜行性の予測は間違いではないのかもしれない。
まさかな。言葉を零しながら首を振る夜科アゲハ。


「死ぬかと思ったぜ……」


口では軽いことを喋るがその身体は大きく汗をかいていた。
少女の姿とはいえ彼女もまた英霊の一人であるサーヴァント。
溢れ出る魔力と底知れない空気はただの会話でも夜科アゲハにプレッシャーを与えていた。
開放された感覚に酔いたいのかアゲハは公衆電話に寄り掛かり空を見上げる。

お昼が過ぎもう少しで夕焼けに染まる頃。
夜になれば月が浮かび上がりその光を除き辺り総ては常世闇の世界に成り果てる。
ランサーの言葉を守る、という訳でもないが夜は睡眠に回す予定だ。

最も人吉善吉の生還を見届けた後になるが。


『――ん? どうした纏……』









「不思議な力は超能力……呼び方はどうでもいいけれど何かしらの力は持っているらしいわね」


夜科アゲハから天戯弥勒の情報を聞き出したサーヴァント、レミリア。
本来ならもっと多くの情報を盗もうとしたが昼は彼女にとって天敵である。

別段今すぐ屋内に避難、という訳でもないが。


829 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:50:52 inUvH6Fc0


館への帰り道、一度マスターであるウォルターに対し念話を行う。
得た情報、価値こそ微々たる物かもしれない。
だが夜科アゲハの名前を知れた。
天戯弥勒と関わりがある人物、殺すにはまだ早いだろう。
時が過ぎれば主催者である天戯弥勒と対峙する時が来る。その時のために保険がほしい。
次に夜科アゲハと出会った時、限界まで情報を引き出せばいい。どんな手段を使ってでも。


『聞こえるかしら、ウォルター』

『ええ、お嬢様』

『貴方は今何処にいる』

『館に向かっている最中でございます』


夜科アゲハに出会う前に念話をした時、彼は病院の近くに居ると言っていた。今から呼び戻せば到着は夜になるだろう。
夜になれば本来の力を発揮出来る、言ってしまえばレミリアが主役となる時が来る。
それまでの間に一度情報を共有し一度策を練る、そのために呼び出している。


『解ったわ、そのまま館まで来て頂戴』

『かしこまりました。それで一つ、他の参加者と接触いたしました』

『奇遇ね。私も接触をしたわ、館で一度打ち合わせが必要ね』


ウォルターはとあるアーチャー組との接触。
レミリアはこの聖杯戦争の核心に一番近いであろう夜科アゲハと接触。
夜を主とする彼女達が昼に入手した情報は決して無駄ではない。

夜が到来すればその時の主役は彼女達だ。

ならば日が落ちかけている今、彼女達は拠点である館に集合する。


  ◆  ◆  ◆


地図で表わす座標はC-6。此処は美樹さやかが住む仮初めのマンションがある場所だ。
自室のベッドに座り込むと彼女はサーヴァントであるバーサーカーの不動明に話しかける。


「あたしはほむらの提案を受け入れようと思ってる」


830 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:51:33 inUvH6Fc0


遊園地で旧友である暁美ほむらから同盟の申し込みがあった。
内容は鹿目まどかを守るためのもの。中心は美樹さやかではなく鹿目まどか。

彼女に危険が及んでいる……と推測するべきだが本当なら暁美ほむらは手段を選ばない。
同盟の期限を明日の正午まで伸ばしている。つまり鹿目まどかは緊急事態に陥っている訳ではない。

そして重要なのが鹿目まどかが聖杯戦争に参加している事実だ。

暁美ほむら同様彼女も聖杯戦争に参加しているならば。
この世界に置ける時間軸の混ざり具合は混沌と呼ぶべきだろう。

暁美ほむらは悪魔ではなく、鹿目まどかも女神ではない。


「そうか……俺はさやかとほむらの関係を知らないからな」

「話したでしょ? あいつは転校生で魔法少女で、鉄仮面みたいでムカつく奴で」

「友達、だろ?」

「……うん」


友達。
悪魔だろうと気に入らない奴であろうと暁美ほむらは友達だ。
対面した彼女が悪魔ではないのなら、道を踏み外さないように助けるのが友達の役目。
彼女がどんな状況かは知らないが鹿目まどかを中心に考えているならまだ大丈夫だ。
NPCの可能性も否めないが自分と暁美ほむら、二人の魔法少女が参加しているなら鹿目まどかが居ても可怪しくない。

それに魔法少女は他にも居る。魔力や魔術、魔法と重なる単語は存在する。
惹かれ合うのか呼び寄せられているのか。聖杯の意思とでも呼んでおこう。或いは天戯弥勒の気まぐれ。

バーサーカーも自分の提案を受け入れてくれたため安心する。
どう転ぶかは不明だが鹿目まどかに対する気持ち、暁美ほむらは嘘をつくことがない。


831 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:52:11 inUvH6Fc0


「私は信じたい、だからヤバくなった時は力を貸して」

「今更確認を取ることもないだろ。当然だ、間に合うなら何だってする」

「今、何でもって……えへへ、ありがと」


自分のサーヴァントが彼で良かった。
バーサーカーと聞くと対峙した白髪の英霊のように暴れまわる狂戦士のイメージが強い。

暴れ狂う戦士は昔の自分を思い出し、重ね、気分が後退してしまう。
考えてみれば暁美ほむらには多くの時間軸で多大な迷惑をかけてしまった。
その彼女が自分に同盟を申し込むのだ、聖杯戦争とは恐ろしいものである。

バーサーカーなのにコミュニケーションが取れる。
彼曰く宝具を発動したら危険な状態になるらしいが今一つ実感が沸かない。


『アッシュフォード学園で事件が発生しました』


テレビから聞こえる何気ないニュースの一報が彼女たちの注目を集める。
アッシュフォード学園と言えば本来通うべき場所だ。
与えられた役割を放棄して天戯弥勒の出方を伺う予定だったが現れる気配がない。
彼が取ったと行動といえばお昼に聞こえてきた通達のみ。


「その鹿目まどかって子は学園に通っているんじゃないか?」

「そうかも……でも、それならほむらが動いていると思うし」

「そうか、じゃあ学園での事件は他の参加者の仕業だろう。日本の屋上で爆発何て非日常過ぎる」

(この状況が非日常なんだよなー)

「……どうした? 学園に向かうって言うなら行くことも出来る」

「何でも、それで学園には――行かない。今行っても面倒事にしかならないと思う。
 今日はもうゆっくりしよう。夜が明けてからあたし達は遊園地に向かう。それで暁美ほむらと話す」


仮に学園での事件がサーヴァントの仕業だとして。
戦火に飛び込むのは無謀過ぎる。敵が何処に潜んでいるかも解らないのだ。
アサシンが一人脱落しているが、マスターの生存は明かされていない。
つまり、再契約を狙っている可能性もある。外を無闇に出歩いていれば危険が増すだけだ。


832 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:52:45 inUvH6Fc0


現実的に考える。常識というものだ。
事件が発生しているなら学園にもう生徒はいないだろう。
其処に今から向かう、怪しすぎる。自分が聖杯戦争の参加者と言っているようなものだ。
そうでしないにしろ、警察に不審者や犯人候補として目を付けられるのが目に見えている。


「解った。話は変えるがほむらのサーヴァント……あの老人についてだ」

「キャスターだね。正直胡散臭いしあんな悪趣味な人形を作ってる奴が良い英霊なワケがないと思う」

「ああ、裏があるタイプだ。それもドス黒い底なしレベル」


遊園地に巣食う不気味な笑みを浮かべていた老人が暁美ほむらのサーヴァント、クラスはキャスターである。
悪趣味な人形を大量生産させ徘徊させている、狂気に満ち溢れているあの光景はもう見たくない。
暁美ほむらと上手くやっているのか。関係はないが心配してしまう。


「あ」

「何か言いたそうな顔をしているな」


暁美ほむらの心配を考えて一つ、接触した時のことを思い出す。
あの時暁美ほむらはどのようにして会話していたのか。
勿論会話なのだから声を出しているには違いない。彼女だけの世界だ。


「ほむらはサーヴァントに自分のことを説明していないと思う」

「根拠は?」

「時を止める魔法のことを黙っているだって。だからあたしにも黙ってろって時間止めながら話してた」

「時間を止めながら……サーヴァントが言う台詞でもないが魔法少女も何でもアリみたいだな」

「魔法は最強、みたいな? だから多分だけどもし戦うことがあるならほむらを上手く説得すれば回避出来るかも」

「令呪の力だな。確かに自害させた後に帰還してもらえれば大分楽になる。よく思いついたな」

「そ、そう?」(自害させるとかは思い浮かばなかったけど……まぁいいか)


◆  ◆  ◆


「俺は君を守る……だから安心していてくれ」


一人呟くと間桐雁夜は寝てしまった間桐桜の身体に毛布を掛けた。


833 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:53:19 inUvH6Fc0


間桐桜がNPCとして存在している。この事実は間桐雁夜の心の闇を明るく照らす。
晴れる訳ではない。だが絶望に面している彼の精神は少し救われた。

仮の生命だろうと見た目は間桐桜そのもの。
偽物だろうと見捨てることは出来ない、最後まで守りぬくだけ。

幸いにも己の身体の調子は良く、魔力の量も確実に増えている。
天戯弥勒の言葉をそのまま受け止めると蟲の使役をした段階で身体が崩壊するらしい。
回数に制限が生まれた。元々サーヴァント頼りだが更に頼ることになる。
魔力の量が増えたことは本当に不幸中の幸いであった。

必要以上にサーヴァントを現界させず、今は霊体の状態を保たせている。
この夜時は眠る、勝負を仕掛けるなら回復した後だ。
彼の身体もバーサーカーも連戦により消耗がある。もし今戦えば余計な損傷になってしまう。

もう一度悪魔のようなバーサーカーと戦えば命の保証はない。
脱落したサーヴァントは一人、夜になれば更に戦況は加速するだろう。
無闇に顔を出さず今は来るべき時を待つのが正しい行動だ。彼はそう思っている。

警察のNPCは日付が変わる直後付近までは辺りを見回るらしい。
ならば襲撃者がいてもその時間帯は安全、或いはその存在に気付くだろう。

休むなら今。
間桐桜はソファーで眠っている。
間桐雁夜はその横に座る形で仮眠を取ることにした。
嘘や闇、血や妬みで固められた聖杯戦争、せめてこの時だけでも幸せな夢を見たいものである。

瞳を閉じた空間に見える未来は希望か絶望か。
来るであろう夜の血戦、暴れ狂う戦士が齎すのは聖杯か――それとも。






連戦を終えた虹村形兆とライダーは座標B-2にある拠点に戻り休憩を挟んでいた。
休憩と言っても通っている予定になっていた学園のニュースを見れば安らぎも得られない。


834 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:53:48 inUvH6Fc0


「天戯弥勒の声が聞こえたと思えば学園で爆破、おいおい日常ってのはないのか?」

「コイツは戦争だ。しかも時間はそう掛からねえぞ、脱落が一人ってのは遅え」

「落ちたのはアサシン……暗殺者が最初に落ちる? 馬鹿かソイツは。
 どんな奴かは知らんが最初に落ちた奴だ、どうせ大した英霊でもないんだろ」


天戯弥勒の声から判明した参加者の人数、そしてアサシンの脱落。
隠密に重点を置くアサシンが最初に落ちる予想はしておらず、結果として面を喰らう。
溜息混じりに話す形兆、吸血鬼にサキュバスとお伽話のような相手と戦っていて疲労が溜まっていたのだろう。
愚痴のように見たこともないアサシンについてボロクソ言葉を紡ぐ。


「先入観で総てを決め込むたぁ随分な言い回しじゃねえか……。
 英霊ってのは何かしら『証』を立てた奴だ、その英霊に大したこと無えとは冗談が過ぎる」

「……気にでも触れたか?」

「勝手に決め込んでると足元救われっぞって事だ」


ライダーの発言は正論だ。返す言葉が見付からない。
結果論ではあるがアサシンは例えば、例えの話として激戦の果てに死んだ可能性がある。
スタンドやサーヴァントが入れ乱れる問答無用のバトルロワイアル、その最中に死亡した。
そう仮定すれば口が裂けても雑魚とは言い切れない。
しかし考えれば考えるだけ無駄、言ったもん勝ちの思いもん勝ちである。

ライダーはテレビを見つめると一つ話を零す。


「行ってみるか、此処」

「今行けば確実に面倒事になるだろうが、それにお前は連戦で消耗してる」

「テメェの言葉どおり休憩してんだ、それでも不服か?」

「聖杯戦争ってのは時間が掛からない、そう言ったよな?
 だったら少しでも休める時に休むってのが定石だろ、今は敵が近くに居ない」

「口ばっかり回るじゃあねえか形兆……まぁテメェも魔力使ってんだ、休んどけ」


喧嘩を売るわけでもない。ライダーはただ甘く見ている形兆に忠告をしただけ。
それに状況を甘く見ている訳でもなく、彼らは休息を、体勢を整える手段を選ぶ。

夜が来る――黙っていても宴《イクサ》に呼ばれると確信しているから。











多くの参加者がアッシュフォード学園に関するニュースを見ているなら。
病室で寝ている浅羽の部屋に流れていても何ら不思議な事はない。


835 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:54:07 inUvH6Fc0

点滴を受けベッドで横になっている浅羽はその意識を眠りに委ねる。
移動中の救急車の中で既に疲労とPSI粒子の効果が作用し彼の脳には絶大な負担が掛かっていた。


(経過した時間から計算して日付が変わる前には起きる)


ベッドに腰掛けていた状態から立ち上がり空を見つめるアーチャー。
思えば浅羽は空をよく眺めていた。
その眼差しは憧れや理想といった崇拝的な心は宿っておらず、何処か寂しさを残していたような。
その瞳を潤いで満たすには聖杯の光が必要になるだろう。
過程はどうであれ手にした者の願いを叶える唯一無二の存在である聖杯、手に取れるのは一人のみ。

天戯弥勒の通達を受け一人の脱落を確認したが残りはまだ十三組存命している。
脱落した情報もアサシンのみであり、マスターの生死は明かされていない。
何処かに息を潜め、再契約を狙い嗅ぎ廻っている可能性もある。

窓の縁に腕を置く。遠くを見つめるように、蒼い空を。
この空の向こうには何が存在しているのか。それは宇宙だとか地平線の話ではない。
創られた、或いは用意されたこの架空世界は現世から切り離されているのだろうか。

外からの干渉を受けない孤島の離島、聖杯戦争《殺し合い》には丁度いい。
NPCと呼ばれていても所詮は日常の演出に過ぎない彼らは害ではなく無と表現しよう。
敵は他の参加者のみ。アーチャーが出会ったのは三組、六人ではないが。

一人は老人、もう一人は少女とバーサーカー、更にバーサーカーと白い男。
全参加者は十四組であり人数で表記すればその数は二十八。
その中の五人と接触しているのは運が良いのか悪いのか。

アーチャーは知らないが他の参加者と接触していない者も存在するため恵まれている。
これまで主な魔力を消費せずに他参加者の情報を持っている参加者の数は極端に少ない。

(これからどうするか、起きたら天戯弥勒の話をしないと)

一度情報を整理しよう。
踵を整えながらアーチャーは通達を思い出す。
天戯弥勒の姿は見えなかった、しかし声は確かに聞こえた。
反響するかのように脳内を駆け巡った音声、眠っている浅羽には聞こえたのだろうか。
その確認を踏まえ、目が覚めたら一度相談の意味合いも含め通達の話をする必要がある。


836 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:54:36 inUvH6Fc0


天戯弥勒の言葉を信じるなら再三繰り返すが脱落したのはアサシン、参加者は十四組。
そしてアーチャーが出会ったサーヴァントは二人の狂戦士である。一人は目撃に過ぎないが。

本来の聖杯戦争は七騎のサーヴァントを招ねき欲に汚れた人間の戦いである。
今回のサーヴァントは十四騎、正規よりも倍の数に膨れ上がっているのだ。
出会ったサーヴァントが既に狂戦士、それも二人。招かれているサーヴァントは各クラス二人ずつと考えられる。

暗殺者が減った事実は生身の人間、自分のマスターを含む魔術師とは関係ない存在にとって明るい話題だろう。
気配を消され後ろから生命を狙われる。常に恐怖と戦う心境は度が過ぎれば精神を壊してしまう。
夜が来れば尚更人間の恐怖心は煽られ、正常な判断が下せないかもしれない。
通達の内容が真実であればの話だが、此処で嘘をつくメリットもなく、この情報は前向きに捉えるべきだろう。


天戯弥勒の真理は解らない。答えと言えばマスターの病状も不明である。


この地特有の風土病などと説明されたが、天戯弥勒が用意した世界ならばこの病状は彼からの贈り物《嫌がらせ》かもしれない。
発熱を含むその症状は確かに風邪の位置付けは可能であるが不自然とも捉えれる。
第一に世界の場所が解らないこの架空世界で『特有』など信用出来る物ではない。罠か何かだろうか。
しかし点滴を行っていると浅羽の顔色は元に戻り始めているため本当に風邪なのかもしれない。

疑いを重ねればこの点滴そのものが一種のウイルス的な可能性もある。
小さな疑問が幾つも重なりやがては大きな壁となること。
情報が少ないこの状況で解を求めるのも無理な話だが一度、他参加者と会話が必要だろう。
人が変われば視点も意見も総てが異なり、己の意識に対して他者の介入は時として思いもよらぬ収穫があるかもしれない。

浅羽の状況にもよるが目を覚ましたら一度、外を出歩く提案を決意。
彼の精神的負担も考えて外の空気を吸う意味合いも重ねて一度打診してみるべきか。

他の参加者に出会い、会話或いは同盟が組めれば御の字。
例え戦闘に発展したとしても此処は聖杯戦争、一度の戦闘も行わずして勝ち上がれる程甘くはない。
この身でマスターを守り聖杯を捧げる。それが従者、サーヴァント。


(謎の症状と浅羽くんの力……天戯弥勒……聖杯戦争……PSYREN……。
 必ず共通点はあるはず。だけど、今は点同士が独立していて線にならない。
 夜に出歩いて他の参加者と接触すれば答えに近づくかもしれない。やってみる価値は――ある)


837 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:57:07 inUvH6Fc0



【A-4/エレン自宅(マンション)/一日目・夕方】


【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]
[令呪]残り3画
[装備]立体機動装置
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り巨人をこの世から駆逐する。
0.夜になったら外出する
1.今後の方針を考える。
2.明日になったら登校する。
3.生きている人間を……殺す?
[備考]
※アッシュフォード学園中等部在籍予定です。
※天戯弥勒の通達を聞いていません。
※学園の事件を知りました。


【アサシン(ジャファル)@ファイアーエムブレム烈火の剣】
[状態]
[装備]
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:獲物を殺す
1.夜になれば戦闘を開始する。
2.甘さは捨てろ……。
[備考]
※ランサー(レミリア)、ウォルター及びライダー(白ひげ)、虹村形兆の姿を確認しました(名前は知りません)
※奇妙な兵隊(バット・カンパニー)を視認しました。
※公衆電話の異変を感じ取りました。
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※学園の事件を知りました。


【B-3/一日目・夕方】


【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]ダメージ(小、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く
1.夜になるまでは拠点で休息
2.ウォルターと合流後、今後の方針を決める
3.アッシュフォード学園に使い魔を……?
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※夜科アゲハを確認しました。
※天戯弥勒がサイキッカー(超能力者)と知りました。


【C-5・市街地/一日目・夕方】


【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.館に向かう
2.アシュフォード学園内での情報集手段の模索
3.アシュフォード学園近隣で監視に使えそうなポイントの捜索
[備考]
※浅羽、アーチャー(弩)を確認しました。


[共通備考]
虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。
発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。


838 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:57:30 inUvH6Fc0


【C-6/自室/一日目・夕方】


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.明日の正午までに暁美ほむらへ回答する。
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。


【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.さやかに従い行動
2.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
3.マスターを守る
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。


[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※暁美ほむらとの交渉『鹿目まどかを守るための同盟』の回答期限は2日目正午までです。
※キャスター(フェイスレス)を確認しました。
※学園の事件を知りました。
※夜は眠る方針を取っています。


【D-4・間桐邸/一日目・夕方】


【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、精神的消耗(小)、魔力消費(小)、PSIに覚醒
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2.夜は外を出歩き敵を探す。
3.蟲の使役に注意する。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※お茶は戦闘を行ったD-4の公園に放置してきました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
2.マスターを休息させる
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲などに残っている可能性はあります。


839 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:58:09 inUvH6Fc0


【B-2/自室/一日目・夕方】


【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(小)、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
0.吸血鬼の次はサキュバスかよ…
1.休養後、夜の戦いへ備える。
2.登校するかどうかは気分次第。
3.そのうち海に行ってみるのもやぶさかではない。
4.公衆電話の破壊は保留。

[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。


【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]ダメージ(中)、疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.行動に移すべきと考えているが…
2.麦わらの男が気になる。
3.いずれ海に行きたい。
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。


[共通備考]
※ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。
※アーチャー(モリガン)と交戦、宝具『闇より出し幻影の半身(アストラルヴィジョン) 』とサキュバスであることを把握しました。
※B-2近辺にこの世界における自宅があります。


【C-7・病院/一日目・夕方】


【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]気絶
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得を目指す
[備考]
※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。
※学園の事件を知りました。


【穹徹仙@天上天下】
[状態]健康
[装備]NATO製特殊ゴム
[道具]ダーツ×n本
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を目指す
1.目覚めを待つ
2.浅羽の体調が戻ったら今後のことを話しあう(夜の提案をする)
[備考]
※学園の事件を知りました。

[共通備考]
※美樹さやか、不動明、間桐雁夜、一方通行の戦闘を目撃しました。


840 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:58:26 inUvH6Fc0

   ◆  ◆  ◆


『やぁやぁやぁ、みなさん。こんにちはとでも言おうか』


『こんばんはでもおはようでもいい。業界用語でも何でも、ね』


『今回の幕間は僕が担当する。こんな所で僕を見れるなんて君たち最高に憑いてるぜ?』


『こう書けば凄い球磨川くんみたいだぜ……って前置き的なのはこの辺にしといて』


『昼の舞台は学園パートを主体とした所謂キャスターの企みが目立っていたね』


『心を操る下衆な能力……僕の数は自慢な能力の中にもあるけど。強いぜ? 個人的には使わないけど』


『学園都市の超能力者同士の対決はまさかの結末。本来なら有り得ないだろう物語が展開されるのが聖杯戦争さ』


『誰も結末を知らない。知っているなんて言ってる奴は妄想を吐き出しているだけの奴だから相手をするな……話が逸れたね』


『さっきまで短いスパンでスポットが当てられた役者の多くは夜に行動を開始する方針を取った』


『昼の主役が学園に通う学生なら、夜はその他……役者の演目が変わるってこと』


『だけどこの物語には筋書きが存在しないんだ。でも全部がアドリブって訳でもない』


『予定よりも遅く幕が上がった今回の物語、筋書きはありきたりかも知れないけど《役者》が素晴らしい』


『舞台に上がっている役者は誰もが一級品さ。眩しいぐらいに、ね』


『だからもしも君たちに時間があるなら最後までこの物語と役者達を見届けて欲しい。それで最後に最高の拍手喝采――なんてね♪』


『何もこんな事を言うために僕は出て来たんじゃない。此処は後書きじゃあないんだ。次から始まる学園の物語、人吉善吉くんの行く先が気になる』


『なんせこの舞台には主人公が存在しないからね。生き残るには《神様の気まぐれ》がとても重要になってくる』


『ただ――こんな所で終わる男とは思っていないけどね』


   ◆  ◆  ◆


841 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:58:49 inUvH6Fc0

少しだけ吹いている風が男の髪をそっと揺らしている。
この風、弱々しいがやがて嵐となり戦場を荒れ回すだろう。
そしてその時は今、校庭に立つ戦国武将と到着したセイバーが睨み合う。


「まった会ったな……仲の良い兄ちゃんはどうした?」

「アゲハか? アイツはどうしようもねえ野郎だった。だからマスターを変えた」

「……詳しくは聞かないけどよ、人吉だっけ。お前が新しいマスター?」

「リベンジマッチと行こうぜ戦国武将、屋上からぶん投げられた分のな」


以前ランサーとセイバーが戦った時、セイバーの隣に居たのは夜科アゲハだった。
人吉善吉ではなく夜科アゲハ、前者はサーヴァントを失っていた。ならば再契約と考えるのが妥当である。
しかし夜科アゲハとセイバーの仲は良好に見えた記憶がある。従者と主の関係ではなく対等的な関係だった。

喧嘩別れなら納得出来ような気がするが果たしてそれは良いことなのだろうか。

「投げたのは悪い。けど怪我しなかったろ?」

「結果論じゃねえか! 痛かったんだよ!」

「ちゃーんと計算して投げたんだ、許してくれ」

ランサーが人吉を屋上から投げたのは再度キャスターの魔の手に掴まされないため。
もう一度操られてしまえば心の傷は深くなり立ち上がれなくなるかもしれない。

「計算ってマジかよ……」

「おいおい、納得すんなって」

ランサーが想像よりも頭が回る男で戸惑う人吉とは対照的に平常心を保つセイバー。
その服は黒いセーラー服に変わっており学園ということも相まって女子高生に見える。
一歩踏み出し前に出ると敵に言葉を吐く。

「お前キャスターの味方なんだよな?
 人吉がどうなったか知ってるだろ、それでも味方のままでいんのか?」

他者の心を操るキャスター。
実際に見たことはないが人吉から話は聞いてある。
自分にサーヴァントを自害させる行い。外道と呼ぶ他に何があると言うのか。


「……一度結んだ同盟はそう簡単に切れないさ」

「戦国武将が言うと深く聞こえるな、でも……分かったよ――テメェはあたしの敵だ!」


言葉を言い切る前に一歩二歩と踏み出しそのまま加速するように走る。
右手に握るは彼女の代名詞である片太刀バサミ。それを斜めに斬る。

ランサーもまた武器である刀を振り回す。
身の丈以上あるその刀の扱いは振り回すと表現しても差し支えない。
両者に到達する前に武器は重なりランサーが言葉を回す。

「敵は元々之は聖杯戦争。相手になるのは問題ないってなァ!」

「否定しねえよ、あたしはただそのキャスターって奴がムカつくだけなんだよォ!」

一歩引くともう一度踏み込み再び武器が重なる。
均衡状態、両者退かず何度も何度も己の武力を振り回す。


842 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:59:13 inUvH6Fc0

均衡状態から流れるように左へ移動するセイバー。
前に身体を押しこみ脇腹を斬り裂くように鋏を振るうもランサーは防ぐ。
地面に刀を突き刺し己の身体の自由を確保した上で鞘でセイバーを吹き飛ばす。

身体に鞘の一撃を受けたセイバーは大地を数回転がるが立ち上がり血を吐く。
傷は深くもなければダメージの蓄積もありゃしねえ――片腕を構えると彼女は吠えた。

「テメェを倒さなきゃキャスターの所へ行けねえ邪魔すんな!
 それでも戦うってんなら早く終わらせる、人吉がケリ着けられないから――人衣一体!」

赤手甲の栓を抜くと彼女の身体は神衣である鮮血と同化する。
サーヴァントであり宝具であり人間であり服でもあるのが彼女達。
血《繊維》はセイバーの身体を巡り回って彼女はそれを纏う。
身体の露出は増えようと恥ずかしさはない。ありのままの姿を恥じる必要など無いのだから。

「神衣鮮血!」

之がセイバーの宝具であり彼女の戦闘スタイルであり纒流子である。
鋏を肩に乘せ人吉に一度視線を移した後、ランサーの方に向き直す。

「戦国武将だか何だか知らないけど歴史に眠ってろおおおおおおおおおおお!」

「サーヴァント何だから一緒だってのッ!」

鋏を上げず大地を削りながらランサーの元へ走るセイバー。
対するランサーは刀を構え迎撃の体勢に移行する。
その姿に隙は存在せず、正面から一撃を加えるには厳しいだろう。

「ッラァ!!」

隙がないなら創ればいいだけのことだ。言葉にするぐらいなら実行しろ。
鋏を勢い良く振り上げると同時に自分は高く飛翔。
空中では身動きが取れなくなる。ランサーはその隙を狙い刀を振ろうとするが思わぬ攻撃を受けた。

「す、砂」

大地から振り上げられた鋏は砂塵を纏いランサーに襲い掛かった。
ダメージは与えられないものの戦場において視界を奪われるのは行動に多大な影響を及ぼす。
前が見えないランサーだがセイバーが上空に上がったのは覚えている。
そして影も見えているのだ、刀を鋏が来るであろう場所に構えた。

「防ぐとはやるじゃねえか、卑怯とは言わせねえからな?」

「そうかい、そうかい。面白い奴だなァ!」

セイバーの一撃を防いだランサーはその体勢のまま刀を押し出し均衡状態を崩す。
その後踏み込み斬り裂かんと刀を振るうがセイバーも同じ考えを持っていた。
再び鍔迫り合う二人の英雄。両者一歩も退かずこの状況に対して笑みを零していた。

「これがサーヴァント同士の戦い……」

人吉善吉は思う。彼らは本当に人間の枠を超えている存在だと。
彼の周りにも飛び抜けている異常者達は存在していたがどうも解り難い存在だった。
能力的に考えて《凄い事実は解るが実際どの程度凄いのかよく解らない》人達が多かったのだ。
戦闘を行っているサーヴァントの強さは説明不要の能力でありとても解りやすい。

「此処から離れる訳にはいかねえ、けどキャスターの奴も探さないと」


  ◆  ◆  ◆


843 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 06:59:35 inUvH6Fc0


食堂にて羽を休ませる犬飼伊介とそのサーヴァントであるキャスターこと食蜂操祈。
宝具の使用は魔力の消費を伴う。
それは宝具以外でも適用されサーヴァントはマスターの力無くして力を発揮出来ない。
補うスキルや能力を持っていれば話は別だが生憎キャスターは持ち併せていない。

「ニュースになってるけど警察やマスコミが中に入って来てないのは?」

「聞かなくても……解るよね☆」

キャスターの宝具は他者の心を操る力。
彼女は外の人間に対して学園に干渉しないように手を回していた。
勿論総ての人間ではなく命令権利等を所有している一部の管理職や現場指揮官のみだ。
全員に使っていては魔力の消費と実績が噛み合わず最後には馬鹿を見てしまう。

マスターである犬飼伊介は思う。
この女はあろうことかマスターである自分を見捨てて一度逃走しているのだ。
アサシンが知り合いだったらしいがそれを理由にするのもどうかと思う。
カップを揺らしながら中を見つめる。黒い、キャスターの心も黒いのだろうか。
根まで黒い人間には見えないが一度裏切られた事実は重く心に残っている。
サーヴァントは人間の事を軽く見ているのか、そんな疑問まで生まれてくる。

「あ、ランサーがセイバーと交戦……っ」

携帯の画面を見て呟くキャスター。
洗脳した生徒から携帯を貰い受け情報収集をさせている他の生徒から連絡が入った。
中身は校庭にてランサーとセイバーが交戦を開始した旨、書かれている。

報道の影響から他の参加者が来る事を予測したキャスターはランサーを校庭に配置した。
理由は単純であり目立つから。中を散策するよりかは目立つだろう。
案の定セイバーが釣られ戦闘が開始したのだ、頃合いを見て伺ってみようか。

そう思っていたが状況は思ったよりも奇妙になっていた。

「どうしたのはーと」

「セイバー……纒流子のマスターは夜科アゲハから人吉善吉に変更されたって」

天戯弥勒の通達から明かされた十四の参加者。
正規の数は七。その倍である今回の聖杯戦争は各クラス二名と考えるのが自然である。

セイバーは緑の剣士と学生のような女の二名、顔は割れている。
前者は既に学園から出ているとの情報がある。そこから先は掴めていないが。
後者であるセイバーは一度ランサーと交戦経験があった。
血気盛んと呼べばいいのだろうか、再戦にしては早過ぎる。


844 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:00:07 inUvH6Fc0


「人吉善吉……アサシンのマスター?」

「あいつ……生かしといたのは失敗だったかな?」


夜科アゲハが何処かへ消えたかは不明だが人吉善吉は纒流子の新たなマスターになったようだ。
サーヴァントが失われてから六時間は生命の保証がある。
その猶予の中で新しい契約を結ぶことは可能だ、寧ろ願いを求めるのだ、そのぐらいの意地を見せろ。

「まぁいいや☆ ちょっと行ってくるねー」

席から立ち上がったキャスターは演技のような笑顔をマスターに向け手を振った。
そのまま扉へ向かい、言葉から察するに校庭に行くようだ。

「ちょ、ちょっと――」

「何かの外部因子で記憶が戻って私の事を話されたら面倒でしょ?
 だから先手を打って戦闘中にもう一度心を操って自害させるの――邪魔しないで?」

「――っ」

それだけを言い残し扉から出て行くキャスター。
その言葉には軽い意思は籠もっておらず真剣其の物――記憶の有無はサーヴァントにとって脅威だ。
真命から対策を練られては太刀打ちの仕様がないのだ、キャスターならば尚更である。
正面からの戦闘に向かない魔術師は決して己の素性を明かしてはならない。

勝ちたいのだろう?
生き残りたいのだろう?
醒めない夢を見ていたいのだろう?
願いを叶えたいのだろう?

ならば最後まで手を抜かず戦い抜けろ。

「……そんな目が出来るなら裏切りみたいなことしないでよ」

   
   ◆  ◆  ◆


845 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:00:42 inUvH6Fc0


学園の近くまで来ていたのはタダノと鹿目まどか。
両者の共通点と言えば同じ聖杯戦争の参加者であり同盟も組んでいる。
故に一緒に歩いていることに問題は存在しない。

「もう一度聞くけどいいんだね、まどかちゃん」

「はい。私はいつも誰かの後ろに隠れていました」

喫茶店にて会話を行った時、タダノは事件があった学園に向かうと言った。
警察という与えられた役職柄、向かう必要性が生まれたが何も理由はそれではない。
犯人は犯行現場に戻る――でもないが、確実に誰かは学園に来るだろう。
或いはそのまま潜んでいる可能性もある。つまり敵が居るのだ。
黙っていては何も始まらない。行動を起すべきだ。

その点では鹿目まどかにとって辛い出来事になるだろう。
聞けば彼女は聖杯戦争に巻き込まれた参加者だという。
殺し合いの強要をさせられているようなものであり、中学生には辛い環境を強いられている。

だが彼女は内容こそ明白にしないものの、言葉や表情から何か《裏》を感じさせる。
まるで似たような体験をしてきたかのように、現実は甘くないことを知っているようだった。

「でも自分から動かないときっと後悔するって……ライダーさんを見て思ったんです」

「分かったよ、ただ気を付けてね」

中学生で今を未来の為に動く、後悔しないための選択を視野に入れる子は中々いない。
鹿目まどかは違う、彼女は魔法少女の運命に巻き込まれているから。

「……あんな風にならないためにも、ね」

バイクをノーヘルメットで乗っていた男女二人を見ながらタダノは笑う。
これから向かう先は闇が巣食う魔の学園だが行く前から気負う必要はない。
場を和ませるのも大人の仕事……犯罪者だが今の男女には助けられた。


846 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:01:10 inUvH6Fc0


「学園はどうやら明日は普通にあるらしい。信じられないね」

署からの連絡では学園の復旧作業は今夜の内に終了するらしい。
正直に言って有り得ない。着工までの間が短すぎる。常識の欠片もない。
この世界の治安管理はどうなっているのか。天戯弥勒が創りだした世界なら彼が管理しているのか。
だとすれば納得が出来なくもないが、NPCの存在性を疑う。

「爆発が起きた学園には行きたくないですよね……」

困ったように笑う鹿目まどか。
登校禁止が当たり前だが学園側の判断に理解を示すことが出来ない。
たしか生徒会長はミレイと鬼龍院皐月と呼ばれる二人の女性が担当していたはず。
前者は外国に行っているらしいが後者は規律を守る人間であると聞いている。
そんな彼女なら明日は休校日にすると思う。ここまで考えて鹿目まどかは気付く。

(生徒会長さんがそんな権利持つ訳ないよね)

当然である。
だが彼女達のオリジナルは方向性は違うが決定権に近いナニカを握っていた。
両者が揃ってイエスと言えば大抵の事はどうにかなるだろう。







などと会話をしている間に学園前まで到着した。
感じられる魔力からサーヴァントが居るのは確実だろう。
それも聞こえてくる音は戦闘のモノであり複数いると予想出来る。


847 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:01:31 inUvH6Fc0

「じゃあ行ってくる!」

「え、ええ!?」

戦闘に刺激でも受けたのか霊体化していたライダーは許可も得ずに走っていた。
校門を抜け戦闘が起きているであろう校庭へ一直線だ。

「タダノさん。す、すいません……」

「頭が痛くなる話だけどまどかちゃんは悪く無いからね」

正直に言えば馬鹿な男だとは思うが口にはしない、出来ない。
直感的に動くライダーは生前も世界を駆け巡っていたのだろうか。
猪突猛進勇猛果敢。流石は英霊、怖いもの知らずといったところか。

「あら魅力的な男性ね」

「ふぇ!?」

「心配しないで。僕のサーヴァント、アーチャーさ」

新たに現れたサーヴァントはアーチャー。
鹿目まどかは突然の襲来に驚くもタダノサーヴァントと知って安心する。
タダノからは別行動を取っていると聞いていたが合流したようだ。

「僕はこれから学園の中に入る。アーチャーは此処でまどかちゃんと一緒に待っていてくれ」

「私はダメかしら。宴に混じりたいんだけど?」

「危険になったら呼ぶからその時は来てくれ」

「わ、私も一緒に行きます」

「いや、危険だからちょっと見てくるだけさ。だから此処で待っていてくれ」

「男の人のちょっとはあまり信用にならないけど……いってらっしゃい」

流石に鹿目まどかを一緒に連れて学園に入るのは気が引ける。
そもそも彼女はタダノに出会わなければ恐らく学園に向かう選択をしなかっただろう。
責任を感じているわけでもないが、危険を調べてからでも遅くはない。

「それと一つ言いたいことがあるの」

背を向け歩き出していたタダノをアーチャーは止めた。
何だ、そう思い振り返る。
返ってきた言葉は予想出来ていなかった。

「さっきすれ違ったバイクの男女、聖杯戦争の参加者よ」

「……もっと頭が痛くなったよ」


◆  ◆  ◆


848 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:01:54 inUvH6Fc0


「何だか疲れたね」


バイクを止め休憩する紅月カレンとセイバー。
今の学園に居座るのは危険過ぎる。
精神を乗っ取られては安心して過ごすことが出来ないから。

加えて天戯弥勒の通達もある。
一度何処かで情報を整理しなくてはパンクするだろう。
パンクしてしまったらもう一度走りだすには時間が掛かる。

この夜で一度深く聖杯戦争について考えなくては――。


【B-3/アッシュフォード学園外/一日目・夕方】


【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]疲労(中)、魔力消費(中) 、脇腹に切り傷(止血済み)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.ひとまず学園から離れる。
2.食蜂操祈に強い敵意。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※学校内での自分の立ち位置を理解しました。
※生徒会の会計として所属しているようです。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。



【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(小)
[装備]なし
[道具]バイク(盗品)
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
2.ひとまず学園から離れる
3.消耗を補うためにマスターを休息させるが、最悪魂喰いも…?
[備考]
※マスター同様。
※どこへ向かっているのかは後続の方にお任せします。


849 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:02:34 inUvH6Fc0


「もらったああああああああああああああああああああああ!」

「そうはさせねえェ!」

鞭のように鋏を自由自在に振り回すセイバーの一撃を防ぐランサー。
セイバーは足を振り上げ一歩踏み込むと鋏を左から右へ斬り裂く。
この攻撃を後退することで避けたランサーは突きの要領でセイバーの左肩を貫いた。

「ぐッ!」

「もらったのはこっちだぜッ!」

「でも捕まえた、ぜ?」

左肩から刀を抜くランサー。その瞬間をセイバーは見逃さない。
彼の右肩を斬り裂こうと鋏を振るうが之も回避されてしまう。だがランサーの体勢を崩すことには成功した。
彼女はそのまま前進すると頭突きをかまし、よろけた体勢に追い打ちを掛けるようにタックルをかます。

ランサーに尻もちを付かせると彼女は跳躍からの斬り下ろしを仕掛ける。
だがそう上手く連撃になる訳もなくランサーは之を回避すると足払いで彼女の体勢を崩す。

そのまま走り刀を回収すると構え直し彼女の出方を伺う。

「大丈夫か流子?」

「心配すんな鮮血。あたしの頑丈さは知ってんだろ?」

「そうだったな……来るぞ!」

鮮血と軽口を叩いていたがランサーの方から仕掛けてくるようだ。

思えば纒流子は無傷で勝利したことがない……ある。
だが彼女は多くの戦いで血を流し限界を超えて戦ってきた。
今更この程度の傷では止まらない。故に心配などいらない。

「前から気になっていたけど誰と話してんだ?」

流れる斬撃を鋏で防ぐ。

「気にすんな。それよりもテメェの心配をしろ!」








「心配するのは貴方☆」







声に反応し後ろを振り返ると一人の女子高生が居た。
だが感じる魔力から――キャスターだ。


850 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:02:59 inUvH6Fc0


「テメェの噂は聞いてるぜ、クソ野郎の魔女野郎だな?」

鋏を向け敵意を全開にする纒流子。

「よぉ、リベンジマッチと行こうぜキャスター……ッ!」

己の不甲斐なさを思い出し怒る人吉。
今の彼にはアサシンの仇を取る使命がある。簡単には負けられない。

「……俺に任せるって話じゃなかった?」

「来ちゃった……だって人吉くんがいるんだもん☆」

キャスターの目当ては人吉善吉である。
彼の心を再び折るため彼女はわざわざ校庭まで足を運んだのだ。

「俺はお前を倒す……だからセイバーと契約を交わした」

「嘘つき」

「アゲハには悪いことをしちまったけど……しょうがない。
 願いを叶えたいのは俺も一緒なんだ、アイツの分も俺は――は?」


「嘘でしょ。貴方はセイバーと契約何て交わしてない」


キャスターの発言により心が固まる人吉善吉。
彼の思考は《やらかしたことがバレてしまい焦っている》時に似たような感覚に陥っていた。
何故キャスターはセイバーが偽りのサーヴァントだと見抜いたのか。

「おいおい、急にハッタリかますのk「残念だけど操るだけじゃなくて覗ける力もあるの。舌噛みきって死んで☆」」

















キャスターの宝具によって心を操られた人吉善吉。
その内容は舌を噛みきって死ね。

己の意思は欠片も残らず涙を浮かべそうになりながら口を開ける。
駄目だった。アサシンの時と同じで。何一つ成果を得ることが出来なかった。
このまま死ぬ。デビルカッコ悪い……今となっては総てが夢のようだった。
無かったことにしたい。そしてもう一度めだかちゃんと……?

「口開けろやああああああああああああああああああ」

気付けば纒流子は人吉善吉の口へ両腕を突っ込み、歯が到達するのを防いでいた。

「どうやったら元に戻せるか知らねえ! けど諦めてんじゃねええええええええええ!」


851 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:03:35 inUvH6Fc0

ランサーとの戦闘を放棄しマスターの救援に向かった纒流子。
人吉善吉は彼女のマスターではない。だが見捨てる理由にもならない。
ダチだ。コイツはアゲハのダチなんだ。なら悪い奴じゃない。死ぬな。諦めるな。

対処法や解除方法は一切知らない。
出来る事と言えば舌を噛み切らないように力で防ぐだけ。

だがこの方法では永遠に解決は生まれない。時間が過ぎれば何とかなる保証もない。
それにこの場には彼がいる。故に背中を晒し続ける事は死を意味する。

「ちょっと待ってろ戦国武将! こちとら取り込んでんだ!」

「戦場で言い訳すんのか、纏?」

刀を構え一歩、確実に一歩ずつ近づくランサー。
セイバーの言いたいことは解る。
人吉善吉の状況も理解している。
キャスターが気に喰わない奴なのも当然知っている。

それでも戦場で敵に背中を晒す相手に情けなど必要もなく彼は無言で彼女達を見つめる。

「怖い怖い☆」

リモコンを持ちながら笑うキャスター。
此処まで総てが自分の思う通りに進んでいるのだ、笑みも零れる。
アサシンが垣根帝督だった時、彼女は死を感じた。
圧倒的戦力差。貧弱な彼女が一時的とはいえあの一方通行を超えた男に勝てる理由など存在しない。

それは学園都市の話であり聖杯戦争にはマスターの足枷が存在する。
彼女の力は対魔力を持っているサーヴァントには無意味だがマスターは例外だ。
それこそ学園都市の高位能力者でもなければ不可能である。
結果として彼女が知る限りでは自分が下手を撃たなければ基本は勝てるのだ。

「見損なったぜ戦国武将! 教科書から消えろ!」

「……」

「見りゃわかんだろ!? テメェの相手してる時間はねぇ!」

「……」


852 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:04:07 inUvH6Fc0

「人吉を死ねせたくねえんだよ! コイツは仇撃てなくてもそのまま帰してやりてえんだ! 邪魔すんな!」

「ひへろらろい!」(逃げろ纏)

纒流子の言葉は戦国武将であるランサー前田慶次には届かない。
最も彼は彼女の敵であり従う道理はない。寧ろ敵を殺すチャンスである。
この好機を逃す程彼は馬鹿ではない。

「やっちゃえー☆」

他人ごとのように傍観者を気取るキャスター。
口からは野次が溢れ我関せず。総ての発端は彼女に在るというのに。
之ぐらいの事を流せないとお嬢様の頂点には登れないのだろうか。

「これで一組消えることになるのね……残るは十三く――みッ!?」

「か、雷か!?」

キャスターはこの後の展開を考えていた。人吉善吉が死ぬ前提で。
しかし訪れたのは彼の死ではなく白い雷が流星のように彼女の腕を貫いた。
傷などの影響は発生していないがリモコンを落としてしまい人吉善吉の心が開放された。
何処から狙撃された、犯人は誰だ、この状況は何だ。

夜科アゲハが流星のような能力を持っていることは既にしっていた。
だが彼の力は黒であり白ではない。そもそもこの場には見当たらない。
ならば一体誰がキャスターを攻撃したのか。答えは登場と共に明かされる。


「これ以上貴様は放置しておけん。恥を知れ魔女め」


彼女の存在を纒流子は知らない。
故に何が起きているか理解していない。

彼女とは一度だけ会ったことが在る。
しかしそれがどうした。人吉善吉は状況を理解していない。

前から好きになれないタイプだとは思っていた。
理解は出来るが受け入れたくない現実がキャスターを襲う。

来ると信じていた。
「変に話せばキャスターにバレるからなぁ。よく動いてくれた」
ランサーは彼女が動くことを待っていた。


「伝える方法は他にもあっただろう。このたわけが」

名を朽木ルキア。
今宵の聖杯戦争では前田慶次のマスターとして聖杯に招かれた。




キャスターの腕を貫いた白い雷はその現象通り白雷と呼ばれている。
死神の力は無い。しかし戦える力が無いとは一言も言っていない。

「助かった……ありがとうな」

「礼はいらん。私もキャスターには腹が立っていた所だからな」

人吉善吉の礼を受けるも彼女は顔色一つ変えずにキャスターを見つめている。

「おかげで俺も動けるぜ――行けるか纏?」

「当然よ。一撃で終わらせてやらぁ」

ランサーもキャスターが行っている悪行を快くは思っていなかった。
他者の心を操る能力。存在自体は納得可能な範囲であるが悪用に回すのは別の話。
しかし彼女は操るだけではなく心を覗く力も持ち合わせていた。
下手にマスターと会話すると情報が漏れてしまい取り返しの付かない状況を招いてしまう危険がある。
警戒しといて正解だった、ランサーは己を心の中で少し褒めていた。

「ランサーよ。お前の考えは解ったが……まぁいい。まずはキャスターが先だ」

「おうよ! 説教なら後で幾らでも聞くからさ。
 そんじゃキャスター、ちっとばかし痛い目見るとするか!」


(勝手に仲が直った、みたいな空気だしても知らないのこっちは!
 この状況はヤバイ……打開策が見当たらない)


キャスターの想定では人吉善吉殺害後にランサーがセイバーを倒せば総てが終了するはずだった。
蓋を開ければ人吉善吉は生存、ランサーとの同盟は破棄されたと見て問題ない。
正面からの戦闘では三騎士に勝てる奇跡も存在しない。


853 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:04:28 inUvH6Fc0


「一つ聞きたいことが在る。どうして報道関係者が学園内にいないのだ」

朽木ルキアはこれから消えるであろうキャスターに問を投げる。
一般的な社会ならば学園の爆発事件を取り上げない、なんてことは起きないであろう。
之も宝具の影響なのか。朽木ルキアは尋ねた。


「ええ。変に人が増えたら大変でしょ? 私も貴方もみーんなも☆」

「此処に来てまで猫を被ると言うのか……」


キャスターの態度に頭が痛くなるが本質は違う。
報道関係者の数は多い。その総ての心を操っているとしたらその範囲は強大だ。
能力、範囲。彼女の力は周りの人々を不幸にしてしまう。


「人が増えたら大変? あたしはテメェが居る方が大変だっつーの」


纒流子は当初の目的であるキャスター討伐のために鋏を掲げていた。
目の前の魔女を斬り裂けば人吉善吉は安心して元の世界に帰れる。
彼女からしてみれば此処でキャスターがどれだけ命乞いしようと関係のない話。


「聖杯戦争で巻き込まれた人達の分……NPCやアサシン達の事を俺は忘れねえ。
 でも俺が出来るのは此処までだ。後は任せたぜ纏……って俺は何一つ出来てなかったけどな!」

「何言ってんだ。お前がいなけりゃ俺と纏が戦っていない。つまりこの状況が生まれていないんだよ」


己の無力さを嘆く人吉。
それを即座に励ますランサー。
人吉善吉の行動が無ければ、彼の諦めない気持ちが無ければこの状況は生まれていない。
そうでなければ遅かれ早かれ朽木ルキアもキャスターの毒牙に――。


「そう言って貰えると有難い……んじゃ任せた」


纒流子と前田慶次は既にキャスターの目の前まで移動していた。
セイバーとランサー。クラスの名に恥じない英雄が目の前に存在しているのだ。
キャスターの心は絶望に近い黒い色で塗り潰されている。


「そ、そんな……」


口から漏れる言葉は弱々しい。人間一度崩れればそんなものか。
勝算は無い。元々単純なステータスで言えばキャスターは飾りのソレに近い。


854 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:04:46 inUvH6Fc0


振り上げられる鋏と刀。
之が振り下ろされればキャスターは絶命するだろう。


「あ、ああ……ああ!」


死ぬ。
英霊故に一度死んでいる。だがその記憶は薄い。
例え一度死を経験したからといって慣れたことにはならないのだ。

怯えている。
キャスターは聖杯戦争を通して初めて怯えていた。


「最後に言い残すことはあるか?」

「助けて……助けて」

「……その力を悪用したお前が悪かった。
 今度会えた時には一緒に酒でも飲むとしようぜ――じゃあな」









「お前ら二人揃って女の子をイジメているのかーッ!!!!」








「は? お前一体誰――っておい!?」


キャスターがこの世を去ろうとしていた時。狙っでいたかのように一人の男が割り込んだ。
その男は麦わら帽子が特徴的であり、ランサーを殴り飛ばした。

大地を転がるランサーは即座に受け身を取り立ち上がる。傷は深くない。
目の前の男は不明だがサーヴァントと見て間違いない。
朽木ルキアから飛ばされた念話によるとクラスはライダーと判明した。


「泣きそうになっている奴に刀を向けてるのかッ!!」


855 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:05:14 inUvH6Fc0


乱入してきたライダーからして見ればこの状況は最悪である。
弱っているサーヴァントを二人で殺そうとしているのだ。セイバーとランサーが悪に見える。
彼の言っていることは事実である。
キャスターの悪事を彼はきっと知らないのだろう。故に事態はややこしい。








「無事か慶次?」

「ああ……でも、面倒な状況になっちまった」


あと一太刀。
たった一度の攻撃があればキャスターはこの世から消え去る。
その瞬間を狙われた。偶然にしては出来過ぎているが偶然なのだろう。
此処まで仕組んでいたとしたらキャスターは大した役者だ――そのキャスターは。



「令呪を以って命じる――ランサーよ、これからはキャスターの命令を聞け」



再び毒素を人間に浴びさせ自分の玩具《人形》を創り上げる。
纒流子、人吉善吉、前田慶次、モンキー・D・ルフィ。
彼らの時間は一斉に止まる。まるでこの世があと二日で終わる事実を知ったように。


「キャスターの言う事を聞け……なぁ刀男。お前のマスター大丈夫か?」

「そう思うならアンタは少し黙っていてくれ……ッ!」


ランサーの問は御尤もであるがお前が言うな。誰もが思っている。
キャスターに早くトドメをささなかった彼らが悪い。しかし乱入者の存在など考慮していない。

状況は最悪だ。
乱入してきたライダーは別にしてランサーの行動圏を握られてしまった。
この場で起きる悪夢――セイバーとランサーの潰し合いだろう。


(俺に出来る事ってなんだ……このままだと纏と戦国武将の殺し合いが起きちまう)

「誰もそんなことさせないぞ☆」

「俺の心を読んでいるのか……ッ」


人吉善吉の心を覗き彼の問に答えるキャスター。
彼女は此処でランサーを戦わせないと言う。ならば彼女は何を企んでいるのか。
我慢出来ない。そう思った纏が斬り掛かろうとした時再び乱入者がこの場に介入する。



「世話が焼けるんだから……乗って!」

「信じてた☆ 流石はマスターね☆」



爆速で校庭に突っ込んできたリムジン。
速度を緩めること無く後部席のドアが開けられると其処には先客が二名。
キャスターである犬飼伊介が洗脳していたNPCに連絡を取り退路の確保をしていた。

その奇跡な流れはキャスターに吹いており女神は彼女に微笑んでいる。


「心配なら貴方も来てね……麦わら帽子のライダーハート」

「ま、まどか!?!?!?」


856 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:05:37 inUvH6Fc0


犬飼伊介が悪い笑みを浮かべたその奥に。
気絶している鹿目まどかの姿が見えた。


「まどかを返せーッ!!」

「なら鬼さんこちら☆ 追ってきなさい」


ライダーを挑発するとリムジンは再び加速を始め校庭空抜け出していく。
このまま行ってしまっては手掛かりが掴めなくなる。
纒流子、人吉善吉、前田慶次、朽木ルキア。
誰もがこの状況に適応出来ていない中ライダーは既に行動を開始していた。


「ギア――2」


大地に拳を降ろしたライダーは一言。たった一言だけ呟いた。
誰もが聞き漏らした静かなる闘志は蒸気となって彼の身体から吹き上がる。
この発熱は彼の怒り、マスターは俺が守る、だから動け、動け、動け。


「何か俺、邪魔しちまったみたいだな。その代わりに――俺がアイツをぶっ飛ばす!」


怒りを起爆剤に変えて。
その速度は加速し彼の早さは普段とは比べ物にならない。
その呟き通り彼のギアは切り替えられ一度回り始めた歯車は止まらない。

リムジンを追いかけるライダー。
距離は離れているが見失うことはないだろう。
その少し先に。車を拝借したタダノとアーチャーが追尾を開始していた。




【C-2/アッシュフォード学園門前/一日目・夕方】


【タダノ ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]魔力消費(小)
[装備]乗用車
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
1.キャスターを追跡し鹿目まどかを救出する。
[備考]
※警察官の役割が割り振られています。階級は巡査長です。
※セイバー(リンク)、カレン、ライダー(ニューゲート)、刑兆について報告を受けました。(名前は知らない)
ライダー(ニューゲート)のことはランサーと推察しています。
※ルフィの真名をルーシーだと思っています。
※ノーヘル犯罪者(カレン、リンク)が聖杯戦争参加者と知りました。


【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]タンクトップ、ホットパンツ
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.キャスターの追跡。
[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※現在の外見はポイズン@ファイナルファイトシリーズ(ストリートファイターシリーズ)に近いです。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※現在C-4の北東部を飛行しています。
※C-4の北東部から使い魔の蝙蝠を放ち、バーサーカー(一方通行)を探させています。
タダノから指示を受けたため、他の用途に使うつもりは今のところありません。
[共通備考]
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(操祈)を確認しました。
※車は学園から拝借(無許可)しています。


857 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:05:56 inUvH6Fc0


残されたセイバーとランサー。
彼らは言葉を交わさず睨み合っていた。

ランサーの主導権は彼でもなければマスターでもなくキャスターが握っている。
この場で戦闘が起きても不思議ではなく一触即発の事態だ。
動けない。
動きたくても動いてしまえばキャスターにどんな指令を下されるのか。



「もう動いてもいいだろ、っと」


その均衡を崩すように人吉善吉は肩に担いだ朽木ルキアを優しく大地に降ろす。
その光景に目を丸くするセイバーとランサー。

「あの状況の中で俺は……悪いけどお前のマスター気絶させた、すまん!」

リムジンが走り去りライダーが追跡を開始した時。
人吉善吉はキャスターが此方側を把握出来ない瞬間を狙って朽木ルキアを気絶させていた。
説明途中にランサーと目が合う。頭を下げ無礼を詫びる、そもそも女性に手を出すとは何事か。心で己を責める。

「いや、助かった……それで今後はどうする? 俺はマスターを連れてリムジンを追ってみる」

「おい、それじゃ危険だろ」

「それでいいんだよ人吉。此処に残っていてもコイツは命令されんだろ?
 なら近くまで行って一発ぶん殴ったほうが速い……それよりお前もどうすんだ?」

ランサーはこの状況に対しキャスターの追尾を選択していた。
黙っていても何も始まらない。
己の生命が握られているなら潰される前に潰す。

問題は人吉善吉である。
彼の存命時間は日付が変わる前に終わってしまう。
空を見上げれば夕暮れ時、多く見積もって彼の生命はあと二時間だろう。

「俺も行く……「も」っていうか俺「は」だな。
 世話になったな纏……アゲハにも伝えてくれよな」

彼もまた諦めていない。
このまま帰ってしまったら一生後悔するだろう。
そんな気持ちを背負い続けるなら、まだ可能性があるなら。
最後まで抗ってみせる、それが彼の決意。

その行いにセイバーは必要ない。
元々セイバーとアゲハには無理を頼んでいるのだ。
それに加えてもう一度協力してくれ、口が裂けても言えない。

「なーに言ってんだ。アゲハもリムジン見つけて追っかけているからよ、行くぞ」


858 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:06:50 inUvH6Fc0


セイバーの返答もまたキャスターの追跡である。
このまま逃しては負けたことになる。それが気に喰わない。
他人の心を操る女だ。生かしておいても碌な事にならないだろう。


「いいのか……また俺に」

「いいって言ってんだろ、だから――行くぞ」

「そんじゃ追うとしますか。俺も人吉も時間は少ないみたいだからな」


こうして学園で発生したキャスター討伐指令は意外な形を以って次へ持ち越す。
その舞台は不明だが他者を巻き込んだ戦闘に代りはないだろ。
戦力――と表現するのは適切かどうかは不明である。

ランサーの実質的な行動権はキャスターが握っている。
セイバーのマスター鞘替えも見抜かれてしまった。
麦わら帽子のサーヴァントが味方かどうかも解らない。

状況は悪くなっているだろう。

だが弱音を吐いている時間はない。
黙っていては人吉善吉が消えてしまう。

それを差し引いてもキャスターを放置する事は危険であり戦争を引き起こす。

彼らは校庭を駆けるとキャスターの追跡を開始する――総ては未来の為に。


【C-2/アッシュフォード学園校庭/一日目・夕方】


【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]健康
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:キャスターを討伐し、アサシンの仇を取る
1.キャスターを追跡し討伐、その後帰還する。
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
→加えて食蜂操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。

※サーヴァント消失を確認(一日目午前)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。
※残り二時間で彼の身体は灰になります。


【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.リムジンの追跡。
2.何かあれば流子と念話で連絡
[備考]
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。


【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲 、左肩に刺傷(修復済み)
[装備]片太刀バサミ、鮮血(通常状態)
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.キャスターを追いかけ潰す。
2.何かあればアゲハと念話で連絡
[備考]
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※ランサー(前田慶次)を確認しました。
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。
※キャスター(操祈)ライダー(ルフィ)を確認しました。


859 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:07:18 inUvH6Fc0


【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]気絶中
[令呪]残り二画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.気絶中
[備考]
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)を確認しました。
※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。
※キャスターから『命令に従うよう操られています』


【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]疲労(小)魔力消費(小)
[装備]超刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1.キャスターを追跡し倒す。
2.マスターが用済みとなって消される前に勝負を決める。
[備考]
※キャスターを装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。
※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。
 エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。
※令呪の発動『キャスターの命令を聞くこと』


[共通備考]
※犬飼伊助&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスターとの同盟を破棄する強い決意を持っています。


860 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:07:42 inUvH6Fc0


リムジンの中でキャスターは安堵の表情を浮かべている。
乗り込んだ瞬間、開放感と安心感に襲われ身体から汗が浮き上がっていた。

「あーつーい☆ でも助かった……ついでに人質なんてやるぅー」

「保険よ……それよりも行き先は?」

彼女が助かったのもマスターである犬飼伊介が移動手段を用意していたから。
この可能性が無かったらキャスターはランサーに時間を稼がせようとしていた。
それでも勝算は薄く、現に乱入者のライダーにまで敵対されたら確実に絶命していたであろう。

犬飼伊介の問に考えるキャスター。
少し悩むが答えは簡単に、それも早く出て来た。


「病院……人も多いし迂闊に手出し出来ないから身を潜めるには最適ね☆」


(――そう)


病院。
キャスターが決めた行き先、其処で発生するであろう英霊同士の戦い。

再び舞い上がる戦火は関係のない人々を多く巻き込むだろう。


【C-2/アッシュフォード学園外/一日目・夕方】


【犬飼伊助@悪魔のリドル】
[状態]疲労(小)魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0.食蜂操祈に心を許さない。
1.病院に向かう
2.このままでは――。
[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。


【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]健康、魔力消費(中) 、焦り
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]ハンドバック(内部にリモコン多数)、購買で買い占めた大量の食品、生徒名簿
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
0.このまま上手く立ち回る。
1.洗脳した生徒を使い情報収集を行う。
2.病院へ逃げ込みこれからの対処を考える。
3.ランサー一行及び犬飼伊介には警戒する。
[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。
※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。
 それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名を聞いたかについては後続の方にお任せします。
※天戯弥勒、および聖杯戦争について考察する必要があると感じ始めました。
 今の仮説は1、ガイアの怪物以上のなにかを御そうとしている 2、参加者と主催者のために14騎いる 3、参戦しているサーヴァントは一流の英霊ではない 4、アッシュフォードに二人のレベル5がいたのには意味がある


[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵を行い、ランサーに協力、或いは命令する形になります。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせています。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確保済み。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による)


861 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:08:12 inUvH6Fc0


「話ってのは今見た映像ってこと」


遊園地で暁美ほむらとキャスターは学園の総てを目撃していた。
セイバーとランサーの戦いからキャスターの逃亡の瞬間まで。
多くの情報を抱えているフェイスレスは底知れぬ笑顔をマスターに向けていた。


(まどかが攫われた……ッ!!)


その心境、焦り。
彼女の中に置いて一番大切な存在が誘拐されているのだ。
宇宙の真理とも呼べる大切な存在、決して汚されることのない聖域への侵入。
許されることではない。許されることではない許されることではない。


「それでマスターに今後の方針を聞きたいんだけど」


「あのリムジンを追うわ。他人の心を操るなんて許せない」


それは嘘だ。
鹿目まどかが攫われた。それが総てである。
しかし口には出さない、この男には知られたくない。
こんな男の耳に入れば何かしら嫌なことが起きる、絶対に、確信している。
故に建前は魔女であるキャスターの討伐を掲げて追跡を発言した。

その言葉にフェイスレスはまたも笑みを浮かべる。
暁美ほむらはその表情に怒りを覚えるが此処で爆発しても解決には繋がらない。
今は耐えるべきだ。出来るなら美樹さやかと連絡を取りたいと思う。


(フェイスレスに気付かれないように美樹さやかと連絡は――無理ね)


時間停止を多用すれば可能であるが本調子ではないため危険である。
普段通り時間を止めれれば簡単に事は終わるが、制限されている状況では危険だ。
フェイスレスに気付かれるリスクを考えた場合――鹿目まどかの生命と天秤に掛けている時点で悔しさが込み上げる。


「解った、じゃあ行こうよ。僕も他人を見下した態度が気に喰わないよーん」

「……耳の調子が悪いみたい」

「マスターも人が悪いなー。僕だって英霊なんだよ? ほむらの名前みたいに燃え上がっているワケ?」

「次言ったら殺すと記憶しているけど……その時間も惜しいわ」


862 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:08:34 inUvH6Fc0


「そんなに思い詰めた顔しないでよ。今の僕はマスターの味方だからさ!」


どの口からそんな言葉が出てくるのだろうか。
彼には終始呆れ怒りを覚えている暁美ほむら。
それでもサーヴァント同士の戦いになれば彼に頼らなければならないのが辛いところである。

鹿目まどか救出作戦。
恐らく映像で監視していたセイバーとランサーも現れるだろう。
加え鹿目まどかと一緒に行動していた男とサーヴァントも来る、これは確定だ。
多くのサーヴァントが入り乱れるこの事態、自分のサーヴァントを信頼出来ないのはどう響くのか。

不安しか生まれない。
だがそんな弱音を吐くことは出来ない。

鹿目まどか。

彼女を救うために暁美ほむらは生きてきた――今までも、これからも。


【D-4・遊園地/一日目・夕方】


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(中)、苛立ち
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
 1.鹿目まどかの救出へ向かう。
 2.正午までの交渉に失敗した場合、美樹さやかのサーヴァントを奪う。
 3.キャスターに対する強い不快感。
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※グリーフシードを一つ持った自動人形を美樹さやかの下へ向かわせました。伝言は『『彼女を助けるのに協力してほしい。遊園地で待つ』と言っている魔法少女がいる』
※美樹さやかとの交渉期限は2日目正午までです。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)


【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]魔力消費(小)
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
 1.病院に向かってピンク色の少女を救うと思う。
 2.さやかちゃんの回答を待ってるよーん。
 3.ほむらの動きを一応警戒。
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 現在、さやか、まどか、タダノを捉えています 。
※映像越しにサーヴァントのステータスを確認するのは通常の映像ではできないと考えています。
※ほむらから伝聞で明とルフィのステータスを聞いています。明についてはある程度正確に、ルフィについては嘘のものを認識しています。
※バーサーカー(不動明)を己の目で確認しました。
※暁美ほむらは何か隠し事をしていると疑っています。
※美樹さやかと暁美ほむらの関係を知りたがっています。
※ピンク髪の少女と暁美ほむらには繋がりがあると確信しています。


863 : 裏切りの夕焼け ◆wd6lXpjSKY :2015/04/05(日) 07:10:13 inUvH6Fc0
投下を終了します。また予約から天戯弥勒を外させていただきました。
今回は期限の超過、大変申し訳ありません。

また誤字、脱字等は見つけ次第自分で修正たします(作業は早くても木曜日以降になりそうです)


864 : 名無しさん :2015/04/05(日) 10:12:42 BiRD4n8k0
投下来てたあ!乙です!
大規模予約からどうなるかと思いましたが、やはり状況が動きますね…!
報道を軸にそれぞれの参加者の判断と行動が描かれ、聖杯戦争がさらに加速していく。学園に尾を引く戦火の残り火がこう影響するとは…未だ覚悟を決められていないエレン、病床にある浅羽、傷を癒すおじさんはすぐには混ざれないか。
一方で虎視眈々と彼らの時間である夜に備える老執事と吸血鬼も気になる。
ほむらとさやかは微妙に食い違ったまま別の行動を取る形に。まどかが巻き込まれた以上、ほむほむが動かないわけないよなー…で、司令にも頼らざるを得ないと。アポリオンによる情報収集をネチネチやってたのが地味にこの混沌の状況下で働いてる感じだなあ。

そしてやはり、中心となったのはみさきちや慶次、善吉やアゲハたち。個人的に、レミリアとの邂逅の中で、アゲハのアゲハらしい即断や、その内に秘める強い意思が感じ取れるのが嬉しい。片や善吉は流子と共に、みさきちの喉元へ食らいつくために走る。不信を募らせてた慶次たちの離反、ルフィの乱入、逃走と追跡…急速に回転速度を増し始めた歯車の行く先から目が離せません。

改めて、投下お疲れさまでした!


865 : 名無しさん :2015/04/06(月) 19:50:55 dunP50Tw0
エレン……


866 : 名無しさん :2015/04/06(月) 20:12:55 qyWedP4Y0
ほんと、かなり状況動きましたね
どう転がるかまだまだわからないが…


867 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/06(月) 23:17:26 yvFZIWcg0
がっつり動いたなあ……
学園も総結集、みさきちとまどかによって因縁が複雑に絡み、裏で様々な思考を巡らせる戦士も多数……
二転三転する戦局は読みごたえありました!
それとまとめwikiにページと前後話リンクだけ作っておいたのでよろしければそのままご利用ください

ではこの勢いを殺さないよう
夜科アゲハ&纏流子、朽木ルキア&前田慶次、人吉善吉、犬飼伊助&食蜂操祈
鹿目まどか&モンキー・D・ルフィ、タダノヒトナリ&モリガン・アーンスランド、暁美ほむら&フェイスレス、虹村刑兆&エドワード・ニューゲート
以上のキャラで予約します


868 : 名無しさん :2015/04/08(水) 15:14:40 UEMeUmKc0
改めて乙です!
大局の動いていく話はやはりすごく面白いです
そしてさらなる予約だと…楽しみすぎる


869 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/09(木) 02:02:00 SH9tZpv.0
すいません、書いていて気付いたのですが、「裏切りの夕焼け」におけるまどかとルフィの状態表が欠けているかと思います
前の話から特に追記するようなことがないようでしたら、こちらでリレーしてしまいますし、大丈夫ですが、何か書き加えることなどあればお願いします


870 : ◆wd6lXpjSKY :2015/04/09(木) 02:38:16 5Q7TBQHI0
感想、予約ありがとうございます。

>>869
大変申し訳ありません。
補完してもらって構いませんので、よろしくお願いいたします。


871 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/13(月) 21:35:59 P1HuP.0c0
延長をお願いします


872 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:07:43 ZH58FSXU0
投下します


873 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:08:27 ZH58FSXU0
「飛ばして☆」

後部座席から運転手に指示を飛ばすキャスター、食蜂操祈。
奥に犬飼伊介が座し、二人の間に意識を喪失したまどかを置いている。

「うわ❤追っかけてきてる❤」
「そうでしょうね……走って来るのは驚きだけど」

ミラー越しに見ると車が一台と、蒸気を上げて走る麦わらのライダー。
騎乗スキルを持つライダーが乗り物を確保してくるなら想定の範囲内だが、まさか自らの足で駆けるとは予期していなかった。

「色々手を打たないとまずそうね……」

車の方が基本的に速いが、小回りでは足の方が勝る。
速度で張り合われると、カーブや僅かな凹凸の差異で追いつかれかねない。
追いついたときに相応に消耗はしているだろうが、対魔力を持つライダー相手に真っ向勝負で勝機は薄い。
ここでライダーを自害させるのは容易いが、そうしても後ろから続々と騎士のクラスが押し寄せてきかねない。
どうにか有効活用できないだろうか。
手札を確認。
能力、人材、情報、地理。
とるべき手は…………


◇  ◇  ◇

「こちらタダノヒトナリ巡査長。現在、アッシュフォード学園前にて女子生徒誘拐の現行犯発生。
 学園より車を借用、協力者二名と共に追跡中です。カーナンバーは……」

追跡するタダノ。
車内から本署に事件として報告し、車の無断借用についても学園から事後承諾を無理矢理に得る。
仕事として報告しているから、まあ始末書程度で済むだろう……おそらく。

「一名は同乗しています。それからもう一名は……えー、先行しています」

まさか蒸気を上げて走っています、などとは報告できず言葉を濁す。
できれば二人とも伏せておきたくはあるが、目立ちすぎる二人だ。
NPCから報告が上がって指名手配などなっては面倒だし、アーチャーならいくらでも上司なりを籠絡して誤魔化せるだろう。
ライダーは……人の話を聞かなそうだが、どうにかするしかない。
今はまどかちゃんの救出を優先する。

「ほら、タダノ。急がないと置いてかれちゃうわよ」
「む……」

ほんの僅かの隙を突かれて誘拐された同盟者。
急いで車を調達して即座に飛び出し、先ほどまではライダーより先に走っていた。
しかし諸々の報告などをしながらで遅れが生じ、今は駆け出したライダーの方が先にいる。

「ホント男ってせっかちねえ。何があるかわからないんだから、乗っていけばいいのに。
 それと、後ろからも何か来てるみたいよ」

らしくなく戦略的な物言いをするのは、それだけ真面目だということだろうか。
報告を聞きバックミラーをのぞくと確かに、自分たち同様追っているらしき車がいた。

「……そうだな。まあアレは別に報告せずともいいだろう」

まどかちゃんの救出に役立ってくれるならいいが、まず間違いなく主目的は別。
それに何より、彼らは敵なのだ。
わざわざ恨みを買うような真似をするつもりはないが、下っ端の些細な権限で根回しをしてやる義務はない。
今後彼らが社会的に不利な立場になって、必要ならフォローしてもいいが、今はこれ以上を遅れをとるわけにはいかない。
先ほどのノーヘルの二人についても後回しだ。

「急ごう。もしルーシー君に追いつけたら乗るよう言ってくれ」
「はいはい。聞くとは思えないけれどね」

アクセルを踏み込み車体を加速させる。


874 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:09:51 ZH58FSXU0
◇  ◇  ◇

「行っくぜええええええええええええええ!」

運転席で雄叫びを上げる流子、彼らの中で騎乗スキルにより唯一車の運転を可能とする彼女が運転する。
後部座席に善吉と、ルキア。屋根の上に霊体化した慶次が座す。
ちなみに車は落ちてるのを拾った、と流子は主張している。

「途中でアゲハ拾うの忘れんなよ!一人で行かせたらあいつに何されるか分からねえ!」

キャスターの脅威を最も体感している善吉が叫ぶ。
単独で挑むのはマズイから、それを忘れるなと。

「分かってるって!ちゃんとやり取りしてるよ!」

アクセルべた踏みのまま答える流子。
流石にマスターを操られるのは警戒し、だから拾えるよう助手席は空けているのだ。

「ならいいけどよ…」

ぽつりと漏らし、席に深く腰掛けなおす。
横のルキアは未だに意識を失っている。
仕方なかったとは思うし、周囲も納得はしているがそれでも一抹の罪悪感はある。
先の交戦でも足をひっぱてしまったのは否めない。
己の不甲斐なさに苛立ち、何か役に立てないかと先走って声を荒げてしまった。
自省し、かぶりを振る。

「おーい、なんか妙な動きだぜ」

屋根の上から実体化した慶次の声が響く。
妙な動き?と各員外を確かめてみると、何やら道に人が増え……道を塞ぐように、果ては暴徒の様に突っ込んでくる者もいる。
前を走る車も、麦わらのサーヴァントに対しても同様だ。

「これは……」
「ああ、キャスターがまた何かやってるな…!」

跳ね飛ばして進む、のはさほど難しくはない。
だが、警察機関が一応存在する以上今後が厄介なことになるし、なによりそんな真似をしたいとは皆思わない。

「いよっと。ここは任せな、そのまま全速前進だ」

ボンネットに立ちそう進言する慶次。
本気か、そう目で問うと、大丈夫だと背中で答える。

「よし、それじゃあこのまま突っ切るぜ!」
「行けや、纏!」

迫りくる群衆を躱すことなく全速で駆ける車に、仁王立ちのまま超刀を構える慶次。
そして人々と交錯する。

巨大な武器が舞う。
馬上で闘う騎馬武者の如く、舞台で歌舞く演者の如く。
魅せるは前田の傾奇者。
薙ぎに石突、払いに投げ。
時に屋根で、時に後部で、雲霞の様に群がる人を露払い。
兵どもが夢の跡が足跡のように転がる。
されどそこに、一切の死者はなし。
不殺の信念、これに在り。

「どんなもんだい、人吉?改めて言うが、ちゃーんと考えてたんだぜ。あの時も」

屋根に立ち、残心。
NPCが消失せずに残っているのを確認し、驚き、感心する善吉……投げ飛ばされたのを許すかどうかはまた別だが。

「その辺にアゲハが来てるらしい!見えないか?」
「んー…?お、いたいた。よし、拾ってくる」

そう言うと即座に屋根を飛び下りて向かう。
流石に最速のクラスたるランサーか、アゲハを脇に抱えてすぐさま帰還し、助手席に放り込む。
多少の減速はしたが、車は止まっていない。

「あ痛ッ!もう少し丁寧にできねえのかよ!」
「横入りなんだ、大目に見てくれや」

抗議するアゲハをあしらい再び屋根の上で構える慶次。
さすがに状況を察してかそれ以上の物言いは控える。

「走ってきたのか?」
「まさか。近場のチャリかっぱらった」

この主従は揃いも揃って……と頭を抱える善吉。
俺以外にそういうのを気にするのはいないのか、とぼやきたくなるが今は戦地。
改めて前を見据える。

「前のやつらも凌いでるか?」
「そりゃあなあ。あいつらもサーヴァントだ、手段を選ばなきゃいくらでも対処できるだろ」


875 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:10:10 ZH58FSXU0
キャスターたちに最も近い麦わらのサーヴァント。
高速で駆ける彼にも止めようとする者はいるが、近付く傍から意識を失い倒れているようだ。

「あれは……何してんだ?」
「特に何もしてはいないだろうさ」

異様な光景に疑問を口にするアゲハに答える慶次。

「ああいう手合いは時々いる。ただそこにいるだけで、立つこともままならないような威圧感を放つ奴ってのがよ。
 大抵が一国を収めるような、魔王だの覇王だの呼ばれる大物さ」
「ああ、あたしも覚えがあるな。やたらキラキラしてる姉さんとか、親愛なるお母上様とかよ」

善吉はああ、めだかちゃんとか王土みたいなもんかと納得。
英霊二人もかつてまみえたカリスマ溢れる人物を想起し、麦わらのサーヴァントに対する評価を上方修正。
ルキアが起きていたら山本元柳斉や義兄を思い返すだろう。
一人そうした人物が思い当たらないアゲハだけがイマイチ馴染めない。

「それじゃああっちの車は?」
「あんまり…いや全く人が寄ってないな」

前を走る車ではなく、少し離れたところに人だかりができていた。
その中心には、アゲハたちからは人影で見えないが、この世のものならざる美女がいる。
足止めに差し向けられたのは、当然ながら身体能力に長けた男性NPC。
大量に操作する故、命令は複雑化できず、ただ追いすがるものに襲い掛かり動きを止めろといったもの。
襲撃対象はNPCが決めるため、3つのターゲットのいずれを襲撃するかはランダムだった。
だが車外に、最高峰のサキュバスが現れ、操祈たちを追うそぶりを見せたなら。
男たちはタダノの車など目もくれず、皆それに向かう。
そしてタダノから離れたところで霊体化し、飛行スキルでタダノに追いつけば

「……どうやら俺の仕事は続きそうだな」

蜘蛛の子を散らしたように、後続のアゲハたちに襲い掛かる。
それを見て再度得物を構える。

「道は俺が切り開く!怯むなよ、纏!」
「舐めんな、慶次!」

二人のサーヴァントが高らかに叫び、戦況は加速する。


◇  ◇  ◇

その激情を表すかのように、蒸気を上げ駆ける麦わらのライダー、モンキー・D・ルフィ。
彼の下にも多くのNPCが押し寄せるが

「ごめんな、恨みはねェけど」

ちょっと邪魔だ。

一声あげて、一瞥もせず、一蹴するまでもない。
半端な覚悟と実力ではこの男の前で意識を保つことすらままならない。
倒れた男を乗り越え踏み超え、突き進む。
もう二度と、間に合わないなんてごめんだから。

「よっ、と!」

向かってきたトラックも飛び越え、大きく跳躍。
そのまま建物や橋げたを利用して大きく前に出、ついには追いすがるターゲットも追い抜く。
そーいやこの移動技も建物跳び移るのもあいつらの真似だな、と回想。
初めてこの技を撃った時の様に、空中で拳を構える。

「ゴムゴムの“JET銃”!!!」

まさに銃の如く、車体の前部を打ち抜き動きを無理矢理に止める。
着地と同時に、事故直後の様に傷ついた車体から少女が三人出てくる。衝撃でぶつけでもしたか、赤髪の少女の顔には一筋の血の痕があった。
それでもなお、桃色髪の少女の手を引き逃げ出そうとする二人の前に即座に回り込む。


876 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:11:19 ZH58FSXU0
「ちょっとマスターへの気遣い力が足りてないんじゃないかしら……!」

病院にはまだ道半ば、丁度橋の手前で止められる。
橋を渡れていれば落とすなり損害を与えるなりで引き離せただろうに。
騎兵のクラスが乗機を召喚しないかは一つの賭けだったが、それさえ超えれば車などに追いつかれることはないはずと思っていた。
しかし乗機以上の韋駄天も、触れることすらなくNPCを倒して進むのも想像以上。
恍けた面からは予期できない大物だったか。
あげく自らのマスターも乗った車に拳を叩きこむとは、本当に最悪というか常識外れと言うか。
前田慶次も、人吉善吉も、この麦わらのライダーもNPCを殺傷はしないと確信していたからあんな策も取ったし、もっと手こずると思った。
死者が出ていないのはよかったが、最初に立てた目的地には至れなかった。

……周囲に目を配り、逃げ道を探すが絶無。
望まぬ背水、正面に敵。
さらに続々と、敵に増援。
鍛えられた体躯の男性が車から降り、すぐ横には妖しい美貌をもつ女性サーヴァント。
まだ遅れているが、夜科アゲハたちの乗る車ももうすぐ追いつく。
これではライダーとランサーをけしかけても敵サーヴァントが一騎残る。
今、打てる手は少ない。
鹿目まどかにナイフを向けようとする己がマスターを制し、言葉を投げかける食蜂。

「こんな状況でなんだけど、取引しない?ライダーさん☆」

槍兵相手の駆け引きの様に、今度も渡り合って見せよう。
今度は相手のマスターを手中に収めているのだから、やれないことはない。
自らをそう鼓舞し、条件を提示しようとするが

「残念だが先客がいる。彼と組んでいるのは僕たちだ」
「ええ、そう。彼と一緒に堕ちるのは私たち。麦わらの坊やも、私とあなたのマスター、二人のレディーを放っちゃダメよ?」

朝とは状況が違う。
聖杯戦争は進行し、すでに盟の関係を築いている組も出始めている。
いずれ敵となる者同士、あまり過多に組むのを少なくともタダノは良しとはしない。

「もちろん、あなたたちをないがしろにするつもりなんて――」
「そいつと組むのはやめとけ。あたしは体験してないが、多分碌なことにならねーぜ」

そしてついには流子たちも追いつく。
これで完全に囲まれたことになる。
背後は川、正面にルフィが、橋に行くにはタダノとモリガンが、街へと戻る道にはアゲハと流子と善吉が立ちはだかる。
逃げ道はなく、リモコンを向けようとでもすれば即座に切り捨てられるか、殴り倒されるか。
今、食蜂操祈に打てる手はない。
けれども

「やめてください、ライダーさん!」

鹿目まどかなら、できることはある。
食蜂操祈と犬飼伊介の前に庇うように立つ少女を見てほくそ笑む。
心理的な距離感を縮める……垣根提督のかつての同僚が得意とした心理操作。
超能力者ならこのくらい、やってのけるのは容易い。

「まどか……?」
「ライダーさん、ほんの少しでもいいんです。キャスターさんのお話聞いてもらえませんか?」

ルフィと言う男、よく言えば懐が広く、悪く言うなら甘いところがある。
敵組織のNo2、一時は敵対した解体屋などを船員として迎え入れたこともあり、兄救出のために因縁あるならず者と肩を並べたこともある。
まどかが攫われたから追ってはきたが、そのまどかが言うならいいか、などとも考えつつある。
当然その状況を受け入れられるものはいない。
タダノヒトナリはまどかの言葉を無碍にはしないが、それでもキャスターの言葉を受け入れられはできないだろう。
モリガン・アーンスランドは強い主張はしないが、タダノに強く反抗はしない。
人吉善吉も纏流子も、キャスターの能力の影響を考慮し、戸惑いつつも流されはしない。
そして夜科アゲハはこの場で最も冷酷な判断を下した。
あの少女は間違いなくキャスターに操られている。キャスターは一分一秒生かしてはおけない。
今、自分が、殺そう、と。
それは他の面々にはできない決断、しかしいずれ誰かが下さなければならない決断。
責められるかもしれないが、この魔女を仕留める対価がその程度なら安いもの。
そう決意し、PSIのプログラムを即座に組み上げる。

(キャスターの前のあの子を巻き込む訳にはさすがにいかねえ……あっちの、キャスターのマスターを射抜く)

暴王の流星(メルゼズ・ランス)。
即座に放たれた極小の、しかし必殺のPSIはアゲハの狙い通りに標的を貫く。


877 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:11:46 ZH58FSXU0



・・・・・・・
タダノヒトナリの腹部を、黒い流星が駆けた。

「がぁ……あッ……?」

口の中に広がる鉄の味と、腹部から全身に広がる痛みに疑念の声と痛苦の悲鳴。そして意識の喪失。
不幸中の幸いは高速前方射出のプログラムにより貫通し、より魔力に優れたモリガンの下へホーミングされたため、魔力や物質を削る特性は十全に発揮されなかったこと。
もしそうでなかったなら、即座に命を落としていただろう。

突然のアゲハの暴挙に即座に反応したのは二人。
犬飼は食蜂を抱えると、川に飛び込む。
ルフィはそれとほぼ同時にまどかに手を伸ばして抱え込むと、タダノの下へと駆け寄る。
タダノの安全が確保されたのを見ると、『暴王』に僅かに怯んだモリガンが刹那遅れてアゲハへと攻撃を仕掛ける。
当然流子はそれをさせじと間に割って入る。
拳打と翼による連撃を繰り出すモリガンを牽制し、片太刀バサミで弾き飛ばす。
遅れてようやく善吉も反応する。

「アゲハ、おまっ、なにやってんだ!?」

なぜその男性を攻撃したのか。
そこまで口にせずとも伝わるだろう、当然の疑問、詰問を口にする。
対するアゲハの表情は申し訳なさのようなものもあるが……僅かながら苛立ちと使命感のようなものを含んでいた。

「あのキャスターは一刻も早く仕留める必要がある。だからマスターを攻撃した」

罪はないとは言わない、だが必要なことだったと言外に主張する口ぶり。
会話が成り立たない、タダノを攻撃するのに結びつかない、殆どの者がそう思った。
しかし、唯一『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』を受けた経験のある善吉は違った。

(アゲハの奴、マスターを誤認させられてるのか……!)

数瞬の思考でその可能性に思い至る。
やつが能力を行使するにはリモコンの操作が必要だと慶次から聞いていた。
そんな素振りは見せなかったはずだが、そうでもなければこの凶行には納得いかない。

「待ってくれ、アゲハは――」

あのキャスターに操られてるんだ。
そう進言して一旦事態を収めようとする。
だが、アゲハに攻撃してきたサーヴァントの方に告げようとすると、なぜか言葉が出なかった。
その装いはまるで物語に出てくる吸血鬼か、はたまた淫魔のよう。
過激さと言うなら、纏だって戦闘時にはそうだったし、めだかちゃんだって脱ぎたがりと言う意味では負けちゃいない。
けれども、なぜかこのサーヴァントの肢体には、媚態には、こみ上げる衝動を抑えきれない。
何をしようとしていた?何を言おうとしていた?
上せた頭で思考は空回り…………その僅かな時でまた事態は動いた。

「鹿目まどか!」

黒いロングヘアーに紫を基調にした装いの少女が突如現れた。
どうやら橋の上部から駆け、飛び降りてきたようだ。

「え!?ほむらちゃん!?」

声を上げたのはまどか。
なぜここに暁美ほむらがいるのか?
疑問はあるが、それでも見知った顔に出会えた安心のようなものを顔に浮かべる。
もしかしたら魔法で怪我を治したりはできないだろうか、そんな期待もあったかもしれない。

「……そう」

それを見て小さく呟くと、右手を高く上げるほむら。
それが合図だったのか数体の人形が続いて現れ、その場にいる一人を除いた全員に対して銃撃を放った。


878 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:12:50 ZH58FSXU0



そのターゲットから外れたものは、鹿目まどかではなかった。



咄嗟に歴戦の戦士たちは動く。
まどかとタダノに放たれた銃弾はルフィが、アゲハに放たれた銃弾は流子が庇う。
さらに自由なモリガンと、銃弾を反射したルフィが銃人形へ反撃する。

「ソウルフィスト!」
「ゴムゴムの“お礼砲”!」

加速した銃弾が、蝙蝠状の光弾が人形を破壊する。
しかしその数瞬で、暁美ほむらは空飛ぶ人形によっていずこへと飛んでいく。
それにはただ一人銃火に晒されなかった人吉善吉も、無理矢理に連れ添わされていた。

「人吉ッ!!」

仲間を気遣う声を上げたのはアゲハか、流子か、はたまた二人ともか。
武器をとり、宝具により消耗覚悟で空を飛び、追うことも考えるが、させるまじとする者がいる。
モンキー・D・ルフィは戦意を滾らせている。
モリガン・アーンスランドも冷たい視線を向ける。
二人からすれば、アゲハたちは突如タダノを攻撃し、そして今の襲撃のきっかけとなった明確な敵だ。

「坊や…いえ、ライダー、タダノをお願い。治療のできるところへ。あの橋からまっすぐ行けばそういう施設があるってタダノが言ってたから」
「いや、けどよ」
「何度もタダノを庇ってくれてありがとう。私じゃあそこまで早く攻撃を感知はできない。
 だからお願いしてるの。それにお嬢ちゃんは放っておけないし……コレは私の、よ」

短くやりとりを交わすと、ルフィが頷き、腕を一瞬ポンプの様に伸ばして縮める。

「『ギア――2』」

再び蒸気を上げ、瞬時に地面を何度も蹴るに足る瞬発力を得る。

「いくぞ、まどか」
「え、あ、はい…」

まどかを背負い、タダノを抱えて瞬時に駆け出す。
残されたのはアーチャーのサーヴァントと、対峙するセイバーの主従。

「話の分かるヒト。やっぱりなかなか魅力的ね」

くすり、と艶美な笑みを浮かべて戦闘態勢。
流子も仕方なくそれに対応する構えをとるしかない。

「おいアンタやマスターを攻撃しちまったのは悪かったと思うけどよ、それは多分――」

キャスターが何かしたせいだ、そう流子も思い至った。
だから誤解を解こう、あのキャスターや善吉を攫ったやつに協力して対処しよう。
そう提案しようとしたが

「ああ、いいのよ別に。私にはダメージはないわ。効かなかった攻撃とか、攻撃した理由とか、そういうのは……どうでもイイの」

攻撃したのはキャスターのせい、というのは薄々察している。キャスターと言うのはそう言うクラスだ。
聖杯戦争に勝つならあのキャスターを叩くべきだというのも、おそらく正しい。
攫われた男が仲間だというならそれを救出に行きたいというのも分かる。
けれども、そんな事情抜きで、モリガン・アーンスランドと纏流子は『敵』だろう?
ここで攻撃されなくともいずれ敵対するのだし、あの男の救出に協力する義理などないだろう?
操られていたとしてもタダノを攻撃した事実は変わらないし、今回の主犯との協力関係がないと証明されたわけでもない。
それに

「どんなときも、気持ちいいのが正しいの。理解できるかしら?」

目の前にこんな強そうな相手がいて、それと戦える理由があるならお預けなんて、刹那主義者のサキュバスが我慢できるはずがない。


879 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:14:39 ZH58FSXU0
◇  ◇  ◇

『まどか、大丈夫か?』
『…はい、私は一応。それよりもタダノさんは……』
『いやー、おれは医者じゃねえからわかんねえ』

高速で走りながらなので念話を交わす。
念話の経験あるまどかと見聞色の覇気を扱うルフィなら、必要なら容易く行使できる。
病院らしき建物をまどかが探している。これなら見落とすことはないはずだ。

『……ライダーさん』
『ん?どうした?』

胸中は様々な疑問が走り回っている。
半分はライダーに対するものではないし、いくつかは些細な疑問だ。
それでも何か話してなければ平静は保てそうになかった。
ライダーなのになぜ車を使わないのか聞こうとも思ったが、いまさら言ってもしょうがないし、走った方が速いとか、忘れてたとか返すのだろう。
だから一つだけ、聞いてみようと思った。

『なんでライダーさんが闘わなかったんですか?』

闘ってほしかったわけじゃない。
状況は混迷して何が起きたのかも、どうしていいかもわからなかったが、それでも破天荒な振る舞いを繰り返してきたライダーが退くというのは、こう言っては何だが意外だった。

『おれだって買わないケンカはあるぞ』

心外だとでもいうように、少々憮然として答える。
構ってられないような些細なものに、友達との無意味な激突、それに自分が手を出すべきではないもの。
今回のは手出しすべきでないものだ。

『同盟は組んだけど、タダノの仲間はあいつだ。だからあいつが闘うっていうならおれは手を出さねえ。
 医者に見せるのも大事だしな』
『そう、ですか』
『それにあいつ、すげー怒ってたからな』
『え?』
『仲間を傷つけられたから怒るのは当然だし、おれも怒ってるけどあいつほどじゃねえから。だからあいつが任せろって言うなら、任せる』

仲間のために怒り、仲間を気遣う。
ライダーはもちろんのこと、あのアーチャーもそんなに悪い人ではないのだろうか。
なんでタダノさんは攻撃されたんだろう。なんで攻撃したんだろう。
思考が全く纏まらない。
何よりの疑問は、仲間と自分に銃口を向けた友達のことをどう思えばいいのか、だ。

(ほむらちゃん……なんで……?)


【C-5/橋近辺/一日目・夕方】

【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]タンクトップ、ホットパンツ
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.目の前の男たち(アゲハと流子)と闘う
2.タダノを攻撃したものに怒り。当然キャスター(操祈)にも
3.タダノが少し心配だが、ライダー(ルフィ)に任せる
[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※現在の外見はポイズン@ファイナルファイトシリーズ(ストリートファイターシリーズ)に近いです。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※C-4の北東部から使い魔の蝙蝠を放ち、バーサーカー(一方通行)を探させています。
 タダノから指示を受けたため、他の用途に使うつもりは今のところありません。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※学園から拝借(事後承諾)した車は近くに止めてあります。
※アゲハの攻撃はキャスター(食蜂)が何らかの作用をしたものと察しています。


880 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:14:59 ZH58FSXU0


【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
0.……ひょっとしてやらかしちまったか?
1.目の前のサーヴァント(モリガン)を迎撃する
2.キャスター(食蜂)も気にかかるが、善吉を急いで助けに行きたい
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。

【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲 、左肩に刺傷(修復済み)
[装備]片太刀バサミ、鮮血(通常状態)
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.目の前のサーヴァント(モリガン)に対処する
2.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり
3.善吉を助けに行ってやりたい
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。
※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。



【C-5/橋近辺、車内/一日目・夕方】

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]気絶
[令呪]残り二画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.気絶中
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスターとの同盟を破棄する強い決意を持っています。
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)を確認しました。
※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。
※キャスター(食蜂)から『命令に従うよう操られています』


881 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:15:29 ZH58FSXU0
【C-6/橋を渡った通り/一日目・夕方】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(小)、腹六分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:叶えたい願いはあるが人を殺したくないし死にたくもない。
1.キャスター(食蜂)への親近感、タダノへの攻撃、ほむらの襲撃などいろいろあって混乱。
2.タダノの治療のため病院を探す。
3.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』を決めたい。
4.魔女のような危険人物は倒すべき…?
5.タダノさんは…
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。 表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうことに少なくない抵抗感を覚えています。
※セイバー(流子)、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により食蜂に親近感を抱かされていました。
※暁美ほむらと自動人形を確認しました。

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]疲労(微小)、腹一分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1.タダノを医者に見せる。
2.タダノを攻撃した奴についてはアーチャー(モリガン)に任せる。
3.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
4.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
5.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う。
6.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
 攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。
※橋を渡り、まっすぐ(ルフィ主観で)走っています。まどかがいる+市街地なので病院を見落とすことはないと思いますが実際どうなるかは後続の方に任せします。

[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
 自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。

【タダノ ヒトナリ@真・女神転生 STRANGE JOURNEY】
[状態]魔力消費(小)、ダメージ(大、致命ではない)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝利する
1.気絶中
[備考]
※警察官の役割が割り振られています。階級は巡査長です。
※セイバー(リンク)、カレン、ライダー(ニューゲート)、刑兆について報告を受けました。(名前は知らない)
 ライダー(ニューゲート)のことはランサーと推察しています。
※ルフィの真名をルーシーだと思っています。
※ノーヘル犯罪者(カレン、リンク)が聖杯戦争参加者と知りました。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。









□ ■ □



『いかがでしたでしょうか?魔女狩りを切り抜けようとする少女の物語は』


『おっと、席を立つのはまだ早い。皆様方の仰りたい事は分かりますとも』


『魔法少女の行動の理由、いなければならない武将の不在。このままでは顰蹙を買って当然です』


『ですがお忘れなく、これは聖杯戦争。全員がサーカスの花形であり、なおかつ黒子なのです』


『それでは次に、この舞台の裏で綴られていた物語を覗いてみましょう……』



□ ■ □


882 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:15:52 ZH58FSXU0
時は遡る。
多くのNPCを押し付けられ少しばかり出遅れた車内で、戦士たちが話し合っていた。

「夜科、お前は特に警戒しろよ。人吉や俺のマスターのように操られると厄介だ。
 リモコンを向けられたら気をつけろ。それらしい素振りをさせるな。
 人吉、いざとなったらお前が夜科を止めてやれ」
「へっ、操られやしねえよ、あんな奴に。もっとおっかねえトランス使いの女の子を知ってるんでね」
「まあそのために俺もついていけっていうなら否はねえけどよ……」

気になるのは慶次とルキアのことだ。
キャスターの能力を最も近くで見てきた情報、加えて戦場の経験値と言う意味でも二人はこの場で最も頼れるものと言える。
しかし二人にはすでにキャスターの毒が回っている。
敵がキャスターだけならば、そこは最速のクラスたるランサー、口を開く前に黙らせることも容易いだろう。
しかし飛び入りのライダーや、なにやらもう一騎いるらしきサーヴァントのせいで状況は読めなくなっている。
そのせいで一手遅れたなら、キャスターが高速思考や詠唱などを可能としたなら、そのせいでランサーたちが再び敵にまわってしまったら。

「ま、その心配はもっともだな。想定より面倒な戦場だ……俺がいくとあのライダーと一緒に混乱に拍車をかけかねん。
 やることも見つかったし、俺は俺の戦をするぜ」

そう言って一足先にいずこかへ跳び立つ用意。

「お、おいどこ行くんだ!?やることってなんだよ?」
「気になさんな。そっちはキャスターの方に集中しなよ。ああ、マスターはそこに寝かしといてくれればいい。
 自分の主君くらい、自分の手で守るさ」

そう言うとともに彼方へと跳び、駆ける。
友軍たちが車を降りてキャスターの方へ向かうのを視界の隅に収めつつ。
ああ、そうだ。マスターは俺が守る。
ついでに言うならこの戦いを、余計なちょっかいからもだ。
どこにでもいるもんだ、漁夫の利を狙う奴ってのは。特にここに至るまでの追っかけっこも、その前の騒ぎも随分目立ってたみたいだからな。
余計な事に気を取られちゃ、あの女を取り逃がしかねん。
横槍は入れさせねえ。介入される前に仕留める。

「覗き見とは、いい趣味してんじゃねえか!」

橋のアーチ上から騒ぎを眺めていた老人と少女、それに向けて超刀を一振り。
接近を感知していたか、あえなく躱されるが、この先は通さないと立ちふさがる。

「じいさん、見物なんてもったいない。踊るあほうに見るあほう、二人とも俺と一緒に踊ろうや」

武器を構えて挑発。
どんな動きを見せるかと思いきや、マスターの方は苛立った目線。
ただし対象は老サーヴァント。

「キャスター……!」
「いや、やっぱり病院じゃなくてこっちにしようって提案したのは僕だけどさ、気付かれるのは本当に予想外だったんだって。
 実際他の奴らは気付いてないでしょ?よく気付いたね〜、君。すごいすごい、どうやったんだい?」

パチパチと手を叩いて賞賛。
マスターへの態度を見るに真っ当に話を聞く気があるようには思えなかったが、時間稼ぎは望むところなので話に応じる。

「勘だよ。あれだけの騒ぎだ、聞きつける奴は確実にいる。
 だったらそいつらはどうするか、目走らせてみりゃ案の定ってわけさ。
 ここに根を張ろうとしてたのは予期してなかったが」
「端から見たり聞いたりしてるとね、分かるもんなんだよ〜ん。鬼ごっこで、逃げ切れそうか、はたまたどこかで追いつきそうか。
 ゲームも狩りも、定石は待ち伏せさ。特にここは東西をつなぐ唯一の橋だからね、順路は絞りやすかったよ。
 道をふさぐならここだと思ったよ。統計だの直感だのとは違う、確実な論理さ」

アーチの上でおどけた調子でバランスを取りながらも、隙は見せず周囲を窺がう。
視界と行く当てを塞ぐように慶次はその身を僅かに滑らせる。

「おっと浮気はよしなよ。恋も戦も、目の前の相手に集中しねえと碌な目に合わんぜ?」

逃がさない、その程度の意の発言だったが思いのほか頭に来たらしく、眉根を僅かに震わせる。

「……ハン、よりによって僕にそんな――」
「戯言はいいわ。ここは任せるわよ、キャスター」

状況が動いたらしく、アーチ下に身を躍らせる少女。
当然その動きを阻もうとする――超刀に引っ掛けて足止めしようとする――が、老人以外の何者かが突如空を舞い、その刃を止める。


883 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:16:10 ZH58FSXU0
「我は軍隊長(カピタン)――カピタン・グラツィアーノ!」

大きな羽飾りが特徴的な、中世欧州の軍人風の装いをした人形が剣を振るい高らかに名乗りを上げる。
その乱入に少女を取り逃がしてしまい、予想外の戦力の登場に慶次も少々面食らった。

「伴天連の騎士ってやつに似せてるのか?よくできてるな」
「いかにも!12世紀の偉大なるアルゴン王の由緒正しき系譜に連なり、7つの爵位を持つ自分は代々軍隊長として造物主様のもと存分に剣を振るってきた!
 我が剣はかつての聖杯戦争でも13のサーヴァントを切り裂き、彼奴らの恐怖の的だったのだ!」
「ほ、名乗り口上まで上げるたあよくできた絡繰りだ。だが人形遊びにゃ付き合ってられねえんでな、押し通るぜ!」

飛んでいるのは厄介だが、かの戦国最強に比べればまだやりようはある。
そう考え武器を振るう慶次の背後から、フェイスレスがそのクラスに相応しくない鋭い攻撃を浴びせる。
咄嗟に受け止めて弾きとばし、前後に敵を置いた状態になる慶次。

「浮気はよくないんだろう?なら僕のことも忘れちゃダメだぜ……ここは通せないなあ」
「恋も戦もかけひきが大事なんだ。どちらも押しの一手が大事だけど、押し方にもいろいろあるんだぜ?」

軽口をたたき合いながらも即座に交錯。

「撃破!(ブラカッソ!)」

追撃するカピタン、突撃しながら刺突の連打。まるで炎の矢の如く。
慶次はその連打をいくつかはいなし、いくつかは躱し、さらには膂力とリーチの差を生かして後ろに投げ飛ばす。
フェイスレスは投げ飛ばされたカピタンを姿勢を低くして躱し、右手に工具を構えて突撃する。

「分解……」

ぽつりと呟き、振るわれた右腕とその突撃、慶次なら容易く回避できるだろうそれ。
しかし足場ゆえか、数の不利ゆえか辛うじて飛び越えるようにして避ける。

「穏やかじゃなさそうな技だな、おい!」

そして空中から着地する前の刹那で超刀の一撃。
工具を複数束ねて受け止められるが、衝撃で距離をとり着地と構えの猶予を得る。

「…ああ、気付いてないみたいだから教えてあげるけどさ、『分解』しようとしたのは君じゃあないよ」

その言葉が言い終るか否か、慶次が足をつけた瞬間にアーチの鉄骨が一本落ちる。
僅かの衝撃で外れるよう『分解』されていたのだ。
歴戦の武将と言えど足元がおぼつかなくては隙も生じる。
ぐらついたその間隙を突かんと、投げられて結果的に背後に回っていたカピタンが飛び、鋭い突きを打ち出す。
巨大な刀は前面で構えている、不確かな姿勢でその得物を扱い不意打ちを受けることも躱すことも不可能、そもそも軌道の確認も出来まい。
その確信は概ね正しい。
カピタンの刃は躱されることも、超刀に防がれることもなく…………その背に回した鞘に阻まれた。
響くのは肉を貫く音ではなく衝撃音。
その反動も利用して体勢を立て直す慶次。

(偶然か……?いや、僅かに鞘の位置を調節していた。もしや狙ったのか!?)
「どうしたよ、随分驚いてるが」

改めて超刀を構える。
返り血など一滴もないその刃は輝き、覗き込むものを映しだしている。

「……まさか!?」
「まさか刃に映して背後からの攻撃を見てるとは思わなかったかい?」

曇りなき巨大な刃。
それは慶次の不殺という信念と、敵の姿を映す鏡となる。
NPCだからといって命を奪わず、血に染まらず歩み続けた故の武運ならぬ武功。
この時点で、二人の格付けは済んだ。
技巧でも、信念でも、積み重ねたもので英雄、前田慶次に空っぽの人形では及ばない。
だが、この戦場の決着は一対一の決着するものではない。

響き渡る銃声。
それは下方、乱入させじとしたはずの戦場から轟いた。
慶次の味方に鉄砲の使い手はおらず、キャスターも、拳を振るった点からおそらくはあのライダーも違う。
もう一人サーヴァントはいたようだが、数の差でキャスター相手にそれを行使することになるとは思い難い。
ならば、これはこちらに不利益なものだ、そう確信し武器を握る力が増す。
仮にこの場の敵を全て下したとしても、キャスターを取り逃がしては、味方に死者が出てはこの戦に勝ったとは言い難い。
急ぎ決着を、とキャスターに切りかかるが


884 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:17:08 ZH58FSXU0
「透明の、巨大クマちゃ〜ん」

何かに阻まれ攻撃は届かない。
いや、それどころか前進もできない。

「新手かッ…!」
「はじめまして、剣士さん。ワタクシはディアマンティーナ、そのクマちゃんはワタクシの友達ね。
 急がないと爆発しちゃうから、タイヘンよ〜、早く逃げなきゃ!」

造物主に近似した、おどけた振る舞いに確かな害意。
それは二つ並ぶとっても悍ましく映る。

「……ちっ、色々言いたいことはあるがよ。女形の人形ならそのじいさんそっくりな振る舞いはやめた方がいいぜ」
「あら、ワタクシとあのお方がお似合いなんて嬉しい〜!そう思いませんか、キャスター様?」
「それともう一つ……俺は剣士じゃねえ」

構えた超刀にその鞘を差し込み、槍兵としての真価を露わにする。
今必要なのは鞘による防御、超刀での速度ではない。
朱槍による、圧倒的な豪の一撃。
全身を駆動し、朱槍を振るう。それで囲んだ透明なモノを破り、そのまま女人形もキャスターも打ち倒そうと向かう。

「小鳥さん♡」

しかし囲みの破壊で思った以上に消耗したか、空を飛ぶ鳥型の自動人形数体に阻まれる。
そこへクマ型の自動人形が、キャスターが追撃する。
そこまで辛うじて対処するが

「血と雷!(サングレ・イ・フェーゴ!)」
「うぁッ…!」

三手目であえなく詰み。
カピタンの必殺剣をあえなく受け、川へと落ちて水柱を上げる。

「やるじゃない、グラツィアーノ。あれならまず生きてはいないわね」
「ああ、確かに急所を貫いたはずだ。生きていたとしても、令呪を用いた超回復でもしない限り無事ではいまい」
「そうかい……」

川を見下ろす二体の人形とその造物主。
そこへさらに新たなキャストが加わる。

「ただ今戻りました」
「お、それじゃあ急いで遊園地まで戻らないとね」

飛行する人形に抱えられ姿を見せたのは紫を基調にした衣装をまとった少女と、意識を喪失した学生服の少年。
暁美ほむらと人吉善吉。

「派手にやったってことは予想通りだったんだ?」
「はい。桃色髪の少女は私の顔を見ると、名前を呼んで安堵の表情を見せました」
「そっかぁ、やっぱりなぁ〜。そこまで伏せられちゃあ、こうしても仕方ないよねえ……君もそう思うだろ、アプ・チャー?」
「造物主様の御心のままに」

暁美ほむらの姿をした自動人形、アプ・チャーにそう語る。
彼女に下されていた任務は桃色髪の少女――鹿目まどか――が暁美ほむらと近しい関係であるか確かめよ。
もしそうであったなら、サーヴァントを持たないマスターが一人いるはずだから攫って来い、の二つ。

「随分予定は変わっちゃったけど、いい仕事をしてくれたよ。君たちもね」
「ありがたいお言葉」

本来なら病院で迎え撃つはずだった騒動。
しかしこの騒動に関わりそうな主従はかなりの数に上ったし、そもそも病院に至るまでに決着しかねないのがまずかった。
これが乱戦となれば脱落するマスターの一人や二人出てもおかしくはない。
つまり、マスター不在のサーヴァントが出てきかねない。
そうなった時に暁美ほむらがどのような行動に出るか、計りかねた。
重要になってくるのは彼女の願い、目的。ひいては執着。
……それは間違いなくあの桃色髪の少女に向かっていた。
それが敵意であるなら、この騒動のついでに攫いでもすれば暁美ほむらはまだ御せる味方だ。
だがそれが執着の域にまで至った好意であるなら、暁美ほむらとの敵対は避けられない。
彼女は好意の対象を倒せはしないだろし、逆に守るためならサーヴァントでも友人でも利用するだろうし、そしてその願いや想いすら踏みにじれるだろう。

僕のことも、切り捨てるだろう。少々からかいすぎたし。
彼女はマスター不在のサーヴァントが出来たなら、おそらくこちらを切ってそいつとの再契約を考える。
ならそうなる前にこちらが動くしかない。
すでに脱落したアサシンが一騎いるのは聞いていた。
アポリオンの映像で、サーヴァントを連れていない男も確認していた。
それがこの騒ぎに参入していることも。
そいつと、再契約する。


885 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:17:26 ZH58FSXU0

そのために色々動いた。
病院でなくここに移動することで暁美ほむらから地の利を奪う。
アプ・チャーなら僕が手を加えずとも独力で変装できるから、作成。
他必要な人形を遊園地からこちらに潜ませておく。
予定じゃここで暁美ほむらは止めといて、奇襲をかけるつもりだったからまさかの襲撃には焦った。
あげく彼女がどこか行きそうなときはあのサーヴァントに止めてもらおうかと思ったけど、騒ぎとは別方向に向かったからそのまま行かせちゃった。
あのサーヴァントも気に喰わないやつだったし、どっか行ってもらった方が都合よかったし。
ギリギリにはなっちゃったけど、さすがは僕。人形繰りも綱渡りもサーカス芸ならお手のものだ。

「さて、あとは……再契約だ。グラツィアーノ、ディアマンティーナ、君たちも頼むよ」

元より自動人形の長で懸糸傀儡作りの達人。
糸を繋いだり切ったりはお家芸だ。
全員がかりで魔力を致命的なまでに吸い上げる。サーヴァント三騎に相当する全力の魔力供給はいかな魔術師とて賄えるものではない。
……供給が断たれ、絶命したと判断。当然死んだマスターとのパスは途絶える。
その後に善吉に向かう。

「粘膜の接触と体液の交換が一番手っ取り早いんだよね〜、確か」

小さな傷を作り血液をなめとる。
そして頭部を掴みあげ、善吉の口を開けさせる。
そして開いた口を顔近くまで近づけて、自身の首筋に傷を作ってそこに口を押し当てる。
傷と口腔の粘膜接触、そして血液を交換して契約状態に持っていく。

「さて、これでよし……起きたら頼むぜ、マスター」

血液を与えるのは契約に加えて『生命の水(アクア・ウイタエ)』を飲ませる意味もある。

「さあ、いったん帰ろう…おっとその前に。
 アプ・チャー。君はその恰好のまま僕と一緒に。美樹さやかちゃんをうまく取り込んで戦力にしたいからね。
 そのために完璧に彼女を演じられるよう、まどかちゃんだっけ?彼女からも情報を得ないとね」

人吉善吉(ぼく)がその辺の渡りもつけられたらいいな、と漏らしながら。
フェイスレスが最も信じているのは、最後の四人でもフランシーヌでもなく、自分なのだ。
人吉善吉が、しろがね犬やディーンの様に白金の記憶に染まったなら誰よりも何よりも信頼できるだろう。


□ ■ □

「やあ、人吉善吉君。初めまして、そしてこれからこの部屋は僕のモノだ」
「お前……誰だ?それにどこだよここ?」

やけにがらんとした部屋に男が二人。
奥に座す主人、人吉善吉と外から入ってきたばかりの新参、フェイスレス。

「君の頭の中さ。この記憶という部屋は、『生命の水』という扉を通して入ってきた僕がこれから使うんだ。
 たくさんいた君も殆ど僕が追い出した。だから君も……出て行きな」
「出て行きな」     「出て行きな」
      「出て行きな」
                  「出て行きな」
「出て行きな」「出て行きな」            「出て行きな」
             「出て行きな」「出て行きな」


頭の中をフェイスレスの記憶が埋め尽くす。
それを表すように部屋の中も大量のフェイスレスで溢れかえる。
邪悪なれど200年の時を歩んだ英霊、その記憶の重みに『人吉善吉』が塗りつぶされそうになるが


886 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:18:16 ZH58FSXU0



「行儀の悪りィ客だな。茶漬けでも食らってろ」

ゴウ!と白い翼が群がるフェイスレスを薙ぎ払い、『人吉善吉』を守る。

「僕もいるよ。例え火の中水の中、あの子のスカートの中でも君の頭の中でもどこにでも」
「安心院さん……それに、お前は」

学生服を纏い、白い翼で飛ぶ長身の男。どこかで確かに見た覚えがある。

「ああ、いい。あのアマのせいで俺のことは思い出せないみたいだからな。まあそれが幸いしたみたいだが」
「どういうことだ……なぜ未だに自我を保っていられる?お前らはなんだ?」

英霊の魂の重みは人間の比ではない。
その記憶が流入している以上、普通なら耐えられるはずがない。
何者かの助けがある、それが目の前のこいつらだ。

「知ってるか?人間の脳ってのはよくできててな、物理的に脳味噌削られでもしない限り、記憶ってのは消えることはないんだとよ。
 思い出せない、っていうのは記憶にアクセスできないってことなんだそうだ。今、人吉は俺とあのアマのことを『認識』できず、『思い出せない』状態だ。
 お前がどんな裏口使おうと、『心理掌握』を破れない限り人吉の記憶全てにアクセスして食い尽くすことはできねーんだよ」

最後の砦として残ったのが二人の超能力者の記憶と言うわけだ。
よく見れば部屋の隅でハニーブロンドの少女がお茶を飲んでいる。

「ふざけるなよ……その程度の異常なら『生命の水』によって復元する。
 だいたいそんな僅かな記憶に自我を残しただけでは、サーヴァントの記憶に抗える理由としては不十分だ…!」
「超能力者(レベル5)を舐めんな。賢者の石から直接ならともかく、スキルにすらなってない技術で、宝具にまで昇華した能力を容易く治せるかよ。
 生前ならともかくサーヴァントってのはそういうもんだろ。自我云々は――」
「ああ、そっちは僕が話そうか」

かすかな、しかし確かな意識で抗う善吉を助けるような弁論の場に安心院なじみが加わる。

「前にも言ったけど、僕は平等な人外だから決して助けはしないよ。そして以前与えたスキルが偶然助けになってしまったからと、それを没収するなんて不利になることもしない。
 敵にも味方にも、良くも悪くも平等に。今回もあくまで偶然だからね。そうだな、球磨川くん風に言うなら『僕は悪くない』」
「『欲視力』なんて物が何の役に立つ!」

既に記憶の大半は把握しているのだから有する能力も分かる。
しかしそれがこの場で何の意味を成す。

「他人の視界を覗くこと、それ自体は役に立たないだろうねえ。これは人吉君のパートナー体質……人の視点に立って考えることができる彼にお似合いのスキルだけど。
 今回重要なのは彼が他人の視界を覗きながら、それを他者のものだときちんと認識してきたことにある。
 この『生命の水』はあくまで記憶を与えるだけで、塗りつぶすわけじゃあない。その記憶が他者のものだと認識できれば、自己を見失うことはないだろう?
 過負荷に悪平等(ぼく)、サーヴァントの視界も覗いた経験のある彼を乗っ取りたいなら、『生命の水』なんて溶媒を混ぜて薄くなった記憶を送るんじゃなく、きちんと手順を踏んでダウンロードしなければ確実とは言えないね」

最後に見下したような笑みを深め、憮然とするフェイスレスを一瞥し善吉の隣に立つ。
もう一人の仲間は隣に下り立ち、肩に手を置く。

「期待してるぜ、人吉くん。欲視力による経験はあくまで僅かな耐性でしかないんだから、この先乗っ取られずにいられるかは君しだいだ」
「『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を強く保て。俺のことを忘れるのはともかく、自分自身が誰かまで忘れるんじゃねえぞ」

二人に背を押され、朦朧としていた頭が晴れてくる。
それと共に、自分が誰か、あの老人が誰なのか『理解』が進む。
……蹴り出してやるよ、爺さん!

「俺の頭から出て行ってもらうぜ、フェイスレス!」
「舐めるな!キサマさえ喰らってしまえばこの部屋は僕のものだ!」

器の奪い合い。
サーヴァントとマスターとしてではなく、一個の人間同士が一つの体を奪い合う戦いが誰にも知れず発生した。


887 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:19:23 ZH58FSXU0
【C-6/橋のアーチ上/一日目・夕方】


【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]気絶、しろがね化進行中
[令呪]残り二画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:キャスターを討伐し、アサシンの仇を取る?
0.気絶中
1.???
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。今後どうなるかは後続の方にお任せします。


【キャスター(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]魔力充填(小)
[装備]特筆事項無し
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:聖杯を手に入れる。
1.陣地へ帰還する。
2.アプ・チャーを上手く使って美樹さやかを利用したい。
3.暁美ほむらの情報を得るために桃色髪の少女(まどか)と接触したい。
4.善吉が起きたら色々と話を聞く。
[備考]
※B-6に位置する遊園地を陣地としました。
※冬木市の各地にアポリオンが飛んでいます。
 現在、さやか、まどか、タダノを捉えています 。
※映像越しにサーヴァントのステータスを確認するのは通常の映像ではできないと考えています。
※ほむらから伝聞で明とルフィのステータスを聞いています。明についてはある程度正確に、ルフィについては嘘のものを認識しています。
※バーサーカー(不動明)を己の目で確認しました。
※暁美ほむらは何か隠し事をしていると疑っています。
※美樹さやかと暁美ほむらの関係を知りたがっています。
※ピンク髪の少女と暁美ほむらには繋がりがあると確信しています。
→アプ・チャーの報告から親しいものと認識。
※ランサー(慶次)と交戦しました。
※セイバー(流子)、アーチャー(モリガン)を確認しました。
※ほむらとの契約を破棄、善吉と契約しました。ほむらは死んだと思っています。


888 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:20:08 ZH58FSXU0
◇  ◇  ◇


「……ごほっ、結構流されたな」

橋より川下へ、数里。
咽ながら前田慶次が岸に姿を現した。

「どうにか防ぎはしたが……ど付き合えて、兵隊を呼べるキャスターとは厄介なの相手にしちまったな」

サーヴァント級の実力者三騎はさすがに一筋縄ではいかない。
それでも慶次ならフェイスレス、カピタン、ディアマンティーナとわたり合えた可能性はある。
万全の慶次なら。
今の彼を苛む令呪の縛り、『キャスターの命令を聞け』。
このキャスターとは当然食蜂操祈のことを指して使われたのだろうが、この地にキャスターはもう一騎存在するのだ。
暁美ほむらの言葉により老人をキャスターと認識し、そのキャスターに刃向かうのは僅かながら令呪に抗う行為。
本来意図した命令と違う物であったため、また保持する対魔力によって戦闘自体は可能としたが宝具は解放できず、体はうまく動かず。
あえなく敗れ、カピタンの一撃を喰らってしまった。

(あの剣戟、防ぐには足を犠牲にするしかなかったからな……この状態じゃ移動も戦闘も厳しい)

そも霊体であるサーヴァントなら多少のダメージは現界に影響しない。
足に受けたダメージも生前なら重傷だが、サーヴァントなら魔力供給さえあれば問題ない程度のもの。
しかし歩行・走行には差し支えるし、同格の相手との戦闘はまず無理だ。
逃れた女キャスターを探すか、老キャスターへのリベンジか、マスター達と合流し令呪の解除を頼むか。
いずれにせよ、今のコンディションのままでは良い方向には転がらないだろう。
一時、回復に努めることを決める。

「…お、こいつは丁度いい」

そうと決めて休めるいい位置がないかと見渡すと、何やらラップされた物が流れ着いていた。

「握り飯か。そういやキャスターの奴が買ったとか言ってたな。えーと、どうやるんだこりゃ?」

適当にビリビリ包みを破り、落ちていたコンビニで売っているようなおにぎりをかっ込む。
落ちていたものを口にするなど不用心、とも思えるが敵が落としたものや樽の中から出てきた物を食べるなどしょっちゅうだった。
それにサーヴァントは細菌による食中毒にも、神秘のない毒でのダメージもない。
宝具などなら別だろうが、ラップされたおにぎりに混入など余程微細なものか作った段階で入れるかでなければ無理。
そんな心配よりも傷を癒すために食って、休む。

「ちょいと、一服」

『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地(ゆめごこち)』発動。
目覚めたとき、再び彼の戦は始まるだろう。


【B-5/北東の川辺/一日目・夕方】


【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]疲労(小)魔力消費(中)右脚へのダメージ(大)、『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地(ゆめごこち)』発動中
[装備]朱槍
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
0.Zzz……
1.マスターたちの元へ戻るか、女キャスター(食蜂)を追跡し倒すか、老キャスター(フェイスレス)にリベンジか。
2.マスターが用済みとなって消される前に勝負を決める。
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスターとの同盟を破棄する強い決意を持っています。
※キャスター(食蜂)を装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター(食蜂)対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。
※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。
 エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。
※令呪の発動『キャスターの命令を聞くこと』
※キャスター(フェイスレス)、カピタン、ディアマンティーナと交戦しました。


889 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:20:31 ZH58FSXU0
□ ■ □ 



『ご覧頂けましたか?飽き性の道化が新たな器を求めて奔走する物語が裏では紡がれていたのです』


『さて、これで魔法少女の不審な行動と戦国武将不在の理由は語られました』


『とはいえ、これもまた物語の一欠片にすぎません』


『姿をくらませた少女たちはいずこへ?未だ姿を見せぬ戦士は何を?新たな疑問が芽生えていることでしょう』


『それでは視線をあちらへ……幕を引くには、まだしばしの猶予があります』



□ ■ □ 

街の東西をつなぐ橋から川を下った、港を臨む河口付近の緑地。
その近くで二人の少女が川から上がっていた。

「しっかりしてよお、犬飼さん……!」

軽い口調に似あわない必死の形相で己がマスターを岸に引き上げる。
飛び込むタイミングの指示は食蜂が、そして実際の飛び込みは体力に優れた犬飼が行い、無事逃亡できたのはよかった。
しかし少し泳いだところで犬飼がダウン、そこからはただ流され続け遥か下流。
中学時代もカナヅチで、生涯着衣泳の訓練なんてしなかった。ましてや人ひとり抱えて泳ぐことなど食蜂操祈にできるはずがない……サーヴァントとして情けないといったらないが。
霊体であるため溺れることがないのは幸いだったが、岸に上がるのは流れの弱くなるのを待つしかなかった。

「あー……死ぬかと思った❤本当にこれ以外なかったの?」

気だるげにしながらも憎まれ口を叩くマスターに大丈夫そうだと安心する。

「ベストとは言わないけどお、ああなったら仲間割れさせてその隙を突くしかないって言ったでしょ?」

病院に逃げ込み、人混みを利用する。
それは自分たちの戦略としてはとれる策としてそれなりのものではあったが、辿りつけねば意味はないし、仮に辿りついてもあのライダーには意味をなさなかったのではないかと思う。
NPCがあえなく倒され、追いつかれそうな時点で方針変更。
攫った少女――鹿目まどか――の記憶を読み対策を考案。
ライダーことモンキー・D・ルフィの能力と同盟者タダノヒトナリとアーチャーの存在、他多数の情報を得る。
アーチャーの詳細は不明だが、ライダーには泳げないという弱点があることを把握。
鹿目まどかを交えライダーと交渉、新たな同盟者を得る。
失敗した場合ランサー、もしくは他の誰かを利用し、アーチャーとセイバーを止めて川へ逃げることでライダーを撒く。
以上二つを主方針とした。
洗脳候補はライダーかセイバーが筆頭。
しかし今後を考え、ライダーとの交渉を優先するなら始めから支配下に置くのは心象的に避けたかった。
といってサーヴァントの前で宝具によるマスター掌握からの令呪使用というのはラグがあり過ぎ、対応される可能性大。
追いすがるサーヴァントは全員が対魔力持ちで直接の掌握が効かないだろう。
そこで独力でかなりの攻撃力を持つ夜科アゲハに別マスターを攻撃させて仲間割れを狙った。
そのために色々と犬飼にも車内で準備・協力を求め、肉体的な無茶もさせた。相当に消耗しているだろう。

「少し行けば麒麟殿温泉っていうの言うのがあるらしいわあ。そこに向かいましょう」

鹿目まどかから得たもの、他にも道中やNPCから得た情報がある。
その整理と休養などを兼ねて北部の施設に向かおうとする。

「……!伏せて、犬飼さん!」

そこへ響く銃声。
犬飼目がけて放たれたそれを咄嗟に庇う。
魔力を感知し、振り返れば銃口。
ただの銃でサーヴァントを傷つけることはできない、そうした打算込みで犬飼を庇って身を晒すが


890 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:20:50 ZH58FSXU0
「あ……くぅ……!」

何らかの魔術的付加をしていたか弾は食蜂の体を貫く。
腹部に二発、胸部に二発。
即死には至らないが動きを止めるには十分なダメージ。
犬飼はここに至るまでの消耗のせいか碌に身動きが取れない。
それを確認すると下手人がとどめを刺すために物陰からはっきりと姿を見せる。

「あなた……暁美ほむら、さん?」
「そう、私のことを知っているのね。魔法少女には見えないから彼女から聞き出していたのかしら?」

覗き見た覚えのある人物の名を呟くと、肯定の言葉を呟きながら銃を改めて構える。
うっすらと紫色の光を纏ったそれが頭部にポイントされる。

「マスターを仕留めての再契約も考えないではなかったけれど……」

庇うというのは予想外。
とはいえパラメータは明らかに今まで見たサーヴァントの中でも最低だし、なによりまどかに危害を加えた女だ。
結局最後はこうしていたかもしれない。
そもそも内輪揉めを始めた川上の面々に混ざって狂騒を加速させるより、こちらに来るべきと考えたから追ってきたのだ。
まどかは自身のサーヴァントに守られている。
同盟者もいたので、サーヴァントの数では有利。
キャスターと武将風のサーヴァントは互いのことで精いっぱいのはず。
なら私は逃げ延びようとしているまどかの敵を、仕留めようなければと。

「今からこのサーヴァントを倒すわ。あなたはテレフォンカードで帰還するのね」

人間を撃つ羽目にならなくてよかった、僅かに感傷的になりつつ。
引き金を絞ろうとすると

(リモコン……?)

鞄から何か投げられたから回避して見れば。
溺れる者は藁をも掴むというか、末期の抵抗の儚さに呆れのような悲哀のようなものを覚えるが

「幻想壊し☆(ブロークン・イマジン)」

ドン!と音を立ててリモコンが爆ぜた。
それを確認すると続けてカバンの中身をぶちまけ、さらに吹き飛ばす。
このリモコンは道具作成スキルで生み出した、微量ながら魔力の塊。
彼女にとってリモコンは宝具『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』の行使に不可欠とまではいかなくとも必要な、いわば宝具の一部。
通常宝具というのは英霊にとっては生前共に在り続けた半身であり、それを壊すというのはその身を裂くほどの精神的苦痛を味わう。
だがこのリモコンは宝具に不可欠の存在でありながら、焦がれた人は投擲という戦術をとり……自身もかつて投げ当てた。
だから、その気になれば『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』に近似した魔力の暴発という戦術も取れる。
恐らくは食蜂操祈の持つ最大火力。
直撃すれば人間なら少なくないダメージが見込めるだろう。

しかしそれはあくまで当たればの話。
食蜂の投擲技術はペットボトルをゴミ箱に入れるのも難儀するレベルだ。
一帯にまとめてばら撒くことで範囲攻撃としてその欠点を補おうとしたが、暁美ほむらと食蜂操祈は直接戦闘の経験値の差が大きかった。
限定的とはいえ、下位の英雄には匹敵するほどに幾度も魔女や魔法少女との闘いを切り抜けた魔法少女と、人の心を操り、自らの体を鍛えることなんてしない超能力者。
最初の爆発で事象を見切り、短時間とは言え時間を止めれば回避は容易。
爆炎が晴れると同時に銃撃を放とうとするが

「な…!こ、れ…は」

急激に魔力が流れ出し、ソウルジェムが黒く染まる。
穢れゆえか、魔力を失う倦怠感ゆえか意識が遠のき銃を取り落とす。

(こんな時に……!)

フェイスレス、そして二体の人形による魔力搾取。
まさかそこに殺意があるなど思いもよらず、無効も戦闘が激化していると想定する。
敵にとどめを刺そうとしたタイミングでこれはあまりに間が悪い。
そして消耗を心配してソウルジェムに意識を向けると、穢れは大幅に増し、さらに追い打ちの様に巨大な魔力反応。
サーヴァントのものだ。

(この…本当に間が悪すぎるわ、あのキャスター……!)

恨みごとを心中吐くが、どうしようもない。
令呪で何か命じるなど思いも及ばず、本能的に右手を盾の中に伸ばしグリーフシードを取り出す。
そして盾を捻り時を止め、撤退する。
僅かながら目にしたサーヴァントの戦闘、出し惜しみをしていては即座に命を落としかねない。逃げるのにも全力を出す。
流れざまにグリーフシードを使い、止まった10秒を全力で駆ける。
時が動き出しても強化された身体能力での足は止めずに十分な距離を稼いだ。

しかし、次の瞬間には自分の中で何かが切れるような感覚。
慌ててもう一つグリーフシードを取り出そうとするが、その瞬間には左手に宿したソウルジェムが深い闇に染まる。
ソウルジェムの奥底、自身の本質が変貌し、肉体という器から溢れそうになる。
自分が、消えていく――


891 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:21:31 ZH58FSXU0
(あ………そ………)

魔女になってしまう。
聖杯が手に入らない。
それはみな些末事。
ただ、まどかのことを助けられないのが口惜しい。
いや、まだそうとは決まっていない。彼女は未だインキュベーターと契約していなかった。
なら、彼女が聖杯を手にするなら魔法少女になることはないはず。
そのために動け。
魔女と化して、先ほど襲撃した主従ともう一人いたサーヴァントを喰らえ。できるならば他の敵も呑み込め。
まどかを助けるためならばこの身が堕ちようとかまわない。
歪んだ希望と献身を胸に昇天せず堕天する。

思えば、まどかのために何度も傷つき、苦しんできた。
沢山のまどかを見てきた。
次々とそれが走馬灯のように目の前に浮かぶ。
エイミーを抱きかかえたまどか、クラスメイトと笑うまどか、家族のことを自慢げに話すまどか、私を庇って弓を構えるまどか。
巴マミに弓を引いたまどか、佐倉杏子と共に魔女となった美樹さやかを助けようと在りもしない手段を探すまどか。
美国織莉子に殺されたまどか、巨大な魔女となり世界を呑みこむまどか。
髪を伸ばし、ドレスと翼を翻したまどか。
…………?
待て、なんだこれは。私はこんなの知らない。
この世のものとは思えない神々しさすら感じるまどかに、なぜかこうしなければならない気がして手を伸ばし―――

「まどかあぁぁぁッ!!」

現実に帰還した。
伸ばした両手、右手に握ったグリーフシードが左手のソウルジェムの穢れを移しとっていた。

(まどかが、助けてくれた……?)

数多の時間軸でも見たことない姿のまどか。幻覚だったのだろうか。
しかし、偶然かもしれないが魔女と化さずにすんだ。
なぜかまどかに両の手を伸ばさなければいけない気がして、その動作がソウルジェムの浄化に繋がった。
そして、美樹さやかは何か私の知らないモノを知っている。
何とかの理、とかいう。
次に会ったら確かめるべきだろう。
それより今は

(グリーフシード……放っておくわけにはいかない)

取りあえず盾の中にしまう。
試したことはないが、時間跳躍についてくる、しまったものが劣化しないなど外とは時間の流れが異なるようだし、グリーフシードが孵る事もないだろう。
最悪魔女は仕留めるしかないが、余計な消耗はしたくない。
なぜならば、キャスターとの繋がりが感じられなくなっていたから。

(魔女になるほどの魔力を持って行って、それでも負けるなんて……情けないにもほどがあるわね、まったく)

魔力が必要ということは戦闘が激化したのだろう。
そして今繋がりが感じられないということは消えたのだろう。
となると新たなサーヴァントを探さなければ、まどかを守るためにここに留まることはできないことになる。

(さっきの金髪のサーヴァントは手に入れるのは難しくなさそうだけど、正直強いとは思えない。
 橋の騒ぎの展開次第では手に入るかしら?丁度今しがた感知した未知数のサーヴァントを狙う?
 美樹さやかか、最悪まどかに協力を仰ぐことも考えるべきかもしれない。彼女たちのサーヴァントも考慮する…必要がある。
 それなら、ここでの連絡先は……まどかの向かっていた学園でわかるかしら?)


892 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:21:58 ZH58FSXU0
【B-5/川辺/一日目・夕方】


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(中)、苛立ち
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(二つ穢れが溜まりきっている)
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
1.新たなサーヴァントを手にする。
2.美樹さやかやまどかのこの地での連絡先を知るためにアッシュフォード学園に向かう?
3.次に美樹さやかに在ったら『鹿目まどか』について聞く。
4.キャスターに対するかなり強い不快感。

※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかとの交渉期限は2日目正午までです。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※フェイスレスは武将風のサーヴァント(慶次)に負けて消失したと思っています
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。



※サーヴァントとの契約破棄を確認(一日目夕方)、これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。








◇  ◇  ◇



「あの女、どこに…?」
「逃亡力全開、なんでしょ。新手が来てるんだから……」
「新手?って」

なによ、と声を出そうとした瞬間にその答えを知る。
川とは反対側、街の方から来たらしき巨大な男が実体化する。
サーヴァント同士気配は感知できるが、暁美ほむらの襲撃とそれに伴うダメージで気付くのも対応も遅れる。
最も仮に動けたところで何か出来たかは怪しいが。

「女二人、それも怪我人か。あまり乗らねェな。銃声の主は逃がしたか」

現れた白いひげの男、エドワード・ニューゲートはポツリと漏らす。
これが仮にホワイティベイのような戦場に立つ覚悟を決めた者なら敵と認めるが、どう見ても戦慣れしてない小娘。
殺る気はあるのかもしれないが、やられる覚悟が足りてない。
とは言え敵を逃がすわけにもいかず、武器を構える。
犬飼は僅かな体力を振り絞って飛びのき、戦闘態勢をとろうとする……がふらつく。
食蜂はダメージと魔力消費が重なり、碌に動けない。
しかしそれでも懸命に活路を見出そうと口を動かす。

「サーヴァント6騎とそのマスターの情報があるわ……それで、私たちと組んでくれない?」
「グラララ、そいつは面白ェな……その6って数字はおれ達を含んでか?」
「そんな貧困力溢れる真似するわけないわぁ。私たちも加えていいなら8騎になるけど」

残り13騎の内8騎。それが事実だとするなら大きな情報だ。
問題はその質と、信頼がおけるかどうか。
時間をかけて検証しなければ難しい、しかしそこまで時間を割く価値があるか。
マスターとも相談し………………………


893 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:22:16 ZH58FSXU0

「飯に行くぞ」
「え?」
「飯だ。もともとおれ達は海の見えるところで酒と飯をやろう、ってことでここまで来たんだよ。
 そこでおれのマスターも交えてお前らの話を聞いてやるよ」

ついて来い、とばかりに背を向け歩み出す。
逃げ出すことはないと考えているのか、逃がさないだけの能力があるのか。
迷いのない足取りと、以外に簡単に進んだことで呆気にとられる。
そしてそれ以上に歩幅の違いで追いつけなそうだと考え、仕方なく声を絞り出す。

「ちょ、待ってもらえない!?怪我人なんだからせめてマスターにくらい手を貸して欲しいんだゾ。
 それにせめてクラスくらいは話してくれてもいいでしょう?」
「ああ?自己紹介はこっちのマスターと合流してまとめてやる気だったんだが……ライダーだ。
 そっちは今はいい、あとでまとめて聞く。
 にしても……召喚された時にも思ったが、名前聞かれるなんざ久方ぶりだ」
「へえ、知名度力高い英霊なんだ」
「年食うと好む好まざるに関わらず人脈は増えるもんだろ……先に逝っちまう奴もいるが。
 ところで一応敵のおれに身柄任せていいのか?」
「その気になれば私たちなんてすぐ倒せるでしょう?なら大して変わらないわよ」

言い分としては分からなくはない。
大した重荷でもないと仕方なく二人とその荷物を纏めて片手で抱え上げ、移動を始める。

「この熱は、川遊びのせいか?」
「さあ?そうかもね❤」

呼吸を乱しながらも身を委ねる。現状を受け入れてか、諦めてか。
少し進んでバス停が見えるたころ、その近くに立つ学ランの男が反応を見せた。

「戻ったか。銃声と爆音が聞こえて行ってみりゃ、そいつらがいたと」
「キャスターよ☆こっちがマスターの犬飼伊介さん」
「虹村刑兆だ」

短く自己紹介をすませ、歩き出そうとする刑兆とライダー。
すぐそこの外にいくつかテーブルを並べた飲食店に向かうようだが、それに待ったをかける。

「ちょっとお願いがあるんだけど、犬飼さんの着替えを買ってきたいのよ。
 それと、できれば麒麟殿温泉っていうところにまず向かってくれないかしらぁ?
 犬飼さんびしょ濡れだし、体調も崩してるから経過観察も兼ねてね☆」
「あァ?温泉?」

買い物くらいならわかるが、そこまで時間を割きたくはない。
そもそもそこまで信を置いたわけでもない。
刑兆に引き合わせたのも、こいつらに会わせるリスクより、まだ一騎存在するアサシンを警戒して戻ったほうが良いと判断したからだ。
そう考え反対意見を述べようとするが

「温泉方面は二本後のバスだな。地名があってる保証はねえから、そっちで確認しろ。
 バスで行くならライダーは収まらねえから霊体化する。自分で歩け」
「おい刑兆……本気で言ってんのか」
「夜になる前に息抜きと偵察もかねて外食、おまけに酒と海の見えるトコなんて注文聞いてやってんだ。こんどはおれのを呑んでもらうぜ」

バス停の時刻表を確認し、ライダーを制する。
そしてひっそりと念話で付け加える。


894 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:22:40 ZH58FSXU0
『こいつらと話す前に少しおれ達だけで詰めておきたい。それに、ちと気になることもあるんでな』
『……意味があるなら、まあいい』

その意図も纏めて話すということだろう。
銃声の主を誘い出したかったが、離れる判断もありだ。
バスが来てから姿を消すわけにもいかないので、バス停の席に二人を座らせ姿を消す。
無論、何かあれば即座に武器を振るえるよう。

「提案受け入れてくれるのは嬉しいけど、怪我した女の子歩かせるなんて紳士力足りないゾ☆」
「伊介はこっちのサーヴァントはともかく、そいつに頼る気はないから別にいいけど❤
 次のバスまでそこそこあるし、服売ってないか探してくる❤」

危なげな足取りだが、日常を過ごすならできなくはないようだ。
街中を軽く見て回る犬飼にキャスターも霊体化して続く。

『体調はどうかしら犬飼さん?』
『悪いに決まってんでしょ❤本当に大丈夫なんでしょうね、コレ?』
『出来るだけの処置はしたから、あとは温泉の効能に期待☆』

変化があったのは逃走する車内。
突如鼻血と高熱の症状を出した犬飼に、敵サーヴァントの攻撃かと思った。
自身の科学・医療知識も能力も動員して調べてみると、脳が異常活性していることが分かった。
まるで、かつての自分や垣根帝督の様に、能力者としての片鱗を見せたのだ。
それならば話は早いと能力を行使。
『自分だけの現実(パーソナルリアリティ』の構築には電気刺激や薬物投与のほかに心理誘導や催眠による暗示も用いられる。
食蜂操祈は能力・心理双方のプロだ。
犬飼伊介を暗示誘導し、能力を安定させたことで症状は僅かながら和らいだ。それでもさすがに完調とはいかないが。

『ところでなんでさっきから温泉押し?』
『この街には発熱と鼻血を伴う風土病があって、その特効が麒麟殿温泉だっていうのがNPCの認識だったんだゾ☆
 一人二人じゃなくてかなりの数がそれを把握してたから、行ってみる価値はあるわ』
『あっそ❤じゃあ伊介はそこのコンビニにシャツとかないか見てくるから、時間に間に合うようよろしく❤』

店内に入る犬飼を見送り、外に残る。
バスが来ないか注意を払いながら思考の海に潜る。
そう、風土病という共通認識のようなものがNPCにあった。
突発的な能力の覚醒、それに対する処置手段の可能性。明らかに何らかの意図を感じる。

誰かが能力者のことを磁石に例えていた。
人為的に作られたのが学園都市の能力者で、自然にある雷に打たれたりして発生した磁石が『原石』というわけだ。
ここはその雷が落ちやすい地――つまり何らかの因子が存在する。
おそらくは学園。今感じる空気と何か雰囲気が違った。
そして学園には多くのマスターが集い、新たに確認したマスターも多くが学生。
そして能力開発の経験があり、それに対応できるレベル5が二人、呼ばれていた。

『この聖杯戦争は能力者を目覚めさせようとしている……』

その説を補強するのは先ほど覗いた鹿目まどかの記憶。

これは偶然得た情報で、最初は逃亡のために彼女の記憶を見た。
同盟者タダノヒトナリの存在とそのサーヴァント、アーチャ―。能力は不明。
彼女にサーヴァント、ライダーことモンキー・D・ルフィ。
ライダーの情報、泳げないというのが一つ重要なカード。
川に飛び込めばこのサーヴァントは追って来れない。
そのためメインプランは病院への逃亡に置き、第二案として橋を塞ぐ、第三案に川に飛び込むで策を進めた。
予感通り川辺で追いつかれ、その策を実行するざるを得なくなった。
ランサー、もしくは他の誰かにアーチャー陣営を攻撃させセイバーも含めた内輪揉めの乱戦に持ちこむ。
ランサーが来なかった場合を考えて一つ仕掛けを撃つ準備。
認識誤認(カテゴリ081)のスイッチをリモコンでなく、左手の指の動きに一時的に変更した。
もともとリモコンは自分ルールとして課したもの。
利便性と思い入れゆえに愛用してはきたが、強い思い込みがあれば別のスイッチへの変更は不可能ではない。
そして『思い込ませる』のは、自他問わず容易いこと。
能力にリモコン必須と勘違いしているはずだからその隙を突き、『食蜂操祈のマスターはタダノヒトナリである』と誤認させ攻撃を誘導、その隙での逃亡に成功した。
鹿目まどかの記憶には感謝してもしたりない。
だが、彼女から得た情報はそれだけではなかった。


895 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:23:18 ZH58FSXU0
『インキュベーターという知的宇宙存在、魔法少女という存在』

宇宙の熱的死を防ぐためにエネルギー源として魔法少女を利用していたインキュベーター。
その在り方は願いを叶える代わりに戦いを強いると言うモノ。
聖杯戦争は、願いを叶えるために戦いを強いるモノ。順序は真逆だが、近似している。
そしてどうやら願いを叶える力にも才能があるらしい。
能力者にも『素養格付』という限界があったように。

『聖杯は万能の願望器だけど、全能ではないのよねえ』

一方通行が最強ではあっても無敵ではなかったように、限界がある可能性が高い。
富、名声、力。不老不死、死者蘇生に……色恋沙汰などが願いとしては定番だろう。
しかしその全てが学園都市の科学と、この聖杯戦争の現状を鑑みれば難しくない。
巨万の富は魔術や科学無しでも得る事はできる。
人の心の機微は、善悪やプライドなどの好悪を気にしなければ『心理掌握』でどうとでもなる。
機械の体でも部品の交換を除けば不老不死は不可能ではないし、記憶を電子情報に記録し『学習装置(テスタメント)』を利用してクローンなどに移せば自我は不老不死となる。
それに『未元物質』の体は本当に不朽のものだったらしい。
そしてサーヴァント、英霊の召喚は擬似的な死者蘇生だ。不老不死同様にクローンを作成し、生前の記憶を学習させればそれも科学的には死者蘇生。
極端な話、願望器は全能である必要は無く、その人の願いが叶うならそれ以外は何でもいい。
金銭を望むならそれをどこかから獲得する手段を与えればいいわけで、死者の蘇生などできなくても別にかまわないだろう。
それはあたかも能力者にできることが一つであるように、魔法少女の願いに限界があるように。

『この聖杯戦争で新たな能力者が目覚めれば、その能力者の手で願いを叶えることができる』

例えるなら、『聖杯の器』。神の子を血を受けた杯は用意されていても、まだ中身が注がれていないのかもしれない。
例えるなら、『絶対能力進化(レベル6シフト)』。万能の願望器たる能力者を生み出し、なしたいことがあるのかもしれない。
14人のマスターはレベル6シフトにおける一方通行の立ち位置で、14騎のサーヴァントが妹達の立ち位置なのだろうか。

『そうねえ、絶対能力者(レベル6)、「天之杯(ヘブンズフィール)」と言ったところかしら☆』

だが、だとするなら何でも願いがかなうというのは眉唾だ。
正確には、その聖杯を参加者が使えるのか、使えたとして目的の願いが叶うのか。
能力者の能力は先天的な才能によるものが大きい。
基本的に能力は1人につき1種類しか使えず、一度発現した後では能力の種類の変更は不可能。
なら、目覚めた能力者は誰の願いを叶える能力を身に付けるのか。
恐らくは、天戯弥勒。

『うーん、馬鹿正直に勝つのは拙いかもしれないゾ☆』

とはいえこれもまだ仮説だ。
出来るなら夜科アゲハ……は難しいだろうが、なんらかの能力に長じた人物との議論を重ねたいところだ。
願わくば、虹村刑兆かあのライダーがそうであってくれるといいのだが。


896 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:23:35 ZH58FSXU0
【B-5/北東部の道/一日目・夕方】

【犬飼伊介@悪魔のリドル】
[状態]疲労(大)魔力消費(小) 微熱、PSIに覚醒
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0.食蜂操祈に心を許さない。
1.麒麟殿温泉に向かい休養
2.それが済んだら虹村刑兆たちと情報交換
[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。またトランス系のPSI(もしくは心理系の能力)を習得しつつあります。

【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]ハンドバック(リモコンなし)
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
1.麒麟殿温泉で犬飼を休ませ、能力が安定するか経過観察。
2.虹村刑兆たちと情報交換、交渉。
3.学園都市の能力に因らない能力者と接触、話がしてみたい
4.犬飼伊介には一応警戒する
[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。
※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。
 それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名は聞いていませんでした。
※天戯弥勒、および聖杯戦争について考察する必要があると感じ始めました。
 今の仮説は1、ガイアの怪物以上のなにかを御そうとしている 2、参加者と主催者のために14騎いる 3、参戦しているサーヴァントは一流の英霊ではない 4、アッシュフォードに二人のレベル5がいたのには意味がある
→さらにインキュベーターの関与、超能力者の覚醒などが要素として含まれている可能性を考えています。
※まどかの記憶を見ました。少なくともインキュベーターのこと、ほむらの容姿、ルフィの真名と能力を把握しています。他にどのようなことを知ったかは後続の方にお任せします。
※超能力を目覚めさせる因子の存在(PSI粒子)に気づきました。


[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。
 基本的にはキャスターが索敵を行い、ランサーに協力、或いは命令する形になります。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確認済み。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による)


897 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:23:52 ZH58FSXU0
◇  ◇  ◇



二人が離れたのを確認し、念のため念話で刑兆に話を振る。

『で、何が狙いで温泉なんざ寄るんだ?』
『おれの狙い、というよりあいつらの狙いが知りたいといったところだな。会って早々の男二人連れて温泉なんざ行きたがるかフツー?
 聖杯戦争の最中だぞ。なにかあるとしか思えねえ。たとえば消耗を癒せる施設だとかなら知っといて損はねえ』
『確実性に欠くな。んな半端な狙いだけか?』
『それとあの女の症状だ。気にかかるのは』

こちらも確実なもではなく、明確な答えとはならない。
だがどことなく覚えのある症状とこの地で経験した戦闘が刑兆に警戒を促す。

『スタンドは本来スタンド使いにしか見えねえ。サーヴァントに見えているのは同じ精神エネルギーである霊体を基にしているからだと思える。
 特にお前はおれのスタンドエネルギー……魔力で現界してるしな。それはまあ、いい。
 だが昨晩の執事。あいつはワイヤーを振るい、能力の類は見せなかったし、スタンドのことを知らないようだった。
 にもかかわらずおれのバッド・カンパニーが見えていた』
『それがあの女たちとどう関わるんだ?』
『無意識のスタンド使いっていうのがいる。自分の能力を自覚してない、もしくは発現していないが才能のあるやつだ。
 おれは弓と矢を使って多くの人間にスタンドを身につけさせたが、才能がない場合死ぬし、スタンドを身に付けてもそれを制御しきれず倒れるやつも時々いた。
 あの犬飼とかいう女みてーに熱出して、最終的に制御できなければそいつも死ぬ』
『あの女も無意識のスタンド使いで、目覚めかけてるってのか?そいつは飛躍しすぎじゃねーか?』
『スタンド使いはスタンド使いと引かれあうんだ。磁石みてーにな。
 それともう一つ。強力なスタンド使いが血縁、もしくは物理的に近くにいると能力に目覚めることがあるらしい。
 スタンドエネルギーが魔力になってるっつーことは、魔術はスタンドの一種、またはその逆だと考えられねーか?
 つまり、あの女は強力な魔術師の近くにいることでスタンドに目覚めたのかもしれねえ。
 もし目的地の温泉にいって体調が戻ったなら何かあるのは確実。
 そいつが弓と矢についてや、スタンドの制御に役立つなら知っておきたい情報なんでね』

キャスターのクラスが目的地と定めるのだ。
何もないということはないだろう。
少なくとも魔力のある、ホットスポットの様になっていたりくらいはしてもおかしくはない。
敵の意図を知る、それが主目的にはなってしまう受け身の案だが無視したくはない選択肢だった。

『目的意識があるなら責めはしねェが、リスク管理は考えてんだろうな?
 あいつらの負傷が癒えて、能力に目覚めたなら厄介かもしれねえぞ?』
『キャスターが全力になって、人間がスタンドに目覚めた程度で苦戦するようなサーヴァントか、お前は?
 もしそうなら一考するが』
『グララララ!!!本当に生意気な口叩きやがるな、テメエは。上等じゃねェか、温泉でもどこでも行かせてやれ。
 だがさっきも言ったが、足元掬われねえように警戒はしてろよ。
 まあ、先々の事考え出したのは悪くねえからな、今回の動きに否はねえよ』
『おいおい、おれが何も考えてねーってか?』

そりゃ1000人を超える荒くれ者を率いて、世界の海をはせた英霊に比べれば経験値で劣る。
それでもここまでの戦闘ではそれなりに立ち回った自負はあるし、休養や偵察なんかも提言している。
さすがに億康のように何も考えてないやつ呼ばわりは心外だと反論しようとするが、続く言葉に押しのけられる。

『そうは言わねェよ。この戦場でのことは考えてる。最初に身の振り方をいろいろ考えてみろって言ったろ。
 能力うんぬんについてはともかく、ここにねえ弓と矢の事は帰った後のことを想定しなきゃ出て来ねえ。
 生きてりゃそういう後先考えねえ若僧は船に乗せてやってもよかったが、生憎な。
 だからまあ、願いがかなった後の事考え出したのはいいことだ、って言ってんのさ』
『……はっ、違うね。単に聖杯とり損ねた場合のことも考えてるだけさ』
『口の減らねえやつだな、本当に。まあいい、本題の方だ』

勝った後のことを考えるのも、負けた場合を考えるのも今は後回し。
まずは勝つための手段を考える。


898 : とある戦士の相互理解(ウェイトゥアンサー) ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:24:14 ZH58FSXU0
【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
1.犬飼休養後に飯を食いつつ情報交換・交渉。できれば海が見えて、かつ酒のある店。
2.登校するかどうかは気分次第。
3.公衆電話の破壊は保留。

[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。
※犬飼伊介がスタンドに目覚めつつあると考えています。
※温泉かその近くには能力に関するなにか、回復施設、魔力のホットスポットのようなもののいずれかがあると考えています。


【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]ダメージ(中)、魔力消費(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.酒と飯と情報交換。その内容を刑兆と詰める。
2.麦わらの男が気になる。
3.いずれ海に行きたい。
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。


[共通備考]
※ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。
※アーチャー(モリガン)と交戦、宝具『闇より出し幻影の半身(アストラルヴィジョン) 』とサキュバスであることを把握しました。
※B-2近辺にこの世界における自宅があります。




[全体備考]
※C-2近辺でアゲハが自転車を盗み、放置しましたが、他の騒ぎが大きすぎるのであまり目立たいない可能性が高いです。
※C-2からC-5にかけての車三台とルフィによるカーチェイス、それに襲い掛かるNPC、大量のNPCの謎の昏倒及び武将風の男による暴行と、沢山の騒ぎが起こりました。
 何らかの噂やニュースになる可能性が高いです。
※タダノから女生徒誘拐事件があったと警察の一部と学園に報告されています。タダノの連絡不能が長期に及ぶ場合警察が何らかの形で動く可能性があります。
※C-6の橋の近くにタダノたちが乗っていた乗用車(学園から拝借、事後承諾済み)、流子たちが乗っていた車(学園の駐車場にあったのを無断拝借)が停めてあります。
 ルキアは車内に残されています。
 また操祈たちが乗っていたリムジン(操祈が洗脳していたNPCのもの)もあります。ルフィの攻撃で車体前部がへこんでおり、気絶したNPCが運転席に残っています。
※操祈が買い占めた食料の一部と、アゲハ、善吉、カレンの生徒名簿が川を流れています。どこかに流れ着くこともあるかもしれません。


899 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 03:26:29 ZH58FSXU0
投下終了になります。
色々とこじつけて進めた感はあるので、明らかに設定と矛盾している点や他にも問題点等ありましたら指摘お願いします。


900 : 名無しさん :2015/04/20(月) 07:51:43 SJA/JcGY0
投下乙です!
すごいな…前回で大きく動いた状況がさらに動いて、それだけじゃなく相当色々な因縁が新しくできてきてる
みさきちの能力の使い方、惚れるわ…大混戦に陥ったその敵の数の多さを逆に利用するとは…壊れた幻想を絡めての奥の手も唸った
白ひげたちと合流できたのはどう動くか。伊助様にもおじさんみたく力の萌芽が見え始めてるし
形兆兄貴の強かさは白ひげの器と上手く噛み合ってますね。この主従、主従としての安定感なら随一かもしれない

タダノの負傷、モリガンの彼女らしい相対、その気概を汲んだルフィもまた器がでかい。即断即決ぶりは時に場をかき回すけど、同時に英霊としての強さにも繋がってるんだなと

そして個人的に一番燃えたのはやはり裏で暗躍するフェイスレス周り!慶次がかっけえのなんのって、目論見の看破から最後の四人交えた交戦の激しさまで、華の傾き者にふさわしい堂々たる立ち回りでした。フェイスレス側も、人形をフル活用した場への干渉と糸の繰り方がまさに悪の司令にふさわしい奸計でぞくぞくします。アプ・チャーさんをここで持ってくるかー!マジでオートマータ万能すぎる。ランサーに比較しての最後二人の力不足を数と頭で補う戦術バランスも上手い。
ほむほむとの関係はまー破綻するだろうなと考えてましたが、まさか善吉と再契約とは…精神世界での戦いはかつての勝を思い出しますが、善吉には二人がいた。これもめっちゃ燃える展開でした。サーヴァントを失ったほむほむの今後も含め、この演目からも目が離せません

状況を繋げ交え、徹底的に盛り上げていく手腕に感服です。改めて、投下乙でした!


901 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 09:56:54 .IuI786M0
感想ありがとうございます
寝て起きて見返して見たら、ちょっと最後の犬飼みさきちパートに描写の不足とちょっと矛盾がありました
修正はどうにか今日中に上げます


902 : 名無しさん :2015/04/20(月) 12:05:09 bRIwutu.0
メンタルアウトで一部乗っ取ってるから、生命の水の記憶侵食は聞きませーん!
というのは強引ながらもすごい納得できる展開


903 : 名無しさん :2015/04/20(月) 13:51:22 WD7h0WjA0
ダウンロードに対して、今は亡き垣根からの『自分だけの現実(パーソナルリアリテイ)』で対抗ってのが胸熱
程度くんの死は決して無駄じゃなかった!


904 : ◆A23CJmo9LE :2015/04/20(月) 15:09:20 ZH58FSXU0
修正です
伊介様パートを一つ挟もうと思ったのですが、進展転換が上手くできずさらに冗長になりそうだったので文章の追記・変更で済ませます

>>892における

犬飼は僅かな体力を振り絞って飛びのき、戦闘態勢をとろうとする……がふらつく。



犬飼は僅かな体力を振り絞って飛びのく。
そして暁美ほむらの取り落としていったベレッタM92F――キャスターにダメージを与えた銃なら、効き目があるかもしれない――を拾い構えようとする。
しかし不慣れな得物に、消耗もあって狙いは定まらない。
そもそもこの銃自体は何の変哲もない物だ。


に変更


伊介様の状態表最後の備考
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。またトランス系のPSI(もしくは心理系の能力)を習得しつつあります。



※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。

に修正

プロットから変更した点のチェックを怠った私のミスです。申し訳ない


>>900
読み込んでもらえて本当に嬉しいです
今後も読んでいただければ稚拙ながら書き手冥利に尽きます

>>902-903
その部分は反発が来るんじゃないかと心配していたところなので、気に入っていただけたなら嬉しいです


905 : 名無しさん :2015/04/20(月) 20:39:12 ss6Zn4XM0
投下来てたのか 修正ともども乙です!

多重クロス、そして二次聖杯戦争の魅力たっぷりの話だった

戦禍の中心になった犬飼食蜂組はしぶといっつーか諦めの悪さが逆境を切り開いててすがすがしい
参加者の中でもメンタル・戦術ともに安定してる白ひげ組に合流したことでわかんなくなったなぁ

個人的に、ルフィの『覇気』やモリガンのサキュバスの性みたいなスキルを上手く場面ごとの盛り上がりに合わせて組み込んで行ってるのに感心する
あとは戦国武将である前田慶次の修羅場慣れをしっかり描写してるのもすごい
慶次とフェイスレス&自動人形の交戦は、交えて語られるフェイスレスの思惑込みで読み応え抜群でした


906 : 名無しさん :2015/04/20(月) 21:23:25 bNDZyMhY0
投下乙です!
読んでてテンション上がりまくりました!
ほーむレス解散、モリガンvs流子、そしてきっと誰も予想できなかった垣根登場
理屈付けも十分納得できるものだと思います!


907 : 名無しさん :2015/04/21(火) 00:30:31 uPYbFku60

まさか死んだてーとくんにこんなカッコいい出番があるとは……


908 : 名無しさん :2015/04/21(火) 02:10:10 clQbg7oo0
修正も乙でした
大混戦なのにどのキャラも立っててそれぞれにかっこいいのがほんと素晴らしい


909 : ◆A23CJmo9LE :2015/05/05(火) 18:13:09 zxcFY3Qg0
バリバリ自己リレーになってしまいますが
虹村刑兆&エドワード・ニューゲート、犬飼伊介&食蜂操祈、美樹さやか&不動明予約します

あと最近ルフィがギア4を披露しましたが、こちらのルフィにそれを追記する予定はありますか?
こう、ステータス情報が更新されましたという感じに
それともギア4は一部のサーヴァントと同様にオミットでしょうか?


910 : 名無しさん :2015/05/06(水) 03:29:13 L9DHbWyE0
おおお、新たな予約が!すげー楽しみです


911 : ◆wd6lXpjSKY :2015/05/07(木) 01:26:04 VNllNxbo0
予約ありがとうございます!

>>909
ルフィのギア4について新しく記述を追加する予定はありませんでした。
ですが「使用不可能ですか?」と聞かれると「使えるよ!!」になります。
最初に書いたモン勝ちです。


912 : ◆A23CJmo9LE :2015/05/11(月) 18:55:20 CPJyJjys0
延長します


913 : ◆wd6lXpjSKY :2015/05/13(水) 23:58:41 3wh9u1LM0
暁美ほむら、エレン、ジャファルで予約します


914 : 名無しさん :2015/05/14(木) 02:32:04 fY8uQ6xc0
おお、また予約が…エレンジャファルか!


915 : ◆wd6lXpjSKY :2015/05/16(土) 23:51:38 C1OIHpoE0
延長します


916 : ◆A23CJmo9LE :2015/05/19(火) 00:58:27 WDRRptaE0
ごめんなさい、明日も仕事長引きそうなので一端予約を破棄します
少なくとも日曜日までは再予約できそうにないので、該当キャラを書きたい方いましたら書いてしまって構いません


917 : ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:50:43 shDAOWAY0
>>916
またの予約、お待ちしております。

お久しぶりです、投下しますが予約からジャファルを外します、申し訳ありません。


918 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:52:32 shDAOWAY0

鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむら。
三人の魔法少女が参戦した願いを求める聖杯戦争。
選ばれた十四人のマスターだが、その中に魔法少女が三人いる。

それぞれ参加している事実を伏せていたがこうも重なるモノなのか。
異なる時間軸からまるで聖杯に吸い寄せられるかの如く。
知り合いに遭遇する、偶然とはどうも思えない。
点と点を結ぶ線の正体に心当たりはないがどうしようもない因果が働いているのか。

魔法少女の生い立ちに関わっている存在に心当たりは在る。
かと言ってその存在が聖杯戦争に関わっている確証はない。
そもそも打ち合わせなど行わずに手に取ったテレホンカード。

鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむら。

三人がそれぞれ願いを求めた結果なのだろうか。

惹かれ合う運命に逆らうことなど出来ない。
出会ってしまえば敵、参加してしまえば敵になってしまう。
言い伝えどおりならば願いが叶うのは最後の生き残りだけ。
それは大切な人を殺してでも奪い取る――唯一無二の願望器。

最もサーヴァントを失ってしまった暁美ほむらには辿り着く権利を持ち併せていない。

六時間の間に新たな契約を結ばなければ彼女は灰になって死んでしまう。
契約を結ばなければ公衆電話で元の世界に帰るか。
答えはノーだ。戻ってもやることは変わらない。
いつか訪れるであろう愛と勇気が勝つ物語を夢見て何度も何度も世界を繰り返すだけ。

ならば生き残るためにも新たなサーヴァントとの契約が必要である。


919 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:53:38 shDAOWAY0

キャスターは死んだ。
あんな奴でも願いを叶えるためには必要な存在だった。
考えるだけで厭になる。死んでくれて嬉しいぐらいだ。
短い付き合いであったがどうもあの男はどうも精神に悪い。
良い表現が見つからないが不快の塊のように感じていた。

「……」

振り返るようなイベントや思い出はない。
気味の悪い人形を使役するキャスターは死んだ。それでいい。
最後の最後まで魔力を喰らい尽くしたのだ、死んでも当然だ。

(我ながらどうしてこうもキャスターを嫌っているか解らない)

マスターとサーヴァントは何処か惹かれ合うかもしれない。
愛の名の下に彼女と彼は狂っている、黒い程までに総てを塗り潰す偽りの無い愛。
彼女がそれを知ることはきっとないだろう。一生すれ違いのまま。

当然の話しであるがキャスターは生存していて新しい契約を結んでいる。

彼には新しい道が見えている。
彼女には新しい道が見えていない。
生き残るのは彼、死ぬのは彼女。

生き残るために暁美ほむらは学園に向かうためにタクシーに乗った、それが数十分前の出来事である。


   ◆  ◆  ◆


920 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:54:38 shDAOWAY0

行き先はアッシュフォード学園……近くのコンビニである。
事件が起きた学園に直行する生徒は野次馬か馬鹿か。或いは犯人か。
怪しさしか生まれず何処に他の参加者が潜んでいるか解らない以上慎重に行動したい。

学園に行く理由。
大雑把に言えば新しいサーヴァントと契約するためである。

そのためには他の参加者との接触が必要である。
この聖杯戦争には三人の魔法少女が参戦しており彼女達は知り合いである。
学園で連絡先を把握すれば接触は可能だろう、暁美ほむらは考えた。

無闇に歩き回って他の参加者を当てにするのは愚策過ぎる。
襲われればその時点で終了、彼女の願いは簡単に砕け散ってしまう。
最も美樹さやか或いは鹿目まどかからサーヴァントを奪えるとは思っていない。
鹿目まどかから奪えば彼女がこの世界から消えてしまう。
美樹さやかから奪うとして時間停止の魔法を知っている彼女をどう対処すればいいのか。
正面からの戦闘で彼女に負けるとは思えないが魔力消費の関係上衝突は避けたい。


(協力を求めるしかない。私が生きる残るためには)


既に美樹さやかには同名の提案をしている。
返事は明日の正午に聞くつもりだったが状況が変わってしまった。それも暁美ほむらにとっての最悪に。
キャスターに掻き乱された結果が之、自分の生命が危険に晒されてしまった。
灰になってしまう現象を防ぐためにまずは協力者を集める。
その後助力を得て他の参加者を襲撃しサーヴァントを奪うのが彼女の算段である。

(上手くいくとは思えない、でも……やるしかないわ)

他の参加者に勝てるのか、そもそも美樹さやかは同名に応じてくれるのか。
不安要素は多く存在しており総てが未確定。
考えれば考える程吐き気が身体の中から押し寄せてくる。

だが暁美ほむらは行動を止めれば死に繋がってしまう。
臆病風に吹かれて黙っているよりは傷付いてでも明日を掴み取らなければならない。
今までのようにこれからも足掻いてこの世界を生き残るしか無い。
学園について連絡して行動してから、次の策を考えればいいだけのこと。

魔力の消費が無ければ橋の乱戦にて漁夫の利を狙うことも出来たが仕方が無いことであった。


「……」


橋の乱戦を思い出し一つ引っ掛かる。
架空世界で日常を謳いながら生命を奪い合う聖杯戦争。
その参加者は天戯弥勒の言葉を信じれば十四組である。
だが実際には住民が多く存在している所謂NPC、彼らは一体何者なのか。

天戯弥勒が用意した存在と考えるのが無難であろうが……。


921 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:56:27 shDAOWAY0

単純に殺し合いをさせるならばNPCは邪魔でしかないだろう。
効率的に行うならば無人島か何処かに参加者を押し込めればいいだけのこと。
ついでに首輪でも嵌めて監視していればいい。

何故殺し合いを行わければならないのか。願いを叶えれるのは最後の一組だけである。
聖杯戦争の知識に疎い暁美ほむらは思う。

一組ならば願いはマスターとサーヴァントでそれぞれ一つずつ、つまり二つの願いが叶えられるのだろうか。

サーヴァントが諦めてくれれば二つの願いを叶えることも可能であろう。
仮にキャスターと契約したままなら確実に無理と言い切れるが。

天戯弥勒はどうやってこの世界を用意したのか。

之については直接聞くか知識有る者と接触をするのが一番であろう。
聖杯戦争に詳しい他の参加者、頭脳に長けている英霊。
そして天戯弥勒と繋がりがあるであろう夜科アゲハ。
彼は幸い学生である。学園にて連絡先を掴める可能性は大いに在る。
自分の状態が万全になれば一度接触を試みたいところ。

NPCの存在価値について。
日常を演出するための記号と暁美ほむらは考えている。

物語の中で特別な役は与えられていないが演出するには必要不可欠な存在。

学園で発生した事件が正にそう。
走るパトカー、集まるマスコミ、広がる噂。
どれも閉鎖された空間では決して起きない日常の流れが形成されている。
日中からサーヴァント同士の戦いを行えば情報は素早く拡散されてしまうだろう。
自分の日常的な立ち振舞も気にしなければこの戦争を生き残れないらしい。


「お客さん……着きました」

「あ……」


時間が過ぎるのは早い。
目的地であるアッシュフォード学園の最寄りコンビニに着いたようだ。
運転手に声を掛けられ間抜けな言葉を放ってしまう。
思えば黙って考え事をしていた。運転手が無口な男で助かった。

暁美ほむらは基本運転手と会話することが無い。
普段の生活にて活用した場合もお喋りな運転手の時はハズレだと内心思っている。
彼女はそんな人間である。


922 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:57:46 shDAOWAY0

NPCと言えばこの運転手もそうなのだろうか。
無口な男、年は若くはない見た目をしている。
特徴といえば背中越しからでも解る鍛え上げられている肉体。
普通の運転手には必要ないように思えるが鍛錬が趣味なのか。

一人一人雑な人形ではなくそれぞれに個性を持たせてることに意味でも在るのだろうか。
着色された人間は他の参加者との違い、初見で見抜くことは厳しいだろう。
この運転手でさえももしかしたら他のマスターかもしれない。危険は常に身近に潜んでいるようだ。


「ありがとうございました」


料金を払い礼を述べると暁美ほむらは外に出ようとする。
開けられた扉の向こうから流れてくる風が心地良い。
この世界が殺し合いではなく日常であればどれだけ嬉しいことだろうか。

その日常を勝ち取るためにも暁美ほむらは学園へ向かう。
自分のために、日常のために、鹿目まどかのために。


「……お客さん、学生だよな」


「……?」


外に出たところで運転手に話し掛けられる。
支払った額は在っているし忘れ物もしていない。
何を言われるか見当もつかない暁美ほむらは黙って次の言葉を待った。


「……いや、なんでもない。止めて悪かった。ただ、知っているとは思うが学園で事件が起きたらしい。
 近付きはしないと信じているが変なことを考えているなら……って思っただけだ。気にしないでくれお客さん」


「は、はぁ……」


結局何が言いたいのだろうか。
運転手は扉を閉めるとそのまま走り去ってしまった。
学園に近付いた自分を心配してくれたと思うが暁美ほむらは感心する。

NPCには思ったよりも感情が豊かである。
物語の進行度合いに関わらず同じ台詞しか発しないゲームとは大違いだ。
やはり魔法的な要素を抜きにして他の参加者を見つけるのは難しいだろう。
キャスターのような監視システムを持ち合わせていれば楽な話ではあるが。

何にせよこれから向かう学園で自分の新しいサーヴァントを見つける第一歩を踏み出す。
気合を入れ直し足を進める暁美ほむら。

「……」

気付けば変な汗を掻いていた。
あの運転手、どうも威厳と言うか貫禄と言うか……何処か強い印象を感じた。


   ◆  ◆  ◆


923 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:58:21 shDAOWAY0

アサシンは現在見回りに出ている。
つまりこの部屋に居るのはエレン一人である。

時間が経過していく度に魔力について適応していく感じが在る。
感じであり言葉に出来なければ状況を理解してもいない。
解ることは近くにアサシンが居ないということ。

お昼のような外出しようとしたらアサシンに止められる、何てことはもう起きない筈だ。

外に出たい思いは彼が居た元の世界に起因する。
コンクリートで固められた居住区は彼に似合わない。
もっと開放的で広々な空気の方がエレンに適応している。

そして扉を開ければ平和な世界で仲間と過ごせるかもしれない。
甘い期待がエレンを動かせる要因となっているのだ。

勿論そんなことは無い。
言ってしまえばエレンの知り合いであるNPCも確認されていない。
当然である、彼は聖杯戦争が始まってから引き篭もっているから。

引き篭もりの現状が彼に幻影を見せるきっかけになってしまった。
快適な生活は元の世界とはかけ離れ過ぎている。
食糧にも困らない、寝床にも困らない、お風呂にも困らない、生活にも困らない。

そして何よりも巨人が存在していない。

異なる世界の日常はエレンにとって甘過ぎる。
黙って寝ていても明日の朝日に怯える必要が無い。
安心して夜を眠れる世界は彼らが追い求めている理想郷だ。
それを一人だけ体感してしまったエレンは元の世界に戻ろうとしないだろう。

殺伐的な世界は必要ない。
ミカサもアルミンも此方の世界に来ればいい。
ジャンやコニー達も、ライナー達も来ればまた皆に会える。

違う。

扉の外に皆が俺を待っているんだ……そんな妄想さえ引き起こしてしまう。

今は邪魔をするアサシンもこの部屋に居ない。
暗殺者とてエレンの邪魔をしようとは思っていなく寧ろ助けている。
無意味な外出を控えるのは生き残る上で重要な作戦である。
しかしその閉鎖的な日常がエレンを動かす要因になってしまったのは皮肉な物であった。


「――ッ!?」


部屋に響く音に警戒するエレン。
その正体は電話である。元の世界には存在しない人類の英知、科学の進歩の象徴。
最初は何もかもが意味不明であったが時間が其れを解決してくれた。


924 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 00:59:55 shDAOWAY0

彼も今では買い物も出来るしテレビも、洗濯機も扱えるようになっていた。
無論電話も熟知しているつもりである。
誰からの電話かは不明だがアサシンやコンビニの店員を除けば久し振りの他人との会話だ。
意気揚々としながらエレンは受話器をとった。

「もしもし? 俺、エレン・イェーガーです!」

『エレン君? 具合は大丈夫かしら……ってごめんなさい。担任の『小萌』です』

小萌。
会ったことはないが資料で見たことが在る。
エレンが通うはずだったアッシュフォード学園の先生であり彼の担任だったはず。
桃色の髪をしておりとても小柄な印象があった。
それも自分と同じくらいか下の世代と間違えてしまう程幼い写真だった。

「ど、どうも。先生すいません。初日から休んで」

『気にしなくていいの。それでね、エレン君……申し訳ないけど学園に来れるかしら?』

「は? 今からですか?」

『ニュースで知っているかと思うけど今の学園は事件が起きたあとだけど。
 それに休んでいるエレン君には申し訳ないけど……手続きの関係上、少し用事があるの』

体調を崩している学生に。
事件が発生した直後の学園に。

呼び出すとは何を考えているのか。
エレンも訓練生時代は教官に無理矢理しごかれたこともあったが優しい世界でも在るのだろうか。
残酷な世界ではなく優しい世界でも……エレンは即答した。

「行きます! 俺、外に出ます! だから先生は待っててくださいね、それじゃ!」

『は、え、なんで……? 貴方それでいいと思って――』

小萌先生の言葉はエレンに聞こえていない。
話途中で受話器を置いてしまったから。彼は急いでいたから。
外に出れる理由は素直に嬉しい。
体調を崩していようが学園で事件が発生していようが関係ない。

これで外出する大義名分を得た。

ジャケットを羽織り、兵団の代名詞でもある立体機動装置をカバンに詰め込む。
之が無ければしっくりこない。身体に馴染んだ装備を持ち歩く。
念のためであるが装着ではなく持ち運ぶ、優しい世界に武器なんて必要ないから。

靴を履き扉を開けて光を浴び風を感じるエレン。
彼は開放感に満ち溢れている――この世界が残酷な世界とは知らずに。



【A-4/エレン自宅前/一日目・夕方(終盤)】



【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]健康、開放感、笑顔
[令呪]残り3画
[装備]立体機動装置(カバン)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り巨人をこの世から駆逐する。
1.学園に向かい小萌先生に出会う。
2.ミカサ達を探す。
3.この世界に皆を呼ぶことを考える。
4.願いを叶えるなら何だって……何だって……?
[備考]
※アッシュフォード学園中等部在籍予定です。
※天戯弥勒の通達を聞いていません。
※学園の事件を知りました。


925 : 右は楽園、左は―― ◆wd6lXpjSKY :2015/05/24(日) 01:01:50 shDAOWAY0

「事件が起きた学園に来る……信じられないわ」

どの口が言えるのだろうか。
エレンとの電話を済ませた小萌先生改め暁美ほむらは呆れていた。
常識的に考えて有り得ない。
体調を崩した生徒に登校を強制、それも事件発生直後の学園で。
そもそも手続きの関係など何をするのか。出勤簿を整理するだけだろうに。

学園に到着した暁美ほむらは職員室に入り生徒名簿を見つけた。
誰も居ない職員室ならば小萌と書かれた教師の机を漁ってもバレはしないだろう。
見つかった生徒名簿は中等部の物だった。そして付箋が貼ってある。

《暁美ほむら、エレン・イェーガー、鹿目まどか、美樹さやか 欠席》

この付箋を見て暁美ほむらは確信した。
このタイミングで休む生徒、他の生徒は魔法少女の三人。
彼女達は聖杯戦争の参加者、ならば……エレン・イェーガーも参加者と考えれる。
NPCの可能性も有るが学園に来て接触を行い情報を貰えばそれだけも有意義と言えよう。
邪魔になるならば殺せばいいだけの話。何にせよエレンのサーヴァントが新しいサーヴァント候補になるだろう。

彼女は知らないがエレンのサーヴァントは付いて来ない可能性も在る。
それは別として。

小萌先生の机の上には生徒から没収したであろう聖書が置かれていた。
暁美ほむらはそう言った類に興味を熱心に持っている訳ではないが手に取り適当に見つめる。
聖杯戦争、何か手掛かりが記されていても不思議ではないのだ……。

「創世、神、始まりの人間、楽園、兄弟、方舟、バベル……まぁそうよね」

書かれていることはきっと彼女が知っている聖書と同じだろう。
見ても意味は無いようだ。聖書を机に戻し窓を見つめる。
しかし、何か気になるというか引っ掛かることがあった。
ゴフェルという見たことのない単語がどうも頭に残る。

日常でも存在する所謂《響きが強い》単語だろう。
覚えやすいこの言葉はテストで配点が低く正解で当然のような。
男子生徒が大喜利素材として活用し授業を中断させる材料のような。そんな印象を受けた。

「そんなこと今は関係ない……私は」

エレンは学園に来る。サーヴァントを率いて。
暁美ほむらは学園に居る。サーヴァントは居ない。

戦闘になれば不利になるのは彼女。
人間の力でサーヴァントに対向するのは厳しい、基本は無理だろう。
時間を止めれば勝機は在るが突破されれば彼女は死ぬ、未来は覆せない。

ならば。

「美樹さやかかまどか……私が連絡するのはどっち……それとも――」



【C-2/アッシュフォード学園・職員室/一日目・夕方(終盤)】



【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(中)、苛立ち
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(二つ穢れが溜まりきっている)
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
1.エレンとの接触を行う。
2.美樹さやかか鹿目まどかに連絡……?
3.次に美樹さやかに在ったら『鹿目まどか』について聞く。
4.キャスターに対するかなり強い不快感。
[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかとの交渉期限は2日目正午までです。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※フェイスレスは武将風のサーヴァント(慶次)に負けて消失したと思っています
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。

※サーヴァントとの契約破棄を確認(一日目夕方)、これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。


926 : 名無しさん :2015/05/24(日) 01:02:33 shDAOWAY0
以上で投下を終了します。


927 : 名無しさん :2015/05/24(日) 01:40:42 yU/7elB60
おお、投下乙です!
エレンが外に出たー!ジャファルさんお宅のマスターが…
すんなり誘き出されたのはほむらにも予想外だったみたいだけど、悶々とし過ぎたか
そしてほむほむもまあ諦めるタマじゃないし打開策を探るよなあ
司令の生存といいどんどんこじれていく…


928 : ◆lb.YEGOV.. :2015/05/24(日) 19:32:21 43mKdMP20
投下お疲れさまです!
エレン、騙そうとしたほむほむですら素に戻る程の迂闊っぷり
彼がこの幸せな世界の裏にある、彼の世界よりも残酷な真実に気づくいたらどうなるのかが気になります
学園はガラっと人員が入れ替わって新しい展開になりそうですね

感想のついでといってはあれですが、流子、アゲハ、慶次、ルキア、モリガンで予約いたします


929 : ◆A23CJmo9LE :2015/05/24(日) 21:14:56 NOAvx24s0
投下お疲れ様です
駆け引きも何もない二人のマスターのやりとりは平和なのやら物騒なのやら……
意味は違えど自身のサーヴァントとの繋がりを失った二人の行く末やいかに
ぽつぽつと気になる語も見え隠れして、がぜん面白そうな状況になってきてますね


では私も改めて食蜂操祈&犬飼伊介、虹村刑兆&エドワード・ニューゲート、美樹さやか&不動明で予約します
今度は何としても期限内に書き上げます


930 : 名無しさん :2015/05/24(日) 22:25:08 IuiM0TUk0
投下乙です!
エレンがついに動く!ジャファルに断りも入れずに…他のマスターと比べても順応にかなりの遅れがあるエレンはどうなってしまうのか。
彼を誘い出したほむらの今後もかなり気になるところですが、さやかちゃんの鯖を諦めたとはいえ、今後の他組との衝突はたぶん避けられないですね…

そして予約が二つも来てるだと…
りゅーこちゃんVSモリガンに慶次たち、そしてもう一方は白ひげみさきちに美樹デビルマンが…
楽しみにしてます!


931 : 名無しさん :2015/05/29(金) 22:32:21 6fCO/RCM0
引きこもりから脱したエレンに明日はあるのか…
気になる予約も二つ入ってて楽しみ


932 : ◆A23CJmo9LE :2015/05/31(日) 20:02:16 te7rUU1c0
明日は代休もらったので夜通して書き上げるつもりですが、一応期限が近いので延長申請はしておきます


933 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/01(月) 01:14:51 TkhlFxKo0
報告が遅れて申し訳ありません
期間内での完成が難しそうなので延長申請させていただきます


934 : ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:05:41 GTR2cE5s0
遅くなりましたが投下します


935 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:06:39 GTR2cE5s0

   ◆  ◆  ◆



魔術と科学が交差するとき、物語が始まるならば。


さらなる法則が交われば、物語は加速する。



   ◆  ◆  ◆


936 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:07:47 GTR2cE5s0



休養。
それはあらゆる生き物に必要な生命の営みの一環。

例えば、食事。
栄養の補給は生きていくうえで必須となる。
加えて美味美食に舌鼓を打つのは心を癒す、人生の楽しみの一つだろう。
虹村刑兆とエドワード・ニューゲート、そして黒髪の女性は食事を摂っている。
麒麟殿温泉近く、浜辺を臨む食事処。小太りの女性が主人を務める小料理屋。
屋内に収まらない巨躯の男を前にしても丁寧に屋外の席に案内するのは、NPCの仕様か、はたまた一部の英霊の住まう世界の常識に呑まれたか、プロ意識か。
女性は丁寧な所作で、刑兆は所帯じみた風に、ニューゲートは雄々しく、食事休憩をとっていた。

「それで私の能力のことは理解してもらえたかしらぁ、虹村さん☆」
「いきなり来たときは何かと思ったが……まあ概ねな」

目に星のような光を浮かべた女性。
『とある科学の心理掌握』により操作したNPCを通じて食蜂操祈と、虹村刑兆たちは情報交換を行っていた。
まず明かした手札は宝具の一端、NPCの操作。
非道な能力にニューゲートは仄かに白い眉を顰めるが、戦術の否定はせず話を止めはしない。大きなデカンタをグラスのように持って酒を呷る。

「遭遇した一人目のサーヴァントはランサー。真名は前田慶次。
 一応組んでたんだけどぉ、どうもこの能力が気に入らなかったらしくて離反されちゃった☆
 マスターの情報もあるけど、いる?」
「そっちも一応あとで聞くが……本当に理由はそれだけか?」
「疑うのも分かるけど、多分それ以上はないと思うわよぉ。価値観力の不一致っていうのは、英雄にとって小さくない。
 私の属性は混沌・善で、彼は秩序・中庸。重んじる方針が違うとやっぱり合わないのよねぇ」

でもあなたのサーヴァントは違う、と眼で訴える。
海で自由に生きる男はどこかに帰属するような質ではないし、無為に人を切り捨てるような悪人でもないだろうと。
それに前田慶次という名。
明智光秀や松永久秀のような裏切りで名高い英霊ではないが、なにより奔放な男だ。
それは日本の学生である虹村刑兆にはわかる。

「つついても仕方ねェだろ、刑兆。これは聖杯戦争だぜ?」
「そうだな、十分あり得るしひとまずは置いておく。実力の方はどうだったんだ?」

矛盾を探そうとするのに時間を割くのも後でいい。
情報が出そろった段階で矛盾があればそれまでだ。

「敏捷は最高クラス、他もアベレージ以上の優秀なパラメータ力だったわぁ。対魔力もそこそこ。
 残念ながら宝具は見せてないし、私自身闘いは専門じゃないからあまり詳しくは語れないけど……強いて言うなら槍じゃなくて大きな刀を持ってたのは気になるところねぇ。
 他の騎士クラスと闘ってもほぼ無傷だったからこけおどしではない、一廉の達人」
「前田慶次って言うと朱い拵えの槍だったはずだな。と言っても長物以外の武器を持ってるのはおかしくはないと思うが」
「大きさも長物くらいの刀だったのよ。明らかに補助武器じゃ収まらない。あ、一応刀の柄と鞘は朱だったゾ☆」
「真名解放と共に槍になるってのは?それくらいの変形ならおかしくねェだろ。おれの世界じゃ動物になる武器や兵器もあったくらいだ」

最も戦闘に長けた英霊の一言に、他の二人はそれはどうだろうかと首を捻る。
食事を口に運びながら小考し、サーヴァントだしあり得なくはないと結論。

「確かにそれは否定できないけど、前田慶次は武器よりもその在りかたの方が知名度力の高い英霊よぉ。
 少なくとも槍以外に切り札……技能か、逸話に因る宝具を一つは持っているはず」
「確かに、な。おれも詳しくはねえが、自由な気風の男だっていうことの方が有名だろう。それに伴う気儘な逸話の数々もな」
「おれの知識は座由来のにわかモンだ。お前らの同郷なら下手に口出さねェほうがいいな」

キーワードは『大きな刀』。真名は『前田慶次』、伝承は『朱い槍』に『傾奇者』。
推理できるのはその程度か。
学園ではNPCに伝記を調べさせていたが、あまりあてになる物でもなさそうだったので放置してきてしまった。
マスター、朽木ルキアのことは容姿とこの地での拠点。
手から雷のようなものを放つ何らかの異能者、戦闘者であることを伝える。
そちらもランサーが宝具を見せていないのと同様、僅かにしか能力の情報は見せていない。
サーヴァントなら一蹴できるだろうが、刑兆は自身との交戦の可能性を想定する。


937 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:08:11 GTR2cE5s0

「それだけか?敵の手の内は知っておきたいんだがな」
「そう言われても……あまり信頼してもらえなかったみたいで名前とクラスくらいしか聞けてないのよねえ」

こっちもお前を信用できなくなりそうだよ、とでも言いたげに呆れ顔の刑兆。
サーヴァントの方が警戒の度合いは高いから仕方ないかと話を進めようとすると、もう一人の男が口をはさむ。

「おめェ、既に二回も少しとは言えサーヴァントとも戦りあったろうが。今さらマスター相手にビビってんじゃねえ」
「油断すんなっつったり、ビビんなっつったり安定しねえ奴だな、おい」
「過小評価も過大評価も、相手を誤って捉えてるのは同じだ。相応の評を下せ。
 少なくともおれから見たお前は、熟練らしい鋼線使いとわたり合い、一瞬とは言えサーヴァント相手に生き残ることができるマスターだ。
 小娘一人、警戒はしても苛立つほどに重要な情報じゃねえだろう」
「…………フン」

前のめりになりかけていたのを改めて、深くイスに腰掛けなおす。
手元のドリンクを飲み干すと、それと同時にニューゲートも酒を飲み下し、二人の飲み物を追加で頼む。

「話を続けても?」
「おう、ウチの若ェのが騒いで悪かったよ」
「それじゃあ、次はセイバーね。二人いたけど……先にランサーと組んでる女性の方から」

容姿と、犬飼を通じて確認したパラメータ、一応属性。
合致した方針と、属性から恐らく気の合う組み合わせだろうとも補足。

「特徴的なのは鋏みたいな剣に、露出気味な服装あたりかしらぁ」
「鋏みたいな剣?」
「こう、真ん中の繋ぎ部分を分けたうちの片方みたいというか……」

テーブルにあったナプキンに描いて見せることで伝わるが、刑兆は困惑顔。
スタンド使いも特異なものは多いが、剣士が鋏を振り回すというのはどうにも思考が追いつかなかった。
ニューゲートは流石にこんな突拍子もないダマシは入れないだろうと、真面目に考察を進める。

「鋏ってのはなかなか象徴的な道具だ。截ち切るものと考えれば、英霊の持つ概念武装か宝具としちゃ納得がいく。
 俗世から『切り離す』、天と地の『乖離』、運命の糸を『切る』なんて神話はいろんな世界にあるみたいだな」
「『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』は天と地を分けた神話の一節ね☆
 糸を切るっていうとギリシャ神話の運命の神モイラかしらぁ?
 流石に神霊はいないでしょうけど、意外と大物かも?」
「片方しかなかったなら対になる、いわゆる『姉妹剣』があるかもしれねェな。
 本人が持ってて二刀流になるか、別の英霊が持ってるかは不明だが警戒はしておくべきだ。
 加えて『服装』が特徴的だったんなら、『糸』にまつわる英霊だと思うぜ」
「『糸』、かぁ……」

サーヴァント二騎は自前のものに加え、座による知識を漁り、一時沈考する。
キーワードは『鋏』、そして推察される『糸』だろうか。

「『糸』を武器や足場にしたり、それで人や物を操るのなら心当りがあるが……」
「『鋏』を持つなら逆にそういう糸使いや人形使いの天敵の可能性力が高いんじゃない?
 加えて握り鋏でない、いわゆる洋鋏があるだけの文化的背景が必要ね☆
 『糸』は動力や衣服みたいな文化面での影響力は大きいから、捉え方によっては反英雄的な存在かも?」
「そういや『糸』で編んだ『衣服』を武装にしてるんだったな?それが宝具かは分からねェが……
 露出が多い、ってなら装飾過多……つまり必要以上の『糸』があるのを否定してるとするなら、確かにある意味じゃ文明の破壊者だな。
 ……まあ英雄・反英雄なんてのは立場で変わるから何とも言えねェか」

食蜂操祈が考えるのは一種のナチュリスト。近代化・時代の変遷に反発する革命児。成功したなら英雄で、失敗したなら反英雄。
エドワード・ニューゲートが考えるのはやはり賊。鋏や衣服のような技術・武装を奪う簒奪者。味方には慕われるが、敵からは当然疎まれる。
宝具の詳細がさらにわかれば別だが、現時点で推察できるのはそこまでか。
実力は少なくとも先のランサーと互角に闘ったという。
宝具によって勝敗は変わるかもしれないが、いずれ劣らぬ豪傑が肩を並べているのは厄介。
マスター、夜科アゲハも戦闘者であるという。
朽木ルキアと同程度の情報しかないが、無視はできない。

「まあ兵数だけならおれの宝具でどうにかできる。相手の宝具次第だが、勝機は十分だ」
「頼りになる発言で助かるわぁ。それじゃあもう一人のセイバーの方に移りたいと思うけど……」


938 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:08:44 GTR2cE5s0

こちらのセイバーと操祈は面識がなく、犬飼を通じた情報が主になる。
キーワードは恐らく『勇者』。

「緑色の服装で固めて、茶系のブロンドにエルフみたいな尖った耳。武装は剣に盾、弓も使ったって。
 それと詳細は不明だけど、魔力を放出して炎のようなものを見せて敵をおびき寄せようともしてたし、さらに結界みたいなものも作れるみたい。
 パラメータはやっぱり全てアベレージ以上。先の二人との連戦もほぼ問題なくこなしてた。
 流石に最後は撤退したけど、バイクに乗っていったそうだから、騎乗スキルも低ランクではないでしょうね☆」
「多芸だな。典型的な勇者系のセイバーか」
「恐らくは、ね。寡黙で情報を漏らすこともなかったから材料は少ないけど……マスターとの仲も悪くはなさそう。
 もちろん、腹に一物抱えてる可能性は否定できないけど」
「マスターの方は?そっちも他のマスターみたく、おれが相手しなきゃいけないようなス……能力者か?」
「修羅場慣れはしてそうだったけど、魔力はなし。犬飼さんに不意を突かれていたから、人外の達人と言うほどでもない。
 今のところ上がったマスターでは一番脅威力は低いんじゃないかしら☆」

紅月カレンについても情報を共有する。
学生の間では病弱と認識されていたが、華奢な外見に似合わぬタフな女性のようだ。
それでも、優秀なサーヴァントを従えるための魔力に乏しいという点、そして先の二人の様に協力相手がいないらしい点から優先度は下がった。
情報の不足もあり、最低限の警戒に留まる。

「それから次は脱落したアサシンだけど……そのマスターの人吉善吉は残ってランサーたちと協力関係にあったわぁ。
 でも、正午からすでに6時間以上経っているから脱落してるはず。通達は聞いてるわよねえ?」
「ああ。ならそこはいいか」
「一応、再契約の可能性は考えとけ。相手する可能性がゼロじゃねえなら手の内は知っといたほうがいい」
「じゃあ一応話すけど……」

人吉善吉には能力を行使していたため、かなりの情報を明かせる。
趣味嗜好に軽い来歴も語れるが、そうした不要な情報は切り捨てる。
サバットという格闘技能、『欲視力』という能力。
あとはこちらで調べた住所などの個人情報。
それから……

「安心院なじみってヒト、知ってるかしらぁ?ライダーさん」
「ん、いや。思い当たらねえが、それがアサシンか?」
「いいえ。人吉くんに赤いテレフォンカードを渡してここに送り出した、人外。
 人類誕生以前から存在し続けてるらしいんだけど……」
「それがなんだ?テレフォンカードのことを知ってたってことは天戯って奴と関わってるかもしれないと?
 おれなんかネットオークションだぞ。まあ相手が誰だかわからん以上陰謀論を否定はしないがよ」
「…………ごめんなさい、情報力が少なすぎるから戯言にしかならないわねぇ。忘れて頂戴☆」

現存する――英雄?幻想種?
何かはわからないから気になってつい話題に挙げてしまったが、あまりに曖昧なことを話し出してしまった気まずさに女性は話題を取り下げた。
そのタイミングで注文した飲み物が運ばれてきたので、いったん一息。
その一息でまたデカンタを空にし、食事と一緒に追加オーダーをする巨躯の老人にはさすがに店員も苦い顔をしていた。
再び、話し始める。

「さすがに消えたアサシンはいいわよねえ?次に会ったのはアーチャーとライダーになるけど。
 アーチャーのことはあまり掴めてないわね。交戦すらまともにしてないのよぉ。
 マスターがタダノヒトナリっていう警察官って言うことと――」
「タダノ?そのアーチャー、もしかしてサキュバスか?」

聞き覚えのある名に口をはさむ刑兆。
本来なら纏めて聞いてからにするところだが、情報が少ないなら話は別だ。
問われた操祈は記憶を――鹿目まどかの情報の――遡る。確か、サキュバスであると明かされていた。

「ええ、その通りよぉ。召喚されたアーチャーが揃ってサキュバスなんて不謹慎力溢れる事態になってなければ同じ英霊について知ってるみたいね☆」
「昼前にここから学園に少し近づいたとこでライダーと二人でやり合った。マスターは一緒じゃなかったが……いつごろに、何処で会った?」
「放課後すぐに学園で。移動時間的に矛盾力はなさそう」
「ならそっちはおれ達の方が詳しそうだな……ライダー、頼めるか?直接対峙したお前の方が詳しく話せるだろう」

軽くうなずき、回想する。


939 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:09:27 GTR2cE5s0

「容姿や服装はいいな?サキュバスだけあって魅了のスキル持ちだろう。刑兆がイカれかけたからな」
「おい」
「事実だろ?」

グラララ、と小さく笑いながらからかうような発言。
無論、意味のないものではない。ちゃんと理由がある。

「ただ対峙するだけで平常心を奪うレベルには至っている、そこそこのランクだろう。一応確認するがマスターは男だな?」
「ええ、それなりに鍛えられた風な男性だったわぁ」
「なら魅了にはオンオフが効くか、マスターには効かないか。もしくは、マスターの方がサキュバスみたいな存在に耐性があるかもしれねェな」
「ああ、なるほど。そのヤロウも能力者である可能性が高いか」

簡素にだが、サーヴァントの能力からマスターのことも推察。
聖杯戦争の参加者である以上、相手も一筋縄ではいかない可能性が高い。

「でもそのマスター、今はセイバーのマスター……夜科アゲハの攻撃を受けてダウンしてるはずよぉ。
 夜科アゲハの能力は一撃で人を昏倒させる威力で、加えてアーチャーのマスターはそういう攻撃を受ければ倒せるくらい、ってことね☆」
「夜科ってのは厄介な攻撃能力持ち。タダノってのは精神面はともかく、真っ当な耐久や防御面については、ライダーが出るまでもなく、おれで十分な可能性が高いか」

油断はできないが、タダノヒトナリに関してはこれまでのサーヴァントの様にバッド・カンパニーが効かないということはないと予測。
負傷したということは、脱落の可能性もある。
そこまでいかなくとも今後の闘いで不利になる可能性は高い。
警戒の度合いは低め、か。

「アーチャーに話を戻すぜ。武器は見せなかったな。徒手格闘がメインで、翼による飛翔と、拳から放つ蝙蝠状の光弾で戦闘を組み立てていた。
 それから、分身。自身とほぼ実力の変わらない分身を一体産み出してみせた。確か、アストラルヴィジョンとか言ってたか?
 あとは…………いや、能力としちゃそんなモンか」
「あ、分身っていうのは宝具かしらぁ?」
「まず間違いなくな。効果も強力だし、真名を開放していた」

再び全員が思考の海に潜る。
キーワードは『サキュバス』、『分身を産み出す』。
食事も進めつつ、ニューゲートがまた酒を追加で頼んだあたりで操祈に操られたNPCが口を開く。

「『サキュバス』で、分身を『産み出す』っていうとやっぱり、リリトかしらぁ?
 アダムと交わり、多くの悪霊を『産み出した』、翼をもつ夜の女悪魔。
 後に大悪魔サタンの妻となり、やっぱり数多の悪魔を生んだ逸話があるし、アベルの血を飲んでるから吸血鬼染みた外見にも納得いかない?」
「そりゃ神霊じゃねェのか?」

思いつきはしたがよ、と老戦士が疑念を口にする。

「やってることは神域かもしれないけど、『始まりの女』として産み出された人間だから英霊に収まる……とは思うわぁ。
 仮に神霊でも、サタンとの交わりで霊格が堕ちていればハイ・サーヴァント級ではあるけど召喚もあり得るはず」

操祈の答えに二人納得。
そこから刑兆が少し話を広げる。

「ならリリトの仔のリリムは?アレにも確かサキュバスはいたよな?」
「人類の祖先とも言われる『始まりのデーモン』ね☆
 確かに霊格としてはリリトより英霊寄りだし、人類を『産み出した』と考えればそっちの方があり得るかも」

では、推察した真名から何が分かるか。


940 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:09:55 GTR2cE5s0

「サキュバスを避けたければ枕元に牛乳を置けば精液と勘違いする、とか3つの天使の名が書かれた護符を持てとかいうけどぉ……」
「牛乳でサーヴァントを撃退できりゃ苦労はねェな。護符は……ライダーじゃ無理だが、道具作成スキルのあるキャスターならどうだ?」
「私には専門外。ヘブライ語なら分かるから、それっぽいだけのを作るならできるけど?」
「いらねェ」
「おれもいらん」
「でしょうね。
 リリトは三人の天使に罰を与えられ、その悔しさに紅海に身を投げたというから、神性を持つサーヴァントや天使の属性を持つ者に弱いかも?
 あと、紅海は血の海のメタファーとも言われるから大量の出血、もしくはそのまま海が弱点になるかも。
 ただ多産多死と子殺しの逸話持ちだから子供は注意が必要ね。
 リリムもリリトの罪で処罰されてるのだから、神性に加えて『原罪』とか『天罰』が有効かしら」

生憎とこの場のサーヴァントに神性はない。
海は近いから、この辺りに陣取るべきかと思考を巡らせるが

「相手はアーチャーだ。まさかあの程度の光弾が弓兵の本懐じゃねェだろう。少なくとももう一つ、射出系の宝具がある」
「なんだかんだで情報力が足りないのよねぇ。サキュバスっていうのだけじゃ絞りきれない、か」
「『分身を産み出す』ってのはかなり特徴的だ。もう一人の自分がいる、とも解釈できるか。もう一つ何かあればかなり踏み込めると思うぜ」

結局は確実なものではない。
方針を決定する一助とはなっても、大部分を占めることはない。
高位の英霊である可能性は上がったので、それなりに警戒。マスターに負傷があろうと、アーチャーならば単独行動できるはず。
さらに本人の実力に加えて、組んでいる相手がいるというのも厄介。

「それじゃあ、アーチャーはこのくらいにして……そのアーチャーと組んでいるライダー。
 真名はモンキー・D・ルフィ」
「あ?ルフィだと?麦わらの小僧、ホントにいやがったか」
「知り合い?」
「まあ、知った名ではある」
「ふぅ〜ん」

視線を交わし、腹の内を探り合う英霊二騎。
仮に操祈本人がここにいれば探り合いなど必要なかったかもしれないが、ここにいるのはNPCを介してだ。
睨みあっても進展はない。
息をつき、改めて話を振る。

「それなりに重要な情報みたいだし、ただでは聞けなそうね。
 さっき私を撃ったマスターに関しては後で纏めて話たい事もあるし…いったん私の話は区切りにして、そちらの話を続けて欲しいわぁ。
 あなたたちは二度、サーヴァントと戦ったんでしょう?アーチャー以外のもう一騎と」
「耳聡いじゃねえか。大した小娘だ」

感心した声をもらすが、別にそちらは隠すつもりはなかった。
十分な情報提供は受けたのだから、こちらも多少は応じようという気になっているし、なにより敵の手の内など伏せる必要もない。


941 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:10:36 GTR2cE5s0

「ランサーと言っていたが、肝心の槍は見せなかった。
 外観は小娘だが、速度も力もかなりのモン。自称ツェペシュの末裔の永遠に紅い幼き月、とかいう吸血鬼だ」
「吸血鬼、ね。特徴力はあるけど、絞るのは難しそう。会ったのは夜?」
「昨晩だ。肌も白かったからな、恐らく太陽光は弱点になるだろうぜ」

なら真祖級の大物ではなさそうか。
『朱い月』との類似性は気にかかるが……

「槍を見せなかった、ていうのは……」
「宝具なんだろうが、理由はいくらでも考え付く。
 単に温存したか、消耗が激しいのか、発動にリスクが伴うのか。論ずる意味はあまりないな」
「他に特徴は何かないかしらぁ?」
「そうだな、コウモリの様な翼による飛行、あとは少食で眷属はあまりつくらないとも言ってたか。
 戦闘自体は殴り合いだったからなんともな。
 ああ、マスターを執事として侍らせてたから、いいとこの生まれか育ちかもしれねェな」

戦闘自体は緒戦も緒戦、お互い宝具を一つも見せない探り合いだった。
情報を伏せての駆け引きがメインになっていたところはあり、そこから推察するには難しい。
吸血鬼ということは分かっても、それがコウモリの様な翼で飛行するというのも、上流階級なのもさほど珍しい特徴とは言えない。

「強いて言えるとしたら、逆に王道を行きすぎてるかしらぁ。
 いわゆる魔術師上がりの死徒ならそこまでベタにはしないと思うのよねぇ」
「つまりは伝承上の吸血鬼、それに近いんじゃねえかと」
「ツェペシュの末裔と言うだけあって、ドラキュラのイメージに引き摺られてる。でもヴラドの子孫はほぼ絶えたはずだし、そもそも吸血鬼って遺伝するのかしら?
 むしろ昔懐かし、現代では忘れられつつあるレベルの幻想の結晶か、もしくは無辜の怪物か、そのあたり?空想上の存在、幻に近いサーヴァントかもね。
 ……マスターの方は?」
「年食った執事だが、なめてかかると痛い目見るぜ。
 あれは戦場で生きてきた殺し屋の類だ。武器はさっき言ったが鋼線。
 魔力はないみたいだが、逆にそうした能力なしで刑兆とやり合えるだけの実力はあった」

マスターの話題に移った辺りで刑兆も顔を上げる。
思考がまとまったのか、自らが銃火を交えた相手の事だからか、吸血鬼への関心ゆえか。

「ウォルター、と呼ばれてたな、あのジイさんは。で、ドラキュラ殺しとか揶揄されてたからあいつ自身吸血鬼とは因縁がありそうだ。
 ……それとおれの知ってる限りじゃ吸血鬼は遺伝しねえはずだ。
 『石仮面』っていう道具で吸血鬼に成ったやつは気まぐれにガキ拵えてたそうだが、それは普通に人と同じ成長をしたそうだ」
「普通に、っていうのをもっと具体力高めでお願いできる?」
「伝聞でな。普通に、としか把握できてない」
「そう。母乳は母親の血液が濾過されたものだから、吸血鬼でも問題なさそうだけど……」

吸血鬼、というのはサキュバス以上にバリエーションが多いだろう。
洋の東西を問わずモチーフとなる人物も、怪物も存在する。
僅かの情報では白木の杭にはならないだろう。

「拠点を調べて昼間に襲撃、が今のところ考えられる最善の策ね。
 …………それじゃあ話は変わるんだけど、虹村さん。あなた、魔術師とは異なる能力者でしょう?それだけ教えて」
「あァ?」
「アーチャー相手に僅かとはいえ生き延びたんでしょう?そしてさっきからマスターに対して能力者という語は使っても魔術師とは一度も評してないわぁ。
 ス、って何か言いかけた言葉の続きも気になるところね☆」


942 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:11:11 GTR2cE5s0

話題をふられたのは刑兆。
己が能力について見抜いたような発言に対し……刑兆は不敵な笑みを浮かべて返した。

「お前のマスターも能力者だろう?それも目覚めつつある」
「それは肯定と捉えていいかしらぁ?」
「質問に質問で返すな」

あなたも質問で返してるじゃない、と思うが口には出さない。
そこまで推察してあえてこの話題を誘ったのか、話甲斐はありそうだと好感。

「ええ、そうよ。犬飼さんも能力者の仲間入りをしつつあるわぁ。
 それを踏まえて、ちょっとこの聖杯戦争について話に付き合ってほしいのよぉ☆
 あなたたちの能力の知識や、情報も交えて、ね」

その結果次第ではライダー、モンキー・D・ルフィについて聞かせてくれないかとの言外の要求。
二人は目配せして、受諾。ディスカッションの甲斐がありそうだ。

「まずは、『魔力』について。あなたの能力で魔力供給はできてるかしら?
 ちなみに犬飼さんの目覚めたばかりの能力は魔術ではないけれど供給してるし、他にも朽木さんたち、話題に上がったマスターも魔術師でないにもかかわらず大丈夫みたい☆」

投げられた問いに対し考える刑兆。
どの程度まで己が手の内を明かしていいものか。
…魔力供給に成功している、そして『スタンド』という名称程度なら話しても問題ないと判断する。

「ああ。おれの能力、スタンドのエネルギーで魔力供給はできている。
 そうだな、ライダー?一応確認するが十分量だよな?」
「問題ねェよ」
「そう。それじゃあそのスタンドっていうのは魔術とは違うのね?」
「恐らくだが、違う。そこまで体系の整ったものじゃあないと思うぜ」

小さく頷きながらナプキンにブレインストーミングのようなものを書き出す。
魔力という単語から、魔術師とスタンドという二つの単語に繋がる。

「それがなんだ?」
「結論は少し待って☆まだ話は途中だから。
 では次はサーヴァントのスキル『対魔力』について。読んで字の如く、魔力や魔術に対する耐性ね。
 私の宝具は魔術ではないんだけど、対魔力持ちのサーヴァントにはほぼ効果を発揮しない。
 さっき話したランサーやセイバーには全く効かなかったし、多分ライダーさん、あなたにもほとんど効かないと思うわぁ。
 あなたの能力…スタンドはどうかしらぁ?」

さらに踏み込んだ問い、能力の無効化範囲。
相手も、効かない相手がいるという弱点を晒してきたがその言葉が信頼できるかどうか。
情報交換というなら、多少は己の腸も見せるべきなのだろうが……

『ライダー。もう一度確認するがこいつらを拾ったところにはサーヴァントの気配はなかった。
 つまり銃声の主はマスターだな?』
『アサシンや、気配遮断に準ずるスキルを持ったサーヴァントである可能性は否定できねェが……
 こいつから聞いた限りではそういう情報はなし。誰か庇ってるなら話は別だが、それならむしろそいつと共闘しておれ達とやり合ったはずだ。
 あの時のお前は一人だったんだからな。
 まあ、十中八九こいつを襲撃したのはマスターだろうよ』

遭遇した時点でかなりのダメージ、それも銃創らしきものがあった。
その直前にマスターのものらしき銃声。
恐らくこのキャスターにはマスターでもダメージを与えられる…バッド・カンパニーでも殺傷可能。
ならこの情報も明かして構わないか。


943 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:11:55 GTR2cE5s0

「確かに、やり合ったサーヴァントにおれのスタンドは効かなかったな。
 アーチャーにランサー、今思えばアレは対魔力のせいだったか」
「恐らくその筈。私の能力と、ほぼ同じ苦境にあるわけね☆」

新たに対魔力からスタンド、超能力という単語を繋げる。

「私の宝具はいわゆる超能力。科学的に人の脳にアプローチして開発したもので、能力自体も科学的な解析がされてるわぁ。
 いわゆる魔術とは異なるものだけど、対魔力に阻まれる。思い当たる理由がないではないけど、不思議だと思わない?
 スタンドというのはどんなものなの?」
「『傍らに立つもの(スタンド・バイ・ミー)』、パワーある生命エネルギーのビジョン、世間で言うところの超能力が具現化した像。
 そこまで科学的な解析はおれの知る限りされてないはずだ。
 身につけるきっかけも様々で生まれついて使える者から、外部からの刺激で目覚める者もいる。
 お前のマスター……犬飼だったか?あいつもスタンドに目覚めたんだと思ったが違うのか?」
「まだ詳細はよくわかってないから何とも。個人的には私の超能力に近いものだと予想しているけど。
 ところで、その外部からの刺激っていうのは、例えばどんな?」
「近くに強力なスタンド使いがいる、血縁の者が能力に目覚める、とある弓と矢で射ぬく。
 あとは眉唾だが、命の危機に瀕した人間が超常の力を身に付けるのもスタンドだとか言われているな」
「オカルト寄りね。『能力者』より『原石』の方が近そう……」

思考を纏めはじめた操祈に今度は刑兆の方が語りかける。

「スタンドエネルギーが魔力に代用できる点から、魔術とスタンドは近似するものだとおれは考えた。
 だとすれば強力な魔術師の影響を受けてスタンドに目覚めることもあるんじゃないかとも。
 そしてスタンドに目覚めた際に発熱などの病状を伴うものも見てきた。だからあいつもそうなったんじゃないかと思ってたんだが……
 聞く限りじゃ、お前は魔術師じゃないんだな?」
「犬飼さんが能力に目覚めたきっかけは別よぉ。学園と……それに、麒麟殿温泉近くのこの辺りにも似たような何かがある。
 空気が、何となく違うのよ。この空気に影響されることで何らかの能力に目覚める可能性力が高いわぁ」

能力の覚醒。
新たに書き加えられたキーワード。

「ここで少し話を戻すわぁ。モンキー・D・ルフィのマスター、鹿目まどかについて」

魔力量が極めて多いことを除けばごく普通の人間にすぎず、彼女自身はその魔力を利用できない。
個の戦力としての評価は高くないが、特異な経験値を有する。
魔法少女、インキュベーターという人間を用いた願望器とその顛末について語る。
願いを対価に戦い続けること。願いには限界があること。
原理は不明だが、人間を能力者とし、願いを叶えていること。
ついでにこの地に暁美ほむらという魔法少女もおり、襲撃されたこと。

「なるほど。聖杯戦争に近似するってわけか」
「その通りよ。つまり『聖杯』とは参加者が手に入れるものではなく、参加者が『なる』ものじゃないかと考えたのよぉ」
「だがスタンドは一人に一能力だ。少なくともおれは新たな能力を身に付けることはねえぞ」
「私たち能力者もそうよ、一人につき一つ。そしてそれは先天的な才能に依存し、一度身に付けたなら二度と変更はできない。
 けれど、能力には『強度(レベル)』があるわぁ。無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)まで。
 そしてその先にある、絶対能力者(レベル6)、さらには『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM)』。
 あなたの能力も、夜科アゲハや朽木ルキアの能力も進化することで『聖杯』へと至る可能性力はあるんじゃない?」

神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの。
神の子の血を受けた聖なる杯。
いずれも戦いの中で覚醒・進化した能力者では、という仮説。

「だがそう上手くいくか?刑兆のスタンドとお前の超能力、それが同一のモンだっていうのも仮定の話だろ。
 仮に同じでも、おれの知ってる能力者ってのは、複数の能力を身に付けようとすると一部の例外を除いて命を落とす羽目になってたぞ」

悪魔の実の能力者。
ニューゲート自身や、麦わらのルフィ含む能力者は複数の悪魔の実を口にすると全身が粉微塵になって死ぬという。
例外は異形の肉体をもった男、マーシャル・D・ティーチくらいだろう。
悪魔の実一つ口にするだけで海に嫌われカナヅチになる。
スタンドに目覚めるのも矢で貫かれる、病床に伏せるなど相応のリスクを伴うらしく容易くいくとは思えなかった。


944 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:12:20 GTR2cE5s0

「そうね、それじゃあ前提条件の方から一端纏めるわ☆
 超能力、スタンド、魔術、その他の異能が同一存在として見なせるか。
 一つ。犬飼さんが目覚めつつある異能は、外的刺激により脳が覚醒した超能力に近似するモノよ。これは処置した私が保証する。
 それとあくまでおまけ程度だけど、外部刺激によって覚醒するいう点と、それに伴い体調不良を引き起こすことがあるという点がスタンドと近似。
 二つ。スタンドも、犬飼さんの超能力モドキも、魔力供給ができる。すなわち、魔術に近似するエネルギーを有している。
 三つ。対魔力により私の超能力もスタンドも無効化される。法則か、はたまた起源か、何かが魔術と超能力、スタンドには共通していて、そのため対魔力に阻まれる。
 以上がこの地で私たちが得ている情報ね☆
 少なくとも共通点が多い、というのは納得してもらえると思うわぁ」

一息ついて、食べ物飲み物を口に運ぶ。
そして書き記していた単語に共通点を書き加え、情報を整理。
しかしこれだけでは足りないと言うのだから、さらに自身の知識を加える。
ちょっと前置きが長くなる、と口にして語り出す。

「ここからはわたしが持っている情報になっちゃうんだけど、魔術も超能力もあらゆる異能を打ち消す右手を持つ英雄っていうのが私の世界にはいたのよ」

『あらゆる』異能を打ち『消す』『右手』。
覚えのあるワードに刑兆が僅かに反応するが、話の続きに耳を傾けに戻る。

「一部では『原石』と言われた、魔術師や超能力者の様に身につけた者ではない、天然の能力。
 スタンドに近い、かしらぁ?
 原理は私にはよくわからないんだけれど、地脈や龍脈といった世界を循環する異能すらも破壊する右手、『幻想殺し』。
 私の考察の根幹にあったのはこの能力から見える、魔術と超能力の類似性。そして『天上』というキーワード」

『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』から線を引き、新たに天上と書き足す。

「『天上』とは何か?
 まず一つ、超能力、レベル6のさらにその先にあるもの。
 そして、魔術的にも最高蜂の位階とされている地点。
 ……古代から現代に至るまで、魔術師の究極の目的は、『天上』より世界に降り注ぐ全なる力を手にすること。
 その力にどの高さで触れるのかによって魔術を三段階に分類したのが十五世紀の魔術師、ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ」

天上からさらに三本線を伸ばす。

「一つ目が自然魔術。地上に存在する元素を用いたもの。化学の名でもって通常の人間も用いることが可能。
 二つ目が天空魔術。天空に座す星の力を利用、または干渉するもの。龍脈に影響する『原石』や、金星の光を用いた槍の『魔術』などがここかしらぁ。
 そして三つ目が儀式魔術。『天上』に接続し、その神たる力を振るう前人未到の領域。これこそが魔術師の悲願……一部では、『根源』なんて呼ぶこともあるみたい。
 わかるかしら?魔術を極めても、超能力を極めても辿りつくのはそこ。
 すなわち、『天上』とは能力を極めたことにより至る『全能』の域。全ての願いを叶える『聖杯』となることもできるでしょう」

能力の進化により至る領域。
それはまさか、ここに来る前に手記で僅かに読んだ……

「天国?」
「え?」

ポツリと漏れた言葉を聞き取り、その続きを操祈が促す。

「……百年の時を生きた吸血鬼が辿りつこうとしていたものだ。
 手記は一部しか残ってなかったが、精神――スタンドの進化した先に幸福な未来、『天国』があると」
「それはなかなか面白い情報ね☆」

絶対能力、天上と書いた近くに新たに『天国』と『スタンドの進化』を書き足す。


945 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:12:52 GTR2cE5s0

「能力の行きつく先に、強大な何かがある。それはほぼ確実と言えそうでしょう?
 超能力の行きつく先には『天上』がある。魔術の果てにも『根源』という『天上』に等しい全能がある。スタンドの果てには『天国』がある」
「それが『聖杯』だっていうのか?」
「能力の行き着く先が『聖杯』だ、というより『聖杯』という名の能力を身に付けると考えた方が説得力はあるかしらぁ?絶対能力(レベル6)、『天之杯(ヘブンズフィール』を。
 もう一度言うけれど、この会場は能力が目覚めるのに適した環境が整っているのは事実。
 犬飼さんを能力に目覚めさせた何かがアッシュフォード学園、そして恐らく麒麟殿温泉にある。もしかすると他にもあるかもしれないわぁ。
 ……それに、そうね。私ともう一人、『能力開発』に長けたサーヴァントが召喚されていたのよ」

身を切る情報を吐く。
モンキー・D・ルフィという英雄の存在からある程度このライダーの情報が得られるなら、対価として一部、垣根帝督を売る。
そこから、食蜂操祈に至られる危険はあるが、リスクは承知。

「脱落した、アサシンのサーヴァント。名を垣根帝督。
 『未元物質(ダークマター)』というこの世ならざる物質――擬似的な『天上』の力を振るう私より上位の超能力者(レベル5)。
 知った顔だったから、本人とマスターの隙をついて、私が倒した……けど、それはともかく。
 能力を覚醒させる因子がある。それに的確な対処ができる能力者が複数いる。
 魔術、超能力、スタンド、もしかしたら他にも。様々な能力者が集っている。
 それと『願望器』の可能性を秘めた魔法少女が一人、その才能を秘めたのも一人。私に銃撃をした暁美ほむらとライダーのマスター鹿目まどか。
 さらに私と垣根帝督は『絶対能力進化(レベル6シフト)』という能力を進化させるものを知ってるし、場合によっては垣根提督はその被験者になった可能性もある。
 それと、不確定情報だけどさっきあげた安心院なじみも、『フラスコ計画』という人間を異常に発達させるプランを実行して、人吉善吉はその関係者らしいわぁ。
 あなたたちはどう?ルフィという英雄も含めて、答えて頂戴☆」
「…………」

虹村刑兆は、多くの者を弓と矢で射抜き、スタンドに目覚めさせた。
弓と矢の使用者自体が少ないのに加え、DIOもエンヤも今はこの世にいない以上、おそらくスタンドを目覚めさせた経験値で刑兆以上のものはそうはいない。
エドワード・ニューゲートは悪魔の実の能力者だ。
己が体に長きにわたり悪魔を宿し、少なくともその運用については熟練。
能力の先のことも知っている。
モンキー・D・ルフィがどの程度かは分かりかねるが、鍛えられた能力者であるのは確実。

「まあ、おれも専門家とは言えねえが、少なくともスタンドの覚醒についちゃかなり詳しい方だろう。
 ライダーも、確かに能力に関してそれなりだ」

キャスターの唱えた仮説には納得するところも多い。
『聖杯』ってのがなんなのか、その答えとしては確かにあり得るだろう。
だが

「バッド・カンパニー……整列ッ!」
「え?」

テーブルの上に数体のミニチュア歩兵が並ぶ。
刑兆のスタンド、バッド・カンパニーだ。
武装はなく、ただ整列しているだけで、戦意がないのは伝わる。

「これがおれのスタンドだ。通常スタンドってのは一人一能力、ビジョンも一体であることが多い。
 だが、こいつは少々特殊らしくてね。いわゆる群体型ってやつだ。
 極端な話、これだけ。時間停止だとか念写だとかそーいうことはできねえ。この能力が進化したとして、願望器になるとは思い難いんだが?」

自分は願望器たりえないのではないか。
喜ぶべきか、悔むべきかすらわからない可能性。
その疑念をぶつける。
それを受け食蜂操祈は考える。

(群体…軍隊。複数の能力……………………『妹達』に、『虚数学区』!)


946 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:13:16 GTR2cE5s0

「スタンド使いの近くにいるとスタンドに目覚める事がある。
 つまりスタンド使いは外部に何らかの影響力を発しているのね?」
「解明はできてないが、そうだろうな」
「それじゃあ、仮説を更新させてもらうわぁ。一人の能力者が聖杯になるのではなく、複数の能力者を束ねて聖杯とする、とね」

『幻想御手(レベルアッパー)』という、複数の能力者に巨大なネットワークを形成させ能力を強化するもの。
副産物として、『多才能力(マルチスキル)』という一人で複数の能力者を産み出す、いうなれば万能への挑戦。
『ミサカネットワーク』というその完成形に近いものと、それに演算させることで降りてきたという何か。恐らくはこれも『天上』へのアプローチ。
噂にすぎないが、『虚数学区』、『ヒューズ・カザキリ』という230万人の能力者が無意識に発生させる能力の余波によって形成されるという何か。
そうした前例を交え新たな仮説を立てる。
絶対能力(レベル6)、『天之杯(ヘブンズフィール)』とは、進化した能力者の力を結集させて完成させるものではないかと。

「なるほどな。外で召喚されたおれの知識不足かと思ってたが、それならマスターが14人もいるのに納得がいく」
「ええ、私も7騎じゃないのは気にかかってたのよぉ。さすがに14人全員が必要ということはないでしょうけど、うち何人かが能力に目覚める、あるいは進化させれば『天之杯』は成る」
「……いや、待てよ。聖杯を手にするのは一組じゃねえのか」
「察しろよ、刑兆。天戯ってのが万能の願望器なんてもんを人様にくれてやるようなヤツに見えたか?」

もちろん見当がついていないわけがない。
だが、願望器が手に入らないなど…………

「ッ、複数の能力者を束ねてなんだってんだ?それに悪魔の実ってのは複数喰うとやばいんだろ?スタンドも、合わなきゃ死ぬ」
「起源を同じくしても、器が異なれば受け付けないことはあるわぁ。
 話してなかったけど、能力者は魔術を使えない。魔術を行使しようとするとダメージを受ける。ちょっとした類似点ね。
 例えばだけど、石油を分解すると軽油や灯油、ガソリンなど色々な物質になる。
 でも灯油ストーブにガソリンを入れたらどうなるかしらぁ?ストーブが壊れるだけで済んだら御の字よね☆
 元は同じでも、馴染まないっていうのは行使する器のせいじゃないかと私は考えてるのよぉ」

軽油に重油、ガソリン、ナフサetc……それら全てを集めて再合成すれば科学的にはそれは石油と言えなくはない。
なら、『天上』を起源とするが、枝分かれした複数の神秘……能力者、魔術、スタンド、などなどを結集し、相応しい器を用意すれば、それは『天上』に等しい力を行使できるのではないか。
もちろんそれは完璧ではないだろう。
『全能』にはとても届かないだろうが、しかし『万能』ではあるだろう。通常の能力者だけではできないことができるだろう。
なにより

「聖杯……願望器は少なくとも天戯弥勒の目的力が達成できるなら、他はどうでもいいんじゃないかしら」

虹村刑兆の願いも、犬飼伊介の願いも、食蜂操祈の願いも、他全ての参加者の願いも。
全てあの男には関わりないことなのだから。

「……仮にそうだとして、あの野郎は何をしようとしてんだ」
「さあ。さすがにそこまではわからないわぁ。推察でしかないわね。
 でも願望器が形を持って存在するなら、彼より先に手にする可能性力は十分よ。
 能力者本人か、あるいは……」

万能の願望器でなしたいことがある、というのは天戯弥勒が万能ではないことの証明。
聖杯を奪うことも不可能ではない。
しかし奪うならばそれがどんなものか把握する必要がある。
その形とはなにか?
それによって得れるものとは?


947 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:13:38 GTR2cE5s0

「『不明金属(シャドウメタル)という噂はご存知?」
「いや、それも何かの能力か?」
「正確には少し違うわぁ。数十、あるいは数百の能力がぶつかったその後に自然界に存在しない金属が誕生することがあるっていう都市伝説。
 正直眉唾だと思ってたんだけどぉ、いくつかそれに近い実例が見つかっちゃったのよね。
 『天上』に刹那触れた電撃使い(エレクトロマスター)と最大クラスの『原石』二人の戦いの後に残った謎の金属。
 第三次世界大戦の後にも、『天上』から天使が下りて来た痕跡らしき巨大な黄金の腕や肋骨らしき物体。
 強大な能力が激突した際に結晶化した前例は存在する……これ、鍵だと思えないかしらぁ?」
「複数の能力者を覚醒・強化し『聖杯』とする。
 サーヴァントも含めてそれらをぶつけ合わせ、『不明金属』を得るのが目的、か?
 面白ェが、状況と知識を重ね合わせただけにしか見えねェぞ」

聖杯の仮説にも、その目的の仮説にも一貫して慎重な姿勢を貫くニューゲート。
だがそれは否定というわけではなく、その先を促すもの。
その先の考えがあるのだろう?それだけが情報の全てではないだろう?そう問うている。

「あら、それらしいものを虹村さんは持ってるでしょぉ?虹村さんだけじゃない。犬飼さんも、他のマスターも。
 材質も意図も不明だけど、超常の力が間違いなく関わっている、磁気を帯びたものを」
「…まさか、コイツか!?」

懐から『赤いテレホンカード』を取り出す。
通常のテレホンカードはポリエチレンテレフタラートという、飲料容器や磁気テープに用いられるものでできている。
いわゆるペットボトルの材料だ。
そこに磁気記録をさせている……のだが、当然この『赤いテレホンカード』はそんなどこにでもあるものではないだろう。

「今のそれはサーヴァントを失ったマスターが元の世界へ帰還するためのもの。
 それが、別世界へと自在へ移動できるものになったとしたら?
 生き別れた恋人や友人が生きている世界、破れたはずの戦争に勝利して歴史が違う世界。
 難病の治癒が、不老不死が、絶大な力が、巨万の富が容易く手に入る世界。
 そんな世界に渡れるようになれたらそれはさぞ便利でしょうね?
 それとも、これが真の『天上』に至るパスポートかしらぁ?」

ただ帰るだけのものが、世界を渡り歩くパスになるかもしれない。
もしくはそれを完成させれば神の位階に手を伸ばせるかもしれない。
まさしく『天之杯』にたる究極の霊装ではないか。

「コイツが何なのかは分からんままだが、現時点では使えなかった。
 どうやらサーヴァントがいる状態で電話ボックスに突っ込んでも意味をなさない……もっと言えば本当に帰れるのかも、まだ実証はできてねえ。
 複数の能力者が必要なら、そこも怪しいか?」
「実験済みなのねぇ、頼りになる相手で助かるわ☆
 でもそこは初めから帰れない、と言っておけばいい程度力の問題だし帰るのはできる…んじゃないかしらぁ。
 能力者が減るのは確かにそぐわないけどぉ、磁気のようにカードに能力を記録できるとしたら?
 磁気を記録するカード、電話ボックスというピンポイントな場所……気付いてるでしょうけど、この街いくらなんでも電話ボックス少な過ぎよ。
 特定の場所で、特定のアイテムを行使させることで、多少の劣化はあるとはいえ能力のデータは残せるんじゃないかしらぁ。
 そして、その能力を再現、もしくは行使できる……英霊からサーヴァントを再現するようにね☆」
「なるほどな」

確かにこの説では能力者本人に用はない。
物体に能力を宿すのは、妖刀とか漫画本のスタンドというのがDIOの部下にはいたと聞いたことがある、あり得なくはないだろう。
思考がまとまり、ある程度落ち着きを取り戻す刑兆。

「サーヴァントがいる状況でじゃ帰れない、ってのはある程度長居させて能力に干渉するためか」
「多分そうじゃないかしらぁ。取得もしくは進化したほうが都合いいでしょうし」

学園には朝からいたが、犬飼の能力の兆候は夕方になってだ。
恐らく影響が出だすのには個人差があるし、学園や温泉など特定の場所でなければ条件にあわない。
だから少しでも影響下に置くためにサーヴァント消失までは帰れないという制限を課したのでは、と予測。


948 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:14:02 GTR2cE5s0

「いや、実際サーヴァントがいると帰れないんじゃねェか?」

それにもまた、ニューゲートは異を唱える。

「おれ達サーヴァントは英霊の座から喚ばれて、消えればそこへ還る。座に、繋がってるわけだ。
 そしてマスターとサーヴァントは魔力パスを通じて繋がっている。
 テレホンカードとマスターの能力に影響し、繋がってるなら。
 マスターはテレホンカード、魔力パス、サーヴァントを通じて座に繋ぎとめられているってことだ。
 それで帰る事ができねェってのは?」
「うーん、否定するつもりはないけどぉ……」

曖昧な要素が多い。
反論のための反論に聞こえてしまう。
もちろん一考の価値はあるだろうが……

「ま、年寄りの戯言と思って結構だ。だが発想の転換は必要だと思うぜ。
 ……魔術師や能力者の到達点だからって『天上』に行くことに拘ってるけどよ、逆もあり得るんじゃねェか?
 『座』から英霊以上の何かを、『天上』から聖杯以上の何かを呼び出す可能性がよ」
「それ、以上……?」
「神霊や精霊、悪魔に天使、ほかハイ・サーヴァント以上のもの。
 聖槍や聖骸布、ほか聖遺物級の宝具や武具。
 あーだこーだ言ってもこれ以上は無意味だと思うが」
「ん、そうね。それじゃあ私からは以上かしら☆
 ……ところで、それなりの情報と仮説を披露したと思うんだけど?」

見返りを求めてもいいのではないか。
敵サーヴァントの情報。聖杯への考察。
これでもモンキー・D・ルフィについて、ランサーについての情報がもらえないとなると、余程のアキレス腱ということになるが。

「刑兆」
「任せる」

モンキー・D・ルフィという男について、刑兆は把握できていない。
麦わら帽子の男、という情報はあったが、それがここで手札となるのは予期してなかった。
そのため刑兆はどの程度明かすとまずいか、問題ないか判別が効かないのだ。
伏せるか、偽るか、一部でも明かすのか。
ニューゲートの能力についてばれない程度でなら、その判断に一任する。

「……モンキー・D・ルフィ、通称“麦わらのルフィ”。
 偉大なる航路で名を上げた海賊だ。お前の推察通り能力者で、全身にゴムと同様の性質を持つ。
 覇王色の覇気の覚醒者だ。恐らくお前じゃ対峙した瞬間に意識をもっていかれるだろう」
「覇気、って?」
「気迫や威圧の類だと思え。実力差のある相手なら一瞬で意識を奪える」

NPC相手の所業に得心がいく。
他容姿や振る舞いなどの情報も一致し、人違いでなく、そして偽りなく情報を共有できていると感じていた。
しかし能力のメカニズムやその弱点などについては触れようとしないニューゲート。

「あまり深い情報はやれねェ。おれの息子とちょっとした繋がりがあってな、やり合うならおれ達に任せてもらう。
 どうしても気になるなら本人に聞いてみろ。隠し事をするような奴じゃねェ。
 代わりと言うとなんだが、身の安全は保障してやるからよ」
「はぁ、分かったわよぉ」

情報を得られなかったのは惜しい。
しかし元々食蜂操祈は前線に立つタイプではない。
能力の弱点が分かったところで活用する機会はまずないだろうし、このライダーが知っているなら問題はない。
それがこの男の弱点になると分かっても、同様に活かせない可能性が高い。
それにおおよその察しはつく。
悪魔の実の能力者の弱点を伏せたということ。ライダーもまた何らかの能力者であること。
併せてみれば明らか。この白い髭のライダーもまた海を弱点とするのだろう。
それだけ掴んだ上で、多少は頼れる協力者が得られるならまあよし。


949 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:14:26 GTR2cE5s0

「それじゃあ、この後はどうするか決めてるかしらぁ?」
「そっちはどうすんだ?」
「学園に資料とかあるから、犬飼さんの家はばれてると想定して動くわぁ。
 彼女の体調、マシにはなったけどまだ完調とはいかないし、どこかホテルでもとって今晩は休むつもり☆」
「……温泉の効能はどうだったよ?」
「いいお湯だったわよ☆
 犬飼さんも少しは元気になったし、行ってみてもいいかもしれないわよぉ?」

僅かなやりとり。僅かなかけひき。
どうやら温泉も能力開発の一助か、と察する。

「ならおれ達もそのうち行ってみるか。
 宿は決めてんのか?おれ達も向かっても?」
「まだ未定。温泉近くにあるんじゃない?
 身の安全を保障する、っていうなら一応近くにいてもらった方が連携とかはしやすいし、お願いするわぁ。
 でもいくら私たちが可愛くて可憐でスタイル力抜群の美少女だからって、悪戯心起こしちゃダメだゾ☆」
「そこまで暇じゃねえよ」

今後の予定を詰めながら店を出る準備。
最後にテーブルに残ったものをニューゲートが平らげ、会計。

「2980円」
「はい」
「ん、釣り20」
「どうも。それじゃあ温泉で合流しましょ☆」

洗脳したNPCの財布を開き、刑兆に渡す。
どうかと思わなくはないが、飲み食いしたのは一応この女だし、いいのかと勝手に合点、レジへ。
NPCと同道する意味もないので、店の外で解放する。
残された男二人で温泉へ歩む。

『食べ飲み放題だからって随分いったな。サーヴァントに食事は不要なんじゃないのか?
 いや、別に責めるつもりはねえがよ』
『一応魔力にはなるから無意味ではねェよ。それに娯楽は必要だろ?
 酒と飯は生きる糧だ、おれはもう死んでるがな、グラララ……!
 それに大して飲んじゃいねェよ、精々樽半分くらいだろ』
『デカンタで飲んでたのは、その図体だし何も言わねえけどよ、単位が樽ってのはおかしいからな』

道すがら雑談に興じる。
急ぐならタクシーなどを利用すべきだろうが、食後の運動に、二人での相談も兼ねてゆったりと向かう。

『さっきの話どう思う、ライダー?』
『状況的にはそれなりに信に足るな。魔術、超能力、スタンド、その先。
 おれや麦わらの小僧の悪魔の実の能力にも、覚醒と言われる段階がある』

糸を放ち操る能力は、触れたものを糸にする能力となる。
生命力・身体能力に長けた動物系なら耐久力・回復力が増す
恐らくは砂へと変化する能力は、触れたものを砂にする能力となり、自ら浮遊する能力は触れた物――例えば島ですら――浮かせる能力となるだろう。
肉体を氷へと変える者、マグマへと変える者が覚醒したならそれは一つの島の気候すら捻じ曲げかねない。
肉体から震動を放つ能力者なら、空間や 武装からも振動を放つようになり、果てには世界全土も地震により滅ぼす能力となるだろう。

『あいつが覚醒してるかは知らねェが、知っててもおかしくはないはずだ』
『マジにそういう能力の専門家が多いんだな。確かにそりゃ『天之杯』も戯言とは言えねえな』
『ああ、まあ…な」

一応そう答えるが疑問はある。
自分たちも素人ではないが、それでも専門家とは言い難い。
麦わらがそこまで切れ者にも見えなかったし、能力のプロとしては些か役者が足りない。
それならベガパンクやシーザー・クラウンのような学者の方が適している。
あいつらなら『人造悪魔の実』なんていう『能力開発』に近いこともやってたはずだ。
……『能力開発』に長けたキャスターと同郷のサーヴァントがいたと聞いた。超能力者二人、確かに作為を感じる。
それと同様に科学者ではなく、“白ひげ”と“麦わら”が呼ばれたのに意味があるなら

(海賊、いや広義では船乗り…か?“偉大なる航路”の海賊ほどに多彩な海を渡ったやつはそうはいねえ。
 深海10000mの魚人島、稲妻降り注ぐライジン島、他にもイカれた気候の島も海域も死ぬほどある。
 噂じゃ上空10000mの空島なんてモンも聞いたな。
 その経験値か……?ふむ、あと未踏の地っつうと宙飛ぶ船で月にでも行くか、グララララ)

無為な思考と振り返りはここまで。
今後の動きについて話す。


950 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:14:46 GTR2cE5s0

『宿に行くとはな。夜は出張るモンだと思ってたが』
『あれだけの情報が入ったんだ。状況は変わる。
 ライダー、サーヴァントに睡眠は必要ない、そうだな?』
『安心しろ。夜通し警戒していてやるよ』
『それもある。が、犬飼ってのを見張ってほしい……正確にはあの女のところに誰か来ないか、な』

刑兆が定めたキャスターたちと同じところに泊まるという選択、その意図を語る。

『もし本当に能力に覚醒させてどうこうするのが目的なら、その兆候を見せた奴を放っては置かねえはずだ。
 少なくともおれなら能力が目的に合致するか確かめたいし、無茶やらかして無駄死にしないよう釘を刺すくらいはする。
 天戯の奴、アサシンの脱落を知らせてきたってことは少なからずおれ達の状況は把握してるみたいだしな』
『分かった。そっちにも気を配っておく』

刑兆も多くのスタンド使いを目覚めさせ、その能力が使えるかどうか確認していた。
天戯弥勒も同様のことをすると考えたのだ。
本人が動くとは限らないが、それでもその一派と接触できれば、推察した事象の正誤の確認くらいはできるだろう。

『もし来たならおれに伝えてくれ。聖杯がおれの目的を達成できるものなのか確かめる必要がある』
『構わねェが、恍けられるだけかもしれねえぞ?』
『あのキャスターがいる。心を読めるんなら戯言に意味はない。有効に活用させてもらおうぜ。
 あいつ自身願いのことは気にしてるはずだ。あいつと接触する機会があれば確かめるだろう』
『来ればいいが、来なかったマヌケ晒す羽目になるな。その場合のことは考えてるか?』

都合よくいけばいい。
だが何らかの監視装置などで済まされる可能性も、そもそも接触がない可能性もある。
少々刑兆は想定が不足していたようだ。

『……来た場合は得た情報で動きが変わるだろうな。そこは改めて考えるとして、だ。
 来なけりゃ普通に休むことになるが……』
『明朝の方針は不定だな。おれの意見だが長期戦は避けてェ。
 目的云々はともかく、能力に目覚める仕掛け自体は事実だろ?
 この先参加者は実力を増してく、叩くなら早い方がいい』
『そうだな。なら変化がなければ朝から打って出るか』

犬飼伊介が能力を使いこなす可能性。
昨夜戦った執事が能力に目覚める可能性。
他敵戦力が整う前に、スタンドという優位が揺るがないうちに勝負に出るべき。
そう刑兆は考えたが

『いや、おれは逆にこのあたりを“ナワバリ”として迎撃の体勢を整えるべきだと思う』
『なに?』

ニューゲートは逆に籠城戦を提案する。
おまけにハイリスクハイリターンな宝具の使用も提言してきた。

『早期決着を狙うんじゃねえのかよ?おまけにルフィって奴の情報伏せて隠した真名までキャスターに露見するかもしれねえじゃねぇか』
『まず、宝具の使用についてだが。
 心を読まれるのは天戯だけじゃねえ、お前もだ。ならお前の知ってるおれの情報を伏せる意味は薄い。
 むしろ示威行為として使っていくべきだろうよ。それにおれのナワバリの住人に手を出したやつには戦力が向上する。
 あのキャスターはNPCを洗脳するようだからな、やり過ぎかもしれねェが用心に越したことはない』

キャスターへの牽制としては確かに悪くないか。
戦力としてはオーバーキルな気がしないでもないが、他の主従との継戦も考慮するとどこかで蓄えは必要だ。
一晩留まるここで打つのは理に適っている。
……真名看破のリスクも、もとよりか。


951 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:15:05 GTR2cE5s0

『ナワバリの誇示は分かった。だがここで待つってのは?』
『能力の覚醒には相応のリスクがあるんだろ。そうなったら向かうのは恐らく医療施設か、麒麟殿温泉(ここ)だ。
 キャスターが仄めかしてたろ?』

熱を出したマスターを連れて行こうとしていた目的地。
そして少しは元気になったというマスター。
温泉もまた能力開発の補助。そのリスクを軽減するための施設である可能性が高い。
能力の兆しとして体調不良に陥ったマスターがここを訪れる可能性は十分ある。

『病院を抑えるのもいいのかもしれねェ。
 だがここにはおれ達しかいないから、先んじて布陣を整えられる。
 何より、ホームグラウンドの海が近い』
『海、か。大丈夫なのか?』

確かに海戦は嵐の航海者たるライダーの真骨頂だろう。
だが麦わらのルフィという海賊もいるのだろう?
それを抜きにしても悪魔の実の能力者は海に嫌われるのだろう?
そんな不安が大丈夫なのかという言葉となって出るが、ニューゲートは一言で一蹴する。

『おれァ、“白ひげ”だ』

名乗りを上げる。
そこに在るのは英霊としての誇りと自負。そして海に生き、海に死ぬ覚悟。
それが凝縮されたのが大海賊エドワード・ニューゲートの異名『白ひげ』。
こうまで魅せられたら頷くしかなった。

『オーケイ。宿をとったら旗を掲げろ。その瞬間からこの一帯はお前のナワバリだ』
『ああ。正確にはおれ“達”のだが。
 しばらくはあのキャスターたちも庇護対象だから忘れんな』

キャスターに対し警戒はするし、警告もする。
だがそれは例えるなら子供に対し叱責をする父親のようなもの。
理不尽に、無慈悲に切り捨てはしようとしない。
仲間殺しという法度は犯さない。

『しばらくはあいつらのご機嫌伺いも必要か。篭るのになんと言うか』
『区切りは必要だろうな……天戯の接触があればそれ次第だが、なければあの通達で一区切りでどうだ?』
『あれか。またあるか?』
『あの一回ってことはねェだろ。脱落者が出たらやるのか、定期的にやるのか言ってなかったと思うが、あれが来れば情報も入るはずだ。
 動きのきっかけにはなるだろうぜ』
『そこから天戯のことも掴めるかもしれねえしな。
 ……いや、考えてみりゃキャスターの言う通りだ。おれにとっても天戯の目的も他の奴の願いもどーでもいい』

聖杯が天戯の目的のためのものであろうと、何でもいい。
問題はひとつ。おやじを殺せるか否か、それだけだ。
……能力の覚醒・進化。原点回帰にはなっちまうが、聖杯だけじゃなくそっち方向も気に掛けておくべきか。

『合流前に麒麟殿温泉、きちんと下見しとくぞ。能力開発のリスク軽減できるってんならな。確か十一時ごろまでやってたか。
 学園や温泉近くの何かでバッド・カンパニーも、さらに成長できるなら……それでおやじが殺れるなら、それに越したことはない』
『……変わらねェか、目的は。能力開発の方にも軽減できてもリスクはあるんだろ?』
『変わらねえし、構わねえよ。
 おれの能力がおやじに手向ける『鎮魂歌(レクイエム)』になれるなら、それが…最善、なんだ。
 誰かに殺してもらうんじゃあない。何かに頼るんでもない。ましてや億泰にやらせるんでもない。
 おれのおやじだからこそ、本来はおれの手で始末をつけてえんだ。
 恨みよりも、怒りよりも、同情よりも。水よりも、血は濃いんだよ』
『………………………………そうか』

不意にポツリと一つ。
雨粒が刑兆の頬を濡らした。


952 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:15:38 GTR2cE5s0

【A-4/麒麟殿温泉への道中/一日目・夜】

【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
1.麒麟殿温泉へ向かう。まず下見をして、その後キャスター(操祈)たちと合流。
2.キャスター(操祈)たちと宿をとり今夜は休息する。
3.天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。
4.接触が無かった場合、基本的に麒麟殿温泉近くに潜む……が通達次第で変更の可能性アリ。
5.バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。
6.公衆電話の破壊は保留。

[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
→キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。

【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.麒麟殿温泉へ向かう。まず下見をして、その後キャスター(操祈)たちと合流。
2.宿をとり次第、麒麟殿温泉近くで『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』を発動する。
3.夜は犬飼伊介に接触があるか見張る。
4.接触が無かった場合、基本的に麒麟殿温泉近くに潜む……が通達次第で変更の可能性アリ。
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。
※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。


953 : 新約 魔科学共存理論 ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:15:57 GTR2cE5s0
[共通備考]
※B-2近辺にこの世界における自宅があります。

※以下の情報・考察をキャスター(操祈)と共有しています。
・アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。
 サーヴァントならパラメータも把握。
・アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。

・アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。
・ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。
・善吉の技能と『欲視力』。
・カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。
・まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。
・ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。
・タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。
・ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。

・ランサー、真名は前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。
 逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。
・セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。
 二刀流の可能性を警戒。
・セイバー(リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。
・アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。
 リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。
 何かを撃ち出す宝具を持っているはず。
・ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。
 ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。
 宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。
・ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。
 キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。

・刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。
・ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。
・キャスター(操祈)はアサシン、垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。
 宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。

・能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。
・麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。
・魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。
・天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。
・アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。
・魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ鹿目まどかに、魔法少女である暁美ほむら。
・スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。
・幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。
・不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。
→以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。
 それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。


954 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:17:04 GTR2cE5s0

◇  ◇  ◇


休養。
それはあらゆる生き物に必要な生命の営みの一環。

例えば入浴。
命の洗濯と言われるその行為は、ローマや日本などで特に好まれた。
清潔に体を保つことは健康を保つのに大きな効果をもたらす。
加えて程よい体温の上昇や、温泉の効能、ストレスの解消など精神肉体の両面から健全さを保つ。
カシス色の髪の少女は麒麟殿温泉の広い湯船に、その豊満な肢体を投げ出していた。
蜂蜜色の髪の少女は脱衣所で己がマスターの着替えが乾くのを待つ。

そして同時刻。
青い髪の少女は自宅の浴室でシャワーを浴びながら考えを纏めていた。
黒神の青年はマスターの両親――無論NPCだが――のいないリビングルームで一人、テレビのリモコンを操作する。

「アッシュフォード学園、それと連なる通学路で事件か。どうやら派手にやってるようだな」

メディアを通じて得られる情報、そこから戦場の激化を感じ、思考にふける明。
学園を休んだのは幸運だったか、さやかの友人たちは関わっているだろうか、今後関わっていくだろうか。
映像や音声の片隅からも情報を得ようと耳目をこらす。

同じようにリモコン――麒麟殿温泉の空調のものを拝借している――で以て情報を集めるサーヴァントがいる。
暁美ほむらの落としていったベレッタを手に取り、リモコンをこめかみに突きつける操祈。

『物的読心(カテゴリ044)、右手で触れた物質から24時間以内の記憶情報を抽出』

得られた情報は……皆無。
いや、正確にはないわけではないのだが、既に体験した以上のものが入ってこない。
まるでそれ以前は、時間の流れから乖離したどこかに置かれていたかのように一切の記憶情報が刻まれていない。
年単位で遡れば何か得られるかもしれないが、得体の知れない情報に触れるのは避けるべきと経験が語っていた。
一方通行は敵に誘導され、魔術を『偶然』発動させてしまい大ダメージを受けたことがあるという。
それと似たような仕掛けがあの魔法少女によってされていないとは言い切れなず、深入りは避ける。

思考に沈むサーヴァントに浴室のマスターから思考が流れてきた。

『だいぶ楽になって来たかも❤そろそろ上がりたいんだけど?』

『バーサーカー、どう?何か新しいこと分かった?』

それに対して各々答えを返す。

『もう少し待ってて☆着てた服はまだ着れたものじゃないわよ。
 間に合わせの服装でいるのもかっこ悪いし、なによりまだ完調してないでしょぉ?』

『際立ったものはあるにはあるが、報道では詳しいことはわからないな。
 少し、情報を整理したい。上がったら話そう』


955 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:17:36 GTR2cE5s0

答えに応じた行動にマスターが移る。
伊介は鼻の下まで湯船につかり、ふてくされたようにぶくぶくと水面を泡立てる。
さやかはシャワーノズルを捻り水を止め、浴室を出て体を拭く。

魔術師のクラスは一人、思考する。
狂戦士のクラスは二人、相談する。

「学園で爆破事件、さらに誘拐ね……まどか、巻き込まれてないかな?」

ぬれた髪を乾かし、ショートパンツにシャツとラフな格好に着替えて自室で合流。
僅かに流れたニュースの続報を耳にし、表情に不安を浮かべる。

「なんとも言いかねるが、さほどの心配はしなくてもいいと思うぞ。
 もし巻き込まれているなら、ほむらが連絡をよこすはずだ。
 彼女…いや、正確にはあのサーヴァントは――」


◇  ◇  ◇

(暁美ほむら、またはそのサーヴァントは監視網を町にめぐらせている。
 透視、遠隔視、盗聴、使い魔。方法力は分からないけどそれは間違いないわぁ)

川を下り、執拗に追ってきたのは鹿目まどかにとってより脅威になるものを排除しようとしたからだろう。
学園での事件、その首謀者両方を掴んでなければとれる選択ではない。
かなり広範囲に、正確な情報収集の手段を用意しているとみる。
それが具体的になにかは不明だが……

◇  ◇  ◇


「おそらくは人形だろうな。あの空飛ぶ人形のように、上空からの監視からもしれないし、ミニサイズの人形をばら撒いているかもしれん。
 でなければ俺たちや、さやかの友人…まどか、か…を見つけることも出来ないだろう。
 現在進行形で少なくともまどかのことは見ているだろうさ。こっちも覗いてるかもしれんな。
 だから火急の事態となれば、連絡してくるだろうさ。便りがないのは無事な証拠だろう」
「え゛っ、あたしさっきまでお風呂入ってたんだけど……
 いや、それよりも――それもよくはないけど!あんまり口に出しちゃマズイこともあるんじゃ…?」

あのキャスターに見られていたかもしれない。
不快感はある。
しかしほむらの手の内や、こちらの思考など漏れては困ることも話していた。
マズイ事態の引き金になるのでは、そう心配するが

「ああ、そうだな―――」

◇  ◇  ◇

(だからこそ……もちろんそれ以外の打算もあるけどぉ、先の虹村さんたちとの話では全ては明かせなかった。
 敵の情報という手札はともかく、切り札は見せられない)

朽木ルキア、鹿目まどか、夜科アゲハに対する心理掌握の名残。
そして令呪により得ている前田慶次への命令権。
これらは行使しえるジョーカーであり、特に前田慶次は戦局に偏りをもたらすカードだ。
万一、白髭のライダーと争うことになった場合、そしてまだ見ぬ暁美ほむらのサーヴァントのために伏せた手札。
追加の令呪で解かれている可能性もあるが、それでも令呪の残数は大きなもの。
知ると知らぬでは違いが生じる。
そうした戦局に影響する情報以外にも明かさなかった考察はある。

◇  ◇  ◇


956 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:18:21 GTR2cE5s0

「もちろん警戒はしていた……あいつは人形遣いのキャスターだ。
 なら俺のような超能力でも、きみのような魔法でもなく人形で以て情報を集めるはず。
 この家の中に人形のような異物はない。
 俺のテレパスで感知できる範囲で、になるが……アモンの力はその気になれば世界を呑みこむ」

かつて対峙した敵デーモン、アグウェルは鉱物との一体化による奇襲・感知能力を有した。
『悪魔の体に人の心持つ戦士(デビルマン)』ならばその上を行く。
テレパシーにより世界中のデビルマンと交信しようとしたこともあるのだ。
家一軒くらいなら、その内に獅子身中の虫がいないか把握はできよう。

「ん〜……なら信じるけど。大きく出るね、世界ってこの、何処とも知れない聖杯戦争の会場でも?」

能力のことを問うてみる。
軽い口調だが重大なことだ。
世界の果てに存在したヒトを基にした怪物、聖杯戦争を行うだけに用意するには大規模にすぎるこの地。
その疑問の答えもまた求めるものだ。


◇  ◇  ◇

(この地は恐らく聖杯戦争のためだけに用意されたいわば箱庭。
 能力覚醒のための因子が、その副作用を抑えるある種の霊地が揃うなんて、偶然なら幸運力がとんでもないわぁ。
 作為的な物と思って間違いない。
 赤いテレホンカードは世界を渡るための物と言ったけど、どちらかというとその本質は――)

◇  ◇  ◇


「鍵は世界の改変、だな。かつて君の友人、まどかとほむらの二人が行ったというそれと同等の力がこの戦場を生み出したのだろう。
 了…サタンも同じくイマジネーションによる世界の創造を可能とする。作るのは難しくても、壊すのはあっけないもの……それだけなら俺にも可能だ」
「ここも世界改変、っていうか創造されたものってこと?
 そんな簡単にできるものなのかな……?まどかもほむらもいろんな要素が重ならないとできなかったと思うんだけど……」
「できる者は多くはないだろうが、その候補を多く知ってるだろう?
 天戯弥勒がその一人である可能性はある。本人ができずとも、宝具を拝借、または再現しているかもしれん。
 たとえば因果を逆転させる槍、『大神宣言(グングニル)』などなら運命を塗りかえ、世界を変える事も可能だ」

例に挙げたのは北欧神話のオーディンが所持する宝具。
運命を、そして世界の理を塗りかえる槍だ。


◇  ◇  ◇

(『主神の槍(グングニル)』という霊装を用いた、魔神オティヌスによる世界改変。
 アレも元いた世界へ帰るためのもの、だったらしいわねぇ。そして、未元物質(ダークマター)はその霊装を作り出す材料にもできる。
 作られた世界、元の世界へ帰るナニカ、その材料。
 『主神の槍(グングニル)』は神の子や聖人の特性と交わると『神殺しの聖槍(ロンギヌス)』の偶像力が混ざるとか。なら、逆もあり得るはず。
 有名な武具っていうのも大変ねぇ。
 そして『聖杯』とは神の子の血を受けた杯であり、『聖槍』とは神の子の血に濡れた槍。
 『天之杯(ヘブンズフィール)』から『不明金属(シャドウメタル)』という神の子の血を注ぎ、『聖遺物』を『赤』く染め上げる。
 そうして世界を基の形に戻す霊装、『主神の槍(グングニル)』を作り出すことができる……状況から推察した、この聖杯戦争のメインプラン。
 未元物質以外にもグングニルのスペアプランらしきものがあれば、確証力もあがるんだけどぉ)

◇  ◇  ◇

「『大神宣言(グングニル)』は神の用いる宝具だから用意は難しいが、高名なだけにそれを元型とした槍は多数存在する。
 例えば派生の一つ、ゲイ・ボルクも運命を曲げる槍だな。
 グングニルの材料となったというユグドラシルに匹敵する宝樹はそうはないだろうが、ゲイ・ボルクは鯨の骨で作られたなんて言われてるし、複製できなくはないかもしれんな」
「そんな簡単にできるものなの?宝具って」
「魔術師の霊装というのは伝承上の武器を再現したものが強力だ。
 論理の可逆を利用すれば空想上のものでしかない武器、例えば実在しないアーサー王の妹、クイーン・アンの盾なども『再現』できる。
 無論、オリジナルには届かないだろうが、複製の『槍』でも元となる世界があればそれを再現する、あるいは元に戻すくらいはできるだろう。
 例えばタイムパラドックスの修正や……元となる人物の存在するNPCの創造などなら」


957 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:18:42 GTR2cE5s0

NPCの出来は大したものだ。そこまで入念な観察をしてはいなかったが、人間との相違点を見出すことはできなかった。
当然作り出すのは容易ではない。
しかし、原型があるのなら。
泥から人を作り出すのは神の所業だが、人から人を作り出すのはそれに比べれば容易だ。
科学ならばクローニング。魔術ならば人形。
世界の創造もまた神域だが、その異常を戻すなら修正力も味方する。
世界改変の力を秘めた宝具ならば、どちらもできるはずだ。

「その力を以て、なぜ聖杯戦争という形をとっているのかは……葛藤の表れではないかと思っている」
「葛藤?」
「願いというのは言ってみれば、限定的な世界改変を望むということだ。
 俺ならもう一度、了…サタンと会える世界を。君ならほむらによる改変がなされなかった世界を望んでいると言える。
 この世界は、いうなれば下書きというかモデルルームのようなもので、勝ち残った一人が望む世界を作り出す」

脳裏に浮かぶ親友にして宿敵の顔。
あの天使長ルシフェル/魔王サタンでさえも、純粋な善/悪ではなく、デーモン族のために神や人間と滅ぼそうとしたのだ。
世界を変える力があったとして、その力を自らの意思のみで振るうのは強い覚悟が必要となるだろう。
そしてその結果に微塵の後悔も迷いも抱かない者など、まずいない。

「ずいぶん、その…身勝手というか無責任な感じがするね、それ」
「思い当たる節が…いや、なんでもない」
「えー、ちょっと失礼じゃない?」

軽口気味に抗議はするが否定はできない。
聖杯戦争というのは他者の願いを踏みにじり、自らの願いを叶えようというもの。
参戦した時点で、身勝手と言われようと反論はできないだろう。

(願い、か……
 まどかの願いは、多分魔法少女が願いの果てに絶望しないこと。
 ほむらの願いは、まどかが魔法少女とならず平穏な生を送ること、かな。
 相反する願いだけど、ほむらは悪魔となってその二つを両立させた。
 けどそこにまどかの意思は介在していない。だから、あたしは悪魔の願いを踏みにじる。
 ……きっと他の人の願いも)

マスターなら皆それを覚悟しているのだろう。
聖杯がないなら戦いに大義はないが、もしあるのなら。
願いのために杯に心血を注ごう。

「それじゃあさ、バーサーカーはやっぱり聖杯はあるって考えてるんだ?」
「………………ああ、そうだ。
 だが今の優先事項は違うんだろう?
 さやか、君の願いは鹿目まどかの無事も含まれるはずだ。
 なら今はそちらを考えて構わないさ。聖杯戦争については、俺が思考しよう。
 少なくとも、聖杯の否定にはまだ早いということは覚えていてくれればいい」
「そ。ありがと、バーサーカー」


958 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:19:01 GTR2cE5s0

大局を見るならば聖杯戦争について考えるのをやめるべきではない。
しかし情勢はあまりに複雑怪奇。
知っているのとは違う親友と、腐れ縁の友人が同時に存在する。
どう対応すべきか。
ほむらと協力するのは、いい。
しかしまどかをどう扱う?
協力者として共に戦うべきか、庇護対象として帰らせるべきか。
これもまた葛藤か、と友人の顔を浮かべる。
連絡くらいはとりたかったと、自らの携帯電話に手を伸ばす。

「ん?そういえば電話番号は分からないのか?
 最近の電話は持ち運びできるうえに電話番号を記録しておく機能もあるらしいじゃないか」

少し古い英霊であるため、明に携帯電話の知識はない。
聖杯に与えられた日常生活の常識として知っている程度、ジェネレーションギャップに悩む老人のよう。
そんな発言に苦笑いを浮かべながら答える。

「あたし、ほむらと番号交換するほど仲良くはなかったみたい……協力したこともあったと思うんだけど、少なくともあの世界ではやっぱり敵、だしね。
 まどかとなら、普通なら番号交換してるんだけどさ、やっぱりあの世界特有の弊害があって。
 あの子、設定だとアメリカからの帰国子女で、しばらく見滝原にいなかったことになってるからやっぱり番号まだ知らないんだよ」

悪魔による世界改変の影響。
それが僅かに、しかし確実に情報網の祖語という決裂を生んでいた。

「覚えていないのか、番号?」
「いや、情けない話だけど現代っ子は大体メモリ頼りで……」
「そういうものなのか」

友人や学校の連絡先くらいは暗記していた時代の人間からすれば現代の電話事情は軟弱に見えるだろうか。
咎めても詮無い事と明も分かってはいるので、それ以上特に言うことはないが何となく気まずい雰囲気になる。

「……遊園地ですぐに踵を返したのは失敗だったかもしれんな。すまない」
「なーに言ってんの。あたしが覚えてればいい話だし、キャスターの陣地に長居したくないっていうのは間違ってないって。
 だから、今は『待ち』。何かあったらほむらが連絡してくるっていうのは多分間違いないし、まどかは多分あたしの番号知ってるからかけてくるかも。
 あたしだけで街に飛び出して連絡つかなくなったら、いざっていう時に困るだろうし。
 寝間着じゃないのもいざって時にすぐ飛び出せるようにね」

ひらりと服の裾を翻してベッドへ向かう。

「かなり早いけど、いったん寝ちゃうね。
 魔法少女だし、多少寝なくても大丈夫だと思うから何かあったら起こしてよ」
「ああ。明日はほむらのところだったな?」
「うん。また学校サボりだね。じゃなきゃ宿題とかでこんな早く寝るなんてできないだろうけど」

じゃあお休み、と言って電気を消す。
明は霊体化し、ベランダに出て思考を続ける。


959 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:19:20 GTR2cE5s0

(情報整理と言っておきながら、急な話題転換をしてしまったな。
 さやかも、感付いているだろうか)

世界改変の力を持つものが、その選択を他者に委ねる。
まるで悪意と理性の葛藤と例えたが……

(鹿目まどか、円環の理と言っていたか。
 その力が、ほむらとさやか、二人に選択を迫っているとするならば。
 この聖杯戦争を引き起こしたのは……願いのための殺し合いを行っているのは鹿目まどかということになる)

魔法少女の力が殺し合いの元凶かもしれない。
確証もないことを聞かせたくはなかった。

(同じことがほむらにも言える。
 悪魔として世界を改変した結果悩み、選択を他者に委ねる。伝聞でしかないがあまり精神的に強い子とも思えんしな。
 サタン、いや了は自らの記憶を消して人間の振りをしていた。
 さやかの記憶を消したように彼女たちがそうしている、というのはさすがに考えすぎだといいのだがな)

自らも記憶を消し、一参加者に身を堕とす。
記憶を失くした自分が同じ選択をするか試す。
そんなifを試みるのも不可能ではないはずだ。

(……飛躍するが、さやかはどうなんだ?魔法少女の才能は。
 どういった理屈で才能が決まるのかはわからんが、あの二人と同じ条件を満たすなら彼女もまた世界改変の力を秘めている可能性もある)

もしさやかが、二人の世界改変のどちらを支持するか悩んでいるとしたら。

(さやかが、この世界を作ったというのも動機・才能としてはあり得る……のか?)

まどか、ほむら、さやか。
三人の魔法少女は、いずれかが光の蛇のように潜んでいるのかもしれない。
彼女たちの秘める力こそが、世界改変をもたらす『聖杯』である。
聞いたところであまり愉快な気持ちになる仮説ではない。

(今はまだ俺の胸に秘めておこう。少なくともまどかやほむらに話を聞くまでは)

魔法少女について理解を深める必要があるだろう。
…………魔法少女以上に世界を変えるといったら浮かべる存在もいる。

(了。お前はこの聖杯戦争を知っているのか?もしや俺の敵は、やはりお前なのか?)

未だ敵の見えてこない、この世界。
姿を見せていないのか、それとも……


960 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:19:37 GTR2cE5s0

【C-6/自室/一日目・夜】


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
0.眠る。
1.明日の正午までに暁美ほむらへ回答する。
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。
※まどか、ほむらへの連絡先を知りません。


【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.さやかに従い行動
2.何かあったらさやかを起こす
3.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
4.マスターを守る
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。
※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。

[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※暁美ほむらとの交渉『鹿目まどかを守るための同盟』の回答期限は2日目正午までです。
※キャスター(フェイスレス)を確認しました。
※学園の事件を知りました。
※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。


961 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:19:56 GTR2cE5s0


◇  ◇  ◇

「やっほー、犬飼さん☆調子はどうかしらぁ?」

長い髪を纏め、ゆさっ、と擬音を纏いそうな躯にタオルを巻いて浴室に合流。
かけ湯をして、二人並ぶように湯船につかる。

「マシにはなってるっていったでしょ❤服は?」
「もう少しすれば大丈夫だと思うわぁ。コンビニのTシャツともさよならできそうね☆」
「家に着替え取りに戻れそうにもないし、しょうがないけど。
 はぁ〜、ホントむかつく❤」

生徒名簿によっていくつかの情報を掴んだのだ。
なら敵もまたこちらの情報を掴む可能性は高い。
のこのこ戻って待ち伏せでもされたら目も当てられない。

「出たらホテル探して、ゆっくり休みましょ。
 さすがに明日は登校しろ、なんて言わないから☆」
「もし言ってたら殺しちゃったかも❤」

絶対命令権の行使……それができればどうなっていただろうか。
いまより状況は良くなっているか、それとも。
このキャスターが優秀である、のは事実なんだが。
ランサーと結んだ。学園を掌握した。
ランサーに裏切られた。ライダーに追い込まれた。
逃げた先でマスターに殺されかけた。別のライダーに取り入った。
生きて、武器も獲得できているのは、マシだろうか。
そういえば

「……さっきまであんたが伊介の服の近くにいたから大丈夫だと思ってたけど、さすがに銃が人にばれたらやばいんじゃない?」
「大丈夫よぉ。まだ道具作成はしてないけど、脱衣所にあったリモコン借りてNPCを何人か放ってるから☆
 魔力も増えてるから、これまで以上に使っていけるわよぉ」

能力として目覚めてるか試すのは体の調子が安定してからの方がいい。
今は魔力の増強だけでも十分。
これまで能力行使は必要分に抑えていた。
今後は些細な調べ物や、NPCへの具体的な命令、『幻想壊し』の行使も含めて戦略の幅を広げられるだろう。
それだけに、学園に広めた『派閥』に近付きにくくなったのは痛いが、危うきに近寄るべきではない。
それよりも

「明日は図書館に行きたいのよねぇ」
「え〜、好きなの?そういうの。一応戦争に来てるのに❤
 それよりあのライダーとの話とかは――」
「もうある程度すませてきたゾ☆
 この後合流することになってるけど、悪くない関係を築けたと思うわぁ。
 彼らには話してないけど、それでもこの聖杯戦争の事とかサーヴァントの真名のこととか話したから、調べ物って言えば反対はしないわよぉ」


962 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:20:15 GTR2cE5s0

あまり乗り気でないマスターに理論武装して提言するが、やはり渋い顔。
なんとも気分屋なものだ。
サーヴァントについてだけじゃない。
その先にある聖杯、聖遺物について。世界改変の力について。
願いが叶うのかも調べるつもりなのだから、それなりに重要な事項だというのに、いい気なものだ。
もちろん、口には出さない、出せない。
暁美ほむらの眼が、耳が、何処の壁に障子にあるか知れたものではないから。

(聖杯に至る情報はないかもしれないけどぉ、わざわざ用意した図書館になにもないなんて無駄足力しないでしょ☆
 サーヴァントの伝承くらいは間違いなく置いている。
 そこから超能力とか魔術とか挟んで、世界を変える力について、何かわかればいいんだけど)

その結果如何で方針も考えるべきだろう。
聖杯戦争に勝つべく動くか。
天戯弥勒に勝つべく動くか。
願いを叶えるために。

「……犬飼さんの願いって家族のためにお金が欲しい、だったかしらぁ?」
「なーに、いきなり❤そうだけど」
「おしゃべりよ、おしゃべり。どんな家族か聞かせてよ」

本当に唯の気まぐれというか、会話のための会話。
心底知りたい情報なら能力を使えばいいが、それはコミュニケーションを疎かにしていい理由にはならないし、こうしたトークは嫌いではない。
命を懸けるほど、きな臭い職業について、こんなところに挑みかかる状況というのはどんなものなのか。
学園都市の暗部とは異なるだろうそれに触れていいかは悩むところだが、聖杯戦争にいるのだから願いのことを聞いてみたいと思った。

「ママはねー、犬飼恵介っていうの。
 伊介っていうのもママからもらった名前よ、いいでしょ?」
「そうね、いい名前だと思うわぁ。にしてもエイスケって、私が言うのもなんだけど変わった名前ねぇ」
「男の人みたいって思った?それ、正解❤」
「え?」

まさかの発言に少々驚く。
彼女の世界では父をママと呼ぶのか?と考えるが、それなら少々応答として疑問が残る。

「ちなみにパパも男よ」
「あー、そういう。納得したわぁ」

理解すればなんということはない。
別に同性婚くらいなら文化的にさほどおかしなものでもない。
暗殺者というきな臭い環境に置かれているとなると些か複雑に見えるが、本人たちが納得しているなら口出しするようなことでもない。

「養子なのねぇ。それでもこんなところに来るなんて家族仲力は良好そうで羨ましいわぁ」
「あっは、何それ❤
 でも伊介にとっては当たり前の事だから」

自信満々気に、誇らしげに語る。

「水はね、血よりも濃いの❤」

浴槽に満ちた水に映った伊介の口から、そう言葉が綴られた。


963 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:21:15 GTR2cE5s0


【A-4/麒麟殿温泉/一日目・夜】

【犬飼伊介@悪魔のリドル】
[状態]疲労(中)魔力消費(微小) 微熱、PSIに覚醒
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0.食蜂操祈に心を許さない。
1.もう少し休んだら刑兆たちと合流。
2.ホテルでもとって休養。
3.学園と家にはあまり近付かない。

[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。
→症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。


[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確認済み。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による)

【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]
[道具]ハンドバック(リモコンが一つ)、アッシュフォード学園の制服
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
1.ホテルでもとって犬飼伊介を休ませる。
2.犬飼の体調が安定したら能力を試してみたい。
3.明日は図書館でサーヴァントや聖杯、世界改変について調べてみたい。
4.犬飼伊介には一応警戒する
[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。
※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。
 それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名は聞いていませんでした。
※まどかの記憶を見ました。少なくともインキュベーターのこと、ほむらの容姿、タダノとの同盟、ルフィの真名と能力を把握しています。他にどのようなことを知ったかは後続の方にお任せします。
※超能力を目覚めさせる因子の存在(PSI粒子)に気づきました。アッシュフォード学園、麒麟殿温泉の近くにあるとほぼ確信しています。
※ほむら、またはそのサーヴァントは情報収集の能力があると推察。重要事項は胸の内に秘めるつもりです。
※赤いテレホンカードの完成形はオティヌスの用いた『主神の槍(グングニル)』に近いものと考えています。


964 : 世界を変える力が、その手にあると囁く ◆A23CJmo9LE :2015/06/01(月) 03:21:33 GTR2cE5s0

※以下の情報を刑兆、ライダー(ニューゲート)と共有しています。
・アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。
 サーヴァントならパラメータも把握。
・アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。

・アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。
・ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。
・善吉の技能と『欲視力』。
・カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。
・まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。
・ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。
・タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。
・ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。

・ランサー、真名は前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。
 逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。
・セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。
 二刀流の可能性を警戒。
・セイバー(リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。
・アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。
 リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。
 何かを撃ち出す宝具を持っているはず。
・ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。
 ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。
 宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。
・ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。
 キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。

・刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。
・ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。
・キャスター(操祈)はアサシン、垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。
 宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。

・能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。
・麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。
・魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。
・天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。
・アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。
・魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ鹿目まどかに、魔法少女である暁美ほむら。
・スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。
・幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。
・不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。
→以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。
 それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。


965 : 名無しさん :2015/06/01(月) 03:22:28 GTR2cE5s0
投下終了です。
冗長な作ですが、なにか矛盾などあればお願いします。


966 : 名無しさん :2015/06/01(月) 11:26:29 tQHWesDs0
投下乙です!
物凄い密度の世界観、各種異能のクロスオーバーだ
白ひげ組と食蜂の会談はわくわくしながら読みました、仮定といえこうしてまとめあげられてみると、驚くほどに用語が連鎖してて感心します
サーヴァントの正体や真名についての推理は、特に白ひげ組はしばしば行ってきてましたが、ある意味その総決算のような濃い会話でした
明とさやかの会話も、風呂を介して複雑に絡み合い、三組がそれぞれの疑念の糸をこのサイレン世界に伸ばす…行動ではなく思考の面で、大きく状況が動いた回だったと思います
改めて、大作の投下乙でした!


967 : 名無しさん :2015/06/02(火) 00:03:35 T7Sd3pSA0
投下お疲れ様です。

学園での食蜂と伊介様、慶次やルキアたちとの会話の時にも感じましたが、今回のサーヴァント考察および聖杯に迫る推論のディスカッションも、それぞれのキャラクターが各々の考えをきっちり持って議論している感が出てて凄く好きです。
背景や伝承に絡めて縦横に考察を繋げていく流れには本当に唸らされました。流子の武器のハサミから「文化の象徴としての糸を断ち切ること」と捉えたりとか…!
さらには、ヒトと悪魔の狭間で戦い、神霊と相まみえたデビルマンの口からも、彼ならではの考察が。魔法少女への彼の危惧といい、見どころ多すぎて言及しきれないです。
あと、個人的に、形兆の台詞の中の、虹村父へ向けた「鎮魂歌(レクイエム)」にグッときました。彼と伊介様が奇しくも別々の場所で口にした「血は水よりも濃い」といい、印象的な台詞が本当多いです。


968 : 名無しさん :2015/06/02(火) 21:51:35 pXIFHWnQ0
白ひげのどっしり構えてる感好きだわ
レミリアやモリガンの正体考察とかが素直に感心する


969 : 名無しさん :2015/06/03(水) 20:00:26 xS/T9uEI0
投下乙です

考察パートは圧倒的な知識量に驚愕
この人、把握してるだけじゃない、読み込んでやがる……!
創作だけではなく神話にも触れてるのは本当に尊敬

後思ったことは聖杯戦争の特性上、現在連載中のワンピースや未完の禁書の最新情報がばんばん使われてるね
こういう部分も面白いところだよなあと実感しました


970 : 名無しさん :2015/06/04(木) 01:18:42 Fzi.VYQA0
この三組のいずれも鯖なり鱒なりがかなり意識的にこの聖杯戦争自体のからくりに思いを馳せてるのか
この手の蘊蓄回は読む方は楽しいが書く方は大変だろうなあ


971 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:24:44 LqswMvUM0
投下お疲れ様です。
サーヴァントの特徴から史実の英雄を参考に練られていく考察はとても見ごたえがありました。
各作品世界の用語や物品にまで考察の枝が伸びて聖杯戦争の裏にある真相見抜こうとするさまはをまさに圧巻の一言です。
彼らが聖杯戦争という謎に対してどう向き合っていくのかが気になります。

遅れてしまって申し訳ありませんでしたが
アゲハ、セイバー、ルキア、慶事、モリガン投下いたします。


972 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:27:26 LqswMvUM0
「鮮血!」
『応っ!』
「人衣一体!神衣鮮血!」

流子の声に答える様に、彼女の纏っていた服が蠢き形を変える。
戦闘形態へと姿を変え、片太刀バサミを手に、眼前のアーチャーへと構えた。
人吉が正体不明のマスターらしき人物に浚われた以上、なるべく早めにここを切り抜け、助けにいかねばならない。
人吉を浚った相手について回っていた人形達から、恐らくサーヴァントを連れている可能性が高い。
であるならば眼前のサーヴァントを自分が相手どり、アゲハだけを救出に向かわせるのは下策。
故に流子の出した最適解は、目の前のサーヴァントをぶっ飛ばすことと、人吉が連れていかれた方向、橋の先めがけて突き進むことだ。
操られたからとはいえ相手のマスターを不意打ちで攻撃してしまった事に申し訳なく感じる気持ちも多少なりともありはするが、それはそれ、キャスターを恨めと割りきる事にする。

「あら、随分と刺激的な格好ね、なら――」

露出の多い戦闘形態へと姿を変えた流子の姿に、対峙するモリガンが楽しそうな声をあげる。
刹那、無数の羽音と共にモリガンの足下から蝙蝠達が沸きだし彼女の美貌を包む。
だが、それも一瞬の事。
モリガンの肢体を覆っていた蝙蝠達がにわかに形を変えていく。
胸元を露にし、その扇情的な体のラインをくっきりと映し出す黒いボディースーツと、引き締まった足を際立たせるピンクのタイツをその身に纏う。
これが彼女の戦闘着なのだと流子は直感的に感じた。

「お姉さんも負けていられないわね。フフ、綺麗でしょう?」

悪戯っぽく微笑みながら、これから始まる闘いが待ちきれないかのように、ワキワキと白磁の様な指をくねらせる。
フワリ、と翡翠の如く煌めく髪が風に舞い、好奇に満ちた眼差しが流子、そしてアゲハへと向けられる。
その時、アゲハとモリガン、二人の視線が重なる。
ドキリ、とアゲハの胸が高鳴った。

夜科アゲハは精神的にも現実離れした少年だ。
必要な事であれば、人一人を殺害するような決断でもやってのける、謂わば漆黒の意思を持っている。
だが、それでも青い春を謳歌し、魅力的な女性には恋をし、性欲も旺盛な極々一般的な10代男性の精神構造である事には変わらない。
結論を言うならば、彼にモリガンの魅了を回避する術はなかったという事である。

男に抱かれるために用意されたとしか思えない艶姿に否が応でも目が奪われる。
動悸が止まらない。
カアッと顔が熱を持つ。
魅了され、熱病に浮かされたかのように頭がぼうっとする。


973 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:28:21 LqswMvUM0

「あらあら」

そのアゲハの変化に気付いたのかモリガンが艶っぽい笑みを浮かべ、ウィンクをひとつなげかける。
ぐらりとアゲハの心が大きく揺れる。
思考が覚束なくなり、一つの衝動に感情が染め上げられていく。

抱きたい。

あの豊満な身体に身を埋めたい。
白く滑らかな肌と自分の肌を重ね合わせたい。
本能の赴くままに、さながら獣の様に交わりたい。
ふらりと、一歩足が前に出る。
不意に、脳裏に悲しげな表情の眼鏡をかけた少女の姿がよぎった。

(……っ!? 雨、宮……!)

その少女を思い出し、アゲハが足を止め踏ん張る。
今、自分が何をしようとしていたのかを理解し、サッと血の気が引く。
同時に雨宮桜子に対して罪悪感が沸き出す。
だが、アゲハがその感情に浸る余裕はなかった。

不意に視界が陰る。
その正体が人影だと気づくのと右頬に衝撃を受けて吹き飛ぶのは同時だった。

「なに色ボケしてんだ馬ッ鹿野郎ォ!!」

響いた声で、アゲハは自分が流子に殴られた事を理解した。
恐らく、眼前のサーヴァントに対して前後不覚の状態になった自分を正気に戻すためにやった事だろうとアゲハは理解する。
実際、アゲハが雨宮の事を思い出さなければ、あのまま相手に向かってふらふらと歩み寄っていた。
アゲハが仮に流子の立場であれば、同じように殴ってでも止めていただろう。

だが。

「いってえだろうが!もう少し加減ってもんを知りやがれ!!」

ズキズキと痛む右頬を押さえ、非難の籠った雄叫びをあげながらアゲハが勢いよく立ち上がる。
流子のとった判断は正しい。
正しいが、それはそれとして今の一撃は痛かった。
その前に正気に戻っていたということもあり、恨み言の一つでも言いたくなるのが人情というものであろう。


974 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:29:07 LqswMvUM0

「あぁ!? 様子がおかしくなったから喝いれてやっただけだろうが! さっきみたいに操られて余計な事されても迷惑なんだよ!
さっきも今も女のサーヴァントに操られるような色ボケはすっこんでろ!」
「色ボッ……!」

売り言葉に買い言葉。
モリガンと目が合った時とは別の意味で顔が熱くなる。
不覚をとった自覚があるばかりに、まともに言い返す事ができず、アゲハがぐぬぬと震える。
不意に痴話喧嘩を遮るように笑い声が響いた。
アゲハと流子、二人の視線が楽しそうに笑うモリガンへと向けられる。

「フフ、騒がしいのは好きだけど、ダンスの相手を無視しちゃダメよ?」
「だったら人のマスターに色目使ってるんじゃねえよ。もとはと言えばお前が原因じゃねえか。
……アゲハ、お前は下がってろ。こいつ相手じゃ分が悪い」

モリガンとアゲハを遮るように立ちながら、流子がアゲハに言う。
暴王の月でもダメージらしいダメージは与えられず、再度魅了される危険性もある事から今の自分が足を引っ張っている事はアゲハも理解していた。

「……ワリィ」
「気にすんな、もともとこれはこっちの仕事なんだからよ」

ボソリ、と呟いた謝罪に不敵な笑みで応えられる。
今、この場において自分に出来ることはない。
その無力感に苛まれながら、アゲハは不承不承頷き後退した。

改めてモリガンと流子、二人のサーヴァントが対峙する。
喜色満面の眼差しと敵意を顕にした眼差しとがぶつかり合う。

「そっちの坊やの事はごめんなさいね。でも態とじゃないのよ?
ちょっとお姉さんが魅力的過ぎたのがいけなかったかしら」
「テメェ、全然悪いとか思ってねえだろ」
「呼吸をするのが悪いと思う人間なんていないでしょう?」

苛立ちを隠す気のない流子の刺のある発言に、モリガンは悪びれることなく答える。
自分はからかわれている。
流子はそう確信する。
キャスターに一杯食わされ、闖入者により人吉をまんまと浚われ、そして人を食ったようなモリガンの対応。
もともと喧嘩っ早い質の流子のフラストレーションはぐんぐんと溜まっていく。
その顔に獰猛な笑みが浮かんだ。
笑うという行為が本来攻撃的なものであるとは、誰の言だったか。


975 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:29:40 LqswMvUM0

「ああ、そうかよッ!」

仕掛けたのは流子。
全身のバネを総動員させ、一息にモリガンに向けて駆け寄る。
ここまでの鬱憤を晴らすかの様に横凪ぎに鋏を一閃。しかし、流子が鋏を振るうのと同時に羽音が響き、刃は手応えなく空を斬る。


「ソウルフィスッ!」

紙一重で上空に回避したモリガンがお返しとばかりにその手から魔力を迸らせた。
光輝く蝙蝠を模した魔力の塊が流子を捉えんと襲いかかる。
直撃の刹那、刃が閃く。
逆袈裟に振り上げられた刃に両断された蝙蝠は忽ち輝きを失い霧散した。
だが、間髪を入れずに上空からモリガンが飛来する。
重力に任せるままに落下しながら、背中から生えていたビロードのような黒い羽根が瞬時に鋭い鉤のついた複数のワイヤーめいた形状に変化し、流子を突き刺し、あるいは絡めとろうと襲いかかる。
対する流子は手にもった鋏でまた一閃。
ワイヤーが纏めて斬られた事によって出来た攻撃の僅かな隙を利用して飛び退り、後続のワイヤーの連撃をかわす。
切断され地に落ちたワイヤーが無数の蝙蝠へと姿を変えモリガンの元に集うなか、流子は再度駆け出す。
狙うのはモリガンの着地際の一瞬。
だがそれはモリガンも予測していた。
ワイヤーを統合し翼へと再構成。高度的に再浮上は無理と判断し、その翼を硬質化させて自身を庇うように重ね合わせる。
ワイヤーを纏めて寸断した切れ味の良さを鑑みて、より硬度をました翼。これで着地際の一撃を凌ぎきれるとモリガンは判断し、次に起こすべくアクションへと思考を巡らし始める。
が、結論から述べればその思考はまったくの無駄となった。

刃が閃く。硬質化していた筈の両翼が、まるで布が鋏で裁断されたかのように、いとも容易く引き裂かれた。
流子の持つ片太刀バサミは魔力供給のブーストさえあれば魔術的な要素をもったものさえ裁ち切る力を持っている。
それが魔力によって変形・硬質化をさせていたモリガンの羽根には特効として作用した結果であった。
もっとも、モリガンがそのような事実を知り得る筈もなく、その表情に驚きの色を見せる。
その一瞬の動揺を流子は見逃さない。
横に振り払った片太刀バサミを持ち変え一歩踏み込み、切り裂かれた羽根の向こうに見えるモリガンめがけ刺突を放つ。
モリガンが身をよじる、が、数瞬遅い。
肩口から紅の飛沫が舞った。

「――痛ゥッ……!」
「理屈はわかんねーが、どうやらテメエとアタシは相性がいいみたいだ、なッ!」

致命傷こそ避けられたものの、熱を持って走る痛みにモリガンの顔が苦痛に歪む。
肩の傷口を抑え、モリガンがバックステップで距離をとる。
それをさせじと距離を詰めるべく流子が跳びかかるが、それを阻止する為に地面へと伸びていた羽根が槍のように尖り、真上を通過しようとする流子目がけて勢いよくせりあがる。
咄嗟の攻撃、加えて跳躍状態でまともに体を動かせなかった流子は片太刀バサミを盾替わりに攻撃をしのぐ。
結果は無傷に終わったものの、せりあがる槍に弾かれ、流子は後方へと飛び退る。
状況は振り出しに戻る、が、防御行動がほぼ封じられた分だけ戦況は流子へと傾いた。


976 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:30:19 LqswMvUM0

「いいのをもらっちゃったわね」

肩口から流れる血が付着した指をペロリと舐め、その口角を釣り上げる。
自分が不利な状況に置かれたというのに、モリガンの顔に浮かんでいたのは喜色の笑み。

「なに喜んでんだよ、ひょっとして変態か?」
「あら、別にマゾヒストじゃないわよ。スリルがあった方がより燃えるだけ。
緑の剣士さんも、お髭のチャーミングなお爺ちゃんも楽しめたけど、貴女もいいわ。
とってもスリリングで楽しめそう」

緑の剣士という単語に、昼にやりあったもう一人のセイバーを流子は連想する。
あのサーヴァントと戦ったのかと、口から出そうになるが、それを飲み込む。
今の彼女の目的は邪魔をする眼前のサーヴァントを撃破し、浚われた人吉の元に急行すること。
敵と呑気におしゃべりをしている暇はない。

「へっ! マゾじゃなくてもな、そういうのは変態って言うんだよ!」

勝機は十分、しかし相手に撤退する気配はなく、むしろこの状況を楽しんでいる事が流子を苛立たせる。
掛け声と共にモリガンの手から放たれた牽制のソウルフィストを切り裂きながら急接近する。

袈裟がけに振り下ろす。
サイドステップで回避される。
横薙ぎに一閃。
上空に回避される。
着地際を狙う。
モリガンの翼がジェットスラスターへと姿を変え距離を離される。
無数の槍と化して突き出される翼を切り払い、カウンター。
切り落とされた槍の先端が蝙蝠へと姿を変え、流子の視界を封じる間に距離を開けられる。
モリガンの闘い方が受けから避けへと代わり、思うように致命打を与える隙が作れない。

焦りが流子の心に這いよる。
一分一秒さえも無駄にできない状況が焦りに拍車をかける。
こちらの気も知らずに、愉しげに戦うモリガンに苛立ちが増す。
攻撃のペースが上がる。
一撃、それが決まれば終わる。
より速く、片太刀バサミを振り抜く。
より強く、片太刀バサミを打ち放つ。
それは正に当たれば必殺と呼べる一撃。
だが、焦りと苛立ちに心を蝕まれ、一撃を当てることに傾注し始めた流子は気づかない。
その一撃が放たれるごとに、速度と威力を代償として攻撃の隙が増えて来ている事に。
勢いあまった横一閃が大きく空を切り、流子が気づく頃には既に手遅れだった。


977 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:31:25 LqswMvUM0
「浚われた坊やが心配なんでしょうけれど――」

獲物を狩る雌豹のようにその目を光らせたモリガンが、滑り込む様に流子の懐に入り込む。
流子が反応するよりも早く、身動きが取れない様に両の腕ごと流子の肢体を抱きしめるように絡めとる。

「さっきも言ったわよ、ダンスの相手を無視しちゃダ・メ」

今眼前で戦っている自身でなく、浚われた少年の救出へと流子の意識が向いてきていたのをモリガンは見抜いていた。
抱き留めた流子の耳元に艶っぽい囁きが響く。
女性同士だというのに、ドキリとした感情に一瞬だけ背筋が震え、思考が停止する。
刹那、強力なGが流子の体を打った。

『まずいぞ流子!持ち上げられて空を飛んでいる!』

状況の把握できない流子に代わって鮮血が今の彼女の状況を伝えられる。
持ち上げられた。
宙に浮かされた。
では次に待っているものは?
重力の法則に従って地面へと落ちる、否、落とされる事だ。
かつての記憶の中から、ある男との戦いで不覚をとり、頭から地面に勢いよくめり込んだ思い出がフラッシュバックする。
ぐるりと景色が反転し、地面と空が逆になる。
それが意味するのは落下。
受け身を取ろうにも流子を抱きしめたまま急降下を開始したモリガンのせいで腕も満足に動かせない。
文字通り手も足も出ない絶対絶命の状態。

だが、流子は尚も抗う。
手が出なくても、足が出なくても、まだ出せるものがある。
グっと自身の頭を振りかぶった。

「墜ちろッ!」
「墜ち――るかぁ!」

流子の頭突きがモリガンの額を捉える。
不意に受けた衝撃と痛みに流子を捉えていた腕の拘束が緩む。
強引に腕を振りほどく、が、受け身を取るには間に合わない。
もんどりうって地面を転がるが頭から落下する事はどうにか防ぐ。

落下の衝撃で軽い脳震盪を起こし、ふらつく体を懸命に立ち上がらせる流子。
その視界に映ったのは羽根をジェットスラスターに変えてこちら目がけて空を駆けるモリガンの姿。
不味い。
咄嗟に片太刀バサミを前方に構え防御体制を取る流子。
しかしその横をモリガンが通りすぎ、すれ違いざま、スラスターの轟音と衝撃の煽りを受けて流子の体がそこに押し留められる。
何が起こったのか、視線を後方へと向けた流子が見たものは下半身を蝙蝠の羽根でドリルのように変形させたモリガンの姿。
無防備な背中にそれを食らえばどうなるかは言うまでもない。
急接近するモリガンに対応するには致命的なまでに時間が足りない。
まさに絶体絶命の危機。
その時、黒い流星がモリガンの肩、流子が傷をつけた箇所に着弾した。
不意の衝撃と傷口への攻撃にモリガンの顔が歪む。
攻撃を中断するまでは行かなかったが、一瞬狙いがぶれ攻撃の手が止まる。


978 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:32:41 LqswMvUM0

「流子ォ!!」

アゲハの声が響く。
流子は今の攻撃がアゲハによるものだと理解する。
作り上げられた一瞬の猶予。
回避する程の余裕ではないが、命運を繋ぎ止める為に全神経を動員して体を動かす。
モリガンのドリルは素肌が露出した部分ではなく、鮮血に守られた部分へと当たる。
ギャリギャリと耳障りな音が響き、鮮血越しに断続的に襲い掛かる衝撃が流子の内臓を容赦なく揺さぶる。
衝撃を殺しきれずたまらずに流子が地を転がる。だが、鮮血に守られたお蔭で致命傷は防がれた。

『流子!』
「大、丈夫だ、そこまで酷くはねぇ。それより……グッ!?」

土と擦り傷に塗れながらも立ち上がろうとした流子が掴みあげられる。
その細腕のどこにそんな力があるのか、モリガンは片腕で流子の首を掴み持ち上げていた。
空気の通りを阻害され顔を歪めて流子がもがく。

「テ、メッ……!」
「愉しい一時をありがとうね、お嬢ちゃん。でも、そろそろ終わりにしましょうか」

サディスティックな笑顔を浮かべながらモリガンはその羽根を矢の形に変え、流子の柔らかな腹部へと添える。
黒い流星が再度モリガン目がけ放たれるが、形を変えていない方の羽根が展開し再度の傷口への着弾を防ぐ。

「それじゃあ、サ・ヨ・ナ・ラ」
「流子ォォォォォォォォォォ!!!」

射出された矢が流子を貫き、背後にあった街路樹へと縫いとめる。
ごぽりと流子の口と腹部から血が噴出し、衝突の衝撃を受けハラハラと木の葉が舞う。
身じろぎする事もなく、流子の両腕がだらんと力なく垂れる。
ガラン、と片太刀バサミが地面に転がる音とアゲハの絶叫が響いた。

「さて、と。メインディッシュといきましょうか」

クルリと、モリガンがアゲハの方を向いた。
自分がまるで肉食動物に狙われた草食動物のような錯覚にアゲハは襲われる。
暴王の月を放つ。
だが、強力なPSIであっても、対魔力のスキルを持つモリガンには効果はない。
背中から生える羽根であるものは防がれ、あるものはいなされる。

「そんなに怖がらなくていいのよ坊や。痛くなんてしないわ、むしろとっても気持ちいいのよ。さあ、私と一つになりましょう?」
「う、あ……」

モリガンの媚態が近づく度に、アゲハに抗いがたい情欲が再び燃え上がる。
だが、暴走をしかける本能を理性が留める。
この戦いの発端は元はといえばキャスターの能力で相手を誤認した自分にある。
言い換えれば流子がこんな目にあった原因はアゲハ自身なのだ。
いいように操られ、仲間を窮地に追いやった自分が許せない。
その自責の念がアゲハを踏みとどまらせている。
キッ、とモリガンを睨みつけ抗戦の意志を露わにする。

「……さっきは私の魅力に呑まれかけてたのに、面白い坊や。いいわその瞳、ゾクゾクしちゃう」

モリガンの顔に浮かんだ喜色が更に強まる。
自身の魅了に靡かない程の強い意思を持った魂。
紛れもなく当たりの部類にあたるものだとモリガンは確信する。
対して追い込まれたアゲハはこの状況におかれてもなお、心は折れてなどいなかった。
ここから助かる見込みは万か億か兆に一つか。
だが諦めればその見込みすら0になる。
複数の暴王の月をアゲハを軸に回転させる。
どこまで有効かはわからないが、微かでも時間を稼ぐためにアゲハは足掻く。
その足掻きすら好ましいものとして、モリガンが一歩一歩進んでいく。

その時、蒼い炎がモリガン目掛けて飛来した。
モリガンの足元に着弾して土煙を巻き起こす攻撃は、モリガンには有効打はあたえられなくとも、警戒させ、アゲハから距離を遠ざける事には成功した。

「なにやら事情はわからんが――」

アゲハ達が乗ってきた車の方角から凛とした声が響く。

「悪いが今、そやつとは手を組んでいる身だ。手を出す真似は控えてもらおうか」

アッシュフォード学園の制服に身を包んだ死神・朽木ルキアの姿があった。


979 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:33:21 LqswMvUM0

時は少し遡る。
ズキリ、と痛む頭に顔をしかめながらルキアの意識が覚醒した。
何故、気絶していたのか記憶を辿る。
キャスターとの同盟破棄、麦わらのサーヴァントの乱入、混乱する状況の中、キャスターの口角がつり上がり――。

「あの女狐にしてやられたという訳か」

どのような指令を送られたかはわからないが、気絶させられたということは、そうせざるを得ないだけの事をさせられたのだと結論づける。
周囲を見回すが、慶次の姿が見当たらない。
令呪を見ると消えてはいない。どうやら脱落していないらしい事は確認できた。
が、一画分の令呪が消えていた。操られ何らかの指令をさせられた事は明白だった。
慌てて念話での会話を試みる

「ランサー、聞こえるか?」

返事がない。
まさか、自身が操られている時に慶次が念話すらも出来ない状態にさせられたのではないかと、焦燥感が沸き上がる。

「おい!ランサー!聞こえぬのかランサー!返事をしろ!」
「……ん? おお! ルキアか、大丈夫か?」

何度か呼び掛けると起き抜けのような調子の慶次の声が響く。
気になる事はあるが、健在のようであることを確認し、安堵のため息を吐く。

「『大丈夫か』はこっちの台詞だランサー。
すまん、迷惑をかけたようだが、今の状況はどうなっている?」
「キャスターが麦わらのマスターを浚って逃げた。
俺達はセイバーと組んでキャスターを追っていたところだ」

闖入者を巻き込んで事態は更にややこしくなってきている事に、先程までとは別の意味で頭が痛くなってくる。
加えて、その原因の一つが自分の不覚であることが、責任感の強い彼女に重くのしかかる。

「で、麦わらのマスターにも仲間がいたみたいでね、そいつらにキャスターを任せて、俺はチラチラとこっちに探りを入れてた爺さん、キャスターって呼ばれてたか。
そいつを相手にしてたんだが……、すまん。不覚をとった」
「負傷したのか!?」

流子との戦いで、慶次の実力の高さは認識していた。
だからこそ、その慶次がよりにもよってキャスターに不覚を取ったという事実に驚愕した。

「足をやられた。今治療してたんだが、まだ治ってねえなこりゃ。そっちに駆けつけるのは時間がかかりそうだ。
それよりそっちはどうなってる?」

慶次の言を受けてルキアが車の窓から周囲を確認する。
橋から少し先に対峙する人影が見えた。


980 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:33:57 LqswMvUM0

「セイバーと夜科アゲハが破廉恥な衣装の女と対峙している。
キャスターや麦わらのサーヴァント、お前の言う老人のキャスターは見えんな」
「人吉の姿は?」
「いや、見当たらんな」
「逃げてるか隠れてくれてりゃいいんだが、浚われた可能性もありそうだな。
見事にしてやられたと考えた方が良さそうだ」

その言にルキアの顔が陰る。
キャスターをあの場で倒せていれば、ここまでの事態にはならずに済んでいた。
無意識の内に、ギュッと手を強く握る。

「すまん。私の落ち度だ」
「別にアンタのせいじゃないだろ、それよりもこれからどうするかだ。流子達はどうなってる?」
「先ほどは向かい合っていたが……、あ、夜科が殴り飛ばされた」

ルキアの視界にふらふらと前に出ようとしたアゲハが急停止したこと、そしてそれに気付いた流子が勢いよくアゲハを殴り飛ばしている光景が映る。

「おいおい、仲間割れか?」
「わからん、いや、仲間割れではないな、アゲハが後ろに下がった、戦闘が始まるようだ」
「そうか、悪いが傷が治るまでまだ時間がかかる。今は見に徹してもらっていてもいいかい?」
「……そうだな、今の私が出ても何ができるかという話だしな」
「そんなに腐るなよ、それより戦いをよく見ておいてくれ、今後の足しになる」
「了解した」

そして始まる剣士と弓兵の戦い。
飛翔する魔女と荒々しい剣姫による攻撃の応酬。
そのバランスが、僅かに傾いた。

「セイバーが押し始めたな」
「おっ、やるねえ」
「ああ、これなら私たちが手を貸すことも……、いや、まずいな」
「なにかあったのか?」
「セイバーの攻撃が雑になり始めた。恐らくだが、勝ちを急いでいる」
「それは……確かにまずいな」

流子が攻撃し、モリガンが避ける。
端から見れば流子が一方的に攻撃を加えているように見えるが、一太刀振るう度にその動きが大雑把になっている。
ついに、流子が致命的な隙を晒し、モリガンに抱きすくめられて宙を舞った。
落下の直前に流子が頭突きを放った事で地面への衝突は避けられたものの、地面を転がる流子に対しモリガンが追撃を仕掛ける。
その時、戦いを見守っていたアゲハが黒い球体を生み出し、モリガンへと攻撃を放った。
着弾、僅かな隙を作り上げるも攻撃を阻害するまでには至らない。
追撃を受けて倒れ伏す流子をモリガンが掴みあげた。
トドメを刺すつもりだと、ルキアは直感的に悟った。

「いかん!このままではセイバー達が……!」
「おいおい!アンタが行ってどうなる、みすみす殺されに行くようなもんだぞ!?」

逸って飛び出そうとしたルキアの気配悟り、慶次が止める。

「しかし、あやつらとは協力関係にあるのだろう!?
このまま見捨てる訳には……!」

制止を振り切ろうとしたルキアが見たのは、変形した翼に打ち付けられ、街路樹へと縫い止められた流子の姿だった。
流子を仕留めたモリガンがアゲハへと狙いを定める。
抵抗を試みるアゲハだが、放った攻撃は悉くが無効化され追い詰められていく。
ルキアはたまらず車の扉を開けて駆け出していた。


981 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:35:02 LqswMvUM0
そして現在に至る。

「まぁったく、どうして考えなしに死地に飛び込むかねぇ」

ルキアの脳内に呆れた調子の慶次の声が響く。
失態の上にこの自殺行為では愛想をつかされても仕方がない。
それでも、一時的なものとはいえ、仲間を見殺しにする選択肢は選べなかった。

「すまぬ、叱責ならばあとでいくらでも受ける。だが……」
「だけどまあ、それがいい、ってね。そういうの俺は好きだぜ?」

だからこそ、どこか嬉しそうな慶次の声は予想していないものだった。
思わず、謝罪の念話を中断する。

「とにかく時間を稼ぎなマスター、それまでになんとか戦えるくらいには回復してみせる。
ただ、そこに俺を呼び出すなら令呪が必要になる。それは構わないな?」
「構わん、必要なことだ」
「よく言った。それじゃあ俺が間に合うまで、生き延びててくれよ?」

そう言って慶次が念話を終わらせる。恐らくは回復に専念し始めたという事だろう。
問題は、マスター二人で慶次を呼び出せるようになるまでどうやって時間を稼ぐかだ。

「あら、随分とゆっくりとした到着ね。
キャスターのお嬢ちゃんはどこかに逃げちゃったし、坊やのお友達は人形を連れたお嬢ちゃんに浚われちゃったわよ?」

新たな乱入者を興味深げに眺めながらモリガンがルキアに語りかける。
慶次の想定していた悪い状況通りの結果に、ギリ、と奥歯を噛み締める。

「それで? お嬢ちゃんもマスターみたいだけど、サーヴァントはどこかしら?
わざわざマスターが姿を見せたって事は近くにいるんでしょう?」

そのモリガンの発言に、ルキアはしめた。と光明を見出だす。

「それをお前に言う必要はあるか?
既に私のサーヴァントはお前に照準を定めている。
ここは退け、出なければ痛い目を見ることになる」

この場に慶次がいない事を利用して、隠れてお前を狙っているとブラフを仕掛ける。
相手方のクラスに確証はない、が此度の聖杯戦争では既にセイバーとキャスターが2人存在していた事から、相手がどのクラスであろうとも言い逃れは可能だ。

「……そうか、あいつが間に合ってくれたか」

ランサーの存在を知っているアゲハはルキアの意図を察し、そのブラフに乗る。
別れてから音沙汰がないのは気になるが、ランサーが駆けつけるまでの時間稼ぎである、というところまでは検討がついた。
その考えを肯定するかのようにルキアが口許に笑みを浮かべて頷く。
運に任せた一つの賭けに、二人のマスターが命運を託す。

「ふぅん」

対するモリガンはこの状況にあって、思案するかのように口許に人差し指を添える。
まるで値踏みするかのようにアゲハとルキアを見つめ、沈黙が周囲を支配する。
バクバクと、ルキアとアゲハは自身の鼓動が強く脈打っているのを聞く。
一分一秒でも多く時間を稼げなければ、例え慶次を呼び出せたとしても状況は変わらない。

仮初の拮抗を破ったのはモリガンだった。
口角が上がりその手に魔力が宿る。

「じゃあ、試してみましょうか」

ルキアに向かって魔力を纏った蝙蝠が放たれる。
しかし、それはルキアの放った炎とアゲハの暴王の月によって相殺される。
二人は追撃を警戒するがモリガンはその場から微動だにすらしなかった。

「わざわざ動かないであげたのに攻撃してこないなんて、あなた、余程サーヴァントに嫌われてるみたいね」

悪戯っぽく笑いながらモリガンが告げる。
無論、本気でそう思っている訳がないことはアゲハ達も十分に理解している。
つまるところブラフだと見破られてしまったという事だ

「時間があればあなたのサーヴァントを待っててあげても良かったんだけど、流石にライダーの坊やにタダノを任せっぱなしにするのは悪いし……覚悟はいいかしら?」

モリガンの目に殺意が宿る。
このままでは全滅は必至。
ルキアが令呪を使用する決意をする。
その時であった。

「オォォオオォオオオォオオオォオオオ!!」

獅子の如き雄叫びが、流子が縫いとめられていた筈の街路樹から響いた。


982 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:36:26 LqswMvUM0
『りゅ……! ……こ……!』

昏い微睡の中、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる。
とても馴染みのある相棒の声。

『流子!しっかりしろ、流子!』
(せん、けつ……?)

沈んでいた意識が覚醒する。
意識が途切れる前に覚えているのは、サディスティックな笑顔を浮かべるサーヴァントの女と吹き飛ばされた自分。
そして一人、残され対峙する羽目になったアゲハの姿

(そうだ!アゲハはっ……ぐう!)

身体を動かそうとして腹部を中心に激痛が走る。
何事かと腹部を見れば、そこには一本の大きな矢が深々と貫通し、後ろにある街路樹に突き刺さっていた。
ああ、そういえばこれを撃ち込まれたのだったか、と頭の片隅で思い出す。
霞む瞳で周囲を見渡す、捉えたのはアゲハとルキア、そして自分が相手をしていたサーヴァント。
敵サーヴァントに対峙するはマスターが二人のみ。
このままでは殺されてしまう、そう思い体を動かそうとするも、杭のごとく撃ち込まれた矢がそれを許さない。

(おい、やめろよ。そいつらに手を出すな、まだアタシ達にはやらなきゃいけない事があるんだ)

浚われた善吉を助けなければならない。
キャスターに落とし前をつけなければならない。
自分を鮮血と再び出会わせてくれた男を、天戯弥勒の元に連れて行ってやらねばならない。
震える手が矢を掴む。
引き抜こうとする度に激痛が走る。
それでも、引き抜くことを諦めはしない。

「グッ、アァ……!」

痛む体に、悲鳴を上げる心に負けぬ為に、自然と口から声が絞り出る。

「オォォオオォオオオォオオオォオオオ!!」

痛々しくも猛々しい雄叫びがあがるのと、流子の体から矢が引きずり出されたのはほぼ同時だった。

その場にいた3人の視線が流子へと向けられる。
ふらつく体で地に落ちた片太刀バサミを手にし構える。
ペッと口に溜まった血を吐き出し、戦意の衰えない瞳が自分の戦うべき相手を捉える。

「流子、お前……」
「アゲハ、魔力をくれ。もう無様は晒さねえから」

その力強い言葉と覚悟に、アゲハは二の句が告げられなくなる。
お互いの視線がぶつかる、その瞳の中にある意地が、誇りが、アゲハにも痛い程に感じられた。
深く、一つ、呼吸をする。
ニッ、とアゲハの顔に力強い笑みが浮かぶ。

「いいぜ流子。俺達の命はお前に預けた!」

その返事に待ってましたとばかりに流子が笑みを浮かべる。
それに対してモリガンは何のアクションもしない。
いや、明らかに流子が行う事を待っていた。
その瞳には紛れもない好奇の色を湛えている。

「本当に退屈させないのね、あなた達って。いいわ、お姉さんに見せてみなさいな」
「余裕こきやがって、ほえ面かいても知らねえからな!」

流子の体に魔力が満ちる。
巻き起こる魔力の奔流が流子の、一つの世界を救った英雄の真なる姿を作り上げる。

「鮮血――更衣!!」

轟、と烈風が巻き起こる。
腹部に開いていた痛々しい傷が瞬時に再生する。
学生服を思わせる濃紺から一転、燃え上がるような赤い装束が体を包む
その身に収まりきらないほどの膨大なエネルギーが体から迸しる。
両の手にいつの間にかもう一振り増えたのハサミを手にし、纏流子が立っていた。

流子が駆ける。
否、流子が飛ぶ。
牽制で放たれた光る蝙蝠の弾丸を意にも介さずに一閃し、引き絞られた弓矢の様に、ただただ一直線にモリガンへと飛翔する。
羽をジェットスラスターに変え距離を取ろうとするモリガンだがその判断は何手も遅い。
既にそこは流子の距離、二振りの刃から逃れられぬ決死の間合い。
後はこのままその両腕を振るうだけで勝負は決する。


983 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:37:38 LqswMvUM0

「闇より出でし幻影の半身(アストラルヴィジョン)――!!」

モリガンがいつになく真剣な声で切り札を切る。
流子の背後に魔力の気配。
しなやかな腕が伸び、流子の体を羽交い絞めにし、動きを強制的に止める。
だが、その攻撃に流子は迅速に対応する。
頭を勢い良く後ろに振る。
顔らしき箇所に当たった硬い感触と衝撃、緩んだ拘束を強引に振りほどき、振り向きざまに一閃。
胴体を横に両断され、モリガンと瓜二つの幻影が四散する。
バサリ、と遠くから響く羽音。
上空を飛翔しながらモリガンが次第に距離を離していく

「びっくりしたわ、タダノが気絶しちゃったから宝具を使う気はなかったのに、咄嗟に使う羽目になるなんて」
「テメェ、逃げるのか!」

流子が吼える。
追撃はできる、が、先程の宝具でまた妨害される可能性がある。
自分が狙わられるならまだしも、アゲハ達が狙われたら。
その可能性を考慮してしまい、動くことができない。

「違うわ、タダノを攻撃したのを許してあげるの。
あなたの宝具は見せてもらったし、私も楽しめたし、それでチャラにしてあげる」

優しいでしょう? とからかう調子で続けながら、モリガンは戦線からの離脱を開始する。

「そうそう、自己紹介がまだだったわね。私の名前はアーチャー。
この決着は今度つけましょう流子ちゃん。また会うのを楽しみにしているわ」

一方的な自己紹介を終えると同時に、蝙蝠の群れがモリガンの姿を隠していく。
高笑いを響かせ、モリガンはその姿を消す。
流子達はそれをただ眺める事しかできなかった。

「……チッ、言うだけ言って逃げやがった」

モリガンが消えるのを見届けて、流子が宝具を解除する。
何から何までいけすかない相手だった。
そして、次こそはあの余裕ぶったすまし顔を叩き潰すと心に誓う。
踵を返し視線を移すと、丁度アゲハ達が駆けてくるところだった。

「……ワリィなアゲハ。格好つけた事いっておいて、無様なところ見せちまった」

開口一番、バツが悪そうに流子が俯く。
"下がっていろ""こっちの仕事"と見栄を切った手前、不覚をとりアゲハを危険な目に合わせてしまった事に自責の念が胸中を渦巻く。

アゲハは今までこの勝ち気な少女が見せたことのなかったしおらしい一面に一瞬面食らう。
どんな言葉をかけるべきか。
言葉が詰まる、頭を回転させる。
ややあして言うべき言葉を思いつく。


984 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:38:06 LqswMvUM0

「もう無様は晒さねえんだろ? ならそれでいいじゃねえか」

プイ、とそっぽを向いてできるだけ素っ気なくそう告げる。
ガラじゃない。
しゅんとする流子も、それを慰める自分もお互いに。
そんな気恥ずかしさが、アゲハの頬をほんのり朱に染める。

「……ありがとよ」

そんな意図を読み取ったのか、礼を述べて顔をあげた流子の顔に、弱気な色は欠片たりとも見られなかった。
それに答えるようにアゲハも笑みを浮かべる。
その時、咳払いが響いた。

「あー、すまんが詳細な状況を説明して貰えないか?
ランサーのマスター、朽木ルキアだ。学園で気絶させられてからそこの橋にいたる経緯まではランサーに大まかだが聞かされた。
だがその後どうなったかまでは詳しく知らんので教えてほしい」

咳払いをした主、ルキアが二人に尋ねる。

「っと、悪いな。俺は夜科アゲハ、こいつのマスターだ。取り合えずそっちのランサーと別れた後からでいいな?」

アゲハの口から聞かされたのは彼らがアーチャーと去り際に名乗ったサーヴァントとの顛末。
ライダー・アーチャー陣営とともにキャスターを追い詰めたものの、対象をキャスターに誤認させられたアゲハの攻撃がアーチャーのマスターに直撃。
更に人形を連れた少女がアーチャーのマスターの名を呼んだかと思えばそのマスター諸とも全員に攻撃を行い人吉を浚っていった事だった。

「人形、さっきランサーが言っていたキャスターの特徴と合致するな」
「もう一人のキャスターが人吉を浚ったって何のために?」
「そこまではわからん、だがろくでもない事は確かであろうな」
「そういや慶次の奴はどこに行ったんだ」
「キャスターの召喚した人形達との戦闘で不覚をとった。足を負傷したらしく今は治療に専念してもらっている」

慶次負傷の報に流子の顔が驚愕に見開かれる。
あの男がキャスターが呼び出した人形たかだか2体に苦戦するなど信じがたい事だった。

「とにかく、一刻も速く人吉を探さないと手遅れになるな」
「そうは言っても場所に心当たりはあるのか、その戦いからはかなり時間が経過してしまっているのだぞ」

夕方だった空は既にその9割が青黒く染まり、星々が煌めき出している。
慶次が橋へと向かった事から橋よりも東側にいるということくらいしかわからない現状、人吉と人形遣いのキャスターの現在値の特定は不可能だ。

「少なくとも橋からこっちには渡ってきてねえ、ならまだ探し様はある筈だ」

流子に車に乗るよう促し、アゲハもまた助手席に乗り込む。

「俺達は善吉を探す、流石になり行きで同行してくれたあんたらにまで着いてこいとは言わねえ、でも――」
「皆まで言うな。女狐のキャスターも気になるが、かといってこちらのキャスターも放置するには危ない匂いがする。
私はランサーと合流してから独自に調べてみる」

そう言って、ルキアは懐からメモ帳をとりだし、何事かを書いてアゲハに手渡した。


985 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:39:46 LqswMvUM0
「私の連絡先だ。何か分かれば連絡する」
「ありがとな、ならこれが俺の連絡先だ。こっちも何かあれば連絡する」

お互いに連絡先を交わしあい、視線を向ける。
いずれ敵対する身ではあれども、捨て置けない存在の為、夜科アゲハと朽木ルキアの同盟が今ここに成立した。

「じゃあまた後でな! 慶次の奴に『次は不覚なんて取るんじゃねー』って伝えておいてくれ」
「……ああ、しかと伝えておこう」

エンジンの廃棄音が鳴り響く。
どこからかパトカーのサイレンの音が聞こえ、ざわざわと人の声と気配が集まってくる。
タダノからの連絡が途絶えた事やここで起こった騒動を聞きつけ、動き出した警察も直に駆けつけるだろう。
それに気付いたアゲハ達は慌てて車を出し、ルキアもその場所を後にする。
大きな祭の起こった場所に当事者達はもう誰もいない。

【C-6/橋近辺、車内/一日目・夜】

【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.善吉と人形使いのキャスターを見つけ出す
2.キャスター(食蜂)も気にかかるが、善吉を急いで助けに行きたい
[備考]
※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています

【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(大)疲労(大)
[装備]片太刀バサミ、鮮血(通常状態)
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.人吉と人形使いのキャスターを見つけ出す
2.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり
3.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。
※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています


986 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:40:42 LqswMvUM0

【C-5/橋近辺/一日目・夜】

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]魔力消費(微量)
[令呪]残り二画
[装備]アッシュフォード学園の制服
[道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない
1.ランサーと合流し、人形使いのキャスターと善吉を捜索する
2.キャスター(食蜂)に何を命令されたのか気になる。早めに対処したい
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)と一時的に同盟を結びました。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました。
※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。
 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。
※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。
※キャスター(食蜂)から『命令に従うよう操られています』
 現在は正常ですが対峙した場合は再度操られる可能性が高いです。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています

【共通備考】
※夕方から現在までの騒ぎを受けて、C-5の橋近辺に野次馬と警察が集まってきています


【B-5/北東の川辺/一日目・夜】

【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】
[状態]魔力消費(小)右脚へのダメージ(中)、『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地(ゆめごこち)』発動中
[装備]朱槍
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:この祭りを楽しむ
1.回復に専念し、マスターの指示を待つ。
2.マスターが用済みとなって消される前に勝負を決める。
[備考]
※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を破棄しました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。
※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。
※人吉善吉を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※キャスターとの同盟を破棄する強い決意を持っています。
※キャスター(食蜂)を装備と服装から近現代の英霊と推察しています。
※読心の危険があるため、キャスター(食蜂)対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。
※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。
 エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。
※令呪の発動『キャスターの命令を聞くこと』
※キャスター(フェイスレス)、カピタン、ディアマンティーナと交戦しました。


987 : Cat Fight!!! ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:41:45 LqswMvUM0
「――ああ、楽しかった」

先程の場所からそう遠くない川縁を歩く影が一つ。
アーチャーのサーヴァント、モリガン・アーンスランドである。
服装をタンクトップとホットパンツ姿に変え、悠々と病院に向けて歩みを進める。

鮮血更衣を纏った流子と手合わせをしてモリガンには一つの確信があった。
あれと相対するには全力で望む必要がある。
タダノが気絶し、宝具を満足に使えない今の状況では、勝つことは不可能であると。

(そう考えると、あのキャスターはつくづく余計な真似をしてくれた事になるわね)

その瞳にキャスターに対する明確な敵意が宿る。
タダノに重傷を負わせただけでなく、全力で楽しむ機会まで奪われた。
タダノが回復するまでは当面戦闘は控えねばなるまい。
モリガンにとっては楽しみの一つを奪われた状態だ。

加えて、キャスターが他人のマスターを操れるという危険性。
操られたマスターが自害を命じるだけで、どれだけ屈強なサーヴァントであっても脱落は免れない。
今戦った流子と呼ばれていたサーヴァント、自分が戦ったサーヴァント達すらも簡単に殺害せしめる異能を持っている。

(タダノを攻撃させた事といい、私の楽しみを奪うかもしれない悪い子にはお仕置きが必要よね?)

この聖杯戦争においてモリガンが初めて明確な敵意を抱く。
だがそれは義憤の感情やこの聖杯戦争を勝ち抜く上での脅威を感じたからではない。
彼女の抱く敵意はそんな複雑なものではなく単純なもの。
目の前にあるご馳走を味わう前に台無しにされそうになったとあれば、その相手をまず排除しにかかるのは自然の摂理。
生き物としての本能がキャスター達を最優先で排除すべき敵として認定した。
モリガンの影からキイキイと鳴き声をあげながら無数の蝙蝠が湧き出す。

「キャスターの顔は覚えてるわね? そう遠くにはいってないだろうから最優先で見つけ出しなさい」

暗がりに溶け込むように蝙蝠達が飛翔し街に散っていく。
夜が来る。
ここからは華々しい英雄達の時間ではなく、暗い夜を跋扈する闇の住人達の時間だ。
月夜を映すモリガンの瞳が妖しく光る。
狩るべき獲物を見出して夜の住人は闇夜に消えた。

【C-6/川辺/一日目・夜】

【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(中)
[装備]タンクトップ、ホットパンツ
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.タダノ達がいる筈の病院に向かう
2.キャスター(食蜂)を最優先で始末する
3.タダノが少し心配だが、ライダー(ルフィ)に任せる
[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※現在の外見はポイズン@ファイナルファイトシリーズ(ストリートファイターシリーズ)に近いです。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※C-4の北東部から使い魔の蝙蝠を放ち、バーサーカー(一方通行)を探させています。
 タダノから指示を受けたため、他の用途に使うつもりは今のところありません。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※学園から拝借(事後承諾)した車は近くに止めてあります。
※アゲハの攻撃はキャスター(食蜂)が何らかの作用をしたものと察しています。
※セイバー(纏流子)と交戦しました。宝具の情報と真名を得ています。
※C-6を中心に使い魔の蝙蝠を放ち、キャスター(食蜂)を捜索しています


988 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 20:42:34 LqswMvUM0
以上で投下を終了いたします。
指摘等ありましたらよろしくお願い致します。


989 : 名無しさん :2015/06/07(日) 21:08:58 ma/PXCN60
投下乙です!
うおお、モリガンつえー!そして艶かしい!サキュバスとしての彼女、ヴァンパイア勢としての彼女の魅力たっぷりな戦闘でした!
そして流子とアゲハの関係もいいなあ…熱いし青い、アゲハが雨宮の顔を浮かべたのにもグッと来ました
ルキアの助太刀、ブラフからの更衣…奥の手の開示はやはり燃えますね!
サイレン聖杯の面白さはこの複数人数の交錯にあるんだなぁと
でもやはりモリガンが一番かっこよかった、奔放に強く美しく戦場を駆ける彼女の今後も応援していきたいです


990 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/07(日) 21:09:31 /a93n67w0
【新約 魔科学共存理論、世界を変える力が、その手にあると囁く】
いやぁ、すごい(小並感)言葉が口からだだ漏れしてます。
この聖杯戦争は最近トキワ荘で建っている聖杯と違って参加者発表式OPがありません。
つまり、明確な世界観だったりスタンスだったりは最初から証明していないんです。
なのに数少ない情報(参加者目線)+各作品の単語や設定を絡ませてくるのは圧巻です。
前から思っていたのですが私が示す前に禁人種の登場やPSIの設定など色々な方に踏み込んでもらえて大変嬉しい限りです。
それぞれのサーヴァントの目線から語れられる今回の聖杯戦争。
知り合いのライダーや能力を刺激するPSI、その先に在ると推測される聖杯と呼ばれているモノ。
この物語に筋書きは存在しない故に先が楽しみであり書く側も大変喜んでいます。

【Cat Fight!!!】
改めて考えると神衣の露出って中々アレですよね。コイツラ人のこと言えない的な。
魅了されても雨宮さんを思い踏み止まるアゲハ、覚悟を持っている青年は強いですね。
強者たる余裕に関してはモリガンの方が上手で流子が貫かれた時の絶望感と言ったら……。
ルキアが来てくれなかったらと考えると聖杯戦争は恐ろしいモノです。
そして衣更の登場、最後の切り札らしく消費量は絶大ですがその分まさに最強の宝具。
キルアと慶次、アゲハと流子の安定した主従は人吉に辿り着けそうな安心感があります。でも彼は……。
そして狙われるみさきち。ステータスは最弱ですが今は彼女を中心に学生組が動いている状況は最初だと予想出来てませんでした。

改めて、お二人共投下お疲れ様でした。

それで、次スレ用意します。(明日以降)
テンプレは二次二次先輩をリスペクトしようと思います。


991 : ◆lb.YEGOV.. :2015/06/07(日) 21:19:26 LqswMvUM0
感想ありがとうございます!

それと一点状態表に記載ミスがあったので以下に修正します

【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(中) 、右肩に裂傷
[装備]タンクトップ、ホットパンツ
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.タダノ達がいる筈の病院に向かう
2.キャスター(食蜂)を最優先で始末する
3.タダノが少し心配だが、ライダー(ルフィ)に任せる
[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※現在の外見はポイズン@ファイナルファイトシリーズ(ストリートファイターシリーズ)に近いです。
※ライダー(ニューゲート)、刑兆と交戦しました。(名前を知りません)
※C-4の北東部から使い魔の蝙蝠を放ち、バーサーカー(一方通行)を探させています。
 タダノから指示を受けたため、他の用途に使うつもりは今のところありません。
※まどか&ライダー(ルフィ)と同盟を結ぶました。
 自分たちの能力の一部、連絡先、学生マスターと交戦したことなどの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
※人吉、セイバー(纒流子)、ルキア、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※学園から拝借(事後承諾)した車は近くに止めてあります。
※アゲハの攻撃はキャスター(食蜂)が何らかの作用をしたものと察しています。
※セイバー(纏流子)と交戦しました。宝具の情報と真名を得ています。
※C-6を中心に使い魔の蝙蝠を放ち、キャスター(食蜂)を捜索しています


992 : 名無しさん :2015/06/08(月) 21:59:30 dIXgNOLc0
投下来てた、乙です!
タイトルからよこしまな期待をした自分を恥じます
いや、エロいけど熱くてカッコいい戦いでした
流子と鮮血が一緒に戦ってることだけで来るものがあります
そして互いに不覚を取っても叱咤し発破をかけあうアゲハと流子はホントにいいコンビだ
ルキア慶次組との同盟は何と言うか正統派な組み合わせで、すごく頼もしいものがあります

しかし、今回は特にモリガン回って感じでした!
この不敵さ、この自由さ、この艶めかしさ、行動理念も徹底して彼女らしくて素敵でした
技の掛け声がいちいち脳内再生されて楽しかったです


993 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/08(月) 23:35:39 KzERi.L20
次スレを建てれました。
みなさまありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1433773709/

残りは感想で埋めてもらえると大変嬉しいです……w


994 : 名無しさん :2015/06/09(火) 06:01:49 ntr40ULA0



995 : 名無しさん :2015/06/09(火) 07:10:43 HjiPmfU.0
考察に戦闘に、聖杯戦争が加熱していく感ある
モリガン対流子はめまぐるしいイニシアチブの奪いあいが面白いな


996 : 名無しさん :2015/06/09(火) 22:53:25 ZXrgUhl20
埋め
最新話もそうでしたが、色んな参加者がそれぞれきっちり動いて行く堅実さと面白さがサイレン聖杯の魅力だと思っています
参加者の面々に幸在らんことを


997 : 名無しさん :2015/06/09(火) 23:48:53 Addp3p5w0
この調子で進めるよう応援します!


998 : 名無しさん :2015/06/09(火) 23:59:24 Gj/CMvSs0
熱い展開が続くサイレン聖杯ほんと好き
書き手の皆さん、これからもがんばってください!


999 : 名無しさん :2015/06/10(水) 00:02:39 ImoJQfjE0
少年マンガのように突っ走る展開は読んでいて最高です!
これからも応援しています!


1000 : ◆wd6lXpjSKY :2015/06/10(水) 00:03:47 u2cFhPPQ0
>>1000ならタダノ、モリガン、まどか、ルフィ、浅羽くん、弩くんで予約します

……>>1000とれてるかなぁw


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