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二次キャラ聖杯戦争・陸
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◆.OpF6wOgZ2氏が不在ですので代理でスレ立て
No.1 天野雪輝 未来日記 キャスター タマモ Fate/EXTRA
No.2 ゼフィール ファイアーエムブレム 覇者の剣 ライダー アシュナード ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡
No.3 衛宮士郎 Fate/stay night セイバー アルトリア・ペンドラゴン Fate/stay night
No.4 鳴上悠 ペルソナ4 ランサー クー・フーリン Fate/stay night
No.5 天海陸 ワールドエンブリオ セイバー イスラ・レヴィノス サモンナイト3
No.6 枢木スザク コードギアス 反逆のルルーシュ バーサーカー ランスロット Fate/Zero
No.7 花村陽介 ペルソナ4 ランサー アレックス ARMS
No.8 遠坂凛 Fate/stay night キャスター 蘇 妲己 藤崎竜版 封神演義
No.9 鹿目まどか 魔法少女まどか☆マギカ アーチャー DIO ジョジョの奇妙な冒険
No.10 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア コードギアス 反逆のルルーシュ セイバー ガウェイン Fate/EXTRA
N0.11 名無鉄之介 私の救世主さま キャスター リインフォース 魔法少女リリカルなのはA's
No.12 衛宮切嗣 Fate/Zero ライダー 門矢士 仮面ライダーディケイド
No.13 園崎詩音 ひぐらしのなく頃に バーサーカー 美樹さやか 魔法少女まどか☆マギカ
No.14 金田一一 金田一少年の事件簿 ライダー 太公望 藤崎竜版 封神演義
No.15 近藤剣司 蒼穹のファフナー セイバー セリス FINAL FANTASY�
No.16 泉こなた らき☆すた ライダー 火野映司 仮面ライダーOOO/オーズ
No.17 ジョン・バックス 未来日記 アサシン ファニー・ヴァレンタイン ジョジョの奇妙な冒険
No.18 間桐雁夜 Fate/Zero アサシン トキ 北斗の拳
No.19 匂宮出夢 戯言シリーズ アサシン “壊刃”サブラク 灼眼のシャナ
No.20 アシュヒト=リヒター エンバーミング セイバー テレサ クレイモア
No.21 間桐慎二 Fate/stay night ライダー ラオウ 北斗の拳
No.22 羽瀬川小鳩 僕は友達が少ない キャスター ゾルフ・J・キンブリー 鋼の錬金術師
No.23 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン Fate/stay night ランサー 本多忠勝 戦国BASARA
No.24 金城優 ベン・トー セイバー エンジェロイド・タイプΔアストレア そらのおとしもの
No.25 我妻由乃 未来日記 アーチャー ジョン・ドゥ エンバーミング
まとめwiki
ttp://www55.atwiki.jp/2jiseihaisennsou/
二次聖杯したらば(議論スレなど)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15853/
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前スレの続きを投下します
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「心配するな、俺は死ぬ気はない。
スザクを倒して…ガウェインとともに合流する。
だから花村、泉…頼む」
ルルーシュは頭を下げる。
こなたと陽介はルルーシュの決意は固く、止められないとわかってしまった。
「…見つけた、マスター!」
そのとき、リインフォースがさらわれた名無を発見する。
もう時間はない。
「…わかったよ。その代わり…絶対生きて戻ってこいよ、ルルーシュ。
これ以上仲間が減るのは許さないかんな!」
「陽介くん!?」
「こなたちゃん。俺からも頼むよ。
ルルーシュを行かせてやってくれ。
俺は悠を止められなかったけど…ルルーシュには俺と同じ思いをしてほしくないんだ。
友達が自分の知らないところでいつのまにか死んでるなんて、悲しすぎるよ…だからさ。
せめて、ルルーシュの手でケリつけさせてやろうぜ」
「陽介くん…わかったよ。
ルルーシュくん、また会おうね。きっとだからね」
陽介からも説得され、こなたもついに折れた。
「すまないな、二人とも…
キャスター、俺とこのキャスターがここから十分な距離をとったら二人を転移させてくれ。
その後は名無を助けに行くんだ」
そういって、ルルーシュは男のキャスターの後に続いて地下室から出て行った。
念入りに周辺をサーチしてキャスターが残していった罠がないこと、
また転移の邪魔をされないことを確認してリインフォースは花村とこなたを柳洞寺へと転移させた。
追ってオーズとアレックスが向かうだろう。
あとは名無を助けて自分も合流するだけだ。
「よし、マスターの転移座標を確認…!?」
再びサーチャーに意識を向けたリインフォースは驚愕した。
名無鉄之介の側に、あのアーチャー…DIOが立っている。
DIOのスタンドが名無に向けて拳を振り上げるのを見た瞬間、
リインフォースは意識するよりも早く反射的に転移魔法を発動していた。
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◇ ◆ ◇
そして…リインフォースは、間に合った。
しかし、間に合わなかった。
ザ・ワールドの拳は名無を庇ったリインフォースの胸を…霊核のある心臓を貫いていたのだ。
「り…リインちゃん!?」
「まったく…最後まで…言うことを聞かないマスターだ…な」
「ふはは…マスターが危機に陥れば来ると思っていたぞ、キャスター。
やはり貴様も我がザ・ワールドの敵ではないな」
DIOはたしかに名無を殺そうとしていた。
しかし同時に魔力を練って備えてもいたのだ。
敵のキャスターは転移魔法を使える。
ならば、この場に異変を感じた瞬間時間を止めてしまえば、
必ずキャスターはそこにいる…と。
そして予想通りキャスターは現れ、予定どおり時を止めてぶち抜いてやったのだ.
「しかし…どういうことだ?ザ・ワールドのキレが良い…」
まどかをマスターとしていた時よりかなり早く時間を止められた上に、魔力の消耗も少ない。
一般人のまどかと魔術師である切嗣の差が出たのだ。
加えて、切嗣の操る魔術は固有時制御。
DIOと同じく時間に干渉する魔術だ。
さらにまどかの心臓を喰らって魔力を限界まで充填したDIOはいま、絶好調だ。
性格の相性や出自を考えなければ、DIOのマスターとして切嗣以上はいない。
「まだ…終わってはいないぞ、アーチャー!」
ザ・ワールドの調子の良さに気を取られていたDOは、
リインフォースが右手に集めた魔力を見て即座にガードの体勢を取る。
警戒してDIOが下がった隙を逃さず、リインフォースは再度転移魔法を発動させた。
名無の視界が空転し…次に目を開いた時、DIOと切嗣はどこにもいなかった。
名無の前にいるのは、胸に大穴を開けて倒れているリインフォースだけ。
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「リインちゃん!?」
「…無事か、マスター?」
「ああ、俺は大丈夫だけどリインちゃんが…!
そうだ、令呪を使って!」
「無駄だ…霊核を砕かれた。
令呪でももう回復できない…」
傷ついた状態で無理に転移魔法を発動させたため、
リインフォースの体を構成する魔力はほとんどが散ってしまっていた。
名無の体ももうムーンセルによる消去が始まっている。
構わず名無はリインフォースの手をそっと握りしめた。
名無はその手の冷たさにぞっとする。
「すまない、マスター。助けに来たつもりが…」
「いい、いいんだ!リインちゃんが謝ることなんて何もねえよ!」
「私は今まで多くの人間を不幸にしてきた…だからこの結末に文句はない。
だが…お前まで巻き添えにしてしまうのは、本当にすまない…」
「何言ってんだよ!
リインちゃんみたいな美女と一緒に死ねるなら、そりゃもう逆に大歓迎だっての!
人生の最後についに俺の時代が来た!って感じ?
俺リインちゃんと添い遂げちゃう?やっべなにそれテンション上がる!
…だから…だからリインちゃん…」
リインフォースの冷たい手を、名無の手が包み込む。
その手はとても暖かく、途方もない心地よさをリインフォースにもたらした。
「そんな悲しそうな顔、するなよ…」
「お前…泣いているのか…」
名無の涙がこぼれ、リインフォースの頬を伝う。
その涙はとても熱い。
魔力生命にはない命の熱さだ。
名無は自分が死ぬから泣いているのではない。
リインフォースが傷ついたから泣いているのだ。
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「私のために、泣いてくれるのか…?」
「当たり前だろ…俺とリインちゃんは一心同体だって…
リインちゃんが痛かったら俺も痛いんだよ…」
今まで、リインフォースは名無のような人間と会ったことがなかった。
いや、一人だけ…本当のマスターである八神はやてもまた、リインフォースを思ってくれる人間だった。
祝福の風リインフォースという名もはやてにもらった。
そして、名無はリインフォースのために泣いてくれている。
リインフォースを、思ってくれている…
「ああ…そうか。私の願いは…もう叶っていたんだな。
主はやてからもらったのと同じ…あの暖かなぬくもりを…
私はもう、この手の中に持っていたんだ…」
ずっと求めていた、家族と、はやてや仲間たちと同じぬくもりを、鉄之介が与えてくれる。
それだけで、リインフォースは安らぎを得られる。
このあと意識が絶たれ、暗闇に落ちていくのだとしても、きっと大丈夫だと確信できる。
名無鉄之介の手の暖かさと、この涙の熱さを覚えていられるのなら。
「マスター…いや、鉄之介。
伝えておきたい…ことがある」
「…なんだい?」
気がつけばリインフォースは笑っていた。
心からの微笑みだった。
「ありがとう…私のマスターになってくれて。
こんな私にもう一度、誰かのために戦う機会をくれて。
私を…暖めてくれて。
本当にありがとう…」
「リインちゃん…!」
鉄之介に強く抱きしめられる。
一日前なら魔法で叩き伏せていたところだが、今は全然不快ではない。
それどころか…とても安心できる。
名無鉄之介という命の熱を感じられて、リインフォースも暖められる。
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「…鉄之介。もう、私はお前を助けられない。
だから最後に何か…私にしてほしいことはあるか?」
「してほしいこと…?」
「ああ。今の私にできることなら、なんでもしてやる…
それが私からお前にできる、ただひとつの恩返しだ」
キスしていいかとか、胸を揉んでいいかとか、
そういうお願いが来たとしても今ならまあ…いいかもしれない。
「じゃあさ…このイルバーン、そんで俺の令呪を、
ルルーシュのやつに送ってやることってできるか?
ほら、あいつってモヤシじゃん。花村みたいなペルソナもないしさ。
多分あいつ、スザクってやつとケンカしに行くからな。
俺のダチもそうだったけど、幼馴染ってそんなもんなのかな。
まあ、だからきっと、このイルバーンが役に立つぜ」
だが名無の願いはそんなものではなかった。
名無はリインフォースだけでなく、今も死地に向かおうとする仲間を気遣っていたのだ。
自分が遠からず死ぬと決まっていても、臆さず仲間を想える。
「まったく、お前というやつは…」
バカでスケベで考えなしで、どうしようもないロクデナシだけど、
だけど最高のマスターに巡り会えたと、リインフォースは確信した。
「…令呪を使えば、できるだろう。
だが残り二画のうち一画を使い、一画をルルーシュに送れば、
その瞬間に私たちは消える。
それでも…いいか?」
「当然!だってリインちゃんと一緒だろ?
じゃあ何も怖くねえよ!」
「わかった、令呪を使ってくれ。
…それと、手を、握っていてくれるか?」
「おうよ!」
リインフォースが名無から令呪を一つ分離させて、
イルバーンとともにルルーシュへと届けるべく、術式を構築していく。
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――なあ、弓樹。
俺、お前みたいな救世主にはなれなかったよ。
でもよ…お前みたいな、春儚ちゃんを笑わせてやれるお前みたいな…
女の子を笑わせてやれる男には、なれたんじゃないかと思う。
なら、いいよな?
後悔はしてないぜ。
なにせいま、俺の隣には…………
「令呪に命じる。
俺の令呪と槍王イルバーン…
大切なものを守れる力を、俺のダチに届けてやってくれ!」
「その願い、叶えてみせる――!」
【名無鉄之介@私の救世主さま 死亡】
【キャスター(リインフォース)@魔法少女リリカルなのはA's 死亡】
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◇ ◆ ◇
「逃したか」
「いや、手ごたえはあった。
あのキャスターが私のような特性か宝具を持たん限り、助からんだろう」
キャスターが転移し、残されたDIOと切嗣。
聖杯を狙うべく手を結んだ二人だが、つい先ほどまで敵だったのだからそう易々と信頼はできない。
特にDIOは切嗣が魔術師殺しへと至る道の最初に遭遇した異変…吸血鬼だ。
切嗣はかつてセイバーにもライダーにも感じたことのないほどの憎しみをDIOに抱いていた。
しかしそれを口には出さない。
DIOはこの手で殺してやりたいほど憎い存在ではあるが、同時に切嗣の生命線でもある。
ライダーを切り捨て乗り換えた今、これ以上仕損じるわけには行かない。
「で、どうする? 朝になれば私は動けなくなるぞ」
「そんなところまで吸血鬼か。
…進むか、退くか。
セイバーを討った今、お前の時間停止に対抗できるものはいない。
そうだな?」
「他の手立てがあるなら先の戦いで出し惜しみはしないだろう。
懸念のガウェインはバーサーカー次第だな」
「…いや、もう一つ警戒すべきはアサシンだ。
こんな乱戦でこそやつらの危険は増す。
戦闘中に背中から狙われることほど厄介なことはない」
切嗣自身がいままで散々やってきたことだ。
だからこそアサシンの怖さは誰よりも深く理解している。
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「アーチャー、やつがどこにいるか探れるか?」
「難しいな。どうやら仕事を終えてからは完全に傍観者を気取っていたようだ。
一度気配を絶たれてはこちらからは発見できん。
…だが、近くにはいるぞ」
それはサーヴァントとしてではなく、スタンド使いとしての直感だった。
あのアサシン…スタンド使いはDIOを最優先で警戒している。
まどかを使って確実にDIOを排除しようとしたように。
「…僕らは今も見張られていると考えるべきか」
「そうだな。退くのであれば振り切れるだろうが、進むのならばやつらは脅威だ。
だが得られるものも大きい」
辺りを見回しても当然アサシンは確認できない。
監視されているという不快感を感じるがどうしようもない。
朝日が射すまであと数時間。
一度退いて体勢を整えるか、短期決戦を挑み敵の数を減らすか。
「さてどうするマスター。
この采配が今後の戦局を左右するだろう。
お前はこのDIOをどう使うのだ?」
弄ぶように言うDIOを切嗣は睨み付ける。
そのとき、煙草の灰が落ちなければ…銃を抜いていたかもしれなかった。
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◇ ◆ ◇
「着きましたよ」
キンブリーが連れてきたのは、ガウェインとランスロットが激突する戦場からやや離れた場所だ。
そこに、枢木スザクが待っていた。
「ありがとう、キャスター。消えてくれ」
「まったく人使いが荒い。邪魔はしませんよ、スザク」
スザクがキンブリーを追い払うと、そこに残ったのは本当にルルーシュとスザクだけだ。
「スザク…待たせたな」
「構わないさ、ルルーシュ。
君ならきっと来てくれると信じていたからね」
「そうか…スザク、俺たちはもう戻れないのか?」
「無理だね。君だってそう思ってるはずだ」
「…そうだな。無意味なことを聞いた」
「俺の狙いはわかっているんだろ?」
「ああ。わかっていて俺はここに来た」
「俺たちの内どちらかが、あるいは両方が、死ぬとしても?」
「ああ…」
まっすぐにルルーシュを見抜くスザクの瞳は、ギアスを発動させている時と同じだ。
しかしギアスに支配されてはいない…逆にギアスを支配している。
スザクはそれだけの意志と覚悟を携えて、ルルーシュの前に立っている。
ルルーシュは返答の代わりに懐から拳銃を抜き、スザクに向けて構えた。
「そうだ、それでいい。
俺たちが向き合うにはもうそれしかないんだ、ルルーシュ」
「俺たちはもう、戦うことでしか分かりあえない…そうだな、スザク」
「そうとも。
…はは、やっぱり俺と君は同じことを考えるんだな」
「そうだな。なんせ俺とお前は」
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ルルーシュはそこで言葉を切る。
促すまでもなくスザクもまた口を開く。
「友達だからな」
ルルーシュとスザクが同時に発したその言葉は、開戦の狼煙。
一瞬遅れて銃声が鳴り響く。
放たれた弾丸を無造作に避けたスザクが跳躍し、
次弾を撃つ前にルルーシュの手から拳銃を蹴り飛ばした。
「…策はあるのか、ルルーシュ。
まさか今ので打ち止めってことはないだろう」
「この体力馬鹿め。
少しは手加減したらどうだ!」
「しないよ。
何をしでかすかわからない君の怖さは俺が一番良く知っているからね」
間合いをあけたスザクが剣を引き抜いた。
キンブリーが作った無銘の、しかしとにかく頑丈に錬成された剣。
「何も打つ手が無いなら、これで終わりだ!」
ルルーシュの目では追い切れない早さでスザクが迫る。
生きろというギアスを完全に制御し潜在能力を全開にしたスザクの身体能力は、
もはや人間の域に留まらない…いうなれば人間サイズのナイトメアフレームだ。
繰り出された剣は確実にルルーシュの首を切断するだろう。
迷いのない殺意。
肉弾戦でルルーシュがスザクに太刀打ちできるはずがない。
…ルルーシュ一人だけ、ならば。
――ああ、スザク。
やっぱりこうなるんだな、俺たちは。
だが俺もここで退く気はない。
俺の帰りを待っている友のためにも、
俺を信じてくれた友のためにも、
俺はお前に…勝つ!
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「力を借りるぞ、名無!」
ルルーシュの手に、長大な一振りの槍が現れる。
銘を、イルバーン。
13騎士の一つにして、名無鉄之介から託された彼の魂。
リインフォースは間に合わなかった。
名無を助けられなかった。
だが、彼らの思いはルルーシュへと繋がれた。
この手の中にあるイルバーン、そして宿った二画目の令呪が、
名無の思いをルルーシュに伝えてくれる。
負けるな、生きろ。
かつては世界を再生するために死を選んだルルーシュに、
命を投げ出すな、力の限り生きてみろと、厳しくも暖かく叱咤してくれる。
友から受け継いた槍がルルーシュの全身に力を漲らせ、迫る親友を打ち払う。
それでこそだと、スザクの目が鋭さを増す。
彼方ではガウェインとランスロットが戦っている。
そしてここでも、幕が開く。
「スザク――!」
「ルルーシュ――!」
長くいびつなすれ違いを終わらせるために。
ルルーシュとスザクは、冷たい鋼を手に親友に向かって駆け出した。
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【深山町/黎明】
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(大)
[装備]:槍王イルバーン、携帯電話
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(大)、義手・義足を機械鎧化
[装備]:キャスターが制作したブレード(複数)
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(小)
※リインフォースにある術式の改良を依頼しました
【バーサーカー(ランスロット)@Fate/zero】
[状態]:疲労(中)、賢者の石の魔力残量残り80%
[装備]:エッケザックス、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)
[装備]:羽瀬川小鳩を練成した賢者の石
【深山町/黎明】
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)
[装備]:スーパータカメダル、スーパートラメダル、スーパーバッタメダル
※ディケイドのファイナルフォームライドにより、スーパータトバコンボ解放。
【ランサー(アレックス)@ARMS】
[状態]:疲労(極大)、魔力消費(極大)、ARMSの進化(進行度・中)
※対ARMSウイルスプログラムへの耐性を獲得。
※時間停止への耐性を僅かに獲得。時が止まった事を認識できますが、まだ動く事はできません。
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【深山町/黎明】
【衛宮切嗣@Fate/zero】
[令呪]:1画
[状態]:固有時制御の反動ダメージ(中)、魔力消費(大)
[装備]:ワルサー、キャレコ 、狙撃銃、鋼鉄の腕、鋼鉄の腕の予備弾@鋼鉄の腕@エンバーミング
携帯電話、鉈、大きな鏡、その他多数(ホームセンターで購入できるもの)
※アーチャー(DIO)と契約しました。
【アーチャー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:魔力充実、最高に「ハイ!」
[装備]:携帯電話
※衛宮切嗣と契約しました。ステータスが以下のように変化します。
筋力A 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運A 宝具A → 筋力A 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具A+
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](4人目)・魔力消費(大)
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](7人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【深山町・柳洞寺/黎明】
【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:健康、強い覚悟と決意
[装備]:スパナ@現実、“無毀なる湖光”@Fate/zero
[道具]:ミネラルウォーター、カロリーメイト、医薬品一式、大学ノート、筆記用具、電池式充電器、電池、予備の服、食料@現実
契約者の鍵@ペルソナ4
※携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました(意図的に隠された情報があるかもしれません)。
※ジライヤがスサノオに転生しました。
【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:3画
[状態]:健康
[装備]:携帯電話
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投下終了
期限時間越えて申し訳ありません
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【新都・双子館/黎明】
【ジョン・バックス@未来日記】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、冬木市市長
[装備]:「The watcher」
[道具]:栄養ドリンク(箱)
投下漏れです
重ね重ね申し訳ない
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投下乙です
774さん、最期まで格好よかった…
彼の分まで頑張れ、ルルーシュ!
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投下乙です!
名無組が脱落か…寂しいけど、彼らの遺志はルルーシュへとしっかり受け渡された
開幕するルルーシュvsスザクの行方は実に気になる、ルルーシュには頑張って欲しいな
それにしてもDIO様、負傷回復で宝具のキレも良くなってまさに絶好調だなぁ…w
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投下乙!
ここに来て名無しリィン組が脱落か……
序盤からお疲れ様でした。清涼剤にシリアスに頑張ってくれた。
名無しは馬鹿だけどやっぱ友達思いなんだよな。リィンも救われてくれたようだし
そして友達といえば陽介ル・ルでも上手く繋いで遂に親友決戦か!
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投下乙です
DIO様の掌の返しっぷり、外道っぷりがよく出ていて輝いていますねw
一方まどかは死んでからも惨々が続くだなんて…こんなのあんまりだよ…
そしてケリィも最悪だな、二度も最愛の人を失わせた吸血鬼と手を組むことになるなんて…
幸運が下がったり、吸血鬼という相性最悪なケリィ組の今後が気になる
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遂に唯一にして最強のマスター補正:幸運が切れた以上最終決戦での快進撃もここまでか…?絶好調になった途端不安になるだなんておかしいよw
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今回はマスター殺されたゆえ仕方ないけど能力上昇は死亡フラグだってハッキリわかんだね
むしろ弱体化したように見える?何のことです?
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乙でしたー!一気に進展したなぁ……!
DIO様が慢心を捨てたのに不安しか覚えないのは何故だろう(棒)
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投下&スレ立て乙です
DIO様からあふれるラスボス臭がヤバい。でもセイバー以外にも天敵がもう一人いるんだが、知らないんだからしょうがないね
そして名無がこんなに熱い散り方するとは思わなかった
いくら槍持たせたからってルルーシュにギアス制御状態のスザクと肉弾戦って凄まじく無理ゲーだこれ
現在地ではあまり効果がなかったソードキャメロットが鍵になりそう
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投下乙です。名無とリインちゃんは好きなキャラだっただけにかなし
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失礼しました、誤送信です。
好きなキャラだっただけに悲しいですね…けれど凄くかっこよかったです。色んな意味で頑張ってたと思いました。
それと全員予約します。
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画像検索でも出て来ないキャラを書き手たちは
よく書ききったと褒め称えたい
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ルルーシュ&ガウェイン
スザク&ランスロット
キンブリー
アサシン(6人目) で予約します
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あれ、もう予約されてるのか
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>>wYN氏がよろしければ29のキャラの予約取り消しますよ?
多分私の方ではそこまで出番無いですし、書きたいのでしたらお譲りしますが?
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ちょっと言いにくいんですが……
◆2shK8TpqBI氏、>>27の予約は◆l3N27G/bJU氏の投下終了宣言から24時間経過してないようです。数十分の差ですが
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えっ!?スミマセン失礼しました!!
一旦予約取り消させてもらいます。
誰も予約ないようでしたら際予約させてもらいます。
ご迷惑おかけしました。それと知らせてくれてありがとうございます。
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誰もないようなので際予約させていただきます。
ご迷惑おかけしました。
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◆2shK8TpqBI氏の予約は◆wYNGIse9i6氏が予約した以外の全員ってことでいいのかな…?
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<<35あっはい、それでお願いします
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ここにきて予約が重なるとは
これは面白いことになりそう
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すみませんまだ大丈夫なら追加で
魔王ゼロ ギルガメッシュ 言峰倚礼お願いします。
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まさかの主催サイド…!?
ホントに終盤臭くなってきてる
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貴様言峰じゃないな……!
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ちょっと確認ですが、
◆wYNGIse9i6氏の予約は ルル&セイバー、スザク&バーサーカー、金鰤、大統領(6人目)で、
◆2shK8TpqBI氏の予約は こなた&ライダー、陽介&ランサー、市長&大統領(4人目、7人目)、切嗣&アーチャー、ゼロ、英雄王、言峰
でよろしいでしょうか?
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はい大丈夫です。それでお願いします。
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新コンビ見て思い出したが切嗣のパパの中の人って格ゲー版三部のDIOと同じなんだよね
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そして切嗣の中の人はツェペリさん(PS2第1部)や吉良吉影(ジョジョASB)と同じだしな
なかなか奇妙な縁だよな
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ケリィって性格考えたら割と同属嫌悪っぽく見えるんだけどなぁ
美化されてるからわかりにくいけどプッチ同様の
他人を犠牲にする事を厭わない吐き気を催す邪悪だし
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プッチ神父の場合、弟は敵だしDIOは死んでるしで、弱みが無いんだよな。
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>>45
正直性質の悪いテロリストだわな
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リリカルマジカル☆テロリズム
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もしかしてほむらの方が切継より性質悪いのか?
愛する者のためなら世界を敵に回しても構わないってタイプだし
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ケリィ「世界が平和になれば、過程や方法なぞどうでもよかろう」
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念のため延長しておきます。
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こちらも延長します
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『吐き気をもよおす邪悪とはッ! なにも知らぬ無知なるものを利用する事だ……!
自分の利益のためだけに利用する事だ……! 父親が何も知らぬ娘を!!てめーの都合だけでッ!』
ブチャラティのこの理論だと、ケリィもほむほむも間違いなく邪悪。
世界のため、たったひとりの人間のためという違いはあっても
目的のためなら無知なる者を利用し踏みつけられる人間。
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そういう話はアンチスレでやってくれ
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そもそもほむらは参加者ですらないから(良心)
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延長されたからって荒ぶってはいけない
じっくり待つのもいい
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そいえば過去スレに「アニメ放送中の作品のキャラは活躍する法則」とかあったな
と、言うことはDIO様は4月まで生き残れば優勝できる可能性がある・・・のか?
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問題は完結するまでにDIOの出番が来るかだけどな
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次の話でポックリ死ぬかもしれないが
誰が死んでもおかしくないからな
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残念ながら「活躍する≠優勝する」だからねー…
ただ言える事は、今後注目されているキャラではあるってことだな
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死亡者名鑑やリストの更新はまだですかね…
特にリストは忠勝とイリヤ以降全く書かれてないし
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自分でやるんだよあくしろよ
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>>61
君のような人材を待っていた
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>>61
死亡者名鑑は(気紛れでしかやらないが)俺達?がやる
だからリストは任せた
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あれって他人が書いてもよかったのか
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ええんやで
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結局仮投下スレはどうなったんだしょう。
多分明日には投下できるのですが…
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まだかなまだかな
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「零れ落ちる砂のように誰も時間止められない」って時間と止められないの間にをが必要だよね
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元ネタ的には「時間」の読み方は「トキ」なので一応問題はないかと
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ジョインジョイントキィ
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そういやタイトル元ネタってないんだなここ
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仮投下スレが解らなかったのでとりあえずこちらに投下します。
この話は後の展開に関わる内容も含まれていますので、悪いところはおっしゃってください。
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キャスターの転移魔術により陽介・こなたの二人は柳洞寺の地下大空洞へと移動した。
あたりを見渡し敵影がないのを確認すると緊張を解く。
「ルルーシュ君大丈夫かな、それに鉄之介くんも…」
「きっと大丈夫だよ、名無のやつは馬鹿だが強えやつだ。俺なんかよりもずっとな。ルルーシュもきっと無事に帰ってくる」
暗い顔で心配するこなたを慰めるように陽介は明るく振舞う。
けれど内心では陽介も二人の心配はしているし何より先の士郎の死が大きく後を引いていた。
あの状況では自分にできることはなかった。しかし何も感じなかったわけではない。
寧ろ大切な仲間を失う辛さを陽介は誰よりも知っている。
(落ち込むのは…後悔するのは全部終わってからだ)
暗くなりそうな思考を振り払い集中する。今この場に戦えるのは自分しかいないのだ。
アレックスたちが戻るまでこなたを守らなければと自分を奮い立たせる。
「陽介くん。映司さんたちもうすぐ到着するっていま連絡があったよ」
「ありがとう泉さん。後は名無とキャスターが戻るのを待つだけだな。戻ったらアレックスを回復してもらわないと…」
先ほどの戦いでアレックスはアサシンの放った毒によりかなり危険な状態に陥った。
幸い毒は克服できたようだが消耗が激しく戦うことが困難な状態だ。
急ぎキャスターに体力と魔力を回復してもらおうと考えていたそのとき、突如洞窟に巨大なスクリーンが投影された。
「なんだ!?」
「何かのスクリーン画面?……あ、あそこに映司さんたちが映ってる!」
「てことはこれ町の中を撮影してんのか?誰がこんなものを…」
これはリインフォースが予め用意していた魔術………ではない。
彼女にそんなことをする余裕も理由もなかった。では誰がこんなものを用意したか?
この場に訪れた参加者でこんなことが可能な人物が一人だけいる。
キャスターのサーヴァント―――蘇妲己である。
彼女は此処に神殿を作ったときから町中を監視しており戦闘をリアルタイムで観賞していた。
もっともすべてのエリアを監視できたわけではなくあくまで深山町一帯だけであったが、逆にいえばキャスターはガウェインが令呪で操られ襲い掛かる事件が起こるまで全ての情報を持っていたことになる。
キャスターが死んだ今でも残っているのはこれが魔術ではなく道具製作スキルにより生み出されたからか。
はたまた特に害がないものと判断されムーンセルの除去を免れたからか判らないが。
そんなことを知る由も無い陽介たちは、ある一点に釘付けになった。
それは先ほど別れたルルーシュがその親友スザクと戦っている画面。
ルルーシュが手に持っている武器は、陽介にとって見覚えのあり過ぎるものだった。
銘を槍王イルバーン
13騎士のひとつにして、仲間である名無鉄之介が持っていた能力
それをルルーシュが手にしているということは………
「まさか…鉄之介くんまで………!?」
「そんな……嘘だろ名無……」
口から零れた否定の言葉。
けれど理性では分かっていた。
キャスターは間に合わなかった。
名無かキャスターのどちらかが致命傷を負い、最後の力で槍王をルルーシュに送り届けたのだろう。
誰よりも友達思いだったあいつは、死ぬ間際でも仲間のために行動したのだと。
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「マスター。無事か!」
「こなたちゃん!」
その時パスを辿って合流したアレックスとライダーが地上から降りてきた。
二人が無事な事にほっと安心すると、この場にいない人物に疑問を抱いた。
「マスター。キャスターたちはまだ戻ってないのか?」
その言葉に俯く二人、そしてその背後に映された映像で全てを察した。
「まさか、キャスターさんたちが…!?」
「……すまないマスター、俺が作戦を失敗したせいだな」
初期から行動を共にし、チームのメンタルをフォローをしていた名無は、ルルーシュや士郎とは違う意味でチームの中心的人物だった。
何しろ彼が起こした行動が陽介を励まし、チームを結束させる一因を作ったのだから。
鳴上悠を除けば一番に仲のよかった名無の死。ひょっとしたら立ち直れなくなると心配するアレックスだったが。
「アレックス、ライダー。落ち込むのは後だ。今はやるべきことをするぞ、すぐに回復する」
「陽介くん…悲しくないの?一番仲良しだったんでしょ!?」
どこか非難する視線を送るこなたの眼を真っ直ぐ見返す。
それは、強い決意を固めた瞳だった。
「悲しいさ。名無に…鉄之介に会えたおかげで俺は今まで戦うことができたんだからな。あいつと出会わなけりゃ俺はきっととっくに死んじまってた」
もしもあの時教会で出会わなければ、もしかしたら殺し合いに乗っていたかもしれない。
そう思えるほどにあの時の陽介は精神的に追い詰められていた。
「衛宮は最後まで自分に出来る事をやった。鉄之介はルルーシュの力になった。ルルーシュたちはまだ戦ってる。俺たちが絶望したら、あいつらの想いが全て無駄になる。そんなことは絶対出来ねえ!」
「マスター……」
「ごめん陽介くん。私酷いこと…」
「気にすんなよ。それより二人とも、すぐ回復するから」
ペルソナを発動し、ライダーとランサーに回復魔法をかける。
傷と疲労は回復したが極限まで消費した魔力は回復にかなりの時間を要する。
この先ライダーだけでは三人を守りながら戦うのは不可能であり、またこちらに来なくてもルルーシュを狙われたら終わりである。
しかし陽介は令呪を使い切っており即座の回復はできず、打開策を考えていると…
「映司さん…あの…」
「俺のことは気にしなくていいから、こなたちゃんの好きにしていいよ」
「ありがとう…陽介くん、私の令呪を使ってランサーさんを回復してあげて。私もう一画残してあるからさ」
そういって陽介の手を握り令呪を一画渡す。
「ワリィ泉、助かるぜ。令呪をもって命じる、回復しろアレックス!」
瞬間、膨大な魔力がランサーの体中を駆け巡り許容量限界まで回復する。
「感謝する泉、ライダー」
「気にしないでランサーさん」
「ランサーさん二人を頼みます。俺はアーチャーの所に…っ!しまった、尾行されてたか」
ライダーの視線の先には地下の入り口に向かってくるアーチャーと衛宮切嗣の姿。
おそらくアサシンにランサーたちが尾行され、それの案内で向かってきているのだろう。
「なんで衛宮切嗣が生きてんだよ。だってライダーはセイバーが捨て身で倒したのにっ…!?」
「おそらく消去される前にアーチャーのマスターを殺害して再契約を交わしたのだろう。アーチャーもマスターがいなければ消えてしまうから承認したに違いあるまい」
「ランサーさん、こなたちゃんたちを頼みます。アーチャーは俺が相手をします。バーサーカーと敵のキャスターはいないなら向かってきてるのはアーチャーとアサシンだけです。此処で向かい討ちます」
「悔しいがそれがよさそうだな。今の俺ではまだアーチャーに対抗できない。まかせるぞライダー」
令呪による時間停止の耐性も未だ効果を発揮しない。
今アーチャーに対抗できるのはディケイドによって新たな力に目覚めたオーズのスーパータトバコンボしかいない。
「アレックス、アサシンを頼む。俺はライダーの援護と衛宮切嗣の相手をする」
「危ないよ陽介くん!あの衛宮切嗣って人と陽介くんは相性が悪いんでしょ。お願いだから考え直して!?」
「大丈夫だ。対策は考えてるし此処なら狙撃の心配がない。正面対決なら俺にも勝ち目はある。それに…」
「それはっ・・・!」
「切り札もあるしな。だから信じてくれ、絶対に死んだりしないって約束する」
懐から取り出したものを見て三人は驚きの声を上げる。
安心させるように笑う陽介を見て暫し迷い、最後には力強くうなづいた。
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切嗣は短期決戦の道を選んだ。
朝日という明確な弱点がある以上、少しでも敵の数を減らし後の危険を減らすメリットをとった。
無論そこに至るまでのリスクも視野には入れていたが、単純戦闘なら無敵の強さを誇るアーチャーならば陽が上りきる前に敵を倒せると踏んだ。
柳洞寺へと向かう衛宮切嗣とアーチャーはお互い一言も口を利かず境内へと侵入した。
そのままあたりを見回すと近くの地面に目印らしきものが置かれているのを発見する。
罠がないか慎重に警戒すると目印にそって移動を開始した。先ほどからこれの繰り返しで進んでいる。
ランサーとライダーを尾行し居場所を突き止めたアサシンはこうして姿は決して見せずにアーチャーの誘導を行っていた。
無論そんなことは二人にも分かっていたが自分たちでは転移した敵を捕らえられず、また時間的余裕も無かったためこうして誘導にしたがっていた。
(無論アサシンの警戒は続けていたが)
「いつまでそんな態度でいるのだマスターよ」
「……別に普通だが」
「普通と言うならこの距離感は何なのだ」
「何だと言われるような仲ではないはずだが?」
隠しきれていない苛立ちや不快感にアーチャーはいい加減煩わしく思う。
だがそんなことは知ったことではない切嗣は素っ気無く返信した。
「アーチャー、はっきり言っておこう。僕は君が気に食わない。ライダーも僕を苛立たせたが君はそれ以上だ」
「ほう、言うではないかマスターよ。生前私に此処まで言う男は宿敵ぐらいしかいなかったぞ」
憎たらしげに言う切嗣をどこか面白そうに見るアーチャー。
「だがわかっているのだろう?勝ち抜くには私の力が必要不可欠だ。
敵のサーヴァントはお前に協力などしないし他のやつらはアサシンにキャスターにバーサーカー。制御するには困難なやつらだ。序盤ならいざ知らず、手の内を全て知られている今では到底勝ち抜けぬと」
どれほど憎らしく思えど絶対に自分を切ることは出来ない。
そう確信が持てるからこそアーチャーはここまで自信が持てる。令呪があればまだ違っただろうがマスターに余分な令呪はない。
(他のマスターから令呪を奪って聖杯を手に入れたら即行で自害させてやる)
(聖杯を手に入れたら令呪を使う間もなく時間止めて切り捨ててくれるわ)
決して信頼関係など結べるはず無く二人は進む。
やがて洞窟の前まで来ると地下に降りる抜け道を見つけた。
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「ほう、このような場所があったとは。地下なら日の出を気にせず戦えるな」
「この場所は…」
「どうしたマスター?」
「なんでもない。先に進むぞアーチャー」
(この場所…知らないはずなのにこの感覚はなんだ?まるで何かを忘れているような…)
―――ザザッ
(…っ!?なんだ今のノイズは。何か大切な事を忘れているようなこの感じはっ!?)
自分の中の違和感に戸惑いながらも歩みを止めない切嗣。
やがて二人は最深部に到達した。
そこには案の定ランサーとライダーの主従が待ち構えていた。アサシンの姿は見えないが何処かで隠れているのだろう。
「追い詰めたぞランサーにライダーよ。ここが貴様らの墓場だ」
「アーチャー、無駄話はせず速やかにしとめるぞ。ここは拠点にも使えるからな。昼間はこの場所は使える」
「ふん、分かっておるわ。先ほどのキャスター達のようにし止めてくれる」
そういって“世界”を発動させ突進するアーチャー。
「吼えろ!スサノオ、ガルダイン!!」
瞬間、風刃を纏った嵐がアーチャーを包み込む。
進化し極限までブーストされた風がアーチャーに襲い掛かる。
その威力は魔術師どころかサーヴァントであっても無視することは出来ないだろう。
「ほう、それがお前のペルソナか。サーヴァントに手傷を負わせるとはな、だがこの程度ではダメージを与えられても私を倒せん」
だがアーチャーは余裕の表情で耐えて見せた。全身に切り傷を負っているがすぐに回復する。
それを離れた場所で見ていた切嗣は、ライダーが強い神秘を放つメダルを手に変身しようとする姿に強い警鐘をならした。
「アーチャー!ライダーを仕留めろ。なにか解らんがマズイ!」
警告を受け真っ直ぐにライダーに向かうアーチャー。この距離では時間停止を使っても届かない、近づこうと走るアーチャーだが。
「消し飛べぇ!」
ランサーから放たれたブリューナグの槍の回避に時間停止を使ってしまう。
「チィッ小賢しい!」
この距離では届かない。再び宝具を使うには数呼吸分のタイムラグが発生する。
苦し紛れのナイフの投擲はランサーによって阻まれてしまった。
「いくよ、ディケイド」
そしてオーズドライバーにメダルを装着した瞬間、激しい光と奇妙な歌が響いた。
スーパー!スーパー!スーパー!
スーパータカ!
スーパートラ!
スーパーバッタ!
ス・ー・パー! タトバ タ・ト・バ!
それはディケイドと築いた絆の力
時空を超えたコアメダルを用いたコンボ形態
仮面ライダーオーズ・スーパータトバコンボ!
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「気をつけろアーチャー、かなりのステータスだ!」
「ふん、いくら強化したところで無駄な事…我が“世界”は誰にも倒せん。大人しく散るがいい!」
そしてライダーに向かって飛び掛るアーチャー。
ライダーもそれに合わせ迎え撃つ。
「いくぞアーチャー!」
「無駄無駄無駄。しょせん貴様はモンキーなんだよ。ライダアアァ!」
お互いの距離はおよそ四歩分。そしてアーチャーは時を止めるべくスタンド“世界”に魔力を流す。
「“世界”!時よ止まれ!頂点はこのDIOただ一人だ!例外なく!」
そして飛んだ勢いのままライダーに拳を振り下ろし―――
「セイヤァーーーー!!」
ライダーのカウンターパンチをもろに喰らい大きく体勢を崩す。
そのままライダーはアッパー、フック、蹴りを流れるように繰り出し、
「ハア!!」
「うげぇええ!!」
渾身のストレートを顔面に喰らい大きく吹き飛ばされた。
「ば、馬鹿な…こいつ・・・!?」
「時間停止を破ったというのか…?いったいどうやって…」
切り札である時間停止を破られ大きく動揺する切嗣。
「認めんぞ…こうまで容易く時の止まった世界に入門するなど…。どんなトリックを使ったが知らんが何度も通じると思うなよライダー!」
再び“世界”に魔力を流し込むアーチャー。
「見破ってくれるわ!“世界”、時よ止まれ!」
しかし、何も起きない。
流れる時は止められない。
真名開放の隙をライダーは見逃さずトラクローソリッドを振りアーチャーの胸板を深く切り裂いていく。
「セイッ!ハッ!うりゃあ!」
「グハッ…ガッ…GIYAAAAAAAAAAAッ!」
「吹き飛べっ!」
強烈な回し蹴りを胴体に打ち込み再び大きく吹き飛ばされるアーチャー。
「血…血だと…。この俺に………許さんぞ貴様ら…便所のタンカスの分際でぇ!」
「まてアーチャー!時間停止が通用しないのでは分が悪い、ここは引くぞ!」
だが激昂したアーチャーは切嗣の静止を無視しライダー達に飛び掛る。
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「ふんっ!どんなトリックを使ったかは知らんが…それならそれでやり様はあるぞライダー!」
そしてライダーの背後にスタンド“世界”を発現させ、自身は正面から両手の指の間にナイフを握り前後からラッシュを仕掛ける。
「いくら貴様でもこれは対応出来まい!死ねいっ!」
だがその目論見は崩れ去る。
忘れてはならないのは敵が1人では無いこと。
そして決して無視してもよい相手ではないことをこのときのアーチャーは失念していた。
「それをさせないための…」
「俺たちだ!」
“世界”の背後に出現したスサノオが手に持ったアロンダイトで背中を袈裟切りにする。
痛みに一瞬動きを止めたアーチャーにメダジャリバーで横一文字に切りつけライダーが右に跳ぶ。
その隙に距離を取ったスサノオが再び風を起こし“世界”もろともアーチャーを包み込む。
そうして僅かに動きを封じられたアーチャーに向けて放たれたブリューナグの槍がアーチャーのわき腹を掠めた。
「グ…ッ貴様ら…ッ!」
スキニングチャージ!
『欲望より生まれし銀貨』を装填したメダジャリバーをスキャンする。
「ハァァアアアアっ!」
『王による時空の列断(オーズバッシュ)』
空間もろとも相手を両断するこの技は並大抵のサーヴァントでは致命傷たりえる。
だが相手の実力は並みのサーヴァントに納まらない。
とっさに放ったアーチャーのナイフがオーズの腕に突き刺さり軌道を僅かだが逸らされる。
そして限界まで身を反らし致命傷をギリギリのところで避けきった。
全身に受けたダメージを魔力を流すことで急いで再生させる。
「くそ…っ貴様らぁ!」
怒りに染まった眼で睨み付けるが今度は迂闊に飛び込むような真似はしない。
悔しいが何の策も無く勝てる相手ではないと把握したからだ。
こちらも策と戦力が必要だ。少なくともライダーとランサー達を引き離さなければ一方的に敗北に喫する。
(気に食わんが、働いてもらうぞマスター)
そしてこちらに向かってくるライダーを迎撃すべく、アーチャーもまた地を蹴った。
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「まずいな。アーチャーの能力が通じないとは…」
アーチャー達の戦場から離れた場所にある岩陰に、切嗣は身を潜めていた。
そこからアーチャー達の戦いを観察していたが、如何せん数の暴力に晒されていた。
オーズが前衛を務め後方からランサーの荷電粒子砲とマスターのペルソナが援護を担当する。
この作戦は思いのほか有効に発揮していた。
さらに彼らはアーチャーのスタンドの射程距離に決して入らない。
常に10メートル以上の距離から離れて行動しているため、ナイフなどの飛び道具しか持たないアーチャーでは彼らを先に排除出来ずにいた。
駄目押しのようにランサーの主従はアーチャーに対し有効な戦闘スタイルと武器を持っているため、高ステータスと再生能力を持つアーチャーといえど無視することは出来ない。
その結果アーチャーは防戦一方の戦いとなっていた。
隙をみてライダーに傷を負わせても…
「スサノオ、ディアラマ!続けてマハスカクジャ!おまけのガルダイン!」
ランサーのマスターの持つペルソナですぐさま回復させられてしまう。あのマスターの能力は集団戦では怨敵だった鳴上悠や衛宮士郎以上の脅威だった。
またアサシンを警戒してかランサーが常にマスターたちの側を離れない。
(だからといってこのままにも出来ない)
撤退も視野には入れていたがそれは本当に最後の手段だ。
何しろ追い詰められているのは敵も同じ。
相手のキャスターを排除した以上空間転移の撤退も魔術による搦め手も使えない。
この好機を逃せばこちらは夜になるまで動くことは出来ず、その間にルルーシュ達と合流されたら各個撃破されてしまう。
今このタイミングが唯一の好機。だがこのままでは…
「迷っている暇は無いか…。このタイミングでアサシンが現れないのは気がかりだが、僕1人でやるしかない」
狙撃銃を構え標的に狙いを定める。
狙うはライダーのマスターの少女。これで仕留められるとは思わないが動揺はさせられるかもしれない。
うまくいけばその隙にアーチャーがライダーかランサーのマスターを排除させられればこちらにも勝ち目が見えてくる。
(アーチャー、敵のマスターを狙撃する。タイミングを合わせろ)
(仕方あるまい。今は従おうマスターよ)
(カウントは10だ。しくじるなよアーチャー)
慎重に狙いを定める。まだ相手はこちらに気がついた様子は無い。
ゆっくり引き金を引こうとして…
ブブブブブブブブブ………
不意に奇妙な音が近くから聞こえ始めた。
ふと見上げた先にあったものは……
「…タコ?」
まるでおもちゃのタコのようなソレに一瞬呆けてしまう。
「…ッ!?」
そしてタコ…タコカンドロイドは威嚇用の墨を切嗣の顔面に吹きかけ視界を封じる。
その隙に上空に待機していたタカカンドロイドの落としたゴリラカンドロイドが地面に着地と同時に動き出し、狙撃銃を遠くに放り投げた。
狙撃銃の落下地点にあらかじめ置かれていたトリケラカンドロイドが、狙撃銃をランサーたちの所まで弾き飛ばす。
「な…っ!?ライダーの使い魔か…!」
とっさにその場から飛びのいた切嗣。先ほどまでいた場所にクジャクカンドロイドが通り過ぎていった。
少しでもタイミングが遅れていたら切り裂かれていただろう。
とっさにキャレコを掃射するが宝具である『獣と化す缶』には効果が無い。
なおも接近するカンドロイドから逃れるため固有時制御の二倍速で急いでその場から逃れる。
そして一旦距離をとったアーチャーの隣まで移動した。
カンドロイド達はそれ以上は近づかずに回りを囲むように待機していた。
「読まれていたと…いうわけか…」
「ええ。切嗣さんなら必ず近づかず狙撃で援護するって解っていたからね、予め準備させてもらいました」
掴み所の無いライダーの口調に思わず歯軋りをする。
ただの緩そうな外見とは裏腹にかなりしたたかな性格をしているようだ。
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なぜ切嗣たちはカンドロイドの存在を予測できなかったか。
これには枢木スザクが学園で調べた情報に起因する。
スザクが学園で敵のサーヴァントを調べた時、真名がわかっていたアルトリアとガウェイン、そしてアレックスの三人だけ。
オーズはクラスとある程度のスキルに仮面ライダーだという事、リインフォースにいたっては真名どころかスキルすら碌に解らない始末だった。
またオーズについても解ったのはベルトとメダルを使い変身することとある程度の経歴だけ。
オーズの切り札ともいえるコンボについても詳細な情報は得られなかった。ましてやスザクどころか情報を渡した衛宮切嗣ですら知らなかったカンドロイドなど知る由も無い。
だがこれについてはスザク・切嗣両方に非はない。
見ていたのなら兎も角、存在すら知らなかった宝具などどうやっても調べようが無い。
つまるところ彼らはオーズの凡庸性を見余ったのだ。
(アーチャー、一旦引くぞ。これでは戦いようが無い…。枢木達と合流して体勢を立て直すぞ)
(それが出来ると思うのかマスターよ。奴らは私たちを逃がすつもりは無いぞ…)
ライダーもランサーも油断無くこちらを見据えている。
背中を見せた瞬間瞬く間にやられるだろう。
(だがこのままではジリ貧だ。隙を見て逃げなければこちらがやられるぞ)
(まてマスター、私に考えがある。勝率は高いとは言えないがこのままよりはマシだ)
そういって念話で作戦を伝える。
伝えられた内容に頭を悩ましたが、どの道このままでも倒されるだけだと腹をくくった。
「ふふふ、やるではないかライダー、それにランサーにそのマスターよ。私をここまで追い詰めたのは生前2人しかいなかったぞ」
芝居じみた動作で大げさに手を叩くアーチャー。その様子に警戒のレベルを上げる一同に懐から無数のナイフを取り出す。
「いまさらそんな物が通じると思っているのかアーチャーよ」
「ふん、黙っておれランサー。このナイフはキャスターのお手製でな。威力は貴様もが体験済みだろう。とはいえお前たち相手には少々火力が足りない…ではこのナイフ、どうすると思う?」
「……?…ハッ!?ライダー、それを撃たせるな!」
「もう遅い!“世界”URYYYYY!!!」
爆発の魔力が込められた無数のナイフが次々と天井に突き刺さり連続爆発を起こし天井を崩落させる。
「岩盤だっ!押しつぶれろ!」
「まずいっ、ランサーさん!」
落下してくる岩盤に向けてブリューナグの槍を放つランサー。マスターが近くにいるために避けるという選択肢は無い。
しかし巨大な落盤は一撃では粉砕されず無数の落石となって降り注ぐ。
とっさに放ったガルダインが落石をさらに削るが人を押しつぶすには十分な大きさがまだ残っている。
「伏せろ二人とも、俺の下に潜り込め!」
全身をARM化させマスター達を抱えるように庇うアレックス。
その体に容赦無く落石が降り注ぎ動きを封じていく。
「こなたちゃん!ランサーさん!陽介くん!」
「余所見をしている余裕があるのかライダー!」
3人がいたところに視線が移った隙を見逃さずスタンドと共にラッシュをかけるアーチャー。
対応するライダーだがその動きは明らかに精彩を欠いていた。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!無駄ァ!」
「ガハッ!」
ついに耐切れずに吹き飛ばされるライダー。
同時に落石からマスターを守りきったランサーが這い出てくる。
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「ライダーっ!」
「残念だがお前の相手は私だランサーよ」
岩と岩の隙間から現れると同時にマスター達に向け拳銃を発砲するアサシン。
とっさに庇ったため僅かに生まれた隙に、未だ埋まったままのランサーの足だけを平行世界に移動させ動きを封じた。
「アレックス!?この…行けスサノオ!」
アロンダイトを持ったスサノオにあっさりと袈裟切りにされ消滅するアサシン。
あまりの呆気なさに眼を丸くすると、背後から現れた別のアサシンがD4Cを発現させスサノオに拳のラッシュを浴びせる。
不意を突く形で受けたダメージにスサノオが解除され吹き飛ばされる陽介。
「グッ…しまった。あいつ囮か」
正確には消滅と同時にもう1人のアサシンにD4Cを移行させたのだが、そんなことを知らない陽介の側に現れる人影。
視線を移すとそこには拳銃を構える衛宮切嗣の姿。
「マズ…ッ!」
乾いた銃声が洞窟に響いた。
「あれ?どこだ此処…?」
見覚えの無い場所に陽介は立っていた。
自分は確か衛宮切嗣に撃たれて…
「死んだのかな俺…つーことは此処死後の世界?なんか想像したのと違うけど…」
青を基調といた部屋。いや、よく見たら部屋ではなくテレビで見るようなリムジンの中だった。
サイドにはアルコール類のような飲み物とグラスが置かれ、中央にはテーブルがある。
そのテーブルの先に視線を移すと…
「ようこそ我がベルベットルームへ。私はこの部屋の主イゴールと申します」
「うわあ!?目デカっ!鼻長っ!」
明らかに人間でない生物が座っていた。
大きく見開かれ血走った瞳にこれまた長い鷲鼻の老人。
白い手袋をつけた両手を鼻の下に組んでこちらを見据えていた。
「なに、ここ何処!あんた誰!?」
「ここは物質と精神の狭間の世界。私はこの部屋の主イゴールと申します。わけあって貴方様をここにお呼びしました」
「…いや意味が解らない。ていうかここ死後の世界?やっぱおれ死んで―――」
「ご安心ください。貴方様はまだ生きておられます。ここは外の世界とは時間が切り離されておりますので、此処でいくら過ごそうと外の世界に影響はございません」
「生きてる…よかった。えっとイゴールさん?なんで俺を呼んだんっすか?心当たり全くないんすけど」
「貴方をお呼びしたのは、あるお客様の『お願い』を果たすためでございます。ここは本来『契約』を交わした方のみが訪れられる場所。本来なら契約をなさってない貴方はここの来ることが出来ないのですが…」
そういってイゴールはゆっくりと陽介のポケットを指差す。
指されたポケットに手を突っ込むと、いつ手にしたかわからない鍵が握られていた。
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「それは本来のお客様の持ち物。けれどそのお客様は貴方に託されたようだ。ゆえに、このベルベットルームに入ることが出来た」
「その…本来のお客さまってもしかして…」
「左様、鳴上悠様でございます。彼がここに来て、私たちにお願いと言伝を頼まれて行きました。あなたの力になって欲しいというお願いをね…」
「悠…あいつ…」
「あなたが彼に渡された力は『ワイルド』。他者との絆を育むことによってより大きな力となる特別な力。もっとも、あなたは本来の使い手ではないので制限はございますが…あなた様の旅の助けになるでしょう。
おお…そうだ、紹介を忘れておりました。こちらはマーガレット。私の手伝いをするものです」
「マーガレットと申します。あなた宛に鳴上悠様からの伝言をお伝えします」
「悠からの伝言…」
「では申し上げます。
『陽介、これが俺に出来る最後のことだ。必ず生きて帰れ。それから…負けるなよ、相棒』―――
以上となります」
「ふふふ素晴らしい。彼は確かな絆を築いたのですな。いやはや、死して尚残る絆。大変素晴らしい」
くそ…反則だこんなの。
俺は最後まであいつに助けられて…
「さあ、お目覚めなさい。あなたの旅はまだ続くのだから」
不意に意識が引っ張られる感覚。
もう眼が覚めるらしい。
「あの、イゴールさんにマーガレットさん。本当にありがとうございました!」
「あなたの旅路が、素晴らしい結末を迎えんことを…」
衛宮切嗣は目を見開いていた。
アーチャーと交わした作戦はうまくいっていた。
天井を爆破させ落石を起こしランサーとマスターの動きを封じる。その隙にアーチャーがライダーとランサーを、僕がマスターの方を始末する。
実際は策とも呼べない穴だらけの作戦だった。
アーチャーがライダーの動揺を突けるかの時点ですでにギャンブルじみていたし、仮にそれがうまくいってもランサーのほうは爆弾ナイフでは本当に足止めが出来るかわからなかった。
また僕のほうもマスター殺しは成功するとは思わなかったので、最悪ペルソナだけでも破壊すると起源弾を撃つつもりだった。
ところが実際はライダーは大きく吹き飛ばされうまくランサーたちと離すことが出来た。
またアサシンもなんの打ち合わせをしていなかったのにもかかわらず、最良のタイミングでランサーの動きを封じそのマスターをランサーたちから引き離してくれた。
ペルソナが解除された今、一発限りの起源弾ではなく連射の利くワルサーが有効だと判断しランサーのマスターにむけ発射した。
完璧なタイミングだったはずだ。
しかし回避不能な一撃を防いだものに、思わず思考停止に陥った。
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それは巨大な黒い影だった。
いや、よく見ると影だと思っていたのは黒いコートのようなもので、どこか応援団長を彷彿させた。
手には矛が握られておりその矛でワルサーの銃撃を防いだと思われた。
その姿はよく知っている。
そのペルソナは切嗣にとって忘れられない物だった。
「なん…だと…」
あれはすでに死んだはずの鳴上悠のペルソナ。
それがなぜここに現れる…!
「悠……ありがとう。お前の力、使わせてもらうぜ!」
大きく振りかざした矛に半ば反射的に固有時制御を発動させ回避する。
なおも追撃をかけるイザナギに向けて起源弾を発射するが、最低限の動きで回避された。
だがもともとかわさせるために放った一撃だ。
その隙に再び固有時制御を使い大きく離れた。
「馬鹿な!心象風景の具現化は1人1人違うはずだ…っ!なぜ鳴上悠のペルソナをお前が使える!?」
「はんっ!友情パワーだよ。あんたにはわかんねえだろうけどよぉ!イザナギ!」
イザナギに抱えられた陽介はアレックス達の元まで後退する。
その勢いのままアサシンに向けてアマノヌボコを振り下ろすが間一髪で回避され並行世界に逃げられた。
「陽介くん大丈夫!?」
「マスター、それはいったい…?」
「話は後だアレックス。動けるか?」
「少し時間をくれれば動けるようにする。それまでは…」
「俺が守ればいんだな。ライダーは?」
「無事だ。何とかアーチャーを押さえ込んでいる」
見ればライダーはアーチャーと“世界”の二面がけに防戦だが凌いでいた。
「ならまずは…イザナギ、マハラクカジャ!続いてマハタルカジャ!」
ペルソナの補助魔法をかけライダーの援護をする。筋力、耐久、魔力が上昇し目に見えてアーチャーの猛攻を捌いていった。
「チェンジ……スサノオ、マハスカクジャ!ディアラマ!」
「二つだとっ!」
カードを入れ替えるようにペルソナをスサノオにチェンジした陽介は、さらに敏捷値をあげ傷を癒す。
幸運を除く全てのステータスを上げ回復したたライダーは、反撃に打って出た。
「これでライダーの方は―――」
「マスター、来るぞ!」
また新たに分身を生み出し終えたアサシンが三体こちらに襲い掛かってきた。
衛宮切嗣も反対方面から銃を構え掃射する。
暴風を敵ではなく自分たちの周りに生み出し即席の結界を作った陽介。
銃弾は全て弾き飛ばされアサシンは荒れ狂う暴風にたたらを踏む。
-
「これで少しは持つ…」
「上出来だマスター。後は…」
腕をARM化させ固定された足を切飛ばすアレックス。即座に再生が発動し元の状態に戻った。
「どうするマスター。このままではライダーの援護が出来んぞ」
「ライダーを信じるしかない。俺たちはアサシンと衛宮切嗣をどうにかするぞ」
「それしかないか…泉、俺の側を離れるな。必ず守り抜く」
「アレックスさん…ううん、私も出来ることをやるよ」
そういってカンドロイドを取り出すこなた。
あらかじめ用意しておけばマスターでも使うことが出来るのがカンドロイドの強みだ。
「無茶はするなよ…マスターいつでも行ける」
「私も大丈夫っ!」
「んじゃまぁ…行きますか!」
竜巻を解除しアサシンの分身体にスサノオを突進させる。
そのまま切り飛ばされ消滅するアサシン。だがその隙に別の分身体アサシン2体と切嗣がマスターへ、D4C持ちの本体はスサノオに殴りかかった。
ガードし反撃するが一瞬早く平行世界に逃げられる。
「ハァ!」
ARM化させた腕が銃弾を弾き飛ばしアサシンを吹き飛ばす。
動き出したクジャクカンドロイド、タコカンドロイドが切嗣に纏わりつくが、消滅したアサシンから拾った拳銃を発射し次々と打ち抜いて行く。
ペルソナを戻した陽介は手にしたスパナで切嗣に殴りかかる。
それをかわした切嗣はお返しとばかりに銃弾をばら撒くが、敏捷値を底上げされた陽介は全てかわしきる。
そのまま勢いよく切嗣に向かって走る陽介に再び銃弾を発射する。
空中へ勢いよく飛び上がった陽介に追撃をかけるべく銃弾を放つが、空中でペルソナを発動。それを足場に大きく跳躍し背後に回りこんだ。
そして手に持ったスパナを勢いよく振り下ろす。
「グッ!この……」
咄嗟に鉈でスパナを防ぐが、如何せん身体能力を底上げした陽介に追い詰められて行く。
アサシン達もランサーの足止めに精一杯でこちらの援護は期待できない。
絶対絶命かと思われたその時。
「いとも容易く行われるえげつない行為(D4C)」
平行世界へ逃げたアサシンが陽介の服の間から出現し、背中を袈裟切りにする。
痛みで動きが止まった陽介のスパナを切嗣が蹴り上げた。
そのまま後ろからアサシンが、正面から切嗣がそれぞれ攻撃する。
スサノオで鉈を防ぐが背後から来るアサシンには手が回らない。
この距離ではかわすことは不可能と勝利を確信したが…
-
「まだだっ!」
陽介は腰に手を伸ばし取り出した武器を使い迫り来るD4Cを弾き返す。
そのままスサノオと同時に回るようにアサシンと切嗣を切りつけ吹き飛ばした。
「なにっ!?」
ばかな…アサシンに傷を負わせただと…。まだ宝具を隠し持ってたというのか。
回復魔術を自分にかけながら敵を見る切嗣の目が、再度驚きに見開かれることになる。
「それはっ!セイバーのマスターの剣!」
陽介の両手に握られているもの。
それは白と黒の夫婦剣だった。
銘は干将・莫邪。
自分が死ぬ間際、衛宮士郎が最後の力を振り絞り投影したとっておきの切り札。
後は任せたと散った友の思いに報いるために、なんとしても勝つ!
イザナギにペルソナを切り替えアサシンに、自身は切嗣に向かう。
ペルソナの同時操作は骨が折れる作業だ。けれど泣き言など言わない。例え倒すことは不可能でも全身全霊をかけてアサシンを押さえ込む。
干将・莫邪は驚くほど使いやすい武器だった。
普通に振るう分には勿論の事、互いに引き寄せあう特性はスピードとトリッキーな動きが武器の陽介とは最高に相性が良い。
無論切嗣も鉈を振るい銃を掃射して反撃を試みるが、そもそもの身体能力が違う。
狙撃ならば話は違っただろうが接近戦は切嗣の得意とするところではない。
ならば固有時制御で距離をとろうとしても…
「Time alter――double accel!」
「デカジャ!」
普段の倍速で動けるこの魔術も、陽介には通じない。
巻き戻しの現象こそ起こらないが無駄に魔力を消耗するだけに終わる。
無論アサシンもその隙をついて攻撃するが、如何せん即座にガードされ、さらには耐久値が底上げされているイザナギを瞬時に倒せるほどの能力をアサシンは持ち合わせていない。
「終わりだっ。衛宮切嗣っ!」
そのまま干将・莫邪を振り下ろそうとし―――
突然の閃光に視界を封じられた。
「―――!!?眼が…っ!」
「切り札は最後まで温存しておくものだ」
至近距離で放たれた閃光弾を間近で浴び動きの止まる陽介。
その隙を見逃す二人ではない。D4Cの拳がラッシュを浴びせイザナギを吹き飛ばし、切嗣の手にした鉈で陽介の身体をが袈裟切りに引き裂いた。
そのまま頭を潰れたスイカのようにカチ割ろうと鉈を振り上げ――――咄嗟にその場を飛び退いた。
アサシンを片付けたランサーの放ったブリューナグの槍が、先ほどまで切嗣のいた場所を通過した。
「そこから離れろ!」
再度放たれるブリューナグの槍。アサシンは平行世界に逃げ込み、切嗣は固有時制御を使い回避する。
その隙にランサーたちは合流した。
「無事かマスターっ!?」
「しっかりしてっ!」
「だいじょーぶだいじょーぶ。スサノオ、ディアラマ」
すぐに傷を塞ぐが失った血液までは戻せないため若干血の気が引いているが、まだその眼は闘志を燃やしている。
「しっかし手強いな…。こっちのが有利なのになかなか決定打が撃てない」
「相手はかなりの修羅場を潜っているからな。経験なら向こうがはるかに上を行く」
「なるほどな。けど負けるわけには…」
「いかないなマスターよ」
「なんか男の友情って感じだね。ちょっとうらやましいかなっ」
お互いに笑いあい、そしてランサーはアサシンへ。陽介は切嗣へと向かった。
こなたは再びカンドロイドを発動させ自分の周りに護衛役を数体、陽介の援護に数体送り込んだ。
因縁の戦いはまだ終わらない。
-
ライダー対アーチャーの戦いは佳境に入ろうとしていた。
スタンドとの同時攻撃を繰り出すアーチャーに対し、ライダーはトラクローソリッドとメダジャリバーを使い分け捌いていく。
高いステータスとスタンドによる数の有利をもつアーチャーだが、全てのステータスを底上げし傷を癒したライダー相手に決定打を与えられずにいた。
ライダーは決して自分からは踏み込まず防戦に徹している。
捌き、逸らし、時に大きく跳躍して距離をとるライダー。猛攻を仕掛けるアーチャーは次第に焦りが生まれた。
「どうしたライダー、逃げてばかりでは勝てんぞっ!」
「そういうあなたは…っ、余裕がなさそうです…ねっ!」
お互い一旦距離をおこうと思い跳躍し離れる両者。
「いいのかライダーよ。お前たちのマスターが危険だぞ?」
「皆のこと信じてるんで…それに危ないのは切嗣さんの方じゃないんですか?」
痛いところを突かれたと顔を僅かに顰めるアーチャー。
そう、実際のところはランサー達対アサシンとマスターではこちらが圧倒的に不利なのだ。
唯でさえ高いステータスを誇るランサーに加え、様々な援護が出来るランサーのマスター。
さらには足手まといと思いきやカンドロイドの力をうまく使いこなし、牽制と援護を行うライダーのマスター。
隙が少ない向こうに対し、こちらは本来のスタイルが暗殺なサーヴァントとマスターの即席のコンビ。
アサシンではランサーを足止めすらギリギリで、マスターの方は相性が悪いのか幾つもチャンスがあったのにも関わらず全てその機会を逃していた。
このままでは遠くないうちに討ち取られると危惧したアーチャーは早急にライダーを仕留めようと攻撃するが、それを分かっているのか防御に徹している。
(とはいえこのままでは本格的にまずいっ!こうなれば…)
アーチャーは大きく跳躍し丁度ライダーの真上の位置になった所でナイフを取り出し…。
「喰らえいライダー!全弾放射だっ!」
キャスターお手製の爆弾ナイフをスタンドと共に次々と投擲して行く。
直撃するものをメダジャリバーで弾くが、雨あられと次々に爆発するナイフにさすがにダメージが蓄積していく。
降り立ったアーチャーは一気に肉縛し―――
「気化冷気法っ!」
下半身を氷付けにしライダーの動きを封じる。
「取ったぞライダーっ!URYYYYYYYYY!!!!」
スタンドとの同時攻撃でライダーを一気に追い詰めるアーチャー。このまま消滅させようと心臓と頭部に向けて拳を振りかざしたその時!
ライダーの危機を見た陽介が、イザナギの持っていたアロンダイトをアーチャー目掛けて投擲する。
猛スピードで迫る宝具に咄嗟に迎撃を選択するアーチャー。
ほんの僅かに出来たチャンスを、ライダーは手繰り寄せる。素早くスーパータトバコンボを解除し、ラトラータコンボに切り替える。
「ここだっ!」
そしてライオンヘッドから放たれた強力な熱線がアーチャーを焼き尽くす。
「GIYAAAAAAAAッ!!!」
半径数キロメートルを瞬く間に溶かし蒸発させる高熱放射は、アーチャーの身体を焼き尽くし深手を負わせる。
足の氷を溶かしたライダーは再びスーパータトバコンボに変身した。
全身のダメージがかなり響いている。しかし、ここで膝をつく訳にはいかない。
守れずに死んでいった仲間のため。自分を信じて戦っているパートナーのためにも諦めるわけにはいかない!
辛うじて立ち上がったアーチャーに、今度はライダーが攻撃を仕掛ける。
「うぉおおおおおお!!」
「ぬぅうううう!!」
『スーパータトバラッシュ』
両腕のトラクローソリッドを振り回しアーチャーを引き裂き、バッタレッグを変形させ跳躍する。
そして背中に赤い翼を出現させとび蹴りを急降下に放つ。
必殺技を繋げて放たれる連続攻撃に、度重なるダメージを受け再生が碌に間に合わないアーチャーの身体に直撃した。
「どうだっ!」
大きく呼吸を乱すライダー。対するアーチャーは立ってはいるが肉体の再生が追いついていない。
(いかん……さっきの様な大技をまた喰らえば再生する間もなく消滅してしまう…っ!)
限界近くまで消費した魔力は枯渇寸前まできている。
切嗣の供給量は決して少なくないにも関わらず消耗が激しすぎるため追いつかないのだ。
(また先ほどと同じ調子で攻められてきたら…)
アーチャーは生き残る道を模索する。
-
場面は巻き戻る。
ランサー対アサシン。花村陽介対衛宮切嗣の戦いは、ランサーたちに分があった。
もともとの能力差に加え戦闘スタイルの差、さらにお互いの能力に対する情報差。これら三つの要素がアサシン達を追い詰めて行った。
そもそも花村陽介はまともに戦ったのは初戦のキャスター・アーチャー陣営の戦闘と、ゼフィールとのタイマンのみ。
あとは常に後方で補助や回復などに徹して進んで攻撃は行わなかった。(普通のマスターは戦うことはしないのだが)
ゆえに彼の情報はかなり限定され、サブラクが目視した範囲。
すなわち、心象世界の具現化が出来る事。敏捷値を上げ回復魔法を使えること。この二点だけである。
対して切嗣の情報はかなりの範囲で知れ渡っていた。切嗣の手札も手段も解っている。
解っているのなら対策が取れる。
その圧倒的なまでの情報差は、誰とも組む事をよしとしなかった切嗣には取りようが無いものだった。
その結果訪れるもの。単純明快な心理。すなわち―――
「おらぁっ!」
「ぐぅ…」
「むんっ!」
「ガハッ!!」
陽介の手にした干将・莫邪が切嗣の身体を次々に切り裂いていく。
ランサーのARM化した両腕がアサシンの分身体を次々に屠っていく。
隙を見てこなたに近づこうとしたアサシンに向かって投げられた干将・莫邪がアサシンに突き刺さり絶命させる。
それを好機とみて鋼鉄の腕から弾丸を放とうとした切嗣に向かってランサーのブリューナグの槍が放たれる。
「Time alter――double accel!」
固有時制御で大きく移動し距離をとる切嗣。その隙にタカカンドロイドに運ばれた干将・莫邪を再び手に持つ陽介。
その間にも次々とアサシンの数は減らされて行く。
「このまま一気に倒す!」
ペルソナを前面に出して突っ込ませその影にかくれて接近する。
切嗣から放たれた弾丸はイザナギに決定打を与えられずに地に落ちて行く。
そのまま一気に押そうとしたところで、アーチャーに追いつめられて行くライダーを視界に映す。
「させるかぁ!」
イザナギに持たせたアロンダイトをアーチャー目掛けて投擲する。
それをチャンスと捉えたか、銃を乱射しながら接近する切嗣に陽介は回避行動をとる。
至近距離に接近され振り下ろされる鉈。ペルソナの防御は間に合わない。
咄嗟に干将・莫邪で防御した瞬間。
ズドン!
「がっ…ゴフ……」
鈍い音が響き渡った。
コートの内側という死角になった所から撃たれた弾丸は、陽介の胴体を貫通し真っ赤に染め上げた。
吐血し膝をつく陽介。ランサーたちはこのタイミングでは間に合わない。
切嗣は止めを刺すべく再び鉈を振り下ろして―――
「まだだっ!」
干将・莫邪を交差させ鉈を受け止める。
そのまま立ち上がる勢いを利用し鉈を弾きとばす。
「おらぁあああああ!!」
振り上げられた干将・莫邪を咄嗟に鋼鉄の腕で防ごうと試みるが―――
「……コフっ……ガハっ…」
振り下ろされた一撃に鋼鉄の腕ごと切られ深手を負う切嗣。
「イザナギっ!」
顕現したイザナギの矛が振るわれる。
反射的に発動した固有時制御の回避も間に合わずアーチャーのいるところまで吹き飛ばされた。
「マスターっ!?」
自分と同じく重症を負ったマスターに舌打ちするアーチャー。
これでこちらの敗北は濃厚になった。さらにそこへアサシンも飛ばされてくる。
最後の一体となりランサーによってぼろぼろにされたその様子はとても戦闘を続行できるとは思えなかった。
-
「追い詰めたぞアーチャー」
余力を残したランサーがこなたを庇うように近づいて来る。
ペルソナで傷を癒したライダーと陽介はなにがあっても対応できる間合いで立ち止まった。
「貴様らっ…」
「終わりだアーチャー。もうお前たちに逃げ場は無い。そして見逃すつもりも無い」
ブリューナグの槍を右手に集中させいつでも発射できるよう構える。
そして全員消し飛ばそうとしたところで―――
「お前たちは自分が何をしているのかわかっているのか?」
「命乞いかアサシン?聞く道理はないな」
「お前たちは聖杯を破壊しようとしているのだろう?それはなぜだ?殺し合いを起こすからか?」
自分の命が今にも消えそうだというのにも関わらずアサシンは言葉を重ねる。
「お前たちには私が自分の目的の為に聖杯を欲していると思っているかもしれない……だが私は決して聖杯を私欲の為に手にするわけではない!
すべては我が祖国、アメリカ合衆国の国民の為!守るべき民の幸福のために必要なのだ!」
少しずつ熱を上げるアサシンにランサーも陽介もこなたも、切嗣やアーチャーでさえなにも言葉を挟めなかった。
「わたしの行動は「私利私欲」でやった事ではない。「力(パワー)」が欲しいだとか 誰かを「支配」するために聖杯を手に入れたいのではない。
わたしには「愛国心」がある。 全ては祖国のために「絶対」と判断したから行動した事・・・」
「そ……それで他の人が傷ついたり死んじゃったりしてもいいっていうのっ!?」
「お前たちも体験したことがあるはずだ!「陽(ひ)」のあたる所必ず「陰」があり・・・幸福のある所必ず反対側に不幸な者がいる・・・・・・・
「幸せ」と「不幸」は神の視点で見ればプラスマイナス『ゼロ』!
それが人間世界の現実であって あらゆる人間が「幸せ」になる事などありえない。
「美しさ」の陰には「ひどさ」がある
いつも「プラス」と「マイナス」は均衡しているのだ
聖杯がッ!仮に地球の裏側のどこかのルール無用の『ゲス野郎ども』の手に渡ってみろ!
自分の欲望でしか考えないゲスどもの事だ・・・
国の将来にどれだけ残酷な出来事が集まってきて起こる事になるのだろう・・・・・・
それだけは阻止しなくてはならないッ!わたしの大統領としての絶対的『使命』は!
この世界のこの我が国民の『安全を保障する』という事!
それひとつに尽きるからだ! 」
なおも反論しようと試みたこなたは、けれどなにも言い返すことができず口を閉ざした。
無論彼らのした事が許されることではないが、このアサシンの言い分は一面では正しいと認めている自分がいるからだ。
少なくとも寝落ちで戦争に参加した挙句、願いも無くただ生きて家に帰りたい自分よりはよっぽど正しい事をしている。
けれどアサシンの言い分を肯定してしまえば、自分たちのしてきた事が誤りだったと認めてしまうことになる。
それは決して認めてはならない事だが、けれど今の自分にはアサシンを間違っていると断じる言葉が見つからなかった。
「誰が正しくて、誰が間違ってるってとっても難しいことだと思います」
「映司さん……?」
そんな時真っ向からアサシンを見据えたライダーの声にこなたは目を向ける。
いつもと変わらない口調の中に、どこか悲しさを含ませながらも彼は言葉を続けた。
「自分が正しいと思うと周りが見えなくなって、正義のためなら何をしても良いって思ったり、きっと戦争もそうやって起こっていくんです。
昔、世界中を旅してたとき色んな国を見ました。
あなたのいうように、自分の国を守るために平気で他の国の人を傷つける所もありました。
生きるために盗みをする子供を見ました。
守るために悪事を働く人を見ました。
信じる正義のために人を殺すことがあることも知ってます。
無浅慮な善意がより人を不幸にしてしまう事だってあります。
貧しい国に募金してたつもりが悪い人に使われちゃってたり。ひどいときは、内戦の資金になってたり。
それで思ったんですよね。人が人を助けていいのは、自分の手が直接届くところまでなんじゃないかって」
だから……
「人を助ける為に聖杯を使ってはいけないと思います。平和や幸せは誰かに押し付けられるものじゃない……。ましてや奇跡に頼って叶えていい事じゃないっ!」
「……決別ということか…」
立ち上がり構えるアサシン。
「我が心と行動に一点の曇りなし・・・・・・・・・・! 全てが『正義』だ」
スタンドを構え脱出のタイミングを計り―――――
背後から手刀で貫かれた。
目を見開き後ろを振り向いた先にいたのは―――
-
目を見開き後ろを振り向いた先にいたのは―――
「貴様……アーチャーっ…」
「お前が散々喋ってくれたおかげで時が稼げた。お陰で動けるくらいには回復したぞ、礼を言おうアサシンよ」
焼け焦げた皮膚は元の色に戻り激しい出血も収まっていた。
アサシンが話術でチャンスを掴もうとしている間アーチャーも何もしなかったわけではない。
残る魔力を全て再生にまわし動く機会を窺っていた。
「フンっ、愛国心だと。くだらんなぁ…そんな便所の紙にも劣る感傷など持ち合わせておらん。このDIOにとってもっとも重要なのは勝利し支配するということ!それだけだっ!!」
指先から血液を吸い取り回復して行くアーチャー。
このままでは平行世界に逃げる間もなく死んでしまうと絶望したとき―――
『令呪をもって命ずるっ!そこから脱出しろアサシンっ!!』
ジョン・バックスからの令呪により空間転移を起こし姿を消した。
残されたアーチャーは指先の血液を2度3度舐め取ると、何かに確信したように高らかに笑った。
「フハハハハハっ!素晴らしいぞ……出会いとは引力っ!やはりアサシンと私は出会うべくして出会っていたっ!取り込んだぞ…聖人の遺体をっ!!」
血液に宿った記憶の残滓からみつけた聖人の遺体の情報。
そしてファニー・ヴァレンタインの心臓部に融合していた『遺体の心臓部』
その力の欠片を取り込んだアーチャーはスタンド“世界”を顕現する。
「欠片とはいえこの「力(パワー)があれば……いけるぞ…やはり世界はこのDIOを選んだのだっ!生まれ変われ…“世界”よっ!!」
瞬間、“世界”から眩い閃光があふれ地下大空洞を光に包む。
なにが起こっているのかランサーもライダーも、陽介にもこなたにも、切嗣にさえ解らなかった。
ただ1人、DIOは生まれ変わる“世界”に祝福を与えていた。
「これはもはや“世界(ザ・ワールド)”にあらずっ!名づけよう……“天国(メイドインヘブン)”とっ!!」
-
そうして生まれ出たもの
後ろ半分が無いケンタウロスのような下半身に上半身が人形のヴィジョン
顔には目の変わりに時計のような計器
新たなスタンド“天国”は産声を上げるように嘶いた。
「アーチャーのスタンドが……進化した!?」
「ちょっおい!なんかわかんねえけど不味くねえかっ!?」
誰もが混乱する中、ランサーの判断は素早かった。
一気にアーチャーに接近し、ARM化した両腕を振るう。
だがそれはアーチャーに届くことなく空を切る結果に終わる。
「無駄だランサーよ。取り込んだ『遺体』が欠片のため不十分な進化だが……『時は加速する』。もはや誰にも私は止められない」
素早く声の方向にブリューナグの槍を放つが、既にアーチャーの姿は消えていた。
次の瞬間ARM化した腕が断ち切られる。
「グゥッ!?」
「ランサーさんっ!」
突然の攻撃に同様する一同に今度はライダーに通り過ぎざま攻撃を仕掛けるアーチャー。
反応し切れなかったライダーの胴体に深く切り傷が刻まれる。
「全員集まれっ!バラバラになるとマズイっ!」
素早くマスター達を回収するランサー。ライダーも怪我を庇いながらマスターの護衛につく。
「不味い。なんて速さだ……。反応が追いつかない」
「あのスピードが上乗せされた攻撃は厄介ですね…。救いなのは“世界”に比べてパワーが無いことでしょうか」
「今はまだ能力のテスト動作みたいだが…何とかして動きを止めないと全滅するな…」
起死回生の一手を模索するが妙案は浮かばない。
いつの間にか衛宮切嗣もどこかに隠れてしまっているが探している暇は無い。
「とりあえずペルソナ!マハラクカジャ。チェンジして…マハスカクジャ!」
ペルソナの補助魔法のかけ直しで耐久値と敏捷値を上昇させる。
どれほど効果があるかわからないが無駄ではないと信じたい。
なにがあっても動けるよう警戒する中、再び上空から爆発が起こった。
次の瞬間猛スピードで落下する岩石。先ほどと同じ光景だが、加速した世界では物質の動くスピードも加速する。
先ほどまで余裕をもって迎撃できた落石はいまや巨大な銃弾のように降り注ぐ。
咄嗟にマスターを庇った次の瞬間、再び深く切り刻まれるライダー。
突然の深手に反応が一歩遅れ今度は右腕を切られた。
それでもアーチャーを探すが、辺り一面に降り注いだ落石の陰から陰に移動し視認できない。
ライダーの傷を治そうとした陽介を庇い今度はランサーがダメージを受ける。
「いかん……っ。このままではっ!」
-
手当たり次第ブリューナグの槍を放つが“天国”を捉える事は出来ない。
「ふんっ。なかなか楽しめたがそろそろ終わりにしようか…。この能力は天国に到達するための能力なのでな、お前たちごときに使う力では無い」
尊大な態度をとるアーチャーだが実際はそこまで余裕があるわけではない。
アサシンから魔力を奪ったとはいえ元々枯渇寸前だった状態。さらにマスターである衛宮切嗣も度重なる戦闘と宝具の連続使用によって大きく疲弊していた。
事実、外の様子が分からない大空洞だったゆえにランサーたちは知らなかったが、常に時を加速させ動いていたわけではない。
必要な所でのみ加速させ攻撃し隠れ、あたかも常に加速状態であるかのように見せかけていたハッタリだった。
(だが大体の能力は把握した。あとはこいつらを始末するのみ……)
再び時を加速させ動き出すアーチャー。
(まずはお前からだライダー。この俺をさんざんコケにした事を地獄で詫びるがいいっ!)
そしてライダーの心臓目掛け刺突を繰り出す刹那―――――
ランサーがライダーの間に割り込み庇い、心臓を破壊された……。
「捕まえたぞっ……アーチャー……」
「貴様ランサーっ!」
心臓を貫いたアーチャーの腕をしっかりと握り、僅かに吐血しながらもニヤリと笑うランサー。
「プライドの高いお前なら必ず、真っ先にライダーを狙うと確信していたぞアーチャーよ」
そうして再生する肉体を利用しアーチャーの腕を固定する。
「こうしてしまえば…いくら時を加速させても関係ないっ!終わりだアーチャー!」
「舐めるなランサーっ!!」
ブリューナグの槍が直撃する刹那、“天国”を使いランサーの腕を殴り軌道を僅かに逸らす。
身体の一部は消えたが危機を乗り切ったアーチャーは自らの腕を切飛ばし脱出する。
「ちょっぴり焦ったぞランサーよ。だが唯一のチャンスを逃したなっ!」
再び加速状態になったアーチャー。ランサーは素早く第二波を放つがかわされる。
「『時は加速する』。これで終わりだっ!」
そのままバラバラに切り刻もうとして――――突然加速状態が維持できなくなる。
いや、よく見たら魔力の供給が途切れかけていた。
マスターの細いパスの先を辿れば、そこは先ほどランサーの攻撃の延長線上。
「貴様っ……まさか……初めからマスター狙いで!?」
「悪いが俺はマスターたちやライダーと違って善人では無いのでな。使える手は使わせてもらう」
足元にはライダーのバッタの使い魔。あれで恐らくマスターの位置を特定したのだろう。
「畳み掛けろライダーっ!」
「ハイッ!」
メダジャリバーがアーチャーの両足を切断する。
片腕と両足を失ったアーチャーは地べたに這い蹲る。そこへイザナギと共にランサーのマスターが突撃してきた。
まずい……逃げなくてはっ…
衛宮切嗣はもうだめだ、そう遠くないうちに死ぬ。
契約を破棄して隠れるのだ。枢木スザクでもルルーシュでも誰でもいい…
新たなマスターを手に入れなければ消えてしまうっ!
片腕だけで跳躍し出口へと向かうアーチャー。
だがそれよりも速くブリューナグの槍が出口を破壊、ライダーの渾身の蹴りがアーチャーを吹き飛ばす。
「悪いが…今さら逃げるのは無しだ」
「俺たちも命削って戦ってるんだから、最後まで付き合ってもらいます」
もうイザナギは目前まで迫っている。
近づいてくる死の影・・・
「調子にのるなっ!」
空裂眼刺驚(スペース・リバー・スティンギー・アイズ)をイザナギ目掛け発射しようとしたその時…
「おねがいタコさん!」
こなたが放ったタコカンドロイドがアーチャーの視界を塞ぐ。
視界を塞がれたアーチャーは目標を誤りイザナギの肩を貫通するだけに終わる。
-
「この……カス共がぁあああああ!!!」
「最後は……お前自身の手で決めろマスター…」
ランサーの声に呼応するように力を高めるイザナギ。
全ての力を……この一撃に込めて!
「馬鹿なっ!このDIOが……このDIOがぁああああ!!?」
「貫け!……仲間の敵だっ!!」
限界を超え放たれた渾身の一撃はアーチャーの頭部を粉砕し、続けざまに干将・莫邪がDIOの胴体を切断、DIOの身体を消滅させた。
アーチャー(DIO)@JOJOの奇妙な冒険 消滅】
消えて行く……消えて逝く……。
身体が少しずつ分解されて行く。
胴体に大穴が開き傷口から止めどなく出血していく。
だがそんな状態でも、驚くほど冷静な自分がいた。
思ったよりもあっさりと死の覚悟が決まっていたのだろうか…
おそらく違うと考える。
これは虚無感だ。あの時、ライダーの言葉がずっと耳を離れなかった。
信じたくないが認めざるえないだろう。
僕は……どうしようも無く間違っていたのだと…
いつからこうなってしまったのだろう…
僕はただ、平和な世界が見たかっただけなのに……
アイリ…あの時君を連れて逃げていたら、違う未来があったのかな?
僕と、君とイリヤと三人で幸せに暮らす。
そんな『全て遠き理想郷』の未来があったなら…次こそ…必ず……
「ああ…アイリ……イリヤ…」
視界が霞んでいく僕が最後に見たものは……
最愛の妻と娘。そして………
「ごめんね…………士郎………」
僕の心を救った息子だった。
【衛宮切嗣@fate/zero 死亡】
-
「終わったな……」
「ああ……そうだな……」
静寂に包まれた空間。
アーチャーの消滅を見届けた陽介の顔はどこか重い。
「後悔しているか?」
「…いや。アーチャーを倒した事は後悔なんかしねえし、俺の手でケリをつけたかった事だ」
でも…
「あいつ…衛宮切嗣は…そりゃやった事は許されないし理解も納得も出来ないけどよ。あいつにも譲れないものがあったんだろうな…」
そしてそれを承知で戦ったのは俺だ。
相手の願いも理想も踏みにじって生き残り、敵を討つことを優先した。
「やっぱ慣れねえな…人を死なせるなんてよ…」
「その気持ちを忘れるなよマスター。お前は…俺のようにはなるな…」
「アレックス?」
ピキッ……ピキピキッ……
「ねぇ…なんか変な音がしてない?」
「ちょっと危ないかな…こなたちゃん、側に…」
異変は上から聞こえてくる。その音は徐々に大きさを増し地響きのような振動が発生する。
アーチャーの二度に亘る天井の爆破、ブリューナグの槍、そして複数回の暴風。
それらの要素で脆くなった岩盤が、“天国”の影響で急速に崩壊速度が加速していた。
それによって訪れる結果は……
「脱出するぞマスター。ここはもう崩れる!」
「えちょっおま…」
「ランサーさん。これをっ!」
ライドベンダーを出すライダー。本人はタジャドルコンボに変身している。
「おれがこなたちゃんを抱えて空を飛びます。ランサーさんと陽介くんはそれに乗ってください!」
「バイクって道なんかねえじゃん!」
「大丈夫。これを…」
タコカンドロイドを大量につなげ螺旋階段のように道を作るライダー。
「破片は俺が対処します。ランサーさんは操作に集中してください」
「騎乗スキルが無いといってられんか…マスター、しっかり掴まっておけ!」
「こなたちゃんも掴まって。絶対守るから」
ライドベンダーを発進させタコカンドロイドの道を進むランサー。
こなたを抱え飛翔するライダー。
激戦を繰り広げた大空洞は、完全に崩壊した。
-
「死ぬかと思った…」
「私も…」
地面に突っ伏す陽介とこなた。
ランサーとライダーは変身をといている。
「調子はどうだマスター?」
「あー……結構しんどい。ていうか眠い…」
新しいペルソナの覚醒。大量の出血による貧血。大幅な魔力消費と精神力の消耗。
限界ギリギリの状態に体が休息を欲していた。
「行くのか…?」
「はい。ランサーさん、二人を頼みます」
まだルルーシュは戦っている。
そしてアサシンはまだ健在なのだ。急いで救援に向かわなければならないがマスター達は体力の限界だ。
この中で一番速く余力を残している自分が単独で向かうことが適任なのだ。
しかしそれはこなたの側を離れる事。
不安もある。だが……
「映司さん…」
立ち上がり真っ直ぐ見つめるこなた。
「行ってらっしゃい。がんばって…信じて待ってる」
「こなたちゃん……うん、行ってくる」
お互いに強い信頼を。
約束する…必ずルルーシュを連れて戻ってくると。
ライドベンダーを走らせ仲間の元へ向かうライダー。
ランサーはマスター達をつれて寺の中に入って行く。
口には出さずとも皆心は一つ。
「絶対にまた会おう」
【深山町・柳洞寺/早朝】
【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、精神力消費(大)、貧血、強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight
“無毀なる湖光”@Fate/zero
[道具]:ミネラルウォーター、カロリーメイト、医薬品一式、大学ノート、筆記用具、電池式充電器、電池、予備の服、食料@現実
契約者の鍵@ペルソナ4
※携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました(意図的に隠された情報があるかもしれません)。
※ジライヤがスサノオに転生しました。
※イザナギを覚醒しました。他のペルソナを使えるかは他の書き手にお任せします。
【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)
[装備]:携帯電話 カンドロイド複数
【ランサー(アレックス)@ARMS】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、ARMSの進化(進行度・中)
※対ARMSウイルスプログラムへの耐性を獲得。
-
【深山町/早朝】
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)
[装備]:スーパータカメダル、スーパートラメダル、スーパーバッタメダル
※ディケイドのファイナルフォームライドにより、スーパータトバコンボ解放。
柳洞寺の山の中に動く人影。
アサシンのサーヴァント、ファニー・ヴァレンタインである。
胸元は応急処置したとはいえ傷が深く、魔力の消耗も激しかった。
「だが…幸運な方か…。市長が令呪を使ってくれなければ終わりだった。市長…?くそ、意識を失っている」
携帯に電話をかけてもつながれず仕方なく諦める。
だがそれもしょうがないかと納得する。
なにせこの戦いで合計10体近くの分身を生み出したのだ。
無論ほとんどが囮や牽制用のほとんど魔力が無い存在だったとはいえ、魔力枯渇の危険性は十分にあった。
生きているだけで御の字というものだろう。
「とはいえ…これ以上私を連れてくれば本当に市長が死んでしまう。…やむ終えまい、作戦は失敗だ…」
アーチャーがランサーを抑えていたからこそ援護に踏み切ったわけで、本当ならライダーにやられた時点で撤退するべきだった。
しかし完全にタイミングを逃してしまいこうして敗残兵のような有様だ。
「ここで少しでも回復せねば……しかしまだ、私たちは負けてはいないっ」
全てはナプキンを手に取るため…
暗殺者は動かない…
【深山町・柳洞寺山中/早朝】
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](8人目)・魔力消費(大)、 ダメージ(大)、疲労(極大)、気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【新都・双子館/早朝】
【ジョン・バックス@未来日記】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(極大)、魔力消費(極大)、気絶、冬木市市長
[装備]:「The watcher」
[道具]:栄養ドリンク(箱)
【月の裏側】
「DIOも落ちたか……」
旧校舎の一室に備え付けられたモニター。
そこに先ほどまでの戦闘を眺める二つの影。
魔王ゼロ
英雄王ギルガメッシュ
方や淡々と…片や愉快そうに眺めていた。
「フン、王を自称する死体が消えたか。あれは我が相手に取るのもおぞましい汚物よ」
「これで残るマスターは5人…あの衛宮切嗣もここで脱落か…」
「なんだ雑種よ。あれがお前の一押しだったのか?確かにあれもなかなか愉快な道化であった」
クックックッと笑う金ぴか。
「あの者の魂は確かに興味深かったが…願いを叶えることなどできぬと初めから分かっていた」
あくまで淡々と話すゼロ。
そこに新たな人物がやってくる。
-
「興味深い話だね。ぜひ私にも聞かせて欲しい」
黒いカソックを着た大柄な神父―――進行役の言峰綺礼だった。
「進行役のNPCか…教会はどうした」
「もはやあそこにはほとんど意味が無くなったからね。代理のNPCを置いてきたのだよ。それよりも先の話だが、どういう事なのだ?」
「そのままの意味だ。衛宮切嗣はたとえ勝ち残り優勝したとしても、願いを叶える事が出来ない」
「それは…ムーンセルが叶えられる願いを超えているという事か?」
「違う…たとえば他の参加者が同じ事を願えば、内容は変わるがそのものにとって『恒久の世界平和』は叶えられていただろう。
衛宮切嗣だからこそ叶えられんのだ……あのマスターの魂は汚染されていたからな」
決して無視してはいい内容では無いにも関わらず、ギルガメッシュも言峰綺礼も驚いていなかった。
寧ろ納得した表情で話を聞いている。
そして単なる気まぐれか、詳細を語るゼロ…。
「マスターたちのムーンセルでの体…その体は魂をアバター化させたものだ。だが…その魂が汚染されていたとき…どうなると思う?」
「まさか…汚染されたのか?ムーンセルにとって有害なウイルスが入ったデーターみたいなものなのだろう?」
「アンリマユの汚染を受けた魂…その魂に接触したムーンセルは緊急手段として衛宮切嗣の魂を改竄した…」
すなわち、汚染が進行していない状態までの肉体年齢まで戻し…矛盾が出ぬよう記憶を改竄する。
しかし一度感染されたコンピューターが正常に作動しないように…月の聖杯もまた汚染されることになった。
「事実、私が参加者に手を加えたのはアルトリア・ペンドラゴンただ1人だけだ。にも関わらず他の参加者や会場にも影響が広がった」
例えば、唯の弱い少女でしかないのにも関わらず精神異常者のサーヴァント、ゾルフ・J・キンブリーを召還した羽瀬川小鳩
例えば、殷を滅ぼした仙女、蘇妲己のサーヴァントを引いてしまった遠坂凛
例えば、クラス制限を超えた制限を課せられたセイバー、セリス・シェール
例えば、聖杯から与えられたにも関わらず碌に現代知識を咀嚼できなかったセイバー、テレサ
例えば、一参加者の悪性情報の解体に2時間以上もかかった会場の霊脈
「ふむ、そういわれれば思いあたる節があるな。衛宮切嗣は私の存在に何の違和感も持っていなかった…拠点にしていた衛宮邸の変わりようにも違和感をもっていない」
「彼が本来来た時間軸は第四次聖杯戦争が終了して数年たっている。彼は死ぬ直前未練を抱いた。だから私の問いかけに手を取った」
「本当なら衛宮士郎のことも知っているはずだった…しかし汚染された魂ゆえに改竄され彼の情報を失ったと…」
さらに皮肉なのは、汚染が完全に除去できなかったことだ。
アンリマユというウイルスに犯された彼はたとえ優勝したとしても、ムーンセルの有害なデータとして消去されてしまう。
「彼が生き残る道は魔王の引継ぎを受け入れるしかなかった…」
「だが衛宮切嗣はそれを断るだろうね…新たな混沌を引き起こす事は衛宮切嗣の理想と真っ向から反する」
「つまりあの雑種は、どうあがいても無駄だったと…。ふん、道化極まりだな」
「いってしまえば彼は…参加した時点で敗北していたものだ…」
だとすれば酷い皮肉だ。
彼は聖杯戦争で多くの犠牲者を出し、唯一助けた義子も死なせてしまったという事なのだから…
身に余る理想を追いかけ続けた果ての結末がそれとは本当に…本当に…
「なんて………愉悦……っ!!」
口を三日月のように笑う神父
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「ほう…なかなか愉悦たるものが解っておるではないか雑種よ…」
「ふふふ…もしかしたら私の元となった人物の影響かもしれないな。彼の苦悩はとても心揺さぶる」
「ハハハっ!!気に入ったぞ雑種!」
彼の気に召したのか愉快気に笑うギルガメッシュ。
「ところで魔王よ、折り入って頼みがあるのだが」
「頼み…?」
「ああ。この戦い、私の参加を許されたい」
このときゼロは、この神父の真意を測りかねていた。
「私は見たいのだよ。聖杯を求める者…聖杯を破壊する者…どちらが勝つのか。そして彼らが…どんな結末を迎えるのか…
観客席で見るのは飽きてきたところでね。幸いこの通り―――」
手袋をはずす神父。そこに現れたモノは―――――
「令呪…なるほど、マスターの資格を持つNPC。過去にもそんな事例があったらしいな」
「我は構わぬぞ。こやつの在り方もまた興味深い…暇つぶし代わりになってやってもな」
「……いいだろう、好きにするがいい。それもまた一つの手段か…」
そういってこちらに背を向けるゼロ。
モニターになにやら操作すると、教会の地下にここへとつながる道を作った。
もし聖杯を砕こうとする集団が勝てばここに案内しろということだろう。
「必要なときに呼べ。我はここでしばらく観戦している」
ギルガメッシュもまた再びモニターに視線を戻した。
「では教会に戻るとしよう。また後でだ英雄王よ…」
そういって部屋から出る神父を、ゼロはいつまでも見ていた…
教会へと戻る神父の頭にあったのは、教会を訪れた参加者の中で唯一生き残っているマスター。
花村陽介の事だった。
叶えたい願いを持ちながらも奇跡を否定し、殺し合いの現実に苦悩していた少年。
彼を救い上げた名無鉄之介も、彼の親友だった鳴上悠も死んだ。
それでも希望を胸に抱き前を向く彼の言葉…
「絶望には負けたくない…か。しかし少年、君の認識はまだ甘い。
全ての絶望は……始まったばかりだ……っ!」
《言峰綺礼 参戦》
※言峰綺礼とギルガメッシュが契約を結びました。
これによりギルガメッシュは安定した魔力供給先を手に入れましたがどちらか片方が死亡した場合同じく消滅します。
※冬木教会の地下に月の裏側へ通じる道が出来ました。最奥に言峰綺礼とギルガメッシュが待ち構えています。
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投下終了です。延長ありがとうございました。
内容に関して私の個人的解釈の部分も多いですので問題があればお願いします。
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投下乙です!
まさに激戦だった…!ワイルドを得た陽介にメイドインヘブン覚醒DIOと先の読めない展開の連続
注目され続けていたDIO様、ケリィもついに脱落か…作中の会話といいやっぱりいまいち噛み合ないコンビだった
ケリィのアンリ・マユ汚染って形で作中の矛盾解消はいいフォローだった
そしてついに神父と英雄王までもが参戦か…果たして彼らの下に辿り着くのは誰になるのだろうか
あと大統領、複数分身で魔力ガンガン使った上に不意打ちまで食らったからハラハラしたw市長やっぱり死にそうw
ふと気になったことと言えば、メイドインヘブンってことはやっぱり会場全体の時も加速してるのだろうか
そうなると外にいる参加者全員が加速に気付くだろうし影響大きそう
あと大統領の遺体の心臓部は作中での死亡時点じゃ手放してると思うけど、まぁ宝具と同じように彼の象徴としての持ち込みってことでいいのかな…?
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>>100
聖人の遺体パワーの一部が大統領の中に廻っていて、それをDIOが吸血により手に入れた
ただし幾らか劣化コピーしているため、完全なメイドインヘブンにはなれない
効果も会場全体じゃなくて一定範囲の場だけでは?っと勝手な個人解釈をしてみる
そして遅れましたが、投下乙です!
実のところ物議を醸しそうな話だとは思ってはいますが、個人的には凄く面白かったです
なんだかよくわからないインフレバトル、二転三転する展開…まったくわけがわからないよ(褒め言葉)
そして市長がマジ心配wもしかして本当に過労死or魔力不足で脱落してしまうのかっ!?
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早速色々更新されてる
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投下乙です
セイバーにも士にもDIOにも不満たらたら
ケリィよお前は一体どんな鯖なら満足するのか
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>>103
「英雄が嫌い」で「悪も嫌い」
そのどちらでもない英霊なんて、文化偉人くらいだろ。
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でも聖杯戦争勝ち残るには強くないとダメ
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それでもテレサなら、テレサならビジネスライクな付き合いできっと上手くやってくれる…!
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ラブクラフト「呼ばれた気がした」
アンデルセン「文化偉人と聴いて着ました」
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英雄も悪も嫌いなんてそら(吐き気を催す邪悪からすれば)そう(なるのが当然だし同属嫌悪もある)よ
ケリィちゃんプッチ神父ならなんとかなったんじゃない?
両方同じ方向に向かって真性キチガイだし
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ぶっちゃけこのロワのアサシンと組んでも何かしら問題あるっていう…
大統領…世界全ての平和とアメリカだけの繁栄じゃ願いの時点で噛み合う余地なし
そもそも為政者とテロリストという時点で普通に相性が悪い
トキ…そのうち反逆されて有情破顔拳で昇天させられそう
サブラク…上二人と比べれば遥かにマシだがサブラクが強すぎて逆に使いにくい
消耗がでかすぎて油断したらすぐ死ねる
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結局紅茶がケリィと一番相性いいのかねぇ?それでも超ドライな関係なら、だけど。エミヤになった経緯知ったら絶望間違いなしだし…
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まぁ性能はともかく、性格的にはサブラクが一番合いそうだよね
基本的に文句言わずに淡々と仕事してくれるし
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第五次的に言えばハサンとかキャス子ならケリィ本人は満足はしたと思う
弓はわからんなぁ、中身知らなきゃ相性良さそうに見えるが
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性能的には緑茶あたりなんだろうけど、うーん
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たった一話の話で陽介組のキルスコアがとんでもないことに!
と、思ってたら既にwikiに更新されていた
みんな仕事早いなぁ
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ちくしょうー、仕事終わったら死亡者名鑑更新してやる!
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なんか知らないけど分身大統領まで律儀にキルスコアに換算されてるよね
そのせいで対主催なのに陽介アレックス殺害数トップになってるしww
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本来の持ち主の手から離れてる時の方が活躍してるアロンダイトさんエ……
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ペルソナ使い専用宝具みたいな扱いになっておられるなw
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よく読むと「この戦いで合計10体近くの分身を生み出した」だから、
陽介&アレックスの殺害数は更に多くなるのか…(震え声)
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アレックス「(大統領を)皆殺しだ!ヒャッハー!!」
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今回の話で9体生み出したとして4人目と7人目は元々いて内1人が生き延びたから
陽介組のスコアはDIO含めて+11だな
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て言うか地味にこなたも頑張ったよなー
何気にこれが初戦闘なんだよな…
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映司も一番活躍してたと思う
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しかし市長はセリフ一言だけで画面外気絶とは相変わらずだなぁw
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未だにお呼びのかからないガタキリバとシャウタとプトティラに今後活躍の場はあるのか
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何気にカンドロイドが良い仕事してたな…w
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>>125
ガタキリバは予算、もとい魔力がかかりすぎるから多少はね?
プトティラはパワーもあって空も飛べるから、月で戦いになったとき隕石とか跳ね返す感じで……
え?シャウタ?水辺があったら最強なんだから出番あるに決まってるだろ(震え声)
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>>108
両者とも吸血鬼によって人生が大きく変わったっう共通点もある。
意外なほどに似通ってるよな、この二人。
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プッチ神父呼んでたらケリィ優勝ありえたんじゃ(震え声)
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優勝しても願いを叶えられるのはプッチだけなんですがそれは…
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(優勝できるとはいったけど願い叶えられるとは言ってない)
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しかしスーパータトバどうやって対抗すればいいんだこれ……?
描写を見るにフルスペックの時なら常時発動可能なのかな?
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我様なら何か有効な宝具の一つや二つ持ってるんじゃね?(適当)
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そりゃ市長が見事な作戦を考えだすんだろ(適当)
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こなたを狙えばいいんじゃないかな(適当)
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型月公式、乗っ取られる
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すみません、寝過ごしました…
今から投下します
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一体何度目だろうか。
こうして敵として、親友と向かい合うのは。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
枢木スザク。
かつて共に在った二人は今、武器を手にして戦っている。
最初はルルーシュがギアスを手に入れたあの日、シンジュクゲットーで。
ルルーシュの作戦を力ずくで捻じ伏せるイレギュラー――白兜として。
それからルルーシュが日本を制圧するために展開した数々の作戦でスザクは現れた。
ナリタでの戦いでは、もう一息でコーネリアを捕縛できるというところからひっくり返された。
藤堂ら四聖剣を救出する作戦で初めて白兜のパイロットがスザクだということを知った。
式根島でなんとかスザクを仲間に引き入れようとしたが拒絶され、『生きろ』という呪いを掛けた。
もう一人のギアス使いであるマオとの遭遇やキュウシュウ戦役では共に戦った。
ユーフェミアを殺害した行政特区記念式典、その直後のトウキョウ租界決戦――ブラックリベリオン、ここで対峙は決定的なものとなった。
ルルーシュのゼロとしての軌跡は、スザクとの戦いの軌跡でもある。
「くっ…!」
ルルーシュの動体視力では本気のスザクを追い切れない。
一瞬で視界の外に消えた友の影を追わず、ルルーシュは槍王イルバーンの石突きを地面に叩きつけた。
接触面でイルバーンの魔力が弾けて推進力となり、見えない腕で引っ張られるようにルルーシュの身体は飛ぶ。
進むべきは前方。少なくとも前にだけはスザクがいないのは確定している。
機動性では及ばなくとも、直線方向への加速能力だけを見ればイルバーンのあるルルーシュが優位だ。
一気に30メートル近く移動し、なんとか減速・旋回してルルーシュは向き直る。
予想通り、ルルーシュの頭上から得意の回転蹴りを放とうとしていたスザクが着地した。
「すごいな。それも宝具なのか?」
「いいや、違う。これは…形見だ」
スザクは必殺の蹴りを避けられても些かも動揺していなかった。
まるでこうなるのが当然だと――この程度でルルーシュが倒れるはずがないと、確信しているように。
「その槍、地下室にいた彼…名無、だったか。彼が使っていたな。
今、君の手にあるということは、彼は死んだのか」
「…ああ。お前たちに攫われた後、ほどなくな」
「そうか…ならルルーシュ、俺を恨んでいるんじゃないか?」
スザクの問いに、迷う――あの時スザクが来なければ、名無は死ななかったかもしれない。
謂わばスザクのせいで名無しは死んだとも言える。
そのことを憎く思う気持ちは、たしかにルルーシュの中にある――が。
-
「俺にお前を責める資格は無い。俺もお前から大事な人を奪ったのだからな」
「ユフィのことか。そうだな、俺だって君を許せはしない。殺したいくらい憎い。そう思ってる…でも、君にだって俺を責める資格はあるはずだ。
ナナリーを、君の一番大事な人を奪ったのも…俺なんだから」
「っ…スザク……!」
予想していたことだが、やはりこのスザクはルルーシュの知るスザクではなかった。
この枢木スザクはおそらく、第二次トウキョウ決戦でフレイヤを放った直後から来たスザクだ。
ルルーシュは口を塞いで勝手に飛び出そうとする言葉を押し止めた。
――違うんだスザク、ナナリーは生きているんだ。お前はナナリーを殺していない!――
これを伝えれば、もしかしたらスザクと争わずに済むかもしれない。
昔のようにまた共に歩けるかもしれない。
ナイトオブセブンとしてではなく、ナイトオブゼロ――ルルーシュの騎士として、また一緒に。
(…いいや、駄目だ…! こんな言葉では絶対に、スザクは『救われない』…!)
ナナリー一人が生きていたところで、スザクがトウキョウ租界を壊滅させて大勢の犠牲者を出した事実は変わらない。
おそらく、スザクが聖杯を渇望するのは、あの過ちを清算して日本を取り戻すためだろう。
ならばここでスザクの戦う理由を否定するのは、今のスザクそのものの否定でもある。
スザクと向き合うと決めたのなら、彼を否定してはならない――認めた上で、乗り越えなくては。
そうでなければ、スザクを赦したことにはならない。
「…お前にも仲間がいただろう。お前が柳洞寺を襲ったとき一緒だったアサシンはあの時消滅した。ならそのマスターも死んだはずだ」
「ああ。出夢…匂宮出夢と言うんだ。色々あって、絶望しかけていた俺を救ってくれた…。
友達って関係じゃないな。でも…そうだな、俺は出夢を仲間と呼びたい。そして出夢は死んだ。君たちに殺された」
「こっちもだ。お前たちのおかげで衛宮が…そして名無が死んだ」
「俺達はお互いに仲間を殺されている」
「だからこそ、退くことも…手を取り合うこともできない」
「そういうことだ、ルルーシュ!」
吼えて、スザクが再度疾走する。
進路上にイルバーンの風を放つ。が、超人的な反射速度でスザクは風を次々とパスしていく。
いかにイルバーンが超越的な力をルルーシュに与えるとしても、ルルーシュ当人は肉弾戦を得手としていない。
持ち前の身体能力に幼い頃からの武術の鍛錬、そしてギアスの呪いが加わった今のスザクは生半には止められない。
スザクの左腕がルルーシュへと向けられる。その掌の部分が開き、覗いたのは鈍く光る銃口だ。
放たれた砲火を、イルバーンが生み出した力場でなんとか受け止める。
スザクのように走って銃弾を避けることなどルルーシュにはとてもできない。
疾走と銃撃を止めないまま、スザクは右腕で剣を抜いた。
接近戦で主導権を握られてはいつか捌ききれなくなると判断し、ルルーシュは再びイルバーンを用いて回避しようとする。
石突きを地面に押し付け、後方へと大きく距離を開けようとし――
-
「二度同じ手が通用すると思うな、ルルーシュ!」
スザクの両足が文字通り『火を吹いた』。
キャスター、キンブリーがスザクの義足に施したギミック――炸薬により脚力を爆発的に増大させる加速装置。
イルバーンによって高速で移動するルルーシュに追い縋る――否、追い抜くほどの速さを見せる。
「ぐう…うぉぉぉおおおおっ――!」
両足と左腕以外は生身であるスザクには、その殺人的な加速は無視できない苦痛であるはずだ。
しかしギアスを捻じ伏せるほどの精神力を見せる今のスザクなら――その痛みにも耐えられる。
迫るスザクが勢いのままに振り下ろした剣を、ルルーシュはイルバーンを掲げて受け止めた。
「ぐう……っ!」
「捕まえたぞ、ルルーシュ!」
なんとか受け止められた――否、スザクは『わざと受けさせた』。
ルルーシュがスザクに唯一勝る加速力を封じるためだ。
イルバーンによって強化されたとはいえ、ルルーシュとスザクの膂力には元々大きな差がある。
ルルーシュは知らないが、スザクはKMFランスロットの脚を素手で持ち上げるほどの異常な筋力を持っているのだ。
スザクがかける圧力に押し込まれてルルーシュの膝が折れる。片膝を着いたルルーシュを、スザクが見下ろしてくる。
「一度でも喧嘩で俺が君に負けたことがあったか、ルルーシュ…!」
「そういえば、一度もないな…だがっ、これは喧嘩ではない――戦いだ、スザク!」
このままでは押し切られる。
しかしイルバーンを少しでも動かせば、スザクの剣がルルーシュを頭から一刀両断にするだろう。
それをわかっているから、スザクも決して退かず全身の力を剣に込めて押してくる。
ルルーシュにとって絶体絶命の窮地だ。
(だが――条件は揃った……!)
スザクはせっかく詰めた距離を断じて離すものかとひたすら圧してくる。
つまりスザクは至近距離にいる――『眼が合うほどに近くに』。
イルバーンを封じられても、ルルーシュにはまだ一つだけ、この状況から切れるカードがある。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが…命じる!」
今にも押し負けそうなルルーシュが取った策は――ギアス。
ルルーシュの左眼が紅く輝く。
-
「何のつもりだ、ルルーシュ! 俺にはもうギアスが通じないことくらい――」
人の意志と尊厳を踏み躙る卑劣な力、ギアス。
この期に及んでそんなモノに頼るのか――激昂しかけたスザク。
だがその瞬間、強烈な直感がスザクの全身を電撃のように駆け巡る。
危険だ。
このギアスは――危険だ。
『生きる』ためには、このギアスを受けてはならない。
ギアスの呪縛に逆らわず、スザクは全力で地を蹴る。
スザクがルルーシュから飛び離れた直後、ルルーシュの左眼から赤い雷が迸った。
寸前までスザクがいた空間を網の目のような雷が駆け抜ける。
空気を焼く匂いがスザクの鼻をついた。
「…切り札、だったんだがな。あっさり避けられてしまったか」
「ルルーシュ、今のは…?」
窮地を脱したスザク――しかしそれはルルーシュも同じ。
詰めの局面を一手で覆し、態勢を立て直したルルーシュがイルバーンを構える。
「ギアスさ。だが俺だけのギアスじゃない――仲間がくれた力だ」
「仲間…仲間か。君の口からそんな言葉を聞くとはね。ギアスで操っている訳ではないんだな」
「無論だ。あいつは…名無は、俺を信じてこの槍を託してくれた」
槍王イルバーンは令呪とともに名無鉄之介からルルーシュへと受け継がれた。
世界を滅亡の危機から救った13騎士――サーヴァントをも傷つけ得る、宝具に匹敵する力。
強大な魔力を内包するイルバーンは、手にした者の魔力を大きく引き上げる。
そしてイルバーンをルルーシュに届けたのは、キャスターであるリインフォース。
リインフォースは消滅する間際、自身の魔術回路の一部を改変してイルバーンに付加させた。
以前にルルーシュから聞いたギアスのカタチに合わせ、ルルーシュの意思を絶対遵守とは別の形で発現させるために。
「ガウェインから聞いた話だがな。
真の英雄は眼で殺す――らしいぞ?」
イルバーンとリインフォースの魔術回路は、霊子ハッカーとしては並程度のルルーシュの力を大きく引き上げた。
ギアスとは意思を視線に乗せて放つ能力だ。
そのギアスを応用し、活用し、魔力を純粋な破壊力として撃ち出す。
ルルーシュが得た新たな力――名付けて、コードキャスト『hadron』。
「まだ収束率が低いが…中々使えるな、これは」
「なるほど、それがギアスに代わる君の力か」
「ああ――だが、こんなものは所詮ただの力だ。俺が信頼するのはこんな力じゃない」
-
イルバーン、コードキャスト、そしてギアス――いずれも強力な力だが、同時にこれら全てはルルーシュの本当の『剣』ではない。
ルルーシュの力――ルルーシュの騎士は、今やここにいる。
スザクではない。
その名も誉れ高き、円卓の騎士――
「来いっ、ガウェイン!」
「ここに――ルルーシュ」
ルルーシュとスザクの間に、白き騎士が舞い降りる。
かつてのスザクの愛機を彷彿とさせる、穢れ無き純白の騎士。
太陽の剣を携えた――聖杯戦争、最後に残った『セイバー』、ガウェイン。
「サーヴァントか、なら…ランスロット卿!」
「■■■■■■■■――ッ!」
そしてルルーシュのもとにサーヴァントが馳せ参じれば、スザクの元にも同じく。
闇を想起させる漆黒の甲冑を纏う、狂える叛逆の騎士。
その名もまさに――聖杯戦争、最後に残った『バーサーカー』、ランスロット。
伝説に語られる、気高き英傑たちの物語。
かの騎士王に仕えた円卓の騎士、その二人が今同じ戦場に立つ。
しかし友としてではなく、伝説をなぞるように敵として。
ルルーシュとスザク――
ガウェインとランスロット――
背中を預けた友であり、死力を尽くして打ち合った怨敵であり。
同じ関係性を持つ二つの主従が向かい合う。
「遅くなりました、ルルーシュ」
「構わん。やれるな、ガウェイン?」
「無論です」
ランスロットが放つ凶々しい存在感は、ルルーシュの眼でもはっきりとわかる。
おそらくスペックで上を行く相手にガウェインは単独で立ち向かい、こうして持ち堪えてくれていた。
白騎士は全身に傷を追いながらも、しかし一つとして致命の傷は許していない。
王を護る騎士として、王を阻む敵を打ち倒すために、王とともに戦うために。
かつての友を倒す――その命令を、躊躇うことなく受け入れる。
「ガウェイン、一つ伝えておくことがある」
「わかっています。叔父上のことですね」
-
ガウェインはランスロットと戦いつつも、戦場の動静を朧気ながら感じ取っていた。
アルトリア・ペンドラゴンが離脱し、仮面ライダーディケイドがそれを追って行った後、仮面ライダーオーズも続いた。
残ったガウェインは、ディケイドの残したクウガゴウラムを駆るランスロットに追い回されていた。
そのとき彼方に見えた黄金の輝き――紛れも無くあれは、約束された勝利の剣の光。
しかし輝きは一瞬、解き放たれることなく消えた。
直後、何の前触れもなく、クウガゴウラムは消失した。それは本体であるディケイドの消滅を意味する。
ガウェインは確信した。
アルトリアはディケイドを討ち――そしてアルトリアもまた戦場に倒れたのだと。
かつて剣を捧げた王の落命に、動揺しなかった訳ではない。それはおそらくは、ランスロットもだ。
理性なく暴れ回るだけのバーサーカーが、あの瞬間眼前のガウェインを忘れ彼方を振り仰いでいたのだ。
円卓の騎士は、王を失ったことを同時に理解し――そして同時に、決闘を再開した。
それはまるで、喪失を忘れるかのように。剣戟に興じることで、他のすべてを振り切ろうとするように。
「ルルーシュ、私の王は貴方です。
たしかに叔父上の死は…悲しい。悔しい。しかし今は、涙に身を浸すときではない。
叔父上は戦って逝ったのでしょう。ならば生きている我々が足を止めることはかの王への侮辱に他ならない。
そう、今は――剣を執る時です、ルルーシュ!」
目前にはランスロットがいる。
ガウェインにとって無二の友――無二の敵が。
かつて、伝説の終焉。
ガウェインはアルトリアの息子であるモードレッドに討たれ、アルトリアもまたモードレッドと共に散った。生き残ったのはランスロットだけ。
だがこの聖杯戦争では、伝説の再現はならなかった。
アルトリアが散り、ガウェインとランスロットが残る。
だが手を取り合うことは有り得ない。
ランスロットがバーサーカーであることを差し引いても、それぞれの主が決着を望んでいる。
戦場で流すべきは涙ではなく、敵の血だ。
「…そうか、そうだな。あいつらは俺達が止めなければ――終わらせなければならない。
それが、俺達ができるたった一つの……」
「そうです、ルルーシュ――故に!」
暴風のごとく吹き荒れるランスロットの双剣へと、ガウェインは恐れることなく踏み込んでいく。
ランスロットの武器は、覇王ゼフィールが携えていた神将器エッケザックスに、封印の剣。
どちらも宝具の域にある業物に相違なく、斬り裂かれればガウェインとて傷を負うだろう。
だが、どんなにランスロットの技量が卓越していて、この二刀を手足のように扱えると言っても――
「友よ、それは貴方の本当の宝具では、ない!」
エッケザックスを弾き、封印の剣を受け止める。
いかに強力な宝具とて、決してランスロット秘蔵の剣である『無毀なる湖光(アロンダイト)』ではないのだ。
英雄が最も力を発揮するのは、生涯を共に駆け抜けた宝具を全力で振るう時に他ならない。
かつてガウェインはアロンダイトを振るうランスロットに敗れたのだ。
聖者の数字が発動しないとて、アロンダイトを持たないランスロットが相手ならば、条件は互角。
-
アルトリアが討たれ、ルルーシュが共にいる今、もうガウェインが時を稼ぐ必要はない。
ランスロットを討つことだけに、全力を傾けられる――
「はあああああっ――!!」
「■■■■■――ッ!!」
足を止めて、打ち合う。
左右から雷撃の如く襲い来る剣閃を、一つ一つ丁寧に弾き、受け、いなす。
多少ステータスで上回られても、両手で剣を握るガウェインと片手のランスロットとでは、やはり一撃の重さは勝る。
もちろんその代償に、速度と手数は遅れを取る。ルルーシュが見た限り、押されているのはやはりガウェインだ。
止まることなく放たれ続ける斬撃は、もはや空間を断割するシュレッダーそのもの。
放たれる魔力と分子の一つずつを斬り割る剣戟の応酬は、間の空気を加熱し撹拌しやがては気流を生み出す。
気流は魔力を巻き込み、熱を生み、雷を孕んで、切り結ぶ二人を包み込む。
どちらかが競り負けた時、この魔力流は敗者へと一気に注ぎ込まれるのだ。
「ガウェイン……!」
「ランスロット……!」
それぞれの主、ルルーシュとスザクが手を出せる戦いではない。
直前までの彼らの戦いが児戯に等しいほどの、異次元の戦い。
ルルーシュのイルバーンでも、スザクがギアスを制御できるとしても、サーヴァントの戦いに横槍を入れればその瞬間に首が飛ぶだろう。
しかし――ならばこここそが、智を力とするルルーシュが介入する場面。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……!」
イルバーンを大地に突き立て、リインフォースから託された魔術回路を励起させる。
槍王から流れ込む魔力を両眼へと集中させる。先ほどは慣れた左眼だけだったが、時間をかければ問題はない。
練り上げた魔力を破壊の力へと変換し、収束し――ギアスを発射台として開放する。
「――ハドロン砲、発射!」
スザクに撃った時とは違う、格段に凝縮された魔力の雷が迸った。
今なお切り結ぶガウェインとランスロット、二人めがけて。
「ルルーシュ、何を…!?」
対面で見ているしかできないスザクが驚愕する。そんなことをすればガウェインをも巻き込んでしまうのに。
が――やはりルルーシュという男は、スザクの想像を超えてくる。
ガウェインの背を撃った雷は瞬時に掻き消え、ランスロットだけを焼いた。
「■■■■■――!?」
セイバーのクラスが備える対魔力は、人間の魔術など容易く弾き返す。
ましてガウェインの対魔力はB。大魔術でさえもキャンセルするほどに強力だ。
ランスロットもまた対魔力を持ち合わせてはいるが、そのランクはE。多少ダメージを削減するだけに留まる。
結果――ランスロットだけが、コードキャストの影響を受け雷に貫かれた。
もちろん、通じると言ってもにわかウィザードであるルルーシュのコードキャストに大した威力などない。
ランスロットの鎧を砕くこともできはしない。
しかし――隙はできた。
眼前で切り結ぶガウェインが必殺の一撃を叩き込むだけの、針の先ほどの刹那の好機が。
-
「――そこです!」
ガウェインの聖剣が、エッケザックスの鍔元を貫く。
ランスロットが刀身で受けるのも間に合わない。
一瞬の膠着ののち、ガウェインが聖剣を引き抜いて飛び退るとエッケザックスは粉々に砕けて散った。
同時、均衡が崩れて流れ出した魔力流がランスロットを襲う。
「■■■■■■■■…ッ!!」
「ランスロット卿!」
魔術ではない魔力の雷風が、ランスロットの全身を激しく叩く。
斬撃ほどではないにしろ――確かなダメージをその身に刻んだ。
スザクがランスロットに走り寄る。傷は大したことはない…が、傷を修復するために賢者の石から膨大な魔力が汲み上げられていく。
無から有を生み出す賢者の石といえど、内蔵する魔力は決して無限ではない。
ここまでのガウェインとの戦いでかなり消費している…これ以上魔力を消費すると、たとえガウェインを打ち破ったとしても魔力が枯渇してしまうかもしれない。
スザクの中のギアスが警告する。
勝てるとしたらもうここだけ――勝負を掛けるならいまだ、と。
「スザク、きっとお前も俺と同じことを考えているんじゃないか? もう、ここで…」
「ああ…そうだな、ルルーシュ。決着を着けよう」
スザクの直感は正しかった。
競り勝ったルルーシュとガウェインもまた、無傷ではない。
賢者の石のような内燃機関を持たないガウェインは、ルルーシュから魔力を吸い上げるしかない。
コードキャストを使い、なおかつガウェインに魔力を供給し続けているルルーシュもまた、限界が近い。
次の激突で――勝者が決まる。
それはすなわち、ルルーシュとスザクのどちらかが死ぬ――ということだ。
訪れる結果を恐れ、厭い――それでも、二人は同時に決断する。
「令呪をもって命ずる! ガウェイン――宝具を開放し、全力で勝て!」
「令呪よ、俺の願いを叶えろ! ランスロット卿――貴方に勝利を!」
二人の主から放たれる、絶対遵守の令呪。
お互いの手から令呪一画が掻き消え、膨大な魔力となって各々のサーヴァントに宿る。
「御意。我が聖剣は太陽の具現。王命のもと、地上一切を焼き払いましょう――!」
「■■■■■■■■■■――!」
勅命を受け、サーヴァント達が吼える。
ガウェインは『転輪する勝利の剣』を開放し、ランスロットはその手に残る封印の剣に黒い魔力を注ぎ込む。
片や、万物を焼き尽くす太陽の輝き。
片や、万物を飲み込む暗黒の闇。
封印の剣が本来持っている、所有者の意志に呼応して炎を生む力を、ランスロットは完全に支配下に置いている。
振り上げた封印の剣から闇が漏れ出し、伸び、長大な剣となって天を衝く。
その威容は、黒く染まった騎士の王が放つ闇の光に勝るとも劣らない。
さながら、太陽を斬り裂かんばかりに――
-
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――ッ!!」
「友よ、それが貴方の力…流石です、だが! それでは勝てない――私たちには!」
迎え撃つガウェインはしかし、些かの焦りもない。
今のランスロットの放つ一撃はたしかに強力だろう。おそらくは神造兵装である二つの宝剣に匹敵するほどに。
しかし――どれだけ強力であっても令呪の後押しを得ているとしても、それはランスロットだけの力でしかない。
だがガウェインは違う。
後ろにはルルーシュがいる。
渾身の力で聖剣を放つガウェインを、彼の勝利を信じるだけでなく、共に剣を執ってくれる王が。
そしてこの王は困ったことに――誇らしいことに、陣の後ろでじっとしているような大人しい王ではないのだ。
「スザク――見せてやる、これが、俺達の力……!」
ガウェインがかつての主から学び、リインフォースが改良し、ルルーシュの魔力を燃やして発動する、切り札の中の切り札。
最強のコードキャスト――その名もまさに、決着術式。
「聖剣集う絢爛の城"(ソード・キャメロット)――!」
瞬間――スザクの視界が紅く染まる。
吹き上がる炎の壁が、辺り一面を覆い尽くしていく。
否、それはもはや炎の壁ではない――炎の世界。転移さえも防ぐ灼熱の結界。
数十メートルに渡って展開された決着術式は、ランスロットとその闇の剣を余すところなく囲み込んだ。
「これは……!?」
「終わらせろ、ガウェイン! 俺達を縛る全ての因縁を――焼き払い、幕を下ろせ!!」
炎の結界に閉じ込められたランスロットが剣を振り下ろす。
しかしその闇は炎に焼かれ、燃え尽きていく――そして炎の結界は、内部のランスロットを逃さぬよう縮小し、炎の球体へと近づく。
「ええ、ルルーシュ!
これが我らの道を照らす輝き! この剣は太陽の映し身、もう一振りの星の聖剣――!」
全力を超えた全力を、聖剣が解き放つ。
ここに放たれるは、闇夜を払う太陽の輝き。
勝利をもたらし、明日へ道を眩しく照らす――
「エクスカリバー・ガラティーン――――――!」
.
-
灼熱の奔流が炎の結界を呑み込み、混じり合い、高め合い――太陽の尖塔となって、ランスロットを焼き尽くす。
肌を焼く熱風から身を護ることもなく、スザクはその光景をひたすらに目に焼き付ける。
己の敗北と、友の勝利と――そして、己が剣の砕ける様を。
「■■■■■■■■■■■■■――――……」
「ランスロット、卿……」
炎が去った後、そこに残っていたのは、もはや狂える騎士ではなかった。
漆黒の鎧を全て焼き払われ、体内の賢者の石も砕かれ――しかしなお、剣を頼りに決して膝をつかない高潔な騎士が、そこにいた。
「…見事だ、ガウェイン。此度は…私の負けのようだ、な」
「ランス、ロット……」
ランスロットは理性を取り戻していた。
それはすなわち――この騎士がもう、遠からず消え行く定めを負ったということだ。
宝具を放ち激しく疲弊したガウェインは、それでも重い体を引きずってランスロットの元へと走る。
その眼前にたどり着くと同時に、ランスロットの脚が光となって消えて、崩れ落ちた。間一髪でガウェインがその体を支える。
「は、はは…私を裁くのは、王ではなく…君だった、か…」
「ランスロット――!」
輪郭すらもう定かではないランスロットの手を、ガウェインが強く握る。
熱を帯びたガウェインの手には、とても冷たい感触しか残らない。
「ランスロット…私は、貴方を…貴方ともう一度ともに……!」
「言うな、友よ――全てを裏切った私が…この地でまた、王と剣を交え…そして君に討たれることができた。
私にとっては、それが何よりの…ただひとつの、救いなのだ……」
「救い、救いだと? 救われたというのか…貴方は、この私に」
「ああ…戦場で、剣に倒れることができる…あの時はそうはならなかった。君と王はもう、いなかったからな…」
それが生前の、円卓の騎士の終焉のことを言っているのだと、すぐに気づいた。
ガウェインが倒れ、アルトリアが没し――残ったのはランスロットだけ。
ランスロットは騎士として散ることも許されず、ひっそりと孤独に朽ちていくしかなかった。
それに比べれば、この終わりはなんと心躍るものであることか――
「そう…だが一つだけ、心残りがある。
すまない、我が主…私はもう、貴方の願いを叶えられない」
「いいんです、ランスロット卿。
俺は…いえ、俺達は全力で戦った。その結果負けた。
彼らに…彼らの意志の強さに」
-
視線を巡らせ、ランスロットはスザクを見る。
スザクにも、もはや戦意はなかった。
認めなければならない。ルルーシュとガウェインが、スザクとランスロットの上を行く意志の強さを持っていることを。
敗北を認めないのは、全力を尽くして戦ってくれたランスロットを侮辱することでしかない。
何より――
「スザク、お前は……!」
「ルルーシュ、君でよかった。俺を終わらせてくれるのが、君で…」
この結末は友が、ルルーシュがもたらしたもの。
それならば納得できる。
受け入れ、剣を置くことができる――
「ルルーシュ。君はこれからどうするんだ?」
「…聖杯を破壊する。二度とこんな戦いが起こらないように…俺達を二度と、利用させないために」
「どんな願いでも叶えられるのに、か?」
「誰かに叶えてもらう願いなどに興味はない。自分の手で掴んでこそ、奇跡は価値がある…」
「結果よりも…過程か? ははっ…君らしくないな。まるで昔の俺のようだ」
「そうかもな。俺は、お前のおかげで変われたかもしれない。
お前がいてくれたから…俺は戦えたんだ」
それは今ルルーシュの眼の前にいるスザクではなく、ナイトオブゼロとして共に戦ったスザクへの言葉だったが――
ルルーシュの中で、もう二人のスザクの差はゼロだ。
等しく友であり、敵であり――そしてやはり、親友なのだ。
「そうかい? はは…そうか。そうか…」
「スザク、俺はお前が何を願っていたか知っている。聖杯を使ってでも叶えたい、その想いの強さも…」
…心配するな。お前の願いはきっと叶う。
俺やお前がいなくても、世界はきっと――優しい世界になる。賭けてもいい」
「だと…いいな。ああ…」
スザクの全身が、ランスロットと同様に消え始めていく。
ムーンセルによる消去。
衛宮士郎と同じ――無慈悲に執行される、永遠の断絶。
スザクが目を閉じる。滅びを受け入れたように…だが、唇を噛み締めて。
――ルルーシュは、たまらず叫んでいた。
「スザク! お前は…お前はナナリーを殺していない!」
「え……?」
「フレイヤでトウキョウ租界が壊滅したあの日、ナナリーはシュナイゼルによって脱出させられていた!
だからお前はナナリーを殺していない! ナナリーは生きているんだ!
お前は俺の大事な人を奪ったりなんてしていない!」
言わないと決めていたのに、気がつけば勝手に言葉が溢れ出てきていた。
ナナリー一人生きていたところでスザクの罪は変わらない。士郎や名無が死んだ事実も消えはしない。
これは死んでいった仲間に対する裏切りにも等しい。
それでも――それでもルルーシュは、スザクがこのまま後悔の中で死んでいくのを許せなかった。
ほんの僅かでも、最後に安らぎを得て眠って欲しい――そう願ってしまった。
かつてユーフェミアを殺したルルーシュは、その痛みを知るがゆえに――スザクへの罰を取り除いてやりたいと思った。
ルルーシュの叫びを聞いたスザクは、目を丸くし、次いで長い長い息を吐いた。
-
「…そうか。ナナリーは生きて…そう、なのか」
これがスザクへの赦しになるとは思わない。
スザクは本来ゼロレクイエムによって生涯をゼロに捧げる運命を歩むはずだった。
だが、このスザクはここで死ぬ。
ならば最後に一つだけ、ルルーシュがこの枢木スザクにしてやれることが――これだった。
「――ランスロット卿、よろしいですか?」
「ああ…望むようにするといい、我が主。私も…それを、望もう」
「ありがとう…ございます」
スザクは消え往くランスロットに何事か問い、ランスロットは了承した。
頷き、スザクはルルーシュに手を差し出した。
「スザク…?」
「ルルーシュ…この手をとってくれないか? もう、君の顔もよく見えないんだ」
別れの刻はもうすぐそこだ。
ルルーシュはスザクの言葉を一言一句逃すまいと、その手を取る。すると繋いだ手を伝い、熱い何かがルルーシュへと流れこんでくる。
それは、スザクに最後に残った令呪――聖杯戦争の参加権でもあるそれを、スザクはルルーシュに移譲しようとしているのだ。
「スザク、待て、これは――!」
「受け取ってくれ、ルルーシュ。俺も、君に…何かを遺したいんだ」
この令呪が完全にルルーシュに移った時、スザクは消える。
それを理解していてなお、スザクは止める様子はない。
その脳裏には生存を促すギアスがけたたましく響いているだろうに、その呪いを捩じ伏せて、ルルーシュへと想いを伝えようとしている。
ならばルルーシュは――応えなければいけない。
「わかった…スザク。お前も連れて行く。共に行くぞ」
「ありがとう、ルルーシュ。俺の…朱雀という名は、不死鳥、火の鳥だ。
この令呪が君の行く手を照らすことを…願うよ」
令呪がルルーシュの手で輪郭を形作っていく。
比例するように、スザクの体が急速に光となって消えていく――
「ああ、そうだ。最後にもう一つ…いいかな、ルルーシュ」
「なんだ、スザク」
「ああ…」
-
か細い声が紡がれ、意味を成す。
それは――
「枢木スザクが、命じる…生きてくれ、ルルーシュ」
それは――ギアス。
かつてルルーシュがスザクにかけた――呪い。
それを今度は、スザクが――ルルーシュへと贈る。
呪いではなく願い――祈りとして。
敵ではなく友として、ただその身を案じるためだけに。
「ス、スザ――」
言いようのない想いがルルーシュの胸を満たす。
スザクに、そのギアスに答える寸前――スザクは消えた。
ルルーシュの手で、令呪が輝いている。
ガウェインを見れば――彼もまた、立ち尽くしている。
その腕の中に、ランスロットはもういない。
「ばか……野郎……っ! 最期になんて、ことを…っ」
「ルルーシュ…」
「わかっている! 生きろだと!? ああ、生きてやろうじゃないか!
元はといえば俺がお前にかけたギアスだ…俺が背負えないはずはない! そうだろう、ガウェイン!」
「ええ、その通りです我が王よ。我々は生きねばならない――そして勝利せねばならない」
「ああ……やってやるさ!
世界を壊し、創造する――不可能を可能とする、奇跡を…起こしてみせる――!」
熱が冷め、残ったのは仮面の王と太陽の騎士、二人だけ。
太陽の輝きによって、暗闇は吹き払われた。
夜が明ける――明けて、最後の朝が始まる。
-
《EXTRA》
「――終わったようですね」
枢木スザクは死んだ。
最後のキャスター、キンブリーは一部始終を見届けた。
約束通り、キンブリーはルルーシュとスザクの戦いに手出ししなかった。
ぶつかり合う二人の意思のどちらが強いか、それを見極めるために。
結果、スザクは敗北し、ルルーシュが生き残った。
「ふむ、中々楽しめましたよスザク。助力の見返りとしては十分です。
どうぞ、安らかにお眠りなさい」
独りごち、キンブリーは戦場に背を向ける。
スザクの仇討ちをするつもりなどさらさらない。元々そういう関係ではない。
スザクがどういう結末を迎えるか、それだけが興味の対象だったのだ。
それにいくら疲弊しているとはいえ、セイバーを相手にしてキャスターが単騎で勝てる訳もない。
何より――死んではそれ以上楽しめない。それでは詰まらない。
「さて――ではこれからどうしましょうかね。他に何か楽しめそうな人は――」
「キャスター、ここにいたか」
歩き出したスザクの前に、黒い影が現れる。
それはアサシン――同盟を組んだ内の一人、何重にも分身を生み出せる暗殺者のサーヴァントだ。
「おやおや、あなたも見ていましたか。なかなか興味深い決闘だったでしょう?」
「それほど愉快ではない。セイバーが残ったのだぞ」
最優のクラスが生き残ったということは、優勝を目指す彼と彼のマスターにとっては確かに憂慮すべき事態だろう。
聖杯などどうでもいいキンブリーにとっては、それこそどうでもいいことだったが。
「彼らを襲うのですか? 止めはしませんが、お勧めもしませんよ。アーチャーを呼んできたらどうです?」
「こちらにも都合がある。今は奴らに手が出せんし、アーチャーを呼ぶこともできん」
「おや、そうですか。ではさっさと退散することですね。サーヴァントが二体もいれば、見つかってもおかしくありませんよ」
「用件を済ませたらな。キャスター――お前はこれからどうするのだ?」
と、アサシンは問いかけてきた。
問われても正直、キンブリーには何の宛てもない。
強いて言うなら、このままセイバーやアーチャーといった強者に狩られるのは避けたいということくらいだが。
「お前は枢木スザクの支配下にあったが、今は違う。そういう認識でいいか?」
「ええ、まあ間違ってはいませんよ。支配というよりは取引で繋がった関係でしたが」
「そうか、なら――」
そこでアサシンは、キンブリーに向けて手を差し出す。
訝しげに見やるキンブリーへ、誘うように言う。
「同盟はほぼ目標を達成した。だが残る敵を駆逐するためには、我々はあまりに貧弱だ。
よってキャスター――もう一度協力を求めたい」
告げられた言葉は、さらなる交戦を予告するもの。
突然に降って湧いた指針に、キンブリーの興味は大きく惹かれ――
「詳しい話を伺いましょうか」
この戦いは、まだまだ楽しめそうだ。
-
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】
【バーサーカー(ランスロット)@Fate/zero 死亡】
【深山町/早朝】
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]:魔力消費(極大)、疲労(大)
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャスト『hadron(R2)』を発動できます。
hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。
効果:ダメージ+スタン。
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)
※『聖者の数字』発動不可
【深山町/早朝】
【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)
[装備]:羽瀬川小鳩を練成した賢者の石
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
-
投下終了です。遅れてすみません
-
投下乙でしたー!完成度高いなぁ……
-
投下乙
目からハドロンwwwwwwww
-
投下乙です。
オーズのスーパー化、陽介のワイルド覚醒に続き、ルルーシュの目からビームと超展開が続くな
-
投下乙です
これで軍団側はアサシン、キャスターを残して全滅と痛手だけど
同盟側vs金ぴかが戦闘すればワンチャンあるかな?
どんどん佳境に迫ってきて楽しみだ
-
投下乙です!
ルルーシュvsスザクとガウェインvsランスロット、ホントにアツい決戦だった…!
やっぱり因縁の対決は燃えるなぁ 最期の会話が凄く印象的
そして半ば孤立状態のキャスターと大統領の今後は果たしてどうなることか
-
投下おつでした!
最期のと言わず最初から全編ルルとスザクのやりとりがらし過ぎて痺れた!
ルルとスザクだけじゃなくてガウェインとランスロットの決着も綺麗だった
そっか、ランスロットは原作じゃ一人置いて行かれたようなものだったもんな……
納得の心情に涙
目からハドロンもすごいネタっぽいのに上手いことコードキャストやランチャーさんと絡められてて違和感ないのがすごいw
素晴らしい作品でした、GJ!
-
あれ?これもう市長勝てないんじゃ?
-
そりゃ残ったのが肉弾戦がまるでダメな2人だし…しかも主催者側からは同盟側はともかく
連合軍側は特に何も言われてないし(ケリィとDIOをボロクソに言った程度)
もう連合軍は綺礼ギルの噛ませになる未来が(ry
-
はい油断しない。アサシンを退治できる味方キャスターが死んだ以上
吉良吉影ばりに爆弾バラ撒けばいいだけなんだから勝機はいくらでもある
そもそもの裏切られる憂いも魔力供給枯渇の恐れもなくなるんだし>キャスターいれば
-
やっぱ市長は格が違うわ伊達に市長してないもん
-
市長はこのロワにおける影の主役だった…?
-
これから市長無双が始まるのか…胸熱
-
ところで名鑑見たら欠片男が死んでる扱いになってるけど、あいつ死んでる訳ではなくないか?
本文内で死人って書かれてるのは比喩だと思うんだが
まぁここから出てきても場違い感あるしどうでもよくはあるが
-
終盤になるほど市長の愛され度が増えていくふしぎー!
たぶんキャスターが外道なことして逆転してくれるはず(適当)
-
市長死にかけてるじゃないですかーw
-
それでも市長なら、市長ならやってくれる!
-
皆忘れてるかもしれないけど、このロワで一番頑張ってるのは不老不死とはいえ一万回以上
失敗してもめげずに聖杯戦争開催してる主催のゼロ様
-
大統領も死にまくりながら同等レベルに頑張ってると思うの
-
実際大統領の生存能力の高さは本物だからなぁ…w
DIOやアレックスみたいな強力なサーヴァントに補足されても悉く宝具使って逃げ延びたり復活してるし
-
原作からして「絶対に逃げられないスタンド」でようやく倒せたんだし
参加者達が倒せなくてもある意味仕方がない
-
ラブ・トレインは防御性能に関して、常時展開の全て遠き理想郷だから仕方ない。
っても、通常時のD4Cはディエゴが圧倒してたけどな(結果的に敗北したけど)。
-
大統領がまどかのナニカを回収できればラブトレインワンチャン!?
でも強化=死亡フラグですし、そもそもラブトレやっちゃったらもう試合終了だし…
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市長が死ぬフラグにしか見えねえwww>ラブトレイン
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ひょっとしたら市長が新たな力に覚醒するかもしれんぞ
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>>177
ただしスマホのアプリ開発が必要
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ならニカイアと悪魔召喚アプリはいかが?(※余計市長の魔力を消費します)
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デビサバは出てねえだろwww
ニカイアは死亡フラグと死亡フラグキャンセルを兼任できるからまだいいけど、悪魔召喚アプリは十中八九暴走するw
アプリってっ点じゃ携帯繋がりで未来日記とは相性良いかもだけどw
-
何だかんだでしれっとメイドインヘブンも出てる以上、何かの拍子でラブトレイン覚醒してもおかしくないけど
初期段階で禁止されてる上にたとえ出来たとしても覚醒する前にその前にころっと死にそうw
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死亡者名鑑でケリィ更新されてたけど確かに意外とショッパイ戦果だ…
直接殺したのまどかだけだし、そのまどかはいつまでたっても更新されないし…
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良くも悪くも、おいてけぼりにされてた感は否めなかったなケリィ……
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ディケイドもそうだが描写だけなら強く見えたマーダーが後から見直すと意外と微妙ってのがよくあるよな
あとこのロワ強いマスターは結構いるけど鯖からキルスコア挙げたのってペルソナ勢だけなんだな
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アロンダイト「ペルソナ使いっておっかないんだな」
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ペルソナの費用対効果がインチキ臭いからな、原作よりマシだがwww
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一人一能力のスタンドと比べても汎用性あり過ぎだからな
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バフ系スキル無しでも身体能力ブーストする点は結構でかいよな。 まぁ、その辺りはかなり個人差も出るけど
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新作予約はまだですかね…
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もう、市長を賢者の石にしちゃえばいいんじゃね?
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もうやめて!市長のLPとMPはもうゼロよ!
今の市長を石にしても魔力も生命力も弱そうだから炉心としては弱そうな気が…
ああでもFF6的に考えたら瀕死の状態でも強力な魔石もとい賢者の石になる、みたいなところかな?
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大丈夫大丈夫市長だし
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?「市長を殺すだけの流れかよ!?」
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市長?いいえ、死長です
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頭脳明晰でイケメンのブリタニア皇帝が完璧な指示を出し続ける限り、市長の逆転は不可能だと思うの
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>>194
つ座布団
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ぶっちゃけ市長の一番の敵は何かと因縁のあるアレックスでも天敵のDIOでもなくて、味方である大統領だと思うの…
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>>197
市長に一番の大打撃与えてる訳だしなw
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性格面の相性とか考えない場合だとイリヤクラスの魔力無いと大統領は扱いづらいかw
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バーサーカークラスと同等かそれ以上の大食らいなのかそう考えると……
無限に食いつぶす分性質悪いか……?
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逆に考えると魔力供給として殆ど期待出来ない市長がここまで大統領の無茶をドリンクだけで一応は乗り切っているんだし
燃費自体はまぁまぁの可能性が微レ存…?
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最初のほう以外は魔力スカスカだったし、その辺は調整したんじゃない?
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(実質無限リレイズという費用対効果を考えたら)燃費がいい
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せめて「大統領絶対命令(プレジデントオーダー)」が使えれば
まだワンチャン巻き返しも可能なんだけどね>>大統領
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でもプレジデントオーダーってアサシン以外のどのクラスなら使えるんだろう?
そも、大統領はアサシン以外にどのクラスの適性があるのだろうか?
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宝具がライダーで弱体化したライダー以外の適性がなさそうな太公望とかもいたな
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軍師だしキャスターだったんじゃない?
ただそれだと騎乗と河馬戦闘形態が劣化しただろうけど
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というか原作だとクラスのせいで宝具持ち込めない事はあっても宝具の威力が下がったと言われた事って無いんだけどな
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まぁそのへんは二次創作企画としての事情だろうなぁ
原作でも使えた能力がクラス補正で使えなくなるよりは弱体化込みで使えた方が単発企画としては面白そうだし
アルテマ?知らない子ですね…
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大統領は基本武器が拳銃だし、アサシン以外だとアーチャーか?
でもアーチャーだと更に「大統領絶対命令(プレジデントオーダー)」使えなさそうなイメージだ…
そういえば、呼び出しておいたディエゴ(の死体)って結局どうなったんだっけ?
ディエゴさん殺され損+市長魔力吸われ損?
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平行世界に干渉可能だし魔法使いってことでキャスターとか?>大統領
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為政者として自国や世界情勢をCastするという意味でキャスターが似合いそうだな>大統領
キャスターなら「大統領絶対命令」で部下を召喚するのもなんとなく頷ける
Fateでも魔術を齧っていないキャラばかりだし
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キャスターでのみ部下召喚できるとするなら代わりにD4Cが使えなくなりそう
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単に気配遮断とかができなくなるだけじゃね
キャスターならラブトレ使えたのかね
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D4C使えない大統領とかエクスカリバー持ってないアルトリアみたいなもんなんだよなぁ…
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予約はまだ来ないのか…
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>>210
まどかを誘き出すのに使われて、そのまま放置じゃなかったっけ。
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>>216
ちょっと急かし過ぎてんよ〜
もっと気長に待って、どうぞ
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全員予約します
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補足
ゼロ、ギルガメッシュ、言峰も含めてです
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市長が活躍する予感
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インターバル入れての次の戦いの狼煙を上げるのかな?
市長頑張れー
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勢い落ちたなー
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>>223
言ってる意味が分からない
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誤爆じゃね?
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もう終盤に入ったし、参加者人数も減って概ね予約一本に絞られてきたから、あとは気長に待つのみ
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太公望ラオウアシュナードDIO以外は勝ち目無しとか言ってた奴は息してるのだろうか
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ギルガメッシュの事? 後付で時間停止出てきたしワンチャンあんじゃね
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前にこの4人しか優勝の可能性は無いとか言ってたやつ
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太公望はギアス反射が可能〜という後付け設定とマーダー全員に対する御都合お情けで殺されてる
ラオウはワカメのせいで死ぬ事が予想済み、アシュナードは殺したのがDIOなので関係ない
DIOはそれこそ、禁止されてたスーパータトバ追加等の御都合マシマシで殺されてる
ワカメはさておき、むしろこんだけ下駄履かせなきゃ殺せなかったのかと言いたい
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DIOの場合、ご都合というよりフラグ回収の方じゃない?
あと喧嘩しないで〜
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>>230
怒ってんの?しゃぶってよ
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後付けで禁止されたスーパータトバを下駄扱いするのはどうなのかね
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>>232
(しゃぶれだぁ?お前がしゃぶれよって言いたいけどネコなんだよなぁ…)
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>>233
後付けで禁止と言うけど本人の項目に載ってすらいない上に使えるメダルの範疇に入ってもなかったんですがそれは
理由付けもある程度ちゃんとしたものだったし後付けで禁止呼ばわりはそれこそどうなのかね
前から思ってたけどここの読み手って仮面ライダーに対して異様に判定甘いよね
じゃあ他全員に対しても寛容なのかと言えばそんなことは全然ないし
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要するに「おのれディケイド!」ということですね
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こうなったのも全部
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???「オーズのせいだ」
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おのれゴルゴム、ゆ"る"ざん"!
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正直ドラゴンブレス一発でサーヴァントを何体も灰にする方がよっぽど補正だと思います
いやまぁアレは在庫処分の側面もあったけど
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236から239までの証言を元にすると「ゴルゴムの乾巧が変身するディケイドがカメンライドしたオーズのせい」ということでいいのかな?
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まさかムーンセルにゴルゴムが…?!
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ー────-リ \________/ / l ̄ ̄ ̄ ̄へ
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シャドームーンが最後のサーヴァントとして登場する可能性が微レ存…?(ただしディケイド版)
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もしかして:綿棒
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キングストーン聖杯?
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キングストーン聖杯はてつをが乱入しすべてを掻っ攫っていくので即刻中止するように
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すみません、申請が遅れましたが延長お願いします
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アレックスも言ってたけど、アシュナードは実は割と穴があるから冷静に見定めればなんとかなるんだよな。
格下相手には無敵に近いだけで。元より飛行系は元々離れて戦うアーチャーとの相性悪いし。
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同レベル相手だと押し付け宝具がないから不利なんだよな
そういう意味ではセイバーや兄貴の方が有利になるのかな?
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>>249
原作でもチートスキルで一部キャラしか攻撃通らない『だけ』だからな。直接戦う時の状況からしっこくの方が強い印象のある始末だし
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てことは某死体も
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そもそも攻撃方向が見え見えのドラゴンブレスなんてそうそう当たるもんじゃないしね
そういう意味では処分祭の時みたいな当てる工夫をして撃つというのは良かった
あんな状況じゃ令呪使って回避もままならんし
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あの戦い、処分祭って呼ばれてて無双めいた扱いだけど
アシュナード達が有利に立ち回れた要因や工夫がしっかり描写されてるから好き
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(俺は内心でセイバー逆無双って呼んでるよ)
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正直処分祭のアシュナード有利の要因は全部こじつけ臭くてあんまり好きじゃない
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こじつけなんて大なり小なりロワじゃよくあること
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そのこじつけが嫌ならあの時投下すればよかったのに
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遅れてすみません、投下します
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結論から言えば、ジョン・バックスは死にかけていた。
「ひゅー……ひゅー……」
力なく開いた口から漏れる弱々しい呼吸。
小刻みに痙攣を繰り返す指先。
白濁した眼球は物体を捉えられず、視界は霞がかったように真っ白だ。
体に血液を送り出す心臓の鼓動はゆっくりと遅くなっていく。
限界をはるかに超えて魔力をアサシンに供給した結果、
正規の魔術師ではないジョン市長は生命維持に支障をきたすほど魔力を消耗していた。
他のマスターから狙われないために新都山奥の双子館に身を隠したことが仇になった。
今、市長の周りには誰もいない。
足取りが漏れるのを恐れて世話役のNPCさえも置いていなかったため、市長がこうして動けなくなっても誰にも発見されないのだ。
柳洞寺を攻撃に向かったアサシンが戻るまでまだ時間がかかる。
市長の命はそれまで持たないかもしれない――
どうしてこうなったのだ?
私は冬木市市長の座を手に入れて、他のマスターより優位に立ったはず。
強力な戦力であるゼフィール王・ライダーと同盟を組み、誰よりもこの聖杯戦争をリードしていたはずなのだ。
配下のNPCから市内の情報も得られる。
アサシンも戦闘向きではないとはいえ諜報・暗殺には抜群の力を発揮するサーヴァントだ。
市長という座もスケープゴートを用意し、ジョン・バックスというマスターの存在はいまや誰にも知られていないはずだった。
万全の状態を整え、万全の戦略を練って、予定通りに勝利するはずだったのに。
なのに、なぜ。
私はこんな暗く寂しい場所でひとりで這いつくばっているのだ?
…いや、違う。一人ではない。
そうだ、きっとすぐに大統領が戻ってきてくれる。
もうすぐ…きっともうすぐだ…もうちょっと待ってみよう。
まだ私と大統領は生きている。ならこの戦いはまだ負けてはいない…
しかし眠たくなってきたな…大統領が戻ってくるまで、少しでも体力を回復させておかねば。
双子館の床はいつまで経っても同じ様に静かで…
そのうち『ジョン・バックス』は、待つ事と考える事をやめた。
-
コツ、コツ ゴンッ!
「ぐわっ!」
「起きたまえ」
市長の意識が途切れた瞬間、頭にすさまじい痛みが走った。
固いものが高速でぶつかった痛みだ。
「眠ると死ぬぞ。
雪山で寝ると死ぬのは体温が低下して生命維持が不可能になるからだが、今の君も似たようなものだ。
そこまで魔力が尽きた状態では無意識状態から復帰できず自我が拡散し、永眠することになる」
なんとか頑張って意識を覚醒させ目を開くと、黒く長い影が壁から伸びていた。
いや、違う。
市長が倒れているためそう見えるだけで、そこに人が立っているのだ。
頭の痛みは、その人影に蹴られたものだった。
「大…統領……?」
「残念ながら違う。君のアサシンは戻ってくるまでもう少し時間がかかるだろう。
私は言峰綺礼。ムーンセルのNPC、監督役だ。
一度会っているのだが、思い出せないかね?」
朦朧とする記憶を振り返れば、たしかにこの人物には見覚えがあった。
神父のNPC、聖杯戦争の監督役。
そういえばゼフィールたちも接触していたはずだ。
「なんで…ここに…?」
「私がここにいる理由かね?
簡単だ、君を救いに来たのだよ」
神父は市長に微笑みかける。
うさんくさい……とても信用できない笑い方だ。
「なぜ…NPCが…?」
「うむ、その疑問はもっともだ。
本来中立であるNPCがいち参加者に肩入れすることはない。
たしかに私がここにいるのはムーンセルの指示によるものではない」
-
その声が遠くなる。
まぶたが重くなり、意識がまどろんでいく……と、再び言峰神父は固いブーツで市長の頭を小突いた。
「……!」
「だから寝るなと言っているだろう。
手短に言うと、私がきたのは君のその姿が原因だ。
このままでは君は死ぬ。あと数分の命だろうな。
いやはや、戦闘で死ぬマスターは大勢いるが君のように孤独に衰弱死するマスターはめったにいない。
中々見ものではあるが、それではつまらんからな」
神父は市長を引きずり起こしてベッドに放り投げる。
仰向けにされてようやくまともに神父の顔が見えた。
NPCのくせに、無表情なのに、なぜかその顔はとても情感が豊かに見える。
「いまや残ったサーヴァントは五人、マスターは君を入れて四人だ。
このうち三組が君の敵側にいる。
そしてジョン・バックス、君はこの通り瀕死だ。
もはやこの聖杯戦争の趨勢はほぼ決したといえるだろう」
なんだか数が合ってない気がするが、この状況が絶望的だということはわかる。
ただでさえ敵は強くて数も多いのに、そもそも戦う前に死にそうだ。
なんなのだこれは、どうすればいいのだ。
「そこで、私は君に選択の機会を与えに来た。
このまま死を受け入れるか、それともまだあがいてみるか。
安らかに眠りたいのなら私は去ろう。
しかし、願いを諦めないのなら力を貸そう」
力を貸す…?
NPCが参加者に協力するというのか?
それも市長が改ざんしたNPCとは違う、本物の運営側のNPCが。
「ともに戦うというわけではない。それはさすがに運営NPCの領分を超えるからな。
私にできるのは君にも戦う力を与えることだけだ。
もう一度立ち上がり、試練に立ち向かう力をな。
あまり時間はない。死んでしまえば蘇生することはできないからな。
さあ選びたまえ」
本能が警告している。この男は信用してはならない。
しかし同じく本能が警告している。この申し出を受けなければ本当に死ぬ。
市長の手は震え携帯電話を持つこともままならず、魔力が尽きたため念話もできない。
大統領に意見を聞くことは不可能だ。
今、市長自身が決断しなければならない。
生きるか、死ぬか。
考えるまでもなかった。
「たす…けてくれ……!」
「戦闘を継続する意思ありと判断する。
ではジョン・バックス、この聖杯戦争最後の戦いを彩るために…
君を助けよう」
-
◇ ◆ ◇
スザクとランスロットとの戦闘を終えたルルーシュとガウェインの前に、ライダー・火野映司が飛んできた。
赤い姿に変化した映司が翼をたたんで降りてくる。
「ルルーシュ君、ガウェインさん!大丈夫ですか?」
「ライダーか。ああ、俺達は大丈夫だ。スザクとランスロットは…死んだ」
「スザクって子はルルーシュ君の友達だったよね?それにランスロットってたしか、ガウェインさんの…?」
「気遣いは無用です、ライダー。私もルルーシュも、友と決着をつける覚悟を持って臨みました。
この結果は心良いものではなくとも、我らと彼らが共に望んだ決着なのです」
ガウェインの言葉に、映司はそれ以上の慰めを拒否する響きを感じた。
ルルーシュの顔を見ても、どこか吹っ切れたような…最初会ったときから感じていた死の影が取れたような気がする。
生きる意志を強く持った顔だ。これなら心配はないだろうと映司は安堵した。
「それよりライダー、お前がここに来て大丈夫なのか?泉と花村は」
「それなんだけど…俺たちが柳洞寺に避難した後、
切嗣さんとアーチャー、そしてアサシンが襲ってきたんだ」
「何だと!? いや、衛宮切嗣のサーヴァントはライダーだったはずだ。
何故アーチャーなんだ?」
「ディケイドはセイバーさんと相打ちになったんだ。
それで切嗣さんはアーチャーと再契約したんだと思う」
「とするとアーチャーのマスターも死んでいたのか…。
それで、お前がここにいるということは衛宮切嗣たちは撃退したのか?」
「うん、陽介くんとアレックスさん、それにディケイドがくれた力のお陰でね。
切嗣さんとアーチャーは倒した。俺はルルーシュ君達を迎えに来たんだ」
「アサシンは逃がしたのか?」
「令呪で逃げられちゃったからね。さすがに追えなかった」
「気を落とすことはありません、ライダー。
あのアーチャーを倒しただけでも戦果としては十分です」
特に被害もなく、最大の難敵と目されていたアーチャーを撃破した事実は大きい。
三人の間で手早く情報が交換されていく。
総合すれば、今この冬木市に生き残っているマスターとサーヴァントの数は見えてきた。
ルルーシュとガウェイン。
陽介とアレックス。
こなたと映司。
アサシンとそのマスター。
キャスターとそのマスター。
-
おそらく十人。
これがこの盤面に残る、最後のプレイヤーたちのはずだ。
仮に今まで潜んでいたとしても、生き残っていたのならばあの大きな戦いに何らかのアクションを見せないはずがない。
この十人という数字には、ルルーシュはほぼ間違いないと確信を持っていた。
「…ライダー、泉たちはまだ柳洞寺か?ランサーは戦えるのか?」
「うん、陽介くんが令呪で回復させたから大丈夫だと思うけど」
「なら、悪いがすぐにこっちに合流するように支持してくれ。
この状況で分散しているのはよくない」
「ルルーシュ?どうしたのです」
「俺達は今すぐ新都に向かい、アサシンを狩る。
俺達が西の深山町に陣取っていて、アサシン達は東から攻めてきた以上、奴らの根城は新都にあるだろう。
こちらのキャスターの索敵にも引っかからなかったしな。そして、敵にはまだキャスターがいる。
俺とスザクの戦いには手を出してこなかったが、奴がまだ健在だということに変わりはない。
アーチャー、ライダー、バーサーカーという戦闘力に優れた駒がなくなった以上、
キャスターが単独でこの深山町に残る可能性は低い。
おそらく新都でアサシンと合流するはずだ」
「アサシンとキャスターですか。たしかに、時間を与えるのは得策ではありませんね」
「直接戦えば間違いなく俺達が勝つだろうが、敵はどちらも罠や暗殺に向いたサーヴァントだ。
余計な小細工をする時間を与えたくない」
ルルーシュが自身とガウェインの状況をチェックする。
魔力を消耗しているが、大きな負傷はない。
アサシンとキャスター相手なら宝具を使わずとも押しきれる。
「令呪で逃げたアサシンはともかく、キャスターは足は早くない。
今すぐ追えば新都に入られる前に追いつけるかもしれない」
「ではルルーシュ、ライダーは後続との合流を待ってもらい、我々だけで先行しますか?」
「いやガウェインさん、俺も一緒に行きます。
もうこっちの深山町側には敵がいないのならこなたちゃん達は安全のはずだ。
敵地に踏み込むルルーシュ君たちのほうが危ないですから」
映司の言うとおり、深山町の安全はほぼ確保されている。
アレックスも戦闘可能な状態に回復しているし、陽介も新たな力を手に入れた。
それに何かあればこなたがもう一画の令呪で映司を呼び戻すこともできる。
戦闘力に優れたガウェインに加え機動力と汎用性のある映司のコンビならば、
アサシン達がどんな手を打ってきても対応できる可能性は高い。
-
「わかった、ライダー。泉達に連絡してくれ。
俺たちはこれよりアサシンとキャスターの追撃、討伐に向かう」
まずガウェインがやや先行し、その後をルルーシュを抱えた映司が続く。
太陽が顔を出し始めた町は視界も良好だ。
移動を映司に任せ、ルルーシュはアサシンらを倒した先のことを考えていた。
もしこのまま首尾よくアサシンとキャスターを倒せたとする。
残るのはセイバー、ランサー、ライダー。
サーヴァントがまだ三人もいる。
ムーンセルはそんな状況を聖杯戦争の終結とは認めないだろう。
最後の一人になるまで戦いは続く。
だがルルーシュと陽介、そしてこなたは当然殺し合うつもりはない。
ならばどうなる?
ムーンセルは戦いの続行を求めて干渉してくるのか、
それとも戦う気になるまで永遠にこの箱庭の中に閉じ込めておくのか。
もし殺し合うこと以外にこの戦いを終わらせようとするなら、ムーンセルの作るこの冬木市からの脱出するか。
しかしムーンセルの支配から脱するにはムーンセルに直接アクセスするしか手段はない。
可能性があるとすれば…運営役のNPC、だろうか。
彼らを解析すればムーンセルへのアクセス方法がわかるかもしれない。
どうなるにせよ、バラけていては危険だ。
早めに泉たちが追いついてくれるといいが…
「ルルーシュ!」
思考はガウェインの言葉で中断される。
立ち止まり剣を構えたガウェインの視線の先には、アサシンとキャスターがいる。
冬木大橋――その半ばほどで、なんとか追いつけたようだ。
「ここまでです、キャスター、アサシン。
この戦いの幕引きは、貴方達を斬ることで下ろさせていただく」
「おやおや、追いつかれてしまいましたね。まあ肉体派ではない我々では当然でしょうか」
「呑気なことを言っている場合か。
私はともかく、お前は死んだら本当にそれまでだろう」
「それはそのとおりですがね。
いや…だって、打つ手はないでしょう?」
白いコートのキャスターがアサシンに向かって肩を竦める。
その顔は全く焦っていない。
映司がルルーシュを背後に庇うが、その必要もなさそうだった。
「まだ策があるのか…?」
「いいえ、違いますよルルーシュ・ヴィ・ブリタニアくん。
どうあがいても無駄なのですから、この期に及んでじたばたするのは美しくないでしょう」
-
なんというか、掴みどころがない。
絶体絶命の状況にあってなお、キャスターは他人ごとのような態度を崩さない。
スザクとこのキャスターがどういう関係にあったのか、何故あの戦いに介入しなかったのか、
疑問はいくらでもある。
しかしそれは危険を犯してまで確かめる価値はない。
そう判断して、ルルーシュはガウェインに命令を下す。
「ガウェイン、これ以上の小細工を許す前に…奴らを倒せ!」
「御意!」
主の命令を受けて、ガウェインが橋を一直線に疾走していく。
アサシンが拳銃を乱射するが、所詮魔術師と暗殺者では騎士を止めることはできない。
瞬きの間に接近したガウェインの剣が、キャスターの首を切り飛ばす――寸前
どこからか飛来した黄金の輝きが、ガウェインの剣を阻んだ。
「……!?」
しかしさすがはガウェイン、虚を突いた攻撃を見事に打ち払う。
弾いたのは綺羅びやかな剣、槍……一見して宝具とわかる、高貴なる武具の数々だ。
ルルーシュの推測ではありえるはずのない、アサシンとキャスターのはるか先からの攻撃。
それは止まることなくガウェインに降り注ぎ続ける。
もはやアサシンどころではなく、たまらずガウェインが後退した。
彼が弾いた武器はゆうに十を超える。
その全てが違う武器、しかし全てが宝具。
「こ、これは!?」
「ほう、雑種とはいえさすがはセイバーというところか。
我の財を凌ぎきるとはな」
高らかに降ってきた声は…はるか頭上、橋桁の頂点にいた。
太陽を背にしたからか…否、まとう鎧そのものが黄金の輝きを放っている。
その姿はこの場にいる誰もが初めて見る。
その人物は血色の瞳と圧倒的なまでの存在感で下々の者を睥睨した。
「何だ、貴様は!?」
「この面頬を知らぬとは、万死に値するぞ雑種。
だがまあいい、許そう。
王は寛大であるがゆえにな」
黄金の男は問い質したルルーシュをじろりと睨む。
それだけで、ルルーシュは己を底まで見透かされたような薄ら寒い悪寒を感じる。
これまでランサーやライダーといった数々の強力なサーヴァントと相対してきても感じなかったほどの…凄まじい圧迫感。
ルルーシュは確信した。
この新たに現れた黄金のサーヴァントは、今まで出会ったどのサーヴァントよりも強力な存在だ。
-
「我が名は英雄王ギルガメッシュ。
頭が高い、伏して仰げ。
貴様らは無二の王の眼前にいるのだ!」
ギルガメッシュと名乗った男の背後に広がる、波紋のような空間の歪み。
そこから現れたものに、誰もが絶句する。
「なんだ、あれは…すべて宝具か!?」
「いけない…ガウェインさん!」
「ライダー、ルルーシュを頼みます!」
およそ五十を超える剣がギルガメッシュの背後から生み出され、矛先をルルーシュたちに向けて発射される。
宝具の雨が弾丸となって迫る。
「いいえガウェインさん、俺に任せてください!」
迎撃しようとしたガウェインにルルーシュを預けて、映司はタジャドルコンボを解除した。
代わりに取り出したメダルはクワガタ・カマキリ・バッタ。
クワガタ!
カマキリ!
バッタ!
ガ〜タ ガタガタ キリバ ガタキリバ!
仮面ライダーオーズ・ガタキリバコンボ。
オーズが瞬時に大量の分身を生み出す。
「セイヤーッ!!」
そして五十体のオーズが一斉にキックを放ち、飛来する五十の宝具を迎撃する。
分身オーズと宝具が激突、爆発。視界を閃光が埋め尽くす。
ガウェインがガラティーンを盾にして守ってくれなければ、ルルーシュはその爆発で焼きつくされていただろう。
やがて爆発が収まると、そこには全ての分身体を撃破されたオーズが膝をついていた。
-
「はあっ…はあっ…!」
ガタキリバコンボは非常に強力なコンボだが、それに応じて魔力の消費も桁違いに大きい。
さらに、ディケイドのイリュージョンと違って分身を個別に動かすことは不可能だ。
今のように指示した目標に向かって一斉に攻撃するような単純な命令しかできないし、
サーヴァントの攻撃に耐えるような耐久力も殆どないため非常に脆弱だ。
もっとも、そのおかげでイリュージョンのようにムーンセルに制限されることもなかったのだが。
大軍を相手にするのならともかく、一騎当千のサーヴァントを相手にするには向かない力だ。
「ライダー、無事ですか!?」
「だ、大丈夫ですガウェインさん…少し、無理しましたけど……!」
かなりの消耗を強いられた映司だが、その甲斐あってギルガメッシュの攻撃を見事に防ぎきっていた。
余波を浴びた橋は無惨にも中ほどから綺麗に消滅し、橋は深山町側と新都側とで分断されていた。
「――やはりな。
ライダー、貴様…時を止める力を失ったな?」
ギルガメッシュといえば、五十個もの宝具を粉砕されたのも意に介さず、その瞳は冷静に映司を観察していた。
そういえば、とルルーシュも映司から聞いた話を思い出す。
ディケイドから得た力で時間を操り、アーチャーの時間停止を破ったと聞いた。
なら何故今その力を使わなかったのか?
「お見通しか…すごいね、君。
君の言うとおり、スーパーメダルはもうない。
アーチャーさんを倒した後、消えちゃったからね」
元々、スーパーメダル三枚は死に際のディケイドがオーズへと力を貸す形で発現したものだ。
本来この聖杯戦争でライダーとして召喚されたオーズに備えられていた力ではない。
ディケイドが消滅したため、いずれは消える幻のような力だったのだ。
ゆえに、その力でアーチャーを倒した後、消えてしまった。
スーパータトバコンボも本来なら空を飛べるが、崩れる柳洞寺からタジャドルコンボで脱出したのはそのためだ。
-
「元々あのアーチャーさんに気をつけろって言ってディケイドがくれた力だからね。
十分、役目を果たしてくれたよ」
「フン、興醒めだな。
あの下種なアーチャーと同質の力、我が蹂躙してやろうと思っていたのだが」
「スーパータトバコンボがなくても、俺にはまだアンクがくれた力がある。
侮ってもらっちゃ困るよ、ギルガメッシュさん」
「ほう?
なるほど、オーズ……欲望の王、か。
その溢れる王気、ただの雑種ではないようだな」
映司は立ち上がり、新たなメダルを手にギルガメッシュを睨む。
その横にガウェインが並ぶ。
もう一度あの絨毯爆撃をされる前に接近し、切り捨てるつもりだった。
「王に剣を向けるとは何たる不敬…と、普段ならその首を落とすところだが、今回はここまでだ。
薄汚い犬共も逃げおおせたようだしな」
しかし、ギルガメッシュは二人の闘志を風のように受け流す。
彼が示すのは新都側の橋。
そこにいたはずのキャスターとアサシンはもう、影も形もない。
「貴様、奴らを逃がすために?」
「使い走りなど不本意なことだがな。
だがこれも主菜の前の前菜と思えば安いものよ」
「ギルガメッシュ…その名も誉れ高きウルクの王よ。
貴方もまたこの聖杯戦争に召喚されたサーヴァントなのですか?」
「ふむ…我の財を凌いだ褒美だ、一つだけ答えてやろう。
否、だ。
我は今回、裏方のようなものだ。
が…そうだな、貴様ら雑種共が勝ち残るのならば、再びまみえることもあろう。
ムーンセル中枢へ続く、熾天の座でな」
「どういう意味だ!?」
「一つだけと言ったぞ、雑種。
ではな。せいぜい我を楽しませろよ」
ギルガメッシュが指を弾くと同時、三度閃光が走る。
ガウェインが流星のような投剣を迎撃したが、その瞬間にはギルガメッシュはもういなくなっていた。
-
「…去ったようですね」
「ギルガメッシュ、だと…あのギルガメッシュ叙事詩の、あのギルガメッシュか」
「たしか、古代バビロニアの英雄王だったね。すごい力だった…」
「あれだけの力を持ったサーヴァントが、この局面まで潜伏していたというのか?
いや…裏方と言っていたな。では奴は誰かのサーヴァントというわけではなく…」
「ルルーシュ、ひとまずここは我らも退きましょう。
状況が変わりました。もうこれ以上深追いすべきではない」
ガウェインが進言する。
アサシンとキャスターを討ち果たすのが当初の目的だったが、ギルガメッシュの乱入により逃がしてしまった。
追おうにも、ギルガメッシュの存在があってはそうもいかない。
アサシンたちを逃すのが彼の目的だったならば、ここでルルーシュたちが進めばまた阻止しに来るだろう。
あれだけの力の持ち主ならば、無策で当たるのは自殺行為だ。
こなたたちと合流し、情報を集め、傷を癒やし、万全の状態で臨まねば。
アサシン達に態勢を立て直す時間を与えることになるが、やむを得ない。
「…そうだな、ここは撤退する。
ライダー、泉たちに学園に向かうよう支持してくれ。
まずはそこで合流し、身を休め、ギルガメッシュの情報を取得する」
「わかった、ルルーシュくん」
ルルーシュは真っ二つに割れた冬木大橋を眺める。
これはライダーとギルガメッシュが激突した結果だが、
それでもギルガメッシュの底知れなさを類推するには十分だ。
これと同じだけの破壊を成そうとするなら、
ガウェインも映司も宝具をフルパワーで開放しなければならないだろう。
しかしあのギルガメッシュは、数十に及ぶ宝具を乱打しながらまったく消耗した様子がなかった。
あれだけの宝具を持ち、しかも使い捨てにできる…規格外と呼ぶにふさわしい破天荒ぶりだ。
やがて月海原学園でこなたたちと合流したが、
彼らもやはりギルガメッシュの存在を知らなかった。
この局面にきての新たな脅威の誕生…しかしそれは同時に光明でもあった。
「口ぶりからして、おそらく奴は聖杯戦争の参加者ではない。
盤面を支配するもの…つまり、この聖杯戦争を演出する者の側と見て間違いないだろう」
「というと、ムーンセルの?」
「いや、衛宮から聞いたが本物の聖杯戦争はこんなに大規模なものではないらしい。
何者かがムーンセルを掌握し、自分の都合のいいように改変したのかもしれない」
ギルガメッシュがその黒幕の一派であるならば、彼が姿を見せたのは道を示すために違いない。
この聖杯戦争、参加者間の戦いが終了したならば、勝者の挑戦を受ける…という。
アサシン達を救った理由は分からないが、どのみち彼らとは決着をつけなければならない。
-
「花村、この剣はお前が使え。
おそらくお前が最も効果的に運用できる」
ルルーシュは、ランスロットが使っていた封印の剣を陽介に手渡した。
陽介が使っていたランスロットの宝具アロンダイトは、ランスロットの消滅と同時に消えた。
陽介のペルソナは意志の力の具現化だ。
持ち主の意思を力とする封印の剣を扱うのにこれ以上の適任はいない。、
それに他に扱えそうな者はガウェインと映司くらいだが、二人とも自前の剣を持っている。
「この剣…あのオッサンが使ってた剣かよ。因果なもんだな…」
陽介は苦い顔で剣を受け取る。
持ち主であるゼフィールとは一度戦っている。
その後、親友である悠がゼフィールを倒したのもまた因果というもの。
巡り巡って剣は陽介のもとに辿り着いた。
「俺はギルガメッシュの情報を調べる。ガウェイン、ついてこい。
花村、泉は休息を取れ。
ランサー、ライダーは各自交代で泉と花村を護衛しつつ、外の警戒にあたってくれ。
おそらくアサシン達を倒せばそのままギルガメッシュとの戦いに雪崩れ込むことになるはずだ」
「りょーかい。正直もう眠くてたまんねえ…」
「あたしも…ごめん、先に休むね」
二人のマスターが出ていき、まず映司が護衛につく。
続いて教室を出ようとしたルルーシュを、アレックスが呼び止めた。
「待て、指揮官。一つ要望がある」
「なんだ?」
陽介たちが出て行った後に切り出すということは、彼に聞かれたくない話なのだろうか。
「ギルガメッシュとの戦い、俺が前衛を務める。
ガウェインよ、いかにお前でも奴相手に剣の間合いに持ち込むことは至難だろう。
俺なら遠距離攻撃の手段と再生能力がある。
いざとなれば…切り札もあるからな」
「それは、ARMSの暴走のことか?」
アレックスがディケイドたちとの戦いで暴走しかけたことはルルーシュも聞いている。
たしかに力は増すだろうが、とても信頼できるものではない。
それにギルガメッシュとの戦いで先頭に立つということは、一番の危険地帯に飛び込むことでもある。
-
「心配は無用だ。
マスターが令呪を使ってくれたおかげで、俺のARMSへの制御能力は増幅されている。
次は完全に制御を保ったまま、暴走クラスの力を行使できるだろう」
「それは…リスクはないのか?」
「無論、ある。マスターには通常以上の負担を強いることになる。
だが…俺はそれほど心配していない。
あいつは強くなった。友との別れが、あいつの心を強靭なものとした。
何があっても俺のマスターは屈しないだろう」
陽介のことを語るアレックスは誇らしげだ。
心底からマスターを守るという意志に満ちている。
「だが、こうも思うのだ。
あの強さは、決して良きものではないと。
生前はわからなかった。やつらの、オリジナルARMSたちの強さの理由が。
だが今の俺なら理解できる。痛みは人を強くする。
だが、悲しみから生まれる力など、本来あってはならないのだ。
マスターはたしかに強くなったが、同時に決して癒えない心の傷を負った。
俺にはそれが許せない」
いつになく饒舌に語るアレックスを見て、ルルーシュは理解する。
この軍人を絵に描いたような男も、やはり内心では怒っていたのだ。
心を通わせたマスターを傷つけ、苦しめるこの戦いに。
「だからもう、マスターに悲しみは背負わせん。
マスターだけではなく、お前とガウェインも、泉と火野も。
もはや誰一人死なせる気はない」
静かに、しかし力強く宣言するアレックスの魂の熱さがルルーシュとガウェインにも伝わる。
生前、アレックスに兄弟や部下はいても戦友、仲間と呼べる存在はいなかった。
しかし今、アレックスの周りには多くの友がいる。
そして、破壊のためにしか振るわなかった槍を守るために使えという、
愚かだが尊敬の念を抱ける、その名のごとく魂を光り輝かせる無二の主君も。
その事実が…アレックスのAMRSマッドハッターに、灼熱のごとき力を湧き上がらせる。
「……」
ガウェインは目を伏せ、厳かに頷いた。
背中を預けられる戦友に飾る言葉は必要ない。
単なる友人とは違う、命を預けられる仲間。
スザクとC.C.、そしてゼロレクイエムを支援してくれた数少ない同志以外に持った、初めての仲間たち。
今やルルーシュにとって、彼らもまた、かけがえのない存在だ。
「いいだろう、お前に前衛を任せる。
しかし忘れるな、お前も死んではならない。
お前が死ねば花村も死ぬ。そして俺たちもその悲しみを背負うことになる。
俺はそんなものはお断りだからな」
「ふっ、わかっている」
ルルーシュの返答に満足して、アレックスは去っていく。
残ったルルーシュとガウェインはどちらともなく笑みを浮かべ、後に続いていった。
-
◇ ◆ ◇
アサシンは双子館に帰還した。
キャスターはひとまず別地点で待機させている。
また、彼からは既にマスターがいないことも聞いていた。
スザクが死んだ以上特に隠す必要もないということだ。
「市長、生きているか?
動きがあった、新たなサーヴァントが…」
「知っている、大統領」
帰ってきた声は、予想に反して力強い。
出て行く時は細かった声は太く、生気に満ちていた。
「…市長?」
「勝負に出るぞ、大統領。
もはや私も隠れるのはやめだ。出撃するぞ!
次の戦いで全てを決する!」
全身を露わにしたジョン・バックスは、なぜか上半身裸だった。
しかし目を引くのは心臓の部分だ。
異常に肥大している…まるで心臓だけが膨張しているようだ。
市長から供給される魔力も今までとは桁違いになっている。
「NPCが…運営側のNPCに治療を受けてな。
おそらくは大統領、あのNPCこそは我らが推測していたこの聖杯戦争の黒幕、その一派だろう」
「なんだと?まさか、なにか細工をされたのか?」
「された。ああ、された。
おかげで私は生き返ったが、同時に後がなくなった。
だからこそ大統領、次こそが決戦だ。
次の戦いで敵対者をすべて始末し、我らが聖杯を掴み取る」
-
数時間前とはまるで別人のような覇気を漂わせる市長に、アサシンは戸惑いを覚える。
回復したのは結構だが、この変わり様はどうだ。
頭や精神をいじられたのではないのだろうか?
「私は覚悟を決めたのだ、大統領。
ああ、私は甘かった。安全なところから指示を出し勝利を掠め取ろうなどと。
真にこの戦いを制しようとするならば、私もまた命を賭けなければならない。
大統領よ、存分に魔力を持っていけ。
令呪も一画補充できた。君の全能力をフルに発揮できるはずだ」
なんと、令呪まで手に入れていた。
NPCの気味が悪いほど手厚い支援を逆に怪しく思う。
が、これで勝てる可能性が出たのも事実だ。
「大統領、まずは帰還報告(デブリーフィング)だ。
しかるのち作戦を整え打って出る。
君の本体を呼び戻せ。総力戦だ!
行くぞ、我らが勝つ。勝つ!勝利するのだ!」
言葉を発するたびにテンションを上げていく大統領を眺めながら、アサシンも覚悟を決めた。
理由はともかくこの市長なら、考えていたプランを実行できる。
その結果市長は死ぬかもしれないが…ムーンセルに勝者として認められるまで持てばそれでいい。
「――市長、なら私から一つ、提案がある。
私とキャスターの合わせ技だ。
幾重にも生み出した私の分身を爆弾化させ、特攻させる――名付けて、バイツァ・ダスト(負けて死ね)」
ブロークン・ファンタズムならぬブロークン・サーヴァント。
分身とはいえれっきとしたサーヴァントを丸ごと人間爆弾に変質させた際の威力は、
そんじょそこらの宝具など軽く凌駕することだろう。
まさにこれこそが、逆転の切り札。
-
◇ ◆ ◇
ジョンの回復処置を終えた言峰綺礼は教会に戻ってきた。
そこにはこちらも一仕事終えたギルガメッシュが、壁に背を預けている。
「終わったか」
「ああ、問題はない。これで彼も舞台に上がらざるをえないだろう」
綺礼がやったのは、ただ市長を回復させただけではない。
回復させる代わりに期限を切ったのだ。
肉体を変質させ、数時間後には心臓が爆発するように細工を施した。
これでもうこそこそと隠れ潜むことはできない。
全身全霊を賭けて戦いに挑み、セイバーらに勝利するしか生き延びる道はない。
正直なところ、綺礼が手を貸さずとも市長はもうしばらくは持っただろう。
だが人間というものは、本当にギリギリまで追い詰められなければ発揮できない力がある。
綺礼とギルガメッシュが干渉しなければ、キャスターと分身体のアサシンは倒されていたはず。
残るのは半死半生の市長とアサシン。
セイバー達を相手にしてはもはや消化試合でしかない。
いかに強靭な魂を持った者でも、そこから活路を見出すことは不可能だ。
それでは面白くないから、綺礼は市長を回復させ、戦いに駆り立てるようにした。
ギルガメッシュを向かわせてキャスターを逃したのもそのため。
アサシンとキャスターが合流すれば、まだ一矢報いる可能性は十分にある。
同時に、どちらかが勝利した場合の指針にもなる。
少年たちが勝つにせよ、市長らが勝つにせよ、勝った方は教会に来るだろう。
ギルガメッシュという聖杯戦争の枠組みの外の存在を示したことで、彼らは真に打倒するべき敵に気付いた。
これで彼らは目的を見失って無為に時間を過ごすこともない。
「さて…誰が勝つかな」
「つまらんことを聞くな。
お前が弄ったあの雑種に勝ち目などないことは、お前が一番わかっているだろう」
「でもないだろう。本当に追い詰められた人間の執念とは侮りがたいものがある。
なりふり構わず、全てを投げ出して挑むのであれば…彼にもまだ可能性はある」
「安らかに逝くことなど許さぬ、か。
ふん、大した聖職者よな、お前も」
「ゼロは私の行いを黙認した。
ジョン・バックスの最後の輝きが少年たちを凌駕するのであればそれもよし…ということだろう。
それだけ魂を高めたということでもあるしな」
ジョン・バックスは一度絶望に沈んだ。
が、目の前に垂れてきた蜘蛛の糸をつかみ、這い上がった。
はたしてそれが絶望を克服した証明になるのかはわからない。
1つだけ言えることは――ジョン・バックスはまだ諦めていないということ。
だからこそ綺礼は市長を回復させるだけでなく、自身の令呪を一画分け与えたのだ。
「亡き友から力と思いを受け継いだ花村洋介少年…
死中に置かれることで覚悟を決めたジョン・バックス…
どちらが勝つのだ?どちらでもいい。
彼らの戦いはさぞや華々しく、また滑稽なものになるだろう…!」
かつて花村洋介は幼き友人たちと共謀し、一人の人間を闇に葬った。
それを悔いたがためにこの聖杯戦争に参加し、しかし殺しを誰よりも忌まわしく思っている。
そんな少年が自衛のために衛宮切嗣をその手で斬殺し、今また一人の人間と対峙しようとしている。
はたして彼はどんな顔でジョン・バックスを殺すのだろうか。
それを思うだけで神父のNPCは聖職者の域を逸脱した背徳感に身を震わせる…
「愉しそうで何よりだ、雑種。
ふん…しかし我もあの偽者(フェイカー)には興味がある。
狗を使役した雑種から受け継いだ力がどれほどのものか…
そしてあのライダー。
この我を差し置いて欲望の王などとよくも抜かしたものよ。
奴は我が手ずから葬る価値がある」
「王にこだわるか?ならあのルルーシュもまたかつて皇帝だったはずだが」
「自ら死を望む王など王たる資格はない。
塵芥ほどの価値もない雑種になど我の食指は動かん。
まあ、奴は奴で生き残れば面白いことになるかもしれんがな…」
「うん?どういう意味だ?」
「気にするな、戯言よ。
今は雑種どもの遊戯をとくと見物させてもらおうではないか。
誰が一番先に熾天の座への門を開くのか…」
因数外(イレギュラー)のマスターとサーヴァントは闇の中でただ愉しむ。
彼らを大いに喜ばせる喜劇悲劇を待ちわびる。
-
◇ ◆ ◇
闇よりも暗い影の中。
魔王――かつて人であったモノは笑うことなく、愉しむことなく、結末を待ち続けている。
「人の足を止めるのは絶望ではなく諦観…、
人の足を進めるのは希望ではなく意志…。
誰もが諦めてはいない。
誰もがもがき続けている」
影の中、魔王は両手を広げる。
宇宙の深遠すらもその身に取り込む、どこまでも底のない漆黒の魔王。
「ならばこの魔王ゼロが祝福しよう、
ここまで生き抜いた貴様たちことごとくに魔王たる資格はあるのだと。
さあ、奪い、壊し、殺し合うがいい…私の愛しき子供たちよ。
もっとも強き、新しき魔王を生み出すために……」
魔王は待つ。
その眼前に現れる最強の挑戦者/後継者を。
一人、ただ、待ち続ける…
-
【深山町・月海原学園/朝】
【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、精神力消費(大)、貧血、強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
[道具]:契約者の鍵@ペルソナ4
※携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました(意図的に隠された情報があるかもしれません)。
※ジライヤがスサノオに転生しました。
※イザナギを覚醒しました。他のペルソナを使えるかは他の書き手にお任せします。
【ランサー(アレックス)@ARMS】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、ARMSの進化(進行度・中)
※対ARMSウイルスプログラムへの耐性を獲得。
【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)
[装備]:携帯電話 カンドロイド複数
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)
※スーパータトバメダルは消滅しました。
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]:魔力消費(極大)、疲労(大)
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャスト『hadron(R2)』を発動できます。
hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。
効果:ダメージ+スタン。
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)
※『聖者の数字』発動不可
-
【新都・双子館/朝】
【ジョン・バックス@未来日記】
[令呪]:2画
[状態]:魔力充実
[装備]:「The watcher」
[道具]:栄養ドリンク(箱)
※言峰綺礼に処置されたことで、心臓を魔力を生み出す心臓に改ざんされました。
数時間で爆発し、死に至ります。
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](8人目)・魔力消費(大)、 ダメージ(大)、疲労(極大)、気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)
[装備]:羽瀬川小鳩を練成した賢者の石
【新都・教会地下/朝】
【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康
【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
-
【新都・双子館/朝】
【ジョン・バックス@未来日記】
[令呪]:2画
[状態]:魔力充実
[装備]:「The watcher」
[道具]:栄養ドリンク(箱)
※言峰綺礼に処置されたことで、心臓を魔力を生み出す礼装に改ざんされました。
この礼装は数時間で爆発し、死に至ります。
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](8人目)・魔力消費(大)、 ダメージ(大)、疲労(極大)、気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)
[装備]:羽瀬川小鳩を練成した賢者の石
【新都・教会地下/朝】
【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康
【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
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投下終了
>>278は投下ミス、>>279が正しいです
タイトル
「境界線上のバビロンズ・ゲート」
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乙でしたー!ARMSと市長への愛が感じられる作品でした!
ところでいちぶARMSがAMRSに、陽介が洋介になっている箇所がありましたのでwiki掲載の際は訂正されたほうが宜しいかと
-
投下乙です!
ついにギルガメッシュ陣営が本格介入か
しかし死にかけていた市長がついに戦いに赴かざるを得ない状況まで追い詰められたな…w
覚悟完了市長とバイツァダスト大統領の最後の輝きは報われるのか
それにしてもアレックスはやっぱりカッコいいなぁ…
-
投下乙です!
しかしなぜだか市長がマッチョというシュールなイメージがつきまとうw
心臓の肥大化まで聞くとこのままタイラントになってしまうのかと心配してしまうw
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投下乙です!
ついにギルガメッシュ陣営が本格介入か
しかし死にかけていた市長がついに戦いに赴かざるを得ない状況まで追い詰められたな…w
覚悟完了市長とバイツァダスト大統領の最後の輝きは報われるのか
それにしてもアレックスはやっぱりカッコいいなぁ…
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すいません、多重投稿してしまったようですorz
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>>177が実現してしまった件について
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時限爆弾付き何ですがそれは…
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投下乙です。
ようやく出陣した市長に安心。自分が書いたこととはいえ、ひきこもりのままだとどう見つける展開にすればいいのか悩んでいたので。
さらに自分がネタにしたことですが、栄養ドリンクの箱買いってwww
ネタだけでなくアレックスの覚悟も良いですね。
最後に予約を。黒幕を含め全員予約します 。
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連投失礼。トリップを間違えました。
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市長が市超になったと聞いて
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っていうより死兆
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市長→死長→死超
なんかジョブチェンジみたいだな
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投下乙です
ついに黒幕介入、聖杯大戦の締めはまさかの市長覚醒
アサシンとキャスターという戦力的には最低クラスの残り物から、見えない人間爆弾なんて恐ろしすぎるコンボが発動するとは
そしてこのAUO完全にリハビリ終わってるw
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仕方がない。NPC桜を懐柔してAUOにぶつけよう(提案)
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(もしかしてまだwikiに収録されてない?)
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市長戦終わればそのままゼロと戦う最終回でもおかしくないけど、ここはどういう形式でやるんだろ
いまさら合作はないだろうし、早い者勝ちか、推薦か
-
いや、もしかしたら次回が最終回「市長大勝利、混沌の未来へレディーゴー」かもしれない
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あるいは「市長たちの戦いはこれからだ!」ENDかもしれないぞ
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そんな生殺しENDはやめてww
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市長が主人公なのは確定なのか(困惑)
-
大爆発!!これが市長の魂だ!
-
予約を延長させていただきます。
-
一身上の都合で現在書ける状況ではありません。
予約を破棄させていただきます。
-
では全員予約させていただきます
-
ヒュー!
-
ファッ!?(歓喜)
-
/
/
` ー
_,.>
r "
マジで!? \ _
_ r-''ニl::::/,ニ二 ーー-- __
.,/: :// o l !/ /o l.}: : : : : : :`:ヽ 、
/:,.-ーl { ゙-"ノノl l. ゙ ‐゙ノノ,,,_: : : : : : : : : :ヽ、
__l>ゝ、,,ヽ /;;;;;;;;;;リ゙‐'ー=" _゛ =、: : : : : : : :ヽ、
/ _________`゙ `'-- ヾ_____--⌒ `-: : : : : : : :
...-''"│ ∧ .ヽ. ________ / ____ ---‐‐‐ーー \: : : : :
! / .ヽ ゙,ゝ、 / ________rー''" ̄''ー、 `、: : :
.l./ V `'''ー-、__/__r-‐''"゛  ̄ ̄ \ ゙l: : :
l .,.. -、、 _ ‐''''''''-、 l !: :
| / .| .! `'、 | l: :
l | .l,,ノ | ! !: :
/ '゙‐'''''ヽ、 .,,,.. -''''''''^^'''-、/ l !: :
r―- ..__l___ `´ l / /: :
\ `゙^''''''―- ..______/_/ /: : :
`
-
流れ戻ったな
-
嬉しいことです。
このままのペースなら二週間に一回で更新されるとして4月には終わってるかな?
-
あと5、6話くらいか
-
結局欠片男とは何だったのか
-
いたなあそんな奴
途中で失踪したんだっけ?それとも死んだ?
-
一応死亡扱いになってるみたい
我様とゼロさん主催者側で登場のインパクトが強かった為、欠片男死亡には誰も触れなかったけど
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実は生きてたって展開なら面白いけどね
実際どうなんだろ?死亡描写は無かったから再登場しても可笑しくはないけど…
-
ぶっちゃけあのSSの死人って単なる比喩表現だと思うんだが
勝手に死亡者名鑑(笑)が面白がって載せちゃっただけで
-
実際明確な死亡描写がないんだよなぁ
-
我様とゼロがやりたかったことやってくれそうだから引っ込んだだけだと思ってた
つまり鯖従えてワンチャンあるよ
-
ザビエルが倒した説が好き
-
ぶっちゃけ明確に死亡したのか書かなかった書き手さんサイドにも問題があると思うの(なんj風)
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生死が曖昧なのに死亡者名鑑更新した奴こそが問題だろ
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>>320
正論なんだよなぁ
-
延長お願いします
-
実際明確な死亡描写がないんだよなぁ
-
まあ今さら出られてもビックリするけどな。
逆に面白いけどね
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このロワももうすぐ完結か
恥ずかしい上自分で続き書く気はなかったんでわざわざ投票終了直前に投下した登場話が懐かしいなぁ
-
純粋に優勝狙ってるのはもう大統領と市長だけになったんだよなぁ
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市長もカオス化しちゃったしなぁ、純粋に優勝を狙うやつは消えたと言っても過言じゃ
-
市長が未来日記のキャラだったということを本気で忘れかけていた
序盤で日記が使い物にならくなったからな
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他のロワなら未来日記を追加支給とかできるけど、ここは本人の持ち込みだけだからね。
-
まだ未来日記にはDead endするタイミングが解るって機能があるから(震え声)
壊されたら死ぬスマホとか弱点以外のなにものでもないな
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市長の日記ってそういう機能あるの?他人の日記を盗み見る能力なんでしょあれ
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能力的に8thと市長のはなさそうだな
-
すみません、私用で少し遅れます
-
原作うろ覚えだけど、The WatcherってDEAD ENDフラグ無いような気がするんだよなぁ…
由乃が金庫突入する前にフラグ一切立ってなかったし
もしも本当にその機能無かったらますますただの弱点に…
-
と言うかDEAD END表示されたら相当な労力使わないと回避不能だった気が……
原作からして日記2つ使った完全日記使ってようやくレベルだったし
つまり…… やっぱ無意味じゃねえか!
-
帰宅しました。期限を大幅に遅れて申し訳ない……
これより投下します
-
視界が朱に染まっている。
息を吸えば喉が灼かれ、肺は酸素を求めて喘いでいる。
夜の暗闇は太陽ではなく炎によって駆逐された。
「……! ……!」
炎の向こうで、仲間が――ルルーシュが、何か叫んでいる。
しかし、何を言っているのかわからない。
ふと足元に何か大きなモノが落ちていると気付いて、視線を下ろす。
それは炎よりも鮮やかな血で全身を染めた泉こなただった。
死んでいる……いや、まだ息はある。
しかしペルソナ使いでも礼装を所持している訳でもないこなたには危険なレベルの重症だ。
何故こうなった、と考えるもまったく理解できない。突然――そう、突然だった。
微睡んでいた意識は、気が付けば熱と痛みによって強引に叩き起こされたのだから。
「花村!」
駆け寄ってきたルルーシュに肩を掴まれる。
ルルーシュは一度こなたを見て唇を噛み締め、次いで呆然とする自分の頬を張った。
「しっかりしろ、花村! お前しか泉を治療できる者はいないんだ!」
痛みではなくその言葉が、花村陽介の意識を覚醒させた。
手の震えが止まる。揺れていた瞳の焦点が定まる。状況を理解できずとも、今やるべき事だけはっきりとしている。
「ルルーシュ、俺は泉を助ける!」
「頼む。俺達は敵を迎撃する!」
ルルーシュがそう言い、彼の横にセイバー――ガウェインが並ぶ。
彼らはランスロットを撃退した時にも使った決着術式“聖剣集う絢爛の城”をまたも発動し、即席の結界として周囲を覆っている。
いかにアサシンが気配を消そうとも、この灼熱の結界に忍び入る事は出来ない。アサシンによる襲撃と判断したルルーシュが咄嗟に展開したのだ。
ペルソナを召喚しこなたの治療に取り掛かった陽介の前に、ライダー――火野映司が現れる。
映司は仮面ライダーという姿に変身してこそ力を発揮するサーヴァントだ。
陽介、こなたの護衛に当たっていた時は変身していなかったため、彼もまた甚大な負傷を負っていた。
「ライダー、その傷は……」
「ごめん、陽介君。君達を守りきれなかった」
ぼんやりと思い出す。そうだ、確か――映司が庇ってくれたのだ。
だからこそ、おそらくサーヴァントの攻撃を受けたはずなのに、陽介もこなたも即死する事なく生き延びている。
ペルソナ使いであり耐久力も常人より高い陽介は軽傷で済んだが、こなたはそうもいかなかったのだろう。
-
襲撃は唐突で、映司が反応できたのはむしろ賞賛すべきだろう。
ともすればこなたと陽介は即死していてもおかしくはなかったのだから。
「ちょっと待っててくれ、火野さんも泉の回復が終わったらすぐ」
「俺の事はどうでもいい、こなたちゃんを! 君しかいないんだ陽介君、頼む!」
「くそっ……ディアラマ! ディアラマ!」
ルルーシュに続き映司にも懇願される。
今、こなたの命を救えるのは間違いなく花村陽介ただ一人だ。陽介は繰り返しこなたに回復魔法を掛け続ける。
「ライダー、変身はできるか?」
「大丈夫……戦うのは、ちょっと厳しいかもしれないけど」
「いや、戦う必要はない。それは俺達でやる。この状況、間違いなくアサシンとキャスターの襲撃だろう。
あのギルガメッシュならば奇襲という手段は取らないはずだ。ライダー、お前は泉と花村を抱えて空へ退避してくれ」
「空へ?」
ルルーシュが周囲を警戒しながら映司へと指示を飛ばす。
槍王イルバーンで底上げされているとはいえ、決着術式をこのように防衛目的で長時間使えば魔力の消費も桁違いに早い。急がねばならない。
「アサシンの気配遮断スキルは攻撃の際に効力を失う。そうだったな、ガウェイン」
「ええ。ですがこの攻撃は気配が現れると同時に行われました。これでは迎撃は不可能に近い」
「奴らは何らかの手段で気配を消したまま、あるいは気配を現すと同時に攻撃する手段を得た。また、威力も相当なものだ。
だがアサシンである以上、遠距離に攻撃する手段はないはずだ」
「つまり、空は安全地帯って事だね」
「そうだ。せめて泉の容態が安定するまで、邪魔を入れさせる訳にはいかない」
図書館で判明したアサシン=ファニー・ヴァレンタインの能力は、スタンド“D4C”による多次元攻撃と拳銃による射撃だ。
未だ全容が定かではないキャスターにしても、爆発物を生成する事は確定しているがそれを射出したような事例はない。
彼らはともにアーチャーのような投擲宝具を持たず、またセイバーやランサーのような高い跳躍力を誇るクラスでもない。
ならば現状、空こそが唯一の安全地帯である事に疑いはない。
「アサシンとキャスターは、俺達とランサーで仕留める。ライダー、お前はとにかく泉達に敵を近付けるな!」
「わかった……変身!」
こなた達を安全な所へ移せれば、ルルーシュが決着術式を維持する必要もなくなり攻勢に出られる。
映司が傷を押してタジャドルコンボに変身し、こなたと陽介を両腕に抱きかかえた。
本来であれば動かすべきではないのだが、地上ではどこに隠れようと気配を消したアサシンから逃れる事は不可能だ。
「行ってください、ライダー。地上は私達にお任せを。あなたの主を失ってはならない」
「お願いします、ガウェインさん、ルルーシュ君!」
ルルーシュが術式を解除した瞬間、映司が二人を抱えて抜けるような蒼穹へと飛翔していく。
同時にガウェインがルルーシュを抱え跳躍した直後、足元で閃光がいくつも弾けた。
「やはりアサシンが潜んでいたようですね」
「ガウェイン、もし泉達ではなく俺達が襲撃を受けていたとして、防げたか?」
「キャスターが気配遮断を解いた瞬間に斬る事はおそらく可能ですが、あの様子ではおそらく斬った瞬間に爆発するのでしょう」
「アサシンだけで出来る事ではない。キャスターも関わっているな」
「おそらくは。そして威力も生半可ではない。おそらくAランクの宝具に匹敵……いや凌駕しているでしょう」
「ちい……まさかこんな手段で打って出くるとはな。無限に増殖するあのアサシンにしかできない芸当だ」
-
ルルーシュは既に柳洞寺地下空洞での戦闘の仔細を聞いている。
アサシンは個体能力を落とせば複数体一気に出現する事も可能だという。
しかし戦闘能力を減退させても、彼らが備え持つ気配遮断スキルは遜色なく使用できる。
ならばこれは、その能力とキャスターの爆発物を合わせた複合戦術――謂わば死をも恐れぬ特攻部隊だ。
「連続して受ければ我ら三騎士のクラスとて危うい。恐るべき攻撃です」
「一人孤立していたランサーが危険か……急げ、ガウェイン!」
半壊した校舎を足場に、ランサー――アレックスが警戒していたグラウンドへ出る。
そこはまるで空爆を受けたかのように大穴がいくつも空き、さながら戦場の様相を成していた。
その中心で、アレックスは一人敵を迎撃している。一人や二人ではない。数十人に増殖した、金髪の男の群れに飲み込まれている。
「薙ぎ払え、ガウェイン!」
ルルーシュがイルバーンから魔力を噴射させ、宙に滞空する。
両腕が自由になったガウェインは“転輪する勝利の剣”を伸長させ、炎の大太刀として横薙ぎに振り抜いた。
十人のアサシン達を一気に斬り捨てる。だが、その瞬間斬られたアサシン達は一斉に爆発し、凄まじい破壊を撒き散らした。
「おおおおぉっ!」
後方の無事をガウェインによって確保され、アレックスが吠える。
開いた空間へ退避、一瞬の好機を得て全身をARMSへと変態させる。
「跳べ、ガウェイン!」
アレックスの指示に逆らわずガウェインが再度跳躍、空中でルルーシュを受け止めさらに舞い上がる。
地上ではアレックスが両腕からガウェインの剣に勝るとも劣らない灼熱を放出する。
そのまま一回転することで荷電粒子の帯が円形に拡散され、取り囲んでいたアサシン達を一挙に消し飛ばした。
荷電粒子に飲み込まれたアサシン達は次々に爆発四散するが、少なくない数が自らの死をも厭わずアレックスへと跳びかかっていた。
結果、アレックスの全身は硬化した装甲をも打ち砕かれ、全身に傷を負ってしまう。
「くっ……」
「ランサー、無事か!?」
「指揮官か。俺は見ての通りだが、マスター達はどうなった?」
「花村は無事だが、泉が重症を負った。今、ライダーが二人を連れて退避している」
ルルーシュが空を見上げて告げる。
ひとまずマスターの無事を知ったアレックスが安堵し、魔力の消耗を抑えるために変態を解いた。
「貴方がここまで深手を負うとは……敵は侮れませんね」
「威力もそうだが、俺のARMSが耐性を作り出せん。どうやら奴ら、一人一人が違う種類の爆薬を所持しているようだ」
アレックスのARMS“帽子屋”は、受けた攻撃を分析してその耐性を作り出す。
しかしこのアサシン達の攻撃は、一人一人が違う波長の魔力爆発を起こすため、耐性を作り出しても次のアサシンには通じないのだ。
「俺達が奴らの手の内を知っているように、奴らも俺達を調べ上げているという事だな」
「それにこの数、尋常ではない。柳洞寺の地下でも多数のアサシンを撃破したが、それ以上だ。
一体一体は大した事はないが、気配を消されて近づかれる上にあの威力だ。連続して受ければ俺の再生能力ですら追いつかんかもしれん」
-
ガウェインとアレックスが背中合わせで警戒するが、いつ攻撃を受けるかわからない。
それに襲い来る敵をいくら倒し続けても意味はない。“D4C”を持つ本体のはアサシンを倒すか、マスターを殺さない事には決着は着かないからだ。
大きな戦いが終わって間もないというのに敵は仕掛けてきた。つまりは、これを決戦とするつもりなのだ。
ルルーシュ達を休ませず、一気呵成に決着を着けるための、このタイミングだったのだろう。
「アサシンの本体とキャスターは同じ場所にいる。アサシンの分身にキャスターが爆発物を持たせているとすれば、これは間違いない。
そしてアサシンの本体がこうして分身を増やし続けているのなら、本体は気配を隠せないはずだ」
「気配を隠していないのなら、近づけば俺達でも察知できるだろう」
「よし、では行くぞ――っ!?」
手短に方針をまとめ、いざ飛び出そうとしたルルーシュ達の前に、人影が現れていた。
それは紛れもなくアサシン――ファニー・ヴァレンタイン。
「アサシン……!」
「君達に伝えるべき事がある」
反射的に攻撃を加えようとしたガウェインとアレックスを制するように、アサシンが手を掲げた。
その手には何もない。が、アサシンの本領は武器などではない事はこの場にいる全員が知っている。
「聞くと思うのか? 奇襲を仕掛けてきたのはお前達の方だ」
「無論、無駄だと思っているよ。それでも、おそらくこれが最後の戦いになるのだ。私達にとっても、君達にとっても。
ならば戦う相手の名くらいは知っておいてもいいんじゃないか?
我々はお互いのサーヴァントの事は知っているが、マスター同士はそうではない。故に、私のマスターがせめて名を交換したいと申し出ていてね」
「断る。お前の能力――“D4C”に利用されるとわかっていて教えるはずがないだろう」
皆を代表してアサシンに応えるルルーシュは、まさにその脅威を肌で知っている。
違う世界の自分と遭遇したとき起こる消滅現象は、リインフォースがいたからこそなんとか防げたのだ。
彼女がいない今はもう、一度攻撃を受ければ防ぐ手段はない。
「ふむ、道理だ。ではこちらが伝えるだけで良しとしよう。
私、アサシン――ファニー・ヴァレンタインのマスター、ジョン・バックスは、諸君らとの決着を所望している。彼は今、新都のハイアットホテルにいる」
「何……どういう意味だ? 何故マスターの所在を俺達に知らせる?」
「言っただろう、彼は決着を望んでいる。この聖杯戦争に生き残っているのはもはや我々と君達だけだ。
我がマスターもようやく自らの命を賭ける時が来た。もはや隠れ潜む必要はない」
「撃たれる覚悟はある……という訳か。だが、俺達が信用するとでも?」
アサシンの言う事が本当である確証はない。いや、間違いなく罠のはずだ。だが、現状手がかりがないのも事実ではある。
アサシンを信じるか、それとも市内を虱潰しに探していくか――どちらが確実かは、正直なところルルーシュにもわからない。
「それは勝手にすればいい。お前達が来ようが来るまいが、私はすぐに攻撃を再開する。
ここで私を迎撃し続けるか、あえて虎穴に飛び込むか。選ぶのはお前達だ」
言葉を切ると同時に、アサシンは突進してくる。
アレックスがすかさず荷電粒子を放ち消滅させるが、当然のごとく彼も爆発、轟音と衝撃波を叩きつけてくる。
爆炎が晴れれば、先ほど十数体を撃破したばかりだというのに、黒い影が山のように周囲を取り囲んでいた。
「どうする、指揮官! このままでは押し込まれるぞ!」
「キャスターがいない以上、探知もできない……くっ、行くしかないか!」
空を仰ぐ。こなたの治療はまだ終わりそうにない。
唯一空を飛べるライダーの参戦は期待できない。だからこそアサシンもこのタイミングで話を持ちかけてきたのだろう。
これだけの数で攻められればいつかこちらの体力が先に尽きる。悠長に市内を捜索する余裕もない。
「……ガウェイン、ランサー! 進むぞ!」
意を決したルルーシュの号令で、セイバーとランサーがそれぞれその力を開放、暗殺者の群れへと突貫していく。
目指すは西の果て、天を衝く魔塔。
ここに、最後の戦いが始まった。
-
◆
手も足も動かない。自分が起きているのかすら定かではない。
意識できるのは思考だけ。夜の海にふわふわと漂っているかのような浮遊感が、こなたの全身を包んでいた。
(あ、これ……もしかして私、死んじゃった?)
泉こなたは一般人だ。
魔術師でも殺し屋でも騎士でも国王でもなく、絶対遵守のギアス、ペルソナ、刃旗といった超常の力もない。
未来日記、封印の剣、魔術師殺しの魔弾など、ゲームの中でしか触れないような物には当然縁がない。
幼少の頃に格闘技を嗜んでいたものの、匂宮雑技団の殺し屋やナイトオブセブンほどの身体能力はさすがに持ち合わせておらず、探偵のような思考力もない。
日記所有者やスーパーの狼達のように日常的に闘争に身を浸していたという経歴もなく、巨大ロボに乗ったり魔法少女になる運命でもない。
つまり、完全無欠な一般人だ。
この聖杯戦争の参加者の中ではある意味少数派。こなたと同じ条件に該当するのはあと一人、羽瀬川小鳩という少女のみ。
では、そんなこなたが今まで生き残れたのは、何が要因か。
(多分、運が良かったんだろうねー……)
最初に魔術師だがどこかお人好しな部分のある遠坂凛と出会って。
次に天海陸と出会って。彼は内に悪意を秘めていたが、それがこなたに向けられる事はなかった。利用されるという形であっても。
その次にはルルーシュ、セイバーと出会い、立て続けに花村や名無達とも合流出来た。
考えてみればこなたは最初蟲に襲われた時を除けばほとんど一人になっておらず、攻撃らしい攻撃もされていない。
無力だからこそ誰からも狙われず、仲間からは守られる、そんな立ち位置を得ていた。
(何より……映司さんが私のサーヴァントだったっていうのが、一番ラッキーだったかな……)
現代の価値観を持ち、平和的で、しかし主を守る強い意志を持つ優しいサーヴァント、火野映司。
もし彼以外のサーヴァントであれば、こなたは殺し合いという緊張状態の中、精神的に追い詰められ錯乱していただろう。
ディケイドという彼と同じ存在に狙われる事はあったが、なんとかそれも切り抜けた。しかし、今度ばかりは幸運も続かなかったようだ。
彼らはこなたを救うためなら躊躇わず命を投げ出すだろう。なら、このまま死んだ方がルルーシュや陽介のためになるのではないか。
仲間を犠牲にして生き延びる事が本当に正しいのか、こなたにはわからない。
(みんなに迷惑ばかりかけて、守られるばかりだったし……私、足手まといだったよね……)
実感はないが、おそらくこのまま死ぬのだろう。死んだらどうなるのだろうか。
こなたの家族は父親が一人、従姉妹が一人同居している。母はこなたが幼い頃に亡くなった。
このまま逝けば、もしかしたら母親と同じ所に行けるのだろうか。
なんとなく、母に手を引かれているような気がする。
目を開ける――そう意識しただけだが――そこには本当に、写真で見た母が微笑んで、両手を握ってくれていた。
本当に、自分にそっくりだ。父親は何たるロリコンなのか。
(おかあ……さん)
こなたはもう覚えていない、その手の温もり。
この温かさがあるなら、このまま眠るのも悪くない――そう思った瞬間、津波のように思い出が押し寄せてきた。
-
楽しかった高校時代。
三年間を共に過ごした親友――柊かがみ、つかさ、高良みゆき。
同じ学校の後輩や先生――岩崎みなみ、田村ひより、黒井ななこ。
一緒に暮らす家族――父、小早川ゆたか、成実ゆい。
彼らの顔を一つ一つ思い出すたび、こなたの足は重くなる。
死んでもいい、一度はそう思ったはずなのに。
(やっぱり……やだ)
死にたくない。
こんなところで、誰にも知られないまま死んで、大好きな人達に二度と会えないなんて。
(嫌だ! 私、死にたくない! まだやりたい事たくさんある!
せっかく大学に入って車の免許も取ったのに、まだどこにも行ってない! 予約してたゲームだって楽しみだし、来期のアニメだって見たいのいっぱいある!
バイトだって店長に止めるって伝えてないし、私がいなくなったら家事する人がいなくなっちゃうじゃん!
お父さんはずぼらだし、ゆーちゃんは見ててあげないと不安だし、かがみんやつかさ、みゆきさんとまだまだいっぱい遊びたいし!
こんな、こんなところで死んでる暇なんてないよ!)
叫ぶ。
それは虚飾のないこなたの心底からの願い――かつて抱いた事のないほどに強い意志だ。
自分の手を掴んでいる母へ、こなたは叫んだ。
(お母さん、私まだ死にたくない! まだ、私――生きていたいよ!)
涙を顔でくしゃくしゃにして叫ぶ娘をどう思ったのか、母は一度小さく頷いて。
「行ってらっしゃい」
笑顔で、そう言った。
そして強く手を引っ張られる。
(お、お母さ……)
違う、自分は生きたいのだ、そう言おうとして、気付く。この手を握っているのは母の細い手ではない。
右手を、父よりも大きく傷だらけの固い手に、左手を、父よりは小さいががっしりとした男の子の手に。違う人物に引かれている。
この手の先から、誰かが呼ぶ声が聞こえる。“泉”、“こなたちゃん”――と、こなたを呼ぶ声が。
振り返れば、こなたの母は微笑んで手を振っていた。
何か言わなければ、ああでも、物心ついて初めて会ったのに何て言えばいいのか。
一瞬で色んな言葉が胸を埋め尽くす。こなたがその中から選んだ言葉はたった一つ。
「行ってくるね、お母さん!」
母には言えなかった、でもずっと言う事を夢見ていたその言葉を、叫んでいた。
-
◆
「もうすぐだ、市長。覚悟はいいか?」
「無論だ、大統領。私の心臓は既に天秤に乗っている。後は、彼らの命が私のそれを上回るかどうか……」
冬木ハイアットホテル。
そのエントランスの中心で、ジョン・バックス市長とファニー・ヴァレンタイン大統領は待っていた。
敵の到来を。決着の瞬間を。そして自らの勝利を。
「スペックを最低まで落とし、さらに令呪を用いたとはいえ、生み出した私の数はおよそ二百。それでも君は生きている。驚くべき事だな」
「後がなければ人間はどんな事でもする。生き延びるためならなおさらだ。今の私からいくら魔力を吸い上げたところで、それは私を終わらせる要因にはならんよ」
市長はひどく落ち着いている。達観しているとも言うべきか。
相変わらず上半身はむき出しだが、目を引くのは彼の心臓だ。
外目からでもわかるほど肥大し、脈打っている。
市長の心臓は今や発電所のようなものだ。彼の寿命を燃料に、無制限に無節操に魔力を生み出し続けている。
彼が本来生きるはずの未来を担保にしているようなものだ。これだけ魔力を吸い上げてしまえば、仮に生き残ったところで永くは生きられないだろう。
それでも、市長は怯まない。勝てば全てお釣りが来る。未来日記など比較にならない想像を絶する力を手にできる。
「ならば寿命などいくらでもくれてやる。この身全てを賭けて、私は勝利を手に入れる。
もう予知などには頼らん。私の武器はこの意志と、決意と、そして大統領。君だ」
「いい覚悟だ。最初の君とは比べ物にならん。それならばこそ、この私も遠慮なく全力を振るえるというものだ」
「ふふ。キャスターはどうした?」
「奴は契約を果たしたと言って姿を消したよ。まあ、もう問題はない。
全ての仕込みは済んだし、奴も残った魔力をほぼ消費し尽くしている。あれでは放っておいてもいずれ消えるだろう」
「とどめを刺していないのか?」
「そういう契約だからな。奴は見届ける――我々と奴らの決着を。我々の邪魔をする事はないだろう」
ここに残ったのは市長と大統領、ただ二人だけという事だ。鳴り止まない爆発が敵の接近を示している。
「やはり、あの程度では彼らは止められんか」
「想定内だ。決着はこの場所で着ける」
「ふふ……そうだな」
「ん? どうした、何かおかしかったか」
戦場では場違いな笑みを見せる市長に疑問を感じ、大統領が問いかける。
「いや、何。奇妙なものだと思ってな。私と君が会ったのはせいぜい二日前だ。にも関わらず我らはお互いに命を預け、決戦に臨んでいる。
思えば私は、これまで誰かをここまで信頼した事はない。それがおかしかったのだ」
「それは私も同じだ。生前、私には部下は大勢いたが、君のような相棒を得る立場ではなかった。
そう、たとえばあのジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターのような……。他人とはすなわち敵か部下しかいなかった私にとっては、なかなか新鮮な体験だ。
今だから言うが。私は最初、君を頼りないと思っていた。大した手腕だとも思っていたがね」
「言ってくれる。だが、結果的に私の仕事は何ら意味を成さなかったからな。甘んじて受け入れるしかない。
市長の地位、ゼフィールとの同盟……予想外の事態でどちらも覆されてしまった」
「しかし結果的にここまで生き残った。指導者とは時に威を示さなければならないが、蛮勇を振るうのも良くない。
君を臆病だと感じた私の目こそ曇っていたのかもしれないな」
-
大統領としても、今や市長はただ一人心を許せる間柄となったのかもしれない。
たとえ彼の先行きが短いものだとしても、聖杯に掛ける願いが競合しない限り彼と争う理由はない。
市長の方もそれは同じだ。彼が守るべき民と、市長が守るべき民は違う。争う理由がない。
だからこそ、市長は純粋に大統領へ敬意と感謝を抱く事ができる。
「何、君がいてくれたからこそだ。大統領、勝敗がどうあろうと……私は君に感謝している。それだけは覚えておいてくれ」
「同じ言葉を返そう、市長。私も、君と共に戦えた事を誇りに思おう」
戦いの果てに何が起ころうと、別れは近い。お互いに感じていた事だ。
だからこそ言い残す事がないように、ここで終わらせておく。
「……来たか。では、客人を出迎えよう」
市長と大統領は、ゆっくりとホテルを出る。
そこにいたのは白銀の騎士と異貌の槍兵、そしてマスターが一人。
彼らは皆、一様に傷を負っている。ここに来るまでぶつけさせた百体のアサシン達は十全に仕事を果たしたようだ。
特にランサーのダメージは深い。再生能力を持っているため率先してアサシンの攻撃を引き受けた結果、再生能力が停止するほどに全身を破壊されている。
しかし、致命傷ではない。その瞳は爛々と輝き、撃発の時を待っている。
指揮官であるらしい少年が進み出てくる。枢木スザクから得た情報によれば、彼こそがルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
仮面のテロリスト。ある意味、政治を司る市長や大統領とは対極の存在だ。
「初めまして、ルルーシュ君。私がアサシンのマスター、ジョン・バックスだ」
「本当に……ここにいたとはな。覚悟は本物だったか」
「いかにも。だが君こそいい度胸をしている。罠とわかっていて突き進んでくるのだからな」
ルルーシュは市長の心臓に目をやり、尋常ならざる魔力が詰め込まれているのを見て取った。
「なるほど、あのアサシンどもはそのグロテスクなもののおかげか」
「ふっ、私は中々気に入っているのだがな。理解してもらえんか」
「生憎だな。そして、捉えた以上長話に付き合う気もない。討たせてもらうぞ!」
ルルーシュの号令でガウェインが構えた。この距離なら一息でアサシンごと市長を葬れる。
しかし地を蹴る寸前、ルルーシュの背後に新たな気配。ガウェインは瞬時に身体を捻り込み、剣を奔らせる。
深山町から新都に来るまで数えきれないアサシンを斬ったおかげでコツは掴めている。
気配を現してから爆発するほんの僅かなタイムラグを見切り、先の先で斬る。
全方位の飽和攻撃でない限り、ガウェインはもはや完璧にアサシンの不意打ちに対応できる。
目論見通り背後に現れたアサシンは何をする間もなく頭部を刎ね飛ばされた。
「――これはッ!?」
しかし、そのアサシンが爆発する事はなかった。
彼が手に持っていたのは、まさにガウェインの主そのもの――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの頭部だった。
「そうだ! 忘れてはいまい! 我々は違う世界の君を何人でも引っ張ってこれるのだよ!」
市長の宣言と同時に現れたいくつものアサシン達は、皆その手に別世界のルルーシュを抱えていた。
彼らはキャスターにより上級サーヴァントをも傷つけ得る攻撃力を得ただけではなく、対ルルーシュ・ガウェイン用の切り札も用意していたのだ。
-
「くっ、ルルーシュ!」
こうなってはもはやガウェインは有効な戦力としては機能しない。
ルルーシュの護衛に専念し、迫るアサシンと距離を引き離さねば、王を討ち取られてしまう。
「ガウェイン、俺の影に入れ!」
完全体へと変態したアレックスが巨体を活かしてルルーシュとガウェインを庇い、ARMSの力を開放した。
全身の装甲が赤熱し、さながら太陽の如き光と熱を撒き散らす。メルトダウン寸前まで出力を上げているのだ。
以前は暴走状態に陥ったが、今のアレックスは令呪の加護を得ている。莫大な熱を放出しつつも、それをコントロール出来ていた。
接近してくるアサシンは、姿を見せている者・隠形している者を問わず次々と灼き尽くされる。
量産するために能力を落とした状態のアサシンでは、この余波に耐えるだけの耐久力もない。
違う世界の自分と接触させなければルルーシュの消滅も始まらない。
当然、そんな熱波を浴びれば至近距離にいるルルーシュとガウェインも無事では済まない――だからこそ、とうに対策済みだ。
「舐めるなよ……!」
ルルーシュとて、アサシン側が再度別世界のルルーシュを利用するだろうという事は予想していた。しかしルルーシュを置いて攻め入る訳にはいかなかった。
ライダーはこれ以上人を抱えられないし、一人でアサシンに対処できるはずもなく、どこかに隠れる事も不可能。
またルルーシュがイルバーンを用いて魔術を発動する際、ガウェインが近くにいなければ彼のバックアップを受けられない。
かと言ってガウェインが残り、アレックスだけを敵陣に攻め入らせるのはリスクが大きすぎる。
ならば、あえて敵に別世界のルルーシュを利用させ、さらにその上をいく――活路はここにしかない。
「コードキャスト、展開!」
学園で展開した決着術式“聖剣集う絢爛の城”と同質のものだ。極小規模の炎熱結界を周囲に展開することで、他者の侵入・干渉を遮断する。
謂わば、決着術式ならぬ絶対守護術式。
ハドロン砲と同じくかつての乗機にあやかって名をつけたこの術式は、サーヴァントならぬマスターが使う防護術式としてはおそらく最高峰のもの。
無論、アサシンの特攻を防げるほどではないが、そこはアレックスがカバーしてくれている。そしてアレックスの放つ熱波は、炎熱の結界が吸収し和らげる。
「この剣は太陽の映し身、もう一振りの星の聖剣……!」
そして王を護る必要のなくなった騎士は、攻勢に出られる。
アレックスとルルーシュの二重の結界に護られている今、ガウェインの宝具開放を止められる者はいない。
ランスロットに放ってからさほど時間が経っていないため全力とは言い難いが、それでも、セイバーの誇る最強宝具がアサシンごときを屠れぬ道理はない。
最強の盾と矛。盾が敵を弾き返した今、返す刀を遮る物はない。
しかし――まだ、市長と大統領の手は尽きてはいない。
「やれ、ガウェイン!」
「まだだ! 超えられるものなら……超えてみるがいい! これが我々の切り札だ!」
ガウェインが聖剣を解き放つ寸前、市長の絶叫が響き渡った。
彼が隠し持っていたスイッチを押し込むと、彼の背後にそびえ立っていた冬木ハイアットビルの四方が弾けた。
「なっ……!?」
空を覆うほどの巨大な建造物が、要である支柱を吹き飛ばされ、斜めにずり落ちてくる。
圧倒的な質量。圧倒的なプレッシャー。まるで山が空から降ってくるような。
生半可な宝具よりもよほど強力な破壊を引き起こす、超大型の質量弾がルルーシュ達を襲う。
-
「自分を餌にして、俺達を誘き出したか……!」
「これが私の覚悟だ! さあ……勝つのは私か!? お前達か!? 決着の時だ!」
勝ち誇る市長がアサシンの開いたホテルのドアに挟まれ、姿を消す。別世界に退避したのだ。
だが、ルルーシュたちはそうは行かない。今も犠牲を厭わず特攻し続けてくる分身に足止めされ、この場を離脱できない。
必然的に、この場を切り抜けるにはガウェインが開放寸前だった宝具を解き放つしかない。
アサシンではなく空に向けて、ガウェインは躊躇わず聖剣を振り抜いた。
「“転輪する勝利の剣”!」
地上から吹き上がる灼熱の炎が、何万トンもの質量を包み込み、消し飛ばす。
いかに超大質量であっても、魔術的な処置を受けていない建造物など宝具の敵ではない。
が、この場合は質量こそが問題だった。いかに太陽の聖剣といえどもすぐには灼き尽くせないほどに巨大なのだ。
必然的に、ガウェインは限界以上の宝具開放を強いられる。
「おおおおおおおおぉっ……!」
全身の魔力を振り絞り、長く短い永遠の刹那を経て――ようやく、空が見えた。
聖剣の炎は遥か上空の雲すらも吹き散らし、冬木ハイアットビルを地上から消滅させた。
「ガウェイン、大丈夫か!?」
ルルーシュに応える余裕もなく、ガウェインは膝を着く。
ただでさえランスロットとの死闘を経て消耗していた上に、ギルガメッシュとの交戦、さらに百体以上のアサシンを退けてここまで来た。
とどめに限界を超えて聖剣を振り抜いたため、ガウェインを以ってしても蓄積した疲労と魔力の消耗はもはや甚大なものになっていた。
「どうやら、我々の勝ちのようだな」
そこに、別世界に逃げていた市長が再び舞い戻る。
彼はルルーシュ達があの状況を凌ぐと予想していたのか、欠片の動揺もない。心臓の脈動が幾分弱まっていたものの、まだまだ戦闘不能の域ではない。
「想定内とはいえ……正直、呆れるよ。これがサーヴァントの力か。凄まじいものだ」
中程から綺麗に消失したハイアットホテルを見上げ、市長が呟いた。
「あれだけの質量を攻撃に叩き込み、さらにお前達は凌いでみせた。こんな真似は未来日記所有者達にもできはしまい。
これが聖杯戦争……か。ふふ、私も、もっと早く覚悟を決めていれば、うまく立ち回れたかもしれんな。
だがまあ、決着だ。そうだろう?」
嘯く市長に言い返す余裕はない。
彼の横に立つアサシンは一人ではなく、数えて十人がそこにいたからだ。
「正真正銘、私の軍勢はこれで最後だ。だがもはや君達に力は残っていまい」
市長の言葉は正確だった。
ガウェインの魔力は尽き、ルルーシュもまた絶対守護術式を長時間展開したためほぼ限界。
唯一両の足で立っているアレックスにしろ、暴走状態を長く維持していたため消耗が激しい。
まだ戦えない事はないが、ルルーシュとガウェインを護る余裕はもうない。
「アレックス、俺達の事はいい。奴らを倒せ」
「拒否する、指揮官。言ったはずだ、もう誰も死なせる気はないと」
「だが……この局面をどう切り抜ける? もう俺達に打つ手はないぞ」
「フン、見くびられたものだな。ガウェインがあれほど大きな狼煙を上げたのだぞ」
ルルーシュは気付く。
アレックスは諦めていない。足を止めていない。彼が見ているものは、たった一つ。
蒼穹からまっすぐに降ってくる希望――前へ進もうという意思そのもの。
-
「あいつが来ないはずはない……そうだろう、マスターッ!」
「ペルソナァッ!」
タジャドルコンボのオーズに運ばれてきた陽介が、落ちてくる勢いのままペルソナを召喚した。
形成す像はイザナギ。彼が友から受け継いだ力。
黒いコートを纏った影が、竜をも封印する剣を手に取る。
湧き上がる炎。それは、花村陽介の抱く希望に向かって進む意思に他ならない。
「“帽子屋”、力を示せ……破壊するためではなく、守護するための力を!」
空から一直線に市長へと落下していく陽介に遅れじと、アレックスが力を出し尽くして腕を変形させた。
人ならざる鉤爪が、陽介を阻止せんと立ちはだかるアサシン達を薙ぎ倒す。
「長い付き合いとなったが、ここで最後だ……アサシン!」
「まだだ! まだ……まだ終わらん。流れはまだ……我々にある!」
分身をアレックスへと特攻させ、本体である“D4C”を従えたアサシンが陽介に向かってジャンプする。
“D4C”を直接陽介に接触させることで異世界に送り込もうとしているのだ。
「いいや、終わりです!」
しかし、上から何かによって押さえつけられる。タジャドルコンボからサゴーゾコンボへと変身した映司が放った重力波だ。
アサシン達が全て封じられ、市長は今や丸裸。
「う……うおおおおおおぉぉぉっ――!」
「やらせないよ!」
市長がアサシンから渡されていた拳銃を乱射する。その狙いは正確で、陽介の身体を貫く奇跡を描く。
ルルーシュ達の陣営の、最後の一人。泉こなたが操ったクジャクカンドロイドが、その銃弾をことごとく跳ね返した。
もはや、王を護る盾は全て取り払われ――
「“D4C”ィィィィ――!」
地面に這いつくばったアサシンが、スタンドだけを飛ばす。だが、“D4C”が陽介の身体を貫く寸前に。
「……負けた、か」
陽介の操るペルソナの一刀が、ジョン・バックス市長を斬り裂いた。
彼の異形と化した心臓を、二つに断ち割った。
この瞬間、聖杯を狙う最後の一人が脱落し。
彼らの聖杯戦争は――ここに、終結した。
-
◆
「勝った、と思ったのだがな。それこそが慢心だったか……」
ムーンセルによる分解が始まったジョン・バックスを囲むように、ルルーシュ達は立っていた。
もうアサシンの姿はない。彼らを支えていたのは礼装となった市長の心臓であり、それが破壊された以上もはや生み出される事はない。
本体であるアサシンもまた、市長が陽介に斬られたと同時にアレックスによって消し飛ばされた。
ジョン・バックスとファニー・ヴァレンタインは、完膚なきまでに敗北したのだ。
「アサシンの報告では、そちらのお嬢さんは致命傷だった……と、聞いていたのだがな。よもや、生きていたとは」
「私もそう思ったけど、映司さんと陽介君のおかげで何とか戻ってこれたんだよ」
こなたの手を引いたのは、呼びかけ続けていたのは、映司と陽介の二人。
ペルソナで傷を癒せても、こなた自身に生きる意志がなければ、回復は難しかったはずだ。
死を実感する事で初めて生を渇望する。こなたを踏み留まらせたのは、懐かしい日常への回帰、ただその一念だった。
「やれやれ。この戦いは予想外な事ばかり起こったが……最後は、ただの女子供に、上を行かれるとは……。
それとも、私はそういう運命なのか……、全く……気に入ら、ん……な」
どことなく不貞腐れたような顔で、市長は目を閉じた。
そのまま、彼を構成するデータは消失し……消える。
「終わった、のか」
ガウェインに肩を支えられたルルーシュが、ようやくと息を吐いた。
二日前に始まった戦いが、今ようやく一つの終わりを迎えた。
まだギルガメッシュという問題が残っているものの、これで残っているサーヴァントは――
「待て。誰かキャスターを見たか? まだあいつが残って」
「おや、私をお呼びですか?」
ルルーシュの独白に答えたのは誰であろう、キャスター本人だった。
またもどこかに隠れて見物していたのか、大した負傷もなく飄々と歩いてくる。
「貴様……」
「おっと、お待ちなさい。もう私に敵対する気はありませんよ。契約主だったそこのジョン氏も敗れたようですからね。
いやいやお見事、この戦いはあなた達の勝利です。まさかこんな結末を迎えるとは、予想もできませんでしたよ」
「なら、何のために現れた。まさかいまさら俺達に協力したいと言う訳じゃないだろう」
「それも面白そうではありますが。残念ながら私もここまでのようですからね」
比較的状態がマシな映司がキャスターの前に立ち塞がるが、キャスターは両手を上げ降伏のポーズを取る。
そのまま身を折り、口から吐き出したのは紅く輝く小さな石だった。
しかしその石は、ルルーシュ達が見ている前で見る間に輝きを失っていく。
「これは私からのささやかなご褒美です。楽しませてくれたお礼とでも思ってください」
「……何だか知らんが、受け取る訳ないだろう。爆弾を操るのがお前の魔術のはずだ」
「いえいえ、本当に含むところあどありませんよ。だって、ほら」
と、キャスターが石を摘んだ手を見せる。
その手は、先ほどのジョン・バックスと同じく徐々に消滅し始めていた。
-
「細かい説明はしませんが、これが私のマスターの代理を務めておりましてね。
マスターを失った私を現世に繋ぎ止めていたのがその石なのですが、さすがに酷使が過ぎましたね。ムーンセルを騙すのももはや限界だったのですよ。
だから、どうせ消えるくらいならあなた方に差し上げよう……とね。
賢者の石、聞いた事くらいはあるでしょう? せいぜい使えてあと一度ですが、必ずあなた達の助けになるでしょう」
消えていく自身の身体に何の興味も示さず、キャスターは淡々と続ける。
その様子を見て、ルルーシュは彼に抱いた印象が間違っていなかったと改めて感じた。本物の狂人だ。
しかし、狂人は狂人なりに筋を通そうともしている。思えばスザクとの決戦の場所に導いた時も、彼は自分の定めたルールを破らなかった。
「……お前は一体何がしたかったんだ?」
「そうですね。まあ、あえて言うなら暇潰しでしょうか。おかげで中々楽しい時間を過ごせました。
この聖杯戦争の結末を見れただけで満足ですよ。ここから先は、私は興味がない」
「ここから先? ギルガメッシュの事か」
「それに、教会の神父役のNPC。さしあたってこの二人があなた達の次の相手になるでしょう。
そして更にその先……いえ、これは野暮というものですね。あなた達が自分の目で確かめなさい」
では、と言い残し、一礼してキャスターも消えた。
最後までよくわからないサーヴァントだった。彼の真名すら明らかになっていない。
だが他のサーヴァントとは違い、一片の後悔もなく消えた。稀有なサーヴァントと言えるだろう。
「とにかく、俺達の勝ちだ。これで残るは」
「ワリ、ルルーシュ。水挿しちまうけど……俺も、これまでだわ」
今度こそ勝利を宣言しようとしたルルーシュを、今度は陽介が遮った。
何だ、と問いかけようとして、気付く。陽介は、膝をついたアレックスの側で立ち尽くしていた。
そのアレックスの胸に、大穴が空いている。彼の命の核と言える、ARMSコアが貫かれている。
「アサシンの……最期の一撃を、避けなかったんだ。俺を護るために。
ハハ……意味ないよな。アレックスが死んだら、俺も一緒に死ぬってのにさ……」
アレックスは、アサシンと相打ちになっていた。
ただでさえ陽介がこなたの治療にかかりきりになり、アレックスに十分な魔力を供給できない状態だったのだ。
数百体のアサシンを消し飛ばし、また彼らの自爆を受け続け、そしてホテル前での“帽子屋”の開放。
アレックスの中にあった魔力は枯渇し、最後に残ったその肉体で彼は主を護りきったのだ。
そして、物言わぬまま――逝った。
サーヴァントを失った陽介もまた、市長やキャスターと同じくムーンセルによる除外が始まっていた。
「花村……」
「だ、駄目だよ陽介君! 私を助けたせいで陽介君が死ぬなんて、そんな……そうだ、私の令呪をあげるよ!
令呪ならまだアレックスさんを助けられるかもしれない!」
「いや……駄目だよ。もう、俺の令呪はアレックスと繋がってないんだ。
死んだサーヴァントには令呪は使えない。使ったって意味ないんだ」
陽介が静かに言う。彼の令呪は輝きを失い、黒く染め上げられていた。
令呪は、既にその効力を失っていたのだ。
-
「いいんだよ、泉。俺、後悔してねえんだ。きっとアレックスも。
むしろ、あそこで泉を見捨てたりしたら俺はずっとそれを忘れられない。アレックスもそんな俺をマスターだって認めてくれないんじゃないかな。
だからさ、いいんだ。悠がくれた力で泉やルルーシュ、みんなを助けられたんだからさ」
涙を流すこなたを、映司がそっと支える。
彼もまた悔いている。もし映司が最初から参戦出来ていれば、結果は違っていたかもしれない。
「火野さんもさ、気に病まなくていいんだぜ。火野さんが最初に俺達を護ってくれてなかったら、俺も泉も死んでたんだ。アレックスだってきっと火野さんに感謝してるさ」
「陽介君……済まない。俺、君達を護ろうって誓ったのに」
「いいんだって。それよりさ、まだギルガメッシュってラスボスがいるんだ、そっちを気にしろよ。
ルルーシュ、頭いいお前ならあいつ倒してこの聖杯戦争終わらせる考えくらいあるだろ? 頼むぜ、俺の代わりに終わらせてくれよ。こんなクソッタレな殺し合いをさ」
「……ああ、了解だ。だが花村、最期に一つ聞きたい。本当に、思い残す事はないのか?」
「ねえよ。俺は、全力を尽くしたんだ。だから」
「花村、次はギアスを使うぞ。本心で答えろ――本当に未練はないか?」
答える陽介をルルーシュが遮る。
ルルーシュの瞳には赤い鳥のような文様が浮かび上がっていた。
使わないと誓った絶対遵守のギアス――それを今、ルルーシュは花村に向けている。
「る、ルルーシュ君? 一体何を」
「ライダー、ここはルルーシュに任せて」
ルルーシュの意図を読めない映司が一歩踏み出しかけるが、ガウェインが制する。
ガウェインはルルーシュに先を促す。
「最後だ、花村。お前の本心を言ってくれ――本当に、未練はないか?」
三度問いかけられ、陽介はぐっと震え――次いで、叫んだ。
「うるせえな! せっかく人が覚悟決めたってのに! 未練? あるに決まってんだろ!
俺はまだ高二だぞ! やりたい事だってあるし、会いたいダチだっている! 里中や天城、クマに完二、りせちーに直斗、親父やお袋……たくさんだ!
それに……それに、堂島さんと菜々子ちゃんに、悠がもう帰れないって伝えてやんなきゃいけないのに……」
「なら、何故諦める? お前が鳴上悠から託されたのはその程度のものか」
「仕方ねえだろ! アレックスはもういない……いないんだ! あいつ、すげえ強いのに、俺なんかの願いに付き合ったから……あいつは死んじまった。俺のせいで死んだんだ。
なのに俺が、俺だけが生きてたいなんて、図々しいにもほどがあんだろ!」
「それの何が悪い。アレックスは、自分だけ死んでお前が生き残る事に起こるような器の小さい男だったか?」
「ちげーよ! あいつはきっと、俺に生きろって言う……。でもよ、どうすんだよ。どうしようもねえだろ。
アレックスは死んだ。生きかえらせる事なんて出来やしない。残ってるサーヴァントだって、お前のガウェインか火野さんくらいだろ。
お前ら殺してサーヴァント奪ってまで生き延びたいとか、思えねえよ……」
本心を吐露し、陽介は項垂れる。
やはり口ではどう言おうと、洋介は死を望んではいない。ただ仲間のために言い出せなかっただけ。
そしてそれこそ、ルルーシュが最も聞きたかった言葉だった。
-
「……花村、俺はな、スザクにこう言われたんだ。『生きてくれ』、と。
誰にも痛みを与えない死なんてない。悔いはないなんて、自分を騙しているだけだ。
そしてお前のサーヴァント――アレックスは、もう誰も死なせないと言った。誰もだ!
俺も同じ想いだ、花村。お前も、アレックスも、死なせはしない! だから!」
ルルーシュは、キャスターが残していった紅い石を拾い上げる。
あのキャスターがここまで考えていたのかどうかわからないが――少なくとも今は、賭けるしかない。
「だから――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。
生きろ、花村陽介! お前の相棒、アレックスの想いを背負い……生きて、元いた場所へ帰れ!」
これはギアス。しかし他者を従属させる絶対遵守ではない。ルルーシュが陽介に願う祈り。
生きて、生き抜いて、本来いるべき場所へと戻って欲しい。彼が本来生きるべき場所へ。
「花村、お前が夢の中で聞いた鳴上悠の力……俺のギアス……そして、キャスターが残した賢者の石。
出来るはずだ。お前なら、お前が受け取った『ワイルド』の力なら! アレックスを、お前のペルソナとして転生させる事が!」
ルルーシュが賢者の石を陽介の手に握らせた。
キャスターは、この石を依代に現世に残っていると言った。ならばその逆も可能なはずだ。
サーヴァントの情報をペルソナ化して取り込み、サーヴァントを所有していると、ムーンセルを欺瞞する事が。
「……悠の、力で……?」
「そうだ、花村! お前の命はもはやお前だけのものではない!
鳴上悠、そしてアレックスの命を背負っている……だからこそ、簡単に死んでいい訳はない。違うか!?」
「そうだよ、陽介君! もし可能性があるなら……!」
「うん、アレックスさんだってきっとそう言うよ、だから!」
ルルーシュ、こなた、映司に促され、陽介は立ち上がる。
同じく消えかかっているアレックスの亡骸の前に立ち、拳を握りしめ、砕けた彼のARMSコアに触れて。
握り締めた鍵が熱い。夢の中の老人を通して、親友から贈られた鍵が。
きっと、あいつも応援してくれている。だったら――諦めてなんかいられない!
「アレックス……もし、まだ俺をマスターだと認めてくれているのなら、もう一度、俺に力を貸してくれ!
俺は生きる! 生きて、聖杯を壊して、家に帰る……あいつと一緒に過ごしたあの街に!
また、笑ってあいつらと会うために……だからアレックス、頼む! 俺と一緒に、戦ってくれ!」
願望、渇望。純粋な願いこそがARMSを駆動する力。
それはきっと、ペルソナも同じ。ならばこの願いはきっと叶う。
アレックスに触れた手に、そっと上から重ねられる手がある。相棒が、鳴上悠が、手を貸してくれる。
陽介自身のペルソナ、スサノオ。
鳴上悠から託されたペルソナ、イザナギ。
二つのペルソナが賢者の石を媒介に惹かれ合い、混ざり合い、新たな器となる。
そこに、魂をダウンロードする。
果てたアレックスの亡骸から呼び覚ます、彼の魂を――
-
「お前の手を取るのは、これで二度目だな」
陽介が伸ばした手が、しっかりと握り返される。
この感触を知っている。固く、熱い。無骨な男の手だ。二日前にも握った――もはや懐かしささえ覚える。
そこにいるのは紛れもなく、ランサーのサーヴァント――アレックスだった。
分解されゆくアレックスの情報は、虚空ではなく陽介が創造した新たなペルソナへと憑依したのだ。
「あ、アレックス……!」
「花村陽介、これは誓いだ。
俺はお前とともに生き、お前とともに滅びる。
お前の願いが果たされるその時まで、我が“ブリューナクの槍”はお前の敵を薙ぎ払おう……」
アレックスの姿が掻き消える。まるで夢だったかのように。
しかし、陽介の手には今のアレックスの手に包まれた感触が残っている。
その熱が、残っている。
「花村、どうなった? 成功したのか?」
「ああ、ルルーシュ……見ろよ、これ」
駆け寄ってきたルルーシュに、陽介が手のひらを返した。
そこにあった、サーヴァント不在のため力を失った令呪が――確かな輝きを放っていた。
ムーンセルによる消去に侵されていた陽介の身体も、一瞬で元の色を取り戻す。
「あいつ、俺と一緒に滅びる、だってよ……。はは。何だよ、死んでも俺と一緒がいいってのか……」
「なら、なおさら死ぬわけには行かないな、花村」
「そうだよ、陽介君!」
「ああ、わかってるよ……」
陽介は大の字に身を投げ出した。視界には青空が広がっている。
アレックスは死んだ。しかし、陽介とともにいる。あの鳴上悠と同じように。
泣きそうになったが、堪える。今泣いてはあの二人になんとからかわれるかわかったものではない。
今言うべきは泣き言ではないはずだ。これだけは、自信を持って言える。
「俺は生きて帰る。絶対に」
決意も新たに、そう呟いた。
-
◆
「……決まったな」
パチ、パチと、小さな拍手が響く。
聖杯戦争最後の戦いを一部始終見届けた言峰綺礼によるものだ。
「まあ順当の結果だったな。新鮮味がない」
「おや、そうかね? 私としては中々楽しめたが。状況に流されていた泉こなたが生きる意志を見出し、花村陽介もまたその渇望に目覚めた。
正直、意外だったよ……私としては、泉こなたはここで落ちると思っていたからな」
「余興にはなったというところだ。さて……これでようやく、我の出番という訳か」
「出るのか?」
「まさかな。横から勝利をかっさらうなど英雄王の戦ではない。
奴らが傷を癒やし、万全の状態で攻め込んできたところを迎え撃ち、蹂躙してこそ、だ」
「それを慢心と言うのではないかね?」
「ハッ、慢心せずして何が王か! 貴様こそ気を引き締める事だ。我は貴様を護る気はないぞ」
「手厳しいな。だがそれでいい……私も別に勝ちたい訳ではないからな」
言峰綺礼の姿をしたNPCの目的は、あくまで結果を見届ける事だ。聖杯を求める者、破壊する者、どちらの意志が強いか。
キャスター・キンブリーの方針と大した違いはない。
その目的も今や達成されたに等しいが、しかしだからといって舞台袖に引っ込む気は毛頭ない。
「私こそが最後の試練となろう。聖杯にたどり着く障害……彼らはきっと本気で向かってくるだろう。
彼らの意思は、きっと甘美なる味わいを私に示してくれるだろう……」
恍惚と呟く神父の前に、滴り落ちる黒い雫。それはやがて人の形を成し、圧倒的な存在感を示す。
魔王ゼロ。聖杯戦争の仕掛け人であり、生き残った彼らが最終的に打倒すべき中枢でもある。
「おや、魔王。次は私とギルガメッシュが出ようと思うが、どうだ?」
「許可する。彼らの意思が真に強きものならば、お前達をも乗り越えるだろう。そうでなくては、待った意味もない……」
「言うではないか、雑種。しかしそうよな……そうでなくては眠りから覚めた甲斐もないというものよ」
「私は門で待つ。彼らがもし、お前達を超える器なら……待っている。そう伝えてくれ」
現れた時と同じように、音もなく魔王は消えた。
「さすがの魔王も昂揚を抑えきれんか。結構な事だ。さて……」
モニターに目を向ける。
そこでは、花村陽介がランサーを自身のペルソナとして再召喚した姿が映し出されている。
ムーンセルに報告すれば、イレギュラーとしてあのペルソナを消去する事は容易い。
が、それは誰も望まない。綺礼も、ギルガメッシュも、そして魔王ゼロも。
欲するは強き意志。
ランサーのペルソナがその意思の果てに生まれたのならば、その誕生は祝福されるべきものだからだ。
「さあ、来るがいい。この聖杯戦争の幕引きを始めよう……」
聖杯戦争が終わり、そして最後の戦いが始まる。
終幕の時は、もうすぐそこに――
-
【ランサー(アレックス)@ARMS 死亡】
【ジョン・バックス@未来日記 死亡】
【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】
【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師 死亡】
【深山町/午前】
【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(極大)、魔力消費(極大)、精神力消費(極大)、強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
[道具]:契約者の鍵@ペルソナ4
※スサノオとイザナギを合体させ、アレックスをペルソナとして召喚しました。
ペルソナのスキルとアレックスの能力を一部引き継いでいますが、会話はできません。
【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(極大)、魔力消費(中)
[装備]:携帯電話 カンドロイド複数
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)
※スーパータトバメダルは消滅しました。
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]:魔力消費(極大)、疲労(極大)
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャストを発動できます。
hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。 効果:ダメージ+スタン。
絶対守護領域 決着術式“聖剣集う絢爛の城”をデチューンした術式。 効果:小ダメージを無効化。
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:疲労(極大)、魔力消費(極大)
※『聖者の数字』発動不可
【新都・教会地下/午前】
【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康
【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
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投下終了です。
ご指摘がありましたらお願いします。
期限より遅れて申し訳ありません。
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投下乙です
回復の時間を待ってくれるギルをぐう聖
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投下乙です。
アレックスさんかっけぇー!
最初は見守るというか鍛える立場だったのに陽介が来ると確信する所とかペルソナに転生した所とか凄く好きです!
市長と大統領もお互いに認めあって対等なパートナーとして戦うとか敵なのにカッコいい
ルルーシュもアレックスもいい意味で変わったなと感じました!
それと誤字でアサシンとキャスターが逆になっているところがあったのでwikiに載せるときは修正した方がいいと思います
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乙でしたー!!
なるほど、ペルソナ2のヤマオカと同じようにペルソナに……その発想は無かった!
鯖を失った陽介がルルやこなたとどこまで行けるのか期待!
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投下乙です!
暗躍し続けた市長組と金鰤の脱落、長かった聖杯大戦もついに決着だな
ハイアットホテルでの市長と大統領の会話が印象的だったな
敵ながら確かな信頼が生まれているのはやっぱりカッコいい
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投下乙です、敵ながら市長と大統領の信頼は熱かったし
アレックスのペルソナ化も予想外で燃えた!
こなたも頑張った、ここで脱落すると思ってたけど
一般人の意地を見せたなあ…
そして序盤からいつ爆破されるか危ぶまれていた
冬木ハイアットホテルがとうとうお亡くなりにw
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投下乙です
対主催と市長側、どちらも極限まで知恵と力を出し切った戦いは良いものですね
退場したキャラも皆悔いなく逝けたようで何より
しかし市長のこの原作からは考えられないネタ方面でもシリアスでも輝く万能さは一体何なのかw
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しかし後期のイケメン大統領ならともかく前期のデブ大統領が群れを成してこなたに突貫する様はイメージすると犯罪的かつシュールなものがあるな
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あれ、ひょっとして小鳩ちゃん今度はペルソナの一部になってるんじゃ
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市長がホテルを爆破する場面はなんか未来日記っぽい感じがして良かった
ねねさんと被ったのかな?市長の気迫も凄まじかったし
しかし、金鰤が口から賢者の石を出したのをばっちいと思ったのは俺だけだろうかw
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ジュネスがここまで活躍したロワはこのロワが始めてなんじゃないかな・・・
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ジュネスは原作でも主人公力高いからね、番長がチート過ぎるだけで
ここは折れちゃった番長な上マーダーだったから陽介が相対的にカッコよくなってるのかも
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>>363
賢者の石といい死んでからの方が役立ってるのか…
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>>365
そもそもペルソナ4が出たロワは少ないから…
個人的にはこなたがここまで生き残ってるのが嬉しい
今までかがみやつかさが生き残ることはあってもこなたは中盤辺りで死ぬ事が多いからこのまま頑張ってほしい
みゆきさんは……まあいつかチャンスがあるさ
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他のロワじゃあまり見ない面子も結構活躍しているよな
ペルソナ4組にFE組、市長、名無、陸とか
このまま行けば、二次聖杯はタッグ系ロワで初完結になりそうか?
主従関係のドラマとか何処も熱かったし、
他でもタッグロワ増えないかと期待してみる
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タッグロワ…二次キャラ聖杯大戦?気が早いかw
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言峰のジュネスお気に入りっぷりは、罪罰でのニャル様のたっちゃんお気に入りに通じるものがあるな。
なんか言峰アバターの皮を被ったニャル様でしたと言われても驚かないレベル。
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やめろよ……ムーンセルの設定的に普通にありそうだからやめろよ……(震え声)
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魔王ゼロ以外全員予約します
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トリこれで有ってるかな?
え〜っと、まとめwikiの管理人で失踪者ですw
現在の流出問題の件でまとめwikiの方も確認しましたが悪意のある改ざんなどは一応発見はされませんでした。
それでも気になるという方は接続は控える事をお勧めします。
日頃からの利用を感謝しつつ、ご迷惑をおかけしました。
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やべ、完全にトリ忘れた…えっと一応本人ですんで偽物とかではないのでご安心を
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>>370
第二次二次キャラ聖杯戦争
第三次二次キャラ聖杯戦争
二次キャラ聖杯戦争EX
第四次二次キャラ聖杯戦争
二次キャラ聖杯戦争F
二次キャラ聖杯戦争F完結編
みたいなシリーズ物になりそう
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二次キャラ聖杯戦争K
でもこれってなんの解決にもなってないですよね?
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何だっていい! 聖杯戦争に出るチャンスだ!
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第三次二次キャラ聖杯戦争α 終焉の銀河へ
グレンキャノンもだ!
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宇宙規模で聖杯戦争が起きるのか
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イデENDしか見えないんですが、それは……
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WIKIの方対応してくれたっぽいのか。乙です
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最近トップページ更新されないね
そしリインちゃんの死亡者名鑑も放置されてる…
誰か書いてくれー!(切実)
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もう@wikiを編集しても大丈夫だろうか?(騒動は治まったのたろうか?)
どちらにしても俺はリインちゃんを書ける気がしないけどな!
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死亡者詳細とかどうなるんだろうな
200人近い大統領が死んでるんだが…
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大統領(200人)とかでいいんじゃないか?
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仮にルルーシュが生還して約束を守る為金田一の世界に行ったら、高遠と対決するのかな
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もし殺人事件が起きても、「正直に答えろ」ってギアスだけで簡単に犯人を特定できてまう
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ギアスも事件捜査とかに使えばみんな幸せになれるんだよなあ
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ルルーシュがそんな幸せな使い方をするわけがないのが残念なところ。
まあ「些細なことに限ればみんな幸せ!」なんて考えて乱用したらしたで歪みが出るんだろうけどw
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ギアス使った方がいいなら普通に使うだろ
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最後の手段が大統領の爆弾化
道場の項目名が星が輝く時
あっ(察し)
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死兆星か何か?(世紀末覇者並みの感想)
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流石にこのスレにザンボット3を知ってる住人はいなかったか…
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こんだけスパロボネタ出ておいて知らない訳ないじゃない
ていうかもう出てなかった?NPCが爆弾化されたあたりで
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大統領爆弾の恐怖
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延長お願いします
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ブックオフで空のおとしもの読んで見たけど主人公のキャラってまんま名無だったな
いやおんなじ作者なんだから当たり前なのかもしれんが…
名無を主役に当てたらこんな話しになるんだろうなと思ったわ
あとアストレイアが以外に強くてビックリだよ!
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・参戦時期の都合
・展開の都合
・持て余されてたのでまともに把握されてなかった
好きな物を選べ
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アストレアはなぁ…
セリスもそうだったけど、書ける人がいればある程度の活躍はありそうなスペック持ちだっただけに、なおさら勿体無い感が
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アストレア本人よりもマスターの方が話を進めていくうえでの扱いに困りそう
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セリスは機械装備とバニシュデスが解禁だったら厨キャラになれたのに
FF6は当時すごいやり込んだのに隠し必殺技の存在を全然思い出せなかった
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鎖に繋がれてエロいことされる人→ロックにベタ惚れの人のイメージが強いからなセリス
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クラスによる制限あったからね
仕方ないね
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>>403
触手要員がほとんどいないのに、事あるたびに触手プレイされる槍使いはどうなるんですかね…
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投下します
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来た!
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「やはりこの程度だったか」
どことも知れぬ空間に呆れとも寂寥ともとれる声が響く。
その声の主を一言で言い表すとすれば黄金。
身に付けた鎧と、何よりその男の存在、魂そのものの色を表現するには他に言葉がない。
その男の名は英雄王ギルガメッシュ。
その総身にも黄金の甲冑にも一切の傷はなく、空間に存在する者全てを睥睨している。
コツコツと黄金の英雄王が近づいてくる音を火野映司は地に這い蹲りながら朧気な意識で聞いていた。
「………っ、…ぁ…」
声を出そうとしたが喉は十分な声量を発してくれない。
立ち上がろうとしても身体に力が入らず、どころか刻一刻と全身から力が消えていくようだった。
視界は鮮烈な朱に染まっている。自分の身体から流れた血液だった。
仮面ライダーオーズへの変身もとうの昔に解除されている。
「…み、……んな……」
全霊の力を振り絞って首を動かし周りを見渡した。
だが現実は無情にも映司を打ちのめした。
前方にはガウェインとルルーシュが、左には陽介が、やや後方ではこなたが無数の武具に全身を刺し貫かれていた。
理解したくなくても理解できてしまう、完全な敗北だった。
「…ぁ、ああああ……」
「雑種とはいえここまで辿り着いた真の英傑ならばもう少しは骨があるかとも思ったがな。
これでは興醒めも甚だしい。貴様らに期待していた我の目も随分と曇ったものよ」
気怠げな呟きと共にギルガメッシュが宝剣を手にし、映司にとどめを刺そうと振りかざす。
一秒後には訪れる終わりの時が何故か永遠のように感じられた。
(…どうして…こんなことに……)
犠牲を払いながらも前進できているはずだった。
今まで以上の絆と想いを乗せてこの金色の英雄王を打倒せんと誰もが気炎を上げていた。
なのに、だというのにどうして。
―――俺達は一体何を間違えてこうなってしまったのだろう?
『何を、だって?おかしなことを言うね。
そんなこと、君自身が一番よくわかっていたんじゃないか?』
「えっ…」
ふと目の前に見覚えのある人物が突然現れた。
とうに消えたはずのセイバーの一人であるイスラ・レヴィノスだった。
映司を嘲笑うかのような態度は仲間として接している間は見ることのなかったものだ。
次いでイスラの隣に見覚えのない小柄な男が出現した。
士郎やルルーシュから伝え聞いた特徴からして彼が太公望なのだろう。
-
『アレと戦うには単純に戦力が不足しておったのだよ。
新都のチームとの決戦前には十分な人数が揃っていたはずだが、どこぞの何者かのせいで戦死者が続出した。
わしは激戦になる事を見越して最初から仲間集めに策を巡らしておった。
それをおぬしという奴は…よくもまあ見事に台無しにしてくれたもんだのう?』
二人は映司が内心で抱えていた澱みを迂遠に、それでいて的確に責め立てる。
人間にはわかっていても他人に指摘されたくはないことがある。
それを無遠慮に突いてこられたために映司は押し黙るしかない。
やがてイスラと太公望の姿が朧に消え、代わりに出てきたのは戦友同然だった白銀の少女騎士。
『オーズ、私は貴方を信じていたしそれは貴方も同じだったでしょう。
ですが、いや、だからこそその信頼を無碍にした貴方は許し難い。
貴方が今コナタと共にいる時間は我々の犠牲の上に成り立っていることを本当に理解していますか?』
「あ、う……」
映司の罪の象徴ともいえるディケイドとの戦いでの大きすぎる失態は決して消えない罪悪感となって今なお彼を苦しめている。
その傷をアルトリアは無表情に、被告に罪状を宣告する法務官のような冷徹さで踏みつけた。
悄然とする映司だが更なる追い討ちが待っていた。
『お前にとっては満足なのかもしれないな、ライダー。
本来使えなかった力に目覚めて仲間と団結してあのDIOも倒した。
けれどそんなものは私に言わせればこの上ない蛇足だ。
セイバーの強硬策は間違っていなかった、間違えたのはお前だけだ。
彼女がDIOを倒すまでお前がディケイドを封じておくことさえ出来ていれば私達は死ななかった!』
「キャスター、さん……」
銀髪黒衣の少女、リインフォースの糾弾が映司をより追い詰める。
鬼気迫る形相のリインフォースの隣にはいつの間にかマスターである名無鉄之介もいた。
彼もまた、これまで見たことのない冷えきった瞳で映司を嘲笑する。
『つーかさあ、俺とリインちゃんが死んだのって全部あんたのせいじゃん。
DIOの野郎が生きてたから俺らが殺されたようなもんだってわかってる?
そりゃ人数不足で金ぴか王に負けてもしょうがねえよ、さっさと諦めて楽になったら?』
「そんな、でも…これが結末だっていうのか!?
俺はいい、でもこなたちゃんも陽介君もルルーシュ君も未来があるんだ!
みんながこんなところで死ぬのが正しいなんて、そんなことは受け入れられない!!」
『それは虫が良すぎる話なんじゃないかしら?』
-
叫ぶ映司に対し、駄々をこねる子供をあやすような調子で語りかける声が一つ。
聖杯戦争で映司が一番最初に取りこぼした命、遠坂凛だった。
『魔術の基本原則は等価交換、って知ってる?
あなたが自分のミスで死なせた人数分のツケを支払う時が来ただけの話よ。
むしろ本来ならとっくにDIOに全滅させられてたんだから等価以上の報酬をもう得てるじゃない。
世の中必ず正義の味方が勝つとは限らない。つまりそういう事でしょう?』
「……そんな、凛ちゃん………」
赤い魔術師はただ冷酷に告げた。
これはお前の起こした必然の結果でしかないのだと。
士郎や鉄之介らを死なせた時点で確定した事象なのだと。
『それだけじゃないよな、火野さん。
カンドロイドだったっけ?あれを使えば衛宮切嗣の作戦から柳洞寺の連中を守ることだって出来たはずだよな?
わかってるよ、あの時のあんたは泉以外誰も信じてなかったんだよな?
だから手の内を曝したくなくてわざと出し惜しみしてたんだよな?』
「陸君、それは……」
更に現れたのは眼鏡をかけた少年、天海陸。
彼の口から出た罵倒もまた映司の内心に燻っていた後悔の一つだった。
ルルーシュや陸らと柳洞寺に向かっている最中の切嗣、ディケイドによる襲撃。
あの時点でカンドロイドをこなた達に張り付けておきさえすれば切嗣の奇襲にも対処できたはずだった。
宝具の一つであるカンドロイドは銃火器など受け付けないしルルーシュらも一応銃で武装していた。
切嗣本人を倒せなくとも初撃を凌ぎ膠着状態に持ち込みさえすれば戦力差で押し切れたはずなのだ。
何より戦場が柳洞寺の近くだったことを思えばガウェインが事態を察知して独自の判断で駆けつけるのも時間の問題だった。
マスターの姿が見えない時点で奇襲を警戒すべきところをディケイドの存在に気を取られて防備を怠ったのは他ならぬ映司のミスだ。
その前の段階でイスラがいるにも関わらずマスターへの攻撃を許したという事実があるにも関わらず、だ。
あの時点でイスラに対して抱いていた信頼とごく僅かな疑惑が映司の心眼を曇らせていたのだった。
絶望に俯く映司の前に現れた最後の人物は赤毛の少年、衛宮士郎だった。
『そうだ、やり直しなんかできない。
犯したミスも失った命も決して戻ったりはしない。
俺も遠坂も名無も金田一もあんたが殺して切り捨てたんだ。
…なあ火野さん、あんた一体何考えてたんだ?俺は宴会の席で話したはずだよな?
元の世界に恋人がいることも、絶対に生きて帰らなきゃいけないことも』
「ぐ、うぅぅ……」
何故かはわからないが、映司はいつの間にか士郎に胸倉を掴まれ宙吊りにされていた。
正義の味方を弾劾する士郎の双眸は憎悪と無念と殺意に彩られていた。
-
『いいや俺だけじゃないな。遠坂は桜の姉で金田一は聖杯戦争に巻き込まれた一般人だ。
皆をむざむざ死なせておいて、どうして頑張った、やり遂げたみたいな顔してあんたはそこに居座ってるんだ?ふざけるな。
一体何考えて泉たちの前でヒーロー面してられたんだ?…本っ当に気持ち悪いよ』
「ぁ……許し、許してくれ………」
耐え切れず、嗚咽を漏らしながら許しを乞う映司を士郎は鼻で笑った。
直後、凍りついたような無表情になるとともに彼の左手に人が振るうものとは思えない巨大な斧剣が顕現した。
『許す?何を許すっていうんだ、ええ?
何人も死なせて皆で脱出する可能性すら自分で潰しておいて自分の望みが叶わないのは嫌です、ってか?
この期に及んでまだそんな身勝手で馬鹿みたいな高望みが通ると思っているんなら―――
殺 し て い い ん だ な 、テ メ エ ?』
一撃、二撃、三撃、四撃、五撃、六撃、七撃、八撃、九撃。
一瞬にして放たれた九つの剣閃が火野映司の全身を十のパーツに分解した。
「あ」
視界も意識も無限の暗闇に放り捨てられていく。
もう何も聞こえず、何も届かない――――――
カチカチと、時計の音が聞こえる。
ふと眼を開けると布団で眠るマスター、泉こなたの姿があった。
木の香りが残る和室は恐ろしいほどの静寂に包まれていた。
「あ……ゆ、夢………」
全身に冷や汗をかきながら映司は現状を正しく認識した。
そうだ、あの後休息を摂るため全員でこの柳洞寺までやって来たのだった。
この街で一番サーヴァントの回復に適した場所だというガウェインのお墨付きがあったことを思い出す。
今は陽介もルルーシュも思い思いに過ごしているはずだ。
「俺は…ここで俺がしてきたことは……」
両手で顔を覆い、力なく項垂れる。
召喚されてからこれまでの間に犠牲になった者の姿が脳裏を過ぎる。
殺し合いを止めるというエゴを通すために他人と戦ってきたこと。
そうしてきたこと自体に後悔はない。
「でも死にすぎた。……あまりにも人が、仲間が死にすぎた」
しかし、だとしてもこの手から零れたものがあまりにも多く、大きすぎた。
遠坂凛に衛宮士郎、天海陸に名無鉄之介と彼らの仲間やサーヴァントたち。
潜在的に殺し合いに乗った者もいたが、彼らの多くは生きて元の世界に帰る希望を持っていた。
その価値はこなたが持つそれと比べても決して劣るものではなかったはずなのだ。
「俺が死なせた…守れたはずの人たちを、俺が選択を間違えたから……」
人を守りたいという想いとそれを実現するための力とどこまでも届く自分の腕。
しかしそれらがあっても判断と選択を誤れば大切なものは容易に自分の腕から消えていく。
その積み重なりの結果があの悪夢だったのだろう。
連戦に次ぐ連戦で顧みることのなかった仲間の無念を改めて思い知らされた。
-
通常サーヴァントが夢を見るということは有り得ないはずだが仮眠を摂っていれば別ということなのかもしれない。
あるいはこの異常な聖杯戦争のシステムの為せる業だったのか。
「それに、きっと俺達ではもうあのギルガメッシュには勝てない。
…ディケイドの時と同じだ、まともにぶつかってはっきりわかった」
新都の連合軍との決戦でディケイドと対峙した際、映司はまるで手も足も出ずただただひたすらに翻弄されるばかりだった。
あらゆる攻撃、あらゆる挙動がいとも容易く見切られあまつさえDIOへの援護射撃を許してしまう始末。
それもその筈、この時映司の保有する戦闘スキル「心眼・真」はそもそも発動していなかったのだ。
仮面ライダーオーズこと火野映司が持つスキル心眼・真。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
が、このスキルにはたった一つ落とし穴が存在している。
それは逆転の可能性が数%を下回る相手、ないし状況下では効果が一切発現しないという点だ。
オーズと相対した時点でディケイドはクロックアップやクウガペガサスなどの能力濫用で少なからず消耗していた。
それでも尚ディケイドとオーズの間には絶対的な実力差が存在していたのだった。
それも当然、相手は数々の仮面ライダーを葬った仮面ライダーキラーとでも言うべき存在。
最初から単一世界のライダーである映司が一人で戦ってはいけない相手だったのだ。
愚かにも映司はディケイドと戦っている最中にようやくその真実に気付いたのだった。
ラトラーターコンボでディケイドを制しようとした時には既に手遅れだった。
コアメダルをセットするよりも早くアタックライド・マッハを発動したディケイドに阻止されてしまった。
メダルをセットし変身して初めて能力を使用できるオーズのコンボ。
それに対してコンプリートディケイドは一枚カードを読み込ませるだけで能力を発動できる。
この僅かなスピード差は特殊能力ありきの者同士の戦いではあまりにも致命的だった。
さらに言えばディケイドはオーズが打つ手にもある程度当たりをつけていた。
対仮面ライダーの経験が豊富なディケイドは少なからぬ数のライダーが高速化系能力を持つことも知っていた。
故にオーズのコンボ全てを知らずとも特に何も問題はなかった。
だからこそラトラーターへの変身はあっさり阻止され完膚なきまでの完封を許してしまったのだ。
つまるところ対仮面ライダー限定とはいえ戦闘論理という分野でもディケイドはオーズを超えていた。
-
「結果的にディケイドから貰ったスーパータトバでDIOは倒せた。
…でもそれは全部偶然で、都合良く状況が動いたからでしかなかった」
その後アルトリアとディケイドは相討ちになりDIOはマスターとの諍いが原因で新都へ転移させられた。
タイミングがあと僅かでもズレていれば映司は文字通りの意味で瞬殺されていただろう。
そしてディケイドは余程DIOが気に入らなかったのかスーパータトバの力を映司に託してくれた。
さらにスーパータトバの力が消える前に切嗣とDIOは自分達から攻め入ってくれたために大空洞で彼らを倒せた。
全部、敵の気まぐれや内輪もめの結果でしかない。
何一つとして映司が何かしらの努力をして掴み取った結果ではない。
スーパータトバにしても新たな力と言えば聞こえは良いが見方を変えればただのルール違反、本来の意味でのチート行為だ。
その力でしたことといえば本来アルトリア単独で倒せたDIOを討つきっかけを皆を巻き込んで作っただけ。
悪意的にマッチポンプなどと揶揄されても何も反論を思いつかない。
「俺は………」
「火野さん、こなたちゃんはどうっすか?
ルルーシュがそろそろ一回情報整理しようって言ってんだけど」
と、突然入ってきた陽介が声をかけてきた。
慌てて床から立ち上がると「ああ」と応じた。
「こなたちゃんはまだ眠ってるよ。
…無理もない。大きな戦いの連続でさっきまで大怪我も負ってたんだからね」
「そうっすね。でもルルーシュは今じゃないと不味いかもしれないって言ってるんですよ」
「どうして?」
「何でもあの黒幕の連中がちょっかいかけてくるかもしれないから情報共有だけでも早くするべきだ、ってことらしいっすよ。
実際こんだけでかい殺し合いを仕切れるなら何かしてきても不思議じゃねえだろうし。
こなたちゃんはいつ起きるかわかんねえし、起きてから改めて伝えるってことでどうですかね?」
「…そうだね。わかった、すぐ行くよ」
陽介に続いて部屋を後にする。
無論、もう同じ過ちを繰り返さないようバッタカンドロイドとタコカンドロイドを残していくことは忘れなかった。
「急に呼んですまなかったな。
ただ次の敵、ギルガメッシュは恐らく今までで最も苦しい戦いになるだろう。
どうしても今のうちに話し合いの場を作っておきたかった」
「いや、いいよルルーシュ君。
俺も彼とどう戦うかは重要な事だと思っていたから」
こなたが眠っている部屋とは別の一室にルルーシュ、ガウェイン、陽介、映司が集まった。
遠坂邸にいた時から随分人数が減ってしまったことに誰もが寂寥を覚えずにはいられなかった。
そんな空気を払うようにガウェインが話を切り出した。
-
「古代ウルクの英雄王ギルガメッシュ。
我ら英雄の祖ともいえる彼はギルガメシュ叙事詩を筆頭に伝承において多くの武勇伝を残しています。
ですがその中で最たるものはあらゆる武具、宝物を蒐集したという逸話です。
曰く、彼の蔵にはおよそ全ての宝具の原典が収められている、とのことです。
我々に対して行なった武具の投射もその応用の一つでしょう」
「ああ、はっきり言ってこれまでの敵とは比較にならない脅威だ」
深刻な様子の三人だが陽介だけは今ひとつ意味を呑み込めなかったらしく首を傾げていた。
「えっと、要するにたくさん武器を持ってるってことだよな?
それが何だって一番ヤバいってことになるんだよ?
今までだって時間止めるDIOとか倒してきたんだし、そんな深刻にならなくたって……」
「陽介君、英霊っていうのは基本的に能力や生前の逸話から何かしらの弱点があるものなんだ。
全ての宝具を持っているということは全てのサーヴァントの弱点を突くことができるということなんだ。
例えばDIOなら太陽に関係する宝具や時間停止を使われても凌げる盾や結界、俺なら恐竜や特定の動物に特別有効な武器とかね」
「更に言えば奴は主催側の人間、当然俺達の情報は全て知り尽くしているだろう。
これだけ言えばどれだけ不味い相手かよくわかるだろう?」
「あー、なるほど…相手が誰でも一人で弱点突き放題ってことか。
そりゃあ、本気でヤバいな……」
思い当たる節のある陽介は頭を掻いて改めて敵の質の悪さを思い知った。
相性が重要なペルソナ使いとシャドウの戦いから考えれば容易に理解できる話だ。
「無論、彼は無限の宝具の持ち主であっても一つ一つを極めた担い手というわけではないでしょう。
それでも英雄王ほどの器であれば所有する宝具を一定のレベルで使いこなす器量は最低限備えていると判断すべきです。
実際に宝具の中には真名解放を行わずとも持つ、あるいは振るうだけで効力を発揮するものも数多く存在する」
「つまり、あの弾幕を掻い潜って懐に入ってもこっちが特別有利になるわけじゃないってことですね?」
「その通りです、オーズ殿。故に我らが取り得る策はただ一つ、短期決戦のみです」
「ああ、策は単純。持てる全ての力でガウェインをギルガメッシュの下まで進ませる。
そしてガラティーンが最大限効果を発揮する距離で奴を焼き払う。
ライダーと俺達はガウェインのサポートに傾注する」
-
作戦を説明するルルーシュの顔色はお世辞にも優れているとはいえない。
誰より彼自身がこの作戦が確実性を欠くことを自覚しているからだ。
ガラティーンで勝負をつけるというのも神造兵装ならばギルガメッシュの防御を打ち破れる可能性が最も高いからでしかない。
更に言えばギルガメッシュの他に主催側にサーヴァント級の戦力がのこっている場合ルルーシュらは完全に詰む。
さりとてギルガメッシュを相手に余力を残して戦おうとすればあっさり殲滅されるだろう。
「いや、でもさ……もっとこう、良い方法とかあるんじゃねえか?
なあ火野さん、ギルガメッシュに効くような技とか変身の一つや二つぐらい持ってねえか?」
期待を込めて訊ねる陽介だったが映司の顔色を見てすぐに望みは薄いことを悟った。
それほど彼の表情は暗く、深刻なものだった。
「ギルガメッシュさんはスーパータトバを使った俺を倒そうとしてた。
つまり彼はスーパータトバへの勝ち筋を持っているってことだ。
そしてスーパータトバは総合的には俺が使えるコンボの中で一番性能が高い。
それより基礎スペックで劣るコンボを使って彼を倒すのは逆立ちしても絶対に無理だ」
先ほどギルガメッシュと戦った際、映司の心眼はやはり発動しなかった。
口ではああ言ったもののあまりにも勝機が薄すぎるために確たる活路を何も導き出せないのだ。
ラトラーターならば、とも思うが恐らくディケイドの時の二の舞になるだけだろう。
映司がコンボ形態に変身し力を発揮するよりギルガメッシュが財を取り出し対処する方が早い。
仮にラトラーターがクロックアップを超越する速さを有していようとディケイドやギルガメッシュ相手には「遅い」のである。
しかも変身時には電子音声でコンボ名を相手にも教えてしまうため余計にリスクが高い。
よしんば仲間に援護してもらって上手く変身できたとしてもカウンターやトラップ、全方位への盾などを用意されていればそれで詰みだ。
「マジか…くそっ、こんな時衛宮たちがいてくれたら……!」
「………」
悪気などなかったのであろう陽介の一言が映司の心を穿つ。
映司のミスと力不足で死なせてしまった彼らならギルガメッシュに対抗できたかもしれない。
複数の宝具を投影できる士郎と最強の聖剣と鞘を持つアルトリアがいれば十分な勝算を以って挑めたはずだった。
先ほどの悪夢と併せて自分が何をしてしまったかを改めて突きつけられた。
-
「ともかく次の戦いではこちらの持てる力全てを一瞬の好機に賭けてぶつけるしかない。
聖杯戦争をずっと監視してきたのだろう主催者に小細工など通用するはずもないだろうしな。
俺は時間が許す限りイルバーンとコードキャストの慣熟に努める。
どんな結果になるとしてもここまで来てやり残しだけはしたくない」
「だな。俺も出来るだけ新しいペルソナ…一緒に戦ってくれるアレックスを使いこなせるように特訓するぜ。
ガウェインさんと火野さんだけに戦わせるつもりなんてちっともねえからな」
「ありがとう、でも絶対に無理はしないでくれ」
胸の内を悟られぬよう努めて明るく返事をし、平静を装った。
こなたが目覚め次第英気を養うため何か出前を頼むということでその場は解散となった。
澄み渡る青空の下、映司の心は沈んだまま、山門の階段に何をするでもなく座り込んでいた。
先の会議で今の自分達の持つ手札がどれほど貧弱で少ないかを認識させられたからだ。
きっと、あの悪夢はこのまま英雄王に決戦を挑んだ場合に訪れる未来の光景だったのだ。
他に取り得る選択肢が無いことは百も承知だが今の作戦ではギルガメッシュには届かないように思えてならない。
(次の戦いは単に強敵を相手にした決戦なんかじゃない。
俺が、俺のせいで確定させてしまった未来を変えるための戦いなんだ。
でもどうすれば良い?何をすれば彼に勝てる?)
スーパータトバの力はもうない。
かといって現実問題それより劣るプトティラで勝てるかといえば否だろう。
サゴーゾならば。いや、ギルガメッシュが重力干渉への対策を怠るとは考えられない。
力が足りない、手数が足りない、火力も足りない、人数も足りない。
まともな考え方では突破口すら思いつかない。
(―――いや、まともな考え方じゃなければどうだ?
そうだ、まともじゃない戦い方をしたサーヴァントとさっき戦ったばかりじゃないか!)
天啓としか思えない閃きが脳裏に走る。
ブロークンサーヴァント。
つい先ほど決着をつけたヴァレンタインが分身を駆使して編み出した戦術ならば。
ヴァレンタインとは段違いの内蔵魔力と霊格を備えるオーズならあるいは英雄王にも届くのではないか?
勿論本当に実行すれば映司は当然消滅し、こなたも死んでしまう。
もし実際にやるなら映司の宝具や武装を捨てる壊れた幻想に留めるべきだろう。
しかし、しかしそれでも。
もしもブロークンサーヴァントを実行してもこなたや皆が助かる可能性があるのなら。
そんな状況がもしも訪れるなら。
-
決然とした瞳で立ち上がり、空を見る。
何かを捨てなければ何も変えられないというのなら喜んで捨ててみせよう。
その覚悟を持てなかったからこそ自分は仲間を何人も死なせてしまったのだろう。
(ガウェインさん、もしもの時は皆を頼みます)
この考えは自分の胸の内にのみ仕舞っておくべきだ。
例えこなた相手でも話すべきだとは思わない。
もう、何も迷いはない。
【深山町・柳洞寺/日中】
【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、精神力消費(大)、強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
[道具]:契約者の鍵@ペルソナ4
※スサノオとイザナギを合体させ、アレックスをペルソナとして召喚しました。
ペルソナのスキルとアレックスの能力を一部引き継いでいますが、会話はできません。
【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(特大)、魔力消費(中)、睡眠中
[装備]:携帯電話
※何時頃目覚めるかは後続の書き手さんにお任せします
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(小)、強い決意、精神的にやや消耗
※スーパータトバメダルは消滅しました。
※ギルガメッシュに対してスキル心眼・真は発動しません。
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]:魔力消費(大)、疲労(特大)
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャストを発動できます。
hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。 効果:ダメージ+スタン。
絶対守護領域 決着術式“聖剣集う絢爛の城”をデチューンした術式。 効果:小ダメージを無効化。
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(特大)
※『聖者の数字』発動不可
※誰かがキンブリーの遺した賢者の石を持っています。
誰が何時使うかは後続の書き手さんにお任せします。
新都、教会の地下にある一室。
言峰が何気なく入ったそこは部屋そのものが黄金の気に満ちていた。
部屋の中央、ソファーに一国の王のように鎮座しているのはやはりギルガメッシュ。
そしてテーブルには見覚えのある、あるいはない物品が無数に置かれていた。
「それも貴方の蔵から取り出した宝物かな、英雄王?」
「ああ、とはいえこれらは本来ならば我の蔵には存在し得なかった。
そら、上級AIである貴様ならばどういう意味かわかるだろう?」
「む?……なるほど、確かに」
-
見る者が見れば即座にその異常さに気付く品がいくつも置かれている。
日本人の祖と言われる古代種族リントが作り出したアークルとその試作型があった。
ミラーワールドへの出入りを可能とするライダーデッキの原型があった。
数多のライダーの力を得る以前のディケイドライバーとディエンドライバーがあった。
現在火野映司が持っているはずのオーズドライバーと既に失われたはずのスーパーメダルがあった。
他にも神経断裂弾や技術の進歩で小型化されたクロックダウンシステムなどがあった。
全てが異なる世界の仮面ライダーに関する物ばかりだった。
ギルガメッシュの王の財宝は過去・現在・未来を問わず人類の技術の雛形を、当人の認識を越えて貯蔵する。
しかし、だとしても明らかに別世界の宝物が対象になるなど有り得るものなのか。
「時空王と魔王、あらゆる世界の観測者である小娘によってムーンセルの知覚する世界は際限なく広がった。
地球外の、異世界出身の英雄を招聘出来た理由もこれに起因する。
同時に月の裏側から呼び起こされた我の認識もまた同様に広がり、認識の拡大によって我が宝物庫に収まる財も際限なく増えたのだ。
とはいえ完全な地球外の世界の財までは対象とはならなかったがな」
「それはまた凄まじい。
しかしそれほど増えては管理も手間なのでは?」
「何、宝具を数える宝具や宝具を整理、整頓する宝具がある故問題はない。
して、そのようなことを聞くために来たわけではあるまい?本題を言え」
「では単刀直入に。英雄王、今生き残っている参加者が貴方に勝利出来る目は如何程と見る?」
自我とプライドの塊といえる英雄王に対して無礼とすら思える発言にしかしギルガメッシュは怒らなかった。
むしろ、何を当たり前のことを聞いているのか、と言わんばかりの様子である。
「そんなものは無い。現時点で奴らが我を超える可能性は全くの零だ。
騎士王とマスターの小僧が健在ならば話は違ったろうがな。
如何に我の財が増えたといっても騎士王の聖剣の鞘の加護を破ることは流石に出来ん」
「…では、彼らと戦うのは貴方にとって時間の無駄以外の何者でもないのでは?」
言峰の当然といえる疑問にギルガメッシュは僅かに首を横に振った。
彼の言葉を事実とすれば無駄手間でしかないはずの戦いを心待ちにしているようにも見えた。
-
「まあそう結論を急ぐな。奴らがこれまで何度有り得ざる奇跡を起こしてきたと思う?
人形が最期の力を振り絞って蘇らせた聖剣の鞘、別世界の人間に所有権を移した槍に本来器でないにも関わらず他者のペルソナを得た小僧。
その全てが我ですら予期できなかったことばかりだ。
やはりこの聖杯戦争の趣向は良い。生と死の狭間にあってこそ人間の魂は輝きを放つ。
奴らの魂が更なる奇跡を呼び起こすのであれば、あるいは我を超える事もあるやもしれんぞ?」
英雄王ギルガメッシュ。
彼は月の裏側より人類史、遍く人間の辿る軌跡を眺め愉しむ者。
故にギルガメッシュは単純な強さの序列や最強の座には固執しない。
この熾烈な戦争を勝ち上がった者たちの命の輝きと価値を王として見定めるのみ。
「彼らが貴方に及ばないならばどうする?」
「愚問だな。その時は奴らも、奴らに期待した我もそこまでの器だったということ。
この先にいる魔王に相対する価値もない。我が手で全て塵に還すまでのことよ」
それは今も月の裏側で勝者を待ち侘びる魔王ゼロの望みとは些かズレている発言だった。
ギルガメッシュは例えゼロが何か文句を言ってこようと残る参加者全員を全力で刈り取るつもりだ。
もしゼロに誤算、あるいは思い違いと呼べるものがあったとすれば。
この唯我独尊を体現したような王が全くの無条件で何の理由もなく協力するものと思い込んでしまったところにある。
永き眠りに入っていた英雄王は今、己を微睡みから覚ました分に見合う全力を尽くした闘争を求めていた。
その結果として魔王が望む次代の後継者候補とやらが命を散らそうと知ったことではない。
無論、ギルガメッシュの思惑はそれだけではないが。
(―――だがもし奴の望みが叶わぬままならばいずれ全ての可能性宇宙が緩やかな滅びを迎えよう。
事実としてこの世界には既にその兆候が出始めている。
ならばこそ、此度で貴様の願いが叶わぬならば我が慈悲を以って貴様の無様な生を終わらせてやろう)
ゼロ本人は知り得ないことだが、ギルガメッシュにはゼロの望みを半分だけだが叶える術がある。
英雄王ギルガメッシュが有する数ある財の中にあってその真の最奥、乖離剣エアの権能。
文字通り世界を切り裂き星造りの一柱を担った創造神の力であれば、エデンバイタルという次元と繋がる魔王すら滅ぼせる。
とはいえ、それが可能なのはギルガメッシュとゼロがSE.RA.PHに存在するからこそなのだが。
-
権能とは元々六千年以上前、神代と呼ばれる時代に存在した世界を創造しうる力を指す。
西暦以降、物理法則が確立し人類の文明レベルが向上したことで役目を終えた。
もし現在、地上で権能を扱おうとすれば自我の崩壊などの相応の代償を払わねばならない。
魔王ゼロが自我を保っているのはエデンバイタルの特異性に加えて彼の元いた世界との宇宙の法則に差異があるためだ。
しかし情報世界であるこのムーンセルでは神話の空気がそのまま再現され、神代の権能を何の制約もなく扱うことが出来る。
例外として、魔王ゼロのみは異世界からの招かれざる客である故に世界からの反発でエデンバイタルの権能に幾らか制約を受けている。
またエデンバイタルの力の多くをムーンセルに対し割いているためにその権能は今、かつてないほど落ちている。
とはいえ本来ならその事実は魔王の存在そのものを揺るがすには至らない、些末な事でしかない。
例え全能の力の行使に幾らかの不備が出ようとこの世の力で魔王が滅びるなど決して有り得ない。
そうでなければ一万と5848回の試行の中で己を滅ぼし得る存在と一度も出会わないはずがない。
しかし、この月の裏側にたった一人の例外が存在していた。
それが古代ウルクの英雄王、人類の歴史の観測者にして裁定者たるギルガメッシュ。
彼の最終宝具、「天地乖離す開闢の星」でのみ、魔王ゼロとエデンバイタルの繋がりを断ち切り殺し切れる。
本来なら同じ権能であっても宇宙誕生より前から存在するエデンバイタルの方が創造神エアに優っている。
だがこのSE.RA.PHではエデンバイタル、ゼロの権能は大きく削がれエアはその真価を最大限発揮できる。
ゼロとギルガメッシュがどちらもSE.RA.PH内部に存在するという極めて限定された状況でのみギルガメッシュはゼロを殺し得る。
閑話休題。
「そうか、確かに我らを抜けぬようでは新たな魔王になる価値もないか。
では英雄王、私は失礼しよう。先ほど泰山に注文した麻婆ワインセットがそろそろ届く頃合だ。
貴方が持つ酒と比すれば安酒でしかないが後で御一献どうですかな?」
「麻婆豆腐はいらぬが酒は貰おう。麻婆豆腐はいらぬが酒は貰おう
-
どこか人間味のある、それでいて不気味な神父が去り部屋にはギルガメッシュのみが残された。
ゼロは焦っている。少なくとも己を格別強力な一介のサーヴァントとしか認識できない程度には。
エデンバイタルの力の行使や知識の取得に制約が生じていることも原因の一つではあるだろうが。
それ以上に「魔王の後継者を選び出し自身を殺させる」という手段に拘泥しているように見受けられる。
仮に後継者を出さぬままゼロが果てたとしてもエデンバイタルは新たな魔王が生まれる芽を作るとギルガメッシュは見ている。
それはそれで世界に新たな混沌と活性化を生む切っ掛けになるはずだ。
「自らの足跡を無にしないために飽くまで後継者を見出すことのみに執心するか。
良くも悪くも元は同じ人間…されど辿る道は正反対、か」
長い時を生き過ぎたために全能の力に対して視野が狭まった孤高の魔王。
聖杯戦争に参加したルルーシュも元は同じ人間だけあり似た性質は持っていた。
しかし彼はこの戦いを通して挫折を味わい、本当の意味で他人との協調性を学んだ。
参加した時点のルルーシュならあるいは魔王の役目を受け入れたかもしれないが最早二人は相容れることのない存在となった。
これも聖杯戦争を通した人間の進化であるとすれば何とも皮肉な話ではある。
とはいえギルガメッシュも魔王の後継者を選び出すという考えそのものに反対しているわけではない。
もし自分を倒し新たな魔王が誕生したならば英霊の座からその者の生き様を愉しみながら眺めることになるだろう。
が、それも全ては英雄王たる己と何故か八極拳の心得があるらしい神父を踏み越えた後の話だ。
慢心せずして何が王か、とはギルガメッシュの持論だが今回ばかりはそれも引っ込めざるを得ないかもしれない。
今やゼロの存在は全ての世界にとって大きなものとなりすぎた。
当人の意志に関係なく彼がただそこに存在しているだけで世界は停滞し、緩やかな滅亡へと傾いてしまう。
今ここで今代の魔王を代替わりさせるか何らかの方法で滅ぼさなければあらゆる世界に停滞が波及してしまう。
故にこれから行うのは人類の命運を預けるに足る者の選定であり、そうである以上慢心を捨て去る時も来るかもしれない。
いや、残る参加者がギルガメッシュの想像を越える奇跡を起こせばその瞬間は必ず来るだろう。
(エアは使えん。魔王もあれの存在を知れば対策を講じることは必定。
もし奴らが期待外れに終わり我自らが魔王を滅ぼす段になってエアの存在を知られていては別の世界に逃げられるかもしれん。
そうなれば如何に我であっても追いきれん)
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ゼロ自身の本心がどうあれギルガメッシュは人類を停滞させ終わらせる芽を見逃す気は毛頭ない。
同時に、非常に珍しいことだが不老不死と己を上回る全能の力を持たされた、ただの人間に対する彼なりの心からの慈悲でもあった。
「この戦いを通して生き残った奴らはまさに真の英傑と呼べる強者ばかり。
だがまだ足りんな。我を踏み越えられぬ程度の者には遍く世界の命運を託すわけにはいかん。
更に魂と力を高めよ、更なる奇跡の輝きをこの我に見せてみよ。
それすら出来ないのであれば――――――微塵も残さず踏む潰すぞ?」
【新都・教会/日中】
【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康
【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
※ムーンセルの知覚領域の拡大によって「王の財宝」内の財宝に各参戦作品の武器、アイテム等が追加されています。
これは人類の歴史の観測者であるギルガメッシュ自身がムーンセルと同質の存在であるためです。
ただし追加される財宝には以下の制約があります。
・「クレイモア」、「サモンナイト」など完全な異世界を舞台にした作品のアイテムは出自の一切を問わず追加対象にならない
・神造兵装など人の手によらない武器、アイテム等は追加対象にならない。
※魔王ゼロに対して彼なりに考察していますが必ずしもその全てが的中しているとは限りません。
※参加者に対して「乖離剣エア」及びエアの最大出力である「天地乖離す開闢の星」を使用する気はありません。
仮に使ったとしてもエアの権能を解放しないFate/stay night準拠の「天地乖離す開闢の星」になるでしょう。
また基本的に慢心を完全に捨て去るつもりはありませんが状況によっては捨てることもやむ無しと考えています。
とはいえ相手が聖杯戦争を勝ち抜いた強者なので慢心したとしても度合いは最小限に抑えられるでしょう。
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投下終了です
感想、ご指摘等お待ちしております
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投下乙
>「麻婆豆腐はいらぬが酒は貰おう。麻婆豆腐はいらぬが酒は貰おう
大事な事なので2回言ったんですね、わかります
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投下乙
最初の全滅で思わずえっとなったw映司は追い詰められてるなぁ…
そして我様の大物感がヤバい
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意外ッそれは夢ッ!!
この戦力からどうやって勝つんだろうかねぇ
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投下乙です
夢とはいえここまで正義の味方キャラを扱き下ろす士郎なんてここでしか見れないだろうなw
しかも物言いが微妙にリアリティあるのがまた…
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投下乙です。
蔵に有るのは「宝具の原典」だから、ディケイドライバーに他のライダーの能力は入ってないのか。
奪うか絆を結ばなきゃいけない。面倒くせえな。
賢者の石って、アレックスペルソナ化で使い切ったんじゃなかったっけ?
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>>428
すいません、賢者の石の消費は見落としていました
賢者の石のくだりはwiki収録の際に削除しておきます
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投下乙です。
映司追い詰めらてるなぁ…
そして我様のカリスマっぷりが凄いですね
対主催陣営予約します
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投下乙です
変身ベルト系はあっても使わないだろうけど、カブトのパーフェクトゼクターや伊達政宗の六爪が飛んでくることになるのか
北斗神拳の使い手がいれば二指真空把で完封できるんだがなあ
そしてついに百話目、完結も見えてきたというところでしょうか
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中の人的に金吾の鍋がルルーシュに飛んでくるとか
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>>374
誰も言わないから気になってたんだけど、wikiの管理人ってことは>>1氏であってますよね?
wikiの保守作業をしていただいたのは乙なのですが、ここ一応>>1氏の俺ロワですし、今まで見てたのなら何度も荒れたのも知ってると思いますけど
もうwiki管理以外では関わるつもりはないんでしょうか
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我様が慢心を捨てざるを得ない状況になりつつあるとか何気に世界の危機?
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ゲリラですが主催陣営を投下します
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1 AUOクエスト
鏡の中には常人、いや英霊でさえ踏み入れない世界が存在する。
その世界を知る者はミラーワールドと呼称する。
ムーンセルが用意したものの、本来ならこの世界には龍騎に変身したライダーのサーヴァント、仮面ライダーディケイドしか入り込むことは出来ない。
―――だというのに、今この世界に有り得ざる侵入者が確かに存在していた。
「さて、目的の獲物は…あそこか。しかし見るからに三流のエネミーばかりよな」
英雄王ギルガメッシュ。この聖杯戦争でディケイドこと門矢士を除いて唯一このミラーワールドに踏み入る手段を有するサーヴァントである。
今の彼の姿は戦闘時の黄金の鎧を着込んだものではなく、かといって何故か彼の蔵の中に入っていた当世風の服でもない。
くすんだ灰色を基調とした騎士風の全身鎧、されどその全身からはとめどなく黄金の気(オーラ)が滲み出ている。
これはギルガメッシュの蔵、“王の財宝(ゲートオブバビロン)”に新たに収まった財宝の一つ、仮面ライダー龍騎のライダーデッキ、より厳密には契約モンスターの力を得る前の原型、ブランク体である。
通常ブランク体のライダーではミラーモンスターには太刀打ちできるものではないのだが、ギルガメッシュは目の前に立ちはだかるエネミーやミラーモンスターの大群を完全に見下した態度でいた。
尚、ここに大量のエネミーが配置されているのは、聖杯戦争でディケイド一人だけが他者が侵入できないミラーワールドを自由に行き来できるという状況をムーンセルが不公平と判断したためである。
「知性の無い雑兵以下の屑も寄り集まれば面倒な存在にもなるか…。
貴様ら如きに用は無い、疾く消え失せよ」
ギルガメッシュ、いや龍騎がパチンと指を鳴らした背後から無数の刀剣、槍などの武具が出現した。
ミラーワールドには生身の人間は長時間存在することは出来ず、すぐに粒子と化して消えてしまうがより存在の階梯が高いサーヴァントや彼らの持つ概念武装、宝具であれば仮面ライダーほどではないがより長く存在していられる。
今しがた現出させた宝具の数々も即座に宝具を回収する宝具で回収しておけば消えることはない。
投射された宝具によって次々と葬られていくエネミー及び野良モンスターを一顧だにすることもなく龍騎はミラーワールドを我が物顔で闊歩していく。
目的地への途中で遭遇した敵も蔵から取り出した宝剣や、あるいは徒手空拳で容易く撃滅していった。
龍騎の中にいるのはただの人間でなく戦闘用スキルを持たずともアベレージ以上のステータス値を誇るサーヴァント、ギルガメッシュであることを考慮すれば当然の帰結だ。
「ここにいたか、あの破壊者の手駒であっただけあってそれなりの面構えよな」
「……!」
やがて、ギルガメッシュがわざわざこの世界に入った理由にして目的の一つ、拳王ラオウの拳で消滅したはずの契約モンスター、ドラグレッダーを視界に捉えた。
無駄にリソースを消耗することを嫌ったムーンセルによって蘇生され、侵入者迎撃用に再利用されていたのだった。
遠見の宝具によって最初から位置を把握していたため労せずしてこのモンスターまでたどり着けた。
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ドラグレッダーは動かない、否、動くことができない。例えブランク体であろうと決して逆らってはならない黄金の王の威圧感を本能で感じ、戦う前から既に屈服していた。
蔵から取り出したコントラクトカードを使用、呆気なくドラグレッダーとの間にあまりにも一方的な契約関係が成立した。
同時にくすんだ灰色だった龍騎の全身が血が通ったような、赤と銀に変化し、本来の仮面ライダー龍騎へと変貌した。
参加者との決戦を前に興が乗ったため気紛れに行なったウォーミングアップと同時に新しい財をも手に入れたギルガメッシュは上機嫌に蔵からまた新たにアドベントカードを取り出した。
そのカードの名はサバイブ・烈火。完全な龍騎となったギルガメッシュが手にすると同時に周囲を炎が渦巻いた。
かつて龍騎の世界を通りすがっただけの門矢士は知る由もないことだが、その世界で仮面ライダーナイトによって倒された仮面ライダーオーディンはサバイブ・無限の力を常に発現させていた。
故に、同じ世界にサバイブ・烈火が存在する、ないしその先の未来で人の手によって作られることは歴史の必然なのである。
であればギルガメッシュの宝物庫に収められているのもまた必然だ。
―――そして今ここに仮面ライダー龍騎がより強大な力を得て蘇る。
サバイブカードに呼応して変形したドラグバイザーツバイにカードを装填(ベントイン)。
顕現したのは身体の随所に金縁が入り、大きく盛り上がった肩部が見る者により力強い印象を与える龍騎の最強フォーム、仮面ライダー龍騎サバイブ。
奇しくも冷気を操る恐竜を模したオーズのプトティラコンボとは対を成す存在である。
「恐竜の仮面ライダーを叩き潰すのであれば同じ仮面ライダーの竜種だな」
満足そうに呟いたギルガメッシュは悠々とミラーワールドを後にして教会へと戻った。
彼自身非常に珍しいことではあるが、ギルガメッシュは来る対主催の面々との対決に際して綿密なシミュレートを行なっている。
別段龍騎がなくとも現状で完全な勝算があるが、無いよりはある方が戦力が増すのも事実ではある。
この段まで勝ち上がった英雄を相手に慢心は残せどもあからさまな油断を見せるほどギルガメッシュは愚かではない。
彼らが更なる限界を超えた力を発揮すること自体も想定に加えている。
龍騎への変身や能力の行使には魔力が必要らしく、変身中は通常形態で二割、サバイブ形態で三割ほど射出できる武具の数が減る。
王の財宝もまた魔力を用いて武装を取り出し射出する都合上避けられない点ではある。………ただし、そのまま扱えば、の話であるが。
そも王の財宝には王律権ダムキナを始めとする魔力を補填し生命力を回復する財が山のように存在している。
例え龍騎への変身が負担となったとしてもそれらの財を用いて魔力を補えばそれで済む話であり、何となれば蔵にある他のサーヴァントと接続されていない令呪で一息に補充でき、早い話が弱点が弱点として機能し得ないのである。
これは別段龍騎に限った話でもなく、例えば強力な斬れ味を誇るが持ち主に呪いを齎す妖刀の場合ギルガメッシュはその呪いを弾くほどの加護を与える財を無数に所持しているため事実上メリットのみを甘受できる。
-
こういったサーヴァントなら誰しもが持つ欠点、不得手を殆ど帳消しにしてしまう点もギルガメッシュが通常の聖杯戦争に適さないとされた一要因でもある。
それどころかペルソナ使いが用いるような特定の属性攻撃を強化する装具などを使えば龍騎の力はさらに増すだろう。
「さて、これでこちらの準備は整った。
奴らもあと数時間程度は休息に費やすだろう。
気紛れとはいえ我に戦準備などさせたのだ、最低でも我の想像を超える程度の力は見せてもらわねばな」
黄金の王はただ待ち続ける。
この熾烈な戦争を生き抜いた強者たちの命の輝きと、価値を問うために――――――
【新都・教会地下/日中】
【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
※ムーンセルの知覚領域の拡大によって「王の財宝」内の財宝に各参戦作品の武器、アイテム等が追加されています。
これは人類の歴史の観測者であるギルガメッシュ自身がムーンセルと同質の存在であるためです。
ただし追加される財宝には以下の制約があります。
「クレイモア」、「サモンナイト」など完全な異世界を舞台にした作品のアイテムは出自の一切を問わず追加対象にならない
神造兵装など人の手によらない武器、アイテム等は追加対象にならない。
※魔王ゼロに対して彼なりに考察していますが必ずしもその全てが的中しているとは限りません。
※参加者に対して「乖離剣エア」及びエアの最大出力である「天地乖離す開闢の星」を使用する気はありません。
仮に使ったとしてもエアの権能を解放しないFate/stay night準拠の「天地乖離す開闢の星」になるでしょう。
また基本的に慢心を完全に捨て去るつもりはありませんが状況によっては捨てることもやむ無しと考えています。
とはいえ相手が聖杯戦争を勝ち抜いた強者なので慢心したとしても度合いは最小限に抑えられるでしょう。
※ミラーワールドでドラグレッダーと契約したことで仮面ライダー龍騎、及び龍騎サバイブへの変身が可能になりました。
変身者が元から高いステータスのギルガメッシュなので引き出される力は本来のスペック以上のものになるでしょう。
2 愉悦
麻婆豆腐。それは清の時代において生まれた四川料理の一つ。
挽肉と赤唐辛子・花椒に豆板醤などを炒め、鶏がらスープを加え豆腐を煮ることによって完成され酸味、苦味、甘味、辛味、渋味の5つが味わえる。
昨今では料理を扱う娯楽作品において勝負の題材になることも珍しくはない。
それが魔王ゼロが麻婆豆腐について知り得る知識である。だが――――――
「どうかしたかな、魔王?」
『…神父、確認したいのだが今君が食べているそれは麻婆豆腐なのか?』
「ふっ、これは異なことを。これが麻婆豆腐以外の何に見えるのですかな?」
『違う、間違っているぞ。その唐辛子を入れすぎて赤みしかない何かが麻婆豆腐であるはずがない。
…というか、私にはどう見ても健康を害する物体にしか見えないのだが君は平気なのか?
そして何故よりにもよって食べ合わせに選んだのがワインなのだ?』
「そうかな?これはこれで味わい深い組み合わせだと思うのだが」
聖杯戦争が事実上終了し会場のセキュリティレベルが下がったのを見計らい言峰にモニター通信を行なった矢先に飛び込んだ衝撃の絵面にゼロは思わず絶句した。
辛うじて麻婆豆腐と判別できる凄まじいまでの赤みを帯びる料理を至福の表情で頬張りワインを飲むNPCの神父。
悠久の時を生きエデンバイタルからあらゆる知識を引き出せるゼロをして暫し思考が止まるほどだった。
もし自分があんなものを食べれば死なないまでも胃が輻射波動を受けたかのようなダメージを受けることは避けられまい。
「…ふう、ご馳走様。さて魔王、遅れて申し訳ない、用件を聞いても?」
『…あ、ああ。残るマスターやサーヴァントと戦うにあたって注意しておきたいことがある。
客観的に現時点での戦力を分析すれば、君とギルガメッシュが彼らに劣る要素はないだろう。
無論私としては彼らが君達を打ち破ってくれることこそを期待しているが、同時に私が望むのは残るマスターが魔王の器に相応しいだけの意志と力を持つところにある。
これはあくまで保険だが、例え君達が勝利する展開になったとしても、これと思う者がいれば生かしたまま私の前に連れてきてもらいたい』
-
ゼロとしては後継者選びに妥協などしたくはないが何分にも余裕と猶予がない。
ここで駄目ならば別世界、より正確には並行世界のムーンセルに渡って同じ手法を繰り返すつもりであるがどれほどの時間がかかるかわからないし、その間に取り返しのつかない事態になってしまう可能性もある。
必要なのは純粋な力以上に意志、すなわち魂だ。
「なるほど、了解した。しかし私はともかく彼の英雄王がそれを良しとするものかどうか…」
『彼にも一応は言い含めてある。あまり過信はできないし反故にされる可能性も勿論あるが……その時は彼にも相応の報いを受けてもらうことになる。
英雄王ほどのサーヴァントであれば彼我の力の差は理解しているとは思うがな』
如何に最強のサーヴァントといえどザ・ゼロのギアスから逃れられるものではないし、サーヴァント程度の存在が魔王を滅ぼす可能性に至っては一考する必要性すらない。
その程度の分すらも弁えぬのであれば次の世界に渡る前に遠慮なく消し去るまで。
『逆に今の彼らの戦力であれば一人も欠けることなく君達を突破したとしても私一人で邪魔なサーヴァントを消すことは問題なくできるがな。
太陽の加護のないガウェイン卿は常識的な範疇に収まる強者でしかなく、仮面ライダーオーズに至ってはルール違反と汚染の件でいつでもペナルティを下せる』
「…?汚染、とは?」
何やら興味を持った様子の言峰にゼロは内心で喋りすぎたか、と舌打ちした。
今の神父やギルガメッシュが時折見せる他者の不幸を肴にする愉悦という感情はゼロにはどうにも理解しがたいものだ。
とはいえ別段知られて困る話でもないのだが。
『少し話は逸れるが、君は衛宮切嗣とライダー、門矢士をどう思う?
精神的な相性ではなく、純粋な戦力として見た場合だ』
「そうだな、監督役としての立場から私見を述べさせてもらうならば、彼らは些か以上に他陣営とのバランスを欠いた主従であったように思える。
火野映司を大きく上回る汎用性に能力制限から脱した騎士王に匹敵する回復力、索敵性能と限定的ながら時間操作・停止能力までもを有し、それらを十全に活かせる戦略・戦術を構築し自らも暗殺者としての力量を持ち合わせるマスター。
運悪く初手でイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと出くわさなければ他の全ての参加者よりも大きなアドバンテージを得て今頃優勝していても何らおかしくはなかっただろうよ」
『やはり君は優秀な監督役だよ。その感想は誤りではない。
門矢士は分身や透明化も備え何より速さという点で他の追随を許さずそれらを相手に押しつけつつ自身はほぼ必ず逃走を成功させられる。
有用だが消耗の大きい能力も持ち前の回復力で十分に補填でき、それによって相手との相性や力の強弱を無視して優位を奪える上に力の多様さ故に自分は敵から明確な対策を打たれることもない。
事実として遠坂邸のチーム、というより泉こなたと火野映司は他には有り得ない知識を有するにも関わらず門矢士の操る能力全てを網羅しきることが出来なかった。
つまり彼は対戦相手の創意工夫など笑って吹き飛ばせるだけの汎用性と英雄王すら場合によっては単独で打倒し得る強力な戦術的切り札を多数有しているということだ。だが―――』
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ゼロは敢えてそこで一拍置き、数秒経ってから言葉を紡いだ。
『―――考えてみるがいい。そのような反則の存在がマスターの質と意志を問う月の聖杯戦争への参戦を許されるはずがあるまい?』
「しかし魔王、現に彼は衛宮切嗣のサーヴァントとして招かれた。
これはムーンセルが門矢士の参戦を許容したということに他ならないのでは?
そうでなければ説明が…………まさか」
『察したようだな、衛宮切嗣はアンリマユの汚染を受け、それを緊急的に除去したムーンセルも少なからず影響を受けた。
その衛宮切嗣に配されたサーヴァントがアンリマユの影響を受けないはずはない』
それは少し思考を巡らせればすぐにわかるはずの事だ。
しかし言峰がすぐにその解答に辿り着けなかったのもまた理由あってのことだ。
「だがアンリマユが齎すのは災厄以外に有り得ないはず。
事実今回だけで会場や幾人かのマスター、サーヴァントに悪影響を与えた。
貴方の言いようでは彼だけは恩恵を受けたように聞こえるがそんなことが―――」
『あるのだよ、神父。今回の門矢士は世界の破壊者としての側面が最も強い状態でサーヴァントとして呼び出された。
同じ破壊を齎す存在であるという事と、彼の“本来有り得ない事象を引き起こす”という性質が噛み合いその結果門矢士ただ一人だけがアンリマユの加護と恩寵を一身に受ける存在となった。
逸話を紐解けば仮面ライダーディケイドがそういった有り得ない事象を何度も引き起こしたことは明白だ』
言われて言峰は思案する。確かに伝承を確認する限り門矢士、仮面ライダーディケイドは純粋に強いのは間違いないがそこにはどこか不自然さ、おかしさが常に付いて回っている。
明らかに攻撃に重みや衝撃が足りていないにも関わらずいとも簡単に爆発四散していく怪人たち。
不死の存在でありカードで封印しなければ無力化できないはずのアンデッドを通常の攻撃で殺傷し、龍騎の世界ではライダーデッキなしでミラーワールドに自在に侵入した。
こうしたその世界の常識を無視した特性が聖杯戦争でもアンリマユによって付与されていたとすれば――――――?
『そのうちの最初の一つが魔力の自力回復の効率、時間あたりの早さだ。
元々門矢士にはマスターの供給性能に関係なく宝具によって一定の魔力を生成する力がある……が、それは本来あれほど驚異的な性能ではなく今回の生成力を十とするなら本来は精々一からニの間、現界や通常戦闘を最低限補助する程度のものでしかないはずだった。
この聖杯戦争でNPCからの魔力収奪のルールが設けられ冬木を模した会場に複数の霊脈が存在しているのもマスターやサーヴァントの現場判断を問うためのものだ。
マスターの存在を介せず、会場の設備やNPCもさして利用することなくサーヴァントの自力のみで多くを賄う魔力の生成など公平性の観点から鑑みても許されるはずがあるまい』
「加えるならば衛宮切嗣のマスター性能は魔術師としてあくまで標準レベル。
しかし奴は門矢士への魔力供給に難儀している様子はなくそれはあの決戦においても変わらなかった。
強化形態の解放にクウガペガサスの複数回使用、クロックアップその他の能力連発にクウガゴウラムの維持、さらには時間停止に火野映司へのスーパータトバの譲渡。
考えてみれば、これらをまっとうな方法で賄うならジョン・バックスのように栄養ドリンクを箱買いしうな重をかき込まねばならないはず。
そうでなければDIOと契約する以前に干上がっていなければおかしいということか…」
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サーヴァントの活動に不可欠な魔力の確保は参加した全てのマスター、サーヴァントにとって至上命題の一つと呼んでも過言ではない。
実際にこの聖杯戦争では多くの者が魔力の確保に奔走し、創意工夫を凝らした。
例えば杏黄旗を使い早期に地脈から魔力を得た太公望や同じ方法を使おうと策略を巡らせ敵マスターからも魔力を奪った天海陸とイスラ主従に実際に“紅の暴君(キルスレス)”を使用し自身とサーヴァントの魔力を得ることに成功した衛宮士郎。
例えばNPCからの魔力徴収を躊躇わず実行したDIOに間桐慎二。
例えば保険として神殿に多数の仕掛けを施した蘇妲己や戦いを放棄したマスターを賢者の石に変えて口を封じたゾルフ・J・キンブリー。
そして何より一般人かつ高齢の身でありながら栄養ドリンクなど文明の利器や食事による栄養摂取を最大限活用して燃費に劣るサーヴァントの活動を助けたジョン・バックス。
彼らは皆、ゲームが開始されてから大なり小なり何らかの労力を支払って魔力を得た。
他サーヴァントの能力を鑑みてもキンブリーの賢者の石は元々量に限りがある補助礼装に近いものであるし騎士王アルトリア・ペンドラゴンの魔術炉心もマスター側からの十分な供給なしに機能するものではない。
それに対して衛宮切嗣と門矢士が成した努力、支払った労力はあまりに小さく精々が他の土地と比べれば効率に優るとはいえない衛宮邸での休息のみ。
遠坂邸の同盟軍との決戦時に至っては切嗣は新都で念話や敵マスターの捜索などでサポートしていたのみで魔力供給に関する支援は実のところ何もしていない。
それ故にディケイドライバーに損傷を受けた時には何ら対処策を見い出せず長時間表立った行動が取れなくなった。
そんな状態で切嗣が魔力不足に陥らなかったのは全てアンリマユの加護によるディケイドの自力回復力の底上げ、そして更なる恩寵のおかげだ。
本来衛宮切嗣と門矢士のタッグは数多の手札を持ちながらも魔力が追いつかないという点で他陣営とのバランスが取れるはずだった。
不足しやすい魔力を魂喰いや霊地を拠点にすることによる回復の促進で補い手札を何時、どのようなタイミングでどう切るか、といったことを地道に模索するのが彼らの課題になるはずだったのだ。
『二つ、一部能力の魔力消費、反動ダメージの軽減。つまりクロックアップやクウガペガサス、タイムスカラベにハイパークロックアップとファイズアクセルなどが該当する。
本来の仕様上乱発がきかないはずのクウガペガサスの制約が半ば形骸化し、多くの場面で活用できたのはこれに依るところもある。
加えてたった一日のうちに十回近い超加速能力を使用しながら肉体へのダメージ、反動が自然に回復する程度で済んだのもアンリマユのおかげだ。
さらに言えばコンプリートフォーム発動中のタイムスカラベやハイパークロックアップといった時間操作能力は本来消費コストがより高く設定されていて令呪などの仕込みなしに実戦でまともに使えるようにはなっていないはずだった』
「そうでなければスーパータトバを没収された火野映司との間に理不尽なまでの格差が生まれることになるから、か。
しかし実際にあれほどの激戦の中タイムを使用できたということは魔力の回復も併せて相当な補正が掛かっていたのだろうな…」
『そして三つ、強化形態であるコンプリートフォームそのものだ。
世界の破壊者として呼び出された門矢士が持っているコンプリートフォームは全ての仮面ライダーを破壊し、世界を再生させた果てに手にした最強コンプリートフォームではない。
各ライダーの最終形態を召喚し同時攻撃を行う機能に重点を置かれたそれ以前のコンプリートフォームだ。そうでなければ矛盾が生まれることになる。
故に、カメンライドを介せずディケイド以外のライダーのアタックライド能力を行使する力など本来あるはずがない。
それが出来るのは全最強形態の戦力を発揮できる最強コンプリートフォームの方だからな』
「いや、魔王よ。世界の破壊者として召喚されたなら激情態があるはずでは?」
『無い。あれは内包する力があまりに多様すぎるために聖杯戦争のサーヴァントの器には到底収まりきるものではなく全てオミットされている。
それ故聖杯戦争という舞台でディケイドがカメンライドなしで他のライダーの能力を行使するなら最強コンプリートフォーム以外に無い。
アンリマユの加護によって宝具の拡大解釈が為された結果最強コンプリートフォームと同様の戦力を発揮でき、そのために火野映司のスーパータトバの力を目覚めさせることが出来た。
本来ならスーパータトバの一つ下のプトティラコンボを自在に制御できるようになる程度の力しか発現させることは出来ない』
-
遠坂邸の同盟軍が門矢士のデータを調べたにも関わらずカメンライドなしの能力行使を予見できなかったのは彼らに落ち度あってのことではない。
ルルーシュらは敵の戦力の見積もりを見誤ったと同時に見誤ってはいなかった。
データベースで調べたところでディケイドの能力が本来の仕様から外れたものになっているためにデータに載せられていないのだから有効な対策を用意するなど最初から絶対に不可能だったのだ。
とはいえそのおかげでDIOを相手にチェックメイト寸前の状態から巻き返すことが出来たのも間違いの無い事実ではある。
「ふむ、なるほど…。もし本来の性能で戦っていたとすれば、同盟軍との決戦の結果も大きく変わっていたことになる、と?」
『仮に全く同じ行動を取っていたとすればそうだ。決着以前に騎士王との一騎討ちの時点で大量の魔力を消費しオーズと対峙する頃にはほとんど枯渇、タイムスカラベの使用など論ずるまでもない。
いや、そもそもカメンライドを行わなければアタックライドの選択肢も限られるのだから騎士王に一騎討ちで討ち取られた可能性は絶対ではないが相当に増す。
だが衛宮切嗣は柔軟なサーヴァント運用が出来るマスターだ。魔力が保たないと理解した上で同じ行動を取らせるほど愚かではない。
それはそれで異なる手段、アプローチで状況を打開する策を練ったことだろう。一概に勝敗そのものが変わったとは断言できまい』
だがそのおかげでこちらにとって都合良く事が運んだ、とゼロは内心で一人ごちる。
正直なところ、騎士王の能力制限解除はまだしも封印した聖剣の鞘が復活したのはゼロにとって完全な想定外といえる事態だった。
“全て遠き理想郷(アヴァロン)”は元々ルールで認可された宝具であるがゼロにとって危険性の高い宝具でもあったため危険を冒してハッキングを行い厳重に封印していた。
あの鞘を展開されてしまうとザ・ゼロによる干渉すら跳ね除けてしまうためゼロにとって数少ない警戒対象だった。
騎士王にデチューンを施したのも極力早く退場させるためだったがこちらも目論見が外れてしまっていた。
その意味で門矢士とDIOが時間停止を駆使して騎士王を討ち取ったのは僥倖だった。
それだけでなく衛宮切嗣と共に適度に場を掻き乱し、太公望を討ってくれたのもゼロにとって実に都合の良い展開だった。
まさか聖杯戦争の初手の初手から殺し合いの破綻を目論むのみならずこちら側への考察に仲間集めを短時間で効率よく進める輩が現れるなど思ってもみなかった。
ゼロは初期の段階では太公望の存在こそを最大限に警戒していた。
『…まあ代償が全くないというわけではないが』
「それはそうだろう。マスターによるサーヴァントのデータ改竄はある程度は許可されているが門矢士の件はマスターの技能と無関係な上にそもそもルール上の許容範囲を明確に踏み越えた。
出来レースじみた強化を背景にした優勝など到底ムーンセルに受理されるものではない。
さらにアンリマユによるデータ汚染も加わるとなれば門矢士もまた二つの意味で不正なデータとして消去される。
彼が生き残る道があったとすれば自ら異常に気付き、ムーンセルに自己申告を行いデータの復旧、事実上のデチューンを受け容れることだけだった。その機会自体は聖杯戦争中であろうといつでも行使できる権利だからな」
『その通りだ。しかし門矢士は結果として自らの異常な優遇に気付くことはなかった。
我々の目から見てどんなに異様に見えようと彼の主観でだけはこれまでどの世界でも当たり前に享受してきた破壊者の権利以外の何者でもないからだ。
今さらそれを異常な事と認識しろというのは彼には些か酷な話だったようだな』
「つまり門矢士が敗北したのは騎士王の聖剣にその身を貫かれた時ではなく……召喚に応じたその瞬間だったというわけだ。
不正行為によりデータを消去されれば当然聖杯戦争中の履歴、仮面ライダーを破壊したという事実も消えて失せる。
門矢士の結末は何も残らず全てが徒労に消える、それ以外の可能性など事実上ありはしなかった。
……何という、何という愉悦っ………!!決戦の前でなければ麻婆豆腐のおかわりを頼んでいるところだ」
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愉悦に身を震わせる言峰から眼を逸らしつつゼロは思考する。
知らなかったとはいえ不正に手を染めたサーヴァントである以上こちらに不都合な真似をすればいつでもムーンセルに通報し消すことはできた。
何かの間違いがあって衛宮切嗣と門矢士が対主催に転じたとしてもゼロの意志一つで容易に排除できたのである。
彼らは実にゼロにとって使い勝手の良い道具であり道化(ピエロ)だった。
そして、汚染と不正の残り香はあるサーヴァントにも確実に影響を齎している。
「…となれば、汚染されたディケイドからルール違反であるスーパータトバの力を譲り受けた火野映司もペナルティと無縁ではいられない。そういうことですな、魔王?」
『そうだ、さすがに門矢士との程度の差を考慮すれば消去は不可能だろうが全ステータスと宝具の出力を最低でも二ランクは落とすことになるだろう。
無論、君と英雄王との決戦が終わるまでそのような手出しをしないことは確約する』
「お心遣い、感謝する。しかし正義の味方の象徴たる天下の仮面ライダーが二人揃って不正行為とはな」
『主催側たる我々にとっても予想外の事態が頻発する、それがこの混沌に満ちた聖杯戦争だ』
そしてそれは今も変わらないが、と思いながら通信を切った。
ここから先は言峰神父とギルガメッシュの仕事であり今のところゼロが干渉する必要はない。
聖杯戦争が終結した今でさえ、どのような奇跡、番狂わせが起こっても何ら不思議な話ではない。
魔王ゼロが待ち望むのはそうした混沌から生まれた強き者の魂である。
【新都・教会地下/日中】
【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康
※ゼロはムーンセルに通じる秘匿回線を持っており、それを通じて度を越した不正を行なった参加者に対し間接的にペナルティを与えることができます。
現在ペナルティ対象になり得るのは花村陽介と火野映司ですが、今のところゼロは二人に手を出すつもりはありません。
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これにて投下を終了します
感想やご指摘等あればよろしくお願いいたします
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投下乙です
以前の議論と合わせて、ディケイドが憎くて憎くてたまらないんだなという執念が伝わってきました
魔王も一気に小物になったなぁ…倒されることを恐れてセイバーを弱体化させたとか脱落してほしかったとか
登場話でセイバーと士郎に期待しているといったのと完全に矛盾してるし
型月のような自分の好きなキャラは徹底して持ち上げる一方、そいつに敵対するキャラはひたすら貶める作品ばかりですね
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投下乙です
色々言ってる人もいますがこれで今までの話との間にあった矛盾のいくつかが解消されるのは事実なんですよね
っていうかよく見たら士の項目にもカメンライドしないで能力使えますなんて最初から書いてませんでしたし
ただ魔王がちょっと小物っぽいのは同意ですね
退場を望んでた云々のくだりだけは削除した方が良いと思いますがどうでしょう?
あともうちょっとだけ刺々しい文章も変えた方が良いのでは…
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投下乙です
ただ、うーん…全体的に特定のキャラに対して攻撃的という印象は確かに受けます
個人的に万人受けする内容ではないんじゃないかな、と思います
ただ同時に(多少修正はしてほしいところですが)通しにしない理由もないとも感じます
ある意味他の方が出来なかった矛盾点の修正を憎まれる覚悟でやった、とも取れますので
とはいえ自分が言うのも何ですが太公望と士郎組を警戒していた、のあたりの部分は修正ないし削除をお願いしたいです
この企画のラスボスを小物にしすぎるのもどうかと思いますし、そこを変えるだけでも幾分印象が変わるでしょう
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投下乙です
自分もこの魔王ゼロには違和感があります
そもそもゼロとしては自分が倒されることを歓迎こそしても警戒することはないんじゃないでしょうか
アヴァロンを封印したのは英雄王と同じであれ自由に使えたら誰も勝てないからバランス取ったものと思ってましたけど
セイバーにせよ太公望にせよ、自分の手に負えないから封印するくらいなら最初から参加させなきゃいいだけの話ですし
あと個人的には麻婆豆腐のくだり
ギャグなのでしょうけどもラスボスの格を下げるだけになってる気がします
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あとミラーワールドについてですが
少なくともこの企画中ディケイドがミラーワールドに侵入した事は一度もないのでミラーワールドが存在するのかどうかは何とも言えませんが、
仮に存在していたとしてもディケイドが消滅した今ではまったくの無意味です
リソースの無駄を嫌ってドラグレッダーを配置する以前に、ディケイドが脱落した時点でミラーワールドも消去されてしかるべきだと思います
鏡像とはいえ舞台1つ分のコピーを維持するリソースは莫大なものでしょうし
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あ、ID変わってますが>>448=>>449です
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emobileは書き込むたびにID変わるのかな…
あとオーズ・ディケイドの両名=仮面ライダーは宝具になったベルトを真名解放して変身するので、
担い手ではないギルガメッシュがライダーに変身するのは不可能ではないでしょうか
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リソースの無駄だからドラグレッダーを蘇生したって、蘇生に使うリソースはもっと無駄じゃないのか……?
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皆様感想、ご指摘ありがとうございます
刺々しい、というのは確かに改めて見返すとそうですね。
士に対して悪意的すぎる文章は修正または削除したいと思います
それとゼロに関しては説明不足でした。彼が危惧しているのは「後継者を選ぶ前に対主催のサーヴァントに力業で無力化されること」だと解釈しています
ゼロを力で殺害できるのはギルガメッシュのみなのでアヴァロンがどんなに強くてもエクスカリバーでは殺し切れないのでゼロの望みは果たせないのです
わかりやすく言うとゼロにとって倒される(行動不能に陥る)のと死ぬの間には大きな隔たりがある、ということです
ただでさえリスクを背負ってハッキングしているのに死ねない上に無力化されてムーンセルから叩き出されるなんてゼロは望まないだろう、という解釈です
とはいえあまりに小物になりすぎた感は否めません。士郎組の早期退場を望んでいたという部分と太公望を警戒した、というのは削除したいと思います
アヴァロンに関しては時間停止系と違ってそれ単体では相手を倒せない受身の宝具なのでルール上は可と判断しました
また原作のギルガメッシュ戦でも描写されてますが相手が大きな隙を見せないと容易にカウンターは決められず、また事前に相手の切り札、大技のタイミングを熟知していなければ使いようがありません
基本的に発動、即相手の動きを封じられる時間停止とは汎用性が全く違います
「開幕、聖杯大戦」でもセイバーがDIOの時間停止を破れたのはそもそも最初から知っていたからであって初見ではさすがにやられているでしょう
ギルガメッシュの変身については龍騎のライダーデッキ自体に誰でも無条件に変身可能という性質があるので問題なしと判断しました
大首領専用に開発されたディケイドライバーや映司以外では使えもしないオーズドライバーとはその点が違います
ディケイド龍騎の世界ではライダー裁判の度に一般人に貸し出されているアイテムで剣の世界のアンデッドだろうと変身できます
なのにギルガメッシュだけが使えないのはそれこそおかしいだろう、といった具合です
そしてミラーワールドについては鏡面世界故に会場と密接に繋がっているためミラーワールドのみ即切り離しはできない、という一文を加えたいと思います
ドラグレッダー蘇生に関しても他の契約モンスターを一から作るよりはまだしも安上がり
ミラーワールドに配置していたのもディケイド以外の空間移動能力者(リインフォースや大統領など)が何かのトラブルや手違いで侵入したケースに備えて、という文を追加したいと思います
修正作業が完了次第wikiにて投下し是非を仰ぎたいと考えております
他にもご指摘等あれば可能な範囲で修正に盛り込むつもりです
お騒がせして申し訳ありませんでした
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ギルガメッシュはあらゆる宝具の「原典」の所有者であり、ということはつまりその宝具を実際に使いこなす「英雄」がいることになります
この場合ですと仮面ライダー龍騎の城戸真司ですが
もしギルガメッシュが龍騎のデッキを使えてしまうと、それはもう英霊の宝具でも何でもありません
仮に龍騎がサーヴァントだった場合、宝具として使用できるものが何も亡くなってしまいます
ディケイド・オーズが既にサーヴァントとして存在する中、龍騎だけが違う、というのはご都合主義的に感じます
原作ではだれでも変身できるものであっても、ムーンセルが運営する聖杯戦争という枠組みはまた別物です
他のパロロワ企画のように元々支給品として出すならともかく、ギルガメッシュが宝物庫から取り出して使用するにははっきりと矛盾しています
ミラーワールドについても、今まで一度も会場と全く同じサイズの鏡面世界が存在しているとは言及されておらず、
ゼロやNPCがしきりにリソースの無駄を避けようとしている中、ギルガメッシュを強化するためだけに「実は存在していた」で通すのは苦しいです
総じて、全体的にかなり無理があると思います
そもそもさほど強化する必要のないギルガメッシュを、都合のいい理屈で無理やり強化している、という印象です
修正案の
>ディケイド以外の空間移動能力者(リインフォースや大統領など)が何かのトラブルや手違いで侵入したケースに備えて
という部分も、持論を通すために無理やり取ってつけたように感じます
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一から作るより安上がりだからドラグレッダーを蘇生させる……野良エネミーや野良モンスターが既にいるのに?
無理のある理屈通そうとしてさらに矛盾だらけになってるよ
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宝具化したライダーデッキが誰でも使える場合
龍騎系ライダーが鯖として召喚されてマスターが出夢みたいなのだったら
担い手の鯖よりマスターが宝具使って戦った方が強いって事になるんじゃないの
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みんな自分にとって嫌なとこばかり頭ごなしに拒否してないか?
そもそも原典龍騎のキャラがこのロワのどこにいるんだ?
参加してるのはディケイドなんだから基準になるのはディケイド龍騎世界でしょ?本文見ればそのぐらい読解できるでしょ?
ディケイド龍騎基準ならギルが持ってるのは誰かに配られる前の誰の物でもないデッキだと思うよ?
あとギルはあくまで裏方で正規の参加者じゃないんだからマスターが使えば、なんて最初から何の意味もない仮定だよ
そんなんでネガキャンできると思ってるなら大きな間違い
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他の部分はともかく(ドラグレッダーだの雑魚モンスターだので防衛するくらいならなんでミラーワールド作ったんだよとか)
ギルが龍騎に変身できるの自体はおかしくはないな
マスターが使える宝具なんて原作にもあるし
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王の財宝内のオーズドライバーは、原作のように最初に着けた人間が変身者になる状態じゃないかな。
原典てのは、初期化みたいな事だろうし。
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投下乙です
ゼロのキャラについては原作知らないのでなんとも言えませんが、内容に関しては問題無いと思います。
そもそもアンリマユの汚染持ち出したのは私ですし、大きな矛盾やご都合主義がない限り書いた本人の意見が最優先の決まりなので、氏が気になった所だけ修正すれば後は問題無いと思います。
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またしょうもない理由でスレが荒れるのか
何回も似たような事あったのに、何でまた再発するんだ?
こんなに民度が低いなら、続編企画も絶望的だね。次があればだけど
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ディケイド一人だけがミラーワールドに入れるのは不公平だから(迎撃用に)エネミーやミラーモンスターを配置する…
これ、「セイバーのようにディケイドがミラーワールドに入れないように封印する」、もしくは「ミラーワールドを存在させない」のが公平ってものじゃないでしょうか
切嗣とディケイドがミラーワールドの活用を思いつかなかったのはアンリマユのせいだと強引に理由付けられなくはないですが
その場合、早い段階でミラーワールドが使用される見込みの無いとわかったのに今まで無駄に維持してきた魔王ゼロの無能っぷりが上がるだけですね
リソースは逼迫しているのに今まで一度も存在を描写されていないミラーワールドが存在し、
エネミーやドラグレッダーと同等の存在である野良モンスターが跋 扈しているミラーワールドの中に、あえてリソースを消費してまで番人としてドラグレッダーを蘇生させた
これらはいわゆる「大きな矛盾やご都合主義」に該当しますので、ミラーワールドの存在と魔王ゼロの小物化を修正すれば問題ないでしょう
ミラーワールドに入る以外の手段で、ならギルガメッシュが龍騎に変身できるのは構いません
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民度が低いっていうか一部の人気キャラに対する神聖視が完全に度を越してるんだよ
同じ矛盾を出した話でも「開幕聖杯大戦」の時の反応と見比べてみ?
あっちは手放しで称賛でこっちは読解すらまともにしない奴が何人もいる
フェアな目線で見てる人の方が少ないんじゃないかと本気で疑うレベル
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自分と反する意見をネガキャンとかいう人にフェアな目線とか言われても困るんですが…
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久々に議論スレ兄貴の出番か
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リソース逼迫してるムーンセルさんが会場とは別にもう一つ会場と同じ規模のミラーワールドを作って
さらにエネミーにディケイドの宝具の力の一部であるドラグレッダーまで置くって何か違和感ある気が
5次ライダー、4次ライダーにおけるペガサスとかブケファラスとかを蘇生させて配置してるようなものだし、宝具だけ蘇生させてそんな非効率的なことをムーンセルがするかと聞かれれば否だと思う
>>満足そうに呟いたギルガメッシュは悠々とミラーワールドを後にして教会へと戻った。
ギルの生前の財宝探しってこんな感じだったんだろうなw
ちょっと想像して和みました
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延長します
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このロワの進行度ってどんなもん?もうすぐ完結しそう?
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>>462
リソースが足りないところにミラーワールドを後付けしたと考えるから矛盾しているように見えるのではありませんか?
最初からミラーワールドを会場とセットで用意した結果脱落者のリソースが運営に必要になるほどリソースが逼迫しているという考え方も出来るのではないでしょうか?
それなら原作からして128体ものサーヴァントに複数の校舎とアリーナまで作れるはずのムーンセルのリソースが逼迫していることにより強い説得力が出ますし
ドラグレッダーはロワ内でディケイドとクーフーリンを翻弄した実績を買われたとかで良いんじゃないでしょうか?
仮にもAP5000の強豪モンスターなんですし
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それはそれで「なんでミラーワールドを用意したのか」わからないんだけど
そもそも後付けだろうと同時だろうとリソースが足りなくなるのは作る前にわかると思う
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>>470
マーダー全滅、生き残った対主催が主催サイドと交戦間近
もうラスト直前だな
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>>472
「ミラーワールドに入れる宝具」を持ったサーヴァントが存在するからじゃないの?
それでも、NPCミラーモンスターはともかくエネミーは要らないと思うが。
どうせ、連続10分未満しか居れないんだし。
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ディケイドにミラーワールド使ってほしくないならなおさらミラーワールドなんて作るべきじゃない
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開催できてる時点でリソースが逼迫してるとは言えても足りないとは言えないんじゃないか?
エネミー配置の理由も退治目的じゃなく足止め、若干の進行妨害用ってことにして数も減らせば良いかと
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イリュージョンが強力すぎるから一度しか使用できないと制限されたのに、
逃走や暗殺にこれ以上ないアドバンテージを得られるミラーワールドを開始から今までディケイドのためだけに維持してきた
ディケイド一人のためだけに会場と同じサイズの鏡像世界を用意し、しかし不公平だから迎撃用にモンスターやエネミーを配置する
おかしいでしょう
なんでそこまでしてミラーワールドを用意する必要があるんですか。公平不公平の次元じゃないですよ。
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え?本文に書いてあるのは「一度壊された分身は二度と復活不可」だったと思いますよ?
上手に使ってれば複数回使えたのでは?
あと以前からちょっとイリュージョンの件を根に持ちすぎじゃありませんか?
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鳴滝「死後もロワに議論を齎すとは…おのれディケイドォォォ!!」
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ドラグレッダーにこだわるからおかしくなるんだし、宝物庫にドラグブラッカーのデッキが入ってたってことにすればいいんじゃないかな
性能はブラッカーのほうがやや上くらいでほぼ一緒で、ミラーワールドや蘇生なども全部不要だし
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つか正直な話そこまで龍騎に拘る理由も無いような。
もちろんそういう「竜には龍」展開を書きたかったのはわかるけど、ここまで物議を醸すならそこ削ってしまったほうが収まりが良いような気がするのだが。
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複数の書き手さんがアリと判断してるのに?
反対している書き手さんだけが具体的な方法論を提示していないのに?
ミラーワールド以外の方法で龍騎出せば納得すると言うならその方法を提案すれば良い
その方が氏の修正作業も捗るでしょうよ
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じゃあ具体的に言いましょうか
・ディケイドへの悪意的な表現の緩和
・魔王ゼロの心情描写の削除、他諸々の修正
・ミラーワールドの削除
・デッキを宝物庫から出したと修正、もしくは龍騎系ライダーに変身すること自体削除
これらを正式に修正要求として出します
龍騎に変身させたいのか、ミラーワールドを存在させたいのか、どちらが主眼なのかはわかりませんが後者は明らかな矛盾ですので
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ミラーワールドはいるのか・・・?
ミラーワールドに入れるディケイド一人のためにミラーワールドまで用意してエネミーも大量に用意して宝具の一部のドラグレッダーまで蘇生させて
ってそんな無駄の多いことを管理の怪物のムーンセルはしないと思う
入ることが不公平ならミラーワールド自体を作らないかEXTRAでのアリーナでの鯖同士の戦闘みたいに3ターンで強制戦闘中止みたいに強制排出される機能がつけられると思う
どの道エネミーとドラグレッダー配置なんてことはしないんじゃいか
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ランスロットみたいに宝具を奪えるサーヴァントもいるんだし、別にディケイドの為だけでは無いと思うけど。
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っていうかよく考えたらムーンセルの容量って別に明確に上限決まってるわけでもないのでは?
いや、以前の書き手さんのチャットでそこらへんを明確に数字か何かで決めてて◆XL.nOGsA4g氏がそれを破ったのならミラーワールドは削除されるべきでしょうけど
もし違うならある程度アバウトに考える余地を残すぐらいしても良いのでは…
多少なりとて説得力の出る理由付けを追加するだけなら◆XL.nOGsA4g氏の修正にかかる労力も減るでしょうし
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> SE.RA.PH内で死んだマスターやサーヴァントはムーンセルによって解体され、その魔力はSE.RA.PHを運営するリソースへと回される。
>通常の聖杯戦争のおよそ七倍 の数のサーヴァントが参加しているため、SE.RA.PHを稼働させるリソースは常に逼迫している。
>魔術師やサーヴァントが放出する魔力を循環・再利用させてこのSE.RA.PHは成り立っている。
すでにこういった描写がある以上、もう一つのSERAPHと言っても過言ではない規模のミラーワールドが入る余地があるとは考えられないけど
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皆さん落ち着いてください
周りが色々いっていたら氏が困ってしまうと思います。
前に述べましたがあくまでも書き手優先の決まりなので氏の返答を待ちませんか?
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書き手の意見を優先するにしても、既に前例がある書き手だしなぁ
プトティラに対抗するなら対竜属性持ちの宝具を引き出せば良いだけだし、ただでさえリソースが圧迫してるのにわざわざミラーワールドを出す必要がないし
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君の言う前例とやらが何か知らないけどスレルールを守る気がないなら書き込むな
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お待たせして申し訳ありません
修正の方向性がある程度固まりましたのでご報告をしたいと思います
というよりほぼミラーワールド関連なのですが……
修正の方向性としては、ミラーワールド及び龍騎再登場の展開は存続としたいと思います
反対意見が少なからずあるというのは重々承知しておりますが、◆2shK8TpqBI氏に◆cp3jCCSc7M氏と複数の書き手さんから賛同ないし容認の判断を頂いておりますので皆様どうかご了承願います
その代わり、>>471において◆cp3jCCSc7M氏から提案のあったミラーワールドを会場とセットで用意した結果脱落者のリソースが運営に必要になるほどリソースが逼迫している、という一文を加える他できるだけ多くの方に納得可能性を提示できるよう極力理由付けを強化し、矛盾の解消・緩和を図りたいと考えております
またミラーワールド内の敵性存在をミラーモンスター及びドラグレッダーのみに変更し、数も減らすことでリソースの無駄遣いと指摘された点を少しでも緩和したいと思います
あとミラーモンスターの存在意義は基本侵入者の妨害と消耗の促進でドラグレッダーはロワ内で多少なりとて実績があることも理由として加えます
説明不足で申し訳ありませんでした
◆wYNGIse9i6氏
数多くのご指摘ありがとうございます
そしてミラーワールドと龍騎への変身に関して氏のご要望に応えることができず誠に申し訳ありません
その他の修正要求にありましたディケイドへの悪意的な表現の緩和、魔王ゼロの小物化を連想させる表現はできるだけ削除、文章の差し替えを行うことで対処いたします
また前述の通りミラーワールドに関しても理由付けを強化することでご指摘にもあった矛盾に対処いたしますので平にご容赦下さい
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乙です、やっぱり複数の書き手のリレー企画って大変なんですねぇ……
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ん? 賛成してる書き手多いから修正しないって言うことです? じゃあ私◆XL氏の修正案では不十分ではないか、と意見しますよ
ミラーワールドを会場とセットで用意する根拠が薄弱すぎますので
そもそも議論スレや前スレであれだけ◆wYNGIse9i6氏や◆QSGotWUk26氏に修正しろと言っておいて、
いざ自分がその立場になると全く聞く気がないってのは少しどうかと
以前「書き手として節度ある判断をしていただきたかったというのが本音です」とまで言った書き手の執るべき行動とは思えませんが
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修正案の件、応じる気はないと。なるほど了解しました。
では私はこう受け取らせていただきます。
「大きな矛盾があると他の書き手から疑問を提示されていても、別の意見の書き手がいるのなら修正案に従う必要はない」
という前例を作る以上、
「今後、私や他の書き手が修正要求を受けた時も、反対の意見でその作品に賛成する書き手がいるのなら、その要求に応じる必要はない」
ということです。
今まで◆XL.nOGsA4g氏や◆cp3jCCSc7M氏は何度も他の書き手に対し修正要求を行っていますが、
もし賛同する書き手が他にいた場合は、あなた方がいくら納得できなかろうが、議論するまでもなく通しとする。
こういうことで、構いませんね?
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ここ、ランサー氏離脱前後の中盤以降から参戦した書き手勢がホントすごい
こんな険悪な議論が少なからず起こってるし、住人の態度もいいとは言えないのに
誰一人として離脱せず書き続けてるのがホントすごい
この活力は割と真面目に見習いたい
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お二人とも落ち着いてください。
どんどん喧嘩腰になったらお互いにも回りの人も嫌でしょう。
私は龍騎知らないんでミラーワールドの設定がいまいちわかりませんがあったらダメなんですか?
納得出来ないのなら一度議論スレで話し合ってはいかがでしょう?
ここまで来たんですから皆で最後まで仲良く終わりましょうよ
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(龍騎なんて持ち出さなくてもオーズ迎え撃つならオーズの原型になる先代オーズでいいじゃん、ってのはここで言うことじゃないか)
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(ギルがオーズドライバー使ったら暴走しちゃうんじゃあ…)
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(映司と比べたら欲望バリバリだもんな)
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(今こそ仮面ライダーフィフティーンを使う時…!)
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以前、私の書いた「猛毒刀与」の議論のときですが
あのときは◆l3N27G/bJU氏から容認意見を頂いていましたが◆XL.nOGsA4g氏は納得されずさらなる修正を私に求めてきました
で、私はその修正に応じたわけですが、今回◆XL.nOGsA4g氏は応じませんでしたね
人にはこうしろと強いるくせに、いざ自分がその立場になれば過去の言動を忘れて我を通そうとする
スレに列挙されていた意見に返答するでもなく、一方的に自分の結論を並べただけでまったく話し合ってなどいない
これが「書き手としての節度ある判断」「共にこの企画を運営する書き手一同への配慮」というなら、私もそれに応じた対応にせざるを得ません
ですので>>497の通り、以降は今回の◆XL.nOGsA4g氏に倣ったやり方をする、ということです
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そろそろ議論スレでやった方がいいのでは…
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◆2shK8TpqBI氏もそう言ってるしなぁ>議論スレで〜
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ミラーワールドをムーンセル側が用意したなら、大統領のD4C用に平行世界も造ったのかな?
それなら、メモリが足りなくなっても仕方ないな。
ゆうに200は越えてたし。
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実はミラーワールドも平行世界も同じものでサーヴァントによって受ける影響が違うだけなんだ!
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ミラーワールドも平行世界も根本的に違うものなんだけどな
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ここ何時も喧嘩してんな
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書き手も戦わなければ生き残れないんだよ
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平行世界は元から存在してたものじゃないの?
大統領のスタンドがそれに干渉可能ってだけで
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<削除>
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>>513そんな事言っていいものじゃない
さすがに失礼過ぎますよ
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そもゲリラ投下ってOKだったっけ?
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少なくともやっちゃ駄目というルールはないな
うろ覚えだけどゲリラ投下のSSって結構前にあった気がする
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毎回仲裁役をやってくれてる◆2sh氏が心配になってくるレベル
書き手さんも読み手さんも攻撃的な発言は控え目にな…
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本スレで議論があって、議論スレでは何も行われてない時点で本末転倒なんですがそれは
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◆2sh氏はこの聖杯戦争の監督役だからな
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その書き込みのちょっと前に書き手さん顔出してるんだよなぁ
あとは件の氏の反応待ちかな
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大変お待たせしました。
これから投下させていただきます。延長ありがとうございました。
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悲しい夢を見た。
全てを無に帰す欲望。
紫の恐竜のコアメダル。
世界の終末を望む男。
少しずつ、しかし確実に進行していくグリード化。
赤い腕の男との敵対。
激化していく戦い。暴走する意識。
助けを求める人たちの叫び声。
暴走する力を制御するべく、「彼」は自分の欲望を思い出す。
「どこまでも届く自分の腕」、自分が人を助けるためにそれに見合う「力」
自身の「欲」を思い出した「彼」は、終末を阻止するため「紫のコアメダル」や「無限のセルメダル」を貪欲に欲した。
自身がグリードになるという恐怖に震えながらそれでも彼は、戦いを止めなかった。
自分ひとりで全てを背負い込み己の命さえ顧みないその姿勢に、あるものは危険視し、ある者は心配し心を痛めた。
その強すぎる自己犠牲の精神を見ていた「彼女」は、いまの私と同じように…悲しい顔をしていた―――
「あ、もう起きて大丈夫こなたちゃん?」
目を覚ますと同時に様子を見に来た映司から水を貰い意識を覚醒させる。
「気分はどうこなたちゃん?」
「あ…うん、もう大丈夫だよ。他の皆は?」
「ルルーシュ君とガウェインさんは居間にいるよ。陽介くんは庭で特訓してる。起きれるなら食事にしようこなたちゃん」
「うん、そうだね。お腹ぺこぺこだよ」
思えば昨日の宴会から何も食べていない。
空腹を感じると同時に、もうここにいない仲間たちの事を思い出す。
「…行こうかこなたちゃん」
そんなこなたの心情を感じ取ったのか、どこか無理に空気を変えるように振舞う映司に感謝しながら、先ほど見た夢を思い出した。
「映司さん、あの……」
「ん、どうかしたこなたちゃん?」
「あのさ、映司さんはその…大丈夫?」
「…っ、もちろん大丈夫だよ。陽介くんのお陰で傷はすっかり治ったから。さ、行こう」
そういって誤魔化すように笑い先に部屋を出た。
「映司さん、やっぱり…それにさっきの夢は…」
先ほど浮かべた安心させるように笑う笑顔は、夢に見た、痛みを堪えて振舞う笑顔だった。
再び居間に集まった一同は先ほど話し合った内容をこなたに伝え、出前が届くまで思い思いにすごしていた。
なおこなたをここにおいて行くという案もあったが、足手まといとは解っているけれど最後まで一緒に戦いというこなたの強い希望により一緒に行くこととなった。
ギルガメッシュほどの英霊が直接マスターを狙う可能性が低いこと、令呪の援護がとり易いよう近くにいたほうがいいという考えもあった。(もちろん戦闘が始まれば離れてもらうが)
大量に届けられた出前をたえらげ、映司は見張りに出ると出て行った。
続いて特訓の続きをしようと部屋を出ようとした陽介を呼び止め、ルルーシュ、ガウェイン全員に先ほど夢を見たこと。
映司の様子がおかしかったことを話した。
-
「夢ですか…。マスターとサーヴァントとの間に強い結びつきがあればそのような事があるとは聞きますが、そのような夢を見るという事はオーズ殿の精神が夢に見た状況に近いのかも知れません」
「まずいな、この状況で精神的に追い詰められていたら絶望的な状況がさらに悪化する」
「やっぱ火野さんも皆のこと気にしてるんだよな…」
「気にしてないものなどいないだろうな。ここにいる全員が感じていることだ」
今はもうここにいない仲間に思いを馳せ、胸を痛めたが感傷に浸るのは後だとすぐに思考を切り替えた。
「どのみちこのままではまずいな。責任を感じて無謀な行動を起こしかねん」
「そうだな、俺も覚えがあるからわかるよ。大切な人や親しい人を亡くした奴ってさ、何かできたんじゃないかとかこうするべきだったって思い悩んじまうんだよなぁ」
仄かに恋心を抱いていた先輩。
相棒が大切に思っていた妹。
嫌われ者の担任教師。
彼女たちの死は、自分や仲間に大きな影を落とした。
特に菜々子の死は大きな影響を及ぼし、自分たちが視野狭窄に陥った原因である。
「だからさ泉さん。火野さんとちゃんと向き合ってほしい。じゃないと火野さんはずっと苦しいまんまだ」
「陽介くん…。でも、私なんかじゃ―――」
「頼む…俺は、俺たちは向き合えなかった。だから悠はこの戦争に参加して命を落とした。そんな後悔は絶対にダメだ」
それは、花村陽介だからこそわかる苦しみ。
自分と相棒が味わった苦しみを目の前の仲間にしてほしくなかった。
両肩に手を置かれ向けられた言葉に戸惑い、迷い、そして決意を固めたこなたは勢いよく飛び出した。
「がんばれよ、泉さん…」
「俺たちも行くぞ花村。何を一人で思い悩んでいるのか知らんが、ここまできて一人で背負い込もうとしているのなら殴ってでも止める」
「…お前って意外と直情型だよな」
私…甘えてた。
映司さんの優しさに甘えてた。
映司さんは都合のいい神様なんかじゃない、そんなこと解ってたはずなのに…
相棒の苦しみに気づかなくて何が対等なパートナーだ。
今度は私が、私が映司さんを守る番なんだ!
「映司さんっ!」
山門の階段で空を見上げ佇んでいた映司は驚いたように振り返った。
「こなたちゃん?そんなに慌てていったい何が―――」
「ごめんなさい映司さん。映司さんの苦しみに気づいてなかった。私、自分のことばっかりで…本当にごめんなさい」
「ちょっと…どうしたのこなたちゃん、なんで急にそんなことを?」
「私、夢で見ちゃったの、映司さんの過去を…映司さん夢の中でとっても傷ついてた。傷ついてるのに無理して笑って苦しんで…」
「こなたちゃん……」
こなたの話す過去に覚えがある映司は、思わず口を閉ざす。
おそらく紫のコアメダルが体内に取り込まれ精神的に追い詰められていた時期を指しているのだろう。
夢に見たことで当時の映司の精神状態を知ってしまい、今ここに来ているのなら……隠し通そうとしてきたことの全てをこなたに知られてしまった事を意味する。
「お願い映司さん、全部一人で背負わないで。
私じゃ陽介くんやルルーシュくんみたいに隣で戦えないけど、つらい時にそばにいることならできるから。
手を握ることならできるから…だから……っ」
「……俺なら大丈夫だよこなたちゃん。無理なんてしてない。なにも心配なんていらないよ」
「そんな明らかに無理してますよーって顔で言っても説得力ないぜ火野さん」
「まったくだな」
いつの間にかやってきたルルーシュと陽介がこなたの後ろから現れた。近くにガウェインも控えていて軽くこちらに会釈をする。
-
「今の火野さんさ、菜々子ちゃんが入院してたときの悠みたいな顔してるぜ。辛いのに周りに心配かけないように必死に取り繕って内側に溜め込んで…見ていてすっげえ心配になってくる」
「もっとも、泉が一番に異変に気づいたからこそ俺たちも気づけたのだがな。たいしたポーカーフェイスだよ」
少しずつ近づき映司の目の前にたったルルーシュ達は、静かに、だが強い視線を向ける。
「ひとつ言っておくぞライダー。もしも衛宮達の事でお前が責任を感じているのならそれはお門違いというものだ」
強い口調でハッキリと告げられた言葉に動揺というよりも困惑を顔に浮かべる。
「お門違いって…それは違うよルルーシュ君。俺が判断を誤ったから凛ちゃんが…それにディケイドを抑えられないうえにDIOさんの援護を許したせいで士郎君もセイバーさんも、それに鉄之介くんやキャスターさんだって―――」
仲間の死は、少なくとも映司自身は自分の選択や判断を誤ったために起こったことだと確信していた。だからこそ、あの悪夢を見たのだ。
「判断を誤ったと言うがなライダー。そもそも作戦を立てたのは俺だぞ。責を問うならまず俺が一番に受けなければならないことだろう」
今思い返しても自身の犯した失態に後悔がよぎる。
「天海陸とセイバーの嘘を見抜けず、衛宮切嗣とディケイドの策略で金田一とライダーを失いガウェインには仲間殺しの罪を負わせ、その後も使い物にならず衛宮切嗣を取り押さえる機会を逃し、あまつさえ敵の戦力を見誤り衛宮とセイバーを死なせた。これ以上の責任がどこにある」
もしも仮に金田一とライダーの主従が生きていれば、あるいは衛宮とセイバーが無事だったならば、宝具殺しの宝具をもつ太公望、アヴァロンの加護を持つアルトリアがいればギルガメッシュとの戦いに大きな勝率が増し、それ以前の決戦でDIOとディケイドに完封を収めることも出来た。
彼らは最優先で守るべき者たちだった。それが分かっていただけに余計に自分の失態に苛立つ。
「俺にだって罪があるぜ火野さん。もしも悠に襲われたとき気絶せずに取り押さえられていたら、そのとき肉の芽を解除出来ていたらもしかしたら一緒に戦う未来があったかもしれない。それに決戦のときアレックスの相手をDIOじゃなくてディケイドを選んでいたら、アサシンの毒を喰らっても令呪ですぐに回復できた。
そしたらディケイドとうまく戦えていただろうし、火野さんと一緒ならそのまま倒すことも不可能じゃ無かった」
陽介もまた自分が犯してしまったミスを悔いていた。
鳴上悠とクー・フーリンの主従。
DIOに敗北こそしたものの、彼らは決して弱くはない。
むしろ全体を見ても上位に属するマスターとサーヴァントだった。
もしも最初の会合で肉の芽を解除できていたら、一緒に戦うとは限らなかったが可能性は大いにあった。
彼らが加わっていた場合こちらのサーヴァントは六人。
人数の有利を取れていたし彼らの実力、正確にはランサーの宝具、「刺し穿つ死棘の槍」ならばディケイドが如何なる速さと手数を持とうと、因果逆転の呪いを回避する幸運もなければ防御手段も持っていないライダーを討ち取る事が出来た。
あるいは最初からDIOの相手をセイバーに任せていた場合、アレックスの防御と再生能力ならばディケイドとランスロットのどちらが相手でも有利に戦闘を進めることが出来た。
またアサシンが打ち込んだ毒も余分な令呪を使えばすぐさま戦線に復帰することが可能で、セイバーとライダーがアレックスの護衛に必要がなくなったので相当戦いやすかったはずだ。
それを友の敵討ちという極めて個人的な勝手で台無しにしてしまった。
そのせいで衛宮とセイバーが死に、ライダーとアレックスも危険な状態に陥り、さらには名無とキャスターの死ぬ原因を作ってしまった。
-
「私なんか初めからずっと足手まといだったよ。そのせいで皆に迷惑かけて…。それに凛ちゃんが死んだ時だって、ほんとなら私が令呪を使って火野さんを呼び戻さなきゃけなかったのに気絶して…。
他のサーヴァントの知識だって、私がいなくても事前の情報や鳴上君の残したデータがあればDIOの時間停止だってわかったはずだし。むしろ私の知識が裏目に出てセイバーさんが死んじゃった…アレックスさんだって私のせいで…」
「違うっ!皆は悪くない、俺がうまくやれていれば―――」
「オーズ殿…」
そんなことは無いと、自分がうまくやれていれば皆が傷つかなかったのだと言いたかった映司の言葉をガウェインが遮った。
「主や仲間を大切に思う貴方の心は素晴らしくとても嬉しい。けれど同時に、ルルーシュ達もまた同じ気持ちなのをわかってください。皆オーズ殿を心配し、助けたいと願っています」
それに…っと少し間を置いてガウェインの心を告げる。
「誰もが責任を感じ、後悔し、傷を負った。それを一人で背負おうとしないでください。この傷は、この痛みは此処にいる皆が背負うものです」
「ガウェインさん…」
「そうだぜ火野さん。気にするなって言われても無理だろうけど、俺が背負わなきゃいけない事まで引き受けないでほしい。俺は、死んでいった仲間達の想いや意思を受け継いで戦うと決めたんだから…」
「陽介君…」
「困ったときは仲間を頼れ。苦しいときは肩を借りろ。それを俺に教えてくれたのはお前達だぞ。
あまり一人で気張るな。俺たちを頼れ。それがチームなのだろう?ライダー…」
「ルルーシュくん…」
「映司さん……」
こなたはそっと映司の右手を両の手のひらで包み込み額をつける。
「私には、こんな事しか出来ないけど…。映司さんを一人にしないって誓うよ。映司さんが傷ついたら何度だって、こうして手を握るから…」
「こなたちゃん…どうしてそこまで?」
「そんなの決まってるじゃん」
顔を上げ、強い意志を宿した瞳でまっすぐ映司を見つめ微笑む。
「私達はパートナーなんだから!お互い困ったら助け合わなくちゃ!」
その言葉に、映司は目を見開いた。
それは、出会って間もないころのこなたの言葉。
自分は一人で戦っているのでは無いことを教えてくれた大切な言葉。
自分は間違えていた。
支えられていたのは、自分だったのだ。
彼女の笑顔と前向きさに、自分の心は救われていたのだ。
「ありがとう。こなたちゃん……」
握り締められた手の暖かさに、心の中の澱みが払われていく気がした――――
幾分かすっきりとした顔に戻った映司に安心したのもつかの間、何があったのか改めて詳細を聞いたこなたと陽介は、自爆覚悟だった映司に怒りを露にし、絶対にしないことを半ば無理やり約束させた。
「まったくもう映司さんはっ!次そんなこと考えたら許さないからね!」
「ごめんってこなたちゃん。もう心配かけるようなことしないから」
ご機嫌取りに躍起になるライダーに苦笑しながら、陽介は他に有効策が無いかを考えた…が
「あーーだめだ!まともじゃない案なんてやっぱそう簡単に浮かばねえよ」
「正攻法では苦戦は必至。しかし小細工でどうこうなる相手じゃなし。やはり正面突破か…泉、お前も何か案はあるか?」
「無いこともないけど…」
「え、まじかよ泉!」
半ば期待していなかったところに帰ってきた返答に思わず身を乗り出す陽介。
対するこなたはどこか歯切れが悪い。
「案っていうか思いつきみたいな物なんだけどね。ある意味お約束っていうか…」
「それは何なのです泉殿?」
「えっと、アニメとかだったら合体攻撃とか新しい力に目覚めるなぁって思っただけで、具体的なことは何も思いついてないんだよ」
あはは…っと明後日の方をむいて笑うこなた。
「ま、確かに俺のペルソナとルルーシュのコードキャスト、それに火野さんのコンボを全部ガウェインさんの攻撃に上乗せできればちょっとは勝ち目見えてくるかもな」
「お前はともかく俺のコードキャストでは出力不足だがな。最低でもお前のペルソナレベルの能力がなければ大した足しにはならん」
どの道現状では出来ることは少ない。
「そんじゃ、ぎりぎりまで出来ることをしますかね。おれちょっと横になって休んでくるから何かあったら起こしてくれ」
「あ、うん。オヤスミ陽介くん」
そういって居間から出る陽介をきっかけに会議はお開きとなった。
-
ベルベットルーム
眼を開けると視界いっぱいに広がる青い世界
どこからか聞こえる音楽
豪華なリムジンの車内
美人なお姉さん
妖怪じじい
再び訪れたベルベットルームで目的の人物に声をかける。
「ども!イゴールさんにマーガレットさん、さっきぶりっす!」
「これはこれは、ようこそ我がベルベットルームへ。お待ちしておりましたぞ花村陽介殿」
相変わらず血走った眼をぎょろりと向け出迎えるイゴール。
マーガレットは考えの読めない笑みを浮かべたままこちらに会釈をした。
「実はお二人に相談があってきたんっすよ」
「ほう、なんでございましょう」
「ええ、ちょっと俺を鍛えてもらえません?」
ちょっと買い物行ってきてと同じくらいの軽さでとんでもない頼みごとをしてきた客人に、わずかに目を細めるマーガレット。
イゴールは興味深そうに先を促した。
「とんでもなくやばい相手と戦わなきゃいけないんっすけど、絶対に負けられないんですよ。けど今の俺だと力不足なんで、ちょっと鍛えに来ました」
あっけらかんと、しかし本気だとわかる口調と表情で告げる陽介。
「ふふふ、これは実におもしろい。私も様々な客人を見てまいりましたが、貴方のような客人は初めてでございます」
「はあ、どうも…。いや俺も悩んだんっすよ。此処は外と時間の影響を受けないって前に言ってたけどさすがにどうなのかなと。けど他に手はないし?泉の言葉を借りるなら修行パートのレベル上げしかないなって思って…」
「いえいえ少し驚いただけですとも。我々のような存在にそんな頼みごとをされたのは初めてでございますから。我々はお客人の旅の手助けをするもの、謹んでお受けいたしましょう」
そして、ゆっくりと停車するリムジン。イゴールはドアのほうへ手を向け降りるよう促す。
降りるとそこは木も建物も何も無い広場のような場所だった。
いつの間に降りたのか、マーガレットが立ち本を開いて佇んでいる。
見惚れる笑みを浮かべながら、とんでもないプレッシャーを感じ反射的に戦闘態勢をとった。
「これから貴方にはマーガレットと戦っていただきます。ここは精神と物質の狭間の世界。この場所ならばより効果的に戦いを経てあなた魂と精神は強靭に鍛えられるでしょう。
生と死の狭間にて、人の魂は輝きを増し奇跡を起こされます。
ただしご注意ください。マーガレットはとてつもなく強い。油断されると……塵に消えますぞ」
洒落にならない事をあっさりと話し、今度はこちらの顔が引きつる。
「改めましてご挨拶をさせてもらうわ。私の名はマーガレット。“力を司る者”として、敬意をもってお相手するわ」
挨拶と同時に途方も無い魔力が渦巻き、吹き荒れマーガレットの体を宙に浮かす。右手にはペルソナ全書を、周囲にはカードが浮かび上がりこちらを楽しげに見据える。
-
「おいおいなんだよこれ…。この威圧感、アシュナードやDIOなんかとは比べ物にならないぞ…!」
「お止めになられますか?」
「まさか!強くならなきゃいけねえんだ、絶対に皆で帰るために!」
アレックスを召喚し封印の剣を持たせ、自身は干将・莫邪を手に持ち身構える。
「準備は万全かしら?さあ、始めましょう―――私を失望させないでちょうだい!」
カードが射出され迫り来る。アレックスを前に出しその全てを封印の剣で弾き飛ばす
「自称特別捜査隊参謀、花村陽介!いくぜぇ―――!」
自らを鼓舞すると共にアレックスが飛び出す。一気にマーガレットに近づくと封印の剣を振り下ろすが、ヒラリとかわされカウンターを叩き込まれる。
直撃する直前に体を硬化させガードし、腕を異形に変化させなぎ払う―――――
「ジークフリード」
瞬間、赤い皮膚の剣士のペルソナがその大剣で異形の爪を防ぎ弾き返す。返す刀で剣を振るうが、封印の剣を盾代わりにし凌ぐ。
「ジークフリード―――ラグナロク」
炎熱系単体最強の魔法がアレックスを包み込み、熱気が陽介の体をチリチリと炙る。
しかし次の瞬間異形の爪が再び襲い掛かり、ジークフリードの体を引き裂いた。
すぐさま後退するジークフリードに追撃をかけるアレックス。
「ジークフリード―――プロミネンス」
次の瞬間、先ほどの炎とは比べ物にならない威力と範囲の魔法があたり一面を焼き払う。
陽介は巻き込まれていないものの、ペルソナであるアレックスに回避も防御も出来ないタイミングでの攻撃。
しかし――――
「撃ち抜け!ブリューナグの槍!」
爆炎の中から現れたアレックスは大した傷を負わず反撃に出た。
このアレックス、サーヴァントとしての能力を一部とはいえ受け継いでいる。
タマモとの戦いで得た呪術に対する耐性の一部も当然引き継がれている。
また元と成ったペルソナの片方はスサノオ。荒れ狂う嵐の神の一面をもつこのペルソナは、炎と風に対する強い耐性を持っている。
結果、いかに最強クラスの攻撃であろうとアレックス相手に炎は有効とは決していえない。
しかし―――
「ふふふ、やるわね…じゃあこれはどうかしら?」
次に現れたのは国造りの神、オオクニヌシ。
相棒が一時期使っていたペルソナをみて陽介は思わず顔を引きつらせる。
「真理の雷!」
極大の雷にすぐさま防御体勢をとるアレックスと陽介。
次の瞬間、脳天を突き抜けるようなダメージが襲った。
そう、耐性を引き継ぐことは、弱点を引き継いでしまうことも意味する。
アレックスの宝具『帽子屋』、というよりもARMS全般にいえる弱点―――
ナノマシンという細胞レベルの機械であるそれは、電気に弱いという弱点がある。
英霊はそういった逸話による弱点を突かれればひどく脆い。またスサノオも同じく電撃に弱いという弱点があった。
イザナギには逆に電撃に対する弱点は持たなかったが、単純にペルソナとしての格の問題と二重の弱点により電撃を克服出来なかった。
「ぐうぅうっ!!」
「休んでる暇なんかないわよ。エル・ジハード!」
先ほどと同じく広範囲、最高威力の魔法がアレックスと陽介二人にめがけて襲い掛かる。
「なめんな、アレックス!」
が、弱点が分かっていて陽介も何も対策を考えないわけがない。
実際の封印の剣の持ち主、ゼフィール。
この剣を使いガウェインを追い詰めたランスロット。
ふたりの歴戦の戦士の戦いからこの剣の使い方を知った陽介は、それを使えるよう訓練を忘れなかった。
封印の剣を掲げ、避雷針代わりに雷を剣に巻きつかせ、そのままマーガレット向けて跳ね返す。
陽介は持ち前のスピードと反射神経を活かし、アレックスが作った僅かな穴に飛び込み回避する。
「ふう、この高揚感…いつ以来かしら。
悪く思わないで、ますますあなたを倒したくなってきたわ!」
「俺だって同じっすよ。あなたを倒して、俺は先にいく!」
オベロンへとペルソナを変えたマーガレットは、魔力を練り上げ、肥大化させていく。
回避は不可能と判断した陽介はアレックスの両手に魔力を集め、荷電粒子の槍を作り上げる。
「これが、俺に出来る最強の攻撃…風と雷の合わせ技!」
泉の言う合体攻撃を自分なりにイメージした、一人合体魔法
暴風を纏ったブリューナグの槍は、マーガレット目掛けて放たれた。
「いっけええええ!」
「――――メギドラオンでございます」
-
柳洞寺の一室
「話とはなんだ泉?」
「ごめんすっかり忘れてたんだけど、これ何かに役に立てないかな?」
部屋の一室で何か書き物をしていたルルーシュの元にこなたとライダーが尋ねてきた。
こなたの手には壊れた拳銃が乗っている。
「これは…」
「切嗣さんが持っていたやつをカンドロイドで回収してたんだ。持ってこれたのはこれだけで残りは大空洞の崩落に巻き込まれたんだ」
渡された拳銃の中に入っていた弾丸を見分し、なぜこれを持ってきたのか納得する。
「衛宮切嗣の起源弾か…ガウィン、これは使えるか?」
「申し訳ありませんルルーシュ、普通の礼装ならば問題無いでしょうがその魔術師専用に作られたならば私には判りかねます…」
あくまで騎士であるガウェインには専門の知識は無い。
魔術師である衛宮かリインフォースがいればまた話が違っていたが、今いるメンバーでは死んだマスターの礼装が使えるかどうかなど分かりようが無い。
「ふむ、しかし消去されていないところを見ると何かに使えるかもしれんな。弾は…2発だけか。泉、これはお前が持っていろ」
そう言って壊れた拳銃から弾丸を取り出し手渡す。
そして懐から念のため取りに戻ったニューナンブを予備の弾薬と共に渡した。
「使い方は分かるな?カンドロイドだけでは対処できないことがあるかもしれない。念のため持っておけ」
「…わかったよ。私が預かっとくね」
サバゲーの知識やシューティングゲームで鍛えたとはいえ実物の銃には僅かに恐怖感が宿る。
しかしもう守られるだけで甘えたくないと決意し、せめて自分の身だけでも自力で守れるようにと覚悟を決めた。
「ところでルルーシュ君は何をしてるんだい?」
「時間稼ぎと宣戦布告といったところか…。ライダー、カンドロイドを貸してくれ。タカのやつだ」
手渡されたタカカンドロイドに手紙を括り付け飛ばるルルーシュ。タカは教会の方角に飛んでいった。
「今日の12時にそちらに出向くといった内容が書かれていてな。あのプライドの高いギルガメッシュだ、こんな挑発をされたら向こうから出向くことはしまい」
その間の時間を作戦と休息に使い、僅かでも勝率を上げるべく行動する。
向こうから奇襲をされればこちらはそれだけで詰む。
「少し休む。ガウェイン、1時間経ったら起こせ。泉も今のうちに休むなりしておけ」
「うん、じゃあ私もそれくらいに起こしてもらえる映司さん」
そしてマスターたちは部屋から出て行きサーヴァントだけが残された。
「なにか言いたい事があるのですかオーズ殿?」
「…ガウェインさん。さっきこなたちゃんたちにはああいいましたけど、もしも他に手段が無くなったときは俺、やります」
それは先ほど言ってた自爆行為、ブロークンサーヴァントの事だとわかった。
無論追い詰められたゆえの行動では無い。しかしこのままでは全滅が確定している現状に変わりは無い。
先ほど伸ばされた腕は、とても嬉しかった。
だからこそ、彼らを死なせるわけにはいかない。
「安心してください。死ぬつもりはありません。俺の持ってる宝具のすべてに『壊れた幻想』をすれば、ガウェインさんをギルガメッシュさんとところまで道を切り開いてみせます」
「それは犠牲の心ですかオーズ殿」
「いいえ、覚悟です。捨てる覚悟じゃない、皆を守るために俺に出来ることをやる覚悟。
もう迷いません。あのときアンクがしたのと同じようにきっとそれは、必要なことだと思うから」
文字通りオーズの持つ全てを捨てギルガメッシュに挑む決意。
そんなことをすればただの一般人程度の強さに成り下がり、残る敵戦力はすべてガウェインが引き受けることになる。
「…わかりました。必ず私の剣を英雄王に届かせてみせましょう。
ただしオーズ殿、それは本当に最後の手段です」
「ええ、わかってます。だからもしもその時がきたら、後のことはお願いします」
そういってこなたの元へ向かい部屋を出た映司。残されたガウェインはルルーシュに話すべきか迷い、部屋を出た。
-
再びのベルベットルーム
「お目覚めになりましたかな?」
だんだん見慣れてきた青い天井。
何処かへと向かっているらしいリムジンの中で陽介は目を覚ました。
「……あーそっか…負けたんすね俺…」
「いえいえ、なかなか見応えのある戦いでございました」
「なかなか楽しめたわ。もう少し強くなってまた出直しなさい」
結局のところ一撃しか入れることの出来なかった相手の言葉に頬を引きつらせる。
「さて花村様。鍛えてもらいたいと言うあなた様の要望、それをお手伝いする次の場所に向かっております。
しかしどうやら、他にもお客様がお乗りになられる様だ。その方たちと協力して頑張っていただきたい」
次の瞬間、突如車内に現れたルルーシュと泉。
急に現れた二人にに驚いたが、二人はそれ以上に驚いていた。
眠りについたと思ったら見知らぬ場所にいれば誰だってそうなるだろう。
混乱する二人に陽介が説明し、もとより一度この場所について話をしていたのもあって早い段階で落ち着きを取り戻した。
「で、なぜ俺と泉もここにいるんだ?それ以前に俺たちはここにはこれないんじゃなかったのか?」
「はい、本来ここは契約者以外は来ることは出来ません。しかしあなた方全員は契約をすでに交わしていらっしゃる。故に、ここへお招きすることが出来ました」
「契約だと?サーヴァントの契約の事か?」
「いいえ、契約といえばわかり難いかもしれませんが、約束と考えてもらっても結構です。覚えがありませんか?」
「……あ、もしかしてお母さん?あのとき生きて絶対に帰るって―――」
ポツリと呟いたこなたの言葉にルルーシュの脳裏に親友の顔が浮かぶ。
あの時スザクは最後の令呪を託し、生きてくれと願い消えていった。
もしあれが契約というならば確かに自分にも覚えがある。
同様に花村もまたアレックスに生きて帰るという約束―――契約を正式に交わしたといえる。
「納得されましたかな?これから皆様にはある場所に行ってもらいます。
此度の聖杯戦争のマスターたちの抑圧された願望が形となったシャドウの巣窟。
あなた方風にいうならばダンジョンといった所でしょうか」
「どういうことだ。まさかここはムーンセルの中とでもいうつもりか」
「いいえ、ここはあくまでも心の世界とでも表現する場所。いってみればどこにでもある場所でございます。よってムーンセルによる関与は一切行われておりませんが…
ムーンセルというひとつの大きな器に集められた魂は、そのままこの場所に大きな抑圧された願望を投影しました」
叶えたい願いという名の欲望。其れの裏側にある願望。
例えば、間桐の家に引き取られた桜を救いたいと願い、その心の奥底で葵を手に入れたいと願っていた間桐雁夜
例えば、世界平和を願い、自身の犯した罪を清算したいと願った枢木スザク
その他大勢のマスターたちの抑圧された心が混ざり合い、肥大化した迷宮を作り出した。
「もっとも、大多数のマスターが脱落され、主のいなくなった迷宮はただのシャドウの巣窟へとなっただけですが…危険な事には変わりありません。
それでもお行きになりますかな?」
「俺は行くけど…ルルーシュと泉は止めといたほうがよくないか?」
「私もいくよ陽介君。もう守られるばかりはいやだ。強くなって、私も皆のこと助けたいよ」
「このまま戻っても何も変わらんだろう。それに実践でイルバーンの慣熟に努めればより効果がある。それにマスターの力量が底上げされればサーヴァントの強化に繋がるはずだ」
「結構。おお、ちょうど着いたようだ。ではどうぞお降りください」
リムジンからでるとそこには、天高く聳え立つ建造物があった。
家や公園や学校や城などゴチャゴチャと詰め合わせたような、まるで塔のような歪なオブジェの構造をしている。
車から降りたマーガレットは臆することなく入り口まで歩いていき「最上階で待ってるわ」と言葉を残し先に進んでいった。
続いて向かおうとすると―――
「お待ちなさい泉様。あなた様の勇気と覚悟には敬服いたしますが今のままではお辛いでしょう。
どうぞこれを持っておいきなさい」
「なにこれモノクルに水晶玉に、マフラー?」
「下級の礼装でございます。どうかお役立てください」
一礼し、車内に戻ったイゴールに感謝しながらこなたは礼装を身に着ける。
そして三人は、高く聳え立つ塔を仰ぎ見て、最上階を目指して進んでいった。
青よりも青いベルベットルーム。
一人イゴールは、三人の旅路の果ての結末を黙したまま待ち続ける。
-
「痛みを共有し、絆を手に入れる事で人はそれを強さに変える。
正と死の狭間にて、人はその魂の輝きを増す。
彼らの道のりは苦難を歩むでしょう。しかし…」
手には三枚タロットカード。眠っていた花村陽介が持っていたものでそれぞれ愚者、審判、世界のカードが描かれている。
「すでに鍵は持っておられます。あとは何か切欠があれば―――」
「空気をーー読まずにー失礼いたします」
突然車の窓を突き破って乗り込んできた見覚えのあるエレベーターガールを、動揺を抑えイゴールは出迎える。
イゴール自身にさえ制御の聞かないこの従者に知られては碌なことにはならないと知っているからだ。
「お久しぶりでございます主。不肖エリザベス、ホセ参じた次第でございます」
「およそ2年ぶりですかな。お前がここを離れ、彼を救いに出る旅路に出たのは」
「ええ、なかなかうまくいかない所に懐かしい気配がしたものですから。こんな所で何をなさっているのですか?」
「いやいや大した事では―――」
「メギドラオンでございます」
そして(力ずくで)主から情報を聞いたエリザベスは、露骨に眉を潜める。
「お月さまで戦争でございますか。異なる世界とはいえ少々不快でございます。どうしてくれましょうか…」
「手出しはなりませんぞエリザベスよ」
「勿論でございます主。しかし興味もわいてきました。英霊に願望機に魔王!私胸の高まりが抑え切れません。エキストリームでございます」
「何をするつもりですかな?」
「何もなさいませんわ主。ではこれにて、ダイナミックに失礼します」
そして走る車のドアを空け飛び出したエリザベスに、深いため息を吐きながら見送った。
「あの子にも困ったものです。何も起こらねばよいのですが…」
それが不可能なこともまた、イゴールにはわかっていた。
聖杯戦争の最終局面。
ここに、誰もが予想できない完全なるイレギュラーが訪れようとしていた―――
-
【精神世界/???】
【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(小)、精神力消費(中)、強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
[道具]:契約者の鍵@ペルソナ4
※スサノオとイザナギを合体させ、アレックスをペルソナとして召喚しました。
ペルソナのスキルとアレックスの能力を一部引き継いでいますが、会話はできません。
※愚者―遠坂邸同盟・審判―聖杯を砕くもの・世界―鳴上悠のコミュニティが解禁されましたが本人は気づいていません。
また他の人物(例ルルーシュ、こなた、アレックスなど)のコミュが解禁しているかは次の書き手にお任せします。
【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:魔力消費(小)、強い覚悟と決意
[装備]:鳳凰のマフラー @Fate/EXTRA、聖者のモノクル@Fate/EXTRA
[道具]携帯電話、ニューナンブ@現実 予備の弾薬@現実 起源弾×2@Fate/zero
遠見の水晶玉@Fate/EXTRA
※礼装を装備することで、コードキャストを発動できます。
また、僅かながら魔力の総量が上昇しました。
heal(16); 効果:HPを小回復
view_status() 効果: 敵対者の情報を表示
view_map() アリーナの階層データを全表示
※礼装が現実に持ち帰れるかは次の書き手にお任せします。
※起源弾が効果を発揮するかは不明です。
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]: 魔力消費(小)、強い覚悟と決意
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャストを発動できます。
hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。 効果:ダメージ+スタン。
絶対守護領域 決着術式“聖剣集う絢爛の城”をデチューンした術式。 効果:小ダメージを無効化。
※冬木教会に向けて果たし状を送りました。ただし実際にギルガメッシュたちがどう動くかは不明です。
【深山町・柳洞寺/日中】
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(中)
※『聖者の数字』発動不可
※ライダーの行動をルルーシュに報告するかは次の書き手にお任せします。
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:魔力消費(小)、強い決意
※スーパータトバメダルは消滅しました。
※ギルガメッシュに対してスキル心眼・真は発動しません。
※無謀な行動は起こしませんが、他に手段が無いと判断した場合「壊れた幻想」を使うことも視野に入れています。
※心の世界にサーヴァントが行けるかは不明です。ただし行くとしても眠るなどの行動が必要です。
※エリザベスが聖杯戦争に興味を持ちました。ただし実際に行けるか、行けるとしても行くかどうかは不明です。
-
投下終了です。
正直エレガは完全なる悪乗りみたいなものなので悪かったと思ってます。
怒られれば消します。
こなたと陽介の強化につきましては現状ギルガメシュとの戦力差が開いておりますので、なるべく矛盾が出ないように
強化したのですが、これもご都合主義といわれれば修正したいと思います。
その他意見、修正案、感想があればお願いします。
-
投下おつです
ラスボスと決戦前に修行パート、王道的展開ですね
CCCの無垢心理領域みたいなものならミラーワールドと違ってあってもおかしくないかな
ただ、エリザベスに関しては…
P3のキャラが一人も出ていない以上、把握の難を増やすことになるのではないかと思います
-
投下乙です。
王道ながら良いチームだなぁ…
個人的にはこなたがオーズの比奈ちゃんの役割を担ってくれたことが嬉しい
というかさりげなくどっちも名字が泉…w
映司も仲間のために生きてほしいな
指摘と言うと、やっぱりエリザベスかな
ペルソナ3そのものはあくまで未参戦だしなぁ…
-
乙ドスヱ
こなたが疑似的なナビ役か
-
投下乙です!
ベルベットルームの住人を介した修行パート…その発想はなかった!
それと件のエリザベスですが、一応自分はある程度彼女のキャラを把握はしています
しかし他の書き手さんが誰一人把握していないとかだったら削除された方が良いかもしれません
-
4にもエリザベス枠のキャラいたよね?
そっちに差し替えたら成り立たない話なのかな、これって
-
1話で修行回書き切れば行けると思う
-
投下乙です
戦力的には他の二人に劣るこなたが映司の支えになる。直接戦いはしなくてもこなたも着実に成長しているのがわかるな
エリザベスに関しては、私はP3はプレイしたことがありません
今からRPGを一作把握する…のは少し辛いです
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>>537
そのエリザベス枠が今回の話に出てたマーガレットだったはず
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乙でしたー!
逆に考えるんだ、ザベスさんが修行に置いてかれた鯖に何かプレゼントを上げに行ったとそう考えるんだ(適当)
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乙ザベス
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投下乙です
王道中の王道といえる展開にほっこりしました
エリザベスは私も把握してはいますけど最終的な判断は氏や他の書き手さんにお任せします
ただ採用することで把握難度が上がってしまうのは間違いないかと
それと議論スレで言われている龍騎への変身について皆様にお聞きしたいのですが、王の財宝から契約モンスター入りのデッキを取り出すというのは問題ないのでしょうか?
これまで自分の中で龍騎系列のデッキを出すならせめてブランク体を挟んでモンスターと契約という手順を踏まなければ駄目だろうという考えのようなものもありまして……
というのもそういう手間を省くとオーディンを出せてしまう上に、以前の話の流れ上ギルガメッシュがそれを使わない理由もないという事になってしまうという危惧があります
さすがにオーディンは不味いだろうと考えた結果、つまりオーディンを出さないためのドラグレッダーの採用だった、ということです
ドラグブラッカー(本編で呼称されてたアレはランスロットが支配していた龍騎なので除外します)はじめその他の契約モンスターをいきなり出すよりはまだしも理由付けが可能ではないか、と考えた次第です
本来最初に説明しなければならなかったことを自分の中で自己完結していたばかりに説明を怠ってしまい誠に申し訳ありませんでした
あと提案にありましたオーズドライバーは欲が強すぎるギルガメッシュに扱えるとは思えないので除外させていただきたいと思います
アンリマユの泥すら飲み込むような我の強さのギルガメッシュなら一周回って使える可能性もあるかもしれませんが、それだと既に持っていることが確定しているスーパータトバになれてしまうのでやはり除外したいと思います
◆wYNGIse9i6氏
何度も提案、ご指摘いただきありがとうございます
結果として採用できていませんが、ご意見は参考にさせていただいています
ミラーワールドの件につきましては、現在修正中ですので◆cp3jCCSc7M氏が提案されたように修正作を以ってもう一度私にチャンスをいただけないでしょうか?
自分自身考えた上で書いたものということもありますし、何卒お願いします
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王の財宝に入ってるのは、神崎の作ったデッキとカードだけなんじゃないかな。
但し、コントラクトは未契約。サバイブやフリーズベント、ナスティベントとかの、特定のミラーモンスターと契約する事で出来るカードは入ってない。
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正直そこまでして仮面ライダーに変身する必要性は全く感じられませんが…
ゼロに頼んでドラグレッダーをその場で復活させてもらえばいいだけじゃないでしょうか。わざわざミラーワールドなんかに送り込まないで
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ご指摘ありがとうございます
反対意見が多いようなのでエリザベスのシーンはカットして加筆修正したいと思います
エリザベス出したのはペルソナ3にとって月は重要なキーワードだったのと、単純にゼロやギルと戦う所を見てみたかったというだけなので出なくとも問題ありません。
それと投下した後で気づいたんですけどルルーシュとこなたってこのままだとシャドウ出るんですかね?
シャドウがペルソナになった場合ワイルドが陽介含めて3人になるのですが…
Wikiにのせる前にどこかで一旦投下した方がいいですか?
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なんでシャドウがペルソナになる=ワイルドなのか…書いてる本人がペルソナの
設定自体を理解してないじゃないか。
ワイルドは個人の才能みたいなものに近いから、仮に二人がペルソナを手に入れた
としても、それは単純に3・4の仲間キャラ達と同じ1体のみのペルソナ使いになるだけ。
2の罪罰で一般人が入ったり、3Fesで仲間達が入ったりしてるから、ワイルドじゃなくても
ベルベットルームに入ることは可能。
それと、ここまで来てオリジナルペルソナとか危ない橋なのは書き手じゃなくてもわかる。
よほど旨く料理しないと、前に没になったランダマイザヨシツネ装備番長みたいに、
陳腐なものになるんじゃないの?
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ルルはイルバーン&ハドロン持ちで鍛えればペルソナ無しでもタルタル攻略の十分な戦力に成り得るし
こなたは現在所持してる礼装でナビ役が可能。 現状、ここに来てペルソナ関連で新たな議論の火種を増やす必要は見当たらないな
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ご指摘ありがとうございます
ちょっと最近知った設定見て疑問に思った事なんでそんなに真剣にならなくて大丈夫ですよ。
また後から議論にしたく無かったので先に聞いておこうと思いまして…
火種撒く気なんてサラサラありませんし
一応弁明させてもらうならワイルドの設定って特別な才能とかじゃなくて契約をしたか否からしいですよ
3ではファルロスと、4ではクマと契約したから使えるようになったとからしいです。
まあ蛇足ですけどね。どっち道使わない設定でしょう。
それと修正は直接wikiに載せて大丈夫ですか?
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あの、本当にP4把握されてますか?
P4の主人公に力を与えたのはラスボスのイザナミで、クマじゃありませんよ
ワイルドもこれという明確な条件があるわけではありませんが、少なくともシャドウを受け入れた時になるものではありません
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んー色々言いたい事もありますけど長くなりそうですし、本編?とは関係ないので流しますね。
どっち道ロワには関係事ですし…
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確か
・ベルベットルームに入る資格:契約とペルソナの才能
・ワイルドの力:生まれつき又はニュクス(デス)の力によるもの
・ペルソナの才能:シャドウを打ち負かすこと、但しシャドウが出来得ない性格の者が何らかのきっかけを経た場合自力で発現
・イザナミの与えた力:テレビの中に入る力のみ
だったかと
まあ使われることもないし意味無いね!
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>>550
はいはい分かった分かった
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なんで議論スレでやらないのさ
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面倒くさいからじゃね?
どっちが勝っても変な空気になる
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多数のシャドウの倒す修行パートと思えばいいんだよね
ここにきて更に覚醒(ペルソナ発現)とか言われてもお腹いっぱいだし
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>>覚醒とか言われてもお腹いっぱい
一々触れなくていいから(良心)
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読み手の戯言かもしれないけど、自分で持ってきたネタの答え合わせを
他人にさせるとか普通にいかんでしょ。
変な空気になったりするくらいなら、最初からあとがきで余計なこと言わなきゃいいのに。
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Wikiに修正したの乗せました
慣れてないけど多分あってると思います
それと変な空気にしてどうもスミマセン
これで流してもらえません?
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>>558
しつこいな
お前も余計な事言ってんじゃねーよ
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まぁこれ以上は混乱や荒れの素になりかねないし、流しで大丈夫だと思います
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主催組の修正版はまだですかね
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まだかかるかもね
約一名ものすごい圧力をかけてる人がいるし
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因果応報ってやつ
何にしても何日もたってるのに議論スレに返答もしないのは呆れたもんだ
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そりゃあ賛成がいるので反対意見にはお答えしませんよなんて言われたら文句も言いたくなるだろうて
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※ただし怒ってる当の本人は過去に同じ事をしたのを隠している
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それ本当ですか?
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言うと長くなるからとりあえず議論スレの316あたり参照
読み手が言ってるってのが確かにアレだが明らか的外れだろこれってことは書いてないと思う
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まあ読み手が言うことではないことは確かだな
読み手様と言われても文句言えないレベル
書き手同士の議論は書き手に任せるべき
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まあ当の書き手が隠し事して議論を有利に進めてたら何か言いたくなるのはわからんでもない
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言う必要はないけどな
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このまま没SSになってしまうのだろうか
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多分いま修正作業中、気長に待とう
このままだと終わりは6月位?
次回はあるのかね
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次回やるとしても改善点は多いから見切り発車だけはしないでほしいかな
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アニロワに対するアニロワEXみたいな
コンセプトだけ流用した企画が建ちそう
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無理して次回やらなくてもええんやで
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wikiに修正作を投下しました
これで問題ないでしょうか?
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投下乙です
自分は問題無いと思いますが、状態表の一部が途切れていたのと、ゼロの状態表が無かったのでそれだけ修正すればいいんじゃないかなと思います。
お忙しい中ありがとうございました。
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投下、及び修正乙です
◆2shK8TpqBI氏が言う通り、軽く状態表を修正しておけばこれで大丈夫だと思います
ミラーワールドに関しては個人的には勿体ない気がしなくもないですが、氏の判断を尊重します
お忙しいところありがとうございました
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修正お疲れ様です
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◆XL.nOGsA4g氏、修正案に応じて下さり感謝します
こちらの要望を聞き入れてくださったので>>497の提案は取り下げます。お忙しい中ありがとうございました
それでは改めて、全キャラを予約します
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色々あったけど、最悪の展開にならなくて良かった
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延長します
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帰宅が遅れたため、20分から30分
投下が遅れます。
申し訳ありません
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投下します
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更なる強さを得るべく塔に侵入したルルーシュ・陽介・こなたの一行を出迎えたのは、一人の男だった。
最上階で待っていると言ったマーガレットではない。白衣に眼鏡、まるで医者か科学者かといった風貌の男だ。
当然、陽介たちに面識はない。
「誰だ?」
「ようこそ…強き魂を持つ者たち。待っていたよ」
干将莫邪を構えた陽介が前に立ち、誰何する。
サーヴァントであるガウェイン、火野映司はこの場にはいない。
ルルーシュとこなたが呼びかけてみたが、どうにもこの空間は隔絶されているらしく念話も届かなかった。
だからこの場で最も力があるのは陽介ということになる。
「私の名はトワイス・H・ピースマン。ピースマンで構わないよ」
「ピースマン…ルルーシュ、知ってるか?」
「いや、初めて聞く名だ。だがこの場にいるということは…おそらく俺たちと同じマスターということではあるまい。
ここが本当に心の世界だというのならばな」
「その通りだ。私は今回、君たちと争う立場にはない。私はただの道案内だ」
敵意はないとピースマンは両手を上げる。
彼はサーヴァントを従えておらず、陽介がやろうと思えば一瞬で首を落とせるだろう。
「この塔…まあ迷うほどの広さではないが、それでもナビゲーションが必要だと思ってね。
ダンジョンとはそういうものだ。君ならわかるだろう? 花村陽介」
「ナビ…クマやりせちーのあれか」
思い当たることのあった陽介は、とりあえず武器を収める。
「先程も言ったが、私は今回君たちの戦いには介入しない。
君たちがここでの探索を円滑に行えるよう、手助けするだけだ」
「信じられんな。そもそもお前は何者だ? 今までどこにいて、どうやってここに現れた?」
「私の知っていることなら可能な限り教えよう…まず、私は何者か、だったな。私はNPCだ。
ただし普通のNPCではなく、既に死んだピースマンという人物の記憶を保有している」
「記憶のあるNPC?」
「そうだ。まれにそういうこともあるらしい」
「では、貴様はマスターではないのか?」
「そうでもあり、そうでもない。少なくとも今この場では、私に従うサーヴァントはいない。ここは私の戦場ではないからな。
私はあくまで君たちの補助をするためにここにいる。
ここに来れたのは…私がそういう力を持っているから、で納得して欲しい。説明すると長くなるからな」
「では、俺たちを助ける理由は?」
「この戦いの結末には私も興味がある。だから、こんなところで足踏みをしてほしくない。
早いところこの塔を攻略して、戦いの続きを見せてほしい…といったところだ」
陽介はルルーシュ、こなたを振り返った。
口に出さなくても何を考えているのかわかる。こいつは胡散臭いやつだがどうする、と。
「もちろん、私の助力が不要だというなら立ち去るが。
助力といったところでせいぜいナビゲーションと解説くらいしかしないがね」
「…待て、まだ聞きたいことがある。
NPCであるというなら、お前はこの聖杯戦争を仕組んだ者…俺たちを招いた者を知っているか?」
ピースマンが本当にNPCであるならば、当然ムーンセル側の駒であることになる。
そのムーンセルを恣意的に歪めた黒幕、とでもいうべき存在の手がかりに違いない。
他のNPCであるならばに聞いたところで答えるはずはないが、この怪しげなNPCならばどうか。
-
「ああ、知っている。少し、話もした」
「誰だ、そいつは?」
「すまないが、それは答えられない」
ギアスの使用も念頭に入れて、ルルーシュが問いかける。
ピースマンは感情を見せない瞳でルルーシュと真っ向から視線を合わせた。
「何故だ? お前がNPCだからか」
「そうではない。その存在の情報は…私から語るべきことではないからだ。君たちが自らの力で辿り着かねばならない」
「そんな悠長なこと言ってる場合かよ!」
「君たちが今考えるべきはこの塔を攻略し、古の英雄王を打倒することだろう。
それ以外に心を割いていては、とてもあの最強のサーヴァントを打倒することはできまい」
む、とルルーシュが口ごもる。
確かにギルガメッシュとの戦いにおいて余裕はなく、今は少しでも不安要素は排除しておきたい。
「心配せずともギルガメッシュを打倒すれば自ずと道は開ける。
ムーンセル中枢へと続く熾天の門で、君たちは真実と出会うことになる」
「やつらを倒せば黒幕が俺たちを招くということか?」
「その認識で問題ない。…ではそろそろ出発していいだろうか?」
返事も待たずピースマンは歩いていき、【塔】の最初の階層、大きな扉の前でこちらを振り返る。
「ええっと、ピースマンさん? ナビって言ってたけど、具体的に私たちは何をすればいいの?」
「この【塔】はシャドウの巣窟だ。そのシャドウを排除し、最上階まで到達することが目的になる」
「シャドウってなに?」
こなたの疑問には陽介が答えた。
といっても、陽介も完全にシャドウを理解しているわけではないため、かなりアバウトな説明になった。
「人間の抑圧された願望が形になったもの…か。しかしガウェインも火野もいない現状、俺たちだけで対処できるものなのか」
「問題はない。シャドウと言っても、この戦いに招かれた者の影だ。サーヴァントほどの力はないよ」
ピースマンが扉を開ける。
その部屋の中は建物の内部ということを忘れさせるほどに広い。
奥の方には教会らしき建物が見える。その前には、全身を黒く染めた人影…まさに影だった。それが二つ。
「あれは…!」
「天野雪輝、そして我妻由乃。この戦いで最初に脱落したマスターたちだ。
花村陽介、君は覚えがあるんじゃないか?」
「ああ、名前までは知らなかったけど、俺とアレックスが最初に戦ったやつらだ。
確か男は女にユッキーって呼ばれてた。雪輝だからユッキー、か…」
それは陽介がアレックスとともに臨んだ最初の戦い。
由乃というらしい女が一方的に陽介を敵視し、襲ってきたことを思い出す。
「彼らは共に自らの願いを叶えるために未来日記と呼ばれる道具を使って戦っていた。
原理的には聖杯戦争と似たようなものだ。だからこそ、特に躊躇いもなくこの戦いに参加したのだろう。
」
「花村、彼らはお前が…?」
「いや違う。俺も応戦はしたけど、いきなり別のところから剣と炎の波が押し寄せてきてあいつらを飲み込んだんだ」
-
――由乃…日記…父さん…母さん…キャスター…
――ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー
「喋った! ねえ、あの人たちまだ生きてるんじゃ…」
「泉こなた、それは違う。彼らは既に死亡し、ムーンセルによって解体されている。
あれは生前の彼らが抱いていた願望…未練が形を得ただけのものだ。君たちはあれを破壊し、魂の残滓を回収すればいい」
「破壊って、またあいつらを殺せってことかよ!」
「殺すという表現は正しくない。花村陽介、シャドウと戦ってきた君ならわかるだろう。
あれは影だ。姿形は同じでも、決して本人ではない。そしてそのオリジナルである人物が死亡している以上、対話など不可能だ。
君がペルソナを発現した時のように、戦って打ち倒し、力を吸収する以外にない」
陽介がペルソナに目覚めたのは、テレビの中で己の影と対峙し受け入れた時だ。
しかしここには、あのシャドウを受け入れる器となる人間はいない。
「…やつらは強いのか?」
イルバーンを構えたルルーシュがピースマンに訊く。陽介が手を下せないのなら代わりにルルーシュがやるつもりだった。
「本体が死亡している今、あれに戦闘力など皆無だ。泉こなた、君のその銃でも容易に破壊できるだろう
「なんだよそれ…俺たちは強くなるためにここに来たんだぞ!
なのに戦いもせず、ただ一度死んだ奴らをもう一度殺せって、それで強くなれんのかよ!」
「ウィザード――霊子ハッカーの能力とは肉体的な強さを指すものではない。
意志の強さ、霊子…魔力を制御する能力、魂の純度。そんなものだ。
あれを破壊するということは、元々彼らが保有していた霊子を取得するということに等しい」
「その霊子を得れば、俺たちは強くなる……と?」
「そうだ。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、泉こなた。
君たちは花村陽介のようにペルソナを覚醒させることはできないが、保有する魔力の底上げをするには十分だろう」
ウィザードとして上達するということは、サーヴァントに供給する魔力もまた増幅されるということだ。
つまり直接的に戦力の強化に繋がる。
「確認するが、あいつらを倒したとして、その力を吸収できるのは倒したやつだけか?」
「いや。影を破壊すれば貯蔵されていた霊子が弾けて拡散する。
この場にいる君たち三人、均等に受容できるだろう」
「…花村、泉。聞いての通りだ。俺たちに手段を選んでいる余裕はない。
が、無理強いすることでもない。ここは俺がやろう」
ルルーシュがイルバーンを構えて、影の雪輝と影の由乃の前に進んでいく。
近づいても攻撃される気配は無い。これなら確かにサーヴァントは必要ないが、やることは虐殺に近い。
「…済まんな」
逡巡をぐっと飲み込んで、ルルーシュは槍を突いた。
諸共に貫かれた男女の影が、淡い光の粒子となって放散していく。
――由乃
――ユッキー
最後にお互いの名を呟き、影は消えた。
ルルーシュたちの体に光が吸い込まれる。
-
「…なるほど、確かに力を感じる。これがウィザードが力を得るということか」
ルルーシュと同じく陽介とこなたも光を吸収し、僅かながら力を増した。
しかし、二人の顔は晴れない。
「可哀想だね…死んだ後でもこんな目に合うなんて」
「いくらシャドウだからって、これはないだろ」
二人にルルーシュを責める気はないが、納得しきれていないのも事実だ。
ルルーシュは、ピースマンを見る。
「…そうか。ピースマン、お前が出てきたのは、この痛みを俺たちに感じさせるためか」
「どういうこと?」
「花村、泉。もしピースマンがあの二人の名前を言わなければ、俺たちは躊躇いなくあいつらを倒していた。違うか?」
「そりゃあ…そうだな。シャドウは基本的に俺らの敵だったし」
そして、彼らの正体を知らないまま、手に入れた力にただ喜んでいただろう。
この程度のシャドウでこんなに経験値を貰えるのか、と。
「戦う必要はない。しかし、自分が何を、誰を蹴落としたのか知れ…
何を踏み台にして先に進むのかを認識しろ、そういうことだろう。違うか? ピースマン」
「概ねその通りだ。これはある錬金術士の言葉だが…
『痛みを伴わない教訓には意味がない。人は何かの犠牲なしに何も得る事などできないのだから』。
私はこれを、この世の真理の一つだと思っている」
痛みと引き換えに、新たな力を得る。体は無事でも、心を傷つける戦い。
「…まさかこの先も、あいつらのような既に死んだ者の影が待っているのか?」
「そうだ。といっても、特に強い未練を残した者たちだ。
鳴上悠、天海陸など死後に君たちと和解した人物はここにはいないし、自身の結末に納得して穏やかに逝った者も同様だ。
中には君たちとは面識のない者もいるだろう」
ピースマンはさっさと次の階へ向かう階段に向かっていく。
取り残されたルルーシュたちは、誰ともなく顔を見合わせた。
「面識がない…か。私たちとは会わなかったか、会ってても名前を知らない人たちってことなのかな」
「名も無き脱落者ではなく、一人の人間として、ここにいた証を覚えておく。俺たちにできることはそれだけなんだろう」
「天野雪輝…それと我妻由乃、か。忘れられねえな…」
静まり返った空気の中、三人はピースマンに続いて階段を上がる。
次に出たのは近代的なショッピングモールらしき空間だった。
――狼…戦い…得物…弁当…
――エルム…人造人間…
――咲良…衛…ファフナー…島に帰りたい…
「今度は三人!」
「金城優。半額弁当を得るために、そして己の誇りを満足させるために、闘争に臨んだ男。
アシュヒト・リヒター。死んだ恋人を人間として甦らせるため、戦いを決意した男。
近藤剣司。心を砕かれた想い人を救い、幼き日の穏やかな生活を取り戻したいと願った少年。
ちなみに彼らは、ゼフィールとライダー・アシュナードによって鏖殺された。花村陽介、君がゼフィールたちと出会う少し前だな」
「あいつら、三組のサーヴァントを相手に勝ちやがったのかよ…」
「東の新都での出来事だから、君たちは知らないだろう。聖杯戦争序盤のことでもあるしな」
-
そういえば月海原学園の掲示板で名前を見たことがある。
しかし、文字の羅列としてみるのと、こうして目の前にするのとではやはり現実感が桁違いだ。
「さあ、初対面だからといって気に病むことはない。先ほどと同じように、破壊し、力を得るといい」
無表情のまま煽ってくるピースマンを横目で睨みつけ、再びルルーシュが進み出る。
ルルーシュはこの仕事を自分の担当だと決めていた。
陽介もこなたも、手を汚していい人間ではない。たとえそ相手が生きた人間ではなくその残滓だとしても。
しかし、そのルルーシュの両手を陽介とこなたがそれぞれ引っ張って止めた。
「待てよ、ルルーシュ…さっきは悪かったな、押し付けちまって」
「今度は私たちもやるよ」
「お前たち…しかし」
「ルルーシュくん、さっき言ったよね。一人に人間として覚えておくって。
だったら、私たちも見てるだけじゃ駄目だと思うよ」
「そうさ。俺たちも同じ痛みを共有しなきゃ、あいつらに申し訳が立たねえ」
陽介が干将莫邪を、こなたがニューナンブをそれぞれ構える。
これから彼らを終わらせる…その事実を強く認識する。
ルルーシュは二人の決意を感じ、それ以上は何も言わずイルバーンを手にする。
こなたが金城優の、陽介がアシュヒト・リヒターの、ルルーシュが近藤剣司の影の前にそれぞれ立つ。
武器を突きつけても影たちは反応しない。
「この人たちが何かに囚われてて、倒したら解放される、っていうのなら、気分的に楽なんだけどね…」
「そうだな。だが、それでは痛みにならない…俺たちの教訓にはならない」
「だからさ、せめて…絶対忘れないからな。あんたたちのこと」
陽介が双剣を振るう。
こなたが引き金を引く。
ルルーシュが槍を突き出す。
何の抵抗もなく影たちは破壊され、やがて跡形もなく消えていく。
それと同時に、三人はまた内なる力が増したのを感じる。
「終わったようだね。では、次に行こう」
影が破壊されるのを見届けたピースマンは、またも一人で先に進む。
言葉通りナビゲーション以上のことをする気はなさそうだ。
陽介たちが影を破壊してどんな思いに至るか、陽介たち次第だというように。
この塔でやるべきことを理解し、三人は足取りも重く次の階層へと移動する。
「…でも、変だな。この調子で死んだやつのシャドウと向かい合うだけなのかな」
「どういう意味だ?」
「ん、俺らが戦ったシャドウってのはさ、もっと直接的に…そう、戦ったんだよ。
ペルソナを使ったり、武器を使ったりしてさ。サーヴァント並とまでは言わねえけど、立派な化物ばっかりだったぜ。
だからなんつーか、こうやってシャドウが無抵抗なのは違和感があるっていうか…」
階段を登る僅かな間の雑談。
陽介の疑問にはピースマンが答えた。
「心配せずとも最上階では君たちの力を試すことになる。花村陽介、君に馴染みのある通りの方法でな」
「げ…やっぱあの人と戦うの…?」
少し前に叩きのめされたペルソナ使いの美女を思い出し、陽介が身震いした。
彼女相手ではそれこそサーヴァントでも持ち出さない限り勝ち目なんて無いように感じる。
-
「よくわからんが、どのみち戦いにはなるということか。なら少し考えておいたほうがいいな…」
「考えるって何を?」
「泉、お前が言ったことだ。合体攻撃とか新しい力とかな」
「あ、あれ…でもあれ、勢いで言っただけで別に案があるわけじゃないんだけど」
「そこから策を考えるのが俺の仕事だ。まずサーヴァント抜きの、俺たちマスターの戦力を確認するぞ。
花村のペルソナ…アレックス。半分ペルソナで半分サーヴァントであるから、俺たちの中で最強であるのは言うまでもないな」
「つっても、さすがにサーヴァントと戦えるかって言ったら無理だと思うけどよ」
「しかし攻撃が通じないということはないだろう。
おそらくガウェインや火野であっても、まったくの無防備のところにお前が全力でペルソナを使えばダメージは負うはずだ」
「そのまったくの無防備ってのがもう既に無理のある前提じゃないかなって私思うんだけど」
「今は攻撃が通じるか、通じないか。その可能性だけでいいのさ。
そして、封印の剣。これはペルソナが使えば最大限に効果を発揮するのは以前に説明したな」
「んで、士郎が残してったこの干将と莫邪。これも一応宝具らしいからサーヴァント相手にも効くらしいけど。
じゃあペルソナ、封印の剣、干将莫耶。この三つが俺の戦力だな」
次にルルーシュがイルバーンを軽く床に打ち付ける。元は名無鉄之介の使っていたもの。
「俺はこのイルバーン、ギアス、そしてコードキャストが二つ、そして決着術式。
ギアスは今さらギルガメッシュに効くとは思えんし、接近戦も無謀だな。イルバーンの魔力増幅機能を使った後衛をやることになるだろう。
ガウェインがいれば決着術式も使えるが、ギルガメッシュに通じるかは未知数だな」
「じゃあ、最後は私だね。って言っても、私には二人みたいな武器はないから何もできないけど…」
最初と最後でかなり勢いに差があるこなただったが、ふとイゴールから渡された礼装のことを思い出した。
「あ、これ使えるかな?」
鳳凰のマフラー、聖者のモノクル、遠見の水晶玉。それぞれ回復、偵察、地形俯瞰の能力を持つ礼装だ。
身につけてみれば、どういう効果を発揮するのかもわかった。
「陽介くん、ちょっと疲れてない?」
「そういえば…」
「じゃあ、ちょっとやってみるね。それ!」
鳳凰のマフラーのコードキャスト、heal(16)が発動した。
柔らかな光がこなたの手から放たれ、陽介を包む。
「おっ…すげえ、疲れがなくなった!」
「うん、今の状態なら私にも使えるみたいだね」
「回復か…これは有用だな。泉、他の二つはどうだ?」
「ええと、敵対者の情報を表示…アリーナの階層データを表示、ってあるね」
「どちらも情報処理系のキャストのようだな。二つとも使ってみてくれ」
「はいはい。えー、まずはこの片眼鏡で」
view_status()が発動。こなたの視界にルルーシュと陽介の様々なデータが投影される。
「ルルーシュくんは左眼に特に魔力が集中してる。
陽介くんは…今ペルソナ出してないよね? ぼんやりと魔力が人の形になってるのが見えるけど」
「魔力がどこに集中しているかわかるのか。それなら相手の出方を見るのには有効だな」
最後に遠見の水晶玉を発動。今度は今登ってきた塔の全体図が表示された。
「この塔…五階建てみたいだね。この上にあと三階あるよ」
「地形データの走査か。これは…使い道が思いつかんな」
「ここから出たらもう使わなさそうだもんな」
-
どうやら一つは外れらしい。が、回復と偵察だけでも大きな収穫だ。
「サーヴァント抜きで戦う場合、花村が前衛、俺が後衛、そして泉がさらに後ろで補助をする陣形がベストだろうな」
「んー、でもこれ普通のマスター相手ならいいけど、サーヴァント相手にはあんまり意味ないんじゃない?」
「それはな…」
さらに話し込もうとした三人を、咳払いが留める。
ピースマンが三階の扉の前で振り返ってこちらを見ていた。
「作戦会議もいいが、そろそろ次に行かないかね?」
水を注され、三人は話を切り上げてピースマンの後を追う。どのみち、今はこれ以上話し合っても打開策はない。
三階層目は、古びた屋敷の前に出た。
「遠坂の屋敷…じゃないな。知っているか?」
「ここは間桐邸。そしてあの二人がこの館の主、間桐慎二と間桐雁夜だ」
ピースマンの示す先には、海藻みたいな髪型の青年と白髪の男性の影が、二人で同じようにうずくまっていた。
――衛宮…桜…遠坂…
――桜ちゃん…凛ちゃん…葵さん…
「あっ…あの白髪の人」
「泉こなた、君は間桐雁夜を知っているな。君を最初に襲ってきた相手だ。
彼は甥である間桐慎二に殺された。そして間桐慎二は匂宮出夢に敗れた」
「出夢…? 確かその名はスザクが言っていた」
「枢木スザクは間桐慎二に蹂躙され、身体機能の大半を奪われた。
その後、枢木スザクの同盟者となった匂宮出夢によって、間桐慎二は殺された」
淡々とピースマンは説明する。
二人ともルルーシュたちとは関わりが薄いが、スザクの両足と片腕を奪った人物とあってはルルーシュもやはり気にかかる。
「あの雁夜って人、凛ちゃんって言ってるけどもしかして」
「君の想像通りだ、泉こなた。彼は遠坂凛とも縁深き人物になる。身内ではないがね」
たとえ深く関わっていなくても、誰かの知り合いと繋がっている。
ならば、ここに彼らが出てきたのも無意味なことではないのだろう。
「…あの雁夜って人は私がやるよ」
「なら、俺は間桐慎二を」
「ルルーシュ…大丈夫か? なんだったら俺がやるぞ」
陽介がルルーシュを引き止めた。
ルルーシュ本人は間桐慎二に面識がなくても、スザクという親友に苦難を味あわせたというのだからルルーシュが怒りを抱くには十分だ。
その怒りを影に叩きつけてはいけない…この思いが直感として陽介の中にあった。
ルルーシュはそんな陽介の考えを察し、ふっと笑う。
「大丈夫だ花村。別に俺は間桐慎二を憎んではいない。
間桐慎二に出会わなくてもスザクの意思は変わらなかっただろうし、既に死んだ人間を憎むのも馬鹿馬鹿しいことだろう。
ただ、この中では俺が一番、間桐慎二に関係がある。だから俺が一番強く覚えていられる…それだけだ」
ルルーシュの様子を見て、余計な心配だったと陽介は手を離した。
こなたもまた、神妙な面持ちで間桐雁夜に向かって銃を構える。
「この人と凛ちゃんがどんな関係だったとか、なんで私を襲ってきたのかは知らないけど…やっぱり、雁夜さんにも願いがあったんだよね」
「間桐慎二にもな。その願いがどんなものか、俺たちが知ることはできないが」
「…絶対に、忘れないから」
引き金を引く。
槍を振り下ろす。
影が消えると、また一つ力を得る。同時に痛みも残る。
-
「…影との対峙は次が最後だ」
去っていくピースマンを追いかけ、陽介たちも急ぐ。
傍で支えてくれるサーヴァントがいないととても不安だと、いまさらながらにこなたは思う。
しかし、この痛みこそが、こなたが火野映司を支えるために必要な痛み。
自らも同様に傷つかねば、パートナーの痛みや苦しみを理解することなどできない。
「無理すんなよ、泉。俺やルルーシュだっていんだからさ」
「あはは、ありがとう陽介くん。でも大丈夫、このくらい平気だから」
「誰かを支えるだけじゃない。同時に誰かに支えられてこそ、仲間というものなんだろう。俺たちはもはや運命共同体だ」
同じ痛みを分かち合うことで、より陽介やルルーシュとの距離が縮まったような気がする。
気恥ずかしさを覚え、こなたはポケットに入っていた弾丸に話をすり替えることにした。
「ね、ねえルルーシュくん。この弾って使えないの?」
「衛宮切嗣の使っていた弾丸か。この大きさの弾丸となると、そのリボルバーではとても撃てないな」
「でもそれって、ただの弾丸じゃなくて礼装なんだろ? 悠のペルソナを一発で消滅させてたし。
泉が使ってるマフラーみたいには使えねえの?」
「コードキャストを発動させるタイプではないらしい。思うにこれは、衛宮切嗣が使用して初めて効果を発揮するものなんだろう」
「じゃあ駄目かー」
こなたが起源弾をポケットに戻す。
ただの話の種に出したものだったが、ルルーシュの思考はそれをきっかけに加速していく。
(衛宮切嗣にしか使用できない弾丸…魔術礼装…ペルソナを、いや魔術をキャンセルする力?
ジェレミアのギアスキャンセラーのような…だとしたら…)
頭の中で演算を繰り返すルルーシュを待たず、一行は第四階層へと辿り着く。
ピースマンの言葉が真実なら、影との対峙はここで最後だ。
最後の影は、小柄な少女の姿をしていた。
――あんちゃん
「羽瀬川小鳩。枢木スザクに同行していたキャスターのマスター。
枢木スザクと同じく間桐慎二によって自由を奪われ、さらに己のサーヴァントであるキャスターの手で魔術炉へと変化させられた少女だ」
「キャスター、魔術炉…それって」
「そうだ、花村陽介。君がランサーをペルソナへと変化させる際用いた賢者の石。あれこそがこの羽瀬川小鳩の成れの果てだ」
告げられた事実に愕然とする。
あの時は単なる魔力の詰まった石としか思っていなかったが、マスターそのものを変化させたものだとは。
使った陽介、使わせたルルーシュ、二人ともに知らず知らず殺人に加担していたということになる。
「罪悪感を感じることはない。キャスターが消えた時、賢者の石もやがては消える運命だった。
仮に消えなかったとしても、君たちに彼女を救う術はなかったのだから」
温度のないピースマンの声が突き刺さるような痛みを与えてくる。
彼女は今までの影と違い明確に陽介たちと関わっている人物だ。特に陽介は、小鳩の死の犠牲の上に命を繋ぎ止めたとも言える。
「…ルルーシュ、泉。ここは俺がやる」
二人に意見を挟ませない断固とした口調で、陽介は小鳩の影に向かい合う。
今も確かに感じるアレックスの存在感。その中に、この少女の命の残り香が含まれているとしたら、小鳩の影を消して記憶に刻みつけるのは陽介でなくてはならない。
これから先も生き続けるならば…アレックスとともに歩むのならば。
-
「ごめんな。謝ったって済むことじゃないけど、知らなかったなんて言い訳にならないよな。
それでも…ごめん。ごめんな…!」
嗚咽を堪えて振り下ろした干将莫耶は、少女の影を霧散させる。
今までと同じく、影は霊子となって飛散し、陽介たちに吸収される。
「覚悟はしてた気になってたけど、まだ甘かったんだな。あんな小さい子までいるなんてよ…」
「うん…あんちゃんって言ってたね。お兄ちゃんがいたのかな」
「妹…か。やりきれんな」
こなたには従姉妹ではあるが小早川ゆたかという妹のような存在が、ルルーシュには実の妹であるナナリーがいる。
それぞれ兄、姉として生きてきただけに、小鳩が帰ってこないと知った時の小鳩の兄の辛さを想像できてしまう。
「絶対に、終わらせなくちゃな、こんなこと…!」
真っ赤になった目をこすり、陽介がずんずんと先に進んでいく。
ピースマンは相変わらず無感情に見ていたが、その足は先には進んでいなかった。
「どうした、ピースマン」
「私の役目はここまでだ。最後の階層には別の者がいるからな」
「本当に解説だけしかしなかったね…何がしたかったの?」
「君たちという存在を一度間近で見ておきたかった。
なるほど、ここまで勝ち残ってきただけはある…これなら、『彼』の願いも今度こそ叶うかもしれないな」
最後はぼそぼそと小声になっていたため、ルルーシュとこなたには聞き取れなかった。
ルルーシュはピースマンが何と言ったか聞き返そうとしたが、
「行きたまえ。君たちなら最後の試練も突破できるだろう。
君たちがこの聖杯戦争をどういう形で決着させるのか…見届けさせてもらうよ」
「…ピースマン、一つだけ聞きたいことがある」
これ以上ルルーシュたちに干渉する気はなさそうなピースマンに向かって、最後の問いを放つ。
「お前は俺たちの敵なのか?」
「違う。これだけは信用してくれていい。私はこの戦いには何の関与もしないと決めている。
次回があるならば、その参考にしたいと思っているけれどね」
「そうか、ではな。二度と出会わないことを祈っている」
ルルーシュはこなたを促して上階へと向かう。
残されたピースマンは二人の背を見送っていた。
「『痛みを伴わない教訓には意味がない。人は何かの犠牲なしに何も得る事などできないのだから。
しかしそれを乗り越え自分のものにした時…人は何にも代えがたい鋼の心を手に入れるだろう』」
欠片の男はポツリと呟く。
「ゼロ、もう少しで答えは出る。
君が望んだ魔王たるべき器が彼らなのか…私も興味が出てきたよ」
その言葉は、誰の耳にも届かずに消える。
同時に、ピースマンの姿も消えた。
-
最後の階層。
陽介たちの前には、ベルベットルームの住人・マーガレットが佇んでいた。
「ようこそ、お客様方。ここが塔の終着地点でございます」
「やっぱ最後はマーガレットさんか…」
やや青ざめた顔の陽介がアレックスを出現させる。
先刻叩きのめされた相手だ。その力のほどは骨身にしみて理解している。
「あなたたちを包む王気…以前とは比べ物にならないくらい強くなっているわ。この塔を登る中で強くなったのね」
「で、この階層の試練は貴方ということか」
「ピースマンさんはここで力を試すことになるって言ってたけど」
「油断すんなよ二人とも。あの人、俺なんかよりめちゃくちゃ強いペルソナ使いだぜ」
三人は先ほどの打ち合わせ通りの陣形を組む。
しかしマーガレットは手をひらひらと振り、その勢いをくじく。
「ご期待に添えなくて申し訳ないけれど…相手は私じゃないわ。
そちらのお二人はペルソナ使いではないし、私よりもっと相応しいものがこの場にはいるから」
マーガレットが横にずれる。
その後ろにいたのは、桃色の髪の少女…の、影。
「こちら、鹿目まどか様の影があなたたちの最後の試練。
ただし、今までの階層と違って…ペルソナ!」
まどかの影は虚ろな眼差しを陽介たちに向ける。
その影…まどかの影が真っ二つに割れ、内から丸太のように太く腕が飛び出してきた。腕は、まどかの影を掴み…自らを引き上げるように力を込める。
「お、おいあの腕…俺なんかすっげえ見覚えがあんだけど!」
「そ、そうか花村、奇遇だな。俺もつい数時間前に見たことがある気がする…!」
「あれ、どう見ても…!」
まどかの影の中から飛び出してきたのは…三人の予想通りのもの。
「アーチャーのサーヴァント、DIOが駆使したスタンド――ザ・ワールド。
その影が、あなたたちの相手を努めます」
マーガレットが朗らかに告げる。だが陽介たちはそれどころではない。
目前にいるのは最凶のサーヴァントとして猛威を振るったDIOのEX級宝具。
近接戦闘においてセイバーやランサーにすら匹敵するほどの超級のスタンドだ。
「いやいやいやいや! ってかなんであれがシャドウなわけ!? DIOは死んだんだろ!」
「DIOはあなたに敗れる少し前、マスターである鹿目まどかの心臓を食らった。つまり、鹿目まどかとDIOは僅かながら同化したと言えるの。
つまり鹿目まどかの影にはDIOの、ザ・ワールドの断片が混ざっている…その情報を、私がペルソナとして再構成した。
ペルソナとスタンドの近似性については…あなたたちはもう知っているわね?」
鳴上悠は、DIOのエネルギーを受けて反転したペルソナ・伊邪那岐禍津大神を覚醒させた。
ペルソナとスタンドは別個の存在だが、在り方は非常に似通っている。
ペルソナ使いとして悠を遥かに上回るマーガレットならば、ザ・ワールドの断片を元にペルソナとして再構成するのもさほど難しいことではない。
「もちろん、これはデッドコピー…時を止める力はない。
でもそれ以外、たとえば格闘能力なんかはオリジナルに近いものになっているわ」
影のザ・ワールドが吼える。
DIOに制御されていた時とは違う。ただ本能の命ずるままに暴れ回る獣…暴走状態だ。
-
「アレックスっ!」
ザ・ワールドの豪腕を、召喚されたアレックスが受け止める。
しかし、サーヴァントの時ならいざしらず、ペルソナとなった今では正面からそのパワーを受け止めるには力不足。
後ろにいたルルーシュ、こなたもろともに吹き飛ばされた。
「なんて力だ…!」
「負けるか! アレックス!」
スサノオ、そして悠のイザナギから継承された力を発現させる。
マハタルカジャ・マハスクカジャ・マハラクカジャ、強化魔法をこれでもかと連発。三人の攻撃力・敏捷性・防御力が増加する。
「ハドロン砲を使う!」
「せぇいっ!」
ルルーシュがコードキャストを、アレックスが頭上から封印の剣を、そして加速した陽介が背後から干将莫邪をザ・ワールドへと叩き込む。
しかし、ザ・ワールドとて数あるスタンドの中で最強の位置を占める存在。
コードキャストを物ともせず、封印の剣を両掌で挟み止め、背後の陽介には蹴りを放つ。
すんでで干将莫邪を差し込みキックを防いだ陽介だが、防御力を上げてもなおその一撃は重い。
壁際まで吹っ飛ばされ、制御が疎かになったアレックスへザ・ワールドのラッシュが叩き込まれる。
ペルソナのダメージがフィードバックし血を吐いた陽介にこなたが駆け寄り、回復のコードキャストを施す。
「くっそ…やっぱつええ!」
制御する本体がいないので、今のザ・ワールドは手近にあるものを力任せに殴りつけるだけだ。
もしDIOが操っていたならば、今の攻防で陽介は確実に死んでいた。戦えない相手というわけではない。
しかし、やはりパワーが尋常ではなかった。
「あら、ここまでかしら? だったら少しがっかりね」
「まだ負けてないっつーの…!」
マーガレットの冷やかしに奮起し立ち上がるものの、陽介には勝機が掴めない。
「映司さんかガウェインさんがいてくれたら…」
こなたの呟きに全面的に同意したい気持ちだった。
しかしただ一人、ルルーシュだけはこの強大な敵に勝利する道筋を見据えている。
「違うな、間違っているぞ泉…!
この程度の壁を乗り越えられないようでは俺たちに未来はない!
こいつは俺たちの手で打ち倒すべき敵だ! それができないのなら、俺たちにサーヴァントと共に戦う資格などない!」
ルルーシュはイルバーンをザ・ワールドに向ける。
しかし、スザクとの戦いのときのように突撃はしない。
「泉、今こそお前の言葉を実現する時だ!」
「え? え?」
「合体攻撃と言っただろう。既にプランはできている…!」
道中の会話でヒントは得た。
構成要素は手元にある。
そしてここに来るまで高められた三人の魔力を持ってすれば…やれるはずだ。
-
「花村、少しでいい、時間を稼げ!」
「なにか手があんのかよ、ルルーシュ!」
「ああ、任せろ! 奇跡を起こしてやるさ!」
ルルーシュの言葉を信じ、陽介は一人ザ・ワールドへと立ち向かう。
その背中にルルーシュは、陽介から向けられる確かな信頼を感じる。ならばそれを裏切る訳にはいかない。
「泉、起源弾を貸してくれ。それにさっきの情報を表示する礼装を使うんだ」
こなたから受け取った起源弾を、ルルーシュはイルバーンの先端に突き刺す。
イルバーンと、リインフォースから託された魔術回路が駆動する。
この塔を登ってくる過程で得た霊子がルルーシュのハッカーとしての能力を底上げしている。
擬似的に起源弾の効果を再現…あるいは変化させて放つことが、不可能ではなくなった。
「ザ・ワールドの情報…出た! これどうするの!?」
「やつの魔力が弱いところを探せ! そこにこいつを叩き込む!」
ザ・ワールドの弱点…それは頭部。陽介がDIOを倒した時、とどめを刺した箇所だ。
「よし、次は…泉、イルバーンを掴め。先端の起源弾にさっきの階層表示の礼装を使うんだ」
「え…弾丸に?」
「階層を表示するということは、つまり空間を把握するということだ。
イルバーンに接続した状態なら、起源弾の構成データも解析できる」
こなたが起源弾に向けてview_map()を使用すると、ルルーシュの言葉通り起源弾を構成する情報を表示できた。
「起源弾…衛宮切嗣の礼装。本人以外には使えないもの。
魔術効果のキャンセル…弾丸の形状…強い指向性。
効果を発揮するのが不可能でも、宿す性質は劣化しない…」
「ルルーシュくん、陽介くんが危ない!」
こなたが表示したデータを一瞬で掌握し、ルルーシュは脳内で演算を処理する。
「起源弾の効果をエミュレート…イルバーンを銃身に…燃料は俺たちの魔力…よし! 花村、戻れ!
「やっとかよ…!」
時間にしておよそ一分も経っていないが、陽介にとっては果てしなく長い数十秒だった。
ゼフィールと戦った時よりきついかもしれない。
アレックスをザ・ワールドへの足止めに残し、陽介が戻ってくる。
「花村、お前もイルバーンを掴め」
「よっと…これでいいのか?」
長い槍の先端近くをこなたが、中盤に陽介が、反対側の端をルルーシュが持つ。
三人のウィザードから注ぎ込まれる魔力がイルバーンを経由し、起源弾へと流れ込む。
『切って、嗣ぐ』というプロセスを経る起源弾。
その、魔術を破壊するという側面だけを抽出し、増幅する。『切る』という属性だけを特化させる。
「狙いを定めるのは泉、お前だ。お前が見たやつの弱点をイメージしろ。
補正は俺がやる。花村はありったけ魔力を流し込め!」
幾度かの戦いでウィザードとして熟達しつつあるルルーシュが細かな制御を処理する。
魔力保有量に最も優れる陽介がエネルギー源である魔力を注ぎ込み、推進力とする。
そして敵対する者の弱点を可視化できるこなたが狙いを定めた。
イルバーンという神話級の魔術礼装を通し、三人の精神は完璧なリンクを果たす。
聖杯を砕くという目的のもと団結し、意識を繋いで高め合う…
-
「…ここ! 陽介くん!」
「撃て、花村!」
「っし…いけぇぇぇぇっ――!」
これこそ、ペルソナ使いたちの切り札。
コミュニティ――絆を繋いだ者たちが成す合体攻撃――ミックスレイド。
放たれた起源弾は中空で分解し、純粋な破壊エネルギーの塊となってアレックスに手こずるザ・ワールドの額へと一直線に進む。
直前で気付いたザ・ワールドが拳を突き出すが、ルルーシュの制御によってエネルギーは錐揉み回転、拳をかわす。
自動で軌跡を補正。次の瞬間、こなたが弱点と示したその額に、着弾した。
――――――――!!!!
声にならない叫びを上げ、ザ・ワールドがのけぞる。
陽介、ルルーシュ、こなたが持てる全てをつぎ込んで放った一撃は、塔を昇る間に成長したおかげもあって膨大な力を内包している。
生前の死因…弱所に命中した破壊エネルギーは、ザ・ワールドの体内で炸裂した。
影のザ・ワールドは、跡形もなく消える。
パチパチパチ、とマーガレットが拍手が響いた。
「終わった…か?」
「お見事。まさかそういう手で乗り越えるとは思わなかったわ。
そうね、名付けるのならば『至高の魔弾』――その力なら、サーヴァントをも傷つけ得るでしょう」
二発しか無い弾丸を一発使ってしまったので、実質一発勝負。
しかし、対ギルガメッシュ戦においてマスターが行使できる最強の攻撃となるだろう。
「これが…この塔を登ることで、手に入れた力?」
「少し前のあなたたちでは、実際に放つことはできなかったでしょう。
影たちを倒して吸収した魔力、そしてあなたたちの結んだ絆…それなくしては存在しないもの。
素晴らしい物を見せてもらったわ。これはその御礼よ」
マーガレットがペルソナを召喚し、三人の傷を癒やす。影を破壊したためか、失った魔力もすぐに充填されていく。
そんな中、陽介たちは景色が歪み始めることに気付く。
「これは…?」
「核を破壊したから、もうこの塔も役目を終えた。あなたたちはすぐに現実で目覚めることになる。おそらく、もう会うこともないでしょう」
「マーガレットさん…ありがとうございました。イゴールさんにもそう伝えてください」
「いいわ。でも忘れないで…あの影たちは、確かに生きていたということを。
鹿目まどかもまた、あなたたちと同じく聖杯を壊そうとしていた。残念ながらあなたたちとは出会えなかったけれど…。
その痛みが、あなたたちに力をくれるはずだから」
マーガレットの言葉がどんどんと遠くなる…
次に三人が目覚めたのは、精神世界に入る前にいた柳洞寺の一室だった。
「こなたちゃん!」
「ルルーシュ…良かった。無事に戻られたのですね」
そこには映司とガウェインがいた。現実世界に復帰したのだ。
「…っ、ガウェイン、どこまで知っている?」
「すべて。我らは介入できませんでしたが、ルルーシュたちと感覚は繋がっていました。
「皆が試練に挑んで、そして打ち勝ったのも全部、見届けたよ。
こなたちゃんたちが強くなったから、俺たちの傷も殆ど回復したし」
「そうか。それなら説明の必要はない…ん? なんだそれは」
ルルーシュはガウェインが持っている紙片に気がついた。
折り畳まれた紙は、ルルーシュがギルガメッシュに向けて放ったものによく似ている。
「ええ、これは彼らからの返答です。時間はこちらが指定したので、場所は向こうが選ぶと。
――冬木大橋。そこで決着をつけよう、ということです」
-
【深山町・柳洞寺/昼】
【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
[道具]:契約者の鍵@ペルソナ4
※スサノオとイザナギを合体させ、アレックスをペルソナとして召喚しました。
ペルソナのスキルとアレックスの能力を一部引き継いでいますが、会話はできません。
※愚者―遠坂邸同盟・審判―聖杯を砕くもの・世界―鳴上悠のコミュニティが解禁されましたが本人は気づいていません。
また他の人物(例ルルーシュ、こなた、アレックスなど)のコミュが解禁しているかは次の書き手にお任せします。
※ペルソナ・アレックスの保有スキル
マハガルダイン 疾風ハイブースタ ブレイブザッパー デカジャ
マハスクカジャ マハラクカジャ マハタルカジャ ディアラマ
また、サーヴァント特性として『帽子屋(マッドハッター)』の荷電粒子砲『ブリューナクの槍』を使用可能。
【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:強い覚悟と決意
[装備]:鳳凰のマフラー @Fate/EXTRA、聖者のモノクル@Fate/EXTRA
[道具]携帯電話、ニューナンブ@現実 予備の弾薬@現実 起源弾×1@Fate/zero
遠見の水晶玉@Fate/EXTRA
※礼装を装備することで、コードキャストを発動できます。
また、僅かながら魔力の総量が上昇しました。
heal(16); 効果:HPを小回復
view_status() 効果: 敵対者の情報を表示
view_map() アリーナの階層データを全表示
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:強い決意
※スーパータトバメダルは消滅しました。
※ギルガメッシュに対してスキル心眼・真は発動しません。
※無謀な行動は起こしませんが、他に手段が無いと判断した場合「壊れた幻想」を使うことも視野に入れています。
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]: 強い覚悟と決意
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャストを発動できます。
hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。 効果:ダメージ+スタン。
絶対守護領域 決着術式“聖剣集う絢爛の城”をデチューンした術式。 効果:小ダメージを無効化。
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:健康
※『聖者の数字』発動不可
-
「決戦といえば、あの場所以外にあるまい」
英雄王は上機嫌でそう告げる。さらに彼は魔王ゼロに向けて注文をつける。
橋周辺の地形情報に手を加え、現時点での損傷を修復、またそう簡単には壊れないくらいの強度を与えることを要求した。
「では往くか。遅れるなよ雑種」
神父を待たず、英雄王は揚々と出陣していき、神父もその後を追う。
魔王はその背を見送っている。
来たる、運命の時刻。
時計の針が天頂を指す時、すべてが終り、そして始まる。
【冬木大橋/昼】
【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康
【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
※ムーンセルの知覚領域の拡大によって「王の財宝」内の財宝に各参戦作品の武器、アイテム等が追加されています。
これは人類の歴史の観測者であるギルガメッシュ自身がムーンセルと同質の存在であるためです。
ただし追加される財宝には以下の制約があります。
「クレイモア」、「サモンナイト」など完全な異世界を舞台にした作品のアイテムは出自の一切を問わず追加対象にならない
神造兵装など人の手によらない武器、アイテム等は追加対象にならない。
※魔王ゼロに対して彼なりに考察していますが必ずしもその全てが的中しているとは限りません。
※参加者に対して「乖離剣エア」及びエアの最大出力である「天地乖離す開闢の星」を使用する気はありません。
仮に使ったとしてもエアの権能を解放しないFate/stay night準拠の「天地乖離す開闢の星」になるでしょう。
また基本的に慢心を完全に捨て去るつもりはありませんが状況によっては捨てることもやむ無しと考えています。
とはいえ相手が聖杯戦争を勝ち抜いた強者なので慢心したとしても度合いは最小限に抑えられるでしょう。
※ドラグレッダーと契約したことで仮面ライダー龍騎、及び龍騎サバイブへの変身が可能になりました。
変身者が元から高いステータスのギルガメッシュなので引き出される力は本来のスペック以上のものになるでしょう。
【月の裏側・旧校舎/昼】
【魔王ゼロ@コードギアスナイトメアオブナナリー】
[状態]:健康
※ゼロはムーンセルに通じる秘匿回線を持っており、それを通じて度を越した不正を行なった参加者に対し間接的にペナルティを与えることができます。
現在ペナルティ対象になり得るのは花村陽介と火野映司ですが、今のところゼロは二人に手を出すつもりはありません。
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投下終了
タイトル 「 Shadow of Memories 」です
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投下乙です。
まどかのシャドウ→クリームリヒトモドキになるのか!っと読んでいて期待してみたが、まさかのザ・ワールド!?
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まどかから太い腕生えたってきいてタイタスにでもなるのかと思ったぜ
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投下乙です!
生き残った彼らには、生き残れなかった者を、その足元に誰がいるのかを知らなきゃいけないのか・・・
こうして見るとこなたも強くなったなぁ、精神的な意味も含めて
まだ英雄王も麻婆神父もその後に魔王も控えてるけど、物語の結末がどうなるのか楽しみだ
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乙でしたー!なるほど至高の魔弾、最強技に相応しい!
あと途中の半額弁当にワロタwwwwww
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投下乙です
何気にさんざん言われてたまどっちのラスボスフラグも回収ですね!(本人がロワでなるとは言ってない)
しかしこのマスター三人の合体技はまさに戦隊モノの必殺バズーカを連想してしまうな…w
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>>606
それはまどかが巨大化するフラグだからやめろし>必殺バズーカ
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日中から昼になってるけど時間巻き戻ってない?
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コラボ映画だと戦隊ヒーローがオーズの各コンボに変身して必殺バズーカを打つシーンがあったな。
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>>608
ご指摘ありがとうございます
期限を昼の12時と勘違いしていたので、帰宅次第wiki収録と時間の修正を行います
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投下乙です!
そうですよね、生き残れなかったのは一緒にいた仲間だけじゃない
他にも無念を残して散った人間が大勢いたことを覚えていないといけない
まさにペルソナ3のテーマである「死を想え(メメント・モリ)」を表した話だな、と思いました
それと全キャラ予約します
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投下乙です
ピースマン生きてたんだw
あるもの全部使った合体攻撃が熱い
全キャラ予約します
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あ、少し遅かったか
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あ、いえ自分も厳密には投下から一日経過まで一秒早かったんですよね
時計見て書き込んだつもりだったんですが…
これ自分が予約取っても大丈夫なんでしょうか?
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投下乙です
まさかのミックスレイド、至高の魔弾!
ルルーシュ陽介こなた、三人が持てる力のすべてを結集させた、ここならではの合体技だなあ
そしてさすがにGW前、予約合戦が起きるとは
他に誰も予約してなかったら問題はなかったと思いますが、数秒遅れで◆l3N27G/bJU氏が予約とってますので・・・
ルール上は◆l3N27G/bJU氏の予約が有効ということになるのではないでしょうか
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早押しクイズじゃないんだから…譲り合ってダチョウ倶楽部すべき
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このフライングはアウトでしょ
フライングせずにすぐ予約してる人がいる以上
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◆l3N27G/bJUさんの予約が優先でしょうね。
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やはり自分の予約は取り下げたいと思います
一秒であってもフライング、ルールはルールですので
皆様お騒がせしてすみませんでした
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ゼロ「お、お前は!?会場だけ用意して描写も無く死亡したと言われ死亡者名鑑に名前の乗った!」
ギル「死んだはずの…!?」
ゼロ「トワイス・H・ピースマン!!」
欠片男「Yes! I am!」
こういうことですか分かりません
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修正しました。時間が昼から夕方に変更になります
それとピースマンの登場はこの話限りのつもりでしたので目次欄には記載していません
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延長します
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済みません、遅刻しました…まだ投下してもよろしいでしょうか?
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日付変わる前だしいいんじゃないですか
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ありがとうございます
では投下します
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日は落ちた。三度目の夜。
紛れも無くこれが最後の夜であると、誰もが確信している。
午前零時。
暗闇の中にあってなお、太陽の如き輝きを放つ一人の男――名をギルガメッシュ。
金の髪、赤い瞳、黄金の鎧。只人が見れば無意識に頭を垂れる、圧倒的な存在感を放っている。
彼こそは人の歴史に燦然と名を刻む、万夫不当の英雄王だ。
そしてその側には、英雄王とは対照的に漆黒の礼服に身を包む長身痩躯の男が一人。
言峰綺礼。神父のNPCにして、ギルガメッシュのマスターとしてこの聖杯戦争に参戦したイレギュラー要素である。
彼らは、敵を待っている。
もうすぐここに――西と東の街を結ぶ冬木市の要所、冬木大橋へと、敵がやってくる。
「英雄王よ、一つ質問がある」
綺礼の問いに、ギルガメッシュは目線で先を促す。
この決戦の地に着いて、ギルガメッシュはただの一言も発していない。
緊張している……という訳ではない。その視線は遥か彼方、これより雌雄を決する人間たちの来訪を待ち受けている。。
「何故、この場所を選んだのか、ということだ。お前に戦場の有利不利などないのだろうが、ゼロに依頼してまでここに拘った理由があるのか?」
「ふ……ん。大した理由ではない」
ギルガメッシュの目線は言峰から天へと巡る。
否、彼が見ているものは空ではない。過去の情景を思い出すように、ギルガメッシュは浅く瞼を下ろす。
「いつか、どこか、までは覚えておらんが。このような場所で、我は賊を裁いた記憶がある。
奴は、正しく英雄であった。この俺が手ずから誅する価値のある、な」
「ほう……英雄王にそこまで言わせるとはな。よほど名のあるサーヴァントだったか」
「我とは違う王道を掲げた益荒男だ。奴の覇道は、あれはあれで見応えのあるものだった」
昔を懐かしむように、ギルガメッシュは述懐する。
豪放磊落を地で行く真の英雄との、譲れぬ王道と掲げた誇りをぶつけあった一戦。
長き眠りと倦怠の中にあって、あの鮮烈な記憶は未だ忘却の海に沈んではいない。
「ではここを選んだのは、これからやって来る彼らが、その英雄某に比肩し得ると見定めたから、か」
「さてな。此度は王と王の戦いではない……そこまでの期待はしてはおらん」
ただ、と英雄王は付け加える。
「この橋を戦場とするなら、余計な小細工はいらん。ただ前進し、ただ敵を粉砕する。
勝ち残った、より強い者だけがこの橋を渡り切ることができる……明快であろう」
そう語るギルガメッシュの眼には、隠し切れない喜悦と戦意が入り交じっている。
拳王、狂王、騎士王、紅世の王、不死者、破壊者、抜剣者。仙人、妖狐、円卓の騎士、妖魔狩り、錬金術士。
スタンド使い、エンジェロイド、戦国最強、光の御子。魔法少女、北斗神拳の使い手、ルーンナイト、神話級礼装の防衛プログラム。
散りゆく者は皆、いずれ劣らぬ当千の強者ばかりだった。
-
「ここまでの顔ぶれを揃えた聖杯戦争は歴史上そうはあるまい。そして奴らは勝ち残ってきた。それが運であれ、実力であれ。結果的に今、生きているということに意味がある。
生を渇望する意思――曇りなき魂。ゼロが求めているものを、奴らは磨き上げ、研ぎ澄ませてきた。
ならばこそ、奴らは我の前に立つ資格がある。我の手で試す価値がある。人の内なる可能性を示す……その行く末を見定めるのが我の仕事である故な」
「裁く……ではなく、試す、か」
「今宵、我は王としてではなく試練として、奴らの前に立ち塞がる。
奴らが我を超えられぬのならば……ゼロもとんだ道化に成り下がるというものよ」
「なるほどな。ゼロに言われただけでなく、お前自身にも彼らと戦う理由があるということか」
得心がいった、と神父は頷く。その姿には気負いも緊張もない。理由というならば、このNPCこそここにいる意味が無い。
「何、私も同じだ。彼らがこの戦いでどこまで成長し、そしてどこに辿り着くのか……その果てを見てみたいのだよ」
「異なことを言う。もし敗北すれば見届けるも何もないではないか」
「それはそれで構わんさ。私を……いや、お前を超えるということは、彼らの可能性は人の臨界を極めたという証左。
ゼロが求める次代の魔王も必ずやそこにいるだろう。新たな魔王の誕生を見届けて消えるのなら、何の不満もない」
そう、魔王ゼロもこの戦いを見ている。
ギルガメッシュが打倒され新たな魔王の器が生まれるか。あるいは魔王たるべき者は現れず、ギルガメッシュによって魔王そのものが滅ぼされるか。
魔王が滅びれば、秩序と混沌の天秤は崩れあらゆる宇宙はいずれ緩やかに壊死していくだろう。
ギルガメッシュはそれでも構わない。人が進化の果てに選んだ結末ならば、黙して受け入れるだけだ。
だが――予感がある。期待、と言ってもいい。
それはか細く不確かなもの。しかしそれでも、信じてみたいと思わせる。
「……来たか」
閉じていた瞼を開く。橋の向こう側――遮るものなき前方に、五つの影が現れている。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。悪逆皇帝、奇跡を起こす男。
ガウェイン。円卓の騎士、太陽の聖剣を担う者。
泉こなた。力なき幸運の星、天秤の支柱となる者。
火野映司。欲望の王、古の力を宿す仮面の戦士。
花村陽介。ワイルドカード、受け継がれる絆と力。そして傍らには信念を貫く槍の男。
マスターが三人、サーヴァントが二人。
皆一様に先刻とは比べ物にならない王気を纏い、確かな意志と共にギルガメッシュと対峙している。
誰の眼にも恐怖はない。感じていないのではなく、呑み込んでいる。何の力もない小娘でさえも、英雄王の視線に怯まず睨み返してくる。
「どうやら彼らもただ遊んでいた訳ではないようだな。
特にあの三人……マスターたちは、どうしたことか、保有する魔力が桁違いに増大している」
「それでこそよ。無策で突っ込んでくるようなら踏み潰してやるところだが……ああ、それでこそだ。
我が相手をするのだ。死力を超えた全力を以って挑んでこそ、初めて戦いになるというものよ」
笑み、ギルガメッシュはゆっくりと前進していく。その手には龍を象った匣がある。
もはや言葉など意味を成さない。此処から先に意味があるのは、雌雄を決する力のみ。
戦を前に、この傲岸不遜を形にした男が常ならあり得ない準備をした。
古の竜を迎え撃つは、新たなる龍の力。鎧を脱ぎ捨て、宝物庫から呼び出した鏡へと、匣を掲げる。
炎が巻き起こる。瞳と同じ、鮮烈な赤。
「――変身」
顕現するは龍の戦士。
英雄王ギルガメッシュが出陣する。
-
◇ ◆ ◇
最後の時間は何事もなく過ぎた。
精神世界から帰還し、決戦に向けての打ち合わせを終え、休息を取る。
こなたは母親が既に亡くなっていて、父親と従姉妹の三人暮らしのため家事には長けている。こなたと陽介が驚いたのは、ルルーシュもまた料理が達者なことだった。
「うわー、美味しいねこれ。ちょっとした店で食べるくらいのレベルじゃない?」
「そんな大したものじゃない。妹や弟によく作ってやっていただけだ」
「へえ、お前兄弟がいるのか」
どこか懐かしむ口調で言うルルーシュに、彼の作ったカレーを食べながら陽介が答えた。
料理の得意な兄、に親友を連想する。故郷を思う気持ちが一層強くなる。
「じゃあ、絶対帰ってやらないとな。もちろん俺も、泉も」
「……ああ、そうだな」
元の世界に帰ったところで、ルルーシュが妹の前に姿を見せる訳にはいかない。
と言うより、首尾よくギルガメッシュとその背後にいる者を倒せて元の世界に帰還したとしても、ルルーシュにはこなたや陽介のように元の日常に帰るという結末は望めない。
ガウェインはかつて“死の直前にある”とルルーシュを評した。ならば、ムーンセルより解放されれば、その後は本来向かうべき結末――死が待っているだけだ。
ルルーシュはその最期に文句などない。やるべきことをやり遂げたのだから、あとはただ舞台から降りればいいだけだ、だが。
(あいつは…スザクは俺に生きろと言った)
元の世界に戻れば、今もゼロとして活動しているスザクがいる。そのスザクは、この聖杯戦争でルルーシュが看取ったスザクとは別人だ。
故に、その言葉に従う必要はない。ないのだが――本当に、それでいいのかと思う部分もある。
今更死を恐れてはいない。しかし、もし元の世界に戻った後に俺は死ぬ、などと言えば、陽介もこなたもきっと迷ってしまうだろう。
言わないでいる、あるいは嘘をつくことは簡単だ。今までにも散々やってきた。
しかしルルーシュは、運命共同体となった二人の友を偽ることに強い躊躇いを覚えている。
(生きろ…か。難しい注文だな、スザク。俺がお前に課した命令は、こうも重いものだったと今更ながらに思い知るよ)
仮に生きて元の世界に戻った場合どうなるだろうか。
こなたは、今までと変わらぬ日常を送るだろう。彼女は元々日向の世界にいる人間だ。
陽介は、鳴上悠の死を親しい者に注げると言った。辛い役目だが、それをしなければあの冬の日から一歩も前に進めないのだと。
ではルルーシュはどうするか。
最愛の妹であるナナリーの前に姿を見せる訳にはいかない。ルルーシュは世界の憎しみを集めて死んだのだから、世界に無用な混乱を招くことになる。
無論、ゼロとして活動するスザクや、カレンといった縁者も同様。かつてのルルーシュを知る人間には全て、出会ってはいけない。
結局、残るのはあの魔女くらいだ。
(そう言えば、あいつはどうしているだろうな。願いを叶えてはやれなかったが…)
ルルーシュが世界を変えるきっかけになった、ギアスを与える魔女。今も一人で世界を彷徨っているのだろうか。
もしスザクの言葉を守って生き続けるとするなら、彼女と一緒に生きるのも悪くない。
(…未練だな。すべて捨てたと思っていたが、そう簡単に忘れられるものでもないらしい)
それはこの戦いで得たものも同じだ。友を得ることなど、スザク以外にはないだろうと思っていた。
しかし今、ルルーシュの周りには友がいる。彼らだけはなんとしても元の世界に送り届けてやりたい……今はそれが一番望みであることは間違いない。
ガウェインを見る。騎士は、口に出さずともルルーシュの思いを汲み取ってくれる。
(そう、ギルガメッシュを討つのは俺たちだ。その結果俺たちが果ててしまおうとも…泉と花村が先に進めるのなら、悔いはない)
仮面を被る。秘めた願いを見透かされないように。
最後の夜は更けていく。
-
◇ ◆ ◇
「あれは…たしか、ディケイドが変身していた…」
「うん、仮面ライダー龍騎だ」
日付が変わる時刻。決戦の場、未遠川に架かる冬木大橋に赴いた一行を出迎えたのは英雄王と神父のNPC。
書状にはこの二人が相手になると書かれていたので驚きはない。何故NPCが、という問いも、その向こうにムーンセルを支配する黒幕がいるのなら不思議ではないからだ。
問題は、黄金の鎧を纏っていた英雄王がその姿を変えたことだ。
仮面ライダーディケイド、仮面ライダーオーズ。二人の「ライダー」に準ずる、三人目の「」仮面ライダー」に。
宙を泳ぐ赤龍が吐き出す炎が、数百メートルの距離を隔ててなおマスターたちの肌をチリチリと焦がす。
「全部のパラメータがBクラス以上!?」
「あらゆる財宝を所有する、英雄王の宝物庫…まさか、仮面ライダーの変身道具まで収めているというのか…!」
接敵した瞬間、ルルーシュたちの目論見は早くも瓦解した。
強大な戦力を次々と投射する英雄王を打倒するには、何らかの手段でガウェインとの接近戦に持ち込むしかない。それが、ルルーシュたちの狙いだった。
至近距離で切り札たるエクスカリバー・ガラティーンの全力を叩き込めば、いかな英雄王とて必ずや打ち砕ける。
問題は、どうやって聖剣の間合いまでガウェインを踏み込ませるか――だったのだが、
「ガウェイン、やれるか?」
「いえ……難しいでしょう。私の宝具もルルーシュのコードキャストも、基本属性は火です。今の英雄王には、効果が半減すると見て間違いない」
エクスカリバー・ガラティーンは太陽の灼熱で敵を焼き尽くす宝具。
決闘術式「聖剣集う絢爛の城」は、炎の壁で相手を覆い自由を奪う術式。
どちらも燃え盛る炎の熱を骨子とする。ゆえに、炎を司る仮面ライダーである龍騎に対してはスペック通りの効果が見込めない可能性が非常に高い。
「で、でもよ。火野さんと同じ姿になったってことは、その剣を飛ばす攻撃はできない訳だろ? じゃあ手数で俺たちが勝てるんじゃ」
陽介の発言は、ギルガメッシュ=龍騎が後背に出現させた無数の刀剣によって遮られる。
仮面ライダーに変身していようと関係なく、英雄王の基本戦術は健在だ。本人を強化しつつ、さらに宝物も自在に操る。これでは数で優っていても何のアドバンテージもない。
「……来ます!」
綺羅星の如き宝具の群れが流星となって射出される。
その上方には、王の支配下に置かれたドラグレッダーが炎をまき散らしまっすぐに向かってくる。
本体たるギルガメッシュもまた、どこからか飛来した剣を手に悠々と歩き出す。
三面からの同時侵攻。迷っている時間はない。迎撃に飛び出すガウェインに続こうとした映司を、こなたが引っ張って止める。
「…映司さん、あれを使おう!」
こなたが言うと同時に、映司の胸から三枚のメダルが飛び出してくる。色は紫……この聖杯戦争では一度も使っていない、恐竜系等のメダルだ。
本来映司の自由意志では使えないこのメダルが飛び出してきたということはすなわち、この状況が絶対的な危機であるということ。
そして――
「これは…そうか、こなたちゃんから供給される魔力がすごく増えたから…!」
火野映司、仮面ライダーオーズのマスターである泉こなたが、ウィザードとして飛躍的に成長したためだ。
今のこなたは、消耗の激しいプトティラコンボを用いるに足る十分な魔力を保有している。
映司がコンボの制御に気を回さずとも問題ない――つまりは消耗を気にせず全力で戦えるほどの。
かつてディケイドは自身のマスターとこなたを比較して、その未熟ぶりを突いた。
ここに来て、仮面ライダーオーズに初めて全力で、いや全力以上で戦う機会が巡ってきたのだ。
-
「…いいかい、こなたちゃん?」
「うん。私も一緒に戦うから…きっと大丈夫だよ!」
何の力もない非力なマスター。そんな者はもうどこにもいない。
今、ここにいるのは…映司を支え、肩を並べて戦う「相棒」にほかならない。
映司が思い出すのは、かつての相棒の姿だ。似ても似つかないのに、何故か懐かしい気持ちになる――三枚のメダルを、掴み取った。
ベルトに叩き込んだメダルが魔力を循環させ、火野映司の全身を覆う。
緑でも黄色でも白でも青でも赤でもない、本来もう失われたはずの禁断の力。その力が今、必要だ。仲間たちを守るために。
かつて見た悪夢を振り払う。マスターたちには傷一つつけさせないという、固い決意とともに。
「変身!」
仮面ライダーオーズが有する最強の宝具――プトティラコンボ。
力強く翼が広がり、長く伸びた尻尾が大地を打つ。迫り来る刃の嵐と赤龍をじっと見据える。翼が羽ばたき、重力の鎖から解き放たれたオーズが弾丸のように突っ込んでいく。
「――ゥゥゥゥゥウオオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!」」
獣の如き咆哮が放たれる。
ドラグレッダーが吐き出した灼熱のブレスを、オーズが冷気のブレスでもって迎撃した。超高温と極低温が激突し、空気さえも震わせる。
その衝撃は降り注ぐ英雄王の宝具を散り散りに吹き飛ばし、橋の橋脚に次々と突き立たせた。
そして、ガウェインがその只中を駆け抜けていく。狙いは英雄王ギルガメッシュの首、ただ一つ。
ギルガメッシュが再度宝物庫を開くが、間に合わない。ガウェインの踏み込みは陽介のペルソナによって強化されている。
音すらも置き去りにする一撃は、しかしギルガメッシュが構えた龍の尾を模した剣に受け止められた。
「英雄王、討ち取らせていただく!」
「音に聞こえたキャメロットの騎士か。ふん、騎士王が倒れた今も剣を置かぬは滑稽よな」
「今の私の主はルルーシュだ…ゆえに、ここは押し通る!」
ガウェインが気合とともに聖剣を一閃させると、寸前に後退したギルガメッシュの胸元に一筋の傷が刻まれる。
さすがにセイバーと正面から斬り合うのは英雄王といえども荷が重い。セイバーとは接近戦だけに特化したサーヴァントなのだから。
すかさず追撃に入ろうとしたガウェイン、しかし後方から迫る気配が許さない。身を翻すと、ドラグレッダーが大きく開けた顎で今にも食らいついてくるところだった。
ガウェインはなんとか回避したが、次は体勢を整えたギルガメッシュの斬撃が来た。
剣を構え直す時間はない。一直線に突き込まれる剣閃――受け止めたのは、飛び込んできたオーズの斧だ。肉食恐竜の頭を象った意匠の斧が、龍尾の剣と拮抗する。
「来たか、雑種。貴様の欲望、我が喰らい尽くしてやろう」
「遠慮しときます……よ!」
オーズがギルガメッシュの剣を弾く。だが、ギルガメッシュが接近戦ではガウェインに及ばないように、オーズもまたギルガメッシュには届かない。
閃く幾つもの斬光は目にも止まらず、剣の英霊たるガウェインならば防げただろうが、騎兵であるオーズではそうも行かなかった。
ギルガメッシュもまた神話に名を刻む英霊だ。セイバーには譲るとはいえ、刀剣の扱いは並みの英霊を軽く凌駕する。
援護に入ろうとするガウェインは、再び襲い来るドラグレッダーとバビロンの宝具たちに足止めされた。
プトティラコンボの尻尾、テイルディバイダーを振り回して隙を狙うが、ギルガメッシュは虚空から飛び出てきた剣を片手で掴み、受け止めた。
「やはり竜種には竜種よな。楽しいぞ、雑種!」
余裕すら感じさせるギルガメッシュに、映司は答えられない。
オーズ・プトティラコンボと龍騎なら、パワーはオーズに軍配が上がる。しかしこの場合、装着者に差があった。
変身しなければ人間とさほど変わりがない火野映司と、元から一流の英霊であるギルガメッシュでは、スペックに天と地ほどの開きがある。
ギルガメッシュが本来持つ膂力や速度に、龍騎の力が上乗せされた形だ。オーズに拮抗せずとも、近いレベルまで迫っている。そして、差が縮まれば物を言うのは両者の戦闘技術になる。
仮面ライダー龍騎というスタイルに限って言うなら、今のギルガメッシュはオリジナルの龍騎やディケイドをも凌駕しているかもしれない。
-
「それでも、ここは退けないんだ!」
至近距離で冷気のブレスを吐きつける。対抗してギルガメッシュが一挙動でガントレットに叩き込んだカードが新たな力を召喚。オーズの眼前に巨大な盾が現れ、冷気を完全にシャットアウトした。
凍りついた盾をメダガブリューで殴りつける。粉々に砕ける。その向こうにギルガメッシュは既にいない。ギルガメッシュは跳躍し、ドラグレッダーに騎乗していた。
ギルガメッシュはドラグレッダーの頭部を傲岸に踏みつける。龍は暴君の怒りに触れぬよう、直ちにその意図を組んで高く舞い上がる。
「フハハハ…やるな。ここまで勝ち残ったのは伊達ではないか」
ギルガメッシュは一旦引いた。何故、と戸惑うも一呼吸置けることはオーズにとっても好都合だ。ガウェインとともに後退し、マスターたちの元へと舞い戻る。
「こなたちゃん、大丈夫?」
「うん、私は平気。映司さんこそ大丈夫?」
「俺も平気。前よりずっと安定して紫のメダルを使えてると思うよ。こなたちゃんのおかげでね」
その言葉は嘘ではない。本来プトティラは長く使えば暴走の危険があるコンボだが、ここまでの戦闘でその兆候は感じられなかった。
こなたから供給される魔力が潤沢なため、映司の状態も安定しているからだ。
「とはいえ、お前たち二人がかりでも詰め切れんか。花村、もう一度補助魔法を頼む」
「おう。頼むぜ、アレックス!」
マスターたちはサーヴァントの攻防を見ているしかなかった。
サーヴァントとペルソナの融合体を操る陽介といえども、超級のサーヴァントたちの闘争に割って入ることはできなかった。
ガウェインやオーズが何気なく弾く剣の一本でさえ、陽介が防ぐには重すぎる。ルルーシュやこなたでは言うまでもない。
「あの龍が厄介だな。どうにかして仕留められないか?」
「難しいですね。ギルガメッシュは常に龍の周りに宝具を展開し、護衛させている。まずはあの宝具の防壁を突破しなければ」
陽介が補助魔法をかけ直し、こなたが回復をする。
オーズ、ガウェイン共に万全の状態に復帰するが、それはあくまで振り出しに戻ったというだけだ。
「もし奴が宝具を無尽蔵に呼び出せるのなら、長期戦は不利だ。一気に決めるしかない」
「じゃあ……あれ、やる?」
こなたが言う「あれ」とは、一発限りの切り札のことだ。
マーガレット名付けるところの「至高の魔弾」。サーヴァントすらも傷つけ得る、とっておきの鬼札だ。
「いや、駄目だ。あれは俺たち三人が全力を傾けねばならない。向こうのマスターがその隙を見逃すとは思えん」
ルルーシュが否定する。サーヴァントたちの攻防の間、ルルーシュはじっと綺礼を観察していた。
サーヴァントたちに割って入れないのはこちらと同じだろうが、それにしてもあの神父は動かなさすぎた。
神父はルルーシュと同じくこちらを観察していた…隙を見せればそこに食らいついてくる、そんな不気味さを感じた。
ギルガメッシュがマスターに直接攻撃してこないのは、姑息な真似はしないという王たる誇りがあるからだろう。
あるいは正面から力づくでガウェインとオーズを打ち破ることに意義を感じているのかもしれない。だがマスターまでそうだとは限らない。
「じゃあ、私が礼装であの人を見張って、ルルーシュくんがそれに備える。陽介くんが映司さんとガウェインさんの援護をする…これでどうかな」
敵対者の情報を表示するこなたの礼装なら、偵察にはうってつけである。
もし綺礼が動けば、ルルーシュが対応する。立ち向かうことは難しくても、こなたを連れて退避するくらいは十分に可能だ。
-
「相談は終わったか? では、再開するぞ」
結論を待たず、ギルガメッシュが再度侵攻してきた。
剣と炎の嵐が降り注ぐ。「壊刃」サブラクに匹敵する、広範囲に渡る破壊。
オーズがガウェインを掴み、炎は冷気のブレスで迎撃、宝具の雨の間隙を縫って突撃する。
一瞬後には先程と同じ光景が繰り広げられる。龍から降りたギルガメッシュへガウェインが斬りかかり、オーズがその援護につく。
しかし、今度は陽介が加わる。
ペルソナのアレックスが両腕を変形させる。ペルソナがただ魔法を放つだけではギルガメッシュには通じないだろう。
だが、サーヴァントの力を受け継ぐアレックスなら…サーヴァントの力を再現することができるアレックスなら、話は別だ。
ペルソナ使いの枠を超えた高密度の魔力が荷電粒子に変換され、まばゆく輝く槍となる。
「力を貸してくれ、アレックス……行くぜ!」
真っ直ぐに放たれた荷電粒子の槍は、オーズに気を取られていたドラグレッダーに直撃した。
炎を司る龍といえど、雷光にはさほどの耐性はない…龍が身を焼く激痛に絶叫を上げる。
「ちっ、竜種といえどこの程度か」
ガウェインがすかさずドラグレッダーの首を落とそうと跳躍するが、その瞬間にギルガメッシュはアドベントのカード効果を解除。鏡像が砕けるようにドラグレッダーが掻き消える。
空振りしたガウェインだが、龍が戦線を離れた今こそ好機とすぐさまギルガメッシュに詰め寄る。
頭上にはオーズ。今度はいくら宝具を展開しようと一手遅れるということはない。
「威勢のいいことだ。だが一つ忘れてはいないか?」
しかし、ギルガメッシュは怯まない。口元には酷薄な笑み。
「貴様らのマスターが仕事をしたように…我のマスターも遊んでいるわけではないらしいぞ」
オーズが急停止。ギルガメッシュに気を取られていたが、いつの間にか綺礼の姿がない。
急ぎ振り返り、マスターたちを見る。ルルーシュとこなたではない。襲われていたのは、ドラグレッダーを攻撃した陽介だった。
全力を振り絞ったために、陽介はしばらく動けない。その隙を言峰綺礼は狙っていたのだ。
「陽介くん!」
「よそ見をしている暇があるのか、雑種 」
――ファイナルベント――
鳴り響いたのは、必殺を告げる死神の声だった。
-
◇ ◆ ◇
陽介が荷電粒子の槍を放った一瞬、視界が閃光に染め上げられたその一瞬だけ、こなたは綺礼の姿を見失った。
綺礼にはその一瞬で十分だった。夜闇に紛れて姿を隠し、人間離れした脚力をもって一気に陽介に接近――全力を開放した直後のアレックスへと拳の一撃を叩き込むには。
アレックスの姿が歪む。膨大な力を流し込まれたために、姿を構成する魔力が乱れに乱れたためだ。
ペルソナのダメージは本体へとフィードバックされる。腹に叩き込まれた一撃が骨と内臓をまとめて幾つか押し潰す。
陽介は血を吐きながら吹き飛んだ。
「がっ……はっ!」
「陽介!」
ルルーシュがコードキャストを放つ。
赤い雷は、神父が両手に生み出した刃渡り1メートルに満たない剣を投擲することによって、すべて見当違いの方向へと誘導させられた。
「ふむ、一撃で仕留めるつもりだったが。やはりペルソナ使いとは普通人よりも頑丈なものだな」
ルルーシュが立ち塞がったことにより、陽介にはそれ以上の追撃は加えられなかった。こなたが急いで駆け寄り、回復のコードキャストを陽介に施す。
元々アレックスが高い再生能力と耐久性を有していたため、ペルソナとなった今はその特性をやや引き継いでいる。そのため陽介は即死することはなかったものの、かなりの深手を負っていた。
「さて…些か呆気ない気もするが。どうやら向こうも決着がつきそうだ。こちらも終わらせるか」
とん、と神父が軽く一歩を踏み出す。それだけで、ルルーシュには目の前にナイトメアフレームが降りてきたような錯覚を覚える。
この神父は、ペルソナであるアレックスをたやすく殴り飛ばした。ただのNPCではありえない。近接戦に不慣れなルルーシュが太刀打ち出来る相手ではない。
「花村陽介とは別の意味で、君には期待していたが。打つ手なしかね、ルルーシュくん」
「くっ……」
神父のずっと後ろ、サーヴァントたちの戦いも佳境に入っていた。ギルガメッシュが龍を召喚し、空高く舞い上がっていく。
こなたの宝具を使わずともわかる。あの魔力の高まりは、勝負を決めに来ているのだ。
「泉、花村はどうだ?」
「待って、まだ時間かかるよ! 傷が深すぎる」
陽介も、こなたも動けない。
ルルーシュ一人では神父に抗えない。
「では、ここまでだな」
「いや、そうでもない!」
ならば――少し早いが、カードを切る。
ルルーシュは開戦当初から槍王イルバーンをずっと地面に突き立てていた。持つのが重かったから…というのもない訳ではないが、ルルーシュの十八番を実行するためだ。
こなたの礼装により、冬木大橋の構造データは既に把握している。なぜだかやたらと硬くなるように情報が変化させられていたが、今のルルーシュとイルバーンなら改竄は可能だ。
ルルーシュはイルバーンに命令を下す。
「チェックメイトには早すぎたな!」
「これは――足場を!?」
綺礼が立っている橋そのものを、情報を分解し消去する。
ルルーシュがかつて得意としていた足場破壊戦術を、ようやく披露する機会を得た。
砂のように崩れ去っていく橋に巻き込まれまいと、綺礼が退いていく。破壊の規模としてはせいぜい十メートルというところだが、僅かながらに時間を稼げた。
視線の先、ギルガメッシュは今にもガウェインたちに襲いかかろうとしている。
ルルーシュは右腕に意識を集中し、叫んだ。
「令呪をもって命ずる!ガウェインよ、ギルガメッシュを斬り捨てろ!」
スザクから託された令呪が蓄えた魔力を解放、ムーンセルの定めた法則を歪める。彼の騎士であるガウェインに力を与えんがために。
ギアスではない絶対遵守の命令が、発動した。
-
◇ ◆ ◇
「これは……!」
天へと駆け上がっていくギルガメッシュ。
瞬時に後を追ったオーズと違い、翼なきガウェインはただ見上げることしかできない。宝具を放とうにも今のギルガメッシュには効果は薄く、オーズまで巻き込んでしまう。
ギルガメッシュの行動を許せば、確実にオーズかガウェインのどちらかが敗北する。それだけのエネルギーを秘めた攻撃だ。
だというのに何もできず結果を待つしかないという焦燥がガウェインを蝕んだ、そのとき。
急激に沸き上がってきた魔力。体内からではない、これは――
「ルルーシュ…!」
かつて無二の友ランスロットとの決闘の時にも感じた力の本流が、またしてもガウェインを奮い立たせる。
今ここに、王命は下された。
「ならば、往くのみ!」
ガウェインの姿が消失する。
次に実体化した場所は、遥か天空――オーズも、ギルガメッシュも超えて、さらに上。
ギルガメッシュとオーズが同時にガウェインを振り仰ぐ。両者の顔には驚愕が張り付いている。
大地を斬り裂かんばかりの斬撃を、ギルガメッシュへと振り下ろす。対してギルガメッシュは、とっさにファイナルベントの矛先をガウェインへ向けて放つ。
「はあああああああぁぁっ!」
「ぐっ――」
太陽の聖剣は龍騎には通用しない。だがそれは、宝具を全面解放した時の話だ。
聖剣をただの刃として振るうのなら、龍騎だろうとギルガメッシュだろうと届き得る。
ガウェインの全力と、令呪を上乗せした一撃は龍騎のファイナルベントに拮抗する力を生み出していた。
「セイヤァァァ――――――!」
そして、ギルガメッシュの全力と拮抗しているということは、下から迫ってくるオーズに対応する余力はないということ。
メダガブリューが飲み込んだセルメダルが魔力となって迸り、純粋な破壊力として現れる。
プトティラコンボの必殺技、グランド・オブ・レイジ。凄まじいエネルギーを内包したアックスモードのメダガブリューを叩きつける技だ。
龍騎のファイナルベント、ドラゴンライダーキックの三倍近い威力を誇るその攻撃が、ギルガメッシュへと直撃する。
「貴様ら、よもやここま――」
ギルガメッシュの驚愕、あるいは惨事はかき消される。
ガウェインの聖剣。ドラゴンライダーキック。グランドオブレイジ。三極の巨大な力の激突は、漆黒の空を白に染め上げるほどの閃光を放った。
-
「やったか……?」
地上で天を見上げていたルルーシュ達も、思わず言葉を飲み込むほどの輝き。
令呪一画とかなりの魔力を持って行かれたが、どうやら乾坤一擲の攻撃は成功したようだ。
「つ…ゴホッ、ガフッ。くっそ……痛え!」
「花村。気がついたか?」
「おかげさんでな…うお、なんだこの光!」
「映司さんたちがやったんだ。あっ、降りてきた!」
やがて光が霧散していくとともに、空からガウェインを抱えたオーズがゆっくりと降りてくる。二人とも全身に傷を負っている。特にガウェインがひどい。
必殺技を放っていたオーズと違い、ガウェインはただ聖剣を振るっただけだ。自らが放つエネルギーに守られていない分、他の二人とは受ける衝撃も段違いだっただろう。
着地した二人を、勝利を確信したマスターたちが出迎える。だが、サーヴァントたちは険しい目を空へと向けたままだ。
「申し訳ありません、ルルーシュ。仕損じりました…!」
ガウェインが苦渋に満ちた声で言う。オーズもまたそれを否定しない。
二人の視線の先には、ガウェインの言葉通り――ギルガメッシュが、五体満足のまま存在していた。
「中々面白い趣向だったぞ、雑種ども」
そう楽しそうに告げるギルガメッシュとて、無傷ではない。全身の装甲は砕け、黄金率を保っていた肌も無残に焼け焦げている。
しかし眼光に微塵の衰えはない。それはつまり、戦いはまだまだ続くということだ。
「王律権キシャル――我が財を砕き、この身に傷をつけるとはな。楽しませてくれるものよ」
ガウェインとオーズの攻撃は、ギルガメッシュが展開した宝具によって威力を半減させられた。
宝具は破壊したものの、ギルガメッシュを討ち果たすことはできず、オーズとガウェインがダメージを負っただけだ。
「へっ、じゃあ今度こそ完璧にとどめを刺してやりゃいいんだろ! そんなズタボロの状態なら楽勝だっての」
しかし膝を屈することなく、陽介が気炎を吐く。
仕留め損なったとはいえ、ギルガメッシュの傷も深い。対してオーズとガウェインは、負傷しているとはいえ動けないほどではない。
ドラグレッダーもまた半死半生の深手であり、回復した陽介ならば今度こそ倒し切れるだろう。
「ククク…言うではないか、雑種。ではこうしよう」
ギルガメッシュは焦らず、一枚のカードを引き抜く。サバイブ――と刻まれたカードをガントレットに装填。
「あれは……!」
唯一その行為の意味を知るオーズが、絶望に顔を歪める。
五人の見ている前で、ギルガメッシュとドラグレッダーが業火に包まれた。
「なんだ!?」
「こなたちゃん、俺とガウェインさんを回復して!早く…!」
-
ただ一人状況を理解したオーズが、体勢を整えるべくこなたを急かす。
何事かわからずとも、オーズの様子からただ事ではないと判断したこなたが全力でサーヴァントを癒やす。陽介もそれに続いた。
「伏して仰げ。これが王の威光である――」
炎の中からギルガメッシュの声が響く。躍り出てきたドラグレッダーにはもう傷一つない。無双龍ドラグレッダー改め、烈火龍ドラグランザー。
続いて姿を見せた龍騎も全身の装甲が元通り復元され、また意匠も力強いものへと変化している。
サバイブ・烈火のカードを得て現れる、龍騎の強化形態――龍騎サバイブ。仮面ライダー龍騎の、真なる全力の姿である。
あらゆるパラメータがワンランク上昇し、マグマの如き灼熱を衣のように纏っている。
「今までは、本気じゃなかったってこと……?」
力を取り戻した龍騎サバイブを前に、こなたの声も震えている。
通常形態の龍騎ですら、全力でかかっても仕留め切れなかった。なのに、そのさらに上がある。
こなただけではなく、ルルーシュもまた、心を支配する絶望に屈しそうになっていた。令呪という切り札を切り、二人のサーヴァントが全力を叩き付けてなお、軽くあしらわれた。
「まだだ……まだ何か、活路があるはずだ!」
口では仲間を鼓舞するためにそう言っても、そう簡単に打開策を考え付けはしない。
もはや残っている令呪はみな一画のみだ。それを使うということは死を意味する。
無論、己の命を勘定に入れなければもう一画は使える。鳴上悠が示したことだ。もう一度令呪を使うことでギルガメッシュを倒せるなら、ルルーシュは迷わずそうするだろう。
しかし、そうではない。ガウェインの宝具は龍騎にさえ通じないのだ。その強化形態である龍騎サバイブには言わずもがな。
もう一度眼前に転移させて斬撃をさせようにも、二度も同じ攻撃が通じる相手とは思えない。
至高の魔弾は論外だ。効いたところで、一発でギルガメッシュを倒せるわけではない。
「……奴は、神父はどうした!?」
マスターを狙えば、という思考に行き着いた時には遅かった。足場破壊から逃れた綺礼は既にギルガメッシュの後ろにいる。
「惜しかったな。一度は勝てると思い、それが覆された時の君たちの表情…中々に見応えがあったよ」
ルルーシュたちの絶望を味わうかのように、綺礼が述懐する。
「ギルガメッシュが本気を出す以上、もう私の仕事はないな。主演目はもう終わってしまっただろうが…さて、君たちはどのような結末を迎えるのか」
――ファイナルベント――
ギルガメッシュが手にした銃にカードを差し込むと、ドラグランザーの体が折り畳まれ、バイク形態へと変形していく。
バイクに騎乗したギルガメッシュが腕を掲げる。彼の背後に無数の空間震動が起き、数十もの宝具が顔を覗かせた。
「さあ――幕だ。雑種ども。王の前に頭を垂れよ!」
十分に楽しんだと、ギルガメッシュは終わりを告げる。もう遊びはない、本気の、全力の一撃。
ドラグランザーが鎌首をもたげ、灼熱の火球を吐き出す。後を追うようにバイクが発進する。
龍騎サバイブのファイナルベント、ドラゴンファイヤーストーム。火球とドラグランザーそのもので、敵対者を打ち砕く必殺技だ。
さらに英雄王が指を鳴らす。それを合図に、宝具が次々と射出されてくる。
炎と宝具の弾幕、そして龍の特攻。人の形をした破滅が差し迫ってくるのを、誰もが見ていることしかできない。
「……ルルーシュ、みな、下がってください」
否、ただ一人――ガウェインだけが、闘志を失わず立ちはだかった。
-
「何をする気だ、ガウェイン!」
「この剣ならば、あの龍に対抗できるかもしれません」
その手には陽介が持っていた封印の剣がある。かの騎士王ですら封じ込めた、異世界の大陸に名を残す伝説の竜殺し。
今までは、万が一ギルガメッシュがマスターを狙った時のために陽介が持っていたが、この状況ではもう陽介が持つ意味が無い。
「何とか、一手は凌ぎます。そこから先を――」
その先を言わず、ガウェインは前進する。否、言えなかったのだ。
ここを凌いだところで、どうするというのか。もはや打てる手はないのに。
「ガウェインっ……!」
迫り来る火球と刃を、ガウェインは聖剣と封印の剣を交差させて叩き落としていく。
その剣技はまさしく、彼の友であるランスロットが見せたもの。太陽の騎士は親友との戦いの中で、二刀を扱う彼の武技を己に刻みつけていた。
炎は龍騎となったギルガメッシュに効果が薄い――ならば、それはガウェインにも同じことが言える。
斬り割った火球が至近距離で爆発しても意に介さず、ガウェインはひたすらに前進し続ける。
「おおおおおぉぉぉっ……!」
「健気なものよな。良かろう、一思いに踏み潰してやろうではないか」
嘲るようにギルガメッシュが速度を上げる。
宝具の迎撃に気を取られたガウェインは、その疾走に対応できない。
「ガウェインさんっ!」
オーズがガウェインの前に飛び込んだ。バズーカモードのメダガブリューを使うもう一つの技、ストレインドゥームをドラグランザーの鼻先に撃ち放つ。
斬撃を繰り出すグランド・オブ・レイジに対して、ストレインドゥームは衝撃波として放つ。
だが――弱い。グランド・オブ・レイジに注ぎ込んだ力が大きすぎた。本来の半分の威力も再現出来ていない。
当然、ドラグランザーの疾走は止まらなかった。オーズの放った衝撃波はあっさりと吹き散らされる。
だがオーズも諦めない。全力で冷気のブレスを放射し、少しでもドラグランザーの勢いを殺そうとする。
ドラグランザーが生む熱量はドラグレッダーの比ではなく、先ほどは何とか相殺できたが、今度は押し込まれる。
やがて限界に達したオーズが弾き飛ばされる。大地に叩き付けられたオーズのベルトからメダルが排出され、変身が強制的に排除された。
「感謝します、ライダー…!」
だが――それで十分。ドラグランザーの速度は確かに減少した。ガウェインはその機を見逃さない。
機を見定めたガウェインがガラティーンを放り投げ、封印の剣を両手で握る。ガウェインの魔力を込められた封印の剣は炎を纏い、ドラグランザーの機首へと突き込まれた。
しかし、拮抗しない。ガウェインが踏ん張った両足が地面を削り、徐々に後退させられる。
最も力の集中しているドラグランザーの頭部、突進の勢い、そしてギルガメッシュ自身の力。あらゆる条件がセイバーの時とは違いすぎる。
「その剣は我の蔵にもないものだ。さて、どこまで保つか見せてみるがいい」
楽しげなギルガメッシュとは逆に、ガウェインは死力を振り絞る。それでも、届かない。封印の剣の効果で何とかドラグランザーの疾走を押し留めているものの……封印までには至らない。
そして封印の剣に細かいヒビが走っていく。激戦に次ぐ激戦、そして巨大な力のぶつかり合い。
マスターの宝具として顕現した封印の剣では、超級のサーヴァントたちの戦いに、最後まで付いて行くことができないのだ。
-
「っ……」
やがて、剣は砕け散った。同時にガウェインも崩れ落ちる。
致命傷は負っていないが、魔力を放出し尽くしたその姿はもう、敗残兵そのものだ。
「中々楽しめたぞ、キャメロットの騎士」
だが、龍騎サバイブのファイナルベントを凌ぎ切った。
ギルガメッシュが褒美とばかりにバイクを降りて、剣を片手にガウェインへと歩み寄る。
時間がないと見た映司が立ち上がり、もう一度変身しようとメダルを取り出す。が、過度に魔力を消費した体は自由にならず、メダルを取り落としてしまう。
「ガウェイン!」
「くっ、アレックス!」
ルルーシュがガウェインへと魔力を供給し、陽介が疾風魔法を使ってガウェインの背を押す。
ギルガメッシュがそんなマスターたちを見て嘲笑する。状況は好転せず、ただ審判の時を先延ばしにするだけだ。
そんな中、こなたは転がってきたメダルを拾う。
「……映司さん」
そのメダルの色は赤。そして――ひび割れている。
以前聞いた、映司の相棒の命が入っていたメダルだ。
「このメダルを、使うの?」
映司にとっては、特別なコアメダル。
魔力を消耗した今のオーズでも、このメダル自体が魔力を供給してくれるため問題なく使用できる。
そして……一度きりしか使えないと、映司は言った。
「……こなたちゃん」
「ううん、わかるよ。きっとここが選ぶ場面。本当にギリギリの場所なんだってことだよね。
映司さんが大切にしてたメダルを使わなきゃいけないくらいの状況なんだって」
これを使うのは、オーズが力を失うことを覚悟した上でのこと。
そう理解しているからこそ、こなたも覚悟を決めることができる。
「こなたちゃん…俺に力を貸してほしい。みんなが、生きて帰るために」
「いいよ。だって私たち、相棒だからね!」
あっさりとこなたは言う。結果次第で死ぬかもしれないのに、微塵の躊躇いもなく。
これほどの信頼を裏切ることは、映司にはできない。
「今日も、明日も生きていくために、今戦わなきゃいけない。生きることは戦うことだって誰かが言ってたけど、今なら私にもわかる気がする。
戦わないと生き残れない…でも私、死ぬつもりなんてないから。勝って……生きて帰るよ! そのために戦うんだ!」
-
こなたは力強く言い切る。絶望に負けない強い意志が、その瞳には確かにある。
だからこそ、映司も覚悟を決められる。
たとえこの一撃で己が砕け散ってしまうとしても――この優しいマスターだけは、なんとしても。
「力が欲しい、アンク……俺に、みんなを守れる力をくれ!」
――タカ!
――クジャク!
――コンドル!
もはや懐かしい、相棒の声が聞こえた気がする。映司は笑い、最後の変身を成し遂げた。
龍騎と同じ、いやそれ以上の熱さ――炎。かつてないほどの力が沸き上がってくるのを感じる。
映司はそれを、アンクとこなたが側にいるからだと確信する。
タジャドルコンボに変身したオーズの胸から、七枚の恐竜メダルが飛び出てきて、オーズの左腕にあるタジャスピナーへとセットされた。
七枚の恐竜メダルから生み出される膨大なエネルギーがタジャスピナーの中で循環・増幅し、巨大な力へと練り上げられていく。
恐竜メダルを一発きりの弾丸として放つ――形は違えど、これもブロークン・ファンタズム。
異変を察したルルーシュが陽介に指示し、ガウェインを風で吹き飛ばす。ギルガメッシュが、オーズが生み出すエネルギーの奔流を見て笑う。
「ほう、それが貴様の切り札か、欲望の王。いいぞ、そうでなくてはな!」
「オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォッ――――!!!!」
そして、オーズの最後の技が発動した。
ロストブレイズ――失われた炎が、もう一度オーズの、映司の力となる。
映司の力と、アンクのメダルと、こなたの思い。すべてを巻き込み、一つの巨大な渦になる。
「ぶ、ブラックホール……!」
「ほう、まだ足掻くか。楽しませてくれる」
目前の現象がどれほど凄まじいか、ルルーシュとて理解しきれない。確かなのは、ギルガメッシュが怯むことなくオーズへと向かっていくということだけだ。
オーズが威を振るうなら、受け止め、正面から打ち砕いてこそ、真の王とでも言うように。
ギルガメッシュは変身を解く。そして虚空より三軸の刀身を持つ奇妙な剣を手にし、相克渦動するエネルギーの中心――オーズの元へと突入していく。
「これを見せるつもりはなかったのだがな。しかしこういう趣向とあっては、我も本気を出すに吝かではない。
さあ、咆えろ――エア!」
それは、世界を切り裂いた剣。
あらゆる宝具の原典を所有するギルガメッシュただ一人だけが持つ――神話の神の名を冠した、ギルガメッシュの真の宝具。
三層のからなる力場を回転させ、空間そのものを斬り裂く対界宝具。騎士王のエクスカリバーすらも凌駕する、本来存在してはならない禁断の力。
オーズの生み出したブラックホールすらも呑み込む、最強にして無尽の破壊がもたらされる。
「原初を語る。元素は混ざり、固まり…万象織りなす星を生む!
フハハハハハハ! 死して拝せよ! エヌマ――
――――――――――――ぐっ!」
-
「天地乖離す開闢の星」――乖離剣エアの真名が解放されれば、この場にいるギルガメッシュ以外の全てが消し飛んだだろう。
だがそうはならなかった。乖離剣を構えるギルガメッシュの腕を、一筋の閃光が射抜いたからだ。
ギルガメッシュの腕を射抜いたのはオーズでも、ガウェインでもない。
「雑種、どもが――!?」
ギルガメッシュが早々に無力と判断し、捨て置いたマスターたち。彼らがやってのけたのだ。
束ねた力を一つにして放つ――あらゆる防御を突き抜け、対象へと確実に着弾する、至高の魔弾。
衛宮切嗣が遺した弾丸。名無鉄之介が遺した槍王イルバーン。鳴上悠が遺したペルソナの力。自分たちだけではない、陽介たちが築き上げてきた絆の具現が、古の英雄王に確かに傷をつけた。
「映司さんっ!!」
こなたが叫ぶ。
至高の魔弾によって真名解放を妨げられた乖離剣は、予定されていた破壊を引き起こさない。
一瞬の停滞は致命的なズレとなる。宝具は不発――ギルガメッシュは、膨れ上がったブラックホールを前に微動だにできない。
ゲート・オブ・バビロンを使うも、射出した端からブラックホールへと吸い込まれてしまう。
自らの敗北を悟った英雄王は目を見開く。
「そうか、これがゼロの求めていた――」
そしておそらく、ギルガメッシュ自身も求めていたもの。
この結果は必然などではなかった。彼らは数時間前までは、ギルガメッシュに圧倒され逃げ惑うだけの弱者だった。
しかし、今。彼らはギルガメッシュを超える。
ほんの僅かな時間で見違えるほどに成長して。徹底的に叩き潰しても、何度でも立ち上がる。
人を試す王を――見守り、時には裁き、決して甘えさせない孤高の王の試練を、超える。
人の可能性。成長の証。厳しい試練の果てに得た無二の宝。それをこの目で見られた。
「――行くがいい、雑種ども。ここから先は、お前たちの道だ」
烈火龍が何とか脱出しようとするが、英雄王が射出した宝剣に頭を刺し貫かれ、一足先に消える。
直後にギルガメッシュの体は暗黒の穴に呑み込まれ、重力の井戸の底へ沈んでいく。
だが、悔いはない。
古の英雄王は――静かに舞台を降りた。
-
◇ ◆ ◇
「今度こそ……やった、のか……?」
呆然と、ルルーシュが呟く。ギルガメッシュはブラックホールに呑まれ、消えた。
ブラックホールはギルガメッシュという巨大な力を呑み込み、ワームホールと化して今も膨張し続けている。
オーズがロストブレイズを解き放つ瞬間、彼らは精神世界で手に入れた力――ミックスレイド・至高の魔弾を放っていた。
ギルガメッシュにはロストブレイズすらも凌駕する力があるかも知れない。ならば、その発動を邪魔してやることだけが、こなたたちが勝利するたった一つの方法だった。
ギルガメッシュが最後に放とうとした宝具は、おそらく彼をしてなお、全力の集中を要するものだったのだろう。
でなければいかにサーヴァントにも通じるとはいえ、こなたたちの攻撃を許すとは思えない。
「――見事だ。これは本当に、予想外の結末だった」
サーヴァントを失った神父のNPCは、満面に笑みを浮かべてこなたたちに賛辞を送る。
陽介が構えようとするものの、綺礼にはもはや戦闘の意思はなく、両手を軽く掲げる。その手先が黒く染まる――NPCといえども、敗者の運命からは逃れられない。
「何故、俺たちを阻まなかった? お前なら、やろうと思えば横槍を入れられたかもしれんだろう」
「勝つことが私の――私たちの目的ではないのでな。とはいえ、手を抜いたわけではない。あれだけの力が放出されている中で動くことなどできんさ」
嘯く神父が本気かどうか定かではないが、それこそサーヴァントか至高の魔弾レベルの力でもない限りは、あのブラックホールの影響を受けて身動きが取れなかったのは不思議ではない。
マスターもサーヴァントも、力を出し尽くした末に掴んだ勝利だ。誰もが地面に腰を下ろし、立ち上がれずにいる。
「ガウェイン、無事か」
「ルルーシュ…さすがに、堪えましたね…」
封印の剣を砕かれ、ファイナルベントを受け止めたガウェインは全身に傷を負っている。しかし、ガウェインは健在だった。
紫色のメダルを弾丸に、最後の一撃を放った映司とは――違う。
「映司…さん」
「こなたちゃん……」
オーズはただでさえプトティラコンボでギルガメッシュと死闘を繰り広げ、さらにタジャドルコンボで恐竜メダル七枚のロストブレイズを放ったのだ。
特に英雄王すら葬り去るほどの一撃を放った代償は大きい。ギルガメッシュがあの時解放しようとしていた宝具を止めるには、それ以上の出力で、ロストブレイズを叩き込むしかなかった。
その結果、英雄王は虚空の彼方に消え――
「火野!」
「え、映司さん、あんた……」
ライダー――火野映司もまた、限界を超えてしまっていた。
変身は解け、こぼれ落ちたメダルも全て砂と消えていく。
「あはは…ごめんね、陽介くん、ルルーシュくん。絶対に死なないって言ってみたけど…そううまくはいかなかったみたい」
映司が死ぬということは、つまりこなたも死ぬということ。
死の恐怖に身を浸しながら、それでもこなたはいつもそうであるように、二人の仲間に笑いかけてみせた。
本当はみっともなく泣き喚いて、もっと生きたいと叫びたいのをぐっと堪えて。そうしなければ、陽介たちが前に進めないと知っているから。
「でもさ、あんな強いやつ倒したんだから、これはもう私たちの勝ちだよね。後はスタッフロールだけっていうか」
「泉……待て、まだ諦めるな! 何か方法があるはずだ!」
「アレックス! 火野さんを治すんだ!」
-
しかし、誰よりもこなたと映司の死を認めないのは、他ならない陽介とルルーシュだった。
陽介が映司へと回復魔法を連発し、ルルーシュもこなたから強引に取り上げた礼装で続く。
しかし――映司、そしてこなたも既に魔力が枯渇している。傷を癒やそうにも、情報が消去されていくほうが早い。
消去速度を遅らせることはできても、根本的な解決にはならない。
「くっそ……どうにかならねえのかよ、ルルーシュ! このまま泉を死なせていいわけねえだろ、」
「わかっている! 俺だってもう仲間が死ぬのを認める気はない! だが、どうすれば……!」
ふと、陽介はこの場にいるもう一人に意識を向ける。
陽介でもルルーシュでもこなたでもない――言峰綺礼。この戦いの始まりを告げたムーンセルのNPC。
陽介たち参加者側ではない、運営側の構成要素。
「なあ、あんた! もしかしてあんたなら何とか出来るんじゃねーのか!?」
藁にもすがる思いで、陽介は綺礼へと問いかけた。
ルルーシュは何を言っているんだこいつは、という目で陽介を見たが、考えてみればその方法が一番可能性がありそうだと思い直す。
「神父よ、一つ疑問がある。貴様とあのギルガメッシュの参戦は、聖杯戦争に元々ありえた要素か?」
「いいや、違う。私も奴もイレギュラー…飛び入り参加のようなものだ」
「ならば俺たちは、本来ならばする必要のない、無駄な戦いをした。そういうことで間違いはないな?」
「ふむ……まあその通りだ。この参戦は我らの気まぐれ故のものだからな」
ならば、とルルーシュは畳み掛ける。
「イレギュラーに対処した相応の見返りがあってしかるべきだろう! 泉は本来ここで死ぬことはない!
お前たち運営側のNPCが本当に聖杯戦争の管理を司っているのなら、正しい結果を歪めてはならないはずだ!」
「そうだ、バイトしたらその分の給料もらえるのが社会ってもんだ! 少しくらい埋め合わせをしろよな!」
二人の少年が轟々とまくし立てる。必死になって、こなたを救う術を模索してくれている。
こなたの頬を、恐怖からではない涙が、一滴、流れる。
「俺たちは、いい友達に会えたね。こなたちゃん」
「……うん。もちろん、映司さんもだよ!」
こなたと映司は笑い合う。数日間の付き合いであっても、ここまで互いを思い合うことができる――それはとても幸せなことだから。
ルルーシュと陽介に押し切られた――という訳でもないだろうが、神父のNPCは一本、指を立てる。
「一つ、手立てがないでもない」
「本当か、おっさん!?」
「もちろんだとも。それは――他ならない君自身だよ、花村陽介」
綺礼は立てた指を陽介に向けて倒す。
そして指を滑らせる。その先には陽介のペルソナ/サーヴァントのアレックスが佇んでいる。
「君は既に一度やってみせただろう。サーヴァントの情報を分解し、自身のペルソナとして再構成する――システムにない、奇跡というやつを」
「あ、あれか…でもあれは、賢者の石があったからできたことだろ?」
「あるではないか。賢者の石に匹敵する宝具が、そこに」
綺礼が示したのは、映司の手にたった一つ残った、ひび割れたコアメダル。かつてアンクの魂が宿っていた、たった一枚の特別なメダルだ。
メダルに人格を宿せることはアンクが実証している。賢者の石の代替として使うのならば、十分すぎる。
-
「でも、泉はペルソナ使いじゃないぜ。どうやって火野さんをペルソナ化させるんだよ?」
「……違う、花村。ペルソナ化させるんじゃない。そのメダルを、火野映司としてムーンセルに認識させる――つまりこういうことだろう」
ルルーシュが導き出した答えに、綺礼は満足気に頷く。
サーヴァントを失ったマスターはムーンセルにより失格と判定され、消去される。
ならば「サーヴァントが肉体を失ってもそこにまだ存在している」とシステムを欺瞞できれば、消去は免れる。
まさに陽介自身が今も証明し続けていることだ。
(それに、ゼロが求めている魂はたった一つ。私の目から見ても、この三者のうち誰もがその資格を満たしていると判断する。ならば二人は不要だ)
綺礼は、これは声に出さなかった。
仮に火野映司の人格をメダルに宿すことができたとしても、残るのはサーヴァントを持たない少女が一人だけ。
それではつまらない。言峰綺礼は魔王ゼロに協力しているとはいえ、ゼロの配下ではないのだ。
魔王の元へ辿り着き、さらなる物語を紡げる者。それはもう一人に確定している。
魔王ゼロと最も近しく、そして遠い者――この演劇の幕を下ろす者は、魔王ゼロとその者を置いて他にない。
「さあ、どうする? 泉こなたを救うというなら協力しよう。英雄王を倒したのだ、それくらいの褒章は与えられるべきだからな」
「……泉。映司さん。いいよな?」
「こっちからお願いしたいくらいだよ、陽介くん。それでこなたちゃんを助けられるなら」
「陽介くん、ルルーシュくん……ありがとう」
こうして、綺礼の協力を得て陽介は映司の魂をメダルに移し替える作業を行った。これにはルルーシュは手が出せない。
「まさか俺がアンクと同じ姿になるなんて、思っても見なかったな……」
魂の改竄は綺礼のおかげで滞りなく済んだ。映司の魂はメダルへと移行し、こなたも消滅から免れる。
「おっと、時間のようだな」
そしてついに、綺礼も消滅の時を迎える。上級NPCだからか、意外なほどに長く存在し続けていたが、やはり限界はあったようだ。
綺礼は頭上に今も広がり続けるワームホールを見る。
おそらくゼロは今、このワームホールを何とか収めようと奔走していることだろう。
なにせ解放直前の英雄王の宝具を呑み込んだのだ。生半可な干渉で打ち消せるものではないはず。
そして、ゼロの手が取られている今、この瞬間ならば。
「このワームホールを通れば、おそらくムーンセルの外側に出られるだろう」
綺礼が何気なく告げた真実は、皆を驚愕させるに足るものだった。
聖杯を破壊する――目的こそ一貫していれども、その後どうするかは全く定まっていなかったのだから。
「外側に出る……現実の世界に帰れるってこと!?」
「そうだ。これほどの規模のワームホールならば、出口は確実にムーンセルの外に繋がっている。サーヴァントに守られているならば、あの空間の中でも消え去ることはないだろう。
そして外に出た後は、魂は肉体のある次元へと自然に引っ張られるはずだ。一度ムーンセルの支配を脱してしまえば、我々もそれ以上追うことはできない」
「おいおい、それって……やったじゃんルルーシュ! 帰れるんだってよ!」
こなたと陽介は喜ぶが、それほど元の世界に未練のないルルーシュには一つやり残した仕事がある。
それを完遂しない限り、いつかまたこのような戦いに引き戻される可能性はゼロではない。
「泉、花村。お前たちは帰れ……自分の世界に」
「え? ルルーシュくんは帰らないの?」
「俺は、聖杯を破壊する。最初からそのつもりだったからな」
-
そしてピースマンの語った、ムーンセルを歪めたすべての黒幕。ルルーシュはそいつと対峙しなければならない。
サーヴァントを失ったこなたと陽介を付き合わせる気はない。
どのみちギルガメッシュとの戦いで消耗しきった彼らでは、いてもいなくてもそれほど変化はないのだ。
ならば――彼らだけでも生き延びてくれる確証が得られたほうが、ルルーシュは心置きなく最後の決戦に臨める。
それで勝てるかどうかはわからない。いや、勝つためにはむしろ絶対に仲間の力が必要だ。
しかし。
「なら、俺も行くぜ。お前だけにいいカッコはさせないからな!」
「陽介くん……それじゃ、私も」
「いや、泉はダメだって! もう映司さんだって戦えないんだし、ここで帰った方がいいって!」
こなたを説得にかかる陽介を見て、ルルーシュはある決意を固める。
やはり、この二人が死んでいいはずがない。抜けられるのなら抜けるべきだ。この狂った世界から。
ガウェインを見る。彼は、目を伏せ頷いた。それがいい、と。
覚悟を決める。二度と使わないと決めた力――だが、今は。
「花村」
「おいルルーシュ、お前からも言ってやれよ。泉はここで――」
しっかりと、視線を合わせる。
ルルーシュの瞳が輝く。
「花村、お前は帰れ。自分のいるべき場所へ」
放たれたのは、絶対遵守の命令。
命令したのは、花村陽介。
人の意志を歪め、弄ぶ卑劣な力――ギアスを、ルルーシュは陽介へと使った。
「ルルーシュくん、何してるの!?」
「ここから先は俺とガウェインだけでいい。お前にも花村にも、帰りを待つ人がいるだろう」
動きを止めた陽介の瞳が、凄まじい早さで動いている。ペルソナ使いである陽介には、ギアスの効き目が薄いのかもしれない。
ガウェインに指示し、陽介を担ぎ上げさせる。ガウェインはそのまま、もう片方の手にこなたを抱えた。
「ガウェインさん!」
「ここまで我が王に付き添っていただき、ありがとうございました。ミス・泉。そしてライダー。花村殿とランサーにも、どうかよろしくお伝え下さい」
「一人でなんて無茶だよ!」
「いや……俺の勘だが、おそらく一人でなければ意味が無いんだ。この聖杯戦争を起こした奴は、たった一人の勝者を求めている。
どうなるにせよ、もう戦えるサーヴァントを連れているのは俺だけだ。だから俺が行く――」
「……っざけんなよ、ルルーシュ! ……置いてかれるのなんて……ごめんだ!」
ギアスに抵抗しているのか、陽介の言葉は絶え絶えだ。
彼は心の底からルルーシュを案じている。こなたも同様だろう。
だが、だからこそ――
「泉、花村。お前たちのお陰で、俺は生きる石を捨てずにここまで来れた。感謝している…本当に。
だから今度は俺に、お前たちを守らせてくれ」
後ろに陽介とこなたの存在を感じることで、絶対に負けられないと己を奮い立たせる。
二人を人質にして、最後の一人になる。それが、ルルーシュの選んだこの聖杯戦争の結末。
「ガウェイン」
-
主の命を受け、ガウェインが二人をワームホールの中へと放り投げる。
その体が消える寸前、
「ルルーシュ! てめえ、今度会ったときに、絶対、絶対――ぶん殴ってやっからな!」
「ルルーシュくん、死なないで! 約束だよ! きっと、もう一度――!」
二人が何かをルルーシュに投げる。それは二人がそれぞれ持っていた物。
契約者の鍵と、各種の礼装。もういない二人の、最後の残り香。
やがてワームホールは収縮していく。今飛び込めばナナリーのいる世界に戻れる――が、ルルーシュはそうしなかった。
陽介とこなたから託された道具を強く握り締め、ルルーシュは神父へと向き直る。
「この後はどうすればいい」
「ふ…心配せずとも、すぐに迎えが来る。そうだ、これも持っていけ」
綺礼はそう言って、残っていた自らの令呪をルルーシュへと分け与えた。
「何故、ここまで俺に肩入れする?」
「フフ…なに、この先でそれがきっと必要になる。無駄に捨てるよりは、と思っただけだ。
ああ――だが、君を前にした時の彼を観察できないのは…残念といえば残念だ…な」
神父のNPCも、消えた。夜の橋に、残ったのはルルーシュとガウェインだけ。
三日間に及ぶ聖杯戦争の果て、残ったのは――ルルーシュとガウェイン、この主従だけだ。
「……ついに、俺たちだけか」
「ですがルルーシュ。我ら二人きり、ではありません」
笑みを浮かべながら言うガウェインに、そうだな、と頷きを返す。ここに来るまで、ルルーシュはたくさんの出会いと別れを経験した。
全てを鮮明に思い出せる。敵であれ、味方であれ、誰もが懸命に願いを叶えようと戦っていた。彼らの存在は、強くルルーシュの中に刻まれている。
その願いを弄ぶ者――全ての元凶を、排除する。
それをもって、ルルーシュの二度目の生は幕を閉じるだろう。
「……! これは」
佇んでいたルルーシュとガウェインを残し、冬木大橋が――否、冬木市そのものが解体されていく。
聖杯戦争が終結したためもはや冬木市を維持する必要もないためだろう。
どこまでも暗く先が見えない奈落を落ちていく。
やがてその底に、黒よりも暗い仮面を見つける。
ルルーシュにはその仮面に馴染みがある――当たり前だ、自分も身に付けていた物なのだから。
足が地面につき、仮面を拾おうと一歩踏み出したところで、
「まさか……お前が残るとはな。神父の干渉の結果か……。
だが、いい。お前になら資格はある……他でもない、この私が誰よりもそれを知っている……」
仮面が、喋った。
影が盛り上がり仮面に吸い込まれ、人の形を成していく。
かつて奇跡を起こす男と呼ばれ、世界を革命し――そして、ルルーシュ自身を終わらせたはずの記号。
ルルーシュは、驚愕と共にその名を口にする。
「貴様は……ゼロ……!?」
「そうだ。我が名は魔王ゼロ。歓迎するぞ、もう一人の私。
そしてようこそ、我が後継者――新しき魔王の器よ」
たどり着いた、終端の果て。
盤面に残った駒は、キングとキング、ただ二人。
ゼロとゼロは邂逅し。そして最後のTURNが始まる。
これは、終わりに向かう物語――。
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【花村陽介@ペルソナ4 脱出】
【泉こなた@らき☆すた 脱出】
【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ 脱出】
【言峰綺礼@Fate/extra 消滅】
【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC 消滅】
【月の裏側/???】
【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:3画
[状態]:魔力消費(大)
[装備]:槍王イルバーン@私の救世主さま、鳳凰のマフラー、聖者のモノクル、遠見の水晶玉@Fate/EXTRA
[道具]:契約者の鍵@ペルソナ4
※槍王イルバーン、他礼装を装備することで、コードキャストを発動できます。
hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。 効果:ダメージ+スタン。
絶対守護領域 決着術式“聖剣集う絢爛の城”をデチューンした術式。 効果:小ダメージを無効化。
heal(16) 効果:HPを小回復
view_status() 効果: 敵対者の情報を表示
view_map() 効果:アリーナの階層データを全表示
【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:ダメージ(大)、魔力消費(極大)
※『聖者の数字』発動不可
【魔王ゼロ@コードギアスナイトメアオブナナリー】
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投下終わりです。遅れてすみません
おそらく最後の展開には疑問がある方もいらっしゃると思いますで、ご意見をお待ちしています
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投下乙です
私は一向に構わん!(某烈海王風)
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投下乙です!!レベルで高いなあー
展開については問題無いと思います
ただ一つ気になったのは644のところで生きる意思が石になってましたので修正したらいいと思います。
あと勘違いなら申し訳ないですが>>636で皆令呪が一つのみとなってますが、こなたは2画持ってませんでしたっけ?
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投下乙です
読みごたえのある作品でした。ついに来るところまで来たな、という感じです
展開については自分も特に問題ないと思います
色々と書く余地のある終わり方ですし
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投下乙!
通常形態の龍騎でプトティラに力で迫るとか英雄王つええw
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投下乙です!面白かった!
死闘の末に英雄王と神父が脱落…ついにここまで来たか、という気持ち
陽介、こなた、映司は生還したけどルルーシュとガウェインには最後の大仕事が残っている
二次聖杯も大団円へ向かいつつありますね
個人的に原作通りオーズ最後の戦いがタジャドルで果たされたのが嬉しい限り
英霊になって尚映司にはアンクが着いていた…
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投下乙です。
悪逆皇帝は、魔王を継ぐのか否か!
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特に問題はなさそうなのでwikiに収録しました
>>649
ご指摘ありがとうございます。こなたの令呪に関しては、残り一画だと完全に勘違いしていました
なのでロストブレイズを使う際に令呪を併用した、と修正します。その他細かい誤字などがあったので、折を見て手直ししておきます
別件ですが、今回こういう引きにしたので、おそらくやろうと思えば次の話が最終回ということも可能だと思います(もちろん、間にもう一話挟みたいという書き手氏もいらっしゃるかもしれませんが)
最終回はいつもどおりの予約制か、もしくはまた書き手陣で話し合って誰が書くか決めるか
他の書き手さんはどうお考えでしょうか?
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予約制で揉めないというなら予約でいいと思います。
どうしても書きたいという書き手が複数いるなら話し合いの場を設けたらいいんじゃないですか?
私は最終回書くような技量無いですから書きたい人に譲ります。
他の書き手の意見も聞きたいですね。
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ここまできて合作というのも現実的じゃありませんし、
ここまでやってきた思い入れもありますので、私は書きたいと思います
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同じく引き続き予約制で問題ないかと思います
私も最終回を書けるほどの力量はありませんので希望される方にお任せします
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月報用
104話(+5) 2/51(-3) 3.9(-5.9)
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もうすぐ一週間たちますけど他の書き手方からは連絡無いですね
このまま予約制でいいんですかね?
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まさかのマルチエンディングくるー?
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遅れて申し訳ありません
私も最終回を書けるほどの力は無いので予約される方がいればむしろ歓迎というところです
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自己リレーになりますけど最後だったら大丈夫ですかね
自分も書いてみたいです
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ずっと思ってたんだがゼロとルルーシュってあった瞬間消滅しないかw
D4C効くの証明済みだし…
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>>663
ゼロが何か対策してくれてるだろ(適当)
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そもそもD4Cの効果で呼ばれた訳でもあるまいし
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ゼロ「よく来たな、ルrうぐあああああーーーーッ!?」パーン
*鮊鷦.⑤礇蘋伺媽鐐茵*完**
くっそシュールだなぁwwwwww
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>>660
3次αみたいな展開になるのかな?
コスモスに君と・終焉の銀河・今遥か遠い彼方のように
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二人いるので予約で決めるのがよさそうですね
予約開始はいつ頃がいいでしょうか
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修正しておきました
>>668
今日の日付変わる時間か、明日の投下終了から一週間後の時刻か、もしくはまた一週間くらい間を開けるか、ってところですかね
こっちはいつでも結構です
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それでは本日の24時でもよろしいですか?
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OKです
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最終回予約します
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ルルーシュ、ガウェイン、魔王ゼロで最終回を予約します
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あ…一秒早かったか…
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ええと、では予私が約ということで
期限って通常通りの一週間+一週間でしょうか?
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最後だから一ヶ月くらいでいいとと思います
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スゲー…1秒の戦いですね
最長2週間でいいと思います。
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最終回予約合戦とは
なんだかんだで書き手に恵まれてたな
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惜しいな
どっちの話も確実に面白いだろうに
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予約は結局2週間になったのかな?
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>>679
もう一方を没ネタとして投下すればいいんじゃないかな
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wikiの死亡者名鑑のアレックスの項に「アレックスがアシュナードと互角に戦っている間に名無がゼフィールを退かせる活躍を見せ事なきを得る」ってあるけど
コレ誤りだよな
実際は陽介がゼフィールを足止めしている隙に名無がアシュナードを説得してたし
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>>682
俺もそこ修正したけど戻されちゃったんだよね…なんなんだろう
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あれ?名無がアシュナードと打ち合ってたんじゃなかったっけ?
別に間違ってるとは思ってなかったんだが読み返してこよ
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オーズって最強宝具を使えないという点ではむしろアルトリアや大統領並みに不遇だと思うんだが
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本人の項目にないものが使えないから不遇って意味がわからないんですがそれは
むしろ逆に優遇されすぎ、甘やかされすぎてかえってキャラとしてダメになっちゃったように思う
本編での活躍の度合いと味方や敵からのヨイショ具合が明らかに乖離してるよ
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活躍度合いでジュネスのがよっぽど上なんだけど
ジュネス以下の英霊がゴロゴロしてるから尺度にならんな
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活躍の仕方が不味かったのも一つの問題だよね
スーパータトバのマッチポンプ感は異常
っていうかレフェリーがいたら普通に反則負け取られてますよねアレ
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>>686
つまりDIOやセリスみたいに後から突然項目に追加すればよかったと?
セリスは結局さらに使用不能と追記されたけど
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>>689
いいや、違うよ?
本編で使えない、もとい使ってはいけない理由が書いてある以上それ以降後付けで登場させた時点でルール違反だよ
それより先にスーパータトバが登場してればまた話は違ったかもしれないけど
>>688
オーズ「ノーサイドってか?レフェリーはここにはいねえよ!」
こうですねわかります
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オーズが特別不遇とは思わないけどオーズで優遇されすぎとか言い出したらディケイドとかクーフーリンとかDIOとかどうなるのよ
散々不遇と言われるアルトリアにしたってステータスに関しては後付けの強化だし
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クーフーリンは思いっきり揺り戻し受けてたからあんまり言えんが…
DIOに関してはロードローラーくらいだったしほぼフレーバーだと思うな
ディケイドとアルトリアに関しては弁護できないけど話の進行上仕方なかったとも思える
バランス調整のためとはいえ、後付設定が多すぎたし次回以降は控えたいかな、対主催勝利EDにしなきゃいけないわけでもない
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何で今更終わったことを蒸し返すのか全く理解できない
ほんとに後から難癖つけるの好きだな
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某死体に補正をつけたらどうなるのっと
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ルール違反とかこれは不味いとか思ったんなら何で投下時に書き手にそう言わなかったんですかね
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後からあれこれ言うのはいつもの事
スルーしていいんじゃね?
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>>695
言われてたぞ
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とうとう読み手が聖杯戦争を始めたかほんとに聖杯先生好きだな
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パロロワ二次組ー
聖杯せんせーい!
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>>699
聖杯くんが教卓に立つ姿を想像しちまったんだがw
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読み手を聖杯戦争に放り込もう(名案)
なお、結末は
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聖杯「今日の授業は戦争です」
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聖杯「今から皆さんに殺しあいをしてもらいたいと思います」
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聖杯「やめて!私を取り合って争わないで!」
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聖杯「争え…もっと争え…!」
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聖杯「決闘(デュエル)!」
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聖杯「呼んだー?」
ゼロ「い、いや…呼んでねっすけど…」
聖杯「いい度胸じゃねえの」
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噂ではエロサイトを見てたら、聖杯戦争に巻き込まれた。寝落ちしたら聖杯戦争に巻き込まれた。という話を聞いたことある
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現実世界の金田一の死因は「エロサイトの閲覧」になるんだろうか?
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HJMちゃんもやっぱ好きなんすね
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聖杯「僕と契約してアベンジャーになってよ」
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はじめちゃんはエロサイト開いたPCの前で死んでるんだよな
可哀想すぎる
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高遠「」
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>>712
それもまた何かの殺人事件かと思われてまう
そして剣持警部や明智警視が抱える迷宮入り事件になってしまい…
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テクノブレイクかな?
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電脳空間で死んだらやっぱ本体も死ぬの?
永遠に眠り続けるみたいなふうに思ってた
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本人を元にしたデータみたいなものだしな…
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コードキャストが原作にもあると知ってびっくり
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むしろ何故ないと思ったのかぎ知りたい
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具体的にいうと、脳が焼き切れる。魂をまるっと移し替えたようなものだから
逆に言うと肉体が死んでも現実に帰れなくなるだけでそのまま電脳空間で生きるのは可能
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トップページの予約が無しになってるけど予約した人はいいのかな?延長の申請は確かになかったけど
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期限1ヶ月じゃなかったの?
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二週間だしいいのかな
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予約した書き手に出て欲しいかな
書かないならもう一人の予約した書き手も書きたいだろうし。
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失礼、期限一ヶ月と思っていたので予約申請を忘れてました
改めて延長申請しますが、実際のところ期限は二週間か一ヶ月かどちらでしょうか
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もう一人の書きたいって言ってた書き手が一ヶ月でいいって言ってるんで、一ヶ月でもいいとは思うかなあ
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一ヶ月も待てるわけないだろ!
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一ヶ月で良いと思うけどね
最後は思いっきり全力で書いてほしいし
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>>727
早漏乙(嘲笑)
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1ヶ月ということは6月の2日が締め切り?
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Today?
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延長が入り、16日になった模様
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1か月なら19日じゃないの
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ようやくあと一週間か…
感慨深いな、これで予約破棄されたらまた1ヶ月待つのだろうか?
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上がったから期待して見てみればなんだぁこれは?
指折り数えて待ってる俺の心を弄んだ罪は重い
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そうだよ(怒り)
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話が投下されるまで気長に待ちますか。来ないからってここで文句いうのはマナー悪いですし
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お前確信犯だろ!
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早漏勢多過ぎィ
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すみません、少し投下が遅れます
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ついに投下宣言がきた!これで勝つる!
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ついにこの二次キャラ聖杯戦争の終わりが訪れるのか。
悲しいな...
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???「つらいことも沢山あったが…でも楽しかったよ みんながいたからこのロワは楽しかった」
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それじゃあな!!しみったれた中二仮面、長生きしろよ!
そしてその高潔なサーヴァントよ、俺のこと忘れるなよ!
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以上、タマモ様とジョン=ドゥ様からの祝電でした
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少しとか言っておいて盛大に遅れてすみません……
最終回、投下します
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そこは広大な空間だった。
壁や天井のない、どこまでも果てしなく続く白亜の領域。
純白の空と大地の狭間にただ一つ、宙に浮かぶ異物がある。
水晶の立方体に囲まれた単眼のオブジェクトだ。水晶はフォトニック純結晶によって構成された檻。
その内部に魔術師たちが追い求めてきたもの――月の中枢、聖杯がある。
西暦2032年。人類は月面で奇跡を発見した。
――ムーンセル・オートマトン。
太陽系最古の遺物。あるいは神の自動書記装置。あるいは七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)。
その機能は万能、宇宙の物理法則すらも書き換える。故に、万能の願望機――『聖杯』と呼ばれる。
聖杯戦争とは、このムーンセルの所有権を巡って行われる闘争である。
己の魂を霊子化し、ムーンセルにアクセスしたウィザード達は、ムーンセルより己の剣たるサーヴァントを与えられる。
サーヴァントとは、人類史に燦然と名を残す英雄英傑を再現した存在。ウィザードはこのサーヴァントの主――マスターとなって、戦場を駆ける。
命と願いを天秤に掛け、万能の願望機を手にするために。
「そうだ、あれこそがムーンセル・オートマトンの中枢……すなわち『聖杯』だ」
囁いたのは、黒よりも暗い闇を身に纏う仮面の魔王ゼロ。
永遠を生きる者。偏在する可能性の収束点。混沌を体現する存在。月の癌――全ての争いの始まり。
その魔王と対峙するのは、やはり王と騎士。
王の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。かつては魔王と同じくゼロを名乗り、やがて古き世界を壊し、新たな世界を創った男。
騎士の名はガウェイン。アーサー王に率いられし円卓の騎士の一人にして、アーサー王の甥である。太陽の騎士と称される、誉れ高き忠節の騎士。
「魔王、ゼロだと……!?」
ルルーシュは愕然と立ち尽くす。
トワイス・H・ピースマンより、ムーンセルに巣食う元凶の存在は知らされていた。そいつと戦う事を覚悟して花村陽介と泉こなたを帰還させ、ルルーシュはこの場に立っている。
そこに現れたのが、かつての自分と同じ名、同じ仮面を纏う存在である。
驚愕が通り過ぎた後、ルルーシュを満たしたのは燃え盛る怒りだった。
「……不愉快だな。ゼロの名は、ゼロの仮面は、誰とも知れぬ輩が勝手に使っていいものではない!」
奇跡を起こす男、ゼロ――それはルルーシュが生み出し、そしてゼロレクイエムにてルルーシュの命を捧げて世界に刻み付けた存在だ。
ゼロとは今や、単なるテロリストではなくなった。人々に溢れる全ての憎しみを精算し、新たな明日を迎える世界を支えていく安全装置となった。
故に、ゼロを名乗っていいのは盟友である枢木スザクだけだ。人並みの幸せを捨て、生涯をゼロとして世界のために捧げる――ルルーシュからこのギアスを受け取った、枢木スザクだけ。
眼前にいるゼロを名乗る男は、隆々たる体躯を誇っている。どう控え目に見てもゼロの名を託したスザクでは有り得ない。
実体の無い記号とはいえ、スザク以外の人物がゼロを名乗る事に、ルルーシュは激しく憤慨する。
「大方、俺を挑発するためにゼロを名乗ったのだろうが……なるほど、効果的だな。貴様と戦う理由がもう一つ増えた。
聖杯戦争を起こした元凶、そしてゼロの名を騙る痴れ者。許す訳にはいかないな。行くぞ、ガウェイン! 奴を倒し、聖杯を解体する!」
「ええ、ルルーシュ。参りましょう!」
英雄王ギルガメッシュとの戦いで消耗したルルーシュとガウェインに、万全の力は無い。
しかし後退は無い。ここは戦う場面だと、主従は言葉を交わさずとも理解している。
敵は一人、魔王ゼロを名乗る黒衣の男。
幾度もの戦いを経て高まったルルーシュの霊子ハッカーとしての感覚は、敵がサーヴァントを従えていない事を察知している。
ガウェインが斬りかかる。負傷しているとはいえさすがにセイバー、剣の英霊である。その踏み込みはまさに神速。
聖剣の切っ先は音よりも早く黒の仮面を断ち割る――事は無く。ゼロが掲げた掌に、聖剣は難なく受け止められていた。
-
「性急だな。私とお前には、まだ語るべき事がある……そうだろう?」
聖剣を受け止めながらも、ゼロの瞳はルルーシュしか映していない。
ガウェインの存在を、路傍の石ころのように無視している。意識する価値も無いとでも言うように。
対して、斬撃を防がれたガウェインもまた動けない。
聖剣を受け止めたゼロの掌――正確には、掌の僅か先に輝く光の印に触れた剣先が、どれほどの力を込めようとも微動だにしないのだ。
「これが私のワイアードギアス――“ザ・ゼロ”だ」
「ギアス……!?」
「そうだルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。私もギアスを持っている。絶対遵守のギアスを持つお前と同じくな。
そしてお前は先程、私をゼロの名を騙る痴れ者と言ったな……」
ゼロはガウェインの剣を拘束したまま、もう片方の手で仮面に触れる。
「しかし、違う……違うんだよ、ルルーシュ。私もまた、ゼロを名乗る資格を持つ者。何故なら――」
仮面の開閉機構が作動し、ゼロの素顔が晒される。
今度こそ、驚愕でルルーシュの呼吸が止まる。
「かつての私の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア――もう一人のお前自身なのだから」
仮面の奥から現れたのは、ルルーシュと瓜二つどころではない、まさにルルーシュその人だった。
顔も、声も、眼差しも。全てが自分と完全に同一。
違いはただ一つ。ルルーシュは白の騎士を従え、ゼロ=ルルーシュは漆黒の魔王である事だ。
ゼロが拳を握る。光の印が消失し、ガウェインが身体の自由を取り戻す。瞬時に放たれたゼロの拳を、ガウェインが聖剣で受け、そして弾かれる。
魔王ゼロはサーヴァントではない。しかし決して人間でもない。セイバーたるガウェインを大きく吹き飛ばすほどの拳を放てる者が、人間であるはずがない。
「ガウェイン!?」
「――っ! ルルーシュ、下がってください! この男、只者ではない!」
接近戦の熟達者たるセイバーに匹敵する膂力は、サーヴァントと比しても遜色無い。
自分と同じ顔をした者がそれだけの力を誇る事実に、悪い夢でも見ているような気がする。
しかし――
「……魔王、ゼロ。違う世界の俺、と言う訳か。だが、この体験はもう済ませている」
動揺は一過性の物だった。ルルーシュは以前にも違う世界の自分と遭遇している。
遠坂邸の地下で攻め込んできたアサシンと対峙した時だ。アサシンの宝具によって引っ張り出されてきた別世界の自分を、ルルーシュは即座に射殺している。
ルルーシュにとってのルルーシュとは、今ここに在る己自身のみ。
親友であるスザクと決着を着けたように、この月の戦場では違う世界の自分だとて敵となる事に疑問は無い。
「そう言えば、そうだったな。お前はアサシン――ファニー・ヴァレンタインの宝具に遭遇していたか。」
そして、その体験こそがルルーシュに確信を与えている。
一つの世界に同じ存在は共存できない。ルルーシュが別世界の自分と遭遇した時、二人の身体は崩壊していった。
あの時はキャスターのお陰で命を拾えたが、キャスターがいないこの場ではルルーシュの消滅は必然であるはずだ。
だがルルーシュも、そして魔王ゼロも、身体に変調を来たす兆候は無い。
「お前は、俺ではない……! この俺と同じルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという存在であるはずはない!」
「然り。故に我は魔王ゼロ。かつてルルーシュであり、今はエデンバイタルの魔王となった存在」
-
ゼロが再び仮面を纏う。
魔王ゼロ。ルルーシュがかつて名乗っていたゼロとは違う、おそらく正しい意味での魔王という力を持った存在だろう。
ガウェインが聖剣を構える。たとえ相手が主と同じ存在であったとしても、剣を向けるに躊躇いは無いという意志の証明。
ルルーシュもまた、友より託されし槍王イルバーンをゼロへと向ける。
「お前が違う世界の俺であろうと関係は無い。お前がこの聖杯戦争の源、多くの人を巻き込んだ元凶だというのなら、倒すのみだ」
「そして聖杯を砕くか。だが、理解しているか? その後に待つのはお前という存在の終焉だという事を」
出逢った時、ガウェインは言った――聖杯を壊した時、貴方は死ぬ事になる、と。
ルルーシュはゼロレクイエムにて、ゼロとなったスザクに討たれ、死んだはずだ。その時抱いた生存への未練をムーンセルが汲み取り、この場に招かれた。
だとするなら、聖杯を破壊すれば、ルルーシュは崩壊するムーンセルと共に消えるか、あるいは召喚される直前の状態に戻り――どちらにせよ、死ぬ事になる。
一足先に自らの世界へ帰った花村やこなたのように生きて元の世界に帰ろうとするならば、聖杯を破壊するのではなく、正しい方法で運用しなければならない。
万能の願望機たる聖杯の力を以ってすれば、死にゆくルルーシュの生体情報を改竄し新たな生命を得る事もできるだろう。
それだけではなく、最愛の妹であるナナリーが望んだ優しい世界を、永久不変に実現する事も可能だ。
「貴様が俺だというのなら、わかるはずだ。“撃っていいのは”――」
「――“撃たれる覚悟がある奴だけだ”。なるほど、お前は世界を託すに足る者を見つけたか」
しかし、ルルーシュは拒絶する。二度目の生も、願望機によって成し遂げられる平和も。
ルルーシュの世界はゼロレクイエムによって破壊され、そして再生する。
混乱はあるだろう。憎しみの収束点である悪逆皇帝が討たれたとしても、それで全てが丸く収まる訳ではない。だが希望もある。戦いではなく対話のテーブルにて平和を掴もうとする人々がいる。
優しい世界の実現を目指すナナリー、それを補佐するゼロ=スザク、そしてゼロに従うとギアスを掛けたシュナイゼル・エル・ブリタニア。かつての黒の騎士団のメンバー。
平和は人の手によって創られるべき物だ。聖杯などという、人の領分を超えた例外で達成して良いものではない。
「お前はまだ聖杯に到達してはいない。聖杯戦争が終結すれば、ムーンセルはただ一人生き残った最後のマスターを迎え入れる。
だが、ムーンセルは未だお前を勝利者とは認めていない。私が阻んでいるからな。
私はお前に用がある。聖杯戦争を勝ち残った最後のマスターであるルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、お前にな。
お前も、私と戦わなくてはならない。私を倒さねば、誰であろうと聖杯にアクセスする事はできないのだからな」
「ふん、元よりそのつもりだ。だが、倒す前に聞いておく……貴様の目的は何だ。何故、この戦いを起こした?
本来の聖杯戦争とは、七人のマスターと七騎のサーヴァントの戦いらしいな。だがこの戦いは俺を含めて二十五人のマスターと、二十五騎のサーヴァントがいた。
何故、聖杯戦争を改変する必要があった?」
ルルーシュにはそれが引っかかっていた。
衛宮士郎から聞いた本来の聖杯戦争のフォーマットは、ルルーシュが言った通り七人プラス七騎のバトルロイヤルだ。
しかしこの戦いの参加者の数はおよそ四倍弱。ここまで規模を広げる必要とは、一体何なのか。
「15848回目だ」
「……何?」
「この聖杯戦争は、15848回目だ。これまでに15847回、失敗した。
本来の聖杯戦争を幾度繰り返そうとも、私の願いを託すに足るウィザードは現れなかった。故に私は聖杯戦争を改竄した。
数十のマスターとサーヴァントが入り乱れるこの戦いは混沌に溢れ、ムーンセルとて結末を予測する事は不可能だった。そして、お前が勝ち残った」
「待て……15847回も聖杯戦争を繰り返したのなら、最後に勝ち残った奴はいくらだっていたはずだ。そいつらはどうした?」
「言ったはずだ、失敗したと。期待外れだったマスターは全て処理してきた。彼らのデータは解体され、次回の聖杯戦争を行う資源として活用された」
-
ルルーシュは絶句する。15847回……通常の聖杯戦争だったとしても七人いるのだ。
単純に計算してもおよそ十一万人の犠牲者が出ている事になる。
「全ては、より強い魂を選定するためだ。この戦いは私にとっても賭けだった。
今回失敗すれば、力を使い果たした私はおそらく異物として認識され、ムーンセルのある世界から排除されていただろう。
だが、間に合った。お前が勝ち残り、私の前に現れた。これで私の望みは成就する」
「望みだと? それだけの犠牲を出して、何を成そうと言うんだ!」
「私の後を継ぐ、新たな魔王の誕生だ」
ゼロは、変わらずルルーシュしか見ていない。
仮面に阻まれその瞳を窺い知る事は出来ないが、それでもゼロはルルーシュに何らかの価値を見出している事はわかった。
「立ち塞がる敵を打ち倒し、あるいは手を取り合い、お前はこの熾天の座へと到達した。
かつて聖杯戦争を制した者、衛宮士郎とアルトリア・ペンドラゴン。欠落を埋めるために絆を捨てた者、鳴上悠とクー・フーリン。
自らを嘘で塗り固めた者、天海陸とイスラ・レヴィノス。知略を尽くし立ち回った者、ジョン・バックスとファニー・ヴァレンタイン。
そして盟友である枢木スザクとランスロット……お前が出逢い、戦ってきた者達は皆、強い意志を示しただろう?
彼らの願いに貴賎は無い。故に彼らは強く、また尊い。そして、そんな願いを持つ者が淘汰しあう事により、勝者の魂はより輝きを増す」
ゼロの指がルルーシュを指し示す。
今ゼロが名を挙げた者、名を挙げられなかった者、全ての屍を踏み越えて今ここに立っているルルーシュを。
「闘争こそが人の進化を促す。魔王の座を継げる程の強い魂を、私は求めていた。
そしてルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、お前の魂は今、かつて無い程に強く鍛え上げられている。
数十の魂を生贄に、お前は魔王の器としてこれ以上ないほどに成長したのだ」
「俺が、魔王の器だと? では、魔王とは一体何だ! 何故こんな方法で選ばれなければならない!?」
「魔王とは、エデンバイタルの使者。言わばこの宇宙の監視者だ」
ゼロは語る。エデンバイタルとは何か……そしてエデンバイタルから遣わされた魔王という存在の意義を。
「エデンバイタルは宇宙誕生の遥か以前から万物を支配する法則にしてエネルギーだ。
神……と言っても差し支えはない。人は皆、エデンバイタルの集合意識より生まれ出て、肉体を得て個として成立する。
お前には、Cの世界やアーカーシャの剣と言えば理解が早いのではないか?」
「Cの世界、アーカーシャの剣……C.C.やシャルルのいたあの世界の事か!」
「それらも、そしてこのムーンセルも、本質的にはエデンバイタルと同義だ。人類の記憶と意識の集積体。そこには過去しか無い。
Cの世界そのものにギアスを掛けたお前には、語るまでもないな」
魔王ゼロは、ルルーシュの行ってきた行動全てを把握しているのだろう。
ルルーシュがシャルル・ジ・ブリタニアの思想を否定し、人類の無意識に、人の歩みを止めるなというギアスをかけた事も。
「エデンバイタルとは、言ってみればお前がギアスを掛けなかったCの世界のようなものだ。
過去しか持たない停滞した意識エネルギーは、やがて均一化して疲弊し、死滅を迎える。
故にエデンバイタルは現世に混沌を生み落とし、人の争いを活性化させ、新たな過去……つまりは明日を作り出す」
「では、魔王とは……!」
「そう、エデンバイタルの意志を代行する者。可能性宇宙の滅びを防ぎ、世界の明日を存続させる者。
すなわち我、魔王ゼロなり」
魔王とは、滅ぼされるべき絶対悪などではない。
宇宙の熱的死から可能性を守護する者。もし滅ぼせば、遠からず宇宙そのものが滅びを迎える事になる。
正しく宇宙の監視者、あるいは安全装置と呼べる者。
「だが……だがそれならば、何故貴様は次の魔王など求める。それだけの力を持っているのなら、代わりを求める必要など無いはずだ」
「私は永く魔王で在り続けた。故に私の可能性は尽きた……停滞した。
古きは滅び、新しきを迎えねばならない。そう、お前が成し遂げたゼロレクイエムのようにな」
「何っ……!?」
「理解できない訳ではないだろう、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。同じ存在である事など関係なく、私とお前は非常に近しい存在だ。
私が背負う魔王と言う名と、お前が起こしたゼロレクイエムという行動。
どちらも世界の明日を求めるという点では一致している。その過程で膨大な犠牲を払うというところもな」
-
ゼロの言葉に、ルルーシュは咄嗟に反論する事ができなかった。
確かに、ルルーシュの起こしたゼロレクイエムは世界に新たな明日を齎しただろう。
しかし、忘れてはならない。ゼロレクイエム達成の陰には、凄まじい数の犠牲が出ている事を。
権益を手放す事に同意しなかったブリタニアの貴族達、ルルーシュに反逆する黒の騎士団やシュナイゼル麾下の軍勢、その他にも武力を背景にした徹底的な弾圧を行った。
全ては世界の憎しみをルルーシュに集めるための、必要な犠牲だった――が、それはあくまでルルーシュの理屈であり、決して正しい訳でも肯定されるべき物でもない。
「私が、数ある平行世界の中でもお前を選んだのは……お前だけが、私と同じ結論に達していたからだ。
地球と宇宙という規模の差こそあれ、やがて来たる滅びを回避し、人々に明日を迎えさせるための人柱となる。
私にお前が理解できるように、お前も私を理解できるはずだ」
「俺と、お前が同じ……か。確かにそうかもしれんな。なるほど、お前の言う魔王の存在価値とやらもわからんではない。
だが、それなら最初から俺を選べば良かったはずだ。こんな馬鹿げた戦いを起こさずとも、俺だけを連れてくる事はできたはずだ!」
「そんな事をしても意味が無い。言っただろう、強き魂が必要なのだと。
別に、お前が勝ち残ると予測してお前を選んだ訳ではない。事実、お前は幾度も命を落としかけた。
私としては別にそれでも構わなかった。その場合、別の誰かがこうして私の前に立っていただろうからな。
必要なのはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアではない。最後まで勝ち残ったマスターが偶然お前だった、それだけの話だ」
魔王ゼロにとって必要なのは、最後まで生き残った者=最も強く成長した者。
今回はそれがたまたま別世界の己であるルルーシュだった、というだけだ。
「そして、私の目論見通り、お前は魔王の器たる資格を備えた。あの英雄王さえも打ち破ったのだから不足は無い。
無論、お前と共に英雄王と戦った花村陽介と泉こなたにもまた、魔王の器たる資格はあった。
お前が彼らをムーンセルから排除した事で、魔王を継げるのはお前だけとなったが。
結果論ではあるが、彼らとの別れもまた、お前を成長させている。予想外ではあったが、歓迎すべきイレギュラーだ」
「全て……お前の掌の上という事か。では、俺がおとなしく魔王とやらを継ぐ気がないという事も、当然理解しているな?」
「ああ。私としても、お前のサーヴァントがいては魔王の継承が行えない。故にそのサーヴァントを消去する必要がある」
ルルーシュとゼロが会話している間、一切口を挟む事なく控えていたガウェインが前に出た。
我が王が敵と対話するのなら、騎士は側で王を護るのが勤め。残り少ない魔力を活性化させ、僅かなりとはいえ消耗は癒えている。
ゼロが黒きマントをはためかせ、ルルーシュへと手招きをする。
「前置きが長くなったな。さあ、来るがいい……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
鍛え上げた力をここに示せ。古き魔王たる我を滅ぼし、新たな魔王となりて宇宙に混沌を導くために」
「俺は魔王などになる気は無い。そして、お前を生かしておく気も無い……行け、ガウェイン!」
「ええ、ルルーシュ。今こそ決着を着ける時です!」
ルルーシュの指示を狼煙に、ガウェインが駆ける。
魔王ゼロの力は未知数――警戒すべきはガウェインの斬撃すらも無効化した掌の光印だ。
初太刀は真っ向からの斬り下ろしと見せかけ、剣先は複雑な軌跡を辿りゼロの右肘を狙う。
瞬間、ゼロのマントが沸き立ち、鋭い刃となって噴出した。影の刃は聖剣を下から叩き、軌道を跳ね上げる。
その隙を逃さず、ゼロの片足が唸りを上げてガウェインの頭部へと襲いかかった。
-
「……っ!」
ガウェインは体勢を低くし、避ける。頭上を行き過ぎる蹴りに込められた威力を察し、ガウェインの眼光が鋭く引き絞られた。
魔王ゼロが武器を持っていないのは、その必要がないからだと悟る。四肢を用いた肉弾戦の一つ一つが、聖剣の一撃に匹敵しかねない。
ゼロの手足を包む燐光こそがその力の源、エデンバイタルのエネルギー。ガウェインはこれを、かつての主である騎士王の業、魔力放出と同質の物であると推測した。
今対峙しているのはAランクのサーヴァント以上の力を持つ存在であると、改めて認識する。
だが、それだけだ。
これが騎士王や湖の騎士であったなら、ガウェインの斬撃は剣を以って弾かれただろう。光の御子ならばその槍で、戦友である槍兵ならば異形化させたその腕で。
ゼロの防御のやり方は、多彩な特殊能力を振るったディケイドやオーズといったライダーに近い。メインで使う武器ではなく、オプションとして備える異能で敵の選択肢を潰す。
どちらが上という訳ではないが、確実なのは一つ。魔王ゼロの接近戦の技量は、ガウェインがこれまで剣を交えた者達には及ばないという事だ。
魔王ゼロがどれだけの異能を誇ろうと、こと接近戦という土俵で勝負する限りはやがてガウェインの速度が勝る。
「コードキャスト……ハドロン砲!」
そしてルルーシュも援護が入る。かつてランスロットと戦った時にも使った、セイバーの対魔力を利用した戦術だ。
ルルーシュから放たれた赤い雷光はゼロとガウェインに等しく襲いかかる。が、ガウェインは対魔力の効果で何もせずともその雷光を打ち消してしまう。
しかしゼロはそうもいかない。魔力放出と同質のスキルを持ってはいても、対魔力までは無かったようだ。
ゼロが交差させた両手にあの光が灯る。ガウェインの斬撃を完全に停止させた絶対防御。ルルーシュのコードキャストはあっさりと吹き散らされる。
その隙にガウェインは、ゼロの軸足を狙って剣を奔らせる。両腕が塞がっているゼロは、再びマントを硬質化させ、ガウェインの剣を受け止めるようとした。
このマントは掌の光と違ってガウェインの動きを妨げる効果は無い。ただ硬いだけだ。そして、ただ硬いだけの物質などセイバーの剣の前では障害になるはずがない。
“転輪する勝利の剣”――その柄に収められた擬似太陽が駆動し、聖剣の刀身を真紅の炎でコーティングする。
炎刃は易々とゼロのマントを灼き尽くし、押し留める物の無くなった聖剣を振り抜かせる。
「――ガウェイン」
その時、王であるルルーシュと同じ声で、魔王ゼロがガウェインの名を呼んだ。
無論、その程度でガウェインが動揺するはずは無い。剣先は迷いなく突き進む。
あわやゼロの片足を斬り飛ばさんと迫ったガウェインの聖剣は――ゼロの影より突き上がってきた鋭利な刃に受け止められた。
聖剣を通じてガウェインの手に伝わったのは、金属的な衝撃。
「これは……っ」
瞬間、動きを止めた隙を逃さなかったゼロの拳がガウェインに打ち込まれた。
受け止めた純白の鎧に亀裂が入るほどのすさまじい威力。
叩き込まれた慣性に逆らわず、ガウェインはルルーシュの元へと後退した。
「さすがはAランクのサーヴァント。全力は発揮できないはずだが、接近戦では私を上回るか。
これでは些か手間取るな。では私も呼ぶとしようか――“私のガウェインを”」
「まさか……!」
「来い、ガウェイン!」
魔王ゼロが、ガウェインの名を呼ぶ。
その影から伸びていた刃が上昇していく。二メートルほどのゼロの影から、巨大な黒い機体が飛び出してきているのだ。
量子シフトにより召喚される、あり得るはずのない異形。その名を、ルルーシュは知っている。
「ナイトメアフレーム……ガウェイン!」
何故ならば、それはかつての己の愛機。全長六メートルを超える鋼鉄の騎馬。
黒く染め上げられたボディ、両肩に備えられた二対のハドロン砲、指先のスラッシュハーケン、全てがルルーシュの記憶にあるそれと一致する。
“黒き魔王の玉座”ガウェイン。魔王ゼロは、そのガウェインの頭部に傲然と立っている。
誰かが代わりにKMFのガウェインを操縦しているという訳ではない。魔王にとってはどこだろうと今立っている場所が操縦席と同義なのだ。
KMFガウェインは背部の飛翔滑走翼を展開し空へと舞い上がっていく。
「さて、こうすればセイバーに打つ手は限られるはずだが」
「甘く見られたものですね。たとえ空へ逃げようとも、その頭上には常に太陽の輝きがあるのです!」
-
ガウェインが握る聖剣、その柄の擬似太陽が再び駆動する。巻き起こる炎熱は聖剣の刃となり、その身を長く伸ばしていく。
地上の敵を薙ぎ払ったと言われる聖剣は、ガウェインの可視出来る範囲まで刀身を延長させられる。
飛翔していくKMFに追いつき追い抜くほどの速度で、ガウェインは天をも貫かんばかりの刺突を放った。
先程はKMFガウェインの装甲に弾かれたが、今度はその硬度をも認識した上での一撃だ。
果たして聖剣の切っ先はKMFガウェインの胴体を貫通して反対側へ抜けていく。KMFの体勢が崩れる。
「ガウェインの装甲を抜くとはな。だがそちらの攻撃が届くという事は、逆もまた然りだ」
乗機が傷ついたところで魔王には何の痛痒もないのか、相も変わらずの静かな声が通る。
魔王ゼロがKMFの背に回り、装甲を貫いたガウェインの剣を掴む。その瞬間、魔王ゼロに斬りかかった時と同じく、剣にかかるすべての運動エネルギーが停止した。
剣を引き戻そうとしたガウェインの意志に背き、天に高く突き上げられた聖剣の刀身はぴくりとも動かない。
「チェックメイトだ」
KMFガウェインが両手の指をガウェインへと向ける。その指先一つ一つが鋭利な刃を射出するスラッシュハーケンだ。
指先とはいえそこはKMFの巨体である。ハーケン一つ一つが、人の頭部ほどの大きさがある。
十の連弾がそれぞれ違う軌跡でガウェインへと放たれる。
「ガウェイン、これを使え!」
聖剣を封じられたガウェインに、ルルーシュは槍王イルバーンを投げ渡す。
サーヴァントの宝具でなくとも、槍王もまた神話級の魔術礼装の一つ。そしてガウェインはセイバーである前に一人の騎士だ。当然、馬上で振るう武器たる槍の心得はある。
ガウェインが聖剣を手放し、槍王を掴み取る。ぶんと旋回した槍王が、次々に飛来するスラッシュハーケンを片っ端から打ち落とす。
凄まじい衝撃。あるいは、ゼロの拳打と同じかそれ以上の。間断なく畳み掛けてくる爪撃は、一撃を弾くたびに残り少ない体力をごっそりと持っていく。
そして見る間に魔王ゼロとKMFガウェインは空から落ちてくる――接近してくる。
スラッシュハーケンを放ちつつ、脚部のランドスピナーを展開したKMFガウェインが足を蹴り出した。ゼロの蹴りとは比べ物にならない質量がガウェインへと迫る。
「避けろ、ガウェイン!」
さすがにこれは受け止められない。ルルーシュの指示に逆らわず、ガウェインは跳躍してKMFガウェインがの蹴りを飛び越える。
が、ランドスピナーが別の生き物のように可動してガウェインの進路上に飛び出てきた。
避け切れず、ガウェインがまともにランドスピナーに衝突した。
「がぁっ……!」
人形のようにガウェインが弾かれる。地に落ち、二度三度と跳ね飛んで転がっていく。
ルルーシュは急いで駆け寄り、こなたから渡された礼装で回復のコードキャストを起動、ガウェインへと施す。
「ル、ルルーシュ……」
「喋るな、ガウェイン。すぐに治療する!」
見れば、ガウェインの魔力で編んだ鎧が粉々に砕かれていた。耐久力に優れたセイバーを一撃でここまで痛めつけるとは。
魔王が操るKMFは、ルルーシュがかつて搭乗していたそれとは似て非なる物のようだ。魔王と同じく、エデンバイタルのエネルギーで強化されているのか。
ともあれ、ルルーシュが連続で使用したコードキャストによりガウェインのダメージは少しずつ回復していく。
それを止める様子もなく、魔王ゼロとKMFは再び大地に降り立った。
「お前は自らのサーヴァントとしてそのガウェインを引き当てたが、私はそれに関与していない。
因果な物だな。この戦いを引き起こしたのは“私”、この戦いを勝ち残ったのは“お前”。
お前の剣は“ガウェイン”、私の騎馬もまた“ガウェイン”。ふふ、エデンバイタルの導きというには些か滑稽だな」
同じ“ガウェイン”の名を冠していても、その有り様は全く違う。
ルルーシュと共に歩むガウェインと、ゼロの意のままに動くガウェイン――意志なき鉄の人形に遅れを取る訳にはいかないと、ガウェインは己を叱咤して立ち上がる。
「ルルーシュ、治療はもう結構です。魔力を温存してください」
「待てガウェイン、お前の傷はまだ……」
-
ルルーシュの言葉を待たず、ガウェインはイルバーンを支えに立ち上がる。
しかし、負傷は癒やし切れていない。小刻みに震えるその姿の、何と弱々しい事か。
そんなガウェインの眼前に、彼自身の聖剣が突き立てられた。
ガウェインからの魔力が途絶え通常通りの長さに復帰したそれを、魔王ゼロが投げてよこしたのだ。
「拾え。この程度で終わるはずは無いだろう」
ゼロは勝ち誇っている訳でも、慢心している訳でもない。
魔王が両手を広げると、足元のKMFガウェインもまた同じ体勢を取る。
その動作が何を意味するか、ルルーシュは瞬時に理解した。
ゼロが放り投げた聖剣をガウェインに押し付け、自身は代わりにイルバーンを引っ掴む。
「先程、ハドロン砲と言ったな。あんな紛い物ではない、本物を見せてやろう……ハドロン砲、発射」
ゼロの言葉に連動し、KMFガウェインの両肩が展開――破壊エネルギーを凝縮していく。
ハドロン砲の威力は誰よりもルルーシュが知っている。故にルルーシュは一切の逡巡無く、コードキャストを起動させた。
「ガウェイン、力を貸せ!」
主が何を求めているか瞬時に理解したガウェインは、王の前で聖剣を天に掲げる。
ルルーシュが槍王イルバーンをガウェインのガラティーンに重ね合わせた。
「絶対守護領域……!」
「聖剣よ、我らを護り給え!」
ガウェインの力を上乗せして展開した防御のコードキャストは、“聖剣集う絢爛の城”を敵ではなく自分に向けて使用するような物だ。
聖剣を以ってせねば破壊できない炎熱の結界――それはルルーシュとガウェインを灼き尽くす事無く、ただ外界からの護りとして機能する。
今のガウェインの状態では、射角が広く発射後も弾道を操作できるハドロン砲は避けきれないと判断し、ルルーシュは受け止める事を選択した。
津波の如きKMFガウェインのハドロン砲が絶対守護領域に着弾する。
「ぐうううううっ……!」
「ルルーシュ、耐えてください!」
イルバーンを通じて凄まじい負荷がルルーシュの全身に駆け巡る。身体がバラバラに弾けてしまいそうだ。
だが、屈しはしない。ルルーシュを支えるガウェインが側にいる限り、王として騎士より先に倒れる訳にはいかない。
コードキャストの展開で、もともと少なかった魔力が消し飛んでいく。
「ほう。対軍宝具に匹敵する我がガウェインの攻撃を防ぐか。そうこなくてはな」
ゼロの呟きはとてもルルーシュには届かない。
濁流の如く放射される破壊エネルギーは、閃光と轟音を伴ってこの場にいる全員の視覚と聴覚を奪っている。
それは、逆に言えばルルーシュとガウェインの声もゼロには届かないという事でもある。
「が……ガウェイン! もう少しだけ、耐えろ!」
「ルルーシュ、何か策が……?」
「この攻撃が止んだ時……奴を倒すぞ!」
それだけでガウェインは主の意図を察する。
どの道、ここまで追い込まれては戦闘を継続させる事も難しい。ならば乾坤一擲の一撃に懸けるのみ。
もはや力を温存する必要は無い。宝具を駆動させるための魔力すらもつぎ込んで、防御結界の維持に尽力する。
流れた時間は一瞬か、はたまた永遠か、ルルーシュにはどちらとも判別がつかない。
確かなのはルルーシュとガウェイン、二人とも限界を迎える寸前まで魔力を放出し尽くし、KMFガウェインのハドロン砲を凌いだという事だ。
-
「この辺りが潮か。ルルーシュ、お前を殺してしまっては元も子もない。サーヴァントだけを排除させてもらう」
ゼロがKMFガウェインに命じ、ハドロン砲の放射をストップさせる。
ルルーシュが地に膝をつき、同時に喀血する。絞り出した魔力の量は生命の維持すらも危ういレベルだ。
しかしその眼光は依然鋭く、魔王ゼロを刺し貫く。
「……令呪を以って命じる! 我が騎士よ、全力で戦え!」
血を吐きながらもルルーシュが令呪を解き放つ。
魔力を枯渇させていたガウェインの全身に、新たなガソリンが注ぎ込まれる。
令呪一画を純粋な魔力として変換し、ガウェインに補給したのだ。
鉛のように重かった手足に力が漲る。砕けた鎧さえ復元される。
「重ねて令呪で命じる! ガウェイン――その聖剣を以って魔王を討ち果たせ!」
それはガウェインが誇る唯一の宝具、“転輪する勝利の剣”の開放許可。
ルルーシュとガウェイン、双方が望む行動を指示され、ガウェインの魔力が再度爆発的に増加する。
消費した魔力を全て補って余りあるほどの膨大な力を、ガウェインは全て聖剣へと送り込んでいく。
「令呪か――!」
魔王ゼロは再度、KMFガウェインにハドロン砲を撃たせるべく命令を飛ばす。
だが遅い。令呪というブーストを得て加速するガウェインと、魔王ゼロから魔力を組み上げて駆動するKMFガウェインとでは、力の収束率に厳然たる開きがある。
ガウェインが聖剣を振り上げる。
「この輝きの前に夜は退け、虚飾を払うは星の聖剣――エクスカリバー・ガラティーン!」
ついに真名を解き放たれた、ガウェインの最終宝具。
その輝きはまさに太陽。地上一切を灼き払う灼熱の断罪。
魔王の漆黒さえも呑み込む、三千世界を遍く照らす太陽の具現。
ただでさえ大軍を一撃のもとに消し去る聖剣は、更に二画の令呪の後押しを受けている。この一撃に限って言えば、あるいは騎士王の聖剣や英雄王の乖離剣にさえも匹敵するだろう。
地平線の彼方まで届く灼熱の奔流は、魔王ゼロのガウェインが遅れて放ったハドロン砲を容易く吹き散らしてその巨体を呑み込んだ。
炎熱の波は留まるところを知らず、魔王とKMFのみならずその向こう――フォトニック純結晶の檻に抱かれたムーンセルの中枢までも、その輝きで塗り潰していく。
背後にムーンセル中枢があるからこそ、ゼロは回避という選択が出来なかった。それを見越してガウェインは聖剣を解き放ったのだ。
先のハドロン砲よりも長い時間、聖剣は灼熱を吐き出し続ける。
やがてガウェインの魔力が尽き、炎が陽炎となって消えゆくその時には、魔王とその騎馬は熾天の座から姿を消していた。
「……っは、ぁ」
「よく……やった。ガウェイン」
ガウェインが荒い息を吐き、聖剣を下ろす。赤熱化した刀身は、触れるだけで地面を融かすほどに高温だ。
令呪の支援を受けた日輪の剣はかつてない力を発揮し、魔王ゼロごとKMFガウェインを一瞬で蒸発させた。いかに魔王といえど、あれだけの熱量の直撃を受け流す事などできなかったようだ。
ルルーシュの知る兵器に換算すれば、ハドロン砲や輻射波動など足元にも及ばない。それこそフレイヤ並み、あるいはそれ以上の威力だったのだから。
「魔王ゼロは……倒したのか?」
どこにも魔王の姿は無い。砕け散ったKMFの破片には隠れるほどの大きさもなく、ルルーシュの前に広がるのは変わらず浮かぶ立方体のオブジェのみ。
魔王と名乗った存在にしては呆気ないものだが、かと言ってどこかに潜んでいる様子は無く、礼装で周囲を探査しても魔王らしき痕跡はどこにも無い。
入念に周囲を調べ、その末にようやく魔王を倒したと結論を得て、ルルーシュは腰を下ろした。
これで、長きに渡る戦いは終わった。
聖杯戦争を歪めた魔王は討たれ、ルルーシュとガウェインが真の勝利者となった。
しかし――
-
「ムーンセルは……無傷、か」
ルルーシュはムーンセルをゼロごと消滅させるつもりで、ガウェインに聖剣を使わせた。
魔王とKMFの存在が聖剣の威力を減衰させたか、あるいはそもそもそんな方法では破壊できないのか、どちらにしろムーンセルは依然としてそこにある。
「ならば、直接アクセスするだけだ。今ならムーンセルは俺を迎え入れる……そうだな、ガウェイン?」
「ええ……もはや我らを阻む者はない。魔王がムーンセルを掌握していたというのなら、魔王を討った今、あなたこそが月に残った最後のウィザードになる。
往ってください、ルルーシュ。今こそあなたの願いを果たす時です」
そうルルーシュに告げるガウェインは、しかし自らは動こうとしない。
ルルーシュにもわかっている。ついに、別れの時が来たのだ。
槍を杖にして立ち上がり、ルルーシュはガウェインと向かい合う。
――お目覚めですか?
ガウェイン。この聖杯戦争を共に駆け抜けてきた、ルルーシュの剣。
死にゆくはずのルルーシュに二度目の生の始まりを告げた者。
出逢った時に交わした言葉は、ルルーシュの心中に一言一句刻まれている。
――貴方はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア陛下。私は貴方に仕えるべく召喚された、ガウェインと言う者です。
かつての愛機と名を同じくする、誉れ高き円卓の騎士が一人。
太陽の騎士と異名を取る、Aランクのセイバー。
最初は、ガウェインという名と巡り逢う奇妙な縁に、おかしささえ感じたものだ。
――聖杯を壊した時、貴方は死ぬ事になる。それでも構わないのですね?
聖杯を破壊する。ルルーシュにとっては揺るぎなきその願いは、通常のサーヴァントにしてみれば言語道断の物だろう。
サーヴァントとてマスターと同じく願いがあり、その願いを叶えるために聖杯を欲し、聖杯に到るために戦う。
であれば、ルルーシュが聖杯を破壊すると宣言した瞬間、ガウェインに斬られても何の不思議も無かった。
ルルーシュを外れのマスターとして処理し、次のマスターに選ばれる確率に賭ける。願いを叶えたいのならばそれくらいはするだろう。
――我が剣は忠義の剣。貴方を我が主と定め、我が命を貴方に捧げると誓う!
だが、ガウェインはそんなルルーシュに剣を捧げると言った。
ルルーシュが聖杯を破壊すればがガウェインの願いは叶わない。
それでも構わないと、そもそも聖杯に懸ける願いなど無いと微笑み、ガウェインはルルーシュに仕えると決めたのだ。
――貴方の定めた道は確かに王の道。騎士としてこれほどの誉れはありません。
生前には成し得なかった、正しき騎士として最期まで王を支える事。
もし次があるのなら。二度目の生があるのなら、今度こそ、自らの全てを王に捧げよう。そう願っていた。
そして、ガウェインは忠義を尽くすに足る王に出逢った。
茨の道を歩む孤高の王。誰からも理解されず、しかし誰かの幸せを願いその身を投げ出せる者。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがガウェインを召喚したのは、決して偶然などではない。
ルルーシュという存在そのものに、ガウェインの魂が惹かれたのだ。そんな王の騎士として、戦場を馳せる。これ以上に望む事などあるはずが無い。
ガウェインの願いは、ルルーシュに出逢った瞬間に叶えられていたのだ。
-
「ルルーシュ、あなたと過ごした時間は二日にも満たない短い物でした。だがこの二日間は私にとって、どんな武勲にも勝る価値があった。
あなたという王に仕え、幾人もの戦友を得て、叔父上ともう一度肩を並べて戦い、そして友と決着を着けられた」
生前のガウェインは、王を疑う事はしなかった。
騎士王の選ぶ道は全て正しく、間違いなどあるはずが無い、そう信じていた。故に騎士王を裏切ったランスロットを許せず、判断を誤り続けてしまった。
だが今ならわかる。ゆらぎがあってこそ人であり、人のまま王になるからこそ尊いのだと。
過ちを悔い、成長の糧として学び、次の機会には乗り越える。そして前に進み続ける。
ルルーシュという人間は、どんな苦難に見舞われようとも絶対に前進を止めない人物だ。完璧ではない故にミスを犯す。敵に怒り、仲間と共に笑い、悲しむ。
敗北の屈辱を舐めてなお、折れず曲がらず反逆し続ける。かつて剣を捧げた騎士王とは違うが、これもまた気高き王道。
そんなルルーシュに従う事は、ガウェイン自身にも影響を与えていた。
もし仮に、ガウェインのマスターがルルーシュではない別の誰かだったとしたら。きっとガウェインは、この場に立ってはいないだろう。
ルルーシュが戦いの中で成長したように、ガウェインもまた王の在り方に影響されていたのかもしれない。
「本当に、夢の様な時間でした。私などには過ぎた栄誉です。だから、あなたには感謝しています、ルルーシュ。
私のマスターが……私の王が、あなたで良かった」
今、万感の思いを込めて、ガウェインは王に別れを告げる。これより先は共に行く事は出来ない。
ルルーシュがムーンセルにアクセスし、最後のマスターとして自壊を命じれば、ルルーシュは再び死の運命に回帰する。
過去の英霊を電子的に再現された存在であるガウェインもまた、ムーンセルの崩壊と共に消滅するだろう。
死出の道行に供をする事は許されない。だからこそ、ここで別れる。敬愛する王の結末を見届ける。それこそが騎士としての最後の勤め。
「往かれよ、我が王よ。私はここであなたを見ています。
あなたが眠りにつくその時まで、私はあなたを見守りましょう」
聖剣を地に突き立てる。もはや武器は必要ない。ルルーシュが聖杯にアクセスし、全てを終わらせる時を待つ。
そんなガウェインを前にして、ルルーシュの内から出る言葉はただ一つ。
「……ガウェイン。お前の忠義、決して忘れん。さらばだ」
言葉少なに、別れだけ告げる。これ以上の言葉など必要は無い。
ガウェインの在り方を認め、彼が捧げた忠義を確かな記憶として死を迎える。それこそが、ルルーシュが彼の騎士に報いる最大の恩賞となる。
踵を返し、歩き出す。遅々とした歩みだが、一歩一歩着実に聖杯へと近づいていく。
背中にガウェインの視線を感じる。見届けると言ったガウェインの言葉に偽り無く、きっと最期まで見守っているのだろう。
そう思うだけで前に進む力になる。死ぬ時に一人ではない事が、こんなにも安心するものであると初めて知った。
思い出す。最初の死――あるべき本来の死を迎えた時、そこにはナナリーがいた。
あの時、ナナリーは泣いていた。結局、最後まで最愛の妹に真意を伝える事は出来ず、傷つけてばかりだった。
済まないと思う。申し訳ないと思う。それでも、ルルーシュは後悔はしていない。
間もなくルルーシュは死ぬ。だが幸い、ナナリーがそれを知る事は無い。ルルーシュが生きている事も、そして死ぬ事も。誰にも知られず、この月の中でひっそりと終わるのだ。
これで全てがゼロに戻る。ゼロレクイエムにてルルーシュの世界は再生に向かい、聖杯が解体される事で二度と聖杯戦争は起こらない。
無論、失った者達が戻る訳ではない。そのマイナスは決して消えない。
だが、それでも。
「花村と、泉。お前達が生きて、俺や衛宮、金田一や名無を覚えていてくれるなら……」
決して、無意味な死ではないはずだ。
心残りがあると言えば、再会の約束を果たせない事か。今頃、あの二人は自分の世界に戻れているだろうか。
戻れていたとして、そこはムーンセルの支配力が及ばない世界。
ペルソナとサーヴァントの複合体であるアレックスと、メダルに姿を変えた火野映司は、そう長くは存在を保てないだろう。
彼らにも、ルルーシュとガウェインのように逃れられない別れは来る。
-
「だが、お前達なら大丈夫だ……そう、信じている」
別れる事よりも、出逢えた事が嬉しい。陽介とこなたなら、そう思ってくれるはずだ。
戦いの中で背負った悲しみに負けず、日常を生きていく事ができる。そんな強さを持っていると、ルルーシュは信じられる。
やがてルルーシュは聖杯に到った。
手が届く距離。触れてみて、思念を送る。結晶体が振動し、膨大な情報がルルーシュに向けて開示される。
万能の願望機。事象を書き換え、あらゆる願いを叶える聖杯。その中枢――フォトニック深淵領域への道が開かれた。
最後に、もう一度振り返る。ガウェインは変わらず、ルルーシュを見守っている。
はず、だった。
ガウェインのを背後から貫く影――魔王ゼロ。
滅びたはずの魔王が、太陽の騎士を串刺しにして、ボロ屑のように放り捨てていた。
「なっ……!」
「言っていなかったな。私を滅ぼせる者はこの宇宙には存在しない――今はまだ、な」
その声は耳元で聞こえた。
振り返る寸前、首筋を掴まれる。ルルーシュの細首など容易く砕けるであろう豪腕は、紛れも無く魔王のそれだ。
ガウェインを倒し、一瞬にしてルルーシュの背後へと移動……否、転移してきた。
魔王は滅びてなどいなかった。この転移の力によって何処かへと姿を消し、ルルーシュがガウェインから離れて一人になる時を待っていたのだと、ようやくにして理解する。
「我がガウェインを破壊したのは見事だった。が、どれほどの宝具を誇ろうと私には通じない。
私のワイアードギアス――“ザ・ゼロ”の前では、森羅万象が無へと帰するのだから」
掴まれた首を無理やり捻り、ルルーシュは何とかゼロへと顔を向けていく。
ゼロは本当に無傷だった。四肢も黒のマントも、全て健在だ。ゼロのギアスを単なる運動の停止だと見誤ったのが、ルルーシュとガウェインの敗因。
だが予測するなど不可能だ。ゼロのギアスは、個にして神たるエデンバイタルと同等――人智を超えた力なのだから。
手にしていたイルバーンをゼロの仮面へと叩きつける。技巧も魔術も無い、反射的な行動だった。
穂先はゼロの仮面へ突き立ち、亀裂を走らせる。が、内部まで届いてはいない。
ゼロが仮面へ突き立ったイルバーンに軽く触れた瞬間、ルルーシュの手から忽然とイルバーンが消失する。
名無から託され、何度も危地を切り抜けてきた武器さえも奪われた。
「お前にはもう必要無い。武器も……そしてサーヴァントも」
イルバーンがなければコードキャストは発動させられない。
ゼロはルルーシュを無力化した事を確認すると、締め付けていた指を解く。床に放り出されたルルーシュは、視線を巡らせてガウェインを見る。
ガウェインは、死にかけていた。
ムーンセルによって除外されるデータが始まっている。だが、ルルーシュにその兆候は無い。
ここ熾天の座では通常の聖杯戦争のルールは適用されないのか、あるいは連動してルルーシュも死ぬ事を恐れたゼロが細工をしたのか。
いずれにしろ、心臓を破壊されてはいかにサーヴァントとて絶命は避けられない。
令呪を用いようとも、魔力の器たる肉体が徹底的に破壊されている以上、あの状態からの復帰は絶望的だ。
「ガウェイン……」
「…………ぁ」
伏したガウェインが、血と共に言葉を絞り出そうとする。
その瞳は悔いに満ちていた。最後の最後で仕損じた、誤った。王を守れず先に逝く事を、心から悔いている表情だった。
「そんな顔で、死ぬな……!」
そうではない。ガウェインとの別れは、こんな形であってはならない。
忠義の騎士が無念と共に果てる事など、絶対に許してはいけない。
その思いは、叫びとなって迸る。
-
「誇れ、ガウェイン! お前は俺の、この俺の道を斬り開いてきた騎士だ!
お前がいたから俺はここまで来れた! お前の忠義が、俺をここへ導いたんだ!
だからガウェイン……俺は、お前を誇る! 俺の騎士は、誰よりも強く、気高い……太陽のような男だ!」
ルルーシュの手に残された令呪が輝きを放つ。三画目の令呪を使えば自らも消滅する、そんなルールは頭の中から吹き飛んでいた。
ガウェインに落ち度は無いと。後悔の内に死ぬのではなく、自らを肯定して眠りにつけと。
この令呪は何の命令にもなっていない。ガウェインの傷を癒やす事も、魔王に一矢を報いる事も無い。
ただガウェインの心を救いたい、その一心で叫んでいた。
「――――――――」
思いは、届いたのか。
目を見開いたガウェインが何かを言おうとして口を開く。
その言葉が紡がれる寸前――ガウェインは消えた。
「ガウェ……イン」
「その悲しみは無意味だ。サーヴァントは死ねばムーンセルによって情報を回収され、いずれまた誰かのサーヴァントとして召喚される。
奴とて例外ではない。道具が壊れただけでそこまで感傷的になる必要は無いだろう」
無感動にゼロが言う。
ゼロはルルーシュが令呪を使うのを止めはしなかった。最後の令呪を使ったところで、ルルーシュは消滅しないと知っていたからだ。
この熾天の座は聖杯戦争のルールの外にある。ガウェインが消去されたのは、ゼロがそうなるようにムーンセルを操作したからに過ぎない。
ルルーシュから全てを奪い、魔王の役割を受け入れさせる。そのためだけにガウェインを殺し、消し去ったのだ。
「無意味だと……? 貴様はあいつを、ガウェインの死を……無意味だと言うのか!」
「すぐにお前もそう感じるようになる。お前も魔王となるのだから」
「ふざけるな! 俺は貴様のようにはならない!」
「お前の意志などどうでもいい。エデンバイタルは既にお前を選んでいる。
抗う事など出来ない……さあ、内なる扉を開け。私を滅ぼす力、魔王の資格たるお前のワイアードギアスを目覚めさせるのだ」
ルルーシュはゼロに引きずり起こされる。
ゼロが突き付けてきた掌に光が灯る。ザ・ゼロではない、エデンバイタルと呼ばれる意識エネルギーの光だ。
そのエネルギーを、ゼロはルルーシュへと染み込ませていく。
「ぐわあああっ!」
「やはり私と同じ器か。私の中のエデンバイタルがこうまで馴染み易いとは。これならば、あるいはザ・ゼロそのものを目覚めさせる事も不可能ではない」
「やめろ……! 俺の中に……入って、くるな!」
「受け入れろ。エデンバイタルと同化すれば、お前は私を滅ぼす力を得る。そしてお前は宇宙に混沌を撒く存在となる。かつての私と同じように」
「その結果……どうなる! お前が俺だというのなら、俺が辿る結末とて……お前と同じはずだ!」
「だろうな。だからその時は、お前がもう一度この聖杯戦争を引き起こすのだ。
このシステムが新たな魔王を生む事は、お前という実例を以って証明された。ならば後は繰り返すだけでいい」
「そんな事を……!」
認めるものか。だがその思いは言葉にならない。
余りにも膨大なエデンバイタルの情報量は、未だ魔王たりぬルルーシュの脳では処理しきれない。
故に魔王ゼロはルルーシュの意識を喪失させる。エデンバイタルが、ルルーシュの無意識領域で生体情報を書き換えた時が、魔王新生の瞬間だ。
ルルーシュには既にワイアードギアスの萌芽が芽吹いている。ルルーシュの瞳で激しく明滅するエデンバイタルの輝きがその証拠。
抗う事もできず、ルルーシュの意識は暗い闇へと落ちていく。
-
「ようやく……終わる。永遠に続くと思っていた俺の旅は、ここで終わる。お前には済まないとは思うがな」
意識を失ったルルーシュには、ゼロの言葉は届いていない。
だからこそ、今だけは魔王ゼロではなく、ただのルルーシュに戻る事が出来る。
仮面を外したゼロが、項垂れるルルーシュにそっと囁きかけた。
「もしかすると俺は……お前に、嫉妬していたのかもしれない。
俺と同じルルーシュという存在でありながら、お前は人として生き、世界を変えて、死んだ。魔王にならざるを得なかった俺には、お前の生き方は眩しい物だった。
だから、なのか……お前が勝ち残ったと知った時は、少し、期待したよ。お前なら、あるいは俺を、魔王という存在を否定し、違う未来を創り出せるのではないか、と」
ゼロレクイエム――ルルーシュが計画した世界再生の策は成った。
それは魔王の目から見ても瞠目に値する結果だ。ギアスを用いたとはいえ、ルルーシュはあくまで己の意志と力で世界を変えた。
無論スザクやその他の協力者の力も大きい。が、何より重要なのはルルーシュ個人の覚悟だ。
世界を壊し、世界を創る。ルルーシュの言葉に偽りは無く、古き世界は破壊され新たな世界が産声を上げた。
しばらく混乱は続くだろう。だがその痛みを乗り越える強さを、あの世界の人々は手に入れた。
「俺は、お前が変えたあの世界を尊いと思う。だからこそ、新たな魔王は必要なんだ。
混沌なくして宇宙は変化しない。俺が魔王であり続ければ、いずれお前の世界も停滞に呑み込まれ、死を迎える。
滅びを防ぐにはこうするしかない」
それが一時の延命処置であったとしても、宇宙が滅びを迎えるよりはマシだと、ゼロは思う。
「許しは請わない。いずれお前も俺と同じ選択をする時が来る。
その時、お前が新たな魔王を選び出すか、あるいはそれ以外の道を見出すのか――それを知る事ができないのは、少し残念だとも思うよ」
誰の記憶にも残らない言葉は、ここで終わる。
ゼロは再び仮面をかぶり、沈黙のままルルーシュの変化を見据えている。
やがてエデンバイタルは完全にルルーシュへ定着し、生体情報の書き換えを終えた。ルルーシュの意識が回復する。
瞼を開けたルルーシュのその瞳には、ザ・ゼロと同じ紋章が瞬いている。ワイアードギアスが発現したのだ。
それも、ザ・ゼロと同等かそれ以上の――
「これでいい。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、お前こそが新たな魔王ゼロ……いや、“魔王C.C.”だ。さあ、そのギアスで私を滅ぼし、無二の魔王となるがいい」
「ああ……そうだな、もう一人の俺よ。俺はお前を滅ぼす……」
発現したワイアードギアスの使い方は既に理解している。
ルルーシュがゼロの腕を取る。そしてもう片方の手を握り締める。
その掌には、陽介から託された契約者の鍵がある。
「だが! 俺は魔王にはならない!」
ルルーシュが怒号と共に繰り出した拳は、槍王イルバーンが突き立った一筋の亀裂へと叩き込まれる。
ゼロと同じくエデンバイタルの光を纏ったその一撃は、ゼロの仮面を粉々に砕き割った。
-
◇ ◆ ◇
全て失った。
騎士も、武器も、戦う意志も。全てを魔王に砕き散らされた。
後はもう、魔王のされるがままだ。エデンバイタルは着々とルルーシュの魂を改竄していく。
どこまでも底のない暗闇に落ちていく感覚。この感覚は知っている。これは、そう――
「負けたのか、俺は」
土の味――敗北の味だった。
ガウェインと出逢い、仲間と数多の戦いを潜り抜け、魔王と対峙した。そして敗北した。
士郎や名無、そして彼らのサーヴァント達という犠牲の上に辿り着いた決戦に、勝つ事が出来なかった。
ルルーシュの剣であるガウェインも、名無から託されたイルバーンも、ルルーシュの手を離れた。
もう打つ手が無い。
「奴の、魔王の役割を……受け入れるしか……ないか」
だが、それは悪なのだろうか。
ゼロの言う事を信じるなら、ゼロはゼロで宇宙の存続のために動いているのだ。
魔王がこの宇宙の維持に必要だというのなら、ルルーシュが魔王となるのが正しい選択ではないのだろうか。
そうすれば、ナナリーが生きる世界も、陽介やこなたが帰った世界も、護ることに繋がる。
「……なら、俺は……」
抗う事を止めて、受け入れる。
言葉にすれば簡単な事。
だが――
「俺は……こんなになっても、まだ……」
諦められない。
ゼロに屈服し、負けを認めて、魔王になる。
ただそれだけの事を、どうしても受け入れられない。
「どうする事もできないっていうのに……」
今やルルーシュに残されているのは、絶対遵守のギアスだけだ。
いや、もう一つあった。
意識する。陽介との別れの際、彼から譲り受けた物――契約者の鍵を。
「花、村……泉……」
遠く離れてしまった友の事を想う。
再会の約束は、魔王になればきっと叶うだろう。
だがあの二人に、魔王となった姿を見せる事は――運命に屈した様を見せる事は、絶対に嫌だ。
――だったらさ。立つしかねーよな?
-
その時、懐かしい声が聞こえた。ここにいるはずのない、再会を誓った友の声が。
契約者の鍵から声が、想いが伝わる。
――だから、俺も行くっつったのによ。一人で突っ込んで負けて、そんでウジウジ後悔してるなんて。カッコ悪いぜ、ルルーシュ。
――まあまあ、あんまりいじめないであげようよ。ルルーシュ君も頑張ったんだからさ。
鉛のように重い瞼をこじ開ける。星明かり一つ無い暗闇の中にあって、はっきりと見える。
花村陽介と泉こなたが、そこにいる――
――ほら、立てよルルーシュ。まだ……やれるだろ?
――もうちょっとだよ。一人じゃ立てないなら、ほら。私たちの手を取って。
こなたがルルーシュの手を握る。
伝わってくる暖かさは、決して幻などではない、本物の熱を感じさせる。
――言ったはずだぜ、今度会った時はぶん殴ってやるって。でもまあ、今のお前を殴るのはさすがにちょっとって思うからな。
陽介がにやりと笑う。
そしてこなたと同じく、ルルーシュの手を取った。
――だから、次だ。次会った時にお前を殴る。今は、手を貸してやるよ。
――素直じゃないなあ、もう。
――へへ。なあ、ルルーシュ……悠はもういねーけど、お前はまだ生きてる。だから、諦めんなよ。生きてるなら何度だってやり直せる。
――疲れたのなら、私達たちが肩を貸すよ。でもね、立ち上がるのはルルーシュくんの足なんだ。
――俺達にできるのは、お前を信じて手を差し伸べる事だけだ。ああ、俺と泉はお前を信じるぜ。なんたって俺達は。
――友達だからね!
「友達……ああ、そうか。お前達は、俺の……」
――周り、見てみろよ。俺達だけじゃないぜ。
――みんな、ルルーシュくんが立ち上がるって信じてるんだよ。
陽介に促され、辺りを見回す。
アレックス、火野映司、衛宮士郎、セイバー、名無鉄之介、リインフォース、そして枢木スザク。
みな、ルルーシュを見ている。
これだけの仲間と絆を紡ぎ、ルルーシュは歩いてきたのだ。
「……ああ、そうだな。俺はまだ……」
何もない、全てを失ったと思った。だがそうではない。
武器が無い。サーヴァントがいない。それが、一体どうしたというのか。
そんなものは――戦わない理由には、抗わない理由にはならない。
「俺は……!」
-
反逆する。
理不尽な運命、強大な敵、歪んだ世界――その全てに反逆する。
それこそがルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという存在の起源。
「俺は誰にも従わない……相手が神や魔王であったとしても、絶対に!」
空っぽだった肉体に、もう一度立ち上がる力が湧いてくる。
押し付けられた役割などいらない。
常に自分の意志で生きる。それが、ルルーシュという人間が己に課したただひとつのルール。
陽介とこなたに手を引かれ、それでも最後は自分の足で、ルルーシュは立ち上がる。
――もう、大丈夫だよな?
「ああ……すまないな。最後まで面倒をかけた」
――最後じゃないよ。絶対もう一度会うって、約束したでしょ。
「ふ……そうだったな。ならばこれ以上負けている暇などない。
さっさと魔王を片付けて……お前達に会いに行くとしよう!」
――おう、待ってるぜ!
――私、ここではみんなのお世話になりっぱなしだったよね。だから、次はみんなで一緒に遊ぼう! 遊びなら私の右に出る人はいないよ!
「ああ、約束する。俺の方からお前達に会いに行く!」
――これで最後なんだ。持ってけよ、俺達の力!
――頑張って、ルルーシュ君! きっと勝てるよ!
繋いだ手だけが紡ぐもの。
陽介とこなた、二人からの贈り物。
確かな絆を握り締め、ルルーシュの意識は覚醒していく。
戦場へ――魔王が待つ、熾天の座へと帰還する。
-
◇ ◆ ◇
「何だと……!?」
ルルーシュの拳によって、魔王ゼロの仮面は砕かれ、生身のゼロの顔がむき出しになった。
当然、鍛えていないルルーシュの拳も同様に砕けている。
だがそんな事を意に介さず、ルルーシュはさらに距離を詰めていく。
「何故、魔王として覚醒していない!? エデンバイタルはお前を呑み込んだはずだ……!」
「ああ、その通りだ。確かに俺はエデンバイタルの海に沈んだ。
だがお前が言ったんだ、エデンバイタルは人の集合意識だと。そこにあるのは魔王の意志だけじゃない!
俺達が繋いだ絆もまた、個から解き放たれ集合意識へ還る。その絆が俺を俺のまま、ここへ導いた!」
ペルソナ使いが操るペルソナは、人の無意識領域に棲まうもの。
一度精神世界で陽介とリンクしたルルーシュとこなたには、無意識領域の繋がり――コミュニティとも呼ばれるものが存在している。
そして、エデンバイタルの流入によりルルーシュの知覚は瞬間的に無限大まで加速した。
違う世界に分かれてしまった陽介とこなたに、意識を接続できるほどに。
「あいつらが思い出させてくれた。誰が相手だろうと、俺は絶対に従わない。
この命ある限り反逆し続ける――それがこの俺、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ!」
「……だが、それで何が変わる。魔王にならないままワイアードギアスに目覚めたとて、私に抗う事は出来まい」
視線を絡ませる。ルルーシュに発現したワイアードギアスがどのようなものであっても、ゼロのワイアードギアス“ザ・ゼロ”ならば無効化できる。
ギアスをギアスで封じられるのならば、競えるのは肉体の基礎性能のみ。多少エデンバイタルを扱えるようになっても、ルルーシュに勝ち目など無い事は自明の理だ。
「魔王を受け入れろ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。お前が選ぶべき道はそれだけだ」
「断る。俺は魔王にはならないし、お前から逃げるつもりも無い。
俺はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして、かつてルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであったお前を滅ぼす!」
「不可能だ、お前には」
「ああ、不可能だろう……俺だけではな。だからこそ、俺は一人ではないのだ!」
ルルーシュの瞳が、黄金の輝きを放つ。
“ザ・ゼロ”と同じ紋様を展開する、そのギアスこそが。
「これが俺のワイアードギアス――森羅万象に命じる力、“ザ・ギアス”!」
呪い――あるいは願い。ギアスそのものの名を冠した、ギアスの中のギアス。
ルルーシュが本来宿していた絶対遵守のギアスを発展させた、神にすら匹敵する力。
瞳から放たれた光の印は、幾重にも重なりゼロへと迫る。
ゼロは、“ザ・ゼロ”での迎撃を選ばなかった。未知のギアスに不用意に干渉するリスクを避けたのだ。
結果、“ザ・ギアス”の光はゼロの背後――ムーンセルの中枢、聖杯へと叩き込まれる。
瞬間、ゼロはルルーシュの狙いを悟る。
「ルルーシュ、貴様っ!」
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! 聖杯よ――我が騎士をここに呼び戻せ!」
“ザ・ゼロ”がムーンセルをハッキングできるのならば、同等のギアスである“ザ・ギアス”もまた干渉が可能だと言う事だ。
そして今、ルルーシュの手には令呪がある。
花村陽介と泉こなたがムーンセルから脱出する際、二人から異物として剥がれ落ちた最後の令呪。夢の中で、二人から託された最後の希望。
今のルルーシュは、サーヴァントを統べるマスターたる資格を備えている。
果たして――ムーンセルは、ルルーシュの要請をマスターの正当な権利として受諾した。
ムーンセルがデータベースを閲覧し、ルルーシュと組み合わせるべきサーヴァントを検索する。中でも一際強く反応を示した者を与えるとムーンセルは決定した。
ルルーシュとゼロの間に、灼熱の尖塔が立ち昇る。纏うは白の鎧、振るうは日輪の聖剣。
ゼロが咄嗟に打ち込んだ拳は、輝く聖剣にしかと受け止められた。
-
「……ガウェイン!」
「ここに! 我が王よ、遅参致しました」
太陽の騎士は、王の元へと帰還した。
その姿は消去された時のまま、満身創痍である。
「俺を忘れてはいないだろうな?」
「無論です、ルルーシュ。あなたの命令――しかと聞き届けました。
月が太陽の輝きを隠す事など出来はしない。私は変わらず、あなたの騎士であり続けている」
だが、今のガウェインに負傷など何の障害にもならない。
自らを誇れ。王の最後の命令は、騎士の魂をこれ以上ないほどに燃え猛らせた。
敗戦を経てなお、王は膝を屈する事をよしとせず、騎士を呼んだのだ。これに奮起せずして何が騎士か。
ルルーシュは聖杯を背後に、再び魔王と対峙する。傍らにいる太陽の騎士の存在が、ルルーシュの力を押し上げてくれる。
「ムーンセルへのハッキングが仇となったか。サーヴァントの消去が間に合わないとはな」
「お前でも予測できない事があるか。魔王といえども万能ではないようだな」
「エデンバイタルに呑み込まれず、人のままで逆に支配したというか。
ならばルルーシュ、お前はもはや魔王の器などではない。お前はまさに――エデンバイタルの魔人だ」
ゼロの脳裏に古い名が思い浮かぶ。
エデンバイタルの魔人――その存在は、遥か遠き過去にもう一人いた。
そいつの名にあやかって、今のルルーシュを表すのならば。
「ルルーシュ・ザ・コードギアス……!」
今やルルーシュは、魔王ゼロに匹敵する力を得た。
“ザ・ゼロ”と同等のギアス、“ザ・ギアス”。そして再召喚されたガウェイン。
魔王ゼロのガウェインは破壊され、未だ再生していない。
だが、まだゼロに分がある。再召喚されたとてガウェインの負傷は癒えていない。未だ無傷のゼロなら、仕留める事は容易いはずだ。
「魔王ゼロ、もう一人の俺よ。決着を着けるぞ!」
「ルルーシュ、もう一人の私! いいだろう……来い!」
三人が、同時に駆け出す。
誰よりも早く踏み込むのは、やはりガウェイン。
宝具の開放も何もない、全身の勢いを乗せた真っ直ぐな突きを放つ。
ゼロが両手に展開した“ザ・ゼロ”が、聖剣を三度、完全に停滞させる。
森羅万象を無に帰す力。ゼロはガウェイン本体をも無に帰そうと、聖剣を直に掴む。
-
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! 止まるな、ガウェイン――進み続けろ!」
「うおおおおぉぉぉっっ!」
「こ、この力……!?」
そこにルルーシュの“ザ・ギアス”が飛ぶ。
森羅万象を無に帰す力は、森羅万象に命じる力によって相殺され、効果を失くす。
故にガウェインの剣は止まらない。切っ先が僅かに、“ザ・ゼロの”光印へと突き刺さる。
「“ザ・ゼロ”を超えるのか……!」
「さらに令呪を以って命じる! ガウェイン――貫け!」
「おおおおおおぉぉっ……!」
花村陽介の令呪が輝き、ガウェインを後押しする。
聖剣はさらに突き込まれ、“ザ・ゼロ”を突破し魔王ゼロの掌へと侵攻した。
「ぐっ……!」
「重ねて令呪を以って命じる! ガウェイン――俺に勝利を捧げてみせろ!」
「……イエス、ユア……マジェスティ!」
駄目押しに、泉こなたの令呪を解き放つ。
ワイアードギアスと令呪二画、合わせて三重のブーストがガウェインの剣に宿る。
擬似太陽が脈動し、聖剣は万物を灼き尽くす炎を纏う。
ガウェインは王に捧げる忠義の言葉を叫ぶ。そして全力以上の全力で、聖剣を突き抜いた。
「…………」
光が弾ける――静寂が戦場に染み渡る。
ルルーシュの眼前で、ガウェインの聖剣は、忠義の剣閃は――確かに魔王の中心を刺し貫いていた。
“ザ・ゼロ”を打ち破られ、肉体に重大な損傷を負い、魔王はついに崩れ、倒れる。
「……俺達の勝ちだ、魔王ゼロ」
「……そのようだ。私に与えられた時は……尽きた」
ゼロは地に伏し、ルルーシュはそれを見下ろしている。
今度は先程のようなブラフではない。
ルルーシュのワイアードギアスによって互角の条件に引きずり降ろされた魔王は、全ての虚飾を取り払われたも同然。
故に全力でルルーシュらに挑み、そして敗北したのだ。
こうなってはもはや、ルルーシュに魔王を継承させる事は不可能だろう。
ただ滅び、宇宙が熱的死を迎えていくのをエデンバイタルの彼岸から傍観するしか無い。
「いや、そうはならない」
しかし、ルルーシュは断言する。
そんな事は起こらない――起こさせない、と。
ナナリーの生きる世界、陽介やこなたの帰る世界を、失わせる訳にはいかない。
-
「何……?」
「エデンバイタルと繋がって知った。お前の宇宙が滅びたのは、お前があまりに長く魔王で居続けたせいなのだろう。
変化のないエデンバイタルの意識エネルギーは停滞し、死を迎える。なら、魔王という存在に収束した可能性を、解き放ってやればいい」
「どういう、意味だ」
「お前がやった事の逆をするだけだ。ムーンセルの事象改竄能力を用いて、エデンバイタルをハッキングする。
そして、魔王というシステムそのものを消去する。そうすれば、世界が魔王を核に存在するなどという事はなくなるだろう」
「馬鹿な……そんな事をすれば、世界はすぐに停滞する。ギアスという混沌無しでは、世界は変化を保てないのだぞ」
「何故そう言える? お前は所詮自分の世界を見てきただけだ。
花村、泉、金田一……ギアスなど無くとも彼らの世界は回っている。
エデンバイタルの干渉こそが、可能性を殺し意識を停滞させるのではないのか?」
「根拠の無い空想だ。そんな不確かな物に全宇宙の存亡を賭けるというのか!」
ゼロは真実、宇宙の行く末を案じているのだろう。
だが一つ、彼は見落としている事がある。
最初から魔王の視点で行動するあまり、人の可能性を信じていない。
ルルーシュが示した強さもまた、その可能性の中から生まれた物だ。
人が人のままで魔王を超えられる。ならば魔王とは、決して絶対の存在ではない。
「もう少しだけ信じてみろ。お前が愛する人間は、無知で愚かで、過ちを犯す生き物だ。
だが、過ちを糧に成長する事もできる。人はいずれ魔王など必要としなくなる。その可能性を、俺は信じる」
それだけ告げて、ルルーシュはゼロに背を向ける。
もはや魔王は敵ではない。それだけの力も、心も、もはやゼロには残っていない。
歩んでいく先はムーンセルの中枢、フォトニック深淵領域。
ガウェインに目を遣る。騎士が頷く。
「我が王、ルルーシュ。あなたの道行きに太陽の輝きが共にあらん事を」
「我が騎士、ガウェイン。忠道、大儀であった」
お互いに一言ずつ告げて、すれ違う。これ以上は必要無い。
ガウェインとの間に確かな絆を感じる。それだけで十分だ。
ルルーシュはガウェインに背を向けて、一人、月の中枢へと踏み入っていく。
「……これが、聖杯か」
そこはまるで、海の中にいるような――情報の大海の只中に、ルルーシュは浮かんでいる。
手を伸ばさずとも情報に触れられる。
太陽系最古の遺物。膨大な過去を収めた、万能の願望機。
ムーンセルは今こそようやく、ルルーシュを最後のマスターだと判定してその鍵を開いていた。
今なら、何でも出来る。
不死の命、別世界への転移、過去の改変、望む事が望むだけ叶えられる。
「以前の俺なら、飛びついていたかもしれんな……」
苦笑し、ルルーシュは願いをムーンセルへと入力する。
魔王ゼロのいた世界を検索。
その世界に存在するエデンバイタルの観測、そして介入。
システムの改竄。
-
「エデンバイタルはムーンセルと同質の存在。
故に、エデンバイタルを根底から改竄するのならば、ムーンセルもまた全てを擲たねばならない。
俺もまた、月と共に消えるか……」
ムーンセル・オートマトンを全力で稼働させるのならば、中枢でそれを指揮するウィザードは欠かせない。
エデンバイタルのシステムを書き換え終えた時、ムーンセルもまた自壊するように設定する。
聖杯が誰の手にも渡らないように。もう二度とこんな戦いが起きる事のないように。
そしてムーンセルが自壊すれば、ルルーシュは死の運命に回帰する。約束された死に帰っていくのだ。
「約束は、果たせない……か」
命令はすぐさま実行に移され、ムーンセルが唸りを上げる。
次々と現れては消える情報を捌きながら、ルルーシュは友を想う。
花村陽介は、鳴上悠の喪失に向き合うだろう。その痛みから逃げず、立ち向かい、そして乗り越えるはずだ。
泉こなたは、日常へと戻るのだろう。だが、前よりもほんの少し、強くなったかもしれない。
彼らの変化を見届ける事ができないのが、未練だ。
「贅沢になったものだな、俺も。全てを捨てると一度は決意したはずなのに」
いつまでも悔やんでいる訳にも行かない。
と、ムーンセルが自壊を始めたのがわかる。
首尾よくエデンバイタルを改竄しているようだ。これでもう、魔王という存在は生まれない。
その果てにエデンバイタルの意識エネルギーが停滞し、やがて滅びを迎えるならば、それはもう仕方がない。
人がそのように選択した結果なのだ。自ら選んだ先の滅びならば、それは魔王がいようといまいと不可避のものだ。
だが同時に、そうはならないとも確信している。
人という存在を論理で表現し切る事は出来ない。誰しも自らの内に混沌を抱え込んでいる。
ルルーシュが世界を変えたいと思ったように、自らの意志で行動する人間という者は必ず現れる。
魔王がおらずとも、混沌の種は尽きる事は無い。
「だって、こんなにも――宇宙には星々が、命が溢れているのだからな」
ルルーシュの目に映るのは、満天の星空だ。
煌めく光の一つ一つが命ならば、可能性はその生命の数だけ広がっている。
「信じろ、魔王……俺やお前がいなくとも、可能性は無限の分岐を増やしていく。
その中から必ず、明日への希望は生まれるはずだ」
目を閉じる。
星々に抱かれて、ルルーシュの旅は終わる。
願わくば、次に目覚める時があれば、優しい世界であってほしい――
伸ばした手は誰かに強く掴まれる。
そしてルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという存在は、月と共に消滅した。
-
◇ ◆ ◇
目覚めは、割と早く訪れた。
小鳥の囀りが耳をくすぐる。朝日が瞼を貫いて眼球を灼く。草の香りが鼻につく。頬を撫でる風が心地いい。
ルルーシュは、ゆっくりと目を開けた。
「ここは……?」
そこは、見知らぬ草原だった。
熾天の座でも、冬木市でも、ましてゼロレクイエム最後の地でもない。
完全に見た記憶の無い、緑の平野だった。
「何だ? 何故、俺は生きて……?」
あの聖杯戦争は夢だったとでも言うのか。
そんなはずはないと思うものの、傷や令呪は一つも残っておらず、夢ではないと証明する物がない。
慌てて立ち上がる。と、懐からこぼれ落ちた物があった。
「これは、花村の……」
契約者の鍵だ。それを見た瞬間、記憶が圧倒的な現実感を伴って脳裏に再現される。
ルルーシュは確かに魔王ゼロを倒し、今度こそムーンセルにアクセスして、自壊を命じた。
エデンバイタルは改変され、聖杯は解体されたはずなのだ。
その結果ルルーシュは死ぬはずだった。本来あるべき死の運命に戻るはずだった。
だが今、生きてこの草原にいる。
「やっと起きたか、馬鹿者め。女を待たせるとはマナーを知らないボウヤだな」
聞き覚えのある声がする。
振り向けばやはり、そこにいたのは全ての始まりである緑の髪の魔女――C.C.だった。
「C.C.……? 何故お前がここにいる。いや、そもそも何故俺は生きている?
ゼロレクイエムはどうなった? スザクは? ナナリーは?」
「うるさい。お喋りな男は嫌いだ」
矢継ぎ早に質問するルルーシュを無視して、C.C.は持っていた包みを放り渡す。
混乱しながら包みを開くと、そこにはいかにも凡庸な普段着が一式入っていた。
「さっさと着替えろ。いくらE.U.の田舎町とはいえ、その皇帝衣装は目立ちすぎる」
「は? 待て、どういう事なんだ。説明しろ、C.C.! なんで俺は生きているんだ!?」
「知らんよ。私はただ、呼ばれただけだ。今日この場に来るようにとな」
「呼ばれた……?」
これ以上聞いてもC.C.に答える気はなさそうだったので、ルルーシュはおとなしく服を着替える。
着ていた皇帝の衣服は血に塗れている。と言っても聖杯戦争の負傷ではなく、ゼロレクイエムにてスザクに刺し貫かれた時の出血だろう。
皇帝服は包みにまとめる。いくつか処分の方法を考えて、それどころではないと思い直した。
「着替えたな、では行くぞ」
「待てC.C.、いい加減に説明をしろ!」
「あれに乗る。お前は前だ」
相変わらずのマイペースぶりで、C.C.はさっさと進んでいく。
その先には一台の馬車があった。荷台に藁を満載した、古き良き原始的な移動装置だ。
C.C.は荷台に乗って寝転がり、ルルーシュに御者席へ座れと手を振って指示してきた。
「私はもう馬の面倒を見る気はない。お前が運転しろ」
「C.C.! いい加減にしろ!」
「うるさい奴だ。頼まれたんだよ、お前の事をよろしく頼むとな」
「頼まれた? 一体誰にだ!」
「お前にだよ、ルルーシュ」
「……は?」
瞬間、曖昧だった記憶の霧が晴れる。
魔王ゼロを打ち倒し、聖杯に接続した後だ
全てを終えて、目を閉じたルルーシュの手を掴む者がいた。
ガウェインではないとしたら、それは魔王ゼロしか有り得ない。
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「あいつ、まさか……!」
ガウェインが止めなかったのは何故か。
それは、魔王ゼロにルルーシュを害する気がなかったからではないか。
あの時、ゼロは魔王ゼロではなく、ルルーシュだった。
魔王という存在が消え、エデンバイタルとの接続を断たれたゼロならば、自らをルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであるとムーンセルに誤認させる事も可能なはずだ。
そしてルルーシュと入れ替わり、ルルーシュをムーンセルの外へと弾き出した。ご丁寧に死ぬはずの運命までも書き換えて。
ゼロ自身は崩壊に巻き込まれると知りながらも、ルルーシュの代わりに聖杯を自壊させた。
そう考えれば辻褄は合う。
「Cの世界を通じてお前に連絡をとったという事なのか」
「私だって驚いたさ。いきなりお前の声で呼ばれて、更にここに来てみれば死んだはずのお前が呑気に寝ているんだからな。
ああ、そういえば伝言を預かっている。“魔王でも魔人でもなく、人として生きて死ね”、だそうだ」
「人として……?」
「まあ、いいんじゃないか。どうせお前が生きてる事を知ってる人間は私以外は誰もいないんだ。
適当に名前を変えて、あちこちを放浪する生活なら、大した騒ぎになる事もないだろう。ナナリーやスザクに会う訳にはいかないだろうがな」
「そんな適当な……」
だが、思い直す。
魔王ゼロがルルーシュを救って代わりに滅びたのは、もう一度人の可能性を信じてみる気になったからではないのだろうか。
魔王として生きざるを得なかった自分の代わりに、人の生を全うしろと……そういうメッセージ。
ならば、ルルーシュが自身の生死に拘るのは、その願いを否定するという事になる。
スザクには、生きろと命じられた。
陽介とこなたとは、再会の約束をした。
魔王ゼロには、人として生きて死ねと託された。
ならば……ルルーシュが、一個の人間として選ぶべきは。
「……まったく。せっかく撃たれる覚悟を決めたというのに、また生きたくなってきたじゃないか……」
「悩むようだったら、理由をやる。私のために生きてみろ。
忘れているようだが、お前には責任があるんだぞ。私の面倒を見るという責任がな。
女を待たせたんだ、ちょっとやそっとの借りじゃないぞ」
「この魔女め……だが、確かにお前には借りがある。
借りっぱなしは癪だしな……まあ、いいさ。一人旅は退屈だからな。付き合ってやるよ」
「じゃあさっさと出発しろ。私は腹が減った。ピザが食べたい」
「やれやれ。おい、金はあるのか? 俺は一銭も持っていないぞ」
「心配するな。ジェレミアの財布を持ってきている」
「……そうか。いや、何も言うまい」
C.C.は相変わらずC.C.だった。その変わらない有り様に、どこか安心する自分がいる。
少なくとも一人、自分と共に歩む人がいる。それならば、もう少し生きてみるのも悪くないのかもしれない。
この、ルルーシュが創った世界で。ナナリーやスザクが生きるこの世界で、もう一度人として生きる。
それでも、いつか死を迎える時は来るだろう。その時――あの魔王に教えてやろう。
きっと、大丈夫だと。魔王などいなくとも、この宇宙は続いていく。
馬車はゆっくりと動き出す。
目的もあてもない、ゼロから始める気ままな旅。
人として生きると決めたのなら、このくらいの適当さがちょうどいいのだろう。
そう、始まりがゼロならば――これからいくらだって、積み重ねていけるのだから。
「ルルーシュ、退屈だ。何か話をしろ」
「そうだな。では、俺の……友人の話をしてやろう」
「ん? スザクの事か」
「いや……そうでもあるが、それだけじゃない。話せば長くなるな」
「いいさ、時間はたっぷりあるんだ。好きに話せ」
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さて、どこから話したものか。
そうだ、と思いつく。C.C.ならば、神根島のような手付かずの遺跡の場所を知っているかもしれない。
思考エレベータを開き、別の世界へと扉を開く。
そうすればまた会えるかもしれない。再会を約束した、二人の友と。
決めた。まずは会いに行こう。この鍵も返さなければならないのだから。
嬉しそうなルルーシュの気配を察して、C.C.も微笑む。
「ギアスという王の力は、人を孤独にする。ふふ……少しだけ違っていたか? なあ、ルルーシュ」
問いかけてくる彼女に、笑みを返す。
見上げれば、空には輝く太陽がある。
あの騎士と同じ、暖かく柔らかな光。
この光が照らしてくれるのならば、行き先に迷う事はないだろう。
道はどこまでも続いていて、旅も続いていく。
そしてきっと、この旅路の果てに――――。
「――約束を、果たしに来たぞ――」
二次キャラ聖杯戦争 終幕。
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投下終了です。
ありがとうございました。
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最終回投下お疲れ様でした!
感想は上手く言えないけど二次キャラ聖杯戦争の幕引きらしい良い最後だったと思います!
l3N27G/bJUさんも、今まで二次キャラ聖杯戦争のSSを書いてくださっていた方達も、
本当にお疲れ様でした!
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最終回投下お疲れ様でした。
素晴らしい作品をありがとうございます。
途中参加でしたが、こうして完結して感慨深いものがあります…
今まで二次聖杯戦争に関わった全ての人に感謝を送ります。
皆様本当にお疲れ様でした。
そしてありがとうございます!!
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最終回投下乙です!!
最後に勝利したのは人としての意志、そしてこの戦いで培った絆だった…!
色々と感想が上手く纏まらないけど兎に角素晴らしい最終回でした!
長らく続いていたこのロワが終わってしまうのは寂しい限りですが、
同時に最後まで完走してくれて本当に嬉しいです!
二次聖杯完結おめでとうございます!書き手の皆様、本当にお疲れさまでした!
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最終回投下お疲れ様でした
ルルーシュはそう繋がるのか……
これまでの話が綺麗に収まった最終回で感慨深いです
波瀾のあった企画でしたが、こうして最終回を迎えたのは嬉しい限りです
この企画に関わった全ての方、お疲れ様でした
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完結お疲れ様でした。
全てを知ってる魔王ゼロなら、ルルーシュの世界にできるだけ影響を与えない運命の弄り方も判るんだな。
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お疲れ様です!二次聖杯戦争2とかないかなぁ・・・
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終わったあああ!
完結おめでとうございます!
ギアス対決としても面白いんだけど集合無意識とかでペルソナや型月クロスしまくりで面白かった
何より本編てかCCCじゃあのまま退場だったガウェインがこっちじゃルルーシュに応えて再召喚ってのがすごい燃えた!
二次創作だからこそだよなー。二次聖杯始まった時はCCCとか存在すらしてなかったはずだけど、なんかほんと、エクストラの二次創作もしてて最高な最終回だった!
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最終回並びに今まで投下して下さった全ての書き手さんに全力で乙です!
終盤から最終回まで決して予約の途切れることのなかった勢いに驚かされました
そして万感の思いで迎えた最終回も時空を超えた因縁と激しい死闘の末にまさにルルーシュの起源であり存在意義であった反逆者たる意志と
今までガウェインや仲間たちと結んだ強い絆によって辿り着いた輝かしい結末が素晴らしかったです!
またガウェインも太陽の騎士の名に相応しく新たな主への忠義に燃えたぎり
ルルーシュの進む道を力強く切り開いて混沌の魔王を振り払った活躍ぶりが最高にカッコよかった……!
改めて二次キャラ聖杯戦争の完結おめでとうございます!皆さん本当にお疲れ様でした!
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最終回投下お疲れ様でした。
そして完結おめでとうございます。
ルルーシュと魔王ゼロ、ガウェインとガウェインの異色の同キャラ対戦や、P4ラストバトルを思い出す仲間の激励など、クライマックスまで畳み掛けるような展開の連続でとても面白かった!
特に最後のCCとの会話は、原作ではわざと明確に描かれていないルルーシュの生死をこう繋げるのかと驚きました。
色々なことがあった企画でしたが、今は心から楽しかった、参加してよかったと思えます。
関わったすべての方に感謝を。お疲れ様でした!
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最終回投下、そして完結、◆l3N27G/bJU氏並びにこの企画に携わった全ての方、お疲れ様でした!
感想に関してはもう皆様が私の言いたいことを全て言って下さった感じです
私も途中参加の身ではありましたが、勇気を出してこの企画に参加して本当に良かった!
この二次聖杯でSSを書いて下さった書き手さん、そして応援して下さった皆様にも心からお礼を申し上げたいと思います
本当にありがとうございました!
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乙、涙腺がゆるゆるです
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◆l3N27G/bJU氏、最終回投下お疲れ様でした。そして完結おめでとうございます!
二次聖杯という大きな流れを締めくくるにふさわしい最高の最終回でした
私は最後の方はほとんど参加できませんでしたが、一つの壮大な物語が終わる瞬間を見ることができて嬉しい限りです
書き手として参加する舞台を作ってくださった◆.OpF6wOgZ2氏、作品を作り上げた書き手諸氏、
そして読者の皆様には感謝するばかりです。本当にありがとうございました!
と、せっかくですので最後に私も何か残したいと思いましたので、花村陽介、泉こなたのエピローグを予約させていただきます
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エピ予約も来たか!
なんかなおさら完結したんだな―って感じる
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エピローグ予約来ましたか!
予約期間はどうしましょう?完結したし予約期間は無しにします?
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エピローグ…だと…*
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大分遅くなりましたがご感想ありがとうございます。十日ほど経ってようやく完結したんだなと実感が湧いてきました
途中参加の身でありながら最終回という大役を頂いたことは大変ありがたく、また光栄な事です
>>1さん、書き手の皆様、トキワ荘の管理人さん、避難所の管理人さん、読者の皆様
本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。二次聖杯が完結できたのは皆様のお力があってこそです
この二次聖杯で過ごした時間は本当に楽しかったよ!
>>784
陽介とこなたについては書ききれなかったという部分がありますので、エピローグを予約していただけてこちらとしても嬉しい限りです
あとは一読者として◆QSGotWUk26氏のエピローグを楽しみにしています
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エピローグマダー?
にしても、人いなくなったな
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みんな第二回の方に行ってるからな
登場候補話だけでもすっげぇいっぱい来てるし
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エピローグいつまでもまってます!
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夜通し読み続けて、今やっと最終話まで読ませていただきました。
あんまりこの手のロワ系(?)を読んだことがなかったのですが、いや、もう、本当に面白くって……次へ、次へとエピソードを読み進める手と目が止まりませんでした。
月並みですが、書き手の方々に感謝の言葉を。
素敵なものを読ませていただき、ありがとうございました。
そして完結、おめでとうございます!
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エピローグずっと待ってますからね!
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エピローグのタイトルがACE過ぎる
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エピローグ投下来たのか!?
探しても見つからぬ……
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企画完結に伴い、本スレッドは過去ログ倉庫に移動させていただきます。
完結おめでとうございます!
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