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SS妄想・没ネタ投下スレ

164 ◆yxYaCUyrzc:2011/05/20(金) 21:59:38 ID:???
「やあ」

荒木が右手を挙げて近付いてきた。この行動が意味する事は一つ。だが少し会話するのも悪くないだろう。
「見せしめの死体を支給するとは随分と奇抜なアイディアだったな。それはどうなった?」
「エンヤ婆が開けて――支給されたのはタルカスだけど。まあ色々あって今は埋葬されたみたいだよ」
へぇ、とセリフにもならないような俺の返答を聞き、荒木も悟ったようだ。ゆっくりと、しかしはっきりと口を開く。

「例えば――ジョルノ・ジョバァーナっているだろ?彼のスタンドは生命を生み出し、それが成長して身体の部品を作るまでに至った」

言いたいことは十分に理解できるし、その先に何を言いたいかも手に取るように分かる。だが放っておいた。彼が上機嫌に話しているならそれでいいだろう。
本になっていた間に何かの境地にでも目覚めてしまったのか……とにかくそれが現状での“賢い行い”だった。

「で、僕が言いたいのはここからさ。スタンドってほら、一人一能力だろ?それは間違いない。
 だけど『スタンド』と『能力』って必ずしも一致しないんじゃない?これはジョルノに限らず皆そうさ。僕も含めて」

「なるほど……興味深いな」
適当に相槌を打っておく。聞いたところで最早どうにもならない。かといって聞かなければ機嫌を損ねる。まったくもって面倒だ。

「だってほら、仮にジョルノが死んだ時――いや、まだ今は生きてるけど――そのスタンドも当然消滅する。
 だが実際はどうだ?彼が作った目玉や血液がネジやレンガに戻ってしまったりするだろうか?そんなことになったら大変だろう?
 時を止める能力だってそうさ。確かに世界を支配しちゃあいるが、実際に本体が干渉出来る範囲なんてせいぜい半径数十メートルだと思わないかい?」

「それはつまり」
「うん、君は用済みという訳さ。君が消えたって紙が破れる事もない」

予想していた通りの内容だった。特に驚きもしない。怒りさえも湧かなかった。
「ならせめて――殺してくれ。以前はそれで無限の虚無を味わったのだから……二度と同じ間違いはしない」
「へぇ、抵抗しないんだ。積極的に協力してくれたから何か打算があるのかと思ったけど――」
驚いたのはむしろ荒木の方だった。もちろんその言葉は表面的なもので、実際はこうなることもお見通しだったんだろう。だがそれさえも構わない。

「お前はさっき、参加者になりたかったのかと聞いたが……広義の意味では俺だって、他の支給品担当だって、お前さえも参加者だろ?
 その場で自分のできる事を考え、行動し、結果としてゲームをリタイアする。戦った相手と場所以外に俺が参加者と違った事はあるか?」
「いや、ないね。本になってる間にどんな悟りを開いたか知らないが、なかなか良い演説だったよ。だが惜しいとは思わないかな。
 もし次があってもその時は別の宮本輝之助を呼ぶとしよう。それじゃあ」

――俺の考えは決して間違っているとは思わない。
  多くの人間から見ればそれが歪んでいると言われようとも。
  だからせめて……祈るとは言えない、見てみたい。
  運命に抗う覚悟と正義を持った参加者たちの戦いを。
  どこかでまた、会う事があったのなら――

【宮本輝之助 死亡】


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