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【小説】よしけんが死んでいました。

1課長:2008/08/13(水) 05:26:32

 ――蒸し暑い夏の日。とあるホテルの一室で僕はよくわからないまま倒れていた。

 


 「健治、今度はいつ帰って来るの?」
 実家を出ようとする僕に母親は尋ねる。
 「さぁ…わからないよ。勉強も忙しいし。また何かあったら戻って来るよ。」
 「おにいちゃん…もう行くの?」
 「ああ、早百合。また来るから。」
 「体には気をつけなさいね。」
 「わかってるって。」

 玄関を出て原チャリに跨る。歳が離れた妹が悲しそうにこちらを見ているので、じゃあなと一言の声とエンジンをかけて車道へ飛び出す。
 さて、これから一号線を8時間の旅だ。

 最初、東京からここまで原チャリで帰ると言ったら色んな人に「やめとけ」って止められたっけ。でも来てみると案外辛くもなかった。
 色んな人、と言ってもこれまた歳の離れた年上の連中。きっと本人基準なんで僕には当てはまらなかったのだろう。

 しかし暑い。東京も暑いがこちらこそ暑い。建物がない分日光は直撃するし、いかんせんヘルメットの中は5分もしない内に蒸れ出すし、かゆくなる。
 そして何よりたまらないのが信号待ちのエンジン熱と地熱。軽く40度は越えるであろう気温が全体を蒸らす。なるべく信号待ちをしないように、先の信号が赤だとゆっくり差し掛かろうとするけど、なかなかそうも行かない。
 そうやって家を出て3度目に止まった交差点で携帯電話が鳴り響く。

 「ん…課長からか。何だろ?」

 携帯に気づくと同時に、後ろの車がクラクションを鳴らす。信号が変わっていた。
 慌てて携帯をしまって発進する。あとで休憩がてら折り返すとしよう。




 「んだよ、でねーな。」
 少し機嫌悪そうに電話を切り、もう一度発信する。今度は別の相手らしい。
 「あーもしもし?電話出ないからまだ確認取れないんだけど、まあ、多分行くと思うから。今日こっちに戻って来るはずだしね。うん。そうそう。」
 「確認取れないのにいいんすか?まあ、何人来ても大丈夫ですけどね、こっちとしては。」
 「じゃあ、まあ連絡来たらまた電話するわー。ういっす。おつかれさーん。」

 電話を切ってタバコに火をつける。時間は昼の1時過ぎ。
 「…んー。パチンコでも行くかなー。」


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