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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part5

1名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:32:26
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第5弾です。

ここに作品を上げる →本スレに代理投稿可能な人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
① >>1-3に作品を投稿
② >>4で作者がアンカーで範囲を指定した上で代理投稿を依頼する
③ >>5で代理投稿可能な住人が名乗りを上げる
④ 本スレで代理投稿を行なう
その際本スレのレス番に対応したアンカーを付与しとくと後々便利かも
⑤ 無事終了したら>>6で完了通知
なお何らかの理由で代理投稿を中断せざるを得ない場合も出来るだけ報告 

ただ上記の手順は異なる作品の投稿ががっちあったり代理投稿可能な住人が同時に現れたりした頃に考えられたものなので③あたりは別に省略してもおk
なんなら⑤もw
本スレに対応した安価の付与も無くても支障はない
むずかしく考えずこっちに作品が上がっていたらコピペして本スレにうpうp

893名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:17:19

人身売買のビジネスに私を協力させたいらしい藤本が馴れ馴れしげに話しかけて来た時、女性の獲物の末路について聞かされた時は本当に吐き気を催した
おぞましい
あの女は魔女だ
安倍さんが清廉な天使だとしたら藤本は不浄な魔女だ
だが私はそんな藤本でさえも利用してやろうと思う
あの女、i914の存在が気に食わない
あいつを監視する為に、安倍さんのいる拠点から離れて暮らさねばならないことも気に食わない
隠れ住んでいた山村から上京してきたあいつを助けた女性の人物像が安倍さんと重なることも気に食わない
だが何より私があいつを許せないのはあいつが無邪気に正義の味方を気取ろうとしていることだ
何がリゾナンターだ
ふざけるな
ピンチな時に助けを呼べば必ず駆けつけてくれる正義のヒーローなんて存在しない
あの日、安倍さんの翼が折れた時、私は自分の立場もわきまえず助けを呼んだ
だけど誰も助けてなんかくれやしなかった
駆けつけてさえくれなかった
正義のヒーローなんてこの世界には存在しない
そのことをあいつに思い知らせてやるため、藤本美貴にあいつをぶつけてやろう
ちょうど次の人狩りが迫っている
その現場の近くにあいつを呼び出して誘導してやろう
残念ながら私の能力では藤本の張った結界に侵入することは適わない
だけど瞬間移動の能力を保有するi914なら可能な筈だ
そしてi914の痕跡をトレースして私も結界の中に潜り込む
その上で二人の戦いの状況に応じて動く

理想的なのはi914が藤本によって生死の境目を彷徨うぐらいのダメージを与えられることだ
もしもi914が普通の日常生活を送れない状態になったらさすがの組織も回収せざるを得ないだろう
私の任務も終了、拠点に戻って安倍さんのお世話をしながら洗脳屋として暮らしていこう
命を落としたところで私は全然構わない
組織が長年追い求めていたi914を死なせてしまった責めを負うのは藤本だ
私は監視不備の責任を問われるかもしれないが、それだけで粛清される事態になるとは思えない
その程度の利用価値が私にはある筈だ

894名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:17:51

万が一、i914が藤本を倒したとしても私には実害は及ばない
不浄な魔女が評価を落とし、組織内での影響力を失う
ただそれだけのことだ

なんにせよ人狩りの正確な日時を探ることが先決だ
藤本の私兵のうちの何人かの情報は掴んでいる
そいつらの精神を揺さぶって、決戦の日時と場所を探り出そう


2007/6/19
少し手間取ったが人狩りの日時がわかった
場所が判明するのはもう二三日かかりそうだ
とりあえずその日のi914の予定だけは押さえておこう
どうせ友達もいないあの女はトレーニングでもしてるんだろう  ------------------(注2)
あるいは喫茶店の物件探しでもしているのか
それにしても一度に50人以上、それも少女ばかりを狩るとは藤本の奴血迷っているのか


2007/6/23
人狩りの現場が意外にあいつの仮住まいに近いのことに驚いた
好都合なのは事実だけどあまりにも都合が良過ぎて何か仕組まれている気さえする
いや藤本とi914を戦わせることを仕組んだのはこの私だ
ビビッていても始まらない
あいつを魔女の結界の中に送り込む手順を決めておこう


2007/6/25
5日後、6月30日のあいつの予定を聞いた
遊びに誘われたとでも勘違いしたのか嬉々として話すあいつの顔を見ていると少しだけ心が痛んだ
どうやらこんな私でも少しは良心の欠片が残っているらしい

895名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:18:26

2007/6/26
藤本の私兵の人員配置がある程度わかった
あの用心深い女はどうやら結界の外部にも何名か監視を置くようだ
まあ当たり前といえば当たり前だが
これで私自身があいつ i914を魔女の結界の近くまで誘導するってわけにはいかなくなったが何の問題もない
精神干渉と精神感応
私とあいつの能力は物凄く近い領域にあるし、重なっている部分もあるが決定的に異なるのは能力の方向性だ
私がラジオの放送局ならあいつはラジオの受信機のようなもの
まるで光と影の関係性みたいだ  
あいつは、私たちの出会いは偶然ではないとこの間言っていた -----------------(注3)
もしもあいつとの出会いが必然だというなら最大限に活用させてもらうことにしよう

人狩りの犠牲者を装った私の思念をあいつに伝えて魔女の結界に誘き寄せる
あいつは正義の味方を気取っている
そんなあいつは助けを求める声を辿った先に人間の侵入を拒む結界が存在したら必ず突入するだろう
後は成り行き次第だがどう転んでも私の不利益にはならないはずだ

896名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:25:31
>>891-895
あと1レスあるんですがNGワードとやらに引っ掛かった所為で書き込めませぬ
別に「死ぬ」とか「殺す」とかそんな物騒なのは含んでないと思うんですが

というわけで本スレへの投下は延期します
というか続きは断念するかもです

897名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:27:38
というかNGワードを割り出すためにチェッカーとして細切れに投下しますのでお見苦しいかもですがご容赦を


2007/7/1
バカな
もう一人能力者が現れただと
それも共鳴増幅という超レアな能力の持ち主と来たもんだ
そんな都合のいい偶然があってたまるか
もしかして今回の件は周到に仕組まれたものなのか
だったらいったい誰がそんなことを
まずは共鳴増幅を持つ女の情報集めをしよう
いやっその前に組織に報告すべきなのか
田中れいな
こいつの存在が吉と出るか凶と出るか
それを決めるのはこの私だ

898名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:28:08
しかしあの藤本美貴があっけなく敗れたのは意外だった  ------------------(注4)
油断したのかそれとも慢心?
本人は逃げ果せたようだが戦いに敗れたことで求心力が低下したのは間違いない
田中れいなによって打ち倒された多数の兵隊は警察に検挙された
大物ぶってた藤本が組織内での発言力が削がれたことだけは喜ばしい

899名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:28:44

(注1)新垣里沙はかなり厳しい視線で藤本美貴を捉えていたが、藤本美貴はかなり親しげに話しかけていたという記述が散見される
    リゾ文書(16)048 『スパイの憂鬱7(前編)』はその最たるものである。その内容の突拍子の無さから資料としての信憑性を
    疑われることもある『スパイの憂鬱』であるが今回発掘した新垣里沙の手記によってその信憑性が高まることを願ってやまない

900名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:29:42

(注2)ストイックなまでに己を鍛え上げた戦士、高橋愛。 そんな彼女のトレーニング風景を撮影した貴重な写真を添付しておく

901名無しリゾナント:2015/04/14(火) 21:30:58
判明
画像のリンクがアウトだったみたい
2ちゃんでもダメなのかしらん

902名無しリゾナント:2015/04/14(火) 22:17:53
続きが断念になるような残念な事態にならなくてよかった

903名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:03:05
>>885-889 の続きです



直線のみで描かれた、無機質な白い建造物。
その目と鼻の先に、天使の奪還部隊は降り立った。

「はは。りっちゃんのくせにやるやん。座標が驚くほど正確やね」

能力者たちの先頭に立つ、白スーツ。
対能力者組織の本部長の地位にあるつんくは、目の前に目標の建物があることに満面の笑みを浮
かべていた。
脇を固めるは、二人の護衛。一人は、和服姿が似合いそうな鋭利な顔をした女。そしてもう一人は、
歌のお姉さんのように優しげな表情をした女だ。そのうちの、鋭利なほうが何かに気づき、つんくに
声をかけた。

「…安心するのはまだ早そうですよ、つんくさん」
「うん?」

身を守るように、前面に躍り出る護衛・前田。
首を傾げるつんくの前に、いくつもの禍々しい気が満ち溢れた。
そしてあちこちに発生した黒い渦の中から身を捩り這い出す、禁断の獣たち。

904名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:04:19
「ちっ。『ゲート』か!」

歌のお姉さん風の女が、顔に似合わぬ荒い言葉を口にする。
能力者の介在なしに、あらゆる物体の転送を可能とする技術。しかし人間が通る場合、相当の精
神力を持ち合わせていなければ、出てくるのは精神が崩壊しきった廃人だ。

ただし、最初から壊れきっていれば話は別だ。
その意味においては「彼ら」はうってつけの人材と言えるだろう。

「何や。紺野のやつ、しっかりもてなしの準備しとったんかいな」

安全地帯からの建物突入だったはずが、一転して黒き獣たちによって取り囲まれる。
熊のような剛毛と、筋骨隆々とした肉体。そして、獰猛な肉食獣の牙。ダークネスが生み出した
戦の為に生き戦のために死ぬ哀れな獣。「戦獣」。

「俺が知ってるんより、随分えげつない姿になっとるなぁ。ま、ええ。とにかく、道…開けて」
「かしこまりました」

つんくが顎をしゃくるのを見たもう一人の護衛・石井が白き建物の門に向かって構えの姿勢を取
った。差し出した右手に握られた、鉄球。
一呼吸し一秒、二秒、三秒。徐々に石井の体を覆う黄色い光、そしてその光が構えた右手の手の
ひらに集まり。

凄まじい音を立てて、正面の門扉が破壊された。
本来であれば認証された組織関係者以外はアリ一匹通さない、強固な門。
それが石井の打ち出した拳大の鉄球により、いとも容易く風穴を開けられてしまった。

905名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:04:50
「相変わらずごっついな。自分の『電磁砲』」
「まあ、エスパーですから」
「なんやそれ。ほな、行こか」

前田と石井を引き連れ、建物の中に向かって歩き始めるつんく。
当然のことながら、それを許す戦獣たちではない。
侵入者たちを食い殺そうと、四方八方から襲い掛かった。

しかし。
その爪が引き裂く前に。その牙が突き刺す前に。
彼らの行く手は阻まれる。
5人の超人と、7人の異能によって。

かつて闇社会にその名を轟かせた存在。「スコアズビー」と「セルシウス」。
しかし、今は。
「ベリーズ」清水佐紀・嗣永桃子・夏焼雅・須藤茉麻・徳永千奈美・熊井友理奈・菅谷梨沙子。
「キュート」矢島舞美・中島早貴・岡井千聖・鈴木愛理・萩原舞。
正義の御旗の元に、悪を断つ。

「つんくさん、ここは私たちが!!」
「おう、頼んだで」

戦獣の顎を両手で押さえつけながら言う舞美に、つんくが後ろを振り返ることなく答える。
信頼の証か、それとも。いや、今はそんなことはどうでもいい。

自分達に新しい道を示してくれた恩人とも言うべき存在に、報いるだけ。

906名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:06:05
彼女たちはそれぞれが、能力者が虐げられない理想の社会を築くという目標を持ってダークネス
に仕えてきた。
そのためなら、自らの手を悪に染めることも厭わなかった。
今もその思いは変わらない。ただ一つ違うことは、闇の中に身を置かなくても夢を叶えることは
できる。
そのことを、知ったということ。

「はあああああっ!!!!」
「おぎょぼぐぎょぐげええええ」

舞美の強力な腕力によって引き裂かれた獣の上顎と下顎。
圧倒的暴力に晒された哀れな生き物が、言葉にならない断末魔をあげる。
裂きイカのように全身を破かれ飛び散る血飛沫が、戦いの幕が上がる合図となった。

つんくたちが建物内に入り込んだのを見計らったように、さらに戦獣の数が増えてゆく。
敵味方お構いなしに食い千切る獣の性質から、後方より敵の援軍がやってくる心配はないものの、
これだけの軍勢を相手にするのは普通なら絶望的状況。それでも。

「…そうこなくっちゃ」
「正直、何も障害がないなんてがっかりしてたとこなんだよね」

その巨体からは想像もつかない俊敏な動きで漆黒の魔獣の死角に飛び、巨大化した拳で横っ面を
叩く茉麻。ありえない力を加えられた頭部は、哀れぐちゃぐちゃのミンチに。
頭を失いなおも血肉を求めて彷徨う胴体。歪んだ技術のなせる、歪んだ形の生命力。

「ほんっとにしつこいね!!」
「潰してダメなら、焼いてみっか」

紫の炎が、吹き荒れる。
雅の放つ、骨さえしゃぶり尽くす業火の前に。
いかに屈強を誇る戦獣と言えど、ひとたまりもない。
黒く煤けた焼け滓を残し、跡形もなく消えてしまった。

907名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:07:02
「やるねベリーズ。うちらも負けてらんないか」
「ま、楽勝っしょ」

好敵手たちの活躍を目の当たりにし、俄然気合が入る「キュート」の面々。
舞が自らの体を鹿に変え、千聖がその背に跨る。そこから、一気に獣の群れを駆け抜けた。鹿の
角が肉を割き、光る弾丸が頭に爆ぜる。

屍が増えるペースに合わせるように、次々と送り込まれてゆく戦獣。
立ち向かう彼女たちの表情に、焦りはない。むしろ、自らの力を存分に発揮できるという喜びが
そこにはあった。

そんな戦の女神たちの活躍を、遠目で見ているものたちが。
赤と黒のツートンカラーの衣装に身を包んだ、経験浅い少女たちだ。

「どうする?うちらも行く?」

そう言って一歩踏み出す、やや猿に似た顔立ちの少女。
しかし、それを最年少らしき垂れ目の少女が制する。

「まだ駄目。だって私たちは『後輩』なんだから」
「えーっ、めんどくさい!あかり早く戦いたいー!!」

リーダーの決定を不服に感じたのか、凛とした顔立ちの少女が両手をぶんぶん上げて抗議した。
容姿と言動のギャップが何ともまた奇妙である。

「由加の言うとおりだよ…先輩さんたちが活躍してるのに、佳林たちが邪魔しちゃ…いたっ!」

駄々をこねるあかりを嗜めようと、おかっぱ頭の黒目がちな少女が発言しかけたその時。
額に、鈍い衝撃。ただでさえ泣きそうな顔が、ますます泣きそうになる。

908名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:07:56
「いたっ…何でデコピン!?」
「なんとなく」

少女にデコピンを放ったと思しき、ワイルドな顔をした少女・朋子
でも、そういうのって朋は私にしかしないよね?うれしい…
酷い仕打ちを受けたにも関わらずなぜか嬉しそうな佳林を捨て置き、リーダーである由加に訊ねた。

「でも本当にどうする?『後輩』だからって、少しは動かないと」
「待って」

由加の言葉に、全員が彼女の視線の先に目がいく。
キュートのリーダー、矢島舞美。
爽やかな笑顔。ちょっといい運動してきました、と言った感じの。健康美を売りにしているアイドル
のようにすら見えた。
ただ一点、両手が滴る黒い血によって染まってなければ。

「はー、いい運動になるなあ。ところでどうなの?最近のスマイレージは…」
「えっ?」
「あのっ!ジュ、ジュースジュースです!!」

自分たちのグループ名を間違えられたことに気付いた猿顔の少女・紗友希が、正式な名称を告げる。
ジュースジュース。警察の対能力者部隊では一番新しいグループだ。

「そっか。ジュースジュースっていうんだ。リーダーは?」
「…私です」

由加が、名乗りを上げる。
しばらく値踏みをするように見ていた。が。

909名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:09:41
「よぉし、腹筋チェックだ」
「は?」

言葉の意味を理解しかねている由加を余所に、手についた血を自分のTシャツで拭った舞美は。
由加の腹を無遠慮にぺたぺたと触り始めた。

筋肉に通じるものは、筋肉を知るという。
自らも鋼のような腹筋を持つ舞美は、相手の腹筋を探ることで何かを得ようとしていた。
ある意味、対話をするよりも手っ取り早い。

「お!意外と鍛えてるんだね。わ、硬ーい!」
「え、えっと、あの…?」
「うん、これだけ鍛錬してるなら大丈夫だね。じゃ、みんな頑張るんだよ!」

触り終えて満足したのか、そのまま爽やかな笑顔で去ってゆく舞美。
そんな様子をずっと不審な目で見ていた朋子。

「あれだけでうちらの力、見抜いたってこと?」
「まだわからない。けど、意外と早く動くことになるかも」

由加は、遠ざかる背中をじっと見ている。
困り顔の奥に潜む、冷徹な目で。

910名無しリゾナント:2015/04/16(木) 12:10:46
>>903-909
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

911名無しリゾナント:2015/04/17(金) 01:20:23
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/1150.html#id_4fb8a7d8
のオマケです。

912名無しリゾナント:2015/04/17(金) 01:21:04





「ハァ……失敗、しちゃったな」

1人での帰り道
出てくるのは溜息とネガティブな言葉ばかり

「待ち伏せしたり能力を使ったり、色々考えて行ったのに……上手くいかないな」

私達は弱い
まだまだ強くならなきゃいない
その為にも石田さんに仲間になって欲しかったのに

歩きながら段々と視線が下がり、顔も俯いていく

バシッ

「痛っ!?」

何!?
おでこ痛っ!

突然の額への痛みに、思わず手で押さえ顔を上げる

「暗いよ、佳林ちゃん」
「と、朋!?」

いつの間にか目の前には仲間の金澤朋子
その右手は佳林の額の高さまで挙げられていた

913名無しリゾナント:2015/04/17(金) 01:22:06

「で、デコピン?」

多分この痛みは間違いない
痛みの原因に納得した所で

「なんかムカついてきたー!」
「えーっ!?」

ゴスッ

なぜか突然、朋に打たれた

もう訳がわからない

「やっぱり朋は暴君だわ」
「りんか、大丈夫かー?」

笑いながら現れた同じく仲間の高木紗友希と植村あかり

あーりー、全く心配してないよね?

「佳林ちゃん」
「ハ、ハイッ!」

普段はおっとりしているリーダー=宮崎由加の真剣な声に、思わず背筋が伸びた

「1人で勝手に動かないで。これでもみんな心配したんだよ」
「ごめん……でも、佳林の怪我のせいでみんなに迷惑かけちゃったから……」
「そう思うなら、ちゃんと言って。私達も頼りにしてもらえるようにするから。頑張ろうよ、みんなで」

由加ちゃんの寂しそうな、でも強い眼が佳林を捉えてる

914名無しリゾナント:2015/04/17(金) 01:22:42

「ま、宮本さんに比べたら私は新人ですしねー」
「うわ、急に後輩感を出してきたよこの暴君」
「朋はウチよりも後輩なんやから、ウチのお願いはなんでも聞かなあかんでー。って事で抱っこしてー!」
「「外でかよ!!」」

楽しそうにはしゃぐ3人
それを優しく見る由加ちゃん

頼りにしていない訳じゃない
みんなの事、信じてる
ただ、足を引っ張った分を取り戻そうとしたかった

「……ごめんなさい。佳林が1人で焦ってた。もう1人で抱えない。みんなで、この5人で頑張ろう!」
「うん、良い笑顔! じゃあ帰ろっか、みんなで」
「「「おー!!!」」」

あーりーが由加ちゃんと朋に飛びついて、2人が仕方ないなんて顔しながら歩いて行く

聖ちゃんが大切にしている今の場所
佳林にとっては、ここが大切な場所

「……なんだ」

意地を張ってたのは、佳林の方だったのかも
期待されても、思う様に結果が出せなくて

でも今の佳林の近くには、助け合える仲間が居る

「みんな、ありがとう」

恥ずかしいから、誰にも聴こえない位の声で呟く

915名無しリゾナント:2015/04/17(金) 01:23:18

「それ、ちゃんと言って欲しんだけど」
「紗友、え、聴こえっ」
「ま、フツー照れるか」

あっけらかんとした顔で由加ちゃん達に付いて行く紗友希

「うえむー、わがままばかり言ってると、お昼にメロン食べさせるよー」
「由加ー! 朋ー! きーがあかりの事いじめてくるー!」
「「はいはい」」

この5人で頑張るって決めたんだ
何があっても、ずっと

きっと聖ちゃんも決心したんだから、佳林は佳林の場所で生きていく
大好きなこの4人と

「みんなー! 佳林も仲間に入れてよー!」

916名無しリゾナント:2015/04/17(金) 01:28:34
>>911-915
side J でした。

先に爻さんに〝J〟を書かれてしまいました。
流石の早筆、尊敬の極みです。

余談ながら、以前テンプレに自作が載ってて小躍りしました。
ありがとうございます。
どのような意図があったのか、気になりますが。

917名無しリゾナント:2015/04/17(金) 12:02:55
昼休み〜なので行ってきます

918名無しリゾナント:2015/04/17(金) 12:15:36
行ってきました
ちゃんさんの救済というと大げさだけどほっとする話でした
でスパイの(ry

919名無しリゾナント:2015/04/17(金) 18:58:05
「この電車はいったい?」

四人の少女たちが乗り込んだのは過去から未来へと向う路線を走る列車だった
見知らぬ駅、奇妙な乗客

飛び降りてもいつのまにか戻されてしまう行き先不明のミステリートレイン

不思議な事態に戸惑ったのは少女たちだけではなかった

「あなたたち、どうして」

時間は過去から未来へと流れる大河
遡ることも留まることも人の身では到底叶わない筈だった・なのに

決して繰り返されるはずのない人生を何度も生きる者たちがいる
それはダ・ビンチの黄金比が示唆する世界の歪みの影響か
共鳴という呪いがその者たちを侵食してしまったのか

呪いという名の祝福を受け入れた者たちは新たなる呪いの連鎖を断とうとした
祝福という名の呪いに魅せられた少女たちは一つの未来を選択した

「もう逃げない運命を諦めない」
「もう逃げなさいなんて言わない私たちと一緒に戦って」

青春は選択を迫られる季節
そのど真ん中で少女たちが下した選択とは

スペシャルドラマ モーニング戦隊リゾナンター’15  第一夜 「青春小僧が泣いている」

♪いろんないろんな明日がある

彼女たちの掴む明日はどっちだ

920名無しリゾナント:2015/04/18(土) 18:57:16
13人の少女たちはリゾナンターとして一つになった
戦闘向きでない能力の持ち主もいたがそれを補うのがフォーメーション
心をひとつにすることで幾度の戦いを制し、戦いを制するごとに彼女たちの絆は深まっていった
しかしそこに一つの落とし穴があった

香音が不在の戦いでフォーメーションの穴を突かれたリゾナンター
以前の9人の時ならば誰かが欠けたなら残ったメンバーで補い支え合ってきた
しかし新しく加わった経験の浅い4人を抱えていてはそんな芸当は出来そうもない
ならば4人を分離して8人で戦うか
そんな隙を与えてくれる敵だろうか

個人として突出した実力を持つ鞘師里保が覚悟を決めて敵を引き付けるべく両手を上げたその時だった

「あなたはいったい?」

黒いショートカットの可憐な少女が香音のポジションを埋めフォーメーションが機能し始める
この子を信じていいのかと躊躇う暇など無い・ならば

「いけーーーーーーっ!!」

勝利したリゾナンターは名前も告げず去っていく少女の背を追った
それを遮るように降り出したにわか雨の向こうで少女を迎える四つの人影

スペシャルドラマ モーニング戦隊リゾナンター′15 第二夜 「夕暮れは雨上がり」

♪私もそうねあの子もそうよ だから負けられない  

運命と戦っているのは自分たちだけじゃないことを知ったリゾナンターの胸に仄かな希望の光が差した
ところで香音ちゃんは?

〜ちょっとさくらちゃん。 おいしそうなカレー屋さん見つけたからおいでって送ったのにどうして返してくれないの〜(T-T)〜

921名無しリゾナント:2015/04/19(日) 19:05:51
「この空はいったい」

世界を絶望から救う筈だった
青空の下、みんなで笑いあえるそんな未来の為に戦ってきた筈だった
戦いの果てに辿り着いた世界、そこは厚い雲が空を覆い日の光など降り注ぐことも無い
そんな色の無い世界が彼女たちの戦いの果てに勝ち取ったものだった

「私たちどこで間違ってしまったの」
「そうだもう一回やり直して…」

彼女たちの旅を支えてきた列車は最後の戦いで彼女たちを守り大地に打ち果ててしまった
大破した車両、折れ曲がったレール

「もうやり直すことはできないんだ・・・」

事態がわかるにつれ一人また一人力尽きたように大地に膝を落としていく
力を失った者を支えようとする者もまた…

「私たちならできると思ってたのに…」

長い長い沈黙

♪私たちは普通の女の子

一人の少女が歌を紡ぎだした
最初は力なくその歌声を聞き流していた少女たちもやがて…

♪運命も未来も切り開く

スペシャルドラマ モーニング戦隊リゾナンター’15  最終夜 「イマココカラ」

この無色の世界をどんな色に染めるかは彼女たち次第、すべては今ここから始まる

922名無しリゾナント:2015/04/20(月) 22:30:42
ベーヤンホールディング
それはこの国を影から支配するブラザーズ5の一員である堀内孝雄が一代で興した持ち株会社だ。
あのオイルショックをブラックマンデーをリーマンショックでさえ勝ち抜いた彼の相場観には一つの秘密があった。
「必敗不勝」
理不尽なまでの悪運を背負った人間を所有し、乾坤一擲の大勝負を行う際に所有権を放棄することで負け運を捨て去る
その倫理的に問題のある験担ぎは中国のさる大人から学んだものだ

だがしかしいくら運が悪くても「必敗不勝」と称せられるほどの不運な人間が存在するのだろうか
いや、いない
それは作られたもの
彼や彼女は虐待されるわけでも凌辱されるわけでもない
一定の監視の元、少なくとも金銭的には恵まれた生活を送っている
しかし彼が彼女が学業でスポーツで芸術で他の誰かと競おうとした時、闇の意志が介入する
捻じ曲げられる結果、歪められた運命
挫折の苦い味を堪能させられた彼や彼女は堀内から放逐されるまで強制された負け運を背負って生きていく
そんな一人に尾形春水がいた
親から引き離され豪華な山荘で乾ききった生活を送っていた彼女が興味を抱いたのはフィギアスケート
通うことを許された教室で素質を見出された彼女が初めて出場したジュニアの大会の結果は最下位だった
以降大会に出場する度、理不尽な不幸が彼女を襲った
彼女の演技直前に出場した選手が転倒した所為でリンクのコンディションが悪化したり、直前練習で死角からぶつかられ故障したり
悔しながらに負けを認めた春水は、そのあまりの不条理さに苦虫を噛んだ
だが春水がこれまでの他の誰かと違っていたのは、春水は異能力者の資質を抱きこの世に生を受けた原石だったのだ
歪められた運命は春水の心に傷跡を残す
傷ついた春水が世界にその傷跡を映そうとした時、その現象が初めて起こった

モーニング戦隊リゾナンター’15  Blu-ray版 【初回特典】「TIKI BUN」

♪ 炎上したってなんも恐れない

「火脚」
その炎こそ春水が創造(うみだ)した真実なのだから

923名無しリゾナント:2015/04/22(水) 00:00:18
一人の予知能力者がいた
彼女は未来に何が起こるかを視ることが出来た
自分が視ることで未来は確定すると思うに至った彼女はいつしか自分を神だと考えるようになった
未来の視えない自分以外の人間を彼女は嘲弄した
自分の視た通りの未来を実現する世界を彼女は軽蔑した
自分以外の全てを侮蔑する自分自身を彼女は憎んでいた

ある日彼女は世界の終わりを視てしまった
それは一人の政治家が画策した日本の核武装を契機に始まる軍事衝突が引き金だった
世界の終わりを視てしまった彼女は気づいてしまった
軽蔑していたと思っていた世界のことを愛していたということに

世界を守る為に彼女は自分の視た未来を変えようとした
自分が視た未来を否定するということは自分自身を否定するということだった
戦いの末に彼女は未来を勝ち取った
彼女自身の命を代償に守った未来は破滅と繁栄の境界線の上を危なっかしく進む運命の列車に託された

それは偶然だったのだろうか
彼女が籍を置いていた組織の能力者養成機関「エッグ」
資質を持った原石たちの養成プログラムと彼女は無関係だった
なのになぜか彼女の予知能力がエッグのうちの1名に継承されてしまった
それは闇に浸りきった彼女が光に手を伸ばしたことで共鳴という名の呪いが伝播してしまったのか

新たなる予知の力は彼女の能力を忠実に継承したものではなかった
彼女の力の残滓が少女の器の中で萌芽した時、その力は形を変えていた

モーニング戦隊リゾナンター’15  Blu-ray版 【初回特典】「3,2,1BREAKIn'OUT 」

時々、誰かの頭の上に現れては減少する数字の意味を牧野真莉愛はまだ知らない
誰かを好きになりたい、誰かを好きになれる自分を見つけたいというのが彼女のささやかにして不埒な夢
孵化した夢の卵の羽根開く場所を探し求めている

924名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:50:09
>>903-909 の続きです



一方、「金鴉」によって再度転送された香音・春菜・さくらの三人は。

明らかに違和感のある光景。
春菜は率直にそう感じた。見慣れたと言えば、見慣れた。当たり前と言えば、当たり前。
臙脂色の座席、ずらりと並ぶ白いつり革。窓の景色からは、流れ行く光の国の建物が見える。電車の中
であることには間違いないのだが。

「どうしてモノレールの上を電車が走ってるの!?」

リヒトラウムには、各エリアを結ぶモノレールがぐるりと敷地を一周するように走っている。だが、その車
両はこんなどこにでもあるような通勤列車ではない。

「えー、本日は当ダークネス列車をご利用いただき、まことにありがとうごしゃいます」

そこに聞こえてくる、変な声色を使った声。
声のするほうを見ると、車両の通路にチェック柄のバスガイド服を着た少女たちが立っていた。

「列車ガイドの、『煙鏡』でごじゃいます」
「同じく、『金鴉』でごじゃいます」
「……」

突拍子もないシチュエーション。
触れてしまうとややこしくなりそうなので、そのままスルーを決め込む春菜と香音。
しかしこの娘はやはり違っていた。

925名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:51:12
「あのー」
「はい、なんでごじゃりましょうか」
「電車なのにバスガイドって、おかしいですよね?」
「は?」
「電車だったらやっぱり車掌さんですよね」

真顔でそんなことを尋ねる、さくら。
すると、黒目がちな少女のほうは見る見る顔色を変えて。

「お前やっぱめんどくさいやっちゃな。のんの言うとおりや。ほなあれか。路面電車やったら満足か!
うぉううぉううぉうせいしゅーん、いーろいーろあーるーさーってか!!」
「うーん、ちょっと違うかも」
「ったく!ノリの悪い…まあええ。のん、さっさと着替えや」
「ん、もう終わり?」

「煙鏡」に促された「金鴉」が、右手を相方に翳す。
バスガイドの制服が、みるみるうちに黒を基調とした短パンへそ出し衣装に姿を変えた。

「不思議やろ?お前ら、こいつがただの『擬態』能力者やと思ってるんやろうけど」

意地悪そうな笑みを、「煙鏡」が浮かべる。
指摘の通り。遥そっくりの容貌に姿を変えた「擬態能力の持ち主」。彼女が使役する「転送能力らしき
力」は、もう一人の「煙鏡」を名乗る少女のものと思っていたが。

「のんの『擬態』は、能力の『擬態』でもあるんだよね」

自らも、「戦闘スタイル」へと変化した「金鴉」が、今度は右手を春菜たちに差し向けた。
何もないはずの空間から飛んでくる、冷蔵庫。洗濯機。炊飯器。

926名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:52:16
「あぶなっ!!」

咄嗟に香音が物質透過能力を発動させる。
三人に掠り傷すら与えることなく後方へ転がってゆく白物家電たち。だが「金鴉」の攻撃は終わりでは
ない。次から次と、当たるとただでは済まない投擲物を飛ばしてくる。

「鈴木さん飯窪さん、私に任せてください!!」

防戦一方の状況下、さくらが躍り出る。
「時間跳躍」。ほんの一瞬だけ止まった時を、軽やかに駆け抜けていった。しかし。

「ああっ!?」

予期せぬ、抵抗。
二人の少女に届くあと一歩というところで、見えない何かに阻まれる。
やがて、時は再び動き始めた。

「…さっそくやってくれたみたいやな。予め『張っといて』助かったわ」

何故突き抜けられなかったのか。
そんなことを考えている間に、「金鴉」がさくらを思い切り蹴り飛ばす。
咄嗟にガードした両腕に、ずしりと重い衝撃。

何この力…!!

力を振り絞り時を止める事で、インパクトの衝撃をずらしたさくらではあったが、それでもびりびりと
痺れるような痛みを免れることはできなかった。

927名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:53:26
「うちの能力は、『鉄壁』。言うとくけど、ただの結界と違うで? うちの精神力とシンクロした、い
わば無尽蔵のバリアや。そこのぽっちゃりの透過能力でも、すり抜けられへんやろな」

そんな…二人ともとんでもない能力者じゃないか!!

春菜の脳裏に絶望が過ぎる。
能力まで擬態できる擬態能力者だなんて、無茶苦茶だ。それじゃ多重能力者と何の違いもない。それに、
もう一人のほうの能力で絶大な防御力まで備えている。

今いるメンバーじゃとてもじゃないけど…勝ち目は無い。
チームのアタッカーである里保や亜佑美がいたとしても。いや。それ以上は今は考えないほうがいい。
この状況を切り抜けること。そのことのほうが大事だ。

「さて、アホみたいに青ざめたツラしてるとこ申し訳ないんやけど。この電車がどこに向かってるか…
知ってるか?」
「えっ?」

香音が周囲を見渡す。
電車はちょうど、停車場を高速で通過しているところだった。

「どこって…確かリヒトラウムのモノレールは環状になってるから」
「ぐるぐる回るだけ。ま、普通はそう思うわな…せやけど」
「ざーんねんでしたー!途中のレール、ぶった切ってやったぁ!!」

レールが切断されたということは。
すなわち、これだけの質量を持つ車両が高速で地面に落下するということ。

928名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:54:25
「しかもな。お前らも見たやろ?今、施設のあちこちで火の手があがっとる。そんなんでパニックに陥っ
た大勢の人間に、この電車が突っ込んでったら」
「びゅーん…ぐしゃ!!あはははは!!!!」

楽しげにそんなことを言う、二人組。
間違いない。三人は確信する。この人達は、まともじゃない。

そんな中、さくらは。
先程のミラーハウスでの罠を立案したのは「煙鏡」だと当たりをつける。
「煙鏡」の瞳は、人を陥れることを喜びとする人間特有の昏さを帯びていた。
彼女の言動には、十分気をつけなければならない。

と同時に、自分が元を辿れば「金鴉」や「煙鏡」と同じあの光射さぬ場所にいたことを思い出す。どこか
で、自分と彼女たちには何らかの共通点があるのではないか。そんな漠然とした不安が襲い掛かる。
黒く立ち込める暗雲を断ち切ったのは、香音の声だった。

「そんなこと、させない!!」

そうだ。
今の私は、リゾナンターなのだ。
出口のない迷路に誘われかけた心が、再び引き戻された。

929名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:55:30
「威勢だけは一人前やなあ、ぽっちゃり。せやけど、自分らどないしてうちの『鉄壁』を越えてくつもりや」
「前がダメなら…上があります!!」

春菜が電車の天井に目を向ける。
その瞬間、香音とさくらにその意図が伝わった。
春菜と香音、さくらの三人が座席とつり革、網棚を利用し跳躍。その瞬間に発動するさくらの「時間跳躍」。
邪魔するものはいない。時間跳躍が解かれた瞬間、香音の物質透過能力の影響下にあった三人の体は天井を
すり抜けていった。

ところ変わって、車両の屋根の上。
休む間もなく三人は車両の先頭を目指して走る。目標は電車の運転席だ。

「早く!あいつらに先回りされないうちに!!」
「はいっ!それにしても、ナイスコンビネーションでしたね!!『上がある』だけで全部伝わっちゃうなんて」
「だって、私たち、『響きあうものたち』じゃないですか!!」

さくらは言いながら、改めて実感する。
自分は今、リゾナンターという輪の中に確実にいる。
あの二人組とはもう、まったく違う存在だということを。

モノレールを走る車両が、段階的に加速されてゆく。
風を切る音が、轟音となって周囲に響き渡っている。
最早、通常運転ではありえないスピードで飛ばしていた。
レールから飛び出すことがあれば、大惨事を引き起こすこと間違いなしだろう。

「鈴木さん右に避けて下さい!!」

突然の、春菜の警告。
咄嗟に香音が身をかわすと、鋭い槍のような物体が天井を突き抜けた。
どうやら簡単には敵も先へは行かせてくれないらしい。

930名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:56:13
「あ、あぶなっ。もう少しで串刺しになるところだった…」
「私と飯窪さんでサポートします!とにかく先に!!」

いかに香音の物質透過があると言えど、不意を突く攻撃に対しては間に合わない。
そこで、春菜の聴覚強化を利用した攻撃ポイントの先読みを行う。それでも間に合わない場合はさくらの時
間跳躍がある。
二重、三重の防御は敵の執拗な嫌がらせを、まったくの無効にしていた。

「見えてきた!先頭車両だよ!!」

香音が指差す先に見える、尖った車両の鼻先。
ここまで来たら、あとは暴走列車の制御を止めるだけだ。

勢い良く、車両の継ぎ目から前方に向かって飛ぶ。
もちろん全員に物質透過の効力がかかっているため、そのまま屋根をすり抜けて車両内に。
そこで見た予想外の光景に、春菜が思わず口にする。

「え…そんな…」

「煙鏡」たちが明らかな妨害を仕掛けていたわけではない。
臙脂色の座席と白いつり革が整然と並んでいる、ごく普通の電車の風景。
ただ一つ普通と違うのは。

運転席にあたるスペースが、存在しないということ。

「何で!先頭車両のはずなのに!!」
「もしかしたら後部にあるのかもしれません!急いで引き返し…」

慌てて踵を返そうとしたさくらだが、見えない何かによって押し返される。
この力の感触は。

931名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:57:26
「せっかくの特等席やのに。『最期』までゆっくりしたらええやん」
「いつの間に!!」

まるで三人の退路を塞ぐように。
「煙鏡」と「金鴉」が立っていた。

「後ろ行って探しても無駄や。この車両はのんの念動力で動かしてるからな」
「ありえない…これだけの質量の物質を」
「ま、のんが動かしたのは最初の数メートルくらいかな。あとは摩擦係数がどうのこうのってやつの能力使
っただけだから。のんも自分で言っててわからないけど」
「簡単に言うと。外から勢い殺さんと、この車両は止まらへん」

俄かには信じがたい発言の数々。
中でも、最後の「煙鏡」の言葉は。ありていに言えば、死刑宣告。

「っちゅうことや。ほな、ええ死出の旅路を。のん、早よテレポート使えや」
「…あ。さっき使ったのでもう『打ち止め』かも」
「はぁ!?お前いい加減にせえよ!!」
「なーんちゃってー。麻琴から『大量にいただいた』からね。あと数回分はありまぁす」

おどけつつの、「転送」。
苦虫を噛み潰したような顔をしている「煙鏡」とともに、「金鴉」はまるで煙のようにその場から消えて
しまう。さくらが「時間跳躍」を使おうが、彼女たちには届かない。姿が消えるのを、黙って見ているし
かなかった。

932名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:58:14
「そんな…どうしよう」

残されたのは、絶望。
このままだと、三人とも車両ごと地面に激突。香音の物質透過で相殺できるようなダメージ量ではないのは
明らかだ。

「か、考えましょう!!考えればきっと何か…」

落ち込む香音を励まそうと、春菜が必死に声をかける。
そんな春菜自身がわかっていた。それがただの気休めに過ぎないことを。
だが、さくらの目の光は消えていなかった。

「鈴木さん!物質透過、使ってください!!」
「小田ちゃん?」
「もしかして私たちだけでも脱出するとか?無理だよ!これだけの速度を出してる電車から飛び降りるなん
て!!」
「違います!飯窪さんが引きちぎった電車の内装を、下に透過させるんです!!」
「抵抗力で減速ってこと!?そんな!危険だよ!!」
「でも、やらないよりはましです!!」

一か八かの、危険な策。
レールの終着点はすぐそこまで、近づいていた。

933名無しリゾナント:2015/04/22(水) 11:58:57
>>924-932
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

934名無しリゾナント:2015/05/02(土) 01:26:50
■ チェリィブロッサム -生田衣梨奈・鞘師里保- ■

「うわぁ桜だ!桜だよ!えりぽん!」
「あーね」

「すごい!向こうまで続いてるよ!えりぽん!」
「あーね」

「ひゃぁ!水路だぁ!ん川かな?水綺麗だよ!えりぽん!」
「あーね」

はしゃぐ鞘師里保。
気のない相槌を繰り返す生田衣梨奈。
その眼は一点、手にした携帯端末に注がれ続けている。

「ほらっ!なんかちょっと潮の香りもしてない?えりぽん!」
「あーね」

「うれしいなぁ!地元だもんね!」
「あーね」

「いいなー!いいとこだねっ!博多っ!」
「…あーね」

935名無しリゾナント:2015/05/02(土) 01:27:48
わかっている。
互いにわかっている。
だから、はしゃぐ…だから、受け流す。
そう、それは、これから訪れる、その…



振動。



携帯端末。
画面には…

「里保」
「…うん」

端末を。

わかっている。

それは、鞘師がとるべきだ。
その端末は、鞘師里保が、とるべきなのだ。

そう、その端末が、戦いの―――

―――戦いの火蓋となる。

936名無しリゾナント:2015/05/02(土) 01:30:44
>>934-935
■ チェリィブロッサム -生田衣梨奈・鞘師里保- ■
でした。

以上、代理投稿願います。

※辛夷に加え椿
来ましたね
今年のハロプロも面白い
すごく面白い

937名無しリゾナント:2015/05/02(土) 01:41:43
代理投稿行ってきます

938名無しリゾナント:2015/05/02(土) 16:42:25
>>937
ありがとうございます

939名無しリゾナント:2015/05/02(土) 16:43:30
■ フオルナウト -田中れいな- ■

社務所の奥は広い道場となっていた。
すでに暖かな外の陽気は、
静謐で厳格な、この空間とは無縁のようであった。

「慣れない方に板の間での正座は御辛いでしょう?膝を崩されても結構ですよ。」
白衣に差袴、見たところ40代。
細身だが、引き締まった全身を、その白装束が引き締める。

「…これで、ええったい…」
田中れいなは、脛に走る鈍痛を堪え、そう答える。

「そうですか。」
微笑。

「おっしゃる通り、あの方からお預かりしたものはここに…」
変らず、微笑。

「時と場所は違えど、あなたと同様、私が応対させていただきました。」
微笑。

「失礼ながらお預かりしたものの内容は全て閲覧させていただきました…特に『見るな』とは、お約束しておりませんでしたのでね。」
変らぬ、微笑。

「興味深い内容でした。
我々のテリトリーの、目と鼻の先で、このようなことが…
かといって、明らかな協定違反とも言い難い…
今頃は本部のお歴々も、頭を抱えていることでしょう…」
微笑、心なしか嬉しそうに。

940名無しリゾナント:2015/05/02(土) 16:44:18
「さて、本題に入りましょう…
お預かりしたものの引き渡しについてですが…」

微笑、だが徐々に、変ってゆく。
その眼の光が、変ってゆく。

田中れいなは身じろぎもしない。
そうだ、知っていて連れてきた。
彼女も知っていて、同行してきた。
あのビジョン、あの場所…であれば、これは避けられない。

組織とは異なる集団。
安芸灘、伊予灘、周防灘…備前、豊前、筑前、筑後、そして…

弱小。

世界規模に触手を伸ばす『組織』とは、あまりに規模が違いすぎる。
だが、できない。
組織といえど、彼らの存在を無視、できない。

「ほう、その顔は『全て織込済み』といったところでしょうか。
では、話は早い、我々があの方に出した条件は一つ。
すなわち…」

それは、飲めるはずのない条件。
だが、交渉は成立した、それは最も無慈悲な、それは最も非情な、
いや、それこそが、そう、それこそが、最上級の。

941名無しリゾナント:2015/05/02(土) 16:46:01
奪いたければ奪うがいい!
やれるものなら!やってみるがいい!
ウチの子達は!そんなに!ヤワじゃないよ!

「塵は塵に…我ら『灰』に連なる結社は、
組織との不可侵条約により、あなた方とも、
表向き、互いに存在せぬものとして、互いに知らぬものとして、
今の今まで参ったわけですが…」

白衣の男が懐から取り出す、携帯端末。
田中が尻のポケットから取り出す、携帯端末。

「120分、3名、遺恨は無し…よろしいですね?」
「ああ、ええっちゃ。」
「では、おかけください。」

それぞれの端末が戦いの火蓋となる。

「私だ、回収しろ。」
「生田!鞘師!思いっきり!ぶちかませ!」

同時に切る。

「さて、このあとは、如何なさいますか?」
「きまっとろうが。」
「…でしょうな…では、謹んで…」

田中が立ち上がる。
白衣が立ち上がる。

942名無しリゾナント:2015/05/02(土) 16:47:23
「あの方との交渉において『私』が選ばれたのは、当然、
その【能力】を警戒して、という側面もありました。
結局、それは杞憂にすぎませんでしたが…」
足袋を脱ぎ、差袴の裾をからげる。

「あいにくと、れーぎなんか何もしらんちゃけん…お辞儀もせんよ。」
「結構、お手柔らかに。」

身を低く沈め…


今度こそ…今度こそ!

今度こそ!


【増幅(アンプリフィケーション;amplification)】

943名無しリゾナント:2015/05/02(土) 16:48:26
>>939-942
■ フオルナウト -田中れいな- ■
でした。


以上、代理投稿願います。

944名無しリゾナント:2015/05/02(土) 19:45:46
行ってきますかね

945名無しリゾナント:2015/05/02(土) 19:52:23
行ってめいりやした
大きく動き出したっで感じですね

946名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 00:42:40
■ プリイジング -研修生- ■

イヤダ…イヤダ…

「輸液C投与…1705、覚醒を確認…バイタル正常…行けます。」

ヤリタクナイ…ヤリタクナイ…

「スポーン準備完了、No.01成人男性26歳、No.02成人男性37歳、No.3成人女性…」
「1705、スポーンNo.01認識…」
「よし、『スポーンを開放』、『猟犬』を放て。」

「【限界突破】第四次実戦検証実験、開始…」

――――

走らないと!走らないと!
なんだ?なんだ?俺はなんでこんなところに?
朝起きて、めしくって、そんで…なんだ?
…朝起きたっけ俺?そっからか?
いやそれどころじゃねぇ…ここどこだ?
息が…苦しい…
走らないと!追い付かれる!
あんな!デカイ奴!何頭も!殺される!殺される!
助けて!助けて!助けてえええええ!

――――

947名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 00:43:16
「スポーン、死亡確認。」
「マインドセット、エラー、アビリティ発動、エラー。」
「データーが取れればそれでよい、実験を続行せよ。」

…ゴメンナサイ…ゴメンナサイ…

「1705、スポーンNo.02認識…」
「『スポーンを開放』、『猟犬』を放て。」
「1705、マインドセット、アビリティ発動待機…」

――――

痛でええええ!あし!脚があああ!
ちぎれる!くいちぎられるううう!
ああ!腕が!指が!あああ!助け…たすけてぇ!
痛い!痛い!いたいたいた!
死ぬ!しぬしぬしぬ!しぬうう!
殺される!ころされ…ころされるくらいなら…
ころされる…らいなら…
ころ…さ…ころ…

…なんだ?この…感覚…は?

948名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 00:44:06
熱い…熱い…

痛く…ない?…
なんだ…なにを怖がっていたのだ俺は…やれる…やれる…
やる…やる…やっころ…ころ…ころ…ころっ…すっ…すすすすすすす…すすー!
おっほ!蹴り飛ばしてやった!
俺の足の肉ごと吹っ飛んだぞ!ひゃはー!楽しい!楽しい!たーのしーい!
ぶちのめーす!ぶっつぶーす!
あはははは!
ひきちぎーる!ふみつぶーす!
あはははは!
なんだ?こいつらおびえているのか?
あはははは!
ざまああねえなああああははは!
なににげてんだ!
あはははは!
にがすわけねええだろおお!
あはあはははははは!
もっと!もっと!ころさせろ!
もっと!もっと!あばれさせろ!
もっともっともっともっと!もっとおおおおおおお!

――――

949名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 00:44:44
「『猟犬』の全滅を確認。」
「アビリティ発動確認、成功です。」
「スポーンNo.2、死亡確認…大量失血によるショック死と推定。」
「実験を続行する。」

…モウイヤダ…モウイヤダ…シンデシマウ…ミンナ…シンデシマウ…
…オウエンシテモ…オウエンシテモ…オウエンシテモ…タスケラレナイ…
…イヤダ…イヤダ…イヤ…

「1705、マインドセット、アビリティ発動待機…」

…ハイ…リア…ガンバリマス…
…リア…オウエンスルノ…スキ…
…ダカラ…ウレシイデス…リア…オウエン…ウレシイ…
…トッテモ…トッテモ…

「1705、アビリティ発動確認。」

…マリア…トッテモ…ウレシイデス…

950名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 00:47:19
>>946-949

■ プリイジング -研修生- ■
でした。

951名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 00:48:23
>>946-949

■ プリイジング -研修生- ■
でした。

以上、代理投稿願います。

952名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:41:50
>>924-932 の続きです



聖の不安は的中する。
けたたましい音を立て、はるか向こう側からやってくる赤く塗装された電車。
車両の下から、何本もの鉄の棒が垂れ下がり、下のアスファルトに擦れて激しく火花を散らし続ける。鉄の棒には
吊り皮のようなものが何列にも渡ってくっついていて、それが気の狂った鯉幟のように激しく揺れていた。

暴走列車の行く手の先には、聖たちとパニックに陥り死に物狂いで出口に殺到する群衆が。

「えりが、止めるっちゃん!!」

レールの最終地点に向かって走り出す、衣梨奈。
それを見て遥や亜佑美たちも後を追う。

「無茶ですよ、生田さん!!」
「無茶でも何でも、あの列車止めんとお客さんたちが危ないと!!」

遥の手を振り解き、切断されたレールの切っ先、その正面に立つ。
やるしかない。その強い意志が形になって現れるように、幾重にも展開される衣梨奈のピアノ線。だがその防護ネ
ットは、迫り来る巨大な鉄の塊の前にはあまりにも脆弱だ。

そんな中、こちらにやって来る電車に、自然と遥の視線がいく。
しかし発動した千里眼が捉えたのは、無人の車内。

953名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:43:00
「だ、誰もいない!?」
「ちょっとくどぅーどういうこと?」
「電車の中に、誰もいないんだよ!乗客も、運転手も!!」

遥の意外な報告は、ある一つの可能性を示す。
それは、車両が群集に突撃するという最悪の惨事を避けるために必要なこと。

「みんな!!」

遅れてやって来た里保が他のリゾナンターたちと合流したのは、そんな矢先の出来事だった。

「鞘師さん!!」
「里保、今まで何してたと!!」

メンバーの中でただ一人安否が不明だったこともあって、様々な反応を示すメンバーたち。
しかし里保は自分がまず最初にやるべきことを知っていた。この状況は、どう見ても尋常ではない。

「フクちゃん、状況は」
「うん。あそこのレールが『敵』に切断されてて。このままだと、電車が」

聖の言うとおり、モノレールのレールは不自然な場所ですぱっと切断されていた。車両が脱線すれば、大惨事を招
くのは自明の理だ。

954名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:44:05
そして。
聖が口にした「敵」が、最早福田花音ご一行でないことは明らかだった。
彼女は、いつの間にかやって来ていた「里保たちを襲った能力者」たちと一緒に、忌々しげな
表情でこちらを見ているだけだ。

「ふ、福田さん…うちら、どないしましょ」

縋り付くように花音に指示を求めるのは、結界の使い手である香菜。
一方、隠密の能力者・里奈は我関せずとばかりにスマホをいじっている。
そんな状況下で遠慮がちに発言するのは、芽実だ。

「いまさらあの人たちにリベンジ、って雰囲気じゃないもんね…そうだ、いっそのこと仲直り
してさ、あの人たちを助けるってのはどう?」
「お、それ明暗。さすがめいめい、一人で滝行するだけのことはあるわ」

しかし、それを見ていた花音は一言。

「…撤収」

とだけ、言った。
皮肉交じりの笑みを浮かべつつ。

「だってさ。うちらがあいつらのこと助ける義理なんてないじゃん。勝手に困って、勝手に死
ねばいい」
「…上への報告は、どうするんですか?」
「上なんてさ、今頃『天使の奪還』作戦でそれどころじゃないって。それよりも、こんな面倒
な場所からは少しでも早く撤収するのが、お利口さんってもんじゃない?」

955名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:45:08
里奈の指摘は、花音の痛いところをついていた。
しかし、リゾナンターの手助けをしているところを例の二人組に見られたら、こちらまで的に
かけられてしまうかもしれない。和田彩花というチームの攻撃の要が不在の今、組織の幹部と
事を構えるなんて、冗談もいいところだ。
花音は名より実を取る選択肢を、選んでいた。
しかし。

「そこの、おねーさん!!」

意外な人物が、花音に声をかける。
天下無敵の爆弾娘、佐藤優樹だ。

「…何よ、気安く話しかけないで欲しいんだけど」
「あの、あそこにいっぱい溜まってる人たちをなんとかしてください」
「はぁ?」

花音は、大げさに顔をしかめてみせる。
ありえない。誰が敵の利になるようなことをしてやるものか。
それに向こうだって、こちらの手を借りるようなことは望んでないはず。
花音の予測どおり、亜佑美がすかさず優樹を止めに入る。

「ちょっと、まーちゃん! そいつはうちらに襲い掛かってきた敵なんだよ?!」
「でも、今は敵じゃないでしょ」
「え…」
「今の敵は、あの変な格好した二人組でしょ。あゆみ、幸せと敵味方は天ぷらそばのように運
ばれてくるんだって」
「いや、確かにそうなんだけど…って何で天ぷらそば!?」

最後の例えはともかく、優樹の考えは至ってシンプルだが。
花音率いるスマイレージは、何度もこちらにちょっかいをかけてきている。
その遺恨。わだかまり。そう簡単に消えるはずも無い。

956名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:46:29
「…そうだね。優樹ちゃんの言うとおり。今は、いがみ合ってる場合じゃない」

納得いかない表情の亜佑美のそばに、聖が立つ。
そこに存在するのは、揺るぎない決断。

「聖ね、思ったの。こんな時、今までのリーダーだったら、どうするかって」
「譜久村さん…」
「福田さん。お願いします。福田さんの能力で、お客さんたちに迅速な避難を」

深々と、頭を下げる聖。
それを見た花音の感情に、再び白波が。

「ねえ。さっきさ、ふくちゃんあたしになんて言った?『孤独』?『誰か私を見て』? そこ
までコケにされて、その上あんたたちを助けるなんてことすると、思う?」

先程のような感情の暴走は伴なわないものの。
聖によって傷つけられたプライドは、未だなおその代償を求めていた。

「…聖の言葉が福田さんを怒らせたなら、謝ります。聖たちのことを助けてくれ、とも言いま
せん。けど、あの人達は、リヒトラウムに遊びに来ただけの人達は。聖たちに巻き込まれてこ
んなことに!!お願いします、あの人たちを助けてください!!」
「そういうのって、虫がいいって思わない? あたしたちは、ここにいる奴らを見殺しにして
も何のメリットデメリットもないし。むしろあんたたちを困らせることができるんだから、率
先してそうしてやりたいくらい」

花音の嗜虐心にはすでに火が点き、その炎の勢いは止められそうにない。
はずだった。

957名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:49:21
「福田さん…いい加減にしてくださいよ」
「…タケ!?」

聖の隣に立つ、朱莉の言葉だった。
自らの力で袋叩きにしたにも関わらず、意識を取り戻した朱莉の姿に内心安堵する花音。
ただ、それよりも先に出るのは面と向かって楯突かれたことによる不快感だ。

「何が、いい加減にしろだって?」
「スマイレージの功績のためにリゾナンターと戦う。納得はできなかったけど、しょうがない
って、そう思ったりもした。でも、何もしてない人たちを見殺しにするのは、嫌だ」
「タケにそんなこと言われるの、なーんかむかつくんですけど」

後輩からの思わぬ反撃。
そんなものはものともしない、といった態度の花音ではあったのだが。
花音の横に立っていた三人の後輩もまた、朱莉のほうへと移動する。

「香菜もたけちゃんの意見に賛成です。うちらは、罪の無い人たちを見殺しにするべきやない」
「だね。タケは顔も丸いし鼻も低いしおまけに頭も悪いけど、今回に関しては間違ったことは
言ってない」
「ちょ、朱莉は天才だし!!」
「福田さんっやっぱみんな助けましょうよ!そのほうがめいもいいと思います!!」

何だこれは。
どうしてそうなる。
ここに至るまでの誤算の連続。そして今、後輩の四人にまで離反されようとしている。
どうすればいい。何を、言えばいい。
悔しさと苦しみの中で導き出した花音の答えは。

958名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:54:12
「…できれば助けてやりたいけど。あたしには、できないんだよね」
「えっ」
「10人、100人。その程度だったら、何とかなる。けど。こんな大人数の群集の精神を操
る事なんて、できない」

要は簡単だ。
「やりたいんだけどできない」。そういう結論を出してしまえばいい。
あいつらの思い通りになるなんて、絶対に嫌。
実際の真偽など、どうでもいい話だ。

「あんた!前にその気になれば千人でも一万人でも操れるって言ったじゃないか!!」
「うるさいわね。そんなの方便よ、方便」

亜佑美の指摘にも、花音はまったく悪びれない。
そのうち、聖も亜佑美も優樹も花音に背を向けてしまう。
もう、それどころの話ではないのだ。

「まあ、精々頑張んなさいな。あんたたちにアレが止められるとは思わないけど」

精一杯の皮肉を込めて、花音は言う。
けれどその言葉を、最早誰も聞いてはいなかった。
そのこと自身を、花音が一番良く知っていた。
俯き、言葉を発しない後輩たち。反吐が出るほど最悪の状況だ。
それでも花音は自らの築き上げた高みに立ち続けなければならない。
たとえその場所が、脆く儚いものだったとしても。

959名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:55:34
轟音を上げながら、終焉へと突き進む暴走列車。
その鼻先が、すぐ、側まで来ていた。
遥から車内の無人状態を知らされた里保は、すでに列車に向かって走り出している。
群集に車両が突っ込むという最悪の展開を避けるためにやることは一つ。終点の手前でレール
を切断するしかない。

ところが。
あることに気づいた遥が、里保の決断を大きく鈍らせる。

「鞘師さん!ダメです!あの中に、は、はるなんたちが!!」
「!!」

全ての物を見通す遥の千里眼能力だが、決して万能ではない。
高速で動いているものの中身を透視した場合、その精度はどうしても落ちてしまうのだ。
しかし車両がこちらに近づくにつれ、はっきりと理解できる。
車両の中に、春菜と香音とさくらの三人がいるのを。

「早く脱出させないと!」
「いや、香音ちゃんの物質透過でもあの速度から投げ出されたら、無事じゃ済まない!!」

里保たちは必死に中の三人に「心の声」で呼びかけるが、返答はない。
おそらく彼女たちは彼女たちで、必死に列車を止める方法を考えているのだろう。大して役に
は立ってはいないが、車両から下方へと突き出しているつり革付きの鉄棒もその内の一つであ
ることは明らかだった。

水、大量の水が近くにあれば。
里保は列車の行く手に何枚もの水の防御壁を築くことで、電車の減速を試みるイメージを描い
てみる。けれど、いくらリヒトラウムが湾岸エリアに建設された立地とは言え、今の場所から
海まではかなりの距離がある。不可能だ。

960名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:57:45
里保だけではない。
今現在張られている衣梨奈のピアノ線の防護ネット。
亜佑美が呼び出した鉄巨人。
優樹のテレポート能力。
そのどれもが、この危機を脱するには足りない。
状況は、絶望的とすら言えた。

だから、誰もそんな結末は予想すらつかなかった。

「あれ…何か電車の速度が遅くなってる気がする」
「そんなこと!あ…」

遥の千里眼が最初に異常を捉え。
そして他の者たちも次々にそのことに気付く。

猛り狂う列車は、まるで最初からその場所に停車するのが決まっていたかのように。
ゆっくりと速度を落とし、やがて完全に動きを止めたのだ。

961名無しリゾナント:2015/05/04(月) 12:58:33
>>952-960
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

962名無しリゾナント:2015/05/13(水) 00:32:08

(痛い──マジ、ありえねーし!)

声がする

誰?
誰の声?

(こんなトコで……じっとしてられるかよ!)

声がした方へ行くと、壁に手をつきながら片脚を引きずって歩く人が居た

「くっ……あーもう!」

ちょっと年上っぽい女の子
でも、髪はショートだし声はハスキーでボーイッシュな感じ

その女の子は、額に汗を滲ませながらゆっくり歩いて行く

「うわっ!」

ドタッ!

女の子が倒れた

「い……った、くそっ!」

引きずってた脚を、何度も何度も叩く女の子
眼には涙が溜まっている

「なんでこんな時に……!」
「大丈夫、ですか?」

963名無しリゾナント:2015/05/13(水) 00:33:03

気が付いたら、声を掛けていた

「君、なんでこんなトコに……?」

こんなトコ
ここは、ある条件を満たした子どもが集められた施設

「まさか……君は
「肩を貸します。ここを出ましょう」

女の子の背中に腕を通し、立たせようとする

「ごめん、無理だわ」

制された

「ここには、もう誰も居ませんよ」
「居るよ。ハルの仲間が、家族が戦ってる。ハル1人で逃げるなんて出来ない」

戦ってる?
誰と?
そもそも

「その脚で、何が出来るんですか」
「頑張っても絶対に上手くいく保証なんてない。それでも、頑張った先には何かがある。だから、ハルは行く」

上半身を起こし壁に寄り掛かるハルさん

「そんな状態になってまで、戦う理由があるんですか。歩く事も出来ないのに、普通じゃない」
「大切な家族を守るのに……正当な理由なんていらないんだよ」

964名無しリゾナント:2015/05/13(水) 00:34:44
>>962-963
見切り発車ですが、保全の一環という事で。

タイトルは完結後に。

965名無しリゾナント:2015/05/13(水) 00:35:50
>>964
大切な事を忘れていました。
代理投稿お願い致します。

966名無しリゾナント:2015/05/13(水) 00:43:52
行きます

967名無しリゾナント:2015/05/13(水) 02:35:06
>>952-960 の続きです



異変は、車両内にいた春菜たちにも伝わっていた。
何の前触れも無く、ゆっくりと動きを止める列車。その止まり方に、春菜は既視感を覚えていた。
もしかして、これは。

「鈴木さん、物質透過をお願いします!!」
「え?あ、うん、わかった!」

取り合えず外に出ようという判断なのだと悟った香音。
自身と春菜、そしてさくらに物質を透過させる力を与えた。

最初からそこに何もなかったかのように、車両のドアを摺り抜ける三人。
春菜は、先頭車両の鼻先に立っている女性を見て、思わず声をあげる。
この独特な雰囲気。見間違えるはずもない。

968名無しリゾナント:2015/05/13(水) 02:36:46
「あ、彩ちゃん!!」

和田彩花。スマイレージのリーダーにして、加速度操作能力の使い手。
やっぱり、という気持ちと同時に、まさかこんな場所で会えるなんて、という驚き。
スマイレージのリーダーとして、花音の手助けに来たのかも、などということは、これっぽっちも
考えなかった。

「やっぱりはるなんだ!はるなん!はるなん!!」

一方の列車暴走を止めた立役者である彩花もまた、春菜の姿を見つけてこちらに駆け寄る。手を取
り合い飛び跳ねている様は、緊張感の欠片もない。

「何ですか、あれ。あの人、確か生田さんと飯窪さんが助けたっていう。その時の恩返し、なんで
しょうか」
「さあ、どうなんだろうね」

その様子を遠巻きで見ながらも、警戒を怠らない香音とさくら。
そんなことを思われてるとはいざ知らず、美しき友情を展開している二人だが。

「今回はほんとに危なかったんです!彩ちゃんがいなかったら、どうなってたか」
「ううん、あや大したことしてないから」
「でもどうしたんですか、こんな場所に」
「んー。花音ちゃんたちが、あやに黙って勝手な行動するから連れ戻しに」

そこでようやく、春菜は今回の花音の襲撃がまったくの独断だったということを知る。
後から考えてみると、スマイレージのリーダーは彩花なのだ。彼女が不在だったという事実が不自
然なことだと気づくべきだった。

969名無しリゾナント:2015/05/13(水) 02:37:57
「そうだ、はるなんの先輩だっけ。道重さんと一緒に来たんだ。今、あっちのほうに行ってる」
「み、道重さんが来てるんですか!!」

さらに思いがけない事実。
どうして道重さんが、と思う前に、ある異変に気を取られる。
彩花が指差した方向には、リヒトラウムの入場門がある。
そこに、遠目からでもわかるくらいの人だかりと呼ぶにはあまりに多くの人間がひしめき合っていた。

「…とにかく、みんなと合流しよう。あの「金鴉」「煙鏡」とか言う2人組のことだ、きっと次の手
を打ってくるはず」
「じゃあ彩も。あっちのほうに花音ちゃんたち、いるっぽいし」

こうして完全に沈黙した列車から離れ、香音たちは入場門を目指すのだった。
一方、件の入場門の前には。

970名無しリゾナント:2015/05/13(水) 02:39:43
「みんな、大丈夫だった!?」
「道重さん!!!!」

聞き慣れた声に、耳を疑うリゾナンター一同。
白い肌に艶のある黒髪、はっきりした二重瞼。
喫茶リゾナントの主であり、そしてリゾナンターのリーダー・道重さゆみ。
彼女は間違いなく、リヒトラウムの地に立っていた。

まさか。でもどうして。とにもかくにも、ぎりぎりまで張り詰めた緊張の糸は、一気に緩むことと
なる。
じわじわとこみ上げる思い。感極まって、全員でさゆみを囲むような形を取ろうとした時。

「りほりほー!!」
「むぎゃっ!?」

さゆみは、「標的」へとまっしぐら。
お決まりのハグ、そして治療と称したお触りだ。
全身で喜びを表現しているさゆみと比較して、ただ身を硬くして目を白黒させている里保、という
光景は最早お約束である。

「愛佳がみんなが血塗れで倒れてる未来を視たから心配になって…でもさゆみは決してみんなのこ
とを信頼してなかったわけじゃないし、それに何よりも、りほりほ、怪我はない?敵に変なことさ
れなかった?」
「は、はあ…」

今まさに変なことをされているんですが。
全身にくまなくぺたぺた、さわさわと癒しの手を這わせるさゆみに、そんな言葉をかけられるはず
もなく。ただ、こうなると外野が黙っていない。

「やすしさんだけずるい!もうみにしげさんきらい!!」
「み、道重さん!あたし、リオンの出し過ぎでちょっと腰が…」

あっと言う間に、後輩たちに囲まれるさゆみ。

971名無しリゾナント:2015/05/13(水) 02:40:48
そんな中、相変わらず忌々しげにこちらを見ている花音と目が合う。

「あんた、確かスマイレージの」
「何ですか。あたしたちはもう、これから帰るところなんですけど」
「…リーダーの子が、心配してたよ」
「は?余計なお世話です」

花音は、さゆみの言葉が図らずも彩花がこの地に来ていることを示すものと悟る。
何であやだけ仲間はずれなの、と変な空気で詰問されるのはまっぴらだ。
彩花がいることで戦力の大幅増大、はいいけれども。さゆみがいる以上は共闘などという最悪の展
開すらありうる。
一刻も早く、この場から立ち去らなければならない。

一方、さゆみは花音を見て。
ひねくれた面倒臭そうな相手ではあるが、愛佳が伝えた悲劇の未来からはほど遠いように感じた。
第一、そのような圧倒的な実力を持っているようにも見えない。では、あの予知は。

まるでさゆみの疑問に答えるかのように。
その二人は突然、姿を現した。

「随分遅いご登場やないか」
「こっちは待ちくたびれたっつの」

空気が、重くなる。
それは地獄の使者が放つ、底知れぬ悪意のせい。

972名無しリゾナント:2015/05/13(水) 02:41:52
さゆみは現れた二人の少女、「金鴉」「煙鏡」の姿を一目見て、理解する。
この二人こそが、後輩たちを血の海に沈める未来を齎すものだということを。

973名無しリゾナント:2015/05/13(水) 02:42:43
>>967-972
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

974名無しリゾナント:2015/05/14(木) 09:53:57
本スレ
>>604-605
の続きです。

975名無しリゾナント:2015/05/14(木) 09:54:29

ハルさんは壁に手をつき、少しずつ立ち上がる

「……!」

脚を押さえ、うずくまるハルさん
顔色は朱く、汗は滝の様に流れている

「これくらいの痛みがなんだ……心の痛みに比べたら全然っ!」

心の、痛み

「……どこが痛いですか?」
「え?」

ハルさんの側でしゃがみ、痛めた脚に手を当てる

──痛覚制御──ロスト・ペイン

「……痛みが、消えた?」
「怪我を治した訳じゃありません。痛みを消しただけです」

消せるのは身体の痛みだけ

「やっぱり君も……能力者」

人間を超えたチカラを持つ者
でも、中途半端なチカラ
役立たずなチカラ

「そんな事ないよ」

976名無しリゾナント:2015/05/14(木) 09:55:35
伸ばされた手で、頭を撫でられる

「痛みを消してくれて、ありがとう」
「──!」

そんな事、今まで一度も言われなかった
なのに、この人は

「よし!」

動きはぎこちないものの、立ち上がるハルさん
その眼は施設の奥を見ている

「……行っちゃうんですか?」

ハルさんが振り返る
その表情は、笑顔だった

その笑顔は、誰の為?

「家族が待ってっからさ」

行って欲しくない

「……一緒に行きます」
「危ないから君はダメ」
「危ない場所に、あなたは行くんですか?」

行かないで

977名無しリゾナント:2015/05/14(木) 09:56:27

「大丈夫! 実は、はるかケンカちょー強いんです! なんてね」
「……怪我してるのに」
「そこ突かれると痛いなー。ま、怪我は君のおかげで痛くないんだけどね。ナハハー」

だって、あなたは

「心細いかもしれないけどさ、ここで待っててよ」

初めて──

「必ず迎えに来るから」

そう言って、フラつきながら施設の奥へ走って行った

その背中を見ていたら、追い掛けたいと思った
ううん、追い掛けるんだ

そう思い一歩踏み出した、その時

「見つけたぞ」

後ろから声を掛けられた

「全員避難した。残るは君だけだ、羽賀朱音」

この施設の人

「直ちにこの場を離れるぞ」
「……はい」

978名無しリゾナント:2015/05/14(木) 09:57:30


──


施設を出ると、空は茜色に染まっていた

「最後の1人を確保、指定地点に到着しました。転送をお願いします」

通信機で話す施設の人

きっと、ここへは二度と来ないんだろう
見納めにと振り返る

「きれい……」

施設の影から少しだけ見えた太陽
徐々に消えて行くオレンジ色は、まるであの人の様だった

心地良い声
優しい言葉
温かい笑顔

誰かの身体の痛みを消した分だけ、自分の心が傷付いてた
無能力者からは嫌われ、能力者からは馬鹿にされてた

だけど、初めて〝ありがとう〟くれた〝はるか〟さん

あの笑顔に、もう一度会いたい

必ず再会する
その為に、朱音は──

979名無しリゾナント:2015/05/14(木) 10:05:12
>>975-978
『アカネ』完結です。

能力設定は以下から↓
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/1202.html

>>608
活躍、してませんよね……。

>>616
予想はいかがでしたでしょうか。

980名無しリゾナント:2015/05/14(木) 10:12:27
>>979
大切な事を忘れていました。(2回目)
代理投稿お願い致します。 (2回目)

>>966
代理投稿ありがとうございます。

981名無しリゾナント:2015/05/14(木) 19:06:16
行ってきます!

982名無しリゾナント:2015/05/14(木) 19:10:13
と思ったんだけどなんか規制されて書き込めない…どなたかお願いします

983名無しリゾナント:2015/05/14(木) 22:01:13
再度チャレンジ!

984名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:02:23
>>967-972 の続きです



ポニーテールと、ゆるふわヘアの二人組。
ゆるふわのほうがマント状の白いストールを翻して後退し、ポニーテールのほうが前に出た。
二人同時で何かをするつもりではないらしいが。

こいつ、強い。
遠巻きにその様子を見ていた花音は、ダークネスの幹部を名乗った少女を素直に評する。
そのような地位の人物と相対するのは二度目だが、発される威圧感は「赤の粛清」に匹敵するほど
のように感じられた。

「まずは…ご挨拶代わりに」

言いながら、ポニーテールの「金鴉」のほうが懐から何かを取り出した。
真紅の液体が詰まった、小瓶。

その中身を一気に飲み干すや否や、
人差し指と親指をピストルのように立てて、何かを発射する。
さゆみではなく、未だパニックに囚われ出口にひしめいている群衆のほうに。

「何を!!」

悪魔の弾丸は、里保の咄嗟の反応により着弾することなく一刀両断された。

「決まってるじゃん。景気づけに、ぶっ殺すんだよ。そいつら全員」

今度は、両手で。
しかし放たれる念動弾の数は、先程の非ではない。
圧倒的な、物量。

985名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:03:25
近くに水があるならともかく、これだけの量の弾丸を全て打ち落とすのは不可能に等しい。
里保だけではなく、他のメンバーたちも放たれた念動弾を処理しようと駆け出す。
だが、間に合わない。数が多すぎる。
弾に穿たれ、苦悶にのたうち回る人で溢れかえる未来は変えられそうになかった。

「…ちっ」

しかし。
後ろで見ていた「煙鏡」が不機嫌そうな顔をし、「金鴉」は思わず舌打ちをする。
高速で突き抜けるはずの念動弾は急に速度を弱めていた。その隙に、里保の斬撃が、衣梨奈のピア
ノ線が、亜佑美の呼び出す鉄の巨人が。飛来する弾を次々に打ち落としていった。

「間に合った!!」
「里保ちゃんたち!それに、道重さんも!!」

息を切らし駆けつけた香音、春菜、さくら。
そしてその後ろに立つ、加速度操作の能力者。

「邪魔なやっちゃな。ま、構う事あらへん。のん、やりぃや」
「りょーかい!!」

引き続き「金鴉」が、他には目もくれずにか弱き非能力者たちをその的にかける。
しかし、彩花の加速度操作によって漂うシャボン玉の如く。勢いを失った念動弾は里保たちによっ
て次々と無力化されていった。

986名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:05:28
一方で、彩花の登場に、明らかに不機嫌な顔になった花音だが。

「花音ちゃん」
「な、なによ」

不意に、彩花に名前を呼ばれる花音。
あたしを連れ戻しに来たのか。一体何の権限があって。リーダーだから? 知り合ったばかりの胡
散臭い黒ゴボウと意気投合しちゃうくらい、警戒心がないくせに。
言葉はいくつも浮かべども、口にすることができない。

「あやもずっと能力使ってるの、疲れちゃうから。その人達、花音ちゃんが操って外に出して」
「はぁ!?」

ストレート過ぎる要求。
彩花らしいと言えば聞こえはいいが。

加速度操作により極度に低速化された、念動弾の雨。
これを打ち落とす手勢に、新しいスマイレージの四人が加わっていた。

「みずきちゃん、あかりも手伝うっ!」
「あかりちゃん!」
「全部打ち返してやる!!」

言いながら、大振りなスイングでホームランを量産する朱莉。
こうなると他の三人も負けていられない。芽実が分身で手分けして弾丸の処理に当たれば、香菜が
防御用の結界を張る。また、里奈は持ち前の俊敏さで大量に降ってくる念動弾を着実に打ち落とし
てゆく。

987名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:06:04
共闘。
花音が最も恐れていたことだった。
何のためにここに来たのか。自分自身が否定されているような気さえする。

花音は、追い詰められていた。
これでは、今の自分はただの聞き分けの無い裏切り者だ。
彩花の様子を窺うと、疑いのない目でまっすぐにこちらを見てくる。
そうだ。その目でいつもあたしを。
花音の意識は、過去へと繋がる裂け目へ吸い込まれていった。

988名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:07:18


「海月のようにただふわふわと浮くことしかできない」はずの彩花が突如、本来の力を発揮し始め
たのは、能力者の卵たちであるエッグから実用に叶う人間を選出しチームユニットを結成すると発
表されてからすぐのことだった。

物体の速度を自在に操り、攻防ともに優れた能力。
彩花は選抜ユニット「スマイレージ」に選ばれることとなり、さらにはリーダーまで任されること
になる。幼少の頃よりエリートとして持て囃されていた花音が、それを面白く思うはずもなく。

「…どいてよ。邪魔なんだけど」
「あやはここに座りたいから座ってるだけだし、知らなーい」

花音と彩花は、そんな些細なことですら衝突を始める。
一方的に花音が突っかかっているだけとも言えるが、それがさらに花音の勘に障った。
だからと言って、花音はユニットを抜けたいなどと思う事は一度も無かった。理不尽な任務に対し
て根は上げる事はあってもだ。

まるで、支配者の瞳のようだ。
花音は彩花の視線を、密かにそのように捉えていた。
別に特別な能力があるというわけでもない。ただ、そのまっすぐな瞳で見据えられると、何となく
反駁する気が失せて結果的には相手に折れてしまう。
リーダーとしてリーダーシップを発揮したことなど、ほとんどないくせに。それでも、あの頃から、
スマイレージが4人だった時から。
彼女は、「リーダー」だった。

989名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:09:46
花音は、彩花に対し複雑な感情を抱いていた。
普段はどことなく抜けている、天然な彼女に対して、ある種の優越感さえ抱いていたのに。
しかし、裏を返せばそれは花音のコンプレックスでもあった。

あれだけの苛烈な試練を、何度も潜り抜けさせられてきた。
それなのに、彩花の心は少しも歪むことなく、育っている。
彼女のまっすぐな視線は、そのことを如実に表す。彼女が支配しようとしているのではない。投げ
かけられたものを素直に返すことができないから、何も言えなくなってしまうのだ。

彩花は自ら引っ張ってゆくようなタイプのリーダーではない。
かと言って、周りの人間が支えてゆかねば、と思わせるタイプでもない。
ありのままに行動し、ふるまう姿。
気が付くと、紗季も、そして憂佳もついていっている。
花音にはその光景自体が、眩しかった。
彩花を筆頭に、自分も含めた四人のスマイレージ。光のように眩しい、思い出。

けれど、認めるわけにはいかない。
それが、花音に残された最後の砦なのだから。

990名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:10:50


時間にして、数秒。いや、それよりもさらに短い時間だったかもしれない。
花音は、自分の思いが4人で活動していた頃に馳せていたことを意外に思った。憂佳や紗季は弱い
から、いなくなった。ただそれだけのことだと思っていたのに。

いやそれは嘘だ。
花音は「意図的に」自分の心にそう言い聞かせていただけだ。
本当は。本当は。

「帰ろう? 新しい『スマイレージ』を作るために。ゆうかちゃんや、さきちゃんが守ってきた、
『スマイレージ』を守るために」
「……」

別に、彩花に言われたからではない。
彩花に、誰かに言われて言われた通りにやるのは、癪だし納得できない。
だからこれは。自分の意思で、やるのだ。

今日は疲れた。早く帰りたい。
贔屓目に見ても、後輩の四人はまだまだだ。鍛えれば少しはましになるかもしれないが。
そのためにも、早く帰って色々やらなければならないことがある。

花音の放つ隷属革命が、恐慌状態の群集に降り注ぐ。
閉ざされた入口に折り重なりあっていたものたちも、互いの襟首を掴みあっていたものたちも、み
な一様に虚ろな顔になり、列を作り、並び始めた。

出入口を塞いでいた鉄板は、芽実の分身の一体が破壊し突破口を広く作っていた。
ゆっくり、しかし確実に。行儀のいい団体は、少しずつ敷地から押し出されるように出てゆく

991名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:12:21
「させるかよ!!」

なおも無力な群集たちに攻撃を仕掛ける「金鴉」だが、暖簾に腕押し。
彩花の加速度操作の前には、無力だった。
そんな攻防の中、春菜と彩花の目が合う。

「彩ちゃん」
「ごめんねはるなん、この人たちを無事に施設から出さなきゃいけないから手伝えないけど」
「ううん、いいんです。それより、その人たちのこと…お願いします」
「わかった。はるなんたちなら、きっと」
「はい、大丈夫です!」

道重さんがいるから。
その言葉を春菜は敢えて、胸にしまい込む。
さゆみが来た事で戦況に光明が見えたのは確かだけれど、それを彩花の前で口にするのはかなり
恥ずかしくも情けなくもあるからだ。

花音が群集を引き連れ、それを四人の後輩たちが護衛する。
里奈の「なーんだ、全員操れるんじゃん。わけわかんね」という毒吐きなどどこ吹く風。
新しいスマイレージたちは、一つの目的に一致団結を形作った。

「みずきちゃん、あかりたち行かなきゃ」
「うん…今度は、もっとちゃんとした形で」

そして聖と朱莉も。
次こそはうれしい再会になるように、約束を交わす。
そのためには。無事にこの状況から、切り抜けなけれなならない。

992名無しリゾナント:2015/05/19(火) 16:14:14
一方。
先ほどから緊迫した空気をぶつけ合う、さゆみと「煙鏡」。
そこに追撃をようやく諦めた「金鴉」が合流する。

「ようやくメインディッシュの時間や。これが人気マンガなら読者さんも待ちくたびれてるで」
「…つまらない茶番ね。あんたたちの書く筋書きなんか、10週で打ち切りなの」

さゆみは「金鴉」の顔に見覚えがあった。
以前、同僚の田中れいなに「擬態」した刺客が、彼女にとてもよく似た姿形だったことを記憶し
ていたからだ。しかし。
その横で厭らしい笑みを浮かべる「煙鏡」とは、まったくの初対面。

「改めて自己紹介といこか。うちは『煙鏡』。道重、お前をここに呼び出す絵図を書いた天才策
士や。めっちゃリアルやったろ? 『お前の後輩たちが血塗れで倒れている未来』は」
「それ、どういう」

「煙鏡」は待ってましたとばかりに、大きく相好を崩す。

「偽の予知やってん。お前のお仲間の…何やったっけ。予知能力持ってたやつ。のんがそいつに
接触して、あたかも予知で未来を見たかのように記憶を刷り込んだ」
「え…」
「お前をおびき出すためのエサ、っちゅうわけや。そこのクソガキどもをこの場所に呼び寄せ
たのもな」

相方の言葉に合わせ、自らの姿を変える「金鴉」。
それを見た優樹が、

「あ!福引きのおねーさん!!」

と大きな声をあげた。


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