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58第1回8番(15)エアル=フラベウファ・ヘルモンド:2008/03/10(月) 00:09:34
 アルセスを祖とするヘルモンドの家系において、唯一アルセスの血を持たぬ者がいる。アルセスの妻となったもう一人のヘルモンドの祖、エアル=フラベウファ・ヘルモンド。
 兄殺しの罪で追放されたアルセスは、この北方の地で奴隷の娘エアルを買った。エアルはアルセスを愛していた。しかしアルセスが愛したのは兄キュトスだけだった。呪いを禊ぐ贄とするためエアルを娶ったアルセスは、彼女との間に子をなした。
 アルセスの企みに気づいた哀しきエアルは、自分の身を魔人に売った。アルセスと交わったエアルの身体は、キュトスの呪いに侵されていた。その呪いを武器として、アルセスを討てと魔人メクセトに願ったのだ。はたして、神滅ぼしの野望を抱くメクセトは、エアルの願いを聞き入れた。
 呪われし具物へと姿を変えたエアルの武装を身に纏い、魔人メクセトはアルセスに挑む。メクセトは敗れたが、アルセスもまた無事ではなかった。エアルによってもたらされた呪傷により、アルセスは幾月もせず命を落とす。エアルによってアルセスが殺害されたという伝承の、これが顛末である。
 二千三百年を経た今、エアルは再びアルセスの面前にある。あの時の魔人の末裔が、今またエアルを纏っていた。
 男は、エアルの内に眠るキュトスの魔力を解放する。その変化は劇的だった。男の腕のひと振りで贄の娘たちが凍りつき、戦套のはためきは勇士たちの活気を呼び戻す。一瞬にして、先手と後手が逆転した。
「兄貴! すげえぜ、兄貴!」
「ソルダス、やれ! 二度はできん!」
「任せてくれ、兄貴!」
 鼓舞された志士たちが、娘たちに飛びかかる。刑事もまたその中にいる。エアルの生み出した唯一の隙を、彼らはこじ開けるように狙い撃った。娘たちはもはや防ごうともせず、道連れの反撃を試みる。
「兄貴! 負けねえでくれ、兄貴!」
 待ち受ける反撃のうず中に身を投げて、最後の攻撃を挑んだ勇士たちが次々と果てていく。同時に、娘たちの魂が一斉に解放されていった。陣内が白光に溢れ、しかしまたすぐに冥い朱の輝きが戻ってくる。
 直前までの騒乱が嘘のように、陣内は打って変わって静かになった。立っている者は、メクセオールとアルセスのみ。失神したクリスが、離れたところに倒れていた。エアルの魔力を行使しても、メクセオール自身には目に見える変化がない。ただ、その武具が光を放っている。彼は、最後の一柱、青年の姿を取り戻したアルセスに対峙する。


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