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第1回8番(γ)ウィアド・イン・ザ・ワイアード
:2008/03/09(日) 23:42:22
「大事になったな……」
彼らは偏在する。ワイアードな構造を持つところ、どこにでも姿を現す。だから名を『ウィアド』と言う。
「ピュクティエトも相変わらずだ……結局、アルセスに裏をかかれた」
デフォンは少女を目覚めさせるためのシナリオを作っている。少女がどの登場人物として夢の中に顕現しているのか、その正体に気付いたデフォンの記述作業は順調だ。しかし、アウターという大きな不確定要素を抱えることとなった今、状況がデフォンのシナリオ通りに展開する保証はない。リアルワールドがシナリオと単純に同期するには、両者の齟齬が広がりすぎた。デフォンにとって認識の枠外にあるピュクティエトが勝手に動いた挙句、見事に失敗した結果である。
「アルセスは気にいらねえし、レーヴァヤナからも協力を願われた。とりあえず、アンリエッタに状況を伝えておいたぜ」
「彼女は、ケルネーを誘ってデフォンの元に押しかるつもりのようだ。自分たちをシナリオ作りに協力させろと」
「デフォン一人ならシンプルで済むシナリオも、ケルネーの手が加わればさぞ乱れることだろう」
「だが、そこに介入する隙が生まれる。アンリエッタなら、どうのこうのと上手いこと言って、シナリオをリアルワールドに同期させてくれるだろうぜ」
「こちらは任せて大丈夫だろう。問題は彼らだ……」
メクセオールの張った宝陣もまた、ワイアードな次元を形成している。ウィアドは陣内を観測する。メクセオールの戦士たちが、四十四人。アルセス=クリス。アルセスの復活の贄となった、アルセス自身を含む七十一人。合わせて百名を越える彼らが、もつれ合うように入り乱れている。肉塊として顕現したキュトスの娘たちは、ときに分離し、また融合し、その姿を変容させながら勇士たちを襲う。その肉の壁に阻まれて、またエクリオベルクに弾き返され、勇士たちはアルセスに手出しができない。
「殲滅戦だな……大将の首をとられれば負けだからこそ、逆に最後の一兵まで争うだろうぜ」
「生贄たちはキュトスの紀性を受け継ぐ。当然アルセス自身も古き神だ。敵のプライオリティは二か」
「太母レストロオセが残せし四十四士……彼らもまたプライオリティを有する」
「そして言理竜エル・ア・フィリスによって、プライオリティがプラスワン。ポテンシャルは互角か?」
「待て。もとはアレの所有物であった大空魔殿エクリオベルクを、今はアルセスが行使している。ピュクティエトに破壊され復旧は完全でないようだが、形而上では言理竜と張り合っているし、陣内でもキュトスの武装として働いている。プライオリティ一だ」
「アルセスと習合したアウターをどう解釈するかは判断が分かれるが、これもプライオリティに匹敵する」
「二対四のプライオリティとなれば……これはアルセスの野郎が圧倒的に優勢だぜ。なんとかならねえのか」
「我々にできるのはエル・ア・フィリスとアウターの形而上の闘争に介入することくらいだが……しかし、難しいな」
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