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物語スレッド

332アルカ・アライブ・アリステル:2008/10/29(水) 22:55:09
散らばった大地の時代、致命的な問題とされたのは資源の枯渇と文明の伝達子(ミーム)が衰退していくことだった。
あらゆるミームは異なるものと接しなければ自壊し、文明は単純化しやがて近親婚を重ねた一族のように亡びを迎える。
交易を困難にする大断層は人々を飢えさせ、やがてより単純な世界を求めさせた。
球化の後、あらゆる種族はその快適さに味を占めていく。
曰く、揺らがぬ大地のなんと暖かな事か。
安定と秩序を欲する人々、竜的思想に凝り固まった彼らに対し、猫的な混沌思想は異質で少数に過ぎたのである。
アリスは思う。
眼前のデータの群の中には、ここ最近の地上の資源の動き、即ち猫側に供給される石油バレルの総量がグラフとなって表示されていた。
右肩下がり。一体何?が残されているのか、細かい数値を数えるのをアリスはやめた。
猫たちが保有する残り僅かな浮遊大陸(散らばった大地の時代のわずかな名残だ)にはもはやわずかな石油資源も残されていなかった。

猫たちは欲望と必要の赴くままに地上で資源を輸入していた。
暫く前まではそれすら許容されていた。
だが、昨今のエネルギー問題と環境の激変は猫へのバッシングを生み出す。
地表温暖化。
温室効果ガスが生むオゾンの破壊はやがて竜的人々の批判を生み出し、猫たちへの致命的な敵意となって形となる。
「緑に満ちた世界を考える会」の竜王たちはエントロピー増大効率の低下を唱え、「健全なる対症療法」をもって自然の崩壊を遅延させるべきだと主張する。
その筆頭はいまやエルアフィリスではなく、一人の矛盾を司る竜である。
言竜エルアフィリスと同格の竜、ロワスカーグ。
化石資源を用いたリサイクル、根本的解決には程遠い環境対策をしつつも、広い視野で眺めて地上の知性種の未来に繋がる環境政策を唱え続ける矛盾を貫き守る竜。
いまや地上において最も勢力を持つに至った「緑に満ちた世界を考える会」の会長であるロワスカーグはいまや世界五大宗教のひとつである竜神信教すらも吸収して猫たちの最大の敵となっている。
そして同時に、アリス・アインシュタインの最大の敵でもあるのだ。
享楽を貪ればいいのに、となんとはなしに思う。
竜の龍理に対し、猫たちの抽象性に満ちた猫写はこうだった。
「延命策ではなく、抜本的解決を図りたい。なんかすごいアイディアで。世界に革命を!」
なお、具体案は一切示されていない。
そんな彼らを、アリスはいとおしいと思う。


アリスがこれから対峙しなくてはならないのは、「現在の球の世界を創りし」創世竜第六位、矛盾竜ロワスカーグであり、そして彼に付き従う竜神信教第六位の巫女、ザリス・アインシュタインである。
ザリス。
その名を思うたび、アリスは暗い、疼痛を伴うような熱を額に覚える。
矛盾竜をその手で討ち果たし、竜の巫女として認められた冥王たちに対抗する英雄の一人。
そして。
アリスの唯一の肉親。彼女のただひとりの姉が、ザリスだ。


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