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物語スレッド

314ワンテクスト リザードマンの皮2:2008/02/06(水) 00:03:50

視界に映る獲物は四、爛々と光る二つの輝点を確認するや否や、彼らの挙動が精練された戦士のものに変わる。
殺意。先にぶつけたのはこちらだ。故に等量以上の敵対意思は圧し掛かるように鱗の上を圧迫する。
躊躇い無く、疾駆する。
眼前、先頭の戦士が咆哮を上げた。
否、それは吼えたのではなく背後の人間達への指示や鼓舞の合図だったのかもしれない。
だがディザウィアーには人間の言語など分からないし、分かろうとも思わない。
翻すは抜き身の刃。薙ぎ払うは踏み出した空間。
湿った大気が鋭い音を鳴らした。
戦士の直剣とこちらの剣がかみ合う高調音。真横から突き出されるのは援護の槍。
それを、ディザウィアーは避けることもなく無視した。
鍔競り合う刃を、一気に押し込む。

刎ねるような金属音。
同時に二つ。

ひとつは、ディザウィアーの刃が戦士の刃を叩き折った音。
もうひとつは、ディザウィアーの首に突き出された槍の穂先が砕けた音。
戦士たちが、高く鳴いた。それは驚愕の声だろうか。このディザウィアーの硬質鱗は程度の低い金属などでは絶対に貫けないという厳然たる事実。冒険者達が絶対の絶望と恐怖に塗れ、死に逝く最大の原因たる、最硬の鎧。

屠る。驚愕から立ち返る機会など与えぬ。鱗人の放つ斬撃は瞬く間に敵手二人の首を跳ね飛ばし、攻撃の機会を窺っていたもう一人の戦士の槍を斬り飛ばすと、一閃して殺害。

瞬間的な殺戮だった。ものの数秒で、三人。
ディザウィアーの電撃的な速攻には、今まで幾人もの冒険者達が餌食となった。
その歴戦とも言える彼の勘に、隔靴と火が点る。爆発的な直感が彼を爬虫類的な柔軟性で臥せさせた。

刹那、爆散する直上空間。耐え難い熱の嵐がディザウィアーの背を、後頭部を焦がす。
魔法使い、彼の天敵。
その鱗を突破し、爆砕し凍結し飛散させて殺害し得る、唯一警戒するべき対象。
だが、一度の回避が成功さえすれば恐れるには足りず。
しなやかに跳ね上がる。眼前の魔法使いにはまるで地を這って接近してきたように見えたであろう、前方への瞬間的跳躍動。
それに次ぐ、斬撃。
血しぶきが飛び、脆い魔法使いの肉がどうと倒れる。

狩りは速やかに終了した。都合十秒ほどである。
今晩の豊かになるだろう食卓を思い描きながら、ディザウィアーは狩りの成果を隠していた袋に詰め、力強い腕で担いで巣へと戻っていった。


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