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物語スレッド

313ワンテクスト リザードマンの皮1:2008/02/06(水) 00:03:33
音は無い。静謐に充ちた闇の中、それでも光景が判然としている。
それは、薄暗いモノレッドの石壁が延々と続いている洞穴の中の事だった。
体温が変動しやすいのは彼の種族の特性だ。季節に関わらず冷え込みが激しい地下でのこと、暖をとる為に熱糧の定期的な摂取は欠かすことが出来ない。
耳まで裂けた口の端で、舐めるようにして溶かしていくそれを横目で眺める。
自分の赤く長い舌が飴玉じみた携帯食を絡めているのが顔の両側に付いた巨大な眼球から見て取れた。
その目玉は大きい。とても。
顔の側面についているのだが、目玉が大きくてよく動く為か、真後ろ以外の死角は存在しないほどだ。
ディザウィアーは三階層のコロニーに来て未だ一年目という新参で、安全な最下層(グラウンド・ゼロ)の揺り篭(クレイドル)で戦士としての訓練を終えてようやく上層に配属されるようになったばかりだった。
ディザウィアーの仕事はいつの日も変わらない。
来たものを狩り、その持ち物を奪い、肉を運ぶ。
徒党を組んで狩る場合もあるが、そしてこの界隈ではもっぱらそれが常道とされているが、
彼、ディザウィアーは単独で狩る事を好んだ。
獲物である侵入者達は通常四人から五人の集団だ。単身襲い掛かれば不利は否めない。
ましてや、この三層にまで到達する事が可能な技量を持った戦士ともなれば、なおさらだ。

それでも、ディザウィアーは独りサーベルの刃を研ぐ事をやめない。
彼は、常に独りで狩りをするのだ。

傍から彼を見れば目が爛々と輝いているのがわかるだろう。無明の闇の中、闇を見渡す、否、闇を照らす光輝の瞳はディザウィアーたちの種族でも珍しいとされる強者の証だった。
魔的な素養が強いと言ったのは何時か出会った魔術師だったか。いずれにせよ彼にとって弱者は糧にし踏みつけるためだけにあるのだ。

そら、獲物が来た。
足音より先にその目が捉えたのは松明の明かりだった。「人間」たちは魔術の明かりや松明がなくては闇の中を歩く事ができない。
それが自分達の敵を引き寄せる悪手だと知りながらも、そうせざるを得ない。
愚かな、愚かな人間たち。

隊列を組んで歩く、硬い鎧を纏った戦士たち。
三人の背後には線の細い身体を長衣に包んだ魔法使いが歩いている。
四人の侵入者。身の程知らずな冒険者たちを、ディザウィアーはせせら笑った。

ディザウィアーは、鞘を押さえてサーベルをすらりと抜き放った。
この地獄のような赤竜の古巣(レッドトーン・モノリス)の中層で、地獄の番人が牙を剥く。
さあ、狩りの時間だ。


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