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207遺された紀憶(14)-2 ◆hsy.5SELx2:2007/06/11(月) 18:17:48
「内側から? でも……」
 ぼくだって、扉は何度も使わせてもらっていた。開け閉めだってしたことがある。だけど、それで扉が消えてしまうなんてことはなかったはずだ。そう話すと、ワレリィさんは悲しげに首を振った。
「そういう内側じゃないのですよ6。内側は『扉』の入口と出口の間にあるのです7」
「そんなもの、見たことがない」
「見えないように、危くないように、極力小さく縮めてますから11。でも、ぼくの『扉』は基本的にキュトスの姉妹のためのものですから、キュトスの姉妹にならある程度いじることができるのですよ6」
 ぼくは嫌な予感がした。
「……ちょっと待って。内側から閉めたって、もしかして、彼女はその、内側に居るの?」
 フィランソフィアから聞いたことがあった。この宇宙には見えない隙間がたくさんあって、その隙間からこの世界の秩序の外側へと旅立つことが出来るんだって。二度と戻ってくることのない、永劫への挑戦。ワレリィさんは悲しげに頷いた。
「……たぶん4。それくらいおかしな使い方をしない限り、『扉』が消えるなんてありえませんから1……」
「戻ってくることは、出来るの?」
「……わかりませんです4……。すみません3……」
「そうか……」
 ぼくは意味もなく天井を見つめた。水紋みたいな木目を見付けた。何を思っていいのかもわからなかった。
「ありがとう」
「ごめんなさい4……ほんとうにごめんなさいです3……」
 ワレリィさんはまだなにか言いたそうだったけれど、ぼくはなにも訊かなかった。大体、今まで自分で書きとめてきた紀憶をよく見返せばわかったから。剣を佩いた女性はフィランソフィアを憎んでいるディオルさんなんだろうし、ワレリィさんはディオルさんからの手紙を届けさせられていたんだろう。あの日屋上に狙ったように窓が用意されていたのも、ぼくのあとを付けてきたディオルさんがワレリィさんに開かせたものだったのだろう。そのあたりのことをワレリィさんに問いつめたところで仕方がない。どのみちもう、過ぎてしまったことだ。でも、一つだけ気になったことがあった。
「そういえば、ディオルさんは今、どこに居るの?」
「それは……」
「そのあたりは、わたしが話そう」
 声とともに、ノックもせず女性が部屋に入ってきた。ワレリィさんが驚きの声を上げた。


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