したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

読書が好きや!!

82kn:2006/11/05(日) 17:04:26
「すばらしい新世界」 ハックスリー 講談社
ttp://www.amazon.co.jp/gp/product/4061370014/

工業化が極限まで推進され、皆が合理化された文明の恩恵を受け幸福に生活するユートピア。
誰ひとり不安や孤独を感じることなく死ぬまで若いままで暮らす事のできる世の中を描いている。
人工授精により知的、容姿、体格レベルなど厳密にコントロールされ、完全な階級社会が出来上がっているが、
階級の下のものたちは生まれたときから条件反射教育により自分に与えられた役割や仕事が好きで楽しく感じるよう
意識を作られているためストライキや革命は起きない。
人工授精によって子孫を増やす社会のため一部を除いて女性には妊娠の機能はなく完全な娯楽のためのフリーセックス化、
家族形態のような人間の深い結びつきはもっとも卑猥で唾棄すべきものとされている。
余暇には触感映画やソーマという薬にて陶酔し、全く悩む事など無しに生きられる。
そんな中、自分の階級と能力のアンバランスにコンプレックスを抱く男が蛮人保存地区(メキシコ?!)にて野蛮人と邂逅する・・・

1932年、第二次大戦前に書かれたSF小説だが20世紀の科学、工業文明がどのような動機によって進歩してきたのか、
人々の欲望の延長線上にあるユートピアを緻密に考証し、人が自らの尊厳を失っていく恐怖が描かれているため古さを感じるどころか
着々と現実のものになって行っているのではないかと思う。
おもしろいのはフォーディズムが小説の下敷きにされていて、自動車王フォードが神のアレゴリーになっているところ。
(十字を切るかわりに"T字"を切ったりする)
「皆が幸福になる、こんなに素晴らしく良いに決まっているのに!」というキチガイじみた文明の諧謔が秀逸。

「ザルドス」とモチーフは共通しているけど、あっちがユートピアの欺瞞を脆さを否定して人間性を回復させる役割として野蛮人が登場したファンタジーなのに対して、
「すばらしい新世界」はリアリズム追求というか、元から低い地位のものが不満や憤りを感じないよう設計されている(どんだけ尊厳を奪われてもニコニコ隷属)
ところがフィクションではない、現実とつながる地平を感じさせて戦慄する。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板