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放課後の吸血鬼

99妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 23:11:01
コンコンと叩く音に窓を見ると、そこに肩胛骨の辺りから漆黒の蝙蝠の翼を生やし、身体にピッタリとした黒衣を身に纏う一人の青年がいた。
その鼻筋の通った整った顔には、深淵を思わせる漆黒の瞳と長い睫を有する切れ長で妖しく美しい眼、白い肌にくっきりと目立つ美しく朱唇。背徳の魅力を体現するぞっとする程美しい悪魔。
「あら、EE」
魅子はクレセント錠を解除して廊下の窓を開ける。
「よう、魅子ちゃん、美樹ちゃん。……えっと、確か光流君だったっけ?」
「はい」
「ねえ、上、どうなってるの?」
魅子が尋ねる。
「ああ、終わってるよ。真紀ちゃんも彼も一応無事みたいだ」
彼は窓から校内に入ってくると、翼を消してして人間の姿になる。妖しげな魅力が失せ、普通の好青年になる。
「魅子先輩、光流君。真紀先輩怪我してるかもしれないから……」
「おっと。今行ったら、馬に蹴られちまうぜ」
ニヤッとした顔で上の方を見る。


西の空は血色から落ち着いた濃紺へと変わり、東の空からは月が穏やかな光を投げかけてくる。
真紀は横たわる哲晴に近づくと、膝を付いて彼の上体をグイッと引き起こす。
「今、返すから」
優しくニコッと微笑むと、彼の右肩に再びカプッと口を付ける。痺れたように動かなかった哲晴の身体にググッと力が戻って来る。
本当はただ術の解除は念じるだけで良いのだが、ここは一つ役得という事で彼の血をもう一度舐める。
「ありがとう。助けに来てくれて。それから改めてゴメン、無理矢理血を吸っちゃって」
プハッと離した口から出てきたのは、まずは感謝の言葉、続いて謝罪の言葉。
「ううん。僕こそ、その……、真紀の事を知って逃げたりして、本当に御免」
「それは、助けに来てくれたからチャラだよ」
「じゃあ、僕も助けに来てくれたからチャラだよ」
二人は自然にフフッと笑い合う。
「ね、ねえ、哲晴……、その、もし、よかったら……、昨日の続き、しない?」
雪のような白い肌をカァッと朱に染め、グッと顔を近づける。
「え、う、うん」
哲晴も顔を耳まで真っ赤にして答えた。そして二人の影が寄り添い、一つになる。
ファーストキスは血の味がした。
そんな二人を見ているのは、東の空にかかるこれから満ちようとする月だけだった。


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