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アイシャの時間

1アイシャ:2020/07/24(金) 20:13:44 ID:BXstIA5o0
『勘違い女神様編』

 どれ程昔の話だったかは覚えていないが、アイシャはとある絵画を見て思い出したことがある。

「アイシャ、それは何だ?」

 とある休日の昼間のド・レインの自室、アイシャの追従型ゲート空間、通称『ゲートバック』。空間自体は四畳半のワンルーム位のサイズ空間で、その中にアイシャの自前の物が色々と入っている。その中を一旦出して整理していたところ、一枚の絵画を手にしていたところを、やってきたレアニウスに問いかけられた、ここまでの流れはそんな所だ。

「これはね、私が昔にエッチした人が描いてくれた絵なの」

 少しニヤつきながら答える。少しレアニウスの表情がムッとしたような気がしたが、それはそれで楽しんでいるような表情でアイシャが続ける。

「サキュバスとしてお邪魔したはずだったのにね、何故か女神様とかって勘違いされちゃったのよ」

「ん、まぁ、確かに・・・」

 おかしな話ではあるのだが、なんとなくアイシャが言うと納得する。レアニウスが複雑そうな顔をしているが、アイシャは話を続ける。

「元々は教会の若手司祭を堕落させるつもりだったんだけどね〜・・・・・・」

 絵画を抱きしめ、アイシャは過去の出来事を語り始めるのだった。





 昔、そうまだアイシャがサキュバスとしてサキュバスらしい仕事をしていたころ、上からの指令により、一人の若手司祭を堕落させ、自分達を信奉させる闇司祭にさせるようにする命令を受け、町中のとある住宅に降り立った時だ。

「天に召します我らが主よ・・・・・・」

 若手、年の頃としては20代前半の司祭、家に作られている簡易的な祭壇の前に跪き、両手をあわせて祈りを捧げている。そんな彼の姿を後ろの窓、さらにその外から眺めているアイシャ、空中にプカプカと浮遊し、衣服は白いシーツを纏っているような清楚系ロングワンピーススタイルだ。

「こんばんは・・・・・・」

 ゆっくりとして動作、そして穏やかな声、ゆっくりと窓を開けながら窓辺に降り立つ。この時期のアイシャは割と清楚系だったのかもしれない。

「あ・・・・・・ああ・・・・・・」

 司祭『ライア』が言葉を失っている、それもそのはずだ、神に祈りを捧げていたら、突然窓、しかも二階の窓があき、言葉を失うほどの絶世の美少女(外見年齢約17)がそこに笑みを浮かべていたのだ。全身から放つ妖艶な雰囲気、それでいて慈愛に満ちた笑顔、それでいて少女の儚さと可憐さといって二律背反を絶妙なバランスであわせもっているのだ。到底この世の物とは思えない、自分を惑わしに来た悪魔の類である認識し、反抗してくる。その反抗を全てぶち壊して精神的に屈服、さらに肉体的快楽による更なる屈服させることによって初めて闇司祭への道は開く。

 そんな筋書き、相手の全てを退けて尚かつ勝利する。悪魔らしくはない相手へのリスペクト精神にある作戦(恐らくこの頃からアイシャは変人だった)だった。

「め・・・・・・・・・女神様っ!?」

「・・・・・・・っ!!??」

 司祭の口から発せられた全く予想だにしない言葉に、今度はアイシャが驚愕し言葉をなくすのだった。

2アイシャ:2020/08/12(水) 19:53:11 ID:d8JiCl1Q0
「貴女様は・・・月の女神様なのでしょうか!?」

 アイシャの前に跪いたライアは、興奮して大きく見開いた目、それでも司祭としてしっかりとアイシャの前に跪き、緊張で体を震わせながら問いかける。

「え・・・いや、あのぉ〜」

 実のところ大パニックなっているアイシャである。まったくもって予想だにしなかった反応に、困って固まり言葉を失っている。

(どうしよう・・・まさか女神に間違えられるとか、考えてなかったなぁ〜・・・)

 言葉を失い、それでも表情は崩すことはなく優しい微笑みを浮かべている。

 ここで正体をあかし、それで当初の予定通りにセックスバトルで屈服させる。しかしそれでは、悪魔を相手にしている、という前提のせいで完全に屈服させることはできない。ならばここは正体を明かすことなく勘違いを泳がせるほうがいいのかもしれない、という結論にいたる。

「敬謙なる我らが信徒よ、そなたの清らかなる祈り、我らが元へと届いていましたよ」
(ぎゃああああっ、かゆいかゆいかゆいかゆいっ!!!)

 ライアの前へと移動し、手を合わせて祈っているその手を握り、視線をあわせて顔を近づける。その裏で、悪魔の自分が神達のような演技をすることに心が拒否反応を起こしていた。

「有難き幸せに御座いますっ!!」

 顔を近づけたことにより、顔を真っ赤にそめて頭を垂れる。

「我は月の女神、愛の女神の名において、我は汝に寵愛を与える。さぁ、生まれたままの姿となり、我と交わろうではないか・・・」
(こんな感じでいいのかな?女神とかって変に格式ばるから嫌なのよ、解り辛い!!)

 ワンピースの腕を抜き、スルリと白い布が体をなぞって床に落ち、一糸纏わぬ姿となってライアの前に立つ。

「しかしっ、私はまだ若輩者・・・そのような私が、女神様の寵愛をうけるなどっ・・・・・・」

 もっと大司祭の方がふさわしい、という意味合いで言葉を紡ぎアイシャから目をそらしてまくしたてるライア、その陰でアイシャが少しイラッと眉をピクつかせる。

「言葉を慎めよっ・・・んっ・・・」

 文字通りライアの言葉を遮り、顔をつかんで無理矢理こちらをむかせ、唇を奪って口内から淫気を送り込む。

「我は汝を愛するために降臨した、女神の判断を信じよ・・・」
(うっざぁ、セックスしましょう、そんな簡単なことがこんなに遠回しにしないといけないなんて・・・)

3アイシャ:2020/08/12(水) 19:53:50 ID:d8JiCl1Q0
「我は汝を愛するために降臨した、女神の判断を信じよ・・・」
(うっざぁ、セックスしましょう、そんな簡単なことがこんなに遠回しにしないといけないなんて・・・)

 唇が離れると、ライアは惚けような顔でアイシャを見つめる。いまいち焦点が定まっていないような感じでもあるが、それでもアイシャの豊かな胸にむいているのは感じされる。

「ふふふっ、これが好きか?」

 ベッドまで移動してライアも裸にし、その手を握って自分の胸に押し付けさせる。

「うあっ・・・はぁはぁ・・・」

 アイシャの胸に触れ、その柔らかさに驚愕、そこからは一心不乱とばかりに、乳房を揉んだり撫でたりしている。淫気を注入したことによって生まれた圧倒的興奮がライアを司祭としてよりは男として突き動かしている。

「逞しいわね・・・」

 ベッドに仰向けに寝ると、ベッドへ向けられていきりたっているライアの逸物に、アイシャは心の中で涎を垂らし、それを表にだすことなく白い手でそれを握ってしごき始める。

「うあっ、ああっ、め、女神・・・さまぁっ・・・」

 司祭としてこういった経験はないだろう、耐性もなく、それでいて知らず知らずに淫魔の気を入れられ、その責めを体をビクつかせながら受け入れている。

「素直に体を開いて受け入れよ、我が愛をもってお主の人としての穢れを浄化し、わが愛をいれよう・・・」
(はぁ〜、このチンポいいわぁ、初物よね、初物でこの大きさと太さ、間違いなくAランク以上の良チンポよぉ!!)

 女神の仮面を被って手でしごきながら、心の中では狂喜乱舞とばかりに舞い上がっている。手コキのスピードが上がっていく、それによってライアの射精欲がグングンと上がっていき、尿道を精液が飛び出そうと駆け登っていく。

「も、もう無理ですっ・・・!!」

「あむっ♪」

4アイシャ:2020/08/12(水) 19:54:40 ID:d8JiCl1Q0
「も、もう無理ですっ・・・!!」

「あむっ♪」

 逸物が痙攣し、ライアが顔を両手でおおって悲鳴に近い声をあげると、射精直前にアイシャが口で銜え・・・

「うっ・・・・うううっ!!ああああっ・・・・・・・・」

 体をビクビク跳ねさせ、口内の逸物から白濁液が大量に吐き出される。

「んっ、ちゅうっ・・・じゅるるるるっ・・・・・・んふふふっ・・・・」

 初々しい精液を飲み込みながら、ライアをみる。今にも泣きだしそうな雰囲気でしょぼくれている、そんな雨に打たれる子犬のような反応に、アイシャの心がトキメキ方面に高鳴っていく。

(はっ、だめだめ・・・まだ地を出すわけには)

 今すぐにでもキャラ崩壊レベルで色々したかったが、心を落ち着かせて女神ムーブへと軌道修正する。

「うむ、いいぞ、お主の生命を感じ、また穢れが浄化されていくのを感じる」
(あはぁ〜、このザーメン美味しいぃ!!濃厚なのに後味スッキリみたいな、やっぱり禁欲してる聖職者の精液は美味しいわねぇっ!!)

「さぁ、お前と我で一つになろうではないか・・・」

 そういい、アイシャはベッドに仰向けになり足を開くのだった。

5名無しのキャスト/お客さん:2020/10/26(月) 15:52:16 ID:m4QBlbxI0
「さぁ、いらっしゃい・・・」

「は、はいっ・・・・・・!!」

 両手を前に出し、優しくライアを抱きしめる。普段触れることのないような柔らかい乳房を感じ、ライアは包まれるかのような安心を感じて吐息をはく。そんなライアを抱きしめ、頭を撫でて耳元で囁く。

「我が中にお前の肉棒を入れよ・・・お主の信仰を私に分けてほしい・・・」

 キスをして言葉を紡ぐ。性的興奮によってライアの信仰度を落ち、聖職者特有の聖属性障壁(精神誘惑による強い耐性)が掻き消えている。アイシャに言葉のまま、ライアのいきりたつ逸物がアイシャの膣口に押し当てられるも、経験がなくどこにどのようにいれればいいのかもどかしくなっている。

「初奴よ・・・・・」
(カワイーーーーーッ!!)

 アイシャが逸物を握り、膣口に少しいれてライアの腰に足を回す。

「それっ♪」

 足を引き寄せ、一気にライアの逸物がアイシャの中にいれられた。この時についつい素が出てしまったが、初めてのセックスがサキュバス、その膣からの刺激がすさまじく、体がガクガクと痙攣させて白目をむいているから聞こえていないようだ。

「あらあら・・・・・・」

 いれられた途端、逸物がビクビクと爆ぜて膣内に精液が放出された。先ほどだしたばかりなのに、アイシャの中から溢れんばかりに射精している。

「おや、もう果ててしまったのか・・・」

 しなだれかかるようにアイシャにもてれかかっているライア、初めてなので仕方ない、とばかりにライアの背中をポンポンして励まそうとしたが・・・。

「・・・・・・・・・・・・」

6名無しのキャスト/お客さん:2020/10/26(月) 15:52:53 ID:m4QBlbxI0
 反応がないライア、しばしアイシャが様子をうかがっていたが、全く反応がない、どうやら気絶してしまってようだ。

 そんなライアを見つめ、アイシャはベッドにライアを寝かせ、脱いだワンピースを再び身にまとってライアにシーツをかぶせて頭を撫でる。それはもう、愛おしそうに子供を見つめる姉のような優しいまなざしだ。

「おやすみなさい・・・」

 頬にキスをして、窓辺から飛び立つアイシャ、数個家の上を跳躍していると、真横に別のサキュバスが並走する。

「いいのか?堕落させるようなことはしておらぬであろう・・・」

「別にいいわよ。確かに堕落はさせてないけど、もう人間相手に満足は出来ないでしょう、あの男の子孫は生まれないわ・・・」

 と、アイシャならではの解釈で仕事は全うしたと言い張るも、上の淫魔はそうととらず、アイシャは罰を与えられたのだが、それはまた別のお話だ。

「・・・・・・・っ・・・」

 翌朝、ライアはベッドで目を覚まし、昨晩のことは夢だったのかと思うも、あの肌の柔らかさ、優しく包み込まれるような安心感が記憶にあり、あれが夢でなかったと認識させる。それからだ、ライアは聖職者としての仕事を行いつつも、夢に見るアイシャの姿を絵画として残し続けた。晩年、彼は弟子の一人に「あの絵は、私が昔に見た女神様じゃ」と言い残している。その中の一枚『愛しき月光の女神』が、アイシャが旅の中で出会った貴族の家にあり、貰い受けたのだった。

「そんなとこよ」

「ふぅん・・・勿体ないことをしたな、アイシャの中に入れただけで気絶しちまったなんて」

 話を聞き、レアニウスの言葉にアイシャは乾いた笑みを浮かべる。

「じゃあ、レア君は本気の私の中にいれても、気絶しない?」

「あったりまえだぁ!!」

「いや〜ん♪」

 ルパンダイブで押し倒される。今日も今日で平和なサロンだった。

7名無しのキャスト/お客さん:2021/02/18(木) 17:44:52 ID:8LNuIwss0
【アイシャの時間 偽りの異教天使編】



 『天使な淫魔』この二つ名を最初に聞いた人間は、さぞかし頭上にハテナマークを浮かべることであろう。サロン【ド・レイン】所属のサキュバスであるアイシャの二つ名だ。

 天使であり、悪魔の一端である淫魔なのだ。天使で悪魔。相反する二律背反で本来あれば交わることもなければ、敵対していてもおかしくない間柄である。その曖昧で異常な状態であっても、おかしくない、それはアイシャのこれまでの人生・・・もとい、悪魔生に大きくかかわっているのだった・・・。

 夢を見る、淫魔であるアイシャも夢を見る。それは昔に経験した事、ある意味自分の転機ともいえる出来事だった。







 魔界と天界の境目、そこは人間界からの魔術的なゲートが発生する場所、わかりやすくいえば人間界行きの始発駅みたいなものだ。

「暇ねぇ・・・」

 待合室的な場所で腰かけるアイシャ、まわりには数名の悪魔や天使がいる。お互いのムードは険悪としているが、上位の者達によって衝突はご法度、お互いに睨みつけたりいかにも嫌がるアクションをしかける程度でとどまっている。

「下界では宗教弾圧とかが相次いでいるらしいからな、むしろ今はあちらさんのほうが、忙しいみたいだな」

 隣で腰掛ける同じ悪魔(インキュバス)がアイシャの言葉に続く。その視線が、アイシャの顔ではなく胸の谷間にむけられているのはいつものことだ。

「そうねぇアッテ君・・・」

 あくびを噛み殺しながら、片手でアッテのむき出しな逸物を握って扱き始めた。長さは約30cm、アイシャの手で握っても指がつながらないほどの太さだ。上唇を舌でペロリと舐める。

「あっ、おっ・・・ちょっ・・・」

 突然の手コキ開始に驚くアッテ、その顔はめっちゃにやけている。

「天使を召喚して、自分達の力と正しさを誇示したいんでしょうけど、そんなに天使なんて、そうそう簡単に召喚できるんもんじゃないんでしょうけど・・・」

 淡々と呟きながらも手コキはとめない、絞り上げるように刺激し、亀頭を親指と人差し指で巧みに刺激していく。微笑み、口だけで投げキッスをしてみたり、ブラをおろして乳房を露出させたりと、追加の魅了攻撃をたたみかける。

「おっふぅっ・・・んんんっああっ!!」

 隣のアッテはアイシャの言葉どころではなく、サキュバスによる性的攻撃によって一分も持たずして限界、いきりたった逸物から白濁の精液を噴水のように噴き出しながらのけぞって痙攣している。

「ふふっ、美味しい・・・」

 手にベッタリとついている精液を舐めながら微笑んでいる。不敵な微笑みを浮かべていると、ふと目の前に人間界へのゲートがつながったのを見つける。

「手コキのお礼として、私が先にいかせてもらうわね」

 自分からしておいて横入りみたいな恰好だが、意気揚々とゲートの中に飛び込むアイシャ、中は光のトンネル、それなりに遠くに見える光の先に召喚される場所がある。

「さぁて・・・どんな世界かしらね」

 クスクスと楽しそうに、無邪気に遊ぶ子供のような笑いながら光の先へとむかっていった。

8名無しのキャスト/お客さん:2021/03/04(木) 21:08:14 ID:8LNuIwss0
偽りの異教天使編・②

 少年達は必死だった、表現ではなく文字通りの意味で必死だった。いるのは地下室、天井のドアの前に出来るかぎりバリケードを作り、必死に物音をたてないようにしている。外から響くは怒号、人々の悲鳴、鉄製の武器がぶつかりあう音、馬の足音を響いている。

 宗教弾圧。現国王の意向により、自分が認めている宗教以外は一切認めない法は可決されてからというもの、多宗教は全て悪しき邪教と断定し、王国軍によって徹底的な物理的に滅す動きへと変化。その標的となってしまったのが、少年達が隠れている村になってしまったのだ。

「・・・っ・・・っっ・・・」

 集まっている数人の少年達の中の一人、本をみながら床に必死になって魔法陣を描いている、傍らには一本のナイフそれで自らの指を斬り、自分のしたたる血液をもって魔法陣を描いているのだ。

「・・・・・・ハァハァ・・・・・・」

 息をきらせて少年の指が動く、藁をもすがる勢いで、本に描かれている天使召喚の魔法陣を描いている。その実、内容はまったく天使など召喚できるような代物ではなく、魔法陣としては薄暗い室内で書いたために非常にお粗末な物になっている。

「オラァアアアッ!!」

 地下室のドアが蹴破られ、数名の兵士が地下室へと降りてくる。怯えていた少年達、中でも年長にある数名が、年下達を守ろうとバリケードが破られぬようにおさえようとはするが、相手は屈強に鍛えられている王国軍兵士赤子の手をひねる様にしてバリケードが突破され、薄暗い地下室でも怪しく光鈍い刃の銀色、意を決した数人が体当たりや体にとびかかって少しでもほかの少年が逃げるための時間を稼ごうとする。だが・・・・。

「しにゃあああああああっ!!!!」

 兵士はまるで笑うように、一切の容赦も温情もなく、逆に狩りを楽しむ貴族かのように、少年の背中に剣を突き立てた。それでも少年は兵士を抑え込もうと、実際にはおさえこむどころか、父親に抱き着く子供のような姿になってしまったいるが、そこには自分の命はもうなくなることが確定し、それでも年下の他の少年達を逃してやりたいという、自己犠牲と博愛の精神があった。本来であればここにこそ、天使が現れるには相応しい。




『あらあら、ダメじゃない・・・・・・そんなに小さい子をイジメたりしちゃあ・・・・・・』

9名無しのキャスト/お客さん:2021/03/04(木) 21:08:48 ID:8LNuIwss0
 心底、心底この場に合わないほどの、呑気で、明るく、殺気などと無縁の声が室内に響く。

 魔法陣、少年が描いていた魔法陣からアイシャが姿とあらわす。人間界に余計な影響を及ぼすのを防ぐため、悪魔の装束、角や翼、尾を隠している裸体の人間の姿だ。

 お粗末で殴り書きのような魔法陣が、まだまだ下位とはいえ悪魔、さらには何故淫魔を召喚したのか?魔力の代用品となったのは、現在を背中を貫かれながらも必死に兵士を抑え込もうとしている少年の物だが、アイシャと繋がってゲートを繋げたのかは、いまだに謎であり、『運命の気紛れ』とアイシャは言っている。

「なっ・・・・・・ああぁ・・・」

 兵士達は呆気にとられている。何もなかった場所から、アイシャのような美女が一糸纏わぬ裸体で姿をみせたのだ、まだまだ十代半ば、それでも当時の同年代からは考えられぬ程に成長した肉体、煌めく金髪は絹糸のように細く外からの風に微かなたなびいている。

「ねぇ・・・・・・」

 歩が進められる。アイシャは全身から溢れ出るいやらしさ、妖しさ、明るさを一切隠すこともせず、兵士の胸に手を置いて目を見つめる。この世の物とは思えないような造形の少女、その裸体、この顔、艶めかしく動く唇から目を離すことができなくなっている。

「子供をイジメるなんてことは、大人がしちゃいけないわ・・・よっ!!」

 手に込められる魔力、異変に気付いた時には時すでに遅し、押されるように放たれた魔力は兵士に襲い掛かり、後方の壁へと吹き飛ばす。壁にクレーターができて兵士は頭をたれて気絶する。そこではじめて、今まで呆気にとられる。またはアイシャに見惚れてしまったいて兵士達は事の重大さと異常さに気が付いてアイシャを取り押さえようと襲い掛かる。が、狭い室内で数名が一斉に一か所へとむかえば、それで弊害が生まれてしまうことは自明の理、突然のことで冷静な判断ができないのは人の常なのだろう。

「ふふっ・・・・・・たぁっ!」

 直接手で触れるまでもない、何名かの兵士がぶつかりあって鈍くなった所へ、先ほど同様に魔力弾を叩き込むダメで気絶、壁に激突した時に打ちどころが悪ければ死亡する。人が減って直接斬りかかっている兵士もいるが、剣をよけて至近距離から魔力弾を叩き込んで吹っ飛ばすとやることは一緒、逃げようとする兵士はもれない背後から魔力弾をたたきこまれている。

 数十秒、アイシャが部屋にいた兵士達を制圧するのにそれだけの時間しかかからなかった。

「さぁ、どうしてほしいの・・・?」

 腰を抜かし、カタカタと震えていた少年、魔法陣を描いた少年にアイシャが問いかける。

「・・・・・・・・・ケテ・・・」

 微かな、今にも消えてしまいそうなか細くも強い声・・・・・・。

「タ・・・ス・・・・・・テ」

 体を剣で貫かれ、それでも少年達を守ろうとした気高い精神を持った一人の少年・・・最後に一言言い残して、その命は掻き消えてしまった。

「そう・・・・・・助けてくださいっ!!」

 少年がアイシャにしがみついて懇願する。それに呼応し、残りの数名の少年達もアイシャに救助を叫ぶ。

 その光景にアイシャは心の中でため息、召喚者を殺させるわけにもいかず、成り行きで兵士達を倒したらさらなる救助の要求、サキュバスとしての本分からは遠くかけ離れた作業だ。

「わかったわ・・・」

 床に落ちていたボロボロのシーツを身にまとい、アイシャは地下室から外へと出る。

 外の様子は凄惨なものとなっていた。

 村人を馬でおいかけまわし、遅れたものから殺していくかけっこ、女性を裸にし、多数決で最下位の者から犯され殺される殺人ゲーム、村人同士に殺し合わせてそれを酒の肴にする狂宴、悪魔からしたら「何を無意味に」と、生産性の無さを吐き捨てるところだがとりあえず、笑い声が気に入らなかった一人の兵士の頭を消し飛ばした。

 戦いの記憶はそこまでだ。あまりにも他愛なく、退屈で、ただただ時間の浪費のような戦いだった。そんな風にしか覚えていないらしい。

10名無しのキャスト/お客さん:2021/11/24(水) 22:18:29 ID:K7WIUzZ20
偽りの異教天使編・③


 少年を助けた後、アイシャは残っていた村の人々ともに紹介された。仲間が命をかけて召喚された天使だということ、それに歓喜した村人たちは、アイシャに泣きつくように助けを求めた。その結果として、アイシャは召喚された救いの天使とした祭り上げられた。

 間違われていることは慣れていた手前、ここでは否定しなかった。天使としていたほうが、後々にリターンがあったり、面白い出来事にであえるという悪魔生における経験値による判断だ。

「君の名前は?」

 助けた少年にアイシャがといかけた。召喚されて数時間たって初めて少年への問いかけだ。何故だか知らないが、その少年と自分の間に魔力のパスがつながっていた。

 あの出鱈目召喚陣による影響なのか、召喚されたときに魔力の素質がある少年が近くにいたから自動的につながってしまったのか、召喚陣同様に今でも不明なままだ。事実として少年からこの世界で体を維持するための魔力供給が行われていた。

「シロウです・・・」

 アイシャの前に跪いて祈るようにポーズの少年が答える。

「シロウね、私はアイシャよ。よろしくね」

 優しい笑みを浮かべ、少年の手をアイシャがとると、周囲からは溢れんばかりの歓声があがる。一瞬、何故歓声があがっていたのは意味不明だったのか、シロウが天使より祝福をうけたとの判断をうけたらしい。

「は、はいっ!!」

 涙を浮かべ、シロウはアイシャの手を握り返した。

 こうして、アイシャは残った村人との逃亡旅は始まった。時の政府より送られる討伐隊を避け、各地に隠れ住む同宗教の元を転々としながら。勿論、天使を召喚して助けてもらった、等と妄言のように思われていたが、アイシャの人並外れた(実際に人外)美貌、力をみせれば、すぐに信じてもらい、最初は村一つだった人員は、雪崩式に近い形で信仰心と人員が増えていった。

 人が増えればその分一目には着く、その結果として、政府軍による地域一帯にいる人間を全て無差別に抹殺する、という狂気としかいえないような命令が下された。その一軍約5000人をアイシャのバーニングファルコンアーマー装備で全て壊滅させる。その結果はその地方では、神の怒りを買った軍隊が炎の天使の裁きを受けたという、「真紅の天罰」という逸話で語り継がれることになった。

 そのようなことをするうちに、年月は5年が流れた。

11名無しのキャスト/お客さん:2021/11/24(水) 22:19:05 ID:K7WIUzZ20
 真紅の天罰の一見依頼、アイシャ達はすでに国からの逆賊としてみられることはなく、国を揺るがす一大勢力として急すぎるほどに成長を遂げていった。

 昼間のアイシャは諜報活動の名目で一団から離れ、シロウ達も日常に隠れて一見は一国民としての生活を送っていた。

「アイシャ様!」

 隠れ家に使っている小屋から出ていこうとすると、シロウがアイシャを呼び止めた。どこか声が弾んでいる。あの日の少年はそこになく、たくましく成長し名を『トキサダ・テンソウ』と表向きに名を変えていた。その隣には、一人の同年代の少女が一人いる。

「は、初めまして・・・」

 諜報用に髪の毛を黒く染め、瞳を茶色にはしているが、少女にはアイシャの存在が何なのかを知っている、つまりは教団側の人間だ。雲の上のような存在相手におどおどとしてしまっている。

「はじめまして・・・マスダ ツルと申します」

 少女ツルが深々とお辞儀をして名乗る。そのツルの肩を抱いてシロウが優しく抱き寄せる。

「私達、来月に祝言をあげることになりました」

 シロウの言葉にアイシャが少し目を丸くする。明確な驚きの表情だ。

 それもそのはず、アイシャとパスがつながっていることは、アイシャからのサキュバスの魅力もシロウへと流れている。だというのに、アイシャに好意を寄せるならまだしも手を出すこともなく、またアイシャからの誘いも頑なに我慢をしていた。

 単純に、アイシャがシロウの好みではなかったということもありえるが、シロウの内に眠っていた魔力は旅の中で発現し成長、耐魔能力や魅力への耐性能力が高かったのであろう、とアイシャは自分を納得させていた。

「そう、よかったわね・・・祝福するわ」

 淡々として口調で祝福する。二人を抱きしめて、アイシャは隠れ家を後にするのだった。

 その夜だった。アイシャが遅くなって帰るのに遅れた。そのタイミングで隠れ家を政府軍が強襲、数多くの信者達が虐殺され、その中でシロウ達が囚われてしまったのだ。帰ることが遅れてしまったアイシャは、その事実を知ったのは深夜遅くであり、翌日に公開処刑が行われることをしり、その場に金髪を黒く染めて隠れているのだった。

「待っててね・・・シロウ」

 物陰から処刑台が設置されて広場を見つめ、アイシャはふと出た言葉に不思議な感覚にとらわれた。

12名無しのキャスト/お客さん:2021/11/24(水) 22:19:39 ID:K7WIUzZ20
 真紅の天罰の一見依頼、アイシャ達はすでに国からの逆賊としてみられることはなく、国を揺るがす一大勢力として急すぎるほどに成長を遂げていった。

 昼間のアイシャは諜報活動の名目で一団から離れ、シロウ達も日常に隠れて一見は一国民としての生活を送っていた。

「アイシャ様!」

 隠れ家に使っている小屋から出ていこうとすると、シロウがアイシャを呼び止めた。どこか声が弾んでいる。あの日の少年はそこになく、たくましく成長し名を『トキサダ・テンソウ』と表向きに名を変えていた。その隣には、一人の同年代の少女が一人いる。

「は、初めまして・・・」

 諜報用に髪の毛を黒く染め、瞳を茶色にはしているが、少女にはアイシャの存在が何なのかを知っている、つまりは教団側の人間だ。雲の上のような存在相手におどおどとしてしまっている。

「はじめまして・・・マスダ ツルと申します」

 少女ツルが深々とお辞儀をして名乗る。そのツルの肩を抱いてシロウが優しく抱き寄せる。

「私達、来月に祝言をあげることになりました」

 シロウの言葉にアイシャが少し目を丸くする。明確な驚きの表情だ。

 それもそのはず、アイシャとパスがつながっていることは、アイシャからのサキュバスの魅力もシロウへと流れている。だというのに、アイシャに好意を寄せるならまだしも手を出すこともなく、またアイシャからの誘いも頑なに我慢をしていた。

 単純に、アイシャがシロウの好みではなかったということもありえるが、シロウの内に眠っていた魔力は旅の中で発現し成長、耐魔能力や魅力への耐性能力が高かったのであろう、とアイシャは自分を納得させていた。

「そう、よかったわね・・・祝福するわ」

 淡々として口調で祝福する。二人を抱きしめて、アイシャは隠れ家を後にするのだった。

 その夜だった。アイシャが遅くなって帰るのに遅れた。そのタイミングで隠れ家を政府軍が強襲、数多くの信者達が虐殺され、その中でシロウ達が囚われてしまったのだ。帰ることが遅れてしまったアイシャは、その事実を知ったのは深夜遅くであり、翌日に公開処刑が行われることをしり、その場に金髪を黒く染めて隠れているのだった。

「待っててね・・・シロウ」

 物陰から処刑台が設置されて広場を見つめ、アイシャはふと出た言葉に不思議な感覚にとらわれた。

13名無しのキャスト/お客さん:2021/11/24(水) 22:23:05 ID:K7WIUzZ20
 たしかにシロウは自分の契約者であり、彼の生き死にによって自分が人間界に現界できるかが決まる。自分にとって重要な存在だが、五体満足でなければならない理由もなく、だからであって・・・・。

 などと考えて頭を抱えているうちに、処刑人が壇上に上がり、集まった民衆にシロウ達の罪状を説明し、今より処刑を実行することを宣言。

「っ・・・!!」

 考えることはあと、まずは助けないと動き出そうとする。その姿を、シロウが壇上から見かけたのだ。

「アイシャ様ダメだっ!!!!」

 全力でアイシャに声をあげる。こん壇上には魔封じの結界や罠が無数にしかけられており、アイシャにしたら大したことないかもしれないが、それでも影響があり、自分達の存在がまたしてもアイシャの足枷となってしまう。それを避けるためだった。

「なっ・・・!」

 勿論、シロウの言葉等聞くつもりはないアイシャだったが、その声を聞いた途端、四肢や体がまるで地面に鎖で縛りつけられているような感覚が襲い掛かり、そのまま地面にうなだれるように固定されてしまった。

 死を覚悟したシロウの言霊は、この瞬間、アイシャの対魔力を上回ったのだった。それだけ真に迫った切実な言葉だったのだ。

「くっ・・・・・んんんっ・・・・!!」

 魔力をこめて鎖を引きちぎろうとするが、鎖はビクともせずにアイシャを縛り続ける。圧倒的な聖属性の魔力だった。アイシャが飛び出してこないのも見て、シロウは大声で口を開きはじめた。

「今までありがとうございましたっ!!」

「シロッ・・・・」

 名前を叫び、少しでも注意をこちらにひこうとしても、まるで鎖が猿轡のように口に絡まって言葉から発せなくなってしまった。

「貴女は逃げてください、私達はここで終わっても、まだこの国の仲間は生きてます。いけるのであれば、そちらの方々を助けてください」

「んーーっ!!」

 契約が切れたら魔界へ戻るアイシャにとっては、その願いは叶えることはできない、それを伝えようにも言葉が出ない。知らない間に涙が頬を伝う、まだ手足は地面に根をはってしまったかのように動いてくれない。

「貴女がたとえ天使であろうと・・・」

 そこまで、シロウの口はそれ以上の言葉を発することはなく、ふりおろされた刃は首を切断し、真紅の液体が壇上をそめあげ、シロウの生命活動は停止、残留していたシロウの魔力が消滅し、アイシャはやっと体を動かせるようになった。

「うっ・・・ううううううっ・・・・」

 地面についた手の甲に涙が落ちる。それから地面に浮かび上がる魔法陣、それは魔界へつながるゲートであり、人間界からの退去が始まってしまった。

「うっ・・・んんんんっ・・・」

 すすり泣くような声を出しながら、アイシャはゆっくりと人間界から魔界へと戻されていった。

 失ってはじめて気づく、一体一体が長命であり肉体的に強い魔族ではあまり実感することはなかったが、人間と触れ合うことによってそれを初めて実感し理解し、それがとても心を貫いたのだった。

 この一件から人間界では政府からの弾圧への反逆が開始、シロウは【アマクサ・シロウ・トキサダ】として担がれて反乱軍の旗となり、人の世は革命の時代を迎えたのだった。

 そしてアイシャは魔界で色々考え、その結果とが魔界を離れて人間界を放浪し始めるのだった。

 アイシャは人間の愛について考え、人の世を渡り歩いて愛を知り、人を愛することによってついた二つ名、それが「天使な淫魔」であったのだ。

 これは二つ名秘められたアイシャの悲しい過去、本人からもあまり語られない歴史の影だ。



「んっ・・・」

 ベッドの上でアイシャが目覚める。のびをしながら起き上がると、頬に涙が伝っているのを感じる。

 不思議そうに涙を拭い、明るい笑顔を浮かべてベットから起きるのだった。

「さぁ、今日も愛してあげる・・・ふふっ」

14アイシャ:2022/03/27(日) 16:30:30 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』

「ふっ・・・はぁっ!!」

 ここは魔界、その深い森の中だ。周囲は鬱蒼とした木々が生え、漂っている空気もどこか淀んで重たい。

 魔界とは元来そういうもので、あくまでそれは人間からの認識であり、魔族にとっては至って普通の所だ。アニメ化するなら最初だけ薄暗かったり霧の中っぽい演出もあるが、少ししたら空が暗かったりする程度の表現方法へと落ちる。

 さて、話がそれてしまいそうなので本題に戻そう。そんな森の中にアイシャはいた。服装は体のラインを強調しているような感じはあるが、どちらかといえば動きやすさに主眼を重視しているデザインをしているインナースーツ、懸命に大木に打ち込みをしている。

「はぁあああっ!!」

 鋭い踏み込み、鋭い呼気を吐きながら手甲がつけられた拳が大木に吸い込まれ、周囲を大気を震わせるような衝撃が放たれる。

 何故こんなところにいるかというと、本来アイシャは戦闘を積極的にするようなサキュバスではないものの、恋人が恋人なので二人で旅行に出かけるたびに何かしらの緊急クエスト的な大型の魔物と対峙する。そしてつい先日、雪山で遭遇した阿修羅熊により、アイシャのアーマーの一つでもあるパワフルベアのアーマーが出力過多によって壊れてしまい、その修復に一度魔界へと戻ったところ、アーマー系、ひいてはサキュバスドライバーの製作者でもある年長者のサキュバスより新型アーマーを製作中との情報を聞き、それに見合う実力を証明してほしいとのことで、こうして森の中で打ち込みなトレーニングにいそしんでいるのだ。

「それにしてもっ・・・」

 今までのアーマーで装着してから不具合がないか調整をすることはよくあったものの、事前にこういったアップ的な物を要求されたことはなかったか、体を温めておけ、そういう意味合いを持っているのだろうとアイシャは納得してかれこれ二時間は打ち込みを続けている。

「ほっほっほっ、せいが出ているのぁ、アイシャ」

 と、背後から気配もなくやってきたローブに身を包んだサキュバス。老婆のようなしゃべり方をしているが見た目の年齢は精々言っても三十代後半から四十代前半くらいだ。赤紫色のウェーブがかった髪をしている。

「ジーナ様…そのしゃべり方、なんとかなりません?」

 汗を拭いながら向き直って会釈するアイシャ。ローブのサキュバス『ジーナ=リムリー』は両腰に手をあててカラカラと笑う。本人曰く、こういうのが人間界での流行りなのだと、言ってはいるが、のじゃっ娘は外見が幼い容姿の子が年寄りめいた言葉遣いをすることによって、何かしらの意味や伏線をはるものであって、妙齢の外見をしているジーナがその言葉を使うと、単なる見た目より年老いている熟女という判定をうけてしまうが、いくらアイシャでもそこは指摘しないようにする。実力は自分よりはるかに高いジーナ、実力主義社会の魔界としては読まなければならない空気はある。

「もうかれこれ、150年はこんなしゃべり方をしておるでのぉ、今更むりじゃ♪そんなことよりアイシャよ、これがお主に話していた新しいキーじゃわい」

 ローブの中から出てきた手に握られていたキー。ドラゴンが刻印されており、角度によって赤青緑黄の四色にかわる。

「特別感が凄いですね・・・」

 キーを受け取り、かざしたり回したりして覗き込んでいる。アイシャの不思議な物を見る目に、ジーナは嬉しそうな反応をしている。ジーナは実力こそあるものの、サキュバスドライバー等本来は淫魔とは別次元のことをしていたするので、淫魔界の中でも異例で異端な奇妙な存在でもあったりする。

「そいつにはな、四属性の力を持つドラゴンの力を内包させておる。とはいっても本物のドラゴンではない、このワシが作り上げた」

「疑似的にドラコン並みの強さがでる、そんなアーマーと解釈してもよろしいですか?」

「そうじゃの、それでよいっ・・・」

 少しジーナの目が真剣みを帯びて細くなり、キーのスイッチが押される。

 『ELEMENTAL DRAGON』とスイッチと同時に展開するキー、そこから目に見えるほどの濃密な魔力が発生し、思わずアイシャが身構えてしまう。

「このキーはじゃじゃ馬での、使うためには試練というのが必要なんじゃ・・・」(それっぽくいっているがジーナが決めた設定)

 サキュバスドライバーにキーを挿入、その瞬間にアイシャの視界はブラックアウトするのだった。

15アイシャ:2022/04/14(木) 16:19:44 ID:K7WIUzZ20
「はっ!?」

 とれほどの時間がたったのかは不明だがアイシャの目が覚ます。周囲は先ほどまでいたような薄暗い森の中、ジーナの姿はない、サキュバスドライバーは装着し、展開すればいつでもELEMENTAL DRAGONのキーが発動するようになっている。

「ジーナ様もいなくなってる・・・」

 とりあえず歩き出すものの、なんだか周囲にあまり変化はなく、しばらくしたら同じ場所に戻ってしまう、そんな感覚するある。その後もしばし歩いたが、本来ならとっくに森の出口付近までやってきた遠目に町が見えるはず、だが周囲はいまだに鬱蒼とした森の中で出口らしく場所も見当たらない。明らかにおかしい状況に翼を展開して森を上空から見ようと飛び上がったが、その時にそれがやってくるのだった。

「っ!?」

 圧倒的な殺気と禍々しい魔力をまき散らしてそれはこちらに突っ込んできた。アイシャは上昇していた軌道を急変更してそれを回避、それは大木に激突して動きをとめる。そしてアイシャはそれと目が合った。

 全身を突き刺さるようになさ殺気の視線、深淵という言葉がしっくりとくる人型、全体的に真っ黒な霧に包まれているようなシルエット、全身から汗が噴き出る様なプレッシャーがアイシャに襲い掛かり、本能的なよあにエレメンタルドラゴンのキーをドライバーに押し込む。

『ELEMENTAL DRAGON』

 ドライバーをキーを読み取り、ドライバーから機械的なデザインの鋼鉄のドラゴンが召喚され、それは弾けてアイシャの体に装着。ここまではいつもの鎧召喚と一緒だ。だがいつもと違う点はここからだった。

「ぐっ・・・・・・・・・」

 全身に襲い掛かった重圧感、眩暈すら起こしてしまいそうな虚脱感、思わず頭を押さえて近くの木の枝に着地、先ほど襲い掛かってきた影を迎撃しようとみていると、ここでも驚くべき点があった。

「・・・・・・・・・」

 無言のままアイシャの前方へとやってくる影、そのシルエットは先ほどまでとかわっており、まさにアイシャが身にまとっている鎧と同じようなシルエットとなっていた。

「なるほど・・・・・・そういうことね」

 それをみてアイシャは一つの確信をえる。このシルエットを倒すことが試験の内容、しかも相手は同じドラゴンアーマー、つまりはこの影の正体はアイシャのコピー、同じ力、同じアーマーで自分を上回れば合格。簡単なように聞こえるが実に難しいことだが、試験と内容としては実にベター、変わり者のジーナが出す問題にしてはシンプルすぎる。

「ふぅふぅふぅ・・・・・・すぅ・・・はぁ・・・」

 深呼吸を繰り返して呼吸を整える。慣れたわけではないが、全身に襲い掛かっている重圧な虚脱感もなんとか耐えられるようになってきた。

 全身に纏っている銀を主体に黒いラインが施されているアーマー、アンダースーツのラインは銀色。乳房を計算しても少し分厚い胴体部、背中には丸々自分を覆えるくらいの翼、両腕も少し大きいアーマー、先端に爪のような鋭利な刃物があり、伸縮が可能、そしてお尻から垂れている巨大な尻尾、先端が砲門のような形状をしている。ドラゴンの部位をありありと連想させるデザインをしている。

「まずは・・・」

 翼をはためかせて加速、影へと向かっていく。相手もこちらとの対決を望むように構え。尻尾がアイシャに向けられると、先端から冷凍光線が離れ、回避してアイシャ後方の森が凍り付く。

「はああああっ!!」

 拳を握って影に攻撃、それを受け止めて二人が空中で止まる。互いに鍔迫り合いのようになっている状況で、影の胸部アーマーが展開、それは龍の顔のように展開され、その中央部に設置されているクリスタルから灼熱のブレスが離れ、アイシャは一瞬にして火達磨となって塵になるのだった。

16名無しのキャスト/お客さん:2022/05/18(水) 10:50:13 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』③

「はっ!!??」

 アイシャは目を覚ました。先ほどと同じ薄暗い森の中、不気味なまでに静まり返った周囲、重苦しい空気、最初にアイシャがたっていた場所と同じ森の中。

「私・・・・・・死んだはず」

 胸部から放たれる超出力火炎放射『オーバーロードフレア』で塵にされたのは覚えている。だというのに自分はここにたっている。ここは死後の世界なのか?だがだとしても先程と同じ場所というのも説明がつきづらい。

 先程の事は幻覚なのか?脳裏をよぎる言葉を自身が否定している。ほぼ一瞬だったが体に残っている熱の感覚、絶望的な力に蹂躙されて生命が終わった感覚、当たり前だがいい感覚とは全く思えない。

「はぁはぁはぁはぁ……」

 青ざめた顔をして自分の体を抱きしめ、吐きそうになるのを堪えてうずくまる。

 圧倒的な恐怖感が心を支配し、立ち上がって周囲を見渡す、逃げなければ奴がくる。

 走り出してしばらくしたら奴が襲来した。自分と同じようなシルエットの影、殺意を身に纏っているようなオーラ。そしてすでに装着されているドラゴンアーマー、ここが先ほど違うという点には実に皮肉めいている。

「戦わないと…」

 歯を食いしばり、こちらもドラゴンアーマーを纏って戦いに臨んだ。

 尻尾の先端から放たれる冷凍光線によって体を凍らされ、尻尾で粉々に砕く『フリージングブレイク』。

 翼に魔力を充填させて周囲に雷魔力を爆発的にまき散らし、攻撃を受けてとまった相手に収束させた落雷を落とす『ボルテックストラトス』。

 腕甲の爪と地面の一部を分解して一振りの大剣を変換錬金し、超振動させたそれで両断する『グランドクエイクスラッシュ』。

 ここまでで四度、アイシャは死ぬ度に最初の森の中に戻されている。

 体をしっかりと残っている死んだ時の感覚、吐き気すら感じなく絶望的な感覚になりふり構わず走り出す。それは距離をとる等の行動ではなく完全に逃走だ。

「はぁはぁはぁ・・・・・・・・やっ・・・はぁはぁ・・・ごほっ、はぁ・・・」

 構わない、死にたくない。その恐怖に襲われて呼吸すら定まらない。

 死ぬ感覚はしっかりと残り、強者に挑み続けて勝たなければ試験が終わることはない。しかし相手は圧倒的な力をもっている。

 終わることない無限地獄、まだ仮定だが勝てば終わることはわかっている。だがどうすればあの力の結晶体の様な相手にどうすれば勝てるのかがわからない。

「どうすれば・・・・・・いいのよ・・・・」

 足が止まる、力なく腕が垂れ、震える膝が力なく大地に落ちる。

 そうしてやつは迫りくる。かわらない殺意をまとい、圧倒的な力をもって、今回のアイシャの命も奪うのだった。

17名無しのキャスト/お客さん:2022/06/13(月) 16:16:04 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』④

 それは次の挑戦にいたるまでの一瞬の出来事、時間的には一秒にもみたないほぼ白日夢のようなセコンドタイム。

 だがそこでアイシャは見た…のかもしれない、単なる思い込みかもしれない、出会ったのかは定かですらない……。

(どうすりゃいいっていうのよ…)

 暗闇の中を漂うアイシャ、体が重くて動かない、まるで深い粘土が高い泥の海に沈んでいるかのような感覚。

 ドラゴンアーマーを纏っている自分に勝つ試練、自分より上の自分に勝つ試練、すでに数回殺され、その痛みはないが感覚が残っている。

 毎回の自分は全力を尽くして戦った、その結果か今までの死であり、その全てが圧倒的な力量さだった。

 前回だけが今までの経緯とこれからを察して絶望し、相手の攻撃を無抵抗に受けて死んだ。

 沈みゆく意識、このまま何回殺されるのか?はたまたこの終わりはあるのか?永遠に殺され続けるのか?

「……っんっ……」

 冷たい暗闇、動かないからだ、それでもある意識、勝てない相手に再び挑まなければならない強制力。絶望しかない心境に、思わず泣き声の様な言葉が口から洩れる。

「いやぁ……だぁ…」

 声を出さないようにずっと我慢していた。声を出してしまったら、きっと自分は子供のように泣き叫んでしまう。だからしたくなかった、だが折れそうな心を支えていた自分が耐えられなくなってしまった。

「ジーナ様ぁ!!見てるんでしょ!!出してっ!!私をここから出してぇぇぇっ!!」

 目を見開き、半狂乱で叫ぶ、普段の余裕はまったくなく、ただただ恐怖に怯えてあてもなく逃げる子供のような姿がある。

「死にたくないっ!!死にたくないっ!!お願いしますっ!!私を…だしてぇええええええっ!!」

 どれだけアイシャが泣き叫んでも、暗闇に何の反応はない、ただ重たい体を嫌悪感すら感じられる泥の海。

「いやぁ…死にたくないのぉ………」

 一体どれだけ泣き叫んでいたのかすらわからなくなるほど泣き、心も疲弊したアイシャが泥の中でつぶやく。

「………君っ……」

 誰かの名前なのか、小さくて音にもならないような呟き、だがそれがこの試験に革新的な変革をもたらしたのだった。

「んんっ!!」

 引き寄せられる。ただ沈むようにアイシャの体が引き寄せられる。暗闇の中では上下の感覚すらないが、おそらく上へ上へと強烈な力でひきあげられていく。

 どれだけの時間引き上げられていたかはわからないが、いつのまにかアイシャは暗闇から引き上げられて地面-それでも暗闇の中ーの上にたっていた。

「アイシャ!!」

 誰かに名を呼ばれてふりかえる。そこに立っていた彼に、アイシャは思わず目を見開いてしまう。

 一般的な成人男性と比較しても屈強といわしめる体躯、全身を覆う白を基調としたフルプレートアーマー、左腕に携帯されている直径1mは超える巨大なラウンドシールド、逆立った金髪と緑色の瞳。

「……ラング…」

 そこにはアイシャのかつての恋人ラング、フルネームは『ラングリット=サーヴァイン』がたっていた。

「おうっ、アイシャ」

 破顔一笑、まさに太陽の様な笑顔でアイシャに笑いかける。懐かしい愛しい顔に、アイシャはラングにかけよりそうになる。が、そのアイシャの手を取って反対側へと引っ張る者がいた。

「アイシャさんダメですっ!!」

18名無しのキャスト/お客さん:2022/06/13(月) 16:16:43 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』④-2

 聞き覚えのある声にアイシャがそちらを向く、短い白髪に銀の瞳、自分に熱心な瞳をむける青年がいる。

「パイ君っ!?」

 リュウ・パイロンにそこにいた。力強くアイシャの手をひいてラングの所へは行かせないようにしている。

「僕だったらアイシャさんを悲しませたりしません、だから僕を…僕だけを愛してくださいっ!!」

「えっ!?ええっ…!?」

 先程までの空気がないものとして扱うような展開に、アイシャ自身が戸惑ってしまう。

「アイシャさん・・・」

 と、そこへさらに三人目の声、今度は先ほどより少し幼い感じもする。

「ドラ君…」

 ド・レインの黒服の一人、ドライゼがそこにいた。彼には恋人がいるのだが、アイシャ自身がとても気に入っている少年の一人でもある。

「少し怖いけど……まだ僕を抱いてください」

 切実な願いとともにアイシャのあいている手を取る。

「アイシャ…」

 そこに更なる声、ド・レインでアイシャが最も信頼を寄せる人物、レアニウスがそこにたっていた。

「レア君…」

 流石にレアニウスならこの混沌とした場でなんとかなると思っていた。

「お前は俺を選んでくれる。そう信じてる…」

 なんて真摯に瞳でアイシャを見つめる。

「そんなの・・・えらべないってええええええっ!!!」

 アイシャが混乱して目を回しながら頭を抱え叫ぶ。

「そうだ、それでいいんだ、アイシャ…」

 叫ぶアイシャにラングがうなずいて答える。

「無理に選ぶな、その時々で一人選んでくれ…」

 それだけ、その言葉で周囲が暗黒から光に包まれた。

19名無しのキャスト/お客さん:2022/07/13(水) 13:58:10 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』⑤

「っは!!」

 そうしてアイシャが目を覚ます。薄暗い森の中のスタート地点、すぐに先ほど殺された恐怖を思い出してうずくまる。

『頑張れっ!!』

「っ!?」

 一瞬、誰かの声を耳にして立ち上がり構える。影の自分がくるような時間ではない、今回の試験から追加された何かがあるのか、手を震わせてサキュバスドライバーのレバーに手をかける。

『あきらめないでっ!!!』

『とても優しい、僕はそんな貴女を愛しているんですっ!!』

『お前なら出来る、芯の強い所、俺はそんなお前を愛してる』

 周囲を警戒しながら聞こえる声に耳を傾ける。しかし声は聞こえない、かわりにきたのは破壊の音、あのドラゴンフル装備の影がせまりくる。

「っ……」

 サキュバスドライバーを持ち手が震える。恐怖に負けて今すぐ逃げ出したい衝動をなんとかおさえて変身、こちらもフルドラゴンになって対峙する。

「はぁ…はぁ…」

 呼吸が荒い。動悸が激しく大きい。眩暈もしてくる。

「っ!?」

 金属音がしてぼやつく視線を前に向けると、影の胸部が展開して龍の顔が出現、その奥の噴射口からオーバーロードフレアが放たれようとしている。

「んんんっ!!!」

 震える体を無理矢理にでも動かして翼を展開して相手の真上へととびぬける。あの技は放出後にある程度の角度調整をきくが真上への角度調整は出来ない仕様となっている。だからオーバーロードフレアは回避、続いて尻尾の放出口がこちらをむく。フリージングブレイクの初手として相手を凍らせる凍結光線の構え、相手を瞬間凍結させるような高出力の魔力で狙い撃つために狙撃時はその場を動くことはできない。だからアイシャも翼の周囲に雷撃球を無数に発生させて影へ放つ。直撃を避けるために影は放出をキャンセル、飛びのき翼を展開しアイシャへ飛翔。影も翼を展開させて巨大な雷撃球を無数に展開、ボルテックストラトスの発射体勢だ。

「その技はっ…」

 自分の周囲に雷撃をばらまいて相手を止めたところへトドメの一撃を放つ技。つまりは相手とそれなりの距離をとっていれば放たれることはない。故にアイシャは距離を保ちながら尻尾の放出口から瞬間凍結させるような物ではない威力の魔力光線を連射、まだ手で使う銃のような命中精度はないが、今まで培ってきた相手の行動予測による本命と牽制を使い分けながらの攻撃によって相手へと命中、ボルテックストラトスの待機雷撃が消えたことによってアイシャは影へと急加速して強烈な突進、二人はもつれあいながら地面へと落下。

「はぁあああああああああっ!!!」

 アイシャが土煙の中で吼える。その手はしっかりと相手のドライバーを握り、そのまま右手に残る魔力の大部分をつぎ込んでパワーを極限まで強化して握りつぶそうとする。

「ぐぅっ…」

 当然影もドライバーを潰されまいと打撃による反撃、幾度となく相手の打撃に呻き声もあげてもアイシャは手を離さない。

「後…少しっ」『頑張ってください!!』

 誰かの声が耳に入る。そんなこと構わずに影の打撃がアイシャの顔をとらえる。

「はな・・・すかっ!!」『そうです、負けないでっ!!』

 手に力が入る。少しドライバーにヒビが入る。

「負け…られないっ!!」『そうだ、負けず嫌いなお前は魅力的だぞ』

 ドライバーのヒビが大きくなっていき。白銀の腕がアイシャに重なる、ようの気がした。

『アイシャ………やっちまえっ!!』「うぉああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

 怒号一喝、悲鳴をあげるドライバーをさらにしっかりとつかみ、そのまま影から引きちぎる。

「……………………………………っっっっ!!!!!!!!」

 声にならない悲鳴に思わず耳をふさいで飛びのくアイシャ、影は激しくのちうちまわったあとに塵となって姿を霧散させた。

「かっ……たっ…」

 手に持っていた相手のドライバーを投げ捨てる。そして変身を解除しようとした瞬間、激しい頭痛に襲われてその場に倒れこんでもんどりうつ。

 何かが頭の中に入ってくる。それも膨大な量が爆発的な速度でだ。

「あっ…ああっ…がぁあああああっ……」

 目を見開いて地面をゴロゴロと転がり、地面に頭を叩きつける等の行動をしても濁流の様な情報がとまることなく。額から血を流しながら悲鳴をあげていると、おもむろにアイシャの手を抑えるジーナの手があった。

「よくやった……少し早すぎる所もあったがの…」

 目を閉じて呪文を唱えるジーナ。アイシャは糸のきれた人形にように地面に倒れ。二人と世界は塵となって消えはじめた。

「やれやれ…戦闘センスは高いのぉ…こりゃあ女王陛下もお喜びのはずじゃ…」

20アイシャ:2022/09/02(金) 19:59:46 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』⑥

「んっ……んんっ…」

 次にアイシャが目を覚ましたのはベッドの上だった。受けていた試練のせいなのか気分が酷く重たい、倦怠感と気分の悪さが全身を支配している。

「…っ!!」

 強烈な嘔吐感に口元を押さえてベッド上で身をよじる。

 身の毛もよだつ体験というものは、今までの生において幾度か味わってきたが、殺され続けるという体験は流石になかっただけに、今回の試練が実に壮絶な物だったと後にアイシャは語っている。

「…アイシャ…」

 アイシャが目を覚ましたのを感じたのか、ドアをあけてジーナが室内に入ってくる。

「ジーナ……様……っ!!!!!」

 申し訳なさそうな顔をしていたが、アイシャの怒りは一気に最大メーターをふりきり、拳を握って殴りかかろうとベットから飛び出す。が、震える足で立位を保持いることがだきずに床に崩れ落ちそうになる。そのアイシャを、ジーナが寸前で抱きかかえる。

「すまなかった!許してほしいとは言わんが、すまなかった、それだけし言わせてほしいのじゃ…」

 抱きしめられてジーナの言葉を聞く。抱きしめる腕をふりほどくこともできずに言葉に耳を傾ける。

「まずは試練の内容は…女王陛下からの命令でもあったのじゃ」

「女王…陛下…」

 突然出てきたビックネームにアイシャの思考が一瞬停止する。

 女王陛下、とはいってもサキュバス族全員の女王というわけではなく、アイシャならアイシャが所属する部族の女王、サキュバスとして大きなくくりではなくて種族の長であり、現代で言えば県知事という形に近い。

「人間界で旅をしているお前のことを、陛下はとても気にして気に入っているのじゃ、今回の試練も、前が人間界で培ってきた愛を試したい、そう申されていての試練の難解さであったとわかってほしい、ドラゴンの力を手にするのと相まって、お前にはあのような試練を受けてもらったのじゃ…」

 言葉がたどたどしい、あれほどの難しい試練を受けさせてしまった後ろめたさもどこか感じる。

 それからしばらく、アイシャはジーナに抱きしめられながら説明を受けていた。

 アイシャがフルドラゴンの技名や弱点を知っていたのは、じつはアイシャの死亡回数がかかわっていたのだ。

 死亡するたびに、少しずつキーを通してスペックや弱点等の情報がアイシャへと流れ込んでいてらしく、幾度となく繰り返しているうちに、少しずつ勝利へと近づいていく仕様だったのだが、本来そこまでいくのに死ぬ続ければならない回数は数百を超えており、一桁の死亡回数でそこまで到達したのはジーナいわく奇跡の部類らしい、アイシャが一瞬だけみたラング達の幻影との会合はジーナも知らなければアイシャも覚えていない。愛のなせる業、といった所である。

「お主が最後に感じた頭痛は、キーから残りの情報が一気に脳に流れ込んだことにより、情報処理に脳が対処しきれなかったものだと考えておる」

21アイシャ:2022/09/02(金) 20:00:51 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』⑥-2

 お主、これがわかるか?といい、ジーナはあるパーツをアイシャに見せる。それはなんてことはないガラス板のような小さなパーツなのだが…。

「それは、極薄のフィルムに魔導式を無数に書き込んで、重ね合わせて魔術の発動が対応したフィルムのみにすることによって単一化し魔力消費のムラを防いで、発動までの導線を簡易高速化するための魔結晶の板……っ!!!???」

 ツラツラと当たり前かのように言葉を紡いでいくアイシャ、そして言い終わる寸前の所で、自分が発している言葉の異常性に気が付いて思わず自分の口をふさぐ。

「それが試験でのお前が得た力の一つじゃ、お主にはドライバーとキー、ワシが数百年かけた研究の全てかお主に刷り込まれた。まるで自分の元からもっていた知識のようにな…」

 椅子に腰かけ、少し寂しそうにポツリポツリとジーナは口にする。数百年、ドライバー関連の事にたどり着いてから研究を始めているなら、ジーナの年齢はそれをはるかに上回る。わざわざ自分の生きた証を誰かに継承するということは、それらが何を意味しているのかは大体が想像がつく。

「ジーナ様……」

 フラフラになりながらもアイシャは立ち上がり、ジーナを優しく抱きしめて頭を撫でる。

「ええいやめいよ…。撫でられるのは…すかんのじゃ…」

 しばらく、二人は一般的な魔界のイメージからはかけ離れていそうに優しくも穏やかな時を過ごす、だがしばらくして、アイシャがつもりもっていたことを口にする。

「ジーナ様、あのアーマーは重すぎますっ…」

「なんじゃと!?」

「ドラゴン各種のパーツがてんこ盛りで装備するのはとても強くていいのですが、取り回しがしにくいうえに消費魔力が大きいです。無理矢理扱うこともできますけど、持久戦にはひどくむいてません。セーブ機能と分割機能が必要です」

 ちゃんと使用者の実体験としての意見をズバズバと言い放つ。元々サキュバスドライバー関連自体、自分達の中でも戦闘に特化できる才能、それにふさわしい力を持った者にのみ支給される装備である。キーに込めれた魔力と魔術の力をフルスペックで行使できるのがドライバーだ。遠近汎用型、射撃特化型、格闘特化型、と三種類のキーは存在するものの、キーを展開した時点で100%の力を100%発揮し続ける。そこにサキュバス個体の魔力量や持久力は考えておらず、セーブしてもいい場面でも全力を発揮し続けるというのは非効率的だ。今まで実にお粗末なシステムだったのは、本来戦闘が得意な種族だはないサキュバス たる所以なのだろう。

「だからジーナ様、私はこれを機にドライバーを新しく作ろうと思います」

 決心した目がアイシャが告げる。ドライバーについての知識はある。やってやれないことはないが、それから約一か月、アイシャとジーナは互いに意見をすりあわせながらドライバーを形成、さらに先ほどアイシャがいっていたキーのセーブ機能を実装したのだった。

 そしてアイシャは再び森の中にやってくる。今度は夢の中ではない現実の森だ。

「アイシャ、いつでもいけるぞ…」

 神妙な面持ちでジーナが告げる。ドライバーを新規造形したのは百数年ぶりだったらしい。

『サキュバスドライバーツヴァイ』(以後ツヴァイドライバー)

 ドライバーのボタンを押せば電子音声が発せられる。今までの機械部分がむき出しのようなデザインではなく、黒と基調として黄色のラインがはいってる。それを腰に装着すれば、ドライバーの左右から光の帯が伸びてベルトとして装着される。そして装着と同時に左右のベルトにキーが計四つ取り付けられているパーツが出現。その中の一本を取り出す。

22アイシャ:2022/09/02(金) 20:01:30 ID:K7WIUzZ20
四精鎧魔龍』⑥-3

『ELEMENTAL DRAGON』

 あの自分を幾度となく死地へと追いやったキーを発動させ。スナップを効かせて横にふると今までドライバーによって展開されていたキーが展開され。展開部に十字の形に5つのボタンが配置されており、真ん中の黒いボタンを押す。

『NOIR』「変身っ!!」

 ノワール。黒を意味する音声が聞こえ、展開したキーわドライバーの横から挿入、それと同時にドライバーの前面の一部が展開し中央に白い円形のリングが出現、そこからアイシャのゲートのような光のリングが前方へと広がっていき。そこから黒一色のエレメントドラゴンが飛び出す。

 それは空中を飛び回った後にアイシャへとむかい、途中で光の帯に分解されてアイシャに鎧として再構築。ツヴァイドライバーからインナースーツに銀色ラインが全身を駆け巡るように走り、膝と肘に魔力を充填と開放のためのクリスタル、それをつつむようなアーマーが装着、さらに腕や足、胴体をつつみこむようなアーマーが装着される。アーマーは黒を基調に縁を金色のライン取りがされている。

『付け心地はどうじゃ?』

 脳内通信でジーナの事が響く。

「大丈夫です。いけますっ!!」

 シャドウをしながら返答、足に力をこめ、その場を飛び出す。その後、森の一体が大規模爆発によって破壊されてクレーターが出現。二人は町のお偉いさんから呼び出されてギッチリ怒られるのだった。


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