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アイシャの時間

17名無しのキャスト/お客さん:2022/06/13(月) 16:16:04 ID:K7WIUzZ20
『四精鎧魔龍』④

 それは次の挑戦にいたるまでの一瞬の出来事、時間的には一秒にもみたないほぼ白日夢のようなセコンドタイム。

 だがそこでアイシャは見た…のかもしれない、単なる思い込みかもしれない、出会ったのかは定かですらない……。

(どうすりゃいいっていうのよ…)

 暗闇の中を漂うアイシャ、体が重くて動かない、まるで深い粘土が高い泥の海に沈んでいるかのような感覚。

 ドラゴンアーマーを纏っている自分に勝つ試練、自分より上の自分に勝つ試練、すでに数回殺され、その痛みはないが感覚が残っている。

 毎回の自分は全力を尽くして戦った、その結果か今までの死であり、その全てが圧倒的な力量さだった。

 前回だけが今までの経緯とこれからを察して絶望し、相手の攻撃を無抵抗に受けて死んだ。

 沈みゆく意識、このまま何回殺されるのか?はたまたこの終わりはあるのか?永遠に殺され続けるのか?

「……っんっ……」

 冷たい暗闇、動かないからだ、それでもある意識、勝てない相手に再び挑まなければならない強制力。絶望しかない心境に、思わず泣き声の様な言葉が口から洩れる。

「いやぁ……だぁ…」

 声を出さないようにずっと我慢していた。声を出してしまったら、きっと自分は子供のように泣き叫んでしまう。だからしたくなかった、だが折れそうな心を支えていた自分が耐えられなくなってしまった。

「ジーナ様ぁ!!見てるんでしょ!!出してっ!!私をここから出してぇぇぇっ!!」

 目を見開き、半狂乱で叫ぶ、普段の余裕はまったくなく、ただただ恐怖に怯えてあてもなく逃げる子供のような姿がある。

「死にたくないっ!!死にたくないっ!!お願いしますっ!!私を…だしてぇええええええっ!!」

 どれだけアイシャが泣き叫んでも、暗闇に何の反応はない、ただ重たい体を嫌悪感すら感じられる泥の海。

「いやぁ…死にたくないのぉ………」

 一体どれだけ泣き叫んでいたのかすらわからなくなるほど泣き、心も疲弊したアイシャが泥の中でつぶやく。

「………君っ……」

 誰かの名前なのか、小さくて音にもならないような呟き、だがそれがこの試験に革新的な変革をもたらしたのだった。

「んんっ!!」

 引き寄せられる。ただ沈むようにアイシャの体が引き寄せられる。暗闇の中では上下の感覚すらないが、おそらく上へ上へと強烈な力でひきあげられていく。

 どれだけの時間引き上げられていたかはわからないが、いつのまにかアイシャは暗闇から引き上げられて地面-それでも暗闇の中ーの上にたっていた。

「アイシャ!!」

 誰かに名を呼ばれてふりかえる。そこに立っていた彼に、アイシャは思わず目を見開いてしまう。

 一般的な成人男性と比較しても屈強といわしめる体躯、全身を覆う白を基調としたフルプレートアーマー、左腕に携帯されている直径1mは超える巨大なラウンドシールド、逆立った金髪と緑色の瞳。

「……ラング…」

 そこにはアイシャのかつての恋人ラング、フルネームは『ラングリット=サーヴァイン』がたっていた。

「おうっ、アイシャ」

 破顔一笑、まさに太陽の様な笑顔でアイシャに笑いかける。懐かしい愛しい顔に、アイシャはラングにかけよりそうになる。が、そのアイシャの手を取って反対側へと引っ張る者がいた。

「アイシャさんダメですっ!!」


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