[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
| |
第三章:目覚めよ、能力者! Awaking of Psionics
1
:
Unia:Shadow
:2016/01/01(金) 22:27:51
2013 4月23日
ギリシャ とある豪邸
「おはようございます お嬢様」
私の目の前に居る召使いであるトウラが、にこやかに目覚めを見届けてくれる。
彼はお父様の知り合いの息子さんであって、一身上の都合でこの屋敷で働いている。
彼の妹、キョウと共に、婦長のカティと執事のダニエルの下で厳しく扱かれているらしい。
朝食をいただき、いつものように大学へ行く身支度をし、屋敷を出る。
大学までの送迎もこの召使いがやってくれている。
7時半になれば、もうトウラは車を出す準備を終えており、あとは私が乗るだけだ。
8:08
<<次のニュースです。国内経済にも、陰りが見えてきました。
ギリシャ国内の失業率は昨年、2012年では約25%であり、経済アナリストの、
テフヌス・ベテレット氏によりますと2015年には財政破綻は免れず、
それに伴い非合法かつ非常に安い値段にて売春が横行される・・・との見解が・・・>>
登下校を行うSUVの車内で、私は召使いと毎日会話している。
喜び、悲しみ、怒り、楽しみ・・・あらゆるものが詰め込まれたSUVだ。
「お嬢様 今夜は貴女の誕生日でしたね」
「ええ、今年も素敵になるといいわ」
そう。今日は私の誕生日・・・楽しみだった。
「本日の講義が終わり次第駐車場にて待機しております。
お早めに」
「わかったわ、トウラ」
19:25
その誕生日パーティーは例年通り、優雅がつ豪勢に行われた。
政治家、大企業の代表取締役など、様々なゲストが私の19歳を祝った。
みな、私が将来を約束されていることを確信していた。
・・・・・そう思っていた。
19:41
銃声。それも1度だけではない・・・2,30回・・・それでも数え切れない。
それと同時に爆発の音が厨房から聞こえた。
人が燃える焦げ臭い臭いが、私の鼻腔を刺激し続ける。
私の目の前で、お父様が眉間を撃ち抜かれて動けなくなった。
「お・・・お父様ァァア!!」
「お嬢様・・・腹心のあの女が・・・・」
メイド服のあちこちが焼け落ち、顔が炭まみれのカティが駆け寄ってきた。
その右足にはナイフが刺さっている。
「逃げるのです・・・謀反です・・・!!」
続いて私を探していたダニエルもまた、右手から血を流している。
私は父の死を嘆き続けるが、彼女とダニエルに肩を持たれ引き離された。
さようなら、お父様・・・私の家。そう涙しながら、焼け落ちる屋敷を見続けた。
近くの森へと逃げ込んだ私達は、夜の中でも輝かしい炎を見つめていた。
パチッ・・・パチッ・・・・と、何かが弾けた音が聞こえて・・・
ダニエルとカティが突然地に伏せて、どうしたのか疑念を抱いた。
「・・・ひっ・・・!」
心臓を抱えたダニエルは痛みに悶え、カティは事切れていた。
トウラとキョウ、二人が銃を構えていた。
銃には消音をするための筒が装着されていて、銃声がなかった。
「・・・と、トウラ・・・?キョウ?何してるの?
なんで・・・?」
「これもギリシャ・・・いえ、世界のためです。
貴女とご当主はこの国の経済に背を向けて・・・
ただただ貧困に喘ぐ人々を救おうとしなかった。
貧しさを憎むことなく、人の悪意を教えられなかった貴女には分かりませんよ。
・・・・さようなら、ユニアお嬢様」
「あーばよ、ユニアの姉御〜」
二人が私の胸へと銃口を向け、引き金を引こうとして・・・
「させるか・・・!!財団を討ったところで・・・
貴様らに何が出来よう、ご当主に拾われた根草無しを世話した恩義を忘れおって!!
させん・・・貴様らに・・・我がプラ・・・!!」
キョウとトウラの足にしがみついたダニエルは、2発銃弾を撃ち込まれて、目を見開いた。
「お逃げください・・・・貴女がもう一度、このギリシャにて栄光を・・・!!」
ダニエルのことは見なかった。トウラも、キョウも。
ただ、行くアテも無く逃げた。走って、走って・・・走っテ。
絶対に許すことなどなイ。 あの兄妹と・・・
私の日常を奪った、腹心の女へ復讐を・・・同苦ヲ!!
血にまみれようと、私は力を得て戻ってやル。
「・・・・・どんな手を使おうともナ」
2
:
Vieri Terrell
:2016/01/01(金) 23:00:36
2018年 8月10日
マージ礼拝堂 墓地
僕は、何をしてやればよかったのだろう。
ここイタリアから遠くの、インド洋の島で死んでしまった妹に・・・。
泣いて、遺体に泣きつくのか。
静かに涙を流し、別れを告げるのか。
遺体を直視せず、目を涙を隠せばいいのか。
その選択肢などなく、どれでもなかった。
ただすすり泣き、16の僕にはカーラのことを見送るしかなかった。
父であるドレイムス教授は、神妙な顔をしていた。
こうなることを知っていたかのように。
2018年 11月12日
テレル邸 自室
年の離れた幼馴染のニーナからメールが届いた。
高校には無試験同然で入学できるのに、受験合格おめでとうって書かれていた。
苦笑しながら、返信するメールの本文にはイタリアの高校に受験がない旨を打ち込んだ。
ニーナはどこか外れていながらも、小さい頃には僕を優しく受け止め、包んでくれた女性だった。
あの草原の中でのことは忘れはしない。
メールを送信できたことを確認し、パソコンの電源を落としてベッドに飛び込んだ。
あれから3ヶ月くらい・・・カーラのあの愛らしい笑顔が脳裏をよぎる。
昨日も、一昨日も失った妹のことを思い出し、布団を涙で濡らした。
布団の暖かい感触はニーナのあの温かみを思い出させる。
洗剤の香りがついた布団は、ニーナの髪の匂いを脳裏によぎらせる。
ああ、ニーナ・・・ニーナ・・・お姉さん・・・・。
ご両親を失った彼女と、カーラを失った僕・・・
どちらも辛いのに、甘えてしまう。
2018年 11月14日
テレル邸 自室
もう嫌だ。誰も失いたくない。
ニーナも死んでしまった。テロに巻き込まれて、誘拐されて銃で殺されたらしい。
幼馴染も、妹も・・・6年前には母さんも居なくなってしまった。
どうしてなんだ。苦しい・・・。
胸中をナイフで抉られた思いで今夜は布団に潜り込もう。
・・・・・・・・次は父さんを失うのか?
3
:
Vieri Terrell
:2016/01/02(土) 22:57:29
2019年 3月19日 05:29
テレル邸 自室
自宅のドアを乱暴に蹴破る音がして、ヴィエリ少年は目覚めた。
ヴィエリの横では、家政婦のアネッタが静かに裸で眠っていた。
妹のカーラと似ている色の栗毛をした、銀縁丸メガネがよく似合う女性だ。
昨日の夜にアネッタが彼の自室へと呼ばれ、情事へと及んだ後、共に眠った。
カーラとニーナにどこか似ていたアネッタは、文字通りヴィエリのお気に入りでもあった。
「ん・・・若様・・・」
彼女が寝ぼけてヴィエリの左腕にしがみ付くが、優しく振りほどいてベッドを降りた。
「・・・・・・誰だろう?」
自室のクローゼットにある金属バットを取り出し、寝巻きを調えた。
金属バットは片手で担ぎ、もう片方の手で扉を開け、エントランスの2階に出た。
誰かが1階の父の書斎へと向かっていったのが僅かに見えた。
「・・・泥棒・・・だよな・・・?」
ゆっくりと階段を降り、書斎へ続く廊下を歩く。
「・・・・・父さんが危ない」
同時刻、ヴィエリの父、ドレイムス教授も起き上がっていた。
彼の自室は書斎と繋がっており、誰かが書斎への廊下を歩いてる足音が聞こえた。
邸宅の家政婦ではあるまい、アネッタはまだ2階の部屋で寝ている・・・はず。
「・・・・まさか・・・ヤツが」
起床して間もないのに、滝のような汗が流れ出た。
ドレイムス教授の予感は的中し、扉を開けた主が彼の胸部に凶弾を撃ち込んだ。
赤いローブの死神だった。
銃声がしない。サプレッサーでドレイムスを撃ったのだ。
「ッーー・・・むぐ・・・!!」
「・・・・・」
赤いローブは、ドレイムスが倒れたことを確認し、窓の鍵を開けてどこかへ去っていった。
4
:
Vieri Terrell
:2016/01/02(土) 23:31:06
05:34
書斎に入って、数ある研究論文などを気にかけず、父の自室へ進もうとして。
父のうめき声の後、窓を開ける音がして、ヴィエリは走って扉を開けた。
「・・・父さん!?」
ナチュラルのブロンドが輝かしく、碧眼を持つ少年の声は、涙声に変わりかけていた。
妹や幼馴染を失ってなお、女性に極めて優しい少年の面影などどこにもなかった。
すでに父の胸部から血液が漏れ出している。
ヴィエリは絨毯を背にした父の元へと駆け寄った。
「ヴィエリか・・・・ぐ・・・やられたよ・・・」
失血が激しく、ドレイムスは話すだけでも精一杯であった。
「だ、誰に・・・!?」
「・・・ニーナを殺した犯人だ・・・
ヴァーミリオン・フェイス・・・赤いローブをした・・・・
いや、そんなことはいい・・・いいか、ヴィエリ・・・
お前が真実を・・・知りたければ・・・・
ひとまずワシの言うとおりにしろ・・・・」
ヴァーミリオン・フェイスだとか、真実だとか。
何を研究しているかもわからない父親の発言には疑問しか感じなかった。
しかし、それが何かと喚く余裕もなく、ただ頷いた。
「・・・・ワシの自室の・・・本棚の赤い本を押し込め・・・
隠し部屋の中の大きなカプセルのロックを外して・・・
その中に居る子と共に、ルーマニアへ逃げろ・・・」
「ルーマニア・・・?」
「お前をイタリアに居させるのは危険になった・・・
既にお前をルーマニアまで運んでくれるよう準備もしておる・・・
アネッタもこのことは把握してある、安心・・・せい・・・
絶対に信頼できる、とワシが保障しよう・・・
行け、ヴィエリ・・・! お前を母さんの所へ行かせるにはまだ・・・」
もはや虫の息のドレイムス教授は、手を動かすこともできない。
「父さん、大体はわかったからもう・・・」
「・・・・・・・・ああ・・・・・お前なのか・・・・?
ヴィエ・・・・リ・・・・それとも・・・・」
”それとも”の続きを言おうとしたドレイムスの命は尽きてしまった。
「父さん・・・・・!!」
ヴィエリが家族全員を失った、と脳で理解した時、彼には虚しさが残った。
それでも、父が死なせぬように、守ってくれた分も生きなければならない。
「・・・・・」
父の開いた瞳孔を手で閉じてやり、彼の両手を胸の上に乗せて静かに冥福を祈った。
06:00
父の自室の赤い本を押し込むと、左右の本棚がレールを軋ませてスライドした。
その奥にあるチョコブラウンの扉を開けると、地下への階段が続いている。
一段一段、下っていき、鋼鉄の扉のドアノブに手をかけて、ゆっくりと開けていく。
その部屋は書斎の論文の量と匹敵するほどの資料が積まれており、
部屋の中央には人一人が入れるほどの大きさのカプセルが鎮座していた。
カプセルの中には映画でよく見る培養液とかの液体はなく、ただただ・・・。
カーラと同じ年頃の、白い髪をした少女がヴィレリを無機質に見つめていた。
5
:
SANA
:2016/01/03(日) 13:12:51
はじまりは あの日だった。
「・・・・・・・・・」
3年前・・・私は・・・
2016年 3月19日
某所 研究所
「愚か者め・・・ワシの研究に資金を出したことは感謝する。
が、貴様のやり方で人類の今後を左右するなどもっての外!
あれはもはや我々の手につけられん。増してやあれで・・・」
教授は、お父様はずいぶんご立腹です。
愚か者とやらの方法には反対の意思を見せています。
「衆愚共にはずいぶん都合の悪い革新の口実も見せ付けねばならん。
ドレイムス・・・研究資金だけではない。
貴方の地位も私が裏でよくするよう工作もしておいた。
今になって対立などできやしない。あなたも同じ罪を背負う。
我々や彼らの犠牲による新たな人類のステップを踏む必要がある。
計画の準備も順調だ・・・貴方には故郷の英国に戻ってもらう。
そこで娘の子育てをするのも悪くは無い」
教授の言う愚か者は、どんな人かもわかりません。
どこで生まれ、育ち、ここまでの地位まで上り詰めたのか。
おそらくは・・・誰であってもいいのかもしれないのです。
「・・・・・どういうことだ」
「貴方の研究はもう十分に計画に貢献してくれた。
それとも、イタリアがよかったかね?
女たらしの国ならばいくらでも再婚ができる。
母がお亡くなりになってから内向的になった息子も見捨てられない。」
「ふざけるな・・・。3年前に殺されたカトリーナの代わりなどおらん!
・・・・貴様の言葉に甘えるのもシャクだが、そう言うならば英国に帰国する!
それと、例の資料は全部私が回収する、いいな!?」
「ええ、ご自由に・・・・ドレイムス・テレル教授」
こうして教授は愚か者とやらの元を離れ、イギリスへと帰ったのです。
どこから、なのかはわからないのですが・・・。
約2年間ほど、カーラというお子さんと一緒に暮らしたそうです。
2018年 8月9日
「カーラが居ない・・・どこへ・・・」
教授はずいぶんと焦っています。
研究が捗らない時も冷静であり続けた、彼がうろたえるほどのことです。
お子さんがどこかへ行ってしまわれたのですから。
「・・・・北センチネル島・・・?
まさか・・・!! カーラが危ない、すぐになんとかせねば・・・」
2018年 8月10日
イタリア マージ礼拝堂 墓地
「カーラ・・・どうして・・・・」
教授のお子さんの死に、男の子が泣いていました。
教授自身は、やはりこうなってしまったのか、と。
どこか諦めを顔に出していたようです。
「父さん・・・なんでカーラを殺したんだ・・・・!!」
「ヴィエリ・・・私から何も言えん。
ただ、カーラを弔ってやれ」
殺した・・・。11歳のお子さんが危険な場所へ行ってしまったこと。
私の同型に無残に殺められたことを、教授が殺した、と彼は言っていました。
野放しにした、と思っていたのでしょう。
違います・・・。彼女は・・・カーラさんは・・・。
6
:
SANA
:2016/01/03(日) 13:27:36
2018年 8月9日 12:45
イギリス テレル宅
「・・・・!!」
「・・・ドレイムス教授。
まずは貴方の娘から・・・犠牲になってもらう」
「いや、やめ・・・!!」
「VF やれ」
「・・・・・・・・」
愚か者がお子さんを縛りつけて、抵抗すれば殴りつけて。
それから、口にゴムのようなものを詰め込んでフタをして。
教授が出かけている間の出来事でした。
「・・・あとは撒きエサだ。
私が言うワードをキーボードに打ち込むんだ。
北センチネル島・・・・と、な」
2018年 9月6日
イタリア テレル邸 隠し部屋
「・・・ヤツの思うままにさせてたまるものか。
次はワシかヴィエリが狙われる。
せめて、ヴィエリだけでもいい、守らねばならない。
罪を償うためにワシの研究を使わねば・・・」
「サーナ・・・聞こえるか・・・・
ワシは・・・ドレイムス・テレル。
お前の生みの親・・・はおかしいか、開発者だ・・・」
「・・・・・わた・・・しは・・・サーナ・・・・
あなたは・・・ドレイムス・・・・
それが・・・な ま え・・・・・」
これが、私の思考の初のテストでした。
この時、私は喋ることのできる赤子程度のものでした。
それから数ヶ月にわたり、教授は寝る間も惜しんでマスターを守ろうとしました。
マスターを守るために、あらゆる力を蓄えさせていただきました。
2019年 2月14日
「・・・いいか、サーナ」
「はい 教授」
「暫しの時が経てばワシの研究はもはやワシなしでも成り立ってしまう。
そうすれば、ワシなど不要だろう。
数ヶ月すればワシはお前と同じ人工能力者に殺される。
その時にヴィエリを守れるのは、お前だけだ」
「・・・・了解 最優先護衛対象をヴィエリ・テレル様に設定」
「・・・・・・いい子だ・・・ サーナ。
それまで・・・もう少し、カプセルの中で・・・
そのゆりかごで・・・眠っていてくれ」
「了解 教授」
7
:
SANA
:2016/01/03(日) 13:45:27
「・・・・・・なんだよ、これ・・・・」
生体反応を検知。対象、ヴィエリ・テレル様・・・
最優先護衛対象を確認。
心拍数85・・・血圧・・・62、104。
脳波及び脳内伝達物質からして緊張状態にあると判断。
「・・・このスイッチか?」
カプセルのロック解除シーケンス開始。
カプセル内筋肉機能維持デバイス、酸素供給パイプをシャットダウン。
キャノピー開閉まで5秒前、3、2、開閉、今。
カプセル内酸素、大気へ放出。
「おはようございます マスター。
バイタル及びメンタルケア用対話型ヒューマノイド、サーナと申します」
「・・・・・・・」
護衛対象、視線を下方向83度に変更。
「どうしました」
「その・・・服・・・着せなきゃって・・・・
裸だし・・・・」
「了解 衣類の着用を実行します」
アドバンスド・ケブラー製防護装甲の着用を開始。
8
:
Vieri Terrell
:2016/01/03(日) 14:22:46
目の前の少女との出会いは奇妙なものだった。
カプセルの中に閉じ込められた裸の美少女が自分をマスターと呼んだのだから。
部屋の床の一部が裏返って出てきたケースを開け、中の衣類を着始めた。
たかが普通の衣類だというのに、なんでタンスにないのか、の疑問は捨てた。
スポーツブラ、ニーハイソックス、スパッツ・・・
それから、制服みたいなものと、妙にメカメカしいヘッドホンも。
「装着完了。マスター、ひとまず移動を」
「え、他にやることが・・・」
「移動開始 脱出の準備をしてください」
「あいでっ!?ちょ、痛いって・・・!!」
11歳ぐらいの女の子とは思えないほどの力で僕を引っ張り、隠し部屋を出た。
7:39
テレル邸 自室
自分の部屋に一旦戻ると、まだアネッタが眠っていた。
「アネッタ・スードヴァリ 起床時間を1時間39分24秒オーバー。
起こしますか?」
「後でね・・・で、ルーマニアに行くんだっけ」
「はい そのために脱出をする必要があります」
「なんだよ、逃げろだとか父さんも言っていたけど・・・
そんなに急ぐ必要があるの?」
「はい 約20分後にこの街を急いで離れる必要があります」
「・・・・わかったよ」
まずは父さんが残した自分の貯金口座の通帳、
次に自分の着替えのカバン・・・
それから身を守るために先ほど持っていった金属バット・・・
とにかく、自分が思いつける中で持っていくべきものはそろえた。
それらをボストンバッグに詰め込んで・・・
7:45
「ところでサーナ、アネッタとも一緒にルーマニアに行くことはできるの?」
「善処します。困難になりますが・・・アネッタを起こしますか?」
「・・・もういいか、起こしてあげて」
「了解」
サーナの体内から電気が高出力で発電されているような音がして。
彼女の手のひらをアネッタの頬に当てると。
「-------ッ!!??!?」
アネッタの体が飛び起きるように目覚めた。
「アネッタ・スードヴァリの起床を確認」
「ちょ、電気ショックで起こすほどじゃあないって!」
「わ、若様・・・?その子は・・・」
困惑した表情で全裸のアネッタはサーナを見て、「ああ」と嘆息を漏らした。
「ルーマニアへ逃げるから、手配急いで」
「かしこまりました 若様」
昨晩、脱ぎ散らかしたメイド服と下着を急いで着たアネッタは、部屋を出た。
その後、彼女は父の書斎へと入り、航空機の予約などをやってくれた。
「・・・・アネッタ・スードヴァリの性フェロモン量が平均女性の1.5倍を超えています。
まだマスターとの生殖行為を望んでると推測」
「ちょ、何を言って・・・・」
「生物本能として死を悟ると生殖を行い・・・」
「もういいって、急ごう」
「了解 邸宅の外にて待機」
9
:
Vieri Terrell
:2016/01/03(日) 23:34:58
7:57
イタリア フィレンツェ テレル邸玄関前
玄関の扉を開けるのは何日、いや何ヶ月ぶりだろうか。
妹の死から立ち直れず、閉じこもっていた自分が嘘みたいになっていた。
何かに突き動かされるような衝動を受けて、外の風景を直で見た。
「若様、出かける際のご挨拶を」
「逃げるんだから、そんなヒマはないって・・・」
アネッタはどこか、僕の顔を見て微笑ましそうであった。
「マスター あれが脱出の手助けをしてくれるのでしょうか」
黒いフードで顔が見えず、赤い髪で服は全て真っ黒だ。
むしろ、教授を殺したヴァーミ何某なのか、と疑ってしまう。
「・・・・・ずいぶんと胡散臭いな」
サーナという、恥じらいもない少女と一緒に歩くことが、僕にとっては苦悶であった。
なんの前振りもなしに手を繋いでくるのだから。
「・・・これは一体」
「メンタルケアです」
「僕の妹の代わりになるとでもいうのか・・・」
「ご不満でしょうか」
「・・・・ムカつくし、嬉しい」
10
:
Caolila
:2016/01/04(月) 00:00:26
08:05
カレンツィアーノ テレル邸付近
ヒヒヒヒッ、随分と雑魚メンタルのガキじゃねえか。
ロリロリのメスガキとお手手繋いで、メイドまで連れて来やがった。
まあいい、これも一応仕事だかんな。
「はじめまして、だな。ヴィエリ・テレル。
私がルーマニアまで逃がす・・・カリラ、と呼んでくれや」
「その・・・逃がしてくれるお代とか」
「出さんでいいぜ、名誉あるドレイムス教授直々の頼みだったからな。
おっと、話は後だ。あんたの親父を殺したヴァーミリオン・フェイス・・・
通称VFがあんたらを追っかけ回している。」
「・・・・はい、じゃあお願いします」
「ペレトラ空港まで車でいく、幸いここカレンツィアーノから近いからな。
近くに止めてある、さっさと行こうぜ・・・っと思ったがちょっと待て。
パスポートは持ったか?その女の子とメイドのほうもな」
「ええ、きっちり・・・」
「そんじゃ、行こうぜ」
ルーマニア、とんでもねえトコロによ・・・。
あらかじめ用意してもらったSUVにせっせと荷物だの詰め込んで、っと。
あとは空港まで向かうだけだ。
あのドアホ、ヴィエリのガキがとんでもねえもん連れてきた事を知らずに居るな。
「窓にスモークがあるが、一応伏せてろ。
VFとは別であんたらを狙うヤツも多いからな・・・・」
「イタリアンマフィアとか・・・ですかね?」
ヴィエリのガキが質問してきたが、
「そんなチンピラ共じゃない、もっとデカいトコロさ」
と返してやった。
「・・・・・・・」
完全にヴィエリのほうは緊張しきってるが、
あの小娘とメイドは妙に落ち着いてやがる・・・まあいいか。
普通に空港にはたどり着いてあとは乗る時間まで待つだけ。
どこかでVFのヤロウが襲いにかかると思ったが、杞憂だったかね。
11
:
Vieri Terrell
:2016/01/04(月) 00:20:22
12:04
イタリア フィレンツェ ペレトラ空港
シェンゲン協定。
ヨーロッパ国家間にてパスポートを必要とせず国境を通過できることを認める協定であり、
西欧各国や、北欧などの大抵の国は同協定に締結している。
ルーマニアは2018年になって締結をしたが、パスポートを必要としている。
2015年と去年のパリにおけるテロがあったこともあり、簡易ながらも入国審査がある。
また、過去ではペレトラ国際空港からルーマニア首都ブカレスト近くのアンリ・コアンダ国際空港へ直接飛ぶ便がなかったが、
ルーマニアの経済が発達したことにより、近年になって就航した・・・・。
と、アネッタから説明を受けたが彼女がバストを僕に押し付けて、説明が頭に入ってこない。
メイド服とエプロン越しでもその柔らかさには驚くばかりで、昨日の夜を思い出すばかりだ・・・。
「若様、お父様やお母様、妹様が居なくなっても・・・
私がずっとお傍に居ますよ」
「・・・・・マスター、実は私のメンタルケアなど不要などでは」
無表情ながらも、どこか凄みのある声で言われた。
「そんなことはないさ、ああと、その・・・」
「了解。メンタルケアの任務を続行します」
「ごめん・・・」
それにしても・・・
本当にこんな子を人工的に作るだけだったのだろうか?
父さんは、何かまだ隠しているはずだ。
あと、あのカリラという女だか男だかわからない変な人も怪しい。
・・・・もしかして、オカマなのだろうか?
というか、パスポートにどっちの性別が記されているのだろう。
いやに疑問だけが残るが、今はそれどころじゃない。
<<13:12分発、666便 ルーマニア アンリ・コアンダ行きの・・・>>
「搭乗する時間です若様、行きましょう」
「カリラさーん、そろそろですよー」
「へいへーい・・・」
12
:
Vieri Terrell
:2016/01/05(火) 02:40:43
ルーマニア行きの機内で、それぞれの座席10列目は左から、
サーナ、アネッタ、カリラ、通路を挟んでヴィエリ、ドレスを着た美しい女性、そして日本人の男性である。
約3時間強の空の旅で、1時間ほど経過しただろうか。カリラの視線が自分に突き刺さる。
「・・・・カリラさん・・・?」
「カリラでいいぜ、お荷物。んで、何だよ」
「あ、はい・・・他の国でもいいのに、何故ルーマニアなんですか?
テレル家のコネでいくらでもアメリカとかに行けるというのに」
それも妙に引っかかる。父との連携が出来すぎているし、
そもそも父は前もって死ぬことを予期しているかのようだった。
「ったく、箱入り息子は化石の思考してんなあ・・・むしろ先進国は危なくなってきたんだ。
フランスでのテロがあれほど凄惨で、過去のイスラム国の連中は先進国にテロを仕掛けると宣言してただろ。
ルーマニアもだいぶ前じゃあ治安はド腐れだったが、政府による統制で治安も向上したのさ。
もっとも・・・まだブカレスト付近くらいで、他は前と変わらねえが。
それと、ウチの知り合いっつーか雇い主の元はシェルターより安全だぜ。
おめーの親父も信頼できるだの言ってるハズだがな・・・。
まとめると、先進国では逆に危ない、お前らのようなワケアリを逃がすにゃあルーマニアがちょうどいい。
理解したか?」
「まあ・・・だいたいは」
聞いていれば、このカリラは父の言動も把握している。
だが、他に頼るところもないし、今はこうするしかないのだろう。
「それで文句なしだろ、お荷物さん」
とはいえ、口調があまりにも悪いものだ。
報酬もヴィエリもとい父の口座から貰わないというし、薄気味悪い。
「でも・・・東欧かあ。
イタリアのパスタやチーズが恋しくなるなあ・・・」
そうヴィエリがボヤいていれば、会話を聞いていただろうドレスの女性が、
「ルーマニアにもチーズはきちっとあるよ、ぼっちゃん」
と、話しかけてきた。そのまま続いて、
「さっきの話は聞いていたわ。イタリアでの暮らしが苦しくなったのね。
何があったかは聞かないけれど、ルーマニアは西欧に劣らない場所よ」
話しかけてきた女性はあまりにも美麗なもので、見とれてしまった。
少しハネのある長い黒髪をなびかせ、肌が白く、吸い込まれるような瞳。
「ああ、はい・・・帰国か何かですかね?」
「まあそんなところよ。イタリアのお菓子を買いにね」
「なるほど・・・その、チーズがあるっていう話なんですが」
「ブルンザね。だいたいは牛かヒツジの乳で作られるの。
ヤギ乳はあんまりないんだけれど・・・」
「大丈夫です、むしろ牛とかのほうが好きで」
「へえ、奇遇ね。現地のルーマニア人もヒツジ乳のものを嫌う人は少なくないの。
私もなんだけれど」
ドレスの貴婦人とは、チーズの話で会話が弾んだ。
カリラの視線が先ほどより強く感じるが、些細なことと思えた。
そうしているうちに、自己紹介をしていなかったので、
「申し遅れました。ヴィレリ・テレルと言います」
「リヴィア・ペルセフォニーよ」
と、互いに名前を教えあった。
13
:
SANA
:2016/01/05(火) 02:49:59
「・・・・・」
私は、嫉妬をしているのでしょうか。
マスターが私と関わりたくないように見えるのです。
それに、アネッタ・スードヴァリやマスターが今会話しているあの女性とは打ち解けている。
私という存在は不気味なのでしょうか。
・・・窓から見える雲海をぼーっと見て、雑念を忘れることにしましょう。
教授が見せてくれた世界は、とても広いです。
・・・・見るのは飽きました。
マスターと話している女性をスキャンしてみることにしましょう。
・・・・・。
リヴィア・ペルセフォニー。
血圧、不明。脳波、不明。結論、測定不能。
おかしいです。起動して早々にバグを起こしているのでしょうか。
スキャン機能診断チェック開始・・・オールグリーン。
マスターのバイタル、正常・・・・。
リヴィア・ペルセフォニー、測定不能のまま。
・・・・・。
再度、空の風景を見ることにします。
14
:
Vieri Terrell
:2016/01/09(土) 00:23:38
ドレスの女性、リヴィアとの会話も尽き、彼女は仮眠を取った。
その際に、日本人の男性に日よけを降ろしてもらって、瞳を閉じた。
どうやら、その純白の肌は日光に弱く、疲れがたまるほど、だそうだ。
「・・・・・」
考えすぎなのだろうか。
サーナがどこかカーラに似ていたり、
”カリラ”と”カーラ”という・・・
あの日のことを思い出せ、と暗示しているかのようである。
「・・・・カーラ・・・」
「あん?」
カリラが呟きに反応したが
------とっさに彼、いや彼女か?どちらでもいいが------
聞き間違いで妹の事と察したのか、こっちを見るのをやめた。
サーナは自分の事をじいっと見つめている。
あのまま生きていれば・・・。どうして一人で先に死んでしまったんだろう。
<<まもなく 着陸態勢に入ります シートベルトの着用を・・・・>>
15
:
Vieri Terrell
:2016/01/09(土) 01:16:22
空港の滑走路へアプローチする針路を取る途中のことである。
サーナ達左側の窓から情景が見えた・・・らしい。
ブカレストでもひときわ目立つ豪邸だが、あれはルーマニアの財団のものらしい。
そこで、アネッタが、
「ペルセフォニー財団です。最近力をつけてきた組織だそうで・・・
ちなみに、若様の隣に座ってらっしゃるあの人こそ、
当財団の代表、リヴィア・ペルセフォニーです」
「なん・・・!?」
ヴィエリは困惑するしかなかった。
そんな大物が何故小型旅客機のビジネスの椅子に座っているのか。
そもそも、偶然にもヴィエリの隣だったのか。
カリラのことも、この逃亡のことも、ますます怪しく思えてきた。
「わかっちゃねえな、アンタはあのドレイムス教授の御曹司だろうが。
規模のデカいところが引き取るんだよ。文句あっか」
「それなら先に言ってくださいよ・・・」
「更に・・・おっと、言ってはならんな。
まあ、そういうことだ。アンタらをここに逃がすよう命じられたんでね」
そんな会話などどこ吹く風、サーナはいつまでも窓から空を見続けていた。
16:59
ルーマニア ブカレスト アンリ・コアンダ空港
飛行機が着陸し、機体のドアから出てタラップを降り、流れてきた荷物を手にする。
長蛇の行列を並び、入国審査を受けたヴィエリは勿論、彼以外も入国許可のスタンプを押された。
もっとも、カリラがどうして入国できたか、はもう考える事を諦めるようにした。
財団のコネだろう、と割り切らなければ、ヴィエリは困惑で倒れるだろう。
18:22
空港エントランス付近にまでたどり着き、外へと出ようとした時のことである。
「空港を出た先に連れが待ってる。
さっさと出て、シェルターより安全なセーフハウスへ行くぞ」
黒フードのカリラが先導し、ズカズカと歩いていく。
アネッタはやけに重い荷物の取っ手を掴み、涼しい顔で引っ張っている。
「・・・・あれ、ですかね?」
そのアネッタが指差している男は、覆面の男のナイフに刺され、血あぶくを吐いて倒れた。
「・・・んだとォ?」
とっさにカリラはヴィエリを乱暴に柱まで引きずり、遮蔽物となるよう投げ飛ばした。
「な、何を アイデッ!」
投げられた時に頭部が床とぶつかったが、そのことを訴える余裕などなかった。
乱立する銃声。しかし、覆面の男は誰も殺してなどいない。
続いてアネッタが20kgはあるスーツケースを軽々と盾にしながら、とっさに別の遮蔽物へと飛び込んだ。
サーナはヴィエリのもとへと駆け寄り、ヴィエリを包まんとするかのように、抱きついてきた。
「・・・・サーナちゃん・・・?」
「マスター 怪我は」
「カリラさんに投げられた時に頭をね・・・」
そのカリラがどこに居るかなど探そうとしたが手遅れで、見失った。
「なんだよ・・・あれじゃあ職務放棄じゃないか・・・」
「動くな! ここは我ら”白銀の集い”の拠点とする!
諸君らはこのルーマニアの体制と交渉するための貴重な存在であり、
それらを無闇に殺傷する意図など決して無い事に安心していただく!!」
カラシニコフの銃の派生など、いかにもロシア系の武装を構えた覆面の集団。
彼らは銃のトリガーを引いたまま天へと銃口を向け、空港に居る全員を人質にした。
2時間後 20:34
彼らがここを思うが侭にできるようになるまで、時間はかからなかった。
テロリストにしては組織的かつ大規模なもので、まるで軍隊のようなものであった。
「空港全域、制圧完了です。
逃亡を試みた職員及び一般人は射殺、死体は処理しています。
旅客機内のパイロットはMチームが射殺しました」
「ご苦労。エントランスに集めたこいつら、これで全員だな?」
「はい、トイレに隠れていたりしていました」
「・・・・わかった。警備にあたれ。」
「イェス、シルバリオに輝きを!」
空港のあらゆる窓という窓はシャッターで遮断され、
おそらく外では警察や軍隊が包囲しているだろう。
解放も時間の問題と思えた。
16
:
SANA
:2016/01/09(土) 01:31:49
21:06
状況報告。
想定されていたシチュエーション「X」に遭遇。
現在、マスター、私、アネッタ・スードヴァリ及び覆面の人物3名が周囲を警戒。
位置情報、アンリ・コアンダ国際空港 スタッフルーム。
問題対処をシミュレート中。
「あー・・・捕まっちゃいましたね、テロリストに」
「テロリスト・・・・こんなことをするには目的はあるはず。
たとえば、誰かのための身代金を欲しがったりとか。
・・・・まさか、目的はリヴィアさん? 助けなくては」
「マスターでは不可能です 増してやアネッタ・スードヴァリが居る状況下です」
リヴィア・ペルセフォニーの位置情報、獲得できず。
マスターの行動原理、不明。
「・・・・・僕に抱きつくことで手一杯ってことかい。
父さんが作ったどうたらこうたらとか言うけど、それだけなんだね」
マスターの声音及び脳内伝達物質から憤りを検知。
「・・・・・・・いえ」
「じゃあ・・・・!!」
「静かにしたまえ。
君達は人質の身であることを忘れるな」
「・・・・・・」
覆面の男の一人目の声紋情報取得。
「なんだこのヘッドホンは・・・外してもらおうか」
二人目、声紋情報取得。
「・・・・・拒否します」
「何を、こっちが下手の態度に出れば付け上がったものを・・・!!」
「よせ、K。所詮は子供だ・・・本気になるもんじゃない」
三人目、声紋情報取得。
「・・・・・・」
「まあいい。最低限に傷つけずと言ってたしな・・・」
「じっくりこいつらを見張っていればいいし、あんまり焦るなよ」
「おう・・・」
17
:
Topaz Guard X-RAY Team
:2016/01/10(日) 15:05:09
同時刻 ルーマニア ブカレスト アンリ・コアンダ空港前
あー、静粛に。ブリーフィングを開始する。
ルーマニア首都ブカレストにあるアンリ・コアンダ国際空港が占領された。
空港内の職員及び観光客はエントランスに集められ、そこで捕えられている。
占領したルーマニア内武装レジスタンス組織「白銀の集い」は、
空港の解放と引き換えにある条件を要求している。
ひとつ、ルーマニア政府による能力者至上主義での国政からの解放。
ふたつ、空港内の人質の身代金として2700万ドル。
みっつ、ドレイムス教授の息子であるヴィエリ・テレル及び、
財団の代表であるリヴィア・ペルセフォニーの拉致を幇助するSUV3両の配置。
なお、この要求は現在時刻から約15時間後、翌日の正午までに要求を満たさない、
または軍や警察による突入作戦が決行された場合、彼らは人質を虐殺、
更に空港の旅客機及び施設を爆破、その後ペルセフォニー財団への攻撃を決行・・・だそうだ。
こうなれば空路による流通や観光等のインフラが破綻しかねない。
白銀の集いはこれらを見る限り、テロによる政権転覆を狙っている。
・・・ルーマニア政府は要求を飲むわけにはいかないだろうな。
そこで、軍も警察も身動きができない政府及びペルセフォニー財団は我々に依頼をしてきた。
依頼内容はアンリ・コアンダ空港のレジスタンスの無力化及び人質、
救出対象であるヴィエリ・テレルとリヴィア・ペルセフォニー氏の無傷での解放を行うこと。
空港内は携帯可能な展開式シャッターで外界から遮断されている。
ただし、遮断できないであろう通気口まではシャッターに塞がれていない。
そこからエントランスへ侵入し、人質の安全を確保、シャッターを解除せよ。
そこからはクェベック隊が突入、一気になだれ込み空港の解放を実施する。
それまでX-RAY隊は人質の防衛を行え。
困難な依頼であるにも関わらず悪い報せだが、ジョニー少尉を生死の境界へ追い込んだ、
VFらしき赤いローブの人物が当地域にて確認された。ヤツもこのテロに一枚噛んでると想定される。
ヤツとの交戦が予想されるが、その場合はヤツの仮面を正面から攻撃、破壊せよ。
デトロイトで発生したジョニー少尉の交戦ログでは、ヤツの仮面に損傷を与えた時点でヤツは撤退する。
作戦のブリーフィングは以上、30分後に作戦を開始する。
君達の成果に期待する、解散!
18
:
Vieri Terrell
:2016/01/10(日) 15:40:53
21:27
アンリ・コアンダ空港 スタッフルーム
「・・・・・」
あれから3時間だろうか。
外の様子もわからず、ずっと椅子に縛られて座ったままだ。
「わ、若様」
アネッタがモジモジと顔を赤らめて、腰部をくねらせている。
「・・・どうした」
「も、もれりゅ・・・お、おトイリェ・・・」
呂律が回らないほどであり、今にも彼女の履いているショーツが潤いそうである。
「あのー・・・トイレ行きたいんだそうです。僕もなんですけど・・・」
と、覆面の男達に、行かせてもらうよう頼んでみると。
「・・・・K、どうするよ」
「ダメだ、ここに閉じ込めておけとボスからの通達だろ」
「だがよ、この部屋をオシッコ臭くするのもアレだって」
「それはそれでいいんじゃないか?」
議論をしている余裕もない、とアネッタが目で訴えている。
「バカ言うな。連れて行くぞ。 F、一人でこの娘を見張ってろ」
「わかったよ、KとNは一人ずつ連れて行ってやれ」
「おうよ。さあ行くぞ。妙なマネすれば撃つからな・・・」
一旦、二人の縄を解かれ、トイレへと連れて行かれた。
ヴィエリのほうは男子トイレでKという男に見張られながら用を足すことになり、
一方アネッタは「女子トイレに男の人が入るのは・・・」というわけで、女子トイレ前でNが待っている。
2分ほどだろうか。 ・・・アネッタが戻ってこない。
女性のトイレには時間がかかるもの、というのはヴィエリの中での常識だが、妙に遅い。
「・・・遅いですね」
と、ヴィエリ自身もボヤくほどであった。
「トンズラしたか?あの女」
「いや、メイド服だしあのスカートが原因で時間がかかっているんだろう」
「まさか?2分もかかるのかよ?」
「ったりめえだろ、男じゃあるまいし」
「・・・・男のくせしてメイドということも」
「アホか! そんな変態なヤツがメイドだったらヤバいって!」
「そ、そうだよな・・・?」
「かなりの美人でそれなりにおっぱいはあったんだ!
あれで男というのはおかしいさ!」
「・・・・・しかし、来ないな。俺が見に行く。 N、このガキを見張ってろ」
「あいよ」
と、Kが女子トイレの扉を開けた瞬間である。
「デェラッシャオラァアアアア!!!」
と、アネッタがハイキックで扉を蹴飛ばし、そのままKが吹き飛び、Nにぶつかった。
「どわああ!?」
「ぎえッ!!」
「女子トイレ入るたぁいい度胸してんな、オス共め!!
この!この!! 待ち伏せしてりゃあ男の疑惑とか抱きやがって!!
ブッコロ!!ぶ・・・・!!」
倒れた二人の覆面男の頬と腹を蹴り、気を失わせるほどのいたぶっているサマ。
これまでヴィエリが見てきた彼女とは思えない形相と口調には、
「・・・アネッタ?」
と困惑でいっぱいの声で呼びかけるしかなかった。
「ハッ・・・わ、若様。この男たちも片付けたし、サーナちゃんを助けに行きましょう。
この銃をぶんどって、ね?」
「あ、はい・・・・」
男ヴィエリ、一生忘れないあの豹変ぶり。
彼が後に老人になっても、このインパクトは記憶にとどまり続けたらしい。
19
:
SANA
:2016/01/10(日) 15:49:36
その頃、
「・・・・・・」
「・・・11歳くらいかぁ・・・」
Fという男の心拍数の上昇を確認。
脳内伝達物質の測定・・・。 私に性的興奮であると断定。
「・・・何か」
「我慢できねぇ・・・
いつまでたっても据え膳食わぬ男じゃあ童貞卒業できねぇ・・・・」
「私に生殖機能はありません」
「いいんだろ、ちゃんと女の子の証拠あるんだからよぉ・・・」
・・・・・気持ち悪い、という感情を学習。
「KとNは戻ってこねえ・・・・先に失礼するよ、ってね・・・」
「拒否」
「そういっても、縄で縛られた君に拒む事はできないだろうさ・・・」
「・・・・・」
Fの股間部露出を確認、勃起時の推定サイズ、10cmと予測。
「・・・・・・・自己防衛、実行」
「へ?」
能力安定デバイス、起動・・・。
20
:
Vieri Terrell
:2016/01/10(日) 16:06:38
覆面の男達から奪った銃を構えながら、スタッフルームの扉を開けた。
そのスタッフルームの壁紙は、赤い血でランダムに染まっていた。
「・・・・・なんだこれは」
「外敵の削除を実行しました」
「サーナ・・・?」
「・・・何か」
こんな部屋になっても無表情のサーナである。
死骸になっている覆面の男は部屋の奥でもたれかけ、股間部が消滅している。
その他にも、内蔵が露出したり、頭部の一部が消し飛んでいたりした。
「君がやったのか・・・」
「はい マスターのためにメンタルケアの準備を」
「・・・・・・なんだって・・・」
これじゃあメンタルケアどころか、逆に向かっている。
アネッタがあまりのグロテスクに口と鼻を抑え込んだ。
「では リヴィア・ペルセフォニーの救出へ向かいましょう」
と、何事もなかったかのように喋るのだから、
「そうだね・・・」
唖然とするしかなかった。この女の子がどう殺したかもわからない。
周囲を見渡しても、あれほどの欠損になるであろう凶器の類は見当たらない。
「・・・・・マスター?」
部屋を出ようとしているサーナが、急かす。
「・・・・・・・君は何者なんだ」
「バイタル及びメンタルケア用対話型ヒューマノイド サーナです」
この女の子は、どこまでもおかしい。
21
:
Caolila
:2016/01/10(日) 18:25:16
21:11
アンリ・コアンダ空港 2番搭乗口付近
「・・・・・大将。あんたここに隠れていたわけですな」
コンテナを開けている私が大将と呼ぶその人物。
「棺桶そっくりだからのう、きゃつらが荷物まで調べんとは愚かなことじゃ。
それはよい。跳ねッ返り共がやりおったわ、わらわの地でな・・・」
リヴィア・ペルセフォニーその人だったが、
ヴィエリのガキが機内で見たあの美麗さとは違う。
冷血で、どす黒い気を放っているようにも見える女傑・・・ああ怖い。
「あのガキの護衛については失敗しました。
まさかヒマワリが"白銀の集い"に武器と人員を供給していたとは」
白銀の集いはルーマニア製カラシニコフ系ばかりだが、
私はとっさにあれの銃声を聞いた。あれはここで作られたものじゃない、ともわかる。
「・・・・フン、あ奴にとってわらわは始末せねばならぬ存在だからな。
そのために九尾も動いておろう?」
フッ、と笑いながらニヤつく大将。まだ余裕綽々の顔を見せるもんだから、
私の知らんどこかでいくらでも策は講じてあるんだろうな・・・。
「ええ。こちらに向かっていると諜報班が」
「手が早いのう・・・彼らはよくやってくれおる。
あとはわらわがあの小童らを引き取ればよい。
カリラ。まだしくじっておらんぞ。
せいぜいレジスタンスの阿呆と九尾に傷つけられんよう護衛を頼んだ」
「ハッ、ありがたき許しとやらです」
左ひざをつき、忠誠を示す。それが、この大将に選ばれた者達の礼儀の一つだ。
その昔・・・・・「怪異」と呼ばれるリヴィアを殺せ、という依頼を受けて、大将とやりあった。
だが、私よりも力だけでなくカリスマがあった大将には勝てず、死に掛けになった。
このままくたばるかと思いきや、大将が私を拾い、今の私が居る。
敵をも味方につけ、素質があるものを適する場所に置いてやる。
大将のやり方にロマンを感じたからこそ今の私があるってわけだ・・・。
22
:
Vieri Terrell
:2016/01/10(日) 18:43:47
21:25
1番搭乗口付近
スタッフルームを出て、搭乗口付近まで進んでいく。
ここまでで、白銀のなんたらという覆面男の集団は居なかった。
おまけに、電気が通っておらず、真っ暗だった。
「・・・・若様」
「マスター」
二人が、ヴィエリに呼びかける。
ソファに居座っている人影が見えた。
アネッタは身構え、サーナはそれでもなお無表情だ。
「動体センサーに反応・・・・パターンを確認。
カリラです」
「カリラさんか・・・」
「その通りだ、みなの衆」
カリラがソファでくつろぎ、ニヤリと笑う。
その笑みはフードに隠れて、口しか見えない。
「今までどこに?仕事を放置して・・・」
「仕事も大事だ、だが依頼人も大事ってことよ。
あんたが愛しく思うリヴィアの大将は無事だぜ」
「いや、リヴィアさんについてはそういうつもりじゃあ」
「照れるなって。まあそれはいい。
大きく予定がブレたが、下の滑走路でお待ちだ。
きっちり、あんたらの荷物もこっちが確保してる。
あとは大将とご対面してトンズラこくだけだ」
「・・・・ここの空港の人質はどうするんですか」
「気にすんじゃねえ、私とは別で始末屋を雇ってある。
ちゃんとそっちの見張りは潰したんだろうな?
でなきゃ、あんたの心配する人質は皆殺しだとよ」
呆れ顔のカリラが、ヴィエリへ眼光を光らせる。
「どういうことです」
「大将はまだ見つかってないからいいとしてだ。
あんたらが逃げ出したと知れば連中が何やるかわかったもんじゃねえ。
空港を爆弾で吹っ飛ばすことも辞さんだろうさ」
「な・・・・・・・!!」
23
:
Topaz Guard X-RAY Team
:2016/01/10(日) 19:30:52
21:30
空港 入口前
「・・・・これより作戦を開始する。
X-RAY隊はエントランスを制圧、行くぞ」
「ハッ」
漆黒のスーツ、所属が肩に記されてなく、顔もHMDで隠れている。
そんな黒ずくめの集団が通気口に入り、ダクトを軽々と通る。
エントランス天井裏まで到着、各員配置完了。
「・・・・・」
暗視ゴーグル着用せよ。
ラジャー、了解、アファーマティブ。
「・・・・・・・・」
合図で仕掛ける、それまで待機せよ。
同時刻
空港 エントランス
「・・・・まだ見つからんのか、リヴィア・ペルセフォニーは?」
「はい、探してもいなくて・・・」
「よく探せバカモンが・・・。
ヴィエリ・テレルらのほうはどうなってる」
<<ちら・・・N、J・・・・>>
「NとJか どうした・・・」
<<くそ・・・Fが無残にやられた・・・
俺達もパッケージを取り逃がした、なんてことだ・・・>>
「すぐに奪還しろ。 追え」
<<無理・・・です・・・・頬を蹴られた・・・・
顔がグチャグチャで・・・内臓もグチャグチャだ・・・>>
「チッ、無能が・・・」
指揮官らしき男がルーマニア製の74のトリガーに指をかけたその時である。
強烈な閃光、そしてスモークがエントランス全域に突っ込み、
それの後で銃声が覆面男たちの居る人数と同じ回数、鳴り響いた。
「GO、GO、GOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」
「クリアー!」
「クリア!!」
「エネミーダウン、エネミーダウン!!」
「人質の安全を確保、シャッターを外せ!!」
人質である職員や観光客などが怯えているが、気にせずX-RAY部隊の半数はシャッターを解除。
「シャッターを解除! クェベック、飛び込んで来い!!」
<<こちらクェベック隊了解、突撃開始ィィィ!!>>
XとQ、二つの部隊が行動に移した後には、覆面男の死体たちが地に伏せていた。
もれなく、である。
更にはスモークの状況下で人質に誤射することなく、敵を撃っていく。
<<こちらCP X-RAY部隊各員に通達。
人質の中に怪我人は居るか、オーバー?>>
「こちらX-RAY8、60代女性が両足をやられている。
担いで救出します」
<<CP了解 VFが来る可能性もある、油断するな アウト>>
24
:
Vieri Terrell
:2016/01/10(日) 20:13:25
X-RAY部隊が排気口からの奇襲をかけ、"白銀の集い"の武装兵士を射殺、
エントランスへ突撃し人質を救出したのと同じ頃である。
ヴィエリらはカリラに連れられ、リヴィアの待つ2番搭乗口まで来ていた。
「やあ、ぼっちゃん」
「・・・リヴィアさん?」
あの機内で見せた"リヴィアさん"の顔でいた。
「カリラから聞いたわ。私を助けようとしたんですってね」
「あ、いや・・・まあ生きていて何よりです」
「心配してくれてありがとう。それよりも、私のところに来るんだったっけ?」
「はい、今後はお願いします」
「こちらこそ ヴィエリ・テレル・・・」
二人が歩み寄り、右手で互いの手を握り合う。
「ようこそ ルーマニアへ」
.
.
.
.
「そして、わらわの世界へ」
リヴィアの顔が怪しい笑みを浮かべた。
「え?」
握手した手をつたって抱きしめ、リヴィアがヴィエリの首筋に噛み付いた。
ドクドクと血が噛まれた位置から漏れ出していく。
全ての血が首筋から外界へ出て行くわけではなく、
ほとんどの血がリヴィアの口へと伝わっていき、ゴクゴクと飲み干す音がヴィエリの耳朶を打つ。
リヴィアが纏う香水の匂いがヴィエリの鼻腔をつつく。
いい匂いと苦痛のサンドイッチが彼の脳内を混乱させる。
「・・・・・・あが・・・リヴィ・・・!?」
一体どうなっている。この人は、何をしている?
この人は僕の血を・・・飲んでいる?何故だ?
僕を引き取るっていうのは・・・こういうことか?
裏切ったのか、いや 違う・・・?
僕・・・・・は・・・・・?
・・・・・。意識が遠のく・・・。父さんやカーラ、母さんの所に行くのか?
「リヴィア・ペルセフォニー及びカリラを敵と断定 戦闘開始」
サーナが言っている事、何を物騒な・・・・?
・・・・・こんなことに巻き込んで・・・ごめ・・・ん・・・・・・
ヴィエリの意識が闇へと沈み、カリラに担がれていく。
「"若様を引き取る"、なるほどね。上等じゃないの!!
騙してくれたわね、ド畜生共め!!ブッコロだわ!!」
激昂するアネッタの怒号が聞こえる・・・。
ルーマニア製74の銃弾がリヴィアへ向けて乱射されるも。
「ふふ・・・わらわの眷属になったヴィエリは戻って来ぬよ。
それに、家族全てを失った彼にはわらわの元におるがよいわ」
影を操る能力者、リヴィア・ペルセフォニー。
その影は盾にも、矛にもなる。
「そういうこった、ここまで連れてきた報酬はヴィエリとそのサーナってわけさ!!
だが、私はあんたらとやりあう気はないね・・・大将!頼んだぜ」
そのリヴィアに雇われた始末屋、カリラ。
空港で起きる戦闘。世界は、彼らは憎悪に侵される。
未だ生死を彷徨うジョニーは来るのか?
まだルーマニアで姿を現さないVFはいずこへ?
TO BE CONTINUED.........
25
:
SANA
:2016/02/05(金) 17:09:17
戦闘開始から2分経過
すでにカリラはマスターを拉致、ペルセフォニー財団本部へ移動開始。
追跡を実行するも、リヴィア・ペルセフォニーによるマスター奪還への妨害を受け、交戦中。
自機及び敵の損傷、依然0。
エネルギー消耗率、5.2%。
「・・・アネッタ・スードヴァリ。貴女の戦闘への参加は危険です。
リヴィア・ペルセフォニーとの交戦は避けてください」
「あァん!?」
当然、この人はうろたえます。ええ・・・マスターに危害を与えたのですから。
「対象の戦闘能力は高く評価できます。それに・・・」
エネルギーフィールド、出力上昇、チャージ・・・。
「クハハハハッ!! わらわに直接楯突く者共など久しぶりじゃのう!!
だが、本気のホの字も出てないというのに苦戦か、おぬしら!!」
敵の攻撃、"影"の人形及び"影"による鎌状の刃物。
襲い掛かってきた"影"の人形をエネルギーフィールドの放射で相殺。
鎌状の刃物を左へ回避、成功・・・。
「マスターは貴女の生存を望んでいると推測できます」
「とはいえサーナ・・・!
あのド腐れに手を出さないのはナメられてるわよ!」
アネッタ・スードヴァリから冷静さを感知できず。
「マスターを誘拐したド腐れカリラの対処をお願いします」
「・・・・・わかったわ」
ルーマニア製74の破棄及びアネッタの移動を確認。
「アネッタ・スードヴァリの援護開始」
「あのフードオカマを潰して若様を助けてやる・・・!」
26
:
Livyjah Persephony
:2016/02/05(金) 17:25:13
「ほう・・・片割れはカリラに任せるとしようかの・・・。
小童だけでわらわの相手は充分・・・だったな」
コイツ・・・見た感じ人工的なブツか。
ドレイムスも随分ヒマであったとみた。
「リヴィア・ペルセフォニー」
「んむ?」
この小娘がわらわの名を呼ぶ。
その声は無表情の顔と相容れぬ憤怒の声じゃ・・・
「マスターが貴女に噛まれてから貴女同様心拍数が感知できません。
その理由の回答次第では貴女の死体を完全消滅させることになります」
完全消滅、とな。ああ恐ろしいのう。
ドレイムスはとんでもないシロモノを作り出したか。
そのシロモノである小娘の能力はエネルギーの塊を飛ばしたりする力か・・・
あの小娘の周囲は見えるほど強力なエネルギーが見える。
その力を引き出す回答をしてやるか。
「ふむ、わらわのもとで生きるしか道がない男を引き取ってやったのじゃ。
そのために最適な方法をとったまでよ・・・
おぬしらとは違って、ワケアリだからな。
安心せい、その副作用でわらわの忠実な僕にしただけじゃよ。
おぬしらも攻撃を止め、わらわの眷属になるべきじゃ、問題なかろう?」
「・・・リヴィア・ペルセフォニーの完全消滅を実行します」
ハッ、この小娘キレおったわ。無表情は相変わらずじゃがな。
それに、きゃつのヘッドホン、あれは能力安定デバイスか。
最大出力と思わしき挙動か、獣の耳の形に変わりおったわ。
おまけに余剰エネルギーが背中から漏れておる。
翼の形をしておるが、浮遊能力は無いとみた。
「そのセリフはわらわを打ち倒してからにせい、小娘が!!」
少々本気を出してもよいか・・・。
あの坊やの血がわらわと同調してきたしな。
27
:
SANA
:2016/02/05(金) 18:00:44
「むんッ!!」
リヴィアの影の能力が熱量を持ち、炎に変化。
黒炎が二次元的に私の周囲を囲い、退路を徐々に抹消。
おそらくこれは行動を誘導させるためのデコイ。
抜け穴である上方へ飛び出せば迎撃を受けると想定。
私は次の行動を実行。
「・・・・」
エネルギーフィールドを纏い突撃。
そして、防御から攻撃へ移行し、刺突する武器へ変形。
「ふむ、悪くない・・・多少の犠牲は構わんタイプか」
リヴィアの影から長槍が出現、格闘戦へと移行。
「甘いわ・・・」
さらに縄状の物体が出現、格闘戦を中止、中止・・・。
「・・・・回避」
不能。回避不能。束縛状態。
「影から出るものの制限があると思ったか、たわけが!」
影の散弾のほぼ全てを被弾、被弾・・・。
「・・・・」
エネルギー放出による強引な脱出は不能、自傷行為になると想定。
束縛によるダメージは現在軽微。危険状態。
「・・・・・」
脱出を実行・・・不能。
「安心せい、殺さん程度に留めてやる。今降伏すれば痛めることはせん」
「・・・・拒否」
背部の余剰エネルギーを攻撃に転換、束縛を破壊。
そのまま前方へ放射、リヴィア・ペルセフォニーを攻撃。
「ほう、さすがにこの手に乗らんか・・・」
対象の衣類、ドレス先端の消滅を確認。
消滅率、およそ0.3%。交戦を継続。
対象は長槍に加え防御手段:シールドを展開。
リヴィアへ接近、エネルギーを刺突形状へ再変形。
「まだ格闘戦をやる気か、懲りないのう!」
対象の長槍から炎の放射。エネルギー変形:攻防一体、獣の頭部状へと変形。
炎の破壊を確認、このまま突撃を実行。
・・・・・被弾。背部からの被弾・・・損傷検出中。
転倒、復帰を実行・・・。
「甘いわ、わらわの影からだけ武器だの出る能力と思いおって!」
「・・・・ッ」
余剰エネルギー放出モジュール損傷・・・機能停止に至らず。
攻撃手段は背部からの散弾と想定。
攻撃を続行、被弾箇所の考慮をカット。対象へ肉薄。
「バカのひとつ覚えか」
自機の影からの拘束縄及び影の炎が出現。
更に対象の長槍による右からのなぎ払いを確認・・・
「・・・・・」
エネルギーフィールドを手の形状に変形、長槍を相殺の形で破壊。
背部からの炎と縄は余剰エネルギーを放出させ、撃退。
最大出力の限界時間、残り12秒。
28
:
Livyjah Persephony
:2016/02/05(金) 18:37:21
「・・・・・・こやつ」
最大出力とやらにしても、やることが稚拙か、小ぶりすぎる。
遠距離からチマチマ砲撃級の攻撃をやればよい。
メイドへの攻撃を逸らすという目的だとしても、自己犠牲が過剰じゃ。
それに、この被弾も構わない最低限の防御。
自殺行為に過ぎないじゃろうが、何故だ・・・?
「・・・(何を企んでおる)」
その思慮の束の間、間合いを詰められた。
影の槍の展開、それでは遅い。炎を出すにしてもわらわまで火あぶりじゃ。
「・・・・・・照射」
こやつ、この近距離でド派手な攻撃をやらかす気だったか・・・・!?
死なばもろともの勢いでやるとは・・・!!
じゃが、その照射らしき攻撃はわらわに向かれてなかった。
明後日の方向どころか、むしろ上だ。
虚空に向けてエネルギーを照射しおる。
それは瞬間的なものではなく、続けての攻撃じゃ。
この巨大なエネルギーの発射による余波の光でわらわのドレスと皮膚が多少焦げた。
・・・あまりにも気味が悪すぎる。こやつの行動理念が通常ではない。
そこが人工能力者であるこやつ”ら”の恐ろしい点じゃ・・・
「何のつもりじゃ?」
「・・・・・・・迎撃です」
「何ィ?」
そうわらわが言ったと同時じゃった。
この小娘が撃った方向の空が突然光り、爆音が遅れて空港に響いた。
この熱量、小娘が迎撃とやらを行ったのは巡航ミサイル群。
「推定ですがコマナより巡航ミサイル23発の発射を確認。
着弾位置はこの空港と計算しました」
「・・・・ほう?」
あの辺りに白銀の集いの連中が居たというのか?
いや、違うな。雇ったPMC共が全員始末したはずじゃ。
おそらくはこのブカレスト付近で確認された・・・
VFか!?
「この巡航ミサイルにより貴女の完全消滅が可能でした。
しかし、マスター及びアネッタ・スードヴァリに危害が加わると判明したため、
エネルギー最大出力の砲撃による迎撃を実行。
追記しますと、この巡航ミサイルの発射は電磁加速投射によるものです。
これにより時速10000kmの初速を獲得と推定されます」
「・・・・・・」
わらわと戦いながら、VF・・・まあ予想じゃがヤツじゃろう。
そやつからの攻撃を防ぐための最大出力とは。
「・・・フン、敵となったお主に言うのもなんじゃが。
一応、この交通の要衝である空港を防衛したことには例を言おう。
そして、こちらはわらわの屋敷におる部下共の安否を確認せねばならん。
この場は退くとしよう・・・」
これくらい時間稼ぎをすればカリラのほうもなんとかなっているじゃろう。
あのメイドは恐らく能力がないとみた。
すぐにこの空港から去らねばならぬ。
この事を詳しく知らん外部の者が集まって来るじゃろうし。
それに、こやつの攻撃で肌が荒れてしまったじゃからの。
「・・・・・・追跡・・・」
こやつ、まだ動けるか。
「わらわの能力のパワーも手を抜いたわけではない。
このまま動けるほどの余力はなかろう?
おまけに、その損傷であのエネルギーを大量に放出したのじゃ」
「・・・・・」
メカとやらみたいに、放電や火花は出ない。
人間と同じく、傷跡が残る。
「・・・・・・この件について、おぬしの関与は隠蔽しておく。
空港に秘密裏に配備していた迎撃装置が働いた、とでも言っておこう」
「・・・・・・・・」
それでも、こやつの眼差しはわらわに向き続けておった。
完全消滅とやらにされんでよかった、と思うべきか・・・
29
:
Topaz Guard X-RAY Team
:2016/02/05(金) 18:57:04
同時刻 アンリ・コアンダ空港 エントランス
エントランスからも、サーナによる巡航ミサイルの迎撃は見えていた。
強力な光が天へと伸び、その後に大爆発を観測した。
「何だ!?」
「空港の滑走路からだ!」
「誰か残っていたかもしれん!」
<<こちらクェベック隊。滑走路に到着しました!
・・・・女の子です、女の子が倒れていました!オーバー!>>
「こちらCP了解。・・・・保護せよ アウト」
「・・・・・まさか、その子がやったのか?」
X-RAY部隊の一人が、呟く。
「ありえねえよ、ルーマニアに居る能力者だっけか?
それでもあんなでけえ光の柱をぶっ放せるとでも思ってるのか?」
「それに子供だぜ?余計ありえねえよ」
隊員である二人が呟いた本人にその可能性を否定した。
「そうだよ・・・な?じゃあ誰が・・・・」
「あんまり詮索することじゃねえ。空港内に爆弾等があるかのチェックを済ませるぞ」
「ああ」
「了解」
22:04
アンリ・コアンダ空港の解放を確認。
人質の死傷者数、0人。なお、行方不明者数は2人。
ヴィエリ・テレル氏及び、アネッタ・スードヴァリ氏と公表。
この2人の捜索願がペルセフォニー財団より出された。
また、ティミソアラのイタリア総領事館はこの二人についての情報を開示。
トパーズガードのアンリ・コアンダ空港の解放は成功。
X-RAY、クェベック両部隊に報酬が振り込まれた。
なお、サーナによる最大出力の照射の件については詳細は隠蔽され、
ペルセフォニー財団の調査が立ち入り、
「秘密裏に到着していたレーザー式迎撃システムの作動」と公表。
巡航ミサイルの件については依然調査中とも発表され、
コマナ周辺の一般の立ち入りを制限している。
トパーズガードの関係者はこのことについて言及をしないよう、
ペルセフォニー財団から要請が出された。
VFのものと思われる痕跡は足跡程度であり、西部へと移動をしたと思われる。
なお、白銀の集いのリーダーとされる、通称「イッカク」から、
巡航ミサイルについての関与を否定する映像がマスコミに送信された。
サーナは救急車でフロレスカ病院に搬送されている途中に失踪。
12日後にペルセフォニー財団及びトパーズガードは彼女の捜索を断ち切る。
・・・・・そして、カリラを追跡するアネッタは、というと・・・・。
30
:
Annete Sudvali
:2016/02/05(金) 22:34:25
見えた。若様と・・・カリラ!
「つおおおおおおおッ!!」
巨大なスーツケースを右側へ両手で持ち、そこから振り上げる。
「・・・チッ!」
スーツケースとカリラの鎌で鍔迫り合い。
無論、質量の事もあり、スーツケースが押し勝つが、カリラはその一撃をひらりとかわす。
「んだよ、おめー、私らのこと誤解してねえか!」
知った事か。若様にかぶりついたお前の雇い主が屑ということだけだ。
そんなヤツの犬であるお前もまた屑だ。
「せやあああッ!!」
ひらりと避けるならば、わざと避けさせてから・・・。
道端にあった3kgほどの石を蹴り上げる!
このとき、ヒールにヒビが入る音がしたが、問題ない。
いくらでも買いなおせばいい。
だが、若様の命は買いなおせるものではない。
「チィッ!あんまり手ェ出したくねぇが・・・!」
その石ころは能力により生成された水で勢いを殺され、地面に落ちる。
そして、その石ころに対応していた矢先で・・・・
スーツケースの重い一撃が炸裂する!
「うおおおぉ!?」
カリラは吹き飛び、気を失ったヴィエリが道端へと転げ落ちる。
「若様、しばしの手荒な真似をお許しください・・・!」
「やめろって!わーったよ!おめーらも保護すりゃいいんだろ!?」
「そういうことじゃあないってことよ、ド腐れェ!」
こいつの懐柔など誰が聞くものか。
お前は・・・お前は・・・・!!
「・・・・・クソッ、一応護衛対象だからなァ・・・傷つけたかねえよ」
あからさまに攻撃する気などない様子。
それがアネッタを更に苛立たせた。
だが、それよりも重要である「若様」のことを優先した。
「・・・・・若様、若様!しっかりなさってください!」
地面へと叩き落とされたヴィエリを揺り起こす。
「うぐ・・・・んー・・・・アネッタ・・・・?」
ヴィエリが気づくが、その顔はどこか色白に見えた。
それどころか血の赤みを帯びていないような、冷たさも感じた。
「若様!このような連中に身を預けるのは危険です!」
あの女に血を吸われたからか、だからか。
だったら、すぐに病院で輸血してもらうだとか、色々やるべき事が。
「・・・・・アネッタ。
・・・僕達に帰る場所がないことに変わりはないよ」
「だとしても・・・!」
いくらでも安宿などで暮らせばいい。
ドレイムス教授の遺した財産は少なくなく、むしろ多い。
「「だからだよ・・・・」」
「・・・!!」
若様だけではなく、あのリヴィアの声もした。
「わらわの庇護は絶対的に保障されるものじゃ。
・・・・信じず問題視するのも無理はないがの・・・・
他に頼れるツテはあるか?このヴィエリが全ての真実を知る方法は?」
「・・・・・・・だから何だと言うのよ」
「冷静さを失っての判断は身を滅ぼすぞ。
まあよい。ヴィエリの坊やのもとで働ければいいんだろう」
「・・・・」
沈黙しかなかった。
このような倫理を超越した連中に守られるのは恥とも思えた。
「ともかく、ヴィエリのほうは承知しているようだが?」
「・・・・!?」
「アネッタ。最初はリヴィアさんの噛み付きには驚いたけれど・・・
今はとても軽いんだ。いや、体重の事じゃなくてね。
心の重みが取れたような」
「我がペルセフォニー財団は同志の過去を気にせぬ。
過去の重みを捨てるのも手ではあるな」
「・・・・・・・」
あれは、若様・・・なのだろうか。
過去の重みを捨てた、ということは。
家族の死の辛さを忘れてしまったんだろうか?
「まあ、御託はいい。
おぬしも・・・我らの同志になるがいい」
「・・・!」
その後のことは、あまりにも記憶が曖昧のままであった。
何か、クラッとくるような気分になって、気を失って。
どこかへ連れて行かれて・・・・
大きな屋敷の・・・地下の・・・祭壇。
そこで、リヴィアという膨大な枠組みに入っていく・・・・。
催眠なのだろうか?それとも、洗脳だろうか・・・。
31
:
Topaz Gurad Quebec Team
:2016/02/06(土) 23:22:55
ルーマニア首都ブカレストで発生したテロは、リヴィア・ペルセフォニーの計画を多少逸らす程度のみで終わる。
ヴィエリ及びアネッタを確保し、彼女の屋敷にて保護・・・いや、アネッタの場合は拉致、洗脳だろうか。
人工能力者であるサーナを逃したという点を除き、計画の大筋は順調に進む。
さて、時は遡りデトロイトの後日------。
2月15日 14:23
デトロイト 小型戦闘マシン工場跡
「そっちはどうだ?」
「いや、全然だ。
資料らしき紙一枚もありゃしない」
VFの撃退、ならびに市賊の拠点の制圧に成功したトパーズガードのクェベック隊は、
エリア51の研究スタッフの護衛任務にあたり、オハイオ州州兵と合同で残存勢力の掃討も兼ねていた。
米国の最新技術を用いてやっと昨年の2018年上旬に配備されたパワードスーツ。
それに匹敵する戦闘能力を持つ、二足歩行タイプの小型戦闘マシンを市賊が保有していた。
増してや、そのマシンの生産及び開発ラインまで存在したという事実は米国防総省を揺るがせた。
直ちにデトロイトに研究スタッフを派遣させた。
「・・・・ん?おい。
この壁、他の場所と違って薄い上に空気が漏れているぞ」
「隠し通路か?クェベック隊と州兵に連絡を」
「わかった」
隠し通路は地下へと続く階段となっており、大人二人分の幅である。
この通路より外の打ちっ放しのコンクリートの地面や壁とは違い、
百貨店を彷彿とさせる、石英色の床や壁となっていた。
「デジタルトラップのチェックをせよ。退路の確保も忘れるな」
「了解」
「・・・・この先に資料があるはずだ。
あのマシンとなると、どれほど山積みになるか・・・」
クセっ毛がトレードマークである研究員の一人が持ち帰る紙の量を憂いた。
階段の最後の一段を降り、自動スライドのドアが開く。
開いたドアの先には、荒廃したデトロイトとは思えぬほど、近未来じみたインテリアで視界を埋め尽くした。
「これは・・・!」
空間投影のデジタルモニター、何やら妙な形をしているサーバー。
そして、壁と一体型の色彩可変LED照明。
「・・・・驚いたな。 だが、これは外部からの支援であることは間違いない」
「ああ。むしろ我々米国の技術より先に行くものも一目見ればチラホラあるぞ」
「待て、これは・・・・・!」
研究員のほぼ全員があるファイルに釘付けになった。
「空間圧縮技術・・・!?
なんだこれは・・・。数世紀先の技術じゃないか?」
「・・・ただちに国防総省に連絡しろ。急げ」
「了解」
32
:
Vieri Terrell
:2016/02/09(火) 23:27:51
リヴィア・ペルセフォニー。
彼女の根城でもあり、彼女の部下が勤務する「リヴィア邸」は、
邸内だけでも1400人、支部を含めると約15000人にもなるらしい。
それだけのこともあって、敷地は約2500ヘクタールと非常に広く、
12階建ての中央棟、8階建ての左右の西棟と東棟、中央の内庭、外壁と接する外庭でおおまかに構成されている。
それほどの屋敷を統べる彼女の部屋、「主の間」は中央棟12階全域である。
「わらわの忠実なしもべ、ヴィエリ・テレル」
荘厳な声音でヴィエリに話しかけて、続いて、
「少々手荒になってすまなかったのう。
君を保護するためには、ちょっとした手間があってだな・・・」
と、膝をつけ詫びてきた。
「大丈夫です。僕を・・・なんだっけ、吸け・・・」
「ヴァンパイアだ。吸血鬼の場合は見境無く血を吸うので間違えないよう」
と、返答した際の言葉を、彼女のプライド故か訂正した。
「そう、ヴァンパイアにするのも理由があったんでしょうし」
「そうじゃな。わらわが用意した万が一の保険でもある」
「保険、ですか」
「うむ。VFについてはドレイムス教授から聞いておるだろう」
「ええ、僕の親友のニーナを殺した・・・」
「それどころか・・・このことは後に話そう。本筋から外れる。
この屋敷は難攻不落の要塞といってもいい。
暑さ2m、高さ12mの外壁・・・そして、内部には厳重に警戒している警備班。
それらがヤツに突破され、君が攻撃された場合、
人間なら即死レベルのダメージをせいぜい軽傷レベルに抑える事ができる。
また、能力者・・・このルーマニアの国民のほとんどがなっているが・・・
それになっておけば、問題ない」
「僕をそこまでに予防しておく理由は何なんです?」
VFについての疑問はそこだ。
ニーナ、父さん・・・
「カーラだ」
そして、自分の妹の名前が出てきた。
「まさか、カーラも」
「・・・・・残念だが」
「・・・・・・・」
ヴィエリはちょっと失礼します、と呟いてから、後ろポッケのハンカチで涙を拭いた。
「ヤツは君の大切なものを奪っていくが・・・
その理由は、ドレイムスにある」
「・・・・父さんが、ですか」
「ある男に強いられVFを作り上げたのはドレイムスだ。
・・・君が連れてきたあの子はおそらく、彼なりの償いだったのだろう」
「・・・・サーナが・・・?
ただの妙な少女の姿をした、ああと心身をケアするとか言っていた」
「あれは嘘だ」
ヴィエリにとって、衝撃的な事実ばかりを突きつけられるが、
いちいちそれは一体なんだだとか言う気分にはなれなかった。
なにしろ、既にそれを受け入れる覚悟を不本意ながらもしてきたからだ。
33
:
Vieri Terrell
:2016/02/10(水) 00:33:42
「まずはカーラが殺された事から説明せねばなるまい。
君の父、ドレイムスがVFをある組織に無理矢理作らされた・・・。
ドレイムスの研究資金を保証する代わりに、だ。
それがきっかけで決別し、その代償としてカーラは殺された。
カーラと同じく殺されんように、と君に保険をかけたというわけじゃよ。
次に、サーナという子だが、あれはそのVFに対抗するための切り札じゃろう。
このままではVFを用いた、敵が分からない世界大戦を起こしかねない。
それを防ぐための手段として、VFの抹消しかなかった、というわけじゃな。
その動きが察知されたことで、ドレイムスは殺されてしまったがの」
「・・・サーナがVFを倒すための切り札・・・」
「皮肉なことに、その切り札は行方不明じゃ。
我々の手中に収めておきたかったが」
どこか悲しげに見えた顔だが、同時に冷徹さも感じた。
リヴィアが被る表情の仮面は、ヴィエリにとって異様に見えた。
「・・・・・リヴィアさん。
説得したアネッタはともかく、手中に収めるとは一体?」
「ふむ、ドレイムスからわらわの方に預ける予定じゃった。
元はわらわに託すべきはずだったが、君をマスターにした・・・
その意図は不明じゃがの。ともかく、予定が多少狂ってしまった。
あの空港で殺し合ってしまった・・・」
他人事のように言っているリヴィアに、ヴィエリは怒りを見せた。
「冗談じゃありません。
みすみす、貴女とサーナが敵同士になるような行動をして・・・
むしろ、傷つけて・・・・どこか去ってしまった。
何を考えてのことなんです」
「わらわの手中になることが有り得ないようになってしまったからじゃ。
それに、完成とはいえ、思考も異常とカリラから伝えられた」
「・・・・・」
「わらわをいくらでも糾弾しても構わん。
この件に関してはカリラに対応を頼んである。
・・・・他に知りたい事があれば西棟の書斎で文献を漁ればよい」
「リヴィア・ペルセフォニー・・・。
貴女しか守ってもらえる場所しかないから、ここに居させてもらっていることは感謝しています。
ただ、サーナをあんな目に遭わせた件については、このことを考慮しないと思っていただきたい」
「・・・・・・うむ」
異常な集団の長の部屋から出ようとした時、その長の表情は歪であった。
笑みも含んでいるが、正気に見せているような狂気が、目に見えた。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板