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( ・∀・)「毎日好きと言うようです」
1
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:25:54 ID:zoafWSng0
【4月、月曜日】
〜登校中、校門前にて〜
(*・∀・)「おはようございます好きです先輩!」ダダッ
ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、おはようねー」
出会ってからの半年間、見かけるたびに好きだと言い続けていた。
〜昼休み、購買にて〜
(*・∀・)「おつかれです、結婚してください!」
ζ(゚ー゚*ζ「だめです、おつかれー」ヒラヒラッ
顔を見るだけで嬉しくて、止まらなくなった。
2
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:27:53 ID:zoafWSng0
〜放課後、校門にて〜
西陽に照らされた帰り道に、桜が散っていて。
思い出みたいに綺麗な景色の中、先輩の背中が輝いていた。
ζ(゚ー゚*ζ
それを見て気付いたんだ。
先輩の学生生活は、あと一年しかないって。
( ・∀・)
3
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:28:51 ID:zoafWSng0
たった一年しかないのに、俺なんかが無意味に時間を使わせていいのか?
先輩に尋ねれば、「好きにしたらいいんじゃないの」と、ちょっと呆れたように、優しく笑ってくれるだろう。
優しい人だから。
あんなに優しい人なのに、俺は何かを返せたか?
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯」
考えるまでもない。
貰ってばかりの半年間だった。
一度そんなことを考えると、声をかける勇気もなくなって。
先輩に出会ってはじめて、先輩にバレないように帰る努力をした。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯?」
4
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:29:22 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「毎日好きと言うようです」
5
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:31:54 ID:zoafWSng0
【4月、火曜日】
〜3-1教室、昼休み〜
('、`*川「今日はモラ助来ないね」
ミセ*゚ー゚)リ「ねー。ちょいちょい来てたのに」
ζ(゚ー゚*ζ「あの子も毎日来てたわけじゃないでしょ」
(゚、゚トソン「そうですけどね。……あ、窓の外にいますよ」
---
( ;・∀・)ササッ
---
('、`*川「あ、隠れた」
ミセ*゚ー゚)リ「珍しいね、いつもだったらでっかく手を振ってくるところだよ」
6
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:32:36 ID:zoafWSng0
(゚、゚トソン「いじめすぎました?」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、いつも通りだけど」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあそのいつもが嫌になったんじゃない?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
('、`*川「いや、そんな深刻にならんでも」
(゚、゚トソン「まあ、男の子だし、友達と一緒がいい時もありますよ」
ミセ*゚ー゚)リ「うちの弟とかもねぇ、〜〜〜」
7
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:33:04 ID:zoafWSng0
【4月、水曜日】
〜2-2教室、昼休み〜
( ゚∀゚)o彡゜「モララー、あの人に会ったぜ、あの人」
( ・∀・)「へー⋯⋯すげぇじゃん」
( ´_ゝ`)「心ここにあらずって感じ。で、誰よあの人」
( ゚∀゚)o彡゜「世界一の美女」
( ´_ゝ`)「あー⋯⋯モララーの心の恋人」
( ・∀・)「⋯⋯あんま迷惑かけんなよ」
( ´_ゝ`)「毎日のように教室まで押しかけてたやつが何を今更」
8
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:33:36 ID:zoafWSng0
( ゚∀゚)o彡゜「つーか最近話しかけに行ってなくね? 心配してたよ」
( ・∀・)「⋯⋯ホントに?」
( ゚∀゚)o彡゜「ホントよホント。まあ、『あの子元気なの』ってくらいだけど。モララーといない時に初めて話したかもしれん」
( ´_ゝ`)「そういえば、最近会いに行ってないね」
( ゚∀゚)o彡゜「『今日のお昼はデレ先輩と食べられるかもしれないから、失礼するぜ!』とか、ちょいちょい購買に顔出してたじゃん」
(;・∀・)「き、金欠でさ」
( ´_ゝ`)「あー……じゃあ、しゃあないわな」
( ゚∀゚)o彡゜「気にして貰ってるうちが花よ?」
9
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:34:34 ID:zoafWSng0
【4月、金曜日】
〜放課後、下駄箱〜
('、`*川「お、モラ助」
ミセ*゚ー゚)リ「ホントだ、おひさー」
( ・∀・)「お久しぶりです!」
(゚、゚トソン「相変わらず声でっか⋯⋯」
( ゚∀゚)o彡゜「ほらなー、兄者は考えすぎなんだよ。モララーはちゃんと元気じゃん」
( ´_ゝ`)「そうかもな。ちょっと安心した」
ζ(゚ー゚*ζ「おつかれー」
(*・∀・)「おつかれでーす、お先失礼しまーす」ソソクサッ
( ゚∀゚)o彡゜( ´_ゝ`)「「「「「!?」」」」」ミセ*゚ー゚)リ(゚、゚トソン('、`*川
10
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:35:03 ID:zoafWSng0
( ゚∀゚)o彡゜(ゼッテーおかしいぞアイツ!いつもなら『美しいデレさんに会えて光栄です』とか始まるだろ!)
( ´_ゝ`)(だからなんかおかしいっつったじゃん!)
ミセ*゚ー゚)リ(『途中までご一緒させてください』っていつもなら言うのに!)
(゚、゚トソン(『会えただけでも光栄です』って、でっかく手を振ってくるのに!)
('、`*川(な、なに、何があった!?)
11
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:36:04 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯おつかれー」サッ
(*・∀・)「? おつかれです。そこ、塞がれると帰れないんですけど」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯」
( ・∀・)「⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「私の名前を言ってみな!」
(*・∀・)「せん、ぱい⋯⋯? ヤンキーごっこですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯かわいいでしょ?」
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯そっすね。おい野郎ども、先輩に迷惑かけないうちに帰んぞ!」
12
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:37:42 ID:zoafWSng0
(;´_ゝ`)「え? あ、え? うん、お疲れです⋯⋯え、マジ?」
(; ゚∀゚)o彡゜「おい、待て、待てよ! おつかれす先輩方!」
('、`*川「⋯⋯またねー」
(゚、゚トソン「はい、また⋯⋯」
ミセ*゚ー゚)リ「またねー⋯⋯え、ホントに帰っちゃうの?」
ζ(゚ー゚*ζ「ばいばーい⋯⋯?」
13
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:38:13 ID:zoafWSng0
【4月、月曜日】
〜放課後、2-2教室〜
( ・∀・)「帰りゲーセン寄らない?」
(;´_ゝ`)「お、おう、いいけどもさ」
(; ゚∀゚)o彡゜「最近はさ、ほら、なんか忘れてない? 何とは言わないけども」
( ・∀・)「別に。なんか最近時間余ってんだよねー。代わりに勉強と習い事に力入れてたから疲れたわ」
( ゚∀゚)o彡゜(『なんか』じゃねーのよ、『なんか』じゃ)
( ´_ゝ`)(暇さえあればあの先輩に会いに行ってだもんな)
( ゚∀゚)o彡゜(これ聞いていいやつ? ねえ、聞いていいやつ?)
( ´_ゝ`)「⋯⋯⋯⋯あのさぁ」
( ´_ゝ`)「あの⋯⋯美人さんとなんかあった?」
( ゚∀゚)o彡゜「! 聞いちゃうんだ!?」
14
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:38:39 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「⋯⋯いや、何もないよ」
( ゚∀゚)o彡゜「何も無くはないでしょ、兄者すげー心配してんのよ」
( ´_ゝ`)「いや、俺だけみたいに言うけど、ジョルジュも結構心配してたよ」
( ゚∀゚)o彡゜「言うなよそういうのは!」
( ゚∀゚)o彡゜「⋯⋯ばれたから聞くけども、何があったん? 言いづらいならいいけどさ」
( ゚∀゚)o彡゜「詰め込むみたいに勉強してるっぽいし、正直心配は心配ですよ」
( ・∀・)「ホントに何もないよ」
( ・∀・)「なんて言ったらいいのかわからないけど⋯⋯」
( ・∀・)「今のままだとダメかなと思って、普段の行動を見直してたんだ」
15
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:39:04 ID:zoafWSng0
( ´_ゝ`)「それさぁ、あの先輩さんには言ったの?」
( ・∀・)「言ってないけど⋯⋯」
( ゚∀゚)o彡゜「毎日来たのが急に来なくなったら心配するでしょ。あ、丁度窓の外にいんじゃん」
-----
ζ(゚ー゚*ζ 「〜〜〜」
ミセ*゚ー゚)リ「〜〜〜」
-----
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯綺麗な人だよなぁ」
( ゚∀゚)o彡゜「うん? そーね。ほれ、窓開けていつも通り『デレせんぱーい』ってさぁ」
( ・∀・)「話しかけると、しょうがないなーって笑って、いつも相手してくれるんだ」
( ・∀・)「それが嬉しかったんだけど」
16
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:39:24 ID:zoafWSng0
( ´_ゝ`)「⋯⋯」
( ・∀・)「俺が嬉しいからって、迷惑かけていい理由になんないよな」
( ´_ゝ`)「お前、いっつも考えすぎじゃないの?」
( ・∀・)「そうかなぁ」
( ゚∀゚)o彡゜「⋯⋯たまに迷走するよね、お前。そもそもなんでそんなに好きなの?」
( ・∀・)「転んで泣いてたら慰めてくれたんだ」
( ゚∀゚)o彡゜「本音か冗談かわかんねー!」
( ・∀・)「ほら、帰ろうぜ。今更、急ぎで報告に行く必要もないんだし」
(;´_ゝ`)「今更、ってくらい話してないのが心配の理由なんだが⋯⋯」
17
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:39:53 ID:zoafWSng0
【半年ほど前】
〜体育祭、校舎内のどこか〜
( ;∀;)
人生どうしようもないな、って思ってた。
夏休み終わってすぐ転校とか、習い事で試験に落ちたりとか、友達できなくて一人で迷子になったとか、転んで怪我するとか。
別に対して痛くもないのに、ちょっと我慢すれば済むようなことの積み重ねが、転んだせいで吹き出した。
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫?」
窓から腹が立つほど気持ちいい青空が覗いていた。その青空を背に、無神経に話しかけてきやがった。
( ;∀;)「ほっといて⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「はいはい」スタスタ⋯
18
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:40:25 ID:zoafWSng0
ほらみろ、親切ヅラしたあの女、さっさと何処かへ行ってしまった。
自分で振り払った相手が、去っていくからと恨んでいる。そんな自分がまた惨めで。
( ;∀;)
ずっと蹲(うずくま)って泣いているわけにもいかず、よろよろと立ち上がった。
ガラガラガラ⋯⋯
「あ、起きてる」
その声に振り返ると、台車を引いたあの女(ひと)が立っていた。
19
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:41:06 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「歩けないと思って持ってきたのに」
少し息を切らせて、彼女は首を振った。
荷運び用の台車に俺を乗せて運ぶつもりだったのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと血が出てるねぇ。消毒しに行こうか」ガラガラ
( ;∀;)「いや、いいっす、大丈夫っす」
ζ(゚ー゚*ζ「うるさい。先輩に逆らう気?」
小さい身体をエヘンと反らせて、先輩風を吹かせるその人に逆らえなくて。
( ;∀;)「じゃあ、お願いします⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「うむ、任された」ガラガラガラ
小さな背中の後ろについて、二人で保健室に向かった。
俺の啜り泣く声と、荷運び用の台車のガラガラいう音だけが響いていた。
20
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:41:40 ID:zoafWSng0
〜保健室〜
先生はいなかった。
先輩は勝手に棚を漁って消毒液と絆創膏を持ち出してきた。
ζ(゚ー゚*ζ「なにかあったの?」
( ・∀・)「何もないっす⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「なにもなくは、ないでしょー」
俺を消毒しながら、先輩は質問してくる。
( ・∀・)「ホント、話すほどのことじゃないんで」
されるがままに、絆創膏を貼られる。
ζ(゚ー゚*ζ「そんなに些細な話なら、いくらでも聞いてあげるから」
俺は意識して、目を合わせないようにしていた。
( ・∀・)「⋯⋯でも、長くなるし」
21
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:42:05 ID:zoafWSng0
バカにされたら、立ち直れない。
ζ(゚ー゚*ζ「しょうがない子だなぁ」
やれやれ、と一息ついて、俺の顔を両手で挟み、無理矢理目を合わせて。
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だから。なんでも話してみなさい」
困ったようにはにかんで、優しい声でそんなことを言うから。
( ;∀;)
些細でよくある、だけど潰れそうなくらい辛いことを全部吐き出してしまった。
ζ(゚ー゚*ζ
先輩は、最後までうんうんと聞いてくれた。
22
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:42:25 ID:zoafWSng0
〜話終わって、保健室〜
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯長々と、お耳汚しをば」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。もう大丈夫?」
( ・∀・)「はい、おかげさまで」
ζ(゚ー゚*ζ「そう」
ぽんぽん、と俺の頭に優しく触れて。
ζ(゚ー゚*ζ「また、なにかあったら来なさい」
ζ(゚ー゚*ζ「先輩だからね」
ふふん、と胸を張るその姿があまりにも綺麗で。
( ・∀・)「結婚してください」
ζ(゚ー゚*ζ「へぁ?」
その日から、無謀な恋が始まったのだ。
23
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:42:46 ID:zoafWSng0
【体育祭から、次の4月まで】
〜とある日、教室〜
(*・∀・)「せんぱーい! 友達できました!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふぅん、よかったねぇ」
(*・∀・)「先輩のおかげです!」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、なにもしてないけどね、私」
(*・∀・)「でも、俺は嬉しかった!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふふ、よかったねぇ」
24
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:43:06 ID:zoafWSng0
〜とある日、廊下〜
ζ(゚ー゚*ζ「さっきさぁ、話しかけようとしてやめなかった?」
(;・∀・)「いや、お友達と一緒だったので⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「挨拶くらいしなさいね。あんなしょんぼりされると気になるから」
(*・∀・)「いいんですか!?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうグイグイ来られると困るから挨拶だけね」
25
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:43:28 ID:zoafWSng0
〜とある日、校庭〜
(*・∀・)「あっちの遠くのベンチから、デレさんがお昼食べるとこ見ててもいいですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ダメって言ったら?」
(*・∀・)「帰って一人でお昼食べますけど」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯一緒に食べようか」
(*・∀・)「いいんですか!?」
ζ(゚ー゚*ζ「そんな喜ぶことかなぁ」
26
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:43:53 ID:zoafWSng0
〜とある日、図書館〜
(*・∀・)「デレ先輩おつかれです!」
ζ(゚ー゚*ζ「図書室では静かに」
(*・∀・)(デレ先輩おつかれです!)
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、小さすぎ。で、どうしたの?」
(*・∀・)(試験前に追い込みかけてるって聞いたんで、差し入れです!)
ζ(゚ー゚*ζ「お、缶コーヒー。ありがと、帰りにいただくね」
27
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:44:15 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「ていうか、君も試験でしょー。わからないとこ教えてあげようか?」
(*・∀・)(マジですか!)
(*・∀・)(いや、邪魔すると悪いんで、失礼します!)
ζ(゚ー゚*ζ「そう? 君も頑張ってね」
(*・∀・)「! はいっ!!」
ζ(゚ー゚*ζ「だからね、声、注意しよっか」
28
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:44:38 ID:zoafWSng0
〜とある日、自販機前で〜
ζ(゚ー゚*ζ「おやおや後輩くん、ちょうどいいところに」
(*・∀・)「先輩! 休憩ですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「まあねー。こないだのお礼に、奢ってあげよう。どれがいい?」
(*・∀・)「あ、じゃあブラックコーヒーで!」
ζ(゚ー゚*ζ「飲めるの?」
(*・∀・)「もちろんですよ!」
ピッ ガコン
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、熱いからね」
(*・∀・)「ありがとうございます!」
29
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:45:45 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「(⋯⋯⋯⋯にがっ)お、おいしいです!」
ζ(゚ー゚*ζ
ピッ ガコン
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯あ、間違えてカフェオレ買っちゃった」
ζ(゚ー゚*ζ「甘いのダメなんだよねぇ、替えてくれない?」
(*・∀・)「ああ、いつもブラックですもんね。でも、口つけちゃったし」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、いいから」
(*・∀・)「じゃあ、どうぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがと」
30
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:46:44 ID:zoafWSng0
オーイ、デレー!
ζ(゚ー゚*ζ「呼ばれてるみたい。またね」
(*・∀・)「はい、また!」
(゚、゚トソン「あなたブラックコーヒー飲めないって言ってませんでした?」
ζ(゚ー゚*ζ「……最近飲めるようになったので」
('、`*川「ほーん」
31
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:47:15 ID:zoafWSng0
〜とある日、購買〜
(*・∀・)「悪いな、今日はデレ先輩とご一緒するから、お前らとお昼できないわ」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、お友達と食べな?」
( ゚∀゚)o彡゜「いっすいっす、持ってってください」
( ´_ゝ`)「むしろ邪魔じゃないんスか、そいつ」
ζ(゚ー゚*ζ「たまたま購買で会えたときだけだから、いうて週に1,2回だし。一緒にくる?」
( ´_ゝ`)「あー⋯⋯それじゃ、たまにはご一緒します。じゃあなジョルジュ」
( ・∀・)「じゃあなジョルジュ!」
( ゚∀゚)o彡゜「え、いや、俺も混ぜてよ!」
32
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:47:37 ID:zoafWSng0
〜とある日、下駄箱〜
('、`*川「おうモラ助じゃん、帰り?」
( ・∀・)「おつかれです、ペニサス先輩」
(゚、゚トソン「少し待てばデレが来ますよ」
( ・∀・)「え、いや、友達同士で帰るのに悪いし⋯⋯」
ミセ*゚ー゚)リ「邪魔になったら追い出すから、それまでいたらいいよ」
(゚、゚トソン「それはそれでどうなんですか?」
( ・∀・)「その方がありがたいです!」
('、`*川「ありがたいのか」
(゚、゚トソン「なにが彼をそこまでさせるのか⋯⋯」
33
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:48:04 ID:zoafWSng0
〜とある日、2-2教室〜
( ・∀・)「好きな人に好いてもらうにはどうしたらいいでしょうか」
ミセ*゚ー゚)リ「恋バナだ!」
(゚、゚トソン「一般に、自分のことを好きな人を好きになる、と言いますけどね」
('、`*川「そんな単純かねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「なになに、なんのはなしー?」
(*・∀・)「デレ先輩、好きです!」
ζ(゚ー゚*ζ「あは、ははははは! なに、急に?」
('、`*川「もっとさりげなくやんなよ」
(*・∀・)「いや、笑ってくれるなら、何度でもやります!」
ミセ*゚ー゚)リ「トソンがやらかしましたねぇ、これは」
(゚、゚トソン「え、私のせいですか、これ」
ζ(゚ー゚*ζ「ははははは!」
34
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:48:31 ID:zoafWSng0
【学年は変わり、現在。4月、第二火曜日】
〜3-1、放課後〜
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、2年生って今忙しいの?」
(゚、゚トソン「いや、特にそういう話は聞きませんが」
('、`*川「じゃあモナ助なんで来なくなったのよ」
ミセ*゚ー゚)リ「彼女でもできたんじゃない?」
ζ(゚ー゚*ζ
(゚、゚トソン「ないでしょ」
('、`*川「ないだろ」
35
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:49:07 ID:zoafWSng0
ミセ*゚ー゚)リ「別に好きあってなくても付き合えるじゃん。モラくん気ぃ使いーだからさー」
ミセ*゚ー゚)リ『一週間だけ試しに付き合って! ダメなら別れてくれて構わないわ!』
ミセ*゚ー゚)リ「とか、断れると思う?」
(゚、゚トソン「でも、デレがいるのに」
('、`*川「まあ、デレには振られ続けてるし、問題ないといえばそう」
ζ(゚ー゚*ζ「そもそも、私はモララー君の話はしてないよ」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、気にならないの?」
ζ(゚ー゚*ζ「気にならない、訳では、ない、けど⋯⋯」
36
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:49:28 ID:zoafWSng0
(゚、゚トソン「けど?」
ζ(゚ー゚*ζ「私が気にしてるって伝わると、あの子に影響が強すぎるから、下手に話題に出しづらいんだよなぁ⋯⋯」
('、`*川「あぁー⋯⋯」
(゚、゚トソン「いっそデレが呼び出したらいいのでは」
ミセ*゚ー゚)リ「本当に恋人が出来てたらどうするんですか!」
ζ(゚ー゚*ζ「それはないでしょ」
ミセ*゚ー゚)リ「なんで?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ないもん」
ミセ*゚ー゚)リ「え、いや、なんで?」
ζ(゚ー゚*ζ「ないの!」
37
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:49:57 ID:zoafWSng0
('、`*川「なんで怒ってんのよ、この子は」
ζ(゚ー゚*ζ「怒ってない! もう、しらないから!」
(゚、゚トソン「ほっといて、こじれても知りませんよ」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯ちょっと、様子見る」
38
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:50:21 ID:zoafWSng0
【4月、第二金曜日】
〜2-2、放課後〜
( ゚∀゚)o彡゜「明日合コンいこうぜ!」
( ・∀・)「なによ急に」
( ´_ゝ`)「お前、気遣い下手くそか?」
( ゚∀゚)o彡゜「⋯⋯まあ、急だけどさぁ。なんかこう、コイツ気分変えた方がいいでしょ」
( ´_ゝ`)「一理、ある、かなぁ? モララー的にはどうなの?」
( ・∀・)「え、俺? 俺は⋯⋯」
39
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:50:41 ID:zoafWSng0
ガララッ
ζ(゚ー゚*ζ「たのもーう」
ミセ*゚ー゚)リ「結局我慢できなくなって、来ちゃってるしね」
(゚、゚トソン「しっ。また拗ねると厄介です」
('、`*川「へい、おじゃま〜」
(*・∀・)「デレ先輩!?」
ζ(゚ー゚*ζ「おやおや、しばらく会わない間に挨拶もできなくなったのかな?」
(;・∀・)「お、おつかれです、デレ先輩」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯」
(;・∀・)「お、おつかれ様です⋯⋯?」
40
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:51:08 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯いつもみたいに、元気な挨拶が聞きたいなぁ」
( ´_ゝ`)「!? お疲れ様です可愛いデレ先輩!」
( ゚∀゚)o彡゜「大好きなデレ先輩ご足労ありがとうございます!」
ζ(゚ー゚*ζ「お、おう⋯⋯。意図してないところからくると照れるね」
ミセ*゚ー゚)リ「へいへい、なるしー」
ζ(゚ー゚*ζ「う、うるさいなぁ……」
(*・∀・)「か、可愛いデレ先輩、お疲れ様です」
41
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:51:42 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「はいお疲れ様。で、モララーくん、君はちょっとそこに座りなさい」
目の前の席を指差し、自分も着席するデレさん。
(*・∀・)「は、はい⋯⋯」
つられて座ってしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「君たち、この子をお借りしますよ」
( ´_ゝ`)「どーぞどーぞ」
( ゚∀゚)o彡゜「元々こっちが借りてたようなもんですから」
(;・∀・)「え、俺の意思は?」
ζ(゚ー゚*ζ「……嫌なら、いいんだけどね」
42
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:53:07 ID:zoafWSng0
(;・∀・)「デレさんとお話しするのに嫌なんて有り得ないっすよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあなんで最近避けてるの?」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯避けてたかなぁ? ちょっと、覚えがないですねぇ」
思わず目を逸らしてしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「君ねぇ」
ひとつ、ため息をついて。
両手で俺の顔を挟み、無理矢理目を合わせて。
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと聞くから、ちゃんと話しなさい」
(*・∀・)「⋯⋯ひゃい」
諭すように、困った笑顔で、ただ俺の心配をしている。
それだけで、もう最初の決心が揺らいでしまうのだ。
43
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:53:31 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「あの、ですねぇ⋯⋯俺、デレさんが好きです」
ζ(゚ー゚*ζ「知ってる。みーんな知ってる」
( ´_ゝ`)( ゚∀゚)o彡゜ウンウン
ミセ*゚ー゚)リ(゚、゚トソン('、`*川ウンウン
( ・∀・)「あの、外野の方々は帰ってもらえると⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「いいから。続けなさい」
44
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:54:02 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「あー⋯⋯何から言ったらいいかなぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「全部聞くから」
怒っているというより、心配するような声。
( ・∀・)「えーと⋯⋯あ、これ食べてみてください」
デレさんと会わない間に試しに買ったチョコレート。
小さな袋に沢山詰まったソレを、一粒差し出す。
ζ(゚ー゚*ζ「おいしいねぇ」
(*・∀・)「デレ先輩と食べると、なんでも美味しいですけど」
( ・∀・)「デレ先輩がいなくても、このチョコレートは美味しかったです」
45
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:54:58 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯続けて?」
袋を奪い取り、心なし不機嫌となったデレさんが言う。
もぐもぐしててかわいい。
( ・∀・)「世の中には、美味しいものとか、楽しいことが沢山あって」
( ・∀・)「ソレを探すには、出会うには、沢山の時間が必要じゃないですか」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯そうだねぇ」
( ・∀・)「でも俺は、そういうの何にもあげられないから」
ζ(゚ー゚*ζ「は?」
チョコレートを食べる手が、止まった。
46
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:55:23 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「困ってる時に助けてもらって、いつも優しくしてもらって、何も返せないから」
( ・∀・)「誇れる後輩になれるよう努力してみても、途中でだらけてゲーセンとか行っちゃうし⋯⋯」
( ・∀・)「なにか、楽しい話でもできないかなって、色々試してみても、なんかダメで」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯」
( ・∀・)「チョコレートは、デレ先輩がいなくても美味しくて」
( ・∀・)「じゃあ、デレ先輩だって、俺がいなくても、美味しいもの、楽しいことはあるはずで⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯なんにもできないなら、邪魔になりたくないってこと?」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯はい」
47
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:57:50 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「あんまり気に」
( ・∀・)「気にしなくていいよ、って言ってくれると思ったから、会いに行きませんでした」
ふふって、デレ先輩が笑う。
しょうがないなぁ、っていうように。
( ・∀・)「今みたいに、ちょっと困った顔で笑って。その顔が好きだったんですけど」
( ・∀・)「いや、どんな顔でも好きですけど。困らせて、自分ばっかり幸せになって⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「あー⋯⋯。対等になりたかったんだね、君は」
ζ(゚ー゚*ζ「ダメだなぁ」
48
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:01:26 ID:zoafWSng0
( ・∀;)「はい、俺ダメで⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、こっちの話。あのねぇ、君」
ζ(゚ー゚*ζ「私はちゃんと楽しかったよ」
( ;∀;)「⋯⋯⋯⋯え?」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、ちゃんとっていうのも失礼か。君が会いに来るの、嫌いじゃなかったよ」
ζ(゚ー゚*ζ「君のほうから毎日来てくれるから、ちゃんと伝えられてなかったよね」
( ;∀;)「⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「先輩だからね。頼ってもらえるのが嬉しいんだよ、私は」
49
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:01:56 ID:zoafWSng0
( ;∀;)「でも先輩、今年卒業じゃないですか」
ζ(゚ー゚*ζ「う、うん? 今それ関係あるかな?」
( ;∀;)「最後の年なのに、あと一年しかないのに、人のことばっかり⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「あー⋯⋯じゃあねぇ、口開けなさい」
チョコレートを押し込まれた。
ζ(゚ー゚*ζ「おいしい?」
( ;∀;)「世界一です」
50
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:02:17 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「二人だと世界一おいしいんだよ。それにさ、」
ζ(゚ー゚*ζ「最後の一年に、ここまで慕ってくれる後輩と会えなくなるなんて、寂しいこと言わないでよ」
51
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:02:53 ID:zoafWSng0
( ;∀;)「⋯⋯⋯⋯結婚してください」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは、だめです」
ハンカチで、涙を拭われる。
振り払うけど、逃がしてくれなくて、諦めた。
ζ(゚ー゚*ζ「でもさぁ、結婚しなくてもできること、いっぱいあるじゃない? そういうの全部、一緒にやろうよ」
ζ(゚ー゚*ζ「今度はちゃんと、私から誘うから」
ζ(゚ー゚*ζ「私のためだと思って、ね?」
拭われた先から涙が出てきて、それでもそっと拭ってくれて、幸せで、申し訳なかった。
52
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:03:45 ID:zoafWSng0
ミセ*゚ー゚)リ(めでたしめでたしじゃん!)ヒソヒソッ
(゚、゚トソン(⋯⋯ミセリの言う通り、気を使った結果ではあったわけですね) ヒソヒソッ
('、`*川(なんか無駄に振り回された気分だわ。いや、なにかしたってわけじゃないけどさ⋯⋯) ヒソヒソッ
( ´_ゝ`)(でも、やっと元通りですよ) ヒソヒソッ
53
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:04:53 ID:zoafWSng0
( ゚∀゚)o彡゜「とりあえずさー、明日の合コンにモララー連れてっていいんだよな?」
54
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:05:27 ID:zoafWSng0
(;´_ゝ`)「お前何聞いてたの!?」
(; ゚∀゚)o彡゜「いやお前が何聞いてたの!? 今エモい感じでフラれてたじゃん!」
('、`*川「『アタシたち⋯⋯ズッ友だかんネ⋯⋯』って、都合のいい友達宣言だったわね」
(;´_ゝ`)「今のはいい感じに恋愛に繋がる流れでした! ねぇトソン先輩!」
(゚、゚;トソン「え!? あ、そういうの、疎くて⋯⋯ミセリ、どうなんですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「次ができるまでキープして、ダメだったらモラくんに行ける恋愛強者の一手でした。アレはプロですね」
( ゚∀゚)o彡゜「ほらみろー!」
55
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:06:38 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「⋯⋯俺、予備の彼氏みたいな感じなんですか」
ζ(゚ー゚*ζ「ち、ちがう、ちがうし」
( ・∀・)「先輩がいいなら、俺、それでも」
ζ(゚ー゚*ζ「よくないから! 自分を下げるのダメ! 外野も変なこと言わない!」
(;´_ゝ`)「そうだぞジョルジュ! なんかいい感じに纏まりかけてたんだぞ!」
( ゚∀゚)o彡゜「纏まってねーわ! 大体俺だって、ここでモララーと先輩が恋人にでもなればイイハナシダナーで終わってんだよ!」
( ゚∀゚)o彡゜「それがなんだよ、『嫌いじゃないよ』とかフワフワしてさぁ! 別にキープ扱いなら他の出会い探しても怒られる謂れはねーじゃん」
56
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:08:11 ID:zoafWSng0
('、`*川「一理あるどころか真理じゃん」
ζ(゚ー゚*ζ「ぺ、ペニサス?」
('、`*川「アンタがモナ助捕まえとけばこんなことになってないし、一回くらい別の出会い探させるのもアリじゃない?」
(;・∀・)「俺、別に合コン行きたいわけじゃないんですけど」
ミセ*゚ー゚)リ「でも友達が心配して誘ってくれたんだから、一回くらい顔出しといたら?」
( ゚∀゚)o彡゜「そうそう、絶対彼女できるわけじゃないし。⋯⋯言ってて悲しくなるけど、彼女より友達増えるだけの方が多いよ」
(゚、゚トソン「それでサクッと彼女できたらちょっと面白いですけどね」
57
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:08:44 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「でも、俺にはデレ先輩が⋯⋯」
( ゚∀゚)o彡゜「フラれてたじゃん」
( ´_ゝ`)「フラれてない! ねえデレ先輩! モララーのこと好きですよね!」
58
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:10:06 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「え、あ、あの、⋯⋯⋯⋯き、嫌いじゃない、よ?」
59
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:10:30 ID:zoafWSng0
( ゚∀゚)o彡゜「好きじゃないって」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなこと言ってないでしょ!?」
('、`*川「じゃあ好きなの?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯い、今はいいじゃん、その話は」
(゚、゚トソン「いや、むしろ今しなくていつするんですか」
( ・∀・)「あの、俺、好かれてなくても、デレ先輩が笑っててくれれば⋯⋯」
60
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:10:59 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「好きじゃないなんて一回も言ってないでしょ!」
61
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:11:38 ID:zoafWSng0
ミセ*゚ー゚)リ「ほう!」
('、`*川「おお!」
(゚、゚トソン「わあ!」
( ゚∀゚)o彡゜「よっしゃあ!」
( ´_ゝ`)「でしょうね!」
( ・∀・)「?」
62
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:12:15 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「あ、え、いや、いまのなし、いまのは、なし」
ζ(゚ー゚*ζ「好きって、色々あるからさ、ほら」
ζ(゚ー゚*ζ「みんなが思ってるアレとは違うから」
( ・∀・)「デレさん俺のこと好きなんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「違う!」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、違わないけど、ちょっと、ちょっと待って、アレだから」
ζ(゚ー゚*ζ「恋愛的なヤツじゃないから」
ζ(゚ー゚*ζ「ただ、特別なだけ」
ζ(゚ー゚*ζ「そう。ただ、大切なだけなの」
63
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:13:07 ID:zoafWSng0
(゚、゚トソン「え、じゃあモララーくんが他所で恋人作ってきてもいいんですか」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯それは、私がいいとか悪いとかいう話じゃ、ないでしょ」
( ´_ゝ`)「ただ大切なだけってなんですか、そもそも」
ζ(゚ー゚*ζ「そのままだよ」
( ゚∀゚)o彡゜「そのままが意味わからんのですわ」
64
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:13:44 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「えっと⋯⋯たとえば、だけどね」
ζ(゚ー゚*ζ「友達ができたり、美味しいモノ食べたり、なにかができるようになったりして」
ζ(゚ー゚*ζ「悩みとか何もなくて、幸せそうに笑ってて」
ζ(゚ー゚*ζ「寂しくなくて」
ζ(゚ー゚*ζ「たまに、なにか辛いこともあったりして」
ζ(゚ー゚*ζ「そういう辛いときに、私の一歩後ろから、相談してくれるだけでいいの」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯それだけで、いいの」
65
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:14:33 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「いつも通りじゃないですか」
ζ(゚ー゚*ζ「いつも通りでいいよ」
(*・∀・)「俺は楽しいこととか、嬉しいこととか話したいのに⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「それを探して、会いに来なくなったじゃない」
(;・∀・)「それは、ほんと……ごめんなさい」
( ゚∀゚)o彡゜(『恋』を通り越して『愛』じゃん)ヒソヒソッ
( ´_ゝ`)(なんか、俺、帰りたいよ⋯⋯) ヒソヒソッ
66
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:15:39 ID:zoafWSng0
(゚、゚トソン「じゃあ仮に今から私とモララーくんが恋人になったら、笑って祝福してくれます?」
67
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:16:11 ID:zoafWSng0
(;´_ゝ`)「また急にぶっ込まんで下さいよ!」
ミセ*゚ー゚)リ「えっ、トソンってそうなの!?」
('、`*川「そんなわけないでしょ」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯別にトソンはモララーくんのこと、好きじゃないでしょ」
(゚、゚トソン「仮に、です」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯お祝いしますよ、それは」
(゚、゚トソン「笑って、ですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、私のことは、いいでしょ」
68
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:16:36 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「それはおかしいですよ。むしろデレ先輩の感情だけが大事です。他がどうでもいい」
(; ゚∀゚)o彡゜「オメーもゼロか百かしかできねー男だよね、ホント」
ζ(゚ー゚*ζ「だって私がどうして欲しいか言ったらそうするでしょ、君」
(*・∀・)「? はい」
(;´_ゝ`)「ちっとは悩んでくれやさっきまでみたいにさぁ!」
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、自分で考えないとダメだよ。幸せになれないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「君は、たまたま初めに優しくしてくれた私に、懐いちゃっただけでさ。他にもたくさん、女の人っているから⋯⋯」
69
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:17:35 ID:zoafWSng0
ミセ*゚ー゚)リ「え、今告白されても物足りないから色々見たうえで自分を選んで、ってことなの?」
(゚、゚トソン「他の女と付き合っても私たち友達だからずっと一緒よ、ってことですか?」
('、`*川「アンタ⋯⋯そんな強欲でよく『それだけでいい』とか言えたわね⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「ち、ちがう、ちがうし」
ζ(゚ー゚*ζ「ゆうどうじんもん、誘導尋問ですよ、これは」
('、`*川「どんな誘導したらこんな迷路みたいな答え出てくんのよ⋯⋯」
70
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:18:33 ID:zoafWSng0
( ´_ゝ`)「⋯⋯あのさぁ」
( ´_ゝ`)「そもそもモララーが毎回毎回、一足飛びに『結婚してくれ』って言うから断られるだけで、普通に『付き合って』って強引に押したら行けるんじゃないか?」
( ゚∀゚)o彡゜「よし、やれ!」
(;・∀・)「そんな単純じゃないでしょ⋯⋯」
( ゚∀゚)o彡゜「もうやるだけやれ!」
71
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:19:27 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「デレ先輩、俺と付き合ってください!」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯言わされてるうちは、ダメ」
(*・∀・)「でも、俺はずっとデレ先輩が」
ζ(゚ー゚*ζ「好きだとしても、ダメ。こういうことは胸を張って、自分から言いなさい」
ζ(゚ー゚*ζ「あと、タイミングも大事だから。雑に済ませようとしないで」
( ・∀・)「すいませんでした⋯⋯」
72
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:20:26 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「やっぱり無理だったじゃん⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、いちいち落ち込まないの」
(゚、゚トソン「デレ、あなたがちょっと素直になればいいだけでは⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「す、素直、ですけど? 何を言ってるのかな?」
( ゚∀゚)o彡゜「あんまりいじめてやらんでくださいね、ソイツ先輩のこと大好きなんで」
ζ(゚ー゚*ζ「い、いじめてないよ! じゃあもう私帰るので! ちょっとこの子借りて行きますね!」
(;・∀・)「え、あ、デレさん? そんな引っ張らないで⋯⋯」グイグイッ
73
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:21:00 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「うるさい! みんなにごめんなさいして、帰るよ!」ダダッ
(;・∀・)「あ、はい、先輩方、ボンクラども、お騒がせしました!」ダダッ
ガララッ ピシャン
( ´_ゝ`)「なんかドッと疲れたわ⋯⋯」
( ゚∀゚)o彡゜「俺余計なことしたかなぁ」
(゚、゚トソン「恋愛って難しいんですね」
ミセ*゚ー゚)リ「いや、あんな面倒なの中々ないから」
('、`*川「でもさぁ、なんだかんだで一番いいカタチで終わりじゃない?」
74
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:21:42 ID:zoafWSng0
〜下駄箱〜
俺の手を引きながら、デレ先輩はどんどん進む。
ζ(゚ー゚*ζ
この人の後ろを歩くのが好きだった。
小さな背中が、とても神々しくて、頼り甲斐があって。
たまに振り向いて、笑ってくれるのが好きだった。
ζ(゚ー゚*ζ「あのさぁ」
デレ先輩がキョロキョロと辺りを見まわし、振り返る。
75
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:22:07 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「? なんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっとこっちきて」チョイチョイ
考えていたことがバレただろうか、と思いながら、近づいて行く。
ζ(゚ー゚*ζ「屈んで。耳、寄せて」
(*・∀・)「?」
吐息がかかる距離まで、近づく。
76
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:22:51 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「だいすき」
77
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:24:53 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「!?!?!」
びっくりして、ひっくり返った。
それを見て、先輩はけらけらと笑っている。
ζ(゚ー゚*ζ「告白って、こうやるのよ」
耳まで真っ赤にして、してやったりって顔で笑っている。
ζ(゚ー゚*ζ「私、君に先輩って呼ばれるの、好きなの」
くるりと、俺に背を向けて、先輩は出口へ向かう。
(*・∀・)「あ、ああ、あー⋯⋯そういうやつですか、はい、わかってました」
ζ(゚ー゚*ζ「私、誰とも付き合わないし、結婚しないから」
(*・∀・)「はい、存じております」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯ずっと後ろにいて。いなくならないで」
78
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:25:13 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「いいんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ダメなんだけどさ」
ζ(゚ー゚*ζ「本当は、いつものデレ先輩なら、君のためにならないからダメって格好つけて言うんだけどさ」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯一緒にいてよ」
小さな背中が、さらに小さく見える。
ずっと一緒にいたのに、こんなにも自信なさげな声を聞いたのは初めてで。
79
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:25:38 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「ずっと一緒にいます」
(*・∀・)「特別ななにかが無くても、俺のなにかがダメになるとしても、一緒にいますから」
(*・∀・)「だから、泣かないで下さい」
ハンカチを持って、急いで前に回り込む。
泣いていなかった。真っ赤になって俯いていただけだった。
ζ(゚ー゚*ζ「後ろにいてって言ったのに」
80
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:27:31 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「かわいい」
ζ(゚ー゚*ζ「恥ずかしいからどっかいって」
(;・∀・)「え、あ、はい! どっかいきます!」
先輩を置いて、急いで校舎内に戻ろうとする。
後ろから、服の裾を掴まれた。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯早くいなくなって」
(;・∀・)「⋯⋯⋯⋯」
初めて会ったとき、俺も同じことを言った気がする。
そのとき、先輩はーーー
81
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:27:51 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「だ、大丈夫です」
(*・∀・)「振り向きませんから。もう前に来ません、ずっと一緒ですから」
ずっと、一緒にいてくれた。
それが、とても嬉しかったんだ。
82
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:28:24 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「気を使うのへた」
(;・∀・)「すいません」
ζ(゚ー゚*ζ「先輩に逆らったね」
(;・∀・)「重ねてすいません」
ζ(゚ー゚*ζ「許してあげないから」
でも、一緒にいていいんですよね。
83
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:28:44 ID:zoafWSng0
(;・∀・)「許して貰えるまで、一緒にいます!」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯あたりまえでしょ! 帰るよ!」
84
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:29:36 ID:zoafWSng0
手を引かれて、校門に出る。
あのときより少ないけど、桜が散っている。
あの西陽の中を、二人で歩いている。
ζ(゚ー゚*ζ「私がいない間に、なにか特別なことはなかったの?」
(*・∀・)「遠くから見るデレさんも、特別綺麗でした」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯いつも思うんだけど、他の人にもそういうこと言うの?」
(*・∀・)「他の人を綺麗と思ったことがないので、なんとも」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ」
デレさんがいつもみたいに、しょうがないなぁ、って笑っている。
85
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:29:56 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「しばらく、君の先輩でいさせてね」
(*・∀・)「? ずっと先輩じゃないんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「それは、君次第だねぇ。どうなると思う?」
(*・∀・)「分かるまで、毎日会いに行っていいですか」
当然先輩は、好きにしなさい、と言ってくれて。
ずっとこんな日が続けばいいと思った。
完……?
86
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:30:16 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「あ、さっきのは内緒にしてね」
(*・∀・)「さっきの⋯⋯ってなんです?」
ζ(゚ー゚*ζ「2人でいる間のこと、ぜんぶ」
( ・∀・)「毎日好きと言うようです」完!
87
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 17:31:20 ID:zoafWSng0
オレンジデー祭り参加作品です。
楽しんでいただければ幸いです。
88
:
名無しさん
:2024/04/24(水) 18:06:56 ID:L9lA1zdY0
乙
かわいい
89
:
名無しさん
:2024/04/24(水) 18:27:50 ID:vmmxdLm20
乙
デレがツンツン気味なの珍しいな、こういうのもいい
90
:
名無しさん
:2024/04/24(水) 21:02:37 ID:i6WKWYsg0
乙乙乙
91
:
名無しさん
:2024/04/25(木) 18:49:48 ID:F12Jc5.60
乙!かわいくてずっとニヤニヤしてた
92
:
名無しさん
:2024/04/26(金) 18:18:57 ID:N3xOx9GA0
乙乙
ほんとほんと。ニヤニヤしちゃうね
93
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 09:58:56 ID:amB2qlHU0
ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。
これからおまけを投下します。
あたたかく見守ってください。
94
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 09:59:24 ID:amB2qlHU0
【おまけ】
人は幸福すぎる時間の中にいると、かえって終わりを意識するという。
頭いいヤツは何言ってんのかよくわかんねー、なんて思ってたけど、今なら分かる。
ζ(゚ー゚*ζ「はい、どうぞ」
ケーキが一欠片刺さったフォークを、デレ先輩が俺に差し出す。
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、はやく」
いや、これさっきアナタが口付けてませんでした!?
ζ(゚ー゚*ζ「あー⋯⋯嫌いかな、こういうの」
デレ先輩が苦笑して、フォークを下げようとする。
95
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:00:03 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「あ、い、いえ、いただきます!」
アナタにそんな顔をしてほしく無くて、反射的にケーキへ飛びついた。
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯うまいです」
嘘です味なんてわかんないです。
ζ(゚ー゚*ζ「そうでしょうそうでしょう」
デレ先輩はふふん、と自慢げに胸を張ると、ちら、とフォークを見て、それからゆっくり俺の口元を見て、またフォークに目を戻す。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯あ」
なぜ俺が一瞬躊躇したのか、気付いてしまって。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯えっち」
どうしろっていうんですか!?
96
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:00:25 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)もはや声も出ないようです
97
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:00:45 ID:amB2qlHU0
〜ちょっとだけ前〜
ζ(゚ー゚*ζ「ここねぇ、来てみたかったの」
通学路から外れた路地の、ちょっとおしゃれな喫茶店。
2人きりで、『デートじゃないよ』と念押しされて、でもデレ先輩からはじめてのお誘いで、そんなんもう断れるわけなくて。
二つ返事で飛びついて、気がついたらここにいた。
カランカランッ
ζ(゚ー゚*ζ「おじゃましまーす」
(*・∀・)「お、おじゃまします」
軽快なベルを鳴らして入店した。
98
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:01:06 ID:amB2qlHU0
('A`) 「いらっしゃい。⋯⋯⋯⋯2名様?」
カウンターで文庫本を読んでいた店員さんが、顔を上げ、好きな席にどうぞと店内を勧める。
ガラガラだ。
ζ(゚ー゚*ζ「2名です」
('A`) 「あいよー。ごゆっくり。注文決まったら呼んでね」
( ・∀・)「へーい」
ちょっと贅沢に空間を使い、奥の四人掛けのテーブル席に、二人で座る。
99
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:01:38 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「なににしましょうねぇ」
(*・∀・)「はは、ご機嫌ですね」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。日常が戻ってきた感じ」
あなたの日常に、当たり前に俺が居る。
その事実だけで、ちょっと感動してしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「それに、私から誘う、って言っちゃったしねぇ」
ひとつ、ため息をついてそんなことを言う。
⋯⋯義務感も、ちょっとあるんですね。
100
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:02:07 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「君からおでかけに誘ってくれたことなんて、今まで一度も無いのにね」
( ・∀・)「⋯⋯?」
不満げな声。
まるで、誘って欲しかったみたいな。
( ・∀・)「いやいや、思い上がりすぎでしょー⋯⋯」
101
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:02:37 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「まあねぇ。所詮はただの先輩ですから?」
ζ(゚ー゚*ζ「可愛がってた後輩に、遊びに誘って貰えるかなー⋯⋯なんて、ほんと、思い上がりだよねぇ」
( ・∀・)「!? いや、いやいやいや! 今のは自分への戒め? 的なアレでして!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、知ってる」
慌てる俺を見て、優しく微笑む先輩。
ζ(゚ー゚*ζ「きみのことなら、ぜんぶ、しってる」
(*・∀・)「」
102
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:04:17 ID:amB2qlHU0
('A`) 「サービスのカップルプレートでーす。あとお兄さん、今はいいけど、お客さん増えたら声落としてね」
店員さんがクッキーの乗ったプレートを持ってくる。
(*・∀・)「あ、すいません、うるさくて」
あまりの破壊力に記憶が一瞬飛んでいた。
(*・∀・)「あと、俺たちカップルじゃなくて⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ
('A`) 「そうなの? ま、いいよいいよ」
ヒラヒラ、と手を振って下がる店員さん。
103
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:04:45 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「あざっす!」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます。キミも、お礼はちゃんとね」
(*・∀・)「ありがとうございます!」
('A`) 「あいあい、ごゆっくりー」
優しい店員さんは読書に戻っていった。
104
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:05:15 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、よくできました。で、キミに聞きたいんだけどね」
サービスのクッキーを摘んで、デレ先輩が言う。
ζ(゚ー゚*ζ「カップルじゃないんだ?」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯え?」
ζ(゚ー゚*ζ「まあ、冗談なんだけれど」
そうですか、冗談ですか、冗談きついぜほんとにさあ。
たぶん無自覚だろうけど、今日の先輩は一言一言が俺の心を揺らしにきている。
105
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:05:37 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「で、なににするー? 私はねぇ⋯⋯カフェオレに、しようかなぁ」
メニューを広げて、先輩が呟く。
( ・∀・)「あれ、ブラックじゃないんですか」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯実はね、甘いの、好きなの」
実は知ってました。
( ・∀・)「でも、コーヒーだけはブラックだと思ってたんで、ちょっと意外です」
先輩は、メニューで顔を隠して。
ζ(゚ー゚*ζ「甘いの好き、って言ったら、可愛く見えるかなぁ、って」
(*・∀・)「」
106
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:05:59 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「だ、だいじょうぶ?」
だいじょばない、おれは、あなたが、かわいすぎてしぬ。
(*・∀・)「だいじょうぶでーす。あ、俺はブラックで」
なんて、まさか言えるわけないので。
苦いので気付けをしないと、意識が飛んでしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、格好つけー」
鼻先を、指でちょんと押された。
(*・∀・)「」
107
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:06:35 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「け、けいき、けいきを頼みましょう、けいきを」
ζ(゚ー゚*ζ「なんでカタコトなの?」
(*・∀・)「ふふ、なんででしょうね」
ζ(゚ー゚*ζ「私はショートケーキかな」
(*・∀・)「俺も同じので」
ζ(゚ー゚*ζ「だめ、違うの頼んで」
(;・∀・)「注文にダメとかあります?」
ζ(゚ー゚*ζ「わけっこできないでしょ」
『わけっこ』って。
不意に出る言葉のチョイスが、もう、ねぇ?
108
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:07:00 ID:amB2qlHU0
〜冒頭に戻る〜
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯ハッ!?」
なんだか幸せな夢の中にいた気がする。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、そっちも食べたい」
ちょっと照れながら、先輩が俺のチョコケーキをフォークで指す。
(;・∀・)「あ、はい、どーぞどーぞ!」
もう味なんて分かんないんで、好きなだけ食べちゃってほしい。
109
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:07:24 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「うむ。あーん」
( ・∀・)「アァン?」
俺がヤンキーみたいになっているのに対し、先輩は目を瞑って、小さな口を開けて待っている。
⋯⋯⋯⋯え、あーん、って、アレですか。
俺が、このお方に、ケーキを食べさせるってこと?
(;・∀・)「あ、そうですね、本当に気が利かなくて! では、フォークをお借りして」
ζ(゚ー゚*ζ「それ」
俺の手元にあるフォークを指差し。
ζ(゚ー゚*ζ「はやく」
自分の口元を指差す。
110
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:07:47 ID:amB2qlHU0
でもね先輩。このフォーク、俺が使ったヤツなんですよ。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯ねぇ」
耳まで真っ赤にして、催促をしている。
さっきと違って、誰が使ったか分かった上での催促ってことですか?
(*・∀・)「せ、先輩さっき俺にえっちって言ったくせに」ボソッ
ζ(゚ー゚*ζ「うん?」
(*・∀・)「せ、先輩の方がー。えっちなんじゃないですかー?」
ああ、ちょっとした反撃が出来るくらいには、頭が回るようになってきた。
111
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:08:12 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯あ、あのね」
(*・∀・)「ほら、こんなふうに言われたら、困るじゃないですか。だから」
そっと、近寄って。耳を寄せてと手招きするから、従う。
ζ(゚ー゚*ζ(⋯⋯⋯⋯えっちでな先輩で、ごめんね)コソッ
(*・∀・)「」
112
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:08:35 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「で、で、では、失礼しまして」
(*・∀・)「あ、あ、あ、あ、アァァン!?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、いただきます」
差し出した一欠片を、パクリと小さな口に納める。
もぐもぐと美味しそうにしているが、口元にチョコレートが少しついている。
113
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:09:12 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「先輩、ここ」
ちょいちょい、と俺自身の口元を指し、チョコついてますよ、と知らせてみる。
ζ(゚ー゚*ζ「うん? ⋯⋯ふふ、欲しがりさんめ」
何か勘違いしたようで、先輩はまた、自分のケーキを一欠片差し出してきた。
ζ(゚ー゚*ζ「ね、別のを頼んでよかったでしょう?」
ふふん、と胸を張るが、口元が大変可愛らしいことになっているので当然威厳がない。
(;・∀・)「あ、あの、そうではなく」
ζ(゚ー゚*ζ「遠慮しなくていいよ」
(*・∀・)「⋯⋯で、では、失礼しまして」
食べる。
さっきより、少し、味、分かる。
114
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:10:47 ID:amB2qlHU0
(;・∀・)「そ、それでなんですが、先輩、口元」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯キミねぇ、落ち着いて食べなさいね」
(*・∀・)「?」
しょうがないなぁ、と笑って先輩が紙ナプキンを取り、俺の口元を拭く。
ζ(゚ー゚*ζ「かわいい子だねぇ、キミは」
115
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:11:09 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「先輩もついてますよ」
ζ(゚ー゚*ζ「」
ζ(゚ー゚*ζ「い、言ってよ」
(;・∀・)「すいません、こう、付いてるよーって伝えたつもりだったんですが」
ζ(゚ー゚*ζ「き、キミはアレだね。今日は、ちょっと。そのさぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「いじわる」
(*・∀・)「」
116
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:11:36 ID:amB2qlHU0
俺が言葉を失ううちに、話は少し変わりまして。
ζ(゚ー゚*ζ「もうすぐ私ねぇ、修学旅行じゃない?」
そういえば、ウチの学校は3年の5月に修学旅行らしい。
(*・∀・)「あー、らしいですねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「大きなイベントだと、色恋に浮き足立つ男の多いこと多いこと」
やれやれ、とカップを手に取る先輩。
117
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:12:14 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「先輩は恋人作らないって言ってましたもんねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「でもそういうの、他の人にはあんまり分かってもらえてないからね」
ζ(゚ー゚*ζ「私の都合どうこうではなく、自分の都合で恋人が欲しいだけの人から声かけられることは、増えたよ」
( ・∀・)「そうなんですか」
なんかヤダな、そういうの。
先輩がなぜ恋人を作りたがらないのかは分からないし、教えてくれるまで聞く気もないけれど、きっと熟考したうえでの選択なのだろう。
先輩が選んだことを、軽く扱うようなヤツに、先輩の側にいて欲しくないな。
118
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:12:42 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「だからしばらく毎日迎えにきてね」
( ・∀・)「!?」
ζ(゚ー゚*ζ「場合によっては、一時的に私の恋人を名乗ることを許可しましょう」
( ・∀・)「?!?!?」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、ホントには付き合わないからね」
( ・∀・)「」
情報量が多すぎてパンクしてしまう。
119
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:13:30 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「勿論、キミに恋人が出来たら、来なくていいよ」
( ・∀・)「」
120
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:13:56 ID:amB2qlHU0
ああ、この人は。
俺のことを、『かわいい後輩』としか見ていないんだ。
それが、無性に悲しくて。
ちょっとだけ、腹が立った。
121
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:14:19 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「⋯⋯先輩はズルい」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、なんで?」
さっきまで口にケーキつけてたくせに、余裕ぶって。
( ・∀・)「俺は先輩が好きだから、恋人なんて出来ませんよ」
ζ(゚ー゚*ζ「私が、いいよ、って言ってるんだよ?」
( ・∀・)「なんでも言いなりってわけじゃないです」
ζ(゚ー゚*ζ「本当はね、私は、キミが思うほど素敵な人じゃないよ?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯実はね、結構頑張って演じてるの」
( ・∀・)「分かってますよ」
先輩が、ちょっと背伸びしてたことくらい。
122
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:14:43 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「今日だって、かわいすぎると思ってました」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
( ・∀・)「ブラックコーヒー好きなのに、かわいこぶってカフェオレ頼んでみたり」
ζ(゚ー゚*ζ「ほ、ホントはブラックの方が苦手なんだよ?」
( ・∀・)「じゃあなんですか、今まで格好つけて半年間も苦手なコーヒー飲んでたって言うんですか、そんなかわいい人いるわけないでしょ!」
ζ(゚ー゚*ζ「」
ζ(゚ー゚*ζ「あのね」
123
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:15:10 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「言葉選びもいちいちかわいいし! なんですか、『わけっこ』とか、17歳で言わないでしょ」
ζ(゚ー゚*ζ「え、言わない? あれ?」
( ・∀・)「口にケーキつけたまま、人の口拭いたり、もう、あざとすぎますよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、狙ってない! 狙ってないところばっかり言わないで!」
( ・∀・)「いっつも格好つけて香水とかつけてるし! 今年受験のくせに!」
ζ(゚ー゚*ζ「それに関しては全く心当たりがないよ!?」
( ・∀・)「じゃあなんでいっつもいい匂いするんですか! 今日は距離近いからなおさら感じましたよ!」
124
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:15:39 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯えっち」
125
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:16:06 ID:amB2qlHU0
空気が、凍った。
ζ(゚ー゚*ζ「あのね」
ζ(゚ー゚*ζ「香水は、してないです」
(;・∀・)「え、でも甘い匂いしますよ」
ζ(゚ー゚*ζ「えっち」
(;・∀・)「」
126
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:16:32 ID:amB2qlHU0
しょうがないなぁ、と先輩はため息を吐く。
ζ(゚ー゚*ζ「キミはホント、私が思ってもいないことばっかり」
(;・∀・)「すいません」
ζ(゚ー゚*ζ「自分だってブラック飲めないくせに格好つけて頼んだでしょ」
(;・∀・)「はい」
ζ(゚ー゚*ζ「今日だって、急に誘ったのに、当たり前みたいについてくるし」
(;・∀・)「嬉しかったので」
127
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:16:59 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「カップルと間違われたら、すぐに否定するし」
(;・∀・)「先輩誰とも付き合いたくないって」
ζ(゚ー゚*ζ「付き合わないって言ったの! 付き合いたくないわけじゃないの!」
どう違うのかわからないけど、たぶん大事なんですね、それが。
128
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:17:39 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「こ、こほん。話を、戻しますが。私もねぇ、いじわるを言った自覚はありますよ」
( ・∀・)「はい⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「でもねぇ、キミも悪いんだよ?」
( ・∀・)「俺、なにかしましたっけ⋯⋯?」
ζ(゚ー゚*ζ「急に姿見せなくなったよね」
(;・∀・)「その節は本当に! 本当にご迷惑をおかけしました!」
純度100%の落ち度を指摘されてしまうと、なにも言えなくなってしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「私がいなくても、人生楽しくやれそうな感じだったし」
(;・∀・)「いや、いやいやいや」
ζ(゚ー゚*ζ「いっそあれかな? 年下の子のほうが、キミはしっかり守ってあげられるのかな?」
(;・∀・)「俺が好きなのは、ずっとあなただけです!」
129
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:18:17 ID:amB2qlHU0
('A`)「そろそろお客さん来るから、声、落としてね」
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさい」
(;・∀・)「あ、ご、ごめんなさい」
('A`)「おう、がんばれ、青春少年」
130
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:19:09 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「は、恥ずかしかった⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「まあ、ちょっといじめすぎました。とにかく、ね」
ζ(゚ー゚*ζ「キミが私のことを考えてしたことは、とても寂しくて、ほんの少しだけ、嬉しかったよ」
( ・∀・)「⋯⋯ごめんなさい」
131
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:20:01 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「私がモララーくんを傷つけた言葉。本心だけど、キミがやったことと同じだよね」
優しく、諭すような声。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯はい」
ζ(゚ー゚*ζ「私たちは、少し似たところがあるからね。同じ間違いをしないように、話し合わないといけないと思って、今日は誘いました」
照れくさそうに、少し目を逸らして言う。
こういうことを自然に言えるの、すごいと思う。
( ・∀・)「ありがとう、ございます」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、ご静聴ありがとうございます」
ふふふ、とおどけて見せる。
ζ(゚ー゚*ζ「それを踏まえたうえでね」
ζ(゚ー゚*ζ「あらためて、伝えておきたかったの」
132
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:20:33 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「キミが、この先誰を選んでも、自由だからね」
133
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:21:17 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「だから、俺は先輩がーーー」
⋯⋯⋯⋯誰を選んでも自由?
俺はいつも、選ぶまでもないと思っていたけれど。
先輩を選んだことは、あったのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、考えてね」
134
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:22:00 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「先輩、は」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
誰とも恋人にならない、と選択した人。
ずっと後ろを歩いていいと、言ってくれた人。
俺をだいすきと、言ってくれた人。
いつか、先輩じゃない何かになるかもしれない人。
つまり。
つまり?
135
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:23:10 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「⋯⋯俺がほかに恋人を作らないで、ずっと先輩といてもいいと思ってくれてます?」
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、考えたうえでのことならね」
ふふふ、と笑って。
ζ(゚ー゚*ζ「この話をするためにねぇ。今日は距離が近く感じてもらえるよう、ちょっとだけ頑張りました」
(;・∀・)「な、なんでですか? いつもどおり、」
ζ(゚ー゚*ζ「誰かを選ぶ前に、ちゃんと分からせておかないといけないでしょ?」
136
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:24:17 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「キミの人生で出会う人の中で、私が一番かわいいってこと」
(*・∀・)「」
137
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:25:07 ID:amB2qlHU0
今まで見た中でいちばんの、輝かしい笑顔。
今日は特別かわいいと思ってたけど、やっぱり狙ってやってたんだ。
この人、ズルい。
選ばせる気なんて、最初からないんじゃないか?
気持ちが高ぶりすぎて。
もはや、好きという言葉も出ない。
138
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:25:45 ID:amB2qlHU0
【おまけの、蛇足】
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯あれ? 先輩が俺と同じくらい傷ついたなら、俺のこと好きじゃないとおかしくないです?」
ζ(゚ー゚*ζ
( ・∀・)「この間『だいすき』って」
ζ(゚ー゚*ζ「言ってない」
( ・∀・)「え?」
ζ(゚ー゚*ζ「言ってないです、ノーカン、忘れてね」
(*・∀・)「でも」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ一人でチョコレートでも食べてたらいいじゃない!」
( ・∀・)「」
それはズルいでしょ!?
じゃあ、って全然話繋がってないし!
('A`)(俺の店で……青春がほとばしっている……)ドキドキ
('A`)(あの子ら、毎週来ないかな……)ドキドキ
139
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:26:14 ID:amB2qlHU0
【おまけの、蛇足の、そのまた蛇足】
ζ(゚ー゚*ζ「ちなみになんだけど、修学旅行までの間、迎えに来てくれる?」
(*・∀・)「え、あ、はい、もちろん」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、しばらく離れる分、一緒にいる時間を作らないと、寂しくなっちゃうだろうしね」
(;・∀・)「別に数日くらいなら、俺は」
ζ(゚ー゚*ζ「……そっか」
ζ(゚ー゚*ζ「私だけかぁ」
(*・∀・)「」
('A`)(いけ! 押せばいけるぞ、少年!)ドキドキ
完
140
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/28(日) 10:28:14 ID:amB2qlHU0
以上です。
オレンジデー祭りも後半戦、皆さん楽しんでください。
141
:
名無しさん
:2024/04/28(日) 13:47:59 ID:hzbmscVY0
おつです
142
:
名無しさん
:2024/04/28(日) 18:31:04 ID:syhLkZKQ0
乙!おまけ嬉しい!!
この2人本当可愛い
143
:
名無しさん
:2024/05/07(火) 21:41:48 ID:X5owII2U0
乙乙
>>132-133
ここ大事なことだと思った
144
:
♯もらでれ
:2024/05/12(日) 23:29:58 ID:Wx5TSJ7s0
自分が逃げないようにこっそり書いておくんだけど、今週中にあとがきとおまけ投下します。
お祭りの余韻を楽しみたいので、それまでトリップは貸してね。
145
:
名無しさん
:2024/05/12(日) 23:36:11 ID:Wx5TSJ7s0
>>144
本当に恥ずかしいので、別なトリップを考えておきますね。
146
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:35:13 ID:cWF.XMM60
トリップを変えました。作者です。
おまけを投下します。
昨日は(入力したのは昨日じゃないだろうけど)感想をありがとう、元気いっぱいです。
147
:
名無しさん
:2024/05/13(月) 22:35:48 ID:jofhPzuk0
やったぜ
148
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:36:02 ID:cWF.XMM60
今がそうなんだと、気付いてしまうことがある。
(*・∀・)ノシ
駆け寄るあなたを一目見ただけで、ああ、そうなんだな、ってすぐ気付いた。
ζ(゚ー゚*ζ「モララーくん」
今なら、言える。
(*・∀・)「先輩、おはようござ⋯⋯」
つくづく卑怯な自分が嫌になる。
ζ(゚ー゚*ζ「だいすき」
149
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:36:28 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ夢の中なら、言えるようです
.
150
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:36:54 ID:cWF.XMM60
最初は、ちょっとしたおせっかいだった。
( ;∀;)
ちょっと馴染めてない、年下の転校生。
先輩、って一度呼ばれてみたくって。
部活もやってない私が、調子に乗って格好つけた。
( ゚∀゚)o彡゜( ・∀・)( ´_ゝ`)
優しい子だから、すぐに友達もできたね。
自分が頑張ったんだろうに、私のおかげ、なんて嬉しそうに報告に来てくれて。
私は、いつでも来なさい、なんて偉そうなことを言った。
151
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:37:16 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)
それからは、ちょっとしたことでも、放課後に話しかけに来てくれるようになって。
小さな相談事とか、友達とのお話とか、もうすぐテストだね、なんて他愛無い話までするようになって。
君が私に憧れているんだな、って、それくらいは分かるんだ。
ζ(゚ー゚*ζ
でもさ。
私はたまたま最初に手を差し伸べただけで。
頼るモノのないあなたは、それを特別に感じてしまった。
それはきっと、恋とは別のものだ。
152
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:37:51 ID:cWF.XMM60
(;・∀・)「せ、せんぱい⋯⋯?」
困惑する彼を、正面から抱きしめる。
ζ(゚ー゚*ζ「すきなの」
夢だから。
夢だからって、何をしても許されるわけじゃない。
信頼されているのに、心の底でそれを踏み躙っている。
本当のあの子に、申し訳ないと思いながら。
ζ(゚ー゚*ζ「すきって、言って」
あの子に似た彼を、強く抱きしめる。
153
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:38:19 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「⋯⋯いつでも、何度でも言いますけど。好きです」
ζ(゚ー゚*ζ「なんで?」
(*・∀・)「優しくて」打算的で
(*・∀・)「格好良くて」見栄っ張りで
(*・∀・)「可愛らしい」見た目だけの
(*・∀・)「あなたが、好きです」自分が、嫌い。
154
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:39:05 ID:cWF.XMM60
彼が優しく、私を抱きしめ返す。
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、夢だ⋯⋯」
あの子なら、きっと慌てて、抱きしめ返すなんてできなくて。
でも、きっと私のために、笑って、焦って、大丈夫ですよ、って繰り返して。
そんな姿を見て、しょうがないなぁって、なんだか優しい気持ちになるんだ。
ζ(゚ー゚*ζ「だいすきだよ」
(*・∀・)「俺も、先輩が好きです」
155
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:39:28 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「他のことなんか、考えられないくらい」
.
156
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:40:19 ID:cWF.XMM60
その一言で飛び起きた。
ζ(゚ー゚;ζ ハァ、ハァ、ハァ⋯
まだ部屋は暗く、日が上る前だ。
ζ(゚ー゚;ζ「悪夢だ⋯⋯」
間違いなく幸せな夢だった。
ただ、一人の男の子から、多くの選択肢を奪ったうえでの、幸せだった。
( ・∀・)『世の中には、美味しいものとか、楽しいことが沢山あって』
( ・∀・)『ソレを探すには、出会うには、沢山の時間が必要じゃないですか』
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯本当にね」
157
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:41:08 ID:cWF.XMM60
あの子が好きだ。
たぶん、誰が見ても気付くだろう。
でも、あの子にだけは、決してバレてはいけない。
ζ(゚ー゚*ζ コロン⋯
たった、ひとこと。
あなたが好きだと、ひとこと言えば。
自惚れではなく、あの子と私は、恋人になる。
そうなったときあの子は、今よりもっと視野が狭くなって。
私が喜ばないような選択肢を、考えることすら辞めてしまうのではないか。
現状ですら、私のためにと隠れてしょんぼりするような子なのだ。
恋と信頼とを勘違いしたままに、手に入るはずだった幸せに、気付かないまま日々を過ごしてしまうのではないか。
158
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:41:55 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ「それだけは、だめ」
あんなに、ひたむきに頑張った子が、幸せになれないなんて、あってはいけない。
じゃあ、どうするかなんて、決まってる。
私が、諦めるのだ。
ただ、諦めて、優しい先輩として、支えてあげればいい。
ζ(゚ー゚*ζ「先輩、だもん」
先輩と、呼ばれた。
あたたかな声で、何度も、何度も、先輩と呼ばれた。
それだけで、いいじゃない。
⋯⋯⋯⋯いい、はずだ。
159
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:42:33 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ『でもさぁ、結婚しなくてもできること、いっぱいあるじゃない? そういうの全部、一緒にやろうよ』
ζ(゚ー゚*ζ『今度はちゃんと、私から誘うから』
.
160
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:43:00 ID:cWF.XMM60
あの子が、寂しがるからと。
自分に言い訳して、放った言葉だけが、救いだった。
161
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:43:37 ID:cWF.XMM60
いつの間にか眠っていて、目が覚めたらもう朝だった。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ねむーい」
歯を磨いて顔を洗って髪を整え着替えていつのまにか通学路でした、滅茶苦茶寝たのに眠気が取れない。
「デレせんぱーい!」
聞き慣れた声。
振り返ると、まあ、当然だけれど。
(*・∀・)ノシ
あの子がいる。
夢と同じ構図でクラクラしてしまう。
162
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:44:39 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「おはようございます!」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、おはよう。今日も元気だねぇ」
ほんの少しの罪悪感を覚えながら、いつもと変わらず挨拶する。
顔に疲れが出ないタチで良かった、心配症なのだから。
(*・∀・)「先輩と会えましたから」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、嬉しいことを」
毎度毎度、こっちが恥ずかしくなるようなことを当たり前に言ってくれる。
出会うたびに喜んでしまうあたり、だいぶ私も絆されている。
(*・∀・)「今日も今日とて、好きです、先輩」
ζ(゚ー゚*ζ「なんで?」
(*・∀・)「え?」
あ。
163
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:45:39 ID:cWF.XMM60
(;・∀・)「⋯⋯⋯⋯なんで、ですか?」
モララーくんが考え込んでしまったのをみて、言うべきではないことを口に出した、と気付いた。
( ・∀・)「思えば、理由もなく好意を口にするのも、不誠実なのかもしれないですね。しかし、なんで。なんで⋯⋯?」
ζ(゚ー゚;ζ「い、いやー、あんまり、深く考えなくてもいいよ。ほら、私、かわいいからね!」
精一杯誤魔化してみる。
正直、かわいいを自称したり言わせたりが凄い恥ずかしいんだけど、やめ時を逃した感がある。
( ・∀・)「いや、別に顔で惚れたわけじゃないんで」
小生意気にも一刀両断である。
少し嬉しいのが腹立たしい。
164
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:46:09 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「あ、もちろん先輩はいつでもかわいいですが」
ζ(゚ー゚*ζ「とってつけたような褒め言葉はいいです」
(*・∀・)「かわいいから好き、ではなく、好きだからかわいい、と感じてる部分は大きいと思います」
ζ(゚ー゚*ζ「う」
なんだこの子、今日は冷静だぞ。
(*・∀・)「こう、なんと言うか⋯⋯多分、先輩が顔に怪我とかして、世間にかわいいかわいい言われなくなっても、先輩にくっついて歩いてる気がするんですよね、俺」
ζ(゚ー゚*ζ「それは私も思う」
( ・∀・)「まあ、人なんていざってとき、どうするか分かりませんから。この考えは自分を美化してる気もしますが」
キミは見た目でどうこうって人じゃないと思うよ、ホントに。
165
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:46:46 ID:cWF.XMM60
( ・∀・)「で、なんで俺が先輩を好きか、ですよね」
ζ(゚ー゚;ζ「そ、それはもういいよ」
( ・∀・)「いやー、自分でも気になっちゃいまして」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯はじめに出会ったとき、甘やかしたからでしょ」
もう諦めて、不貞腐れる。
どうせ最初にちょっと優しくしただけの、タイミングのいい女ですよ、ふん。
166
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:47:14 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「あれは大切な思い出ですけど。あのときよりずっと好きですよ、俺は」
.
167
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:47:48 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ 「へぁ?」
まぬけな声が出た。
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯なんで好きなんだろう」
(*・∀・)「なにかで相談しにいったときに、しょうがないなぁ、って笑ってくれるところとか」
(*・∀・)「図書室で勉強してるときの集中した横顔とか」
(*・∀・)「意外と礼儀に厳しいところとか」
(*・∀・)「好きだなぁ、と思うところは多いけど。それが理由で好きってわけじゃない気がするんだよなぁ」
私に、というより、自分の中の言葉を、まとめるように口に出す姿が、思いのほか真剣で。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
照れるんですけど。
168
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:48:20 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「優しいところが好きですけど。たぶんいじめられても、嫌いに慣れないと思います」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと、勘弁してもらっていいかな」
とても、恥ずかしいんですけど。
(*・∀・)「⋯⋯案外本当に理由がなくて、あとから理由付けしてるだけかムグッ」
手でモララーくんの口を多い、物理的に止めました。
ζ(゚ー゚*ζ「やめてって言ったら、やめてね」
(*・∀・)「はい」
手を離すと、モララーくんが苦笑する。
ちょっと、苦笑したいのはこっちですよ。
169
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:49:00 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ「いつものことだけどね、キミは考えすぎて暴走するところがあるよ」
( ・∀・)「⋯⋯ごめんなさい」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、思っていることを口に出せるようになったのは、成長だね」
(*・∀・)「! ありがとうございます!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、私は何もしてないでしょう」
ころころ表情が変わる。
落ち込んだり喜んだり、忙しい子だなぁ。
170
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:49:41 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯? 何かな?」
立ち止まったモララーくんの様子を見るため、振り返る。
眩しいものを見るような、決して手に入らないものを眺めるような、優しい目をしていた。
(*・∀・)「あー⋯⋯いえ。そういうところだろうな、と思っただけです」
ζ(゚ー゚*ζ
ど、どういうところだろう。
(*・∀・)「たぶん、先輩にとっては本当に大したことじゃないんです。ただ、あたりまえに口にする言葉が、俺にとってそのとき一番欲しい言葉だったってだけで」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯そんなに、ご立派な人間じゃないけどね」
とても嬉しそうな顔を見て、少し後ろめたくなってしまう。
私が言った言葉は、きっと誰でも言えるようなことばかりだ。
171
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:50:22 ID:cWF.XMM60
(*・∀・)「そうなのかもしれません。でも、先輩が『私は何もしてないよ』って言うとき、必ず俺は救われてるんです」
ζ(゚ー゚*ζ
それは本当に恋なの、なんて。
わざわざ聴かなくても、私だってわかるくらいに。
(*・∀・)「先輩が大したことじゃないと思っていても、俺には人生を変えるほどの出来事だったりするんです」
一生懸命に、モララー君は言葉を紡ぐ。
(*・∀・)「例えば、保健室での別れ際の『いつでも相談しに来なさい』の一言が、何かに挑戦する励みになったり」
(*・∀・)「なんとなしに『字が綺麗だね』と言われてただけで、文字を書くたび嬉しくなったり」
(*・∀・)「『ちゃんと全部話しなさい』と叱られた事が、気持ちを隠さず話すきっかけになったり」
172
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:51:17 ID:cWF.XMM60
本当に、些細な言葉。
私が覚えてないような言葉すら、こんなにも嬉しそうに語る姿が、嬉しくて。
(*・∀・)「そんな些細な何かがあれば、俺は、自分を好きになれて。少しずつ、できる事が増えて」
見守ることしか、出来ていないと思っていた。
成長するキミの、選択肢を狭めるばかりだと思っていたのに。
(*・∀・)「いつか、先輩と離れても心配掛けない、頼れる後輩になれると思います」
いつのまにか、私が思うよりずっと頼もしくなっていた。
ζ(゚ー゚*ζ「なまいき。いつの間に、男の子みたいになってさ」
(;・∀・)「ずっと男の子ですが」
ζ(゚ー゚*ζ「どうだったかなぁ」
守ってあげたいと、思っていたのに。
甘えてしまいそうになる。
173
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:52:24 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ「ずっと一緒、って言ったのに。またお別れを考えてるし」
(;・∀・)「いやでも受験とかで会えなくなることは多くなりますし。最終的には後ろをついて回るにしても、どうしても離れる機会は増えるじゃないですか」
少し、過保護だったのかもしれない。
もしかしたら。
私の気持ちを打ち明けて、寄り添って一緒に成長していく、という選択肢だって、あるのだろうか。
174
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:52:57 ID:cWF.XMM60
(;・∀・)「何かの間違いで先輩に追い払われたり、先輩に恋人ができたり、というのもあるかもしれませんし」
.
175
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:53:37 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ
この子は。
本当に、この子は。
こっちの気も知らないで。
いや、知られないようにしてるのは私なんだけど、それにしたってコレはないでしょ。
これで、私のためだというのだから、困ってしまう。
(*・∀・)「まあ、そんなことはないと思いますが。先輩にも成長を認めて貰えたし、」
ζ(゚ー゚*ζ「キミはいつまでも成長しないなぁ」
( ・∀・)「!?」
全然頼りにならない。
こんな調子じゃ、先が思いやられるよ。
176
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:54:08 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ「これは、もう少しきちんとお話しする必要があるかもね」
少し目を離すと、私のことが見えなくなってしまうようだし。
私だって、キミの気持ちを考えられていなかったのかもしれない。
このまますれ違ったら、きっと目も当てられない。
ζ(゚ー゚*ζ「あのさあ、放課後、時間作ってよ」
(*・∀・)「はい、もちろん!」
理由も聞かず、即答。
そういうところが心配なんだけど。
177
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:56:10 ID:cWF.XMM60
ζ(゚ー゚*ζ「二人で出かけようか。行ってみたい喫茶店があるの」
(*・∀・)「! それってもしかしてデー」
ζ(゚ー゚*ζ「デート、ではないけど」
( ・∀・)「あ、そうですか⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「キミと、二人で、出かけたいの」
(*・∀・)「喜んで!」
178
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:56:32 ID:cWF.XMM60
もしも。
どんな大事な未来も、私の気持ちも見逃さず、それでも私を選んでくれるなら。
ζ(゚ー゚*ζ「かわいい後輩だね、キミは」
こんな遠回しじゃなくて、夢の中みたいに素直に伝えられるのかもしれない、なんて。
諦めたはずなのに、未練がましく思ってしまった。
完、あるいは『(*・∀・)もはや声も出ないようです』へ続く。
179
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 22:57:13 ID:cWF.XMM60
もしも。
どんな大事な未来も、私の気持ちも見逃さず、それでも私を選んでくれるなら。
ζ(゚ー゚*ζ「かわいい後輩だね、キミは」
こんな遠回しじゃなくて、夢の中みたいに素直に伝えられるのかもしれない、なんて。
諦めたはずなのに、未練がましく思ってしまった。
完、あるいは『(*・∀・)もはや声も出ないようです』へ続く。
180
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/13(月) 23:00:53 ID:cWF.XMM60
よし、今度こそ完結です!
未熟ながら書くべきこと全部書ききった、今週中にあとがきとか書きます。
本当にありがとう!
181
:
名無しさん
:2024/05/13(月) 23:15:43 ID:BFBnTEKU0
乙だ!
182
:
名無しさん
:2024/05/13(月) 23:24:40 ID:09q/HlTQ0
やっぱり二人とも可愛い!乙!また読めて嬉しい!
祭りでこの話に投票したよ〜!!是非また何か書いてくれ〜!!
183
:
名無しさん
:2024/05/14(火) 21:32:30 ID:Trl1vV8U0
乙です
184
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/15(水) 22:50:37 ID:aOyGv6lo0
>>182
投票ありがとうございます! とてもうれしいです! とてもとてもうれしいです!
他のみんなも乙やかわいいをありがとうございます!
あとがき土曜か金曜投下です。何書いたらいいか迷っているため。質問とかあったら、書いてね。
本編は終わったし、読まなくても全然大丈夫だからね。なんかおまけするかもだけど。
185
:
名無しさん
:2024/05/15(水) 22:51:41 ID:sOV3RK/Y0
たいへんおいしゅうございました
186
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/15(水) 23:08:10 ID:aOyGv6lo0
オレンジデー祭りスレの
>>568
にもお礼を言いたくて戻ってきたら、追加で感想があって嬉しいです。
勿論、他の感想も、乙も、かわいいも、やったぜも嬉しいよ。
>>185
ありがとう、お粗末様でした。またどこかで!
187
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:52:39 ID:6.e01KAI0
あとがき
オレンジデー祭り、おつかれさまでした。
大変楽しいお祭りでした、読者、作者、主催者さん、あな本先生、皆様本当にありがとうございました。
あな本先生だけ別枠なのは、ファンだからです。嘘です(嘘ではないですけど)、この方のリツイートでオレンジデー祭りに参加したからです。全く面識無いので、本人からすればいい迷惑かも。
思いつきで色々書きます、文章が読みにくいかも。
このレス以降は読まなくても大丈夫です。
188
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:54:02 ID:6.e01KAI0
まずはテーマ曲みたいなものを記載しておきます。
完全一致ではなく、なんとなくこんな主題を持ってたのかな、くらいで考えてください。
聞いてみて「そうだね」「違うんじゃない?」など考えてみてね。
作品全体
・世界はそれを愛と呼ぶんだぜ/サンボマスター
( ・∀・)「毎日好きと言うようです」
・( ・∀・)なんでもないや/マカロニえんぴつ
・ζ(゚ー゚*ζまた あした/Every Little Thing
・ζ(゚ー゚*ζ君の瞳に恋してない/UNISON SQUARE GARDEN
(*・∀・)もはや声も出ないようです
・メルト/Supercell
ζ(゚ー゚*ζ夢の中なら、言えるようです
特にないけど、あえていうなら
・メランコリック/ Junky feat. 鏡音リン
・夜な夜な夜な/倉橋ヨエコ
どっちかがコレを歌えれば私は苦労しなかった
・時間を止めるラブソング/サンボマスター
189
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:54:40 ID:6.e01KAI0
( ・∀・)モララーについて
・明るく素直で人懐っこい子ですが、本心では自信がない。些細なことの積み重ねで落ち込んで、誰かに打ち明けて「なんだ、男らしくないな」なんて言われると怖いので、ずっと一人で抱えていました。
・偶々出会って、言葉でなく心に寄り添い、何を言うでもなくただ話を聞いて「また来なさい」と言ってくれたことが、彼にとっては救いで、とても大切なことでした。
・他の人から見たら、先輩から見ても、それくらいで? と言われることはわかっていましたが、それでも大事だったのです。
・大事過ぎて神格視している節がありました。一度離れて、迎えに来てもらって、自分より小さな女の子だと気付きました。先輩も一人は寂しいんだと気付いたので、もう自分から離れることはないでしょう。
・先輩に「なんで恋人作らないの?」と聞かないのは、それが聞かれたくないことかもしれない、話したくなれば話してくれるだろう、という信頼で、気遣いです。
・デレが先に気付いていましたが、というかモララーが気付いてるかわからないですが、対等になりたかった。助けられるだけでなく、助け合いたかった。
・本人が気付いてないだけで、デレも結構モララーを頼りにしてました。一緒にいると、当たり前に相手の手伝いとかするよね。
・「どっか行ってよ」に対して「嫌だ」が言えるようになった今、「付き合わない、結婚しない」にも「嫌だ」と言えるように成長すればさくっと付き合えます。もうちょっとですね。
・さくっとは言い過ぎましたが、要は「自分に逆らえないから付き合えないよ」というのに対してNOと言えれば「お付き合いとか恥ずかしいし⋯⋯」と逃げ道を失って弱体化するためです。
・プロットではデレさん呼びでした。ちょいちょい修正漏れがありますね。
190
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:55:25 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζデレについて
・聡明な読者の皆様ならばもうお分かりでしょうが、実はモララーが好き。どこで気付いたかな。
・いつのまにかモララーが好きだった。でも好きと言われたから好きになるなんてズルじゃん、と負い目があった。別にいいと思うよ。
・出会いに関しては「なんか転んでたね、キミ」くらいの温度。基本的に誰にでも優しいので、倒れてたのがモララーじゃなくてもきっと助けた。でも、その相手とは恋に落ちなかったと思う。
・めちゃくちゃ嬉しそうにお礼を言いに来たことは覚えてる。
・後輩だし、生き方不器用だし、凄い心配。二人称「あの子」な時点でだいぶ子供扱いして、甘やかしている。「彼」と呼ぶときは男扱いしてるとき。
・「付き合わない、結婚しない」は、モララーと一緒になると成長しなくなるから付き合わない、でも他の人を好きになることはないだろう、という精一杯の強がり。
・恋人になれなくても先輩は自分のものだ、という意思が強い。初恋を諦めたんだからこれくらいのワガママ許してよ。勝手に諦めて何言ってんの君。
・書いてて筆の走りが速い時と遅い時に差がありました。具体的には告白とか慰めるときは実力以上の甘い言葉が出るくせに、モララーから逃げようとするとクッソ時間かかるうえ、なんか読みにくい文章になりました。頑張って直したけど。
・公開しないけど、試しに失恋したらどうなるかプロット切ったら最速で出来てビビりました。悩んでるとダメで覚悟決まると行動早い人なの?
・肩の力が抜けてモララーに甘えられるようになったとき、デレから告白することがあるかもしれません。
191
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:56:59 ID:6.e01KAI0
( ・∀・)「毎日好きと言うようです」
・初投稿です。完成させる、読みやすい、かわいい、が目標でした。二つは達成しました、みんな、読みやすかったかな?
・読みやすい=面白いではないけれど、読みにくい=読まなくていいや、には繋がるからね。せっかく書くなら読んで欲しい。
・テーマは「かわいい」、「理由なんてなくても一緒にいたい」です。クオリティよりまず完成、を合言葉に必死でした。アホなので10日もかかりました。
・まず完成とは本当に心にブッ刺したいところだけクオリティを上げて、他は雑でも完成させるという意味です。
・皆どうせホラーとか横道に逸れるし、一作くらいはただ甘い作品があってもいいでしょ。
・素人なので参加に少し迷いましたが、読む物は多ければ多いほどいいんだよ、と思い書きました。
・後輩が好き好き言ってるけど、本当は先輩の方が執着強い、でも後輩は気づいてない。そんな話が書きたくて、書きました。
【アホでもわかる図解】
(*・∀・)→好感度100→ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚ー゚*ζ→好感度200→( ・∀・)?
・タイトルになんで「」がついてるのかというと、純粋にミスです。
・なるべくデレと話すときのモララーは紅潮させています。照れ屋さんだからね。
192
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:57:24 ID:6.e01KAI0
(*・∀・)もはや声も出ないようです
・コメント欄を見て、「あれ、私が思ったよりデレってモララーを甘やかしてないのかな?」と思い、最後まで読んだ人が楽しめるようオマケを作りました。
・読み返した今、「本編も甘やかしてたよ?」ってなりました。執筆後は疲れてるからね、仕方ないね。
・二人が未来に向かって歩いていく綺麗な終わりなので蛇足かな、求められてないかもなと思い、ちょっと投下が怖かったです。
・でも出来上がったので投下しました。おまけなんてなんぼあってもいいんやで。面白ければ。
・最終発表でオマケ良かったよ、の声が多くて嬉しかった。
・モララーを幸福で殺す、デレを素直に、読者を糖死させる、1レス1かわいい、などが目標でした。繰り返しになりますが、感想を見るとちゃんと死んでて嬉しかったです。
193
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:58:14 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ夢の中なら、言えるようです
・「デレ先輩はなんでそんな付き合いたくないの」という点に説得力が薄いので書きました。
・失恋して泣いてる女の子が世界で一番かわいい。夢の中から夜にかけてのデレを書くのが楽しかった、もっと長くてもよかったかな。でも幸せになって欲しいよね。
・難産過ぎて一度挫折しました。
デレが「諦める」から「モララーと話し合う」まで持っていくための流れが難しくて。
・口では好き好き言ってるけど内心諦めもあるモララーと、諦めるって言い聞かせて本当は成長を待っているデレ、というのを書きたかった。
・前二作が駆け足作成だったから、丁寧に作るのを心がけました。最後の最後に二重投稿したけど。
194
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:58:42 ID:6.e01KAI0
思うこと
・「傷つけるより傷つく方がいい」って言いますよね。今作の二人はそんな感じです。でもそれって、相手には「傷ついて欲しくない相手が、一人で傷ついている」という辛さを押し付けることです。作中でもデレさんに言って貰いました。
ζ(゚ー゚*ζ「私がモララーくんを傷つけた言葉。本心だけど、キミがやったことと同じだよね」
・人間関係は言葉のナイフを振り回すようなものだと、とある作家が言いました。私の大切な言葉です。
親しいとは、相手のナイフが刺さってもいい位置まで近くこと。それは相手をナイフで傷つける覚悟を持つこと、お互いがつけた傷を笑い合えるようになることと同意だと。
・二人とも、もうちょっとだけ相手に迷惑をかける勇気が必要ですね。「しょうがないなぁ」で笑って許しあえる二人なので、きっといつか幸せになるでしょう。
・私も言葉のナイフでたくさんの読者を傷つけたいです。作品を作って刺しに行くので、読者の皆さんも作者を乙で殺しに来てください。
195
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:59:23 ID:6.e01KAI0
お祭りについて
・楽しかったねー!
・8位でした。自惚れるなら、真ん中くらいには面白かったみたい。5人も投票してくれたようです。本当にありがとうございます。びっくり、嬉しい、ありがたい。語彙が少なく恐縮です。
・『爪'ー`)y‐5人も投票してくれたようです』ってありそうですね。生徒会選挙で不良生徒フォックスに何故無記名の投票があったのか、前生徒会長トソンとフォックスが喧嘩しながら調べる話。多分オムライスとか漁ったら全6話ぐらいであるよね?
・感想も嬉しかったです。「かわいいしか言えない身体にしてやるぜ」と思って書いた結果、いろんな表現でかわいいが返ってきました。
・上位を見ると「俺はそうなると思ってたぜ」ってなるのに、他の順位を見ると「こんなに低いわけないだろ!」ってなる、不思議なランキング表でした。皆面白かった。
196
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 18:59:53 ID:6.e01KAI0
長々と語りましたがオレンジデーの残り香もあと僅か、これで物語はおしまい、あとは若いお二人で、となります。
たまに何か投下するかもです。
短編の練習がしたいので。
今の私にはカラテが足りない⋯⋯
※カラテとはネットミームで実力のことです。
今日もちょっとだけおまけがあるんじゃ。
197
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:00:40 ID:6.e01KAI0
【おまけ】
( ・∀・)ポストカードは買わないようです
198
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:01:14 ID:6.e01KAI0
デート、ではない映画鑑賞の帰りだった。
( ・∀・)「売店のポストカードって誰が買うんでしょうね、アレ」
特に今日みたいなゴリッゴリのホラーのヤツ。
情け無いことに、鑑賞中の俺は涙目で叫び声をあげないよう必死だった。
そんな俺を横目に、先輩は笑いを堪えるのに必死だったようだ。
おまけにこっそり手を握るという余裕まで見せてくれて、俺の感情はもう滅茶苦茶だった。
そんなこんなで映画館を出た頃には、体力を使い果たしてげっそりしていた。
見かねた先輩に一休みを提案され、現在は近場の喫茶店である。
ζ(゚ー゚*ζ「私は買ったよ」
(;・∀・)「マジですか」
じゃん、と取り出された五枚組のソレを、薄目で見る。
199
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:01:48 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「あはは、いいでしょ。どれがいい?」
封を開け、一枚ずつ並べる。
み、見たくねー。
(;・∀・)「えー⋯⋯じゃあ、コレ」
映画の宣伝ポスターになっているソレを指差す。
ζ(゚ー゚*ζ「ふうん、私はコレが一番好きかな」
答えとは無関係に、一番血みどろのヤツを裏返して渡してくる。
えー、聞くならせめて気に入ったヤツくださいよ⋯⋯
200
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:02:17 ID:6.e01KAI0
(;・∀・)「あー⋯⋯た、大切にしますね」
声が裏返る。
先輩からのプレゼントでも、さすがに今回は辛い。
ζ(゚ー゚*ζ「え、あげないよ?」
わあうれしい、じゃなくて。
(;・∀・)「じゃあなんで聞いたんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「はいココ、住所書いてね」トントン
全然話を聞いてくれない。
今度はボールペンを差し出し、ポストカードの裏面をトントンする。
(;・∀・)「いいですけど。いいですけど、結局のとこ何がしたいんです?」サラサラ
言われた通りに書いて、先輩にペンとポストカードを返す。
ζ(゚ー゚*ζ「うん、よく出来ました」
ふふん、と満足げに胸を張って。
201
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:06:01 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「今日の映画が面白かったなぁ、と私が思い出すたび、キミにこのポストカードが届きます」
.
202
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:06:49 ID:6.e01KAI0
満面の笑顔。
ζ(゚ー゚*ζ「これから先、四回ね」
(*・∀・)「そんなの最高じゃないですか!」
映画館でポストカードを買わないヤツはどうかしてるぜ!
⋯⋯俺も買えばよかったな。
( ・∀・)「ってあれ、四回ですか? 五回じゃなく?」
ζ(゚ー゚*ζ「これは、私の分だから、だめ」
俺が住所を書いた、そのポストカードを大事そうに両手で持って。
203
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:09:18 ID:6.e01KAI0
(*・∀・)「俺もポストカード買えばよかったなー!」
俺からも送れば先輩の手元に同じのが残るじゃん!
そうしたら五回、先輩の気持ちが俺のものだったのに!
次から絶対、ポストカード買おう。
⋯⋯⋯⋯後日、郵便で届いたゴアでパンクなポストカードにビビり散らかしたのは内緒。
完
('A`)「⋯⋯⋯⋯一服したのか? うち以外の喫茶店で⋯⋯」
完
204
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:10:18 ID:6.e01KAI0
【おまけ】
ζ(゚ー゚*ζ全部寒さのせいのようです
205
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:11:14 ID:6.e01KAI0
記録的な寒波の襲った日。
珍しく、朝一番に先輩が教室に押しかけてきた。
ζ(゚ー゚;ζ「ジャージ貸して!」
(;・∀・)「!? 喜んで!」
( ・∀・)
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯いや、喜ぶのはおかしいな。そもそもサイズ合わないですよ」
先輩のお願いには反射的に頷いてしまう俺だが、恥をかかせるわけにはいかない。
ここはきちんと断ろう。
( ・∀・)←標準よりデカい
ζ(゚ー゚*ζ←標準より小さい
.
206
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:11:54 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚;ζ「寒いから制服の下に着るって、他クラスの子みんな貸してくれないの! おっきくてもいいから!」
(;・∀・)「いや、俺、三年で成長するだろって、ばーちゃんからちょっと大きめのジャージ買ってもらってまして」
先輩が着たらぶっかぶかである。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯いいよ! 覚悟したから!」
ぐっ、と両手を握って言う。
なんでこう思い切りがいいかなぁ。
(;・∀・)「マジでデカいんですって! じゃあもう、しゃーない、俺の友達から借りてくるんで」
207
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:12:29 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「男子のジャージとか恥ずかしいでしょ!」
.
208
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:13:17 ID:6.e01KAI0
( ・∀・)「お、俺は!?」
ζ(゚ー゚*ζ「弟みたいなもんでしょ、もう身内枠だよ! ほら、さっさと用意して!」
( ゚∀゚)o彡゜「おーおー。またモララーがサラッとフラれてるぜ」
(*・∀・)「身内枠⋯⋯! 急いで用意します!」
( ´_ゝ`)「あ、いいんだ」
超特急で急いで用意し、先輩にジャージを渡す。
先輩は服の上からジャージを当て、大きさを測っている。
お父さんの服を引っ張り出した幼児、みたいなサイズ差だ。
(;・∀・)「⋯⋯やっぱり無理じゃないです? 俺転校生ですから、みんな青ジャージの中一人だけ赤ですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「だいじょぶ、着れるよ! ありがとう!」
そう言って、ぎゅっと俺のジャージを抱きしめる。
くそ、今日もかわいいが過ぎるぜ。
209
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:13:59 ID:6.e01KAI0
( ・∀・)「じゃあ、お昼に取りに行きますね。五限が体育なので」
ζ(゚ー゚*ζ
嬉しそうだった先輩が、ピタリと、動きを止める。
ζ(゚ー゚*ζ「や、やっぱりいいや。半袖で受けるね、体育」
(;・∀・)「えっ!?」
交通に影響が出るレベルの寒波である。
(;・∀・)「なんでですか、風邪じゃすみませんよ!? 俺のがイヤなら、他のヤツのを」
ζ(゚ー゚*ζ「そういうんじゃないから」
(;・∀・)「じゃあどういう理由だってんですか!?」
210
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:14:29 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「汗かいた後の服着られるのは流石に恥ずかしいでしょ!」
.
211
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:14:57 ID:6.e01KAI0
(♯・∀・)「じゃあ俺が半袖で授業受けるから持って行ってくださいよ!」
思ったより下らない理由だった。
全く、先輩には困ったものだ。
(; ゚∀゚)o彡゜「お前、それ、大丈夫なの?」
( ・∀・)「大丈夫でしょ、先輩外だけど俺ら体育館だし」
昔は東北のほうで暮らしていたこともある、寒さには強いのだ。
( ・∀・)「⋯⋯あ、先輩、カイロ持ってってください。ぶかぶかだから多分首から風入って寒いっすよ」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょ、ちょっと、そこまでさせるわけには⋯⋯」
( ・∀・)「大丈夫です」
ζ(゚ー゚*ζ「でも」
212
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:15:22 ID:6.e01KAI0
( ・∀・)「先輩、大丈夫ですから。ほら、俺、結構丈夫なんで」
.
213
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:16:03 ID:6.e01KAI0
安心させたくて、先輩の真似をして、自信満々に笑顔を作って。
カイロとジャージをしっかり押し付けた。
まあ、ちょっとだけ強がりだけど、体調崩した先輩とか絶対見たくないし。
ζ(゚ー゚;ζ「⋯⋯⋯⋯」
先輩はちょっと、迷うような顔をして。
ζ(゚ー゚*ζ「〜〜〜っ!!」
凄く困ったような顔をして。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ借りるから! ちゃんと午後はこれ着て体育受けてよね!」
真っ赤な顔で言った。
(;・∀・)「いや、それがイヤだって話じゃないんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うるさい、口答え禁止! 先輩ですよ私は! じゃあね!」
逃げるように去ってしまった。
もうちょっと話してたかったのに。
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯優しい人だよなぁ」
( ゚∀゚)o彡゜「オマエモナー」( ´_ゝ`)
214
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:16:32 ID:6.e01KAI0
◆◆◆
(,,゚Д゚)「せっかく外出て貰ったけど、あんまりに寒いんで今日は体育中止なー! 中に戻って自習だ!」
ζ(゚ー゚*ζ
ぶっかぶかである。
裾を捲っても手が出ないくらい、大きい。
私はなんのためにこんな辱めを受けているのか。
('、`*川「あっはははははは! コナンくんみたいじゃん!」
(゚、゚トソン「ふっ、ふふふ⋯⋯⋯⋯かわいいですよ、デレ」
ミセ*゚ー゚)リ「うちの弟が小さいとき、お父さんの服着てそんなんなってたよ」
(゚、゚トソン「ふふふ、ははははははは! ミセリ、やめてくださいよ」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯そんな笑うことないじゃない」
215
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:17:00 ID:6.e01KAI0
ミセ*゚ー゚)リ「だよねー! 彼氏のジャージとか、ちょっと憧れちゃうもんね!」
ζ(゚ー゚*ζ「そういうんじゃないから! 弟みたいなものだから」
( ・∀・)『先輩、大丈夫ですから。ほら、俺、結構丈夫なんで』
ζ(゚ー゚*ζ カァァ⋯
ζ(゚ー゚*ζ「弟だから!」
('、`*川「いや、弟ではないだろ」
(゚、゚トソン「顔赤くないですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「カイロいっぱい持ってるから暑いの! あの子、二個も三個も渡してくるんだもの、勿体無いなぁ!」
ミセ*゚ー゚)リ「いいな、愛されてて。一個ちょーだい」
ζ(゚ー゚*ζ「だからそういうのじゃないの! はいカイロ!」
ミセ*゚ー゚)リ「せんきゅー」
216
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:17:36 ID:6.e01KAI0
◆◆◆
ヴヴヴッ
( ・∀・)「?」
『通知:かわいいミセリちゃん』
メッセージアプリの通知だ。
ミセリ先輩から(強制的に)登録されたアドレスからの連絡のようだ。
( ・∀・)「なんだろ」
『可愛かろ?』
添付写真、だぼだぼジャージのデレ先輩が眉間に皺を寄せてピースしているところ。
( ・∀・)「ぐはっ!」
『通知:セクシーペニちゃん』
『ひれふせ』
添付動画、デレ先輩が袖を捲っては、ずり落ちてくるところ。
( ・∀・)「げふっ!」
『通知:都村トソン』
『ペンギン』
添付動画、裾を踏んで転ばないよう、ゆっくり歩くデレ先輩。
( ・∀・)「ごふぁぁ!」
今日は人が死ぬレベルの大寒波である。
217
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:18:10 ID:6.e01KAI0
◆◆◆
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ありがとうね」
お昼休み。
先輩自らジャージを返しに来てくれた。
( ・∀・)「⋯⋯なんか不機嫌です?」
ζ(゚ー゚*ζ「ペニサスたちにめちゃくちゃいじられた」
(;・∀・)「本当すいません」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、キミは何も悪くないでしょ。はいこれ、助かりました」
ジャージと、缶のカフェオレ。
カフェオレを学ランのポケットに入れる。
律儀な人だなぁ。
218
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:19:04 ID:6.e01KAI0
( ・∀・)「いえいえ。こちらこそ、ごちそうさまです」
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんね、洗って返すべきなのに」
( ・∀・)「あー、別にいいですいいです。それよりデカくて困りませんでした?」
ζ(゚ー゚*ζ「困った」
照れたように、えへへと笑う。
219
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:19:49 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「でもほら、校内で自習になったから。あんまり汗もかかなかったし」
( ・∀・)「ふふ、よかったですね」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、制汗剤いっぱいかけたから、ちゃんと着てね」
( ・∀・)「ホントだ」スン
スパアン!
ζ(゚ー゚;ζ「なんで嗅ぐの!」
(;・∀・)「え、あ、フリじゃないんですか今の」
ζ(゚ー゚;ζ「フリじゃないよ!? な、何でそんな、そんなさぁ、ヘンタイなのキミ!?」
(;・∀・)「ごめんなさい! ごめんなさい!」
俺先輩のこと大好きだけど、たまにすげー理不尽だと思う。
220
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:20:26 ID:6.e01KAI0
(;・∀・)「あー、じゃあもう着替えちゃうんで、チャチャっとお昼ご一緒させてください!」
ζ(゚ー゚*ζ「お、おう⋯⋯」
( ・∀・)「なんです、その反応」
ζ(゚ー゚*ζ「汗かいてなくても自分が着てた服を着られるって、恥ずかしいでしょ」
そうかなぁ。
わからないのは俺が鈍感なのか、男女の差なのか。
まあ、ささっと着替えてしまおう。
ζ(゚ー゚*ζ「嗅がないでね」
(;・∀・)「わかりましたって」
下に半袖短パンは着ていたので、制服を脱いでジャージを着るだけのお手軽お着替え。
ζ(゚ー゚*ζ「でっかー。ふふふ、おっとこのこー」
先輩は俺が脱いだ学ランを羽織って、くるくるしてる。
怒ったり笑ったり、見てて飽きない人だなぁ。
( ・∀・)「えー⋯⋯俺が脱いだのは着るんだ」
かわいいから是非是非って感じだけど。
221
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:21:18 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、寒いからね。全部寒さが悪いの」
( ・∀・)「そうですか」
ζ(゚ー゚*ζ「キミがヘンタイなのも、カッコつけなのも、全部寒さが悪いの」
( ・∀・)「そ、そうですか?」
カッコつけた覚えはないですけども。
ζ(゚ー゚*ζ「だから、これも寒さのせい」
( ・∀・)「え、なに、どれですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ばいばい!」ダッ!
( ・∀・)「!?」
走って逃げた!?
一歩遅れて追いかける。
222
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:21:42 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「購買に先についたほうの勝ち!」
( ・∀・)「ずるじゃん! 先輩ずるじゃん!」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは、寒いから身体動かさないと」
( ・∀・)「俺このあと体育ですってば!」
ζ(゚ー゚*ζ「頑張ってね」
聞いてくんないし。
でも、先輩がはしゃいでるのも寒さのせいなら、こういうのも悪くないかもしれない。
目の前をひらひら揺れる学ランを見ながら、そう思った。
223
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:22:38 ID:6.e01KAI0
ζ(゚ー゚*ζ「へぶっ」
べちっと音を立てて、転んだ。
空気が凍る。
何度も言うが、外は記録的な寒波である。
(;・∀・)「⋯⋯⋯⋯こ」
(;・∀・)「これも寒さのせいです!」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがと⋯⋯」
先輩が立ち上がるため手を貸しながら、思った。
やっぱり寒いのは良くないね。
完
224
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 19:24:45 ID:6.e01KAI0
あー終わった終わった。
宿題終わりって感じですね。
みんなもお疲れでした。
225
:
名無しさん
:2024/05/18(土) 19:53:59 ID:EL7Y/COo0
大好きです
乙
226
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/18(土) 20:14:53 ID:6.e01KAI0
>>225
ありがとうございます。
また何か書いたら読んでね。
227
:
名無しさん
:2024/05/18(土) 20:56:43 ID:uDZvSzek0
乙
228
:
名無しさん
:2024/05/20(月) 00:39:19 ID:Zw3QR1Oo0
またおまけ!?めっちゃ嬉しいありがとう!乙!
気が向いたらまた何かお話投下してくれ〜!待ってるから〜!!
229
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/20(月) 03:23:22 ID:.qSkPn4I0
>>227
ありがとう。
>>228
あとがきだけだとがっかりするかな、って。また何か書きます、読んでくれてありがとう。
230
:
◆xSBhltJ66c
:2024/05/20(月) 03:25:55 ID:.qSkPn4I0
【おまけ】
(*・∀・)ちょっと口には出せないようですζ(゚ー゚*ζ
(*・∀・)(連絡、しなきゃいけないんだけど)
(*・∀・)(耳元で先輩の声がすると、凄い心臓バクバクするんだよな⋯⋯)
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯メッセージでいいか」
◆◆◆
『メッセージを保護しました』
ζ(゚ー゚*ζ「あの子の文章、『好き』とか『かわいい』って突然入ってくるから、読んでて照れるんだよなぁ」
ζ(゚ー゚;ζ(まさか私の書いたメッセージからもそういう雰囲気出てたりしないよね?)
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯電話で返事しよ」
◆◆◆
ζ(゚ー゚*ζ「キミってさ、電話嫌いだよね」
(*・∀・)「⋯⋯先輩は、文章のやり取りは嫌いな感じですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん。まあ結局、連絡がつけばそれでいいじゃない」
(*・∀・)「まあ、そうですよね!」
(*・∀・)「ははははは!」ζ(゚ー゚*ζ
あなたの声/文章に一々心躍るなんて、流石にちょっと口に出せないので、笑って誤魔化した。
完
231
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:18:37 ID:vuGcRS6E0
終わる終わる詐欺になってしまったけど、許してね。
投下します。
232
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:19:06 ID:vuGcRS6E0
県外に進学する、と先輩から告げられたのは、三日前のことだった。
( ・∀・)いつもと違う、ようです
土曜日の朝である。
休日にわざわざ先輩を呼び出しておいて、遅れてしまった。
急いで階段を駆け上り、屋上の扉の前で息を整える。
(;・∀・)「はぁっ、はぁっ、はぁっ⋯⋯⋯⋯」
「聞こえてるよー」
扉の向こうから、少しからかいの混じった先輩の声。
意を決して、扉を開ける。
(;・∀・)「ごめんなさい遅れました!」
心地いい風が吹く。抜けるような青空と、入道雲を背に笑う先輩と目が合う。
初夏だなぁ、なんて思っている暇はない。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、いいよ。ほんの数分でしょ? そんなに慌てなくても」
233
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:19:41 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「先輩!」
ζ(゚ー゚*ζ「は、はい。何かな?」
( ・∀・)「結婚してください!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、だめです」
俺の勢いに少し驚いた先輩も、なんだいつも通りか、なんて安心したような顔になり、やんわりと告白を断る。
いつもなら、ここから日常がはじまる。
でも。
いつもの日常は、終わりが近づいているのだ。
234
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:20:15 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「お願いします。結婚してください」
一本のバラを差し出して、繰り返す。
ζ(゚ー゚*ζ「あのねぇ、何か焦らせちゃったようだけど。まだ先の話だし、受かるかどうかもわからないしね」
( ・∀・)「先輩は、必ず受かります」
断言できる。
( ・∀・)「そして、お別れはいつか、必ず来ます」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯そうだね」
何を言っても、先輩が先に卒業するのは避けられない。
235
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:20:52 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「でも、それは今キミと結婚する理由にはならないでしょう」
困ったように笑う先輩。
( ・∀・)「今じゃなくていいです」
さらに困らせてしまうな、なんて思いながら、言葉を続ける。
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ・∀・)「2年、ください。待たせてしまいますし、大学も別になると思います。でもバイトして金貯めて、こんな一本キリじゃない、バラ百本の花束を贈ります」
( ・∀・)「指輪だって綺麗なやつを贈ります」
236
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:21:28 ID:vuGcRS6E0
「必ず」「必ず、迎えに行きます」「幸せに、します」
.
237
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:22:15 ID:vuGcRS6E0
少しの、沈黙。
ζ(゚ー゚*ζ「ふうん、本気なんだ」
先輩は受け取ったバラを弄りながら、呟く。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯はい」
「先輩に、話したいことがたくさんあるんです」
ζ(゚ー゚*ζ「そっか」
先輩は、少し考えたあと。
ζ(゚ー゚*ζ「うん、そうだね」
何かに納得したように頷く。
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと聞くって言ったもんね」
そして先輩はこちらを一度見て、影のベンチを指差し、言った。
ζ(゚ー゚*ζ「座って、ゆっくり話そうか」
238
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:25:22 ID:vuGcRS6E0
ベンチへ移動し、並んで座る。
ζ(゚ー゚*ζ「男の人にお花を贈られたの、はじめてかも」
先輩は、受け取ったバラをくるくると回しながら、どことなく嬉しそうだ。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふん、キザだね。薔薇なんて」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯すいません、一本きりで」
俺の心を映し出すように、バラも心なし萎れているように見える。
ζ(゚ー゚*ζ「額のついた花は、一輪、と数えるんだよ」
そっちの方が風情があるでしょ、なんて優しく笑って、余裕の表情だ。
少し悔しい。
ζ(゚ー゚*ζ「それで、何から話してくれるのかな?」
239
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:26:55 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「まずは、先輩に謝まらなければいけないことがあります」
ζ(゚ー゚*ζ「許します」
当たり前のように、こちらも見ずに言う。
せめて内容を聞いてからにして欲しい。
ζ(゚ー゚*ζ「キミのことだから、悪気があってやったことではないだろうし」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯まあ、言うべきでは無いことかな、とも思ったんですけど。色々と用意した段取りがあるのでね、聞いてください」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、用意したんだ」
( ・∀・)「そりゃもう、寝れなくなるくらいには」
ふふふ、と顔を見合わせて笑う。
240
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:27:18 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「実は、先輩が県外に行くって聞いたとき、少しだけ『行かないで欲しい』と思いました」
ζ(゚ー゚*ζ「そりゃそうでしょ」
馬鹿正直だね、と困ったように笑う。
ζ(゚ー゚*ζ「普通ね、仲良い人が居なくなるってなったら、嫌だよ。むしろ、そう思われないほうが寂しいくらい」
( ・∀・)「でも、口に出して言われたら困るでしょ」
ζ(゚ー゚*ζ「まあねぇ」
( ・∀・)「それに、もし先輩が俺のために進学先変えたら、多分一生顔向け出来ないです」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、いい子だ」
くしゃくしゃ、と、頭を撫でられる。
先輩は俺をデカい犬かなんかだと思っている節があり、褒める時は取り敢えず撫でとけ、と雑な扱いをされる。
それで喜んでしまう自分が単純で困る。
241
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:28:16 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「じゃあどうしようか、ということをここ三日ほど、色々考えたんです」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯本当、気を使う子だよね、キミは」
頭を撫でる手を止め、ため息を吐く。
( ・∀・)「まず、先輩と同じ学校に進学を考えました」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯うん」
( ・∀・)「でも、辞めました」
ζ(゚ー゚*ζ「どうして?」
ぐさり、と頬に指を突きつけられる。
ちょっと痛い。
242
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:29:25 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「私学の文系じゃないですか、先輩の進学先」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。キミは理系クラスの予定だっけ?」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯はい。同じ理由で、先輩の進学先の近所に進学、というのも無しです」
頬に刺さっていた指が離れ、ぐしゃぐしゃになった頭を整えるように撫でられる。
ずっと一緒って言ったのに薄情かな、とも思ったが、正解のようだ。
( ・∀・)「じゃあ何が出来るかっていったら、もう背中を押して送り出すか、迎えに行くしかないと思いまして」
ζ(゚ー゚*ζ「キミなら、すぐにでも追いかけてくると思ったけど」
( ・∀・)「気持ちだけなら、そうしたいとこですけど」
現実的には、何もできない。
口に出せずに苦笑した。
243
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:30:32 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「進学して、バイトして金貯めて、自分の力で迎えに行けるのが2年後かな、と」
ζ(゚ー゚*ζ「迎えに来られても、私がキミと一緒に帰ってくるとは限らないじゃない?」
そもそも在学中だしねぇ、と茶化される。
( ・∀・)「まあ、それならそれでいいんですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「いいんだ」
少しムッとして、撫でる手が乱暴になる。
( ・∀・)「俺が寂しいだけです。振られても、断られても、先輩が笑ってくれたら、いいんです」
手が、止まる。
髪をそっと直し、離れていく。
244
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:32:30 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「それに、先輩って地元がここでしょう?」
( ・∀・)「はじめての引越しで辛いことがあっても、誰かが迎えにくると思えば少しは違うかなって」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、私が引越しくらいで⋯⋯」
余裕そうに笑い、何かに気付いたように、こちらを見る。
ζ(゚ー゚*ζ「モララーくん、キミも誰かに迎えに来て欲しかったの?」
聡い人だなと思う。
少し考えて、答える。
( ・∀・)「先輩と会ってからは、そういうのは無いですけどね。そもそも誰に来てもらうんだ、って話ですし」
笑いかけてみるが、先輩は心配そうな顔のままだ。
本当にもう平気なんだけど、経験上こういうときに弱音を吐かないと絶対逃がしてくれない。
( ・∀・)「⋯⋯⋯まあ、人間関係出来上がってる中に途中から入ってきた俺と、先輩では全然違うんでしょうけど」
245
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:32:54 ID:vuGcRS6E0
「一番辛いのはアレです」
「帰る場所がないこと」
.
246
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:35:26 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「いや、家にはいくらでも帰れるんですけど。なんて言ったらいいのかなぁ⋯⋯。昔居た場所に、自分の居場所がどんどん無くなっていくんですよね」
( ・∀・)「また連絡するね、なんて言ってた友達が一人一人とゆっくり減っていって、ゼロになる」
( ・∀・)「たまにこっちから連絡してみれば、もう友達じゃなくて珍しいお客さんみたいな扱いになってて」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯そういうのも何回かやれば慣れるもんで。もうどこ行ってもお客さんなんだなって、諦めちゃうんですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
隣の先輩が、一歩近くに寄ってくれる。
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんね、置いていくことになって」
(;・∀・)「わー! 違います違います、先輩が遠くに行っても俺がいますよって話です!」
心配かけないように、先輩がそうならないようにと口に出した言葉が、かえって逆効果だった。
( ・∀・)「どれだけ離れても、先輩の場所はちゃんと後ろで俺が守ってますから!」
ζ(゚ー゚*ζ「本当に、キミは私のことばっかり」
ありがとう、と先輩は小さく微笑んだ。
やっと、安心してくれたようだ。
247
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:36:14 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「いつか、私が言ったこと、覚えてる?」
優しい声で、語り掛けられる。
( ・∀・)「いやぁ、色々お話しましたから、どれのことやら」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは、確かに」
いつも、一緒だった。
たくさんの言葉を交わした。
そのいつもに、終わりが近づいている。
248
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:37:34 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「『結婚しなくてもできること、一緒に全部しよう』って言ったの」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ、ダメなの?」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ダメじゃ、ないです」
( ・∀・)「ダメなわけがないんですけど」
( ・∀・)「それでも、伝えておきたかったんです」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
( ・∀・)「分不相応だってのも、困らせてるのもわかってます。後輩として可愛がって貰ってるのに。いつか恋人に、なんて不純な気持ちで、ずっと一緒にいました」
( ・∀・)「そんなの、ズルじゃないですか。だから、諦めたかったんです、本当は」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯うん」
249
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:38:33 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「先輩、いつか言ってくれたじゃないですか。告白は、言わされてるうちはダメなんだって。胸を張って、自分から、タイミングを選んでやりなさいって」
( ・∀・)「だから」
( ・∀・)「諦める前に、一度、伝えておきたかったんです」
だって好きなんだ。
ズルしてでもずっと一緒にいたかったんだ。
あなたがもしも俺を好きになってくれたら、なんて、夢みたいなことを思ってた。
250
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:40:22 ID:vuGcRS6E0
( ・∀・)「先輩、好きです」
( ・∀・)「ずっとずっと好きでした」
( ・∀・)「ほかの言葉なんて思い浮かばないくらいに」
でも、俺じゃダメなんだろうなって、本当はずっと気付いてた。
( ・∀・)「最後の告白です。もう、好きですとか、結婚してくださいとか、そういうことを言って困らせません」
混乱して、熱に浮かされて、考えないようにしていたことが、今になってゆっくりと表に出てきた。
うまく、笑えているだろうか。
( ・∀・)「いつもみたいに。断ってくれて、いいですから」
声が、震えていないだろうか。
( ・∀・)「ちゃんと、諦めます。ただ、俺は、あなたが好きだから」
( ・∀・)「迷惑かもしれないけど、遠くに行っても無くならない、帰る場所はあるって伝えたかったんです」
251
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:41:23 ID:vuGcRS6E0
もう、心配はかけたくなかった。
何も出来ることがないから。
今の自分みたいにへたったバラ一輪を片手に、未来に迎えに行く、なんて無責任な告白をした。
( ・∀・)「それさえ伝われば、他にはもう、いいです」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯そっか」
先輩の顔を見れなかった。
顔を逸らして、無意味に透き通った空を見た。
先輩は、黙って俺の手の上に、その小さな手を重ねた。
252
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:43:13 ID:vuGcRS6E0
◆◆◆
「こんなに、天気が良くてさ」
「はい」
「空が抜けるように青くて、どこまででも行けそうで」
「⋯⋯はい」
「でも、どこにも行けないのが、嫌になるよね」
「本当ですね」
◆◆◆
253
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:45:54 ID:vuGcRS6E0
どれくらいの時間だろうか。
穏やかなような、気まずいような、心地良いような不思議な気持ちで。
無言で二人、並んで空を見ていた。
ζ(゚ー゚*ζ「モララーくん」
重ねられた手が、ゆっくりと離れていく。
(;・∀・)「え、えー、はい、まあ、そういうことです」
(;・∀・)「じゃあ、失礼しますね」
言葉はなくとも、渾身のプロポーズが失敗したのだと、じわじわ実感が湧いてくる。
気まずくなり、立ち上がってその場を後にする。
ζ(゚ー゚*ζ「こら」
座っている先輩に手を引かれ、元の位置に戻る。また、横並びである。
顔が見れない。
ζ(゚ー゚*ζ「私から逃げようとするのが、キミの悪いところだよ」
254
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:46:15 ID:vuGcRS6E0
動けなくなっていると、肩へ先輩が倒れ込んでくる。
( ・∀・)「!?」
ζ(゚ー゚*ζ「そして私の悪いところは、素直になれないところだね」
( ・∀・)「そ、そうなんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんです、実はね」
くすくすと、安心したように笑う。
255
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:47:58 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「今日さ」
ζ(゚ー゚*ζ「行かないで、って言われると思ってたの」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯言いませんよ。それだけは、絶対」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、ありがとう。そう言ってくれるとも、思ってたよ」
256
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:49:33 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんね、信じてあげられなくて」
( ・∀・)「いえ、そんな⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「キミを置いて一人で遠くに行くのも、許してくれるって分かってて謝るのも、素直じゃないのも。ぜんぶ、ぜんぶごめんね」
( ・∀・)「そんなの、謝ることじゃないですよ。むしろ、気にしてくれるのが嬉しいくらいです」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。私も、同じ気持ちだからね」
257
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:50:39 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「自分はずるいとか、何もできないとか。それでも、一緒に居たいとか。同じ気持ちだからね」
ζ(゚ー゚*ζ「キミほど素直に言えないけど、キミを大事に思ってるよ」
.
258
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:52:11 ID:vuGcRS6E0
嬉しいけど。多分、先輩の大事と、俺の好きは、少し違うんだろうな。
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、考えるから」
( ・∀・)「⋯⋯はい」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、信じてないね」
拗ねるような声。
(;・∀・)「いやいや、信じてます、信じてますよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「まあ、私も疑っちゃったし。こういうところもお互い様かなぁ」
考えるような、声。
259
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:53:17 ID:vuGcRS6E0
(;・∀・)「信じてますけど! こういうのって即決で答えが出ない時点で、それがもう答えみたいなもんじゃないですか!」
先輩の声を聞くと、自分の暴走を自覚して、逃げ出したくなることがある。
情けなくて、涙が出そうなのを必死で堪えていた。
ζ(゚ー゚*ζ「モララーくん、あのね」
(;・∀・)「気付いてるんですからね、先輩が俺のこと、デカい犬かなんかだと思ってること!」
ζ(゚ー゚*ζ「モララーくん」
(;・∀・)「あーもう、帰りますね俺! 心配しなくてもちゃんと諦めますから! 明日からまたよろしくお願いします!」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと」
胸元を掴まれ、引き寄せられる。
先輩が近づき、その唇が、俺の頬に触れる。
260
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:53:40 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、考えるって、言ってるんだけど」
.
261
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:55:00 ID:vuGcRS6E0
耳元で、声がする。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯?」
優しい匂いがする。
あたまが、働かない。言葉の意味を、遅れて理解する。
ζ(゚ー゚*ζ「あのね、そもそも、誰から贈られた花でも喜んで受け取るなんて、思わないでね」
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯え、え?」
ζ(゚ー゚*ζ「一人にしたら悪いなとか、少し目を離した隙に成長したなぁとか、これから先離れたくないなぁとか、色々、色々、色々思ってるの、私も」
( ・∀・)「せ、せんぱい?」
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、考えるから」
突き放される。
少し離れたことで、先輩の顔が見えるようになる。
口元を抑えた先輩は、バラのように真っ赤だった。
262
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:56:30 ID:vuGcRS6E0
ζ(゚ー゚*ζ「割と、前向きに、考えているから。いい子で待っているように」
大事そうにバラを一輪携えて、先輩は後ずさる。
ζ(゚ー゚*ζ「あとね。大事なものは、一つあればいいから。どんな結果になっても、百輪の薔薇なんてなくても、未来の私を迎えに来てね」
じりじりと、後ずさって。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃ、じゃあ、そういうことだから」
帰ってしまった。
( ・∀・)「え?」
( ・∀・)「え?」
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯え!?」
263
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 15:57:35 ID:vuGcRS6E0
初夏だった。
空に吹き抜ける風が頬を撫でる。
頬の微かな湿り気を強く感じた。
強気だった先輩がだんだん弱々しくなっていく姿を思い返して、今日の俺もこんな感じだったのかな、なんて他人事みたいに考えていた。
いつものように、俺には先輩の心がわからなくて。
いつもと違って、先輩には余裕が無さそうだった。
そして、いつもの日常が、終わって。
いつもと違う、日常が始まった気がする。
( ・∀・)いつもと違う、ようです. 完
264
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/11(火) 16:04:25 ID:vuGcRS6E0
別なお話も書きたいんだけどね、面白そうなネタが降ってきたので、書きました。
もう一話だけ続きます、難産なので夏の間にもう一話来るかも、くらいに思っておいてください。
乙とか読んだよとか、書いてもらえると嬉しいです。
もちろん読んでもらえるだけでもうれしいです。
265
:
名無しさん
:2024/06/11(火) 19:57:33 ID:TNKv7FQE0
乙乙乙
266
:
名無しさん
:2024/06/11(火) 22:10:35 ID:NPwikQL60
ニヤニヤしてまう
267
:
名無しさん
:2024/06/13(木) 22:44:52 ID:8cDJBd.20
乙乙
大事にしたいと思ってる相手に対しても実際には理想像を押し付けていた、みたいなことありがちだからこそ、
言葉にして伝え合う姿勢をとるこの二人それぞれをとても好ましく思ってる
268
:
名無しさん
:2024/06/16(日) 01:22:34 ID:V8e3gcCY0
相変わらず可愛い二人だけど、着実に進んでるの良き…。
また書いてくれたの嬉しい!次も楽しみにしてる!乙!
269
:
名無しさん
:2024/06/17(月) 23:35:43 ID:zkhj84Io0
おつおつ
270
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 21:53:23 ID:p.SgACmw0
すいません、最近サボってYouTube見てました。
配信中のGTA実況がめちゃくちゃ面白かったので、布教の意味を込めて、どんな話を見ていたのかをちょっとだけブーン系にしてみたので投下します。
「毎日好き」の続きじゃなくてごめんよ。
271
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 21:54:02 ID:p.SgACmw0
これは、幸せを求めるパン屋さんのお話。
o川*゚ー゚)o生徒会パン屋さんのようです(-@∀@)
◆◆◆
どうもみなさん、病弱美少女中学生です!
o川*゚ー゚)o
『生徒会パン屋さん』というお店でバイトリーダーとして日々働いています。
夢はラプンツェルのように引き篭もって、素敵なパンをお客さんに届けること!
毎日お店でパンを捏ね、訪れたお客さんの接客をし、たまに店長と一緒に営業に行ったりします。
犯罪率がめちゃくちゃ高くてヤバいこのロスサントスで、最高のパン屋さんになるぞ!
272
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 21:54:31 ID:p.SgACmw0
◇◇◇
どうもみなさん、マッドサイエンティストです。
(-@∀@)
『生徒会パン屋さん』というお店の店長と、『公務員』の二足の草鞋で日々働いています。
夢は自らの手で作った麻薬入りパンで、食べた人皆の能力を引き上げ、幸せにすること。
まだパン屋さんに並ぶ商品に麻薬は使っていないけど、いつか最高の麻薬が作れたらいいな。
新しいバイトにはバレないように、夢のために今日も頑張るぞ!
273
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 21:54:56 ID:p.SgACmw0
◆◆◆
出会いは少し、最悪だった。
o川*゚ー゚)o「田舎からパン屋さんになるためだけに出てきました働かせてください!」ハヤクチッ
(-@∀@)「あー⋯⋯まだ立ち上げたばかりのお店だからねぇ。働く人からは入店料を貰ってるんですよ」
o川*゚ー゚)o「嘘だ!」
(-@∀@)「嘘じゃない!」
o川*゚ー゚)o「じゃあ皆払ってるの?」
(-@∀@)「払っ⋯⋯てる⋯⋯けど、お金の話は汚いからね、あんまりしないほうが良いよね、うん」
o川*゚ー゚)o「じゃあパン屋さん紹介してくれた先輩に連絡するね」
(;-@∀@)「えっ!? 私連絡先教わってない⋯⋯」
o川*゚ー゚)o「うぷぷ、信用されてないんだね」
(-@∀@)
(-@∀@)「そんな、そんなに言うなら今日は入店料はいらないです」
274
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 21:57:58 ID:p.SgACmw0
ーーーでも、原付二人乗りで営業に行ったり。
o川*゚ー゚)o「パン屋さんゴーゴー!」
(*-@∀@)「パン屋さんゴーゴー!」
o川*゚ー゚)o「パン屋さんゴーゴーゴー!」(*-@∀@)
ーーー制服作ったり。
o川*゚ー゚)o「デザインできたよ! 神戸屋ベーカリーみたいで素敵でしょ?」
(;-@∀@)「このヒラヒラ、私も着るんですよねぇ」
o川*゚ー゚)o「だめ?」
(-@∀@)「⋯⋯よし、着ましょう!」
275
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 21:58:59 ID:p.SgACmw0
ーーー怪我して、病院行ったり。
o川*゚ー゚)o「キューちゃん5万5千円しかない⋯⋯」
(-@∀@)「私も全財産で5万8千円だ。合わせて10万、なんとか足りるかなぁ⋯⋯」
o川*゚ー゚)o「え、キューちゃんの怪我なのに奢ってくれるの?」
(-@∀@)「奢りっていうかワリカンだけども。仕事中の怪我だからねぇ」
(*゚ー゚)「⋯⋯人情話されると悪いことしてる気になるなぁ」←医者
o川*゚ー゚)o「⋯⋯ああ痛い、痛い! 急に痛みだしたなー、これは医療ミスかも!」チラッ
(-@∀@)「パン屋さん開いたばっかりでお金がないけど! なけなしの10万で足りるかなー!」チラッ
(*゚ー゚)「ホント勘弁してくんないかなぁ」
276
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:00:16 ID:p.SgACmw0
ーーーちょっと、仲良くなれたと、思う。
o川*゚ー゚)o「キューちゃん色々覚えたし、パン屋のラプンツェルとしてお店で頑張るね」
(-@∀@)「www」
(-@∀@)「でも、ラプンツェルはちょっと違うんじゃない? 誰かが君を閉じ込めたりはしないから。楽しくやろうよ」
o川*゚ー゚)o「うん。でも、天岩戸とか、そっちはあんまりかわいくないしなぁ⋯⋯」
(;-@∀@)「そういうんじゃなくて、ね」
277
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:01:05 ID:p.SgACmw0
◇◇◇
出会った頃は、自分の夢だけ見てた。
(-@∀@)「私さぁ、麻薬入りパンを売りたいんだけど」
(´・ω・`)「⋯⋯これは噂だけどね。ゴミ捨て場とか、麻薬被害者からね、麻薬レシピが手に入ることがあるよ」
◇◇◇
ーーー色々な悪事に、加害者として被害者として巻き込まれた。
(; ^ω^)「いやー、今回は冤罪だったみたいでホント申し訳ない」←善良な警官
(♯-@∀@)「ホントですよ。ウチか弱い学生バイトも雇ってるんだからさあ」←今回は冤罪
(♯-@∀@)「私相手だったら許すわ。その子にはやめてよねぇ!!」
( ^ω^)「ちなみにその学生バイトさんには手ぇ出してないですよね?」
(♯-@∀@)「手ぇ出してるってどういう言い草だ!」
( ^ω^) wwwww
278
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:02:34 ID:p.SgACmw0
◇◇◇
ーーーいつのまにかアリバイ作りに必死になって。
『お店に血痕があってね、心配になってね、電話したの』
(-@∀@)「あー、それはお客さんが乱闘しちゃったやつだねー。大丈夫、私は『そっちでは』血を流してないから」
『「そっちでは」!? 大丈夫?』
(;-@∀@)「あー、大丈夫大丈夫、資金集めのためにバイトしててね」
『うん、聞いたよ。資金集めのために公務員してるって。キューちゃんにもできることがあったらゆってね』
(-@∀@)
『アサピーさん、気をつけてね。さようなら、ばいばい』
(-@∀@)「ばいばーいっ」ピッ
( ゚∀゚)「あ、終わりました?」
( ゚∀゚)「さあ⋯⋯共犯になったわけで」
( ゚∀゚)「ようこそ、麻薬カルテルへ」
279
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:03:53 ID:p.SgACmw0
◇◇◇
ーーーちょっと、仲良くなれたと、思う。
(*-@∀@)「見てください、あの黄色いヤツ⋯⋯」
o川*゚ー゚)o「パン屋さんの車!? 購入したの?」
(*-@∀@)「もちろんですよ」
o川*゚ー゚)o「それで怪しいバイトやってたんだ」
(;-@∀@)「怪しくないよ、普通にタクシー運転手やってました」
o川*゚ー゚)o「そうなんだ。怖いバイトして、怪我とかしてるのかなと思ってた」
(-@∀@)「いや、いやいや、そんなことないですよ」
280
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:04:34 ID:p.SgACmw0
◇◆◇
二人なら、夜のドライブも楽しいしさ。
o川*゚ー゚)o「これアサピーさんのやつ?」
(-@∀@)「ん?なに?」
o川*゚ー゚)o「これ今、ダッシュボードの中にメモが⋯⋯」
(-@∀@)「ああ⋯⋯そうそうそう。なんか色々と、パンのレシピとか必要だなーって思ってて。殴り書きみたいなかんじで」
(-@∀@)「あーこれレシピね、置いてて、ダッシュボードの中にね」
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「⋯⋯⋯⋯」
o川*゚ー゚)o「はーい」
281
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:05:35 ID:p.SgACmw0
◆◇◆
二人でも、店内で夢を語るのが楽しかった。
(-@∀@)「今の車も凄く良いけど、生徒会の皆で旅行とか行きたいしね」
o川*゚ー゚)o「行きたい!」
o川*゚ー゚)o「今日海の写真上がってた。救急隊の皆で海に行ったってハインさんに自慢された」
(-@∀@)「ええー、ズル〜!」
o川*゚ー゚)o「キューちゃんも豪華客船乗りたい!」
(-@∀@)「豪華客船に負けられないしね。それこそ飛行機で旅とか」
o川*゚ー゚)o「飛行機!?」
(-@∀@)「絶対楽しいよ。生徒会パン屋最高っていうのを見せつけていきたい!」
(-@∀@)「皆で楽しい旅行してさ」
o川*゚ー゚)o「夢が膨らんでくんねぇ」
(-@∀@)「ほんとですねぇ」
282
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:06:43 ID:p.SgACmw0
◆◆◆
ーーーだからこそ、誰にも言えない言葉が増えてきて。
o川*゚ー゚)o「⋯⋯最近、サイレンが鳴るとさ」
o川*゚ー゚)o「アサピーさんじゃないかって、不安なの」
◇◇◇
ーーーだからこそ、共犯者とも本音で話せるようになった。
( ゚∀゚)「お前さ。麻薬カルテル、続けたい?」
(-@∀@)「⋯⋯まず、ね。もっとパン屋をデカくしたい」
(-@∀@)「ヘリでパン屋を宣伝したり、従業員みんなで旅行したり⋯⋯」
(-@∀@)「それこそ飛行機とかあったら、楽しいと思うんだよ」
( ゚∀゚)「⋯⋯」
(-@∀@)「⋯⋯今のまま普通にパンだけ売って『頑張って働いて終わったな』ってなるのは、ちょっと寂しいなって思ってるんだよね」
(-@∀@)「だからもっとお金は欲しいとは思ってる」
( ゚∀゚)「⋯⋯金がないと、それは全部はできないね」
(-@∀@)「もうちょっと楽しみたいなって思ってるから」
(-@∀@)「この街を」
283
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:07:57 ID:p.SgACmw0
◆◆◆
o川*゚ー゚)o「キューちゃんがお祈り出来るのは、みんなにキケンが無いように⋯⋯」
o川*゚ー゚)o「カミサマ」
o川*゚ー゚)o「みんなを守ってください」
これは、幸せを求めるパン屋さんのお話。
o川*゚ー゚)o生徒会パン屋さんのようです(-@∀@) 完.
284
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:10:58 ID:p.SgACmw0
おっす、インターネットのオタクくんたち、見てるかな?
川 ゚ -゚)どうするどうなるめちゃかわJK委員長のようです
私はめちゃかわJK委員長、犯罪だらけのロスサントスに現れた一筋の光。
高校2年生も6周年を迎えたプロのJKたる私が、この街で何をしているかわかるかな?
(,,゚Д゚)「バイトちゃん、手も動かしてね」
川 ゚ -゚)「うっす、社長。へへへ、勿論ですよ」
答えはなんと、銃の密造でーす!
川 ゚ -゚)「どうしてこうなった?」ボソッ
現在地、謎の倉庫。
この街に来て三十分も経たずに反社(仮)の下働きをしています。
なんで反社(仮)かって、本人たちが反社じゃないって言い張るからです。
⌒*リ´・-・リ「どうしタ、具合悪いカ?」
片言の先輩はちょう優しい。
(,,゚Д゚)「ムリすんなよー」
明らかギャングな社長も優しい。
【+ 】ゞ゚)「ゆっくり覚えたら良いですよ」
私をここに連れてきた元凶も優しい。
コイツ何故私をここに連れてきたんだ!
⋯⋯⋯⋯私が「え〜、社長さんと知り合いなんですか、すご〜い」とか言って無理矢理ついてきたからだった。
ちくしょう、パパ活して美味い飯食いたかっただけなのに。
( <●><●>)「あれ、委員長ギャングになったんですか」
川 #゚ -゚)「やっぱりギャングじゃねぇか!」
(,,゚Д゚)「「ははははは!」」【+ 】ゞ゚)
笑ってんじゃねえよ、絶対逃げ出してやるからな!
完.
285
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:11:25 ID:p.SgACmw0
元ネタはにじさんじGTA、配役は以下です。
※二次創作だからところどころ違う部分もあります。
o川*゚ー゚)o 周防サンゴ(善良パン屋さん)視点
(-@∀@) レオス・ヴィンセント(パン屋さん・薬の作成者)視点
川 ゚ -゚) 月ノ美兎(パパ活JK)視点
そんな感じで「にじさんじGTA」とか、「生徒会パン屋さん」で日々検索してました。
ブーン系民はインターネットの住人だからメジャーどころの動画は皆が見ている気もする。
逆にインターネットの住人だからこそ実況動画とか避けてそうな気もするけど、面白かったから紹介だよ。
興味ない人には興味ない話かもしれないけど、楽しい話は分け合いたいからね。
実況配信だからストーリー期待するのはちょっと違うんだけど、これまでが凄く良くてね、気になったら切り抜き動画(長い配信の面白いところだけ切り取った動画)だけでも見てみると楽しいですよ。
オチがつかずに終わる可能性もあるけど、それ込みで楽しんでました。
警察視点、ギャング視点、ラーメン屋さん視点、うんち屋さん視点とかいろいろあって見切れないので、○○さんのこういうシーンがよかったよ、とかあったら知りたいです。
ちなみに本日6/22、22:00から 川 ゚ -゚)『チキチキ! 半グレコロシアム〜優勝賞金5,000万円〜』が配信予定らしいです。
どうやって成り上がったんでしょうね。
ちなみに、「毎日好き」進捗は6割くらいです。
ゆっくり待っててください。
286
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/22(土) 22:15:56 ID:p.SgACmw0
追伸、乙や感想ありがとう、とってもとっても嬉しいです。
頑張ります。
暑さに負けずに待っててください。
287
:
名無しさん
:2024/06/22(土) 23:45:30 ID:3uZIo7Zk0
おつ
288
:
名無しさん
:2024/06/22(土) 23:48:11 ID:a/Wepe9w0
乙
GTAってなんぞ?と思ったエセネット民だが楽しめた
ダラーと見続けたい会話がよかった。副業系公務員好き
289
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/23(日) 00:21:26 ID:f71Qqxoc0
>>287
おつありがとう。
>>288
ありがとう、嬉しいです。そして説明不足でごめんね。
GTA(グランド・セフト・オート)っていうゲームがあって、そのゲームではあらゆる犯罪行為や、警察として犯罪を取り締まる行為、加えてお店屋さんだったりをロールプレイできるんだ。
面白いのが、同じ街の中、同時にそれぞれが「自分の視点から」ゲームプレイを配信してること。
リアルタイム01:30
o川*゚ー゚)o パン屋さんにいて、お客さんとお話し中
(-@∀@) 山奥で密造仲間と麻薬の原材料発見
川 ゚ -゚) コンビニでパパに奢らせちゃおw
リアルタイム02:00
o川*゚ー゚)o 車の音が聞こえたからお出迎えしよう
(-@∀@) パン屋さんが近いから密造仲間との無線切らなきゃ⋯⋯
川 ゚ -゚) 違うんすよ、コンビニ強盗とかしてないっすよ、マジですマジマジ
みたいなお話が繰り広げられてるんだ。
当然、自分以外がどこで何してたかなんてわからないからすれ違いも起きたり。
作中の会話内容は8割がそのままで、この例や内心描写だけ作り話なので、気になったらネタ元の動画もちょろっと見てみると楽しいかもです。
切り抜き動画っていう、面白い部分だけ切り取って数分〜数十分の動画もあったりします。
290
:
名無しさん
:2024/06/25(火) 00:33:31 ID:Sj1x2yto0
乙!GTAってただ人を撃つだけのゲームだと思ってたから自分にとっては凄く新鮮だった。
Vはあんまり知らなかったけど面白そうだし見てみる。紹介してくれてありがとう!
291
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/25(火) 23:00:22 ID:lX5r9EEA0
>>290
こちらこそ読んでくれてありがとう。
自分が面白かったことの紹介兼文章の練習でしたが、優しい言葉が貰えてうれしいです。
練習で、
・1レスだけの話
・パン屋さんの話(短編くらい)
・麻薬カルテルの話(短編くらい)
が出来上がったので、「なんか自作品の完成まで時間空きそうだな……」って思ったときに投下します。
292
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/25(火) 23:05:23 ID:lX5r9EEA0
かつてはおもちゃ屋の社長であった私も脱サラし、このロスサントスでラーメン屋を始めた。
(´・_ゝ・`)ラーメン屋さんは大忙しのようです
お客様を思い、一人厨房で調理するこの時間が好きだ。
「今何してんスか、警察辞めて?」
客席から漏れ聞こえる会話にに耳を傾けながら、思う。
「警察辞めてから? んーと、この世の悪いこと全部してますよ」
……なんですと?
「全然捕まってないスよね、でも」
「え? うん、なんか警察無能なんスよね」
(´・_ゝ・`) wwwww
ああ、こういう話を聞くと、本当に思う。
(´・_ゝ・`)「最高の店だ」
私の店は、最高だ。
開店初日には、店の前で爆発事故が起こり八人が死亡した。
毎日がとても刺激的で、これからも事件が起こり続けることを願って、完成したラーメンを客席へと運んだ。
善人も悪人も、おいしいものを前にしたときの笑顔は同じだな、と嬉しくなった。
完.
293
:
◆xSBhltJ66c
:2024/06/25(火) 23:12:51 ID:lX5r9EEA0
(´・_ゝ・`) 加賀美ハヤトさんという方がモデルでした。
パン屋さんと違って悪事はせず、真っ向からラーメンだけで勝負していたようです。
今日の投下は終わりです、出来れば「毎日好き」の続きはちょっとずつ進んでます。
294
:
名無しさん
:2024/06/26(水) 12:26:50 ID:.dGZXTkw0
乙乙
1レスが濃い
295
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:31:24 ID:ggrxUHDw0
お久しぶりです。
完成のめどが立ちました、もうちょっと遂行したら続きを投下します、数日ください。
今日は練習用で作った、にじGTAの短編を投下していきます。
296
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:32:16 ID:ggrxUHDw0
(-@∀@)ふたりはひみつのようですo川*゚ー゚)o
【生徒会パン屋さん・店内】
o川*゚ー゚)o「パンにローズマリー入れてるの?」
o川*゚ー゚)o「素敵だねぇ」
本当に、素敵だと思ったの。
o川*゚ー゚)o「ここ、お花とかあるの?」
o川*゚ー゚)o「お花摘みに行けるなら、行きたい!」
力になりたいと、思ったんだよ。
297
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:34:16 ID:ggrxUHDw0
(-@∀@)「またその内⋯⋯今度、行こうね」
(-@∀@)「遠いところにあってね、めちゃくちゃ山道だから」
凄く忙しそうでさ、困らせちゃうかなって、思ったけどさ。
o川*゚ー゚)o「キューちゃん、ハイジとか見るの好きだし、お花摘むの好きだからさ」
o川*゚ー゚)o「お花摘む仕事あったら教えてね」
(-@∀@)「うん、わかった」
(-@∀@)「 ⋯⋯是非とも、ね」
一緒に行くって約束、したんだ。
凄く嬉しかったの。
298
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:35:55 ID:ggrxUHDw0
◇◇◇
【麻薬カルテル『ENIGMA』拠点】
最初はギスギスしていた麻薬カルテルも、次第に打ち解けてきた。
ニンテンドーダイレクトを見ながら作戦会議なんてするほどに。
|゚ノ ^∀^)「あ、電話かかってきましたわ」
( ゚∀゚)「任天堂からだw」
(-@∀@)「怒られるよw」
パン屋さんもお休みだし、今日一日は研究に使うつもりでいた。
ミセ*゚ー゚)リ「はい差し入れ、ノンアルでーす」
( ゚∀゚)「あざっす」
(-@∀@)「助かるー」
喉を潤しながら、備品リストを眺める。
ああ、もう少しで新製品が作れそうかな、なんて。
|゚ノ ^∀^)「キュートさんから呼ばれたんで行ってきます」
299
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:37:22 ID:ggrxUHDw0
(-@∀@)
(-@∀@)「今」
(-@∀@)「だっ誰に、呼ばれたって言った⋯⋯?」
(-@∀@)「キュ、キュー⋯⋯」
|゚ノ; ^∀^)「キュートさんです」
なんでその名前がここで出るんだ。
ミセ*゚ー゚)リ「⋯⋯? 大丈夫?」
よっぽど酷い顔をしていたのだろう、ミセリさんが心配しているのがわかる。
ミセ*゚ー゚)リ「キューちゃん、普段タクシーとか使わないの?」
(;-@∀@)「使わない、そもそも出勤の連絡も来てない」
ミセ;゚ー゚)リ「えっ?」
(;-@∀@)「今連絡したら、ここにいることがバレるから連絡も取れないなって考えてました」
300
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:38:47 ID:ggrxUHDw0
( ゚∀゚)「どうしたどうした」
あまりの動揺に、ボスまで心配しだす。
ミセ;゚ー゚)リ「キューちゃん今日、出勤の連絡無かったって」
( ゚∀゚)「まあまあまあ、今来たんじゃないすか?」
ミセリさんの泣きそうな声に対し、ボスが答える。
楽観的な内容ながら、その声色は気遣いに溢れていた。
(-@∀@)「いや、タクシーの使い方も教えてないし、ずっとパンを捏ねるか移動販売だったから」
( ゚∀゚)「箱入りなんだ」
(-@∀@)「そう、ずっと箱入り」
ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと調べたらわかることだけど、心配だよね⋯⋯」
( ゚∀゚)「まあ、終わったらレモナさんに連絡貰おう」
301
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:39:28 ID:ggrxUHDw0
◆◆◆
花なんか、ほんとは咲いてないのかもと思ったんだよ?
でも、よかった。
アサピーさんは嘘はついていなかったみたいだ。
アサピーさんなんだか頑張ってるみたいだからさ、無理してほしくないんだよね。
でも、そうもいかないでしょ?
302
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:39:52 ID:ggrxUHDw0
◇◇◇
【麻薬カルテル『ENIGMA』拠点】
数分も経たずに、その電話は掛かってきた。
『ハインです、今パン屋に来たんだけど』
兼業でパン屋に籍を置く、ハインさんからだ。
パン屋になる前からの付き合いで、頭の上がらない相手である。
『キューちゃんから今ね、ローズマリーがうんたらって聞いて』
(-@∀@)「ローズマリー⋯⋯?」
『変なこと教えてない?』
(;-@∀@)「いやなんにも教えてない!ほんとに」
『あたしはあれだよ、「手伝えない」からね』
(;-@∀@)「私は」
(;-@∀@)「なにも、ほんとに、言ってないし」
303
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:41:49 ID:ggrxUHDw0
『キューちゃんローズマリー取って帰ってくるって話だけど』
『大丈夫だよね?』
(;-@∀@)「大丈夫⋯⋯」
電話しながら、地図を見る。
山には、昨日まで表示されていなかった花の表示がある。
⋯⋯この花、麻薬の原材料じゃないのか!?
(;-@∀@)「いや、とりあえず向かいます」
『うん。タクシーで帰るって話だから、パン屋戻ったげて』
304
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:42:22 ID:ggrxUHDw0
(;-@∀@)「ごめん、緊急事態。パンにローズマリーとかリラックス効果のあるお花を使ってたんだけど、一人でハッピーフラワーの群生地行っちゃったみたいで」
※ハッピーフラワー:麻薬の原材料
( ゚∀゚)「あー、それでレモナさん呼ばれた感じ?」
ミセ;゚ー゚)リ「大丈夫、警察とか?」
(;-@∀@)「いや、電話ができてるから捕まってないはず⋯⋯」
( ゚∀゚)「いい、いい、一回帰れ!」
ミセ;゚ー゚)リ「大丈夫、送ろうか?」
(;-@∀@)「いや、大丈夫、車で来てるから⋯⋯」
305
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:44:04 ID:ggrxUHDw0
◇◇◇
【アジト前・二人】
(;-@∀@)「車がない!」
ミセ;゚ー゚)リ「レッカーされちゃったんだ⋯⋯」
(;-@∀@)「レッカー!? そんなんあんの!?」
ミセ;゚ー゚)リ「いいよもう、乗っていきな! 私の車早いから送るよ!」
(;-@∀@)「ごめん、恩にきます!」
306
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:44:41 ID:ggrxUHDw0
◇◇◇
【車内・二人】
(;-@∀@)「キュートくんに電話かけます!」
ミセ;゚ー゚)リ「いいから早くかけな!」
出ろ、出ろ、出ろ⋯⋯繋がった!
(;-@∀@)「キュートくん今日出勤した?」
『今日出勤のとき道間違えちゃってね、そしたら地図にアサピーさんの言ってた花のマークがあって、そこに行ってみた!』
⋯⋯⋯⋯嘘だろ。
307
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:45:16 ID:ggrxUHDw0
『でも重くて積めなかったから、みんなでピクニックに行こうね』
.
308
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:46:49 ID:ggrxUHDw0
え?
(;-@∀@)「あー、今、その花持ってる?」
『んーん、重くて積めなかったの。なんか重いって⋯⋯』
『パンいっぱい持ってたから!』
よかった、本当によかった!
(;-@∀@)「そっか、大変だったねぇ⋯⋯」
『でね、すぐ出勤したいんだけど⋯⋯⋯⋯』
309
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:47:26 ID:ggrxUHDw0
■■■
【車内・二人】
合流後。
店にキューちゃんを一人で残し、しゃーないからアサピーのレッカー車を取りに市役所へ向かっていた。
从 ゚∀从
この街で生きる以上、どうしたって後ろ暗いところはできる。
だとしても、今回キューちゃんを巻き込んだことは許せなかった。
許せなかった、のだが。
(;-@∀@)『ハインさん今日一日、医者業務にキュートさん連れて行けませんか?』
合流してからのコイツの狼狽えようといったら、見てられん。
ここまで過保護やったか、コイツ?
从 ゚∀从「怪しいことは、してないんだもんね?」
運転しながら、問いかけてみる。
(-@∀@)「してないです」
おう、そんならもっと胸張って言えや。
310
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:48:18 ID:ggrxUHDw0
(-@∀@)「ただ、その⋯⋯なんか⋯⋯人質になった時もそうなんだけど」
从 ゚∀从「なんや」
(-@∀@)「言動が怪しまれやすいのかな。そもそも、私自身が」
从 ゚∀从「ははっ」
本気で困ってるのがウケるな。
いや、ウケてる場合と違うんやけど。
311
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:48:45 ID:ggrxUHDw0
从 ゚∀从「⋯⋯何してもいいけどさ、キューちゃんだけは」
(-@∀@)「分かってます」
(-@∀@)「私も、パン屋を大きくしていきたい」
さっきの狼狽えた声とは違い、真剣な声。
从 ゚∀从「 ⋯⋯それが今やりたいことなんやな?」
とりあえずは、信じたるからな。
ムカつくから口には出さんけど。
312
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:49:11 ID:ggrxUHDw0
□□□
【麻薬カルテル『ENIGMA』拠点】
アサピーを送り届けた後。
ミセ*゚ー゚)リ「あのさ」
( ゚∀゚)「?」
ミセ*゚ー゚)リ「キューちゃんが花を摘んじゃってさぁ、今後アサピーこっちにいていいのかなって⋯⋯」
ミセ*゚ー゚)リ「キューちゃんのためにも捕まってほしくないな⋯⋯って、思っちゃって⋯⋯」
( ゚∀゚)「あー⋯⋯」
313
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:49:58 ID:ggrxUHDw0
( ゚∀゚)「正直アサピーにも夢があってさ。でも、両方は取れない案件だよね、これに関しては」
( ゚∀゚)「キュートさんの安全をとるのか」
( ゚∀゚)「隣でバレないように薬を練り続けるのか」
( ゚∀゚)「俺らとしては⋯⋯切るのが、皆の為だよな」
314
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:51:58 ID:ggrxUHDw0
ミセ*゚ー゚)リ「このまま3人で私達が頑張ってパンをめちゃくちゃ買うとかどうですか?」
( ゚∀゚)「あのパン屋、今めちゃくちゃ安いもんね。レモナさんどう思う?」
|゚ノ ^∀^)「タクシーでキュートさんが『沢山お花摘んだんだ!』って無邪気な顔で言ってて、私は心が痛くて⋯⋯」
ミセ*゚ー゚)リ www
( ゚∀゚)「俺がそれ現地で聞いてたらアサピー切ってたね」
( ゚∀゚)「まあ、なんにせよ、だ」
( ゚∀゚)「アイツが戻ったら、四人で話し合いだな」
315
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:53:10 ID:ggrxUHDw0
◆◆◆
重量オーバーでお花が持てない!
何が重いんだ?
⋯⋯パンかな、やっぱ。
でもこんなとこにパン捨ててったら、アサピーさんが次に花畑に来た時に傷つくかな。
あーん、こんなことなら置いてくればよかったよ何か!!
でも今日わかったもんね、ここに花が咲いてるって。
みんながもっと、ひまになったらさ。
⋯⋯ここにみんなでピクニックに来よっか。
キューちゃんがいいとこ見っけたんだよ。
って、みんなに教えてあげるのだ。
316
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:54:44 ID:ggrxUHDw0
◆◆◆
【生徒会パン屋さん・一人】
o川*゚ー゚)o「さすがに、さ」
o川*゚ー゚)o「あんだけ大人が集まって騒げばさ、キューちゃんでも気づくよ」
o川*゚ー゚)o「あれは、触っちゃいけない花だったんだ」
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「⋯⋯⋯⋯」
「ひとりではしゃいで、ばっかみたいー」
317
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 15:57:54 ID:ggrxUHDw0
〇〇〇
【警察】
( ^ω^)「数日前の爆発事故の現場の血液が誰のものか判明したお」
( ^ω^)「アサピーだ」
( ^ω^)「パン屋が、麻薬の製造に関わってる可能性があるお」
「パン屋さん?」「あの、かわいいとこか」「確かめっちゃ頑張ってだよね」「こないだ買ったよー」「誰かアサピー捕まえた人いる?」「冤罪ばっかだよアイツ」「でも怪しいんだよな、言動がさ」
( ^ω^)「すぐにどうしようってんじゃなくて、なんかあったときのためにアンテナ張っとくくらいでいいお」
( ^ω^)「この街の犯罪者は、全員僕らで捕まえるお」
(-@∀@)ふたりはひみつのようですo川*゚ー゚)o 完.
318
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:06:48 ID:ggrxUHDw0
|゚ノ ^∀^)まるで、夢のようです
宝物が欲しかった。
きらきらで、特別で、大切な、宝物が欲しかった。
特に目的はなく、そんな宝物を探しにロスサントスへ来て。
なんとなく流されて、麻薬カルテルに入りました。
|゚ノ ^∀^)
もう数日で、この街の暮らしも終わってしまう。
仲間だって、警察だって、すれ違うだけの人たちですら、輝かしい夢のようなものを持っているのに。
私の宝物はまだ見つからない。
319
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:08:46 ID:ggrxUHDw0
驚いて二人でアサピーさんのほうを見ると、何でもない風にタバコを吸っている。
(-@∀@)「半分は私が負担するから、もう半分ボスとかに聞いてみて」
ミセ;゚ー゚)リ「い、いいのアサピー?」
(-@∀@)「私、もう自分の夢は叶えたから」
ミセ;゚ー゚)リ「じゃあもう無理しなくてよくない?」
|゚ノ;^∀^) ウンウン
アサピーは唯一、麻薬カルテル以外に居場所を持つ人物だ。
危険な橋を渡るべきではない。
320
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:09:24 ID:ggrxUHDw0
(-@∀@)「でもここで稼いどけばもうワンチャンあるかもしれない」
ミセ*゚ー゚)リ「ワンチャン?」
(-@∀@)「家のランクちょっと上げるとかね」
パン屋さんの拠点を大きくしたいとは、確かに常々言っていたけれど。
(-@∀@)「ここから私は、パン屋の利益はもらうけど、粉の利益は二人に渡すわ」
321
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:09:55 ID:ggrxUHDw0
ここまで一緒にやってきた私たちのため、というのもあるのだろう。
夢のため、人のために働く姿は、まぶしく見えた。
……やってることは悪党のそれなんですけど。
|゚ノ ^∀^)
|゚ノ ^∀^)「私、夢がないんどす。だから」
(-@∀@)「夢、無いの?」
無いんです。
だから、ちょっとおどけて言ってみる。
|゚ノ ^∀^)「足りひんのやったら、あちきが負担します」
夢は見つからなかったけど、仲間は出来たから。
その夢を手助けできたら、それは私の夢といってもいいんじゃないだろうか。
なんていうのは、ちょっと恥ずかしいかな。
322
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:10:54 ID:ggrxUHDw0
ミセ;゚ー゚)リ「無理しないで二人とも無理しないで、アサピーは特に無理しないで」
(-@∀@)「だって私もうヘリ買ったもん」
|゚ノ ^∀^)「私もう夢叶えてるんですわ」
二人で遠慮するミセリさんを説得にかかる。
(-@∀@)「調べたらさあ、4,5人乗りボートが500万くらいで買えるんだって」
ミセ*゚ー゚)リ「「へー」」|゚ノ ^∀^)
(-@∀@)「最終日にパン屋さん全員でヘリで空の旅して、ボートで渡航して、ビーチで遊ぶっていう計画立ててたんだけど」
ミセ*゚ー゚)リ「いいなー」
(-@∀@)「その分のお金さえあれば、大丈夫」
323
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:11:14 ID:ggrxUHDw0
ミセ*゚ー゚)リ「豪邸買えたらパーティしたいから、生徒会のみんなで来てよ」
(-@∀@)「ヘリで行きます」
|゚ノ ^∀^)「ええですねえ」
パン屋の方々も、エニグマの皆さんも、仲良くできたら、それは素敵だと思う。
旅人として帰る場所がない私は、少し羨ましく思って。
ミセ*゚ー゚)リ「レモナさん一緒に住みます?」
急に、当たり前みたいに言われたその提案に驚いてしまう。
|゚ノ ^∀^)
|゚ノ ^∀^)「ええどすの?」
324
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:11:52 ID:ggrxUHDw0
ミセ*゚ー゚)リ「一緒にお金出してくれるって話でしたし、どうです?」
|゚ノ ^∀^)「ええどす、じゃあ、ええと……」
うまく言葉がまとまらなくて。
|゚ノ ^∀^)「私はね、宝物探しに来たんですわ、この街には」
どう答えていいか、わからなくて。
325
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:14:10 ID:ggrxUHDw0
ミセ*゚ー゚)リ「私が宝物になろうかな、レモナさんの」
.
326
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:17:15 ID:ggrxUHDw0
|゚ノ ^∀^)
ミセ*゚ー゚)リ
|゚ノ ^∀^)「「ははははは」」ミセ*゚ー゚)リ
顔を見合わせて、笑った。
このあとどんな話をしたのかは秘密だけれど、この街に来れてよかったな。
|゚ノ ^∀^)まるで、夢のようです 完.
327
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/09(火) 16:24:41 ID:ggrxUHDw0
とりあえず手元にある分は投下終わりです。
エニグマやパン屋さんについて詳しく知りたい人は動画漁ってみてください。
「毎日好き」の続きはもうちょっと待ってね。
オリジナルで別な話も書きたいけどね、途中まで書いて「これは……面白いのか……?」となって止まったりしてます。
読んだよとか乙とか書いてあると喜びます。
それではまた。
328
:
名無しさん
:2024/07/09(火) 21:11:13 ID:l4SbCuwI0
乙乙
329
:
名無しさん
:2024/07/10(水) 02:38:40 ID:cL9wEFAc0
おつぅ
330
:
名無しさん
:2024/07/10(水) 17:18:17 ID:Qx6tYm8w0
乙です
331
:
名無しさん
:2024/07/11(木) 00:23:47 ID:/TUmgNgE0
つべでパン屋さんまとめの動画があったから見たよ。それ見てからまたこっちに読みに来たらより楽しめた。
毎日好きも楽しみにしてる!乙〜!
332
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:54:06 ID:yQdk9mkE0
>>328-330
乙ありがとうです。
>>331
楽しかったねーって共有がしたかったので、元動画見てくれたこと嬉しいです。
そして、待っててくれてありがとう。
投下します。
333
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:55:00 ID:yQdk9mkE0
愛しすぎて嬉しすぎて死んだらどうしよう。
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです
走って逃げていた。
何から逃げているのかは自分でもわからない。
先を考えること、彼に応えること、自分に向き合うこと、とにかく考えうるすべてのことから、逃げていた。
とても幸せで、少し後ろめたくて、でもやっぱり幸せなのだった。
334
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:55:41 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ(どうしよう)
恋人には、なるべきではないと思っていた。
近づきすぎると、あの子はいつか私のために大事なことを捨ててしまうんじゃないかと不安だったから。
挨拶のように繰り返された結婚してください、という言葉は、親愛と恋愛の区別がつかないあの子なりの、ずっと一緒にいようねという意思表示だと思っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(本当に、私のことを好きなんだ)
嬉しい。
あの子は私が思っているよりずっと強く、ずっと思慮深く、ずっと頼りになるということが、ただ、たまらなく嬉しい。
335
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:56:45 ID:yQdk9mkE0
そして、それを信じられていなかった自分が、少しだけ後ろめたいのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(でも、さぁ)
急成長し過ぎではないか。
守ってあげるべき後輩だと思っていたのに、急に、あんなに、男の子になってしまった。
いや、少しずつ成長はしていたのに、日々が楽しすぎて気付いていなかったのかもしれない。
ずっと一緒にいたのに、いつもいつも予想外のことばかりだ。
336
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:57:08 ID:yQdk9mkE0
そして、予想外といえば。
ζ(゚ー゚*ζ『割と、前向きに、考えているから。いい子で待っているように』
あの返事。
我ながら、もっと他に何か無かったのだろうか。
普段は好きにするよう言っておいて、いざ逃げられそうになると慌ててしまう自分が情け無い。
ζ(゚ー゚*ζ『あとね。大事なものは、一つあればいいから。どんな結果になっても、百輪の薔薇なんてなくても、未来の私を迎えに来てね』
自分勝手にも程がある。
というか、これはもう実質答えじゃないかな。
意識して、唇が熱くなる。
ζ(゚ー゚*ζ『じゃ、じゃあ、そういうことだから』
そういうことだからって何!?
卒業まであと半年以上あるんですけど。
明後日からまた毎日会うんですけど、どんな顔して学校行けばいいのかな?
337
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:57:58 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
手元の薔薇に目をやる。
当然、答えはない。
私だって、ずっと、好きだった。
それなら答えなんて、決まってるようなものだけど。
ζ(゚ー゚*ζ『私、誰とも付き合わないし、結婚しないから』
あの子のためと思って言い続けた言葉。
これを今更反故にするのは、あの子からどう見えるだろうか。
ぐるぐる、ぐらぐら、思考が回る。
進んで、戻って、傍へと逸れて、どっちに進めばいいのかわからない。
学校から、あの子は逃げられでも、自分からは逃げられない。
誰にも言えないことだけど、誰か一緒に考えてくれないだろうか。
338
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:58:21 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
(;'A`)「あのね、どんな相談かは知らないけど、多分人選ミスだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「言わないでくださーい」
迷った末に辿り着いたのは喫茶店だった。
いつも通りガラガラ、カウンター席でマスターと二人きりだ。
('A`)「お友達とかには頼めないの?」
ζ(゚ー゚*ζ「近すぎる関係性だと、かえって相談しにくいんですよ。その点このお店なら、気まずくなったら二度と来なければいいだけなので」
('A`)「わりかし酷い事を言っている自覚を持つように」
鳴物入りの新メニュー、水出しアイスコーヒーが差し出される。
ζ(゚ー゚*ζ「はーい」
ミルクとガムシロップを入れ、掻き混ぜながら答える。
339
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:58:54 ID:yQdk9mkE0
('A`)「まあ、相当混乱してるみたいだから、愚痴くらいは聞くけどね」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ありがとうございます」
('A`)「いいえー、お仕事ですから」
拗ねちゃった。
ζ(゚ー゚*ζ「えー⋯⋯こ、これは友達の話なんですが」
('A`)「飲んだら帰りなさいね」
ζ(゚ー゚;ζ「な、なぜ!?」
今、話を聞いてくれる流れでしたよね!?
('A`)「多分自分の話なんだろうけどね。本当に友達の話ならお嬢ちゃんが考えてあげるべきだし、わざわざ隠すくらいならもう少し自分で考えなさい」
ぐうの音も出ない。
340
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:59:43 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「実は私の話なんですけど」
('A`)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「なんです、けど」
('A`)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ちょっと覚悟を決めるので、待ってください」
(;'A`)「無理に言わなくていいんだよ」
困惑しながらも、こちらを心配するような声。
341
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:01:49 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「一人で考えると袋小路なので相談したいんですが、口に出すのに勇気がいるもので」
('A`)「わからなくも無いけどね」
誰か他の客が来るのでは、と不安になり、入り口のほうを見る。
マスターは仕方ないな、といった表情をして、入り口まで行き、掛札を「close」に変える。
ζ(゚ー゚*ζ「いいんですか?」
('A`)「いや、未成年の娘さんと二人きりって時点で大分マズい。流石に鍵は開けとくからね」
ζ(゚ー゚*ζ「そういうことではなく」
商売的に大丈夫なのか、という話である。
342
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:02:11 ID:yQdk9mkE0
('A`)「お嬢ちゃんもね、卒業したら大学生なんだから。ちょっと顔見知り程度の大人をあまり信用しないように」
そして渋い顔で戻ってくる。
カウンターを挟んで向き合う形に戻る。
('A`)「俺のこともね。怪しいな、と感じたらすぐ逃げなさい」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯凄い過保護」
('A`)「学生さんの多いところで商売する以上、当然のことだよ。逆に学生だからという理由で付け込んでくるヤツも多いから」ケッ
顔を顰めて言う。
何かあったのだろうか。
343
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:02:36 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「私、卒業、するんですよねぇ⋯⋯」
('A`)「やっぱり悩みは進路か」
ζ(゚ー゚*ζ「進路に絡んではくるんですが」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯えー、ちょっとした条件付きの、返さなくていい奨学金があるんですが」
('A`)「うんうん」
ζ(゚ー゚*ζ「それに手が届きそうなので、県外に進学を考えてるんですよ」
344
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:03:42 ID:yQdk9mkE0
('A`)「⋯⋯君。もしかしてだけど凄い頭いいの?」
ζ(゚ー゚*ζ「頑張れば平均より上だけど、トップクラスだと最下位争い中、くらいのレベルです」
('A`)「それは、なんというか⋯⋯」
('A`)「挑戦するか悩むね」
ζ(゚ー゚*ζ「悩むんですよ」
諦めるには近すぎて、覚悟するにはちょっと遠いレベル。
誰かの応援があれば、頑張れるかもしれない。
('A`)「あの子なら応援してくれそうだけどね」
あの子。
( ・∀・)
他の人から見ても、そう思ってしまうくらいには近い関係なのだろうか。
345
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:04:39 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「実はそれを期待して、モララーくんには真っ先に伝えました」
('A`)「ほう」
ζ(゚ー゚*ζ「それで、告白、されまして⋯⋯」
(*'A`)「ほほう!」
ζ(゚ー゚*ζ「どう、しよう、か、なぁ⋯⋯と」
もうこうなればヤケだ、と口には出したものの、どうにも気恥ずかしい。
目を合わせず、アイスコーヒーの水滴を見つめながら話す。
346
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:05:25 ID:yQdk9mkE0
(*'A`)「いや、いやいや、おめでとう! 本当におめでとう!」
心からの拍手。
進路に悩んでるのに合格発表みたいになってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「ま、まだそうなるとは決まったわけでは!」
('A`)「え? 嫌なの?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯そうじゃなくて! これから忙しくなりますし。県外進学ですし。会える時間も減るし、寂しくさせるし、今まで断ってたのはなんだったのって話になるし。それに」
('A`)「それに?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯もし、落ちたら、格好悪いし」
('A`)「あのね」
('A`)「進学とか就職って、大体格好つかないものでね」
ちょっと呆れるような声。
自分でも、間抜けなことを言っているのは分かっている。
347
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:08:21 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「分かってます」
ζ(゚ー゚*ζ「分かってるんですけど」
ζ(゚ー゚*ζ「あの子の中で『先輩』は、いつでも優しくて、格好良くて、一歩前を行く存在なんです」
('A`)「⋯⋯⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、これからはどんどん忙しくなって、失敗して、少しずつ余裕が無くなっていくから」
('A`)「そうやって考えられることを、優しさっていうんだと思うよ」
348
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:09:02 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「私、最近自分のことばっかり考えてるんです」
ζ(゚ー゚*ζ「前は違ったのに。もっと我慢して、あの子の選択肢が増えるように行動できた」
('A`)「今は違うの?」
ζ(゚ー゚*ζ「今は⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ『誰かを選ぶ前に、ちゃんと分からせておかないといけないでしょ?』
ζ(゚ー゚*ζ『キミの人生で出会う人の中で、私が一番かわいいってこと』
ζ(゚ー゚*ζ「少しずつ、自分勝手になってる。あの子が自分を選ぶように誘導してるような。そんな気がします」
349
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:09:49 ID:yQdk9mkE0
琥珀色の瓶の底を額にガン、とぶつけられた。
ζ(゚ー゚*ζ「あいたぁ!?」
('A`)「それが人を好きになるってことだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですかねぇ」
額をさすりながら、思う。
そんな、傲慢でいいのかな。
350
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:10:43 ID:yQdk9mkE0
('A`)「そうそう、俺も若い頃はそんなんでした」
マスターは瓶から自分のコーヒーカップに何かを注ぎ、一気に煽る。
ζ(゚ー゚*ζ「それなんです?」
('A`)「コーヒー用のブランデー。ちょっとおじさん、素面で話聞くの限界だから」
ζ(゚ー゚*ζ「真面目に相談してるのに」
('A`)「だからだよ」
('A`)「恋愛なんて真面目に考えたら失敗するんだから、ちょっと力抜きなさい」
ブランデーは流石に出せないけど、と寂しそうに笑った。
351
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:12:36 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「マスターも若い頃失敗しました?」
('A`)「まあ俺もまだ若いっちゃ若い歳だけども。失敗しましたとも」
ζ(゚ー゚*ζ「参考にしたいから教えてください、って言ったら怒ります?」
('A`)「大して面白くもないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「いいです。私だけ恥かくの嫌なので」
(;'A`)「いい性格してるね、本当に」
('A`)「⋯⋯⋯⋯昔、バリバリに働いてた頃、一緒に住んでた娘(こ)がいてねー」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ」
('A`)「はは、意外だろ。昔は金さえあれば幸せになれると思ってたし、幸せにできると思ってたのよ」
傲慢だよなぁ、と、カップを傾ける。
352
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:13:33 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
そこそこ忙しく、たまに二人でゆっくりして。それなりに上手くいってたんだけど、いつだったかテレビでウェディング特集をやっていてね。
まだ早いな、って思いながら隣見たら、キラキラした目でテレビ見てるからさ。
裏でこっそりドレスだの式だのの金額調べたら目玉が飛び出たわ。
ζ(゚ー゚*ζ「お金で諦めたんですか?」
いや、もっと仕事詰めたよ。
金があれば全部解決するから、働けば解決だなんて簡単に考えてた。
必死で働いてね。休みも日雇いバイトしたり、勉強会行ったり。ちょっと遊ぶ時間は無くなるけど、サプライズだと思って何も言わなかった。
でも、彼女からすりゃ急に忙しくなれば不安だわな。
川 - )「何か手伝えることはないか」
なんて心配されたけど、いつも「大丈夫」って答えてたよ。
353
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:15:06 ID:yQdk9mkE0
で、あれは⋯⋯三ヶ月目くらいか。
あの頃は忙しくて時間感覚曖昧になっててね。
ある朝家に帰ったら「大事な話がある」って言われてさ、正直「寝せてくれよ」って感じだったから、敷きっぱなしの布団に倒れて「あいあい」なんて生返事をした。
川 - )「別れて欲しい」
川 - )「一緒にいても頼って貰えないなら、一緒にいる意味ないだろう?」
なーんも言えなかったね。
居てくれるだけで幸せだったから、苦労とか心配とかかけたくなかったから、幸せにしたくて頑張ってだんだけど。
そういうの、ずっと恥ずかしくて伝えられてなくてね。
何か言わなきゃ、立ち上がらなきゃって考えてるうちに寝ちゃって、起きたらもう夜で、荷物纏めていなくなってたよ。
情けなくて、申し訳なくて、寝転がったまま泣いて、泣いて、泣き疲れて、気づいたら寝てて、起きたら朝になってた。
なんか虚しくなって、仕事も辞めたよ。
手元には金だけ残った。
354
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:17:19 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
からん、と、アイスコーヒーの氷が溶け、音を立てる。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯聞いてよかったんですか?」
軽い気持ちで、聞いていい話だったんだろうか。
('A`)「んふふ、お気遣いどうも」ピン
気遣いは無用、とばかりにデコピンされた。
('A`)「まあ何にせよ、あの経験からお嬢ちゃんに言えることは一つだ」
('A`)「良いことも悪いことも、何をやっても思い通りにいかないんだから、好きにしたらいいんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ、そっち!?」
355
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:18:23 ID:yQdk9mkE0
('A`)「ん? 他に何かあるかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「てっきり、話し合うのが大事だよ、というような方向に進むのかと」
('A`)「それが出来ないからここにいるんだろう?」
そうでした。
('A`)「⋯⋯⋯⋯分かってても出来ないよなぁ」
呆れるように、嘆息するように、呟く。
356
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:18:56 ID:yQdk9mkE0
('A`)「大切な人には幸せでいて欲しいし、そのためならいくらでも苦労できるんだ」
('A`)「でも、相手も同じ思いだったら?」
('A`)「俺は止められちまうと思って隠して、一人で努力して、結局バレて悲しませだけど⋯⋯」
('A`)「二人で幸せになるためには、相手にも苦労させる弱さが必要なのかもね」
分かんないけどさ、と弱々しく笑う。
ζ(゚ー゚*ζ「酔ってます?」
('A`)「んふふ、だからね、恋愛相談なんか酔わなきゃやってられませんわ」
わざわざ茶化す気もないけど、と笑う。
357
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:19:20 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「でも、ありがとうございます」
なんとなくだけど、やらなきゃいけないことがわかった気がする。
残り少ないアイスコーヒーを飲み干し、立ち上がる。
ζ(゚ー゚*ζ「今日はお世話になりました。それと、酷いこと言ってすいませんでした」
('A`)「んー? なんか言ったっけか、悪いこと」
ζ(゚ー゚*ζ「最悪もう来なければいいとか」
('A`)「はは、流石に冗談だって分かってるよ」
ζ(゚ー゚*ζ「冗談だって分かって貰えると思ってましたけど」
ζ(゚ー゚*ζ「言いたいことは、言うべきだと思ったので」
358
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:21:14 ID:yQdk9mkE0
('A`)「⋯⋯⋯⋯あー」
('A`)「お嬢ちゃんは、やっぱり頭がいいなぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、励みになります」
「んじゃ、また二人でおいで」
「ええ、きっと」
.
359
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:22:09 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
客が店を出ていく姿を見るのが好きだ。
少し重い木のドアがゆっくり開き、外から差す光の中に足を踏み出す姿が、好きなんだ。
その客が笑顔だったら、尚更に。
カランとベルが音を立ててドアが閉まり、店内は静寂につつまれる。
('A`)「⋯⋯⋯⋯お幸せに」
過去に愛した人を思う。
思えば彼女も、俺が家を出るときはニコニコと背中を見送ってくれた。
あの頃は気恥ずかしくて申し訳なかったが、今なら彼女の気持ちもわかる気がする。
送り出す側は、見守ることしか出来ず、だからこそ祈ってしまうのだろう。
('A`)「あの子たちが、幸せでありますように」
酔いのせいか、重くなった瞼を閉じ、呟く。
('A`)「俺も、好きだったよ」
360
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:23:21 ID:yQdk9mkE0
戻らない日々を思う。
愛した人の幸せを思い、あの頃言えなかったことを、今度は大きな声で言ってみる。
カランッ
('A`)「大好きだったよー!」
ζ(゚ー゚;ζ
(;'A`)
ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの、お会計、忘れてて⋯⋯」
('A`)「奢りです」
ζ(゚ー゚;ζ「で、でも」
('A`)「奢りだから」
ζ(゚ー゚;ζ
('A`)「ひとりにしてよぉぉぉぉ!!!」
「すいませんごちそうさまでした!」ヒュンッ三ζ
カランッカランッ
361
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:24:23 ID:yQdk9mkE0
('A`)
('A`)「⋯⋯」
(ノA`)「⋯⋯⋯⋯」
人生は思い通りにならないことばかりで。
話し合うべきだった、口に出さなきゃよかった、なんて後悔ばっかりで。
それでも。
('A`)「それでも、大好きだったんだよ」
こればっかりは、どうしようもない。
店の外、光の下を歩くあなたが、どうか幸せでありますようにと願いながら。
新しい客を迎えるために、立ち上がった。
362
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:24:51 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
そんなこんなで。
激動の土曜日を乗り越え、悩みながらも日曜日を越え、なんともう月曜日の朝である。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ねむーい」
登校中はいつだって眠い。
いつもなら、そろそろあの子が声を掛けてくる頃だ。
(;・∀・) ζ(゚ー゚*ζ「おーい」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯遠くないかな?」
(;・∀・)「い、いつもー、これくらいです、よ?」
嘘だ。
普段なら、にこにこと走って駆け寄ってきているはずが、今日は気まずそうにゆっくりとこちらへ近づいてくる。
363
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:25:27 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「あーあ、嫌われちゃった」
(;・∀・)「いやいやいやいや、そんなことは全然決して絶対無いですよ!?」
冗談めかして非難すると、焦って走ってきた。
わかりやすくて、とてもよろしい。
ζ(゚ー゚*ζ「はい、おはよう」
(;・∀・)「お、おはよう、ございます」
ぎこちない返事。
なんとなく目を合わせられないまま、しばらく無言で、並んで歩く。
一歩だけ、近づいてみる。
364
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:25:55 ID:yQdk9mkE0
(*・∀・)「ち、近くないですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「駄目かな?」
(*・∀・)「駄目じゃないですけど⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「けど?」
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯心臓が持たないので」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、なにそれ」
365
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:26:29 ID:yQdk9mkE0
一歩、離れる。
緊張が和らぎ、なんだかいつもの雰囲気だ。
ζ(゚ー゚*ζ「色々と考えたんだけどさ」
なんでもないことのように、切り出してみる。
ζ(゚ー゚*ζ「まだ答えない、という結論になりました」
モララーくんの足が止まる。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯そ、うですか」
私も止まり、待つ。
366
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:26:51 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「期待を持たせるようなことを言って、こんな答えでごめんね」
ゆっくりとモララーくんが歩き出し、私も並んで歩く。
ζ(゚ー゚*ζ「現実的に考えるとさ、断ったほうがキミのためなんだろうなって思ったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「これから少しずつ会える時間は減るし、その時間でキミには他に好きな子を作る自由もあるし」
ζ(゚ー゚*ζ「それに、遠距離恋愛っていうのは破局しやすいらしいし?」
( ・∀・)「⋯⋯」
無言で俯く彼の手を握る。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、やだ」
強く、握る。
ζ(゚ー゚*ζ「キミがいないのは、いやだ」
367
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:27:57 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「キミがきてくれるなら。私はこの先、恋愛とか結婚とか、そういうの全部出来くなってもいい。二年後に、必ず答えを聞きにきて」
.
368
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:28:17 ID:yQdk9mkE0
言わないでおこうと決めたことを、言ってしまった。
恥ずかしくて顔を見れない。
心臓がうるさい。
繋いだ手から、心臓の鼓動が伝わらなければいいなんて、ありきたりで馬鹿みたいなことを考える。
369
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:29:32 ID:yQdk9mkE0
強く、握り返される。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯迎えに行くのが俺で、いいんですか?」
震える声に喜びが混じっているのに安堵するべきか、それともその内容に呆れるべきだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「キミはもう少し、自分に自信を持ちなさい」
( ・∀・)「すいません」
ζ(゚ー゚*ζ「私を幸せにしてくれるんでしょう?」
(*・∀・)「」
照れて、黙ってしまう。
こっちだって、恥ずかしいのに。
繋いだ手を離し、彼の頬を指で突いてみる。
370
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:29:53 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「これは受け売りだけど。人生は何をしても、思い通りにはならないんだってさ」
( ・∀・)「? そうなんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、私は先輩として格好つけるのを少しだけ諦めました」
本当は、ずっと格好良い先輩でいたかったんだけど。
思いを口に出せば、キミは「先輩はいつでも格好良いですよ」なんて、当たり前みたいに言うんだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「少しだけキミに頼ってみようと思うので、しっかりしてくれないと困るよ」
なんて勝手な理屈。
それでも、許してくれるという確信があった。
( ・∀・)「頑張ります。先輩のこと、支えられるように」
ほらね。
優しいんだ、この子は。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、いい返事。ありがとう」
371
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:30:41 ID:yQdk9mkE0
諦めたなんて言いながらも、余裕ぶって、先輩らしくと努めてしまうのは、私の悪い癖で。
そんなことを知らずに、モララーくんは後ろを嬉しそうに着いてくる。
今までと同じ、今までと少しだけ違う関係。
この子の一歩前こそが、私の、帰る場所であればいい。
もし将来、答えを返すそのときに。
愛しすぎて嬉しすぎて死んだらどうしよう。
372
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:33:02 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
「⋯⋯あ、そういえばこの間のこと。俺も考えたんですけど」
「ん、何かな?」
「晴れてるのにどこにも行けなくて寂しいなーってやつ」
「そんな話も、したね」
「あれだけ晴れていれば、きっと景色が綺麗に見えると思うので。次は電車で海とか、気分の晴れる所に行きましょうよ」
「ふふっ。キミのそういうとこ、いいと思うよ」
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです 完.
373
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 15:02:15 ID:yQdk9mkE0
これで終わりです。
>>232
( ・∀・)いつもと違う、ようです(前回分)
>>333
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです(今回分)
ちょっとだけ二人は前に進みました。
今度こそ完結のはず、です。
でも思いついたら何かしらの短編など上げます。
乙とか読んだよとか書いてあると嬉しいです。
一レス当たりの文章量に迷ってます、ちょうどいいとか、ちょっと多いな少ないな、とか思うことあったら書いていってくださいお願いします。
374
:
名無しさん
:2024/07/20(土) 23:30:16 ID:Q7QDsKHk0
おっしゃ乙やで!
375
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:28:21 ID:598SG89w0
>>374
読んでくれてありがとうございます。
本編に入れようとして入んなかったエピソードを追加で投下して終わりです。
毎回毎回ごめんよ、今回はマジで入れ忘れたしエピソード挟まる隙間が無いと思ったのに、なんかスルッと収まりそうなので投下します。
376
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:29:41 ID:598SG89w0
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです・エピローグ
ζ(゚ー゚*ζ(⋯⋯⋯⋯とは、言ったものの)
言葉だけでは、いつかこの子を一人にした友人たちと、同じことをしているのではないか。
ζ(゚ー゚*ζ(かと言って、渡せるものがあるかと言えば、無いわけで)
どうにか安心させてあげたくて、ポケットを探る。
ハンカチと、予備のヘアゴムが一つ。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
無意識の行動だった。
隣に歩く彼の左手を取り、その薬指に、赤いヘアゴムをくるりと巻いてみる。
ζ(゚ー゚*ζ(いや、これは流石に、ねぇ)
自分より大きい指に、赤色のそれは似合ってなかった。
(*・∀・)「あ、あの、なにを⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ
我に返る。
ζ(゚ー゚*ζ「返してね」
急いで取り返して、自分のポケットに戻し、走り出す。
377
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:30:26 ID:598SG89w0
(*・∀・)「え、それ、くれるんじゃ」
そっと、離れる。
ζ(゚ー゚*ζ「あげない」
走る。
(*・∀・)「でも」
ζ(゚ー゚*ζ「だめ」
走る。走る。
(*・∀・)「先輩、ちょっと待って」
ζ(゚ー゚*ζ「待たない」
走る。走る。走る。
ζ(゚ー゚*ζ「キミがやってよ」
追いつかれないように、走る。
ζ(゚ー゚*ζ「安心させるのも、追いつくのも、プレゼントくれるのも」
追いつかれたいと思って、走る。
「全部、キミがやるんだからね!」
追いかけてくる音が近づいてくるのが嬉しくて、それでも必死に走った。
でも、先輩にも意地があるので。
今日のところは、逃げ切りたいと思う。
二年後には、もう、逃げられないだろうから。
完.
378
:
名無しさん
:2024/07/21(日) 18:45:53 ID:hC0.Ldeo0
乙だ
379
:
名無しさん
:2024/07/22(月) 23:35:34 ID:r9DqISMY0
完結乙
自分の考え方を変えるのも、約束するのも結果的に相手を縛るのも、迷うし怖いよな
前向きな回答にたどり着けてほんとに良かった
素敵な作品をありがとう
行数に特に違和感は感じなかったです
1レスのボリュームが無意味に変動しまくってると気をとられるかもしれない
投下のしやすさで決めていいと思います
380
:
名無しさん
:2024/07/27(土) 00:34:32 ID:icKv7jL60
完結乙です!最後まで面白かった!
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