したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

『スウィート・メモリーズ』ロールスレッド

6352/4『あなたの声』 ◆4J0Z/LKX/o:2023/02/15(水) 20:14:10 ID:???
>>634
「──────ドーモ、C.T.S.S.クローントルーパーα-03です」

現れた兵士達の足並みは完璧に揃い、その統率力の高さが窺える。先頭に立つ指揮官(コマンダー)が拳を振り上げると、兵士達は一斉に銃を構えて止まった。
一見して脆弱に見える少女型の素体には、これまでの戦闘データが蓄積され、高度に統合されている。
カノッサ・テクノロジー・セキュリティ・サービス。クローン技術によって半無尽蔵の兵力を有するカノッサ機関の尖兵である。

「……奴はただのクローンじゃない、厄介だぞ」

「あっ……待って!」

ゼロスリーと名乗った兵士を見てエルミスは眼を細める、その名乗りには聞き覚えがあった。
かつて只のクローン・インファントリーとC.T.S.S.を一蹴したエルミスに、その有能さを見せ付けた個体だ。
武装を無くし我先にと逃げ出したアキレスに抱かれたまま茫然自失としていた彼女は、ふと我に帰ると静止を求める。だが既にデモンレッグは宙を舞う。
木々を飛び移って森の上空に飛び出したアキレスを迎えるのは、ガンシップのプラズマエンジンの羽音……先程帰投した筈のSCRAMBLER/HORNETである。

「なんで、さっき戻ったはずなのに……!!」

「私の進言です、越境者はこのコントラクトを次々に断っていった……まるで示し合わせたかのように」
「故に、邪魔が入ることを予測するのは……当然の事」

(セフィロトを……魔力が…………間に合わない……!)

戸惑うハイプリエステスに平然と言い放つα-03。正確には、2機目のガンシップを投入したのだ。燃料満タン、銃火器の弾も有り余った状態の雀蜂を。
そして旧世代のスクランブラーにはその名の通り異能を阻害する装置が搭載されている。近付けば近付くほどにアキレスの力は弱まってゆくだろう。
二基の機銃が空中のハイプリエステスとアキレスを捉える。回転し始める銃身を見て背筋に悪寒が走る女教皇。
傷が深く、今からでは攻撃魔法は間に合わない。どうしようもない。心の中でアキレスに謝りながら両目を瞑ったその時である。

「呼ばれて飛び出て…………え、呼んでまセンでシタ?」
「ともかく、アービターズでとびっきりの美少女戦士、キューティーAllieのご登場デス」

雀蜂の背中に何かが降り立ち、その巨体が傾く。まるで鐘を鳴らすかのような金属音が重く響く。
凹んだ装甲の上、立ち上がったのは未来に残った筈の人型兵器……SCRAMBLER/TACTICであった。
それは越境者の知っている個体である。トンチキな言動、桁違いの出力……A-07 Allie(アリー)である。

「フム……旧式SCRAMBLER……やっぱり図体はデカいデスね」
「しかし我々S/Tと何方が優れているか……ほぼ全ての戦力が我々に置き換えらレタ事実を見れば明らか……デス!!」

唖然とした表情のハイプリエステスであったが、すぐにアキレスを抱き抱えて近くの木に降り立つだろう。
アキレスと共に地面へと滑り降り、クローントルーパーに囲まれたミスカとエルミスの居る戦列へと戻る。
ここで自分だけが逃げても二人が無事で済むとは限らない。とりあえずこの状況を脱するまでは……心折れてなど居られないだろう。

「こんなモンですかね……んじゃ、またいつか会いまショウ?」

一方でアリーは首の稼働部をポキポキと鳴らし、手刀を唸らせてその排熱口に手を突き刺せば、エンジンへと向けて直接ブラスターを幾度か発射した。
急所を抉られ煙を噴いて回転し、落ちていく雀蜂。まるでクジラの背に乗ってサーフィンでもするかのように悠然とその上に立つ支配機兵は。
背中から越境者達に投げキッスを放つと、そのまま雀蜂と共に崖の反対側へと墜落して爆炎の中に消える。

「命拾いしたね……アキレス、私の剣を使って」
「この子たちはここでカタを付けるしかないようだ…………クロ!!」

自らの持つ双剣の片割れをアキレスへと預け、ハイプリエステスは眷属であるシャドークローを召喚してクローン兵の方へと突っ込んでゆく。
そして残されたアキレスの背中に小さな張り手が叩きつけられる。振り向けば膨れっ面のミスカ。
アキレスの落とした武器を拾ってきてくれたようで、それを押し付けると前線へと走り出そうとし。

「……さっきの事、じっくり説明して貰いたい所だけど」
「私相手っていうのもあるから、今回は見逃してあげるね?」

「色男は辛いな……せいぜい殺されないようにしろよ」

もう一度振り返ってアキレスをジト目で睨みつけると、魔法で草木を操りながら戦場へと戻っていった。
最後にエルミスに追い越し際に軽く茶化されると、今度こそ彼は一人戦場の端に残されることになるだろう。
一人っきり。あの時と同じ……しかし今は取りこぼした命が、未来が、手の届く所に……目の前にある。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板