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『スウィート・メモリーズ』ロールスレッド

297ソーマタージ ◆P2bEA4mHeU:2019/05/15(水) 22:10:01 ID:???
>>294
〈ソーマタージ記 世界線Z84 スクラントン式空間座標…測定不能〉
〈神はいる。否、神に近しい高次元存在は確かにいる。あの黄金の立方体の中に〉
〈これが悲劇ならよく出来たものだろう。美しき女教皇は蒙昧なかつての同胞に討たれ、醜い浪人は彼女の忘れ形見の前にいけしゃあしゃあと現れる〉
〈描いた図通りだろうか?佳い感じだろうか? これが運命だと言うのなら、影法師に過ぎぬとしてもこのソーマタージは台無しにしてやる〉
〈そうだ。傲岸不遜な殺人鬼、殺しの安牌、醒めた夢の業人だとしても、迅る気持ちが仕組まれた“役割”だとしても、このソーマタージは動いてやる〉
〈一流の悲劇など糞食らえだ。オレは三流でも喜劇を選ぶ。あいつらの未来を創る。そうすれば、他の誰かが笑えるだろう〉


「お待たー?」
懐に冷凍保存用の処置を済ませた何かをしまい、ソーマタージは現れる。
その腰に提げたのは、工作用のカッターの刃に似た形状の高周波ブレード。大振りの電磁ナイフ。丸きり同じ物ではないが、性能はさして変わらない。
脇の下のホルスターに収めた大口径の自動拳銃と、予備弾倉二個。一度服の上からなぞると、ポッドを見上げた。これが今回入るものか。

「帰るぜよ、あん時代へ……ちょっとキツくない?アメリカ人のくせに?」
ジョシュアの想像通りの事を言う口が塞がる。わざとらしく窮屈そうにウェーと呻くと、着心地を確かめ、カプセルの内側を指でなぞった。
ナノマシンの治癒能力も、この中では役に立つまい。幸い今日眠りに着くまでの一週間の間、殆ど治っているが。

流石に冷凍睡眠の経験は無い。泥のように横たわっているだけの眠りなら何度かあるが。
眉をひそめて『より良い未来のために』なんておどけていると、ジョシュアが呼びつけてきた。円陣を組むらしい。
「俺らは運動部の高校生か?やれやれ……」
対照的に皮肉を漏らしながらも、言われた通りに手を繋ぐ。取れなかった彼女のものを思い出そうとするかのように。
「食ったりするなよ?俺も気をつけるから」

「───ヤツのあの手が果てしない大海原を血の色に染めて、緑を真っ赤に変えなきゃいいが」
アキレスの事を一度思う。愛する者を喪った痛みは、万分の一だとしても理解しているつもりだ。信じてはいるが、念の為。
心残りの一つを呟くと、カプセルへと向かうだろう。ただ一人になれる時、男はやっと噴き出る事が出来る。
「仇の一人はここだってな……」


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