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【俺能世界】俺が能力授けるからこの世界で戦え【新世界】Part46

52【マニュピレイズ】:2020/07/19(日) 18:21:44 ID:x.fbq37w
>>51
衝突、拮抗、静止。猛烈に突き立てられた破壊と殺意の邂逅は、鋼と鋼が奏でた狂想曲となりて仄暗な裏路地に残滓を染み渡らせる。

「えへ………私ってぇ頭がイイんですよぉっ………?誰よりも優秀で………賢くて……ホラぁ、この子を作ったのだってまだ13の時だったんですよ…………」

玉響の間隙を、女の鈴の音めいた声が甘く静かな言の数々が浚う、それは遍くを満たした反響音が夜風に潰える迄のほんの刹那。軋んだ機械腕を愛おしげに視線が伝う。

「その私の脳が腐って………?あはは………巫山戯た口が聞けたもんですねぇっ?棒振りだけが能の愚昧、蒙昧のクセにぃっ………!
アナタみたいなヒトをなんて言うか…………知っていますかあっ?………グズ!そうグズ!そうやって達観したみたいにカッコつけて………上から見下ろすのをやめろってんですよぉっ!」

例えどれほど口汚い悪態で己の尊厳が傷付けられようとも構わない。それらはどうせ、遥か眼下に犇めく愚者共の囀りでしか無いのだから。
だが如何に些細な切欠であったとしても、彼女にとって許せぬ事がたった一つだけある。

「(巫山戯んなってんです!コイツも私をバカにしてぇっ…………ぐぅ………い、痛め付けてやる………認めさせてやる………自分の間違いをぉ………アイツみたいにぃっ!)」

何よりも、何よりも下に見られるのが嫌いだった。頭が良くて、勉強が出来た、でも他の事は何をやってもてんでダメで、故に何時しか自らの得意とする事で一番を取り続ける事でしか自分の存在意義を見つけられなくなっていた。
ああそうだとも、これは唯の意地で、二十の小娘らしい下らぬ癇癪でしかない。あてどない苛立ちの行方定めたように、手放したワインボトルが音を立てて砕け散る。

醜く地べたを這い蹲って血と肉の痕跡と成り果てたこと男と同じように、只々間違いを認めさせると決意を新たに彼女を断罪せんと嘶いた剣を打ち弾かんと司令を下した瞬間に、その変化は唐突に姿を見せた。

「ぅあ………くうぅううっ………!」

底知れぬ憤怒に目を見開いて、憎き敵を睥睨した彼女には突如として瞳を閉じた男の行いを、その心底に沈んだ策など感付ける訳もなく。
煌々と真夜中を照らした恒星はいとも易く酒で歪んだ視界を白く焼き払う。

脳を伝達する電気信号にて零から百を取り決め動作するこの六本の腕は、ただ念じるだけで一ミクロン程の誤差も無く正しく精密に、それでいて信じられぬ程の速さで動作する。
けれどもそれは、思考と密接に繋がって居るからこそ可能となった芸当で、指揮系統たる彼女自身の脳が動きを止めれば、当然その傀儡(かいらい)たる触腕とてその影響を色濃く反映する。
動物が炎を恐れるように、熱く煮えた湯を湛えたヤカンを触れれば手を引くように、DNAの奥底に刻まれた本能が、一瞬の混濁を見せて固まった。

それはたったコンマ五秒程の隙ではあったがしかし、百戦錬磨たる男にはきっとあくびが出るほど長いものであっただろう。
風穴の空いた思考の傍ら、優秀過ぎる頭脳は脊髄反射にも匹敵する速度で即座に対応、情報を処理し、刺突を断行したが良くて捉えたのは横に回り込んだ彼の服の切れ端程度。
命の取り合いどころか喧嘩ですら片手で数えられる程度しかした事の無い彼女と彼に横たわる絶対的な経験値の差は計り知れない程に大き過ぎた。

「こ、このぉっ……!」

微かに耳朶を叩いた音の波長だけを頼りに向き直る、顔を覆った指の間から見えた紅色は、既に光を見失ってただ地面を射抜くだけ。
姿勢制御の二本を除いた二対のそれらはただ男が居ると思われる空間を引っ掻き回す。消え去った白を塗り替えた月光を受けて4本の硬質ブレードが燦然と瞬く。

鉄壁に思われた守りの向こう、柔らかく無防備な彼女の肢体が綻び出でた。


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