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【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:23:54 ID:w/7Zs4bc
………………海での一件から数日後 予備校

成幸 「なんです、藪から棒に」

小美浪先輩 「いや、メールでも謝ったけど、これだよ。ほれ」

成幸 (紙袋? 中身は……)

成幸 「あっ……ああ。これ、海で貸したシャツですね」

小美浪先輩 「いや、ほんと悪かったな。返すの忘れて先に帰って」

小美浪先輩 「メールでは大丈夫だったって言ってたけど、本当に大丈夫だったのか?」

成幸 「えっ、あー……」

成幸 (……帰りに乗せてもらった桐須先生の車の運転は、正直全然大丈夫ではなかったけど、)

小美浪先輩 「? 後輩?」

成幸 (それをこの愉快的な先輩に話したら、また桐須先生をからかうネタにしかねないし)

成幸 (わざわざ言うことではないな。よし)

小美浪先輩 「おーい、こうはーい。どうしたー?」

成幸 「……すみません。大丈夫でしたよ。海の家ですぐに新しいシャツを買えましたし」

小美浪先輩 「そ、そうか……」 ホッ

951以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:03:05 ID:UudYFwz2
………………射的

真冬 「………………」

真冬 (今日も学園長から祭りの巡回を仰せつかってしまったけれど)

真冬 (前回の失敗は、お面で変に顔を隠して悪目立ちしたのがいけなかったんだわ)

真冬 (そもそも、これだけ人がいるお祭り会場で、生徒と出くわすとは思えないわ)

真冬 (変に目立たなければ、誰とも出くわさずお祭りを楽しめ――じゃなくて、巡回できるわね)

真冬 (だから今回は普通に。顔を隠さずに。射的を楽しみま――巡回しましょう)

パシュッ……パシュパシュッ……

「うおー! すごいぞ、あの美人!」  「百発百中どころじゃないぞ!」

「まさか、あの伝説の射的荒らしが素顔を見せているだと!?」

「俺も撃たれたい!」  「踏まれたい!」 

真冬 「……?」 (なぜかしら。以前よりギャラリーが多い気が……――)

「――まふゆセンセ、何やってんです?」

真冬 「!? こ、小美浪さん!?」

952以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:03:53 ID:UudYFwz2
あすみ 「高そうな浴衣着て、射的にはしゃいじゃって……。お祭り楽しんでますね」 ニヤニヤ

真冬 「ご、誤解! 私はただ、生徒が羽目を外しすぎないか巡回しているだけで……!」

真冬 (僥倖。見つかったのが元生徒である小美浪さんで、まだ良かったと考えるべきね……)

成幸 「あれ? 桐須先生……」 ジトッ 「……また景品もらいまくってるんですか」

真冬 (何で毎度毎度私の前に現れるのあなたは!?)

和樹&葉月 「「………………」」 ジーーーーッ

真冬 「……? この子たちは?」

成幸 「ああ、俺の弟妹です。今日はお祭りに一緒に来たんです、けど……」

和樹&葉月 「「………………」」 ジーーーッ

成幸 「こ、こら! 人の物を物欲しそうに見るんじゃない」

真冬 「………………」

スッ

真冬 「……口止め料。どれでも好きな物を持って行きなさい」

成幸 「えっ!? いいんですか?」

真冬 「小さな子どもの純粋な目には勝てないわ」

953以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:04:30 ID:UudYFwz2
成幸 「ありがとうございます、桐須先生。ほら、お前たちも」

葉月 「ありがとー!」  和樹 「美人の姉ちゃん!」

真冬 「………………」 テレテレ 「……悪い気はしないわね」

あすみ 「マジすか。悪いなぁ。じゃあアタシもひとつ……」

真冬 「あなたにあげるとは一言も言っていないのだけれど?」

あすみ 「ちぇーっ、まふゆセンセのケチんぼー」

真冬 「……聞き捨てならないわね。小美浪さん」

真冬 「というか、今日は救護テントは手伝わなくていいのかしら?」

あすみ 「まぁ、今日は親父からお祭りを回れって指令が出てるもんで」

真冬 「? それでどうして唯我くんと一緒に……?」

あすみ 「ああ、まぁアタシと後輩付き合ってますし」

真冬 「そう」

ハッ

真冬 「……えっ?」

あすみ 「? どうかしました、センセ?」

954以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:05:14 ID:UudYFwz2
真冬 「付き合ってるって……あなたと唯我くんが!?」

真冬 「そ、そうだったの……」

真冬 (……まずいわ。もし唯我くんが私の家に来てしょっちゅう掃除をしていることがバレたりしたら……)


―――― あすみ 『へぇー。まふゆセンセ、人の彼氏をそういう風に使うのが趣味なんですねー』

―――― あすみ 『しかも自分の生徒。教師が聞いて呆れますね』


真冬 (教師としての威厳が地に落ちるどころの話じゃないわ!? ヘタしたら訴訟物よ!)

アセアセアセ

あすみ 「……?」 (あれ……? 冗談だって言おうと思ったのに……この人なんでこんなに焦ってるんだ?)

あすみ 「あ、あの、先生? 冗談ですからね?」

真冬 「えっ……?」

ホッ

真冬 「そ、そうなの。良かったわ……」

あすみ (何が良かったんだろう……? 聞くのも怖いしこのまま聞かなかったことにしよう……)

955以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:05:50 ID:UudYFwz2
葉月 「わたしこれにするー!」 和樹 「おれ、これ!」

成幸 「うん。じゃあ、改めて桐須先生にお礼を言おうな」

和樹&葉月 「「ありがとう、きりす先生!」」

真冬 「どういたしまして」

真冬 「……じゃあ、唯我くん、小美浪さん。遊ぶのもいいけど、門限までには家に帰ること。いいわね?」

真冬 「特に小美浪さんは年上なのだから、唯我くんの見本となるような行動を心がけなくてはいけないわよ」

あすみ 「はーい」

真冬 「では、私は巡回に戻るわ。さようなら、唯我くん、小美浪さん。それから、唯我くんの弟妹さんたち」

和樹&葉月 「「ばいばーい!!」」

あすみ (……うーん、まふゆセンセのさっきの動揺は一体なんだったんだろう)

あすみ (アタシと後輩が付き合ってるのがそんなに焦るようなことなのか?)

あすみ (……まさか、まふゆセンセ、後輩に気があったり……) チラッ

葉月 「すごく美人の先生ね、兄ちゃん」

成幸 「ん? ああ、まぁ、そうだな……」

成幸 (中身は色々残念だけどな……)

956以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:06:50 ID:UudYFwz2
和樹 「浴衣も似合ってたなー」

成幸 「そうだな。あの人は基本的に何でも似合うよ。綺麗な人だからな」

成幸 (ジャージもスーツも……スクール水着もメイド服も制服もチャイナドレスも修道服もフルピュアも……)

あすみ 「………………」

成幸 「? どうかしました、先輩?」

あすみ 「……何でもねーよ」

成幸 「?」

あすみ 「………………」 (……あんだよ。“あの人は何でも似合う” ねぇ)

あすみ (……ふーん。そうかい)

あすみ (……べつに、アタシには関係ないか)

あすみ (そもそも、後輩はアタシと親父に巻き込まれているだけなんだから)

あすみ (……アタシみたいなちんちくりんじゃなくて、きっと……)

あすみ (まふゆセンセみたいな、スタイルの良いおとなっぽい人が、好みなんだろうな)

あすみ (……けっ)

957以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:07:25 ID:UudYFwz2
………………帰路

和樹&葉月 「「………………」」 zzz……

成幸 「……散々はしゃぎ回って、遊んで食べて、とうとう寝たか」

あすみ 「まぁ、楽しそうだったからな。疲れたんだろ」

成幸 「すみません、先輩。葉月をおぶってもらっちゃって……」

成幸 「しかも、うちまで来てもらうことになってしまって……」

あすみ 「気にすんなよ。お前ひとりじゃふたりも連れて帰るの大変だろ」

成幸 「ありがとうございます」

成幸 「……あ、あと、今日、葉月と和樹に色々買ってくれましたよね」

成幸 「お金、返すんで、いくらだったか言ってください」

あすみ 「うん? どうしてお前が金を出すことになるんだ?」

あすみ 「アタシは自分で買ったものを、ちょっと葉月と和樹に分けてやっただけだぜ?」

あすみ 「ヨーヨー釣りだって、くじ引きだって、アタシがやりたかったからやって、景品を葉月と和樹にあげただけだ」

あすみ 「お前が金を払う道理はねーよ」

成幸 「先輩……」

958以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:08:02 ID:UudYFwz2
成幸 「……すみません。今日は葉月たちの世話をしてくれるだけでありがたかったのに、」

成幸 「お金まで出させてしまって……」

あすみ 「だーかーらー、アタシはべつに金を出したつもりはねえよ」

あすみ 「……そもそも、アタシはお前の先輩だからな」

あすみ 「後輩に奢ってやるくらい、当然だろ?」

成幸 「……わかりました。ありがとうございます」

成幸 「お礼に、明日からも気合い入れて勉強教えますからね!」

あすみ 「頼もしい限りだな。頼りにしてるぞ、後輩」

成幸 「はい!」

あすみ 「………………」 (……こいつは本当に良い奴だ)

あすみ (いつまでも、こんな風にアタシの事情に巻き込んでおくわけにはいかない)

あすみ (いつまでもこいつに甘え続けるのは、アタシの矜持が許さないし、何より、こいつに申し訳ない)

あすみ (なんとしても、今年中に国立医学部に入学して、親父に本当のことを話す……)

あすみ (……そして、後輩を開放してあげよう)

あすみ (もし受験に失敗しても、とにかく、親父にウソを謝ろう。そして、後輩を自由に……)

959以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:08:36 ID:UudYFwz2
成幸 「……あ、先輩、そういえば」

あすみ 「ん? なんだー?」


成幸 「浴衣、似合ってますね」


あすみ 「………………」

あすみ 「……へ?」

成幸 「本当は会ってすぐ言いたかったんですけど、葉月と和樹がいて恥ずかしくて……」

成幸 「前の縞模様だけの浴衣もシンプルでカッコ良かったですけど、」

成幸 「今日の花柄の入った浴衣、先輩によく似合っててきれいです」

あすみ 「………………」 プイッ 「……お、おう、そうか」

成幸 「……? 先輩?」

あすみ (ま、まじか、こいつ……)

あすみ (超越的なくらい鈍いくせに、何で、こんな……)

あすみ (……的確に、ほしい言葉をくれるんだ。バカ)

960以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:09:23 ID:UudYFwz2
あすみ (今回の浴衣だけじゃなくて、夏祭りのときの浴衣まで……)

あすみ 「………………」

成幸 「あの、先輩?」

あすみ (……やめろよ。そんな優しい言葉をかけるなよ)

あすみ (せっかく、来年の春で開放してやろうと思ってたのに……)

あすみ (……お前を、手放したくなくなるじゃねーか。バカ)

あすみ (バカ……)

あすみ 「……ありがとう。嬉しい」

成幸 「大丈夫ですか? 顔赤いですけど……」

あすみ 「大丈夫だよ。気にすんな」

あすみ 「……なぁ、後輩」

成幸 「はい?」

あすみ 「……来年の夏祭りは、ふたりで回りたいな」

成幸 「へ……?」

961以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:12:22 ID:UudYFwz2
成幸 「……ま、またからかうようなこと言って」

あすみ 「………………」 ジッ 「……ダメか?」

成幸 「えっ? いや、そんな……ダメとかでは、ないですけど」

あすみ 「……そうか。よかった」

ニコッ

あすみ 「じゃあ、約束な。来年の夏祭りは、ふたりきりで回ろう」

成幸 「は、はい……」 ドキッ

成幸 (なんだよ……。不意打ちすぎだろ)

成幸 (……先輩、笑うとめっちゃかわいいんだから)

成幸 (急に無防備な笑顔を見せないでほしいよ……) ドキドキ……

あすみ 「………………」

あすみ (親父にウソを話して、その上で。お前は……アタシの隣にいてくれるかな)

あすみ (……願わくは、来年の夏は、“ニセモノ” じゃなく、本物として)

あすみ (お前の隣にいられたら、いいな)

おわり

962以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:12:56 ID:UudYFwz2
………………幕間1 「鈍い彼がなぜ浴衣を褒めることができたのか」

成幸 「!?」 (先輩、今日の浴衣も綺麗だな……)

成幸 (前回のシンプルなデザインの浴衣も良かったけど、今回の浴衣……)

成幸 (これは絶対上等な生地だ。あの浴衣、安物じゃないぞ……)

成幸 (うーむ。織り方も秀逸だ。染めも一級品だな、これは……)

成幸 (……いつか、絶対!!)

成幸 (安物の生地でも、これに負けないような浴衣を水希に作ってあげるぞ……!!)


おわり

963以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:13:28 ID:UudYFwz2
………………幕間2 「かわいそう」

紗和子 「ほらほら、緒方理珠! 何から食べる!? 私はとりあえずたこ焼きが食べたいわ!」

理珠 「ちょっと待ってください、関城さん。あんまりはしゃぐとはぐれますよ」

うるか 「さわちんご機嫌だねぇ」

文乃 (……よっぽど夏祭りに誘われなかったのが悲しかったんだろうな)

紗和子 「友達とお祭りに来るのってこんなに楽しいのね! 初めて知ったわ!」

文乃 (……発言のひとつひとつが笑えないよ)

文乃 (今日は紗和子ちゃんに優しくしてあげよう……)


おわり

964以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 01:16:15 ID:UudYFwz2
>>1です。
いつも読んでくださる方、感想くださる方、ありがとうございます。
個別レスしませんが、いつも感謝しています。ありがとうございます。

毎度思いますが、あすみさんはこんなにチョロくないです。
というか、原作で心情描写が圧倒的に少ないので、なかなかどうして彼女の本心は把握しづらいです。
そのあたりがあすみさんの魅力だと思うのですが、わたしは単純なのでどうしてもチョロくしてしまいます。
申し訳ないことです。


そろそろスレも終わりに近づいてきて、次くらいでラストかなと思います。
また思い立ったらスレを立てるつもりですが、どうするかは全く決めていません。

また折を見て投下します。

965以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 08:22:47 ID:6nm/36q6
おつんこ

966以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 13:59:17 ID:bN7g4.MM
今週のジャンプこれ文系のターン来たろ

967以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 12:25:47 ID:hTglVXm2
妹ブチ切れ不可避

968以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:48:02 ID:GqEZX2ZI
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】真冬 「トリックオアトリート」

969以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:49:21 ID:GqEZX2ZI
………………一ノ瀬学園 職員室

ワイワイガヤガヤ……

真冬 「……?」

真冬 (何かしら? 今日はやけに職員室が騒がしいわね……)

真冬 (職員会議で大事な議題でも上がっていたかしら?)

佐藤先生 「あ、桐須先生。先生は明日どうされますか?」

真冬 「? 明日は平常授業だったと思いますが、何かありましたか?」

鈴木先生 「やだなぁ、桐須先生。明日はハロウィンですよ」

鈴木先生 「職員会議で学園長がおっしゃっていたじゃないですか。教職員もお菓子を用意を推奨するって」

佐藤先生 「生徒に合い言葉を言われたらお菓子を渡さなきゃ、イタズラされちゃいますよ」

真冬 「ああ……」

真冬 (……そういえば、先日の職員会議で学園長が楽しそうにそんなことを言っていた気がするわ)

真冬 (バカらしいと思って話半分に聞いていたけど、まさか本気だったとは……)

真冬 (……というか、それを本気にする教職員がこんなにいるというのも驚きね)

970以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:49:57 ID:GqEZX2ZI
佐藤先生 「だから、鈴木先生とどんなお菓子を用意するか相談していたんですけど、」

鈴木先生 「もしよかったら、桐須先生も一緒に用意しませんか?」

鈴木先生 「この後買い出しに行く予定なんです」

佐藤先生 「そ、その後で、一緒に食事でもどうかな、なんて……」

真冬 「……せっかくですが、結構です。私はお菓子を用意するつもりはありませんから」

真冬 「では、社会科準備室で仕事がありますので、失礼します」

スタスタスタ……

佐藤先生 「……あー、また振られたかー」

鈴木先生 「今のところ全敗ですね。今日もふたりで寂しく飲みましょうか」

971以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:50:27 ID:GqEZX2ZI
………………帰路

真冬 (まったく。職務怠慢……とまでは言わないけれど、職務専念義務違反だわ)

真冬 (学園長も学園長ね。一体何をお考えなのか……)

真冬 「………………」

真冬 (明日は、例年通り、生徒も友達同士、お菓子を交換したりするのでしょうね)

真冬 (そして今年はきっと、顔見知りの先生に、元気よく “Trick Or Treat” と言うのでしょう)

真冬 「………………」

真冬 (……イタズラをされてしまっては敵わないし)

真冬 (学園長命令だから、生徒を叱ることもできないでしょうし)

真冬 (自衛。生徒から身を守るために、お菓子を用意するのも致し方ないことかしら)

真冬 (そう。これはあくまで自衛。自衛のためのこと)

真冬 (……私はべつに、お菓子を用意したいわけではないわ)

972以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:51:01 ID:GqEZX2ZI
………………スーパー

真冬 (さて、結局スーパーに来てしまったけれど、何のお菓子を買おうかしら……)

真冬 (生徒たちが好きなお菓子なんて分からないし……)

真冬 (……まぁ、私もまだ20代前半ではあるわけだから、そう生徒と好みも変わらないでしょう)

真冬 (私の好きなお菓子を適当に買えばいいわね)

真冬 (まず外せないのはこのパイよね。サクサクした食感とザラメの甘みがたまらないわ)

真冬 (ああ、このチョコも外せないわね。中のパフが甘みを引き立てるのよ)

真冬 (甘い物が苦手な生徒もいるかもしれないわね。ぽんち揚げも買っておきましょう)

真冬 (和菓子が好きな子もいるかもしれないわね。どら焼きとおまんじゅうの詰め合わせと……)

真冬 (あと、これとこれと……これも買おうかしら)

ポイポイポイポイ……

973以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:51:52 ID:GqEZX2ZI
………………会計後

ズシッ……

真冬 (と、とんでもない量になってしまったわ……)

真冬 (これは持って帰るのも一苦労ね……)

真冬 (ふふ。でも、これで明日のハロウィンは完ぺきだわ)

真冬 (……生徒たち、喜んでくれるかしら) クスッ

ハッ

真冬 (べ、べつに、生徒のためにお菓子を買い込んだわけではないわ)

真冬 (自衛のため。あくまで自分の身を守るためよ)

974以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:52:29 ID:GqEZX2ZI
………………

あすみ 「はぁ? ハロウィンに教員がお菓子をくれるだぁ?」

成幸 「そうなんですよ。だから、明日は先生方もお菓子をたくさん用意するみたいです」

あすみ (あの学校、生徒には良い環境かもしれないけど、教員にとっちゃブラック企業だな)

あすみ 「……ってことは、あの “氷の女王” まふゆセンセもお菓子を用意するってことか?」

成幸 「どうですかね。桐須先生がそういうのを用意するって、想像つきませんけど……」

あすみ 「……ん? なぁ後輩。あれ、そのまふゆセンセじゃねーか?」

成幸 「えっ……? あっ、本当だ」

あすみ (あの両手に提げてる買い物袋から見え隠れするシルエットは……)

ニヤリ

あすみ 「おい後輩、ちょっとあいさつしてこーぜ」

成幸 「えっ? あ、ち、ちょっと先輩!?」

あすみ 「まふゆセーンセ、こんにちは」

真冬 「えっ……!?」

975以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:53:21 ID:GqEZX2ZI
真冬 (小美浪さん!? 唯我くんも!?)

真冬 「こ、こんにちは。小美浪さん、唯我くん」

あすみ 「先生、聞きましたよ。明日の学校、教職員もお菓子を用意するんですって?」

真冬 「え、ええ。そうらしいわね。私には関係のないことだけれど」

あすみ 「えーっ、先生用意しないんですかー? お菓子」

真冬 「するわけないでしょう。この私が、そんな浮わついたこと……」

あすみ 「じゃあ、その両手に提げた買い物袋の中身はなんですか?」

真冬 「……こっ、これは、ただの……私が食べるためのお菓子です!」

真冬 「生徒にあげるためとか、そんなことのために身銭を切るはずがないでしょう」

成幸 (あ、先生、ハロウィンのためにお菓子買ってくれたんだ……)

成幸 (まぁ、変に律儀な人だしなぁ……)

成幸 (っていうか、どうせ明日バレるうそをなぜつくのだろうか……)

真冬 「で、では、私は家で仕事があるから失礼するわ! ふたりとも早く帰るのよ!」

あすみ 「……おやおや、焦って行っちゃったよ。あの人、ほんとおもしろいよなー」

成幸 「あんまりからかわないであげてくださいよ。まじめな人なんだから……」

976以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:54:00 ID:GqEZX2ZI
あすみ (……にしても、あのまふゆセンセがハロウィンにお菓子を用意、ねぇ)

あすみ (教職員でそうすると決まったからって、そんなことするとは思えないけど……)

あすみ (あの人も変わったんだな。間違いなく、こいつのせいで) ジロッ

成幸 「? なんですか、人の顔をじろじろ見て……」

あすみ 「なんでもねーよ。ところで後輩は? 友達と交換するお菓子とか用意しないのか?」

成幸 「……残念ながらそんなお金はないです」

ガクッ

成幸 「今年も友人たちが和気藹々とお菓子交換をしているのを眺めているだけの寂しいハロウィンです……」

あすみ 「ああ……」

ポン

あすみ 「ま、元気出せよ。この後ハイステージで甘いもん奢ってやるから」

成幸 「ほんとですか!?」 パァアアア……

あすみ (チョロいなこいつ……)

977以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:54:54 ID:GqEZX2ZI
………………翌日

真冬 「………………」

ドキドキドキドキ……

真冬 (結局、昨日買ったお菓子をすべて職場に持ち込んでしまったわ)

真冬 (おかげで机の中がパンパンだわ……)

真冬 (ふふ……。私がお菓子をあげたら、皆どんな顔をするのでしょうね……)

女子生徒1 「鈴木センセー、トリックオアトリート!」

鈴木先生 「お、ではイタズラをされては敵わんから、ほら、お菓子だぞー」

女子生徒2 「わー! 鈴木センセーだーいすきー!」

鈴木先生 「ふふ、女子生徒にモテて困るな……」

佐藤先生 「ほらー、こっちにもお菓子があるぞー」

女子生徒2 「あっ! これ私の好きな奴だー! 佐藤先生もっと好きー!」

鈴木先生 「何!?」

978以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:55:28 ID:GqEZX2ZI
真冬 (やっているわね……)

真冬 (準備は万端よ。いつでもいらっしゃい……) ジーーーーッ

女子生徒1 「……!?」 ビクッ (“氷の女王” がこっちを見てる……!)

女子生徒2 (お菓子なんかもらいに行ったらどれだけ怒られるか……)

女子生徒1 (っていうかすでに職員室で騒いじゃって怒られるかも!?)

女子生徒1&2 「「し、失礼しましたー!!」」

真冬 「あっ……」

シュン

真冬 (……行ってしまったわ)

真冬 (ま、まぁ、まだ午前中よ。時間はまだまだあるわ)

979以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:58:57 ID:GqEZX2ZI
………………昼休み 3-B

うるか 「………………」 ドキドキドキ……

うるか (今年は学校全体でハロウィンハロウィンしてるから、成幸にトリックオアトリートって言いやすい……)

うるか (成幸はお金がないからお菓子を持っていない!)

うるか (そして、お菓子がないならイタズラをするしかない! ゴーホー的に成幸の身体にイタズラをするチャンス!!)

ガラッ

うるか 「やーやー! 成幸ー! トリックオアトリート!」

成幸 「ん、うるかか。ほれ、クッキー」

うるか 「へ……? 成幸、お菓子持ってんの? っていうかこれ、手作り!?」

成幸 「ふふふ、去年、しょぼくれてた俺を見るに見かねた水希が、今年は朝からお菓子を作ってくれてな」

成幸 「水希の絶品クッキーだ。心して食えよ」

うるか 「う、うん。ありがと……」 モグモグモグ 「……めちゃくちゃ美味しい」

うるか (うあぁあああ!! こんなことなら去年イタズラしておくんだったー!!)

成幸 「えへへ、そうだろ。水希が俺のために作ってくれたんだ〜」 ニヘラ 「今年は俺もお菓子を配れるんだ」

うるか (でも成幸の嬉しそうな顔が見られただけでも良し!)

980以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 22:59:39 ID:GqEZX2ZI
………………放課後 職員室

真冬 「………………」

ズーン

真冬 (……結局、今日一日、誰も私のところに来なかったわ)

真冬 (よく考えたら当然よね。私は融通も利かないし、生徒に好かれるような性格でもない)

真冬 (……生徒が私にお菓子をもらいにくるなんて、ありえないわね)

真冬 (学園が浮かれているだのなんだの言って、結局一番浮かれていたのは私だったのね)

ワイワイガヤガヤ……

滝沢先生 「ほら、お前ら、お菓子」

海原 「わー、美味しそうな詰め合わせだー! ありがとうとざいます、滝沢先生!」

川瀬 「ふむふむ……ラインナップから年代が分かりますね」

滝沢先生 「ほう。川瀬はお菓子がいらんと見えるな」

川瀬 「冗談ですよー! いただきまーす!」

真冬 (未だに職員室の中は、お菓子をもらいにくる生徒であふれているというのに……)

真冬 (私だけひとりぼっちみたいだわ……)

981以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:00:20 ID:GqEZX2ZI
ガラッ

成幸 「失礼します。2年B組の唯我です。滝沢先生、提出物を持ってきました」

成幸 (うわっ……いつにないくらい職員室に生徒がいる。みんなお菓子もらいに来てるのか……)

滝沢先生 「お、来たか唯我。いつも提出物集めさせて、悪いな」

成幸 「いえいえ。それじゃ、俺はこれで……」

滝沢先生 「せっかくだし、お前も持ってけよ。ほら、お菓子」

成幸 「あっ……す、すみません。ありがとうございます」

成幸 (食べたい……けど、持って帰って葉月と和樹にも分けてあげないとな……)

成幸 「ん……?」

真冬 「………………」 ズーン

成幸 (あれ? なんか、桐須先生の周りだけ誰もいない……?)

成幸 (でも先生、昨日お菓子を山ほど買ってたよな……)

成幸 「………………」

成幸 (……もしかして)

982以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:00:54 ID:GqEZX2ZI
………………

真冬 (はぁ……。落ち込んでいても仕方ないわ。仕事に戻りましょう)

成幸 「あ、あの、桐須先生?」

真冬 「……? ああ、唯我くん」

真冬 「何か用かしら?」

成幸 「いや、その……」

成幸 「………………」



成幸 「……トリックオアトリート」



真冬 「へ……?」

真冬 「あっ……」

ガチャッ……ゴソゴソ…………

真冬 「あ、あげるわ。これ、私の好きなお菓子の詰め合わせよ……」

成幸 「あ……ありがとうございます!!」

983以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:01:42 ID:GqEZX2ZI
「“氷の女王” にお菓子をねだって……」

「もらえただと!?」

「……っていうか、私、文化祭以来、桐須先生のファンなんだよね」

「行くのためらってたけど、お菓子もらえるみたいだし……」

「お話をするチャンスになるかもだよね」

ゾロゾロゾロ……

桐須先生 「え? え? え?」 (な、なぜ、私は生徒に囲まれているの!?)

生徒 『トリックオアトリート!』

真冬 「あっ……ち、ちょっと待ってちょうだい! あげるから、ちょっと……」

真冬 (……唯我くん、ひょっとして)

真冬 (私を気遣って……?)

984以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:02:18 ID:GqEZX2ZI
………………

成幸 (あっという間に生徒に囲まれてしまった……)

成幸 (桐須先生って、厳しくて怖いけど、まっすぐな先生だから嫌われてはいないんだよな……)

真冬 「あ……ち、ちょっと待ってちょうだい! すぐ用意するから……!」

成幸 (不器用な人だから、手渡しにすら戸惑ってるよ……)

クスッ

成幸 (まぁ、でも、桐須先生も嬉しそうだから、いっか)

成幸 (……文化祭のときのように)

成幸 (桐須先生が、ただ怖いだけの人じゃないって、わかってもらえたら、いいな……)



おわり

985以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:03:18 ID:GqEZX2ZI
………………幕間1 「近親憎悪」

真冬 「……ふぅ。やっと生徒がはけたわ」

「あの、先生」

真冬 「? お、緒方さん?」

理珠 「成幸さんから聞きました。お菓子を配っていると……」

真冬 「え、ええ、そうだけど……」

理珠 「……先生が渡している詰め合わせの中に、私がとても好きなお菓子があります」

理珠 「だから、決して、その、先生に気を許しているわけではありませんが、」

理珠 「……トリックオア、トリート」

真冬 「………………」 クスッ 「……仕方ないわね。ほら、あげるわ」

理珠 「あっ……」 パァアアア…… 「ありがとうございます!」

真冬 「どういたしまして」

真冬 「……ただ、発音が悪いわ」 ジロリ 「“Trick Or Treat” よ。そんなことでは理系科目だけでなく英語も心配ね」 ゴゴゴゴゴ……!!!!

理珠 「ご心配には及びません」 ジロリ 「英語の発音は受験には関係ありませんから」 ゴゴゴゴゴ……!!!!

986以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:04:02 ID:GqEZX2ZI
………………幕間2 「やだ」

成幸 「ただいまー」

水希 「おかえり、お兄ちゃん。クッキーどうだった?」

成幸 「おー、みんな美味しいって食べてくれたぞ。小林と大森も大喜びだったよ」

水希 「えへへ。それなら早起きして作った甲斐があるよ」

成幸 「あと、うるかと緒方と古橋にもあげたけど、大喜びだったぞ。美味しいって」

水希 「………………」 ニコッ 「……へー」

成幸 「ハロウィンって楽しいんだな。来年は俺も手伝うから、また作ってくれよな」

水希 「やだ」

成幸 「へ……?」

水希 「やだ」

987以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:04:50 ID:GqEZX2ZI
………………幕間3 「おかしい」

文乃 「………………」

文乃 「……おかしい」

文乃 「先生方ほぼ全員からお菓子をもらって、」

文乃 「成幸くんから水希ちゃんお手製のクッキーをたくさんもらって、」

文乃 「りっちゃんからデザートうどんをもらって、」

文乃 「うるかちゃんから水泳選手常食の高カロリーブレッドをもらって、」

文乃 「みんなに配りきれなかったお菓子をもったいないから全部食べただけなのに」

文乃 「………………」

文乃 「なんでこんなに体重増えてるの!?」



おわり

988以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:08:58 ID:GqEZX2ZI
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。


今日がハロウィンだったと途中で気づき、慌てて書きました。
アラが目立つのはそういうわけです。申し訳ないことです。


1000までそうないので、感想等ありましたらかき込んでくれると嬉しいです。
どれが一番面白かったとか教えてくれるとすごく嬉しいですし参考になります。
質問やご意見もいただければ答えます。

次投下する際はこのスレを埋めて新しいスレを立てると思います。
そのとき投下するタイトルをそのまま新しいスレタイにします。
誤解を招くかもしれませんが、それは変えたくありません。ご容赦ください。

989以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:14:30 ID:GqEZX2ZI
>>1です。
SS本文でもないのに連投してしまってお目汚しすみません。
書き忘れたことがありました。

二ヶ月間ほどこのスレにお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました。
全部読んでくれたよ、なんていう方がいたらとても嬉しいです。

今まで色々な題材でSSを書きましたが、こんなに一気に大量に書けたのはこの作品が初めてです。
アニメが始まる頃に、ぼく勉SSが増えることを祈っています。

本当にありがとうございました。
次スレもまた立てると思います。よろしくお願いします。




あと、最後に全然関係ない上にどうでもいいことですが、あしゅみー先輩のお祭りのSSで
あしゅみー先輩が着ていた浴衣は五巻の表紙の浴衣をイメージしています。
一応わたしが勝手に花柄の浴衣を着せたわけではないことだけ釈明しておきます。

990以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 23:50:23 ID:FRZlX7HQ
>>989
最初から読ませて頂いてます!これからも無理のない範囲で頑張ってください!

991以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/01(木) 01:44:55 ID:iBjeY8c.
>>988
全部読ませていただきました、面白かったです!
本当に全てレベルが高く、どれが面白かったかと言われると迷うのですが、原作にあまり出てきてくれない水希ちゃんや小林くんが出てくる回が新鮮でよかったです!
次スレも応援してます!

992以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/01(木) 02:25:52 ID:6i/2LgB2
おつおつ 成幸が徹夜して本読む奴が一番好き
俺が文乃スキーなのは関係ないはず

水希ちゃんは単行本によく出てくるから気になる人は買おうぜ
このスレみたいな登場の仕方だけど

993以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/01(木) 09:13:15 ID:pc/Klrwc
おつおつ

994以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/01(木) 23:28:33 ID:/.3rN8ZM
あまりにも不器用すぎる先生かわいい

995以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/02(金) 01:04:17 ID:wyPjphZs
愛してるゲームとか、海の帰りとか原作補完の話がなんとも言えなくて好き
ただ先生が好きなだけかもしれないけど…
先輩や文系の話もすごく面白い

996以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/02(金) 12:15:25 ID:Ok0GwWRU
原作で読んだ話なのかここで読んだ話なのかこんがらがって来るレベルのクオリティよ
また書いてくれたら嬉しいな

997以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/02(金) 23:59:30 ID:5dBdiF62
おつおつ 面白かった

998以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 00:04:30 ID:U85.jAH2
全部読んだ。全部良かったけどやっぱり文乃関連が一番好き。

999以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 18:45:37 ID:iELA8746
最後の先生の話とか本当にありそう

1000以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 18:51:59 ID:trA5kroY
はい神スレ




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