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姫「私の家庭教師はスパルタ騎士」
-
<城>
姫「まあっ、私に家庭教師を?」
国王「うむ、お前にもそろそろ必要かと思ってな」
姫「ちなみに、どんな方が来るの?」
国王「騎士だ。それも騎士団で選りすぐりの人物で――」
姫「まぁ、嬉しいっ!」
国王「文武に長けており――」
姫(ああっ、姫と騎士……めくるめくロマンスの予感……)
国王「もしもし? 聞いてる? もしもーし」
"
"
-
姫(ああ……騎士ってどんな方なのかしら?)
姫(きっと、素敵な方にちがいないわ)
姫(お勉強を優しく教えて下さり、時には剣を振るってみせてくれたり)
姫(時には、ダンスのリードなんかもしてくれたりして!)
姫(さらには夜のリードまで……)
姫「きゃっ!」ポッ…
姫「私ったら、なんてはしたない女!」タタタッ
-
ドンッ!
姫「いたた……」
使用人「申し訳ありません、姫様っ!」
姫「もう、どこを見て歩いてるのよ! あなたには目がついてないの!?」
使用人「いえっ、不注意で……!」
姫「まったく、クビにされたくなきゃ、もっとしっかりしてちょうだい!」
姫「これから、私にはロマンスが始まるのだから……!」
使用人(ロマンス……?)
-
数日後――
騎士「はじめまして、姫様」
騎士「本日から家庭教師をさせて頂くことになりました。よろしくお願いします」
姫「こちらこそ」
騎士「ところで、さっそくで恐縮なのですが、敬語で教師はやりにくいのです」
騎士「なので、敬語を使わずに姫様と接したいのですが、かまいませんか?」
姫(まぁっ、この方ったら、いきなり私の夫気取り?)
姫(もう、せっかちなんだから……だけど、これこそロマンスよね!)
姫「もちろん、よろしいですわよ」
-
騎士「じゃあ、さっそく勉強を始めるぞ。机に向かえ。一時間みっちりやるぞ」
姫「は?」
姫「あの、ロマンスは……?」
騎士「ロマンス? 貴様はなにをいっている」
騎士「さぁ、机に向かえ!」ビシッ
姫「は、はいっ!」
"
"
-
姫「…………」カリカリ
姫「あの、紅茶でも飲みませんこと?」
騎士「私語をするな」
姫「…………」カリカリ
姫「あの、この問題が分からないのだけれど」
騎士「これは、さっき教えた公式を使えばいい」
姫「…………」カリカリ
姫「あの、もうそろそろ一時間経ったのでは?」
騎士「まだ30分も経っていない」
姫「…………」カリカリ
-
姫「…………」ポイッ
姫「もう! こんなのイヤ! なんで私が勉強しなくちゃならないの!?」
姫「せめて、もっと優しく丁寧に――」
騎士「…………」グリッ
姫「ぎょえぇぇぇぇぇっ!」ビビビッ
姫「な、なにをなさるの!?」
騎士「ツボを突いただけだ」
-
姫「突いただけって……ものすごい激痛でしたわよ! 私を殺す気!?」
騎士「心配いらん。あのツボは肉体的ダメージは与えず、純粋に痛みだけを与えるツボだ」
姫「だからって――」
騎士「さぁ、もう一度突かれたくなくば、勉強に戻れ」
姫「ううっ……」
-
……
……
……
騎士「よし、今日のところはこれまで」
騎士「明日からは勉強時間を増やすし、勉強以外のことも教えていく」
騎士「ビシビシいくから、覚悟しておくように」
姫「は、はい……」
-
次の日――
シェフ「どうぞお召し上がり下さい、姫様、騎士殿」
姫「それでは、お食事にしましょう」
騎士「ああ」
姫「では……」
姫「!?」ギョッ
騎士「どうした?」
姫「――シェフ、なんなのこれは!?」
-
姫「私がこの貝を嫌いなのは、知っているはずでしょう!?」
姫「なぜ入れたの!?」
シェフ「も、申し訳ありませんっ! うっかりしておりまして……」
姫「うっかりにも程があるわ! マヌケなんだから! だいたいあなたはいつも――」
騎士「姫っ!!!」
姫「!」ビクッ
姫「なんですの、いきなり……?」
騎士「姫……シェフに謝れ」
-
姫「なぜです!? なぜ、謝らなければなりませんの!?」
騎士「シェフは姫のために、心を込めて料理を作ってくれたのだ」
騎士「なのに、その言い草はなんだ。敬意がなさすぎるとは思わんか」
姫「な、なによ……! 好き嫌いがあってはいけないというの!?」
騎士「そんなことはいっていない。私もピーマン苦手だしな」
姫&シェフ(子供か!)
騎士「シェフを侮辱したことについてのみ、謝れ、といっているのだ」
姫「い、いやよ……! なんで私が……」
騎士「謝れッ!」
-
シェフ「あの……私は気にしておりませんので……」
姫「…………」
騎士「姫……!」
姫「うっ……」グスッ
姫「シェフ、あなたを侮辱して、ごめんなさい……」
シェフ「い、いえいえっ! こちらこそ、申し訳ありませんでしたっ!」
騎士「それでよし」
-
騎士「よし……食べるぞ。いただきます」
姫「はい……」
騎士「…………」モグモグ
姫「…………」モグモグ
姫(なんなの!? なんなのよ、これ!? 腹立たしい!)
-
騎士「食後は勉強の時間だ」
騎士「今日は二時間みっちり行う。トイレ以外で席を立つことは許さん」
姫「二時間も!? そんなの耐えられるわけが――」
騎士「…………」グリッ
姫「ぎょわはぁぁぁぁぁっ!」ビビビッ
姫「わ、分かりましたわ……やればいいんでしょ! やれば!」
-
……
……
……
姫(やっと終わった……)ゲッソリ
姫「――で、次は何をなさるの?」
騎士「姫たる者、文武両道でなくてはならん」
騎士「次は剣術の修行に入る」
姫「は、はい」
姫(えぇ〜……ウソでしょ?)
-
騎士「この木剣を構えろ」
姫「こ、こう……?」
騎士「…………」グリッ
姫「きゃほぉぉぉぉぉう!」ビビビッ
騎士「お、いい構えになったぞ」
姫「いちいちツボを突くの、やめて下さる!?」
-
騎士「では、私が攻撃を繰り出すから、その剣で防いでみろ。いくぞ」ヒュオッ
バシッ! ガッ! ガツッ! ガッ! バシッ!
姫「ちょ、ちょ、ちょっ! これ、ガチじゃありませんこと!?」
騎士「ガチなものか。本気ならば、この剣は何度も姫を打っていることだろう」
姫「いや、そういうことじゃなくって……」
騎士「ほら、動きが止まっているぞ! 防げ、防げ!」
姫「ひぃぃぃぃぃっ!」
ガッ! バシッ! カツッ!
-
姫「うっ、うえぇっ……もう、ダメ……」
騎士「なんだ、この程度でへばるのか。だらしない」
姫「当然ですわ! 私は姫なのよ! 運動なんかしないのよ!」
騎士「ほう、まだまだ余裕そうだな」
姫「はうっ!」ギクッ
騎士「元気があるのならば、続きだ。剣の修行は追い込まれてからが本番だからな」
姫「あがががが……!」
-
ベッドの中で――
姫「ああ、もう疲れた……。ツボも突かれた……」
姫「これから……毎日のようにこんな生活が続くというの?」
姫「ううう……地獄ですわ……」
姫「ああ……ロマンスが、ロマンスが遠ざかっていく……」
-
危惧通り、姫の過酷な日々は続いた。
姫「なぜケーキをいっぱい食べちゃダメなの!? ケーキは別腹ですのよ!?」
騎士「好きなものを好きなだけ食べる、たしかにそれは楽しいことだ」
騎士「しかし、好きなものをあえてそこそこ食べる。それもまた楽しいことなのだ」
姫「あうう……まるで意味が分かりませんわ」
〜
姫「あぁ、眠い……」ウト…
騎士「…………」グリッ
姫「はぎゃぁぁぁぁぁっ! 起きましたぁぁぁぁぁっ!」ビビビッ
〜
騎士「さぁ、もっと動け! 動きまくれ!」
バシッ! ガッ! カツッ! バシッ! ガッ!
姫「速い、もっとゆっくりぃ! ゆっくりぃぃぃ!」
騎士「いいぞ! 姫には才能がある!」
姫「こんな才能、いりましぇぇん!」
-
一方で、騎士の教育(やりかた)に眉をひそめる者も多かった。
「いくらなんでも、ねぇ……」
「あれじゃ姫様がおかわいそうよ……」
「臣下という立場を完全に逸脱してるよな……」
-
そんなある日――
姫「もういやっ!」
姫「もう無理! もう限界! もう沢東! いい加減にして!」
騎士「ほう、私に逆らうか」グリッ
姫「痛くないっ!」ビビビッ
姫「今日でオシマイよ! お父様に訴えて、あなたなんかクビにしてやる!」タタタッ
騎士「…………」
-
ドンッ!
姫「いたた……」
使用人「申し訳ありませんっ! 姫様っ! 大丈夫ですか!?」
姫「ええ、平気よ」
姫「そちらこそ、大丈夫? 痛くなかった?」
使用人「え……? は、はいっ! 平気です!」
姫「そう、よかった」ニコッ
使用人「ひ、姫様……」ドキッ
姫(……あれ?)
-
姫(今、私は使用人の心配をした……。昔なら、きっと怒鳴りつけてたでしょうに……)
姫(なぜ?)
姫(それはもしかして、騎士が“痛み”を教えてくれたから……なの?)
使用人「姫様……」
姫「あら、なぁに?」
使用人「なんといいますか、ここ最近、一段と美しくなられましたね」
使用人「――っと、すみません! いきなりこんなことを申しまして!」
姫「ありがとう。きっと、剣で汗を流しているおかげだわ」
姫「これも騎士のおかげ――」ハッ
-
姫「…………」ドキン…
姫(分かる……私は今、あの騎士を求めている)
姫(あんなにひどい目にあってきたというのに……なぜかしら?)
姫(なに!? なんなの、この感覚!?)
姫(分かったわ、これこそロマンス! これこそ、真のロマンスなのですわ!)クワッ
-
姫「騎士!」
騎士「姫!」
姫「やっぱりやめるのやめた!」
騎士「!」
姫「さぁ、今日もロマンスを開始しますわよ! 勉強? それとも剣術?」
騎士「(ロマンス……?)ならば勉強といこう。今日は三時間みっちりだ!」
姫「分かりましたわ!」
-
そんな生活が半年ほど続いたある日――
兵士「騎士殿……陛下直々に、あなたに逮捕状が出ております」
騎士「そうか……」
騎士「分かった。すぐに出頭しよう」
……
……
……
-
姫「えっ、今日から家庭教師交代!?」
メイド「ええ、よかったですね。姫様!」
メイド「これでやっと、あのスパルタ騎士から離れられるのですから!」
姫「…………」
-
新しくやってきた騎士は――
金髪騎士「さ、優雅に勉強を始めよう」キラッ
金髪騎士「10分ほど勉強したら、ティータイムといこうじゃないか」
金髪騎士「ボクがおいしい紅茶を入れてあげるからね、姫」
姫(まさに、私が理想としていた騎士ですわ……)
姫(だけど、なぜかしら……なぜか……物足りない……)
-
姫「ごめんなさい」
金髪騎士「!」
姫「悪いけど、あなたじゃ……私、物足りないわ」
姫「前の家庭教師の方に、戻して下さるかしら?」
金髪騎士「……残念だけど、それはできないんだ、姫」
姫「なぜ!?」
金髪騎士「彼はね、君にしていた仕打ちが陛下に発覚し、逮捕されてしまったのだよ」
金髪騎士「おそらく今日……護送馬車で監獄へと送られることだろう」
姫「なんですって!?」
-
<護送車>
兵士「では騎士殿、出発いたします」
騎士「ああ」
騎士(姫様……私は自分のやったことを、なんら後悔してはおりません)
騎士(あなたには厳しい人間が必要でした。そして、みごとあなたは克服されました)
騎士(あとは、あなた次第です……姫様)
騎士(……さようなら)
-
すると――
「ぐぁぁぁぁっ!」 「あぎゃぁぁぁぁぁっ!」 「いたぁぁぁいっ!」
兵士「な、なんだ!? 護衛が次々と叫び声を上げてやられていく……!」
騎士「?」
-
兵士「な、なぜあなたが!?」
姫「たああっ!」グリッ
兵士「いでぇぇぇぇぇっ!」ドサッ
姫「騎士! やっと会えましたわね!」チャキッ
騎士「姫様!?」
「こっちにもいるぞ!」 「かかれーっ!」 「こいつ強いぞ!」
金髪騎士「やれやれ……お人好しすぎるね、ボクって」バシッ ドカッ ベシッ
-
姫「騎士! すぐに馬車から出てきなさい!」
騎士「な、なにをやっているんですか、あなたは!」
姫「決まってるでしょう? 私の家庭教師を取り戻しにきたのよ!」
騎士「こんなことしたら、ただじゃ済みません! さぁ、早くお帰り下さい!」
姫「イヤよ! 一度始めたからには、そうやすやすとはやめません!」
姫「だって……あなたがそう教えてくれたんですもの!」
騎士「……どうやら私はあなたの教育を大失敗したようですね」
姫「そういうことね。ちゃんと責任は取ってもらわないと」ニコッ
-
<城>
国王(あの騎士め、娘にあのような仕打ちをしていたとは……許せぬ!)
近衛兵「陛下! 護送を担当していた兵から、連絡がありました!」
国王「おお、護送は終わったか?」
近衛兵「いえ、騎士を護送していた馬車が襲撃を受けました!」
国王「えっ!」
近衛兵「ちなみに襲撃者は姫様です!」
国王「えええっ!」
近衛兵「騎士の罪を取り消さねば、姫をやめるとおっしゃっています!」
国王「ええええええええええっ!」
-
こうして二人は国王公認の仲となった。
騎士「今日の授業はここまで。きちんと復習しておくように」
姫「ねえ……そろそろ、夜のリードをしてくれませんこと?」
騎士「姫、それはまだ早い。今は勉強が優先だ」
姫「あっ、今“まだ”っていいましたわね! “まだ”って!」
騎士「…………」グリッ
姫「ぎゅえぇぇぇぇぇんっ!」ズババッ
姫「今の痛み……! まさか、今まではずっと手加減を……!?」
騎士「当然だろう。だが、これからは手加減は無しだ」
姫(ああっ……ステキ! 私のロマンスは、まさに今から始まるのですわ!)
おわり
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以上でおしまいです
-
乙
奇声をあげたりどさくさ紛れに駄洒落言ったり面白い姫様だなww
-
乙乙
これが教育か(意味深)
-
毛沢東ワロタ
-
乙
-
乙
金髪騎士が普通にイケメン
-
乙
姫の叫び声がいちいちおもろい
-
ハッピーエンド乙!
金髪騎士どんまいw
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金髪騎士心もイケメンすぐる
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