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海の上の駅
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この世界に人はどれだけいるのだろう。
たくさんの人がいる場所もあるだろう、人が全くいない場所もあるだろう。
この場所には私一人。
生まれたときからこうなのだ。
世界はこういうものなのだ。
私は海の上の駅舎で生まれた。
私は生まれたときから「私」として完成していたがそれはこの世界がそういうものだからだ。
"
"
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今日は少し寝すぎてしまったらしい。
ドアを開け駅のホームに足をつけるとジリッとサンダルの底が焼けた気がした。
太陽はとっくに海から顔を出しもうすぐ私の真上まで上がるころだ。
家に隣接する線路は昨日の雨で増えた海のせいで水の中を走っている。
太陽の日差しに誘われ日向ぼっこするかのように魚は線路の上で漂っている。
今日は列車が来る気配がない。
きっと何もしないのが今日の私の仕事なのだ。
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私はいったん家の中に戻ると水着に着替え窓から海に飛び込んだ。
太陽は相変わらず私を焼いていたが魚はもうそこにはいなかった。
この海は線路に乗せて運び、また連れてきては、連れていく。
しかし私をどこかに運んではくれない。
私の意味はここにしか存在しないから、ここにいることで私は肯定されるのだ。
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なにを羨むわけでもない。
私は与えられた意味その通りに生きていく。
…そう生きてきたはずなのになぜだか最近頭の中が重たい。
海を行く魚を見ると、空を高く飛ぶ鳥を見ると。
なぜだか重たく感じるのだ。
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今日は雨。
線路は海に沈み駅のホームぎりぎりまで達した水面を雨粒が叩いている。
雨粒が作った波紋はいつもよりも黒いホームに吸い込まれていた。
こんな日は電車は線路を走れない。
逆を言えば今日は電車が走る意味はないのだろう。
雨の日はすることがなくなる。
"
"
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読書が普段の雨の日の過ごし方だが今日はなんだかそんな気分でもない。
朝ごはんの皿も片さずにぼーっと窓から外を眺めていた。
どんどん強くなる雨脚を窓や屋根をたたく音で感じ、聞き入っていると遠くから何かが聞こえた気がした。
それは海をかき分け進む音、今日聞くはずのなかった音だった。
しかし、どんなに不思議に思っても事実、音は近づいている。
私は急いで部屋を片付けなければならなかった。
この世界で生きるには与えられた役割を、自分の意味を果たさなくてはならないのだから。
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私の役目は、この駅を訪れた人を迎え出発の日に見送ること。
私は幾度となく繰り返してきた。
いままでこんな日に電車が来ることはなかったがそんなことは関係ない。
今日の私に意味が与えられるなら、仕事があるのならこなすだけだ。
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やがてホームに電車が滑り込む。
電車によって裂かれた海はホームを濡らすがそれはまるで吸い込まれたかのようにホームの色を一瞬変えただけですぐに消えていった。
ドアが開くと乗っていた男はゆっくりとホームに降りた。
雨が降っているというのに走って私のドアを叩くわけでもなく、ゆっくりと近づいてきてそのまま自然な動きでドアを自分で開けた。
「長い間お疲れ様。君がしたいことは何かな?」
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男は部屋に入りながら私に問いかけた。
不意な問いかけに私は頭が回らない。
また頭が重たく感じられる。
考えることを放棄しろと言わんばかりに頭の中の私は瞼を下ろそうとしている。
と、男が私の頭に手を置いた。
その瞬間、不思議な虚脱感に襲われる。
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同時に今にも眠りに落ちそうだった頭の中の私はどこかに消えていた。
男はまた繰り返した。
「君がしたいことは何だい?何かに決められたことじゃない君自身が選ぶんだ」
私はまた答えられない。
今までは客人の荷物を受け取り、部屋に通し、短い間のお世話をしていた。
しかし、私は動けない。
こんどは頭の中で思考が渦巻いている。
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今までこんなことはなかった、こんな自分がやってきたことに疑問を持つなんて。
そう、疑問なんてないだろう?
私は何を考えている…。なぜお世話をするのか?それが私という存在だからだろう?
なぜ私はここに留まり続けているのだろうか…。この場で客人をもてなすのが私の意味、価値だからだろう?
本当か?
わからない…疑問に対する答えにまた疑問が浮かぶ、終わりのない思考の迷路…。
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不意に頭の上にあった手が下ろされた。
「今、答えを出さずともいいさ。そうだねぇ、この雨がやむまでじっくりと考えるんだ」
男は柔らかく微笑みながらそう言った。
呆然と立つ私の横をすり抜け男はキッチンで冷えた水を飲むと羽織っていたコートを椅子の背もたれにかけ
窓の外をぼーっと眺め始めた。
窓をたたく雨は勢いを弱めたが雲は厚みを増し夜がいつもより早くこの駅を覆っていた。
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翌朝、布団の中で半覚醒状態の私の鼻を何かの香りが撫でる。
急速に頭が回転を始める。
体を起こし窓の外を見ると未だ雨は降り続いているが部屋に漂う香りが鼻を通るたびに微かな温かみを感じる。
ふと、頭の回転が止まる。とほぼ同時にベッドを出て扉を開けると、
予想通り男が朝ごはんを作っていた。
それは私の役目だったはずだ。
ありえなかった、今まで一度もここを利用する人が料理を作ることなどなかった。
そして私が役目を忘れ寝過すことなど。
しかし混乱する私に男は優しい動作でホットミルクを差し出した。
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読んでてイメージがどんどん膨らむ
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何かを他人から受け取ったのは初めてだった。
湯気がふわりふわりと立ち上るマグカップにぎこちなく口をつける。
初めて他人から受け取ったミルクは普段より暖かく甘い気がした。
「甘いのは蜂蜜がほんの少し溶けてるからだよ」
男は頭の中を透かして見ているかのように私の思考に返事をした。
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「僕はこの世界のシステムみたいなものだからね、考えていることぐらいわかる」
システム?
「どういうこと?」
「そのままの意味さ」
頭の中で思考が渦を巻き始める。
昨日のような重さは感じないが終わりのない迷路は進む速度より早く道を伸ばし複雑にしていく。
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「まあまあ今はとりあえず朝ごはんを食べようじゃない」
迷路からの緊急脱出ボタンを男が押した。
男は私と話しながらも手際よく調理を進めていたらしい。
テーブルには皿が並べられバターの甘い香りを立ち上げていた。
「ほら、できたから座りなよ」
男は最後にキッチンからフルーツジュースを注いで持って来ると席に着いた。
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席に着くと二人の皿には柔らかく軽そうなスクランブルエッグにレタスとソーセージが添えられている。
「君が普段作るのに比べてどうかな?」
男はソーセージを一口大に切りながら訊ねる。
皮が弾けるようにパツッと切れ肉汁が流れるのをみてパンに手を伸ばそうとしていた私はソーセージに目標を変更することにした。
「頭の記憶を覗いたかのようにいつもの朝ごはんのメニューと一緒ね」
卵の焼き加減を見てわかっているこの男は料理がうまい。
あえて冷たい感想を返す。
「そう、良かった。なら美味しそうにできてるってことだね」
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皮肉を返されるという会話を本の中でしか経験したことのない私は苛立ちという新しい感情と
楽しいという感情また同時に二つの感情が一人の心の中に存在することがあるということに気付いた。
思考の渦の迷路の中で錆びついた扉を開けた気がした。
「君は人に近づいているんだね…」
男がぽつりと漏らす。
食事を終え窓を一瞬覗き見ると
雨を降らす厚い雲のずっと先に切れ間から差す光が見えた。
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朝ごはんの片付けを済ませエプロンを椅子の背もたれにかける。
男は窓から遠くを見通しているかのように外をひたすらに眺めていた。
私は扉を開け雨の降り続くホームに出る。
男はこちらを一瞥したがまた窓へと視線を戻した。
ホームは男が現れた時と同じく冷たい灰色で雨を飲み込んでいた。
雨が止むまで考えろと男は言った。
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私はどうしたいのだろう。
ちゃぷちゃぷとなる水音を耳に溶けさせ思考の渦を自ら巻く。
ホームから水に沈んだ線路をのぞき込む。
ベンチも何もないホームで雨に打たれながら小さく起こる波から足を逃がして遊ぶ。
思考しながらふと始めた一人遊びは静かで大した面白味もない。
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大した面白味のない単純意味無しの遊びにだんだんと思考をかき消されていく。
結局のところいつだって私はこうなのかもしれない。
考えるべき時、深い未知の世界に飛び込む時
手近などうでもいい目標にゴールをすり替えてしまう。
考えること、考えた末に出した結論への後悔
何もかもが怖くて半歩踏み込んでも見知った自室に踵を返してしまう。
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しかし男が来てから未知の世界にかけていた霧が晴れてきたのだろうか。
私は微妙な意識の違いを感じていた。
ここから出たい。いつか見た魚たちが向かったであろう場所、男が見つめていた場所。
この場所からは線路など一本しか伸びてはいないのだ。
無限の選択肢から選ぶわけではない。
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霧はだんだんと晴れていく。
雨はどんどん弱くなる。
選択肢は二つだけ。
みかんかオレンジかを選ぶようなものだ。
私はホームから線路の先に視線を伸ばす。
雨が上がった。
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ただでさえ遅筆なのに明日は書きにこれません
読んでくださってる方がいたら申し訳ありませんです
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乙乙
ゆっくりで全然問題ないでよ
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乙
世界観というか雰囲気がすこぶる好きだ
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駅舎に戻ると男はまた勝手に料理を始めていた。
「あはは、ひどいね。傘をさせばよかったのに、びしょびしょだよ?」
男は笑いながらテーブルに置いておいてくれたのだろうタオルを指さす。
「とりあえず軽く水滴おとして、お湯張ってあるからお風呂入ってきな」
男はお風呂まで用意してくれていたらしい。
まるで私がお客さんになったかのようだった。
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「ありがとう」
言いながら髪をタオルで拭く。
タオルが私の髪や肌を撫でると、やわらかな暖かさが体温の低下を感じさせる。
今まで自分がやっていたことをされる側になるのは照れるようなもやもやを感じるが
男にお礼を言って素直に甘えさせてもらう。
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お風呂を上がると部屋には微かないい香りがふわふわと浮いていた。
「君好きでしょオニオンスープ」
この男は本当に人の頭を透かしているらしい。
「あんまり時間なかったから君が自分で作るものには負けるかもしれないけど美味しくできたと思うよ」
ついつい釣られて鍋を覗きにキッチンに入る。
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鍋から立ち上る香りでわかる美味しい。
男は自分をシステムなどと言っていた。
きっと料理も最高にうまく作れるのだろう、ずるい。
「感想は味のことも含めて後で聞くから今はお皿運んでもらっていいかな?」
私の対抗心に火が付く。
明日の朝は私の本気の料理を食べさせてやろう。
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「楽しみだね」
心の声を読むのはやめてほしい。
「君はあまり自分の考えていることを話してくれないからね」
「これからはなるべく話すようにしようと思うからやめて」
「そうだね。失礼だった、ごめんね」
男は何かに納得しながら最後の料理を運び席に着く。
テーブルの上には鶏肉とジャガイモのホイル包み、オニオンスープ、
生ハムとサラダに見たことないワインも並んでいた。
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>>31
鍋から立ち上る香りでわかる、美味しい。
句点が抜けました。ごめんなさい
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こういう作品ずっと待ってた
頑張ってください
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「「いただきます」」
スプーンを取りまずはスープを口に運ぶ。
やはりとても美味しい。
口だけではなく体全体にしみる優しい味だ。
「さあワインも開けようか」
男は栓を抜き私のグラスにワインを注ぎ始める。
「決めたんだろう?これからの自分を。なら今日は祝わなきゃね」
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「そんなこと言ってあなたが飲みたいだけでしょう?ここにはお酒はなかったはずだし」
まあまあ、良いじゃないと男は適当にごまかした。
男がワインを注ぐ間にスープを急いで口に運ぶ。
男は二つのグラスにワインを注ぎ終えグラスを差し出してきた。
手で軽く制止しながらホイル包みを二口ほど口にする。
男は気づかなかったのだろうか、
私はお酒は嫌いではないがとてつもなく弱いのだ。
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「どう?美味しいワインだろう?」
そうね、とても美味しい。
アルコールは私の舌と喉を刺激しながら体内に侵入する。
「とても、美味しいわね」
一口飲んだだけで思考から言葉にするまでのタイムラグが発生する。
二口目で私の体には翼が生え頭の中の花畑は咲き乱れていた。
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「うぅ…」
とてつもない渇きを覚え意識を取り戻す。
テーブルではなくベッドだ。
自力でたどりついたのだろうか、男が運んだのだろうか。
外はまだ月と星が静かに海を照らしている。
ぼんやりする視界で窓からぼんやり入る月明かりを頼りにふらふらとキッチンに向かった。
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水をコップに汲み一杯。
もう一杯飲んだところでシンクにもたれかかる。
頭が重い。
と、換気扇が回りっぱなしである。
男も酔っていたのだろうか。
人が泥酔しているのを見て普段通りにお酒が飲めたとは思えないが。
換気扇を止めるついでに立ち上がる。
さて、もう一度寝ようか。
私はベッドに再び入りながら体内時計をセットした。
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翌朝、その日一番の海鳥が鳴くより少し前。
月は海に帰り太陽が顔をのぞかせるほんの少し前、静かに駅に列車は滑り込んだ。
押し分けられた水は音もなくホームに吸い込まれる。
音もなく開いたドアは冷たくも見える白い明りで照らされた車内に一人吸い込んでまた閉じた。
沈む月を追いかけるように列車は走り出した。
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窓から入り込む太陽に顔を焼かれる寸前に私は起きた。
暑さと睡魔に負け顔まで布団を被るといった愚行をしなかったのは昨晩
男に本気の私の料理を作って見せると誓ったせいである。
体内時計はセットしたはずの時間から多少ずれ私の顔に太陽が覆いかぶさることになったが
男が料理をしている気配はしない。
結果良ければすべて良しである。
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夜中起きたときになぜか部屋まで持ってきたコップを持ち部屋を出る。
リビングのテーブルの上には小鍋と封筒が置いてあった。
夜中起きたときにこんなものはあったかと鈍い頭を動かしてみるが記憶にない。
薄々と察した封筒はまだ開けずにまず小鍋を開ける。
中は昨晩のオニオンスープだ。
小鍋を火にかけ、その間にクロワッサンを一つだけオーブンで少し温める。
後はミルクをコップに注ぐだけだ。
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「本気の料理はまた今度だ」
独り言というには大きすぎる発言で自分の決意を固める。
一瞬で胃袋に朝ごはんを収めた私は片付けもせずに荷造りを始める。
すでに遠くでは列車が波を切る音が聞こえる。
荷物は多くない、急がなきゃ。
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最後に封筒をバッグにしまいドアの前に立つ。
ほぼ同時に列車は波しぶきを派手に上げながらホームに滑り込む。
「行ってきます」
一人の私から一つの歯車だった私への挨拶だ。
ドアを開けると私は振り返ることなく列車に乗り込んだ。
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感想のレスとてもうれしいです。
ただでさえ遅筆なのにまた明日は書き込みにこれません。
申し訳ないです。
おやすみなさい。
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今更だけど雨で水位が上がる海というのもなかなか意味深だな
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不規則なリズムで揺れる列車に乗り込んでどれぐらいたっただろうか。
駅も島も見えず車窓から広がるのは海、海、海。
乗り込んですぐに開けた窓からはぬるい風が車内に侵入し私の体を撫でていく。
本を読みながら時間をつぶすには気持ちのいい環境だったがだんだんと体も固まってきてしまった。
もぞもぞと重心を動かすついでに車内を見渡すが右にも左にも誰も人はいない。
海と海の間を水しぶきを上げながら列車が私一人のもの、世界から切り離された私を襲う孤独感が
軽いめまいのような興奮を覚えさせる。
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いてもたってもいられなくなった私は本当に人がいないか車両を移動することにした。
誰もいない車両を斜め前に伸びる自分の影を追いかけながら進んでいく。
最後尾の車両のドアを開けた瞬間いきなり列車がスピードを落とし始めた。
背後から不意に波をかぶったようにバランスを崩し倒れそうになる。
とっさに手すりにつかまり倒れるのをこらえた私の視界の端からは見慣れた建築物が流れてきた。
ホームには一人のかわいい少女がベンチに座ってスケッチブックを膝に置いて列車を待っていた。
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ドアが開き少女と目が合う。
青い瞳の少女は私に微笑みかける。
その微笑みは青い空、高く上った太陽の景色の中でどこか冷たいものを感じさせた。
少女は鼻歌を歌いながら近づいてくる。
なぜか私は背中に冷えた汗が流れるのを感じた。
「こんにちは、お姉さん」
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容姿から連想されたままの綺麗な声で少女は私に声をかける。
「こんにちは」
ただ挨拶を返すことしかできない。
「なんでお姉さんは立ってるの?」
無邪気な笑顔を絶やさず少女は私に問いかける。
「一人しか乗ってないのかなって探検してたんだ」
「そうなんだー。面白いお姉さんだね」
私の答えを聞いて少女がアハハと笑って面白い人認定を下す。
とたんに私の中でいつの間にか張られていた緊張の糸がゆるんだ。
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同時にようやく列車のドアは閉まり緩やかに加速を始める。
私と少女は微妙な間をあけ隣り合って座った。
緊張が解けたからか急に言葉が頭の中を行き来し始める。
「あなたはどこまで行くの?」
今度はこちらが少女に質問する。
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「どこまでもよ。海を走って海鳥を眺めながら絵を書きたいの」
「スケッチブックを持ってたもんね。絵をかくのが好きなんだ」
不意にぐぅ、とお腹が鳴った。
そういえば何か食べるものを持ってくるんだったな。
少女にも聞こえてしまっただろう、自分の顔が恥ずかしさで火照っていく。
-
すると少女は鞄を開け紙に包んだバゲットと赤いソースを取り出した。
取り出したバゲットをちぎりソースにつけ食べる。
「はい、どうぞ」
差し出されたバゲットを私もちぎり一口もらう。
「美味しい…」
パンも美味しいが赤いトマトソースが特に美味しい。
-
「お姉さんいい人そうだからあげる」
言いながら少女はスケッチブックと鞄から鉛筆を出して席を立つ。
車内の揺れに体をふらつかせることなく少女は前の車両に行ってしまう。
追いかけようか迷ったが少女は鞄を置いて行ってしまったしバゲットを食べて待つことにした。
ぼーっと車窓から見える海を眺めながら口を動かす。
景色は流れているはずなのにひたすらに海が続くので止まっているような錯覚を覚える。
-
乙
-
お腹が膨らんでくると軽い眠気が私を襲ってきた。
昼寝をするのにもちょうどいい雰囲気だ少し眠ることにする。
夢の世界へと落ちるとそこでは男が待っていた。
「封筒開けてくれなかったね」
男は言いながら私に笑いかける。
私を置いていったくせに。
-
「まあ、いいよ。今は必要ないってことだ、君は変わってもこの世界はそういうふうに出来ているからね」
「それじゃあ、あの少女のことは君に任せたよ」
「あとあんまり長く昼寝するのはよくないよ」
言いたいことを言って男は私を置いて闇に溶けてしまう。
追いかけようとするが闇は光に塗りつぶされ始め私は目を覚ました。
目を覚ますと太陽はずいぶんと色を暗くしていた。
目の前の席には少女が座って絵を書いている。
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「おはよう、お姉さん」
少女は顔をスケッチブックからあげると私が起きた事に気が付いた。
「おはよう」
おはようという挨拶がふさわしい時間はだいぶ昔のことだが一応おはようと返しておく。
「ねえ、あなたは今まで何をしていたの?」
ふと気になって問いかける。
「ああ、あまり動かないで。お姉さんの似顔絵を描いているんだから」
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いつの間にか寝顔を描かれていたらしい。
「私はねずっと山小屋で暮らしていたの」
「もちろん一人でね」
少女は鉛筆を動かしながら話し続ける。
ある日ドアが叩かれたの。
「すいません休ませてくれませんか?」って
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それはいつもの日常じゃなかった。
私がドアを開けると男の人が立ってた。
ずいぶん顔色が悪そうでね水が欲しいっていうから部屋の椅子に座らせて飲ませてあげたんだ。
少女の話す雰囲気は見た目とは裏腹に長い年月を感じさせるようになっていた。
その人は異質だった。海を探してるんだって。
-
乙
-
自分の目的のために行動してるんだよ?
この世界ではとびきりに異質でしょ?
具合が悪いのはどう見ても明らかなのに海が見たいんだって。
綺麗で穏やかな時間が流れているはずなんだって。
目だけは輝かせて私に語ってた。
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でもねもう男の人は限界だった。
きっと私のところに来る前から随分ひどかったんだと思う。
私の家で過ごしたのも一ヶ月ぐらいだったかな。
具合は悪くなるばかりでね。
それにすごい勢いで年をとっていったの。
男の人は毎日「海」の話をしててね私は男の人の話を聞きながら海の絵を描いてあげたりしてた。
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でも話で聞いた想像でしかないからね見せるとまた細かい説明を始めて修正させるんだ。
結局、納得のいく絵が描けたことはなかったな。
最後の日、男の人は日向に座って海が見たかったなぁって言い続けて目をとじて二度と開けなかった。
それでね私も海ってやつが見たくなったんだよ。
当たり前だよね、目の前で人が死ぬ間際いや死にながらにも見たがった風景だもん。
だからね私は絵を書いてあの男に届けてあげるの。
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本当の海を見て。本物を届けてあげるのよ。
「はいできた。これはお姉さんにあげる」
静かに語っていた少女は唐突に明るい声を上げた。
少女が差し出した紙には私の寝顔が描かれている。
「お姉さんまだ本当に若いでしょう。これからいろいろあると思うけど頑張りなさいね」
暖かな少女の言葉からは外見には現れない本当の年齢が見え隠れしていた。
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それに私は少女が最後「男の人」を「男」と呼んだことに気づいていた。
一ヶ月しか一緒に過ごさなかったのに大事な人だったんだろう。
受け取った似顔絵を大事に折りたたんでバッグにしまう。
「付いて行ってもいいですか?あなたがその人に届けたいその場所まで」
「やっぱりお姉さんいい人だね」
それはもう無邪気な少女の顔で放つ無邪気な少女の言葉だった。
「お姉さんが私に敬語使うなんて変だよ」
とてもおかしそうに少女は笑った。
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今日はお休みです…。申し訳ない。
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星が降るような夜空の中列車は海を走り続けている。
夜の海の姿を描いた後寝てしまった少女を置いて私は先頭車両まで歩く。
昼寝をしたからかなかなか寝付けないでいた。
窓を開け潮風を肌にあてる。
絡みつくような潮風とは反対に海は星たちに照らされ美しく輝いていた。
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波が立つたびに飛沫は輝きながら空に溶けていく。
ここはどこなのか、世界の真ん中なのだろうか。
はたまた世界の隅まで来てしまったのだろうか。
空を見ても海を見ても自分の居場所を知ることはできない。
どこに立っているかは自分が決めることなのかもしれない。
-
少女はどこまで行くつもりなのだろう。
「どこまでも」か。
世界の果てまでも行くのだろうか。
男の人が見たかったその場所、男の人の話から少女に見えたその場所は遠いのだろうな。
果てしなく遠い。
二人で話をして瞼の裏に映し描いていたその時が一番近かったのかもしれない。
-
それでも少女は探すのだろう。
少女の眠る車両まで戻りながらも少女の行動を思い計り思案はめぐる。
探して見つけてその道中にあった風景と一緒に男の人に贈るのだろう。
少女はどんな心持ちで列車に乗っているのだろうか。
その答えを私が出すことはできない。
少女の感情を計るには人になったばかりの私では足りないのだ。
そして少女もまたその感情を寝顔にすら映すことなく無邪気に眠るのでった。
-
乙
-
私が目を覚ましたのは太陽が昇ってからずいぶん経ってからだった。
太陽からの目覚ましは少女が下ろしてくれたのだろうブラインドによって吸収されていた。
列車はどうやら動いてはいない。
ブラインドを上げると埃の匂いが立ち上った。
列車のドアは開いたまま閉じる気配を見せない。
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私は固まってしまった体を伸ばしほぐしながら立ち上がる。
左右を見渡しても少女の気配は感じられなかった。
閉まってしまわないだろうかと思いながらホームに出る。
ホームには屋根がなく点々と赤く錆びた不思議な形の突起物が生えていた。
外に出ると心地よい程度の海風が私の肌を撫でていく。
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あたりを見渡すと少し先にも平行してホームが海に突き出している。
ホームとホームの間に広がる砂浜に少女はいた。
私はかけられていた梯子を使って砂浜に降りる。
少女はいつものようにスケッチブックに絵を描いているわけではなかった。
初めて会った時のように少女は冷たく静かな雰囲気を漂わせ海を見つめていた。
-
「おはよう」
少女の背後から声をかける。
瞬間、空気は和らぎ波の音が帰ってくる。
「おはよう。ずいぶんと寝てたのねお姉さん」
少女は笑顔で答える。
「私が朝起きたら電車が止まっててね、ドアは開いてたから降りてみたの」
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「そしたらこんなに広い砂浜があったのよ!」
先程までまとっていた雰囲気を微塵も見せず少女ははしゃぐ。
「サンダルを脱いで素足で砂浜を歩くのはなんだかわくわくしたわ」
よく見れば小さな足跡が残っている。
「ひとしきり楽しんだら疲れたから座って海を眺めてたの」
-
乙
-
「ご飯にしましょ」
少女は急に立ち上がりながら言った。
「どこか雰囲気が固いわよお姉さん」
少女に指摘され表情が固まっていたことに気付く。
「ごめんなさい」
-
なぜか謝ってしまう。
「お姉さんが謝る必要はないでしょう?」
「まぁいいわ。聞きたいことがあるのかもしれないけど先にご飯よ」
少女は私がお腹空いてるもの、と笑いながら私をおいて電車に戻っていく。
少女は自分で気づいているのだろうか。
自分がまとう雰囲気が少女になりきれていないことに…。
-
私は少女が眺めていた海を一瞥してから少女についていく。
空では海鳥が羽ばたかずまるで浮くように飛びながら鳴いていた。
電車に戻ると少女はブラインドと窓を開けていた。
「このブラインド埃臭いわね。太陽の熱のせいでにおいが車内にこもってるわ」
「車両移ろうか」
-
掃除を始める勢いの少女に提案するとはっとした顔で少女が止まる。
「そうだった。ご飯だったご飯だった」
少女は恥ずかしそうに顔を赤らめながら荷物を手に取る。
今日の少女は「少女」と「女の人」を行ったり来たりしている。
それはここが少女の求めていた場所ということなのだろうか。
-
乙
-
ふぅ…
-
朝というよりか昼に近くなってしまった食事を終えると少女は再び列車を出ていった。
スケッチブックと小さな折り畳みの椅子を持ち出してホームに座る。
海鳥は先ほどまでよりやかましく鳴いている。
私もなにか書いてみようと思い紙と鉛筆をもって少女についていく。
少女は海を描いていたので私は山を描いてみる。
-
改めて見るとこの島の中央は山になっているようで砂浜からはすぐ山になっているようだった。
山の後ろからはどんどんと蒸気が噴き出すように雲が出てきていた。
しばらく二人無言で筆を走らせる。
あまり絵の教養がないなりに会心の作品が描けたかと思うと後ろから声をかけられた。
「お姉さんすごく絵うまいね!」
少女はいつの間にかどこから出してきたのか帽子をかぶっていた。
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「お姉さんが描いてたあの山登ってみない?」
ふと少女の後ろに止まる電車に視線を移すが動く気配は全くなかった。
「登ってみようか。水筒持って行ったほうがいいよね」
「水筒もだけどお姉さんも帽子被ったら?」
じりじりと日差しに焼かれ続ける髪はとても熱かったが生憎私は帽子を持ってきていなかった。
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駅を出たときずいぶん急いでたからなぁと思い返す。
数日前のことなのにずいぶん前に感じる。
ふと記憶の中で思い当たるものがあった。
「ちょっと待ってて」
「じゃあ水筒準備してるね〜」
少女に水筒を準備してもらっている間にバッグの中で封筒を見つけ出す。
夢の中の男を思い出しながら封筒を取り出す。
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「……必要になった物が出てきたりするのだろうか」
つぶやきながら封筒を開ける。
昼間の日差しの中そんなわけはないのになぜだか封筒の中は不鮮明でよくわからない。
手を入れてみると帽子のつばのようなものが指先に当たった。
引っ張り出すと、どうしても入らないであろう麦わら帽子が出てきた。
封筒は帽子を吐き出したにもかかわらず急に重さを増す。
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不意なことで封筒を落としてしまうと床に触れた封筒は黒い水たまりのようなものを作り上げた。
「お姉さんまだー?」
少女が待ちきれずに呼びに来る。
「もうちょっと待ってねー」
答えたのは黒い水たまりから放たれた聞き覚えのある男の声だった。
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昨日書きにこれずすみませんでした。
今日はここまでです。
-
乙
-
乙
-
水たまりは一瞬広がりを見せ何か弾んだように盛り上がる。
人型で固まった黒い何かはだんだんと色が透け始める。
「久しぶりですね」
そこに現れた男が最初に挨拶したのは少女だった。
久しぶり……?初対面じゃないの?
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そういえば夢に現れたとき少女をよろしくと言っていたような気がする。
「久しぶりね、お兄さん」
少女も挨拶を返す。
「お兄さんと呼ばれるとは!初対面では小僧呼ばわりされたのにずいぶんと慣れてきたんですね」
「そりゃあ少女でいた時間のほうが長いんだから慣れたら元のように振る舞えるさ」
少女の雰囲気が一瞬、変わる。
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「それはなにより。ところで、こちらに来たついでに私もご一緒してもいいですか?」
「それはお姉さんに聞いて?」
ころころと雰囲気を変える少女に話を振られたところでやっと私の番である。
まず言いたいことがある。
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「私への挨拶がない!」
「お久しぶりです」
「遅い。罰として荷物を持て」
「君はずいぶんと明るくなったね」
反省の色なく男は笑っている。
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「同行は許されたらしいし早く出発しようか」
男は少女からスケッチブックと水筒をもらうと先頭に立ってさっさと行ってしまう。
私は少女と顔を見合せ笑いながら男を追いかけ列車を降りる。
外はじりじりとした日差しが照り続けているが海鳥の気配は消えていた。
地面に移る影は3つだけ、山へと向かっていた。
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山に入ると日差しが和らぎじりじりとした感覚から解放される。
違う世界に入ったように一瞬頭がくらっと揺れる。
風が通るたびに緑と土の匂いが沸き立ち熱をどこかに連れていく。
山の中は道と言えるような道はなく木と木の間に通れそうな空間を探して進んでいく。
ずっと海の上で過ごしてきた私には初めての山だ。
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土を踏み体を登らせていくのは思っていたより疲れる。
山の中腹あたりまで登ってくると男がこちらをちらりと振り返った
「ちょっと開けた所あるし休憩しようかー」
一人、前を歩く男からの提案はありがたかった。
男が言ったとおり少し歩くと森のなかにぽっかりと開けた空間が現れた。
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葉や枝の間からは下の海が見える。
少女は「荷物」とだけ男にいってスケッチブックを強引に奪う。
男は残された水筒を私に差しだしながら話しかけてきた。
「少し急いだほうがいいかもしれない」
「暗くなったら大変だから?」
「日はまだしばらく大丈夫だけどそろそろ雨が降りそうだからな」
「こんなに晴れてるのに?」
「僕が来る前は鳥がよく鳴いてたでしょ?雨が降る前は海鳥が鳴くって言われてるんだ」
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知らなかった。
空を見上げると葉に遮られてはいるが強い日差しを吐き続ける太陽はまだそこにいる。
本当に雨が降るのだろうか?
「それに彼女も限界が近いだろうし……」
一生懸命絵を描く少女を見ながら男はつぶやいた。
限界……?元気そうにしか私には見えなかったが。
しかし聞いたところで教えてはくれなさそうな雰囲気を察して適当な話題を切り出す。
しばらくして息も整い、汗も引いてきた頃少女の「できた」という号令により私たちは山登りを再開した。
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乙
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男の言葉が気になりチラチラと少女の様子を伺いながら登る。
少女と目が合う。
目が合うと不思議と何も聞けなくなってしまう。
男に頭の中を覗くなといった時から進歩がない。
会話もなく三人で黙々と登っていると不意に強い風が体の横をすり抜けた。
いつの間にか登ることに必死で下を見ていた私の頭に強い日がさす。
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強い日差しに反抗するように細めながら上を向くと頂上はすぐそこだった。
何かに押されるように足が動き重かった体を頂上に押し上げる。
頂上は風が少し強いが眺めは最高だった。
隣に立つ少女は眩しいのにもかかわらず目を見開いて驚いている。
そんなに大きな山ではなかったはずだが初めての登山だったからか私も心に鳥肌がたった。
感動する少女に男がスケッチブックを差し出すと少女は首を振った。
「この景色は私が絵にできるものじゃない」
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たしかにそうだ。
どこまでも広がる世界が私たちの目の前に広がっているのだ。
無限に広がる空を追いかけるように海も広がり水平線で触れ合っているように見えるがその先までもこの空と海は続くのだろう。
「記憶に残す。今度は私が話して聞かせる番だよ」
「そっか。スケッチブックは持っていくかい?」
男と少女の会話からようやく少女は本当に限界なのだと悟る。
そして少女が自覚していたことも。
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「やっぱり貸して」
そういって少女は男から奪ったスケッチブックの紙を何枚か破る。
「このスケッチブックはお姉さんにあげる」
私がスケッチブックを受け取ると少女はいつもの笑顔を見せる。
一瞬少女に戻った雰囲気はいつの間にか発達していた入道雲によって太陽が隠されると消え去ってしまう。
「この世界は本当に敏感ね」
「急ぐよ」
言いながら男は少女の頭に手を置いた。
-
それだけで大丈夫?と聞かれた少女は胸に抱いたスケッチブックの紙を一度強く抱きしめると小さくうなずいた。
「お幸せに」
男の言葉とともに少女の姿は暗くなり始めた空に溶けていく。
消えていく少女を見ながら私は生まれて初めて涙を流した。
唐突に始まった私を蚊帳の外に置いたような少女との別れにただ涙を流すしかなかった。
たった数日一緒に過ごしただけの他人であったはずなのに私の心は泣くのをやめてはくれない。
少女が消えてしまう寸前になってようやく私は涙による情報処理の合間から言葉を紡ぎだす。
-
「私がこの先を見てきますっ!だから二人で仲好く待っていてくださいっ!」
私の誓いの叫びは届いたのだろうか、少女は何度も見せた笑顔とともに空に海に溶けた。
同時に私の頬に涙とは違う水滴が流れる。
気づくとすっかり空は雲に覆われていた。
「ギリギリ間に合ったよ」
降り始めた雨に打たれながら男は笑う。
「間に合った?少女はいなくなっちゃったじゃないっ!」
-
追い打ちのように降る雨は男への言葉を尖らせる。
「これが少女の臨んだ結末だよ」
頭に手を置かれる。
消されるかもしれないと感じた体は緊張により固まってしまう。
「大丈夫、消されたりしないよ」
男はまた笑っている。
どこからか出した傘で私を雨から守りながら話始めた。
-
少女の言っていた男の人はね歯車じゃなく人として亡くなったんだ。
この世界で人として生きるというのはバグ。
この世界の不具合になってしまう。
だから彼は亡くなった後どこへ行ってしまったのか僕もわからなくてね。
そして少女もまた彼と触れ合ったことで人に近づいて行った。
手を置かれたからなのか男の言葉がすんなりと頭に入ってくる。
僕に会う前から彼女の覚悟は決まっていた。
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それは彼女が君に話したとおりだ。
僕は彼女が死んだあと彼に再び会うことはできないことを知っていた。
だから彼女と彼を合わせてあげることにしたんだ。
それから僕は彼を探しに世界を超えて探し回っていた。
たまたまこちらに帰って来た時君に会って君も人にしてしまったけどね。
人になった彼女には亡くなった彼同様時間はあまり残されていなかった。
僕は急いだ、その結果君との別れはああなってしまったけどなんとか彼を見つけ出した。
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そして話は今日につながるんだよ。
少女にはもう時間がなかった。
彼のようにこの世界に呑まれたら二人は散り散りになってしまう。
だからこの雨が降る前に彼女を送れたことは最善だったんだよ。
すべてがうまくいったんだ。
その証に少女は笑って行っただろう。
さあこの話はこれですべてだよ。
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ここからはこれからの話だ。
少女は君にこの先を見ることを託した、君は託されたものを受け取り誓った。
「君がすることはここで涙を流し雨に打たれることかい?」
男は最初に会ったときのように私に尋ねる。
「君がしたいことはなんだい?君自身が選ぶんだ」
私は少女に誓った、約束したのだ。
顔を上げて空を見渡すと雲は黒く分厚いが黒い雲の先には青い空が見えた。
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私は何も言わずに山を小走りに降り始める。
男は何も言わずついてきた。
やがて列車が見えてくる。
列車は明りを灯し今にも発車するところだ。
一気に駆けながらようやく私は男に答える。
「決めたよ!」
「行くよ、どこまでも。行けるところまで行ってたくさんのお土産話を持って二人に会いに行く!」
言い終わると同時に私たちはドアの閉まり始めた列車に駆け込んだ。
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終わりです。
レスをくれた方は本当にありがとうございました。
書き込みはなくとも最後まで読んでいただけた方々もありがとうございました
久しぶりにssをかいたので人物の口調が定まってない、描写がくどすぎる等感じられたと思います。
改善点、感想などレスいただけたら幸いです。
おやすみなさい。
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乙
台詞と地の文のバランスが心地よかった。
この作品が好きなので、次作の予定があったらここに告知してほしい。
できればトリップつけて。
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>>117
レスありがとうございます。
次作の予定は今のとこないです。
もし面白くできそうな話が思いつけば別タイトルで次作書くかもしれません。
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おつおつ
面白かったです
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>>118
トリップありがとう!
楽しみにお待ちしています。
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乙
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てす
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待つ
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酉テスしてるから多分言っても大丈夫だよな
>>123
>>1なら別ss書き始めてるぞ
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>>124
ありがとう
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