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地球の道化師のおはなし
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『こんにちは』
公園でこどもが泣いていた
こどもの笑顔が見たかった
わたしは高く高く跳んでみせた
着地に失敗してわたしは転んだ
泥にまみれてからだが汚れた
こどもは笑った
春の陽ざしのなか
わたしも笑顔になった
"
"
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『今日は暑いね』
鼻先でボールを回した
くるくると、くるくると
こどもは拍手をくれた
燃えるような夏の熱気のなか
わたしも笑顔になった
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『風が強いね』
夏が終わり秋が来た
わたしはボールを回した
ひゅるると冷たい風が吹いた
重力に引かれてボールは落ちる
こどもはため息をついた
ボールは地面を転がる
ころころと、ころころと
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『とっても寒いね』
そこに冷たい目をした
おとなたちがやってきた
ここを更地にするらしい
薄汚れた革靴で
公園を踏み荒らしていった
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わたしはこどもの目を見た
透き通った涙が、じわり
星の重力に引かれて、ぽたり
あたたかい涙がひとしずく
汚れた地面にとけていった
"
"
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おとなたちは遊具をこわした
金属は貴重なんだと言った
おとなたちは鉄棒をとかした
有効に活用するんだと言った
おとなたちが大嫌いだった
でもそこにはおとなたちしかいなかった
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『どうか、どうか、元気でね』
あの子が大好きだった
でもこの星は嫌いだった
もう公園は更地になった
わたしの居場所はどこにもない
ずっとずっと眠っていたかった
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おとなたちは宇宙船をつくった
おとなたちは犬をのせると言った
わたしは鎖に繋がれた犬の目を見た
『わたしをのせてください』
その子の鎖をくいちぎって、わんわんとわたしは吠えた
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誰もいない宇宙船のなか
わたしはようやくひとりになれた
誰の犬でもないわたし
窓の外は静かな宇宙
ふわふわとからだが浮いた
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その窓に鼻先をぺたり
そこに綺麗な地球が見えた
鼻先で地球はまわる
くるくると、くるくると
そのときあの子の笑顔が見えた
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わたしの目に、涙がじわり
決してこぼれることのない涙
決して地につかない足
着地の失敗もできなかった
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『地球にもどってくれませんか』
いいよ、と宇宙船は答えた
高く高く打ち上げられた宇宙船は
大気圏に再突入した
火の粉にまみれてからだが燃えた
燃え尽きる宇宙船のなか
わたしは笑顔になった
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なにもない更地に、こどもがひとり
「もう一度会いたいな」
それは寒い寒い冬のある日
空から降ったあたたかい雪が
更地を白く、きれいに染め上げていた
おわり
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幻想的な雰囲気ですね。乙。
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乙
雰囲気が良かった
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美しい
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乙
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