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サル「おむすびと柿の種を交換してくれないか?」カニ「いいよ!」
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サル「よう、カニ」
カニ「サルじゃないか。やけに頬がこけてるけど、どうしたんだい?」
サル「実はオイラ……最近あまりメシ食えてなくてさ」
サル「お前の持ってるおむすびと、この柿の種を交換してくれないか?」
カニ「もちろんいいよ!」
サル「サンキュー! 恩に着るぜ!」
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カニ「早く芽を出せ、柿の種、出さなきゃハサミでちょんぎるぞ〜♪」
カニ「なぁ〜んてね。ちょん切るわけないけどね」
サル「よう! こないだはありがとな!」
カニ「なぁ〜に、困った時はお互いさまさ」
サル「ところでさ、いい肥料を見つけたから、これ使ってくれよ」
カニ「ありがとう! これでむくむく木が育つよ!」
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カニ「やったぁ、ついに柿がなったぞ!」
カニ「だけど……このハサミじゃ木に登れないや」チョキチョキ…
カニ「いったいどうすればいいんだろう?」
サル「お、ついにあの種が実ったか!」
カニ「あ、サル! いいところに来てくれたね!」
カニ「頼みがあるんだけど──」
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サル「オイラが木に登って、柿を取ってくりゃいいんだな? お安い御用だ!」
カニ「ありがとう。お礼に、先に柿を食べてくれてもかまわないから」
サル「バカ、そんなことするわけないだろ? お前にはおむすびの恩があるしよ」
カニ「あんなこと、まだ覚えてたのかい」
サル「ったりめーだろ! あのおむすびがなきゃ、オイラ本当に危なかったからな」
サル「んじゃ、おしゃべりはこの辺にして柿を取ってきちまおう!」ヒョイッ
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サル「よっしゃ、どっさり取れたぜ! どれもよく熟れててウマそうだ!」ドサッ…
カニ「わぁっ、ありがとう!」
サル「さ、食おうぜ」
カニ「……うっ!」
サル「?」
カニ「ううっ……!」ドサッ…
サル「ど、どうした!? しっかりしろ!」
カニ「う、産まれる……! 赤ちゃん……!」
サル「ええっ!? ──ってか、お前メスだったのかよ!」
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カニ「大丈夫……。気にしないで、柿を食べて……」
サル「気にしないでって、そんなことできるかよ!」
サル「柿食ってる場合じゃねえ! とにかく……産むしかねえな!」
サル「オイラも他の猿の出産を見てたことがあるし、きっとなんとかなる!」
サル「えぇと……ヒッヒッフーって呼吸するんだ!」
カニ「ひっ、ひっ、ふぅぅ……っ!」
サル「いいぞ、その調子だ! がんばれよ!」
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サル「ふぅ……なんとか取り出せたな」
子ガニA「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
子ガニB「ふえぇ〜……!」
子ガニC「びえぇ〜ん……!」
サル「よくがんばったな! 三匹とも元気だ!」
カニ「……うん、手伝ってくれてありがとう」
サル「気にすんな! これもおむすびをもらった礼さ!」
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サル「どうだ、柿はうまいか? ってオイラの柿ってわけじゃないけどな」
子ガニA「おいし〜!」パクパク…
子ガニB「おいち〜!」シャクシャク…
子ガニC「うまい、うまい」モグモグ…
サル「ハッハッハ、産まれたばかりなのによく食いやがる」
サル「しっかし、柿はまだまだあるな……とても食い切れねえぞ」
サル「──そうだ!」
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ひっひっふー!支援!
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サル「なぁ! この柿、とてもオイラたちだけじゃ食いきれないだろうし」
サル「出産と誕生祝いに、柿パーティーでも開かないか! 他にもだれか呼んでさ!」
カニ「それはいいね、ぜひやろう!」
子ガニA「じゃあ、ぼくたちがあつめる〜」
子ガニB「あたしも〜」
子ガニC「うまい、うまい」モグモグ…
サル「お、やってくれるか!? じゃあ、四人ほど集めてきてくれ!」
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クリ「柿パーティー!? へへっ、喜んで参加させてもらうぜ!」
ハチ「今は女王様から休暇をもらっているのでな……よかろう」
フン「よろしいのですか? 牛のフンである私などが食事会に行っても……」
ウス「ウッス! ありがたくご馳走になるでごわす!」
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クリ「ちいっす!」
ハチ「……お邪魔させてもらう」
フン「こんにちは……。なるべくニオイを発しないようにしますので……」
ウス「ウッス、ご相伴にあずかるでごわす!」
サル(……こりゃまた珍妙なメンバーを集めてきたな)
カニ「それじゃ、柿パーティーを始めよう!」
子ガニA&B&C「いっただっきま〜す!」
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クリ「うん、こりゃうめぇぜ!」シャクシャク…
クリ「甘いし、汁気もあるし、歯ごたえもあるしよぉ!」
クリ「栗が柿食うっつうのも妙なハナシだけどな! もし桃がありゃ完璧だったぜ!」
ハチ「……ふむ」モグモグ…
ハチ「なかなかの味だ」
ハチ「一つ分けてもらい、女王様へ献上すれば、きっとお喜びになろう」
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フン「落ちついた甘味で、とてもおいしいです……」モグモグ…
フン「しかし、気になることが一点……」
フン「私は食べたものを排泄できるのでしょうか……。していいのでしょうか……」
ウス「うまいでごわす! おいしいでごわす! いけるでごわす!」ガツガツ…
ウス「美味でごわす! クセになるでごわす! デリシャスでごわす!」ガツガツ…
ウス「おかわりでごわぁ〜〜〜〜〜す!」
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サル「この分じゃ、すぐ柿がなくなっちゃいそうだな」
カニ「なぁに、あの木は元気だから、またすぐ新しい実をつけてくれるさ」
子ガニA「ぼく、たのしい〜」
子ガニB「あたしも〜」
子ガニC「うまい、うまい」モグモグ…
ハッハッハッハッハ……
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おいしく熟した柿に舌鼓を打ちながらも、
柿パーティー参加者の誰かが──いや、誰もが思っていた。
何かが違う、どこか物足りない、本当にこれでいいのか、と。
こんなにも平和で、柿は美味で、誰も傷ついてないのに、いったい何が不満なのだろう。
その答えを得る術を彼らは持たない。
きっと気のせいさ、何かの勘違いさ、と心の中で自身を説得しながらも、
どこかもやもやした気持ちを抱えながら、仲良く柿を頬張り続けるのであった。
〜 おしまい 〜
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ありがとうございました
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乙
他の話も見てみたい
平和な猿蟹もあっていいと思う
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乙
ハッピーエンドだけど…復讐劇の方が盛り上がるよな
これはこれで良かった
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おつ
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なんかわろた
おつ
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乙
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面白い
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優しい世界
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京都教区か?
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乙
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