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【とあるSS】壊れた窒素と、打ち砕く幻想【α-1】
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どうも、超>>1です
SS速報にて投下していたSSですが、嵐さんに埋められてしまいましたのでこちらにて投下することにしました
皆様には多大なご迷惑をおかけして申し訳ございません
このSSに関してですが、キャラクターには独自の設定を盛り込んでおります
そういったオリジナル要素が苦手な方はスレを閉じる事をお勧めします
それでも構わないという方はごゆっくり
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【過去作】
・絹旗「超窒素パンチ!」上条「その幻想をぶち殺す!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367384742/
↑SS処女作で痛い思い出満載です
・当麻「起きろ姉ちゃん、朝だぞ」麦野「んー…」【7日目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387343571/
↑こちらに関してはレス44-53、355-418、431-436が該当作品です
・エレン「童心を忘れていた俺達」
http://jbbs.shitaraba.net/internet/14562/storage/1391954101.html
↑進撃SSでかなり短いです
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・【とあるSS】壊れた窒素と、打ち砕く幻想
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378177878/
↑作者都合によりエタリました。今回はこれの改訂版です
・【とあるSS】壊れた窒素と、打ち砕く幻想【改】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401126752/
↑上記作品の改訂版……荒らしさんに埋められました
・壊れた窒素と、打ち砕く幻想【α】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401473241/
↑またまた埋められてしまいました
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【壊れた窒素と、打ち砕く幻想】
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『暗闇の五月計画』。
――学園都市最強の超能力者の演算方法の一部分を意図的に植え付ける事で、能力者の性能を向上させようというプロジェクト。
個人の人格を他者の都合で蹂躙する非人道的な計画だ。
性能を向上させる、それは聞こえがいい。
しかし、意図的に植え付ける、それはあまりに残酷で非道である。
そもそも人格とは、植え付けられるものではなく、積み上げていくものである。
その時の経験、環境によって自らが形成していくものだ。
プロジェクトには『置き去り』という、親元の行方が分からない少年少女、もしくは赤ん坊を用いられた。
非人道的な計画を進めるには、『置き去り』は最適な素材であったからだ。
が、計画は座礁に乗り上げた。
そもそも、自らが積み上げて形成する人格を、他者の手によって無理矢理植え付けるという行為に無理があったのだ。
プロジェクトに参加していた者達は途方に暮れた。
しかし、ある日。
素材に思わぬ数値を示したものがあった。
一つは攻撃性を示し、もう一つは防護性を示した。
それは学園都市最強の超能力者の演算部分の一端にしか過ぎなかった。
しかし、希望は見えた。
計画は更に進められ、深く、暗く、更なる混沌へと落ちていった。
…………
……
…
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暗闇に二つの影があった。
影の周囲は瓦礫で埋め尽くされ、平坦な場所は一切ない。
様子を伺うように、瓦礫の隙間から火が顔を出し、周囲を僅かに照らしている。
???「……これから超どうするつもりですか」
影の一つがもう一つの影に向かって言葉を投げかけた。
その声はまだ幼い。
???「さぁな。そっちはどうするんだよ」
もう一つの影が答えた。
その声もまた幼く、そしてやや刺があった。
???「んっ――」
答えようとしていた影が、突如吹いた風に言葉を奪われた。
瓦礫の隙間に隠れていた火が見計らったかのように顔を出し、炎へと姿を変えた。
目を細め、顔を背けたくなる程に、炎の存在は大きくなっていた。
???「ったく、超嫌な風です」
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言葉を奪われた影――いや、少女が悪態をつく。
声と同様、炎に照らされた横顔はまだ幼い。
小学生か、中学生くらいの子だろうか。
肩の部分で切れた橙色のタンクトップパーカーを羽織り、下には白地のシャツが覗く。
青色のショートデニムパンツを履き、白く細い太腿を晒していた。
少女と言うより、少年という印象が強い。
成長期の途中であると言う事も理由だろうが、起伏はほぼ無く、全体的に細身である。
被ったパーカーのフード下からは、焦げ茶色に染まったショートヘアーが収まっていた。
前髪に隠れた瞳にはどこか面倒臭そうな、まるで周囲にある全てをゴミとしか思っていないような冷淡さを感じさせる。
少女には、全く光を感じさせなかった。
子供のようで、子供ではなかった。
???「で、絹旗ちゃんはどうするんだよ」
仕切り直しと、影――いや、もう一人の少女が再度質問を投げかける。
瓦礫に腰を落ち着かせ、今にも転がって昼寝でも始めてしまいそうな少女。
パーカーの少女――絹旗と同様に、少女もまた小柄で起伏が少ない。
周囲の闇に溶け込むかのような、黒い衣服を身に纏っている。
自らを締め付けるような隙間のない革と鋲でできた衣服。
さらりと伸びた黒髪は、アクセントのつもりかもみあげ部分だけが脱色され、純粋ではない金色が炎の揺らめきに反応して輝いた。
暗闇をただじっと見つめる切れ長の瞳はまるで鋭い刃物。
眼窩にできた濃い隈がそれをより際立て、周囲を威嚇しているようだ。
レスポールとヤクが趣味ですとでも言わんばかりの風貌。
彼女もまた子供のようで、子供ではなかった。
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絹旗「まあ、しばらくは身を超隠すしか選択肢はないですね。とりあえず、この街で転々と暮らしていきますよ」
絹旗と呼ばれたパーカーの少女は、どこか遠くを見つめながら答えた。
そこには何の感情も浮かんではいない。
???「暮らすって言ってもよ、これがねえだろうが」
もう一人の少女が親指と人差し指で小さな輪っかを作った。
絹旗「それに関しては超問題ありませんよ。ほら」
絹旗はパンツの後ろポケットに手を突っ込み、数枚のカードを取り出した。
まるでトランプのように扇状に広げられたそれは、金融機関もバラバラの磁気カードであった。
そんな絹旗に対し、もう一人の少女は溜め息混じりに呟く。
???「あのなぁ、絹旗ちゃん。暗証番号って知ってるか?」
絹旗「……私を馬鹿にしてるんですか、黒夜」
絹旗の目が僅かに細められた。
相手を威圧するには十分過ぎる程の殺気が込められている。
しかし、絹旗の殺気を目の前にしたもう一人の少女――黒夜はどこ吹く風と言葉を紡ぐ。
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黒夜「暗証番号がわかんねぇなら、そのカードはゴミ同然だろうが」
絹旗「ご心配なく。このカードの持ち主達が、“ご親切”にも超教えて下さいましたから」
絹旗は自身の言葉に口角を釣り上げた。
三日月のような、不気味な笑みであった。
黒夜「ちゃっかりしてんなーおい」
黒夜は関心を通り越して呆れていた。
やれやれと肩をすくめる。
絹旗「よければ一枚差し上げますよっと」
絹旗は黒夜の返事を待たないまま、扇状に広げられたカードの中から適当に一枚抜き、指先に挟んで軽く手首を振った。
僅かなスナップで投げられたカードは空気を裂きながら回転し、切り裂こうと黒夜に迫る。
黒夜「どうも」
しかし黒夜は視線を僅かに動かしただけで、カードの動きを把握し、眼前に迫ったカードを左手の人差し指と中指だけで挟みとった。
絹旗「番号は裏面に記載しておきましたので……ああ、手元にペンが無かったので超汚いですが、そこは我慢して下さい」
黒夜「あん? ……ああ、そういう事かよ。別に気にしねぇっての、これぐらい」
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絹旗の言葉に、黒夜はカードを裏返した。
裏面には太い字、恐らく指で書いたのであろう四桁の数字が並んでいる。
赤でもなく、茶色でもなく、黒でもない。
そんな中途半端な色をした文字であった。
絹旗「さて、それでは私は超行きますので――また、どこかで会えたら会いましょう」
黒夜「おう」
絹旗はこれ以上話す事は無いと、黒夜に背を向け、暗闇へと足を踏み入れていった。
黒夜はそんな絹旗に向かってぼそりと呟く。
黒夜「――次に会った時は『新入生』としてな」
暗闇に溶けた絹旗に、黒夜の言葉は届かなかった。
そして、黒夜もその言葉を最後に、闇へと溶けていった。
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〜item〜
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学園都市。
総人口の約八割が学生で占められた科学の街。
しかし、それは学園都市の一端にしか過ぎない。
本質は、『人間を超えた身体を手にすることで神様の答えにたどりつく』事。
人間を超えた身体――『超能力』、即ち『脳の開発』。
学園都市に住まう学生達の脳の開発を行い、人を超えた力を手にする事が、この学園都市の目的である。
東京西部を一気に開発して作り出され、一部を神奈川や埼玉に及ばせながら東京都の中央三分の一を円形に占めている。
二十三の区に分けられ、学区ごとに特徴がある。
そんな二十三区の一つである、第七学区のファミリーレストラン。
昼時の店内は喧騒で溢れ、店員が慌しく動き回っていた。
席は既に満席であり、回転効率を上げるため、席は時間性となっている。
そんな中、店の一角を占拠する四人の少女達がいた。
???「――た――おい――はた」
???「……ん……あれ、超寝ていましたか」
???「涎垂らすくらいにはな。まあ、今日はオフだから別にいいわよ。ただ、今が仕事中だったらぶっ飛ばしてたからね」
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机に突っ伏して眠っていた少女の向かい側。
窓際に座る高校生ぐらいの女が腕組みをしながらそう零す。
ふわりとした栗色の髪が肩を撫でるように下ろされ、その髪から覗く表情には大人びた落ち着きを感じさせる。
切れ長の目は鋭く、可愛いというよりは、美人というイメージだ。
春という季節を表現したような桜色のスカーフを首に巻き、ベージュ色のコートを身に纏っている。
ストッキングに包まれた脚を組み、モデルであればかなりの高評価を得ることだろう。
どこかのご令嬢だったのか、一挙手一投足に抜け目が無い。
彼女こそ、学園都市最強の超能力者(LEVEL5)第四位――『原子崩し(メルトダウナー)』の麦野沈利である。
電子を曖昧な状態で固定し、操り、絶大な破壊を生み、全力であれば第三位の超電磁砲(レールガン)をも圧倒すると言われている。
しかし、強大な力には代償が付き物だ。
使い方を誤れば、それは自身を蝕み、崩壊させてしまう。
麦野「春眠暁を覚えずとは言うけど……それにしてもあんたは寝過ぎ。疲れでも溜まってんの?」
???「結局、絹旗はまだまだお子様っていう訳よ」
麦野の心配を他所に、紺色のベレー帽を頭に乗せた少女が小馬鹿にしたように笑う。
彼女の名前はフレンダ=セイヴェルン。
元々の黒髪を脱色したのではなく、純粋な金髪は流れるように腰まで届いていた。
丸みを帯びた青い瞳は、全てを見透かす怖さを感じさせながら、同時に可愛らしさも感じさせる。
学校の制服を改造したような紺色の服に身を包み、スカートは短め。
そのスカートの下から覗く脚は黒のストッキングによって保護され、白い肌を隠している。
見た目と名前から分かる通り、西洋の人間だ。
が、彼女の流暢な日本語から推測するに、日本で産まれたか、もしくは物心つかない頃に海を渡ってきたのだろう。
能力に関しては一切不明だが、とある事柄に関しては右に出る者はいない。
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フレンダ「ごふっ!?」
そんな小馬鹿に笑っていたフレンダが、奇声と共に机に突っ伏した。
絹旗「フレンダは超黙っててください」
フレンダを突っ伏させた張本人、絹旗最愛が握り締めた拳を解いた。
見た目は中学生ぐらいではあるが、童顔の為にもっと幼く見えてしまう。
橙色のパーカーを羽織り、下には白地のシャツ。
フードに隠れた髪は焦げ茶色。
青色のショートデニムパンツを履き、使い古されたスニーカーという身なりは少年と思われても仕方ないだろう。
しかし、当の本人は動きやすければそれでいいと、服装に関してはあまり興味が無いようだ。
四人の中では最年少である彼女。
そんな彼女もまた、能力者の一人である。
大能力者(LEVEL4)の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』。
窒素を纏い、そして操る彼女の能力。
それは、とある能力者を元に人工的に植え付けられたものだ。
暗闇の五月計画という、知る人は知る、非人道的な人体実験。
学園都市最強の超能力者(LEVEL5)第一位――『一方通行(アクセラレータ)』。
その演算パターンを無理矢理に脳に叩き付け、生まれたものだ。
???「……」
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そんな三人のやりとりをどこか遠くの出来事のように眺める少女。
艶めいた黒髪は、肩の辺りでばっさりと真横に切られている。
表情の変化は乏しく、無表情。
伏せがちな瞼からは、常時眠気を醸し出している。
寝間着に使うようなピンク色のジャージを私服同然に身に纏う。
だらしなく見えるその姿は、しかし、彼女にはぴったりの印象を与えていた。
それは、彼女が醸し出す雰囲気があまりに穏やかで、周囲の空気に溶け込んでいるからだろう。
滝壺理后……彼女もまた、異能の力をその身に秘めている。
有する能力は『能力追跡(AIMストーカー)』――大能力者(LEVEL4)。
能力者が無意識に発する電波――AIM拡散力場。
彼女はそれを記録し、探索、補足ができる。
例え太陽系の外に出ていたとしても、その位置は彼女の能力によって察知される。
滝壺「……東北東が騒がしい」
滝壺が虚空を見つめながら、呼吸にも等しい、電波じみた言葉を呟く。
他三人はいつも通りの日常として、そんな彼女の言動をスルーした。
年齢、能力、一部は国籍……それら全てがバラバラの彼女達。
しかし、そんなバラバラな彼女達にはある共通点がある。
性別ではない。
それは、彼女達がとある組織に所属している事。
組織名――『アイテム』。
学園都市の裏の顔、暗部。
学園都市内の不穏分子の削除及び抹消を遂行する為だけに存在する。
それが彼女達の共通点であった。
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絹旗「っ……私って超どれぐらい寝てました?」
寝起きの絹旗は目頭を抑えながら麦野に尋ねた。
麦野「三十分程。ここで熟睡されても後が困るし、悪いけど起こさせてもらったわ……今日の鮭弁、なんかしょっぱいわね」
絹旗の質問に答えながら、麦野は自身のテーブルの前に広げた鮭弁に箸を伸ばしていた。
それ以外の食べ物は見当たらない。
ちなみに、ここはファミリーレストランである。
料理を注文し、食べ、お金を払う場所である。
食べ物の持ち込みは基本的に禁じられている。
フレンダ「お、鯖の柚子胡椒味は意外といける! ……麦野も言ってたけどさ、やっぱり最近は頻繁に寝てるって訳よ」
そんな麦野の斜め右。
フレンダは近所のスーパーで購入してきた鯖缶に舌鼓を鳴らしていた。
改めて言うが、ここはファミリーレストラン。
注文、食う、払う。
この循環があって成り立つ場所である。
持ち込みなど以ての外である。
公園の片隅に鎮座するベンチではない。
滝壺「きぬはた、うなされている時もあるけど……何か悩み事でもあるの?」
ドリンクバーで淹れてきた飲み物で喉を潤す滝壺。
前者二人に比べ、こちらは比較的まともだ。
が、それ以外のものは一切注文しない。
ドリンクバーで長居される客は、店側としてはかなり迷惑である。
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店員「……」
現に、店員の迷惑そうな視線が四人へと注がれていた。
そして、今日に限って言えば、混雑時の対応として席の利用は時間性となっている。
既に彼女達が店内に入ってからの利用時間は、その制限時間を大幅に超越していた。
しかし、彼女達が占拠する席から発せられる、独特な雰囲気が店員の口を開かせない。
絹旗「……いえ、特には」
滝壺の質問に、絹旗は間を置いて答えた。
絹旗は背中を猫のように丸め、ソファーに靴を履いたまま膝を立てる。
膝小僧に顔を埋め、その姿は言葉通り、殻に閉じ籠もっているかのようだ。
滝壺「ふむ……元気が無いね。そういう時はこれだよ、きぬはた」
やや元気のない絹旗を見かね、滝壺はコップに注がれたジュースを差し出す。
絹旗は滝壺の厚意に緩慢とした動きで顔を上げる。
そして直後、眠気眼であった絹旗の目が見開かれた。
絹旗「……今日は何を超混ぜたんですか?」
滝壺「苺おでん、ジンジャー、ヤシの実サイダー、枝豆珈琲、後はえーっと……」
滝壺は視線を斜め上に向け、両手の指を一つ一つ曲げながら答えた。
絹旗の眼前に置かれた手の平に収まるコップに注がれた液体は、まるでヘドロのように渦巻き、泡が浮き上がっていた。
浮き上がった泡は、表面に出来た薄い膜をゆっくりと持ち上げ、そして裂いた。
この四人の中で、まともな人物は一人もいなかった。
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絹旗「滝壺さん、ご厚意だけで超結構ですので」
絹旗はそう言って、眼前に置かれたコップをおそるおそる、指先の僅かな力だけで机の上を滑らせた。
指先から伝わる力と机との摩擦が、注がれた液体に重たい波を作る。
絹旗はこれを片付ける店員の泣き顔が容易に想像できてしまった。
麦野「ったく、隣に座る私はたまったもんじゃねえよ」
麦野は眉間に皺を寄せ、明らかに迷惑そうな表情を浮かべる。
フレンダ「結局、味、臭い、見た目からして人間が飲んでいい代物じゃないって訳よ」
フレンダも同調して、滝壺の物体Xを批判する。
しかし、それがいけなかった。
フレンダは、超えてはいけないラインを超えてしまった。
絹旗と麦野は「あー……」と、哀れみの視線をフレンダに送ったが、彼女はそれに気付いてはいない。
滝壺「……そんなフレンダは応援できない」
フレンダ「ぎゃー!? 私の鯖がー!?」
フレンダの言葉が気に触ったのか、滝壺は自身が持つヘドロ状の液体を彼女の眼前にある鯖缶の中へと流し込んだ。
ヘドロが流し込まれた事によって、鯖は底へと沈み、ついには姿を消した。
そんなフレンダの悲惨な結末を目の当たりにして、麦野は自分の食す鮭弁を、数センチ程避難させた。
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フレンダ「何するって訳よ!?」
滝壺「今の言葉は流石に聞き流せなかった」
机に足をかけようかという勢いで、フレンダは立ち上がる。
店内の店員や客が何事かと振り返り、フレンダ及びその周囲の三人に視線を向けた。
麦野「ちっ……おい、フレンダ。目立ち過ぎんだよ。とっとと座れ」
フレンダ「うっ……ごめんって訳よ」
麦野の刺のある言葉と冷めた瞳に、フレンダは渋々自分の席に腰を下ろした。
そして、異様な液体で満たされた缶詰に箸を突っ込み、鯖を救出しようと試みる。
絹旗「フレンダは超一言が多いんですよ」
絹旗の呟きに、しかしフレンダは反応を示さない。
目の前の鯖缶に集中しているようだ。
フレンダ「鯖……鯖……あ、あったって訳よ!」
粘着質な音を立てて、鯖がヘドロの中から持ち上げられた。
フレンダは目を輝かせて喜びを表現した。
しかし、
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フレンダ「……へ?」
喜びもつかの間。
絹旗「……超ありえません」
鯖は箸から逃げるように滑り、そして再びヘドロの中へ。
包まれるようにして液体に着地すると、僅かに顔を出した部分がボロリとその形を崩した。
そして最後には液体と混ざり合い、固形と呼ばれるものが一切見当たらない状態になってしまった。
滝壺「流石、私のスペシャルドリンク」
一部始終を見て、滝壺は僅かに上半身を反らし、満足気に鼻を鳴らした。
そんな彼女とは対照的にフレンダは口を半開きにして天井を仰いだ。
絹旗はそんなフレンダの悲惨な現状を目の当たりにして、ほんの少しだけ滝壺から距離を置こうと座り直した。
麦野「ったく、こんな事で一々騒ぎやがって……あんたら餓鬼かよ」
鮭弁を空にした麦野が三人のやりとりに前髪を掻き揚げた。
そして、そんな彼女の溜め息混じりの言葉に三人は揃って顔を上げた。
フレンダ「高校生」
絹旗「中学生」
滝壺「高校生」
麦野「……あんたらの精神年齢が低い事はよくわかったわ」
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麦野は席に背を預けた。
不機嫌そうに眉根を寄せるが、別に機嫌が悪い訳ではない。
ただ単に疲れただけだ。
切れ長の瞳は彼女の様を美人にも見せるが、ちょっとした事で相手に勘違いさせてしまう。
麦野は自分をそれなりの容姿と認識してはいるが、美人も美人で色々と面倒であるという事も認知している。
そんな彼女の表情の変化に、しかし他三名はいち早く気付く。
この四人というメンバー意外であれば勘違いしてしまうであろう。
だが、このメンバー内ではその勘違いは生まれない。
それだけこの四人という繋がりは太く固いものであるという証拠であった。
フレンダ「結局、こういうところで息抜きしないとアイテムの仕事なんてやってらんないって。最近なんて働き詰めだったし、麦野もお疲れって訳よ」
麦野「どうも。けど、だらけ過ぎんなよ。オン、オフを切り換えれない奴は、アイテムにはいらないからね」
労いの言葉をかけるフレンダに対し、しかし麦野は視線で威圧した。
フレンダ「……なんで、私を見るって訳よ」
麦野の圧ある視線が、フレンダを捉える。
フレンダはその視線に身体を震わせた。
麦野「調子こいて、いっつもいっつもいっつもヘマをするのはどこのどいつだと思ってんだ? あぁ?」
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この疲労はお前のせいだと言わんばかりの語気の荒さがフレンダに向けられた。
そんな言葉を向けられた本人は「ごめんなさい」と瞬間的に額を机に擦りつけた。
その勢いは机に頭突きを食らわせるが如くであった。
そんなフレンダに対し、麦野は腕を組み、足を組み直して再び席へともたれかかる。
正直、彼女としてはまだ言いたい事が山程あった。
ただ、これ以上追い込めばそれが緊張という枷になり、更なるミスへと繋がってしまう。
フレンダの性格を考慮した上で麦野は口を閉ざしたのだ。
しかし、やはり言い足りない。
何かで鬱憤を晴らす事はできないものか、と麦野は考えを巡らせてみる。
麦野「あん?」
そこに突然、甲高い電子音が鳴り響いた。
麦野の羽織るコートの右ポケットから早く出せと急かすような音。
眉を潜める麦野に対し、そして、そんな彼女の表情から他の三人の表情が固くなる。
他三人の表情の変化に構わず、麦野は面倒臭そうにポケットから携帯電話を取り出し、通話ボタンを押した。
麦野「今日はオフ。それじゃ――」
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相手の用件も聞かず、そしてすぐに通話終了のボタンを押そうとする麦野。
???『ちょ、ふざけんな! 今後のギャラ減らすわよ!』
しかし、電話の向こう側から、これでもかと張り上げた声が、それを押させない。
それは、若い女性の声だった。
麦野達の直属の上司でもある。
声と性別以外のあらゆる情報は不明。
四人はその電話相手の上司を、『電話の女』とそのままの意味で呼ぶ。
麦野「ちっ……テメェ、今日は仕事ねえって言ってただろうが」
麦野は聞こえるように舌打ちしてから、用件を尋ねた。
電話の女『絶対無いとは言ってないでしょうがー! ……まあ、とりあえず今日いきなりで悪いんだけど働いてもらうわよ』
電話の女はいつもの事なのか、麦野の舌打ちに関して気にも留めず、話を続ける。
麦野「わーったよ。で、用件をさっさと言え」
電話の女『はいはい。で、あんたらにやって欲しいのは十一学区にある――』
仕事の内容を告げられ、『アイテム』の一同は席を立つ。
そこには、先程までのお気楽な雰囲気は皆無であった。
彼女達がようやく席を離れた事に、店内の店員から疲れたような視線が飛ばされる。
四人はその視線に気付きながらも、特に気にしてはいなかった。
仕事。
彼女達の頭にはそれ以外の思考は既になかった。
『アイテム』が、動き出した。
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<font color="#000000">
†
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<font color="#000000">
第十一学区にある某研究所内。
四人は電話の女からの命令で、施設破壊の命を受けてやってきていた。
施設破壊、それは施設の機能を完全に停止させる事。
それは、そこにいる人間も含まれている。
現在、建造物内の主電源は落とされている為、内部は予備電源による淡い光だけで照らされていた。
しかしそれはあまりに頼りなく、蝋燭の火のように、そよ風で消えてしまいそうな程だ。
フレンダ「結局、こんな仕事をアイテムに押し付けるなって訳よ」
薄暗い通路を歩く二つの小さな影。
絹旗の隣を歩くフレンダが、両手を大袈裟に挙げてそう零した。
いつもなら裏方に徹するフレンダだったが、今回は何故か前線に出ていた。
その理由は、仕事内容があまりに簡単すぎるからであった。
フレンダ「能力者もいない施設の破壊って、結局赤ん坊でもできるって訳よ」
が、簡単過ぎるからと言って、手は抜いてはいない。
普段裏方に徹するフレンダの仕事。
それは――
フレンダ「お、通路A−3のセンサーに引っ掛かった馬鹿がいるって訳よ」
フレンダの携帯端末が震えた。
取り出した端末のロックを解除すると、液晶画面には建造物内の設計図と思われる図面が表示されていた。
図面には数十、数百に及ぶ数の赤い印が付けられている。
その赤印の一つが点滅していた。
主に建造物内の出入り口を集中的に配置された赤印。
それは、フレンダお得意の罠が張り巡らされている印であった。
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<font color="#000000">
フレンダ「結局、私の爆発はいつも大活躍って訳よ」
――彼女の十八番である、爆弾での誘導、妨害、破壊。
それが、フレンダ=セイヴェルンの仕事であった。
原始的な爆弾、学園都市の最先端技術を用いた爆弾。
彼女にとってそれは分けるものではない。
彼女にとってそれが爆発するかどうかが重要なのだ。
それさえ同じであれば、どんなものでも扱える。
アイテムという大能力者(LEVEL4)以上の人間ばかりで埋もれているが、彼女もまた立派な戦力の一人であった。
フレンダ「……さっきからずっとだんまりだけど、結局、聞いてるって訳?」
一人盛り上がっていたフレンダが、痺れを切らして隣を歩く絹旗の顔を覗き込む。
絹旗「……ええ、聞いてますよ」
パーカーのフードに隠れた目が、覗き込むフレンダを見下ろす。
フレンダは、そんな絹旗の視線に一瞬固まった。
彼女の目があまりに冷め、恐怖を覚えたからだ。
それは、仲間に向ける目ではない。
その目を、フレンダは見た事がなかった。
フレンダ「(“あの部屋”に入ってからなんか様子がおかしいのよね……)」
極力視線を合わせないで、かと言って余所余所し過ぎないようにフレンダは努めた。
そして、絹旗が今のような状態になった事について思案する。
フレンダ「(うーん……とりあえず、さっさと仕事を終わらせて帰るって訳よ!)」
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<font color="#000000">
内心で意気込むフレンダ。
絹旗は相も変わらず、無言を貫いていた。
フレンダ「っと、ここって訳よ」
研究施設の中枢。
ここを破壊するのが、今回の最低限の仕事でもある。
しかし、その仕事の遂行を阻むかのように、部屋の扉は固く閉ざされていた。
フレンダ「ま、当然って――」
フレンダが扉を見上げ、面倒臭そうに呟こうとした。
しかし、それは突然の破壊音によって掻き消された。
フレンダが仕掛けた罠が作動した音ではない。
重く、のしかかるような轟音。
絹旗「……ちっ」
絹旗が小さく舌打ちをした。
その原因は絹旗の目の前にあった。
強行突破を試みようと、絹旗が能力を用いて扉を破壊しようとしたのだ。
が、扉は絹旗の能力を用いても破壊されず、僅かなへこみが出来た程度。
フレンダ「ちょ、絹旗!?」
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<font color="#000000">
流石のフレンダも声を上げずにはいられなかった。
それは、普段の絹旗からすれば考えられないような行動だからだ。
フレンダから見た絹旗は、もっと冷静に物事を分析し、その行動がどのような影響を与えるかを予測する。
アイテムのメンバーで言えば、麦野に近いタイプである。
そうフレンダは思っていた。
しかし、今の絹旗の行動は全くの無意味。
何も考えていないという、ただの馬鹿がやる行動だった。
フレンダ「(……やっぱり、ここ最近はおかしいって訳よ)」
今日に限ってではない。
ここ最近、絹旗の行動に不可解な点が多く見られた。
それに気付いたのは、フレンダだけではない。
今はこの場にいない、麦野と滝壺の二人も気付いている。
が、どうやら麦野と滝壺は、絹旗がどういう状況にあるのかを知っているような態度ではあった。
フレンダ「(結局、私も二人に相談しておくべきだったって訳よ……)」
フレンダは溜め息を吐きながら、再度扉を殴りつけようとする絹旗に静止の声をかける。
フレンダ「結局、ここは私の出番って訳よ」
絹旗「……能力が超ないくせに、どう開けるつもりですか?」
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-
<font color="#000000">
遠慮のない言葉が、フレンダの癪に障る。
が、ここで喧嘩に発展させる程、フレンダは無能ではない。
絹旗の様子がおかしいのは確か。
フレンダはそれらを考慮し、滲み出そうな感情をぐっと堪える。
フレンダ「絹旗、ツァーリ・ボンバって知ってる?」
絹旗「フレンダのような爆弾オタクではないので超知りません」
フレンダ「結局、私には褒め言葉って訳よ」
フレンダは無い胸を張り、手の平に収まる小瓶をどこからともなく取り出した。
瓶はコルクで蓋をされ、更にその上から針金が二重、三重と巻かれている。
その中には透明な液体が瓶の半分を満たしていた。
フレンダ「ツァーリ・ボンバ――通称『爆弾の皇帝』。ソビエト連邦が開発した人類最大の水素爆弾って訳よ」
絹旗「水素爆弾……それって核爆弾ですよね? こんなところで使用して、超大丈夫なんですか?」
フレンダ「勿論、私が持ってるこれはツァーリ・ボンバを小さくしたもの。本物なんて使ったら、学園都市が吹っ飛ぶって訳よ」
まるで新しい香水を手に入れたかのように、フレンダは小瓶を手の中で弄ぶ。
フレンダ「けど、これは本家のような水素爆弾じゃない。液体爆弾と燃料気化爆弾を混合したもの」
絹旗「燃料気化爆弾ですか?」
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フレンダ「そ。学園都市で開発された気体爆弾イグニス。試作段階だけれど、その威力は充分過ぎるって訳よ」
絹旗「そうですか……では、その威力を超早く見せてください」
いつ終わるか分からない爆弾講座に絹旗は苛立っていた。
腕を組み、壁にもたれかかって、早くしろと言わんばかりにフレンダを睨む。
フレンダもその苛立ちを肌で感じたのか、慌てて固く閉ざされた扉の前にしゃがむ。
フレンダ「そ、それじゃあ、ちょっと準備するから、絹旗は少し離れた場所で待ってて欲しいって訳よ」
フレンダの額に冷や汗が浮かんだ。
絹旗はそんなフレンダを見下ろしながら、
絹旗「ええ、なるべく早く頼みます」
と、右手の指の関節を鳴らした。
それから数分後、鼓膜を破く程の轟音が施設を揺らした。
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†
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地面を叩くヒールの音が、施設内に木霊する。
一定のリズムで叩かれる音に、もう一つ。
まるで親鳥の後を懸命に追う雛のような可愛らしい足音。
麦野「あーつまんない仕事ねー。スライム殺したって、大した経験値(ギャラ)になんねーってのによ」
麦野がつまらなそうに髪の先を指で弄んだ。
彼女が歩いてきた道には、無残な死体が幾つも転がっていた。
この施設内にいた、研究員達だ。
フレンダの罠によって誘導された鼠でもある。
滝壺「むぎの、お疲れ様」
もう一つの音の正体、滝壺が麦野の後ろから声をかける。
歩幅が違うため、若干早歩きだ。
滝壺「二人、終わったかな?」
滝壺が前を歩く麦野へと話題を振る。
緊張感の全くない声は、この惨状の前ではあまりに不釣り合いだった。
麦野「終わったら終わったで連絡するようには言ってある。とりあえず、私達は私達の仕事をしておけばいいのよ」
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施設内には複数の出入り口が存在する。
そのほとんどが電源を落としてしまえば稼働しないものである。
しかし、それはほとんどであり、全部が全部稼働しなくなるわけではない。
予備電源に切り替わる出入口が一つだけ。
麦野は今回の依頼内容である施設の完全破壊、それを考慮してフレンダと絹旗を前線に、自分と滝壺を裏方へと置いた。
本当は自分がフレンダと組めば手っ取り早いのだが、しかしそうするとフレンダが緊張してしまう。
そう言うのも、フレンダと麦野の仕事上での相性はあまり良くないからだ。
細かいミスが多いフレンダに対し、常に激を飛ばす麦野。
それが積み重なった原因で、フレンダは麦野がいるといつもできる事でさえできなくなってしまうのだ。
麦野「(あー……人間って本当、面倒臭いわ)」
乱暴に髪を掻き上げる麦野。
彼女としては不機嫌を表した行動の一部ではあるが、しかしそれなりの見た目をした彼女がやるとそれは相手を魅了する仕草へと変わる。
麦野「さっきの揺れと爆音からして、中枢部に突入したんでしょうね。あの二人ならそろそろ……」
そうボヤいていると麦野の携帯端末が突然震えた。
噂をすれば、と彼女はコートのポケットの端末を取り出した。
淡い光を放つ液晶にはフレンダの名前。
慣れた指捌きで操作する麦野。
彼女は通話が繋がると同時に口を開こうとしたが、しかしフレンダの声がそれを遮った。
フレンダ『む、麦野!? ちょ、やばいって訳よ!?』
仕事の完遂の連絡かと思えば、フレンダの慌てふためく声。
麦野はまた何かやらかしたのか、と溜め息を零す。
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麦野「おい、本気でギャラの配分考えんぞ」
重い一息を吐き、麦野は滝壺へと視線を向けた。
アイテム創立当初から彼女を見てきた滝壺はその意図を瞬時に理解し、自らの能力を用いて二人の所在を探り始めた。
学園都市には様々な階級の能力者が存在する。
そんな階級の中で最高位にある超能力者は現存七人のみ。
人口約百八十万人に対しての七人という、極めて稀少である。
滝壺はそんな稀少な存在である超能力者の八人目になれる最も近い存在と言われている。
アイテムの要でもあり、その能力の干渉は超能力者にまで及ぶため、脅威とされている。
その脅威というのは、学園都市の機能を全て一人で補えると言っても過言ではない。
一度でも相手の能力――AIM拡散力場に触れさえすれば、その能力者を操る事ができる彼女。
しかし、彼女には一つ欠点があった。
それは、能力を使用するには意図的に暴走する必要があった。
学園都市暗部でも禁忌とされる薬物――『大晶』を用いて、初めて真の力を発揮する事ができる。
が、それは勿論、使用者に多大な負担をかける事は免れない。
意図的に引き出す事がどれほどのものか。
滝壺はそれを知りながらも、仲間のためにと、能力と『大晶』を使い続ける。
ただ、今回は然程範囲も狭く、大晶を用いずとも能力を使用する事は可能である。
それでもやはり、能力を使用する度に投薬を続けていた彼女の身体は、通常時の能力使用でさえ息があがる行為だ。
滝壺「っ……はぁ……うん……やっぱり中枢部にいるみたい」
滝壺が声を整え、額に脂汗を滲ませながら施設内の壁に向かって話しかける。
視界を覆う壁だが、しかし彼女はその壁を見てはいない。
その何重にもして連なる壁の先にいるフレンダと絹旗を見ていた。
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フレンダ『絹旗っ、もういいから! 終わってるって訳よ!』
滝壺「!?」
麦野「っ……!?」
突然の叫び声に、麦野は瞬時に携帯端末から耳を話した。
それは少し離れた場所に立つ滝壺にまではっきりと聞き取れる程であった。
麦野「おい、どうした。絹旗がどうかしたのか?」
麦野は携帯端末を持ち替え、反対側の耳へと押し当ててフレンダへと問いかけた。
滝壺はただただ、事の成り行きを見守るしかできないでいた。
フレンダ『き、絹旗が! 絹旗が――きゃっ!?』
端末越しに聞こえるフレンダの叫び声。
その背後で何かしらの音がする。
麦野は耳だけの情報で、何が起こっているのかを想像し、予測する。
麦野「(……ああ、聞き慣れた音がするな)」
それは暗部に染まっている麦野にとって聞き慣れた音であった。
不快で、腐った果実のようだと彼女は思う。
麦野「フレンダ。今から私と滝壺でそっちに向かう。お前は下手に手を出すなよ。下手したら巻き込まれからな」
フレンダ『っ……う、うん。わ、分かったって訳よ』
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フレンダの声からするに時既に遅しといったところか。
麦野はフレンダとの通話を終えると、滝壺に無言でついて来いと視線で語る。
滝壺「……」
しかし、滝壺は麦野の視線に気付いていながら歩き出そうとしなかった。
そんな彼女に対して麦野は「おい」と一言声をかける。
滝壺「ねぇ、むぎの……そういえば、“そろそろ”だよね?」
滝壺は今、自分の仲間がどのような状態にあるのかを察していた。
麦野「……ああ、そろそろだろうな」
そして、麦野も知っていた。
現在進行形で、仲間が苦しんでいる事を。
その苦しみは、自分達ではどうしてやる事もできないという事も。
滝壺「なんとかしてあげれないのかな……」
滝壺は無駄である質問を投げかける。
彼女の頭の中に、一人の少女の顔が浮かんだ。
それは明るく、無邪気で、妹のような存在。
けれど、気付いていた。
その妹のような存在は心の底から笑っていない事を。
滝壺は感じていた。
まだ、壁があるという事を。
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<font color="#000000">
麦野「……さっさと行くわよ」
麦野は感傷に浸る滝壺に背を向けた。
それは、彼女なりの優しさであった。
滝壺「……うん」
その優しさに滝壺は一言頷いて応えた。
麦野「(ったく……どこのどいつだ)」
麦野は内心で悪態をつきながら中枢部へと向かった。
麦野「(私の“道具”に手を出した野郎は……)」
アイテムのリーダーとして弱音を見せない。
そもそもリーダーとは頼られ、そして同時に畏怖される存在にならなければならない。
だから麦野は誰にも聞こえない、自分の中に語りかける。
しかし、
麦野「……クソッタレが」
その感情は自分の内だけには留めておける程軽いものではなかった。
ヒールのリズムが僅かに早まり、そして、もう背後の音も早まった。
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とりあえず今夜はここまで
亀の歩みですが今後共よろしくお願いします
……最後の最後で誤字を発見してしまった
ではまたノ
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乙‼
頑張ってくれ
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こっちにきたのか乙
深夜はsagaいらないぞ
-
乙
-
そういえばこれ丁度シュラバーになりそうな場面で中断してたな
そこまでなっがいなー
-
乙
頑張れ
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つまんな
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糞スレ
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支援する
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深夜に来るな
速報に帰れ
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何だここではスクリプト使えないのか
頑張って手動で埋めてね
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荒らしても規制されるだけじゃないの
速報行ったって>>44->>47とかが荒らすだけだし
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乙です
今度こそ完結できるといいですね
初代「壊れた窒素〜」の改訂版だそうですが、大規模な変更をしないのでしたら続きからでも良かったのですが…
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マイナーな組み合わせ過ぎてワロタ
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つまんねやめろ
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深夜にくんなクソムシども
速報に帰れゴミ
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窒素通行なら面白そう
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ここならあらしのペースが遅い
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こっち来たのか!乙!!
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このスレくっさ
やめちまえ
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臭う
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うん●スレだから
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一方「あっ・・・・・」ブリブリブリブリブリビチャビチャビチャビチャビチャ
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こっちだと埋められないのかw
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一通り読んだけどつまらん文章だな
気持ち悪いから速報に帰れ
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取り巻きキンモー☆
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一人で頑張ってる姿が惨め過ぎwwっうぇうぇwwっうぇwww
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え、むしろ埋めて欲しいの?
なんてドMなスレだ
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なんか信者ついてんのな
気持ち悪
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頑張れ荒らしちゃん
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横から悪いが批評は荒らしじゃないんじゃないか?
自分の気に入らない意見を荒らし認定してたらそれこそ盲目な信者って感じがするけど
まあ俺のレスも荒らし認定されるかもしれんが
長文失礼
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確かに駄文
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確かに駄文スレ
-
確かに駄文スレ
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>>68
絹旗スレを速報からずっと荒らして埋めてるやつがいるんだよ
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SS読んでないけど荒らしひどすぎワロタ
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どうも、超>>1です
書き溜め分を透過しますね
いやーなんか色んな意味でスレが盛り上がっています
皆さん、無理して夏バテしないでくださいね?
夏バテにはひじきがいいそうです
私は嫌いなので遠慮しますが……
あ、そういえばレスの中に続きからでもよかったという人がいるようですが、これは私の勝手な都合です
一度手放した話を途中から書くというのはなかなか難しく、それなら一から書き直そうと至りました
全く同じような箇所もあれば、追加したり、削ったりした場面もあります
私としては初めから読んで頂くことをお勧めします
ご迷惑をおかけして申し訳ございません
それでは、投下始めます
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†
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壁一面がコンピューターで囲まれた部屋に二人の少女がいた。
一人は絹旗最愛。
もう一人はフレンダ=セイヴェルン。
強固な扉を突破するために先刻、爆弾を用いた方法で突入しようと試みた二人。
慣れた手付きで準備を進めたフレンダが扉を破壊するまでの時間は五分とかからなかった。
そして、フレンダが用いた爆弾の威力は想像以上であった。
が、中枢部を守る扉はそれ以上であった。
フレンダの予想立てとしては、扉どころか中枢部の中にいる人間、機器に至るまでが跡形もなく吹っ飛ぶ筈。
しかし、扉の強度は強固で、施設全体を揺らした爆発は扉をひしゃげる程度にしか破壊しなかった。
今回の依頼内容の最低ラインがこの中枢部の破壊。
最低ラインなだけあり、最高の守りで情報を保護していた。
それでも、絹旗にとっては僅かな隙間ができれば充分であった。
窒素で纏った己が身体を突っ込ませ、内部へと侵入。
侵入後は、排除、破壊。
たったそれだけだった。
それが、フレンダの頭の中にはあった。
しかし、絹旗の頭の中には何もなかった。
ただ、敵を嬲り殺す。
それだけで埋められていた。
最終目標である情報の抹消など彼女にはどうでもよかった。
絹旗「……超面白みがありませんね。もっと私を楽しませてくださいよ」
絹旗の腕が雑に振るわれた。
何かに跨り、窒素に包まれたその腕は、対象を無残にも押し潰し、赤い液体が飛沫となる。
液体は絹旗の服、髪、顔と全身を濡らし、染み込んでいく。
絹旗「……超、汚いです。これ、結構値が張るんですよ?」
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<font color="#000000">
対象はこの研究所の研究員の一人。
しかし、そこには人と呼べるものは一切なかった。
果実を潰したように、どこがどのパーツであるかすら分からなくなる程に分解されていた。
分解と言っても、それは鋭利な刃物で寸断されたわけではない。
無理矢理に引き千切り、筋、皮、肉、骨の断面がどこにあったのかすら分からなくなっていた。
絹旗「ほら、ちょっとは抵抗してみてくださいよ。これじゃ、超イジメているみたいじゃないですか」
絹旗は細切れになった果実に腕を振るいながら語りかける。
フレンダ「き、絹旗、もういいって訳よ!」
絹旗の残虐非道な行為を側で見守るもう一人の少女、フレンダが叫ぶ。
そんな彼女の唇の端から、僅かに血が滲んでいる。
よく見ると身体のあちこちに擦り傷があり、衣服にも破れが見られる。
それは全て、暴走する絹旗に巻き込まれた結果だ。
絹旗は仲間であるフレンダの事を一切考えない立ち回りで能力を行使。
様子がおかしいと気付いたフレンダが麦野達に連絡を取っている間に、研究員もろとも吹き飛ばされたのだ。
致命傷こそ無いが、しかし針で刺したような痛みがフレンダを襲う。
そして、その痛みは外傷によるものだけではない。
フレンダは思う。
なんで、と。
その痛みと言うのは、心の痛みでもあった。
フレンダ「もうやらなくていいんだよ、絹旗!」
フレンダは再度絹旗に問いかける。
その問いかけは微かに震えていた。
</font>
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<font color="#000000">
絹旗「何を言っているんですか。まだ、ここに超“ある”じゃないですか」
フレンダの叫びに、絹旗は初めて応えた。
しかし、フレンダに向けられたのは声だけ。
絹旗の視線は未だ虚空を見つめていた。
フレンダ「っ……」
そんな同僚の姿にフレンダの足が震え、言葉を詰まらせた。
本来の目的である仕事は終わった。
中枢部の機器も研究員も、絹旗の援護で転がした。
後は帰って、暖かい風呂に入って寝るだけの筈だった。
しかし、絹旗は仕事が終わっても尚、何かに摂り付かれたかのように解体を楽しんでいた。
それはもはや仕事ではない。
それは無意味な労力だ。
一般人など、急所を貫けばそれだけでいい。
後は下部組織に回収を任せればいいだけの話だ。
絹旗は笑う。
こんな絹旗を見た事がない。
フレンダは、恐怖した。
出会った当初からこのような行動を起こす人物ならまだ分かる。
が、絹旗の場合は違う。
今までがあった分、フレンダは目の前の少女の奇異な行動に驚きを隠せずにいた。
絹旗はそんなフレンダの事などどうでもいいのか、息のある無し関わらず、人の一部分だろうと、片っ端から潰していた。
例え腕一本、脚一本、指一本であろうと、挽肉に、細切れにするまで続いた。
絹旗の周りには既に十数体にも及ぶ屍――いや、屍だったものが床を濡らしていた。
まるで吐瀉物のようだ、とフレンダは思った。
その吐瀉物から発せられる臭い、そして視界に広がる残虐の爪痕。
</font>
-
<font color="#000000">
暗部で血生臭い事に慣れていたフレンダでも、口と鼻を手で覆いたくなる程であった。
研究員「うぅ……」
絹旗「おや? こっちの“玩具”はまだ超息の根があるみたいですね」
部屋の隅からの呻き声に絹旗は即座に反応した。
彼女の視界の先には、生まれたての子鹿のように這い蹲る男の研究員が一人。
潔癖な印象を与える白衣はフレンダの爆弾の影響を受けたのか、煤で薄汚れていた。
しかし、幸か不幸か、その爆弾の余波のお陰で物陰に飛ばされ、絹旗の魔の手から逃れらたのだ。
ただ、一つ問題点を挙げるとすれば、声を出すべきではなかった。
そのまま気絶した振りを続けていれば、毒牙にかかる心配もなかった。
彼の運命は、声を漏らしてしまった時点で終わっていたのだ。
絹旗「いやー貴方は超運が良いですね」
絹旗は三日月のような笑みを浮かべ、一歩また一歩と部屋の隅に蹲る研究員へと近付いていく。
退路を絶たれた研究員は立ち上がる事もできず、ただ壁に背中を擦り付けるだけしかできなかった。
その姿はあまりに滑稽であり、そして正直な反応であった。
研究員「こ、この化け物が!」
研究員は最後の悪足掻きと、懐から取り出した護身用の拳銃を絹旗へ向けて発砲する。
乾いた音が発せられた。
狙いも定めずに放ったその一撃は、絹旗の右頬を僅かに掠っただけであった。
掠った銃弾は彼女の頬肉を抉り、真一文字の傷がつく。
すぐに赤い線が走り、線は次第に膨らみ、重力に押し負けて頬を伝っていった。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「化け物、ですか……」
絹旗は傷を負った事など気にせず、研究員へと詰め寄る。
研究員は銃弾を掠ったにも関わらず、一歩また一歩と近付く絹旗に驚愕した。
手にした銃が震え、引き金を引こうにも、何かが邪魔をする。
次第に腕が下がり、目に涙を貯めていた。
研究員は気付いた。
これが本当の恐怖なのだと。
それは彼がこの生涯最後の研究成果となる感情であった。
絹旗「私を化け物に超したのは、誰なんでしょうかね?」
絹旗は研究員の首に左手をゆっくりと伸ばし、締め上げ、そして身体を持ち上げる。
身長差があるため、研究員は膝をついたまま持ち上げられる形となった。
彼が手にしていた拳銃は床に滑り落ち、二度と主の元に戻る事はないだろう。
その細腕からは考えられない、まるで万力で締められたかのような圧迫感に、研究員が苦痛に顔を歪める。
声もまともに出せないのか、呻き声を上げる事が精一杯のようだ。
絹旗「貴方達なんですよ。私を、私達を鼠としか思っていない貴方達なんですよ」
絹旗の見開かれた瞳が研究員を捉える。
まるで人形のように光のない瞳だ。
全ての光を吸収してしまいそうな、暗さがそこにはあった。
絹旗「あの時も、そして“この研究所”でも……っ!」
研究員「っ……」
</font>
-
<font color="#000000">
研究員の視線が定まらない。
今にも意識を失ってしまうだろう。
しかし、絹旗はそんな事はしない。
そんな生温い最後にはしない。
絹旗「……まあ、中には化け物にすらなれなかった者もいますから、超感謝はしているんですよ? だから……」
そう言って、絹旗は研究員から手を離した。
マリオネットの糸が切れたかのように、研究員は重力に逆らう事なく床に崩れ落ちた。
絹旗「……化け物にしてくれた御礼です。超楽しい事をしてあげましょう」
絹旗の口角が限界まで上げられた。
それは刃物のように鋭利で、綺麗で、不気味で、妖艶さが混じっていた。
研究員は今から起こる事に恐怖し、途切れそうな意識で首を横に何度も振った。
しかし、絹旗は忘れない。
過去の自分も嫌がった。
痛かった。
怖かった。
暗かった。
けれど、その願いは聞いてはもらえず、ただ数値を図るためだけに弄ばれた。
それが今度はされる側になって、途端に拒否するとはどういう事か。
なら、最初からやるな。
それは、大罪。
許される筈がない。
例え、神様が許しても、私は許さない。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗は右手の指と指の隙間を閉じ、板のように指先を限界まで伸ばした。
そして倒れる研究員に向かって全体重を乗せた右腕が彼の腹部へと突き刺さった。
中指、薬指、人差し指と、全ての指が肉を裂き、内部に侵入するのは一瞬であった。
ついには手首まで埋まり、もう少し突き進めば貫通するだろう。
研究員「――――っ!!」
研究員の声のない叫び声。
彼は腹部の違和感に吐き気を催した。
指先までもが痙攣し、痛みを通り越し、熱さを感じていた。
絹旗「あはっ」
絹旗はそんな研究員の姿を愛おしく思えた。
手に纏わりつく滑り気と温かさ。
苦痛に歪む表情。
それが、絹旗の喜びに変わり、笑みとなった。
過去に暗闇の五月計画の被験者として鼠(ラット)に成り下がった絹旗。
当時の研究者共は何かを発見する喜びと同時に、鼠が転げ回る様を楽しんでいたのだ。
と、絹旗は自身が現在、当時の研究者共の側にいて、初めてそれに気付いた。
まるで陸に打ち上げられた魚。
そして、それはまるで人形。
生きているようで生きていない。
生きていないようで生きている。
なんて楽しいんだ。
当時の研究者達の気持ちを、絹旗は僅かに理解した気がした。
絹旗「おやァ?」
</font>
-
<font color="#000000">
昂ぶる絹旗の口調に変化が見られた。
自らの口調が変わる程に、彼女は現状を楽しんでいた。
絹旗「これは超何でしょうかねェ?」
研究員「あがっ……っ」
研究員の内部で絹旗の指が蠢く。
それは本来ある位置にある筈の内蔵を動かし、好き勝手に暴れる。
そんな好き勝手暴れる指が、固い何かを研究員の内部で触れた。
絹旗「とりあえず、超引っ張ってみましょうかァ」
言葉とは裏腹に、絹旗の行っている行為は惨忍であった。
無知な子供のような好奇心で、研究員の苦しみを楽しんでいた。
既に彼に声を出す余裕は無い。
腹部から発せられる粘着質な音が悲鳴の代わりとなった。
絹旗「えいっ」
絹旗は内部で掴んだものを引っ張った。
何かが割れ、折れ、砕けたような音がした。
果実を潰したような不気味な音を奏で、絹旗の手がゆっくりと研究員の腹部から顔を出す。
手は真っ赤に染まり、白い肌を隠していた。
その手に握られていたのは、骨だった。
上半身、下半身を繋ぎ、支える役目を持つ脊椎骨。
その一部が、絹旗の手によって握り、そして、
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「……」
無情にも、砕かれた。
絹旗「もォ終わりなンですかァ?」
砕かれた骨を床に零しながら、絹旗は研究員を見つめた。
しかし、研究員は単なる“モノ”に成り下がっていた。
声など出せる筈もない。
絹旗「はァ……」
興味が一気に冷め、絹旗は深い溜め息を吐く。
もっと、もっとぐちゃぐちゃにしたかった。
痛がり、転げ回る様を見ていたかった。
静寂が部屋の中を支配した。
フレンダ「あっ……うっ……」
その静寂の端。
フレンダはただ呆然と立ち尽くすしかできなかった。
絹旗に恐怖し、そして何もできない自分を悔やんだ。
確かに自分達は暗部に所属し、人の命を弄ぶ事もある。
しかし、フレンダから見た絹旗は、任務以上の何かが垣間見える。
???「――荒れているわね、絹旗?」
</font>
-
<font color="#000000">
その静寂を破る女性の声。
聞き慣れた声だった。
フレンダの表情が、その聞き慣れた声に崩れた。
安堵に柔らかく、そして泣き出しそうな程に脆く。
絹旗「……私は別に荒れてなンか超いませンがねェ」
フレンダに続き、絹旗も声の方向へと振り向いた。
部屋の入り口付近の壁にもたれかかり、腕組みをする女性。
栗色の髪を下げ、高校生にしては大人っぽい雰囲気を撒き散らす麦野沈利。
そして、その影に隠れるように、おかっぱ頭の滝壺理后が顔を覗かせた。
麦野「荒れてないって言うんなら、その口調をどうにかしろ。それと……」
麦野は自分の右頬を指先で二度、三度と叩き、言った。
麦野「“興奮”してただろ?」
麦野の言葉、その動作に、絹旗は自身が始めて傷を負っている事に気が付いた。
しかし、それは有り得ない事だ。
絹旗の能力名は窒素装甲(オフェンスアーマー)。
第一位の防御性の一部分を受け継いだその能力は、三百六十度全ての範囲を窒素の膜で覆っている。
その膜を破かない限り、絹旗に傷を負わせる事は不可能。
それが破られたという事は、膜を貫通する程の威力、もしくは絹旗自身が能力を操りきれていないという事。
だから興奮していたのかと、麦野は聞いたのだ。
麦野の頭の中に、その二つの選択肢は既にあった。
そして、前者はまずありえないと結論付ける。
ならば後者だ。
そして、原因の根本が何であるかも分かった……いや、分かっていた。</font>
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<font color="#000000">
麦野「テメェの能力があれば、汚え汚物を浴びる事すらない筈だ。だが、今のテメェはどうだ」
呆れたと言わんばかりに、冷めた視線だった。
床一面に広がる残虐の跡。
それと同様に不快なものでも見るような視線を麦野は絹旗に浴びせた。
その時初めて、絹旗は自身の状態を確認した。
服を返り血で染め上げ、どこかの部位であろう肉片などが絡まっている。
水を浴びたと言うより、油に沈んだみたいだと絹旗は思った。
フレンダ「うう……滝壺……」
滝壺「大丈夫、フレンダはやれるだけの事をやった。そんなフレンダを私は応援している」
絹旗の暴走をただ見ているだけしかできなかったフレンダ。
緊張の糸が切れたのか、半泣きで滝壺へ自身の身体を預けていた。
そんな彼女の頭を優しく撫でる滝壺はまるで母親のようであった
麦野「はぁ……」
そんな滝壺とフレンダを見て、麦野が深い溜め息を地面に落とした。
思えば、フレンダはこれが始めてだ。
絹旗が壊れるのを見るのは。
そろそろ来る頃だと思っていた。
麦野は今日の仕事で最大のミスを犯した事に気付き、唇を噛んだ。
麦野「……絹旗、しばらくアイテムを離れろ」
絹旗「はァ? 何を超言っているンですかァ?」
</font>
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<font color="#000000">
その小柄な体型からは想像もつかない威圧感を麦野は感じた。
が、アイテムのリーダーはその程度で怖気つく器量ではない。
麦野「理由が欲しいって顔だな。なら簡単だ。今のテメェじゃ使い物にならねえんだよ」
絹旗「LEVEL4のこの私がですかァ?」
尚も食って掛かる絹旗。
それでも麦野は言い放つ。
麦野「そうだ。たかがLEVEL4如きで過信するような奴は、危なくてアイテムじゃ使えねえんだよ」
その言葉に絹旗の目が見開かれた。
麦野はすぐに察知した。
それは殺しの目である、と。
もし、絹旗がそれ相応の行動を起こしたのであれば、自分もそうならなくてはならない。
麦野はアイテムのリーダーとして、そして仲間として心を鬼にした。
いつでも対応できるよう、腕を解き半身で絹旗と対峙する麦野。
滝壺「きぬはた、私からもお願い」
そんなぴりぴりとした空間に、滝壺が突如割り込んだ。
落ち着いたフレンダを床に座らせると、滝壺は無防備にも絹旗へと近付いていく。
麦野「ばっ……!?」
麦野は滝壺へと手を伸ばした。
あまりにも危険だ、と。</font>
-
<font color="#000000">
滝壺「大丈夫だよ、むぎの」
しかし、滝壺は麦野の手を言葉で拒む。
彼女の言葉に、麦野の伸ばされた手が行き場を失う。
麦野「……わかったわよ」
一瞬の思考の末、その行き場を失った手は、ゆっくりと降ろされた。
滝壺はそんな麦野の態度に対して、小さな笑みを作った。
そして、絹旗の元へと向かう。
絹旗も相手が滝壺に変わると、警戒態勢を解き、全身の強張った筋肉を緩めた。
滝壺「ねぇ、きぬはた」
滝壺は絹旗の視線に合わせ、僅かに屈んだ。
笑みを絶やさず、視線を逸らす事なく語りかける。
彼女はとことん暗部には向いてはいない。
あまりに優し過ぎるのだ。
滝壺「むぎのも本当は心配している。そして、きぬはたは役立たずなんかじゃない。四人揃ってのアイテムだから」
滝壺はそう言って、絹旗の頬にゆっくりと手を伸ばした。
血で汚れるのも気にせず、彼女は絹旗の肌を汚す血を自らの手で拭う。
そして、最後には自分の着ているジャージの上着を絹旗の肩へとかけてあげる。
赤黒く染まった絹旗の衣服は、ジャージの淡いピンク色で覆われた。
滝壺「最近、忙しかったから。むぎのはきぬはたに休んで欲しいんだと思う。だから、ね?」
柔らかく微笑む滝壺を前に、絹旗は視線を逸らした。</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「……わかりました」
頷くしかなかった。
絹旗の言葉に、滝壺は目を細めた。
そして、絹旗の小さな身体を引き寄せる。
互いの肩に顎を乗せ、呼吸を合わせる。
不思議と絹旗は、心が落ち着いていくのを感じた。
絹旗「麦野」
絹旗は滝壺に抱き締められたまま、麦野へと声をかけた。
麦野「……何」
ぶっきらぼうな返事を返す麦野。
しかし、それが麦野らしいと絹旗は思った。
絹旗「……私、アイテムを離れます。皆さんに、迷惑を超かけたくありませんし」
落ち着きを取り戻した絹旗は、いつもの口調に戻っていた。
絹旗「それと、フレンダ」
フレンダ「な、何って訳よ」
床で膝を抱えるフレンダが絹旗の声に飛び上がる。
そんな彼女を見て、絹旗は申し訳ないと思ってしまった。
絹旗「今日は本当に申し訳ありませんでした。この埋め合わせはいつか超必ずしますので」</font>
-
<font color="#000000">
フレンダ「……あ、うん」
フレンダは絹旗の素直な謝罪に面食らってしまった。
先程植え付けられた恐怖とのギャップによるものだろう。
上手く言葉を返せなかった。
絹旗「(……頭が、超痛いです)」
もう言う事は無いと、絹旗は滝壺の肩へと顔を埋めた。
そして、自分自身に語りかける。
自分は何をしているのか、と。
何がしたいのか、と。
絹旗「(痛い……)」
それは小さな違和感。
違和感はすぐに消え、息を潜めた。
が、何か凝りのようなものが残っているようで、絹旗は吐き気を感じた。
そしてこの日、絹旗はアイテムを離れた。
五月一日。
春と夏の曖昧な季節。
まだ、とある少年とシスターが出会っていない日の事であった。
</font>
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投下終了です
……玄関を開けたら猫が交尾していた
次の投下、今週中にできたら木曜日には投下します
感想などお待ちしておりますので、皆さんどうぞ板を活用してください
では、またノ
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乙です
今回も楽しませてもらいました♪
猫の交尾てwww
あとそれから変なのがこのスレに湧いてるようですが、所詮負け犬の遠吠えです
とても惨めで可愛そうな奴らだと思えばいいでしょう
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名前欄のkくっさ
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乙
-
乙
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つまんね
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なにこれ?
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荒らし対策スレに対策依頼出しときますね
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こんなののために連投スクリプト組んでんの?
あんた相当な阿呆だわ
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わざわざこっちにまて埋めに来てんじゃねーよ
シネ基地害
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糞スレつまんね
今すぐ依頼だしてこい
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批判と荒らしNGしたら>>1以外の殆どがあーぼんでワロタwww
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まあもうこれはシブで書いた方がいいんじゃないか?
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sousiro
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sousiro
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絶賛逃亡中
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ごらぁ
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あの伝説の風俗嬢の誕生秘話を極秘公開!
http://www.girlsheaven-job.net/18/so-kairaku/blog/9250299/
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え?これネタじゃないの?
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速報から荒らしもついてきたのかよ…
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ゴキブリみたいな奴だ。
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このスレつまんね
やめろ
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予想通りめっちゃ埋め立てられててわろた
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クソSSつまらん
晒しあげ
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支部はどうやって荒らすんだろうなw
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>>1敗走乙
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支部なんかでやったら即ブックリストやわ
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支部なんかでやったら即ブラックリストやわ
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このスレをブラックリストに登録しますか?
→はい
Yes
御意
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どうも、超>>1です
……起きたら昼を過ぎていた
にしても、千客万来ですね
とりあえず皆さんのレスを見るのが私の楽しみなので、ここで投下続けますね
今回、地の文多めです
なんとバランスの悪い文章でしょうか……
では、投下ー
-
<font color="#000000">
〜五月雨〜
絹旗はその日、夢を見た。
それは先日、彼女がアイテムという暗部組織を離れるきっかけとなった日の再現であった。
主電源を落とされた建造物内は暗く、予備電源による通路灯は蝋燭の火のように頼りなく不気味だ。
そこには絹旗ともう一人、ベレー帽を頭に乗せた少女の姿。
それは絹旗の同僚であるフレンダ=セイヴェルンという少女。
彼女は絹旗に話しかけながら、一定間隔でとある仕掛けを施していく。
それは彼女の十八番である爆発による建造物破壊のための仕掛けだ。
そして建造物とは別で、対人爆弾を設置してくフレンダ。
それは情報の漏洩を防ぐために、蟻一匹だろうと逃がさないためだ。
絹旗はそんな仕掛けを設置するフレンダを見守りながら、周囲に緊張していた。
施設内に能力者は自分達を除いていないという連絡は受けてはいるが、万が一という事もある。
最近、巷で話題になっているAIM Jammerという、対能力者専用の兵器があるかもしれない。
そのAIM Jammerに晒された能力者は、能力の制御ができなくなるとの事らしい。
実物を見ていない絹旗にはそれがどういった代物なのかは分からないが、警戒をし過ぎて損をする事は無いだろうと、更に五感を研ぎ澄ました。
そんな張り詰めた空気の中、絹旗とフレンダの二人は“とある部屋”に出くわした。
入り口はそれ程厚みがある訳ではない。
しかし、何重ものロックが二人を遠ざけようとしているかのようだ。
破ろうと思えば、絹旗の能力、もしくはフレンダの爆弾によって強制的に解錠する事も可能だ。
ただ、今はまだ騒ぐ時間帯ではない。
準備が整うまではなるべく隠密に活動しなくてはならない。
今回の任務内容である情報の抹消及び施設破壊。
ここもそれなりに重要であろうと判断した絹旗は、フレンダに顎で支持する。
その意図を汲んだフレンダが、扉のロックを解除するため、壁に設置された端末に触れる。
フレンダは慣れた手付きで、端末の状態を確認する。
爆弾を扱うだけあって、フレンダは手先が器用だ。
ものの数十秒で端末のコード類を引っ張り出し、端末を調べあげていく。
</font>
-
<font color="#000000">
ただ殴るだけしか脳がない自分の不器用さに比べたら羨ましいと思ってしまった絹旗であった。
その時、絹旗は思った。
自分に能力が無かったらどんな生活を送っていたのだろうか、と。
それは、暗い記憶だ。
精神的傷害を負ったあの日の事。
それを考えて、しかし絹旗は僅かに目を細めた。
鈍器で後頭部を殴られたような重い痛み。
声に出そうで、しかしその場で蹲る事で何とか耐える。
そうしてる間に、フレンダが扉の解錠を終えていた。
絹旗は痛みを我慢し、すぐに仕事へと戻る。
フレンダと絹旗は壁に張り付き、そしてフレンダが端末を操作させて扉を開けた。
扉はゆっくりとスライドし、壁と壁の隙間へと消えていく。
同時に、部屋の中から光が零れ、絹旗とフレンダの領域である通路側にまで伸びていく。
どうやらこの部屋の電力はまだ生きているようだ、と二人は考察する。
するとフレンダが不意に、壁に張り付いたまま何かを部屋の中へと放った。
放った何かは部屋の床へと着地し、弾けるような甲高い音がした。
多分、爆弾を設置する際に用いる部品の一部だろう。
絹旗はその部品が転がる音が止むまで、息を止めて目を瞑った。
数秒、数十秒。
反応は無し。
二人は内部が無人である事を確認すると、纏っていた緊張を振り払って部屋の中へと足を踏み入れた。
部屋は施設の一部であるというのに、十畳あるかないか程の狭い間取りであった。
壁に覆われた機械類は可動を続け、様々なケーブルを伸ばしている。
そのケーブルを辿ると、それはとある場所へと行き着いた。
絹旗は目を見開いた。
彼女の隣に立つフレンダも驚きに奇妙な声を漏らす。
部屋の中央の壁際。
そこには鉄のベッドが設置され、人が裸で横たわり、“設置”されていた。
</font>
-
<font color="#000000">
頭を半分切り開かれ、脳を剥き出しにされた状態で。
ケーブルは全て、その人の脳に繋がれていた。
数十、数百とあるケーブルはまるで脳から直接生えた毛のようにも見えなくはない。
驚きに固まっていた二人は、ゆっくりと人に近付いた。
それが少女であると、二人は初めて気付いた。
雌性生殖器を隠す事なく、瞳を閉じようともしない。
胸は僅かに膨らんでおり、その膨らみと生殖器が無ければ少女と判断する事はできなかっただろう。
少女は生きているのか、死んでいるのかぱっと見では判別がつかない。
しかし、二人は僅かに少女が呼吸をしている事に気付いた。
絹旗は呟いた。
「まだ、生きていますね」と。
そんな絹旗に対してフレンダはこう答えた。
「けど、これって死んでるも同然って訳よ」と。
フレンダの言葉通りであった。
少女は呼吸こそしているものの、しかし全く反応を示さない。
瞬きもせず、人形のような光のない瞳がただずっと天井を見つめているだけ。
脳に機械を繋げられ、少女も機械の一部となっていた。
そんな少女を見て、絹旗は数年前の自分を思い出していた。
その思い出が浮かび上がり、横たわる少女の姿と自分が重なった。
あのまま実験を続けていたら自分もこうなっていたのだろうな、と。
フレンダはそんな絹旗の内心の事など露知らず、気味が悪いのか少女に背を向けて部屋の外へと向かった。
早く仕事を終えなければリーダーである麦野に怒られる。
それをフレンダは優先した。
しかし、絹旗は違った。
彼女はこの少女を救ってあげたかった。
フレンダの呼ぶ声がする。
絹旗は適当な返事ですぐに行くから、と伝えた。
そして、右手をゆっくりと掲げ、手の平を真っ直ぐに伸ばして天井に向けた。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗は悲しそうな目で、そして優しく呟いた。
「お疲れ様」と。
そう言い終えると、絹旗の腕が振るわれた。
能力を刃のように纏った右手が、少女の胸を貫いた。
不思議な事に、血は全く吹き出さなかった。
スポンジに突き刺したかのような、金網が絡み付くような奇妙な感触。
多分、身体の中にあるもの全てが機械で操られているのだろうと、絹旗は推測する。
しかし、もし身体の全てが機械で補われているのであれば、その一部でも機能を停止させてしまえばこの少女は絶命してしまう。
絹旗は突き刺した右腕を捻りながら抜いた。
これで少女の中は掻き乱され、もう生きてはいけない。
そして、右手を抜ききった時、絹旗は聞いた。
それは幻聴でも何もない。
そして、見た。
少女が笑って呟いた。
「あ……りが……と……う」と。
その言葉が絹旗にスイッチを入れた。
あの時のように。
それは、全てを破壊するための感情であった。
絹旗の中で、何かが切れた。
</font>
-
†
-
<font color="#000000">
絹旗「――っ」
絹旗は不意に目を覚ました。
動悸が激しく、酸素を求めて何度も呼吸を繰り返す。
今は何時だ、と首を回して時計を探し、テレビに繋いだレコーダーに表示されたデジタル数字から午前二時であると確認する。
時間を確認する事は、自分を落ち着かせる方法の一つである。
戦場を駆ける兵士のほとんどは冷静な思考であると確認するため、常時時計を確認する。
文字盤を見た瞬間に何時何分であると理解できれば自分はまだ正常である事を指す。
しかし逆に文字盤を読み取る事ができなければ、精神に異常がある証拠だ。
絹旗「はぁ……はぁ……はぁ……ふぅ……」
時計を確認し、呼吸を落ち着かせた絹旗は最後に大きく息を吐いた。
そして、自分がどこにいるのか、頭の中でゆっくりと組み立てていく。
絹旗「(ここは……寝室……私の部屋……第七学区……)」
自分に関連する事柄を一つ一つ挙げる。
同時に少しずつ、冷静さを取り戻していく。
絹旗「(夢……いや、あれはあの日の出来事がそのまま出てきたものですね)」
夢の中で自分の記憶を覗き込み、現実世界をそのまま過ごしたかのような内容に、絹旗は妙な疲労感に纏わり付かれていた。
お陰で身体を動かす事が億劫で、絹旗は指先でさえ動かそうとしない。
絹旗「(……雨、ですか)」
</font>
-
<font color="#000000">
暗闇の中で話し声のような雑音。
それはベランダの向こう側から聞こえてくる。
雑音は一定の間隔で地面を叩いていた。
絹旗の住まう部屋は地上から三階に位置している。
地面を叩く音が聞こえるという事は、それなりに大降りなのだろうと絹旗は推測する。
絹旗「はぁ……」
大きな溜め息を零す絹旗。
彼女は雨が嫌いだ。
雨は心と身体を冷やすもの。
雨は嫌な事を洗い流してくれる、という考えを持つ人も世の中にはいるらしいが、しかし絹旗はそんなポジティブに物事を考えられない。
視界を妨げ、憂鬱を運ぶ雨は絹旗の過去を思い出させる。
絹旗「(超やる気が起きないです……)」
水の一杯でも飲もうかと絹旗は思うが、意思と反して身体は全く起き上がらない。
絹旗「(まぁ、このまま寝ているのも超悪くはないですね……)」
そもそも、今の絹旗にはやる事など皆無。
先日、暗部組織アイテムを一時脱退し、仲間と会って駄弁る事も無くなった。
暗部組織に所属する彼女は、元々学校にも通っていない。
今の絹旗は全くの空っぽであった。
絹旗「(時間も時間ですし、もう一眠りしますかね……)」
</font>
-
<font color="#000000">
結局、何もする事が見つからなかった絹旗は、再び眠りに就くことにした。
瞼を閉じ、ゆっくりと息を吐き出す。
肺が縮み、ベッドに沈み込む間隔が再び眠気を誘う。
意識と共に、雑音が少しずつ遠ざかっていくのを絹旗は感じた。
絹旗「(っ……!?)」
しかし、邪魔は突然やってきた。
絹旗の瞳が見開かれ、一瞬で覚醒する。
上から下まで何かが貫き、彼女の小さな身体が僅かに跳ねた。
絹旗「ぐっ……あァ……ふっ……ふっ……あァァァァァァァ!!」
叫ばずにはいられない程の頭痛が絹旗を襲った。
ベッドの上で身体をくの字に曲げ、絹旗は頭を押さえた。
歯を食いしばるも、しかしその程度で我慢できる程、生易しい痛みではなかった。
絹旗「あァっ……うぐっ……はァ……っ!?」
内部からの痛みに襲われていると同時に、とある映像が浮かび上がった。
それは白と黒だけの映像。
映像は倍速で再生しているかのように次々と場面が変わっていく。
その中に、とある少女の叫びを聞いた。
絹旗はその声を聞いた事がある。
そして、その映像が何であるかを理解した。
…………
……
…
</font>
-
<font color="#000000">
数分後、絹旗はベッドの上で乱れていた。
彼女自身は既に時間の間隔は無くなっていた。
ものの数分の出来事であるが、絹旗はそれが数時間にも及ぶと感じていた。
今の彼女は正常ではなかった。
絹旗「はっ……はっ……はっ……」
大の字で仰向けになる絹旗。
全身の毛穴からは油のような不快な汗が吹き出していた。
汗は身体を包み、不快感が纏わり付く。
下着は水でも零したのかと思わせる程に濡れ、肌にべったりと張り付いていた。
寝巻き代わりのタンクトップは肩からずり下がり、ハーフパンツは包み込む下着を外気に晒している。
絹旗「はぁ……はぁ……はぁ……」
荒い呼吸が繰り返される。
何度も胸を上下させていた。
絹旗は、何も考える事ができなかった。
絹旗「っ……」
そして、絹旗の瞳から不意に何かが零れ落ちた。
零れ落ちたそれは重力に逆らう事なく、彼女の肌を伝ってシーツを濡らした。
誰もいないのに、絹旗は何故かそれが恥ずかしく、そして情けなくなって腕で瞳を覆い隠した。
外の雑音が、より強くなった。
</font>
-
超、投下終了です
……ここのスレがダメだったらやはりpixivですかねー?
次の投下は遅くなるかもです
では、またノ
-
支部にいっても読むよ
乙
-
乙
-
乙です
願わくばここで完結して欲しいのですが、たとえpixivでやっても応援します
-
乙
どこへ言っても応援するぞ
-
乙
-
糞つまんね
さっさと深夜から出てけゴミ共
-
深夜民は民度が低いですねぇ
自分に合わないSSなら閉じりゃいいのにそんな事すらできないとは可哀想ですね
それに出て行けとは・・・お前何様だ?お前が作った板か?
とりあえず死ね
-
いやこいつ速報からついてきた荒らしだろ
-
人に死ねってゆっちゃいけないよ!
-
>>480
は?
わざわざ深夜を使わせてやってんのになんて言い草だよ
死ねゴミが二度と深夜から出てけ
-
>>480
黙って乙しとけ
荒しに構うな
お前の稚拙な文章打った所で火に油になるのは目に見えてる
-
二度と深夜から出ていけって日本語がやべぇな
-
>>485
ネットは初めてかな?www
コピペくらい知っとけよ
-
普通につまらん
-
さっさと支部に行きゃ良いのに
-
読んだけどおもしろくねぇー
-
つまんね
-
l:::::::::::::::::::,r' ⌒!l::::::::;.イ::;ィ:::_:::::,.イ::::::::::::::::::::::::lヽ!
!:::::::::::::::::| (´ソj/リ" l/ メイ-='、/ソ,ィ::::::/!:::::::::::!
ヽ:::::::::::::;ゝ ソ ソ __゙ヽ.,メノル リ::::ハ::|
!::::::/ `┐ ! j゙ゞ、_ /ノリ !l
W´ ! ` ,r'´
/ l
/ _ ゙ 、
r‐‐=/ ヽ、 ‐、 ,. ‐'"
ノ `ヽ、 /ヽ ,.-´ 逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!
ヘ、__ \ / \__,. '´ 含み損が100万超えたからって逃げちゃダメだ!
_,.--'`ヽ. j`゙┴-゙ヽ、 \/、
{:.::..;:;:;:;:;:| /_,.-‐‐-、 ! `ハ ヽ
_,.ゝ:.:.:.;;‐二ニ=、 ,.イ '".:.:.:.:.:.:.:.:.゙ヾ、! l | l´!
'"´=ニニ二、ヽ:::::!;;i:゙y.:.:.,.--‐'"´`ヽ.::.:..ヽ.、 j |ノ ゙、
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糞SS晒しあげ
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どう見ても深夜民を装った荒らし
百以上も伸びたスレに粘着する辛抱強いキチガイは深夜にいない
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>>1逃げたの?
まぁ邪魔だから逃げてもらって結構だけど
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糞つまんね
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うんこスレ
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もう埋めたて出来なくなったのか?
あの見事な埋めたてぶりは忘れられん
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ゴミスレ
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つまんねとかいってるやつほとんど自演じゃないの
ここまで荒れるもんなんかい
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面白くね早くピクシブ行け
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どうも、超>>1です
いや、投下遅れてしまって申し訳ありません
昨日投下しようと思っていたんですが、久々の休日に寝て過ごしていました
遅い時間ではありますが、投下しますね
と言っても、改変前と流れは一緒なので、前回のを知っている方はどういう内容かはわかると思います
では、投下開始します
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<font color="#000000">
〜偽善者〜
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<font color="#000000">
学園都市のビル群の遥か上空。
青空を薄っすらと塗りつぶすように、ベールのような雨雲が漂っている。
地面を照らす太陽も今回はお役御免と、雲の隙間に隠れている。
しかし、ここ数日降り続いた天気に比べれば、まだマシな天気ではあった。
絹旗「あー……超つまんないですねえ……」
第七学区のとある公園のベンチにて、絹旗は空を仰ぎながらそう零した。
いつも好んで着ている橙色のパーカーと青色のショートパンツではない。
先日、繊維の奥の底まで血で染めてしまった衣服は、元の色が判別できない程の状態であった。
撤退後、アイテムの一員である滝壺が念入りに洗ってくれたものの、しかしそれが元通りの色を取り戻すことはなかった。
それなりにお気に入りの服であった。
しかし、着れないものは着れないので仕方がない。
その代わりに着たのは、古着である黒色のタンクトップパーカーと黒色のショートパンツであった。
全身を黒で染め、肌着として着ている赤色のシャツが浮き出て見える。
彼女の焦げ茶色の髪も、黒に統一した服の前ではかなり明るく感じさせた。
絹旗「ここ最近の映画も全部見終わってしまいましたし……本当、超暇です」
絹旗はベンチの背もたれに上半身を預けた。
そんな彼女の手の指先には一本の煙草が握られている。
既に半分程短くなってしまい、今も尚、葉をゆっくりと燃やし距離を縮めている。
絹旗「――――」
絹旗はその煙草を口元へ運ぶ。
桜色の唇でそっと煙草の末端を挟み、呼吸をするような自然な動作で煙を体内へと取り込む。
取り込まれた煙は絹旗の口内を犯し、更に侵入して肺を蹂躙した。
</font>
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<font color="#000000">
絹旗「――ふぅ……」
役目を終えた煙が再び元来た道を辿って、絹旗の体内から吐き出された。
空気を押し退けるように空気中へと吐き出された煙は、ちょっとした風に吹かれて霧散する。
絹旗「……PALL MALLがやっぱり超一番ですね」
煙の行方を見つめて絹旗がぼそりと呟く。
ちなみに彼女は成人には程遠い。
今年、書類上ではあるがようやく中学生になったばかりである。
しかし、絹旗は確信犯である。
分かってやっている、もっともたちが悪いパターンだ。
身体的成長の妨げ。
肺癌。
その他諸々の健康に外を及ぼす。
それがどうした、と絹旗は思う。
既に自分は煙草を咥えるよりももっと辛い事を体験済みなのだ。
これ以上のマイナスがあるものか、と絹旗は再度煙草を口に運んだ。
絹旗「――はぁ……」
空を見上げ、煙を吐き出す絹旗。
その行為はまるで、空を漂う雲に手助けしているかのようだ。
絹旗「(そういえば、いつからだったでしょうか……)」
絹旗は考える。
それは何故、自分が煙草を吸うようになったのかを。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「(アイテムに入る前……ああ、黒夜と超別れて半年程してからでしたっけ)」
まだ絹旗がアイテムという組織に入る前の事だ。
身を隠し、今後どのようにして生きていくかを模索していたあの日々。
別れた黒夜と連絡を取れず、一人という時間を過ごした。
絹旗「(あの頃は精神的に超参っていましたからね……)」
自分が何故、煙草を吸うのか。
当時は何となく手にしただけだった。
しかし、今なら分かる。
何かに縋りたかったのだと、絹旗は指先で灰に変わっていく煙草を見つめて思った。
絹旗「(皆、どう思うんでしょうか)」
アイテムのメンバーはこの事実を知らない。
絹旗は紫煙を映画のスクリーンに見立て、その中に彼女達の姿を思い浮かべた。
絹旗「(麦野は、仕事に影響がなければ関係が無いと言うでしょう)」
最初に浮かんだのはアイテムのリーダーにして、超能力者(LEVEL5)の麦野沈利。
絹旗「(滝壺さんは、超心配するでしょうね)」
次に浮かんだのは、暗部には到底向かない性格をした滝壺理后。
絹旗「(フレンダは、どうでしょうかね……案外、影で超心配してそうです)」
</font>
-
<font color="#000000">
小生意気な金髪少女、フレンダ=セイヴェルンの顔が浮かんだ。
彼女達は今もアイテムとして活動を続けている。
毎日ではないにしろ、近況を伝える連絡はあった。
過信している訳ではないが、自分がいなくても大丈夫そうだ。
絹旗は少し自嘲気味に笑う。
絹旗「……私は、超何処に“ある”んでしょうかね」
煙草を吸う事も忘れ、燃えカスが地面へと落ちた。
そこに、
???「不幸だぁぁぁっ!!」
己が現状を表す叫び声が、公園に響き渡った。
絹旗はその声の出所へと視線を向ける。
その視線の先。
一人の男子学生が自販機の前で刺々しい頭を抱えていた。
絹旗「……なんなんですか、一体」
絹旗は周囲の事も考えずに大声を上げる男子学生に苛立ちを覚えた。
彼女は無視を決め込もうと、短くなった煙草を携帯灰皿へと押し込み、新たな煙草を吸うためにパーカーのポケットに手を伸ばした。
ポケットの中を探り、手の平サイズの赤い箱から適当に一本取り出し、口に銜える。
箱をポケットに戻すついでに、今度は火を点けるため、少し黒ずんだ銀色のZippoを取り出す。
蓋を親指で弾く。
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-
<font color="#000000">
金属の擦れた音が、波紋を広げるように空気中を渡った。
そして、火を点けると同時にオイルの臭いが鼻腔をくすぐる。
絹旗はこの一連の動作が好きだった。
一番自分が落ち着いていられる瞬間。
その余韻を楽しみながら、絹旗は口に銜えた煙草へと火を近づける。
煙草の先端が赤く燃え、熱を帯びた。
???「だぁぁぁっ、なんでお金を呑み込むんですかっ!? 上条さんのなけなしの金を返しやがれこのやろー!!」
どうやら自販機にお金を呑まれたらしい男子学生は、返却レバーの取っ手を何度も上下に動かす。
絹旗「……ちっ、超うるさいですね」
絹旗はせっかくの安らぎが、男子学生によって潰された事に舌打ちする。
あの様子では、しばらくは自販機から離れようとはしないだろう。
絹旗「はぁ……仕方ありません」
煙草を指に挟み、絹旗はベンチから腰を上げた。
そして、面倒臭そうに男子学生へと近付く。
絹旗「お金、超呑み込まれたんですか?」
???「へ? あ、なんで分かったんでせうか?」
</font>
-
<font color="#000000">
うな垂れる男子学生が絹旗へと視線を向けた。
身長は一七〇センチ程。
特徴あるツンツンとした黒髪。
幸薄そうな顔には、どことなくやる気のなさを感じる。
それなりに運動をしているのか、学ランの上からでも分かるほどに肩幅などはしっかりとしている。
絹旗「(暗部の癖が超出てしまいましたね……)」
対象を観察する事は、暗部――いや、戦闘を行なう者にとっては基本中の基本である。
絹旗はそれが日常生活においても出ている事に、自分がどれだけ暗闇に染まっているのかを自覚した。
絹旗「あれだけ大声を上げれば超分かりますよ。で、どうなんですか?」
???「あー……実はそうなんだよ」
男子学生は自分がそれだけ注目するような行為をしていた事に羞恥を感じ、誤魔化すためか頭を無造作に掻いた。
そして、何故この少女が自分の所へ来たのか、男子学生は気付く。
???「もしかして、結構迷惑でしたでせうか?」
やや低姿勢になりながら、それでも絹旗よりは少し高めの目線で話しかける。
絹旗「ええ、せっかく人が一服していたというのに、正直超迷惑でした」
絹旗は自分の正直な気持ちを吐露した。
苛立ちを表現するかのように、煙草を咥えて煙を撒き散らす。
男子学生はそれに対し、深々と頭を下げた。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「まあ、謝罪は結構です。それより、お金が呑まれたんですよね? 私が超助けてあげましょう」
半分程燃え尽きた煙草を携帯灰皿に押し込みながら、絹旗は男子学生に申し出た。
???「それって、どういう……」
絹旗の言葉に男子学生は疑問の言葉を投げかける。
が、言い終わる前に、とある音がそれを掻き消した。
絹旗「――らっ!」
渾身の蹴りが、自販機へと吸い込まれるように叩きつけられた。
片足を軸に遠心力を加え、更に能力を用いての蹴りは、人体であれば骨の数十は折れるであろう。
そんな強烈な一撃を喰らった自販機が無事な筈もなく、
『警告。警告。外部の衝撃による損傷。周囲の風紀委員(ジャッジメント)、警備員(アンチスキル)、警備ロボへと通達――』
と、蹴られた箇所を凹ませつつも、何やら怪しげな機械音声を流し始めた。
絹旗「ふむ。いくら呑み込まれたかは知りませんが、これだけあれば元は超取れるでしょう」
絹旗の放った一撃が、自販機の内部をも破壊してしまったのか、排出口から様々な種類のジュース缶が転がり落ちてきた。
それは徐々に排出口を埋め、ついには中で詰まったのか、奇妙な音が自販機から漏れ出した。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「あなたのお金なんですから、好きなのを――」
と、絹旗が男子学生に言葉を投げ終えようとしたところで、
???「――ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁっ!!」
何故か男子学生に、片手で身体を抱えられた。
そして、男子学生は絹旗を抱えたまま、自販機から全力で離れていった。
絹旗「――きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
突然の事に、絹旗は叫ぶしかなかった。
その叫び声を聞いても尚、男子学生は走るのを止めない。
逆に、どんどんと速度を上げていく。
自販機があった場所には、通達を受けた警備ロボと近くを警備していた風紀委員が駆けつけていた。
しかし、事の発端である二人は既にいなくなった後であった。
</font>
-
<font color="#000000">
†
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-
<font color="#000000">
絹旗「で、この私をこんな路地に連れ込んで、ナニを超するつもりなんですか?」
絹旗の機嫌は言葉の矛となり、目の前の人物に向けられていた。
???「いえっ、姫! 別にそういう訳じゃないんでありますっ!」
ウニのような頭をした男子学生が、絹旗に気圧されてコンクリートの壁に背を預けていた。
口調が壊れる程に狼狽している彼は、なんとか説得を試みようと両手を盾にして早口言葉となる。
現在、二人は第七学区の外れにある路地に身を潜めていた。
絹旗の一撃によって警報機を発令した自販機。
その発令に伴って現場に急行した警備ロボや風紀委員から逃れる為である。
男子学生はひたすらに走った。
その行動は、自販機から離れる事には成功した。
しかし、少女一人を抱えて走る様は、どう見てもただ事ではない。
すれ違った通行人のほとんどが、走り去る男子学生を見て誘拐犯だと勘違いし、風紀委員に連絡を入れたのは言うまでもない。
???「あのままあそこにいたらですね、色々と面倒な訳ですよ! 呑み込まれた金額よりももっと大事なものを損失する恐れがありましてですね!」
手振りを加えて、必死に説得を試みる学生。
まだ小学生か中学生くらいに見える絹旗。
そんな彼女に対して、ここまで狼狽する様はなんとも間抜けである。
絹旗「ええ、それは超分かりました。まあ、それはいいとしましょう」
男子学生は少女がちゃんと話は聞いてくれる人だと分かり、内心でほっとする。
絹旗「逃げるなら逃げるで超一言あってもいいんじゃないですか? おかげで煙草もZippoも落としてしまったじゃないですか」
</font>
-
<font color="#000000">
しかし、目の前の少女の言葉で、男子学生は全身の筋肉を再び緊張させた。
咄嗟の行動は、新たな事態を引き起こしてしまったようだ。
が、男子学生は少女の言葉に違和感を覚えた。
???「そういや、さっきも気になってたけど……あんた、どう見ても小学生だろう」
男子学生は自分のクラスの担任を思い出した。
もしかすると、目の前の少女もそういった身体的な特徴がある、実は大人の女性なのかもしれない。
絹旗「私は超中学生です!」
が、目の前の少女の言葉で、それは違う事が分かった。
そして小学生と見間違えた男子学生に腹が立ったのか、今にも掴みかかり、そのまま殴りかかってきそうな勢いだ。
絹旗を宥めながら、どっちにしろ煙草を吸っていい年齢じゃねえだろうと、男子学生は口にしようと思ったが、できなかった。
それを言った瞬間、二度と口が開かなくなりそうだと危惧したからだ。
???「と、とりあえずどうすればいいでせうか?」
冷や汗を流し、男子学生は半笑いで質問する。
絹旗「そんなの、超決まってるじゃないですか。煙草はいいとして、Zippoに関しては弁償ですよ、弁償」
???「……ちなみにおいくらで?」
絹旗「まあ、超高いものではないので……一、二万ぐらいだった筈です」
絹旗の言葉に、男子学生の思考が一瞬停止した。
</font>
-
<font color="#000000">
???「はぁぁぁぁぁぁ!?」
と、次の瞬間、男子学生が声を張り上げた。
今度は絹旗が気圧され、一歩後退りする。
絹旗「な、超なんなんですか!? いきなり大声を上げないでください!」
???「あ、ああ……悪い」
男子学生は自分の非に後頭部を右手で掻いた。
???「えっと……姫には悪いんだけど、俺にはポンと出せる金額じゃねえ」
絹旗「はい? あなたもこの街の人間なら奨学金ぐらい超出ているんじゃないんですか?」
上条「いや、お恥ずかしい事に、上条さんは無能力者(LEVEL0)なんです。奨学金も微々たる額でして……」
自分を上条と呼ぶ男子学生は苦笑を浮かべた。
この学園都市の学生のほとんどは、親元を離れて暮らしている。
そのため、多くの学生が奨学金を利用していた。
貰える金額は自身の能力値によって決められ、無能力者はその中でも最低ランク。
絹旗のような大能力者(LEVEL4)はかなりの額を貰えるシステムだ。
絹旗「なんだか私が超苛めてるみたいじゃないですか」
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗は鼻で息を吐き、さてどうしたものかと腰に手を当てる。
正直、暗部で稼いだお金はそれなりにあるのだ。
別に弁償させずとも、自分で買い直すのが手っ取り早い。
諭吉数枚程度の金は絹旗にとって、はした金に過ぎなかった。
絹旗「分かりました。まあ、私が超傷物にされた訳では超ありませんし、見逃してあげますよ」
絹旗は結局、自分で買い直す事に決めた。
それに、これは目の前の上条のためでもあった。
暗部に所属している自分と一般人である上条とは世界が違う。
土俵が違う相手を巻き込むのも、また巻き込んで自分に被害が出る恐れをわざわざ作ろうとは思わない。
そう絹旗は判断した。
上条「いやいやいや! ちょ、ちょっと待ってくれ!」
しかし、上条はそんな絹旗の思惑も露知らず、立ち去ろうと背を向ける絹旗に制止の言葉をかける。
絹旗は怪訝な表情を浮かべながら、再び上条へと向き直った。
絹旗「なんだって言うんですか」
上条「いや、なんだってそれはさすがに悪いって。ちゃんと返すものは返すからさ」
絹旗「お金が超無いのにどう返すって言うんですか」
上条「じゃ、じゃあ分割! 分割でなら何とかなるから! それで頼む!」
</font>
-
<font color="#000000">
自身の顔の前で合掌する上条。
絹旗は面倒な奴に声をかけてしまったと今更になって後悔する。
過去の自分に無視して公園から立ち去れと伝えてやりたいぐらいであった。
絹旗「はあ……わかりました」
深い溜息が零れた。
目の前の上条という男はそう簡単には納得できない、と絹旗は数分の間の彼を見て思った。
自分に非があれば、その非を帳消しにしなければ気が済まないタイプ。
芯が真っ直ぐだ、とでも言うのだろうか。
悪い言い方をすれば頑固者だ。
絹旗「では、分割でもいいので、とりあえずあなたの名前と連絡先を超教えてください」
絹旗の諦めの混じった言葉に上条は拳を握って控え目にガッツポーズを決めた。
もしかすると、これは新手のナンパなのだろうかと絹旗は今のやりとりに怪しさを感じた。
絹旗「(いや……これはそんな類の輩ではありませんね)」
上条の顔を見て、絹旗は今の考えをすぐに捨てた。
整った顔立ちだが、二枚目という程でもない。
それに頭が悪そうだ、と絹旗は心の内を読まれないのをいいことに散々な言葉を並べる。
上条「上条当麻って言うんだ。で、こっちが俺の連絡先だ」
上条当麻は学ランのポケットから携帯電話を取り出し、絹旗に差し出す。
絹旗も同じように携帯電話を取り出そうとポケットを弄るが、
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「……」
上条「どうしたんだ?」
絹旗「いえ、超なんでもありません。これが私の連絡先です。ちなみに私は絹旗最愛と言います」
自分が暗部にいる事。
それが絹旗の思考を一時的に奪った。
連絡先の交換だけでも、光ある住人を自分達側に引き摺るような危険行為である。
本当にいいのだろうかと、絹旗は携帯に新たに追加された連絡先を見て思った。
つい数分前に呼び止められた声を振り切ってでも、この場所を離れておけばよかったかもしれない。
絹旗「(……ほんのお遊びですよ)」
しかし、自分は現在アイテムから離れている。
その離れている間だけでも、こうやって光ある人間と触れ合っても大した問題はないだろうと、絹旗は自身に言い聞かせた。
絹旗「とりあえず、詳しい値段を調べてくるんで、また後日に連絡します……全く、おかげで今日は煙草を吸えないじゃないですか」
互いの連絡先が無事に交換された事を確認し、絹旗は上条に愚痴を零した。
上条「分かった……なあ、さっきも言ったが煙草は止めとけよ。吸うなとは言わないけどさ、せめて二十歳過ぎてからでもいいじゃねえか」
絹旗「……あなた、超しつこいですね。別に私の身体なんですから超どうでもいいじゃないですか」
</font>
-
<font color="#000000">
上条の言葉に絹旗は苛立ちを覚えた。
何も知らないのだ、こいつは。
私が今までどんな思いで過ごしてきたのかを。
相手は悪くない。
絹旗はそれを分かっていながらも、上条当麻という人間に沸々とした感情を沸かせた。
上条「そりゃ、自分の身体だってのは分かるけどよ……」
上条は絹旗の苛立ちに気付いていた。
けど、口は動き続ける。
何故か、目の前にいる少女を放って置いてはいけないような気がして。
それは単なる杞憂でしかない。
しかし、上条はこう考える。
杞憂で済むならそれでいいじゃないか、と。
上条「……あんたにも親がいるはずだろ? お前一人の身体じゃないんだから、もっと大事にしろよ」
絹旗「っ」
しかし、上条の杞憂は踏み込みすぎた。
そこは、絹旗の聖域でもあり、地獄でもある。
それを上条は踏んでしまった。
絹旗「――っさい」
上条「へ?」
</font>
-
<font color="#000000">
奥歯を噛み締め、搾り出すように呟いた絹旗の言葉は上条には届かなかった。
顔を俯かせ、拳をぎゅっと握り締める絹旗。
彼女は、沸騰していた。
絹旗「――うるさいって言ってるンですよっ!」
そして、爆発した。
握り締めた拳を引き、上条に向かって放つ。
窒素で包まれた右拳は、空気を押し潰しながら上条の腹部へと向かった。
その威力には、殺しが含まれていた。
触れてはいけない場所へ土足で上がり込んだこの男を排除する。
絹旗の一撃が上条を捕らえる。
上条「っ!?」
が、上条はそれを寸前で避けた。
腰を無理矢理捻り、絹旗から見て左手側へ転がる。
その結果、腰を中心とした骨が僅かに軋みを上げ、上条は僅かに顔を歪ませた。
そして避けた拳はコンクリートの壁を直撃し、そして、砕いた。
拳を中心に、絹旗の身の丈を軽く越す大きなヒビが、円状に広がった。
上条「お、おい! いきなり何すんだよ!?」
地面に転がった上条は、その一撃に恐怖を覚えながらも、絹旗に怒りの言葉を放った。
絹旗「……超うるさい、超うざったい。マジでなンなンですかァ? 親? 先生? 友達?」
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗の口調が、変わった。
めり込んだ拳を引き抜き、絹旗は上条を見下ろす。
上条「うっ!?」
その瞳に、上条の心臓が跳ねた。
何も感じなかった。
それは、まるで人形のよう。
それは、まるで死人のよう。
光が、全く感じられなかった。
上条は、恐怖した。
絹旗「全部、違うでしょうが。超赤の他人ですよ? それが知ったよォな口を聞くンじゃねェンだよ、くそったれ」
一歩、一歩と上条に近付く絹旗。
上条はなんとか、立ち上がり、逃げようとする。
が、身体が動かない。
そして、気付いた。
自分の脚が震えている事に。
たったの一撃。
その一撃で、上条の身体は全て恐怖に犯されていた。
今までの生活でこんな事があっただろうか、と上条は考える。
</font>
-
<font color="#000000">
いや、ない。
これ程の恐怖を味わって忘れる事などできる筈がない。
過去に上条は自身の体質から色々な事に巻き込まれた。
しかし、それは全て一瞬の事で、恐怖を感じる暇すら無かった。
だが、今は違う。
絹旗という少女から発せられる禍々しいまでの雰囲気。
それはじわりじわりと上条の脳内に侵入し、恐怖を盛り上げていく。
それが自身を抑え、逃げる意欲を奪っているのだと上条は気付く。
上条「……そっちがその気なら、やってやるよ」
逃げる橋を失った。
なら、前に進めばいい。
上条はそう自分を鼓舞し、両腕を構える。
だが、やはり恐怖で震えは止まらない。
しかし、上条はそれを超える意思で恐怖を塞いだ。
絹旗「はっ」
自身に対抗しようとする上条を絹旗は鼻で笑った。
その構えは素人。
腕の位置は低く、脚幅が肩幅よりも広く開かれている。
腰は高く、ほぼ棒立ちだ。
その構えでは素早く移動する事も、ましてや耐えられる程の防御力も皆無。
絹旗「私と超やり合おうっていうンですか? いやァ、大したタマ持ってるじゃないですか」
絹旗は口笛でも吹きそうな軽いノリで話しかける。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「――けど、すいませン。あなたのその意気込み、私が超つぶしちゃいますから」
そして、絹旗は地面を蹴った。
それは走るというより、跳躍に近かった。
絹旗「あは」
絹旗は笑った。
笑った顔のまま、跳躍の勢いを生かして蹴りを放つ。
その際、腕と上半身を徐々に捻り、遠心力も加える。
能力を纏ったそれは、当たれば骨を砕く勢いだ。
上条「つっ!?」
上条は、その蹴りに自身の手を伸ばした。
握っていた拳を解き、手の平で迎え撃つ。
それは、避けるよりも賢いやり方である。
跳躍し、蹴りを放った人間の脚を掴めばどうなるか。
もし掴んだのであれば、蹴りを放った人間は成す術もなく地面に叩きつけられる。
上手く受身を取れることも出来ず、そして逃げる事もできなくなる。
が、それは普通の人間の場合に限る。
ここは学園都市。
能力者を開発する都市。
そして、絹旗は能力者。
上条は無能力者。
ここに差があった。
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗「(相手は無能力者と言ってましたし、能力者の私に対して、その判断は超間違いですよ)」
絹旗は相手の動作に対して、採点する。
そして、上条の身体に向かって蹴りが迫る。
窒素で包まれ、殺しを含んだ蹴りが。
そして、放たれた一撃は上条の手へと。
絹旗「ぐっ!?」
が、しかし、
上条「――わりぃな」
次の瞬間には、絹旗は地面に崩されていた。
そして、上条は脚を掴んだままである。
それは、おかしい。
絹旗「な、あなたは無能力者では――」
地面に崩され、脚を掴まれたまま、絹旗は上条に問いかける。
上条は即座に答えた。
上条「俺の右手は、ちょっと特殊なんだよ」
</font>
-
<font color="#000000">
絹旗の脚を掴んでいたのは、上条の“右手”であった。
絹旗は知っている。
上条が無能力者であるという事を。
絹旗は知らない。
上条の“右手”には、“能力を消す力”があるという事を。
上条「っと!?」
絹旗は近くに転がっていた石を手首のスナップで投石し、上条の脚を掴む力が弱まったところを狙って拘束から逃げ出す。
そして、絹旗は分析する。
彼はなんと言っていたかを、思い出す。
絹旗「(俺の右手、と言っていましたね……という事は、右手以外にはその能力が超ないという事……)」
絹旗は立ち上がり、警戒心を強める。
無能力者だからと油断し、蹴りを放った事に対して反省する。
蹴りは拳打より何倍もの威力を誇る。
しかし同時に、自身に隙を生む。
何より自分の脚が邪魔をして視界を塞いでしまうのだ。
絹旗「(……しかしそれも仮設でしかありません。ここは学園都市……どんなビックリ人間がいたとしても不思議ではありません)」
改めて上条と対峙した絹旗は、今度は先程とは違って隙を埋めた構えを見せる。
左肩をやや相手側に向け、前後左右に素早く対応できるように腰を落とす。
瞬きを相手に合わせ、自分が相手を相手が自分を見えない時間すら合わせる。
</font>
-
<font color="#000000">
上条「はあ……」
しかし、対峙する上条はどこか面倒臭そうに溜め息を零す。
上条「なあ、もう止めにしないか? こんな争いは無意味だろうが」
絹旗「無意味かどうかは私が決めます。テメェは超黙っててください」
それは、単なる意地っ張りであった。
絹旗も薄々と感づいてはいた。
そして、一度は考えた。
相手に非はないという事を。
もう、止めるべきであると。
相手は自身の境遇を知らないのだから仕方がないと。
絹旗「(けど、何も知らないっていうのが、余計に超腹が立つ……!)
幸薄そうな顔をした少年だ。
しかし、それでも自分よりはマシな日常を送ってきたのだろう。
だから、あんな事を平然と言える。
平気で手を伸ばし、偽善者となれる。
そういった思いが混ざり、絹旗の感情の昂ぶりに変わっていった。
上条「……」
</font>
-
<font color="#000000">
上条は絹旗を見て思う。
これは止まらないと悟った。
何が悪いのかは分からない。
けれど、自分に非があるのは分かる。
だから、上条は――
絹旗「……超、なンのつもりですかァ?」
――上条は両手を頭上に上げた。
上条「正直、俺はお前がなんで怒っているのか分からない。けど、多分俺に非があるんだろう」
両手を上げたまま、少年は言葉を紡ぐ。
上条「だから、俺は何もしない。お前の気が済むまで何もしない」
更に上条は、地面に膝を擦りつけた。
それは完全な沈黙を意味していた。
絹旗「……」
そんな上条を見下ろす絹旗。
思考ができなくなる。
しかし、それも一瞬。
絹旗「あ、は……は、はははっ――」
</font>
-
<font color="#000000">
こいつは馬鹿か、と絹旗は思った。
笑いが止まらない。
そして、同時に
絹旗「――ふざけンじゃねェぞっ!!」
怒りが頂点に達した。
もう、腕の一本や二本どころでは済まさない。
舐めた事をしてくれた。
その存在を消し去ってやる。
絹旗「っ!?」
激昂する絹旗。
そんな彼女の視界が僅かに歪んだ。
しかし絹旗はそれを無理矢理振り払った。
右拳を解き、手を板のように広げた。
能力を指先に集中させ、窒素で視えない刃を作り出す。
それは肌から数センチという極僅かな刃。
しかし、それだけあれば充分である。
それだけあれば、肌、肉、骨をも切り裂く。
上条「っ」
上条は身体を固くした。
絹旗の気迫、そして絹旗から発せられる恐怖に。
上条に、絹旗の手刀――刺突が迫る。
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絹旗「クソッ――っ!?」
が、しかし、
上条「――え?」
絹旗の手は上条に届く事はなかった。
絹旗「……ァれ?」
当の本人も何が起こったのか理解できていなかった。
ただ、目線が上条よりも下にある事だけは理解できた。
上条「お、おい!?」
突如、膝を着いた絹旗に上条はつい声をかける。
自分を殺そうとしていた相手だと言うのに。
絹旗「(……アタマガ)」
しかし、今の絹旗に上条の言葉をはっきりと聞き取る程の情報処理能力はなかった。
絹旗「(……イタ……イ……)」
上条「―――っ!? ―――っ!?」
そして、絹旗は受け身を取る事もせず、ただゆっくりと冷たく固い地面に唇を落とした。
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④
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投下、超終了です
いや、中身大して変わってなくてすいません
とりあえず、気になった文章だけを書き直しただけです
ちなみにpixiv投下も考えましたが、やはり完結するまではスレ立てて継続していこうと思います
完結するまで暖かく見守ってくださると嬉しいです
……BLACK LAGOONの10巻(特装版)をようやく買えました
感想などありましたら、どうぞ書き込みを
私の励みにもなりますので
ではまたノ
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乙
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乙です
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乙
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乙です
自分も絹旗のキャラが結構好きなんで、pixivじゃなくここで完結して欲しいです
おそらく頭の沸いた荒らしがこの先も邪魔しに来るでしょうが、純粋な気持ちで見に来る読者も少なからずいます
完結まで応援しますので是非頑張ってください
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乙
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なあここって速報からなんて思われてるか知ってるか?
クソスレ乱立
進撃SSに制圧されている
書き手の完結能力の無さ
読み手のクソガキの多さ、くさいから書き込みすんなクズ
圧倒的過疎、VIPで書いてた書き手なら当然書き込みが多い方がいいくせにまったりした空気が好きだと負け惜しみ
シンヤアアアアアアアアwwwwww
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>>536
気に入らないものはとことん陥れる所から判断して精神面がとても幼く見えます
ずいぶんと甘やかされて育ったのがまるわかりです
早く立派な大人になれるといいですねw
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乙です
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荒らすくらいならいつもみたいに埋め立てろ
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乙
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乙
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乙
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乙
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深夜の2時からやってんのかw
ド級の暇人だな!リアル充実するといいね!
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まぁ荒らしがいるのに前もって書き貯めて一気に投下しなかった>>1の落ち度でもある
リメイクならそう難しくないだろうに
欲をかいたな
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まあまた立てるだろうから良いんじゃね
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>>1には負けないで欲しい。
頑張れ
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