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男「なんでだよ、これ」ぬえ「あう………」
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このSSは男「どこだよ、ここ」幽香「誰!?」の続きです。
よろしければそちらからどうぞ。
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カタカタと音が聞こえた。
男「な、なんだ。なんの音だ?」
憑かれ屋「や、やめて」
男「おい、これなんの音なんだ!?」
不気味な音に恐怖を覚え憑かれ屋の胸倉をつかむ。
憑かれ屋「だ、だめだよっ」
しかし憑かれ屋は俺の事を見ていなかった。視線の先を見ると。
カタ、、カタカタカタ
小刻みに振動を繰り返す刀。それはまるで生きているようで
男「あつぁっ!」
掴んでいた右手首にカミソリで切ったような背筋がぞっとする痛みが走った。
思わず手首を見る。
男「あ、あが、ああ」
なかった。手首から先が。
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理解と同時に鉄板に押し付けたような熱と痛みを傷口から感じた。
男「あぁああああぁああああぁあああっ!!!!」
絶叫する。手首から血が面白いほどに噴き出していた。
噴き出す血が俺と憑かれ屋を赤く汚す。
チルノ「ししょーっ!!」
ドンと右わき腹に衝撃を受け俺は地面に倒れこんだ。地面に付いた手首に石が食い込み、神経に直接触れ、意識が飛びそうな痛みをくれる。
男「ぐぎぎぎっ」
何をすると思い顔を上げると刀を横に凪いだ腕が見えた。
チルノが体当たりをしてくれなかったら今頃俺の体は上下で分かれていたのだろう。
チルノ「師匠、こっち!」
チルノが無事な左手を引っ張って俺を引きずる。引きずられながら後ろを見ると憑かれ屋が刀を器用に使い氷を砕いていた。
その顔はさっきまでの様子とは違う。人が変わったかのような。
二重人格? 刀を持つと性格が変わるとか?
いや、でもさっきあの刀は一人でに動いた。超能力? サイコキネシス? よくわからないが憑かれ屋が何かしたのか?
駄目だ、血が足りなくて頭が働かなくなっている。
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チルノ「しっかりしろっ」
男「あぐぅっ」
右手首に違う種類の熱を感じた。見ると傷口が氷でふさがっていた。
じんじんどころじゃなく傷口が痛むが、これで失血はしなくなった、のだろうか。
憑かれ屋「………」
利き手を失った俺は満足に殴ることはできない。蹴りは避けられると隙だらけだからしたくない。
それでもとにかく立ち上がって逃げなければ。
生き残れば霊夢が倒してくれるだろう。その希望にかけるしかない。
男「チルノ、大丈夫か?」
チルノ「うん。師匠は?」
男「なんとか」
逃げ回ることはできる、チルノの氷で障害物を作れば時間稼ぎにはなるだろう。
男「逃げるぞチルノ」
チルノ「了解!!」
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〜俯瞰視点〜
霊夢「ちょっと、あれどういう事よ」
後ろから聞こえる絶叫に霊夢がぎりりと歯を食いしばって聞く。
「あいつは妖怪やらなんやらにやたらと好かれるんだよ」
男が幅広の刀を霊夢に向かって降る。それを霊夢は空中に飛んで避けながらお札を放った。
霊夢「………なんかあんたどっかで見たことあると思ったら、妖怪退治の仕事やってるやつね」
祓い屋「知ってもらえて光栄だな、俺の名前は祓い屋だ」
パンッと風船が弾けるような音がして空中の霊夢の頬を何かがかすめた。
霊夢「祓い屋のくせに巫術やなんかは使わないのね」
祓い屋「段平とハジキさえあれば十分だ。妖怪も、人もな」
霊夢「あぁ、そう」
霊夢は拳銃の射線から逃げながら札をばらまいていく。
自動的に敵を追尾して追っていく札を祓い屋は段平を使い切り落としていくが、落とす事が出来なかった札が直撃する。
霊夢「ただの人間が私に勝てるわけないのよ。今なら命だけは助けて上げるからどきなさい」
霊夢が二つの陰陽玉を取り出す。それはぐるぐると霊夢の周りを回り始めた
"
"
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おお、次スレ始まったか。
期待してるから頑張ってくれ。
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てか↑巫術使わんのに誰が壁作ったの??
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刀と拳銃…そして魔を払う術…
この祓い屋、まさか葛葉一族…
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これからも頑張って下さい
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この戦闘が終わったら男の右腕にオンバシラが装着されるんですねわかります
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がんばれー男ー!
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いや、俺のぬえちゃんが助けに来るんだ!クワッ
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はよかけハゲ!
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ハゲゆーやなw
1 はよくしてくれ 頼む
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一週間もたってないのに…>>1が禿ならお前らは早漏か
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も一個の方も二週間更新ないけど
この時期何かあるのかな?テスト?
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ほっとけよ…書かないのは勝手だろ
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そういやアリスどこいったっけか?
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>>18アリスは中立のはず
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休むな!はよ書けニート!
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とりあえずお前らもちつけ。
後あげんな
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ペッタンズッチャペッタンズッチャ
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楽しみなのは分かるが急かすのは控えよう
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↑ は×1 よ×1 あ×10 お×490
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暇ならこの人の過去作でも読んでろよ
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まだかね?
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罵倒されてまで書こうと思う人はあまり居ないと思います
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それほど期待されてるんだよな
がんぱれ
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期待が重いんでないの?
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とにかく黙って待っとりゃええやん
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うるさいはよかけ
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なんだただのいやがらせか
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祓い屋「くくく…俺をただの人間と一緒にするなよ」
祓い屋は銃口を霊夢に向け狙いをすます
祓い屋「お前らクソガキどもがやってる“ごっこ遊び”なんざ実戦じゃ通用しねぇんだよ」
霊夢「ふん、弱いヤツほどよく吠えるってね」
霊夢「だったら私も手加減はしないわよ」ゴゴゴ…
霊夢「くらいなさい…必中必倒“反則結界”…!」カッ!
祓い屋「な…なんだと…!?」
…チュドーン!…
祓い屋「がっはっ…!」ブシュッ!…ゴプッ…
…ドサッ…
霊夢「私だってね、この戦い…遊びでやってんじゃないのよ!」
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レミリアs「あなたを油断させるために!!」
お燐s「死んだふりをしていたのよ!!」ババーン!!!
黒幕「なっなんだとぉぉう!?」 って展開は,,,もうないのかな,,,,,,
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>>35あってほしいな
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>>35あってほしいな
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連投すまん
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>>34
作者じゃないだろお前
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↑確かに。
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絶対許早苗…!
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どいつもこいつも無駄にageやがって
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それだけ期待してるんだろ。
1 結末考えてるのはわかるけど早くしてくれ〜
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男「こいつが…本当の黒幕…!」
???「よくここまで辿り着いたね」
魔理沙「てめぇが…てめぇがみんなを…!」ギリリッ!
翠香「あんた…なんでこんなことを…」
???「なんでって…僕はこの幻想郷を創り直して、大結界に覆われた閉塞感からみんなを救ってあげたかったのさ」
霊夢「気に入らないわね」
???「僕の事が?」
霊夢「ええ!そうよ!特にそのものの言い方が気に入らないわ。救世主にでもなったつもりかしら?」キッ!
???「救世主?…それは違うなぁ」
???「神主なんだよ………僕は」ドンッ!
紫「…!」
男「こいつ…さっきから何を訳の分からんことを…」
紫「………………ZUN…!」ガタガタ…ブルブル…
UN「ほう…やはり君は僕の事を少ならず知っているようだねぇ……紫」ゴゴゴ…
…みたいな感じで神主がラスボスと見たっ!
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黙って待てや
お前らうるさいから>>1来なくなった
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>>45
お前みたいなのがいるからこねぇんだよきめぇな
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きいてるきいてるww
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ネタ考え天だろ
作者早くしてくれ 遅いとこんなの沸いてくるから
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せやな。そもそも東方関連のスレ書いててキャラ殺したら荒れんのなんて分かりきってるやん。
んで荒れてる時こそ次々書いていかんと際限なく荒らしが沸いてきて収拾つかんくなんぞ?
頑張って書けよ。埋め荒らしが大量に沸いて粘着されたら最悪やぞ
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んだんだ。二週間になっぞ頑張れ頑張れ。
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もう一個の方でもそうだけど何「せや」流行っとるの??
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単純になぜ黙って待てないのか不思議なんだが。
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↑
そう言いながらお前も書き込みしてるじゃん。何偽善者ぶってんの?バカじゃねーのwww
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「偽善者ぶる」って表現はたぶん間違ってるぞ
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触ってやるなよ可哀想だろ・・・
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Zun「ぐはっ,,,,,,何故だ,,,神主である僕が負けるなんて,,,何者だ・・・?」
???ザッ「,,,消えろ」ブラックホール
Zun「うわあぁぁぁ,,,,,,」
???「ここは,,,俺のスレだ,,,!!」
てなかんじで
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44は終結する,,,!
誤差動で2つに分かれた,,,,,,
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1です。
おそらく水曜日の夜には続きをかけるようになると思います。
今までお待たせしてすみません。
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↑大丈夫です。
期待してます。頑張って下さい。
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>>58
頑張ってください
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眠いのにッ……寝られないぃッッ!!!
1の言う夜よ、早く恋!
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どうせみんな(幻想郷から)いなくなる
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祓い屋「どくわけにはいかないな」
霊夢「あらそう。じゃあ本気で行くわよ」
霊夢が腕を祓い屋に向けると周回していた陰陽玉が祓い屋に向かって飛んでいった。
目にもとまらぬとは言えないものの十分すぎるほどに速いその一撃を祓い屋は辛うじて上体を後ろにそらし、避けた
避けたままの態勢で回転式の拳銃を霊夢に向ける。
必中。外すはずがない。
そう祓い屋は思っていた。
パンッ
命を奪うにしては軽すぎる音が鳴り、銃弾が撃ちだされる。
銃弾は霊夢の胸に向かいまっすぐ飛んでいく。到底人の目では見えない速度。撃ちだされてから避けることは難しく、その威力は必殺と呼んでもよい。
しかし霊夢は銃声にも飛んでくる銃弾にも眉ひとつ動かさず祓い屋に向けていた手を強く握りしめた。
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祓い屋「!」
空気を切り裂く音がし、札が飛ぶ。三か所から祓い屋を囲むように。
霊夢と二つの陰陽玉から高速で札が飛ぶ。幾ら動いても追跡してくるそれを避けることは難しい。
しかし祓い屋の意識はそれよりも違う場所にあった。
いくら札が速いと言ってもすでに銃弾は霊夢を撃ちぬいていて良い筈だ。しかし霊夢は今だ変わらず札を放ち続けている。服が破けすらしていない。
祓い屋「ぐっ」
避けきれず、さばききれなかった札がわき腹に直撃する。ぐらりと崩れた隙に祓い屋に三方向から札が殺到した。
祓い屋「仕方、ねぇ」
祓い屋が痛みに耐え、腰につけている巾着袋に手を入れた。
取り出したのは小さな丸薬。それを祓い屋は口に放り込み、飲み込んだ。
とたんにドクンっと心臓が痛む。それを歯を食いしばることで耐え、銃を再度構えた。
霊夢「………」
霊夢が祓い屋の行動に警戒しながらも攻撃の手を緩めない。
しかし先ほどまでと状況が変わっていた。
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祓い屋「はぁっ!」
三方向から飛んでくる追尾する札を祓い屋が刀を振り回し叩き落とす。
先ほどまでギリギリでしか対応できていなかった攻撃を祓い屋は易々と対応していた。
霊夢「薬に頼るなんてよくないわよ」
祓い屋「その通りだな」
祓い屋が札を叩き落とし、数瞬の合間を狙い霊夢に向かって引き金を引く。
パンッとまた音が鳴り、霊夢に向かって銃弾が飛び出した。しかし先ほどとは違う。身体能力を強化する丸薬の効果により祓い屋の目はかろうじて銃弾の動きをとらえていた。
銃弾が霊夢に近づいていく。やはり外すような軌道ではない。
しかし、
祓い屋「っ!」
当たらなかった。霊夢に銃弾が当たる直前、銃弾が霊夢を避けた。なぜか銃弾は霊夢から数センチ離れ、霊夢の体に沿って後ろへ抜けて行った。
霊夢「無駄よ。あんたがいくら銃を撃とうが薬に頼ろうが絶対私には勝てない」
だってと霊夢が言葉を続ける。
霊夢「今の私にはどんな攻撃も当たらないから」
そんな、まるで冗談のようなことを霊夢が真顔で言った。
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キターーーー(・∀・)ーーーー!
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ヤホーーーーーーーd=(^o^)=bーーーーーーーーイイィィ!!
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夢想天生かな?
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男の方を早く・・・
↑てかまた会ったな和服www
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↑せやな
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まず秋姉妹と妖夢が伏線。
そして男の手が切れた今が話の分岐点。←だから1は悩んで更新が遅くなった。
手が切れて、男は能力に目覚める。「無かった事にする能力」
男の手が治っていて驚く一同にゆかり(変換でねぇ)が現れ↑を告げる。
しかしその後異変を解決すると同時に霊夢は誰かの手によって殺される。
男は霊夢を抱きしめ、止める霊夢を振り払い異変解決を無かった事にする。
目覚める男。「どこだよ、ここ」
幽香「誰!?」,,,,,,あぁまたここからか。
そこから無限ループ話。
長文悪い。
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だから男の右手にはオンバシラが装着されんだよ
魔理沙と霊夢の股にもな!
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>>71
球磨川かな?
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73 どゆこと???
球磨川(くまがわ)は、熊本県南部の人吉盆地を貫流し川辺川をはじめとする支流を併せながら八代平野に至り八代海(不知火海)に注ぐ一級河川で、球磨川水系の本流である。熊本県内最大の川であり、最上川・富士川と並ぶ日本三大急流の一つでもある。
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>>74そっちの球磨川じゃなくてめだかボ○クスの球磨川君だよ
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↑の球磨川は
球磨川・禊は「大嘘憑き」(オールフィクション)とゆう
スキル(能力)をもっていて
それはあらゆる事を「なかったこと」にできる
一応補足 例(「怪我をした」ことをなかったことにした)
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お前ら黙って待てよ
上げるのは保守と1だけで良いから
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1が前、「嫁はぬえとパルスぃ」っていっとったから紅魔館組とかは生きてるオチだと思う今日この頃でさ。
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確か一番の嫁は星ちゃんゆーとったはずなんやけど…話の流れ的に寺メンバーぬえちゃん残してみんな死んだんだよなぁ(泣)
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男の片腕切断はにとりと白衣男登場フラグでしょう。
おそらくサイコガン的な武器を与えられそう。
とりあえず秋姉妹は素戔嗚尊の所に向かってると思う。
ただし、絶賛迷子中。
紅魔組は覚醒美鈴によりパチェ・吸血鬼以外は助かってる。
しかし、助かっただけで皆負傷で動けない。
後描写的に勇儀も助けてる?
ヤマキスは脱走中?
寺組は太子によって仮死状態にしてある可能性もあるけども生存は絶望的。
個人的に星君はナズと毘沙門天の加護で生き延びてるがショックで曖昧な状態でさまよっており、地上の偵察に来た衣玖を囲ってしまい、憤慨し衣玖を取り戻しに来た天子秘槍「星流れ」で失明させてしまっている。
星君が生存していたら針妙丸と打出の小槌と宝塔の合わせ技で死亡者を復活させる可能性が微粒子レベルで存在する?
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↑なるほど。
そのサイコガン的なのが「無かった事にする」ですかね。
ただ、どちらも男の時間巻き戻し銃の回数制限の謎は解けず,,,,,,
このスレあと三回は足りなくなるくらい長くなりそう,,,,,,
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>>80
片腕がサイコガンてコブラかよ
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いや。義手かもしんないけど戦力向上的な意味で。
個人的に黒幕・・・元凶は魔理沙の親父かもしれない。
魔理沙の親父が昔なんかやる→鱗に目的される→鱗を言いくるめる→鱗、幻想郷を滅ぼそうとして封印→封印から脱出→魔理沙の親父がこれ幸いと野望の為に後援する。
あたりかと。
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ぬえ「(^p^) あうあうあー」
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てか我々、早苗を忘れてたwww
あれかな、「無かった事にする」 のは早苗かな?神的な力で。←捨てきれない「無かった事にする」
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今日の10時から更新します。
お待たせしました
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うるさい黙ってかけハゲ!
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黙ってもちつけ、ハゲ!!
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「・・・・・・・・・」ペッタンズッチャペッタンズッチャペッタンズッチャペッタンズッチャ
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おいおい、何が10時だ?
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大量の符が祓い屋に襲い掛かる。
見えていないわけではない。薬で強化された動体視力は符の文字まで見切っていた。
しかしそれでも攻撃を当てることが出来ない相手に勝てるわけがなく、どんどんと不利な状況へと追い込まれていく。
見えているが避けることが出来ない。避ける場所がない数の暴力に今までなんとか切り落とし凌いできた刃も鈍ってきた。
霊夢に現在届く攻撃手段は拳銃のみ。しかし意味がない。それでも打ち続けたため弾数は残り2発しか残っていなかった。
結界の向こうから男とチルノが逃げ回る音が霊夢の耳に届く。
しかしそれでも霊夢の表情は動かない。
祓い屋の手から刀が弾き飛ばされる。
しかしそれでも霊夢の表情は動かない。
感情無く、ただ相手の動きが止まるまで霊夢は機械的に攻撃を放ち続けた。
時間にしておよそ20秒足らず。それだけで祓い屋の骨が折れた数は10を優に超えた。
魔理沙によってかつて夢想天生と名付けられていたその技。博麗の巫女を象る不条理。
人妖問わず全て等しく地にひれ伏させるそれは一切の慈悲無く油断なく祓い屋の体を完膚無きまでに破壊した。
ぴくりとも動かない祓い屋を霊夢は覚めた目で見ると背を向け結界に向かってふわりと飛んでいった。
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霊夢「………」
霊夢が結界に手を伸ばし何度か撫でる。
それだけで結界は霧のようになり消えた。
憑かれ屋「………」
突然の乱入者に憑かれ屋の目が男とチルノから霊夢に向けられる。
霊夢「妖刀に憑かれてるだけなんでしょうけど」
憑かれ屋「………っ」
憑かれ屋が空中の霊夢に向かって素早く飛びかかる。
しかし縦に振り落された妖刀は霊夢に当たらず、霊夢の体を通り抜けた。
霊夢「関係ないわね」
いつの間にか霊夢の手に陰陽玉が握られていた。
霊夢が陰陽玉を軽く放り投げるとまっすぐ刀を振り下ろした態勢の憑かれ屋に向かって落ちていき
そして眩い光を放って衝撃波が弾けた。
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書き溜めてないの?
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霊夢「終わったわよ」
ふわりと霊夢が地面に降り立つ。憑かれ屋が持っていた刀は折れ、本人は全身傷だらけで頭から血を流していたが霊夢は見向きもせず唖然としている男とチルノに近づいた。
霊夢「………何よ、そんな顔して」
男「い、いや。強いな、って」
霊夢「当たり前でしょ」
自慢でもなんでもなく当たり前のように霊夢がそう言う。霊夢はそんなことはどうでもいいからと話を変え男のなくなった右手首から先をひょいと拾った。
霊夢「良かったわね綺麗な切り口よ。永琳のところ行けばくっつくんじゃない?」
チルノ「師匠治るの!?」
男「凄いな、永、琳」
ふらりと男の体から力が抜け地面に倒れ伏す。その肌の色は真っ青だった。
チルノ「師匠!?」
霊夢「失血して気絶してるだけよ。そのまま傷口塞いでなさいよ。今から連れていくから。あとこっちも冷凍」
霊夢がチルノに向かって手を投げ渡す。チルノは戸惑いながらも男の右手を瞬間的に冷凍させた。
霊夢「やっぱりただの人間なのね。まぁ、こんな奴がヒーローだなんて思ってたわけじゃないけど」
霊夢はため息をつくようにそう言うと倒れている男の体に触れた。ふわりと風船のように男の体が浮き上がる。霊夢は残った左手を引っ張り人里の方向ではない迷いの竹林に向かって歩き出した。
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右腕つくかなぁ・・・。確か切断面を凍らしたら細胞が壊死すると思うがぁ・・・。感染症もありうるし。
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一気に出して欲しいのだが
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↑わかるけどかきためてないんだろ。
も少し早くしてほしいがな
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書き溜めないならないでコテつけてほしい
ID変わるせいでものすごい読みづらい
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永遠亭に担ぎ込まれた男が目を覚ましたら、今までに死亡したと思われた面子が全員強制入院させられてベッドに寝かされつつも生存してるとかだったらいいな
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↑だといいが,,,,,,
,,,兎男は人間側だったろ?
大丈夫なのか?
てかここでやっと登場か?
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全員生還するならとしたら実は男とことりと鱗以外は紫の作ったダミーで本体はスキマの中にいますって話かもしれないが・・・
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↑逆は?
男とことりと鱗だけスキマん中で永遠ループしてます的な
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そんな夢オチやられても面白くないんだよなぁ
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男「手首はくっつきそうですか えーりんせんせー」
えーりん「むりです」
男「え?」
えーりん「むりです」
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霊夢「………何よ、そんな顔して」
男「い、いや。遅いな、って」
霊夢「何が?」
男「更新速度。」
霊夢「当たり前でしょ(絶望)」
中略
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皆「こーしんそくどははやくなりそーですか、すれぬしせんせー」
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夢オチというか、映姫さまが改易食らったあとに鱗が出没していることに気がついた紫が反乱までにちまちま作っていたと。
最悪、秋姉妹が素戔嗚尊をつれてきて無理やり生き返らすか・・・
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お待たせしました
書き溜めが完了したので明日の10時30分から大量更新します
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イヤー待ってやしたはい!
散々房総してすいやせんでしたw
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よっしゃ!宣言したからにはちゃんと書けよ!
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>>108
それ1じゃないです
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えっっ!Σ( ̄□ ̄;)
↑ 111が 1 か?
イタズラかい?((( ̄へ ̄井)
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おまえらが疑心暗鬼になってどするのか
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…で、10時になったわけだが。
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全くイタズラはやめてほしい
1 も遅いとこーゆう荒しが沸くからはよしてくれ
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フヒヒ…
…埋め埋め
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うめ
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止めれハゲ糞虫以下の精神年齢クソガキ止めれ
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うんこ
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1はいい加減酉を付けるべきである
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えーりんは万能
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まだかな
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いい加減書き溜め終わらせて欲しいものだ。
,,,,,,まさか,,,書き溜めさえもしてないなんてことは,,,ないよね?
まぁ111みたく見てるんなら更新してくれ
ほぼ生き甲斐なんだ更新してくれ
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きも
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>>137
クソコテ死ね
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>>137
クソコテ死ね
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もう飽きたのかな
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長寿の東方系SS二つとも更新止まってるんだけど…実はあっちもここの人のだったり?
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「もしもこんな紅魔館」「その2」のこと?
だったら同じ人。
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〜男視点〜
温かい、温かい何かが俺の手を包んでいる。
薄暗い世界の中で俺はそれだけを支えに歩いていた。
暗い暗い闇の中をぬくもりだけを頼りに。
―――――
――――
―――
???「こんにちわ」
また鱗の人に出会った。こんにちわということはいま昼なのだろうか。
この世界に朝昼夜という概念があるのかはわからないが。
男「また会ったがいい加減名前くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」
???「女の子は秘密を抱えて美しくなるのですよ」
そんなふざけた答えを返しながら鱗の人が微笑む。
結局ここがどことかなんでここにいるのかなど質問には全部秘密ですで返された。
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???「ところで調子はどうですか?」
男「調子………別におかしいところはないが」
健康そのものだ。
???「そうですか、えっと、うーん。あ、もう大丈夫ですね」
男「はい?」
なんだか自己完結してるせいで意味が全然分からない。せめて情報は共有してほしい。
そんな不満をよそに鱗の人は右手を左右に振っていた。
???「それではまた今度」
男「またか!!」
やはり唐突に足元から俺の姿は消えていく。
もがいても騒いでも何も変わらず一定の速度でこの世界から俺は失われていく。
俺の存在が消え、感じられるものは右手を包む温もりだけだった。
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目が覚める。
はじめに見えたのは白い天井。
この光景は二度目だなとぼんやり思っていると右手が温かい。
なんでだ? 俺は右手を斬られて無くしているはずなのに。
しかし俺の右手は今ひと肌程度の温もりを感じている。
もしかしてこれが幻痛なのだろうかと戸惑っていると右から四季さんの声が聞こえた。
映姫「おはようございます」
男「あ、おはようございます」
右を向くと椅子に四季さんが椅子に座っていた。
元から小さいため、椅子に座ってしまうと寝ている俺より少し高いぐらいにしかならない。
とりあえず体を起こそうとするとぐいと引っ張られ無理やり寝かされた。
映姫「まだ寝ててください」
いや、全然大丈夫ですって、右手に幻痛が走ってま―――
映姫「まだ手がくっついたばかりなんですから」
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一気に読みてぇ(´・ω・`)
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↑ほんとにな(・ε・` )
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男「え?」
えーきっき「それがあなたの新しい右手ですよ」
ばんきっき(首)「……なによ」
男「………なんですか?これ…」
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144と145の1の名前お菓子い
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付いてる酉 #あああ
#が重要
あああのところはなんでもいい
もっと長くてもいい
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テス
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テス
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右腕を胸の前に持ってくると四季さんの手と共になくなったはずの自分の右手がついてきた。
一瞬わけがわからず目を瞬かせた。
動く。自分で思ったように動かせる。義手ではない。ちゃんと四季さんの温かさを感じる。
映姫「永琳がきれいに治してくれたのですよ」
手を開いたり握ったりしている俺の様子を見て、四季さんが教えてくれた。
治した。ということは外科手術をしたということだろう。
まさか薬を飲ませたらくっつきました、もしくは生えましたなんてことがあるとは思わない。
いやここはそんなことが起きても何もおかしくない場所だったな。
しかしさっき四季さんがくっついたと言っていたがそれにしては手術後が一切ない。
斬られた場所を指でなぞってみるも以前と変わりない、二十年あまり付き合ってきた右手だ。
男「あっ。結局俺はどれだけ寝ていたんですか?」
映姫「一日だけですよ」
一日………一日も俺は寝ていたのか。
その事実に愕然とする。
今の俺にとっては手遅れにも値する時間。なぜなら戻せる時間は長くても半日だからだ。
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男「霊夢たちは無事なんですかっ?」
慌てて四季さんに聞くと、四季さんは微笑みながらえぇと頷いた。
その言葉に安堵のため息を吐く。
映姫「退院、しますか?」
いきなり四季さんがそう聞いてくる。
その意味はおそらく続けるとまたこんな目に合うかも知れない。それでも続けるのかという意味だろう。
男「はい」
悩む必要は一切なかった。
俺がいかなければ誰かが死ぬなんてことを言うつもりはないが、すでに魔理沙と小町が死んでいる。
また大切な人を失いたくはない。
映姫「そう言うと思っていましたよ」
四季さんがもう一方の手も使い俺の手を包む。
映姫「頑張ってください。私たちの希望として」
そんな大げさな言葉かこそばゆく、少しだけ嬉しくあった。
霊夢みたいなヒーローになれた気が少しだけしたから。
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映姫「では永琳に伝えてきましょう」
男「よろしくお願いします」
包んでいた手を離し四季さんが病室から出て行く。
男「ん、ぐぁっ」
一日寝ていたため少し痛む体を軽く動かすとボキボキと骨が鳴った。
一通り体を動かすと用意されてあったスリッパをはいて俺は外に出た。
ここに来るのは二回目だ。
出来ることならもう来たくはないが。
そういえばここで話したんだったなと椅子に座り、羽男の事を思い出す。
てゐ「病人は部屋に戻りなよ」
気が付くと目の前に兎の耳が生えた少女が立っていた。
こないだの兎の少女よりも小さい。小学生ぐらいだろう。
男「いや、もう退院するから」
てゐ「昨日担ぎ込まれてきたのにかい? 生き急ぐ若者は見たくないねぇ」
やれやれとため息をつく様がやけに似合っており、仕草だけはまるで老人のように思えた。
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男「いや、もう治ったから大丈夫だ」
少女の目の前で右手を振ると少女は目を丸くさせた。
てゐ「あれ、人間だよ、ねぇ?」
男「永琳さんが治してくれたらしいけど」
てゐ「ん。あぁもしかしてあたしがいないときかねぇ。にしても永琳はキツい薬なんて使ったんだろうね。ヤマザナドゥ……四季映姫が急かしたのかね」
小さな手で手首をなぞる少女が独り言を言いながら首をかしげていた。
男「キツい薬?」
てゐ「すぐくっつける。しかも傷跡を無くすなんて薬、寿命が縮むに決まってるじゃないかい」
なるほど。普通に考えていればその通りだ。強い効果がある薬ほど強い副作用があるのは普通の事だ。それは毒にもなりえるのだから寿命を縮ませることだろう。
てゐ「それでいいのかい?」
男「別にいいよ」
そう答えると少女は小さな手を握りしめ、軽く拳骨をしてきた。
てゐ「命は大切に」
そう言って少し怒ったように、少し呆れたように去って行った。
男「命は大切に、か」
-
鼻に指をいれながらボクシングして「命を大事に」だっけ?あんま覚えてないな
-
『決してこの像の前で パンを尻にはさみ 右手の指を鼻の穴に入れ 左手でボクシングしながら「いのちをだいじに」とさけんではいけない』
だな
-
ぬえさんが書いてたのか…
-
当たり前の事だ。
本当当たり前の事なのに。
誰も命を大切にしないんだよなぁ。自分も他人のも。
格好つけてため息をつくも情けない恰好にしかならなかった。
映姫「ここにいましたか」
うな垂れて座っているいつの間にか四季さんが隣に座っていた。
映姫「手続きは済みましたよ。もう行きますか?」
男「そうですね、行きましょう」
休んでいる暇はない。
それに皆は無事かが気になる。
ぬえはどうしているだろうか。
-
小町「大変な目にあったみたいだね」
外に出ると小町が鎌をくるくると回しながら待っていた。
小町がここにいるってことは萃香と魔理沙はどうしているのだろうか。
その疑問を伝えると小町は頬を掻きながら二人で行動していることを教えてくれた。
萃香がいるから無事だと信じたい。
男「そういえば今何時だ?」
小町「とっくに昼過ぎてるよ」
と言うことは魔理沙たちが帰ってくる時間はすぐということか。
神社で待つしかないか。
映姫「帰りましょう」
男「はい」
-
小町の能力を使い、神社に戻る。
境内には誰もいない。まだ帰ってきていな
男「うっ」
後ろから強い衝撃を受けて地面に倒れこむ。
この背中に感じる華奢な感触は
-
男「ぬえ、か」
ぬえ「あうぅ」
服が強く握りしめられる。強く握りしめすぎて爪が肌に食い込んでいた。
さすがに妖怪だなぁとかんがえ
痛い
マジで痛い
どんどん爪が食い込んで
びりって音がした。直後に痛みがさらに鋭く。
痛いじゃない、熱い。
おそらく血が出ているんだろう。
小町「こら」
ぬえ「あうっ」
男「ぐぎぎ」
小町がぬえを引きはがしてくれた。
その際に背中の肉が持ってかれたような痛みがしたが、まぁいい。
-
男「ただいま、ぬえ」
ぬえ「あう」
ぬえの顔は少し泣いてるような少し怒ってるような少し笑っているようなよくわからない表情だった。
小町「………背中、血だらだらでてるけど」
男「痛すぎて泣きそうだ」
割と本気で。
斬られた痛みよりもしかしたら酷いかもしれない。
映姫「治療、しましょうか?」
男「お願いします」
-
傷口を鏡で見るとまだ血を流していた。
どうやら深いらしい。
映姫「沁みますよ、かなり」
男「うぐぐごごごご」
四季さんが消毒液のしみ込んだ綿を傷口にあてた。
映姫「我慢してくださいね」
今すぐ逃げ出したい痛い
ぬえ「………」
なのだが肩をしっかりと押さえつけるぬえのせいで逃げられない。
まぁ、その顔が申し訳なさそうだから許そう。
映姫「あ、ここ深いですね」
男「あばばばばばばば」
前言撤回。今すぐ離して、お願いだから。
-
無事治療が終わり、傷口に包帯が巻かれる。
斬られた手首の傷はないというのに新しい傷が出来てしまった。
ぬえ「うぅ」
まぁ、少し潤んだ目でこっちを見てくるぬえが可愛いので許そう。
喉元過ぎればなんとやらだ。次は前言撤回しない。
映姫「まぁ、仲良きことはいいことかもしれませんが、それでも自分が妖怪であること、男が人間であることをちゃんと理解して行動してくださいね」
ぬえ「あう」
救急箱をしまいながら四季さんがぬえに軽く説教をする。
うな垂れているぬえは可愛いなとか思っているとすぱーんっと良い音がして障子が開かれた。
魔理沙「兄貴!!」
男「魔理沙」
魔理沙「怪我、したのか?」
魔理沙が包帯を巻いている俺の姿を見て、そう聞いてくる。
怪我はしているのだがなんて説明すればいいのだろうか。ぬえが犯人だ!………いやいやいや、ここでそんなこと言ったらぬえが落ち込むし、魔理沙が怒るだろうしいいことがないな。
-
はよはよ
-
ゆっくり書いて下さい、作品の質が下がったら嫌なので
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全部書き終わってから出してけよ
-
変に焦らないでもいいよー。ゆっくり過ぎも駄目だけどねw
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支援。完結まで見守ると決めた!
-
いぇーい支援
-
支援
-
支援
-
魔理沙「はぁ、もう本当心配したんだぜ」
魔理沙が右手首を撫でながら息をつく。
男「皆無事だったか?」
魔理沙「無事だったけど、自分の事も心配してくれよな」
その注意はさっきから何回も言われている。
この銃で誰か死んだら生き返らすんだーとか言ってしまえば楽になるかも知れないが、そのあと起こる騒動について考えると頭が痛くなるのでしない。
男「霊夢とチルノはまだ帰ってないのか?」
魔理沙「いや、さっき見たけどチルノは一人でなんか練習してたな。霊夢は屋根の上で黄昏てた」
霊夢はいつも通りだとしてチルノが練習か。
男「ちょっと見に行ってみるかな」
立ち上がる時に背を曲げてしまったせいで傷に響く。涙目になりそうなのをこらえながら外に出ると外では雪が降っていた。
魔理沙「チルノだな」
吹雪とまではいかないが、いったいなにをしようとしているのだろうか。
すでに一センチほど積もった雪を踏みながら雪風が吹いている方へ歩いて行く。
いつの間にか後ろについてきていたぬえが小さくあうぅと寒さに鳴いていた。近づくにつれどんどん雪の量が多くなっていく。離れを出て一分ほどしか歩いていないというのに積もる雪は足首を超えていた。
-
男「チルノ!!」
雪の発生源、チルノの姿は吹雪く雪で良く見えない。辛うじて青色が見えるくらいだ。
ごうごうとなる風の音に俺の声はかき消されたらしく雪はやまない。
仕方ないので届く位置まで歩みを進める。
魔理沙「これ以上は危険じゃないか?」
その通りだ。防寒服なんてものは着ていない。おかげで体温はどんどん奪われていっている。まだ眠くないので大丈夫だろうと考えているのも素人判断に過ぎない。
男「チルノッ!!」
口を開けた途端に口の中の水分が凍り付いてしまう。声を出せたのはこの一回だけで、あとは口を動かす事すら難しい。
チルノ「し―――」
チルノの声が聞こえた。どうやら俺の声は無事届いたらしく雪は徐々に弱まり一分ほどで積もった雪だけを残しその姿を消した。
チルノ「師匠………無事、だったのか。良かった」
チルノがちゃんと両手がくっついている俺の姿を見て小さく微笑む。
しかしその姿は少し弱々しかった。
魔理沙「力の使い過ぎだろ。昨日もしてたしな」
男「俺が戻ってきて次はチルノなんてことになったらシャレにならんぞ。何やってたんだ?」
-
チルノ「レティ………レティが来れば力強いから。がんばって呼んでたんだけど、来なくて。レティ、忙しいのかな、それとも」
魔理沙「レティは忙しいんだ。だから来ないんだよ」
疲れ切っているらしくチルノの言葉はたどたどしい。そんなチルノの言葉を遮って魔理沙がそう言った。
チルノ「そう、なのか」
レティが誰なのかは分からない。だけどチルノにとっては大切な人なんだろう。いつも自信過剰なチルノが認めるほどなのだから。
魔理沙「だから帰るぞ。大妖精だって心配してるし。それにお前がダメになるとよう………妖精たちも心配するだろ」
チルノ「そうだね。あたいががんばって、皆を守らなきゃ」
魔理沙「あぁ。がんばれ」
チルノ「うん」
ふらふらと飛ぶチルノに駆け寄りその体を抱き上げる。
チルノの体温はいつもよりも冷たい。痛いほどの冷たさをこらえながらチルノを離れまで運んだ。
離れに付いたころにはチルノは小さな寝息を上げていた。
-
黒幕行ったか
-
よっしゃ投下ktkr!
支援。
-
〜俯瞰視点〜
今日も一人でメディスン・メランコリーは留守番をしていた。
理由は理解している。それは自分が弱いからだと。
それを否定するつもりはメディスンにはない。否定したところで弱いことには変わりないからだ。
しかしどうも堪え難い退屈さにメディスンは悩まされていた。
外は曇った灰色の空ではなく真っ青な空。
普通ならば家の中で本を読むよりは外で思いっきり駆け回りたいと思うだろう。それはメディスンも例外ではない。
さきほどから扉の前に立っては戻りを繰り返す行動がそれを証明していた。
メディ「うー。我慢我慢」
幽香との約束を思い出しそのたび堪え読書へと戻る。
しかし外から聞こえる鳥の声や風の音がメディスンを物語の世界から現実の世界へと引き戻していた。
メディ「幽香、まだかなぁ」
メディスンが視線を本から窓の外へと移す。
幽香が出て行ったのは数時間前。帰ってくる時刻は告げられていないためいつ帰ってくるかは分からない。
数十秒後かもしれないし、数時間後かもしれない。そんな不確定の未来をメディスンはため息をつきながら待っていた。
-
メディ「あれ?」
視界の端に何かが映ったのをメディスンは捉えた。
赤色
初めは幽香の服の色かと思った。しかし幽香は全身が赤いわけではないということに気付く。
それにあれは赤と言うよりは朱。暗さを浴びたその色は幽香の鮮やかな赤い色ではない。
ではなにか。それをメディスンは知らなかった。
好奇心よりは恐怖が勝った。メディスンは身を乗り出さずに隠れながら注意深くそれを観察した。
ひとつだけだったそれがふたつみっつ、それどころか十にも及ぼうとしていた。
ゆらりゆらりと
ゆっくりとゆっくりと
幽香が咲かせた太陽と称される花を掻き分け、踏み倒しながらこっちへ近づいてくる。
-
逃げるべきだろうか。
そう思ったメディスンは扉へ駆け寄り扉を開く。
メディ「―――あ」
白く染まった花の中に赤、黒、藍。
数十ととっさには数えきれないほどの数。
それは全て人間だった。
-
囲まれて逃げれない。
飛べば逃げれるかも知れないが飛び道具を持っていないとは思わない。
自ら死に近づくよりは一瞬でも長く生きていたいと思った本能がメディスンの足を家の中へ下がらせる。
メディ「スーさん、いくよ」
スーさんと呼ぶ人形、そしてメディスンの体から無色透明のガスが湧き出る。
弾幕ごっこで使う色付きの微弱な毒ではない。正真正銘の猛毒。
触れれば爛れ、吸い込めばただちに死に至るそれをメディスンは家の中に充満させていた。
メディ「これで、大丈夫。うん、大丈夫」
自分に言い聞かせるように呟き、家の中心に立つ。
全ては殺せないかもしれないが十人くらい殺せば諦めてくれるかもしれない。それにそれだけ死んでしまえば逃げる隙くらいはあるだろう。
そう判断してメディスンは辺りに注意深く気を配った。
-
カチカチと時計の音だけが家の中に響く。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。それを確かめる余裕はメディスンにはなかった。
メディ(扉からかな、それとも窓から?)
パリンッ
メディ「!」
何かが窓ガラスを割り飛び込んできた。
慌てて振り向いた顔に感じるのは熱。
メディ「火!!」
飛び込んだ何かが火をまき散らしていた。
それが火炎瓶であることをメディスンは知らない。しかし何か火がついたものを投げ込まれたのだということは分かった。
逃げればまだ良かったのかもしれない。
しかしメディスンは幽香の家だからと必死にその火を消そうとした。
幽香が持ってきた飲み水。それを火に向かって撒く。
しかし火の勢いは衰えることなく家を、メディスンを飲み込もうと迫る。
さらに壁に何かがぶつかる音も聞こえる。怯えた目で見た外には赤い火の海が広がっていた。
-
支援
-
周りは火の海だった。どうやって逃げようか考えるも空中に飛ぶしかない。
結論にたどり着いたメディスンは意を決して空中へ飛び上がった。
弾幕で天井に自分が通ることができる穴を開け外へ出る。
すでに天井にまで回っていた火が少し肌を焼いたがメディスンは怯むこと無く空に向けて飛んだ。
メディ「あ、あれぇ」
体が重くなった。まるで足を引っ張られているかのように。
必死に飛ぼうとするもその場にとどまることが出来るだけで数センチ進むことすらできない。
ひょうと風を切る音がメディスンの耳に届いた。なんだろうと考えたころにはメディスンの体に矢が突き刺さっていた。
メディ「いっ」
矢が刺さった場所は左肩。抜こうとしたが十を超える風を切る音にやっぱ無理だったのだとメディスンは諦め、せめて痛くないようにと体の力を抜いた。
メディ「ありがとう、幽香」
幽香に見られたときのため死に顔ぐらいはとつくった笑顔は無理やりだったためか無機質な人形のような笑みになってしまっていた。
数瞬後、空中にいたメディスンの体が火に飲み込まれている幽香の家の中に飲み込まれていった。
-
それが異常な光景だということは遠目からでもすぐに分かった。
白、もしくは黄色しか存在しないはずの花畑が赤い。
その赤はゆらゆらと揺らめいていて
幽香「―――!」
声が聞こえた。
焼けてゆく花たちの声が幽香には聞こえていた。
四季のフラワーマスターである幽香には声を持たない花の気持ちが分かる。
だから千を越える悲鳴が、絶叫が、怨嗟が幽香の耳に届いていた。
幽香「ふふ、やってくれたわね。人間」
幽香の口から笑いがもれる。
その季節に咲かない花を咲かせることは幽香は好まない。その好まないことをわざわざしていたのは自分の存在をアピールして面倒な戦いに巻き込まれないようにするためだ。
しかし売られた喧嘩は嬉々として買うのが風見 幽香という妖怪だ。どの妖怪よりも妖怪らしい暴力的な性格が幽香の口角を吊り上げさせていた。
幽香「いいわ。貴方たちを一人残らずいたぶり殺してあげるわよ。ふふ、うふふふふふ」
最強の妖怪は笑い声を優雅なものから徐々にけたけたと狂気を含んだものに変え、花畑に降りて行った。
幽香「さぁ、始めま―――」
-
燃え盛る花畑に降り立った幽香の頭の隅で何かが引っかかった。
何かを忘れている。
それがとても大切なものだったことは覚えている。
しかしそれが何なのかを思い出そうとするが辺りに響く絶叫が邪魔をする。
幽香「!」
矢が左肩に突き刺さった。
どうやら向こうは弓を持っているらしい。しかしこの程度では幽香は死なない。妖怪払いの力的なものは感じたがその程度では幽香は死なない。
幽香「これが、殺すってことよ」
幻想郷に唯一咲く枯れない花。幽香がいつも持っている傘を矢の飛んできた方向へと向ける。
幽香「マスタースパーク」
そう幽香が宣言すると傘の先端から半径十メートル以上はあるであろう光線が放たれた。
魔理沙は八卦炉の魔力を利用してマスタースパークを撃つ。しかし幽香は自身の魔力だけでそれを成し遂げ、魔理沙よりも強い威力で、広い規模で撃つことが出来る。
全てが規格外、それが最強の妖怪と言われる所以だった。
幽香「くふ、くふふふふう」
直撃した数人は蒸発した。直撃しなかった人間も衝撃だけで吹き飛び、体が変な方向に曲がっていた。
-
支援に来ますた。
-
仲間が数人まとめて戦闘不能になったことによって人間たちが幽香に向けて近づいてくる。
がしゃりがしゃりと金属同士が擦れあう音が辺りに響いた。
幽香「あらぁ? あらあらあらあら」
幽香が傘を下げ、人間たちが近づいてくるのを待った。その表情は笑みを浮かべている。
幽香「侍なのね。貴方たち」
がしゃりがしゃりという音の原因は鎧。メディスンが幽香と勘違いした朱色は人間が着ている鎧の朱色だった。
幽香「知ってるわよ貴方たち、殺しが上手なんでしょう? 妖怪も人間も区別なく殺すんでしょう?」
その言葉に人間たちは何も返さない。ただけたけたと笑う幽香を静かな殺気を放ちながら取り囲むだけだった。
幽香「くくふ、くくふう」
幽香が傘を地面に突き刺し両手で手招きをした。それに対し人間たちは腰に下げた刀を抜く。
ぎらりと刀身が炎を映し輝いていた。
幽香「さぁ、楽しませてちょうだ―――」
-
「リグルキィイイイイイックッ!!」
この殺伐とした場に似合わない元気な声が聞こえた。
その声の主は完全に幽香に集中していた人間の後頭部を蹴り飛ばし、そのまま地面に着地
リグル「熱いッ!!」
しようとして足を滑らせ炎の中を転がって行った。
その光景に幽香も人間の両方に隙ができた。
その間にリグルは立ち上がり、幽香に近づいて幽香を守るように拳を構えた。
幽香「あ、あなたは」
リグル「幽香さん。助けに来ましたよ! 一緒に逃げましょう」
幽香「邪魔しないで頂戴。今から私は」
リグル「メディスンはどこですか、早く逃げないと」
幽香「――――っ!」
-
幽香の頭の中に忘れていたその名前が戻ってくる。
慌てて花畑を見渡すもメディスンの姿は見当たらない。ただあるのは燃える花と
幽香「あそこね。どきなさい!」
幽香が地面を蹴る。それだけで数十メートル離れた家に着地した。
すでに炭化しかけている木材を掴み持ち上げ投げる。邪魔な木材は数が多くその姿は隙だらけだった。しかし吹き飛ばすとメディスンがどうなるかは分からない。
幽香は煤を体に纏いながらメディスンを探し続けた。そんな幽香の姿を人間が狙わないわけがなく、人間はリグルを無視し、幽香に刀を構えながら向かっていった。リグルは慌てて空を飛び幽香の背後に立ち両手を広げる。
リグル「僕はね。戦うことは出来なくても逃げることと守ることはできるんだ」
リグルがそうにっこりと笑いながら言う。その言葉に幽香はなにも返さず黙々と焼ける木材を退けていた。
パチンッ
リグルが指を鳴らした。
それ以外、それ以外リグルは何もしていない。
それなのに
「ひ、ひぃいいぃいいっ!!」
「う、うわぁああああっ!!」
「助けてぇええええっ!!」
人間の半分以上がこの場から逃走した。
-
支援に来た。
-
幽香「貴方、何したの?」
幽香が手を止めずにそう聞く。
リグル「僕の能力は蟲を操る程度の能力、それは弱虫も例外じゃない! 例外じゃないんですけど」
リグルの言葉が尻すぼみ気味に途切れる。
その言葉の意味するところは両手を広げながら幽香を守っているリグルの足が小刻みに震えていることからわかった。
リグル「でも、これ以上できる事ないんですよねぇっ!」
涙目でやけくそ気味でそう叫んだリグルに人間たちが一斉に斬りかかった。
リグル「ひいっ!!」
―――
――
リグル「………ほえ?」
リグルが来る痛みに耐えるように目を閉じるもその痛みは一向に来なかった。
恐る恐る目を開けると
リグル「あわわっ!?」
リグルの体は宙に浮いていた。
-
幽香「助けにきたのかどうなのかわからないけど………」
幽香は右手でリグルの襟をつかみ左手で所々が黒くなった人型を持っていた。
幽香「次は殺すわ」
それだけを言い残し幽香は全速力で魔法の森へ向かい飛んだ。
リグル「ぐぇっ!!」
-
アリス「………いらっしゃい」
アリスはいつも通り人形に家の周辺を警備させながら、戦争が終わるのを待っていた。
そんなアリスの元に人形から異常事態の知らせが届いた。
慌てて外に飛び出そうとするとそれより先に扉が開け放たれ旧くからの友人が自分の人形の頭を掴んで微笑んでいた。
幽香「いきなりで悪いけどお邪魔するわよ」
アリス「いやいやいや、別にいいけどなんで私の人形壊してたのよ」
幽香「ストレス発散。こうでもしないと魔法の森を消しちゃうところだったから」
アリスはなんでこんな奴と友達なのかしらと思ったが幽香が暴君なのは昔からの事だったのでため息をつき戦闘不能にされた人形を幽香の手から奪い取った。
アリス「あ、直せるように壊してくれたのね」
幽香「友達ですもの」
気遣いが出来るのなら壊さないという気遣いをしてくれないかなぁとアリスは苦虫をかみつぶしたような表情をしたが幽香の後ろから現れた緑髪の妖怪に気付いて、表情を微笑みに戻し話しかけた。
アリス「リグルもいたのねって、それは?」
幽香「治してお願いだから」
アリス「え、あ。うん、いいけど」
幽香がお願いをすることが珍しくアリスはそれがなんなのかを確認せず思わず頷いた。
-
アリス「えっと、それは」
アリスはリグルが持っているそれが初めは何なのかが分からなかった。それは黒く、そして同じく黒い布に包まれていた。
私に直せってことは人形なのかしらと思いながらリグルからそれを受け取る。
ぱらり
それの表面が剥がれ地面に落ちた。
アリス「………これって」
黒が剥がれ落ちた場所に現れたのは赤。てらてらと光る赤をアリスは理解した。
アリス「人?」
それには手が二本あり、足が二本あり、頭と思われる場所には髪が残っている。
幽香「メディスンよ」
アリス「メディスン?」
その名前をメディスンは知っていた。幽香から聞いていた人形の妖怪。いつか会いたいとは思っていたがまさかこんな形であうなんてとアリスは眉をひそめた。
アリス「完全な人間型じゃないのね、人形らしいところもあるわね」
アリスがメディスンの関節を曲げたり、腹部を触ったりしてそう判断する。
そのたびに炭化した肌に亀裂が走り、その中にある赤を覗かせた。
-
幽香「治せるの?」
アリス「………治せるわよ」
即答できなかったのは知識があるが試みたことはなかったからだ。
人形の修理なら数えれないほどにしてきた。形は似ていても人形は生物ではない。
アリス「任せて」
失敗する確率の方が高かった。しかし目の前にいる幽香の目が少し潤んでいたのでアリスは胸に手をあて頷いた。
もしかしたら、いやもしかしなくても永遠亭に連れて行ったほうが治せるまだ確率は高いのだろう。しかし永遠亭に運ぶまでにメディスンが死んでしまう確率も決して低いわけではない。
幽香「お願い」
アリス「任せなさい。魔界神の愛娘は別に七光りってわけじゃないのよ」
アリスがメディスンの体を抱き直し、地下にある作業室に続く階段へ降りて行った。
リグル「大丈夫、ですかね」
幽香「誰に、誰に祈ればいいのかしらね、こんな時」
リグルはその言葉に気の利いた答えを返すことが出来ず代わりに手を合わせ心の中でどこかにいるであろうメディスンを助けてくれる神様に祈った。
-
〜男視点〜
チルノは布団の中で浅い寝息をあげている。
時折うなされていたがそれも落ち着いた。
魔理沙から聞いた話によるとレティは雪女で氷の妖精であるチルノとは当然仲が良かったらしい。
チルノはレティのことを尊敬し、レティはチルノを娘のように可愛がっていたらしい。
そんなレティを呼ぶためにチルノは力の限り冷気を作り続けていたらしい。
その結果、レティは現れなかった。
魔理沙はチルノにレティは忙しいから来なかったと言ったが魔理沙はそれが嘘だと言った。
レティはすでに死んでいた。それも初めの頃に。
冬の冷気を味方に強くなるレティは冬が始まる前に殺されていた。
-
この事実を胸に抱えた俺はどうすればいいのかが分からず寝ているチルノの頬を数回撫でた。
冷気を撒き散らすが心は誰よりも熱い少女。その頬は柔らかく、普通の子供にしか思えない。
男「それでも、俺よりはずっと強いんだよな」
まぁ、俺より弱いやつのほうが珍しいんだけどな。怪我してばっかりだし。
チルノ「う、うぅん………あ、ししょう」
頬を撫でているとチルノがゆっくりと目を開けて俺を呼び微笑んだ。
男「大丈夫か?」
チルノ「うん、もう大丈夫」
男「嘘つけ」
その声色にいつもの元気は含まれていない。起き上がろうとするチルノを制し、無理やり布団へ寝かせた。
-
チルノの今日は寝てろと厳重に釘を刺して部屋をでる。
すでに沈んだ太陽は月だけを照らしていた。この場にあるのは月の光と何億光年も離れた星の光だけだ。
電灯が少ないため、夜は外の世界と比べて格段に暗い。
男「萃香?」
その中で萃香が靴も履かずに境内で佇んでいた。
萃香「………どうしたんだい?」
それはこっちの言葉だ。萃香の姿はとてもいつも通りとは見えない。
男「どうしたんだ。っていうかどこいたんだ?」
萃香「ちょっと外にいたんだよ」
男「外?」
魔理沙が帰ってきていたからてっきり萃香も帰っていると思っていたがもしかしてそれは勘違いだったのか?
男「何かあったのか?」
萃香「正邪がいたんだ」
萃香「本当あいつはクズだ。どうしようもないクズだ」
その声色は怒りに震えていた。ただその怒りは正邪以外の誰かに向けられているようにも感じた。
-
〜俯瞰視点〜
魔理沙「それじゃあ帰るか」
萃香「あぁ、そうだね」
魔理沙が箒で空を駆け、神社へと戻っていく。
それを萃香は見送り、自分は歩いて帰ろうかと思い歩き出したが数歩歩いて止まった。
感じるのは自分以外の存在。
やれやれまた敵かと軽くため息をついた萃香は存在の感じる方へ向き直った。
萃香「気付いているから出てきたらどうだい?」
手をひらひら振って隠れている敵に声をかける。
すると草むらの中からごそごそと人間が這い出てきた。
萃香「今なら見逃す。ただ一度でも攻撃をしたら見逃さない。今は魔理沙がいないから手加減はしないよ」
萃香が拳を握り固め軽く構える。
正邪「いやはや、まったく怖いもんだね、鬼ってのはさ!」
どこからか正邪の声が聞こえた。声を響かせるだけで姿を見せないその正邪の行動が萃香の神経をさらに逆撫で萃香は奥歯を噛みしめた。
-
萃香「………お前は逃がさないよ」
正邪「そう言われたら絶対逃げてやるよ」
その萃香をあざ笑う声が萃香の神経を逆なでる。萃香は怒り心頭に発したが何とか自制し目の前の人間たちをどうするかを考えた。
さっきの脅しが聞いた様子はない。人間たちは各々武器を構え、じりじりと萃香に対し距離を詰めている。
攻撃をしてこようものなら殺すのは決まっている。それに正邪のことだ、またあの変な術を使っているだろう。
ならば一撃で殺してやるのが慈悲かと萃香は結論に至った。
萃香(あんまりガラじゃないんだけどね)
萃香は構えを軽くからしっかりとしたものに変え、飛びかかってきたものを全力で殴り砕くことにした。
-
萃香から一番近い男が飛びかかってくる。得物は小刀。それを逆手に持っていた。
小刀が振り下ろされる前に萃香は肩から男に当身をした。普通ならば活殺術のはずのそれはたやすくあばらを砕き内臓を破壊していた。
萃香はそのまま男を他の人間にぶつけようと考えていた。
萃香「―――え?」
正邪「………は?」
しかし男の体は飛んでいくことはなかった。
爆発。
萃香が当身をした瞬間、男の体が炎と共に弾けた。
至近距離から浴びた衝撃と炎に萃香の体が揺らぐ。
致命傷にはならない。しかしそれでもまったダメージがないというわけではない。
軽く火傷した頬に驚いた顔で萃香が触れる。
その表情は火傷から怒りへと変わった。
萃香「これがお前のやり方かい!?」
正邪「っ。そうだ、命を懸けなければお前は到底倒せそうにもなかったからな」
萃香「殺す。お前は絶対殺すっ」
-
やっぱ正邪は天邪鬼だな。外道だ。
支援。
-
固有名詞の「男」と普通名詞の「男」が紛らわしいな…
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あれ?正邪も驚いてる・・・?
-
>>208うん ワイも思った
あの男が爆発したのって多分萃香が強すぎたからだと思うんだが
どう思う?
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すいかもダメージ受けてますやん
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子供達が破裂したのと同じ術的なのを違う誰かにかけられてたんじゃね?
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支援に来た。
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幻想郷に武士は生息してないだろ。いたら巫女が妖怪退治なんかしない。だから、アレは形だけまねた奴だね。
というか武士は人妖の最大最悪の天敵でしょう。
-
※ヒント 二次創作
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武士の出来損ないくらいの奴ならたくさんいるイメージ
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あ 言われてた
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>>217
いきなりどうした
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全部誰かさんの術では??
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シリーズを全部読み直してみろ。いるだろ?一匹だけ生死不明みたいになった黒幕が。他人を操るのに長けたヤローが。そいつが全ての元凶だよ。麟ちゃんもただの手駒に過ぎん。
-
一人目が爆発するや否や回りの人間が萃香に向かって飛びかかってくる。
それをなんとかいなそうとするも、やはり爆発し、爆炎と煙を撒き散らした。
萃香「けほっ、けほっ。ちっ」
辺りにただようのは火薬の匂いと血の匂い。はるか昔に萃香は戦場でこの香りを知っていた。
萃香「ただ、状況はまったく違うけどね」
接近が出来ないので避けながら、手のひらに熱を集め人間に向かって飛ばす。
熱が人間にぶつかり、やはり爆発する。
萃香「どれだけ火薬を詰めたのかね」
距離が離れていても自分を襲う炎を手のひらに集め反撃をする。
妹紅ほどの威力はなくても爆発の威力は高い。辺りの木々は焦げ付き倒れていった。
煙と木が倒れたことによる砂煙で視界は悪い。能力で散らそうとするも、砂煙を突破し、襲い掛かってくる人間によってそれは阻止されていた。
襲い掛かってくる人間は例外なく全員爆発する。萃香の体は少しずつ、しかし確実に傷ついていった。
萃香「だるいね。死にはしないけど」
-
萃香「………っと、終わったから出てきなよ」
最後の一人が爆発する。萃香が右手を振ると辺りの煙が散っていった。しかしその先に正邪の姿は無く、帰ってくる返答もなかった。
萃香「ちっ。逃げたのかい」
「じゃあ私の相手をしてもらえるかしら」
萃香「誰だ?」
まだ無事だった木の後ろから一人の少女が出てくる。
その髪の色は赤。身に着けているマントもスカートも赤。そして同じく赤い目が18個。少女と同じ顔が、少女と同じ頭が少女の周辺に浮いていた。
少女は額に大きく刻まれた痛々し気な縫い目を撫でると、マントで隠れた口を小さく動かした。
赤蛮奇「私は赤蛮奇。貴方を殺さないと殺されるから、慈悲があるなら相手をしてもらえる?」
口調は諦めきっている。しかし赤蛮奇は萃香を殺すために足を一歩前へ踏み出した。
萃香「………その額の縫い目はなんだい」
赤蛮奇「火薬が埋め込まれてるの、逃げたら私は死ぬわ、これでね」
赤蛮奇が額の縫い目を人差し指で軽く触る。
萃香「分かった。楽に殺す」
赤蛮奇「感謝するわ」
-
ばんきっきーーー!!!
死ぬなーー!!
-
萃香「来るかい? それとも私がいこうか?」
赤蛮奇「いえ、私から行くわ。貴方を殺せる確率が万が一にでもあるのならば足掻きたいし。なんて楽に殺してもらうやつが言う言葉じゃないけどね」
萃香「かまわないさ」
萃香がそういうと、赤蛮奇が近くに浮いている頭の一つを萃香に向けて飛ばす。
飛んでくる二つの瞳の視線を受けながら萃香はそれを掴んだ。
萃香の手に触れると同時に頭が爆発。さきほどの人間よりも大分威力の強い爆発だった。
萃香「まぁ、そんなことだろうと思ったけど」
赤蛮奇「正攻法じゃあなたは倒せないって言われたから」
萃香「受け入れたのかい?」
赤蛮奇「頭に爆弾が入っているのに、拒否なんかできないわ」
萃香「そりゃそうだね。さ、残りの爆弾を飛ばしてきな。避けないからさ」
赤蛮奇「? なんで避けないの?」
萃香「勝負だよ。あんたが私を殺せるか。私が耐えきるか」
赤蛮奇「………優しいのね」
萃香「勝負が好きなだけさ」
-
赤蛮奇が少し微笑んで二つ目の頭を飛ばす。
瞬きをする間にというほどではないが、十分に加速のついた頭が萃香にぶつかる。それと同時に爆発。
萃香の体は少し揺らいだが、すぐに態勢を立て直した。
三発目、四発目も萃香の体を少し傾かせるだけで萃香自身に変化はない。
萃香はだらりと下げた腕を肩を動かし揺らした。
萃香「あと4回だね」
赤蛮奇「えぇ、そうね」
堪えた様子もなくそう言う萃香に赤蛮奇は少し嬉しそうに微笑んだ。
赤蛮奇「じゃあ続き、いくわよ」
萃香「あぁ」
残った四つの頭が萃香に向かって一斉に飛んでいく。
その全てを受け萃香の体はゆらりと傾いて倒れた。
-
赤蛮奇「ダメだったわね」
萃香「鬼を地面に倒れ伏さすのは大したもんだと思うよ」
赤蛮奇「貴方ワザと倒れたでしょ」
萃香「あぁ、ワザとさ」
優しいのねとくすりと笑った赤蛮奇が萃香に背を向け人間の里に向かって歩いていこうとする。
萃香「けほっ、けほっ。待ちなよ」
それを口から煙を吐きながら萃香が止めた。
赤蛮奇「あぁ、そういえば楽に殺してくれるんだったわね」
萃香「あんた、生きたいかい?」
赤蛮奇「………当たり前でしょ。進んで死のうとする妖怪なんていないわ」
萃香「ならうちに来ないか。助けてっていえば全力で助けようとする人間がうちにはいるんだ」
赤蛮奇「信じても、いいのかしら」
萃香「信じてもいいんじゃないかい?」
赤蛮奇「なら信じさせてもらうわ」
赤蛮奇は笑った。そして赤蛮奇は人間の里に向けていた足を萃香の方に変え、一歩踏み出す。
-
支援に来ますた。
男どうなってっかなwktk
-
ばんきっきがなかまになった!
俺得ルートキタアアアアアアア!!
-
ケン「そうか!頭の中に…爆弾が…!」
-
男が源頼政の生まれ変わりで頭ぶつけて覚醒。襲いかかってくる連中を残酷無惨に打ち取っていくがぬえが泣きながら止める展開が来そうな気が・・・。
ばんきっきは咲夜が時間止めた上で永琳に外してもらわないと危なくないか・・・?
-
キモい妄想を書き込むな。脳内だけで完結させろよ。
-
何でこのスレこんなにクソコテ多いんだ
-
東方というコンテンツの宿命 たぶん
-
東方は中高生に人気が高い
現在は夏休み
つまり…
-
ただでさえ無意味にキャラ延々と殺しまくりで荒れる話だし
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荒れてるか?
-
支援に来た。
-
っていうかチャッチャと書いていけよ!それができないなら書き溜めてから大量に投下していけよ!
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なんで?
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>>240消えろゴミクズ
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>>240変なもん書くんじゃねえカス
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>>1よ、頼むからはやく書いてくれ。変なのがいっぱい沸いてきて読みににくいったらありゃしないわ
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まだ一週間…
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今までを見ると>>1がいない時に>>240みたいな変なのが沸いてる
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それがありなら、なんとでも言えるぞw
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支援。はよ。
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面白いので頑張ってほしいです!
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>>1よ早く来い
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そろそろ二週間だな。支援。
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支援。頼む>>1よ。失踪は許さんぞ。
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なんで君そんな偉そうなの?
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是非ハッピーエンドになってほしいな。
-
赤蛮奇の足音が萃香に近づく。萃香はそれを寝た状態で笑いながら迎えた。
敵はいない。赤蛮奇もきっと助けることが出来る。
萃香はそんな事を考えている自分を丸くなったなと感じ、男と魔理沙に毒されたかなと思った。しかし不思議と嫌ではない。
全てが解決したら義理人情を重んじて生きるのもいいかもしれない。
過去は消えないが過去は過去だ。未来ではない。直せないものに意識を向けるよりこれから何を作るかが生きているものの務めだろう。
萃香「ねぇ、あんた―――」
酒は好きかいと言おうとした。
でもその言葉を向けようとした相手は、赤蛮奇は
パァンと水風船が割れるように、血を撒き散らして地面へと倒れた。
-
自分の考えがいかに甘かったかを萃香は理解した。
裏切りがばれてしまえば殺されるのは当然だ。
でもどこかで何とかなるんじゃないかと思っていた。
しかし駄目だった。赤蛮奇は埋め込まれた爆弾が爆発して死んだ。
あっさりと
やはりどう足掻いても赤蛮奇は死ぬ運命しかなかったのだろうか。
それを知りたくても運命を読み解く幼い吸血鬼はいない。
萃香「正邪ぁああああぁあああっ!!」
逃げたと思っていた正邪の名前を叫ぶ。
正邪は隠れていて、赤蛮奇の様子を見ていた。そして裏切ったから殺した。
尊厳なんてない死を赤蛮奇は迎えてしまった。戦いでもない、自害でもない、生きるものとして意味のない死を赤蛮奇は迎えてしまったのだ。
叫んだ声には山彦すら帰ってこなかった。ただざわざわとした風の音と、全てを飲み込むような夜の帳がそこに降りてきていた。
-
〜男視点〜
萃香は話終わると、一人にしてくれとどこかへ霞のように消えて行った。
もしかすると今ここにいたかもしれない赤蛮奇について思う。
頭に爆弾を埋め込まれ、それが原因で死んでしまった彼女は最後どんなことを思ったのだろうか。
自分の命が助かるということに希望を感じていたかもしれない。希望を抱いて逝けたのならまだ救いがあったかも知れない。
そんな事を思うのは生きている俺のエゴだろうか。
戦争が正しいか正しくないかなんて断言することは俺にはできない。
ただ、なぜこんなにも簡単に命が消えていくのだろうか。消せてしまうのだろうかの結論が出ない俺は霊夢が言う通り甘い人間なのだろうか。
戦いと言えば子供同士の喧嘩ぐらいしか経験したことがなかった俺にはどんな理由があろうとも人の命を奪うことはいけないんだとしか思えない。
しかしそれに強固な意志はないし信念もない。ただ綺麗なことは素晴らしい。平和は素晴らしいとただ盲目的に世間の型に嵌められた意見を自分の意見と勘違いするだけしかできない。
結果俺はやはり弱い人間なんだろう。
魔理沙や霊夢たちを守ると誓いながらもこんなことを思ってしまう俺は優柔不断でどうしようもないクズだ。
ただ正義という偽善の虜になっているだけのどうしようもないクズなんだ。
-
ばんきっき・・・。
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俺の嫁赤蛮奇が
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赤いばんきっきと緑のえーきっきがコンビを組めばポンキッキーズやな!
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まーた萃香は仕留めそこなったのかよ正邪を
しかし仮にも弱者気取ってたくせに随分ご都合無双だな正邪
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>>260
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もう建てなおせよ、書きためるまでスレたてんな
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>>264変なもん書くんじゃねえ
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支援に来たぜ。
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ゆっくり書いていいですよ
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酉付けてるのにこの荒れよう
たまに来てはちょろっと書いてるんだから別にいいじゃん
ぐちぐち文句言わんで待って落ちそうになったら上げるとかでいいじゃん
ほんとここって書いてる人に優しくない読者様(笑)多いよね
あとガキ湧きすぎ
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俺は好きだから頑張れ。支援
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このスレだけは落とさせない。
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ゴロー「東方SSっていうのはね…誰も死んだり殺されたりしないで、楽しくて、豊かで、なんというか…掬われてなきゃだめなんだ!」
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餓鬼が多すぎる
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このキチガイ共は静かに待つこともできないのか
俺はこの人のSS全部好きだ
支援。
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この荒らしどうにかするには街道たんに頼むしかないのかね
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もう終了宣言して別スレで立て直したらいいのに
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その行為にいったいどれだけの意味があるというのだ
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だって読みにくいじゃん!それに、途中で雑談とか荒し多すぎて話の内容に集中できないし
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>>289
つーかsageろよ
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>>1早くこないかな
-
乗っとってもいいですか?
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無理です
-
自己嫌悪に陥っていると、ガサガサと草むらから何かが動く音が聞こえた。
一瞬敵かと思ったが結界内だ。忍び込めるとは思えない。
ならばなにかの生き物だろうか。狸や猫かもしれない。
音のした方へ近づく。空には薄い雲を纏った月の頼りない光しかないせいでよっぽど近づかないとそこになにがあるかが分からない。
流石に狼や野犬はいないよなと少し怯える。
男「多分ここら辺だと思うんだが」
草むらに手を伸ばす。
俺の手がガサガサと草むらを掻き分ける音がし
ガブリ
男「ッ!! いてぇえええっ!!」
俺の悲鳴が夜空に反響した。
-
魔理沙「なんだなんだ、何があったんだ!?」
俺の悲鳴を聞きつけ、魔理沙が家の中から飛び出してくる。
俺は何かに噛まれた右手をさすりながら痛みに飛び跳ねているというなんとも間抜けな恰好で魔理沙を迎えた。
男「な、何かに噛まれたっ」
魔理沙「噛まれたって、蛇?」
男「わからんっ」
痛む手を魔理沙に差し出す。
魔理沙はその手を左手で支え、右手で八卦炉を使い傷口を照らした。
魔理沙「これはなんだ、イヌか?」
見れば綺麗にU字に歯型が並んでいる。しかしあまり大きくはない。中型か小型の犬だろうか。
魔理沙「消毒しといた方がいいかもな」
男「だよな。四季さんのところ行ってくる」
魔理沙「いや、私がする」
私だって手当ぐらいできるんだぜと言いながら魔理沙は少し拗ねたような顔で俺の手を引っ張った。
-
てっきり消毒液たっぷりついた脱脂綿を乱暴に傷口に当ててくるのかと思ったら魔理沙は丁寧に包帯まで巻いてくれた。
男「包帯まで巻けるんだな」
魔理沙「乙女なら誰でもできるって」
魔理沙「それにしても災難だったな。結界内に犬が入り込むなんて」
霊夢「入り込んでないわよ」
男「え?」
いつの間にか霊夢が部屋の前に立っていた。
霊夢「許可してないものは入り込めないわよ」
結界に入り込んでないならさっきのはいったい何なんだ。そんな疑問を口に出す前に霊夢は答えた。
霊夢「侵入者ね」
なんて発言を事もなげに霊夢は言った。
どこまでも冷静なその姿に呆れつつそれは大丈夫なことなのかと霊夢に聞いた。
霊夢「結界の揺らぎがあってその箇所の結界を点検してたらあんたの声が聞こえたから来たの。大丈夫かと聞かれたら紫は藍達が守ってるし、映姫は小町と萃香が守ってる。今のところ被害は出てないから問題ないわね」
被害はすでに出てるんだがといってもこれぐらい、しかも俺だから霊夢にとっては被害のうちに入らないのだろう。
しかし侵入者は何をしたいのだろうか。
-
霊夢「さっさと侵入者を探しに行くわよ」
男「え、俺も?」
霊夢「当たり前でしょ、こんなか弱い女の子だけに探させるなんて男としてどうかと思うわよ」
異論が少しあったが霊夢についていく。魔理沙はあぶないので、四季さんのところへ連れて行った。
侵入者が再び襲い掛かってきたら俺は足手まといでしかないんだけどなぁ。
霊夢「私の結界を抜けてこれるんだから結構な使い手だと思うんだけど」
そんなぞっとしない言葉を霊夢がぽつりとつぶやく。
男「どこから探すんだ?」
霊夢「まず部屋を回るわよ。紫と映姫は大丈夫だと思うけど、いつまでも警戒してるわけにはいかないわ」
男「でもここまで警戒してたらとっくに逃げたんじゃないか?」
霊夢「まだ出て行ってないわ。結界に異常がないもの」
ってことはまだどこかにいるってことで、例えばそこの曲がり角とかに………
霊夢「? 私より先に歩かれると邪魔なんだけど」
男「まぁ、念のために、一応」
-
曲がり角の先は当たり前だが見えない。
だから想像は膨らみ、今頭の中の曲がり角の先には恐ろしい化け物が存在する。
自分自身で恐怖を煽りながらも曲がり角にたどり着いた。もし本当に化け物がいたのなら俺は曲がったときに殺されてしまうのだろう。
霊夢「何立ち止まってるのよ。早く行きなさいよ」
しかしこの程度で怯えていては霊夢みたいなヒーローにはなれない。自分を何とか奮い立たせて曲がり角を覗き込む。
「あう?」
男「っ!」
俺より幾分か背の低い誰かと対面する。
霊夢「どうしたのって、ただのぬえじゃない」
ぬえだった。
ぬえは立ち止まった俺の顔を不思議そうに見ている。
俺は軽く震えた声でぬえになんでもないよと言って頭を撫でた。
男「危ないから四季さんのところに行っててくれ」
ぬえ「う」
ぬえは小さく頷いてぺたぺたと廊下を小走りで駆けて行った。
-
結局それ以外別に何も異常はなく、霊夢の朝を待ちましょうとの言葉によって捜索は一旦中止となった。
霊夢は紫のところへ、俺は四季さんのところへ―――なんてことは出来ないので自分の部屋に戻った。
大丈夫、俺を襲っても意味はないからと自分に言い聞かせつつ部屋に戻るとそこにはぬえがいた。
男「四季さんのところへ行っててくれっていったろ」
ぬえ「あう?」
しかしぬえが居てくれるおかげで恐怖心は大分薄まった。
ぬえは俺よりよっぽど強い。いざという時はなんとかなるだろう。頼るのは情けない話だが。
男「じゃあ寝るか」
ぬえ「う」
ぬえはこくりと頷いて俺の布団の中に潜り込んできた。
男「………?」
少し獣くさい気がしたが気のせいだろうか。
ぬえの首筋に顔を埋めて嗅いでみてもぬえの少し汗の混じった香りがするだけで獣くささはなかった。噛まれたから少し獣に敏感になっているだけだろうか。
恥ずかしがっているぬえにごめんと謝り目を閉じる。
時はすでに日付を跨いでいるせいで、俺はそのまますっと眠りに落ちた。
-
魔理沙「萃香は今日はついてこないのか」
萃香「うん。まだ侵入者が誰かわかってない状態だからね。万が一があっちゃいけない。あ、おかわり」
確かに
昨日は途中で打ち切ったから侵入者がまだ隠れている可能性がある。もしまだ隠れていて、俺たちが結界の外に出た場合残されている中で戦えるのはウィルや咲夜、あとは藍さんぐらいなものだ。足りないとは思わないが何かがあってからでは遅い。
紫や四季さんはまだ良い。もし咲夜やウィルが死んでしまうとおそらく時は戻せない。確認したわけじゃないけど、異変解決に絶対必要な存在ではないと思う。
だから一番強い萃香が残ってくれれば安心だ。
その代わり魔理沙と小町だけのチームになってしまうが、それでも俺のチームと対して戦力は変わらないだろう。
………いや、魔理沙と小町だけじゃダメなのか。
初めて時を戻したときの事を思い出す。誰が殺したのかはわからないが、確かに小町と魔理沙は殺された。小町と魔理沙を殺すことが出来る存在が向こうにはいるんだ。
魔理沙も小町も決して弱くない。だけど最強ではない。
そのことが不安だ。
魔理沙「どうした兄貴。浮かない顔して」
男「ん、あぁ寝不足でな」
ワザとらしくあくびをする。周りはお疲れ様と笑ってくれたが萃香だけは察したようで少し眉をひそめていた。
-
そうか…マミぞーさんはかろうじて生きてたか…
-
せーじゃとかばんきっきがいるのになんで博麗神社に針妙丸おらんの?
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魔理沙と小町は、まだ生きてるか。
二人共、死なないでくれ・・・
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よーむどこいったん?
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支援に来た
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全然関係ないけど守矢組は人間側についてるのになんで天狗どもは放置したのかな?
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人間側ではないだろ
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みすちーだ…
とにかくもっと
みすちーをだせ
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何このスレ…
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なにこのクソスレ…
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落ち着けおまいら。AA邪魔だ。
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一回立て直した方が良いのでは?
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クソスレ
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>>1が来るまで静かに待っとることも出来んのか
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だからあんだけはやく書いていけって言ったのに…
夏休みに入ってさらに変なヤツに目つけられて粘着されまくってるじゃん
これもう休み明けてもアウトだぞ。せっかくの良スレだったのにクソ以下のゴミスレ化決定やな
はやく埋められてしまえ馬鹿野郎。もう二度と書くな
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この程度の粘着は荒らしにも入らねぇ
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荒らされたぐらいでクソスレとか行ってるなら帰ってどうぞ
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街道たんに報告したからどうにかしてくれると信じてる
焼き希望
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掃除されたか。
最終的に黒幕が霊夢達と死んだはずのキャラ達に囲まれて絶望しながら倒されればいいや。
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おお一気に消えたな
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早く書けや
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>>336
一週間も待てないとかなんなの?馬鹿なの?死ぬの?
-
ぬえ「あう!」
ぬえがいきなり手を上げた。なんだろうかと思っているとぬえが魔理沙と小町を指さし、最後に自分を指さした。
魔理沙「ひょっとして、ぬえ。お前もついてくるのか?」
そう魔理沙が尋ねるとぬえは勢いよく「う!」と言って頷いた。
男「………それは」
紫「別にかまわないわよ」
駄目だと言おうとした。しかしその言葉は突然現れた紫によって遮られた。
紫「私はぬえがあなたの恋人だとしても一切特別視するつもりはない。私たちのために働いてくれるならそれはありがたいことだわ。いや、あなたのためにぬえは働こうとしてるのね。恋人として喜ばしいことじゃない?」
魔理沙「おい紫、その言い方は」
男「………分かった。よろしくぬえ」
魔理沙「兄貴!?」
確かにそれが一番良い。萃香がダメなら頼れるのはぬえだけだ。藍さんは紫を守るためにいなければならないし咲夜は手伝ってくれるわけがない。
残ったのはぬえだけなんだ。
-
萃香「それで、いいのかい?」
ぬえ「あう」
男「ありがとうな。ぬえ」
霊夢「それじゃあ私と男とチルノ。魔理沙と小町とぬえの三人ずつに分かれるってことね」
紫「そうね。あ、そうそう男」
紫が俺と目線を合わせる。そして声を出さずに口を動かした。
ばぁん
口がそう言っていた。
男「………分かってる」
紫と俺だけにしかわからないこと。
そして俺が認めたくなかったこと。
ぬえは死んでも生き返らない。
紫「ありがとう、ぬえ」
紫はそう言って去って行った。
ぬえにやっぱり行くなと言うことが出来ず俺はただぬえのにこにことした笑顔を見ていた。
-
安心してくれ、俺は見てる。支援。
-
ぬえちゃん生き返らないのか・・・・
-
小町「ん、今日はぬえが来るのかい」
小町が萃香の代わりについてきたぬえを見てそう言った。
ぬえは小町にやる気を見せるようにガッツポーズをしてみせ、その様子を見た小町はほほえましそうに笑った。
チルノ「師匠、今日も頑張ろうね!」
男「あぁ、もう人間の里の入口だからな」
戦いはこれからが本番。あまり考えたくないが今まで以上に戦いは厳しくなる。
厳しくなるということは俺が銃を使うことがあるかもしれない。死ななくても怪我を負ってしまうかもしれない。
そして俺は今まで以上に足手まといになる。
男「漫画とかだったら逆なんだけどなぁ」
霊夢「なんか言った?」
男「いや、なんでもない」
小町「それじゃあゲート開くよ。霊夢たちは目立つ入口側だから気を付けなよ」
霊夢「誰かが足を引っ張らない限りは安心よ」
その誰かが俺を指しているということはじろりとこっちを見てきた霊夢の視線で痛いほど分かった。
実際足手まといになっているのだからぐうの音も出ない。
-
小町が引いた線を通ると設置した竹筒の場所へと到着する。
小町の能力をベースに色々と工夫を施した術らしいが一割も俺には理解が出来なかった。
まぁ、竹筒を置いた場所に移動できるとさえ知ってればなにも支障はでないが。
霊夢「さ、行くわよ」
男「おぉ」
人間の里の入口。
多いとは聞いていたが里という規模じゃないな。ここから見えるあれは電灯………いやガス灯か?
霊夢「………男。邪魔だから離れてなさい。チルノは男守ってて」
さぁ、これから行こうと歩みを進めた途端に霊夢が立ち止った。
覗いた顔は険しく近くに敵がいるということが分かった。
見回すと少し離れた場所に女性の姿が見えた。その髪の色は全体的に白だが少しだけ青が混じっている。
小町と同じか少し大きいぐらいだろうか。ここからでは距離があるので正確には分からない。
周りには誰もいない。ただその女性だけが腕を組んで仁王立ちをしていた。
-
霊夢「私が倒してくるから、絶対邪魔しないでよ」
男「分かった」
霊夢がふわりと浮いて滑るように女性に近づく。それを見ながら俺とチルノは言われた通りに草むらの中へと隠れた。
チルノ「………うぅ」
チルノが小さくうめき声を漏らす。どうしたのだろうかとチルノの顔を見ると少し青ざめた顔をしていた。
男「どうしたチルノ」
チルノ「慧音が………死なない、よね」
男「………霊夢がか? それともあの女の人か」
チルノ「慧音………」
あの人はチルノの知り合いなのか。ならば心配する理由もわかるが、しかし倒さないという選択肢はない。今度の事を考えておくならば、そう考えておくならば命を奪うという選択肢のほうが良い。
その結論に至ってしまう自分が嫌で、気取ったふりをしてチルノの頭を撫でた。
男「霊夢もさっき倒すって言っただろ。大丈夫だって」
チルノ「うん。そうだよね。あ、いや違う殺さなきゃ、殺さないといけないんだった」
男「チルノ?」
-
チルノ「そう、敵は殺さないといけないんだ。そうしないと」
チルノが青ざめた顔のままぶつぶつとそう呟き出した。
男「おい! どうしたチルノ!!」
チルノの肩を掴み強く揺する。チルノは青ざめ虚ろになった目を俺に向け、一筋だけ涙を流した。
チルノ「あたいは。あたいは頑張らないといけないんだ」
何があったのかは分からない。
しかし今チルノは何かを思い出しショックを受けている。
それが慧音。親しい人物を殺さないといけないということが原因であるとするならば。
それを命じることが出来る人物―――
男「………紫が何か言ったのか?」
その名前を出すとチルノの体が少し震え反応した。
やはり紫が言ったのか。これからは親しい者も殺さなければいけないと。
間違いではない、間違いではないがチルノに言っていいことじゃないだろ。
チルノは人殺しが出来るような性格ではない。そんなチルノを追い込むことが出来る理由って
-
チルノ「師匠、大丈夫。大丈夫だから」
その姿は到底大丈夫そうには思えない。
チルノはまだ青ざめた顔で気丈に笑った。
チルノ「紫はあたいががんばらないと他の妖精を保護してくれない」
男「やっぱりゆか「でも、それは当たり前の事なんだ。何かをしてもらうのは何かをしなくちゃいけない。あたいだってそれくらいわかる。わがままを言っていい時じゃないんだって」
チルノが俺の言葉を遮り、胸に手を当てそう言った。俺はその言葉に何も言えなくなる。
その覚悟を否定できる言葉を思いつかなかったからだ。
ドンッ!
男チル「!」
衝撃が伝わってきた。霊夢と慧音の戦いが始まったのかと思いそっちを見ると慧音を中心として地面がひび割れ荒れていた。
そして何よりの変化。
目の前にあった人間の里が跡形もなくなっていた。
-
慧音「生きるも死ぬも裏表…」
慧音「生きて逝きては星巡り…」
慧音「天あり地あり人ありて…」
慧音「各々交わるはここ、人里…」
慧音「来たりて行かんとする、その者の名は博麗霊夢…」
霊夢「…」ザッ…
慧音「いざ…死合わんッ!」スッ…
慧音「上白沢慧音…参る!」ゴゴゴ…
霊夢「…!」
-
>>347誰?
-
〜俯瞰視点〜
魔理沙はぬえがついてきたことにいまだ不満を抱いていた。正確にはついてくることを許可した紫に対してだが。
そんな心中を察してか小町は舟渡をするときの漫談のような話をしていた。しかし魔理沙はそれを聞いておらず、空回りに終わった。
二人の様子を見たぬえは少し申し訳なさそうな顔をしながらも二人についていく。
小町「あー。魔理沙。もうそろそろ人間の里の裏だね」
魔理沙「あぁ、そうだな」
帰ってきた短いながらも面倒くさいから話しかけないでくれというはっきりとした拒絶を含む言葉に小町が人差し指で頬を掻く。
小町の能力を使いながらなため霊夢たちよりはよっぽど移動が速い。しかしそれもここまでで、人間の里に入ってしまえば、いくら能力を使えども戦いを避けることはできない。
なのにこんな様子で大丈夫なのかねと小町は心の中でため息をついた。
小町(これはあたいががんばらないといけないかな?)
そう思い小町は歪な形の鎌を握りなおした。
-
見てるぞ頑張れ
-
小町「もうすぐだ。気張っていこうかね」
魔理沙「ん」
ぬえ「あう!」
後数分もすれば人間の里の裏へと着く。
霊夢たちの前に比べれば警備は手薄だが、それでも少なくはない。ただ霊夢よりは楽というだけだ。
魔理沙はほとんど自分の力だけで進んでいくであろう霊夢を思い、その差について少し悲しみを覚えた。
しかし自分にもやれることはある。ここで頑張らなければ霊夢や男に負担がかかる。魔理沙は魔理沙なりにこの場で戦う覚悟を決めていた。
しかしその覚悟は数分後に簡単に砕かれる。
目標の場所。
小町「あれ、ここのはずなんだけど」
魔理沙「消えた? まさか、慧音か」
ぬえ「うぅ」
人間の里はどこにも存在しなかった。
-
魔理沙「どうすればいいんだよ」
小町「流石のあたいでもどうしようもないよ。まぁ、消えたってことは向こうも攻めてこないからいいんじゃないかい?」
魔理沙「良くないだろ」
「その通りじゃな!」
二人が会話をしているとすぐ近くから声が聞こえた。
慌てて声がした方向を向くとそこには小さな白髪の少女がいた。
そして魔理沙も小町もその少女の名前を知っている。
小町「布都………いつの間に」
布都「ふっふっふ。修行してぱわーあっぷした我にとっては風水を使い、気配を消す事なぞたやすいことよ」
右手でくるくると皿を回しながら布都がにやりと笑う。その様子を見た小町と魔理沙は布都が自分が知ってる布都よりも強くなっていることを感じ、距離を取ろうと後ろに引いた。
ぬえ「ぐるるるっ!!」
しかしぬえは野犬めいた声を上げながら布都に飛びかかった。
布都「ん。誰かと思えばあの寺の死にぞこないか。まるで野犬じゃな。しかし」
布都の首にぬえの手が伸びる。しかし、その手はぬえの首から数センチ離れたところで止まった。
-
布都さん!
-
布都「どうじゃ。怖いであろう? なんといってもこれだけはお主には耐えられまい。のう、ぬえ」
布都が袖から黒い刀を取り出し、ぬえの眼前へ構えていた。鞘も抜いていないその刀を見た瞬間にぬえの動きは止まり、額に脂汗をかいていた。
布都「獅子王。妖怪殺しの刀よ。我が持つにふさわしいな」
ぬえの手が鞘へとのびる。その動きを見たぬえは慌てて後ろへ飛びのいた。
小町「ぬえは逃げな。分が悪いよ」
飛びのいたぬえの前に小町が出て、ぬえを庇うように立つ。
ぬえは小町の姿を見て、少し迷った後、布都に背を向けて、逃げた。
布都「逃がさんぞ!」
小町「あんたの相手はあたいだよっ」
布都「すまんがお主の相手はまた今度じゃ!」
布都の体を中心につむじ風が巻き起こり、小町は前に進もうとした態勢を崩され、風を利用し大きく飛んだ布都に対応することが出来なかった。
魔理沙「行かせないぜ!」
布都「屠自古!!」
屠自古「分かってるわよ!!」
魔理沙が八卦炉を布都へ向け、レーザーを放とうとした瞬間魔理沙の眼前に雷が落ちる。その衝撃に魔理沙は数メートル吹き飛ばされた。
-
布都に名前を呼ばれた少女は苛立たし気な顔をしながら風に乗って飛んでいく布都を見送った。少女には足がなく、足があるべき場所に二股に分かれた半透明の白い靄のようなものがあった。
小町「ちっ。さっさとあんたを倒して布都を追わせてもらうよ」
魔理沙「あぁ、すぐに撃つ」
屠自古「あんたたち私の事を布都より格下に見てない? そんな事ないわよ、マジで」
布都が右手を払うと数本の雷が小町と魔理沙に向かって飛んでいった。
魔理沙「あぶなっ」
小町「魔理沙っ!!」
対応が遅れた魔理沙の手を引いて小町が雷を避ける。
完全に態勢を崩した二人を見て屠自古はくすくすと笑った。
屠自古「私一人でも強いってこと、分からせてあげるわよ。やってやんよ!」
屠自古が右手を掲げるとバチバチと雷が集まる。どんどん大きく膨れ上がるそれを屠自古は二人に向かって投げつけた。
投げつけられた雷は槍のようになり、二人に向かって飛んでいき、落雷の音よりも何倍も大きい爆音と衝撃をあげ地面へ衝突した。
屠自古の雷を受け、辺りの木々が焼けこげ、衝撃でもうもうと砂煙が舞う。
屠自古はその光景を見て満足そうに笑った。
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マジで
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豪族達が来たか・・・
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・・・獅子王は鵺退治の褒美だったと記憶してるが?
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ここで修行を終えたみょんちゃんが増援にくるんですねわかります!
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なんでsageないの?馬鹿なの?
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そうだよ
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アホだよ
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男が獅子王を奪い取って頼政だった時の記憶が蘇るフラグが出たか・・・。
東京にあるはずの獅子王が幻想郷にあって、史実とちがう鵺退治の話は紫の前からの仕込みか?
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>>363
くっさい推理してて楽しい?
sageもできないなら黙ってたらどうかね
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>>364
くさい
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>>365
くっさい推理してて楽しい?
sageもできないなら黙ってたらどうかね
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屠自古「とどめだ!」ぐっ…
???「獄神剣…業風神閃斬」
…ガトキイィーン!…
屠自古「な…なん……だと……!?」
???「祖父より受け継いだ二刀流を極めた今の私に、切れないものなど何も無いッ!」チャキン…
屠自古「…ぐは」ブシュー!…ドサッ…
-
長くなりましたがこのSSはこれで終わりです。
ここまで支援、保守をしてくれた方々本当にありがとうごさいました!
パート化に至らずこのスレで完結できたのは皆さんのおかげです(正直ぎりぎりでした(汗)
今読み返すと、中盤での伏線引きやエロシーンにおける表現等、これまでの自分の作品の中では一番の出来だったと感じています。
皆さんがこのSSを読み何を思い、何を考え、どのような感情に浸れたのか、それは人それぞれだと思います。
少しでもこのSSを読んで「自分もがんばろう!」という気持ちになってくれた方がいれば嬉しいです。
長編となりましたが、ここまでお付き合い頂き本当に本当にありがとうございました。
またいつかスレを立てることがあれば、その時はまたよろしくお願いします!ではこれにて。
皆さんお疲れ様でした!
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えっ
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>>368は1ではないです
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ですよね〜。安心した
って>>367は?
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ぬえ「はっ、はっ、はっ」
ぬえは深い森の中を走り続けていた。その呼吸は追われる者にかかるプレッシャーと自分のリズムを無視して走っているため普段よりも大きく乱れている。
布都「どこまで逃げるか分からぬが、我も暇ではない身。一つ止まって首を差し出してくれぬかの」
布都が逃げるぬえをからかう。布都は帰ってこない返事に軽く笑いつつ、風に乗りながらぬえを追った。
布都「鬼ごっこなど童の頃以来ゆえ、勝手を忘れてしまった。どうしたものやら。鬼を倒したものが勝ちじゃったか?」
布都が短く唱える。するとこぶし大の火が数個布都の周りに生まれた。
布都「燃え散るが良い!!」
布都がぬえに向かって手を振り下ろすと炎はそれを合図とし、ぬえに襲い掛かった。
ぬえ「うぐっ」
炎がぬえを掠める。掠めただけでわかるその熱にぬえは気圧され足をもつれさせた。倒れることはなかったがそれでも布都との距離は大きく詰められた。
布都「どうした捕まるぞ?」
布都の態度はぬえを侮っている。それはぬえにとって恐怖の対象となる源頼政の匂いが強くしみついた師子王を持っていることもあったが布都はその性格ゆえに自分の実力に絶対的な自信を持っていた。
今までいくつもの妖怪を討ち滅ぼし、燃やしてきた。その中には逃げる者や幼い者もいた。
しかし布都にとってはただの妖でしかない。呉れるのは温情ではなく変わらず死だ。
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>>371 違いますよ
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元々恐怖する対象だったがゆえに布都は慈悲なく力を振るうことが出来る。恐怖が大きかった分力を持った布都は冷酷になれた。
怖ければ燃やせばいい、射ればいい。単純的な子供染みた思考をもって布都は動いていた。
まるで子供が虫の足をもぐような気軽さで布都は死を押し付ける。
狂った力を持った弱虫、いつか誰かが布都をそう評した。それに対し布都は戯言をと一笑した。
しかしそれは布都の性質を哀しいほどに表していた。
布都「ほれほれ、もうすぐつかまってしまうぞ? 仲間でも呼べばどうじゃ? 大きな声でな!」
ぬえ「あ、あうぅっ」
布都「どうしたどうした。言葉をつかえないのか?」
ぬえはその言葉に悔しそうに表情を歪ませた。その反応によって布都は本当にぬえが喋ることが出来ないことに気付いた。
布都は愉快そうに笑い、両手を叩いた。
布都「いくら恐怖しても仲間も呼べぬか。まぁ、やってくるのは助けではなく犠牲だがな!」
布都「しかしまことに哀しいことよの。死するときに愛する者の名すら呼べぬとは」
その言葉にぬえは返すことが出来ない。助けを呼びたくても呼ぶことが出来ない。
出来ることは魔理沙たちが速く自分を助けに来てくれることを願うことだけだった。
-
びゅおう。
今までよりも強い風が吹き、布都の速度が上がる。
ただでさえ近かった二人の距離が更に縮まる。
布都「さて、終わらせるかの。戯れは終わりじゃ」
獅子王の柄に手を駆け、さらに速度を上げていく。
その間合いにぬえが入るまではあと数メートル。
数秒程度でその距離は詰めることはできる。
いくらぬえが死ぬ気で走ろうと、乱れた息で布都から逃げ去ることは不可能だった。
距離が1メートル、2メートルと詰められる。
布都「あの世で我の名誉でも語ってもらおう!!」
上体を捻り、布都が刀を抜く。その刃が届く範囲にぬえはいた。
その迫りくる妖怪殺しと妖怪殺しの刃を
「馬鹿者め!!」
ぬえは一笑した。
-
布都「なっ!」
布都の刃が届く範囲。それはつまり
「妖怪相手に接近するとは迂闊じゃな。それとも自分が侍とでも勘違いしておったか?」
ぬえの手が十分に届く範囲だった。
いきなり止まったぬえに布都は間合いを誤り、予定よりも深くぬえを懐に入れていた。
その間合いは刀よりも拳の方が有用な超接近。
ぬえのいきなり後ろに突き出した肘は布都自身の速度もあり、容易く布都の肋骨を叩き折り、内臓を傷つけた。
-
布都「な、なんじゃ、と?」
数メートル吹き飛ばされた布都が痛みに喘ぎつつ驚愕の表情でぬえを見る。
予定外。
布都の予定では獅子王を持っている自分が絶対的な強者で、逃げるぬえを倒す。それだけのいわばキツネ狩りのような一方的で娯楽的なものだったはずだった。
しかしそれは覆された。目の前にいるぬえは獅子王を恐れず、それどころか反撃すらしてきた。
「元ただの人間風情が大妖怪に勝てるなんて少し思い上がり過ぎじゃなかろうか」
雰囲気が違う。今までのぬえとは全く違う異質な雰囲気。
そのぬえのような少女は酷く年寄りくさい笑い声を上げながらいまだ地面に寝転がった布都に近づいた。
「どんな気分じゃ? 追っていたはずが気付けば妖怪の腹の中の気分というのは」
ぱちんと指を鳴らす。
その途端、深い深い森の木々は消えうせた。
-
一体いつから錯覚していた?
-
まみぞーさん!
-
阿笠「いや…わしじゃよ」
-
なんという事だ。予想してなかった。
-
文死んだこと聞いた白衣男の反応が気になる
-
ぽんぽこぽんと小鼓を叩いたような小気味良い音が布都の周りで幾度となく鳴る。そしてどこからか煙が湧いて出た。
布都「ここ、は」
音がなるにつれ景色がどんどん変化していく。緑が生い茂った森は、緑を失い土壁へと変化する。そして煙も徐々に濃くなっていく。
「変化は儂の本分じゃからな」
ぬえの姿をした何者かがからからと笑う。その声は布都の周りで鳴り続ける音よりも高く響いた。
煙が布都を包み、10センチ先も見えないほどの濃さになる
布都「謀っておったのか、畜生めが」
「その畜生に騙されたのはどこの大馬鹿者かのう」
ぽんぽこぽんという音が次第に少なくなっていく。その音に比例して煙も風に吹かれ薄れて行く。
辺りに漂うは濃い獣の臭い。
周りの木々は消え失せ、在るは荒れ果てた寺と無数の狸。
そんな景色の中気付けば布都は、メガネをかけた女性と対峙していた。
マミゾウ「さぁて、皆の衆。古今伝わるムジナの変化。この団三郎の名において、集まれば百鬼夜行にもなるその力を存分に振るってもらおうか」
その言葉の返事の代わりにぽーんという音が一斉に鳴り響いた。
-
布都「く、くく。畜生どもがいくら集まろうと我と獅子王に叶うわけがなかろう。くく、くははっ」
マミゾウ「痛みで気でも狂ったか? 侍でもなければそれは宝の持ち腐れじゃ」
布都「我は負けぬ、なぜなら我は聖童女! 貴様ら畜生が触れてよい存在ではない!! 我には神がついているのだ!! 負けるはずがないのだ!!!」
高笑いをしながら布都が獅子王を顔に水平に構えそのまま数メートル先のマミゾウに向け突進染みた突きを繰り出した。
布都の体は人間のそれと違い、本体の皿さえ壊れなければ四肢がなくなろうと数分ほどで回復してしまう。
マミゾウが負ったあばら骨もすでに完治し、布都の状態は完璧だった。
布都の突きの速度は仙術を使い起こした風に後押しされ、その小さな体躯も相まって神速と呼んでも差支えないほどだった。
それは人間の反射神経では到底追うことが出来ない速さ。
妖怪でも避けることが難しい速さだった。
布都「我のっ 勝ちじゃっ!!」
マミゾウ「馬鹿者め」
どろんっ
獅子王の切っ先がマミゾウの心臓を捉えようとした直前マミゾウの体は煙に包まれた。
布都「もう遅い!。いくら変化しようとこの刃から逃れることは―――」
ザクッ
-
マミゾウ「儂も神という事を知らぬのか? お主が神の味方だというのなら、儂に適う道理はなかろう。まぁ、貴様が信じてた神はすでに貴様を見捨てておるがの」
布都「―――ま、た。謀って」
マミゾウ「我らに真正面から挑む時点で負けは決まっていたよ。忠告はしたはずだったが。この大馬鹿者め」
ぐりんとマミゾウが右手を捻じる。
布都の背中に刺さっているドスがその動きに呼応して布都の傷口を大きく広げながら右に回転した。
マミゾウ「すぐ治る体でもこれは耐えられるまい」
マミゾウが布都の足を払い胸を貫通したドスで地面に縫いとめる。
マミゾウ「食って良いぞ、皆の衆」
その言葉を聞いた狸が布都に殺到していく、ものの一秒ほどで布都の体は狸に埋め尽くされ見えなくなった。
布都「く、ぐぎぃっ。や、やめろ、ちくしょうどもめ! 触れて良い体、ぐぎゃっっ。我の指が、返せ返すのじゃっ。ぐげがっ。やめ、目は、やめて、お願いじゃか―――」
布都の体が狸の鋭い犬歯によって噛み千切られていく。布都の抵抗も空しく布都の体は端から骨ごと食われていく。
抵抗する声も、すぐに痛みによる絶叫に変わり、その絶叫も声帯が噛み千切られ荒い泡が弾ける音に変わった。
マミゾウ「足りんな。これじゃあまだ、足りんよのぅ」
マミゾウが近くの岩に腰を下ろし懐から煙管を取り出す。
指の先から小さな火を出し煙草に点け、うな垂れながら大きく煙を吸い込んだ。
-
今まで一番エグいのがきたな。
確かに血と死の穢れに好んで進み、敵になれば親兄弟親友でも殺し合うと言う武士の生き方は半分、妖怪の世界に足を踏み入れた人間だから、妖怪に対抗できたのだから、神子の威を借りた程度の布都では大妖怪には適わない。
あと、アンデルセン神父の言葉を借りれば布都は朝廷に仕えるのをやめ、朝廷の力に仕え一族を裏切ったからこの結末は当然であろうか。
-
うわぁ・・・豪族逝ったぁ・・・・。
-
吐き出された煙が天に登っていくのにあわせて空を見上げると、視界の隅に何かが映った…
マミぞう「…なんじゃ、あれは?」
マミぞうが空を眺めながらおもむろに立ち上がると、なんとも間の抜けた声が聞こえてきた
???「春ですよ〜…春ですよ〜…」
マミぞう「…ただの春告げ妖精か…」
リリー?「…」ニタァ…
やれやれ、といった感じで再び腰をおろした瞬間…
リリー?「Hell death yo !!」ザンッ!
マミぞう「…がっは…!?」ドサッ…
腹部に尋常ではない痛みを感じたので確認してみると、左脇腹が大きく抉られていた
マミぞう「キ…サマ!何者じゃ…!」ぜぇ…ぜぇ…
リリー・ブラック「私はリリー・ブラック…生けとし生きる全ての者に死の訪れを告げる存在」
マミぞう「く……そ……、こんな…ところ…で……」
マミぞう「す…すまん……ぬぇ……」ガクッ…
-
…ガッ!…キンッ!…バキィ!…
男「…すげぇ」
人里の上空で目にも止まらぬ速さで戦闘を繰り広げている二人を眺めながら男は呟いた
チルノ「あ…あぁ…」ブルブル…
チルノは相変わらず小刻みに震えている。
男「チルノ…霊夢だったらきっとあの慧音って人を…」
チルノ「あいつが…来る……!」ガクガク…
男「…チルノ?」
慧音「霊夢!貴様…なぜ妹紅を殺したぁっ!」ボッ!
霊夢「はぁ?私はそんなことしてないわよ!」ヒュッ…
慧音「しらばっくれるな!神子は貴様がやったと言っていたっ!」ブンッ!
霊夢「だから、私じゃないって言ってるでしょうが!第一あんなヤツの言うこと鵜呑みにするなっての!私は…」
慧音「問答無用!」
霊夢「この…わからず屋が…!」
リリー・ブラック「Hell death yo !!」シュバッ!
-
霊夢「きゃあ!」ブシュッ…
男「霊夢ー!」
突如乱入して来た何者かの凶行によって霊夢は地面に強かに打ち付けられた
男「おい!霊夢!しっかりしろ!霊夢!」
駆け寄った男は必死に霊夢に呼び掛ける。
霊夢「……っ!」ひゅー…ひゅー…
霊夢は男に何かを言おうとするも声にならない。どうやら肺をやらたようでうまく息が吸えない。
霊夢が喋ろうとするたびに口の端から血の混じった真っ赤な沫がこぼれ、その顔からはどんどん生気が失われていく
男「……くっ!」チャカッ!
もはや霊夢は助からない…そう悟った男は銃口をこめかみにあてがい、引き金を絞る…
神子「…させませんよ」ガシッ!
男「な…!?」
-
トリつけ忘れてました…
神子「なるほど、その銃とか言うもので時間を巻き戻していたのですね」
男「ど、どうしてそれを…!」
神子「私は人の欲…つまり人の心が読めるのです」
男「え…!?」
神子「身を潜めて様子を伺っていたかかいがありました。貴方にはここで死んでもらいます」チャキン…
神子は男の銃を握る手を掴みながら腰に携えていた鞘から刀をゆっくりと抜いた
神子「…覚悟はいいですね?」
男「や…やめ……」
-
トリみればわかるけど、これ1じゃない
-
どう考えても1なわけ無いだろ
-
確かにリリーブラックが唐突すぎるしなぁ・・・
-
しかしヘルですよは評価する
-
Hell Death Youのセンス。
-
tes
-
屠自古「あっはっは。ずいぶん他愛無かったわね。この調子じゃ布都のほうも終わってるでしょうし見に行きましょうか」
屠自古は布都がぬえを追っていった方を見てどこまで行ったのだろうかと手を眼の上に当て眺める。
しかし炎や雷も見えないため森に隠された二人の姿を発見することはできなかった。
屠自古「仕方ない。ちゃんと死体でも確認するか。やったかなんて台詞を吐くのは二流の証拠」
「だけどそうやって視界の悪い中近づくのは死亡フラグだぜ」
屠自古「うしr」
―――マスタースパークッ!
屠自古の後ろ。正確にはまだ砂煙の舞う地から衝撃によって砂煙を吹き飛ばす巨大の光の塊が屠自古に向かって襲い掛かる。
屠自古「雷よ! 在れ!!」
屠自古が驚異的な反射神経を持って雷に命じる。
しかし雷もマスタースパークも速度は同等。
雷が落ちるよりも早くマスタースパークは屠自古の体を包んだ。
魔理沙「瞬ッ殺!!」
-
屠自古「ぐ、ぐぐっ。絶対ゆるさ、ナイ」
魔理沙「まだ、生きてたか」
体が薄れ消えかかっている屠自古を見て魔理沙は笑った。
魔理沙「もちろん私は油断なんてしてないから追撃の準備は万全だぜ」
箒を蹴り上げ、魔理沙はその箒に飛び乗る。
魔理沙「幻想郷最速。だから私はお前をぶっ飛ばして、そのままぬえを助けに行く」
小町「おっと、あたいも忘れないでくれ」
魔理沙「生きてたのか、死んだかと思ったぜ」
小町「冗談。雷から助けてやったのはあたいだよ?」
魔理沙「別に助けられなくても避けれたし」
小町「さぁね。とりあえず行こうか」
魔理沙「速攻でなっ!!」
-
屠自古「ぺちゃくちゃぺちゃくちゃうるさいうるさい煩い!! 大人しく吹き飛ばされろぉおおお!!」
屠自古が右手を天に掲げる。周辺の雲がごろごろと雷を孕む。
屠自古「今度こそ、灰に―――」
魔理沙「ブレイジングスター」
小町「お迎え体験版」
屠自古「なれぇええええ!!」
屠自古が手を振り下ろす。
ごろごろとなる雷が二人に向かって襲い掛かる。瞬く間に数十里をかける速度で。
屠自古「っぐぁっ」
魔理沙「そんな速度じゃ私に当てるには何光年もかかるぜ!」
小町「あたいの能力のおかげだけどね」
しかし二人は瞬く間に遥か遠くに移動していた。
-
…正直>>1より乗っ取り野郎が書いた展開のが面白いな
ただし書いてる途中のSS勝手に乗っとろうとしてる時点でクズだが
-
魔理沙「さぁて、ぬえを助けにいくか。ヒーローは遅れて助けに来るから、ピンチを待ったほうがいいか?」
小町「普通に助けようか」
魔理沙「えーそれじゃあつまらないじゃないか」
「そうよねぇ。面白く行かないと」
魔理沙「そうそう。そしたら兄貴も私を褒めてくれるだろうし」
小町「すっかりブラコンだねぇ。まぁ、別にいいけどさ」
魔理沙「あっ。兄貴は渡さないぞ!!」
小町「いや、あたい一言もそんなこと言ってないけど」
「魔理沙はその兄貴って人が好きなのね」
魔理沙「もちろん。あ、でも恋愛感情は一切、な、い
小町「………あんた誰だい?」
「はろー。今日も良い天気。こんなに空が綺麗だから」
あなたを殺しに来たのと、巫女は微笑んだ。
-
>>401
きも
-
小町「魔理沙っ!」
魔理沙「マスタースパークッ!!」
遠慮なしの一撃必殺を至近距離から放つ。
「あっ」
巫女服を来た少女は避けることも出来ず、そのまま光に焼かれた。
魔理沙「な、なんなんだよ、あいつ」
小町「狂人、かね」
「酷いわ。人をいきなり狂人扱いなんて、それになんなんだとかも酷いわ」
魔理沙「っ!」
耳元。魔理沙の耳元でくすくすと幼気な笑い声が聞こえた。
ぞっとして振り返ると今確かに吹き飛ばしたはずの少女がいた。
-
小町「危ない魔理沙っ!」
「あぎゅっ」
小町の鎌が少女の首を刈り取る。
小町「どんな手品を使ったのかは知らないけど」
「種も仕掛けももちろんあるわよ。神様じゃないんだから」
今度は小町の耳元で声がする。
「でも教えない」
少女の手が小町に触れる。
小町「くっ」
慌てて小町は能力を使い移動した。
一センチも一キロも小町にとっては等しい。どんなに速く相手が動こうと小町はあくび交じりにその先を行く。
だから小町には誰も追いつくことが出来ない。
なのに
小町「……………ごぽっ」
小町の頭は重力に従い地面に落ち、数瞬を置いて体もそのあとを追っていた。
-
旧作?それともウィルの様な番外からのゲスト?
-
Murabito「また、つまらぬ者を斬ってしまった」
-
乙、ハラハラしっぱなしだわ
-
展開よりも>>1が失踪しそうでハラハラする
-
そんな素振りないが
-
魔理沙「は。な、何をしたんだよ。なぁ、今お前何したんだ!?」
「それはね」
巫女服を着た金髪の少女が悪戯を自慢するような笑みで魔理沙に仕掛けを教える。
「とってもつよーい糸を首に巻きつけてあげただけ。糸の長さは変わらないんだから距離を操れば首がすぱーんって切れる仕掛け」
ね、簡単でしょと少女はけらけらと笑う。
どすんっ
小町が地面にぶつかる。
魔理沙は地面に転がっている小町を見て、手のひらをきつく握り締めた。
「ねぇ、魔理沙」
魔理沙「近寄るな! 近寄ると撃つ! いや、お前を撃つ!!」
少女は魔理沙の構える八卦炉をまるでただの玩具であるかのような態度で魔理沙に近づく。
そんな少女の様子に魔理沙は戸惑ったが八卦炉に魔力を送り込む。
魔理沙「あの世で小町に詫び続けろ! いや、あの世に小町は………くそっ」
八卦炉に送り込まれた魔力は何倍も増幅して破壊だけを性質とした光に変わる。
魔理沙がぎゅっと八卦炉を握り締めると光は巨大な柱となって少女を包み込んだ。
-
あの世で俺にわび続けろ
-
「」
少女が声を発する間もなく、光によって溶ける。
魔理沙は至近距離で人型のものが端から形を失い人型を失い、小さくなって小さくなってそして消えてしまうのを見た。
小町の仇ではあるが、それでも見ていて気分の良い光景ではない。
魔理沙は相手片手で額から流れ落ちる汗を拭こうとした。
「あらあら魔理沙、こんなに汗をかいちゃって。拭いてあげるわ」
魔理沙「!!」
魔理沙の額に誰かの手が触れる。そして今目の前で消え去った声も幻聴ではなく確かに魔理沙の耳に届いた。
魔理沙「な、なんなんだよ。お前」
「あら、忘れちゃったのね。まぁ、思い出すわ。それとももしかして自分がいったい何者なのかという哲学的思考? うーん禅問答をあまり得意ではないのだれど」
魔理沙「違う。お前はなんで私を知っている」
有名人だとは魔理沙自身も思っている。人里に度々訪れる魔法使いは自分ぐらいのものだし、人間の里以外も飛び回っている。魔法使いとしては一番行動力があるのは確かなことだ。
しかし目の前の自分を良く知っているかのような口ぶりで話しかけてくる相手を魔理沙は知らない。
-
忘れてしまったわけではない。
自分と同じ金髪。更に霊夢や早苗以外に見かけることのない巫女服。
こんなに特徴のある人物を忘れるはずがない。
ならなぜこの少女はこんなにも親しげに話しかけてくる。
額の汗を楽しそうに拭いてくる。
答えの見当たらない問題に魔理沙は感覚的に長い時間頭を悩ませた。
「はい、終わり」
少女が汗を拭き終わり、魔理沙に微笑みかける。
その一切の殺気を感じない笑みに魔理沙は背筋を凍らせた。
-
魔理沙「意味が分からない。なんなんだよお前は、なにがしたいんだよお前は、なぁ、何者なんだよお前」
魔理沙の混乱した頭によって口から矢継ぎ早に疑問が飛び出してくる。
少女はその質問に対し、すらすらと答えた。
「私の名前は冴月 麟。幻想郷を破壊しようと目下活動中。そして貴方のお友達」
魔理沙「は………ははは、なんだよそれ、私のお友達?」
麟「そう、私は貴方のお友達。だから私と一緒に来ない?」
魔理沙「なんでだよ、私はこの幻想郷を」
麟「―――――」
魔理沙「………え?」
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この人の作品は、やっぱり面白いなぁ
書いてる本人のメンタルも強くて本当に尊敬するよ
-
荒らしや外野のくだらない喧騒には目もくれない 安価や質問には黙って応答する
おおよそ書き手の鑑といえる
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>>416
>>417
>>1の自演とみた
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ただのコメントだろ
ID違うし
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応援コメを装ったアンチコメかも
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気持ち悪い深読みだなうっかりモノも言えん
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メディスン「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ…」
スーさん「ポイズン」
-
麟「まりさしっているかキラはじつはわたし」
魔理沙「なん…だと…」
こいし(…計画通りッ!)ニヤッ…
-
〜男視点〜
慧音は霊夢の攻撃を避けもせず霊夢に向かって突っ込んでいく。
綺麗な服も髪も霊夢の攻撃を受け、ボロボロだ。
霊夢の様子を見るに命まで取る気はなさそうだ。逃げれば霊夢は追わない。
ただそうなった場合消えた人間の里をどうすればいいのだろう。
慧音「うぉおおおおぉおおっっ!!」
いや、この人は絶対逃げないのか。
自己犠牲。
愛しているものを守るためなら自分を度外視できる人なんだ。
その姿に少しだけ憧れた。
-
存在消されたキャラが、よくもおめおめと。
-
慧音「くぅ、はぁはぁ………」
霊夢「いい加減諦めてくれないかしら」
慧音「私は絶対に諦めない。諦めるわけにはいかないんだ」
霊夢「これは異変よ?」
慧音「知ってる。私が幻想郷にとって悪だってことも知ってる」
霊夢「ならさっさと人間の里を戻しなさい。黒幕ぶっ飛ばすから」
慧音「だとしても。だとしてもだ! 私は人間の味方だ。人間の守護者なのだ!!」
霊夢「あっそう。そこまで言うんじゃぶっ飛ばすしかないみたいね」
慧音「私も霊夢。お前を全力で叩き潰す!!」
霊夢「全力程度じゃ私は叩き潰………」
霊夢「ねぇ慧音。あんたは私に勝てない。だから私を見逃しなさい。今から逃げるから」
慧音「は?………何を」
霊夢「それじゃ」
-
霊夢が優勢に見えた。いや確実に優勢だったはずだ。無傷の霊夢。傷だらけの慧音。誰が見ても霊夢の優勢だ。
なのに霊夢が戦いをやめ、こっちに向かって飛んできた。
その表情はどこか重い。
霊夢「男!!」
男「! なんだ!?」
霊夢「小町が死んだ。魔理沙が危ないわ」
男「分かった」
霊夢「だから助けに―――」
銃を取り出しこめかみに当てる。
霊夢「は!?」
チルノ「師匠!?」
引き金を引く。
重い衝撃がこめかみを通して脳を揺らす。
衝撃の後の熱い感触が
ギュルルルルルルルルルルルルルル
-
小町「ん、今日はぬえが来るのかい」
ぬえ「う!」
チルノ「師匠、今日も頑張ろうね」
気が付けば博麗神社の境内。
小町は死んでない。
男「なぁ、小町」
小町「ん、なんだい?」
男「今日は止めないか? 萃香もいないし、昨日の侵入者の件もある。不安な要素が多いうえに戦力が万全じゃない」
小町「はい?」
ぬえ「ううっ!」
小町が怪訝な顔をし、ぬえが不満げな顔で軽く俺を叩く。魔理沙も霊夢もチルノもいきなりそう言い出した俺を驚いた顔で見る。
霊夢「休みたければあんただけ休んでればいいわよ」
魔理沙「言いたいことは分かるが私と小町とぬえが居れば十分だと思うぜ。侵入者だって萃香がいるんだから」
違う、本当はそんな事を心配してるわけじゃないんだ。
-
だけどここで小町が死ぬからと言っても意味がない。俺が怒られるだけで終わる。
萃香がいれば。萃香ならすぐに話を分かってくれるのに。
小町「とりあえずゲートを開くよ?」
男「駄目だ!!」
このままゲートを開かれれば俺は小町たちを止める手段が一切無くなる。
そうすればまた同じことの繰り返し。
後は小町が死ぬのを待ってまた時間を巻き戻す。
貴重な弾を消費。だけどそれでも絶対助けれるわけではない。
-
―――小町を見捨てる
いや、駄目だ。貴重な戦力だ。
そして何よりも死んで欲しくない。
小町「男は休んでなよ。疲れがたまって、きゃんっ」
男「駄目だ、やめろ!!」
小町に半ば体当たりするような恰好で抱き付いて止める。
霊夢「は!? あんたいきなりなにしてんの!?」
魔理沙「おい兄貴!!」
男「お願いだ、やめろ。やめてくれお願いだ」
チルノ「師匠。でもあたいは行かないといけないんだ」
知ってる。チルノにどんな理由があって戦っているのかも。
魔理沙「分かった。ぬえがいなくても私たちだけで頑張るから」
違う。違うんだそうじゃない。
いくら俺がそう口に出しても子供の我儘程度にしかとらえられない。
-
魔理沙死亡確定してないのになんで銃使えたん?なぁなぁなんでなん?
-
なんでなん?なぁ?
-
条件が別に魔利沙死亡じゃないから
小町が死んでも対応するから
-
小町がなんかの鍵なんだろうなぁ
-
小町有能やからなあ
-
はよかけロリコン!
-
>>436
落ち着け早漏
-
はよ
-
>>441
しねゴミ
-
小町「じゃあ行くよ。男は休んでな」
誰も俺の言葉を聞かない。小町は俺を軽く引っぺがし、軽く地面に放り投げた。
駄目だ、やめろ。
その言葉よりも早く鎌は振り下ろされ、地面に線が引かれる。小町の能力により向こうとつながってしまった。
魔理沙の方に行けば俺は小町を助けることが出来るだろうか。
男「ま、待ってくれ。俺が魔理沙達の方へついていく」
小町「でも、紫からそれを止められているんだよねぇ」
小町が困った顔をして頬をかく。
男「お願いだから、俺を魔理沙の方へ行かせてくれ」
霊夢「駄目よ。あんたのその提案のせいで万が一チルノが危ない目にあったらどうするのよ」
駄目だ。やっぱりぬえを心配しているせいとしか思われていない。
魔理沙「じゃあ頑張ってくるぜ」
ぬえ「う!」
ぬえと魔理沙が俺の頭を軽く撫で、小町の引いた線へと向かう。
慌てて掴もうと伸ばした手は何もつかめず、魔理沙達は向こうへと消えてしまった。
-
男「待て魔理沙っ!」
線の向こう側へと駆け出す。
しかし小町に襟首を捕まれ再び放り投げられた。
小町「どうせ通っても男は向こうに行けないんだから諦めな」
チルノ「師匠は休んでて。あたいがいれば十人並みだから!」
チルノが消える。
霊夢「頭冷やしてなさい。バカ」
霊夢が消える。
小町「四季様をよろしく頼むよ」
小町が消える。
誰も止めることが出来なかった。
運命は変わらない。
小町は死ぬ。
俺の嗚咽に混じって誰かがあざ笑っているような気がした。
-
黙って待て。下までスクロールするのが大変になるだろ。
-
黙って待てとかそういう問題じゃねえだろこれ!
-
ウィル「どうしたのだ?」
どれだけ泣いていただろうか。自分の無力を何度呪っただろうか。
時間を戻すことは可能。されど小町を見捨てる自分にどれだけ怒りを感じただろうか。
絶望と怒りと嘆き。自分の心が壊れるんじゃないだろうかと思うほどの負の感情。
そして壊れそうになる自分の心の弱さにすら怒りを覚える。
流れる涙も枯れ、喉が裂け慟哭すらあげることが出来なくなったころ、気がつけばウィルが俺の肩に小さな手を乗せていた
-
荒らしうぜぇ
街道たんに報告する手間がかかる
街道たんの消す仕事を増やす
何回迷惑かければ気がすむんですかねぇ
ガキですか?ガキなんですか?
マジで死ねよ
-
ウィル「痛いのか?」
違う、そう答えたかったが喉が裂けたため声を出せない。
だから首を横に振った。
ウィル「辛いのか?」
首を縦に振る。
ウィル「それはウィルに解決できることなのか?」
首を………
ウィル「ウィルを巻き込めないのか」
そう。ウィルを危険な目にあわせることは出来ない。
誰しも死んだら生き返ることは出来ない。
そんな当たり事。
-
ウィル「相談も駄目か?」
首を縦に振る。
ウィル「………ウィルは、無力なのか?」
首を横に振った。
ウィル「なら、なら頼って欲しい。救えない、助けられない。ウィルはもうたくさんだ。いやだ」
ウィルは家族を失った。
だからこその自己犠牲なのだろうか。
助けられなかった家族の代わりに誰かを助ける。
ウィル「駄目、か?」
俺は首を縦に振った。
下種な勘繰りかもしれない。
ウィルの純粋な気持ちを踏みにじる行為かもしれない。
だけど死ぬよりはよっぽどましだ。
英雄を目指したかった。
霊夢のようになりたかった。
-
ウィル「………もしウィルの力が必要になったら」
ウィルの言葉をさえぎるように首を横に振る。
ウィル「そう、か」
ウィルが落胆する。
ウィル「ごめんなさい。役に立てなくて」
ウィルが俺に背を向け神社に戻っていく。
ウィルの言葉は少し震えていた。
-
ウィルの姿が完全に消えてから数分後。
更なる自分への嫌悪感を抱きながら神社の中に入る。
萃香………萃香ならなんとかしてくれるかもしれないと信じながら四季さんの部屋へ向かう。
ぎぃぎぃとなる廊下を腕をだらんとたらしながら歩いているといつの間にか咲夜が目の前にいた。
咲夜「一応礼を言っておくわ」
礼?
言われるような事はしていない。
ただ踏みにじって、俺が汚れただけ。
咲夜になんのリアクションも返さず横を通りぬける。
咲夜「………」
咲夜も何のリアクションも返さなかった。
それでいい。
俺なんかこれでいい。
-
がらり。
少し引っかかりながら四季さんがいる部屋の襖を開ける。
四季「どうしま………どうしたんですか?」
萃香「なんだか穏やかじゃない顔してるけど」
後ろ手で襖を閉め、ゆらゆらと二人に近づく。
四季「何かあったようですね。座ってください」
四季さんが手で示した座布団へと座る。
萃香「なんでいるんだい? 霊夢たちと一緒に」
男「にど、げほっげほっめ」
血交じりの咳をしつつかすれた声で言い終える。
四季さんは大きく目を見開き、萃香は苦虫を噛み潰したような表情になった。
萃香「誰が、誰が逝った」
男「こ、まち」
四季「小町が!?」
四季さんがぐいっと上半身を俺に寄せる。
-
萃香「今から間に合うかね」
映姫「どうでしょうか。場所も分からない今できる事は」
萃香「いや、見捨てる事はできないね」
映姫「それは私だってそう思います。今すぐ貴方に頼んで小町を助けに行ってもらいたいです。しかし、小町を倒す事ができる相手、貴方でも」
萃香「鬼を舐めるんじゃないよ。負けるはずがない」
映姫「それでも最善策をとるべきです。もっと考えて」
萃香「時間は過ぎていく。急ぐべきだ」
二人の会話がどこか遠く聞こえる。
助ける
助けられない
またやり直す
やりなおす
やりなおす
やりなおす
-
なんでこんな無力な俺がそんな役をもらったのだろうか。
ほら、どんどん小町の死が近づいてくる。
なのに俺はどうする事もできない。
小町を助けるには萃香を向かわせればいい。
だけど萃香も死んでしまうのではという不安が言葉を阻止する。
小町を殺してまた戻ればいいじゃないかと誰かが言う。
その通りだ。
最終的に救えればいいんだ。
英雄じゃなくてもいい。
俺なんか汚れればいい。
それがいい。
-
何かが頭の中ではじけた気がした。
それが倫理観とか道徳とかそういったものかもしれない。
男「こまちのばしょ、わかります」
なんとか出せるようになった声でそう言う。
萃香「どっちだい」
適当に指を指す。
それは小町がいない方向。
萃香「分かったいってくる」
萃香はそういってすぐに霧になって消えた。部屋の中から消えた萃香を見送ると俺はゆっくりと立ち上がった。
映姫「これで大丈夫なのでしょうか。もしかして」
男「だいじょうぶ、です」
大丈夫、大丈夫、大丈夫。
大丈夫なんだ。絶対。きっと。
男「だいじょうぶ、ですよぉ」
-
少し安堵した表情の四季さんに見送られ外に出る。
自分の部屋に行こう。
そう思い廊下をすり足で歩く。
今の俺は傍から見ればまるでゾンビだなとどうでもいいことを考える。
男「………あぁ」
小町は死ぬんだなぁ。
俺のせいで死ぬんだな。
男「ふはっ。ふへは」
変な笑いが出た。
運よく誰も近くにいなかった事おかげで誰からも心配もされずとめられる事もない。
後は部屋で待つだけだ。
あぁ、小町はどんな風に死ぬんだろうなぁ。
痛いのかな。
痛いだろうな。
-
自分の部屋に戻る。
ぬえと魔理沙の香りがした。
布団に座る。
ホルスターから拳銃を取り出しこめかみに当てる。
カチリ
弾は出ない。
カチリ
弾は出ない。
カチリ
弾は出ない。
カチリ
弾は出ない。
カチリ
弾は出ない
-
カチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリ
カチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリ
カチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリ
カチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリ
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カチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリ
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カチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリ
カチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリカチリバァン
-
小町「ん、今日はぬえが来るのかい」
時間が戻った。
小町は生きている。
男「なぁ、ちょっと待っててくれないか」
小町「どうしたんだい?」
男「ちょっと用事。おいてかないでくれよー」
冗談じみたしゃべり方で釘を刺しておく。
たぶんこれでおいていかれるような事はないだろう。
ぬえ「うーっ」
男「ごめんな。四季さんが小町に伝言を伝えておきたいって言ってたこと忘れてて」
小町「あたいに? なんだろうね」
霊夢「なんかしたの?」
小町「何もしてない、と思うんだけどねぇ」
小走りで四季さんの部屋へ向かう。
-
四季さんの部屋の襖を少し乱暴気味に開ける。
四季「なっ」
四季さんが驚いた顔でこっちを見ていた。
少し力をこめすぎたかと反省する。
男「しきさ―――「誰ですか!? 貴方!?」
萃香「男、じゃないね」
男「は?」
いきなり飛び掛ってきた萃香に組み伏せられる。
勢い良く畳に顔を打ち付けたせいで一瞬視界に光が舞った気がした。
男「な、なにするんですか。俺は」
萃香「男はそんな顔してないよ。お前みたいな顔はしてないっ」
映姫「………貴方が昨日の侵入者ですね」
萃香の力で抑え込まれたせいで抵抗することすら出来ない。
-
男「違いますよ、誤解です」
萃香「嘘をつくんじゃない」
メキリッ
首にかかってはいけないほどに力が込められる。
折られる。
そう感じたが、それ以上は力を込められることはなかった。
だけどあと少し、ほんの少し力を込められれば俺は死ぬ。
なんで、何がいけないんだ。
-
萃香「こっちの質問にだけは答えさせてやる。それ以外に言葉を発したり、妙な動きしたらこのまま殺す。分かったね」
分からない。何がいけない。何が間違っている。
俺は俺なのに。
俺が俺だと認められない。
映姫「貴方が昨日の侵入者ですね」
男「ちが」
ペキッ
男「あがうっ!」
折られた。
首ではない。
萃香は空いた手で俺の手首をへし折った。
熱い。
折られた腕がものすごく熱い。
萃香「警告はしたよ」
-
言ってない。
俺は嘘なんで言ってないのに。
俺は俺。
俺は俺、なのか?
俺は俺じゃないのか?
-
男「俺は、男、あぎぃっ。です、か? ぐけっ」
左手の指の骨が握りつぶされ粉になる。左手の肘が逆に曲げられる。
萃香「お前は男じゃないよ」
映姫「男さんは貴方のように醜い顔はしてません」
あぁ、違ったのか。
俺は俺じゃなかったのか。
なら俺は誰。
俺はいったいなにものなんだ。
男「ふ、ふへへへあ、あははははっ」
萃香「っ」
萃香が首にかけた手に力を入れようとしたのが分かった。
男「何が三週目だ!! 何が時を戻せるだ!! くそがっ!!」
-
映姫「萃香っやめなさい!!」
萃香「っあぁ」
首にかかっていた力が抜ける。
映姫「本当に、貴方は男、なのですか?」
恐る恐るそう聞かれる。
男「知らないよ。否定したろ今、俺は俺なのかなんて誰が証明できるんだよ、なぁ教えてくれよ、俺は誰なんだよ。男なのか? 男でいいのか?」
白黒つけてくれよ。
そんな恐る恐るじゃなくてさぁ。
俺が俺だって教えてくれよ。
なぁ
-
萃香「何があった。何が起きた。二週目って事は二回失敗したのかい?」
男「二週目って何だ。本当に時間は巻き戻ってるのか? 小町は二回も死んだのか? 俺は小町を殺したのか?」
映姫「小町は、死んだのですか?」
男「死んだ、夢じゃなければ、な」
殺した。
夢じゃなければ。
男「なぁ、四季さん。俺は男、なのか? 白黒つけてくれよ。なぁ!!」
さっきからぐるぐるぐるぐるしててもうわけがわからないんだよ。
男「助けてよ、四季さん」
-
映姫「っ―――貴方は、男、です」
男「本当、に?」
映姫「本当に貴方は男です」
男「そうか。よかった」
ぐるぐるしてる頭の中が少しずつ元に戻っていく。
俺は男。俺は男だ。
男「俺は、男、だ。あぐっ」
左腕を襲う痛みが激しくなる。
痛い痛い痛い痛い。
痛みが脳の神経を焼く。
そして俺の意識はブレーカーが落ちるようにぷっつりと途切れた。
-
「ふざ…んじゃ………よ」
「ごめ…………い」
「あや………ない………」
誰かが言い争う声が聞こえた。
その声はいったい誰なんだろう。
それを考える力も
確かめるためにまぶたを開ける力も
今の俺にはなかった。
「こんな………」
だけど、誰かが俺を心配してくれている。
こんな俺を心配してくれている。
そのおかげで俺は救われた。
誰かのための俺になれる。
それが俺に生きる意味を与えてくれる。
でも悲しい事に今の俺には誰かを助ける力がない。
-
まぶたすら開けれない。
指も動かせない。
まるで糸の切れた操り人形のようだ。
「う!」
あぁ、大切な声が聞こえた。
大切な人の声だ。
左手にぬくもりを感じた。
神経を焼く熱じゃない。
包み込んでくれる暖かさ。
-
助けてくれる。
暖かさが俺の体に糸をくれる。
右手
左手
右足
左足
無数の糸が俺に繋がる。
これで大丈夫。
俺は動ける。
これでもう大丈夫。
-
男「う………うぅ」
目を開ける。
喉がからからだ。
べたりと張り付いた喉が声を阻害する。
水が欲しい。
魔理沙「! 兄貴大丈夫か!?」
魔理沙の声が聞こえた。
ぐるりと眼球を動かして視界を向ける。
男「まり………さ」
魔理沙「大丈夫か? 痛いところはないか? 欲しいものはないか?」
男「水、水が、欲しい」
喉がもうカラカラなんだ。
魔理沙は大きく頷くと慌しく部屋から出て行った。
魔理沙がいなくなったので少し寂しくなる。
誰かいないのだろうか。
-
ゆっくりと上体を起こす。
そういえばこれが何度目の気絶だろうか。
普通に生きていれば滅多に起きるはずのない気絶を何度も受けているのが少しおかしくて笑ってしまう。
男「げほっ」
乾いた喉が笑いを咳に変えた。数回咳き込み大きく深呼吸をする。
霊夢「怪我人は寝てなさい」
今度は霊夢の声が聞こえた。
首を左に回すと霊夢が呆れた顔で俺を見ていた。
そういえば霊夢は良く俺を呆れた顔で見ている。
申し訳ない。
霊夢「今ぐらいはゆっくりしなさい」
ゆっくり、なんて出来ない。
男「こまち、は?」
霊夢「小町なら生きてるわよ。もう時を戻さなくても大丈夫」
男「………え」
-
男「なんで知って、るんだ?」
霊夢「全部聞いたわよ。あれだけあんた達がおかしくなってれば何かあったなんてすぐ分かるでしょ。映姫と萃香を締め上げて吐かせたわ」
男「お………おぉ」
戸惑っていると霊夢が珍しく優しげな表情を浮かべて俺の頭に手をのせた。
霊夢「お疲れ様」
男「………あぁ………ありがとう」
霊夢「あんたバカだからずっと一人で悩んでたんでしょ。誰が死んだとか誰が救えなかったとか」
男「………………あぁ」
霊夢「協力、なんてのはあんまり柄じゃないけど、私もあんたの力になるし、魔理沙もぬえもいる。あんたの言う事を信じてくれる」
男「………………」
霊夢「後は………前の私もあんたを辛い目に合わせた、なら。ごめんなさい」
霊夢が謝る。
霊夢って謝るんだなぁなんて事を頭の隅で考えつつ、俺は頭の上におかれた手を両手で包み笑った。
精神も弱い、肉体も弱い。豆腐メンタルといわれても仕方ない。
そんな俺に霊夢が目を向けてくれた事がうれしくて笑った。
-
男「俺、さ」
霊夢「なに?」
男「霊夢みたいに、なりたかったんだよ」
霊夢「私みたいに?」
男「強くて、自分の意思をちゃんと持ってて、それをちゃんと突き通せて」
そんな眩し過ぎる霊夢を俺は目指していたんだ。
霊夢「そんないいもんじゃないわよ。異変が起きたら止める。それだけの意思しか持ってないのよ、博麗の巫女は」
男「………」
それでも、それだとしても羨ましいんだ。
霊夢が。
守りたい人をちゃんと守れる力が。
霊夢「とりあえず寝てなさい」
男「………うん」
霊夢「それじゃあ、私はちょっと用事あるから」
そういって出て行った霊夢の表情は少し複雑そうな表情をしていた。
-
魔理沙「持って来たぜ」
魔理沙の持ってきた水を飲んで一息つく。
男「そういえば。皆どうなったんだ?」
霊夢が小町は大丈夫だといっていたが、何があったのかまでは詳しく聞いていない。
魔理沙「あー。霊夢が映姫と萃香を問い詰めて全部喋らせた後、一応今日は小町は待機になった。代わりに萃香とぬえとチルノが行ったけど」
男「萃香とぬえとチルノが? 無事なのか?」
魔理沙「もうすぐ帰ってくるだろ」
男「ならよかった」
萃香がいるならたぶん大丈夫だろう。
なんとか運命は変えられたのだろうか。
男「ちょっと出歩いてくる」
魔理沙「怪我してるんだから安静にしとけよ」
男「いや、大丈夫だから」
もう痛みはない。
そう魔理沙に言っては見たものの外を出歩くことは許されなかった。
-
シャリシャリと魔理沙がりんごを剥く音が聞こえる。
そして時折聞こえる小さな、いてっという声。
男「りんごの赤以外をつけないでくれよ」
魔理沙「わ、分かってるって。ただあんまり刃物には慣れてないんだよ」
ただ魔理沙を眺めるだけの時間も飽きてきたっていうと本人に失礼かもしれないが、あまり部屋の中でじっとしているのは好きじゃない。
しかし逃げ出そうとするたび魔理沙に見つかって怒られているのだが。
魔理沙「〜♪」
鼻歌を奏でながら上機嫌でりんごの皮と剥く我が妹。
可愛くはあるが、外出を許してくれないものだろうか。
-
魔理沙「ほら、出来たぞ」
男「………これは」
化け物、だろうか。
ぼろぼろの皮をまとったりんごに角が生えている。
血で汚れた怪物。
なんてものをモチーフにしてるのだろうか。魔女なら当たり前なのか?
そんな風に考え込んでいると魔理沙からこれは実は兎であるという衝撃の事実を聞かされた。
男「………あぁ、うん。ありがとう」
一つに爪楊枝を刺して口に運ぶ。
しゃりっと新鮮な音。そして酸味と甘み。ついでに少し鉄の味。
………魔理沙には料理を教えたほうがいいかもしれない。
得意というわけではないが、魔理沙よりはよっぽど出来るだろう。
-
魔理沙「………不満そうだなー」
男「不満というかなんというか………落胆?」
魔理沙「それは失礼だぜ!」
男「はっはっは」
そんな風に魔理沙をイジって遊んでいるとがらりと障子を元気良く開けて橙が入ってきた。
橙「紫しゃまから薬です!」
魔理沙「薬?」
橙「すごい効き目の薬らしいです」
魔理沙「そんな強い薬だと副作用とかあるだろ」
橙「そこらへんは大丈夫だそうです。橙は分かりませんが」
男「でももう痛みもないし」
魔理沙「それでも治ってるわけじゃないだろ」
男「そうだけど」
-
魔理沙「しかし副作用がない強力な薬って珍しいな。興味ある」
橙「駄目ですよー」
魔理沙「分かってるって。兄貴、左手だせ」
男「自分で塗れるけど」
魔理沙「怪我人にはあまり無理させないってのが私の信条なんだ。今作った」
男「まぁ、いいけど」
左手を動かして魔理沙に向ける。すると動くなと怒られた。
仕方ないので左手を下ろし魔理沙の好きなようにさせる。
橙が魔理沙に小さな小瓶を渡す。小瓶を開けると軽く生臭い臭いがした。
良薬口に苦しというわけではないが、良い薬はやはりどこかデメリットがあるんだな。
魔理沙「塗るぞ」
魔理沙が小瓶から軟膏を少し取り、左手に優しくゆっくりと広げていく。
自分の手に移る生臭さが不快だったが我慢する。
魔理沙の手が指を一本づつ包んでいく。
ぬるりとした感触が指先に伝わり背筋がぞくりとする。いったいこの薬はなんなのだろうか。
-
魔理沙「はい終了」
橙「では橙はこれで失礼しますねー」
橙が薬の小瓶を持って帰っていく。
まだ少し生臭い。
魔理沙「これで明日にでも治ってたりしてなー」
男「だったらものすごい薬だな」
魔理沙「河童の妙薬とかかな」
男「なんだそれ」
魔理沙「どんな傷でもたちどころに治してしまう薬。なんか前人里の爺さんが持ってた」
なんでそんな貴重なものを人間が持ってたんだろうか。幻想郷ならばありえること、なのか?
魔理沙「ま、これで後は安静だな」
男「結局安静しなけりゃいけないのか」
魔理沙「当たり前だ」
-
男「………治った」
魔理沙「外出たいからってそんな嘘は………嘘だろ」
あの軟膏を塗って一時間ちょっと。
骨が砕けぐにゃんぐにゃんだった俺の左腕が元通りになっていた。
腕を振っても、強く握っても痛みはない。
男「ってことだから、もういいか?」
魔理沙「え、あ。うーん。治りたてが危ない、ってのは病気かぁ。いい、のか?」
男「じゃあ外出てくる」
魔理沙「あ! 待って。私も行く!!」
-
服を新しいものに着替え外に出る。
魔理沙は俺の左腕を庇うように左側に立っていたが、骨が再び折れたり砕けたりしそうには感じない。
完全なる治癒。まるで時間を早送りにしたかのようだ。もしくは巻き戻したよう。
男「さぁてと」
外に出たかったが何かをしたかったわけでもない。
とりあえず外の肺を傷つけるほどの寒い空気をいっぱいに吸う。
男「そういえば霊夢は?」
魔理沙「霊夢は多分どっかで一人でいると思うぜ」
男「どっかって………心当たりは?」
魔理沙「えっと。あーうん。ないな」
嘘だという事が一瞬で分かった。
魔理沙の視線を追うとその先には鳥居。
幻想郷ではなく外とをつなぐ鳥居。
そこを魔理沙は見ていた。
-
さて、別に行く必要はないんだけど。
男「そういえば向こうの方の鳥居って俺見たことないな」
魔理沙「うぇ!?」
面白いぐらいの反応を魔理沙が見せた。
魔理沙「い、いや別に面白いものはないぜ?」
男「魔理沙って嘘が下手だよな」
魔理沙「なっ!?」
男「別になんか行っちゃいけない理由があるならいいけど」
魔理沙「いっちゃいけない理由って………まぁあるけど」
男「そうか。ならいいや」
行っちゃいけない理由があるなら別に深く突っ込む必要はない。
わざわざ藪をつついて霊夢の怒りを買わなくてもいい。
亡霊男「おぉ、いたいた」
さてどこに行くかと考えていると、天井からにょっきりと亡霊男の首が生えた。
-
魔理沙「びっくりするからやめてくれ」
亡霊男「すまんな。人間を辞めると人間を忘れてしまうもんなんだ」
そんな笑えないことを笑いながら亡霊男がふわりと地面へと降りてくる。
亡霊男「左腕、治ったか?」
男「もう完治してます」
亡霊男「それは良かった。健康で五体満足が一番だ」
男「それでどうしたんですか?」
亡霊男「明日からの方針を相談するためと謝罪のために紫と閻魔の姫様が呼んでる。あとは今日の夕飯の献立の相談。って言っても肉か魚かってところだけど」
魔理沙「魚だな」
男「俺も魚がいいです。それで二人はどこの部屋に?」
亡霊男「いつも飯食べてるところだ。それじゃ俺は魚釣ってくるかな」
そう言って亡霊男はふわふわと飛んでいった。
亡霊でも魚を釣れるのかと疑問に思ったが料理を作れるのだから魚ぐらい釣れるのだろう。
物を通り抜けるかと思えば包丁を持ったり、いったいどんな風になっているのだろうか。
なりたいわけではないが気になった。
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おもろい。もっと続けて見たい
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紫煙
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(´・ω・`)
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はやく(´・ω・`)
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(´・ω・`)
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なんでこんなに豚が湧いてるん?
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>>558
知るかよ
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(´・ω・`)
流れに乗らなきゃ(使命感)
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3時間かけてここまで読んだのに
(´・ω・)
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(´・ω・`)
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出荷不可避
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進まな過ぎじゃね?
なんか理由あるの?
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マダー
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はよみたいよー
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まだかー
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なんでお前ら上げるん?
黙って待てないの?
犬でも待てるよ?
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紫と四季さんが呼んでいるってどこで呼んでいるのだろうか。
夕飯の献立に気をとられて聞くことが出来なかった。紫の部屋か、四季さんの部屋か。
とりあえず紫の部屋に行ってみよう。
男「魔理沙はどこかで待っててくれないか?」
魔理沙「えぇー。まぁいいけど。私も何か採ってくるかな。全快祝いに美味しい物取ってきてやるよ」
男「それはうれしいけど気をつけろよ?」
魔理沙「大丈夫大丈夫、て良いたいところだけど、一回私死んだのか」
実感ないけどな、と魔理沙が軽く笑う。
俺にとって笑えたことじゃないから、真面目な顔で魔理沙にもう一度注意する。魔理沙はそこまで遠くには行かないからと再び笑った。
心配だな。
魔理沙「それじゃまた後で」
そういって魔理沙が廊下を駆ける。綺麗な金色の髪が風に靡き広がっていた。
男「………本当に無事でいろよな。魔理沙」
ぽつりとつぶやいてしまった一言は魔理沙にとっては過保護かもしれない。でも過保護くらいでちょうどいいんじゃないだろうか。
-
男「入ります」
紫の部屋の前に立つと部屋の中から気配がした。
部屋の中に向かって声をかけると紫と藍さんの声が聞こえた。
その直後に藍さんが襖を開けてくれる。
藍「来てくれてありがとう。紫様と四季様がお待ちだ」
そういって中に招く。
紫の部屋には紫と四季さんが大きめの四角い机に並んで座っていた。
紫は開いた扇子で口元を隠し、四季さんは俺の顔を見て少し戸惑ったような顔をして頭を下げた。
紫「よく来てくれたわね。そこに座って頂戴」
紫が机をはさんで向かい側を手で示すと藍さんが座布団を引いた。
俺が座布団に座ると紫が扇子を閉じ机の上においた。
-
紫「まずは謝罪、ね」
映姫「っ、はい。男、貴方を信じることが出来ず、本当に申し訳ありませんでした」
四季さんが机の横に移動し、俺から見える位置で深く頭を下げる。畳に頭をつけるほどに。
男「頭を上げてください、四季さん。あの時は俺も変になっていたから仕方がないことだったのです」
映姫「いえ、貴方の事情を知っていたのに信じなかった私の責任です。私は、貴方のことを、信じ切れなかった。すべてを貴方に投げたというのに!」
男「………」
怒っていなかったというと嘘になる。信じていた四季さんと萃香からあんな事をされたことをうらんでいないといえば嘘になる。だけど仕方がなかった仕方がなかったんだ。
もう怪我も治った、それでいい。なにより
男「なら一つお願いがあります」
映姫「なんでしょうか」
男「俺は皆を守れると言ってくれませんか」
そう言ってくれれば俺は、四季さんに認めてもらえるのなら俺は
頑張れるから、そう思うから。
俺を決め付けてくれ。
そうであるって
-
随分短いが
それでも更新してくれたことに感謝
-
映姫「男さんならば、皆を守ることが出来ます。期待しています」
男「ありがとう、ございます」
紫「さて、謝罪も終わったことだし、これからの話をしましょうか」
そういって紫は机を二度、指先で叩いた。
紫「正直な話、私は霊夢たちにこの話を知られたくなかったわ」
男「なぜ?」
紫「死んでも大丈夫なんて、そんなの緊張感ないじゃない」
確かに緊張感がない戦いは死を招く。紫はばれてしまった以上しかたないけどねと言って小さくため息をついた。
紫「これから倒すべきはまず上白沢 慧音、豊聡耳 神子。次に古明地三姉妹。最終的には冴月 麟。古明地 ことりと冴月 麟は絶対に逃がしてはいけないわ」
冴月 麟、古明地 ことり。
この異変の原因。
この二人のせいで、皆死んだ。
あの光景と臭いを思い出し吐き気を催す。大きく息を吸い込みなんとかそれを押さえる。
-
紫「あと残っている弾の数は?」
男「5発」
紫「十分、であると信じたいわね」
やり直せる回数は後五回。それが多いのか少ないのかは分からない。
映姫「人間の里ではもっと多くの敵がいるはずですが、集団で固まったほうがいいのでは?」
紫「あぁ、それは別にいいのよ」
映姫「………」
紫「彼女達、囮だもの」
-
………その言葉の意味が一瞬分からなかった。
男「挟み撃ちにするんじゃ、なかったのか?」
紫「陽動、冴月麟から他の敵をはがしてくれればあとは霊夢が何とかするわ」
男「魔理沙達、危ないだろ、それ」
紫「危なくない戦いなんてあんまりないわよ」
いやそういうことじゃない。
男「その言い方だと、魔理沙達が死んでもいい、って聞こえるんだが」
紫「あら、私はそう言ったのよ?」
紫が不思議そうな顔で俺を見る。思わず腰を浮かせると後ろから藍さんが肩を抑えた。
藍「やめろ、やめてくれ」
男「囮って、殺す気なのか?」
紫「別に殺す気ではないわよ。萃香なら死ににくいでしょ。後はまぁ、五回もやり直せるのよ。死なせる気ではあるけど殺す気ではないわ。殺す気なら囮なんてさせないわよ」
そんな不確定な、と紫が茶化す。
男「それでも死ぬんだぞ! 死んじゃうんだぞ!!」
紫「五回も死ねる命にそれほど価値があるとでも言うの?」
-
くすりと紫が笑う。
紫「人生は一回だから美しい、大事だ。なんて事はただの妄言よ。数十億も量産された命のどこに価値が?」
男「同じ人は一人しかいないだろ!」
紫「あら、同じ牛も、同じ羊も、同じ馬もいないわよ? 正義とか、そんな穴だらけの妄言で作戦を決めれるわけないじゃない。誰かを死なせてしまうかもしれないわ」
紫「それに、私たちも人を殺してるのよ?」
紫が身を乗り出し俺に顔を寄せる。
紫のすらりとした指が俺の胸を突き、ぐるぐると渦を描いた。
紫「共犯者じゃない、貴方も、私も」
耳元で紫が囁く。
脳髄を犯すような声が怖くなって俺は紫を突き飛ばした。
男「お、俺は」
紫「貴方は何人殺したの? 貴方の行為で誰がどれだけ死んだの?」
一度生まれた世界を殺して。と紫は突き飛ばされたままの体勢で口を薄い半月に変えた。
紫「変わらないのよ、私も貴方も誰も彼も」
-
男「俺は皆を守りたかったんだ!!」
紫の視線が怖い。
紫の口が怖い。
紫の言葉が怖い。
紫が怖い。
紫の考えが怖い。
紫の、
紫の、
紫は
男「やめろ、やめてくれっ!」
耐えられなくなって外に飛び出す。
乱暴に開かれた障子がはずれ廊下に倒れる。
俺は靴を履かずに地面に降り、紫から離れるためにがむしゃらに走った。
-
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
-
書くのに時間がかかってるのか忙しいのか、そのくらいは示せよ>>1
-
乙、男は逃げずに踏ん張れ
-
示してどうする
-
書き込む時間なんて>>1の自由なのになんで文句言う奴が居るんだよ
-
>>582
こいつ最高にきもい
-
そんなことはないよ
-
>>583
お前もキモいからageずに待ってろ
-
〜俯瞰視点〜
長時間にわたる手術。人間とも人形とも妖怪とも違うその体を修復したアリスは右手で額の汗を拭いた。
成功したのかは分からない。すでにダメになった皮膚をシリコンで多い、その上から人形用のプラスチックの皮膚を被せた。
後は自然に回復するのを待つしかない。人間よりはよっぽど回復力があるはずだ、きっとこの火傷でも治るはずだとアリスは期待した。
あとは焼けた髪。完全には焼けていない。先端は完全に炭化しているが根本はまだ生きている。
短く髪を切り、ウィッグを被せればまた見た目上は元通りになるだろう。こちらも自然に回復するのを待つしかない。
アリスは慣れた手つきでメディスンの髪を整え、ウィッグを被せた。
アリス「これで、なんとかなったかしら」
救いだったのは臓器に損傷はなかったことだろう。焼けた喉以外に傷はなかった。
だから皮膚を形作れば何とかなった。すでに炭化した皮膚をはがし、人口の皮膚を取り付ければ何とかなった。
アリス「あとは、目を覚ましてくれれば」
アリスは近くにあった安楽椅子に深く座り込み天を仰いだ。
地下のため、いまだ不快な臭いが漂う。そんな中でアリスは深くため息をつき、大きく息を吸った。
全身を覆う疲れに身を任せアリスはこのまま寝てしまおうかと思った。
魔女であるアリスに睡眠は必要がない。しかしアリスは今は目を閉じ、いつかの平和だったころの日常を夢みたいと思った。
-
パチパチと何かが弾ける音がする。
その音が心地よくアリスは微睡んでいた。
パチパチ、パチパチ、まるで暖炉で薪が弾ける音。
そう、まるで木が燃えているような音。
アリス「………え」
瞼を開ける。
たしかに家に暖炉はある。しかしここまで大きい音はしない。
アリスは慌てて起き上がり、上に行こうとし、メディスンの事を思い出す。
戻りメディスンを抱え上へ出ると幽香もリグルもそこにいなかった。
アリス「幽香? どこいったの?」
リビングまで歩くと一目でわかる異常にアリスは驚き、メディスンを強く抱きしめた。
パチパチ、パチパチ
外の木が赤く燃えていた。
森が、燃えていた。
-
アリス「幽香!? どこ、どこにいったの!?」
大声を上げるが返答はない。
まさかあの幽香が負けるはずはないと思っているがアリスの不安は拭えなかった。
それにいったいなぜ。
魔法の森は平和だったはずなのに。
キノコの胞子と濃い瘴気で人間はおろか妖怪も踏み入れない場所なのに。
それにここに住んでいるのは魔法使いだけ。妖怪の戦いにも人間の戦いにも全く興味を持たない人間だけ。
不干渉故の自分だけの平和。
それがなぜ崩れたのか。
アリスは椅子にメディスンを座らせながら考えた。
アリス「………まったく面倒事を持ち込んでくれるわね、幽香」
襲われる理由があるとすればそれは幽香の事だろうとアリスは察する。
幽香がその事に気付いていないわけがない。
ならば幽香は今戦っているだろう。
アリスは呆れたわねと小さく呟いて人形を操るためのグローブをはめた。
-
この様子ならば見張り用の人形も撃退用の人形も焼け朽ちてしまっているだろう。
残った人形は何体あっただろうか。火薬を積み込んだ人形に戦闘用の槍を持った人形。完全な戦闘用のゴリアテ人形もあるが使うには場所が悪い。
ならば使い慣れた二つを使うべきだと判断したアリスは階段の近くにある人形部屋に入った。
アリス「………な、い?」
上海、蓬莱。
アリスが使い慣れたその二つの人形がなかった。
なくしたわけではない。几帳面な性格のアリスは自分の人形は毎回決まった場所に置くし、置いた記憶もある。
ならなぜここにないのか。
他の人形は全て揃っているのに。
上海も蓬莱もアリス以外には特別な人形ではない。
だから盗まれる理由もアリスには思いつかない。
-
アリス「………仕方ないわね」
アリスは一通り探し、見つからない事に落胆した。そして多くの人形たちを掻き分けるように移動させ、その奥から上等な木でできた箱を取り出した。
アリスの半分ほどある大きな長方形の木箱。厳重に取り付けられた左右合計十個の鍵穴に
アリスは全ての指を差し込んだ。
カチリと何かがはまる音が聞こえた。
アリス「グランギニョル座の怪人!」
勢いよく穴から両手を引き抜くと箱が開きそこから小さく折りたたまれた黒づくめの道化師めいた人形が飛び出した。
人形は折りたたまれていた関節などのパーツを空中で変形させアリスよりも少し大きい人形となった。
着地した人形はアリスの後ろで微笑んだ口と大きく窪んだ眼球のない目、そんな顔でアリスを見下ろしていた。
アリス「行くわよ。グランギニョル」
アリスがそういうとグランギニョルと呼ばれた人形はアリスを抱え、窓から外に飛び出していった。
-
緑から赤へその姿を変えた森は近づくだけで火傷しそうな熱風を放っていた。
アリスはその中をグランギニョルに抱えられながら進む。
アリス「あっちね」
炎の弾ける音と、焼け落ちた木が倒れる音で正確には聞こえなかったが、爆発音がした。アリスはそれを幽香の暴れている音と判断し、右手の人差し指と中指を動かした。
グランギニョルがぐるりと方向を右に変える。
アリス「こっちで正解みたいね、音が大きくなってる」
そして爆発音に紛れ悲鳴らしきものも聞こえる。
その悲鳴は男のもので幽香のものでもリグルのものでもない。
きっと全員無事だと安堵したアリスはグランギニョルの走る速度をさらに上げた。
走った後の地面が抉れるぐらいの力でグランギニョルが大地を駆ける。
その速度は魔理沙ほどではないが並大抵の妖怪の速度は遥かに凌駕する。
走ることによって生まれる風が炎の勢いを強くし、さらに熱い熱風を生む。
アリスは少し苦しそうに目を細め、軽く咳をした。
-
幽香「あぁもう、次から次に現れて、楽しいわね!」
幽香が燃えている大木を右手で掴み引き抜く。幽香はまるでキャッチボールでもするかのように軽くその大木を投げた。
人間「ぐ、あぁっ!」
直撃し、死んだ人間はまだマシで、下敷きにされ自分の肌が焼けこげるさまを見て狂ったように笑う人間がいた。
地獄絵図、そう呼ぶことがふさわしいとされるまでの狂った空間。
その中で幽香の笑い声と人間たちの猛々しい声が響いた。
アリス(あの声、幽香の笑い声? こんな時に笑っているだなんてなんて性格の悪い。まぁいいわ、とにかくさっさと終わらせないとね。メディスンも待ってるし)
パキパキといくつもの枝が折れる音と共にグランギニョルが跳ねた。
幽香「っ!?」
アリス「待たせたわね」
幽香「待ってないわよ、それより」
アリス「大丈夫よ、私を誰だと思ってるのよ」
グランギニョルが着地すると同時にアリスが地面に降り立つ。
アリス「魔界神の娘。アリス・マーガトロイドよ!」
-
乙
最近早いね
-
おつです
-
おせーよポンコツ
-
リグル「アリス!? 大丈夫なの!?」
アリス「大丈夫よ。メディスンなら、ね!」
幽香「それは良かったわ。ならばさっさと終わらせましょう。ダージリンはあったかしら?」
アリス「クッキーもあるわよ」
幽香が地を駆ける。
アリスが腕を振るう。
それだけで人間はなすすべもなく地に倒れ伏す。
人間「あ、あぁあ、な、何が起きたんだ?」
グランギニョルが足が竦み動けなくなった人間の前の両肩を掴む。
ギギギ、キキキ。
耳障りな音を立てグランギニョルが大きく口を開ける。
口の中に見えるのは鉄でできた鋭い歯と無数の回転する歯車。
アリス「貴方に、死が」
ガブリとグランギニョルが人間の顔に噛り付く。人間の顔は半分を失い食いちぎられた肉が歯車によって粉砕されグランギニョルの胴体から噴き出す。
グチャリと動くことがなくなった体は地面に倒れ、グランギニョルは次の得物を探すかのように人間たちを見た。
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幽香「相変わらずえっぐいわね、それ」
アリス「幽香と同じじゃない?」
幽香「心外だわ」
そう言いながら幽香が人間の頭を握りつぶす。ミシミシと軋む音がした後、パキャリと頭蓋骨が割れる音がして脳漿を撒き散らした。
森に攻め込んだ人間の数はどうやら多くはないらしく、幽香とアリスの一方的な戦いにより既に壊滅まで追い込まれている。
先ほどの赤い鎧を着た人間たちの姿もない。
ならばなんのための犠牲なのだろうか。この数じゃ幽香に勝つどころか、傷すら負わせることが出来ないと分かっているはずなのに。
幽香「まぁ、でも嫌がらせってことはないわよねぇ」
嫌がらせのために無駄死にさせるほど人間の里に余裕があるとは思わない。幽香は少し首を傾げながら近くにいた人間を殴り飛ばした。
「いや、嫌がらせさ」
幽香「ん?」
燃える炎を避けながら独りの少女が近づいてきた。
その表情はにやにやと人の神経を逆なでるような表情でアリスは少し眉をひそめた。
-
アリス「どういう事?」
正邪「私は炎が好きでね」
正邪がパチパチと弾ける炎を見ながら繋がらない会話をした。
正邪「ほら、なんというか、炎って」
幽香「好きなら貴方も燃えれば?」
瞬間的に移動したのかと思えるほどの速度で幽香が正邪の首根っこを掴み炎の中に投げ込んだ。
正邪「あぎっ、あ、あつっ!」
炎に正邪が包まれもだえ苦しむ。
炎の中で転がる正邪を幽香とアリスは冷ややかな目で見ていた。
アリス「で? 何がしたいの?」
正邪「あ、分かる?」
炎の中を転がっていた正邪があっけらかんと立ち上がった。
自分を飲み込んでいる炎をまるで空気か何かの無害なものであるかのような様子で正邪が肩をすくめる。
-
アリス「自分の人形を見間違えるような事ないわよ」
正邪「あぁ、そうかい。つまらないの」
正邪がため息をつきながら炎から出てくる。服は焼けこげ、ボロボロになり、半裸を通り越して全裸に近い様相だった。
炎に隠されていた時は見えなかったがその体は生物の物ではない。
つるりとした肌、人間に似せられただけで人間ではないその体はまさしく人形の物だった。
正邪「ま、でも面白くはあるだろう? いくら騒ごうとも私は無傷。素晴らしいな、呪いのデコイ人形ってやつは」
アリス「お褒め頂きどうもくたばれ。貴方ゲームでイカサマとかして喜ぶタイプ? 幼稚ね」
正邪「イカサマをして喜べないようじゃまだまだだな。ま、とりあえず今日の用事は済んだし、帰るかね」
アリス「帰すとでも? それは返してもらうわよ」
正邪「帰るさ、今日の晩飯は私の好物だからな。気に入らないことは作りたくない」
幽香「へぇ、私たちからどうやって逃げるの?」
正邪「私が逃げるんじゃない、お前たちが帰るのさ」
幽香「はい?」
正邪「治ったのかい? あの金髪の人形もどきは」
幽香「………ゲスね、あなた」
-
支援保守
-
冬休みに入ったので夜に再開しようと思います。
お待たせしてすみません
-
何か質問があればどうぞ
-
過去作の別キャラルートやる予定は?
-
終わらせる目処はついてるのか
-
このままだとほとんどのキャラが死にそうだけどどうするの?
-
支援
-
>>604
今のところはないですが、落ち着いたらするかもしれません
>>605
一応最後までストーリーは出来ています。ただ時間が………
>>606
なんとかなります
>>607
ありがとうございます
-
笑いながら去っていく正邪を殴り飛ばしたいがそんな事をしていては間に合わなくなるかもしれない。
幽香はギリリと奥歯を噛みしめて家に向け走った。
リグル「え、幽香さん!?」
リグルとアリスを置いて幽香が燃える森の中を走る。
幽香が一歩地を踏み抜けばその衝撃で炎が揺らぐ。
ただ一歩地を踏み抜くだけで幽香は数十メートルを移動する。二歩踏み抜けば百メートルを優に超える。
その速度は地を駆ける妖怪の中でも最速。
グランギニョルに慌てて乗ったアリスを置き去りにし、幽香を追い急いで飛ぶリグルが羽を数度動かしただけで見失わせる。
アリスの家までの距離、約5キロ。
その距離を幽香はわずか十歩で走り切った。
-
幽香「メディスン!!」
速度と慣性を殺すために出した足が爆発を起こしたかのような音を立て地面を数メートルに渡り抉る。
アリスの家の玄関の扉は乱暴に壊されていた。
アリスの家には魔法で保護されている。そう簡単に壊されることはない。
最初から正邪の目的はメディスンを狙う事だったのだろうか、いや違う。正邪の目的はアリスの呪いのデコイ人形を手に入れることだ。
ならメディスンを狙う理由は幽香との戦闘を回避するため
幽香「もしくはただ私をからかうために、かしら」
壊された扉を踏み越え、家の中に入る。家の中では生臭い血の香りがつんと香った。
抵抗すらできないメディスンがまだ生きている可能性は低い。
アリスが救ってくれたというのに、メディスンはもう一度目を覚ますことなくその命を奪われたのか。
幽香「あぁ、まったくいい気分だわ。これで、これで私は、ふふ、あはは。本当、よくもありがとう」
その表情は見たものによっては笑っているようにも怒っているようにも見えただろう。
幽香は優雅にゆったりと歩みを進める。さらに匂いが濃くなる。
幽香はその匂いの中心へと進み続ける。
そしてドアノブに手を駆けると―――
-
「またかよっ!」
幽香が扉をはがし取ると同時に幽香の右目に痛みが走った。
幽香が手を当てると頬にぬるりとした感触と眼球を抉っている鉄の感触があった。
幽香「これじゃあ、死なないわよ」
「なっ!」
「あ、だめ!! やめ、やめるの!!」
幽香が眼球を抉る鉄を抜き取り軽く放り投げる。
鉄はカランカランと軽い音を立て地面を転がった。
幽香の右目はすでに治っている。一般的な妖怪とは一線を画する幽香の魔力が常識外れの速度で傷跡を修復したのだ。
幽香「あはっ♪」
幽香が無造作に拳を振る。
自分を攻撃した何者かを屠るために。
この程度の威力しか持っていないのならばすぐに殺し終わる。幽香は余裕を持った致死的な一撃を繰り出した。
-
「ストップ! ストップです!!」
ガキンッ
硬質的な手ごたえ。分厚い鉄板を殴ったような感触が幽香の手に伝わった。
幽香「?」
幽香の拳が止められていた。
本気ではないがそこらへんの妖怪、まして人間にはどうやっても止められるような攻撃ではなかったはずだと幽香が首をかしげる。
「ストップ幽香さん!!」
幽香「あなた―――誰?」
幽香の拳を止めた大きな盾を構える金髪の髪を持つ少女の姿を幽香は知らない。
「私は、私たちは―――」
-
アリス「幽香!! 大丈夫!?」
グランギニョルによって幽香に一分ほど遅れアリスが到着する。
グランギニョルから飛び降りアリスが家の中へ駆け込む。
アリス「メディスンは大丈夫なの!?」
ボロボロになった家の廊下を進みリビングへと向かいながら幽香に呼びかけるも返事がない。
更に進むと無くなったドアと立ったままの幽香の姿。
アリス「ゆう、か?」
様子がおかしい、怒っているわけでも、落ち着いているわけでも、戦おうとしてるわけでもない。
ただ幽香は立っていた。
一体何がと思いアリスが幽香に近づく。
強い血生臭さに耐えながらアリスが幽香の横から部屋の中を覗くと
「アリス、遅い」
「もう、駄目ですよ、そんな事いっちゃ」
赤い服の槍を持った少女と、青い服の盾を持った少女がいた。
-
アリス「………え?」
アリスは二人を見たことはなかった。
しかしアリスはこの姿を見たことがある。
この二人は、この姿は。
アリス「上海、と。蓬莱?」
蓬莱「助けに来たよ、アリス」
上海「はい、アリスをがんばって守ります」
大切な、大切な昔からの親友の姿だった。
-
蓬莱は目つきの悪さを隠そうともせず、身の丈の倍以上ある鉄槍にもたれ掛っている。
上海は柔和な笑顔を振りまきながら自分の体をすっぽりと覆い隠してしまうほどの丸い盾を持っている。
上海も蓬莱もアリスの知る限りではただの人形でこのような豊かな表情を持つことはない。
そもそも生きていない。
夢の完全自立人形を作った覚えもない。
アリス「な、なんで、何が起きたの?」
上海「なんだか、アリスの力になりたいっ、て思ったらこうなったんです」
蓬莱「んで、メディスンを狙った奴を返り討ちにしてやったのよ」
その言葉の言う通り地面には人間の死体が何体も転がっている。
アリスは、はっとメディスンの事を思い出し、椅子に座らせたメディスンを見る。
メディスンは綺麗なままだった。この血だらけの部屋の中で返り血を浴びておらず、傷は一つもない。
アリス「貴方が守ってくれたの?」
上海「はい、頑張りました」
上海の持っている盾は乾いた血が張り付き、鉄の輝きを更に鈍くさせている。
蓬莱が戦っている間、上海はメディスンに届くものは返り血ですら全て防ぎきっていたようだとアリスは察した。
-
リグル「幽香さぁんって、なんか知らない子が二人いる!」
あわただしく羽を動かしながらリグルが遅れて入ってくる。
蓬莱はリグルをぎろりと睨みつけた、とリグルは思ったがただそれは蓬莱の目つきが悪いだけだった。
幽香の後ろに隠れながら部屋の中を伺うリグルの頭を幽香が掴み部屋の中へ投げる。
リグル「ひぃんっ」
尻もちをつき、少し涙目なリグルの前には槍を持った蓬莱がいる。リグルは小さく長い悲鳴を上げながらかさかさと後ろに下がった。
蓬莱「なんで私はこんなに恐れられてるのよ」
上海「目つき、かな」
蓬莱「はぁ!? 私のどこが目つき悪いっていうのよ!」
ぎろりと上海を蓬莱が睨みつける。上海はあははと笑って蓬莱の怒りを受け流しアリスと幽香の二人に向き直る。
上海「あの、アリス。もうこの家は無理ですから、どこかに逃げましょう」
アリス「………」
-
メディスンの事を思うならば、安全と平和と望むならば今すぐここから逃げ出すべきだ。
アリスは理解している。だけれども決断が出せなかった。
この家が、この家から離れることがアリスにとっては耐えがたい事だったからだ。
血は繋がっていないが実の母親の神綺と自分をまだ小さなころから世話してくれたメイドの夢子、一緒に遊んでくれたユキとマイ。
魔界から出る事を心配されながらも皆が作ってくれた家だった。
アリス「私は、私は」
幽香「そうね」
決断をしようとするも出来ないアリスを見て幽香が言う。
幽香「それでいいわよね、アリス」
アリス「あ、えぇ、そうね」
リグル「え、えぇっと、事情があんまり分からないんですが」
幽香「今から博麗神社に行くわ。夜がさらに深まる前に」
窓の外は明るい。それは炎のせいであって空は夕暮れを越え、日が沈みかけていた。
アリス「幽香!?」
幽香「メディスンを庇いながら逃げるのは難しいわ。せめてメディスンと貴方だけでも博麗神社においておきたいの」
-
アリス「私なら大丈夫よ、そこらへんの妖怪よりも強いし」
蓬莱「私が守りますから、大丈夫ですよ」
幽香「あぁ、違うわよ。弱いから邪魔なだけ」
アリス「―――っ!?」
幽香のその言葉にアリスが傷ついたらしく顔を歪ませる。
蓬莱「それは私たちが弱いって事かしら?」
幽香「えぇ、その通りよ。それともあなたは私より強いつもり?」
蓬莱「そうy」
バチンっ
幽香に近付いてきた蓬莱が言い終える前に幽香が蓬莱の額にデコピンを当てる。
それだけで蓬莱の体が部屋の壁に叩きつけられどさりと床に落ちる。
幽香「どこが?」
その言葉に言い返せる者はおらず、幽香はメディスンを抱きかかえ外へ出て行った。
-
〜男視点〜
気が付けば博麗神社の森を走り続け赤い鳥居の前に立っていた。幻想郷の外へ向けられた赤い鳥居の前に。
裸足のため石かなにかで切ったらしく細かな傷がいくつもあり、泥と血で汚れていた。その傷口を見て初めてじんじんと痛み出す。
鳥居に背を預け地面にしゃがみ込むと、子供ぐらいの大きさの卵状の石があった。その前には数輪の花が置かれていた。どうやら墓らしい。
男「誰の………あぁ」
霊夢がいた赤い鳥居。霊夢は墓参りに来ていたのか。供えられた花はまだ新しい。
この墓は霊夢の大切な人の墓?
それが誰かは分からない。墓石替わりの石にも名前は刻まれていない。ただ石とその周りは苔や雑草も生えていないことからよく手入れされていることが分かる。
男「拝む、のは流石に変か」
面識ないし、それに霊夢も良い顔しないだろう。
男「でも、少しここで休ませてもらいますねー」
戻る勇気はまだない。魔理沙を助ける方法も思いつかない。
もし俺がスーパーヒーローだったなら悩まなくてもいいのに。
顔を押さえた指の隙間から見えた冬の空ではベテルギウスが爛々と輝いていた。
-
この鳥居をくぐれば外に出ることができるのだろうか。
もしそうならば俺は魔理沙とぬえを連れて
男「駄目だ、それじゃあ駄目だ。逃げちゃあだめだ」
罪のない命が多く失われていくこの戦いから逃げちゃいけないんだ。
無邪気な笑顔を二度と失いたくない。
でも、心でそんな事を思っているのに、体が戻ろうとしない。足が痛いからもう少し休もうと提案する自分もいる。それに甘える自分もいる。
男「………ぬえ…魔理沙………俺は……………」
「………」
うな垂れている俺の頭を誰かが撫でた。
子供をあやす様に。
-
ぬえ「あうぅ」
顔を上げるとぬえがいた。
心配するかのように俺の顔を覗き込んでいる。
その視線が辛くて俺はまた顔を下げた。
ぬえ「………」
ぬえがそんな俺を抱きしめ背中を撫でる。
嬉しくて、申し訳なくて、格好悪い嗚咽が小さく口から飛び出た。
そんな俺をぬえは見捨てずに抱きしめ続けてくれた。
ぬえの少し低い体温が冷気で冷め切った肌を温めてくれる。
あぁ、このまま二人溶けてしまえばいいのに、なんて考えを嗚咽と共に吐き出す。
幾度となく砕けるこの心。
お願いだから、勇気を生み出してくれ。
-
立ち上がると傷口の中に入り込んだ小石が傷口を抉る。
耐えきれないほどではないけど、少しつらいなと小さく笑う。
ぬえ「う?」
男「大丈夫だ、ありがとうな、ぬえ」
ぬえ「う!」
ぬえが俺の手を引く。
少し照れくさい、顔が少しにやけてしまう。
男「ぬえ、好きだ」
思わず出てしまったその言葉を聞くとぬえは少し目を見開き、その後大きな笑顔で笑った。
-
神社に戻る。
もう皆は夕飯食べたのだろうか。申し訳ないが亡霊男さんに言って夕飯をもらおう。
しかし静かだな。
なんでだろうか。
ぬえ「!」
ぬえが立ち止る。手を引かれていた俺はそれに反応できずぬえにぶつかった。
男「どうした………幽、香?」
幽香「えぇ、久しぶりね」
男「どうしたんだ?」
幽香「私もここで戦う事にしたのよ、親友と戦火で失われていく花のために」
男「おぉ、そうなのか。幽香がいるなら心強いな」
幽香「あとアリスもいるわよ」
アリス、あぁ魔理沙の友達の。
-
男「アリスはどこに行ったんだ?」
見渡してもアリスは居ない。
幽香「今は居ないわ」
男「どこか行ったのか?」
幽香「えぇ」
幽香は少し笑いながら言った。
幽香「裏切った魔理沙を追いに、ね」
なんて冗談を。
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支援
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支援
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支援
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グロ注意とでも書いといてくれませんか
次のスレがあるんならその最初にでもさ
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あとキャラがよく死ぬから注意書きに追加してもらったほうがいいな
まあ大半が死んでるから今更感はあるが
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支援
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支援
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支援
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支援
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待ってる
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支援
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まだかな〜
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わたしまーつーわ♪
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次の更新は○○です。とかはっきり言えばみんな待てるんじゃないのか?
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男「じょう、冗談にしちゃ、笑えないな」
無理してあははと笑った声が震える。
そんな俺を見て幽香は形の良い真っ赤な唇を歪めて笑った。
男「だって魔理沙には裏切る理由なんて」
そうだ、魔理沙には裏切る理由がない。だから裏切る事なんて
幽香「でもあなた、魔理沙の事知らないじゃない。少しの間だけ一緒にいたからって、霊夢より、アリスより、私より魔理沙を知れるわけないじゃない」
男「なら、ならなんで魔理沙はうら、裏切ったんだよ」
幽香「知らないわ」
幽香が肩をすくめる。どこか人を馬鹿にしたような態度に感じるそれに俺は強く拳を握った。幽香に殴りかかるのかと心配したぬえが俺の腕を掴む。
幽香「でも私が知らなくても魔理沙が裏切った事は変わりないわよ?」
幽香が静かに笑う。
俺は答えを信じたくなくてさらに強く手を握りしめる。
血は出なかった。でも全身の血液が抜けていくかのような感覚に俺はふらついた。
ぬえに支えられた俺を見て幽香がもう一度笑った。
-
半場強制的に言葉を信じさせる幽香の存在に目の前から色が消えてゆく。
幽香の言葉が耳から入り、脳を犯す。麻酔のように否定する言葉を奪っていく。
幽香「あら、アリス速かったわね」
その言葉に反射的に反応しアリスを探す。
アリスは空を歩きながらこっちへ降りてきていた。
その隣に魔理沙は居らず、こっちを見て静かに首を横に振ったアリスによって完全に理解してしまう。
本当に、やっぱり本当に魔理沙は裏切った。
目の前から、消えていく。
色、景色、幽香の静かな笑み、アリスの唇をきつく噛んだ顔、それらは目の前に広がる黒に塗りつぶされる。
風の騒めきも、ぬえの心配する声も、遠くから聞こえる葉の音もキーンと静かで高い音に塗りつぶされる。
残ったのは頬を擦る砂利の感触と熱さ。
でもそれもすぐに消える。
目の前は真っ暗で
俺は何も感じない。
夢かもしれないと夢だったら良かったのにが頭の中で巡り、耐えきれなくなって俺は意識を消した。
-
目を開けると天井の木目が顔に見えた。
息する音がうるさく感じるほどの静けさの中上体を起こすと胸にかかっていた布団がずり落ちた。
誰かが布団に寝かせてくれたようだ。
朝になっていれば良かったのに外はまだ暗い。
後悔の言葉を数度呟き、そのたび流れる涙のしょっぱさを唇で感じながら、俺は朝を求めてもう一度眠った。
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ほしゅ
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応援してる
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ゆうかりん信者だけど、このSSのせいでぬえが好きになった…どうしてくれるんだ
早く、早く続きを…
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〜俯瞰視点〜
霊夢の黒髪は月明かりの無い闇夜に溶け込むほど黒く、その反面肌は光るように白い。
わずかな星の光だけを頼りに霊夢は木々と触れ合うかどうかのぎりぎりの高さで空を飛んでいた。
少し強い風が木々を揺らし、どうどうとなる風と葉の音はまるで大きな化け物の声のように聞こえる。
霊夢「まったく、どうしてなのよ」
小さく呟いた声に霊夢の下から言葉が返ってくる。
アリス「心当たりはないの?」
地を駆けるグランギニョルの肩に乗り繰り糸を操るアリスが尋ねるが、霊夢はその問いに返す事なく考え込んだ。
催眠、洗脳、拉致。
決して魔理沙の意志で裏切ったわけではない、と信じたい。
きっと相手に何かやられたのだ、という怒りの中で、魔理沙は自分の意志で裏切ったのだと勘が主張する。
おそらくこの怒りが消えてしまえば自分は魔理沙自身の意志で裏切ったのだという事を納得してしまうのだろうと霊夢は恐怖した。
-
アリス「じゃああとは頼むわよ」
霊夢「あんたこそね」
森を抜けると人間の里に着く。
外部からの侵入者を防ぐべく作られた木の壁に松明の明かりが眩しく辺りを照らしていた。
これじゃあ人間の里なんて呼べないわねとアリスがため息をつく。
数か月前までなかったその壁が人間の里の雰囲気を塗り替えていた。
里というよりは基地、砦と言った方が正しく思える。
アリス「さぁて、やろうかしらね。出来るだけ派手に」
グランギニョルから降り立つアリスの両手には人形。
それを思いっきり振りかぶって投げると人形は派手な音を火花を放ち、まるで花火のようだった。
アリス「そーれっ」
もう一度人形を投げる。
二度目の音と光に人間の里が騒めく。
アリス「上手くやりなさいよ、霊夢」
霊夢の姿はすでになく、かけた声は爆発音にかき消され消える。アリスは苦笑したよなため息をつき、新しい人形を構えた。
-
霊夢の白い肌と赤色の巫女服は隠密には向かない。
白い肌が暗闇でも輝き、巫女服は暗闇に溶け込まないからだ。
なのに、住民は誰も霊夢を見ない。
明らかに異質であり、敵の霊夢を誰しもが気に掛けることなく外に向かっていく。それはまるで霊夢が皆の意識の外側にいるかのようだった。
霊夢「どこかしら」
周りにいるのは人間だけで。数か月前には見れた妖怪の姿はない。
こんなにも変わったのねと里の中を見て霊夢は思った。
しかし観光するほどの余裕はない。
霊夢は人にぶつからないように気を付けながら進んでいく。
魔理沙がどこにいるかは分からない。虱潰しに探すしかない。
あまり時間はかけられないため出来るだけ迅速に探し魔理沙を助けなければいけない。
侵入ならば霊夢だけでなんとかなるが魔理沙を連れ戻すという事ならば話は別だ。今アリスが人間の気を引いているうちに魔理沙を誰にも見られず連れ戻さなくてはいけない。
多少暴力的な手段に出なければいけないかも知れないが、注意が里の中に向いてしまえば連れ出す事はほぼ不可能になる。
霊夢(連れ去られるとすれば外側よりは中央。捕まるとしたら牢屋、地下牢? たしか阿求のところに座敷牢があった気がするわね。あと牢屋なら小兎姫かしら?)
適当に検討を付ける。中央に向かうのならば時間がかかる。もし外れてしまえば大幅に時間を費やすだけになりアリスに負担がかかる。霊夢は少し悩みながらも勘を信じて小走りで進んだ。
-
里の中心にある大きな屋敷。里を取り仕切る稗田家当主の阿求がそこに住んでいる。
阿求ならば話を聞いてくれそうだが、リスクを負いたくはないので諦め、地下牢を探した。
元々は阿求は人間と妖怪の中立。いや、やや人間よりではあったが妖怪に対して根拠のない不安や恐れなどは抱いていなかったがはたして阿求はこの異変にどれだけ関わっているのだろうか。
阿求を心配する声が屋敷内から聞こえる。それに対して冷静に返す阿求の声も聞こえる。
特に役立つ情報も聞こえなかったため、意識を地下牢探しに向ける。
流石に広い屋敷のため時間はかかったが、屋敷の奥に地下へ続く階段を見つけた。
霊夢「………」
あくびをしていた見張りを無言で気絶させ、そっと地面に寝かせる。
見張りがいるという事はどうやら誰かが入っているようだと判断し、薄暗い廊下を進んだ。
ジャリと鎖の音が聞こえた。
誰が捕まっているのだろうかと視線をそっちに向けると見知った顔。汚れ、破れた服を纏っているが、痛々し気な表情で足枷を撫でるのはミスティアだった。
なぜ、と一瞬口から言葉が漏れかけたがなんとか抑える。
他の牢を見るとどうやら見知った妖怪の顔。どれも里で人間に紛れて暮らしていた妖怪だった。
考えてみれば一番最初に狙われるのは人間の里の妖怪だ。おそらく人間に情を抱いていた彼ら彼女らは抵抗しなかったのだろう。
その結果、皮膚が切れるほど寒い地下牢で凍えた手足を撫でている。足枷は氷のように冷え、体を少しずつ壊していくのだろう。
-
全ての牢を見ても魔理沙の姿はなかった。
ここで妖怪を助ければ魔理沙を助けることはできない。
それに逃がしたとしても守りきることはできない。
霊夢は太ももをつねって地下牢を後にした。
寒さに凍える妖怪達の声が霊夢の耳にこびり付いて何度も何度も響いていた。
-
外に出るとまだ里は騒がしい。まだ時間はあるらしい。
アリスに感謝しつつ霊夢が屋敷の塀を飛び越える。
着地した時になった砂が擦れる音が響いたが幸い周りに人はおらず、霊夢は小兎姫のいる警察署へ向かった。
今現時点で犯罪者が発生しているとは思えないのでいつも通り警察署は暇のようで、大した警戒もなく霊夢は中に入り込むことが出来た。
警察署と呼ぶには立派ではないが、それでも牢屋はある。
稗田家の地下牢ほど環境が悪くないのが捕まっているものの唯一の救いだろうか。
あまり使われていないため、綺麗な牢屋を見ると、中には人間の姿があった。これは魔理沙もいるかもしれないと急ぎ全ての牢屋を調べたが、魔理沙の姿は見当たらない。
この状況下で犯罪を犯した者がいるのだろうかと霊夢は考え、別に犯罪しているわけではないけれど捕まることもあるのだろうの結論づけた。
魔理沙がいないのならば用はない。捕まっている者を助ける義理もないため霊夢は急いで外に出た。
外では喧騒が静まりかけており、このままの長時間行動は危ない。霊夢はそう判断し、出来るだけ速く外に出られるように少し宙に浮いた。
滑るように移動していると先ほど捕まっていた人間の顔をどこかで見たことがあるなと感じ、少し考えたのちに思い出した。
そういえば霧雨商店と同じぐらい大きな商店の一家だった。
まぁ、それが分かったところでどうでもいいので霊夢は高度を上げ木でできた壁を乗り越え外へと出た。
-
〜男視点〜
夢の中では俺は外の世界で生活していた。
たった数週間前の話だがずいぶん遠くの事のように思える。
家族の顔が思い出せないくらいに。
色々なことがありすぎてボケてしまったのだろうか。
多分事故の時の後遺症だとは思うのだが心配だ。
異変が終わったら永琳さんのところに行ってみよう。
布団から立ち上がると少し立ち眩みがする。
若干の吐き気を押さえながら外に出ると雲の隙間から出てくる日差しが宙に反射してきらきらと輝いていた。
良い天気だ。
男「………魔理沙がいれば」
実の妹よりも妹らしい魔理沙。
死んだわけではないのに虚無感が酷い。
胸にずしんとした重みと虚無感がある。
男「ぬえは、これよりもずっと………」
-
身近の人がいなくなるという事は予想をするよりもずっと影響を与える。
心を壊すほどに。
悲しんでいるのは俺だけじゃないんだと思い聞かせても、俺の心はそれを突っぱねる。
どうにもならない心はまるで俺のものではないかのようだ。
ため息をつくとそれに連動したのか、お腹がぎゅるるとなる。
どんなことがあっても生きている限り腹は減る。
何か貰おう。
今は食べることだけ考えよう。
-
いつもより一つ多い味噌汁の数。
一人消えて二人増えたのだから当たり前だ。
幽香は何を考えてるかよくわからない顔で朝食を食べている。
アリスはいつも通りの優雅さで朝食を食べている。
まるで魔理沙なんて初めからいなかったかのように朝食は進んでいく。
あまり味が感じられないご飯を咀嚼し胃の中へ送り込む。
たまにむせて味噌汁で強引に。
とても楽しめそうになく、ただただ機械的に動作を繰り返すだけ。
何事もなく朝食は終わる。
明るい声がないいつも通りでない朝食が。
-
一つ進んで一つ戻っていくようなそんな感覚を覚える。
足掻いても沈まないだけで進むことはない。
まるで終わりが見えない。
この異変はいつ終わるのだろうか、なんてことを考えていると霊夢が小さくあくびをした。
目の下には隈があり、いつも通りの霊夢らしくはない。
霊夢も魔理沙の事を心配していたのだろうか。
霊夢「………何よ」
俺の視線に気付いた霊夢が睨みつけるように俺の顔を見る。
男「なんでもない」
霊夢「さっさと行くわよ」
そういって霊夢が出て行った。
俺も着替えなければいけないなと自分の部屋に戻る。
その途中いつの間にか後ろに立っていた紫が幽香が小町達と一緒に、アリスが俺たちと一緒に行動するという事を教えてくれた。
幽香の強さは知っているし、アリスの強さも聞いている。戦力的には問題がない。それどころか今までよりも強くなった。
もしかしたらすぐに解決してしまうのかもしれない。でも
-
もしかしたら、このままだったら二度と魔理沙は帰ってこないんじゃないのだろうか。
もしかしたら、魔理沙と戦わなければいけないのではないのだろうか。
もしかしたら、魔理沙を殺さなければいけないのではないのだろうか。
そんなマイナス思考のもしかしてが重なりあまり喜べない。
紫に掠れた声でわかったといい分かれる。
紫は珍しく心配していたけれどその内容は頭の中に入らなかった。
-
着替えて表に出るとすでに全員そろっていた。
全員………ん?
アリスの隣に二人の少女。身長はアリスと同じぐらいでアリスと同じ金色の髪に碧眼。
似てるけれど一人は睨みつけるような顔つき、一人はにっこりとした顔つき。
身の丈に合わない大きな槍に大きな盾。
アリスの姉妹だろうか。良く似ている。
蓬莱「何見てるのよ」
少女から睨まれる。
上海「だ、駄目ですよ」
もう一方の少女が窘める。
男「アリス、この子たちは?」
アリス「あー、えっと」
上海「私たちはアリスの人形よ」
男「………?」
頭の上に疑問符を浮かべると目つきの悪い少女がさらに目を吊り上がらせた。
-
人形と聞いて思い浮かぶのはフランス人形や日本人形、あとはこけしぐらいなんだが目の前にいる彼女たちはどれにも当てはまらない。
関節だってあるし、表情だって豊かだ。
まぁ、幻想郷ならば人形が動き出す事だってあるのだろう、と納得する。
アリス「えっと彼女たちは私の人形で、槍を持った方が蓬莱、盾を持った方が上海」
上海「どうも、よろしくお願いします」
男「君たちもついてくるのか?」
蓬莱「私たちでアリスをちゃんと守れるわよ!」
そう帰ってきた言葉はどこか俺ではなく誰かに向けられているように感じる。
幽香「勘違いしちゃだめよ? 貴方たちを連れていくのは霊夢がいるから。霊夢がいるからアリスを連れていくのよ」
どうやら幽香に向けられていたらしく、幽香がいう事を聞かない子供を諭すかのような口調で返す。
蓬莱「むぐぐっ」
その言葉に蓬莱は返すことはなく、その代わりさらに目つきを悪くして幽香を睨んだ。
-
小町「あー、喧嘩するほど仲が良いっていうけど、今そんな事してる時間がなくてね」
幽香「あらごめんなさい」
上海「ご、ごめんなさいっ。ほら蓬莱も」
蓬莱「………ごめん」
背を曲げて謝る上海と、ぷいと横を向いて謝る蓬莱。まるで姉妹のように見える。
手のかかる妹と礼儀正しい姉、と言ったところか。
上海「どうかしましたか?」
男「いや、俺も妹いたなぁと思って」
顔の思い出せない。
小町「はいはい、世間話は帰ってからだよ。今開くから、いってらっしゃい」
小町が大きく鎌を古い地面に線を入れる。
チルノ「師匠、行こう!」
俺の手を引いたチルノと共に線を越える。
物凄い速度で流れる景色は脳が認識できないほどの情報を与える。今だに慣れない移動方法に頭がくらりとして近くにあった木に手をついた。
-
上海「大丈夫ですか?」
男「あぁ、うん、大丈夫」
目の前にあるのは大きな門。
近寄ればまた慧音は来るのだろう。
里を守る。
それが彼女の役目であり、俺たちはそれを乗り越えなければいけない。
チルノ「? どうした師匠」
思わずチルノの頭を撫でていた。
チルノは俺の突然の行動に目をぱちくりさせていた。
蓬莱「ほら、いくわよ」
蓬莱が早足で里に向かうと、瞬きをする間に。いや認識と認識の間に里が消えうせた。
男「来る」
人間の里に続く橋の真ん中で仁王立ちをしている慧音がいた。
この位置からでは声は聞こえない。でもそのまっすぐな瞳があぁ、引く気も負ける気もないんだろうなと思わせた。
-
霊夢とアリスと蓬莱と上海が慧音と対峙する。
その光景を見て俺はどこか子供の頃に見た戦隊もののヒーローを重ねていた。
昔から不思議と俺は怪人のほうに感情移入をしていた。
戦力の差に負けない。諦めない。足掻き続ける。
そんな姿に俺はどこか泥臭い憧れを感じていたんだと思う。
だから俺は慧音を尊敬してしまっていた。
もしこんな出会いでなければ彼女を尊敬していたのだろう。
焦げた赤と白のリボンを付けた彼女はとても悲痛に満ちた慟哭をあげ飛びかかる。
胸を裂くような悲しい叫び。
何があったのかは知らない。
何かが彼女を駆り立てているのだろう。人間の里を守るだけではない何かが。
しかしそれでも多勢に無勢。俺の記憶にある怪人の姿もこうだった。
二本しかない手を懸命に動かして、でも勝てない。
徐々に追い詰められていき、そして倒れる。
違うのは爆発しないだけ。現実は爆発して巨大化なんてしない。ただ、倒れるだけ。
-
戦いが終わったのだろう。俺はチルノと近づいていく。
霊夢は倒れた慧音に対し数度口を動かしていたが、それに対し慧音が反応したのかは見えなかった。
無くなっていた里がうっすらと現れる。
夢が覚めたかのように。
慧音の元へたどり着くと彼女は目をつぶっていた。
男「殺したのか?」
その言葉に誰も答えなかった。
霊夢もアリスも蓬莱も上海も慧音には目もくれず人間の里に向かっていった。
チルノが氷で作った花を一輪慧音の胸元に乗せていた。
俺はなんといえばいいのか分からず心の中で南無阿弥陀仏と唱え慧音に背を向けた。
その時チルノがぽつりとつぶやいた言葉が何だったのかは聞こえなかった。
-
蓬莱が槍を構え門に突進すると、大きな音をたてて門に人がくぐれるぐらいの大きな穴が開いた。
霊夢「行くわよ」
霊夢、アリス、蓬莱、上海、俺、チルノの順で中に入る。
人間の里の正門。当たり前だが、敵がいる。大きな音を立てて正面突破をしているのだから当たり前だ。
でも思ったよりは多くない。
もっとわらわらいるのか、と思ったら里の奥から閃光と爆音。そして燃え盛る火が遠くに見えた。
アリス「派手にやってるわね。幽香」
おそらくそっちに多くの人数を割いたのだろう。こちらは正門を壊したといっても幽香ほど派手には動いていない。
そうやって騒げば騒ぐほど冴月 麟から敵は離れて、幽香たちはどんどん危なくなる。
幽香たちを信用していないわけじゃない。
でも紫の囮にするという考えを伝えることが出来なかったもし幽香たちが死んでしまえば俺は見捨てたことに―――
チルノ「師匠行くよ!」
すでに駆けだしていた霊夢たちに気付いていなかった俺の背中をチルノが押す。
死が隣り合わせの戦場。今までよりもずっと危険な場所へ俺は最初の一歩を踏み出した。
-
〜俯瞰視点〜
訓練はしていた。だけれど月の世界は平和で、力を振るうことはそんなになかった。
ウサギが臆病で痛みに弱いと知っているし、自分がそれに適した能力を持っていたため逆らうウサギもいなかった。
たまに来る侵略者にも自分が向かう事はなかった。自分の代わりに出て行くウサギが死んで返ってくることは良くあった。もし自分が出ていたのならば死ななかったのだろう。
月人に逆らうことはなかった。逆らおうとも思わなかった。だから戦うことはなかった。
ただ毎日を繰り返す事により蓄積された経験が自分を実力者と周りに錯覚させるだけで、戦ったことはない。
運が良かっただけだと誰かに責められることはなかった。
誰も自分を責めなかった。
褒めるものもいなかった。
能力と勘違いされた実力は自分から周りを遠ざけて行った。
孤独が自分を蝕む毒だと気付き死のうとも考えた。考えるだけで実行はしなかった。
ある日自分は月から地球に降りた。
ここでやっと死ねるのかと思ったら、孤独は消え、まだ生きたいと思ってしまっていた。
-
ウサギは元来臆病なものである。自分も例外ではない。
張り付いた薄ら寒い笑みの下で冷や汗をかいている。てゐやミスティア以外の前で剥がせないこの仮面は自分の正体を覆い隠してしまう。
不気味。それが第三者から見た自分の感想だろう。それはコミュニケーションに対し深刻な枷となる。
しかしそのことに唯一だけ感謝をすることができる。
それは他の妖怪と違い、牢に入らずある程度自由に行動できることだろう。
そんな風に独白していた兎耳男の耳に爆発音が聞こえた。
みすち「ひっ」
その音に怯えたミスティアは大きく体を震えさせ、それに対応して鎖がじゃらじゃらと鳴り響いた。
兎耳男はそんなミスティアの頭を撫でて落ち着かせる。今では以前のように表情豊かに喋らなくなり、歌も歌わなくなったミスティアを見るたびに兎耳男の心は痛んだが、死ぬよりはずっとましだと我慢している。
兎耳男「………行ってきますね。ミスティア」
みすち「行って、らっしゃい」
掠れた声で返事を返すミスティアの頬に兎耳男が口づけをする。ミスティアの乾いた頬が少しだけ赤く染まり、うっすらと笑みを浮かべた。
-
期待してまーす
-
舞ってる
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支援
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支援
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遅筆すぎだろ、まとまってからスレ立てればよかったのに
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>>669
やぁ。このスレは初めてかい?
-
爆炎、轟音、閃光、悲鳴。
それらが現在平和ではない事を教えてくれる。
兎耳男の大きな耳はそれがどこから聞こえてくるのかを教えてくれる。
跳ねるようにしてその場所まで向かう兎耳男の背筋に寒いものが這った。
これが死の臭いなのだろうかと兎耳男は思った。
今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られたがミスティアの事だけを思い戦場へと赴く。
そしてたどり着いた戦場はまさに
兎耳男「………」
地獄絵図、そう表現しても間違いではないような惨状だった。
-
兎耳男「貴方が、これをやったのですか」
幽香「えぇ、私よ」
周りを血の海に変え、しかしその姿は一遍の汚れもなく、甘い花の香りすらも漂わせている、あまりにも場違いな雰囲気を、まるでそこだけ違う世界かのような異質な雰囲気を漂わせていた
風が吹き、生臭い血の香りと甘い花の香りを兎耳男に届ける。幽香は手に持った傘をクルクルと回しにこりと微笑んだ。
幽香「それで、次はあなたが相手なのかしら?」
兎耳男「貴方で私の相手になるのですか?」
ぺたりと張り付いた笑みと、長年の演技が兎耳男の言葉を自動的に紡ぎ出す。
虚栄でしかないその言葉を脳内であざ笑いながら兎耳男はさらに言葉を紡ぐ。
兎耳男「ただの地上の妖怪風情が月の兎である私に適うのでしょうか」
幽香「へぇ、貴方ならもっと楽しめそうだわ。ところで貴方は戦いが好きかしら?」
兎耳男「えぇ、とても」
幽香「じゃあ素敵に殺しあいましょう」
幽香の微笑みが獰猛な笑みに変わり、兎耳男の笑みがさらに固定される。
こうして兎耳男の初めての戦争は始まった。
-
幽香「開花『四季折々の素敵な花時計』」
幽香がスペルカードを宣言するかのように技名を告げる。
すると幽香の足元からカタクリ、向日葵、ミズヒキ、柊など。咲く季節を無視した魔力を帯びた花が咲いた。
瞬く間に数百以上の花が咲き、その花冠は例外なく全て兎耳男を向いている。
幽香「やりなさい」
花から光が放たれる。一つ一つが放つ弾幕の量は多くはないが、数百の花から放たれるそれは弾幕と言うよりも壁であり、
避けることを許さず、正面突破か逃げることしか許されない。
最強の妖怪である幽香に背を向けることは死と同義であり、結局許されるのは正面突破。
強く地面を蹴り光の壁へと立ち向かう。
兎耳男の体を弾幕による衝撃が襲うが、致命傷にはならない。月の兎という種族と訓練により鍛え上げられた体には多少の攻撃は致命傷にならず、兎耳男の持つ、痛みを操る能力により痛みによって怯むことはない。
しかし
幽香「あははっ!」
光により眩んだ目が最初に捉えたのは眼前にある拳。そして空中をひらりと舞う傘。弾幕を目くらましに、戦闘狂 風見 幽香は兎耳男に襲い掛かっていた。
純粋な力による回避不能の攻撃が兎耳男を襲う。
-
兎耳男「っ!」
少し体を捩って真正面から受けるのを回避したがそれでもダメージは凄い。
しかし幽香の伸びきった腕の関節を攻撃し、ダメージを与える。
骨を折る、とまではいかなかったが幽香は何度か腕を振り、関節の痛みを和らげていた。
幽香「凄い、痛いわ」
噛みしめるように区切られ言ったその言葉の直後、幽香が嬉しそうに身を震わせる。
吹き飛ばされ何度か地面を跳ねた兎耳男は数度跳ねた後に何とか受け身を取って着地をした。
幽香「貴方って素敵ね」
兎耳男「すみませんが妻がいるので」
幽香「残念ね」
なら、仕方ないわと、ため息をつくように笑った幽香は再び、花に命じる。
しかし花から飛び出したのは光ではなく
幽香「っ!」
耳を劈くような絶叫。
至近距離で幽香にだけ聞こえるその声が幽香の鼓膜を伝い、脳を揺らした。
-
一瞬、ほんの一瞬途切れた幽香の意識の隙に、兎耳男は地面を滑るように飛び、幽香に接近すると移動の勢いを殺さず膝を幽香の腹へ叩き込む。
強力な脚力によって放たれた膝蹴りは幽香の内臓を激しく揺さぶり、幽香は咳き込んだ。
兎耳男は追撃することはなくそのまま地面を蹴って距離を取る。
幽香は数度咳き込んだ後、口元を伝う涎を拭って、兎耳男を睨みつけた。
すでに幽香の耳に絶叫は聞こえない。色とりどりに咲いていた花は死体のように地面にその体を横たわらせていた。
幽香「何をしたのかしら?」
兎耳男「魂を持つものは痛みからは逃れられないのですよ。死ぬほどの痛みは実際に魂を傷つけ死に至らしめる」
兎耳男「そして痛みを操る狂気の瞳を持つのが私、兎耳男なのです」
そういって兎耳男はにっこりと笑って恭しく一礼をした。
-
幽香「面白い面白い、面白いっっ!」
幽香が体を曲げて大笑いする。
いきなりのその行動に兎耳男は面喰ったが油断せずに一歩踏み出す。
それに対し幽香は反応せずただただ笑い続ける。
罠か狂気かの区別がつかず兎耳男は警戒をし、攻に転する一歩を踏み出せなかった。
幽香「はぁ。久しぶりにこんなに笑ったわ」
目じりに溜まった涙を拭いながら近くに転がっていた日傘を拾い上げる。
そして深呼吸するとその日傘をクルクルと回した。
今の攻撃を意に介していないかのようなその行為に兎耳男の張り付いた笑みの上から冷や汗が滴る。
確かに手ごたえがあり、決して弱くない一撃だったはず。
しかし目の前の少女のその行動は決してやせ我慢や演技などではない。
本心から笑っている。
その狂気の沙汰に兎耳男は動揺を隠せなかった。
-
幽香「まだやれるかしら?」
兎耳男「………もちろんです」
幽香「うふふ」
幽香は微笑むとくくると回していた傘を兎耳男に向けた。
幽香「小細工無しでいきましょ」
幽香が手に力を込める。
日傘の石突きを中心にして先ほどとは比べ物にならないくらい眩い光が集まる。
幽香「マスタースパーク」
日傘から光が放出される。それは地上を這う大きな光の柱となって兎耳男に襲い掛かった。
幽香「………?」
あまりにも大振りな攻撃。当然兎耳男から何か反撃があると想像していた幽香だったが、反撃もなにもないどころか手ごたえを感じた。
首を傾げ、マスタースパークを止めると仁王立ちで兎耳男男が立っていた。
着ている服はボロボロになり、それどころか所々に酷い火傷を負っている。しかし瞳だけは爛々と幽香を見つめている。
幽香「なんで避けないの?」
兎耳男「守りたいものが、あるから。とっても大切な、私が生きる意味が!!」
-
幽香「あぁ、そう」
兎耳男「私の人生を、奪われた人生を取り戻さなくてはいけないんです」
幽香「そうなの。でも負ける気はないわ。私だって守りたいものがあるのよ」
兎耳男の言葉を聞いた幽香の顔から笑みが消え、真剣な眼差しとなる。
兎耳男「知ってます。だから」
兎耳男が踏み出す。体中を襲う火傷の痛みを消して、歩き続ける。
痛みを消したところで体の不調は消えるわけではない。しかし前に進み続ける。
幽香「じゃあ貴方と私の大切なものは、どっちが強いのかしら!?」
幽香が日傘地面に突き刺し兎耳男に向かって歩く。
兎耳男「私の人生を、私の人生を作ってくれた、私を生き返らしてくれたミスティアにっ!」
幽香「私の可愛い妹とっ、私の大切な娘をっ!」
「守るためならばっ!!」
-
ミスです。
兎耳男「私の人生を、私の人生を作ってくれた。私を生き返らしてくれたミスティアにっ!」
は
兎耳男「私の人生を、私の人生を作ってくれた。私を生き返らしてくれたミスティアをっ!」
です。
-
両者が至近距離で見合う。
兎耳男「私はこの力が嫌いです」
幽香「私はこの力が好きよ。力がなければ守れないわ」
兎耳男「でも力があると守るものが出来ない」
幽香「それは嘘よ」
兎耳男「そう、嘘だった」
兎耳男「それは本当は嘘だったのです。力とかそんなことは関係ない」
兎耳男「原因は私の弱さ。全ての原因は私にある。全て私が悪いのです」
兎耳男「それを、ミスティアはそんなことと笑ってくれた。人から嫌われた私を、臆病ものだと笑ってくれた!」
兎耳男「そんなミスティアを守るためならば、私はこんな私を好きになれる」
兎耳男が拳を引く。
幽香「そう。守れる力を持つ自分を愛しく思えるの」
幽香が拳を引く。
それからは一瞬、一瞬の出来事だった。
幽香が微笑み、兎耳男が笑い、そして風が吹いて―――
-
カランカラン
檻を誰かが叩く音が聞こえる。
ミスティアが視線を上げると兎耳男は笑っていた。
ミスティアにしか向けない笑みを浮かべて。
兎耳男「ミスティア、お願いです」
みすち「な、なに?」
かつての美声を失い、掠れた声でミスティアが聞き返す。
兎耳男「私はあなたの事が大好きです、あなたを愛しています。これからも、そう、未来永劫に」
兎耳男が檻の鉄格子を二本、握る。
兎耳男「だから、だからっ」
兎耳男はそれを思い切り力を籠め横に引っ張る。
兎耳男の力をもってしても頑強な鉄格子。兎耳男が苦しそうに息を吐きながら、さらに力を込める。
徐々に、徐々に、鉄の檻が音を立て歪んでいく。
時間をかけ、ミスティアが通ることが出来るぐらいの隙間が開く。
そのスキマから兎耳男が何とか身を捩って入り
-
足を踏み外したように倒れる。
ミスティアが慌てて這って進むと手の先にぬるりと温かいものがつく。
みすち「う、兎耳男さん?」
兎耳男「貴方は、必死に」
兎耳男がミスティアの足をつなぐ鎖に手をかけ、力を込める。
ぼこと気泡が弾ける音がした。
その音は兎耳男から。
兎耳男の腹。腹に大きく開いた穴から聞こえた。
みすち「兎耳男さんっ!? そ、その傷」
薄暗く良く見えない地下牢の中、ミスティアは兎耳男に抱き付き、傷口を見る。
確実に致命傷である。ミスティアはそれを理解した。
みすち「兎耳男さん………っ。兎耳男さんっ!!」
兎耳男「生きて、くださいっ」
鉄の鎖が引きちぎられる。それと同時にに兎耳男の体はミスティアの小さな体にもたれ掛った。
-
幽香「………」
阿求「満足、でしょうか」
幽香「いいえ」
阿求「が、くふっ」
焼け落ちた部屋の中、幽香は炎に囲まれながらその家の持ち主である阿求の白く細い首を片手で絞めた。
幽香「もう、満足なんてできないわ。出来るのは私は私らしくただ暴れまわるだけ」
幽香「ねぇ、貴方は、なんで貴方はこんなことができたの?」
自分の首を強く締め付けるその手を引きはがそうとなんどか阿求がもがくが、ただの人間の力が幽香に叶う訳がなく、何度か幽香と自分の首をひっかくだけで終わる。
阿求「わ、わだしは、かんそくじゃに、すぎまぜん」
幽香「へぇ」
阿求「なにもちからを、もだない、わたじは、みることしか、できないっ」
幽香「だから、だからこんなことを見ないふりしていたの?」
阿求「みないふりは、じてないっ、わたしはただの゛かんぞくしゃで、よわい゛」
阿求「ひきょうもの、にじか、なれない゛っ」
-
阿求「だがら、あやまるごとすら、できない゛」
幽香「へぇ」
幽香が手を放す。阿求の体が地面に向かって倒れる。
阿求「がはっ」
阿求の体が地面に倒れ伏す前に、阿求の腹に幽香のつま先が刺さった。そのまま蹴り上げ、阿求を蹴り飛ばす。
幽香「謝る気すらないというの!?」
阿求「謝れないっ!! 私は間違った!! 間違ってしまった!」
阿求「日に日に変わっていく住民を!! 殺される妖怪の叫びを! 見てた。見てるだけだった!」
阿求「そんな私が、幾千の言葉を並べ立てたところで謝ることなんてできないっ!!」
阿求「殺したいのなら殺してください! お願いだから私を殺してっ!!」
そう唾を吐きつける勢いで叫ぶ阿求に背を向ける。幽香は再び里で暴れまわるために。
幽香「今日、この異変は終わる。幻想郷に最悪の形で」
幽香「貴方はそこで見てなさい」
そう告げると、泣き咽ぶ阿求を炎の中に残し、地面を蹴り駆けだした。
-
終わり?
-
>>685
もうちっとだけ続くんじゃ
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このアリスかわいい
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兎耳男…
-
兎耳男…
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うさみみ……
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舞ってる(((o(*゚▽゚ )o)))
(((o( *゚▽゚)o)))
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キャラが死にすぎだが
なかなかの良スレ
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ついに兎耳男まで………
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うさみみがぴょんぴょんするんじゃあ〜!
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待ってる
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楽しみに待ってます
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支援
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支援
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待ってる
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みすちーがちんちんするんじゃあ〜
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がんばれ
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支援
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支援
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支援
実は生きてたなんてオチだったら良いのにな...
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支援
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支援
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〜男視点〜
響く絶叫。
照らす炎。
ねちゃりと靴底に纏わりつく血。
いくら走れどそこから逃れることはできない。
アリスは蓬莱と上海を連れて人間の集団の中へ突っ込んでいった。
一騎当千の働きを見せるアリスに気を取られた隙をついて更に奥へ進む。
俺、霊夢、チルノ。
この戦火を潜り抜けるには少し厳しい戦力。
いや、少しじゃない。相当厳しい。
相手の数は自分たちよりも数十倍。
いくら時が戻せても。そんな後ろ向きな考えが頭をよぎる。
なんとかなるだろうなんて楽観的な考えは今現在、現実によって打ち消される。
だけれど、目の前を走るこの少女が地面に倒れ伏す光景は頭の中でも想像できなかった。
後ろ向きの中で唯一の希望。それが博麗霊夢という英雄の存在だった。
-
霊夢「あぁもう!! どれだけ倒せばいいのよ!!」
霊夢が投げた札の直撃を受けた人間が吹き飛ぶ。
しかし敵の数は一向に減らない。
幽香たちが陽動として働いていてもこの数。
明らかに村全体で1万は超えているのではないだろうか。
でもなぜ。減らないはずがない。
もう戦いも長い。その中で失った損失も大きい筈だ。
なのに減っていない。
まるで幻影。
悪夢のようなその光景のたねを見つけることが出来なければ消耗戦に持ち込まれる。
それは電撃戦を挑んだ自分たちにとっては負けを表す。
だから前に進み、冴月 麟を倒さなければいけない。
-
男「うおらぁっ!!」
襲い掛かってきた人間の頬を拳で打ち抜く。
拳が骨を打つ手ごたえを感じた。脳が揺さぶられた人間は気を失い倒れた。
幻影ではない。感触もある。幻ではないようだ。
五感を欺く幻覚と言われればそれまでだが。
チルノ「師匠、やるね!」
男「萃香にしごかれたからな」
短い時間だったが密度の濃い稽古がなければ俺はとっくに死んでしまっていただろう。
幼い外見ながら、老獪とした雰囲気をだすあの少女に俺は感謝をしなければならないだろう。
萃香は死なない。だからこの戦いが終わった後、俺は萃香にお礼を
-
霊夢「!?」
前を行く霊夢が立ち止る。
ぶつかるギリギリのところで止まり、なぜ立ち止ったのかを知るために前を見る。
その異変は異変というにはあからさまで、異常というにはさして珍しくもない。
日本人ならば誰でも見たことがある物。
鎧、兜、刀、槍。
全て朱に塗られたそれらが一歩踏み出すとそれらは揺らめく炎のように見えた。
霊夢「なんで武者が!?」
驚く霊夢の顔を見るに、流石の幻想郷でも武者は居なかったようだ。
ならなぜこの量の武者がいきなり、湧いて出たように現れたのだろうか。
本当に幻影なのではないかという疑問は歩みを揃えて近づいてくる武者の威圧感、甲冑の重い音によってそうではないと理解した。
-
霊夢「………」
男「勝てるのか?」
霊夢「私を誰だと思ってるのよ、とは言いたいけれど、正直あんたとチルノを守り抜くのは厳しいわ」
チルノ「う、ごめんなさい。霊夢」
霊夢「別にあやまらなくていいわ。これはどうしようもないことよ」
だから逃げなさいと言って霊夢は俺たちを庇うように札を構えて武者を睨みつけた。
男「チルノ、行くぞ」
チルノ「で、でも師匠」
男「大丈夫だ、霊夢なら」
チルノの手を引いて武者に、霊夢に背を向けた。
-
霊夢「あんたにそういわれると癪だけど、その通りよ。私は伊達に博麗の巫女を名乗ってないわ。異変を解決するそのためなら神様だって悪魔だってぶっ飛ばしてきた、それと比べれば所詮人間」
敵じゃないと言おうとした霊夢の声が震えていた。
霊夢「………ごめん。私が死んだら後お願い」
男「分かった」
弾倉の中に弾はまだある。俺にできるのは出来るだけ手遅れにならないようにそれを使う事。
その覚悟だけはずっと前に決めている。
俺だけが使える俺だけの力。優越感はないが、心強くはあった。
男「じゃああとは頼んだ、霊夢!」
-
振り向いてみた霊夢の姿は
いくつもの槍を突き出され
逃げ場がない霊夢の姿に
あ、死んだんだと簡潔に思ってしまうほどの
絶望感
咄嗟に銃を抜いてこめかみに当てる。
男「くっそがぁああああっ!!」
力を込めて引き金を引く。
カチリ
男「え?」
と音が鳴るだけで弾は弾倉から飛び出てこなかった。
-
「おうおうおうおう、懐かしい空気、懐かしい音、懐かしい殺気!!」
心底嬉しそうな声が聞こえた。
霊夢「は!? え!? なんで!?」
霊夢に向かって突き出された槍は全て手折られ、地面に転がる。
「武者殺すは妖怪の誉、妖怪殺すは武者の誉」
「なら、ならば、そうならば!!」
「この戦、私が頂いた!!」
口にくわえた槍の先を噛み砕き、小さくて、大きな鬼。
伊吹萃香が不敵な笑みを浮かべていた。
-
萃香「さぁ、どいたどいた」
萃香が霊夢を突き飛ばした。それだけで霊夢の体は空を飛び、慌てて走り寄り抱き留めた俺の顔を霊夢が叩く。
霊夢「飛んだのよ、バカ」
萃香が腕をぶんぶんと振り回す。その腕についた鎖がじゃらじゃらと鳴り、かき回された空気が突風となり吹き荒れる。
萃香「ちょうどいい、男、よく見てなよ」
ちらりと俺を流し目で見た萃香がそう言う。
男「な、なにを?」
萃香「鬼にゃ向かないが人には向く。力がなくても力を振るう方法」
萃香が前を見て構える。それはいつもの萃香の無造作な動きではなく、ちゃんとした武道の構え。
半身で当たる箇所を少なくし、間合いを隠す実践的な構え。
萃香「しっかり見てな、一回しかしない。鬼の鬼による人間のための戦い」
萃香「鬼の百本組手だよ」
そう言って萃香は赤い群れに向かってゆっくりと歩みを進めた。
-
やっとキター!
-
キタ━(゚∀゚)━!
-
赤い群れが怒号を発し、萃香に向かって槍を突き出した。
しかし萃香は突き出す前に大きく前に踏み込み、槍を避け、一番近くにいた武者に肉薄した。
萃香「まずは一」
槍を突き出した体勢の武者の腰に手を当てる。そして萃香は武者の足を払い地面に叩き付けた。
萃香「相手から力を奪い取って、自分のものとする。人間が化け物を相手するのにこれ以上良い戦い方なんてあるもんか」
萃香「戦場の中で一番自分が有利な位置に立つ。相手をよく見る。周りを見る。力の流れを知る。それさえしてれば」
槍を振るうことが出来ない距離。武者は槍を捨て刀を抜き萃香に切りかかる。
萃香「後手必殺なんて馬鹿げたことが出来る」
四方から迫る刃。萃香はそれの横っ腹を押し強引に道を開けた。
刀を振り切ったその体勢は死に体。萃香は鎧と兜の隙間。さらにそこにあるしころの隙間を縫い武者の頚動脈に突きを入れた。
次にそのまま自分に覆い被させるように死体を動かす。死体の甲冑は次に飛んできた斬撃を弾き、耳障りな高音を上げた。
武者が次の一撃を繰り出すよりもすでに拳を引ききった萃香のほうが早い。
萃香の拳は握り締められておらず、指だけが折りたたまれた形。つまり掌底。
正確に心臓の位置に打ち込まれた萃香の掌底は鎧を衝撃となり通過し、鎧の中の人間に届く。
一対多。圧倒的に不利なはずの状況を萃香は能動的に受動的に動き打開していた。
-
萃香の動きは合気道ほど相手を待たず、空手ほど自分を持たない。
だけど柔道のようでもない。
戦いの中に罠を撒いて誘導し、自分に有利な状況を作り出すそれはまるで将棋や囲碁。
一手二手先を読むのはもちろん、視点視線体勢タイミング。全てを自ら望むまま動かす。
武者が駒だとするならば、萃香は棋士。
格が違っていた。
-
確実に一人一人を倒し終わった萃香は、最後の一人が地面に倒れ伏すのを見届けると、額の汗を拭い一息ついた。
萃香「分かったかい、男」
男「分かった、けど実践できるかどうか」
萃香「出来るさきっと」
霊夢「ずいぶん男に甘いのね」
萃香「ん? そうかい?」
霊夢「そうよ」
萃香「ははっ。天下の伊吹童子が甘くなったといわれちゃ、おしまいかもしれないねぇ」
男「まぁ、萃香と一緒に戦って―――――」
萃香「―――けふっ」
萃香が口から血を吐き出した。
口だけじゃない、その小さな胸から刃を覗かせ、血を流していた。
-
萃香「まだ生き残りが………っ!?」
ゆらり、幽鬼のごとく武者が立ち上がる。
あるものは首から血を噴出し、あるものは胸に槍を刺し、またあるものはそもそも首から上が無かった。
今まで倒した武者。全てが立ち上がり萃香に向かって各々武器を振るった。
その攻撃を萃香は全てを避けることは出来ず、さらに両者とも赤く染まる。
男「萃香っ!!」
萃香「大丈夫、大丈夫さ」
血の混じった痰を吐き出す萃香の姿はどう見ても大丈夫なようには見えない。
男「萃香っ!! 鬼なんだろ!? 天下の伊吹童子なんだろ!! なんで人間に負けるんだよ」
萃香「鬼だから、妖怪だから、人間に負けるのさ。でもね男。わたしゃ天下の伊吹童子さ。腕を切り落とされても、首をもがれても」
萃香「全員一緒に纏めて、地獄に連れて行ってやる」
萃香が腕を一閃すると周りの武者が吹き飛んだ。
萃香はまだ笑みを浮かべながら口元に滴る血を拭った。
萃香「逃げな男。失せな霊夢、生きなチルノ。ここは私の戦場で死に場所。誰にも邪魔はさせない」
萃香「天下一の大立ち回り。誰にも見られず朽ちて果てりゃ、大笑いできる、最高の酒の肴。向こうの奴には良い手土産になるだろうさ!!」
-
踏み出そうとした霊夢とチルノの手を握り萃香に背を向け走る。
霊夢「話してよ男!!」
男「うるさい! 絶対離すもんか!!」
霊夢「あんたは萃香を見殺しにするの!?」
男「あぁ、そうだよ見殺しにするんだよ!! 萃香を、俺は見殺しにするんだよ!!」
男「大切な、俺の師匠を俺は見殺しにするんだよ!!」
霊夢であれば振りほどけたはずだった、チルノだったら振りほどけたはずだった。
だけど二人の柔らかい手は強く握る俺の手を弱く握り返してくれた。
男「ちくしょう、ちくしょう………」
紫の「共犯者じゃない、貴方も、私も」という言葉が頭の中に幾度となく響き、みっともなく、泣いた。
-
来てた!萃香…
-
続きはよ
-
〜俯瞰視点〜
幾多もの亡骸に囲まれ、伊吹萃香は天を仰いでいた。
その体に左腕はなく、残りの肢体も辛うじて残っているだけだった。幼い見た目にいくつもの折れた刃を生やし、止まることのない血が服を汚す。
だがその顔に浮かべるのは憤怒でも悲しみでもなく、満足そうな満面の笑み。
戦いの中で生きて死ねた。それだけで萃香は自分の生に十分な価値を見出していた。
酒に酔いつぶれ、寝首をかかれるわけではない。真っ向から立ち向かい、見事に散った。
その事実だけで萃香は安らかに生を終えることができた。
残った右手で瓢箪の中の酒を口に運ぶ。
しかし飲み込めず、そのほとんどを口の端から零した。
首を伝って滴った酒が服に染みこんだ血を浮かせる。
萃香は飲み込めない酒を何度も何度も口に運び、そのたびに吐き出す。
それでも口の中に残る強すぎる酒の味だけで不思議と満足できた。
次第に腕の動きも遅くなり、酒を運ぶことすらままならなくなる。ついに力尽き、地面に転がった瓢箪。とくとくと酒が地面を濡らした。
「あぁ、楽しかった」
萃香は小さく息を吸い込んでやっとのことでそう言うと、目を閉じた。
-
血の匂いは苦手ではない。畜生の変化であるため、生臭い事なんて慣れる以前に辛いとすら考えたことはなかった。
だからこのむせ返るような血の煙の中でも顔色一つ変えず息をしていた。
「なるほど、貴方は」
独特な耳当てをし、まるでミミズクのような特徴的な髪型をした少女、豊郷耳 神子はマントを風になびかせながら目の前の良く見知った黒いワンピースの少女を見た。
「あうぅ………なんて演技はもう良いかの」
神子の冷ややかな目で見つめられた少女はその小さな可愛らしい口を獣のように大きく歪め、低い声で笑った。
そのつややかな黒色の髪は柔らかそうな栗毛に。少女のような華奢な肢体は肉付きの良い大人の肢体に。怯えていた瞳は、敵意をむき出しにした瞳に。
瞬く間に変化した。
マミゾウ「のう、豊郷耳の」
神子「どうしてここに?」
マミゾウ「可愛い娘に頼まれたもんでな」
そういってマミゾウは懐から煙管を取り出し火を灯した。煙管を咥え大きく息を吸い込み、そして大きく息を吐く。
するとマミゾウの口から通常では考えられない、辺り一面を覆うほどの大量の煙が飛び出した。
マミゾウ「それと怨みがある」
神子「そうですか、それは私もです」
-
煙の中から飛び出したマミゾウにむかって、巫女が剣を抜く。その刃は飛びかかってきたマミゾウの胸元を正確に捉えたが、刃が胸を抉る刹那、マミゾウの体は気の抜ける音を立て、木の葉へと姿を変えた。
神子「でしょうね」
そのまま後ろに向かって剣を薙ぐ。剣は巫女の後ろに回り込んでいたマミゾウの持つドスを止め、甲高い金属音と火花をたてた。
神子「欲は化けれませんよ。人間も妖怪も神も仏も」
マミゾウ「熱心な仏教家の名が泣くぞ?」
神子「あれは民を操るのに都合が良かっただけです。仏も神もさらさら信じる気はありません」
マミゾウ「あぁそうかいね。じゃあ一度会ってくるといいさ」
マミゾウが力を込めると徐々に神子の剣は神子の方へと押し込められてゆく。
神子「その気は更々ありませんよ」
神子が後ろに向かって飛ぶと、その体はマントの中に吸い込まれ、消えた。
神子「それより、貴方は布都に詫びると良い」
その姿は消えると同時にマミゾウの後ろに現れていた。そして無防備になったマミゾウの背中を剣で貫く。
マミゾウ「けふっ」
神子「畜生も血は赤いんですね」
マミゾウ「くくっ、貴族様は知らないだろうさ。血の色も、我ら畜生も何もかも」
-
神子「戯言を」
神子が剣をさらに押し込む。
剣はずぶずぶとマミゾウの背中に吸い込まれてゆき、そしてついにマミゾウの胸元からその姿を覗かせた。
マミゾウが大きく咳き込むと同時に大量の血を吐く。
神子「この程度に貴方は負けたのですか布都。………見損ないましたよ、えぇ」
その声色はどこか悲しげであった。マミゾウはその感傷的な神子の言葉をくくくと笑い飛ばした。
マミゾウ「死人は泣きはしないし、笑いもしないさ」
神子「その言葉、復讐をしにきたあなたが言うのですね」
マミゾウ「わかっちゃいない、わかっちゃいないのさ豊郷耳の。儂が何に怒り、何に悲しみ、何を思っているのか」
神子「その貴方のうちから湧き出る憤怒は、命蓮寺の連中を殺した私によるものでしょう」
マミゾウ「ははっ。確かに奴らとは関わり深い。儂の可愛いぬえを可愛がってもらってたからのう」
マミゾウ「だがそうじゃない、そうではない。儂の怒りは、儂の悲しみは、儂の怨みは」
マミゾウが胸から飛び出た刃を掴み
大きく胸に向かって引いた。
-
神子「なっ」
その突然の行動に巫女が驚くと同時にマミゾウが勢いよく振り返る。
そしてそのテラテラと濡れた刃を神子に抱き付くようにして突き刺す。
神子「うぐっ」
胸を刺す刃と背中を刺すマミゾウの爪によって神子の顔が苦悶の表情に歪む。
神子「なにを、するのです」
マミゾウ「儂は、儂を許せないんじゃよ」
マミゾウ「だから儂は儂を殺してその敵を討つ。まぁ付き合ってくれんか。豊郷耳の」
マミゾウの力がさらに強く込められる。神子は自らの骨がきしきし音をたてるのを聞いた。
神子「自己犠牲なんて、ばかばかしい」
マミゾウ「自己犠牲なんてもんじゃないわ。このままじゃ儂は儂を許せんのよ。ま、ただの頑固者よな」
マミゾウ「じゃ、頼んだよ」
「あぁ、任せろ」
神子の後ろから声が聞こえた。その声は聞き覚えのある声であり、そしてするはずのない行動とその言葉に神子は驚きを隠せず―――
後は全て光が覆い何も見えなくなった。
-
更新待ってました
ちなみに豊郷耳ではなく豊聡耳ですよ〜
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おせーよゴミ
-
早くー
-
もう誰が残ってるのかわからなくなってきたな
妖夢とかどこ行ったんだ?
-
先の展開が楽しみだ…
-
「これで、これで、良かったのか。マミゾウ」
少女は箒に乗り、すすり泣くような声をあげ、今にも泣き出しそうな表情で更地となった地面を見た。
「あら、あらあらぁ、なにやってるのかしら、魔理沙」
「っ!」
そんな魔理沙を後ろから抱きしめる金髪の少女。その右手は優しく魔理沙の髪を梳くように撫でていた。
魔理沙「いつの間に、いた。冴月」
麟「麟って呼んでよ」
そう拗ねたように、からかう様にそういう麟を魔理沙は振り返って睨んだ。
魔理沙「何時の間にいた」
麟「最初から今まで」
魔理沙「見てたのか」
麟「えぇ、見てただけ」
魔理沙「なんで怒らない」
麟「怒る必要がないから」
-
魔理沙「怒る必要がないってなんでだ、私は、私はお前の仲間を殺したんだぞ」
麟「? それで?」
魔理沙「それでって………私はお前を裏切ったんだぞ!?」
麟「どこが?」
魔理沙「お前の仲間を殺した」
麟「えぇ」
魔理沙「裏切りだろ!?」
麟「いいえ」
魔理沙「なんでだ、なんでだよ」
麟「だってそもそも私の親友は魔理沙と霊夢だけだし」
魔理沙「………っ」
麟「うふふ、私の大切な魔理沙。貴方は私を裏切らないわよね」
魔理沙「………私は」
魔理沙「私は、霊夢を裏切らない。霊夢は私が救う」
麟「うふふ、素敵ね。魔理沙」
-
アリス「で、まだ来るのかしら?」
上海「お願いです、降伏してください」
蓬莱「は? こんな奴ら皆殺しで良いわよ」
アリス、上海、蓬莱の三人を中心として、半径10メートルほどの隙間を開けて数十人の村人たちが円状にアリスたちを囲んでいる。
初めは闇雲に人数にものを言わせて襲い掛かってきた村人達だったが、すぐにアリス達に蹴散らされ今に至る。
どうやら遠巻きに見るが逃げるつもりはないらしい。
アリス「消えるなら消えなさい。追いはしないわ」
そう呼びかけるも効果なし。こっちの隙を探るような視線だけしか返ってこない。
蓬莱「面倒よ、蹴散らしましょう」
上海「だ、駄目ですよ!」
蓬莱「は? なに甘ったれた事いってんの? こいつらは敵。敵なの。わーかーる?」
上海「で、でも」
人形劇、見に来てくれた人たちなんですよ。
そうもごもごと言う上海に蓬莱は罰が悪そうに頬を掻いた。
-
「はいはい、皆さん。助けに来ましたよー」
膠着した状況を打ち破る軽やかに弾んだ声。
場違いに明るいその声の聞こえる方向にいる集団がざっと左右に分かれ、そこを通り、緑色の髪をした巫女服の少女が現れた。
早苗「こんにちわ。アリスさん」
アリス「早苗。なのかしら」
早苗「えぇ、そうですよ」
ニコニコと目を細めて笑う彼女の姿を見るアリスの表情は険しい。
蓬莱と上海は早苗からアリスを守るように武器を構えた。
-
アリス「いや、貴方は早苗じゃないわね」
早苗「えぇ、少なくとも貴方の知る早苗、ではありません」
アリス「でしょうね」
早苗「どうも、守矢神社の三柱の内が一柱、東風谷 早苗です」
アリス「………嘘つき」
早苗「嘘じゃあ、ないですよぉお」
にこにこと笑う早苗の目が開かれる。
その瞳の色は黒。
アリス「祟り神め」
白目のない、底の見えない闇色の眼だった。
-
早苗「祟り神? それは諏訪子様ですよ」
アリス「そんな禍禍しい神様なんているわけないでしょ」
早苗「禍禍しい神様なんていくらでもいますよぉ」
アリス「生憎だけど、私は神道じゃないのよっ!」
アリスが指を動かすと4体の人形が早苗に向かって飛んでいく。
早苗「ふふ」
その人形を早苗は指すら動かすことなく、地面に叩き落とした。
早苗「そんなものですか? アリスさん」
アリス「っ その力って」
早苗「神として奇跡を操る私にそんなものが通じるわけないじゃないですかぁ」
早苗がにこりと微笑んで、祓串を振るった。
上海「!」
その数瞬後。アリスを守るために大きな鉄の盾を構えた上海の姿が吹き飛んだ。
-
早苗「良く止めれましたねぇ、見えないはずなのに」
蓬莱「こんだけ殺意がこもってれば嫌でもわかるわよ」
早苗「ほへぇ。そういうものなんですかぁ」
早苗「あ、皆さんもういいですよぉ。あとは全てこの私。東風谷 早苗が終わらせるので」
その言葉を聞いた村人たちが散る。一瞬それを追おうか考えたアリスだったが、目の前の早苗から目を離すことはできないと考え、蓬莱に目くばせをした。
蓬莱「はっ。ずいぶん余裕ぶってるわね」
早苗「ぶってる? いいえ。余裕なんですよ」
蓬莱「どうだか」
早苗「では証明してみせましょう」
早苗が再び祓串を振るう。
不可視の攻撃。それを迎撃するために蓬莱が槍を突き出す。
蓬莱「う、ぐぅっ!」
蓬莱の槍に触れた何かが爆発した。
辺りに吹き荒れる風によって蓬莱の小さな体が宙に浮いた。
-
早苗「うくくっ。弱いじゃぁ、ないですかぁっ!」
早苗「ほらっ、ほらっっ、ほらぁっ!!」
早苗が祓串を振るう。
荒れ狂う風が
研ぎ澄まされた風が
重き風が
アリス達を襲い、刻み、押しつぶす。
早苗「ほらぁっ! こんなにもっ!!」
早苗「弱いじゃぁないですかぁっ!」
アリス「………」
アリスたちは、成す術なく、打ちのめされていく。
早苗「弾幕はブレイン? いや違います!」
早苗「弾幕とは、圧倒的なまでの、完璧なまでの、超絶的なまでの力と!!」
早苗「独善的で、妄信的で、狂信的なまでの意志から生まれる!!」
早苗「パワーなのです!!」
-
早苗が祓串で素早く九字を描く。九字を模した眩い光の線がアリス達を囲むように現れ、上下左右からアリス達を狙い、襲い掛かった。
絶対回避不可な攻撃、自らに迫るそれを見てアリスは笑った。
アリス「弾幕ごっこは避けれない攻撃は禁止。そんな優雅じゃない弾幕はもちろん使ってはいけないのよ。知らなかったの?」
早苗「はっ。これは戦い殺し合い! ごっこなんかじゃぁないんですよぉっ!1」
光の線がアリスの首に触れる。
アリスの白く綺麗な首筋に食い込み、表面を破り、中へ入り、進み、骨に触れ、それでもなお進み、骨を砕き、肉を断ち、そして首を断つ。
それだけではない。
腕も足も胴も胸も、その綺麗な青い瞳と金色の髪さえも
四角く四角く、切り刻んだ。
-
アリス「そう、殺し合いでいいのね」
早苗「!?」
アリス「知ってる? 殺し合いもブレインなのよ」
早苗の後ろ、逃げた民衆の内の一人が早苗の背中を刺していた。
早苗「う、くぅっ」
その瞳は蒼
その髪は金
その唇は赤
その肌は白
形の良い唇が、形良く歪んで、微笑む。
ナイフを伝わって滴る血が陶磁器のような肌に良く映える。
いつもと違う着物姿がまた、少女の美しさを際立てる。
-
アリス「お人形遊び、楽しかった?」
早苗「お前―――」
蓬莱「さっきのぉおおおぉおお、お返しよっ!!!」
ひらりと避けたアリスの後ろから大きな槍を構えた蓬莱が現れる。
その槍は早苗の肩甲骨と肩甲骨の隙間を通り、心の蔵を貫き、胸から現れ、早苗の体に大きな風穴を開けた。
アリス「ごめんなさい。貴方の事、詳しく知らないから泣いてあげれないわ」
頬に散った返り血をアリスがレースの白いハンカチで拭う。ハンカチに滲んだ血を見てアリスがハンカチを地面に放り投げた。
蓬莱「はっ。たかだか人間が私たちに適うかっての」
上海「あたた、でも痛かったです」
アリス「お疲れ様、上海、ほうら―――
「許さない」
「許すことはできない」
「許すことは認められない」
「神を、祟神を、私を、我を、殺し、殺し、痛みつけたことを、見捨てた事を」
「許さない」
-
アリスの後ろ。今しがた東風谷 早苗の亡骸が地面に倒れ伏した場所。
正確にいえば東風谷 早苗の空いた胸の穴の中から、
くぐもった、おどろおどろしい声が聞こえた。
アリス「アーティフルサクリファイスッ!」
反射的に懐から人形を取り出し、投げる。
火薬の詰まった人形は近距離にいるアリス達ごと早苗を吹き飛ばした。
上海「大丈夫ですか!? アリス!!」
アリス「えぇ、大丈夫よ。それより」
少し眩暈がしたため、アリスがこめかみを押さえる。
片目瞑ってみたそれの姿は東風谷 早苗。
ゆらりと幽鬼のようにだらりと腕を垂らして立つその姿は紛れもなく東風谷 早苗だった。
アリス「………やっぱり祟神になってたのね。東風谷 早苗」
-
待ってました!
-
早苗「ねぇ、おい、アリスさん、お前、死んでください、死んでしまえ」
おどろおどろしい怨嗟の声。乱れた前髪の隙間からアリスを睨めつける目に宿るのは憎悪。
黒い泥のような瞳にアリスは少しの恐怖を感じた。
アリス(早苗………あれは本当に東風谷 早苗なの?)
早苗「死んで、死ね」
早苗が左腕を上げる。
眩い光とゴロゴロと体に響く低い音。
雷が早苗の上に集まっていた。
アリス「っ!」
早苗「死んで、死ね、死んで、死ね、死んで、死ね、死んで、死ね」」
早苗が左腕を振り下ろす。
雷がアリスに向かって、瞬きよりも速く走る。
その速さに反応できたのは身を挺してアリスを庇った上海だけだった。
-
展開した盾をも砕く一撃。
抑えることが出来なかった力が上海の体を襲った。
上海「あうぅっ」
衝撃により地面に叩きつけられた上海が小さくうめき声をあげた。
蓬莱「上海! よくも上海を」
アリス「やめなさい蓬莱」
槍を展開し、早苗に向かっていこうとした蓬莱をアリスが手で制す。
蓬莱「アリス!?」
アリス「こいつは、私が相手する」
アリスが両手を広げる。
その十本の指には全てリングが付いており、そのリングからは目に見えないぐらい細い糸がついていた。
アリスがまるでピアノを弾くかのように指を動かすといつの間にか空中に人形が現れ、それぞれ弓や槍などの得物を早苗に向かって構える。
アリス「逃げなさい蓬莱、上海を連れて」
蓬莱「でもアリスッ!」
アリス「逃げて蓬莱。私の最高の友達」
-
早苗「許さない、許さない」
蓬莱「………死なないでよ、アリス」
アリス「私を誰だと思ってるのよ」
蓬莱「アリス」
アリス「魔界の神の娘よ。舐めてもらっちゃ困るわ」
アリス「こんな悪霊の一体二体三体四体、いや、いくら束ねてもお母さんや夢子の足元にも及ばない」
アリス「かかってきなさい悪霊、誰だか知らないけど死んでもらうわよ」
-
早苗さん怖いでぇ…投稿頑張ってください!
-
見えない風の刃。眩い雷の槍。瞬く間というほど遅くはない攻撃がアリスを襲う。
しかしその青い瞳は相手をまっすぐ見据え、紙一重で全てを躱していく。
アリス「………」
無言で進みながらアリスがその白魚のような指を微かに動かすと、アリスの後ろで弓を構えていた人形が矢を放つ。
早苗はそれを避けようともせずその身に受けた。顔には苦悶の表情すら浮かばず、怨みの念しか含まない瞳がアリスを貫く。
アリス「本当、不気味」
アリスが右手の中指をくいと動かすと槍を持った人形が早苗に向かって飛んでいく。
早苗はその人形の槍を手のひらで受け、手のひらを貫通した槍を掴みアリスに向かって投げ返した。
しかしその人形は早苗の手を離れる寸前に爆発する。
掴んでいた右手首から先が吹き飛んだ。傷口から赤く汚れた骨が露出し、大量の血が流れた。
しかしその表情は変わらない。
アリス「神の子っていってもまだ人間でしょ? それとも一回死んで生き返った?」
冷静に観察をするも、なぜそうなるのかがアリスには分からない。
悪魔に取りつかれたとしても、心臓を抉り取られ、右手を無くしたのに悲鳴すら上げず、妄執に取りつかれたかの如く小さく恨み言を続けるそれが分からない。
全てを恨むかのようなその力の根源が分からない。
-
勝てないわけではない。万が一目の前の早苗に取りついた悪霊が魅魔並だったとしてもアリスは本気を出さずに倒すことはできる。
しかし、目の前の悪霊は魅魔よりもずっとずっと湿ってドロドロとした怨みをぶつけてくる。並の妖怪なら精神汚染され、その形を失うほどの濃い怨み。
これほどの悪霊がなぜ幻想郷に入って来れたのか。そしてなぜそれが早苗に憑いているのか、それが分からない。
いくら観察しても分からないことだらけなのは変わらない。
ならばもう倒してしまおう。アリスはそう結論付け両手の指を激しく動かした。
矢が。槍が。剣が。爆弾が早苗に襲い掛かる。
早苗の体は切り刻まれ、欠落し、損失する。
腕はなます切り。胴は矢でハリネズミ。足は所々炭化し、爆風で抉れている。
並の人間では吐き気を催してしまうほどの猟奇的な光景。
しかしアリスも早苗も顔色一つ変えない。
吹き飛んだ右足により、体を支えられなくなった早苗の体が傾き、地面に倒れ伏す。
這って行こうとした腕もすでになくただ肩から少し残った先が空しく地面を掻くのみ。
しかしその瞳はまだ爛々と光っており、アリスを睨めつける。
アリス「さようなら、早苗」
アリスが腕を一閃すると、矢が早苗の眼を貫き、頭蓋を食い破った。
-
そこまでしてやっと早苗の体が動かなくなった。
操り糸が切れたかのようにいきなり動かなくなるその姿をアリスは不気味に思ったが、執念で動いていたのならそうなのだろうと考え、早苗に背を向ける。
それがいけなかった。
早苗が立ち上がる。
右足で地面をしっかりと踏みしめ。
右手でしっかりと己が武器である祓串を構え。
爛々と怨みの暗い光を灯した瞳で。
早苗の後ろに立っていた。
反応が一拍の遅れを生じた。
振り向こうとしたアリスの右肩甲骨辺りを早苗の爪が切り裂く。
熱い痛みを感じながら距離を取ろうとしたアリスのわき腹をお歯黒のように黒く酸化した血がこびりついた歯が噛み千切る。
痛みは体の不調、危機を知らせるもの。しかしそれは時により脳神経を焼き切ってしまう。
アリス「なんで、なんで?」
判断を間違えた脳が取った行動は口から疑問の言葉を吐き出すことだった。それに対し早苗が悍ましい声で答えた。
早苗「きせき」
-
アリス「違う」
違う。それは奇跡ではない。
目を貫かれ、足を焼かれ、いくつもの矢をその身に受けたその体を全て元通りにする奇跡は存在しない。
奇跡ならば死んでから蘇る。
それは死体が残っていた場合の話だ。
もしくは奇跡ならばそもそもその身に攻撃を受けることはない。
だからこれは奇跡ではない。
これは呪いだ。
高密度の怨みが生んだどす黒い奇跡染みた呪いだ。
早苗「さぁ、死ね」
祓串が眼前に迫る。
それを右手で防ぎ、尻もちをつくようにして早苗から逃げる。
そんな自分を無様とあざ笑いながらアリスは自分の喉を食いちぎろうとしてくる早苗の顔を蹴り飛ばし、その隙に距離を取る。
-
アリス「私は魔界神の娘、だから、だからあんたに負けるわけにはいかないのよ!」
アリスが滅茶苦茶に腕を振るう。
矢が、槍が、剣が、爆弾が、先ほどよりも苛烈に火のように早苗に押し寄せる。
早苗「ばぁ」
早苗の周りに雷が落ちる。その力と巻き起こされた砂煙により、その攻撃は全て地面に叩き落とされた。
早苗「く、くぅ、ははぁ」
早苗が笑った。
いやそれを笑ったと言えるのだろうか。その歪んだ口角を笑みと言えるのだろうか。
アリス「………」
アリスは全て防がれた自分の全力を前に唖然とし、小さく口を開けた。
アリス「ごめん、蓬莱。勝てなかった」
垂らした指からリングが落ち、地面と接触し、軽い金属音を立てる。
早苗が右手を上げる。
その上に集まる高密度の雷。
それを見てアリスは自分の体を抱きしめた。
-
早苗の手は振り下ろされ、一直線にアリスの元へ飛んでいく。
早苗「!」
しかしその雷はアリスには届かなかった。
突然隆起した地面がアリスを庇っていたからだ。
「ねぇ、もうやめてくれよ、お願いだ」
「………やめて」
突然現れた二人が早苗を抱きしめていた。
早苗「う、うぐぅ、は、離せ」
童女のような姿の洩矢 諏訪子。
威厳のある大きな姿の八坂 神奈子。
二人で包み込むように早苗を抱きしめていた。
アリス「やめろって、早苗は今優勢だったでしょ?」
諏訪子「違うよ、違うんだよ」
アリス「違うって、何が?」
諏訪子「早苗はもう、死んだよ。さっきあんたが殺したじゃないか」
-
アリス「それは、早苗じゃないの?」
神奈子「違う! 早苗は、こんな、こんな奴じゃ、こんな奴じゃない!」
アリス「それで、何?」
神奈子「お願いだ、お願いがある」
アリス「お願いって何よ。これ以上戦わないでくれとでもいうの? もしくは早苗をいたぶらないでくれ?」
神奈子「前者はそうだ。でも後者はその逆」
アリス「それって」
神奈子「お願いだ。早苗を、殺してくれ」
アリス「………」
神奈子「お願いだ」
アリス「自分でやれば? そいつより強いんでしょ?」
諏訪子「あんたは、私たちに自分の子を殺せって、言うのかい?」
-
諏訪子「無理だよ、無理だよぉ」
神奈子「たとえ形が違っても、たとえ中身が違っても、私たちにとっては可愛い早苗なんだ」
神奈子「でも、でもこれ以上見てられないんだよ」
神奈子「だからお願いだ。早苗を殺してくれ」
アリス「………私が早苗を殺せると思うの?」
神奈子「さっき、人形遣いを辞めようとしたよね」
アリス「………それは私が諦めたのよ」
神奈子「いや、違う。諦めていない。アリス、お前は本気を出そうとした」
アリス「………」
神奈子「その今抱きしめている魔導書を開こうとした」
アリス「………分かったわ、そいつは私が殺す」
神奈子「ありがとう」
-
アリス「それじゃあ、行くわよ」
早苗「やめろ、やめろっ!!」
アリスが右手で本を持ち、左手を早苗の首にあてた
アリス「さよなら」
魔導書が少し光ると二人から逃げ出そうともがき、獣のような表情でアリスを睨みつけていたその体から力が抜けた。
諏訪子「う、くっ、あうぅ………」
神奈子「ありがとうアリス。良かったなぁ、早苗、良かった」
アリス「………それで、貴方たちも私と戦うの?」
神奈子「いや、もう私たちは消えるさ」
諏訪子「早苗、ごめんよぅ、ごめんよぉ」
神奈子「さ、行こうか諏訪子。帰ろう早苗」
神奈子が早苗の亡骸を抱きかかえ立ち上がる。地面に座り込んで泣いていた諏訪子は神奈子に縋り付くようにして同じく立ち上がった。
三人の姿はうっすらと透け、どんどんとその色を亡くし、最後に神奈子はアリスに向かって微笑むと完全にその姿を失った。
アリス「………何よ、バカみたい」
アリス「本当、バカみたい」
-
〜男視点〜
霊夢「………あんた」
気が付くと目の前に少女がいた。
紫色の髪に、体から生えた触手と目。その大きな目がぎょろりと俺たちを見る。
男「誰、なんだ?」
霊夢「こいつは」
さとり「古明地 さとり。元地霊殿の主。今は、今は、なんでしょうね」
さとりと名乗った少女が短くため息をつく。
敵なのか味方なのか。いや十中八九敵だろうがなんというか今までの奴と比べて敵意を感じない。
さとり「敵意、というものはありませんよ。私はただ交渉しにきただけです」
心を読まれたかのような言葉がさとりから
さとり「心、読めますよ。私」
まじか
心の中が読まれていた。という事は俺の考えている事が筒抜けという事か。
いくら策を弄しても読まれ看破されてしまう。それがどんなに恐ろしい事か。
-
さとり「………」
そんな事を考えているとさとりが悲しそうに微笑んだ。
悪いやつ、じゃないのか?
いやこいつもあいつの仲間なら
あいつらを殺した奴の仲間なら
さとり「ごめんなさいと謝っても意味はないのでしょうが、一応謝っておきます」
さとりが頭を下げた。
なぜ謝る。
あぁそうか。
男「俺の心を読んだのか」
さとり「はい」
男「やめてくれ」
さとり「ごめんなさい」
あいつらのこんな可哀想な姿を知らないでくれ。
知ってるのは俺だけでいいんだ。
-
霊夢「それで、何の用?」
さとり「霊夢、貴方と交渉がしたい」
霊夢「交渉?」
さとり「はい」
霊夢「交渉って何よ」
さとり「貴方が私たちのところに来てくれるのなら、この戦争を終わらせましょう」
霊夢「は?」
いきなりのその言葉。
霊夢一人の決断でこの戦争が終わる。
それって
そんなのって
もしかしてこの戦争って
原因は、霊夢?
-
………いや違う、そんなはずはない。
さとり「男さん。今あなたが考えている事は半分は正解です」
霊夢「………何を考えているの?」
さとり「私は平和に暮らしたいだけです」
霊夢「ならなんで戦争を初めたのよ!」
さとり「その原因はこの世界が悪いのです。この世界を、幻想郷を嫌った人が、そして貴方を誰よりも好く人がこの戦争を起こした」
霊夢「残念だけど、私は冴月 麟なんて奴知らないわ」
さとり「えぇ、そうでしょう。あの人を知る人なんていない」
霊夢「ストーカー?」
さとり「そこまでは知りません。あの人の心は私には読めませんから」
霊夢「あんたに読めないって何者よ」
さとり「人間のはずですよ」
霊夢「………あぁ、そう」
-
さとり「さて、無駄話はここまでです。答えを聞かせてもらえますか?」
霊夢「最後に一ついいかしら?」
さとり「えぇ。私でわかることなら」
霊夢「もし私が条件を飲んであんた達に従ったら、その後どうなるの?」
さとり「言った通り戦争は終わります。幻想郷と共に」
-
早苗もいってしまったか…先の展開が楽しみだ。
-
チルノ「何言ってるんだ?」
その言葉を一番最初に口にしたのは今まで黙っていたチルノだった。
チルノ「この幻想郷がなくなったら、あたいは、みんなはどこで暮らすんだ?」
さとり「さぁ、どうなるのでしょうか」
霊夢「ちょ、ちょっと待ちなさい、アンタたちは一体」
さとり「質問に対する回答はすでに終了しました。どうしますか霊夢、私についてきてくれますか?」
さとりが霊夢に向かって手を差し出す。
チルノと俺の視線がその手に釘づけになる。
この手を握れば戦争が終わる。
ただ、戦争が終わって平和になる保障は一切ない。
-
霊夢「お断りよ」
その手を
その提案を
あっさり霊夢は拒否した。
霊夢「私は幻想郷の素敵な巫女。幻想郷を見捨てるなんてことが出来るわけないじゃない」
さとり「でしょうね」
さとりも初めからわかっていたかのようにそうあっさりと返す。
霊夢「私の心読めるんでしょ? 今私が何考えてるか分かる?」
さとり「怒り、悲しみ、あたりですかね」
霊夢「そうよ、怒ってるのよ。悲しんでるのよ。あんたならわかるでしょう、どれだけ、どれだけ私があいつをぶっ飛ばしたいか!!」
さとり「そうですか。頑張ってください。それでは私は失礼します」
霊夢「ちょっと待ちなさい」
さとり「………」
さとりが自分の首筋にあてられたお祓い棒に、命を奪うそれに対し
嬉しそうにため息をついた。
-
霊夢「逃がすわけには行かないわ、誰かを呼ばれるかも知れないから」
さとり「なるほど、そうですかそうですか」
さとりは戯曲を演じるかのように大仰な動作で両手を上げた。
さとり「死にたくはない、えぇそうですとも死にたくは、ない」
霊夢「………なら私たちを連れて行きなさい、あいつのところに」
さとり「でもそれよりも、でもそれよりも」
さとりが首に添えられたお祓い棒を掴む。
じゅじゅじゅと焦げるような音がして、さとりの手から煙が上がる。
さとり「殺されたくない人がいる。お燐を殺し、お空を殺し、地底を見捨て、いくつもの屍を築き上げ、それを半笑いで踏みつけても、それでも殺されたくない人がいる。殺し殺し殺し殺し、それでも殺されたくない人がいる」
さとり「そう、死んでも殺されたくない人がいる」
さとりが掴んだお祓い棒をぐいと押しのけ振り返り、霊夢の息遣いが感じられるほどの距離に顔をよせ、霊夢の形よい瞳を覗き込んだ。
霊夢「っ!」
さとり「私の家族以外、皆死んでしまっても構わない」
-
〜少年視点〜
僕は守りたかった。皆を。
でもできなかった。
僕の小さな手では持てるものはとても少なかった。
僕がこの手にまだ持っているものはさとりさんとこいしさんだけ。
だから僕は二人を守るためなら
霊夢「!」
さとり「え?」
皆の視線がさとりさんに集中しているこの時。
それはこのうえないほど良いタイミングでした。
手にあるのはいつもと違う感触。いつものペンではありません。小さくも手の中でずっしりと主張する鉄と火薬。
ちゆりさんからもらった小さくても必殺の武器、拳銃。
物陰から飛び出し霊夢さんに向ける。
初めて引き金を引いてみるとそれはずいぶんあっけない音をたてました。
-
少年「っ!」
地面に倒れたのは霊夢さんではありませんでした。
とっさに霊夢さんを庇ったチルノさん。
その胸の真ん中に小さな穴が開き、チルノさんは地面に倒れこみました。
男「ち、チルノォオオオォオオ!!」
一緒にいた男の人が叫びました。
その声はとても大きく、とても悲しそうでした。
でも、それでも僕はさとりさんを守らなくてはいけません。
再び引き金を引いて霊夢さんに打ちます。しかし引き金を引いたとたん霊夢さんの姿は消えました。
霊夢「あんたっ」
霊夢さんが目の前にいました。
引き金を引くよりも霊夢さんが僕を殺す方が早い。
だけどこれでいいのです。
-
拳銃を握りしめていたほうとは違う手に握りこんだものをさとりさんのほうへ投げました。
それは白衣男さんからもらったもの。
煙を噴出する玉。
必殺でなくてもいい。
さとりさんを守れればそれでいいのです。
少年(さとりさん、逃げてください)
振り向いた霊夢さんの足元に二発打ち込む。
逃がしてはいけない。
逃がしてしまってはさとりさんが無事に逃げられない。
さとりさん。
僕が死んでも殺されたくない人。
-
霊夢さんの胸に標準を合わせます。
確実に当たる距離。たとえ手が震えても。
親指程度の弾。だけど小さくても一撃必殺。
手をあげろなんて言葉は口から出ない。
ただ霊夢さんを睨みつける。それだけで十分でした。
霊夢「………あんた、正気なの」
その質問に対し頷きます。
僕はことりさんのように妖怪全てを憎んでもないし、麟さんのように幻想郷を憎んでもない。
でも、二人に負けないぐらいの意志はあるつもりです。
視線でお祓い棒を手放してくださいと命じます。
霊夢さんは素直に手放してくれましたが、それでも相手は霊夢さんです。油断はできません。
せめて、せめてさとりさんが逃げる時間を稼げれば。
それだけで僕の人生に意味はあったと胸を張って言えるから。
男「や、やめろっ!! 霊夢から離れろ!!」
しかし現実はやはり僕に厳しく、男の人が僕に拳銃を向けていました。
-
お、来てる
-
いつでも読むのが楽しみだ
時間かかってもいいから頑張れよ~
-
すごいことになってきた…
-
舞ってる
-
膠着状態。
まださとりさんを逃がすのに十分な時間を稼げたとは思えません。
でも男の人の銃口が僕を向いていて良かった。もしその先がさとりさんだったら僕はどうすることもできなかったから。
男「霊夢から離れろ、撃つぞ!」
それは無理です。僕が今銃口を霊夢さんから離せば僕はすぐにやられてさとりさんにその力の矛先が向くから。
撃たれてもいいという覚悟ならできています。本当ならすでに死んでいる僕だから。
この命、さとりさんに返すことが出来るのなら本望です。
そう考えても腕の震えは止まらず霊夢さんに向けている銃口がぶれます。
奥歯をきつく噛み、霊夢さんを睨みます。
霊夢さんは僕の眼を睨み返し、小さくため息をつきました。
-
どれだけ時間が経ったことでしょうか。
冷や汗が額から頬を伝い、顎で滴となって落ちました。
どこまで続くのでしょう。
さとりさんはもう無事に逃げたのでしょうか。
それを判断するための時間感覚が僕から抜け落ちてしまいどうしようもありませんでした。
「そこまでです!」
この緊張感溢れる空気を打ち破ったのは一人のまだ幼い雰囲気を持った凛々しい声でした。
その声と同時に水流が男の人を飲み込みました。
男「うおっ、くそっ、くそぉおおっ!!」
大人を吹き飛ばすほどの強い水流、いったい誰が放ったのかと霊夢さんも僕もその水流が来た方を見ました。
そこのいたのは男の子か女の子かの判断がつきにくい中性的な顔立ちと体型をした子供でした。
そして大きく目を引く紫色の傘。
憑かれ屋「助けに来ました、少年さん!」
現れたのは憑かれ屋さんでした。
-
現れた憑かれ屋さんを見て霊夢さんが少し目を見開きました。
霊夢「あんた」
憑かれ屋「あの時はどうも」
霊夢「なんで、人間の味方してるのよ。あんた」
憑かれ屋「………あぁ、なるほど」
憑かれ屋さんが紫色の傘を前に翳しました。
「当たり前じゃない」
霊夢さんのものでも、憑かれ屋さんの声でもない、誰かの声がしました。
霊夢「あんた妖怪でしょ、小傘。なのになんで人間の方へ」
小傘「私は妖怪。だけどその前に傘。必要としてくれる人がいるなら、私は人間を脅かす妖怪より、私は人間を守る傘になるのよ!」
その言葉が終わると傘から水が噴き出しました。それは霊夢さんに向かって一直線に伸びて行きましたが、半身を捻った霊夢さんにはかすりもしませんでした。
-
霊夢「あぁもう、男!」
男「なんだ!!」
霊夢「私がこいつをぶちのめすからあんたは少年をお願い!!」
男「分かった!!」
まだ噴き出している煙の中から男の人が飛び出してきました。
思わず拳銃の引き金を引きましたが、標準が甘く、弾は当たる事なく煙を少し散らしながら消えていきました。
少年「っ!」
次の弾を発射する頃には男の人は僕の目の前にいて、拳銃を握ったほうの僕の手首をつかんでいました。
男「………行くぞ、萃香!」
腕を捻られ、拳銃をもぎ取られました。そしてそのまま肩に担がれ地面に叩きつけられました。
地面に肩甲骨を強かに打ち付けられ掠れた悲鳴が飛び出します。
男「殺しはしない、暴れない限りな」
後頭部に固い金属の感触。
どうやら僕はここまでのようでした。
-
一瞬で思い出が頭の中を巡ります。
こいしさんに拾われた日から今までの楽しかった思い出。
あの頃にはもう戻れないけれど、人生最後に思い出せたのがこれで良かった。
もうさとりさんも逃げたでしょう。
僕は安心して目を閉じました。
-
なかなか終わりの時は来ませんでした。
後頭部に触れる銃口から震えが伝わります。
男「………くそ、お前はチルノを」
僕がさっき撃ちましたがチルノさんは妖精。すぐにまた現れるでしょう。
もしかしてこの人はそれを知らないのでしょうか。
僕がその事を教えて上げたくても、意志を伝える手段を持たない僕にはどうしようもできません。
男「お前がチルノを!!」
男の人の息が短く吸われ、体に力が入ったのが分かりました。
燐さん、お空さん、勇儀さん、パルスィさん、ヤマメさん、キスメさん。
今、ごめんなさいと言いに行きます。
なんでもしますからどうかさとりさんとこいしさんを怒らないでください。
もし許してもらえるなら、もう一度皆で楽しく
さとり「少年から銃をどけなさい」
少年「っ!」
-
最悪の事が起きました。
さとりさんが逃げていません。
さとりさんに助けられたことが悔しくて。
でもさとりさんが僕を助けてくれたことが嬉しくて。
どちらが理由か分かりませんが、僕は泣いてしまいました。
男「………逃げてなかったのか」
さとり「もう一度言います。少年から銃口をどけなさい」
男「断る」
さとり「私はさとり。トラウマを弄ぶ妖怪」
男「だからどうした。トラウマなんかで挫けちゃ萃香に示しがつかねぇんだよ」
強く銃口が僕に押し付けられます。
さとり「そうですか。しかし人間の心の脆さはあなたが思っているよりもずっと―――っ!!」
男「どうした、口だけか、さとりぃっ!!」
首に腕を回され、盾にするように無理やり立たされました。
首が閉まり、反射的に吐き気がこみ上げました。
-
さとり「あなた」
男「なんだ」
さとり「可哀想ね」
男「あぁそうだよ、可哀想だよ。可哀想じゃない奴なんていねぇよ、ここには」
さとり「本当に、可哀想」
男「………ちっ」
僕の体はさとりさんに向かって突き飛ばされました。
僕の体はさとりさんの胸に収まりました。
さとり「可哀想な木偶人形」
さとりさんが僕を抱きしめながらそう言いました。
-
主人公が実は式神で過酷な運命を背負わされてる…しかも時間巻き戻すループもの…
なんかten+crossに似たような話があったな
-
〜俯瞰視点〜
小傘は驚いていた。
普段ならば霊夢を相手にしても、数分持たず倒されてしまうはず。
しかし自分も憑かれ屋も地に伏せることなく、互角とは言えないまでも良い勝負を繰り広げている。
馴染む、非常に憑かれ屋に自分が馴染む。
初めて人間の役に立ったのが傘としてではなく武器としてだが、そんなことが些細な事に思えるほど、小傘の心は満ち足りていた。
小傘「ごめんだけど、帰ってもらうよ、霊夢!」
水を圧縮して吐き出す。いつもの弾幕よりも強く速く。
殺すまではいかないけれど、戦闘不能にさせるぐらいの力を込めて打ち出したが、霊夢はそれをあっさり避ける。
本当に霊夢は人間なのだろうか。
そんな疑問が小傘と憑かれ屋の中に浮かぶ。
攻撃をする前に避けているほどの先見の眼。
薄ら恐ろしいが、小傘も憑かれ屋も負ける気は微塵もなかった。
-
霊夢は驚いていた。
普段ならば小傘程度の妖怪が力を貸したところで数分程度で倒せてしまうはず。
しかし、小傘も憑かれ屋も地に伏せることなく、諦めることもなく立ち向かってくる。
おかしい、記憶の中の小傘はこんなに強くはない。
霊夢は勢いよく飛んでくる水流を避けながら陰陽玉を取り出し構えた。
霊夢「どいつもこいつも、なんで私を困らせるのよ!!」
陰陽玉に力を込める。陰陽玉は力を飲み込みさらに強い力を発する。
符は今の小傘に届かない。いくら力を込めても紙と水では相性が悪い。投げた符は全て水を吸って地面に落ちるか、湿気て破れてしまった。
封魔針では時間がかかり過ぎる。だから一撃必殺。
霊夢「今すぐ、消えなさい!!」
小傘を無力化するには過剰すぎるほどの力を込めた。
しかし霊夢はいつもより強い小傘達に焦っていた。
陰陽玉を放つ。当たれば必殺。避けるのも難しいそれを見て憑かれ屋は笑った。
憑かれ屋『一本足ピッチャー返し!』
まっすぐ飛んでくる陰陽玉を、憑かれ屋は小傘をバッドのように持ち直し、霊夢に向かって打ち返した。
-
舞ってる
-
霊夢「うそ、でしょっ!?」
自分にまっすぐ返ってくる陰陽玉。
それは小傘の力を大きく超える霊夢を倒すのには十分な一撃。
憑かれ屋「倒れろぉおおおおおおっ!!」
霊夢「あぁもう。あんたなんかに!!」
その一撃は霊夢の体を通り抜け、大きく大地を抉り、大きく砂煙をあげた。
霊夢「コレ、結構疲れるのよ、速攻で決めるわよ。あんたなんかにゃ勿体無いけど、ねっ!」
霊夢の袖から出てくる無数の札。それは憑かれ屋を二重に囲んだ。
霊夢「大人しく、大人しくなりなさい!!」
小傘「霊夢、あちきは人間を守る、傘なんだぁっ!!」
憑かれ屋「小傘さんっ!?」
傘の状態だった小傘が人型の姿に戻り、憑かれ屋を抱きしめた。
その小さな背中が襲い掛かる符によってどんどん傷ついていく。
その青い服と髪は赤く汚れていく。
-
憑かれ屋「小傘さんっ。小傘さん!!」
小傘「わたし、夢、だったんだよ。こんなあたいが、誰かを守る傘になれることを」
小傘「雨を、槍でもいい、鉄砲の弾だってなんだって、防いでやるっ!!」
小傘「傘として生まれたからには傘として使われたいって、ずっと思ってた、んだぁっ!」
その叫びを最後に小傘は憑かれ屋に覆いかぶさるようにして、事切れた。
霊夢「………本当、気分悪い」
-
憑かれ屋「よくも、よくも小傘さんを!!」
憑かれ屋が小傘を抱きしめながら立ち上がる。
憑かれ屋「行きますよ、小傘さん」
憑かれ屋が傘を掴んだ。
霊夢「せっかく小傘に助けてもらったのに、それを無駄にするの?」
憑かれ屋「だって、だってだってだって!! ここで逃げたら僕は、僕はずっと、ずっとっ!!」
憑かれ屋が駆け出す。もうすでに意味のない傘を持って。
槍のように突き出されたその傘は霊夢を貫通し、だけれど霊夢には何の意味もなく。
霊夢「馬鹿ね、本当」
霊夢が針を憑かれ屋の首に刺した。畳針ほどの太さのあるそれは憑かれ屋の首を容易く貫き、それに伴い切れた血管から溢れる血が憑かれ屋の口から溢れた。
-
憑かれ屋「こぽっ」
吐き出された血は霊夢にも霊夢の服にも張り付くことなく地面に吸い込まれていった。
霊夢「許さないで。貴方は何も悪くない」
針を抜くと大動脈から噴水のように血が噴き出した。
憑かれ屋の体が地面に落ちるよりも早く踵を返した霊夢は強く唇を噛んだ。
血が霊夢の唇を伝わって滴となって一滴、地面に落ちた。
-
〜男視点〜
引き金を引くことはできない。
だからこれは脅迫にしかならず、実際の力にはならない。
形だけの虚勢。
それを見抜かれてしまっている。
だから拳銃をしまって拳を構えた。
心を読める相手にどこまで戦えるのかは分からない。
だけどやらなければいけない。
男「行くぞ、さとり、少年」
相手の体は俺よりもずっと小さい。しかし一人は化け物、一人は銃を持っている。しかもチルノを一発で倒すぐらいの。
死にたくない。死にたくはない。
だけどここで逃げちゃ
男「守れるもんも守れねぇよ、なぁ! 萃香ぁっ!!」
一息で踏み込む。数日前の自分とは思えないほどの踏み込み。
萃香のおかげで俺は変わった。容赦、油断をしてはいけない。拳は相手の事を理解しては振るうことができないってことを学んだ。
-
さとり「右こぶしを囮に、左膝」
攻撃は軽く躱された。
少年「さとりさん!!」
少年が地面に落ちている銃を拾おうとしていた。俺はそれを蹴って遠くへ飛ばし、少年に向かって右足で蹴りを
さとり「危ないっ、少年!」
さとりの袖の中から飛び出した茨が少年を引っ張った。俺の蹴りはかすりもせず空をきった。
男「ちっ。どうやって勝てって言うんだよ」
かすりもしない。さとりよりも速く動くことはできない。
萃香の言った自分に有利な戦場を作り出すこともできない。
しかし諦めたら負けだろう。
だから諦められない。
再び大きくさとりに向かって踏み出す。
さとり「だから、貴方は私には届かない」
地面から湧き出た茨。
それが俺の足に絡みついて、俺を地面に引きづり倒した。
-
さとり「少年、こっち、見ないでちょうだい」
さとりが俺に近づく。
なんとか立ち上がろうともがく腕も茨で地面に縫い付けられた。
殺される。
男「………すまん、ぬえ………っ」
心残りはいくつもある。
死を前にすると、押さえていた気持ちが溢れだした。
さとり「あなたは、本当にぬえが好き、なのね」
男「あぁ、そうだよ、俺は、俺はぬえが大好きだよっ!」
だから戦っているんだよ。
大好きな皆を守るために。
さとり「ごめんなさい。私も大切な人がいるから」
さとりの手が俺に触れる。
さとり「………さよなら」
-
age
-
誰かこうまかんの
-
誰か紅魔館のifストーリーのリンク下さい。
探しても見つからないので、
-
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1398145621/
-
どっちのスレもエタったみたいだなと思ってたら数レス投入
ぬえさん大丈夫ですか?
-
この>>1って 男「幻想郷で就職活動」とか書いていた人?
それとも他の人が設定借りて勝手に書いているだけ?
-
>>800
あざす
-
>>802
多分同じ人だと思う
-
>>802
同じ人ですよ
-
「やめろぉっ!!」
さとりの手が俺に触れた直後、さとりの背後からそんな声が聞こえた。
とっさに振り向くさとりだったが一瞬遅かったらしい、
そのわき腹の服が裂け、白い肌に一筋の傷を残した。
蓬莱「そこまでだ」
さとり「あなたは―――」
男「蓬莱!?」
蓬莱「アリスの命令だ、お前を助けるわけじゃない」
さとり「っ!」
蓬莱の槍が間髪なくさとりに突き出される。
男「危ないっ!」
蓬莱「死なないなら大丈夫だ」
さとりに槍を突き出すという事は俺にもあたる可能性がある。この蓬莱に至ってはわざとではないのだろうか。
慌てて飛びのくと蓬莱は俺を横目で見て、少し口元を歪ませた。
-
何と一レスだけ投稿……だと……
-
最後まで頑張ってチョ
-
忙しいんかねぇ
-
来ないな..,
-
まだ俺らは待つぞい
-
シルバーウィークでも投稿できないとは...
-
さとり「………不利、ですね」
蓬莱「なんだ? 弱いものいじめしかできないのか? たしかにあんたはそんな顔をしてるな」
さとり「いいえ。心のない偽物二人相手するのは、心底疲れるの、でっ!」
蓬莱に向かって地面から茨が生える。
その隙をついて俺は無理やり地面から立ち上がった。
茨が服と皮膚を裂く。痛いが、死ぬほどではない。
男「お返し、だっ」
起き上がる力をそのまま使ってさとりの腹部に拳で一撃入れる。
さとり「うっ」
男「効いた!?」
予想外だった。
人間ならともかく妖怪に効果があるとは思っていなかった。俺が距離を稼ぐためだったんだが。
しかし追撃はせずに背を向けず急いで逃げる。
-
少年「よくもさとりさんをっ!」
少年の声。
見ると俺に向かって銃を構えていた。彼我の距離はほんの数メートル。俺より、引き金の方が速い。
威力はさっきのチルノで証明済み。当たればただでは
男「てめぇっ!」
さっきの怒りが再び噴出する。
だがそれはさっきのような勢いの良い怒りではなく、
ねっとりと、芯の底から熱くなるようなそんな怒り。
それは殺意に近い。
チルノが殺されたから復讐しないといけない。
そんな考えが俺の体を乗っ取った。
-
パンッ
腹が痛い。腹が痛い。腹が痛い。腹が痛いっ。腹が、痛いっ!
どうやら俺は撃たれたらしい。神経をぐちゃぐちゃにされたかのような痛み。
男「あぁあああぁああっ!!」
痛みを叫びで誤魔化し、拳を振るう。
少年「あがっ」
少年の悲鳴。地面に倒れ込んだ少年の手を俺は思いっきり踏んだ。
さとり「少年っ!」
蓬莱「おっと、あんたの相手はこっちだ」
さとり「っ!」
どうやら蓬莱が相手をしてくれているらしい。だから俺は容赦なく、この拳を
男「おらぁあっ!!」
振り下ろす。
-
何度も少年の手を踏んで拳銃をもぎ取って、蹴って遠くへ滑らせる。
少年「あっ、ああぁっ!」
さとり「少年っ! しょうねんっ!!」
蓬莱「余所見なんて余裕ねっ!」
男「なぁ………痛いか、痛いか!?」
少年「あ、あぁああああ」
男「痛いだろ? なぁ、痛いだろ!?」
少年に跨る。俺よりもずっと小さな体。
だけど容赦はしない。
男「皆痛いんだ。皆痛かったんだよ」
男「皆皆皆、痛いのに! 辛いのに!!」
振り上げる。
振り下ろす。
少年の鼻の骨が折れたのが振動で分かった。
でもだからどうした。
-
お前はまだ楽に死ねる。
俺にはできないから楽に殺してやる。
お前を楽に
「それ以上やると、貴方殺人犯よ?」
男「あ?」
アリス「ずいぶん濁った眼」
アリスがいた。よくよく考えれば蓬莱がいるのだからそりゃあアリスもいるだろう。
男「なんだよ、これ、戦争だろ? 何が悪い!」
アリス「別に? 別にあなたが人を殺そうが、その子が死のうが私は知ったこっちゃないわよ」
男「なら、黙っといてくれ」
アリス「あら、そう」
アリスが近くにあった樽に座った。足を組んで俺をじっと見ている。
アリス「どうしたの? さっさと殺しなさいよ。殴るより、首絞める方が簡単よ。体重乗せて花を手折るように」
男「分かってる、わかってる、わかってるって!!」
アリス「貴方、ずいぶん情緒不安定ね。それに」
-
アリス「臆病者」
少年「あ―――っ」
温かい。
俺の体を温かいものが包む。
それは温いシャワーを浴びたときのようだった。
さとり「しょうねぇええんんんんんっ!!」
少年「さとり、さん」
さとり「あ、あぁあぁつ、しょうねん、少年! 駄目、駄目、嘘、嘘よ、こんな」
少年「さとり、さぁ、、ん」」
アリス「その子、喋れないんじゃなかった? 奇跡かしらね。なんて空気を読まない、奇跡」
男「あ、あ、あぁあ、あああ」
アリス「花を手折るとして、子供と大人が負う責任は一緒? いや、大人は知ってるからこそ、その責任を負わなければいけない」
アリス「貴方、人殺し向いてないわよ? 今貴方が抱いた気持ちが貴方から消えない限り」
-
アリスが少年を殺した。
座ったまま。何気ない行動で。
少年の命を奪った。
アリス「上海、蓬莱を手伝ってあげて」
上海「はい」
蓬莱「いや、いいよ、こいつはもう」
さとり「しょうねん………少年、しょうね、ん」
蓬莱「死んでるから」
さとり「あ、あぁ、しょうね、ん、しょうねん、しょうねん、しょう、ねんしょうね、んしょう、ねん、しょう」
覚悟なんて脆い。
やった後を知らないから。
人は覚悟を決めて、行動を起こし、そして後悔する。
怒りは案外弱くて冷えやすい。
男「俺は」
-
〜俯瞰視点〜
こいし「あ、あーあ」
緑の髪。濁り切ったこの空気のなかに存在する無邪気な二つの瞳。
古明地 こいしは屋根の上から戦いを見守っていた。
大好きな少年が死んで、大好きな姉のさとりが死んだ所も見守っていた。
しかしこいしの瞳には一滴の涙も浮かばなかった。
こいし「あーあ。少年も、お姉ちゃんも、死んじゃったー」
ただ残念そうにため息をついて
こいし「私も死のっと」
自分の胸にナイフを突きたてた。
-
〜男視点〜
霊夢「何ぼーっとしてんのよ」
男「れい、む?」
気が付くと霊夢がいた。
蓬莱「霊夢。こいつ駄目だ、役に立たない」
霊夢「んなこと知ってるわよ」
男「あ、霊夢。チルノが、チルノが」
霊夢「チルノが、どうしたのよ」
男「死んだ、チルノが死んだ」
霊夢「はい? チルノが死んだ? 何言ってんのよ、妖精はやられても一回休みですぐにまた現れるわよ」
男「あ」
そうだった。そういえばそうだったと脳の奥に存在する記憶を思い出す。
妖精は死んでも再び生き返る。
そのことを俺はすっかり忘れていて、頭に血が上って。
男「俺は、人を、殺そうと」
-
アリス「ねぇ、霊夢。あなたって、なんで人を殺すの?」
霊夢「は? 頭でもおかしくなったの?あんた」
アリス「私じゃないわよ。男が人を殺す理由が見つからないっていって」
霊夢「ばかばかしい」
霊夢はそう俺を一笑して、俺に目線を合わせた。
霊夢「殺さないといけないからよ」
男「そんな、理由?」
霊夢「私は聖なんかと違って、正義がどうのこうのなんて考え持ってないわよ。ただ、私が殺さないといけない存在がいるなら。私はそいつを殺す」
アリス「シンプルね」
霊夢「難しく考えてちゃ、博麗の巫女なんてできないわよ」
男「俺は、俺は」
霊夢「あんたに人殺しなんて期待しちゃいないわよ。もちろん妖怪殺しも。多分萃香も期待してないでしょうね」
霊夢「アンタはただの私のサポート。難しく考えなくてもいいの。そういうことは全部私がやるから」
そう言って霊夢は俺の頭を数度軽く叩いた。
霊夢「任せなさいよ、私に。あんたはただ死なない。それだけでいいの」
-
アリス「あら、優しくなったわね、霊夢」
霊夢「別に。ただここで人を殺す事の意味とかうだうだ考えられても面倒なだけよ。邪魔邪魔」
男「………ありがとう、霊夢」
霊夢「感謝なんてしなくていいわよ。あんたは私に付いて来る。それだけでいいの」
霊夢「あんたはあんたがしなくちゃいけない事をしなさい」
アリス「貴方は私達の保険。いや、霊夢の保険。主人公の特権、コンティニューの正体」
霊夢「?」
アリス「気にしないで。なんでもないから」
霊夢「なんでもないって」
「『あははははははははははははははは!!』」
「みぃつけた」
「………霊夢、兄貴、アリス」
霊夢「!」
アリス「来たわよ、霊夢」
霊夢「分かってる!!」
-
来てたー!
-
魔理沙が来たか…
-
それはいきなりだった。
瞬きもしなかったのにいつの間にか俺たちの目の前に三人現れていた。
一人は霊夢と同じような巫女服に、魔理沙と同じような金髪。
一人はさとりのような冷めた目をして、少女のように無垢な笑み。
一人は俺達を裏切った仲間で、俺の大切な妹。
霊夢「ほら、何ぼさっとしてるの!」
男「あ、あぁ」
霊夢に手を引っ張られ立ち上がる。
麟「ねぇ、霊夢。迎えに来たわよ」
と冴月 麟が
ことり「降伏しなさい。今なら許してあげますから」『絶対殺す』
と古明地 ことりが
魔理沙「兄貴、逃げてくれ。お願いだから」
と魔理沙が
-
アリス「五対三、男は戦闘じゃ役に立たないから四対三、ギリギリかしら」
霊夢「………私は冴月 麟を相手する」
アリス「なら私は古明地 ことりを。あちらも私をお望みみたいだし」
男「俺は、魔理沙を説得する」
上海「それだと五対二ですね!」
蓬莱「いや、魔理沙は仲間にならない」
上海「なんで、ですか?」
蓬莱「知らないよ。でも分かるんだよ。魔理沙は絶対折れない。あいつはなにかを隠している」
男「隠し事、魔理沙が?」
霊夢「無駄話は終わり。男、あんたは魔理沙をお願い」
男「分かった」
-
霊夢「………私、アンタの事知らないんだけど」
麟「私は貴方の事を知ってるの」
霊夢「有名人の自覚はあるわ」
麟「私はあなたのことは誰よりも詳しいつもりよ。ずっと見てたもの」
霊夢「趣味悪いわね、ずっと見てただなんて」
麟「うん。でもそれは今日でおしまい。さぁ、遊びましょう霊夢」
麟「遊び終わったら私は貴方を助けてあげる」
麟「霊夢を幻想郷の被害者になんて、私は絶対させてあげない!!」
-
アリス「貴方が私にさっきから殺意をぶつけてるのは」
ことり「跪いて、後悔したら許してあげます。アリス・マーガトロイド」『お前は絶対に殺す』
アリス「貴方、腹芸は苦手みたいね」
ことり「『えぇ、だから私は貴方を殺すわ』」
アリス「理由、は聞くまでもないわね」
ことり「私はお前を殺して」『妖怪を殺して』
ことり「『もう悲しいことなんて、無い世界にするの』」
ことり「『これは私の復讐劇。だからあなたは大人しく私に殺されなさい!!」』
-
男「魔理沙」
魔理沙「………兄貴」
男「戻ってこないか?」
魔理沙「それは、無理だ。もう、無理だ」
男「魔理沙は俺が守るから。誰も魔理沙を傷つけさせない」
魔理沙「やめてくれ、兄貴。私に優しくしないでくれ………」
男「俺はお前の兄だ、兄のつもりなんだ、だから」
魔理沙「私は決めたんだ、大切なものを守るために強くなるって。だから私は少女のままじゃいられないんだよ!」
魔理沙「勝負だ男! 本当に守りたいもののために戦ってみせろ!」
-
お、終盤近い…?wktk
-
期待して待ってる
-
あくしろよ
-
まだか!?
-
待ってる
-
そうして一ヶ月が過ぎた……
-
待ってるから…
-
〜俯瞰視点〜
それは狂気を纏った純真な声だった。
耳から伝わる声は、純白の羽を纏った天使のようで。
脳に伝わる音は、地獄の亡者のような重苦しい怨嗟の声。
二つの音がアリスの脳を揺らしたが、アリスは挫けることなく、両手の指、十本を忙しなく動かした。
ことり「『貴方の心の中なんて私には丸見えなのよ』」
人形が振るう、剣も、槍も。
人形が放つ爆弾も、矢も。
全て行動が起こる前に回避されている。修正をしようとしてもその修正のさらに先にことりはいた。
アリス「だとしても、私は負けないわ」
アリスが右手首を捻る。するとことりの周囲の人形が渦を巻くようにしてことりに近づいた。
人形とアリスを繋ぐ糸がことりを巻き込み捕縛しようとする。それをことりは間一髪で避け、弾幕による反撃を行った。
ハートの形をした弾幕に、茨が巻き付いている。ハートは弾けると周囲に茨を撒き散らした。
激しく叩きつけられた茨の衝撃が石粉やプラスチックでできた人形の肌を砕く。
ボロボロと地面に散っていく腕や足や眼球は、傍目から見れば小さな殺戮だった。
-
こころなきものはそれにも恐れず、進行を続ける。
統率された無機質な動きでことりの動きを徐々に縛っていく。
それはまるで遅効性の毒のようであった。
アリス「降参するなら今の内よ」
ことり「『馬鹿なことを!』」
アリス「あら、そう」
アリスが左手を握りしめると、槍を持った人形十体程度がことりに向かい突撃した。
隙間を縫ってことりがそれを避けるとそこに来たのは小さな矢の雨。
体を捻ってなんとか避けるとそこには何も持っていない。可愛らしい人形。
人形が微笑むと、次の瞬間にそれは爆発へと形を変えた。
爆発の中心へと槍を、矢を、爆弾を放ち続ける。
土煙が薄くなってくるころには地面は針の山のようになっていた。
その中心にことりの姿を残して。
-
その肢体はピクリとも動かない。
流血だけが、地面を這っていた。
アリス「こんなものなの?」
アリス「ここまでの事をした貴方はこんなものだったのね」
アリス「戦いはタクティクス。信念や怨念じゃ、戦いに影響はしないのよ」
ことり「『そうかしら?』」
世界が弾けて消えた。
-
アリス「………かぽっ」
アリスが口から大量の血を吐く。
消えた世界が再構築されたときに見たものは、頬を血に濡らすことりの顔と、胸をえぐる小さな腕だった。
ことり「『おはよう、良い夢は見れたかしら』」
アリス「なに、が」
ことり「『あら、まだ喋れるのね』」
どくどくと鼓動をし続ける心臓をことりが優しく握る。
それだけで形容しがたい痛みがアリスを襲った。
蓬莱「アリスをっ、離せっ」
ことり「『動くと、これ、握りつぶすわよ?』」
助けようとした蓬莱の動きを言葉で制す。
上海と蓬莱の二人は狼狽えた様子でアリスとことりを見ることしかできなかった。
ことり「『魔法使いって、結構体強いみたいだけど、どこまでやれば死ぬのかしらね』」
何度もことりがアリスの心臓を握る。
それだけでアリスの体は震え、痛みによって自由を奪われた。
-
ことり「『大丈夫、私の心よりは痛くない』」
ことりがにっこり笑って小さなバッグを取り出す。
地面から茨が生え、アリスの四肢を縛ると、ゆっくりと地面に寝かせた。
痛みで過呼吸になっているアリスはそれに抵抗することが出来ず、人形のようになされるがままだった。
ことり「『まずは、これ』」
ことりは上海と蓬莱を、流し目で制すとアリスの傍らに座り込んで、おままごとをするがごとくバッグからそれを取り出した。
それは細い細い糸。髪のように細く、落としてしまっては探すのが困難になりそうなほど細いそれをことりはアリスの眼球の中心に狙いを定めて突き刺した。
アリス「―――っふっ!」
アリスの体が震える。それを両手を合わせてことりがよろこんだ。
ことり「これって痛いのかしら? 痛いのかしら?」『………答えろよっ!』
ことりがもう一方の目にも同じ事をする。
蓬莱と上海はそれを見たくなくて俯いていた。
しかし人形は泣けない。
二人の作り物の慟哭が辺りに響いた。
-
霊夢「………なんなの、あんた」
もう五回頭を砕いた。
ここまで来て今までのように容赦をすることはできない。
もうごっこで済む時間はとうの昔に終わっていたのだ。
しかしそこまでしても倒れない。
甘ったるいほどの愛の言葉を吐いて霊夢を抱きしめるが如く、攻撃してくる。
殺意を持った攻撃を笑顔で受けて、霊夢に対する思慮を感じる柔らかい攻撃が霊夢を包む。
今までに戦った事のない狂気の敵に霊夢は若干の恐怖を感じていた。
麟「ねぇ、ねぇ、諦めて霊夢」
六回目の頭を砕く。しかしそれは砕いた瞬間泥のように崩れ、またいつの間にか冴月 麟はそこに立っている。
霊夢「手品の種。教えてくれない?」
麟「んー。私と遊んでくれるならいいわよ」
霊夢「じゃあ、いらない」
麟「いけずな事言うわねぇ」
-
霊夢「私を助ける助けるって、何から助けるってのよ」
麟の放つ、花の形を伴った弾幕を紙一重で避けつつ、麟に肉薄する。
麟「それは幻想郷から」
帰ってくる返事は変わらない。
霊夢「幻想郷からって何が私を縛ってるっていうのよ」
麟「貴方は幻想郷に騙されているのよ」
抱き付いて来ようとした麟の体を蹴り飛ばす。地面に滑りながらも麟は霊夢に微笑みかけていた。
霊夢「幻想郷に騙されてるってどういうことよ」
麟「あぁ、貴方はまだ気づいていないのねっ。すぐに助けてあげるわ、霊夢。だって私達親友でしょう?」
霊夢「私はあんたなんか知らないっ」
麟に向かって針を放つ。麟の心臓の位置に互い無く突き刺さった瞬間、風船が弾けるように、泥を撒き散らして消えた。
そしてまた元通り。
霊夢「いつまで続けるのこれ」
麟「貴方が諦めるまで」
そしてまた再び繰り返される。
-
〜男視点〜
曇った魔理沙の表情からは依然の魔理沙を伺うことはできない。
魔理沙の放つ弾幕を何とか避けながら俺は魔理沙に声をかけ続けた。
もしかしたら、もしかするとこれは洗脳されているだけであって。
こうやって話かけ続けると、元の魔理沙に戻ってきてくれるんじゃないかと。
そう甘い考えを抱いていた。
魔理沙「どうしたっ。男っ」
宙を飛ぶ魔理沙に攻撃するための有効な手段はない。
石を拾って投げても、当たりはしない。
この戦い、俺の負けなのは確実的だった。
-
魔理沙が語った覚悟を邪魔するほどの信念を、魔理沙を下すほどの信念を今の俺は見出す事は出来ず俺はただ魔理沙の瞳から逃げ回っていた。
魔理沙「男。お前の守りたいものってのは、その覚悟ってのはそんなもんなのかっ」
男「守りたいものだって、あるっ。その中にお前だって入っているんだっ」
魔理沙の動きが止まる。空中から魔理沙は俺をまっすぐな瞳で見ていた。
魔理沙「………守りたいものは一つにしろ。私はそうした」
男「………」
魔理沙「見てみろ。私もお前も手の大きさはそんなに変わらない」
魔理沙「こんなんじゃ、重い荷物は背負えねぇよ」
魔理沙が懐に手を伸ばす。魔理沙は六角形の金色。ミニ八卦路を俺に向けた。
魔理沙「男は何を捨てる? 私はお前を」
男「………」
魔理沙「大人になってくれよ。そんな目で私を見ないでくれ」
-
絶体絶命。
右に行こうと左に行こうと、進もうが戻ろうが。
一呼吸をするより早く魔理沙は光の奔流を放つ。
魔理沙「まだ、私を捨てられないのか?」
男「………俺は、お前を捨てられないよ」
魔理沙「………」
男「だって、大切な妹だから。道を違うなら拳骨してでも引き戻してやるよ」
魔理沙「………馬鹿野郎」
魔理沙が俯いた。しかしすぐに顔を上げ、きっと俺を睨みつけた。
魔理沙「じゃあな」
あぁ、終わってしまう。
だけど、俺はどうしようもなく我儘で。魔理沙を切り捨てることはできなかった。
男「じゃあな、魔理沙。霊夢を守ってやれよ」
魔理沙「………おう」
-
久々の更新
-
「―――だめぅっ」
俺の死という終わり。その構図を崩したのは小さい黒い影だった。
魔理沙の後ろから飛びかかったそいつは、俺がいつも見ていた姿で
子供のような無邪気な怒りを魔理沙にぶつけていた。
魔理沙「っお前」
ぬえ「だめっ、だめぅっ」
舌足らずな言葉を吐きながらぬえがほうきから魔理沙を引きづりおろす。数メートルの自由落下の後、魔理沙は強かに背を地面に叩きつけた。
男「………ぬえ?」
ぬえ「たすける、おとこ、たすけぅ」
ぬえは言葉を多少取り戻したらしいが、幼児退行は戻っていない。
幼児のような簡単な言葉の羅列で感情を示していた。
-
魔理沙「………来たじゃねぇか。男、なっ!」
跨るぬえを魔理沙が蹴り飛ばす。地面に転がったミニ八卦路を拾おうとしたので、その前に魔理沙を制した。
魔理沙「捨てるか? 私を」
男「いいや。手が二つ増えた。背負うには十分だろ?」
魔理沙「………誰を守る気だ」
男「お前と、ぬえ」
男「魔理沙は是非とも霊夢を助けてくれ」
魔理沙「あぁ、そうかい。でもそれはダメなんだ」
魔理沙「それじゃあ霊夢は助けられねぇんだよ」
魔理沙が箒を逆手で掴んで振るう。
ぬえと俺は半歩下がってをそれを躱し、魔理沙の一挙手一投足に注目した。
ミニ八卦路を蹴って遠くに転がし、萃香のあの動きを頭の中で思い浮かべる。
男「初めての兄妹喧嘩だな」
魔理沙「おいおい、にしては二対一ってのは卑怯じゃないか?」
男「俺もそう思う」
-
期待
-
おうちかえぅ!
-
きたー!
-
来てたのか
-
まってる
-
いつまでも、待っているぞ
-
いつまでも、待っているぞ
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いつまでも待つぜ
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待ってるから
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まだ待つ
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期待している
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男「さぁ、来いよ」
魔理沙「威勢がいいな。格好だけは一人前だ」
ぬえ「がるるるるるっ」
魔理沙の構えは掃う方をこちらへ向け槍のように。
対する俺は萃香と同じ半身で魔理沙に向かって構えた。
魔理沙「フッ!」
一息に魔理沙が箒を突き出す。それを前進しながら避ける。箒が右腕を掠めたが特に支障はない。
前進の勢いで右手のひらを魔理沙の左肩にあてる。そして押し倒すようにして足を刈った。
魔理沙「嘘だろっ」
地面に倒れる寸でで魔理沙が体を捻って転がった。しかし態勢は圧倒的にこっちの有利。
ぬえ「ううぅっ!」
それをぬえが追撃する。俺とは違う威力を伴った一撃。それは大地と魔理沙のわき腹を抉った。
-
男「ぬえ! 魔理沙を殺すなよ!」
ぬえ「ごめんぅ!」
魔理沙「だから甘いんだよっ」
ぬえの意識がこっちにそれた瞬間を狙い魔理沙がぬえの顎に蹴りを入れる。ぬえの体は大きくのけぞったが倒れることなく。そのまま魔理沙に対して頭突きを行った。
魔理沙「ちっ。まるで獣だなぁっ」
男「無理するなよ、ぬえ」
ぬえ「「むりしてないっ」
魔理沙「っ!」
男「おっと」
魔理沙が隙をついて地面に転がっているミニ八卦炉を取りに行こうとしたが、低い姿勢で駆けだした魔理沙の背中を押して地面に倒れ込ませる。
魔理沙の体は土煙を上げ乍ら少しの距離を滑って行った。
魔理沙「ちくしょうっ」
男「終わりだな。魔理沙」
魔理沙「終わりな、もんか」
魔理沙「なぁ!」
-
「『その通りよ』」
ぬえ「あうっ」
男「ぬえっ!」
ことり「あらあら、ごめんなさいね」『死ね、死ね、死ねっ!』
さとりによく似た少女が笑いながらぬえの背中に太い針を突き刺している。その口は笑いながらも目は覚めていて、優し気な声に被って怨嗟の声が脳を直接揺さぶった。
魔理沙「二体二」
ことり「いえ、二体一よ、たかだか木偶人形が相手になるかしら」『すぐに殺す、今殺す』
男「うるさい精神異常者が」
そう吐き捨てるも動けない。ぬえの背中に刺さっている針をいやらしくぐりぐりと手のひらで押し込みながらことりが笑っているからだ。
ことり「『うふふ、うふふふふ』」
ことり「『もうすぐ私の夢がかなうのですよ、祝ってください』」
ことり「『ねっ!』」
ぬえ「―――っ!」
ぬえの体がガクガクと震える。ぬえの胸元から血がしたたり落ちた。
-
ことり「『もうすぐ消えるのよ、汚らわしい妖怪が』」
男「何言ってるんだよ。お前だって妖怪だろ」
ことり「『私は汚くないですもの。生きてていい妖怪は私とさとりと、こいし』」
ことり「貴方が殺したけれど」『お前等のせいでぇえぇえええっ!!』
『お前らが、お前らのせいで死んだぁああぁあっ、さとりが死んだぁあああぁあっ、私の可愛いさとりが、こいしが死んだぁああぁっ、死ね、死ねぇっ、あぁああっ、死ねぇえぇっ、さとりがぁああっ、こいしがぁあっ、もういなぁあいぁい、もうもどってこなぁあっぁあぃ、だからしねぇようぅ、しんでしまえよぅおおぅ!!』
男「………知るかよ」
もう戻ってこない命なら一杯見た。
戦う事すら許されない命だっていたのに。
全ての元凶が怒り狂っている。自分が招いた災いを呪い叫んでいる。
その姿は偉く滑稽だった。
-
魔理沙「………後戻りはできないぞ」
ことり「後戻りなんてさせないわ」『絶対に逃がさない』
魔理沙「今度こそ本当に私が霊夢を守るために。私はその対価として男、お前を支払う」
男「殺す覚悟なんてもの、俺にはできないと思うんだよ、なぁ、魔理沙。俺が人を殺せるような奴に見えるか?」
魔理沙「? ………お前には無理だよ」
男「そうなんだよ。でもなぁ魔理沙、今分かったことがある」
男「殺すのに覚悟なんていらないんだよ。ただ必要に迫られて殺すんだ。霊夢が言っていたことは楽しい」
男「そういうことなんだ」
ことり「あらあら、恐怖で頭がおかしくなったのかしら」『死ぬのはお前なのに!』
男「俺は自分の意見がころころ変わって嫌になるなぁ。意志薄弱で優柔不断。でもいらないんだよ、自分の意見なんてさ」
男「ごめん魔理沙。俺はお前を捨てるよ」
魔理沙「………おう!」
-
魔理沙「………後戻りはできないぞ」
ことり「後戻りなんてさせないわ」『絶対に逃がさない』
魔理沙「今度こそ本当に私が霊夢を守るために。私はその対価として男、お前を支払う」
男「殺す覚悟なんてもの、俺にはできないと思うんだよ、なぁ、魔理沙。俺が人を殺せるような奴に見えるか?」
魔理沙「? ………お前には無理だよ」
男「そうなんだよ。でもなぁ魔理沙、今分かったことがある」
男「殺すのに覚悟なんていらないんだよ。ただ必要に迫られて殺すんだ。霊夢が言っていたことは正しい」
男「そういうことなんだ」
ことり「あらあら、恐怖で頭がおかしくなったのかしら」『死ぬのはお前なのに!』
男「俺は自分の意見がころころ変わって嫌になるなぁ。意志薄弱で優柔不断。でもいらないんだよ、自分の意見なんてさ」
男「ごめん魔理沙。俺はお前を捨てるよ」
魔理沙「………おう!」
-
なぜか頭がすうっと冷えた。ぬえの血が流れたからだろうか。
気が付けば俺は初めからそうであったかのように冷たい心で魔理沙を眺めていた。
俺に何ができるだろうか。ぬえを助け、魔理沙とことりを倒す。いやそれは無理だから殺す。
到底不可能な事に思えてくる。だけどそれは違うとなぜか俺は思った。
無謀でも勇気でもない。
ただその考えがひどくしっくりきた。
必要だからそうする。
それだけだった。
-
ぬえ「がうっ!」
ぬえが自分を刺したことりに反撃をした瞬間に距離を詰める。
ことり「あぁ、素直に死んでくれないのですねっ」『ならいたぶって殺すしかないじゃないっ』
地面から生える茨、その棘に肉を抉られながらも進む。
ことり「『木偶人形程度が生意気に!』」
痛み、痛覚は意識を刈り取ろうと訴えてくる。しかしなぜかどんどん頭が冴えわたる。命の危機のためかなんてことはどうでもいい。ただ戦うには都合がいい。
妖怪といっても身長は俺の胸辺りまでしかない。なら、どれだけ力が強いところで
男「抑え込む手段はいくらでもあるよな」
人間と同じ体をしているからこそ出来る関節技。解こうとすればするほど痛みが強く帰ってくるうえに行動の始点を潰すために対して強い力で抵抗が出来ない。
油断をしていたのかことりの肩を簡単にきめることができた。
ことり「『腕が使えないところでなんの問題があるのでしょうか!』」
茨がわき腹の肉を抉っていく。ぞりぞりと岩肌を滑り落ちたときのような嫌な痛みがした。
男「早くしてくれ、ぬえ」
ぬえ「わかった!」
いくら戦い魔理沙が戦い慣れをしていたところで相手はぬえ、ミニ八卦炉も持っていない魔理沙は徐々に押されていった。
-
茨に肉を抉られながらさらにことりの関節を絡めとる。合気道というよりはプロレス技。萃香の言った人間が妖怪に勝つ手段なんてもんじゃない。
ただ喉元に食らいついて、泥臭く相手を制す。そんな戦い方。
萃香の教えを反故にした事は申し訳ないと思った。
魔理沙「このっ、くそっ」
ぬえ「はやくっ、たおれろっ」
男「違うよぬえ。殺していいんだよ」
ぬえ「? うん、わかったぅっ!」
ことり「『貴方、頭おかしいわよ』」
男「早くしてくれぬえ。流石に痛い」
「私がやる」
「お願い、倒して、蓬莱っ」
乱れた前髪を幽鬼のように垂らした蓬莱と、くしゃくしゃに顔を歪ませた上海がいた。
-
ことり「あらぁ。アリスはもう死んじゃったのかしら?」『やった、やった!』
蓬莱「あぁ、さっきアリスは死んだよ」
ことり「そういえば、なんで貴方たちはまだいるのかしら、主はもう死んでるのに」『やった、やった!』
蓬莱「知るかよ。奇跡かなんかだ」
蓬莱がそう吐き捨てる。そんな問答はどうでも良いとばかりに大きな槍を構えた。
上海「アリスは最後まで苦しんでた。でもそうはしません、痛みにもがき苦しんで」
蓬莱「そんなことできないぐらいハラワタ煮えくりかえってんだよ、なぁっ! さっさと死ねよぉっ! おっ死ねやぁっ」
いつもより荒々しい蓬莱の怒声。それと同時に槍が突き出される。
ことりがそれを止めようと素振りを見せた。俺はそれを制すために肩に会った腕を首に絡めた。ことりからくぴと間抜けな音を立てて空気が漏れた。
茨が一瞬遅れた。茨は蓬莱の服を切り裂き、蓬莱に絡みつく。
しかしその槍の穂先はしっかりとことりに突き刺さっていた。
-
ことり「『痛い、痛い、痛いっ』」
蓬莱「だろうな。でもまだ死なないんだろ、妖怪ってのは難儀だよなぁ!」
蓬莱がさらに進もうとする、ぼきりと音を立てて、蓬莱の左膝から先が折れ、茨によって押しつぶされる。繋ぐものを失った球体関節がぐらぐらと揺れていた。
蓬莱「止められねぇんだよ。もう勝つとか戦う理由とかどうでもいい。お前さえいなくなればどうでもいいんだよ。もうあたしなんてどうでもいいんだよっ!」
呪詛「首吊り蓬莱人形」と蓬莱が掠れた声でつぶやいた。
蓬莱「分かるんだよ、何かは分からないけど」
蓬莱の体が輝く。赤く、ひび割れた作り物の皮膚の下から光が漏れる。
蓬莱「今私を動かす何かがどれだけ恐ろしいものかってことは、分かるんだよ。奇跡とか偶然とかその類だろうがそれに感謝だ。神でも仏にな」
蓬莱「いや悪魔かも。祈る言葉なんて私にはないからな。でもなんでもいい、魂すらないこの私の何が対価になるかなんてことは分からない。ただの喜劇を演じるための人形の役かもしれない」
蓬莱「でもそんなことはどうでもいい。私なんかどうでもいいんだ。元から何も考えねぇ人形だ。動けただけで十分、アリスと喋れただけで十分すぎる。だからもう私なんてどうでもいい!!」
輝きがどんどんと強くなっていく。網膜を焼き尽くす光が終ぞ見たこともないほどに膨れ上がると、それは視界全てを染め上げ、近くにあるものをどんどん飲み込んでいった。
蓬莱「産まれてきた意味なんて、一つもなかった」
ぱらぱらとひび割れ、零れ落ちていく蓬莱の顔は光のなかで無邪気に笑っているように見えた。
-
男「―――ぁ」
気が付くと俺は地面に寝そべっていた。体は酷く重い。
上海「男、さん?」
ぬえ「おきたっ!」
起き上がれないほどの痛みではないようだ。抱き付いて来るぬえを引きはがし、上体を起こす。
地面が黒く焦げるほどの爆発。それを蓬莱は生み出したようだ。ことりの残骸は服の切れ端程度しか残っていない。
男「まりさ、は?」
ぬえ「あっちっ」
ぬえが指さしたほうを見ると、服の白い部分もどす黒く染めた魔理沙が地面に転がっていた。
男「魔理沙…」
魔理沙「……なん…だ、よ」
小さな返事が返ってくる。俺はゆっくりと魔理沙に近づき、その横に座った。
男「俺はお前を捨てた」
魔理沙「はは、………あやまる、なよ…………わたし、も………いっしょ、だ」
-
男「楽しかった」
男「少しの間だったけど俺はお前を愛してたよ」
魔理沙「くくっ………こくは、くか………ぁ?」
男「妹見たいに、思ってたの、本当だ」
魔理沙「あぁ………そう、かい………」
男「俺は、お前の兄になれたか」
魔理沙「………………」
男「………愛してるよ、魔理沙」
魔理沙「………わたしは………………」
魔理沙「だいっ、きら、い………だ、よ」
その言葉を言い終えると魔理沙の体から力が抜けた。少し開いていた瞼を下ろさせ、近くに転がっていた魔理沙の帽子を被せた。
最後の言葉まで優しかった魔理沙の泥で固まった金色の髪を指で梳き、俺は霊夢のもとに向かうために立ち上がった。
-
魔理沙も殺すの!?
-
麟「楽しい!楽しい!幸せよ!」
霊夢「あぁ、もう!」
それは狂気じみた光景だった。霊夢が麟を殺し、そしていつの間にかまた現れていた麟が霊夢に微笑みかける。
麟は決して霊夢を傷つけるような弾幕を放とうとはしていない。遊び、ごっこであるかのように笑う。
男「霊夢!」
霊夢「!」
麟「あら」
男「ことりは倒した。あとはそいつだけだ」
霊夢「ほらあんたの野望はもう終わりよ」
麟「終わってないわ!」
麟が攻撃をやめ、両手を広げた。
麟「私の野望は霊夢と一緒にいること。霊夢を救う事よ!」
霊夢「だから言ってるでしょ。私はあんたなんか知らないって」
その言葉を聞くと麟は少し悲しそうに顔を歪めた。
麟「私は貴方を知ってるの! 誰よりも、魔理沙よりも私は貴方に詳しいの!」
-
それは傍から見たら発狂したようにしか見えない。
冴月 麟は自ら霊夢の弾幕に身を投じた。
麟「ねぇ! いったいどうしたら私を信じてくれるのよ!」
霊夢「なんども身代わりばっかり使うあんたを一体どうやって―――」
麟「っ!」
麟の体に穴が開いた。しかしその体は崩れ落ちず、新しい燐が出てくることもない。
苦痛に身を歪ませながら悲しげに笑う燐がじっと霊夢を見つめていた。
麟「もう、時間がないのよ」
霊夢「あっそ、なら勝手に死になさい」
麟「私は死ねないの! 貴方を助けるために!」
霊夢が放った太く長い針を麟が少し身を捩って躱す。しかし致命的な場所でないだけで腕や足に突き刺さった。
麟「お願い、信じて。霊夢」
その視線を受けて霊夢が苛立たし気に次の針を構える。
麟「お願い、霊夢!」
霊夢「無理」
-
麟「うふ、うふふふ」
麟の心臓を狙った一撃。それを麟は手のひらを犠牲にして受け止めた。
麟「また私を裏切るのね、霊夢」
霊夢「は?」
麟「いや、霊夢のせいじゃないわ。全てあの女と幻想郷が悪いのよ」
麟がずずずと手のひらに刺さった針を抜く。その穴から血が流れ落ちるのと同時に麟が涙をこぼした。
麟「霊夢、貴方を殴ってでも止めるわ。だって私は貴方の親友だもの」
麟が手を握りしめる。流れ落ちる血が弾けて辺りに飛び散った。
麟「感謝しなくてもいい。恨まれてもいい。でも私はお母さんに約束したの!」
麟の表情に今までの薄気味悪い笑顔はなかった。そこにはきっと真剣に霊夢を見つめる視線と固く結んだ口があった。
麟「貴方をきっと救って見せるって!」
麟「この幻想郷から貴方を救って見せるって!」
-
口を出す事は出来なかった。
それはなぜか分からない。
辺りを飲み込む深い悪意、敵意のためだろうか。それとそんな中でもひしひしと感じる霊夢に向けられた愛情のせいだろうか。
そんな雰囲気に飲まれ俺と上海は微動だにせず二人を見つめていた。
最初に動いたのは麟だった。先ほどまでのむやみな特攻ではない。
握りしめた手のひらから麟の血が滴り落ち。その先に赤い花が咲いた。
麟「花符『思い出の中の曼珠沙華』」
花から赤い閃光が迸る。閃光は放射状に霊夢包み、動きを縛る。
霊夢「この程度で私を縛ることができると思う?」
霊夢は失笑した。それ以外の動きはしていない。
ただ、気が付くと赤い光の檻の中に霊夢はおらず、その外にて麟に向かって札を構えていた。
麟「流石ね、霊夢」
霊夢「あ、そ」
霊夢が札を投げつける。札は意志を持っているかのように麟に向かって襲い掛かった。
それは麟を捉え、当たった瞬間に弾け、麟の肢体を強く打ちのめした。
-
その衝撃で吹き出した血が地面に降り注ぐ。地面はさらに多くの花が咲き、霊夢を捉えるために放たれる赤い光線は数を増やした。
霊夢「面倒くさいわね、これ」
麟「まだよ、まだ終わらないわ!」
麟「風符『窮鼠噛猫の神風特攻』!」
麟が宙を蹴る。その速度は瞬きをする間。麟は霊夢の腰を掴んで宙を引きずっていた。
そして空中を飾るあまたの光線に向かってもろとも突っ込んだ。
霊夢はその速度に反応できなかったのか、背中を光線に焼かれ悲鳴をあげる。その悲鳴に重なって麟の堪えるような悲鳴も微かに響いた。
霊夢「なんで人間の癖に、倒れないの、よっ!」
腰にしがみつく麟を必死に叩く。しかし麟は霊夢を決して離す事無く新たな光線に向かって飛び込んでいった。
その動きは到底目で終えたものではない。気が付けば霊夢と麟の悲鳴が響き、麟と霊夢はさっきまでいなかった場所に出現する。
それが只管繰り返され、ボロボロになった霊夢と、それ以上にボロボロになった麟がどさりと地面に落ちた。
-
麟「はぁ、はぁ。まだ、まだなのよ」
麟「まだ死ねないの、まだ、私は死ねないのよ」
麟「だから」
麟がゆっくりと立ち上がる。そして今だに光線を放ち続ける花畑に向かって飛び込んだ。
ジュジュジュと音がし、肉が焼けるにおいが漂う。麟の肉体は完全に焼き尽くされ、消滅した。
麟「虚符『芥川のシェイプシフター』」
しかし俺の視界に冴月 麟はまだいる。さっきまでのボロボロではない姿で。
麟「さよなら私」
麟「頑張れ私」
-
今週中に第一部、終了させます。
今後ともよろしくお願いします。
-
乙!
まだあるのか(歓喜)
-
第一部ってことはまだ続くのか!
楽しみだ!頑張ってください!
-
お疲れさまです。
今度はハッピーエンドが良いですね...w
-
超絶乙!だけどこんなに長かったのにまだ続くなんて……ストーリーはドSなのに>>1はドMなのか?!
-
霊夢「かはっ、けほっ、げほっ」
霊夢が咳き込みながら血反吐を吐く。
男「霊夢!」
麟「もう霊夢は動けないわよ。私の勝ち」
冴月麟がこっちへと立ち上がろうともがいている霊夢にへと近づく。
男「や、やめろ!」
麟「さぁ、霊夢。私と行きましょう」
霊夢「誰が、アンタなんかと」
霊夢が自分の腕を掴もうとしている麟の腕を振り払う。その衝撃で霊夢は地面に転がった。
麟「霊夢、我儘はダメよ。ほら」
ボロボロになった霊夢と傷一つない麟では勝負にはならない。なんとか抵抗しようとするも霊夢は麟に動きを封じられ、抱え上げられた。
麟「行くわよ」
霊夢「誰が、いくもんですか」
霊夢が麟に向かって血交じりの唾を吐きかける。それにも麟はにっこり笑って肩で拭った。
-
男「霊夢!」
麟「うるさいわ」
麟が振り返って俺を睨む。俺は自分よりもずっと小さい少女に気圧され、動くことが出来なかった。
麟「さ、行くわよ」
連れてかれてしまう。霊夢が。
連れていかれてしまえばおそらくもう助けることはできない。
しかし、足が動かなかった。口はいくら動けど、足が動かなければ意味がない。まるで足を地面に縫い止められているようだった。
上海「れ、霊夢さんが」
男「分かってる」
拳銃を使えばいいだろうか。いや霊夢が死んでいない今拳銃は果たして使えるのだろうか。しかし巻き戻したところで何がある。
男「もう、おわ―――」
諦めかけた状況を打破したのは矢のように麟に向かってかけて行ったぬえだった。
-
ぬえ「やらせない!」
麟「あら」
麟はひらりとそれを躱すと、少し面倒くさそうな顔でぬえを見た。
麟「少し寝ててね、霊夢」
霊夢「駄目、今のあんた、じゃ」
ぬえ「まけない、ぬえはぜったい負けない」
ぬえが猫のように爪を構える。鋭利でとがったその爪は麟を容易く切り裂くことだろう。
しかし。しかしだ。
それが当たるのだろうか。あの麟に。そして当たったところでまた麟は蘇ってしまうだけなのではないだろうか。
ぬえ「みてて、男」
いや、そんなことはどうでもいい。俺は信じないといけないんだ。ぬえを。
麟「来なさい。今の貴方は全然怖くないもの」
麟「あ、そうそうでも」
麟「魔理沙殺したから、貴方殺すわ」
-
霊夢「にげ、にげなさ」
麟「逃がさないわよ。魔理沙を殺したんだから。霊夢だって許せないでしょ」
霊夢「………」
麟「ね。ほら―――っ」
麟が霊夢に話しかけている隙をついてぬえが麟に踊りかかる。しかしその爪は麟の髪を一房切り落としただけに止まった。
麟「野蛮なのね。そういうの嫌いよ」
ぬえ「うぅっ、まけない!」
麟「だから嫌いだって、言ってるでしょ?」
麟はため息をついただけだった。それ以外、どこも動かしていない。
ぬえ「あぁ―――っ。いた、いたい、いたいぃ!」
なのにぬえの四肢はもがれ。ぬえの胴体と頭は地面に転がっていた。
麟「動きが早いバカほどこれ効くのよね」
男「ぬえぇえええぇえええっ!」
-
だくだくと血が物凄い勢いであふれだしている。その光景は俺の足を縫い付ける糸を断ち切り、俺を自由にした。
ぬえの元に駆けつける。あの白くて美しかった足は今はぴくぴくと震えながら地面に転がっている。
俺に痛いほど抱き付いてきたあの腕も。
男「ぬえ、ぬえぇぇえっ!」
ぬえ「いたい、いたいよぉ」
ぬえが痛みで子供のように涙を流している。
俺はどうにもならないと分かっていても、自分の服を引き裂いてぬえの止血を試みた。
服はすぐに血を含み切れず意味を失う。付け根をいくらきつく縛ろうとぬえの泣き声が酷く形ばかりで意味をなさなかった。
麟「妖怪ってすぐに死なないから無様で嫌いよ」
男「お前、ぬえを、よくもぬえを!」
麟「知らないわ。貴方の都合なんて」
麟がぬえの頭を踏みつける。俺はその足をどけようとしがみつこうとしたが弱い、明らかに加減された弾幕で吹き飛ばされた。
上海「男さんっ」
地面にぶつかる前に上海が受け止めてくれた。しかし彼我の距離は10メートルを越え、弾幕の衝撃で自由に体が動かせない。
-
ぬえ「ひ、ひっ、たすけて、たすけてよぉ、ひじり、たすけてよぅ」
麟「あらあら」
麟がぬえの頭にもう一方の足を乗せる。ぬえはいやいやと頭を振って抵抗しようとしたが麟は楽しそうに、ぬえの頭を踏みつけ続けた。
麟「我儘はだめ、よっ!」
麟が高く飛び上がる。そして浮くことなく重力によって下に落ち
ぬえ「がっ!」
ぬえの頭に着地した。重く鈍い音が聞こえる。心なしか骨が砕ける音がしたような気がした。
麟「何回で死ぬのかしら。あ、そうそう。貴方も目をつぶっちゃだめよ。愛しい人の最後は目に焼き付けておかなきゃ」
麟が飛び跳ねる。そのたびに嫌な音は響き、ぬえの悲鳴が上がる。
ぬえ「ひじりぃ、ひじりぃ………」
麟「すぐ会えるわよ。あの世でね」
一層高く飛び上がる。俺の身長よりもずっと高く。
男「やめろ、やめろぉおおぉおおぉおおっ!!」
麟がぬえの頭に着地する。
メキャリと音が鳴って、ぬえの鼻から、大量の血が溢れ出た。
-
ぬえはガクガクと震え、目があらぬ方向を向いた。もう声も聞こえない。
麟はぬえから足をどけると靴底にねちゃりとぬえの血が糸を引いた。
割れた頭から流れ出る血を避けながら麟が霊夢の元へ戻る。
もう助けてくれるものはいない。
俺以外霊夢を助けれるものはいない。
でももうそんな事どうでもいいんじゃないだろうか。
ぬえもいない、魔理沙もいない。
俺だって人間にしては頑張ったはずだ。
諦めてもいいんじゃないだろうか。今まで挫けそうな心を引きずってここまで来たじゃないか。
誰も俺を非難する資格はない筈だ。
全身の力が入らない。上海は俺を支えることができなくなり。地面へと倒れ込んだ。
こんな運命。こんな結果誰のためにあるんだよ。
どこのどいつがこんなのを望んだんだよ。
意味なんてまったくないじゃないか!
-
麟「さ、行きましょう霊夢」
霊夢「ふ、ふふふっ、あははははっっ」
麟「霊夢?」
霊夢がいきなり笑い出した。楽しそうではなく、ただ何かに怒っているような笑い声をあげた。
霊夢「もう幻想郷がボロボロじゃない。この異変が終わって、何が残るってのよ」
麟「そうよ霊夢! 目が覚めてくれたのね!」
霊夢「意味なんてない。もうこれじゃあ幻想郷に意味なんてないじゃないの」
麟「えぇ、だから一緒に幻想郷の外へ―――」
霊夢「私に意味なんてないじゃない」
-
笑い声が止んだ。
なぜかはっきりと麟の歪んだ顔が見える。それに対するは霊夢の凍った真顔。
霊夢はなんてこともなかったかのように立ち上がり、お祓い棒を構えた。
霊夢「意味を亡くした私は何になるって言うの?」
霊夢「ねぇ、教えてよ」
霊夢「ねぇ!」
霊夢が振りかぶったお祓い棒で麟の頬を殴りつける。
麟「霊夢、落ち着いて霊夢。幻想郷なんて貴方に関係ないの!」
霊夢「だったら私はなんなのよ!」
再び霊夢が麟を打ち据える。麟は腕でそれを受けなんとか霊夢を止めようとするも、声とは正反対に真顔の霊夢に見据えられ動きを止めた。
鎖骨に勢いよくお祓い棒が振り下ろされる。麟の体が少し浮き上がった。
麟「こうなったら」
麟が霊夢に向かって飛びかかる。
麟「え?」
しかしその体は霊夢を通り抜けてその先の地面へとぶつかった。
-
麟「駄目、霊夢その力は使っちゃだめよ! あなたはそれ以上戦ってはいけないの!」
霊夢「あんた私の事なんでも知ってるんでしょ、教えてよ、教えなさいよ」
霊夢が札を放つ。それは容易く麟を破壊した。
麟「落ち着いて! 駄目なn」
新たに現れた麟の体が言葉を言い終える前にはじけ飛ぶ。
霊夢「何?」
-
麟「それ以上やったら、あn」
麟「だm」
麟「やめt」
麟「きえちゃ」
麟「いっしょに」
麟「おかあs」
麟「つれてかr」
麟「あなたm」
麟「一緒n」
麟「そのちk」
麟「博麗n」
麟「なってしm」
麟「前n」
麟「たすk」
麟「あ」
-
麟「や、やめて、霊夢」
麟が怯える。札を必死に転げまわりながら麟が命乞いをする。
麟「駄目なの! それ以上!」
霊夢「しぶといわね。どうせ死んでも蘇るんだから死になさいよ」
麟「もう最後なの! これ以上―――」
霊夢「へぇ」
霊夢の姿が消えたかと思うと麟の首を掴んでいた。
霊夢「あんたが最後なんだ」
霊夢「異変解決ね」
麟「やめて、れいむ、わたしは、あなたと、しあわせ、に、なりたか」
霊夢「さよなら」
-
体の下半分を消し飛ばされた麟の死体は泥として消えることなく、残っている。
新たな冴月 麟が現れることはない。
終わったのだ。
冴月 麟は死に。
古明地 ことりは死に。
この異変の首謀者はいない。
時間はかかるだろうがこの里の戦火もいずれ静まるだろう。
霊夢が語った元の幻想郷が戻ってくるとは思わない。それでもきっと今よりはマシなんだろう。
失ったものは大きかった。ここにきて手に入れたものを俺はほとんど失ってしまった。
皆失ったものは大きいだろう。でもこれ以上失うことはない。
そう失うことは―――
男「え?」
そうこれでやっと誰も死なずに―――
-
霊夢「え」
霊夢の頬に緑の何かが張り付いている。
それは大きな鱗のように見え。
男「!」
そして霊夢の姿は薄れてかき消えた。
-
麟「霊夢、落ち着いて霊夢。幻想郷なんて貴方に関係ないの!」
霊夢「だったら私はなんなのよ!」
戻った。撃鉄を引いた感触がまだ残っている。
霊夢が消えた後、拳銃の引き金は引けるようになっていた。
しかし戻ったときは残酷なほど些細な時間。
すでにぬえは死んだあとだった。
弾倉には残り4発。
あと4回やり直せるとはいえ、霊夢が消える原因が分からない。
男「やめろ、霊夢! 戦うんじゃない!!」
上海「え?」
霊夢「ふふっ、博麗の巫女は戦うのよ」
霊夢「あ、でも私は博麗の巫女なのかしら」
霊夢「ねぇ!」
麟「駄目、霊夢その力は使っちゃだめよ!」
霊夢「ねぇ、教えてよ。教えなさいよ!」
-
残り3発。霊夢は説得に応じることなく消えて行った。
ならどうやって止めればいいのだろう。
男「上海、霊夢を止めてくれ」
上海「え?」
男「お願いだ。頼む」
上海「は、はい! わかりました!」
霊夢「誰も、誰も教えてくれないのね」
上海「そ、そんな。触れられないなんて」
麟「霊夢が、霊夢がきえちゃ」
霊夢「残念ね」
-
残り二発。もう余裕がない。
霊夢に誰も触れることはできない。
ならどうやって止める。どうすれば止められる。
無理だ、瞬間移動をする霊夢に。追いついても触れることすらできない霊夢をどうやって止める。
届くのは言葉のみ。
ただそれも聞こえるだけで伝わりはしない。
ならどうすれば、どうすれば霊夢を助けれる。
どうすれば霊夢を助けることが出来る。
男「無理じゃ、そんなの無理じゃないか」
-
残り一発。これで手がかりを見つけなければ霊夢は消える。
まるで台本にでも書かれているかのように霊夢は消えていく。
それが運命だとでもいうのだろうか。
もし、運命を破壊することが出来るのなら。
男「………運命を破壊することが、できる、のなら」
いや、差し伸べられた手を振り払ったのは俺じゃないか。もうウィルは助けてくれない。
男「ははっ。ははは。もう遅すぎたのか。でも誰がこんな結末予想できたっていうんだよ」
男「こんな悲しすぎる結末」
上海「男、さん」
男「どうした、上海」
上海「止めて見せます。霊夢さんを。全力で」
男「無理だ、出来るわけない」
上海「やってもいない事を、出来る訳がないからって私は諦めたくないです! なにがなんだかわかりませんが、それしかないと言うのなら、試みるのは悪い事ではないですよ」
そういって上海が盾を構えて戦火の中へ飛び込んでいく。
違うんだよ上海。もうやったんだ。やって、駄目だったんだ。
-
もう弾はない。時を戻す事はできない。
あれだけ大事にしてきた弾はもうひとつもない。
やってもいない事を、出来るわけがないからって諦めたくない。
男「そうだよな。俺もまだやってないことあるじゃないか」
上海「男、さん?」
男「ちょっと霊夢止めるために行ってくる」
上海「危ないですよ!」
男「分かってる。でも俺にはもうこれしかないんだよ」
もう走れる程度には回復している。
何もできないことは分かっている。でも頭の中だけじゃ現実は完結しないんだよな。
霊夢に向かって体当たりをする。霊夢は驚いた顔をしたが、体当たりは通り抜け、俺は無様に転がる。
麟「!?」
男「霊夢、お前このままだと消えるんだよ」
麟「貴方、知ってる、の?」
男「なんでかは知らない。だけどこのまま霊夢が戦い続けると霊夢は消えてしまう。それだけは知ってる」
-
霊夢「血迷ったの?」
男「俺は時を戻したんだよ」
霊夢「へぇ」
麟「そう、貴方は戦うと消えてしまうの!」
霊夢「そう」
麟「龍神の餌食になってしまうの」
霊夢「なるほどね」
男「だから戦うのをやめ」
霊夢「嫌よ」
男「え?」
霊夢「どうでもいいわよ。そんな事。ただ私は戦わないといけないの」
霊夢「だって私がなんなのか分からないんだもの!」
-
言葉は通じなかった。
博麗の巫女とは言えど一度摩耗した精神は容易く戻ることはない。
霊夢は発狂していた。
霊夢の砕けた心は自分に対する関心を失わせた。
ただ博麗の巫女としての妄執に囚われた霊夢は立ちはだかる俺を敵と認識して容赦なく、札を構えた。
霊夢が札を振るう。今まで幾度となく見てきた札の威力は折り紙付き。本気ならば俺を一撃で殺すことなど容易いだろう。
上海「危ない!」
寸でのところで上海が盾で防いでくれた。しかし分厚い盾は半分以上吹き飛び、盾を持つ腕もボロボロになっている。
なんて常識外れな威力なんだろう。
麟「貴方、霊夢を助けたいなら協力しなさい」
男「協力なんてしねぇよ。ただ霊夢は止める」
麟「そう。なら仕方ないわね。巻き込まれても文句は言わないでよね」
男「あぁ、そうかい!」
-
麟「―――れい、む」
男「うぅ、あ、あぁ」
上海「………」
霊夢「異変解決ね」
上海は動かなくなった。
麟はたった今殺された。
そして今、霊夢が死にかけの俺を見下ろしている。
静かに俺を見下ろしている。
その頬は燐と緑に光る鱗が生えていた。頬だけじゃない、首筋にもどんどん浮き上がってくる。一体これはなんなのだろう。
ぼんやりと見上げていると霊夢はにっこりと笑った。
霊夢「やっぱり私は博麗の巫女なのね」
そう言うと霊夢の姿はうっすらと薄れ。そして消えて行った。
異変は最悪の形で終わった。結局この異変は失うものばかりで得るものはない。そう俺の命もすぐに消えてしまうのだろう。
遠くの方で火が生き物のように蠢いている。
この火がいずれ全てを飲み込むのだろう。この異変の残骸さえも。
-
終わり
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破壊の末には創造……きっとそこから、新しい何かが生まれるのだろう
そうとでも考えなければ、あまりにも虚しい結末ではないか
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でいいわけがないだろう。
このままでいいわけがないだろう。
自分の指先すら見えない暗闇の中で俺はそう強く訴えた。
これが死後の世界だというのならチャンスをくれ。亡霊でもなんでもいい。もう一度皆を救うチャンスを―――!
「そうですよね」
男「あんたは………」
???「お久しぶりです」
鱗。緑色の鱗。緑色の鱗に肌が覆われた女性。
再び俺はあの空間に来てしまったみたいだ。
???「守れなかったのですね」
男「守れなかった………俺は、みんなを」
???「もし、もしあなたの心がまだ砕けていないというのなら」
鱗の女性が俺の手を握る。暖かな体温が俺の右手の場所を教えてくれた。
???「もう一度、全てをやり直しませんか」
-
男「………できるのか」
???「えぇ、貴方にしかできません」
男「なんで俺なんだ」
???「秘密です。貴方は知らない方がいい」
男「また秘密か」
???「すみません」
男「心が折れてなければ、か。もう心は折れたさ。でもしなくちゃいけないんだよ。俺はしなければならないんだよ。そのためにできるってことがあるなら」
それしかないと言うのなら、それが俺にしかできないというのなら、試みることは決して悪い事じゃない。
男「分かった、俺にできるというのなら」
???「ありがとうございます」
鱗の女性が微笑んだように見える。鱗のせいでよくわからないが。
???「お願い、あの子を。博麗霊夢を守って」
男「霊夢―――あんたはいったい」
???「これは私の我儘です。そして私は謝らなければこの異変の原因はきっと―――」
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鱗の女性が消えていく。
男「おい、まて、今なんて言った!? この異変の原因は―――」
???「ごめんなさい―――るいのは―――のこじゃ―――りんは―――」
男「おい!」
男「………おい」
姿が完全に消えた。俺は再び闇の中に取り残される。
男「教えてくれよ、なにがなんだかわかんねぇよ」
男「なぁ、教えてくれよ」
男「なぁ」
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目を開ける。
空からちらほらと降り注ぐ雪がどうやら俺を埋め尽くそうとしているという事は分かった。
ここはどこだ。体に積もっている雪を振り払い、俺は寒さによって一つくしゃみをした。
立ち上がる。一面に見えるのはこちらをぎょろりと見る大きな向日葵。
俺はこの光景を知っている。雪を被った向日葵の姿を。
男「そうか、ここは」
「誰!?」
振り返る。緑の髪に赤い目をした美しい少女。
男「よう、幽香」
俺はどうやら戻ってきたらしい。信じられないがあの日へ。
俺の運命の日に。
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男「お願いだ、信じてくれ」聖「あらあら」へ続く
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>>1000までは一週間くらいは掛かりそうかな?w
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ループ物か!全員生存のハッピーエンドだったらいいなぁ…これからも頑張ってください!
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とにもかくにも辛く苦しい、もしくはカタルシスだけだったが、次こそは流れを変えられるのか?
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どこぞの鳳凰院って人とどっちが大変かね?
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あくしろよ
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そんなに急かしてどうする
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うんこ
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うんこ
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うんこ
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Uが三つもあるだけに?
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ID並び替えたらうんこだな
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うんこ
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うんこ
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うんこ
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http://ssks.jp/url/?id=294
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うんこ
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うんこ
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うんこ
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第一部ってあとどれだけ続くんだ
これは大作の予感
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うんこ!w
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タイトル回収した? 別に気にせんでえあか 1乙
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うんち
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これからまた大変なんだろうなぁ
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第一部完乙!
長かったなあ………
そしてまた長いんだろうなあ………
全裸待機してます
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最後の抜け抜けメッセージを埋める気はしない
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うーんこの(天邪鬼)
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...たれぞうですぅ
それでは(ヘッw)バナナを食べますぅ
フッ フフフフフ…フッ(クチャクチャ)フッ(ギュピ)
うん、OCwww...
(クチャクチャ)口の中にバナナの味が広がって…(アヘェ)...OC...
...今日は、ここまでにしときますぅ
それでは皆さんさよならぁ
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一週間どころじゃなかったね>埋まるまで
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ぬえぬえ、ぬえ〜ん
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ウィイイイイイイイイイイイイッス
どうもーシャムでーす
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ちょりーっす!!転入生の刹那でーっす!!よろしちょりーっす
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こんなに月も赤いから
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ウイイイイイイイッッッッス。どうも、シャムでーす。
まぁ今日はオフ会、当日ですけども。
えーとですね、まぁ集合場所の、えーイオンシネマに行ってきたんですけども、ただいまの時刻は1時を回りました。
はい、ちょっと遅れて来たんですけどもね。えー11時ちょっとすぎくらいに、えーイオンシネマに行ったんですけども。
ほんでーまぁイオンシネマの全体の動画を撮った後に行ったんですけども。スィー。
ほんでーかれこれまぁ2時間くらい、えー待ったんですけども参加者は誰一人来ませんでした。ガチャ。
誰一人来ることなかったですぅ。残念ながら。はい。
一人くらい来るやろうなーと思ってたんですけども、スゥー、結局2時間くらい待っても誰一人来ませんでしたね、えぇ。
でもね、でもオフ会のお知らせの動画にちらほらコメントあったんですけどもね。えー参加者の方の。
なんだろう。なんで来なかったんでしょうかねー。
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まぁーもう一時間くらい待とうと思ったんですけども今日はね、えーまぁみんなとお昼ごはん食べるつもりだったし、
あっ夜ご飯もみんなと一緒に食べようかなと思ってたんで今日は朝、パン一枚でございます。
今日の朝食はパン一枚!
なのでもう1時間待とうと思ったけどさすがにちょっと腹ペコなんで、えー今回のオフ会は残念ながら、こういう悲しい結果で終わりですね。
たぶんねぇあのまま待っててももう誰も来んかなぁと思ってたし、スィー、かといっても誰も来る気配なかったんで、カチッ、もうこれアカンなぁと思って、えーいま車に戻って、えー動画を撮影しております。
なんだろうなぁー。情報が足りんかったんかなぁー。
でもちゃんと載せて、載せて、載せたつもりなんですけどもねぇー。カチッ。
イオンシネマのーURLも載せたし、でー駅探で新大阪から垂井までの駅探の情報も載せていたんですけど一体なにが足りんかったんでしょうかねぇー。
あのねー、まぁイオンシネマで一人でずーっと待ってたわけですよ。
最初はちょっとイオンシネマのフロアロビーをうろちょろしてたんだけど、ちょっと足がちょっとしんどくなってきて、ずーあれそれからずーっとイスに座ってた、カチッ、座ってたけど、シー、誰一人来ることなかったですね。はい。
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スー一体なにがダメだったんでしょうかねぇー。参加者はいると思うんですけどなぜ来なかったんでしょうかね。不思議ですね。
なんかプレゼント持って行くよっていう人がおったんだけどそれらしい人もおらんかったし。
まぁ女子24人で男4人、28人やろ計、そのような団体さんもまったくいる気配はなかったし。
女子ぐー十人ぐらいでいきまーすってコメントもあったんやけどそれらしい人もおらんかったし、なんだろう。
今日、8月11日だよね?オフ会、当日だよね?
なんだろう。なんで来んかったんかなぁ。なんで来なかったんやろかなぁ、みんな。
あれ?もしかしてみな、みんなー場所わかってた?
俺がさー不安なのは一番不安だったのはコメント返信でね。場所分かりますか?っていうコメント返信したんだけどまったく返信なくて。
ホンマに場所分かってんかいなぁっていう不安がいっぱいで今日、当日迎えたから。
もしかしたら場所分かってなかったかもしんないねぇーみんな。
うーん、なんでだろうねぇ。なんで来なかったんだろうか。謎ですね。スゥー。
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ちょっとーみん、さすがに参加者0人はねぇ。へこんでますねぇーえぇ。
そうですねぇー次のオフ会はまた、そやな夏休み明けやろうかな。
あのねー、いま夏休みやからイオンシネマ多かったわ、人が、人でいっぱいやったわ。うん。プスゥー。
そやねー自分としてはリベンジしたいんだけどね。泉南イオン、場所は泉南イオンで。スゥー。
なんだろうぉ、ちょっといま夏休みやし、夏休み明けやろうかな。9月ごろ。スゥ、やろうかな。
今度は土日で。やろうかなと思ってますよ。スィー。
いや、あのぉー今度ね、今度ぉーコラボジャパンさんの方でゲーム実況者イベントがあるんですよ、とYoutubeスペーストーキョーで。
で、もしかしたら俺が呼ばれるかもしれな、しめ、しれないのでぇー、でーゲーム実況者イベントの中にね、ファンとの交流会っていうのがあるんですよ。
それにみんな来てもらおうかなって思って、はい。
とりあえずぅー、今回のオフ会は残念ながら参加者0人という形で終わりました。チッ、はい、チッ、スゥ。
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なんかねぇーそーとーショックですねぇー。なんで来なかったんだろうって思いがあります。スゥー、はい。
まぁ腹も減ってくるしは、腹も減ってくるし、誰も来ぉ〜んしっていう、なんだろう。
まぁとにかくむなしかったし、一人でずーっと待って2時間くらい待ってたけどそれがむなしかったし、スィー、なんで来なかったんだろうって思いとまぁ情報が足りなかったかもしれへんし、今回は。はい、それが、それもあるかもしれないね、はい。
まっ、ちょっとーなんでしょうかね。泉南イオンに来たよーって人はぜひえーコメントください。スィー。
もしかしたらすれ違いっていう可能性もあるかもしれへんし。
いやっ、あのまま待ってても誰も来んかったかなぁと思いますし。スィー。
まぁー自分はですね、オフ会やりたかったし、今回はこういう形で終わりましたけど。
まぁこれでまぁ自分自身もオフ会やりたかったし、今回はこれでええかなぁっと納得しております。スィー。
もし、参加者様で、もし泉南イオンのイオンシネマに来たよーっていう人はぜひコメントください。
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こんな所(SS深夜VIP)に愚痴書かれても……(困惑)
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なんでだよ、これ… >>948-952
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どうやらそういうネタの様だな
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うんち
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運動音痴が何だって?
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埋め
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うんこ
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埋め
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めちゃくちゃ長いな
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俺は今日1トン分の仕事をしたんだぜ?…スケル「トン」だけに!\ドドンッ!/
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ウイイイイイイイイイッッッス。どうも、シャムでーす。
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一日一レス
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うんこたべたい
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へ、変態だーっ!?
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次スレってもう立ってる?
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たってるよ
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残り50レスくらいは意外と遠かった
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ゴルバチョフ
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誰だ生き残ってるのは
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サトウキビ
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あの思い出は男にしか残ってないのかな
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うんちっち
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控える程度の能力
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杉内投手
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呼ばれて飛び出す程度の能力
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チェコスロバキア
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球体地図持って こ↓こ↑!ってやる人?
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それはゴー☆ジャス
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途中でバックレる程度の能力
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ウッチャンかオメーはよぉ
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ちんこ
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とにかく明るい程度の能力
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何だ?安村って言わせたいのかコラ
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UNDOで寸分前の過去を帳消す程度の能力
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あ
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い
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う
-
え
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お
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ウイイイイイイイッッッッス。どうも、シャムでーす。
まぁ今日はオフ会、当日ですけども。
えーとですね、まぁ集合場所の、えーイオンシネマに行ってきたんですけども、ただいまの時刻は1時を回りました。
はい、ちょっと遅れて来たんですけどもね。えー11時ちょっとすぎくらいに、えーイオンシネマに行ったんですけども。
ほんでーまぁイオンシネマの全体の動画を撮った後に行ったんですけども。スィー。
ほんでーかれこれまぁ2時間くらい、えー待ったんですけども参加者は誰一人来ませんでした。ガチャ。
誰一人来ることなかったですぅ。残念ながら。はい。
一人くらい来るやろうなーと思ってたんですけども、スゥー、結局2時間くらい待っても誰一人来ませんでしたね、えぇ。
でもね、でもオフ会のお知らせの動画にちらほらコメントあったんですけどもね。えー参加者の方の。
なんだろう。なんで来なかったんでしょうかねー。
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め
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う
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>>1000なら、主人公に少し有利なアイテムのお恵みを
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