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坑夫「穴を掘り続けた俺の二十年をかけて、絶対に壁を超えてやる!」

1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:15:10 HAjjnOvI
進撃の巨人ssです


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2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:16:32 HAjjnOvI
〜炭鉱〜

坑夫「おい、そろそろ休憩にしようか」

友人「そうだな、目標の深さまで穴は掘れた」

坑夫「あぁ、しかし、ここの地盤は坑夫泣かせだな」ハッハッハ

友人「全くだ。だが、その分掘った後の爽快感がたまらないじゃないか」

坑夫「へっ、分かってるじゃねぇーか、お前」

友人「当たり前だ」ハッハッハ


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:18:00 HAjjnOvI
〜酒場〜

友人「お、今日はお前がお先か」

坑夫「おう」

友人「おやっさん!いつものくれ」

店主「はいよ」

坑夫「・・・ハァ」

友人「ん?溜息か?」ニヤ


4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:19:01 HAjjnOvI
坑夫「俺のこの先の未来を案じたら溜息が出てくるんだよ」

友人「はっはっは!何だ、今の現状に不満でもあるのか?」

坑夫「あぁ、俺たちは決して良い暮らしをしてるわけじゃねぇ」

友人「そりゃそうだ。ただ穴を掘る仕事だぜ?誰にだってできる。俺たちの代わりはいくらだっているんだ。暮らし向きが悪いのは仕方ねぇ」

坑夫「あぁ、そうだ」

店主「ほら、いつものだ」


5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:22:47 HAjjnOvI
友人「おぉ、これで一日の疲れがとれる・・・」

坑夫「・・・」ゴクゴク

友人「ゴクン・・・プハァー・・・で、お前は穴掘りを辞めるのか?」

坑夫「俺から穴掘りをとったら何が残る?俺には穴掘りしかできねぇ」

友人「確かにそうだ・・・だが、そのままじゃお前の悩みは解決しないぞ?」

坑夫「あぁ、だからこそ悩みなんだ・・・」


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6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:23:58 HAjjnOvI
友人「なるほど・・・まぁ、なんだ・・・悩んでも仕方ねェ・・・とにかく今日や明日の飯にありつけねぇと話にならねぇぞ」

坑夫「そりゃ分ってる。明日も穴を掘るしかねぇ」

友人「へっ、しけた顔しやがって!ほら!今日は俺の奢りだ!」

坑夫「え?いいのか?」

友人「当たり前だ。だから陰気な顔すんじゃねぇ。酒がまずくなる」

坑夫「あぁ、悪いな」


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:25:28 HAjjnOvI
〜翌日〜

〜炭鉱〜

ザク ザク ザク

坑夫「ハア・・・ハア・・・」

友人「大丈夫か?息切れしてるぞ?休憩したほうがいいんじゃないか?」

坑夫「いや、大丈夫だ。相変わらず坑夫泣かせの地盤の固さだ」

友人「はっはっは、後もう一息だ。頑張ろう」

坑夫「あぁ」


8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:32:27 HAjjnOvI
ザク ザク ザク

坑夫(はあ・・・俺も歳をとったな・・・)

坑夫(近いうちに体が壊れて、仕事ができずに金はなくなり死ぬだけだ・・・)

坑夫(この先、どうすりゃいい・・・)

坑夫(穴掘りを辞めて・・・老後もいい暮らしができねぇもんか・・・!!)

坑夫(・・・そうだ・・・シーナに行けば良い暮らしができるかもしれん・・・)


9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:35:13 HAjjnOvI
坑夫(あそこは金持ちの住む場所だ・・・俺にもできて、なおかつ給料の高い仕事が必ずあるはずだ・・・)


坑夫(市民権をとるのはまず不可能だが・・・噂に聞けば、王都の地下街は無法地帯で、市民権をとってねェ奴や犯罪者の住処らしい・・・)


坑夫(だが・・・どうやってシーナに潜り込む・・・門には常に憲兵がいて、監視も市民権が必要な分厳しい・・・まず門からの侵入は不可能だ・・・・・・!!)


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:37:25 HAjjnOvI
坑夫(そうだ!簡単にいけるじゃねぇか!穴を掘っていけばいいんだ!!)

坑夫(ははっ・・・穴を掘れば侵入するのは簡単だ・・・伊達に20年間も穴を掘ってきたわけじゃねぇ・・・必ずやれる・・・!!)

坑夫(俺ならやれる・・・)

〜酒場〜

友人「・・・あいつ・・・遅いな・・・いや、今日は来ねぇのか・・・?」


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:38:50 HAjjnOvI
〜シーナの壁沿い〜

坑夫「ふぅ・・・今日は暑いな・・・」テクテク

坑夫「さてと・・・人の気配がしなくて、壁上から見ても見えない場所を選ぶか・・・」

〜〜〜〜〜

坑夫「よし、ここがいい・・・明日の朝までには掘るぞ・・・あいつには最後の挨拶ができなかったが仕方ねぇか・・・」


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:40:32 HAjjnOvI
ザク ザク ザク ザク

坑夫「ふぅ・・・ここの地盤は結構柔らかいな・・・もう俺の背丈の3倍ぐらいは掘ったが・・・」

〜〜〜〜〜

ガキィン ガキイン 

坑夫「・・・ダメだ・・・まだ横にシャベルを入れても地盤が固すぎて、穴が開かねェ・・・」

坑夫「一体どこまで壁の基礎が続いてるんだ・・・」


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:42:34 HAjjnOvI
坑夫「とにかくまだまだ掘るしかねぇな・・・」

坑夫「諦めねぇぞ・・・必ずやってやる・・・」

坑夫「穴を掘り続けた俺の二十年をかけて、絶対にこの壁を越えてやる!!」

〜〜〜〜〜

ザク ザク ザク ザク ガキィン

坑夫「?!」

坑夫「・・・」


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:43:32 HAjjnOvI
ガキイン

坑夫「くそっ!」

ガキイン ガキイン 

坑夫「・・・くそっ・・・嘘だろ・・・シャベルが・・・」

坑夫「ハア・・・ハア・・・・これ以上掘れねぇのか・・・」

坑夫「・・・夜が明ける・・・くそっ・・・」

坑夫「・・・・・ハァ・・・・やめだ・・・・・・」


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:44:35 HAjjnOvI
〜翌日〜

〜酒場〜

友人「地面の中にまで壁があるだと・・・?」

坑夫「あぁ・・・」

友人「・・・」

坑夫「俺達はもしかしたら地上だけではなく、地下までの壁に囲まれているかもしれないな・・・」

友人「・・・」


16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:46:12 HAjjnOvI
坑夫「なあ、そもそも壁ってのはいったい――――――」

友人「ゴホン!」

坑夫「!」

友人「馬鹿・・・憲兵がきちまうだろうが・・・!」ゴニョゴニョ

坑夫「あぁ・・・すまん」

友人「まぁ・・・とにかく・・・これまで通りここで暮らせばいい。貧乏に変わりはないけど、毎日仕事があって酒がちょっと飲める。それで十分だ。そうだろ?」

坑夫「その通りだ。また地道に穴を掘るよ。結局のところ、俺にはそれが似合ってるんだろう・・・」


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:48:50 HAjjnOvI
〜その日の夜〜

坑夫「さてと・・・誰かがここに来ちまう前に穴を元に戻すか・・・」

坑夫(・・・いや・・・待てよ・・・まだ試してないな・・・)

坑夫(確か昨日使ったシャベルよりもっと固いやつがあったはずだ・・・)

坑夫(それを使えば・・・この地盤を・・・)

坑夫(どうせ今日埋めてしまうんだ・・・試しても駄目かもしれんが、試す価値はある・・・!!)


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:49:51 HAjjnOvI
〜〜〜〜〜

ガキイン ガキイン ガキイン 

坑夫「よし!!やっとヒビが入ったぞ!!」

ザク ザク ザク

坑夫「いけるかもしれねぇ・・・ん?何だ?液体が出てきた・・・」

坑夫「・・・明かりだ・・・明かり・・・!!」

坑夫「よし・・・ん?・・・これは・・・血か・・・」


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:54:45 HAjjnOvI
シュウウウウウウウ

坑夫「!?うわっ!何だ!煙が・・・!」

坑夫「くそっ・・・急に出てきやがって・・・どこから煙が・・・!!」

坑夫「おい・・・嘘だろ・・・」

坑夫「血がでてきた場所から煙が・・・?!」

坑夫「・・・・・・さ、再生してやがる・・・どういうことだ・・・こりゃ・・・まるで・・・」

坑夫「いや・・・!!!そんな馬鹿げたことがあるわけねぇ!!」


20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:55:50 HAjjnOvI
坑夫「そうだ・・・これはただの地盤だ!!俺は!!!!!穴を掘り続けた二十年をかけて!!!!絶対にこの壁を越えてやるんだよ!!!!!」

ザク ザク ザク ザク ザク

シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ

坑夫「くそっ・・・なぜだ・・・俺は・・・・」

シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ

坑夫「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・俺はとんでもないことを・・・・
ああああ・・ああああああああああああああ!!!!!」


21 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:56:53 HAjjnOvI
坑夫「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:58:03 HAjjnOvI
〜翌日〜

友人「あいつ・・・サボりか・・・」

同僚「どうした?坑夫の奴は今日来てねェな」

友人「さぁな・・・」

友人(あの野郎・・・穴を埋め直すのに手間がかかってんのか・・・それともまだ諦めずに穴掘ってんのか?)

次の日も、その次の日も坑夫は仕事には来なかった。

坑夫の友人は彼の家を何度か訪問したが、いつ行っても坑夫はいない。

また坑夫には親兄弟も連れ合いも親しく付き合ってる友人もいないから、彼の行方に心当たりのある人間はひとりも見つからなかった。


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 16:59:15 HAjjnOvI
〜〜〜〜〜

友人「・・・もう一週間が経つな・・・やはり駐屯兵団へ話をしたほうがいいか・・・長く付き合った友人を見捨てるわけにはいかねぇしな・・・」

そして翌日から駐屯兵団と憲兵団による大々的な合同捜索が始まった。

それは1人の貧乏な坑夫――地面を掘って壁を抜けようと試みた犯罪者であるが――の行方を捜すにはいささか大仰に過ぎるものだった。


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 17:00:15 HAjjnOvI
〜〜〜〜〜〜

同僚「おい、坑夫の捜索に中央憲兵までが出動してるって知ってるか?」

友人「あぁ・・・奇妙だな・・・」

同僚「全くだ・・・あいつ一体何をやらかしたんだ?」

友人「さぁな・・・」


25 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 17:01:14 HAjjnOvI
〜〜〜〜〜

〜王都・ミットラス〜

王「坑夫の件について報告せよ」

中央憲兵「はい。昨夜・・・死体で発見されたそうです」

王「ふむ・・・」

中央憲兵「我々が穴を調べた結果、奴は壁の正体にたどり着いたようです」


26 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 17:03:18 HAjjnOvI
王「ふっ・・・はっはっは!!なるほど・・・知ってしまったのじゃな・・・」

中央憲兵「はい・・・しかし、ご安心ください。奴には親族や知り合いがおらず、壁のことについては誰にも話をしてないと思われます。唯一の友人であり、坑夫の失踪を駐屯兵団に話した奴も壁のことについては何も知りませんでした」

王「ふむ・・・しかし、念には念をだ・・・分かっておるな?」

中央憲兵「はい・・・坑夫の友人は近いうちに不運な事故にみまわれるでしょう・・・・」ニヤリ

王「ははっ・・・気の毒じゃ・・・」ニヤリ


27 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/26(水) 17:04:48 HAjjnOvI
終わり


28 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/03/30(日) 15:51:48 7oMKF/3A



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