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映姫「しばらくニートでいいわ」小町「いやいやいや」
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布団の中はとても温かく、人を堕落させる存在だ。マジギルティ。
なんとかその誘惑に抗おうとしてはみるが、結局あと5分あと5分を思い続けてはや1時間が経った。
映姫「布団の中までご飯もってきてくれる人、いないですかね」
着替えも食事も布団の中でしたい。というか何もしたくない。
そんなぬくぬくのいけない快楽を貪っていると、ぴんぽんとチャイムがなった。
映姫「………………」
狸寝入りをしよう。そう思っていたら、がちゃがちゃと鍵をあける音がなり、誰かがドアを開ける音がした。
映姫「誰ですか?」
小町「あたいです、あたい」
映姫「小町ですか。死刑」
小町「いきなりなんですか!?」
映姫「もう仕事の時間ですか?」
小町「何言ってるんですか、四季様閻魔クビになったじゃないですか」
映姫「………夢ですね。おやすみなさい小町」
小町「起きてください」
"
"
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お前のスレ立て敏捷すぎて怖い
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映姫「どういう事ですか」
小町「映姫様。昨日クビになったじゃないですか。無罪の人間を地獄に落として」
………寝ぼけているせいか、私がミスをしたと聞こえた気がした。顔を冷水で洗ってきたほうがいいかもしれない。
小町「それで、なんでミスをしたのかを今日から調べるって」
映姫「………あー」
なんか思い出してきた気がする。妄想でなければだが。
たしか私は少女を殺した男を地獄に送って、それが実は男の責任ではなかったとかなんとか言われて、閻魔をクビになったんだ。
でも浄玻璃鏡を見て間違えるはずがないから、お情けでなんでミスしたかを明らかにして、それで私が悪くなければ閻魔に復帰させてもらえるといわれたんだった。
映姫「あれ、これ小町のせいにすれば万事解決」
小町「やめてくださいよ、洒落になってません」
洒落を言ったつもりは無いのだけど、まぁいい。
映姫「とりあえず一眠りする」
小町「閻魔の仕事戻りたいんですよね!?」
映姫「しばらくニートでいいわ」
小町「いやいやいやいや」
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いつもの閻魔服は着る事ができないので、適当に私服を選んで着ることにした。
小町「うわ、ださ」
映姫「着れればいいのよ、それで」
小町「いや、でもI LOVE 幻想郷Tシャツって」
映姫「安かったから」
小町「給料結構もらってるんですから、もうちょっとマシな服着ましょうよ」
そんなにいけないだろうか。I LOVE 幻想郷Tシャツ。幻想郷愛があふれて素敵って店の人が言ってたんだけど。
小町「あたいが選んであげますから、四季様はご飯食べててください」
映姫「そう言って私の下着を盗む気ですね。マジギルティ」
小町「あたい信用ないですね!?」
普段から仕事をサボるからそうなる。信用を積み重ねるのは難しい。崩れるのは一瞬だったけど。
とりあえず、小町が私フェチなのは置いといて、お言葉に甘えてご飯を食べることにしよう。
映姫「………ご飯がねぇ、おかずもねぇ、食材それほどそろってねぇ」
出鼻をくじかれた。
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小町「なんで乾パン食べてるんですか?」
映姫「非常食を非常事態に食べるのは当たり前でしょう」
小町「いや、今非常時じゃないですし」
映姫「私のおなかはエマージェンシーコールを発しているのです」
小町「まぁ、四季様がそれでいいならいいですけど。服持って来ましたよ」
映姫「ワンピースですか」
小町「四季様ならワンピースかなって思いました」
映姫「小町と言えば貫頭衣ですよね」
小町「あたいそんなイメージあります!?」
ちなみに貫頭衣とは一枚の布に頭を通す穴だけ開けた簡単な服である。現実では見たことないけど。
"
"
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映姫「よいしょっと。ふぅ。どうですか?」
小町「よく似合ってますよ」
映姫「ところでなぜ小町も私服なのですか?」
小町はいつもの仕事着ではなく、雑誌でみるような格好をしていた。そういう雑誌は見たことないのでどんな種類とかは言えないが、小町のくせに似合っている。小町のくせに。
小町「あたいは四季様を助けるためにしばらく死神休んだんですよ。条件として、四季様が駄目だとあたいもクビですけど」
そういって笑いながら、手のひらを横にして首の前で振った。俗に言う、クビになったのジェスチャーだ。
映姫「私の首をギロチンにかけたい?」
小町「分かってましたよね!? 絶対!!」
映姫「冗談です。これは小町を失業させないためにもほどほどに頑張らないといけませんね」
小町「一生懸命頑張ってくださいよ!?」
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乙、次はここか
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外に出ると朝日が眩しい。そういえば、裁判官用の宿舎に住んでいるが、閻魔ではない今、住んでいてもいいのだろうか。
小町「今日も良い天気ですね」
映姫「そうですね」
適当に相槌を打ちながらこれからどうしようかと考えてみる。手がかりもない今、どう動いて良いかの判断がつかない。さてはてどうしようかと考えていると小町が「じゃあ人里で話でも聞いて周りましょうか」と的を射たことをいう。小町のくせに少し役に立った。
映姫「まぁ、そんなこと私はすでに考えていたのですけどね」
小町「何がです?」
映姫「なんでもないです。さぁ、行きましょう。三三七拍子のリズムで」
小町「普通に行きましょうよ」
ノリが悪い。普段サボタージュの帝王のくせして、いやサボタージュの帝王とは誰にも流されない人のことを言うのだろうか。常時マイペース、部下としては使いにくい部類だ。
映姫「使いにく塚小町」ボソッ
小町「ボソッといきなり何言ってるんですか」
映姫「特に意味はありません。森羅万象全ての物事一つ一つにちゃんと意味があると思わないでくださいね!!」
小町「え、今なんであたい怒られたんですか?」
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小町「ところで、四季様。まさかとは思いますが今回の事件の情報覚えてますよね」
………あ。いや、忘れたというより記憶の引き出しのどこにしまったかが分からないだけで、忘れてしまったというわけでは」
小町「忘れたんですね」
小町が私を呆れた目で見てくる。今までサボりだのなんだの言ってきた相手からあんな目で見られるのは少し傷つく。ガラスの乙女心が砕けてしまいそうだ。
映姫「いえ、しかし小町の復習のために聞いてあげましょう。それでどんな事件だったのですか?」
小町「はぁ………。しっかり聞いてくださいよ? 被害者は白衣兄。人間の里から少し離れた森の中で死体として発見されました。死因は妖怪にやられてますね。それで罪状なんですけど、その死体の近くにいた女の子ですね、それを鋭利なもので切り殺したんですよ。良く分かりませんが、道具を使ったみたいです。ちゃんと浄玻璃の鏡にも映ってます。しかしなぜかこれが冤罪ってことになって今にいたるんですけど」
映姫「しかし浄玻璃の鏡は真実しか映しませんよ?」
小町「そこなんですよ。だから映像に映ってない真実を見つけに行くんですよ」
はっきり殺したところが映っているなら無罪もなにもないと思うのだけど。いやしかし現実に起きたことはなにかしらの理由があるはず。だけど一体?
映姫「人里かー、めんど」
小町「四季様なんか性格変わってません?」
映姫「そりゃもうヤマザナドゥじゃないからよ。堅苦しいのはやめやめ」
小町(仕事が変わったぐらいで性格変わるのかねぇ)
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こんなえーきさまもありやな
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人間の里。そこには文字通り人間で溢れている。しかし最近は人間と共存する妖怪も増えてきたようで、ちらほらとその姿を見かけることができる。
人口はおよそ五万人ほど。電気などのインフレが進んでいるおかげで、大通りは夜でも街灯がついていたりする。そういえば私は人間の信仰心を受けて地蔵から閻魔に出世したのだった。あの頃は普通に人間と触れ合っていたが、閻魔だった頃は人間と触れ合うことなんて説教ぐらいしかなかったなぁと昔の私を振り返る。説教が効いて少しでも地獄行きになる人間が減っているといいのだけど。
小町「四季様、はぐれないように手を繋ぎましょうよ」
映姫「小町。貴方は私を子供と勘違いしてませんか?」
小町「いや、四季様小さいので」
映姫「ジャッジメント!!」ゴスッ
小町「きゃんっ! なんでまだ悔悟棒持ってるんですかぁ………」
映姫「これ人を叩くのに便利だからです」
名前を書いてないので重さは普通の棒と変わらないが、手になじんでるおかげで扱いやすい。ところで小町の名前を書いたらどのくらい重くなるのだろうか。やってみたい気もするが、きゃんきゃん鳴かれるとうるさいのでやめておく。決してデレた訳ではない。
流れてくる人の波を小町を盾にして押し進むと、見知った顔が団子屋に据わっていた。言うなれば人間の里の顔とでも言えばいいだろうか。小町よりも自己主張の激しい体の一部分がマジギルティー。
彼女の名前は上白沢 慧音。人里で歴史書を纏めたり寺子屋の教師をやっていたり人里を守護したり、祭りなどの行事にかかわったりと大忙しの半妖だ。そのおかげで人間からの人望が厚く、困ったときには慧音が言ってたと付け加えると相手が納得するほどの影響力がある。私も閻魔に戻ったら判決を慧音が言ってたと付け加えてみようか。
慧音「おぉ、四季映姫・ヤマザナドゥじゃないか」
映姫「残念ながら今は、ただの四季映姫です」
慧音「ん?」
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慧音「なるほど、しかし白黒つける程度の能力を持っている君が冤罪とは」
小町「それが不思議なんですよ。あたいはみたらしで。四季様は何にします?」
映姫「三色団子。慧音は何か知りませんか? 白衣兄のことを」
慧音「いや、私が知ってるのも大体似たようなことだが」
やはり、真実にはそう簡単にはたどり着けないようだ。どうしたものかと思案していると、横で小町がおいしそうにみたらしをほお張っていた。なんとなく幸せそうな顔がむかついたので、飲み込むタイミングでみぞおちを突いた。小町は面白い顔をしていた。
慧音「とりあえず私よりは紫に聞いたほうがいいんじゃないだろうか。もしくは白衣男に話を聞くとか。いやでも白衣男は今は行方不明になっているのか」
映姫「行方不明?」
慧音「あぁ、里の人間が殺人犯の弟と責めたらしいんだ。それで、里から出て行ったみたいだ。どうなったかは知らない」
映姫「手がかりがなくなりましたね」
小町「四季様どうします?」
映姫「とりあえず、人里で情報収集、のちに稗田家、八雲のところへ行きましょう」
小町「了解です」
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人ごみを見回すと急がしそうに過ぎ去って行く人の中に、私から明らかに目をそらしている人が何人もいるのでそういう人に積極的に話を聞きにいった。しかし得に収穫はなし。事件は知っているみたいだが、自分には関係のない事件なので新聞に載ってある以上のことは知らないらしい。
しかし、なんだろう。なぜこんなに目をそらされるのだろうか。もしかして私は嫌われているのだろうか。なんだかむしゃくしゃしてきたので、目をそらした奴を黒にして小兎姫に引き渡してやろうか。そう憤っていると、赤髪てやんでい娘。もとい小野塚小町がため息をつきながらやってきた。
映姫「その様子だと駄目だったみたいですね」
小町「新聞社に行ってみたんですけど、公開されてることが全てらしいです」
映姫「ここまで何もでないと、私が間違ってないんじゃないかと思ってしまいますね」
小町「そうだと良いですね。えっと次は」
映姫「稗田阿求ですが、収穫はないでしょうね」
小町「ですよねぇ」
それでも可能性がある限りは行動しなければならない。それに彼女ならば今までの知識をいかし、何か解決に導いてくれるかもしれない。
しかし、稗田家で知ったことは里で聞いた話と変わらず、手に入れた情報は白衣男が消えた日にその幼馴染も消えたということだけだった。
おそらく里で暮せなくなったゆえの駆け落ちで事件には関係なさそうだが、一応頭の隅にはいれておこう。さて、八雲家に行かなければいけないがどう行けばいいのだろうか。
とりあえず出没スポットにでも行こう。彼女なら適当な和菓子を包めば居座ることを許してくれるだろう。
映姫「というわけで、小町。適当な和菓子を自腹で買ってきなさい」
小町「え!?」
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支援
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人間の里を出て、看板に従い数十分歩くとそこに博麗神社がある。一応参拝道はあるのに妖怪に襲われる危険があるのでほとんどの人間が訪れることはない。巫女の職務怠慢ではないかと思うが、そもそも神自体がいるのかどうかが分からない。それに命蓮寺、守矢神社があるのでわざわざ危険を冒してまで訪れる必要はない。来るのは妖怪ぐらいだ。
映姫「よくよく考えれば小町の能力を使えばすぐでしたね」
小町「まぁ、そこは散歩をしたとでも思いましょうよ」
映姫「散歩は老後の楽しみに取っておきます。というか気を利かせなさい、小町」
まぁいい。過ぎてしまったことだ。あとはこの無駄に長い階段を上るだけだ。
映姫「ん?」
視界の隅の草むらで何かが動いた。妖怪? 獣? なんにしろ用心するにこしたことはない。少し下がり、小町の影に隠れる。
その直後シュンッと空を切る音。
飛んできたのは矢。カッという音をたて突き刺さった。木に。
小町「あ、あ、あ、あぶなっ!?」
射手の腕が拙くて助かったようだ。いやあれくらいで死ぬ小町ではないが。
映姫「あそこですね」
小町が愛用している鎌を奪い取り、草むらに向かって思いっきり投げる。鎌は草むらに一直線に飛んでいき、三つの悲鳴が聞こえた。
映姫「小町。捕まえなさい」
小町「合点承知!」
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ルナ「ほら私やめようって言ったじゃないの」
スター「だって面白そうだったんだもの」
サニー「毎回思うけどスターの悪戯って殺傷力高いよね」
映姫「無駄口は叩かない!」
三月精「はいぃ!」
小町が捕まえてきた三つの悲鳴の主は、博麗神社の裏にある大樹に住み着いている三月精だった。とりあえずジャッジメント(物理)をしてしばいておき、そのまま昔の王様よろしく板の上に乗って階段を上らせている。
映姫「らくちんです」
小町「容赦ないですね。四季様」
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スター「つ、疲れたぁ………」
ルナ「スターは自業自得として、なんで私まで………」
サニー「連帯責任………?」
ルナ「そ、そんな………」
後ろで疲れて倒れている妖精を無視して境内に入ると、ちょうど賽銭箱を覗いている紅白の巫女。博麗霊夢がいた。
映姫「こんにちは霊夢」
霊夢「なに? 今忙しいんだけど?」
いくら覗いても賽銭箱に入っているお金の量は増えないと思うが。なんとなくかわいそうになったので首にかけているがま口から硬貨を数枚とり出して投げ込む。
カコンッと悲しい音が鳴った。
霊夢「いらっしゃいませ。何の用かしら?」
現金な巫女だ。
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映姫「貴方はそんなにお金に困ってましたか?」
霊夢「霖之助さんにツケでむしりとられたのよ。あの鬼眼鏡」
ほとんど自業自得ではないだろうか。なんとなく借金で首が回らなくなる人はこういう感じなのだろうかと思った。説教するのも面倒なので本題をさっさと切り出すことにしよう。
映姫「八雲 紫はいますか?」
霊夢「紫? 紫なら最近姿を見ないけど」
どうやらあてが外れたようだ。となると紫にあるのは絶望的だろうか。
映姫「霊夢、物は頼みなのですが、紫が現れるまで博麗神社に住ん」
霊夢「却下」
映姫「食費はこっちもちで」
霊夢「もう、しかたないわね」
説教をする気はないが、この巫女はもう駄目だと思う。
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映姫「今日で一週間ですか。もう冬眠は終わったころだと思ってたのですが」
霊夢「アイツは気まぐれよ。いつ来るかなんて誰もわからないわよ」
それでも少しは焦燥感が募る。このまま時が過ぎていくだけの無駄な時間は過ごしたくない。しかしどうしようもないのもまた事実だ。
小町「四季様〜。今日の晩御飯買って来ましたよー」
悩んでいるといつも通りののんきな小町の声が聞こえた。
どうやら買い物に行ってきたようだ。
小町「あと、これー」
小町が何か抱えている。子供くらいの大きさの
橙「にゃあん………」
橙だった。
映姫「誘拐ですか」
小町「え!? いやいや、八雲に一番つながりがあるのこの子だと思いましてですね?」
映姫「霊夢、事件ですよ」
霊夢「妖怪同士の争いごとなんててんで興味ないわ」
小町「違いますって!!」
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映姫「さて冗談はさておき、橙。今紫はどうしているのですか?」
橙「えっと、紫しゃまは飯屋男と一緒に」
映姫「飯屋男?」
橙「人間の里のご飯屋さんの息子さんで、今うちで働いてます」
あの紫が人間を雇った? 一体なんで? きまぐれだろうか。とりあえずだからこっちへこなかったのか。
霊夢「神隠し?」
橙「違うです。うちに働きにきたんです」
霊夢「へぇ。物好きもいたものね」
小町「それでどうします? 橙をこのまま捕まえておけばいずれ式神のほうが来ますよ?」
映姫「そうしましょうか。他に打つ手もありませんし。というわけで橙、しばらくここにいなさい」
橙「え、でも紫しゃまと藍しゃまが」
映姫「大丈夫です。私が責任を取りますから」
橙「にゃぁん………」
橙が困ったように鳴いた。しかし他に打つ手はないのだから橙を縛ってでも私は前に進まないといけない。
映姫「………まったく、面倒なことになりましたね」
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時系列一番最初か
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紫「で、一体何の用かしら」
橙を三月精で遊ばせておいて、私は縁側でゆっくりお茶を飲んでいると、幻想郷の賢者のうちの一人。八雲紫がスキマから現れた。
映姫「そうですね。とりあえず秘密なお話なので、人払いの結界を張っていただけると嬉しいのですが」
紫「人払いの結界? そんな大事な話なのかしら?」
映姫「私にとっては一大事。貴方にとってはただの出来事でしかないですね」
紫「あら、そこまで素直に話しておいて、貴方のことを嫌ってる私がいいわよと頷くと思ってるのかしら? 私は相手の弱みを見つけたらそこを叩きに行く妖怪よ?」
映姫「えぇ、それは存じております。白と黒、そのスキマをなくされては困るのが貴方ですからね。ですが、貴方はこの申し出を断れない」
紫「なぜかしら? 白と黒をはっきりさせてスキマを使えなくするの? でも私にはスキマ以外にも打つ手はあるのよ? スキマだけで幻想郷の最強の一角に立てるはずないって貴方も知っているでしょう?」
映姫「そんな好戦的な話ではありませんよ」
そして平和的な話でもない。紫にとってはこの提案は限りないほど残酷だ。ほとんどの動きを縛れるくらいには。そう、彼女が他ならぬ八雲 紫である限り。
映姫「幻想郷の死者の動きを全て縛ります。輪廻を含め全て」
紫「っ! それは」
映姫「このままでは人間の数が緩やかに減り、やがて幻想郷はなくなる。貴方の愛した幻想郷が」
紫「閻魔である貴方がそんな脅しを使ってくるとはね。だけど、そんな提案は」
映姫「使えますよ。幻想郷は人間や動物などの輪廻を繰り返す生き物のためには出来てはいないイレギュラーな土地なんですよ。だからこそ、私はあなた方の意思なんてまるっきり関係なく、私はここにすむ人々のために幻想郷を破壊することができる。さてどうしますか? 今幻想郷の命運は貴方の手の中にありますよ。どうすればいいか賢い貴方ならお分かりでしょう? さて早く返答を聞かせてもらいませんか?。私にとって都合の良い答えを」
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私の提案に対する紫の答えはイエスだった。
いらだたしそうに結界を張る紫を見ながら、さてこれからどうすればいいかを考える。隣に座らせた小町は眠そうにあくびをしているし、どうやら役にはたってくれなさそうだ。
紫「張ったわよ」
映姫「えぇ。では本題に入る前に、一つ暴露しておくことが」
紫「なにかしら?」
映姫「私は現在、閻魔ではありません。クビになりました」
紫の目が大きく見開かれて、次に睨みつけられる。何かを言いたそうにしているが、怒りで言葉がつまっているらしい。
映姫「えぇ、騙しましたよ。今私は閻魔ではないので」
紫「………すーはー………で、結局話って何?」
映姫「実はですね」
今までのことを話す。判決ミスのこと、その白衣兄の弟が人里から消えたこと。紫は初めは普通に聞いていたが、しだいに困惑した表情になった。
紫「判決ミスなんて、そんな事あるの?」
普通はない。というかほとんどない。浄玻璃の鏡は真実しか映さないのだから。犯行現場も見た。覆しようのない黒、だったはずなのだ。
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小町「あたい達が見た真実って、あれ、本当なんですかね」
今まで大人しくお茶と饅頭を口にしていた小町が突然口を挟んできた。
映姫「はい? 浄玻璃の鏡は真実しか」
小町「そういうことじゃなくてですね」
小町は饅頭を一口かじって、こういった。
小町「白は白、黒は黒。まぁ、当たり前ですけど。そこが覆せないなら、あたい達が見たのって本当に黒ですかね?」
映姫「どういうことです?」
紫「閻魔様は今答えが違うといっているけど、貴方は答えが間違ってるのは式が間違っているからと言いたいのね」
小町「いえーす。ザッツライトですよ」
映姫「つまり、どういうことです?」
小町「殺したことは覆せないのなら、こう考えましょう。なぜ無罪かではなくどうしたら無罪になるか。黒を白にするにはどうすればいいか。限りなく黒に近い白はどうやれば作れるのか」
映姫「小町………言うのが遅くないですか?」
小町「すいません。ちょっと考えてたんで」
紫「人を殺しても良い理由?」
小町「えぇ。思いつきませんでしたけどね」
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紫「あ、一つおかしなことがあったのだけど、良いかしら?」
映姫「なんですか?」
紫「関係はないと思うのだけど最近新しい奴が増えたのよ。博麗結界は揺らいだ覚えはないから、多分外からの侵入ではないと思うのだけどね」
映姫「しかし無縁塚があるんですから入ってきても気づかない事だってあるのでは?」
紫「あんなのが入ってきたらどこにいたって気づくわよ。なのに気がついたらいた」
小町「あんなのって、なんです?」
紫「崇徳天皇。本物かは知らないけど、力はあるわよ」
映姫「なぜ幻想郷の管理者である貴方がそれを放っておいているのですか!?」
紫「私だって放って置きたくなんてないわよ。だけど消えては現れ、消えては現れ。位置が全然分からないのよ」
小町「面倒ごとが増えてきましたね」
本当頭痛いことばっかりが増える増える。厄年? 御祓いに行ったほうがいいのだろうか。
紫「閻魔の解雇、いつの間にかいた大悪霊。異変じゃなければいいけど」
映姫「今の時点ではなんとも」
紫「そうよねぇ」
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紫が色っぽくため息をつく。………私だってその気になれば色っぽいため息だって出せる。だせるはず、多分。いや、今はそんな事考えている場合ではなかった。
紫「じゃあ、崇徳天皇(仮)についてよろしくね〜」
映姫「え、丸投げですか!?」
紫「さっきの仕返し。頑張ってね」
そう言ってスキマにはいって消えていく紫。クビ入れた瞬間にスキマを閉じて、お手軽断頭台にしてやろうかと一瞬思ったが、さすがにそれはグロいのでやめておく。代わりに小町の頬を抓っておいた。
小町「いひゃい!?」
さて、とりあえず崇徳天皇について調べよう。
となると、資料が必要だから阿求に会いに行かないと。
バサバサッ
外から何か羽ばたくような音。なんの鳥だろうと外を見た瞬間に目の前に広がる白。
映姫「いたたっ!?」
何かが顔に飛び込んできた。ふわふわする。しかしがりがりもする。なんだこれ………何これ!?
小町「おー。伝書鳩。地獄からですね」
小町が私の顔から伝書鳩を引き剥がす。傷はついてなかったが、ひりひりする。
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映姫「で、なんと書いてあるのですか?」
ぶつけた鼻をさすりながら、手紙を読んでいる小町に聞く。返事は帰ってこなかったが手紙を読み進める小町の顔がどんどん苦虫を噛み潰したような顔になってるので、どうやらあまり良いことではないのだろうという事はわかった。
小町「じっちゃんが呼んでます」
映姫「御爺様がですか?」
小町「一回地獄に戻って来いだそうです。怒られるんですかね」
まぁ、いきなり仕事をやめた形になるのだから御爺様としては気になるのだろう。
映姫「では私は秦広王様とお話がしたいので、着いていきましょう」
小町「遠いんだけどなぁ」
映姫「距離を操ればいいのでは?」
小町「そうですけど、あたい、それでも疲れるんです」
映姫「時間を浪費するよりはマシでしょう」
小町「拒否権は?」
映姫「ありません」
小町「とほほ」
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地獄はとにかく暑い。いや熱いと形容したほうがいいかもしれない。是非曲直庁はまだ涼しくはあるのだが、それでも40度は超える。その熱さは進むごとにどんどん熱くなり、ほかの閻魔殿に行くと気温は優に70度を超える。中心からだいぶ離れた閻魔殿ですらこれなのだから、実際に刑を行う場所がどれだけ熱いかは分かるだろうか。数万度は普通に行く。漆黒の地獄なんかは温度が分からないくらいに熱い。
小町「はぁ。やっぱりここまでくると熱いですねぇ」
隣の小町が熱い熱いといっているが、それほど汗はかいていない。やはり小町も地獄の住民なのだなぁ、といまさらに思う。
映姫「まだ中はクーラーが効いているので涼しいでしょうから我慢しましょう。なんなら八寒地獄の方、行きますか?」
小町「いや、あたい八大産まれなんで、冷たいのだめです」
映姫「でしょうね」
私だって嫌だ。
映姫「生身の人間が迷い込んできたら、死にますよねこれ」
小町「じっちゃん生きてるし、案外大丈夫なんじゃないですか?」
映姫「あぁ、そういえば前例ありましたね」
数百年前に迷い込んできた、小町の御爺様。今では秦広王の補佐官をしている。いわゆる公務員だ。元は人間だったが、今は死んでいるので外見の年はかなり若く見える。
映姫「あれ、小町って、幽霊の子でしたっけ」
小町「じっちゃん幽霊じゃないですよ? 補佐官になるときちゃんと体もらいましたから」
そういえば御爺様と話したことないし、お会いしてみるのもいいかもしれない。
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小町「やれやれ。やっとつきましたね」
映姫「それでも、ずっと速くついたからいいではないですか」
閻魔殿、これは十個あるうちのひとつで、最初の審判を司る、秦広王の閻魔殿だ。
小町「あたいの距離を操る能力にも限界があるんですけどね」
映姫「修行をしなさい。修行を」
亡者が並んでいる玄関からではなく、職員用の入り口から入る。現在閻魔ではないが、職員とは顔見知りなので特別に通してもらった。
小町「結局四季様も来るんですね」
映姫「お爺様とまともに話したことないので」
小町「なんてことのない人ですよ?」
映姫「うわさでは頭の回転がやたら速いとか」
小町「あたいじっちゃんが仕事してるところみたことないですもん」
映姫「もったいないですね」
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小町「えっと、たしかここがじっちゃんの仕事場だったはず」
映姫「ここですか」
ガチャッ
篁「お、やっときたね、小町」
中に入ると、着物を着た男性。見た目は20代そこそこに見えるが、実際は千数百歳らしい。
この男性は小野 篁(たかむら)さん。小町の御爺様で、秦広王の補佐官をしている。私は本庁務めではないので、実質、御爺様のほうが私よりも立場が上だったりする。
篁「っと、君はたしか。地蔵からの出世組で」
映姫「お初にお目にかかります。四季映姫と申します。わけ合って今はヤマの名はありませんが」
篁「そんなかしこまらなくてもいいよー。僕は小野 篁。ここの小町のおじいさんで、秦広王の補佐官やってるよー。そういえば裁判ミスだって?」
映姫「はい」
篁「普通記録とか、浄玻璃の鏡とかあるんだし、間違いようがないと思うけど。誰かが細工をしたのかな」
記録………そういえば。
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映姫「小町。記録。すべて見直してみましょう」
小町「え!? 人一人の人生って短くても読むのに結構時間かかりますよ?」
篁「え? 記録所行くの?」
映姫「えぇ、篁さんは小町に何か御用でしたようなので、小町は置いていきますが」
篁「別にいいよ。僕も記録所ついていくからさー」
小町「え!? じっちゃんついてくるの!?」
篁「なんだい、嫌なのかい?」
小町「だって、怒るんじゃないのか?」
篁「怒らないよー? ただ映姫ちゃんについていくなら、なんとなく教えたいことがあったからさー」
小町「教えたいこと?」
篁「えっとねー。存在しない人間が一人、悪いことしようとしてるよー」
存在しない人間? どういうことだろうか。こいし、ではないだろう。あれは起こしたことが結果的に悪いことになることがあるだけで、悪いことを起こそうとはしないはずだ。
映姫「どういうことです?」
篁「上でまあちょっといろいろねー。だから大声じゃ言えないんだけど、今回それが原因みたいだよー」
そういってにへらと笑った篁さんはいったい、今回の件をどこまで知っているのだろうか。あるいみ人のよい笑みがポーカーフェイスのようで考えていることがまったく読み取れなかった。
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篁「そういえば最近食堂でねー」
世間話をしている、篁さんには申し訳ないが、今はさっきの言葉の意味を考えるしかない。やっと手に入ったデータ。存在しない人間? 上で起きた事件? なんだ、いったい地獄で何があったんだ。
篁「映姫ちゃん?」
映姫「っ え、あ、すみません」
だめだ、今の情報では何も思いつかない。せめてほかの情報があればいいのに。
篁「ぼーっとしてたら何か情報を聞き逃しちゃうかもよー?」
映姫「は、はい。それで何の話でしたでしょうか」
小町「ただ食堂でおいしかったものの話くらいですけど」
篁「別に何気ない会話だよー。意味なんてない。だけど、人の言葉の揚げ足はできるだけとるようにねー」
映姫「御教授ありがとうございます」
篁「あー。もうすぐつくよー」
どうやら私はずいぶんと考え込んでいたらしい、すでに目の前には記録所と書かれた、部屋があった。
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篁「じゃあねー。ばいばーい」
小町「ついてきただけ? じっちゃん」
篁「あー、今ごたごたしてるからねー じゃあねー」
映姫「待ってください。ごたごたとは?」
篁「いきなり突っ込んでくるねー まぁいいよ。おまけに情報あげちゃうよー」
小町「ありがとうな、じっちゃん」
篁「一人ねー、亡者が逃げちゃったー」
映姫「!? 大事件ではないですか!」
篁「うんー だから上も早く解決して隠そうとしてるんだけどー だめだねー」
映姫「その逃げた亡者はなんていう」
篁「ストップー。もうおしまいだよー。これ以上は僕の首が飛んじゃうからねー」
映姫「…ありがとうございました。お気をつけて」
篁「小町ー たまには遊びにきなよー? ばあちゃんも待ってるよー」
小町「あー。ばあちゃんの作った料理食べたい」
篁「うんうん。楽しみに待ってるねー」
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小町「そういえば、人間の記録ってどうつけているですか?」
映姫「そんなことも知らなかったんですか?」
小町「あたい、あんまり中には詳しくないですからね」
映姫「人には二柱の倶生神がついていてですね。男神「同名」が善行を、女神「同生」が悪行を記録して、それをついている人間の死後この記録所に伝えてくるんですよ。それをまとめているのがここの中で働いている人たちですね」
小町「大変そうな仕事ですね」
映姫「大変ですよ」
記録所に入ると、中ではかりかりと何かを書き続けている音が聞こえる。そのほかに雑音はなく、逆にその音が静寂を痛いほどに感じさせる。息が詰まりそうだ。
映姫「早く受付に行って記録を受け取りましょう。私、ここ苦手です」
小町「あれ、四季様なら、静かなの好きだと思ったんですけど」
映姫「静かなのは好きですけど、こんな息が詰まりそうな静寂はいやです」
小町「あたいも嫌です。早く貸してもらいましょう」
-
小町「あー。もう行きたくないですね」
映姫「そうですね。返却するときにもう一回行かないといけませんが」
そういいながら私は、手にした本を適当に開く。どうやらささいな出来事まで書き込まれているようなので、必要なページを調べるのに時間が要りそうだ。
映姫「小町、手伝いなさい」
小町「えぇー阿求に手伝ってもらえばいいじゃないですか。阿求、昔記録所居たことあるんでしたよね」
映姫「だめです。もしこれが上の事件に関係することだった場合、人間に見せたりなんかした場合、今度は完全に首を切られます」
小町「そうですか。あたい、本読むのあんまり好きじゃないんですけど」
映姫「つべこべ言わず読みなさい」
小町「四季様は?」
映姫「私はこっちを読みます」
小町「なんですかそれ」
映姫「崇徳天皇の情報ですよ。記録所に悪霊としての崇徳天皇の情報があったので。こっち見ますか?」
小町「おとなしくこっち読んでます」
映姫「よろしい」
-
映姫「なるほど、自らの祈りを呪いとみなされ、悪霊になる………悪い人ではなさそうですが。小町、そっちはどうですか?」
小町「久しぶりですよ。こんなに字読んだの。まだ半分までしか読んでないです」
映姫「早く読み終わりなさい」
斜め読みで崇徳天皇の生涯と悪霊となった後のことを見たが、治安を悪くしたり、竜巻や火災を起こす。これが幻想郷で暴れるとどうなるか。
今までもひどかったですが、明確な悪意のため嫌な異変になりそうですね。
ちょうどいい、小町が読み終わるまでに情報を整理しておこう。
-
まず、白衣兄がなぜ少女を殺したのか。
………これはまだ原因がはっきりしていない。
崇徳天皇がなぜ幻想郷に現れたのか
………地獄から逃げ出し、幻想郷にやってきた。これは篁さんが亡者が逃げ出したといっているし、一番自然な考えだろう。
白衣兄と崇徳天皇になんの関係が?
………現時点では不明。
悪事を働こうとしている存在しない人とは
………分からない。存在しない人について調べてみたいが、調べようがない。
やはり情報が少ない。駄目だろうか。
-
小町「あ!」
小町が何か驚いて声を上げる。椅子に座って考え込んでいる私のほうを振り向き本の一箇所を指差した
白衣兄。怨霊に襲われる。そう、書いてあった
映姫「日付は?」
小町「今から半月前です!!」
映姫「浄玻璃の鏡でその現場を見ましょう」
なんとか繋がった。しかしその悪霊は本当に崇徳天皇か? いや、悩むよりも見るほうが先だ。
小町「四季様。是非曲直庁と繋ぎました」
映姫「えぇ、では行きましょう」
-
一歩踏み出すとすごい勢いで景色が流れていく。建物の中だった私の体は足を前に出すといつの間にか炎がまぶしい地獄に。そして足を地面につけると見慣れた是非曲直庁にあった。
小町「さぁ、早く見ましょうっ」
いつもマイペースな小町が珍しく慌てている。
映姫「大丈夫です。浄玻璃の鏡はなくなりませんよ」
小町「それもそうですね。のんびり行きましょうか」
映姫「あなたは少し極端すぎる」
といっても私も早く浄玻璃の鏡を見たくてたまらない。
これでヤマザナドゥに戻れるのだ。そう
映姫「安定した公務員生活!!」
小町「四季様。口に出てます」
しまった。
まぁいっかと笑ってごまかし、現在の代理ヤマザナドゥに事情を言って見せてもらおう。
獄卒「あっ! 四季様!!」
そんな私たちの考えは、否定され、いかに現実が厳しいかを嫌というほど教えてくれた。
獄卒「侵入者がやってきて、浄玻璃の鏡を破壊していきました!!」
-
浄玻璃の鏡が破壊された。
誰だ、なくならないとかいったやつ。
………私か。
なんだこの神生。難易度ルナティックすぎるだろ。神様が嫌がらせをして大爆笑してるとしか思えない。私も神様だけど。
気分的に、100万円の目の前の落とし穴に落ちる。ボスを倒したと思ったら第二形態もあった。そんな上がって下げられるバレーのトス、アタックみたいなそんな気分だ。
あーなんだ、もう嫌だ。ニートでいいからだらだらしてちゃいけないかな。
ほら、がんばったしさ。それかまた地蔵に戻ってのんびり暮らすのもいいかもね。
小町「四季様!?」
………現実が嫌で、あきらめようとしていた私が呼び戻される。
目の前にいるのは小町。それと仕事着の私と同じ格好の女性。おそらく現ヤマザナドゥだろう。
映姫「あー。えっと、おはようございます」
小町「しっかりしてください四季様」
駄目だ、まだ頭がしっかり回らない。私は四季映姫、だよね。そこらへんの獄卒とかじゃないよね。
足元が無くなった気がして、地面を見る。暗闇じゃない、ちゃんと立ってる。うん。
映姫「すみません。最初からお願いします」
-
ヤマ「侵入者なのですが、金髪の巫女と、黒いフードをかぶった男です」
誰だよそいつ。知らないよ? 金髪の巫女なんてそんな素敵趣味を持った知り合いなんてどこにも存在しないし聞いたことすらないよ?
ヤマ「写真がこちらです」
ヤマザナドゥから写真が手渡される。女のほうは確かに金髪で紅白の巫女服を着ている。感じ的には魔理沙と霊夢を足して2で割ったような感じだ。
ヤマ「すみませんが、この二人の調査もお願いできませんか?」
映姫「それが私の事件に関係があるのですか?」
ヤマ「今は分かりません」
そうだろう。この二人の素性が分かってるのなら今頃お縄だろう。
映姫「分かりました。可能性のひとつとして調べましょう」
ヤマ「ありがとうございます」
現ヤマザナドゥの顔がぱっと輝く。どうやらこの責任を取るのは彼女らしく、事件が解決しなかった場合クビをきられるのだろう。
-
ヤマ「これをどうぞ」
ヤマザナドゥが手渡してきたのはなにやら白い箱。あけてみると20本ほどの白い筒が入っている。
映姫「タバコですか? 吸わない主義なのですが」
ヤマ「これは吸うと外界の情報を遮断して自分の世界に入り込める道具です。考え事に浸りたいときに使ってください」
映姫「分かりました」
タバコを受け取って胸ポケットにいれる。
小町「これからどうしましょう」
映姫「とりあえず写真の人物の特定からです。人間なら慧音。妖怪ならば紫に聞きにいきましょう」
小町「分かりました」
ヤマ「お願いしますね。私は動けないので」
ヤマザナドゥに別れを告げ、一歩踏み出す。
小町によって圧縮された距離を越え、人間の里の入り口に到着する。
映姫「やれやれ、一難去らずに難ばかりが増えていきますね」
貯まるのならお金や暇ならば良いのに。
-
ざわざわとした人ごみを越え、目的地である寺子屋へと向かう。その途中に紅白の巫女が見えた。残念ながら金髪ではなく黒髪だったが。
霊夢「あら、おかえり。あんた達」
霊夢に呼び止められ、立ち止まると霊夢が小走りでこっちに向かってきた。
手提げかばんに入っているのは食材なので、買い物をしていたらしい。
ちょうどいい、巫女のことなら巫女に聞けばいい。もらった写真を霊夢に見せる。
霊夢「? 誰これ」
映姫「知りませんか? あなたによく似た格好なのですが」
霊夢「知らないわよ。幻想郷で巫女っていったら私と早苗とあと………いない、わよね」
映姫「歯切れが悪いですね」
霊夢「いた気がしただけ。先代はもういないし、やっぱりいないわ」
映姫「そうですか」
すぐに解決するなんてないと思ったが、やはり少し期待しただけあって落胆する。
しかし霊夢が知らないってことは巫女服を着てはいるが巫女ではないということだろうか。
-
小町「っていうか金髪に巫女服なんて格好なら目立つしうわさぐらいは流れてますよね」
霊夢「噂ねぇ。そういえば噂なら詳しそうなやつがいるじゃない」
小町「あ、そういえばそうだねぇ。聞いてないや」
霊夢「後でたぶんあいつあたしのところ来るだろうから来たら?」
映姫「あ、そういえば提案なのですが、またしばらくとめてはいただけませんか?」
霊夢「食費は?」
映姫「こっちもちで」
霊夢「のった!」
-
仕事ばかりの俺に残された数少ない楽しみ…
-
無茶苦茶更新かかってるな今日は
-
霊夢に別れを告げ寺子屋へと急ぐ。
寺子屋は人間の里のほとんど中央にあるため、外からだとなかなかの距離を歩くことになる。
小町の能力を使って距離を縮めればいいと思ったが、どうやら縮めた距離の中を人間がたくさん通ることになるため衝突事故や一瞬で景色が変わったことに対する混乱を招くので使えないらしい。
なので神と死神はえっちらおっちらと徒歩で歩いている。
そういえば地蔵時代は動けなかったから、昔は歩くことすら面白かったなぁ。
でも日々をすごすたびに面白いはなくなって、代わりに当たり前やつまらないばっかりになってきたのだった。
いづれ、私はすべてのことを面白いという観点で見れなくなってしまうのだろうか。
それは少しさびしい。
小町「四季様?」
映姫「え、あ。どうしました?」
小町「なんだか悲しそうな顔してたので」
どうやら表情に出ていたようだ。顔をこすって表情を普通に戻し、えへへと笑ってごまかす。
小町「………もしなにか相談したいこととかあったらあたいに言ってくださいね。聞きますから」
映姫「生意気ですね」
なんとなく心を読まれたのが悔しくて、悔悟棒で小町を叩く。小町は「きゃんっ」といつもどおり鳴いて、涙目でこっちを見てきた。
-
寺子屋に着くと、外で子供たちが元気に遊んでいた。人間とともに幼い妖怪もだ。
人間と妖怪の共存。もしそんなことが起きたならば幻想郷は本当の意味で幻想郷になれるのではないだろうか。
紫にああは言ったが、私だって妖怪が嫌いというわけではない。好きな妖怪だってたくさんいる。そもそも嫌いならば宴会なんていかない。
ほほえましくその様子を見守っていると寺子屋からついさっき聞いた声が聞こえた。
慧音「ではよろしく頼む」
紫「分かってるわ。それじゃ、ってげ………」
映姫「人の顔を見て、それはひどいですね」
紫「なんでいるのよ」
映姫「まぁ、二人そろっているのなら話は早いです。二人に聞きたいことが」
紫「また? ネタ明かししてるのに、いまさらあなたのこと聞くとでも?」
映姫「ヤマザナドゥはやめましたが、神はやめた覚えはありませんよ?」
慧音「まぁまぁ、そう喧嘩せず、仲良くしようじゃないか」
小町「そうですよ。小さい子に悪影響です」
紫を慧音が、私を小町が抑える。私は喧嘩しようとはしてない。あっちが喧嘩を売って来たから買っただけだ。
慧音「とりあえず中に入ろう。立ちっぱなしもなんだからな。入るといい」
-
招かれ中に入ると、心休まる木の香りがした。
慧音「こっちだ」
慧音がとある部屋にはいって手招きをした。どうやら職員室らしいが、慧音以外の姿はない。
映姫「慧音一人でやっているのですか?」
慧音「いや、妹紅や紫なんかのほかの人に頼むときもあるよ。子供の数が多くて、私一人では足りないんだよ。人間の里ではこうやって不特定多数の子供に勉強を教えるところが、ここか、命蓮寺しかないからな」
映姫「教員を募集すればいいのでは?」
紫「基本的の数学家なんかは弟子を取るから、こうやってみんなに教えるってことはしないのよ」
映姫「それは困るでしょう」
慧音「まぁな。でも子供達の成長を見るのはとても楽しいぞ」
映姫「そうですか。私は基本的に生者より死者をみているので、一度子供達の成長を見守ってみたいですね」
小町「四季様有給貯まってるんですから使いましょうよ」
映姫「そうですね。ヤマザナドゥの代わりもいることですし。3年ほど有給を取って教員をしてみましょうか」
慧音「それはありがたいのだが、地獄の有給制度について疑問を持たざるを得ないな」
小町「千年も働けば貯まるよ?」
慧音「そうではなく、いやまぁいい。本題に入ろう」
-
慧音「適当な椅子に座ってくれ。といっても上等な椅子はないが」
言われたとおりにそこらへんにあった木の椅子に座る。子供用らしいがジャストフィットしてしまった。そんな自分の体系が嫌になる。
映姫「そういえば子供達の面倒は見なくていいのですか?」
慧音「あぁ。今は妹紅が見ているよ」
なるほど、ちょうど来ていたようだ。子供を相手にする妹紅が見てみたかったが、今は事件のほうが大事なので解決したら見に来ようと思う。
映姫「まず、この写真を見てください」
紫「これは、霊夢………じゃないわよね」
慧音「こっちは………駄目だ。フードで分からない」
どうやら二人とも知らないみたいだ。
慧音「これは人なのか? 人間の里の住民は全て分かるから人間ではないと思うのだが」
紫「妖怪でも知らないわ。人間の形をしているってことはそこそこ力のある妖怪だと思うけど、そこそこ力のある妖怪なら私が知らないわけないし………幻想入り、かしら」
………どうやらしらないようだ。これは幻想入りしたばかりの人間。あるいは妖怪なのだろうか。
なぜ幻想入りした連中は揃いも揃って異変を起こすのか。
-
なんか地の文もかなりレベルアップしてきてるな
-
小町「四季様」
小町が何か思い当たったように私の名前を呼んだ。
映姫「なんですか?」
小町「これが悪さをしようとしている存在しない人間ってやつじゃないですか?」
映姫「………かもしれませんね。タイミングが良すぎますし」
慧音「どういうことだ?」
映姫「存在しない人間というのを私は探しています。どういう意味なのかは分かりませんでしたが、おそらく。誰も知らない人間でしょう」
慧音「どういうことだ?」
映姫「それはまだ分かりません」
これ以上は知りえようがない。存在しない。つまり誰も知らないことを知ることはできない。やはり直接見つけるしか方法はないのだろうか。
映姫「これはもしかすると異変に繋がるかもしれません。二人とも警戒をよろしくお願いします」
紫「分かったわ」
慧音「分かった。人里で見かけたら知らせよう」
-
まさか冴t
-
映姫「そういえば、なぜ紫は寺子屋に? 教師をしていたのですか?」
紫「今日は違うわ」
慧音「私が人間の里のことで呼んだのだ」
慧音が紫を呼ぶ理由。
考えられるのはやはり、人間の里で何かするか。もしくは何かが起きた。この二つのどちらかだろう。
慧音「最近人間の里で暴力沙汰が多いんだ。無差別ではなく、夫婦や恋人などの仲の良い者通しのどちらかが突然人が変わったように相手に殴りかかる。幸い今のところ死者はいないが」
慧音は口を濁したが、おそらくこのままでは死者が出るといいたいのだろう。状況を聞いた限り、いつ出てもおかしくはなさそうだ。
人間の里の守護者である彼女にとっては里で事件が起きるということはとてもつらいことなのだろう。死者が出るという可能性を言葉にできず、唇をかみ締めるほどに。
慧音「すまないとは思うが、この事件について何か知っていることがあったら知らせてくれ。頼む」
人間が間違った道を歩もうとしているのなら止める。それが元とはいえ閻魔の仕事だろう。
映姫「どうやら間違っている人間が多すぎるようです。ここらでひとつ説教をしなければいけないですね。力になりましょう」
小町「え、でも四季様が説教するのは、閻魔の時の性格であって今は違うって言ってませんでした?」
映姫「黙りなさい」ぽかっ
小町「きゃんっ!!」
-
慧音「では頼む」
紫「何か分かったら知らせるわ」
映姫「えぇ、そちらもよろしくお願いします」
慧音「あぁ、知り合いに聞いて回ってみよう。もし人間の里に来ているなら、分かるだろう」
紫「それでは失礼するわ」
紫が地面にスキマを作って落下していくように消える。たいていの場所ならば自由にいけるスキマを使える紫に、人間の里の全てを網羅しているといっても過言ではない慧音。
この二人が力になってくれたので、捜査がずっと楽になるだろう。
小町「四季様ー はやくあの烏天狗に話を聞きに行くため博麗神社行きましょうよー」
気がついたら小町が人ごみの向こうで手を振っていた。
人間の里を出るまで能力は使えない。どうせ歩かなければいけないのなら霊夢の機嫌をとるために洋菓子でも買って帰ろう。
決して私が食べたいわけではない。決してだ。
-
小町「四季様、遅いです。なんですか洋菓子屋に30分って」
映姫「すみません」
小町「それでケーキを二つ眺めて、白黒つけがたいって。自己否定ですか?」
映姫「すみません」
珍しく私は小町に怒られていた。洋菓子屋でどっちのケーキを食べようかと悩んでいたら30分以上立っていたらしく、のんびりやの小町が珍しく怒った。
小町「早く烏天狗が帰るまえに博麗神社に行きましょうよ」
映姫「あ、プリンも」
小町「怒りますよ?」
すでに怒っている。今日の小町はなぜこんなに怒るのだろうか。甘いものはいくらでも眺めていれるのが乙女ではないだろうか。
映姫「行きましょうか」
珍しく小町が怖いので、足早に人間の里の入り口に向かって急いだ。
-
支援
-
じゃあ俺も支援
-
支援
-
無駄に長い階段を上るとそこにはご存知妖怪憩いの場、博麗神社。景色がいいことと沸いて出てきた温泉ぐらいしかいいことがない。
映姫「これ河童に命じて自動で動くようにしましょうよ。外の世界にあるでしょ、そんなの」
小町「いやいや、人の土地を無断で改造しないでくださいよ」
映姫「だって、面倒だし、背負ってくださいよ小町」
小町「飛べばいいじゃないですか」
映姫「非常時でもないのにそんな疲れることしたくありません」
文「空を飛ぶのはそんなに疲れることではありませんよ」
少し顔を上げると、誇大広告拡大解釈上等の迷惑ばら撒き装置射命丸 文がいた。
文「どうも清く正しい射命丸 文です」
映姫「ギルティー!!」ゴスッ
文「あやや!?」
ドシンッ
映姫「今の私は飛ぶ鳥をも落としますよ」
小町「鳥っていうか天狗じゃないですか。というか鬼ですか?」
映姫「神です」
-
文「ひどいですねぇ。私が何をしたというのですか」
映姫「………生きているということは罪なのですよ?」
文「えぇ!?」
小町「閻魔としては言ってること間違ってないんですけど、殴った言い訳にしか聞こえませんよ」
霊夢「お帰り」
映姫「ただいま戻りました」
小町「お菓子買って来ましたよ」
霊夢「ありがと、お茶いれてくるから縁側で待ってなさい。どうせ文に聞きたいことあるんでしょ?」
文「そういえば私に聞きたいこととは?」
映姫「捜査協力をしてもらおうかと」
文「捜査協力、ですか?」
映姫「つべこべ言わず情報ださんかい! いてこますぞわれぇ!!」
文「ひぃ!!」
小町「四季様、無意味に脅さないでくださいよ。かわいそうですから」
-
小町のじっちゃんがどうしても鬼灯の冷徹の方がちらつく
-
>>62
お前は俺か
-
文「金髪の巫女がいるから、それについて何か噂が流れてないか私に聞きたいというわけですね」
文はなるほどとうなずいて、懐から黒い皮製の手帳を出した。どうやらそれがネタ帳らしい。思い当たる節があったらしく、ぺらぺらとめくって、あるページを開いた。
文「ありましたありました。これですこれ」
手帳を受け取り、読んで見るとそこには『金髪の巫女!? 新しい勢力の誕生か』とゴシップのような見出しが書かれてあり、下に細かな情報が書き込まれてあった。
要約するとその金髪の巫女はたまに人間の里で二胡を引いているそうだ。そうして人を集めてもおひねりとかを要求しないので別に大道芸人とか言うわけでもなく、何をしたいかの目的は不明。毎回さとりの女性が迎えに来るまではずっと引き続けているらしい。
映姫「人間の里に現れることがあるのですね」
小町「でもなんで慧音は知らなかったんでしょうか」
映姫「たまにしかこないみたいですし、ただの偶然では?」
小町「だといいんですけど」
目的は良く分からないが、人間の里で会えるということは分かった。それだけで大きな収穫だろう。
映姫「では人間の里を中心に探しましょう」
小町「そうですね」
-
文「お役にたててなによりです。それでは私はここで失礼しますね」
霊夢「あら、もう行くの? お茶いれたのに」
奥から霊夢がお盆に買ったケーキとお茶を乗せて持ってきていた。神社にはどうやら紅茶は置いていないようだ。
文「最近妖怪の山に人間が住んでいましてね。その人に会う約束をしているのですよ」
映姫「ほぉ。妖怪の山に人間ですか。上のほうが許さないのでは?」
文「秘密ですよ。発明家の白衣男さんっていうんですけど」
白衣男………どこかで聞いたような。
小町「白衣男って白衣兄さんの弟ですよ!!」
映姫「あぁ、そういえば」
文「? 閻魔様たちのお知り合いですか?」
映姫「知り合いというわけではないですが、探していた人物です。ところでどこに住んでいるのですか?」
文「にとりの家ですよ」
なるほど、では今度会いに行ってみることにしよう。しかし妖怪の山に侵入するのは妖怪が騒ぎそうなので、こっそりと行かなければ。
なんにしろ情報が手に入るのは ありがたい。
-
文「文々。新聞をよろしくお願いしますね〜」ばさばさっ
映姫「お断りします! ごみに出すのが面倒ですから!!」
小町「四季様、たまにはオブラートにつつみましょうよ」
霊夢「それで、結局どうなったのよ」
映姫「大変ですよ。あの金髪の巫女とフードの男がかかわってるみたいだから探さないといけませんし、怨霊も探さないといけないんです」
霊夢「あら、大変なのね」
映姫「異変じゃないといいのですが」
霊夢「そうね、私もごろごろして日々を過ごしたいもの」
映姫「そうですね。私も常々そう思います」
小町「いやいや、働きなよ二人とも」
-
霊夢「あ、そうそう」
霊夢が思い出したように人差し指を立てた。
映姫「どうかしましたか?」
霊夢「霖之助さんにツケを返してあげたときに、なんとなく癪だったから、香霖堂から持ってきたのよ」
そういって袖から黒い手帳を取り出した。
映姫「その袖、物が入るようになっていたのですね」
霊夢「巫女服ってあんまりかばんが似合わないのよ」
なら私服に着替えればいいのでは、と思ったが巫女服以外の霊夢を見たことがないのでもしかしたら巫女服以外持っていないのではないだろうか。
映姫「ところでその手帳は?」
霊夢「事件調査するときに記録しとけばいいんじゃないかなって思って」
小町「事件簿ってやつだね」
映姫「ありがとうございます。使わせていただきます」
小町「なんだか警察とか探偵っぽくなってきましたね」
映姫「閻魔探偵、映姫。いい響きですね」
小町「あれ、あたいは?」
-
映姫「では、これから始めましょうか。私の安定した神生を取り戻すために」
小町「いや、そこは嘘でも幻想郷のためにとか言いましょうよ」
霊夢「いいんじゃない?」
小町「あたいが尊敬していた四季様はどこに」
映姫「照れる」テレテレ
小町「あ、今はそんな尊敬してません」
映姫「!?」
-
7月28日 晴れ
今日は記念すべき一回目の捜査だ。正確には記録を始めて第一回の捜査。
昨日話に聞いたとおりに妖怪の山へ行くことにしようと思う。
ちなみに結局この事件簿の名前は私が閻魔探偵、小町が死神探偵と名づけようとしたので、間をとって地獄探偵にした。
地獄探偵事件簿。閻魔探偵には及ばないがいい名前だと思う。
この事件が終わったら使わなくなるだろうから、そのときは私がもらい、閻魔探偵帳に改名し休日に新たな謎を探しに出かけよう。
地獄から来て、謎を求める探偵。
格好いい。
小町です。
これでは日記と変わらなくありませんか? しかも朝に書くって。
まぁいいですけど。
あと、改名はさせません。
-
朝だ。いつも地獄にいるので、朝の日差しを浴びながら目覚めるのは久しぶりだ。
朝日、すずめの鳴き声。ビバジャパニーズ朝の風景。
小町「むにゃむにゃ、ボーナス………うへへ」
そんなすばらしい朝に浸っていると、後ろで欲にまみれた寝言をつぶやく、無駄に胸の大きい小町がいた。
映姫「まぁ、私は優しいから起こしませんけど」
その代わりに小町の布団を濡らしておこう。主に下半分を。
-
霊夢「朝って、パン? ご飯? ご飯しかないけど」
映姫「ご飯ですね。日本人ですし」
霊夢「朝、ご飯じゃないとおなか空くのよね」
映姫「分かります」
がらっ
霊夢「おはよう」
映姫「おはようございます、小町。? どうかしましたか?」
なぜかずいぶんと小町が暗い顔をしている。悪夢でも見たのだろうか。可哀想に。私の宇宙海賊になってハードボイルドな旅をする夢をわけてあげたい。あ、でも小町がアシスタントのアンドロイドか。どうしよう。
小町「なんでもないです………。あ、霊夢。自分のものは自分で洗いたいのでどこで洗えばいい? 布団と寝巻きを洗えるようなところ」
霊夢「それなら風呂場で洗えばいいと思うけど」
小町「ありがと………」
小町は暗い顔をして、「ありえない。絶対ありえない」とつぶやきながら風呂場に向かっていった。
映姫「そういえば、魅魔とカナと同居しているのでは?」
霊夢「魅魔は今魔界。カナはプリズムリバーのところに泊まりに行ってるわ」
映姫「残念ですね」
-
映姫はじけすぎワロス
-
お漏らし小町って語呂がいいよね
-
霊夢「納豆ってどう思う? 私は好きなんだけど」
映姫「昔はお供え物をもらってましたからね、なんでも食べますよ」
小町「………ただいま」
映姫「おかえりなさい」
霊夢「ご飯できてるわよ」
小町「うん………」
-
朝ごはんを食べ終わったので、そろそろ出かけようと思う。
外を見ると小町の布団と寝巻き。
映姫「………小町ー。地図はどこですかー」
小町「え、ち、地図ってなんのことですか?」ワタワタ
映姫「何をあわててるんですか? 幻想郷の地図ですよ」
小町「あ、そうですよね。えっと地図はいらないんじゃないですか?」
映姫「そうですね、あー、相手が何か情報を漏らさないですかねー」
小町「!! え、えっと、漏らさないんじゃないですかね」
映姫「………なぜそんなにあわててるのですか?」
小町「なんでもないですよ?」
あわてる小町が面白いが、妖怪の山に侵入しなければならないので急ごう。
問題は、千里眼を持つ白狼天狗か。カリカリを持っていけばなんとかなるだろうか。
-
今日は晴天、雲ひとつない空がまぶしい。これで天下泰平世はこともなしだったら良かったのだが、いまだに私はただの四季映姫だ。
妖怪の山は見上げても頂上が見えないほど高く、噂によれば外の世界に通じる穴があるという。
そういえば最近外の世界には出かけてない。たまには旅行に行きたいな。
映姫「小町、こんど外の世界にデート行きましょうよ。ゆっくり温泉につかりたいです」
小町「温泉いいですねぇ。でも温泉なら地底でもいいのでは?」
地底か。そういえば地底にさとりが温泉を作ったという話は聞いたが、結局行ってない。
地底に用事ができたら入ってみることにしよう。
ガサッ
映姫「見つかるのが早いですね。どうやら優秀な番犬がいるようで」
小町「言ってる場合ですか。どうするんです?」
映姫「見つかったものは仕方ないでしょう。交渉ですよ」
椛「こちらとしても力づくで説得はしたくないので、ありがたいですね」バッ
映姫「抜き身の剣を突きつけられてると説得力がありませんよ」
現れたのは純白の髪に同じく純白のもふもふ尻尾を持った犬走 椛。外見はかわいいのだが、こちらをにらんでくる瞳のせいでかわいさ30%減というところだろうか。もったいない。
さて、これをどう切り抜けるか。さすがに天狗を敵に回すのは得策ではない。なんとかして中に入れるようにしてもらおう。
-
映姫「こんにちわ、いい天気ですね」
椛「そうですね。このまま天下泰平世はこともなしだと良かったのですが」
あ、この人私とおなじこと言ってる。少し親近感。
椛「何かよからぬものが入ってきたようで、森が荒れているんですよ」
映姫「というと何かあったのですか?」
椛「………部外者に話すことはありません」
映姫「小町、このわんこ、クソまじめですよ。見習いなさい」
小町「四季様もですね」
映姫「やれやれ、困りました。事件の調査に来ただけだったのですが」
椛「事件………?」ピクッ
映姫「この人物を探しています」ぴらっ
写真を椛に見せる。椛は写真を見た瞬間に、驚き、そして少し考え込んだ。
どうやら何かを知っているようだ。
状況から察するに、このどちらか、あるいは両方が妖怪の山に侵入したのだろう。
-
椛「少しここで待っていてください。絶対に動かないでくださいね、絶対ですよ。それでは」
そう念を押して椛は山の中に走っていった。
映姫「これはあれですね。押すな、絶対押すなというやつですね」
小町「話をややこしくさせないでくださいよ!」
なんだ、違うのか。
一回やってみたかったのだけど。
しかたない。今度、小町にあつあつおでんを顔に押し当ててみよう。
小町「? なんだか嫌な予感が………。気のせいかな」
-
椛「おまたせしました」
暇だったので小町としりとりをすること3分。もふもふ椛が戻ってきた。
椛「私の監視付きで動き回ることを許可します」
映姫「神に許可とは、罪深いですね。天狗風情が」
小町「四季様、せっかくOKでたんですから喧嘩売らないでくださいよ」
映姫「にとりの家に案内してちょうだい」
椛「なぜにとりの家なのですか?」
映姫「捜査です捜査。事情を聞いてからです」
椛「分かりました付いてきてください」
そういって、からからと下駄を鳴らしながら椛は特に舗装されてない山道を難なく登っていく。さすが山育ちは違う。
映姫「小町」
小町「距離は操りませんよ」
映姫「いけずですね」
-
妖怪の山は夏の空気をはらみ、どこか爽やかな印象を受ける。
椛についていくと、あるのは大きな川、どうやらこの川の近くに住んでいるらしい。河童らしい住所だ。
透き通った水の中には、幻想郷では紫からの供給があるとはいえ、まだ高価な魚が気持ちよさそうに泳いでいる。夏が本番になったらここに泳ぎにきてみるのもいいかもしれない。人間がいないので穴場だ。天狗による撮影を無視できるのなら。ちなみに私は我慢できないので、いざ入るときには付近の天狗を根絶やしにしようと思う。
椛「あれですよ」
椛が指を指した先には、無骨な特に特徴もない二階建ての家があった。
椛「では私はここで待っていますから。しかし見てますので変な気は起こさないようにお願いします」
映姫「安心してください。私は神なので」
小町「神で安心できる要素はあまりありませんね」
映姫「さっさと行きますよ。情報がまた失われてはいけませんからね」
小町「怖いこといわないでくださいよ」
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椛「後」
意気揚々と、にとりの家の家に向かおうとしたところ、椛に呼び止められる。
振り向くと椛は木の枝に座っており、こちらを見下ろしていた。
映姫「………あともうちょっとで、見える」
椛「? 例のフードに仮面の男の情報が手に入ったら、私にも教えてください」
小町「仮面?」
フードの男は知っているがそれが仮面をつけているなんて初めて知った。
小町が椛に聞き返すと、椛はしまったと小さくつぶやき、咳払いをした。
椛「言ってしまったものは仕方ありません。そのフードの男は仮面をつけています。片目しか開いていない、変な仮面を」
フードのしたがどうなっているのか分からなかったので、これでまた情報がひとつ増えた。仮面をしている限りは、この外見情報で見つけることができるだろう。
とりあえず一歩。それでも進まないよりはましだ。
映姫「期待しててください。この事件はこの私がまるっとすっきり解決してみせますから」
椛「………。えぇ、期待しましょう。天下泰平」
映姫「世はこともなし。ですね」
私がそういうと、椛は少しだけ口角を上げ、笑った。
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家に近づくと、幻想郷では珍しいチャイムがあった。どうやら外の世界の技術が伝わっているらしい。
チャイムを押し、少し待つと中からぱたぱたと誰かが玄関に向かってくる音が聞こえた。
足音はカチャと鍵をはずし、ガチャリとドアを開けた。
ドアの隙間から顔をのぞかせたのは赤い髪と赤い目を持った河童。正確には河童と人間のハーフである河城みとりだった。
映姫「朝早くからすみません。おやにとりではないのですか。あなたは確か姉のみとりでしたか?」
一応確認を取ると、みとりは小さく「うん」とうなずいた。
どうやらあまり歓迎はされていないようだ。
それでも事情を聞きださなければならない。さとりのように心を読む力があれば楽なのにと思いつつ、適当に世間話を話す。
映姫「貴方は妹と違い、面倒ごとは起こしてないようですね。実にいいですよ」
妹のほうは、作った機械が暴走して暴れだしたり、祭りで高額の商品を売りつけたりと、いろいろな問題を起こしていたが、姉であるみとりの悪い噂はあまり聞かない。
聞いたとしても、それは人間と河童のハーフなので、妖怪の山の妖怪たちから嫌われていたり、あらゆるものを禁止する能力を恐れたものがみとりの陰口を叩いている。そんな本人の人となりは所業を完全に無視したものだけだった。
小町「四季様ー。早く本題に入りましょうよー」
後ろで小町が、そう言う。とはいうものの、いきなり本題に入ってもいいものだろうか。もしみとりの機嫌を損なうようなことをしてしまうと、あまり信頼されていないようなので、扉は天岩戸よろしく閉じられてしまうの違いない。禁止された扉を開けることは私はオモイカネでもアメノウズメでもないのでできないだろう。
しかし小町が発破をかけてしまった以上、世間話を続けても怪しさが増すだけだ。後戻りができないのなら進むしかない。
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まぁ閻魔と死神が尋ねてきたら良い気分はしないわなw
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映姫「えー、こほん。今日伺ったのは聞きたいことがあったからなのです」
みとり「聞きたいこと?」
映姫「仮面をつけてフードをかぶったいかにも怪しいという体の妖怪を見かけたことはありませんか?」
私がそう聞くと、みとりが口をあけるよりも早く、後ろから白衣を着た外見からして科学者か医者のどちらかであることが分かる人間の青年が出てきた。
なにやら驚いた顔をしていると同時に、今すぐこちらに飛び掛ってきそうな焦りも感じさせる。
いったい何があったのだろうか。それは分からないが、なにやらフードをかぶった男に関係がありそうな気がする。
みとり「うん」
みとりがこくりと小さくうなずく。やはり知っているようだ。
映姫「まじですかっ!? よっしゃーっ!!」
小町「映姫様。喋り方喋り方」
映姫「あ、こほん。いやでも小町。私ヤマザナドゥ、クビになったんですし、いいのでは?」
小町「今、ヤマザナドゥに戻るために行動してるんでしょうが」
映姫「あー。そうでしたね」
みとり「?」
映姫「こっちの話です」
-
映姫「で、どこでみかけました?」
みとり「ここ」
映姫「!?」
みとりは地面を指差した。
つまりここというのはヒアーで、にとりの家で、今現在私がいるところ。
運がいいというかよすぎるというか、このままだととんでもない不運が訪れそうな気がする。
小町「やりましたね映姫様。手がかりゲットですよ」
映姫「それで、そいつはどこにいますか?」
みとり「分からない」
映姫「………ですよねー」
小町「映姫様。がんばりましょう」
映姫「それではそいつには気をつけてください」
みとり「襲われた」
映姫「!?」
小町「!?」
-
映姫「ななな、何があったんですか!?」
情報を知るものと目撃者の間に大きな壁があるように、目撃者と被害者の間には大きな壁がある。
そして、情報を知るものとしての私から見れば、被害者はあまりにも遠すぎて、少し、いや大いに混乱してしまった。
どうしたものか、触れていいのか、いけないのか。
壊れてしまうのではないだろうか。何があったかは知らないが、それがもしも酷い話だったら。壊れたのが鏡ではなく生きているものだったら。
そんな終わりのない独りよがりな思考を打ち切ったのはピーっという音だった。
音が聞こえたと同時に、後ろにいた青年の姿がぼやけ、認識と認識の間に彼の姿は河童になっていた。
変化、人間が? よく分からないが見てみぬふりをしたほうがいいのかもしれない。
おそらく、人間がここにいるということを知られたくはなかったのだろう。
ならば私もだまされるしかない。
映姫「うん? やかんが鳴ってますよ」
みとり「?」
私がとぼけてみると、その男がみとりの後ろから扉を開け、ドアを完全に開いた。
男「あぁ、いやなんでもない」
-
映姫「貴方は? 見たことないですが」
白衣男「この家に居候させてもらってる河童の白衣男という」
映姫「男女が一つ屋根の下―――っ!? 不純ですよっ」
なんとなく場を和まそうとして、ちゃかしてみると小町があきれたようにため息をついた。
小町「あー四季様四季様。嫉妬はいいですから話聞きましょ」
映姫「嫉妬ではありません!!」
嫉妬ではない。別に彼氏が生まれてこの方存在しないことも、いまだに恋愛のれの字も知らないことも今はなにも関係ない。そう、関係ない………
映姫「それで、襲われたというのは」
白衣男「襲われたというかなんというか。その妖怪を見て。気がついたら友人を殺しかけていた」
映姫「!?」
小町「………手がかり、ゲットですね」
どうやら被害者はみとりではなく、この男らしい。
となると被害者は誰なのだろうか。友人となるとにとりだろうか。もしくは一緒に消えた、白衣男の幼馴染か。
まぁ、どちらにせよ襲われた人に話を聞くことは無理だろう。
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支援
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じゃあ俺も支援
-
映姫「もう少し詳しく話をお聞かせ願えますか?」
男「詳しい事は良く分からないが。あの妖怪が現れたときに凄い殺気を感じたな。それぐらいしか」
小町「気がついたら人を殺しかけた。これで犯人は決まったようなものですね」
映姫「まだ確定は出来ませんが、やはり怪しいですね」
小町「ご協力ありがとうございました。それでは」
映姫「さぁ、小町。そいつを探しますよ! 私がヤマザナドゥをクビになった怒りをこめて裁きますっ!」
小町(なんだかヤマザナドゥをクビになったほうがかえってこの人元気じゃないかな)
-
みとりと男に別れを告げ外に出る。すると椛が木の上から飛び降りて、こちらに歩いてきた。
椛「どうでしたか?」
映姫「おそらくあなた方が探しているのは、私が探している奴でしょう」
椛「そうですか。しかし勝手に捜査はできませんから」
ここまで関わったんだから捜査させてもらってもいいと思うのだが。頭固い。いや組織だからか。
大きくなると動きづらくなるのはどこも一緒なのだなぁ。
映姫「そうやって、言い切らなくても」
椛「仕事ですので」
小町「仕事仕事だと息詰まらないかい?」
椛「そうですか?」
………良く調教されている。やはりわんこか。
あの黒ガラスとは大違いだ。この二人を悪魔合体させれば良い感じになりそうなのに。
小町「どうします?」
映姫「今はどうしようもないですね」
-
椛「帰りますか?」
椛の鉄面皮がほっとしたように少し揺らぐ。ようするに部外者はさっさと帰れということか。
映姫「そうなると意地でも帰りたくないのが、この私」
小町「何言ってるんですか」
映姫「終電、なくなっちゃったね」
小町「何言ってるんですかあんた!?」
さーて、どうすればいいのか。思い浮かばない。
一番良いのはあっちから出てきてくれることだが。
映姫「そういえば」
小町「どうしたんですか?」
映姫「いーことおもいついちゃったー♪」
椛「?」
小町「四季様今凄い邪悪な顔してますよ」
映姫「えー♪ そんなことないよー♪」きゃるんっ
小町「不安だなぁ」
-
椛「それでは」
映姫「ばいばーい♪」きゃるるんっ
椛に別れを告げ、妖怪の山を下る。
とりあえずさっき思いついた良いことを実行するために早急に神社に帰らなければいけない。
映姫「というわけで、神社につないでください」
小町「人使いが荒いなぁ」
そう言いながらも、距離を調整する映姫。
少し景色が歪んで元に戻る。どうやらすでにできたようだ。
では、善は急げというので、急ぐとしよう。
映姫「いやぁ、妖怪の山の皆さん。喜ぶだろうなぁ」にやぁ
小町「四季様。顔」
映姫「いけない」ニコッ
小町「それで、いったい何をするんですか?」
映姫「素敵な贈り物ですよ。奴らのカーストを昔に戻してやります」
小町「?」
-
しかし映姫のキャラ崩壊っぷりが酷いな
-
支援
-
映姫「ただいまー!!」
霊夢「あら、おかえり。早かったのね」
映姫「えぇ、いろいろありまして。そうそう」
あたりを見回すと川の中に一滴、墨を入れたような薄い気配がある。気のせいではなく。確実にいる。
映姫「萃香さーん」
上を向いて声をかけると、うっすらと漂っていただけの存在感がしだいに一箇所に集まり。そしてしだいにそれは一人の少女となった。
萃香「閻魔が私に何のようかね」
見た目は幼い少女のようだが、気配はまるで100まで生きた老人のよう。外見とは裏腹に確かな強さを感じさせる。
妖怪の山を支配していた、鬼の一人。伊吹萃香がそこにいた。
映姫「いえいえ。ちょっと提案をね」
萃香「………裏を含んでるね」
映姫「じゃあ単刀直入に言いましょう、妖怪の山に帰ってください」
萃香「断るよ」
映姫「駄目です」
-
萃香「せめて理由ぐらいは聞かせてくれてもいいんじゃないのかね」
そういって、萃香が瓢箪の中の酒をあおる。瓢箪の質量を無視した酒を飲み、萃香はため息のように息をついた。
映姫「良いでしょう。あなたたち鬼が昔いた、妖怪の山に現在侵入者がいます。それはとても危険でこのままではおそらく数人どころじゃない被害者が出るでしょう」
萃香「………で?」
映姫「私じゃ妖怪の山に入れないからそいつ追い出して」
萃香「………相手は?」
映姫「悪霊。おそらく相手の精神を操りますね」
萃香「気に入らないね。じゃあちょっくら潰して来るよ」
映姫「言ってらっしゃい。素直になれない萃香さん」
萃香「………あんた、嫌いだね」
映姫「えぇ、極悪人から好かれようとしてませんから」
小町「あわわわわ」
萃香「霊夢、これ終わったら良い酒を用意しててくれないか。金はそこの閻魔が払うだろうからさ」
霊夢「了解。買えるだけ買っとくわ」
-
萃香が霧になって消える。それを見送ってからほっと一息ついた。
映姫「これで一手。さて向こうは何手打っているのやら」
霊夢「結局いったい何が起きてるのよ」
箒で落ち葉を集めながら聞いてくる。
映姫「分かりませんね。ちょっと考える暇が欲しい」
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懐からタバコを取り出しをつける。
タバコから煙が出て、昇っていく。香りは普通のタバコのようだ。
映姫「………」すぅ〜
煙を肺に入れると、それは不思議なことになんの感触もなく体に溶け込んでいった。息を吐くがそこに紫煙は含まれていない。
タバコは吸ったことがない。なのに何事もなく吸うことができる。
なるほど、これは不思議だ。
そこで気がついた。
さっきまで吹いていたそよ風。霊夢が掃く音。そして明るい日差し。
全てが気にならなくなっていた。
聞こえているが聞こえていない。見えているが見えていない。感じているが感じていない。
何も介入しない完全な自分の空間がそこにあった。
映姫「なるほど、じっくり考え込めますね」
-
さて今日の収穫は悪霊は仮面をつけていて、人を操る術を使うらしい。
もしも自分の意思ではどうにもならない時に人を殺してしまった場合それは罪になるのだろうか。
指の一本でさえ自由に動かせない状況で人を殺す。そこに殺意も悪意もない。
罪にはならない。
仮定しよう。白衣兄がこの悪霊によって操られ、少女を殺してしまったとしたらだ。
彼は有罪にはならない。
ならば、この悪霊が白衣男を操っていたというのが自然だろう。
証拠は?
完全な証拠ではないが、悪霊に襲われたということが記録されている。
悪霊が白衣男を操り少女を殺した。理由は不明だが、この考えで進んでいこう。
次になぜ悪霊と金髪巫女服が一緒にいるのだろうか。
利害の一致。だとは思うがその利害が何か。
人間に害することか。おそらく彼女の人間に悪意を持つ何か。
あっちから調べたほうが真実には近そうだ。悪霊は萃香に任せよう。
-
映姫「ふぅ………」
息をつき、タバコを地面で消す。
ぼんやりと意識が現実に帰って来る。
風の音。鳥の鳴き声。そして
霊夢の怒号。
霊夢「掃除してるのにポイ捨てなんかしないでよ!!」
映姫「あ、失礼。無意識でした」
霊夢「閻魔がタバコなんて吸って良いの?」
映姫「これはタバコじゃないから良いんです。そういえば小町はどこですか?」
霊夢「小町なら買出し行かせたわよ」
映姫「私の部下を普通に使いましたね。いいですけど」
小町が人間の里に行ったのか。
そういえば金髪巫女は人間の里に出没するのだった。ならば近々探しにでかけよう。
映姫「やれやれ。何歩歩けばたどり着くのですかね」
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8月12日 晴れ
ずっと金髪巫女を探しているが見当たらない。
どうすればいいのかと考えていたところ、どうやら今日は祭りがあるらしい。
二胡を弾いているのなら来るだろうか。
人を害することが目的ならばおそらく来る。
こんなに人が集中することはおそらくないだろうから。
たしかお祭りは2時から22時までだったはず。気が抜けない。
まったく。お祭りとはやっかいだ。
小町です。
こないだ買った浴衣と下駄の代金返してくださいよ。
忘れたとは言わせませんからね。
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響き渡るは笛の音。太鼓の音。そして人々の活気。
普段人間の里に散っている活気が今全てここに集まっていた。
人妖とわず今はともに楽しむだけ。
そこに諍いはない。
映姫「としたいところですが、やはり祭りに喧嘩はつきものですね」
小兎姫「助かりました〜」
これで喧嘩を収めるのは3度目だ。
祭りの精神高揚によって血が騒いでしまう人が多いらしく、始まってまだ1時間しか経っていないというのにこれだ。先が思いやられる。
数回訪れた小兎姫のところを出ると、人ごみの中に人間に化けたマミゾウと貸し本屋の娘がいた。
どうやら、人間と妖怪の交流が進んできているらしい。いや、マミゾウの正体を知らないだけかもしれないが。
そういえば紫のところも仲が良いらしい。結婚したりして。
いやあの紫のことだ。面白がっておいているだけだろう。
結婚したらそれはそれで面白いが。
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行きたいんですね 四季様
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映姫「む。屋台の焼きそば。侮れませんね」ずるずる
小町「四季様〜って情報収集はしてないんですね………」ガクッ
これは別に食べたくて食べているわけではない。どんなに優れた英傑でも腹が減っていた場合全ての力を出すことができない。相手は何者か分からないのだ、だから私も十全の力を整えなければいけない。決してイカ焼きやたこ焼きや焼きそばわたあめを食べたいから食べているわけではない。
映姫「なんですか。もぐもぐ。なにか。もぐもぐ。あったんですか? もぐもぐ」
小町「食べるか喋るかにしてくださいよ。行儀悪い」
映姫「もぐもぐもぐもぐ」
小町「………はぁ。別にたいした情報ではないんですけど、この祭りを開いた、稗田阿求と守矢神社と命蓮寺の挨拶が始まりますよ」
映姫「はぁ、一応行って見ますかね」もぐもぐ
小町「こっちですよ」
小町が人ごみをすり抜けて歩いていく。私は焼きそばを急いで食べ、それについていった。
人の流れが小町についていくにつれて一定になる。
どうやら皆あの三人に会いに行くようだ。
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櫓を中心にして多くの人が集まっている。屋根の上でなければ到底見えなかっただろう。
小町「はぁ。人ごみはつかれますねぇ」
映姫「小町。始まりますよ」
櫓の上には稗田阿求、八坂神奈子、聖白蓮。三組織のトップがそこにいた。
映姫「これだけ、集まっているのなら」
見回す。人人妖怪人妖怪人人。金色の髪は見えない。
阿求「皆さん。今日、このお祭りは私、稗田阿求と」
神奈子「私、八坂神奈子と!」
白蓮「聖 白蓮の三人が代表として企画しました」
人ごみを見ながら、三人の声を聞く。幻想郷のための稗田。人のための八坂。妖怪のための聖。なんとも違う道を歩む三人が揃ったものだ。
人のためと言っているが妖怪の信仰しか集まってない現状の八坂は人のためといって良いのかは疑問だが。
そういえば神奈子と聖には話を聞いていない。これが終わってから聞いてみよう。
-
阿求「皆さん。こーんなに大きなお祭りなんですから盛り上がっていってくださいねー!!」
神奈子「この機会にこの八坂 神奈子の名前を覚えていってもらおうか。私は人間のために働くぞ!!」
白蓮「あら、じゃあ私は妖怪のために動きますから聖 白蓮をお願いしますね」
映姫「確かにお祭りが一番信仰を得るのに手っ取り早いですよね」
小町「分かるんですか、四季様」
映姫「神ですからね」
神奈子にたくさんの信仰心が注がれていってるのが分かる。なるほど、思惑通りか。
しかしその分守るものが増えるがどうする。ここで人間を守るのは容易ではないはずだ。
一度愛してしまえば、見捨てることはできない。神とはそういうものだ。そしていつも人から見捨てられる。
神奈子「さぁ、皆のものどんどん楽しんでいってくれ!! 日ごろの因縁など捨て、思う存分自由に生きると良い!!」
白蓮「でも、ハメをはずしてはいけませんよ?」
阿求「それじゃあお祭り。本格的にはじめましょう!!」
遠くて空砲がなる。
どーん、どーん と。しかしそれは人の歓声にかき消され、空に消えた。
-
神奈子「………つか…れた」
阿求「神奈子さんって性格凄い変わりますよね」
神奈子「……うん……よく…言われる」
白蓮「うふふ。面白いですね」
映姫「はーい、ここで質問ターイム」ぶらぶら
阿求「ひぃ!」
神奈子「………びっく…り」
白蓮「あらあら、なんでぶら下がってるのかしら」
映姫「頭に血が上りますねこれ。よいしょっ、にゃんぱらりっ」トンッ
映姫「改めてインタビュータイム!! まず質問です。すりーさ」
小町「何やってるんですか馬鹿四季さまぁ!!」ダダダッ ズザーッ
-
フレンドリーにふざけていたら、後ろから走ってきた小町にどつかれた。なんだ、下克上か。
仕方ないので、頭をさすりながらきょとんとした顔の三人に質問をする。
映姫「この人物を知りませんか」
神奈子「巫女……?」
白蓮「どこかで見たことありますねぇ」
阿求「里で噂になってますね、金髪の巫女さんって」
里で噂になっているのは知っている。結局これだけしか情報が手に入らないのだろうか。
神奈子「あ、でも……こっち…は」
神奈子が金髪巫女ではなく、フードのほうを指差す。
神奈子「うちで……あばれて…る」
どうやらまだ妖怪の山にいるようだ。組織をもってしてもつかまらないらしい。
白蓮「この人がどうかしたのですか?」
映姫「えぇ。今事件を起こしてまして」
-
映姫「被害者は人間、妖怪問いません」
そう聞いた聖の目が悲しげに伏せられる。
無理もない。妖怪を守れなかったのだ。それは聖の志に傷を入れる。
しかし、この僧侶は折れない。守れなかったものを次守るためにもさらに努力をし、志を太くする。砕けることのない傷だらけの志を。
そして産まれた魔にして善、聖 白蓮という志は折れることはない。決して。
少なくとも私は、この人物をそう認識している。私は仏ではないが、それなりに聖を信用しているのだ。
神奈子「………ひど…い」
映姫「どんな被害が?」
神奈子「身内で……殺し…あった」
白蓮「………」ぎりっ
映姫「ご協力をよろしくお願いします。それでは」
小町「え、もう行くんですか?」
映姫「嫌な気がします。だいぶ」
もしもの話で確定はしていないのだが。ここのところおきている喧嘩。それがこのフードの仕業だったら?
取り越し苦労で杞憂だといいのだが、それでも動かないという選択肢はない。動かなかった場合、結果は負けしかないのだから。
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ダイヤモンドは砕けない
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四季様キャラ崩壊激しすぎィ!!
-
屋根から屋根へと飛び、里を回る。
どこもかしこも活気があり、祭囃子や歓声が聞こえる。遠くに見えるのは神輿だろうか。
人が多いからとやってきたが、こうも人が多くては探しようがない。
あの天狗みたいに千里眼でもあればいいのだが。
テメー フザケンナー
映姫「おや」
歓声ではなく怒号が聞こえた気がして、音がしたほうを向くとそこには殴りあいをしている若者がいた。
またか。周りを見ても小兎姫達、警察の姿は見えない。
ならば私が止めなければいけない。
痛いタイムロスだ。
-
映姫「あぁ、もうまったく」
どんどんどんどん喧嘩が増えていく。しかもなぜか人間と妖怪の喧嘩がやたらと多い。
話を聞くと人間から喧嘩を吹っかけているようだが。
ガヤガヤ
映姫「………?」
一人を中心として人がなにやら集まっている。
中心に立つのは人間ではなく妖怪。
特徴的なのは体から生えた管に繋がる紫の閉じた瞳。
おそらくさとり妖怪。しかしこいしと同じく目が開いていない。
見たことはある気がするがかかわったことはないので誰かが分からない。
とりあえず何をやっているのだろうか。近くの屋根まで飛んでみよう。
-
???「『この妖怪に支配されているという不自然な状態をおかしいとは思いませんか。人間は家畜ではない』」
近くの屋根に座り、耳を傾けると、そんな言葉が聞こえた。
人間は幻想郷で飼われている。それは知っている。しかしそれは幻想郷に住むもののためであり、幻想郷に生まれたものの性だ。たしかにこの状況を打破しようと秘密結社が存在するのは知っているがその構成員は人間。決して妖怪じゃない。
目の前にいるのはどう見ても妖怪だ。生々しくうごめく管がそれを証明している。
そしてさらに不可解なのが、祭りのこの空気の中、誰しもがおとなしくその妖怪の話を聞いている。誰も野次をいれず、歓声を上げたりしない。
ただ、静かに聞いている。まるでお経を聞いてるかのように。
???「『私は妖怪に知り合いの女の子を殺されました。とても大切な友人でした。私は妖怪を許しません』」
???「『幻想郷を妖怪から人間の手に!!』」
八雲 紫に対する宣戦布告。公言されたテロ宣言。祭りの空気には合わないそんな言葉が飛び出してきた。
止めたほうがいいだろうか。そう悩んだ時、私が座っている家が大きく揺れた。
映姫「!?」
逃げ出す人々、おこる土煙。それが晴れたときそこには妖怪がいた。
人間を口にくわえた妖怪が。
-
危ない。そう思ったときにはすでに事が終わっていた。
妖怪が倒れる。頭を残して。
いつの間にか金髪の巫女が妖怪のクビを刈り取り、その口から人間を助けていた。
???「『やはり妖怪は危ないのです!! 見てください、今そこの人間が助けてくれなかったらその人は死んでいたでしょう!!』」
さとり妖怪が指を指す。そこには笑顔で手を振る金髪の巫女がいる。
金髪の巫女はショートカットで二胡を持っていた。ちょうど霊夢と魔理沙を足したような外見で―――
映姫「金髪の巫女!?」
探していた人物があっさりと目の前にいた。仮面の男はいないようだが話を聞かなければ。
映姫「そこの巫女! 待ちなさい!!」
???「あ、大変」
金髪の巫女が駆け出す。
それを私は追おうとした。しかしできなかった。
再び起こる砂煙。
妖怪「ぐぎゃぁあああぁあああ!!」
なぜなら妖怪が人に襲い掛かっていたからだ。
-
これってもしかしてあのにとりのssと繋がってるのか
-
追うか、止めるか。
いや止めなければ新しい被害者が出る。
屋根から飛び降り妖怪の前に立つ。
妖怪の大きさは2メートル半ほど。近くには子供。
人間に化けていないのなら下級妖怪だろう。しかしそれでも人間の命を奪うには十分。それが子供ならなおさらだ。
映姫「警告します。今すぐおとなしく投降しなさい。すれば刑が」
妖怪「ギャオォオオォオオオォ!!」
話が通じない。仕方ない。子供を殺させるわけにはいかない。
スペルカードを取り出し、構える。
映姫「見た目は派手ですが安心してください。死にはしませんよ。死ぬほど痛いですけどね!!」
力をこめ、スペルカードを発動させる。選んだスペルカードは審判『ラストジャッジメント』 周りへの牽制射撃はせず、主砲だけで射抜く。
映姫「審判『ラストジャッジメント』!!」
罪を裁く赤き光が両手から発射される。その断罪の光は妖怪だけを飲み込み、そのまま気絶させた。
どうやら他には被害はないらしい。が、しかしもうすでにあの巫女は逃げてしまっただろう。
仕方ない。あきらめよう。そう判断し、気絶した妖怪を持ち上げた。
-
妖怪をつれ、警察に行こうとすると人間が目の前に立ちはだかった。
映姫「なんですか?」
村人「こいつは人間を手にかけようとしました。生かしちゃおけません。そいつを殺させていただけませんか」
………物騒な考えだ。無法地帯でもないのに、私刑とは。これもあのさとり妖怪の影響だろうか。
映姫「駄目です。誰にも生きているものを裁くことはできません」
???「『ならあなたがすればいいではないですか。四季映姫・ヤマザナドゥ!!』」
そうさとり妖怪が叫ぶと、周りからそうだそうだと声が上がる。
映姫「残念ながら私は今ヤマザナドゥではないのです。なのでこの妖怪は警察に引き渡してきます」
映姫「ところであなたの名前は? 一見あなたも妖怪のようですが」
ことり「『私の名前は古明地 ことりです』」
古明地………どうやら、さとりの身内のようだ。
映姫「そうですか。それでは」
村人はどいてくれそうになかったので屋根の上へ飛び上がり、そのまま駆ける。後ろから罵声があがっていたがそれを無視する。
どうやら物騒なことになってきたみたいだ。
-
妖怪「おら、しらねぇだ。気が付いたら頭が真っ白になって………」
小兎姫「はい?」
映姫「………」
目を覚ました妖怪は怯えたように正座をして縮こまっていた。どうやらとてもその図体からは想像できない性格をしているらしい。
小兎姫「言い訳は駄目よ?」
妖怪「そんな! おらだからしらねぇって。おら人間なんてくわねぇべ!!」
映姫「おそらく本当に知らないのでしょうね」
そういう状況を私は知っている。悪霊に操られたのだ。
小兎姫「はぁ。またこれなのね」
映姫「また?」
小兎姫「今日つかまった人で、結構こんな人多いのよ。とぼけてるのかって思ったけどどうやら本当に知らないみたいで。自白剤が無駄になっちゃったわ」
すると、やはりフードの男は里で暴れているようだ。しかも頻繁に。
このままでは祭りが終わるまでに死傷者が増えてしまう。
映姫「そういえば、一人妖怪が殺されました」
さっきあったことを小兎姫に話すと、小兎姫は、はぁ……… とため息をつき、面倒なことになったわね、とつぶやいた。
-
小兎姫「警察だけではどうも対応しきれませんわ」
映姫「なら使えばいいじゃありませんか。ちょうどおあつらえ向きなのがいますよ」
小兎姫「え?」
霊夢「なんで私が、今お団子食べるので忙しいのよ」
阿求「まぁまぁ霊夢さん。どうやら大変なことになってるみたいですし」
白蓮「そうねぇ、うちの皆も巡回させるわ」
神奈子「……私…も、さが……す」
霊夢「はぁ、どこの馬鹿がやってるのよ。祭りは楽しむものよ。よいしょっと」
映姫「やっていただけるのですか?」
霊夢「新しく屋台を見回ってくるだけよ。それじゃ」
そういって霊夢は祭りの本部から飛び立っていった。
阿求「あぁ、霊夢さんは大変なときに」
映姫「あれは建前ですよ。ちゃんとパトロールしてくれますよ。たぶん」
白蓮「そうねぇ」
-
霊夢さん素敵
-
霊夢さん素敵
-
霊夢さん素敵
-
霊夢さん素敵
-
素敵だよな
-
霊夢さん失敬
-
他の人が手伝ってくれたおかげで、その後は無事に祭りを終えることができた。
しかし、金髪巫女と仮面の悪霊は見つからなかったようで、今後、まだ事件は続くようだ。
それに、あのことりという妖怪。あれも何かしらの障害になりそうだ。
霊夢「あら、あんたまだ帰ってなかったの」
映姫「霊夢こそ、祭りが終わったら一目散に帰るものと思ってましたが」
屋根の上で祭りの空気がどんどん消えていくのを眺めていたら、ふよふよと霊夢が飛んできた。
手には酒。どうやら飲んでいたみたいだ。
外では未成年は飲酒禁止らしいがここは幻想郷。生きている間に裁ける法はない。
霊夢「こうやって祭りの後の空気を楽しむのも祭りのうちよ。飲む?」
映姫「祭りが終わっているのに祭りとはこれいかに。どうも、いただきます」
霊夢がお猪口から徳利へ酒を注ぐ。小さな月がでていた。
-
映姫「今日はお疲れ様です」
霊夢「別に私は何もしてないわよ。ただ屋台を見回ってただけ。物買うのに邪魔だったやつを懲らしめただけよ」
素直じゃない。私はくすっと笑い、酒を飲んだ。
映姫「他の皆は?」
霊夢「向こうで酒盛りよ。聖は般若湯って事でだまされて飲んでたわ」
それでいいのか、聖職者。少し飲めば分かるだろうに。
霊夢「ねぇ」
映姫「なんでしょう」
霊夢「ずっと、祭りが続けばいいのに」
霊夢が酒にうつった月を見ながら、そうぽつりとつぶやいた。
映姫「終わりがあるからこそ祭りじゃないですか」
霊夢「そうね。じゃあ祭りが終わった後、よろしくね」
映姫「公平な立場で見ますよ」
霊夢「知り合いのよしみで」
映姫「あなたが普段ちゃんとしとけばいいのです」
-
霊夢「残念。閻魔様は地蔵なだけあって頭が固いから」
映姫「自由なのは部下に任せているので」
小町「四季様〜!!」
霊夢「ほら、自由代表が来たわよ」
映姫「ですね」
霊夢「じゃ、私は先に帰ってるわ」
映姫「気をつけて。夜道は危ないですから」
霊夢「それ、私に言う?」
映姫「あなたを狙う人なんていませんね」
霊夢「そうそう。私が死んでも代わりができるもの」
映姫「縁起でもない」
小町「四季様〜!! どこですか〜!!」
霊夢「ほらさっさといきなさい」
映姫「それでは」
-
小町「あれ、巫女もいたんですね」
映姫「そうですよ。愛の語らいをしてました」
小町「え、四季様ってそっちの趣味が」
映姫「えぇ、もちろん両方いけます」
小町「………」ズザッ
映姫「冗談ですから、そんな距離を操りながら後ろに下がるのやめてください」
小町「はいはい」
映姫「それでどうしたんですか?」
小町「小兎姫や、山の神様が呼んでましたよ。酒を飲めって」
映姫「やれやれ」
どうやら今夜は無礼講らしい。人も神も妖怪も。飲みつぶれりゃ皆同じ。
たしかに幻想郷らしくはある。
映姫「でもほどほどにしますよ。霊夢が家で待ってるので」
小町「そうですね。っていっても普通に布団引いて寝てそうな気もしますけど」
映姫「いいんですよ。ただの酔っ払いを回避する建前ですから」
-
8月17日 曇り
朝ごはんを食べていたら、霊夢が一言、蔵の掃除をしろと命令。
捜査しなければいけないが、家主である霊夢の命令に逆らえず、小町と一緒に掃除をすることになった。
霊夢曰く、蔵にはいろいろやばいものがあるから力を持った人でないと掃除をすることができないらしい。
それに、三バカ妖精(特にスター・サファイア)がいたずらをしないとも限らないので、できるだけ気をつけてやらないといけないようだ。
博麗神社の蔵に入る機会なんてそうそうないのだから、少し、楽しみだ。
霊夢よ。 報酬のようかんは二人で二本でいいわよね
小町です。霊夢、これ伝言板じゃないんだから、しかも報酬はようかんだけって、一応神と死神をこき使ってるんだからもうちょっと良いものにしてほしいねぇ。いやようかん好きだけどさ。
-
博麗神社には先代や霊夢などの歴代巫女が封じたものや、宝具が入っているらしい。
普段は泥棒よけに結界が張ってあるので入れないが、霊夢が結界を解いた今だけは入ることができる。
それにしてもなかはごちゃごちゃとしていて、何がなんだか分からない。懐中電灯で照らしてみるものの、明かりひとつない蔵では頼りない明かりだ。
小町「四季様〜。大丈夫ですか〜?」
外で見張りをしている小町の声が聞こえる。自分も楽な外がやりたかったが、霊夢からじきじきに指名されてしまった。そんなに危ないものが入っているのだろうか。
映姫「大丈夫です。小町は妖精の一匹でも通さないようにしなさい。洒落になりません」
小町「了解です〜」
とりあえず適当にまずは整理をしていくところから始めよう。棚に入っているものもあるが、地面に放置されているものも多い。
霊夢がしたのかそれともなんらかの原因で落ちたのかは分からないがとにかくこのままでは動きづらい。
近くにあったつぼを持ち上げる。人間にとっては重いかもしれないが、人間ではない私にとってはそう苦労することなく運ぶことができる。しかし問題は重さではない。お札で封をされていることだ。
もし目覚めても倒すことはできるだろう。しかし倒すまでに蔵の中をめちゃくちゃにされ、その結果多くの妖怪が封印を解かれ暴れだすことだろう。
そんな精神プレッシャーのほうが私たちにとっては大変なのだ。
-
地面においてあったものをあらかた整理し終わりほっと一息をつく。
次は棚の中だ。懐中電灯で照らしてみると、いろいろこまごまとした小物や、先代が使っていたのであろう祓串がおいてあった。
映姫「おや」
棚の中でこの神社には似合わないものがあった。古い一眼のカメラで、しまわれていたためか射命丸が使っているものよりも古く見える。
なんでこんなところに? と思い手にとって見ると、ストラップの部分に先代の名前が書いてあった。どうやら先代は写真が趣味だったらしい。
すると横にある小箱は写真が入っているのだろうか。そう思いあけて見ると、やはり中には写真が入ってあった。
一番上には博麗神社の写真。写真の数はざっと見て100枚はあるだろう。
ぱらぱらと適当に見る。始めは幻想郷の美しい風景を切り取ったものだったが、しだいにその中に少女が写っているものが増える。
普通よりも赤が多い巫女服に赤い大きなリボン。目つきは今と違い子供らしいが、これは霊夢だろう。
なるほど、このころに霊夢がここに来たのか。
霊夢の寝顔や、写真端に書かれてある、霊夢修行中という文字。血はつながってないが、実の娘の用に思っていたということは十分伝わってくる。
これが、博麗の巫女としての愛なのだろう。
子供を作ろうとしない巫女としての。
-
映姫「おっといけない」
このまま写真に見入っていては終わるのが遅くなり霊夢に怒られてしまう。
とりあえずこの写真は危ないものではないようなのでしまって外で見ることにしよう。
写真が入った箱をポケットに入れ作業にもどる。
映姫「こんなに埃があって動くんでしょうか」
試しに棚にあった回転式拳銃を構えてみる。
映姫「実にハードボイルドですね」
くるくると拳銃を回して元の位置に置く。触った感じ動くようだが弾が置いていない。
そもそも巫女が拳銃を使うとは思えないので、捕まえた妖怪の所有物だろう。拳銃を使う妖怪も珍しいが。
-
小町「あ、四季様もう終わったんですね」
外にでると小町が鎌を構えて入り口の横に立っていた。珍しく働いているなと思ったら、すぐそこの霊夢がいた。
どうやら霊夢が怖くてちゃんと仕事をしていたらしい。
霊夢「お疲れ様」
映姫「えぇ。中にあった写真が見たいのですが、いいですか?」
霊夢に中にあった箱を見せる。
霊夢「何それ」
映姫「写真みたいですよ」
霊夢「あー。そこにあったんだ」
どうやら霊夢は先代が蔵に写真をしまったことを知らないらしい。なぜ先代は写真をしまったのだろうか。思い出なんだから出しておけばいいのに。
霊夢「懐かしいわね。あっちでお茶をしながら見ましょうか」
小町「霊夢の子供時代かぁ。気になるね」
霊夢「今と変わらないわよ」
変わっている。昔の霊夢はもっと無邪気な目をしていたはずだ。
もちろん口にはださない。
-
神社の離れに戻りようかんと緑茶を飲みながら、三人で写真を眺める。
霊夢は風景を見ながら、そういえば昔はここにこれがあったのよね、と昔を懐かしんでいた。
写真をめくるたびにどんどんと時間は進み、小さかった霊夢が少し大きくなったり、魔理沙が現れたりする。
そういえばなぜこの写真は古い順から入っているのだろうか。アルバムにまとめているならともかく、箱に入れているのなら新しい順ではないのだろうか。わざわざ並べ変えた?
小町「………え?」
小町が声を上げる。何事かと写真に目を向けると―――
映姫「これは」
霊夢「えっと、誰かしら」
金髪で巫女装束。写る姿は幼いが、あの金髪巫女がそこにいた。
-
小町「これって」
写真の中では霊夢と魔理沙と金髪巫女が仲良く並んで写っていた。どうやら三人は友人のようだ。
映姫「霊夢。この人は?」
霊夢「知らないわよ。こんなやつ」
霊夢は知らないというが、はっきりと写っている。他人ではなく友人として。
霊夢「昔からの友人は魔理沙ぐらいだし、こんなやつ知らないわよ。本当よ」
霊夢は困惑して写真を見ている。無理もない。記憶にいっさい残ってない友人がいたのだ。
写真を裏返すとそこには鉛筆の少しかすれた文字でこう書かれてあった。
博麗 霊夢 霧雨 魔理沙 冴月 麟 三人で遊ぶ。
-
写真を進めると、冴月 麟と書かれた金髪の巫女が何回も写っていた。
どうやら頻繁に博麗神社を訪れていたらしい。
そしてその写った写真、どれもに冴月 麟の名が刻まれてあった。
冴月 麟とは一体何者なのか。
その答えは写真全てを見終えても出ることはなかった。
-
それからもう一人の冴月 麟を知るであろう人物。魔理沙連絡を取ることにした。可能性は低いがただ単に霊夢が忘れているという可能性があるからだ。
小町の能力を使い、魔理沙を呼び出す。
しかし結果は知らないという、なんとも不思議な答えだった。
二人はこの冴月 麟の知り合いであるということは写真が証明している。
しかし二人ともこの少女を知らない。
写真が間違っている―――そう結論付けるには、あまりにも無理がある。なぜなら写真を細工するとしたら、霊夢以外入ることがでない蔵に入らなければいけないからだ。
それにあの棚にはこりがかぶっていた。誰かが動かそうものなら跡が残る。埃の積もりようからすればしばらくは蔵を開けてなかったはずだ。
写真を真実だとして。この二人が知らないという決定的な矛盾をどうする。
謎は解け、またひとつ大きな謎を呼ぶ。
この謎が解けたとき、どれだけの大きな謎が現れるのだろうか。
-
魔理沙「あ、そうだ。この神社にいたんなら、紫なら覚えてるんじゃないか?」
霊夢「そうね。あと寺子屋に行ってたなら慧音も」
二人がそう提案する。確かに紫なら神社で起きたことなら覚えていそうだ。
しかし、写真に写っている少女は金髪巫女。金髪巫女に関しては紫ははっきりと知らないと答えている。慧音もだ。
冴月 麟。この名を出せば思い出してくれるだろうか。
とりあえず考えていても行動に移さなければ形になることはない。
おそらく寺子屋には橙がいるだろう。橙に頼めば再び紫のところへいくことができるかもしれない。
とりあえず寺子屋に行こう。
霊夢と魔理沙に寺子屋に行って来ると伝え、私たちは人間の里へ急いだ。
-
そういや地霊殿編でさとりは映姫にあっていたから
そのときにことりが生きてるって知らせてるんじゃないか?
なのになんで何もないようにしてるんだろ
-
慧音「………すまない。寺子屋に通っていた生徒の名前は全て覚えているのだが」
映姫「そうですか」
ということは冴月 麟は寺子屋に通っていなかったということだろう。
寺子屋に通っていないとは珍しい。
慧音が駄目なら跡は紫に頼むしかなさそうだ。
映姫「橙はどこですか?」
映姫「橙は外で遊んでいるよ。ほらあそこだ」
慧音が外を指差す。外にはおそらく鬼ごっこをしているであろう橙と、子供達に混じって遊ぶ小町がいた。
映姫「………いないと思ったら」
まぁいい。橙を確保してくれていたのだろう。
全力で遊んでいるようにしか見えないが。そう思ったほうが苦労がなくていい。
-
小町「ふははははー。橙はおとなしく降参するのだー」ガオー
橙「ちぇ、橙は自分を曲げないですよ!!」
映姫「こら、何をやってる」ゴツッ
小町「きゃふんっ」
橙「あ、閻魔のお姉さんです」
映姫「今は閻魔では、いやまぁどうでもいいですね。橙、再び八雲 紫の家い連れて行ってもらいたいのですが」
橙「わかりました! 橙に任せてくだしゃい!! 藍しゃまが向かえに来ます!」
映姫「なるほど。ではそれまで時間をつぶしましょう」
小町「よし、鬼ごっこの続きをしようか」
橙「望むところです!」ニャニャッ
映姫(………なぜ子供とこんな楽しそうに鬼ごっこができるのでしょうか。私が汚れている?)
-
橙「追い詰めました!」
小町「残念!距離ブースト」ヴィンッ
橙「にゃ!?」
映姫(大人げないですねぇ)
藍「おや、あなたは」
振り向くと金色の尻尾がもふもふしていることで有名な八雲 藍が立っていた。
橙「藍しゃま!」
映姫「紫に会いたいのですが」
藍「………どうやら急用のようですね。分かりました。呼んできます」
-
紫「で、どうしたのよ」
映姫「冴月 麟という名を知っていますか?」
紫「冴月 麟?」
映姫「えぇ」
紫「まって、どこかで聞いたことがあるわ。たしか」
稗田阿求の書庫で見た。そう八雲 紫は思い出し、答えた。
稗田 阿求の書庫に残っているということは何かしら歴史に残るようなことをしたということだ。
何を。
人間が歴史に名を残すなんて、霊夢や魔理沙のように異変を解決するなんて事をしない限りできないはずだ。
何かを発明するにしてもあまりにも幼すぎる。
紫「分かったわ。その冴月 麟については私が調べておくわ。あなたたちは悪霊退治を急いで」
映姫「分かりました」
-
小町「あ、そういえばもうすぐ天狗の新聞大会ですね」
そういえばそんな時期だ。しかしそれがどうかしたのだろうか。
小町「あんなのが現れたんだからニュースにならないんですかね」
映姫「あぁ、そういえば。でも私たちは入れないですから」
小町「あぁ、そうですね」
そういえば萃香からは大きなことはまだおきていないと連絡が入っている。
潜んで何をしているのかは分からないが、妖怪の山の住人を争わせるぐらい(いや、これでも十分大きいが)で済ませているとは一体何を考えているのだろうか。
不気味だ。
-
8月29日
萃香から入った情報によると、悪霊は妖怪の山から逃げたらしい。方角的に迷いの竹林だそうだ。
なので永遠亭にいかなければいけない。
それにしても次は永遠亭で何をする気だろうか。
早く捕まえなければ。
-
迷いの竹林。そこは周りの景色が同じなため迷いやすいといわれている。
迷い込んできた人間は妖怪にとって絶好の餌だろう。
そんなところになぜかある病院。永遠亭に私は向かっていた。
迷いはしないが、変わらない風景というのは気分を陰鬱とさせる。
進んでいるのかわからなくなるこの空間。下手な妖怪でも迷ってしまうだろう。
映姫「………なぎ払いてぇ」ボソッ
小町「四季様、不穏なこといわないでくださいよ。気持ちは分かりますが」
-
ざぁぁぁああぁああああぁああ
突然振り出した雨は容赦なく服を濡らし不快感をあげる。それに体温を奪い、衣服を重くする。
雨は嫌いではないが、うたれるのは嫌いだ。
好きな人は河童かかえるぐらいだ。
紫「雨がっ! 服にっ!」
変な人が雨にうたれていた。
スルーしようと思ったが、肩をつかまれる。
紫「待ちなさい」
映姫「なんですか。ぬれた手で触らないでください」
紫「あなたもぬれてるじゃないの」
映姫「ごもっとも」
-
紫「冴月 麟について分かったわ」
小町「!?」
映姫「そうですか。では詳しく教えてください」
ざぁああぁあああぁ
映姫「雨に打たれないところで」
紫のスキマを使い竹林にある小屋に移動した。生活観漂う部屋だが、気にしないでいよう。
妹紅「おい、しれっとうちでなにやってんだよ」
映姫「御黙りなさい!!」
紫「静かにしてなさい!!」
妹紅「うちに勝手に押し入られて、なんでこんな使い受けないといけないんだよ」
小町「どんまい!」
-
紫「あなたは他のところ行ってなさい」
映姫「小町、連れて行きなさい」
小町「あいあいさー」
妹紅「ちょ、まてっ。はなせっ!!」
小町が妹紅をつかんで、紫のスキマに投げ込んだ。どこにつながっているかは知らないが、なんて酷いやつだ、小町は。
紫「さて本題に入りましょうか」
映姫「えぇ」
紫「冴月 麟は大罪人よ。その結果人々に記憶から消された」
映姫「? どんな罪を犯したのですか?」
紫「幻想郷の消滅」
映姫「!?」
小町「え、それって」
紫「一番最初の異変。一人の少女が幻想郷を、博麗大結界を破壊しようとした異変よ」
-
誰だ冴月 麟って
-
君達よく知ってるねぇ(笑)
-
名前ググっておおっ!っなったわ
-
無理やり家を追い出されたもっこさんをよしよししてあげたい
-
もこたんはキレてもいいとおもうの
-
麟か
なんの異変を起こしたんだ
-
間違った なんで異変起こしたんだ
-
・ムシャクシャしてやった
・妖怪優位の世界とかおかしくね所詮結界に引きこもってる連中共じゃんとか思い至った
・閉鎖世界の主人公キャラらしく外の世界に憧れた
-
どういうことだ。幻想郷を壊そうとするだなんて。
考えることはできる。しかしそれを異変にまでにするのはいささか現実味が足りない。
しかし実際にそれは起きている。記憶には残ってないが、記録に残っている。
映姫「それで冴月 麟については」
紫「書いてあることは異変の顛末と、冴月 麟の能力について。どっちから聞きたい?」
映姫「異変からでお願いします」
紫「この異変は通称 始めの異変と呼ばれているのよ。何が始めかというと博麗 霊夢が担当したはじめての異変ってこと。先代の巫女はこの異変の数ヶ月前に亡くなったからまだ少し幼い霊夢が担当することになったの。この異変はさっき説明したとおり博麗大結界を破壊しようとして霊夢に阻止されたという異変よ」
紫「この異変の特殊なところは始めから最後まで冴月 麟一人だけによってなされたということ」
映姫「待ってください。人間一人でそんなことができるとは思えませんが」
紫「先祖返りよ。なぜ一人でできたかはあとで冴月 麟について説明するときに話すわ。冴月 麟は能力を使い妖怪を追い詰め、そして霊夢を捕獲しようとした。しかし私や幽香などの大妖怪には返り討ちにされ、霊夢に至っては、逆に霊夢に捕獲されるというなんともお粗末な結果に終わったわ。だけど事が事だから宴会をして終わりなんてするわけには行かなくて、全てをなかったことにしたのよ」
映姫「こういうのもなんですが、死刑にすればよかったのでは?」
紫「霊夢のお願いで殺せなかったらしいの。まぁ、その親友である霊夢は忘れてるけど」
-
紫「次は冴月 麟について説明するわ。冴月 麟の能力は、想像を形にする程度の能力。簡単に言えば、私たち妖怪ができる過程を一人で成し遂げる。この能力を使い」
妖怪ができる過程………たしか人間が良く分からないものに抱いた恐怖や想像などが形になるとかなんとか………ということはこの能力は妖怪を作り出すという能力ことか。なんとも恐ろしい能力だが、紫みたいな大妖怪は作ることができないらしい。
それでも人間にとっては十分脅威だろう。想像が続くかぎり、彼女は個にして万の大群となる。戦争をするにはうってつけの能力だ。
そんな彼女が今動いている。つまりまた幻想郷を破壊しようとしているのだろうか。
何を計画して動いているのかは未だ不明だ。やることといえば個人レベルで争わせているぐらい。それが幻想郷崩壊につながるとは思えない。
紫「あと残念ながら動機は不明よ」
紫がそう付け加える。残念だ。動機さえ分かっていればとめられたかもしれないのに。
紫「それじゃあ私は引き続き調べておくわ」
そういって紫は小屋の扉を開けた。外には傘を差し雨に打たれている紫の式、藍がいた。
映姫「あるいて帰るのですか?」
紫「そうよ。私もうあんまり能力使えないから。それじゃ」
紫がそういって出て行く。私がそれはなぜかと問いたがそれは雨の音に消されて紫に届かなかったようだ。
立ち尽くす。これから一体私たちはどうすればいいのか。
映姫「傘、くれよ」
外は大雨。これから永遠亭にいかなければいけないのだから気分が滅入る。
-
雨。天から降ってくる恵みであり、龍神の気分によって降ると言われている。
しかし恵みもすぎれば災いとなり、荒れ狂う川は何人もの人を飲み込んでいる。
そして恵みは急ぐ人間にとっては非常に迷惑なものとなる。
映姫「あぁもう! 靴の中がべっちょべちょですよ!」
小町「あたいなんて服透けてますよ。人いなくて本当よかったです」
映姫「しね!!」
小町「えぇ!?」
急ぐも、ぬかるんだ地面によって足を取られ走りづらい。しかも走る衝撃で泥水が跳ね、服を汚す。
龍神の馬鹿やろうと叫びたいが、叫んだところで雨がやむわけではないし。叫ぶと雨が口に入り非常に鬱陶しい。
小町「あ! 見えましたよ!!」
雨で視界が悪くなっているが前方に見えるのは閉じた門。その門柱には永遠亭の文字。
どうやらやっと着いたようだ。
これでやっと目的が果たせる。門に急いで駆け寄り、引っ張る。
びくともしない。
どうやら閂をされているようだ。
-
どうにかあかないものかと全力で何回も蹴ってみる。
がんがんと音を立てるだけで開く気配は見せない。仮にも私は神だ。神の蹴りに耐えるこの門は一体………
この音が中に聞こえているかどうか危うい。どうにかしなければ風邪をひいてしまうかもしれない。
最後の手段だ。スペルカードを使おう。
懐からスペルカードを適当に取り出し、構える。
見ると選択したカードは十王裁判。この火力ならこの門を開くことができるだろう。
小町「四季様!?」
スペルカードを発動させる。色鮮やかな光が十本一まとめになり巨大な一本のレーザーになる。
光は門を飲み込み、吹き飛ばした。砕けてはいないようだが、本当一体あの門は何でできているのだろうか。
跡に残ったのは侵入者を防ぐことができなくなった入り口とへたりこんでいる月兎の娘、鈴仙だけだった。
映姫「風呂をよこせ!!」
小町「映姫様それじゃあ、強盗ですよ。おじゃまします」
映姫「ひゃっはー!! 温かい飲み物もだぁ!!」
-
クソワロタwwwwwwwwwwww
-
クソワロタwwwwwwwwwwww(真顔)
-
ちょっwwwwwwwwww
-
永遠亭に進入、もといお邪魔をさせていただく。待合室には誰もおらず、このまま入ってもこの家の住民以外には迷惑はかからないだろう。そう判断し、濡れて歩くたびにぐちょぐちょと不快感と嫌な音を立てる靴と靴下を脱ぐ。
小町「躊躇しましょうよ、すこしぐらい。くちゅんっ」
永琳「なんだか鈴仙の悲鳴が聞こえたような気がしたのだけれど、あら」
奥から、半分づつで色が分かれているという、ずいぶん変な格好をした医者、八意 永琳が現れた。
濡れた服であがったことに関しては目を丸くしただけで怒りはしないらしい。これが大人の余裕か。
映姫「風呂にはいらせてくださ、へくちっ」
寒気がして、くしゃみが出る。気のせいでなければ少し頭がふらふらしているかもしれない。これはもしや風邪をひいたのだろうか。
小町「すみません。ちょっと用があってここに来たんだけど、雨が降り出して」
映姫「この様だよ、へくちっ。さむっ!」
永琳「………あなた本当に四季映姫・ヤマザナドゥ?」
失礼な。どっからどうみても断罪美少女、映姫ちゃんだというのに。はっ、まさかこの医者は頭を怪我をして、普通の人が肉塊にでも見えるという後遺症があるのでは! ………ないか。
-
小町「ヤマザナドゥではないですけど本物です。仕事クビになっておかしくなったんですよ」
永琳「クビ?」
映姫「はめられたのですよ。誰かに。お邪魔します」べちょ
さすがにこのまま歩きまわるのは駄目らしい。心が狭いことだ。私が同じことをされたら、三途の川にいこうぜ。久しぶりにキレちまったよ、となるが
永琳「濡れてるから、ちょっと濡れてるから」
映姫「気にしなくていいですよ」びちゃびちゃ
永琳の制止を振り切り、風呂場はどこかと大捜索を始める。すげぇ、このたたみの部屋凄い広い。ちょっとあがってみよう。おぉ、こっちにはじゅうたんの部屋が。こっちに風呂がありそうな気がする。
永琳「てゐ!! さっさとタオルもってきて!!」
小町「すみません、うちの上司が」
-
案内された温泉に入る。なんでこの病院露天風呂あるんだろうと内湯から眺めて思う。普通に宿泊施設として機能するんじゃないだろうか。
内湯には普通のお風呂と薬風呂の二種類。薬風呂はヨモギ風呂。蓬莱山つながりだろうか。
小町「あぁ〜。良いお湯ですよ。四季様〜」
小町がお風呂の中ですっかりとろけきっている。気持ちよさそうなので私も軽く体を洗い入る。というか小町先に体洗えよ。
映姫「あつっ!」
小町「そうですかぁ? これくらいがいいと思うんですけど」
江戸っ娘め。熱いのでゆっくりゆっくり時間をかけて入
映姫「あうっ!?」
ろうとしたら、滑って湯船にダイブした。熱い熱いあついっ!!
映姫「あわわわわっ」
小町「四季様なんで風呂でおぼれかけてるんですか!?」
-
映姫「あふぅ」
お風呂の温度になれ、タオルを頭にのせてビバノンノンとしていると、ふと小町が目に入った。
小町「どうかしましたか?」
映姫「いえ」じーっ
小町「ふふんふ〜ん♪」ぷかぷか
映姫「………オゥ」ペタペタ
浮いている。確実的に浮いている。なぜだ重いはずなのになぜ浮く。空気でもはいっているのか。
自分を見ると、浮く部分はあまりない。というかほとんどない。小町がカンチェンジュンガだとすれば私はカムイエクウチカウシ山ぐらいの差があるからだ。
これが貧富の差か。
映姫「全部貧しいのが悪いんやっ!!」
小町「っ!?」ビクッ
映姫「なんでもないです。ところで小町は胸が大きくてうらやましいですね」
小町「え!? あたいですか? でも大きくても不便なだけですよ。戦うとき揺れて面倒ですし、肩こりますし」
映姫「そう、ですか」
持っているものと持たざるものとの間で意識の差があるとは思わなかった…!
-
小町「さっぱりしましたね。あ、着替えありますよ」
映姫「私がブレザーで、小町が着物ですか」
小町「似合うと思いますよ。四季様。そういえばなんだか落ち込んでましたが大丈夫ですか?」
映姫「えぇ。すでに私は悲しみを優しさにしましたから」
おそらく鈴仙のものであろうブレザーを着る。少し大きいのが悲しかった。
-
存在していた謎の巫女、正体不明の仮面の男、彷徨う悪霊。謎は謎を呼び、絡まり合う本質が露わになる。
しかしながら少しずつ謎は一つに集い始めている。
黒幕は果たして。
幻想郷の行く末は?
そしてえーきちゃん様ははたして四季映姫ヤマザナドゥに戻れるのか!?(くわっ
……雨はただ、鈍色の調べを奏でる……
なーんちゃって♪
てなわけで支援
-
>>173 ありがとうございます!
迎えに来た妖怪兎の案内を受け、永琳が待っている部屋へと向かう。
襖を開け、中に入ると永琳と鈴仙がいた。入ると鈴仙が恨めしそうな目でこっちを見る。はて、何かしただろうか。
映姫「ふぅ。さっぱりしました。あ、服お借りしてます」
鈴仙「………私のブレザー」
小町「永琳さん、服ありがとうございます」
永琳「いえ、構わないわ。それで話って何かしら」
話………さっき紫から聞いた話は全て伝えて良いものだろうか。次の異変が起きる。いやそんなことは伝えられない。封印された歴史をみだりに伝えるわけにはいかない。最悪巻き込んでしまうという可能性もある。そもそも次の異変を起こさないために動いているのだ。内密に、誰も知らないというのが一番良い解決方法だ。
伏せて伝えよう。永琳のことだから嘘を見抜いてくるだろうが、知らぬ存ぜぬで通すしかない。
精一杯の作り笑顔で話を切り出す。
映姫「今、現在。幻想郷がおかしい。それは気づいてますか?」
永琳「………いいえ。特に何もないと思う、いや、なんだか人間外の患者が増えたかしら。怪我で」
怪我というのは例のあの仮面の悪霊だろうか。それともただ単に怪我が増えているだけか。
後者であることを望むが、前者だろう。最善を望むなら最悪を考えなければならない。
-
妖怪の怪我が増えている、か。そういえば幻想郷の破壊は冴月 麟の目的だ。悪霊で人間と妖怪をぶつけて妖怪の心象を悪くしようと?
その結果人間の対妖怪勢力―――こないだの古明地 ことりという妖怪みたいなのが現れた。
なんて遠回りだけど、地味に効果的な作戦を取るのだろうか。でもあれだって妖怪だろうに。もし幻想郷がなくなれば、人間の支持を受けていることりはともかく嫌われ者のさとりと、その妹こいしは消えてしまうだろう。
家族の命よりも大切なのか。
ありえない―――と断言するには私はいろいろな死者を見すぎていた。
自分のためには親でも殺すようなやつがいるのだ。それを人は革命者やテロリストと呼んだりする。あるときは英雄。人間が自分の思想を柱とし、その柱中心に物事を進めるようになったとき、それはそう呼ばれるのだ。
映姫「けして表面には現れない水面下の悪意がこの幻想郷で被害を及ぼしているのです。まぁ、私も被害にあったのですが」
永琳「被害っていうと、クビになったことかしら」
映姫「えぇ。起こるはずのない、裁判の判断ミスでクビになりました。浄玻璃鏡を使っていて、完全に犯行現場をみました。簡単に説明すると、男が少女を殺した。それだけです」
単純な事件だったはずなのだ。何度も言うが間違えようもない簡単な事件なのだ。見た目だけは。
ドラマと思っていたものが人形劇であったかのように。登場人物は自分ではなく誰かに操られていたのだ。
-
映姫「それで今調査をしているのですが、分かったことは外からの怨霊がそれを引き起こしたということです」
永琳「ならそれを退治すればいいんじゃないの? 貴方ならできるでしょう?」
映姫「えぇ。私なら出来ると思います。無傷ではいられないと思いますが」
永琳「なら、もう終わりなんじゃないの?」
悪霊を倒して終わりなのだろうか。悪霊を倒したぐらいであの冴月 麟は止まるのだろうか。おそらく止まらない。
映姫「いえ、まだ終わりではないのです、むしろこれが始まりでしょう。問題はそんな浅い所にない。今日ここに来たのも、忠告をしにきたのですから」
永琳「え?」
-
映姫「ここ何百年も永遠亭にいた貴方では分からないでしょうが。いえ、誰もわからないのですが」
そう、誰も知るはずはない。私は紫と慧音によって消されたから。
映姫「その誰も知らない奴が次の異変の犯人です」
そう、誰も知らないこの私が異変を起こしてやる。
永琳「誰も知らない? っていうと、外の世界の」
映姫「いえ、中の人物です。産まれてから今まで」
そう、私は幻想郷に産まれた。霊夢や魔理沙と友達だった。悲しいことに過去形だが。
永琳「………どういう事?」
映姫「誰にも知られていないではなく忘れられたといったほうがいいかもしれない」
だから思い出させてやる。
永琳「だからどういう事」
映姫「彼女はかつて異変を起こした。この幻想郷の存続にかかわるほどの。今までどんな異変が起きようともそのタブーには誰も触れようとしなかった。そのタブーに誰よりも早く触れた」
私を思い出させるために。もう二度と私を忘れないように。強く、誰も成し遂げなかったタブーに触れてやる。
映姫「異変は博麗霊夢誘拐。目的は博麗霊夢を幻想郷の外に連れ出すことだったようです」
なぜなら私は博麗霊夢を――――しているから。そのため幻想郷を――――
-
映姫「ですが、私が調べられたのはここが限界。どこまで調べても彼女のことを思い出すことができない。そもそも彼かもしれない」
映姫「だから忠告をします。もうすぐ大きな異変が起きる。それまでに、覚悟を決めておきなさい」
どちらにつくのか。私か、あいつか。
永琳「異変って何が起きるの?」
映姫「分からないのです。おそらく大きな異変が起きるとしか」
そうとてつもなく大きな異変。
永琳「………ご忠告どうもありがとう」
映姫「―――!? ………お風呂ありがとうございました」
あれ、今私何話したっけ。
-
映姫「小町、行きますよ」
今、おそらく私は何かされた。永琳でもない鈴仙でもない小町でもない。この場にいない誰かから。
小町「え、あ、ちょっと待ってください(もぐもぐもぐ)(ずずー)お茶菓子ありがとうございました」
外はまだ雨。弱まってはいるが、走って帰れるほど弱くはなかった。
映姫「失礼。傘を貸してください」
小町「本当すみません。服次洗って持ってくるので」
-
映姫「小町………」
永遠亭から帰る途中の竹林で立ち止まる。
借りた傘に雨がぶつかる音を聞きながら、さっきの私を思い出そうとしていた。だけど思い出せない。
映姫「小町、私はさっき何を話しましたか?」
小町「何言ってるんですか四季様。ボケたんですか?」
映姫「いいから早くっ!!」グイッ
小町「いたッ。四季様痛いです………っ」
映姫「あ、すみません。ちょっと混乱してて。私はさっき、無傷ではいられないと言ったあと。なんて言いましたか?」
意識が消える前。記憶が残っているのはそこまでだ。
その後―――私は何を話した。
小町「なんか次の異変が起きるとか、犯人が忘れられているとか、そんなことを」
しまった。思いっきり話していた。これで永琳は知ってしまった。次の異変を。
なぜだ。なぜ教えた。犯人の宣戦布告か。
絶対異変は起きるという。絶対に異変を起こすという―――!
-
映姫「この私が操られるとは」
小町「何言ってるんですか? 四季様」
映姫「………この、私が操られるとは」
体から力が抜け傘を離してしまった。風が吹き、傘は遠くどこかに運ばれていった。
ドサッ
小町「四季様!?」
ぬるりとした何かが顔についた。
血か泥か。
どうでもいい。
今考えている私は本物か?
まだ操られているのか?
私は操られているのだろうか。
分からない、わからない。わからないわからないわからない解らないわからない判らないわからないわからないっ!!
映姫「うあぁああぁあああああああああぁああああッァア!!」
-
四季様が叫んで倒れた。あたいは目の前が真っ白になって四季様を背負って博麗神社に戻った。
何を言ったかは覚えてないけど、たぶん変なことを霊夢に口走っていたんだと思う。
霊夢は泥にまみれた四季様をふいて、着替えさせ布団に寝かせて「もう大丈夫」と言った。
あたいはそれを本当なのだろうかと心配になりながら、できることはないので四季様の隣にずっと座っていた。
-
霊夢「ただの精神汚染よ」
目を覚まさない四季様の隣に座っていると霊夢が部屋に入ってきてそう言った。
霊夢「わかってると思うけど、妖怪や神なんかは私と違って精神が本体。それをいじくられたみたいね。多分映姫の心に無理やり他の心を入れたとかそんな感じで映姫の心はぐっちゃぐちゃにされたのよ」
心をぐっちゃぐちゃに? 誰かの心が四季様の中に?
そういえば四季様は倒れる前に自分は何を喋っていたのかと聞いた。
あれか。永琳と話していた四季様は
小町「なんであたい気づかなかったんだろう。これでも部下なんだよ。それが上司の異変にまったく気づかないなんてさ。あはは笑っちゃうよな。サボりなんていわれても仕方ない。駄目なんだ。あたいは駄目なんだよ 失格だよ。守れないんだよ。守れなかったんだよ、無能だから、あたいが無能だから」
霊夢「あぁ、うっさい!! じめじめするのは天気だけにしなさいよっ」スパンッ
霊夢が頭をはたく。反応ができずに思いっきりくらってしまった。
霊夢「だから精神が本体って言ってんでしょうが! 病むな、面倒くさい!!」
小町「あはは、ごめんごめん。病んでもしかたないよね………ちょっと空気吸ってくる。
-
地蔵だったころ、私は見守るだけで何もできなかった。
そして今、私は誰かを助けるために動いていた。休みができたなら誰か困っている人を探しにいく。そんな生活を続けていた。
だって、私の前で死んでいく人がいたから。飢餓のときだって妖怪に襲われているときだって、助けることはできなかった。
私にできたことは助けてあげてと神様に伝えること。
今起きていることは救えなかった。助けれなかった。
だから今私は救わないといけない。救えるのなら手を伸ばす。
人であろうと妖怪であろうと助けなければいけない。
それが私の心。
大丈夫。私はまだ砕けていない。
映姫「………おはようございます」
霊夢「おはよう。目覚めはすっきり?」
映姫「えぇ。おめめぱっちりです」
-
9月13日
なにやら永遠亭のほうが騒がしいと紫の式、藍が夜分遅くにわざわざ知らせてきた。
とりあえず今から永遠亭に眠気まなこの小町を連れて行こうと思う。
急がないといけないので書くのはここまでにしよう。
-
小町の能力を使い竹林まで行くと、そこではなにやら銃声が上がっていた。
気のせいでなければ永遠亭で何か光っている。何が起きたのだろうか。
小町「うげっ」
小町が悲鳴を上げたので小町のほうを向くと死体があった。月兎の死体がいくつか。
なにやら鋭利なもので切り裂かれているようだが。
映姫「何が起きたのでしょうか」
小町「銃声の主がやったのか、他の何かがやったのか………」
映姫「私たちもこれと同じにならないように気をつけましょう」
数人を相手にして勝てるのならおそらくかなり強い。しかも死体の月兎は訓練されているようだ。
とりあえず急ごう。永遠亭に加勢をしなければ。
-
キンッ―――そんな金属を叩いたような音がして、永遠亭が光の壁に包まれた。
あれは結界だ。しかも強力な。
映姫「本当何が起きているのでしょうか」
ざぁあぁあぁと風が吹き、竹を揺らす。
スパンッ
映姫「!?」
風が、竹を切り裂いた。倒れてきた竹は空中でバラバラになって地面に落ちた。
小町「あ、あれっ!」
小町が暗闇に指をさす。その方向を見ると闇に溶け込む黒いフードと不気味な仮面が見えた。
映姫「崇徳天皇が現れましたか」
スペルカードを出し構える。
スペルカードで倒せるだろうか。非殺傷で大丈夫か。
いや、してみせる。
罪は償わせなければ。消滅なんてさせない。
映姫「来なさい。ヤマザナドゥの名。あなたと交換で返してもらわなければいけないのですから」
-
風が吹いて、風は見えない刃となり飛んでくる。唯一よける手段があるすれば音を聞いてよけるぐらいか。
風を操る能力でも持っているのか。
崇徳「キヒッ。キヒヒヒッ」
映姫「話が通じそうにありませんね。小町っ!!」
小町「了解です! 死者選別の鎌っ!!」
小町の鎌が金色の光をまとい、輝く。小町は一瞬で仮面の男に肉薄しその鎌を振るった。
カキンッ
鎌が不自然に飛んでいく。
小町「あっ」
風が吹いた。
映姫「小町ィ!!」
崇徳に向かって光の矢を放つ。光の矢20本、これが間に合わなければ小町は斬られる。
小町「あ、ああ、あぶなぁ!?」
小町はすばやくバックステップで回避をし。光の矢は見えざる刃に阻まれ、弾かれた。
-
厄介だ。どうにかしてあれを止めなければ、射撃も近接も当たらない。太いビームならば打ち抜けるかも知れないがあまりにも隙ができる。避けられて動けないところをやられると即終わりだ。
小町が幽霊や銭を投げ、私が光の矢やレーザーを放つことで動きを止めているが決定打にはならない。
どうにかして動きを止め、その間にラストジャッジメントで打ち抜く。それが理想的だが、竹が邪魔をし、思うように動けない。
浄玻璃鏡があればまだ何とかなったかも知れないがすでに砕けている。あの手鏡高かったのに。
映姫「さてはて、これはもしかしてピンチですか?」
小町「いやいや、霊夢のほうが恐ろしいですよ」
動きを止めるために使ったスペルカードは彷徨える大罪とタン・オブ・ウルフの二枚。両方効果的とはいえない結果に終わってしまった。
私があと持っているのはいずれも主砲級の技。隙が多すぎる。
小町は牽制のスペルカードをいくつも持っているが、威力が足りず全て弾かれていた。
ジリ貧。スペルカードのルール、不殺に縛られているとあまりにもやり辛い。
小町「………」カランッ
小町が鎌を投げ捨てた。
映姫「小町?」
小町「あたいは不惜身命、でも四季様は可惜身命でお願いしますよ」ニコッ
-
小町の姿が消える。いや能力で一瞬の間に仮面の男の後ろに移動していた。そして崇徳を後ろから羽交い絞めにする。
風が吹く。
小町「四季様。早く、お願いします、よっ。あたいごと、打ち抜いて、殺さないと、四季様、危ないです」
小町の体が刻まれていく。しかしいくらその肌に傷を作ろうが、いくら血を流そうが小町は離さない。それどころかさらにきつく絞めている。痛いだろう、辛いだろう。
なのになんでそんな笑顔なのかっ!!
なんで笑えるのか!!
死ねば死に損 生くれば生き得と言っていたのは小町じゃないかっ!!
映姫「いえ、殺さずに止めます」
小町「駄目ですって。たまにはあたいにも、働かせて、くださいよ。お願い、です」ニコッ………
映姫「………」
小町「死ねば死に損ですけど、誰かのために死ねるなら、案外死に得ですって」
映姫「すみません、小町」
小町「いいんですよ、四季様」
私には
殺せない
-
小町を殺すぐらいなら殺されたほうがマシだ。
多分小町だけなら逃げられるだろうから。隙を作ればなんとかなるだろう。
映姫「小町。離れててください」
小町「四季様?」
光の矢を放ち小町だけを弾き飛ばす。
小町は切り裂かれてすでにふらふら立ったようで、あっさりと弾き飛ばされた。痛いだろうが我慢して欲しい。
映姫「審判『ラストジャッジメント』」
スペルカードを発動させる。当たれば勝ちだが、避けられれば死。
それでも小町が助かるのなら、私にとっては両方勝ちのようなものだ。
全てを裁く断罪の光が闇夜を裂き飛んでいく。竹をへし折り崇徳へ一直線に。
崇徳は空へと飛び主砲をかわした。しかし小町からは離れている。それに絶好の私を狙う機会だ。
映姫「私の勝ち、です」
風が吹いた。
-
???「おぉっとさせるかぁ!!」
誰かの声が聞こえた。たしか聞いたことのあるような声。しかし誰かはわからない。
???「開発ナンバー24「凪様」だぁっ!! 説明しよう!! この発明はこのフィギュア、もといとある神様をあしらった像の背中にあるスイッチを押すことで半径100メートル圏内の地帯を無風地帯に変えることができるっ!! というわけでポチッとな!!」
風が―――やんだ。
飛んでくるであろう不可視の刃は私を刻むことはなかった。
とりあえず助かったようだ。
-
???「大丈夫か?」
映姫「えぇ、だいじょう―――」
ト、 ト、
_,.-L:l-l::l
/: : :ヽl::l ヽト、
./: : : ,.-‐ヘ:l。lト、ヽ
{: : :/ ハl0l ',
l: : { lnl }
', ヘ lul j
V、ヽ l゚j /
_ト、ミニト、/_/_,.ィ゙
/`ヽ、\\/∨/
,. -‐'"ニ=、`¨`ー-イ7l>、__
_,.-‐'"⌒ヾヽ、_/\__>=ミY´ノノヾ∧:.`ヽ
: : : : :/ ̄ヾ: :l´ \ ヽ lィ゙ lLヽ=ヽ、
ニニ<<__||: :\ヽ// i } } `ヾL__イll
 ̄¨ヽ___ヽ: :`1 ̄ l } }___ト-イ
映姫「誰!?」
???「あ、そうかこの格好じゃわからないよな」
白衣男「白衣男だ」
-
崇徳「ジャマ………スルナ。キハハハハッ!!」
白衣男「ちっ。そこの二人!。風は封じた、俺は戦う力を持っていないっ! 倒せ!!こいつを倒してくれ!!」
映姫「その姿で戦えないのですか」
白衣男「これは防御用だ。というわけで後は任せた!」
映姫「そうですか。小町、やれますか?」
小町「やれますよ。あたいに任せてください」
映姫「任せましたよ。小町」
小町「あいあい、さー」
小町の鎌が輝く。
小町「魂符『生魂流離の鎌』………この鎌は有象無象の区別なく………全てを切り裂くよ」
一瞬だった。
そもそも距離を操る小町が本気を出したのなら、全ての勝負は一瞬で着く。小町に切られるか、小町がやられるか。そんな弾幕勝負なんてものの外にいる存在が小野塚 小町だ。
袈裟斬りで降り下ろされた鎌は崇徳を一刀両断し、その傷口から魂が抜け落ちていく。
小町「手間かけさせんじゃないよ。若造が………」
そういい終わると、小町は力を使い果たし、地面にどさりと倒れこんだ。
-
小町に駆け寄り傷の具合を調べる。
傷はそう大したことはないみたいだ。出血は酷いがちゃんと止血をすれば命に別状はなさそうだ。
気がつけば永遠亭の結界は解けていた、あそこで手当てをしてもらおう。何があったかは知らないが永琳のことだ。すでに解決しているだろう。
映姫「馬鹿小町………世話が焼けますね」
身長差ゆえに背負いにくいが、何とか小町を背負うことに成功する。
映姫「これで事件のひとつがかいけ………つ」
崇徳がいなかった。消滅はしていなかったが、それでも逃げられるような怪我ではなかったはず。
………誰かが奪った? なんのために。
いや、それより今は小町を手当てしなければ。
多分時間差で消滅しただけだ。そう思おう。
小町「うぇへへへ。おごりですか、四季様ぁ………すぴーすぴー」
映姫「はいはい。おごりでかまいませんよ。馬鹿小町」
背中で傷ついているのに、気持ちよさそうに眠っている小町はずいぶんと大物だと思う。
どうか、今はせめて夢の中だけでもゆっくり休むといい。
それで目が覚めたら一緒に飲みにいこう。
-
〜とある竹林の深い闇の中〜
これで、私は
ボリボリムシャムシャ
強くなれる。
妖怪を全て殺す。そのためには私は強くならなければいけない。
???「うぇ………」むしゃむしゃ
体の中に力が入ってくる感じはおぞましい。しかしそれも強さのためならば甘露にもなる。
これは復讐だ。
あの子を殺した妖怪に対しての復讐だ。
???「待ってなさい………殺してあげるわ」
???「どう、おいしい?」
???「美味しいわよ。あなたもどうかしら?」
???「うげー。私は遠慮しとく」
???「残念残念。うふふふふ」
???「あははははー」
-
小町の傷が癒え、事件の顛末(といっても私の判決に関する部分だけ)が解ったので、それを閻魔大王に伝えにいく。
冴月 麟が悪霊を逃がして、その悪霊に操られた白衣兄が少女を殺した。
あの能力と記録をみればこれはわかることだろう。
さて、ヤマザナドゥになった後は再び冴月 麟に関して調べなければいけない。
小町「やりましたね! ヤマザナドゥ復帰ですよ!」
映姫「そんなはしゃぐことじゃないですよ。当たり前のことです」
小町「四季様、前とテンション違うんですね」
映姫「もう閻魔ですからね。ニートは卒業です」
小町「あ、着きますよ。あたいも仕事復帰の報告をしなきゃなりませんから一緒ですね」
映姫「そうなんですか。では行きましょう」
これで事件は一段落着いた。しかしこれで終わりではない。まだまだ忙しい。
なんてったって異変が起きそうなのだ。優秀すぎる探偵は事件が始まる前に解決してしまうので物語になりえない。しかしそれは平和でいいじゃないか。
望むのは平穏。皆で酒を飲み、笑い合えるような。そんな平穏が望ましいのだ。
-
映姫「え?」
一瞬また心をいじられたのかと思い聞き返してみる。
しかし帰ってきた答えは一緒だった。
閻魔大王「四季 映姫。小野塚 小町。アフリカ担当所属になる」
小町「えっと、理由を聞きたいのですが」
閻魔大王「これは決定だ。意義はみとめない」
映姫「待ってください。幻想郷を離れて、もう一人のヤマザナドゥだけで回せるとは」
閻魔大王「………幻想郷担当の部署はなくなる」
………え
いやいやいや。幻想郷の全員が不老不死にでもなったわけじゃないし。普通に産まれはは死ぬし。どこかしらで人が死んでるし。だから幻想郷の担当のヤマがいなくなったら死者の管理ができなくなって、輪廻から外れた魂がどんどん増えて大変なことになる。
だから幻想郷がなくならないかぎり、幻想郷を担当する閻魔殿はなくならない―――
幻想郷がなくなる?
あの冴月 麟が起こす事件で消える?
ないないない。だって紫もいるし、永琳もいるし、幽香だっているし。
なくなるわけがない。ありえない。でも、なんで閻魔殿をなくす?
-
映姫「お待ちください。幻想郷はなくなりません。なぜそう思うのかお聞かせください」
閻魔大王「決定したことなのだ。それでは忙しいゆえ失礼する」
閻魔大王が退席をし、部屋から出て行こうとする。
映姫「え、待ってください。待って。待てよ。おい、待てよ!!!!」
小町「四季様。閻魔大王ですよ!?」あわあわ
閻魔大王「………まだ何かあるのか?」
映姫「当たり前だろ。昨日までいた幻想郷がいきなりなくなるとか信じられるわけないだろうが! せめて説明しろよ!! わけわからないこといって終わらせてるんじゃねぇよ!!」
閻魔大王「四季 映姫。あまりにも口が過ぎるがまぁいい。許そう。もう一度聞く。何かあるのか?」
映姫「―――っ!! 四季 映姫。ヤマの名なんていりません!」
小町「え、四季様!?」
閻魔大王「どういうことだ?」
映姫「辞めてやります、こんなところっ!!」
-
四季 映姫。ニート生活続行。
映姫「やってしまった………」
おもわずカッときて閻魔大王に暴言を吐いて、しかも辞めてしまった。
どうしよう。これから生活。
篁「いやぁ。若いねぇ」
ベンチに座って落ち込んでいるといつの間にか篁さんが横に座っていた。
篁「小町ちゃんから聞いたよ。辞めたんだってね」
映姫「はい………」
篁「まぁ、気持ちはわかるよ。分けわかんないことを力で押し通されたら反発しちゃうよねぇ。ついでに小町ちゃんも死神やめちゃったし」
映姫「え?」
篁「今退職届け書いてるよ。じっちゃんどうしようって泣きついてきた小町ちゃんはかわいかったよ? あ、どうでもいいかぁ。まぁ、嫌じゃなかったら頼ってね。小町ちゃんの知り合いなら協力しちゃうよ」
映姫「ありがとう、ございます」
篁「さ〜て。次のお仕事しなくっちゃねぇ。それじゃあ頑張ってねぇ」
篁さんは立ち上がり、口笛を吹きながら廊下を歩いていった。
小町が辞めた………私のせいだ。
-
小町「あ、四季様」
映姫「もう部下じゃないんですから、様はつけなくていいんですよ。馬鹿小町」
小町「あれ、怒ってますか?」
映姫「怒ってないと思いますか?」ニコッ
小町「え、えぇっと。怒ってないでファイナルアンサー………」
映姫「残念!!」ゴスッ
小町「きゃんっ!」
映姫「なんで辞めたんですか。小町は何もしてないでしょう?」
小町「あたいも幻想郷が好きだって話ですよ。それに四季様以外の部下になんてなりたくないですし」
映姫「………馬鹿小町///」
小町「あれ、顔赤いですよ?」
映姫「怒ってるんです!!」ゴスッ
小町「きゃんっ!」
-
映姫「というわけで、閻魔辞めました。これからここに住むことになったので、今後ともよろしく」
霊夢「はい?」
博麗神社に戻り、事の顛末を伝えると霊夢は当たり前だが驚いていた。
さて、これは数発しばかれるかと覚悟していたが、霊夢は以外にも「仕方ないわねぇ」で済ませてくれた。
どうやら、食費をこっちもちというのはなかなかに大きなことらしい。
小町「これからどうします?」
映姫「決まってます。事件の捜査ですよ。あと、さとりに話を聞きにいかないといけませんし」
霊夢「さとりにねぇ。わたしは異変出るまで動かないからよろしく〜」
映姫「怠慢巫女………」
霊夢「金くれれば協力するわよ」
小町「強欲だね」
-
ふぁ、555だぁぁあ!?
あとなんか起きたぁぁああぁ
-
やっぱり映姫がおかしい
-
ファイズAAにワロタwww
-
ヾ / < 仮面ライダー555が>
,. -ヤ'''カー、 /Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Yヾ
ー―ァ /r⌒|:::|⌒ヾ
_ノ オ{( |0| )} オオオォォォォ!!!!!
__,ヽ,ヾ,_|V|,_ノ、/ ,r-,,=
,゛==ゝ_ViV_ノ~i/ 〃 `ー―-、
/ /⌒`//´⌒c/^^^ ))))))))))
,,―イ {ー''"~{ {~゛`ー`/'`'~/ー--―'
)) ,./ゝ_/∧ゝ_ノ ノ
ー''" |ロ ロ |
人,_,人,_,人,_,人,_,
< >>555ゲットだ>
-
>>206
駄目だなぁ君は
-
我慢できなかった
-
11月1日
やばいやばい、何がやばいって超やばい。
八雲 紫の能力喪失。
まじやばい、シャレにならない。
どうしよう。
-
朝起きた、寝坊した、急いで着替えて出かけなきゃ。
いや、仕事してないし、寝坊とかないです。はい。
人里にいったり、妖怪の山に潜入したり、竹林を探してみたけど、どこにもあの仮面の男はいない。
事件も起きてないし、本当に消えたのだろうか。
そうだといいなぁと布団をたたみながら考える。
空は晴天、雲も少なく、もうそろそろ冬にしてはなかなか良い天気だ。
こんな日は調査をやめて、のんびりしたいなぁと思うが、しないわけにはいかない。
早期解決が病だって事件だって大切なことだから。
いやもう発生から結構経つから早期発見でもないが。
とりあえず朝ごはんを食べよう。
一日の源、朝ごはん。
食べないと力が出ないから。
-
映姫「あぁ、味噌汁美味しい」
がらがらっ!!
藍「四季 映姫っ!!」
味噌汁うめぇとほっこりしていた私の朝の時間はわずか数秒で崩壊した。
九尾の狐、幻想郷のもふもふ担当こと、八雲 藍がいきなりふすまを思いっきり開けて登場した。
映姫「見てのとおり、朝ごはん途中なんでちょっと引っ張らないで、服脱げる、服脱げるから」
藍「いいから早く!!」
よくねぇよ。
なんとか振りほどき、3分の格闘の末、藍をおとなしくさせることに成功する。
話を聞くところによると、ここでは話せないから、家に来てくれ。とのことだ。
せめて朝ごはんを食べるまで待ってくれと伝え、再び味噌汁をすする。
映姫「ぬる………」
冷めていた。
-
朝ご飯を食べ終わり、藍に連れられ空を飛ぶ。聞いたところ、白玉楼に向かうらしい。
なぜかと聞いたところ、どうやらそこに紫の住処へと向かうスキマがあるらしい。
用事あるなら迎えにこいよ面倒くさいと思ったが、紫がそこまでするのなら何か理由があるのだろう。
なんかいきなり斬りかかってきた半霊を、人間か幽霊かのどっちかで分けるぞ、と脅し白玉楼に入る。
やはり噂通り広い。向こうが見えない。何坪あるんだこれ。
藍「こっちです」
案内されたところは、大きな桜の木の下。根本に扉のような形のスキマがあった。これをくぐればなんと映姫ザワンダーランドにご招待。嘘だけど。
妙な浮遊感が一瞬し、気が付くと大きな家の庭に。白玉楼までとは言わないが、そこそこ大きい。
そしてその庭には人間………いや亡霊の男が立っていた。地縛霊!? 映姫ちゃん怖い!
亡霊男「藍さんおかえりなさい。あれ、あなたは確か四季 映姫さん」
映姫「そうです私が四季映姫です。あなたが噂の亡霊男さん?」
亡霊男「どうも亡霊男です。紫の夫です」
映姫「あぁ〜。それはそれは。おめでとうございます」
亡霊男「どうもありがとうございます。とりあえずお茶はいかがですか?」
藍「世間話してないで早く来てください!!」
-
最早映姫のキャラが原型留めなくなってきたな
-
紫「よく来てくれたわね」
久しぶりに会った紫はやけにゆったりとした服を着ていて、それでもなお目立つ腹部。明らかに大きいこれはまさか
映姫「太りました?」
紫「妊娠したのよ!!」
映姫「あぁ、おめでとうございます。それで伝えたいことって妊娠ですか? 無職だから出産祝いとかあんまり出せませんよ?」
紫「違うわよ。いや、まぁ関係してるけど」
関係してる?
とすれば妊娠で動くのは赤ちゃんに悪いから協力は無理だと?
それは困った。紫無しでの情報収集は少し難しいものがある。
紫「能力が使えなくなったわ」
映姫「!?」
-
映姫「ちょっと待ってください。どういうことです?」
紫「だから能力が使えないの。お腹の子が能力吸い取ったみたいで。出産するまでは使えないみたい」
映姫「おぉう………」
紫「後はがんばってね♪」
ウインクしてくる紫をぶん殴りたくなる衝動にかられたが相手は妊婦、相手は妊婦と鋼の意思でねじ込みなんとか耐える。
紫「藍なら貸してあげるからこき使ってもいいわよ」
藍「うぇ!?」
紫「家事なら亡霊男がいるもーん♪」
あ、この人結構不憫な人だ。紫に振り回されているであろうことが普通に想像できる。
藍「………というわけで、よろしくおねがいします」
ちゃららららーん ちゃららららーん ちゃーちゃーちゃーちゃーちゃー♪
八雲 藍が仲間になった。
すごく仲間になりたくなさそうな目で見ている。
かわいそうに。
-
どゆことなん……支援?
-
男「幻想郷で就職活動」を見るといい
-
新しくスレが立つ度にやってるなこの流れ
-
映姫「いや、うちには小町がいるんで、大丈夫です」
紫「あら、残念ね。仲間にしたいのなら、このユカーリの酒場にいつでも来ると良いわ」
酒場? 酒の一本すら見当たらないが。相変わらず何言ってるかちょっと良くわからない。
映姫「それでこれから幻想郷の管理どうするんですか?」
紫「それがねぇ、どうしようかしら。霊夢がいる限り大丈夫だと思うんだけど。でも逆にいえば霊夢がいなけりゃ大変なことになるのよねぇ」
つまり霊夢が全て要と。
こんなときに異変でも起きたら大変じゃないか。いや、フリじゃないから絶対起きてくれるなよ? 起きるなよ?
紫「まぁ、霊夢に弾幕勝負で勝てる妖怪なんてそうそういないから安心していいわよ」
映姫「弾幕勝負では最強ですけどね」
夢想天生使えば無敵だから、といっても不安がいまいちぬぐえないが。
紫「後はよろしくねー」
ひらひらと手を振る無責任な幻想郷の管理者に別れを告げ、元来たスキマを通り白玉楼に戻る。
幽々子「………」
映姫「?」
亡霊のお姫様がなぜか咲いてないこの桜を見ている。どうしたのだろうか。
-
映姫「どうかしましたか?」
幽々子「………あ」
幽々子の視線が私に向く。どうやら私がいたことにも気づいてなかったらしい。
幽々子「あらぁ。あなたは閻魔の」
映姫「元閻魔です。今はただの四季映姫です。ところで黄昏てたのですか?」
幽々子「ふふ、なんでもないわよぉ。ただ桜餅が食べたいなぁって思ってただけだから」
桜餅か。でも枯れた桜を見て桜餅とは。
過去を見るのは亡霊の性といったところか。いや、そこまで深く考えなくてもいいとは思うが。
幽々子は桜に近づきそっと撫でる。それはまるで何か大切な人に触れるかのような触れ方だった。
幽々子「咲かない桜に意味はないって言うけど、桜だって迷惑よねぇ。別にそんな人に喜んでもらうために咲いてるんじゃないのに。心あったからって人のために咲くとは限らないわよねぇ」
映姫「たしかあなたは桜を咲かせようとしていませんでしたか?」
幽々子「うふふ。そうよぉ。桜に迷惑をかけたのは他でもないこの私なのよぉ。でもね一生のうち一回でいいからこの桜が満開になったところを見てみたいのよ。他でもないこの桜が、ね」
………たしかこの桜の下に封印されているのは西行寺 幽々子自身の亡骸でこれが咲くと幽々子は消えてしまうのだったか。
深草の 野辺の桜木 心あらば 亦この里に すみぞめに咲け
この桜は心あるからこそ、咲かないのだろうか。
-
幽々子「お茶でもいかがかしらぁ?」
映姫「いえ、遠慮しておきます」
幽々子「残念ねぇ。また遊びに来てね」
別に遊びに来たわけではない。そう口に出しかけたが、幽々子は妖夢以外幽霊しかいないこの白玉楼にずっといるのだから、話相手というのがあまりいないのか。
こっちに遊びにくることもあるようだが、それでもこっちで過ごす時間のほうが多い。
桜と亡霊しかいないこの場所で数百年という時間は長すぎたのだろう。
たまになら遊びにくるのもいいかもしれない。
そう幽々子に告げると、ふんわりとした笑顔を浮かべ、またね と、そう言った。
おもわぬところで友人を作ってしまったが、損はなし。異変を解決すれば時間はありあまっているのだ。
早めに解決してお茶をしにこよう。
願わくば、咲いた桜並木を見ながら。
-
映姫「って事があったんです」
霊夢「へぇ」
小町「お夕飯できましたよー」
霊夢「何?」
小町「おろし鍋だよ」
そういいながら小町が足で襖を開けて入ってくる。手には土鍋。
コタツの上のみかんをどけて濡れた布巾を敷き、その上に土鍋をのせる。
ふたを開けると湯気がぶわっと噴出し天井に消えながら昇っていく。
「いただきます」
手を合わせ、霊夢と肉を取り合いながら具を集める。これはもはや食事ではない。戦争だ。
小町「豆腐が一番美味しいと思うんだけどなぁ」
豆でも食ってろ。
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豆でも食ってろワロタ
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豆腐は高カロリー
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霊夢「はふはふ。そういえばさとりのとこ行ったの?」
映姫「まだです」
霊夢「なんか今日こいしと人間の男の子が来て、温泉どうですかって言ってたんだけど、一緒に行く?」
映姫「行きたいのはやまやまなんですが」
小町「風呂入ってくつろげるほどあたい達暇じゃないんだよねぇ」
霊夢「残念。ま、わたしは行って来るけど」
そうドヤ顔で行ってくる霊夢。おのれ鶏肉の恨みか。
温泉入りながらお酒飲みたい。
博麗神社の温泉で我慢するしかないか。
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一人星空を眺めながら温泉につかる。
この博麗温泉はそこそこ大きな広さがあるが、博麗神社は妖怪が多いことで有名なので人間が訪れることはよっぽどない。
温度はそれほど熱いというわけではないが、体が冷えない程度には温かい。
日本酒を飲みながら長湯するにはちょうど良い温度だ。
魅魔「私にもくれないかい?」
気が付くと湯船に魅魔が浸かっていた。一人だけだと思っていたがどうやら違ったらしい。
予備に持ってきていたお猪口に酒を注ぎお盆を湯の上に滑らす。
魅魔「………はぁ、やっぱり酒はどんなときでも美味しいねぇ」
魅魔が一気に飲み干しそう言う。酒は死人でも生者でも獣でも神でも等しく好む。酒で繋ぐ縁の円。酔いて乱れし艶の宴、なんてね。
魅魔「なんかさ、悪霊の私がいうのもなんだけどさ、平和が良いよ。酒が飲めて、友と語らい、そして笑いあう。なんでそんな単純な事ができないのかね………誰が悪霊だ!」
映姫「自分で言ったんじゃないですか。まぁ、そうですね。世の中誰かが平和だったら誰かが苦しんでるなんてそんな不平等な世界でできてますからね。神はいますが、皆等しくは愛してくれませんよ。昔も今も、意識ある限り誰しも自分勝手です」
魅魔「主義主張がある限り平和は訪れない………ね。そして負けたものが勝ったものを引きずり落とすためにまた戦う。自分の信じたことが正しいかなんて神ですら分かる訳ないのに、皆それが正しいと信じ込んで今日もそれが故に血を流す。あーやだやだ。もっと単純に生きられないものかね。人に迷惑かけなきゃ誰しも皆正しいよねぇ。雨の中傘をさしたって、踊ったって間違えじゃないんだから」
映姫「ところで一体どうしたのですか? いきなりこんな話して」
魅魔「んにゃ、なんか神綺から呼び出されてねぇ。他にはサリエルとか夢美とかも呼び出されてたね。なんか異変がどうのこうの言ってたけど」
異変………神綺の動いていたのか。なら解決はもっと早そうだ。ありがたい。
-
風呂を出て博麗神社の裏山を見上げる。話によるとそこに魔界があるらしい。
その魔界を作った主。神綺というのは凄く力の強い魔神。ちょくちょく紅魔館で飲み会を開いているらしいがその姿を見たことは一度もない。
しかしそんな神綺が協力してくれるのならこの異変解決したも同然だ。
映姫「これは温泉いけますね、きっと」
魔界を封印する手段なんてないのだから安心安心。
これはもう楽勝ですわー。と一人笑う。
映姫「なんて、油断してたら足元すくわれますよねぇ」
私は今までと変わらず動くだけだ。
着実堅実。前ほど固くはないが、それでも腑抜けたつもりはない。
さぁ、明日もまたがんばろう。澄んだ空気に輝く星を見ながらそう決意した。
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エラー時の再起動って怖い。
また別のスレに書き込んでしまったorz。
ほんとう申し訳ない。
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風呂を出て博麗神社の裏山を見上げる。話によるとそこに魔界があるらしい。
その魔界を作った主。神綺というのは凄く力の強い魔神。ちょくちょく紅魔館で飲み会を開いているらしいがその姿を見たことは一度もない。
しかしそんな神綺が協力してくれるのならこの異変解決したも同然だ。
映姫「これは温泉いけますね、きっと」
魔界を封印する手段なんてないのだから安心安心。
これはもう楽勝ですわー。と一人笑う。
映姫「なんて、油断してたら足元すくわれますよねぇ」
私は今までと変わらず動くだけだ。
着実堅実。前ほど固くはないが、それでも腑抜けたつもりはない。
さぁ、明日もまたがんばろう。澄んだ空気に輝く星を見ながらそう決意した。
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11月28日
今日は旧地獄にある地霊温泉に向かう。
別に温泉に入りにいくわけではなく、古明地 さとりに会いに行くためだ。
小町を使えばすぐに着くのだが小町は今日は別件で動いているため、飛んだり歩いたりしながら地底へと向かわなければならない。
面倒ではあるが、仕方ない。
さとりに聞けば姉に何があったかを知ることができるだろうか。
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寒い。コートを着てはいるが、寒いものは寒い。
あの雪女が元気になる季節だなぁと思いつつ、ひたすら人間が通るようになってから整地された地底への道を歩く。
はいた息は白く染まり天へ昇っていく、なんてありがちな詩を小さく口ずさみながら一人、ただただ歩く。
寂しくはない。ただ暇なだけだ。
映姫「そういえばもうすぐクリスマスですね」
過ごす相手なんて霊夢、小町ぐらいしかいないけど。魔理沙は香霖堂で過ごすらしいし。
映姫「プレゼントでも小町に買おうかなぁ。っていっても何が欲しいんだろう」
服? 髪飾り? 指輪? それとも食べ物か。もしかしたら温泉一泊二日とかかもしれない。
小町とのんびり過ごすクリスマスも悪くないかもしれない。
………ちくしょう。浮いた話がねぇ。
なんで誰も告白とかしてこないんだろう。こんな美少女なのに………こんな美少女なのに!!
あれか説教臭かったからか。
あの竜宮の使いの二の舞とか嫌だ!!
衣玖「くしゅんっ。あー、もうすぐクリスマスですねー。なにして過ごしましょうか」
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言われてみれば確かに衣玖さんと同じ類の結婚できないオーラが出てるな
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自分で美少女って言う奴は大体微妙なツラしてry
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映姫「あぁ、素敵な人とか現れないかなぁ」
麟「呼んだかしら?」
映姫「!?」
素敵な人ではなく、敵な人が現れた。
なんでまたいきなり。急すぎる。
いや、こっちの都合とか知ったことじゃないんだろうけどそれでもラスボスがいきなり出てきたら話としてなにこの超展開とか言われかねないし、あ、もしかしてこれで終わりですか!? いやいやまだ始まったばっかりだし。
麟「あのぉ。何あたふたしてるの?」
映姫「あなたは黙っててください!!」
麟「え、あ、はぁ」
どうしよう。今すぐにでも おわり なんて文字が出るかもしれない。いやこんなメタな話を話していいのは紫だけなのだがそれでもこの急展開に私に頭は付いていかないもしかしてこれは夢!?目が覚めたら私は素敵なお姫様!………ねぇよ。この年でお姫様にあこがれるほど夢見てないよ。素敵なだんな様は欲しいけど。いやいや今はそんなことを考えてる時間じゃないって何度言えばいいのか。私のおばかさんっ!
麟「ってそうじゃないわ。ふぅ、危なかったわ。あなたの流れに乗せられてしまうところだったわ。でもそうはいかないわ。あなたがこのまま地底にいくというのなら私はそれを止めるわ。さぁ! あなたは私にはむかうのかそれとも従うのかどっち!?」バババッ
ちくしょう。撃ってきやがった。
冴月の周りに花びらが現れたかと思うとそれが一直線に飛んでくる。まるで花吹雪だ。
季節にはそぐわないが、これがもしかして彼女は草を操るのだろうか。
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なまじ本当に美少女だから敷居が高い女と思われてしまうんだきっと
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飛んできた花びらを後ろに飛んで避ける。地面にぶつかった花びらは小石や土を巻き上げ地面に小さな穴を無数に開ける。
まるで銃のショットガン、なんてのは幻想郷の住民では一部しか分からないだろうがまさにそんな感じ。狭い範囲に高密度で攻撃を仕掛けてくる弾幕。ひとつひとつの威力を考えてみてもまともに当たれば下級の妖怪や妖精なんかはひとたまりもないだろう。
麟「まぁ。これくらい避けてもらわなければ楽しくないわよね」
映姫「なぜ邪魔をするのですか?」
麟「地底には行って欲しくないのよね。計画の邪魔になるから。さてここまでが冥土の土産。さぁ! 存在を否定され、幻想へと消えなおあがき続ける私の意志。あなたの意思とどちらが上か、勝負よ!!」
冴月がスペルカードを構える。とりあえずこっちの土俵で戦ってくれるみたいだ。もしくはこっちの土俵でないと勝ち目がないからか。とりあえず弾幕勝負なら小細工はいらない。あの魔女のようだが真正面から打ち抜く。それが弾幕!!
麟「花符『美しく青きドナウの花』!!」
スペルカードが砕け散りその無数の欠片が地面へと降り注ぐ。
そして青くて小さな花を咲かせた。
麟「さぁ。その目に! 耳に! 記憶に!! 忘れることのできない記憶、刻んであげるわ!!」
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花から弾幕が放たれる。飛んできた弾は空中で弾けさらに小さな弾を吐き出した。
遠くにいけば避けれるだろうが近くに行くと避けることはできない。
なんて面倒な符。
こちらも撃ちかえしてみるが弾幕の量、密度が負けているためジリ貧で押される。
パターンの決まってない完全ランダムの弾幕は避けれるが避けきるのは難しい。じょじょにかすれ服に小さな切れ目を入れる。
当たってはいないがそれでも気を抜くと即アウトになりそうだ。
ならばこっちも使うしかない、スペルカードを。
映姫「審判『ラストジャッジメント』!!」
手加減なしのフルパワー。それでも弾幕勝負なら死にはしない。死ぬほど痛いだろうけども。
断罪の光が青い弾幕の群れを力でねじ伏せ一直線に飛んでいく。光の速度で飛ぶこれはそうそう避けれるものではない。
映姫「判決!! 死刑!!」
青い霧がはれる。そこにいたのは
麟「………」
腹に大きな風穴を開けた冴月麟。見るまでもなく、確実的に死んでいる。
映姫「………え」
-
あれぇ?
死ぬはずない程度の出力のはずなのに。殺さない程度の全力だったのに。
それなのにこんなあっさりと。
彼女は咲いていた花の上にゆっくりと落ちていった。
その衝撃で花が宙に舞う。
映姫「………え、えっと」
近づく。もしかしてこれは人形ではないのか。そんな希望的観点は砕かれてしまう。
明らかにこれは死体だ。それは赤の中に見える臓物の色と冬の寒さによって立ち上る湯気によって強制的に認識させられる。
殺意はなかった。そんなありきたりな言葉が頭の中をよぎる。いや、それでも冴月麟は犯罪者で私は悪くないなんて考えを抱いてしまうがその考えを潰し、現実を認識する。
被害者 冴月 麟 加害者 私
そんなイコールで結べる簡単な答え。
麟「閻魔様が人殺しぃ?」ゴポゴポ
映姫「!?」
そう彼女だったものが血のあぶくを吐き出しながら笑う。
いきなりのことで認識が追いつかなかったのが私の敗因だった。心が弱い。そう、私はどこまでいっても心が弱すぎる。
-
麟「虚符『芥川のシェイプシフター』」ゴポゴポ
死体がゆっくりと溶けて消える。
麟「隙だらけだぞ♪ なんちゃって」
後ろから声がする。
さっきまで目の前で死んでいた彼女の声。
麟「ばーん」
と同時に衝撃。
強くはないが、閻魔を辞め、信仰もあまりない私にとって意識を奪うには十分な威力。
薄れ行く意識の中でどうか、皆無事であるようにと祈った。
こんなちっぽけな神様の言葉でも、800万もいるんだから誰か聞いてくれますよね。
-
あれ、四季様さとりに一回あってね?
-
目を覚ます。
目を覚ませた。
生きている。
もっともこれが死後の世界(私は地蔵が信仰を集めて産まれたので死後の世界はないが)でなければの話だが。
体を起こす。見慣れた部屋。どうやら私は博麗神社にいるらしい。
そこで気づいた。力があまりない。
閻魔のときの私の数分の一もない。おそらく中級妖怪ぐらいだ。白黒つける能力はあるようだが、それだけだ。
信仰が薄れたか、それとも負けて弱ったのか。
後者なら時間の経過でなんとかなるかもしれないが、前者だとどうしようもない。
薄れてしまった信仰心を取り戻すには奇跡でも起こすか、異変を解決するか。とりあえず人間の利益になりそうなことをするしかないが、今の私にはできそうにない。
どうしたものかと手を握ったり開いたりしながら考える。
結局答えは出ず、諦めに近い感情が心を鈍く染めた。
-
今は何日なのだろうか。前よりも大分重い体を引きづり、外にでる。
こないだよりもずっと空気が寒い。
どれだけ眠っていたのか、とりあえず霊夢に聞こう。
そう思い霊夢がいるであろう境内へと向かう。
映姫「………っ!?」
裏山、たしかそこには魔界への門があったはず。
その場所には薄く金色を放つ壁―――結界が張ってあった。
何があったのか。霊夢に急いで聞かなければ。
縁側から素足で飛び降り駆け出す。
映姫「霊夢!!」
霊夢はいた。それだけじゃない霊夢、魔理沙、紫、藍、萃香、小町。
なぜこんなに揃っているのか。嫌な予感がした。
宴であればいい。それをこの数秒でどれだけ願ったことか。
しかしその願いは無常にも打ち砕かれる。
霊夢「―――異変よ」
-
異変。
おそらく。いや確実的に冴月 麟によるもの。
魔理沙「本当厄介だぜ。なんてったって」
魔理沙が語った内容は絶望的。そう断言しても良いものだった。
この異変は人間の反乱。
人間の里に住む十数万人の大多数が妖怪に向けて戦い―――いや、規模から言って戦争をしかけた。
人間対妖怪。その戦いはすぐに終わると思われた。博麗霊夢や魔理沙などの力ある存在によって。
しかしそれは始まってから一週間。どうしようもなく続いている。
理由は簡単。人間が妖怪と戦えるくらいの力をつけたからだ。
先祖返り。
人間の里のほとんどは妖怪退治の血を継いでいる。たまに産まれる特殊な力を持った人間が先祖返りと呼ばれるのだが、人間がなんらかの理由で先祖返り化。それによって異変が長引いているようだ。
それに妖怪は人間を必要とする。餌的な意味でも存在するために必要な認識という意味でも妖怪は人間がいなければ生きることができない。
この戦いで人間を殺しすぎれば、妖怪は緩やかに全滅の道をたどっていく。それは神といえど同じ。
どう転んでも最悪。最善は冴月麟の個別撃破のみというあまりにも難しすぎる条件。
それが現在の状況だった。
-
映姫「どうするのですか?」
霊夢「即効でぶったおす、と行きたいところだけどスペルカードは殺さないためのルール。さすがに殺し合いはしたくないわ。勝てるかもしれないけど勝てないかもしれない。言い換えると殺せるかもしれないけど、殺されるかもしれない」
魔理沙「んにゃ、倒せるかもしれないけど、殺されるかもしれないだ。私達は人間殺せないけど霊夢以外は普通に殺される。」
前と同じならば相手の目的は幻想郷の破壊。博麗の巫女の確保。
確かに霊夢は殺されないかもしれないが、私たちはその限りではない。
霊夢「とにかく、ここに張った結界から出ると敵がうじゃうじゃいるから気をつけて。人間に味方する妖怪もいるようだから」
………考えたくはないが、おそらく慧音などの人里で生きてきた妖怪だろう。
紫「まだ様子見したほうがいいと思うわ。ほら」
紫が指を指した方向には黒く立ち上る不吉な煙。戦火の煙だ。
人間が妖怪を殺しているのなら逆も起きているということだ。
人間の数が減る前に解決するのは当たり前だが、情報が少ない時点で行動しても効果は薄い。霊夢を守らなければいけない今は特に軽率な行動は取れない。
弱い自分が嫌になった。
-
小町「四季様………」
嘆いているといつの間にか後ろに小町が立っていた。
映姫「どうしましたか、こm―――っ!」
後ろから小町に抱きしめられる。
小町「四季様。あたい、こんなの、嫌ですよ」
嗚咽交じりの小町の声が聞こえる。
おそらくその言葉はここにいる全員が思っていること。しかし口に出しても士気が下がるだけでどうしようもなかったから誰も口に出さなかった。
顔を見ることはできないが、おそらく小町は酷く傷ついている。
慰めようにも、強く抱きしめられて振り向くことすらできない。
映姫「大丈夫です小町。私がなんとかします」
だからこんな嘘しかつけない。
小町「嘘です………四季様今弱くなってますもん。だから、だから」
小町「四季様が死ぬのが嫌なんです」
その言葉を言い終わると、小町の嗚咽がいっそう酷くなった。
-
いやあ穏やかじゃない世の中ですねえ
-
映姫「小町………」
どんな言葉を使っても今私には説得力のある台詞を言うことはできないだろう。
きつく抱きしめてくる小町の腕すら振りほどけないのだから。
萃香「死なせたくないなら、死ぬ気で守りな。失いたくないなら失わないための努力をしなくちゃいけないよ」
紫「それにこの結界は相当強い結界よ。なんてたって龍神の力を借りてる、博麗の巫女を守るための結界だからね。まぁ、うちの巫女さんは守られるより、戦うらしいのだけど」
霊夢「当たり前じゃない。冴月麟だか、なんだか知らないけどぶっ潰す。今回ばかりは宴会はなしよ。本気でキレてるんだからね」
魔理沙「私も同意だぜ。いきなり現れといてちょっとこれはおいたがすぎる」
本気で怒っている霊夢と魔理沙を見て少し胸が痛む。
覚えてないとはいえ、昔の親友に向けての言葉だから。
小町「しきさま………あたい、がんばります。まもって、みせます」
小町の誓いに頷く。
小町なら負けない。私はそう信じている。
映姫「小町。今度一緒に温泉行きましょう。一泊二日でも、二泊三日でも好きなだけ」
小町「はい………はいっ」コクッ コクッ
-
霊夢「行くわよ、魔理沙、萃香、小町」
魔理沙「あぁ。一緒にな」
萃香「任せときな。鬼の伝説、見せてあげるよ」
小町「四季様。行ってきます」
映姫「行ってらっしゃい」
小町が離れる。
小町はくしゃくしゃになった顔を無理やり笑顔に変え、笑って飛んでいった。
結界を潜り抜けていく四人を見送り、どうか無事でありますようにと祈る。
紫「さて、藍。私達にできることをするわよ。映姫、手伝う?」
映姫「手伝います。なんでも」
紫「力がないなら知恵を使えばいい。考えましょう。皆のために」
映姫「えぇ」
小町に守ってもらうのだから私も小町に何かをしてあげたい。そのためならなんだってする。
神社の中へと歩いていく紫に早足で追いつき、すでに豆粒ほどになっている小町たちを振り返りそう誓った。
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おわりです。
次から異変が本格的に開始です
たぶんタイトルは男「ここはどこだ」幽香「誰!?」
みたいな感じになります。
タイトルに幽香は出てますが特にヒロインというわけではないのであしからず。
良かったら次回もよろしくお願いします。
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ここまで見ていただいて本当にありがとうございました
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引きが上手い野郎だ
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おつー
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慧音だけじゃなくて太子率いる豪族勢も人間側につきそうだな
あと妹紅とか人からの信仰がないと存在自体が維持できなくなる神様連中とかも人間側かなぁ?
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天狗は人にもよるかなぁ…
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次が最終章かと思ったら“開始”ってまだあるのかよ…
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なるほど
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引きが上手いな
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四季様がさとりにあってないのならさとりが会ったさとりはいったい誰だ
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間違ったさとりが会った四季様だ
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描写ミスじゃね(適当)
あるいはことりちゃんとか
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