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ライナー「チラシ・ズシ?」
-
※進撃の巨人で、ベン・トーのパロディです。
※原作最新話までのネタバレがあるかもしれません。
※ユミル「チキン・ナンバン?」の続きです。
ベルトル「僕等の目的を忘れたわけじゃないよね?」
ライナー「ああ、勿論だ。餓狼として頂点を目指す!」
ベルトル「またブレてる……」
ライナー「なんか言ったか?」
ベルトル「独り言だよ」
ライナー「そうか?」
"
"
-
夜 食堂
サシャ 「一番手、行かせて頂きます」
ジャン 「サシャか。いきなり本命だな」
サシャ 「まず、ご飯をの上にほぐした鶏ササミの燻製を乗せます」
ミーナ 「もう、それだけで美味しそうだよね」ダラァ
アルミン「うん、涎を拭こうね」
サシャ 「鶏ササミの燻製は、お酒を売ってる店なら、おつまみとして大体おいてあります。
お好みですけど、柚子コショウ味の奴が私は好きです」
クリスタ「そのまま食べたいね」ジュル
ユミル 「今度、買ってやるから、みっともない顔すんな」
サシャ 「そうしたら長ネギを刻んだのと、白ゴマをちょっと入れて、
その上から熱々の鶏がらスープを注いで」トポポポ
-
最初から名前が既にベルトルである
-
サシャ 「出来上がりです。キース教官どうぞ」
キース 「うむ」
サシャ 「私も頂きます」
ズズズ
サシャ 「アツツ……鶏がらスープが良い匂いですね」
モグモグ
サシャ 「スープの脂とササミ肉が合わさって、極上の味ですね!
燻製になってますから、さっぱりした食感なのに奥深い旨味が口の中で溶け出します!」
コニー 「凄い美味そうだな」ゴクリ
-
ハフハフ
サシャ 「染み出した柚子胡椒がスープに混ざって、また一段と美味しいですよ」ホクホク
モグモグ
サシャ 「ゴマの香りのアクセントと、長ネギのシャキッとした食感が飽きさせませんね!」
ズズズ……
サシャ 「はふぅ……スルスルと胃の中に滑り込んで行っちゃいますね。
食べやすくてお夜食にピッタリだと思いますよ」
"
"
-
バタン
ベルトル「……?」
マルコ 「やぁ、ベルトルト。水汲み当番お疲れ様」
ベルトル「皆、何してるの?」
マルコ 「第一回ヨルメシ大会を開催してるんだ」
ベルトル「ヨル……なに?」
ライナー「要は、夜食だ。自分の知ってる夜食を披露しようって催しだ」
ベルトル「何で、そんなことを」
マルコ 「フランツが福引で、ユトピア区の温泉旅行券を当てたんだよ」
ライナー「だが、1名分らしくてな。ハンナと一緒に行けないなら、誰かにやると言い出して」
ベルトル「それを皆で取り合ってるんだね。じゃあ、あそこに座ってるキース教官は?」
マルコ 「面白そうだから、審査員をやるって」
ベルトル(何で、こんなに緊張感が無いんだ……)
-
ミカサ 「二番手、ミカサ・アッカーマンです」
エレン 「がんばれよー」
ミカサ 「一口サイズのオニギリを作って置きます」
ミーナ 「もう、これだけで美味しそうだよね」ジュル
アルミン「うん、涎をね、拭いてね」
ミカサ 「オニギリに豚バラ肉を巻いて、外からご飯が見えなくなるようにします。
醤油、みりん、酒、砂糖を混ぜてフライパンに入れます。
オニギリも入れて、タレが染み込むまで火を通します」
コニー 「すげぇ美味そうな匂いだな」
-
ミカサ 「そして、出来上がったものがコチラです」
ユミル 「やけに準備がいいな」
ミカサ 「出来立ても美味しいけど、冷めて味が染み込んだものも美味しい」パク
モグモグ
ミカサ 「ほら、こんなに美味しい」
キース 「いや、分からんな」
ミカサ 「教官、どうぞ」
キース 「頂こうか」
-
モグモグ
キース 「ふむ、確かに、味が良く染み込んでいるな」モグモグ
キース 「濃い目のタレに付けられたバラ肉を食い破ると、中には柔らかな米。
米の甘みと肉が混ざり合い、旨味が口内に噴出する。
そして気づいたときには、喉を通っていて、つい次のオニギリに手が伸びる」モグモグ
キース 「ほう! ピリリと来る辛味! これは七味か!」
ミカサ 「はい、予め肉の内側に振っておきました」
キース 「大きさも程良く食べやすい。また次に手が伸びてしまう」モグモグ
-
キース 「こちらは、中にチーズが入っているな」
ミカサ 「チーズは出来たての時に食べると、トロリと溶け出して……すごいです」
キース 「変化があって面白い」
ミカサ 「ありがとうございます。作り置きが出来るので、夜食に相応しいかと」
〜
ライナー「どうしたんだ、難しい顔をして」
ベルトル「まさか、君も参加しているのか?」
ライナー「おいおい、何を言ってるんだベルトルト」
ベルトル「そうだよね、いくらライナーでも」
ライナー「俺は餓狼だ。欲しいものは自分で掴み取る。当然、参加しているさ」
ベルトル(頭が痛くなってきた……)
-
続編やっと来たか
-
ライナー「調子が悪いなら、早めに休んだほうが良いぞ?」
ベルトル「ライナー、ちょっとこっちに来てくれ」
ライナー「何だ? 用件なら早めにしてくれよ、俺の番が来ちまうからな」
ベルトル「いいから!」
ライナー「お、おう」
〜
ベルトル「ライナー、君は何だ?」
ライナー「何だ、もしかして、さっきのを気にしてるのか?」
ベルトル「大事なことなんだ、答えてくれ」
ライナー「餓狼って言うのは確かだが、流石にあそこで言えるわけないだろう。
俺は、戦士だ。必ず故郷に帰る。お前も、そうだろう?」
-
ベルトル「ライナー……そうだね。ちょっと疲れててたみたいだ、ありがとう」
ライナー「気にするな」
ベルトル「半額弁当争奪戦もそうだけど、お遊びは程ほどにね?
息抜きが必要だっていうのは分かるけどさ」
ライナー「何を言ってるんだ? 俺たちは兵士だぞ、仲間との結束を固めるのも必要なことだ」
ベルトル(あぁ……もうダメだ)
エレン 「おーい、ライナー。次はお前の番だぞー」
ライナー「お、出番だな。話の続きは後でもいいか?」
ベルトル「ああ、うん。行っていいよ」
ライナー「至高の夜食を振舞ってやるぜ」
(つづく)
-
今日はここまで。続きは多分明日。
>>3
名前の収まりが悪いんで、意図的に削っています。スミマセン。
-
今回はライナーとベルトルさん中心なのかな?
なんにしても続きが楽しみ!
-
>>14
違うんだ。最初から笑ってしまっただけなんだ。
-
ライナー「5番手、ライナー・ブラウンだ」
ミーナ 「どんな料理で来るのかな。夜食だし、やっぱりご飯系かな」
ライナー「まずは、もやし、キャベツ、人参、長ネギ、にんにく、豚肉を炒める」
エレン 「肉野菜炒めか? 夜食らしくねえな」
ライナー「そこに鶏がらスープだ!」
ミーナ 「まさか、それは!」
ミカサ 「知っているの、ミーナ?」
ライナー「味噌を溶かし込んで、別に茹でておいた麺をどんぶりに入れる!」
-
ミーナ 「やっぱり、味噌ラーメンだ!」
ミカサ 「それは、美味しいの?」
ミーナ 「この間、アニと食べたけど、すごかった」
ライナー「さあ、食ってください」
キース 「うむ、しかし夜食にラーメンか」
サシャ 「所詮、男の料理ですね。
こんな時間にラーメンだなんて、体に良くないですよ」
-
ライナー「何を言ってるんだ? 体に良くないから、美味いんだろうが」
サシャ 「むぅ、一理あるような気もしますね」
キース 「伸びる前に頂くか。まずはスープから」
ズズズ
キース (ニンニクが効いているな! 鼻っ柱に拳骨を食らった気分だ!
夜食として、こんなにニンニクの効いた味噌ラーメンとは、なんという暴虐!)
-
パリパリ
キース (うむ、野菜にシャキっとした食感が残っていて、食べ応えがある。
もやしのパキパキした瑞々しさ、味噌スープと合わさったキャベツの甘み、
少し硬さの残る人参、長ネギ、そして脂の溶け出す豚肉!)
モグモグ
キース (そして、主役の出番だ。味噌ラーメン独特の黄色い縮れている
透明感のある、少し固めの麺だ)
-
ズルズル
キース (おぉ、スープが絡む! 口の中に飛び込んでくる麺とスープがたまらん!)
ハフハフ
キース (熱いスープで口の中を火傷しそうだが、食べるのを止められない!)
-
ズルズル
キース (麺のもっちり感を引き立てる野菜の食感と、スープの熱気!
唐辛子が後から効いて来るな! 暑いぞ!)
ハフハフ
キース (はぁ……暑いが、美味い! こんな時間にニンニクを食べたてしまっては、
明日、口臭がえらいことになりそうだが、最早知ったことか!)
-
ズズズ…
キース (ふぅ、擦ったゴマが入っているな、ここにきて香ばしい匂いがする)
モグモグ
キース (野菜から溶け出した旨味が、スープに染み込んでいて、美味い)
-
ズズズ
キース (奥深い味だ。甘味と辛味が調和している)
ズズズ ズズズズ
キース 「いかん、スープを全部飲んでしまった」
ライナー「人間、食っちゃいけないと思うほど、美味いと感じるもんです」
キース 「いや、しかし、この時間だからこそ味わえる禁忌の味だった」
ライナー「ありがとうございます」
コニー 「何かズルくねえか?」
-
サシャ 「いえ、夜食というテーマなだけで、そのほかに制限はありませんでした。
勝手に軽めのメニューを想像した、私たちが安易だったんです」
ミカサ 「教官も男性だからというのも計算されている。
夜中にラーメンを食べることに、躊躇が少ない」
ライナー「ふふん、これは俺で決まりかな?」
キース 「いや、最後にキルシュタインがいる」
-
ライナー「おっと、悪かったなジャン。ラーメンなんか作っちまって。
教官殿は、腹がいっぱいかもしれないぜ」
ジャン 「いいや、構わねえさ」
ミーナ 「ジャンに妙に余裕がある、何か企んでる顔だよ」
ジャン 「何も企んでねえよ、真摯に考えただけだ」
キース 「悪いが、全部食べられないかもしれんぞ」フゥ
-
ジャン 「そんなに量はありませんよ。これが、オレの夜食です」
キース 「……これは」
ミーナ 「……ミルクかな?」
アルミン「いいや、あれはヨーグルトだ」
ライナー「ヨーグルト? 朝に食うもんだろ」
ジャン 「いいじゃねえか、夜に食べても」
-
キース (まぁ、ラーメンの後で、そんなに食べらんからな、調度良かった)
パク
キース 「……!」
パクパク
パクパク
ミーナ 「キース教官が、無心で白濁の液体を口に運んでる!」
アルミン「変な表現しないでくれるかな」
クリスタ「おいしそうだね!」
マルコ 「中に何か入れてあるんじゃないかな」
-
キース 「これは、リンゴだな!」
ミカサ 「リンゴ?」
ジャン 「ええ、摩り下ろしたリンゴを入れてあります」
キース 「ヨーグルトのまろやかさに、リンゴの優しい甘み。
満腹で重かった胃袋が癒されるようだ」
ジャン 「オレが順番が最後なのは、分かっていたので」
-
あなたか!久しぶりなのかな?
しかしあなたのssは腹が減る・・・
-
アルミン「ヨーグルトは胃腸の動きを助けるし、リンゴの匂いには
安眠効果があると言われているんだ。正しく夜食に相応しいね」
コニー 「すげぇな! そこまで考えてるのか!」
ジャン 「まぁな」
(そこまでは考えてなかった)
ミーナ (そこまでは考えてなかったって顔だ)
-
ミカサ 「あふれ出る優しさ、これはきっと優しいジャンのお母さんの味」
ジャン 「ま、まぁな」
ユミル 「何だ、オリジナルじゃねえのかよ」
クリスタ「でも、凄い美味しそうだよ」
ジャン 「ほら、まだあるから食えよ」
クリスタ「わーい」
ユミル 「こら、怪しい人から物を貰うなって言っただろ」
ジャン 「怪しくねえ!」
-
キース 「全員、終わったな。では、結果を発表する」
コニー 「味噌ラーメン美味そうだったなぁ」
クリスタ「誰になるんだろうね」モグモグ
ユミル (可愛い)
キース 「正直、味は甲乙付けがたい。どれも美味かった」
-
キース「しかし、夜食ということを鑑みて、
寝る前の体に優しく、それでいて急に食べたくなっても
簡単に作ることの出来る一品だった、キルシュタインを推したいと思う」
オオオオ
オオオオオオオ
-
ジャン 「ヨッシャアアアア!」
ライナー「負けたか。着眼点は悪くないと思ったんだが、引き立て役になっちまったな」
ジャン 「いや、最後までヒヤヒヤしたぜ」
ミカサ 「私も負けるつもりはなかった。
けれど、あなたの方が一歩先を行っていた」
ジャン 「いいや、ミカサも中々だったぜ」
(ババア、今だけ感謝するぜ!)
-
サシャ 「ライナー、今度私にも味噌ラーメン作ってください!」
コニー 「俺も食べたい!」
クリスタ「私も!」
ライナー「あぁ、みんなに振舞ってやるよ」
ベルトル「ライナー、ちょっと」チョイチョイ
-
ライナー「どうしたんだ? ベルトルト」
ベルトル「いいから、こっちきて」
ライナー「そんなに心配しなくても、お前の分もラーメン作ってやるから」
ベルトル「そうじゃない!」
ライナー「おかしなやつだな」
ベルトル(君には言われたくないよ)
-
ライナー「それで、さっきの話の続きか?」
ベルトル「そうだけど……君は、何してるの?」
ライナー「説明しただろ、ヨルメシをだな」
ベルトル「そうじゃないよ! 何で、本気でラーメン作ってるのさ!?
君は戦士だろ!? どうして無駄に美味そうな料理作ってるんだよ!」
ライナー「おいおい、そんなに褒めるなよ」
-
ベルトル「褒めてないよ! 怒ってるんだ!」
ライナー「カルシウムが足りてないんじゃないのか。
牛乳を飲むといいらしいぞ」
ベルトル「〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
ライナー「顔真っ赤だぞ、どこか調子がおかしいんじゃないのか」
ベルトル「おかしいのは君だ! いい加減にしてくれ!」
-
ライナー「大声出すなよ」
ベルトル「はぁ……もう一度、聞くよ。ライナー」
ライナー「何だ?」
ベルトル「君は、何だ? 戦士か? 兵士か?」
ライナー「今はまだ見習いだ。しかし、いつかは特級厨師に……」
ベルトル「分かった、もういい」
-
ライナー「ベルトルト、疲れているのか?」
ベルトル「いいや、疲れているのは君だよ。少し、休んだほうがいい」
ライナー「あぁ、そうだな。片付けたら早く寝て」
ベルトル「そうじゃないよ、これを使ってくれ」
ライナー「これは?」
-
ベルトル「僕も当てたんだ、旅行券」
ライナー「俺がもらうわけにはいかないだろう」
ベルトル「君が使うべきだ。心の歪を矯正してきてくれ。頼む」
ライナー「しかしだな、アニにでもやったほうが」
ベルトル「お願いだよ、ライナー。……頼むから」
ライナー「わかった
-
中華一番かよ。ライナー。
-
訂正
×:ライナー「わかった
○:ライナー「わかった」
-
ベルトル「多分、ジャンと同じ日程だよ。一緒に行くといい」
ライナー「ああ、土産を期待しててくれ」
ベルトル「そんなこと考えないで、ゆっくり休んでくれよ。本当に」
ライナー「貰いっぱなしも悪いからな、
何か、オレに出来ることはないのか?」
ベルトル「君が帰ってくるときに、戦士であることを祈るよ」
(つづく)
-
今日はここまで。続きはそのうち。
>>30
ご無沙汰してます。スミマセン。
なるべく間が開かないようにしたいと思います。
-
>>46
乙
>>1の好きな時に書いてくれたらいいよ
気長に待ってるし
-
〜
数日後 長距離馬車駅
ジャン 「全員、揃ったようだな」
ライナー「ジャンは分かるが、何でアルミンもいるんだ?」
アルミン「僕も旅行券を当ててたんだよ」
ライナー「随分と大盤振る舞いの福引だな、そんなにポンポン当たるもんなのか?」
アルミン「実際、沢山当たってたみたいだよ。シーズンオフだし。
日程は違うだろうけど、現地に着いたら誰か顔見知りがいるかもしれないね」
ジャン 「マジかよ」
-
ライナー「しかし、アルミンが来るとはな」
ジャン 「ミカサがヨルメシ大会に参加してたのは、そういうことか」
アルミン「うん、エレンを誘いたかったみたい。3人ならエレンも行くだろうし」
ライナー「だが、仮に勝っても一人分は自腹だろう」
アルミン「あー、うん。その場合、ミカサは自力で現地まで移動するようなことを言ってたよ」
ジャン 「自力って、人の足で何日かかんだよ」
アルミン「……まぁ、ミカサなら、ね」
ライナー「あぁ、ミカサならやりかねないな」
-
アルミン「だから、ジャンが勝ってくれて、ちょっとホッとしたよ。
幼馴染が馬車と並走して、新しい都市伝説が生まれる瞬間は見たくなかったし」
ジャン 「野郎ばっかになっちまったがな」
ライナー「気楽で良いだろう」
アルミン「そうだね。訓練兵なのに泊まりで温泉旅行に行って。
一体、規律はどうなっているんだとか、そういう難しいことは考えないで
気楽に行こうよ。くれぐれも、深く考えてはいけないよ」
ジャン 「ああ、全くだ」
-
ライナー「ベルトルトにも、しっかり休んで来いって言われたからな。
馬車の中でも、のんびりと過ごさせて貰うさ」
アルミン「何言ってんのさ、ゆっくりなんか出来ないよ」
ライナー「ん? どういうことだ」
ジャン 「馬車に乗ってるだけじゃねえのか?」
アルミン「途中で乗り継ぐからね、居眠りしてると違うところに連れて行かれるよ」
ジャン 「面倒だな」
-
アルミン「それに、乗り換えのときにお弁当を買わないと」
ジャン 「おぉ、駅弁か」
ライナー「楽しみが増えるな」
アルミン「そんなに気楽なものじゃないからね。
限られた時間で、弁当売り場まで駆け抜けて、その場で購入して
すぐさま馬車に飛び乗るんだ」
ジャン 「本当に、のんびり出来ないな」
-
アルミン「それが出来なければ、ご飯を食べ損なうか、
お弁当を持ったまま駅に取り残されるんだ」
ライナー「置いてけぼりは避けたいな」
ジャン 「飯が無いのもゴメンだ」
アルミン「だったら、気を抜かないでそのときに備えるしかないよ」
ジャン 「仕方ねぇ」
ジャン 「随分と調べこんでるな」
アルミン「旅行本は、昔から数が豊富だからね」フフン
-
〜
乗換駅
アルミン「さぁ、急いで! 僕について来るんだ!」
ライナー「おう!」
ジャン 「道案内は任せたぜ!」
アルミン「距離はそんなに無いから、落ち着いて行けば間に合うよ!」
ジャン 「落ち着いて走るのかよ」
ライナー「難しい注文だな」ハハハ
-
〜
アルミン「ハァハァ……この道を突き当りまで行って、左に曲がれば正面に見えるから、
そこの売店で買うんだ……」ゼェゼェ
ジャン 「分かった! 先に行かせて貰うぜ!」ダダダ
ライナー「アルミン、大丈夫か?」
アルミン「僕は大丈夫、時間にもまだ余裕はあるから、ライナーは先に行ってよ」
ライナー「分かった、次の馬車まで走る体力は残して置けよ!」ダダダ
-
ジャン 「よし、着いた。さっさと買っちまうか」
老婆店員「いらっしゃいませ」
ジャン (いくつか、種類があるな……)
"鶏釜めし弁当"
"シウマイ弁当"
"栗おこわ弁当"
ジャン (どれも美味そうだ。だが、どれかを選ぶなら……)
-
ジャン 「婆さん、シウマイ弁当をくれ」
老婆店員「はい、ありがとうございます」
ライナー「俺には鶏釜めし弁当を! しまった、小銭が無い!」
老婆店員「はい、ありがとうございます、今お釣りを出しますね」
ジャン 「アルミンはどうした?」
ライナー「直ぐ後ろに来ていたはずだ。 恐らく、もう角を曲がるところだ」
ジャン 「なら問題ねぇな! 先に行くぞ!」ダダダ
-
アルミン「ハァハァ……もう直ぐだ、お釣りがあるとタイムロスになるから、
先に財布を出して、用意しておこう」ゼェゼェ
ジャン 「おう、アルミン、ここにいたか」
アルミン「あぁ、ジャン。なんとか、時間には間に合いそ
ジャラララーン
ジャン 「」
アルミン「」
-
アルミン(小銭を、ぶちまけてしまった……!)
ジャン (……小銭を拾って、馬車に間に合うか?)
アルミン(弁当を買わなくても、間に合わないよ)フルフル
ジャン 「仕方ねえ! 小銭と弁当は諦めろ!」ダダダ
アルミン「ああ! それが今の最良の選択だ!」クッ
-
ライナー「派手な音がしたが、アルミンが転んだのか?」ダダダ
アルミン「いいや! 例えそうだとしても、お荷物にはならないよ!」
ジャン 「おい、馬車がもう着てるぞ!」
ライナー「あぁ、急ぐぞ!」
-
〜
ユトピア区行き馬車
ゴトゴト
アルミン「ふぅ、何とか間に合った」ハァハァ
ライナー「一先ず、落ち着けるな」ハァハァ
ジャン 「あぁ、疲れた」ハァハァ
-
アルミン「僕は、骨折り損のくたびれ儲け、さらに小銭がマイナスだったね」ハハハ
ジャン 「俺とライナーの弁当を分けてやるよ」
ライナー「あー、そのことなんだが、弁当を選びきれなくてな」
アルミン「?」
ジャン 「?」
-
ライナー「時間も無かったんで、もう一つ弁当を買って来たんだ。
二つも食えないから、片方貰ってくれないか」
ジャン 「ライナー? お前は鶏釜めし……」
ライナー「……」
ジャン (まさか、小銭をぶちまける音を聞いて……)
ジャン 「いや、そういえば悩んでいたな」
アルミン「悪いよ、せめてお金は出させて」
-
ジャン 「小銭は廊下に食わせちまっただろ。
それに、ライナーが食えないと、この弁当は捨てられちまうぞ」
アルミン「ううん……お弁当は貰うけど、必ず後で払うから!」
ライナー「あぁ、今度な」ニコリ
ジャン (頼れる兄貴スマイル!)
-
〜
ジャン 「あとは、この馬車に乗っていれば着くんだよな?」
アルミン「うん、もうのんびりしても大丈夫」
ライナー「弁当を食べよう、腹が減った」
ジャン 「そうだな、俺も楽しみだ」
パカッ
ジャン (出来立てに密封された香りが、蓋を開けると同時に解き放たれて一気に広がる。
その中でも一際と自己主張するシウマイの香り)
ジャン (弁当箱は、半分がシウマイと他の惣菜、もう半分がチャーハンだ)
ジャン 「いただきます」
-
ジャン (まずは、メインのシウマイだ!)
パクッ
ジャン (おおっ、冷めているのに柔らかい! 噛み締めると肉の旨味が口いっぱいに広がる!
蒸されて中に閉じ込められた脂が流れ出てくるぜ!)
モグモグ
ジャン (肉だけじゃない、椎茸、筍、他にも沢山の具が入っている。
細かいのは分からないが、魚も入っているのか……?)
-
フゥ
ジャン (よし、次はチャーハンだ。薄く切った筍が乗せてある)
パクッ モグモグ
ジャン (こっちも冷めているのに、米が固まらないでパラパラしている。
具は、あんまり入ってないな、炒り卵と上に乗ってる筍くらいか)
-
コリッ
ジャン (おっ! 筍も蒸してあるのか? 歯ごたえが残るくらいに熱が通ってる。
筍の爽やかな風味が、脂っぽいチャーハンを相殺してくれるな)
モグモグ
ジャン (あくまでメインはシウマイだ。チャーハンは次のシウマイを
美味しく口に運べるように、脇役に徹している)
ジャン (あぁ、そのおかげでシウマイを口に入れたときの感動が薄れない!
コイツは、美味い!)
-
〜
ライナー「鶏釜めしか……小さいが本当の釜だ」
カパッ
ライナー(釜の中には、ドンと乗った鳥の照り焼き。それを挟むように、左右に肉と卵のそぼろ。
そして、これは中を見なくても分かるぞ! この匂い、炊き込み飯だ!
もしかして、この釜で本当に炊き込んでいるのか、とんでもない手間だな)
-
ライナー(しかし、食べる側としては、その味に期待できる、まずは照り焼きだ)
パクッ モグモグ
ライナー(柔らかい、鳥のモモ肉だな。甘辛い照り焼きのタレが、鶏の味を引き立てる)
モグモグ
ライナー(そして、炊き込み飯。人参やゴボウ、椎茸が小さく混ぜ込んである。
ちょっと水分が大目で、もっちりしている食感が堪らないな!)
-
ムシャムシャ
ライナー(ほう! 釜に触れてるところは、オコゲが出来てるな!
このパリパリした食感と香ばしいさが、食欲を更に掻き立てる!)
モグモグ
ライナー(照り焼きとの相性も抜群だ! 少し甘めのそぼろも素晴らしい!)
ムシャ
ライナー(あぁ、そして、何だコレは! 隠すようにうずらの卵が入っているじゃないか!
しかもこの色、煮玉子だっ!)ゴクリ
-
パクッ
ライナー(おおおおお! しっかりと黄身まで染み込んだ醤油ベースの味!
シンプルで、それでいて深い味だ! これは、米が欲しくなる!)
ムシャムシャ
ライナー(鳥の照り焼きがメインかと思ったたが、名前に偽り無く釜飯が主体だ。
全てのオカズが、釜の飯を、より一層と味わうために演出されて、美味い!)
-
〜
アルミン「栗おこわ弁当……栗ご飯のお弁当かな」
パカッ
フワッ
アルミン(栗の甘い香りが……いいね!
中身は、栗の乗ったご飯と、煮物、肉団子、玉子焼き。まずは栗かな)
パクッ
アルミン(うん、自然な甘みだ。ほろりと崩れる栗から、甘みがじんわりと広がる)
-
アルミン(カチカチの栗だと喉に引っかかるけど、この栗は潰したら
そのままクリームに出来そうなくらい、水分を含んでいて柔らかい)
モグモグ
アルミン(次は、ちょっとしょぱいのが欲しいな。煮物にしよう)
モグモグ
アルミン(濃い目に感じるのは、先に甘い栗を食べたからかな、醤油味の椎茸から
じわっと煮汁が染み出てくる)
-
モグモグ
アルミン(ちょっと大きめにカットされた人参だけど、口に入れれば甘みを残して消えてゆくし、
ゴボウはコリコリとした歯ごたえで楽しませてくれる)
アルミン(そして、鶏肉がひとかけら。
ほど良く煮込まれて、咀嚼すると鳥の旨味を振りまきながら解けて行く)
モグモグ
アルミン(ご飯も食べてみよう)
-
パクッ
アルミン(あぁ、栗と一緒に炊き上げてあるんだ。栗の甘みがお米に染み込んでいる。
それに、これはもち米だね。独特のモチモチ感があるし、普通の米よりずっと甘い)
モグモグ
アルミン(噛むたびに、米の甘みが増してゆく。栗の甘みから始まり、米の甘みで終わる。
一口で2種類の異なる甘みを与えてくれる……凄いね!)
アルミン(肉団子、甘辛く煮込まれた豚肉だ、ミカサが作ってた肉巻きオニギリに似てるかな。
ちょっと濃い目だけど、肉の味が負けてないから、不自然じゃない)
-
モグモグ
アルミン(玉子焼き、甘いのかと思ったら、ダシの効いてる味だ。
これも、脇役なのにしっかりと地に足の着いた味をしてる)
モグモグ
アルミン(そして、おかずを食べると栗ご飯を食べたくなる)
モグモグ
アルミン(普通は、栗の甘みを消さないように、薄めの味付けのおかずにするのに、
これはあえて、濃い味付けのおかずで揃えてあるんだね)
-
アルミン(単品でも勝負できるくらい、自立した味のおかずを食べると、
やんわりとした甘みの栗ご飯が欲しくなる!)
モグモグ
アルミン(栗ご飯自体の甘みは、とても地味なものなのに、
他のおかずを強調させることで、逆に目立たせているんだ!)
アルミン(一度、栗ご飯を口にしてしまえば舌が勝手に、このやさしい甘みを求める!
だから、おいしい!)
-
〜
ジャン (旨かった……)
ライナー(美味かった……)
アルミン(おいしかった……)
「「「ごちそさまでした」」」
(つづく)
-
今日はここまで。続きはそのうち。
-
乙
お腹すくなあ
-
ライナーかっこいい・・・!
-
久々に続編キターーー!
楽しみに待ってたよ。
-
〜
ユトピア区 温泉街
ジャン 「やっと、到着か」
ライナー「酷い揺れ方だったな、腰が痛くなったぞ。
ん? 何か、変な臭いがするな」クンクン
アルミン「硫黄の臭いだね、温泉の成分らしいよ」
ジャン 「この臭いはどこから……あれは何だ?」
-
ライナー「井戸か?」
ジャン 「いや、湯気が出ている」
アルミン「源泉かな。ここから温泉が噴出しているんだ。
とても人が触れられない温度だよ。
硫黄の臭いも、ここから出ているみたいだね」クンクン
ライナー「この上から吊るしてあるカゴは何だ?」
アルミン「何だろうね?」
-
????「ゆで卵じゃよ」
ライナー「!?」
ジャン 「!?」
アルミン「あなたは!?」
-
????「温泉の熱で、ゆで卵を作っておるんじゃ。
貴様ら訓練兵じゃろ。どれ1個奢ってやろう」グビグビ
ジャン 「誰だ、この爺さん? 昼間から酒飲みやがって」
アルミン「駐屯兵団のトップ、ドット・ピクシス司令官だよ」ヒソヒソ
ジャン 「げっ」
ピクシス「せっかく温泉に来とるのに、無粋な敬礼なんぞするなよ」ニッ
-
ジャン 「あの、スミマセンデシタ」
ピクシス「構わん、若いうちは生意気なくらいが良い。
ほれ、温泉卵じゃ、食え」
ジャン 「ハイ、イタダキマス……」
ピクシス「おぬし等も食わんか?」
アルミン「は、はい」
ライナー「頂きます」
-
ライナー「これは、凄いな。殻が真っ黒だ」
アルミン「温泉の鉄分に、硫黄が反応しているんだ」
ピクシス「小さいのに、難しいこと知っとるのお」
アルミン(孫あつかいされてる気がする)
-
コンコン
パキパキ
ライナー「殻が剥きやすいな。黒くなってるからか?」
アルミン「でも、熱いから、結局剥きづらいね」アチチ
ジャン 「中は白いままだな」アチチ
ライナー「美味そうだ」ムシャリ
-
ホフホフ
ライナー「ほほふ、はふい」(すごく、熱い)
ジャン 「はふふ」(熱い)
アルミン「はふひ」(熱い)
-
モグモグ
ライナー(プリプリした白身を食い破ると、ホクホクの中身が口いっぱいに広がる。
濃密な黄身の味と、鼻から吸い込む硫黄の香りで、何倍にも風味が増幅されるな)
モグモグ
ライナー(うおっ!? 黄身が前歯の裏にくっついた! 熱い! しかし、美味い!)
ゴクン
-
ライナー「……ふぅ、涙が出るほど熱いな!」
ピクシス「若いうちは、何を食っても美味い」グビグビ
アルミン「ご馳走様でした」
ジャン 「美味しかったです」
ピクシス「若者は腹いっぱい食え。それが仕事じゃ。
しかし、美味そうだのう。酒がすすむわい」グビグビ
アルミン(一口も食べてないのに!?)
-
〜
旅館
ジャン 「しかし、変な爺さんだったな」
アルミン「駐屯兵団きっての変人らしいからね」
ライナー「温泉卵は美味かったけどな」
ジャン 「まだ時間はあるが、晩飯は何だろうな。美味いもんだと良いけどよ」
アルミン「無いよ?」
-
ジャン 「は?」
ライナー「俺の空耳か? 今、晩飯が無いと聞こえたんだが」
アルミン「君たち、旅行のガイド読んでないの?」
ジャン 「そんなもん、フランツから受け取ってねえ」
ライナー「俺も、ベルトルトから貰ってない」
-
アルミン「一泊二日の素泊まりだよ」
ジャン 「マジかよ!?」
アルミン「そもそも、別々に当たったのに相部屋になるあたり、おかしいでしょ」
ジャン 「そう言われれば、そうだな。何で同じ部屋に案内されてんだ?」
-
アルミン「素泊まり、相部屋の清貧旅行だよ」
ライナー「福引の割に、ポンポンあたりをばら撒くと思ったら、そういうことか!」
ジャン 「わざわざヨルメシ大会に勝ってまで来たのに、そりゃねえぜ」
アルミン「温泉は入り放題だけど、先に晩御飯を確保しに行こう」
ジャン 「そんなもん、後で定食屋にでも行けば良いだろ」
アルミン「無いよ?」
-
ジャン 「は?」
ライナー「俺の空耳か? 今、定食屋が無いと聞こえたんだが」
アルミン「君たち、"ゆとぴあウォーカー"読んでないの?」
ジャン 「そんなもん、どこで売ってんだよ!」
ライナー「俺は、ベルトルトから貰った」
ジャン 「持ってんなら読めよ!」
ライナー「そうしよう」
-
アルミン「殆どの人が宿泊先で食べるから、定食屋は無いんだ。
あるのは、もっと上のランクの高級料亭みたいな店ばかりだよ」
ジャン 「俺たちの手持ちじゃ、入れそうにないな」
ライナー「しかし、そうなるとどうやって晩飯を確保するんだ?」ペラ
アルミン「自腹で旅館のご飯を食べても良いけど、どうせなら美味しいものが良いよね」
ライナー「当然だ」ペラ
-
アルミン「少し行ったところに、夕市があるんだ」
ライナー「なるほど、そこで弁当争奪戦があるようだな」ペラ
ジャン 「ライナーも知ってるのかよ」
ライナー「"ゆとぴあウォーカー"に書いてあった」
ジャン 「すげぇな、その本」
(つづく)
-
今日はここまで。続きは近いうちに。
-
〜
夕市
ライナー「観光地でも、夕市はそう変わらんな」
アルミン「機能性と簡潔さが重要視されるからね」
ジャン 「弁当売ってんのか?」
ライナー「こっちにあるようだな」
-
アルミン「狙うのはご当地弁当だよ」
ジャン 「ご当地って、どういう意味だ?」
ライナー「名産品を使ってるんだろう」
アルミン「あぁ、山には山の、川なら川の食材が使われているんだ」
-
ジャン 「ここは、温泉街だから……何だ?」
ライナー「温泉豚だな。温泉に入れて育てた豚で、肉が柔らかいらしい」
ジャン 「豚肉か」
ライナー「あぁ、豚だ」
ジャン 「……ブタか」
ライナー「……ああ」
アルミン「……ブタだね」
-
〜
ミーナ 「へぷしゅ」
アニ 「風邪ひいたの?」
〜
ライナー「弁当を見に行くぞ」
ライナー(残っているのは……3つ。全部、別々だ)
"半熟卵乗せ、豚しょうが焼き丼"
"温泉卵と温泉豚の角煮弁当"
"リブ・フランクセット"
ライナー(……骨付き肉だ!)ニヤリ
-
ライナー「俺はリブ・フランクだ」
アルミン「僕はしょうが焼きかな」
ジャン 「オレは角煮だ。
温泉卵に、味が染み込んでるなんて、考えただけでも涎が出る」
ライナー「……おい、あの人はもしかして」
-
ピクシス「貴様らも来とったのか」
ジャン 「ピクシス指令!」
アルミン「さっきは、ご馳走様でした」
グスタフ「指令、お知り合いですか?」
アンカ 「こんばんは。あなた達、訓練兵?」
-
ライナー「ピクシス指令に、先ほど卵をご馳走になりました」
アンカ 「ふらっといなくなったと思ったら、何してるんですか」
グスタフ「女性をナンパしてないだけマシだ」
ピクシス「人を何だとおもっとるんじゃ」グビグビ
グスタフ「飲酒しながら何を言っているんですか」
アンカ 「ご自分の普段の行動を、鑑みてください」
-
アルミン「お二人は駐屯兵団の方ですか?」
グスタフ「あぁ、駐屯兵団参謀のグスタフだ」
アンカ 「アンカ・ラインベルガーよ」
ピクシス「二人とも、餓狼じゃよ」
ライナー「!」
ジャン 「!」
アルミン「!」
-
ピクシス「貴様らも、ここにおる以上、餓狼じゃろう?」
アルミン「ええ、しかし」
ピクシス「わしも、一線を引いていたが、今日は久しぶりに参加しようかのう。
あのリブ・フランクは酒に良く合う」
ライナー「む」
ピクシス「ん? 狙いがかち合ったかの?」
ライナー「ええ、まぁ」
ピクシス「あれは良いぞ。骨付きソーセージみたいなもんじゃ。
そのまま食っても美味いが、焼くとなお美味い。
しかし、もっと美味い食い方がある」
-
ピクシス「温泉卵を作った井戸を覚えておるか?
袋のまま、あそこに入れるんじゃ」
ライナー「袋のまま?」
ピクシス「臭いが移ってしまうからの」
-
ピクシス「熱湯で満遍なく熱せられたリブ・フランクは、
内から溶け出した肉汁でパンパンに身を膨らませる」
そこへ、思いっきり、かぶりつく!
比喩でなく、パリンッ! と割れる音がする。
次の瞬間には、断面から肉汁が飛び出してきた!
もう、熱くてたまらんが、しかし直ぐに飲み込むことも出来ない。
はふはふ、と必死になって呼吸をして、なみだ目になりながら
一生懸命に飲み込むんじゃ。
そして、よく冷えたビールを一気にあおる!
火傷寸前の喉に、キンキンの液体が届く。
くぅっはあああぁぁ〜〜〜!!!
最高の喉越しじゃ、思わず声が漏れてしまう。
-
ピクシス「食いたくなったか?」
ライナー「それは、もう」ジュルル
ピクシス「簡単に取らせはせんぞ」ニッ
ライナー「望むところです」ニッ
アンカ 「怪我でもしたらどうするつもりなのかしら」
グスタフ「そうさせない為の俺たちだ」
-
ジャン 「結構な年齢なんだから、無理させないほうがいいんじゃないですか?」
アンカ 「どういう意味?」
アルミン「え?」
グスタフ「あぁ、違う。指令が怪我することは考えてないよ。
怪我をするのは、君たちだ」
ジャン 「……そういうことですか」フンッ
アルミン「お二人は、二つ名持ちですか?」
-
アンカ 「アンカよ」
グスタフ「グスタフだ」
アルミン「いえ、そうではなくて」
ピクシス「合っとるよ、二人は名前がそのまま二つ名になっとる」
ライナー「そんなことが?」
-
グスタフ「名乗って不利になるわけでもないから、教えてやるさ。
グスタフ
"神の恩恵"だ」
アンカ 「名乗ったからって、通じるとも思えないけどね。
アンカ
"安価"よ」
-
ジャン 「もしかして、ピクシス指令にも二つ名が?」
ピクシス「まぁの。じゃが、教えてやらん」
ライナー「何故ですか?」
ピクシス「そのほうが、面白いじゃろ」
(つづく)
-
今日はここまで。続きはそのうち。
-
黒卵なつかしーな、食うと寿命が伸びるって言われてんだっけ、箱根で7歳ぐらいの頃食ったな。
-
黒卵なつかしーな、食うと寿命が伸びるって言われてんだっけ、箱根で7歳ぐらいの頃食ったな。
-
>>119
寿命が延びるどころか勢い有りすぎて分裂しちゃってるな
-
バタン
ピクシス「半額神が来たな。二人とも、手を出すでないぞ」
グスタフ「えっ」
アンカ 「二つ名まで名乗らせておいて、手を出すなって」
ジャン 「無茶苦茶な人だな」
アンカ 「はぁ、もう仕方ないですね。やりすぎないでくださいよ」
-
グスタフ「訓練兵のお前等も、"やられ"過ぎるなよ」
ライナー「随分と、軽く見られたもんだ」
ジャン 「ピクシス指令が一人で相手にするってのか」
アルミン「二人とも、気をつけて。駐屯兵団のトップが、只者であるはずが無い」
-
バタン
ジャン 「年寄りだからって、手加減は無しだ!」ダダダ
ピクシス「うん? 呼んだか?」フラッ
ジャン 「チッ、酔っ払いが。真っ直ぐ立ってられねえのかよ」
ピクシス「元気があって良い」フラフラ
-
ジャン 「な!? また避けられた!?」
ピクシス「いっちょ揉んでやるわ。かかってこい」フラフラ
ジャン 「クソッ」ブン
ピクシス「おっとっと」ゲシッ
-
ジャン 「ぐっ……足癖が悪い爺さんだ」
ピクシス「いや、年寄りは足から弱っていかんの」
ジャン (ただ、酔っ払ってふらついてる訳じゃねぇな)
アルミン「ジャン! ピクシス指令は、一線を引いてはいるけど、老獪な古狼だ!
気を抜いたら、やられる!」
-
ライナー「二人掛りでいくぞ! 俺に合わせろ!」
ジャン 「おう!」
ピクシス「そうそう、それでいい」
ライナー「うおおおおおおお」
ピクシス「そうやって、動きが鈍くなる」ガスッ
ライナー「げほっ」
-
ライナー「二人掛りでいくぞ! 俺に合わせろ!」
ジャン 「チッ、爺さん一人に情けねえ!」
ピクシス「そうそう、それでいい」
ライナー「うおおおおおおお」
ピクシス「そうやって、動きが鈍くなる」ガスッ
ライナー「げほっ」
-
ジャン 「ライナー!」
ライナー「いや、平気だ。まだ行ける!」
ピクシス「ほれ、掛かって来い。一撃入れたら二つ名を教えてやっても良いぞ」
ジャン 「クッソ!」ダッ
ピクシス「ほれ、考えていることが、すぐ動きに出る」ガツン
ジャン 「がはっ」
ライナー「足止めには成功しているんですよ!」ブォン
ピクシス「!」
-
ライナー(……回避は間に合わないはずだ!)
ピクシス「……」フラァ
ライナー(何だ……? 体ごと倒れて……?)
ピクシス「貴様は、二つのことを同時にやるのは苦手じゃろ」ボソッ
ライナー「な……っ」
ピクシス「吹っ飛べ」ドンッ
ライナー「……!?」ゲボォ
-
ライナー「」
ジャン 「」
アルミン「あ……ああ……」
ピクシス「貴様は、来んのか?」
アルミン「……僕では……貴方に勝てません」
ピクシス「賢い選択じゃが、何かを失う覚悟が無ければ、何も得らんぞ」
アルミン「……覚えておきます」
-
〜
ライナー「……う、う……ん」
ジャン 「よう、やっと起きたか」
ライナー「ここは……?」
アルミン「旅館だよ、ジャンと二人で担いで帰ってきたんだ」
ジャン 「ピクシス指令にブン殴られたの忘れたのか?」
ライナー「ピクシス……?」
ジャン 「おいおい、本当に大丈夫かよ。いいの貰いすぎて、記憶が飛んだのか?」
-
アルミン「ライナー、どこまでなら覚えてる?」
ライナー「ライナー……それは、俺の名前なのか?」
ジャン 「……面白い冗談だな」
アルミン「……ちっとも笑えないよ」
ライナー「お前達は、誰だ」
-
ジャン 「おい、もし冗談なら、いい加減にしておけよ」
アルミン「僕達のこと、本当に分からないの?」
ライナー「あぁ、いや、見覚えはある。気がする。
確か、そう。仲間だ」
ジャン 「何も覚えてないってわけじゃねえな、流石に」
-
アルミン「もしかしたら、頭を強く打ったのかもしれない。
念の為に、医者に見てもらったほうがいい」
ジャン 「そうだな、直ぐに呼んで来る」
アルミン「代金は、ピクシス指令につけておいてね」
ジャン 「……狡辛いな」
-
〜
アルミン「医者の診断では、一時的な健忘症で後遺症もないだろう。
ということだったけど、まだ何も思い出せない?」
ライナー「あぁ、集団で生活しながら、何か特訓していたことは覚えている。
ただ、人間関係のことだけが、霞みがかっているように思い出せない」
ジャン 「随分、器用な忘れ方をするもんだな」
-
ライナー「仲間が、沢山いた気がする」
ジャン 「あぁ、そうだな」
ライナー「俺は……誰なんだ」
アルミン「ライナー・ブラウンだよ」
ジャン 「104期訓練兵で、成績優秀で、頼れる皆の兄貴分だ」
-
ライナー「俺は……俺は……わからん……」
アルミン「少し、休みなよ。考えすぎても、きっと良くないから」
ライナー「……ああ。そうさせて貰おう」
ジャン 「どちらにしろ、明日には戻るからな」
-
〜
ジャン 「腹が減って眠れねぇ」グゥ
アルミン「僕も」グゥ
ライナー「何も思い出せなくても、腹は減るんだな」グゥ
アルミン「温泉に行こうか、少しは眠りやすくなるかも」
ジャン 「そうだな」
-
途中でスミマセン。今日はここまで。
-
アルミン「そもそも、まだ眠るような時間じゃないんだよね」
ジャン 「とは言っても、飯も無いからな」
ライナー「すまんな、俺のせいで。気楽な旅行だったろうに」
ジャン 「……」ジー
アルミン「……」ジー
-
ライナー「どうした?」
ジャン 「いや、やっぱりライナーはライナーだと思っただけだ」
アルミン「うん、ちょっと忘れてるだけで、根本的な所は変わってないね」
ライナー「そうか?」
-
ジャン 「そのうち思い出すだろ、気にすんな」
アルミン「そうそう、旅行の間は、細かいことを気にしないって決めてるんだから」
ライナー「……ありがとうな」
ジャン 「やめろよ、くすぐったい」
アルミン「ほら、着いたよ」
-
〜
露天風呂
カポーン
アルミン「謎の効果音だよね」
ライナー「何の話だ?」
アルミン「独り言だよ」
ライナー「?」
-
ゴシゴシ
ザバー
ライナー「何故か、お湯が体に沁みるな」
ジャン 「ピクシス司令にぶん殴られて、壁際までぶっ飛んでたからな。
そこら中、傷だらけになってんだろ。
あの爺さん、腹の虫の加護があるにしても、すげえ力だったな」
アルミン「あれは、カウンターだよ。酔っ払ったような動きで、ライナーの攻撃に合わせてる。
ギリギリでかわして、渾身の一撃を叩き込んでいるから、巨大な拳で殴られたようなもんだよ」
ジャン 「良く見てるな」
アルミン「違うよ。僕は二人みたいに、戦えなかった。見ていることしか出来なかったんだ」
-
ライナー「ただ見ていた訳じゃないだろ、ちゃんと分析している」
ジャン 「あぁ、大した奴だ」
ライナー「今の俺は、お前達のことをちゃんと覚えていないが、
ただ見ていただけだったら、そんな分析は出来ないだろう。
きっと、お前だけにしか出来ない、秀でた才能だ」
アルミン「やめてよ、そんな。褒めたって……もう……背中流そうか?」
-
〜
ザブーン
ジャン 「あ”ー」
アルミン「あ”−」
ライナー「ふー、効くなー」
-
リヴァイ「何だ、随分うるせぇのが来たと思ったら、手前らか」
ジャン 「え。あ、え!?」
アルミン「り、リヴァイ兵長!?」
ライナー「どうも?」
ジャン 「どうして、ここに……?」
リヴァイ「手前らがいるほうが不自然だがな、俺は内地の帰りだ」
ジャン 「俺たちは、福引で当たって、たまたま」
アルミン「内地ということは、エルヴィン団長も?」
リヴァイ「よっぽど叩かれたみたいだな。部屋で飲み潰れてる」
-
アルミン「兵団のトップともなると、大変ですね……」
ジャン 「済みません、騒がしくして」
リヴァイ「気にするな。いま、ピクシス司令の話をしていたな、会ったのか?」
ジャン 「ええ、ここの夕市で。ボコボコにされましたけど」
リヴァイ「"赤頭"相手に、ボコボコで済んだなら、運が良い」
アルミン「もしかして、それが二つ名ですか?」
レッドキャップ
ライナー「"赤頭"とは、随分不吉な名前だな」
アルミン「返り血で自分の帽子を赤く染める、残忍な妖精だね」
リヴァイ「それじゃねえ」
アルミン「え?」
-
リヴァイ「そう思っている奴もいただろうが、妖精なんて可愛げのあるもんじゃねえ」
ジャン 「それなら何故、"赤頭"なんて……」
リヴァイ「酔っ払って、酒が頭まで回ってくると、獰猛な獣になる。
アカカブト
その攻撃力、巨大な熊を思わせる、"赤頭"だ」
アルミン「それは、もしかして」
ライナー「俺がやられたっていう攻撃のことか」
リヴァイ「お前は、"仮面"の訓練兵か」
ライナー「仮面?」
ジャン 「そういう二つ名が付いてたんだよ」
ライナー「仮面、か」
-
リヴァイ「やられたってことは、飯は食ってねえのか」
ジャン 「はい」グゥ
アルミン「仕方ないです」グゥ
リヴァイ「早く上がれ、店が閉まるぞ」ザバッ
ライナー「……?」
リヴァイ「今、部屋に戻ると、目を覚ましたエルヴィンの酒の相手をさせられる」
ジャン 「それは、つまり」
アルミン「晩御飯を、ご馳走して頂けるということですか?」
リヴァイ「早くしろ」
ジャン 「はい!」
-
今日はここまで。続きは多分明日。
-
〜
鉄板焼
アルミン「あれ、このお店って……」
ライナー「有名なのか?」
アルミン「うん、グルメ本にも載ってる有名店だよ。
前に調べたことがあるんだ」
ジャン 「おぉ、店内が既に肉の香りに包まれてる」
ライナー「嗅ぐだけで分かるな、旨い肉の匂いだ」
アルミン「こんなに高級な店に、いいんだろうか……」
-
ライナー「ここに座っていいのか?」
ジャン 「立派な椅子だな」
アルミン「6人がけのテーブルの真ん中に、大きい鉄板がはめ込まれているね。
テーブル毎に、肉をその場で焼いてくれるんだ」
ジャン 「おい、鉄板の上に乗ってる皿のが、もしかして」
店員 「はい、こちら本日のお肉とお野菜です」
-
ジャン 「こんなに分厚い肉を食えるのか。
しかし、目の前に妙に見覚えのある食材があるな」
アルミン「これは……食パンだね」
ジャン 「は……食パンって、まさか!?」
リヴァイ「ようやく気づいたか。
超大型巨人弁当を食った後で、ハンジが見つけてきた店だ」
-
店員 「では、焼かせていただきます」
アルミン(肉を二等分して、まずは半分をバターを溶かした鉄板に乗せる)
ジュゥウウウウウウウ
アルミン(湯気と共に肉の焼ける音が立ち上る。焼き目がついたら、すぐに裏返してる)
ライナー「あぁ、良い匂いだ」
-
アルミン(両面に焼き目をつけて、いったん皿の上に。まだ中が赤いままだけど、これからもう一回焼くのかな。
油かな? 何か液体を鉄板に垂らして、肉を乗せる)
店員 「火が出ます」
アルミン「え?」
ボゥッ!!
ジャン 「うおっ!!」
アルミン「びっくりしたー!」
ライナー「何の意味があるのかわからないが、すごいな」
-
ジャン 「でかいヘラで肉を切ってるぞ」
アルミン「ヘラがすごいのかもしれないけど、肉が抵抗なくスッと切れてるよ」
ジャン 「すげぇ柔らかそうだ」グゥゥ
アルミン(そして、一口大に切られた肉が、僕らの目の前に……)
ライナー「パンの上に乗せるんだな。皿だったのか、これは」
-
アルミン「これ、もう食べてもいいんだよね」
ライナー「大丈夫だろう、こんなにも旨そうなんだ」
ジャン 「タレが2種類と塩か」
アルミン「最初は塩かな、何となく通っぽい感じがするし」
ジャン 「じゃあ、俺も」
ライナー「どんくらいつければいいんだ?」
ジャン 「好きなだけ付けろよ、肉の味が強そうだから、大目につけてもいいだろう」
ライナー「そうだな、じゃあたっぷり」
-
ビリッ
ライナー(うぉおおっ。電気が走ったのかと思った。舌に乗せた瞬間、塩の辛みが!
これは調味料用の塩じゃない、そのまま食べるための荒塩だ。
塩だけでも食べられるくらい旨いぞ。
口の中がびっくりして唾液が飛び出てきたところに、肉汁が襲いかかる!)
ライナー(気がつけば無我夢中で肉をかみしめている。
表面だけは極薄くカリっと焼きあげて、中は生みたいに柔らかいのに、しっかりと噛みきれる)
-
ムシャリ ムシャリ
ライナー(はぁああ、これは何味だ。肉の味で、塩味なんだが、そんなんじゃない。
舌の上で蕩ける……! もう、味覚が感情を凌駕した領域に突っ込んでる。
味覚が、舌が、口の中が喜んで仕方ない)
ライナー(しっかり噛み続けていたのに、いつの間にか口の中から無くなってしまった。
恐ろしいほど旨かった。こんなに旨いものが存在していたのか)
-
ライナー(次は、にんにくタレにつけてみよう。フライドガーリックを入れるんだっけな。
肉の上に、ガーリックを乗せて、一緒に口の中へ)
カリッ じゅわぁ
ライナー(うほほほほ。これは! すごい! カリッとしたフライドガーリックの食感と
にんにくタレの甘みが、肉に絡みつく!)
ライナー(鼻腔から抜ける肉の匂いに、にんにくが合わさって、強烈な自己主張をし始める!
肉とニンニクは、こんなにも相性がいいのか。お互いを高めあってるみたいだ。
強烈な味と香りなのに、全然飽きない。むしろもっと食べたくなる!)
-
ライナー(よし、次はポン酢で食べよう)
モグモグ
ライナー(おおぅ。これは、また方向性が違うな。
てっきり、強烈な酸味が来ると思っていたのに、やさしい酸味だ。
肉の脂と溶け合うような酸味に、柑橘系の爽やかな香りが包み込む。
それでいてしっかりと酸っぱいから、唾液が止まらん。
肉の旨みを味わう為に、涎が次から湧いて出る)
ライナー(これは、今までのガツンとくるような肉じゃなく、癒し系の肉だ。
同じ肉なのに、こんなにも印象が変わるのか)
-
ライナー「次は野菜か」
ジャン 「げっ、オクラが入ってる」
アルミン「オクラ苦手なんだ」
ジャン 「生臭いし、ネバネバしてるだろ」
ライナー「御馳走になってるんだ、残さずに食っておけ」
ジャン 「あぁ、そうだな。肉が旨いんだから、贅沢は言えん」
-
ポリッ
ジャン 「うおおおお、何だこれ!? オクラなのか!? 本当に!?」
アルミン「オクラの産毛を丁寧に取ってあるね」
ライナー「あぁ、カリっと焼きあげたオクラを噛みちぎると、中から粒粒の種が飛び出してくる」
ジャン 「これが気持ち悪くて苦手だったんだが、全然気持ち悪くねぇ」
ライナー「オクラだとわかっていても、まったく別の食べ物のようだな」
-
アルミン「全く生臭くない、オクラの甘みさえ感じるようだよ」
ライナー「あぁ、このキノコもシャキシャキしてて旨いな」
ジャン 「すげぇな、野菜はここまで旨くなるのか」
アルミン「これを最初に食べさせたら、野菜嫌いな子供なんていなくなるんじゃないかな」
ライナー「まったくだ。美味い」
-
ジャン 「お、肉の後半が焼きあがったみたいだ」
リヴァイ「もう十分だ。俺の分はやる。お前らで食え」
アルミン「頂きます!」
ジャン 「どれだけ腹が一杯でも、食べられる気がする!」
ライナー「あああ! 美味い!」
-
〜
ライナー「ふぅ、食ったな」
ジャン 「暫く、安い肉は食えないな」
アルミン「そろそろ、来るんじゃないかな」
店員 「このパンを焼きますが、砂糖はつけますか?」
ライナー「なん……だと……?」
ジャン 「やっぱり、焼くのか」
アルミン「是非、お願いします」
ジャン 「俺も同じで」
ライナー「俺も」
-
じゅわぁ
ライナー(鉄板で溶かしたバターを、パンに塗るってレベルじゃない。パンが浸るくらいつけてる)
パサパサ
ライナー(おぉ、そんなに砂糖をかけるのか。
シュガートーストというよりも、砂糖がメインのパンだ)
ザクッザクッ
ライナー(これを4等分して、各々の皿の上に。
肉汁がこれでもか、と染み込んだ、シュガートーストだ)
-
シャリ
アルミン「おおおおおおおお」
ジャン 「おおおおおおおおお」
ライナー「おおおおおおおおおお」
ライナー(肉汁が!砂糖で!おおおおおおお!
ここまで肉汁がしみこむと、この食パンが肉の旨みを凝縮した肉みたいだ。
それだけ強烈な旨みを閉じ込めているのに、そこにバターを加えて、
脂を注いでやってさらに旨みを高めている。
とどめに、砂糖だ。ザラメみたいに目の荒い砂糖。
舌に触れた甘みが溶けた瞬間、怒涛の肉味が襲いかかってくる)
-
ジャン (あくまでシュガートーストだから、食感は軽いのに、その中身は濃密だ。
ベーコンなんかの成型肉とは比べ物にならない、生の牛肉から染みでた肉汁だから、
自己主張が半端じゃない。汁だけがパンにしみ込んでるくせに、こんなにも旨い。
前にハンジさんが言ってたな、このシュガートーストが、この鉄板焼の最終系だ)
ライナー「ふぅ、満腹だ。しかし、全然、腹にもたれない。
もう1人前くらいなら、食えそうなくらいだな」
-
リヴァイ「今の肉が入ったチャーハンが締めにあるが、食うか?」
ジャン 「くっ……食べたい……です!」
ライナー「何たる拷問……!」
アルミン「胃がはちきれてでも食べます!」
(つづく)
-
今日はここまで。続きはそのうち。
-
しえん
-
〜
翌日
アルミン「1日経っても治らなかったね」
ライナー「まあ仕方ないさ。なるようになる」
ジャン 「随分、慣れるのが早いな」
アルミン「順応性の高さは、元々なのかもね」
ライナー「そうかもしれんな」
ジャン 「帰りの乗り換え駅で、弁当買って行こうぜ」
アルミン「そうだね。行きは僕も買い損ねちゃったし、ライナーに貰っちゃたから
今度は僕がご馳走するよ」
ライナー「気にしなくて良いぞ、こっちは覚えてないからな」
ジャン 「そういう、本気かどうか分からない冗談が好きなのも変わらないな」
アルミン「本当に」
-
〜
乗り換え駅
アルミン「帰りは時間の余裕があるから、ゆっくりでいいよ」
ジャン 「助かったぜ。帰りも全力疾走は勘弁だ」
ライナー「お前らと、この駅を走ったことは覚えてないが、
ここの弁当の味は覚えてるな。損した気分だ」
アルミン 「あはは、覚えてるのもいいことばかりじゃないね」
老婆店員「お客さん。昨日、お金を落とされたでしょう?」
アルミン 「え、僕ですか?」
老婆店員「ええ、間違いないです」
アルミン 「でも、僕はお店で買い物してませんし、そこの角を曲がったところですぐに引き返したから」
老婆店員「お客さん、お金を落とされたんで、拾っておいたんですよ。
きっと帰りに取りに来ると思って」
アルミン「本当だ、僕の落とした小銭とピッタリあってる」
-
ジャン 「よくチラっと見えただけの顔なんて覚えてるな」
老婆店員「私は足も腰も弱いですから、せめてお客さんの顔を見るくらいは、頑張ってるんですよ。
幸い、まだ頭のほうはシャンとしてますからね」
ライナー「その調子なら、あと50年は店員を続けられそうです
老婆店員「いやですよ。さっさとお迎えに着て欲しいのに」
アルミン 「……ははは」
ジャン (反応し辛い、老人ジョークだ)
-
〜
トロスト区
ジャン 「ふぅ、やっと着いたな」
アルミン「温泉に着いたときも同じこと言ってたね」
ジャン 「そうだったか?」
ライナー「あぁ、間違いないな」
ジャン 「お前は覚えて無いだろ」
ライナー「ははは」
-
ジャン 「あぁ、そうだ悪い。ちょっと実家に寄るから、先に行っててくれ」
アルミン「別に構わないけど、お土産?」
ジャン 「あぁ、夜飯大会で勝ったメニューの一応……礼にな」
ライナー「よし、じゃあ一緒に行こうか」
ジャン 「待てよ、先に行ってろって言ったろ」
ライナー「お前の親に会うことで、何か思い出すかも知れないだろ」
ジャン 「ねえよ! 初対面だよ!」
ライナー「どうかな?」
ジャン 「……怖い冗談言うな、頼むから」
-
〜
訓練所
アルミン「と、いうわけでライナーは、ちょっと記憶が無くなっちゃったんだ」
ベルトル「ちょ、ちょっとって、どのくらいなんだい?」
アルミン「人間関係に付随することと、あと自分のこと」
ベルトル「最悪、料理人になるって言い出しても受け入れる覚悟はしていたのに、
ライナー、君はいつも僕の想像の斜め上を行くよ」
ライナー「何だかスマンな」
エレン 「でも、そのうち戻るんだろ?」
コニー 「なら、いいじゃねえか」
クリスタ「ライナー、可哀想」
ライナー「君と恋人だった気がするんだけど、そのことについt」ゲボォ
ユミル 「いっそ、全部忘れて赤ん坊からやり直せよ、ホモゴリラ」
クリスタ「ライナー、可哀想」
-
ベルトル「ライナー、ちょっといいかな」
ライナー「うん? 俺はホモじゃないぞ」
ベルトル「その話じゃないから」
ライナー「あの話か?」ヒソヒソ
ベルトル「……! その話だ」ヒソヒソ
〜
宿舎裏
ライナー「ここなら誰もいないぞ」
ベルトル「記憶が無いって聞いて、少し不安だったけど、ちゃんと目的は覚えていたんだね」
ライナー「ああ、だがスマン。俺が記憶をなくしたばっかりに、目的は失敗だ」
ベルトル「ええ!? それは、どういう……?」
ライナー「俺たち、同郷だったんだろ? お前に土産を買ってくるのを忘れたんだ」
ベルトル「……え?」
ライナー「……ん?」
-
ベルトル「あの話って、その話?」
ライナー「その話は、この話だが?」
ベルトル「……ねえ、ライナー。君は、自分のことも忘れているんだっけ?」
ライナー「ああ、そうだな。靄がかかった様な感じだ」
ベルトル「パッっと、思いついた印象で構わないから、自分が何者かを一言で言って貰えないかな」
ライナー「変なことをいう奴だな。心理テストか?」
ベルトル「そんなような、というか。まさしくそのものだよ」
ライナー「そうだな、俺は……」
ベルトル「……」ゴクリ
ライナー「俺は……………………」
ベルトル「…………?」
ライナー「………………わからん」
ベルトル「ライナー?」
-
ライナー「兵士だった気もするし、他の目的を持った何かだった気もするし、
誇りを持った餓狼だったような記憶もあるし、料理人を目指していたような、
温泉ガイドをやっていたような、ハーレムを築いていたような……」
ベルトル「記憶が混乱しているにしても、ちゃっかりし過ぎだろ」
ライナー「そんな感じで、良く分からん」
ベルトル「餓狼のことを覚えてるなら、変身のことは覚えてる?」
ライナー「変身?」
ベルトル「ほら、空腹が極限までに達すると、胃がキリキリと痛むだろう?
それをさらに我慢したとき、微かに胃袋に潰瘍のような傷が出来る。
その自傷行為にも似た感覚が、夕市でのみ僕等の体を変質させる。どう、思い出せない?」
-
ライナー「……いや、分からんな」
ベルトル「そうか……」
ライナー「まぁ、そのうち思い出すらしいから、気長にまとうぜ」
ベルトル「そのうちじゃ困るんだよ」
ライナー「ん? 何か言ったか?」
ベルトル「……それを口癖にしてもモテ無いからね」
-
〜
翌日 食堂
アルミン「あ、ジャンとライナー。良かった」
ジャン 「どうした?」
ライナー「それは、俺が良い人なんじゃなくて、お前にとって都合が良いと言う意味か?」
アルミン「いきなり、意味もなく重そうな話にしないでよ。
僕等が、ピクシス司令に呼び出されてるらしいんだ」
ジャン 「げっ、もしかして治療費をツケたのがまずかったのか」
アルミン「それ以外に思い当たるところは無いよね」
ライナー「よし、じゃあ行こうぜ。多分、怒られるだろうが、全部俺のせいにしろ。
お前等は、俺の後ろに立ってれば良い」
ジャン 「覚えて無いくせに、格好いいな。おい」
アルミン「ツケるように言い出したのは僕だから、そんなこと出来ないよ」
ライナー「とにかく行こう。遅れて更に怒らせるのも不味いだろう」
ジャン 「そうだな」
-
〜
駐屯兵団 本部
アルミン「すいません、ピクシス司令に……」
リコ 「あん?」
ジャン 「げっ」
リコ 「うわ……お前、こんなところまで何しに来たんだ」
ライナー「知り合いか?」
ジャン 「前に、夕市でちょっとな」
アルミン「済みません、ピクシス司令にお取次ぎ頂けますか。アポイントはあります」
リコ 「チッ、待ってろ」
ライナー「何をしたら、あんなに嫌われるんだ?」
ジャン 「前に、夕市でちょっとな」
アルミン「リコ・プレツェンスカ班長……か」
リコ 「お前等、こっちに来い。ピクシス司令がお待ちだ」
-
〜
司令室
ピクシス「治療費なんぞの請求が来るから、ヒヤっとしたわい」
アルミン「体は至って問題ありません」
ピクシス「そういうことなら、良いんじゃ」
アルミン「あの、治療費の件でお咎めは?」
ピクシス「欲しいのか?」
アルミン「とんでもない」
ピクシス「なら良い。若者に怪我をさせると、参謀に怒られるからの」
アルミン「そういうことでしたか」
ピクシス「まぁ、訓練兵とは言え、もうちょっと体を鍛えんとな」
アルミン「耳が痛いです」
-
ピクシス「次は、わしをもっと楽しませんかい」
アルミン「次があれば、善処します」
ピクシス「あるぞ」
アルミン「え?」
ピクシス「3日後、夕市でユトピア区の物産展をやるそうじゃ。
そして、そこに弁当も出ると聞いておる」
ジャン 「逃した弁当を賭けて、リベンジできるってわけだ」
ライナー「なるほど、面白そうだな」
-
〜
廊下
アルミン「失礼しました」ガチャ
ジャン 「結局、アルミンの後ろに立ってるだけだったな」
アルミン「僕ちょっと会いたい人がいるから、二人は先に戻ってて」
ジャン 「知り合いでもいるのか?」
アルミン「うん、まぁね」
ジャン 「オレも、このあとリヴァイ兵長のところに呼ばれているから、ここで解散だな」
ライナー「なら、オレは戻るか」
-
〜
休憩室
イアン 「おい、リコ。お前の弟が来てるぞ」
リコ 「あん? 私に弟なんて」
アルミン「……どうも」
リコ 「イアン、どうして弟だと思ったのか、簡潔に説明してくれないか」
イアン 「そんなの、その太い眉毛みたら、誰だってすぐに」
リコ 「そうか、良く分かった。あとで話がある」
アルミン「えーと、いいですか」
リコ 「食事休憩中だから、食べながらになるが」
アルミン「それでも構いません」
リコ 「手短に頼む。後の予定が詰まってるんでな」モグモグ
アルミン「リコ班長に武術を教えて欲しいんです」
リコ 「ダメだ」ズズズ
アルミン「何故ですか」
-
リコ 「1つ、私は人に教えられる腕前じゃない。
2つ、私は見ず知らずの他人の面倒を見るほどお人良しじゃない。
3つ、私は今、酷く機嫌が悪い」モグモグ
アルミン「交換条件ではいかがですか」
リコ 「訓練兵風情が、私と何を交換すると言うんだ」モグモグ
アルミン「僕の幼馴染の話ですが、この1年間でバストサイズが3つも上がったと言ってました」
リコ 「……それが、どうした」モグモグ
アルミン「1年前に、相談されたんです。グラマラスになる方法について」
リコ 「くだらん、そんなもの女性雑誌にも書いてある」モグモグ
アルミン「もしかして、今食べてるとろろご飯のことですか?」
リコ 「麦とろ飯だ」ズズズ
アルミン「美味しそうですけど、あんまり意味無いですよ」
リコ 「はんっ、何を根拠に」
アルミン「バストアップ効果があるのは、とろろじゃなくて、とろろ昆布です」
リコ 「とろろ……コンブ?」
-
アルミン「壁の外にある、海と言う水域に自生する水草です」
リコ 「何を……」
アルミン「5年前の食料革命により壁内の食糧事情は一気に緩和されました。
ご禁制の書物も一部解禁され、過去の料理、調理方法が爆発的に広がりましたが、
未だに壁の外の食材は手に入りません」
リコ 「しかし、雑誌に」
アルミン「情報というのは、正しく扱える者の元でなければ、何の意味も成さないんです。
恐らく、とろろという言葉から、似たようなものだと思って編集者が載せたんでしょう」
リコ 「チッ……いや、私は麦とろ飯の味が好きだから食べているだけだ」モグモグ
アルミン「美味しいですよね」
-
リコ 「あぁ、固めに炊いた麦飯にとろろをかけて、醤油とワサビをちょっとかけて食べるのが好きなんだ」ズズズ
アルミン「それもいいですけど、同じ粘り気のある納豆もいいですよ」
リコ 「あの保存食のか?」
アルミン「ええ、"効果"があります」
リコ 「……ほう」
アルミン「キャベツもいいですね。とろろ昆布と同じ成分が入ってます」
リコ 「……それで?」
アルミン「それから、程よい運動が大事みたいです。例えば、武術のような」
リコ 「ふん、それが目的か」
アルミン「ダメですか?」
リコ 「まぁ、いい。腹ごなし程度には付き合ってやるよ」
(つづく)
-
今日はここまで。続きはそのうち。
-
支援
-
〜
2日後 駐屯兵団本部
リコ 「お前には才能が無い。やるだけ無駄だ」
アルミン「才能が無くても努力で埋められるのが武術ではないんですか!?」
リコ 「それはお前、十年単位での話だ。2,3日で身につくなら金でも取ってる」
アルミン「そんな……」
リコ 「頭は悪くないようだから、技巧にでも行くんだな」
アルミン「僕は、いつか壁の外を友達と一緒に冒険したいんです。
だから、どれだけ才能が無くても、自分の足で歩かなきゃ」
リコ 「才能が無いって言うのは、足が遅いって意味じゃない。足が無いという意味だ」
-
アルミン「それなら、腕で這ってでも行くまでです」
リコ 「諦めの悪い奴め」
アルミン「例え、指をくわえて見ていることしか出来なくても、配られたカードで勝負するしか無いんです」
リコ 「見るだけで勝負にはならないぞ」
アルミン「してみせますよ、どんな手を使っても」
-
〜
帰り道
ライナー「よう、帰りか?」
アルミン「あ、ライナー。どうしたの」
ライナー「ここ2日間、何か思い出すかと思って、この辺りを歩き回っていたが、さっぱりだった」
アルミン「そうかぁ。てっきり、全部受け入れているのかと思ってたけど、
記憶を戻すつもりはあったんだね」
ライナー「あぁ、俺と同郷のベルトルトが、悲壮な顔してるからな」
アルミン「自分のことを忘れられたら、そうなるだろうね。
僕もエレンやミカサに忘れられたら、なんて考えたくも無いよ」
-
ライナー「お、ここまで離れてても店先で蒸してる匂いが漂ってくるな」クンクン
アルミン「美味しそうでしょう」
ライナー「あぁ、肉まんしかないのか?」
アルミン「ううん、あんまんもあるよ」
ライナー「甘いのもいいな」
アルミン「一つが大きいから、僕は一個しか食べられないんだけどね。
サシャは凄かったよ、一人でライナーの拳くらいある肉まんを3つも4つも食べてたから」
-
ライナー「それだけ美味いってことだろう、着いたぞ」
アルミン「えーと、じゃあ僕は肉まん一つください」
ライナー「俺はあんまんだ。そこのベンチで食うか」
アルミン「うん、このもっちりした皮が美味しいんだ」ハフハフ
ライナー「蒸したてでふかふかだな」モグモグ
アルミン「具がぎっしりだよ」モグモグ
ライナー「あんまんは、中のあんにゴマが入ってるな。ゴマの香りがたまらん」ハフハフ
-
ライナー「……」
アルミン「?」
ライナー「……ちょっと待ってろ」
アルミン「どうしたの?」
ライナー「スープを買ってきた、1個取ってくれ」
アルミン「え、悪いよ。自分の分はお金出すよ」
ライナー「良い店を教えてもらったからな、受け取ってくれ」
アルミン「全く、ライナーはいつもそうなんだから、断れないじゃないか」
ライナー「そんなことを言われてもな」
アルミン「じゃあ貰うね。コーンスープだ、あちち」フーフー
ライナー「最近、冷えてきたからな。熱いスープも美味い」ズズズ
-
アルミン「はぁ、コーンの甘さが胃に染みるね」
ライナー「コーンの粒のプチっとした歯ごたえも良いな」
アルミン「ふぅふぅ、舌をやけどしちゃう」
ライナー「落ち着いて飲めよ」ハハハ
アルミン「肉まんにコーンスープっていうのも、案外合うね」フーフー
ライナー「そうだな」ズズズ
アルミン「あんまんも美味しいや」ハフハフ
ライナー「肉まんも美味い」ハフハフ
-
ジャン 「随分、仲が良いな」
アルミン「あれ、ジャンだ」
ライナー「よう」
ジャン 「美味そうだな、俺も買ってくる」
アルミン「そこのお店だよ」
ジャン 「わかった」
-
ライナー「妙にボロボロだったな」
アルミン「ここのところ、リヴァイ兵長に呼び出されてたけど、そのせいかな」モグモグ
ライナー「秘密の特訓でもやってるんじゃないか」モグモグ
アルミン「みんな考えることは一緒なのかなぁ」
ジャン 「結構でかいな、この饅頭」
アルミン「肉まんにしたの? それともあんまん?」
ジャン 「いや、何か新商品らしい。ピザまんだ」
ライナー「ピザ……まん?」
アルミン「いつの間にか新商品が出てたんだ。どんなのだろうね」
ジャン 「外れじゃないといいがな」
-
パクッ
ジャン 「んー、うまい! これはすげえ!」ハフハフ
ライアー「そんなに美味いのか」
ジャン 「噛み付いたところから、とろーっとチーズが伸びてきやがる!
しかも、何種類かのチーズを混ぜてあるな!
ミルクっぽい風味を残したチーズが、トマトソースと絡み合って、もう最高だ!」モグモグ
アルミン「ねえジャン、肉まんとあんまんにも興味ない?」
ジャン 「わかったよ、三等分だからな」
ライナー「トマトの酸味が、肉まんとも全く違う香りだな」
アルミン「でも、ものすごい食欲を掻き立てるよ」グゥゥ
-
パクッ
ライナー「おお、これは美味い! チーズが凄い伸びるな!」ハフハフ
アルミン「ふかふかの皮に齧り付くと、中からアツアツのソース、そして濃厚なチーズが飛び出してくる」ハフハフ
ジャン 「トマトベースのソースに、バジルの香りが混ざりこんで、そこにチーズだ」
ライナー「口の中で、チーズとソースが絡み合って、更に美味い」
アルミン「チーズがもちゅっとして美味しいね。チーズだけでも食べたいくらいだよ。
でも、トマトのソースと一緒にたべると、相乗効果でもっと美味しい!」
-
ジャン 「肉まんも美味いな」モグモグ
アルミン「はぁ……しあわせ」ホッコリ
ライナー「うむ、満足だ」ズズズ
ジャン 「何飲んでるんだ?」
ライナー「そこで買ってきたスープだ」
ジャン 「それも美味そうじゃねえか、買ってくる!」
ライナー「忙しい奴だな」
-
今日はここまで。続きはそのうち。
-
乙
今から肉まん買ってくるわ
-
あれ、見返したらところどころ抜けてる。
スミマセン、以下補足です。
>>198の次
ライナー「流石に気の毒だと思って、こうして歩いているわけだ」
アルミン「ライナー、肉まん食べない? 僕、お腹空いちゃった」
ライナー「そうだな、買い食いしていくか」
アルミン「この間、サシャが美味しい店を教えてくれたんだよ」
ライナー「ほう、楽しみだな」
アルミン「すぐそこなんだ」
-
>>200の次
アルミン「肉まんは、野菜もたっぷりだよ。もちもちの皮とジューシーな肉に
タケノコのコリコリした食感が、いいアクセントになってるね」モグモグ
ライナー「そっちのも美味そうだな、半分交換しないか」
アルミン「うん、いいよ。いま、半分にするから」アチチ
ライナー「ほら、あんまんの半分だ」
アルミン「へへへ」
ライナー「どうした?」
アルミン「いつも1個でお腹一杯だから、2種類食べられるのが嬉しくて」
-
以上でした。
今更ですが、適当に脳内補完してください。
-
〜
夜 食堂
ライナー「どうしたんだ、こんなところに呼び出して」
ベルトル「ライナー、あれから記憶は戻ったかい?」
ライナー「いいや、さっぱりだ」
ベルトル「そうか……」
ライナー「すまんな、心配して貰っているのに」
ベルトル「いや、いいんだ」
ライナー「それを聞くために呼び出したのか?」
-
ベルトル「いいや、その答えを想定していたから、呼び出したんだ」
ライナー「どういうことだ」
ベルトル「今から夜食を作るから、食べてくれないかな」
ライナー「そりゃあ、別に構わないが」
ベルトル「ねえライナー。君は、人間関係と自分のことを忘れているんだよね」
ライナー「そうだな。相変わらず記憶が麻痺しているようだ」
ベルトル「それなら、僕らの郷土の名物、"マシマシ"のことは覚えているかい?」
-
ライナー「マシマシ? いや、覚えが無いな」
ベルトル「そうか、やっぱりね」
ライナー「大体、そのマシマシっていうのは、何なんだ?」
ベルトル「僕らの故郷の味だよ」
-
〜
ベルトル「さあ、出来たよ」
ライナー「出来たよって、何だこれは」
ベルトル「これが、マシマシだよ」
ライナー「これが……?」
ベルトル「君は、これが大好物だったじゃないか」
ライナー「いや、これはどんぶり一杯のモヤシの山だろう。家畜の餌か?」
ベルトル「ちゃんと中に麺とか、他の具が入っているよ」
-
ライナー「まぁ、騙されたと思って食ってみるか」
ムシャムシャ
ライナー「これは……?」
ベルトル(さあ、ライナー。君はどうする)
ライナー「ただの……もやしだな」モシャモシャ
ベルトル(ライナー、きっと君は人間関係を忘れたわけじゃないんだよ)
ライナー「ただのもやしと、千切った少量のキャベツだ」ムシャムシャ
ベルトル(兵士とか戦士とか特級厨師とか)
ライナー「どれだけ食べても、もやしだな」ムシャムシャ
ベルトル(なるべきもの、ならなきゃいけないもの、なりたいものがごっちゃになって、
わけが分からなくなったんだ)
-
ライナー「ただのもやしなのに……止まらん……何だこれは!?」ムシャムシャ
ベルトル(全部になろうとして、なれなくて、それで全てから逃げたんだ)
ライナー「箸が止まらんぞ!」ガツガツ
ベルトル(人間関係を忘れているんじゃない。思い出したくないことから目をそらしているんだ。
そうやって心の距離を置いて、自分に都合の良い幻想にしがみついているだけなんだ)
ライナー「もやしを切り崩して、ようやく中の麺が見えたぞ」
ベルトル(だから)
ライナー「やっと麺が食えるな」
ベルトル(その幻想をぶち壊す!)クワッ
-
ズズズ
ライナー「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
ベルトル「大盛り、野菜、ニンニク、マシマシだ!!」
ライナー「これだ! この味! ラーメンじゃない! マシマシの味だ!」ズズズ
ベルトル「君もマシマシ愛好家なら、忘れるわけが無いと信じていたよ」
ライナー「ガツンとぶん殴られるようなニンニクのパンチ!
嘘臭い濃厚な脂! 極太のちぢれ麺! 体に悪そうなスープ!!」ムシャムシャ
ベルトル「だが、やめられない」
-
ライナー「そうだ! 絶対に後で胃にもたれる! しかし、食べずにはいられない!」ガツガツ
ベルトル「当然だ。これはラーメンじゃない、マシマシという食べ物なのだから」
ライナー「アニが未練がましくラーメン屋巡りをしていたが、ラーメンとは似て非なるものだ!
何かが代わりになるはずが無い! これは別次元の領域にある味だ!」
ベルトル「君も味噌ラーメンを作っていたじゃないか」ハハハ
ライナー「俺のも手慰みだ。この味はお前にしか出せないよ、ベルトルト」
-
ベルトル「思い出した。いや、記憶から逃げるのをやめたんだね、ライナー」
ライナー「ああ、いらない苦労をかけたな。全部、思い出せる」フゥ
ベルトル「いいんだ、それで聞きたいんだけど」
ライナー「今の俺は何者か、だろ?」
ベルトル「ああ、教えてくれないか」
ライナー「俺は、戦士」
ベルトル「ライナー!」パァァ
ライナー「……で、あり兵士だ」
ベルトル「ライナー……」
-
ライナー「あと料理人見習いで、温泉ガイドに憧れを持ってて、故郷でロットマスターだった」
ベルトル「欲張りすぎだよ」
ライナー「すまんな、だがこれが今の俺だ」
ベルトル「どれか一つは選べないんだね」
ライナー「ああ。しかし、今の俺は間違いなくライナーだ。揺るぎ無く、決してブレない。
ただ一直線のライナー・ブラウンだ。今はそれで勘弁してもらえないか」
ベルトル「仕方ないなぁ」フフッ
-
ガチャ
ライナー「!!」
ベルトル「!?」
アニ 「あんたら、何を夜中に騒いでるんだい」
ライナー「何だ、アニか」
ベルトル「アニ! 聞いてよ、ライナーの記憶が戻ったんだ」
アニ 「ふーん……それで?」
ライナー「それでって……冷たいな」
アニ 「そんなことより、私の分のマシマシはあるんだろうね」クンクン
ベルトル「……勿論だよ!」
-
今日はここまで。続きはそのうち。
-
乙
午前中食べたカレーで胃もたれしてるのに
ラーメン…じゃなくてマシマシを食べたくなったじゃないか
どうしてくれるw
-
翌日 トロスト・キッチン
ベルトル「ライナー、どうしても行くのかい?」
ライナー「ああ、けじめだからな。結果はどうなろうと、行かなきゃならん」
ベルトル「でも、また記憶が無くなったりしたら……」
ライナー「そのときは、またマシマシ作ってくれよ」
ベルトル「僕は医者でも料理人でもないんだよ」ハァ
-
ジャン 「よう、思い出したんだってな」
アルミン「やあ、ベルトルトも一緒なんだ」
ライナー「あぁ、世話かけたな。俺の記憶が戻ったからな、コンビ復活だ」
アルミン「うん、良かったね」
アルミン「今日は、ピクシス司令が来るはずだ」
ジャン 「リベンジマッチだな」
ライナー「今回は負けないぜ」
ベルトル「無茶はしないでくれよ、ライナー」
-
ピクシス「意気込んどるのぉ、訓練兵」
ライナー「来たな」
ジャン 「……どうも」
アルミン「今日は、お一人ですか?」
ピクシス「二人とも来とるよ、ワシが無茶せんようにな」
アンカ 「司令! また一人でいなくなって……あら」
グスタフ「君達は、ユトピア区で会った」
ライナー「その節は、お世話になりまして」
アルミン「今日は、お二人も参加されるんですか?」
-
アンカ 「司令がダメって言わなければね」
ピクシス「弁当の残り具合じゃの。見に行くか」
アルミン「僕達も行こう」
ジャン 「そうだな」
ライナー(ユトピア区の物産展だから、ユトピア区ゆかりの弁当があるはずだ。
残りは5つ。2種類……いや全部同じ名前の弁当だな)
ハービバノンノ
"温泉豚の肉そぼろ ちらし寿司"
ライナー(肉そぼろの……チラシ・ズシ? しかし、それよりもフリガナの意味が分からん)
-
ジャン 「なあ、チラシズシって何だ?」
アルミン「スシは、ご飯にお酢を混ぜたものらしいけど、食べたことは無いね」
ライナー「チラシは何だ?」
アルミン「”散らし”じゃないかな、肉そぼろが散らしてあるんだよ」
ジャン 「微かに漂う甘酸っぱいような香り……」
ライナー「ああ、美味そうだ」グゥ
ピクシス「数は十分じゃな、二人ともワシの邪魔をせんなら参加せい」
アンカ 「向こうで食べたのとは違うお弁当だけど、美味しそうね」
グスタフ「良い機会だ、お前らに俺が"グスタフ"と呼ばれる所以を教えてやる」
アルミン「確か、意味は”神の恩恵”ですよね?」
-
イクシス「夕市で神とは、半額神に他ならん」
グスタフ「俺の参加する半額弁当争奪戦は、月桂冠が出やすい」
アルミン「そんな、まさか」
ライナー「何か、コネでもあるんですか?」
グスタフ「いいや、俺は普段は特別美味そうな弁当でないと参加しないからな。
そういうときは、必然的に月桂冠になりやすいだけだ」
アルミン「つまり、それだけの審美眼を持つだけの経験があるわけですね」
グスタフ「まあ、そういうことだ」
ジャン 「おい、半額神が来たぞ」
-
ライナー(全部、半額になっているな……いや! ひとつ、月桂冠があるぞ!?)
ライナー「どういうことだ」
ジャン 「何か違うのか?」
アルミン「一つだけ、見た目が少し違う弁当があったのに気づいたかい」
ライナー「ああ、そういえば、あったな」
ジャン 「どこが違うんだ?」
ライナー「見た目がちょっと違う弁当があったが、具体的にどこが違うのかは……」
アルミン「卵だよ。他のは炒り卵だけど、月桂冠には煮卵を半分に切った物が入ってた」
ジャン 「相変わらず、よく見てんな」
-
バタン
ドドドドドドド
ドドドドドドドドドドド
アルミン「この半額弁当争奪戦で、僕は自分の歩む道を示す!」
ジャン 「リヴァイ兵長の特訓を無駄にはしねえ!」
ライナー「ベルトルト、行くぞ!」
グスタフ「訓練兵に負けるわけにはいかないな」
アンカ 「負けてたまるもんですか!」
ピクシス「男子三日会わざれば活目せよと言うからのう、せいぜい楽しませろ」
-
アルミン VS グスタフ
アルミン「やってやる!」
グスタフ「やってみせろ」
アルミン(僕は、見ていることしか出来ないけれど、”見る”ことなら誰にも負けない!)
グスタフ「訓練兵だろうと手加減はしない、悪く思うな!」ブンッ
-
アルミン「……ッ」スッ
ドン
グスタフ「げふっ!?」グラッ
アルミン「ふぅ」
グスタフ「避けた……いやカウンターを狙ったのか?
どういうことだ。とてもそんな身体能力は持っていないと思ったが」
アルミン「まぐれだと思うなら、何度でもどうぞ」
グスタフ「そうさせて貰おうかッ!」タタタッ
-
アルミン(集中!!!!)
アルミン(距離確認!)
アルミン(稼動範囲確認!)
アルミン(予測結果、右フック!)
アルミン(体の移動位置に、蹴りを放つ!)
-
ズンッ
グスタフ「ぐほっ!」
アルミン「……っ、はぁはぁ」
グスタフ「まただ。俺の動く前に避けて、移動する前に攻撃を放っているな!」
アルミン「それが分かったからって、避けられるわけではないですよ」タラー
グスタフ「何をやってるか分からないが、かなり消耗するみたいだな、鼻血が出ているぞ」
アルミン「!?」グイッ
グスタフ「俺より早く動くなら、それが出来ないほどスピードをあげるまでだ!」ダッ
-
アルミン(相手距離確認!稼動範囲確認!呼吸律動確認!右脳回転!想像力発射!)
アルミン(集中力 限界突破!!!)
アルミン(結果、左方からローキック!)タラ-
アルミン(全力でダッシュ! 胃袋を、全体重で、蹴飛ばす!!!!)
バキィ!
グスタフ「ゲボッ!」
アルミン「あぁ……!」
(体重差が有り過ぎた……僕も吹っ飛ばされる……)
ガッ……ズザ……
-
アルミン「げほ……」
(思ってたよりも消耗が酷い。目が霞む。体に力が入らない)
アルミン(グスタフさんは、起き上がれないみたいだ…………。
まだ、立ち上がらなくちゃ。自分で歩いて、ピクシス司令を倒さなきゃ……)
リコ 「あれだけの大口を叩いて、無様にやられる姿を見に来たんだがな」スッ
アルミン「うう……僕は……」
リコ 「見ていたぞ。何だアレは、もしかして『見』のつもりか」
アルミン「力がなくても、才能がなくても……」
リコ 「無茶苦茶だ。経験を全く無視している。
お前のは、情報と計算で割り出した機械的な予測だ」
-
アルミン「……歩くんだ、自分の足で」
リコ 「ただまぁ、誰もやらないことに挑戦した意地と根性は、認めるよ」
アルミン「壁の外を冒険する為に……!」
リコ 「今から、あのハゲ頭ひっぱたいてくるから、少し寝てろ。
うまくいったら、晩飯奢ってやるよ」ワシャワシャ
アルミン「……あれ、リコ班長……何でここに……?」ボー
スペランカー
リコ 「鼻血出した甲斐があったな。お前は今、最弱の冒険家だ」
アルミン(ダメだ……目が霞む、まぶたが重い、リコ班長のあんな幻覚まで見えるなんて……)カクン
-
今日はここまで。おやすみなさい。
-
しえん
-
〜
ライナー「俺も行くぞ!」
ベルトル「"仮面"ライナーの復活だね」
ライナー「いいや、仮面はやめた。前に言ったろ、今は」
ベルトル「今は?」
ライナー
ライナー「今は、"一直線"だ」
カッ!!
-
ライナー「うおおおおおおおおおお!!!!」
アンカ 「真っ直ぐ突っ込んでくるだけなんて、芸の無い!」
ピクシス「手を出すでない、弾き飛ばされるぞ」
アンカ 「しかしピクシス司令!」
ジャン 「よそ見してる場合ですかね!」ガッ
-
ライナー、ジャン VS ピクシス、アンカ
アンカ 「くっ」
ピクシス「ワシが迎え撃つ!」
ライナー「うおおおおお!!!!」
ピクシス「撃ってくれと言わんばかりじゃな」フラー
-
ガッ
ライナー「ぐっ」
ピクシス「くッ」
ベルトル「……どうなったんだ!?」
アンカ 「……え?」
ベルトル「ピクシス司令に………止められてる?」
-
ピクシス(……カウンターで殴り飛ばすつもりだったんじゃがのう。
勢いを殺しただけで、相殺に留まったか)
ライナー「うおおおおおおおお!!!」
ピクシス「ぐっ、押し通るつもりか!?」ジリジリ
ジャン 「そのままだライナー! 動かすなよ!」タッ
アンカ 「何をするつもりか知らないけど、させないわよ!」タッ
-
ジャン 「また肩借りるぜ!」タタッ
ベルトル「え、あ!?」
アンカ 「ノッポを踏み台に!?」
-
〜
数日前 山中
リヴァイ「俺は昔、ここで巨大な熊と野生の狼が戦っているのを見た」
ジャン 「は……?」
リヴァイ「熊は一頭、狼は多数いたが、熊のほうが優勢だった」
ハンジ 「地元じゃ有名な熊だったらしいよ」
-
リヴァイ「だが、狼の中でも一際小さな固体が、飛び上がったかと思うと、
信じられんような動きをして、熊の首をはね飛ばした」
ジャン 「え、はね飛ばしたんですか!?」
ハンジ 「信じられないよねぇ、私も話を何度か聞いたけど未だに眉唾だし」
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リヴァイ「信じるかどうかは手前次第だ。だが、俺はその時見た光景から、
立体機動装置と組み合わせ、巨人をブチ殺す技を思いついた」
ハンジ 「あ、アレがそうなんだ。よくやってるもんね」
リヴァイ「生身でも熊程度なら倒せるはずだ。一度だけ見本を見せてやる」
ジャン 「は、はい! ありがとうございます!」
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〜
ベルトル(ジャンが僕を踏み台に飛び上がった! 駐屯兵団の女の人も追いかけてる!
また天井を蹴って急降下するつもりだ!)
ジャン 「ぜぇええええええっ!!!」
ベルトル(違う!? 蹴った反動で、全身を高速で縦回転させた!?)
アンカ 「……あ、安価! >>253 コンマ1桁が偶数なr」
ジャン 「てぇえええええええ!」ガガッ
アンカ 「キャアア!」
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ピクシス「な、何じゃ!?」
ライナー「うおおおおおおおお!!!」ググッ
ピクシス「し、しもうた!」
ジャン 「とおおおおおおおお!!!!!」ドシュッ
ライナー「うおおおおおおおお!!!」ダダダッ
ズバンッ
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アンカ 「へふっ」ドンッ
ピクシス「がはっ」ズザッ
ベルトル(ジャンを追いかけてた女の人と、ピクシス司令が折り重なって倒れている。二人が、勝ったんだ!)
ピクシス「ぐっ……」
ジャン 「げっ、まだ起きるのかよ」
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ライナー「うおおおおおお!!」ダダダッ
ベルトル(……え?)
ピクシス「……あやつ、弁当しか見ておらんわい」
ベルトル(確かに一直線だね。ライナー……)フフッ
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リコ 「そして貴方は、楽しむことしか見ていなかった」
ジャン 「え!?」
ピクシス「な、ん!?」
バチンッ!!!
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ベルトル(いきなり現れた駐屯兵団の人が、ピクシス司令の頭を思い切り叩いた……)
ピクシス「……がっ!」ガツン
アンカ 「キャッ!」ガツン
ベルトル(叩かれた頭が、玉突きみたいにぶつかり合ってまた倒れる)
ピクシス「」
アンカ 「」
ベルトル(今度はもう、起き上がれないみたいだ)
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〜
ジャン 「ピクシス司令が立ち上がった時は、もうダメかと思ったぜ」
リコ 「お前が未熟だからだ。大技なら一度で決めろ」チッ
ベルトル「それよりも、僕が半額弁当とっちゃって良かったのかな。見てただけなのに」
ライナー「構わないだろう、他に生き残っていた餓狼もいなかったしな。それも戦略だ」
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リコ 「私は戻るぞ。コイツは、私が連れて行くからな」
アルミン「いえ、僕はもう、大丈夫なので」
ジャン 「どうぞ」ビシッ
ライナー「よろしくお願いします」ビシッ
ベルトル「ええっ、いいの!?」
アルミン「その、あの……」ズルズル
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ジャン 「まぁ、悪いようにはされないだろ」
ライナー「前から交流があったようだしな。ジャンも一緒に弁当食わないか?」
ジャン 「悪い、弁当取れたらリヴァイ兵長達に分けるって約束してるんだ」
ライナー「そうか、それならまた今度だ」
ベルトル「僕達も行こうか」
ライナー「ああ、そうだな」
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〜
訓練兵団 食堂
ライナー「これが、温泉豚の肉そぼろ ちらし寿司か」
ベルトル「甘い香りだね」
ライナー「では、頂きます」
ベルトル「いただきます」
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パクッ
ライナー(優しい甘みだ。酢が入っているが、全然キツくないな)モグモグ
ライナー(米も普通のより少し固い。時間が経っているからというより、元々固く炊いてあるんだろう)
ベルトル「美味しいね、お米に玄米を使っている」モグモグ
ライナー「そうか、これは玄米か」
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ライナー(パラパラとした米の一粒一粒に、酢がしっかりと絡んでいる)モグモグ
ライナー(口の中に酸味が広がる。唾液が、止まらん)
ライナー(さやインゲンに、肉そぼろ、卵と紅生姜。見た目も鮮やかで楽しませてくれる)
ライナー(さやインゲンは軽く塩茹でしてあるな。青臭くないし、歯ごたえも残ってる)ポリポリ
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ライナー(固めの米に合わせたのか、甘く濃い味の豚肉そぼろも美味い。
噛み締める度に肉汁が染み出すようだ)モグモグ
ライナー(紅生姜の強めの酸味が、口の中をサッパリとさせてくれる)
ライナー(そして、煮卵だ)パクッ
ライナー(ふぉおおおおおう!)
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ライナー(すごいな! タレが黄身まで十分に染みこんでいる!)
ライナー(豚肉そぼろの濃い味にも負けないくらいだ!)モグモグ
ライナー(黄身だけが半熟になっていて、トロリとした食感が舌を包み込む)
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ライナー(このチラシズシというのは、恐らく出来立てよりも
少し時間が経ってからのほうが味がしみこんで美味いな)
ライナー(彩りも鮮やかだ。肉そぼろにさやインゲン、ニンジン、しいたけ、タケノコ、そのほか色々)
ライナー(ん? これは何だ。黄色いが、卵ではなさそうだな)パクッ
カリッ
ライナー「ふぉっ!?」
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ベルトル「どうしたの?」
ライナー「これは、揚げ玉か!」
ライナー(やられたぜ! 柔らかく煮込まれた具の中で、さやインゲンとは違う歯ごたえだ!
油の強い風味だが、不思議と酢飯に良く合う!)カリカリ
ベルトル(どうしよう、またライナーがわけの分からないことを言い出した……)
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ライナー「そんな顔するなよ、お前のにも入ってるはずだ。食ってみろ」
ベルトル「何だ、お弁当の話か。驚いたよ……ふぁ!?」
ライナー「また驚いたな」フフフ
ベルトル「これは、びっくりするね」カリカリ
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ライナー「ただの揚げ玉じゃないな」
ベルトル「うん、ピリっとくる辛味と、強い香りがする」
ライナー「七味のようだが、独特の香りだな。鮮烈なのにどこか華やかだ」
ベルトル「山椒かな? 突き抜けてふわっ広がる辛味だね」
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ライナー(バランスをとるようにふんわりと甘めの酢飯)モグモグ
ライナー(ぎゅっと噛み締める歯ごたえ、酢の酸味が広がる)
ライナー(煮込んであるニンジン、椎茸の風味、タケノコの食感)
ライナー(これだけの具が入っているのに、全ての具がお互いを高めあっている)
ライナー(決してバラバラにならない、一つになってもいない、それぞれが個でありながら調和を実現している!)
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ライナー「ふぅ、ごちそうさま」
ベルトル「ごちそうさまでした」
ライナー「美味かった」
ベルトル「そうだね」
ライナー「なあ、ベルトルト。俺はチラシズシになりたい」
ベルトル(どうしよう、ライナーがおかしくなった……)
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ライナー「いや、だからそんな顔をするな。将来の夢の話じゃない。
これだけの具を内包しながら、崩れることの無い味を適えているだろう」
ベルトル「ああ、そういう比喩の話か。
ライナーの話は、たまに言うことが冗談とも本気ともつかないからね」
ライナー「全てを、叶えたい。戦士も兵士も餓狼も」
ベルトル「君なら出来るさ。
故郷に帰るのが第一だけれど、そのくらいなら欲張ってもいいよ」
ライナー「あと、クリスタと結婚したい」
ベルトル「それは欲張りすぎだね」
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ジャン・キルシュタイン
調査兵団詰め所に行くが、3人に弁当を8割方食べられて涙目になる。
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アルミン・アルレルト
駐屯兵団まで引きずられて行く。
お酢にもバストアップ効果がある話をしたところ、リコ班長の目の色が変わる。
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ドット・ピクシス
酒を買って帰り、駐屯兵団本部でアルミンとリコの間に割り込んで酒盛りを始める。
ちらし寿司を横から摘んだら、リコに凄い嫌そうな顔で見られたが、男らしく無視。
これにはグスタフとアンカも苦笑い。
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ベルトルト・フーバー
これからも暫くは同郷の友人に振り回されそうである。
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ライナー・ブラウン
自分の中に息づく多数の虫がいる。
ひとつの餌に向かっている時は良いが、コイツらはバラバラに動き回る。
そうすると、もう支離滅裂としか言い様の無い状態になる。
全てを受け入れて自分のものにすることは、とても難しい。
中途半端な糞野郎には、なりたくないと思う。
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(おわり)
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乙。
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乙
お腹減った
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遂に完結したか。乙。
シリーズ続編も期待してる。
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乙。
ちらし寿司作ってくる
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乙!
このシリーズ大好きだ
次回作も期待してます!
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