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ξ゚( ^ω^)幽霊裁判が開廷するようです
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ξ゚⊿゚)ξ「タイトルが背後霊みたいになってんだけど」
( ^ω^)「携帯からだとツンさんの口が文字化けするんで……」
のっそり投下
過去の話は
Boon Romanさん http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/gh_judge.html
RESTさん http://boonrest.web.fc2.com/genkou/yuurei/0.htm
前スレ http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1393490590/
最終話前編、前スレ>>928から
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ツンちゃんwww
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こっから、前スレ>>993からの続きです
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2月15日。
ヴィップ中学校、2年1組の教室は朝から騒がしかった。
「はい静かにー」
担任教師がやって来て、教壇の前に立つ。
生徒達の目は輝いていた。何かを心待ちにする瞳。
担任は苦笑し頷いた。
「話はもう伝わってるな。──えー、転校生が来ている。
なにぶん急なことで、こんな半端な時期のため、このクラスでは一ヶ月程度の付き合いになるが──」
( ・∀・)「せんせー、話長いと転校生のプレッシャー半端ないぜ!」
「モララーうるさい」
どっとクラスメート達の笑い声があがった。
教室内の緊張感が解け、一気に和む。
それを良きタイミングと見たようで、担任は前置きもそこそこに、
教室の入口を見遣ると「おいで」と声をかけた。
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( ^ω^)(さて、どんなタイプの子か……)
戸が引かれ、転校生が入ってくる。
転校生の性格、振る舞いを見てから自分の出方を決めようと注目していた内藤は──
担任の隣で立ち止まった彼の顔を認識した瞬間、胸の奥が凍りつくような感覚に襲われた。
( ^Д^)
そこらにいるような、至って普通の少年。
担任から渡されたチョークを持ち、転校生は黒板に自身の名を記した。
「指差プギャー」。
その名前に、内藤の心臓が跳ねる。
嘘だ。嘘だ。何で。何で。どうして。
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( ^Д^)「K県のウンエイ中学から来ました、指差プギャーです! よろしくお願いします」
当たり障りのない自己紹介。
声や表情は明るく、皆も受け入れるのに何の抵抗もなかったようで、
口々に「よろしく」「ようこそ」なんて歓迎の言葉を送った。
内藤の目の前で、モララーの背中が揺れた。
ああ、気付いた。
頼む。何も言うな。何も──
( ・∀・)「K県っていやあさ、」
モララーの声はよく通る。クラスメートが口を閉じ、こちらを見た。
椅子の背凭れに腕を乗せ、モララーが内藤へ振り返る。
( ・∀・)「ブーンが前に住んでたとこだよな!」
そう言う彼の顔は、ちょっとした発見をしたときのような、無邪気なもので。
当然、悪意など無い。──あろう筈もない。
この教室にいる誰1人、「それ」を知らないのだから。
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プギャーが内藤に気付く。
目を見開いた彼は、まじまじと内藤を眺め回し、
──いかにも楽しそうに笑った。
( ^Д^)「よおブーン! マジかよ、すげえ奇遇!
覚えてるか? 小学校でクラス一緒だったよな!」
忘れるわけがないではないか。
手を振るプギャーの笑顔は、かつて、内藤を苛めていたときのものと何ら変わりがなかった。
*****
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放課後。
早速ツンと共に「素直キュート」の捜索に乗り出した内藤は、
素直家──シュールではなく、ヒールとクールの方──へ赴いた。
応対に出たヒールにリビングへ案内され、
テーブルについたツンが早速キュートの件を切り出した。
川*` ゥ´)「──キューちゃんの行きそうなとこ?」
約3ヶ月ぶりの対面である。
ヒールは自身が作ったというカップケーキを手に取り、首を傾げた。
内藤も一つ頂く。相変わらず料理が上手い。
川*` ゥ´)「何で私に訊くのさ。シューちゃんに訊いた方が確実だろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「シュールさんに思いつける場所は、とっくに彼女が探してるでしょう。
だから彼女が思いつかないような場所はないかしらということで」
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川*` ゥ´)「んー……なるほどね。でも、ごめん。分かんない。
遊ぶときは大体家の中だったから」
( ^ω^)「全く思い浮かびませんかお?」
川*` ゥ´)「うん。ごめん……」
ヒールが申し訳なさそうに視線を下げる。
以前ほど、きつい印象は強くない。
このタイミングで「カップケーキ超うめえ」と頓狂な感想を放ったツンは果たして、
落ち込むヒールを気遣ったのか、単に脈絡を無視してまで現在の心境をアホ面で発表したかっただけなのか。
川*` ゥ´)「……役に立たない私が言うのも何だけどさ、キューちゃんのこと、早く見付けてあげて。
シューちゃんがすごく心配しててさ。気の毒なんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。任せて」
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川*` ゥ´)「キューちゃん、本当にいい子ですごく可愛いんだよ。
だからシューちゃんもかなり可愛がってて……その分ショックもデカいんだろうね」
£°ゞ°)「私とどちらが可愛いんです」
川*` ゥ´)「お前のどこに可愛さがあるんだよ……」
少し離れたソファに座ってテレビを見ていたロミスが、
相変わらずおっとりとした笑みを浮かべてヒールへ声をかけた。
先程、顔を合わせるなりツンの手を取って馴れ馴れしい挨拶をかましたので、ヒールにソファへ追いやられたのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ロミスさん、洋服似合ってるわよ」
出し抜けに、カップケーキを貪りながらツンが言った。
セーターにチノパン姿というロミスは、「ありがとうございます」とはにかむ。
11月の時点では和服しか着ていなかった彼だが、たしかに洋装が似合う。
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£°ゞ°)「お義父様が、ピャー子さんと夫婦で居続けるのなら、現代人らしい暮らしも学んでほしいと……」
川*` ゥ´)「父さんの建設会社で事務やってんだ今。人間として。
妖怪が事務仕事って、変な話だろ」
ξ゚ー゚)ξ「妖怪が人間社会に混ざるのはよくあることだわ。
異類婚姻のパターンは色々あるけど、ロミスさんとピャー子さんの場合なら
そうやってロミスさんが人間側に適応する方が向いてるでしょうね」
£°ゞ°)「私も楽しいです」
ξ゚⊿゚)ξ「ご夫婦仲良く幸せそうで何より」
ココアを飲んでいたヒールが噎せる。
その様子に、ロミスはますます笑みを深くした。にやけた、とも言う。
£°ゞ°)「ええ、昨日ピャー子さんがチョコレートを……」
川;*` ゥ´)「おいコラ! 言わんでいい!!」
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ξ゚⊿゚)ξ「ピャー子さんは相変わらず照れ屋ねえ」
£°ゞ°)「そこが可愛いでしょう。
このあいだ一緒にお出掛けしたときにですね、手を繋ごうとしたら断られたんですが、
私の服の袖をつまんでですね……」
そこが限界だった。
悲鳴とも唸りともつかぬ声をあげ、ヒールがテーブルの下に隠れる。
::川;*//ゥ//)::「もう二度とお前と出掛けない」
£°ゞ°)「それは困る」
ξ゚⊿゚)ξ「私そういう惚気話まで聞きたかったわけじゃないんだけど」
川;*` ゥ´)「じゃあロミスに話振らないでくれ!
……。……な、内藤、なんか今日おとなしいな」
ξ゚⊿゚)ξ「あらピャー子さんもそう思う?」
ツンの足元で真っ赤な耳を弄ばれながら、ヒールが涙目で内藤を見上げた。
返答に悩んだので、ケーキを飲み込んでから
わざとらしく首を傾げてみせた。
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( ^ω^)「僕はいつも大人しいですが」
ξ゚⊿゚)ξ「何の嫌味もからかいも無いなんて珍しいわ」
( ^ω^)「僕を何だと思ってんですかお。──少し怠いだけですお」
テーブルの下から這い出たヒールが、内藤の額に左手を当てる。
薬指に巻きついている薄紫のヘアゴムが、額を擽った。
川*` ゥ´)「風邪とか? 大丈夫か? ちょっと熱っぽいかもな」
£°ゞ°)「ああ、それは良くない。お話も終わったようだし、今日はお帰りになった方がいい」
心持ち声を張って、ロミスが微笑んだ。
ツンやヒールに向けるそれとは別種に感じられる笑みだった。
はっきり言ってしまうと、ちょっと恐い。その意図が分からぬほど鈍くはない。
( ^ω^)「恨みとか買いたくないんで、そうしますかお」
ξ゚⊿゚)ξ「……古今東西、蛇は嫉妬のモチーフにもなるからねえ……。
自分のものと定めたからには嫉妬深いわよー、ピャー子さん頑張ってね。
そのぶん大事にしてくれるけどさ」
川;*//ゥ//) ワカッタカラカエッテクダサイ
*****
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ξ゚ -゚)ξ「──内藤君、本当に今日何かあった?」
事務所、もといツンの家の前。
カップケーキの入った紙袋を片手に提げたツンが、内藤の顔を覗き込んだ。
先のヒールのように、手のひらを額に当ててくる。
ξ゚⊿゚)ξ「うーん、熱があるような、ないような」
( ^ω^)「ツンさんの手が冷たいんですお。
……今日、……。転校生が来ましたお」
ξ゚⊿゚)ξ「転校生? 内藤君のクラスに?」
( ^ω^)「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして喧嘩とかした?」
( ^ω^)「いえ。──やっぱり何でもないですお。何でも……」
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ロミスの嫉妬かわいい
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『──明日暇な奴らでプギャーに町の案内してやろうぜ』
昼休みに、男子生徒の1人が提案した。
プギャーは明るく元気で、冗談もよく言う少年だったのですぐにクラスに馴染んだ。
どことなく垢抜けた雰囲気が人を引き付けたのもあったかもしれない。
( ・∀・)『おー、行く行く!』
(-_-)『僕は家族と出掛けるから……ブーンはどうするの? プギャー君と友達なんでしょ?』
( ^ω^)『友達っていうか……遠慮しとくお、僕も用事あって』
内藤が断ると、何人かから残念そうな声があがった。
様子を窺うようなプギャーの目や仕草が、逐一内藤を刺激する。
-
『最近ブーンと遊んでないから連れていきたかったのになあ』
(;^ω^)『ごめんおー。今度ゲームでもしようお、モララーの家で』
( ・∀・)『勝手に俺んちに予定入れんなよ。弟者は?』
(´<_` )『俺もやめとく』
クラスメートと笑い合い、明るく会話を交わす。
そんな内藤をプギャーはどんな目で見ているのか。
あまり視線を飛ばしては不審がられる。プギャーの表情を頻繁に確認できない。
( ^Д^)『ブーン、人気者なんだ?』
( ^ω^)『、』
咄嗟に返事が出来なかった。
どういう意図での質問なのか分からない。
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『ムードメーカーっつうか、マスコット?』
『マスコットって』
( ^Д^)『ふうん……』
プギャーが腰を屈め、内藤の顔を覗き込む。
笑顔を返す。いつも通り。皆に好かれる表情。いつも通り。いつも通り。
彼は何を言うでもなく、「よろしくな」と内藤の肩を叩いて、明日の打ち合わせに戻った。
結局、8人ほどの男女で町案内をすることになったようだ。
──どう関わればいい。
過去のことをどう扱えばいい。
下手に触れれば逆効果か。
向こうの出方を待つべきか。
彼は転校してきたばかり。
対して内藤は上手く味方を作り今の立ち位置を手に入れている。
いっそ──いっそ先手を打ちプギャーを排除するように働きかければ──不可能ではない、その気になれば容易に──しかし──
そんなもの。愚策だ。
罪悪感云々の問題ではなく、相手を下手に刺激したくない。
互いに何もしないで済むのならそれが一番いい。
反省も謝罪もいらない。
この日常を奪わないでくれるならそれでいい。
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ξ゚⊿゚)ξ「──なーいとーうくーん」
( ^ω^)「……あ、はい」
ξ゚⊿゚)ξ「ずっと同じ場所に掃除機かけても意味ないわよ」
どうにも意識がふわふわしていけない。
昼からずっと同じ思考が回っている。
明日、内藤のいないところでプギャーが余計なことを言うのではないか、という不安。
内藤は頭を振り、掃除機のスイッチを切った。
茶を淹れてくれと言われたのでポットの前へ移動する。
電源が切れていたため、コードを差し直して沸騰のボタンを押した。
事務所に戻ってきてから、かれこれ30分。
何をしても集中できない。茶を淹れ終えたら帰ろうか。
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('A`)「悩みでもあんのか? 若いな少年」
ドクオ(ついさっき来た)の揶揄を無視して、湯が沸くのを待つ。
その発言に、「あらあら恋の悩み?」と馬鹿が食い付いた。
ξ*゚⊿゚)ξ「駄目よ内藤君、私がいくら美しくて優しくてセクシーだからって!」
('A`)「俺と弁護士で『セクシー』の定義が違うらしいな……」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、『色っぽい』という言い方のほうが情緒的で私にぴったりかしら」
('A`)「あのな、貧相な体つきなのはもう諦めるとして、せめて仕草とか振る舞いに色気を出す努力をしろ。
──何か分かったことあるか?」
最後の問いは、これまでの話題とは別のこと。
ニュッから送られてきた日記と手帳のコピーを見ているツンに対してだ。
ドクオがいる場では見ない方がいいのでは、と内藤は思うのだけれど、
当のドクオが「自分も気になるから」という理由で、この作業を勧めていた。
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ξ゚⊿゚)ξ「んーとね……赤ペンとかで、文に線が引いてあったり矢印が書いてあったりするんだけど……
それが、どう関係してるのかは書いてないのよね」
('A`)「親切なんだか不親切なんだか分かんねえなあ、あの検事」
( ^ω^)「鵜束検事に電話で訊いてみたらどうですかお」
ξ゚⊿゚)ξ「訊いて素直に教えてくれると思う?」
('A`)「訊いてきた時点で、あんたの負けだと見なすだろうな……。
そしたら教えてくれんじゃねえの、すっげえ上から目線で」
ξ#゚⊿゚)ξ「くっそ想像つく! 誰が訊くか畜生!」
想像の中のニュッに腹を立てながら、ツンは次のコピーの束へ手を伸ばした。
気になることがもう一つある、と言って。
ξ゚⊿゚)ξ「……日記の方、所々が抜けてるのよね。
たとえばこれ、平成5年の8月分はごっそり無いし」
( ^ω^)「手帳の方はあるんですかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
同時期の手帳の方を見ると、鬱田家に関わりある記述は
「8/12 鬱田さん食事」「8/29 鬱田さん訪問」の2件のみだという。
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('A`)「その時期は、高崎があんまりうちに来なくて平和だった覚えがあるな。
恐らく日記も大したこと書いてねえだろうし、
特に触れなくていい部分は省いてくれたんじゃねえか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、たしかに不要な部分までいちいちコピー取ってらんないものね、何ページも……」
と、いうことは。
少々面倒な事実に直面してしまうのではないか。
内藤が指摘するより早く、ツンも思い至ったらしい。頭を抱えて叫ぶ。
ξ;゚⊿゚)ξ「……じゃあ、ここにあるやつは全部触れるべき点があるってこと!?
何それ無理!!」
(;'A`)「うわー、何百枚あるんだ」
端から見ているだけの内藤まで気が遠くなる。
一つの束を取り、斜め読みをしてみた。
ニュッは、これらの文字の山から、何を見付けたのだろう。
高崎美和は善人らしい振る舞いをしながら、しっかりと金を巻き上げている。
ドクオの母は高崎美和を信じ崇拝し、
ドクオは反発を露にして母親と対立してしまい、家庭内の空気がどんどん悪くなっていく。
内藤に読み取れるのは、そういったものばかりで。
気が滅入る。
ポットが甲高いメロディを奏で、沸騰を知らせる。
内藤は束を戻し、茶の準備をした。
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──突然。
こつこつ、窓を叩く音。
室内の3人が一斉に窓を見る。
(*'A`)「ふおっ」
まずはドクオが感嘆の声をあげる。
暗くなってきた窓の外、そこに女性が立っていた。
ハハ ロ -ロ)ハ
ツンが、顔を引き攣らせた。
*****
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( <●><●>)「──あれっ」
大学から帰るなり、ワカッテマスは目を丸くした。
彼の部屋の同居人は2人。──その内1人は先住民、と言った方が適切か。
弟ビロードと、先住民の「ぽぽちゃん」。
なのだが、1人増えていた。
(;><)「あっ」
ビロードが慌てたように、その「新顔」の前に立つ。
隠したところで、既にばっちり目撃してしまったので意味など無いのに。
( <●><●>)「誰です、その子」
(;><)「あうあう、一ヶ月くらい前から、たまにここに来て遊んでたんです……。
ごめんなさいなんです」
(*‘ω‘ *)"
日が落ち始めているので、ワカッテマスにもぽぽちゃんは半透明ながら視認できる。
新顔もそんな感じなので、ぽぽちゃん同様、幽霊の類なのであろう。
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( <●><●>)「別に友達と遊ぶくらいで怒りはしませんよ、幽霊なら大して邪魔にもならないし。
──バイトの時間まで少し眠るので、うるさくしない程度に遊んでくださいね」
( ><)「はーい」
(*‘ω‘ *) ポポッ
コートを壁に掛ける。
携帯電話でアラームの設定をしていると、その「新顔」が近寄ってきた。
o川*゚ー゚)o「あの……お邪魔してます! 少し遊んだら外に行くから──」
( <●><●>)「どうぞお好きに。落ち着きのない男子高校生と無口な和服女性で遊び相手になるのなら」
小学生か、あるいは中学生か。
可愛らしい少女だった。
*****
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ハハ ロ -ロ)ハ「ハローと申しマス」
ソファに座った客人は、ぺこりと頭を下げた。
(*'∀`)「ほおー……ほうほう……へええ〜」
上下左右からじっくり観察しながらドクオが唸る。
ハローと対面する位置に腰掛けたツンは、何とも言えぬ表情で目を逸らしていた。
(*'∀`)「イイ! 『セクシー』とか『色っぽい』ってのは、こういう人にこそ相応しい! なあ少年!」
( ^ω^)「はあ」
進んで同意したいわけでもないので、茶を淹れながら、内藤は適当に返した。
タートルネック、デニム、ロングブーツ──と露出は低いのだが、
衣類越しでも肉感的な曲線は伝わってくる。
声も高過ぎず大人っぽさがあり、とろりと甘い。
だが、おばけだ。
-
ツンとハローの前にティーカップを置く。
菓子も出すべきかツンに訊ねると、彼女は首を横に振った。
ハハ ロ -ロ)ハ「お茶請けくれないンですカ、センセイ」
ξ゚⊿゚)ξ「いるの?」
いいえ。ハローが答え、笑う。
奇妙な喋り方。何かが頭を過ぎった。深く考えるのを本能で拒否する。
(*'∀`)「そんで、ハローさんは何のお話で?」
ハハ ロ -ロ)ハ「エット……」
ξ-⊿-)ξ「──その前に」
話し出そうとしたハローを、ツンが遮る。
ハローは心持ち楽しそうな表情を浮かべた。
強烈な既視感。
ツンの困る様子を喜ぶ姿を、どこかで見たような。
そもそも先程からずっと、「どこかで見た」という感想が消えない。服装も、奇妙な口調も──
-
ξ゚⊿゚)ξ「その格好やめなさいよ、アサピー。
私それ嫌いだわ」
( ^ω^)「……は?」('A`)
.
-
(-@∀@)「──センセイ、ネタバラシが早いですよ。これじゃツマラナイ」
どこからか取り出した白衣を羽織った瞬間、ハローはハローでなくなっていた。
胸が引っ込み、声は低くなり、眼鏡も瓶底眼鏡になり──
つまりはアサピーになった。
(;A;) ウッウッウッ
( ^ω^)(哀れな……)
打ちのめされているドクオを慰めつつ、内藤はソファで相対するツンとアサピーへ振り返った。
ハローを見たとき、既視感がいくつもあった。
服装はアサピーのそれだった。
ただ、髪や肌、顔つきは──いま思えば、ツンに雰囲気が似ていたのだ。
似ていた、というより、似せていた、ということだろうけど。
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(;A;)「何かの間違いだ……きっと呪術師の野郎が俺らをからかうためにハローさんと協力して……」
(-@∀@)「『ハロー』は僕が仕事する上で、女の方が都合が良さそうなときに取る姿デス。僕デス」
ドクオの嗚咽が激しくなる。
自分も些か驚かされたのが癪で、内藤は意趣返しの方法を探った。
( ^ω^)「そういえば、この前はありがとうございました。姉者さんを手伝ってくれたようで」
(;*-@∀@)「アッ、やだなあ僕の性格知っててソーイウこと言う!」キャーッ
ξ;-⊿-)ξ「……で。何でわざわざ女の格好で来たわけ?
いちいち姿変えるのも疲れるんでしょう?」
(-@∀@)「ハイハイ、イヤー、実はホストクラブに行く用があったノデ、
お客として行ったンです。ハローの姿でネ」
(;A;)「だからって、ここにまで『ハロー』で来る必要はどこに……」
(-@∀@)「センセイはハローとしての僕がお嫌いなようなので、是非とも嫌そうな顔をしてほしくて」
ξ゚⊿゚)ξ「別に通常時のあんたも充分嫌いなんだけど」
(-@∀@)「アアもうソレですよ僕ァ感謝の言葉よりセンセイのその一言が欲しい」
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( ^ω^)「いや、ていうか、あの、アサピーさんホストクラブに……?」
(-@∀@)「依頼がありました。素行のよろしくナイ人気ナンバーワンのホストさんに罰を当ててほしいと。
色男は色道に精通するゆえ色ーんな恨みを買いますモンで」
通報しようかと言うツンを宥めすかし、アサピーはポケットから小さな紙を一枚取り出した。
テーブルの上に置かれたそれを、ツンが警戒しながら持ち上げる。
ξ゚⊿゚)ξ「『ワカッテマス』……?」
(-@∀@)「ホストの1人です。あ、その人はターゲットじゃありません。
ターゲットの情報を集めるタメに、彼と話しましてネ」
喉が渇き、内藤は自分のぶんの紅茶を用意した。
角砂糖を入れ、ティースプーンをぐるりと回す。
(-@∀@)「それでー……雑談の流れで、ワカッテマスサンのことも色々聞いたンですケド。
彼。野良猫のね、世話してるんデスッテ」
ξ゚⊿゚)ξ「……野良猫?」
猫──と聞き、内藤の頭に浮かぶものがあった。
三森ミセリの憑依事件、「真犯人」。
その犯人らしき猫の名前を、ツンから聞いたことがあった。
そういえば、あのときも素直家から帰った後に聞かされたのだったか。
-
( ^ω^)(何て名前だったっけ……)
事務机の上からパンフレットを取る。
G県のラウン寺という寺の案内、解説が載っているものだ。
たしか、これの最後のページに、寺で飼われている猫の名が。
∧ ∧
( ФωФ)
さぞ可愛がられているのだろう、丸々とした猫の写真。
茶色く長めの毛並み。ふてぶてしい顔つき。
-
(-@∀@)「仕事帰り──マァ真夜中ですな、自宅の近くに現れるんだそうで。
茶色でふさふさして、チョット太めで。
尻尾が2つあるそうデス」
ξ゚⊿゚)ξ「……猫又かしら」
(-@∀@)「デスネ、恐らく。
しかも喋るんデスッテ! 名前も名乗ったトカ」
ξ゚⊿゚)ξ「! なんて?」
写真の横に、その猫の「経歴」が書かれている。
いつの間にか境内に住み着き、住職が名前を付けて可愛がるようになったそうだ。
名前は「ロマネスク」──
-
(-@∀@)「エエト、ワカッテマスサンいわく、『ロマ』──なんとか」
内藤は口に含んだ紅茶を吹き出した。
驚きの他に、思いのほか紅茶が熱かったので。
話に加わろうとソファに近付いていたのが災いし、ツンの顔面に思いきりかかってしまったが
それはまあ大した問題ではなかろう。
ξ;゚⊿゚)ξ「ぉあ゙熱ッッッづあ゙!!!!!」
( ^ω^)「あ、すみません。ごめんなさい」
ごろごろ床を転げ回り、最終的に何故かブリッジの体勢をとったツンが「ごめんで済むか」と怒鳴る。
アサピーの方もソファに倒れ込み、ひいひい笑いすぎて動けなくなっていた。
(;'A`)「ロマなんとかって、その──例の『化け猫』の名前だっけか? ラウン寺で飼われてたっていう」
( ^ω^)「多分……まだ、その猫が化け猫だと決まったわけでもない筈ですが。
でも、充分に怪しいですお」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ああもう……お風呂入る。アサピー、手短に話して」
(-@∀@)「僕ァその化け猫云々については詳しく知らないんデスガ、
とりあえずセンセイや警察が猫を追ってるのは聞いてたんでネ」
ξ゚⊿゚)ξ「それを教えに来てくれたってわけね。ありがとう」
(-@∀@)「や、先に警察の方に通報しました。
早ければ、昨夜にはもう逮捕したんじゃナイですかネー。
センセイがいきなり聞かされてびっくりして死んじゃわないように、こうして話しに来た次第デス」
ξ ⊿ )ξ
ツンがびっくりして死んだ。
正確に言うと白目をむいて固まった。
-
(;'A`)「マジか!? そういや朝方、おばけ達がちょっと騒がしかったが……」
( ^ω^)「ツンさんには連絡とか来てないんですかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ま、まだ……」
(-@∀@)「それ、僕がこっそり調べて手に入れたワカッテマスサンの住所です。
彼に話を聞きたいときにでもご活用クダサイ」
先程渡されたメモ紙を見下ろし、ツンは「ファイルに挟んでおいて」と内藤へ手渡した。
言われた通りにしながら、ふと、血まみれの女幽霊の顔が思い浮かべた。
( ^ω^)(トソンさんにも話さないと)
このときを誰よりも待ち望んでいたのは、都村トソンその人だ。
まさか泣くほどではなかろうが、大層喜ぶのは間違いないだろう。
*****
-
( ´_ゝ`)「お前モテるんだなあ」
流石家、台所。
味噌汁を作っていた流石兄者が、キャベツを切る内藤に言う。
姉者が仕事で遅いため、じゃんけんの結果、今日は2人で簡単なメニューを作ることになったのだ。
( ^ω^)「だから、あれ全部義理ですって」
(#´_ゝ`)「女から好かれる云々じゃなく、人気者って意味でだ!
義理すら貰えない男の気持ちがお前に分かるか!」
昨日からずっとこれだ。
姉と妹からのチョコレート(それすら、内藤と兄者弟者の3人で分け合えと渡されたものだ)以外に
誰からも貰えなかった兄者にとって、内藤が持ち帰った十数個の菓子類は衝撃的だったらしい。
-
( ´_ゝ`)「ったく、充実した学園生活のようで羨ましい限りだ」
( ^ω^)「充実……してますかねえ」
充実しているのだろう。それは間違いなかった。
演技し続けるのも初めは大変だったが、今では、そうすることが自然になっている。
そのおかげで対人関係には然程困らなかった。輪に入れるのは楽しい。
だが──
( ´_ゝ`)「お、なんだ、何かあったか?」
( ^ω^)「別に。──僕なりに努力して手に入れた地位なので、
兄者さんも今から頑張ってみたらどうですかお」
( ´_ゝ`)「中学生に言われると心が激しく痛む」
ざく、ざく、とん。
包丁がキャベツを刻み、まな板に勢いよくぶつかった。
駄目だ。すぐにプギャーのことが思考を染める。
明日への不安と、過去の記憶と。
-
( ^Д^)『──お前がおばけだから、おばけが見えるんだろ』
明るい。活発。冗談もよく言う。
プギャーには仲間が多かった。
( ^Д^)『ブーンは化け物だぞ! 近付いたら祟られるぞー!』
彼がそう言えば、みんな信じた。
いや、信じたわけでもないかもしれない。
発言力のある彼の言葉だから、内藤を虐げるのには丁度よくて、迎合しただけかもしれない。
( ^Д^)『ブーンのせいで、うちの父ちゃん怪我したんだぜ!
みんなも祟られてるぞ! ──化け物を殺さないと祟りは消えないんだってよ!』
近付けば祟られる、と言っておきながら、祟りが恐いなら殺さなければならない──なんて。
子供らしい理屈で、馬鹿らしくて堪らない。
そもそも理屈などどうでもいいのだ。
自分たちの行いを正当化できれば。
殴って、蹴って、嘲笑って、それを多数と共有できる理由さえあれば良かったのだ。
.
-
( ´_ゝ`)「ブーン、キャベツそれくらいでいいぞ。残りは明日に回すから」
我に返る。
刻んだキャベツをボウルに移し、残った分は冷蔵庫にしまった。
( ^ω^)「豚肉は全部使っていいんですかお?」
( ´_ゝ`)「おう、賞味期限今日だし。全部やっちゃおう」
豚肉のパックを開ける内藤をしばし見つめてから、兄者は鍋に向き直った。
( ´_ゝ`)「明日用事あるか? ないなら、弟者も連れてドライブでも行くか」
( ^ω^)「ごめんなさいお、明日はちょっと」
(;´_ゝ`)「まさかデート!?」
( ^ω^)「いや、例のバイトというかお手伝いというか」
( ´_ゝ`)「あー。出連さんか。まさか姉者があの人と仲良くなれるとは思わなかったよなあ。
じゃあドライブは弟者と妹者連れてくかな」
明日の町案内に、弟者は参加しないらしい。
内藤が苛められていた事実を彼は知っているし、その原因が霊感にあったこともN県の裁判で聞かれている。
もしかしたら、弟者は既に何か察しているかもしれない。
──兄者が再びチョコレートの話題で絡んできたので、今度こそ、そちらへ意識を集中させた。
*****
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翌日、2月16日。土曜日。
ξ゚∀゚)ξ「──ああら検事さーん。連絡がちょーっと遅いんじゃありませんことお?」
(*゚ー゚)「向こうが何も言わないもんでね。弁護士を呼ぶかと訊いてもだんまりで」
(;,´Д`)「ぜーんぜん口開かないの。疲れちゃった」
カンオケ神社を訪れた内藤とツンは、参道でいつものコンビに出くわした。
2人とも疲れきっている様子で、声に元気がない。
しぃがツンの胸元を手の甲で軽く叩き、さっさと歩き去ろうとする。
(*゚ー゚)「諸々の書類は裁判長に預けてます。目を通しておいてください」
(,,゚Д゚)「あんた、今回は骨が折れるかもよ。頑張ってね」
ξ゚⊿゚)ξ「安心して、毎回複雑骨折してる気分だから」
(*゚ー゚)「敵を応援するなギコ。行くぞ」
( ^ω^)「さようなら」
どうやら、向こうも一筋縄ではいかないようだ。
まあ、そうそう簡単に事が収束するはずもあるまい。
去っていく大小の背を見送って、ツンは禰宜の八ノ字ショボンへ声をかけてから拝殿へ上がった。
拝殿の中にも、先程とはまた別の、いつもの2人組。
-
【+ 】ゞ゚)「お。来たか」
川 ゚ 々゚)「こんにちはー」
胡座をかいているオサムと、彼の膝に座るくるう。
彼らの脇に文机が置かれており、そこに分厚いファイルが数冊乗せられていた。
ツンが顔を引き攣らせる。
例の日記や手帳のコピーより量が多そうだ。
【+ 】ゞ゚)「ああ、これ、検事達が置いていった。弁護人に渡せと」
ξ;゚⊿゚)ξ「……このファイル全部、目を通さないと駄目でしょうか」
【+ 】ゞ゚)「何せ数年分の事件が関わってるからな。
どうする、先に会っとくか?」
オサムが、一枚の札を揺らした。
拘束札。凶悪犯などを閉じ込めておくための札である。
この中に──あの猫が。ロマネスクが。
ツンは顔を引き締め、「是非」と答えた。
-
どことなく、内藤の現実感は遠い。
逮捕、起訴。去年の夏から気にかけていた事件が
あまりにもあっさり進展していて、まだいまいち追い付けていない。
オサムが拘束札を軽く振る。
すると、1人の男が現れた。
札から伸びる幾多の白い糸が全身に絡みついている。
過去に、ドクオが同じような格好になっていたのを見たことがある。
「ああ、本当に捕まったのだな」。今更ながら、まずはその事実がようやく胸に落ちた。
( ФωФ)
小太りの、猫目の男。
間違いなく、11月に見た男と同一であった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ロマネスクさんね」
( ФωФ)「……」
男──ロマネスクは黙っている。
ツンと内藤を睨んだまま。
【+ 】ゞ゚)「それじゃあ俺とくるうは席を外すから……何かあれば、本殿に」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
川 ゚ 々゚)「またね」
( ^ω^)「はあ」
オサム達が拝殿を出ていく。
残された内藤、ツン、ロマネスクの3人は、しばし口を開かなかった。
-
ξ-⊿-)ξ「……」
ひとまずツンがコートを脱ぐ。
文机をロマネスクの前に移動させると、自身も文机の前に正座し、彼と向かい合った。
内藤はとりあえずツンの斜め後ろに。
ξ゚⊿゚)ξ「弁護士の出連ツンです」
( ФωФ)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「さて、何から話しましょうか。去年の11月ぶりね。覚えてる?」
( ФωФ)「……」
ξ-⊿-)ξゞ ポリポリ
ツンが頭を掻く。
ファイルの中身を眺めて諸々を確認するように読み上げていくが、返答は一切無し。
-
前置きはやめましょうか。そう呟き、ツンはファイルを閉じた。
そうして、基本にして最も重要な問いをぶつける。
ξ゚⊿゚)ξ「……全て、あなたがやったの?」
( ФωФ)「……」
ロマネスクは語らない。
「沈黙は肯定」「沈黙は否定」、どちらも彼には当て嵌まらない。
彼はただひたすらに──黙っている。
何かを諦めているわけでも、何かに怯えているわけでもなく。
睥睨する瞳ばかりが強い意思を覗かせる。
( ^ω^)「ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしましょうかねえ。……私は弁護士だわ。
あなた、幽霊裁判のことは分かる? 私が何をする立場か分かる?」
( ФωФ)「──分かっている」
初めて口を開いた。
低い声。
-
ξ゚ -゚)ξ「あなたは起訴されるのよ。一連の事件の犯人として。
──私は……弁護士はどうしたらいいの?
犯行の否認? それとも減刑の主張?」
ロマネスクは僅かに目を見張り、すぐに眇めた。
意外そうな顔をしたようにも思えたが、気のせいかもしれない。
それほど些細な変化だった。
( ФωФ)「分からないのであるか」
ξ゚ -゚)ξ「事実はあなたにしか分からないでしょう? 私にはまだ何も」
( ФωФ)「……」
ξ゚ -゚)ξ「……」
( +ω+)「……」
-
ξ-⊿-)ξ「……あなた、ラウン寺の飼い猫だったのよね?
ミセリさんとは知り合い?」
ぴくり、ロマネスクの肩が揺れる。
瞳に一層、力が籠る。
鋭い視線は威嚇。踏み込むのを許さないような。
ツンが息を呑む。
彼の敵意に反応するように、白い光の糸が増え、彼の身を更に締めつけた。
( ФωФ)「──真実を話すくらいならば我輩は死を選ぶ。
元より、ミセリを殺せなければ己を殺すと覚悟していた身である」
.
-
ロマネスクがツンに顔を寄せる。下から睨み上げる。
言葉を続けるために口を開いたのだろうが、内藤には、ツンの喉笛を食いちぎろうとしているように見えた。
( ФωФ)「貴様は黙って立っていればいい」
ロマネスクが消えた──いや、小さくなった。
茶色い毛並み。写真で見たのよりは幾分か痩せているが、それでも平均より丸い体。
∧ ∧
( ФωФ) ニャァオン
先程とは打って変わって愛らしい声で鳴いて、彼は今度こそ消えた。
拘束札の中へ。
ツンが大きく溜め息をつく。
殺されるかと思った、と一言。
-
( ^ω^)「何か分かりましたかお?」
ξ;-⊿-)ξ「なーんにも見えない聞こえない」
まあ、そうだろう。
ツンの「追体験」は、心を閉ざされていては使えない。
ロマネスクは他者への警戒心で溢れていた。
( ФωФ)『──真実を話すくらいならば我輩は死を選ぶ』
真実。
もしもロマネスクにかかる全ての容疑が事実であるならば、彼は確実に「死」、消滅処分に処される。
では彼の口振りからすると──「真実」を話せば、死なずに済むのか?
本当は無実とか。
いや、「ミセリを殺せないのならば自分が死ぬ」とも言っていた。
つまり彼がミセリに殺意を抱いているのは確かなこと。
では何か、やむにやまれぬ事情があった?
ミセリ以外の被害者相手にも。
幾人も殺して、許され得る事情などあるのか。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……内藤君、別のとこ調べに行きましょ」
( ^ω^)「──はい」
ツンの呼び掛けは丁度いいタイミングであった。
早々に思考が行き詰まったので。
大量の資料を詰め込み、肩が抜けそうなくらい重くなった鞄をどちらが持つかで揉めに揉め、
ひとまず交替で運びながら事務所に置きに行こう、と決定するまで
実に4分30秒を要した。
*****
-
神社から持ち帰った荷物を一旦事務所に置き、それからバスに乗って住宅街へ。
とあるアパートの前でツンが立ち止まった。
( ^ω^)「ここは?」
ξ゚⊿゚)ξ「アサピーから教えてもらったホストさんが住むアパート。
ここって……──まあいいわ」
( ^ω^)「?」
階段を上り、一番奥の部屋の前に立つ。
「全手」という表札が掛かっている。
ξ゚⊿゚)ξ「この部屋に住む人がいるとはねえ……」
独り言を漏らしながら、ツンはインターホンを押した。
しばし待つ。応答なし。
再度押すと、室内から足音が近付いてきた。ドアが開かれる。
-
( <●><●>)「はい?」
ξ゚⊿゚)ξ「おうっ」
( ^ω^)(おうっ)
美形だ。
全体のパーツが整っていて、派手さはないが、こざっぱりした美形である。
思っていたより若い。
インターホンの音で起こされたのか、眠そうな目をしている。
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君……やばいわ……好みだわ……4番目兼7番目の脳内彼氏タダシ君に匹敵するわ……」
( ^ω^)「知りませんけども」
別れてから間に2人挟んでヨリを戻したのかタダシ君。
( <●><●>)「……」
ξ*゚⊿゚)ξ「や、やだわ、じっと見て。
ごめんね内藤君、私はみんなのアイドルだったけど、ついに1人の男性に独占されてしまうかも」
( <●><●>)「ハローさん?」
怪訝な顔をしていた男──これがホストの全手ワカッテマスだろう──は、ツンの金髪と面差しを見つめて言った。
視線が徐々に下りていき、
-
( <●><●>)「……じゃ、ありませんね……」
胸元に到達した辺りで前言撤回した。
そしてどうやらツンも前言撤回したらしい。
ξ#゚⊿゚)ξ「はいはいどうもごめんなさいねグラマラスボディじゃなくてね!! やっぱ三次元クソだわ!!
──弁護士の出連ツンといいます、アs……ハローに紹介されて来ました!」
( <●><●>)「弁護士? ハロー? 紹介……」
ぼやけた声で反芻し、ワカッテマスは唸る。
「ハローさんが言ってた『センセイ』ですか」と、もごもご呟いた。
-
( <●><●>)「何で僕のとこに?」
ξ゚⊿゚)ξ「ここに警察が来ませんでした? でなければ、女口調のガチムチと傲岸不遜な学ラン少女とか」
( <●><●>)「女口調のガチムチ警察官なら、昨日……
最近ここらで野良猫が増えてて、色々問題が起きてるってんで。諸注意とか、そういう」
ξ゚⊿゚)ξ「ロマネスクさんのことは訊かれました?」
( ^ω^)(うわ直球)
眠そうな瞳が清かになった。
はっきり開かれると、黒目がちで、少し威圧的な目であることに気付く。
人によっては怯えさせてしまいそうだ。
ハローさんから聞いたんですか、との問いを肯定する。
ξ゚⊿゚)ξ「私、ロマネスクさんのことを聞きに来ました」
( <●><●>)「……長くなります?」
ξ゚⊿゚)ξ「内容次第かと。割と根掘り葉掘り詳しく聞きたいんですが」
きょろきょろと辺りを見渡したワカッテマスは、一歩引いた。
室内を手で示す。
( <●><●>)「上がってください」
.
-
そう広くはないが、1人2人で住むには充分な部屋。
若々しい、という印象を受けた。
スポーツチームや歌手のポスター。小振りな家具のデザインも、野暮ったくはない。
( <●><●>)「弟と2人で住んでるんです。これが弟」
( ><)「どうも、えっと、ビロードです」
ビロードと名乗った少年が頭を下げる。
彼と2人暮らしだと言うが──窓辺に、もう1人いた。
(*‘ω‘ *)
和装の女性。
内藤と目が合うと、女性はビロードに倣って一礼した。内藤も会釈する。
-
( <●><●>)「……あの、もしかして見えます?」
ξ゚⊿゚)ξ「着物の女性が」
ローテーブルにマグカップを置きつつ、ワカッテマスは恐る恐る問うてきた。
彼女をじっと見つめたまま、ツンが答える。内藤も頷いた。
どうやら彼女、生きた人間ではないらしい。
ξ゚⊿゚)ξ「ここ、曰く付きの部屋でしょう。おばけが溜まってたとかで……。
去年ある程度は追い払ったって聞いてたけど、この人は追い払えなかったのかしら」
( <●><●>)「僕らがここに越してきたのは去年の夏で、そのときには既に彼女がいました」
ξ゚⊿゚)ξ「地縛霊かしらね。まあ放っておかれたってことは悪い霊じゃないのかも」
-
( ^ω^)「ワカッテマスさんも見える人なんですかお?」
( <●><●>)「この部屋の中限定ですけどね。
それにはっきり見えるのは夜だけで、明るい内はほとんど……。
今も見えてません」
ξ゚⊿゚)ξ「幽霊が集まってた部屋だから、そういう影響が出ちゃったんでしょうね。
ビロード君も彼女が見えるの?」
( <●><●>)「ビロードも部屋の中でしか。ああ、でも僕と違って、朝でも見えているようです」
( ><)「あ、あの、すいません。……ぽぽちゃんの、じょ、除霊、とかしに来たんですか?」
黙って様子を窺っていたビロードが、自身の名が出たのを契機にして、先の兄のように恐々と訊ねた。
ぽぽちゃん、と名前らしきものを口にする際に彼女を一瞥したので、彼女が「ぽぽちゃん」なのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「いえ、そちらに用があって来たんじゃないの。ワカッテマスさんに訊きたいことがあって。
あなた達に迷惑かけてないなら、彼女がどうこうされることはないわ。
死後100年経ってる場合は、また話が別だけれど」
( ><)「あ、良かったあ……」
(*‘ω‘ *)"
「ぽぽちゃん」というのは本人が名乗ったわけではなく、
普段から全く口をきかないので、ビロードが便宜上そう呼んでいるのだそうだ。
彼女は唇を尖らせ、ぽっ、と空気を弾き出した。
-
( <●><●>)「あ、これ、どうぞ食べてください。
お客さんから頂いたんですが、僕はお菓子があまり好きではないので」
いかにも高そうでお洒落な箱に並んだ、いかにも高そうでお洒落な個包装。
印された英字で、それがチョコレートであるのが分かった。
お客──ホストクラブの客からバレンタインデーにもらったということか。
そういえば彼はホストだった。
あまりそれらしくなかったので忘れていた。
( <●><●>)「君は、ええと……」
( ^ω^)「内藤ですお」
( <●><●>)「内藤君ですね、チョコレートは好きですか?
他にも色々ありますから持っていってください。手作りのものはないので安心していいです」
( ^ω^)「あ、──はい、どうも」
一昨日もらった分がまだ家に残っているのだが、兄者が昨夜から
内藤のもらったチョコレートを「自分がもらったもの」と仮定して食すという悲しい遊びにハマっているので、
その遊びに追加してやるとしよう。
-
( <●><●>)「コーヒー飲めます? コーヒー牛乳にしましょうか」
( ^ω^)「お願いしますお」
( <●><●>)「……何だか僕のこと警戒してませんか。寧ろ僕の方が警戒する立場なんですが」
( ^ω^)「すみませんお……経験上、誰に対しても敬語で話す大人に碌なのがいなくて……」
ξ゚⊿゚)ξ「トソンさんはマトモでしょうよ」
そういえば、トソンに今回の件はもう伝わっているのだろうか。
遅かれ早かれツンの事務所には来るだろうから、そのときに話してみよう。
彼女に会ったら改めて礼をしなければならない。
数年前、あのゴミ山で内藤は危うく死んでしまうところだったのだと、前回の裁判で思い知ったから。
それを救ってくれた彼女にちゃんと礼を言わないと。
神妙な感情に浸っていた内藤を、意地汚くチョコレートに飛びつくツンの姿が一気に冷まさせた。
ξ゚⊿゚)ξ「うめえうめえ」ムシャムシャ
( ^ω^)「あさましい」
冷静になって考えてみると、敬語云々関係なく身の回りに碌な大人が少なかった。
ワカッテマスは貴重な常識人かもしれない。大事にしなければ。
-
( <●><●>)「クッキーもありますよ。ビロードとぽぽちゃんもどうぞ」
(*><)「わーい」
チョコレートよりは焼き菓子の方が好きだ。
内藤もクッキーの包みを開ける。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
さっさと本題に入ればいいものを、ツンは沈黙し(アーモンドチョコに口を封じられている)、
マグカップにコーヒーを注ぐワカッテマスを凝視した。
舐めるような視線、とはよく言ったもの。
( <●><●>)「何です?」
ξ゚⊿゚)ξ「イケメンだなあと」
( <●><●>)「知ってます」
クッキーをさくさく噛んでいた内藤の口が止まった。
いや、そんなまさか。それしきの返答、ジョークの範疇だ。
真顔で賛辞を肯定したワカッテマスは、コーヒーを注ぎ終えると
ツンに大して視線を送らずに世辞を返した。
-
( <●><●>)「出連さんこそお綺麗で」
ξ゚⊿゚)ξ「知ってるわ。──何か、ホストって感じじゃないわね」
( <●><●>)「プライベートなので。仕事のときは違いますよ」
(*<●><●>)「やーべえ、こんな綺麗なひと初めて見ましたよ僕!
弁護士さん? 頭いいんだ! 才色兼備ってやつでしょ。うわーモテる絶対モテる。
あ、コーヒーどうぞーツンさんのために美味しーく淹れましたよ!」
( <●><●>)「みたいな」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ……大変ね。
私みたいなのは褒めるところがたくさんあるから困らないだろうけど、
全てのお客さんにもそうやって振る舞わないといけないんでしょ」
( <●><●>)「最初の頃は本当に大変でした。まあ僕なのですぐに慣れましたけど」
( ^ω^)(何か嫌な予感がしてきた)
(*><)「兄さんすごいんですよ! 女の人にすごくモテるんです!」
(*‘ω‘ *)"
へーそうなんだすごいね、あ、用事があるので僕帰ります。
そう言って出ていきたい。
やっぱり兄者達とドライブに行ってきた方が良かったかもしれない。
-
( <●><●>)「前に住んでたアパートにストーカーが来るのでやむを得ず引っ越して、
前にやってた飲食店のバイトは店長のお気に入りの女の子に告白されたってだけでクビになって、
生活費と学費のために見付けた新しいバイトが今の所なんです」
ξ゚⊿゚)ξ「生活費もビロード君の学費もってなったら大変でしょう」
( <●><●>)「あ、ビロードの分は親戚が払ってくれてます。僕の学費です」
弟と2人暮らしということから薄々感付いてはいたが、少々わけありのようだ。
だが今の内藤には、そんなことどうでもいい。
彼の人格を見定めたい。
多分内藤の思い過ごしだろうが、ちょくちょく引っ掛かる発言があるので油断ならない。
ξ;゚⊿゚)ξ「あら、学生なの?」
( <●><●>)「大学2年生です。
正直、成人したてじゃ断られるかなーと思いつつ遊び半分で面接受けてみたら合格しちゃって。
まあ、この美貌なので仕方ないことなのですが」
あ。駄目だこれ。
-
スリーアウトでチェンジや
-
( <●><●>)「女性に好かれるのが仕事ですから、それが理由でクビになることはないでしょう。
だから天職かなあと思ったんですけど、やっぱり、好かれすぎるのも困りものですね。
バレンタインデーのプレゼントの処理に悩んでて」
ξ;゚⊿゚)ξ「分かるわー、美しさって時として自分自身に牙を剥くのよね」
( ^ω^)(もうやだこの町)
最悪だ。
こいつ、男版ツンだ。
違いを挙げるとするならば、ツンは素材の良さを無に帰す残念さのために全く男っ気がないが、
ワカッテマスは上手く隠しているのか周りが節穴だらけなのか、大層モテていらっしゃるという点だ。
すこぶる下らない自画自賛大会がしばらく続いたので割愛する。
-
いや、裏表激しいのは内藤と似てるぞww
-
( <●><●>)「……ところで、いつ本題に入るんです?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、入ってもよろしい?」
その一言でようやく場の空気が締まった。
生チョコを飲み下し、ツンが視線を斜め下に落とす。
ξ゚⊿゚)ξ「ロマネスクさんと初めて会ったのはいつ?」
( <●><●>)「……1月……20日ですね。
バイトから帰って、そこの──曲がり角の向こう。
電柱のとこで会いました」
ワカッテマスは、すんなり答えた。
何故ロマネスクのことを訊くのか──などという疑問をおくびにも出さず。
出会ったときの様子や、そのときの行動を思い出せる限りで語ってくれた。
.
-
#####
(;<●><●>)『ぶぇっ、うえ、えべべべ』
その日は飲みすぎてしまった。
何とか自宅近くまで来たものの、とうとう限界に達し、側溝に胃の中身をぶちまけた。
どぶの臭いが鼻について、更に出た。
(;<●><●>)『あ゙あ、あ゙ー、ああ……』
すぐ傍の電柱にしがみつく体勢のまま固まった。楽だったので。
自分の客にこんな姿を見られたら大層まずいなと思いつつ。
最後のもう一波を側溝にぶちまけてから、ようやく立ち上がった。
-
( <●><●>)『……うん……?』
電柱を挟んだ向こう側に何かが見えた。
丸い。暗くてよく分からない。
ハンカチで口元を拭い、携帯電話の画面を明かり代わりにしてそちらへ向ける。
(;<●><●>)『うわっ』
動物。
猫。
猫だ。猫が横たわっている。
ここらは野良猫が多い。
たまに子猫が他の動物や車によって死んでいるという話を聞く。
まさか死んでいるのか。子猫ではなさそうだが。
ワカッテマスが様子を窺っていると、猫は目をうっすらと開けた。
視線がかち合う。
途端、猫は身を起こした。
警戒するようにワカッテマスを睨みつけ、じりじりと後退している。
何者か見定めようとしているようだった。
-
∧ ∧
( ФωФ)『……』
全体的にやや丸くて、毛並みも良さそうなので、あまり野良っぽくはない。
けれど首輪はしていないし。
ちっちっ、と舌を鳴らしてワカッテマスは手を伸ばした。
猫は近付いてこない。
手を引っ込め、ふと思い至り、肩に引っ掛けていた鞄の中から袋を一つ取り出した。
おやつに持ち歩いている煮干し。これも、自分の客にはあまり見せられない。
友人の飼い猫が煮干し好きだと聞いたことがある。この猫はどうだろうか。
( <●><●>)『食べます?』
猫の前に煮干しを2匹ほど置く。猫は未だ警戒している。
ワカッテマスは顔を逸らし、しばらくしてから横目で猫を見遣った。
猫は煮干しの匂いを嗅いでいた。
食うか。食わないか。
わくわくしながら猫の様子を窺っていると、ついに齧りついた。
-
∧ ∧
( ФωФ) カリッ、カリカリ
( <●><●>)
∧ ∧
( ФωФ) ポリポリ
( <●><●>)『美味しいですか?』
∧ ∧
( ФωФ)そ ビクッ
猫が後退りをする。
煮干しをさらにもう2匹置き、ワカッテマスは立ち上がった。
野良猫に餌付けしてはならない、と理屈は理解していても、どうにも放っておけない。
( <●><●>)『普段この時間にいるんですか? それなら明後日、もっといいもの持ってきますよ』
∧ ∧
( ФωФ) …ニィ
返事なのかは分からないが、猫は短く鳴いた。声だけは愛想がいい。
もう一鳴きすると煮干しをくわえ、ワカッテマスに尻尾を向けて去っていった。
-
──かと思えば。
3歩先で振り返り、一旦煮干しを置き、口を開いて。
先の鳴き声とは打って変わって、低い声を発する。
∧ ∧
( ФωФ)『……馳走になった。借りはいずれ何かしらの形で返す』
(;<●><●>)『──へ?』
喋った?
ワカッテマスが後退り、躓き、尻餅をつく。
その間に、猫は去っていった。
#####
-
( <●><●>)「それ以来、ちょくちょく会いました。
ロマネスクって名前は、二度目に会ったときに聞きましたね」
ロマネスクと会うのは仕事帰りのみ。
週に3、4回。
餌を与え、食い終わればさっさと別れる、ほんの数分間。
何度か会話をしたという。
寡黙な猫なのか、全く喋らない日もあったし、口を開いても二言三言が精々といったところだったらしいが。
( ><)「僕も会ってみたいのに、僕が行っても全然出てきてくれないんです」
( <●><●>)「警戒心が強いですからね」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたは、自分が酔ってるから会話してる気分になってるだけだ、とハローに話したそうだけど」
( <●><●>)「さすがに、本気で猫と会話してるんだとは言えないでしょう。
実際は酔ってない日でも会話したことあります。
ぽぽちゃんのような存在もありますし、おばけというか、喋る猫が存在してもおかしくはないだろうと考えてました」
会話の内容は他愛ない。
名前、美味いもの、不味いもの、撫でられたい場所、撫でられたくない場所。
-
ξ゚⊿゚)ξ「毎回欠かさず会ってた?」
( <●><●>)「2月の──1日、いや、午前1時回ってたから2日か。
その日はいませんでした。
しばらく待ってみたけど、全然来なくて」
ξ゚⊿゚)ξ「……2日」
神隠し罪の裁判の直後だ。
何か思うところがあるらしく、ツンが唸った。
( ^ω^)「その後は、また来るようになりましたかお?」
( <●><●>)「ええ、特に変わった様子もなく。
『何で来なかったんですか』と問えば、『貴様に関係ない』と一刀両断」
ξ゚ -゚)ξ「……そう」
-
( <●><●>)「それでまた餌をあげてちょっと話して、って日々で、
13日にハローさんが来て彼女にロマネスクのことを話して──」
( <●><●>)「それから2日連続で、彼に会ってません」
──どこに行ったんです、と。
ツンを真っ直ぐ見つめ、彼は問うた。
ξ゚⊿゚)ξ「……彼は逮捕されたわ」
( <●><●>)「……裁判にかけられるんですね」
ξ゚⊿゚)ξ「ご存知?」
( <●><●>)「おばけにも裁判があるのだとロマネスクから聞きました。詳しくは教えてもらえませんでしたが」
( <●><●>)「──幽霊の見えるあなたが、幽霊の見える少年を連れて、
『弁護士』としてロマネスクの話を聞きに来たということは──そういうことでしょう」
本当に、ツンに似ている。
理解が早い。今まさに交わしている会話より、既に数歩先まで思考は及んでいるのだろう。
-
( <●><●>)「僕は証人として呼ばれるんでしょうか?
それとも知らず知らずの内に犯罪に加担していたとか」
(;><)「え!? 兄さんは悪いことしないんです!」
"(;‘ω‘ *)" ポッ…
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫、話を聞きたかっただけだから。法廷に呼ばなきゃいけないものでもなさそうだし。
──ありがとう、お邪魔しました。何か気付いたことあったら、ここに連絡して。
もし裁判の傍聴を希望するなら、訊いてくれれば日時と場所を教えるわ」
名刺を手渡し、ツンは立ち上がった。ポケットにチョコレートを目一杯詰め込んで。
( <●><●>)「そうやって僕の電話番号をゲットしようって腹積もりですね」
ξ゚⊿゚)ξ「私とお話ししたいからって用もないのに5分おきに電話かけちゃ駄目よ」
( ^ω^)「生き別れた姉弟か何かですか」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「──それじゃ、何かあれば、また」
( <●><●>)「はい。お仕事頑張ってください」
玄関先。
ツンはほくほく顔で、見送りに出たワカッテマスに手を振った。
有名ブランドのチョコレートを2箱もらえたのがよほど嬉しいらしい。
( ^ω^)「おっ?」
通路に立っていた内藤は、アパート前の道を子連れの三毛猫が通っていくのを見付けた。
にゃあ、という声に顔を上げれば、ハチワレが向かいの家の塀で寛いでいるのが目に入る。
-
ξ゚⊿゚)ξ「ここら辺、ほんとに猫多いのね」
( <●><●>)「ええ」
ξ*゚⊿゚)ξ「あら綺麗な白猫」
ツンの示す先を見ると、白い毛並みの猫が丸まって眠っていた。朱色の首輪。飼い猫か。
その猫へ、塀から下りたハチワレが近付いていく。
にゃあにゃあ鳴くハチワレの声に、白猫はうるさそうに起き上がると、
すたすたとその場を去っていった。
──ハチワレの体を、すうっと摺り抜けて。
さらに、民家の屋根から黒猫が飛び降りる。こちらは青い首輪。
黒猫は内藤達を見ると、にやりと「笑って」、毛繕いを始めた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……おばけの猫もいっぱいいるみたいね」
( <●><●>)「え、マジすか」
( ^ω^)「ロマネスクさんもここに来てたし、そういうのが集まりやすい地域なんでしょうかお」
悪さしなけりゃ可愛いんだけどね、とツン。
ロマネスクは──「悪さ」をしたんだろうか。
ワカッテマスには何の危害も加えていないようだったが。
.
-
アパートを後にし、内藤はツンに問う。
( ^ω^)「何か良さげな手掛かり見付かりました?」
ξ゚⊿゚)ξ「いまいち!」
( ^ω^)「ですおね」
次だ次──ツンが拳を振り上げる。
まだ行くところがあるらしい。
猫の鳴き声を背にして、2人はまだ溶ける気配のない雪を踏み越えていった。
*****
-
生き別れた姉弟でワロタ
-
o川*゚ー゚)o「へー、おばけに裁判とかあるんだ」
( ><)「そうらしいんです」
(*‘ω‘ *)"
ツンと内藤が帰り、兄が奥の部屋で二度寝を始めてから少し経った頃。
いつものように遊びに来た少女の霊にツン達のことを話してみると、
少女は興味いっぱいといった顔で聞き入ってくれた。
──ビロードは、この部屋に越してくるまで幽霊というものを見たことがなかった。
それまで霊の存在すら信じていなかったワカッテマスとは違い、存在そのものは信じていた。
無論、「怖いもの」として、だ。
しかし、いざ会ってみると──ぽぽちゃんにしろ、この少女にしろ、
存外に普通で親しみやすい。
たまに部屋に迷い込んでくる浮遊霊達も、話が通じないようなのは滅多にいない。
危なげな輩はぽぽちゃんが追い払ってくれるし。
-
o川*゚ー゚)o「すごいねえ。見てみたいな、裁判」
( ><)「もしかしたら兄さんが見に行くかもしれないから、頼めば連れていってくれるかもです」
(*‘ω‘ *)" ポッ
──数年前に両親を亡くしてからというもの、ワカッテマスと関わる時間が減った。
彼は毎日バイトや学業に追われている。家にいても課題をやるか眠るかの二択といった様子。
自分ももう高校生だし、寂しいだなんて甘ったれたことを簡単に言えやしないが、
中学生の頃は毎日寂しくて堪らなかった。
ワカッテマスは高校生の時分からバイトに勉強に忙しかったので、
唯一の肉親である彼と満足に交流できなかったのだ。
だが、この部屋にいると、ぽぽちゃんや他の霊が相手をしてくれる。
1人になることはない。
ぽぽちゃんと目が合う。
ビロードがへらりと笑うと、彼女も微笑を返してきた。
*****
-
( ・∀・)「──でさあ、ブーンの奴、10個以上もチョコもらってんの!
まあ全部義理らしいんだけどー」
駅前、ぞろぞろとゲームセンターへ向かう男女の集団。
プギャーへの「町案内」という名目だが、結局は大勢で遊びたいだけの集まりだ。
その中央で、モララーはプギャーへ内藤との様々なエピソードを語って聞かせていた。
特に深い意味はない。手っ取り早い共通の話題が内藤だっただけで。
プギャーも興味深そうに聞いているので、まあ間違った選択ではないだろう。
友達自慢──もあったかもしれない。
モララーも友達は多い方だが、特に内藤と弟者、ヒッキーの3人とつるんでいるときが一番楽しい。
-
( ・∀・)「ブーンって小学生のときから人気あったの?」
( ^Д^)「んー? いや……」
初めてプギャーが歯切れ悪く答えた。
違うのか、と別のクラスメートが意外そうに問う。
( ^Д^)「あー、そうだなあ」
にやついている。
何となくだけれど、嫌な笑顔だなとモララーは思った。
しばらく勿体ぶってみせたプギャーだったが、ゲームセンターに到着したところで
ようやく、ちゃんとした返答を発した。
( ^Д^)「人気があったかはしらねえけどさ」
そうして、笑みを深める。
-
( ^Д^)「あいつ、幽霊が見えるってよく言ってたなあ」
Last case:続く
-
乙
-
おつおつ
-
今回の投下終わり
読んでくれてありがとうございました
Romanさん、いつもありがとうございます
次回は中編になります
投下日は未定
-
乙
プギャーめ…よくもよくも
-
乙 波乱の予感すぎる
-
乙
続きむっちゃ気になる・・・
-
乙
男版ツンさんに笑ったw
-
まあ完全にブーンのフィールドだから大丈夫大丈夫
下手なことしたらプギャーがムラハチよ
-
プギャーがかき乱してくるのか……
乙乙、次も楽しみにしてる
-
プギャーの登場が怖すぎる
やっと居心地のいい場所を手に入れたのに、それが壊されるかもしれないってすごく怖いよなー…
大好きなピャー子ロミス夫妻が再び見られたのと
ツンちゃんと姉者が友達になったの分かって
大歓喜である
高崎美和の詐欺事件もまだ終わってないし絡んできそう
予想がつかなくてわくわくします
続き楽しみ!
-
シュールがコメ好きでやっぱりシュールだった
ワカッテマスがちょっとウザッテマスなのがいい感じ
ホスト役が意外とハマってる
この作品だとAAがいつもの役柄と違ってひねってあるんだけど、そのAAらしさがあるところが、キャラクター立て上手いなーって思うわ
-
乙
-
キューちゃんおしかった!
これからどう絡んでくか期待
-
ぽぽちゃんシューキュープギャーワカビロ…
どういう風に絡み合っていくのだろうか
-
乙
ξ゚⊿゚)ξ「うめえうめえ」ムシャムシャ
( ^ω^)「あさましい」
にわろた
-
相変わらずのボリュームでワロタ
楽しみにしてる
-
相変わらず残念な奴ばっかだな
乙乙
次も楽しみ
-
乙です
続き楽しみです
アサピーに呪いの依頼したいな
プギャー呪いてぇ…
-
乙!
-
おつでした!
-
乙乙
次は年末ぐらいかな
続きが楽しみでならん
-
乙!
馬鹿なことしでかしたらプギャー呪いたいぞゴラァ…
-
相変わらず面白いなぁ乙!
漫画と見比べてニヤニヤしてた
-
もうすぐ終わるから読み返してるんだけど 誘惑罪の話でツンって貞子のみたってことはツンちゃんミルナやその他大勢の男と擬似セクロスしてんのかな
-
水溶き片栗粉のときに毎日のように見てるっていってるじゃないか
-
ああ そうだったっけ
漫画全部まとめられてるところ無いかねぇ
-
確かに漫画全部読みたいな。
-
泥酔していたとはいえブラを貸す仲だったとは
-
酔った勢いでランジェリーショップまでひとっ走り買いに行って試着までしてた可能性が微レ存
-
未成年だけど酒ってそんな魔力あるのかよ……
-
お酒お酒っていうけど アルコール度数でいうところのエチルアルコールは脳神経を麻痺させる神経毒だ
-
まぁ酒も煙草も合法ドラッグだからな。大量に取れば幻覚、奇行、昏睡、死亡まであるわけで
-
>>117
ニュッ君は「奇行」で済んで良かったと捉えるべきか
-
漫画はその時スレ読んでくれた読者の為のお楽しみ的なことを前に作者さんが言っていたような気がするので尊重したいですのうと一読者が言ってみるテスト
遭遇したらそっと保存して自分だけで楽しむ分には構わぬよね
-
この作者の過去作って何ある?
あな本しか知らないんで教えていただきたい
-
せいとかいだっけ?
-
後心霊スポット巡りするヤツも確か
-
( ∴)早く人間になりたいようです
ttp://viper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1292229019/
短編ではこの作品が特に好き
次点でクリスマスには間に合わなかったようです、行灯業者の鐘の声が聞こえるようです
他にもいっぱい作品あるけど、たしか穴本の最終話に挙げてあったと思う
-
あな本スレより
695 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 2011/07/23(土) 21:58:50 ID:O2WumhgwO
>>690
長編 ( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
短編
('A`)燃え尽きた後のようです
ξ*゚⊿゚)ξふたりはなかよし(^ω^*)のようです
(*'A`)ふたなりなかだし(゚- ゚*川のようです
川 ゚ -゚)日和のようです(乗っ取り)
( ^ω^)の川 ゚ -゚)ルなナイトのようです(乗っ取り)
( ^ω^)が拳の王となるようです(乗っ取り)
( ^^ω)クリスマスには間に合わなかったようです
( ∴)早く人間になりたいようです
('A`)ドクオには幼なじみがいるようです(乗っ取り)
( ^ω^)ドラゴンボールのようです
【+ 】ゞ゚)は異世界で出会ったようです
川д川おばけやしきのようです
(-_-)ストライクヒッキーズのようです
(・ ∀・) また明日、のようです
爪'ー`)y‐小泥棒のようです
( ФωФ)いつでも変われるようです
lw ´‐ _ ‐ノ v 六度目の大量絶滅のようです
( ^ω^)はボクサーのようです(乗っ取り)
/ ,' 3 荒巻老人は80代にして妻以外の女性を愛したようです
('A`)おしりをかじらなければ虫になるようです
ξ゚⊿゚)ξ わるいひと! ζ(゚ー゚*ζ のようです
こんな感じで
-
>>124に入ってないものだと、
ζ(゚ー゚*ζ あな素晴らしや、生きた本 のようです
('、`*川 フリーターと先生の怪奇夜話、のようです (´・_ゝ・`)
( ゚д゚ ) 学生と先生の怪奇夜話、のようです (´・_ゝ・`)
ミンミンミセ*゚ー゚)リのようです
〈::゚−゚〉行灯業者の鐘の声が聞こえるようです
(-@∀@)誇り無き吸血鬼のようです
( ^ω^)姉が孕んだようです
|゚ノ ^∀^)にとってはそれが真実だったようです ほか
(( ゚∋゚)大きな古時計のようです・( ^(i)^)ブーンの口はついにふぐりじゃ無くなったようです・('A`)はキノコのようです)
l从・∀・*ノ!リ人 超絶プリティ!流石家のアイドルのようです
川 ゚ -゚)冬の迷い子のようです
( ^ω^)猫娘を拾ったようです
-
ありがとうございます
-
時計の国とラノベ祭のようですもだな、続き……!
-
追いついたー
面白いです、いつも乙
-
ていうか文字化け危惧するなら代行で建てたのに
-
やっぱり自分で立てたいだろ
考えた結果これっていう
初見の時ついに内藤が乗っ取ったと思ったww
-
金曜か土曜に、最終話中編投下します
長い
今までスレに貼ったやつ。の一部
http://imepic.jp/20140826/701570
http://imepic.jp/20140826/701571
http://imepic.jp/20140826/701580
http://imepic.jp/20140826/701581
http://imepic.jp/20140826/701582
http://imepic.jp/20140826/702890
http://imepic.jp/20140826/702891
http://imepic.jp/20140826/702900
http://imepic.jp/20140826/702901
http://imepic.jp/20140826/702910
http://imepic.jp/20140826/704010
おまけ
http://imepic.jp/20140826/782810
-
ツンちゃん・・・
-
期待、であることは否定しないんだな
-
ちょwwツンちゃん
-
しぃ検事が可愛すぎて辛い
-
ツンクソワロタ
見たことないのもあって嬉しい
-
血の涙流すくらいならやるなwwww
-
ツンさんブレないな いやブレまくってるのか?
-
血涙wwwww
待ってるよー
-
こまめに覗いてたつもりだけど、ゴムドッキリ以外は初見だわ。内藤少年鬼畜すぎるwww
あな本*類擦い箸*い面白かったから、今回も別作品コラボネタやってくれないかなぁ(チラ
-
俺の携帯で保存すると上から5個がバグってホラーになる
-
ツン姉者の胸揉んでよく弟者に殺されなかったな
-
昔からなにかと姉者を助けてるのは事実だし強くは出られまい
-
>>142
異性だったら間違いなくタヒんでたと思う…
-
見た事無いのが結構あった!
ありがとうありがとう
-
弟者の「姉者の乳揉んだ殺すリスト」に入る基準の一例
ξ゚⊿゚)ξ←許す
(,,゚Д゚)←半分許す
_
( ゚∀゚)←二度殺す
早ければ明日の夕方、遅くても日付変わる前には最終話中編投下します
-
女
オカマ
男+ジョルジュ
-
ツンは許すんだ…一応女だから?
-
女どおしで揉み合いしてるの見て、おれにも揉ましてくれよと思ったことがあったな
-
>>148
流石の弟者もツンが哀れ過ぎて殺す気にはならないんだよきっと
-
おお・・・もう続き来るのか
明日が待ちきれねえ
-
漫画全部保存したひええええ中編楽しみ
-
弟者的にも姉者に同性の友人が出来たことが好ましいとかとかかなーって
たとえ相手がツンであっても
-
ここでのツンさんの女としての評価がとんでもなく低くてワロタ
確かに弁護士として以外ではまるっきりかわいそうな人なのは確かだがw
-
ここんところ連勝してるけど確か弁護士としてもポンコツなんじゃなかったっけ
-
最終話中編投下します
長いです
-
ニオイがする。
ニオイがする。
奴はまだ生きている。
-
Last case:憑依罪/中編
.
-
カンオケ神社でロマネスクと話した。これといって収穫なし。
アパートでワカッテマスからロマネスクの話を聞いた。同上。
なので今度は、ヴィップ総合病院へ。
容疑者とその関係者側から情報を得られなかったので、
それなら被害者、三森ミセリの方に何か手掛かりはないだろうか──ということらしい。
ミセ*- -)リ
真っ白なベッド。目を堅く閉じ、弱々しい呼吸を繰り返す女性が1人。
ここはミセリの病室である。
病室の外には警備が2人。人間とおばけ、1人ずつ。
事件が完全に解決するまではまだ警戒を解けないという。
ミセリは相変わらず眠っている。
まだ生きている。
-
( ^ω^)「……ミセリさん。猫、捕まりましたお」
呼び掛けたところで、返事があるはずもない。
けれどもやはり、彼女は生きている。
ξ゚⊿゚)ξ「……『真犯人』が捕まって事件が解決すれば、
ミセリさんも目を覚ますような気がするって、トソンさんが言ったわ」
( ^ω^)「あんまり言いたくないですけど、そう何もかも上手くは行きませんお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。でもね、私も、何だかそういう気がずっとしてたのよ。
何かが一つ片付けば、釣られて他のことも解決に向かうんじゃないかってね。
でも、ミセリさんに変化はない」
ミセリはまだ目覚めない。
寧ろ、以前見たときよりも更に生気を失っているようにさえ思える。
ξ゚ -゚)ξ「……まだ、何一つ解決してないんじゃないかって……
真実に全然近付けていないんじゃないかって、思っちゃうのよ」
彼女の言葉を信じてしまうと、何だか途方に暮れてしまいそうで。
内藤は黙っていた。
ツンが頭を振る。ここにいるだけではどうにもなるまいと結論づけて、2人は病室を出た。
.
-
ξ゚ -゚)ξ「さて、担当医に話でも聞きに行きましょうか」
( ^ω^)「何かあるとも思えませんけど」
ξ゚⊿゚)ξ「訊いてみなきゃ分かんないでしょー」
「……あの」
エレベーターを待ちながら会話を交わしていると、背後から声が掛かった。
ナース服。看護師だろう、若い女性がやや怯えた様子でこちらを見ていた。
カウと書かれた名札を付けている。
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
||‘‐‘;||レ「あっ。ごめんなさい、警察の方……じゃ、ないですよね、すみません」
ξ゚⊿゚)ξ「弁護士です」
おばけ法の、とは勿論言わない。
弁護士と聞き、カウは少し安堵したようだった。
-
||‘‐‘||レ「弁護士さん……。三森さんについて、何か調べてらっしゃるんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。あ、こっちは──弟です。荷物持ちしてもらってて」
( ^ω^)「こんにちはー」
さすがに、弁護士と中学生が一緒にいる自然な理由は咄嗟に思いつかない。
弟という設定を受け入れ、内藤はにっこり笑った。
||‘‐‘||レ「えっと、三森さんのことでちょっと話したいことがあるんですけど……
こういうのって、警察に話さないと駄目なんでしょうか」
ξ゚⊿゚)ξ「内容によりますよ。よろしければ、私にも聞かせてほしいですが」
エレベーターが到着し、扉が開く。
それに乗り込まず、3人は近くにあった長椅子に腰を下ろした。
||‘‐‘||レ「私、三森さんの病室を担当してる内の1人なんです」
ξ゚⊿゚)ξ「ここ最近で何か変わった様子などはありました?」
||‘‐‘||レ「三森さん自体には、これといって……。でも、その──」
2月の始めに──囁くような声で言って、カウは口籠る。
発言の続きを躊躇うように。
-
ξ゚⊿゚)ξ「何でも言ってください。何でも聞くし何でも信じますから」
||‘‐‘||レ「……ナースコールが鳴ったんです。
2月1日の夜中に……えっと、それが、三森さんの病室からでした」
( ^ω^)「病室に誰か来てたんですかお?」
||‘‐‘||レ「いいえ。三森さんしかいませんでした。
あの日は、警察の方もいらっしゃいませんでしたし」
ξ゚⊿゚)ξ「……ナースコールを押すような人は、いなかったわけですね」
||‘‐‘||レ「はい。──よくあること、とまでは言いませんが……たまに、あるんです。
誰もいない病室とか、動けない筈の患者さんの部屋のナースコールが鳴るのって」
ξ゚⊿゚)ξ「病院ではよく聞く話です」
ツンが頷くと、カウはほっと息をついた。
人によっては一笑に付されてしまうような話だ。
||‘‐‘||レ「そういうときは、機械の誤作動ということにしてるんです」
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさんの病室で鳴ったときも?」
||‘‐‘||レ「はい。
あの日、私は凖夜勤──夕方の4時から12時まで勤務する日でした。
ナースコールが鳴ったのは、そろそろ帰れるって思ってた頃だから……午後11時から12時の間くらいですね」
-
丁度そのとき、ナースステーションにいたのはカウだけだった。
もしかしてミセリが目を覚ましたのではと思い、急いで病室に向かったという。
しかし。
||‘‐‘||レ「三森さんは変わらず眠っていました。
とはいえ万が一ってこともあるので、当直の医師を連れてきて、診てもらったんです」
やはり起きた様子はないし、まだ起きる気配もない、という結論に至った。
繋がっている機械の記録を見ても変化はなかったため、
ナースコールの件は誤作動ということで処理をした。
そのことは他の看護師にも話したが、誰にも言っていないことが一つあるそうだ。
カウは、また不安げな表情を浮かべた。
||‘‐‘||レ「そのとき私、ベッドの上で変なもの見付けたんです」
ξ゚⊿゚)ξ「変なものというと」
-
カウがポケットに手を入れ、一枚の紙を取り出した。
然ほど大きくなく、何も書かれていない。白紙。
ξ゚⊿゚)ξ「これは……何かしら」
||‘‐‘||レ「ミセリさんの手の下からはみ出てたんです」
( ^ω^)「手の下、ですかお」
ミセリは動かない。目覚めてもいない。
ならば──誰かが差し込んだとしか。
||‘‐‘;||レ「私、消灯前に病室の掃除や、三森さんの身の回りのお手入れをしてました。
そのときは、そんな物なかったのに」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……姉さん」
ξ゚⊿゚)ξ「どういうことなのかしらね」
消灯前となれば面会時間も過ぎている。
それから12時前にナースコールが鳴るまで──恐らくは誰も病室を訪れていない筈。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……分かりました、預かってもよろしいかしら」
||‘‐‘||レ「はい、捨てるわけにもいかなくて、ずっと持ってたんです。
お昼前に警察の方が病室に来ていたらしいんですが、私はさっき出勤してきたので
渡しそびれてしまって」
( ^ω^)「警備の人に渡せば良かったのに」
||‘‐‘*;||レ「あっ。やだ、本当……私って抜けてて。恥ずかしい……」
ξ゚ー゚)ξ「お話聞かせてくださってありがとうございます。
他に何か変わったこと、ありました?」
ツンから手の仕草のみで指示を受け、内藤は鞄に白紙をしまった。
何の紙なのだろう。
彼女の問い掛けを反芻してから、カウは答えた。
||‘‐‘||レ「さっきも言いましたが、私は凖夜勤だったので、12時過ぎに帰宅したんです。
だから詳しくはよく知らないんですけど」
-
||‘‐‘||レ「朝、別の担当看護師が三森さんの病室に行ったときに──
ベッドの下からメモ用紙を見付けたそうなんです。
変なことが書いてあって、気味が悪いと言ってました」
どんなメモですか、とツンが余所行きの笑顔で問う。
カウが「変なこと」を思い出すまで、しばらくかかった。
ようやく、あ、と声をあげてツンに視線を向け直す。
||‘‐‘||レ「えっと、たしか、体を貸すとか何とか──」
*****
-
《本日午前11時50分から午後12時10分まで都村トソンに体を貸します。 H17/08/20 三森ミセリ》
その文面を、ツンは何度も何度も読み返していた。
コピーでなら内藤も見たことがある。実物は初めて見た。
トソンの裁判で、証拠の一つとして提出された「憑依許可書」だ。
ビニールの小袋に入っている。
(*゚ー゚)「……一応証拠なんで、そろそろ返してもらえます?」
しぃが手を伸ばす。
それを避け、ツンは彼女を睨みつけた。
ξ#゚⊿゚)ξ「何で教えてくれなかったの!」
(*゚ー゚)「緊急性を感じなかったので」
ξ#゚⊿゚)ξ「すごく大事なことじゃない! どうして──」
(;,゚Д゚)「ツン、あんまりここで騒がないでちょうだい」
──ヴィップ警察署、おばけ課。
しぃとギコがここにいるというので、ツンと共に乗り込んだのが15分前のこと。
こちらをちらちら見てくる職員達に、内藤は会釈を返した。
-
ξ#゚⊿゚)ξ「ギコ! 検事はともかく、あんたまでこのこと隠してたのが信じらんないわ!」
(;,´Д`)「あーん、だって、それはあ……」
(*゚ー゚)「僕は僕の仕事があるので失礼します。その証拠はちゃんとギコに返しておいてくださいね」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと……!」
ツンの横を過ぎ、しぃが早足で歩いていく。
おばけ課を後にする背中を睨みつけていたツンは、溜め息を吐き出すと
近くにあった椅子に勝手に腰を下ろした。
ギコの机の上、証拠の入った大小様々な袋(証拠品袋というらしい。そのままだ)を持ち上げる。
その内の一つに、茶色い、やや太めの毛が見られた。
-
>( ^ω^)「……姉さん」
全く笑う場面じゃないのに笑っちまった・・・
-
ξ#゚⊿゚)ξ「2月2日の朝、ミセリさんの病室でトソンさんの『誓約書』が見付かった。
病室の警備についてたおばけ2体が消えていた。
同日に病室から『猫』の毛が採取された。
──これで緊急性がないって、あんたんとこの検事はどうなってんの」
(;,゚Д゚)「だからあ……」
どうも、今し方しぃ達から聞き出した情報を組み合わせると
そういうことになるらしい。
それらの事実を2週間も前に知っていながら、しぃもギコもツンに話していなかった。
そのことをツンは怒っている。
( ^ω^)「……結局のところ、トソンさんは今どこにいるんですかお?」
率直な疑問をぶつけると、ツンが口を結んだ。
顔から怒りの色が抜け、眉尻が下がる。
ξ゚ -゚)ξ「……トソンさん、ずっと私のところに顔を出してないの」
内藤の問いへの答えにはなっていないが、それに近いものではあった。
-
痕跡からして、ほぼ間違いなく、トソンとロマネスクは病室で遭遇している。
だとしたら──トソンは。ロマネスクは。
そのときどうしたのだろう。
(,,゚Д゚)「おばけ課のみんなでトソンさんを探してるわ。まだ見付かってないけど……」
2週間探して、まだ見付からないのか。
彼女のことだから、何かあれば、すぐにツンのもとに来る筈だ。
なのにツンはしばらく会っていない。
警察が捜索しても見付からない。
それらが示すのは──
(,,゚Д゚)「……しぃがね、トソンさんを見付けるまではツンに話さないでいようって言ったの。
いらない心配かけさせても、ツンの邪魔になるだけだろうからって」
ξ゚ -゚)ξ「……」
(,,゚Д゚)「あの子なりに気を遣ってたのよ」
(,,゚Д゚)「来週の水曜まで探して──それでも見つからなかったら
それなりの結論を出すことになるから、
どのみち、あんたに話すつもりではあったんだけど」
ツンはもう一度溜め息をつき、ギコに証拠を返して立ち上がった。
わかった。ありがとう。帰る。その三つを口にして、踵を返す。
内藤はツンとギコを見比べ、ギコに一礼してからツンを追った。
-
エレベーターを待つ。
足元を見下ろすツンの顔は硬い。
ξ゚ -゚)ξ「……トソンさん……」
( ^ω^)「……」
ξ゚ -゚)ξ「……どこに、いるのかしら……」
内藤に分かる筈もない。
ロマネスクに訊いたとて、あの様子では喋ってくれると思えない。
浮かぶ推測はあれど、それを信じたくはなかった。
( ^ω^)(……お礼を)
トソンへどうやって礼をしようか、悩んだのだ。
数年前のあの日、結果的に命を救われたのだから、
言葉だけでなく何か別の礼もするべきだと。
ツンの事務所に出入りしていれば、いずれ会えるだろうと考えていた。
ロマネスクが捕まったことが広まれば、すぐに事務所に来るだろうと考えていた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……落とした許可書を探してるんだわ。ね、そうよね。早く渡してあげないと」
( ^ω^)「……ですお、きっと」
来る筈だ。
今頃、いつものように町の中をうろうろしている筈だ。
きっと、その内ひょっこり顔を出す。きっと。きっと。
*****
-
あちこち回って疲れ果て、翌日の日曜日はごろごろして過ごし。
2月18日、月曜日。
登校し、教室に入ったと同時に、内藤は思い出した。
──土曜日の「町案内」。
ロマネスクのあれやこれやで忘れていた。
(-_-)「おはよう」
(´<_` )「はよ」
( ^ω^)「おはようおー」
変わった様子は特にない。
本日も反応は良好。
( ^Д^)「──……でさあ」
プギャーが、ちらり、こちらを一瞥した。しかしすぐに前へ向き直る。
彼と楽しげに話していた2人のクラスメートも内藤を見てきた。内藤が仕草で挨拶すると、返してくれる。
その2人は、町案内に参加した生徒の筈。
何も話していないのだろうか。
良かった。やはりプギャーだって、中学生にもなって、あんなことを繰り返す気はないのだろう。
-
5分、10分、と経つにつれ教室内に生徒が増えていく。
笑顔で交わされる挨拶。眠たげな生徒。いつも通りの光景。
ばたばた、階段を駆けのぼる慌ただしい足音が近付いてくる。
その音にヒッキーが顔を上げた。
(-_-)「何か課題出てたっけ」
(´<_` )「数学。授業中にプリント終わらなかったら宿題になる」
( ^ω^)「あー、モララー居眠りしてたから……」
直後、足音の主が教室に飛び込んでくるなり叫んだ。
(;・∀・)「ヒッキー! 数学のプリント写させてくれ!」
( ^ω^)(-_-)(´<_` )「ビンゴー」
(;・∀・)「へ?」
けらけら笑う3人に、モララーは息を整えながら首を傾げる。
しばらく笑っていると、順番に小突かれた。
クリアファイルからプリントを取り出すヒッキーの笑顔には呆れが混じっている。
-
(-_-)「挨拶も無しにいきなりそれ?」
(;・∀・)「ああ、おはよう。……ありがとう! ありがとうヒッキー、代わりに給食の牛蒡サラダやるから!」
(´<_` )「お前が食べたくないだけだろ」
(*^ω^)「おっおっお、この成長期に一品欠くのは気の毒だお、モララーに僕の分のサラダをあげよう」
(;・∀・)「プラマイゼロ!
──あ、そうだ、そうだ、ブーン! お前に訊きたいことあったんだ!」
この季節に不釣り合いな汗を拭って、モララーは内藤に顔を向けた。
瞳いっぱいに、好奇心を詰めて。
-
(*・∀・)「お前、幽霊見えるってマジ!?」
──心臓が、喉元まで持ち上がったような気分だった。
呼吸の仕方を一瞬、忘れた。
モララーの声は大きくて、教室内の会話が止んだ。
(;-_-)「何言ってんの急に……」
( ・∀・)「いや、プギャーが一昨日……」
「俺も聞いた聞いた」
「私もー」
他のクラスメートも同調する。
内藤は懸命に、引き攣りそうな顔を笑顔に留めた。
-
すごく悲しい…
支援
-
(´<_`;)「な──何だよ、何聞いたんだ!」
( ・∀・)「何って、別に、それだけ。
ブーン、小学生のときは霊感少年で有名だったらしいじゃん。
なあなあ、今は何か見えねえの!?」
( ^ω^)「……小学生のときは空想癖で。そういうこと言って遊んでただけだおー」
なんだ、とモララーが残念そうに言う。
皆も、中断させていた会話を再開した。
が。
( ^Д^)「──でもさ」
先程のモララーほどではなかったが、室内に響くには充分な声量。
また周囲は会話を途切れさせ、プギャーの方へ視線をやった。
-
( ^Д^)「結構『それっぽい』ことはあったんだぜー。
誰も触ってないのにブーンの筆箱が落ちるとか、何もないとこに声かけるとか、
あと、あれだ、──祟り」
( ・∀・)「祟り?」
( ^Д^)「ブーンと喧嘩したり、からかったりするとさ、
相手の身に必ず悪いことが起きんだ。怪我するとか物なくすとか」
喧嘩、とは。どういった行為を指すのだろうか。互いに争うことではないのか。
一方的に暴力を振られ、笑われた記憶しかないが。
プギャーは笑顔で語る。
ただの「思い出話」のように。
( ^Д^)「俺もブーンと喧嘩して『ちょっと』叩いたことあるんだけど
そしたら親父が仕事中に怪我してさあ、しかもそれが、
ちょうど俺とブーンが喧嘩してたのと同じくらいの時間だったりすんの」
(´<_`;)「──んなこと、偶然だろ」
( ^ω^)「……」
咄嗟に言葉が出なかった。
それがいけなかった。
空気が動かない。停滞する。明るい話題ではないと皆が察知する。
-
「──こえー! 前にブーンから借りた漫画汚しちまったことあるけど、俺も何か祟られんのかな」
1人の男子生徒が言った。
取り繕うような、明るい口調だった。
それに合わせて何人かが笑う。
( ^ω^)「しないお、そんなの。出来ない出来ない」
(;-_-)「……だ、だよね。そんなこと出来るならモララーとかとっくに死んでそうだよね」
(;・∀・)「ひでえ言い草!」
ヒッキーは冗談のつもりで言ったのではなかっただろうが、おかげで、今度こそみんな笑った。
空気が動く。まだ少しぎこちないけれど、いつもの教室。
「内藤君ほんとに幽霊見えないのー?」
(;^ω^)「だから見えないってば、もー」
何人かから冷やかしは受けたが、それも、担任がやって来てホームルームが始まると
完全に流れは消えて、続くことはなかった。
.
-
( ・∀・)「なあなあブーン、実は霊感あったりしない? 嫌いなやつ呪えたりとか」
(;^ω^)「モララーしつこいお」
(;-_-)「ほんと、そういう話好きだねモララーは……」
(´<_`#)「何が祟りだ、下らない!」
(;-_-)「弟者は弟者で、相変わらずそういう話大嫌いなんだね」
放課後。
昇降口で今朝のことを話しながら靴を履き替える。
モララーはすごい、と思う。
普通、霊感があるなどという話を証拠も無しにすんなり信じる者はそうそういない。
だからこそ内藤も小学校で苛められたのだ。
なのにモララーときたら。
良くも悪くも素直。その認識を改めて深めさせられる。
-
(´<_`#)「プギャーの奴、みんなに聞こえるようにあんなこと言うなんて酷いんじゃないのか!」
( ^ω^)「……悪気があったわけじゃないと思うお」
いや──悪気は、多分、あった。
しかしプギャーは、あくまでも「こんなことがあった」と語っただけだ。
昔のように、化け物だ祟りだ排除しろ、と言ったわけではない。
それが厄介なのである。
分かりやすく敵意と悪意をばらまいてくれれば、不穏な言動に出てくれれば、
周囲も抵抗感を持つ。プギャーに不信感を抱く。
けれども彼はそうしなかった。
故に内藤も何も出来ない。
むきになって否定すれば怪しまれる。
苛められていましたプギャーは悪い奴でしたと言えば、向こうも色々言い触らすだろう。
後手に回った時点で内藤が不利だ。
ともかく、みんな大して気に留めていないようなのが救いだった。
-
( ・∀・)「ホラーゲームやりたくなってきたなあ。そういやシリーズ物の新作出たんだっけ。
お年玉まだ残ってるしさ、今からそのゲーム買って、家でやろうぜ」
(´<_` )「断固拒否」
(;-_-)「僕もやだなあ」
( ・∀・)「かーっ、ノリ悪いな! じゃあこの前の格ゲーやるか」
(´<_` )「それなら構わない」
( ・∀・)「ブーンは?」
( ^ω^)「僕も──」
内藤君、と呼び掛けられた。
振り返る。
lw´‐ _‐ノv「やあ。あの件、どうなったかな」
眠たそうな顔。シュールだ。
ああ、そうだった。これも、ロマネスクの件に隠れてしまっていた。
-
(;・∀・)「あ! バレンタインの!」
まさか──とあらぬ疑いをかけるモララーへ、手で追い払う仕草をする。
( ^ω^)「そういうのじゃないから。
後で追うから、先に行っててくれお」
(;・∀・)「裏切り者ー! お前だけ彼女作るなんて許さねえぞー! 俺にも可愛い子紹介しろー!」
(-_-)「はいはい邪魔しない」
(;^ω^)「だからそういうのじゃないってば!」
(´<_` )「じゃあ後でな、ブーン」
弟者とヒッキーがモララーを引きずっていく。
弟者にはシュールの「依頼」について軽く話してあったので、
これから甘酸っぱい話をするわけもないと理解してくれているようだ。
シュールと共に昇降口の隅へ移動する。
-
( ´ω`)「あの……ごめんなさいお。まだ、全然……」
しょんぼりした表情を作った。
これで大体は許される。
( ´ω`)「実は、前々から騒がれてた事件の犯人が捕まって──
そのおばけの弁護をすることになって、ツンさん忙しいんだお」
lw´‐ _‐ノv「あー……そっか。しょうがないよね、弁護士なんだし」
lw´‐ _‐ノv「後回しになっても、とにかく見付けてくれればいいや。
もし見付からなくても──それはそれで、しょうがないのかなあ……」
( ^ω^)「見付からなかったら、お米返すようにツンさんに言うお。
あの人も、ちゃんと解決するまではお米に手をつけないだろうし」
lw´‐ _‐ノv「いや、いいよ。あれは依頼を受けてくれたことへのお礼であって、結果は関係ないんだから」
内藤も大概だが、彼女も同年代とは思えない落ち着きぶりだ。
ますますもって、涎を垂らし米にしがみつくツンの姿の駄目さが際立ってくる。
-
lw´‐ _‐ノv「あ、そういや、内藤君にもお礼するって言ったんだったな……どうしよう、米は先生にあげちゃったし」
(;^ω^)「いやいや、僕は何もしてないんだお! だからそんな気にせず……」
lw´‐ _‐ノv「私が納得いかん」
(;^ω^)「んー、じゃあ今度、何か手伝ってほしいことがあるときにでも声かけるお」
lw´‐ _‐ノv「おう、よく米俵とか担ぐから力仕事は得意だよ」
( ^ω^)「おっお、頼もしいお。──じゃあ、また今度」
lw´‐ _‐ノv「ん、またね」
( ^ω^)「ツンさんはまだ忙しそうだし、しばらくは僕が探してみるお」
lw´‐ _‐ノv「ごめんね、よろしく。私も頑張る」
昇降口を出て、校門の前で別れる。
2人の方向は反対。
数歩進み、あ、というシュールの声に足を止める。
振り向いてみると、シュールもこちらへ振り返っていた。
-
lw´‐ _‐ノv「内藤君、何か無理して笑ってるように見えるね。嫌なことあった?」
困ったことがあるなら相談には乗るよ。
そう付け足し、シュールは前へ向き直って歩き出した。
再び振り返ることもなく、そのまま角を曲がる。
一方の内藤は立ち止まったままで、彼女が視界から消えても、なかなか動けなかった。
頬を両手でぴしゃりと打つ。
しっかりしないと。
演技をして上手く立ち回ることが、自分の処世術なのだ。
*****
-
l从・∀・ノ!リ人「ジョルジュ先生ばいばーい」
⌒*リ´・-・リ「さようなら」
_
( ゚∀゚)「また明日なー。寄り道するなよ、知らない人に付いてくなよー」
流石妹者は担任に手を振り、凛々島リリと共に学校を出た。
遊ぶ約束をしていたので、まずはリリの家へ行き彼女の荷物を置いて、
それから2人で妹者の家へ──というルート。
寒さで鼻と頬を真っ赤にしながら、2人は歩く。
-
l从・∀・ノ!リ人「──でのう、妹者と姉者で、ブーン達にチョコ作ったのじゃ」
⌒*リ´・-・リ「妹者ちゃん学校にいっぱいチョコ持ってきてたけど、あれは手作りじゃなかったね」
l从・∀・ノ!リ人「あれは媚びと恩を売る用じゃ。10円で買えるチョコだろうと、可愛い子からもらえば嬉しいもんなのじゃ。
どんなに冴えない男子でも末は社長かもしれんのじゃから、
最低限の出費で出来る最大限の投資と言えよう」
⌒*リ;´・-・リ「妹者ちゃんの言うこと、たまに難しい」
l从・∀・ノ!リ人「実は妹者もよく分かっとらん。──む?」
横断歩道の白い部分だけを渡っていた妹者は、反対側の道に立つ男を見付けて首を捻った。
どこかで見たような。はて、どこで。
美形や金持ちならば、一度会っただけでもちゃんと顔も名前も覚えていられるのだが。
あの男は美形ではないしどことなく野暮ったい。
l从・∀・ノ!リ人「えーと……」
⌒*リ;´・-・リ「! アサピー!」
l从・∀・ノ!リ人「おお、それじゃそれじゃ」
(-@∀@)「おンやァ?」
そうだ、アサピー。
幽霊裁判で見たのだった。
白衣ではなく真っ白いトレンチコートを着ているので、すぐにはぴんと来なかった。
-
(-@∀@)「オジョーサン、妹者サン、お久しぶりです」
⌒*リ´・-・リ「何してるの?」
(-@∀@)「センセイに頼まれて色々調べてるんデス。
モー参っちゃう、実体化すると寒くて寒くて……」
l从・∀・ノ!リ人「じったいか、とやらをしなければいいじゃろう」
(-@∀@)「人間様相手にも聞き込みしろとセンセイが仰るもんでェ……」
ξ゚⊿゚)ξ「おーい、アサピー」
l从・∀・ノ!リ人「おお、出連さん」
噂をすれば。
黒いコートと黒いマフラー、黒い手袋で完全防備のツンが歩いてくる。
妹者とリリは、ぺこりと頭を下げた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「あら、お2人さんお揃いで。この間はごちそうさま、妹者ちゃん」
l从・∀・ノ!リ人「姉者が、またご飯食べに来てねって」
ξ゚⊿゚)ξ「今抱えてる案件が諸々終わったらまた行くわ。いいお米もらったから持ってくわね。
アサピー、今度はあっち」
(-@∀@)「ハイハイ、お供シマスヨどこまでも」
2人が連れ立って進んでいく。
ちょうど妹者達の進路と同じ方向なので、付いていくような形になってしまった。
(-@∀@)「オジョーサン調子はいかがデス? 日々は楽しいデスカ?」
⌒*リ´・-・リ「ん、楽しい……妹者ちゃんのおかげで友達増えた」
l从・∀・ノ!リ人「妹者は天使じゃのう……」シミジミ
ξ゚⊿゚)ξ「私に負けず劣らずといった具合ね」
(-@∀@)「アッハッハ、センセイ、アッハッハ」
⌒*リ´・-・リ「お母さんも仕事落ち着いて、前よりは帰ってくるの遅くない」
(-@∀@)「それはそれは。ナラ、もう、誰かを呪うよーなこともありませんネ」
ξ゚⊿゚)ξ「おっと、こんなとこに妖怪無神経眼鏡が」
ツンが肘鉄を食らわせる。
ありがとうございますと答え、アサピーは脇腹を摩った。
-
⌒*リ;´・-・リ「……去年、ごめんなさい……」
l从・∀・ノ!リ人「いいのじゃ。妹者は女神じゃからの」
(-@∀@)「ワーオどんどん図々しく。
……人間様は普通に暮らしてるつもりでも色んな人を呪い、呪われてしまうものデス。
オジョーサンの言霊がいい例デスナ」
(-@∀@)「しかし妹者サンみたいな方は、そういうコトが滅多にない。イヤハヤ自信過剰な博愛主義とは無敵だ。
オジョーサンもネ、妹者サンともっと仲良くなって、もっと自分に自信をつければ、
更に良い影響を受けられマスヨ」
「いい人と友達になれましたな、それもオジョーサンの素敵な運のお導きです」。
そう締めたアサピーの言葉の全ては理解出来なかったが、
ともかく自分が褒められたのは確実に把握したので、妹者は満面の笑みを浮かべた。
l从・∀・ノ!リ人「そうそう、そうなのじゃ。
リリちゃんはもっと妹者を利用していいのじゃ」
⌒*リ;´・-・リ「利用って、そんなので妹者ちゃんと仲良くしてるんじゃないもん」
l从・∀・ノ!リ人「それはいいことじゃのう、ならもっと仲良くなろう」
ξ;゚⊿゚)ξ「……いい性格してるわ、本当に」
自分でもそう思う。
足元の雪を掬い上げ、無意味に丸めながら黒いコートと白いコートの後ろを歩く。
リリが、躊躇いがちに口を開いた。
-
⌒*リ´・-・リ「……ねえアサピー、普通に暮らしてても人を呪うって、どういうこと?」
(-@∀@)「ンー? そのままデスヨ。オジョーサンは、
『普通に』妹者サンに嫉妬して、『普通に』悪口を言って呪ってしまったデショウ。
ソーイウ、そこら辺にありふれてる行いが呪詛に繋がってしまうんデス」
⌒*リ´・-・リ「そっか……じゃあ、呪われる、っていうのは?」
(-@∀@)「どうしましたオジョーサン、呪術に興味がおありで? 僕に弟子入りします?」
ξ;゚⊿゚)ξ「だめよリリちゃん、こいつみたいな人格破綻者になってしまうわ」
⌒*リ;´・-・リ「アサピーみたいになりたいわけじゃなくて、ただ気になるだけです」
l从・∀・ノ!リ人「妹者も面白い話だと思うのじゃ」
おばけとか呪いとか、そういうおどろおどろしい、不思議な話が子供は結構好きだ。
アサピーは「んん」と唸り、歩みを止めずに左手の人差し指を立てた。
-
(-@∀@)「──呪詛ってのはイロイロありますが、一番多くて、一番手軽で、一番確実な方法があります」
⌒*リ´・-・リ「……言霊?」
(-@∀@)「イイエ。──いや、それも含むのかな。ただ、そういうわけではなく。
誰にでも……老若男女、この世にいる人すべてが『作り出せる』呪いがあるんデスヨ」
l从・∀・ノ!リ人「どんなのじゃ?」
(-@∀@)「──思い込み、です」
*****
-
「──せんせー、怪我人! 湿布くださーい」
「はいはい、そこ座って。これにクラスと名前書いてね。何やったの?」
「部活のトレーニングで、校内の走り込み……痛い痛い! 先生優しく!」
「こいつ足滑らせて転んだんです」
「捻挫ね。歩けるならそう酷いもんじゃないだろうけど、一応病院で診てもらった方がいいかも。
──あれ、ハサミは……あ、職員室か。ごめんね、ちょっと待ってて」
「はーい」
「……」
「……いてえなあ」
「なあ、校内ランニングなんて今まで何回もやってたじゃん」
「ん? うん」
「何で転んだんだよ」
「何でって言われても、なんか足が上手く動かなくて……」
-
「……お前さ、朝、ブーンのこと馬鹿にしたじゃん」
「馬鹿にって──からかっただけだろ」
「でもブーンは嫌そうだったし」
「……」
「……祟り」
「──やめろよ、あるわけないじゃん。……違うよ」
*****
-
メガネのトレンチコートと黒ずくめの不審な男女二人組がが少女二人に声をかける事案
-
(-@∀@)「たとえば嫌いな相手にネ、『お前に呪いをかけたぞ。これからお前に良くないことが起きるぞ』と、
こう言ってやるンです。するとどうなると思いマス?」
⌒*リ´・-・リ「……わかんない」
l从・∀・ノ!リ人「なーんか子供の負け惜しみみたいで、妹者だったら鼻で笑ってしまうかもしれん」
ξ;゚⊿゚)ξ(小3に『子供の負け惜しみ』と言われるって、相当よね)
(-@∀@)「ええ、誰だってそう感じるデショウ。
馬鹿らしい、呪いなんてあるわけない──と」
(-@∀@)「けれど、そこで何か不幸が起きたらどうなりマス?
怪我や、失敗や、思わぬ災難」
l从・∀・ノ!リ人「……呪いのせいかなって、たぶん考えるのじゃ」
(-@∀@)「そうなんデス。──ちょっと転んだだけ。ちょっと手元が狂っただけ。
そういう、日常的な……。いつでも起こり得る、そして今までにも何度も経験したような小さな不幸であっても、
人は『呪いの効果だ』と──思い込んでしまう」
-
l从・∀・ノ!リ人「それ、『呪い』って言えるのじゃ? 本当はただの偶然なのに」
(-@∀@)「呪いをかけられた側が『これは呪いなんだ』と信じて怯えれば、成功したも同然デショウ。
本来ならば感じる必要のなかった恐怖や不安を与えられたんですカラ」
呪いのせいで不幸が起きたわけではないが──
呪われたせいだ、と思わせ恐怖させた「結果」そのものは、たしかに呪詛によるものなのだ。
⌒*リ;´・-・リ「そんなのでいいんだ……」
(-@∀@)「はい。人間ってそんなものデス」
(-@∀@)「この呪いの厄介なトコロは、終わりが見えないことです。
身の回りの不幸を全て呪いのせいにしていくカラ、どんどん広がっていく」
*****
-
『題:Re:
本文:じゃー明日持ってくねー ところでさ、なんか変なことなかった?』
『題:Re:Re:
本文:よろ。変なことって??』
『悪いこと』
『さっきおばーちゃんが喘息の発作で病院行ったよ。入院するみたい』
『うわーヤバイね まじでタタリかも』
『なにそれ。朝言ってたやつ?』
『内藤くんのことからかった人、みんな何かあったらしいよ 部活で足ケガした奴もいるって』
『えー・・・あたしちょっと笑っただけじゃん。祟りとかウソでしょ』
『でも本当にみんなケガとかしてるよ 次あたしかも どーしよ』
『下校中に車とぶつかりかけたじゃん、あれかもよ。もうちょっとで死んでたりして』
*****
-
(-@∀@)「呪術師というダケで、皆サンは僕のことを凶悪な陰険者と決めつけますが──
マァ事実ですけど、でもネ、何も僕ら呪術師だけが持つ技術というワケじゃナイんですよ、呪詛って」
(-@∀@)「いま僕が言った方法なら、誰にだって出来る。
ま、完璧とは言えませんがね、当然」
l从・∀・ノ!リ人「一番恐いものは人間、ってやつじゃのう」
あまり深く考えずに、分かった風な口をきく。
すると、アサピーがくつくつ笑った。
(-@∀@)「馬鹿言っちゃいけない。人間ってやつァ、そうやってすぐ驕ってしまう。
驕り高ぶるから勝手な呪いを生み出し自滅する」
くるり、アサピーが身を翻して立ち止まる。
すぐ後ろを歩いていた妹者とリリも足を止めた。
彼はにやにや笑いながらしゃがみ込み、真っ正面に立つリリの鼻先へ人差し指を向ける。
-
(-@∀@)「おばけと関わる機会が少なく、生きた人間とばかり接しているカラ
目の前の人間への応対に必死で、相手が恐ろしく見えてしまうだけ。
どんな極悪人でも、神仏に簡単に捻り殺され得るくせにね。おかしな話デス」
妹者の手にある雪玉を取り上げる。
ふ、とアサピーが息を吹き掛けると、雪玉はどろりと溶け、指の間から地面へ零れていった。
(-@∀@)「だからねオジョーサン、妹者サン。
おばけを見付けたからって、それが知り合いだからって、
話し掛けちゃァいけません。見て見ぬふりコレ大事」
⌒*リ;´・-・リ「……」
(-@∀@)「人間はたしかに恐いデスヨ。だから、その相手をすることだけに必死になればイイ。
もっと恐い相手となんて、関わらない方がイイに決まってるんデスから」
(-@∀@)「特に僕みたいな輩からは、嫌われても気に入られても良くないンだ」
ξ゚⊿゚)ξ「アサピー」
(-@∀@)「ハイハイ」
数メートル先からツンが呼び掛ける。
ちょうど分かれ道で、彼女達とこちらの行き先は別々だった。
立ち上がったアサピーはコートの裾についた雪を払い、向こうで待っているツンを見遣る。
-
(-@∀@)「おばけと関わらざるを得ない人達は、どんなに日常が恐ろしいんデショウねェ。──バイバイ、お2人」
妹者はアサピーに挨拶を返し、それから大きな声でツンにも別れを告げた。リリも同じように。
2人が角を曲がる。
妹者は腕を組んだ。
l从・∀・ノ!リ人「……ふうむ」
見透かされたような気がして、そしてその上で釘を刺されたようで、少し悔しい。
まあ呪術師なのだから「釘を刺す」のはお得意だろうが。
おばけ。呪い。幽霊裁判。
クラスの子達が知らないであろう世界を自分は知っている、その関係者と知り合っている──と
いくらか優越感に浸っていたかもしれない。
たしかに、今後も関わり続けるには、妹者もリリも不相応だ。
触らぬ神に祟りなし。神も幽霊も妖怪もみんな。
アサピーの言うことは正しい。
妹者は何よりも自分の身が一番可愛いので、自身に有益な忠告は素直に受け入れる。
l从・∀・ノ!リ人「アサピーさんはいい人じゃのう」
⌒*リ;´・-・リ「……それ、本人の前で言ったら怒るよ、多分」
先の2人とは別方向へ曲がり、これまでのことなどなかったかのように
学校に関する話題へ切り替えた。
-
(-@∀@)『おばけと関わらざるを得ない人達は、どんなに日常が恐ろしいんデショウねェ』
l从・∀・ノ!リ人(……ブーンは……)
同居人の姿が浮かぶ。
彼自身の目から見た彼の日常とはどんなものだろう。
ツン達と進んで関わる彼は。
*****
-
支援
-
ワカッテマスは携帯電話を下ろした。
手元のメモ帳に目を落とす。
今週土曜日、夜9時から。場所は廃工場。
( ><)「どうだったんです?」
( <●><●>)「今週の土曜日に、裁判だそうです。丁度バイトも入ってないし、行こうかと思ってます」
( ><)「あの子も裁判見てみたいって言ってたんです! 連れていってあげてくれますか?」
「あの子」。
最近この部屋に遊びに来る少女の霊だろう。
( <●><●>)「それは構いませんが。ビロードはどうするんです?」
( ><)「僕はいいんです、難しい話は分かんないですから……」
たぶん寝ちゃいそうで、とビロードが苦笑する。
幽霊裁判などというものを前にして居眠り出来るのも、それはそれで凄かろう。
-
( ><)「ぽぽちゃんは?」
"(*‘ω‘ *)" ポッ
ぽぽちゃんも行かないらしい。
そもそも彼女はこの部屋から出られるのだろうか。
地縛霊、とツンは言っていたけれど。
( <●><●>)「じゃあ夜は留守番よろしくお願いします」
( ><)「いつものことなんです」
それもそうか。
一緒に留守番しましょうね、とビロードがぽぽちゃんに笑いかける。
あまり構ってやれなかったので、仕方ないと言えば仕方ないが、
兄である自分よりぽぽちゃんの方にばかり懐いている気がする。
──しかし、それにしても。
法廷が廃工場とは。
( <●><●>)(僕、騙されてませんよね)
あの弁護士、夜中の廃工場へ自分を誘き出し、既成事実でも作ろうとしているのでは。
半ば本気でワカッテマスはそう思った。
*****
-
本当に残念なワカッテマスだな
-
──木曜日。
月曜日に霊感や「祟り」に触れられはしたが、火曜水曜は特に何もなかった。
本当に──何もなかった。
ただ、内藤をちらちら見る視線がやけに多かった、気がする。
気がするだけで、本当はそんなことないのかもしれないが。
内藤は手の甲を見下ろした。昨日、転んで擦り傷を作ってしまったのだ。
(´<_` )「みんな気にしてないんだろ。あんなの、そうそう信じる奴もいないし」
( ^ω^)「……だおね」
通学の道を行く。
寒さのためか鼻を赤くした弟者の言葉は、呆れたような色合いだった。
(´<_` )「とりあえず、出連さんのとこ行くのはなるべく控えた方がいいかもな。
あんな話が出た後で、あの人と一緒にいるとこ見られたら面倒だ」
( ^ω^)「分かってるお」
ここ数日は事務所へ寄っていない。
内藤がいなくてもアサピーなりドクオなり、ツンには助手となり得る者がいるし。
とりあえず、空いた時間は素直キュート探しに費やしている。
-
( ^ω^)(……トソンさんは、見付かったんだろうかお)
('A`)「おおーい、少年ー」
( ^ω^)(うわー)
何か来た。
どうせ霊と会うならトソンかキュートがいいのだが。
思えば、ツンよりもこの浮遊霊との付き合いの方が長い。
何なら、こいつとさえ関わらなければ、ツンの事務所に出入りするレベルにはならなかった気さえする。
('A`)「お前、最近事務所来てないんだって? 事務所が片付かないって弁護士が嘆いてたぞ」
( ^ω^)「自分で掃除しろとお伝えください」
(´<_`;)「独り言も禁止!!」ゾワワァ
冷たいな、とドクオが鼻白んだ。
事務所に寄らないとはいっても、気になることは山ほどある。
トソン。日記と手帳のコピー。ロマネスク。キュート。
('A`)「まーだ悩み事の解決できてねえのか? なに悩んでんだよ。
あ、妹探しの件? 手伝ってやろうか」
( ^ω^)「手伝ってくれるならありがたいですけど」
(´<_`;)「何もないところを見るな! 何もないところに喋るな!」
-
学校に着く。
靴を履き替えていると、少し遅れてヒッキーがやって来た。
(;-_-)「……あ……」
(´<_` )「おはようヒッキー」
( ^ω^)「おはようおー」
(;-_-)「う、うん。……おはよ」
さっさと内履きに替えて、ヒッキーはそそくさと教室に向かっていった。
2人は顔を見合わせる。
(´<_` )「……どうしたんだ?」
( ^ω^)「さあ……」
('A`)「何だ、友達と喧嘩したのか?」
まだ付いてこようとするドクオをこっそり蹴飛ばし、内藤と弟者も歩き出した。
*****
-
日は過ぎる。
何一つ、事が進まぬまま。
ならば、無理にでも進めるしかなかろう。
ξ゚⊿゚)ξ「……うっし、やるか」
2月23日、土曜日。午後8時。
廃工場。
相対する長机。向かって右にある机、弁護人席に立ち、ツンは両手で頬を叩いた。
反対側の机には、とっくに見慣れた学ランと女装。
-
(*゚ー゚)「何を急に顔なんか叩いてるんです」
(,,゚Д゚)「あんた顔だけは綺麗なんだから大事にしなきゃ駄目よ」
ξ゚⊿゚)ξ「私は全ての生き物に好かれてしまうからね、季節外れの蚊が2匹いっぺんに寄ってきただけよ」
川 ゚ 々゚)「くさい」
【+ 】ゞ゚)「意味なく嘘をつかないでくれるか」
前回は弁護人席に座っていたオサムとくるう。
今日はいつもの位置だ。だが、前よりますますくっついている気がする。
くるうがオサムの首に頬を擦りつけながら「オサムはいい匂い」などと。オサムはオサムでくるうの腰を抱いて。
神隠し罪の裁判で、そういった振る舞いを指摘されたのではなかったか。反省はしないのか。
いい匂いって、見た目の年齢で言えば加齢臭のしそうなオッサン神に向かって何を言っているのか。
(*゚ー゚)「ツンさん、声に出てますよ」
ξ゚⊿<)ξ⌒☆「カレーって美味しいわよねっ」
(,,゚Д゚)「ええ、まあ、加齢は加齢で美味しそうだとは思うわ、あたし」
【+ 】ゞ゚)「鰈はたしかに美味い」
川 ゚ 々゚)(華麗臭……オサムの匂い……)
ξ゚⊿<)ξ「……」
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ。ツッコミ係がいないんだけど」
(*゚ー゚)「何ですかその精神の磨耗が激しそうな係は」
(,,゚Д゚)「ブーンちゃんどうしたの?」
-
【+ 】ゞ゚)「内藤ホライゾンのことだから、この裁判には絶対に顔を出すと思っていたが」
──開廷1分前。内藤が、まだ来ていない。
昨日、裁判の日取りも法廷の場所も教えたのだが(わざわざ流石家へ赴いて)、
「分かりました」としか返ってこなかった。
内藤は表情を読みづらい。
ぶりっ子をしているときは喜怒哀楽のいずれも巧みに表すが、
まるで反動のように、素の状態ではなかなか感情を顔に出さない。
「素」──穏やかな笑みに見える顔付きのまま、彼は様々なことを考えている。
せいぜい、驚いたときに少しだけ目を見開いたり、不快さを眉間の皺で表したりする程度。
よほど追い詰められていなければ。
だからツンはたまに彼が心配になる。
彼は所詮、子供なので。
表情の動かし方は達者でも、自身の本心、感情の処理は上手くないように見えるのだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ま、あの子も中学生ですしね。そうそう夜に出歩いてらんないのかも」
(*゚ー゚)「ツンさんのくせにマトモなことを」
ξ#゚∀゚)ξ「『くせに』?」
10近くも年下の少女の無礼な言い様に、ツンは片眉と口角を吊り上げる。
売り言葉に買い言葉、となりかけたところを、他方の声が阻害した。
「いいから早く始めろよ」
「もう開廷の時間だぞ!」
「今回も期待してるよ弁護士さん──」
──囃し立てるのは、幾人かの人間と、何体もの幽霊、妖怪、その他異形の者。
ツンは横目に、それらが座る「傍聴席」を見た。
-
【+ 】ゞ゚)「今回も満員御礼だな」
木槌で手のひらを打ち、オサムが呟く。
化け猫の事件は、被害者の多さと発生地域の広さから注目度が高い。
故に傍聴希望者もかなりの数があった。
とはいえ逮捕から裁判に至るまでの流れがやや急だった上、地方の片田舎で裁判が開かれるということもあり、
捌ききれぬほどの人数──というほどもなかった。
神隠し罪のときには及ばない。あれは神様の裁判という物珍しさがあったから。
これで審理が数回に分けられれば、傍聴人もどんどん増えていくだろうが。
【+ 】ゞ゚)「準備はいいか?」
(*゚ー゚)「もちろん」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫です」
緊張しないわけがない。
普段は傍聴人など内藤くらいしかいないのだ。
N県での裁判も、前回の裁判も、正直に言うと、普段よりよっぽど恐かった。
オサムが木槌を振り上げる。
傍聴席を背にして立ち、オサムと真正面から向かい合う男をツンの瞳が捉えた。
-
( ФωФ)
ロマネスク。人間の姿。
ずっと、ずっと、沈黙を保っている。
どうするべきか──自分は、未だに分からない。
【+ 】ゞ゚)「これより化け猫事件の裁判を開廷する」
かあん。
高らかな宣言。残響。
ξ-⊿-)ξ(……始まったもんはしょうがないわ)
やれることをやろう。
黙ってたって事が進まないのだから、むりやり進めねば。
*****
-
手順はいつも通り。
まずは被告人の確認、いわゆる人定質問。
【+ 】ゞ゚)「被告人。名前と……生年月日、を聞いたところで、こちらも、確認は……とれない、が」
どうしたものかと迷っているようで、ぎこちなく言いながら、オサムはしぃを見た。
しぃの涼しげな瞳がオサムからロマネスクの方へ滑る。
(*゚ー゚)「まあ一応」
【+ 】ゞ゚)「うん。じゃあ名前と生年月日。覚えていれば」
( +ω+)
【+ 】ゞ゚)「……」
(*゚ー゚)「……被告人」
苛立ち混じりにしぃが幾度か呼ぶが、相手は目を閉じたまま動かない。
軽く振られた木槌が小さな音を発すると、ようやく瞼を持ち上げた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「ロマネスクさん、裁判始められないわ。始まらないと終わりもしないわよ」
( ФωФ)「……ロマネスクである。いつ生まれたかは知らん」
【+ 】ゞ゚)「猫又──でいいな?」
ロマネスクはまた黙る。
完全に持て余したようで、オサムはツンへ目を向けてきた。
ξ゚⊿゚)ξ「はい。本来の姿は猫ですし、その際には尻尾が二つあります」
猫又。歳をとった猫が妖怪となったもの。
尻尾が二股に分かれている、というのは有名な話。
二度目にロマネスクと会ったときに、猫の形態をとった彼の尻尾を確認させてもらった。
ぱっと見では大振りな尻尾が一つあるだけだったが、
よくよく観察してみれば、2本の尻尾が重なり合って一本のように見えるだけだと分かった。
川*゚ 々゚)「猫のとき可愛かった」
【+ 】ゞ゚)「くるうが一番可愛いよ」
よくもまあ、そんな歯が浮くような台詞を。
いや、彼の場合はお世辞もなく本音100%なのだろうが。
-
【+ 】ゞ゚)「初めから妖怪だったのではなく、元々は普通の猫だったんだな?」
( +ω+)「猫である」
【+ 】ゞ゚)「猫又なら、長生きした猫がそのまま妖怪になったものだから──
享年とかは無いな。分かった。
今から検事が起訴状を読み上げるから、ちゃんと聞いておいてくれ」
( +ω+)
【+ 】ゞ゚)「うん、まあ、聞かんこともないだろう。検事、頼む」
開廷からものの3分でオサムは慣れたようだった。
ギコなど苦笑いを浮かべている。
しぃはいつもと変わらぬ所作で書類を持ち上げた。
-
(*゚ー゚)「──公訴事実」
どことなく落ち着きのなかった傍聴人達が、一斉に居住まいを直したような気がした。
ツンは何気なく彼らの顔を順繰りに眺め──
( <●><●>)
ξ゚⊿゚)ξ(あら、来たのね)
3列目にワカッテマスの姿を認めて、僅かに目をすました。
ビロードと「ぽぽちゃん」はいない。
(*゚ー゚)「7年……いや、8年前、平成17年8月20日。昼、12時15分頃。
被告人は、被害者──三森ミセリに断りなく憑依した」
しぃの声が耳に入り、意識を正面に戻した。
(*゚ー゚)「その状態で町の中を移動し続け、同女の体力を著しく消耗させた後……
午後7時40分。道端で憑依を解き、意識の戻らない被害者を残してその場を去った」
未だに被害者は昏睡状態にある──と言って、しぃは書類をめくる。
トソンの裁判で何度も議論した。
あのときとは、既に様相が違っている。
-
(*゚ー゚)「さらに被告人は昨年、平成24年7月13日午後10時過ぎに
被害者が眠る病室に忍び込み、被害者の首へ手を伸ばしていたところを
通りすがりの霊に見付かり、逃走した」
通りすがり。トソンだ。
トソン──
彼女は終ぞ、事務所に顔を出さなかった。
しぃは続いて、その件がきっかけで病室前に警備がつけられたことを説明する。
おばけ課の警官と、協力者であるおばけの二人体制。
(*゚ー゚)「しかし同年8月10日、午後11時過ぎ。警官が席を外し、残された霊が僅かに目を離した隙に、
またも被告人が病室に現れた。すぐに発見され、また逃走──
警備の霊が追いかけたものの、追いつかず、取り逃した」
「警備の霊」はドクオ。
警察に歯向かわぬように弱い霊を使おう、という流れで雇われ、
いざロマネスクを捕らえられなかったとなるや否や
やはり強い霊の方が頼りになる、と外されたのだから、彼も気の毒なことだ。
ロマネスクは、もう飽きたと言わんばかりにうんざりしたような目をしぃに向けた。
-
(*゚ー゚)「そして今年2月1日。その日の警備には、2体のおばけが当たっていました。
午後11時から午前0時の間に、被告人はまたまた病室を訪れ
警備のおばけを──殺した」
言って、ほんの3秒、間をあける。
しぃの瞳が書面を追い、一度ツンへ向けられ、すぐに戻った。
(*゚ー゚)「そこへ通り掛かった浮遊霊──これは昨年7月に居合わせた霊と同じです。
被害者の旧友であった都村トソン。彼女までをも殺害したものの、
その間際、同女がナースコールを鳴らしたために、今回も被害者に手を出すことなく逃げ去った」
殺害。
は、と、ツンは短く息を吐き出した。
聞きたくなかった言葉。──うっすらと、感付いてはいたこと。
揺らぐ思考を、むりやり真っ直ぐに保つ。
ここで感傷に浸っていてはいけない。審理は始まったばかりなのだから。
唇を噛み、沸き立つ感情を隅に追いやる。後で取り出せばいい。いま見るべきではない。
逃げてばっかりだな──傍聴席から囁きが聞こえた。薄い嘲笑。
ロマネスクが俄に怒気を孕んだ目で睨みつけ、しかしまた瞼を下ろした。
-
(*゚ー゚)「罪名及び罰条!
憑依の罪、つきまといの罪並びに殺霊罪──
おばけ法第61条の第2項、第88条、第100条!」
(*゚ー゚)「以上の事実について、審理を願います」
憑依罪とつきまとい罪は、ミセリに対しての犯行。
過去にも被害者は何人もいるようだが、今回はひとまずミセリに関する事件のみを扱う。
今回の審理、判決如何によって、過去の事件も改めて吟味することになるのだろう。
殺霊罪は文字通り、おばけを殺す──消し去る罪。
こちらの被害者はミセリではない。
【+ 】ゞ゚)「被告人から何か意見は」
( +ω+)「我輩は『ひこくにん』ではなくロマネスクである」
【+ 】ゞ゚)「形式として一応な」
それ以外の発言は無かった。
起訴内容の否認も是認もしていない。
-
相変わらず中編は読んでて胸がザワザワする
火のついた導火線を見つめてる気分だ
-
(;,゚Д゚)「何だかねえ」
(*゚ー゚)「弁護人に訊いた方がいいかもしれません。
そもそも弁護人、そちらが無罪を主張したいのか、減刑を望んでいるのか、全て認めるのか
未だに伺っていませんが」
ξ゚⊿゚)ξ「それは審理を進めていけば自ずと分かるわ」
(*゚−゚)「まさか、まだ決めてないわけじゃありませんよね」
図星。
何度か面会はしたが、結局ロマネスクは一つとして語らなかった。
かといって罪を認めているようにも──ツンには思えなかったのだ。
何にせよ手探りでいくしかない。
しぃの冷ややかな視線に、ひとまずウインクを返す。
可愛げに免じてくれるかと思いきや、一層厳しい表情になってしまった。おかしい。
もはや軽蔑すら感じられる顔付きのまま、しぃは別の書類を手に取った。
(*゚ー゚)「まずは被告人の来歴から話しましょうか」
【+ 】ゞ゚)「そうしてくれ」
-
(*゚ー゚)「被告人は25年も前、G県サロン市にある寺──ラウン寺の境内に出入りするようになり、
以降、同寺にて飼われていました」
証拠として、ラウン寺の古びたパンフレットを掲げるしぃ。
ツンの手元にもある。ギコが入手してきてくれたもの。
最終ページに、おまけのような形で猫が紹介されている。
(*゚ー゚)「ロマネスクと名付けられ、僧侶や参拝客らに可愛がられていた彼ですが──
少しばかり『変わった』ところのある猫だったそうです」
川 ゚ 々゚)「どんな?」
(*゚ー゚)「霊障といいますか……不可解な現象に悩まされている人、
あるいは突然不幸に見舞われるようになった人が寺を訪れると、
この猫がまとわりつき、にゃあにゃあ鳴くというのです」
-
(*゚ー゚)「初めは誰もその共通点に気付きませんでしたが、
僧侶の1人が、ふと、猫が擦り寄る客はいつも霊障の相談に来る人ばかりだなと思い、
その後も注意して観察した結果確信するに至ったそうです」
(,,゚Д゚)「障り、祟り、呪い。そういうのに関わってる人を見分けられたってことよね、つまり」
この事実は寺の中でのみ噂されていたという。
だが、ラウン寺に残されている過去の日誌や、古くからいる僧侶の証言で確認できる。
この時点で、既に猫又になっていた筈だ、としぃが言う。
「尻尾の根元に、小さな毛の房があった」という記述が残っていたらしい。
当時はまだ2本目の尻尾が小さかったのだろう。
【+ 】ゞ゚)「猫は鳴くだけなのか?」
(*゚ー゚)「ええ。特別、何かするわけでもなく。
ただ、寺の人達にとってはいい目安になっていたでしょう」
(,,゚Д゚)「アドバイスしたり徳の高い話聞かせたりするくらいならお寺さんの仕事の内だけど、
除霊とかお祓いするような場所じゃないから。
にゃんこが騒いでくれれば、もっと相応しい相談先を紹介する準備ができるってわけよ」
【+ 】ゞ゚)「坊主や相談者の役には立ってたんだな」
ロマネスクが善意で行動していたのか、はたまた別の目的があったのかは定かでない。
何しろ彼が語らないので。
深く考えることもなく、「なんとなく気になる」相手にまとわりついていただけ──という可能性だってある。
-
(*゚ー゚)「また、寺で飼われていたとは言うものの──放し飼いのような状態だったので、
ふらりと外に出て、数日すると戻ってくる、ということがよくあったと言います」
(*゚ー゚)「彼はその間にも、憑依事件を起こしていたと思われます」
ξ゚⊿゚)ξ「根拠は?」
(*゚ー゚)「被告人が寺で飼われるようになってから8年後の春先。今から17年前ですね。
G県のヒナン町に住む、拝み屋の男性が不審死を遂げました」
先週しぃに渡された大量の資料の中にもあった。
その概要を、しぃが説明する。
-
(*゚ー゚)「──その日、男性は自宅の一室に呼んだ客のお祓いをしていました。
一度別室に移り休憩した後、再び客のもとへ戻ってきた男性は、
それまでの穏やかな物腰とは打って変わって、奇妙な言動をし始めたそうです」
(*゚ー゚)「『やっと取り憑けた』『人の体ってのは変な感じだ』──などとね」
【+ 】ゞ゚)「ずっと猫だった者がいきなり人間の体を使うとなると、そりゃあ感覚の違いはあるだろうな」
ξ゚⊿゚)ξ「ロマネスクさんは、こうして人間の姿にもなれていますが」
(*゚ー゚)「当時は他者に憑依する程度の力しかなかったのかもしれない」
まあ、妥当な結論だ。
猫又は歳を重ねるごとに出来ることが増えていく、という説もあるし。
ツンは資料群の中から、件の拝み屋に関する書類を引っ張り出した。
証言は、当時、その拝み屋に師事していた助手によるもの。
残念ながら助手には霊を見るほどの力がなかったので、拝み屋に憑いた何者かの正体は誰も分からない。
(*゚ー゚)「話を戻しましょう。──そして男性は家を飛び出し、
本人が所有していた裏山へと駆けていきました。
それなりの大きさの山だったので、捜索してもなかなか見付からず……」
(*゚ー゚)「翌日になってようやく、山の奥で首を吊って死んでいるのが発見されました」
-
ξ゚⊿゚)ξ「吊るためのロープとか持ってたの?」
(,,゚Д゚)「この人、お祓いするときは相手の周囲に縄を張って簡易な結界を作る方法でやってたんですって。
で、家を飛び出す直前に、その縄を持って……」
ξ゚ -゚)ξ「ふむ」
首吊り。縄。ボールペンで書類に補足する。
今回の裁判は、こちら側の持つ手掛かりが本当に少ない。アサピーやオサムのときよりも、更に。
少しでも気になったことはきちんと留めておかなくては。
ξ゚⊿゚)ξ「この件がロマネスクさんの仕業だって言いたいのよね?
たしかにおばけによるものではあるみたいだけど、それがロマネスクさんだと特定できる証拠は?」
(*゚ー゚)「物証はありません」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、この事件が起きたとき、ロマネスクさんがお寺にいなかったとか?」
(*゚ー゚)「分かりません。日誌にはそういったことまでは書かれていませんでしたし、
当時ラウン寺に勤めていた僧侶も、いついつに被告人が不在だったか、はっきりとは覚えていませんので」
-
ξ゚ぺ)ξ「ならロマネスクさんのせいだとは言えないじゃない。
霊能力者、しかもそれを生業にしてる人はおばけに目を付けられやすいから
何かに憑かれて命を絶たれてしまうのは、ないことじゃないわ。容疑者はいくらでもいる」
(#ФωФ)「──」
ロマネスクの怒気を孕んだ視線が、ツンに突き刺さった。
ツンもまた、負けじとロマネスクを見据える。
( ФωФ)『貴様は黙って立っていればいい』
彼は先週、そう言った。
ロマネスクは己のみならず、ツンにも沈黙を要求した。
素直に従った場合、無罪判決はおろか、酌量減軽に至る可能性はゼロに近い。
-
ξ゚⊿゚)ξ(この人は)
いや、この「猫」は。
何らかの真実を隠したまま死のうと──消えようとしている。
それは。
駄目だ。
駄目なのだ。
ツンは昨年の夏、真実を隠そうとして失敗した。
山村貞子。河内ミルナ。あの裁判で、ツンは、やってはいけないことをやろうとしてしまった。
二度と、ああなってはならない。
被告人。被害者。警察。検事。裁判官。自分自身。全てを蔑ろにするような行いだったのだから。
-
(*゚ー゚)「根拠はあるんです。物には順番ってものがあるのでね、どうかお聞きください」
しぃの声で我に返った。
根拠。何の根拠だ。過去と現在が入り交じった意識を振り払う。
──17年前の憑依事件がロマネスクの手による犯行だった、という根拠の話だ。
(*゚ー゚)「この年と翌年、霊能力者の自殺がやけに多い。
G県で3件、T県、F県、S県でそれぞれ2件、Y県で1件。
どれも霊媒師や占い師など、『そういう』職業の方ばかりです」
【+ 】ゞ゚)「いずれもG県の近くだな。
限られた範囲の中で、2年間に10件……それはたしかに多い」
方法は全て首吊りなのか、というオサムの質問に
しぃが首を横に振った。
(*゚ー゚)「首吊り、入水、飛び降り──多岐に渡っていますね。
被告人は、こうして霊能力者達を殺してはその魂を喰らい、力を付けていきました」
-
(,,゚Д゚)「これらの事件は共通点があるのよ。
まず一つ。彼らには自殺する理由が無い。
もう一つ。妙な言動をとる。
最後に一つ。被害者達の霊魂が見当たらない……」
【+ 】ゞ゚)「妙な言動と不自然な自殺は『憑依されたから』で説明がつくとして、
霊魂が見付からないのは──」
川 ゚ 々゚)「食べられたから?」
(*゚ー゚)「そういうことかと」
推測の域を出ない。
ここまでは、神隠し罪のときに近いように思う。
とにもかくにも物証が無いのだ。
それはしぃも重々承知しているらしく、あまり熱が入っていない。
「そして」と話を進めた。
-
(*゚ー゚)「そして更に翌年。平成10年の8月を境に、被告人は完全に寺から姿を消しました。
充分に力を蓄えたため、もっと活動範囲を広げようと考えたのでしょう」
(,,゚Д゚)「平成10年以降は、霊能力者の変死件数も例年と大差なくなったわ。
ただ、それは──判明してる範囲で、ってだけなんだと思う」
【+ 】ゞ゚)「どういうことだ?」
(,,゚Д゚)「霊が見えるんだって周りに吹聴してた学生が
ある日突然ビルの最上階から飛び降りたとか、
そういった、『霊感を持つ一般人』の変死がちらほらあるのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「それは普通の自殺と何か違うとこあるの?」
(*゚ー゚)「件の学生は極度の高所恐怖症だったことでも知られていました。
その日、友人と街を歩いていた最中に突然押し黙ると
高層ビルへと駆け込み、エレベーターで最上階まで上って──飛び降りたんです」
(,,゚Д゚)「その子、いい会社から内定もらえてて、恋人との仲も良好で、幸せそうだったらしいんだけど……」
ξ゚ -゚)ξ「なるほどね」
本来なら取る筈のない行動。
自殺するほどの精神状態なら有り得なくもないのだろうが、
そもそも自殺する理由が見当たらない。
-
(*゚ー゚)「──この学生は別として、霊感持ちの一般人というものの多くは
自身の持つ力について他言しません。言っても信じてもらえなかったりね。
ギコだって仕事で必要なとき以外は、霊感のことを話しやしません」
(*゚ー゚)「しかし、たとえ吹聴していなくとも。無能力者だと振る舞っていても。
おばけは、自分達の存在に気付く人間には敏感です。
何処其処の誰々が霊感持ちらしいぞ──という情報は、おばけ達の間で噂されてしまう」
【+ 】ゞ゚)「? 検事は何が言いたい?」
ξ゚⊿゚)ξ「つまりですね、至って普通の一般人の変死として処理されている事件の中には、
実は霊能力を持つ一般人の変死事件が混ざっている可能性もあるわけです」
人の話を盗るなとしぃが愚痴る。
遠回りなのが悪い。
-
ドキドキするな……支援
-
【+ 】ゞ゚)「ああ……。表向き、憑依による変死件数は減ったように見えるが
その実、憑依事件は変わらず起きていたのではないか、と」
川;゚ 々゚) ムズカシイ
(*゚ー゚)「いかにも。
霊媒師占い師拝み屋ばかりを標的にしていては注目を集めてしまう恐れがあるため、
なるべく一般人を狙うようにしていったのかもしれません」
(,,゚Д゚)「あと、ここら辺からは自殺よりも、極度の衰弱による死亡とかの割合が増えてるわね」
「極度の衰弱」は、憑依した状態で長時間動き回ったり、
徐々に生気を喰らったりしていくことで引き起こされる。
その両方を併用すれば、一日と持たずに命は奪えるだろう。
(,,゚Д゚)「自殺ばっかりだと目立っちゃうから他の方法を試したのかもね。
まあ健康だった人が一日で衰弱ってのも、ある意味目立つんだけど……」
( +ω+)
喋り通しで疲れたのか、しぃが口を閉じる。
彼女がミネラルウォーターで喉を潤している間に、
ツンは今までの話を軽く整理した。
-
25年前。昭和63年に、ロマネスクはラウン寺に住み着いた。
霊障に悩まされる人間を識別できること、数日ほど外出すること、そういった性質があった。
17年前。平成8年、G県の拝み屋が何者かに憑依され、山で死んだ。
それを皮切りに、平成8年と平成9年の2年間、G県付近で霊能力者の自殺が相次ぐ。
15年前。平成10年の夏にロマネスクは寺に帰らなくなった。
その年以降、霊能力者の変死件数は落ち着いたという。
ただしそれは「記録で確認できる限り」の数であって、
事件はひっそりと起きていたかもしれないのだ。
これらの変死事件には、被害者に死ぬような理由が無かったり、被害者が不可解な行動に出たり、
被害者の霊魂が見付からなかったり──加害者に喰われた可能性が高い──という共通点がある。
-
ξ゚⊿゚)ξ(うーん……)
ロマネスクに繋がる、と言い切れるほどの説得力があるかどうかは、まだ怪しいところだ。
しかしロマネスクが全くの無関係か、というのもまた怪しい。
彼にはアリバイが無い。
少なくとも、ここまでは検察側も確たる証明は出来ていない。
ロマネスクに否定されれば、意味を失ってしまう話だ。
しかし。
【+ 】ゞ゚)「被告人。これまでの話で、何か意見はあるか?」
( +ω+)「無い」
【+ 】ゞ゚)「それは認めるということでいいのか?」
( +ω+)
【+ 】ゞ゚)「……黙秘されると、こっちで勝手に判断することになるが」
ξ;゚⊿゚)ξ「ロマネスクさん」
彼は何も言わない。
結局のところ、否定しないのならば、ほぼ認めていると同義に扱われるのだ。
-
(*゚ー゚)「それでは次。
8年前、今回起訴されている、三森ミセリの憑依事件が起きました。
被害者は霊感を持っており、その日の昼、旧友の霊に体を貸してやっていました」
(*゚ー゚)「被告人はそのやり取りを見ていたのでしょう。
三森ミセリに霊感があるのを知り、憑依して、彼女をも犠牲にした」
【+ 】ゞ゚)「……全てが被告人の仕業だとして、なぜ霊能力者ばかりを狙うのだろうか。
取り憑き霊魂を喰うだけならば、そこらの人間相手でも出来る筈だが」
(*゚ー゚)「霊的な力を持つ人の魂となれば、妖怪に馴染みやすいからではないでしょうか」
単純にそういうことだろう。
オサムも納得した様子で顎を摩る。
それを確認してから、しぃは書面を視線でなぞった。
-
(*゚ー゚)「被告人が被害者に憑依する瞬間は誰も見ていませんが──
どちらかといえば明朗な性格である被害者が『ぶっ殺してやる』と叫ぶ姿を目撃されていることなどから、
他者に体を操られていた事実は間違いありません」
その論拠は、トソンの裁判でも聞かされた。
被告人がトソンであるかロマネスクであるか、違いはそれだけ。
(*゚ー゚)「三森ミセリは幸いにして命までは取られることなく解放されたものの、
衰弱が激しかったために、今なお昏睡状態が続いています」
ξ゚⊿゚)ξ「……彼女が誰かに憑依されてただろうってのは私も同意見だし、犯人を許せないとも思うわ。
手口が酷似していることから、同一犯による犯行だってのも、まあ納得する」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、その犯人がロマネスクさんだっていう確かな証拠は?」
(#ФωФ)「──……弁護士!」
ロマネスクが唸る。
喋るな、弁護などいらない、黙っていろ──そんな意思が窺える。
だから、ツンも再び彼を見遣った。そうも行かないのだという意思を込めて。
-
(;,゚Д゚)「どうかしたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「お気になさらず。検事、答えて」
正直、答えは聞かずとも分かっている。
これは、話を整理しやすくするための問答だ。
しぃも承知の上で、はきはきとした声で答えた。
(*゚ー゚)「6年前に、G県ラウン寺の住職が死亡しました」
(#ФωФ)「……っ」
ロマネスクは強くツンを睨み、そっぽを向いた。
──もう好きにしろ、どうせ無駄だと呟いて。
(*゚ー゚)「普段の住職とは打って変わった振る舞いを繰り返して
方丈──住職の住まいですね、そこに閉じこもり、
数時間後に若い僧が様子を見に行くと、亡くなっていたといいます」
-
【+ 】ゞ゚)「死因は?」
(*゚ー゚)「心臓麻痺による突然死、ということになってはいますが、はっきりしていません。
体のどこにも異常はありませんでしたので」
住職の体自体には異常がなかった。だからこそ異常なのだ。
異様な振る舞い。不可思議な死。
これまで語られてきた変死事件との類似。
故に、これもまた、同一犯による犯行と疑える。
そこへ、しぃは更なる情報を加えた。
(*゚ー゚)「しかし、遺体の近くに、猫の毛が落ちていたんです」
写真を掲げる。
太く長い、茶色の毛。
-
(,,゚Д゚)「この毛、G県の警察署に保管されてたのを借りて
被告人の体毛と一緒に調べてもらったの。
そしたらDNAが一致したわけ」
【+ 】ゞ゚)「でーえぬえー」
川 ゚ 々゚)「?」
(*゚ー゚)「同一の猫の毛であると認められたんです」
【+ 】ゞ゚)「ほう」
同様のものが寺の敷地内からも採取されました──
しぃが付け足すと、傍聴席がささやかに揺れた。
ついに証拠を残しちまったんだな、と。
【+ 】ゞ゚)「その被害者である住職は、被告人と面識があったのか?」
(*゚ー゚)「過去の記録によると、被告人がラウン寺で飼われていた頃
特に被告人を可愛がっていた方であったようです。
まあ被告人のほうは大して懐いていなかったそうですがね」
(*゚ー゚)「そしてこの住職は、あまり強くはありませんが、霊を見る力があったとか」
来客を区別するロマネスクの「妙な癖」の実態に最初に気付いたのも、その僧だったという。
皆が被告人を見る。
彼はオサムに冷眼を向け、表情を歪ませた。
-
(*゚ー゚)「これ以降、霊能力を生業とした者、あるいは宗教関係者の変死件数が再び増加し始めます。
4年前はK県の占い師、T都の宮司、3年前にC県の呪術師等々──」
(,,゚Д゚)「範囲も広くなった。
長いこと警察に怪しまれずにいたから、気が大きくなったのかも」
(*゚ー゚)「おかげで痕跡を残しやすくなってもしまったが」
しぃが数枚の写真を出した。
それにもまた、猫の毛が写されている。
(*゚ー゚)「おばけ法の普及に伴い、各地のおばけ課の捜査方法や取り組む姿勢も進歩しまして……
ここ数年の事件に関しては、現場に落ちていた被告人の体毛、さらには目撃証言などが
ちゃんと残されています」
【+ 】ゞ゚)「でーえぬえーは、全部一致したのか?」
(,,゚Д゚)「ええ」
ξ゚⊿゚)ξ「目撃証言って、たとえば?」
-
(*゚ー゚)「4年前のK県占い師変死事件。
被害者はマンションの一室を仕事場にしている占い師でしてね。
ある女性が、占ってほしいと予約を入れた」
予約した時間に客が訪問しても、一向に応答がない。
仕方なく帰途についた客が何気なくマンションへ振り返り、
占い師が使っている部屋のベランダへ目をやると──
猫が、ベランダにいたのだという。
茶色の体毛。猫はしばらく窓を見つめた後、ベランダから去っていったらしい。
翌日、客は、その部屋で占い師の変死体が発見されたことを知った。
(*゚ー゚)「その占い師の部屋からも、被告人の毛が見付かったんです」
【+ 】ゞ゚)「それは大変怪しいな」
占い師とロマネスクに何かしらの関係があったとは認められない。
知り合いでもない人間のもとにロマネスクが訪れる理由も認められない。
であれば、自ずと決まってくる。
「殺すために」、占い師の部屋に入ったのだ。
-
(*゚ー゚)「先ほど弁護人が言いましたね。
17年前から今に至るまでの霊能力者憑依事件は、手口が酷似している。
同一犯の犯行であることは明白です」
(*゚ー゚)「そしてここ数年の事件に関して言えば、被告人を示す証拠や証言がありますので──」
「同一犯」イコール、ロマネスクとなる。
【+ 】ゞ゚)「だから昔の憑依事件も被告人の仕業と言えるわけだな」
(*゚ー゚)「ご明察です」
川 ` 々´) ウー
ぐるぐるする、とくるうが呟く。
ツンもぐるぐるする。
-
支援
-
(*゚ー゚)「……と、ここまでが憑依罪。
ここからつきまとい罪に移ります」
ξ∩;゚⊿゚)ξ∩「ちょっと待ったァ!!」
勢いよく両手を挙げた。
しぃが、びくりと身を竦ませる。
(*゚−゚)「何です」
ξ;゚⊿゚)ξ「10分でいいから休憩ちょうだい。情報多くて疲れたし、──ロマネスクさんとも少し話がしたい」
( ФωФ)「……」
【+ 】ゞ゚)「俺は構わん。くるうもまだ、ちゃんとまとめられていないようだから」
川 ゚ 々゚)「頭休める……」
検事は一気に済ませたいところだったようだ。
少しだけ渋ったが、オサムの発言があっては無視も出来なかったらしく。
溜め息と共に、一言吐き出した。
(*-ー-)「然るべく」
*****
-
──工場の奥に、6畳程度の部屋がある。
もともと休憩室として使われていたらしく、傷みきった畳が敷かれている。
そこにシートを広げ、ツンはどっかと座り込んだ。
横に鞄を下ろす。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あー……もう」
光量の少ない電球を見上げて、溜め息。
視線を休憩室の出入口へ送る。
( ФωФ)「……貴様、なぜ我輩の言うことを聞かないのである」
ドアの前。
拘束札の白光に捕らわれながら、ロマネスクが凄みを利かせた声でいった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……裁判ってさあ……」
( ФωФ)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「色ーんな人が関わってるからさあ……。
万人が納得する結末って、なかなかないのよね」
( ФωФ)「何の話であるか」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたは納得できてる?」
ロマネスクが詰まった。
肯定ではない。かといって真意もはかれないが。
ξ゚⊿゚)ξ「……検察側は、10年以上前の憑依事件の方の犯人があなただとは、まだ証明しきれていないわ。
ただ『限りなくクロに近い』とは確信しているし、裁判長にそう思わせることにも成功してる。
私も正直そう思う」
ここまで来てしまえば、ロマネスクが「違う」と言っても、
否認するだけの証拠がないのなら認識の変化は見込めない。
「限りなく怪しい」という疑惑は確実に残る。
しぃ達からすれば、それで充分。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あちらが起訴してるのは、あくまでミセリさんの憑依事件。
間違いなくあなたが犯人だとみんなが思ってる。
これからの審理でも補強されていくわ」
( ФωФ)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「このまま行くなら、きっとあなたは有罪と判断される。
そうなれば──さっきの審理が生きてくる」
( ФωФ)「過去にも同じことを繰り返した凶悪犯だと」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
ツンはロマネスクに顔を向けた。
猫目を、じっと見つめる。
何も見えない。聞こえない。
幾度試しても、彼は一瞬たりとも警戒を解かない。
-
( ФωФ)「我輩はそれでいい」
ξ゚⊿゚)ξ「……ロマネスクさん、私、あなたが無実なら何が何でも助けるわよ」
( ФωФ)「だから、それがいらないのだと言っているのである」
ξ゚⊿゚)ξ「それは罪を認めるって意味?」
──また沈黙だ。
いっそ頭突きでもかましてやろうか。なんて思いながら微笑む。
結局、その後ロマネスクは喋らなかった。
無為に10分が過ぎていく。
そろそろ法廷に戻らなければ、とツンは腕時計を見て立ち上がった。
喉の渇きを覚え、鞄から麦茶のペットボトルを取り出す。
( ФωФ)
ロマネスクが。
目を見開いた。
-
( ФωФ)「──貴様」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
( ФωФ)「その鞄に何を入れているのである」
背中が冷える。うなじがちりちりとざわつき、恐怖が足元にまとわりつく。
これは──殺気か。
ξ;゚⊿゚)ξ「何って……資料とかは全部机に出したから、今は空っぽで……
このペットボトルしか」
ロマネスクの敵意を察知し、拘束が強まる。
その苦痛に顔を歪ませながら、それでも尚ロマネスクは食い下がった。
( ФωФ)「違う。何か入っている」
ツンは一歩下がり、鞄の中を探った。
やはり空っぽだ。
布を撫でる感触ばかり。
ξ゚⊿゚)ξ「、」
──内側のポケットに指が引っ掛かる。
そこに手を忍ばせると、何かに触れた。
それを引っ張り出せば、ロマネスクの表情がますます険しくなる。
-
追いついた
支援
-
ξ;゚⊿゚)ξ「あ」
( ФωФ)「──それは」
紙。手のひらに収まる程度の。
ヴィップ総合病院で、カウという看護師から預かったものだった。
直後にトソンの件でごたついたので、ギコ達に渡すのを忘れていたのだ。
ツンが紙を見下ろしていると、ロマネスクは呆然としたような声を出した。
( ФωФ)「なぜ貴様が──」
「ツンさん、再開しますよ」
ドアの向こうからしぃの声が掛かり、張り詰めていた空気が切れた。
はっとして、ロマネスクが口を閉ざす。
不意に、ツンは違和感と既視感を覚えた。
それに戸惑い、返事をするのに間があいた。
*****
-
──おい、という声が背後からかかる。
内藤はそれに応えずに歩を進める。
おい。もう一度。
ざくり。返事の代わりに雪を踏む音が大きく響いた。
(;'A`)「少年。やめとけって」
( ^ω^)「……」
(;'A`)「どこ行くってんだよ。こんな夜によお」
どこに行くか、など。
内藤にも分からない。
けれども、じっとしてもいられなかった。
-
( ^ω^)(……もう、裁判は始まってるお)
考え、頭を振る。
幽霊裁判。ツン。
関わってはいけない。
好奇心に負けてあんなものに関わったから──自分は。「失敗」したのだ。
(;'A`)「こんな時間に出掛けたら、すぐバレる」
( ^ω^)「……裁判の傍聴に行くって書き置きしてきたから、
それなりに時間稼ぎは出来ますお」
(;'A`)「遅くても朝にゃみんな気付くって。──なあ、やめようぜ、家出なんか」
( ^ω^)「ドクオさんには関係ないじゃありませんかお」
(;'A`)「知り合いのガキが夜中に家出してるとこ見て放っておけるほど薄情じゃねえんだ」
ざくり。ざくり。
普段通らぬ道を進む。
目的地など、特にない。
-
──クラスメートが、右腕の骨を折った。
水曜日の昼休み、担任に頼まれて内藤が掲示物の貼り替えを行っていたところ、
走り回って遊んでいたクラスメートがぶつかってきたため、踏み台にしていた椅子から落ちてしまった。
内藤は右手の甲に掠り傷を負う程度で済んだのだが。
放課後。
「階段で突き落とされて」、そのクラスメートが転落し右腕を折ったのだという。
そのとき、周りには誰もいなかったらしい。
.
-
──クラスメートが、右腕の骨を折った。
水曜日の昼休み、担任に頼まれて内藤が掲示物の貼り替えを行っていたところ、
走り回って遊んでいたクラスメートがぶつかってきたため、踏み台にしていた椅子から落ちてしまった。
内藤は右手の甲に掠り傷を負う程度で済んだのだが。
放課後。
「階段で突き落とされて」、そのクラスメートが転落し右腕を折ったのだという。
そのとき、周りには誰もいなかったらしい。
.
-
内藤…
-
あっという間に、ほとんどのクラスメートのもとへ話が伝わった。
もはや些細な不幸とはいえない事態、
そして「無人の場所で突き落とされる」という不可解な現象から、
皆が異様なものを感じ取ってしまうのも、当たり前ではあった。
木曜日にそれを聞かされ、内藤は困り果てた。
ああ、自分の知らないところで、事は深刻なところへ発展していたのだ──と。
('A`)「なあ。少年ってば。えーっと、何だ、よく分からんが学校で嫌なことあったんだろ?
おまえ人気者だっていうし、どうとでもなるんじゃねえの?」
( ^ω^)「……」
内藤は演技が得意だけれども。
場の空気を操るのが得意なわけではない。
多数が作り出す「空気」に抗えることが出来るのなら、小学生のときだって苛めになんか負けなかっただろう。
そもそもあれは、内藤が純真だろうが穏和だろうが関係ない。
「内藤に『何か』すると、祟られる」──それ自体が問題になっているのだから。
-
#####
( ^Д^)『祟り、まだ健在だったかあ。こえーこえー。あ、こういう風に言ったら俺もやべえのかな』
プギャーの発言はあくまで茶化すものであった。
だが一部の生徒は本気で怯えていた。
故に、他のみんなが距離を掴み損ねた。
そんなことが本当に起こるわけがない。しかし実際に被害は出ている。有り得ない。でも──。
そうやって、判断しかねて。どう触れるべきか見失ったのだろう。
(;^ω^)『偶然だお! 僕、みんなに──怒ったことだってないし……
そもそも祟ったりなんか出来ないお!』
必死にそう言ってみせれば、半数は「そうだよな」と納得したが
残りは、まだ腑に落ちずにいた。
-
何より内藤本人が、自分を疑ってしまったのが悪かったのかもしれない。
他の被害報告はともかくとして、骨折の件は明らかに異常なのだ。
有り得ない状況で「突き飛ばされた」という主張。これだけが異質だ。
骨折した本人は内藤と仲が良く、内藤を嵌めるために嘘をつくとも思えない。
そうして内藤の脳裏に呪詛罪の裁判が過ぎってしまえば──もう、自分のせいではないと言い切れなくなった。
凛々島リリは無意識に呪術を行っていた。
彼女の呪いも、多くは他人を転ばせたり怪我をさせたりするような類だった。
もしや自分も同じことをしたのではないか。
そう考えてしまって、自分の潔白を信じられなくなった。
#####
-
('A`)「おーい……夏だったら俺だってここまで気にしねえけどよお……。
冬だぜ。この寒い中、野宿でもしようもんなら死ぬぞマジで」
( ^ω^)「……財布は持ってきてますから、どっか泊まりますお」
('A`)「んで朝になったら電車に乗って遠くへ──なんて考えてねえだろうな」
( ^ω^)「……」
('A`)「やめとけって、本当にさあ……」
#####
(;^ω^)『……僕は、そんなこと……』
それでも、内藤がひたすらに否定し続ければ、クラスメート達だって
今回の件が如何に馬鹿らしいか理解してくれただろう。
だが。
-
『──でも、俺、ブーンがあの人と一緒にいるところ何回か見たよ。
ほら、いつも黒い服着てる、金髪の……あれ、「霊感女」』
一人の生徒から上がった発言が、決定打となった。
『出連さん? 聞いたことあるよ、うちのお兄ちゃんと同級生だった』
『あの人も幽霊がどうとか言ってたんでしょ』
『──そういえば去年さ、その人と内藤くん校門のとこで話してたよね』
知らない、と。
言えなかった。
言いたくなかった。
ツンとのことを否定したくなかった。
.
-
(´<_`#)『──……いい加減にしろよ!!』
代わりに言葉を発したのは弟者。
(´<_`#)『みんな祟りだ何だって本気で言ってるのか!?
冷静に考えろって、現実にそんなのあるわけないだろ!』
『だけどさあ……』
(´<_`#)『ブーンはそんなことする奴じゃないだろ? ……だよな、ヒッキー』
内藤や弟者と普段から一緒にいる友人として、彼はヒッキーに話を振ったのだろう。
内藤の絶対的な味方になると信じて。
しかし。
(;-_-)『……あう……』
ヒッキーは、頷いてくれなかった。
-
当然ではある。彼は人一倍臆病だ。
祟りを臭わせる情報がいくつも示されてしまえば、恐怖も覚えるし
無条件に内藤を信じることも難しくなったのだろう。
彼は決して悪くない。
内藤だって、立場が違えば──たとえ表面は取り繕ったとしても、本心では──同じような反応をとる。
だからこそ胸に刺さった。
既に、一番仲のいい友人からも疑われてしまう段階に行き着いているのだと。
-
(´<_`#)『ヒッキー!』
( ・∀・)『……怒んなって、こうなったらもうしょうがないんだから』
(´<_`#)『……お前が余計なこと吹き込んだんじゃないのか?
お前、初めからずっとブーンのこと疑ってただろ』
(#・∀・)『はあ!? 疑うって何だよ、好奇心で訊いてただけじゃんか!
俺は別に、ほんとに祟りがあったとしてもブーンが悪いとは思ってねえし!』
(´<_`#)『何だそれ、ブーンが本当に祟ってると思ってるってことか!?』
(#・∀・)『だって分かんねえじゃん! みんなに色々あったのは事実だろ!』
(;-_-)『ま──待って、2人共、ごめん、違うよ、信じる! 僕はブーン信じるから! 喧嘩しないで!』
(´<_`#)『そんな風に「信じる」って言われて納得できると思うか!?』
(#・∀・)『どっちにしろ怒られんならヒッキーはどうすりゃいいんだよ!
弟者は黙ってろよ、お前が出しゃばるとこじゃねえんだって!
今はブーンが何か言わなきゃ意味ねえだろ!』
(´<_`#)『な──』
(;^ω^)『弟者! 弟者、……弟者……』
どうやって止めればいいのか分からず、名前を呼ぶことしか出来なかった。
2人の言い合いを続けさせるべきでないことしか認識できなかった。
-
弟者が口を閉じる。モララーも黙ったが、両者は睨み合いを続けていた。
周囲のクラスメートは──今の騒ぎに、一気に距離を置いてしまっていた。
不安。気まずさ。恐怖。それらが混在し、空気が重たくなっていて。
( ^ω^)『……ごめんお……』
その元凶が己にあることに耐えきれず、内藤はそう呟いた。
そうすることで、また一層、気まずさに拍車がかかる。
( ^ω^)『僕は、何もしてないんだお……』
それ以外に言うべきこともない。
(´<_` )『……悪かった』
弟者も、謝罪の言葉を口にした。
モララーとヒッキーに向けてなのか、内藤に向けてなのか、皆に向けたものなのかの判断はつかなかったが。
( ^Д^)
一歩引いたところで、プギャーが笑ってそれを見ていた。
#####
-
ブーン……
-
その日と金曜日は、クラスの雰囲気が歪に軋んだままだった。
内藤を敵視する者こそいなかったが、積極的に話しかけてくれる者もいなかった。
モララーとヒッキーは弟者とのことがあって近付いてこなかったし、
弟者は弟者で周囲に苛ついてばかりいた。
それが、どうしようもなく辛い。
('A`)「あー、少年。おまえ居候だろ。
預かってる息子さんが家出したなんてことになったら、流石家の連中、めちゃくちゃ大変だぞ。
思春期だし家出したくなることもあるだろうけどよ、他所様の家に迷惑かけちゃ駄目だって」
( ω )「……うるさいお」
('A`)「……」
足を止める。
見知らぬ公園。
ひどく狭くて、遊具などブランコや滑り台程度しかなく、砂場は雪に埋もれていた。
-
( ω )「……何で、あんたらみたいなのが見えるってだけで、こんなことにならなきゃいけないんだお。
これさえなけりゃ、きっと僕は普通に暮らせてましたお。
苛められなくて済んだ。腫れ物みたいに扱われずに済んだ」
(# ω )「──普通で良かったんだお!!
全員から好かれなくても!! 普通に友達が出来て、普通に過ごせればそれで良かった!!」
──なるべく敵を作らぬように、演技することを覚えた。
友達をたくさん作るためでも、周りを味方で埋めるためでもなく。
ただ、みんなが自分を排除しないでいてくれるなら、それで良かった。
けれど、予想外に周囲は内藤を好いてくれた。
必要としてくれた。
それがどれだけ嬉しかったか。
疎まれ蔑まれ続けた子供が、一転して愛されるようになってしまえば、
その環境に依存するのは当たり前だった。
あんな心地よささえ知らなければ、こんなに辛くならずにいられたかもしれないのだ。
-
読むのが辛い
-
('A`)「見えるもんはしょうがねえじゃねえか。
埴谷刑事は上手くやってたんだろ、あの人は色んな奴から好かれてる」
('A`)「……あー、いや、あれは育った家がそもそも特殊みたいだしな。
少年と比べても仕方ねえか」
慰めの言葉も浮かばないようで、ドクオは口ごもってしまった。
ブランコの雪が内藤の頬を冷やす。
頭は一向に冷えない。
財布と携帯電話だけを持って家を出てみたものの、これからどうするか、などと考えていなかった。
ただ、とにかく──「ここ」にいたくない、という思いが足を動かしたのだ。
ここ、というのが、流石家を指すのか町を指すのか、別の何かなのかは判然としない。
ひとまず歩いて、歩いて、ひたすらに考え続ければ、感情の落ち着きどころを見付けられるのではないかと期待していた。
しかし思考を巡らせるほどに深みに嵌まっていく。
-
分かっている。
自分がどこまでも半端でいるから招いた事態なのだと。
霊感のことは、ドクオが言うように、持って生まれた以上は仕方のないこと。
だから、この町に来てからは全て無かったことにしてやり直そうと決めた。
──この生活をずっと続けたいのなら、誰に何を言われようと、
幽霊も幽霊裁判も、何もかも無視し続ければ良かったのだ。
「普通の中学生」を演じ続ければ良かったのだ。
なのにそうしなかった。
幽霊裁判に関わり続けた。
欲張って、どっち付かずのまま日常を過ごした。
だからこうなった。
分かっている。
分かっているからこそ、後悔してもし足りない。
-
支援
-
( ω )
コートの袖を握り締める。
手の甲に額を押しつける。
色んな人の顔が、脳裏に浮かんでいく。
(;-_-)
(#・∀・)
(´<_`#)
大事な友人達の顔が浮かんで、胸に重石が一層詰め込まれた。
たくさん笑い合ってきた筈なのに、不安と怒りの顔しか思い出せない。
彼らが離れていってしまうのではないかと考えるのが、一番辛い。
( ^Д^)
次に、プギャーの笑み。
きっと彼が期待した以上に、2年1組は拗れた。
彼は最低限のことしかしていない。水面に小さな石を2、3投げ込んだだけ。
その波紋で、まんまと内藤の足場は揺らいで崩れた。
-
──喉が、ひくひく震えた。
手に力を込める。ああ。嫌だ。嫌だ。
この感覚は。嫌だ。ああ。
泣くな。
泣いてはいけない。
泣いたら負けだ。
こんなの、泣くようなことじゃない。
平気だ。
既に経験したこと。いや、寧ろ前より楽ではないか。殴られやしない。蹴られやしない。
だから泣くな。
泣けば──もう駄目になってしまう。
強がることすら出来なくなる。
惨めで、苦しくて、堪らなくなってしまう。
耐えられれば、きっと大丈夫。
また立てる。今度こそ1人で。
泣くな。泣くな。泣くな。泣くな。
泣くな。
( ;ω;)
.
-
叫ぶ。
感情を全て吐き出して、空っぽにしたくて声を張り上げる。
なのに涙はますます溢れてくる。
泣けば泣くほど辛くなる。
苦しい。苦しい。
寂しい。
*****
-
(*゚ー゚)「──被告人が三森ミセリ憑依事件を起こしたのは8年前」
休憩が終わって。
既に何度目かの説明を前置きとし、しぃは書類を左手で叩いた。
今度は、つきまとい罪の話だ。
(*゚ー゚)「それまで7年間は何もありませんでしたが
昨年の夏から、被告人は被害者の周りに出没するようになりました」
(*゚ー゚)「少なくとも、二度目撃されています。
いずれも発見者のおかげで退散していますが」
【+ 】ゞ゚)「何か被害があったわけじゃないんだろう? 被害者の病室に二回現れただけで。
つきまとい──と言えるのだろうか」
被害がなかったのは、発見者たちのおかげだ。
そう言って、しぃが続けた。
-
(*゚ー゚)「昨年の7月、最初の目撃者から通報があった際に、
警察は三森ミセリの病室から猫の毛を発見しています」
(*゚ー゚)「それから、実家や、彼女が昔住んでいたアパートを調べました。
もしも病室の闖入者が『真犯人』だったのなら、そしてそいつが身軽な猫ならば、
三森ミセリの身辺を嗅ぎ回っていたかもしれない、ということで」
結果、ミセリの実家やアパートの周辺にて、これまた猫の体毛を発見。
読みは当たっていたわけだ。
【+ 】ゞ゚)「被告人、毛が抜けすぎじゃないか。大丈夫か」
川 ゚ 々゚)「大豆とか牡蠣がいいらしいよー」
(;,゚Д゚)「いや、今は人間の姿だからちょっとアレに感じるかもしれないけど、本来の姿は猫だから。
犬猫に擦り寄られると服に毛がいっぱい付いたりするし、そんなもんなんだと思うわよ。
……あとは猫又だし、年齢とかも、ほら……」
ツンはロマネスクの頭に視線をやりかけ、物凄く睨まれたので目を逸らした。
-
(*゚ー゚)「ともかく、被告人は執拗に三森ミセリの周りをうろついていたんです。
目的は彼女の息の根を止めるため」
ξ゚ -゚)ξ「……」
思うところがあり、片手を挙げた。
別に挙手制ではないが、何となく。
どうした、とオサムが問うたのを発言権の取得と見なし、ツンは単刀直入に疑問をぶつけた。
ξ゚⊿゚)ξ「これまでの憑依事件だとみんな亡くなってるのに
どうしてミセリさんだけ生きているのかしら?」
しぃが答えようとしたが、僅かに詰まった。
代わってギコが応じる。
(,,゚Д゚)「毎回上手くいくもんでもないでしょ。
上手くいかなかったからこそ、今度こそトドメを刺そうと付きまとってたんじゃないの?」
ξ゚⊿゚)ξ「7年間放置してたのに?
どうして去年になって再び現れたのか……」
それには、今度こそしぃが。
-
(*゚ー゚)「裁判が行われたからでしょう」
川 ゚ 々゚)「裁判……トソンの?」
(*゚ー゚)「そうです。去年、最初に病室で被告人が発見されたのは7月13日でした。
その6日前、7月7日に我々は三森ミセリ憑依事件の裁判を行っています」
ξ゚⊿゚)ξ「誤認逮捕だったわけだけどね」
しぃが睨んでくる。が、事実は事実なので強くも出られないらしい。何も言ってこない。
被告人はトソンだった。
ありがとう、と泣いて礼を言っていた彼女の顔を簡単に思い出せる。
彼女は今──
ξ-⊿-)ξ
額を押さえる。
集中。今は審理に集中しないと。
-
(*゚ー゚)「過去の事件が今になって取り上げられたのを知り、焦ったんです。
司法は『真犯人』が別にいるという結論に至った、これでは新たに捜査をされてしまう──と」
(*゚ー゚)「被害者は同時に目撃者でもある。決定的な証言をされてしまう前に始末しなければならない……
そう考えたのでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「それで、ミセリさんを殺すために彼女を探していたってこと?
だから──彼女の実家や、昔住んでたアパートに痕跡があったって?」
(*゚ー゚)「何か問題が?」
ξ゚⊿゚)ξ「実家はともかくとして、昔のアパートなんて、どうやって辿り着いたのかしら。
彼女がそこに住んでたのは7年も前だし、事件直後に家族の手によって解約させられてるわ」
(*゚ー゚)「おばけならいくらでも探せますから」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだけど。でも検事の主張だと──
実家やアパートを探した後、ようやくミセリさんが入院してるのを突き止めたってことになるわよね」
(*゚ー゚)「別におかしくはないと思いますが」
ξ゚⊿゚)ξ「7年も入院している病院より、7年前に住んでたアパートの方を先に知るって、
何だか変な気がするの」
しぃが、瞳を斜め上に向けた。
かと思えば机を見下ろし腕を組む。
-
ξ゚⊿゚)ξ「それに、真犯人なら、ミセリさんが入院した時点でその情報を得ると思うのよね。
殺しきれなかった相手がどこにいるかってのは気になる筈だし」
(*゚ー゚)「当時は気付かなかったんじゃありませんか。
以降も他県で同様の事件を起こしていたのを考えると──
三森ミセリを殺したと思い込み憑依を解いた後、すぐにこの地を離れたのでは?」
ξ゚⊿゚)ξ「昨年再びこの町に来て、たまたま裁判のことやミセリさんが生きていることを知り、
自分に嫌疑が掛かるのを恐れて、ミセリさんを今度こそ殺そうと決めた?」
(*゚ー゚)「って流れでしょうね」
ξ゚⊿゚)ξ「でもさ。それなら、この町をうろついてミセリさんを狙い続けるより
さっさと別の土地に逃げた方が安全じゃない。
猫の姿にも人の姿にもなれるんだから、ミセリさんに見られてない方の姿をとればもう絶対大丈夫だわ」
ξ゚⊿゚)ξ「なのにさあ……。去年の夏に二度も目撃されたってのに、
この町に残り続けたっておかしいと思わない?」
(;*゚ー゚)「う」
(,,゚Д゚)「そう言われるとそうよねえ」
腕を解き、しぃが視線を彷徨わせた。
隣のギコは口元に手を当てて、浅く頷いている。
-
ξ゚⊿゚)ξ「しかも11月には、私やあなたにまで遭遇してるのよ。
それでもここに居続けた」
【+ 】ゞ゚)「ああ、そういえば検事から聞いたな、昨年」
傍聴席がどよめく。
しかし、しぃが顔を上げると同時に収まった。
彼らも議論の流転に追いつこうと、こちらの挙動に注意を向けているのだ。
(*゚ー゚)「──何が何でも、三森ミセリを殺そうと思っていた、と仮定すればいかがでしょう」
ξ゚ -゚)ξ「……ん」
ミセリを執拗に狙ったのは、彼女の口を塞ぐため、ではなく──
ひたすらにミセリを殺したい一心で、ということ。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「……そこまでミセリさんに固執する理由は?」
(*゚ー゚)「過去に怨恨があった」
それはまた。思い切った方向転換だ。
だが、突拍子がないとも言えない。
『元より、ミセリを殺せなければ己を殺すと覚悟していた身』──
彼とミセリには、「何か」がある。
(*゚ー゚)「三森ミセリの母親の実家がG県のサロン市にあります。
ラウン寺があるのと同じ土地だ。実家と寺は、近いとは言えないが遠くもない位置関係にある」
ξ゚⊿゚)ξ(あら、そう来るの)
検察側からその情報を出してくるか。
そろそろこちらから言おうと思っていたのだが。
-
(*゚ー゚)「で、あるなら──彼女と被告人が顔見知りだった可能性はゼロではない。
何か尋常ではない関わりを持っていた可能性だってある」
(,,゚Д゚)「だからミセリさんが昔住んでたアパートも知ってた、ってこともあるかしら?」
(*゚ー゚)「ああ。……そうだな、そう考える方が自然かもしれん。
まあ本人に確認をとらなければ、どうにも。
──いかがです、被告人。三森ミセリと過去に確執がありましたか?」
ツン、しぃ、ギコ、オサムとくるう──全員がロマネスクを注視する。
ロマネスクの表情は、つい先程から強張ったままだ。
( ФωФ)
相変わらず睨むような目付きだが、反発は寧ろ薄い。
何かしらの意思が瞳に込められている。
それは決して──しぃの言葉を否定するものではない。
-
(*゚ー゚)「……どうやら当たりのようだ」
満足げに頷くしぃ。
ロマネスクは猫目を右方に寄せた。気まずそうな仕草に見えて、意外だった。
【+ 】ゞ゚)「被告人と三森ミセリが知り合いだった、か」
(*゚ー゚)「個人的な恨みを持っており、8年前の事件を起こした。
しかし昨年になってそれが失敗していたことに気付き、次こそはと
しつこく付きまとうようになった──」
川 ゚ 々゚)「それなら、他の被害者ともそういうのがあったんじゃないの?」
(*゚ー゚)「そちらは前々から調べてあります。
しかし、三森ミセリ以外の被害者との間には接点らしきものは何も……」
(;,゚Д゚)「何十人もの相手に怨恨を、ってなったら、それはそれで問題だしね」
(*゚ー゚)「なので、三森ミセリが特別だったと見てよろしいかと」
「ミセリが特別だった」。
その結論は、ツンの胸にすとんと落ちた。
しかし、そうなり得る事情とは何だろうか。
ミセリがロマネスクの恨みを買う理由とは。
-
──では最後に殺霊罪。
言って、しぃが書類をめくる。
(*゚ー゚)「被害者は3体。
内2体は、その日三森ミセリの病室の警護に当たっていたおばけです」
(,,゚Д゚)「うちの──猫田家の当主のね、でぃ様が持ってる使役霊だったわ」
それなりに強く、コントロールも利くおばけとなると限られてくる。
猫田家で所有している霊が駆り出されることが多かったらしい。
──事件は同日に二度起きている。
一度目の被害者が、その使役霊たち。
-
(*゚ー゚)「2月1日、午後11時頃。
我が家の、……猫田でぃの部屋にて、使役霊2体の『依り代』が突然壊れました」
猫田家では、使役の契約を交わした霊の多くは人形なり何なり、「物」に憑かせて保管するという。
必要なときに霊を取り出し、用が済めば戻す。
そのための「物」を、便宜上、依り代と呼んでいる。
依り代に縛りつけられた時間が長ければ長いほど、その依り代と霊の繋がりは強固となり
いわば半身のようなものになる。
その依り代が、触れてもいないのに壊れたとなれば。
霊の身に何か良からぬ──「何か」と暈かす意味もないが──事態が起きたと見ていい。
(;,゚Д゚)「……実はそのとき、叔母様──えっと、でぃ様が
そのことをあたしに話しに来てたらしいんだけど……
丁度あたし、シャワー浴びててね、会えなくて。翌日になってから聞いたの」
(#゚ー゚)「明らかに異常事態なのに『いないなら後でいいわ』と引き下がったあの人がおかしいんだ!」
(;,-Д-)「しぃ」
ありゃあ、たしかに変わった人だから。そう呟く声が傍聴席から聞こえた。
しぃの母親は些か浮き世離れしたところがある。
ギコに宥められたしぃが、咳払いを一つ。
-
(*゚ー゚)「……翌日になって探しましたが、2体とも見付かりませんでした。
喰われるか何かして消えてしまったのでしょう」
また、ここでもやはりロマネスクの体毛が病室で見付かっている。
人が死んだ場所、霊が消えた場所。そういった現場にばかり痕跡を残しているのだから
彼を犯人とするのは当然の流れだ。
続いて、二度目の事件へ話は移る。
(*゚ー゚)「もう1人の被害者は、都村トソン。浮遊霊で、三森ミセリの旧友でした」
既に──慣れてしまったのだろうか。
今度は、深い感慨も湧かなかった。
-
(*゚ー゚)「正確な時間は分かりませんが、11時から12時までの間に一度、
病室のナースコールが鳴ったため看護師が病室に行ったそうです。
が、三森ミセリに異変はなく、他に誰もいなかったため、機械の誤作動という結論になった」
(*゚ー゚)「しかし朝になり別の看護師が病室を訪れたところ──
都村トソンの私物が落ちていたのを発見しました。
ベッドの下に潜り込んでいたというので、夜には気付けなかったのでしょう」
これです、と憑依許可書をオサムへ見せる。
過去の裁判でも扱った証拠であるため、オサム達にも馴染みはあろう。
(*゚ー゚)「消灯前の清掃時には、こんなものはなかった」
(,,゚Д゚)「トソンさんは一般霊だから、警備がいたならば病室には入れてもらえない。
にも関わらずトソンさんが部屋に入った痕跡があったってことは──」
【+ 】ゞ゚)「警備の霊が殺された後に病室を訪れた」
(,,゚Д゚)「そういうこと。──そこで被告人と鉢合わせたんじゃないかしら」
そして。
殺された。
( +ω+)
ロマネスクの顔はもう、先程のような揺らぎを消していた。
この話は──彼の心に触れるほどのものではないのか。
-
(*゚ー゚)「ナースコールは、間際に彼女が鳴らしたものでしょう。
そのため被告人は逃げざるを得なくなり、またも三森ミセリの殺害に失敗した」
失敗。また失敗。
それだけ聞けば、ひどく間抜けな犯人だ。
しかし他の点を踏まえると、途端に齟齬が生じる。
ξ゚⊿゚)ξ「……何故、最初は殺さなかったの」
(*゚ー゚)「……」
極めて短い問い掛けだったが、しぃは理解したようだ。
というより、気付いていながら敢えて口にしていなかっただけだろう。
-
ξ゚⊿゚)ξ「昨年の夏、最初にトソンさんと遭遇したときは何故逃げたの?
ドクオさんのときも……。
──警護についてた強力なおばけを簡単に殺せる力を持っていながら、
どうして昨年はただの一般霊を見逃していたの?」
(*゚ー゚)「それは」
恐らく反射的に口を開いたのだろう、続きの言葉は出なかった。
たしかに、とオサムがくるうと顔を見合わせている。
これは──検察の論旨は、不完全だ。
重要な情報が欠けている。
というか。ツンが、故意ではなかったにしろ、隠してしまっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……アサピー!」
しぃを見つめたまま、叫ぶ。
何の脈絡もなく呼ばれた名前に、ほとんどの者が呆気にとられた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「どうせ居るんでしょ。ちょっと来て」
(-@∀@)「……ハイハイ、何ですかセンセイ、僕が恋しくなりました?」
癇に障る声を吐き出しながら、白衣の呪術師が傍聴席から現れた。
仕切りのロープを越えて、弁護人席へ近付いてくる。
絶対に来ているだろうと思った。
本当は来ていなかったらどうしようかと少し不安だった。
隣に立つアサピーを見上げる。
この男は。思考が全く読めない。
今、何を考えている。
ここでツンに呼ばれたことをどう思っている。
川 ゚ 々゚)「アサピーだー」
(;*゚ー゚)「何です、何でここで彼が……」
ツンは、鞄から紙を取り出した。
小振りの白い紙──休憩室で、ロマネスクが反応を示した紙。
カウから預かった紙。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……これは、その殺霊事件の日──ナースコールを聞いて病室を訪れた看護師が
ミセリさんの手元から発見したものです」
(;*゚ー゚)「は!?」
(;,゚Д゚)「何で隠してんのよお! あんたしぃのこと言えないわよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい、ちょっと色々あってね」
-
( ФωФ)『なぜ貴様が──』
あのとき覚えた違和感。
ロマネスクは、紙そのものではなく、ツンがそれを「持っていること」に疑問を向けた。
あのとき覚えた既視感。
この紙の大きさ、感触。すぐには気付けなかったが、今なら分かる。
これは──
ξ゚⊿゚)ξ「アサピー。……あんたが使ってたメモ紙と同じだわ、これ」
アサピーがワカッテマスの住所を記し、ツンに寄越したメモ用紙と、同種のものだ。
-
支援
-
(-@∀@)「……ハァ」
しん、と法廷に静寂が満ちる。
理解したギコが息を吸い込む音が、ツンの耳に届くほど。
(;,゚Д゚)「──それじゃあ……」
(;*゚ー゚)「彼が病室にいたということか!?」
しぃが机を叩き、身を乗り出した。
傍聴席のあちこちで声があがり、混ざり合って、ざわざわという雑音になる。
オサムは木槌で制すのも忘れ、アサピーを凝視していた。
ξ゚⊿゚)ξ「待って、それはまだ分からないわ。
アサピー、あんたが使ってるメモ帳を見せてちょうだい。
まずは、それがよく出回ってるものなのかどうか確認する」
手帳に挟んでいた、ワカッテマスの住所が書かれた方の紙も持ち上げる。
並べてみれば、やはり同じサイズ、同じ紙質。
-
結果によっては──この男から、アサピーから、話を聞かねばならない。
睨み上げると、アサピーはしばらくツンの顔を見下ろして
かくんと首を傾げた。
(-@∀@)「ないデス」
ξ#゚⊿゚)ξ「……アサピー」
(-@∀@)「イヤ。メモ帳の紙じゃないんデス、それ」
僕が普段使うのはこっち──
白衣のポケットから、二回りか三回りも大きなメモ帳を取り出してみせた。
白紙とメモ帳を見比べる。2回。3回。4回。
めくってみる。やや黄色がかったクリーム色。薄めの罫線。
少しざらざらしている白紙と違って、メモ帳の方はつるつるしている。
別物だ。
ツンの勢いが削がれるのに合わせて、傍聴席の声が収まった。
-
まさかこんな伏線が・・・
-
やっと追いついた
-
ξ;゚⊿゚)ξ「……じゃあこれは?」
(-@∀@)「外れくじですよう。オサム様の裁判で引かされた、傍聴席のくじ。
メモに使おうと思って持ち帰ってたんです」
(,,゚Д゚)「あらほんと。あれくらいの大きさだったわ」
(-@∀@)「ホラよく見てください、正方形っぽいデスが、微妙に曲がってたりするデショウ。
大きい紙を裁断して使った証ですな。
病室で見付かったっていう方も外れくじじゃないですかネ」
──くじ。
傍聴席の。
くじ?
一転して白けた様子で、しぃが呟く。
(*゚ー゚)「……都村トソンもくじを引いていたのでは?」
【+ 】ゞ゚)「ショボンに確認してみるといい。
都村トソンは裁判に関わったことがあるからショボンとも顔見知りだし、
くじ引きの際に会ったのならショボンが覚えているだろう」
たしかにトソンがオサムの裁判に来ていたとしてもおかしくはない。
彼女も、オサムがどうなるのかは気になっただろうし。
-
ξ;゚З゚)ξ「……、……」
川 ´々`)=3 ハァ
くるうにまで溜め息をつかれた。
何だよそりゃ──興醒めした声が傍聴席から飛ぶ。
縮こまるツンを、アサピーが頭を撫でて慰める。速攻で叩き落とした。
(,,゚Д゚)「とりあえず電話してみるわね」
ξ゚⊿゚)ξ オネガイシマス
少し離れた場所へ移動して電話をかけるギコの後ろ姿を、ツンはじっと見つめた。
しぃやオサムやロマネスクを見るのが、というか彼らからどんな目で見られているのか確認するのが恐かったので。
通話はすぐに終わる。
結果は大体予想がつく。恥ずかしい。
だが。
検察席に戻った彼は、戸惑いを覗かせていて──
ツンとしぃは、眉根を寄せた。
-
川 ゚ 々゚)「どうだったの?」
(;,゚Д゚)「えっと……まず、トソンさんは来てなかったそうよ。
それと──」
いわく。
ゴミ箱を用意していなかったせいで、紙をその辺に捨てていく者がいたため
その対処として、外れくじは職員がその場で回収するようにしたのだという。
(;,゚Д゚)「だから──くじを外に持ち出した人がいるなら、
早い段階で旧校舎を出た人だろうって……」
羞恥と決まり悪さでふわふわ浮いていた気持ちが、すぐに、体に戻ってきた。
手に力が篭る。足元に熱が回る。
ξ゚⊿゚)ξ(……トソンさんが来てなかった?)
それなら──じゃあ、この外れくじは。
一体誰の。
-
(;*゚ー゚)「……誰がくじ引きに来てたのかは分からないのか?」
(;,゚Д゚)「んな無茶な」
(;*゚ー゚)「逃げ回っていたロマネスクが法廷になんか来る筈がない! 別の者が引いたくじだ!
それは、それじゃあ、そうなったら、つまり、
──我々の把握していない『誰か』が現場にいたということだぞ!!」
何てものを隠してくれたんだとしぃがツンへ怒鳴る。
ツンは謝罪も出来ずにいた。
思考を回す。浮かぶ事柄はたくさんあれど、全てが壁にぶつかる。進まない。
(;*゚ー゚)「裁判長、今日のところは閉廷を!」
そうするべきだ。
今は、このくじについて調べるのが何より優先事項。
だが。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ロマネスクさん!」
裁判長へ向けて叫んだしぃとは逆に、ツンは、被告人へ呼び掛けた。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ロマネスクさん、お願い! 何か──何か知ってることがあるのなら、
私達が何か間違ってるなら教えて!」
このまま閉廷したとして、すぐに捜査に乗り出してもタイムラグがある。
もしもくじの持ち主がそれを察知してしまったら──その者が事件にどう関わっているか分からないが──
こちらが出遅れている間に、望まぬ展開へ持ち込まれてしまうかもしれない。
今この場で、少しでも手掛かりを得なければならない。
彼は、この持ち主不明のくじについて何かを知っている。
-
( ФωФ)
ξ;゚⊿゚)ξ「一つだけ! ……一つだけでいいから……あなたの言いたくないことは言わなくていいから、
……お願い……」
( +ω+)
しかし、ツンの必死の願いも、ロマネスクには響かない。
被告人、としぃが怒鳴る。
オサムが木槌で宙を打つ。
誰の声も音も、彼の考えを揺らさない。
(-@∀@)「話せば彼が不利になるようなコトなのデハ?」
違う。
彼は、有利なことも不利なことも、何も言わない。
何が彼をそこまで黙らせる。
どうしたら彼の口をこじ開けられる。
ツンは机に手をつき、その手を固く握り締め──
( <●><●>)「ロマネスク!」
──響いた声に、力を弱めた。
-
傍聴席の3列目。
ワカッテマスが、立ち上がっている。
【+ 】ゞ゚)「あれは?」
(;,゚Д゚)「ワカッテマスさん……被告人を逮捕する切っ掛けになった人だわ」
ロマネスクは傍聴席に顔を向け、彼を視界に収めると、目を見開いた。
今までその存在に気付いていなかったようだ。
(;ФωФ)「何故ここに──」
( <●><●>)「僕に借りがあるでしょう。いずれ返すと言ったでしょう。
……出連先生の頼みを聞いてやってください」
(;ФωФ)「……」
初めてロマネスクが怒りや不快感以外の表情を見せた。
驚き。戸惑い。
丸い瞳でワカッテマスを見つめ、徐々に、その感情も失せていく。
代わりに表れたのは──諦め。
-
ここでワカッテマスか
-
( ФωФ)「……そうか……それならば──それならば、いいのである。お前がそう望むなら」
呟き、のそのそと前へ向き直った。
彼がワカッテマスへそこまで感情を向けたのが、予想外だった。
彼にとってワカッテマスはどんな位置付けをなされているのだろう。
これまでと瞳の色合いが変わった気がする。
ロマネスクがツンを一瞥した。
( ФωФ)「我輩の話したいことを一つだけ──でいいのであるな」
ξ゚⊿゚)ξ「……全部話してくれるのが一番いいんだけれど」
( ФωФ)「ならば我輩は口を閉じる」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。──ひとつでいい。……お願い」
( ФωФ)「……貴様らが思い違いをしている点を、一つだけ、指摘する」
声に先程までの敵意はない。
しかし、迎合もそこにはない。
( ФωФ)「……逆なのである」
そうして彼が語った最初の一言は、それだけでは意味が分からなかった。
-
熱い展開
-
【+ 】ゞ゚)「逆?」
( ФωФ)「8月。病室で我輩が見付かり、警備の霊に追われたという話。
あれは逆である」
(;*゚−゚)「我々が欲しい情報は2月1日の──」
( ФωФ)「そのことと無関係でもない。どう関係あるのかは貴様らが調べればいい」
(;*゚−゚)「……」
(;,゚Д゚)「逆ってどういうこと?」
( ФωФ)「8月のあの日、病院に行ってみると
警備の者が誰もいなかったため、我輩は病室に入った。
すると見知らぬ男がミセリの傍らに立っていたのである。
……我輩が様子を窺っていると、男は突然振り返り『そこで何をしている』と訊いてきて──」
-
( ФωФ)「こちらが近付こうとしたら逃げ出したので、我輩はその男を追ったのである。
地の利があったようで最後までは追いきれなかったが」
以上だ、と締めくくり。
ロマネスクが口と目を閉じる。
ξ;゚⊿゚)ξ
(;*゚ー゚)
(;,゚Д゚)
【+ 】ゞ゚)
川 ゚ 々゚)
一秒の沈黙の間に、様々なものがぐるりと脳裏を巡る。
-
傍聴席の外れくじ。
ロマネスクを追ったという嘘。
ロマネスクに追われたという真実。
示すのは、1人の男。
ξ;゚⊿゚)ξ「──裁判長!」
どうして自分はこんなところに立っているのだろう。
そんな逃避的な思考が浮かんで、次に唇を動かすのに間があいた。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオさんを──鬱田ドクオさんを、証人として呼ばせてください!」
*****
-
ちょ、ええええええ
-
まさかのドクオ
-
ニュッの資料が絡んでくるのか…?
-
まさかの展開、胸がひやっとした
-
もう嫌だ。嫌だ。
泣きたくない。
もう。
( ;ω;)「ど、どく、お、さっ、」
ブランコにしがみついたまま、後ろにいるであろう男を呼ぶ。
どうした、と優しげな声が返ってきた。
-
嘘、ここでドクオ?!
-
いったい何が…
乙です
ギ子さんにプギャーとついでにモララー献上しよう
-
まじか予想外
-
( ;ω;)「僕に、と、取り憑いてください、憑依して、ください」
('A`)「……何で」
( ;ω;)「泣くの、止めて、くださ……っ」
自分では涙を止められない。
「内藤ホライゾン」は泣き止めない。
別の誰かに体を制御してほしい。
幽霊のせいでこんな目に遭った、と言っておきながら
今度は幽霊に頼るなんて。
本当に、どっち付かずだ。
( ;ω;)「おねがいします、ドクオさん、おねがいします……」
-
そういえば誘惑罪のラストのシーン、言われればドクオ視点に見えなくもないな…
-
あかんんんんんんんんんんんんんん
-
('A`)
( A )
( ∀ )
.
-
「ああ。いいよ」
.
-
Last case:続く
-
おつおつ
-
ドクオェ・・・
誰か聖徒会よんできてー!!
-
すごくいいところで続くに
乙! 話の続きがすごく気になる
-
乙!
-
乙
生殺し
-
ブーン逃げてマジ逃げて考え直して
-
うっわぁぁぁどうなるんだこれ……
-
乙
-
ラスト見たら視点切り替わってるんだな
おつおつ
-
ギ子ちゃん助けに来てあげてー!!!
-
次いつ頃になりそうかな?
とりあえずまた一話から読んでこよう
-
えええーー
なんて終わり方するんだよおおお
気になるじゃねえか乙!
-
今回の投下終わり
第5話のラスト3レスがロマネスク視点だとは誰も言っていないぜ
読んでいただきありがとうございました
Romanさんいつもありがとうございます
次回投下日はちょっと未定です
目次
最終話 中編>>157
あ、>>264はうっかり重複です
-
おつ! ちょっと言葉にならない
うわあああああ
-
猫のように丸まってとか書いてたし完全にミスリードされたわ…
-
目次ちょっと修正
最終話 前編(途中から)>>4/中編>>157
-
長時間乙
内藤くんパートが辛すぎるところに爆弾をブチ込まれた…面白かった……
-
現行の中で一番好きだわ
次で最後かー
待ち遠しいが惜しくもある
次でまとまるのかこれ
-
もしかしたらアサピーと妹者達の会話がブーンのトラウマ抉りの演出だけじゃなくこれの伏線だったのかな
正直ドックンがクロだったらブーンが人間不審幽霊不審の二重苦になってしいそう
続き舞ってる乙
-
この作品のヒロインってギ子ちゃんだよね
主人公はブーンだから
ヒロインが助けに来てくれるよね?
-
嘘だよなドクオ…
続きを読むのがちょっと怖いな
-
乙
胃が痛くなってくるくらいのめりこんじゃったよ
-
乙
続きよみてえええ、けど終わっちゃうのはいやだあああああ、読みてええええ
-
すげえなあ よく思いつくわこんな展開
-
ドクオまじかよ……衝撃的すぎて一瞬固まったわ
乙!続きが早く読みたいけど最終回なんだよな……
-
どういうこっちゃねーーーん
-
なんてことだ…なんてことだ…
とりあえず乙
-
ドクオ……まさかここで……
開いた口が塞がらない……
最終話後編も楽しみにしています
-
気になって五話を読んできてしまったよ
-
乙乙
展開に驚きすぎて頬に置いた左手が動かない
-
乙
タイミング的にプギャーもドクオも色々疑惑の目でしか見られないよ
-
case6で泣いていたドクオを信じたい…けど
-
投下乙でした!
ドクオ完全に信用してたからショックだ…
最終話くるまでもう一回読み直してくる
-
改めて読むと怪しいところ多いなドクオ・・・過去を誤魔化そうとしてたり心読めなかったりオサムの御神酒断ったり
-
もうニュッさん逮捕して終わろう
これ以上はブーンが痛々しくて見てられない…
-
ドクオは容疑者として定評があるな
三度目の正直なのか二度あることはなのか
美和の書類の時とかトソンにお礼言われたシーンとか全部印象変わりそう
-
動機の点で若干モヤモヤが残る……と思ったがドクオには霊能力者を恨む理由はあるな
でもミセリやらはあまり関係ないし
そもそも高崎美和に指示してたもしくは唆したもう一人の存在がある可能性考えるとまたわけがわからんし……
「今のドクオ」と「死んだ人間のドクオ」が同一なのかどうかとかそんなところまで考えてしまいそうだ
-
>>371
やめたげてよお
-
今までいろんなブーン系よんできたし、たくさんの作者をみてきたけど
俺この作者さんが一番好きだ
ブーン系が好きだって意思が伝わってくる
俺もブーン系好きだからさー
今度両眼の手術するから下手したらブーン系読む事もできなくなるかもしれんので言わせてもらう
本当ありがとう、ブーン系に留まらず一番好きな作家だわ
無責任な発言だけど、本気で小説家とか目指したらどうかとオススメしてみたり
-
>>373
同じ事思った
憑依罪の時のドクオと同じドクオには思えないんだよな。ロマネスクがミセリに執着する理由も考えると余計に。
-
>>375
確かにここの作者さんすごいよな。俺もブーン系以外を含めても一番好き。
時々プロの人が趣味で書いてるのかと思うことがあるくらいだ。
余計なお世話かもしれないけど、眼の手術頑張って。>>375がまたブーン系を読めるよう祈っとく。
-
>>375
手術とかwwwwwwwwww嘘乙wwwwwwwwwwwwwwwちゃんと治してこの人の続編期待しとけバーカwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
大体そういうもんは主人公補正でパパッと治るもんだから、諦めずがんばれや
-
>>1スペース失礼
>>375
俺作者ではないけど手術の成功祈ってるよ
俺もこの作者の作品大好きだ
手術後もブーン系を一緒に読んでいけるのを期待してるからな
上手い言葉が見つからんから気に触るような部分あったらホントにごめん
-
>>375
どうか手術が成功しますように
-
>>375
心の眼で視るんだ!!!
大丈夫
大丈夫
-
おぉ、おまいらにしちゃ珍しいくらい良い雰囲気が流れている
ヌクモリティってこういう事を言うんだな。良いね
-
ヌクモリティとかまた懐かしい言葉を
-
>>375
大丈夫だよ、きっと成功するよ
-
乙
最終話投下前に読み返してくる
-
>>375
こちらこそありがとうございます、本当に
手術が上手くいくことを祈ってます
どうかお大事に
-
>>375
前に全盲の人が読みあげソフトでネットしてたからブーン系もイケる
-
>>375の人気にジェラシー
-
ここって難病応援スレなん?
他所でやれとまでは言わんがそれなりで止めようよ
-
ーーーーーーここですべての記憶をリセットする
-
この作者またお得意の他作品キャラチェンジストーリーしてくれないかな
-
乙!
いよいよ佳境…
今までの伏線がどうなるのか
早く見たいが終わるのはさみしいな
ところでまるっと重複してんのは創作板のバグ?
-
>>392
>>263-264の重複なら投下時のミスです
大事なことなので二回言ったという解釈でもいいです
-
続きが読みたいけど終わりは悲しいジレンマ
これが終わったら何を楽しみに生きて行こう
でも最終回読みたい
-
>>370
御神酒断ったのって何話?探したけど分からなかった
-
>>395
ロミスの時だから7話じゃないかな?
-
オワタ君人形のくだりのときにオサムの酒断ってるな。
-
わかってますかっこいいな
-
ドクオ…
後半楽しみだ
-
>>395
ただの酒なら濡れ女子の次話の時かなに断ったというかオサム様がもっと飲むか?ってきいてもういいっすって答えたとこはあった
-
完結してから読み直すのが楽しみ
伏線がしっかりしてる作品ってまた読もうって気にさせてくれるからいいね
-
幽霊は人に憑依ってか乗っ取ることが出来るみたいだけど、おばけどうしだとどうなんだろう
逆に人がおばけを乗っ取ったりとか
-
オサムの裁判の回を読み返したら、
ドクオとアサピーがハズレくじ引くのもアサピーがハズレくじメモにしようかって言ってるのも一レスの中に収まっていて、ぞくぞくした
伏線だとは思わなかったよ
-
道連れ罪の時のドクオは素だと思いたい
実際どうなんだ…
-
これまでの話の中で1番予想外の展開だよ
続きが気になってしょうがない
-
乙
ドクオいいやつだと思ったのになんだかもうこれからどうなるんだ
-
金曜日の夕方5時くらいから、最終話後編とエピローグ投下します
とてもとても長いので投下終わるまで時間かかると思います。いつものことだけど
気が向いたときにでも見に来て支援とか置いていってくれるとありがたいです
場合によっては日時変更するかもしれないけど、とりあえず上記の予定を目安に
-
ついに最終話くるのか…
終わるのが寂しいけど楽しみにしてるよ!!
-
待ってた!
無理せず頑張ってください
最終話楽しみだけど終わったら寂しくなるな
-
うわぁ楽しみだ
毎回前編投下する時には後編まで書き上げてるものなんですか?
-
幽霊裁判終わったらまた待つ作品が少なくなるな……
楽しみに待ってる どう終わるのか本当に楽しみ
-
>>410
本当はそうした方がいいんだろうけど、大抵は前編書き終わった時点で我慢できなくなってすぐに投下してしまう
最終話の場合は何とか我慢して、中編の途中まで書けたところで前編投下、
中編書き終わったらすぐに中編投下、それから後編書き始めた感じでした
-
うわあああああきたあああああ
-
ついに最終話後編かー…。楽しみだけど寂しいな。あな本の時もこんな気持ちだったよ(´;ω;`)
>>1の作品全部読んできたけど、どれも面白かったよ!幽霊裁判が終わっても、また何か書いてほしいなー。
-
>>412
ほえー…修正きかないのに齟齬があんまりでないってすごいね…
-
金曜か
いよいよなんだな…
-
最終回くるのか……
楽しみに待ってるよ
-
いよいよ最終回か
楽しみに待ってます
-
楽しみだあああああ
-
>>407
マジっすか…
見たいけど終わってほしくないもどかしさ…
-
もう最終回か…
寂しくなるな
-
金曜マダー?(・∀・)っ/凵チンチン
-
金曜マダァ-? (;∀; )っ/凵⌒☆チンチン
-
最終回が待ち遠しくもさみしい
-
ラストに備えて今までの話を読み返そうとしたら、まとめサイトに繋がらないんだけど…自分だけかな(´・ω・`)
-
まとめさんなんか停止するとか言ってたな……ここに来て生殺しとは
-
本当だ読めない!!
他にまとめられてるとこないかな……?
-
RESTにcase2の前編まである
http://boonrest.web.fc2.com/genkou/yuurei/0.htm
足りない分は過去ログ漁るのオススメ
http://jbbs.livedoor.jp/internet/13029/storage/1348843676.html
http://jbbs.shitaraba.net/internet/13029/storage/1375892848.html
http://jbbs.shitaraba.net/internet/13029/storage/1393490590.html
-
使いものになるかわからんけど、グーグルのキャッシュへのリンクとかまとめた
https://dl.dropboxusercontent.com/s/ein5ct0ol75bp90/1408449628.htm
ガラケーじゃ厳しいだろうから結局はRomanさん待ち
-
犯 人 は ( ^ν::.... r─ 、-、_
`ー \\\-、
\ \\\\
r‐ 、 ヽ ヽ .
ヽ ヽ } ',
人 `ー \
\ 、
ヽ \
`¨¨¨¨ヽ
\
-
ニートでもないのに今日金曜のつもりでwktkしてた死にたい
-
ついに金曜だぜ
-
待ちに待った金曜日がきたー!
長時間投下大変だろうけど頑張ってくれ!
-
投下、予定時間より遅れそうです。すみません
遅くても7時くらいには何とか
-
うおお期待
あな本のリアルタイムを思い出す
-
7時か・・・
-
ああん7時ぃ
-
謎は
とべてすけた!
m9ξ゚⊿゚)ξ
-
くるぞおおおおおおおおおおお
-
今日は疲れたから寝よう…と布団に潜った瞬間に思い出してPCにかじりついてる
-
後編&エピローグ投下します
本当にとても長いです
>>429
ありがてえ
-
ミセ*゚ー゚)リ『ロマのお腹やわらかい』
触るな。
ミセ*´ー`)リ『もっふもふだあ』
触るな!
ミセ;゚ー゚)リ『ぎゃっ! 噛んだな!』
自業自得だ馬鹿め。
ミセ*゚ー゚)リ『でも甘噛みだね』
お前らはこっちが牙を立てれば大騒ぎするではないか。
ミセ*゚ー゚)リ『ロマは優しいねー。ほーら、もふもふもふもふ』
……。
-
∧ ∧
(#ФωФ)『……だから! 気安く触るな!!』
ミセ;゚ー゚)リ『ぎゃああっ!? え!? しゃべっ、え!!?』
∧ ∧
(#ФωФ)『嫌がってるのが分からんか! 馬鹿女!!』
ミセ;゚ー゚)リ
∧ ∧
(#ФωФ) フーッ、フーッ
ミセ;゚ー゚)リ
ミセ*´ー`)リ『……すげー、ロマ喋れるんだあ。賢い賢い』ナデナデ
∧ ∧
(#ФωФ)『触るなと言っとろうに!!』ガブッ
ミセ;゚ー゚)リ『うわあああ今ちょっと本気で噛んだだろ!』
この女、本当に嫌いだ。殺してやりたい。
-
Last case:憑依罪/後編
.
-
ξ;゚⊿゚)ξ『ドクオさんを──鬱田ドクオさんを、証人として呼ばせてください!』
あの発言から、20分ほど経過した頃。
耳に当てた携帯電話が呼び出し音を鳴らす。
二度目のコールで相手が出た。
『ようクソ弁護士。今夜が裁判じゃなかったのか。てめえの無様に負ける姿を見られなくて残念だ』
ξ゚⊿゚)ξ「こんばんは根暗検事。裁判は一時閉廷。ちょっと問題があってね」
『てめえの出る裁判で問題起きなかったことってあんのか?』
ξ゚⊿゚)ξ「……あなたと楽しくお話しする気分じゃないの。本題に入るわよ、お時間よろしい?」
こつ。こつ。
ツンの足音が、すっかり人気の失せた工場内に反響する。
とうに閉廷を告げられ、傍聴人は外に出されて
カンオケ神社の職員が椅子や机を片している。
ストーブは沈黙し、夜気が温度を下げていった。
電話越しに聞くニュッの声は、相変わらず人の神経を逆撫でするのが生き甲斐と言わんばかりだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ「あなたが寄越した日記と手帳のコピーは、ドクオさんに関わるものなの?」
『……その口ぶりだとまだ理解しきれてねえのか。
お前そんな馬鹿だっけかなあ……がっかりしたわ』
『ニュッさんどの立場から言ってるんですか出連先生に2敗してる分際で。
出連先生限定で勝率0パーセントですよ、0。ぜーろ』
『うるせえなわざわざ電話口に近付いて言うな! 顔ちけえよ!!』
『いやあああ! そんなとこ触らないでニュッさん! 出連先生助けてニュッさんが私に乱暴を!』
『てめえが近付くから胸に手が当たったんだろうが!』
ξ゚⊿゚)ξ「おいこら私まじめな話をしてるんですよ。じゃれてんじゃねえよテメェら」
脱力して、ツンは弁護人席のパイプ椅子に腰を落とした。
そうしてようやく、自分がひどく緊張していたのに気付く。
一気に視界が広がったような心持ちに、自嘲めいた笑みが浮かんで、すぐに消えた。
-
『そもそも2敗じゃねえし。8月の裁判は結果的に引き分けみてえなもんだし』
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
『負け惜しみ半端ねえっスよニュッさん』
ξ゚⊿゚)ξ「半端ねえっスよ」
『こっちの起訴内容はたしかに間違ってたが、てめえの弁護だって正しくはなかったろう』
ξ゚⊿゚)ξ「……どの点が?」
『鬱田ドクオが真っ白、ってとこだ。
あれは──決して潔白な輩じゃねえ』
結局、それが目的だったのだろう。
「景品」として資料のコピーを送ったと言うけれど。その資料を読んだツンが
ドクオの隠している「何か」を悟ることで、8月の裁判は
決して真実──ドクオに関して──に辿り着けていなかったのだと知らしめるための。
驚くべき負けず嫌い。
それで引き分けとなる思考もよく分からないが。
-
支援
-
ξ゚⊿゚)ξ「それは、あなたが送ってきた資料で分かるのかしら」
『てめえで考えろ。そっちで何があったか知らねえが、お前の手助けになるようなことはしたかねえんだ』
ξ゚⊿゚)ξ「わざわざアンダーライン引いたりしてくれたくせに、それ以上は駄目なの?
あなたの線引きがよく分からないわ。あ、洒落じゃなくってよ」
『……アンダーラインってなァ何の話だ』
ξ゚⊿゚)ξ「……書類に線引いたり矢印書いたり」
『知らねえぞ』
ξ゚⊿゚)ξ「あー……そう。分かった。
ねえ、ドクオさんのお母さんの日記って、あれ特定の月だけ抜いたりした?」
『してねえよ』
ξ゚⊿゚)ξ「あとで指定した分をもう一回送ってちょうだい。着払いでも許すわ」
通話を終了させ、携帯電話を見つめた。
やがて画面が暗くなり、自身の顔を反射する。
──やられた。
-
コピーが届いた日。
内藤を送るからと、小一時間ほどドクオに留守を任せてしまった。
あのときに──手を加えられたのだ。
考えてみれば、高崎美和の手帳のコピーは、抜けもなければ書き込みもなかった。
そういったものが見られたのはドクオの母の日記だけ。
('A`)『……その女の物とカーチャンの日記、一緒にしないでくれ。たとえコピーでも』
ξ ⊿ )ξ(ちっくしょー……)
事務所として使っている部屋は特殊な結界が張ってある。
霊が入るのにはツンの許可──ノックなどに対する「どうぞ」といった応答──が要るが、出るのは自由。
ドクオが日記のコピーを移動させたことで、日記は部屋に残したままだったが、
その他は段ボール箱に入ったまま廊下に出していた。
故に彼は日記にのみ細工が出来た。
他の資料には手を出せなかったのだ。そうするためには廊下に出る必要があって、
そうしてしまえば、彼はツンが帰るまでは事務所内に戻れないからだ。
箱も日記も、一緒に廊下へ移すべきだった。
-
なんかもうドクオさんが黒の振りして白の可能性がどんどんなくなってく……!
-
ξ゚ -゚)ξ「……」
携帯電話をしまい、ツンはコートを羽織ると鞄を持ち上げた。
職員へ会釈して工場を出る。
( <●><●>)「出連先生」
ξ;゚⊿゚)ξ「ぎょわんっ!!」
いきなり真横から声をかけられ、飛び上がった。
闇に佇むギョロ目、もといワカッテマスの姿は恐い。美形など関係ない。
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何……びっくりした……待ってたの?」
( <●><●>)「はい。お疲れ様でした」
ξ;゚⊿゚)ξ「何かご用事?」
( <●><●>)「いえ。ただ、挨拶せずに帰るのもどうかと思いまして」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「そう。……さっきはありがとう。あなたのおかげでロマネスクさんが口を開いたわ」
( <●><●>)「お礼だったら、今度うちの店で僕を指名して高い酒飲んでいってくだされば結構ですが……
──ロマネスクはどうなりますかね」
ξ゚⊿゚)ξ「分からない。ドクオさん──証人の方がどうなるかによる」
ワカッテマスが考え込む。
「真面目に仕事してるんですね」という呟きは聞かなかったことにした。
ふとツンは視線を下にやった。
少女が、ワカッテマスに寄り添うようにしてツンを見上げていた。
どことなく色が薄い気がした。色白ということではなく、全体的にぼんやりしているような。
ξ゚⊿゚)ξ「この子は?」
( <●><●>)「え?」
ツンの視線を追ってワカッテマスが足元を見下ろしたが、
いまいち焦点が少女に合っていない。
そうだった、彼は霊感があるわけではないのだ。
自室でのみ──それも夜限定──見えるだけ、と言っていたか。
-
o川*゚ー゚)o「はじめまして……私、ビロちゃんの友達です」
少女は、ぺこりと頭を下げた。
ξ゚⊿゚)ξ「ビロちゃんの友達って言ってるけど」
( <●><●>)「ああ、その子、最近うちに来るビロードとぽぽちゃんの友達です。
幽霊裁判を見てみたいと言うので、僕と一緒にここへ」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほどね。どうだった?」
o川;´ー`)o「難しくって、頭が痛くなっちゃった。ほとんど頭に入らなかったな」
子供らしい返事に、ツンが微笑する。
先の電話といい、心身をほぐしてくれるのがありがたい。
同時に、穏やかでいる場合ではないだろうという焦りも湧く。
-
( <●><●>)「挨拶もしたし、僕たち帰りますね。
──審理の内容って、ビロード達に話してもいいんでしょうか」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ家族に話すくらいなら……大まかな内容であれば。
ただし幽霊裁判知らない人に言い触らすのは困るかな。
クラブでお客さんに話したりしたら、あなたは今後不思議ちゃんキャラとして扱われる恐れがあるわよ」
( <●><●>)「そうですね……正直、現実的なことではありませんからね。
非常識なのは美しさだけにしておけと怒られかねません」
ξ゚⊿゚)ξ「分かるわー、現実離れした美貌を持ってると、それだけで敬遠されたりするものね」
o川;゚ー゚)o
少女が何か言いたげな目でツンとワカッテマスを交互に見比べている。
内藤がたまに見せる目付きに似ていた。ような気がする。
( <●><●>)「では今度こそ」
ξ゚⊿゚)ξ「さよなら。──近いうちにまたお邪魔すると思う」
一礼して、ワカッテマスが踵を返す。
立ち尽くしたまま青年と少女の背を見送っていたツンは、不意に目を見開くと、
2人に向かって駆け出した。
一瞬悩んでから、ワカッテマスの肩を引っ掴む。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!」
(;<●><●>)「な、何ですか!? やはり僕の体が目当てだったんですか!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「何の話だ! 待って、女の子、その子の顔見せて!」
o川;゚ー゚)o「へ?」
立ち止まった少女の前にしゃがみ込む。
下から彼女の顔を覗き込んで、ツンは訊ねた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あなた、名前は?」
o川;゚ー゚)o「名前?」
-
ツンちゃん気づいてくれた!
-
──くりくりした瞳。小さな口。真っ直ぐ肩まで伸びた髪。
可愛らしい顔立ち。歳は、小学校高学年くらい。小柄。
赤、というか濃いピンクのセーター。
聞き覚えのある特徴。
ロマネスクの方に掛かりきりで、人探しの件を進められていなかった。
o川*゚ー゚)o「名前……」
少女は困ったような顔をした。
恐々、答える。
o川*゚−゚)o「……覚えてないの……」
.
-
o川*゚ー゚)o「──生きてる人間として暮らしてたような気は、うっすらあるんだけど。
気付いたら道端に立ってて……」
アパート、ワカッテマスの部屋。
少女は、思い出し思い出し、訥々と話した。
o川*゚ー゚)o「あれから一ヵ月くらい、何か思い出せないかって
ずっと歩き回ってるけど。まだ、何も」
ξ゚⊿゚)ξ「一ヶ月」
「彼女」が事故で死んだのもだいたい一ヶ月前。
時期も一致する。
ツンはワカッテマスの弟、ビロードが淹れた紅茶に角砂糖を落とした。
( ><)「何か食べますか?」
ξ゚⊿゚)ξ「軽い洋食があれば」
(*><)「わかったんです!」
(*‘ω‘ *) ポッ
ビロードが手早くホットサンドをこしらえてくれた。ツンの分と、それから少女にも。
ワカッテマスが留守がちなので、家事はほとんどビロードがこなしているらしい。
-
ハムとチーズが挟まれたホットサンドに齧りつく。
とろり、とろけたチーズが伸びる。ざくざくとしたトーストの食感にチーズのもちもちが絡んだ。
塩気が程よい。
ξ*゚〜゚)ξ「うっめえ」
o川*゚ー゚)o「ほんとだ、おいしい」
ツンの質問に些か身を固くさせていた少女が、表情と姿勢を緩める。
続けて二口三口と頬張る彼女へ、ツンは隙を突くように問いかけた。
ξ゚〜゚)ξ「素直シュールって子、知ってる?」
o川*゚ー゚)o「素直?」
少女の手と口が止まる。首を斜めに傾けて、宙を見上げた。
なかなか思わしげな反応が返ってこない。
休みなくホットサンドを貪りながら返答を待つツンを、ワカッテマスが生温い目で見ている。
最後の一口となり、ツンが諦めかけた──ところで。
o川*゚−゚)o「……あ、何か……素直……聞き覚え……うう……?」
少女は頭を押さえ、呻いた。
片手に持ったホットサンドを皿に戻している。
-
覚えてないんかーい
-
ξ゚⊿゚)ξ「出てきそう?」
o川*゚−゚)o「はっきり思い出せないけど、知ってる気はする……」
( ><)「先生はこの子と知り合いなんですか?」
ビロードが耳打ちしてきた。
知り合いではないけれで、と返し、彼女へ追加の質問をする。
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、車について何か思い出せることないかしら」
o川*゚−゚)o「車……」
また唸り出した。
先程より激しい。
大丈夫なんですか、と今度はワカッテマスが小声で問う。訊かれても、どうにも。
少女は頭を掻きむしると、上半身を前に倒した。
o川;> -<)o「……事故……交通事故が……」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「──あなた、やっぱり」
(;<●><●>)「何なんですかこれは」
(;><)「あ、あの、苦しそうだし、その辺で……」
(;‘ω‘ *)"
「ぽぽちゃん」が少女──素直キュートの背中を摩る。
我に返ったツンは、苦しいなら無理に思い出さないで、と声をかけた。
死の瞬間を再認識させるというのは、精神的に大きな負担となろう。
特にキュートは、姉のことすら明確に思い出せぬほど記憶がごっそり抜け落ちている。
それをいきなり埋める作業はショックが大きそうだ。
-
そこで、ふと気付く。
まだ彼女自身のことを知らせていなかった。
本人の情報を抜きにして、それ以外のことから思い出させようとしても、そりゃあ上手くいかない。
ξ゚⊿゚)ξ「……あの……あなた、多分、素直キュートって子なんだと思うの」
o川;゚−゚)o「……素直キュート……」
キュートはしばらく考え込んでから、シュールって人は家族なんですね、と納得したように言った。
まだしっかりとは思い出せないようだが、腑には落ちたようだ。
(*‘ω‘ *) ポッ
ぽぽちゃんがキュートとツンを交互に見遣り、口元で空気を鳴らした。
キュートの背を再び撫でる。
一応、姉のシュールがキュートを探しているのだということも伝えておく。
キュートがまた考え込み始めたので、それ以上は言わなかった。
断片的に、ツンの発言が自分と関わりあるものだとは理解できるのだが、
そこから発展した形では出てきてくれないという。
-
ξ゚⊿゚)ξ「ひとまずお姉さんから依頼を受けている以上、あなたを見付けたことは話しておくわ。
会ってみたら思い出せるかもしれないし、それまでここでゆっくりしてて」
o川*゚ー゚)o「うん……」
( <●><●>)「ここで面倒見るのは確定なんですか」
ξ゚ -゚)ξ「私のところに連れてくより、ビロード君たちと一緒の方が彼女も落ち着くでしょう。
ただ、また行方不明になられちゃ困るから、無断で遠くに行かないでね」
o川*゚ー゚)o「はあい」
短時間でツンから様々な情報を押しつけられ、彼女も疲れただろう。
シュールにはキュートを見付けたと伝えておいて、いくらか日を置いてから対面させよう。
それまでの間にキュートが記憶を取り戻してくれれば上々。
-
(*><)「まあ──ともかく、家族に会えるんなら良かったんです!
あ、これどうぞ、余っちゃって。紅茶とは合わないかもしれないけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
明るく言って、ビロードが箱に入った饅頭を差し出した。
薄皮にあんこがぎっしり詰まっていて美味い。
キュートはあまり好みでないのか──というか心労のためか──、一口だけ齧って残りはぽぽちゃんにあげていた。
嬉しそうに饅頭を頬張るぽぽちゃん、にこにこと彼女を見つめるビロード。
2人を眺めていると、ツンの心が少し揺らいだ。
今日はもう、このまま帰ってしまおうかと。
しかし、この部屋には、もう一つ果たさねばならない用がある。
そちらの用件を済ませるべく、ツンは顔の向きを変えた。
ξ゚⊿゚)ξ「ぽぽちゃん──さん」
(*‘ω‘ *)"
饅頭を食い終えたぽぽちゃんが、顔を上げる。
着物の袖口が揺れた。
ツンは悩みながらも、問いを発する。
どうか出番が来てくれるなよと、緊急時のための拘束札に手を伸ばしながら。
*****
-
──結果から言うと、拘束札の出番はなかった。
(;‘ω‘ *)
力なく項垂れるぽぽちゃんからは、怒ったり暴れたりする予感がしなかったからだ。
(;><)「……う──嘘なんです、ぽぽちゃんは……ぽぽちゃんは僕と……僕を……」
彼女を見つめ、ビロードが呆然としていた。
彼の目に涙が滲み始め、ツンは視線を逸らした。
慣れない。人の絶望や悲しむ様を見るのに慣れる者などいるのだろうか。
(;><)「ぽ、ぽぽちゃんは僕に優しくしてくれたんです、……僕を一人にしないでくれたんです」
(;<●><●>)「ビロード」
ぽぽちゃんに近付こうとしたビロードを、ワカッテマスが留めた。
それは咄嗟の反応だったのだろうが、己の行動に、ワカッテマスは罪悪感めいた表情を浮かべる。
-
ξ゚⊿゚)ξ「一緒に警察に行ってもらえるかしら」
(;‘ω‘ *)"
警察という言葉と、それへ頷くぽぽちゃんに、ビロードの目尻からついに涙が落ちた。
──どうしたものか。
警察への説明は、ツンの方からしなければならない。
ぽぽちゃんに口を開かせれば──少々、厄介なことになる。
(。><)「……」
(;‘ω‘ *)、
(*<●><●>)「……やだなーもー! なんか暗ーいぞ! ちょっと笑おっか! ほらワカさんのスマイル真似て! にこっ☆」
ξ゚⊿゚)ξ
(*<●><●>)
ξ゚⊿゚)ξ「ちぎり取るぞ」
( <●><●>)「すみません空気に耐えきれず……」
-
しえ
-
ワロタ
-
いまいち話を飲み込めていないキュートを一度見遣ってから、ツンは携帯電話を取った。
と同時に、携帯電話が鳴る。
ξ゚ -゚)ξ「む」
しぃからの着信だった。丁度いいといえば丁度いいが、
このタイミングでの彼女からの連絡は、ある種、不穏でもある。
ワカッテマスに「失礼」と断って、ぽぽちゃんから目を離さずに電話に出た。
ξ゚⊿゚)ξ「検事? どうしたの?」
『鬱田ドクオが見付かりました』
ξ゚⊿゚)ξ「……そう」
安堵と緊張が同時に訪れ、奇妙な心持ちだ。
どこにいたの、と問おうとした。
しかし、続けて発せられたしぃの言葉に、声を失う。
『内藤君に憑依していました。
憑依を解いても内藤君が目を覚まさないので、病院に運びましたよ。
鬱田さんに会いたいのならカンオケ神社へ、内藤君に会いたければヴィップ総合病院へどうぞ』
*****
-
な、ないとおおおおおおおおおおおおおお!
-
来てたか支援
-
ひとまず見つかってよかったな…
-
頑張ってください
しえ
-
#####
ミセ*゚ー゚)リ『おーっすロマ。夏だね暑いねー』
ああ、今年も鬱陶しいのが来た。
ミセ*´ー`)リ『お腹さわらせてー』
暑いと言ったくせに、何故そうなるのだ。
∧ ∧
(#ФωФ) カーッ!
ミセ*゚ー゚)リ『おっ、今日も威勢いいね!』
∧ ∧
(#ФωФ)『寄るな!』
-
ちんぽなんかやった?
今まででそういう描写あったっけ?
-
ミセ*゚ー゚)リ『鳴き声は可愛いのに喋ると声がオッサンになるのは何なの……。
ロマお腹すいてない? 煮干し食べる?』
∧ ∧
(#ФωФ)『いらん。貴様は毎回毎回そればかりだ。どうせ食わせるならもっといいもの持ってこい』
ミセ*゚З゚)リ『だって私が煮干し好きだしー。嫌なら食べなくていいよ』ポリポリ
∧ ∧
(#ФωФ)
ミセ*゚ー゚)リ『うま』ポリポリ
∧ ∧
(#ФωФ) カーッ
ミセ;゚ー゚)リ『欲しいなら欲しいって言えよ面倒くせえー!!』
#####
-
会話は和むんだがな
-
(;'A`)「──だから! 俺は何もしてねえって!」
何度も何度も繰り返している主張を吐き、ドクオは文机を叩いた。
書類に書き付けながら、しぃは「落ち着いてください」と宥める。
(;,゚Д゚)「別に強制憑依でしょっぴいてるわけじゃないってばあ」
(*゚ー゚)「先程の裁判で被告人が──」
(;'A`)「俺が真犯人だっつったって話だろ? さっきから聞いてるよ!
んな事実ねえし、内藤少年に憑依したのも悪意があったわけじゃねえ!!」
(*゚ー゚)「真犯人だとは言っていません。
あなたの話と被告人の記憶が食い違っていると言っただけです。
もちろん被告人が嘘をついている可能性もありますので断定はしていません」
(;,゚Д゚)「あと、外れくじの件もあるし……とにかく冷静に話しましょ。ね」
ドクオは忌々しげにしぃ達を睨んで、乗り出していた半身を引っ込めた。
去年つきまとい罪で逮捕されたときも、彼はこのような態度を見せていた。結果は主張通りに無罪で。
-
しぃはペンの上端でこめかみを掻き、書類を見下ろしてから、神社の拝殿内を一瞥した。
(*゚ー゚)「改めて訊きますが、内藤君に憑依していたのは何故……」
(;'A`)「内藤少年が取り憑けっつうから言われた通りにしただけだ。
許可書の準備するような状況じゃなかったし、とりあえずの応急処置としてだなあ」
(*゚ー゚)「応急処置とは」
(;'A`)「学校で何かあったらしくて、家出して泣いてたんだよ!
泣き止みてえが泣き止めねえから取り憑けって少年が──」
家出して泣いた。あの内藤が。
一時間半ほど前に道端で見付けた少年の顔を思い出す。
言われてみれば目元が赤かった、かもしれない。
(;,゚Д゚)『ブーンちゃん、こんな時間に何してんのよ……あ、ねえドクオさん見なかった?』
( ^ω^)『……俺に何の用だよ』
ドクオに何か疚しいことがあるのなら、あのとき内藤らしい振る舞いをして、
見ていない知らないと適当に答えて立ち去れば、それで良かった筈だ。
正直に憑依していることを話し、こうして神社に付いてきたという事実はどう捉えればいい。
-
(*゚ー゚)「内藤君が目を覚まさないほど消耗していたのはどう説明します?」
(;'A`)「少年が元から疲弊しきってたからじゃねえか、心身ともに……。
正直、俺もよく分かんねえけどよ」
(,,゚Д゚)「病室にあったっていう外れくじは?」
(;'A`)「知らねえよ! 今の今まですっかり忘れてたし、もう見当たんねえし、どっかで落としたんだろうが……。
病室にゃ行ってねえ。そもそも俺以外にも外れくじ引いて外に持ち出した奴はいるだろ」
幾度か問答を続けているが、ドクオが嘘をついているようには見えない。
しぃは文机に肘をつくと、手に頬を預け、長く息をついた。
(*゚ー゚)「これまで訊いた諸々を、裁判でも証言していただく。
出廷していただけますね」
(;'A`)「……出ねえといけねえんだろ。
くそっ、また人を犯人みてえに……!」
-
(*゚ー゚)「僕が犯人だと思っているのはロマネスクだ。
ただ、あなたが事件に無関係とは思えないので出廷を要請しているだけです」
(;'A`)「俺は検察側の証人なのか?」
しぃは顔を軽く上向け、考え込んでから振り返った。
(*゚ー゚)「そういえばどっちだ、ギコ」
(;,゚Д゚)「知らないわよ。
とりあえず、ツンがドクオさんをどう扱うか……」
(;'A`)「……弁護士の奴、俺を真犯人だって告発してやる腹じゃねえだろうな」
(*゚ー゚)「そうですね。あの人は何をするか分からないから」
(;'A`)「冗談じゃねえよ!!」
たしかに冗談ではない。
が、ツンならやりかねない。
無罪判決のために、そういう展開に持っていくかもしれない。
-
(*゚ー゚)(……新たな事実について捜査すべきだが、あまり猶予がないな)
調べるべきは外れくじや、内藤とドクオのこと。
本当に事件に関わっているのかはっきりしないドクオに対して、それほど強い拘束力は持てない。
くじは、ドクオではない誰かの持ち物であった場合を考えると、すぐに対処しなければならない。
爪を噛む。
人手が必要だ。
*****
-
#####
ミセ*゚ー゚)リ『ローマーはー太いーなー、まーるーいなー♪』
∧ ∧
( ФωФ)『噛み殺すぞ』
ミセ*゚ー゚)リ『ふう、あっついなあ。海行きたいけどG県は海ないもんなあ……。
ロマ暑くないの? 毛むくじゃらだしお肉ついてるし』
∧ ∧
( ФωФ)『噛み殺すぞ』
ミセ*゚ー゚)リ『いかん、暑さのあまりロマの語彙が後退しとる。
ばあちゃん家にビニールプールあったかな、水浴びしようロマ。きっと涼しいよ』
∧ ∧
( ФωФ)『噛み殺して埋めるぞ』
ミセ*゚ー゚)リ『よっしゃ語彙が進化し始めた』
#####
-
( ‐ω‐)
( ぅω‐)
( ^ω^)
眩しかった。
目が痛んで、一瞬、闇を探した。
横へ動いた瞳が、友人の顔を捉える。
(´<_` )「ブーン」
( ^ω^)「弟者」
呼び掛けられたので、呼び返した。
がたがたと硬いものが揺れる音がして、今度は、きゅっと聞こえた。
椅子から勢い良く立ち上がって靴底を床に擦ったら、多分、こういう音が鳴る。
-
(;・∀・)「ブーン!」
(;-_-)「……ブーン」
名前を呼ばれてばかりだ。
仕方ないので内藤も返した。モララー、ヒッキー。
やけに白の目立つ部屋で、病室か、とぼんやり思った。
全身の疲労が凄まじく、頭があまり働かない。
眠っていたのか。
辛うじて──学校で起きたこと、それが理由で家出したことを思い出せた。
改めてモララー達を見据え、どうしようもなく安堵する。
彼らは内藤を案ずるような顔付きだった。
-
ついに終わりか
支援
-
( ^ω^)「いま何日の何時だお?」
起き上がらないまま、何となく訊いてみる。
それより気になることはたくさんあったが、一番単純で手短に済みそうな質問がそれだった。
( ・∀・)「24日の、えーっと、昼前」
(´<_` )「それ答えになってないだろ。11時半だよ」
( ・∀・)「昼前じゃん」
(´<_` )「何時かって訊いたんだから」
弟者とモララーのやり取りは、いつも通り。
彼らが会話する姿を見るのはたかだか数日ぶりだというのに、いやに久しく感じた。
少し躊躇ってから、仲直りしたのか、と問う。
( ・∀・)「おう。さっきな。弟者と喧嘩してたらヒッキーにキレられた」
(´<_` )「恐かった」
( ^ω^)「なんでヒッキー……」
(;-_-)「き、キレたってほどじゃないでしょ」
( ・∀・)「いや、あれマジギレだろ……小学生のとき以来だわ」
-
以下の説明は、弟者から聞いた話。
まず、昨夜。
内藤が倒れていたのを発見した──とギコから流石家へ連絡が行った。
内藤の書き置きを居間で見付けた弟者がそのことを伝えると、
ギコが、内藤はこちら(法廷のことだろう)には来ていなかったと答えた。
書き置きで示されていたのとは全く違う場所で内藤が見付かった旨を聞かされ、
本当は家出をするつもりだったのではないかと弟者は勘づく。
それから朝一番に、内藤が病院に運ばれたことをモララー達へ伝え、
すぐに病院へやって来た彼らと話をした。
(´<_` )「ブーンが家出したのは──あのー……学校の、あれが原因だろうと思って。
それなら、モララーやヒッキーが庇わなかったのも一因だろうって言った」
( ・∀・)「それ言うならキレまくってブーンに喋らせなかった弟者も悪いじゃんって思ったから
そう言った、ら、喧嘩になった」
(-_-)「で、僕が、みんな悪いところあるだろって怒った」
そうして、内藤をそっちのけにしたまま弟者達が仲違いしてもしょうがない、という結論に至ったらしい。
そもそも弟者もモララーも、決して対立した立場ではなかったそうなので。
-
( ^ω^)「……そうかお」
訊きたいことを頭の中で整理しようとしたが、上手くまとまらない。
すると、今まで座っていた弟者も腰を上げて、モララーの隣に並んだ。
ごめんなさい、と3人が同時に頭を下げる。
返事が思い浮かばずに内藤がぼうっと見つめていると、
反省点を聞いてくれないかというモララーの声を合図に、3人は顔を上げた。
(-_-)「……僕ビビりだから、あのときちゃんと喋れなかったんだ。
別に、ブーンに近付きたくないと思ったわけじゃないんだよ。
でも、もしかしたらとか考えたら、どうやって関わればいいのか分かんなかった。
すぐに庇ってあげられなかった」
話すヒッキーの顔は泣きそうだ。
ずっと思い悩んでいたのだろう。
(´<_` )「さっきモララーが言った通り、俺が熱くなったせいでみんなが引いたんだと思う。
ややこしくしたのは俺だし、冷静でいられたら、もっとマシになってた」
-
( ・∀・)「俺はちょっと無神経だったわ。
……まー、ぶっちゃけ、考え自体は今もあんまり変わってないんだけどな」
(´<_` )「モララー」
( ・∀・)「だってブーンが絶対に違うって言えばそうなんだろうけどさあ。
自分のせいかも、なんて顔されちゃ、分かんなくなる」
内藤は自分の頬を摩った。
「自分のせいかもしれない」──あのときそう思ったのは、事実。
モララーはそれを察したのだ。
今度こそ、答えを間違ってはいけない。
躊躇ってはいけない。
みんなの目を順繰りに見つめて、内藤は言った。
( ^ω^)「……僕は、本当に、何もしてないお」
( ・∀・)「おう」
分かった。そう返して、モララーは椅子に座った。
続いてヒッキーと弟者も。
-
( ・∀・)「俺やヒッキーのこと許せないなら言ってくれ」
( ^ω^)「いいお。みんなの気持ちも分かるし」
ああいう風に言われれば──本当に、よく分かる。
彼らの性格を考えれば、納得もいく。
自分の悩んでいたことの一部が、杞憂だったのだ、と解きほぐされた。
彼らは友人でいてくれる。
内藤を拒絶することもなく。
( ・∀・)「ごめんな。俺とヒッキーからも、みんなに言っとくから」
(-_-)「弟者とモララーがぴりぴりしてたから皆も困ってただけで、
僕らが普通にしてれば大丈夫だよ」
( ^ω^)「……そういうもんかお?」
( ・∀・)「わっかんね。
でもお前が暗い顔して黙ってるだけじゃ、いい方向には行かないんじゃねえの」
もしかしたら、一番冷静なのはモララーなのかもしれない。
いたずらっ子(可愛げのある言い方に留めれば)なので、
おとなしい内藤達に比べれば、揉め事にはやや慣れている。
-
(´<_` )「俺じゃなくてブーンがキレてたら、すぐに話は終わってたかもな」
( ^ω^)「僕が怒ったら、みんなもっと怯えたと思うけど」
(;-_-)「どうだろ、ブーンが怒らないから真剣味が伝わらなかったのかも」
そう──なのか。
ずっと当たり障りなく、いい顔だけしていても、必ずしも事態が良くなるわけではない。
当然のことなのに、勇気が出なくて、結局すべて流れのままに任せてしまっていた。
( ・∀・)「おまえ普段疑われることないから、いざそういう状況になったときに立ち回りが下手なんだよ」
(-_-)「モララーなんて逆ギレとかして有耶無耶にしたりするもんね。
そういうのも、一種の手だよ」
( ・∀・)「そうそう。経験から得た知恵よ知恵」
(´<_` )「お前の場合は日頃から悪さばっかりしてるから、疑われるのに慣れただけなんだけどな」
(-_-)「真似しろと堂々と言えたもんじゃないのは確かだよね……」
(;・∀・)「うっせえなあ!」
笑うと、少し気力が出た。
半身を起こす。大丈夫か、と問う弟者に首肯を返した。
-
ふと、弟者が何かに気付いたように再び立ち上がる。
(´<_` )「姉者たち呼んでこないと」
(-_-)「あ、そうだね。じゃあ僕らは一旦帰るよ。検査とかあるだろうから」
( ・∀・)「結局ブーンは何で倒れたんだ?」
( ^ω^)「さあ……」
──昨夜、家出した。
ドクオと一緒に歩いた。
ドクオに憑依を頼み──そうして、先ほど目覚めた。
なぜ自分は倒れていたのだろう。
何故こうも体が怠い。
(´<_` )「そうだ、おじさんとおばさんも来てるよ。姉者達と外で話してる」
このタイミングで弟者の言う「おじさん」「おばさん」ときたら、誰を指しているかすぐに分かる。
内藤の両親だ。
学校での出来事が原因となれば、余計に心配させてしまうかもしれない。
小学校の苛めを理由にこちらの町に預けられたわけだから。
不安を和らげるためにも、友達のおかげでだいぶ楽になったことは言っておこう。
-
身支度を整えていたモララーが、不意に振り返った。
( ・∀・)「お前ほんとにツンさんと知り合いだったんだなあ」
( ^ω^)「ツンさん?」
どうしてそれを知ったのか、というのと、どうしてそんな呼び方をするのか、というのと。
疑問が二つ、顔を出す。
ツンが変人として有名なのは知っている。
が、ツンさん、と親しげに呼ぶのに違和感。
( ・∀・)「俺とヒッキーが病院に来たとき、先に来てたんだよ、あの人」
(-_-)「それで何かモララーとホラーゲームの話題で盛り上がって、ちょっと仲良くなってた。
噂されてるほど恐い人じゃないね」
(*・∀・)「極秘の私立探偵やってて、ブーンもこっそり手伝ってたんだって? かっけえなあ。
もっと怪しげな人かと思ってた」
( ^ω^)(何してんだあの女)
何を言っているのだ。極秘の探偵って何だ。恥ずかしくないのか。充分怪しい。
というか来ていたのか。
どことなく決まりが悪くて、内藤は首を擦った。
-
( ・∀・)「とりあえず出回ってるイメージとは違う人だって、みんなにも話しとくから。
そしたら誤解もとけやすいんじゃねえかな」
( ^ω^)「……モララー」
( ・∀・)「だからほんと、俺らのこと許してなー」
笑って、モララーはヒッキーと弟者と共に出ていった。
閉じた扉をしばらく見つめてから、内藤は布団に目を落とした。
ぽたりと雫が落ちて、染みを作る。
悲しくはなかった。
安堵していた。
ただ、それ以上に、結局周りに頼って
自分で自分を守ることすら出来ていない己が情けなかった。
*****
-
良かったなあ!
-
∬;_ゝ;)「良かった、ブーン君っ、ブーン君、起きなかったらどうしようって思ってたぁああ!」
内藤の頭を抱えるようにして、姉者はわんわん泣いていた。
とても柔らかい。とても。
l从・∀・ノ!リ人「姉者、あんまり胸を押しつけたらブーンが息できないのじゃ」
(;´_ゝ`)「せっかく目覚めたのに今度は弟者の手で永眠させられかねないから、その辺にしとけ」
∬;_ゝ;)「ひうっぐっうぐぐうっう」
鼻水まで垂らしながら泣きじゃくる姉者に、妹者がティッシュペーパーを差し出す。
姉者が鼻をかむために手を離したことで、内藤はようやく解放された。
-
( ^ω^)「お騒がせしましたお」
( ´_ゝ`)「本当になあ。──弟者、殺気まき散らすのやめて、
母者に連絡してきてくれ。異常なしって」
(´<_` )「分かった」
先ほど検査をした結果、脳も体も特に異常はないと診断された。
学校で色々あったということだけは弟者から医者に話が行っていたようなので、
極度のストレスと疲労が重なって、体に不調を来して気を失ったのではないか、との結論が出た。
念のため、用心をとってもう一日だけ病院に泊まることになったが、とにかく容態は然ほど問題ない。
内藤の両親は安堵していた。今は医者と話しに行っている。
改めて病室を見渡し、内藤は首を捻った。
他にベッドがない。個室だ。
∬;_ゝ;)「そうだ、後でツンちゃん来てくれるって」
( ^ω^)「はあ……あのう、個室で大丈夫なんですかお、その、お金とか」
l从・∀・ノ!リ人「ギコさんのとこが払ってくれるらしいのじゃ!」
-
ブーンそこ替われ
-
∬;_ゝ;)「うん、あのね、何かの事件に関わってるかもしれないんですって。
だから多分もう少ししたらギコ君が話を聞きに来るかも──……」
はっとして、姉者は口を噤んだ。
兄者は何も知らない。彼に聞かせるわけにはいかないと判断したのだろう。
ともかく幽霊裁判関連で何かが起こったのは理解したので、
内藤は「分かりました」と頷いた。
( ´_ゝ`)「なーんか俺だけ除け者にされてる気がするなあ最近」
Σ∬;ぅ_ゝ;)「そ、そんなことない! そんなことない!」
l从・∀・ノ!リ人「流石じゃ姉者、2回言うことで怪しさ倍増」
( ´_ゝ`)「別にいいけどな。
ブーンだって、何も知らない相手の方が楽なときもたまにはあるだろうし」
ぺちぺち、兄者が内藤の頭を叩く。
それを咎めながら、涙を引っ込めた姉者はサイドテーブルに手を伸ばした。
新品の紙コップをいくつか取り、テーブルに置かれているポットの中身を注ぐ。
深い茶色の液体は、匂いからして、ほうじ茶だ。先ほど看護師が置いていった。
-
( ´_ゝ`)「ドライブに連れてくとか、安いメシ奢るとか、それぐらいしか出来んが
まあ何かしんどいときは言ってくれ。気を紛らわすには丁度いいだろ。
倒れるくらい悩む前にな」
悩んだせいで倒れたわけでもないと思うが。
まあ他に言いようもないので、内藤は黙って姉者が差し出した紙コップを受け取った。
ほうじ茶を啜る。
ぬるくて薄い。兄者の態度に似ている。悪い意味ではなくて。
ほっとする。
-
( ^ω^)「……ありがとうございますお」
∬*´_ゝ`)「兄者がマトモなこと言った……!」
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者はたまに輝くのう」
(*´_ゝ`)「妹者は常にきらきら輝かしい!」
l从・∀・ノ!リ人「えっ……そんな当たり前のこと言われても……」
さっそく内藤そっちのけで兄者と妹者がじゃれ始めた。
正確には、兄者が妹者にじゃれつき素気無くあしらわれている。
弟者と姉者は内藤に対して甘いというか丁寧に扱う面があるが、
兄者と妹者は構いすぎることがない。それでも内藤を気にかけてくれているのは分かるから、
疎外感を抱かせることもない。この兄弟はバランスがいい。
改めて客観的に見てみて、自分が如何に恵まれた環境にいるのかが分かる。
それを自分は昨夜、無下にした。
内藤はもう一度「ありがとう」と言って、それから「ごめんなさい」と頭を下げた。
.
-
みんないい人達だ
-
弟者が戻り、入れ替わりに兄者と妹者が先に帰宅して。
午後3時頃、また新たな客が来た。
ξ゚⊿゚)ξ「お加減いかが?」
lw´‐ _‐ノv「やっほう」
( ^ω^)「……どうも、秘密の探偵さん」
ξ゚⊿゚)ξ「どうも助手君」
lw´‐ _‐ノv「何だいそりゃ」
ツンとシュール。
ツンはともかく、シュールが来るのは完全に予想外だったので驚いた。
驚いた点は他にもある。
-
( ^ω^)「ツンさん、珍しい格好を」
ξ゚ー゚)ξ「そうねー、内藤君の前で黒以外の服着るのは初めてかしら。似合うでしょ」
ツンは白いブラウスの上に明るいグレーのジャケット、同色のタイトスカートを身につけていた。
脇に抱えたコートもベージュ色と明るい。
黒くない服も持っていたのか。
∬´_ゝ`)「こんにちはツンちゃん。そっちの子は?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君の友達」
lw´‐ _‐ノv「シュールです。はじめまして」
∬´_ゝ`)「あ、えっと、お世話になってます」
シュールが見舞品だと言って紙袋を差し出した。
駅前のおにぎり専門店のメニュー、個人的ベストセレクション。彼女らしい。
-
ξ゚⊿゚)ξ「悪いんだけど、ちょっと内藤君と話したいことがあるから
姉者は席を外してもらえる? 弟者君は残って」
(´<_` )「うん?」
∬;´_ゝ`)「わ、分かった。……危ないことに関わってたりするの?」
ξ゚⊿゚)ξ「さあね」
∬;´_ゝ`)「さあねって」
ξ゚⊿゚)ξ「まだよく分かんないの」
∬;´_ゝ`)「そっか……でも、ツンちゃんに任せれば平気よね。ツンちゃん頼もしいから……。
何か手伝えることあったら言ってね」
ξ;*゚д゚)ξ「うるっせえバーカ! バーカ! あんたはもう!!」
Σ∬;´_ゝ`) ビクッ
ひとまず家から替えの衣類と日用品を持ってくると言って、姉者は病室を出ていった。
彼女が扉を閉める間際、ちらり、女性が顔を覗かせる。
川 ゚ 々゚)
くるうだ。
内藤が様子を窺っていると、ツンはくるうを呼び寄せた。
彼女は1人だった。
-
川 ゚ 々゚)「ブーン、大丈夫?」
( ^ω^)「はあ。どうしてここに」
ξ゚⊿゚)ξ「彼女の力が必要かなと思って、お借りしたの」
(´<_`;)「何の話をしてるんだ?」
弟者が訝しげな顔をする。
彼の視点では、あらぬ方向を見ながら会話している2人にしか映らぬだろう。
ξ-⊿-)ξ「あー……くるうさん」
川 ゚ 々゚)「うん」
内藤には視覚的に変化はなかったが、くるうが頷いた直後、
弟者が思いきり空気を吸い込んで後ろに退いた。
椅子に腰掛けたままそうしたので、椅子から落ちて転んでいた。
(´<_`;)「なっ、あ、あんた、裁判の、」
震える声で言いかけ、弟者はシュールを一瞥して口を噤んだ。
が、間もなくして、この場にいる時点でシュールも無関係ではないと理解したのか
「監視官だか何だか言う人だろう」とくるうに向かって言い切った。
-
一旦、シュールとくるうも椅子に座る。
室内には椅子が3つまでしか用意されていなかったので、ツンはベッド脇に立った。
新しい紙コップにほうじ茶を注いでそれぞれに差し出す。
喉が渇いていたのか、ツンが一気に呷った。
ξ゚⊿゚)ξ「──なぜ裁判に来ずに、あんな時間に外にいたの?」
( ^ω^)「……家出ですお」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたの意思で?」
( ^ω^)「もちろん」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさんがあなたに憑依していたけれど」
( ^ω^)「僕が家出したとこを見かけて、心配して付いてきてたんですお」
──帰った方がいい、と彼は何回も言ってくれた。内藤は言うことを聞かなかったけれど。
色々なことが辛くなって、それらから逃れるためにドクオに憑依を頼んだ。
そして、気付いたらここに。
ぽつりぽつりと昨夜の流れを話す。
ツンはくるうを見て、彼女が黙っているのを確認すると、「そう」と頷いた。
反応はそれだけだった。
-
( ^ω^)「……誰も僕が家出したこと叱ってくれませんお」
ξ゚⊿゚)ξ「倒れられちゃ、それどころじゃないものね。叱ってほしかった?
家出って色々理由があるけど、あなたはどれかしら。
心配してほしい、気を引きたい、家から逃げたい、1人になりたい、その他」
( ^ω^)「よく分かりませんお」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ家出した理由はどうでもいいわ。
ただ、きっかけになった出来事については弟者君たちから聞かせてもらいました」
弟者に目を向ける。
別に非難する意味はなかったが、弟者はそう受け取ったようだった。
(´<_` )「ごめん、この人には話した方がいいかと思って」
( ^ω^)「いいお」
ツンはサイドテーブルに寄り掛かると、紙袋に手を突っ込み、勝手におにぎりを一つ取った。
見舞品だと言っているのに。
-
lw´‐ _‐ノv「私の友達が君らと同じクラスだけど、
内藤君が病院に運ばれたこと、もう聞かされたみたいだよ。
何か大変そうだね、色々」
(´<_` )「……モララーが言い触らしてるな」
ξ゚⊿゚)ξ「言い触らすように私が頼んだの」
苦々しげな顔をする弟者へツンが言い、弟者の顔がますます険しくなる。
鋭い視線を意にも介さず、ツンは包みを剥がして天むすに口をつけた。
ξ゚⊿゚)ξ「これで、内藤君も『祟られた』ことになる。
つまり内藤君がクラスメートを呪ったわけではない、って話を広めやすくなるわ」
(´<_`;)「え? うちのクラスが呪われてるのは事実なのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ。
──いや、呪われてるって言やあ、呪われてるのかもね。
ただし術者は無意識のクラスメート達」
-
ξ゚⊿゚)ξ「前に、アサピーから聞いたことがある。とても単純な呪い。『思い込み』」
呪われたせいで自分は不幸なのだ、呪われたせいで怪我をした──そういった思い込みが
自分自身を呪うのだと、ツンは簡単に説明した。
たしかにクラスメートの身に起きた不幸の大体は、日頃の不注意で起こり得るものだった。
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君のクラスメートはその呪いにかかってる。
思い込みってのは厄介だわ。思い込んだからには、その認識をいきなりゼロには出来ない」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、まずはみんなの思う『事実』を曲げる」
( ^ω^)「曲げる?」
ξ゚⊿゚)ξ「『内藤君がみんなを呪った』──この思い込みを変えるの。
幸い、今回のこの事件でそれは容易になった」
(´<_` )「ブーンも不幸に遭った、ブーンも呪われた被害者だ、って?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。これによって、みんなの認識がぐらつく」
天むすを食い尽くし、ツンが更にもう一つおにぎりを奪う。
咎められなかった。彼女は──内藤のために「改善策」を講じてくれている。
-
ツンさんかっこいい
-
支援
-
lw´‐ _‐ノv「内藤君が容疑者から外れるだけで、また新しい犯人探しが始まるんじゃ?」
ξ゚⊿゚)ξ「放っておけばそうなるわね。だから放っておいちゃいけない。
──ここでようやく、『そもそも本当に祟りなんてものはあったのか?』と
根本的で現実的で、それ故に見落としがちな疑問が改めて顔を出すのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そこが狙い目。
『呪われたんじゃないんだ』『みんな偶然だったんだ』っていう
現実を認めさせることで、この騒ぎは終わるわ」
先ほどモララーとヒッキーにも根回しを頼んでおいたと言って、
梅じゃこおにぎりにかぶりつく。
弟者は微妙な表情だ。
今まで散々毛嫌いしてきた女が自分の身の回りに手を出していくことへの反発心と、
それにより内藤が救われるかもしれないことへの期待に戸惑っているのだろう。
そんな弟者を横目に見て、指についた米を舌で掬いつつ彼女は苦笑した。
-
ξ゚ー゚)ξ「これらの発案はアサピーよ。
呪術師だもの。呪うのも、呪いを解くのもあいつの専門でしょ」
( ^ω^)「アサピーさんが」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ思い込みが原因なんだから、それを解ければいいわけね。
モララー君たちの根回しが効けば、何とかなる……かも」
(´<_`;)「確定じゃないのかよ」
ξ゚⊿゚)ξ「後押しするような、インパクトのある何かが起きれば確実だろうけど」
放っておくとツンに全て食べられそうなので、内藤もおにぎりに手を伸ばした。
いなり寿司。こういうのもおにぎりと言うのだろうか。寿司とはっきり言っているが。
じゅわっと甘い煮汁が滲み出し、薄味の酢飯に染み込んで、ほぐれる。
-
( ^ω^)「──ほとんどがみんなの勘違いでも、不思議なことは実際に起こってましたお」
酢飯に混ざる胡麻を噛み砕き、記憶を手繰っていた内藤は、言った。
( ^ω^)「誰もいない場所で突き飛ばされて、怪我をした生徒がいましたお」
(´<_`;)「そうだ、そうだよ、それも思い込みだっていうのか?」
ツンが名前を呟いた。
正に、その、「無人の階段で突き落とされた」クラスメートの名だった。
ξ゚⊿゚)ξ「その子なら、さっき会ってきた」
(´<_`;)「は?」
ξ゚⊿゚)ξ「モララー君、ヒッキー君と一緒に。
こういう格好して、クラスメート同行させるだけで私のこと信用するんだから単純よねえ……。
普段の黒服ってそんなに怪しい?」
( ^ω^)「ツンさんの場合は手加減なしで真っ黒だから怪しいんですお」
ξ-⊿-)ξ「失礼ね。ま、ともかく、その右腕骨折した子に会って話してきたわ。
くるうさんにも、こっそり付いてきてもらってね」
川 ゚ 々゚)「うん」
今まで欠伸をしながら話を聞いていた──聞いていたのかもよく分からないが──くるうが、
とつぜん名前を呼ばれたことで、意識をこちらに向けた。
-
突き飛ばされたって言ってた生徒も偶然だったのか
-
ξ゚⊿゚)ξ「結果から言うと、あの子は嘘をついてない。
本当に、『姿の見えない何者か』に背中を押されたみたいよ」
川 ゚ 々゚)「ん、そう。臭わなかったの」
駄賃代わりか何なのか、ツンはくるうにもおにぎりを渡した。おかか。
そして見舞品はなくなった。受け取り主である筈の内藤はいなり寿司一つを食べたのみ。
( ^ω^)「……監視官って、私用に付き合わせていいんですかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「本当はあんまり良くない。
監視官は裁判官に次いで偉くて厳正たる立場の者だから
弁護士なんかが軽々しく連れ出していいもんじゃないの」
ξ-∀-)ξ「ただ、くるうさんが『自分の意思で』外出して、『たまたま』私と同じ場所にいて
その場で嘘の臭いがしたかどうかを『独り言』で呟いても、それは仕方ないことよね」
( ^ω^)「せこい」
(´<_`;)(せこい)
せこい。
-
せこい
-
せこい
-
せこい
-
ξ゚⊿゚)ξ「まあ裁判長がなかなか離さないから大変だったわ、正直」
川*゚ 々゚) キャッ
(´<_`;)「──で、結局あいつは本当に、……お、おばけか何かに突き落とされたのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう、それに関して、シュールさんから大事なお話があります」
ツンがシュールの肩を叩く。
眠たげな顔を傾けたシュールは、頬を掻いた。
lw´‐ _‐ノv「クラスメートが階段から落ちたのって、4日前──水曜の放課後だったっけ」
( ^ω^)「そうだお」
lw´‐ _‐ノv「……私さ、少し霊感あるけど、姿を見るのは稀だって言ったよね。
その分、気配はよく分かるとも言った。
霊によって、気配ってちょっとずつ違うんだ」
それは、まあ、そうなのだろう。
だからこそキュートの「気配」を探すことが出来ているわけなのだし。
lw´‐ _‐ノv「そんで、この前、ちょっと覚えのある気配がした」
-
lw´‐ _‐ノv「キュートの依頼をした日にツン先生の事務所で感じた気配……男の人の。
ほら、ツン先生が、『このひと見えるか』って指差したときの」
( ^ω^)「ドクオさん?」
lw´‐ _‐ノv「名前は知らないけど、その人のに似てた。
水曜と木曜に学校で。時間帯は違うな、水曜は放課後で木曜は朝だ」
──ドクオが水曜日にも学校に来ていた?
lw´‐ _‐ノv「つっても、あれだよ。気配の名残がしただけで、対面したわけではないし
──本当にそのドクオさんってのと同じだったか、自信があるわけじゃないけどさ。
でも感覚はたしかに似てた……はず」
くるうは普通におにぎりを食べて茶を飲んでいる。
嘘だと指摘する様子はない。
情報を与えられっぱなしでいっぱいいっぱいの頭を、左手で押さえる。
特に意味はないけれど、内藤は右手を上げて制止するような仕草を見せた。
-
( ^ω^)「……木曜の朝に、ドクオさんと学校で会ったお。
すぐ──昇降口のとこで別れたけど」
lw´‐ _‐ノv「私が気配を感じたのは1組の前だよ。
遅刻ぎりぎりで始業の直前って時間だった。
名残がまだ濃かったから、あの人が教室に居たのとそんなに時間変わらなかったんじゃないかな」
(´<_`;)「……教室でモメてたとき、うちのクラスにいたってことか? ブーン見たか?」
( ^ω^)「いや……」
見ていない。
──けれど、彼が居なかったとも断言できない。
あのときは、それどころではなかった。
しっかりと顔を上げて周囲を見るのが億劫だった。
もしもあそこにドクオがいたのなら、彼は騒ぎを見ていた筈。
しかし昨夜、彼は学校で何が起こったのかを知らない素振りをした。
嘘をついた?
何のために。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……昨夜の裁判のいきさつを話すわ」
話題がころっと変わった──ように見えて、変わっていないのだろう。
実際、ツンがそれから語った経緯は、最終的にドクオへ帰結した。
ロマネスクの主張する「事実」。
クラスの周囲にちらつくドクオの影。
憑依。病院に運ばれた内藤。
ξ゚⊿゚)ξ「……まだ何も分かっていないの。
あれこれ推測することは出来ても、今のところドクオさんは事件に関与してないと言い張ってるし」
( ^ω^)「ドクオさんは今どこに?」
川 ゚ 々゚)「神社でしぃ達と話してる」
ξ゚⊿゚)ξ「あの人は、内藤君に憑依している際に検事達と会っても逃げなかった。
くじのことも否定しているし、家出した内藤君にも帰宅を何度も促したようだし、
──彼は何も嘘を言っていなくて、私が勝手に怪しんでいるだけなのかもしれない」
( ^ω^)「嘘をついてるかもしれないのだって、確かなんでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね、どちらかだわ。
ドクオさんかロマネスクさん、どちらが嘘つきなのか分かれば、今回の件は終わると思う」
-
ξ゚⊿゚)ξ「これ以外の件では、ドクオさんは間違いなく嘘をついてることがある。
ただ、その嘘が何のためにつかれたものなのか、まだ分からない……」
ツンが歯噛みした。
──昨夜の閉廷から今に至るまでの間に、彼女はあちこち駆けずり回ったのだろう。
ドクオと話して、モララー達と会って話して、くるうを借りて、内藤のクラスメートに会って、シュールにも会って、ここに来て。
休む暇など、ほとんど無かったのではないか。目の下にうっすらと隈がある。
弟者も察したようで、腰を上げてツンに席を譲ろうとした。
しかし、そろそろ帰るからと断られてしまう。
行儀悪く紙コップの縁を齧って、ツンは視線を落としたまま新たな発言を落とした。
ξ゚⊿゚)ξ「キュートさんが見付かったわ」
今度こそ話題が別方向へ転がった──と思ったが。
ツンの真剣な表情が、それを否定する。
内藤は咄嗟にシュールの顔色を窺った。
何ら変わりない。既に聞かされたのか。
思うに、ツンがシュールにキュートの話をしに行って、
そのときにシュールから先の「気配」の話を聞かされた──といった順番だろう。
-
支援
キュートやぽぽちゃんはこの裁判にどう絡んでいくんだろうか…
-
ブラックドックンが突き落とす→ブーンの祟りのせいにする→ブーン責められる→ドックンに泣きつく→憑依d('∀`)bってことか
-
状況証拠からいくとドクオ真っ黒だなあ
-
ドクオがグレーすぎる
-
( ^ω^)「……今度はシュールさんの妹とドクオさんに関わりが?」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ、キュートさんは何も関係なくてね」
( ^ω^)「じゃあ何ですかお」
ξ゚⊿゚)ξ「キュートさんが見付かったのが、ワカッテマスさんの部屋だったの。
亡くなって間もない頃からちょくちょく遊びに来てたみたい」
ξ゚⊿゚)ξ「……あの部屋の『先住民』がドクオさんと関わってる」
先住民。
ワカッテマス達より早く住んでいた者──
──「ぽぽちゃん」か。
どういう風に関わっているのかと内藤が問うと、彼女は、「これ以上は法廷で」と答えた。
紙コップを捨て、ベージュのコートを羽織る。
-
ぽぽちゃんが未確定要素が多すぎる・・・
-
支援
-
(´<_`;)「法廷で、って……ブーンはそういうのに関わってたからこんなことになったんだぞ。
行かせられるわけないだろ」
( ^ω^)「……えっと」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君、8月の弁護依頼料はもうチャラよ。事務所には来なくていい。
ときどき流石家へはお邪魔するかもしれないけど、別に私と話さなくていい。
どうしてもと言うなら流石家にも近付かない。
あなたが幽霊裁判との関わりを絶っても、誰も咎めない。好きにしていい」
──何故。
胸が痛む。
ξ゚⊿゚)ξ「でもね、関わった分の責任ぐらいはとってちょうだい。
次の裁判には絶対来て。あなたにも証言してもらわなきゃいけないから」
( ^ω^)「……はい」
目が覚めてから、甘やかされっぱなしだったかもしれない。
大して変わりのない世界に高を括っていたかもしれない。
ここに来て突き放されて、体の中のどこかが震えた。
いや、突き放されたと言う程でもない。
まだ充分に優しい。
それでもやはり、──寂しい。
-
日時はあとで知らせる。そう言って、ツンは鞄を抱えた。
川 ゚ 々゚)「お大事にね」
( ^ω^)「はい、お気を付けて」
lw´‐ _‐ノv「じゃあ、また今度学校で」
( ^ω^)「うん、──シュールさん」
内藤が呼び掛けると、シュールは「ん?」と首を傾げた。
( ^ω^)「僕の頼み、聞いてくれるって言ったおね」
lw´‐ _‐ノv「言ったよ」
( ^ω^)「なら──この裁判が終わるまでの間だけ、ツンさんを手伝ってあげてほしいお。
事務所の掃除くらいでいいから。
あのひと掃除下手なんだお。僕はもう事務所に行くことはないから、だから……」
lw´‐ _‐ノv「ん、いいよ。裁判終わるまでね。
私じゃ、きっと内藤君の代わりにはならないけど」
唇を噛む。
シュールの今の発言に「嬉しい」と感じたのが、理解できなかった。──理解したくなかった。
見舞品がほとんどツンに食べられたからと、シュールは鞄に入っていた米菓をサイドテーブルに置いていった。
-
lw´‐ _‐ノv「……内藤君って、それが素かい? 結構印象変わるね。そっちのが格好いいよ」
( ^ω^)
返事をするより先に、自身の顔に触れていた。
──目覚めてからずっと、素のまま喋っていた。
素とは言っても顔つき自体は元から軟らかいからともかくとして、
普段から気を付けていた、明るい振る舞いと幼い感情表現を、思い切り忘れていた。
慌てて相応しい表情を作り、その白々しさに自嘲の念が浮かんで、結局消した。
( ^ω^)「どうしよう弟者」
(´<_` )「別にそれでもモララー達と普通に話せてたじゃないか」
──そうか。
たしかに。友達と、このまま話せていた。
普通に。そうか。
良かったのか、あれでも。
( ^ω^)「……今までの僕って何だったんだお……」
ξ゚⊿゚)ξ「今までの内藤君だって無意味じゃないでしょ」
扉の前に立ったツンが言う。
内藤は顔を上げた。
-
食ってんじゃねーぞツンwww
-
ξ゚⊿゚)ξ「さっきも言ったけど、今、モララー君達がクラスメートに根回ししてくれてる。
上手く行くかはまだ分かんないけど」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、内藤君が今までたくさん刷り込んできた『明るくて優しい子』ってイメージは、
間違いなく有利に働くはず。
──内藤君が自分の身を守るための武器として、非常に有効なものだったのは事実でしょ」
( ^ω^)「……武器」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたに合ってたし、とても優れてると思う。
あなた自身の本心と上手く摺り合わせられるようになれば、もっとね」
自棄になって全部捨てちゃ駄目よ。
その言葉を最後に、ツンは病室を出ていった。
くるうとシュールも続く。
急に静かになった気のする室内で、内藤は弟者と顔を見交わした。
-
(´<_` )「俺も、すごいと思ってるよ。
俺には出来ないことだし、ブーンは演技や嘘を悪いことに使ってないだろ。……あんまり」
( ^ω^)「僕って、嘘つきのままでいいのかお」
(´<_` )「ブーンがしたいようにすればいい」
( ^ω^)「普通の僕じゃ、嫌われるかもしれないお」
(´<_` )「うちの連中や出連さんに嫌われてると思うか?」
内藤はベッドに体を横たえた。
ジュース買ってくる、と弟者が立ち上がる。
久しぶりに一人きりになった部屋の中、内藤は顔の上で手を組み、思考し、ゆっくりと手をほどいた。
*****
-
#####
ミセ*゚ー゚)リ『一年ぶりー』
∧ ∧
(#ФωФ) カーッ
ミセ*゚ー゚)リ『会っていきなり威嚇かあ、歪みねえな。
ロマ、ちょっと来て来て』
∧ ∧
( ФωФ)?
ミセ*゚ー゚)リ『やわらかーい』ギュー
∧ ∧
(#ФωФ)『暑い!』
ミセ*゚ー゚)リ『……』ギュー
∧ ∧
( ФωФ)『……あつい』
-
ミセ*゚ー゚)リ『友達がさあ。死んじゃったんだ、半年前に』
∧ ∧
( ФωФ)『……』
ミセ*゚ー゚)リ『一番仲良くって、すごく好きだったんだけど、死んじゃった』
∧ ∧
( ФωФ)『……』
ミセ* ー )リ『……』
ミセ*;−;)リ『……ロマぁあー』ギュウウウ
∧ ∧
(;ФωФ)『ちょ、待、強』ゲフッゲフッ
-
ミセ*;−;)リ『就活上手く行かないんだよ、ヤバいよ本当にヤバいよ卒論も進まないんだよお。
もうやだよお、やだやだやだやだ……』
∧ ∧
(;ФωФ)『離……っ』
ミセ*;−;)リ『……トソンがいたら、慰めてくれんのに……
トソンの馬ー鹿……』
∧ ∧
(;ФωФ)『……』
∧ ∧
(;ФωФ)『貴様におうぞ』
ミセ*;−;)リ『えっ、ちょっと何やめてよ、ちゃんとお風呂入ってるよ! 服も洗ってるし!』
∧ ∧
( ФωФ)『そういうことでは……、……貴様、住まいを変えたか』
ミセ*;−;)リ『住まいって、去年から一人暮らし始めたけど』
-
∧ ∧
( ФωФ)『貴様は家族と一緒の方がいいのではないか』
ミセ*;−;)リ『えー……何だよ、家族とそんなに仲良くなかったもん、もう戻るの無理だよ』
∧ ∧
( ФωФ)『……』
ミセ*;−;)リ グスッ
∧ ∧
( ФωФ)『おい馬鹿。貴様、いつA県に帰る』
ミセ*;−;)リ『ばあちゃんのお墓参りに来ただけだから、もう帰るよ』
∧ ∧
( ФωФ)『なら、我輩も連れていけ』
ミセ*;−;)リ『……ええ?』
#####
-
(,,゚Д゚)「──これからどうすんの?」
猫田家の門をくぐりながら、ギコが問う。
午後5時。薄暗い。
先程、内藤の病室に行って家出の件を聞いた。
ドクオの証言と食い違う点は無い。
彼は自分の意思で家出し、自分の意思でドクオに憑依を頼んだ。
(*゚ー゚)「鬱田ドクオについて調べよう。
外れくじの調査とも並行して……」
事務所代わりの離れへ向かう。
窓から明かりが漏れているのを見て、しぃの眉間に皺が刻まれた。
ちょくちょく家と神社を往復したが、電気はつけていなかった筈だ。
窓を覗き込み、舌打ちした彼女は、ドアを乱暴に開けた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「あ、お邪魔ー」
(#゚ー゚)「不法侵入で逮捕する」
(,,゚Д゚)「さようならツン……」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやいや、でぃさんが入れてくれたの!」
ソファに座っていたツンは、ギコから逃げるようにソファの後ろに隠れ、両手を挙げた。
しぃが金髪を掴み上げる。
(#゚ー゚)「盗んだものを置いていってくれれば、今回だけは見逃しましょう」
ξ;゚⊿゚)ξ「何も盗ってないから! ほら鞄のなか見ていいし何なら服も脱ぐから確認して!」
言われた通りにしぃはツンの鞄をひっくり返し、服の上から彼女の体を叩いた。
たしかに何も盗っていないようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「こいつマジで確認しやがった……マジで疑いよった……」
(,,゚Д゚)「で、何の用よ」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、つーさんが昔担当した事件の資料見せてほしくて」
(,,゚Д゚)「叔父様の?」
椅子に座ろうとする姿勢のまま、しぃは動きを止めた。
見定めるようにツンを睨めつける。
-
(*゚ー゚)「何のために」
ξ゚⊿゚)ξ「先日、鵜束検事がたっぷりラブレターを送ってきてくれたんだけど
その中に、つーさんが20年前に受け持った事件の記事が入ってたのよ」
これ、と言って、ツンは新聞記事のコピーを何枚か見せた。
20年前、この町の小さな会社の休憩室で女性が死亡したという事件の記事だった。
体質的に飲んではいけない薬を服用してしまったことによる事故死、として「表では」処理されている。
実際は彼女に恨みを持つ霊の仕業だった。
その霊を起訴し、有罪判決へ導いたのが、しぃの父、つーだ。
(*゚ー゚)「鵜束検事が……」
ξ゚ -゚)ξ「あの人ってつーさんの知り合い?
つーさんがご存命の頃なら、鵜束検事はまだ子供だったと思うけど。行っても中学生くらいかしら」
(*゚ー゚)「……僕の父を尊敬していると言っていました。記録でしか知らないようですが」
ξ゚⊿゚)ξ「へー。鵜束検事にも殊勝なとこあんのね」
しぃはいくつかある段ボール箱の前から、ファイルを一冊取り出した。
経年により劣化はしているが、読むのに支障はない。
(*゚ー゚)「どうぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
-
(,,゚Д゚)「ねえツン、あんたちゃんと寝てる? 顔疲れてるわよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたらこそ寝てんの」
(,,゚Д゚)「ノーコメント」
ギコが淹れたハーブティー(なんちゃら言う葉が疲労回復云々と説明されたがしぃの記憶には残らない)の匂いが
室内に満ちていく。癖のある味と香りが、しぃには何というか、難しい。
苦手なわけではないがとにかくよく分からない。
ちびちび飲みながら資料をじっと見つめるツンに、しぃは声をかけた。
(*゚ー゚)「全手さんの部屋の……『ぽぽちゃん』? とかいう霊ですが、
こちらが何を訊いても頷くか首を振るばかりで全く喋らないんですが」
ξ゚⊿゚)ξ「照れ屋だからね。明日は私も同席するわ」
(*゚ー゚)「そうしてください。ギコ、神社に監視官の協力許可願いを出しといてくれ」
(,,゚Д゚)「はいはい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「えーと、証人リスト……。
検事さん、この事件って他に資料ないの?」
(*゚ー゚)「ありませんよ。それで全部です」
ξ゚ -゚)ξ「そう……裁判記録の方、情報抜けてない?」
(*゚ー゚)「その頃はヴィップ町でおばけ法が施行されてから5年程度ですから、
今以上に大雑把に済ませてるところが多々あります」
コピーは出来るかとツンが訊くので、備え付けのコピー機で書類を複製する。
ありがとうと言いながら受け取るツンの顔には、たしかにギコの言う通り、疲れが見て取れる。
ξ゚⊿゚)ξ「ん……こんなとこかな。
じゃあね、また明日。ごちそうさま」
(,,゚Д゚)「送ろうか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ううん、大丈夫」
足取りはしっかりしている。
彼女が門をくぐって去っていくのを見届けてから、しぃはドアを閉めた。
-
歪みなく面白い
支援
-
(,,゚Д゚)「なんでニュッちゃんがツンに20年も前の事件を……」
(*゚ー゚)「さあな」
ファイルを箱に戻しかけ、やめた。
あの女がこのタイミングで求めてきたということは、今回の件に無関係ではなかろう。
箱の前にしゃがみ込む。
しぃが汚れの酷いファイルを拾い上げると、ギコが傷ましげな顔をした。
平成12年。
今から13年前、父が最後に担当した事件。
事故の名残が染みつく血痕に触れ、しぃはファイルを一通り眺めて、閉じた。
ロマネスクの裁判を始めてから、ずっと頭にちらつく疑問がある。
霊能力者達の死。自殺や事故に見せかけた殺人事件。
──父は。
父の死は。
-
(*゚ー゚)「……休憩は終わりだ、捜査を再開しよう」
ティーカップを持ち上げ、中身を飲み干した。
ヴィップ町の地図を広げる。
どこに人員を向かわせるか考えていると、視線を感じて顔を上げた。
ギコがしぃを見つめている。
何か言いたそうな、しかし躊躇っているような。
なんだ、としぃが訊ねれば、観念したように口を開いた。
(,,゚Д゚)「前の……神隠しの裁判、見たでしょ」
(*゚ー゚)「ああ」
(,,゚Д゚)「ニュッちゃんは結果的には負けたけど、捜査方法に関して言えば間違ってなかったわよ」
──何を言いたいのか理解できぬほど愚鈍ではない。
ぴりぴり、空気が震えた。
-
(,,゚Д゚)「叔母様にお願いして、『猫田家』の力を借りた。
速さも、正確さも、あんたが自力でやるより上だったでしょう」
(*゚−゚)「……そうだな」
(,,゚Д゚)「……あんたが叔母様を嫌ってるのは分かるけど、
意地だけで何とかなる仕事じゃないのよ」
地図を畳む。
しぃの目はギコを睨んだまま。
(*゚−゚)「僕があの人の力を借りるのを心底嫌うと知ってて、お前はロマネスク逮捕のために
あの人の使役霊であるフサを借りた」
(,,゚Д゚)「あたしが独断でやったことだから、あんたのプライド傷付けちゃいないわ」
(#゚−゚)「あの人が僕の仕事に少しでも関わるのが嫌だと言ってるんだ!!」
机を叩く。
ティーカップが転がり、床に落ちた。
-
(#゚−゚)「あの人は父さんを蔑ろにした!!
父さんがどれだけ努力しても! 功績を残しても!」
検事という職ごと、母は父を見下した。
しぃの誇りを無下にする。
それが許せない。
父の偉大さを知らぬ女に、介入してほしくない。
父はいつも、「猫田」に頼らず捜査をした。
父は──
(,,゚Д゚)「……叔父様だって叔母様の力を借りてたわ」
畳んだ地図の上に置いた左手が、ぐしゃりと紙を潰した。
-
(,,゚Д゚)「いくら叔父様でも、あれだけの功績を1人じゃなし得ないわよ。
あんただって薄々勘づいてるでしょ」
(*゚−゚)「……」
(,,゚Д゚)「もちろん叔父様の実力もあったけれど、それだけじゃなくて──
いつだって叔母様の力に頼ったし、警察にも弁護士にも頼ってた。
自分1人で何もかも出来るなんて思ってなかったのよ」
父は。
(,,゚Д゚)「しぃが思うほど、叔父様は高潔な人ではなかったと思うの……打算も欲もあったわ。
叔母様と結婚したのだって、そうすることで
自分が得られる利益を計算してた筈でしょ」
(#゚ー゚)「違う! 父さんは──父さんは、検事として、……自分の正義を……」
父は何故、あの母と結婚したのだろうかと。
考えないことも、なかった。
互いに愛情を抱いている様子はなかった。
猫田家の誰かに言われて仕方なくそうしたのだろうけれど、
想い合わない者同士が婚姻を結ぶことに、父が何も思わぬ筈がない。
婚姻は──父にとって「正しい」ものだったのか。
-
彼が駄目でも、猫田家には他にも婿となる候補がいた筈だから、断ることは出来ただろう。
なのに母と結婚したというのは、
つまり、「猫田の本家当主」との結婚によって彼に齎されるものがあったから。
それが、父にとっては正義と同等のものだったからだ。
(,,゚Д゚)「ええ、そうよ、正義のために。
高潔ではなくても、出来た人だったわ。紛れもなく善人だった。
人間臭い善人だったから、みんな叔父様のことが好きで、尊敬してたのよ」
唇を噛み締める。
それを咎めるように、ギコの手がしぃの口を開かせた。
その指を噛んでやりたくなったが、ただの八つ当たりでしかないのは分かっていたから、やめた。
(,,゚Д゚)「……しぃはね、叔父様と顔は似てるけど、それ以外のところは全然違うわ」
(# − )「……、うるさい……」
父に近付きたいと願っているしぃにとって、それはどんなものより侮辱となる言葉だ。
けれど、何より腹立たしいのは、その一言を否定できない自分。
-
(,,゚Д゚)「誰かに頼るのって、悪いことじゃないのよ。汚いことじゃないのよ。情けないことじゃないの。
たとえ相手が嫌いな人だって、役に立つのなら、利用していいのよ。
そういうことが出来たから、叔父様はいつも『真実』に辿り着けてたんだと思う」
(,,゚Д゚)「ブーム君を法廷に連れてったとき、言ったでしょ。全部1人でやらなくていいの。
あんたがその通りにしたから、裁判は正しい方向に行ったじゃない」
突如、違和感。
しぃは怪訝な顔をした。
その表情をどう受け取ったのか、ギコが焦れたように続ける。
(;,゚Д゚)「しぃ、あたし、あんたには本当に頑張ってほしいの。
法廷でのあんたは好きだけど、捜査のときのあんたは何ていうか独りよがりが過ぎるっていうか……」
(*゚−゚)「……」
苛立ちが収まった。
──ギコは一部、思い違いをしている。
途端に、真剣な顔で自分を説得しようとしているギコが可笑しくなった。少しだけ。
そうして僅かに余裕が出来たことで、煮えたぎっていた色々な事柄が胸の中で落ち着き出した。
-
(*゚ー゚)「何を言ってるんだお前は」
(;,゚Д゚)「な、なによ、なに笑ってんのよ。言っとくけど今あたしは真面目に……」
たしかに自分は度々思い上がる。慢心する。傲慢だ。
だからといって、全能感など持ってはいない。
寧ろ何度も叩き潰された。
高みに登ろうとする度に蹴落とされた。
ξ゚⊿゚)ξ
出連ツン。
あの女に負ける度、思い知る。
自分はまだまだ出来ちゃいない。
あの女に勝つ度、思い知る。
自分はまだまだ独り立ちには程遠い。
-
(*゚ー゚)「……頼ってるだろ。昔からお前には頼りっぱなしだ。
僕1人きりで何か出来たことなんてないじゃないか。
そもそもお前がいないと霊も見えない身だぞ」
ツンのことを考えると、不思議としぃの胸に風が吹く。
屈辱と自尊を繰り返されて、長年凝り固まってきたあれこれを、次々にひっくり返されていく。
一番強く風が吹いたのは、神隠し罪の裁判だった。
ξ゚⊿゚)ξ『しぃ検事、ブーム君、──来てくれてありがとう』
あのとき、しぃは、「良かった」と思った。
自分がブームを連れてきて良かったと。
呪詛罪のときにツンはリリを連れてくることでしぃの過ちを暴いた。
神隠し罪で、それへの返礼を出来たと──何故だか、思ったのだ。
共通点など、子供を連れてきた、ただそれだけだったのに。
あの瞬間に、報われた気がしたのだ。
(*゚ー゚)「……けど、母にだけは頼らない。
僕が頼るのは、僕が信じられる人と物だけだ」
-
(*゚ー゚)「それが父さんのやり方と違うというのなら──僕は父を目指すのをやめてやる」
(,,゚Д゚)「──しぃ」
(*゚ー゚)「たいへん今更なことに思うが、僕にしか出来ない方法を模索しようじゃないか。
今までよりも最善の、もぶっ」
頬を両側から押し潰された。
ギコの手を払い除ける。ギコは笑っていた。
(,,゚Д゚)「あんたのね、そういうところが面倒臭くて……一番好きだわ」
(*゚ー゚)「そう言いながら付いてきてくれるところが面倒で一番好きだな」
ティーカップを拾い上げる。
ゆっくりはしていられない。
しかし焦ってがむしゃらに動くだけなのもいけない。
-
(,,゚Д゚)「何か考えはある?」
(*゚ー゚)「僕は誇らしいことに猫田つーの娘で、残念なことに猫田でぃの娘だ。
つまり猫田家の娘だ。
僕は母を信用しちゃいないが、『猫田家』の持つ力そのものは信用している」
少しでも母に関わるのが嫌だった。
けれど、使役霊達の有用性も分かっていた。
母に関わらずに使役霊の力を借りるには──
(*゚ー゚)「僕が家を使えばいい」
(,,゚Д゚)「でも猫田家は目下、叔母様のものだわ。
この家にいる使役霊は全部叔母様のものだし、借りるにしても叔母様に許可をとらないと」
(;,゚Д゚)「まさか今から代替わりする気でもないでしょ?」
(*゚ー゚)「いくら何でも無茶だな。──もっと楽な方法がある」
手で「ついてこい」と指示を出す。
外へ出るためのドアではなく、母屋と繋がる渡り廊下へ出るための扉を開けた。
.
-
──母屋の奥、さらに奥。
障子の木枠をノックすると、間延びした声で返事があった。
(*゚ー゚)「フサ」
ミ*,゚Д゚彡「どうしたの、お嬢さん」
6畳の和室いっぱいに収まる体躯を横たえた獣、フサは、
その身に相応しい大きな尻尾を振っていた。
(,,゚Д゚)「機嫌いいのね」
ミ*,゚Д゚彡「だってお嬢さんがわざわざ俺のところに来るなんて珍しいから。
ああお嬢さんの匂いだ、昔はよく一緒に遊んだなあ。
あ、ギコ、『猫』はあの後おとなしくしてた?」
しぃにぐいぐい頭を押しつけてくるフサの姿は、本当に、大きな犬といった感じだ。
何代も前から猫田家に仕えている古株で、現当主でぃの一番のお気に入り──の割には
威厳とは縁遠そうな、柔らかな話し方をする。
-
こっちがにやけるほどラブラブだな
……片方がオカマじゃなければ
-
ギコが頷くと、「そうかあ」とのんびりした声で言って、欠伸をした。
老体のせいか、最近ますますのたりのたりとしている。
(*゚ー゚)「なあフサ、鬱田ドクオという男の浮遊霊を知ってるか」
問うた瞬間、フサはしぃから頭を離した。
目を眇めてしぃの顔を窺う。
ミ,,゚Д-彡「まあ知らなくもない」
(*゚ー゚)「その男の情報を集めたい」
ミ,,゚Д-彡「……それは、検事として?」
(*゚ー゚)「そうなる」
ミ,,゚Д゚彡「捜査の一環?」
(*゚ー゚)「ああ」
ミ,,-Д-彡「じゃあ駄目。俺を使うならでぃ様に話を通してもらわないといけないから」
(#゚ー゚)「ええい、何でもかんでも事務所第一のアイドルかお前は!」
(,,゚Д゚)「その例えはちょっとよく分からない」
フサは再び身を横たえて、すっかり寝る体勢に入ってしまった。
また欠伸。
-
和んできた
-
(*゚−゚)「……お前の所有者の許可がないと、お前は検事や警察に協力できないってことだな」
ミ,,-Д-彡「んー。でぃ様との契約があるから」
(*゚−゚)「いずれは、母さんの持つ使役霊たちも僕のものになる。
その予定が少し早まるだけだろ、いま僕と契約しろ」
ミ,,-Д-彡「その『いずれ』が来るまで待てば、
お嬢さんは大した対価も無く俺の使用権を引き継げるから」
(*゚−゚)「今すぐでなければならないんだよ。お前だって分かってるだろうに」
ミ,,゚Д゚彡「引き継ぎじゃなく、いま俺と新しく契約するってこと?
面倒だよ、それなりの取り引きをする必要が出てきちゃうから」
(*゚−゚)「お前は何が欲しい?」
フサが身じろぎする。
取り引き──つまりは対価を払わねばならない。
よほど物好きな霊でない限り、無報酬で人間の言いなりになどならないからだ。
しぃの母は自分の体を「対価」にしておばけ達と契約していたが、
フサは何代か前の当主と契約した身であり、母は形式に則ってフサを引き継いだだけ。
この巨大な獣が何を対価として求めるのか、想像がつかない。
-
フサこんな性格なのか
可愛いな
-
ミ,,゚Д゚彡「……そうだなあ……」
フサの瞳に、爛々と鋭い光が灯った。
先程までの穏やかさは消えていた。
起き上がり、のそのそと近付いてくる。
未だ部屋の内側まで入っていなかったしぃの眼前に鼻を寄せ、匂いを嗅いだ。
ミ,,゚Д゚彡「……若い女の血が飲みたいなあ。
契約のときは聞き入れてもらえずに野鳥の血で済まされてしまって
それが未だに心残りだから」
ギコが絶句する。
他に選択肢はないのと問えば、「ない」ときっぱり返事。
-
6畳間ぐらいの大きさの犬(狼?)って相当だよな
ましてその獣のイチモツっていったら推して知るべしだよな
……でぃさんマジぱねぇ
-
かわ…いい…?
-
(*゚ー゚)「血が飲めれば僕と契約するのか?」
ミ,,゚Д゚彡「する」
(*゚ー゚)「分かった。約束だぞ」
(;,゚Д゚)「ちょっとしぃ……!」
踵を返し、離れの部屋からカッターナイフを回収した。
再度フサの部屋へ向かうしぃに、ギコが狼狽を顕わに騒ぎ立てる。
(;,゚Д゚)「しぃ! 駄目よ、どうしても契約しないといけないんなら、あたしの血を……!」
(*゚ー゚)「フサが望んでるのは若い女の血だろ」
(;,゚Д゚)「若い女よ!?」
(*゚ー゚)「女じゃない」
(;,゚Д゚)「女よ!?」
(*゚ー゚)「女じゃない」
-
ギコさんwwwww
-
>>570
フサとはやってないんじゃね
-
クッソwwwwwwwwww
-
女じゃない
-
おいww
-
ギコ最高www
-
そんなにギコの血が飲みたいのか……
-
ギコwww
-
クソワロタ支援
-
フサは大人しく待っていた。
しぃが握るカッターを見て、尻尾をゆるりと揺らす。
そういうところは、なるほど化け物らしい。
フサの前に立ち、袖を捲る。
尚も止めようとするギコを押し留めてカッターの刃を適当な長さまで調節し、
楽しそうに舌舐めずりするフサに見せつけるように翳した。
──そこから先は、一瞬。
(*゚ー゚)「はい」
ミ,,゚Д゚彡「んぐ」
本当に一瞬だった。
人差し指の先を軽く裂き、口の端に垂れていたフサの大きく薄い舌に押し当てる。
反射だろうか、フサは舐め擦るように舌を動かし、口の中にしまった。
-
≡≡≡
≡≡≡ ハ,,ハ ぬ〜すんだバイクで おことわり〜♪
/ ̄/ ミ,゚Д゚,,彡
/─ ハ ハ ハ ≡≡≡≡≡
ノ[ ̄]ノo \二⊂ノ ノ _ ≡≡≡
 ̄ ) ̄)Ninja\ ハ ヽ ̄ノ ノ ̄\ ≡≡≡
// //冊||冐呪| ハ ヽ ニニニo┘ ≡≡≡
/⌒/ ハ川 重⌒ハ (__)言 ´ニヽ ≡≡≡
( ̄(/ / ) 巛○(○)| /ニニ(○)) ≡≡≡
\_ ノ  ̄ ̄ ̄  ̄  ̄ \ 二 ノ ≡≡≡
-
(;,゚Д゚)
(*゚ー゚)「飲んだな」
ミ,,゚Д゚彡「は」
ハンカチで傷を拭う。
浅く切っただけのつもりだが、予想外に出血が多かった。
ぽかんとしているギコとフサに口元を緩ませ、フサの額を手のひらで押しやった。
(*-ー-)「契約成立」
ミ,,゚Д゚彡「……これだけの量で?」
(*゚ー゚)「量の指定をしなかったじゃないか。
ご希望通り、若い女の血を飲ませてやったんだから取り引きは成立している。
納得いかないなら裁判で争うか?」
(;,゚Д゚)「せこい」
ミ,,゚Д゚彡「せこい」
せこい。
-
おお立ち会えた!
支援支援支援
-
うーんこの
-
せこい
-
せこい
-
せこい
-
間があって。
フサは目を細めると、声をあげて笑った。
彼は母親のお気に入り。そうなるだけの理由がある。
物わかりの良さは折り紙付きだ。
ミ*,゚Д゚彡「うん、分かった、分かった。その図太さは父親じゃなく母親譲りだから」
(*゚ー゚)「次また同じこと言ったらお前の依り代削るぞ」
はたと、ギコが慌ただしく踵を返した。
救急箱を抱えて戻ってくる。
人差し指の手当てを済ませた後、改めて契約書等の始末をつける。
これでフサは、でぃとしぃが共有する使役霊となった。
共有というのが少々癪だが、その程度ならば目を瞑れる。
障子を開け放したまま廊下に座り、しぃは書類の中からドクオの写真を取り出した。
生前撮られたものなのでやや古い。とはいえ今の彼と見た目に違いがあるわけでもなかろう。
-
(*゚ー゚)「改めて訊く。鬱田ドクオという霊を知ってるか?
あるいは詳しく知ってそうな奴はいるかな」
ミ,,゚Д゚彡「俺はそれほど知らないなあ。後でみんなにも訊いてみるけど……。
……ただ、名前は一度聞いた」
(,,゚Д゚)「一度?」
ミ,,゚Д゚彡「20年前に一度。霊じゃなくて、そのときは生きてる人間だった」
20年前──しぃが口の中で復唱する。
フサは記憶を整理するようにしばらく沈黙した後、ようやく語り出した。
──彼の話が進むにつれ、しぃとギコは唖然としていった。
*****
-
支援
-
翌日、夕方。
ヴィップ署、取調室。
ξ゚д゚)ξ
机に突っ伏してぐったりしている女が1人。
川 ゚ 々゚)「じゃあねー」
(*゚ー゚)「ご足労かけまして」
(,,゚Д゚)「ごめんねー、わざわざ。はいケーキ。オサムちゃんと食べて」
川*゚ 々゚)「わーい! いっつも和菓子ばっかだからオサム喜ぶ!」キャッキャ
(*゚ー゚)「あちらで宮司さんがお待ちです。気を付けてお帰りください」
川*゚ 々゚)「はーい」
(,,゚Д゚)「あなたも宮司さんに預けないとね。大丈夫?」
(*‘ω‘ *)" ポッ…
「ぽぽちゃん」が席を立つ。
ツンに深々と頭を下げてから、ギコに続く形で取調室を出ていった。
-
部屋に残ったのは、ツンとしぃ。
ツンは閉められたドアをひたすら眺めた。
(*゚ー゚)「……今の話は本当なんですね」
ξ゚д゚)ξ「くるうさんが嘘だって言わないし……
ぽぽちゃんさんも異議唱えなかったでしょ……」
なかなか立ち上がらないツンを見下ろして、しぃが呆れた顔をする。
「早く立ってください」と急かされても、体が言うことを聞かない。
白状すると、昨日も寝ていないのだ。
2日徹夜した状態でぽぽちゃんの取り調べに同席し、
しかも結局ほとんどツンが1人で喋ったようなものなので、ひどく疲れた。
ぽぽちゃんはカンオケ神社に預けられるだろう。
凶悪犯というわけではない。強く拘束されることもあるまいが、さて、どうなるか。
-
皆いろいろと変わってきている気がする
-
気付けば常に何かを考えっぱなしで、まったく休まらない。
疲労も眠気も感じるが、頭も体も動かしてばかりで。
しぃが溜め息をつき、机に寄り掛かった。
(*゚ー゚)「……鬱田さんについて、どうお考えですか」
ξ゚З゚)ξ「……」
左頬をべったり机につけたまま、目だけを動かしてしぃを見上げる。
ξ゚⊿゚)ξ「あなたは?」
(*゚ー゚)「僕が犯人だと思っているのはロマネスクだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう」
(*゚ー゚)「で、あなたの答えは?」
どう言おうか。
目を閉じ、考える。考える。考える。
瞼が持ち上がらなくなった。
開きかけた口がもごもごとしか動かない。
「ツンさん」と呼び掛ける、しぃの、声が、
.
-
(;、;トソン『ありがとうございました、ツンさん、本当にありがとうございました』
ξ;゚⊿゚)ξ『どんだけ泣くのトソンさん。裁判終わったの昨日よ』
(;、;トソン『だ、だって、ずっと恐くてえっ。どうしようって思っててっ。ツンさん、ツンさん、ありがとうございました』
ξ;゚⊿゚)ξ『内藤君の手柄だわ。あの子の証言のおかげで無罪判決が出たんだから』
(;、;トソン『もちろん内藤さんもそうですけど、でもでもツンさんだってすごく頑張ってくれたからあっ』
ξ;゚⊿゚)ξ『私は本当に時間稼ぎしか……』
(;、;トソン『ツンさんが私のこと信じてくれたからじゃないですか!
ツンさんが私のこと守ってくれたからじゃないですか……』
ξ゚⊿゚)ξ『……』
-
(;、;トソン『あ、あんなの、最初から諦められてもしょうがなかったのに、
ツンさんはずっと、ずっと私の無実を信じてくれました』
(;、;トソン『だから私もツンさんのこと信じられたんです、任せようって……』
ξ゚⊿゚)ξ『逆だわ、トソンさん。あなたが私を信用してくれたから、私もそう出来たのよ。
……あなたに信用されなければ、私も分からなかったわ』
(;、;トソン『も、もう、順番なんてどうだっていいんです。
……嬉しかったです、私。ありがとうございました……』
ξ゚⊿゚)ξ『そろそろ泣き止まない?』
(;、;トソン『無理です』
ξ゚⊿゚)ξ『無理かー』
(;、;トソン『私、一生ツンさんについていきます……一生終わってますけど……』
ξ゚⊿゚)ξ『笑えないわ……』
(;、;トソン『冗談言うの苦手で……。
でも、ツンさんについていきたいっていうのは本当です』
(;ー;*トソン『私、ずっとずっとツンさんのこと信じてますから』
.
-
つらいな
-
目を覚ますと、眼鏡が視界を覆っていた。
ξ ⊿ )ξ「ふんっ!!」
(-@∀@)「きゃんっ! モー痛いなァ、センセイ」
頭突きをかますと眼鏡が仰け反った。
身を起こす。
建物の中だ。廊下だろうか。スーツや警官の制服を纏った男女が行き来している。
体の下で、ぎしりと軋む音。やや硬めの長椅子に寝かせられていたようだ。
(*゚ー゚)「起きました?」
ξ゚⊿゚)ξ「えーっと……どこ」
(*゚ー゚)「ヴィップ署の廊下です。
取調室でいきなり寝始めて、いくら声をかけても起きないし、
居眠りで部屋を占領するのも良くないので廊下に引きずってきました」
ξ;゚⊿゚)ξ「うっそ、どんぐらい寝てた!?」
(*゚ー゚)「一時間くらい?」
-
まだ投下中か
凄いな頑張れ
-
ぽぽちゃんの「ポッ」が可愛いなあと思ってたんだけど、もしや八尺様的なアレなのか…?
-
ξ;゚⊿゚)ξ「一時間ここで!? 人目に晒されて!?」
(*゚ー゚)「よだれ垂らしてイビキかいてました」
ξ;*∩⊿∩)ξ「いやあっ! お嫁に行けない!」
(*゚ー゚)「ですって、もらってあげたらいかがです」
(-@∀@)「遠慮します」
ξ;゚⊿゚)ξ「つか何でアサピーがいるの!」
(*゚ー゚)「家に運んでもらおうかと思って、そのへん探したら案の定いました」
ξ゚⊿゚)ξ「つきまとい罪で訴えよう」
(-@∀@)「センセイが無茶してそうだったから心配してあげてたッテいうのに失礼な」
ξ゚⊿゚)ξ「ていうかこいつに運ばせようとするのやめて。身の危険を感じる。
そこそこ美形で心優しくて由緒ある家系の高身長独身男性にして」
(*゚ー゚)「すみませんギコは仕事があるので」
ξ゚⊿゚)ξ「つくづく勿体ねえ」
口を動かしていると頭も回ってきた。
仮眠のおかげか、一時間前よりはすっきりしている。
-
アサピー密着しすぎだろ
-
ほんとギコさんもったいねぇ……
-
案の定ww さすが
-
男性じゃないだろ!
女性だろ!
-
ギコさんオカマじゃなかったらスペックアホみたいに高い
-
ξ゚⊿゚)ξ「……寝言とか言った?」
(*゚ー゚)「……トソンさん、とは言いましたね、一度」
ξ゚⊿゚)ξ「そう」
隣に座ったアサピーが、缶コーヒーをツンの手に持たせた。
お礼代わりに、姿勢悪く背凭れにだらんと寄り掛かって足を組んでいる彼を叩く。
(-@∀@)「どーします、センセ。帰るなら送りマスヨ。
今なら特別キャンペーンで、送り終わったら僕も素直に帰りマス」
ξ゚⊿゚)ξ「ん……」
ちびちび、コーヒーを飲む。
どうしてあんな夢を見たのだろう。去年の夏の記憶だった。
どうして今、トソンの夢を。
昨日今日と、ドクオや内藤のことばかりで、トソンを思い返す暇がなかったのに。
ξ゚⊿゚)ξ「……ギコどこ?」
(*゚ー゚)「デスクじゃないですか」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとここで待ってて」
(-@∀@)「ハイハイ」
飲みかけのコーヒーをアサピーに押しつけ、ツンはおばけ課へ向かった。
.
-
女じゃない
-
(,,゚Д゚)「べたべた触らないでね。汚しちゃ駄目よ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってるわよ」
ギコの机の前で、ツンは一つの小袋を掲げた。
トソンがミセリに憑依するために書いてもらった契約書。
指紋採取のための溶液につけたのか、変色してしまっている。
(,,゚Д゚)「何回見ても中身変わんないわよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってるってば……」
他の職員に呼ばれたギコが、席を離れた。
所用で出ている者が多いのか近くに人はいない。
ツンは机の陰に隠れるようにしゃがみ込み、小袋を開けた。
契約書を取り出す。
トソンという霊が確かに存在していたことを示すものは、最早これだけだ。
彼女自身は、もう消えてしまった。
-
追いついた支援
-
ξ゚⊿゚)ξ「トソンさん」
自分が彼女にしてやれたことなど、本当に少ない。
ξ゚⊿゚)ξ「……トソンさん」
彼女が望んだことは何だったろう。
ミセリが目覚めること。
真実が明らかになればミセリが目覚めるのではないかと、彼女は言った。
ミセリを起こさないと。
真実を、明かさないと。
ξ ⊿ )ξ「トソンさん……」
呼び掛ける。
返事など、あろう筈もないのに──
-
オカマキャラってたいていスペック高いよな
というかスペック低くてオカマって、いよいよ存在価値皆無だもんな
-
──最初に感じたのは、熱だった。
体中を削り取られたような痛みが走る。
それから一瞬遅れて、脳裏を駆け巡る情景があった。
-
月明かりが辺りをうっすらと照らしている。
白い。壁。床。
ベッド。
横たわる女。──ミセリ。
病室だ。
ベッドの脇で縺れる影。2人の男。
それを、「自分」は床に伏せながら見ている。
-
追体験?あれ?本人いないのに?
-
動かなければ。逃げなければ。
手も足も動かない。逃げられない。
痛い。痛い。苦しい。──死ぬ。死んでしまう。
争っていた片方のシルエットが、もう片方のシルエットを踏みつけた。
男は少し迷った様子で、こちらを見た。
それから病室の入口を睨み、舌打ちして窓から去っていく。
よろけながらも、先程まで踏まれていた方の男が立ち上がった。
かと思えば屈み込み、何かを拾って、それをミセリの手に握らせる。
そうしてようやく、逃げた男の後を追った。
早く──
──ツンのところに、行かないと。
思うのに、やはり体は動かない。
死が全身を回る。
二度目の死。これで本当に、最後。
最後の最期に思ったことは。
-
ツンさんエイジ化
-
「ミセリの目覚めるところ、見たかったなあ」
ツンの口が勝手に動いた。
吐息のような小さな声だった。
-
モノの追体験って出来なかったよな
やっぱりみんな少しずつ変わったのか?
-
目まぐるしい記憶の渦。
全てを理解する。
今の光景、感情、その視点の主と、彼女の末路。
はらはらと涙が零れる。
彼女の感情の名残なのか、彼女を想ったツンの悲嘆なのかは分からない。
涙を拭って契約書を何十秒も何分も見つめ続け、何度も名を呼んだが、
二度と、先の情景は訪れなかった。
サイコメトリー。
物に宿る残留思念を読み取る力。
いつぞや、彼はツンの力がそれではないかと言った。
なるほどたしかに似ているが──やはり、別物だ。
-
ξ;⊿;)ξ
文面を親指の腹で撫でる。
今の今まで、ここに「トソン」がいたのだ。
誰にも感知できなかったほど、極々わずかな。
残り香程度の、小さな小さな彼女の残滓。
ツンを信じると言った彼女が、
ツンに知らせなければという最後の使命を終わらせるために。
戻ってきたギコが、袋から証拠品を出しているツンを咎めようとしたが、
ツンが涙を流しているのに気付くと、口を閉じた。
*****
-
そうか霊なんだから本当にわずかに残ることも不可能ではないのか
-
#####
ミセ*;−;)リ
∧ ∧
( ФωФ)『貴様ようやく帰っ──……臭いぞ』
ミセ*;−;)リ『ただいまロマ……』
∧ ∧
( ФωФ)『……』
.
-
ミセ*;−;)リ グスッ、グスッ
∧ ∧
( +ω+)
ミセ*;−;)リ グスッ…
∧ ∧
( +ω+)(最近は落ち着いていたくせに、面倒な女である)
ミセ*;−;)リ『ロマ』
∧ ∧
( Фω+)
ミセ*;−;)リ『ロマ、聞いてる?』
∧ ∧
( +ω+)
ミセ*;−;)リ『……あのね、いつでもいいの、いつでもいいから……』
-
支援
-
ミセ*;−;)リ『私のこと、殺してくれないかなあ……』
∧ ∧
( ФωФ)
#####
-
3月2日。
土曜日。
廃工場。
(*゚ー゚)「今夜で終わらせますよ」
学生服の裾を軽く引き、背筋を伸ばしてしぃが言う。
ξ゚⊿゚)ξ「私もそのつもり」
首元の白いリボンを結び直し、爪先を鳴らしてツンが言う。
──静かだった。
傍聴席はすっかり埋まっていて、おばけも人も話し声を発しているのに、
ツンとしぃの間は何物も入り込めないかのように。
静かだった。
-
繋がってきた
でも('A`)がまだ……
-
良くも悪くもロマネスクは仁義の男なのかな
-
なんと
-
辛いな……
-
(,,゚Д゚)「ブーンちゃん大丈夫?」
( ^ω^)「はいお」
しぃの隣でギコが問う。
ツンの隣で内藤は頷く。
大丈夫、というのには、色々な意味があったろう。
体調。学校のこと。諸々の心労。
全てが大丈夫かと問われれば手放しに認められないが、それでも「大丈夫」と答えた。
(´<_` )『これで最後にしろよ』
小一時間前、見送りながら弟者はそう言った。
内藤は「分かった」と答えたし、ツンも「無事で帰すから」と弟者に約束した。
最後。
内藤が関わるのはこれが最後なのだから、ツンの足を引っ張るわけにはいかない。
-
まってました!!
-
最後なのか・・・一時は弁護士見習い一直線かと思ったが
-
【+ 】ゞ゚)「静粛に」
オサムが木槌を宙に打ちつける。
傍聴席が静まった。
lw´‐ _‐ノv o川*゚ー゚)o
傍聴席の最前列に、シュールとキュートの姉妹が並んでいる。
誰にでもおばけが見える法廷内ならキュートに会える、というツンの言葉に従いシュールは傍聴に来たという。
ツンや内藤は裁判の準備でごたついたので、2人の再会シーンには立ち会えなかった。
あれだけ探し求めた妹と会えたのにも関わらず、シュールは相変わらず眠たそうな目でこちらを見つめている。
本当にマイペースというか。
( <●><●>) ( ><) (*‘ω‘ *)
さらにその隣に、ワカッテマスとビロード、ぽぽちゃんが。
ぽぽちゃんは──何か、逮捕される(かもしれない)ようなことをしたと、ツンから聞いた。
重い罪ではないし、本人も反抗的でないらしく、そのため傍聴を許されたという。
近くでおばけ課の職員が監視してはいるようだが。
ぽぽちゃんを横目に見るビロードの瞳は、ひどく悲しげだった。
-
スレタイ見直してやっぱりツンさんが背後霊に見えてワロタ
-
しえ
-
──それから内藤の視線は、ツンを挟んで反対隣の方へ向けられた。
( ФωФ)
ロマネスクが椅子に座っている。
背はやや丸く曲がり、目は一点を見つめて──睨んでいる。
( ^ω^)「……ロマネスクさんはあっちに立たないんですかお?」
内藤達のいる場と傍聴席とを区切るロープを指差しながら、小声でツンに問う。
ヴィップ町の幽霊裁判では、被告人はオサムと向かい合う位置に立たされる筈だが、
今日のロマネスクは弁護人席に座らされている。
ξ゚⊿゚)ξ「今日はドクオさんの証言が主だし、訊くことも多くなるだろうから
ドクオさんをあそこに立たせるんだと思う」
( ^ω^)「適当なもんですお」
-
【+ 】ゞ゚)「証人、向こうに立ってもらえるか」
タイミング良く、オサムが自身の斜め後ろに控えていた男へ指示を出した。
男が返事をし、オサムの傍を過ぎると、弁護人席と検察席の間を進んでいく。
彼の動きをロマネスクの顔が追う。入廷してからずっと、ロマネスクは彼を睨んでいた。
そうして男は、傍聴席から2メートルほど距離を空けた位置で立ち止まると、
傍聴席に背を向け、オサムを正面から見据えた。
('A`)「……この町じゃ、ここは被告人の立ち位置じゃねえんスかね」
【+ 】ゞ゚)「今夜はこの方が都合がいい。
今の段階では、証人は検察側とも弁護側ともつかないから
どちらの席に立たせるのかも悩むしな」
男──ドクオは肩を竦めた。
腕を組んで、あちこちに視線を飛ばしては長息する。
苛立っているのは明白だ。
不服と不安の混じる表情は、つきまとい罪や道連れ罪の裁判で幾度か見てきたものだった。
【+ 】ゞ゚)「……くるう、そろそろ始めるぞ」
川 ゚ 々゚)「うん」
オサムの左手とくるうの右手が絡む。
それから、2人はゆっくりと手を離した。
-
【+ 】ゞ゚)「準備はいいな」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(*゚ー゚)「問題ありません」
オサムが右手を持ち上げる。
木槌を握る手に力が篭る。
【+ 】ゞ゚)「それではこれより、被告人ロマネスクの幽霊裁判を──」
傍聴席の空気がたじろぐ。
ツンの顔がオサムに向いた直後、木槌は振り下ろされた。
【+ 】ゞ゚)「──開廷する」
*****
-
いよいよだな
-
終わりが見えてきて胸が苦しくなってきた…
-
(*゚ー゚)「おさらいをしましょう」
初めに、しぃが前回の審理の流れを掻い摘まんで説明した。
17年前の拝み屋の不審死に端を発した憑依事件。
ミセリの事件を含むそれらは、共通点の多さから同一犯によるものとされた。
また、ロマネスクの痕跡が何件も見付かっていることが、彼の犯行を示している。
しかし、ミセリの病室で警備の霊と都村トソンの殺害事件が発生した日、
ロマネスクでもトソンでも、警備の者でもない何者かが現場に居合わせた可能性が出てきた。
さらにロマネスクは、昨年の夏、ミセリの病室でドクオと遭遇した際
ドクオが逃げ出したため彼を追いかけ、結局取り逃がした、と語った。
憑依事件はともかくとして、法廷は、
ドクオが何らかの形でミセリの件に関与している──恐れがあるという結論に至る。
(*゚ー゚)「先週はそこで閉廷となりました。
今日は、その続きから始めます」
しぃは、書類へ伸ばした手を止めた。
早速ツンが挙手していたのだ。右手を高々と。
-
【+ 】ゞ゚)「どうした弁護人」
下ろした手を、腰に当てる。
左手は机につき、やや前のめりになった彼女は上目にしぃを見た。
表情は真剣だ。
ξ゚⊿゚)ξ「前回は曖昧なまま進めて悪かったわ。
だから今日は、こちらの方針を言わせてもらう」
(*゚ー゚)「……」
椅子に腰掛けたまま、ロマネスクがツンの顔を見上げた。
目を一度合わせて、ツンはドクオへ顔を向ける。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん」
('A`)「何だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「私は──」
ツンが息を吸い込む。
瞳には力が込められていて、しかし睨むのとは違う強さがあった。
一拍。
唇が動く。
黒衣の弁護士は、一言、告げた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「あなたを告発します」
その発言の直後、ロマネスクが難しい顔をして、目を閉じた。
-
( ^ω^)「……こくはつ……」
ドクオを──何らかの罪に問うというのか。
流れからして、ツンの意図を推測するにも一つの答えしか浮かばない。
傍聴席が、瞬時にどよめく。
オサムが木槌を一度打っただけでは騒ぎが収まらず、二度三度と続けてようやく鎮静化した。
(;'A`)「……何の冗談だよ、弁護士」
ξ゚⊿゚)ξ「私が訊きたいくらい」
ドクオは驚愕に声を震わせていた。
内藤も戸惑ってはいたが、本人のそれとは比べ物にならないであろう。
当然のように、困惑は怒りへ変わり出す。
(#'A`)「てめえ、やっぱり俺を!!
……弁護士が人に罪なすりつけんのかよ!!」
-
ドックン黒か・・・
-
【+ 】ゞ゚)「落ち着け証人。
──弁護人、告発と言うが、何の罪について告発するというんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「一連の憑依事件。及び、先日の殺霊事件」
(*゚ー゚)「全て彼の仕業だと?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。それと、内藤君への憑依殺人未遂も追加で」
ちらりと内藤を一瞥し、ツンの目は正面へ向けられる。
相対しているしぃが鼻白んだ。
(*゚ー゚)「やっぱりそう来ますか」
(,,゚Д゚)「予想の範疇だわね」
(#'A`)「なに落ち着いてやがる! てめえら言っただろ、俺を疑っちゃいないって!」
(*゚ー゚)「ええ勿論。──弁護人! 僕は事件の犯人がロマネスクであると確信している。
前回の審理でも明白であるし、今回、鬱田さんの証言を聞いてもそれが揺らぐことはないでしょう」
-
ツンさん頑張れ!!
-
いいね
-
(*゚ー゚)「であるにも拘わらず、そこまで言い出したからには、鬱田さんが犯人であることを
証拠でもってはっきり示してもらわなければなりません。
『疑わしい』『もしかしたら犯人かも』、その程度では足りないのです!」
ξ゚⊿゚)ξ「……行けっかなー……」
( ^ω^)「は?」
(*゚ー゚)「この法廷にて、あなたの主張を証明できなければ
今日こそ被告人の有罪は確定します。……よろしいですね」
こくり、無言で頷くツン。
いや待て、ついさっき小声でとても危なっかしいことを言わなかったか。
決め顔で頷いている場合か。
また傍聴席で声が上がり、それを切っ掛けにして波及していく。
ただし、今度は木槌一発で収まった。
( ФωФ)「……弁護士」
ロマネスクが小さな声でツンを呼び、しかしそれ以上は言葉を飲み込んだ。
-
ドクオが犯人だとすると内藤少年ー憑依させろーってのが怖すぎワロエナイ
-
ドクオ自身が憑依されてる可能性
-
>>655
幽霊に憑依とか斬新
-
しぃの白々しさに笑いたいのにドクオが気になって変な表情になってる支援
-
【+ 】ゞ゚)「告発に至った根拠は何だろうか」
ξ゚⊿゚)ξ「殺霊事件の日にミセリさんの病室から見付かった外れくじ、
前回の審理での被告人の証言、内藤君に憑依していた事実──などです。
ドクオさんが亡くなったのが18年前で、最初の事件が起きたのが17年前といった時期の近さも」
(#'A`)「だから! 外れくじが俺のものだと決めつけてんのもおかしいが、
そもそも、その被告人の証言が正しいって証拠がねえだろうがよ!!」
川;゚ 々゚)「……オサム……」
怒鳴り声に怯えたくるうが、オサムの袖口を掴む。
それに気付くとドクオは口を噤んだ。
(*゚ー゚)「……外れくじを引いたのは、僕を含め大勢いました。
職員による回収が始まる前に法廷を出た霊や人は──回収したくじの数から計算すると、21人。
内3名は僕とギコと同行者で、僕達は帰宅してからごみ箱に捨てましたので、それを除いて18人。
さらにそこから鬱田さんとアサピーさんを抜いて16人」
その16人の確認はとれているという。
どのような捜査方法かは分からないが、よく見付け出したものだ。
アサピーのようにメモ紙に使ったという者が1人だけいて、それを除けば、
やはり外れくじを保管しているような者はいなかった。
大抵は屑籠か道端に捨ててしまったそうだ。
が、事件が起きた時間帯のアリバイはほとんど裏が取れたし、
そうでない者にもミセリやトソン達との関係は全く見られなかったため、
彼らが事件に関与した可能性は著しく低い。
-
(*゚ー゚)「──ですので、あの外れくじが鬱田さんのものだという点には同意します」
(;'A`)「……おい、検事……」
しかし、と、力強い声でしぃは続ける。
(*゚ー゚)「病室で落としたのだと、誰が言い切れます?」
ξ゚ -゚)ξ「……」
( ^ω^)「……別の場所で落としたものを、誰かが病室に運んだ?」
(*゚ー゚)「そう考えることは出来る」
本来あった場所から別の場所へ──
内藤の脳裏に浮かんだのは、N県の事件だった。
死体が動かされたことで、内藤とドクオに嫌疑がかけられた事件。
(*゚ー゚)「そして鬱田さんが言うように、
被告人の証言が真実であるのか否かは、まだ誰にも分かっていない!
少なくとも──僕らが調べても、それを裏付けるものは出てこなかった」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ロマネスクさんは証言する際、くじの件と8月の病室での件が
関連していると匂わせるような発言をしたでしょう。
それも嘘だっていうの?」
(*゚ー゚)「8月に被告人は鬱田さんと接触している。
殺霊事件の日にも、鬱田さんと接触したのなら──
そして鬱田さんがどこかで外れくじを落としたことに被告人が気付いていたのなら」
ドクオに罪を被せるための嘘を思いついてもおかしくはない──
しぃの言葉に、傍聴席の幾人かが納得するように唸った。
ξ゚ -゚)ξ「……せっかく思いついた嘘を、何で土壇場になるまで喋らなかったのよ」
(*゚ー゚)「外れくじが消えてしまったからですよ」
ツンが片眉を上げ、黙る。
どういうこと、とくるうが訊ねた。
-
(*゚ー゚)「被告人の計画では、まず、くじを警察に発見させることが前提にあった。
それから鬱田さんの件を証言すれば、警察の目は鬱田さんにも向けられる筈ですから」
(*゚ー゚)「しかし、くじは消えてしまった。拾った看護師が警察に届け忘れていたからですが──
ともかく警察がくじの存在に気付かなかったため、布石が崩れたんです。
こうなると、余計なことを話せば墓穴を掘りかねない。だから黙っていた」
(,,゚Д゚)「でも、法廷でようやくくじのことが俎上に載せられたのよね。
被告人にとってはチャンスだわ。
まあ今まで黙ってたのにどうして今さら話すんだって疑われそうなのがネックだったでしょうけど……」
(*゚ー゚)「それも周りが勝手に解消してくれた。
──結果的には、被告人にとって何もかもが完璧なタイミングだったんではないでしょうか」
【+ 】ゞ゚)「当初の計画が、より効果的な形で成されたわけだ」
その通りだとすれば、たしかに願ったり叶ったりだったろう。
ロマネスクは無表情で聞いている。
しかし瞳には、何か堪えるような色があった。
ツンが反論の足掛かりを見失っていた。
沈黙する彼女から、しぃは目線を外した。
-
(*゚ー゚)「まあ、くじの件はあくまで僕の推測です。
というわけで鬱田さん、証言をお願いします」
ドクオが、はっとしたように顔を上げた。
もう一度しぃが証言を促すと、頷き、咳払いをしてみせる。
ドクオの顔からは怒りが消え、困ったような表情になっていた。
(;'A`)「あー……っと……。……今更、すげえ言いにくいんだけどよお……」
数分前に怒鳴っていた彼とは、まったくの別人だった。
その様子に、検察側の空気が乱れる。
(;'A`)「でも、もう、こうなっちまったら本当のこと話さなきゃいけねえだろうし……参ったな……。
……は、話すぞ? 話すからな? 怒んなよ?」
(*゚ー゚)「……何ですか」
-
(;'A`)「──俺、たしかにあの日、病室に寄ったんだよ。オサム様の裁判の日」
ξ;゚⊿゚)ξ「は」
【+ 】ゞ゚)
(*゚−゚)
それは、たった今披露されたしぃの推論を、思いきり否定する発言だった。
ツンが目を見開く。
オサムが眉間に皺を寄せる。
しぃのこめかみが、引き攣った。
(*゚−゚)「は?」
(;,゚Д゚)「何で最初に認めなかったの!?」
(;'A`)「だって絶対に疑うじゃねえかよ! 現に、弁護士は俺を犯人だと言いやがる!
でもやっぱ小心者だからよお、結局こうやって話しちまったわ……」
( ^ω^)(やっぱスムーズな審理にはならんお)
病室には寄っていないとか、どこかでくじを落としたとか、
そう証言すれば、無実を訴えるドクオにはとても有利だったろう。
けれど、彼は結局、正直に話すことを選んだ。
-
やっぱりドクオはドクオだなあ
-
検察の意見をそのまま通そうとしたら、仮に論破された時に逃げ道無くなるからなぁ
-
(;'A`)「だ、だが、弁護士が思ってるような理由で病室に行ったんじゃねえ!」
川 ゚ 々゚)「じゃあ何で?」
(;'A`)「くじ引きの後、刑事が言ってたんだよ。
『おばけ課がオサム様の事件で手一杯で、他の事件が手薄だ』って」
(;'A`)「俺も病室の警備任されたことあるし、乗りかかった船っつうか……一応、気にはなっててな。
大丈夫かよって思って、ちょっと様子見に行ったわけだ」
暇だったからってのもある、とドクオは付け足した。
(;'A`)「そしたら──その、都村トソンが被告人に襲われてたからな。病室で。
見て見ぬふりは出来ねえわな」
【+ 】ゞ゚)「助けようとしたのか?」
(;'A`)「まあ、ご覧の通りひょろいし、しがない浮遊霊だから勝つ見込みはなかった。
結局、身の危険を感じたもんで、何とか紛れ当たりで怯ませた隙にナースコール押して逃げた。情けねえ話。
……くじも、そのときに落としたな」
(;,゚Д゚)「ナースコールはドクオさんが押したものだったの?」
(;'A`)「ああ」
-
そういや結局トソンはロマが殺ったのかな・・・
-
( ^ω^)「警察に言わなかったんですおね? どうして……」
('A`)「……二回も不当に逮捕されたことのある身だぜ。警察に行くのは嫌だった。
俺が行かなくても──都村が警察に話すだろうと思ったしな」
('A`)「俺が逃げ出したときにはまだ生きてたし……霊が生きてるってのもおかしな言い方だが。
そんで被告人はしばらく俺を追い掛けてきてたから、てっきり、その間に
都村も逃げただろうと思ってたんだよ」
実際、翌日になって病院を覗いてみると警察が出入りしていたので、
トソンが通報したのだと解釈したらしい。
('A`)「俺んとこに警察が話を訊きに来ないのが気になったが……まあ
あの姉ちゃんも必死で、俺のことなんか分かってなかったのかもしれねえし
実際に聞き込みに来られたとしても大した情報持ってねえから、
俺が関わらなくて済むんなら、それが一番楽だろうと思って、黙ってた」
('A`)「まさかあのまま病室で消えちまってたなんて、知らなかったんだよ」
──トソンは消えてしまった。
裁判の前にツンから聞いてはいたが、改めて別の者から聞かされると、やけに重たく響いた。
逃げ出したときにすぐ警察に駆け込めば良かったと、ドクオが唸るような声で言う。
-
くるうが嘘だって言わないのが気になるな
この辺はほんとだってことだもんな…
-
>>669
読み直そうぜ
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あなたは本心で言ってるの」
('A`)「ああ。あんたは俺を非情な殺人犯だと思いたいようだがな」
ツンが顎に手をやり、黙りこくる。
椅子に座るロマネスクは、膝に乗せた手を握ったり開いたりしていた。
何かに焦れるように。
【+ 】ゞ゚)「それで結局のところ、弁護人は、今の証言を否定できる証拠を持っているのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……いいえ」
【+ 】ゞ゚)「被告人から意見は?」
( +ω+)
【+ 】ゞ゚)「今日も喋らないか。えー……つまり殺霊事件については、依然として
被告人の疑いは晴れないということになる」
(*゚ー゚)「そのようです」
( ^ω^)「……ツンさん」
内藤の声は無意識に低くなっていた。
あれだけ大見得きって、ものの10分でこの体たらく。
いくらなんでも冗談では済まされない状況だというのに。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、だって自分から認めるなんて……」
【+ 】ゞ゚)「次は何の証言をしてもらおうか」
ξ;゚⊿゚)ξ「ふぇいっ! ……あ、えと、内藤君に憑依したときのことを」
ふぇいって。
オサムは提案を了解し、木槌を打った。
そこへ、しぃが確認のために「憑依」の件を振り返る。
先週の土曜日。閉廷後にしぃ達がドクオの捜索を開始し、
住宅街で内藤を見付けたため、聞き込みをしようとしたところ
内藤に憑依していることをドクオ自ら説明し、憑依を解いた。
憑依の時間は然程長くなかったが、内藤は半日ものあいだ目覚めないほど体力を奪われていた──
(*゚ー゚)「憑依に至った経緯の説明をお願いします」
('A`)「ああ」
頷いたものの、ドクオはなかなか話し出さなかった。
内藤とツンを見、溜め息。
仕方ないといった様子で、ようやく口を開いた。
-
('A`)「切っ掛けの話からするなら、当日の何日か前から始めないといけない。
──俺は、度々ヴィップ中学に寄ってた」
ξ;゚⊿゚)ξ「──!!」
ツンが絶句した。
ドクオの言葉に、驚愕の表情を浮かべる。
先刻、彼が病室にいたのを認めた際に見せた表情を、数倍増幅させたような。
('A`)「ちょっと前から内藤少年の様子がおかしかったから、学校で何かあったのかと思って
覗きに行ってたんだよ。──正直に言うと、心配してたからじゃない。好奇心だった。
生意気な少年が何に悩んでんのか興味があっただけだ」
('A`)「こんなことバレたら少年もいい気はしねえだろうから、黙ってたんだがな」
「今言うの」──ツンが呟く。
呆然とした声だった。
( ^ω^)(……ツンさんの武器だったんだ)
ドクオの気配が学校に残っていたというシュールの話。
それがツンの「手」だったのだ。
けれど、本人が先に話してしまえば──
ツンが後出しするのとは、全く違う印象になる。
-
ドクオがツンの手の内を見透かしていると見るべきか否か
-
('A`)「少年のクラスメートがひそひそ『祟り』がどうのこうの言ってんの聞いちまって、
ああ面倒なことになってそうだなと思ったよ」
('A`)「そんで──木曜日か。
登校中の少年に声をかけて……まあ追い払われはしたんだが、
そのとき見かけた少年の友達の調子が変でな。いよいよヤバそうだったから
こっそり教室覗いたんだ。そしたら大騒ぎになってて」
ドクオは気まずそうに内藤をちらちら見ながら、教室での出来事を語った。
どれも正しくて、実際に聞いていたのだという証明になるものだった。
('A`)「少年がもうドン底って感じでな。明らかに危ねえ状態だった。
妙なこと仕出かしやしねえかって不安になったから、常にとは言わんが見張ってたよ。
だから土曜日の夜、少年が家出したのもすぐに見付けられたんだ」
そうして、彼は内藤の後をついていき──
限界を迎えた内藤から憑依するように言われて、それに従った。
以上だとドクオは言う。
机に手をつき項垂れていたツンは顔を上げ、内藤へ目をやった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……内藤君からも、そのときの話をして」
( ^ω^)「はあ……」
内藤から、と言っても、今のドクオの証言と大差ない。
ひとまず内藤は、学校でのことを一部始終話した。
内藤の過去やプギャーの件についてはここで初めて話題にあがったが、
それ以外は、オサム達も同じ話を繰り返されたようにしか感じなかっただろう。
川 ゚ 々゚)「ブーンかわいそう……」
【+ 】ゞ゚)「それで家出を?」
( ^ω^)「はい。──その後のこともドクオさんが言うのと変わりませんお。
ドクオさんは心配してくれてるみたいでした」
記憶を手繰り、そのときのドクオの様子などを説明した。
殊更そうしようという気はなかったが、擁護するような言い方になる。
最後は、公園でのこと。
( ^ω^)「泣き止もうとしても出来ないから、ドクオさんに取り憑いてくれと頼みました。
とにかく僕の体で泣き続けたくなかったんですお」
そこから先は覚えていない。
病室で目をさましたのだ。
-
(*-ー-)「鬱田さんの証言と一致します」
川 ゚ 々゚)「嘘の臭いもしないよ」
【+ 】ゞ゚)「しかし、昼頃まで目覚めないほど衰弱していたんだよな。
それほど長く憑依していたのか?」
('A`)「や、大体2時間くらい……つっても少年が歩き通しで疲労が溜まってたようだし、
俺も休み休みとはいえ結構移動してたから、そのせいで弱っちまったのかと」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん」
ツンが声を挟み込む。
ドクオは口を止め、目付きで彼女に応えた。
ξ゚⊿゚)ξ「質問させて」
('A`)「おう」
長机の上から折り畳まれた紙を選んで、それを広げた。
地図だ。西の方が流石家周辺。
大きく印刷された地図の片側を内藤に持たせ、反対側をツンが支える。
-
>>670
すまん穴があくほど読み返してくる…
-
>>678
くるうは生きてる人間の嘘しか嗅ぎ分けられないはず
おばけは対象外
-
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君に憑依した公園っていうのは、ここにあるものよね」
赤いマジックで小さな公園を囲んだ。
ああ、とドクオが肯定する。
オサム達が把握したのを確認してから、ツンは指で道を辿ると、
細い道路に再びマジックで印をつけた。
ξ゚⊿゚)ξ「でも、あなた達が見付かったのは、公園から2キロメートルも離れた住宅街だった。
何故その場でじっとせずに移動したの?」
(,,゚Д゚)「外は寒いし、暖かい場所でも探してたんじゃ?」
ξ゚ -゚)ξ「公園を出てすぐ近くにコンビニがあるのに、それを無視して?」
('A`)「……流石んとこの家に戻ろうと思ったんだよ。
少年の意思にゃ反するだろうが、やっぱり、そうした方がみんなのためだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「流石家とは全くの逆方向だわ。道筋としては単純な筈なんだけど」
たしかに地図で見てみると、何度か曲がりはするが大体が真っ直ぐで単調な道だ。
淀みなく答えていたドクオの口が、僅かのあいだ止まった。
-
>>679
ああ!そうだった
ここ理解してなきゃ今までの話なんだったんだってレベルなのになんで忘れてたんだろう
トンクス
-
この見透かした感じ…ドクオも何かを読めるのか?
-
('A`)「……迷ったんだ。知らねえ道だったから」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさんは平成7年の大晦日に亡くなって、
それからすぐにヴィップ町へ来たって前に言ってたわよね」
('A`)「何だよいきなり。
……そうだよ、ずっとこの町にいた。
だから過去に他県で起きてた憑依事件だって関係ねえし──」
ξ゚⊿゚)ξ「十何年もずっとここにいたのに、迷ったの?
さっきも言ったけど大して入り組んでない簡単な道よ。大通りにも近い」
口籠もる。
少ししてから、「本当に知らない道だった」と答えた。
ツンは納得していないようだったが、しかし、それ以上言えることもなかったのだろう。
地図を畳んでファイルに挟み込む。
【+ 】ゞ゚)「内藤ホライゾンへの憑依殺人未遂──だったか。
それも証明できなかったようだが」
ξ゚⊿゚)ξ「……今の段階では」
負け惜しみに聞こえなくもない。
しぃが白けた様子で肩を竦める。
オサムは鼻で息をつき、木槌の先で内藤を指した。
-
【+ 】ゞ゚)「内藤ホライゾンはどう思っているんだ。
殺されかけたと感じているか?」
問いを反芻する。
先週のドクオとのやり取りが思い浮かび、それから、どんどん記憶を遡っていった。
( ^ω^)「僕は……」
──体を貸せと何度も頼まれた。
しかしそれには理由があった。
夏の裁判で、彼は法廷の床を叩きながら泣いた。
慟哭した。
母を想い、犯人を憎み、泣き叫んだ。
( ^ω^)「……ドクオさんが、悪いことするようには思えませんお」
('A`)「少年……」
焦りの滲んでいたドクオの顔が、ふっと和らいだ。
ありがとう、と呟いている。
傍聴席がさざめく。
多くは、ドクオを告発すると言ったツンへの疑念を呈する声だ。
だが。
鼻をひくひくさせたくるうだけが、首を傾げた。
-
川 ゚ 々゚)「……ちょっと、嘘のにおいがする」
(;,゚Д゚)「へ?」
──そうだろうな、と思う。
ドクオから目を逸らす。
こつりと鳴った木槌の音が催促なのは分かっているので、言葉を続けた。
( ^ω^)「でも僕は、ツンさんがそう言うのなら、
そこにちゃんと意味があるんだろうとも思うんですお」
弁護士として功績を残すために無実の者を犯人に仕立て上げるような、そんな人間ではない。
少なくとも今の時点の内藤には、ドクオもツンも怪しいと言えなかった。
ツンの肩が僅かに下がる。力が抜けたのだろう。
緊張がほぐれたのか、呆れたのかは判断がつかなかったが。
('A`)「……そうかよ」
結局どっちなんだと野次が飛ぶ。
オサムが木槌を持ち上げたが、しぃが声を発すると、傍聴人達はぴたりと口を閉じた。
-
追い付いた支援
-
ああ気になって眠れん
-
(*゚ー゚)「まあ内藤君がそっちの席にいる時点で弁護人の味方なのは分かってたことですがね。
ただ忘れないでほしい、今のところ、弁護人は何も立証できていません」
(,,゚Д゚)「ブーンちゃんはああ言うけど、あたしはツンが早まった気がしてならないのよねー……」
( ФωФ)「……」
ふ、とロマネスクが吐息を漏らす。
──笑った?
ξ゚⊿゚)ξ「正直焦ってはいるけどね、早まっちゃいないわよ。
まだ訊きたいこともある」
(;'A`)「粘んなよー、もう……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「──ロマネスクさんが捕まったのは、ある青年との出会いが切っ掛けだった」
話は次へ移った。
ロマネスクが傍聴席を瞥見する。
青年というのはワカッテマスのことだ。
先週、彼のおかげでロマネスクが証言するに至ったと聞いた。
(*゚ー゚)「猫の姿で現れた被告人に、何度か食事を与えていた彼ですね」
ξ-⊿-)ξ「彼からご飯をもらうのは、いつも決まった場所でした。
その青年が住むアパートの近く」
ξ゚⊿゚)ξ「そのアパートがどこにあるか、検事は当然知ってるわよね」
(*゚ー゚)「そりゃ勿論……このヴィップ町ですが」
ξ゚⊿゚)ξ「もっと細かな区域の話」
(*゚ー゚)「……ラウンジ××丁目」
川 ゚ 々゚)「ラウン寺?」
(*゚ー゚)「読みは同じですが……」
「ラウンジ××丁目のアパート」。
うっすらと聞き覚えがある。
いや、聞き覚え、と言える程はっきりした感覚でもない。
ただ、この状況と絡んで、何かを想起させる要素ではあった。
-
ラウンジ。アパート。──幽霊裁判。
ドクオ──
( ^ω^)「あ……」
【+ 】ゞ゚)「つきまとい罪の現場と同じ場所か。昨年の」
内藤が至った答えを、オサムが口にした。
ツンは首肯する。
昨年の梅雨頃、ドクオが被告人となった裁判。
内藤が初めて参加した裁判。
証人として現れた女が真犯人だった裁判。
あの事件で亡くなった被害者が住んでいたアパートが、たしかにそこだった。
-
支援
-
【+ 】ゞ゚)「もしかして、ラウン寺と同じ名の土地だから何度も訪れていたのか?」
( +ω+)「……」
(*゚ー゚)「どうでしょうか。
あの一帯には猫が多いです。飼い猫も野良猫も、猫の霊も。
猫が寄りつきやすい土地で、被告人もそれに引かれただけかもしれません」
かつての住み処と同じ響きを持つ地だから近付いた、
猫として何となく引かれるものがあったから近付いた、
そのどちらになるかで印象は変わる。
彼は、ラウン寺で世話になった僧を殺した容疑をかけられているのだから。
──その点は今の問題ではない。
そう言って、ツンは自分へ注意を引き戻す。
ξ゚⊿゚)ξ「昨年、そのアパートに住む男性が亡くなりました。
おばけに付きまとわれた結果、浴室で……」
ξ゚⊿゚)ξ「犯人はとある妖怪でしたが、ドクオさんが誤認逮捕されました。
──そのアパートに出入りしていたのを目撃されたからです」
(;‘ω‘ *)
ドクオの背後。傍聴席。
ぽぽちゃんが、膝の上で手を握り締めていた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「死亡事故があったのは1階の一部屋。
一方ドクオさんが出入りしていたのはアパート2階、右端の部屋」
ワカッテマスの部屋。
つきまとい罪の裁判に関する記憶を掘り返しつつ、ツンの話に耳を傾ける。
ξ゚⊿゚)ξ「この部屋は霊が溜まりやすくなっていて、
そのため人が住んでもなかなか続かず……」
溜まり場となっていたから、ドクオはそこで様々な情報収集を行っていたと語ったのだったか。
そうして内藤のことを知り、取り憑かせろとまとわりつくようになったのだ。たしか。
そのおかげで彼は昨年、容疑者として捕まってしまったのであった。
-
ハインが逮捕されたやつか?
-
ξ゚⊿゚)ξ「しかしつきまとい罪の後、おばけ課とカンオケ神社の職員によってお祓いがされました。
たった一体のおばけを除いて、他の霊達は成仏するなり他の土地に移るなりしたそうです」
【+ 】ゞ゚)「なぜ一体は残したんだ?」
(,,゚Д゚)「他の霊から、彼女──あ、その『一体』は女性のおばけね。
彼女は無害だし昔からここに住んでるって聞いたから、
無理に追い出す必要もないかと思って」
ぽぽちゃんだ。
お祓いを終えてから少しして、ワカッテマスとビロードが越してきたそうだ。
無害という評価に違わず、彼らからは円満にやっている印象を受けた。
特にビロードと仲が良かったように思う。
──ツンが手のひらをスーツに擦りつけ、握りしめる。
次いで手を開き、同様に口を動かした。
ξ゚⊿゚)ξ「──彼女は、ドクオさんから命令を受けていました」
.
-
まとめ消えたのか…
-
そこも繋がるのか……
-
(;‘ω‘ *)
ぽぽちゃんは膝の上で両手を重ね、ひたすらに俯いている。
その隣で、ビロードの瞳はぽぽちゃんと自身の足元を往復していた。
次に内藤はドクオを見る。
彼は眉を顰めていたが、口は反論もないまま引き結んでいた。
【+ 】ゞ゚)「命令?」
ξ゚⊿゚)ξ「『この部屋は霊道が歪みやすいから幽霊妖怪がよく集まる。
その影響で部屋の住人にも霊的な力が宿ることがあるだろう、
特に強い力を持つような奴がいたら、仲良くなって、いずれ俺に寄越せ。
取り憑くなら霊感持ちがいい』──大体このようなことを」
しぃとギコは何も言わない。
既に知っていたようだった。
オサムは目を丸くさせて(といっても元からぎょろりとした目付きなので大した違いは無いが)、
内容を整理するように沈黙すると、木槌で肩を叩き、
「あー」と発言の取っ掛かりと思しき唸り声をあげた。
-
>>696
消えたわけじゃなく休止
ただ一月は見れないらしいな
-
【+ 】ゞ゚)「それは……なかなか不穏というか、結構大事な話じゃないか」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、なかなか不穏で結構大事な話です」
( ^ω^)「僕もそう思うんですが」
(,,゚Д゚)「そうよねえ」
──事実、ワカッテマスとビロードは、あの部屋に住み始めてから霊が見えるようになったと言っていた。
ワカッテマスはそこまで強い霊感を得なかったようだが、
ビロードは兄よりも顕著だった筈だ。
ξ゚⊿゚)ξ「彼女は言われた通りにしました。
新たな住人であった兄弟の、弟の方に目をつけ──
自分に懐くように仕向け、信頼を得ていったんです」
(;><)
傍聴席のビロードが唇を噛み締めている。
ワカッテマスが何か話しかけると、ビロードは首を振った。
そうして顔をしっかりと持ち上げ、涙の滲む目でこちらを見据えた。
-
失敬
-
ドクオさんまさかのジャイアニズム
-
('A`)「……」
ドクオはといえば、先程までの焦りと裏腹に
腕を組んで悠然と構えていた。悠然と、というのも違うのかもしれないが、僅かばかり余裕が見える。
彼の目は胡乱げにツンを捉えている。
【+ 】ゞ゚)「それは、そのおばけを呼んで詳しく話を聞くべきではないのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「彼女は人と話すのが苦手ですので」
(*゚ー゚)「まあ──真実ではあるようです。念入りに確認しましたから」
川 ´々`)「あれ疲れた」
しぃが情報を追加する。
くるう立ち会いのもと、ツンを「通訳」にして、しぃとギコがぽぽちゃんの話を聞いたのだそうだ。
具体的に言えば、ぽぽちゃんから聞いたという話をツンがギコ達に語り、
逐一ぽぽちゃんには「今のが本当なら頷いてくれ」と言って、
くるうにはツンの言葉の臭いを確認してもらう、という方法。面倒臭い。
オサムは労るようにくるうの頭を撫で、ドクオへ向き直った。
-
【+ 】ゞ゚)「証人、何故そのような命令をしたんだ? 目的は何だ」
('A`)「……質問に答える前に、ちょっと、こっちからも質問いいスかね」
【+ 】ゞ゚)「……重要なことならば」
ドクオは腕を解き、後ろへ振り返った。
傍聴席へ歩いていく。彼が近付く度に傍聴人達のざわめきが増した。
そして彼は、ロープの向こうに座る彼女──
ぽぽちゃんの腕を掴んだ。
(;‘ω‘ *) ポッ…
(;><)「あ、ぽ、ぽぽちゃん!」
('A`)「そのおばけってのが、こいつだよな。たしかに俺の知り合いだ。
命令の件の真偽は別として」
ドクオが手を引けば、彼女は観念したかのように立ち上がった。
-
あかん、豹変クル…
-
【+ 】ゞ゚)「ああ、そのおばけか。最近うちに預けられたから何かと思ったが」
(;,゚Д゚)「聞いてなかったのオサムちゃん……」
【+ 】ゞ゚)「宮司が説明しなかったんだ」
手を離し、ドクオはわざとらしくツンとぽぽちゃんを見比べる。
「ふうん」と唸り、顎に手をやって、ツンに問うた。
('A`)「弁護士。『聞いた』んだな? こいつから話を聞いたっつったな」
ξ゚⊿゚)ξ「……聞いたわ」
('A`)「こいつと話をしたってことだな?」
ξ゚ -゚)ξ「……」
【+ 】ゞ゚)「弁護人?」
黙るツンに、オサムが怪訝な声を漏らした。
内藤は隣から顔を覗き込む。しぃもギコも不思議そうにしていたので、
ツンが何か隠しているのは間違いなさそうだ。
-
ドクオってAAは豹変が様になるよな
-
('A`)「なあ、あんた」
(;‘ω‘ *) ポ…
('A`)「さっきオサム様も言ったけど、あんたの証言は重要だ。
折角ここに居るんだし、いっぺんあんたの口から話してやったらどうかな」
(;‘ω‘ *) …ポッ…
ξ;゚⊿゚)ξ「っだ、だから彼女は話すのが苦手で……!」
('A`)「でも弁護士には話したんだろ」
(;‘ω‘ *)「……、……っ」
何だ。ツンは何を焦っている。
ただごとではない。
ぽぽちゃんが着物を握りしめる。
全員が彼女の挙動に注目している。
-
ドクオが妙に冷静で怖いな
-
──とても長く感じる沈黙を経て、彼女は声を発した。
(;‘ω‘ *) ……ミャア
高くて、細くて、甘えるような。
(;*゚ー゚)
(;,゚Д゚)
しぃとギコが、面喰らう。
内藤の口元が、ひくりと動く。
ξ;-⊿-)ξ
ツンだけが額に手を当て、後悔を面輪に浮かべていた。
-
ああ、どっくんはそういう手に出るのか…
-
(;‘ω‘ *) ニャア、ニャウ、…ミィ
川 ゚ 々゚)「……にゃんこ」
【+ 】ゞ゚)「ふざけているわけではないよな」
(;‘ω‘ *)" コクコク
【+ 】ゞ゚)「ええと……猫の妖怪か何かか」
(;‘ω‘ *)" コクコク
('A`)「前に俺と話したときも、こういう鳴き声しか出しませんでしたよ」
( ФωФ)
ロマネスクがぽぽちゃんを見る。
彼になら、彼女の言葉の意味が分かるだろうか。
分かったところで、教えてはくれないだろうけれど。
-
ドクオ強敵だな
-
内藤は前を向いたままツンの脇腹をつついた。
つついたというか軽く打った。
( ^ω^)「ツンさん」
ξ;゚⊿゚)ξ「……私だって、先週初めて知ったのよ」
ドクオが事件に関わっていると知り、ならばドクオと面識のありそうな彼女に話を聞くべきだと
ワカッテマスの部屋で彼女と向かい合い、いざ話そうとしたら──これだ。
さぞ困ったことだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ「苦労したんだからね、本人にも検事にも怪しまれないように事を運ぶの……。
警戒解くのも時間かかったし……」
(;,゚Д゚)「ちょっと、何ひそひそ話してんの」
ξ;゚⊿゚)ξ「いえ別に」
-
(;*゚ー゚)「おい! あんた、おい! 何だあれは!」
ξ;゚⊿゚)ξ「……な、何って?」
(;*゚ー゚)「本人から『聞いた』って言っただろう! ほんとに聞いたのか!? あれで!」
ξ;゚⊿゚)ξ「聞、いた……っていうか……見たっていうか」
尻窄みに小さくなっていく声。
しぃは最早、青筋すら立てて「あ?」などと柄悪く聞き返していた。
表情が感情に追いついていないのか、見開いた目と歪な笑みを浮かべた口が恐い。
-
川 ゚ 々゚)「でもツンが『あの人から聞いた』って言ったとき、臭わなかったよ。
ツンが話してる間も全然……」
(#゚ー゚)「説明しろ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「き、聞いたのは確かなのよ、ほんとに……」
(#゚ー゚)「彼女は人間の言葉を話せるのか? それとも字が書けるのか」
"(;‘ω‘ *)" ブンブン
(;,゚Д゚)「無理みたいだけど」
【+ 】ゞ゚)「しかし本人から聞いたというのは確かなんだろう?」
(;*゚ー゚)「ああもう、どうなってるんだ!」
どうなっているのか、は。
内藤にとっては然程不思議ではない。
──ツンが「聞いた」のは事実だろう。
彼女が聞いたのは、ぽぽちゃんからの証言ではなく、
ぽぽちゃんの記憶の中のドクオの声だ。
ならば、それは確かに、本当にあったことなのだ。
内藤はそのことが分かる。
けれど──しぃ達は分からない。
この流れへの疑問は証言そのものへの疑惑に変わる。
-
ツンさんは猫語が話せるんだよ(棒)
-
ああ、プギャーと同じように、他人の秘密を暴きにきたのか
ドクオ頭いいというか、いよいよ性格悪いのが出てきたな・・・
-
( ^ω^)(……ドクオさんは?)
ツンの「追体験」について知っているのは、内藤とドクオだけ。
ドクオも分かっている筈だ、その力のおかげで情報を得たのだと。
彼はどんな意図で、この展開へ運んだのだろう。
彼の真意は。
皆の目がツンに向けられる中、内藤だけが、ドクオを盗み見た。
そして──それが、視界に映った。
( ^ω^)「、」
ドクオの瞳が一瞬、ひどく冷たいものになったのを。
それでいながら、笑むように歪んだのを。
本当に一瞬のことで、すぐに無気力な眼差しへと戻ったが。
-
本当に、プギャーと言いドクオと言い悪質な奴を敵に回すとたちが悪いな
-
(;*゚ー゚)「──」
ξ;-⊿-)ξ「──」
言い合う声が遠ざかる。
いや、耳には入るが、その意味を理解しようとしていないため、音でしかなくなった。
──今の目は何だ。
今は、彼が喜ぶような場面なのか。たしかに論点は彼からズレている。
だとしても、あの冷たさは。あの暗い色は。
音が途切れた。
そこに割り込むように、ドクオが唇を動かした。
頭の切り替えが一瞬遅れ、初めの呼び掛けも音でしか認識できなかったが、直後の言葉は声となって脳に届いた。
('A`)「──お得意の『あれ』でも使ったってのか?」
木槌による牽制はなかった筈だけれど、法廷は静まり返っていた。
-
(;*゚ー゚)「……あれとは何です」
総意でもある問い掛けを、しぃが投げる。
ぽぽちゃんも答えを求めてドクオの顔を窺った。
待って、というツンの制止は間に合わない。
間に合ったところで、無視されていただろうけれど。
ともかく彼は、それを言ってしまった。
('A`)「おばけの記憶を辿れるんだとよ。
今までにも、何度もやってたらしい」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ……」
ツンの漏らした声は、ひどく弱々しかった。
-
ドクオこの野郎
-
ドクオ怖えよ
-
誰かTさん読んできてー!ドクオを波ぁしてもらってー!
-
敵に回るって事はそうなるよなぁ
-
ドクオてめぇこらふざけんな
-
('A`)『あんたは俺を信じてくれたし、俺も信じる。誰にも言わねえ』
かつてのドクオの言葉が、脳裏で弾けて消える。
当然の流れのように思えて、いっそ滑稽だった。
ツンがドクオを信じることをやめたから、彼も、彼女の秘密を暴露したのだ。
【+ 】ゞ゚)「……本当か」
固まるしぃに代わり、オサムが問う。
臭いを嗅ぎ漏らすまいとしているのか、くるうは真っ直ぐツンに顔を向けていた。
暖房は充分に機能しているのに、いやに寒い。
ξ;-⊿-)ξ
ツンの唇がわななく。
一度きつく瞼を閉じて、それから、目と口をゆっくり開いた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……はい……」
臭いの有無を確認し、くるうがオサムを見上げて首を振った。
ギコが頬に添えた手が、するりと落ちる。
-
最終対決めいてきたな
-
ああああああああああああああああ
-
ドクオーーー
-
いつかばれるとは思ってたが…
タイミング最悪や
-
まあ若干ヒネてるし 疑われて告発なんてされたら相手をできうる限りボコボコに攻撃はするわな・・・
-
──訥々と、ツンは「追体験」を語った。
相手によって記憶の感じ方に違いがあることや、毎回できるわけではないこと。
これまでの裁判でも、何度か被告人や証人の記憶を元にして弁護の仕方を変えていたこと。
【+ 】ゞ゚)「……それはまた、珍しい力だな。
弁護士より監視官に向いていそうな気もするが」
川 ゚ 々゚)「何でずっと黙ってたの?」
(;,゚Д゚)「そうよー、あんた、それじゃあ……。
あんたが喋って、くるうちゃんに確認してもらえばそれでもう終わり、っての何個もあったでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そんなの、裁判じゃないわ」
ツンの声は、悔しさが滲んでいる。
彼女は、かつて内藤に聞かせたのと同じことをオサム達にも吐き出した。
自分の匙加減で物事が決まってしまうのが、とても恐ろしいと。
-
せいとかいもあな本もみんな幸せヌルエンドだったが、このドクオがいたらヌルエンドにはならんだろうな・・・・・・
-
ξ゚⊿゚)ξ「くるうさん相手なら、私はきっと、言い回しや表情でどうとでも誤魔化せる。
それはきっと、裁判長が一番よく分かってくださるんじゃないでしょうか」
【+ 】ゞ゚)「くるうはそこまで単純じゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「何も、嘘を真実と思い込ませるだけじゃなくても、
私がわざと嘘ばかりつくことで、真偽を有耶無耶にすることは出来ます」
【+ 】ゞ゚)「……」
オサムの否定は続かなかった。
──検察席から何かを叩くような音が響いた。
何が何を叩いたか、など、見なくても分かる。
しぃが机を叩いたのだ。
(*゚−゚)「……僕は、毎回あなたに踊らされていたんですか」
感情を押し殺すような声が、冷たく落ちた。
-
あああああ
ドクオやったか・・・・・・
-
しぃ→使えるものは使う
ツン→自分の力を極力使わない
この対比構造になってんのか
つくづく話し作るのうまいな
-
ξ;゚⊿゚)ξ「……検事」
(*゚−゚)「被告人が真に有罪で、それに相応しい判決が下されて、僕がいい気になっているとき
あなたはいつも心中で舌を出して笑っていたんですか」
ξ;゚⊿゚)ξ「違う! 私だけの力でどうにかなったことなんてない!!」
(* − )「あなたはいつも上から見下ろしていたのか」
違う、とツンは何度も首を振った。
俯くしぃに、ギコが掛ける言葉を選んでいる。
しぃはゆっくりと頭を擡げて──
(*゚ー゚)「……と、いう風に思わないでもないが。
どのみち、やることは変わらないじゃないか」
毅然として、そう言った。
以前までの彼女と──何かが、変わっていた。
-
お?
-
しぃさんかっけぇ勃起する
-
おお…しぃ
-
しぃさんマジイケメン
-
いいねぇしぃちゃん!
-
ヒステリック駄々っ子卒業か
-
しぃ覚醒
-
なんかみんな成長してんだや
-
腕を広げる。
大仰な仕草で、彼女は朗々と言葉を紡ぐ。
(*-ー-)「記憶を読む! 大いに結構。
弁護人に都合よく事実を曲げる。可能だというならやってみるがいい」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
(*゚ー゚)「前にも言った筈だ。僕はあなたを敵だと思っている。
あなたがどのような手口を使おうと、どんな戦法で来ようと、
僕が納得できないのなら叩き潰す。捻り潰す。ぶっ潰す」
彼女の声に篭るのは、紛うことなき敵意だ。
鋭く、血の通った敵意。
右手の人差し指を真っ直ぐツンに向け──叫ぶ。
-
しぃちゃんが変わったっ
-
(*゚ー゚)「出連ツン! 僕はあなたの人間性を、一切! これっぽっちも! 信用していないのだから!」
──正直なところ、これまで聞いてきた彼女の声の中で、最も自信に溢れたものだった。
あまりの勢いに、傍聴席も、オサム達も、ドクオも、ロマネスクも呆気にとられていた。
呆然としたまま、くるうが呟きを落とす。
川 ゚ 々゚)「……くさくない」
-
これは熱い!!
-
くさくな〜い
-
やばい読んでて楽しい
-
ちょっとは信用してやれよww
-
うそ臭くなくてもいろいろくさいぞww
-
ツンから表情が消えた。
彼女の顔にだけ影が落ちたように見えた。
小刻みに肩が震え始める。
ξ ⊿ )ξ「……ふ」
( ^ω^)「ツンさん」
ξ ⊿ )ξ「ふふふ……」
( ^ω^)「ツンさん?」
がばと上げた顔に、内藤は声を引っ込めた。
口角も目尻も吊り上がっていた。
ξ#゚∀゚)ξ「あーっはっはっは!! 上ッ等だわこのジャリ!!
本当に可愛げないったら!!」
私の苦労は何だったの──ツンの叫びに、内藤はこっそり共感する。
自分も病室で同じ気持ちになった。
己が重大視していたことが、存外に細かな問題だったときの脱力感は言葉にならない。
(;,゚Д゚)「……あんたらねえ……」
( ^ω^)「まあ、こんなもんですおね」
【+ 】ゞ゚)「これで丁度いいんだろうな」
-
くさくないwwww
-
しいさんかっけー惚れる
-
しぃちゃんいっけめん!
-
険悪にならなくてよかったぁ…
-
ひどい台詞だけど嬉しい言葉だなwww
-
全力で検事と弁護士が戦う
これこそリーガルミステリー
-
ドクオ思惑が外れてザマアwww
-
しぃさん覚醒回
-
ある意味最大限に険悪だけどなwww
-
ξ#゚⊿゚)ξ「あー腹立つ! でもありがとうね検事!
そうよね、あなたが私の言うこと手放しで信じるわけないわ!」
(*-ー-)「誤解なきように言っておきますが、あなたの仕事ぶりだけは認めないこともない」
ξ#゚∀゚)ξ「おほほほほナッマイキぃ!!」
ぷりぷり怒りながら、腕をぐるぐる回すツン。
仕草や声とは反対に、どこかすっきりしたような顔色だった。
そして、すっと目を細めると、再度ドクオへ体を向けた。
ドクオは眉根を寄せている。至極つまらなそうに。
ξ゚⊿゚)ξ「改めてお話ししましょ?」
('A`)「大した信頼関係だな」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね。ここまで嫌われてて光栄だわ。本当にありがたい」
-
ドクオ悔しそう
-
しかしこれでドクオの目論見も外れそうだ
-
しぃが変わってくれててよかった…
-
('A`)「……でも、まあ、俺も検事を支持する。
みんながあんたの発言を信じるようになっちまえば、
あんたは裁判の流れを作ることが出来るわけだからな」
ξ゚⊿゚)ξ「いくら何でも自由自在とは行かないけど」
('A`)「どうだか。内藤少年だってこのことを知ってたんだ。
その気になりゃあ、それとなく少年を促して
自分の望む方向へ話を動かすことも可能だろう」
弁護士として事件を俯瞰的に見られる立場にいる以上、
仮にツンとしぃのバランスが崩れてしまえば、ツンはいくらでも工作し得る。
ドクオはそれを指摘し、ツンに対する信用性を欠こうとしたのだろう。
存外に、彼女と対立する壁の頑強さが並ではなかったが。
(*゚ー゚)「諸々踏まえてお聞かせ願いたいんですが、あなたが見た彼女の記憶ってのはどんなものなんです」
しぃの問いはツンに対してだ。
この段階に至っても尚、怪訝な顔付きなのが実に彼女らしい。
-
ドクオざまぁみろww
-
ξ゚⊿゚)ξ「……鬱田ドクオさんという男性の霊を知ってるかしらと訊ねたわ。
そうすることでドクオさんにまつわる記憶を想起させた」
ツンが得た記憶は、視覚と聴覚。それと一部の感情、思考。
映像は所々ぼんやりしていたが、声ははっきり再生されたという。
部屋の霊道、その影響、取り憑くために霊能力者を確保しておけという指示。
それらは確実にドクオの声だった。
ξ゚⊿゚)ξ「彼女は、言うことを聞かないといけないと思っていた。
……何故そう思うかまでは読めなかったけれど、
私は怯えてるように感じた」
(,,゚Д゚)「怯えてる……」
(*゚ー゚)「最後のはあなたの単なる感想でしょう」
ξ-⊿-)ξ「そうね、撤回する」
-
しかしこのドックンは実にラスボス然としてていいな
全く動じず、落ち着いて、相手の弱点を的確に抉る
-
【+ 】ゞ゚)「実際はどうだったんだ?」
ぽぽちゃんは少ししてから、自分への質疑だと理解したのか、肩を揺らした。
ちらりとドクオを見、目を逸らし、何も答えない。
何でそんな反応するんだよと、ドクオは弱りきった声を出した。
(*゚ー゚)「彼女が明確な返答をしない以上、どうとでも取れる」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん」
(;'A`)「あーもー、待ってくれ。俺がこいつに会ったのは確かだ。間違いなく。
霊感持ちの奴を探してたのも──それは、その通りだ」
ホールドアップするように両手を顔の位置まで上げてドクオが言う。
心底嫌々といった雰囲気だ。
が、しぃの返しは「そうでしょう」なんてもの。
-
(*゚ー゚)「憑依対象を探していた理由については、弁護人の方がよく知っている筈ですが」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。お母さんと会うために生きてる人の体を借りたがってた。
霊感の強い人がいいっていうのも、去年言ってたかしらね」
(;'A`)「その、憑依したい理由については話してなかったんだ。
だからこいつも物騒な勘違いして怯えちまったんじゃねえか?」
(*‘ω‘ *) …ニャ…
彼女の「発言」は誰にも理解できない。
真偽のほどが伝わらない。
( ^ω^)「もう開き直って、もう一回ぽぽちゃんさんの記憶見せてもらったらいかがですかお?」
川 ゚ 々゚)「くるうもちゃんと監視官やるよ!」フンフン
(;‘ω‘ *)、
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、残念だけど今の彼女の状態じゃ難しいわ」
緊張してしまっているし、ツンの力を知って、警戒しない筈もなかろう。
たとえ善良な霊でも、記憶を辿られるなんて歓迎したいものではない。
-
──状況を一旦整理しよう、とオサムが提案する。
傍聴席の方もそうしてもらいたかったらしく、ふっと空気が緩んだ。
【+ 】ゞ゚)「17年前から続く憑依事件と、三森ミセリへのつきまとい、殺霊事件、
内藤ホライゾンへの憑依殺人未遂──話に上がった事件はこんなところか」
【+ 】ゞ゚)「検察側の主張は初めの通り、連続憑依事件とつきまといと殺霊事件は被告人ロマネスクの仕業であり、
憑依殺人未遂はそもそも事件ではなかった──というものだな」
(*゚ー゚)「その通りです」
【+ 】ゞ゚)「反対に弁護側は、連続憑依、つきまとい、殺霊全ての真犯人を鬱田ドクオとし、
故に内藤ホライゾンへの憑依にも殺意があった筈だ、と言いたいわけだ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(,,゚Д゚)「面倒臭いことになったもんだわー」
( ^ω^)「本当に」
くるり、木槌を右手で器用に回してオサムは思案する。
-
ロマはいつ動くんだ…何でまだ黙ってるんだろう。
-
そういやロマいたな
-
【+ 】ゞ゚)「『殺霊事件の日に三森ミセリの病室に居た』、
『内藤ホライゾンの学校でのいざこざを知っていた』『家出した彼についていった』、
『霊能力者に憑依するため他者に命令していた』──」
【+ 】ゞ゚)「これまでの話を聞く限り、鬱田ドクオに怪しい点は色々あるが──
それらは全て、本人の反論内容でも納得できるものばかりだ。
……つまり、どうとでも取れる」
川;゚ 々゚) ウーン
【+ 】ゞ゚)「弁護人の論調は、『鬱田ドクオが真犯人だった場合』が認められて初めて意味を持つものであり、
『鬱田ドクオが真犯人だと示す』ものではない」
【+ 】ゞ゚)「対して、被告人、ロマネスクが一連の犯人であることを示す証拠や証言は
はっきり残されている。
どちらに説得力があるかというのは明白だ」
顔の右側を覆う面を、左手で撫でる。
彼の言葉は尤もだ。
しかし──
-
( ^ω^)(……さっきのは……)
内藤だけが見たであろう、ドクオの顔が気にかかる。
彼が一瞬見せた目付きは、あれは──
何かを「楽しむ」目だった。
もしも今一度、ドクオを信じるかと問われれば。
きっと内藤は頷けない。
【+ 】ゞ゚)「被告人は、相変わらず何も喋らないつもりか?」
( +ω+)
川 ゚ 々゚)「自分が犯人なのかどうかも言わないよね……」
(*゚ー゚)「罪を認めようが認めまいが、僕は集めた情報からロマネスクが犯人であると判断し起訴しました。
弁護人も、それを否定する気ならそれなりの何かを提示すべきだ」
証拠を出せ、とは初めから言われている。
しかしツンはそれを出さない。あれだけ堂々と告発をしたからには、根拠がある筈なのに。
両手をつかね、机を見下ろすツン。
彼女の唇が動く。声はない。
瞳に迷いの色が灯る。
-
ふむ…?
-
どうなるんだ
-
( ^ω^)「どうかしましたかお」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「何かあるなら、言った方がいいですお。みんな聞いてくれますし」
ξ゚ -゚)ξ「……」
ξ゚ー゚)ξ「そうね」
大したことを言ったつもりはなかったけれど、ツンの迷いが薄れた。
視線を上げる。
ξ゚⊿゚)ξ「……トソンさんの記憶も見ました。殺霊事件の日、当日の」
また「追体験」を元にした話だ。
皆はまず、そう認識して、それから首を捻った。
【+ 】ゞ゚)「弁護人のそれは、霊と相対しなければ出来ないんじゃなかったか」
ξ゚⊿゚)ξ「そうです」
-
(;,゚Д゚)「トソンさんは病室で消えたんだから、ツンと会ってる暇はなかったでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「憑依契約書にトソンさんの記憶が残ってたの」
( ^ω^)「いや、『残ってた』ってあんた」
どういうことだというオサムの問い掛けに対し、
説明が難しい、とツンの答え。
もう投げやりだ。
一応形式として、くるうは「臭わない」と補足した。
(;'A`)「あんたサイコメトリーじゃねえっつったじゃねえか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、それとは違うわよ。
……そっか。私の力がどこまで及ぶか確かめたかったから、
あの日あんなことを言い出したのね、あなた」
サイコメトリー。
物質から思念を読み取れれば、もう無敵だろうとドクオは言っていた。
──もしも仮にツンの力がそれだったら、ドクオはあの後どうしたのだろう。
-
ドクオもこれは予想外か
-
(*゚ー゚)「……都合が良すぎやしないか」
ξ;゚⊿゚)ξ「だから言うの迷ったのよ……」
話の流れは当然、どんな記憶を見たのかという方向へ定まる。
しぃは既に胡散臭さしか感じていない顔である。
ツンは頭を掻き、ぽつりぽつりと語った。
ξ゚⊿゚)ξ「床に倒れてるトソンさんの視点から始まったわ。
そこはミセリさんの病室で、ドクオさんとロマネスクさんが争っていて……」
ξ゚⊿゚)ξ「それで──ロマネスクさんがナースコールを押したの」
(,,゚Д゚)「ロマネスクさんが?」
きゅっと引っ張られるように、空気が締まった。
──ドクオは、自分がナースコールを押したと言っていたではないか。
-
ξ゚⊿゚)ξ「それでドクオさんが逃げ出し、ロマネスクさんもそれを追って、
病室には倒れるトソンさんとベッドに眠るミセリさんが残された」
トソンの意識は薄れていき──それで終わり。
ξ゚⊿゚)ξ「……追いかける間際に、ロマネスクさんは何か拾ってミセリさんの手に持たせた。
あれが外れくじだとするなら、ロマネスクさんはドクオさんの手掛かりを残そうとしてくれたのね」
( ^ω^)「……それって……」
──とても、重要な話である。
それ故に皆、その話を信じられなかった。
誰がナースコールを押したかは大事な点だ。
ミセリを殺そうとした者がそんなことをする筈がない。
誰かが駆けつけるなんて、その状況では邪魔にしかならないからだ。
ナースコールを押した者は──
ミセリを助ける意思を持っていたことになる。
-
支援するぞ!
-
やはりか…
-
(;ФωФ)
全員がツンを訝る中、ロマネスクだけが目を丸くし、
('A`)
ドクオだけが、足元を見ていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……これが、私がロマネスクさんを無罪だと信じ、ドクオさんを疑う最大の理由です。
──さすがに、これを信じてくれなんて無茶は言えないわ」
ツンにとっては一番の拠り所だ。
しかしツン以外の者には、とてもじゃないが簡単に受け入れられるものではない。
(*゚−゚)「……僕は信じない」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、そうして。これが通ったら駄目だと思うし、
……見間違いの可能性だって、ゼロじゃないもの」
くるうが口を動かした。
それを、オサムの手が止める。
-
【+ 】ゞ゚)「見間違いの可能性は確かにあるのか」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
【+ 】ゞ゚)「被告人、今の話は事実か?」
( ФωФ)
( +ω+)「……」
【+ 】ゞ゚)「……これでは、今の弁護人の話を容易に信じることは出来ない。
参考にはするが、信憑性にはやや欠ける」
そうした方が、きっとツンのためにもいい。
彼女にとってその記憶は弁護をする上での武器ではなく、
弁護をするための基盤なのだ。
トソンが残したそれを、信じているからこそ。
-
──「なあ」。
声がした。
ドクオからだった。
未だ傍聴席との境界に立ち、ぽぽちゃんの前にいる。
('A`)「なあ、裁判の結果によっちゃ、こいつ逮捕されんだろ?
俺が有罪なら──こいつも、故意的犯罪協力罪になる。未遂、って付くだろうけど」
(;‘ω‘ *) ミァ…
('A`)「逆に俺が無罪ならこいつも無罪だ。
……もちろん俺は悪いことしちゃいねえ。
弁護士、冷静に考えろよ。俺だけならまだしも、こういう善良なおばけまで巻き込むことになんだぞ」
その発言に真っ先に反応したのはビロードだ。
反射的に立ち上がり、希望を宿した瞳でツンを見る。
-
ドクオはぶれずにクズいな
-
(;><)「ぽ、ぽぽちゃん、許してもらえるんですか!?」
(;‘ω‘ *) …
('A`)「ほら見ろ弁護士、こんなに心配してんのに可哀想だろ」
(;<●><●>)「ビロード!」
ワカッテマスが咎め、ビロードを座らせた。
彼は、弟の眼差しがツンの妨げになることをよく理解してくれている。
しかし座らせたところで瞳を隠せるわけでもない。
いっそ暴力的な期待が、ツンへ降り注がれる。
こういうのが、ツンには一番の毒だ。
-
うわぁ……
-
けれどもツンは──揺らがなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「……あなたが凶悪な霊で、彼女がそれを知っていたのなら、
彼女は言うことを聞かざるを得なかったのだから
罪の適用がされたとしても、極々軽い刑で済む」
彼女はあくまでも、ドクオが真犯人であると信じている。
過去、彼女は他者を思いやり、そのために犯人を逃そうとしたことをひどく悔いていた。
きっと、もう、同じことはしない。
そしてそれは恐らく、ドクオの予想図から大きく外れた反応であった。
一瞬、ドクオの顔から色が消えた。
かと思えばまるで反動のように、青白い顔に赤みが差す。
歯を食い縛り、彼は咆哮するかのように怒鳴った。
(#'A`)「だから──言い掛かりじゃねえかよ、全部!!」
川;゚ 々゚)「ひゃうっ」
-
これはゲスい
-
ここまで来たらもうドクオ行動だけで真っ黒……
-
剥がれてきたぜー
-
(#'A`)「俺が怪しく思えたからって、何もかも俺におっ被せようってなァ短慮すぎやしねえか!?
そもそもあんたが勝手に信じてる『根拠』の正確さはどう証明する!!」
くるうがオサムにしがみつく。
オサムはくるうの背を撫でながら、黙ってドクオの怒りを聞いていた。
(;,゚Д゚)「ねえ、ツン、あたしもちょっと──告発っていうのは突飛だったんじゃないかと思うの。
あんたが言うことも分かるっちゃ分かるけど、ドクオさんの反論でも充分に筋は通ってるし、
トソンさんの記憶だって確かなもんじゃないんでしょ?」
(*゚ー゚)「殺霊はまだしも、憑依事件まで彼の犯行だというのは言い過ぎに思います。
これまでの事件現場には、被告人の痕跡は見付かっているが
証人が関与した証拠はないんですよ」
オサムはまだ何も言わない。
様子を窺っている。
判断を下すために、因子を集めている。
( ^ω^)「……ドクオさんが、ツンさんに記憶を見せれば済むんじゃありませんかお。
それで無罪が証明されれば、ツンさんだって諦めますお」
(#'A`)「馬鹿の一つ覚えみてえに俺を犯人だ悪霊だって騒いでる奴を、どう信用すりゃいいんだ!
言いかた次第で誤魔化せるって本人が言ってたじゃねえか!」
-
でも裁判入ってからのドクオの反抗は別に不自然な行為ではない不思議
-
もうニュッさん逮捕して丸く収めようぜ
-
支援
眠れん
自分はまだドクオが犯人とも思えんのよな…
-
(#'A`)「ああ、畜生! あんたがそんな奴だと思ってなかったよ俺は! がっかりだ!!」
川;゚ 々゚)「お、オサム、こわい……」
くるうが顔を伏せ、ようやくオサムの右手が動いた。
【+ 】ゞ゚)「証人。落ち着け」
(#'A`)「落ち着いてられっか! どう責任とってくれんだよ!
こんだけの騒ぎにしといて、ごめんなさいで済むと思ってんのか! おい弁護士!!
ふざけんなよ!! クソッ……クソッ!!」
(;,゚Д゚)「お、オサムちゃん、今日はもう裁判続けられる状態じゃないんじゃないかしら……」
ドクオの剣幕にすっかり萎縮した様子のギコが、オサムに訴えかける。
ツンはにわかに焦りを見せ、右手を挙げた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ま、待っ……!」
【+ 】ゞ゚)「そうだな。弁護人、証人が犯人だと示す証拠がないのなら、
これ以上この場で証人から話を聞くことは認められない」
-
ニュッ関係ねーだろ
ドクオとプギャーを消滅処分にして終わりでいいんじゃない
-
この作者が書くドクオがゲロ以下のクズなことってなかったからなー
だからこそ今回はもしかしてと思ったりもして
-
全然先が見えてこないwktk
-
ξ;゚⊿゚)ξ「は、犯人と言える証拠──は」
言いにくそうにするその態度が、何よりの答えだ。
【+ 】ゞ゚)「ないんだな」
ξ;゚⊿゚)ξ「……でも、事件に関与している……かもしれない、証拠は」
【+ 】ゞ゚)「『かもしれない』じゃない。断言出来るだけの説得力を持つ証拠だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
【+ 】ゞ゚)「殺霊事件、内藤ホライゾンへの憑依、さっきの件──
それらも結局明白な証拠はなく、たしかに言い掛かりとされても仕方ないとは思わないか」
ξ;゚ -゚)ξ「……」
【+ 】ゞ゚)「これ以上続けても、告発するに足る決定的な証拠や証言がないのならば
同じことを繰り返すだけではないのか」
ツンの顔がどんどん下がる。
こん、と木槌が鳴ったのが、最後の合図。
【+ 】ゞ゚)「……場が荒れた。
今日はこれで閉廷として、検事達は改めて証人から──」
ξ;゚⊿゚)ξ「駄目です!!」
──オサムの冷眼が、ツンを射抜いた。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「閉廷は、閉廷は駄目です!」
怯みながらも彼女は叫ぶ。
傍聴席も、裁判長ですらも、うんざりした様子を隠しもしない。
それにもめげずに声を吐き出す彼女の姿は、滑稽で、痛ましくて──
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオさんが無関係だっていう証明も出来てない!
でも今の段階じゃ彼を強く拘束することも出来ない!
……閉廷なんてしたら、逃げる隙を与えかねません!」
(#'A`)「この期に及んでまだ俺を犯人扱いかよ!? 大した自信だなあオイ!!」
(;,゚Д゚)「ツン、もう無理よ!」
くるうがまた怯え出す。
そろそろオサムも限界だ。
このままだと、黙っても喚いても閉廷となるだろう。
( ^ω^)「──裁判長」
恐慌状態が、ほんの少し収まった。
-
主人公動くか
……主人公だっけ?
-
どうなる
-
( ^ω^)「ツンさんに、もうちょっとだけ、時間あげてくださいお」
辺りに集まっていた熱が、すっと冷えた。
まだ終わらせるわけにはいかない。
まだ真実の一端も掴めていない。
(#'A`)「……少年……」
あの笑みの意味を、内藤はまだ知らされていない。
オサムは廷内を見渡す。
最後にツンへ目を留め、薄く吐息。溜め息かもしれなかった。
がん、と。
強く強く、木槌が打ちつけられる。
【+ 】ゞ゚)「休廷だ! ──10分……15分やる。弁護人はその間に
証人をここに留まらせる理由を考えろ。
相応の理由が見付からなければ、先の決定通り今日は閉廷とする」
.
-
どうなるどうなる
-
ツンはパイプ椅子を用意したものの、座りもせず、机を睨み続けた。
時折思い出したように書類をめくるが、唇を噛んでファイルを閉じる。
何も見付からぬまま、時間が過ぎていく。
('A`)
定位置に立ったまま、ドクオは手持ち無沙汰に待ち続けている。
(;,゚Д゚)(*゚−゚)
ギコとしぃは、検察席の椅子に腰掛けツンの挙動を見守っている。
【+ 】ゞ゚)川;゚ 々゚)
オサムは未だに怯えるくるうを宥めている。
傍聴席に目をやった内藤は、ひらひら動くものを見付けた。
( <●><●>)づ
ワカッテマスが手招きしている。
内藤はドクオに接近しない程度に遠回りをして、傍聴席の最前列にいるワカッテマスの前に立った。
-
( <●><●>)「……大丈夫なんでしょうか」
( ^ω^)「……さあ……」
本当に分からない。
まったく読めないのだ。
内藤の中でドクオは既に「怪しい人」になっているが、勿論ツンが何かを勘違いしている可能性もゼロではないので。
ビロードに目をやると、ぽぽちゃんの手を握っていた。
空気が重い。
( ^ω^)「あの……えっと、……ぽぽちゃんさん? ぽぽさん?」
(*‘ω‘ *)" ポッ…
( ^ω^)「ドクオさんに、ビロードさんのこと渡すつもりでしたかお?」
( <●><●>)「君って奴は直球な」
-
ひそひそと小声で会話を交わす。
ぽぽちゃんは丸い瞳で内藤を見つめると、
(*‘ω‘ *)"
まずは頷き、
"(*‘ω‘ *)"
続いて首を横に振った。
意味を考える。
( ^ω^)「……初めはそのつもりだったけど、そうじゃなくなった?」
希望的観測だ。
ぽぽちゃんは、一度だけ深く頷いた。内藤の希望を認めた。
ビロードが更に強く彼女の手を握る。
それが事実なら、罪が重くなることもないだろう。
何となく、ほっとする。
次に内藤は反対隣、少女へ目をやった。
-
( ^ω^)「君がキュートちゃんかお」
o川*゚ー゚)o「ん……」
かつてシュールが言った特徴が、たしかに当て嵌まっている。
敢えて言うなら、シュールやヒールが褒めちぎっていたので絶世の美少女を想像していたのだが、
存外、庶民的な範疇に収まる可愛さであった。
キュートは内藤を見上げ、「えっと」と困惑したような声を漏らした。
どうしたのだろうと首を傾げる内藤の腕を、シュールが引く。
lw´‐ _‐ノv「内藤君、内藤君」
( ^ω^)「どうしたお?」
lw´‐ _‐ノv「ちょっと」
尚も引っ張られるので、内藤は身を屈めた。
シュールが内藤の耳に顔を近付ける。
lw´‐ _‐ノv「なんか、今これ言うのも申し訳ないんだけども──」
*****
-
──時間がない。
証拠がない。
ツンは横に座る男に、縋るような声をかけた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ロマネスクさん、何か話してもらえないかしら……」
( ФωФ)「……我輩は何も言わぬと決めた。ワカッテマスへの恩も前回の件で返したのである」
てっきりまた無視されるのではないかと思っていたが、返答はあった。
何も言わないというなら、今までと同じように黙っていれば良かった筈なのに。
ロマネスクの瞳に見入る。
彼はツンを一瞥して目を逸らし、──また、ツンを見た。
諦念でも怒りでも無気力でもない。
期待するような色が塗り込められている。
-
( ФωФ)「どうせすぐに終わると思っていた」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
( ФωФ)「裁判が」
それは──ロマネスクに有罪判決が下されて、という意味だろう。
事実、ツンが彼の指示通り黙っていれば、前回の開廷から一時間もかからずに終わっていた筈だ。
( ФωФ)「……まさか、あの男をこの場に引きずり出せるとは思っていなかった」
ξ゚⊿゚)ξ「あの男って……」
ロマネスクは視線でドクオを指し、そしてまたツンへと戻した。
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオさんとあなたに、何かあるの」
( +ω+)「喋りすぎたのである」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたから見て、私にまだ手はある?」
( Фω+)「……無いとは言わん」
ξ;゚⊿゚)ξ「教えてよ!」
( ФωФ)「我輩から言うのは無理だ。……が」
-
( ФωФ)「『手』は、前回も今回も、近くにあった」
今度こそ沈黙し、ロマネスクは目を伏せた。
「手」──とは、どれのことだ。
「前回」と「今回」とは何だ。裁判。審理。
一週間前の裁判と今日の裁判、そのときに、ロマネスクの認識できる範囲にあった何か?
一週間前と今日、近くに存在している?
( ^ω^)「……」
足音に意識をやれば、内藤が首を傾げながら戻ってきたところだった。
どうしたの、と訊いてみる。
( ^ω^)「いや、シュールさんが……」
-
眠れない!!!!!クソッタレ応援してるからな!!!!!しえん!!!!!!!
-
ξ;゚⊿゚)ξ「なあに?」
( ^ω^)「キュートちゃんをキュートちゃんじゃないって言うんですお」
ξ;゚⊿゚)ξ「──え?」
( ^ω^)「気配……というかそもそも見た目そのものが、全然違うって」
別人?
別人。
ああ、それは、資料として写真をもらっておかなかった自分の責任だ。後で謝らねば。
ひとまず今は裁判優先だ。
キュート探しは一旦後回しに、
いや。
ξ;゚⊿゚)ξ「でも──でもあの子、シュールさんの名前に反応したわよ」
( ^ω^)「ですおね、僕もツンさんからそう聞いてたから不思議で」
ξ;゚⊿゚)ξ「事故のことだって──」
-
キュートの発言が、代わる代わる脳裏に浮上する。
異様に回転する頭が、平素ならここで思い出すことのないような記憶を拾い上げ、
互いに絡ませ始めた。
心臓が跳ねる。
そんなわけがない。まさか。違う。でも──。
緊張と興奮に呼吸が乱れ、しかし思考は整然と情報を並べ立てていく。
ξ;゚⊿゚)ξ「キュートさんを連れてきて!」
大きな声が出た。しぃが目を丸くする。
内藤は返事もそこそこに傍聴席へ駆け寄ると、キュートの手を取った。
.
-
わくわくして眠気がログアウト
支援
-
5時起き支援
-
(;ФωФ)『何故ここに──』
あのときロマネスクは誰を見た?
ワカッテマスだとツンは認識していた。
けれども。
キュートも、ワカッテマスの隣にいた筈だ。
あのときロマネスクが見たのは──
.
-
キュートなのにキュートじゃない……?
どうなるんだ
-
内藤と共にこちらへ歩いてくるキュートを横目に、ツンはファイルから憑依契約書のコピーを引っ張り出した。
文面の更に下、メモ用紙に元から印刷されていた文字を指でなぞる。
(*゚ー゚)『ヴィップ町の不動産会社に事務として勤めており、その日も会社に出勤していた』
川*` ゥ´)『父さんの建設会社で事務やってんだ今。人間として』
素直ヒールの父は、建設会社の社長。
建設会社と不動産会社ならば仕事を共にすることもあろう。
o川*゚−゚)o『……あ、何か……素直……聞き覚え……うう……?』
キュートが反応を示したのは、シュールの名ではない。
「素直」だ。
-
>>825
奇遇だな、俺もだぜ
-
ここであな本のキュートの性格を振り返ってみましょう。
-
そして。
o川;> -<)o『……事故……交通事故が……』
交通事故は。
「彼女」の親友の、都村トソンの死因。
.
-
皆の視線を一身に集めたキュートは、何事かと辺りを見渡し、
不安げに体をそわそわさせていた。
o川;゚ー゚)o「あの、今、私なんかに構ってる状態じゃないんじゃ……。
私とシュールさんのことは後でいいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……今じゃなきゃ駄目だわ」
しゃがみ込み、目線を合わせる。
ツンは、キュートの──少女の髪に触れた。
(゚、゚トソン『髪長かったんですよ。まっすぐで、綺麗で……』
少女の髪は、するすると、ツンの指先を滑っていく。
ξ゚⊿゚)ξ「……なんだ……」
何故だか、目元がじんわりと熱を帯びた。
瞳が潤む。
唇が、ほんの僅かに笑みを浮かべた。
-
えええええええ
-
嘘じゃん
-
ξ゚ー゚)ξ「──ミセリさん、こんなとこにいたのね」
*****
-
!?!?!?
-
キュートがミセリぃ!?
-
What happened?!
-
どういうことなの・・・
-
o川;゚−゚)o「……みせり……?」
呆然と、少女が復唱する。
今まで何度も出た名前だった。
今まで何度も中心となった名前だった。
一体何を言い出したのかと、皆がこちらを見ている。
混乱している。
o川;゚−゚)o「……みせり……」
二度目を口にし、少女は突然唸って、その場に膝をついた。
頭を抱え、ミセリ、その名を繰り返す。
-
やっぱりミセリか
-
──初めは、目の錯覚かと思った。
内藤は目を擦り、それが気のせいでないのを悟る。
少女が成長していっている。
歳を重ねるごとに、セーターからセーラー服へ、セーラー服からブレザーへと服装も変化する。
法廷で何度も繰り返された名前の筈なのに、それを自身に向けられて初めて、
彼女はその意味を真に理解したのだろう。
彼女と共に、内藤の認識も追いついていく。
──「トソン」。
別の名を呼んだ瞬間、彼女の成長は止まった。
ミセ;- -)リ
半袖のブラウスにベスト、スカート。
OL然とした服装の女性が蹲っている。
-
女性はゆっくり目を開けると、顔を持ち上げ、ツンを──
いや、ツンの向こうに座るロマネスクを見た。
ミセ;゚ー゚)リ「──ロマ……」
( ФωФ)「……」
20代後半ほど。内藤が病室で見た姿よりも若い。
そこにいるのは、間違いなく三森ミセリその人だった。
.
-
ツンとロマネスクを除く全員が呆気にとられている。
オサムさえも、口を開け放して弁護人席を凝視していた。
ロマネスクが腰を上げ、ミセリに手を伸ばす。
その手を取ったミセリが立ち上がって、ようやく、法廷の時が再び動き出した。
(;*゚ー゚)「……ぁ……」
動き出したが、やはり、頭はまだ追いついていないようだ。
( ФωФ)「この馬鹿が。記憶をなくしていたのであるか。本当に馬鹿である。馬鹿女」
ミセ;゚ー゚)リ「ひ──ひっどいな相変わらず! ……ロマだって馬鹿だ! なに捕まってんだよバーカ!」
(#ФωФ) カーッ
ミセ;゚ー゚)リ「あーもう言い返せなくなるとすぐ威嚇する!
ていうか何だよ、猫の方が可愛いのに、何だよその格好……おっさんじゃん……。
……もう、わけ分かんない……トソン、トソン……」
せっかく立ち上がったのに、ミセリはしゃがんでしまった。
膝に腕を乗せ、顔を伏せる。
か細い声でトソンを呼び続けるミセリ。
それを眺めていたしぃの頭が、ようやく現状に到達したようだった。
-
わっつはぷん
-
(;*゚ー゚)「おい」
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
(;*゚ー゚)「何が起こってる」
ξ゚⊿゚)ξ「ご覧の通り」
(;*゚ー゚)「ご覧になっているが分からん」
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさんの霊魂がここにいます。
──弱ってたのか何なのか知らないけど、記憶をなくして子供の姿で彷徨ってたみたい」
みたい、って。
簡単に言ってくれる。
皆を代表するように、ギコが呟いた。
(;,゚Д゚)「……そんなの有り?」
( ^ω^)(ええ本当に)
誰もが同意したに違いない。
内藤も賛同したかったのに、声が出なかった。
-
生きてるのに霊魂でさまよってたのか…
そりゃ目覚めないわ
-
川 ゚ 々゚)「オサム」
【+ 】ゞ゚)「んあ」
恋人に呼び掛けられ、はたとオサムが我に返った。
休憩時間が終わってから3分ほど経過している。
【+ 】ゞ゚)「……この女が弁護士になってからというもの、
本当に予想外のことばかり起こる」
そんな言葉と共に、オサムは木槌で開廷を知らせた。
ドクオは。
('A`)
表情をなくしている。
じとりと、湿った目でツンを睨んでいる。
ξ゚⊿゚)ξ「告発のための証拠は見付かりませんでしたが──
重要な証人は見付かりました」
【+ 】ゞ゚)「……そりゃあ、被害者だからな」
ツンは得意顔である。
別にツンの手柄では──あるか。
ミセリをここに呼んだのはツンだ。
-
ミセ; − )リ「うー……」
(;,゚Д゚)「あ──……っと、大丈夫? 急なことだし、まだ調子が……」
( ФωФ)「立て。ずっと傍聴していたのであろう。
するべきことくらい、分かっている筈である」
ミセ; ー )リ「……ロマ、相変わらず厳しいなあ……おっさんのくせに……」
( ФωФ)「噛み殺すぞ貴様。そもそも貴様こそ今年でもう37ではないか」
ミセ; ー )リ「なに言ってんのまだぎりぎり20代だよ……まだお姉さんよ」
( ФωФ)「もう8年経っている」
ミセ; ー )リ「……8年も寝てたんだなあ、私」
ロマネスクは饒舌になっていた。
今までと比べて、だが。
彼の手を借りずにミセリは立った。
気分は最悪だが体の調子はいい、と嘯く。
彼女の体は病院に置いてきているだろうに。
-
ミセリとロマのコンビいいな
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ミセリさん、いけそう?」
ミセ*゚ー゚)リ「ん。私の意識は8年前のまんまだ。
事件のこと、ほんとに昨日のことみたいに思い出せる」
それは、とても頼もしい宣言だった。
ただ、顔付きはしっかりしているのに──
瞳だけは、悲哀を湛えている。
散々聞かされてきた「殺された都村トソン」が自身の友だった事実に突然直面したのだ、
それだけでも随分ダメージがあるだろう。
【+ 】ゞ゚)「証言を頼めるだろうか」
ミセ*゚ー゚)リ「もちろん」
力強く頷いたものの、ミセリはしばし黙り込み、ロマネスクに振り返った。
「どう言えばいいの」。ミセリが訊ねる。
「知るか馬鹿」。ロマネスクは冷たく返した。
随分と親しそうだ。
首を左右交互に捻ったミセリは、息を吸い込むと、右手を持ち上げた。
-
ロマがいきいきしてんなw
-
本物のキューちゃんはどこに、、、
-
支援支援支援支援支援支援支援支援
-
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、単刀直入に」
人差し指を立てる。
華奢な指先は、ある一点へ向かった。
──ドクオへ。
ミセ*゚ー゚)リ「私に取り憑いたのは、あの人でした。ロマじゃない」
ツンが目を閉じ、息を吐く。
満足感も達成感も、そこに無い。
まだ、一区切りついただけなのだ。
-
うわぁ
-
(;*-ー-)
腕を組んだしぃが天井を見上げ、深く長い溜め息を吐き出した。
ギコもまた、頬に手を当て長嘆息。
('A`)「……あーあ」
ドクオの声は、色も熱もなかった。
-
ドクオ…ツンさんの普段着より真っ黒だったか
-
この期に及んでまだドクオを信じている私がいる
-
ドクオから目を離さぬまま、オサムはミセリに詳細を求めた。
昨日のことのように思い出せるという言葉は真実らしく、記憶を手繰るのに時間はとらなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「トソンに体を貸して、トソンと別れて……会社に戻ろうとしたときに
声を、かけられました」
#####
('A`)『──あんた、霊が見えるんだな』
#####
ミセ*゚ー゚)リ「トソンに会えた嬉しさで、少し、浮かれてたんだと思います。
ちょっとだけならいいよって、体を……」
( ФωФ)「馬鹿が」
ミセ*゚ー゚)リ「馬鹿だよ。……そこからはもう、記憶はないです」
意見はあるかとオサムが問う。
ミセリは少し戸惑ったが、ドクオへの呼び掛けだと気付き口を閉じた。
気怠そうに頭を掻きながら、ドクオはぞんざいに言う。
-
('A`)「……その姉ちゃんの証言が事実だって、誰が証明する」
ミセ;゚ー゚)リ「に、人間が相手なら嘘の臭いが分かるんでしょう?
私、病室に戻って──お、起きます、起きてみせます!
そしたら臭いで確認できますよね!」
('A`)「だよなあ、……そうなるよなあ……」
声が沈んでいく。
やがて観念したように、ドクオは俯いた。
鬱田さん──しぃが名を呼んだ瞬間、彼はぽつりと呟いた。
('A`)「──認める」
(;*゚−゚)「……え」
('A`)「……認める……」
(;*゚ー゚)「何を……」
('A`)「全部。一連の憑依事件も。三森ミセリを殺そうとしたのも。……殺霊も……」
──俺がやった。
.
-
ドクオ…
-
きんと、空気が冷え渡る。
長い、長い間、静寂に包まれた。
不用意に声を発すれば、全てが溶けてしまいそうだった。
誰に問われるでもなく、ドクオは静かに語り始める。
('A`)「……カーチャンが、詐欺に引っ掛かった。
生活が苦しくなって、家の中がめちゃくちゃになって、……俺は自殺した。
いわゆる霊感商法ってやつだったが、詐欺師は本当に霊能力者だった」
そしてまた沈黙。
誰も急かすことが出来なかった。
ドクオが瞳を揺らす。言葉を探している。
口を震わせながら開いた瞬間、涙が落ちた。
(#;A;)「……憎かったんだよ!! 霊能力者って奴が、みんな憎かったんだよ!!」
その叫びは、N県で聞いた慟哭よりも、さらに激しかった。
血反吐を吐くような、全身から絞り出すような憎悪と悲しみ。
それは初めの一言だけで、続く言葉はひどく弱々しい。
-
(;A;)「初めに殺した霊能力者たちだって、確かに力はあったが、
みんな法外な料金を請求したり裏で悪さやってたり、ろくでもねえ奴らばっかりだった。
許せなかったんだ……」
嗚咽が後を引く。
緊張感を飲み下し、ギコが声を発した。
(;,゚Д゚)「でも途中からは、ただ霊感を持つだけの一般人まで……」
(;A;)「悪い奴ら殺しても、恨みが消えなかったんだよ。
……憎しみがどんどん増すばっかりで……もう、『そういう』奴ってだけで憎くて……」
(;*゚−゚)「……」
しぃが口を開いた。
しかし小さな小さな声が喉の奥で詰まっただけに留まり、彼女は顔を歪めた。
こつん。木槌の音。
-
ドクオ……?
-
なんかおかしい
-
まだ波乱があるな…
-
AAに騙された
キュートのAAだから素直シュールの妹の素直キュートってわけじゃないんだな
-
【+ 】ゞ゚)「……お前のやったことが許されることでないのは分かっているな。
動機面に些か同情出来る点は確かだが」
オサムの声は決して優しくなかったが、突き放しもしなかった。
ドクオが何度も首を縦に振る。
【+ 】ゞ゚)「今ここで処罰を決めることは出来ない。
後日、じっくりと精査する必要があるだろう」
(;A;)「すみませんでした、本当に、──本当に、すみませんでした……」
ぼたぼたと涙が落ちて消えていく。
しぃは尚も何か言いたげだったが、ギコによって押し留められた。
泣き声が響く。
涙が落ちる。
オサムが木槌を振り上げ──
ξ゚⊿゚)ξ「──その辺にしておきましょう」
声と涙とオサムの手が、止まった。
-
ん?
-
ツンさん!
-
ξ゚⊿゚)ξ「ここまで来て、まだ嘘をつくの?」
(;A;)「……」
ツンの声は刺々しい。
彼女はドクオを睨みつけて、足元から鞄を持ち上げた。
机に置くなり、どすんと重たい音をたてる。
口を休めないままに、ツンは鞄を開くと中から紙の束を次々に出していった。
ξ゚⊿゚)ξ「彼のお母さんを含む、大勢の人々を食い物にしてきた詐欺グループ。
表のリーダーとして主に活動していたのは、高崎美和という女性でした」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさんのお母さんは、まめに日記を書く人で──
詐欺に遭っている間も、日々のことを細かく記録していました」
それらは、ニュッから送られたコピーの数々だった。
いくつも付箋が貼られた束の中から、黄色い付箋のページを選ぶ。
その書面をしぃ達に向けた。
-
ここにきてニュッの資料が
-
ここでニュッ君の資料の秘密が!
-
ξ゚⊿゚)ξ「20年前。平成5年に使われていた、高崎美和の手帳。予定がびっしり書き込まれています。
たとえばこれ、4月6日。『鬱田さん 訪問』」
ξ゚⊿゚)ξ「で、同日、お母様の日記にはこう書かれています。
『美和様が家に来てくださった。折角いらしてくれたのに、ドクオが追い出してしまった。
後でお詫びしなければ』──」
(;,゚Д゚)「予定通り、ドクオさんの家に行ったってことでしょ?
それ自体はおかしくないじゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、これはね。問題は他の日……」
ξ゚⊿゚)ξ「予定を入れておいても、何らかの理由で予定が滞れば、二重線で消しています。
たとえば1月8日は『鬱田さん お札』の部分が消されていて、
日記の方には『美和様がいらっしゃる予定が悪天候で叶わず』との表記がありました」
続いて紫色の付箋が貼られたページで手を止めた。
指でなぞり、読み上げる。
-
やっぱり憎いって理由だけじゃないよな…
それにしてもこんな遅くまで長時間投下乙です
-
ξ゚⊿゚)ξ「8月12日。『鬱田さん 食事』」
次に、日記の方。
ξ゚⊿゚)ξ「同じく8月12日……。
『今日は特に何もせず一日家で過ごす。ドクオの帰りが遅く、久しぶりに一人で晩ご飯』──」
(;*゚ー゚)「……1人で」
しぃが眉を顰めた。
──食い違っている。
【+ 】ゞ゚)「高崎美和と食事するどころか、家に一人きりで過ごしていた……」
ξ゚⊿゚)ξ「訂正のための二本線もありません。
──こういった食い違いがちょくちょく見られます」
鬱田という苗字はそうあるものではない。
だが、内藤達は、その苗字を持つ者を少なくとも2人は知っている。
1人は日記の持ち主、鬱田カー。
-
まだ何かあるのか
寝れねえぜ!
-
ドキドキする
-
あぁ、そういう・・・
-
もう1人は──
ξ゚⊿゚)ξ「この『鬱田さん』というのは、所々、ドクオさんを指していたのでしょう」
先程からずっと黙りこくる、鬱田ドクオ。
既に涙は乾いている。
コピーを机に戻して、ツンは訊ねた。
ξ゚⊿゚)ξ「お母様を騙す憎い憎い霊能力者と、どんな話をしながらお食事したの?」
('A`)「……」
今度の沈黙は、先程とは打って変わって混迷していた。
目まぐるしく流転する空気。
皆、それにしがみつくのでやっとだ。
そしてまた、渦に飛び込む者がいた。
(*゚−゚)「……一つ、控えていた事実があります」
しぃ。
-
焦らすなあ
-
読み終わらないと寝れない…!
-
(*゚−゚)「恐らく重要なものであろうとは理解していましたが、
これを出すタイミングを見誤れば、下手をすると誤魔化されて終わってしまいかねないだろうとも危惧していました。
──今なら出せる」
父の裁判記録で何か気付きましたか、としぃはツンに訊いた。
内藤には分からない話だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……いえ、憶測の範囲を出なかった。だからドクオさんに直接訊こうと思ってたんだけど」
「その手間を省いてさしあげます」。
偉そうに言い切るしぃは、すっかり待ち侘びた様子だった。
(*゚ー゚)「鬱田さん、あなたは20年前にも、この町に出張のために来ていましたよね」
('A`)「……ああ」
視線を彷徨わせたドクオは、間をあけてから首肯した。
母の日記に書かれているかもしれないのだ、嘘をついてもバレると判断したのだろう。
(*゚ー゚)「実際の目的は出張ではない。
──僕の父の捜査に協力しに来たんだ」
.
-
はやくしろおおおおおおおお
-
伏線回収が神がかってる
-
#####
ミ,,゚Д゚彡『でぃ様は、つーの悪口をよく言っていたけど、俺はあいつが嫌いじゃなかった。
非力なのを自覚し、それを隠すことも言い訳にすることもしなかったから。
人間嫌いの妖魔は多いけど、あの男に協力するのは厭わないという奴も多かったよ』
(*゚ー゚)『お前も父さんに協力していたんだな』
ミ,,゚Д゚彡『うん……被害者、容疑者の身辺調査が主だったかな。
あの頃は警察に人材が不足していて、捜査が不十分だったから』
(*゚ー゚)『それで、20年前っていうのは』
ミ,,゚Д゚彡『裁判で薬の知識が必要になった。
薬を扱う会社に打診していて──鬱田ドクオと知り合ったみたいだった』
(*゚ー゚)『……彼は他県の人間だ』
ミ,,゚Д゚彡『打診していた会社の親会社が鬱田ドクオの勤め先だったから』
(;,゚Д゚)『そっか、あのひと製薬会社の人なんだっけ』
-
ミ,,゚Д゚彡『それで鬱田ドクオが、前から幽霊裁判に興味があった、ぜひ協力させてくれと──』
(;*゚ー゚)『──彼が言ったのか?』
ミ,,゚Д゚彡『そうらしい、ということしか分からないから。
この町までわざわざ来てくれたもんで、ずいぶん熱心だなとつーが驚いてたよ』
ミ,,゚Д゚彡『それで、自分のことはあまり他言しないでほしいと鬱田ドクオから言われていたらしいから。
俺も詳しくは聞かせてもらえなかったし、書類にも残ってないかもしれない』
#####
-
もう支援としか言えない
-
(*゚ー゚)「あなたは生前から幽霊裁判を知っていた。
N県で行われていた詐欺がおばけ法に引っ掛かることも知っていた筈だ」
使役霊から聞いたという話の最後に、しぃはそう付け足した。
もしも高崎美和を憎んでいたのなら──黙っている以外の対処も出来ただろう。
まして、彼が自殺するより前におばけ法はN県で施行されたのだ。
高崎美和が捕まることは予測できた筈。
内藤はツンが俯いているのに気付き、そっと下から覗いた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
見開かれた目。
何事か、彼女はぽかんとしている。
唇が、動いた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……私、ドクオさんに会ってる……」
【+ 】ゞ゚)「──何?」
ξ;゚⊿゚)ξ「20年前に──この町で、ドクオさんに会ってる」
-
#####
(*゚∀゚)『悪いおばけがいたら、おじさんに教えてな』
──泣きじゃくるツンに、つーは言った。
20年前、夏の日。自然公園でのこと。
ツンは答えられずにひたすら泣いた。
すると、つーと一緒にいたスーツの男が訊ねてきた。
『おばけが嫌いかい?』
ツンはしばらく考え、答える。
ξ;⊿;)ξ『……怖い』
(*゚∀゚)『おばけだって、みんながみんな意地悪なわけじゃないぞ。
優しいのもたくさんいるんだから。
……でも、意地悪なおばけはやっぱり怖いよなあ』
『おばけ法を知れば、おばけなんか怖くなくなるさ』
男は言った。
にやにやしていた。笑っていた。
最早ぼんやりとしか思い出せない面影に、ある男を重ねる。
微細の狂いもなく、溶け込んだ。
-
あの時の男はドクオだったのか!てっきり助手かなんかかと…
-
いつもながら話の組み立て凄いな、読み始めはただの裁判物の感じだったのに
-
『それで検事にでもなれば、おばけ達を苛めてやれるぞ』
(;*゚∀゚)『苛めるのが仕事なわけじゃありませんって。人聞き悪いなあ』
あの顔は。
あの声は。
('A`)『この町で弁護士になったって、つーさんには勝てっこないでしょう』
#####
-
えええええええぇえええ
-
ξ;゚⊿゚)ξ
ツンは自分自身が語った記憶に、絶句していた。
くるうに視線が集まる。
監視官は首を振った。
──ツンは嘘をついていない。
【+ 】ゞ゚)「……どうやら検事と弁護人の話は真実のようだが……」
オサムが木槌を鳴らす。
二度目で俯くドクオの肩が揺れた。
それきり身じろぎもしなくなって──
突如、弾かれたようにドクオが顔を上げた。
('∀`)「はははははは!!」
──笑った。
げらげらと、腹を抱えてドクオは笑ったのだ。
-
('∀`)「ああ遅ぇ遅ぇ! ここまで来んのにどんだけかかってんだよ!
もっと早い内にケリつくと思ってたのによお、てめえら頭緩すぎだろ!」
ひいひいと呼吸を引きずり、笑い続けるドクオ。
声が──心底楽しそうな声が、内藤の頭を揺さぶる。
ああ。先程の目だ。
オサムは制止を忘れていた。
ひとしきり笑ったドクオは、しゃっくりのように声を跳ね上げながら言う。
('∀`)「こんなもんかあ、だよなあ、みんなそうだもんなあ……
あー馬ッ鹿みてえ……」
('∀`)「はあ……。ずっと言いたかったんだ。
──大きくなったなあ、ツンちゃん」
そうして、我慢しきれぬように、吹き出した。
-
支援!
-
本性キター?
-
驚異の伏線回収ラッシュ
-
ドクオの目的はなんだ
-
気の抜けていたしぃが、はっと口を開ける。
また声が詰まり、しかし今度は、ちゃんと言葉となって飛び出した。
(;*゚−゚)「──13年前に!」
('∀`)「あん?」
(;*゚−゚)「13年前に……僕の父が死んだ! 裁判に行く途中──交通事故で!」
しぃの体が震えている。
それ以上言葉が続かなくても、問い掛けなのは伝わった。
ドクオもそうだったのだろう、ああ、と唸った。
('A`)「あれな。裁判の当日に、事件の決定的な瞬間目撃したんだっつったら喜んで『話聞かせてくれ』って。
目撃者は他にもいたんだから俺になんか構わなきゃ良かったのになあ。
そんで車乗せてもらってー、で取り憑いて事故って。
いや大変だった。殺すまでは楽だったんだが、後始末がよ」
('∀`)「あれ見た? ファイル。血すごかったろ!
俺に繋がるようなこと書いてねえか不安だったからさあ、
全ページ満遍なく汚すの大変だった。警察とか来る前に終わらせなきゃいけねえもんよ」
まるで、功労を自慢するような言い草だ。
かっと顔を赤くし、しぃが目をむいた。
すぐさまギコに抑えられ、彼女は何度も叫ぶように口を大きく開けたが、
結局、泣きそうに顔を歪めて、机に拳を叩きつけた。
-
ゾクゾクした
-
クズ過ぎて笑う
-
どっくん……
-
えええええええ…
うわあ…
-
伏線回収が次から次へとー! 続きが気になって寝れない!!
-
ドックン屑すぎるしえ
-
【+ 】ゞ゚)「憑依の──本当の動機は何だったんだ」
('A`)「あ? 動機なあ……ご大層な理由はねえかな。好き勝手やりたかっただけだよ」
ポケットに手を突っ込み、ふてぶてしくドクオは答えた。
わざと挑発するかのようだった。
('A`)「生きたまま何か為し遂げるより、死んでから何かやらかした方が楽しそうだと思ってたんだよ、ずっと。
まあ俺ァ霊感なんかなかったから、死後の世界ってもんがあるんだかすら分かんなくてよ。
ただ無意味に考えるだけだった」
('A`)「そしたら本物が来た。高崎美和だ。
初めは手品か何かかと思ったが、まあ手品で人をぽんぽん殺せやしないわな」
ドクオは、高崎美和に興味を抱いた。
彼女に、ではなく──彼女の持つ知識に、だ。
-
しいの父親までかよ
こりゃどんな判決か楽しみだ
-
やばいとしか言いようがない
-
清々しいクズっぷり
-
('A`)「訴えたりしない代わりに色々教えてくれって近付いた」
(;,゚Д゚)「お母さんを騙してた詐欺師よ」
('A`)「うん、まあ……騙されんのはカーチャンの責任だろう」
ぽんと返された答えに、内藤の理解が遅れた。
──8月に見せた態度は。あの涙は。
母のために怒り、泣いた彼の姿は。
どこに。
ξ゚⊿゚)ξ「あなただって必死に止めてたんじゃなかったの?
何度も喧嘩したんでしょう?」
('A`)「近所の目があるし、そもそも俺の金まで使われるのが嫌だったからな」
内藤は一歩、後ろへ退いた。
自分とは比べ物にならない豹変ぶりが、恐ろしかった。
.
-
嘘つきばっかりだなこの作品
当然っちゃ当然だが
-
#####
('A`)『霊が見えるってなァどんなもんなんだ』
料亭など、初めて入った。元より外食自体が縁遠い。
不馴れな感覚に落ち着かないながらも、物珍しさが少し楽しかった。
大して舌に合わない天ぷらを口に運びながら、ドクオは正面の女に訊ねる。
<(' _'<人ノ『どんな、と言われましても……』
高崎美和は黙り込んだ。
ようやくまとめたらしい答えを口にしたが、いまいち分からない。
('A`)『あー、もういい。じゃあ霊はどんな感じで生活してんだ?』
<(' _'<人ノ『私は幽霊になったことがありませんから、ぴんと来ないです。
ただ……生きていた頃より出来ることが増えたり減ったりしていて、
便利なところも不便なところもあるように思います』
('A`)『増えたり減ったり、なあ……』
霊は存在している。
たしかに、この世で日々を送っている。
-
('A`)『ならやっぱり、生きてる奴と幽霊ってのは、ただ単に別々の生き物ってだけだよなあ』
<(' _'<人ノ『はあ、生き物……。亡くなっているのに?』
('A`)『脱皮したようなもんじゃねえの。体から魂が抜けて』
<(' _'<人ノ『たしかにそう表現する方もいらっしゃいますが』
('A`)『な。つまり死んでもまた生きられるってことだろ』
<(' _'<人ノ『……死にたいのだか、生きたいのだか、よく分からない物言いですね』
首を捻る高崎は興味深そうな顔色をしていたが、実際のところドクオに興味などないのだろう。
そういう女だ。外面がいいから人に好かれるし、
だからこそ様々な人間と関わりを持っていて、大抵の相手にはもう飽きている。
('A`)『ろくな人生じゃねえや。
母親からして、あんたみてえな胡散臭ェのに引っ掛かりやがる』
<(' _'<人ノ『ですね』
('A`)『仕事も性に合っちゃいねえし。大して稼げねえ。いい女も寄ってこねえ。欲しい物も碌にない。
かといって職変えんのも面倒くせえし何かを努力すんのも怠い』
スーツの上から、腹、胸、肩を叩いていく。
体が最も煩わしい。腹が減る。維持するために金がかかる。
-
突き抜けるクズさ
デミタスは可愛いもんだったな
-
支援
-
('A`)『今のままの俺じゃ、満足に出来ることも少ねえんだろう。
ああ待った、努力すりゃ何でも出来るみてえな根性論は今いらねえからな。
そもそも俺だってただ楽がしたいわけじゃねえんだから勘違いすんなよ』
<(' _'<人ノ『はあ……』
('A`)『要は自分の肌に合ったやり方さえ見付けられれば、いくらでも頑張れるし上手く行くんじゃねえかって話。
で、人間として生きてる限りは、「肌に合ったやり方」も見付けられそうにねえなと』
<(' _'<人ノ『鬱田さんにとっては、幽霊の方が可能性が広がると?』
('A`)『いやー、分っかんね。でもまあ試してみたいじゃん。
どうせ今の状態にゃ愛想尽かしてるし、つまんねえし』
<(' _'<人ノ『どんな風に生きたいんです?』
海老の尻尾を噛み潰し、漠然とした考えをまとめる。
考えれば考えるほど、無価値で無意味で底が浅い。
我ながら、あまりにもしょうもない願いだ。
('A`)『──誰も逆らえねえぐらいの力つけて、そんで、ムチャやってみてえな』
本当に、その程度の。
#####
-
> ──8月に見せた態度は。あの涙は。
母のために怒り、泣いた彼の姿は。
どこに。
今すごくこの気持ちだわ
-
>>920
まったくもって同意
-
('A`)「んで18年前な。おばけ法が施行されて、詐欺グループがそろそろヤベェかもってことになった。
訊きてえことは大体聞き出して用済みだったし、
この機に俺もこの世からオサラバ──って感じで」
( ^ω^)「……会社のことやお母さんのことがあって自殺したんじゃ」
('A`)「っていう体な。自殺する理由は欲しかった。
理由なく自殺したら、ちょっと目立つからな」
「無事に」幽霊となったドクオは、さっそく計画を立てた。
憑依する相手。時。場所。
まずは隣県のG県で、拝み屋に狙いをつける。
('A`)「霊的に成長すんなら、霊能力者の魂を喰えば手っ取り早く力が付くと教えてもらった。
単純なもんだわ」
-
('A`)「方法に関しては──まあ、どうせ先週の審理でもう触れたろ。
難しいこっちゃねえし、あんたらの考えた通りだろうよ。
意外とすんなり行くもんだよな」
憑依し、自殺や事故で死亡させ、体から離れた魂を喰らう。
あるいは憑依したまま長時間を過ごし、じわじわ吸収する──
('A`)「8年前は失敗しちまったが」
ミセ;゚ー゚)リ「っ」
ずっとロマネスクに寄り添い気配を殺していたミセリが、肩を跳ねさせる。
ロマネスクは彼女の前に出て、ドクオからミセリを隠した。
ドクオは嘲笑のみを返した。
-
そんな理由からかよ
-
力…演技力ついたんじゃね
-
ξ゚⊿゚)ξ「……どうして8年前だけは失敗したの」
('A`)「色んな死因を試してきたが、人に殺されるってのはやったことなかったから興味があった。
あちこち喧嘩売って回ったが、まあ上手く行かねえな。アホそうなの選んで絡んだんだがなあ」
(#ФωФ)「……貴様!!」
('A`)「怒んなよ恐えなあ。
──そうこうしてる内に本人の気配が無くなったからよ、
死ぬ前に全部吸収し終えちまったかと思って離れたんだが」
単に、削られた魂が気配を感じ取れぬほどに弱っていただけだった。
それに気付かずドクオはミセリの体を置いて、ヴィップ町を離れた。
-
そういう動機だったのか
クズだな
-
そして2年前、生前も含めると四度目のヴィップ町。
そこでミセリが生きていることを知ったが、それはどうでも良かった。
何年も放ったらかされているようだったから、危険視はしていなかったのだ。
それよりもドクオは、ツンに興味があった。
昔会った子供が立派に成長し、おばけ法の弁護士になっていたからだ。
前にこの町で検事を喰ったのだから、次は弁護士を喰おう──と。
深い意味はなかった。
しかしなかなか隙がない。
一年が経ち、面倒になった彼は、ツンでなくていいから誰か1人を喰ったら町を出ようと決めた。
色々探したが、これまでと違って手こずる。
そして──彼はようやく、内藤に目をつけた。
('A`)「だが、そうやって長居してる内に去年の都村の裁判だ。
また捜査が活発になりやがって。
内藤少年を喰う以外にも、三森ミセリを仕留めなきゃいけなくなっちまった」
そこからは予想外の連続だった。
ミセリの殺害を邪魔され、病室に近付けなくなり、
内藤に憑依する最大のチャンスだと思った8月には別の輩が企てた事件に巻き込まれ──
-
じゃあデミタスがあの計画立てなかったら内藤は今頃…
不幸中の幸いか、いやでもなんというゲスばかり
-
('A`)「……笑った笑った。
すれすれで、俺に都合のいいことになっていきやがる」
何故だか、知らないおばけが真犯人になっていた。
何故だか、どんどん周りから信頼されていった。
何故だか、トソンから礼を言われた。
楽しくて堪らなくなった。
どこまで騙せるか、弁護士や警察に関わりながらどこまで出来るか、試したくなった。
( ^ω^)「……」
('A`)「なあ少年。演技が得意なのが、自分だけだと思ってたか?」
声も表情も、小馬鹿にするのを隠そうともしていない。
手のひらが痛み、知らず拳を握りしめていたのに気付いた。
-
よし、このドクオ殺そう
-
('A`)「警戒してたつもりだろうが、ちょろいもんだよ少年。
しおらしくしてみせりゃあ簡単に憑依させてさあ」
( ^ω^)「……お母さんに、会うって」
('A`)「嘘に決まってんだろう。
……あんときゃ、上手く行ったと思ったんだがなあ……邪魔が入っちまった」
ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君の学校のことは……」
('A`)「あー……あんたが疑った通りだ。
少年のクラスメートんとこ回ってみりゃ、何か面白いことになってたから
階段から突き落として……」
('A`)「そしたら簡単に憑依の機会が来やがった。本当にちょろいよ。
……あーあ、少年くらい強い霊感持ちの魂喰えれば、
もうこの町にも未練はねえし、出ていこうと思ってたんだがなあ」
──まあ、今日のこれも楽しかった。
ドクオはそう言った。
やはり楽しんでいたのだ。
結果がどうなろうが、良かったのだ。
-
せめて憑依罪の時は素でいてほしかった…
-
>>931
もう死んでるわw
気持ちはわかるが
-
('A`)「実に、ちょろかった。あまりにも、ちょろすぎた」
-
>>934
ちょっとそこどいて死んでも殺すから!!
-
ξ゚⊿゚)ξ「トソンさんと猫田家の使役霊もあなたが……」
('A`)「そうだってば。都村と猫は、ほんとタイミング悪いわ……同時に来やがって。
いや、それにしても何で猫が捕まった時点で何も言わなかったのか不思議だったな。
もうどうでもいいけどよ」
ミセ;゚−゚)リ「……っトソン……」
【+ 】ゞ゚)「──本当に罪を認めるんだな」
('A`)「訊く必要あるか?」
【+ 】ゞ゚)「……刑事」
(,,゚Д゚)「ええ……」
ギコが拘束札を持ち、ドクオに歩み寄っていく。
ドクオは大人しくそれを待っていた。
( ^ω^)「……?」
内藤は、首を傾げた。
-
ドクオは楽しんでいた。それは確かだ。
本性を現したときの台詞から考えると、いずれ真相を暴かれるのを察していた。
──その後は、どうするつもりだったのだろう。
真相が明らかになれば当然ドクオは捕まる。裁かれる。
しかし、いざ法廷に呼び出されるまでは必死に逃げ、嘘をつき、嫌疑を避けようとしていた男が
そんなにあっさりと諦めるだろうか。
嫌な予感がする。
ギコが、ドクオの眼前に立つ。
そして拘束札をドクオに近付け──
(;,゚Д゚)「っあ゙、っ!?」
ギコの体が、吹っ飛んだ。
-
なんか貞子の時思い出すわ
-
んん!?
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ギコ!」
(;, Д )「ぐうっ!!」
(;*゚ー゚)「う、──わっ!」
検察席の机を巻き込んで、ギコはしぃに衝突した。
書類が舞う。2人が転がる。ギコと机の両方を身に受けたしぃは呻き、幾度も咳き込んだ。
ギコが起き上がろうと床に手をつき、そのままの体勢で固まった。
ξ;゚⊿゚)ξ「ギコ! 検──」
(;^ω^)「っ」
ツンが、はくはくと口を動かす。
内藤も同様に。
──声が出ない。
体が動かない。
全身を鋼鉄の糸で絡み取られ、足を杭で打ちつけられ、喉を巨大な手で潰されているかのように。
それら圧迫感は、人間以外にも作用しているらしかった。
-
すーぱーどっくんたいむ
-
>>935
たしかにこれはアルファにすら劣らない作品だと思うけどさあ!そのセリフは使ったらいかんだろwwwww
-
【+ 】ゞ゚)
川;゚ 々゚)「……っ、……っ!」
常に一定の位置に浮かんでいたオサムとくるうが、床に落ちた。
片膝を立てて固まるオサムに、尻餅をついたような体勢のくるうは助けを求めるように視線を送っている。
何か言いたげな口は、引き絞るような唸りを時おり漏らすのが精々だった。
傍聴席も、人間おばけ関係なく、ついには僅かな身動きも呻きさえも出来なくなっていた。
笑い声が、工場の中に反響する。
('∀`)「ああ──最高だクソッタレ!! やっぱ俺の人生死んでからが本番だ!!」
照明がちかちかと激しく点滅し、目眩がした。
外に放り出されたかのように、冷気が肌を突き刺していく。
-
ドックンどんだけ霊能力者喰ったんだよ、強すぎだろw
-
('∀`)「てめえら今まで俺に生かさせてもらってたんだって実感しろ!
傍聴席のおばけども全員喰って、生きてる奴らぶち殺して喰って、
悠然と俺がこの場を去るのを想像してみろよ! 10秒後の現実だ!」
('∀`)「神様が何だよ! 俺に跪いてるあいつが何だってんだ!!」
(;ФωФ)「……!!」
ミセ; − )リ「っ、……っ!」
息が出来ない。
視界が霞む。
全身がぎりぎりと痛む。
倒れたいのに依然として足は縫い留められていて、
急速に増していく疲労感が思考を奪う。
ドクオの笑い声が耳から潜り込み、脳内を掻き乱していく。
-
零感の教授きてえええええええええ
あの人には無効なはず!
-
てかなんで内藤はドクオに取り憑かれた時に無事だったんだ?
-
ギ子さんはか弱い女性だからそら吹っ飛ぶよな
と思ってたらそんな雰囲気じゃなくなってた
-
どっくんこんな強キャラだったなんてえええ
-
聖徒会集合!!!はよ!!!
-
>>949
女じゃない
-
('∀`)「すっげえよ! ここにいる奴ら全員喰ったら俺どうなっちまうんだ!
なあ──なあ少年!! 三度目の正直だ!! 絶対にお前を最初に──」
大股で内藤へ向かってくるドクオの足が、止まった。
──こつ。こつ。
硬い音が響いている。
('A`)「……何してんだよ」
【+ 】ゞ゚)
こつん。
木槌を打つオサムの手が止まった。
ドクオと目が合うなり、彼はゆっくり立ち上がる。
ぱたぱたと着物の裾を叩く動作は、ひどく軽い。
('A`)「……おい」
【+ 】ゞ゚)「俺も訊きたいんだが……くるうに何をしてくれているんだ」
川;゚ 々゚)「っ……ぉ、……」
ドクオが後退る。
オサムが一歩出る。
ドクオは身を翻し、駆け出した。
-
オサム様、怒りどころそことちゃいますで
-
相変わらずのオサム様ですね
-
>>952
まごうことなき女性じゃないですか
-
ごおん、と響いたのが何の音なのか、初め、内藤には分からなかった。
音と共に、ドクオがくずおれる。
ξ;゚⊿゚)ξ「──っはあっ……!」
ツンが勢いよく息を吸い込み、机に手をついた。
内藤も呼吸が楽になり、気が抜けた瞬間に倒れ込みそうになって、机で身を支えた。
ごおん、ごおん。
巨大な鐘のような音は、オサムの手元から轟いている。
木槌の音。聞くだけで背筋が寒くなるような。
検察席に散らばる紙の中から拘束札を拾い上げ、オサムはドクオに歩み寄る。
【+ 】ゞ゚)「10秒後が何だって?」
(; A )「ぎ──……ぃいいっ!!」
【+ 】ゞ゚)「10秒ほどしか粋がれなかった人間霊ごときが、何を言っている」
音が鳴る度、ドクオは頭を掻き毟って見悶えた。
-
>>956
女じゃない
-
>>958
女の子でしょ
-
>>959
女じゃない
-
オサム様かっけえええええ
-
流石に神様相手は無理か
これで裁判長があかんかった暁にはもうどうしようも…
@@@
@#_、_@
あっ
-
流石神様
-
まだでぃさんがいる
-
【+ 】ゞ゚)「数十人喰ったから何だと言うんだ。
数百人喰ったから何だと言うんだ」
(; A )「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!」
【+ 】ゞ゚)「それで屈するようでは、神として、裁判官として、立ち行かない」
呪詛を吐き出すような苦痛の叫びは、オサムが拘束札を叩きつけた途端に弱まり──
(; ∀ )「……あ゙あっ、くそ、ほんとに……」
──面白かった。
小さな囁きを残して、ドクオごと消えた。
-
えええええええいきなり消滅しちゃっただと
-
あまりに呆気ない終わりだった。
わんわんと反響する悲鳴が、うすら寒く内藤の頭を揺らす。
【+ 】ゞ゚)「……話は後で改めて聞くとしようか」
(;,゚Д゚)「オサムちゃん……」
【+ 】ゞ゚)「検事は大丈夫か」
(;,゚Д゚)「あっ……しぃ!」
(;*゚ー゚)「平気です……」
拘束札をしまい、オサムは定位置に戻る。
くるうを支えると、彼は左手にくるうを抱え、右手で木槌を振った。
こん、と、いつもの軽い音。
ギコが机を戻し書類を拾い上げる間に、しぃも回復したようだった。
腹を摩りながら立ち上がる。
顔に痣が出来ていた。
誰からともなく、溜め息が落ちた。
-
拘束しただけじゃね
-
>>958
女だよ!!
>>959
そうだな
>>960
ちゃんとみろよ
-
ちょwwwwwオサム様wwwww
-
ついにき
-
静謐が法廷を満たす。
皆が回復し、混乱を落ち着けた頃、オサムはまた木槌を振った。
【+ 】ゞ゚)「真犯人は捕まったわけだが」
咳き込んだしぃが、それに続く。
痣に赤みが増し、痛々しい。
(*゚ー゚)「被告人、──ロマネスクに訊くべきことがあります」
【+ 】ゞ゚)「そうだな、同意見だ」
ツンがロマネスクに振り返る。
ロマネスクは応えようとしなかったが、ミセリに腕を引かれて一歩前へ出た。
( ФωФ)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「何を話せばいいか、分かってるでしょ」
(ФωФ )
ξ゚⊿゚)ξ「おい」
いい加減にしろよとツンがロマネスクの顔面を引っ掴む。
ロマネスクが牙を剥いた瞬間、ミセリが間に割って入った。
-
ミセ;゚ー゚)リ「あの、まず私から話させてください」
ξ゚⊿゚)ξ「……まあ気になることはあるし」
深呼吸を何度か。
ミセリは、ロマネスクの肩を軽く叩いた。
ミセ*゚ー゚)リ「……私、お盆の時期には毎年G県の祖母の家に行ってました。
お墓は別のお寺さんにあったからラウン寺には行ったことないんですけど……
よく、ロマが近所で日向ぼっこしてたので──知り合いでした」
とても懐いているとは言えない素っ気なさだったが、かといって、無視もしないでくれたそうだ。
ある年、執拗に構っていたら、怒鳴られた。
驚きはしたものの、可愛がっているロマネスクと話せるのが嬉しかったという。
ミセ*゚ー゚)リ「それで7年前……じゃないか、もう15年前だ。
15年前にトソンが死んで、嫌なことが色々あって──私、ちょっと不安定になって」
-
ミセ*゚ー゚)リ「G県に行ったとき、ロマに泣きついたら……
ロマは私についてきて、一緒にヴィップ町に来てくれました。
たぶん心配してくれたんです」
(#ФωФ)「していない」
(;*゚ー゚)「被告人はこの町に住んでいたんですか?」
住んでいたのはたしかだが、
ロマネスクは2年居たか居ないか、といった程度だそうだ。
ミセ*゚ー゚)リ「ロマが傍にいてくれてからは、結構調子良かったんですけど……
大学卒業してから入った会社が嫌なひと多くて、また色々溜まっていっちゃって」
ミセ*゚ー゚)リ「ある日、ぷっつり切れちゃったんです。
私、ロマに『私のこと殺して』ってお願いしました。
今にして思えば、ほんと、頭おかしいんですけど」
-
#####
この女は本当に馬鹿だ。
∧ ∧
( ФωФ)『死にたいなら勝手に死ね』
ミセ*;−;)リ『ロマがいい、やわらかくてあったかいロマに殺されたいの、
1人でこっそり死んでくなんてやだ、やだ、やだ……』
∧ ∧
( ФωФ)『貴様は本当に馬鹿であるな』
ミセ*;−;)リ『馬鹿でいいよ。お願いロマ、今じゃなくて……
私が普通に生活してるときに、いきなり殺して』
ミセ*;−;)リ『何も分からない内に死ぬのがいい。お願い。お願いロマ……約束して』
∧ ∧
( ФωФ)『……』
ミセリの右手の小指に、2本ある尻尾の内1本を絡ませた。
人間の子供が約束をする際、小指と小指を合わせるのをよく見かけていたので覚えていた。
ミセリも意図が分かったのか、ほんの少し笑って、子供達が歌っていたのと同じ歌を唱える。
とても恐ろしい歌だと思う。
-
ミセ*;−;)リ『約束だよ』
歌に従うならば、ミセリを殺せなかった場合、針を千本飲まされてしまうらしい。
死ぬだろう、それは。
人間というやつは臆病なくせに思い切りが良い。
∧ ∧
( ФωФ)(針を千本用意するのも大変であろうに……)
ミセ*;−;)リ『……あ、もう一個、約束』
∧ ∧
( ФωФ)そ
場合によっては二千本飲まされかねない。
確実に死ぬ。
内心動揺しながらロマネスクが再び尻尾を差し出すと、ミセリは首を振った。
この約束は「針千本」しないらしい。
涙を拭って、彼女は弱々しく笑った。
ミセ*゚ー゚)リ『もう本当、こんなの……みっともなくて恥ずかしいから』
-
ミセ*゚ー゚)リ『……誰にも言わないでね』
#####
-
ロマネスク…
-
トソンの時のあれか…
-
内藤とトソンと同じことを……
-
ロマネスクとの「約束」について語り終える頃には、ミセリの声は震えていた。
頭突きをするように、ロマネスクの胸に額をぶつける。
ミセ*;ー;)リ「ごめんね、ごめんねロマ……ありがとう、黙っててくれたんだね。
だから何も言わなかったんだね」
( ФωФ)「……」
ミセ*;ー;)リ「で、でも、ロマだって馬鹿だよ、こういうときは言っていいんだよ。……言わなきゃいけないんだよ」
ロマネスクが顔を傾ける。
少し、困ったような表情。
トソンの姿が内藤の脳裏に浮かんで、溶けた。
( ^ω^)「憑依事件のことは、自分が犯人じゃないって言ったところで
約束を破ることにはならなかったんじゃありませんかお」
( ФωФ)「……一つ話せば、どこからミセリに繋がるか、分からなかったのである」
トソンよりも不器用だ。
ツンが溜め息をついたが、口の端がほんの少し、上がっていた。
-
トソンと一緒やんロマネスク
あーもう
ああああああああ…
-
ミセ*;ー;)リ「もういいよロマ。話していいよ。……ちゃんと、話して」
ロマネスクはそれでもすぐには口を開かなかった。
ミセリを見つめ、彼女の涙がなかなか収まらないことに呆れて、それからようやく話し始める。
( ФωФ)「……臭いが……」
【+ 】ゞ゚)「におい?」
( ФωФ)「霊的な、と言えばいいのか……
とにかく、普通ではないモノの『悪意』の臭いが分かる」
(,,゚Д゚)「悪意って……」
( ФωФ)「霊の呪詛や殺意や害意が、臭いとなって我輩の鼻をつくのである」
つまりは──「祟り」とか、そういうもの。
寺にいた頃は、よく、そんな臭いを纏った人間と会ったそうだ。
くるうが鼻を擦る。
嗅覚で特殊なものを察するというのは、彼女と似ているかもしれない。
-
( ФωФ)「15年前のミセリは、その臭いに塗れていた。
暗い気持ちがそういったものを寄せつけ──
ますます悪いことを引き起こし、それでまた良くないものが寄ってくるような、
たちの悪い状態に陥っていたのである」
(,,゚Д゚)「悪循環ね。微量でも霊感がある人だから、余計に引き寄せやすいのかも」
( ФωФ)「1人にしておくよりはマシかと思い、ついていった。
……ただの気まぐれである」
本当に単なる気まぐれなのかは、敢えて触れないでおく。
触れずとも分かる。
ξ゚⊿゚)ξ「殺してと頼まれた後──実際にミセリさんを殺そうとしたことはあるの?」
( +ω+)「……寝ているときに喉に噛みつこうとしたことは何度かある」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、出来なかったのね」
ばつが悪そうにロマネスクは顔を逸らした。
出来なかったのではなくしなかっただけだ、という言葉に彼の性格が覗く。
( ФωФ)「恐らく、あの夜が一番──精神が酷いときだったのであろう。臭いも酷かった。
だがそれ以降はまたよく笑うようになったし、
親類の縁で職を変えてからは改善していった」
(*゚ー゚)「なぜそれから間もなく三森さんから離れたんです?」
( ФωФ)「……臭いがしたからである」
-
#####
ミセ*- -)リ
∧ ∧
( ФωФ)
眠るミセリの顔を眺める。
「約束」してからというもの、こうすることが増えた。
殺すのは簡単だ。喉を噛みちぎれば済む。
こんな普通の猫ではなく、もっと巨大な姿にもなれるから、そうすれば更に容易い。
しかし最近はミセリも持ち直している。
彼の嫌いな、あの臭いも消えた。
前の職場にいたときより忙しそうだし仕事の愚痴も増えたが、仲間への文句は減った。
忙しいおかげで余計なことを考える暇がないのだろう。
猫も人間も気紛れだ。
殺せという約束など、忘れているのではないか。
尻尾の先でミセリの鼻の頭を擽ると、呻いて寝返りした。
-
瞬間。
∧ ∧
(;ФωФ)『──!?』
頭をがつんと殴られるような衝撃に襲われた。
鼻が痺れる。
──臭いだ。
強烈な悪意。
凶悪で、全身を食い破られそうな。
外から臭っている。
ロマネスクは窓をすり抜けた。
臭いは、先程よりは若干弱まっていた。
発生源を辿る。
-
人だかりが出来ていた。
壊れた車から運び出された血まみれの男が、それより大きく白い、赤い灯りのついた車に乗せられていった。
騒ぎに引き寄せられたのか、おばけ達も大勢いたが
どのおばけからも臭いの名残は感じなかった。
∧ ∧
(;ФωФ)
思い返し、震える。
あれは悪意そのものではなく、それを発した者が強大なのだ。
現場とミセリの家が遠く離れていることと、
ここがミセリの普段通らない方向であるのを確認してから、ロマネスクは走り出した。
──恐ろしかった。
本能が、町を離れろと叫んでいた。
走りながら自問する。
──良かったとは思っていまいか。
ミセリの傍を離れることを。
彼女の命を狙わなくていい口実が出来たことを、喜んではいまいか──
#####
-
(;,゚Д゚)「ミセリさんのとこに行ってから2年後ってことは──
今から13年前よね」
(;*゚−゚)「……父さんの事故のときか」
( ФωФ)「何年も放浪していた。様々な県を巡った。
稀に、ヴィップ町で嗅いだのと同じ臭いを嗅ぐこともあった。
その度に我輩は遠くへ逃げたのである」
「しかし」。
逆接が、不穏な響きを孕む。
( ФωФ)「ある年、G県へと戻ったときのことである。
例の臭いを感じた。ラウン寺がある方角だった。
胸騒ぎがして寺に駆けつけ、まだ色濃く残る臭いを辿ってみれば──」
住職が死んでいた。
死んで間もない様子なのに、魂が欠片も残っていなかった。
ロマネスクを最も可愛がってくれた僧侶だった。
-
( ФωФ)「それから我輩は逃げるのをやめたのである。
臭いの元を追った。
──だが、それを感じるのはいつも事件が発生した瞬間である。
我輩はいつも出遅れる」
ξ゚⊿゚)ξ「……それで、現場にあなたの痕跡が」
ところが、2年前から、ぱったりと臭いを感じなくなった。
ドクオがこの町に居着いた頃だ。
( ФωФ)「何もないまま一年が過ぎ去り、去年の夏になって──
ふと、ミセリはどうしているだろうかと気になったのである」
ミセリはアパートにも実家にいなかった。
彼女を探し──入院しているのを知る。
病室に行くと、眠っているミセリから臭いがした。
自分の追っていた臭いが、微かに、ミセリの体に残っていたのだ。
トソンが来たのは、その直後。
間が悪かった。
-
新スレ立ててきます
あともうちょっと&エピローグで終わります
-
支援!
-
ロマ超いいやつ
-
一旦乙
-
ごくろうさん、頑張れ!
-
次スレ
文字化け防止のためにツンさんにニヤニヤさせました
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1411152618/
目次
最終話 前編(途中から)>>4/中編>>157/後編>>442
-
ほんとにほんとに…
気になるけど終わってしまうのがさみしい
-
終わるのか
-
名残惜しい
-
梅
-
1000ならニュッくんが
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