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ξ゚?听)ξ幽霊裁判が開廷するようです
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ゆったり投下
過去の話は
Boon Romanさん http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/gh_judge.html
RESTさん http://boonrest.web.fc2.com/genkou/yuurei/0.htm
前スレ http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1375892848/
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スレタイうわああああああああああ
まあいいか
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ツンちゃん・・・
どんまい
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例のラッキースケベのせいか…
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わろた
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#####
高熱を出した姉がよろけながら階段を下りようとするのを見て、ヒールはぎょっとした。
川;` ゥ´)『──お姉ちゃん、何してるの。寝なきゃだめだよ』
川;゚ -゚)『ピャー子……でも庭がうるさくて……』
川;` ゥ´)『ピャー子が見てくるから、お姉ちゃんは寝てなよ。ね?』
クールはふらふらだった。
母を呼んで姉をベッドに戻させ、ヒールは庭へ向かった。
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ガラケーェ
-
池の傍で、カラスがぎゃあぎゃあ喚きながら何かをクチバシで突いている。
真っ白な蛇だ。
怪我をさせられたらしく、あちこちから出血している。
川;` ゥ´)『こ、こらっ!』
恐かったが、庭掃除のための箒を振り回し、何とかカラスを追い払った。
白蛇を持ち上げる。
目に血液が流れ込んでいる。これではろくに前も見えないだろう。
しかし怪我の手当ての方法など分からないし、姉も母も蛇は苦手だから助けも求められない。
傷に触れないように撫でることしか出来なかった。
川;` ゥ´)『痛い? 大丈夫?
何でこんなとこに……』
〈……クールさん〉
蛇が小さな舌を一度出し、囁くように言った。
初め、蛇が喋ったとは分からず、辺りを見渡した。
もう一度姉の名前が呼ばれ、ようやく、声が蛇から発せられたものだと気付いた。
-
〈お礼に……何か、願い事があれば、叶えてさしあげます。
私が出来る限りなら何でもしますから〉
ヒールは幼かった。
疑問はあまり浮かばなかった。
助けたからお礼をしてもらえる、という運びは、
蛇が喋るわけがないという一般的な認識よりもよっぽど身近で、彼女にとって常識的な流れであった。
この蛇を助けた自分にお礼が返ってくるのも当然なのだと。
問題は、蛇が自分をクールだと勘違いしていることだった。
欲しい玩具があった。その玩具が欲しいと言えば、自分ではなく姉の手に渡ってしまうかもしれない。
訂正しようと口を開いたヒールは、逡巡の末、わざと咳をした。
──そもそもは、姉の代わりに自分が様子を見に来たのだ。
高熱で苦しんでいる上に妹に手柄を横取りされるなど、姉が気の毒だった。
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久しぶりだな
超期待
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川*` ゥ´)『来週、ピアノのコンクールがあるんだ。
元気になって、コンクールに出たいな』
姉の声真似は得意である。
蛇は分かりましたと答え、ヒールの手から地面へ下りた。
身をくねらせ、ゆっくりと進んでいった蛇は、庭の隅の草むらに入り込んだ。
翌日、姉はすっかり元気になってピアノの練習に打ち込んでいた。
蛇のおかげだろうとヒールは内心喜んだ。
ただ、成長に伴って常識を身につけていく内に
喋る蛇の異様さを理解し──あの日のことを夢だったのだと思うようになり、
やがてそれは記憶の底へ沈んでいった。
#####
-
ロミスは、呆然とした様子でヒールを凝視した。
ヒールの方は何となくばつが悪そうに縮こまっている。
ξ-⊿-)ξ「……まあ、そりゃ、夫婦生活送る内にピャー子さんに惚れるわよね。
ずっと思い慕っていた『優しい手』の持ち主が、ピャー子さんだもの」
川*゚ 々゚)「わあ……」
( ^ω^)「くるうさん、冷静に考えてみてくださいお。
どっちにしろ、ロミスさんは幼女に惚れて十何年間も想い続けてきたことになりますお」
川;゚ 々゚)そ
(;*゚ー゚)「それは……この際無視しよう」
-
£°ゞ°)「……ピャー子さん」
ロミスが名を呼ぶ。
決して大きな声でもないのに、ヒールは思いきり肩を跳ねさせた。
£°ゞ°)
川;*` ゥ´)
£°ゞ°)
川;*` ゥ´)「な、何だよ! 何か言えよ!」
£°ゞ°)「いえ、何と言えばいいか……」
-
【+ 】ゞ゚)「ええと……結局あれか。
原告は、昔から今に至るまで、素直ヒールに対して一途だったと」
ξ゚⊿゚)ξ「クールさんと結婚したいというより、
『あのとき助けてくれた人と結婚したい』って思ってたみたいですし、
まあ、そうなりますね」
空気は、一気に解決の方向へ変わっていた。
当たり前か。もはや、全ての答えが出たも同然なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ピャー子さん」
またヒールの肩が跳ねる。
彼女の内心までは分からないが、さぞかし乱れに乱れているのだろう。
-
ξ゚⊿゚)ξ「いいことはお姉さんに、悪いことは自分に……。
お姉さん想いなのはいいけれど、行き過ぎればお姉さんにも負担になる。
あなたのそれは、献身とは違う。理想の押しつけだわ」
ξ゚⊿゚)ξ「今回も結果的には、お姉さんの手柄にしたせいで
彼女が望まぬ展開になったでしょう?
ロミスさんまで振り回されたし」
川;*` ゥ´)「……う……」
ξ゚⊿゚)ξ「自分がした『いいこと』はちゃんと自分のものにしなさい。
そうしたら、あなたのことを良く評価してくれる人も必ずいるし、
お姉さんだって喜んでくれるから」
それは決して悪いことではない。
ヒールが評価されたからといって、クールが貶められるわけではないのだから。
比較されて育ってきたヒールには、まだいまいち分からないかもしれないが
少しずつでも理解していけばいい。
しぃの学生服の袖を握り、たっぷり考え込んで、ヒールが頷く。
ツンの表情が僅かに和らいだ。
ξ゚⊿゚)ξ「……お姉さんのこととか抜きにして、我が侭言ってみてよ。
あなたは、どうなりたいの?」
-
ツンちゃん…支援
-
ヒールは困ったような顔をした。
唇を震わせ、ロミスを見て、すぐに目を逸らし。
じわじわと顔が赤くなる。
先週から何度も彼女の赤面を見てきたが、これまで以上に赤かった。
両手で顔を隠す。
左手の薬指、薄紫色のヘアゴムが鼻を擦る。
そうしてようやく、彼女はぽつりと答えた。
川*∩ ゥ∩)「……ロミスと夫婦のままがいい……」
.
-
ロミスが動いた。
立ち上がり、ツンの隣を離れ、ほんの一歩で縮まる距離を越え。
ヒールの傍に膝をつく。
彼女の顔を隠す両手を、ロミスの手が優しく剥がす。
£°ゞ°)「──ずっと欲しかった。
助けてくれた人。……優しい人」
川;*` ゥ´)「あ」
途端に、やめろ離せとヒールが喚きだした。
多くの目に晒されながら思いきり抱き締められれば、彼女でなくとも恥ずかしい。
だが、どんなに抵抗しても、しばらくは解放されないだろう。
ロミスはたまらなく幸せそうな表情を浮かべて、さらに腕へ力を入れているのだから。
-
£°ゞ°)「蛇でも愛してくれますか」
川;*` ゥ´)「知らないよ馬鹿、気持ち悪い!! ──くそっ、何だよ、現金な奴……」
£°ゞ°)「蛇の皮は金運がつくとも言いますから」
川;*` ゥ´)「くだらないこと言うなよ。……ばあか」
川*゚ 々゚) キャーキャー
【+ 】ゞ゚)「……離婚裁判の件は」
(;*-ー-)「続行するかどうか、訊くまでもないような」
ξ゚⊿゚)ξ「何故かしら、腹立ってきたわ」
( ^ω^)「ツンさんには脳内彼氏がいるじゃありませんかお」
*****
-
£°ゞ°)「ありがとうございました、出連先生」
川;*// ゥ//)「……、……」
£°ゞ°)「ピャー子さん、聞こえませんよ」
川;*// ゥ//)「ありがとう!! ございました!! これでいいかよ!!」
なんてやり取りが最後にありつつ。
諸々を片付けて、ツンと内藤、しぃは素直家を後にした。
(#゚ー゚)「……ほとんど痴話喧嘩じゃないか!!」
素直家が見えなくなった頃、しぃは開口一番叫んだ。
切実な怒声だった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「まあ結界も誤解もとけて丸く収まったし、いいんじゃないの?」
(#゚ー゚)「とりあえずあなたの負けということでいいですよね!
原告から全面取り下げを申し出たんだから!」
ξ;゚⊿゚)ξ「あーはいはい、負け負け」
( ^ω^)「しぃさん、今回必要なかったかもしれませんおね」
(#゚ー゚)「君に言われたくないな!! ぼけーっと見てるだけだったろ!」
( ^ω^)「そもそも裁判自体、意味あったんでしょうかお」
ξ゚ー゚)ξ「ないこともないわよ」
彼女が言った「答え合わせ」の意味は、ここにあるのだ。
一方的な結論を出すためではなく、全ての真実を明らかにした上で、
ロミス達に改めて判断させるための。
この結末をフィレンクトが知ったとしたら、どう思うだろうか。
孫が幸せならそれでいい、と思ってくれればいいのだけれど。
-
ツンは上機嫌だ。
足取り軽く、内藤達の前を歩く。
それを見てしぃの毒気が抜かれたようだった。
(*゚ー゚)「……ずいぶん嬉しそうですね」
ξ゚ー゚)ξ「結婚してみたいなあって、興味出てきたの」
(*゚ー゚)「だそうだ、内藤君」
( ^ω^)「こっちに振らないでくださいお」
ξ*゚⊿゚)ξ「ええっ、内藤君が結婚したいっていうなら……する?」
( ^ω^)「孝雄くんに幸せにしてもらってくださいお」
ξ゚⊿゚)ξ「孝雄くんは私が19のときに脳内病死して脳内葬式を挙げたわ……」
(*゚ー゚)「誰ですかそれは」
-
無機質な音楽が鳴った。
しぃがポケットから携帯電話を取り出す。
ξ゚⊿゚)ξ「ギコ? 『車で迎えに行こうか』ってメールとか?」
(*゚ー゚)「何で分かるんですか気持ち悪い……」
ξ*゚⊿゚)ξ「幼稚園来の付き合いナメんな。
ねえねえ私と内藤君も乗せてってよー。いいでしょ?」
ご機嫌をとるためか、ツンがしぃの肩を揉む。
ひどく迷惑そうにしながらも、しぃは拒まない。
結局、ツンの提案は受け入れられたようだ。
(*゚ー゚)「……あまり、うちのギコを働かせすぎないでくださいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「んー、努力する」
( ^ω^)「色々手伝ってくれてるんですっけ」
「猫」の事件に関わる情報や資料など、警察で集めたものだけでなく
ツンが個人的に必要だと思った品も、ギコに調達してもらっているらしい。
ふと、ツンの声が真剣なものになった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「そういえばね、G県のラウン寺のパンフレットが手に入ったの。かなり前の。
ギコに頼んでたやつなんだけど」
( ^ω^)「ああ、事務所にありましたおね」
(*゚ー゚)「それが何か?」
ξ゚⊿゚)ξ「パンフレットの中に、猫が写ってる写真が使われてたのよ」
(*゚ー゚)「──猫?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「どうも、昔、ラウン寺で猫を飼ってたらしいわ」
( ^ω^)「……その猫って」
ξ゚⊿゚)ξ「関係あるかは分からないけど……。名前も書いてあった。
『ロマネスク』って──」
──ぎしりと、頭上で何かの軋む音が響いた。
近くにあった街灯を3人が見上げた、
瞬間。
(;ФωФ)「うおっ……!!」
男が落ちてきた。
-
あまりの事態に、その光景がスロー再生のように、ゆっくりと進んでいるような錯覚をおぼえる。
おかげで男の姿をそれなりに観察できた。
小太りで、目が──
( ^ω^)(……猫……)
猫に似ていた。
うっすらと見覚えがあった。
夏。アサピーの裁判の後。遠目に。
-
(;ФωФ)「っ」
男は体型に似合わず、軽やかに着地した。
驚愕の滲む顔で内藤を──いや、ツンとしぃを睨む。
誰も動けない。混乱している。
男は焦った様子で走り去っていった。
速い。すぐに角を曲がった。
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ……」
真っ先に駆け出したのは内藤。
やや遅れて、ツンとしぃも足を動かした。
-
今のは誰だ。
瞳や動きが猫に似ていた。
どうしてツン達を見て、あんな、逃げるように去ったのだ。
「猫」の話をしたら落ちてきた。
3人の話を聞いていた? そして──動揺したのか。
まさか。
まさか。
男が曲がったのと同じ角に差し掛かる。
だが、夜の色に塗られた住宅街があるだけで、
既に影ひとつなくなっていた。
case7:終わり
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乙
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今回の投下終わり
今まではこのガラケーでも普通にツンのAA貼れてたのに、どうして急に文字化けするようになってしまったんだ
読んでいただきありがとうございました!
Romanさんいつもありがとうございます、お世話になってます
7話後編は、昨日投下分は前スレ>>833から、今日投下分は前スレ>>918から
夜中か明日くらいに、8話に関わる幕間的な話を投下します
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乙
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乙!久々のリアルタイム遭遇!
ピャー子がただただ可愛かった!
-
乙
今回も面白かった!
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乙!
ピャー子よかったね!
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乙乙
最後ニヤニヤしてたわww
-
スレタイがいい感じに幽霊裁判らしくなったなw
乙!
-
乙!
脳内彼氏ワロタwww
ピャー子もロミスも報われて本当によかった
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エンダアアアア!!!
酔ってイチャイチャとかの所でニヤニヤし過ぎて涎出た
こういうの好きだわー
-
乙
非常にニヤニヤ出来て良かった
でもピャー子大変だな
将来的にロミスがヒモになる想像しか…
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金運上昇効果持ちらしいし宝くじで余裕余裕
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乙!
ロミスのくせにかっこいいじゃないか
-
乙
ニヤニヤと笑いがとまらん
-
乙
ニヤニヤしたけど爆散してほしい
-
乙でしたー
ピャー子が可愛すぎるほど某デミタスの本事件を思い出して複雑な気持ちになる
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面白かった、乙
-
ツンが最後まで崩壊してたけど面白かった
ぴゃーこかわいかったよ乙
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>>46
マジか
ツンの口を &#8895 って打ち込んでて(&#は半角で)、自分の携帯では問題なく反映されてる
他の環境で見ると違うのかな、参った
んで改めてググってみたら、&#8895じゃなくて⊿だった
;←これ抜かしてたのが駄目だったんだろうか。こういうのはもう全く分からん
ξ゚⊿゚)ξ ;無し
ξ゚⊿゚)ξ ;付き
携帯ではどっちも表示できてるから違いが分からない
誰か助けてください
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2chmateだがどっちも崩壊してないよ
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>>47
上が崩壊してる
下だけちゃんと三角形だわ
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>>48-49
ありがとうございます
⊿ならだいたい大丈夫そうか
かくなる上はツンの口を常に閉じさせるか、ツンにお亡くなりになっていただくのもやむなしかと思ってたから助かった
Romanさんがまとめるときに余計な手間かけさせてしまわないかが気になった
今回の話を顔面崩壊したツンで読まされてた人にもほんと申し訳ない
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上がお化け
下が小憎らしいいつものツンだわ
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>>47
上も下もどっちもちゃんと見えてる
Jane、Chrome、IE、ガラケーで確認してみたけどスレタイ以外はちゃんとみえてるよー
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ツンさん本編と全く関係ない所でコロコロされかけてたwwww
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おつ!
ニヤニヤしたわwしかし猫でてきたな…話が動く予感
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bb2c iPhoneだと下はいいが、他全部アウト
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お亡くなりになってもツンさんなら幽霊になって内藤に纏わりつくだろうな…
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お歯黒べったり辺りになりそう
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さっきからずっとξ゚?听)ξがカッパハゲのままだな
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顔面崩壊した上にQ. E. D.のハゲテロに遭うツンクッソワロタ
ツンの口に関して色々報告ありがとうございます、以後気を付ける
また表示おかしいぞってのあったら言ってください
幕間投下します。短い
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幕間
.
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(´・_ゝ・`)「私が全て指示してきたわけじゃないんだ」
神経質そうに眼鏡をかけ直し、盛岡デミタスは言った。
(´・_ゝ・`)「高崎が独断で行動することも多かった。
だから私は、全てを把握してはいない」
ζ(゚、゚*ζ「嘘は良くありませんよ」
(´・_ゝ・`)「嘘じゃない」
ついと顔を背け、デミタスは何かを探すような素振りを見せる。
照屋デレは彼の動きを注意深く観察した。
(´・_ゝ・`)「エクストとダイオードは」
ζ(゚、゚*ζ「検事局の方へ」
(´・_ゝ・`)「彼らも裁かれるんでしょうね」
ζ(゚、゚*ζ「大変ですよ、余罪が色々ありますから。あなたに協力させられて」
気の毒だなとデミタスが呟く。
他人事のような、本気で心配しているような、どちらとも取れる声音だった。
*****
-
ζ(゚、゚#ζ「もー話が進まない!! ようやく新しい証言したと思ったら『自分もよく分かってない』?
ああ、血を吸い尽くしてやりたい!!」
鵜束、と表札がついた日本家屋。
その居間で、どんと飯台を叩くパジャマ姿のデレを見て
鵜束ニュッは内心舌打ちした。
( ^ν^)「優秀な照屋さんでも手こずる相手がいるんですねーはいはい頑張れ頑張れ」
数時間前に届いた夕刊を見下ろしながら、棒読みで返す。
彼が聞いているか否かはデレにとって然程重要でない。
ただ愚痴りたいだけで、会話がしたいわけではないのだ。
ζ(゚、゚#ζ「ダイオードさん達はデミタス様ごめんなさいだのデミタス様悪くないだの
そんなんばっかり!」
( ^ν^)「あいつらは心酔してるからな。盛岡弁護士との付き合いもかなり長いだろ」
ζ(゚、゚#ζ「あー苛々する!!」
( ^ν^)「サキイカうめえ」
ζ(゚、゚#ζ「サキイカ食べながら豆乳飲むってどういう組み合わせですか!」
-
ひとしきり怒鳴って満足したのか、デレはころりと表情を変えた。
ζ(゚ー゚*ζ「ふう。参っちゃいますよ本当に」
くわえたサキイカを口の端で揺らしながら、ニュッは新聞をめくった。
様々な事件の報道はあるが、不審なニュースは少ない。
ふと小さな記事に目を留めた。
事件自体は大して心惹かれない。
ただ、「G県」という文字が引っ掛かっただけだ。
ζ(゚、゚*ζ「何か気になるのありました?」
( ^ν^)「出連ツン」
ζ(゚、゚*ζ「はい?」
あの女の顔が脳裏を過ぎる。
──あの日から度々、出連ツンのことを思い出しては
腸が煮えくり返って仕方がない。
-
( ^ν^)「あの日──裁判が終わった後、駅で出連ツンを見かけたから
その辺の霊を雇って、あの女の後を尾けさせた」
ζ(゚ー゚;ζ「えー何それ間接ストーカーですかニュッさん気持ち悪っ」
( ^ν^)「死ねよ蚊」
ζ(゚、゚#ζ「誰が蚊ですか! 私が血吸っても痒くならないでしょ!!」
( ^ν^)「どこに怒ってんだよ」
ζ(゚、゚#ζ「で、あの弁護士さん尾けさせてどうしたんです?」
( ^ν^)「内藤ホライゾンと鬱田ドクオを連れてG県に行ったんだと」
ζ(゚、゚*ζ「……G県? あの人A県の弁護士さんじゃありませんでした?」
( ^ν^)「ラウン寺に用があったらしい。
何のために行ったかまでは確認しなかったそうだ。役立たずめ」
──だが、手がかりが無いこともない。
そのことを告げると、デレが小首を傾げた。
-
ζ(゚、゚*ζ「どんな?」
( ^ν^)「化け猫の事件があるだろ」
ζ(゚、゚*ζ「化け猫……ああ、全国で多発してる霊能力者の変死事件ですか。
話は聞いてます」
事件に関する噂は、あちこちへと広まっていた。
明日は我が身か、と霊媒師や呪術師が不安になっている。
元はといえば、A県で出連ツンが弁護をした裁判が切っ掛けだったそうだ。
旧友の体を借りたという女の裁判。その真犯人を探る内に
化け猫と、そいつの関連が疑われる事件に辿り着いたとか何とか。
-
( ^ν^)「5年前、G県のラウン寺で坊さんが化け猫に殺されたそうだ。
それについて調べに行ったんだろう」
ζ(゚、゚*ζ「あの弁護士さんも猫事件を追ってるわけですか」
( ^ν^)「恐らくな」
ζ(゚、゚*ζ「ていうか何でニュッさんはラウン寺の事件のことまで──
あっ、最近しょっちゅう同僚からニュッさん宛ての荷物頼まれるのって……
あれ猫事件の資料だったんですか」
( ^ν^)「4年前にK県であった占い師の不審死、3年前I県のリーマンの怪死、
他にもF県、T県──至るところで化け猫の痕跡が認められた。
あの女、この現場全部回ったりしてな。だったら笑える」
-
ζ(゚、゚;ζ「……ニュッさんは猫事件には関係ないでしょうよ。
内藤君たちの裁判以来、こまごまとした事件しか回されなくなっちゃったじゃないですか。
何でそんな資料なんか集めてるんです?」
( ^ν^)「つまんねえ事件ばっかじゃ飽きる。でけえ事件眺めるのぐらいは許されてもいいだろ」
あの女が今一番関心を寄せているのは、多分、その化け猫の件だ。
自分も知っておきたかった。
そうやって、間接的にでも出連ツンと繋がっておかなければ。
いずれ、出連ツンに会わねばならない。
泣かせてやらないと気が済まない。
あのふざけきった弁護士を。
ついでに、あの小憎らしい嘘つき中学生も。
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんにやにやして気色悪いですよ、にやにやしてなくても気色悪いですけど」
とりあえず目下一番泣かせるべきなのは、この吸血鬼なのだが。
-
デレは立ち上がると襖を開けた。
欠伸を漏らし、ニュッへ振り返る。
ζ(-、-*ζ「私は歯磨きして寝ます。
ニュッさんはどうぞ夜更かしして体調管理怠って寿命縮めてください。
おやすみなさい」
( ^ν^)「一生起きなくていいぞ」
ぱしん、と襖が閉められる。
ニュッは豆乳の紙パックを空にすると、飯台の上を片付け、
自分も寝る準備をするべく、デレが出ていったのとは逆の方向の襖へ手を伸ばした。
*****
-
──まずい。
(;ФωФ) ハァッ ハァッ
顔を見られた。
間近で、あの弁護士と顔を合わせてしまった。
あいつは特殊な力を持っている。
だから近付かないように決めていたし、警戒していたのに。
うっかりというか、運が悪いというか。自分の行きたい方角にあの弁護士がいたのは予想外だった。
(;ФωФ) ハァ…
忙しなく動かしていた足を止め、振り向く。
追い掛けてくる者の姿はない。
上手く撒けたか、あるいは自分にさしたる興味を抱かなかったか。後者ならいいのだけれど。
-
(;+ω+)
路地に潜り込んで丸まり、目を閉じる。
眠りたい。
けれど焦燥が意識を冴えさせる。
ξ゚⊿゚)ξ『「ロマネスク」って──』
弁護士は、自分の名前を呼んだ。
どこまで知ったのだろう。
どこなら知らないだろう。
早く目的を果たして、この町など出ていってしまいたい。
こそこそ逃げ回るのは疲れた。
(;+ω+)「……」
男は。猫は。「ロマネスク」は。
何も考えないように努め、ようやく心を落ち着けると、一時の眠りについた。
*****
-
:ξ;゚ -゚)ξ:「!?」ブルッ
( ^ω^)「どうしましたお、ツンさん」
ξ;゚⊿゚)ξ「今、何か悪寒が……。
たとえるなら、性根の腐った性悪検事が良からぬ企みをしているような」
(*゚ー゚)「それもしかして僕のことですか」
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、しぃ検事より数倍タチ悪そう」
( ^ω^)「そう言われると僕には1人しか思い浮かばないんですが……」
ξ;゚д゚)ξ「ええい、んなもんどうでもいいわ!
さっきの人どこに逃げたのよ! もー!」
幕間:終わり
-
投下終わり
読んでくれた人もRomanさんも毎度ありがとうございます本当に
目次
幕間 >>60
-
続き楽しみ乙
-
乙
-
おつ
ニュッデレ組いいねえ
-
しいww性根の腐った性悪なのかwww
iPadのサファリから見てるけど>>47の上下きちんとツンちゃん表示されてる
不思議だねー
-
乙
次の話は大きく動きそう
ttp://imepic.jp/20140301/618560 ※擬人化
>>19のツンさんの表情が描きたくて漫画の一コマみたいに描いてみた
-
>>77
わあああああありがとうございます!!
すっげえ。ツンすっげえ美人。ブーンとの身長差すっげえいい
書いてるときに想像してた表情そのままで感激しました
-
しっかし胸ないな
-
え、絵の下のほうが切れてるだけでホントはあるから…
-
それもうパッドの位置ずれてるってレベルやぞ…
-
ちっぱい可愛いじゃないか
次回も期待
-
あ
-
エイプリルフールで何かやりたかったけど去年やっちゃったしネタ思いつかないし
もうエイプリルフール関係なく「自分の過去作品の宣伝しよう」と欲に走った結果がコレ
怪奇夜話(´・_ゝ・`)
http://imepic.jp/20140401/738200
http://buntsundo.web.fc2.com/long/kaiki_yawa/top.html
生きた本(*゚ー゚)
http://imepic.jp/20140401/738210
http://boonsoldier.web.fc2.com/ikitahon.htm
せいとかい(-@∀@)
http://imepic.jp/20140401/738211
http://vipmain.sakura.ne.jp/end/730-top.html
興味を持っていただければ幸い
自己満足以外の何物でもないけど楽しかったです
-
とりあえず8話目はのそのそ書き溜めてます
今月中に、せめて前編だけでも投下したいなあとは考えてます
頑張ります
今日の内に言っておけば、もし投下間に合わなくても、エイプリルフールでしたーで何とかなる寸法
-
夜話もあんただったのかww
期待してる
-
零感...だもんな...
-
しぃワロタ
まああんなそっくりさん見たら泣きたくなるわな…
-
そういや、他の作品のツンは割かしまともだな
-
ビケーイわろた
-
安定のしぃ
-
あな本のしぃ見ると元気が沸く
-
あな本のしぃ見ると元気が沸く
-
くそわろた
-
>>84
こういうの見たかった!特にしぃ
-
>>84
こういうの見たかった!特にしぃ
-
しぃさんの勢いぱねえっす
笑った
あな本だとブーンとニュッ君従兄弟なんだよなーと思うと幽霊裁判の内藤少年の嫌そうな顔が思い浮かぶ
-
好きなシリーズはろかりだわ
-
クッソワロタ
本編も待ってる
-
エイプリルフール投下乙!
デミタスコンビくそわろた
-
しぃさん節操無さすぎてワロタ
支援
-
あな本読み返したけどやっぱり好きだわ
-
過去作品も好きなのばっかだわ
-
>>89
ξ*゚⊿゚)ξ「あぁら、照れ隠し?
恥ずかしがり屋のショタは可愛いわようふふふふ。
しかも生足露出!」
ξ*゚⊿゚)ξ「きょわほほほほほほほほほ」
まと…も?
-
夜話読んだら怖すぎた
しいちゃんの学ランで涙拭くわ
-
いやちょっと待ってギコが巨乳?
それってホルモn……
-
大胸筋です
/フフ ム`ヽ
/ ノ) ∧∧ ) ヽ
゙/ | ( ,,゚Д゚)ノ⌒(ゝ._,ノ
/ ノ⌒7⌒ヽーく \ /
丶_ ノ 。 ノ、 。|/
`ヽ `ー-'_人`ーノ
丶  ̄ _人'彡ノ
ノ r'十ヽ/
/`ヽ _/ 十∨
-
カッチカチやぞ!
-
大胸筋なのか、ホルモンなのか……
-
ホルモンです
n∧
i /
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| .|
| |
|∧ ∧
( ,,゚Д゚)
.ノ†:::( ⌒丶
(:::::::::::ヽへ \
i::::::::/ \\
.|::::::( \\、_
i:::ノ ヽ ヽ、_っフ
.i/ ノ
/ / \
/ ./ \ ヽ、_
/ / ヽ、_ \
/ ( ヽ、\_
/ ノ \ ヽ
/ / ヽ (
/ / ヽ)
/ )
./ /
.し'
-
なんだホルモンか
-
ワロタ
-
ギコって顔はともかく首から下は有名人で言うと誰に似てるんだろうな
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武井壮じゃねえかな
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ギコ顔の武井壮で脳内変換決定
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近い内に、8話目前編投下します
多分VIPで
ただ最近2chがゴタゴタしてるようなので、ちょっと様子見中
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楽しみにしてる
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期待
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ゴタゴタしてるならここでええんやないの…?
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>>119
いい加減しつこい
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よっしゃ待ってる
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投下してくれるだけで幸せ
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http://viper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1397986634/
投下始めました
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支援できねぇ……
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同じく
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VIPもう落ちてるのか
なぜブラウザだと過去ログ拾えるのにjaneだと見えないのはどうして?
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ロリツンちゃんかわいい
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間に合わなかった…
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乙でした
相変わらず続きが気になる展開だった
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こっちにも投下
途中で止まったらたぶん寝落ち
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給食当番の仕事を終え、教室に戻ると、ランドセルが無くなっていた。
壁際の棚の、「出連ツン」と名札の貼られた場所だけが空っぽだった。
ξ゚⊿゚)ξ『ランドセル……』
近くにいたクラスメートに訊ねても、気味悪そうに離れられるだけで、
ランドセルの所在は分からない。
5時間目の算数で提出する宿題が、ランドセルに入ったままだ。
先生は怒ると恐いし、最近、毎回のように宿題を提出できていないので、余計に怒られてしまう。
どうしよう。
顔を上げた。窓からは隣の旧校舎が見える。
古臭い木造建築。今や足を踏み入れる者はいない。
その旧校舎の窓に、一瞬、ちらりと赤いランドセルが浮かんだ。
ああ。まただ。
ツンは教室を出て、昇降口へ向かった。
.
-
ξ;⊿;)ξ グスッ、グスッ
壁に手をつき、そろそろと足を進める。
床が腐っているのか、ぎしりと大きな音が鳴った。
ξ;⊿;)ξ『返して……返してよう……』
ランドセルが、暗い廊下の先で揺れる。
笑い声。
からかわれている。
ずっと追い掛けているのに、追いつけない。
ξ;⊿;)ξ『もうやめてよ……』
空気が冷たい。
壁から生えてきた半透明の腕に突き飛ばされる。
ツンが床に倒れ込むと、どっと大勢の笑い声が響いた。
異様に大きな右目と異様に小さな左目の子供が顔を覗き込み、腹を抱えて笑う。
頭部の無い男がツンの髪を引っ張る。
立ち上がろうとすると、狐目の和服の女に転ばされた。
-
ξ;⊿;)ξ『やめて、おねがい、おねがい……』
ツンが泣けば、向こうは更に喜んだ。
ランドセルを抱えた少年が近付いてきて、ツンには届かない距離で立ち止まると、
抱えていたランドセルを放り投げて踏みつけ始めた。
ξ;⊿;)ξ『返して……』
──不意に、周りが静かになった。
皆が一斉に遠ざかる。
不思議に思っていると、
(-@∀@)『オジョーサン』
後ろから肩を叩かれた。
(-@∀@)『まァた、こんなところに来て。どうしたんデス。
今日も苛められたんデスカ?』
ξ;⊿;)ξ『アサピー』
-
振り返り、視線を合わせるようにしゃがんでいる白衣の男に抱き着く。
ランドセルをとられた、返してと言ったのに意地悪された、と泣きながら訴える。
アサピーは左腕をツンの背中に回し、右手で頭を撫でた。
(-@∀@)『オジョーサン、そうやって泣くから、みんなマスマス面白がるんデスよ』
ξ;⊿;)ξ『だって、だって、意地悪するんだもん、まいにち、宿題ぐしゃぐしゃにして、
それで先生に怒られるの、私、ちゃんと宿題、したのに、出せなくて、私、』
(-@∀@)『ヨシヨシ、可哀想にね。
でもね、ソレですよう。そんなに可愛く泣くから、みんなイジワルしたくなるンですヨ。
めそめそするオジョーサンがあんまり美味しそうだから、』
べろり。
アサピーの獣じみた、やや長い舌が、ツンの頬を舐め上げた。
ひ、と悲鳴が喉の奥でつっかえる。
(-@∀@)『僕だってオジョーサンを苛めたくなっちゃうデショウ』
アサピーの胸を押す。
彼は、ぱっと手を離してツンを解放した。
-
ξ;⊿;)ξ『ひどい、ひどいっ』
裏切られた。
舐められた頬を拭い、わあわあ泣きながら走った。
おばけなんか、みんな意地悪だ。
(-@∀@)『冗談なのに』
消える間際に落としたアサピーの呟きは、泣きじゃくるツンには聞こえなかった。
旧校舎から飛び出す。明るい。
ツンはその場に立ち止まり、振り返った。
ランドセルを回収していない。
また旧校舎の中へ入るのは嫌だ。
けれど、先生に叱られるのも嫌だった。
昼休みの終了時間が近付いている。
ξ;⊿;)ξ『う、う、』
しゃがみ込む。
もう何もしたくなくて、けれど何かしなければいけないのは理解していて、
どうしたらいいか分からず、ぼろぼろと涙だけを零した。
-
(;,゚Д゚)『ツン!』
少し遠くから聞こえた声に、ツンは顔を上げた。
駆け寄ってくる少年。安堵の感情が、ますます涙を押し出した。
埴谷ギコ。保育園の頃からの仲だ。
ξ;⊿;)ξ『ギコ、ギコ……』
ランドセル、と言って旧校舎を指差す。
ギコはそれで事情を把握したらしかった。
(,,゚Д゚)『取ってきてやるからな』
ここで待つように言い、彼は旧校舎の中へ飛び込んでいった。
ツンは右腕で目元を擦ると、ふと、数メートル先の木を見遣った。
∬;´_ゝ`)、
木の陰に隠れるようにして、少女がツンの様子を窺っている。
彼女は、ツンと、その後ろの旧校舎に怯えているのか
顔をすっかり青ざめさせていた。
少し震えてすらいる。
──彼女が、ギコを呼んできたのだろう。
-
∬;´_ゝ`)そ
ツンが近付こうとした瞬間、びくりと跳ね上がり、逃げ出してしまった。
いつものこと。
自分のことが嫌いなら、放っておいてくれればいいのに。
お礼を言うことすら出来ない。
ツンはランドセルを抱えたギコが戻ってくるまで、彼女がいた辺りを見つめて泣き続けた。
──『おばけ法を知れば、おばけなんか怖くなくなるさ』──
脳裏を過ぎる声。
何年か前に聞いた言葉。
ξ;⊿;)ξ(おばけ法……)
後で、ギコに訊いてみようと思った。
-
case8:神隠し罪/前編
.
-
年が明け、2013年。
元旦から2週間と少し。
しんしんと雪が降る朝、ヴィップ小学校の職員室にて
職員会議が行われている。
「──というわけで、隣町の小学生が行方不明となった事件を受け、
我が校でも町内ごとに集団となって登下校を──」
_
( ゚∀゚)(やっと本題か……話長えよ校長……)
男性教諭、長岡ジョルジュは周囲へ聞こえぬよう溜め息を漏らした。
寝不足で体が怠い。目をしょぼしょぼさせながら書類を見下ろす。
新聞記事のコピー。
「児童行方不明」──という見出しが載っている。
隣町の小学生が、正月にヴィップ町の祖父母の家に来たらしいのだが、
家族が目を離した隙に忽然といなくなってしまったのだそうだ。
-
_
( ゚∀゚)(もう2週間経つのにまだ見付かってないのか……)
そんなことを思いつつ、ジョルジュは視線を右へ滑らせた。
頬が緩む。
咳払いをするふりをして、口に手を当てた。
∬´_ゝ`)
流石姉者が真剣な表情で書類を眺めている。
その横顔を見つめてから、ジョルジュは小声で姉者に話しかけた。
_
( ゚∀゚)「心配ですね……どこへ行ってしまったんでしょう」
∬´_ゝ`)「ええ、本当に……。ずっと注目してたんですけど、続報があまり無いんですよね……。
この子、無事だといいんですけど」
_
( ゚∀゚)「同感です」
──たしかに、いくらか気にかかるのは事実だ。
だが、見ず知らずの子供を本気で心配するほどジョルジュは出来た人間ではない。
正月にローカルニュースで見て以来すっかり事件のことなど忘れていたし、
それよりかは、新学期に向けての準備を始めとした業務の方が彼にとっては差し迫った問題だった。
教師(それも小学校の)としては些か薄情に思われるかもしれないが、
一般人の感覚からはそう逸脱しているわけでもあるまい。
何にせよこのとき彼は、姉者に良く思われたいがため
いくらかオーバーに案じているような素振りをした。
-
∬´_ゝ`)「もし誘拐だったら……。
営利誘拐ならまだしも、続報が無いとなると、無事である可能性は……」
一方で、姉者は心の底から事件に胸を傷めているようだった。
何度も記事を読み直している。
ふと記憶の底から湧き上がったものがあって、ジョルジュは口を開いた。
_
( ゚∀゚)「神隠しって線もありますね。非現実的ですけど」
∬;´_ゝ`)「……か、神隠し?」
_
( ゚∀゚)「俺、昔よく婆ちゃんから言われたんですよ。
『夕方は子供をさらいに来たおばけが物陰から見つめているぞ。
ひとりで狭いところや暗いところに行っちゃいけない。行ったら連れていかれる』って──」
そこまで言って、ジョルジュは少し気恥ずかしくなった。
こんな話、大人が子供を管理しやすくするための方便だ。
幼い頃はたしかに信じていたが、大人になってからは、今の今まで思い出すこともなかったのに。
なんちゃって、と誤魔化そうと、ジョルジュは改めて姉者を見る。
::∬; _ゝ )::
_
(;゚∀゚)「……姉者先生?」
-
姉者は震えていた。
顔を真っ青にし、細い目を見開き、書類をぐしゃぐしゃに握り締め。
明らかに、恐怖に打ち震えていた。
_
(;゚∀゚)「姉者先──」
声をかけ、肩に触れる。
その直後。
∬; _ゝ )「──……〜〜っ!!」
姉者は、椅子ごと後ろへぶっ倒れた。
*****
-
l从・∀・ノ!リ人「姉者は極度の怖がりなのじゃ。
オカルト話は禁物なのじゃー」
休み時間。社会科資料室。
ジョルジュに肩車される形で棚の上の箱に手を伸ばしながら、
流石妹者は呆れたような声音で言った。
_
(;゚∀゚)「そうなのか?
いや、怖いのが苦手って噂は聞いてたけどさ、そんなに?」
l从・∀・ノ!リ人「ジブリの某神隠し映画ですら怖い怖い言って目を逸らしてたくらいなのじゃ」
⌒*リ;´・-・リ「あ、姉者先生って、そうだったんだ……」
l从・∀・ノ!リ人「家族でも軽く引くレベルじゃ。
姉者のクラスの子達も、初めは姉者を怖い話でおどかして遊んでたらしいけど
姉者のビビり具合が異常で、だんだん『これは触れちゃいけない部分だ』と理解したようなのじゃ」
⌒*リ;´・-・リ「学級文庫、2年3組にはおばけが出る本は回しちゃいけない決まりがあるって噂、本当なんだね……」
-
l从・∀・ノ!リ人「事実じゃろうな。──ジョルジュ先生、地図帳あったのじゃー」
_
( ゚∀゚)「おう、ありがとう。下ろすぞー」
⌒*リ´・-・リ「先生、地球儀、この小さいのでいいですか」
_
( ゚∀゚)「それそれ。凛々島もありがとな」
しゃがんだジョルジュの肩から下りて、妹者はスカートの裾を叩いた。
妹者の肩についていた埃を凛々島リリがつまんでゴミ箱へ捨てる。
──ジョルジュは、妹者とリリが属する3年3組の担任である。
教材を運ぶのを手伝ってくれ、と声をかけられた彼女達は、進んでそれを受け入れた。
l从・∀・ノ!リ人「はあ。ジョルジュ先生がいらんこと言ったせいで、
姉者は今夜、妹者と一緒に風呂に入ったり布団に入ったりするじゃろうなあ」
_
( *゚∀゚)「おい姉者先生可愛いな」
-
l从・∀・ノ!リ人「妹者、お風呂はゆっくり入りたいのに……。怯えた姉者は早風呂じゃからのう……。
──それよりジョルジュ先生、可愛い妹者に肩車させてもらえた代金として500円払うのじゃー」
_
( ゚∀゚)「冗談だろ」
l从・∀・ノ!リ人「払ってくれたら、サービスとして、姉者の前で
『ジョルジュ先生が家族になってくれたら嬉しいなあ』と呟いてあげるのじゃ」
_
( ゚∀゚)「五千円払うから10回たのむ」
l从・∀・ノ!リ人「冗談なのじゃ」
3人で教室を出て、ゆっくり廊下を歩く。
通りすがる女子生徒からの挨拶にジョルジュは爽やかな笑顔で返し、
通りすがる男子生徒からの眼差しに妹者は可愛らしい笑みを向け、
横を歩くリリは苦笑いだか何だか分からぬ表情で2人を横目に見遣った。
_
( *゚∀゚)「それにしても──いいよなあ……姉者先生。
優しくてさ……胸でかくてさ……ちょっと隙があって……真面目で……胸でかくて……胸でかくて……」
l从・∀・ノ!リ人⌒*リ;´・-・リ(また始まった)
-
>>130
よかった、読める!
ありがとう!
-
_
( *゚∀゚)「俺なら幸せにしてあげられると思うんだ」
l从・∀・ノ!リ人「ジョルジュ先生ぜんぜん相手にされてないじゃろう」
_
( ゚∀゚)「いや……姉者先生も俺を憎からず思ってる筈だ。
俺は姉者先生が困ってるときには助けてきたし、見掛ければほぼ必ず声をかけたし、
声をかけられる距離じゃなくても、目に入れば常に見守り続けた」
_
( ゚∀゚)「さらに姉者先生に下心を持って近付く男は、たとえ生徒であろうと牽制してきたからな……
姉者先生にとって一番親しく一番頼りがいのある男は俺の筈だ」
l从・∀・ノ!リ人「ほぼストーカーだし最高に大人げないし思い上がりもいいとこなのじゃ……」
ジョルジュは姉者より2、3歳上。
20代という若さに加え、体格もがっしりしている。
いかにも爽やかなスポーツマン、といった佇まいの彼は
女子生徒や女性教諭のみならず、生徒の保護者からも人気が高い。が。
こういった、少々残念なところがあるのが玉に瑕。
_
( ゚∀゚)「俺のことは『お義兄ちゃん』と呼んでくれて構わない」
l从・∀・ノ!リ人「兄なら間に合っておる。というか──
ちっちゃい『お兄ちゃん』が黙ってないと思うんじゃがのう……」
*****
-
(´<_` )「ふぇぶしゃっ!」
(;・∀・)「わーびっくりした! もっと控えめにやれよ!」
(´<_` )「急に出るもんはしょうがないだろ」
駄菓子屋の前で、流石弟者のくしゃみが響き渡った。
ちり紙で鼻をかむ弟者を浦等モララーが睨む。
(-_-)「誰か弟者の噂してたり」
(;^ω^)「それならいいけど、風邪だったら大変だおー」
小森ヒッキーが微笑み混じりに言う。
内藤ホライゾンは、気遣う演技で弟者の顔を見上げた。
まあ、いくらか本音ではある。風邪だとしたら、伝染されても困るし。
ひとまず弟者の話題はそこまでとして。
( ・∀・)「なあ、このあと用事とかある?」
買ったばかりの駄菓子を頬張り、モララーが訊ねる。
──今日は休み明けの学力テストの日で、普段より早く放課となった。
だからこうして寄り道して、買い食いなどしているわけである。
このまま遊びに行かないか、とモララーは誘いをかけたいのだろう。
弟者とヒッキーはそれに乗り気だ。
-
( ^ω^)「ごめんお、僕、今から寄るところがあって……」
( ・∀・)「あーそう? んじゃ、俺らだけでどっか行くか。またな、ブーン」
(´<_` )「夕飯までに帰ってこいよ」
( ^ω^)「分かったおー」
(-_-)「また明日」
モララー、弟者、ヒッキーは内藤に手を振り去っていった。
「今から」とは言ったが、約束の時間まではまだ余裕がある。
内藤は入口の邪魔にならないところへ寄りかかり、ビニール袋から取り出した駄菓子の封を開けた。
「──、……で……」
「ああ……──、……」
店先のベンチに老人が2人座って、世間話をしている。
近くにバス停があるので、恐らくバスを待っているのだろう。
内藤も同じだ。
菓子を齧りつつ、何となく老人達の会話を盗み聞きしてしまう。
-
「──そういえば、行方不明事件……」
「隣町の子がヴィップ町で行方不明になった、あれですか」
「なんでも、神隠しに遭ったんじゃないかと噂で」
「この町では昔からちょくちょくありますしな」
神隠し。
例えとしての表現ではなく、怪奇現象のそれとして話しているようだ。
「数十年前など、とつぜん行方不明になった娘が
その5年後、行方不明になった当時の姿のまま戻ってきたとか……」
「ああ、騒ぎになったもんで」
「他にも十……何年前だったかな……。
友達とかくれんぼしてる間に消えちまった子は、
前日『おばけが呼んでる』って家族に言っていただの何だの──」
「ヴィップ小学校の裏山でいなくなった子の話もありましたかな」
-
( ^ω^)「……」
この町の地理を思い浮かべ、内藤は一瞬、咀嚼する動きを止めた。
ヴィップ小学校の裏山。
そこの近くには、嫌な思い出がある。
大小様々なゴミが積まれた空き地。
昔、おばけに襲われ都村トソンに助けられた場所。
トソンの裁判にて、あのとき抱いた恐怖を思い出して以来、
あそこへはなるべく近付かないようにと決めている(そもそも近付く用も無いのだけれど)。
今は大抵の霊に怯えることもないが、
あんな印象的な出来事を、裁判に臨むまで忘れていた──脳の奥に閉じ込めていた程度には
当時の内藤にとってあまりに恐ろしい記憶だったわけだし。
──思考に意識を向けていた内藤は、耳慣れた単語が突然出てきたことで、また隣の会話に気をとられた。
-
「やはり、あれですかな……。カンオケ神社の神様……」
「オサム様」
「あの神様に、みんな連れてかれてるんでしょうかな……」
「ええ、まことに恐ろしい話で」
「あれは人を喰う神だと聞いたこともありますし──」
*****
-
総合病院。
三森ミセリの病室。
(゚、゚トソン「ミセリ……」
都村トソンはミセリの顔を覗き込んだ。
呼び掛けても、返事は当然ない。
ミセ*- -)リ
ミセリに繋がれた管や何かしらの器具が、絶えず微細な音を吐き出している。
それが、唯一彼女の生を証明しているようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「トソンさん、あまり近付きすぎないようにね」
( ^ω^)「向こうの方々が警戒してますお」
(゚、゚トソン「はい……」
背後に立つツンの言葉に頷き、トソンは名残惜しげに顔を上げた。
付き添いとして呼ばれていた内藤は、病室の入口へ振り返る。
警官と、何やら大きな獣の姿をした化け物が内藤達を監視している。
「猫」がこの病室で目撃された一件以来、こうしておばけ課の職員と協力者たるおばけで警戒に当たっているらしく、
単なる見舞客である内藤達にも厳しい目を向けていた。
-
トソンだって、こんな風に中まで入ってくるのは実に半年ぶりなのだそうだ。
結界が張られている──今は弱めてもらっているが──ため、
窓の外から病室を覗くことしか出来なかったとかで。
(゚、゚トソン「……ミセリ、髪伸びましたね……」
トソンがミセリを見つめ、ぽつりと呟く。
ぱさぱさに乾いた長い髪が、看護士の手によってか軽くまとめられている。
話は色々聞いていたけれど、内藤が実際にミセリを前にするのはこれが初めてだった。
明るい人、とトソンは言っていたが──目の前で眠り続ける彼女からは、そういった印象は受けなかった。
肌も髪もツヤはなく乾ききっている。
年齢は、三十代の半ばを過ぎた頃の筈だ。
その年齢よりいくつも老けて見える。
(゚、゚トソン「高校のときは、ミセリ、髪長かったんですよ。まっすぐで、綺麗で……。
大学上がる頃から癖毛が増えて、短くしちゃいましたけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、髪質変わるひと結構いるわよね。私は昔から癖毛だったけど」
(゚、゚トソン「ミセリ、残念がってて──でも短い方が、元気な彼女に合ってて、私は好きでした。
そのことを言ったら、ミセリは照れくさそうに笑ってくれたんです」
トソンの言葉尻が震えた。
きゅっと唇を噛み、眉間に皺を寄せる。
ミセリの髪の毛先を軽く撫で、彼女は離れた。
-
(゚、゚トソン「……久しぶりにミセリを見たら、何か、色々思い出しちゃって」
そこへ警官が声をかけた。
時間切れだという。その声のおかげか、トソンの潤み始めた目から涙が零れることはなかった。
──病院を出て、内藤とツンは事務所へ向かうためバス停に立った。
他に客はいない。
(゚、゚トソン「ツンさん……あの、『猫』のことなんですけど……。
何か新しい手掛かりはあったんでしょうか」
ξ゚ -゚)ξ「残念ながら」
昨年11月──素直ヒールとロミスの離婚を巡る裁判が終わった後。
家路についた内藤達は、件の化け猫らしき男と遭遇した。
だが、すぐに男を見失ってしまったため、事が進展することはなかったのだ。
けれども分かったことはある。
トソンや鬱田ドクオが男を見たのは去年の夏で、内藤達は11月。
その3ヵ月以上もの間、奴はヴィップ町に滞在し続けていたと見ていいだろう。
となれば、過去数年、何県にもわたって痕跡を残してきた者が、この町にだけ長期間いたことになる。
-
何のためか。
──詳細は分からないにしても、目的は確実にミセリだ。
あの警備態勢によりミセリに近付けないものの、
何か果たさねばならない目的があって、ここを離れるに離れられないのだろう。
もしも奴が未だに諦められずこの町に残っているのなら、いずれは捕らえられる筈。
ξ゚⊿゚)ξ「何にせよ、強行突破できるほど強いおばけじゃないみたいだから
警察に見付かっちゃえば終わりでしょうね」
(゚、゚トソン「そう、ですよね。
……事件が解決すればミセリが目覚めるような気がして、私、焦ってしまって」
( ^ω^)「まあ解決しなきゃミセリさんの安全も保障されませんから、
早く化け猫を捕まえるに越したことはないんでしょうけど」
(゚、゚トソン「ですね……」
ツンは、トソンをまじまじと見つめた。
何でしょう、とトソンが首を傾げる。
ξ゚⊿゚)ξ「……トソンさん、普段は何してる?」
11月にしたのと同じ問いを、ツンはぶつけた。
(゚、゚トソン「……ふらふらしてますよ」
答えも、前回と同じだ。
けれど視線を僅かに逸らしたのが気になった。
-
ξ゚ -゚)ξ「──無茶なこと考えてない?」
( ^ω^)「無茶って?」
ξ゚⊿゚)ξ「『猫』を捕まえてやろうとか思って、1人で色んなとこ探してるんじゃないかってこと」
トソンはまた首を傾げた。
苦笑いを浮かべている。
(゚、゚トソン「ツンさんには何でも見通されているような気が、たまにします」
( ^ω^)(実際に見通してるようだけど)
彼女はツンの「追体験」を知らない。
ともかく、ツンの懸念は当たっていたらしい。
諦めたように頷き、トソンは小指の無い右手で頬を掻いた。
(゚、゚トソン「でも捕まえようとは思ってません。私なんかじゃ、とてもそこまでは……。
ただ、目撃情報でも立派な手掛かりにはなるでしょうから、
警察のお手伝いにでもなればいいなと思って──まあ私が勝手にやってることなんですけど」
-
ξ゚⊿゚)ξ「鉢合わせたとき、向こうがどんな行動に出るか分からないでしょ。
危険だわ。捜索は警察や私に任せて、あなたはゆっくりしてなさいよ」
(゚、゚トソン「お気遣いありがとうございます。でも、じっとしてもいられなくて」
叱られた子供がそうするように、トソンは目と話題を逸らした。
バスが来ましたよ、と。
重たいエンジン音が近付いてくる。
(゚、゚トソン「それでは……私は、これで」
一礼し、トソンは去っていった。
バスが停まる。扉が開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……思いきったこと、しなけりゃいいんだけど」
( ^ω^)「多分──大丈夫じゃないですお? ちゃんとした人だし」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、少し……言いかた悪いけど、愚直なところがあるわ」
( ^ω^)「まあ、それは少し分かりますけど」
ξ゚⊿゚)ξ「でしょう。──内藤君、うちに来てもらえる? 事務所の片付け手伝ってほしいの」
*****
-
( ^ω^)「──そろそろ帰りますお」
内藤は顔を上げて言った。
すっかり日が暮れている。
ξ゚⊿゚)ξ「ん……そうね、もうこんな時間」
事務机で作業していたツンが、ペンを置いて頷く。
この事務所に来て内藤がしたことといえば、掃除と、あとは漫画を読むくらいだった。
掃除が終わった時点で帰れば良かったかなと少し反省。
漫画の方に集中しすぎた。
ダッフルコートを身につける。
ツンは欠伸を一つして、己のコートを手に取り外出する準備を始めた。
ξ゚⊿゚)ξ「一緒に行くわ。中学生1人で暗いとこ歩かせるわけにもいかないし。
最近、子供の行方不明事件あったでしょ」
老人達の話を思い出し、内藤は手を止めた。
-
神隠し──
訊きたいことがあって口を開いたが、すぐにツンが言葉を続けたため、タイミングを失ってしまった。
ξ゚ -゚)ξ「あの『猫』がまた現れる可能性もあるし」
猫。猫目の男。
内藤は、あの男を二度目撃している。一度目は夏休み。二度目は11月。
二度目の遭遇のとき、彼は内藤達の前からすぐに逃げ出した。
ということは接触を避けたがっていて、明確に敵意を持っているわけではない。
不用意に近付いてはこないだろう。
だが、あまりに間近で顔を見てしまったのだ。
向こうが、いつ、自分にとって厄介な存在を消そうと考えるか分からない──
ツンはそんな風に警戒しているようだった。
( ^ω^)「ツンさんも気を付けてくださいお」
ξ゚⊿゚)ξ「私は美人だから、そう簡単に危険な目に遭いやしないわ」
( ^ω^)「意味分かんねえ」
-
──流石家の玄関の前まで来たところで、ツンは「それじゃあね」と内藤に微笑んだ。
( ^ω^)「女の人が1人で夜道を歩くのも危なくありませんかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ご心配ありがとう。まあ大丈夫よ」
( ^ω^)「お気を付けて」
ξ゚ー゚)ξ「ん、どうもね」
ツンがひらひらと手を振る。
そのとき、玄関の引き戸が開かれた。
背後から掛けられる、呑気な声。
∬´_ゝ`)「あ、ブーン君、いま帰り?」
(´<_` )「遅いぞブーン」
( ^ω^)「あ」
財布を持った姉者、さらにその隣に弟者が立っていた。
まずい。今この場には最も具合が悪い組み合わせだ。
-
∬´_ゝ`)「あら、誰か一緒に──」
姉者が一歩出て、内藤の後ろを見遣る。
そうして、彼女は固まった。
ξ゚⊿゚)ξ「……こんばんは。あけましておめでとう。もう半月は経ったけど」
∬;´_ゝ`)
(´<_`;)「──ああ!? あんた何でここにいるんだ!!」
弟者はツンを睨み、それから内藤を睨んだ。
よくも連れてきてくれたな、という目。申し開きのしようもない。
-
∬;´_ゝ`)「つつ、つ、ツンちゃ……ツンさん……」
ξ゚⊿゚)ξ「この子が暗いなか歩いてたから、送ってあげただけ。じゃあね」
気まずそうに目を逸らし、ツンは踵を返した。
彼女の姿が見えなくなると同時に、青ざめきった姉者がへたり込む。
∬;´_ゝ`)「ぶ、ブーン君、知り合い……?」
どう答えたものか迷った。
姉者の背後で弟者が首を振っている。
( ^ω^)「や、──そこで会っただけですお」
そう、と姉者が呟く。
彼女は、とっくに見えなくなったツンをまだ目で追おうとするかのように、視線を遠くにやっていた。
*****
-
ξ-⊿-)ξ ハァ
家路を辿りつつ、ツンは溜め息をついた。
ずいぶん久しぶりに、姉者と対面した気がする。
というか会話──向こうからの答えはなかったが──を交わしたのは、最早、高校以来ではなかろうか。
そもそもマトモに会話した覚えがあまりない。
ξ゚⊿゚)ξ(保育園から高校まで、けっこう長いこと一緒だったけど)
幼馴染みという括りにはなるのだろうか。
馴染み、と言えるほど馴染んだ覚えも、やはり無いけれど。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
保育園の辺りまで記憶を遡らせて、ツンは顔を顰めた。
嫌な「思い出」が浮かび上がる。
頭を振って思考を遠ざけようとしたが、こういう記憶は一度掘り返すと
得てしてねっとりと絡みついて離れないもので。
勝手に、耳の奥で声が蘇った。
-
#####
『先生、ツンちゃんがおばけがいるって言うの』
『また姉者ちゃんのこと泣かしてるよ』
保育園の中では、毎日のようにそんな言葉が飛び交った。
酷いときには、うそつき、と他の園児に物を投げられてしまう。
ξ;⊿;)ξ『……』
園庭の隅っこで、ツンはギコにしがみついて泣いていた。
いつもの光景。
(,,゚Д゚)『あのなツン、おばけを見ても、言っちゃダメなんだって。誰も信じてくれないし、
おばけが喜んでもっと近付いてくるってでぃ叔母さんが言ってた』
ξ;⊿;)ξ『だって……』
おばけは突然現れて脅かしてくるし、彼らが真正面に立つと、
よく分からないもの──おばけの記憶か何かだろうか──が見えたり聞こえたりする。
-
驚いて逃げたり悲鳴をあげたりすれば、先生や園児が「どうしたの」と問うてくるから、
上手く誤魔化す術を知らないツンは、正直に体験したことを全て答えるしかない。
そうすれば結局、先生は困った顔をするし、子供は怖がるか嘘と決めつけてくる。
どうしようもないのだ。
ギコは「猫田家」の人だから、おばけもちょっかいを出しづらいけど
ツンは何の後ろ盾もないので、ますます。
∬;_ゝ;) エグエグ
从'ー'从『ツンちゃん、大丈夫?』
泣きじゃくる姉者を抱えて、渡辺先生が近付いてきた。
渡辺先生は優しくて、ツンの言うことを否定しないから好きだった。
姉者もツンのことは信じてくれているようだったけれど、
だからこそ怯えて泣いてしまうのでツンは彼女が苦手だった。
まず、ツンがおばけに脅かされて反応すると、真っ先に姉者が駆け寄ってくるのだ。
「大丈夫?」「何があったの?」なんて訊ねてくるから、やはり正直に答えれば、
姉者は怖がって他の子や先生に泣きついて、それで騒ぎが大きくなる。
怖いなら、どうして放っておいてくれないのだろう。
-
从'ー'从『転んじゃったんでしょう? 怪我は?』
ξ;⊿;)ξ『……』
(,,゚Д゚)『ひざ!』
ギコがツンの膝を指差す。
先程、おばけから逃げた拍子に転んで擦りむいたのだ。
从'ー'从『あらあら。絆創膏貼ろうね。歩ける?』
姉者を抱えたまま、渡辺先生は園庭から教室へ上がった。
ギコがツンの手を引き、後に続く。
他の園児や先生は園庭で遊びつつ、ツン達をじろじろ眺めていた。
救急箱を持ってきた渡辺先生が、部屋の真ん中に座る。
ツンとギコは彼女の向かいに座った。姉者は渡辺先生の膝の上に。
渡辺先生が傷の消毒をする間に、ギコが絆創膏の準備をした。
从'ー'从『ギコ君、いい子だねえ』
(*,゚Д゚)『へへ……』
渡辺先生が好きなんだ、と、いつだかは忘れたがギコが言っていた。
ギコだけではなく、渡辺先生に憧れる男の子は園内にたくさんいる。
渡辺先生はもう結婚しているのだけれど。
-
∬ぅ_ゝ;) グシグシ
姉者は何度か目を擦り、それから、渡辺先生の膝の上で眠ってしまった。
泣き疲れてしまったのだろう。
ちょうど昼寝の時間だったし、元から眠かったのかもしれない。
从'ー'从『ごめんねギコ君、姉者ちゃんのお布団、準備しておいてくれるかな』
(*,゚Д゚)『はーい』
みんなの布団がしまってある押し入れへ駆け寄り、ギコは敷き布団を部屋の隅に敷いた。
渡辺先生が絆創膏の包装を剥がし、ツンの膝に貼る。
从'ー'从『はい、おしまい』
ξ゚ -゚)ξ
泣き止んだツンは俯き、何度も絆創膏を撫でた。
渡辺先生の膝で眠る姉者が羨ましかったけれど、言えなかった。
-
(*,゚Д゚)『できた!』
从'ー'从『ありがとう、ギコ君。えらいねえ』
ギコの頭を撫でてから、渡辺先生は立ち上がり、姉者を布団に寝かせた。
その布団の隣に腰を下ろして渡辺先生がツンに手招きする。
ツンが首を傾げて近付くと、ふわりと抱え上げられた。
渡辺先生の膝に座らされる。
从'ー'从『おばけ、怖かったの?』
ξ゚ -゚)ξ" コクン
从'ー'从『先生がツンちゃんのこと抱っこしてるからね、大丈夫だよ』
ξ*゚ -゚)ξ" コクン
ツンをしっかりと抱いて、渡辺先生は優しく体を揺らした。
心地よくて瞼が重たくなってくる。
眠りに落ちる間際、なんとか「ありがとう」と呟いた。
渡辺先生がくすくす笑う声を聞きながら、ツンは夢の世界へと飛び込んでいった。
ツンが怯え、姉者が泣き、ギコが慰め、渡辺先生が収拾をつける。
これがほぼ日常と化していた。
-
けれども。
今より20年前、夏の暑さが厳しくなってきた日のこと。
保育園を出て、近くの自然公園へ行く日だった。
先生達の先導に従い、子供は列をなして歩いていく。
その道のりには、特に何もなかった。
公園が問題だったのだ。
そもそも人が集まる場所は霊も寄ってきやすい。
夏という季節も関係あったのか、ともかく、公園にはおばけがうようよいた。
(,,゚Д゚)『ツン、俺といっしょにいろよ』
ギコがツンの手を握って言う。
ツンは頷いた。元からそのつもりだった。
-
(,,゚Д゚)『あっちのみんなとボール遊びしよう』
賑やかな一角を指差し、ギコが提案した。
彼はツンと違って、おばけが見えることをツン以外の園児や先生には言っていなかったし、
明るく溌剌とした子だったので人気があった。
彼が言えば、みんな、ツンも遊びの仲間に入れてくれるだろう。
しかし、ツンの意識は全く違う方向に釘付けになっていた。
∬*´_ゝ`)
姉者が、みんなから少し離れた場所へ1人向かっていた。
彼女の目線からして、そこに咲く綺麗な花に興味を引かれたのだろう。
そのすぐ傍。
人間──に似た何かが立っていた。
大きな穴が3つあいているだけのような顔で、手足も歪だったので、本物の人間でないことは一目で分かった。
じっと姉者へ顔を向けている。
何を考えているかは分からないが──姉者に何かをしようとしている、というのは感じ取れた。
-
姉者がそいつに気付ける筈もない。
2人の距離が縮まる。
ξ;゚⊿゚)ξ『……っ』
(;,゚Д゚)『ツン?』
ツンはギコから手を離して駆け出した。
姉者、と名前を呼ぶ。
姉者は笑顔でツンに振り返った。
彼女に向かって、「あいつ」が手を伸ばしている。
∬;´_ゝ`)『きゃあっ!』
ツンは、姉者を突き飛ばした。
手や膝を擦りむいたらしく、じわじわと姉者の目に涙が滲み、
やがてわあわあ泣き出してしまった。
その声に「あいつ」は手を引っ込めると、後退りをして姿を消した。
-
(;,゚Д゚)『姉者!』
ギコが泣きじゃくる姉者を起こした。
男の先生が1人走ってきて、姉者を抱える。
『どうして姉者ちゃんを押したんだ』
先生はツンに、責めるような目を向けてきた。
ツンやギコ以外の者には、ツンが突然姉者を突き飛ばして転ばせただけにしか見えなかったろう。
(;,゚Д゚)『ちがうよ、ちがうよ先生、ツンは……』
ξ゚⊿゚)ξ『……おばけ、いたから……』
(;,゚Д゚)『ツン!』
他に、何と説明すればいいのかツンには分からない。
だって本当のことなのだから。
先生が溜め息をつき、他の先生達のところに姉者を連れていく。
ギコはツンと姉者を何度も交互に見て、ツンの頭を一度撫でてから
姉者の様子を見るためか、そちらへ駆けていった。
-
从'ー'从『ツンちゃん』
彼らと何か話していた渡辺先生が、ツンの名を呼び、走ってくる。
ツンはほのかに顔色を明るくさせた。
渡辺先生なら、ツンの話をちゃんと聞いてくれる。
ツンが意地悪したのではないと理解してくれる。
渡辺先生は、ツンの目の前でしゃがんだ。
从'ー'从『どうしてあんなことしたの?』
ξ゚⊿゚)ξ『おばけが、姉者のこと捕まえようとしてたの』
おばけの見た目や、そいつがどれだけ怖かったか、ツンはありのまま──闇雲に──話した。
渡辺先生は優しい表情で、じっと聞いている。
-
何とか自分の正当性を未熟な言葉で説いた。
全て聞き終えた渡辺先生の手が、ツンの頭をそっと撫でる。
ツンはすっかり安心して頬を緩め、
从'ー'从『あのね、ツンちゃん──』
从'ー'从『──どうしていつもそんな嘘つくの?
先生、いい加減にしてほしいな』
ξ゚⊿゚)ξ
息が止まるような感覚をおぼえた。
言葉の意味を理解すればするほど、息苦しくなった。
渡辺先生は、ひどく困り果てたような顔をしていた。
声はどこまでも優しい。
だから、分かってしまった。
幼心にぼんやりと。
今までもずっと、彼女はそう思っていたのだ、と。
-
ツンの言葉を心から信じていたわけではなくて。
けれど否定はしないようにと、気遣いながら宥めてくれていただけだったのだ。
ずっと、ずっと、困っていたのだろう。
今のような表情を、言葉を、ツンの知らないところでは覗かせていたのだろう。
(;,゚Д゚)『虫……蜂が、姉者の近くにいたから! 危なくって、だからツンは──』
ギコが、男の先生に必死に説明する声が聞こえた。
渡辺先生はそれに気をやったのか、視線をギコ達の方へ向けた。
何でもかんでも自分が悪いような気分になったツンは、
ギコに嘘をつかせてしまったことまでもが申し訳なくて。
気付けば足を動かしていた。
脇目も振らずに走る。走る。
どこへと決めたわけでもないけれど、逃げ出したくて堪らなかった。
分かっている。
渡辺先生の発言は、ツンを傷付けようとしたのでもなく、
思わず──疲れて、ぽろりと零してしまっただけに過ぎない。
それでも、裏切られたような気持ちを抱いてしまう少女を、誰が責められようか。
#####
-
──携帯電話の着信音で、ツンは我に返った。
胸の奥が重たい。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
携帯電話の画面を見る。
発信者は埴谷ギコ。
ツンは歩を進めながら電話に出た。
ξ゚⊿゚)ξ「もっしー」
『ツン! ちょっと大変なことになってんのよ!』
ξ゚⊿゚)ξ「私だって今けっこうメンタルが大変なことに……。
……んで、何? まさか、しぃ検事に恋人でも出来たとか? 男と女どっち?」
『冗談言ってる場合じゃないわよ!』
──次いで発されたギコの言葉に、ツンはしばし声を失った。
*****
-
支援
-
数日後。
この日は、朝から町の空気がおかしかった。
とはいっても、それを感じ取ることが出来たのは内藤を始めとした一部の者だろう。
( ^ω^)(何なんだお……?)
道端で見かける幽霊や妖怪が、どことなくそわそわしているのだ。
人間はごく普通に、いつも通りの日常を送っている。
おばけだけが何やら騒がしかった。
( ・∀・)「──うちでゲームやろうぜ」
放課後、お年玉で新作のゲームを購入したと自慢げに語っていたモララーは
内藤達にそんな提案をした。
(*^ω^)「行くお!」
( ・∀・)「弟者とヒッキーは?」
(-_-)「お邪魔しようかな」
(´<_` )「行く」
-
( ・∀・)「んじゃ行こうぜ。ついでにジュースとか買ってこう」
話がまとまり、皆コートを着込んだ。
寒がりのヒッキーは更にマフラー、手袋と完全防備。
内藤は窓から外を見下ろした。
冬は、日が落ちるのが早い。
さらに今日は雲が多くて、一時間ほど前から雨が降り続いている。
雨が激しくなる前にモララーの家に着けばいいのだが。
( ^ω^)(──やっぱり、何か変だお)
コンビニから出て、内藤は傘を開きつつ辺りを窺った。
霊の行き来が多い。
普段であれば、彼らはどことなくひっそりとしているのに
今日は町中のあちこちにふらふらふわふわと。
こんなに彼ら全体に落ち着きがなくなるなんて、盆や年末年始ぐらいなものなのだが。
もう1月も下旬で、正月気分など抜け切っている時期だろうに。
-
(;・∀・)「なあ、さっきのコンビニ寒くなかった?」
(-_-)「普通に暖房きいてたと思うけど……」
(;・∀・)「やけに視線も感じたしさあ」
(´<_`;)「……変なこと言うなよ」
( ^ω^)「ジュース売り場の前でずっと悩んでるから体が冷えただけじゃないかおー?」
( ^ω^)(……コンビニの中も、おばけで溢れてたお)
早くモララーの家に行こう、と言って、内藤は足を速めた。
嫌な予感がする。
ぱたぱたと傘を叩く雨の音がそれを助長した。
( ・∀・)「あ、急ぐんなら近道通ろうぜ」
モララーが右へ曲がった。彼が片手に提げたコンビニの袋が、がさりと鳴る。
アパートの壁、それと空き地の高い塀に挟まれた路地があった。
いやに薄暗い。
-
(;-_-)「ここ? 蜘蛛の巣とかあるよ」
( ・∀・)「避けりゃいいだろ」
(;^ω^)「ぼ、僕はここ、何か嫌だお」
──右の壁にくっつくようにして、黒い人型の何かが立っている。
人の影がそのまま立体的になって立ち上がったような、不気味な姿。
異様に細い手で手招きしていた。
内藤は弟者を見上げると、モララー達には見えないように表情を消して、無言で首を振った。
弟者の方はそれで理解してくれたようだ。一気に青ざめる。
(´<_`;)「……モララー、普通の道行こう。
路地は雪が積もったままだし、転びそうで危ないじゃないか」
( ・∀・)「こんなん余裕だって」
モララーが鞄と袋の持ち手を傘の柄に掛けた。
そうして、空いた手で内藤の右腕を掴む。
止める間もない。内藤を連れ、路地をずんずん進んでいく。
(;^ω^)「おっ!?」
(´<_`;)「モララー!」
-
(;^ω^)「も、モララー、左! 左のほう歩くお! そっちの方が──ええと、雪が少ないから!」
( ・∀・)「はいはい」
左の塀に寄る形で路地を進む。
黒い影の前を通り過ぎる際、じっと見つめられている気配を感じたが、
こちらに手を出してはこなかった。
(;-_-)「待って、2人とも!」
(´<_`;)「……左な」
少し遅れて、弟者が諦めたように路地に入った。
続いてヒッキーも。
壁に傘を引っ掛けないよう気を付けながら。
( ・∀・)「ブーンって、こういう細い道とか嫌いだよなー」
( ^ω^)「……夕方の、人がいない暗い道にはおばけが出るってよく言うお」
( ・∀・)「お前も結構ビビりだなあ」
「──うわあ!?」
後方から悲鳴があがった。
内藤とモララーは同時に振り返る。
-
(´<_`;)「何だ何だ」
(;-_-)「ま、マフラー、何か、変な風に引っ掛かっ……!」
(;・∀・)「どうしたー!?」
傘も鞄も手放して、ヒッキーがマフラーを引っ掴んでいた。
踵を返して彼のもとに向かう。
ヒッキーが巻いているマフラーの両端が、壁に縫い止められたようにくっついている──
弟者とモララーには、「そう」見えているだろう。
内藤の目だけが、違う光景を捉えていた。
(;^ω^)(こいつ……!)
件の人影が、ヒッキーのマフラーを掴んで締め上げているのだ。
-
(;-_-)「……っ、……っ!」
(;・∀・)「ヒッキー、おい大丈夫か!?」
(´<_`;)「何だこれ……マフラー取れないぞ!」
(;^ω^)「ヒッキー!」
自身も荷物を放り、マフラーを壁から離そうとする弟者とモララー。
内藤は人影を蹴飛ばそうとしたが、感触はあるものの、びくともしない。
ヒッキーがもがけばもがくほど、首が締まっていく。
徐々にヒッキーの顔が苦悶の表情へ変わり、弟者達の焦りも激しくなった。
降り注ぐ雨の不快さが更にそれを煽る。
(;^ω^)「──ハサミ! 誰かハサミ持ってないかお!? それでマフラー切るんだお!」
(´<_`;)「持ってないよ、そんなもん!」
(;・∀・)「お、俺、誰か呼んでくる!」
-
モララーが駆け出そうとし、弟者が僅かに手の力を緩め、そして内藤が顔を上げた、その一瞬。
内藤の顔の真横を何かが通った。
華奢な──女の手。
その手が触れた瞬間、黒い人影が消えた。
いや、違う。
手が触れたからではない。その手に持った、札が触れたから消えたのだ。
(;-_-)「──っはあ……っ!」
ヒッキーが地べたにへたり込んだ。
空気を吸い込んではすぐに吐き出して──と荒々しく呼吸を繰り返す。
(;・∀・)「ひ、ヒッキー、良かった……。……ていうか誰?」
(´<_`;)「あ……」
モララーと弟者は内藤の真横を見て、きょとんとしている。
内藤もまた、そちらへゆっくりと視線を送った。
-
白いブラウス。襟の下を通って結ばれたスカーフ。クリーム色のコート。赤い傘。
微笑む口元には、ただの犬歯と言うにはあまりに鋭い牙。
ζ(゚ー゚*ζ「こんなとこ、通っちゃ駄目ですよ」
──照屋デレ、その人だった。
吸血鬼にして、N県警のおばけ課職員。
去年の夏、内藤とドクオを散々追い詰めてくれた2人組の片割れ。
内藤は戸惑う。
彼女は、こんなところにいる筈のない人(『人』ではないが)だ。
混乱したままデレを凝視していると、突然、背後から顔を鷲掴みにされた。
そのまま、ぐいと後ろに逸らされる。
空を仰ぐ内藤の顔を、男が上から覗き込んだ。
-
( ^ν^)「ないとーくーん。お礼はー?」
( ^ω^)「……」
デレがいるなら、やはり、こいつもいるだろう。
鵜束ニュッ──N県の、おばけ法専門の検事。
にやにやと笑うニュッの顔に唾を吐きかけてやりたくなったが耐えた。
手を引っぺがし、デレの方へ視線をずらして早口に呟く。
( ^ω^)「……助かりましたありがとうございます」
ζ(゚ー゚*ζ「どういたしまして。皆さんお怪我は? 特にそこの君、大丈夫ですか?
いやー飛び出した釘にマフラーが物凄く引っ掛かってたみたいですねー、はっはっは」
(;-_-)「も、もう大丈夫です……ありがとうございました……」
(;・∀・)「誰? ブーンの知り合い? 弟者も知ってんの?」
(´<_`;)「ま、まあ……」
ζ(゚ー゚*ζ「以前、ちょっとね」
拘束札──おばけを捕まえるための札──をしまいながら、デレが弟者に微笑みかける。
弟者はびくりと身を竦ませ、モララーの後ろに隠れた。
-
ζ(゚、゚*ζ「ありゃ。嫌われちゃいました?」
( ^ω^)(吸血鬼だってバラしちゃったからなあ)
かつてはデレを見て顔を赤らめていたというのに。
あれも最早、弟者にとってはほぼ黒歴史とかいうやつか。
内藤は2人から離れ、先程の騒ぎの際に手放していた荷物を拾った。
混乱しつつ、モララー達も倣う。
(;・∀・)「早く行こう。うちのタオル貸すから」
コンビニの袋が内藤の目に入る。勿論それも拾い上げた。
スナック菓子がジュースのペットボトルに押しつぶされてしまっている。
中身がいくらか砕けたかもしれない。
咳払いを一つして、内藤は検事と刑事に振り返った。
(*^ω^)「ありがとうございましたお!
とっっっっっっっっても優しいお2人が来てくれて良かった!!
それじゃあさようなら」
目一杯の嫌味を込めて言い切り、背を向ける。
彼らが何故ここにいるのか──という疑問は残るが、
わざわざそれを探るために彼らと会話を交わすのも億劫だ。
-
立ち上がったヒッキー達もデレに礼を言い、路地を抜けるために歩き出した。
慌てた声が飛んでくる。
ζ(゚、゚;ζ「あっ、ちょ、ちょっと! 内藤君に用があって尾行してたんですけどお!」
(;・∀・)「え!? 尾行!? どういうこと!?」
( ^ν^) ☆))>、゚;ζ「すみません口が滑りましたっ!」
⊂彡
内藤は足を止めた。
誰に対して何をどう言えば良いのか、頭を押さえて考え込む。
( ^ν^)「ひとまず内藤以外のガキは散れ。お前らには何の用も無い」
(;-_-)「ひゃいっ」
(;・∀・)「え……でも」
-
ζ(゚ー゚*ζ「あ、私、警察の者です。お正月の行方不明事件について調べてて、
内藤君にちょっと訊きたいことがあるんですよ。ほら警察手帳」
(;・∀・)「警察!? 何だよ、何これ、どういうこと!?」
──行方不明。「神隠し」。
内藤は溜め息をついた。
どういうわけで彼らが出動したのかは分からないが、おばけ課が関わる類の事件ではあるようだ。
(;^ω^)「ごめんおー……みんな、先に行っててくれお」
言って、踵を返す。
ニュッが一睨みすると、モララーとヒッキーは怯えた様子で行ってしまった。
(´<_`;)「……またブーンに変な疑いかけてるんじゃないだろうな」
ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ。ただ、内藤君は容疑者といくらか関係を持っているので
お話ししたいことが色々あるんです」
( ^ω^)「──容疑者と?」
検事の方へ視線をやる。
それを受け、ニュッはわざとらしく腹を押さえて笑った。
-
( ^ν^)「冷てえ目。さっきの可愛げはどこ行ったよ」
ζ(゚、゚*ζ「いいから本題進めましょうよ。
──とにかく用があるのは本当に内藤君だけだし、
内藤君に不利益なこともないと思うので、弟者君は安心してお友達のところへどうぞ」
( ^ω^)「……その話って、どれくらいで終わります?」
ζ(゚、゚*ζ「さあ……とりあえず、今日はお友達と遊ぶのは諦めていただくしか」
( ^ω^)「さっそく不利益じゃありませんかお。……弟者、これ持ってってくれお」
(´<_`;)「あ、ああ。何かあったら電話くれよ」
コンビニの袋を弟者に差し出す。
手を伸ばしつつ、弟者は訊ねた。
(´<_` )「……その容疑者って、誰なんですか」
もしかして聞いてないんですか? 首を傾げ、デレは問い返す。
何も知らない。内藤が表情で示すと、彼女は勿体ぶるように、ゆったり微笑んだ。
-
ζ(゚ー゚*ζ「カンオケ神社の神様、オサム様ですよ。神隠しの罪で逮捕されました」
内藤は渡し損ねた。弟者も受け取り損ねた。
袋が地面へ落ちる。
ばきばき、スナック菓子がジュースの重みで粉々に砕ける音が響いた。
*****
-
ζ(゚ー゚*ζ「この町では、おばけ法の裁判官はオサム様のみですから。
悪いことをしたいおばけ達にとっては、彼が一番の脅威なわけでして」
軽やかな足取りのデレは、にこにこ笑いながら言った。
彼女から借りたハンカチで鞄を拭いつつ内藤はそれを聞く。
自分のハンカチは顔や首を拭いた段階で使い物にならなくなってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「余計な騒ぎになるのを防ぐために、彼が逮捕されたことはなるべく広めないようにしてたみたいですが
まあ、人の口に戸は立てられぬと言いますしね。
とうとう町中のおばけに知られてしまったようです」
ζ(゚ー゚*ζ「それで、どうも、このごたごたに乗じて
好き勝手やっちゃおうって思ってる方々がいるみたいですね」
( ^ω^)「さっきの黒いやつみたいな?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですそうです。まあ、今夜の内には収まりますよ」
( ^ω^)「どうして分かるんですかお」
ζ(゚ー゚*ζ「ヴィップ警のおばけ課の人達がパトロールしてますし、
近い内、他県から裁判官──神様が、裁判を取り仕切るためにいらっしゃいますので」
あの、フォックスとかいうすぐ泣き出す神様が来るのだろうか。
彼(彼女?)も、悪ではないのだろうけれど、些か流されやすいところがある。
果ては不当な判決を下されかけた思い出もあるから、内藤が若干の苦手意識を抱くのも無理はあるまい。
-
( ^ω^)「……裁判官をやるだけなら、わざわざ遠くから呼ぶ必要ないんじゃありませんかお?
この県の他の地域でだって、幽霊裁判やってる神様はいるでしょうし。
それにどうしてお2人まで──」
( ^ν^)「今回の裁判の担当検察官は俺だ」
いくらか予想はついていた。
が、疑問が尽きるわけでもない。
( ^ω^)「しぃさんは」
( ^ν^)「人手が不足してる地域では、裁判官と検察の馴れ合いが間々ある。
情に絆されて生温い捜査されちゃ堪ったもんじゃねえ」
ζ(゚ー゚*ζ「人間の法なら、この場合は弾劾裁判ってやつになるんでしょうが……。
おばけ法なのでね。裁判官相手でも、いつも通りの幽霊裁判をするしかありません」
( ^ω^)「……それで、馴染みも情も薄い他県の検事さんや裁判官が呼ばれたってことですかお」
( ^ν^)「本当ならI県に話が行くみたいだったがな。ねじ込んだ」
-
( ^ω^)「──弁護士の方はどうなるんですかお? それも他県から?」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、弁護なら、被告人をよく知る人の方がいいでしょう。
というわけで、出連先生が任命されるかと思います。
オサム様が他の方を指名しない限りは」
この町だって、弁護士がツン一人しかいないわけではないという。
ただ、長続きしている──オサムとの関係も深い──という点で言えばツンが適任なのだそうで。
出連、と聞いてニュッが肩を震わせた。
口を押さえているが、笑いを堪え切れていない。
実に嬉しそうだった。
( ^ν^)「ひっさしぶりだなあ……あのアマ元気か?」
( ^ω^)「お陰様で、変わりなく絶好調ですお」
( ^ν^)「それはそれは。泣かせ甲斐のある」
こちらも変わりなく性根が腐っている御様子。
-
ζ(゚ー゚*ζ「久々に大きな事件を任せられた上、相手が出連先生ですからね……。
ニュッさん楽しみすぎて昨日あんまり寝られなかったそうですよ」
( ^ω^)「小学生ですかお」
( ^ν^)「何とでも」
ははは、と今度は不釣り合いに爽やかな笑い声をあげ、
濃灰色のコートを纏ったニュッが大股で歩いていく。
先程から笑いっぱなしなところを見るに、たしかに上機嫌ではある。
ζ(^ー^*ζ「ニュッさんが楽しそうだと、ぼろかすに負けて不様に喚くとこが見たくなっちゃっていけません」
( ^ν^)「この地にお前を捨てていくのもいいなと考えればますます楽しい。
ここで頭の軽い吸血女が悪さしようが何しようが、俺が責任問われる筋合いはねえ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですねえ、ニュッさんのクッソ不味い血を吸い尽くして死体を山中に埋めてから
私は身をくらまし、内藤君や内藤君のお友達みたいな
ぴちぴちの男の子たちの血を吸いつつ海外逃亡といきましょうかね」
( ^ν^)「てめえ一週間メシ抜きな」
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、やだやだ、冗談ですよお。私は世間様の平和のためにN県警に身を捧げ骨を埋める所存で」
検事様と刑事様の大変仲のよろしい会話を聞き流しつつ、
内藤は覚えのある道に出たことに気付いた。
-
( ^ω^)「──どこに行く気ですかお」
( ^ν^)「カンオケ神社に決まってんだろ。……ん、何だ、道間違ってるか?」
( ^ω^)「……いえ」
ここからでも行けないことはないだろう。
けれど。進みたくはない道だ。
( ^ω^)「別の道にしませんか。僕、案内しますから」
そんな内藤の様子に、立ち止まったニュッは無表情で思案し、顔面にべたりと笑みを貼りつけた。
しまった、と思う。
仔細は分からないまでも、内藤が何かしらを嫌がっていることは察したようだ。
( ^ν^)「このまま行こう」
ζ(゚、゚*ζ「何ですか、よく分かんないけど内藤君、困ってるでしょ。行くならニュッさん1人でどうぞ。
内藤君は私と別の道行きましょうか」
( ^ω^)「……。いいですお、この道で」
そもそも、絶対に嫌、と言うほど拒絶しているわけでもない。
あれは──何年も前のことだし。今更。
それにこの2人がいる以上、片一方が内藤に敵意を持っているとしても、まさか危ないことにもならないだろう。
-
歩く。進む。
車一台しか通れないような道。
左手には木々が並んでいる。山──ヴィップ小学校の裏山だ。
山の向こうに小学校がある。ここからでは内藤達には見えないけれど。
右手には家がぽつぽつとあって、やがて、それが途切れた。
そうしてしばらく行った先に、それが見えた。
( ^ω^)「……」
空き地に積まれたガラクタを、雨が打つ。昔に見たときより、さらに増えている気がする。
上の方は雪を被っていて、どこか適当な場所を軽く押しただけで雪崩が起きそうな危うさだ。
幼き日の内藤がトソンに助けられた、「宝の山」。
そこに座る2人組を見付けて、ざわざわ、肌が粟立った。
( ∵)( ∴)
穴ぼこしかないような顔に、異様に細長い腕。
薄い手に付いた指は4本だけで、指の股がやたら深い。
-
頭と胴体がアンバランスなおばけは、
空き地の前を通る内藤達を見つめて──目は無いけれど、顔を向けて──いた。
雨は奴らを素通りする。
昔、内藤をここで捕まえようとしたおばけ達の内の2体だ。
顔などの様相は覚えていないが、あの腕は見覚えがある。
向こうは、内藤を認識しているだろうか。
ともかく、空き地を通り過ぎるまでの間、ずっと視線を向けられていた。
ζ(゚、゚;ζ「……あれ、何でしょうね。
あそこにいた2人組……悪い感じはしなかったですけど」
振り返っても空き地が見えないような場所まで来たところで
詰めていた息を吐き出し、デレが言った。
( ^ν^)「長いことゴミ溜めにされて土地が汚れて、雑霊が寄ってきてんだろう。
害を加えようって感じはなかったから、まあ気にする必要は無いんじゃねえか」
( ^ω^)「……僕、あれに危害加えられたことありますけど」
足を掴まれ引きずられたときの恐怖は、いま思い出しても肌がざわつく。
幼少期の「恐怖体験」を2人に聞かせると、ニュッからは、まあ予想通りのリアクション。
-
( ^ν^)「ちびって泣き喚く内藤ホライゾン──さぞ楽しい光景だったろうな」
( ^ω^)「ちびっちゃいませんお」
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんはクズですねえ……。
……でも、内藤君の話とさっきの実物を比べると……
違和感があります。そんな危険なおばけには見えませんでしたが」
( ^ω^)「僕が小さかったから、必要以上に怖がってしまっただけでしょうかお」
そんなところかもしれない。
奴らは、ただ内藤をからかっただけで。
あるいは、当時、本当に内藤へ危害を加えようとしていたのは
先程の2体の他にいた、別のおばけだったのかも。
──考えても、分かりはしない。
内藤は首を振った。
*****
-
カンオケ神社の周りは、何だか凄かった。
幽霊妖怪の人だかり──「おばけだかり」が出来ていたのだ。
鳥居の向こうにまで入っていく者はいないのだけれど、
その前に大量のおばけが屯して、覗き込むように神社の様子を窺っている。
( ^ω^)(野次馬か……)
ζ(゚ー゚*ζ「はいはーい、警察と検察が通りますよー、通らせてくださーい」
( ^ν^)「どかねえと公務執行妨害罪適用すんぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「通行の邪魔程度じゃ罪には当たりませんから皆さん御安心を」
素直に、おばけ達が道をあける。
内藤はコートに付いているフードを深く被った。傘も心持ち前へ傾ける。
不特定多数のおばけに顔を知られたくない。
鳥居を潜り、手水舎で手を清め、拝殿の前に立つ。
何本か立て掛けられた傘。雨に濡れない位置に並べられた靴。間違いなく客がいる。
ニュッは閉じた傘を同様の位置に立て、拝殿の格子戸を手の甲でがんがん叩いた。
-
( ^ν^)「失礼」
中からの返答は待たずに格子戸を開ける。
ニュッさん、と咎めるように名前を呼んでから、デレは拝殿内へ敬礼してみせた。
ζ(゚、゚*ζ「N県警おばけ課所属、照屋デレ、到着いたしました!」
( ^ω^)「……失礼しますお」
中にいるのは、想像と違わぬ顔触れ。
ξ゚⊿゚)ξ「──内藤君。どうして……ってかコートすごい濡れてるわよ」
その内の1人、ツンが目を丸くしている。
内藤は会釈し、次いで隣へ意識を向けた。
ツンの瞳もそちらへ移動する。
( ^ν^)「……よお、よお、出連ツン。5ヵ月ぶりか」
急ぎつつもしっかり靴を脱いで拝殿に上がるニュッの顔は、
それはもう楽しそうで、そして声から憎悪が滲み出ていて。
他の誰にも目をくれず真っ直ぐ歩いていき、座り込んでいるツンを見下ろした。
-
( ^ν^)「内藤もそうだったが、久々に見ると懐かしさより腹立って仕方ねえな。しっかし何だその阿呆面。俺が来るの聞いてなかったか? まあそりゃビビるか」
ξ゚⊿゚)ξ「あなた──」
ツンは眉根を寄せる。
そうして、沈黙。
ニュッの顔を睨み上げつつ、口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……誰だったかしら……」
( ^ν^)
内藤とデレも取り急ぎ靴を脱いで、小走りでニュッに近付いた。
両脇からニュッの顔を覗き込む。
ねえ今どんな気持ち? そんな感じで。
ニュッは頬をひくひくと痙攣させていた。額に青筋。
ζ(^ヮ^*ζ
デレはとても嬉しそうだった。
-
(#^ν^)「……ユーモアのセンス最低レベルだな……。
それとも体付きだけじゃなく脳味噌まで貧相な造りしてんのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい……無害な浮遊霊と中学生をドヤ顔で起訴した挙句に大敗するような恥ずかしい人、
私の知り合いにはちょっといなくて……。
大丈夫? 男性機能が元気なさそうな顔してるわよ?」
(#^ν^)「覚えてんじゃねえか!!
っつうか余計な情報くっついてんぞ誰だバラしたの!」
( ^ω^)「裁判の後、雑談してるときについ……」
ニュッは三度ほど舌打ちし、コートを脱いでデレに投げつけてから、どっかと腰を下ろした。
ニュッと自分のコートを丸めて置いて、デレが静かに正座する。
内藤はツンの隣へ。
ξ゚⊿゚)ξ「コートと鞄、そこに積んである新聞の上で乾かしときなさい。
私が持ってきたものだから汚していいわ」
( ^ω^)「お言葉に甘えますお」
ほんの数秒、沈黙が生まれた。
デレが、正面に座る相手へ向けて、口を開く。
-
ζ(゚、゚*ζ「……お初にお目にかかります、改めて自己紹介をば。
N県警、おばけ課に勤めております、照屋デレです。
こちらはN地検の鵜束ニュッさん」
( ^ν^)「どうも」
2人は深く礼をする。
それを受けた相手は、うん、と返答なのか何なのか、呻くような声を漏らした。
【+ 】ゞ゚)「話は聞いている。よろしく頼む」
オサムは──これから「被告人」となる神様は、特別、普段と変わりあるようには見えなかった。
怒るでもなく、恥じるでもなく。
彼自身に何かしらの変化は一つもない。
あるとすれば、彼の周囲。
オサムを囲むように立てられた杭。それにぐるりと縄が張られている。
誰も説明してくれなかったが、オサムを閉じ込めるための処置であることは内藤にも察しがつく。
挨拶と幾許かのやり取りが済むと、ひとまず区切りをつけたのか、ニュッが顔の向きを変えた。
-
( ^ν^)「おう、猫田のお嬢ちゃん。『お坊ちゃん』の方がいいか?」
(*゚−゚)「……」
少し離れたところに座る、猫田しぃ。
隣には埴谷ギコも。
(,,゚Д゚)「しぃ、ちゃんと挨拶なさい」
(*゚−゚)「……」
( ^ν^)「いい、いい。どうでも。
とりあえず、さっさと起訴しといてくれ。後は俺が引き継ぐ」
しぃは機嫌が悪いのか、顰めっ面。
だがニュッ自体に不満があるというわけでもなさそうだ。
恐らくは──他所者が、この地の神様を裁こうというのを快く思っていないのだろう。
( ^ν^)「ああそうだ。お付きのカマ刑事、しばらく借りるぞ。
ヴィップ警の奴らも」
(*゚ー゚)「……ご自由にどうぞ」
(*,゚Д゚)「優しくしてね」
しぃは分厚いファイルを2冊ほどニュッに差し出した。
事件の資料であろう。
-
( ^ν^)「これに目を通す時間を少し──5分ほど。それからいくつか話でも」
【+ 】ゞ゚)「うむ。しかし、こちらに来て早々忙しいな。
いくらか休んでからでも構わんが」
ζ(゚、゚;ζ「ありがたいお言葉ですが、神様を捕まえたままゆっくりもしていられませんので……」
しぃは何か言いたげにしていたが、目を伏せた。
そうして自分の出番は終わったとばかりに腰を上げ、オサムやツンに黙礼してから
さっさと拝殿を出ていってしまったのであった。
(,,゚Д゚)「しぃのこと送ってきますわね」
言って、ギコも気まずそうに退散する。
残ったのは内藤とツン、オサム、そしてニュッとデレ。
( ^ω^)「──くるうさんは?」
内藤は拝殿内を見渡した。
いつもオサムの傍にいる彼女が、今はいない。
-
【+ 】ゞ゚)「泣いて暴れるんでな、本殿の方でショボンに相手をさせている」
ξ;゚⊿゚)ξ「さっきまでここにいたんだけどね、
オサム様はそんなことしない何も悪くないってギコ達に怒り狂うもんで大変だったわよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そもそも逮捕したのギコじゃないし、しぃ検事もあんまり起訴に乗り気じゃないから
あいつらに当たったところで仕方ないんだけどねえ……」
然もありなん。
彼女のオサムに対する陶酔ぶりからして、この事態は理解の範疇を越えているだろう。
怒り、暴れる姿も容易に思い浮かべられる。
内藤は、黙してファイルをめくるニュッを一瞥した。
( ^ω^)「……どうして、裁判長が逮捕されたんですかお?
何か証拠があったわけでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ……まあ」
ζ(゚、゚*ζ「この拝殿から、行方不明だった児童の持ち物が見付かったんです」
( ^ω^)「え、ここ現場?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうかしらね。私からは何とも」
-
( ^ω^)「子供──……その子本人は」
ζ(゚、゚*ζ「残念ですが、どこにもいないらしいんですよ」
内藤はオサムを見る。
オサムは反応もせずに黙っている。
ξ゚⊿゚)ξ「……で、私、席外すべき?
これからあなたたち取り調べするんでしょう?」
ζ(゚、゚*ζ「あのう、内藤君もですけど、出連先生にも聞き込みしたいんです。
とはいっても、出連先生の場合は法廷での弁護材料と被る可能性もあるでしょうから
二度手間になってしまうところもあるかもですが……」
( ^ν^)「たっぷりお話ししようぜツンちゃん。積もる話もあるしよ」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤くん助けて! 私が美人すぎるばかりにモテて困っちゃうの!」
( ^ν^)「くたばれ」
くるうを呼べるか、とデレが問う。
くるうのような「監視官」はN県にはいないというので、諸々を確かめたい気持ちもあるのだろう。
難しいでしょうね、とはツンの言。
オサムを犯人だとしている彼らに、くるうが協力するとは思えない。
デレは諦めたようで、溜め息をついた。
-
( ^ν^)「……一部否認」
書類の文字をなぞり、ニュッが呟く。
面白そうだとでも言わんばかりの表情。
( ^ω^)(──『一部』?)
一部否認。
ということは、どこかは認めている。誰が。オサムが、だ。
神隠しの容疑で逮捕され──「一部」否認し、また一部は認めている?
内藤はオサムへ顔を向けた。
尚も、彼は平素通りのまま微動だにしない。
そこへ、ニュッの声が耳に入った。
( ^ν^)「渡辺アヤカ……証人に使えそうだな」
内藤の隣で、ツンの体が揺れる。
ξ゚ -゚)ξ
彼女は不意を突かれたような顔をしていた。
雨音が強くなっている。
*****
-
(#゚ー゚)「散れ! 悪さはするなよ!」
神社の前に群がるおばけに怒鳴り、しぃが手を振り回す。
彼女が不機嫌であるのを知るや、おばけ達はさっさと退散していった。
(;,゚Д゚)「やめなさいって。
あんた、検事ってだけで白眼視してくるおばけもいるんだから。
嫌われるのは損よ」
(#゚ー゚)「ふん」
──鵜束ニュッ。N県ニューソクの検事。
彼の不遜な態度はさして気にしていない。
そこは、自分も人のことを言えないからだ。
ただ、ヴィップ町と何ら馴染みの無い彼らが捜査するというのが気に入らない。
慣れない土地ゆえに不備が出るのではないかと思うと焦れったい。
まあ、しぃが一番腹を立てているのは、己が今回の件に不要であると判断されたことなのだが。
-
他県の検察に任せると決まった際、協力くらいはさせろと申し出たのに
いいから大人しくしていろと両断された。
オサムに対して手心を加えられても困る──と。
(#゚ー゚)(この僕が! 面識があるからって贔屓するような人間だと思ってるのか!
というかそれ以前の問題だ! まだ充分な捜査を行えていないじゃないか!)
ζ(゚、゚*ζ「すいませーん」
(,,゚Д゚)「あら」
拝殿の方からデレが駆けてくる。
どうしたのとギコが訊ねた。
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんが、資料抜けてるんじゃないかって……」
口の端に牙が覗く。吸血鬼だというのは事前に聞いている。
前科者である、とも。それがまた気に食わない。
聞けばニュッはデレの監視役でもあるそうではないか。それで事件に集中できるのか。
まあ──あまり不満を示すのも失礼だとは分かっている。
言っても彼らはN県ではいくつも功績を残しているというし。
しぃは頭を振り、片手で鞄を探った。クリアファイルの感触。
-
(*゚ー゚)「申し訳ない、一つ渡し損ねていました」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、いえいえ。ありがとうございます。
ごめんなさいね、いきなり来た他所者が偉そうに……。
ニュッさんああいう人で」
(*,゚Д゚)「あたしは割と嫌いじゃないわあ。好みってわけでもないけど悪くはないの」
うふふ、とギコが笑う。
あらニュッさんが喜びますね、とデレ。絶対に嘘だ。
浮かぶ不満を少しばかり言葉に織り交ぜ、吐き出す。
(*゚ー゚)「……どうして他県の、それも若手の検事がこんな大きな事件を任されたんだろう」
ζ(゚、゚*ζ「癪に障る事実なんですが、一応ニュッさんは優秀でしてね。
夏の裁判でやらかしたので少々お灸を据えられましたが、
今回の件も、まあ、チャンスということでお話を頂けまして」
頂けたとはいっても、それとなく持ち掛けたのはニュッさんですけど──と付け足される。
他県の検察へ協力が仰がれるとの話を聞きつけたニュッの行動は早かったという。
動機はどう考えてもツンだ。
些か私怨じみた因縁であるようだが、まあ彼の気持ちは分からないでもない。
しぃだって、あの女の鼻を明かしてやりたいと常々考えているし。
-
ζ(゚、゚*ζ「それじゃあ──何かありましたら、また」
クリアファイルを抱えたデレが頭を下げ、馳せ戻っていく。
しぃは体の向きを変え──
(*゚ー゚)「……ん」
道端に立つ子供に気付いた。
| ^o^ |
小学校低学年ほどの少年。
季節外れのTシャツに短パン。傘も差さず、ぼんやりとした顔でしぃを見つめている。
けれど雨に濡れた様子はない。
子供ということで今回の事件の「被害者」が脳裏を過ぎったが、資料にあった写真と顔が違う。
別人か。
-
(,,゚Д゚)「あら……どうしたのかしら」
(*゚ー゚)「……放っておけ。そこら辺の浮遊霊だろう」
少年に背を向け歩き出す。
ギコは気遣わしげに少年を見ていたが、やがてしぃに並んだ。
──が。
(*゚ー゚) ガクンッ
後ろからコートを引っ張られた。
振り向く。
| ^o^ |
少年が、コートの裾を引っ張っていた。
-
(*゚ー゚)「……何かな」
| ^o^ |
答えようとしているのか、口をもごもご動かしている。
ギコがしゃがみ込み、少年の頭上へ傘を翳した。
別にそうする必要もないのだが、気分というやつだろう。
(,,゚Д゚)「何かご用事?」
| ^o^ |「…… あ う」
ようやく声を出す。
もたつく舌が、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
| ^o^ |「お おさむさま おさむさま……」
(*゚ー゚)「オサム様がどうした。君も野次馬か?」
| ^o^ |「おさむさま…… み みました みた……」
(*゚ー゚)「何を」
苛立つ。声に険が滲んだ。
怯えた少年がギコの影に隠れる。
ギコがしぃを咎めた。
-
しばらく、しぃが少年を睨み、ギコが少年の頭を撫で、少年がしぃにびくびくする光景が続いた。
| ^o^ |「ぼく」
ようやく少年が再び口を開く。
そうして彼は、言ったのだ。
| ^o^ |「みました…… おさむさま…… きらきら きらきら……」
──それから、少年は全てを語り終えたような顔で口を閉じた。
しぃから苛立ちは消えていた。
代わりに生まれたのは困惑。
この少年が何を言いたいのか、まったく分からない。
しぃは弱り果ててギコを見た。
ギコも似たような表情をしていた。
雨は一層強く。遠くで雷が鳴っている。
case8:続く
-
今回の投下終わり
読んでくれた方、Romanさん、ありがとうございます
次回投下日は未定
目次
幕間 >>60
case8 前編>>131
-
おつ!
相変わらず面白いな
くるうが出てくるのが楽しみだ
-
乙でした
次回も楽しみに待ってます
-
あるフレーズのせいで人間になりたいを読者レス付きで読んじゃったよ
-
乙です!ツン可愛かった
次回も楽しみにしてます!
-
投下くる度続きが気になってしゃーない
乙
-
乙
オサムどうなることやら
-
アサピーから溢れる危険なほどのロリコン臭さ
-
おつ!
オサム様まじか…でもニュッくんが楽しそうで何よりです
楽しみだわー
-
ニュッに今度こそ立ち直れないくらいのダメージいかないかな
-
ニュッくんはもう既に起ち治れないよ…
-
ミスがあった
一話目でギコが
(*,゚Д゚)「あれは幼稚園の保母さんで……あたしだって昔はノーマルな恋をしたものよ」
七話目でツンが
ξ*゚?听)ξ「幼稚園来の付き合いナメんな。
ねえねえ私と内藤君も乗せてってよー。いいでしょ?」
って発言してるけど、「幼稚園」じゃなくて「保育園」ってことでお願いします
今回の投下で保育園って書いちゃったし昼寝の描写も入れてしまったし
一話目でギコも「保母さん」って言っちゃってるし、保育園の方が合ってますね
探せば他にもこういう地味で微妙な食い違いがありそう
>>229
dζ(^ヮ^*ζ
-
了解!
でもツンの顔がまた呪われてる…
-
今週中に8話中編投下します
早くて水曜日、遅くて金曜日
多分VIPで
-
よっしゃ今週生きる糧ができた
-
( ^ω^)はあくしたお
-
ペースはええな
-
やったあああああああ
楽しみにしてます!
-
http://viper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1398853027/
今から投下します!
-
VIPの鯖落ちた?
-
落ちてますね……
-
何か重くなって落ちたな、リアタイ楽しみにしてたのに…!
-
やっぱりjimって糞だわ
-
過去ログ見れるのは助かりますわ
-
投下乙
なんか今回ニュッの追求がほとんど言いがかりに近いと感じた
裁判官3人を味方につける形になるのかな?だとしたら全員オサムに敵意ありありな感じだし難しそう
-
>>241
糞はたらこだろ
今回も2chがDDoS攻撃喰らってたとさ
何はともあれ乙乙
-
フォックスが裁判官として失格過ぎてウザい
前回だって感情論で決めつけて槌打とうとするし
なんでこいつ裁判長できんの
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6話まで読んだけど、8話イライラ展開ならもうちょい待つわ
-
ageちゃったsorry
-
乙乙
ロミスとピャー子のニヤニヤとは違って今回はほんのり怖くて緊張感があるね!
-
川 ゚ 々゚)『……』
【+ 】ゞ゚)『……おい。娘』
その娘は、神社の裏手に座ったまま黙りこくっていた。
右手で自身の着物の裾をいじっている。
【+ 】ゞ゚)『用も無いのにずっとそこにいられると、気になって仕方ないんだが』
川 ゚ 々゚)『……』
【+ 】ゞ゚)『おーい』
川 ゚ 々゚)『……』
【+ 】ゞ゚)『……おい』
何度呼び掛けても返事は来ない。
オサムに背を向け、娘は、じっと自分の膝を見つめていた。
【+ 】ゞ゚)『……聞こえるように話しかけてるんだがなあ……』
彼女の前へ回り込み、オサムはしゃがみ込んだ。
顔を覗き込む。
やはり何の反応も無い。
瞳を動かすことすら。
-
──オサムの姿が見えない上に、声も聞こえていないようだ。
平常時ならばそれも普通だろうが、今は、見えるように聞こえるようにと気を遣ってやっているのに。
それでも全く見えていないとなると、この娘、どうやら相当「鈍い」らしい。
【+ 】ゞ゚)『……』
睨むように、オサムは娘を見つめ続ける。
彼女の呼吸がオサムの顔に当たるほど近くで。
川 ゚ 々゚)『……』
ふと、娘が顔を上げた。
ようやく気付いたか、と思ったが、そうでもなかった。
娘はオサムではなく、辺りへ視線を彷徨わせていたので。
彼女の頬が緩む。
川 ゚ 々゚)『いい匂いがする……』
娘は目を瞑り、周囲の匂いを嗅ぐような仕草を見せた。
匂いの発生源を探しているのだろう。
やがて、オサムの胸元辺りで動きを止めた。
-
川*゚ 々゚)『ふふ……いい匂い……』
オサムが身じろぎすれば、彼女もそれを追うように身をよじる。
【+ 】ゞ゚)(──なるほど)
目も耳も「鈍い」代わりに、彼女の鼻はこういったものに敏感なのだろう。
【+ 】ゞ゚)『おい。おい』
呼び掛けには、やはり答えない。
意思の疎通がとれないのなら、されるがまま匂いを嗅がせてやる義理も無い。
本殿の中に引っ込んで一眠りしたい。
だが、彼女があまりに嬉しそうな顔をしているから、ここを去るのも気の毒なような。
オサムが困っていると、突然、娘の顔が険しくなった。
鼻をつまんで視線を滑らせる。
『──くるう! こんなところにいたのか』
川 ゚ 々゚)『……くさい……』
初老の男が近付いてくる。
彼女の呟きは彼へは届かなかっただろう。
-
『仕事を放っぽり出して何やってるんだ! 旦那様がお怒りだぞ』
男は娘の腕を引っ張って立ち上がらせると、説教をしながら歩き出した。
くるうと呼ばれた娘はそれについていく。顔を顰めたまま。
2人が鳥居を潜って去っていくのを見届けて、オサムは本殿へ引っ込んだ。
それ以降、彼女はちょくちょく神社を訪れるようになった。
オサムに気付くことは、やはり、なかったが。
-
case8:神隠し罪/中編
.
-
(;'A`)「いやあ、驚いた……オサム様がねえ……。何かの間違いじゃねえのか?」
──あれから2日後。
ツンの事務所、ソファの背もたれの上で横になりつつ
鬱田ドクオは未だ信じられないといった顔で言った。
ξ゚⊿゚)ξ「前々から疑われてはいたのよ。
っていうのも、ヴィップ町では昔から子供の失踪事件がちょくちょく起きてて……
オサム様の仕業だろうって言われてきてたから」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、もちろん確固たる証拠があったわけでもないのよ。
『神』隠しって言葉のイメージで、オサム様が連想されてたんだろうと思うけど」
( ^ω^)「何にせよ、警察の方は裁判長をマークしてたわけですおね」
ツンのカップにインスタントコーヒーを注ぎ、ミルクとガムシロップを付けて渡す。
自分のマグカップにはコーヒーと牛乳を3:7の割合で、そこに砂糖を多めに。
ドクオがいるのとは逆のソファに座って、内藤はコーヒー牛乳に口をつけた。
ξ゚⊿゚)ξ「ギコみたいに、オサム様と会う機会の多い人は反対してたみたいだけど……
今回の事件が起きて、そこへ子供の持ち物が神社で見付かっちゃったでしょう」
('A`)「前からオサム様を睨んでた奴らは、そら見たことかって感じだったろうな」
ξ゚⊿゚)ξ「鬼の首とったよう、ってギコが言ってたわね」
コーヒーにミルクとシロップを注ぎ、ツンは溜め息をついた。
そんなツンを、ドクオがじっと見つめている。
-
('A`)「で、どうなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「何が?」
('A`)「オサム様。やったのか?
あんた、『見える』んだろ? 記憶とか、そういうの」
ξ-⊿-)ξ「神様とかのレベルになると無理だわ。全然」
('A`)「ふうん……。──じゃあ、あれだ、被害者の方」
ξ゚⊿゚)ξ「見付かってないし。……生きてるか死んでるかも、どうだか」
('A`)「私物は見付かってんだろ。
それに触って、こう、思念を読み取るとか……」
( ^ω^)「あ、知ってますおそれ。サイコなんちゃら」
ξ゚⊿゚)ξ「サイコメトリー? 超能力の」
('A`)「それそれ」
内藤も漫画で見たことがある。
物に宿る残留思念──これが内藤にはよく分からないが──とやらを感じられる超能力だ。
たとえばアンティークの時計に触れることで、
その持ち主だった人の記憶や感情を読み取る、とか。そういう。
たしかにツンの「追体験」も似たようなものではある。
「記憶や感情を読み取る」、その一点においては。
-
( ^ω^)「でも超能力とか言っちゃうと、僕らとはジャンルが違う気が」
('A`)「お前らの霊感だって超能力の一種っていう見方もあるんだぞ」
物を介して情報を得るサイコメトリー、相手から直接情報を得るツン、
最終的にやっていることはほぼ同じ。
似たような力であることに変わりはないのだから──とドクオが熱弁する。
(*'A`)「その気になりゃ出来んじゃねえのか?
もし本当に出来りゃ、もうほぼ無敵じゃん。格好いいじゃん」ワクワク
ξ゚З゚)ξ「うーん……。
内藤君、一番お気に入りのものとか、一番大事なものない? ちょっと貸して」
( ^ω^)「一番お気に入りのものをツンさんに触らせたくないんですけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「てめえの持ち物全部舐めしゃぶって私の唾液まみれにしてやるよ」
さて、一番大事なもの、と言われてすぐには浮かばない。
敢えて言うなら「自分自身」だが、今はそういう答えは求められていないだろう。
少し考えて、学生服の襟に付いている校章を外し、ツンの机へ乗せた。
-
ξ゚З゚)ξ「一番大事なもの?」
( ^ω^)「小学校が碌な思い出無いもんで……。
こっちの──仲のいい弟者がいる中学校に通えるようになったのはすごく嬉しかったですし、
友達できたしクラスメートもいい人ばっかりだし……大事なものっていうか思い入れがあるっていうか」
ξ;⊿;)ξ「良かったわね良かったわね内藤くん私の胸で泣いていいのよ」
(;A;)「まな板に頭押しつけても胸骨当たって痛いだけだろ」
一旦ドクオに鯖折りを決めてから、ツンは改めて校章を手に取った。
むにゃむにゃ唸り、校章を握り締めながら謎の踊りをして、最後に変なポーズを決める。
どうでしたか、と内藤が問うと、彼女は一仕事終えた顔で答えた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ふう……そうね、ツンさん愛してますという強い念を感じたわ……」
( ^ω^)「出来なかったみたいですお、ドクオさん」
('A`)「なんだ無理か。腰と膝めっちゃ痛い」
無駄な時間を過ごした。
返された校章を付け直した内藤は、ふとあることを思い出して、口を開いた。
-
( ^ω^)「この間、駄菓子屋の前でご老人が会話してたんですけど……」
老人達は、オサムが神隠しをしているだの──オサムは人を喰う神だのと言っていた。
それは事実なのか、とツンに問う。
ξ゚⊿゚)ξ「……どうかしらね。私も聞いたことはあるけど……。
ちゃんとした記録は無い筈よ。記録が無いだけなのかもしれないけど、でも──
そんなことするような人にも見えないわよね」
少し、ほっとした。
やはり、見知った者に良からぬ噂が付き纏っているのは気になるものだ。
はっきり否定されたわけでもないけれど、肯定もされなかっただけ、いくらか安心できる。
ξ゚⊿゚)ξ「ほんと、分かんないけどね。私にも。
──ねえドクオさん、ちょっといいかしら。
オサム様についての印象を訊きたいんだけど」
('A`)「あん? 裁判で使うのか」
ξ゚⊿゚)ξ「使えそうならね。無理に褒めたり、良く言ったりしなくていいわ。正直にお願い」
-
('A`)「急に言われてもな……。
節度はあると思うぞ。悪いことと、いいことの区別はついてるひとだろう」
( ^ω^)「僕もそう思いますお」
これまでの裁判を通し、悪事を行った者に対しオサムは厳しい対応をしていた。
やはり神様ということで、何を考えているのか分からないところはあるけれども
しかし良識はそれなりに備わっている筈だ。
('A`)「ただ、やっぱり……神様だからな。俺らとは考え方が違うとこもあるだろ。
もし本当にオサム様が犯人だとしても、俺は──納得するかもしれねえ。
個人的な感情としては、そんなこと、あってほしくはないが」
それもまた、内藤は同意する。
人間の幽霊ならまだしも、妖怪や神様となると、もはや内藤達とは根本からして違うものだ。
善悪の基準など、どこまで人間と一致していてどこから食い違っているのか、こちらでは判断しかねる。
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君が検事達に話したのと、ほぼ同じ内容ね」
('A`)「マジかよ。今回の検事ってニューソクのあいつだろ。容赦ねえな、少年」
( ^ω^)「ありのままを話そうとすると、やっぱりああなっちゃいますお」
今頃、彼らは証拠や証言を固めているところだろうか。
内藤は窓の外、ちらちらと雪の散る空を見た。
*****
-
(;*゚ー゚)「だから、彼は事件に関する何かしらを目撃しているようで──」
( ^ν^)「何を?」
(;*゚ー゚)「いや……それを聞き出すのが我々の仕事では」
( ^ν^)「聞き出せたのか? この2日で」
──ヴィップ警察署の一室。
長机を挟んでニュッと向かい合うしぃは、言葉に詰まって視線を逸らした。
| ^o^ |
しぃの隣に座った少年が、紙パックのストローをくわえたまま、足をぶらぶらさせている。
「ブーム」。
2日もかけてしぃが彼について理解できたのは、この名前だけだ。
-
(;*゚ー゚)「……ブーム君の中では何か明確に思い描ける像があるんだ。
もう少し時間をかければ……」
( ^ν^)「しぃちゃんよお」
左手で頬杖をついたニュッは、冷淡な瞳でしぃを見た。
そこには嘲りもいくらか混ざっている。
彼はループタイの留め具をいじっていた右手を持ち上げ、
人差し指で自身のこめかみをとんとんと叩いた。
( ^ν^)「分かるだろ。このガキ、知能に問題がある。
見たとこ7歳8歳、行っても9歳──まあ、おばけにゃ外見年齢なんかほぼ関係ないが
何にせよ見た目の割に言葉が覚束ない。
知恵遅れだ。低能とも言う」
(;*゚ー゚)「……」
| ^o^ |
豆乳──ニュッからもらったもの──を飲み終えたのか、
ずず、とストローが音を立てた。
普通に量が減ったとなると、浮遊霊等の一般霊ではなく、
それなりに実体を持つ妖怪か何かであるらしい。
ブームという名前を聞き出した時点でしぃも色々調べてみたが、
彼の来歴を窺わせるものが何も引っ掛からなかったため、
やはり人間の霊などではない、何かしらのおばけなのだろう。
-
(,,゚Д゚)「最後の一言二言は余計なんじゃないの〜ニュッちゃん」
ζ(゚、゚*ζ「そうですよ。低能って何です。ニュッさんなんか不能のくせに」
( ^ν^)「そういう悪口はいいんですかあー」
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんに対してはいいんですうー」
入口脇に立つデレとニュッの間で睨み合いが勃発したが、
ニュッの後ろに回り込んだギコが彼の肩に両手を置いたことで、すぐに治まった。
(,,゚Д゚)「どうどう。はいリラックスリラックス。肩揉んであげる」
( ^ν^)「おい。何か昨日今日と接触多いぞお前」
(*,゚Д゚)「気のせいよお。ぐほほほ!
ニュッちゃんもっと鍛えなきゃ駄目よう、これじゃ簡単に捩じ伏せられそう」
心持ち青くなったニュッがギコの手を叩き落とした。
咳払いをし、しぃとの話に戻る。
-
( ^ν^)「ともかく。こいつに『まとも』な証言は期待できねえ。
もし仮に、根気強く粘って通訳に成功したとしても
今度はその証言の信頼性に大きな疑問が生じる」
(;*゚ー゚)「……ぐう……」
ぐうの音も出ない。出たけど。
たしかに、この少年は──健常な同年代の子供達と比べると
動きや反応が鈍いし、言葉も、意味の通る文章としての形は紡げていない。
| ^o^ |
ブームは不安げにしぃを見上げた。
視線を返し、しぃは額に手を当て唸る。
| ^o^ |『みました…… おさむさま…… きらきら きらきら……』
2日前の彼の言葉。
「オサムを見た」と言いたいのは分かる。
だが、いつ、どこで、オサムのどういった姿を見たのかという肝心な部分がさっぱり分からない。
何故だかしぃとギコに懐いてしまったらしく、あれ以来しぃ達の周りをうろちょろしては
上記の言葉と更にわけの分からない言葉を繰り返しているので、どうしても伝えたいことであるようだけれども。
-
(;*゚ー゚)「……タイミングから考えて……彼は今回の事件に関する何かしらの情報を持っていて、
それを我々に提供しようとしてくれているのは間違いないと思うんだが」
( ^ν^)「被疑者の逮捕によって落ち着きのなくなった町の雰囲気に刺激され、
幼さゆえの自己顕示欲から──あるいはただ構ってほしいがために
いかにも意味深な発言をして検事と刑事に付き纏っているだけの可能性は?」
(;*゚ー゚)「それは……」
| ^o^ |「みました」
少年が口を開いた。
ニュッの冷眼を受けて若干肩を竦ませたが、負けじと続ける。
| ^o^ |「みた…… か かば…… ぺたぺた……」
( ^ν^)「カバ?」
(;*゚ー゚)「ブーム君、それも何度も聞いた……。もっと何か、他の言い方は出来ないだろうか」
少年は困ったようにしぃを見て、黙ってしまった。
こちらから「他の言い方は」だの「それ以外の情報は」と訊くと、
決まってこんな顔をして考え込むかのように沈黙する。
そして、
| ^o^ |「えんぴつ…… はこ ほん……」
こうやって、更に難解になってしまうのだ。
-
しぃは溜め息をつく。
対し、ニュッは再び左手で頬杖をついた。退屈そうな顔。
( ^ν^)「あんまり、がっかりさせてくれるなよ」
(*゚ー゚)「……何がでしょうか」
( ^ν^)「あの猫田つーの娘だっていうから、さぞ優秀だろうと思ったんだがな。
つまんねえ」
(*゚−゚)「……」
( ^ν^)「俺はな、自覚できてるくらいにはクズだが
お前の父親に対しては、ガラじゃねえが尊敬なんかもしてるんだ。
俺が検事になるより前に死んじまってるから、もちろん話でしか知らねえが……」
──しぃの父、猫田つーは、しぃが幼い頃に亡くなっている。
夜、幽霊裁判が行われる法廷に車で向かう途中
運転を誤って、真正面から壁にぶつかってしまったのだという。
事件の捜査が立て込み、疲れていたから居眠りしてしまったのだろう、と警察は言っていた。
惜しい人を亡くした──
おばけ法の関係者達は、みな口々にそう言う。
実際に会ったことのない人すら、話は知っているようで。
父が死して何年も経っても、未だに。
それほど有名だったのだ。
優秀さと人柄のおかげで。
-
( ^ν^)「まだガキだな」
ニュッはしぃに向かってそう言い捨てた。
父を引き合いに出されると──反論も浮かばない。
しぃは唇を噛んだ。
瞬間、ニュッが飛び上がる。
(;^ν^)「──ってえ!!」
(,,゚Д゚)「あらごめんなさいねえ」
いつの間にやら肩揉みを再開させていたギコが、思いきり力を入れたようだ。
謝罪の言葉はわざとらしい。
それでいくらか、しぃの気が晴れた。
(*゚ー゚)「……裁判は、いつになりますか」
( ^ν^)「来週。どうなるもんかね」
あいつが相手だからな、とニュッは呟く。
この男は、決してツンを見くびりはしていない。
少し意外に思えた。
-
( ^ν^)「というわけで俺は準備に忙しい。女子高生の妄言には付き合ってらんねえ。
そのガキを証人にしたいなら、きっちり裏付け取れた上でちゃんとした証言持ってこい」
逆に、しぃのことは完全に見下し始めた模様。
あの人より僕の方が下だというのか、と内心で憤慨しつつ、
しぃはおとなしく部屋を出た。
そのまま警察署を後にする。
──ギコから離れたせいで、ブームの姿が見えなくなってしまった。
けれども服の裾を軽く引っ張られている感覚があるので、一応、ついてきてはいるのだろう。
(*゚ー゚)(……裏付けの取れた証言……どうしろっていうんだ)
ギコは今、ニュッの方を手伝わされているため
しぃと一緒にいられる時間は減る。
そうなると、しぃには幽霊達が見えない。まともに会話も出来ない。
いや──相手をブームに限定すれば、元より「まともな会話」ができた試しもないが。
ギコが帰ってきてから、改めてブームと話してみよう。
しかし、自分にちゃんと聞き出せるだろうか。果たして。
-
(*゚ー゚)(……子供を相手にするのは苦手だ)
去年の夏、アサピーを訴えた裁判。
子供相手の聞き込みでしぃは失敗した。
──反省はしているつもりだ。
自分のやり方を非難されたのは腹が立ったが、
しぃのミスだというツンの指摘も正しかった(それがまた頭に来るのだけれど)。
それで今度の相手は、かつての凛々島リリより更に扱いづらそうな少年である。
ありのままを彼に語らせ、また、それをそのまま受け取れるだろうか。
しぃは、深い深い溜め息をついた。
*****
-
──それから一週間後。
1月30日、早朝。
∬´_ゝ`)「あら?」
雪かき当番のため、普段より早く出勤した姉者は
旧校舎の近くに見慣れぬ集団を見付けて首を傾げた。
_
( *゚∀゚)「おはようございます姉者先生!」
∬´_ゝ`)「あ、ジョルジュ先生おはようございます」
同じく当番であるジョルジュがスコップ片手に近付いてくる。
体の芯まで染みるような寒さの中でも、彼はいつも通り活発だ。
∬´_ゝ`)「職員室に荷物置いてきますね」
_
( *゚∀゚)「どうぞそのまま職員室でお休みになって!
俺が姉者先生の分まで働きますとも!」
∬;´_ゝ`)「それは流石に……。
──あの、旧校舎のところの人達って」
-
_
( ゚∀゚)「ああ、あれですか? 警察とカンオケ神社の人達みたいですよ」
∬;´_ゝ`)「警察と神社?」
どういう組み合わせだろう。
姉者が振り返るのと同時に、旧校舎の昇降口から見知った男が出てきた。
∬´_ゝ`)「──ギコ君!」
男へ手を振ると、彼も姉者に気付いた様子で
微笑みながら歩み寄ってくる。
(,,゚Д゚)「あらま、姉者。早いのね。おはよう」
∬´_ゝ`)「おはよう。ね、どうしたの? 旧校舎で何かあった?」
コートに付いた埃を払い、ギコは「ちょっとね」と返した。
(,,゚Д゚)「体育館を使わせてもらうことになって。色々準備してたの」
∬´_ゝ`)「どうして旧校舎なんか……。それに、神社の人まで呼んで──」
∬;´_ゝ`)「……ま、まさか、おばけのお祓い……!?」
-
(;,゚Д゚)「そうじゃないそうじゃない。
寧ろ、お呼びするために色々……あ、いや、違うのよ、おばけとか関係ないから」
∬;´_ゝ`)「そ……そう……」
震えそうになる姉者の肩をギコが押さえる。
──旧校舎は苦手だ。
姉者がここの生徒だった頃から、旧校舎には霊が出るだの何だの言われていた。
それに当時、ツンが時おり何かに呼ばれるようにあそこに行っていたから。
_
(;゚∀゚)「……あ、あのー、姉者先生?」
過去の記憶に潜っていた姉者の意識は、ジョルジュの声によって現在に引き戻された。
早く雪かきを手伝わないと。
∬´_ゝ`)「ごめんなさい、すぐ準備してきます」
_
(;゚∀゚)「いや、それより──その男性はどちら様で……」
ジョルジュはギコと姉者を何度も見比べている。
やがて彼の目は、姉者の肩を掴むギコの手に固定された。
∬´_ゝ`)「この人、昔から仲良くさせてもらってる方で……警察の人なんです」
(*,゚Д゚)「埴谷ですう、よろしくお願いしますねえ。
ちょっとちょっと姉者、このひと先生? 素敵な方じゃないの!」
-
∬´_ゝ`)「ジョルジュ先生っていうの。いつも何かと助けてもらってて……」
(*,゚Д゚)「あらー、いいわあ、いいわ本当に」
∬*´_ゝ`)「ギコ君ったら」
きゃっきゃと笑い合う姉者とギコ。
仲睦まじい2人の様子に、ジョルジュの顔が強張っていく。
姉者は気付かない。
_
(;゚∀゚)「……姉者先生! ほら、ちゃっちゃと雪かきしないと! 登校時間に間に合いませんて!」
∬;´_ゝ`)「あ、そ、そうですね。じゃあねギコ君。
今度また家にご飯食べに来てね」
_
(;゚∀゚)「ご飯んんん!?」
(*,゚Д゚)「雪かき手伝いましょうか?」
_
(;゚∀゚)「結構です!!」
ギコの女言葉にも構う余裕のないジョルジュは、
姉者の右手を掴んで、ざくざくと雪を踏みつけながらギコから離れた。
姉者も姉者で、別のことが気になって、ジョルジュの様子にまで気を払っていなかった。
∬´_ゝ`)(……結局、何のために旧校舎使うのか聞けなかったなあ)
.
-
∬´_ゝ`)「──ってことがあってね」
その日の夜。
夕飯を食べ終えた卓袱台を拭きながら、姉者は早朝の出来事を家族に語っていた。
l从・∀・ノ!リ人「ははあ、それで今日一日、ジョルジュ先生が落ち着いてなかったわけじゃの。
いきなりギコさんのことを訊いてくるから、
ついにストーカー容疑で警察に目を付けられたのかと思ったが……」
(´<_` )「おい妹者、そのジョルジュ先生って何だ。どういう奴なんだ。おい」
( ´_ゝ`)「妹者、弟者が面倒臭いからその話やめよう」
∬´_ゝ`)「警察と神社の人が、旧校舎で何するのかしら……」
( ^ω^)「現場検証とか、そういうのじゃありませんかお。
ほら、子供が行方不明になった事件で、神社の中から子供の持ち物が見付かったっていうし。
旧校舎にも何か痕跡あったのかもしれませんお」
テレビを見ながら、内藤が興味なさげに答えた。
道理が通っているように思えた。
たしかに先週、カンオケ神社で行方不明事件の子供に関する何かしらが発見されたというニュースがあったし。
∬´_ゝ`)「そっか。そうよね」
──わずか一瞬、内藤と弟者が目配せしたことに姉者は気付いた。
ただ、その真意までは思考が至らなかったけれど。
.
-
それから約一時間後。
居間で妹者の宿題を見てやっていた姉者は、ふと、内藤への用を思い出した。
大したものでもないけれど、忘れない内に言っておこう。
男衆3人は、既に2階の自室へ戻っている。
姉者は2階へ上がり、一番奥、内藤の部屋へ向かった。
「──行くのか」
「まあ、どうなるか気になるし……」
「そりゃ俺だって気になるけどさ」
「弟者も行くかお?」
「まさか。後で結果だけ教えてくれ」
内藤の名を呼ぼうとしたとき、室内から、弟者と内藤の声がした。
どうやら2人で話しているらしい。
∬´_ゝ`)(邪魔しちゃ悪いわね)
用事はまた後にしよう。
踵を返しかけた姉者は、次いで弟者が発した言葉に動きを止めた。
「しかし、何でまた旧校舎なんだ……。去年も一回あったけど」
-
∬;´_ゝ`)(──旧校舎?)
迷った。
躊躇し、後込みして、そして姉者は襖に耳をつけた。
「今回は傍聴人もたくさん来るだろうから、
分かりやすい場所で広いところをってことで旧校舎の体育館にしたらしいお」
「傍聴人って……N県のときみたいに?」
「多分そうなるお」
∬;´_ゝ`)(傍聴? ……N県が何なの?)
「何時からなんだ」
「9時から──そろそろ出ないと間に合わないお」
「……気を付けてな」
「途中でツンさんと合流するし、多分大丈夫。
一応バレないように行くけど、姉者さんや兄者さんには上手くやっといてほしいお」
「分かったよ」
「今度、何か奢るお」
-
∬;´_ゝ`)「っ」
立ち上がったのか、衣擦れの音がした。
姉者は慌ててそこから離れ、斜向かいの自分の部屋に飛び込んだ。
襖をそっと開け、細い隙間から廊下を覗く。
内藤の部屋から彼と弟者が現れる。
弟者は隣の自室へ入り、コートを着込んだ内藤は用心深く周囲を見渡して、
(ω^ ) , , ,
そして足音を立てぬように廊下を進むと階段を下りていった。
∬;´_ゝ`)「……」
様々な単語が脳裏を巡る。
旧校舎。傍聴人。9時。──ツン。
葛藤が胸の内で暴れ回る。
姉者には隠したがっているようだった。
けれども、いったい何をするのか気になる。
そっと廊下に出た。
そろり、四つん這いで進み寄る。
階段の上から階下を窺う。
内藤は左右を見て、玄関の方へ向かった。
静かに靴を履き、玄関の引き戸がゆっくり開かれる音──こうして耳を澄まさねば聞こえないほどの。
-
∬;´_ゝ`)(こんな時間にどこへ……)
疑問を口の中で言葉にし、その馬鹿馬鹿しさに眉根を寄せる。
どこへ、なんて。決まっている。
今し方、彼が言ったばかりではないか。
姉者もまた内藤に倣い、そろそろと階段を下りて、玄関で靴を履き、外に出た。
門に隠れて向こうを見遣る。
内藤はもうこそこそするのをやめて、普通の足取りで歩いていた。
夜道は恐い。
けれど──内藤はまだ中学生だ。
夜に1人で出歩くのを見過ごすことは出来ない。
∬;´_ゝ`)(あ、でも、旧校舎に行くのよね……。なら心配いらないかも……)
旧校舎なら、ギコも何かしら関わっている。
ちょっとしたイベントでもあるのかもしれない。
内藤が居間で言った「現場検証」などではなく。
しかし、「傍聴人」とはどういうことだろう?
裁判? 旧校舎で。こんな時間に。まさか。きっと、聞き間違いだったのでは。
-
──内藤が角を曲がった。
姉者の選択肢は二つ。家に戻るか、内藤を追うか。
彼はしっかり者だから、そうそう危険なことには首を突っ込まない筈。
でもやっぱり不安はある。もしかしたら。万が一。
∬;´_ゝ`)「……」
姉者は、一歩踏み出した。
*****
-
_
( ゚∀゚)(あの刑事、姉者先生とどんな関係なんだ……)
夜道を歩きながら、ジョルジュは本日30回目の疑問を頭の中に落とした。
早朝に見た、埴谷ギコとかいう男の姿が蘇る。
背が高かった。ジョルジュより逞しかった。顔もそれほど悪くなかった。
そして何より姉者と親しげだった。昔からの仲。しかも警察の人間。
_
(;゚∀゚)(姉者先生の……姉者先生の『一番頼りになる男』というポジションは……俺ではなかったのか……!?)
そんな馬鹿な。一日の内で姉者との接触が多いのは自分の方である筈だ。何しろ同僚。職員室の席も隣。
だが累計で言えばギコの方が圧倒的だろう。だって昔から、なわけだから。
_
(;゚∀゚)(いやいやいやそんな筈……いや……しかし……待て……)
嫌なことを忘れるには酒が一番手っ取り早い。
というわけでコンビニに向かっているのだけれど、今のままアルコールをとれば、
寧ろますます深みに嵌まってしまいそうだ。
-
_
(;゚∀゚)(帰ろうかな……)
「──やばいやばい、遅れちゃうわ!」
「お前が化粧なんかに時間かけるから」
「だっていっぱいおばけ来んのよ、気合い入れなきゃ」
「誰もお前のことは見ないよ」
_
( ゚∀゚)(ん?)
何やら聞き覚えのある声がして、ジョルジュは立ち止まった。
それと同時。
≡≡≡(;,゚Д゚)
ギコが目の前を通り過ぎていった。
けばけばしい化粧をして。
-
_
( ゚∀゚)
_
( ゚∀゚)(なに今の)
もしかしたらギコに似た化け物かもしれない。
(;,゚Д゚)「しぃ、急いで急いで」
(*゚ー゚)「しかしブーム君が……ええい、ブーム君、ギコに抱っこしてもらえ」
(;,゚Д゚)「どっこいしょー!」
本当にギコらしい。隣にいる少女(少年?)にギコと呼ばれていた。
どうしよう。見てはいけないものを見た気がする。
空中に向かって腕を伸ばし、何か抱えるような仕草をしている。恐い。
_
(;゚∀゚)(え……え? どういうこと?)
ふらふら、ジョルジュは彼らの後を追った。
無意識である。頭はひどく混乱していて、それを鎮める手掛かりを体が勝手に求めた。
彼らの目的地は幸い近場だったようで、見失うことはなかった。
頭の中はますます乱れたけれど。
_
(;゚∀゚)(──学校?)
ギコとギコの連れは、ヴィップ小学校の敷地へ入った。
-
携帯電話で時間を確かめる。
もう少しで午後9時。
どうして今、こんなところへ。
校門で身を隠しつつ覗き込んでみると、2人は旧校舎へ向かっていた。
体育館の窓にカーテンが引かれているようだが、僅かな隙間から明かりが漏れている。
_
(;゚∀゚)(わけ分かんねえ……)
しばらく、そのまま旧校舎を凝視する。
辺りは静かなのに──何だか空気が騒がしい。
見えない誰かがたくさん居るような。ざわざわと落ち着かない。
「──ジョルジュ先生」
_
(;゚∀゚)「あ!?」
背後から掛けられた声に飛び上がり、ジョルジュは振り返った。
その様子に相手も驚いたようで、ひゃ、と短い悲鳴があがった。
∬;´_ゝ`)「あ、あの……こんばんは……」
_
(;゚∀゚)「あ──姉者先生?」
少し、ほっとした。
馴染みのある顔に出会えて安心したのだ。
姉者は防寒具を身につけず、部屋着そのままといった格好だった。
長いこと外にいたのか、鼻や耳、指先が真っ赤だ。
-
∬;´_ゝ`)「今、ギコ君、入っていきましたよね……」
_
(;゚∀゚)「え、ええ」
∬;´_ゝ`)「うちの親戚の子と、知り合いもさっき入っていったんです……。
……何があるんでしょう……」
答えようもない。ジョルジュにはさっぱり分からないのだから。
沈黙が流れた。それでもやはり、空気はざわついている。
しかも、時が進むにつれて激しくなっているような気がする。
──ぽつ、と冷たい感触が頭を打った。
ぽつ、ぽつ。連続するそれは、徐々に間隔を狭めていく。
雨だ。
すぐに本降りになった。
ひゃあ、と姉者が悲鳴をあげる。
ジョルジュは姉者の手を掴み、旧校舎を指差した。
_
(;゚∀゚)「……雨宿りついでに、見に行ってみます……?」
*****
-
(*゚ー゚)「ここならよく見えるな、ブーム君」
| ^o^ |" コクリ
──旧校舎、体育館。
ストーブの熱はまだ全体に行き渡っておらず、肌寒い。
体育館の真ん中に縄が張られ、そこから後方が傍聴席となっていた。
一応椅子が並べられているのだが、あまり個別の席としての役割は果たしていない。
何しろおばけというのは大きさの差が激しいので、
一体で何席も占領する者もいれば、複数で一席を共有する者もいる。
しかも、よく見てやろうという気持ちからか、宙に浮いている輩も多い。
(;,゚Д゚)「予想はついてたけど、それにしたって凄い数……。こんなの初めてだわ」
(*゚ー゚)「そうだな」
何しろ体育館に傍聴人が入りきらなかったくらいだ。
あぶれたおばけ達は、それでも尚、校舎の外に留まっている。裁判の行方が気になるのだろう。
カーテンの隙間に目をやれば、窓の向こうから何とかして覗こうとしている奴もいた。
最前列、検察寄りの席に腰掛けながら、しぃはほっと息をついた。
事前に席を確保しておいて良かった。でなければ、しぃ達も体育館に入れなかっただろう。
-
(*゚ー゚)「裁判中は、おとなしくしていておくれよ」
| ^o^ |" コクリ
しぃの隣、ブームに声をかける。
結局、今日に至るまで、彼から有益な情報を得ることはなかった。
いい加減しぃも見限ろうと思ったのだが、
一度裁判を傍聴させようじゃないかとギコが提案したので現在こうなっている。
ブームの、どこか気の抜けた顔つきはいつも通り。
けれども緊張しているように見受けられた。
(*゚ー゚)(裁判を傍聴するのは初めてかな)
そう判断し、しぃは前方へ顔を向けた。
──彼女は気付かなかった。
ブームが怯えていることに。
彼女の注意力が足りていないわけではない。ブームが、感情を表に出さぬよう我慢していたからだ。
|; ^o^ |
ブームは、ちらりと後方を一瞥する。
( ∵)( ∴)
おばけが2体。ひっそりと、他のおばけの陰に隠れるようにして座っている。
ブームは慌てて目を逸らし、そして、もう振り返ることはなかった。
-
(*゚ー゚)「……そろそろ始まる」
(,,゚Д゚)「ええ、そうね」
縄の向こうを見遣る。
左右に、それぞれ向かい合うように長机が置かれていた。
左側は検察席。
( ^ν^)
ζ(゚ー゚*ζ
パイプ椅子に座るニュッとデレが、何か話している。
傍聴席が騒がしいのと、雨の音でしぃの耳にまでは届かない。
ニュッは腕を組み足を組みふんぞり返り。非常に自信満々といった様子。
彼らの隣に女性が座っていた。証人だ。
懐かしい、とギコが呟いている。
-
対して右側。弁護人席。
同じくパイプ椅子に座る内藤とツン、くるうとオサム。
皆、普段通りといった風である。怒りの形相で検察席を睨むくるう以外は。
(;*゚ー゚)(監視官は神社で待たせた方が良かったのでは)
開廷の時間が迫るにつれ、傍聴席は騒がしくなっていった。
その多くが、弁護人と検察官のどちらが勝つか、という点の話し合い。
「オサム様もお気の毒に。あの弁護士、負けが多いって聞くぞ」
「だが相手の検事には勝ったことがあるって噂だ」
「じゃあ相手も大したもんじゃないな」
──それを静める音が一つ、響いた。
傍聴席の真正面。
体育館前方の壇を背にして立つ──少し浮いている──裁判官「達」の真ん中から。
-
(*゚ー゚)(合議体か)
複数の裁判官によって取り仕切られる裁判。それが合議体だ。
今回の裁判にはそれが採用されている。
3人。3柱、と言うべきか。
幽霊裁判ではなかなか見られない。
真ん中、ひときわ背の低いのが裁判長。
傍聴席から見て左側(裁判長から見て右)が右陪席裁判官。
その反対、傍聴席から見て右側が左陪席裁判官。
真ん中の裁判長が、静まり返る法廷の中で口を開いた。
爪'ー`)「では、これより開廷する。
──私はN県ニューソク市、吉津根神社のフォックスという者だ。
今回の法廷では裁判長を務めさせてもらう。よろしく頼む」
まるで邪魔するのを嫌うように。
雨の音が、少し弱まった。
*****
-
(゚A゚* )「──O府、能茶神社の、のーいいます。
山の神様やらせてもろてますけど、山姥なんて呼ばんといてね。
今回は右陪席やね。よろしゅう」
関西訛りの、のーという女の神様が和やかに挨拶した。
緑を基調とした和服姿。
見た目の年齢は60代あたりだろうか。表情は柔らかく、品のいい老淑女といった佇まい。
続いて左陪席の神様が自己紹介を始める。
▼・ェ・▼「……W県、大犬神社。ビーグルだ。左陪席」
──犬の頭。人間の体。
ワイシャツにセーター、ジーンズなんて格好だ。
洋装の神様など内藤は初めて見た。
声は老人のように低く嗄れている。反して、体付きは若い男のよう。
そして犬である頭部は愛嬌があるというか、可愛らしい。
( ^ω^)(神様も色々いるもんだお……)
(゚A゚* )「ビーグルはもうちょい愛想ようすればねえ。可愛いのに」
▼・ェ・▼「ふん」
-
爪'ー`)「検察官は私と同じくニューソクから、鵜束ニュッ」
相変わらず性別年齢が曖昧な神様、フォックスがニュッを紹介する。
ニュッは姿勢を正して一礼。
爪'ー`)「そして弁護人は──傍聴席の皆はよく知っているかな。出連ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「……よろしくお願いします」
(#'A`)「いけー! 弁護士ー! 悪徳検事をぶっ潰せー!!」
(-@∀@)「センセイ頑張れー」
弁護人席に一番近い傍聴席から、ドクオとアサピーが声援を送ってくる。
即座にフォックスから注意を受けて黙ったが。
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田さんだー」
( ^ν^)「……あの眼鏡、出連に協力してやがった奴じゃねえのか」
-
( ^ω^)「ツンさん、勝つ自信ありますかお」
ξ゚⊿゚)ξ「余裕」
川 ゚ 々゚)「……」
内藤の隣。くるうが表情で反応を示す。
嘘のにおいがしたのだろう。
川#゚ 々゚)「ツン……」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、大丈夫、何とかなるわ! ……私はオサム様の無実を信じるから。何とかする」
それは本当のようで、くるうが若干落ち着く。
内藤はほっと息をついて、傍聴席に意識を向けた。
おばけまみれ。皆がこちらを注視している。
本当は、弁護人席なんて目立つ場所に座りたくなかったのだが。
「内藤君、もう結構な知名度になってるわよ」と悲しい事実をツンから聞かされたので、諦めた。
考えてみれば彼女の事務所に入り浸ったり裁判に参加したりしているのだから、当然である。
-
フォックスは再び木槌を打って──オサムに目で合図を送った。
爪'ー`)「被告人、前へ」
【+ 】ゞ゚)「うむ」
オサムが立ち上がると法廷に緊張が走った。
彼は急ぐでもなく、かといってのんびりもせず、
至って平静のまま、裁判官達の正面へ回った。
適当な教室から持ってきたと思われる、一人用の机が置かれている。
その前にオサムが立った。
爪'ー`)「昨年、出雲で会って以来だな。いつものことだが顔を見せてすぐ帰ったろう」
【+ 】ゞ゚)「くるうを置いたまま遠出したくない。
──それにしても珍しい組み合わせだ。
狐と犬は相性が悪いんじゃなかったのか」
▼・ェ・▼「そりゃまた違う話だろ。俺らにゃ関係ねえや」
爪'ー`)「私も気にしていない」
(゚A゚* )「なあに言うとんの。待機中ぴりぴりしてたやろ。
うちの身にもなってほしいもんやわ」
-
( ^ν^)「裁判長」
和気藹々とした雰囲気を、ニュッの声が断ち切る。
すまない、と謝罪して、フォックスは仕切り直した。
爪'ー`)「それでは、被告人。名前と所属を。生年月日は覚えてないだろうからいい」
【+ 】ゞ゚)「カンオケ神社のオサムだ」
爪'ー`)「うん……まあ、別人なわけもないな。席へ戻って」
【+ 】ゞ゚)「……いちいち、弁護人席と証言台を行き来するのは面倒だと思うんだが……」
爪'ー`)「お前のやり方と私のやり方は違うんだ」
首を傾げつつ、オサムは内藤達のもとへ戻ってきた。
ヴィップ町の幽霊裁判では、被告人は初めから最後まで裁判官の向かいに立ちっぱなしだ。
一方、ニューソク市での進行は人間のそれに若干近かったように思う。
-
爪'ー`)「検察官、起訴状の朗読を」
( ^ν^)「はい」
ζ(゚ー゚*ζ「いつも通り行きましょう、ニュッさん」
ニュッが腰を上げる。
内藤は息を吐き出し、聞き漏らすまいと耳に意識を集中させた。
事件の概容は知っているが、細かいところまでは聞いていないのだ。
( ^ν^)「公訴事実」
傍聴席のおばけ(と少しだけ人間)達も居住まいを直す。
ニュッの目がツンを捉えて、すぐに書類へ戻された。
( ^ν^)「今年平成25年1月1日、午後8時過ぎ。
被告人は本件の被害者──斉藤またんきを喰うために、
菓子を用いて、被害者をカンオケ神社の拝殿内へ誘き寄せた」
( ^ν^)「目論見は成功し、自分の敷地内で誰にも邪魔されず
被告人は被害者を喰らったものである」
-
( ^ν^)「罪名、及び罰条。
──神隠し罪、おばけ法第97条の第2項。
以上の事実について、審理を願います」
( ^ω^)「……短っ」
ξ゚⊿゚)ξ「事件そのものはシンプルだからね」
神隠し罪には項目が2つある。
第1項は神様が生者を誘拐したり、同意無しで現世とは違う──異界というか、そういった場所へ
迷い込ませたりするのを禁じる、という内容。
第2項は、上記に加え、対象に傷害・殺人等の害を加えることを禁じる法である。
オサムの行いは第2項の方に相当する、と検察は訴えているのだ。
──ぽたり。
水滴が床を叩くような、ささやかな音が鳴った。雨が地を打つより小さく儚い音。
原因など見なくても分かる。
-
爪;ー;)「──ああ! なんて……なんて愚かな!
人を喰う必要などないだろうに! それも、まだ幼い子供を!」
▼・ェ・▼「序盤で泣いてんじゃねえよ涙腺ゆるゆる狐」
(゚A゚* )「よしよし、泣いたらあかんよフォックス。みんなびっくりするさかい」
案の定フォックスが泣いていた。
ビーグルが悪態をつき、のーはどこからか出したハンカチでフォックスの涙を拭ってやっている。
何だこいつ──といった空気が傍聴席から漂ってくる。
やはり、おばけから見てもフォックスは些か異様らしい。
( ^ω^)「相変わらずですお……」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと安心するわ」
(゚A゚* )「まだ彼が有罪や決まったわけでもないやろ、フォックス」
爪;ー;)「うう……被告人、起訴内容に異論はあるか?」
それはオサムへの問いだったし、オサムも答えようとしていた。
けれど──いち早く答えたのは、彼と内藤の間に座っている、彼女だった。
-
川#゚ 々゚)「──違う!! 全部違う、全然違う!
オサムは悪いことなんかしないの!
こんなの有り得ない!!」
広い体育館に、くるうの怒声が響き渡る。
傍聴人達は面食らっていた。
裁判官の方は、少々呆れ顔。
フォックスが木槌を構えたが、オサムがくるうの腕に触れるのを見て、手を下ろした。
ξ;゚⊿゚)ξ「くるうさ……」
【+ 】ゞ゚)「くるう。静かにするって約束しただろう。
約束が守れないなら、先に神社に帰っておいてくれ」
叱るような声ではなかったが、制止には充分だった。
信じられない、という顔で、くるうはオサムを見る。
ふ、ふ、と口の端から荒い息が漏れていた。
川;゚ 々゚)「なんで……く、くるうが、オサムのこと守るのに……」
【+ 】ゞ゚)「裁判の邪魔は駄目だ。
──今日、俺を守ってくれるのは弁護人だから、
くるうは協力してやってくれないか」
-
川;゚ 々゚)「協力って、何、したらいいの」
【+ 】ゞ゚)「静かにして、ここに座ってるだけでいいよ」
くるうが俯く。
納得はいっていないだろう。それでも一応は静まった。
茶番だとでも言いたげにニュッが小声で笑っている。
▼・ェ-▼「……落ち着いたみてえだし、被告人、改めて質問に答えてもらえるか」
【+ 】ゞ゚)「ああ。……その、斉藤またんきという子供が拝殿に入ったのは事実だろう。
だが俺が招いたわけではないし、喰ってもいない。
そもそも──その子供を見てすらいない」
爪;ー;)「罪に関しては否認しているわけだな……」
( ^ν^)「『罪に関しては』」
明確な意図をもって、ニュッはフォックスの台詞の一部を繰り返した。
さっさと次に進みたいのだろう。
爪;ー;)「弁護人から意見はあるか?」
ξ゚⊿゚)ξ「オサム様と同じです」
爪;ー;)「了解した。──次だ。検察官は引き続き、冒頭陳述を頼む」
-
ζ(゚ー゚*ζ「さあ頑張りましょうニュッさん」
冒頭陳述へ移るや、デレも立ち上がった。
過去の裁判と同じだ。ここら辺から2人がかりで責めてくる。
ニュッはまず、オサムの背景から語り始めた。
( ^ν^)「──記録によれば、被告人が神として祀られるようになったのは
この地が開拓され、人が住むようになってから」
ζ(゚ー゚*ζ「それより以前から存在はしていたそうですが、
まあ、人がいなけりゃ祀ってもらえることもないですからね。
ともかく移り住んだ人達によって、ようやく、土地を守る神様として認識されました」
-
( ^ν^)「土地を治める神様ってことで、『治む様』──オサム様と呼ばれるようになった。
何か大層な謂れがあるわけでもない。たまたまそこにいた土地神ってだけだ」
ζ(゚ー゚*ζ「祀られてから力を得ていったタイプですね。
おかげで今やヴィップ町で一番強い神様です。
とはいえ、現代では信仰も薄れ気味ですが……」
(゚A゚* )「今はどこもそうやね。うちとこも、昔よりお客さん減っとるわ」
( ^ν^)「被告人がおばけ法の裁判官になったのは25年前。
特に揉めることもなくスムーズに決まり、現在に至るまで幾多の裁判を扱ってきた」
ζ(゚ー゚*ζ「不当な判決があった、という話は聞きません。
記録を見ても、良識に則った判決であると言えます」
裁判官としての評判はこれといって悪くない。
内藤は隣のくるうを盗み見た。
当然だ、といった表情だ。
( ^ν^)「んで……。今回の事件の話に移ろうか」
-
ζ(゚、゚*ζ「被害者の斉藤またんき君は、隣町のビップラ市に住む小学4年生の男の子です。
事件当日、彼は、このヴィップ町に住む母方の祖父母の家へ
両親と共に訪れてました」
ツンが広げているファイルの中に、被害者──斉藤またんきという少年の写真が挟まっている。
【 (・∀ ・) 】
特に目立った箇所はない。
普通の子供だ。
( ^ν^)「その日の午後8時頃──」
祖母と母が台所で洗い物をし、祖父が風呂へ入り、父が煙草を吸いにベランダに出て。
またんき少年が、居間に一人きりになる時間が出来た。
とはいえ、父が戻ってくるまでの、たった5分程度だが。
( ^ν^)「父親が居間に戻ったときにはもう、被害者は姿を消していた。
愛用のランドセルと一緒に」
ζ(゚、゚*ζ「それ以降、誰もまたんき君を見ていません」
-
( ^ν^)「警察がいくら捜索しても見付からなかったが……
1月1日から2週間ほど経った、1月15日。
カンオケ神社の拝殿から、被害者のランドセルが発見された」
傍聴席のそこかしこから、息を呑む気配がした。
オサムへ向けられる目の多くには、好奇が塗り込められている。
( ^ν^)「ランドセルの中には冬休みの宿題の他、
小さなゼリーとビスケット菓子が数点入っていた。
これは、1月1日の午前に参拝客からカンオケ神社へ供えられた菓子類と一致する」
( ^ν^)「──このことから、被告人は参拝客の善意により提供された菓子を利用して
斉藤またんきをかどわかし、自身のテリトリーである神社まで誘導してから、
拝殿の中で幼気な子供を手に掛けたものと考えられる」
川#゚ 々゚)「……」
くるうはそわそわと落ち着かない。
オサムが彼女の背を撫でていなければ、また先のように怒り出していただろう。
-
( ^ν^)「さて。先ほど被告人の恋人様が『被告人はそんなことしない』と怒鳴っていたが、
それへの反論として、被告人の過去の所業について話させてもらおう」
σξ;-⊿-)ξ ポリポリ
ツンが人差し指でこめかみを掻く。
痛いところを衝かれたような顔。
ニュッは目敏くそれを見付け、彼お得意の嫌らしい笑みを浮かべてみせる。
( ^ν^)「ヴィップ町では、子供が行方不明になる事件が過去に何度も起きている。
たとえば8年前。ヴィップ小学校の男子生徒が、放課後、
友人と一緒に学校の裏山へ入り──そのまま消えてしまった事件」
ζ(゚、゚*ζ「また、13年前、ヴィップ保育園の年長さんである女の子と、そのお友達が
公園でかくれんぼをしていたんですが
女の子は隠れたまま出てこなくて……未だに見付かってません」
( ^ω^)(駄菓子屋の前で聞いた話と同じだお……)
他にもいくつか例が挙げられる。
どれも、行方不明になった子供は見付かっていないらしい。
-
( ^ν^)「逆に、一度は行方不明になったものの、
しばらくしてから帰ってきた例もある」
ζ(゚、゚*ζ「40年前に、中学2年生の女の子がいなくなりました。
女の子はその5年後に何食わぬ顔で帰ってきたといいます。
19歳になっている筈なのに、14歳の姿のままだったとか」
( ^ν^)「62年前。5歳の男児が行方不明になり、その一月後に帰ってきた」
(゚A゚* )「……ええと、それらの事件も被告人の仕業やいうこと?」
( ^ν^)「検察はそう考えてます。
……被告人も認めているし」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ、こら! 異議! 全部認めたわけじゃないわよ!」
( ^ν^)「失礼」
反省した素振りもない。
油断も隙もないわ、とツンが憤慨した。
過去の「神隠し」について、オサムは認めている。
だが──詳しくは追々説明するとして──それは決して「犯行の自供」ではない。
けれども向こうからすれば、立証に大きく関わる重要な話だ。利用しない手はなかろう。
▼・ェ・▼「……一部とはいえ、認めてんだよな」
事実、ビーグルの心証にはしっかり影響したようだ。
犬というものも存外、表情豊かだな、と内藤は思う。
彼がオサムを深く疑っているのは顔から見て取れる。
-
( ^ν^)「えー……それから、被告人の人柄に対する評価だが」
ζ(゚ー゚*ζ「人の機微に特別聡いわけでもなく──まあ、これは神様としては仕方ないことなんでしょうけど。
また、何を考えているか非常に分かりづらいため、
もし被告人が本当に罪を犯したとしても、『絶対に有り得ない』とは思わない……なんて証言があります」
( ^ν^)「だよな、内藤君?」
( ^ω^)「……そうみたいですね」
川#゚ 々゚)「誰がそんなこと言ったの……!」
ニュッと内藤のやり取りの意味は理解しなかったらしく、くるうが憎々しげに呟いた。
内藤が言った、とバレたら首の一つでも絞められるかもしれない。
ξ゚⊿゚)ξ「でも、裁判官としてはおかしなところもなかったんでしょう」
ζ(゚、゚*ζ「ええ、そのことなんですがね……。さっき言った通り、
判決は妥当なものばかりでした。
ただ、法廷での振る舞いが完璧だったわけでもなくて」
-
ζ(゚、゚*ζ「『裁判を早く終わらせたい』
『さっさと切り上げてくるうといちゃつきたい』
『くるうが好きだよ』──と……まあ……このような発言が何度かあったそうです」
「ああ……」とか「たしかに」とか、溜め息混じりの声が傍聴席から上がった。
もはや、ヴィップ町幽霊裁判のあるあるネタ扱いだ。
ζ(゚、゚*ζ「特に、法廷においては裁判官と監視官という立場でありながら、
審理中に堂々とべたべたするような──
プライベートな振る舞いが多々見られたとのことで」
▼・ェ・▼「色ボケ」
爪;ー;)「昔はそんな男ではなかったのにな……」
【+ 】ゞ゚)「……」
オサムは眉一つ動かさない。
精神が強すぎではないか。あるいはただの無恥か。
嘆かわしい、とニュッが肩を竦めた。
( ^ν^)「このことから、被告人には些か自分本位な側面があると言わざるを得ない。
特に恋人に関することとなると顕著だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ぬうう……」
-
( ^ν^)「これを裏付けるような話を一つ、紹介しようか。
その2人の馴れ初めについてだ」
机に手をつき、やや前のめりになりながら、ニュッはくるうに視線を注いだ。
ぎし、と机が軋む。その音がいやに耳障りだった。
( ^ν^)「監視官、くるう。
神に嫁いでしばらく経ったせいで、普通の幽霊でもなくなっちまっているが──
元は、ヴィップ町に住む人間だったそうだな」
川 ゚ 々゚)「……」
自分へ話が向けられるとは思っていなかったのだろう。
くるうは目を逸らし、躊躇いがちに首肯した。
( ^ω^)「そうだったんですかお」
川 ゚ 々゚)「うん……」
( ^ν^)「80年近くも前、彼女は、商家である茂名家の下女として働いていた。
身寄りがなく困ってたところ、人のいい若旦那に拾われたそうだ」
( ^ω^)「……ツンさん知ってましたかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いえ……」
2人の馴れ初めなど、神隠しとは何の関係もないように思える。
ツンもそう考えていたらしく、本当に予想外の方向から切り込まれたことに戸惑っていた。
-
( ^ν^)「が、少々足りないオツムと生まれつきの『嗅覚』のせいで
上手く馴染めず、仕事も出来ず……厳しい大旦那や先輩方に辟易し、
度々職場を抜け出してはカンオケ神社でサボっていたという」
( ^ν^)「神社へ逃げ込んでくる彼女を見ている内、
被告人は特別な想いを抱くようになり──」
【+ 】ゞ-)
オサムは目を閉じていた。
ニュッの声を拒絶しているわけではなく、
寧ろ、彼の言葉から追想しているようだった。
#####
川#; 々;)
この世の全てに不満を抱いているような顔をしていることが、多々あった。
【+ 】ゞ゚)『今日も来たのか』
そういうときに近付くと、オサムの匂いを嗅ぎつけるなり、顔を綻ばせるのだ。
それが愛しく思えるようになったのは、いつからだったか。
-
川*゚ 々゚)『んー……いい匂い。他で嗅いだことないような匂い……』
【+ 】ゞ゚)『また店の奴らに馬鹿にされたのか?』
オサムが訊ねても、どうせ彼女には聞こえていない。
ただ、彼女は独り言のように不平不満を漏らすので、
近況を理解するのは容易かった。
川 ゚ 々゚)『みんな臭い……いっつも嘘ばっかり。
若旦那様はいい匂いだけど、他のみんなは嘘のにおいがする』
若旦那、というのは、茂名モナーのことだろう。
茂名家の跡継ぎ。齢20を過ぎたばかりの青年。
神社によく足を運ぶので知っている。
たしかに柔和な顔つきの、心の優しそうな男だった。
茂名家の中で、くるうは彼にだけ懐いている様子だった。
他の下男下女や茂名一族の悪口は言っていても、モナーのことだけは悪く言わなかったほど。
【+ 】ゞ゚)(モナーに嫁げば幸せだったろうに)
生憎そうもいかない。
モナーには既に妻がいる。茂名レモナ。
夫にくっついて神社へ来ることがあるから、彼女のこともいくらか分かる。
-
川 ゚ 々゚)『……レモナ様は恐い……』
くるうの評価はそんなものだった。
──レモナは嫉妬深いのだ。
幾度も聞いてきた、くるうの独り言から察するに。
だから夫に懐く下女を敵視しているのだろう。
モナーを奪おうなんて気持ちがくるうになくても。
川 ゚ 々゚)『誰もいないところで、レモナ様はくるうを叱るの……。
声が大きくて、すごく恐いの。大きい声は嫌い……』
──「独り言」、というのも、違うかもしれない。
時折、こうして明らかに語りかけてくるような口調になる。
恐らくオサムの存在には気付いているのだ。
見えなくても、聞こえなくても、匂いで察している。
それがこの神社の主であるとまで理解しているかはともかく──
「いい匂いのする何か」が近くに居る、という程度に。
川 ゚ 々゚)『帰りたくない』
くるうが真正面に座るオサムに擦り寄る。
擦り寄ると言ったって、触れることも出来ないから、
ただただ距離が縮まっただけに過ぎないけれど。
-
抱き締めて頭を撫でてやりたいと思う。
慰めの言葉を聞かせてやりたいと思う。
自分の姿を、その目に映してほしいと思う。
どれも叶わない。
もし。
くるうが人間でなくなったら。
「こちら」側の存在になったら。
──霊にでもなったら。
触れられるだろうか。
会話が出来るだろうか。
【+ 】ゞ゚)『……くるう』
抱き締めるような仕草をする。
触れられないから、形だけ。
名前を呼ぶ。
彼女の耳には入らない。
彼女が幽霊になれば、これら全て、その身に受けてくれるだろうか。
彼女が死んだら。
【+ 】ゞ゚)『……殺したいほど、お前が好きだよ』
#####
-
( ^ν^)「で、ある日。とうとう茂名モナーの奥方がキレた。
人の旦那に色目使いやがって淫売が、ってな具合にな。
まあ勝手に嫉妬して勝手にキレただけなんだが」
#####
──くるうが来なくなった。
気配もしないのに、本殿の裏を見に行っては
今日も来ていないのかと肩を落とす、というのを日に何度も繰り返した。
くるうにとってはいいことかもしれない。
逃げ込む必要がなくなった──つまりは茂名家での諸々が解決した(かもしれない)わけだ。
あるいは、ここよりもっといい逃げ場が見付かったか。
ともかく、寂寥と安堵を胸に抱えつつオサムは日々を過ごした。
様相が変わるのは一月後のことである。
.
-
( ,'3 )『あの家はもう駄目ですな……』
ふらっとカンオケ神社を訪れる者がいた。
珍しい相手だった。
──茂名家を代々護り、栄えさせてきた神だ。
その屋敷神は、心底疲れた様子で首を振った。
【+ 】ゞ゚)『何かあったのか』
( ,'3 )『先代や今の跡取りは善人でしたので、見守ってきましたが……。
跡取りの妻が、家を穢しましたでな……。当代や番頭も荷担しておりましたで、
もう、ほとほと愛想が尽きました』
【+ 】ゞ゚)『穢した?』
( ,'3 )『あの家は見放して、何処ぞ別の土地へ移ろうと思いましてな。
オサム様に一つ挨拶をしておこうと、こうして参った次第です。
今まで大変お世話になりました。それでは……』
去ろうとする屋敷神を引き留める。
詳しく話せとオサムが詰め寄ると、屋敷神は渋ってみせた。
-
( ,'3 )『身内の恥ですので……オサム様の御耳を汚してしまいます』
【+ 】ゞ゚)『構わん』
( ,'3 )『つまらぬ話でございますから』
【+ 】ゞ゚)『いいから言え。何があった』
( ,'3 )『はあ。──下女を一人、殺したのでございますよ』
──変わった力を持つ娘でした。人が嘘をつくと悪臭を感じるというのです。
あれは恐らく、親のどちらかがサトリか何かの血を薄く継いでいたもので、
その血がいくらか変化して、娘の鼻にだけ色濃く現れたんでしょうな。
その下女と跡取りが親しいというので、跡取りの妻が悋気を起こしまして。
下女を騙して、地下の座敷に閉じ込めたのですよ。
普通に騙そうとしても、においで悟られますから……。
きつい薫き物で下女の鼻を馬鹿にしましてな、それから嘘をついて、座敷へ。
酷いものでございましたよ。些細なことをあげつらい、
何もかもが気に食わぬのだと、仕置きと称して何度も何度も……。
-
自分一人の仕打ちでは足りないと思うたのでしょうか、ついには
当代や番頭、下男下女達まで呼んで、「この女は好きに扱え」と。
それがまた、残忍といいますか、非道な者ばかりをわざと選ぶものですから。ああ恐ろしい。
見ていられませんでしたな。人間というのは、どうしてああも醜いことを……。
……とうとう下女は亡くなりまして。
それを誰一人、悪く思うておりません。あの家はもう駄目です。
唯一まともな跡取りだって、妻の「下女は他所へ奉公に行った」という嘘を信じて
ついぞ地下の狂態に気付かぬような愚鈍ですから。
いっそ哀れでございましょう──
( ,'3 )『私はあの家を離れます。
私がいなければ、あんな家、すぐに滅びてしまうでしょう。
あの有り様では自ずと不幸を呼び寄せますので。
仕方のないことです。……仕方のないことです』
そう繰り返して、屋敷神は去っていった。
オサムは本殿へ戻り、一眠りして、目が覚めてから茂名家の屋敷へ向かった。
.
-
死体は既に片付けたのか、茂名家の地下は
どす黒い汚れと血や糞尿の臭いのみが名残を留めていた。
穢した、という屋敷神の表現に違わず、オサムには居づらくて堪らない。
川 ゚ 々゚)
死体は無かったが、「くるう」はそこにいた。
座敷の隅に座り込み、自分の膝をじっと見つめている。
着物はほとんど布切れに成り下がっていて、青白い肌を碌に隠せていない。
くるうの気配は稀薄で、あと2、3日も放っておけば跡形もなく消えてしまうだろうと思えた。
【+ 】ゞ゚)『くるう』
呼び掛ける。
くるうは頭を擡げた。
──オサムの声を聞いた。
-
川 ゚ 々゚)『……』
【+ 】ゞ゚)『ここにいても何にもならない。ひとまず出よう』
羽織を被せて、くるうを抱える。
オサムの胸元に鼻先を寄せた彼女は、目を見開いた。
川 ゚ 々゚)『カンオケ神社の匂い……』
うん、とだけ返して、オサムはくるうを抱えたまま茂名家を出た。
途中、満ち足りた様子のレモナとすれ違う。レモナはオサム達に気付かない。見えていない。
オサムは少し立ち止まって、結局そのまま歩き出した。
屋敷神の言葉を信じるならば放っておいても報いはあるし、
それに何より、今はくるう以外の者などどうでも良かった。
川*゚ 々゚)
くるうの機嫌はいい。
川*゚ 々゚)『やっと会えた。ずっと会いたかった……』
オサムの肩に手を回し、くるうは感極まったように囁く。
レモナ達から酷い仕打ちを受けたのだから、平生ではいられないだろうと思ったのだが
彼女の振る舞いはこれまで見てきた姿と何ら変わりない。
-
機嫌良く微笑みながら、くるうはオサムの首を絞めた。
表情に反して力は強い。
それで苦しいということもないが、食い込む爪が少し痛い。
川*゚ 々゚)『ずっと呼んでたのに。
助けて迎えに来てってずっと呼んでたのに』
【+ 】ゞ゚)『すまん』
川*゚ 々゚)『神社ではずっと傍にいてくれたくせに、肝心なときに全然来てくれない。助けてくれない。
裏切り者。殺してやりたい。……って思ってたの、ふふ、んふふ』
【+ 】ゞ゚)『……』
川*゚ 々゚)『でも、私が死んだおかげで会えたんだから、もういいや』
そう言うくせに、手は一向に緩まない。
俺が憎いかと問うと、否定が返ってくる。
川*゚ 々゚)『違うの。違うの。
……レモナ様は、若旦那様が好きだから私に酷いことしたんでしょう。
じゃあ、人って、誰かを好きになればなるほど酷いことが出来るんでしょう』
-
【+ 】ゞ゚)『……そういうものでも、ないと思うよ』
川*゚ 々゚)『少なくともレモナ様はそうだったし、私も、ちょっと分かるの』
──殺したいくらい好きよ。
くるうの声が、オサムの耳に吹き込まれる。
ぞくりと背が震えた。
浮かんだ感情は愉悦。
神社に辿り着く。
本殿へ向かう途中、たった今気が付いたといった顔でくるうは問うた。
川 ゚ 々゚)『あなた、名前は何ていうの。何て呼んだらいいの』
【+ 】ゞ゚)『みんなオサムって呼ぶから、オサムでいい』
川 ゚ 々゚)『オサム? オサム様? ──じゃ、神社の神様なんだね』
今まで全く思い至っていなかったらしい。
くつくつ、オサムは声を抑えて笑った。
間もなくして。
茂名家に強盗が入り、大旦那と若旦那夫婦が殺されたと聞いた。
主人のいなくなった商家はすぐに潰れ、多くの奉公人が路頭に迷ったという。
それもやはり、オサムにはどうでも良かったのだ。
#####
-
( ^ν^)「──屋敷に行くと彼女の霊がいたため、これ幸いとばかりに
被告人は彼女を神社へ連れ帰った。
こんなもんか」
ニュッの説明は簡潔だった。
オサムがくるうに焦がれたこと。
くるうが主人の妻から手酷い扱いを受けて死んだこと。
霊となったくるうをオサムが引き取ったこと。
それだけだ。
当時のオサムとくるうが、どんな思考と感情で動いていたかの説明はない。
川;゚ 々゚)
【+ 】ゞ゚)
本人も否定する素振りは見せなかった。
要約すればそんなものだろう、と。
ζ(゚ー゚*ζ「これらの成り行きは、被告人本人、そして古くからこの町に住むおばけ達から聞いたもので、
大体は一致していましたから間違いないかと」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……しぃ検事のお母さんに協力してもらってるわね、あれは……」
小さな声でツンが呟く。
感心したような声色だった。
( ^ω^)「しぃさんの?」
ξ゚⊿゚)ξ「この町に来て、たかだか一週間と少し程度で
古株のおばけ達から話を聞き出すなんて簡単に出来ることじゃないわ」
ξ゚⊿゚)ξ「でも『猫田家』のツテを使えば可能でしょう。
──手っ取り早く的確な情報を得られる手段をちゃんと理解してるんだわ、鵜束検事」
ニュッには出来て、しぃには出来ない点だ──とツンは続けた。
しぃは母を嫌っている。
プライドの高い彼女のこと、嫌いな相手に協力してほしいなどとは絶対に言わないだろう。
そう考えると、地道に自分(とギコや警察)の手で証拠証言を集めているしぃは、なかなか努力家というか。
爪;ー;) グスッグスッ
(゚A゚* )「ほんで、その話がどないしたん」
( ^ν^)「非業の死を遂げた思い人を、その機に乗じてあっさり連れ帰り
成仏もさせず、自分の傍に置いておくあたり──
自分の欲に素直すぎるところがある」
くるうへの恋慕はひとまず置いておいて、
オサムの「自分本位」で「欲に素直」な点に注目してほしいのだ、とニュッは声を強くした。
-
ζ(゚ー゚*ζ「もし、人を食べたくて堪らなくなったら……。
拐ってしまうことも、厭わないのではないでしょうか」
爪;ー;)「そうかもなあ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっ、待っ、飛躍してるわ!!
くるうさんがオサム様の傍にいるのは、彼女が自分の意思でしてることよ!」
慌ててツンが立ち上がる。
必要なときにちゃんと反論しておかないと、フォックスの心証は検察側に傾きっぱなしになってしまう。
ξ;゚⊿゚)ξ「第一、……検察の『喰った』っていう憶測は何なのよ!
たしかにまたんき君は見付かってないけれど、
だからって、丸ごと食べましたってのは──短絡的じゃないの」
( ^ν^)「まあ残念なことに、丸ごと食べましたって証明できる物証は無いな。
が、根拠が全く無いわけでもない。
カンオケ神社の神様は人を喰う、という噂がある」
ξ;゚⊿゚)ξ「噂でしょう? 記録なんてどこにもないわ」
( ^ν^)「重要なのは、『噂がある』、それそのものだろう。
火のないところに煙は立たねえもんだ」
ヴィップ町には他にも神社があり、神様もいる。
それでも人喰いの噂は「カンオケ神社のオサム様」に終始しているのだ。
それはつまり、オサムが人を喰うということに何かしらの根拠があるわけで。
-
( ^ν^)「今はとっくに廃れたがな、昔、この町では『口減らし』が行われていた。
まあ昔はどこでもあったろうが、ここでは方法が少し変わっていた」
( ^ω^)「口減らしって?」
ζ(゚、゚*ζ「家計にかかる負担を軽くするために、子供や老人などを減らすことです。
奉公に出すとか他所の家にやるとか、……捨てるとか」
( ^ω^)「捨てる……」
( ^ν^)「子供をカンオケ神社の裏の林に置いていくんだ。
その際、不要な物も一緒に置く。そうすることで、子供も『いらないもの』ですよと証明するわけだ。
すると一日もすれば、子供は消えるという」
──噂の元になった話がある、とデレが人差し指を立てた。
その昔。ある女性が、カンオケ神社の裏の林に、使い物にならなくなった調理器具や裁縫道具を捨てに行った。
その際、口減らしのため子供を樹にくくりつけ、置き去りにした。
翌日、やはり子供を惜しんだ母親は林へ戻った。
調理器具と裁縫道具はそのまま残っていたが、子供だけがいなくなっていた。
-
見ると、道具には歯形が付いている。
道具は硬くて、とても食べられたものではなかったが、
子供の方はそうではなかったのだろう。
そんな風に考えが及び、母親はむせび泣いた──という話。
ζ(゚、゚*ζ「きっとオサム様に食べられてしまったんだろう……って感じで締めくくられます」
ξ;゚⊿゚)ξ「創作怪談でしょ、そんなの」
( ^ν^)「この話自体の真偽は知らんが。これを種にして噂が広がったのは確かなことで、
同様の手段で子供を捨てる輩は実際にいたし、
その結果子供がいなくなったってのも、事実としてあったことだ。
先も言った古株達からの証言にもある」
ξ;゚⊿゚)ξ「で、でも、絶対にオサム様が食べたんだって証拠もないんでしょう!?」
ζ(゚、゚*ζ「そりゃあ無いですけど」
▼・ェ・▼「しかし神社の裏の林に捨てたのが居なくなるわけだろう。
限りなく被告人が怪しいじゃねえか」
ξ;゚З゚)ξ「うー、うー、うー……」
( ^ω^)(ツンさんが使い物にならなくなった)
-
【+ 】ゞ゚)「俺はそんな噂が流れてるのは知らなかったし、人を喰ってもいないんだが……」
川#゚ 々゚)) コクコクコク
傍聴席がざわつく。
内藤は一番近い席を横目で見た。
ドクオの気勢は削がれ、一方、アサピーは追い詰められるツンを堪能している。
( ^ν^)「被告人は昔から神隠しを行っていたし、子供を喰うこともあった。
……それが、今回の件にだけ関わっていないとは、到底言い難い」
以上ですと言って、ニュッとデレは座った。
次はツンの番だ。
反論の際に腰を上げたままだったので、そのまま続行。
爪;ー;)「弁護側の冒頭陳述だな」
ξ;゚⊿゚)ξ「……はい」
フォックスが木槌を打ったことで、傍聴席はにわかに静まった。
物凄い数の視線がツンに注がれている。
頑張ってください、と内藤は小声で声援を送った。
深呼吸。書類をめくり、彼女は口を開いた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「検察側の主張する事実は、ないものと見ています」
ニュッが舌舐めずり。
そう来なくては──なんて声が聞こえてきそうだ。
ξ゚⊿゚)ξ「事件当日、1月1日。
元日ということもあり、オサム様はずっと忙しかったそうです」
日が暮れて、ようやくその日の人足が絶えた頃、休息をとるため
オサムは禰宜の八ノ字ショボンへ声をかけてから、くるうと共に本殿へ戻って眠った。
それが午後7時50分頃。声をかけられた際にショボンが時計を確認したというので確かだろう。
8時頃、ショボンや他の職員が一旦社務所に入る。
それから8時30分までの間、誰も、参道や拝殿には近付いていない。
( ^ν^)「『子供がこっそり忍び込んだのに気付かなくてもおかしくない』、か?」
先回りをして、ニュッが言う。
眉間に皺を寄せたツンは、そうです、と冷たく返した。
ξ゚⊿゚)ξ「ランドセルに入っていたお供え物のお菓子についてですが、
当時、供えられたお菓子やお酒は拝殿に置いて保管していたといいます。
つまり拝殿に入りさえすれば、誰だってお菓子に手をつけられました」
-
ξ゚⊿゚)ξ「オサム様もくるうさんも翌日になるまでお供え物には触れていないそうですから、
またんき君が少しばかり失敬したんでしょう」
(゚A゚* )「まあ、子供やからね……。ついつい手も伸びる、かなあ?」
ξ゚⊿゚)ξ「8時30分頃。目を覚ましたオサム様は、拝殿の方に違和感を覚え、そちらへ向かいました。
そこで見知らぬランドセルを発見します。
けれど、持ち主らしき人はどこにもいませんでした」
ランドセルを持って外に出て、辺りを回ってみたが、やはり持ち主は見付からない。
仕方なく神社へ持ち帰り、後で職員に訊こうと思ったオサムは
拝殿の隅にそれを置いて、再び本殿に戻ったという。
そうして、すっかりそのことを忘れてしまったのだ。
──ランドセルを置いたのは、お祓いを依頼され神社が預かった品々の近く。
年越し前の駆け込みが多かったため、職員も、ランドセルがそこにある違和感に気付きにくかったらしい。
-
ξ゚⊿゚)ξ「またんき君は何らかの目的で拝殿に忍び込み、ランドセルを置いて外に出て、
そのまま行方不明になったのでしょう。
オサム様の関与する余地はありません」
( ^ν^)「子供が夜の拝殿に侵入する目的って何だよ」
ξ゚ -゚)ξ「それはどうだか……。
──またんき君のコートやマフラーも無くなっていた、と家族が証言しています」
ξ゚⊿゚)ξ「彼はしっかり防寒具を身につけて……ちゃんと準備した上で外出したわけだから、
明確な意思を持って行動していることになる。
衝動的に飛び出したとか、むりやり拐われたのとは違う。
またんき君なりに考えがあって外出し、カンオケ神社に来たんでしょう」
( ^ν^)「ああ、そこはこっちも同じだ。
被害者は自分の意思で外に出た。
お菓子っつう餌が欲しくてな」
ツンがひっそりと舌打ちする。
ニュッは大っぴらに笑った。
-
そこへ口を挟む者がいた。
ビーグル。人間の手で犬の頭を掻きながら、小首を傾げる。
▼・ェ・▼「カンオケ神社の拝殿は俺も写真で見たが──
あそこは、逮捕された容疑者や裁判待ちの被告人達の保管場所でもあるだろう。
そいつらは、事件について何か見ちゃいねえのか?」
爪'ー`)「拘束札に閉じ込められていれば外の様子など分からないだろう。バカ犬」
▼#・ェ・▼「誰がバカだ! そりゃ全員に拘束札使ってりゃそうだろうが、
人形や骨董に魂を固定しただけのもあったんだ。
そっちは普通に意識もある筈だから、拝殿の中は見えただろ」
(゚A゚* )「そうやねえ……」
ζ(゚ー゚*ζ「カンオケ神社では、暴れん坊ですとか、ちょっと危険な被告人には拘束札を用いますが
そうでない方々は、ビーグル様が仰ったように
何かしらの『物』に魂を固定するだけにしているそうです」
ζ(゚ー゚*ζ「ただ、年末年始は人が多くてばたばたするので、間違いが起こらないようにと
みんな拘束札に移してから社務所の金庫にしまっていたそうなんですよ。
お正月明けにまた元通りにして、拝殿に戻したらしいですが」
( ^ν^)「というわけで事件当日の拝殿にそいつらは居なかった。誰の目もなかった。
──被告人には丁度いいタイミングだったろう」
::川#゚ 々゚):: ムギーッ
【+ 】ゞ゚)「くるう、どうどう」
-
ξ-⊿-)ξ「……次に、過去の神隠し事件について。
未だ帰ってきていない子達の事件はオサム様には関係ありません」
ξ゚⊿゚)ξ「ただ、帰ってきた子達に関しては──
たしかに自分の仕業であると、オサム様が認めています」
爪'ー`)「……ふむ?
8年前や13年前その他の事件には関与していないが、
40年前、62年前のものは被告人が神隠しを起こしたと?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなりますね。40年前のに関しては、相手から同意も得ています」
( ^ω^)「……本当ですかお?」
【+ 】ゞ゚)「ああ」
( ^ω^)「……」
【+ 】ゞ゚)「事実なんだから仕方ないだろう」
川#゚ 々゚)「ブーンまでオサムのこと疑うの……」
( ^ω^)「いや、ただ……」
内藤の胸に湧いた思いを、裁判官はもちろん、傍聴人達も同様に抱いたらしかった。
空気が変な生温さを孕む。
-
爪'ー`)「……無事に帰ってきた話のみ認める、か。しかも同意の上?」
▼・ェ・▼「随分とまあ都合がいいもんだ」
そう。
都合が良すぎるのだ。
合意、かつ相手が無事である分には、オサムには何の罪もない。
(゚A゚* )「ビーグルもフォックスも、あかんよ。まだ決め付けたら」
ξ゚⊿゚)ξ「神隠し、と言うと語弊がありますね。『保護』です」
( ^ν^)「保護」
鸚鵡返しにしたニュッの声は、あと少しで吹き出してしまいそうに震えていた。
それに釣られたか、傍聴席からも失笑を買ってしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「40年前に行方不明になった中学生の女の子は、当時、両親と仲が悪かったんです。
母親が暴力的といいますか……とにかく家に帰るのが嫌だというので、
ある日カンオケ神社に立ち寄って、お賽銭を投げ、
悩みを吐露し、助けてくださいとお願いしました」
それを聞いたくるうが、可哀想だ、何とかしてあげてくれとオサムに頼んだ。
仕方なくオサムは少女の前に姿を見せ、言った。
しばらく身を隠すか、と。
少女は驚きつつも頷いた。
そうして、ひとまず、彼女を異界に隠したのだという。
-
ξ゚⊿゚)ξ「『あっち』と『こっち』は時間の感覚が違います。
ほんの少しのつもりでも、『こっち』では5年も経っていました」
とにかくオサムが無理矢理さらったわけではないし、
彼女が帰りたがった時点ですぐに帰している。
オサムの方から何かを強いてはいないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「これは、『こっち』へ帰ってきた彼女本人が語ったことです。
当時の新聞にも、彼女の証言として載っていますし」
本当ならば、本人を証人に呼びたいところだが、数年前に病死してしまっている。
そう付け足してから、ツンは次の書類へ移った。
ξ゚⊿゚)ξ「62年前に起きた5歳児の事件にしても、そうです。
夕方、刃物を振り回した男に終われて子供が神社に逃げ込んできたため
咄嗟に子供を隠しました──それもやはり、すぐ出したつもりでも一ヶ月近く経ってましたけれど」
その男は通行人にも怪我を負わせていたので、まあ当然のように逮捕されたわけだが
取り調べの際に『子供が神社で消えた』と話したそうだ。
このことも新聞に載っている。
-
ξ゚⊿゚)ξ「これら2つの事件以外、オサム様は神隠しを行っていません。
オサム様は私利私欲のために人を拐ったことはないし──
人を食べたことも勿論、一切ありません」
( ^ν^)「私利私欲で連れ帰った恋人のことは?」
ξ゚ -゚)ξ「……事情が違うでしょう。
拐ったわけじゃないし、一方的に気持ちを押しつけたわけでもないわ。両想いだったんだから」
「そうですね」。
神妙な顔で納得の意を見せたデレの口を押さえ、ニュッはツンを睨む。
( ^ν^)「確認するが、実際に神隠しをしたって事実は認めるんだよな?」
ξ゚ -゚)ξ「……帰ってきてる件のみはね」
( ^ν^)「つまり悪意の有無はともかくとして、
子供を隠すことは可能だし、何度か実行してるわけだ。なあ?」
嫌な訊き方をする。
オサムが神隠しを行った、その事実のみを印象付けようとしているのだ。
ツンは口をひん曲げて黙っていたが、ニュッがいつまでも返答を待つので、渋面を浮かべて頷いた。
そんなやり取りを経て、ツンが腰を下ろす。
手応えは無い。内藤にも分かる。
-
爪'ー`)「では、検察側から証拠の提出をしてもらおう」
ゆっくり腰を持ち上げるニュッに対し、デレは勢いをつけて起立すると
何やら機具をいじり始めた。
検察席と弁護人席の背後には、それぞれ高い位置にバスケットゴールが付いている。
そのボードから、モニターが下げられていた。
ぱち、とデレの手元で音がすると同時に、モニターに映像が現れた。
川;*゚ 々゚) ホワー
こればかりは、苛立っていたくるうも釘付けである。
彼女やオサムはどうも機械類に慣れていないのか、こういったものに示す興味も強い。
最初に映し出されたのは、カンオケ神社の簡単な見取り図。
ζ(゚ー゚*ζ「参道を通って真っ直ぐ行くと拝殿があり、拝殿の後ろに本殿があります。
社務所は参道の左手に。
ランドセルが見付かったのは拝殿の右奥、赤い印の付いた場所です」
(゚A゚* )「うちのんに比べると、何やせせこましい感じやねえ」
▼・ェ・▼「お前のとこのが無駄に広すぎんだよ」
-
( ^ν^)「次。被害者のランドセル」
映像が変わる。ランドセルの写真だ。
黒い革製で反射鋲が付いている、至って普通の造り。
ただ──やけに真新しく見える。
被害者、斉藤またんきは小学4年生だと聞いたけれど。
( ^ω^)「冬休み中なのに、何で祖父母の家にランドセルなんか持っていったんでしょうかお」
ζ(゚ー゚*ζ「すごく気に入ってたんですって。
昨年ランドセルを壊してしまって、新しく買ってもらってからは
ずっと離さずに大切にしてたらしいです」
(゚A゚* )「可愛らしなあ」
( ^ν^)「これがランドセルの中身。菓子類と宿題、ペンケース」
写真は3枚目に移る。
一口サイズのカップゼリーが数個と、ビスケットの個包装もいくつか。
ビスケットの方は一つ、封が開いている。
それから後は、過去の事件を報じる新聞など細々した証拠が提出されたが、あまり真新しいものはない。
「古株」から聞いた証言に関して、しぃの母親が保証する旨の書面もあった。
-
ついでに、弁護側の証拠提出もこれといって取り上げるべきものもなかったため、割愛する。
新聞の記事とかカンオケ神社職員の証言書とか、そんなもの。
( ^ω^)(大丈夫なんだろうか……)
内藤が心配してしまうくらい、重要そうな証拠がなかった。
心持ちツンも青ざめている。くるうの方を見られないのか、あからさまに顔を逸らして。
こつん。
フォックスが緩く揺らした木槌は、動作に似合いの小さな音を出した。
爪'ー`)「──さて。いつも通りなら、本日の審理はこれで終了するところだが
今回は検察たっての希望により、ひとり証人を呼んでいる。
そちらの証人尋問をしてから閉廷としよう」
▼・ェ・▼「疲れてきたんだがな……」
(゚A゚* )「検察側は、次回の審理でも別の証人呼ぶんやろ?
なら、今日の内に一人でも片しといた方が、次が楽やね」
( ^ν^)「すぐ済むんで、少しばかりお付き合いを」
爪'ー`)「うん、それでは証人、証言台へ」
デレの隣に座っていた女性が、戸惑い気味に返事をした。
今までずっと黙っていたので、初めて彼女の声を聞いた。
女性は検察席を出て、裁判官の正面、机の前に立つ。
-
爪'ー`)「人間だな。名前と年齢から頼む」
从'ー'从「わ、渡辺アヤカです。44歳です」
優しげな人だった。
よく通る声で、現状に戸惑いつつも、口調ははきはきしていた。
爪'ー`)「生年月日と職業と、住所」
从'ー'从「昭和43年の、4月19日……。
ヴィップ保育園で保育士をしています。住所は──」
( ^ω^)「ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「……何?」
( ^ω^)「や、全然証人のこと見ないんで……」
ξ゚⊿゚)ξ「何でもないわ」
緊張と言えばいいだろうか、ツンは身を固くしていた。
ぴりぴりした空気も感じる。
起立したニュッは書類を軽く叩いた。
-
( ^ν^)「それじゃあ始めよう。
──証人の保育士歴は?」
从'ー'从「短大を卒業してからだから、24年……
あ、でも、子供を産んでからしばらく休んでいた時期があるので、実際は18年です」
(゚A゚* )「長いのー」
( ^ν^)「その18年、ヴィップ保育園で?」
从'ー'从「ええ」
( ^ν^)「13年前、2000年の6月に起きた事件は覚えてるな」
渡辺の顔が曇った。
痛ましげに目を伏せ、頷く。
从'−'从「ヘリカルちゃん……保育園で、私が受け持った年長組の女の子でした。
その子が公園でかくれんぼをして──そのまま……」
( ^ν^)「行方不明に」
从'−'从「はい……」
13年前というと、子供が帰ってきていない──オサムは関わっていないと弁護側が主張している事件だ。
-
( ^ν^)「休日に子供だけで遊んでる間に起きたからな。
あんたには何の責任もないが、それでも胸は痛むだろう」
从'−'从「はい、もちろん……。
……あのとき、私がもっと、ちゃんと話を聞いていればって」
▼・ェ・▼「『あのとき』?」
ビーグルが疑問符を飛ばす。
答えたのは渡辺ではなく、ニュッの方。
( ^ν^)「女児は事件の前日、家族や証人に、あることを話していた」
爪;ー;)「あること、とは何だ?」
( ^ν^)「証人」
从'ー'从「えっと……公園に行くと、おばけが──自分のことを呼ぶんだ、って」
( ^ν^)「その『おばけ』について、女児は何て?」
从'ー'从「あの、私、そのとき忙しくて……あまり話を聞いてあげられなかったんです。
だから細かくは覚えてないんですけれど」
( ^ν^)「構わねえ。知ってることだけを」
渡辺は口元に手を当て、躊躇うように沈黙した。
ほんの数秒。すぐに手を下ろし、答える。
-
从'ー'从「……『オサム様のところに行く』って──文脈は覚えてないけど、
そう言ったのはたしかに記憶してます」
くるうが瞠目した。
声は出ないままに唇が動く。「どうして」。
そのことに、内藤だけでなくニュッも気付いていた。
( ^ν^)「なあ、『監視官』」
川;゚ 々゚)「、」
立て、と命令する声は冷たく、表情は場違いに明るい。
くるうはニュッを睨み、恐々と立ち上がった。
ツンが訝しげな顔をする。ニュッの意図をはかりかねて。
( ^ν^)「人間の嘘のにおいが分かるんだよな。
だから監視官やってんだよな」
川;゚ 々゚)「……」
-
( ^ν^)「今回は被告人が被告人だから、あんたを監視官としては採用しなかったが……
実際、どうなんだ。
証人から嘘のにおいはしたか?」
川;゚ 々゚)「……ぁ……」
くるうの額に汗が滲む。
そこでようやく察しがついたようで、ツンが眉を顰めた。
ニュッは敢えて口を閉ざす。瞳でくるうを貫いたまま。
彼女にとってプレッシャーになるのは分かっているけれど、内藤も目を外せなかった。
沈黙は長い。
すっかり存在感の薄れていた雨音が、この場にいる全員の耳に染み渡る。
フォックスが木槌を持つ手を動かした。
同時に、くるうの目から涙が零れた。
川 ; 々;)「……やだ……」
-
( ^ν^)「監視官」
川 ; 々;)「やだ、やだよお……何で……何で……」
ツンが机を叩いて立ち上がった。
その音で、くるうの涙は勢いを増す。
ξ;゚⊿゚)ξ「今まで黙ってたくせに、どうして今更こんな確認を……!」
( ^ν^)「弁護人にしたって、ここで訊いときたいとこだろ?
『くさい』って一言がありゃ、
弁護側の『被告人は無関係』って証明が出来る……かもしれねえんだから」
──この反応を見れば、聞くまでもないではないか。
くるうが泣いてしまった時点で、ニュッにはもう、答えなどどちらでも良くなったのだ。
「臭わない」と言えば、もちろん検察側に有利だ。
逆に「臭う」と言えば──誰も信用しない上、
監視官が嘘をついたということで、くるうの信用は無くなる。
▼-ェ-▼「……趣味が悪い」
ビーグルが、気分を害したように呟いて顔を逸らした。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「くるうさん、答えなくていいわ!」
川 ; 々;)「う、ううっ、ううっ、ああ、あう……」
制止を期待し、内藤はのーを見た。
あの神様はこれまで、フォックス達を宥めるなど、気を遣った振る舞いを見せている。
ニュッを止めてくれないだろうか。
のーは頬に手を当てると、首を小さく傾けた。
(゚A゚* )「まあ、うちも気になるさかい……くるうちゃん、ちゃちゃっと答えてくれるかな。
だいじょぶだいじょぶ、何も恐いことあらへんよ」
内藤の顔が引き攣る。
彼女は微笑んでいた。微笑んでいたが。
目は笑っていなかった。
-
(゚A゚* )「これ裁判やから……なるたけ判断材料欲しいんよ、な? 分かるやろ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと……! さ、裁判長!」
爪;ー;)「私も一度は確認しておきたいんだがな。……まあ無理にとは言わん」
(゚A゚* )「何やのんフォックス。結構大事なことよ?」
▼-ェ-▼「そんなに泣かせんのが楽しいかババア」
(゚A゚* )「ちゃいます。うちが確認したいんは、そういうのやなくて……って今ババア言いよったな貴様」
裁判官が仲間割れし始めた。
ツンがおろおろと裁判官やくるうのどちらへ声をかけるべきか迷っている。
乱れた場を収束へ導いたのは──やはり「彼」だった。
【+ 】ゞ゚)「くるう。いいよ」
座ったままオサムが言う。
くるうは、しゃくり上げながらオサムへ顔を向けた。
-
【+ 】ゞ゚)「お前は嘘をつけないし、つかなくていいんだ。
本当のことを言えばいいよ、くるう」
2人の視線が絡み合う。
くるうの涙は止まらない。
震えを止めるように唇を強く噛んだ彼女は、それから、ゆっくり開いた。
川 ; 々;)「……嘘のにおい、しなかった……」
言い終えると共に、くるうは崩れるように座った。オサムに縋りつく。
ごめんなさい、許して、と何度も繰り返す彼女の頭を、オサムの手が撫でた。
ニュッは満足げに手を叩く。
一人分の乾いた拍手が体育館に虚しく響き、余韻を残して消えた。
( ^ν^)「恋人より監視官としての誇りを守ったな。監視官の鑑だ」
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんのこういうとこ嫌い」
( ^ν^)「知ってる」
辛かったなあ、堪忍なあ──のーが、慰めの言葉を吐く。
彼女のハンカチは、フォックスの涙によって既に使い物にならないほど
水を吸い込んでしまっている。
-
爪;ー;)「弁護側から、証人への反対尋問はあるか?」
ξ゚ -゚)ξ「……少しだけ」
( ^ω^)(……?)
内藤は首を傾げた。
ツンの返答に、今度は渡辺が緊張するのを感じたのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「証人。女の子は、『おばけが呼んでる』って言ったんですよね」
从'ー'从「ええ」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたはそれを聞いたとき、すぐに信じましたか?
本当に──おばけが、女の子の前に現れたんだと」
从'ー'从「……もちろん。子供のことを信じてあげないで、どうするんです」
保育士としては理想的な答えだろう。
が、即座に、くるうが頭を振った。
川 ; 々;)「い、今、くさかった……」
ξ゚⊿゚)ξ「……証人」
从;'ー'从「あ──えっと──
……ごめんなさい、何かの勘違いだろうと思って……。
子供って、よく見間違えたり、自分の想像したものを現実のことのように話すから……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「今回もそんなものだろうと思って、女の子のことを信じなかった?」
从;'ー'从「……ええ」
( ^ν^)「子供なんて、みんながみんな純粋無垢で素直なもんじゃねえだろ。
嘘だってつくし、いたずらもする。
子供の言うこと全部信じろってのも無茶な注文だ」
ツンの顔色が僅かに暗くなった。
その反応は予想外だったのか、ニュッが不可解そうに眉根を寄せる。
ξ゚ -゚)ξ「……そうね。……検事の言う通りよね」
从;'ー'从「あっ、で、でも、今は信じます!
おばけが本当にいるんだって、今回の裁判でよく分かりましたから──」
从;'ー'从「──あの、……つ、ツンちゃん……ごめんなさいね……私……」
ξ゚⊿゚)ξ「『あまり話は聞いていない』『文脈を覚えてない』と言っていましたが、
本当に、他のことは覚えていませんか?」
明らかに渡辺は何かを言いかけていた。
けれど、ツンが質問を続けたために打ち切られてしまう。
渡辺は目を伏せ、「はい」と小さく答えた。
くるうの指摘は入らない。
-
ξ-⊿-)ξ「なら、尋問は以上です」
爪'ー`)「いいのか? 証人が何か言いたげだったが……。知り合いか?」
( ^ν^)「弁護人も昔ヴィップ保育園に通ってたんだとは聞いてるが」
ξ゚⊿゚)ξ「それだけです。特に訊きたいこともないので、もう終了して結構です」
从;'ー'从「ツンちゃん……」
爪'ー`)「証人、まだ言うことはあるか?」
从;'ー'从「……いいえ」
ツンが着席し、渡辺はデレの隣に戻った。
くるうは泣き止んだが、どこか呆然として黙り込んでいる。
空気は重い。
フォックスが弁護人席と検察席を見渡し、木槌を振り上げた。
-
爪'ー`)「それでは──今日は、これにて閉廷とする。
次回の公判は2日後、2月1日の夜9時から、またここで」
叩きつける音が、高く響く。
数秒の間を経て、館内の緊張感が途切れた。
傍聴人達が動き出す。
フォックスは宙に胡座をかくと、木槌を回した。
一回転すると木槌は煙管へ変わり、紫煙を燻らせるフォックスをビーグルが睨む。
内藤がそれらを眺めている間に、検察席を出たデレがこちらへ歩いてきた。
ζ(゚ー゚*ζ「オサム様、くるうさん、行きましょう。お送りします」
【+ 】ゞ゚)「ああ。──弁護人、世話をかけた。ゆっくり休んでくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「オサム様とくるうさんも」
川 ゚ 々゚)「ん……」
-
(#'A`)「あ゙ーっ! 相変わらず……っつうか、ますます憎たらしくなってねえか、あの検事!!」
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田さん、お久しぶりです。ニュッさんはいつもあんなもんですよ」
(-@∀@)「センセイ、大丈夫デス? 証人尋問の辺りカラ具合が良くなさそうデスが……」
( ^ω^)「──ツンさん、もう行くんですかお?」
傍聴席からドクオとアサピーも近寄ってきて、弁護席は俄に賑々しくなった。
だが、ツンは手早く荷物をまとめると、コートも手に持つだけにして
さっさと体育館の入口へ向かって歩き出してしまう。
ξ゚⊿゚)ξ「次回の準備をしないと」
内藤はツンの後を追った。大した荷物もないのでコートを羽織るだけで身支度は整う。
入口は検察席の後ろだ。
-
(*゚ー゚)
(,,゚Д゚)ノシ
傍聴席に目をやると、しぃとギコがいた。
小さく手を振るギコに、内藤も同じようにして返す。
しぃの隣で見知らぬ少年が彼女の服の裾を掴んでいたが、誰だろう。
( ^ν^)「次はもっと粘ってこいよ。ワンサイドゲームって退屈なんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんまり調子乗ってると後で恥ずかしいわよ」
ニュッがパイプ椅子に座ったまま、にやにやしながら嫌味をぶつけてくる。
ツンは検察席の横を一旦通り過ぎ、すぐに後ろ歩きで戻ると、
ニュッのループタイの両端を引っ掴んで彼の鼻にぶち込んだ。
-
(#^ν^)「てめえコラァアア!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ばーかばーかお前の根性ツイストマカロニ! 逃げるわよ内藤君!」
( ^ω^)「はい」
ζ(゚ー゚;ζ「ニュッさんそのまま! 写真撮るから動かないで!」
从;'ー'从「あ……ねえ、ツンちゃん──」
ξ゚⊿゚)ξ「どうも」
呼び止める渡辺に、ツンは素っ気なく会釈だけを返した。
過去に渡辺との間に何かあったらしい。
そういえば先週、拝殿の中で彼女の名を聞いたときも様子がおかしかった。
待てと怒鳴るニュッに構わず、ツンは入口の扉に手を当てた。
そのまま押し開き──
.
-
_
(;゚∀゚)∬;´_ゝ`)
そこにいた男女を見て、ツンと内藤は硬直した。
男の方は知らない。
女の方はよく知っている。
ξ;゚⊿゚)ξ
( ^ω^)
∬;´_ゝ`)
女は──姉者は、腰が抜けているのか、情けない体勢で座り込んでいた。
顔に血の気はなく。目も涙が張っている。
全身が小刻みに震え、床を掻く指先は白い。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「……いつから……」
∬;´_ゝ`)「……最初から……」
内藤はひとまず手のひらで目を覆い、しばし、思考を別の方向へ旅立たせた。
傘を持ってきていないな、失敗したな、と。
一度は止みかけた雨が、また激しく降り出していた。
case8:続く
-
今回ここまで
読んでいただきありがとうございました
Romanさん、いつもありがとうございます
次回投下日は未定
Romanさんへ
>>230のミス修正に関する依頼をRomanさんの掲示板に書き込んだのですが、
スレ一覧では書き込みが反映されていませんでした(最新50レスで表示すると反映されてました)
もしかしたら書き込みに気付いてもらえないかもと思ったので、この場で再びお願いさせてください
他のスレはみんな普通に書き込めてるようなので、多分こっちの端末に何か問題があったんだと思います、ごめんなさい
-
軽く今回の事件まとめ
(・∀ ・)
・被害者。小学4年生
・2013年1月1日、両親と共に母方の祖父母の家に来る
・午後8時頃、家族が目を離した隙に、防寒具・ランドセルと一緒に姿を消す
【+ 】ゞ゚)
・被告人
・2013年1月1日の午後7時50分から8時30分まで、川 ゚ 々゚)と一緒に神社の本殿で寝る →アリバイ無し
・1月15日、警察が拝殿で(・∀ ・)のランドセルを発見したため、【+ 】ゞ゚)を逮捕
・ランドセルの中に、カンオケ神社に供えられたお菓子が入っていた
→検察側:【+ 】ゞ゚)がお菓子を使って(・∀ ・)を拝殿に誘き寄せた
→弁護側:事件当日、【+ 】ゞ゚)が拝殿でランドセルを発見した
持ち主を探したが見付からなかったので拝殿に戻した
お菓子は拝殿にあったものを(・∀ ・)が失敬した
-
乙
-
・(・∀ ・)は見付かっていない
→検察側:拝殿の中で【+ 】ゞ゚)が喰った
【+ 】ゞ゚)には人を喰う噂がある。噂は全く根拠が無いわけではない
→弁護側:(・∀ ・)は、たまたま拝殿に入っただけ。【+ 】ゞ゚)には会ってない
【+ 】ゞ゚)とは関係ない理由で行方不明になっている
・【+ 】ゞ゚)は過去にも神隠しを行っている
「8年前、13年前、さらに他の年に子供が行方不明になったまま帰ってきていない」
「40年前、62年前に行方不明になった子供は後で帰ってきている」
→検察側:全て【+ 】ゞ゚)の仕業
弁護側の意見は都合良すぎ
13年前に行方不明になった子供はオサムの名前を口にしていた
→弁護側:40年前と62年前のは【+ 】ゞ゚)の仕業。やむを得ない事情でやった
それ以外は関わっていない
・結論
→検察側:【+ 】ゞ゚)が尋常でないくらい怪しすぎる
でも犯行を確実に証明できる決定的な物証は無いよ
→弁護側:【+ 】ゞ゚)は無関係
でも犯行を確実に否定できる決定的な物証は無いよ
( ^ν^)
・鼻穴ループタイ写真をデレの手によりN地検とN県警と親に拡散される
-
ニュッ君ざまぁ
-
>>245
「凶悪な霊が相手でもまともに審理を進められる」ために、裁判官は神様としての力の強さが重視されます(もちろん最低限の良識も必要)
今回の裁判官の中では爪'ー`)が一番強いので裁判長になってます
あとフォックスの感情は、検察側あるいは弁護側の「説得力」具合で左右されるので、
最終的に下す判決は、客観的には不当なものではありません(事の真偽はともかく)
検事の口がいくら上手くとも、弁護側がちゃんとした証拠で反論できれば、弁護側に傾きます。逆も然り
オサム同様、審理中の振る舞いには問題あるけど判決自体は特に問題ない裁判官です
という設定、もとい申し訳程度のフォロー
ただしフォックスに反感を持つ弁護士検事やおばけも当然います
-
〜ついでに本編にあんまり関係ない設定〜
▼・ェ・▼
・裁縫、手芸関連のご利益がある
・よく衣類や装飾品をお供えされる
・ビーグルが着てる服も、過去にお供えしてもらったもの
・気分によって着替えるファッショナブル神
・たまに神社の宮司がお供え物の中に犬用の首輪混ぜてツッコミ待ちの顔してるのが最高に鬱陶しい
・オサムに対しては有罪寄り
(゚A゚* )
・山神様
・地元の弁護士検事おばけ達から信頼されてる。そのため地元のおばけ犯罪発生率は低い
・ババアとか山姥とか言われるとガチギレする
・幽霊裁判ではあまりいない「疑わしきは罰せず」タイプ
・なので今のところオサムに対しては無罪寄り。今のところ
(゚A゚* )の関西弁は雰囲気関西弁なのでおかしいところも多々あるだろうけど、目を瞑っていただければありがたい
-
目次忘れてた
幕間 >>60
case8 前編>>131/中編>>249
今回は以上です!!
-
おつ!
-
乙
事態がいくつか重なってる上に形勢不利だからすげえやきもきする
-
乙
どう繋がるのか早く知りたい伏線?が多くて次回が楽しみ
-
全然先が分からなくて楽しみ。
-
いつもなんとなく覗いたら投下してるから嬉しい
乙ー!
-
嘘発見能力持ってる子がもう一人居たら即解決なのになぁ…
くるうちゃんのアレどのくらいレアな能力なのかね?
後鼻ループタイ拡散ニュッくんざまぁwwww
-
ニュッ君って登場する度に大恥晒されてるな
-
ニュッ君とデレの出会いとか気になるわぁ
-
確かに気になる
-
乙
ホント楽しみに待ってますわ
-
男に終われてって誤字?
-
>>373
誤字! 「追われて」ですね
>>370
〜17年前・鵜束ニュッ11歳 学校帰り〜
( ;ν;) ヒックヒック
彡 l v lミ「やはり、このガキ俺らが見えているぞ」
( l v l)「美味そうだ、喰ってしまおう。この町もそろそろ去らねばならないし、その前に」
彡 l v lミ「そうだな。……おのれフォックスめ、おばけ法など面倒なものを……」
( ;ν;) グスッグスッ
( l v l)「俺は右足から」
彡 l v lミ「俺は目玉が好きだな」
( l v l)「それでは早速……」
「──やいやいやい! そこな悪党共! それ以上その子に近付けば、ただじゃ済みませんよ!」
彡 l v lミ「何だ」
( l v l)「誰だ」
ζ(゚ー゚*ζ「私です!」
-
ζ(゚ー゚*ζ「幼気な少年を食べようだなんて見過ごせません。
このまま去るなら、まあ、見逃してあげなくもありませんが。
そうでないなら──」
彡 l v lミ「照屋じゃないか」
( l v l)「……行こう。あいつは厄介だ」
彡 l v lミ「ああ」
彡l v l ミ(l v l )≡≡ スタコラサッサ
ζ(゚ー゚*ζ「……ふー」
( ;ν;)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「さて……」
ζ(゚ー゚*;ζ「──あのう、すみません、ねえ、そこの僕、あのね、そのですね、
ちょっとだけ、ちょっっっとだけ、あれ、血をね、ちょっとだけですよ、
お姉さんに飲ませてくれませんかね、本当ちょっとだけ! 痛くしませんから! 先っちょ(牙の)だけ!」
( ;ν;)
-
ζ(゚ー゚*;ζ「お腹空いてるんです! もう一ヶ月、血を飲んでなくて!
助けてあげたでしょう? ギブアンドテイクですよ! お願いします!」
( ;ν;)「一ヶ月……?」
ζ(゚ー゚*;ζ「はい、一ヶ月前に高校生の女の子の血を飲んで以来、獲物……じゃなくて
いい感じの子が見付からなくて。あっ、死にはしませんよ! 私そこまではしませんから!」
( ;ν;)つ⊂ζ(゚ー゚*ζ ギュッ
(;ν; )つ⊂ζ(゚ー゚*ζ , , , テクテク
ζ(゚ー゚*ζ「あら、場所を移すんですか?
ですよね、道端じゃちょっとね」
ζ(゚ー゚*ζ「あらあら、どこまで行くんです? どんどん人通りの多いとこに……
こっち? はいはい、もしかしてあなたのお家に連れてってくれるんですか?
その方がゆっくり吸えますもんね」
ζ(゚ー゚*ζ「あのう、何か県警に近付いてません? ねえ、ちょっと。
あっ県警入りましたね。これ良くない展開ですね。
あー。あー。チクりやがりましたね。あーあ。あー。そう来ますか。あー」
.
-
〜それから10年後〜
ζ(゚ー゚;ζ「やっと霊界から出られた……うう……酷い……
そりゃ、たしかに血を吸った相手はいっぱい居ましたけど……
命に関わるほど吸っちゃいないんだからもっと軽くしてくれたって」ヨロヨロ
ζ(゚ー゚;ζ「お腹空いた……月に一回微量な血液渡されただけじゃ全然足りない……」
ζ( ー ;ζ「あ、駄目……動けない……」バタッ
ζ( ー ;ζ(野垂れ死ぬんでしょうか……ああ……
それもこれも、あのときの少年のせいです……)
ζ( ー ;ζ(……ん……?)
ζ( ー ;ζ(口の中に何か入れられた……指……? 誰……ああ駄目、お腹が空いて……)
ζ( ー ;ζ(吸ったらいけません、許可もとらずに吸ったのがバレたらまた逮捕……
うう、声を出す気力もない、許可とれない……お腹空いた……お腹……)
ζ( ー ;ζ チューチュー
ζ( ー ;ζ チュー…
ζ(゚ー゚;ζ「──まっっっず!! 何です、この不健康な味は!!
これは推定21歳、大学に通いつつ他に仕事か何かしてるため疲れも取れず生活習慣も不規則
ひたすら不健康な生活を送っている男性の味!!」ペッペッ
( ^ν^)「何でそこまで分かんだ気持ち悪ィよ」
ζ(゚ー゚;ζ「吸血鬼をナメないでいただきたい! ……。……あれ? あなたは」
-
( ^ν^)「吸血鬼って10年経っても見た目の年齢変わんねえのな」
ζ(゚ー゚;ζ「──あのときの少年!! おのれ、ここで会ったが100年目!
せっかく助けてあげたのに、恩人を警察に突き出すとは何たる所業!
しかもあんなにお願いしたのに血の一滴も寄越さない鬼畜め!」
( ^ν^)「くれてやったろうが、今」
ζ(゚ー゚;ζ「え? ……あっ、今の指……」
( ^ν^)「っつうか、お前なんでこんなところで倒れてんだ。
警察で雇われたんだろ?」
ζ(゚ー゚;ζ「へ?」
( ^ν^)「……お前みたいなのは野放しにしたらまた繰り返すし、
それに吸血鬼って種族はその名前だけで色々使えそうだから
警察で引き取るって話になってた筈だが……。手違いで外に出されたな」
ζ(゚ー゚;ζ「そうなんですか? っていうか何であなたがそんなこと知って……
あれ、その片手に持った本は何です。おばけ法?
べ、弁護士さんですか? あ、検事の方……。はあ」
-
ζ(゚ー゚;ζ「それにしても、ううむ、私が警察ですか。面倒だなあ……。
聞かなかったふりして逃げましょうかね」
( ^ν^)「まあ俺はどうでもいいが。
警察に入るなら、今後しばらくは安定して血液が供給されるらしいぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「やりましょう」
( ^ν^)「じゃあとっとと県警行け。
俺も呼び出されてるから行くところだ」
ζ(゚ー゚*ζ「はい!」
ζ(゚ヮ゚*ζ(安定した供給……! 美味しい血だといいなあ!)
( ^ν^)(こいつが刑事になった暁には利用し倒してやる)
*****
-
_、_
( ,_ノ` )y━・~「──うん、適性試験は大体合格だね」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「後でまた色々テストあるけど、まあ心配ないだろう。これからよろしく」
ζ(゚ー゚*ζ「はい! ……それでですね、あのう、『血液の安定した供給』というのは……」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、そのことだけど。
一応ね、念のため見張りとして、おばけ法に詳しい人と一緒に暮らしてほしいんだ。
住居はこっちで準備するから。血液はその人からもらって」
ζ(゚ー゚*ζ「承知しました!」
ζ(゚ヮ゚*ζ(同居ということは女性!? 若くて生娘だったら最高ですね!
そうでなかったとしても、まあ一定の水準は……!)
< コンコン
_、_
( ,_ノ` )y━・~「入って」
( ^ν^)「失礼します」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「というわけで鵜束検事、よろしく。N地検にも話は行ってるから」
( ^ν^)ζ(゚ヮ゚*ζ「は?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「今後は鉄分たくさん摂った方がいいよ。豆乳飲みなさい豆乳」
( ^ν^)ζ(゚ヮ゚*ζ「は?」
終わり
-
完全に不審者
おつ
-
意外とかわいらしい出会いだった
ニュッくんレバーとプルーンもどうぞ
-
適当に言っただけなのになんか来てて草
ありがとう
ていうか7年一緒に暮らしてんのか付き合いなげーな
-
かわいい
-
ショタニュッ君かわいいな
-
この二人の関係はなんかおかしいな
乙です
-
泣いてはいるけどめちゃめちゃ冷めてないか…?
-
ニュッくん昔はお化け怖がって泣くような子だったのにどうして歪んでしまったのか…
不能になったからかな…
-
不能になったのはこの7年間でじゃないか…?
-
異性と同棲してて不能にか…
あっ(察し)
-
\x95\x82\x82*\x82*\x82*\x8A**\x82*\x96*\x89x\x81B
\x82*\x82*\x8DD\x82*
-
浮かんだ感情は愉悦。っていうところが好き
愛しさとかじゃないところがいい
-
変態っぽさとも違うなんか軽く病んでる感が出るよね
-
おつ
うおおおオサム様・・・ニュッ君趣味悪いけど鼻ループタイで許す
ツン姉者と仲良くなれたらいいなぁ
-
八話後編、早ければ明日、遅くて明後日に投下します
超長いので多分こっちで。もしかしたら途中で切って残りは翌日って形になるかもしれない
>>368
結構なレア物です
監視官という役割もレアです
本当にそういう力があるのか、あるとして正しく公平に使えるかなど色んな試験があるので監視官になれるのは一握り
くるうはオサムのために監視官になってヴィップ町にいるけど、
本当ならもっと大きくてもっと幽霊裁判の多い土地に派遣されて然るべき人材。人材というか霊材
神無月の出雲の集まりにオサムが行く度、各地の神様から
「お前のとこの監視官くれよ」と言われるのでオサム困る
今考えた
-
よし待機
くるうちゃんすげーな
-
やったwktk!
-
楽しみが出来た
-
くるうちゃんエリート!
明日が待ち遠しい
-
さとり系の妖怪なら監視官になれるのかと思ってたらエリートだけなのか
くるうは臭いの嫌なのに難関くぐり抜けてまで嘘吐きと接する仕事してるんだな
愛されてるなぁオサム
-
投下します
※切りのいいところまで
-
『またんき。この人が、新しいお父さんになるからね』
( ´ー`)『よろしく、またんき君。……息子になるんだし、またんき、でいいかな』
(・∀ ・)『うん。よろしく……』
握手をする。
物分かりは悪い方ではない、と自負している。
母を困らせたくはない。新しい「お父さん」を拒絶するつもりもない。
勿論すぐに受け入れられるかといえば、そうではないけれど。
──「お父さん」は親切にしてくれた。
初めから家族だったかのように、父としてまたんきを可愛がってくれた。
『またんき、あんたに弟か妹ができるよ』
食卓を囲みながら嬉しそうに母が報告をした日、「お父さん」は勿論、またんきも喜んだ。
その新しい命が、家族としての繋がりを強くさせてくれる気がしたから。
.
-
case8:神隠し罪/後編
.
-
ξ-⊿-)ξ「──というわけで、幽霊裁判ってものが誕生したわけよ。
で、何やかんやあって内藤君は私の手伝いをしてくれてる、と」
黒ずくめの女──ツンは、そんな風に話を締めた。
マグカップを持ち上げ、ホットミルクティー(インスタント)を口に含む。
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君、ミルクティー薄いわ。お湯多くない?」
( ^ω^)「僕はこれで丁度いいですお。お好きに粉足して調節してください」
ξ゚З゚)ξ「へーい」サッサッ
(,,゚Д゚)「あんたそれは足しすぎじゃないの」
ξ*゚⊿゚)ξ ウマー
( ^ω^)「ツンさん濃いめ好きですおね」
(´<_` )「遠慮しろよ」
_
(;゚∀゚)(何でこいつら和やかなんだ……)
かれこれ20分近く正座しっぱなしのジョルジュは、足の痺れも気にならないほど困惑しきっている。
-
──時は深夜。
場所は流石家の居間。
ジョルジュと姉者が並んで座り、
卓袱台を挟んだ向こうにツンとギコ、内藤──流石家の居候の存在は知っている──がいた。
さらに彼らを監視するかのように、少し離れた位置に姉者の弟が。
_
(;゚∀゚)(ああ、落ち着け俺、ともかく状況を整理しろ)
まず、ギコを追って旧校舎に辿り着き、姉者と共に体育館を覗いた。
体育館の中では裁判が行われていた。神隠しとか何とか。
おばけがどうのこうのという話が頻出した。角度のせいで全体は見えなかったが、
傍聴席──らしき空間──には、明らかに人間ではないものがたくさんいた。
何が何だか分からない内に裁判が終わったらしく、ツン達が体育館の扉を開けた。
そしてジョルジュ達と対面して。
-
裁判を覗き見している間、通算21回ほど気絶と覚醒を繰り返していた姉者が
とうとう22回目の失神を果たし、ツンが傍聴席にいたギコを呼んで姉者を抱えさせ──
一旦どこかで話しましょう、ということで姉者の家へ連れてこられたのだ。
姉者が目覚めるのを待ち、騒ぎを聞きつけた弟者も2階から下りてきて、
そうしてようやく、ツンとギコから「おばけ法」「幽霊裁判」についての説明を受けた。
以上。整理終わり。
ξ゚⊿゚)ξ「信じてくれます?」
_
(;゚∀゚)「あれで信じないほど往生際悪くねえよ……」
話だけ聞かされたのなら、そりゃあ信じなかっただろう。
しかしジョルジュ達は見てしまった。
裁判や神様、おばけを目の当たりにしてしまったのだ。
それは結構です、とツンが微笑む。
美人だ。胸元が寂しいのでジョルジュの好みではないが。
-
目覚ましちゃ失神してたのか姉者www
-
(´<_`#)「……まったく、姉者にだけは知られちゃいけないことだったのに」
( ^ω^)「ごめんお、僕とツンさんが尾行に気付かなかったばっかりに」
弟者は先程から苛々しっぱなしである。
彼が姉者に甘いというのは、妹者から度々聞いていた。
ゆえに姉者を脅かすものを嫌うのだろう。
自己紹介してからというもの、こちらに向ける目が非常に冷たいのが気になるけども。
_
( ゚∀゚)「弟者君も、幽霊裁判を知ってるんだね」
(´<_`#)「あんたに弟者君と呼ばれる筋合いはない!!」
_
(;゚∀゚)「ええ〜じゃあ何て呼べと」
( ^ω^)「義弟者?」
(´<_` )「やめろ」
( ^ω^)「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「そういやギコ、しぃ検事放っといて良かったの?」
(,,゚Д゚)「先に帰るよう言っといたから大丈夫」
-
∬;´_ゝ`)「つ、つまり……ギコ君も、おばけ見えるのよね? ブーン君も……」
じっと黙っていた姉者がやっと発した言葉は、そんなものだった。
内藤とギコが顔を見合わせ、姉者に向き直る。
(,,゚Д゚)「ええ」
( ^ω^)「黙っててすみませんお」
∬;´_ゝ`)「いえ、いいの、そりゃ言えないわよね。それはいいんだけど。
──うちの中で、ゆ、幽霊とか見たことあるの?」
( ^ω^)「聞きたいですかお?」
∬;´_ゝ`)「……ううん」
ξ゚⊿゚)ξ「姉者」
∬;´_ゝ`)「わひゃああっ!!」
(´<_`#)「おい!」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと何それ名前呼んだだけじゃないどうして私にだけそういう態度なわけ信じらんない」
∬;´_ゝ`)「ご、ごめんなさいいい」
(,,゚Д゚)「幼少期に刷り込まれた恐怖ね」
-
ξ゚⊿゚)ξ「チックショウもういいわ。
姉者、長岡さん、このことは他言無用でお願いね」
_
(;゚∀゚)「他言無用って、でも普通に証人とか呼んでたじゃねえか」
ξ゚⊿゚)ξ「別に、必要があれば一般人でも法廷に呼びますよ。
何が何でも秘密に内密にってものでもないですもの。
いずれ──何年も経って環境が整えば、公表されることになるでしょうし」
(,,゚Д゚)「でも今はまだそのときじゃないのよー、だから出来れば黙っていてくださいな」
ジョルジュは頷いた。
正直、今すぐ家族友人に触れ回りたいほど衝撃的な事実なのだが
何せ幽霊や神様が関わっている事態なので、下手をすると祟られそうで恐い。
気持ちが落ち着いてくると、今度は純粋な好奇心が湧いてくる。
非現実的な出来事に興味を持つなという方が無理だ。
-
_
( ゚∀゚)「……あれって正月の失踪事件?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうですけど──」
ジョルジュの顔に、好奇が宿っていたらしい。
ツンが呆れたような表情で口を閉じた。
ξ-⊿-)ξ「詳しく知りたかったら、次回の公判の傍聴にでも来てください」
_
(;゚∀゚)「むう」
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃあ私とギコは帰るわ。ミルクティーごちそうさま。おやすみなさい。
内藤君、明日学校休みなんでしょ? 来れたら、正午に事務所に来て」
( ^ω^)「はい。おやすみなさいお」
(´<_` )「あんまりブーンをこき使うなよ」
カップを空にして、ツンは鞄とコートを抱えて立ち上がった。
ギコがそれに倣い、1人残るわけにもいかないのでジョルジュも続く。
ツンが居間の引き戸を開け──
∬;´_ゝ`)「っあ、あの、ツンちゃん……ツンさんっ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ふぉびあっ!!?」
姉者がツンの足に飛び掛かった。
そんなことをされれば当然、鞄もコートも手放し派手に転倒するというもので。
-
顔面をしたたか打ちつけたツンは、半身を捻り、押し倒すような姿勢で乗っかる姉者へ振り向いた。
ξ;"⊿")ξ「私の美顔があっ! 何すんのよ!!」
∬;´_ゝ`)「あああああごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ! そんなつもりじゃなかったの!」
(;,゚Д゚)「鞄の中身が飛び散ってるわよー、ツン」
(´<_`;)「何してるんだ姉者……」
( ^ω^)「ついに殺意が」
∬;´_ゝ`)「違うの違うの、あの、あのね、ツンさん、あのね……」
ξ;゚⊿゚)ξ「何よ」
∬;´_ゝ`)「あの……えっと……えっと……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
∬;´_ゝ`)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「だから何よ!」
∬;´_ゝ`)「あううう」
ツンが姉者を押しやる。
姉者は胸の前で両手をつかね、えっと、とか、あのね、とか繰り返すばかりで、
いきなりタックルをかました理由をなかなか喋ろうとしない。
-
可愛いな、などと鼻の下を伸ばしつつ、ジョルジュはギコと共に
ツンの鞄から飛び出し散らばったファイルや書類を拾い集めた。
ふと、その内の一つ──新聞記事のコピーだった──が目に入る。
『女児行方不明 沢近ヘリカルちゃん(6)の行方が──』
_
( ゚∀゚)(裁判で話題に挙がったやつだ)
13年前の記事。
渡辺という保育士が証言していたのと同じ事件が報じられている。
しゃがみ込んだ姿勢のまま、何気なく目を通す。
『5月13日、ヘリカルちゃんはヴィップ自然公園で友達と──』
_
( ゚∀゚)(ん?)
ヴィップ自然公園。
検事や証人は「公園」としか言っていなかったので、
てっきり住宅地などにある小さな公園だと思っていた。
同時に、「なるほど」と1人納得する。
あのカンオケ神社の神様が疑われるのも無理は無いな、と。
-
ξ゚⊿゚)ξ「長岡さん、返してもらえます?」
姉者との会話を諦めたのか、ツンが近寄ってきてジョルジュに手を伸ばした。
見れば既に周りは片付いており、ジョルジュの持つ資料のみが鞄に収まり損ねていた。
一言謝罪し、ファイルとコピーを渡す。
_
( ゚∀゚)「13年前のって、『オサム様の森』のところで起きたんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「……何です、それ」
おや、とジョルジュは意外そうな呟きを胸中で漏らす。
これは知らないらしい。
_
( ゚∀゚)「カンオケ神社の裏の森あるだろ? 森っていうか、林っていうか。
あれって反対側に自然公園があって──
まあ神社と公園で森林を挟む形になってるんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、それは分かります。──オサム様の森っていうのは?」
-
_
( ゚∀゚)「俺の実家が……元々は祖父ちゃん祖母ちゃんの家だが、公園の近所にあるんだ。
そんで、『あそこはオサム様の森なんだ』ってよく祖母ちゃんから言われてて……
その森っていうのが、」
(,,゚Д゚)「神社と公園の間の?」
_
( ゚∀゚)「そうそう。だから勝手に入っちゃいけないって言われた」
思えば、言い伝えなどを大切にする祖母だった。
「オサム様の森」のこともそうだし、以前姉者を怯えさせてしまった神隠しの話も
祖母からしょっちゅう言い聞かせられていたのだ。
その祖母も数年前に天寿を全うし、間もなく祖父も亡くなったので、
もう聞かされることはないけれど。
(´<_`;)「……去年、花見に行ったときちょっと入っちゃったよな」
( ^ω^)「兄者さんが変なテンションになって樹に登ってたおね」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あそこは別にオサム様が管理してるわけじゃない筈よ。
神社の裏にあるから、そう思ってしまう人が多かったんじゃないかしら」
_
( ゚∀゚)「あ、そうなの? 何だ」
ツンは新聞のコピーを見下ろし、何か考え込んだ。
何秒そうしていただろう。
思いついたことでもあったようで、ジョルジュへ顔を向けてくる。
ξ゚⊿゚)ξ「長岡さん。少し、お手伝いしてほしいことがあるんですけど」
*****
-
ヴィップ自然公園は広大な敷地を誇る公園だ。
運動場や広場、サイクリングコース、ランニングコースなんかを内包しており、子供向けの遊具もある。
春ともなれば広場を中心に桜が咲き乱れ、花見客で溢れ返るような場所。
ξ゚⊿゚)ξ「13年前、ヘリカルちゃんが行方不明になったのは
5月13日──桜もとっくに散って利用者が減った頃。
桜が咲いてる時期だったなら、目撃者もいたでしょうに……」
( ^ω^)「去年、ゴールデンウィーク中に弟者達と遊びに来たんですけど
花見客が散らかしてったゴミが多くて嫌でしたお。
夏は夏で花火とか落ちてるし」
ξ゚⊿゚)ξ「人が多く来る時期は、どうしてもね。普段は綺麗なもんよ」
ヴィップ町があるA県は寒い地域なので、東京などに比べると桜の開花時期は遅い。
大体4月下旬頃。
ここへ越してくる前に内藤が住んでいたのはどちらかというと暖かい土地だったので、驚いたものだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……この広場の隅で友達とかくれんぼをして、ヘリカルちゃんはいなくなった」
( ^ω^)「神社の近くで事件が起きた上、女の子本人は『オサム様のところに行く』と言ってたわけで」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ怪しまれるわね……」
──さて、今は裁判から夜が明けて1月31日、木曜日。
真っ昼間、内藤はツンと共にヴィップ自然公園へ来ていた。
広場の奥、遊具などが置かれた区画の裏手、林の前に立つ。
( ^ω^)「──ここに子供を捨ててたんですおね……昔は」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうらしいわね」
この林がカンオケ神社に繋がっているというのなら、そういうことになる。
「口減らし」。
ニュッとデレの話を思い出すと、ぶるり、体が震えた。
-
木々の間に、ひっそりと幽霊や妖怪がいる。
内藤達を──というかツンを物珍しげに見てはいるが、これといって干渉してはこない。
ξ゚⊿゚)ξ「自我の薄い、ただそこにいるだけの人ばかりみたいだから、害もなさそうね」
内藤がそれらを気にしているのを察したらしく、彼女が言った。
そのせいで事件に関する聞き込みも出来なさそうだけど、と付け足しつつ。
ξ゚⊿゚)ξ「……で」
腰に手を当て、溜め息をつき。
ツンはゆっくり顔を動かした。
一番近いところにあるベンチへ。
ξ゚⊿゚)ξ「何で居るのかしら」
( ^ν^)「こっちの台詞だな」
そこに、ニュッが座っていた。
ハンバーガーを食べながら。
-
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはー。
今まさに出連先生が仰ってた『13年前の事件』について確認するために来てたんですよ。
で、お昼時なのでご飯食べてたとこです」
ニュッの隣でデレが答えた。
彼に身を寄せ、首筋から血液──彼女にとっての昼食──を吸っている。
ξ゚⊿゚)ξ「端から見ると、時と場所を弁えないバカップルよ……。
せめて物陰でやりなさいよ」
ζ(゚、゚#ζ「物陰でこそこそやったら、それこそ何だか不健全じゃありませんか」プンスカ
ξ゚⊿゚)ξ「ええええ何それ基準が分かんない」
ニュッは諸々より自身の食事を優先させたらしく、以降は黙ってハンバーガーに集中していた。
ジャンクフードなんか食べるから血が不味くなるのだというデレの小言にも無視を決め込んでいる。
先に食事を終えたデレが、ニュッから離れた。
-
ζ(゚、゚*ζ「ところで内藤君、学校は?」
( ^ω^)「開校記念日で休みですお」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんね、せっかくの休日に付き合わせて」
( ^ω^)「いえ。家にいると、弟者の小言がいつまで経っても終わらないので」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ……うん」
最後の一口を収め、咀嚼しながらニュッは包み紙を丸めた。
お馴染みの豆乳のパックと一緒に、傍らのゴミ箱に放り込む。
嚥下し、自由になった口で彼は出し抜けに質問を落とした。
( ^ν^)「証人の渡辺アヤカと過去に何があった」
ξ゚ -゚)ξ「……何のことかしら」
( ^ν^)「明らかに証人を避けてただろう。向こうもお前を気にしてた。
お前が証人に訊くべきことはもっと色々あった筈だ。
なのに、不自然に短い尋問で切り上げたな。とんだ肩透かしだったぞ」
-
ξ゚ -゚)ξ「彼女が『他は何も覚えてない』って言うんだから、訊いたって無駄でしょう」
( ^ν^)「だとしても粘るのがお前の仕事じゃねえのか」
2人は黙して睨み合った。
負けたのはツン。先に目を逸らしてしまう。
ξ゚⊿゚)ξ「……個人的な話よ、本当に。
自分でも、法廷での振る舞いは馬鹿らしかった……大人げなかったと思ってるわ」
それ以上は続かなかった。
その「個人的な話」こそをニュッは聞きたいのだろうけれど、
審理でのねちっこさはどこへやら、「そうか」とだけ言って追求はしない。
( ^ν^)「何にせよ渡辺が法廷にいりゃ、多少なりとも動揺してくれるわけだな」
かと思えばこれである。
ツンが無言でニュッの左足を何度も踏みつけた。
ニュッも負けじと右足でツンの脛を蹴る。
-
( ^ω^)「小学生みたいな喧嘩やめてくださいお」
ξ#゚д゚)ξ「んあああああムカつくうううう!!
陰湿! 何なの、そんなに私を苛めたいの!?」
( ^ν^)「そりゃ、お前の泣き顔が見たくて来たとこもあるからな。
今この場で泣きながらこれまでの非礼を詫びれば手加減してやらんこともない」
ξ;⊿;)ξ「えーんえーん、ごめんなちゃいごめんなちゃい。
去年の裁判で無駄にプライドだけ高いニュッ様を公衆の面前で正当に打ち負かして
自業自得な大恥かかせてしまって反省してます
私の方が優秀だから仕方ないこととはいえもうちょっと手を抜いてあげるべきでした」
ニュッは雪を掬い上げると、ツンの襟元に突っ込んだ。
ツンが奇声をあげて飛び上がる。
ξ#゚⊿゚)ξ「何すんの!! ご所望通り泣いて謝ってやったじゃないのよ!」
(#^ν^)「完全に煽りにかかってたじゃねえか!」
-
ξ#゚⊿゚)ξ「ええい、もう怒った!
望むところよ渡辺先生の1人でも2人でも3人でも好きなだけ呼べばいいわ!!」
ζ(゚、゚*ζ「渡辺先生は1人しかいませんよ」
ξ#゚⊿゚)ξ「尋問やり直すから証人として呼びなさいよね!!」
(#^ν^)「てめえ明日も自分の都合で適当に流しやがったら次こそ俺が一瞬で勝つからな!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「こればっかりはあなたが正しいわ分かってるわよ私が勝手だったわよ!!
でも次からはあんな風にならないから覚悟してなさいよ!!」
(#^ν^)「全力で来いよ!! 全力で潰すからな!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「その台詞そっくりそのまま返すわ!!
法廷のド真ん中で全裸に剥かれてケツ穴広げられた方がマシってくらい恥かかせてやるから!!」
( ^ω^)「ツンさん汚い」
(#^ν^)「俺が勝ったら這いつくばってこの公園内の雪全部食って綺麗にして町民様がたのお役に立てよ金糸玉子!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「金糸玉子って何もしかして髪のこと!?」
いい大人が2人、雪を投げつけながら言い合う姿は非常に見苦しかった。
おばけ法の弁護士検事というものは、大人げなければいけないのだろうか。
-
最後にツンの顔面に雪玉を叩きつけ、ニュッは鼻息荒く踵を返すと、
その場を足早に立ち去っていった。
デレが慌てて内藤達に会釈し、彼を追い掛ける。
2人の背が見えなくなるまで憤怒の形相で睨みつけていたツンは、
彼らがいなくなって、ようやく落ち着きを取り戻した。
ξ゚⊿゚)ξ「……ほんと、しっかりしなきゃ」
先程まで彼らが座っていたベンチに腰を下ろす。
何だかんだ、ニュッのおかげで立て直したようだ。
彼のことなので狙ったわけではないだろうけど。
内藤は湿った雪を踏み締め、ツンの隣に座った。
しばらく黙って広場を眺める。
内藤が身じろぎしたのを合図に、ツンの唇が動いた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「──私が渡辺先生を苦手になった場所も、『おばけ法』を知った場所も、この公園だったわ」
彼女は渡辺に「嘘つき」と言われた過去を手短に説明した。
奇しくも、この広場でのことだったという。
内藤に聞かせたい、というわけでもなかったのだろう。
声は淡く、ただ記憶の確認をするためだけに語っているようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「それで、私は思わず広場を出て──」
.
-
#####
ξ;⊿;)ξ グスッグスッ
自然公園のランニングコースだったろうか、
舗装された道の隅に蹲り、ツンは泣いていた。
渡辺先生の笑顔が脳裏に甦り、その都度先程の発言を伴って、困ったような表情に変わる。
「どうしていつもそんな嘘つくの」。
ξ; -;)ξ『……』
『──ツンちゃん?』
男の人の声がした。
顔を持ち上げ、涙で霞む視界を擦る。
-
(*゚∀゚)『どうした? 迷子?』
ξ;⊿;)ξ『あ……』
ギコの家──正確には、猫田家はギコの親戚の家だろうけど──で会ったことのある人だった。
猫田つー。
ギコの叔母さんの夫。
(*゚∀゚)『そっか、今日、保育園のみんなでここに来る日だったっけ』
スーツ姿のつーは、ツンをひょいと抱え上げた。
つーの隣にスーツ姿の男の人がいた。
その人が、「どなたですか」とツンを指して訊ねる。
(*゚∀゚)『甥っ子の友達です。この子も幽霊が見えるんですよ。
──よしよし、泣かない泣かない。
どうした、おばけに意地悪されたか?』
泣いていることの直接的な原因ではないが、おばけが関わっていないわけでもなかったので、
答えあぐねたツンは口を閉ざした。
(*゚∀゚)『悪いおばけがいたら、おじさんに教えてな』
-
『おばけが嫌いかい?』
スーツの人が問い掛けてくる。
ツンは、これにも返答が浮かばなかった。
しばらく考え、答える。
ξ;⊿;)ξ『……怖い』
嫌いというよりは、怖かった。
どう対応すればいいか分からないから。
(*゚∀゚)『おばけだって、みんながみんな意地悪なわけじゃないぞ。
優しいのもたくさんいるんだから。
……でも、意地悪なおばけはやっぱり怖いよなあ』
『おばけ法を知れば、おばけなんか怖くなくなるさ』
ツンの頭を撫でて、スーツの人は言った。
にやにやしていたように思うが──今となっては、顔も声も明確に覚えていない。
ともかく、当時のツンには、その男が笑っていたように思えた。
おばけほう、が何なのかツンには分からない。
-
『それで検事にでもなれば、おばけ達を苛めてやれるぞ』
(;*゚∀゚)『苛めるのが仕事なわけじゃありませんって。人聞き悪いなあ』
『この町で弁護士になったって、つーさんには勝てっこないでしょう』
(*゚∀゚)『でも、弁護士がいないと僕だって成り立ちませんよ。
もし僕が何か間違ってたとして、それを指摘してくれる人がいなくちゃ……』
『真面目だねえ』
(*゚∀゚)『面白味がないとよく言われます。
──ごめんな、ツンちゃんにはつまんない話だな』
ツンは首を振った。
話の内容はよく分からないが、つーの声は穏やかで、
気持ちを落ち着かせてくれた。
-
(*゚∀゚)『さ、泣き止んだね。みんなのとこに戻ろう。
どこに行けばいい?』
ξ゚⊿゚)ξ『……あっち……』
(*゚∀゚)『分かった。あとはギコ君に任せればいいね。行こう』
ツンを抱えたまま、つーは運動場の方角へ歩き出した。
仕事の途中でしょう、とスーツの人が呆れたように言ったが、つーは笑って「少しだけだから」と返していた。
#####
-
( ^ω^)「しぃさんのお父さんですかお」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。……いい人だったわ、本当に」
( ^ω^)「すごい人だったんですおね。
それでこの町、『弁護士殺し』の町って呼ばれたとか」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、よく知ってるわね」
( ^ω^)「前に鵜束検事から聞いたんですお。
で──僕、そんな町でツンさんはよく弁護士やってるなあって思って」
ツンが、虚をつかれたような顔をした。
唇を指先で押さえ、考え込むように黙りこくる。
しばらく間が出来た。
言ってはいけないことを言ってしまっただろうか。
話題を変えよう。あまり突拍子のないものではなく。弁護士。検事。しぃ。
しぃ、からギコを連想した。
-
( ^ω^)「ツンさん達って、そんなに小さい頃から仲良かったんですね」
ξ゚⊿゚)ξ「……達って、まあ、姉者はともかくとしてギコとはね。
おままごとするとき、ギコに無理矢理お母さん役とかやらせたもんだわ」
( ^ω^)「……今のギコさんがああなったのって、そのせいでは」
ξ゚⊿゚)ξ「責任は感じている」
だいぶ大きな責任ではないのか。
ツンは足元の雪を踏み固め、腰を持ち上げた。
何故だか晴れやかな顔色に見えた。
ξ゚⊿゚)ξ「行きましょう」
( ^ω^)「どこに?」
ξ゚⊿゚)ξ「またんき君のお祖父さんの家」
.
-
斉藤またんきの祖父母宅は、近いと言う程ではないが、そう離れてもいなかった。
これといって変わったところのない、普通の住宅街の中にある一軒家。
ξ゚⊿゚)ξ「またんき君がいないことに気付いた家族は、真っ先に玄関へ向かったわ。
またんき君の靴が無くて、鍵も開いてた。
一方、窓はどこも鍵が閉まったままで──」
( ^ω^)「玄関から外に出たと見ていいわけですね」
ξ゚⊿゚)ξ「そういうこと。
──またんき君は8時くらいに行方をくらました。
で、オサム様が目覚めた8時30分までにはカンオケ神社に着いてた筈だから……」
ツンは、祖父母宅を背にして立った。
ここをスタートとすると、道は右か左かしかない。
彼女の指が左方を示した。
ξ゚⊿゚)ξ「行くとしたら、あっちね。
逆の道だと入り組んでるし、遠回りになる」
-
( ^ω^)「じゃあ早速歩いてみますかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ、先に──」
──そのときである。
祖父母宅のドアが開き、男女が現れた。
( ^ν^)
ζ(゚ー゚*ζ「あら」
振り返ったツンの顔の、嫌そうなこと嫌そうなこと。
ニュッの方は然程表情を変えなかったが。
( ^ν^)「出待ちが来てるとは俺も人気者になったもんだな」
ξ#゚⊿゚)ξ「大変だわ内藤君ストーカーよストーカーがいるわストーカーストーカーストーカー!」
( ^ω^)「僕らの方が後から来てる以上、この言い合いにツンさんの勝機はありませんお」
-
ξ#゚⊿゚)ξ「何でいるの!!」
ζ(゚ー゚*ζ「次回の証人と、ちょっと証言内容の確認を。もう終わりましたけど」
ξ#゚⊿゚)ξ「そっちの証人はまたんき君のお父さんでしょ?
お父さんはビップラ市の方じゃありませんでした?」
ζ(゚ー゚*ζ「お仕事はお休みして、奥さんと一緒にこっちに泊まってるんですって。色々不安ですから」
( ^ν^)「照屋、行くぞ。その女と長く会話するとアホが伝染る」
ζ(゚ー゚*ζ「たしかにさっきの雪合戦はアホ丸出しでしたよニュッさん」
ξ#゚⊿゚)ξ「あんたの陰気が伝染る前にこっちから消えてやるわよ! ばーか!」
ツンはニュッ達と入れ替わるように、玄関の前に立った。
彼らの見送りに出ていたらしき老婦が目を丸くしている。
-
ξ゚⊿゚)ξ「大前ガナーさんですね」
( ‘∀‘)「はあ……」
60代半ばほどの女性。
ツンは大前ガナーという名に頷いた彼女へ、自身が弁護士であることを告げた。
( ‘∀‘)「……あの、幽霊裁判? の弁護士さんでしょうか」
ξ゚⊿゚)ξ「ご存知なら話が早い。……今、ご家族の方とお話し出来ます?」
( ‘∀‘)「夫と娘は、まだ冷静に話が出来る状態でもなくて……娘の夫も疲れていますし……
私ならお相手できますが」
ξ゚⊿゚)ξ「お願いします」
( ‘∀‘)「分かりました、どうぞ上がってください」
ツンに手招きされ、内藤も上がることにした。
ドアが閉まる寸前にツンが外の検事に向かって中指を立てたのには、
見なかったふりをしておく。あまりに大人げなくて恥ずかしかったので。
.
-
( ‘∀‘)「──またんきは……孫は、帰ってくるでしょうか」
ξ゚⊿゚)ξ「……私には分かりません」
大前家の居間へと通されて。
お茶の入った湯飲み茶碗がツンと内藤の前に置かれた。
それと同時に、ガナーは期待混じりの問いを投げ掛ける。
ツンの答えは素っ気ないようでいて真実でもあった。ガナーが目を伏せる。
ξ゚⊿゚)ξ「ご家族も、幽霊裁判のことは聞いているんですか?」
( ‘∀‘)「ええ。私の夫は昨夜の裁判に、傍聴人として行っています。
……まるで夢か何かを見ているようだったと……
色々なショックが強かったみたいです」
( ^ω^)「でしょうね……」
自分の孫が神隠しに遭った──かもしれない──上に
疑いをかけられた神様を裁判にかける、など。
それだけ聞くと、たちの悪い冗談のようである。実際に見れば悪夢のようでもあろう。
-
( ‘∀‘)「被告人は、カンオケ神社のオサム様なんですよね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうです。……犯人だと思いますか?」
( ‘∀‘)「いいえ」
ガナーの否定は明瞭だ。
ツンが意外そうな顔をする。
彼女は暫し正面の老婦を見つめ、鞄からファイルを取り出すと
ランドセルの写真が印刷されたページを開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「またんき君のランドセルですが、何か変わったところはあります?」
またんきが神社にランドセルだけ置いていったからには、
その理由となるべきものの痕跡がある筈だ──とツンは考えているようだった。
こんな大事な証拠などとっくに親が確認している筈で、その親が何も言わなかったのなら
ランドセル自体に異常は無いのだろうと内藤は思うのだが。
どうやらツンの方が正しかったらしい。
ガナーが初見のように写真をまじまじと眺め入り、あら、と声をあげたのだ。
( ‘∀‘)「無くなってますね……」
*****
-
ξ゚⊿゚)ξ「それではよろしくお願いします」
( ‘∀‘)「はい」
ガナーに一礼し、大前家の玄関から外へ出る。
ドアを閉じ、門の前に立つ男女を視界に収めると
ツンが思いきり顔を顰めた。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、来ました来ました」
デレがにこやかに手を振ってくる。
その隣で寒い寒いとぼやいていたニュッへ、
ツンはここぞとばかりに指を突きつけた。
ξ゚∀゚)ξ「あーら出待ちだわ内藤君! 私ほどの美人ともなれば当然よねえ!」
( ^ν^)「ずっとファンでしたサインください」
ξ゚∀゚)ξΦ"「ほほほほ人気者は大変だわあ!」サラサラ
( ^ν^)「照屋、至急このサインを貼りつけた藁人形を用意しろ」
ξ;゚∀゚)ξ「あっやだ返して返して」
本当に、いい歳して何をやっているのだろう、あの2人は。
ミニコントをするために自分達を待っていたのか、と内藤はデレへ問うた。
-
ζ(゚ー゚*ζ「出連先生が証人用意するのか気になったみたいです」
ξ゚⊿゚)ξ「お祖母さんが、こっちの証人として来てくれることになったわ」
( ^ν^)「祖母? 他の家族は概ね被告人が犯人だって意見で一致してるようだが」
ξ゚⊿゚)ξ「家族だからって必ずしも意見が合うもんでもないでしょ」
( ^ν^)「そりゃそうだろうがよ。……まあいい。面白そうだ」
ξ゚⊿゚)ξ「面白いか面白くないかで裁判やられても困るのよね。
──行きましょ内藤君」
( ^ω^)「はい」
( ^ν^)「照屋」
ζ(゚ー゚*ζ「はいはい」
ツンとニュッは互いに顔を背けた。
そうして、別々の方向に歩き出──
, , , ξ゚⊿゚)ξ スタスタ
, , ,( ^ν^) スタスタ
──さなかった。
ξ#゚д゚)ξ「ついてくんな!」
( ^ν^)「こっちの台詞なんですけど……」
-
ζ(゚ー゚*ζ「お2人はどちらへ?」
( ^ω^)「この家からカンオケ神社へ向かう道を確認したいんですお」
ζ(゚ー゚*ζ「あらー、私達も今そうするとこだったんです。奇遇ですね」
うふふ、とデレが手を合わせて微笑む。
弁護士と検事は同時に舌打ちしていた。
.
-
本当仲がよろしい事で
-
( ^ν^)「──防寒具を身につけ、靴を履きランドセルまで持って玄関から出たとなると、
被告人が強引に連れ去ったわけではない」
歩きながらニュッは言う。
彼が声を吐き出す度、白い息が漂い溶けていく。
( ^ν^)「だから、まあ、カンオケ神社までの移動はまたんき自身の足で行われた筈だ。
もちろん被告人が誘導してはいたんだろうが」
それに対してツンが反論した。
肌が白いので、鼻や耳の赤みが目立つ。
ξ゚⊿゚)ξ「その時点でオサム様が疑われる謂れは無くなるでしょ。
もし本当にオサム様がまたんき君を手に掛けるとするなら
わざわざ歩かせる必要なんか無い。誰かに見られるリスクもあるし」
-
( ^ν^)「被告人は新年の行事で疲れてたんだろ?
だから異界へまたんきを隠すだけの余力がなかった。
さらに言えば、疲れていたからこそ子供の1人でも喰って精をつけたかったのかもな」
ξ#゚皿゚)ξ「子供なんか食べなくたって、年末年始の豪華なお供えがたくさんあったわよ!」
( ^ν^)「神饌を食うのと人間を喰うのは全然違うだろ」
( ^ω^)「外で裁判の続きをやってるようですお」
ζ(゚、゚*ζ「今回はお互いに決定的な物証がありませんからね。
推論のぶつけ合いですから、2人だけでいくら話しても決着つきません。
最終的には裁判官の心証次第です」
内藤とデレが並んで歩き、その前をツンとニュッが行く。
少々ちぐはぐなように感じた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……またんき君、どうしてカンオケ神社に行ったのかしら」
( ^ν^)「被告人に誘われたからだろ」
ξ#゚⊿゚)ξ「検事は勝手にそう思ってればいいわよ」
それからしばらく、2人の言い合いがまた続いた。
内藤とデレは後をついていきながら世間話なんかをして。
──すると、見覚えのある道に出た。
( ^ω^)「……ここに出ますかお」
ζ(゚、゚*ζ「ここです」
ヴィップ小学校の裏山と住宅に挟まれた道。
あのゴミ山の前を通る道である。
( ^ν^)「さあて、内藤君のトラウマロードだ」
ξ゚⊿゚)ξ「トラウマ?」
( ^ω^)「いや、トラウマってほどじゃありませんので」
ツンは一度首を傾げ、合点がいったか頷いた。
トソンの裁判での話を思い出したのだろう。
-
ζ(゚、゚*ζ「ゴミの山って、いつからあるんです?」
ξ゚⊿゚)ξ「10年くらい前からだったかしらね。元はただの空き地だったんだけど、
土地の持ち主が壊れた電化製品とか置きっぱなしにしてたら、
他の人達も勝手にゴミ捨てていっちゃって」
色々話しながら歩いている内、ゴミ山が視界に入った。
内藤達が一歩進む度に近付いていく。
油や鉄の臭いが漂い、デレは不快そうに鼻をつまんだ。
前回は雨が降っていたため、臭いがいくらか誤魔化されていたのだろう。
( ∵)( ∴)
例のおばけ2人組も、やはりそこに居た。
こちらに気付いたようで、一瞥し──目らしき部分に穴しかないので、見た、と言えるか分からないが──、
のそのそと立ち上がると、ガラクタの陰へ引っ込んでいった。
先日は内藤達が通りかかってもじっとしていたのに、今日は少し反応が違う。
-
ゴミ山の前を通り過ぎる。
ニュッは大して興味を示さないままずんずんと進んでいく。
ツンが足のスピードを緩め、反対にデレがゴミの臭いから逃れるため早足になったので
2人の位置が入れ替わった。
デレはニュッの隣に、ツンは内藤の隣に。
ξ゚⊿゚)ξ
ツンが怪訝な顔をして振り返る。
どうしました、と内藤が小声で問うても、何でもない、と返事。
釈然としないまま歩き続ける。
不意に、胸の内に引っ掛かるものを感じた。その正体も掴めず疑問は募るばかりだ。
*****
-
(;*゚ー゚)「うーん……」
夕方。猫田家の離れ。
しぃは、机の上のメモを見下ろしながら頭を掻いた。
「オサム様」「きらきら」「見た」「カバ」「ぺたぺた」
「えんぴつ」「はこ」「ほん」「ぶらぶら」「おちた」
「こわい」「こわいやつ」──その他色々。
ブームが口にする単語を書き取ったものだ。
意味は、未だ一つとして分からない。
(;*゚ー゚)「日に日に単語は増えるが……」
(;,゚Д゚)「増えれば増えるだけ、それぞれの関連性が分かんなくなるわね」
-
| ^o^ |「……こわい……」
昨夜の裁判以降、この『こわい』という単語が出る頻度が上がった。
ただ、それ一つだけを繰り返すので、ますますもって理解が及ばない。
しぃはひとまずそれを置き、棚から適当な本を一冊持ち出した。
(*゚ー゚)「ブーム君、たとえば『ほん』というのは──こういう、『本』のことだろうか」
| ^o^ |「……」
ブームは頷いた。
頷いてから、首を横に振る。
肯定と否定だ。
(;*゚−゚)「……何だそれは」
(,,゚Д゚)「本は本だけど、種類が違うんじゃないかしら」
ギコの推理に納得し、しぃは辞書や文庫や漫画、図鑑、専門書、雑誌を机に並べた。
ブームはそれらを眺め、また首を振る。
-
(;*゚−゚)「ああっ、何なんだ! もう!」
わけが分からない。
頭を抱えたしぃの叫びに、ブームは肩を竦めて俯いた。
大きな声出すんじゃないの、とギコに窘められる。
大声に畏縮したのか拗ねたのか、ブームはひとしきり黙って、
そして──
| ;o; |
ぽろぽろ、声もなく涙を零した。
-
(;*゚−゚)「!? な、何だ、何で泣くんだ!」
(;,゚Д゚)「あらやだ! もう、しぃが怒鳴るから!」
(;*゚−゚)「僕は別に怒ったわけじゃ……」
何だか、ブームには困らされてばかりいる気がする。
おろおろするしぃを放置し、ギコはブームを抱え上げた。
背中をぽんぽん叩いてあやしても、彼は泣き止まない。
(;,゚Д゚)「しぃ、あんたも何とかしなさいよ」
(;*゚ー゚)「え、ええっ、いや、どうすれば……」
子供は何をすれば機嫌を直すのだろうか。
しぃが小さい頃は、よくギコに本を読んでもらったものだが。
生憎、絵本の類はここにはない。
しぃはひとまずギコからブームを受け取り、膝の上に座らせた。
悩み、背後の棚からファイルを取り出して、ブームに見せるように開く。
-
(;*゚ー゚)「そ、そうだ、僕が今までやってきた裁判の話をしようじゃないか。
あれは一昨年、僕が初めて担当した事件で……被告人はとある地縛霊、罪状は道連れ罪……」
(;,゚Д゚)「何なのよその血生臭い読み聞かせは!」
(;*゚ー゚)「僕はこうやって父さんから裁判の話を聞くのが好きだったんだ!」
(;,゚Д゚)「叔父さんはちゃんと緩い事件だけ選んでたでしょ!
あんた今話そうとしたやつドロッドロのやつよ! 2、3人死んでるわよ!」
*****
-
(;´・ω・`)「ここで締め切らせてもらいます! それでは順番にクジを引いていってください!」
──翌日、2月1日。午後8時30分。
旧校舎、体育館。
まだ弁護人も検察官も入っていない法廷にて、抽選が行われていた。
何の抽選かといえば、傍聴席の。
(;'A`)「ぐあっ! 外れた……!」
(-@∀@)「アラー、僕もハズレ」
ドクオは外れクジを畳み、溜め息をついた。
辺りを見てもゴミ箱が見付からないので、どこか適当なところで捨てよう、とポケットにしまう。
メモ紙にでもしましょうかねと言いながら、同様に白衣のポケットへしまうアサピー。
彼はドクオほど悔しがる素振りを見せない。
-
(;'A`)「あー、裁判気になるな畜生……誰か当たりクジくれねえかな」
(-@∀@)「みんな傍聴したくて来てるンですカラ、そりゃ無理デショウ」
正論である。
前回以上に多くの傍聴希望者が出たため、こうしてクジ引きに至ったのだ。
それだけ注目度が高い裁判なのだから、皆の熱意も相応に強い。
当選したおばけや人間達の喜びようからしても、譲ってもらえる確率はかなり低いだろう。
-
('A`)「けっ。あんたは気にならねえのかよ」
(-@∀@)「判決はショージキ、ドーデモイーんですけど、
追い詰められて追い詰められて最後に逆転するセンセイをナマで見られないのがヒジョーに悔しい」
('A`)「勝つの確定かよ」
(-@∀@)「僕のセンセイがタダでやられるわけがナイ。
──オヤ、刑事サンと検事サン。オ揃いで」
(#'A`)「何っ!?」
(,,゚Д゚)「あら、どうもー」
(*゚ー゚)「あなた達も来てましたか」
('A`)「何だ、こっちの検事刑事か」
咄嗟に構えたファイティングポーズを解く。
しぃが胡散臭げな目をドクオとアサピーに向け、片手に持った紙を揺らした。
ドクオと同じ、真っ白な外れクジ。
-
('A`)「あんたらも外れたのか」
(;,´Д`)「そう、全員はずれー。3人もいりゃ1人くらいは当たるかと思ったんだけど」
そう言うギコは、見知らぬ少年を肩車している。
誰だとドクオが問えば、ちょっとね、と曖昧な返事のみ。
まあいい。ドクオに関係あることでもなかろう。
('A`)「すげえ数だよな、希望者」
(,,゚Д゚)「神様を裁くわけだからねえ……。
もう、あちこち大騒ぎよ。警察も地検も」
(;,-Д-)「特に警察がごちゃごちゃ。おばけ課の職員なんて、そう多くはないでしょ。
他の事件の方が手薄になっちゃって」
(;'A`)「おいおい、大丈夫なのかよ」
(;,゚Д゚)「これが一段落しないことにはねえ……」
(;´・ω・`)「すみません、抽選に外れた方は外へお願いします! 当選した方はこちらへ並んで──」
青ネギがいつものしょぼくれ顔に汗を滲ませながら誘導している。
彼も大変だろう。色々と。
何しろ彼が仕える神様の裁判なのだから。
ドクオ達は大人しく体育館を出た。
ギコとしぃ、そして少年はさっさと帰っていく。
-
雨が降りそうだ、と思った。
そんな匂いがする。気がする。
ξ゚⊿゚)ξ「グッドイーブニーン」
('A`)「お」
(-@∀@)「センセイ」
黒いコートを纏ったツンが、内藤と──証人だろうか、老婦を連れてやって来た。
アサピーがツンにまとわりつく。
白衣と黒ずくめが並ぶと、何だかオセロっぽい。
ξ゚⊿゚)ξ「体育館入らないの?」
('A`)「くじ引きがあってな、外れた。あんたと仲いい刑事達も」
ξ;゚⊿゚)ξ「くじ。そんなのやるの、ヴィップ町の幽霊裁判じゃ滅多にないわね」
-
(-@∀@)「僕がいないとセンセイ心細いデショウ」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ残念だわあ。帰って寝ろ」
( ^ω^)「アサピーさんって帰る場所あるんですかお?」
これから裁判に臨む割に、ツンも内藤も普段通り。
彼らは時計を確認すると、旧校舎へ入っていった。
その背中に「頑張って」というアサピーの声援を投げ掛けられながら。
このままここにいても外れクジが当たりクジになるわけでもないので、
ドクオはその場を後にした。
明日にでもツンの事務所へ寄って、裁判の結果を聞こう。
*****
-
それからあまり時間も経たず、9時が迫った頃。
∬;´_ゝ`)「ご、ごめんなさいジョルジュ先生、呼び出してしまって……」
_
( *゚∀゚)「姉者先生からの要請とあらば、いつどこへども!」
旧校舎の前で、姉者は何度もジョルジュへ頭を下げた。
──内藤が堂々と姉者へ外出の旨を告げ、家を後にしたのが数十分前。
もうこそこそする必要もなかろうと完全に開き直ったらしい。
それからずっとそわそわしていた姉者が、ついに辛抱たまらず旧校舎へ赴いたのは数分前。
ジョルジュも呼んだのは、怖いから。単純に。
常ならばギコを頼るところだが、幽霊裁判に関わることとなれば、ジョルジュの方が立場としては身近だったのだ。
-
姉者頑張るなあ
-
_
( ゚∀゚)「それにしても姉者先生、怖いんじゃなかったんですか?
傍聴したいなんて意外だ」
∬;´_ゝ`)「ええ……」
そろそろ始まる。
幽霊裁判。神隠し罪。
先日の法廷を思い返し、姉者は頬に手を当てた。
∬;´_ゝ`)(おばけって、本当にいるんだわ)
記憶が蘇る度に血の気が引く。
けれど──奇妙なのは、自分の中で彼らの存在が確固たるものになったというのに、
これまで以上に恐ろしくなる、といった変化が無かったことだ。
彼らにも法がある。
ならば無闇に悪いことはしない筈だろうと。
さらに言えば、
∬;´_ゝ`)(弟者や妹者も知ってるし、参加したことあるのよね……。
ブーン君に至っては何回も)
それは、幽霊裁判やおばけが必ずしも危険なものではない、という証明にもなり得た。
-
何よりあの法廷を見た限り、おばけにも、
怒りや悲しみや喜びを人間のように表現できる者がいるようで。
これらの事実を知ったために、
「得体が知れないもの」への漠然とした不安は除かれた。
もちろん枠に収められないおばけもたくさんいるだろうけど、それは人間だって同じこと。
まあ怖いものは怖いのだけれど。
しかも正直に言うと、本当は、来たくて来たわけでもないのだけれど。
ならば何故来たのかといえば──
_
(;゚∀゚)「──っと、雨だ。入りましょう姉者先生。今日はちゃんと傍聴席に座りましょうか」
∬;´_ゝ`)「! は、はい」
頭に落ちる雫の感触で我に返る。
ジョルジュに手を引かれ、姉者は一層青ざめながら旧校舎の体育館へ向かった。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「……どういうつもりなの、あんた……」
∬;´_ゝ`)「……」
体育館に入った途端、近付いてきたツンに怒られた。
というより呆れられた。
顛末が気になるなら傍聴に来いと言ったのはそっちだろう、とジョルジュが答える。
ξ゚⊿゚)ξ「言いましたけど──あんたはこういうの嫌なんじゃないの、姉者」
∬;´_ゝ`)「こ、怖いけど……でも……」
( ^ω^)「姉者さん、また来たんですかお?」
弁護人席に座っていた内藤もやって来た。
ツン同様、呆れた顔つきで。
どちらに何を答えればいいのか。パニックに陥った姉者の頬を軽く抓ったツンは、
続いて傍聴席へ目をやり、頭を掻いた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……まあそれはどうでもいいけど。
残念ながら、席はもう全部埋まってるわよ」
∬;´_ゝ`)「う」
それは体育館に入った時点で薄々わかっていた。
傍聴席には、姉者達の座る場所など隙間ほどもなさそうなのだ。
あまりおばけが密集しているのも見たくないので、顔を逸らす。
ξ゚⊿゚)ξ「さっき、くじ引きやったらしいのよ。
今更2人分の席なんか空けられないわ。
ギコ達だってクジ外して帰ってったらしいし」
( ^ω^)「ドクオさんとアサピーさんも外れてましたおね」
ドクオさんとアサピーさんというのが何者かは知らないが、
ともかくツンやギコの関係者である「こちら寄り」の人がいないとあっては、
たとえ席が空いていたとしても、おばけの群れに混じる勇気は出ないだろう。
-
_
(;゚∀゚)「どうします? 諦めて帰りましょうか」
∬;´_ゝ`)「そうするしかないですよね……」
とは言いつつ、姉者は立ち尽くしていた。
帰りたいという気持ちは勿論ある。
同時に、気がかりなことがあって、ここに残りたいとも思う。
やがてツンが長く息を吐き出した。
親指で弁護人席を示す。
ξ゚⊿゚)ξ「……騒いだり気絶したりしないなら、傍聴席以外の場所、用意するけど」
.
-
爪'ー`)「今日の弁護人席は大所帯だなあ」
ξ゚⊿゚)ξ「助手達です」
∬;´_ゝ`)
_
(;゚∀゚)
弁護人席。ツンや内藤の後ろに置かれたパイプ椅子が2つ。
そこに腰掛けた姉者とジョルジュは、痛いくらいに浴びせられるおばけ達の視線から少しでも逃れるため、
精一杯、己の身を縮めようと悪戦苦闘していた。
やっぱり帰っておけば良かったかなと思いつつ。
*****
-
今日はここまで
残りは明日、時間とれなかったら明後日に
読んでいただきありがとうございました!
Romanさんもありがとうございます!
目次
幕間 >>60
case8 前編>>131/中編>>249/後編(途中まで)>>402
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おおお、これからって所でまた明日か
乙
-
続きが気になって気になってしょうがない
乙乙明日も楽しみ
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乙
-
乙!
姉者は裁判終わるまで気絶しないでいられるのか
-
おつ
毎度いい所で切られる
-
乙でした
続きが気になる〜!!
いつも思うが切り方が上手いな
-
乙
-
乙です!
-
待ってる待ってる愛してる
-
なんかサインを藁人形に使われそうになって焦るツンさんが可愛かった
ふと思ったけどツンさんってアサピーにこっそり呪い耐性的なもの付与されてそう
-
乙面白かった、また待機だな
アサピーがそんな生ぬるいことするだろうか
-
むしろ転ぶとか物をなくす系の軽い呪いにかかりやすい補正付与されてそう
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乙です。明日が楽しみ過ぎる
-
乙
-
モテないのってアサピーの呪いか…
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>>483
あぁ…、何か納得。
-
>>483
胸も呪いのせいか……
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大人げなさも呪いのせいなんだな
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全部呪いのせいにしたらあきませんでツンさん
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それもこれも全てアサピーって奴の仕業なんだ
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アサピー浄化すれば巨乳ツンさんか…
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ツンの能力もアサピーってやつのせいなのか
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ツンとニュっくんのやりとりアホ可愛いな
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でも実際に目の前でこんな喧嘩されたらウザいことこの上なしだと思うwww
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ツン呪われすぎワロタ
とんでもねえミスがあった
>>338で
( ^ν^)「13年前、2000年の6月に起きた事件は覚えてるな」
って言ってるけど「6月」じゃなくて「5月」です
直すの忘れてた
-
きっとこれも呪いだな
-
アサピー・・・一体何者なんだ
-
続き投下します
超長い
-
9時を過ぎ。
爪'ー`)「さて。本日は、検察側2人目の証人尋問から始める──筈なんだが……」
ほんの数分前に法廷へやって来た検察組は、何やら様子がおかしかった。
裁判長フォックスが開廷を宣言しても、落ち着きがない──どころか
ますます焦り出す始末で。
(;^ν^)「……」
ζ(゚、゚;ζ「連絡つかないです……」
腕を組み、貧乏揺すりをするニュッ。
何度も携帯電話を耳に当てては、その度に首を横に振るデレ。
──検察側の証人が、いなくなってしまったのだという。
たしか、またんきの父親と言っていた。
内藤の記憶が確かであれば。
-
_
(;゚∀゚)「証人いないのか?」
( ^ω^)「そのようで」
∬;´_ゝ`)「じゃ、じゃあ、どうなるの?」
( ^ω^)「さあ……」
背後からジョルジュと姉者が小声で訊ねてくるが、内藤には答えようもない。
過去に参加してきた幽霊裁判の中で、このような事態になったことがないので。
というわけで、手っ取り早くオサムを見た。
オサムもくるうも、前回の公判のときと変わりがない。
片や落ち着き払い、片や憤っている、という意味でだが。
【+ 】ゞ゚)「俺だったら、まあ、日取りを延期するかな。
証人を見付けて連れてこないことには始まらないだろう」
川#゚ 々゚)「延期でいいよこんなの……」
いや、くるうに限っては、いくらか違いがあるかもしれない。
たしかに怒ってはいるが、前回ほどの元気というか威勢はなかった。
オサムが言うように延期を提案したフォックスへ、ニュッが片手を挙げる。
-
(;^ν^)「少し時間を。──照屋。何が何でも見付けてこい」
ζ(゚、゚;ζ「えー」
(;^ν^)「見付けてこなかったら2週間メシ抜きだ」
ζ(゚、゚;ζ「わっ、分かりました分かりました、行ってきますよう」
ばたばた、デレが慌ただしく体育館を飛び出していく。
微妙な空気が満ちる中、のーとビーグルが溜め息をついた。
(゚A゚* )「まさか、証人が行方をくらますとはなあ」
(;^ν^)「……家まで迎えには行ったが、来る途中で消えてました」
▼・ェ・▼「逃げたってことでいいのか」
爪'ー`)「だとしても、逃げる理由は一体……」
内藤は、ちらりと隣を見た。
(;‘∀‘)「シラネーヨ君、どうしたのかしら……」
弁護側の証人──大前ガナーが困惑している。
検察側証人がまたんきの父ということは、ガナーにとっては娘の夫だ。
彼女もどうしていいか分からなくなったようで、ごめんなさいと辺りへ謝罪し始めた。
-
川 ゚ 々゚)「オサム……」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だよ、くるう」
初っ端からの奇妙な展開に、くるうも不安を覗かせる。
傍聴席のざわつきを静めたのは、フォックスではなくツンの言葉だった。
ξ゚⊿゚)ξ「照屋刑事が戻ってくるまでの間、前回の証人、渡辺アヤカさんへの反対尋問を
もう一度させていただけませんでしょうか」
検察席、ニュッの隣で渡辺が肩を揺らした。
戸惑うような瞳をツンへ向けている。
▼・ェ・▼「『もう訊くことはない』と弁護人が言っただろう」
ξ゚⊿゚)ξ「……お願いします」
爪'ー`)「必要な尋問なんだな?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)「なら許可しよう。──検察官はどうだ」
( ^ν^)「然るべく」
昨日のツンの発言を覚えていて、ニュッが連れてきたのだろう。
元より尋問に異論ない筈だ。
-
渡辺が「証言台」へ移動する。
氏名等の確認は省かれ、早速反対尋問が行われた。
∬;´_ゝ`)「……渡辺先生……」
姉者が呟く。
彼女も渡辺とは旧知の仲である。
ツンとは違って、ただただ優しい保育士だという印象が強いのだろうけど。
ツンは書類の一部を指でなぞり、顔を上げた。
ξ゚⊿゚)ξ「証人。13年前──5月13日に行方不明になった女児が、
その前日『おばけが自分を呼ぶ』『オサム様のところに行く』と言っていたんですよね?」
从'ー'从「ええ」
ξ゚⊿゚)ξ「他の発言は覚えていない」
从'ー'从「はい……」
-
支援
-
ξ゚⊿゚)ξ「なら──『おばけ』が『オサム様』を示しているとは限らないですよね?」
从;'ー'从「え? ええと……そう、なのかしら?」
自問し、そうかもしれないわね、と渡辺が言う。
彼女の証言内容はひどく少ない。つまりは、ほとんどがあやふやなのだ。
( ^ν^)「異議。同一の話題の中で出た発言である以上、無関係だとは言えない」
ξ゚⊿゚)ξ「途中で話題が変わっていた可能性もあるでしょう。
証人はあまり話を聞いていなかったと言ってますし」
然もありなん。
だが、それには明確な否定を見せた。
从;'ー'从「あの……話題自体は、変わってなかったと思います。
そうだったら、さすがに気付きますから」
女児の話を完全に無視していたわけではない──と渡辺は主張する。
真剣に聞き入らなかったから今おもいだせないだけで、当時としては、話の流れくらいは頭に入れていた筈だ、と。
くるうは反応しない。
つまり「おばけが呼ぶ」「オサムのところへ行く」、この二つの発言は
どちらも互いに関連したものであるわけだ。
-
( ^ν^)「女児が『おばけ』に声をかけられ、姿を消した公園はヴィップ自然公園。
カンオケ神社の裏、林を挟んだ位置にあるものだ。
このことも、被告人が関わっている可能性を示唆している」
恐らくニュッとしては、前回の審理において
こういったやり取りを経た上で、この情報を補助として出したかったのだろう。
あのときツンがあっさり引き下がったからタイミングを逃していたのかもしれない。今の彼は活き活きしている。
ということは、少なくともここまでは彼の予想通りの流れ。
ツンが反撃するなら、更に進む必要がある。
そして彼女もまた、予定した通りに事が運んでいるようだった。
一瞬、不敵に笑んだのだから。
ξ゚⊿゚)ξ「小さい子が遊びに行ける距離であるからには、
女児の家は自然公園の近くにあったわけでしょう」
从'ー'从「ええ。あの子の家と公園は大した距離じゃなかったと思います。
事件のしばらく後に、ご家族も引っ越してしまったようですけど……」
ツンはジョルジュを一瞥した。
数枚の書類を持ち上げる。
-
ξ゚⊿゚)ξ「あの近隣の住民は、神社と自然公園の間の森林を
『オサム様の森』『オサム様の土地』という風に呼んでいました。
特にご老人は、『オサム様の土地だから入ってはいけない』と子供達に話していたそうです」
_
(;゚∀゚)「……俺が調べたやつだ」
【+ 】ゞ゚)「そうなのか」
_
(;゚∀゚)「ぁえ、あ、は、はいっ」
2日前の夜にツンがジョルジュに頼んだのは、このことだった。
元々ジョルジュの実家があの辺にあるのだから、
近所と馴染みのあるジョルジュの方が調べやすかろう、と。
爪'ー`)「その林とは、『口減らし』のあれだろうか」
ξ゚⊿゚)ξ「あれです。入っちゃいけない、というのも、その名残だったんでしょう。
実際のところは、特別、オサム様の管轄だったわけでもないんですが……」
-
ξ゚ -゚)ξ「ところで証人。13年前の、その女の子の家族構成はご存知ですか」
从'ー'从「ご両親と妹と……父方のお祖父さんが一緒だった筈です」
その通り──とツンが頷く。
ξ゚⊿゚)ξ「女児の祖父、沢近シーンさんも信心深い方だったそうです。
──近隣住民から彼が聞き出してきた情報ですし、
私も今日の内に確認したので、間違いはないです」
突然ツンの手によって示され、皆の意識を一斉に向けられたジョルジュは
びくりと体を跳ねさせ、隣の姉者にしがみついた。
そのせいで姉者も飛び上がったが、騒ぐな失神するなというツンの言いつけを守り、両手で口を押さえていた。
ξ゚⊿゚)ξ「女児が、祖父あるいは親から『オサム様の森』のことを聞いていた可能性は充分にあります。
当然、オサム様、というのが神社の神様であるのも聞いていておかしくない」
ξ゚⊿゚)ξ「そう仮定すると、女児が『オサム様』を『おばけ』と表現するのは、おかしくないでしょうか」
爪'ー`)「……ふむ……」
(゚A゚* )「せやねえ」
ニュッがようやく反論する。
「仮定は仮定だろう」と。
-
( ^ν^)「知っていたかどうかなんて分からねえだろ。知らなかったのかもしれない。
オサムと名乗りはしても、自分が神社の神だということは説明してなかったのかもしれない」
ξ゚ -゚)ξ「『はじめましておばけですオサム様って呼んでね』と挨拶したわけ?
んなわけないでしょ」
( ^ν^)「誘い出したのは被告人本人ではないかもしれない。
──協力してくれそうなのはいるだろう」
川;゚ 々゚)「え、」
ニュッの目は、間違いなくくるうを指した。
射竦められたくるう本人も当惑の表情を浮かべている。
だが──
【+ 】ゞ゚)「前回の狼藉は大目に見たが、くるうまで疑うのならそれ相応の態度をとるぞ」
( ^ω^)(わあ)
内藤の肌が粟立った。
オサムから、巨大な憤怒の気配を感じたからだ。
普段より一層低めた声も、それを如実に表している。
ニュッがくるうを泣かせた際、冷静に対処したのを意外に思っていたが、
どうやらあのときも怒ってはいたらしい。
-
反対側に立つニュッにも充分伝わったようで、
彼は、たじろいでしまったのを誤魔化すように咳払いなんかをしてみせた。
爪'ー`)「被告人。威嚇はやめよう」
【+ 】ゞ゚)「すまない」
(゚A゚* )「まあ怒るのも無理ないな。でもあかんよ」
裁判官から緩めの叱責を受け、オサムの怒気は引っ込んだ。
引っ込んだだけで、内側には留まっているのだろうけど。
嫌な予感がしたので姉者の様子を窺ってみると、白目をむきかけていた。
すんでのところで気絶を耐える。偉い。
川*゚ 々゚)「オサム……」
こっちはこっちで、それどころではないのに惚れ直した様子。
ツンがやりにくそうに頬を掻いて、ニュッへの反論を続行させる。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「えー……。……で。仮に、かーりーに、くるうさんだとしても。
子供を誘い出す上で、わざわざ自分がおばけであることなんか言うわけない。
怖がらせちゃ意味ないんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「オサム様にしろくるうさんにしろ、見た目は人間と変わらないわ。
彼らに声をかけられたとして、『あ、自分は今おばけに声をかけられたんだな』なんて思うかしら」
( ^ν^)「見た目以外からも判断は出来る。
たとえば、自分には見えているのに、周りの友人たちには見えていない……となれば
相手が人間ではないと推測するのは可能だ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうであった場合、『自分以外には見えていない』と確信できるだけの何かがあったわけでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「『何で1人で話してるの』『何もないとこ見てどうしたの』と言われるとか。
ともかく第三者、この場合は一緒に遊んでたお友達かしら。
お友達が関わってくるわけだけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「事件後の警察の捜査において、お友達がそういったことを証言した形跡は無いわ。
『かくれんぼをしてた。探しても見付からなかった』──それだけ。
おばけのおの字も無い。おばけに関する証言は家族と渡辺先生……証人の話だけよ」
-
从;'ー'从「あ……たしかに、そうです。
あのとき、保育士からも子供達に訊いてみてくれないかって警察に頼まれたんです」
从;'ー'从「私、『おばけ』のことを訊いたんですけど、みんな知らないって答えてました」
ニュッが苦虫を噛み潰したような顔をした。
対してツンは得意気な。
ξ゚⊿゚)ξ「つまり、女児に声をかけたのは、
見た目ではっきり人間ではないと分かる……おばけ然とした何者かであった可能性が高いわ」
ξ゚⊿゚)ξ「そのおばけが『オサム様のところ』──つまり
林の中に行った、と女児は言っていたのではないかしら。
自分がオサム様のもとへ行く、ということではなくてね」
( ^ν^)「……憶測が過ぎる」
ξ゚⊿゚)ξ「そっちも同じでしょ。
──検事。この証人の証言は曖昧で不確かで情報が欠如してて、不完全なのよ。
事実を語るに値しないの。いま私が言ったことでさえ証明は出来ないわ。残念ながらね」
今更そんなことを言うのか──ニュッが呆れ気味に呟く。
今更そんなことを言うわよ──ツンは開き直っていた。
-
(゚A゚* )「たしかにどっちも憶測やけど、どっちも有り得へんわけでは……」
▼・ェ・▼「前回の公判時点では検察の主張が尤もに感じたが、
こうして反論されると、どうにも」
从;'ー'从「ご、ごめんなさい、私お役に立てないようで……」
爪'ー`)「いや、かといって不要な証言でもない筈だ」
( ^ν^)「──林の中は警察も一通り調べたが、
あそこにいた霊はどれも自我や気配が薄い奴らばかりだった。
子供を拐って食うような行動的な奴は見当たらなかったぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「事件から13年も経ってるのよ。とっくに場所を移しててもおかしくないわ」
過去の神隠し事件は、決まった場所でのみ行われていたわけではない。
裏山で行方不明になった、という8年前の例もある。
ニュッは舌打ちをしてそっぽを向いた。
これ以上の進展はなしと見たか、フォックスは渡辺に、検察席へ戻るように言う。
渡辺と同時に、ツンも腰を下ろした。
-
始また、これで今晩は寝れる
-
待ってました!支援!
-
川*゚ 々゚)「ツンすごいすごい!」
ξ゚ -゚)ξ「まだ、裁判官をこっちへ引き込めたわけではないけどね」
( ^ω^)「ツンさん、渡辺先生相手でも大丈夫でしたね」
ξ゚⊿゚)ξ「ん……もう平気よ。内藤君のおかげだわ」
( ^ω^)「?」
何かした覚えはないのだけれど。
首を捻る内藤を他所に、ツンは検察席へ目を戻す。
視線が合ったのか、渡辺は肩を揺らした。
俯き、そして、ニュッへ顔を向ける。
从;'ー'从「……すみません、私、これで」
( ^ν^)「ああ……すぐそこの教室に神社の職員がいるから、そこに行っててくれ。
裁判が終わるまで、帰宅はしないでくれると助かる」
从;'ー'从「はい」
渡辺は、そっと体育館を出ていった。
たいそう気まずかったのだろう。
検察席は、ニュッ1人になってしまった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「照屋刑事、まだ戻らないわね」
ニュッがむすっとしたまま携帯電話を取り出し、些か乱暴な手付きで操作した。
恐らくデレに電話でも掛けたのだろう。
二つ三つやり取りをして、携帯電話をしまう。
( ^ν^)「まだ見付からねえらしい」
爪'ー`)「そうか……」
( ^ν^)「……弁護側の証人尋問に移ってください。
それが終わってもまだ照屋が戻らないなら──
……延期ということで頼みます」
爪'ー`)「弁護人、異存あるかな」
ξ-⊿-)ξ「ありません」
(゚A゚* )「そんじゃ証人、早速お願いしよか」
証言台へ、とビーグルが手振りで誘導する。
内藤の隣、ガナーが返事をした。
(;‘∀‘)「あ──は、はい」
-
恐る恐るといった様子で、裁判官の向かいに立つ。
人生経験がそうさせるのだろうか、不安そうな顔をしていた彼女だったが、
二呼吸ほどの間には覚悟を決めたように背筋を伸ばした。
爪'ー`)「名前と年齢を」
( ‘∀‘)「……大前ガナーです。64歳です」
続いてガナーの生年月日と住所が告げられ、
最後にフォックスは、こう確認した。
爪'ー`)「被害者、斉藤またんきの母方の祖母だな?」
( ‘∀‘)「はい」
傍聴席から囁き合う声が湧いた。
被害者の身内が弁護側についたのか、といった類のものであろう。
先ほど座ったばかりのツンが、再び起立した。
-
ξ゚⊿゚)ξ「お祖母さん……ガナーさん。
お孫さんのまたんき君が、あなたの家を訪れたのはいつでした?」
( ‘∀‘)「1月1日の──お昼頃に。2泊の予定でした」
ξ゚⊿゚)ξ「またんき君はあなたの家で何をして過ごしましたか?」
( ‘∀‘)「冬休みの宿題を終わらせようって、頑張ってました」
ξ゚⊿゚)ξ「宿題の内容は」
( ‘∀‘)「工作と社会の宿題だけ残ってたみたいです。
工作はお正月にちなんで、私の夫と一緒に凧を作ってました。
結構大きくて、布で裏打ちなんかして、しっかりしたものでした。
その日は途中でやめて、続きは明日にしようって……作りかけの凧が、まだ夫の部屋に残ってます」
ξ゚⊿゚)ξ「……社会科の宿題は、どんなものでした?」
( ‘∀‘)「年末年始の風習についての研究、というような。
またんきは、初詣のことを調べると言ってましたね」
2人の会話は淀みない。
ガナーの顔色は浮かないけれど。
孫が姿を消した日のことを語っているのだから、当然ではある。
-
ξ゚⊿゚)ξ「その日、彼は初詣に行きました?」
( ‘∀‘)「いえ、2日にカンオケ神社に行くつもりだったみたいです。
……それで、宿題を手伝っていたとき、カンオケ神社の話になりました」
ξ゚⊿゚)ξ「どのような」
( ‘∀‘)「昔、神社で神隠しがあったんだよって……。
私の夫が、またんきの興味を引こうと思って話したみたいでした」
( ‘∀‘)「でも──私が『オサム様は悪い神様じゃないよ』と言うと、
またんきはそちらの方に興味を示しました」
──それからガナーは、昔の新聞を引っ張り出してまたんきに見せたらしい。
40年前に神隠しにあった少女の記事。
( ‘∀‘)「あの子は私の知り合いで、とても印象的な事件だったので記事を残してあったんです」
暴力的な母から逃れるために少女がオサムのもとへ身を隠し、
その5年後に帰ってきた、という事件である。
前の公判でも何度か取り上げられていた。
当時の紙面では、少女の証言として全てが語られていたのだ。
記事の文意は半信半疑といった体であったそうだが。
-
( ‘∀‘)「オサム様は子供を守るために隠したんだよ、とまたんきに説明しました」
ξ゚⊿゚)ξ「子供を守るため──……あなたもそう思っていました?」
( ‘∀‘)「ええ。その40年前の子から、何度か聞いてたんです。
オサム様は優しかった、何も恐くなかったと……。
あんまり真剣に語っていたものですから、そうなのだろうと私は信じていました」
【+ 】ゞ゚) テレル
川 ゚ 々゚) ナンダカ フクザツ
( ^ω^)(くるうさんが喜ぶべきか嫉妬するべきか悩むような顔をしている)
ξ゚⊿゚)ξ「またんき君も信じましたか?」
( ‘∀‘)「あ、いえ、興味深そうに聞いてはいましたけど……。
他の神隠しの事件も夫が話していましたので
どちらかといえば、そちらの印象の方が強かったのではないかと」
他のというと、つい今しがた語られた13年前だとか8年前だとか、
「被害者が帰ってきていない」パターンの方か。
この法廷でもそうであるように、行方不明者が帰ってきたものと帰ってきていないもの、
後者にオサムが関わっていないという証明は一度も出来ていない。
-
ξ゚⊿゚)ξ「つまり、またんき君にとって、オサム様は『神隠し』をする神様というイメージがあった?」
( ‘∀‘)「恐らくは……」
ξ゚⊿゚)ξ「そのオサム様が目の前に現れたとして、またんき君はどのような反応をすると思います?」
( ‘∀‘)「警戒するのではないでしょうか。すみません、多分、ですけど」
ξ゚⊿゚)ξ「たとえばお菓子などに釣られて、知らない人についていく可能性は」
( ‘∀‘)「もう4年生ですし、ないと思います」
ξ゚⊿゚)ξ「では、それらを踏まえて。またんき君がオサム様についていくと思いますか?」
( ‘∀‘)「私は、そうは思いません」
言い切ってから、ガナーはオサムに向かって頭を下げた。
自分自身はオサムを怪しんでいない、この事件もオサムが犯人だとは思えない、と言って。
【+ 】ゞ゚)「ああ……うん、ありがとう」
ξ゚⊿゚)ξ「話は変わりますが──
先日お話を伺ったとき、ランドセルに気になることがあると仰いましたね?」
( ‘∀‘)「あ、──はい、えっと、巾着が付いてなくて……」
-
▼・ェ・▼「巾着?」
ニュッは無言のままだったが、僅かに姿勢を崩した。
彼も知らない話なのだろう。
( ‘∀‘)「あの、巾着と言っても、小さいものなんですよ。
本当に小っちゃくて、物も全然入らないくらいの……。
凧作りのときに余った端切れで作ったんです。飾りとして使えればいいと思って」
( ‘∀‘)「またんきにあげたら、またんきはそれをランドセルの、あの──何と言うんでしょう、
横っ側の、細いベルトのようなところに結んだんです」
ξ゚⊿゚)ξ「そのことを、あなたや、あなた以外の方は警察に言いました?」
( ‘∀‘)「いえ……ランドセルの確認は娘夫婦の方が行いましたので……。
あの子たちは巾着のこと知らなかったでしょうし、
私は昨日、弁護士さんに写真を見せてもらって初めて気付いたものですから」
( ^ν^)「……巾着……」
ここから弁護側がどう来るのか、ニュッは察したようだ。
厄介なことを聞いてしまったな、といった表情になっている。
そうしてツンが口にした結論はやはり、彼の予想と同じだったのかもしれない。
-
ξ゚⊿゚)ξ「またんき君が自らの意思で神社の拝殿へ行った、という見解は検察側も弁護側も一致しています。
では何故ランドセルだけを残してまたんき君が消えたのか……。
それが問題となっていました」
ξ゚⊿゚)ξ「──彼は神社へ向かう途中で巾着を落とし、
拝殿の中でランドセルを下ろしたときに、それに気付いたんでしょう。
そして、巾着を探すために外へ出たんです」
その後、外へ出たときに何か事件に巻き込まれたのではないでしょうか──
そう言ってツンは口を閉じた。
ガナーが辛そうに顔を顰める。
これまで踏ん張っていたであろうフォックスの涙腺が、ここで緩んだ。
-
爪;ー;)「だとしたら哀しい話だ……いや、どのみち哀しくはあるんだが」
(゚A゚* )「あー泣いた。今日はハンカチやのうて、ふぇいすたおる持ってきたったからね」
爪;ー;)「ありがとう……」グシュグシュ
▼・ェ・▼「俺のなんだが」
爪;ー;)「ああ犬くさい。敵わん」
▼#・ェ・▼「狐汁染み込ませやがって! 返さんでいい!」
爪;ー;)「きゃんきゃん吠えるな。──弁護側からは以上か?
では検察から反対尋問を」
( ^ω^)(弁護士検事だけじゃなく、裁判官まで大人げないのかお幽霊裁判)
ニュッは特に乱れてもいないダークグレーの背広の裾を直し
起立すると、思案するように俯いた後、ガナーを見遣った。
-
( ^ν^)「相手が『オサム様』だと分かっていれば、ついていかない──かもしれない。
逆に言うと、分かっていなければ、ついていくかもしれない。
そうだろう」
(;‘∀‘)「どう……なんでしょう。
でも、オサム様なら、見た目で分かると思います。
『十字の柄のお面をつけている』と、40年前の新聞に載っていましたし、またんきもそれを読みましたし……」
( ^ν^)「面なんて外せば関係ない。
そもそも被告人本人が被害者のもとへ行ったかも怪しい。
協力者がいた可能性は、さっき言った通りだ」
【+ 】ゞ゚)" ピクリ
ξ゚⊿゚)ξ「あなた、またオサム様を怒らせたいの」
( ^ν^)「俺が怒られたって、可能性が消えるわけじゃない」
川#゚ 々゚)「くるうはそんなことしないし、オサムもくるうにそんなことさせないもん!」
仲がよろしくて結構、とニュッは受け流す。
流されたくるうは顔を真っ赤にして検察席を睨み、オサムに頭を撫でられるまでそうしていた。
_
( ゚∀゚)(おばけにすら恋人がいるのに俺ときたら)
∬;´_ゝ`) アワワワ
-
( ^ν^)「弁護人は、巾着を落としたのに気付いて拝殿から出たと言うが、
そもそも根本的な疑問が生じる。
『被害者はなぜ拝殿にいたのか』、だ」
( ^ν^)「弁護人の主張が正しいとすれば、
人攫いの神がいると知った上で、被害者は夜中に神社へ行ったことになる。
それは不自然だろう」
ξ;゚ -゚)ξ「む」
( ^ν^)「そんな荒唐無稽な言い分よりは、こちらの
『被告人に誘われるがまま神社へついていった』という主張の方が筋は通る。
またんきは被告人が『オサム様』であることに気付かなかった──という前提でな」
( ^ν^)「行く途中で巾着を落としたのだろうという意見には同意するが、
巾着を探すために拝殿を出たってのはないな」
ξ;゚⊿゚)ξ「何か……嫌なことがあって家出したとか……可能性はあるでしょ!」
( ^ν^)「家出。家出ね。まあ子供の浅はかな衝動で家を飛び出ることはあるかもしれん。
だとしても、やはり『何故わざわざ神社へ』という疑問は残るよな?」
ξ;゚ -゚)ξ「うう」
▼・ェ・▼「……まあ、そこだよな」
(;‘∀‘)「家出をするような理由は……なかったと思います」
-
ツンは唇を尖らせ、反論の足掛かりを探している。
その様に気をよくしたのか、ニュッに楽しげな笑みが浮いた。
ここで弁護側の主張を通すのなら、
「またんきが1人で家を出て神社の拝殿に侵入した」という点に合理的な説明を為さねばならない。
しかしそれが出来ないから、こうして向こうに押されてしまう。
ツンが唸る。言葉は出ない。裁判官も短く唸る。ニュッの意見がそれらしいなと。
──そのとき、体育館の入口、扉が勢いよく開かれた。
ζ(゚ー゚*ζ「連れてきましたー!」
デレだ。
左手で男の腕を掴んでいる。
コンビニにいました! と質問が飛ぶより先に答えて、検察席へ立つ。
突然の登場に誰もしっかりとした反応を返せないでいると、それを不審に思ったらしく
デレは辺りをきょろきょろ見渡した。
-
ζ(゚ー゚*ζ「えっと、何か邪魔しちゃいました?」
( ^ν^)「いや、丁度いい。──裁判長、反対尋問はこれで以上です」
爪ぅー;)「そうか、それでは改めて……。
弁護側証人は席へ戻り、検察側証人は証言台へ」
木槌が叩かれ、ガナーは内藤の隣へ、デレは男の腕を離してニュッの隣へ座った。
男は呆然としながら周囲を見回して、その場に立ち竦んでいる。
それに焦れた様子で、デレは再び彼の腕を掴むと証言台へ引っ張っていった。
-
爪'ー`)「証人」
(;´ー`)「は、はあ」
爪'ー`)「名前と年齢を」
(;´ー`)「斉藤シラネーヨ……33歳だヨ」
諸々の確認は特に滞りもなく。
忙しなく視線をあちこちへ送っていた斉藤シラネーヨは、
弁護席のガナーを見て、愛想笑いでもしようとしたのか、ひしゃげた笑みを湛えた。
前を向け、とニュッが注意する。
慌てて言う通りにしたシラネーヨへ、尋問が開始された。
-
( ^ν^)「まず初めに訊くが、なぜ逃げた?」
(;´ー`)「こわくなって……」
( ^ν^)「……まあ、特殊な裁判だ。
証人が怖じ気づくことはたまにある」
(;´ー`)「……すんませんでした……」
(゚A゚* )「ま、これからちゃんと証言してくれたらええからね」
もふもふと柔らかそうな毛並みの首元を人間の手で摩り、
ビーグルは目を眇めた。
▼-ェ・▼「被害者の父親なんだよな。
母親の方は呼ばないのか」
ζ(゚、゚*ζ「またんき君のお母さん、お腹に赤ちゃんがいるんです。
もう8ヵ月になるそうで……。またんき君のことで参ってしまっているのに
更に負担をかけさせるわけにはいきませんから」
(゚A゚* )「あややや。そうなん? そら大変やねえ」
-
一応、またんきの母へ裁判の話をしてはいたらしい。
法廷へ呼んで証言なり傍聴なりをさせるのは、身体にも精神にも厳しいので諦めたようだが。
問答が一段落するのを待って、ニュッが尋問に戻る。
( ^ν^)「証人は──斉藤またんきの父親ではあるが、血は繋がってないな」
(;´ー`)「は、はい」
ζ(゚、゚*ζ「去年の2月頃に、またんき君のお母さんと再婚したんですよね」
( ^ν^)「一年も経たずに息子が失踪……さぞ悲しかっただろう」
(;´ー`)「ひどく、あの……驚きましたヨ。
どこへ行ってしまったのかと、毎日、妻と話して……
まさか──神隠しなんて、本当に神様に連れていかれたなんて、思ってもみなかった」
(;´ー`)「ずっと混乱して……今でも、ひょっこり帰ってくるんじゃないかって気がしてるヨ」
爪;ー;) ドバァ
ううっ、と声をあげ、フォックスはタオルに顔を埋めた。
それを眺めながらビーグルが渋い表情を浮かべている。
ガナーもまた、目を潤ませていた。
彼女の心境だって、きっとシラネーヨと同じなのだ。
-
( ^ν^)「先も言ったように、証人の妻は妊娠しているが、
それが発覚したのはいつ頃だった?」
(;´ー`)「去年の夏……8月の終わりくらい」
( ^ν^)「さぞ嬉しかったろう」
(;´ー`)「そりゃあ勿論」
( ^ν^)「またんきはどうだ? 喜んでたか?」
(;´ー`)「当たり前だヨ。
きょうだいが出来るんだって、すごくはしゃいでたのを覚えてるヨ。
……なのに、今、こんなことになっちまって……」
爪;ー;)「ふぅおっ……! うぐう……! ううううっ、むううう……っ!」
▼・ェ・▼「すげえうるせえ。こいつすげえうるせえ」
(゚A゚* )「フォックスこういう家族の話に一番弱いねん」
実際、親や祖父母の立場からすれば──ひどく辛い事件であろう。
妊娠というめでたい出来事の後だから、尚更。
-
内藤やツンは涙を堪えるガナーを見遣り、どう慰めるべきか悩み、
今は下手に触れない方が良かろうと判断した。
オサムとくるうも対応しかねているようだった。
ぐす、と鼻を啜る音が背後から聞こえた。姉者だ。ジョルジュが小声で慰めている。
( ^ν^)「またんきも、弟──あるいは妹の誕生を心待ちにしていたわけだな」
(;´ー`)「……恐らくは」
( ^ν^)「少し質問の方向を変える。
弁護人は、またんきが1人で家を出たんじゃないかと言っているが……
夜中に外出するような子供だったか?」
-
事情のある親子なんだな
-
(;´ー`)「そんなこと、今まで一回もなかったヨ!
夜に、まして誰にも言わずに勝手に出るなんて有り得ネーヨ!」
(;´ー`)「……そうだ、有り得ネー……俺は何も悪くネーヨ……俺は……」
( ^ν^)「……証人?」
おどおどしていたシラネーヨが突然叫ぶように返事をしたことで、
ニュッは面喰らったようだった。
反対に、続いての発言はぶつぶつ呟くような小さな声で。
怪訝な呼び掛けに、慌てて首を横に振る。
(;´ー`)「あ──ええと──とにかくまたんきが1人で外に行ったとは思わネーヨ!」
( ^ν^)「誰かに誘われて行った可能性については?」
(;´ー`)「それ、それだヨ。きっと誰かが、犯人がまたんきを騙して連れてったんだ」
何やら挙動がおかしい。
内藤とツンは互いを見交わした。
-
【+ 】ゞ゚)「……何だか妙だな」
(;‘∀‘)「シラネーヨ君、普段は落ち着いてて静かな人なんですけれど……」
審理の邪魔をしないようにか、オサムとガナーの声は抑えられている。
こちらだけでなく、ニュッやデレ、裁判官も奇妙な空気に気付いているようだ。
それでもニュッは努めて冷静に尋問を続けた。
( ^ν^)「弁護人は、またんきが家出をしたんじゃないかと疑っているようだが」
(;´ー`)「──家出?」
( ^ν^)「家出をするような原因等に心当たりはあるか?」
(;´ー`)「……ネーヨ」
ツンが肩を落とし、ニュッは頷く。
シラネーヨの語る家族の風景はごく普通で、それなりに幸せそうだったので
家出をしたというのは考えにくい。
-
それからニュッは、ほんの数秒黙った。
次の質問について整理していたのだろうけれど、
どうも、シラネーヨには耐え難い間であったらしかった。
目の前の机をシラネーヨの右手が叩く。
そうして彼は身を乗り出させ、叫んだ。
(;´ー`)「ネーヨ、そんなもん!! うちは──仲良くやってたんだ!!
何も問題なんか無かった、家出なんかするわけネーんだヨ!!」
恐らくは、法廷にいるほとんどの者が仰天した。
弁護人も検事も刑事も、傍聴席も。フォックスでさえ、涙が引っ込んだくらいだ。
それほど大きく、唐突に過ぎる怒鳴り声だった。
ふうふうと息を荒らげ、シラネーヨが何処ともつかぬ場所を睨む。
フォックスが口を開こうとしたとき、それより早く、別の位置から声がした。
-
川 ゚ 々゚)「……くさい……」
彼女のその一言は、今この場において、何より大きな意味を持つ。
唖然とする周囲を横目に、くさい、ともう一度呟いた。
ξ;゚⊿゚)ξ「──くるうさん」
川 ゚ 々゚)「嘘のにおいがした、今」
(;´ー`)「は? ……な、何だヨ」
くるうの体質については知らないのだろうか、シラネーヨが不思議がる。
デレが手を挙げ、彼の意識を自分へ向けた。
ζ(゚、゚*ζ「シラネーヨさん、さっきの、もう一回言ってもらえますか?
またんき君の家出について」
-
(;´ー`)「……またんきが家出するような理由なんか、ネーヨ」
先程と違って、戸惑い混じりの答えは声量が小さい。
くるうは、ぎゅっと顔を顰めた。
川 ゚ 々゚)「くさい……嘘ついてる」
(;´ー`)「だ──だから何なんだヨ、それは」
▼・ェ・▼「あれは、人が嘘をつくと臭いで分かるんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……家出する理由に、心当たりがあるんですね」
(;´ー`)「はあ!? ね、ネーヨ! 俺がどうして嘘つかなきゃなんネーんだ!」
狼狽する様は、言ってしまえば、どうとでも取れた。
図星とも、釈明とも。
故にニュッにも付け入る隙がある。
-
( ^ν^)「待て。監視官は被告人の恋人だ。
今回において、監視官の発言は信頼性に欠ける」
その疑いも、決してお門違いではない筈だ。
内藤だって、彼らのことをよく知らなければそう思っていただろう。
ツンの表情が一瞬、強張った。
だが──すぐに。
口を弓なりに曲げる。
ξ゚ー゚)ξ「……それはないんじゃないの、検事」
( ^ν^)「あ?」
-
ξ゚ー゚)ξ「あなたが証明してくれたのよ。前回の公判の最後に。他ならぬあなたが」
ツンは、ゆっくりと腰を上げ、ゆっくりと机に手を乗せた。
挑発するような目付きがやけに似合う。
かと思えば、すっと表情を消して。
彼にのみ刺さる棘を、声に忍ばせる。
ξ゚⊿゚)ξ「くるうさんは、恋人よりも、監視官の誇りを守る人なんでしょう?」
(;^ν^)「──っ!!」
ニュッが息を呑む。
あーあ、とデレが肩を竦めた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「くるうさんは前回、オサム様を守るために嘘をついたかしら?
……涙を流して、歯を食いしばって、真実の方を取ったわ」
(;^ν^)「あ、あんなもん──」
(゚A゚* )「せやで、鵜束検事」
予想外の方向から援護が齎された。
右陪席、のー。
あのとき、ニュッと共に厳しくくるうを追及した神様。
(゚A゚* )「くるうちゃん、どんなに辛かっても、ちゃんと本当のこと言うたやろ。
監視官として信用できる子やと思います。うちはね」
しゃんとした態度で彼女は言い切った。
ニュッがぱくぱく口を動かしている。
堪忍してな、と、のーは前回同様くるうに謝罪した。
-
(゚A゚* )「あんときな、くるうちゃんが嘘つく子か確かめたかったんよ。
もし本当に被告人の利益しか考えとらんかったら、誰にどう思われようと嘘つくやろ?
でもくるうちゃん、しっかり監視官の仕事したもんな」
川 ゚ 々゚)「……うん」
(゚A゚* )「ビーグルとフォックスがどうかは知らんけど、うちは、あれで充分信じられるわ」
ビーグルは、ふん、と鼻を鳴らした。
信じるとも信じないとも言わないが、のーの意見に反対するわけでもなさそうだ。
フォックスは言わずもがな。しみじみ頷いている。
(;^ν^)「な……な……」
ζ(゚、゚*ζ「諦めましょニュッさん。墓穴掘ったんです」
-
【+ 】ゞ゚)「……良かったなくるう」
( ^ω^)「泣かされた甲斐がありましたおね」
くるうは喜ぶでもなく困るでもなく、ただただ釈然としない様子で
オサムの肩口に頭突きするように寄りかかった。
彼女としては常に事実のみを口にしていて、それを周りがああだこうだ騒ぐのが不可解極まりないのだろう。
くるうの正当性をツンやのーが保証してくれたのが嬉しいのか、
オサムは口元をほんの少し緩め、くるうの髪を指で梳くようにして何度も撫でた。
普段表情を変えない人なので少し驚いた。
-
爪'ー`)「……つまり、被害者の家庭には何かしら問題があったのだな」
(;´ー`)「……」
本題に戻したのはフォックスの一言。
すぐにツンが乗っかる。
ξ゚⊿゚)ξ「『はい』か『いいえ』でも答えられるでしょう。
あなたと奥さんに問題があった?」
(;´ー`)「……いいえ」
ξ゚⊿゚)ξ「奥さんとまたんき君?」
(;´ー`)「いいえ……」
ξ゚⊿゚)ξ「……あなたとまたんき君に?」
(; ー )「……い、いいえ……」
がばとくるうが顔を上げた。
川 ゚ 々゚)「嘘」
(; ー )「……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あなたとまたんき君の間に何があったんです?」
シラネーヨは口を閉ざした。
その目がガナーに向けられ、気まずそうに逸らされる。
(;‘∀‘)「あ、あの……でも──私から見て、おかしなところはありませんでしたよ。
いつも仲が良さそうでした。
事件の日だって、またんきはシラネーヨ君と一緒にお風呂入ってましたし」
ξ゚⊿゚)ξ「お風呂に?」
(;‘∀‘)「ええ……うちに泊まりにきたときは、またんき、いつも私の夫とお風呂に入るんですが……
あの日は夫が声をかけても乗り気じゃなくて。
でもシラネーヨ君が『一緒に入るか』と言ったら一緒に……」
-
∬;´_ゝ`)「そ、それまではお祖父さんと一緒だったんですか?
なのに今年は一緒に入らなかった?」
_
(;゚∀゚)「ちょっ、あ、姉者先生」
戸惑いながら説明するガナーへ、声が飛んだ。
姉者。黙って審理を眺めていたが、何か気にかかるものがあったらしい。
教師という職業柄、こういったことには敏感にならざるを得ないのだろう。
(;‘∀‘)「ええ。もう4年生ですから、気恥ずかしいのかなと思ったのですが」
ξ゚⊿゚)ξ「でもシラネーヨさんとは入ったんですよね」
(;‘∀‘)「あら……そうね、そうだわ」
-
▼・ェ・▼「斉藤証人、普段から息子と風呂に入るのか?」
(;´ー`)「そ、……そうだヨ、いつも……だからあの日も……」
川 ゚ 々゚)「嘘」
(#´ー`)「──うるせえな!! 嘘嘘嘘ってウザってえ!」
シラネーヨの手が、また机を叩く。
くるうが首を竦めると、怯えた彼女の様子に、「まずい」といった顔をした。
(;´ー`)「……っあ、ちが、」
∬;´_ゝ`)「どうして、そのときだけ一緒に入ったんですか?」
弁護人や検事でなく、姉者が質問をぶつける。
声音は優しいのに、どこか厳しい。
──シラネーヨの振る舞いや、またんきとの間に「何か」があったことから、
嫌でも思い浮かぶものがある。きっと内藤だけでなく、ツン達の頭の中にも。
今はまだ、想像でしかないけれど。
-
∬;´_ゝ`)「……またんき君の体に、何か、見せたくないものでもありましたか?」
痣、とか。
その最後の一言は躊躇いがちで。
ざあ、と雨音が強くなった。
ざあ、とシラネーヨの顔が青くなる。
天井近くの窓が刹那に光り、雷鳴が響いた。
*****
-
(>、<;トソン「っ、」
霹靂に、トソンは身を竦ませた。
(゚、゚;トソン「ああびっくりした……」
ずいぶん大きかった。どきどきする胸を押さえながら(心臓は動いていないが)、
人気のない廊下をゆっくり進む。
──ヴィップ総合病院。
トソンは、そこにいた。
(゚、゚トソン(警備の人にお願いしたら、少しくらいはミセリに会わせてもらえるかな……)
何だか、嫌な胸騒ぎがあったのだ。
具体的にどうこう言えやしないけれど。
連日続く雨に言い知れぬ不安が煽られただけではないかと思うし、そうであればいいとも思う。
とにかくミセリの様子を見たい。
-
姉者がんば!
-
(゚、゚トソン(やっぱり、ツンさんや刑事さんから話を通してもらわなきゃ駄目かな……)
思えば、自分は皆に恩ばかり作っている気がする。
ツンには裁判の弁護やミセリの事件の捜査をしてもらったし、
内藤のおかげで無罪の証明をしてもらえたし、ドクオにもミセリを助けてもらったし、
トソンを逮捕したギコやしぃだって、今は「真犯人」を捜してくれている。
(゚、゚トソン(いつか、何かの形でお礼をしなきゃ)
オサムとくるうもちゃんと正しい判決を下してくれたのだから、彼らにもお礼をせねば。
しかし今、オサムは裁判にかけられているらしい。
彼が罪を犯すとは考えられない。ツンが弁護しているし、大丈夫だろうとは思うのだけど。
-
廊下を進むにつれ、ミセリの病室に近付くにつれ、辺りの霊の数が減っていく。
警備としておばけ課の職員が出入りするようになってから、
あの部屋にわざわざ近付こうとする霊はいなくなったのだ。
ついに病室まで数メートルというところで、トソン以外の霊は見当たらなくなった。
(゚、゚;トソン(……気配も全然しない……?)
病室の数歩前で立ち止まる。
──誰もいない。
警備に当たっている筈の警官も、おばけも。
-
(゚、゚;トソン「……!?」
駆け寄り──ぞわりと背筋に冷たいものが走り、振り返った。
( ФωФ)
暗い廊下に、男が立っている。
やや太り気味の体型。猫のような目。
-
(゚、゚;トソン「……! あなた……!」
ぐるり、トソンの頭の中を様々な思考が巡った。
──捕まえないと。
──無茶はするなとツンが言った。
──逃げるべき? 急いで警察へ。
──病室のミセリは、どうなっている?
それらがぶつかり合い、トソンの反応を鈍らせた。
(#ФωФ)「──!!」
男が目を見開く。
憤怒の表情。
-
(゚、゚;トソン「ぁ、」
男は、トソンへ向かって飛びかかった。
口を大きく開いている。
鋭い牙が、トソンの目の前でぎらりと光った。
*****
-
(*゚ー゚)「……裁判は今頃どうなってるだろう」
猫田家の離れ。
ブームを膝に乗せたしぃは、ふと時計を見上げて呟いた。
開廷からずいぶん経っている。
何となく持ってきたまま放置していた外れクジを丸め、屑籠に放った。
| ^o^ |「……さいばん……」
ギコがタオルで頭を拭きながら(さっきまで風呂に入っていた)、「さあね」と返した。
まあ、この場にいる誰に訊いたところで正解など得られよう筈もない。
-
(,,゚Д゚)「凄かったわねえ、傍聴希望者の山」
(*゚ー゚)「何も問題が起こらなければ、今日で判決が出るからな。
みんな気になるんだろう」
ツンがいる時点で、何も問題が起こらないとも思えないけれど。
彼女が勝つだろうか。負けるだろうか。
ニュッに負かされるツンの姿を想像すると、少し癪に障る。
色々なことが気になって悶々としてしまう。
誤魔化すため、別の裁判に関する書類でもまとめようと、しぃはブームを膝から下ろした。
(*゚ー゚)「そういえばギコ、さっき母さんがお前を探していた」
(,,゚Д゚)「叔母様が? 行ってこようかしら」
(*゚ー゚)「もう寝たかもしれない」
(,,゚Д゚)「どうしましょ、明日でいいかしら」
(*゚ー゚)「大事な用ならまた来るだろう」
-
ギコさんの入浴シーン想像したらこれまでの緊張が一気に解れた
-
|; ^o^ |「あ あ」
(*゚ー゚)「うん?」
|; ^o^ |「あう…… あ……」
(*゚ー゚)「……君が何を言いたいのか、結局よく分からなかったな」
裁判が終わったら、この少年はどうするのだろうか。
──まじまじと見つめ、そこでようやく、ブームの様子がおかしいことに気付いた。
|; ^o^ |「あ…… あ お おさむさま……」
(*゚ー゚)「どうした?」
|; ^o^ |「おさむさま おさむさま」
絵や字で表現させられないかと試したこともあったが、
文字の読み書きは出来ないようだし、絵も、何が何だかよく分からない代物だった。
言葉での説明はこれまでの通り。
ただ、感情などはいくらか分かる。
今の彼からは、これまでになかった必死さが見えた。
その違和感にしぃは眉を顰める。
-
|; ^o^ |「だ だめ おさむさま……おさむさま」
(,,゚Д゚)「なあに、ブーム君」
ギコも異常を察したようで、様子を見に近付いてきた。
おさむさま、をひとしきり繰り返したブームは
口を開いたまま震わせ、ひどく困り果てたように眉尻を下げ、
|; ^o^ |「む」
唸りに似た声を漏らす。
それが端緒となったか、意味のある単語が飛び出した。
|; ^o^ |「む、ざい ……むざい…… おさむさま……」
.
-
(*゚ー゚)「──無罪?」
|; ^o^ |「むざい むざい……」
ブームは2人から一旦離れると、棚から何冊かファイルを持って戻ってきた。
過去の法廷記録。
昨日、彼をあやすために読み聞かせたところ、どうやら気に入ってしまったらしく
何件もの裁判の話を語らされたのだった。
そこで「無罪」「有罪」の単語をしょっちゅう口にしたので、すっかり覚えたようだった。
ブームがファイルをしぃに突きつける。
読めというのか。それより気になる発言があるのだけど。
-
(;,゚Д゚)「オサムちゃんが無罪?」
(;*゚ー゚)「な、何なんだ、どういうことだ?」
そういえば、ついさっき、しぃが「判決」という言葉を出してから
ブームの様子がおかしくなったのではなかったか。
今日の内にオサムの処分が決まると知って──焦った?
|; ^o^ |「ん!」
ぐいぐい、手にファイルが押しつけられる。
どうも、彼にとっては、これまでの流れから外れた行為でもなさそうだ。
しぃはブームを再び膝に座らせるとファイルを開いた。
読めばいいのか、と問えば、頷きが返ってくる。
-
(;*゚ー゚)「……これは憑依罪の裁判で……。
被告人は男の浮遊霊、被害者は被告人の元恋人。
被害者に新たな恋人が出来たので、それを邪魔するため被告人が被害者に取り憑いた、という容疑だった。
取り憑かれていたと思われる時間帯、被害者が、新恋人に対して被告人しか知り得ないことを言って……」
|; ^o^ |「ゆ ゆうざい」
言って、ブームはしぃの顔を窺う。
正解か否か確認するような仕草。
(*゚ー゚)「……正解だ。いま言った事実が決め手となり、有罪判決が下った」
まぐれ──なのか。違うのか。
彼を馬鹿にするわけではないが、それでもやはり、今まで受けた印象と食い違う。
ブームの手はファイルをめくった。
別の事件。先の記録もこれも、ブームにはまだ語っていないものだ。
-
(*゚ー゚)「騒霊罪。被告人はとある家の地縛霊だった老人。
新しい家族が越してきてからというもの、ポルターガイスト……
ラップ音や物が独りでに動く現象が多発して、被告人が逮捕された」
(*゚ー゚)「勝手に動いていた物の中でも特によく動かされたのはボールだ。
実は、過去に住んでいた家族が犬を飼っていてね。数年前に亡くなったらしいんだが、その犬は
ボールで遊ぶのを好んでいて……」
|; ^o^ |「むざい」
それも正解。
以降、しぃが事件の説明をする度にブームは「有罪」あるいは「無罪」という単語を口にした。
どれも、しぃが決定的な証拠について説明した段階での解答だった。
そして、また、全てが正しい。
ある仮定が頭に浮かぶ。
| ;o; |「……ゆうざい……」
幾度目かの発言の後、ブームは涙を零した。
彼の膝の上へ雫が落ちる。
しぃと同様の疑念を抱いたらしきギコは、ノートパソコンを開き何かを打ち込み始めた。
-
(;*゚ー゚)「ブームくん、君は……」
(;,゚Д゚)「しぃ」
ギコがパソコンをしぃへ向ける。
どこかのホームページが開かれていた。
そこに書かれた文章を読み進める内に、仮定が確信へと変わっていく。
(;*゚−゚)「……すまない、ブーム君。
僕は──僕達は、勝手に決めつけてしまっていたようだ」
知恵遅れ。先週、ニュッはそう言った。
しぃもその類のものだと捉えていた。
だから、証言の信憑性が一番のネックなのだろうと考えていたのだ。
たとえブームの言葉を理解できても、根本的な部分を疑われてしまう、と。
実際は違う。
問題は、ただ一点のみだった。
片手のファイルを机に放り、しぃはギコにブームを抱えさせると、離れを飛び出した。
傘を差す間さえ惜しかった。
*****
-
爪;ー;)「……証人」
(; ー )「……」
何度目かの呼び掛け。
何度目かの無視。
シラネーヨはあれからずっと黙り込んでいる。
シカトされ続けたフォックスが泣いてしまうくらいに。
ζ(゚、゚;ζ「シラネーヨさーん」
(;^ν^)「黙ってたって終わらねえぞ」
彼を法廷に呼んだのはニュッだ。
お前がどうにかしろ、という雰囲気に晒されたニュッも、些か居心地悪そうにしている。
(;‘∀‘)「シラネーヨ君……あなた、またんきに何をしたの……」
(; ー )「……」
-
フォックス泣くな。。
-
(゚A゚* )「このままじゃにっちもさっちも行かんわ」
▼・ェ・▼「むりやり聞き出すか」
ビーグルの方は、既に苛立ちが限界を迎えかけている模様。
喉から獣じみた唸り声を鳴らしたが、「威嚇は駄目だと言ったろう」とフォックスに咎められ、
そちらに向かって短く吠えてから、腕を組んで大人しくなった。
ビーグルを見る限り、シラネーヨが黙秘することよりも
シラネーヨがまたんきに「何か」していたかもしれない──という点に怒っている節がある。
一番人間離れした見た目の割に、物事に対する感覚は、神様の中では最も人間らしいのかもしれない。
( ^ω^)「どうなるんですかお? これ」
_
(;゚∀゚)「全然進まねえぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ「分かんない……」
-
フォックス無視されて泣いてんのかよワロタ
-
支援
-
【+ 】ゞ゚)「黙秘を貫くのなら、こっちで勝手に判断することになるだろうな」
川 ゚ 々゚)「どんな風に?」
【+ 】ゞ゚)「……耳触りのいいことではないと思う」
傍聴席も、既に意見はほぼ一致しているようで
シラネーヨに向けられる目は冷たい。
ついに、一人が野次を飛ばした。
それを皮切りに次々と文句が出始める。シラネーヨに対するものと、裁判官や弁護士検事に対するもの。
後者は、さっさと話を進めろというような言い分である。
フォックスが木槌を鳴らすといくらかは収まったが、
完全に沈静化することもなかった。
姉者がいる方向から、がたがた震える音がする。構っている暇はない。
-
( ^ω^)(これだけ荒れたら、続きはまた後日だろうか)
おくびにも出さないけれど、内藤だって裁判の行方がどうなるか、はらはらしている。
ここで延期になればやきもきして落ち着かないし、心臓にもあまり良くない。
傍聴席はまたもや活発になり始める。
裁判官達は顔を見合わせ、どうすべきか話していた。
このままだと、内藤の予想通りになりそうだ。
──が。
突然体育館の扉が開け放されたことで、法廷は俄に静まった。
.
-
(;*゚ー゚)「──証人の追加だ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「しぃ検事!?」
しぃとギコが、どかどかと体育館へ入ってくる。
2人とも部屋着そのままといった格好の上、雨でずぶ濡れになっていて
見ているだけで寒くなる。
ギコは少年を抱えていた。
2日前、傍聴席に彼らと共にいた少年と同じだった。
爪;ー;)「お前は……たしか、この町の検察官だったか」
(;^ν^)「何しに来た」
ζ(゚、゚;ζ「どうしたんですか、その格好……傘差さないで来たんですか?」
(;,゚Д゚)「ちょっと急いで来たからね」
-
(*゚ー゚)「何やら滞っているようだし、そちらの証人は後回しにして
こちらの証言を先に聞いてもらえないだろうか」
|; ^o^ |
ずいとギコが腕を伸ばし、少年を前方へ差し出すようにする。
少年の名前──ブームと、彼がおばけであることが説明された。
どうやらニュッとデレは知っているらしく、ブームに対しては然したる驚きを見せていない。
( ^ν^)「……証人って、まさか『それ』か?」
(*゚ー゚)「そうだが」
( ^ν^)「前に俺が言ったこと覚えてるよな?
その証人が証言したところで──」
(*゚ー゚)「それは僕が保証しよう。彼の知能には問題などない」
やはりニュッとブームは面識があるようだ。
内藤には話が全く見えないけれど。
これまでの流れで苛々していたのか、ニュッがついにキレた。
-
(#^ν^)「ああ? あれのどこがマトモなんだ!?」
(#゚ー゚)「そうやって決めつけるのが間違いだったんだ!
僕もあなたも簡単なことを見落としていたんだ、少し考えれば分かることだったのに!」
(#^ν^)「決めつけるも何も、そのままじゃねえか!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと待ってちょっと待って、何なの? 何事?」
(#゚ー゚)「やかましい!!」(^ν^#)
ξ;⊿;)ξ「うわーん内藤くーん!」
( ^ω^)「僕に来られても」
ζ(゚、゚;ζ「ニュッさん落ち着いてくださいよ、喧嘩するとこじゃないでしょう?」
(;,゚Д゚)「そうよそうよ。
しぃ、ちゃんと説明しなさい。ニュッちゃんはまず話を聞いて」
刑事2人に諫められて、検事2人がようやく口を噤んだ。
弁護士1人は酷いわ酷いわと内藤に泣きついている。
-
ニュッくんどうしようもない!
-
ニュッくんカリカリすんなよ、カルシウム足りてる?
-
爪ぅー;)「ええと……その少年に、証言をさせるのか?」
(*゚ー゚)「そうさせていただきたい。弁護側証人ということになります」
( ^ν^)「……お前マジでふざけてやがんなあ……?」
(,,゚Д゚)「はいブーム君、下ろすわよ」
|; ^o^ | オロオロ
ζ(゚、゚*ζ「あのう、この子、頭が、あの……ちょっと……。
言葉も、繋がりの分からない単語を繰り返すばかりで。
証拠能力に欠けるって、ニュッさんは言ってるんですけど……」
その少年を指したデレの言葉に、裁判官は渋りを見せた。
しぃが泡を食って一歩出る。
-
(;*゚ー゚)「彼は、こちらの言うことを概ね理解している!
逐一言葉の意味を説明しなくても理解できているんだから、知識はある筈だ!
場の空気も把握できるから、おとなしくしているべき場では黙っていられるし──」
(;*゚ー゚)「善悪の判断だってつく!
何が悪くて何がいいのか──有罪と無罪の区別をつけられる、
その拠り所となるものも良識から外れていない!」
しぃはブームの肩に手を置き叫ぶ。
その手に触れたブームは、彼女を見上げた。
-
(;*゚ー゚)「……昨日と今日、彼は泣いた。自分の主張が我々に通じないのが悔しくて泣いたんだ。
彼の思考力と情緒に何ら問題はない」
(;*゚ー゚)「こちらが彼の発言を正しく理解すれば、証言はちゃんと意味を持つんだ!」
( ^ν^)「なら、何で碌に喋ることすら儘ならねえんだよ」
(*゚ー゚)「……言語障害」
( ^ν^)「……」
(*゚ー゚)「彼はおばけだから、どこまで人間の定義に嵌められるか分からないが──
失語症の類であると思う」
(*゚ー゚)「恐らくは、ブローカ失語というものに近い。
他者の言葉は理解出来るが、自分で話そうとすると言葉が出てこないんだ」
ζ(゚、゚*ζ「ブローカ失語、ですか……」
たとえば、物品の用途は分かっていても、それの名称が出てこない──というのも
その症状に含まれるのだという。
知識はある。聞き取りも出来る。ただし発語の点において問題が生じる。
-
ブームくんずっと必死だったんだな
-
がんばれブームくん
-
ニュッは舌打ちをして、「それで」と急かすような声を吐き出した。
( ^ν^)「そいつの言いたいことは分かったのかよ」
(;*゚ー゚)「……解読は……まだ、上手くいっていないが」
とりあえず勢いで来たのか。
ああ、またニュッが苛立った。
「よく分からんがそれじゃ駄目だろう」とビーグル。のーも困り気味。
だが、ここに来てくれて良かった、と内藤は思う。
ツンがいる、この場に。
( ^ω^)「なら、ツンさんに任せましょうお」
(;*゚ー゚)「え?」
( ^ω^)「そういうの、ツンさんが得意ですお。多分」
ね、とツンに呼び掛ける。
ツンは内藤のように「多分」と言って、頷いた。
両手を顔の横へ上げ、わきわき動かす。
-
ξ∩゚⊿゚)∩「へい。カモン」
(;*゚ー゚)「……」
連れてきたはいいものの、ツンに託すのは癪らしい。
ブームとツン、ギコを見比べている。
(,,゚Д゚)「全部あんたがやろうとしなくたっていいのよ」
微笑んで言うギコに、観念したようだった。
ブームを抱え、ツンの前へと歩み寄る。
証言台よりは、弁護人の傍にいる方がブームもやりやすかろうと思っての判断だろうが、
こちらとしてはますます都合がいい。
(*゚−゚)「結局あなたに任せることになるのか」
ξ゚⊿゚)ξ「ここまで漕ぎ着けたのは、あなただわ」
(*゚ー゚)「……頼みますよ、本当に」
ξ゚⊿゚)ξ「お任せあれ。美味しいとこ持ってくのは得意よ」
証言台に立ったままのシラネーヨが、どうしていいか迷っている。
ひとまず引っ込んでいい、とフォックスに言われ、逡巡してから検察席へ向かった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「さてと。ブーム君、だったかしら」
|; ^o^ |" コクン
ツンは立ち上がり、弁護人席の前へ移動すると、
ブームと視線を合わせるためにしゃがみ込んだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ゆっくり話して。私のこと見ながら。そのときのこと、ちゃんと思い出しながら。
……大丈夫だから」
警戒されては、ツンの「あれ」は使えない。
首を僅かに傾けて微笑むツンに、突っ張っていたブームの肩が下がった。
それから間もなく、ツンは軽く頭を揺らした。
何か見えた──のだろうか。
| ^o^ |「お おさむさま…… みた……」
のろのろとした語調。
たった二語だが、さすがにそれが示す意味は内藤にも分かる。
-
ξ゚⊿゚)ξ「オサム様を見たのね。いつ? 1月1日?」
| ^o^ |" コクン
ξ゚⊿゚)ξ「夜?」
| ^o^ |" コクン
ξ゚⊿゚)ξ「他に見たものはある?」
| ^o^ |「カバ……」
川;゚ 々゚)「かば?」
|; ^o^ |「え、えんぴつ! はこ ほん…… か、かみ ……きらきら……」
ξ゚⊿゚)ξ「『鉛筆』と『箱』? ──鉛筆を入れる箱?」
( ^ω^)「筆箱ですかお」
|; ^o^ |" コクコク
-
ξ゚⊿゚)ξ「筆箱と『本』と『紙』……」
(;*゚ー゚)「──カバンか!」
はっとしたように、しぃが言った。
ブームはまた首肯する。
(;*゚ー゚)「筆箱と本と紙を入れる『カバン』だ!」
ξ゚⊿゚)ξ「となれば、『本』は教科書かしら」
( ^ω^)「なら紙はプリントとかですおね」
(;^ν^)「……ランドセルのことかよ」
|; ^o^ |" コクコク
-
ξ∩゚⊿゚)∩
↑これがジワる
-
▼・ェ・▼「きらきらってのは何だ」
ξ゚⊿゚)ξ「ランドセルに関係ある?」
|; ^o^ |" コクン
【+ 】ゞ゚)「あれじゃないか。鞄の一部が光ってたんだが」
∬;´_ゝ`)「は、反射鋲ですか?
暗いところでも子供の存在に気付けるように光るやつ……」
検察側が提出した証拠、またんきのランドセルの写真を思い出す。
たしかに反射鋲が付いていた。
ランドセルとオサムを見た、ということ。
他に何か見たか、誰かいたか、とツンが問うと、それには首を横に振る。
オサム以外の誰か──またんきは、その場にいなかったわけだ。
-
| ^o^ |「おさむさま かば…… ぺたぺた……」
(゚A゚* )「今度はぺたぺたかいな」
ξ゚⊿゚)ξ「……足音……。……オサム様がランドセルを持って歩いてるのを見た?」
| ^o^ |" コクン
ξ゚⊿゚)ξ「それは外で見たの?」
| ^o^ |" コクン
ツンはまたんきの頭を撫で、立ち上がった。
ニュッへと体を向ける。
ξ゚⊿゚)ξ「……オサム様の証言が正しかったわね。
拝殿で見付けたランドセルを持って外に出て、持ち主を探してたんだわ」
(;^ν^)「そ、そう──限った話じゃねえだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「もしオサム様が犯人なら、そんなことする必要ないでしょ」
(;^ν^)「証拠となり得るランドセルを処分しようとしたのかもしれねえ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、なぜ処分しなかったの?
適当な場所にランドセルを放り投げればいいのに、
そうせずに拝殿に戻したってわけ?」
(;^ν^)「ぐっ……!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「お菓子をそのままにしてるのもおかしいわよね?
誘き寄せるために使ったっていうなら、ランドセルに入れっぱなしにしてれば
自分が疑われることなんて簡単に予想がつくじゃないの」
もっとやれ、とくるうが小声で言う。
もっとやれ、と内藤は心中で思う。
(;^ν^)「じゃあ──被告人が喰ったわけじゃないなら……またんきはどこ行ったんだ」
ξ゚ -゚)ξ「そうなのよね……」
が、ここで躓いてしまった。くるうががっくりと肩を落とす。
はたとツンが視線を下ろした。
ぐいぐい、ブームが彼女の服を引っ張っていたのである。
|; ^o^ |「……ぁ……」
口を開閉させながら、もう片方の手でニュッを指差した。
予想外だったのか、指されたニュッはどぎまぎしている。
-
(;^ν^)「俺?」
が、ブームは首を横に振った。ニュッ自身に用があるわけではないらしい。
ツンは再びしゃがむと、彼の顔を覗き込んだ。
じっと見つめ合う。
ζ(゚、゚;ζ「ニュッさんの発言に反応したんじゃ?」
(;^ν^)「──またんきか?」
|; ^o^ |" コクン
様子を窺っていたツンが、目を見開いた。
彼女の瞳はブームに向けられているが、ブームではない別のものを見ているようだった。
そうしてブームは呟く。
「みた」。先程、オサムの名にくっつけていた単語を。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「……またんき君のことも見たのね!?」
|; ^o^ |" コクン
ξ;゚⊿゚)ξ「オサム様を見た前? 後?」
|; ^o^ |「ま まえ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「どこで?」
|; ^o^ |「あう」
(;*゚ー゚)「ツンさん」
矢継ぎ早の質問に、ブームが閉口する。
彼は「はい」「いいえ」で答えられる質問ならすぐに対応できるようだが、
言葉で答えねばならない問いには、臨機応変にとはいかないのだろう。
しぃに窘められ、ツンは咳払いをした。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「──ごめんなさい。オサム様を見る前よね? 夜?」
|; ^o^ |" コクン
ξ;゚⊿゚)ξ「どこで……えっと、何て訊いたらいいかしら……」
|; ^o^ |「き きたない……」
ブームも焦れているのか、必死に単語を絞り出そうとしている。
両手を、山を作る形に動かした。
|; ^o^ |「きたない……こわい こわい…… きたない……」
|; ^o^ |「かば ぶらぶら ……お おちた」
ξ;゚ -゚)ξ「……」
ツンは、検察席の近くに立ったまま成り行きを見守っているギコへ、何度か視線をやった。
──彼女は既に正解を知ったのだ。何をするべきかも。
だが、どうやって、それとなく「そこ」へ導けばいいのか悩んでいる。
手伝えないだろうかと内藤は思案したが、やはり彼にも手段は浮かばない。
-
爪'ー`)「汚くて怖い?」
ζ(゚、゚;ζ「『かば』はランドセルですよね? ランドセルがぶらぶら?」
(;‘∀‘)「……『ぶらぶら』は、巾着のことでしょうか」
ああ、と皆が納得したように頷く。
ランドセル、ぶらぶら、たしかにこの2つの単語を繋ぎ得るのはそれだ。
けれど、ブームは首を傾げた。
肯定でも否定でもない。
(*゚ー゚)「何かは分からないが、何かがランドセルからぶら下がっていたのは確かなんだね」
|; ^o^ |" コクン
( ^ω^)「それが──『おちた』ってのは、そのまま『落ちた』って意味でいいんでしょうか」
ζ(゚、゚;ζ「巾着って何のことです?」
(゚A゚* )「照屋刑事は外行ってたから話聞いとらんね。
被害者のランドセルにな、ちいちゃい巾着が付いてたんやと。
でも拝殿で見付かったときには無くなってたらしいわ」
その巾着がランドセルから落ちる瞬間を、ブームは目撃した。
「きたない」「こわい」に関わる場所で。
-
【+ 】ゞ゚)「『きたない』というのは……」
ブームがまたんきを見たのは、祖父母宅から神社へ向かう道中でのことだろう。
もしまたんきが歩いていくのなら道筋は一つに絞られる。
昨日の昼にツンが言っていた。
その道を思い浮かべれば──「きたない」の意味は、何となく分かる。
ブームが、またも両手を山なりに動かす。
この動きに目を止め、ツンが口を開いた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ゴミ山……」
確信めいた響き。
やはり彼女は一足先に、ブームの記憶から情報を得ていた。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ゴミ山のところで、またんき君のランドセルから──ぶら下がってた物が落ちたのね」
|; ^o^ |" コクン
|; ^o^ |「……こわい こわい こわいやつ……」
ブームの体が震える。
しぃにしがみつき、もう、何も言わなくなってしまった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ゴミ山に……『こわいやつ』がいるの?」
少年の小さな頭が動く。
上から下へ。
頷き。肯定。
いち早く反応したのは2人の検事で、また、彼らの判断は正しかった。
(;*゚ー゚)「──ギコ!」
(;^ν^)「照屋」
(;,゚Д゚)「はい!」ζ(゚、゚;ζ
ギコとデレが体育館を飛び出す。
ツンは何かを言いかけたが、既に声が届かないと気付いて口を閉じた。
-
ひとまずは2人からの連絡待ち。
幸いにして、ゴミ山と学校の間は大した距離ではない。
ξ゚⊿゚)ξ「……ランドセルに付いてた巾着の話は、今日の公判で初めて話題に出たわ。
ついさっき来たブーム君が知っているということは、
この子が実際に『それ』を見た証明になるわよね」
(;^ν^)「うるせえな。……分かってるよ、そんなこと」
ニュッが項垂れる。
ふん、と鼻を鳴らしてツンは席へと座った。
爪'ー`)「『こわいやつ』が、事件に関係しているのだろうか」
ξ゚⊿゚)ξ「可能性は大いにあるかと。
──関わりがないとしても、またんき君に関する目撃証言は得られるでしょう」
-
∬;´_ゝ`)「……ねえ」
不意に、後ろの姉者がツンの腕をつついた。
小声で呼び掛ける。
ξ゚⊿゚)ξ「なあに」
∬;´_ゝ`)「何か、足りないものがあるの?」
唐突といえばあまりに唐突な質問。
ツンはきょとんとし、小首を傾げた。
ξ゚⊿゚)ξ「どうして」
∬;´_ゝ`)「だって──困ってるもの。ツンちゃん……じゃなくて、ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「いちいち直すの鬱陶しいから好きなように呼びなさいよ。
……わたし困った顔してる?」
( ^ω^)「さあ」
内藤は他人の表情には敏感である。
顔色を窺うという意味で、普段から気にしているからだ。
そんな内藤にも、今のツンは──平時とさして変わらないように見える。
-
∬;´_ゝ`)「……」
ξ゚ -゚)ξ「……」
ツンの椅子の背もたれをがっちり掴み、姉者は必死にツンを見つめている。
やはり怯えているのだけれど、それを抑え込むように。
∬;´_ゝ`)「……ねえ、私どうしたらいい?」
2人は、真剣な目を互いに向けた。
やがて、ツンが溜め息をつく。
後ろへ身を乗り出させ、姉者の耳元で何か言った。
そうして2人は更に声を小さくさせ、内緒話でもするように囁き合うものだから
内藤にはさっぱり聞こえない。
しばらくして話を終えたか、元の姿勢へ戻った。
それ以降、姉者は何も言わなかった。
-
裁判官3人はひそひそと話し合い、ニュッは苛々しながら携帯電話を睨み、
しぃはブームを抱えて所在なさげに時計を見上げ、オサムはくるうと手を重ねて前を向き、
すぐ隣のガナーは沈痛な面持ちで目をつぶっている。
ツン達のそぶりに気付いたのは、内藤やジョルジュ以外で言えばせいぜい傍聴席の一部の者だろう。
だとしても姉者とジョルジュは「助手」という体でこの場にいるので、
審理に関する話し合いとしか思わない筈だ。実際、そういったものには違いないし。
──それからだいぶ経って。
ニュッの携帯電話が鳴り、彼はすぐに電話に出た。
難しい顔で相手の声を聞き、最後に「ああ」とだけ言って通話を切る。
爪'ー`)「刑事は何て?」
( ^ν^)「……ゴミ山にいたおばけが2体、刑事を見るなり逃げ出したので
埴谷刑事と共に追っていると」
そうか──とフォックスが答えきるより早く。
内藤の背後で、姉者が立ち上がった。
パイプ椅子が、かしゃんと音を立てる。
-
∬;´_ゝ`)「……、──、……」
皆の注目を集めた彼女は、青ざめながら口を動かし、
しかし恐怖のためか声は発せないまま。
俯いたり頭を上げたりを繰り返して。
そして。
∬;´_ゝ`)「い──行ってきます!!」
なんとか絞り出した声で叫び、突如駆け出した。
そして検察席の後ろ、扉を押し開けて体育館の外へと。
_
(;゚∀゚)「──姉者先生!?」
少しズレた間で、ジョルジュもそれに続いた。
彼は考えがあったわけでもなく、驚きのままに動いたようだったが。
-
(;*゚ー゚)「な……何だ?」
川;゚ 々゚)「?」
▼・ェ・▼「どうしたんだ、ありゃあ」
2人が去った後、ほとんどの者がぽかんとしていた。
無理もない反応だ。内藤でさえ何が何やら。
それを取り直すためか、ツンが腰を上げた。
ξ゚⊿゚)ξ「……私の推理を聞いていただけますか」
*****
-
∬;´_ゝ`) ハァッ、ハァッ
_
(;゚∀゚)「姉者先生、大丈夫ですか?」
∬;´_ゝ`)「は、はい……」
ゴミ山の前で姉者は息を切らしていた。
ジョルジュが背を摩る。
雨は小降りにこそなってはいるが、体に触れる水や空気は、とても冷たい。
_
(;゚∀゚)「どうしたんです? 一体」
∬;´_ゝ`)「ツンちゃんが……」
_
(;゚∀゚)「弁護士さんが?」
はっとして、姉者は口を押さえた。
ξ゚⊿゚)ξ『……何も訊かないで。私が言ったって、誰にも話さないで』
先刻。ツンが囁いた最初の言葉が、こうだった。
-
おいついた!
支援
-
ξ゚⊿゚)ξ『ギコ達がすぐにゴミ山の「中」を調べてくれるならいいけど──
そうでなくなった場合、ゴミ山を調べに行ってほしいの。
……またんき君が、そこにいるかもしれない』
∬;´_ゝ`)『ゴミ山の中に?』
ξ゚⊿゚)ξ『多分……。生きてるかは分からないし、
……死んでいるとしても、どんな風に痕跡が残ってるかは、はっきりしないけど』
どちらにせよ、それらをすぐに見付ける必要がある──とツンは言っていた。
本来は警察に任せるべきところだが、普通の警察ならともかく、「おばけ課」の管轄となると
迅速な対応が望めない、とも。人手が足りない上に、今回の事件でごたごたしてしまっているらしいのだ。
積み重なったガラクタを見上げる。
近くにある外灯の切れかけの明かりに淡く照らされていて、不気味さが増している。
何年にもわたって溜まったゴミ。
錆と、油の饐えたような臭い。
人ひとり隠しても、そう簡単に気付かれないのではないか、と。
ふとそんなことを考え、姉者の背筋が凍った。
-
∬;´_ゝ`)「……私、またんき君を探します」
_
(;゚∀゚)「え──ええっ!? こ、この中からですか!?」
もしも。
またんきという少年が、ここにいたら。
行方不明になって一ヶ月。
こんなところに食べ物などない。
毎日のように雪が降り、雨が降り。
生きている可能性など、万に一つも。
思考を振り払おうと、姉者は近くにあったゴミを掴み、引っ張った。
それが支えとなっている箇所があったのか、山の一部が崩れる。
けたたましい音が鳴り、姉者の心臓が強く刺激された。
-
へたり込む。
足が震える。
ギコ達はおばけを追っていったというが、もしも他にも霊が隠れていたとしたら。
ゴミの間から、ぬっと顔を覗かせたら。
とつぜん足でも掴まれたら。
全身が冷え渡る。
雨のせいか、恐怖のせいか。分からない。
_
(;゚∀゚)「姉者先生、無茶ですよ」
ジョルジュが姉者を抱え起こす。
やはり自分には無理だろうか。
そんな考えが湧き、すぐに頭を振った。
∬; _ゝ )「……こわくない……」
ジョルジュから離れ、再度、ゴミへ手を伸ばす。
壊れたオモチャが地面に落ち、それにつられて、また山の一角が崩れた。
肩を跳ねさせる。踵を返したくなった。
-
∬; _ゝ )「こわくない……こわくない……」
震える足を叱咤する。
一番怖いのは誰だ。
ξ;⊿;)ξ
幼いツンの、泣きじゃくる姿が脳裏を過ぎる。
彼女はいつだって怯えていた。
自分にしか見えないもののせいで泣かされていた。
姉者なんて、見えもしないものを怖がって──逃げて。
本当に助けを必要としていたのは、いつだって、姉者ではない別の誰かだったのに。
もしもまたんきがここにいるなら。
彼はどれだけ恐ろしい思いを。
-
∬;´_ゝ`)「……こわくない!」
涙目で山を睨んだ。
崩れた際に出来た隙間へ手を突っ込み、それらしい手応えがなければ邪魔なゴミを放り投げる。
力ならある方だ。母親譲り。
折れた傘の骨が、手の甲の皮膚を裂く。痛みに顔が歪んだ。
せっかく振り絞った勇気だ。こんなもので怯んだら、また怖じ気づいてしまう。
構わず、力任せに腕を押し込む。
──後ろから伸びた大きな手が、隙間を広げた。
∬;´_ゝ`)「あ、」
_
(;゚∀゚)「……そのやり方じゃ、中にまたんき君がいたら潰されちゃいますって」
ジョルジュが苦笑する。
彼は一旦姉者を山から離し、その場にしゃがんだ。
-
_
( ゚∀゚)「上の方からどかしましょう。
俺の上に乗っかっていいですから」
乗っかると言ったって──どうしたらいいのだろう。
姉者は迷い、躊躇い、肩車の要領で後ろからジョルジュの首を跨いだ。
ジョルジュが立ち上がる。視点が一気に高くなった。
∬;´_ゝ`)「す、すいません、すいません」
_
( ゚∀゚)「わりとしあわせなのでだいじょうぶです」
何かしらを堪えるような声色だったが、姉者は気付かず、
「だいじょうぶです」のところだけ受け取った。
てっぺんを覆っている雪を払い落とす。
すると、大きなボードがそこにあった。
上手いバランスで支えられているようで、気を付ければ乗ることが出来そうだった。
逡巡し、靴を脱ぐ。
-
またんき……辛いな……
-
∬;´_ゝ`)「ごめんなさいジョルジュ先生、ちょっと踏ん張ってください!」
_
( ゚∀゚)「はいだいじょうぶですもうすきにしてください」
肩を踏むようにして慎重に立ち上がり、ボードの上に乗っかった。
僅かに揺れて血の気が引いたが、なんとかやり過ごす。
_
(;゚∀゚)「あっ、姉者先生!? それちょっと危なくないですか!?」
ジョルジュが下から慌てた声をかけてくる。
姉者の返事は片手を挙げただけ。
∬;´_ゝ`)「──またんき君!」
叫ぶ。
会ったこともない少年の名を。
∬;´_ゝ`)「またんき君、いたら返事して!」
いるかいないかも分からないのに、こうして声を張り上げる己の姿は
きっと滑稽なのだろうと思う。
それが何だと開き直り、何度も名前を呼んだ。
すると──
-
支援
姉者頑張れ
-
姉者良い先生や
-
∬;´_ゝ`)「!」
わざわざ手を伸ばす必要もない距離から、物音がした。
すぐ目の前。
こつこつ、硬いものを叩くような。
それに合わせて、ゴミの一部が揺れている。
目を凝らせば、そのすぐ傍にベニヤ板らしきものが重なっている場所があって、
どうやらそこから音がしているようだった。
深く考えずに板を持ち上げる。
そこに、不自然な空間があった。
穴と言うべきか。
ぽっかりと、人ひとり程度を入れられるようなスペースが作られているのだ。
-
俺の担任達もこんな先生だったら…
-
そして。
∬;´_ゝ`)「──……」
(;∀ ;)
その穴の底に座り込み、涙を流す少年がいた。
新聞の記事で見たことのある顔立ち。
ひどく色が薄い。
背後のガラクタが透けて見えるほど。
それだけで、もう、彼がどんな存在であるかは明白だった。
-
姉者ああああ(´;ω;`)
-
──本当は。
教師として。人として。
一も二もなく、彼へ手を差し出し、抱き締めてやるのが「正しい」ことなのだろう。
それでも姉者は、やはり怖がりだった。
少年を見た瞬間に体が震えた。
けれど、今ここで自分のするべきことが、逃げることでないのも勿論わかっていた。
∬;´_ゝ`)「またんき君……!」
たった一秒間の躊躇いを捨て去り、手を伸ばす。
少年がその手を掴む。
温度も、重みも無い。
姉者が引っ張れば、何の抵抗もなく少年は浮かび上がった。
-
うわぁ…後味悪いな…
-
あああああまたんきいいいい!!
-
ボードの上に座り込んだまま、少年を抱き締める。
やっぱり怖い。怖いけれど、怖いだけでもなくて。
ずっと苦しんでいたであろう彼が少しでも安心できるよう、
姉者は、しばらくそうしていた。
自分はそうするべきなのだろうと自覚していた。
*****
-
あああ……そんな……
-
またんきぃ……
-
ξ゚⊿゚)ξ「──昔……20年前、ヴィップ自然公園でおばけを見ました。
目玉が無くて、穴があいただけみたいな顔で、手足の形がおかしくて……」
ツンの声だけが法廷に響く。
20年前、姉者の前にいたというおばけ。
その特徴は、内藤にも覚えがあった。
ξ゚⊿゚)ξ「昨日、そいつをゴミ山でも見かけました。
そいつは7年前に、ここにいる内藤君をゴミ山で襲ったことがありました」
(*゚ー゚)「都村トソンの裁判で出た話ですか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
この場にいるほとんどの者には伝わらないやり取りだった。
都村トソンの裁判とは、とフォックスが訊ね、しぃが手短に答える。
その間に、内藤は小声で問いかけた。
-
あぁ・・・う・・・
-
( ^ω^)「ツンさん、こっちでは見たことなかったんですかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの道は普段使わないし──トソンさんの『あれ』を見たときも
内藤君以外の情報はぼんやりしてたから……」
「あれ」。トソンの記憶のことだろう。
納得して頷く。
しぃの方の回答も終わったようで、フォックスがツンへ続きを促した。
ξ゚⊿゚)ξ「……元々は、カンオケ神社の裏の林に住んでたおばけだったんでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「そこで、あいつは──『あいつら』かしら。
あいつらは、子供を食べてたんだと思います」
(;^ν^)「『口減らし』の……」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーム君はそれを知っていたんじゃないかしら。
だから『こわいやつ』と表現した」
|; ^o^ |" コクコク
(;*゚ー゚)「……まさか」
ブームは尚も震えている。
尋常でない怯えようだ。
しぃと同様に、内藤も「まさか」という念を抱いた。
-
(;*゚ー゚)「君も──喰われたのか」
ブームは答えなかった。
しぃの服をぎゅうと握り締め、呻きながら縋りつく。
▼・ェ・▼「その子供、普通の霊とも違うようだが」
(;*゚ー゚)「きっと……昔の、『口減らし』の方の被害者なんでしょう。
長い間うろついている内に魂が変化して──
ああ、そうか、だから君のことを調べても素性が分からなかったのか……」
今時の服装だから分からなかったとしぃが言う。
服装なんて、あまり当てにはならない。
アサピーのような一風変わった格好の者もいるし、くるうだって日によってワンピースが違う。
ξ゚⊿゚)ξ「……口減らしの件について、元となった話がありましたね。
母親が、ゴミと一緒に子供を捨て……翌日、子供だけがいなくなっていたっていう」
-
ξ゚⊿゚)ξ「きっと、あれは事実だったんだわ。
──あいつらは、たまたま林の中で捨てられている子供を見付け、それを食べ……」
ξ゚⊿゚)ξ「変なクセがついちゃったんでしょうね。
子供を食べるのを気に入ってしまった」
(;^ν^)「……しかも噂が広まったせいで、
林の中に子供を捨てる親が増えた」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴミと一緒に、ね」
ブームがついに泣き出していた。
声を殺し、呻いて、しぃへ回した腕に力を込める。
それを宥めていたしぃは、ふと気付いたように瞠目した。
(;*゚−゚)「……! そうか、ゴミか……!」
ツンが頷く。
くるうや、一部の傍聴人は首を傾げた。
-
マモレナカッタ…
-
ξ゚⊿゚)ξ「奴らは、『ゴミ』と『子供』がセットになったときに
スイッチが入るようになった」
ξ゚⊿゚)ξ「たとえば13年前、女児が行方不明になったのは5月。
桜が散り、ゴールデンウィークも終わった頃」
( ^ω^)「──花見客や、連休中の利用者が散らかしたゴミがあったんでしょうかお」
ξ゚⊿゚)ξ「多分ね」
【+ 】ゞ゚)「弁護人が20年前に見掛けたときも春だったのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ、夏でした。でも、あの時期は公園の広場で花火をする人が増えます。
マナーの悪い人は燃えカスなんかをそのままにしていくので……」
姉者がこの場にいなくて良かった。
おばけに喰われかけていたなどと知ったら、彼女の心臓が止まってしまう。
-
じゃあゴミ山に住んでたら無敵じゃん……
-
>>633
地縛霊的なものでは?
-
ξ゚⊿゚)ξ「……昔は黙ってても勝手に子供が捨てられてくるから良かったんでしょうが、
現代になり、『口減らし』は行われなくなった。」
ξ゚⊿゚)ξ「奴らの住み処の近くに公園が出来、ゴミや子供が目の前にある機会が増えても、
ひっそりと事を行うことは却って難しくなった」
ξ゚⊿゚)ξ「だから──ゴミ山に引っ越したんだわ」
爪;ー;)「……その者達にとって、とにかくゴミは『飯』と密接な関わりがあったと」
(゚A゚* )「そんで、1人でゴミ山に近付いた子供が襲われたんやな」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、7年前の内藤君や、8年前に裏山で遊んでいた子供のように。
裏山とゴミ山は近い場所にあるから、
多分、裏山を抜け、あの場所に近付いてしまったんでしょう」
筋は通る。
ささやかな疑問があって、内藤は首を捻った。
-
( ^ω^)「でも、あのおばけから悪い気配はしなかったって、照屋刑事が言ってましたお」
ξ゚⊿゚)ξ「彼らには悪いことしてる自覚がないのよ。
向こうが来るから食べてるだけ──って感じで、
悪事のつもりはないんだわ」
ξ゚ -゚)ξ「逃げたってことは、法に触れる自覚はあったようだけどね」
(゚A゚* )「たち悪いんよね、そういうの……。
自分は間違ったことしてないんやから罪に問われるんはおかしいやろー、てね、
おばけ法を真っ向から否定してくんのよね……」
分かる、とフォックスとビーグルがしみじみ頷いている。
そこへ、しぃが大きくくしゃみをした。
よく見ると体も細かく震えている。
すっかり忘れていたが、雨に濡れっぱなしだった。そりゃあ体も冷える。
-
▼・ェ・▼「……すぐ隣の部屋に、神社の職員が待機している。
暖房もあるし、タオルか何かあるかもしれん」
ビーグルが呟く。
渡辺が証言を終えた後に向かった部屋と同じだろう。
爪;ー;)「うん、そこで休んでいるといい。
ご苦労だった」
(*゚ー゚)「お言葉に甘えさせていただきます」
一礼し、ブームを抱えたしぃが入口へと歩いていく。
彼女が扉を押しやると同時、ツンが呼び止めた。
ξ゚⊿゚)ξ「しぃ検事、ブーム君、──来てくれてありがとう」
しぃは立ち止まって、思考するように顔を僅かに持ち上げた。
けれど、彼女からの返事はくしゃみだけで。
振り返ることすらなく、体育館を出ていった。
-
静寂。
耐えきれないとばかりに、内藤の隣から消え入りそうな声がした。
(;‘∀‘)「……またんきは……」
ガナーの顔は青白かった。
今にも泣きそうな表情を浮かべ、久しぶりに出した声はか細い。
(;‘∀‘)「またんきは……ゴミ山で巾着を落として……それを拾いに行ったんですか……」
ξ゚⊿゚)ξ「恐らく……」
(;‘∀‘)「だとしたら──またんきは。あの子は、どうなって……」
誰も答えられなかった。
事実がまだ証明されきっていないこともそうだが、
何より、ほぼ確定しているであろう「それ」は、彼女に聞かせるにはあまりに辛すぎる。
-
その辛い役目をツンが引き受けようとした。
だが、それが果たされることはなく。
ξ゚ -゚)ξ「またんき君は多分──」
∬;´_ゝ`)「──つ、連れてきました!!」
軋む音と共に、扉が開かれた。今日は審理中の出入りが激しい。
全身ずぶ濡れの姉者とジョルジュ。姉者が少年を抱えている。
まるで、ブームを連れてきたしぃとギコのような登場だった。
ガナーが椅子を倒す勢いで立ち上がる。
(;‘∀‘)「またんき……!」
(;∀ ;)「あ──ば、ばあちゃ……っ」
涙を流す少年の顔は、写真で見るものより血色が悪い。
けれど、斉藤またんきであることは間違いなかった。
ガナーの表情は歓喜に溢れ──駆け寄ってきた姉者がまたんきを渡した瞬間、
絶望へと塗り替えられた。
-
ああ……
-
うわぁ……
-
(;‘∀‘)「ああ……どうして! またんき……嫌だ……またんき……」
ガナーが震える。またんきを落としてしまいそうで、
取り急ぎ、内藤が彼を抱え直した。
温度がない。雨のなか姉者に抱えられていたのに、彼からは少しの水気も感じない。
何より、赤ん坊ほどの重みもなかった。
【+ 】ゞ゚)「……どこから見付けてきたんだ」
∬;´_ゝ`)「えっと……」
_
(;゚∀゚)「ゴミ山の中に隠されてました!」
爪;ー;)「ほう。──しかし、何故あんなに突然行ったんだ?」
∬;´_ゝ`)「え、あ、あのう、」
( ^ω^)「姉者さん、小学校の先生ですから、『もしかしたらあそこにいるかも』って思ったら
居ても立ってもいられなかったのかもしれませんお」
恐らくはツンの指示だろう。
問いかけに困っているところを見ると、口止めもされていたのかもしれない。
なので内藤から助け船を出した。
ひとまずフォックスも納得──したかは分からないが、それ以上は何も訊かなかった。
-
ああ……
-
ガナーへまたんきを返す。
2人は泣きながら抱き締め合い、やがて、またんきの方が先に落ち着いてきた。
検察席のシラネーヨは、息子であるまたんきから目を逸らしている。
(・∀ ・)「……ここは」
涙を拭い、またんきは辺りを見渡した。
状況をよく分かっていないようだ。
ツンはいくらか躊躇ってから、またんきを一旦ガナーの膝から下ろさせた。
裁判について軽く説明する。
ある程度の事情を理解した彼は、オサムを不思議そうに見上げた。
(・∀ ・)「オサム様……?」
▼・ェ・▼「見覚えはあるか?」
(・∀ ・)「ううん」
くるうの頬が、ぱっと赤くなる。
しかし喜んでいい雰囲気でないことは把握しているようで、オサムの手を握るだけに留めていた。
-
ξ゚⊿゚)ξ「どうしてお正月に、カンオケ神社に行ったの?」
(・∀ ・)「……オサム様は、親に苛められてた子供を助けたんだって……祖母ちゃんから聞いたから」
そこで初めて、またんきはシラネーヨの存在に気付いた。
目を見開き、一歩後退する。
ξ゚⊿゚)ξ「あなたも、助けてほしかったのね」
(;´ー`)「──何言ってんだヨ! それじゃあ……まるで俺が……」
シラネーヨはようやく声を発した。
内容は変わらず、自分の潔白を主張せんとするものだ。
ξ゚⊿゚)ξ「まるで?」
(;´ー`)「……っ、そいつに、何かしたみてえじゃネーかヨ!」
(゚A゚* )「そう言うからには、何もしてへんのやね?」
シラネーヨが詰まる。
くるうの方を気にしていた。
またんきのことを「そいつ」と粗暴に呼んだ時点で、内藤はもう疑いの余地はないだろうと思うのだけれど。
-
シラネーヨは某大作のせいでクズのイメージが強かったが、やはり覆らず
-
(;´ー`)「……だ、大体! 俺ばっかり悪者みてえに言ってるけどヨ!
そいつが死んだのは、結局、向こうのせいだろうが!」
「向こう」──シラネーヨはガナーを指差した。
泣き崩れていたガナーが息を吸い込み、ひゅう、と喉から風が吹くような音が聞こえた。
(;´ー`)「婆さんが巾着なんてもん作るから、それ拾うためにゴミ山に行ったんじゃネーか!
それで死んだんなら──悪いのは婆さんだろ!
そもそも神社の話なんかするから、余計な興味持って夜中に家出なんざしたわけだしヨ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「なっ……!」
_
(;゚∀゚)「はあ!? 何だそれ、責任転嫁じゃねえか!」
-
あるあ…ネーヨ
-
デミタスとは違うタイプのクズ
-
(#´ー`)「俺が何したってんだ!!
1人で家出たのはあいつだし、あいつ殺したのも──神様だかおばけだかシラネーが、
俺は関係ねえだろうが!!」
▼・ェ・▼「……」
爪;ー;)「斉藤証人!」
ビーグルが口を動かした拍子に、牙が覗いた。
フォックスは咎めるように叫び、のーは頭を押さえている。
オサムは右手を持ち上げ、木槌がないのに気付いて下ろした。癖になっているのだろうか。
嫌な空気だなと思った。
何人も傷付けるような発言が響き渡る度、いびつに引き攣るようで。
姉者がガナーの肩を支えるように持つ。
内藤も何か言ってやりたかった。けれど相応しいものが思いつかない。
(#´ー`)「俺は、──何もしてネーヨ!!」
くるうは首を振るが──シラネーヨの怒声に怯んでしまっているのか、
嘘を指摘するための言葉が出ない様子である。
指摘する必要もなさそうだけど。
-
わかりやすいクズ
-
木槌が振り上げられる。
しかし、直後に落とされたのは硬質な音ではなく──
少年の、叫びだった。
(#・∀ ・)「俺のランドセル壊したくせに!!」
大声の余韻は、存外あっさりと消える。
けれど空気は、シラネーヨの怒気を弱まらせていた。
ランドセル──内藤は、先日の公判を思い出す。
前に使っていたランドセルが壊れたから、新しく買ったものを大事にしていた、という話。
「壊れた」のではなく、正しくは「壊された」ということか。
-
(#・∀ ・)「俺のこと殴ったくせに!
俺のこと馬鹿にしたくせに!!」
(;´ー`)「っ……」
シラネーヨは目を白黒させている。
彼による糾弾が、あまりに予想外だったのだろう。
またんきが一度俯く。
顔を上げたとき、彼の瞳には涙が張っていた。
(#;∀ ;)「……お、俺のこと、いらないって……言ったくせに……」
(;´ー`)「てめえ! それ以上──」
-
(#;∀ ;)「母ちゃんに子供が出来たから! その子供が産まれたら、
俺なんか捨ててやるって、あいつが、言、言った……」
(;^ν^)「──もういい」
腕を組み項垂れていたニュッが、低く唸るような声を出した。
(;^ν^)「分かったから。……そんな死にそうな声で喋らなくていい」
またんきが唇を噛み締める。
涙はますます激しくなって。
声を張り上げ、少年は泣いた。
ガナーがきつく抱き締める。
雷が鳴った。
その音はずっと遠くて、ふと、雨も遠ざかっているのに気付いた。
.
-
#####
( ´ー`)『みんな嬉しそうだなあ』
居間でシラネーヨと2人きりになった。
またんきの前でしか見せない下卑た笑みを浮かべたシラネーヨは、
わざわざ距離を詰め、低めた声で囁きかけてきた。
( ´ー`)『新しい子供のことばっかりだな、みんなの話題。
すげえ楽しみなんだろうなあ……』
(・∀ ・)『……』
( ´ー`)『お前なんか、もういらネーのかもヨ。可哀想だなあ。
子供産まれたら、おまえ捨てちまおうか。
俺の「家族」じゃネーもんな、お前……』
気にしないふりをしたかった。
けれども、泣くのを堪えるので精一杯だった。
シラネーヨは声を抑えて笑い、煙草をくわえると
ベランダへ向かうためか、居間を出て2階に上がった。
-
(ぅ∀ ;)
滲んだ涙を拭う。止まらない。
またんきはコートとマフラーを身につけた。
ランドセルを背負う。
──オサム様。
苛められる子供を助けてくれる神様。
母も祖母も祖父も、シラネーヨの本性を知らない。
誰かに話したら殺す、とシラネーヨに脅されているので、誰にも言えなかった。
まさか本当に殺すわけがないだろうと考えつつも、もしかしたら、という気持ちが働くのだ。
音を立てないように気を遣いながら、玄関から外へ出る。
外の空気は痛いくらいに冷たい。
正月の、どこかのんびりした気配が自分の心境と食い違っていて、
世間からも除け者にされた気がしてひどく悲しかった。
-
過去数年、正月にこの町を訪れる度にカンオケ神社へお参りに行っていたので
道順は知っていた。
ガラクタの山の前を過ぎる。
飛び出していた棒切れにランドセルのストラップ部分が引っ掛かり、些か乱暴に外した。
(;∀ ;)(……着いた)
神社に到着する。
職員などは見当たらない。
左手、小さな建物に明かりがついている。
神社の職員が使っているらしい。
見付かったら帰らされてしまう。
またんきは腰を屈め、ゆっくり拝殿に近付いた。
ここに神様がいるのだろう、とまたんきはぼんやり考えていた。
奥にある本殿の存在を知らない彼にとっては、神様がいるとしたらここしかないという認識だったのだ。
-
拝殿の中は暗かった。
闇に目が慣れても、ほとんど物が無かった。
(ぅ∀ ;)(……オサム様、来るかな……)
もしオサム様が来てくれたら、少しだけ匿ってもらおう。
シラネーヨがいる家にはいたくないし──母のお腹を見ると、
まだ会ってもいない弟か妹に嫉妬してしまって、辛い。
。
ほんの少し、ほんの少しの間だけ、別の世界へ行きたい。
大丈夫。昔の新聞によれば、帰りたいと言えばオサム様はすぐに帰してくれる。
ほんの少しの間だけ。
オサム様が来ないなら来ないで、別にいい。
その場合は一晩だけここに身を隠して、母や祖父母がどんな反応をするのか確かめたい。
心配してくれたらいい。
そしたら、シラネーヨの、「またんきなんかいらない」という言葉を否定できる。
-
こっちも辛い…
-
(・∀ ・)『……あ……』
拝殿の隅に、お菓子のパッケージを見付けた。
ぐう、と腹が鳴る。
シラネーヨがいると食欲が湧かなくて、それと母に心配されたい──気を引きたいがため、
あまりご飯を食べていなかった。
散々迷って、またんきはお菓子の袋に手を出した。
ごめんなさい、と誰にでもなく謝る。強いて言うならオサム様に。
ビスケット菓子を一つ食べる。
美味い。
(・∀ ・)(……ちょっと分けてください……)
今度ははっきりオサム様に向けて言って、お菓子をいくつか取ると
後で食べるときのために、ひとまずランドセルにしまった。
(・∀ ・)(──あれ?)
ランドセルを見下ろし、違和感に首を傾げる。
何かが足りない。何かが。
考え、思い至った。
祖母からもらった巾着がない。
-
うわあああ……
-
(;・∀ ・)(あ……どうしよ……)
落としてしまったようだ。
祖母に対して申し訳ない気持ちも勿論あったが、それより、
このことを祖母に知られてしまったらどうしよう、という不安の方が大きかった。
せっかくあげた物を失くすなんて──と思われたら。
可愛くない、いらない子だと思われたら。
嫌だ。
どこで落としたのだろう。
ただ歩いているだけで落ちてしまうほど、緩い結び方はしなかった筈だ。
だとすると──
(;・∀ ・)(あそこだ!)
ゴミ山。
棒切れを振りほどくときに外れてしまったのだ。
すぐ戻るつもりだったので、ランドセルを置いたままにして拝殿を出た。
-
急ぎ足でゴミ山へ戻る。
足元へ目を向けるが、見当たらない。
──かちゃ、と、金属の擦れる音がした。
顔を上げる。
またんきの頭より高い位置に、小さな巾着が置かれていた。
何故そんな場所に、という疑問はすぐには浮かばなかった。
手を伸ばす。
その腕を、歪な形の手が掴んだ。
(・∀ ・)『え……』
( ∵)" ( ∴)"
ガラクタの間から、人──に似た何かが這い出してくる。
-
(・∀ ・)『あ』
引っ張られる。
持ち上げられる。
空洞に落とされる。
そいつらが、またんきにのし掛かってきた。
──久しぶりだ。久しぶりの子供だ。
──まずは一月かけて体を喰って、魂は二月だ。
──じっくり味わおう。
声を出しているわけでもないのに、化け物の会話が聞こえる。
-
ああ。
こんなつもりじゃなかったのに。
少しの間だけ、他所へ行きたいだけだったのに。
どうしてこうなるんだろう。
やっぱり自分は、いらない子なのかな。
オサム様にも、いらないって言われたのかな。
化け物の顔が自身の右手に近付くのを眺めながら、またんきはそんなことを考えていた。
#####
-
ツンもこれ味わったのか……
-
またんきいい子なだけにこの展開はつらい…
魂が無事だったのが救いだわ
-
──ニュッの手元から、着信音が鳴り響いた。
この法廷で彼がそれを操作するのは既に3度目。
どことなく虚ろな表情で電話をとる。
彼は一言ぽつりと答え、携帯電話を置いた。
▼・ェ・▼「どうなった」
( ^ν^)「捕まえて──今、埴谷刑事と一緒にここへ向かっていると」
分かった、とフォックスが頷く。
彼は静かに、オサムへ体ごと向き直った。
爪;ー;)「……これから先の諸々は、オサムの仕事だろう」
(゚A゚* )「せやね」
▼・ェ・▼「俺らはこれのために来ただけだからな」
ξ゚⊿゚)ξ「──ということは」
爪;ー;)「ああ」
タオルはもう使い物にならない。
着物の袖に涙を吸わせ、フォックスは木槌を振り上げた。
爪'ー`)「判決を言い渡そう」
-
かあん、と響く音は、高く強く。
爪'ー`)「──被告人を、無罪とする」
*****
-
よかったぁ
-
雨は止んでいた。
傍聴人が消え、証人も、検察官も、刑事も裁判官も被告人もいなくなり、
いやに広く感じる体育館の中。
内藤とツンだけが、弁護人席に残っていた。
ξ゚З゚)ξ「早く帰りたいわ」
( ^ω^)「帰ったらいいじゃないですかお。
僕は姉者さん達の服が乾くまで待ってるだけですし」
姉者やジョルジュ、戻ってきたギコとデレは、しぃのように別室で暖まり服を乾かしている。
どうやらフォックスのためにタオルを用意していた職員が何人かいたらしいので
それを使わせてもらっているとか。
裁判官達とオサム、くるうも同様の部屋で後処理中。
ニュッは分からない。ふらふらと法廷を出ていったけれど。
-
ニュッさんのゆくすえちょーっとだけ気になる
-
( ^ω^)「……姉者さんに、またんき君を連れてくるように言ったんですかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ん? ……うん。だって何かしたいって言うから」
( ^ω^)「またんき君があそこにいるって分かってたんですかお」
ξ゚⊿゚)ξ「確信してたわけじゃないけど。いるとしたら、あそこが一番隠しやすいだろうなって」
ブームと話しながら「追体験」で情報を探っていたとき。
こわいやつ、の話題で、ブームが奴らに喰われたときの記憶が見えたのだという。
ξ゚⊿゚)ξ「あいつらは、いっぺんに全部喰うわけじゃない。
まずは肉体を少しずつ時間をかけて食べていって、
それから更にゆっくり、魂も堪能する……」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーム君は魂を食べきる前に逃げ出せたみたいだけどね」
( ^ω^)「そりゃあ運が……良かった、わけでもないか」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね。……あの子、何十年も町をうろうろしてる間、服も何度か変えてたみたい。
あいつらに見付かりにくくするために……。
……やっぱり、どちらかと言えば頭の回る子なんだわ」
今後、奴らの裁判をするときに、また証人としてブームが呼ばれるだろうか。
あんなに怯えていたのだ。きっと思い出すのも辛いだろうに。
それが全て終わったときこそ、彼が安寧に身を委ねられるように祈るばかりだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ「で、ほら、内藤君が襲われたときって、あいつら以外のおばけもいたんでしょう?」
( ^ω^)「ああ、そういやそうでしたお」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかしたらそのとき限りだったのかもしれないけど、まあ、
今でも共犯者がいる可能性はあるわけでしょ」
( ^ω^)「ですね」
ξ゚⊿゚)ξ「だから──ギコが主犯の方を逮捕したとして、
すぐにこっちが手を打たないと……」
( ^ω^)「共犯者がいた場合、ギコさん達が主犯に気をとられている隙に
共犯者がまたんき君を完全に消してしまう恐れがあったと」
ξ゚ -゚)ξ「そう。だから、姉者には
ギコ達の帰りが遅かったり、ゴミ山を離れる状況になったりしたら
すぐにゴミ山に行ってまたんき君を探してちょうだいって頼んだの」
なるほど。
納得しかけ、あれ、と首を捻る。
-
ブームくん魂喰われて失語症になってしまったのか…?
-
( ^ω^)「もし現場に共犯者がいたら、姉者さん危なかったのでは」
ξ゚⊿゚)ξ「私がそこまで考え回らないとでも? ──もちろん保険もかけたわ」
( ^ω^)「どんな?」
ξ゚⊿゚)ξ「姉者に、こうも言っておいたの。
校舎を出たら、大きめの声でこう言いなさい、って」
──「アサピーさん、あなたにツンちゃんから依頼があります。
今から私がまたんき君を探しに行くので、それを手伝うように」。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「あいつが付いてりゃ、まあ最悪な事態にゃならないでしょ」
( ^ω^)「……アサピーさんが校舎の外にいる確証は」
ξ゚⊿゚)ξ「いないわけないわ。あいつのことだから、私が裁判に勝ったか負けたか
すぐに確認したがる筈だもの」
( ^ω^)「じゃあ、アサピーさんが素直に言うこと聞く確証は」
ξ゚ー゚)ξ「私の依頼なら聞くわ」
まあ聞くだろう。
彼はツンのことを大層お気に召しているので。
-
ξ゚∀゚)ξ「しかも結果的に善行をしたわけだからねえ。
これからしばらくは、あいつ恥ずかしくて私の前に現れないわ。
はあ快適快適!」
( ^ω^)「そうなんですかお?」
ξ゚∀゚)ξ「去年の呪詛罪裁判後の数日間は、私を見る度に顔真っ赤にして逃げてたもの。
N県裁判後もね」
( ^ω^)「か、顔を真っ赤に」
まったく想像がつかない。
とにかく「いい人」であるのを嫌う彼にとって、
「いいこと」はプライドを傷付けられる行いらしい。
いかにも可笑しそうに笑って、それから欠伸をすると、ツンは机に伏せた。
──きい、と軋む音が耳に入った。
内藤とツンが顔を上げる。
∬´_ゝ`)「ごめんねブーン君、待たせちゃって。帰りましょうか」
( ^ω^)「姉者さん」
-
策士ツンかわいいξ∩゚⊿゚)∩
-
_
( ゚∀゚)「家の前まで送りますよ姉者先生」
∬´_ゝ`)「ジョルジュ先生、遠回りになっちゃうでしょう」
_
( ゚∀゚)「いいんですいいんです、女性と子供を2人で歩かせるわけにもいきません」
すっかり頭も服も乾いた様子の姉者とジョルジュが入ってくる。姉者の手には包帯。
内藤が腰を上げ、それに合わせて立ち上がったツンは──
続けて入ってきた女性を見て、固まった。
从;'ー'从「……ツンちゃん」
おずおずと、渡辺が歩み寄ってくる。
ツンは黙っている。
距離をあけた位置に立ち止まった渡辺は、気まずそうにツンを見、目を逸らし、それから。
真っ直ぐ視線を合わせたかと思うと、頭を下げた。
-
从;'ー'从「ごめんなさい!」
ξ゚ -゚)ξ
从;'ー'从「私──ここであなたを見て、ずっと謝りたくて……
でも、今さら謝ったって許してもらえないだろうって恐くて、
どうしていいか分からなかったの」
从;'ー'从「ただ、別室で待ってる間、この裁判が終わったら二度と会うこともないかと思うと
絶対、謝らなきゃいけないって気持ちに……」
ごめんなさい──再度、渡辺は言う。
当時のツンがどんなに辛かっただろうかと。
自分はとても酷いことを言ってしまったのだと。
そう考えると苦しくて堪らない、と。
姉者とジョルジュは困惑している。
内藤は口を挟まず見守っている。
ツンは。
ξ゚ー゚)ξ
一瞬、ほんの一瞬だけ、晴れやかに笑った。
昨日の昼、公園のベンチで見た顔に似ていた。
すぐに真剣な──とはいっても瞳は優しい──表情を浮かべたが。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……たしかにあのときはすごく辛くて、
正直、今でも完全に許せるかと訊かれたら自信はないです。
だから──許すとも許せないとも言えないけど」
ξ゚⊿゚)ξ「昨日、内藤君に言われて、私どうして弁護士になったんだっけって考えて……。
思い出したから、いいんです」
从;'ー'从「え……」
ξ゚⊿゚)ξ「本当のことを言ってるのに信じてもらえない人の味方になりたかったんです、私。
だから……今こうしてるのは、渡辺先生のおかげだとも思うんです」
渡辺は反応に悩んでいる。
はっとして、ツンが、「遠回しに責めてるわけじゃないんですよ」と弁解した。
ξ;゚⊿゚)ξ「私、今の自分が一番いいんです。これで良かったって本当に思うんです!
だから──えっと──結果的に言えば──渡辺先生がああいう風に──」
ふ、と渡辺が吹き出す。
彼女の瞳にはまだ罪悪感が色濃く残っているけれど、蟠りは薄れたようだった。
-
从'ー'从「……ツンちゃんが、今、充実してるなら良かった。
ずっと気になってたの。真っ黒な格好して町中うろうろしてるって噂聞いてたから。
……色んな人を助けてるのね。本当に良かった」
ξ;゚⊿゚)ξ「ふぐうっ……!」
軽快な音楽が鳴り響いた。
渡辺が携帯電話を開く。
メールだろうか、画面をしばらく眺め、そのまま閉じた。
从'ー'从「夫が迎えに来たから……私、帰るわね。
ツンちゃん、これからも頑張って」
ξ゚⊿゚)ξ「──はい。渡辺先生も」
互いに深く礼をし、渡辺は体育館を後にした。
姉者が状況を探りながらツンに声をかける。
∬;´_ゝ`)「えっと……よく分からないけど、良かったわね」
_
( ゚∀゚)「仲直りはいいことだ。──仲直りってのとも違うだろうけど」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ、もやもやは解消されたかな」
内藤の方は少々照れ臭い。
公判中の「内藤君のおかげ」の意味が分かったため。
自分が何気なく発した一言が、相手には大きく影響していたなんて。
どうも恥ずかしい。そんなつもりで言ったのではないのに。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ていうか、疑問が一個あるんだけど。姉者に」
∬´_ゝ`)「? なあに?」
ξ゚⊿゚)ξ「結局あんた、どうして裁判に来たの?」
∬´_ゝ`)「どうしてって……」
既にツンに慣れてきたのだろうか。
先程までのおどおどする感じは薄れている。
姉者は小首を傾げ、当然のように答えた。
∬´_ゝ`)「言ったじゃない。
ツンちゃん、困った顔してたでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ
∬´_ゝ`)「一昨日も困った顔してたから……ずっと気になってたの。
だから私、ここに来たのよ。
何か出来ないかと思って……」
ξ゚⊿゚)ξ
そういえば流石家にて、ツンにタックルしていた。
あれも──彼女を気にかけて呼び止めたものだったのだろう。
姉者の答えに、ツンは固まっている。
-
( ^ω^)「ツンさん、割といつも通りだったと思いますけど」
∬´_ゝ`)「そうかしら……」
( ^ω^)「そうですお」
∬´_ゝ`)「私の考えすぎだったのかな」
_
(;゚∀゚)「うおっ!? 何だその顔!?」
ジョルジュがびくりと肩を跳ねさせ、叫んだ。
内藤と姉者が彼を見れば、彼の視線はツンへ向いていたので、それを辿ってツンを見る。
::ξ;*゚H゚)ξ::
本当に何だろうこの顔。
照れているんだか怒っているんだか。
とにかく真っ赤な顔で姉者を睨んでいる。
姉者が声をかけようとした瞬間、ツンの口が大きく開かれた。
-
ξ;*゚⊿゚)ξ「……あんたの! そういうところが昔から嫌いだったわ!!」
∬;´_ゝ`)「えっ」
ξ;*゚д゚)ξ「そうよ、いっつも、いっつもあんたなのよ!!
あんたが一番初めに気付くのよ!!」
ξ;*゚д゚)ξ「保育園のときも! 小学校も! 中学校も高校も!!
あんたが最初に私の異変に気付くんだわ!!」
ξ;*゚д゚)ξ「気付いたところで、あんたから声かけてくりゃ話にならないどころか騒ぎ大きくするし
ギコを呼んでくるくらいしか出来ないくせに!!
いっつもいっつもいっつも!!」
∬;´_ゝ`)「だ──だから、今回こそは……私ももう大人だし、
ギコ君に頼らずに何とかしようって思ったんだけど」
∬;´_ゝ`)「だって初対面のジョルジュ先生にだって頼ってたでしょ、調べてほしいことあるとか言って……
それが何だか悔しかったから、ますます、こう……なんていうか……」
ツンは唸りながらしゃがみ込んだ。
両腕で自分の顔を隠している。
姉者もしゃがみ、びくびくしながら問うた。
-
∬;´_ゝ`)「迷惑だった……?」
ξ;* ⊿ )ξ「……」
ξ;* ⊿ )ξ「……ありがとうってずっと言いたかった……」
──多分。
姉者は怯えながらも、ずっとツンを気にかけていたのだろう。
もしかしたら誰よりも。
姉者がふにゃふにゃ笑う。
ツンはその頬を思いきり引っ張った。
*****
-
【+ 】ゞ゚)「──ありがとう、助かった」
川*゚ 々゚)「ありがとうツン! ありがとう!」
ξ;゚⊿゚)ξ「わ」
体育館を出ると、ちょうど別室から出てきたオサムとくるうがツンに礼を言った。
特にくるうの喜びようは激しく、ツンに抱き着いて何度も何度もありがとうと繰り返している。
【+ 】ゞ゚)
( ^ω^)(くるうさんが早く離れないとツンさんが嫉妬で殺される)
そろそろ限界かというところで、くるうが離れた。
早速オサムがくるうを背後から抱き締める。
この神様は本当に、こういうところだけでも何とかなればいいのだが。まあ何ともならないだろう。
-
川*゚ 々゚)「ありがとう……うれしい、本当にうれしい」
ξ゚ー゚)ξ「……こっちこそ。くるうさんがいて助かったわ」
∬;´_ゝ`)「?」
_
(;゚∀゚)「?」
( ^ω^)「あ、ここにオサム様とくるうさんがいるんです」
法廷の結界から外れてしまったので、姉者とジョルジュには見えないようだ。
そういえば姉者は何故、外にいたのにまたんきの姿が見えたのだろう。
考えかけて、疑問に感じる必要すらなかったなと思い直す。
アサピーが見付けやすいようにしてくれたのだろう。根性悪く振る舞うくせに、よく気の回る。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……またんき君やブーム君たちはどうなります?」
【+ 】ゞ゚)「斉藤またんきは、証言を取ったから間もなく『上』に送る。
ブームの方は、次の裁判で証人として出ることに同意してくれたので
それが済んでから、斉藤またんきと同じようにするつもりだ」
【+ 】ゞ゚)「斉藤シラネーヨは人間の法で処理することになるかな。
あとは──大前ガナーは、斉藤またんきのおかげでいくらか持ち直している」
ひとまずは、大体収まったわけだ。
内藤とツンは安堵し、姉者達にもその旨を伝えた。彼らの反応も同じようなもの。
全てが丸く、とはいかない。それでも一段落はついた。
別室の方から、神社の職員であろう声がオサムを呼んだ。帰りますよ、と。
それに返事をし、オサムは改めてツンに向き直った。
【+ 】ゞ゚)「今度、何か礼をする」
ξ゚ー゚)ξ「いいですよ、そんな」
オサムとくるうがその場を後にする。
それを見送った内藤達は、昇降口へ向かい、外へ出た。
-
やはりアサピー有能
-
ζ(゚ー゚*ζ「あ」
( ^ν^)
ニュッとデレがいた。
目礼だけして去ろうとしたが、デレがツンを呼び止めた。
何だろう。気になるので内藤も残る。
姉者とジョルジュには、門のところで待つように頼んだ。
|@∀@)
( ^ω^)「お」
|≡ サッ
物陰から眼鏡をかけた白衣の男が覗いていて、内藤と目が合うなり逃げてしまった気がするが、
錯覚ということにしてやろう。
-
アサピーさんチーッスwww
-
ξ゚⊿゚)ξ「鵜束検事は今後どうなっちゃうかしら」
( ^ν^)「……またしばらくは、ちまちま小せえ事件の処理ばっか押しつけられるな」
ξ゚⊿゚)ξ「あーら可哀想。私に負けたばかりに。私に、また、負けたばかりに。
んで、何で引き留めたの?」
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんが、出連先生にご用事」
ξ゚⊿゚)ξ「ふうん? どんなご用?
負け惜しみでも言いに来た? それとも私に土下座でも?」
ζ(゚、゚*ζ「あんまり、そう言ってあげないでください。
ニュッさんさっきまでちょっと泣いちゃってたんですから」
ξ゚⊿゚)ξ「ワンモア」
ζ(゚、゚*ζ「あんまり、そう言ってあげないでください。
ニュッさんさっきまでちょっと泣いちゃってたんですから」
ξ゚⊿゚)ξ「後半ワンモア」
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんさっきまでちょっと泣いちゃってたんですから」
-
ツンとデレ仲良さすぎw
-
www
-
ツンさんwww
-
二人でいじり倒してんな
-
いいぞー、もっとやれー!
-
>>695
共通の敵がいるからかな…
-
ツンはニュッに顔を近付けた。
ニュッは顔を逸らす。ツンの顔もそれを追う。ニュッが上を向く。デレの手がむりやり下へ向けさせた。
泣いたの、とツンが問う。泣きました、とデレの答え。
ツンの肩が震え──かと思えば急に背を反らせた。
ξ^⊿^)ξ「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
( ∩ν∩)
ニュッは両手で顔を覆ってしゃがんだ。
先のツンに似ていたが、状況が全く違った。
-
ニュッ君が可愛い・・・だ・・・と?
-
ツンちゃんwww
-
流石に可哀想
-
ξ^⊿^)ξ「ぶほっほwwwwwwwwwwおまwwwww
泣いwwwwwたwwwwwwwwww
マwwwwジwwwでwwwwwwww
待てやwwwwwwwwwwお前wwwww
昨日わたしに何つったwwwwwwwwww」
( ∩ν∩)
-
やだニュッくんかわいい
-
すごいニッコリしてるニュッ君に見える
-
ニュッくんがどんどん萌えキャラに
-
ξ^ν^)ξ「『そりゃ、お前の泣き顔が見たくて来たとこもあるからな』」
ξ゚∀゚)ξ「おwまwえwがw泣いてんじゃねーーーかwwwwwwwwwwwwwww
気のwwwwwwwwww毒wwwwwwwwwwwww
プライドが無駄に高い三十路一歩手前の涙wwwwwwwww
ふひひwwwwwうひいwwwwwwwwww
悔しいのうww悔しいのうwwwww私に負けて悔しいのうwwwwwwwwwwww」
( ∩ν∩)
ζ(゚ー゚*ζ(なに今の物真似すごく似てた)
( ^ω^)(顔めっちゃ似てた今)
-
ξ;∀;)ξ「あwww駄目wwwwwwww腹痛いwwwwwwwwwwwwwww
らめえwwwwひぎいいwwwww腹筋16分割しちゃうwwwwwwwwww
ねえwwww今どんな気持ちひひひひぃひぃひひひぃいいひひいひwwwww
やだwwwww私いま泣いてるwwwwほらほらwwwww泣いたよwww
やったねニュッちゃん!」
( ∩ν∩)
-
ξ;∀;)ξ「あっふwwwwwwwあっふwwwwwwwwwwwwwww
壮大な前ふりwwwwwwwwとんだドMじゃねえかwwwww
しぃ検事すら私に負けたくらいで泣いたことないわwwwwwwwww
あかんwwwwあかんわwwwwwwww
照屋刑事に慰めてもらったんかwwwwwwwwwwおう?wwwwwwww」
( ^ν^)「しつけえんだよいい加減にしろ」
ξ;∀;)ξ「あひんっ」
早々に立ち直ったニュッが、ツンの横っ面を引っ叩いた。
衝撃で右側へ向けられた顔を、すかさず左手で掴んで正面へ戻す。
強引な動きに、ツンの首がごきりと鳴った。
-
これはニュッくんがダークサイドに堕ちるフラグですね
-
ツンさんの特技はモノマネか
-
( ^ν^)「そもそも泣いたっつったって悔しくて泣いたんじゃねえよ己の不甲斐なさにだよ
てめえが関わる余地なんざ1ミリたりともねえよ愉快な頭で不愉快な勘違いすんな糞が
金糸玉子が調子乗んなよ乗っていいのは冷やし中華の上だけだボケカス死ね」
::ξ;∀;)ξ::
(#^ν^)「声殺して笑うな!!」
( ^ω^)「ていうかどれくらい泣いたんですかお?」
ζ(゚、゚*ζ「ほんと、ちょっとですよ。
まあ『ちょっと』の定義はお任せしますが」
そんなことはどうでもいいんだよ! と怒鳴るニュッの顔は怒りと羞恥が混ざっていて
それはもう大変愉快だった。
こうして彼がツンに翻弄される様は、見ていてなかなか気分がいいので嫌いではない。
-
ξ゚⊿゚)ξ「ああ……私に用があったんですっけ。何?」
( ^ν^)「……今回もお前に負けたら、景品でもやろうと思ってたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「景品?
ところで今更あなたが真面目なツラで話しても私の笑いのツボをがんがん突いてくるだけよ。
ふざけてくれた方がまだマシだわ」
( ^ν^)「はいはい分かりましたふざけながら話しますようんこうんこ」
ζ(゚、゚;ζ「ニュッさん自棄っぱちにも程が」
( ^ω^)(ツンさん……さっきまでの『いい話』風な雰囲気を保てばいいものを……)
-
いい笑顔過ぎワロタ
-
ニュッ君の周り敵しかいねぇw
-
ニュッはツンのコートの胸ぐらを掴んだ。
ぐいと引き寄せ、彼女の耳元で何かを告げる。
ツンは目を丸くさせ、離れたニュッをまじまじ見つめた。
ξ゚⊿゚)ξ「何でそんなもの」
( ^ν^)「面白そうなもんがあったからだ。
──後でお前の事務所に送っておく」
ξ゚⊿゚)ξ「住所知ってる?」
( ^ν^)「調べりゃ分かんだろ。
照屋、来い」
ζ(゚ー゚*ζ「はあい。──皆さんお疲れ様でした。それでは失礼します」
ニュッとデレは、諸々の事後処理のためか、旧校舎へ戻った。
それを見つめ続けていたツンが、ついと背を向ける
ξ゚⊿゚)ξ「……帰りましょうか」
( ^ω^)「そうしましょう」
ニュッの「景品」とやらが気になったが、訊いていいものか悩んで、
結局そのまま帰途へついた。
*****
-
( 、 ;トソン ハァッ、ハァッ
手を伸ばす。何の感触も得られない。
( 、 ;トソン「ツン……さ……」
ツン。ツンのところに行かないと。
( 、 ;トソン「ツ……」
舌が縺れる。
自分の体勢が分からない。
うつ伏せになっている筈だ。
けれど、腹にも背中にも何も感じないので、どちらが下で上か判断がつかなかった。
-
( 、 ;トソン「……」
霞む視界。自分の右手。欠けっぱなしの小指。
小指どころか。
今となっては、体のどの部分が残っていて、どの部分が無くなっているのかすら。
( 、 ;トソン「……ぁ……」
懐かしい感覚だった。
身体中の力が抜けて、徐々に頭も働かなくなっていく。
命が消え行く感覚。
-
アカン
-
うあああートソンー!!
-
トソンは何とか右手を動かした。
この手はもう、前へ向けても意味がない。
なら、せめて。せめて。
くしゃり。ポケットの中のそれを握り締める。
ほんの僅か安堵し、それ故に、脱力感が加速した。
( 、 トソン
一度目の死の間際、頭にあったのは想い人だった。
けれど、もう既に彼への気持ちは整理をつけている。
-
( 、 トソン「……ミセリ、の……」
目尻から熱いものが流れた。
もう指先の感触すら朧気なのに、それだけは、いやに鮮明だった。
(;、;トソン「ミセリの目覚めるところ……見たかったなあ……」
.
-
そうして。
二度目の死は、大事な友達の記憶と共に訪れた。
.
-
ええええええトソン!
-
ああああああああああとそーん!!
-
ミセリは!?ミセリはどうなったんだ!!
-
わあああああ……
-
その場所に、一枚の紙が残された。
メモ用紙には丸い文字が並んでいる。
《本日午前11時50分から午後12時10分まで都村トソンに体を貸します。 H17/08/20 三森ミセリ》
ミセ*- -)リ
その字の主は、すぐ傍のベッドで眠り続けている。
呼吸はひどく弱々しい。
.
-
「猫」が逮捕されたのは、それから2週間ほど後のことだ。
case8:終わり
-
乙!
気になる終わり方だ
-
長時間乙です
逮捕されただと…
-
うおお乙!!
-
おつ!
-
おつ
もうおつうやもーどです
-
なんと言う急展開!
ニュッくんざまあで終わらなかった
続きが気になる!!
-
姉者がんばったなぁとかニュッくんざまぁwとかいろいろあったはずなのに
最後に全部持ってかれちゃったよおい!トソン!ミセリ!
しかも猫つかまったっておーいいいところで引くなぁまったくもう!おつ!
-
乙!またんきもブームも可哀相に
でも姉者とツンが分かり合えて良かった
次回も無茶苦茶楽しみにしてる
-
今回の投下終わり
読んでいただきありがとうございました!
Romanさん、いつもありがとうございます!
次回は最終話の前編になります、多分
いつになるかは未定
目次
幕間 >>60
case8 前編>>131/中編>>249/後編>>402 >>497
ちなみに姉者がまたんき探してるときに音鳴らして知らせたのは眼鏡白衣の人です。とても気が回る
-
ラノベからマタンキいい役してるな
-
最終回も近いのかな…
-
乙
ついに脱落者が出たか・・・
-
そういやお化けが死んだらどうなるんだっけ?
グレートスピリッツに還るんだっけ?
-
乙です。ちょっと今割と本気で涙腺がヤバい。
トソン…
-
乙乙
-
乙!
最後の最後で……トソン……
-
乙!
勇気振り絞ってまたんき抱きしめた姉者も、姉者の前で絶妙な表情のツンさんも本当良かった
最後は猫か……読後すっきりとはいかなかったな……
-
乙
-
アサピーは間に合わなかったのか…
-
さっき読み始めてまだ3話までしか読んでませんが乙だけ置いておきます!
面白いです!
-
家族は皆辛いだろうが、ばあちゃん辛かろうな……
乙
-
おつおつ
-
力作投下乙
遂に最終回かー連載始めてから2年弱ぐらい?長かったけどやっぱり終わったら寂しいなぁ
トソンは消滅しちゃうとしたら死んだことがツンにも伝わらないってこと?それだったら切ないな
猫事件の詳細はほとんど謎のままだったし最終回でツンが誰を弁護するのか、どんな結末を迎えるのか楽しみだ
-
乙 毎度のことながら、一話に名場面がありすぎていろんな気持ちで胸がいっぱいになる。
くそ面白かった。最終回とは寂しいが次も楽しみに待ってる。
-
アサピーイケメンすぎ抱いて
-
幼女になって出直してこいよ
-
次回最終話か!楽しみすぎる乙
-
これひょっとして猫の弁護ツンがするのか?
お、おぉ…
-
藁の楯的な
-
ツンさんの姉者に対する態度が他の誰に対するものよりもツンデレしている件
-
こいつらいつも濡れ衣着せてるな
-
僕もしぃとデレに濡れたシャツとか着せたいです
-
ギコさんが着てくれるってよ
-
それはそれでセクシーな気がする
-
そんな事したらギ子さんがお嫁に行けなくなるだろ
-
>>763が貰ってくれるだろう
-
姉者かっけええええええええええええトソンんんんんんんんうわあああああああああああああああああああああああおつううううううううううう
-
そういえばなんでアサピーはツンのこと気に入ってるんだろう。具体的に触れられたっけ?
いやほんと単なる疑問なんだけど
-
それに関するらしきものは話にちょこっとだけでてきてたから最終話で分かるんじゃね
-
>>769-770
本当は今回の話の中に織り混ぜるつもりだったんですけど、
それ入れると更に長くなるしぶっちゃけ大して本編に影響ないことなので省いてました
( ^ω^)「アサピーさんってツンさんの何をそんなに気に入ってるんですかお?」
(-@∀@)「全部?」
ξ゚⊿゚)ξ「気持ち悪っ。首傾げながら言うのが気持ち悪っ」
('A`)「あんたは呪術師の何が気に入らねえんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「全部?」
(-@∀@)「あーセンセイ可愛い」
( ^ω^)「どういう経緯で今みたいな関係になったんです?」
-
(-@∀@)「エート、出会いはですネェ……ある日、何気なーく立ち寄ったヴィップ小学校の旧校舎で、
幼き頃のセンセイがおばけ達に泣かされていまして……。
オヤ可愛いコがいるナァというのが第一印象デシタネ」
ξ゚⊿゚)ξ「このロリコンが」
(-@∀@)「で、こう、ぱっと目を引くような可愛らしい少女が化け物にイジメられて泣いてイル姿ッてのが、
もうネ、ぞくぞくキましてネ」
( ^ω^)(どうしようもない)
('A`)(どうしようもないロリコン)
(-@∀@)「で、僕チョット助けたんデスヨ」
( ^ω^)「優しいー」ヒュー
('A`)「いい奴ゥー」ヒュー
(;-@∀@)「ヤダーもー! やめてクダサイ本当にー!
あっ、あれはただ、懐かせた後に僕の本性見せたらますます可愛く泣くだろうナって思ったダケなんですカラネッ!
センセイのためなんかじゃナイんデスからッ!」アワアワ
ξ゚⊿゚)ξ「変な照れ隠しの仕方やめなさいよ」
(-@∀@)「いやマジですよ?」
ξ;゚⊿゚)ξ(うっ……!)ゾワッ
( ^ω^)(目が本気だ)
-
(-@∀@)「そしたらマァー懐く懐く。ソレ以来、苛められてるトコへ僕が行くと安心して
『アサピーアサピー』ッテ。馬鹿ダナこのガキ……ゲッホゲッホ
素直で可愛らしいナァこのオジョーサンはと思ってました」
(-@∀@)「それでついに、ある日、辛抱堪らず僕もセンセイをイジメてしまったンですが(八話前編冒頭)
そしたらセンセイ、ますます大泣きで逃走デスヨ。
でもネェ、なーんか、思ってたほど面白くなかったデス」
ξ゚⊿゚)ξ「べっつに、本気で傷付いたりしてませんけど?
裏切られたとか別に、そんなこと思ってないしね本当、
あんたの性悪加減は初めから見抜いてたしね嘘じゃないからねあんたのこと信用したことなんか一秒たりともないから」
(-@∀@)「へー。
で、ソレカラしばらく経って……」
( ^ω^)(うわ流された)
('A`)(今のは恥ずかしい)
::ξ∩⊿∩)ξ::
(-@∀@)「久々に会ったンで、ちょろっと近付いて、まーた、ちょろっとからかおうとしたら……
『訴えてやるー!』って」
( ^ω^)「ほう」
-
(-@∀@)「おばけ法について学んだんデショウなァ。
コレコレコーイウ行為はナニナニ罪に当たるんだから! と、ソンナ調子で。
その日カラ、センセイはどんどん逞しくなっていきまシテ……」
('A`)「あんたからしたら残念なことじゃねえのか」
(-@∀@)「イヤー、全然! とってもとってもとってもオモシロくって堪りませんデシタナ」
(-@∀@)「そもそもそれマデのは、結局、弱い者イジメでしかなかったワケですから。そりゃつまらない。
反抗してくれた方がヤり甲斐はあるデショウ、イロイロ」
( ^ω^)「幼い頃の方が可愛げはあったのでは」
(-@∀@)「あの頃のセンセイより、今みたいなセンセイの方がヨロシイ。
御しやすいのが一番イイとは限らないわけデスヨ」
('A`)「その結果、こんなに色気のない女に育っちまったわけか……」
(-@∀@)「あー、色気バカリは、いくら僕でもセンセイからは見出せませんな」
ξ#゚⊿゚)ξ「おんどれナメんなよボケェエエ!!
見てろ! 濡れたシャツ着てやるよ! すっけすけのぴっちぴちやぞ!
溢れ出るフェロモンに色んな汁まき散らして浄化されろ!!」
( ^ω^)「やめてくださいしんでしまいます」
(;A;)「そんなの見たら目玉がストライキ起こしちゃうよー!」
(-@∀@)「きゃーっセクハラで訴えてやる!」
ξ#;⊿;)ξ「うおおおおああああああがががががががぎひぃいいいギィイイイイイ!!!!!」
-
(-@∀@)「……とマァそんな経緯で、僕はモウ一生センセイをからかったり愛でたりし続けていこうと決めたのデシタ」
ξ;⊿;)ξ「さりげなく絶望的な宣告された!!」
('A`)「こんなのが付きまとってりゃ、結婚どころか恋人作ることすら難しそうだな」
(-@∀@)「あ、イヤ、それはゴ自由に。
僕ァ、センセイが僕との間に1人くらい子供こさえてくれればソレでジューブン」
ξ;⊿;)ξ「気持ち悪いよぉおおおおおおおおお!!!!!
ガチで気持ち悪いよぉおおおおおおおおお!!!!!」
( ^ω^)('A`) ドンビキ
(-@∀@)「でもホラ、子供産むナラ、若い内の方がセンセイにとってもイロイロ都合がいいデショウ。
だから僕チョット焦ってるンですヨネー」
ξ;⊿;)ξ「うわあああああああ!! うわあああああああ!! うわあああああああ!!」
( ^ω^)(もはや言葉にすらなっていない)
-
( ^ω)( 'A)( -@∀) ≡≡≡ξ;⊿;)ξ「眼鏡かけてるときに内側に向かってレンズ割れろ!! くたばれ!!」
( ^ω^)「逃げた」
(-@∀@)「冗談なのにナァ」
('A`)「分かりづらいっつうか冗談にしても恐すぎるっつうかマジで冗談なのかすら分からんっつうか」
(-@∀@)「あ、ちなみにネ。あの日、旧校舎で大層傷付いたセンセイの姿があまりに哀れで
柄にもなく申し訳なく思っちゃったンで、アレ以来、
なるべくセンセイのお願いは聞くようにしてるンですヨ。センセイには内緒」
('A`)「いや言えよ」
( ^ω^)「それ知ったらツンさんの態度もいくらか軟化するのでは」
(-@∀@)「アッハッハ。勘弁勘弁。僕ァ別にセンセイに好かれたいわけではナイので。態度軟化とか最悪。アッハッハ」
( ^ω^)(ほんとタチ悪いわ……)
('A`)(タチ悪すぎるわ……)
-
〜猫田家〜
(*゚ー゚)「何故この人はうちで震えながら布団に潜ってるんだ」
(;,゚Д゚)「さあ……。貞操の危機とか言ってるんだけど……」
::ξ;⊿;)ξ::「私しばらくここで寝泊まりする……」
(*゚ー゚)「嫌です。出なさい。それ僕の布団です」
::ξ#;⊿;)ξ::「一緒に寝ればいいじゃないの!! 何なの!! 何すれば許可が下りるの!!!!」
(;*゚ー゚)「何で今キレられたんだ僕は……」
(,,゚Д゚)「母屋からお客さん用の布団持ってきましょうか。あ、りんご食べるー?」
(*゚ー゚)「甘やかすな」
(,,゚Д゚)「今夜はパジャマパーティーよー」
ξ;⊿;)ξ「パジャマといえばさっきから気になってたんですけどここにあるすけすけのネグリジェが明らかにギコサイズなんですがまさか」
(*,゚Д゚) ポッ
終わり
-
おつ!
-
来てた乙!
最後ww
-
乙!
ギコwwwww
-
ギコの寝間着ってすけすけのネグリジェなのか…
何の違和感も無いんだけど、慣れてきたのかな
-
もし、もしだ
透け透けのネグリジェがしぃサイズで、それをしぃが着ているとしたら……!
-
アサピーがどうしようもないレベルでたちの悪い変態なのは分かった
混乱して怯えるツンさん見たさにこっそり枕元に水で溶いた小麦粉入れた近藤さんとか置きそう
しぃちゃんは透け透けネグリジェより男物なんだけどちょっと可愛い系のパジャマが良いナー
-
乙
アサピーの日頃の扱いを不憫に思ってたけど、こりゃ妥当だわwww
-
乙
ttp://de.mon.st/RyEq2/
-
乙!
アサピーさんが想像以上に変態だったわwww
-
>>783
http://imepic.jp/20140521/641320
-
近藤さん知らないツンさん可愛い
>>1さんの描く漫画が好きです
-
A生しかしたことないエッチなお姉さん
Bツンさんは天使だから避妊具とか知らねえに決まってんだろぶっころばすぞ
Cマジで寝ぼけてた
答えはどれでしょうてか混乱して怯えるツンさん観たかったのにチクショオオオオ!
-
同じドッキリ姉者としぃとギコにもして欲しい
-
D知ってるけど実物は見たことなかった だろ
-
>>788
http://imepic.jp/20140521/678040
-
まぁでもパジャマ装備して寝てる時点で事後ではないと推測はできよう。
-
この手の話しててドクオが突っ込みに回るしかないなんてこの作品恐ろしい
-
やっぱこの作者の作品読みやすいし面白いな
わりと定期的に投下してくれるから安心出来るし
-
これニュッくんだったら付けれないね
-
>>792
ありがとうございます!
ツンさんちょろすぎ可愛い…
閃いた!!
-
>>797
通報した
-
>>798
ギコさんにか
-
ていうかアサピーとの間に子供つくるとか可能なのか
-
>>799
すみませんでしたやめてください
-
>>790
http://imepic.jp/20140521/795900
>>796
http://imepic.jp/20140521/795910
打ち止め
何で水溶き小麦粉コンドームというネタで4枚も描いてしまったのだろう
>>800
アサピーは人間と同じような実体も取れるのでその気になれば可能です
-
終始冷静なブーンに笑ったわ
乙でした
-
>>802
ニュッくんの「つーか出来・・・」で泣いた
-
乙乙
色々投下してくれてありがとう
ギコさんの安定の乙女
-
姉者とギコさんマジ乙女
ニュッさんすっかり泣き虫でワロタ
-
ニュッさん本編でも漫画でもふんだり蹴ったりwwww
-
ツン以外はちゃんと意味分かったんだ
しぃでも分かるのにツン枯れ過ぎ
-
大人ってどうしようもないな
-
ニュッ君もうボッコボコじゃあないか・・・
-
マジ再起不能
-
兄者を見ることは今後一切なくなったか…
-
ニュッ君…
あな本→何気に優しい
幽霊裁判→泣き虫、噛ませ犬、不能
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穴本と裁判のデレ入れ替えネタちょっとみたい
そういやデレ吸血鬼だけど酔うんだ
とある吸血鬼ラノベだと酔っ払いの血液のんだら酔う設定あったな
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ニュッデレほんとは仲いいだろこれ
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姉者の泣き顏はムラムラくるものがありました!
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ふと書いた小麦粉近藤さんネタをここまで全力で拾ってくれて大変嬉しかったです
アサピーでもヤればできるって事はいざとなったら赤ちゃんは作れるよ!やったねツンさん!
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ギコサイズのネグリジェとかどこで買うんだよww
オーダーメイドなのか!?
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ギコの手作りかも
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この世にはオネエ専門の衣料販店というものがあってだな
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ギコサイズのネグリジェをしいがロングドレス的な寝間着として使っているという一縷の望み
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スウェット、ジャージ、Tシャツ短パン
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一気読みした。二年ほどブーン系から離れてたけどすげえ面白かったです。
最終回楽しみにしてます。
-
ニュッくん散々だなwwww
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590:名も無きAAのようです:2014/05/18(日) 21:26:58 ID:MrK7fFB.O
| ^o^ |「おさむさま かば…… ぺたぺた……」
(゚A゚* )「今度はぺたぺたかいな」
ξ゚⊿゚)ξ「……足音……。……オサム様がランドセルを持って歩いてるのを見た?」
| ^o^ |" コクン
ξ゚⊿゚)ξ「それは外で見たの?」
| ^o^ |" コクン
ツンはまたんきの頭を撫で、立ち上がった。
ニュッへと体を向ける。
ここ間違ってない?もう指摘されてたらごめん
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ブームくんとまたんきは同じ事件の被害者という伏線だったんだよ!(適当)
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それはアレです。間違いじゃなくてアレです。間違いじゃないです。アレです。ツンはブーム君を通してまたんきをも救おうとしており、
それの暗示みたいなアレです
すいません、またんき→ブームの間違いでした
やたらとミスが多くて申し訳ない。恥ずかしい
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支援
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まだかなまだかな
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めっちゃ下がっててワロタ
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下がり過ぎワロリンヌ
待ってるぞ
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面白い(ノシ ^ω^)ノシ
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そろそろくるかなあ
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スレやっと読み終えた
面白かったです
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絶賛書き溜め中
もうしばらくお待ちください
最終話書くにあたって一話目からざっと読み返してみると、
「ヴィップ町」だったり「ヴィップ市」だったり、色んなものの表記がちょいちょいブレてる
勢いだけで書くからこうなる。そういうの見付けたらフィーリングで補完しておいてください
そして今回も次回予告的な落書きで誤魔化す
最終話の始めのシーンこんな感じ(実際に投下するときには別物になっている可能性もある)
http://imepic.jp/20140625/759450
http://imepic.jp/20140625/759451
http://imepic.jp/20140625/759460
書き溜め頑張ります
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二枚目の最後のコマの最後の文字が小さくて見づらいですが、(-@∀@)「命取るホドじゃないんで見逃してクダサイ」とか言ってます
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アサピーなかったことにしてさ、ハローでやり直さないか
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期待age
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来てた!!!
最終回待ってます!!!
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最後の内藤の冷静さにこっちがブー!しちゃいそうだわw
待ってるよー
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アサピーなかったことにしてハローでやり直さないか割とマジで
モデルツンなのかー(胸以外)アサピーツン大好きだな本当
続き楽しみにしてるぜおつ
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ツンさん割りと酷い目あってるなww
続き楽しみだわー
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ハローに恋しかけた俺のこの気持ちどうしてくれる……
最終話期待
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最終話が来ると思うとさみしいけど楽しみ
アンビバレンツ!
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ツンマジ美人すぎる
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つまりアサピーはギ子の顔でハローの身体とかもできるのかな
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ツンさんのドリル切り落として詰め物すればハローか
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あ、ツンがずぶ濡れ・・・いやなんでもないっすホント
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アサピーは普段男の格好してるだけでどちらが真の姿とか性別とかそんなんは無いのでは無いだろうかという説
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もうアサピーでもいいや
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ドクオばっかりだな
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>>849
それなんて蛙の為に鐘はなる?
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でも姿変えるの疲れるって言ってるし…
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変化させる過程が疲れるんじゃないの?
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ワカッテマスがホスト役をするなんて恐らく初なのではないだろうか期待
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もう最終回なのか…
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>>849>>853>>854
よく分かる解説(裏声)
http://imepic.jp/20140627/114970
(-@∀@)「あと本来とは違う姿を維持し続けるのもそれなりに体力使うノデ、ずっと『ハロー』でいるってのも難しいデス。
思いっきり気を抜くと所々『僕』に戻ってしまったりネ」
ξ゚⊿゚)ξ「え? 下半身だけ男に戻るとか?」
( ^ω^)「黙れ。
黙れ」
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なんでツンさんはそういう残念な発想しかできないのか
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ボードの相合傘を訂正したのもツンさんかな……
気の毒に思えるほどの発想の貧しさ
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おっぱい!おっぱい!
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下乳!下乳!下うっ、ふぅ…
誰も野良猫やってるロマに触れてなくてワロタ
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おっぱい!おっぱい!うひょおおおぉおおぉぉ
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ってことはツンさんになってあんなことこんなこともできるってこt…
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>>857
だぼだぼ服+眼鏡のしぃたんかわいい
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イケメン御曹司って書いたのツンだろwwwww
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アサピーが諦めろっと言っても諦め切れないおっぱいおっぱい
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ツンの姿で巨乳になったら本物のツンをいじめれるな
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最終回超絶期待
ロマは犯人と見せかけて無罪と思ってたけどミセリのこと「殺しそこねた女」ってモノローグしてるんだよなぁ
どうまとめるんだろう
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http://netallica.yahoo.co.jp/news/20140625-00010005-rocket
つまりニュッくんもDカップになる可能性もあるってことです?
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ツンより胸が大きくなってしまうわけですね
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, ‐ '  ̄ ` ー 、
/ _ _\
/:: ぇ旡'ゝ ィ旡') :、
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l:::::::::: ) ノ ,!
゙ 、:::::::::::  ̄ _ノ
ノ..: ゛、
リ‐-‐‐‐--''.‐''゛,,;,,...: ゛''-、、,;,,
,ィ'゛ ゛゛""'' ''" ゛"'''-、
/ ヽ
/ '、
l l l
. l i. l l
l :i. ヽ.:.:...:.:: "'-、 .l
. l .:l ヽ.:.::... "''、
. l. .:l ヽ.:..:. `'、
l ::l: ∩ ∩ ';.:.:..... ヽ
l .:l.:.. い,,c'_ノ l.:.:.: / ̄`>O
. l .:l..: c/ `っ.:.:l. /⌒ヽ {,,,,,,,,,,,,,,,,,} /⌒ヽ
.. l ::l.::. {´┴` } ..(^ω^ ) ξ(゚△゚*ξ ( ^ν^ )凸
l. :l.::::.: O┬Oノ )∽[ ̄てノ ̄]∽[ ̄てノ ̄]∽[ ̄ ̄ ̄ ̄]
l :l ヽ、.:.:.:.... ◎┴し'◎ ◎──◎ ..◎──◎ ◎──◎ =3 =3
. l .:l:.:.:.:.゛''‐-----‐''゛..:.:..: .:.:.゛'''‐-t--i‐''゛
l :l.:.:.:...:.:....:..::...:.:..::..:. ..:..:.l l
. l ヽ、.:.:.:. .:.:..:.:. l l
こんなかんじか
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>>869
そこはデレさんが吸いとってるから大丈夫でしょ…
大丈夫だよね…
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>>869-872
ニュッ君とデレはそういうプレイが好きなのか
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なんか嫌な予感がするんだが……
(;^ν^)
| ⊃_))-*ζ 大丈夫、誰も見てませんよ
| |⊂ )
∪^∪(_(_⊃
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巨ニュッとか誰得だよ……
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巨ニュッワロタ
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もしやニュッ君が勃たないのはこのせい
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別の場所が勃つのか
お前ら卑猥
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この作者のニュッ君は全体的に愛され過ぎ
キノコとか本とか
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まぁこの作者以外あんまりニュッ君出ないしな
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デレさんがニュッくんの雄っぱい吸ってるからデレさん巨乳か…
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つまり、ツンさんがニュッぱいを吸えば……?
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デレさんがヤンデレ化しますね
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お前ら巨ニュッの話題に吸い付きすぎwwww
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ニュッ君愛されてるわ
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作者が漫画にする流れになっちゃって困ってるだろ!!
いい加減にしろ!!
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流石にソレは誰得だよ
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>>887
デレ得だろ
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作者さん漫画にしなくて大丈夫ですからね|д゚)チラッ
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くそ近藤ネタ見損ねた… もっかい貼ってはくれぬか…
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近藤さん保存してるが、作者の許可が必要なのでは
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ブーム君は幽霊なのに実体があるのはなんでなの?
さまよってる間に妖怪にジョブチェンジしたの?
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> 豆乳──ニュッからもらったもの──を飲み終えたのか、
> ずず、とストローが音を立てた。
>
> 普通に量が減ったとなると、浮遊霊等の一般霊ではなく、
> それなりに実体を持つ妖怪か何かであるらしい。
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力の弱い妖怪だからビコゼアに襲われて食われたし、実体もあるってことか?
それとも元は人間で死んだあとにかなり時間が経過してるから妖怪になったとか?
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人間から妖怪になるもんは普通にいるんじゃね?
神にだってなれるんだし
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今まで出てきた妖怪には濡れ女や飛縁魔などの名称がついてたけど妖怪全部がそうなのかな?
貞子は色情霊なのに妖怪ですって嘘つこうとしてたから幽霊と妖怪の区別はつけにくいものなのかもしれない
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\____________________/
○
ο
o
,, --──-- 、._
,.-''"´ \
/ ヽ、 と思うブーンであった
/ /\ /\ ヽ
l , , , l
.| (_人__丿 """ |
l l
` 、 /⌒⌒i /⌒ヽ /
`/ | | \ /
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ここのブーンがそんな可愛い表情するわけないだろ
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全く同じこと思っててワロタ
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なにいってんだブーンの得意顔だろう
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これは騙されますわ
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作り顔ならいける
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マダー?
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楽しみに待ってる
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続き楽しみー
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>>892
ジョブチェンジです
( ∵)( ∴)に半端に喰われた状態から逃げ出して
長年さまよいながら無理矢理回復していったので、普通の幽霊とは違った存在になりました
ちなみにブーム君は言語障害と生まれつきの鈍臭さから、色々あって捨てられて( ∵)( ∴)に襲われました
本編では削ったけど
>>896
この作品内では基本的に、死んだ者の魂を「幽霊」、それ以外を「妖怪」「おばけ」と表現しています
また、全てを引っくるめて「おばけ」と言うこともあります
たとえば('A`)や(゚、゚トソンは幽霊、(-@∀@)やζ(゚ー゚*ζは妖怪です
そして広義には皆「おばけ」です
「じゃあ幽霊裁判っつかおばけ裁判じゃね」って感じですが、幽霊裁判の方が語呂と字面がいい
幽霊も妖怪も色んなのがいるため、よほど見た目や習性に特徴がない限り、ぱっと見での区別は難しいという設定
ぶっちゃけ大体が曖昧で適当なので、曖昧で適当に読んどいてください
最終話前編はなるべく今月中には投下したいです。します。頑張ります
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④
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最終話が待ち遠しいが終わると思うと寂しくて複雑だ
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>>907
同意
名作に出会うといつもそうだ
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ごめん上のは>>908向け
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自分も悲しいけれどでもうれしいような
好きな話が完結するってこういうものだよな
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この人は投下遅くなっても絶対来てくれるから安心して待てる
支援
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久々に来たら、えっ、最終話…だと…?
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最近読み始めけどもう最終話か…楽しみだ
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最終話前編、早ければ今日の夕方、遅くても日付変わる前に投下します
超長いので、場合によっては今日と翌日に分けるかもしれません
http://imepic.jp/20140819/088820
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんもうお酒飲まない方がいいんじゃありませんか」
ちなみにうっかりデレさんの手が滑ったため巨ニュッさんの写真はツンさんとギコさんの携帯に送信されました
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ニュッさん完全にデレのおもちゃっすね
ギコさんはこれどう見るんだ……仲間として見るのか……?
投下楽しみにしてます
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ひっでぇwwwwこれだから酔っぱらいはwwww
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最終話うひょー!
そしてまさかのニュッさんお酒の失敗第2弾wwww
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うわぁ…一番知られたらヤバい人達に送られたな…
最終話、楽しみにしてます!
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ついに最終話きたか…待ってたのに寂しい
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最終話か…待ってる
巨ニュッwwww巨wwニュッwwwwwwww
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巨ニュッの響じわる
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デレってこういう髪型だったんだなあ
投下の時は新しいスレ立てるよね
ここ埋めてったほうがいいのかな
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こういうパターンの時は>>1が新スレ立ててこのスレはおまけとかで埋まる
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巨ニュッと爆笑してる二人がツボすぎてつらい
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デレはニュッさんの黒歴史作りに余念がないな
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>>923
髪型とかはあくまでも作者の中でのイメージですんで、本編では描写してないし、好きな髪型をイメージしてください
最終話前編投下します
まずはこっちで投下して、>>1000付近で新スレ立てる
今回も長い
途中で力尽きるかもしれない
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何事にも終わりの時はあって。
終わりというものは存外に唐突に訪れる。
つまりは何事も唐突に終わってしまうのだ。
それはたとえば日常であったり。
( ^ω^)「転校生?」
( ・∀・)「うん」
(-_-)「うちのクラスに?」
( ・∀・)「そ、そ。男子か女子か分かんねえけど」
(´<_` )「ふうん。クラス替えまであと2ヵ月もないのにな」
(*^ω^)「仲良くなれるかおー」
( ・∀・)「ブーンって、ほんと平和だよなあ。思考っていうか何ていうかさ」
.
-
たとえば長い追いかけっこであったり。
(;ФωФ) ハァッ、ハァッ
(,,゚Д゚)「……あんたがロマネスクね」
(;ФωФ) ハァッ、ハァッ
(;+ω+) ハァ…
たとえば命であったりする。
lw´;‐ _‐ノv「キュート! ……ああ、キュート、キュート、何で……!」
lw´; _ ノv「どうして……」
.
-
この世には物語が溢れている。
本とか、映画とか、そういったものに限った話ではなく。
人の半生も、人と人の関わりの間に生まれた僅かな時間も。
そこには何らかの物語がある。
ξ"д")ξ∴・。「はあああ──っぶくしゅんっ!!」
('A`)「あんたはくしゃみ一つ取っても色気というか品性が欠けてやがんな」
( ^ω^)「今更」
ξ゚⊿゚)ξ「うっさいわねえ……」
そういった物語も、いずれは終わり行くものなのだ。
-
Last case:憑依罪/前編
.
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──どうして私はこんなところに立っているのだろう。と。
出連ツンは戸惑った。
ある種の現実逃避だった。
( +ω+)
被告人が目を閉じている。
(;*゚ー゚)
検事が絶句している。
(;,゚Д゚)
刑事は呆然とし、
【+ 】ゞ゚)
川 ゚ 々゚)
裁判長と監視官は相変わらず何を考えているか分からない顔だが、こちらを注視している。
その他にも、傍聴席からたくさんの視線。
-
この静寂は、時間にして一秒かそこらだろう。
しかし、一時間にも思える密度があった。
ツンは、縺れる舌をむりやり動かす。
ξ;゚⊿゚)ξ「──裁判長!」
横目で被告人を見る。
「化け猫」、「猫」、「真犯人」。
様々な呼び名があれど、彼が認める唯一の名はロマネスク。
これは彼の裁判だ。
彼を裁く法廷だ。
-
どうして自分はこんなところに立っているのだろう。
何も難しいことではない。
弁護士だからだ。
言わなければ。
それが自分の責務。
ツンの唇が、ゆっくりと開いていく。
*****
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──2月13日。
ホストクラブ「ホノボノ」。
爪*゚ー゚)「ワカちゃん、これあげる。安物で悪いけど」
(*<●><●>)「えー何これ何これ、クッキー? あざーっす!」
爪*゚ー゚)「あんまり甘くないやつ。そういうの好きって前に言ってたでしょ。
ま、一日早いけどバレンタインってことで」
(*<●><●>)「マージで! 覚えててくれたんですね!
うわー嬉しい! じぃさん最高です!」
爪*^ー^)「あっははは! そう喜んでもらえると私も嬉しいなあ」
(*<●><●>)「今度お返しさせてくださいねー約束ですよー」
爪*^ー^)「いいからいいから! でもやっぱり、これじゃ何だし……今度あんたが好きそうなチョコ探しとくよ」
(*<●><●>)「ぃよっしゃ! 幸せですよ僕はもう、もうね、じぃさんってあれでしょ、女神でしょ」
爪*゚ー゚)「馬鹿言わないの。──あ、そろそろ夫が帰る時間だわ。私も帰んないと……。
はあ、ワカちゃんみたいな子が夫だったら家にいるのも楽しいのになあ」
-
(*<●><●>)「毎日残業して立派な旦那さんじゃないですかー。
僕以外の男がじぃさんの傍にいるなんてちょっと嫉妬しちゃいますけど、
じぃさんが旦那さんと仲良く幸せな生活してくれるのが僕は一番嬉しいなあ。
それで思い出したときにでも会いに来てくれたら、僕、それで満足です」
爪*゚ー゚)「はいはい、口が上手いねワカちゃん」
客を店の出口まで誘導する。
べたべた引っ付いてなかなか離れようとしない客に、甘ったるい囁きを何度も繰り返してやると
ようやく身を剥がし、店の外へ出た。
それを笑顔で見送る。
客の姿が人込みに紛れ、光と闇が無造作に混ざる歓楽街の一部となった辺りで、
男は──全手ワカッテマスは表情を消した。
片手に持ったクッキーの包みを見下ろす。
( <●><●>)「甘くないのが好き、じゃなくて、お菓子そのものが好きじゃないって話だった筈なんですけど」
控え室へ寄って鞄にクッキーをしまった。
ホールに顔を出した途端に呼び出される。
満面の笑みを浮かべ、テーブルについた。
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初めて見る客だった。
ハハ ロ -ロ)ハ
癖のある金髪、青い瞳。ともすれば野暮ったくなりがちな黒縁の眼鏡が凛々しい印象を与える。
美人だ。顔より下を見れば、タートルネックのセーターを大きく盛り上げている胸が特に目を引く。
恐らく香水をつけていないのだろう、淡いシャンプーの香りがワカッテマスには最も好ましかった。
たまたま手が空いていたので自分がテーブルについたのだが、少し得した気分だ。
客に優劣をつけるわけではないけれど、傍にいて不快になる要素は少ない方が当然いい。
(*<●><●>)「初めましてー、ワカッテマスです! いやあ、すんごい美人! お名前は?」
源氏名を考えるのが面倒で、本名で通している。
女は唇を笑みの形にして自分の名を答えた。
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ハハ ロ -ロ)ハ「ハロー」
( <●><●>)「ハローさん、でいいですか?
ハローさんハローさん、せっかく来たんですし何か飲みましょうよ」
ハハ ロ -ロ)ハ「ンー……牛乳」
ふふ、と笑って、ハローは足を組んだ。
デニムに包まれた長い脚に、革のロングブーツ。
仕草や服装がいやに似合っていて、こりゃ目の保養だなと内心呟く。
安酒しか落としていかなくても構わない、とさえ思えた。彼女の注文は安酒どころか酒ですらなかったが。
( <●><●>)「牛乳?」
ハハ ロ -ロ)ハ「ダメ?」
( <●><●>)「ぜーんぜん問題ないですよー、大抵のものはありますんで」
ハハ ロ -ロ)ハ「良かった。あなたもドウゾ、お酒デモ何デモ、お好きなモノ頼んでください」
調子のおかしな話し方だった。
イントネーションが所々ズレているというか。
大半は普通の語調なので、日本語に不慣れとか、訛りとか、そういうことでもなさそうだ。
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少しして飲み物が運ばれてくると、ハローは牛乳を一口飲み、
何故かおかしそうに笑ってワカッテマスを見た。
ハハ ロ -ロ)ハ「この町にも、こーんなお店があるんデスねえ」
( <●><●>)「ええ、意外と繁盛してますよ。──ハローさんはここの出身じゃないんですか?
そういや、こんだけ綺麗な人を町で見かけた覚えもないしなあ」
ハハ ロ -ロ)ハ「イイエぇ、50年は住んでますよう」
( <●><●>)「面白いこと言いますねえ」
見たところ20代。50歳以上なわけがない。
ハロー自身もくすくす笑みを深めているし、彼女なりの冗談のようだ。
ハハ ロ -ロ)ハ「センセイにゃ無縁そうなところだナァ」
( <●><●>)「せんせい?」
ハハ ロ -ロ)ハ「あ、コッチの話。私がセンセイのこと考えるのはもう病気みたいなモンなんで、お気になさらず」
口調のみならず、頭もやや変わった御方のようだが、
不思議とそれがしっくり来る雰囲気が彼女にはあった。
先生と呼ばれる職業は色々ある。
教師、医者、政治家、弁護士。
どれかに関わる立場なのだろうか。
-
( <●><●>)「ハローさんって何やってらっしゃるんですー?」
ハハ ロ -ロ)ハ「じゅじゅつし」
( <●><●>)「? じゅ……」
意味が分からなかった。聞き間違いかもしれない。
本当は「施術師」? 整体とか鍼灸とか。
なら、やはり病院かそれに準ずる職種に関わる人なのだろう。
グラスの縁に垂れた白い雫をハローの厚みのある舌先が舐め取る。
彼女の瞳が別の方向を注視しているのに気付き、視線を追った。
別のテーブルで3人組の客の相手をしているグループ。
ハローの目は、その内の1人を見つめている。
ハハ ロ -ロ)ハ「あの白いスーツの人……」
一番人気のホストだ。
ワカッテマスより彼の方が良かった、とでも思っているのだろうか。
-
ハハ ロ -ロ)ハ「あの人って、どんな人なんデス?」
( <●><●>)「どんなって──」
ハハ ロ -ロ)ハ「あちこちで悪いことしてるトカ。女泣かせトカ。お客のいないとこで下っ端イジメてるトカ」
──彼の知り合いだろうか、というのが、第一の感想だった。
たしかに彼は色々とやらかしている。
客からの人気は高くとも、店内の人間からは嫌われていた。
「そうですね」と頷いてしまいたくなるのを堪え、ワカッテマスは笑顔のみを返した。
話題を移そう。
なるべく平和なやつ。
( <●><●>)「それよりね、最近、うちの近くに猫が出るんですよ! まーるいの。
まあ会うのはいっつも仕事帰りなんで、僕は酔っ払ってるんですよね。
で、もう酔いすぎて……ふふ、猫とね、お喋りしちゃうんですよ──」
.
-
深夜1時過ぎ。
ひたすら女の機嫌をとる仕事を終え、いつもの電柱の辺りで立ち止まった。
何もいない。
僅かな失望に肩を落とすと、にゃあ、と可愛らしい鳴き声が頭上から聞こえた。
∧ ∧
( ФωФ) ニャウ
( <●><●>)「あ」
どこかの家の樹上にいたらしい。
塀に飛び降り、そこから地面へ華麗に着地する。
猫は、ふてぶてしい見た目に似合わぬ可愛い声でもう一鳴きした。
ワカッテマスは少しだけ口元を緩め、鞄から缶詰を取り出した。
出勤前に買っておいた、猫用の缶詰。
開封し、差し出す。
猫は匂いを嗅いでから、餌に食らいついた。
-
∧ ∧
( ФωФ) カッカッ
( <●><●>)「人に飼われたことってあるんですか?」
背を撫でながら問えば、猫はしばらく食事を続けた後に顔を上げ、
∧ ∧
( ФωФ)「ない」
と低い声で答えた。
∧ ∧
( ФωФ)「我輩はずっと一人である」
( <●><●>)「猫のくせに一匹狼ですか」
指先で軽く擦るようにして真ん丸な頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める。
随分と人馴れている気がするのだが。
-
以降、ワカッテマスが話し掛けても、猫は大した返答もせずに食事に集中していた。
間もなくして食べ終わる。
∧ ∧
( ФωФ) ケプッ
( <●><●>)「お粗末様です」
空になった缶を回収し、猫の喉元を擽った後、ワカッテマスは腰を上げた。
あまりしつこく構っていると機嫌を損ねてしまう。
( <●><●>)「それじゃあ、また明日」
うむ──と。
返事なんだか呻き声なんだか分からぬ声を落として、猫が去っていく。
全体的に丸いシルエットが角を曲がった頃、ようやくワカッテマスも帰路についた。
.
-
彼が住むアパートは、その電柱から大して離れていないところにある。
2階の最奥がワカッテマスの部屋。
( <●><●>)「ただいま」
ドアを開け、呟く。
テレビの音がする。台所と居間を仕切る引き戸を開けると、2人の人物が出迎えた。
( ><)「兄さん、おかえりなさいなんです」
(*‘ω‘ *)"
10代半ばほどの少年──弟が振り返る。
ローテーブルの上に教科書やノートを広げているところを見るに、課題でもやっていたのだろう。
その近く、窓辺に座っている和服姿の女性はこちらに黙礼し、
そのままテレビのバラエティ番組に目を戻した。
もう一度「ただいま」と言って、ワカッテマスは2人の前にクッキーを置いた。
弟が喜び飛びつく。
-
(*><)「食べていいですか?」
( <●><●>)「どうぞ」
(*><)「やった! ぽぽちゃんもどうぞ!」
(*‘ω‘ *)"
弟──ビロードという──は、「ぽぽちゃん」へクッキーを一枚差し出した。
「ぽぽちゃん」はいつものように微笑んだまま頷き、それを受け取った。
くりくりした瞳でクッキーを見つめている。
( ><)「クッキー知ってます?」
"(*‘ω‘ *)" ポッ
彼女は首を振りながら唇を尖らせ、空気の破裂するような無声音を発した。
「美味しいんですよ!」と言って、ビロードがクッキーを口に運んでみせる。
「ぽぽちゃん」はそれを真似て、恐る恐るクッキーを齧った。もごもご口を動かし、目を見開く。
それからすぐに二口目。気に入ったらしい。
2人のやり取りを一通り眺めた後、ワカッテマスは洗面所に立ち歯を磨いた。
-
( <●><●>)(……眠い……ああ、でもレポートやらないと……いいか、明日の午後いっぱい使って書けば何とかなる)
鏡の中の自分を見つめる。
我ながら、整っている。と思う。
一番の特徴である黒目がちな大きな目に対する周りの評価は、
「恐い」と「可愛い」の真っ二つ。
思考が読めなくて不気味。ミステリアスさが堪らない。どちらかといえば後者が勝る。
歯磨きを終えた彼は、居間の隣の和室へ入り、着替えないまま布団に倒れ込んだ。
気を遣っているのか、小声で「ぽぽちゃん」に話し掛けるビロードの囁きを
襖越しに聞きながら、眠りについた。
.
-
翌朝。
ワカッテマスは携帯電話のアラーム音で目を覚ました。
アラームを一旦止め、俯せで枕を抱えるような体勢のまま、無意味に携帯電話を眺める。
再び落ちかけた意識を、スヌーズ機能が覚醒させた。
( ><)「ぽぽちゃん、晩ご飯は何がいいですか? お肉かお魚か……あ、おでんもいいですね」
( <●><●>)「おはようございます」
( ><)「おはようございます!」
居間では、既に高校の制服を着込んだビロードが登校の準備を済ませていた。
彼も、4月からはもう高校2年生になる筈なのだが。
低い身長と幼い顔付き、仕草のせいで、もっと下の年齢に見える。
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( ><)「兄さん、晩ご飯は何がいいんです?」
( <●><●>)「今日もバイトがあるので、多分あなたが帰ってくる前に家を出ます」
(;><)「えー。最近ますます僕らとご飯食べる時間が減ってるじゃないですか。
交流が足りないんです! ねえ、ぽぽちゃん」
ビロードが、誰もいない窓辺に声をかける。
別にビロードがおかしいわけではない。
ワカッテマスに「ぽぽちゃん」が見えていないだけだ。
明るい内は、いつもこうだ。
夜なら、はっきりと目視できるのだが。
( <●><●>)(──幽霊ってみんな、こんなもんなんでしょうか?)
彼女以外の霊が見えたことはないので、比較しようもない。
これまで霊など信じていなかったので、
「曰く付き」と言われているこの部屋を借りるのにも抵抗なかった(ビロードは怯えていたが)。
いざ住んでみればこんな状態。さすが曰く付き。凄い。
自分達がここに住み始めてからまだ半年程度なのでよく知らないが、
昨年の5月だか6月だかには、1階の部屋で男が風呂場で殺される事件もあったらしい。
このアパート、大丈夫なんだろうか。
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( <●><●>)「ビロード、遅刻しますよ」
(;><)「あっ……い、行ってくるんです!」
( <●><●>)「行ってらっしゃい」
慌ただしく玄関へ駆けるビロードを尻目に、
ワカッテマスは浴室に入って軽くシャワーを浴びて、手早く服を着込んだ。
その他身支度を整え、大学へ行くべくアパートを出る。
にゃあ、と、近所の飼い猫が見送るように一声あげた。
*****
-
2月14日。
世はバレンタイン。
(;・∀・)「おかしいだろ!!」
浦等モララーがヴィップ中学校2年1組の中心で不満を叫ぶ。
大体予想はついていた。
(´<_` )「何がだよ」
(;・∀・)「何でブーンが一番チョコもらってんだよ!!」
モララーの人差し指が、こちらへ向けられる。
こちら──内藤ホライゾン、ひいては机の上に積まれた包みへ。
(´<_` )「まあ別におかしくはないんじゃないか」
(-_-)「それにしたってすごいね、ブーン」
(*^ω^)「いやあ……」
本日、内藤が同級生、さらに隣のクラスの女子生徒からもらったチョコレート。
その数10。
-
流石弟者、小森ヒッキーの2人は素直に感心したような顔をしているが、
モララーはといえば、朝から内藤にチョコレートが渡される度に
納得いかなそうな表情へ変わっていった。
とか何とかやっている間に更に2人分追加。12個。
ちなみにモララーは現在3つ。弟者は2個で、ヒッキーは1。
女子生徒の1人がクラスの男子全員に配っていたので、それを除いたとしても内藤が圧倒的トップである。
(;・∀・)「俺が一番美形なのに!! 何で!!」
(-_-)「まあモララーがイケメンなのは認めるけどさあ……」
(´<_` )「そういうとこが駄目なんだと思う」
(;・∀・)「ブーンなんて特別格好いいわけじゃないじゃん! 何でモテんの!? 去年より多くね!?」
モララーが後ろから内藤の両頬を思いきり引っ張った。
たしかに、内藤は美形と言える顔ではない。
ただ、柔らかい顔付きのおかげで、嫌われることはまずない。
-
(;^ω^)「いたたた。ぜ、全部義理だお、これ。
ほとんど数十円で買える駄菓子だし……」
(´<_` )「『内藤君ってお菓子あげたくなっちゃう』──だとさ」
(-_-)「ブーン優しいから、片付けとか色々手伝ってあげてるしね。普段のお礼もあるんじゃない?
日頃の行いだよモララー。第一モララーは本命っぽいの一個もらったからいいじゃん」
( ;∀;)「あれ本命じゃなかったよ! あいつ部活の先輩にもっと凄いチョコあげてたもん!!」
(;^ω^)「あぶぶばばば」ガクガク
(´<_`;)「ブーンの頭を揺らすな」
(-_-)「ていうかお情けのチョコ一個しかもらってない僕としてはみんな羨ましいんだけど。
弟者は部活の時間にまたもらうでしょ」
騒ぎを眺めていたクラスメート達が笑った。
モララーだって嫌われているわけではない。
こうして正直に、そして大仰なリアクションをする様は気持ちがいいというか好感が持てる。
それは内藤も見ていて楽しい。
このクラスはとても平和であると思う。
みんながみんな仲良しこよしというわけではないが、不仲でもない。仲間外れもいない。
居心地がいい。
-
( ・∀・)「……ったくよー、来年こそは勝つからな!」
(´<_` )「はいはい、頑張れ」
( ・∀・)「棒読みかよ畜生。おっ、これ美味そう。食っていい?」
(;^ω^)「答える前から開けるなお」
( ・∀・)「いいじゃん。
あ、そういやさあ、例の転校生、男子らしいぜ」
(-_-)「へえ。楽しい人だといいなあ」
内藤の机上から勝手に一つ箱を取り、開封するモララー。
中身を4人で分け合っていると、クラスメートから声をかけられた。
-
「内藤ー、お客さーん」
( ^ω^)「はーい」
(;・∀・)「何っ、またチョコか!?」
教室の入口に行ってみれば、そこにいたのは見知らぬ女生徒。
はて、彼女に何かしただろうか。
lw´‐ _‐ノv「内藤ホライゾン君だね」
眠たそうな目に眠たそうな声。
やはり覚えがない。
( ^ω^)「そうだお。えっと……」
lw´‐ _‐ノv「3組のシュール。──放課後、話があるから校門で待っててほしい」
( ^ω^)「え?」
lw´‐ _‐ノv「じゃあね」
女生徒はそれだけ告げると、さっさと自分の教室へ帰ってしまった。
近くの席にいた生徒達が俄に盛り上がる。
照れた演技で応えながら、内藤は席に戻った。
-
(;・∀・)「お前っ……お前ぇえっ……!!」
(;*^ω^)「いやいやいや、絶対そういうのじゃないお、違う違う」
まあ、皆が思うような用事ではなかろう。
知り合いですらない女子から好かれるとも思えないし。
とはいえ。
世はバレンタイン。
もしかして、と期待する程度には、内藤も思春期真っ只中である。
*****
-
( ^ω^)「──何ですかお? これ」
学校帰り。
出連おばけ法事務所へ顔を出した内藤は、
床に置かれた段ボール箱を指差し、事務机の方を見遣った。
そこにいた女──ツンは携帯電話を耳に当てている。
彼女の代わりに、浮遊霊、鬱田ドクオがソファに転がりながら答えた。
('A`)「ニューソクの陰湿検事からプレゼントだと。ついさっき届いた」
( ^ω^)「鵜束検事から?」
そういえば2週間前──神隠し罪の裁判が終わった後、
鵜束ニュッが景品だの何だの言っていた。
それが今日やっと届いたのだろう。
となればツンが電話を掛けている相手も、恐らくは彼──あるいは彼とセットである吸血鬼──だろう。
ツンの手には伝票らしき紙がある。
-
ξ゚⊿゚)ξ「──はあい、もしもし。あなたの永遠のアイドル出連ツンですよ。
私のサインは大事にしてくれてるかしら?」
ツンは内藤を横目に見ると、携帯電話のボタンを押して、スピーカー状態にしてくれた。
こちらのことをよく分かっていらっしゃる。
彼女と彼のやり取りは嫌いではない。彼がツンにからかわれる、という点では。
ξ゚⊿゚)ξ「愛の篭ったプレゼントどうもありがとう。変なもの入れてないでしょうね」
『いちいちうぜえ言い方すんな。届いたのか』
ξ゚⊿゚)ξ「うん、届いた届いた。まだ開けてないけど。ひとまず報告をと思って電話をば。
調子はどう? 元気? あんまり泣いちゃ駄目よ、慰めなきゃいけない照屋刑事が大変でしょうから」
『あんまり頭のネジ落としすぎんなよフォローする内藤が大変だろうから』
それから5分ほど嫌味の応酬をし、通話は切られた。
向こうが切ったってことは私の勝ちよねと意味の分からぬ理屈を捏ねて、ツンが腰を上げる。
-
( ^ω^)「ツンさんツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー?」
( ^ω^)「お客さん」
lw´‐ _‐ノv「どうも」
(;'A`)「……どわあっ!? 人いたのかよ、気付かなかった!」
部屋の前に立つ少女に今更気付いたらしく、ドクオが飛び上がる。
少女は内藤とツンを見比べた後、一礼と共に入室した。
緊張した様子は見られない。
少女が、眠たげな目をツンに向けた。
lw´‐ _‐ノv「出連ツン先生、ですか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ……どなた? どうしたの?」
ツンはやや戸惑っている。内藤が人を連れてきたのに驚いたのだろう。
しかも相手は──内藤と同じ年頃、同じ学校の制服を纏った少女なのだから。
少女は制服の裾を握り締め、口を開いた。
-
lw´‐ _‐ノv「私の妹を……キュートを、探してほしいんです」
*****
-
lw´‐ _‐ノv フゥ
ソファに腰掛けた少女は、内藤の淹れた焙じ茶を飲んで、柔らかく息をついた。
ξ゚⊿゚)ξ「その制服からして、内藤君と同じ学校よね。知り合い?」
( ^ω^)「今日初めて話しましたお、ツンさんに用があるから案内してほしいって」
lw´‐ _‐ノv「まさか本当に、校内一の人格者として名高い内藤君が
こんな怪しげな人と関わりを持っているとは……」
('A`)「へーえ、校内一の人格者。へーえ」
(;^ω^)「あ、つ、ツンさんは、悪い人じゃないんだお……。
たしかにちょっと、手遅れなくらい変なところもあるけど、いい人なんだお。
僕、助けてもらったことがあって──それでお手伝いしてて」
少女が内藤と全く無関係な人間であるなら演技をしなくてもいいだろうが
同じ学校、同じ学年という極めて近い立場にある相手に「素」の自分を見せるわけにはいかない。
彼女の口振りからしても、演技をしているときの内藤しか知らないようだし。
おどおどする内藤。舌を出すツンとドクオ。
少女は首を振った。
-
lw´‐ _‐ノv「いい人なのは聞いてる」
ξ゚⊿゚)ξ「聞いてるって、誰から?」
lw´‐ _‐ノv「親戚」
少女が焙じ茶を口に含む。
ひとまず良からぬ印象を抱かれてはいないことに安堵し、内藤は高そうな和菓子の箱を開けた。
神隠し罪の裁判の後、カンオケ神社から色々もらったらしい。
饅頭や煎餅、落雁をテーブルの上に出す。
事務机の周りに浮かぶドクオには、煎餅を一つ放り投げて渡した。
饅頭の包みを剥がしつつ、ツンが少女に今更ながら質問する。
ξ゚⊿゚)ξ「……あなた、お名前は?」
lw´‐ _‐ノv「素直シュール」
( ^ω^)「──素直?」
覚えのある苗字。
誰だっけと記憶を辿り、真っ先に浮かんだのは、女好きな蛇男。
-
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、親戚って、ピャー子さんとクールさんのことね」
lw´‐ _‐ノv「そう……苗字は同じだけど、血の繋がりは遠い」
素直ヒール、あだ名はピャー子。その姉クール。
女好きの蛇男は、ヒールの夫ロミスだ。
去年、彼女達にまつわる裁判に関わった。
そこから、この素直シュールにツンの話が伝わったのだろう。
lw´‐ _‐ノv「ピャーちゃんに悩みを相談したら、ピャーちゃんが、この事務所のこと教えてくれた」
ξ゚⊿゚)ξ「悩みってのは──さっき言ってた、『妹を探して』ってやつ?」
シュールはこくりと頷いた。
ここを紹介されたからには、つまり、おばけに関係する事態。
-
lw´‐ _‐ノv「私、幽霊が見えるんだ。……ちょっとだけ……。
疲れたときとかに、ぼんやり」
ξ゚⊿゚)ξ「見えるだけ? 声とかは?」
lw´‐ _‐ノv「全然。見るのも、たまにしか出来ない。
……あ、でも、気配はよく分かる。見えなくても、何かいるなっていうのは感じる」
ξ゚ -゚)ξ「ふむ。昔から?」
lw´‐ _‐ノv「昔から。──小さいときに親に変な顔されたから、誰にも言ってないけど」
ツンがドクオを指差した。
あれは見えるか、と。
lw´‐ _‐ノv「ぼんやり、人っぽいのが。輪郭しか分かんない。男の人っていう気配はする」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほどね。──それで、あなたの妹さんがどうしたの? えっと、妹さんの名前が、きゅ……」
lw´‐ _‐ノv「キュート。名前も見た目も可愛い子だよ。
……一ヶ月くらい前、事故で死んだんだ。……車に跳ねられて……」
ツンが口を噤む。
俯くシュールに痛ましげな視線を注ぎ、しばらくしてから、悔やみの言葉を呟いた。
シュールはまた首を振って、顔を上げる。
-
lw´‐ _‐ノv「私、そこに居合わせたんだ。
何が何だか分からなくて、キュートに駆け寄って、体を抱え起こして……」
lw´‐ _‐ノv「そしたらキュートの体から、もやもやした煙みたいなのが出て──
そのまま、どっか行っちゃった」
('A`)「死後に抜け出た魂が、自我を取り戻す前にふらふら移動しちまったんだな。
事故や心臓発作みたいな突然死にはよくある」
ドクオが煎餅を食べながら解説を加える。
やはりシュールには聞こえていないらしく、彼女からの反応はない。
代わりにツンがそれを説明した。
lw´‐ _‐ノv「……多分、そうなんだと思う。私が呼んでも、気付かずに行ったし。
追いたかったけど、キュートの死体はその場にあるもんだから
私がそこを離れるわけにもいかなくて、追い掛けられなかった」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、大抵はふらふらしてる間に記憶を取り戻して、家や事故現場に戻るわよ。
一ヶ月経ってるのよね? キュートさんが帰ってきた様子はなかった?」
-
lw´‐ _‐ノv「家に帰ってきてるなら、気配で分かる。けど、それがないんだ。
事故現場や思い入れのありそうな場所にも毎日寄ってるけど、どこにも……」
ただ時折、道端などで──残り香とでも言おうか、
妹の気配をうっすら感じるのだという。
「少し前までそこにいた」、と直感する程度に。
だから、彼女の霊は未だにこの世を彷徨っている筈だ、とシュールは言う。
lw´‐ _‐ノv「ずっと頑張ったけど──いつも幽霊が見えるわけじゃない私には、難しい。
だから、弁護士さん……ツン先生に、助けてほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「キュートさんを見付けろってことね」
lw´‐ _‐ノv「お願いします」
ξ゚ -゚)ξ「……私が弁護士だって分かってるなら、ピャー子さんから、おばけ法のことも聞いてるわよね?
ただの人探しは弁護士の仕事じゃないわ」
lw´‐ _‐ノv「でも。ツン先生はいい人だから、きっと力になってくれるって、
ピャーちゃんと一緒にいた男の人が言ってた」
( ^ω^)(ロミスさんか)
-
ξ;゚⊿゚)ξ「そうは言われても……」
lw´;‐ _‐ノv「お願いします! 依頼料は払うから……!」
シュールは鞄から箱を取り出した。
ブリキで出来た、なかなか大きな箱だ。
それをテーブルに置く。
どん、と重たい音がした。
ξ;゚⊿゚)ξ「……何これ?」
( ^ω^)「貯金箱──とか」
「依頼料」という言葉からそう判断したが、だとすると、
今の音からして、かなり詰まっているのでは。
ツンは仰け反り、両手を突っ張った。
ξ;゚⊿゚)ξ「む──無理よ、そんなの受け取れないわ! 中学生の大事な貯金!」
lw´;‐ _‐ノv「でも私には、これぐらいしか……。
無償で依頼するわけにもいかないし」
ξ;゚⊿゚)ξ「だからって、そんな!」
-
lw´;‐ _‐ノv「どうか! お願いします、私キュートを放っておけない!
キュートのためなら、これくらい平気だ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「でも!」
lw´;‐ _‐ノv「ツン先生だって、これを見ればきっと協力する気になってくれる!!」
シュールはブリキ缶の蓋を開けた。
中にはぎっしり、輝かんばかりの──
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
未開封の米が。
-
lw´;‐ _‐ノv「小遣い叩いて取り寄せた最高級の米……。
お年玉は最新の炊飯器に使ってしまったため、
今の私には財産といったらこれしかない……!」
ξ゚⊿゚)ξ「……はあ……」
lw´;‐ _‐ノv「ご覧の通り、袋は未開封。
日本人なら誰もが──いや、世界中の人々が涎を垂らして求める至高の米を、
手付かずのまま進呈する」
lw´;‐ _‐ノv「勿論それだけじゃない! キュートを見つけ出してくれた暁には、
最も美味くなる炊き方でこの米を炊いてみせよう!!
最高のお供もあるぞ! 牛しぐれ、じゃこ、海苔の佃煮、納豆!
どれも予約しないと手に入らない一級品! どうだ!」
しまった。
こいつも変な人だ。
-
(;'A`)「……世の中、頭おかしい奴ばっかりだな」
( ^ω^)「この町が変人の吹き溜まりなのでは……」
シュールは先程の鞄から次々に瓶詰めやら箱詰めやらを取り出し、テーブルに並べた。
どれだけ物が入るのだろう、あの鞄。
ξ;*゚p゚)ξ「……」
( ^ω^)「ツンさん。よだれ」
そして引っ掛かるのか。
-
ξ;*゚p゚)ξ「ほ……本当にくれるの……?」
lw´;‐ _‐ノv「何度言わせる気だツン先生、キュートのためなら惜しくない!!」
いつの間にか前のめりになっていたツンは、その確認が済むと、
更に前へ体を倒して卓上の食品達を抱え込んだ。
ξ;*゚⊿゚)ξ「も、もらうからね! 返せって言っても遅いからね!」
('A`)「中学生から大金は受け取れないっつったくせに、食い物となると必死だな」
( ^ω^)「まあ、多少お金あっても、高級食材にはなかなか手が伸びないもんですし……。
こういう機会でもないと」
ひそひそ話し合う内藤とドクオにも構わず、ツンは子供のように輝く瞳で米達を見つめている。
何とまあ嬉しそうな。
そして意地汚い。
( ^ω^)(この人、もしかして普段からちゃんとご飯食べてないのでは……)
流石姉者とちゃんとした「友達」になったのが2週間前。
その流れで先週末、流石家の食卓にツンが呼ばれたが、
美味い美味いと誰よりもがっついていた。
ツンは仕事以外の面ではズボラなところがあるので、
日頃の食事は簡単に、そして質素に済ませていてもおかしくない。
-
近い内にまた姉者の料理を食わせてやろうと内藤が決意している間に、
ツンとシュールの方は話がまとまったようであった。
ξ゚⊿゚)ξ「分かりました。引き受けましょう」
lw´*‐ _‐ノv「ありがとうツン先生……!」
ξ゚⊿゚)ξ「それで──妹の、キュートさんの写真とかあるかしら?」
lw´‐ _‐ノv「写真は今、手元には……」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあとりあえず、特徴だけでも教えてちょうだい」
きりりとした顔付きで話すツンだが、依然変わらず卓上の米を抱えたままなので、
むりやり首を擡げてシュールを見上げるような姿勢になっている。
首と腰を痛めそうだ。その光景が既に痛々しくもあるが。
-
lw´‐ _‐ノv「目がくりっとして、口が小さくて……体も小柄。
すごく可愛い。我が家自慢の美少女なんだ。贔屓目を抜きにしても」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほどなるほど。私とタメを張れそうなレベルなのね……髪はどんな感じ?」
lw´‐ _‐ノv「ちょっと長めで真っ直ぐ」
ξ゚⊿゚)ξ「歳は?」
lw´‐ _‐ノv「私の2つ下。12歳」
ξ゚⊿゚)ξ「亡くなったときにどんな服装だったか覚えてる?」
lw´‐ _‐ノv「服? えっと、赤いやつ……私が買ってやった……」
シュールは口に手を当て、瞳を潤ませた。
妹が亡くなった瞬間のことなど、そう何度も思い出したくはないだろう。
ツンもそう考えたのか、首を振り、「やっぱりいいわ」と質問を撤回した。
体勢はそのままに、ツンは手帳へ素直キュートの特徴を書き込んでいく。
これだけの情報で、迷子を見付けられるものだろうか。
-
ξ゚ -゚)ξ「とりあえず探してみるわ。
他にも色々仕事があるから、これだけに掛かり切りとはいかないけれど……」
lw´‐ _‐ノv「協力してくれるだけで心強い……ありがとうございます。
変わってるけど、やっぱりいい人だ」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃどうも。素直に喜べないけど」
lw´‐ _‐ノv「内藤君も手伝ってくれるのかい?」
( ^ω^)「え」
いきなり話題がこちらにも飛んできて、素のまま声を返してしまった。
lw´‐ _‐ノv「ツン先生のお手伝いしてるからには、内藤君も幽霊とか見えるんじゃないの?
いや、そうでなかったとしても、無理に巻き込もうとは思ってないけど」
( ^ω^)「──……そうだお」
まあ。
それくらいなら、隠す必要もなさそうだ。
力の強さに差はあれど、彼女もまた、己の霊感を周りに秘密にしているようだし。
ひとまず霊感についてのみは、そのまま告げておくことにした。
演技は続行するけれども。
-
(;^ω^)「だっ、誰にも言っちゃ駄目だお? 僕らだけの秘密だお!」
lw´‐ _‐ノv「うん。内藤君も……まあ言い触らしたきゃ好きにしていいけど、
出来れば私のこともあまり周りに吹聴しないでくれるとありがたい」
(*^ω^)「それは勿論! ……僕もキュートちゃん探すの手伝うお」
lw´*‐ _‐ノv「本当か! 良かった、内藤君にも何かお礼するから」
これでいい。
中学校のなかでの内藤ホライゾンという人物像は、守らなければならない。
それさえ崩されなければ大丈夫。
.
-
──間もなく、シュールが事務所を後にして。
ξ*゚⊿゚)ξ「お米♪ 美味しいご飯♪」
('A`)「『僕らだけの秘密だお!』──おうおう、可愛いねえ内藤少年。寒イボ立つね」
( ^ω^)「放っといてください。……ツンさん、検事さんからの荷物、何なんですかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「おっとと、忘れてたわ」
くるくる回っていたツンが箱の前にしゃがみ込み、ガムテープを剥がした。
内藤とドクオはツンの隣に立って箱の中を覗き込む。
ξ゚⊿゚)ξ「あの野郎、着払いで送ってきやがったのよね」
( ^ω^)「細かな嫌がらせに余念がない」
箱の中には、ぎっしりとコピー用紙が詰まっていた。
紙はいくつかの束に分けられていて、それぞれの束の一番上には写真が留められている。
とある写真に、見覚えがあった。
-
(;'A`)「こりゃあ……カーチャンが使ってた日記帳じゃねえか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
暗赤色の厚いノート。
ドクオの母が使っていた日記帳だ。一冊につき一年分。
N県の裁判で何度か登場したもの。
( ^ω^)「こっちの写真は手帳ですかお」
(;'A`)「っぽいな」
別の束に添えられた写真は、紺色の革表紙の手帳。
そちらは見たことがない。
──どうやら、それぞれ、写真にうつっている日記帳や手帳の中身を印刷したものらしい。
これらの中身をツンは事前に知っていたらしく、驚いた様子を見せなかった。
そういえばあのとき、ニュッに耳打ちされていたのだったか。
-
ξ゚⊿゚)ξ「やけに箱が重たいと思ったけど、こんだけ紙が詰まってりゃそりゃ重いわね」
隅っこに、小さな箱がちょこんと収まっている。ツンがそれを持ち上げ、上下左右から窺った。
四方10センチメートル弱の立方体。
私へ愛のプレゼントかしら、と本気の顔で言いながら、ツンは箱の蓋を開けた。
──間髪入れず、黒い「何か」が飛び出してきた。
虫だ。
しかも顔の近くで開けたために、ツンの鼻面にぶつかった。
-
ξ;゚д゚)ξ「ふぎゃああああああ!!!!!」
ツンが箱を放り投げる。がさがさ逃げる様は虫っぽかった。
一方、飛び出してきた虫は逃げなかった。
よく見ると、虫の腹から箱へとバネが伸びている。
( ^ω^)「これ偽物ですお。あ、すごい、チョコだ」
つまんでみれば、僅かに溶けたチョコレートが指先に付着した。
バレンタインに合わせたのか。芸が細かい。
ツンはしばらく呆然として、やがて送り主のいたずらと理解すると、
顔を真っ赤にさせてわなわな震え始めた。
('A`)「びっくり箱って、今時……」
ξ#゚⊿゚)ξ「小学生かよ!!」
-
( ^ω^)「これ、手紙入ってますお」
ξ#゚⊿゚)ξ「え?」
箱の底に封筒が挟まれていた。
取り出し、ツンに手渡す。
封筒の中からは、折り畳まれた2枚の便箋が出てきた。
ニュッからの何かしらのメッセージだろう。ツンが開いてみると──
「死ね」と、大きく2文字。
ξ#゚⊿゚)ξ「ぅおっおっ……ぐうっ……ふんぎいいいい……!!」
( ^ω^)「本当に余念がない」
('A`)「ここまで嫌われるってのも相当だよな」
もはや嫌いを通り越してツンが大好きなのではないか、あの男。
ツンは一頻り怒りに身をくねらせると、その場で再びニュッに電話をかけた。
-
ξ#゚⊿゚)ξ「クソッタレ!! 著しく寿命縮め!!」
うひゃひゃひゃ、と電話の向こうで響く笑い声が、内藤の耳にも辛うじて入ってくる。
ついには笑いすぎて噎せていた。
楽しそうで何より。
ツンは電話をぶった切り、ソファに投げつけた。
床に投げない程度の理性は残っていたらしい。
それはそうと、彼女の方から切ったということは、今度はツンの負けではなかろうか。彼女の理論で言えば。
ξ#゚⊿゚)ξ「あー腹立つ!」
( ^ω^)「便箋、2枚目は何なんです?」
1枚目の便箋を丸めて捨てる。
その下の2枚目は、普通の内容のようだった。
どうやら荷物の中身をリストにしてくれているらしい。
妙なところで律儀というか、几帳面というか。
-
ξ゚З゚)ξ「……ドクオさんのお母さんの日記を数冊分と──高崎美和のスケジュール帳のコピー」
(;'A`)「高崎──」
ドクオは表情を歪め、改めて段ボール箱を見下ろした。
憎々しげに手帳のコピーを睨む。
かと思えば、彼は母親の日記の方を持ち上げると、ローテーブルに移動させた。
('A`)「……その女の物とカーチャンの日記、一緒にしないでくれ。たとえコピーでも」
ξ゚ -゚)ξ「……ええ」
言って、ドクオは気まずそうに目を逸らした。
子供みたいなことを──と己の発言を恥じている。
だが、彼の気持ちは内藤にも理解できる。
高崎美和は彼の母を騙し、親子関係を滅茶苦茶にした。ドクオが自殺した原因にも大きく関わっている。
詐欺グループの大本は別に居たが、直接的に鬱田家へ詐欺を行ったのは高崎美和だ。
彼女に関わるものなど、なるべく遠ざけたくもなるだろう。
-
( ^ω^)「中身はそれだけですかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ、他にも少し……」
ツンは曖昧に答え、手帳のコピーを手に取った。
手帳は、見開きで一ヶ月分のスケジュール表となっているらしい。
右上に年と月が書かれていた。
( ^ω^)「大体20年前ですお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね」
20年ほど前といえば──正にドクオの母が詐欺にかかっていた時期。
ドクオが内藤の後ろからコピー用紙を覗き込む。
ξ゚⊿゚)ξ「『セミナー』……詐欺グループの会合よね、言ってしまえば」
表に書き込まれた文字を、ツンが読み上げる。
ほぼ毎日、何かしらの予定が入っている。
こんなもの。犯罪の記録だ。
-
ξ゚⊿゚)ξ「『は瀬川さん お札』、お札を売りつけるってことかしら。
『田中さん 訪問』『鬱田さん 食事』──」
( ^ω^)「『鬱田さん』は、ドクオさんのお母さん……」
('A`)「だろうな。たしかにカーチャンはたまに、あいつと飯食いに行ってた。
……そんで、『ありがたいお話』聞いて帰ってくるんだ……」
空気が沈んでいく。
今これに触れるのは得策ではないと悟ったか、ツンは高崎美和の手帳のコピーを箱に戻すと、
箱を廊下に出した。
日記のコピーは机の上に。
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君、もう暗くなるし、帰っていいわよ」
( ^ω^)「そうしますお」
ξ゚⊿゚)ξ「キュートさん探しついでに送ってくわ」
-
('A`)「……気ィ遣わせて悪い。俺に構わねえで、さっきのコピーの確認してていいぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「いいの、後でゆっくり見るから。
というわけでドクオさん、ちょっと留守番よろしくね。
お客さん来たら、お話だけ軽く聞いておいて」
(;'A`)「えー、面倒くせえよ。それにあの変態呪術師が来たらどうすりゃいいんだ、
俺あいつと2人きりになるの嫌だぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「あいつは無視していいわ」
(;'A`)「小指ない姉ちゃんも苦手だしよお」
ξ゚⊿゚)ξ「いいじゃない、トソンさんいい人だし。
……そういや最近、トソンさん来ないわねえ」
( ^ω^)「ツンさん、準備できましたお」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい、じゃ行ってきます」
('A`)「早く帰ってこいよー」
*****
-
さくさく、雪を踏みながら2人で歩く。
まだまだ寒い。
( ^ω^)「鵜束検事は、何だってあんなもの送ってきたんでしょうかお」
ξ゚ -゚)ξ「さあ……。面白いものが見付かったっていうけど、詳しくは教えてくれなかった。
自分で見付けろってことね」
まあ丁寧に助言してくれるような男ではない。
だが、全くもって無意味なことをする男でも──多分──ないので、
ツンにとって何か重要な情報が隠れているのだろう。
不意に、ツンはいたずらっぽい笑みを浮かべた。
ξ゚∀゚)ξ「今日はバレンタインねー、内藤君はチョコもらった?」
( ^ω^)「12個」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゅう……12!? マジ?」
( ^ω^)「全部義理ですけど」
ξ゚⊿゚)ξ「あー。っぽいわ。内藤君っぽい」
-
( ^ω^)「ツンさんは誰かにあげました?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君にあげましょ」
途中のコンビニで、ツンが肉まんを買ってくれた。
ふかふか柔らかい皮の中にみっしり詰まった具は、程よい塩気と程よい甘味。
噛めば、じゅわっと肉汁が溢れる。
ツンはあんまんを食べながら、辺りを見渡した。「どこに居るのかしら」と独り言。
そう簡単に素直キュートは見付からないだろう。
( ^ω^)「美味しいですお」
ξ゚⊿゚)ξ「お菓子ばっかりもらうより、こういうのも欲しいでしょ。食べ盛り」
( ^ω^)「ありがとうございました」
ξ゚⊿゚)ξ「いえいえ。
ギコはどうなってるかしら、今年も凄そうだわ。あいつは義理も本命も物凄い数もらうからね」
( ^ω^)「あの人に本命チョコ渡す人は何のつもりなんですかお」
ξ゚⊿゚)ξ「普段からオープンオカマなのにねえ」
*****
-
日付は変わり、午前0時半。
猫田家の離れ。
椅子に腰掛け、事務机に乗せた携帯電話を睨み続ける少女。
(*゚−゚)「遅い」
学ラン姿の猫田しぃ。
いつまで経っても鳴らない携帯電話に焦れ、じっとしていられず、椅子を回して振り返った。
ファイルの並んだ棚の前に立つ。
(*゚−゚)「既に2時間近く経ってるぞ。一切連絡なしか。
今どうなってるんだ。何で僕を連れていってくれないんだ。ギコの奴。
僕だって少しは役に立──」
(;*゚−゚)「──ぉあだッ!!」
棚の前を行ったり来たりしていたら、段ボール箱に足をぶつけた。
過去の資料が詰まっているので重たい。
足の小指を思い切り強打したしぃは、ぐおお、と色気のない唸り声をあげながらしゃがみ込んだ。
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(;*゚ー゚)「いっっったいな! もう! 誰だこんなとこに置いたの! 僕だ!」
一人きりの室内で物に怒鳴る己を客観視し、途端に恥ずかしくなった。
顔を赤らめつつ、箱を隅へ寄せる。
ふと、箱の中、色褪せたファイルが目に入った。
頬の赤みが失せ、口元が歪む。
彼女は少し躊躇ってからファイルを拾い上げ、適当なページを開いた。
中に挟まっている書類はほとんどが皺くちゃで、酷いものは破れてしまっている。
さらに酷いものは──黒っぽい染みが広がっていた。
ある書類の一番上に、「担当検事」の枠がある。
そこに書かれた名前を一文字一文字、ゆっくりと目で追った。
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(*゚−゚)「……」
──猫田つー。
しぃの父親が最後に担当した事件の資料。
この事件の裁判に向かう途中で、父は居眠り運転による事故で死んだ。
その車中から見付かったファイルだ。
事故の衝撃と父の血でめちゃくちゃになってしまっている。
(*゚−゚)(……あの日、家を出る直前の父さんは、眠たそうには見えなかったが)
とはいえ10年以上も前のことなので記憶もおぼろ気。
断定は出来ない。
もう何十回と眺めてきたファイルを箱にしまい、しぃは机に戻った。
小腹が減り、机の横に置かれた紙袋から菓子をいくつか失敬する。
──神隠し罪の裁判で証人となってくれた少年、ブームのために買ったものだった。
彼は先日、例の「こわいやつ」達の審理でも証言をし、その役目も終えて
オサムの手によって「上」へ送られた。おかげで菓子がずいぶん余ってしまった。
麩菓子を食べようとしたところで、携帯電話が鳴った。
すぐに電話を取る。
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(*゚ー゚)「もいもい!」
『あんた何かくわえてない?』
(*゚ー゚)「もしもし! ギコか、どうなった!?」
急いで噛み砕いた麩菓子を飲み込み、問いを投げつける。
電話の向こうのギコは、やや息が上がっているようだ。
「何か」は確実に起きている。結果はどうなった。
逸るしぃに、ギコは勿体ぶらずに答えた。
『──逮捕したわ。……ロマネスク』
(*゚ー゚)「……そうか」
知らず知らず、前のめりになっていた。
座り直し、背もたれに寄り掛かる。
『どうする? 今すぐ聴取とるの?』
(*゚ー゚)「ああ」
『じゃあ迎えに行くから準備しといて』
通話終了。
しぃは残りの菓子を腹に収めると、鞄を手に立ち上がった。
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(#゚;;-゚)「──しぃさん」
(*゚−゚)
部屋を出るなり、声がかかる。
母、猫田でぃの姿を視界に収めたしぃは、
一瞬詰まってから「こんばんは」と笑みを浮かべた。
(*゚ー゚)「こんな時間にどうしました」
(#゚;;-゚)「ギコさんのお手伝いに行っていたフサさんがね、今帰ってきて、
例の化け猫を捕まえたと言うから。
あ、フサさん、しぃさんに姿を見せてさしあげて」
ミ,,-Д-彡
でぃが隣の空間に言った瞬間、そこに大きな獣が現れた。
狼を何倍にもしたような、とてもとても大きな獣。
大口開いて、これまた大きな牙や舌を覗かせながら欠伸をしている。
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(*゚ー゚)「……ギコの手伝い?」
(#゚;;-゚)「ええ。すばしっこい相手だというし、人間だけじゃ捕まえるの大変だろうからって」
フサ──巨躯の狼の鼻面を撫で、でぃは答えた。
彼女が従えている妖怪達の中では一番の古株で、また、彼女の一番のお気に入りでもある。
仕事をする上で、この女の手だけは借りたくないのに──
舌打ちしかけて、何とか堪える。
(#゚;;-゚)「何かあったら言ってね。協力するから」
(*゚ー゚)「ええ」
誰が言うか。
自分はこんな女に頼らない。
父のように、自分と警察の力のみで調べてやる。
車の近付く音に気付き、しぃは敷地を出た。
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次スレ立ててきます
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こっち半端に残ってますが、次スレに移動します
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目次
幕間 >>60
case8 前編>>131/中編>>249/後編>>402 >>497
最終話 前編>>928
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うめ
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うめ
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ニュッさんツンさんに軽く社会的致命傷になりかねない弱み握られてるのによくやるわ…
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巨ニュッ
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