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( ^ω^)ホワイトクリスマスのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2012/12/23(日) 21:24:00 ID:vX8NP46.O
「あ……あぁ……。こんなの、こんなの嘘……だお……」
僕の目の前には『ツンだったもの』が横たわっている。
さっきまで元気に僕の隣を歩いていたはずのツン。
そのツンはきれいな顔さえ残していない。
髪の一本すら僕には触れられない。
「ブーン、何をしている! 危ないからそれ以上前に出るな!
ドクオは救急車を呼んでくれ!」
「あ、あぁ。分かった、クー!」
ドクオとクーが慌てた様子で何が言っている。
しかし僕の耳には入らない、入っても通り抜けていくだけ。
「ああ……俺は、俺はなんてことを……!」
ツンをツンでなくした張本人はトラックから降りてきて何か言う。
どうでもいい。
こんな男、どうでもいい。
僕はツンだったものに近づいた。
真っ白なコートは真っ赤になっている。
やっぱりこれはツンじゃない。
だってこんな悪夢のような出来事が、僕に降り掛かるはずがないのだから!
.
51
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 20:59:15 ID:cVsXFuLcO
( ^ω^)「今日イブだから駅前なんか行ったら人いっぱいだし、風邪なんかうつされたら堪ったもんじゃないお」
四人でできるゲームを探しながらドクオに答えた。
そして、ちょうど見つけた目当てのゲームを本体にセットする。
川 ゚ -゚)「ツン、ゲームやるぞ。そんな部屋の隅じゃなくてこっちに来い」
ξ;゚⊿゚)ξ「う、うん……」
ツンはなんだか落ち着かない様子で部屋の隅のパキラの植木の前からソファーに移動した。
川 ゚ -゚)「ツン、ここに来るのは初めてか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……うん。な、なんか緊張しちゃって……」
川 ゚ -゚)「彼氏の家だからか」
ξ;*゚⊿゚)ξ「は、はぁ!? そんなんじゃないわよ!」
首をぶんぶん振って否定するツン。
そんなにやられると少し傷付く。
('A`)「……わかりやすいな」
( ^ω^)「うん。同感だお」
52
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:00:07 ID:cVsXFuLcO
それから僕らはゲームで盛り上がった。
ドクオが強いのは知っていたがツンやクーもゲーマーだったらしくて、白熱した戦いが繰り広げられた。
僕は最下位だった。
( ^ω^)「……で、罰ゲームはどうするお?」
ゲームを始める前に、最下位は何か罰ゲームをしようと決めていたのだ。
僕の言葉に答えたのはクーだった。
川 ゚ -゚)「ならケーキ買いに行ってもらおうか。クリスマスだからな」
ξ゚⊿゚)ξ「それはいいわね」
('A`)「だが、ブーンに安心して任せられるか……?」
川 ゚ -゚)「どういうことだ?」
('A`)「ブーンのセンスはな、壊滅的なんだよ……」
そう言ってドクオが語ったのは僕らが小学生の頃の話だ。
僕が遠足のおやつに煮干しとよもぎ団子を持っていったことをまだ根に持っているらしい。
小さい男だ、本当に。
ξ゚⊿゚)ξ「なら私も一緒に行くわよ」
( ^ω^)「え?」
53
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:01:03 ID:cVsXFuLcO
ツンは僕の服を引っ張って、立たせる。
ξ゚⊿゚)ξ「私が選んであげる。ついでにお昼ご飯もいるでしょ。
荷物持ちはブーンだからね」
それに納得したらしいドクオとクーは、僕を引き止めたりはしなかった。
外は寒い。
昼前だというのに、吐く息は真っ白だ。
僕でさえこれなんだから、細身のツンはもっとつらいだろう。
僕がダメ元でそっと手を差し出すと、それに無言で返してくれる手。
ちらりと様子を伺うと、ツンの頬は真っ赤になっていた。
ξ*゚⊿゚)ξ「今日は特別なんだから」
(*^ω^)「うん」
住宅街を並んで歩く。
昼前だからか、昼前なのにか、やけに静かだ。
(*^ω^)「寒いおね」
ξ*゚⊿゚)ξ「……そうね」
54
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:02:39 ID:cVsXFuLcO
ゆっくり歩く。
二人の友人を待たせているのは分かっているけれど、この時間をあっという間に終わらせてしまうのはもったいない。
目的地は駅前のケーキ屋とハンバーガー屋。
買い物なんてすぐに終わってしまう。
ゆっくり、ゆっくり。
寒いけれど幸せ。
しかしそんなことに、影が射す。
( ^ω^)「なんだお、あれ?」
僕らの前方、つまり駅のある方向から、人影が近づいてくる。
普通の速度じゃない、走っている。
奇声を上げながら。
刃物を片手に。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ブーン」
(;^ω^)「……逃げるお」
僕達は繋いだ手をいったん離し転回、もう一度手を繋ぎなおして走りだした。
相手は速い。
僕だけならともかく、ツンが逃げ切るのは難しいかもしれない。
だけど、離さない。
僕がツンを守るから。
55
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:03:33 ID:cVsXFuLcO
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン、逃げて……! 私の足じゃ……」
(;^ω^)「そんなの許さないお」
しかしどうしようもない現実。
不審者はすぐ後ろに迫っていた。
川*゚ 々゚)「ころすのー! みんなみんな、しぬんりゃからー!!」
支離滅裂な内容、呂律も回っていない、ヤク中か何かだろうか。
ξ;゚⊿゚)ξ「きゃっ!」
(;^ω^)「ツン!!」
ツンが道に落ちていた空き缶に足を引っ掛けて転んでしまった。
( ^ω^)「今度こそ、僕が!」
迫るヤク中。
僕はツンに覆いかぶさって刃物を受けとめようとした。
失敗した。
いや、ツンがそれを許さなかった。
ξ; ⊿ )ξ「……!」
56
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:05:16 ID:cVsXFuLcO
ツンは素早い動作で立ち上がり、刃物を受けた。
川*゚ 々゚)「あうあうあー!!
やったの! あかいの、あかいのみれた! しゅごいきれいなの!!」
まるで僕を庇ったようだ。
少ししてヤク中は刃物を抜いて、僕には目もくれずに走りだした。
(;゚ω゚)「ツン、ツン!!」
ξ ⊿ )ξ「ぶ……ん」
ツンの息は絶え絶えだ。
どうしよう、どうしよう。
僕はツンを救うと誓ったのに。
守れなかった。
必死で塞ぐ傷口、しかし血が止まらない。
生暖かい液体がどくどくと溢れだして、ツンの声が小さくなって。
そして。
.
57
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:06:20 ID:cVsXFuLcO
******
( ^ω^)「……今度こそ」
.
58
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:07:57 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
また同じ朝。
同じ出来事が繰り返される。
僕は携帯電話を手に取った。
('A`)「早かったな」
僕の家ではダメだった。
ならドクオの家で遊んでみたら、どうなるか。
そんな僕の考えは、浅はかだった。
僕らは僕の家に集まった時と同じようにゲームをしていた。
やっぱり僕が一番弱かった。
今回は罰ゲームはなかった、しかし、もっと酷いものが待っていた。
(-_-)「兄さんはずるい。僕が欲しいものは全部持ってる」
59
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:09:10 ID:cVsXFuLcO
(;'A`)「ヒッキー、落ち着け。落ち着いてくれ……」
右手には刃を目一杯出したカッターナイフ。
ドクオの弟で三年前から引きこもりのヒッキー君は、ふらふらとドクオの部屋にやって来た。
ドクオは宥めようとする。
でも、それは意味がなくて、むしろ火に油を注いでいるようだ。
ヒッキー君はカッターをしまおうとはしてくれない。
(-_-)「頭は悪いし、スポーツができるわけでもない。顔だって不細工なのに、ずるいよ。
友達がいる、ついに彼女までできた。許せない」
(;'A`)「そ、それは……」
(-_-)「だから、いいでしょ? このくらい、罰当たらないよね」
ヒッキー君は、カッターを振り上げた。
その切っ先は、一番近くにいる僕を向いていて。
ξ;゚⊿゚)ξ「させないわ!」
(;^ω^)「ツン!!」
60
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:10:21 ID:cVsXFuLcO
(#゚_゚)「みんな死ねばいいんだッ!!」
カッターの刃が、ツンの首筋を切り裂いた。
(;'A`)「ヒッキー!」
ドクオがヒッキー君を組み伏せた。
川;゚ -゚)「きゅ、救急車!」
クーが携帯で救急車を呼んでいる。
(*-_-)「はは……あははは!! どうだよ、友達なんだろ!?
友達がこんななって、今どんな気持ちなんだよぉ!?」
ヒッキー君が狂ったように笑っている。
また、まただ。
また僕は。
.
61
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:11:09 ID:cVsXFuLcO
******
(´・ω・`)「また、やり直すんだね」
.
62
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:15:09 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
今までとは違う行動を取る。
******
( ^ω^)「ツン……」
.
63
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:16:16 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
何度も、何度も。
******
(´・ω・`)「さぁ、精一杯あがいてみせてくれよ」
.
64
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:18:21 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
何度君の死を見ても。
******
( ^ω^)「絶対に……」
.
65
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:19:37 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……絶対に」
救うと決めたから。
僕がツンを死なせない。
幸せなクリスマスを君と過ごす時まで、僕は運命と戦う。
僕は今回、ついにツンとのクリスマスイブを諦めた。
だから皆にメールをして、今日の集まりはなしにしてもらった。
( ^ω^)「これでツンが助かるなら……」
僕は風邪をひいていることになっている。
暇を潰そうにも、どうにも落ち着かない。
ひたすらベッドのふちに座って時計とにらめっこをしても、まだ昼にもならない。
( ^ω^)「うーん……」
時間が進むのが遅すぎて、だんだんとイライラが募ってゆく。
66
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:21:09 ID:cVsXFuLcO
今までツンの死はある一つの出来事によって起きていた。
直接の原因は事故だったり誰かに傷つけられたりだった。
しかしツンは必ず、『あること』をするから死ぬ。
ツンは必ず、僕を庇って死ぬ。
それが運命なのかは知らない。
だが、僕からツンを遠ざけてみる価値はある。
今日が終わってからだって、きっとツンと仲直りするチャンスはある。
だから今日だけは、僕はツンに会わないことを選んだ。
時計を見る。
やっと二分経ったところだ。
ため息を吐いてベッドに寝転んだと同時、階下から音がした。
インターホンだ。
( ^ω^)「……」
居留守を使おうか、そう思った。
しかし、聞こえてきた声が誰のものか分かったら無視は出来なかった。
( ^ω^)「ツン……」
67
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:22:47 ID:cVsXFuLcO
ツンが、何の用かは知らないが、わざわざ来てくれた。
出ないなんて選択肢はない。
僕は厚着をして、出来るだけ病人を装って玄関を開けた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン、大丈夫なの?」
( ^ω^)「……大丈夫だお」
まさか風邪で寝込んでいるはずの僕が出るとは思わなかったのだろう。
ツンは驚いた様子で僕を見上げている。
ξ゚⊿゚)ξ「良かった……。
クーとドクオはお昼ご飯買ってから来るって言ってたから、少ししたら来るわよ」
靴を脱いできれいに揃えて。
ツンは遠慮がちに玄関に上がった。
ξ゚⊿゚)ξ「朝ごはん、食べた?」
( ^ω^)「……す、少し」
本当はいつも通り食べた。
だが、そう言ったら嘘を吐いたとばれてしまう。
68
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:25:11 ID:cVsXFuLcO
ξ゚⊿゚)ξ「……そう。ブーンって、嘘が下手ね」
(;^ω^)「お?」
ξ゚ー゚)ξ「家にあったゼリー持ってきたわよ。少しでもお腹に入れておきなさい」
( ^ω^)「……うん」
焦った。
しかしツンは僕が何も食べていないのだと勘違いをしてくれたようだ。
僕はそっと胸を撫で下ろし、ツンをリビングに案内した。
ξ゚⊿゚)ξ「もう元気そうじゃない」
( ^ω^)「ツンの言う通りだお。だからツンはもう帰っても大丈夫だお」
ξ゚⊿゚)ξ「ダメよ。あんたがおとなしく寝てるよう見張っておかなくちゃ」
(;^ω^)「うーん……僕、そんなに信用ないかお?」
ああ言ってはこう言う、そんなやり取り。
ツンは引く気がないようで、僕はしぶしぶそれを受け入れた。
やっぱり取り返しがつくとしても、一瞬でもツンに嫌われるのは嫌だし、仲がギクシャクするのも耐えられない。
69
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:28:02 ID:cVsXFuLcO
僕はツンが大好きで。
たぶん僕の世界はツンを中心に回っているのだ。
みかんゼリーを食べてツンと他愛無い会話をする。
そんな時に、再びインターホンがなった。
( ^ω^)「ドクオ達かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうかもね」
ツンは立ち上がった。
僕はそれを制すように慌ててツンに続く。
客人に手間を掛けさせるわけにはいかない。
( ^ω^)「僕が出るお」
ξ゚⊿゚)ξ「私も行くわ」
( ^ω^)「でも……」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、行くならさっさと行くの!」
先を行こうとするツンの前になんとか割り込んで、僕は玄関を開けた。
( ^ω^)「はい、今開け……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!」
70
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:31:16 ID:cVsXFuLcO
(;^ω^)「!?」
ツンに突き飛ばされたはずみで前のめりに倒れた。
僕の目の前に立っていた宅配員は右腕を振り上げ、僕の上に覆い被さるツンに振り下ろした。
ξ; ⊿ )ξ「う、ぐ……」
(;゚ω゚)「あ……つ、ん……」
ツンは荒い呼吸を繰り返している。
ツンの体重が全部僕にかかった。
液体が服に染み込んで体が気持ち悪い。
目の前の男はツンが動かなくなったのを確認すると、僕の家の中へ入っていった。
要するに宅配便の男は、変装した強盗だったのだ。
.
71
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:32:28 ID:cVsXFuLcO
******
(´・ω・`)「運命を変えるんだろう? 君の力、見せてくれよ」
.
72
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:33:35 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
ツンを救う。
その想いだけが僕を突き動かす。
.
73
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:34:39 ID:cVsXFuLcO
――――――
数えられないくらい。
――――――
同じ日を繰り返して。
――――――
僕のためにツンを殺した。
.
74
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:35:45 ID:cVsXFuLcO
――――――
ツンは僕を生かす。
――――――
気の遠くなりそうな時間。
――――――
僅かな変化では何も変わらない。
.
75
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:37:19 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
もし、大きな変化が起きたなら。
僕は携帯を手に取った。
('A`)「……で、人を朝早くに叩き起こす程の重要な話ってのは何だ?」
ドクオは頭をかきながら尋ねてくる。
ここはドクオの部屋。
ツンとクーとの待ち合わせ前に無理言ってお邪魔したのだ。
今は隣のヒッキー君の部屋からは物音一つない。
僕一人で来たからなのか、違うのか。
理由は分からないが、まだ安全そうだ。
( ^ω^)「ドクオはもし……僕が今日を繰り返してると言ったら、信じてくれるかお?」
76
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:38:54 ID:cVsXFuLcO
('A`)「……は?」
僕は何も言わない。
ドクオの答えが聞きたかったから。
しばらく無言の気持ち悪い空気が続いて、やっとドクオは言った。
('A`)「頭でも打ったか?」
そりゃそうだ。
僕だってドクオに同じことを言われたなら、嘘か頭の異常だと思うだろう。
分かっていた。
しかし僕は落胆を隠しきることも出来なかった。
( ^ω^)「本当なんだお。僕の話、聞いてくれお」
僕を信じないドクオだが、それには頷いてくれた。
僕は話した。
今までの出来事を、簡潔に。
ショボンの存在まで話しておいた。
('A`)「……ブーンの言ってることが本当だとして、俺にどう証明する?」
( ^ω^)「最初の時と一度目の繰り返しの時は、ほぼ同じ展開だったお。
ということは……」
77
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:40:41 ID:cVsXFuLcO
('A`)「今駅に行くと、クーが一人で待ってるわけだな」
( ^ω^)「本屋の袋を持って、だお」
現実にはあり得ないようなことでも僕が大真面目に語るものだから、ドクオはついに信じようとしてくれた。
僕が言った通りのことが起きれば、ドクオは僕を信じるというのだ。
今日、前から約束していた通りの日程をこなすとして印象的な出来事はいくつかある。
一つは本屋に寄ったために三十分前には待ち合わせ場所にいるクー。
そして、その買い物の内容。
まだ言っていないが、現地で言えばクーにも僕の状況を理解してもらえるかもしれない。
二つ目は喫茶店での出来事。
僕のお気に入りの白い上着にコーヒーがかかる。
その後のやり取りだって知っている。
そして、ツンの死。
ツンはふらふらと歩く僕を庇って、トラックにひかれる。
さっそくドクオの家を出て、僕らはVIP駅前の待ち合わせ場所に向かっていた。
巨大なクリスマスツリー、その下にはクーがいた。
川 ゚ -゚)「おや、二人とも早いな。ブーンが時間を守るなんて、雪でも降るのか?」
( ^ω^)「クー、本は買ったかお?」
78
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:41:49 ID:cVsXFuLcO
川 ゚ -゚)「ん? 買ったが、それがどうした」
('A`)「……ブーン、お前」
( ^ω^)「信じてもらえたかお?」
クーがトートバッグから取り出した本屋の袋。
ドクオは目を見開いて僕の方を見て。
(;'A`)「ツンは、ツンのことも間違いないんだな?」
( ^ω^)「……うん」
僕は頷いた。
ひとまずドクオが信じてくれたようで嬉しい。
少し、ほんの少しだけ、希望を持てるような気がする。
川 ゚ -゚)「……? いったい二人は何の話をしているんだ?」
クーは僕たちの話を知るわけもなく、疑問符を浮かべている。
( ^ω^)「実は……」
ドクオは信じてくれた。
クーも信じてくれるかもしれない。
僕一人では変わらなかった運命を、変えられるかもしれない。
79
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:43:19 ID:cVsXFuLcO
僕はクーにも事情を話した。
僕の拙い説明にドクオが補足を入れてくれた。
しかし、クーの反応は。
川 ゚ -゚)「偶然だろう」
ドクオの後だったからか余計に冷たく感じた。
('A`)「でもブーンの言ったことは……」
川 ゚ -゚)「夢でも見たんだろう。私はそんなあり得ない話、信じないぞ。
よりによってツンが死ぬなんて、冗談でもやめてくれ」
それきり、クーは口をつぐんでしまった。
僕が何を言っても、ドクオが何を言っても。
クーの心は揺るがないようだった。
僕は愚かだった。
僕がもし、クーからドクオが死ぬと話をされたなら、僕はそれを受け入れられるだろうか。
いや、たぶん信じたくないからクーを拒絶する。
十時になってツンが来てからも、僕がクーと話をすることはなかった。
80
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:44:21 ID:cVsXFuLcO
カラオケボックスから出ると、外はもう真っ暗だった。
('A`)「……ブーン」
( ^ω^)「うん。ここまでは今までと同じだお」
('A`)「あぁ。本当にお前の言った通りで気持ち悪い」
隣に立つドクオは言った。
ドクオは今日一日で、すっかり僕を信じてくれた。
ツンを守るとも言ってくれた。
しかし暗い中に溶け込むようなドクオの姿は、僕の不安をかき消すには頼りない。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、早く帰りましょ」
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよ、辛気臭い顔して」
( ^ω^)「……」
81
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:45:29 ID:cVsXFuLcO
ツンが僕の顔を覗き込む。
僕の方が背が高いから、ツンは自然と見上げる形になる。
ξ;゚⊿゚)ξ「……!」
僕の体は突き飛ばされていた。
(;^ω^)「ツン!!」
ぐしゃ、という耳にこびりつくような嫌な音。
ツンの上には人が重なっていた。
いや、形を失ったそれは、ツンと混ざり合っていた。
川;゚ -゚)「つ、ツン……?」
(;'A`)「な、なんだよ、これ……!」
たぶん、飛び降り自殺だろう。
ツンの上の人は、空から降ってきたのだ。
.
82
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:46:32 ID:cVsXFuLcO
******
( ^ω^)「……こんなことで、諦めないお」
.
83
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:47:26 ID:cVsXFuLcO
――――――
ツンはひかれた。
――――――
ツンは刺された。
――――――
ツンは潰された。
.
84
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:48:41 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
何度も何度も何度も何度も。
僕は失敗した。
待ち合わせ場所のVIP駅前にはすでにクーがいた。
川 ゚ -゚)「ブーン早いな。雪でも降るのか?」
( ^ω^)「……そうだといいけど」
川 ゚ -゚)「……?」
今まで全く気にしなかったが、今日は常に晴れだ。
一度くらい違う天気も見てみたい。
僕の様子を少し見て、やがてクーは買ってきた漫画を読み始めた。
( ^ω^)「……何読んでるんだお?」
川 ゚ -゚)「命の話」
85
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:50:10 ID:cVsXFuLcO
( ^ω^)「面白いのかお?」
僕が中身を覗き見した時、その中身は男同士がやたら仲良くしている話だったはずだ。
それを『命の話』とは、どういうことなのか。
川 ゚ -゚)「面白いよ。ブーンには薦めにくい部分があるがな」
( ^ω^)「話、聞かせてくれお」
川 ゚ -゚)「いいぞ。この世界の魂の総量は常に一定でな……」
魂の数は常に同じ。
99にも101にもならない。
何があろうと100なのだ。
物語はそんな理から外れた魂を処理する二人組に焦点が当てられている。
あらすじだけなら興味の湧く話なのに、いったいどうして作者は無駄な恋愛要素を入れたのか。
川 ゚ -゚)「読むか?」
(;^ω^)「遠慮しとくお」
しかし、『魂の総量』という考え方は興味深い。
ツンの死が運命だというなら、他の誰かが代わりになれば結末は変わるのだろうか。
川 ゚ -゚)「……」
クーは黙って漫画を読んでいる。
86
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:51:42 ID:cVsXFuLcO
今なら、クーは隙だらけだ。
両手を上げて、伸ばしたら……。
( ^ω^)「……」
僕は馬鹿だ。
周りには他にも人がいる。
第一、友達を手に掛けるなんて僕には出来ない。
出来るはずがない。
僕はおとなしく携帯を取り出し、ネットに繋ぐ。
検索ワードはもう決まっている。
カラオケボックスから出ると、外はもう真っ暗だった。
繁華街だから街の光が邪魔をして、そこにあるはずの星も見えない。
寂しい夜だ。
僕は隣のツンにそっと手を伸ばした。
ξ*゚⊿゚)ξ「……今日は、特別なんだから」
(*^ω^)「……うん」
ツンは僕の手を握り返してくれた。
もう離さない。
それからほんの数十秒後、空からはやっぱり人が降ってきた。
.
87
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:53:19 ID:cVsXFuLcO
******
暗い世界に佇む二人。
ブーンとショボンはいつものように対峙していた。
( ^ω^)「この世界の魂の総量ってのは、決まってるのかお?」
(´・ω・`)「いきなり何の話だい?
僕は魂なんて目に見えないものには興味がないから知らないよ」
( ^ω^)「そうかお」
やっぱり、ブーンはそう思った。
こいつに何を聞いたって意味はないのだ。
それでも聞いてしまったのは、迷いがあるから。
( ^ω^)「僕は次こそツンを救うお」
88
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:54:39 ID:cVsXFuLcO
(´・ω・`)「毎回言ってるね」
( ^ω^)「……今度こそ絶対、だお」
そう呟いて、ブーンは消えた。
彼が消えたあとには何も残らない。
それに何かを感じることもなく、一人残されたショボンはいつもの表情で呟く。
(´・ω・`)「残念。君は大きな勘違いをしているよ。
魂がどうのこうのなんて、全く関係ないんだ」
そして、口角を上げる。
(´・ω・`)「ありがとう、楽しかったよ」
死にゆく君に、敬意を表して。
ショボンは結末を知っている。
彼が知らないのは過程だけ。
そして彼は、自らの享楽のためなら人間を絶望させることも厭わない。
それを人が悪魔と呼ぶのなら、彼は間違いなく悪魔だった。
.
89
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:55:56 ID:cVsXFuLcO
――――――
聞き慣れた目覚まし時計のけたたましいベルの音で僕は目を覚ます。
( ^ω^)「……」
僕はすぐにベッドから出た。
目的地は決まっている。
僕は僕の未来を決めた。
J(;'ー`)し「ホライゾンがこんな時間に起きてくるなんて……!」
僕の姿を見た母ちゃんはいつもと同じ反応。
もう見たくない。
だけど、決心を鈍らせるのも事実。
僕は母ちゃんを無視して台所に入る。
J( 'ー`)し「あら、コップなら戸棚よ」
90
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:57:23 ID:cVsXFuLcO
僕が喉を潤すために台所に来たと思ったのだろう。
僕は今から母ちゃんを裏切るのに。
しまってあった包丁を取り出した。
時々料理をする僕は場所を知っていたから、迷うこともない。
J(;'ー`)し「ほ、包丁なんか持って、急にどうしたの?」
( ^ω^)「……」
包丁を持つ手が震える。
母ちゃんは僕を見ている。
たぶん僕が何をするか感付いている、そんな表情。
( ^ω^)「ごめんね、母ちゃん」
僕は母ちゃんに背を向けて、喉に包丁を突き刺した。
力が抜けた体が床に乱暴に投げ出された。
直後、絹を裂くような悲鳴が聞こえたような気もするが、僕にはもう関係ない話だ。
でも叶うなら、最期にもう一度。
ツンに、会いたかったな……。
.
91
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 21:59:31 ID:cVsXFuLcO
******
私がドクオから連絡を受けた時、ブーンはもう息絶えていた。
ξ;⊿;)ξ「どうして……どうしてよぉ……」
ベッドに縋りついて泣き叫ぶ。
この部屋の誰も、私なんか見ていない。
ブーンが死んだのが信じられなくて、それぞれに泣いたり俯いたり。
ベッドに横たわるブーンの顔はいつもとは比べものにならないくらい真っ白で。
だけど薄ら微笑んでいて。
――やっぱり陰気だ。
涙と鼻水を拭いて、私は一度心を落ち着けることにした。
病院の中庭は静かで、まだ夕方なのに誰もいなかった。
あの時と同じだった。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……」
92
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 22:01:08 ID:cVsXFuLcO
いや、一つだけ違うことがあった。
世界は常に変化する。
私が経験した今日、一つとして全く同じ今日はなかった。
だけど今、目の前の景色は異常に見えた。
雪が、降っている。
初めてだ。
いつも晴れている今日、どうして今回に限ってこんな天気なのだろう。
私が生まれてからさえ、一度だってクリスマスイブに雪が降ることなんてなかったのに。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、待っててね。次は絶対、幸せになろうね」
空を見上げる。
顔に降る雪が気持ちいい。
冷たいのに温かい、不思議な感覚。
私は目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、たった一人の笑顔だけ。
.
93
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 22:02:43 ID:cVsXFuLcO
******
真っ暗な空間に二人の男女。
しかし不思議と互いの顔はよく見える。
片方は気の強そうな女。
今は穏やかな表情に、笑みさえ浮かべている。
片方はしょんぼり顔の男。
感情のない目で、ただ対面する女を見つめている。
ξ゚⊿゚)ξ「初めて雪が降ったわ」
(´・ω・`)「そうかい。……でも、君には関係ない出来事だ」
ξ゚⊿゚)ξ「わかってる。でも、すごく嬉しかったの」
(´・ω・`)「どうして?」
ξ゚⊿゚)ξ「わからない。だけど私は、喜ばないといけない気がした」
(´・ω・`)「ふぅん」
ショボンはつまらなさそうに声を洩らした。
94
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 22:04:13 ID:cVsXFuLcO
ショボンが望むのは、こんなツンではない。
もっと泣いて、怒って。
目の前の人間の負の感情を見たかった。
それがショボンの楽しみだから。
しかしそんなことを露程にも知らぬツンはショボンを見据え、微笑む。
ξ゚ー゚)ξ「なんだかね、今度こそブーンを救って、『ブーンと一緒に幸せに』なれそうな気がするわ」
にっこり、初めてショボンに見せた顔。
そしてツンは光に包まれて消えた。
(´・ω・`)「内藤ホライゾン、君の願いはツンを遠回りさせたけど、ムダではなかったのかもね」
元はと言えばツンが『内藤ホライゾンの死』の運命を変える為に始めた繰り返し。
それをややこしくしたのが『内藤ホライゾンを庇うツンの死』を覆そうとしたブーンの願い。
しかしブーンの願いは本人の死を代償に叶えられた。
その結末はツンの心に何かを残したらしい。
(´・ω・`)「……さて、次のツンはどれだけ僕を楽しませてくれるかな?」
(´^ω^`)「はは……あはは! あはははは!!」
ショボンの笑い声が高らかに、闇の世界を満たした。
95
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 22:06:20 ID:cVsXFuLcO
ξ;⊿;)ξ『やだ、どうして、どうして死んじゃうの!? 認めない、私は認めないわ!
だって、私とブーンは』
『一緒に幸せになるんだもの!!』
ツンの願いには代償がない。
よってツンの願いはツンが最良の選択を続け、12月24日を越えるまで叶わない。
一つの結末に収束し続ける運命を変えるのは容易ではない。
神の力を持ってしても、だ。
だから。
――楽しいゲームは、まだ終わらない。
( ^ω^)ホワイトクリスマスのようです END
.
96
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 22:07:51 ID:cVsXFuLcO
以上、鬱祭り参加作品でした。
二重の意味で鬱になってもらえたら嬉しいです。
反映されてるかはともかく一番意識したループ系作品はシュタゲでした。
97
:
名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 22:08:43 ID:cVsXFuLcO
読んでくださった方、ありがとうございました。
98
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名も無きAAのようです
:2012/12/24(月) 22:31:48 ID:jjNUE47EO
乙
シュタゲ知らないが良かった
99
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名も無きAAのようです
:2012/12/25(火) 12:07:24 ID:Dinl0W1I0
おつ!
個人的にはヒッキーが一番鬱だったわ…
100
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名も無きAAのようです
:2012/12/28(金) 22:46:57 ID:tvrnLaho0
報われねェ
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