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黒の月―― Lucifer went forth from the presence of Jehovah

52ノラ ◆SWPOXuu/ls:2017/08/14(月) 13:37:42 ID:XcQX46DQ0


木々は、燃え盛り、個々の消耗も激しい。皆が焦り始めた中、指示を出す者が

「陽子!あれよ!」

咲羽翼音だ。彼女は、この状況を打破する方法を知っていた。

「あれ……?……そうか!分かったわ!えぇい!!」

この状況を打破する力、それは、大宮が持つ九曜護符の水符だ。大宮は咲羽の指示をすぐに理解すると、水符を付与した破魔矢を、上空へ向けて放つ。すると、辺りに雨のように水が溢れだした。それにより、炎は鎮火する。
それだけではない、さらに、滝のような水流がコピールシファへと降り注ぐ。大宮、咲羽、ノラには、見覚えのある光景だ。

「今よ!咲羽さんっ!!」

「ええ!」

「「凍りなさい!!」」

咲羽がコピールシファに手を向けると、たちまち周囲の水が凍りついていく。
そう、これはあの時、合宿や陽動作戦の時に使用した咲羽の能力と大宮の護符を合わせた策だ。二人は、水符を使用した時から、この策を使うと相互理解していたのだ。

「悪魔と退魔師が力を合わせたか……だが、これで終わりかい?」

退魔師と悪魔の合わせ技に、驚愕を隠せないコピールシファ。だが、巨体と化した彼を完全に凍り付かせるのは、二人の力を合わせたとしても、不可能だった。
胴や足は凍り付いても、腕や頭は動かせる。その両の腕を伸ばし、近くの咲羽と大宮を掴もうとするが……

「まだ終わりではありません!ヴァイオレット・ソウル!!」

「今度は私達の連携だよ!」

「「いっけえええぇ!!」」

右の腕を、紫の炎を纏った銀と黒の二つの剣が。左の腕を、激しく燃え盛る炎を纏った拳が。それぞれ、切り裂き、打ち砕き、燃やしていく。ノラと黄昏の連携だ。

「くっ……」

それにより、コピールシファに、大きな隙が生じた。事態は完全に好転した。少年少女達のこれまでの経験に、生まれたばかりのコピールシファは追い付けていないのだ。

「今だ!桜井!動けるよな!?」

「当たり前だ!ぶっ飛ばす相手が目の前に居るのに、倒れてなんかいられるかよ!」

その隙を、春日と体勢を立て直した桜井は、見逃さなかった。二人は、息を合わせ、跳躍し……

ああ、そうだ。俺達は、このために戦ってきたんだ。

「俺は復讐の為に……」
「俺は平和の為に……」

「「 ルシファをぶっ飛ばす!!! 」」

二つの声が重なったその瞬間、春日の逆説結界を貼った拳と、桜井の獣と化した拳が、コピールシファの両の頬へとめり込んだ。

「っ…………!!?」

大きな音を響かせ、遂にその巨体を倒したコピールシファ。やがて、その身体から黒い煙を上げ、徐々に消えていく。それと同時に、上空の黒の月も、透けていく。つまり、長き戦いは終わり、本隊の少年少女達の勝利を意味していた。



戦いを終えた少年少女達は、消耗し動かない体を休めつつ、その勝利を確かに実感していた。

「やった……遂にやったんだな、俺達……」

「ああ、遂にルシファをぶっ飛ばした……」

複製品とは言え、感覚は共有している筈だ。つまり、二人の拳は、間違いなくルシファに届いたのだ。

「やっと、あの忌々しい月も消えたのね。やっぱり、この街の空には、あんな物似合わないわ。」

「同感。珍しく意見が合ったわね。」

黒の月が消え、見渡すことが出来るようになった夜空を見上げれば、なんだか憎らしい程に綺麗に輝く明けの明星。日の出がもう近いようだ。一同は、暫く、それを見ていた。

「見てください。日の出です。」

「綺麗……なんだか、まるで、私達の勝利を祝うようだね。」

やがて、明けの明星も、昇る太陽の光により、見えなくなっていく。それは、まるで、彼らの勝利を祝うかのように美しかった。









……しかし、忘れてはいけない。明けの明星は、太陽の光によって見えなくなっているだけで、そこに存在しているということを……

「………………」

幻影城の玉座にて、口元から一筋の血を流したルシファ。その表情は、暗い闇に覆われ、誰にも伺うことが出来ない。ルシファがこの戦いで何を思ったのか、今は誰にも分からない。


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