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黒の月―― Lucifer went forth from the presence of Jehovah
49
:
◆kmP3XI7i0M
:2017/08/05(土) 23:58:19 ID:Zp4VpA3k0
>>48
「……ふふ。」
まさか、“黒の月”を半身ながらも、欠けさせる者が居るなんて。──これだから、人間は面白い。そう、ルシファは思った。
コピーであるが故に、彼の思考は“彼”と寸分違わない。この狂騒は、彼にとって、この世で最も甘美な響きでもある。
全能の彼であっても、自ら響かせられるのは独奏曲にすぎない。協奏曲こそ、美しい。彼のソロ・コンチェルトを支えるのは、やはり、人間で在るべきだった。
「でも、そろそろ飽きたかな。」
だけど、この曲にもそろそろ飽きた。黒の月の修復が終われば、終わらせようと思う。
主演奏者でありながら、指揮者でもある彼は、そう思った。この街が終われば、次の街で奏でるだけだ。或いは、この世全てを舞台にしてもいい。
──人間は不完全だ。空に飛んだぐらいで追って来ることができない。その不完全さは、時にして美徳だが、基本的には悪徳だ。
必要に迫られて安易な手を打つと、こうして、醒めることになる。これぐらいで途絶える曲なら、もう、名残も惜しみもありはしない──
その、筈だった。
ルシファの上空から飛来する巨大な“氷塊”。それを認めたルシファの振るう右手が、一瞬で、それを粉々に割る。氷の向こうに見えたのは“悪魔”。
割られたことも予想通りだったのか、即座に次の氷塊が放たれる。次は左手で砕くと、ルシファは“神々しい”笑みを浮かべた。
「君は悪魔だね。この月の下で私を攻撃できるなんて、面白い存在だ。」
「あら、もしかして上下感覚逆転してる?私が居るのは、その月の“上”よ。」
次なる氷塊を投げつけながら、咲羽も笑みを浮かべた。──口で紡ぐほど、余裕がある訳がない。この大きさの氷塊を放つのは、一度でも苦しい。
それを幾度も放っては、砕かれる。身体が氷のように冷たくなっていくのを感じるのは、気のせいではない。純粋に体力を削られる。
それに、似姿とはいえ、ルシファに相対するということが悪魔としての根源的な恐怖を呼び起こす。本当なら、いますぐにでも飛び去ってしまいたい。
「でも、手慰みにもなりはしない。所詮君は、つまらない悪魔だ。」
10個目の氷塊が砕かれる。最早、咲羽に新たな氷を作り出す力は残っていない。つまらない悪魔。確かにそうかも知れなかった。
──だけど、それでも。彼女はここで退くわけにはいかなかった。その理由は今更言うまでもない。青臭すぎて笑えてしまうから、言いたくもない。
こんな馬鹿なこと。悪魔の風上にも置けない。それに、彼女は所詮悪魔で、人間が好むような自己犠牲とか何だとかは、大嫌いだった。
「 あら、そう。なら暇潰しに、これでも喰らいなさい。 」
だから、此処に来たのは、もう一度彼らと笑い合う為でしかない。
そして、彼女はそれをつまらないなんて、死んでも思わない。
「……なるほど。」
砕け散り、水分と化して宙空に漂った水分が再び凝結する。象ったのは巨大な“氷の鎖”。ルシファが反応し、砕くよりも疾く。その身を絡め取る。
ルシファの口には笑みが浮かんでいた。つまらない、と言ったのは間違いだった。悪魔にも、美しい者が居る。久方ぶりに、それを思い出した。
重力に囚われた彼の身体は、真っ直ぐと、神社へと堕ちて行く。──この先には、どんな美しい人間達が待っているのだろうか。
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