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黒の月―― Lucifer went forth from the presence of Jehovah

46 ◆UBnbrNVoXQ:2017/07/30(日) 16:17:40 ID:R3rU1bJo0
>>42

 不自然なまでに荒らされた街で、一般人が持てば確実に警察の御用となるものを片手に嗤う男。元より部下に大した感慨を持たない草薙にとって、注視すべきはそちらだけだ。そして、単なる戦闘狂と見くびって侮るようでは、曲がりなりにも「黄金の英雄」は務まらない。
 草陰からじっと獲物を狙いすますように、白目の多い三白眼が眼前の男を睥睨する。竜也のぎらつく瞳は獣めいた獰猛なものだが、草薙の部下だったものを吸収した際に現れた光は、相反するように0と1を模したものだった。

「……ふむ、なるほど」

 沈思は数秒。草薙もまた、常の嘲笑うような表情を顔に張り付ける。

「当代の『オメガ』の契約者は君かね」

 冷戦時の混乱期よりAPOHに所属していた草薙が、組織から『一級』の指定を受けている悪魔の存在を知らないはずがない。
 車のキーを背広の裏ポケットに戻しながら、そこにある小型の機械に触れる。悪魔との遭遇かつ何らかの事情で詳細の連絡が厳しい際の通信機だ。ある程度上位の人間であれば持っているため、今夜の第3会議室は該当の通信が鳴りっぱなしで気に留められる可能性は低いだろうが、草薙が、となれば話は別だろう。
 何より、今の時点で本部に誰もいなければ……既に佐倉達が辿り着いているのでこの目論見は半ば破綻しているのだが……位置情報を伝える連絡はかなり明確なアリバイとなる。

 そして、防衛省の長官とも繋がりを持つ草薙の知識はそれだけではない。両腕を広げて大仰に嘆いてみせる演技をしながら続ける。

「随分と残虐な真似をしてくれたじゃァないか。流石指名手配犯殿といったところか、迷いがない」

 戦況を見渡すふりをして、彼我の間にある障害物を確認。「常人であれば」動かせない大きさのコンクリート片が3つほどあることを視認した後に、不可視の触手を展開した。
 左手の触手をそっと地面に這わせながら、右手をあたかも後方の部隊に指示するように振り上げる。

「私は、貸しを作るのは好きだが借りを作るのは大嫌いでねェ……部下の分と待たせた分、一気に返させて貰おうか。
 ――どれが私の攻撃か、当ててみたまえ」

 振り下ろす右手。目を凝らせば僅かに軌道が見えるかという速度で四本分の触手が飛ぶ。不可視の弾丸、と一見した限りでは映るだろうか。
 そして数秒後、左手の指三本分の触手が竜也に最も近いコンクリート片を砕き、まるで時限式の爆弾が作動したかのように襲い掛かる。

 『後方の部隊に不可視の弾丸を撃たせ、草薙自身は爆弾を作動させた』か『草薙自身が能力で不可視の弾丸を撃ち、離れた場所にいる人間が爆弾を作動させた』と誤認させるための動きだ。こう思い込んでしまった今までの敵はすべからく自滅した。

 万一、……今までそのような敵はおらず、よって草薙もそれを狙ってはいないが……技の観察目的で全く動かないのであれば、致命傷と引き換えに『全て草薙の攻撃で、不可視の何かで操っている。糸状、もしくは棒状の何かだ』と気づけるだろう。
 もしくは攻撃の仕組みなど一切気にせず回避にだけ専念するのであれば、全て避けることも可能だろう。


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