したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

黒の月―― Lucifer went forth from the presence of Jehovah

1管理人:2016/03/18(金) 01:21:29 ID:???0
【海馬市山中・次元の狭間・『幻影城』】

 かつて多くの悪魔や眷属たちでにぎわっていた幻影城には、今やただ一人の悪魔しかいない。
 一台のピアノに向かい、一心不乱に美しい音を奏でる悪魔――始祖悪魔ルシファは、長い交響曲を奏で終えると、ゆらりと立ち上がった。

「万能の私が、人間の都市一つ手に入れられないなんて……なんて美しくて華やかな混乱なんだろう。
 私を愛したものたちが死に、しかし私はまた、彼らの名、すら、思い出せぬ……」

 ルシファにとって【堕天六芒星】の幹部の死や失踪など、とるにたらない些事なのかもしれない。
 それでも、気まぐれに欲したこの街を、いまだ手中にいれられない現実はここにある。
 そのことに、ルシファは笑う。笑い転げる。高らかな笑い声――
 不意にルシファは、自らの脇腹に手を突き刺した。
 そしてその右手から出てきたものは、自らのあばら骨だ。
 唇から呪詛がこぼれ出ると、骨はみるみる肉を纏い、ルシファとうり二つの姿に変形する。

「”コピールシファ”……百万分の一の力しか持たない君に、【黒の月】を託そう。
 この街を私から守り抜いた人間たちと、
 この街を手に入れ損ねた悪魔たちへの手向けだよ。
 君の目で、耳で、肌で、舌で、霊感で……もしあの街が、魔界になったらどんな風になるか。
 ……つぶさに見ておいで」

 腹から血を出し続けるルシファは、その血からソフトボール大の玉を、あばら骨だった「コピールシファ」に手を出す。
 コピールシファはそれを受け取ると、滑るように床を滑空し、幻影城の外へ出た。

【 3月17日。】

 その日、海馬の上空に、バスケットボール大の玉がプカリと浮かんでいた。
 だが、その玉の存在に気づくものは居ない。
 しかし、その気配に気づくものは――


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板