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海馬市陽動作戦 Who has "gift" for the sacrifice ?
42
:
夜桜学園4-4
◆UBnbrNVoXQ
:2016/02/29(月) 03:26:05 ID:R3rU1bJo0
時計台に辿り着いた春日たちは、惨劇の後のような情景の中で立ち尽くす桜井に息を呑んだ。
しかし、彼等の友情は伊達ではない。彼が“黒獣”と知って尚、桜井がやったとは誰も思わない。
桜井、桜井くん、先輩、とそれぞれに呼んで駆け寄っていく。振り返った桜井は、泣きそうな顔をしていた。
「みんな……! 頼む、何か方法があるなら教えてくれ、先輩が……!」
言いさして指し示された沙里亜の酷い有様に、ノラが悲鳴をあげそうになって踏みとどまる。
ノラの華奢な肩を支えるように大宮が手を置き、咲羽が沙里亜の脈をとってまだ生きていることを確認する。
「それなんだが、桜井」
春日が手短に先刻見たことを伝える。そして、四羽の言葉を一言一句洩らさず。
すると桜井は場違いなほどに躊躇いのない安堵の表情を向け、春日に手を差し出した。
「良かった……! サンキュ、春日!」
「待て桜井、どうする気だ」
「決まってんだろ! 俺が使う!」
「待て! いくらお前が“黒獣”だからって……」
「そうよ! 私か、百歩譲ってAPOH所属の誰かが使うべきよ!」
途中で大宮も混ざり、侃侃諤諤の口論となる。誰もかも、仲間を思うがゆえの言い争いだ。
そのことが分かっていても、ノラはおろおろと先輩たちを見るしか出来ない。
彼女らの斜め下、未だ沙里亜に触れていたため座り込む形に近い咲羽が息を吐く。
「貴方たちね、『困難は分割せよ』って言葉を知らないの? これ言ったの、人間の哲学者でしょうが」
一斉に振り向く三人に、こんな状況でなければ面白いのにと思いつつ、説明を足した。
「さっきの四羽って人は一人でやったからああなったんでしょう?
複数人で発動させれば、一人一人の負担は軽くて済むんじゃない?」
「でも、そんな上手く……」
おそらく四羽も……あの場の大人の誰も思い当たっていなかった可能性を指摘され、咲羽以外は揃って逡巡の色を見せる。
四羽の戦闘を間近で見ている春日は特に顕著だ。あの実力者がやらなかったことを、と顔に書いてある。
大宮と桜井は逡巡というより心配か。人命が係っている場面で、もし失敗したら、という不安があるのだろう。
ノラはむしろ混乱だ。目の前の重傷者も先輩も見捨てられない、妙案に縋っていいのか分からない。
まだまだ頼りない若い人間たちだ、だからこそ面白いと咲羽は感じる。
「いかなかったらそこで揉めればいいじゃない。悪魔である私か桜井くんがメインで持つことをオススメするけど。
……今更協力できない人、いないでしょ?」
言外に自分も協力する、と示す咲羽。ノラが弾かれたように、私もです、と名乗りをあげる。
三人は顔を見合わせ、誰からともなく笑った。
そうだ、佐倉に合宿で習ったではないか、協力しろ、と。それが生き残る道なのだ、と。
此処にいるのは、背中を預けられる仲間たちだ。手を重ね力を出し合うくらい、なんてことない。
十字架に近い四つの先端を、桜井、大宮、春日、ノラで持つようにし、咲羽が中心部に手を添える。
死人同然の肌となっている沙里亜の傷、それが最も深い腹部の上にかざす。
途端、力が抜ける感覚が全員を襲う。だが、覚悟していたほどではない。――推測は当たっていたのだ。
やがて、沙里亜の頬に赤みが戻る。意識は戻らないが、それは単純に元戦闘職種かそうでないかの違いだろう。
助かった。助けられたのだ。
夜中の時計塔で、ささやかな歓声があがる――
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