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珍さんと剣士娘たん
1
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:31:20 ID:hoHbDutA0
SS書いてた俺だけど本スレ規制で書けないからこっちで書くわ
とりあえずログはって自己満足するわ
2
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:32:00 ID:hoHbDutA0
珍「ふぅ、、今日も日課のキャラメル狩り終了、と。」
今日も今日とてカードは出ない。
キャラメル狩りを始めてからどれくらいたっただろうか。
珍「えーと、、、もう2ヶ月目か。やはりカードってのは出にくいもんだな。。。」
ため息をつきながら手頃な切り株に腰を降ろす。
キャラメルを倒すのは苦ではないが、やはり目的のものが出ないと疲れる。
珍「LUKも105まで振ったんだけどな。。なんで出ないんだろ。•••まぁ確率だしな、しょうがないか」
もう夕暮れだ。今日は帰るとしよう。
珍「…ん、しまったな。蝶の羽を切らしてたか。仕方ない徒歩で帰るか、、、ハエももったいないしな」
移動して5分…妙な気配を感じ、立ち止まりあたりを見渡す。
珍「…気のせいか。ちょっとナーバスになってたかもな」
自嘲気味に笑い移動を再開した直後、、、鈍い衝撃が後頭部を襲う!!
珍「ぐっ!? …うぅ」
あまりの衝撃に耐えきれず倒れこむ。
しくじった……一体なにが…?
意識が闇へと消えていった。
3
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:32:55 ID:hoHbDutA0
珍「………ぅ……」
気付くと、うつ伏せに倒れていた。
…なぜ俺は倒れて…?
ズキン!! 鈍い痛みが頭を襲う。
珍「ぐ…そうか俺はいきなり何者かに襲われて……ここは…一体…?」
見慣れない景色にあたりを見渡すと…
そこは見慣れたキャラメルの巣だった。見慣れないと思ったのは勘違いだったようだ。
珍「…妙だな。俺を襲うにしても、モンスターなら気絶した俺は今頃ヤツらの胃袋だろう。山賊だのならば身ぐるみはがされてもいいはずだが…荷物も無事だ。」
思わず首をかしげる。一体何の目的で…?
狙われる心当たりなら、ある。
とある事件がきっかけで、俺はアサシンギルドを脱走した。
ギルドを抜けるということは、暗殺対象となること。忍者の世界の抜け忍みたいなものだ。
しかし、あのギルドにいたら俺は…
珍「あいつらなら俺を確実に、殺すはずだ。」
あたりを見渡す。
ふと、目に、つくものがあった。
珍「…なるほど、な。」
事態を理解した俺は、ニヤリと笑った。
4
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:33:28 ID:hoHbDutA0
進行方向の目線ほどの高さに、もの凄く太い木の枝があった。
どうやらこれにしこたま頭をぶつけて気絶したようだ。
珍「フッ、バックステップも考えものだな…」
自嘲気味に笑い、荷物を拾い上げる。あたりはすっかり朝になっていた。
珍「夕方すぎだったはずだが…もう朝方か。…ギルドを出てから熟睡したこともなかったしな。気絶したまま寝ていたか。」
久々にとれた長い睡眠のおかげか、身体が軽い。
珍「災い転じて福となる、ってか。はは、今日こそカードも出ちまうかもな!」
軽く屈伸をして今日のプランを考える。
ーーと
???「キャァーッ!!だ、だれかぁ!」
女の悲鳴だ!
???「た、たすけてぇ!」
5
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:34:08 ID:hoHbDutA0
珍「このあたりに凶暴なモンスターはいないはずだが…」
(クローキング!!)
足音、姿さえも消し去り悲鳴のしたほうへ急ぐ。
???「いやぁ!はなしてぇ!」
悲鳴の元へ辿り着くと、女剣士がヒドラに襲われていた。
触手はすでに脚を捕らえ、太腿にまで伸びていた。
一次職とはいえヒドラ程度に苦戦するとは…しかし水場もないこんな場所になぜヒドラが?
考えているうちに女剣士にどんどん触手は伸びていく。もはや身動きも取れないだろう。
(やれやれ…ヒドラ程度に捕まるようじゃ剣士としてやっていくのも厳しいだろう。助けるのは容易だが…少し痛い目を見てから助けてやるか)
姿を消したまま静観する。
触手はすでに全身に廻り、剣士の口内にまで伸びている。
剣士「………!!」
剣士の顔に紅が差し始める。触手はなめらかな動きで服の隙間から秘部へと伸び、粘液を出し始める。卑猥な音とともに、触手はさらに剣士を攻め立てる。
その淫猥な光景を目にし、不覚にも興奮を覚えてしまう。
珍「……」
6
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:34:51 ID:hoHbDutA0
目前に繰り広げられる光景に目が離せない。
剣士は恐怖に怯えながらも自分の身体を襲う快感にとまどっているようだ。
ヒドラの粘液には絶大な媚薬効果があり、調教したヒドラをペットとして飼いならし性欲発散に利用する輩もいるほどだ。
次第に剣士の抵抗も弱まり、四肢から力が抜けていく。
快感と疲労でもはや限界が近いのだろう。
ーびくんっ!
剣士の身体が痙攣する。絶頂に達したのだろう。しかし尚もヒドラの触手は動きをやめない。
助けなければ、と思うが、この光景をもっと見ていたいと思う。いや見るだけではもう我慢も出来ない。いっそ……
ーーこんっ!
足元に軽い衝撃が走る。
ッッ!!
不意打ちに驚きその場から瞬時に距離をとる。
…どうやらアクティブ化したキャラメルが襲ってきたようだ。
距離をとると同時にクローキングがとけ、剣士の目の前にきてしまう。
急に現れた俺に驚きながらも剣士は懇願するように俺を見る。
我に帰った俺はヒドラを秒殺し、剣士にまとわりつく触手を切りちぎった。
剣士「…助けてくれてありがとうございます…はあっ…」
今だ快楽の余韻の中にいる剣士は、息も絶え絶えに声を出す。
7
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:35:42 ID:hoHbDutA0
…クローキングで見てたのはバレてないよな…?
珍「大丈夫か?災難だったな」
平静を装い剣士を抱き起こす。
粘液の生暖かい感触とともに火照った剣士の体温が感じられる。
……
剣士「あ、ありがとうございます。。不意を付かれてびっくり、しちゃって…はぁはぁ……ん……はぁ……ぁ……」
安堵した顔でこちらに体重を預けてくる。まだ息も整わないようだ。
…剣士のくせに随分華奢で柔らかい、な。
珍「…ヒドラとは言え油断したらああなるんだ。特殊な攻撃方法だからな。…だいぶ粘液を飲まされたようだが胸に違和感はないか?」
剣士「はぁ…苦しい…です……」
モンスターの粘液だ。媚薬効果があるとはいえ、人体に悪影響なのは決まってる。
…このままじゃまずいな…。
珍「待て、確か解毒剤が………あった。ヒドラの毒だと経口タイプだな…おい飲めるか?……っておい!」
少し目を離しただけで剣士は気を失っていた。毒と、疲労のせいだろう。
珍「…このままじゃマズいな…。おい、しっかりしろ!起きろ!」
頬を叩くと少し反応がある。…が解毒剤を飲むのは無理そうだ。
珍「飲ませるしかないか…コレ不味いんだよな……」
ぐい、と解毒剤を口に含んだ。
8
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:36:20 ID:hoHbDutA0
珍「…」
目をとじたままの剣士の顔を、じっと見る。
…あどけなさが残るが、整った顔立ちをしてる。美少女、と言っていいだろう。
こんな娘がなぜ剣士に?
あごに指を添え、くい、と持ち上げる。
…人それぞれ事情があるわな。俺には関係のないことだ。
唇を近づける。仕方ないと言い聞かせながらも、胸の鼓動が早まる。
…くそ、ヒドラの媚薬ってのは随分と強力なんだな。こっちまでおかしくなるぜ。
言い訳めいた考えをしながら、そっと唇を合わせた。
珍(…強力な解毒剤だ。少しずつ飲ませよう。)
ゆっくりと、流し込む。
ぴくり、と剣士の身体が動く。
珍(即効性バツグンなシロモノだからすぐ動けるようになるだろう。)
自然と、剣士の頭を撫でていた。
…ぐいっ!
ーーー!!?
半分ほど流し込んだところで、剣士が唇を強く押し付け、手を首に回してきた。
同時に、解毒剤を吸い込むように飲み出しし、解毒剤がなくなると舌を絡ませてきた。
珍「ーー!! んー!」
口を離そうとするも、首の手が邪魔で離せない。どこにこんな力が?
なおを舌を絡ませ、解毒剤を貪り尽くす剣士。
珍(…うぅ、柔らかい……キス、って気持ちいいんだな…)
自然と、こちらも舌を絡ませだしていた。
9
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:36:53 ID:hoHbDutA0
珍「・・・はぁ・・・んぐ・・んく・・ちゅ・・・」
剣士「・・ん・・・んぅ・・・ちゅぱ・・・はぁっ」
お互いに、激しく舌を絡ませあう、呼吸を忘れたように、貪りつくす。
珍(・・・これ・・ヤバい・・・な・・・)
ヒドラの粘液のせいか、はたまた剣士の感触のせいか。
これ以上続いたら自制出切るかどうか、危うい。
剣士「・・・ぷはぁっ!!」
息が続かなくなったのか、剣士が顔を離す。
珍「・・・はあっ!」
残念なような、安堵したような。自分でも顔に熱を帯びているのがわかる。
・・・いや、熱を帯びているのは顔だけでは、ない。複雑な気持ちで俺は剣士の顔を眺めた。
剣士「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
解毒剤は間に合ったらしい。剣士は安らかな顔で寝息を立てていた。
ひとまず安心だろう。
珍「・・・ふぅ。」
心を落ち着ける。マインドコントロールだけはアサシンギルドで磨いてよかった技術だと、思った。
珍「・・・くそ、俺らしくもない。」
寝息をたてる剣士を抱きかかえ、街へと向かった。
10
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:37:26 ID:hoHbDutA0
・・・・・・・・・
・・・気づくと、見知らぬ場所にいた。
ふかふか、のベッド。どこかの、宿屋?
剣士「・・・??」
寝ぼけた頭で考える。
(確か私はゲフェンにいて、そこから魔物討伐に行って・・・
そう、ポポリンが食べてた不思議な枝を見ていたら、急に魔物が現れて・・・それで・・・。)
・・・!!
かぁぁ。
あっという間に、体温があがり、顔がほてる。
(・・・そう、ヒドラ、かな?あいつに襲われて・・・わけが分からなくなって・・・。)
経験はないが、わかる。
あれが、ヒドラの媚薬効果というものだろう。 俗な雑誌で読んだことがある。
(気持ち悪かったな、あの感触・・・でも、あんなに気持ちいい、だなんて・・・。)
思い出し、ほぅ、と思わずため息を漏らす。
・・普段、一人で自慰にふけることもあるが、一人でするのとは比べ物にならないほどの快感だった。
ぽーっとした頭で思いを巡らせる。
???「・・・気がついたか?」
・・!?
突然、横で声がした。
11
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:38:21 ID:hoHbDutA0
珍「気分はどうだ?」
・・・驚いて、照れて、ぼーっとして。
起きたのはすぐ気づいたが、百面相をしてる様子がおかしくて、すぐさま声をかけなかった。
剣士「ゎはぁっ!?!?」
間抜けな声を出しながら、剣士がこっちに身体を向けた。顔を半分掛け布団で隠している。
珍「・・・枝でも折ったのか?好奇心旺盛なのはいいことだが、それで人は死ぬこともあるんだぞ。」
そう言って、机の上のティーカップに手を伸ばす。
・・・リヒタルゼン産の茶葉は、渋みがあってうまい。渋みの中に甘みがある。
剣士「・・・・・・。」
珍「・・・・・・。」
相変わらず顔の半分を隠したまま、じーっと目線だけこちらへ向けている。
・・・なんだよ黙るなよ気まずいな。久々に人と話したからこっちも緊張してるんだよ。
・
・
・
剣士「・・・あの・・・」
珍「ん?」
12
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:39:19 ID:hoHbDutA0
剣士「・・・えーと、すみません、あたしなんでここに?」
・・・記憶が飛んでるのか。毒も浴びたししょうがないか。
珍「・・モンスターに襲われているところだったんだが。どこまで覚えてるんだ?」
剣士「ええと、ゲフェンから出て、モンスター討伐にいって。」
剣士「・・・ポポリンを倒したら変な枝が出て。」
剣士「そしたらヒドラみたいのがでてきて・・・」
剣士「・・・えと・・・」
説明しながらどんどん剣士の顔が赤くなる。
耳まで真っ赤だ。
珍「ヒドラに襲われた以降の記憶がないのか?」
剣士「は、はぃ。なんか凄い気持ちよくて、わけわからなくなって、限界になってってああああなにいってんのあたし!!!」
ぼふっ!
・・・顔半分どころか全身体部隠れてしまった。
珍「・・そ、そうか。俺が助けたとこは覚えてないのか?」
平静を装ってティーカップに手をまた伸ばす。
・・・味がよくわからん。
ふとんがもぞもぞと縦に動く。・・・たぶん頷いているんだろう。
・・・ひとまず安心だな。
13
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:40:21 ID:hoHbDutA0
珍「俺が近くにいてよかったな。・・・もう少し遅れてたら確実に死んでたぞ。」
丸まった布団に話しかける。・・・もぞもぞ、と剣士が顔を出す。
あいかわらず半分だけだが。
剣士「・・・た、助けてくださって、ありがとうございますっ!あ、あたし・・その・・・」
珍「ん?」
剣士「その、ヒドラに襲われてしばらくしてからの記憶がないんですけど・・・。
状況がわからなくて・・・。」
珍「・・・あぁ。」
席を立ち、もうひとつのティーカップにティーを注ぎ込む。
・・・うん、いい香りだ。
珍「苦いのは平気か?」
剣士「へ? あ、えと、へ、平気です、飲めます」
・・・素直じゃないヤツだな。
珍「とりあえず、これでも飲んで落ち着け。」
剣士の枕元に、ミルクティーを置く。
甘くしてもこの茶葉の味は、損なわれないのだ。
ちらちらと俺とミルクティーを交互に見ながら、
「ありがとうございます」と剣士は頭を下げた。
・・・いい加減顔を出したらいいのに。
14
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:41:21 ID:hoHbDutA0
剣士「い、いただきます。」
ようやく顔を隠すのをやめた剣士が、恐る恐るティーカップに手を伸ばす。
・・・さっきまで百面相してたが、今が素顔だろう。
改めてみても、やはり整った顔立ちだ。どことなく、高貴な印象も受ける。
名家の出身なのだろうか。
ふと、唇に目を奪われる。薄い、きれいな唇。
・・・今まで布団で隠してたせいか。それとも。
上品にミルクティーを飲むと、ふう、と長く息を吐き、カップを皿へと戻す。
ようやく落ち着いたようだ。
珍「・・・落ち着いたか?沈静作用のあるハーブも混ぜてあるんだが」
剣士「は、はい。甘くて、凄いおいしいです。・・・落ち着きました。」
にこり、とこちらに微笑みかけてくる。
ひとまず、敵意がないことはわかってもらえたようだ。
剣士「それで、その・・・」
珍「ん?あぁ。ヒドラに襲われたあとどうしたか、だっけか?」
剣士「は、はい!・・・あたしどうなっちゃったんですか?」
・・・困ったな、素直に言っていいものか?
どうみても経験も少なそうな女だ。あられもない姿を見られたとなったら傷つくだろう。
・・・それに、俺のほうもバツが悪い。媚薬にあてられたとはいえあんなことを。
適当にごまかすのがいいな。
珍「ん、まあ気絶寸前のところを助けてだな。起きないから宿屋につれてきた。おわり。」
剣士「あ、あたしの装備は?服も着替えさせてくれたんですか?」
15
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:42:02 ID:hoHbDutA0
珍「道具はそこの棚に入ってる。装備もヒドラの粘液でべたべただったからな。着替えさせておいた。武器はそこに置いてある。防具は布装備ばっかりだったから洗濯してあっちに今干してある。」
そっちこっちあっちと、指をさしながらたんたんと説明する。
説明し終わって剣士を見ると、また顔の半分が隠れていた。
剣士「えっと、、、つまり、やっぱり、着替えさせてもらったんですかね??」
珍「粘液まみれだったからな。身体も拭いておいた。」
ぼふん!
全部隠れた。
珍「…えっと、皮膚からでも影響出るから、綺麗にしないとな。いけなかったんだよ。」
な、なんか言い訳してるみたいな感じがする。
…まぁ、拭いてる最中に邪な考えがなかった、とは正直言えないしな。
珍「ま、まぁ、すまん。」
謝る必要ないとは思いつつも、ついつい謝ってしまう。
……もぞもぞ。
剣士が顔を出す。またもや耳まで真っ赤。
16
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:42:44 ID:hoHbDutA0
半分顔を出したまま、剣士がこっちを見る。
…この構図がもうなんだろう、お決まりだな。
剣士「………」
珍「………」
剣士「………恥ずかしいです。」
珍「やむを得なかった。すまん。」
もじもじしながら剣士が喋る。
剣士「……私、変じゃなかったですか…?」
珍「変??……何がだ?」
剣士「だから、その……」
珍「うん?」
剣士「あたしの、身体」
珍「……あ、うん。なるべく見ないように拭いたんだが。うん。」
剣士「はい」
珍「その、まぁ、別に。」
剣士「……」
じーーっと見つめられる。
なんだよもう!悪かったよ!
珍「うん、綺麗だった、よ?」
声が上ずる。
ぼふん!
…3度目のハイディング。
17
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:43:45 ID:hoHbDutA0
……………
今度はなかなか出てこない。よっぽど恥ずかしかったのか。
もぞもぞ…
ひょこ。
あ、出てきた。
剣士「……身体中、べとべとでしたもんね。拭いてくれて、ありがとうございます。」
珍「そう、しょうがなかったんだよ。俺も見たくて見た訳じゃない。」
剣士「…そうですよね、あたしの身体なんて見たい訳ないですよね」
もぞもぞしながらまた布団に引っ込んでしまった。
…そういう訳でもないんだが。
剣士「……男の人に裸見られたの初めてです」
珍「……まあ、減るもんじゃないし、な?」
剣士「……ずるいです」
力が「え?」
ひょこり、とまた顔を出した。でも、相変わらず半分だけ。
出たり入ったり忙しいな。
剣士「…不可抗力でもあたしだけ裸見られて不公平です。……あ、あなたのも見せてください」
珍「………え?」
18
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:44:37 ID:hoHbDutA0
珍「…いやいやいや、どうしてそういうことに?おかしいだろ?」
剣士「……おかしくないです。平等です。ダメです。見せてください。」
気が動転してる・・・のか?
・・・どうしたものか。
珍「俺の裸を見たってしょうがないだろ?」
剣士「しょうがなくないです」
珍「いや、でもさ。おかしいでしょ?」
剣士「どうしてもダメですか?」
珍「どうしてもダメ」
剣士「……………ふぇ〜ん!ぁぅぅ、うぅぅぅ。。。」
・・・な、泣かせてしまった。
剣士「ひっく、は、はじめてがモンスターだなんて!そ、そのうえ、男の人にまで裸見られて!!
・・・もうお嫁にいけないよぅぅぅ!ぅわ〜ん。。。うぅ・・ひっく」
顔半分を隠してたシーツを目元まであげて、わんわん泣き出してしまった。
珍「お、おい泣くなよ」
剣士「だってぇ・・・ひっく・・・ぐすん」
・・・ったくしょうがねえなもう・・・。
珍「・・・そっちの窓のほう、向いてろ。」
しゅるり、と巻いていたマフラーが音を立てた。
19
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:45:09 ID:hoHbDutA0
…感情が高ぶると、自分でも何考えて、何言ってるのか、わからなくなる。
自分が自分じゃなくなる感じ。昔からそうだった。
…キャパを越えたら、暴走してしまうのだ。
そういう自分を知っていたから、…ここ数年はなるべく落ち着くように、心がけてきた。
……でもさすがに、今回のはムリ。キャパを越えて暴走してしまった。久々の暴走。
だから今も、自分で言っておいて「あたし何言ってんの!?」って。ばかばかばかあたしのバカ。
暴走したら最後、支離滅裂、滅茶苦茶な事を言って、いっつも周りを困らせてた。
それで、一度落ち着けばいっつも自己嫌悪、反省。暴走したきっかけはどうあれ、結果でみればロクなことはない。
…だから今も、反省してる。
あたしの後ろでする、衣擦れ、というより、カチャカチャと装備を脱ぐ音が、部屋に響く。
その音が、否が応でもでもあたしを冷静にさせた。
(……どっどど、どうしよう!?)
脱げって言っておいて今更やっぱりいいですとか言えないし、でもでも、男の人の裸なんて見たことないからちょっぴり興味あるし、って何考えてんのあたしばかばかばかばか落ち着け!
ぎゅっと目を閉じ、胸に手をあてて心を落ち着かせる。
………謝って、さっきのは取り消そう。うん、それがいい。そうしよう。
剣士「…ぁ
珍「ほら、お望み通り脱いだぞ」
………間に合わなかった。。。ど、どうしよう!?
20
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:45:42 ID:hoHbDutA0
剣士「あ、あ、あのっ」
珍「ん?」
剣士「その、やっぱり、いいです、ごめんなさい!」
珍「……今更何言ってるんだ?お前が見たいと言ったんだろう?」
剣士「そ、そうですけど。で、でも」
珍「俺の裸を見れば満足なんだろう?」
剣士「ご、ごめんなさい。あ、あたし暴走しちゃって、その」
珍「…自分の言葉に責任を持て」
剣士「…あぅぅ。。。わ、わかりました」
だ、だめだ。許してもらえそうにない。有無を言わさぬ感じ。
(…え、ええい!)
がばっ、と掛け布団ごと振り返る。
珍「……下向いて目を閉じてて見えるのか?」
剣士「……ぅー。。。」
恐る恐る、目を開けながら、顔を上げた。
剣士「……ッ!?」
21
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:46:42 ID:hoHbDutA0
…意を決して目を開け、目前に広がる光景に、目を疑った。
バツが悪そうに横を向き、腰に手をあてたまま立つ彼の………いや、彼女の、姿がそこにはあった。
胸にはサラシが巻いてある。…それほど豊満ではない、と思うが、しっかりとサラシの上には谷間があり、露出したお腹にはきゅっと引き締まった腹筋が。
すらりと伸びた手足は、鍛えぬかれながらも、女性らしさを残している。
洗練された肉体は、芸術的ですらあり、…思わず見とれてしまう。
…………それに、可愛い水色のしましまパンツがミスマッチながらも似合っていた。
剣士「……っ、え、えぇ?」
珍「…これで満足か?こっからさらに脱いだほうがいいか?」
サラシに手をかけるのを、あわてて止める。
剣士「い、いえいえあのだっ大丈夫です!」
…ちょっぴり見たい、と思ったが。なんだろ、どきどきする。
珍「……こういう訳だから。別に、男にどうこうされた訳じゃないから安心しろ。」
と言いながら、ばさり、と彼女はマントを羽織った。
22
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:47:20 ID:hoHbDutA0
剣士「……あ、あの。変なこと言って、すみませんでした。」
珍「ん。まぁ、ちょうど着替えるとこだったし、ついでみたいなもんだ。気にするな。」
すたすたと窓際にいき、そのままベランダに出て、洗濯物を確認する。
(…うん、もう乾いたな。今日はいい天気だしな。)
まだ肌寒い日もあるが、季節はすっかり春だ。
もう少ししたら、アマツの樹に綺麗な花が咲きはじめるだろう。…確かサクラ、と言ったか。
ぱちん、ぱちんと洗濯バサミを外し、洗濯物を取り込む。
………マントを羽織ってるからやりにくい。
洗濯物を取り込み、部屋に戻る。
剣士「あ、あの」
珍「うん?」
陽にあたりまだポカポカと暖かいシャツに袖を通す。
…あぁ、サラシも洗わないと、な。
剣士「聞いても、いいですか?」
珍「答えられることなら」
ハーフパンツを履き、キッチンに向かう。
剣士「…どうして、男のフリを?」
23
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:47:55 ID:hoHbDutA0
珍「……女が一人で旅をしてると面倒なことも多いしな。お前も一人旅のようだが、そのうちわかるだろう。…と、いうより。」
剣士「…と、いうより?
珍「女として育てられてないからな。そもそも素がこれなだけだ。別に男装の趣味がある訳でもないし、無理してる訳でもない。」
カップにハーブティーを注ぎ、ベッドサイドへ行く。
剣士「…ふふっ」
珍「……?何がおかしい?」
笑うところはなかったはずだが。
カップを手にとり口に運ぶ。
剣士「じゃあ次の質目。あのかわいいしましま模様のパンツは自分で買ったんですか?」
ぶー。
吹き出してしまった。
珍「…あ、あれはだな、べつに意味はない。」
剣士「なるほどー…じゃあこのあたしが着てる可愛いルナティックのプリントTシャツは?あなたのですよね?」
珍「そ、それは」
剣士「…それに、あの取り込み忘れてる可愛いブラジャーも」
ばっと振り返りベランダを見ると、ひらひらとフリルのついたブラジャーが。
バックステップ!!スティール!!
全力で取り込んだ。
24
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:48:28 ID:v15vmGYQ0
珍「……」
取り込んだブラジャーを洗濯物の山に無言で放り投げ、戻る。
剣士「…ふふふっ。」
珍「な、なにがおかしい。」
剣士「いいえ、別に。ふふっ。」
くすくす、と口に手をあて剣士が笑う。
……なんか凄い恥ずかしい。なんなんだ。
珍「〜〜〜〜!! べ、別にいいだろ!」
あああ、自分でも顔が赤いのわかる。もうやだ。
珍「普段可愛くないゴツい装備だし、み、見た目も私なんて可愛くないし、見えないところで、か、可愛いの着たっていいだろっ!」
ばんっ。思わずテーブルを叩いてしまった。
剣士「………」
剣士が目を丸くしている。
…い、いかん。冷静にならねば。
ゴホン、とわざとらしく咳払いする。
珍「あー、そのー。取り乱した。悪い。」
剣士「…うふふふっ!立派な可愛い、女の子、ですね」
相変わらずくすくすと笑う剣士。
…くそう、なんだこの微妙な敗北感は。
25
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:49:43 ID:hoHbDutA0
珍「…うー。」
テーブルを叩いた時に勢い余って立ち上がってしまっていたので、どんっと腰を降ろす。
剣士「…うふふ。」
まだ笑ってる。…もう!
完全にペースを乱されてる。いかん。いかんぞこれは。イニチアシブを取り返さなくては。
珍「……まぁ、いい。俺からも質問させてもらうぞ。」
声のトーンを下げる。
珍「こんなご時世に、一人旅なんて物騒な真似をなぜしてる?」
横を向き、再びティーカップに手を伸ばす。
ハーブティーをいれてよかった。落ち着くのに最適だ。
…うん、うまい。目をつむり、ハーブティーとともに心を落ち着かせる。
……しかし、剣士が無言のままだった。
…聞いたら、まずいことだったか。
珍「……」
ちらり、と剣士を見る。
…声を殺して、まだ笑ってた。
…コイツ。
26
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:50:14 ID:hoHbDutA0
珍「こら!なんでまだ笑ってるんだよ!」
剣士「だ、だって。」
スッと剣士がこちらに指をさした。正確には、顔よりも下、胸あたり。
指につられて目線を落とす。
……うん、1番お気に入り。ポリンTシャツシリーズの、デフォルメメタリンTシャツ。すっごいキュートでカラフルな色彩。1500z。
珍「〜〜!!」
かぁぁぁ。落ち着けた心が一気にまた沸騰。
ばばっ、とおもわず両手でシャツを隠す。
珍「ば、ばか!もういいだろ!」
剣士「ご、ごめんなさい。笑うつもりじゃなかったんですけど、つい」
……あーもう。
剣士「それに…恥ずかしがる貴女が、可愛くて。」
珍「な、なに言ってるんだ。からかうな。可愛いのはシャツだけだ。」
剣士「…いいえ。」
ふふ、と口に当てていた手を剣士が降ろす。
剣士「…すごく、可愛いです。」
射抜くようにこちらと目を合わせながら、剣士が喋る。
………な、な、なにを言ってるんだこいつは。今まで可愛いだなんて言われたこと一度もないし、実際可愛くないし。嘘に決まってる。
珍「…じょ、冗談はやめろ。」
思わずぷい、と横を向いてしまった。
27
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:50:57 ID:hoHbDutA0
剣士「あら、なぜそんなに自分を卑下なさるんですか?」
珍「う、うるさい。嘘つきとは話さない。」
…何言ってるんだ私は。こんなキャラじゃないだろ!
珍「…髪だって、短いし、自分で切ってるし、ボサボサだ。」
剣士「まぁ、お手入れもなしでそんなに綺麗な薄紫色だなんて。それに…」
ぎし、とベッドが軋む音がした。思わず横に向けていた顔を戻すと、、、剣士がこちらに身を乗り出してきていた。
珍「うわっ!びっくりさせるな!」
剣士「それに、凄いサラサラ。ほんとにお手入れしてないんですか?」
そういいながら、右手でさらり、と私の髪の毛をとかし、撫でてきた。
珍「わっ、な、なにをする」
剣士「…体質なのかな?ずるい」
珍「ず、ズルいってなんだ」
剣士「貴女がです。…そばで見ると、まつ毛も長い。眉毛は、整えてるんですね?」
珍「そ、そんなことしたことない。」
剣士「…え?一度も?」
珍「一度もない」
剣士「……」
ぴたり、と剣士の撫でる手が止まった。ああ、髪撫でられるの好きだから結構心地良かったのに残念、じゃなくて。
ずぼっ!
突如剣士がTシャツの袖口から手を入れてきた。
!?!?!?
28
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:51:33 ID:hoHbDutA0
珍「ぎゃーーー!!なにをする!!」
ぐい、と腕をねじ込んでくる。
剣士「おとなしくしてください!」
珍「できるか!」
抵抗するが、ぐいぐいねじ込まれる。どこにこんな力が……
ふと、剣士とのキスを思い出してしまう。あの時も凄い力で抑えられたんだった。
珍「!! ど、どこを!」
ちょっと油断した隙に、何を考えてるのかワキの下に手をいれてきた。
珍「お、おい!」
お構いなしにぐいぐいしながら、ワキ下をわさわさと触られる。
珍「うあ、あはは、や、やめろばか!」
剣士「……毛もない。剃り跡もない。」
珍「お、女はワキに毛は生えないだろう!?」
またもや、ぴたり、と剣士の動きが止まる。
剣士「け、毛の処理がどれだけ面倒か……」
なぜかわなわなと震えている。怒ってる??な、なんで?
スッ、と剣士の力が抜け、服から手を出す。
…よかった、や、やっと解放される。
と思ったら。
ずぼ。
パンツに手突っ込まれた。
29
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:52:13 ID:hoHbDutA0
珍「!!!?」
剣士「・・・あ、下の毛は薄いけどちゃんと生えてるんですね」
軽く下腹部・・よりもう少し下、をさすられたと思ったら、今度はあっさり手を抜いてくれた。
珍「なななな、なんてことを」
剣士「ついつい興味が沸いてしまって・・・ついつい」
珍「ついついじゃない!」
がたっ。
席を立ち、床に脱ぎっぱなしの装備に手を伸ばし、身に付ける。
軽い鋼鉄で出来た素材だが、頑丈に出来ていて、動きを阻害することもないいい装備だ。
剣士「ご、ごめんなさい。……怒りましたよね?」
珍「当たり前だろ!」
手早く装備を装着し、マントを羽織る。
・・・まったく調子狂うな。
剣士「どこか出かけるんですか?」
珍「食事を買ってくる。ここの宿屋は自分たちで食事を用意しないといけないんだ。」
剣士「あ、あたしも行きます」
ベッドから降り、洗濯物の山に向かう剣士。
珍「すぐ戻るから、休んでろ」
剣士「いいえ、もう大丈夫です」
ぱぱっと自分の装備を取り出し、手慣れた手つきで身に付ける。・・ルナティックTシャツは脱がないのか。
剣士「さ、行きましょう」
珍「・・・勝手にしろ」
剣士「勝手にします」
にこり、と剣士が微笑んだ。
30
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:52:45 ID:hoHbDutA0
階段を降りて、外に出る。
出掛けにちらり、とロビーの時計を見ると、ちょうど3時あたりを指していた。
宿を出て、商店街を目指す。
ちょっと遅れ気味に宿を出た剣士が、やや早足で隣に並んできた。
剣士「ここは、ゲフェンじゃないんですね。」
珍「あぁ。首都プロンテラだ。」
剣士「ここがプロンテラですか・・・。」
きょろきょろ、とあたりを見渡す剣士。
珍「はじめてなのか?」
剣士「いえ、小さいころに何度か。・・・でもあんまり覚えてません。」
珍「一番人が多い街だからな。ゲフェンとは比べ物にならない。」
町外れから中心に向かうにつれ、人が増えていく。
???「おまんこおおおおおおおおおおおお」
???「おまんこwwwwwっこっこwwww」
ガヤガヤと騒いでる集団がいた。
剣士「おまんこってなんですか?」
珍「・・・知らなくていい」
さっさと店に行こう。
31
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:53:20 ID:hoHbDutA0
プロンテラ商店街は、街の南西部分にある。
晴れの日は季節を問わず毎日のようにバザーが出ており、いつ来ても活気がある。
剣士「うわぁ・・・凄い人ですね」
珍「今日は祝日だしな。普段も人だかりは激しいが、さすがに今日は多いな」
剣士「祝日・・・ですか。今日は何の祝日なんですか?」
キョロキョロとしながら剣士が喋る。
珍「ん?あぁ。今日はプロンテラの王位継承式が行われるんだ。新しい王様の誕生ってことだな。」
剣士「王位継承式・・ですか。」
珍「新しい王は若いくせにかなりのやり手らしいがな・・・さて、食べれないものはあるか?」
そうこうしているうちに、食料品店につく。
剣士「あ、大丈夫です。一応、なんでも。」
珍「そうか・・・じゃあ適当に見繕って買っていくか。宿屋で料理するぞ」
剣士「料理とか出来るんですか?」
珍「・・・一人旅してるのにお前できないのか?」
剣士「え、あ、と、当然出来るに決まってるじゃないですか!」
珍「・・・だよな。あぁこれおいしそうだな。ヒドラの触手煮込み。何々、夜のお供に」
ばん!!
・・・痛い。思いっきり背中を叩かれた。叩かれたというかグーで殴られた。
剣士「もう!いじわるしないでください!」
ぷいっとふくれつらで横をむいてしまった。
・・・。
32
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:54:21 ID:hoHbDutA0
珍「・・・こんなもんかな」
今晩と翌朝、翌昼と3食分の材料を買う。
ぐるりと店の中を見回ってきた剣士が戻ってくる。
剣士「種類が豊富で面白いですね、ここ」
珍「プロンテラで一番大きい百貨店だしな。大体のモノはここで揃う」
剣士「ふむふむ・・・。上の階に行ってみたいです」
珍「構わんが・・・今日はダメだ。また明日な」
剣士「えー・・・わかりました。しょうがないですね」
少しばかりしょんぼりとした剣士と一緒に店を出る。
チラリ、と広場の時計台に目をやると、まだ6時も過ぎてなかった」
珍「ちょっとまだ戻るには早いな・・・。一休みしていくか」
剣士「どこいくんです?」
珍「ちょっと離れたところにオープンカフェがあるからな。そこに行こう」
33
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:57:02 ID:hoHbDutA0
商店街から少し離れた場所に、オープンカフェテリアがある。
ここの名物はアルベルタ産のクロワッサンだ。焼きたてはなんとも言えない美味さがある。
剣士「うわぁ、色々ありますね。・・・どうすればいいんですか?」
珍「並んでるのを選んで、トレイにいれてあっちにもってくんだ。カフェテリアはきたことないのか?」
剣士「はい、初めてです。自分でとるなんて新鮮で楽しいです。」
・・・やっぱりどこかいいとこのお嬢さんなのかな。
珍「俺はクロワッサンに・・・カフェラテにするか」
ひょい、とクロワッサンをとり、レジに向かう。
剣士「んー・・・このティラミスもおいしそうだし、クロワッサンも凄いいい香り・・・
でもこのドーナツも捨てがたい・・・」
珍「・・・食事前だから軽めにしとけよ」
散々悩んだ挙句、チョコクロワッサンとドーナツをトレイにいれてきた。
珍「買ったはいいけど混んでるな。席は・・・おっと奥の席があいてるか」
ちょうど二人分が座れるテーブルに座る。ほぼ満席状態だが、店が広いためそれほど窮屈ではない。
剣士「すっごい美味しそうじゃないです?このチョコクロワッサン」
珍「あぁ・・・それは、うん、実にうまいな。でもプレーンも美味いぞ?」
喋りながらクロワッサンを口に運ぶ。さくり、とした感触とともに口の中にバターの風味が広がる。
剣士「うわぁ・・・焼きたてでサクサク、すっごい美味しい」
上品にクロワッサンを食べる剣士。・・・女の子、って感じだな。
34
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:57:34 ID:hoHbDutA0
剣士「あの・・・聞いてもいいですか?」
珍「・・・さっきみたいな質問しないならな」
剣士「ふふ、もうしませんよ。」
珍「・・・どうだかなあ」
ずず、とカフェラテを飲む。上質なミルクのおかげか、実に深い味わいだ。
剣士「・・・あなたは、どうして一人旅を?」
珍「・・・ん。まぁ、趣味みたいなものだ。」
剣士「女の一人旅だなんて、そんな物騒なことをなぜ?って先ほどおっしゃいましたよね。
趣味でそんな物騒なことを?」
珍「・・・見た目が男だから問題ない」
剣士「そんなのずるいです」
珍「んー・・・」
なんてはぐらかそうか。悩んでいると、突然店のオープンエリアで大きな音がして、あたりが騒がしくなった。
珍「んー・・・どうやらケンカみたいだな」
剣士「まぁ・・ケンカですか」
スッ、と席をたち騒ぎのほうに向かう剣士。
珍「おいおい、野次馬はみっともないぞ」
慌てて剣士についていく。
35
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:58:17 ID:hoHbDutA0
剣士についていくと、オープンエリアでホワイトスミスとクリエーターが言い争いをしていた。
かなりヒートアップしてるようで、一触即発状態のようだ。
WS「大体よお、テメーらきにいらねえんだよ!卑怯な手でレベルあげやがって!」
クリ「あれうらやましいのかな?脳みそまで筋肉の君たちじゃとても真似できないもんなあ」
剣士「うわ・・・凄いお互い怒ってますね。仲悪いのかな?」
珍「元は同門だが、彼らはそれぞれ別の手段での製造・・創造の道を選んでるからな。あまり仲はよくないと聞く。
マジシャンとセージも仲が悪いといわれてるが・・・」
そうこうしてるうちに、どんどん言い争いはヒートアップし、周りの連中ももはや止めるに止められない状況だ。
WS「もう我慢ならねえ・・・カートブースト!!オーバートラストマックス!!!」
WS「カートターミネーション!!」
ドガァア!! ホワイトスミスの強力な一撃で、クリエーターは吹っ飛ばされてしまった。
おいおい・・・ケンカは勝手だが店まで壊すつもりか?あんな攻撃しやがって。
剣士「わっ・・・ついに乱闘騒ぎになっちゃいましたよ」
珍「まったく野蛮なことだ・・・台無しだな」
クリ「こ、この蛮族が・・・いい加減にしろよ」
WS「ハン!かかってこいよこの卑怯なフラスコ野郎が!」
36
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 21:59:32 ID:hoHbDutA0
クリ「アシッドデモンストレーション!!!」
ビュッ!!起きざまにクリエーターが赤と黒、2つの瓶をホワイトスミスに向かって放り投げる!
WS「!?」
大きく横に一回転しながら飛び、ギリギリのところでホワイトスミスは回避した。
瓶はそのまま後ろに飛んでいき、地面にぶつかると同時にボンッ、と音をたて消滅する。
WS「て、てめえ・・・シャレにならねえぞ今のは。殺す気か!」
クリ「ぐ、いてて・・・。よけやがったか、くそ」
ホワイトスミスが方膝を立てながら怒鳴ると、クリエーターが、よろよろと身体を起こす。
剣士「た、大変ですよ!!なんですかあのスキル」
珍「おいおいあいつら本気かよ・・・カートターミネーションもそうだが、アシッドデモンストレーションとは・・・殺すつもりか?」
いくらなんでもやりすぎだ。瓶も店のほうに飛んでいたらどうなっていたか。
剣士「と、止めてください!あなたなら止められるでしょう!?」
珍「え、ええ?さすがにあの間に入るのはちょっと・・・」
止めるのは造作もだろうが・・・あまり目立ちたくない。
しかし確かにこのまま放っておけばどうなるかわからないだろう。
(・・・気に入ってる店が壊れるのも、困るな)
???「そこまでだ!!!お前らやめろ!!」
迷っていると、大声とともに大通りから小さな竜に乗った騎士が3人ほど現れる。
剣士「あ、あれは?」
珍「あのエンブレムは・・・閃光強襲隊、だな。プロンテラの警備を担当していて、有事の際には強力な切り込み部隊になると言われている」
剣士「そんな凄い人たちなんですか」
あっという間竜騎兵達は到着し、ホワイトスミスとクリエーターの間に入る。
37
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 22:00:22 ID:hoHbDutA0
RK1「なにをしとる貴様ら!!今日はめでたい日だと言うのに・・・」
WS「ふん。めでたい日ねえ」
クリ「ま、一部の人間にとっちゃめでたい日かもしれんが・・」
RK2「なんだ貴様ら!?その言い草は!!」
竜騎兵達が喧嘩をしていた二人に詰め寄る。
剣士「解決してくれると思ったら、な、なんか険悪なムードのままですね」
珍「そうだな・・・王位継承に、反対してるヤツもいるんだろうな」
新しい王はかなりのやり手であり・・・同時に黒い噂も絶えない人物であった。
今回の王位継承も、一悶着あったと言う。
RK1「貴様ら陛下を侮辱するつもりか?」
WS「ハン!陛下ねえ・・・王子様が立派になったもんだぜ」
RK1「それ以上の発言はプロンテラ王国への侮辱ととる!」
スチャ、と竜騎兵がヤリを構える。
止めに来たんじゃないのかよ・・・あきれたヤツらだな、どいつもこいつも。
RK3「ふむ・・・そこまでにしておけ」
事態を静観していた、もう一人の竜騎兵が声をかける。
燃えるように逆立った髪型とは裏腹に、実に落ち着いた佇まいをしている。・・・かなりの実力者だろう。
38
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 22:01:41 ID:hoHbDutA0
RK1「は、隊長殿。しかしですね。この者達の発言、見過ごすわけにはいきません」
WS「・・・フン。」
横を向いて悪態をつくホワイトスミス。クリエーターのほうも同じような態度をとっていた。
隊長「ほっほ、まぁ今日はおめでたい日じゃ。多少のことは目を瞑ろうではないか('∀`)」
RK1「し、しかし・・・」
RK2「自分は許せません!」
隊長「・・・ワシの言うことが聞けんのか?(゚A゚)」
隊長と呼ばれた竜騎兵が、静かに、しかし、凄まじい気を放った。
・・・この距離で、なんてプレッシャーだ・・・。自分に向けられたモノでないのに、背筋に冷たいものが走る。
剣士「あ、あの人・・・こわい、です。」
剣士が2、3歩後ずさり、俺の隣できゅっとマントを掴んだ。・・・無理もないだろう。
RK1、2「も、申し訳ございません」
隊長「ほっほ、わかればいいんじゃよ('∀`)・・・これ、そこの生産者2人も、これ以上の争いはせんな?」
コクコク、と顔を立てにふる2人。
それを見て満足そうにうなづくと、竜から降りて、カウンターの方に向かってくる。
隊長「器物破損などはなかったかの?・・ふむ、それで何故あんな争いが?」
・・・店長に事情を聞いているようだ。ひとまず場が収まってなにより、か。
39
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 22:02:14 ID:hoHbDutA0
隊長「……ふむ、大体事情は飲み込めた。当人同士以外に怪我はなさそうじゃし、建物や器物の損壊も無し、と。」
頷きながら、スラスラと報告書らしき紙にペンを走らせている。
…ぎゅう。
剣士がマントを握る手を強めてきた。まだ怯えてるのか。
横を向くと、憂いをおびたような、、、複雑な表情をした剣士の顔があった。
怯え、とも違う。なんだろう…、哀しみと……怒り?
剣士「あ、あのエンブレムは……」
ぼそり、と剣士が呟く。
報告書を書き終えたらしい逆毛騎士がチラリ、とこちらを向いたと思いきや、カツカツと靴音を建てながら向かってくる。
ぎゅっ。
マント越しに、剣士の緊張が伝わってくる。
俺たちの目の前にくると、逆毛騎士は顎をさすりながら品定めをするかのように剣士を見る。
隊長「…ふむ、どこかで見たことがあるような。失礼だが、ワシに見覚えはないかね?」
剣士「あ……う……」
逆毛騎士に圧倒されたのか、声も出せないでいる剣士。
気づくと、一歩前に出て二人の間に入っていた。
逆毛騎士「むう?ワシは後ろのお嬢さんに用があるんじゃがのう」
珍「怯えてるだろ?それにアンタに覚えはないみたいだ。ナンパにしちゃ古い手法だぜオッサン」
ふむ、と相変わらず顎をさすりながらこちらを値踏みするように見る。
逆毛騎士「…まぁええじゃろ、ワシの勘違いかもしれん。迷惑かけたの。」
ふぉっふぉ、と穏やかに笑う逆毛騎士。
逆毛騎士「では、皆にも迷惑かけてすまなかったの。暴れた二人は一応ついてくるように。よし、引き上げるぞい」
くるりと踵を返すと、若い竜騎兵の二人にそれぞれホワイトスミスとクリエーターの側に付かせ、城のほうへと引き上げて言った。
40
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 22:03:34 ID:hoHbDutA0
珍「…席に戻ろう」
剣士がマントから手を放す。そのまま席へと二人で戻った。
珍「まったく…冷めちまったな」
剣士「あ、ありがとうございました」
まだどこか落ち着かないような表情の剣士。…あの逆毛騎士の殺気だけが原因じゃなさそうだな。
珍「別に何も。あいつが気に入らなかっただけだ。……しかし、恐ろしい男だな。お前、本気で怒りながら笑えるか?」
剣士「?? そんな器用なこと、出来ないと思います…」
珍「フリなら誰でも出来るだろうが、あの騎士、本気で笑いながら、殺気を…俺に放っていた。…つまり」
剣士「つまり?」
珍「穏やかに笑いながら、人が殺せるってことだ」
…修羅場を潜ってきた自負はあるが、それでも久々に味わった感覚だ。
剣士のトレイを見ると、席に戻ってから手付かずだった。
珍「戻ろうか。もういい時間だ」
はい、と剣士が微笑んだが、さっきまでの笑顔よりもどこか、ぎこちなかった。
41
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 22:04:04 ID:hoHbDutA0
…宿屋へ戻る間、会話らしい会話はほとんどなかった。
散々喋っていた剣士も、こちらから話しかけないと何も喋らず、喋ったとしても一言二言だった。
考え込むような、落ち込んでるような。ずっとうつむいたまま、歩いている。
街中をキョロキョロとリスみたいに見回して、はしゃいで。
クロワッサンをサクサクとウサギみたいに、おいしそうに食べて。
さっきまでのそんな剣士の姿は、見る影もなかった。
(…あの逆毛騎士を見てから、だよな。)
剣士が小声で呟いた台詞を思い出す。
あのエンブレム。確かにそういった。
それが示す物といったら、閃光強襲隊のエンブレム以外に、考えられないだろう。
義に反するようなことは決してせず、正義の騎士団と誉れ高い部隊。それが、閃光強襲隊の評判だが…。
そうこうしているうちに、宿屋に着いた。
…まだ剣士はうなだれたままだった。
そんな剣士の姿を見て、さっきから苛立ちが募るのは、何故なのか。
自分でもよくわからなかった。
42
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/27(水) 22:09:44 ID:hoHbDutA0
コピペおわり
ここから続きかくお
43
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/30(土) 04:36:29 ID:ssFVF/6A0
買ってきたものを、備え付けの冷蔵庫に入れる。
2人用の部屋だけあって、十分な広さの冷蔵庫だ。
珍「さて、と。さっき軽く食べたからな・・・、剣士、腹は空いてるか?」
剣士「あ、え、ええと。・・・あんまりすいてないけど、食べたいです」
珍「そうか。クロワッサン食べたばかりだしな。軽めにしとくか。・・・食べれないものはあるのか?」
剣士「ええと、その。・・・にんじん」
珍「・・・・・・嫌いなものと食べれないものは違うからな?今日は人参の野菜炒めを主食にしよう」
剣士「ええー!ひどいです!」
珍「好き嫌いはよくないなあ」
剣士「ぶーぶー」
珍「・・・じゃあ何も食べなくていい」
剣士「いじわる。夜中におなかすいて目が覚めちゃいますよう」
珍「じゃあ好き嫌いなく食べような」
剣士「ぇう〜・・・。。。」
部屋に戻ってからも剣士は大人しかった。
そんな剣士に気を使ってやたら喋る俺。・・・キャラじゃないのに。
そしてそれを察して、無理に元気に振舞っている剣士。・・・茶番、だよな。
珍「・・・ふう」
剣士「? どうしたんですか?野菜炒めな気分じゃなくなったんですか?」
珍「いや・・・すまん、無理して喋らなくていいぞ」
剣士「・・・・・・すみません。気を使わせちゃって」
珍「すぐ出来るから、待ってな」
剣士「はい・・・」
・・・・・・・・・・
沈黙は沈黙で気まずいな。
44
:
田村ヨーコ(既婚)
:2011/07/30(土) 05:16:23 ID:ssFVF/6A0
黙々と料理を作る。
剣士「ごめんなさい、あたしの分まで料理・・・」
珍「一人分作るのも二人分作るのも大して手間は変わらん」
・・・・・・・
珍「出来たぞ。・・・と、テーブルの上の荷物どかしてくれ」
料理を盛り付けた皿を両手に持って、ベッド脇にあるテーブルに向かう。
剣士「あ、はい・・・・・ぅぐぷく」
床で荷物整理をしていた剣士がこっちを向くと同時に変な声を出した。
珍「・・・?なんだ変な声だして」
剣士「いやその・・・かわいい、エプロンだなって。すっごい似合ってます」
珍「!?」
ついクセでいつも使ってるエプロンを・・・使ってしまった・・・。
両手ふさがってるから隠せないし!
珍「りょりょ料理中にエプロンするのは常識だろいいからさっさとその荷物どかせ!!」
剣士「ふふっ、はあい」
くすくすと笑いながら立ち上がる剣士。
・・・からかわれるのはシャクだけど。笑顔になったのは、よかったかな。
剣士「メタリン好きなんですか?」
珍「さっさとしろ!」
やっぱりよくない。
45
:
僕は名前がない
:2011/11/23(水) 02:03:45 ID:/WTtM8ts0
続きまだか
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