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ダンゲロス流血少女MM:番長G応援スレ
1
:
流血少女GK
:2015/08/01(土) 23:45:34
番長G用
123
:
タイガービーナス(1st 千本桜 明菜)
:2015/08/11(火) 23:28:12
<<千本桜明菜 エピローグ>>
「これでお仕舞い、ですか」
胸に手を当て、その掌にべっとりとついた血を見つめながら、千本桜明菜(せんぼんざくら あきな)は呟く。
その胸には生徒会の彩妃 言葉(あやさき ことは)が植えつけた多種多様な植物の種が穴を明けていた。
本来なら人を殺すほどの力の無かったそれは、同じく生徒会の砂漠谷レマによって潜在能力を最大限に発揮され、人体を貫き、食い破るほどの力を持つに至っていた。
「結局、この私の生(せい)は何だったのか……」
明菜の脳裏にこれまでの人生がよぎる。
ただ父の背中を追いかけた日の事、その父が日に日に豹変していったこと、その父を斬り、魔人能力に目覚めた日の事、ただ美しくあろうと悪しき者を斬り続けた日々、妃芽薗学園へと入り剣道部へと入った日、一 十(にのまえ くろす)との出会い、ゴリ剣との戦いの日々、百端一茶(ばたばた いっさ)のお茶を皆で囲んで飲んだ日、自分を圧倒した謎の羊男、そして後輩の紅井美鳥。
「ごめんなさい、一緒に能は見に行けませんね……」
彼女と約束を思い出し、明菜は悔いる。
学園に入ってから明菜を慕う多かったが、なぜ彼女に特に惹かれるものがあったのかは分からない。一十の百合粒子に長く当てられたからであろうか。
彼女は果たして大切な人と分かり合うことはできたのだろうか。
「十さん……」
唇に一十と触れ合った感触が蘇る。
彼女が知らせてくれたあらぬ噂……、最初に見た時は面食らったものだが、十の友人が明らかにしてくれたことには
それほど悪意の無い他愛も無い悪戯のようなものだったらしい。
その犯人こそが紅井美鳥の大切な人だったようだ。二人は和解できたのか……今の自分にはもはや知る由もない。
「何故人は、醜く争うのでしょうか……」
周りには自分が属していた番長陣営の魔人達の死体が累々と横たわっている。
これが、今まで悪人を散々桜にしてきた自分への罪だというのか。
その自分の力、刀妖血界を張る力は今の自分にない。死の淵にいるからではない。学園中に張られた高二力フィールドがそれを許さないのだ。
自らの力が十分に生きるのはこの戦いの後半戦だったが、彼女の優れた攻撃力は前半戦においても生きるため、彼女は力を抑えられた場においても先陣を切って生徒会陣営へと向かっていくことになった。
その結果が、これだ。
美しく桜を舞わせることもできず、今倒れ伏すしかない。これが自分に与えられた罰だというのか。
「せめて、最後は見苦しくなく……」
手に持った刀に力を入れる。
最後はせめて割腹し、果てたい。このままただ何もせず死ぬのは自分のこれまでの生き方に反する。
「番長陣営の皆さん、せめて幸運を……。そしてこの学園に平和と安らぎを……」
ギリギリ……と刀が腹を抉る。
明菜の意識が闇へと沈んでいく。
(十さん、貴方は果たしてどちらの陣営に……。美鳥さん、貴方の想い人は……)
そして、大きな紅い華が散った。
――――それからしばらくして。
千本桜明菜の胸に植えられた種からは、まるで彼女の血を吸って育ったかのように大きな芽を伸ばし、木となり、枝の上に花を咲かせた。
ひゅうひゅうと風が吹き、桜の花びらが舞っていく。
その欠片は誰に届くのか。彼女の最期の祈りの行方はまだ知れない……。
124
:
少年A
:2015/08/11(火) 23:29:09
【快進撃?:後藤さんとツツジの場合】
「いやあ、なかなか愉快じゃのー」
「ゆ、愉快ですかあ……?けっこう怖かったですよー……」
暗い森の小道を、二人の少女が進む。
一人は、ウサミミめいた甲冑に身を包む魔法少女、後藤うさ。
もう一人は、その執事にして羊角の少女、ツツジ。
肝試しで探検側に選ばれた二人は、ツツジの強い要望でペアとなった。
主従関係による本能的な部分も大いにあるが、それ以上に
ツツジは怖いモノが苦手であった。
一方、後藤うさ――ナリこそ幼女だが、実年齢数十歳の老人である。
ましてや人外化生のモノを相手取る魔法少女歴80年の大ベテランとあらば、
十数年しか生きていない少女達が精一杯絞った知恵程度では驚かない胆力がある。
それでは、ここまでに彼女たちの前に現れた驚かし役達の奮闘を駆け足で御覧頂こう。
〜〜〜
「ウサー」
「むむっあれはヴォーパルバニー!お二人、下がっていなさい!」
二人の前に現れたのは、烏兎々々と彩妃言葉の二人……と、人形が数体。
烏兎々々はこれといった仮装はしていないが、言葉は己の能力で編み上げた植物性の鎧を着ている。
人形も同じように、甲冑騎士を模して作られている植物製のものだ。
「ふ、ふぇ?ボーパル……なんですか?」
突如出てきた大量の鎧騎士(に扮した人形)と、かわいらしい兎人の組み合わせに
戸惑うツツジをよそに、烏兎々々が突如動く。
「ウサー」
「グワーッ」
兵士人形の横を烏兎々々が通り過ぎるタイミングで、言葉が棒読みで悲鳴をあげる。
すると、兵士人形の首が次々はねられていく!
これぞ古事記にもその名を残す伝説の邪悪存在・ヴォーパルバニーの再現だ!
「び、びえええええぇぇぇ!!!」
あまりの怖さに泣き叫ぶツツジをよそに、後藤さんは平然とツッコんだ。
「……いや、今時モンティ・パイソンのわかる女学生がおるかの?」
〜〜〜
125
:
少年A
:2015/08/11(火) 23:29:31
「市民、あなたは幸せですか」
「もっとよくしてください」
続けて現れたのは……奇妙なロボットと人形のコンビだった。
人間型の警備ロボ、N-SR-CA2-T-1 ハイレッグ・プリンセス。
自己学習能力を備えた高性能ラブドール・かれん。
ハイレッグ・プリンセスの問い掛けに、回答になっていない回答を返すかれん。
彼女のAI回路は今「若奥様のおねだりモード」に切り替わっているので、男の情欲をそそる台詞のみしか喋れないのだ。
「回答が不適切です。回答を拒む者は市民ではありません。
市民でない者は不穏分子なのでZAPします」
ハイレッグ・プリンセスの腕に取り付けられた電磁ZAP銃が不穏な光を放つと同時に
かれんの肉体がビビビビと痙攣し、男の嗜虐心を煽る悲鳴を上げる。
なお、これらは実際に電磁ZAPが行われているわけではなく音と光と高度AIによる演技である。ご安心ください。
「な、なんですかこれえ……!怖いよう!怖いですよう……!」
涙を目に溜めて後藤さんにしがみつくツツジ。
後藤さんはツツジの頭を難儀しながら撫で、やはり冷静にツッコミを入れる。
「『パラノイア』のパロディなのはわかるがのう……せめてZAPされる役がもうちっとマシな演技できんかったのか」
と、ロボ(とラブドール)に対してダメ出しまでする始末だった。
〜〜〜
「……で、お主らはなんなのじゃ」
三組目は――シトラ・ストロベリーフィールドと、小灰陵墓色の二人。
しかし、一目見てそうと気付ける人間は少ないだろう。
というのも、二人とも全身を着ぐるみに身を包んでいるからだ。
それも――バナナとハマグリの着ぐるみである。
「……どうも、キラーレモンです」
「……どうも、シジミチョウでございます」
着ぐるみの中から、明らかに士気の低い声が漏れる。
キラーレモンと名乗ったシトラの着ぐるみは、バナナ売り場にいそうな
アメコミ調の顔が描かれたバナナのキャラクターである。
その表情は明るくファンキーで、キラーっぽさは微塵もない。
せめて禍々しい表情であれば、B級ホラーのキャラクターで通せただろうが……
もう一方の墓色に至っては、シジミチョウと名乗りながらハマグリである。
殻を閉じた状態で、蝶番を上にした格好で
そこから人間の手足部分だけが突き出ている――着ぐるみとしても色々とチープな姿だ。
「ひ、ひええ!バナナに貝が喋りましたよう……!」
それに本気で怯えるツツジも大概ではあるが。
「いやこれは怖くないじゃろ。別の意味で怖いがの……
というかどう見てもバナナとハマグリなんじゃが」
「誰がなんと言おうと、私はレモンであり凶暴なキラーレモンです」
「私も、死の匂いに誘われた妖艶なる蝶でございます」
多分表情が見えれば、二人とも目が死んでいる状態であったろう――
それが容易に推測できる程、二人の声音はどこか淡々と、ぼんやりとしていた。
「で、どうしてこうなったのじゃ」
後藤が、近くの切り株に腰掛けて話を聞く姿勢を見せる。
人生の先輩にとりあえず話してみなさい――その気配に、二人も口を開いた。
「……着ぐるみの発注が……」
「衣紗早さんにお願いしたのですが……他にも沢山の人が頼んだらしくて
どこかで取り違えが起きた結果、こうなりました……」
「あー……それは、なんというか……
じゃがまあ、その格好も人を驚かすには悪くないからの。
創意工夫が大事じゃよ……うん」
こうして、バナナとハマグリは幼女相手に人生相談を繰り広げるに至ったのだった。
〜〜〜
126
:
少年A
:2015/08/11(火) 23:38:28
「……ふう。やっとこさチェックポイントじゃの」
こうして、数々の難関(?)を攻略した後藤さんはチェックポイントへと辿り着き――
置かれていた小さなマスコットを手に取る。
「これを持って帰ればしまいじゃ、さっさと帰るぞ――」
そう言って振り返った、そこには。
「……む?」
ツツジの姿はなかった。
「……ありゃー、どこかではぐれてしもうたかの……」
己の迂闊を、額をぺしゃりと叩きながら反省する魔法少女。
すぐに気配を辿ろうとした、その刹那――
「ぴぃぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
森中に、探していた少女の悲鳴が木霊した。
127
:
一二兆
:2015/08/11(火) 23:39:55
メリー・シープ
tp://0006.x0.to/oo/gif/194.png
128
:
少年A
:2015/08/11(火) 23:58:51
【人外対決?:白瀬の場合】
「……ううむ」
白瀬・ウルフレット・桜子は不本意であった。
驚かし役に任命された時、自分が『銀狼の騎士』と呼ばれることから
人狼の仮装をしよう、と思い立ったまでは良かったのだが――
同じように仮装道具を欲する驚かし役がよほど多かったのか、
桜子の元に届いたのは――狼とは似ても似つかない、別の動物だった。
それも、頭だけ。
だが、桜子はそれを嫌な顔一つせず受け取ることにした。
それを見た時、彼女の心に何か――奇妙なときめきが広がったからだ。
そして桜子は今、それを被り――探検役が来るのを待ち受けていた。
ところが、探検役の子がなかなかやって来ない。
理由としては、桜子の配置されたポイントがかなりの奥地であり
臆病な子達はそこまでにリタイヤしてしまうし、他の子にはもっと難易度の低いチェックポイントが
割り振られていて桜子の所を通らないという不運が重なったためだが、桜子は知る由もない。
「驚かす練習は大分やったのだがな……」
そろそろ肝試し自体も終了する頃合い――
桜子も諦め、そろそろ戻る支度をしようとした、その時だった。
「ぴぃぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
「!? 何だ、あの悲鳴は――!」
桜子が思わず身構えた瞬間、悲鳴をあげながら走り去る影が目の前を通り過ぎた。
「! あれは……待って!」
桜子が咄嗟に後を追いかける。
この辺りは道も入り組んでいるので、見失って迷子になってはまずい――
風紀委員としての判断であった。
〜〜〜
「なにあれなにあれなにあれぇ!こわいよこわいよこわいよーっ!」
羊角の少女、ツツジは――大粒の涙をこぼしながら、暗い森の中を走って逃げていた。
チェックポイント寸前、主である後藤さんが先に進む中――
不意に横の茂みを見た時、
“それ”と目が合った。
恐怖が臨界点を迎え、彼女は主に縋り付くのも忘れて逃げ出した。
闇雲に走り回るツツジの脳内は、パニックに支配されている。
「待って! そっちは危ないから!」
不意に、凜とした女性の声が背後からする。
恐怖と混乱で塗りつぶされていたツツジの心に、ほんの少しだけ余裕が生まれる。
「大丈夫、私は風紀委員だから……!
そっちに行くと戻れなくなるから止まって!」
女性の必死の呼びかけに、少しずつ走るペースを落とし……そしてへたり込むように止まるツツジ。
「ふ、ふええう゛ぇえぇぇ……」
目の前には、段差が広がっていた。
さほど高くはないが、あのまま走っていたら――転落し、怪我していただろう。
「あ、あの、ありがとうございま――」
自分を救ってくれた女性に、お礼を言おうと振り返ったツツジが見たものは――
白馬の頭部を持った、奇妙な女性だった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
声にならない悲鳴をあげ、ツツジは――気を失った。
【白瀬・ウルフレット・桜子VSひつじ執事ツツジ:無効試合(ノーコンテスト)】
129
:
犬
:2015/08/12(水) 00:24:30
シアクさん4コマ
tp://t.co/aaxxFjG0VU
千本桜さん
tp://t.co/6KOzNIKryJ
メリー・シープ
tp://0006.x0.to/oo/gif/inunomeriisiipu.png
tp://0006.x0.to/oo/gif/inunomeriisiipu2.png
一二兆
tp://0006.x0.to/oo/gif/inunonityou0811.png
130
:
一二兆
:2015/08/12(水) 00:26:52
メリーVSゴリラ
tp://0006.x0.to/oo/gif/maryVSgorira2chou.png
131
:
流血少女GK
:2015/08/12(水) 00:33:07
>>122
10点
>>123
10点+10点=20点
>>124-126
8点+13点=21点
>>127
5点
>>128
7点+5点=12点
132
:
メリー
:2015/08/12(水) 01:02:01
「意思を継いで」
〜第一戦終了後〜
遠くでの戦いの音がやんでしばらく
斥候に出た一二兆と里見晶は戦場になっているであろう校舎の傍へとやってきていた
脇に差した刀を確認しながら歩く晶と両の手を頭の後ろに手を組んで歩く二兆
「だっ、大丈夫ですかね先輩」
「大丈夫にゃよ、千本にゃくらさんも一緒にゃし」
気楽に話す二兆とは違い、晶の顔は暗いままだ
晶は携帯で何度か前線に出た仲間に連絡を取ってみていたが返事はないままであった
二人がしばらく歩くと、ふと目の前に何かが飛び出してきた
白い巨大が二人の前で立ち止まる、赤と白の斑な身体と光が霞んだ瞳を向けるそれは飛び出した姿勢のまま二人と対峙していた
「だっ、誰にゃ!?」
思考停止から先に戻ったのは二兆だった
エアガンを引き抜き目の前のそれへと向ける
慌てて晶も刀を構える
「まっ、待ってください!?」
一瞬の対峙であったがそれは少女の声によって遮られる
その声には二兆も晶も聞き覚えがあった
もぞもぞと巨体の赤斑な身体から別の存在が姿を出す
それは先陣の援護に行った折内こころであった
「敵じゃないです、敵じゃないです!!」
涙を浮かべながら手を振るこころの姿と彼女しかいない状態に晶は嫌な予感が当たったことを感じ、二兆は陽気な表情を引き締める
「こころさん……ほかの方は?」
振るえる声で聞く晶の言葉にこころは咄嗟に声を返せなかった
その様子に二兆は予感が確信へと変わったことを感じた
「わかったにゃ、すぐに番長小屋に引き上げるにゃ」
「は……はい……」
深く聞かれないことに後ろめたい思いを感じながら
こころは静かに頷き、彼女の乗る存在の耳元へと唇を寄せる
「シープさん、もう少しです……頑張って頑張って」
その言葉に少しだけ彼女の乗る物体の瞳に光が僅かに戻る
一歩一歩と歩み始めるその姿は、巨体でありながら今にも崩れ落ちてしまいそうなほど弱弱しく
晶と二兆は気が気でないまま、番長小屋へと戻った
―――――――
133
:
メリー
:2015/08/12(水) 01:02:49
「つまり十三人中生き残ったのは五名ということか」
誰とも知れない発言に番長グループのメンバーたちの顔は一様に思い
メンバーの真ん中ですべてを話して、まるで何事かの糾弾や罵詈雑言を待つかのように、ただただうつむくこころに誰もが声をかけられないでいた
「ひっ、ひっぐ、約束したのに、一緒に頑張ろうって……」
「晶さん、少し部屋の外に行きましょう」
「うっ、うぁあああああああっっっ」
経過を話せば話すだけメンバーの多くが目を伏せ、中には涙をこらえられず泣き出してしまうものも多かった
「ステラ……」
「……亞聞ちゃん」
「……大丈夫、私は大丈夫だよ白雪」
友達や憧れの先輩といった者たちが倒れた、彼女たちが死んでいったことを受け入れられるほど強い心を多くの少女達は持ってはいなかった
「……桃ちゃんの能力のブラフが上手くいかなくて」
人の口に戸は立てられない、彼女の友達の何気ない一言が生徒会のメンバーに漏れ、そこから一気に隊列が瓦解することとなった
番長の右腕的な存在であった「四万十川アリス」は凶弾に倒れ、番長である「メリー・シープ」も敵であるパラノイアの能力により魔人の身体を維持できず、今はただの羊に戻ってしまっている
生き残ったシアクは口から泡を吹き、土星、不定もいまだ昏睡から覚めないままである
千本桜明菜を始め、ステラ、綾崎楓、草野珠、赤牛崎黄毬といった大半のメンバーを一気に失い小屋の中はまるでお通夜のようになっていた
「何をしているのですか、みなさん?」
そんな悲しみにくれる小屋の中に凛っとした声が響く
自然と集まった視線が小屋のドアへと向けられる
そこにはいつものようににこにこと笑みを浮かべた百端一茶が立っていた
彼女は番長小屋に入れずらいメリーを陰世庵に運んでいたはずであったが
何故かポットを持って戸口の前に一人たたずんでいた
「とりあえず、皆さんお茶にしましょう。ゆっくりと今をかみしめましょう」
そういって、小屋に入るや否や彼女はゆっくりとお茶をたてる
彼女へ向けられる視線の中にはいらだちを含む者や呆れが混じるものもあった
だが、彼女はまるでそのようなものを気にせず、やがて一杯のお茶をたてた
何とも言えないほのかなお茶の香りが小屋の中をつつんだ
「さあ、こころさん」
「……あっ」
差し出された茶碗に戸惑うような反応を見せるこころに一茶は優しい笑顔を向ける
ゆっくりと椀を傾け、飲み込んだそれはこころが今まで飲んだ何よりもおいしかった。そこで初めてこころは生きててよかったと小さく思えた
「……おいしいです」
「ゆっくりとはいえないけど、しっかりと受け入れましょう彼の思いはまだ失われていないわ」
番長グループ
それは突如、学校に現れた部外者によって作られた組織だった
得体の知れない胡散臭いものによって半ば強制的に集められたメンバーではあったが、それでも皆何かの思いがあってここにいた
彼の危惧する危機に呼応するものもいた。生徒会の組織に反感を持つものも居た。友達が入ったから入ったものも居た
こころの小さな頭を撫でつつ、一茶はグルリと小屋に集まるメンバーを見回す
「これから、反抗戦のための作戦会議を始めます。まずは番長を新しく選定します」
凛とした声に沈んでいたメンバーの顔がゆっくりと引き締まる
そうだ、まだ終わりじゃない
私たちは生徒会には屈していないのだと
「やるにゃ、生徒会に目に物見せてやるにゃ!!」
「ステラちゃんの〜かたきは〜ちゃんと〜とりますよ〜」
「そんなまったりじゃ全然ダメにゃー!!」
「やるきは〜あるん〜ですよ〜?」
二兆の勇ましい言葉と、白雪の気の抜けた言葉のコントラストに何人かの生徒の口元に笑みが浮かぶ
まだ負けてない、ここから大逆転だ
「わっ、私もやります千本桜先輩の分も頑張ります」
「ええ、頼りにしてますよ」
「はい、柿内先輩。泣いてたら怒られちゃいますもんね」
番長グループはその日再度結束を固める――
「さあ、お茶で申し訳ありませんが献杯しましょう。皆の魂に報いる為に」
――勝利を信じて
134
:
ドラゴンゾンビのステラ
:2015/08/12(水) 02:04:06
二兆ちゃん
tps://twitter.com/kakono_hito/status/631118595326513152/
本戦1ターン目
tps://twitter.com/kakono_hito/status/631102555750150144
メリーさんに頂いたSSのイメージイラスト
tps://twitter.com/kakono_hito/status/631102662671372289
135
:
少年A
:2015/08/12(水) 02:23:13
0006.x0.to/oo/gif/sitorasijimi.jpg
シトラさんと墓色さん。
>>125
の挿絵だとおもっていただければ。
136
:
胡亞聞
:2015/08/12(水) 07:22:53
左:折れないさん 右:メリーさん
tp://img.ly/CnDk
一ニ兆さん
tp://img.ly/CnEl
137
:
ステラ
:2015/08/12(水) 21:32:57
\あおりーん/
tp://0006.x0.to/oo/gif/aoriiiiiin.png
138
:
一二兆
:2015/08/12(水) 23:58:07
タイガービーナス
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51940589
139
:
里見晶
:2015/08/13(木) 23:27:38
一戦目一日目3T後手SS『渡り廊下の変』
ーーー嘘つきわんこーーー
「音隠ちゃん! 無理しちゃダメだからね!」
「はい。大丈夫です」
私は、嘘つきだ。音隠は自嘲した。
包は、応援でやってきた音隠を気遣いながら、ウミウシの着ぐるみでバタバタと後退していった。音隠のどこか心ここにあらずといった様子に若干の胸騒ぎを覚えたが、早く動かなければ作戦に響く。不安をかき散らすように頭を降り、先を急いだ。
音隠は、戦闘用糸電話を構えながら、渡り廊下を見つめた。そこに陣取るのは、仁王立ちをする竜人の女の子。家乃ステラという名と聞いている。
私の役目は、この渡り廊下から先にステラを行かせないことだ。今、もう一か所の渡り廊下では生徒会陣営の総攻撃がされているはず。その間、ここの守りを固めることで、挟撃を防ぐのだ。結局はにらみ合いをするという、死線となっているであろう反対翼の渡り廊下に比べればまだ安全な仕事だ。
だが、音隠は己を犠牲にする覚悟を決めた。
渡り廊下に陣取る、竜人の子は、決して侮っていい相手ではない。だがそれ以上に危険なのは、その奥でギターを構える、帽子を被った女、綾崎楓だ。
音隠は以前、目撃している。妃芽薗学園のグラウンドで暴れるゴリラたちを、一瞬にして惨殺した楓の力を。
楓は危険だ。彼女を生かしておけば、いずれ生徒会は大打撃を受けるかもしれない。今ならば、相手も油断している。私の能力ならば、殺せる。生徒会のためには、今削っておくべき戦力だ。
生徒会のため。自分で言って笑えてくる。正直言って、陣営なんてどっちでも良かった。結局、お互いがお互いの正しさを主張しているだけだ。ガキのケンカと変わらない。そんなものに巻き込まれるなんて、私からしたらごめんだった。
でも、”あの子”が生徒会に入ると言ったから。
あの子は今も、生徒会が陣取る校舎で非戦闘員として、お茶くみや洗濯などの雑用を頑張っている。本陣まで、敵を近づけるわけにはいかない。
生徒会のみんなは、私の能力を心肺機能を強化して運動能力を上昇させるものとしか認識していない。一度使えば、ハルマゲドン中には復帰できないということは話した、だが、本当の副作用については誰も知らない。私が、言わなかったから。
いざというときに、それを理由に判断を鈍らせてしまえば、生徒会全体を危機に陥らせる。それは、あの子を危機にさらすということでもある。それだけは、絶対に嫌だった。
死ぬのは怖い。でも、あの子に死なれることの方がもっと怖い。生徒会を守ることが彼女を守ることに繋がるのなら、それ以上に理由なんか必要ないのだ。
命には、使い時というものがある。
私にとって、それが今だ。
音隠は、静かに糸電話の片側を口に当て、もう片方を左胸に当てた。
思い返すのは、茶道部の先輩。私みたいな偏屈者も、笑って受け入れてくれた優しい先輩。生徒会に行くと言ったときも、「体に気を付けてね」と送り出してくれた。私は、貴方の敵になるのに。ごめんなさい。言うこと、聞けませんでした。
思い返すのは、古武道部によく顔を出してた剣道部の先輩。私みたいなやる気のない部員にも、とてもよくしてくれた。あの子が先輩に向ける尊敬の眼差しに少し嫉妬したときも、見透かしたように笑いかけてくれた。強い、きれいな人。
思い返すのは、あの子の笑顔。
ねえ、知ってる? 私は、嘘つきなんだ。
最初から、古武道部への誘いを断るつもりなんてなかったの。
ただ、照れくさかっただけなんだよ。
「静那。静那。静那…」
その言葉に呼応して、音隠の心臓は強く胸を打つ。まるで、悲鳴をあげるように。まるで、飼い主を探して鳴く子犬のように。
140
:
里見晶
:2015/08/13(木) 23:29:19
ーーー竜の人ーーー
渡り廊下に仁王立ちで立つステラは、糸電話を手にする女を視認していた。翼の仕込み銃は準備オーケーだ。近づいてくれば、いつでも迎撃体勢は取れる。
ステラは、渡り廊下の守りを任された。ここは、番長グループの最前線だ。もっとも危険な場所であり、もっとも死に近い場所である。
全く、とんだ役回りだ。復讐以外に使う命はない。そう思っていたのに、なぜあたしは最前線で命のやり取りをしているのだ。
番長グループには恩義がある。メリーさんには世話になった。アリス先輩が作ってくれたオムライスは、本当に美味しかった。何よりも、こんな私を疎まず、仲良くしてくれたみんなのために、命を張りたいと思っている。
しかし、これはただの情だ。あたしの本来の目的を考えれば、一時の感情に惑わされることなく、他人を犠牲にしてでも生き延びるべきだろう。なのに、あたしはここから下がるつもりはない。本当に、馬鹿げている。大局を見据えず、断捨離をせず、やりたいことをやるなんて。
"やつら"に言わせれば、それがドラゴンのすることか、ってなもんだろう。
「上等だ」
ステラは、自らを鼓舞するかのように、握り込んだ右拳を、開いた左手に叩きつけた。恩義は貫く。復讐も果たす。あたしの身を焦がすような二つの衝動を、仕方ないなんて言葉で決して誤魔化したりはしない。
あたしがあたしであるために大事なものを、一つたりとも零れ落とすつもりはない!
「来るならこい! あたしは逃げも隠れもしねえぞクソがぁーっ!」
ステラが、咆哮したその瞬間、一陣の風がステラの真横を瞬く間に通りすぎた。
背後から、肉が裂ける音。その更に遠くから、人の名を呼ぶ声が聞こえる。
ステラは、一歩も動けなかった。膝が震えて、恐怖で後ろを振り向けなかった。
ステラが真の意味で、この戦いを殺し合いと認識したのは、この瞬間だった。
141
:
里見晶
:2015/08/13(木) 23:29:48
ーーー風に吹かれてーーー
綾崎が全身に風を感じたのは、音隠の拳が自身の腹部を貫いた数瞬後だった。
(なにこれ)
口の中に血の味がする。目線を下ろすと、糸電話を握りしめた音隠が血を吐き、そのまま崩れ落ちるように倒れた。音隠の腕が綾崎の腹部から抜けると、水道のコックを捻ったように血が大量に流れ出す。
綾崎の膝が笑う。立っていられず、たまらず尻餅を付いた。
(血、ガンガン抜けてくな…)
お漏らしでもしたみたい、と間の抜けたことを考える。痛みはない。脳が痛覚をシャットアウトしているのだろう。
「楓ちゃん!」
草野の叫び声が聞こえる。だが、綾崎の視界は水中のように歪み、聞こえる音は一枚壁を隔てたかのように遠い。
これが、死か。
そんな、中二病のような言葉が頭に浮かび、綾崎は自嘲した。全然美しくない。どうせなら、もうちょいいい最期を迎えたいところだ。
ふと、鼻歌が口をついた。路上で弾き語りをするとき、シメに必ず歌っていたこの曲。あいにくと力が入らないから、ギターは弾けないし、ブルースハープも吹けないが。
「How many roads must a man walk down.Before you call him a man ?」
息継ぎをする度、肺に血が入って咳が出る。多分、音程もめちゃくちゃだ。格好悪いけど、でも、なにもしないよりはマシかな。
「How many seas must a white dove sail.Before she sleeps in the sand ?」
そういえば、ももっちとやってた将棋の対局が途中だったっけ。出陣の時間が来たから、私が封じ手をしておいたのだ。ちょっと勝ち目は薄かったけど、詰むにはまだ早すぎる。早く帰って、続きを打ちたかったんだけどな。ももっち、無事かな。あの人、やたら自信満々だったから、大丈夫だと思うけど。
「Yes, how many times must the cannon balls fly.Before they're forever banned ?」
ああ、お嫁さん。なれなかったな。結構お料理だって自信あったのに。胃袋、掴めると思ったんだけどな。
「The answer my friend is blowin' in the wind.The answer is blowin' in the wind...」
私の魂も、どこかに吹かれていくのかな。
綾崎の体から、ゆっくりと力が抜けていく。それでも、意識を手放す最後の瞬間まで、綾崎は歌うことをやめなかった。
その歌声は、風に吹かれていずこかへと流れていった。
誰の耳にも、届くことなく。
劇中歌 ”Bob Dylan「Blowin' in the Wind」”
142
:
里見晶
:2015/08/13(木) 23:40:24
家族と僕の絵まとめ
千本桜さんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/630715637606715392
メリー・シープby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631101152789028864
メリー・シープby私
tps://twitter.com/mutiennji/status/631101305340100608
一二兆さんby私
tps://twitter.com/mutiennji/status/631111722581929984
一二兆さんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631125579467636736
百端一茶ちゃんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631307682750726144
tps://twitter.com/mutiennji/status/631307774299770880
霜月サビーネさんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631307928511733760
十七夜月美女ちゃんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631308098544648192
折内こころちゃんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631308211866374144
里見晶ちゃんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631308365663055876
十七夜月美女ちゃんと一二兆ちゃんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/631833102562660353
143
:
犬
:2015/08/13(木) 23:49:59
十星 迦南
tp://t.co/ZV9Jngj86Y
タイガービーナス
tp://0006.x0.to/oo/gif/inunotaigabisan.png
144
:
一二兆
:2015/08/13(木) 23:52:25
メリー・シープ
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51959128
コキンちゃん
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51959861
145
:
一二兆
:2015/08/14(金) 01:18:11
綾辻 結丹
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51963005
146
:
流血少女GK
:2015/08/16(日) 12:15:03
>>129
8点+13点=21点
6点+10点=16点
6点 こいつは間違いなくゴリラ・・・!
10点
8点+13点=21点
合計74点
>>130
1点
>>132-133
10点+15点=25点
>>134
6点
7点+10点=17点
10点+15点=25点
合計48点
>>135
3点
>>136
8点+10点=18点
8点=8点
>>137
7点+7点=14点
>>138
5点
>>139-141
15点+10点=25点
>>142
7点+7点=14点
8点+8点=16点
4点
2点
10点+10点=20点
10点+10点=20点
10点+10点=20点
6点+6点=12点
6点+5点=11点
10点+10点=20点
10点+10点=20点
12点+15点=27点
合計186点
>>143
15点+10点=25点
15点+10点=25点
>>144
4点
4点
合計8点
>>145
6点
147
:
流血少女GK
:2015/08/16(日) 12:15:32
合計:2402.8点
148
:
ももじ
:2015/08/16(日) 20:14:57
こきんちゃん
tp://0006.x0.to/oo/gif/kokinncyann.png
ももっち&ゴリラ部員
tp://0006.x0.to/oo/gif/gorira%20momocchibunnsinn.png
149
:
のし
:2015/08/16(日) 21:58:27
後の皐月継承者と雪月継承者
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52015298
「おねえしゃま、いってらっしゃいー!!」
150
:
一二兆
:2015/08/17(月) 01:38:58
鮫人間
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52015716
クリスと土星
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52022801
151
:
ももじ
:2015/08/17(月) 16:55:42
土星を掴むクリス
tp://0006.x0.to/oo/gif/kurisu.png
152
:
鳩子
:2015/08/17(月) 20:34:23
綾崎楓さん
tp://sasimi-mazui.sakura.ne.jp/dng/e/ryuuketsu4/kaede.jpg
後藤さん
tp://sasimi-mazui.sakura.ne.jp/dng/e/ryuuketsu4/gotousan.jpg
153
:
一二兆
:2015/08/18(火) 01:09:41
藤堂美咲
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52041155
154
:
不定
:2015/08/18(火) 01:39:16
「躑躅は迷信深いほうだったかな? 神や仏に祈りを捧げたり、お化けに怯えたりするかい?」
紅茶の注がれたカップをソーサーに置き、椅子に腰かけた「お嬢様」が投げかけたその言葉は、
彼女の背後に立つ、執事然とした黒服に身を固め直立の姿勢を保っていた有角の少女の眉間に
「なにを言いだしたんだこいつ」と、いぶかしげなシワを彫らせた。
ここ三日ほど、授業にも行かず寮の自室へひきこもり怠惰のかぎりをつくしていたその発言の主は、
いつまで週末気分なんですかとたしなめる執事に対しても平然と――むしろしたり顔でもって、
「私の神は世間のそれより優秀でね。世界を創るのに六日もかけなかったのさ」と返す人間である。
そんな傲岸不遜の体現者、神をも恐れぬ彼女が神仏だお化けだと口走ったのだ。
お嬢様のことを知る人物ならば、特に彼女の幼馴染として幼少期を共に過ごしてきた執事ならば、
まず裏のある話が始まったと疑ってしかるべき事態であった。おそらくは碌でもないたぐいの。
「いえ、特別……」
語尾を濁し、あいまいな返事をした執事をふり仰ぎ、そうかそうかとお嬢様は唇の端をつりあげた。
少女の動きにあわせて余所行きの白いワンピースの裾がふわりと広がり、その笑顔に彩りをそえる。
その「不穏な」笑顔にはまったくもって不必要な彩りだと、執事はため息をついた。
せっかくひさしぶりの外へ――臨海学校という思春期まっただなか、学生生活の一大行事に参加し、
この海岸線沿いに建てられた、白くて丸い石造りの、これぞリゾート地と言わんばかりの宿と
青と緑が交じりあった水平線と白い砂浜と、これほどまばゆい青春を謳歌できそうな場所へきて、
「変なことを考えていないで……泳ぎにいきませんか?」
海も砂浜も窓の外に追いやって、宿の部屋で紅茶を淹れるだけなどと、これはなんの罰ゲームか。
怨嗟の念をこめた執事の提案も、哀願の意図をこめた執事の視線もまたどこ吹く風と、
お嬢様はふふんと鼻で笑い、椅子の背もたれにしなだれかかったまま執事を流し目で見あげている。
「躑躅はアレをなんだと思う?」
「また話が飛びましたね。アレと言うと?」
「近頃、学校に出没しているじゃないか。あのクネクネだよ」
「ああ」
お嬢様と執事の二人が通う全寮制の高校、妃芽薗学園の校内に、近ごろ、ソレは居ついていた。
「一人ひとりにマスコット」を教育の売り文句とする学園の、珍妙な生物が闊歩する校内において
なお誰と一緒にいるでもなくふらふらと移動するソレは異質な雰囲気だった、と執事も思いおこす。
「ああ、だなんて躑躅は相変わらず鈍いな。臨海学校にもついてきているんだよ?」
「そうなんですか?」
しかし、それがどうしたというのか。私たちが夏の海で貴重な思い出作りをする責務も放棄して
若さという宝石を石壁の内側に閉じこめ中天の陽光で釜蒸しにして燻らせる正当な理由になるのか。
お嬢様の話の先が見えず、執事は思考の半ばを部屋の外へ遊ばせながら、なげやりな返答を導き、
「誰かのマスコットでは?」
「マスコットというには愛嬌に欠けるだろう」
その「早く海にいこう」をオブラートに包んだひねりのない回答は、にべもなく一蹴された。
まあ、ああいう見た目を好む人間が一定数いるのも確かだが、と言い足してお嬢様は言葉をつぐ。
「だが、マスコットではない。今回の臨海学校に参加している生徒全員の情報は調べたが、
アレをマスコットとして使っている者はいなかったからね。隠している可能性もあるが、
そうする利益も見つからなかった。まあ部外者――闖入者と見て間違いないだろう」
「お嬢……まさか、最近ずっとひきこもってそんなことを調べていたのですか?」
「そうさ。なかなかに面白そうなものを見つけたからね」
嬉々としてそう言ったお嬢様は、机に向き直ると置かれた自前のノートPCに手を伸ばし、
こんなところにまでそんなものを持ってきてという執事の白い目をものともしない笑顔で
ディスプレイを執事に向け、丁寧に指差しで「これを見ろ」とアピールした。
執事が覗きこめば、そこには白地を背景にしたシンプルなデザインのWebサイトが映っていた。
「なんですかこれ……ブログ?」
「躑躅には海より先に見ておいてもらいたかったんだ」
どうあっても、このお嬢様のきまぐれを解決するまでは自分は海にいけないらしい。
どうせわかっていたことだけれど、と執事はため息をひとつつくと、せめてもの抵抗の表明として
穴でもあけよと全力の眼力をきかせ、青白く発光するPCの画面をにらみつけた。
***
155
:
不定
:2015/08/18(火) 01:40:46
//spelunker59603.blog.fc2.com/blog-entry-7.html
//spelunker59603.blog.fc2.com/blog-entry-6.html
//spelunker59603.blog.fc2.com/blog-entry-5.html
//spelunker59603.blog.fc2.com/blog-entry-4.html
//spelunker59603.blog.fc2.com/blog-entry-3.html
//spelunker59603.blog.fc2.com/blog-entry-2.html
//spelunker59603.blog.fc2.com/blog-entry-1.html
***
156
:
犬
:2015/08/18(火) 23:11:14
仔狐クリス
tp://t.co/guaV6nua5W
業ヶ深院シアク
tp://t.co/VkLpnDCufU
十七夜月美女 4コマ
tp://t.co/LxoHmYoqE2
157
:
一二兆
:2015/08/19(水) 00:48:15
弐番館 白雪
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52057141
158
:
一二兆
:2015/08/20(木) 00:14:02
折内こころ
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52076360
159
:
里見晶
:2015/08/21(金) 23:43:22
里見晶SS『鬼胎 #1』
百端一茶の主導による、散っていった仲間達への献杯の後、晶は一茶と共に海沿いを歩いていた。
晶はつま先で、足元に寄る波とパシャパシャ戯れる。本当に、臨海学校で遊んでいた時の海そのままだ。蓮柄円の説明によると、ここは爆心地である臨海学校宿舎によく似た異次元空間らしいが、とてもそうとは思えない。山間に広がる無数の墓石さえ目にしなければ。
晶は、山側を見ないようにしながら、前を歩く一茶に話しかけた。
「さっきは、ありがとう。おかげで、持ち直せた」
晶は、ばつが悪そうに苦笑する。そんな晶に、一茶はいつもと変わらないたおやかな微笑みで返した。
晶と一茶は同い年だ。千本桜先輩と親しくなる切っ掛けになったお茶会の後、家の方向が近いこともあって親しくなった。晶は、委員会に入っているとはいえ帰宅部。一茶は、茶道部の次期部長。当然下校の時間は合わないが、お互いなんとか一緒に帰る機会を作る程度には仲が良い。
「いいえ、晶さんのためだけというわけでもありませんわ。私自身も、動揺していましたし。そんな時は、茶の湯を点てるのが一番ですから」
そう言いながら、一茶は着物のひざ裏を押さえてしゃがみ、海岸に流れ着いた丸く白い貝殻を手の中で弄ぶ。つい先程、自陣営が大敗したことを一瞬忘れるほど淑やかな後ろ姿に、晶は思わず目を奪われた。
ふと、一茶が目線を落とし、物憂げに一息吐いた。
「許せませんね」
晶は、突然の一茶の強い言葉に、眉をひそめる。
「生徒会を、かい?」
「いいえ、こんな茶番劇を仕組んだ者を、です。どのような思惑があるのかはわかりませんが、他人を都合のいいように操って、利権を得るような卑怯者を、許すことはできません」
立ち上がって振り返り、墓場を見つめる一茶に、晶は一瞬気圧される。その眼には、普段の柔和な雰囲気を押し退け、冷たく燃える炎のような鋭い憤怒が宿っていた。
「そのためにも、私たちは生徒会との戦いに勝たなければなりません。生き残って、真相を暴いて、私たちの手で黒幕を断罪するのです」
一茶は、風に乱れる髪を押さえ、自分に言い聞かせるように言葉を続けた。
「私から茶飲み友達を奪ったこと、心底後悔してもらいます」
一茶のゆったりとした言葉は、内に秘める確かな強い意思を感じさせた。
晶は改めて、一茶の胆力に感心した。何度も話して、よくわかっている。百端一茶は、茶のことしか考えていない、争いの嫌いなのんびり屋だ。だからこそ、どんな極限状況でも自分を決して見失わない。戦闘力は決して高くないが、人間力という意味では番長グループの誰よりも強いのではないかと感じる。
それに比べて、ボクは情けない。はじめから、人が死ぬかもしれないということはわかっていた。わかっていたつもりだったのに。目を閉じれば、思い出す。こころちゃんやメリーさんの体にこびりついた、鉄臭い血の臭い。土星先輩の、虚ろな目。
晶の体が、ぶるっと震えた。暗雲を払うように頭を振り、なるたけ元気よく一茶に声をかける。
160
:
里見晶
:2015/08/21(金) 23:43:56
里見晶SS『鬼胎 #2』
「ごめんね。先に戻ってて。ボクは、もう少し刀を振っていくよ」
晶の言葉に、一茶が怪訝そうな顔をする。晶は必死に平静を保つが、どうしても顔がひきつるので、意識的に一茶と目を合わせないようにした。
「明日も早いし、ゆっくり休んだら?」
「いや」
晶は、腰に指した鞘から真剣を取り出した。背筋を正し、左手の小指に力を集中して、雑巾を絞るように刀を握る。千本桜先輩に教えられた、刀の持ち方の基本。こんなことすら、おじいには教えてもらえなかった。
「千本桜先輩に教えてもらったものを、無駄にしたくないんだ。少しでも、体に染み込ませておきたい」
一茶は、少しだけ不安げに顔を曇らせたが、やがて皆に茶を振舞ったときのような、穏やかな微笑みを湛える。
「そう……。わかったわ。けど、無理しないようにね」
「うん、ありがとう」
一茶が、砂浜に足を取られないよう着物の裾を摘まんで、ゆっくりと離れていく。晶はそれを、刀を振りながら見送った。
晶の視界から、一茶の姿が消える。素振りを百本ほどしただろうか。まだまだ、体力に余裕はある。
だが、晶はそれ以上刀を振ることができなかった。刀を下ろし、左手で胸の真ん中を鷲掴みにする。夜の闇が、晶の小さな背中にのし掛かってくる。重みにつぶれないよう懸命に踏ん張るが、とても押し返すことなどできない。
涙は出ない。取り乱しもしない。それは、真綿で首を絞めるようにゆっくりと、晶の呼吸を塞いでいく。心臓が鉛に包まれたかのように重い。気管に砂が詰まっているかのように息苦しい。
折内こころから、先発隊の死に様を聞いたときのことを思い出す。そのとき晶の心中を支配したものは、仲間を失った悲しみや、大切な人を守れなかった無力さではない。
(ボクはあのとき、悲しくて泣いたんじゃない)
それは、庇護者がいない戦場で、初めて感じた死の重圧。
(戦ったのがボクじゃなかったことにほっとして、それが情けなくて泣いたんだ)
刀がカタカタと音を出す。柄を握りしめる右手の手首を押さえるが、それでも雑音はやまない。殺すのも、殺されるのも、覚悟していたはずだ。それなのに、手の震えが止まらない。
唇を噛み、恐怖を押し退けようとする。美咲先輩なら、それでも顔をあげるはずだ。己の正しさを信じて、最後まで戦い抜く。ボクの知っている美咲先輩は、そういう人だ。
美咲先輩。ボクに力をください。正義なき力は無能なり。力なき正義は無能なり。一番大事な言葉を、おまじないのように唱える。それでも、震えは止まらない。
千本桜先輩の笑顔。ステラちゃんの憎まれ口。綾崎さんの弾き語り。みんなで食べた、アリスちゃんのオムライス。大切な思い出の全てが、過ぎる時間の恐ろしさを、人が死ぬということを晶に実感させる。
次の出陣の時、ボクが死ぬかもしれない。ボクが殺すかもしれない。
暗闇に溺れまいと、無理矢理に顔を上げる。しかしその先には、並び立つ山ノ端一人の墓石。その奥で、今までのハルマゲドンの犠牲者たちが手招きをしているように見えたとき、晶の精神は限界に達した。
「おじい…助けて…」
刀を取り落として肩を抱く晶は、決して口にしたくなかった言葉が漏れ出ることを、止めることは出来なかった。
161
:
一二兆
:2015/08/21(金) 23:46:54
里見晶ちゃんの祖父権蔵さんだ
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52112345
162
:
ステラ
:2015/08/22(土) 00:36:33
里見晶さん
tps://twitter.com/kakono_hito/status/634750224620199936/photo/1
163
:
里見晶
:2015/08/22(土) 00:53:16
用語解説『里見無人流剣術』
対多人数に特化した、無差別殺人剣術。速さと切れ味を重点としており、技から技への繋ぎが流れるように速いため、休みなく攻撃し続けることが可能。
その技は徹底して甲冑の継ぎ目など急所を捕らえるようになっており、真後ろへの斬撃など全方位にも対応しているため、達人であれば四方を囲まれたとしても、剣を振り続ける限り生き延びることが出来ると言われている。
里見無人流は、関ヶ原の戦いが始まる頃、創始者である里見権十郎宗近が妻と共に富士の樹海で山籠りを始め、その中で生まれたとされている。
権十郎はそのままサバイバル状態で暮らしていたことから、江戸時代における竹刀剣術への移行や、明治時代における廃刀令等をことごとくスルー。里見無人流剣術は、近親相姦を繰り返しながら作られた「里見村」で村人同士の争いにより発展し、ガラパゴス状態で独自の進化を遂げた。よって、武道としての理念や信念は一切なく、ただ敵を倒すための方法としての殺人剣術としてしか伝承されていない。
里見村は非常に閉鎖されていたことから、村人には現代における常識的概念がほとんど身についていない。それはすなわち、『認識の壁』を突破することが容易であったということであり、里見村の住人はそのほとんどが現代で言う魔人であったといわれている。
富士の樹海に所在する里見村を来訪した者は村人に一人残らず斬殺されていたため、里見村の存在は長らく認知されなかったが、第二次世界大戦後日本警察の調査により初めて発見される。警察は、殺人に対する倫理観が一切ない村人を未開の野蛮人と判断し攻撃を開始したが、里見村の人々は徹底抗戦を挑み、大激戦を繰り広げた。
最終的には自衛隊をも巻き込んだ戦いとなり、ほとんどの村人が近代兵器に破れその命を落としたが、一部の逃げ延びた人は里見無人流を途絶えさせてはならぬと考え、これを門外不出とし、ごく僅かな門弟に伝承して生き永らえさせている。
権蔵は少年期に憲兵隊の襲撃を受け、その際は近代兵器に歯が立たず敗走したが、その数年後、日本警察及び自衛隊を相手取ったリベンジを仕掛け、完勝した。
結果として、日本政府からアンタッチャブルな存在として認識されたことから、自らが里見無人流伝承者であることを隠そうともせず、悠々自適に毎日を過ごしている
なお、里見無人流には、刀を主とした武器による技を磨く剣術の他に、素手による殺し技を使う拳術、内効を高める健術がある。それぞれ伝承者が存命しており、そちらは細々と素性を隠して生きている。
164
:
里見晶
:2015/08/22(土) 09:30:10
ゴリ剣の皆様by私
tps://twitter.com/mutiennji/status/634741410600607744?s=17
里見晶ちゃんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/634883640644599808?s=17
里見晶ちゃんWithゴリラ 合作?
tps://twitter.com/mutiennji/status/634883855942455296?s=17
165
:
里見晶
:2015/08/22(土) 09:31:40
ゴリ剣の皆様by私
tps://twitter.com/mutiennji/status/634741410600607744?s=17
里見晶ちゃんby家族
tps://twitter.com/mutiennji/status/634883640644599808?s=17
里見晶ちゃんWithゴリラ 合作?
tps://twitter.com/mutiennji/status/634883855942455296?s=17
166
:
不定
:2015/08/22(土) 19:05:37
承前
>>155
「なんですか……これ」
「見てのとおりだよ。ブログだ」
「そんなことはわかってますよ。これ……不定生物ってあのクネクネのことですか?」
「あんな見た目のものはそうそういないだろう」
執事は口元をおさえ、PC画面の前から上体をおこした。
思ったとおりの反応を引き出せたからか、お嬢様は満足げに目を細めている。
「悪い冗談じゃないですよね?」
「これの舞台の希望崎にも確認はとってみたよ。たしかにこの同好会が遭難していたそうだ」
はあ、と執事の口からため息がこぼれた。浮かれていたところに冷や水を浴びた気分であった。
妃芽薗に現れた闖入者。同じ容姿のなにかが別の高校でおきた事件の渦中にいた――偶然にしても
あまり良い気はしない。執事の曇り顔を見ながら、お嬢様はそれで、とさらに話を続ける。
「躑躅はこの遭難事件をどう思うかい?」
「どうって……私としてはただ探検隊が洞窟で運悪く遭難した、で片づけたいのですが」
「だが、これを見てすぐに、このブログに登場する不定生物とアレをつなげて考えたのだろう?」
ようやくだが、お嬢様の言いたいことがわかってきたと、執事は口をおさえる手を頭に運んだ。
こめかみからはえた羊の角がごつごつと存在感を手のひらに返し、自分と同じ有角の少女が遭った
事件に自分もまた巻きこまれかけているのではという予感を伝えてくるのであった。
「お嬢はアレがなにかやったと……?」
ひとときの間をはさみ、執事が思い切って口を開いた。
お嬢様のティーカップに新しい紅茶を注ぎ、慣れ親しんだ日常の行為の反復作業によっていくらか
冷静になった執事に、いや、とお嬢様は大げさにかぶりをふってみせた。
「この記事を読んだだけでは情報が少なすぎる。本当のところなんてわかりはしないさ」
そして、執事のその言葉を待っていたとばかりにまくしたててきた。
「たとえばこの同好会内のマスコットの地位をかけた愛憎のもつれでドラ娘君がおこした狂言遭難。
あきらかにまともじゃなくなっているこの記事の筆者がなんらかの利益を求めて仕組んだ事件。
あるいは躑躅の言ったとおりにただの事故だったのかもしれないし、そもそもこの記事自体が
現実の遭難事故にのっかった、ただの悪ふざけという可能性だってある」
「ブログはここから更新されていないんですね」
「うん。過去の記事の更新間隔からいって一週間以上も更新が止まるのは珍しいようだから、
その点から言うとただの悪ふざけでは済まないなにかはやはりあったのだろうね。
書いてあるとおりにブログの筆者が袋叩きにされて入院中だなんてオチかもしれないが」
「私は冗談で済ませてほしいですね」
「だがね躑躅。こんどはこれを見てくれ。
ツテで希望崎の友人から、このときの通信端末のログをもらえたんだ。
遭難していた側の子たちのものだが、見ていておかしいと思わないかい?」
「はあ……これは記事に出てきた最初の被害者の?」
「部室側から、単独行動をそそのかすような指示が飛ばされているだろう?
この子はどうやら甘言にコロッとのるタイプだったみたいだし、これが事態悪化の原因だろうね」
「『この子』ってお嬢よりだいぶ年上ですよこの人……。それで、ということは部室の人が……?」
「いや、部室の端末にはこんな送信ログはなかったんだよ。
誰かが遭難者側の端末になにか細工をしていたのかもしれない」
「ああ、だから記事にも通信記録に不審な点があるとかなんとか」
「次はこっちだ。これはドラ娘君の端末のものだが、七月十二日以降に通信した形跡がない」
「……は? 記事にのっていたログでは」
「そう。部室の端末には十二日以降もドラ娘君のログが書きこまれているね。
部室にいたブログの筆者をあざむくための偽装工作がおこなわれていた可能性がでてくる」
「でも待ってくださいよ。お嬢の言うとおりだとすると、遭難者側の端末と部室側の端末の両方を
誰かが同時に細工していたってことになりません? 犯人はテレポート能力者かなにかですか?」
気づけばお嬢様の勢いにのせられてすっかり話しこんでしまっている自分がいる――
執事はその事実に、我がことながらお嬢様に甘いものだ、と頭の片隅で苦笑し、そのまましばらく、
少々傲慢で気まぐれな安楽椅子探偵の名ワトソン役をつとめることにしたのであった。
***
167
:
流血少女GK
:2015/08/22(土) 19:16:39
>>148
1点
1点
合計2点
>>149
7点+5点=12点
>>150
1点
3点
合計4点
>>151
0点
>>152
15点+5点=20点
15点+5点=20点
合計40点
>>153
2点
>>154-155
10点+30点=40点
>>156
15点+5点=20点
15点+5点=20点
15点+25点=40点
合計80点
>>157
3点
>>158
3点
>>159-160
15点+15点=30点
>>161
1点
>>162
10点+3点=13点
>>163
3点
>>164
3点
18点+15点=33点
0点
合計36点
168
:
のし
:2015/08/24(月) 21:21:01
>>149
を修正した
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52167727
169
:
不定
:2015/09/06(日) 01:33:20
承前
>>166
「――だから、海にはいかないほうがよい。少なくとも、アレがいる今はね」
机におかれた携帯電話ほどのサイズの通信機器を指先ではじき、お嬢様はそう言葉を結んだ。
唐突に始まったお嬢様の話だったが、つまるところ、これが言いたかったのだな、と執事は頷いた。
相変わらずいつも迂遠でまわりくどい手段をとる、ひねくれた人だ――と。
ただ、今回ばかりはその面倒くさい言葉にも従うべきだろう、とも、転がされた端末を見おろし
執事は考えていた。事件の被害者の一人が持っていたと思われるその端末の画面に映る、
最後の通信メッセージ、「KILL YOU」の文字は憧憬にきらめく海よりも深く暗い意志が滲んでいた。
あのクネクネが落とした通信端末を他でもない、このお嬢様が拾いあげたのが始まりであった。
そして――それに刻まれていたのが元の持ち主による気楽な通信記録と、クネクネがいじって
入力したであろう無意味な文字の羅列と、脈絡なく入力された明確な危険信号であった。
元の持ち主が最後に訴えた誰かへのメッセージか。あのクネクネが入力したのか。それとも……?
そもそもアレが端末を持っていたのは偶然や気まぐれで拾っただけか、誰かの意思が働いた……?
執事には真実を判断するだけの情報も、真実を知ろうという熱意もなかったが――
「アレ自身がやったにしろ違うにしろ、こんなぶっそうな言葉が絡んでいる相手に近づくな……と」
「躑躅が迷信深いならなおさらね。本当に危ないかもしれないし、ほら、『呪いは気から』さ」
執事は背筋を伸ばし、ピンと姿勢を正したまま目を閉じた。
まぶたの裏に映る青い海と、白い砂浜と、波間にたわむれる自分とお嬢様の姿は惜しいものだが、
そこに不審で、不穏で、不定の影がある以上は執事としてお嬢様を危険にはさらせない。
「海に行けないのは残念ですが……仕方ないですね。今日はお嬢と引きこもっていましょうか」
「やあ、そう言ってもらえると嬉しいね。それじゃあ躑躅。さっそくだが――」
「はい。紅茶のおかわりですね。もう淹れましたよ」
「さすがは私の執事だ。気が利くじゃないか」
「さっきは鈍いとか言っていたくせに。……それに私は野良執事ですから。お嬢のものでは」
「おっと、つれないな。私と躑躅の仲じゃないか。いい加減に私のところへ嫁ぎにきたまえよ」
こうして今日という青春の一日も、臨海学校という学生の楽土も、お嬢様と二人、
不健全に消費していくのだろうな――執事はため息をつき、腕をからませ体重をあずけてくる
お嬢様をつとめて見ないよう天井を仰いだ。一面の白い漆喰には汚れひとつ見あたらなかった。
*** 【不定】エピソード『迷子』完 ***
170
:
不定
:2015/09/06(日) 12:07:38
承前
>>169
*** おまけエピソード『ひつじの皮をかぶった執事』 ***
「ところで躑躅。さきほど海へ行けなくて残念と言っていたね。躑躅はそんな海好きだったかな?」
海を臨む絶景をよそにPCにかじりつき、はやりもののソーシャルゲームを始めて一時間もしたころ、
いかにも「そういえば思いだしたが」という口調でお嬢様がふり返った。
身をかがめてゲームを見ていた執事は、一瞬、間近でお嬢様と向きあい、直後に背を伸ばしていた。
「これでも健全な女子ですから。日光と水を与えられないとひからびるんですよ」
「躑躅は羊だと思っていたけれどバロメッツ(羊の実る空想の植物)だったのかい」
「そりゃあ躑躅(植物の名前)ですから」
冗談を言いながら、執事はお嬢様のいたずらの成功を期待する眼差しを受け止め、それに向かって
全力の抗議の視線を返した。――どうせ全部わかっているくせに、などと、言うまでもない。
執事はふいとお嬢様に背を向け、窓へ手をかけた。外の風を入れなければ頬と耳が熱くて仕方ない。
「……お嬢と海へ旅行なんて最高の思い出じゃないですか。期待してたんですよ」
「うん? なにか言ったかい?」
「潮の香りが強いですねって言ったんですよ」
「『臨海』学校なのだからね。ああ、確かに塩気のある風がこちらにも届いてくるよ」
結局、畢竟、とどのつまり――今回の話は徹頭徹尾、ただの閑話であり、
「それでだ。そうかそうか。ごまかすということは本気で私との旅行を期待してくれていたんだね」
「ばっちり聞こえているじゃないですか!」
「安心してくれよ躑躅。私も躑躅と旅行ができて、今、とても嬉しく思っているんだよ。
可愛いかわいい私のふわふわ子羊ちゃん。私も君のことが大好きだからね」
執事のことが大好きで仕方がない、好意をまっすぐ伝えられない、ひねくれ者のお嬢様と、
そんなお嬢様が大好きで、押されればごまかすが引かれると必死で好意を示してくるお嬢様の性格を
よく理解して、だから望む言葉を聞きたいがためにそっけない態度で接する執事との――
「だから私はまだ野良執事です。仕えるべきお嬢様を探す流浪の身です。お嬢のではありません」
「幼馴染の私を見捨てるなんて躑躅は薄情じゃないかい? 将来を誓いあったというのに?」
「何歳のときの話ですか、それ」
「けれど、安心はしているよ。先ほどの呟き、アレは私に聞こえるように言ってくれたんだろう?
わかっているよ。躑躅は優秀な執事だから、うっかりひとりごとを聞かれるドジなんてしない」
「ああ……もういつもの調子に戻っちゃいましたね」
日常の、仲むつまじい、じゃれあいでしかなかったのである。
<了>
171
:
里見晶
:2015/11/27(金) 21:31:29
ーーーーーー胸の奥の針のありかーーーーーー
不気味なイタミは、座っている。
窓の外には、赤い空と無数の墓場。机が後ろに下げられた教室の真ん中に、ただ一つ置かれた安っぽい木製のイス。そこに、イタミは口を半開きにしてよだれをたらしながら座っている。
その背後には、制服を着た華奢な女子生徒。彼女は、イタミのつやのある黒色長髪を、自前のオイルを塗りこみながらくしで梳かしている。イタミはもともと身なりが汚らしく、髪の毛も油でバリバリに固まり、くしを通せば折れてしまうほどだった。それを、ここまで解き解したのは、女子生徒のたゆまぬ努力の力だった。
ついさっきまで、同じ学校の生徒同士で殺し合いをしていたとは思えないほど穏やかな、昼下がりの午後のような空気の中に、二人はいた。
『もー、私、すっかりイタミ先輩係って感じじゃないですか』
『ヒヒッ、つらーい? 一本いっとく? ヒヒッ』
『いりませんっ! ……ほんとに、もう』
女子生徒は、呆れたようにイタミの頭を軽く叩いた。頭を叩かれたイタミは、どこか心地よいような気持ちになったが、よくわからないしどうでも良いことだったので、そこで考えることをやめた。
イタミは、ネガティブな感情には共感力が高いが、それ以外はからっきしだ。それは、自分の感情に対しても変わらない。少なくとも、自分が感じているのが悪感情ではないことはわかったが、それ以上は何が何だかわからないのだ。
『ヒヒッ。断られた。かーなしーい。ヒヒッ』
悲しいというものの、あんまり悲しくないことがイタミにはわかる。しかし、なぜそう感じるのかわからない。イタミは、“彼女”にだけはドラッグ中毒になってほしくないと思っているのかもしれないが、そのことにイタミ自身は気づかない。
そもそも、イタミは基本誰にも自分の髪を触らせない。イタミは潔癖症だからだ。自分の頭はフケだらけのくせに、他人の素手など病原菌の塊だと嫌悪感が先に来る。そんなイタミが髪の毛を触らせるなど、よっぽど気を許しているという証拠だ。だが、そのことにイタミ自身は気づかない。
『はい、できましたよ』
『ヒヒヒッ』
女子生徒が最後にイタミの長髪に手ぐしを入れると、イタミの油でバリバリに固まっていた長髪が、サラサラと水のように流れ落ちた。ここまで来るのに、どれほどかかっただろう。お風呂に入れ、シャンプーとトリートメントをし、ドライヤーをかけ、くしで髪を梳かした。事あるごとに逃げるイタミを追いかけ、捕まえた。途中で楽しくなっていたのは否めない。
女子生徒は、イタミの感情が読めない笑いに、手間のかかる子どもに向けるような慈しみの眼差しを向けたかと思うと、ふと、視線を地面に落とした。
『ねえ、イタミ先輩』
ネガティブな感情。
女子生徒から零れ出た一滴の“寂しさ”が、イタミの心を潤した。
『私が存在ごと消えても、私を覚えていてくれますか?』
172
:
里見晶
:2015/11/27(金) 21:31:45
不気味なイタミは、跳ね起きた。
6畳の自室。物が一切置かれていない、いつも通りの自室だ。フローリングの床の上に、布団も敷かずに仰向けに寝ていたイタミは、ポリポリと頭を掻きながら、窓の外に登る白い朝日を見つめた。
不気味なイタミは、生還した。
結局のところ、イタミはハルマゲドンにおける戦闘に参加しなかった。いや、イタミには戦闘があったという感覚すらなかった。ほぼ常にドラッグでラリっているイタミには、殺人事件も、閉鎖空間への移動も、それを現実として認識する方法がない。いつのまにかよくわからん世界にいて、いつの間にか元に戻っていた。それだけの話だ。イタミにとっては、日常茶飯事の出来事だった。
だから、イタミにとっては今日もいつもと変わらない日だ。朝起きて、学校に行って、ドラッグをキメて、髪の毛を洗おうとする美化委員から逃げ回る。今日は、そんな変わらない日のはずなのだ。
それなのに。
イタミは、知らないうちに胸を押さえていた。キメていないのに、ちくちくと胸の奥に針が刺さるようだ。体の一部が抜け落ちたかのような、大きな喪失感。なぜ、なぜこんな。
“髪の毛を洗おうとする美化委員から逃げ回る。”
私は、いったい誰から逃げていたというのだ。
胸の奥で暴れまわる針を掴みかけたその瞬間、ぷつっ、と小さな音がした。
肉を、針が裂く音。
イタミのか細い左腕に、注射針が刺さった。イタミの右親指は、迷うことなく静脈に特製ドラッグを流し込んでいく。それと同時に、喪失感も、胸の奥の針も消え失せ、充実感がイタミの脳髄を満たしていった。
「……あ〜〜〜〜〜、光〜〜〜〜〜〜。ヒヒッ。ヒヒヒッ」
不気味なイタミは、笑う。
ネガティブな感情にしか共感できない心の痛みを、ドラッグで放り投げてしまったから。
誰よりも情が深く、誰よりも悲しみを恐れるイタミは、もはや笑う以外の感情表現を持たない。だから、イタミの頬を流れる涙に、何の意味もない。
イタミが、サラサラの黒髪を指で弄ぶ度に、涙腺が刺激されるとしても。
落とした針のありかを探し出す術は、もはやイタミには存在しない。
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