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ドラゴンクエスト・バトルロワイアルⅢ Lv6

1518哀しみのとき/哀しみを胸に ◆2UPLrrGWK6:2024/04/29(月) 02:56:42 ID:chZJ0etU0


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ピサロの前には微動だにしない肉体が2つ転がっている。
少し離れた所にはもう一人。
今しがた殴り飛ばした者が意識を失い大の字で昏倒していた。
息の根があるようだが、もうそれはどうでもよかった。
彼は、自分の前に立ちはだかる存在こと、勇者の血筋を持つ者でもなんでもないからだ。

「……?」

瑞々しく光り輝いていた伝説の剣。
持ち主が手放してからしばらくは、その力を失うことがなかったのか光を湛えている。
魔王たる自分が、若干の嫌悪感すら抱かんばかりの輝きを。
ほどなく、ただの金属光沢に過ぎない鈍い輝きを放つだけの存在へと成り果てた。
血脈が絶たれたゆえに、役割を失ったのだろうと考えた。
誰かの手に渡るくらいならば戯れに拾おうか。
そんなことすら、彼は思わなかった。
すでにピサロにとってそれは、もはや脅威とならない。
振り返ることのない過去、どうでもいいものとなったからだ。

「?」

ほどなくして輝きが失われたはずの剣が微かに脈動し、淡い光に包まれる。
何が起こるか油断なく見つめていた矢先、ロトの剣は小さな宝玉へと姿を変えてしまった。

「……完全に役割を終えた、ということか」

力のオーブが寂しげな光を放ち、ころりと足元に転がる。
踏み砕くも拾い上げるも自由だが、ピサロは無視を決め込んだ。
自分の目的地がはっきりとした今となっては、この場にとどまる選択肢などない。

「……」
「ひ」

ぐるり、と首を動かして振り返れば、そこにはさらにもうひとり居た。
激しい暴風の影響を受け、吹き飛ばされ気を失っていたはずのポーラがいつの間にか目覚めている。
眼をいっぱいに見開き小刻みに震える姿は小動物を彷彿とさせ、胸の前におわかれの翼を抱えていた。
邪なる力とは正反対のものを感じられるそれを、大切そうに。
その方向へ踵を返して歩き出すと、彼女の表情がさらに青ざめた。
じゃり、と瓦礫と血まじりの土を踏みしめ一歩を踏みだすごとに、彼女の呼吸は荒く、大きく弾む。
逃げ出しても良かったのだが、どうもできないように見えた。
奪われてなるものか、そう言わんばかりに固く手に握りしめている、それ。
先程までの彼は、それにひどく、執着していたような気もしたが。


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