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FFDQかっこいい男コンテスト 〜DISSIDIA FINAL FANTASY部門〜

1名無しの勇者:2008/11/17(月) 23:49:33
DISSIDIA FINAL FANTASY小説専用スレです。
書き手も読み手もマターリと楽しくいきましょう。


*煽り荒らしは完全放置。レスするあなたも厨房です*

2名無しの勇者:2008/11/17(月) 23:52:13
スレ立てとた上に投下とかいいのだろうか。
という訳でお借りします。
受受な上にイチャしかないので。

3バツクラバツ。1:2008/11/17(月) 23:54:07
傍らで、オニオンとジタンがなにやら胡坐をかいてこそこそしている。
「こうきたら、こうだろ?」
上半身をひねり、腕を振るうオニオンをうんうんと頷くジタン。
「そしたら、こっちの手で、こう!」
ぶん、と振るわれた腕をひょいっと避け、ジタンは再び真剣な目でオニオンを見やる。
──何やってるんだ。
クラウドは、まるで何かの儀式をしているかのような二人を遠目にしながらも、やはり気になるのか視線をはずさない。
そっと近づいてから、「何やってるんだ?」と声をかけると、二人同時に小さく身が跳ねた。
「あ、クラウド。」
オニオンの丸い目はぐっと丸みを増し、ジタンはしっぽが踊っている。
──嬉しい……のか?
「暗闇の雲対策。」
ジタンが自信満々とばかりに胸を張った。「対策?」と耳を傾けるクラウドに淡々と説明を始める。
「あの、うねうね。あるだろ?」
うねうね、のところでジタンのしっぽが動く。そちらの方が気になって、理解するまで少し時間がかかった。
「触手がどうかしたか?」
「あのうねうねに足取られたら怖いからさ、対策練ってたんだ」
オニオンの教示だろうか、しかし対策と言えども。
「そうか……がんばれ」
クラウドには結局、『興味ない』のだ。
「クラウドもやろうよ」
「興味ないね」
声をかけたのが失敗か、と今更気付くがもう遅かったようだ。
「こう来たらどうするんだよ!」
「うわっ!」
くるりと向いた瞬間、その左腕にジタンが絡みついた。
思わずつんのめるクラウドに、目を煌かせたオニオンが右腕に飛びつく。
「そうだ、触手は怖いぞ、捕まるぞ!」
「離れろ……おまえらっ」
こんなのバレットでも出来るものか、とクラウドは力の限り腕を振って逃れようとした。
「うわ、引きずる、やめっ」
「何やってるんだお前らー」
悲鳴をあげたジタンの声に被さる別の声。
「ぐあっ……」
被さるのは声だけではなかったようだ。重みがクラウドを潰そうとしている。
「お、バッツ」
右手にオニオン。左手にジタン。背中にはバッツ。
一体、なんの寄生モンスターか、と思うような体勢に、クラウドは力が抜けていった。

4バツクラバツ。2:2008/11/17(月) 23:55:13
さすがにジタンとオニオンは、自分の身が大切とばかりに離れた。そのままくっついていると、当然地面に崩れるのは目に見えているし。
「ほら、やっぱり。怖いだろ?」
悪びれもせずにオニオン。
「……お前ら……。」
へなへなと座り込むクラウドの背中には未だにバッツが張り付いている。
「離していいから、バッツ」
クラウドが背中をよじるものの、バッツはまるで座椅子になったかのように支えていた。
「……。」
何故かバッツが放心している。クラウドを、なんの違和感もなくぎゅっと抱いたまま。
目さえ閉じて、まるで、クラウドを全身で感じていたい、そんなようにも見えてた。
「バッツ?おーい」
ジタンがぺたぺたとバッツを叩いた。居心地の悪さにクラウドが身じろぎをしてるのも気にならないらしい。
「バッツ、離せってば!」
しびれを切らせて腕の中で暴れるクラウドに、バッツが自分を取り戻すまでそれからしばらくの時間がかかった。

5バツクラバツ。3:2008/11/17(月) 23:55:44
結局、ジタンとオニオンはWoLに呼び出されて怒られた。
「対策は構わないが、迷惑をかけるな」とのお言葉を頂き、再び二人で何か会議を始めている。
「バッツ」
「あ、腕、平気か?」
多少の注意を受けたバッツも、クラウドにばつの悪い顔を向ける。
「ああ、別に」
「ごめんな、楽しそうだったからついやり過ぎた」
クラウドは苦笑した。
今度されてみろよ、なんて言いたい言葉はぐっと飲み込む。
「さっきは、どうしたんだ?」
抱きしめたまま、動かなくなった。あのとき、ほんとは何があったんだ?
首筋に当たる吐息が激しくて、抱きしめた腕は強くて、こんなこと認めたくないけど、嫌悪はなかった。
「う、ん。……いや、すまない」
言葉を濁し、バッツは背を向ける。そっけないその態度に、クラウドもつい言葉を荒げた。
「勝手にあんなことしといて、その態度はないだろう」
「……ん。悪い。」
振り向くバッツに、クラウドは息を呑んだ。
何かを失った顔。
いや、ここにいる全てがそうだ。クラウド自身もいろいろなものを失っている。違う、それだけじゃなく。
「大切な友達に似てた。……すまない」
ずき。
クラウドはどこかが急に痛むのを感じて、つい手をやった。その場所が胸だと気付くのにも時間がかかるなんて。
「気をつける」
バッツはクラウドの言葉も待たぬまま、背を向けた。足取りはまるで逃げるかのようで、今度ばかりはクラウドの声も届かない。
「なんだよ、これ」

荒れた地を踏みしめるバッツは、やっと足を止める気になった。
遠出してるという自覚はなかったが、結構な距離歩いてしまったようだ。
これくらいの距離、以前ならバッツの友達のチョコボと一緒だったらもっと早く来られただろうに。
「……しまったな」
はぁ、とため息そのままにしゃがみこむ。
アイツと間違えてたなんて言ったら、クラウドはきっと怒るだろう。いや、絶対怒り出す。
「でも、どうしてもあいつの頭、ボコを思い出すよなぁ……」
誰にも聞こえないようにと閉ざしていた言い訳を、バッツはやっと口にした。

6名無しの勇者:2008/11/17(月) 23:57:07
以上お目汚し失礼しました。
4−7までしかプレイしてないくせにキャラ出しすぎですいません。

7名無しの勇者:2008/11/18(火) 00:11:29
>>6
スレ立て&作品投下GJでした!
主人公ズみんな可愛いすぎる…
何この仲良しさん達けしからんもっとやれ
そしてオチに吹いたww
是非また投下して下さい!

8名無しの勇者:2008/11/18(火) 00:22:40
オチわろたw
WoLのリーダーっぷりにハァハァ
オニオン&ジタンもかわゆすw

9名無しの勇者:2008/11/18(火) 01:18:59
ボコを思い出してクラウドをフカフカしちゃうバッツwww
かわいすぐるwww

10名無しの勇者:2008/11/18(火) 14:25:20
和むー可愛いーw
あれだけの男集団なのに何でこんなにイチャイチャが似合うんだよw
ディシディア本当に楽しみだ!

それにしてもこんなにピュアだとカオス勢にいい感じに弄ばれそうで心配だ。

11名無しの勇者:2008/11/18(火) 17:37:42
>「そうだ、触手は怖いぞ、捕まるぞ!」
ごめん萌えた

12発売前ばつくらばつ:2008/12/23(火) 23:48:44
バツクラバツの人です。
発売前に書きなぐってたテキストが出てきたので貼らせて頂きます

バツクラバツの序章みたいなのですかね

13発売前バツクラバツ:2008/12/23(火) 23:50:49
大地が泣いてる、と少女が呟いた。
聞こえる?とクラウドを見て、再び視線を戻してから彼女は目を閉じた。
返答が来るとは期待していないようだ。ただ、彼女が歩いた先で座り込むクラウドがいたから声をかけた、それだけのことかもしれない。
クラウドはそんなティナの姿に多少の罪悪感を感じながらも、口を開くタイミングを失っていた。
「ティナ」
その空気を打ち破ったのは、一人の青年。
「バッツ」
茶色い髪を荒れた風に流したまま、バッツはティナからクラウドへと視線を滑らせて、少しばつの悪い表情になった。
「邪魔?」
見た目は線の細い青年だと言うのに、実際は芯のしっかりとした『おにいさん』だ。
年齢の近いクラウドやセシルよりも、ジタンやオニオンと気が合うということは、彼の年齢は嘘ではないかとクラウドは時々思う。
まぁ、18歳のスコールを考えたらそんなことどうでもいいのだけれど。
「ううん、平気。わたし、行くね」
「うん。すぐ戻る」
クラウドをちらりと見やると、ティナは身を翻した。何か気を使わせたのか、とクラウドはいまさら気付く。
「悪いことしたかな」
「ん?何か言ったのか?」
気付いてないだけか、単に気を使ってのことだか、こいつはイマイチ食えない。
困ったように首をかしげるクラウドに、バッツもつられてつい首をかしげた。
「で、何の用だ」
ふっと視線を逸らした先には荒野が広がっている。荒れた大地。泣いてるとティナが言っていた、かろうじて大地の姿をしたそれがどこまでも広がっていた。
「一人で何やってるのかなって」
「別に何も。アンタは?」
特に何をしたかったわけではない。ただ、クラウドは一人でいたかった。
「俺もだ」
特に何かしたかったわけではない。ただ、クラウドを一人にしたくなかった。
「……いい?」
隣に座り込みされては、クラウドももう嫌とは言えない。仕方なく傍らに置いたバスターソードを邪魔にならないようにとそろりと動かす。
バッツは、膝を抱え込んでから独り言のように言葉を連ねた。
「これから、どうなると思う?」
「意味がわからない」
「荒れた大地、切りつけてくる風、怒りしか見せない炎、泣いてる水。こんな今の世界、信じられないよな」
「しかしこれが真実だ。」
膝に顔を埋めたまま、ちらりとバッツを見る。彼もクラウドに気付いたか、ふと目が合って苦笑された。
「でも、行くんだろ?」
コスモスに導かれたままに、行かなければならない。選択肢など最初からないのだ。
そもそも。
「また、眠ってもらわなけりゃ」
クラウドの悪夢、そして全ての始まりであるあの男は、自分を待っている。
「強いな」
「……?」
耳を疑うバッツの言葉に、クラウドはいささか不安になった。理由はないけれど、自分に素直になっている彼への畏怖?
「俺は正直、怖いよ」
「光の戦士がそんなクチ聞いていいのか?」
クラウドのその投げやりな言葉に、バッツは困ったように頭に手をやった。流れる髪をかきあげ、「いや、悪い」と焦りを含んだ声を流す。
「そうだよな、……みんなが、いるしな」
ほんの少しの沈黙に含まれた、躊躇いの意味。それを考えているクラウドの、大地に触れた手のひらが、ふわりと熱を持った。
「クラウドもいてくれるだろ?」

戦いはこれから。
「ああ」
クラウドは荒野を見つめたまま小さく頷く。

──安心?違う、これは。
「行こうぜ。みんなが待ってる」
そう言ってバッツは重ねたクラウドの手を持ち上げ、そのぬくもりを閉じ込めるかのように強く握り締めた。

14名無しの勇者:2008/12/23(火) 23:53:51
以上 お目汚し失礼しました。

では再びPSPを睨む日に戻りますです。
ありがとうございました。

15名無しの勇者:2009/01/19(月) 20:32:56
スレお借り致します

スコバツでDFF本編開始直前あたりの話

*注意事項*
・出したキャラの中で最後までプレイしたのは2と5だけなんで、
 一人称や二人称、言い回しはDFFだけを参考にしましたスンマセン
・若干バッツの設定を原作寄りにしてあります
 見た目のちょっとした部分とか、性格的な一面とか
些細な部分ではあると思いますが、それだけ頭の片隅に置いて頂けると幸いです

それでは次レスからドゾー

16スコバツ 1/12:2009/01/19(月) 20:33:48
最初に飛び込んできたのは、鈍色の空とおぼろげな光。
厚く層をなす雲間から頼りなく、それでも確かに世界を照らす光。
それは、じわりじわりと綻び始めた秩序の現れ。

(カオスの力、か)

確かなものが失われつつあるその中で、今なお鮮明な存在感を放つのは「仲間」である、と。
自分を召喚し、この世界を支える女神はそう言った。
闘える者の数が多いのは、結構なことだ。
だが、仲間と言われたところでつるんで行動する気にはなれない。
各自がやるべきことをやるだけ。
任務というのはそういうものなのだから。
ガン・ブレードという名の武器を肩に担ぎ上げ、だから、とスコールは思う。

(カオスの奴らと闘う時以外は、一人で静かに居させてくれ)

17スコバツ 2/12:2009/01/19(月) 20:34:39
少し前まで静寂が支配していたその場所に、今は騒々しいやりとりが繰り広げられていた。
元凶の片方は、剣を手に、斧と杖を腰に差し、背には槍ばかりか弓矢まで負っている男――
自分と同じぐらいの年恰好で、名前はフリオニールと言ったか。
足元には短剣まで仕込んでいるが、見えない部分にまだもう一つ二つは武器を隠し持っている気がする。
(物騒な奴だ…)
武器など数を持っていれば良いというものでもないと思うのだが。
そして、そのフリオニールに相対しているのが――
「吹っ飛べーッ!!」
良く通る声が響き渡る。
直後に地面へ大剣を叩き付ける音が炸裂した。
衝撃波を伴って盛大に吹き上がる土砂。
反射的に防御体勢をとったフリオニールが、その掛け声どおりに勢い良く後方に吹き飛ばされた。
どうにか受身を取って、相手との距離を確かめようと目を向けた眼前に何かが迫る。
咄嗟に腕を振り上げて振り払うと、球状のそれは更に地面で弾み、放った本人の元へ跳んでいった。
おっと、と軽口めいた声と共に返ってきたボールを手で受け止めて笑うのは、確かティーダという名だったと思う。
そう、その手にあるのは紛れもなく球技で使うようなボール。
(どうして戦場にボールなんだ…?)
確かに当たれば痛いだろうが、ボールはボールだ。
大剣を手にしているのだからそれを主軸に戦う手段を考えた方が効果的なのではないだろうか…
闘う姿を目にしてからずっと疑問ではあったが、最近その大剣ごとボールよろしく投げつけて攻撃するのを見て以来、
ティーダにとっては大剣も投擲武器扱いなのだと認識を改めることに決めた。

だが決めたところで、そもそもどうしてボールなんだという疑問が消えることはない。
視界に入ればどうしても気が向く。
何より闘っている時のティーダは非常に騒々しい。
別にそれについて文句をつけるつもりはないが、静かに休める時はそれを優先したい――
じっとしてると体が鈍るから、というティーダの手合わせの誘いを断ったところで、
他の者がそれに乗ってしまえば結局自分の希望は叶わないのだと、
スコールは眼前の光景を眺めながら溜息をつくのだった。

18スコバツ 3/12:2009/01/19(月) 20:35:19
「なーに溜息なんてついてんのさ」
掛けられた声に視線を向けると、そこにはゆらゆら揺れる長い尻尾の持ち主。
陽気な表情を浮かべた顔は、この騒々しさを楽しんでいる事が良くわかる。
秩序の女神の下に集った「仲間」には、賑やかな事が好きな連中が多いらしい。
(自分は少数派、か)
「別に……」
理由を説明したところで理解を得られるとは思えないし、ご丁寧にそんなことをするつもりもない。
無視はしていないというようなポーズだけの返事をすると、
少しでも静かな場所を求めてスコールは踵を返し、歩き出した。


どのぐらい歩いただろうか。
どこまでが秩序の力に守られ、とりあえずは安全であるという目に見える境界がないこの世界で、
あまり他の連中のいる場所から離れるのは得策ではない。
振り返ると、緩やかなくねり道と勾配を歩いてきたらしく、
眼下に元の場所を見るような位置に立っていた。
白と灰色を基調にした広大な遺跡の中にいるような、そんな殺風景な光景が延々と続いている。
他に目につくものといえば、辺りに帯状に漂う幻のように儚い薄緑の輝きだけ。
それでもこの重たげな空の下、意外に眺めが良く感じられる場所だった。
抜け出してきた所からは、距離的にはそんなに離れていない。
音や声はほとんど届かないが、しっかり視認はできる。
見ていると、ティーダと、今度はあの尻尾の生えた少年がやりあっていた。

19スコバツ 4/12:2009/01/19(月) 20:35:59
(まったく…元気な連中だな)
そういえばまだあの少年の名前を聞いていなかったことに思い当たる。
女神コスモスがこの世界に召喚したのは全部で十人だと聞いてはいるが、
お互い時期も場所もバラバラにこの世界に喚ばれて、しかもまだ日が浅い。
当然未だ顔を知らない者もいるという事だった。だが――
(今、気にしたところで無意味だ)
共同戦線でも張ることがあれば、その時に考えればいい。
集ったのは全員闘いに長けた者なのだから、自分の得意不得意ぐらいすぐに把握できて当然。
それが苦手だというなら、こちらが指示を出せばいいだけの話だ。
(それ以上を踏み込んで相手を知る必要など、ない)

他人に干渉するのも、されるのも。俺は好きじゃない――

その時、どこかで地面を踏みしめるような音が聞こえた気がした。
微かな緊張が沸き起こる。
(カオスの手勢でもいるのか?)
さっと周囲を見回し、気配を探る。
敵意のようなものは感じない。が、誰かが居るような気配が確かにある。
そんなに離れた場所じゃない、と見当をつけて慎重にその気配に向けて足を運んだ。
視界を遮る岩場のような地形を陰に使い、気配がする先を窺う――

20スコバツ 5/12:2009/01/19(月) 20:36:33
果たして、そこには人影があった。
弱々しい逆光が縁取るその姿は線が細く、茫然と立ち尽くしているように見える。
いでたちは随分と軽装で、茶色の髪が光に透けて柔らかく輝いていた。
人影の纏う気配には歪みや淀みといったものが感じられず、カオスに属す者ではないであろう事だけは推測できる。

知らない顔。
恐らくコスモスに召喚された一人。
(あれは、誰だ?)
今まで気にしたこともない「仲間」の存在に興味を示したという事実を越えて、
スコールの意識は更に別のところに引き寄せられていた。
しばし空を振り仰いで眺めていたその人物が、ゆっくりと視線を落とす。
何かを憂うように半ば伏せられた瞳が、淡い逆光の中でもやけに鮮明で、それがスコールの意識に強く焼きついた。
やがて、その口から小さな呟きが零れる。
「…風が……」
本当に微かな言葉。
聞き落としても仕方がないほどの呟き声。
今、何と言ったろう?
(風が…弱くなっていく……?)
そんな言葉に聞こえた。
風なんて強いときもあれば、弱いときだって当然あるだろうに。
それが何だというのだろう?
けれど、そんな疑問がすぐに消え失せるぐらい、その瞳が印象的だった。
夜明けの空の、一番濃くて、深い青。
暁の色。

だからその瞳がパッとこちらに向き直った瞬間、咄嗟に声も出せずに凝視してしまったのだ。
伏せ気味だった瞳が自分の存在に気付き、今度は大きく見開かれる。

21スコバツ 6/12:2009/01/19(月) 20:37:16
「…もしかして、コスモスに喚ばれた一人か?」
辛うじて「……ああ」と返しながらスコールは頷く。
光の加減だろうか、暁の空を思わせた瞳は黒に近い色味に転じて見えた。
その瞳が何度かの瞬きを繰り返し……そして破顔した。
一瞬にして纏う空気が入れ替わる。
「俺、バッツ。よろしくな!」
からりと明るい声音と、それに完璧に見合った表情に、今度はさっきと別の意味で言葉が出てこない。
お前は?名前、何て言うんだ?そんな風に問いかけられて、ようやく「……スコールだ」の一言を搾り出した。
「そっか、スコールか」
バッツと名乗った青年はスコールの名前を繰り返すと、再び屈託のない笑顔を浮かべる。
キラキラと蒼黒の瞳を輝かせながら「よし、改めてよろしくな!」と笑いかけてくるのだった。

(さっきのは、何だったんだ…?)
ほんの数秒前の、声すら掛け難いほどの空気。
纏っていた気配には静謐ささえ感じさせられたのに、
面と向かってみれば、周囲まで明るくするような、賑やかで人好きのする人となり。
見た目は自分と同じぐらいか、少し上といった年の頃のようだったが、
実は年下なのではないかと疑いたくなる雰囲気に一変していた。
それに、と思う。
ようやく意識を相手の全身へと回して気付いたが、
バッツの姿は軽装というレベルを遥かに越えた薄手の服装だった。
左肩には肩当てと両腕に手甲を着けてはいるが、肘から上は何の保護もない素肌が晒されていて、
腰に佩いているのは恐らく主用途が日常用の短剣のみ。
出会って間もないながら推測されるのは、恐らく白兵戦の物腰なのに、
武器の類はそれ以外全く所持していないのが一目瞭然の姿である。
今までどこにいたのかは知らないが、いつカオスの手勢に遭遇するのかも知れないこの世界に居るにしては
あまりに無用心ではないだろうか。

22スコバツ 7/12:2009/01/19(月) 20:37:53
困惑と混乱がスコールの意識をかき回す。

名乗ったきり沈黙している黒服の青年を、バッツが不思議そうに覗き込んだ。
くるくると変わる表情に合わせ、黒味を帯びた碧い瞳もその印象を変える。
子供みたいに澄んだ目――
いやに纏まりの悪い意識の中に、そんな思考がストンと落ちてきた。
「どうして、そんなに――」
口を開いたという自覚がないまま滑り出した言葉に、後から意識が追いついて思わず口篭った。
途中で止まったスコールの言葉に「そんなに、何だよ?」と興味津々で身を乗り出すバッツ。
(突然何を言い出すんだ、俺は)
形が定まらない意思に、焦りが追い討ちをかける。
――どうして、そんなに無邪気なんだ、なんて。
(初対面の相手に、言うような事か…?)
名乗った次に発する第一声がそれでは、不躾な上に良くて厭味にしか聞こえない。
(別に、厭味を言いたいわけじゃないのに)
思う間にも、言葉の続きを待つバッツの真っ直ぐな瞳が覗き込んでくる。
そしてその瞳を目にするほどに、それ以外の言葉が見出せなくなっていく。

思考の袋小路。
逃げ場が、ない。

23スコバツ 8/12:2009/01/19(月) 20:38:36
その時、

「あ、いたいた!おーい!」

聞き覚えのある声が二人の後方から投げかけられた。
それに反応したバッツの視線が、完全に押し黙ったスコールの背後に逸れる。
「あれ、なんだよバッツもいたのか!」
「お、ジタン!」
快活な声と共に長い尻尾を揺らして走り寄った少年に、バッツも楽しそうに応じた。
ジタンと呼ばれた少年が「どこに行ってたんだよ」と軽い調子で問えば、
「ちょっとな」と笑って応じるバッツ。
どうやら既知の仲であるらしい二人が楽しげに言葉を交わすのを目にし、
スコールはそっと気付かれないように息を吐いた。
言葉に詰まったところを救われたのは幸いだったが、今度は妙に居心地が悪い。
結局ここも静かではなくなったせいだと、性急にその居心地の悪さに理由をつけたスコールは、
「それで、」と切り出した。
尻尾がひょこりと揺れ、ジタンが振り向く。

「何か用だったのか」
「ああそうだ、探しに来たんだよ」
素っ気ない物言いに鼻白む様子も見せず、見上げる視線がスコールに向けられた。
「気がついたら姿が見えなくなってたからさ、心配になって探しに来たんだ」
あんまり一人でフラフラしてると危ないぜ、と続いた言葉に、スコールは思わず眉間に小さな皺を刻む。
あっけらかんとした顔でジタンの横に立っているバッツに一瞥を送ると、その言に対して切り返した。
「それは、俺よりこっちに言うべきじゃないのか?」
見上げるジタンの目がきょとんと丸くなる。
「バッツに?どうして?」
「どうしても何も……」
(本気で理由がわからないのか?)
即座の反問に、逆に戸惑いを覚える。
「…丸腰で一人でふらついていた奴より、俺が心配される理由が知りたいぐらいだ」

24スコバツ 9/12:2009/01/19(月) 20:39:10
至極当然な回答をしたつもりだった。
それなのに、当のジタンは隣のバッツと顔を見合わせ…やがて双方がニヤリと笑顔を浮かべる。
「あー、そうかー知らないんだなお前」
それなら仕方ないよなー、などと呟いて何度か頷くような仕草をジタンがすれば、
「なにしろさっき会ったばっかりだからなぁ」
何故かジタンとそっくりな仕草でバッツが同じように頷く。

――どうしてだろう。
(……何か、嫌な予感がする)
漠然とした薄い不安感に囚われていると、ポンと肩に手が置かれた。
笑みにきらめきながらスコールを覗き込む瞳に、再び暁の空を見つける。
「よぉし、じゃあ一度手合わせしようぜスコール!」
(……なんでそうなるんだ…?)
どうしてか小さな動揺を覚えながらも、スコールは心の声で突っ込んだ。
不意を打たれたせいだと、その動揺に理由を探し与えながら口を開く。
「……俺の疑問とその手合わせに、一体何の関係がある?」
実はとんでもない手練者で、武器などそもそも必要としないとでも言うのだろうか。
武器を持って闘うにしても随分と華奢な身体つきに見えるこの青年が。

「まーやってみりゃ、すぐわかるって」
そう言って妙に楽しそうな笑顔を浮かべたジタンがスコールの背後に回り、そのまま背中を押した。
当然、やってきた方角へと足が押し出される。
「待て、勝手に決――」
「スコール、俺、先に戻ってるからな!」
抗議の声を上げかけたスコールを遮り、一方的に言い置いてバッツが駆け出す。
あっという間に後姿が遠ざかり――視界から消えた。
と、思った瞬間、先程自分が視覚の盾にした岩場からひょっこりと半身を覗かせてこちらを振り返った。
「そうそう、さっきの言いかけの続きも、ちゃんと聞かせろよな!」
じゃ、向こうで待ってるから、と一瞬だけ片手を閃かせて、今度こそ駆け去っていった。

25スコバツ 10/12:2009/01/19(月) 20:39:42
「……なんなんだ、本当に……」
いつもなら心の中だけで呟く声が、うっかり外に零れた。
完全に振り回されている気がする。
「元の世界では、風を司る戦士だったらしいよ」
「――風?」
いつの間にか背中を押すのをやめて傍らに立っていたジタンを見下ろす。
バッツとは対照的に明るい蒼天の瞳は、訳知りな笑みを湛えていた。
「そう、探求の風」
すごくバッツらしい称号だよなー、とジタンの言葉が伸びやかに紡がれる。
(探求の、風――)
確かにこれ以上はないぐらい相応しい称号かもしれない。
「まるで、つむじ風だな」
「お、意外に言うねえ」
面白そうにジタンがそれに応じる。
「そういえばまだ名前聞いてなかったよな。オレはジタン・トライバル」
「…スコール・レオンハートだ」
「じゃあスコール、一つ忠告な」
忠告、という言葉を耳にしたスコールが微かに眉を顰める。
「――"つむじ風"には、十分注意した方がいいぜ?」
「……何だ?その忠告は」
意味がわからない。
もし比喩だとするなら、話の流れからそれはバッツの事を指しているのだろうが、
一体彼の何に注意しろというのだろう?
「そのまんま、言葉どおりの意味さ」
ジタンの尻尾がゆらゆらと揺れている。何か楽しげな企みを秘めたような目が悪戯っぽく輝いていた。

26スコバツ 11/12:2009/01/19(月) 20:40:13
(見た目で判断するな、という話か?)
成り行きで仕向けられた手合わせとはいえ、
闘いの場において、相対する者の力量を外見だけで判断するつもりは、毛頭ない。
どこか掴み所のない雰囲気と線の細さに騙されるな、と自分に言い聞かせ、スコールは歩き出した。
ジタンがそれに続く。
「ところで、言いかけの続きって何だ?」
「……答える義務はない」
ふぅん?と笑いの雰囲気を滲ませたジタンの声。
スコールはといえば、その問いかけでもう一つの問題を思い出し、内心軽く頭を抱えていた。
(続きを言えと言われてもな……)
どうしたものかと黙考する。
「何そんなに深刻そうな顔してるんだよ」
妙に自信に満ちた声に視線を下げると、明朗な瞳がそこにあった。
「悩みでもあるんなら相談にのるぜ?」
特に恋の悩みならいつでもな、とジタンは片目を瞑って言葉を繋ぐ。
(……だから、なんでそういう話になるんだ?)
様々なパターンの突っ込みが頭を駆け巡る。
(全く、揃いも揃って――)
能天気で、楽天的。
思い浮かんだ単語にはたと心の手を打つ。
もうこの際、皮肉めいていても構いはしない。
ストレートに無邪気だなどと伝えるよりは、余程ましな選択に思えた。
「……悪いが、特に相談するような悩みなどないな」

27スコバツ 12/12:2009/01/19(月) 20:41:18
その時、前方から賑やかにスコールとジタンを呼ぶ声が聞こえてきた。
バッツと、何故かティーダとフリオニールも揃って待ち構えているのが見える。
「いい見物、ってとこかな?」
ジタンの言葉に、スコールは視線だけを天に泳がせる。
「……全く、物好きな奴らばかりだな」
そして、恐らくその筆頭に当たるのがバッツなのだろう。
スコールはある種、観念めいた思いを抱いた。
当分、一人静かに過ごす事は出来そうにないな、と。



軽快に、奔放に。
輝きを宿して駆け抜ける一陣の風。

探求の風と呼ばれる青年の巻き起こす軌跡に、
その時既に引き込まれていたことにスコールが気付くのは、もう少し先の事だった。

28スコバツ 12/12:2009/01/19(月) 20:49:17
以上、お目汚し失礼しました

個人的には、バッツはこの板のFF5スレでも仰っている人がいましたが
はるかなる故郷がテーマ曲だと思ってるので
DFFでのアホ可愛さも堪らなく好きですが、
年不相応なほど達観した一面も持っている、というのが理想

最終的に何が言いたいかというと、もうバッツは存在が堪らんということです

29名無しの勇者:2009/01/19(月) 20:49:54
タイトル消し忘れました失礼

30名無しの勇者:2009/01/19(月) 21:22:59
ふおおー!スコバツ好きなのでこれは美味しい・・・・・・!!
ごちそうさまでした。初対面バッツに戸惑うスコール可愛いよスコール

31名無しの勇者:2009/01/19(月) 21:45:34
とてもnrnrしました バッツの青い目の描写がふつくしかったですGJ!
バッツのテーマははるかなる故郷同意

32スコ→バツ:2009/01/20(火) 08:11:29
イミテーション達との連戦が一段落つき、スコールは休憩出来そうな場所に腰を下ろした。
単独での戦いに慣れているとはいえ、こうも敵が多ければ、さすがに疲労が溜まるものである。
「・・・・・・・・・・・」
何気なくポケットの中から、例のお守りを取り出した。

”幸運のお守り”

古ぼけて薄汚れた羽にしか見えないが、それ程痛んでいる様子もなく、余程
大切に扱われてきたのが分かる。

――そんな物を、どうして俺に――

ただ心配だからと、笑って自分に宝物を渡した、あいつ。
スコールにとって、到底理解出来ない類の人間だ。

誰とでも気軽に話せて、能天気で、無駄に元気で前向きで、いつも笑顔で

金色の羽を額に軽く当てる。温かいように感じるのは気のせいか。
――別に、一人でいるのが苦痛な訳じゃない。
それは本心だ。けれども。
瞼の裏に映る、子供みたいにコロコロと変わる表情、楽しそうな声
少し恥ずかしそうに自分に近付く仕草。自分より年上のくせに、情けない。

――・・・・・・・理解出来ない

ぎゅっと唇を噛み締めて、思考を遮断しようとするが、既に彼はスコールの心に
侵食しつつあった。

いつの間に、いつの間に、こんな

――理解なんて、出来るものか。

理解したら、理解したら一体どうなるのだろうか。
今度こそスコールは頭を振り、思考を遮断した。
行かなければ。
優しく髪を撫ぜる風をよそに、彼は再び歩き出した。
手にはしっかり、金色の羽を持って。

33名無しの勇者:2009/01/20(火) 08:12:18
上の方のスコバツに萌えて、便乗して投下させて頂きました。
お目汚し失礼致しました。

34名無しの勇者:2009/02/11(水) 20:54:58
おおおー、スレでのアナウンスがなかったから今気付いたよ!
スコバツどちらもGJ!でした。ありがとう、萌えた!


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