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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ファイナルファンタジー7部門〜

1名無しの勇者:2002/10/18(金) 20:13
FF7の小説専用スレです。
書き手も読み手もマターリと楽しくいきましょう。

*煽り荒らしは完全放置。レスするあなたも厨房です*

39名無しの勇者:2004/11/07(日) 00:42
……すんません。暴力表現は一言注意書きが欲しかったです……

_| ̄|○

40名無しの勇者:2004/11/07(日) 01:00
>38
お付き合いありがとうございました、ねた切れで途中でガス欠ぽいです。
ガリアンビーストは四足だったらもっと可愛いのにのぅ

>39
あれ、と思って見直してから青くなりました、すみませんすみません、
このあたり宝条気味、このあたり、流血と注意書きをつけているうちに、
コピー失敗していました。
 それ以前に、私の認識がずれていました、強姦、輪姦が既に「暴力」の
中に含まれてるので、一つの話だからいいだろう、と、注意を怠ってました。
 不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。

41名無しの勇者:2004/11/07(日) 05:49
>31-37
GJっす!
萌えと感動をありがとうございました…!
ヴィンたんが虐められてるのは可哀想だけど興奮してしまった…
こんないいもんを短時間で作れるなんて、さすがネ申。
次の作品もかいてくれるなら心待ちにしてます。
乙でした!

42名無しの勇者:2004/11/07(日) 20:57
>41
ありがとうございますた、途中で意地悪のねたが尽きて(略
次が…次があるなら、村人とリプレイか宝条くらいしか相手がいませんです。

誰か次に職人さんが書いてくれたら、その間にエロイねたのボキャブラリーを増やしてくるとします。

43名無しの勇者:2004/11/11(木) 04:53
 …消化不良のときは吐いてしまえば落ち着くと本能が囁きます。
 他の職人さんを待っていたのだけど来る前にやっちまえ、そして、
遠いお空に逃亡することにします。

 宝条×ヴィンセントです。むさくるしいところでお一つ。

44おあずけ(1):2004/11/11(木) 04:54
 ミッドガルからニブルヘイムは星を半周。
 とりあえず遠い。
 到着したら靴を脱ぎ捨てて湿気ててもかびてても構わないのでベッドに倒れこみたい、
何でこんなに厳重に鍵をかけたんだ、しかも鎖が錆びている。
 暇なのだから手入れ位しろと宝条の頭は濁りに濁って南京錠を外す手もおぼつかない。
 扉を開けて後ろ手で鍵を閉めそのままがっくりと埃の中に膝をつく。
 …カビ生産工場か、ここは…

 這うように居間へ向かう、と、ヴィンセントがいた。
 床に長い足を放り出し、壁にもたれて座っている。
 宝条が覗き込んでも表情を変えもしない。
 一瞬、また誰かに食われたのかと心配したが、屋敷内には人の入った気配もなく、
ヴィンセントの髪にも埃が積もっている。
 ただ単に場所をわきまえず眠っているだけらしかった。
 少し揺すると赤い瞳が宝条を向く。
「尻が床ずれするか痔になるからちゃんと横になって寝ないか」
「…ん…」
 そのまま、ヴィンセントは宝条にもたれ、ほおずりして肩に頭を預ける。
「違うだろう、起きろ」
「ん」
 ほおずりしてそれから、鼻を摺り寄せ、宝条が押しのける前に顔を押さえつけて
口を舐める。
 ぴちゃ、くちゅ、と、唇も口中も舌も歯も舐められつつ、宝条は舌でヴィンセントの
歯を確かめる。
 長い犬歯は不用意に触れたら舌に穴が開く、前歯も、奥歯も、見なくてもわかる、
ぎらぎら光って猛獣の尖り具合。
 全身刃物のようなこんな時は、抵抗すれば怪我をする。
 鼻を頼りにする犬がしつこく匂いをかいで舐めて確かめるのと変わらないのだ、
ただ姿が見知った男であるだけで犬と違って舌を絡ませ指先でのどをくすぐり体を
預けてくるだけであって
「…勘弁しろ」
 押しのけるとヴィンセントは体をかしげ、くぅ、と鼻を鳴らす。
 宝条はよだれを手の甲でぬぐい、鞄を開く、と、ヴィンセントはすり寄るように
中を覗き込んだ。
「口に匂いが残っていても、そこに食い物はないんだ、君がおいしそうだとかいだのは
私の昼飯の名残でしかなく狼の母ではない私は吐き戻して餌をやることなどできん」
 消費期限を睨み、どうしたものか考え中の宝条にお構いなくヴィンセントは
ハムサンドを食いついた。
「横着するなよ」

45おあずけ(2):2004/11/11(木) 04:55
 記憶も知性も眠ったまま、寝ぼけたヴィンセントは変身した姿よりもさらに獣で、
刺激に反応してやりたいことを好きなようにするだけ。
 今じゃれついている相手が誰かわかってやしない。
 サンドイッチをろくに噛まずに飲み込んだヴィンセントは、宝条の指をしゃぶる。
 口の中をくすぐると、焦点の合わない瞳がとろんと潤み、宝条の背筋をざわつかせる。
 粘膜が吸い付き熱い舌が絡みつき、ちゃぷちゃぷと水音を立ててしゃぶられているのか
かき回しているのか脳の奥が痺れてつい体が傾いでいたのに気がついて、宝条は
慌てて体を起こす、が、指は軽く歯を立てられて引っこ抜けない。
 しどけなく宝条の膝に体を預け、とろけそうな瞳の獣は、ただ暇潰しに餌の匂いに
じゃれているだけなのだと気をそらしても、舌の動きに全身がざわりと鳥肌を立てる。
 こんな風情で村人に我知らずじゃれていたのだとしたら、つい手が出たとしても
いたずらが過ぎても、全部向こうが悪いとは言い切れまい。
 あごが少し開いた隙に指を抜き取ると、糸を引いてよだれが滴る。
 見ず知らずの通りすがりの存在だったら、と、あらぬことを連想してしまう、
ざわつく体を叱咤する。
 完全に獣の姿でいるのなら、尻尾を巻いて逃げ出すまで撫で回して遊んでやろう。
 深い眠りの中にいるのなら、無個性のサンプルの一体として何の感情もなく扱う。
 起きて言葉がわかるのなら、聞き取りと観察と生活指導で遊んでいる暇などない。
 不安定に寝ぼけたこの状態が、一番癪に障る。
 ヴィンセントであって、自分の手塩にかけた作品でもあるのが輪を重ねて腹が立つ。
 いい加減にして気付け薬でも嗅がせてやろうと腰を浮かせた、いや、浮かせたところで
へなへなと上半身が前のめりになる。
 しゃぶる指がなくなって退屈していた獣が、とっくの昔に宝条のチャックの中から
男根を引き出して掴んでいた。
「…こら」
 指先がそわそわと竿をいじり、赤い舌が舐めあげる。
 さっき指を念入りに舐めていた時とおんなじに。
 押しのけると口中に吸い込まれ、尖った歯がふれ、その奥で熱い舌が先をつつく。
 逃げなくとも姿勢を変えるだけで簡単に食い切られる、それはごめんだがさりとて
このまま舐められているのも沽券に関わるがこれは事故であり不可抗力、どうにも
ならないなら仕方ない、と、覚悟を決めて体の力を抜くと、ヴィンセントが離れた。
 宝条の膝にもたれたまま、男根を指でなぞって、それから、どうする?と、
正気のヴィンセントが絶対しないだろう笑いを浮かべる。
 ああ、きっと、もうとっくの昔に目は覚めているのだ。
 人としての知性は取り戻し、目的を果たす手段を知っているのだ。
 ただ、目の前にいるのが宝条だとわからないだけで。
 宝条だってわかってる。
 今握り締めているのが欲しいのではなく同じ事をして欲しいのだ
 期待して待ちこがれてうずく身体を持て余して早くしろとじゃれ付いてきているのだ。
 行きずりの相手だったら
 ヴィンセントじゃなかったら、いや待て、最初に女であるのが前提だった、ともかく、
遠慮せずに据え膳いただけるのに。

46おあずけ(3):2004/11/11(木) 04:55
 髪を撫でると擦り寄ってくる。
 のどを撫でるとくう、と声を漏らす。
「起きてから論理的に私を説得して掻き口説いてみろ。仕草でわかれと甘えていいのは
言葉を持たない獣だけだ、人の肉体に人の愛撫が欲しいなら話は起きてからだ」
 必死に声を絞り出す。
 と、ヴィンセントが耳元に唇を寄せる。
「宝、条、」
 吐息が耳たぶをくすぐり、ざわざわと神経が揺れる。
「お前が来るのを、ずっと待っていたのに」
 意思の篭った囁き宝条は絶句し、同時にきつくしごかれて、とうとう屈服した。
 ヴィンセントは残さず舐め取り、吸い尽くす。
「…じゃ、まぁ、そういうことで弾切れだ、残念だな」
 しばらくたって、やっと言ってはみたが、二発目はとっくに装填済み。
 ああもう、せんずりぐらい一人でこいてろ、と、愚痴をこぼしながら、ヴィンセントを
引き起こし、寝室に押し込んだ。
 たまってる分抜くの手伝うだけだ、性交ではないと一人ごちながら。

 幾分痩せはしたが、必要分無駄ない筋肉で引き締まった体は、素直に美しかった。
 唇と指で隅々まで堪能すると、震え、息を弾ませ、身をよじって応じる。
 皮膚の張り具合、筋肉の流れを普段診察する異常に熱心に楽しんでいるとヴィンセントが
うなり、背中に爪を立てる。
 このわがまま者がと宝条はそれでも背中から抱きしめ、男根に触れる。
 胸に触れ腹をなで、腿をさすりながらしごいて弄ぶ。
 密着した体に緊張した筋肉の動きも動悸も痙攣が伝わっていくさまも荒い息も伝わるので
なかなか興味深い、などと楽しむほど余裕はなく、じらされて苛立つヴィンセントに
すり抜けられて抱きすくめられる。
 いつ果てるともなく二人は絡み合って喧嘩してほどけなくなってとぶつかり合っていた。

47おあずけ(4):2004/11/11(木) 04:56
「…いつから起きていた」
 カーテンの向こうはとっくに日が高い。
 目は覚めたが起きる気も体力も失せて、宝条はベッドの中で伸びたまま。
 ヴィンセントに口を舐められ、げんなりして押しのける。
「ずっと。お前が神羅屋敷に来たときから」
 たばかられた、と、宝条は寝返りを打つ。
「喋れるほど頭が回るようになったのは、始めてからだが」
 結局食事もせず風呂にも入らず一晩中。
 たぶん宝条が先に潰れて眠ったらしいが詳細など思い出したくもない。
「私は私自身が何を言ったか何をしたか何を欲しがったか、全て覚えている。意識が
遠くなっていてさえ恥ずかしくて口に出して頼めないようなことを…」
「いやそのまま忘れろ」
「宝条をとっ捕まえてくちゅくちゅとろとろしこしこがつがつ十二分に楽しみたいと。
思ってはいても正気の時に真顔でいえるものか、例えお前でない者にでもだ」
「今平気な顔して言っているじゃないか」
 うんうん、と、ヴィンセントは宝条に手を伸ばすが宝条のほうがフーッと威嚇音を
出して近寄らせない。
「もう金輪際ごめんだ、打ち止めだ、これ以上強要されたら私は腎虚で死ぬ」
「のりのりだったではないか」
「…完全否定はしないが」
 ヴィンセントはくすくす笑う。
「いい運動になった、礼を言う」
「…運動なのか」
「生物学的に同性で性交はないとお前が言ったのだ。性交じゃないならスポーツ。
二人組みで一試合しただけだろう」
「…うん、まぁ、それでいいけどね」
 再試合はしないぞとわめく宝条を、ヴィンセントは枕でベッドに埋める。
 そして、自分の大あくびを一つ。
 
 外は晴天、気温は上々。
 夕べの始末は朝寝を十分楽しんでから。

 おしまい

48名無しの勇者:2004/11/13(土) 13:45
職人さん乙です。
本能で行動するヴィンたん…かわええ!

それにしても文章のテンポがいいですね。面白かったです。

49名無しの勇者:2004/11/14(日) 01:07
>48
ありがとうございました、けだものなので遠慮なくちゅっちゅして
ごろごろ甘えられました。

テンポがいい、って言ってもらえたのは大変嬉しかったとです。
気軽にさくっと読み飛ばせる文面を目指して修行の旅に行ってきます。
(その前にエロのボキャブラリー増やせ、と)

一つ感想つけてくださったので、安心して成仏できます、ありがとうー

50名無しの勇者:2004/11/17(水) 00:49
 修行の旅に出る前に戻ってきてしまいましたすみませんすみません。

【注意】
・以下しばらくヴィンセント陵辱話です。監禁して縛って取り囲んで、と
お定まりのパターンなので愛あるエロスを求める方にはむきません。

・>9あたりから連作ですがわざわざさかのぼって読まなくていいです。

51冷たい床(1)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:51
 リノリウムの白い床、蛍光灯の青白い光、あとは何にもない部屋。
 嵌め殺しの窓から見えるのは廊下だけ。
 後ろ手に縛られて、ヴィンセントは床に倒れ伏していた。
 床に押し付けられたままの頬も、体も、床と同じに冷え切っている。
「ニブルヘイムからわざわざ捕まえてきたのはいいが、一般人ではないのか」
「一般市民からの通報なのでまだ不確定なのですが…」
 白衣、二人。作業着、一人。胸に下げた入館証にはKBR。神羅と一度たりとも協力関係に
あったことはない、むしろ敵である企業のはず。
 少なくともヴィンセントが現役だった頃は。
 油断しているのか、偽装か、ヴィンセントを見くびっているのか。
「知能はあるのか」
「捕獲時には簡単な受け答えをしたらしいのですが正式な報告ではありません。その後、
喋りも応答もしません、知能テストも受験不可能です」
「戦闘能力は」
「捕獲時に揉みあったので、麻酔を使った後、まだ起きていないのかほとんど動きません」
 何も見ず聞かず感じず考えず、何もできず何もしないふり。
 ご挨拶して欲しければ名乗って握手を求めろ。
 白衣の一人が、無遠慮にまぶたをこじ開け、目にペンライトを向ける。
「意識はあるのだな」
「自白剤使ってみますか」
「いや、いい」
 そのままかがんで、シャツのボタンを外し、ゴム手袋越しに胸から腹まで撫で回す。
「で、どこが変わっているんだ」
「通報者の話では、死んでいたのが生き返っただの、悪魔だの、サキュバスだのと」
 一般市民じゃない、空き巣だ。
 窓を割って押し入り、ヴィンセントを見つけて魔がさしたのか、ついいたずらし、
調子に乗って村の酒場で面白おかしく武勇談を触れ回ったのだ。
 村では黙殺されたそれが、遠く、別企業の情報網に触れた。そんなところなのだろう。
 武装した工作員に突入され、ヴィンセントは抵抗しなかった。
「あそこは神羅の秘密研究所だ。何をさして悪魔かわからんが、秘密研究の実験体の
可能性がある」
 ズボンのボタン、チャックが外され、下着ごと膝まで下ろされる。
 足は縛られていないので蹴り飛ばすことはできるが、ヴィンセントはじっとしていた。
 ゴム手袋ごしの指が、体内に何も隠し持っていないか、性器が作り物でないか確かめる。
 ひねりあげられて、思わず背が丸くなる。
「何の実験体か見当もつかないと、検査のしようもないな」
 神羅の置き土産かもしれないので捕まえてはみたが、興味がないのだ。
 時間と手間をかける魅力がないとわからせれば、すぐに放逐される。
 ただ、やり過ごすには、触診している手指がしつこい。
 筋肉のつき具合、骨格だけでなく、何か歪みや綻びがないか、くまなく探っている。

52冷たい床(2)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:51
「誰かに体を見せることになったら、わかるのだろうか」
 思い切って聞いてみた時、宝条は神妙な顔で睨みつける。
「女か、医者か」
「女性だったら」
「途中で牙むいて噛み付かなければ、少々のことでは意外にワイルドだと喜ばれるだけだ」
「医者」
「…虫歯でもできたか、美容形成か、それとも精神科に相談に行きたいのか」
「どれでもない、聞いてみただけなんだ」
 宝条が露骨にいやそうな顔をしているので、ヴィンセントのほうが笑う。
「駄目か」
「君の言っている駄目が何をさしているのかわかりかねるが、先入観のない医者にかかり、
人間ドック程度の検査を受けても何も出ないよ。いや、精密検査をしてもちっとも面白くない。
二十代の内臓と筋肉ですといわれておしまいだ」
 宝条はいらいらと歩き回り、大げさに肩を落としてみせる。
「例え君を学会に連れ出して目の前で変身させても、データが駄目なので、よくできた
仮装だと喜ばれるだけ、宝条は金かけて変身ごっこの研究かと笑われて信用失墜決定だよ」
 どこまで本気か、どこまでがヴィンセントを晒し者にしない言い訳なのか、わからない。
「変身しなければばれないか」
「そういうことだ。あと寝ぼけて人の口舐めるのやめろ、朝は定時に起きて着替えろ」
「はいはい」
 他愛もない会話。もう何日前になるだろうか。

53冷たい床(3)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:52
 ゴム手袋が無遠慮に全身をまさぐっても、何もない。
 いじられて不快だと睨み付けたかったが、やめておいた。
「極限状態になれば能力を発揮するとか」
「兵器ならありうるがウィルスのキャリアや遺伝子操作で特定の病気にかかりにくいとか
地味な研究である可能性のほうが高いだろうよ」
 白衣の一人がヴィンセントのどこも見ていない目を覗き込む。
「ただ、気になるのが、知能が残っていないようなのに一人で屋敷にいたこと。誰かが
世話をしているのか、自活能力があるのか、寝たふりをしているのかな」
 あごを取って、鼻先でニヤニヤ笑う。
「自分の意思で寝た振りをしているなら、起きて泣いて謝るまで責めてみてもいい。
だれかバックがいるなら、助けを呼ばせてみる」
 ゴム手袋が顔をなでる。
「何か尻尾を出せば、神羅に圧力をかけるねたにしよう。何もでなければただの屑だ、
何もなかったように廃棄すればいい」
「…何使います」
「通報者がサキュバスだといったっけな。吸精鬼か。その辺が機密かもしれないな、
血の気の多いのを何人か連れて来いよ」
 ヴィンセントは、口の中に押し込まれるゴム手袋の匂いに顔をしかめる。
 ゴムの匂いと、口の中をいじる指に、吐き気がした。

54冷たい床(4)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:52
「取り返しのつかないような怪我はさせるな」
 ヴィンセントは天井のひびを見ていた。
 腕の拘束はそのまま、手足を押さえ込まれて身動きできない。
 押さえつけられながら、どこもかしこもまさぐられている。
「口を割ったら聞いてやるし、要求があったら聞いてやるよ」
 わきの下をくすぐり、胸をさする太い指。
 抱えあげた足の、指を誰かが舐っている。
「サキュバスなんだってな、絞りつくさせてやるよ、どっちの口が欲しいんだ」
 一人、二人、三人…六人。
「人間じゃないんですかい」
「最初はそうだと思ったんだが、こんないやらしい肌をした男はないだろう。
ふん、違っても、神羅の関係者だ、神羅への報復やら見せしめにな」
「ふーん、じゃ、遠慮なく」
 顔を舐める男の、饐えた口臭。
 乳首に歯を立て、舐めまわす舌。
 執拗にへそをいじり、おまけのように性器に触れる指。
 アナルをかき回すゴム手袋越しの指。
 内股からつま先まで好きなようにしゃぶる唇。
 我知らず歯を食いしばっていたヴィンセントだが、あごに手をかけて揺すられ、
力が抜ける。
 男根をなで上げられ、声が漏れると連中が嘲る。
「やられてるのに気持ちよくなってるのか、神羅もだらしねえな」
「もっとしてください、お願いしますって言ってみな」
 顔を背けても逃げる場所はなく、力づくでこじ開けられた口を吸われる。
「潰して欲しかったら噛み切ってみろよ」
 ぎり、と、握り締められると同時に、口に男根がねじ込まれる。
「欲しいんだろ、サキュバス」
 かき回していたゴム手袋が抜かれ、躊躇なく誰かが侵入してくる。
 もがいても手足は押さえつけられ、挿入した者を喜ばせるだけ。
 幾つもの手がヴィンセントを引き起こし、四つん這いにさせて、それからまた口と
アナルに押し入ってくる。
 観念して舐めてやろう、とするより前に、口に押し込んだ男はヴィンセントの頭を
押さえつけ、力任せに腰を使い、果てた。
 むせるヴィンセントを引き起こし、次の男根が押し入る。
 後ろから貫く男も好きなように動き、果てては交代し、ヴィンセントの膝が砕けると、
抱えあげる。
 幾度貫かれ、うめいて、自分も吐き出させられはしたが、ヴィンセントは喋らずにいた。
 交代で一回り、二回りして、だれも回数など考える気もなくなり、やがて、部屋から
みな出て行った。
 後ろ手に縛られて、這わされたまま、ヴィンセントはぼんやり床を見ていた。
 誰もいなくなり、戻ってこないことを知ってから、膝が崩れ、床に伏して、
それから、吐いた。
 自分の吐いた汚物に突っ伏したが、よける体力は残っていなかった。

55冷たい床(5)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:53
 体の中に、熱が篭ってくすぶっている。
 ゆっくり、ゆっくり、息をして、熱を逃がす。
 手荒に扱われはしたが殴られなかったので、いつもは一時に皮膚まで駆け上ってくる熱は、
体の奥を焦がすばかり、はらわたや骨が煮えくり返ってきしんでいるのがわかる。
 後ほんのわずかの刺激ではじける、部屋にいる連中程度、一撃でしとめられる。
 だが、その後だ。
 逃げる場所もなく暴れるのは、自殺と同じ。
 ヴィンセントは深く、深く、息を吐く。
 冷たい床と、裸の体が、熱を冷ますのだけには役に立った。
 暗闇の中、気絶しないよう、眠ってしまわないよう、息を整える。

56冷たい床(6)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:54
「夕べは辛かったかい」
 優しげなのは言葉尻だけ、髪を掴んで引き起こされる。
 熱は、下がらない。
 血液が煮えたぎり、肌を内側から炙り、脂汗が滲み出す。
 火傷しそうな口の中は乾ききって、血の味が粘りつく。
 歯を食いしばった上から、分厚い唇が粘りつき、のどを舐る。
「もう喋んなくていいわ、お前。ここでずっと可愛がってやるから。下手に喋って
なんか訳ありのほうが面倒だろ」
 白衣は、昨日二人か三人いたが、今日はいない。
 夕べ陵辱に加わってはみたが、体力自慢の工作員の張り切りぶりに恐れをなして、
途中で這うようにして逃げて行ったのを覚えている。
「もうどこも熱くなってるんじゃねえか、期待して火照ってんのか」
 なでる手に体が応じて、肌に粟が立った。
 唇を舐めていた男が、ふと離れて、口をこじ開ける。
「かっさかさだな。捕まえてから誰か水飲ませてやったか」
 白衣達はもう興味を失って逃げ出した。
 工作員連中も遊んでいいと下げ渡されたが、世話をすることまでは聞いていない。
「可哀相になー、昨日から汗かいてよだれたらしてしごかれてからからだろ」
 鼻先に、だらしなく垂れ下がった男根が突きつけられる。
「水、これしかなくてよ」
 みな、表情の見えない薄ら笑いを浮かべて、ヴィンセントを眺めたまま。
 見せ付けはするが、押し付けては来ない。
 誘うように揺らして、ヴィンセントが自分から来るのを待っている。
「早くしないと小便どころじゃなくなるけど、そっちがいいのかよ」
 口を開けると、血がにじむほどに乾ききっている。
 ヴィンセントが顔を近づけると、男は腰を引いて、にやつく。
「お願いします、だろう?お願いします、たくさん、飲ませてください、っていってみな」
 髪を掴んでいた手が離れる。
 体を焦がす熱と、のどの乾きで、目がくらみ、体を支えているのもだるい。
「…お願いします」
「床に顔つけて、ちゃんとお願いしろよ、何だちゃんと喋れるんじゃないか」
 後ろ手に縛られたままで膝で立っていたヴィンセントはうまく這えず、床に崩れこむ。
「…お願いします」
「そんなに欲しいのかよ」
「…はい」
「じゃあ仕方ねえなあ」
 男はヴィンセントの鼻をつまみ、口の中に押し込んだ。
 へらへら笑いながら、次第に、そわそわとして慌ててヴィンセントを突き放す。
「汚ねえなぁ、こぼすんじゃねえ、お前だけで遊んでるんじゃねえんだぞ」
「途中で舐めるやがるんだよ、お水はおしまいだよ畜生」
 朝飯だと、ぶつくさ言いながら、男はヴィンセントの髪を掴んで突き立てる。
「喋れるんだなぁ、おい」
 男が腰を放し、ヴィンセントがむせて咳き込んでいる間に、後ろから股間に指が触れる。
 熱ではちきれそうな体は触れられただけで跳ね上がり、なでられて震えた。
 ふうん、と、珍しい虫をいじるように、くまなく撫で回され、舌が這い回る。
 がくがく震える膝は、もう自分を支えられず、また、ヴィンセントは崩れ落ちた。
「気持ちいいのかよ」
 息が弾んで、声がでない。
 最も、奴らには喋らせる口ではないのだ、ただ押し込み、放ち、汚すためだけにある。
 誰かが腰を抱え上げ、貫いている。
「…水…」
「水しか出なくなったら好きなだけ飲ませてやるよ」
 うつろに、ヴィンセントは押し入れられた男根を舐る。

57冷たい床(7)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:54
 熱くて、熱くて、頭が朦朧としていた。
 ひくひく震えて、言う事を聞かない体も、笑い声も、壁越しのように遠い。
 何か考えて、変身を我慢していたはずなのだが、わかっているはずの答えも遠すぎて、
わからなくなっていた。
「で、一体何なんだ、こいつはよぅ」
「サッキュバスだろ。野放しで危ないから捕まえたんだろうさ」
 俺たちも危ないがな、と、笑っているのが聞こえる。
 喋っても、喋らなくとも、変わらないのだ。
 神羅の所有物に手を出したことすら、もう忘れている。
 ヴィンセントの体から力が抜けた。
「何だ、今頃泣いてんのか」
「…さらわれ損だ、な」
「先生方は面白いバケモノが欲しかったんだから仕方ねえな」
 干からびるまでやりたくなるお前もバケモノだ、と、男はヴィンセントの胸を舐める。
「まぁ、しばらくは俺たちと遊んで、その後に客でも取ることになるんじゃね」
「無意味に弄られているのは、面白く、ないな」
「余計な口叩いてないで、ひいひい泣いてろよ」
 涙は一筋だけ。
 ヴィンセントは息を整える。
「自らを哀れんで、涙ぐんで、めそめそ泣いていたいのだが、馬鹿らしく、なった」
「喋るようになったらうるせえな、さっきまでありがたがって小便飲んでた口で
何ぶつくさ言ってる」
「この体は、私が招き寄せた、私の罪。天から降ってきた災難ではなく、自ら制御して
利用するべき私のものなのだ、いまだ受け入れられないことが、私の罪」
 男が、顔をしかめ、身を放す。
「何だ、こいつ」
 頭が朦朧としている分、感覚が尖っている。
 廊下の足音、部屋にいるもの全員の呼吸と動悸、向かいの部屋の話し声。
 考えるのをやめた分、鼻から、耳から、皮膚から伝わる内容が全て届く。
「お前たちの、顔も名前も覚えておいてやれないのが、私の罪。警告を出して、
逃がしてやれなかったのが、私の罪」
「…壊れてんのか?口、ふさぐぞ」
 足音が止まり、扉が開く。
 途端にヴィンセントは飛び起き、またがっていた男を振りほどいた。
「お楽しみのところ悪いが、ちょっとそれ返してくれ。型通りでいいんで検査結果が
ないと報告書ができないんだ」
 無警戒に扉を開いた白衣は、無様にひっくり返った男と、後ろ手に縛られたまま、
立ち上がっているヴィンセントの赤い瞳を見た。
 一呼吸遅れて取り押さえようとかかってきた男達は、耳まで裂けた口と、金色の爪と、
それから、真っ赤な炎を。

58冷たい床(8)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:55
 神羅屋敷に押し込み強盗が入った、と村人から電話を受けて、慌てて宝条が来たのが
四日もたってから。
 村に入ったところで、背中から体当たりされ、そのまま押さえ込まれる。
「こら」
 乱暴にほおずりして無理やり口を舐めてくる。
 とりあえず好きなようにさせてやって、宝条はぎょっとしてヴィンセントを押しのける。
 半裸で汚れ果てた姿は誰だか見当もつかなかった。
「どこ散歩してた」
 ぐるぐるとうなるだけ、まだ喋れないらしい。
 宝条はくしゃくしゃの髪をなで、抱えるように神羅屋敷にヴィンセントを連れて行った。
 話は、念入りに洗って休ませてからだ。
 KBR所有の施設が一つ、突然の火事だか事故だかテロにやられて大事になっている、と、
連絡を受けたのは、じゃれたくて仕方ないヴィンセントをやっとベッドに押し込んでから。

59冷たい床(9)※ヴィンセント陵辱系:2004/11/17(水) 00:55
「KBR、先だっての火事が原因で不正が噴出、今年持つかどうかわからんぞ」
「…あんな給料泥棒の無能ばかり飼っているからだ」
 怪我はしていなかったので、体力はすぐ回復したヴィンセントだが、まだ機嫌は悪い。
「せっかく研究材料を捕まえておきながら、身体検査しながら見つけられもせず、
性欲の捌け口にしか使えないのだから」
「言っとくが変身してなきゃ並みの検査でわかるほど特徴はないぞ」
「知っている、だが、何かある、と感づかない鈍さに腹が立っているのだ」
 宝条があきれてヴィンセントを見ている。
「私の実験材料で並の人間じゃない、とばれて弄繰り回されたかったように聞こえるが」
「それを死守する覚悟でいるのに完全にスルーされたので無性に腹正しい」
 ヴィンセントは大きくため息をつき、そして、あくびをかみ殺す。
「起きてるうちに、帰ってくれ」
「そうだな、また来る」
 急いできて、旅支度もしていない宝条は普段着のまま。
 戻れば仕事の山に押しつぶされるのだろう。
 それじゃ、と、でようとして振り返る。
「戸締りしろよ」
「ああ」
「知らない人についていくな」
「ああ」
「朝定時に起きろ、起きたら着替えろ」
「わかってる!」
「わかってないから痛い目にあうんだろうが、今度やられてみろ、扉セメントで固めて
尻にコーキング剤充填してやる」
「いいから帰れ!」
 わめく宝条に枕をぶつけて追い払い、ヴィンセントはくすくす笑って、それから、
もう一度だけ、ため息。
 横たわり、天井を仰いで、これも私の罪、と、ひとりごちた。
 目を閉じてすぐ、深い眠りに落ちてゆく。

 おしまい

60名無しの勇者:2004/11/17(水) 03:31
>>50
神が降臨なされた〜!!
『鍵』も存分に楽しませていただきましたが、『冷たい床』にも激萌えでした!

宝条があくまで「口を舐める」という表現の仕方をしていながらも、結局は
ヴィンの好きにさせているところなんか最高です。
無法者に陵辱されながらもある一定の冷静さを保ちつづけ、かつ自責の念
からのがれられていないヴィンも実にヴィンらしくて良かったです。
(この辺は相手が宝条だったらヴィンの対応も変わってくるのかな〜などと
妄想して楽しんでます。)

それにしても宝条とヴィンの距離感がたまらないですな。付かず離れずと
いうか。このセクシャルな緊迫感が漂う二人の関係も実に魅力的ですが、
正直、宝条と我を忘れるくらい思いっきりからんだヴィンの痴態もまたみて
みたいと熱望しております。(『おあずけ』の、けものなヴィンとヴィンには
とことん甘い宝条には悶絶させられました…もう最高。完敗です!!!)

…貴方の書かれる宝条をみてると自分がヴィン萌えなことを忘れそうに
なるくらい、貴方の書かれる宝条は魅力的で、ある意味困ってます。
それに全部の話に共通して感じているのは話が読みやすい、ウマイと
いうことです。

いつの日か、また宝条がらみの話(暴力・陵辱・鬼畜・甘々なんでも)を
投下していただけることを楽しみにしております。長文失礼しました。

61本スレ613:2004/11/17(水) 11:12
>>50
まさかここまで書いてくれるとは思ってなかった…
激しくグッジョブ。ありがとう萌え女神。
お腹いっぱい飲まされて吐いちゃうヴィンたん(;´Д`)ハァハァ
おねだりして悪者のくっさいチンポから直飲みしちゃうヴィンたん(;´Д`)ハァハァハァハァハゥァ
…下品な萌え方してごめん。でもこういうのを読みたかったんだ。
最後もちゃんと悪人懲罰なハッピーエンドで良かったと思う。
身も心も強いヴィンたん大好きだー!!

62名無しの勇者:2004/11/18(木) 00:33
>60
ありがとうございますありがとうございました、いつも衝動的に書いてUPしてしまい、
需要もないのに何やってんのだおいらとショボーンと寝るのですが、読んでくださった方が
いるとわかっただけで昇天してしまいます(フリダシニ モドル)。
「鍵」はお試しSSだったので、後とかみ合わなくなりますが、まぁそれはそれで。
宝条出すなら「空回りの愛憎冷徹実験責め涙の泥沼密室地獄」と、キャッチまで
浮かぶのですが、私はそれ書くの苦手なので、誰かが書いてくれるのを楽しみに…
本スレの兄貴達のハァハァを餌に書いてます、ねた切れ逃走、といいつつまだ書いてるのは
ひとえに「読んだよ」と声をかけてくださる皆様のおかげです。
でも、次にどっちに行ったらいいんだろう、何が受けて何が駄目だったんだろう、と、
どうしていいかわからなくなります。
そんな時、丁寧に感想をいただき、ほっとしたと同時に勇気付けられました。

さて、宝条ですが、論理的科学的に同性とセクースするのは問題ない、と納得させてやるか
デスギガスに押し倒されるか獣ヴィンセントに甘え倒されるかしないと無理です。
なので攻略法を練ってきます。考え付いたらまた見に来てやってください。

>61
このたびは指名して無理やり読ませるような真似をしまして申し訳ありませんでした、
そんな無礼にも関わらず読んでくださってありがとうございます。
今回は613さんと「こいつとなら…」スレの1、4、5、6…あと、サキュバス発言で
できてます、文章や構成の未熟さはおいらの罪だけれどいい部分は頂戴したものだと
なんかの形で宣言しておきたかったでした。
エロカワイイ妄想に触発されて書いているので、ハァハァした、と言っていただくのが
最大目標でした、いってしまいそうに嬉しいお言葉をありがとうございました。
正直、「方向性が違う、キモイぞゴルァ!!!」と引かれているのではないかと…
大事に、床の間に飾ってありがたく鑑賞してはヴィンセントの真価が見えないと思うです。
泥でも血でも男汁でも汚物でも引っかぶってそれでもまだ全然きれいなのがヴィンセントだと
心底思うのです、だからおいらも鬼畜SS書くことで叫びます。
…ごめん、ヴィンたん、でも好きだからなんだよ、って。

63名無しの勇者:2004/11/19(金) 16:55
すばらしいー!超乙。もうスゴイなんてもんじゃない。
ヴィンは汚されても辱しめを受けてもきれい、という言葉に深く同意。
本当にグッジョブ。ヴィン大好きだー!

64名無しの勇者:2004/11/20(土) 00:26
>63
ありがとうございました、ほんとにありがとうございます。
鬼畜はなんとなく書きたいな思っとったですが、濡れ場書くのをめんどがるのと
需要ないだろうなぁと半ばあきらめてましたが、今回書く機会に恵まれ
読んでいただくことができました。
超乙ですごいのはヴィンセントで、泥の中のダイヤモンド、川の中の砂金、
掃き溜めに鶴…なんか違う、辛い目にあったり悲しんだりひどい事されるのが
似合ってしまう、だけどそれで壊れて廃人になったりしない、芯の強さを
持ってるのだと思うのです、だからきれいなままなのだ、と思うです。

鬼畜陵辱はシチュエーション考えるのが面倒なので、もう打ち止めだと
思われますが、また何かあったら見てやってくださいまし。

65暖かい場所(1):2004/11/21(日) 21:26
>58 「冷たい床」(8)の最後の3行ですっ飛ばした分です。
 いらない方はどうぞスルーで。
 宝条とヴィンセントでべたべたですがエロくなりませんでした。


 湯船に、煤と、灰と、埃と、血糊が溶け出す。
 洗い場がないのは非合理的だとぶつくさつぶやきながら、宝条はヴィンセントを洗う。
 まだ獣の血が鎮まらないヴィンセントは、浴室まではおとなしくついてきたが、
ぬるい湯に浸って疲れが出たのか、目を閉じた。
 全身にくまなく指を這わせ、手のひらを使って確かめても、特に傷はない。
 爪先から、揉み解しながら丁寧に洗っていく。
 突然、視界が曇った。
 眼鏡を外すと、ヴィンセントがもう一撃、湯を跳ねかける。
 洗っていた足を離すと体を起こし、湯船の端で身をすくめる。
「私が誰だかわからなくても構わないのだが、危害を加える気はない。洗濯しているだけだ。
傷があってしみるなら、湯を落として入浴剤を変えるか、もう上がるかにしよう」
「…自分の名前も言える、お前が宝条であるのもわかる、帰ってきて、風呂に入っている
最中なのも知っているし、傷もない」
「じゃ、よかった。後は自分でするか」
 ヴィンセントはゆるゆると首を振り、洗われ途中の足を伸ばす。
「…汚れた、な」
「風呂に入ったら煤で湯が真っ黒になったよ」
 風呂は狭いし君はでかいし、と、宝条は腰を叩きながら洗っていく。
「汚染されたサンプルは役に立たないだろう」
「無菌管理する必要があるのや病原体のキャリアなら実験には使えないな」
 ヴィンセントは天井を仰ぎ、ため息一つ。
「…私も、汚れた」
「だから洗ってるんじゃないか、そのまま布団に入られたらシーツの洗濯が手間だ」
 足は終わって次にて指にかかろうとした宝条をヴィンセントは捕まえ、口を吸う。
 捕まえたまま、舌を絡め、口の中を舐める。
 泡だらけの宝条の手から、石鹸が落ちた。
 しばらくたってから、やっと押しのけられる。
「眠くなったんなら」
「キス、してくれ」
「やだよ」
 勝手にするなら不可抗力だが、と、宝条は石鹸を拾い、何もなかったように泡立てるが、
ヴィンセントが襟元を掴んで引き寄せる。
 唇だけ触れて、今度はそれだけで、顔を伏せた。
「…いや、別に舐めたって、よくはないけど禁止はしないし怒らないよ、そもそも君が
私の命令を聞く義理はない」
「…汚い、口だ。誰とも知らない者のナニをしゃぶって、小便を飲んだ、汚い、口だ」
 宝条の手が、止まる。
「口だけじゃなく、尻にもくわえ込んで、かけられて、擦り込まれて、それで、
喜んでいた、汚い、体だ。石鹸でなど、落とせるものか」
 ヴィンセントは、自分の体を抱くようにうつむく。
 宝条は、泡を落とすついでに湯加減を見、そのまま栓を抜いた。
 何事かと顔を上げるヴィンセントに、ふふんと鼻で笑ってみせる。
「だから、洗い場がいるんだ、バスタブで体洗って気持ち悪いと思わないのか」
 乱暴な程無遠慮に、だが余計なこともせず的確に、性器から尻まで洗い上げ、
頭から勢いよくシャワーの湯を浴びせる。
「ほら立て、私に抱っこをせがんでいいのは体重10kgまで身長1mまでだ」
 上がってからパジャマを着せられるまでの工程は鮮やか過ぎて抵抗の余地無し。

66暖かい場所(2):2004/11/21(日) 21:26
 ベッドに押し込まれて、ふてくされようとしたところに、宝条のキスが来た。
 義理で唇に触れるだけれはなく、ヴィンセントがさっき口を舐めたのとおんなじに。
「…満足か」
「哀れんでもらっても何も感じるものか」
「なら、よいこの理科教室だ」
「もういいから、ほうっておいてくれ」
 毛布をかぶろうとしても剥ぎ取られる。
「いいや、駄目だ。途中で寝るな、試験に出すぞ」
 宝条はベッドに腰掛け、仕方なくヴィンセントは起き上がる。
「そもそも尿は細菌感染した膀胱やら尿道を経由しない限り、排出された時点では無菌、
養分が豊富なので腐敗しやすいだけで、体表を流れ落ちる汗よりよほど清潔と言っていい。
サバイバルのテクニックとして、水が切れたら自分の尿で耐えるというのもあるくらいだ。
成分的にも体内からの廃液ではあるが毒ではない、飲んでもまた尿になっておしまいだ」
 大真面目な宝条につられてヴィンセントもうなずく。
「精液も大半は汗だの唾だのと同じ体液に過ぎない、実はそれを認めると女性の乳房も
最終的には尿タンクであるという極論になってしまって私が悲しくなるので中断し、
ともかく体液でしかないのだ。含有物の精子は半分だけの染色体を卵に届けるためだけに
特化した細胞、成熟卵の招きに応じて最初の一匹だけが細胞膜を突破できるが、
それ以外は行き場がなく数日で干からびてしまう、単体では増殖もできんのだ」
 ヴィンセントは身を乗り出して、宝条の背中に寄りかかる。
「翻って消化器官の粘膜は柔軟且つ強靭、日々熱い物冷たい物化学物質に生きた菌に
さらされていながら、受け入れては粘膜ごと再生し、破壊も侵入もされずに存続するのだ。
ヨーグルトやらチーズで口が腫れるか、排泄のたびに高熱がでるか」
 うん、と、ヴィンセントはうなずく。
「皮膚からだって当然侵入できるものか、常在細菌と皮脂のバリアが、たいていの物を
跳ね返してしまう、ここで面白いのが、汗には尿素が含まれること、これは女性の化粧品に
わざわざ添加されて保湿成分としてありがたがられているのだ」
「…肌がつるつるになるか」
「わざわざかぶらなくていい」
 ヴィンセントはくすくす笑い、宝条は手を伸ばして膝を枕に貸す。
「何にも、汚くなる要因なんかないんだ、覚えとけ」
「ん」

67暖かい場所(3):2004/11/21(日) 21:28
 そばに来たが、背を向けているから、覗きこまなければ、表情が見えない。
「実験のせいで、男に好かれるような体になっているのなら、悪いと思っているんだ」
「…残念だが違う。タークスの時も、仕事や取引や捕まったりで、いつものことだった。
村の連中も、KBRも、やることが可愛くてお話にならない」
 それなりの体格をしているのに、膝の上のヴィンセントはひどく小さく見える。
「奴らが、サキュバスだと、言った。私は、好きでもない相手に組み敷かれて、
気持ちよがって喜ばせてやっている、色情狂だ」
 宝条は縮こまった背中を、首から肩までゆっくり辿る。
 しばらくまさぐって、おもむろに力を込める。
「いたいいたいいたいっ!痛い!」
 飛び起きたヴィンセントに宝条が自信ありげにニヤニヤしている。
「東洋の神秘、指圧。経験的な民間療法ではあるが人体構造を理解していると合理的に
ポイントが絞ってあるのがよくわかる」
「私の話を、聞いていたのか」
 宝条はヴィンセントをうつ伏せにして、嬉々としてまたがる。
「私はカウンセラーではないので、お悩み相談など受け付けてやらん。それより、
君のがちがちに凝り固まった肩を何とかするほうが興味深い」
 ここは肩井、ここが膏肓、ここが合谷と、ぐりぐりやられてヴィンセントは抵抗もできず
ぐったり横たわったままされるまま。
「…痛気持ちいい…」
「ふふん、科学部門内では金が取れると大絶賛でね」
 ヴィンセントの体から力が抜け、ため息が漏れる。
「…あのな、誰と寝たって、汚い真似したって、洗えば落ちる。性病うつされたって
感染した、キャリアになっただけで、本人の存在には関係ないことだ」
 女性は、妊娠する可能性があるから言語道断だが、と、宝条は無駄に力を入れる。
「いかされて胸糞悪い思いをしたって、結果だけ見れば自分でせんずりこいたのと
同じだろ、克服できないものじゃないはずだ」
 宝条の動きが止まる。
「君の存在を汚し、傷をつけたとしたら、それは私だけだ。実験に使い、身体構造を
変化させ、モンスターに作り変えたのは、私だ。洗っても、落ちるものか、年月を経ても
消せるものか、君を君でなくし、消せない傷を刻み込むことができたのは、私一人だ」
 ヴィンセントが体を起こすと、襟元を掴んで額がつくほどに顔を寄せる。
「自覚してないのか、生き延びるために誤魔化しているのか、目先の事しか考えられない
鳥頭なのか知らんが、顔も覚えていないような相手に汚されたのなんのとめそめそして
いるほうが楽しいのか、誰に泣き言を言っているんだ、君が怒って憎むべき相手は
この私なのを忘れたのか、誰かの排泄物じゃなく、私の実験が君を汚したんだ」
 吠えてから、宝条の顔にべったり脂汗が浮く。
「…すまん」

68暖かい場所(4):2004/11/21(日) 21:29
「いや」
 ヴィンセントは宝条の口を舐める。いぶかしんで宝条が後ずさった。
「やきもち妬きめ」
「はぁ?」
「聴診器、持ってくればいい、お前に口説かれて、動悸が激しすぎて、私が体を
起こしているのも辛いことがわかるから」
「熱、出たか」
 ベッドの上では逃げる場所無し。追い詰められた宝条にヴィンセントは擦り寄る。
「…私としたことが、ルクレツィアがなんとお前に口説き落とされたのか考えて、
嫉妬と羨望ではらわたが煮えくり返ってぞくぞくして気分が悪くなってきた」
「それは湯冷めだ、早く寝ろ!」
 宝条が伸ばした手をヴィンセントは難なく捻り、股間に導く。
「ぅわ」
「お前が口説いたから」
 宝条はぶんぶん首を振る。
「勘違いだ、関係ない、きっと、多分、指圧のつぼを間違えたんだ、疲れて血が
いっただけだ、それよりどこをどう勘違いして口説いただのと」
「お前が口説いたのでも私が勝手に欲情したのでも、結果だけ見れば同じだろ」
「揚げ足取るな、寝ろ!」
 聴診器で心臓を聞くよりも激しく脈打っている。
「これじゃ寝られない」
「ほうっておいてやるから一人でかいてろ」
 焦点の合うぎりぎりのそばに、赤い瞳。
 この瞳が嫌いなのだ、腰が抜けそうになる。
「私の体は、お前のもの、お前のものは、お前が面倒を見るのが定め」
「ちょっと待て」
「一度抜いてくれたら、後はおとなしく寝る。お前だけを憎んで、お前だけを恨んで、
お前の夢だけ見ててやる」
 宝条は生唾を飲む。
 勘違いも甚だしいと静止したいのだがさりとて激昂して口走った中身がすっかり
頭の中から消えている。
「…手でいいか」
「手じゃないところでいい」
「勘弁しろ」
 宝条がぶつぶつ文句を言いながら、やがて、押し黙り、ヴィンセントののどから声が漏れる。
 へたくそ、うるさい、教えてやるから替われ、と、眠くなるまで二人で喧嘩していた。

暖かい場所 おしまい

 …>60さんへ、と言いたい所でありますが、まだ攻略できんかったでした。
 残念っ。

69名無しの勇者:2004/11/21(日) 21:59
ベタ甘でも鬼畜でもなく「イイ感じ」な宝ヴィン萌えました。
やきもち妬きな宝条、いいなあ。かわいいですよ(w
これからも二人には仲良くきわどくけんかしてて欲しいです。
60さんじゃないですがごちそうさまでした〜

70名無しの勇者:2004/11/22(月) 23:24
>69
 ありがとうございました、ほんとうにありがとうございます。
 必殺の風呂ネタもマッサージも使ってやったのに不甲斐ない宝条でした、
 理想は「ヴィンセントが可愛くて仕方ないけど全く自覚してない宝条」
 「宝条に叱られてるだけでガクガクブルブルしていきそうなヴィンセント」
 で、顔合わせちゃだらだら喧嘩して気がつけば連れ添って30年ッ
 
 お粗末さまでした、励ましてくださってありがとうございます!

71不可解なのは(1):2004/11/28(日) 00:17
 もうやめるやめるといいつつまだ書いてますサルのようです。
 宝条とヴィンセントで甘ったるい痴話喧嘩でお茶を濁して
逃亡することにいたします。


 しばらく、状況がつかめずに宝条はぼんやりされるままになっていた。
 寝返って枕元のランプに手を伸ばそうとするが押さえ込まれ、また、口をふさがれる。
 寝ぼけヴィンセントめ、またか、と、押しのけようとして、どちらのものともつかない
汗にまみれて、胸も、腹も、足も、肌が密着しているのに気づく。
 起きた、と、意思表示するため、背中を叩くと、やっとヴィンセントが顔を離した。
「楽しいか」
 窓からこぼれる魔晄の街灯のみで部屋は暗闇。
 眼鏡も外した宝条にヴィンセントの顔など見えやしない。
 汗ばんだ肌は溶け落ちそうに熱く脈打ち、宝条の肌に絡んでくる。
 胸から腹まで、辿って降りてくる指を、途中でつかまえて引き離した。
「起きてるの知ってるんだよ、いたずらもほどほどにしておけ」
 宝条の胸に頬を乗せて、ヴィンセントがため息をつく。
 が、押しのけようとしても抱きすくめて放さなかった。
「寝てるうちにその気にさせて寝ぼけてるうちに楽しもうと思ったのだが」
「あいにくだが私は君よりはるかに寝起きがいいのだ、ほら、どけ」
 抜け出そうとした宝条はヴィンセントに男根を握られて白目をむく。
「…いい加減にしとけよ」
「遊んでくれ」
「いやだ」
 しごき、握り、撫で回す指は歯を食いしばって気をそらして耐える、が、息も上がり
そわそわと落ち着かなくなるのに気がついたヴィンセントは体を起こし、くわえ込む。
 押しのける前に熱い口と絡みつく舌に責め立てられ、宝条はヴィンセントの頭を
かきむしる。
「駄目だ、駄目、だ、やめろ」
 力では勝てないはずだが、不意にヴィンセントが口を離す。
 指はまだ、力を入れるでもなく男根に触れたままだが。
「…お互い、気持ちよく抜いて、それで終わりだ。それでも、駄目か」
「寝込みを襲われて気持ちいいものか」
 まだ手をかけたまま、ヴィンセントは宝条に寄り添う。
「夢精したとでも思って寝ていればいい。私は人肌が欲しいだけだ」
「じゃ、起こさないようにやれよ」
「起きて嫌がるところいじってるほうが楽しい」
 ああもう、と、宝条は体の力を抜く。
「寝た振りしてるから好きなように遊んでろ」
 うなずいて、ヴィンセントは体を摺り寄せ、胸に、腹に、舌を這わせる。
 さっきの寸止めのせいで体中がまだ脈打つようだが宝条はざわざわ這い上がってくる
感覚から気をそらそうと、円周率でも口に出してみる。
 いや、円周率はあまり覚えていないのだ、元素表ではすぐに終わってしまうし
あと何か即効性のある萎える言葉はないか、脳裏を探る。

72不可解なのは(2):2004/11/28(日) 00:18
「…私なんかで何が楽しいんだ」
 ヴィンセントの動きが止まる。
「肉体美は皆目なし、女性代わりにするような美貌でもなし。肥満体ならそれなりに
柔らかくて醜くとも手触りがいいとする向きもあるのかもしれないがそれもない。
何か、楽しいことがあるか」
 耳に、ヴィンセントの熱い息が触れる。
「卑怯者」
「何がだ。純粋に疑問に思っていることを言っただけだ」
「卑下されたら、そんなことはない、と、返事をするしかないではないか。
お前が照れてのた打ち回るまでほめ倒してやるしかないではないか」
 宝条は起き上がろうとするがヴィンセントが許さない。
「ただ人肌が欲しくて気まぐれにいたずらしているだけだ、相手がいないから近くに
いるのをつかまえただけだ、選択肢がないので同性でしかも肉体的に貧弱であり、
個人的にも仲良くしたくない相手であるのには、性欲を満たすためには目をつぶる、
終わったら近寄りもしないから安心するがいい、と、言って欲しいのか」
「…そりゃいいな」
 宝条を抱きすくめているヴィンセントの肌が脈打って熱い。
「…実際、そうなのだ。相手が欲しくて見境なくしているだけなのだから、犬に
舐められたと思って、寝ていればいい」
「だからそうしているだろう、早く終わらせて寝ろよ」
 ヴィンセントの腕に力が篭り、宝条は咳き込む。
 背中に押し付けた顔が、震えているのがわかる。
「寝ぼけていたずらしたが目が覚めて萎えたんだろう?飽きたなら叱らないから
放してくれ」
「…飽きて、ない」
 声が、震えている。
「駄目だ、今君は惰性で続けてるだけで性欲滾って我慢できない気合が入っていない」
 腕の力が抜けたところで、宝条はヴィンセントからすり抜ける。
 身を乗り出してランプをともすと、ヴィンセントが顔をしかめて目をこする。
「…どうして、気合が入っていないと断言できる」
「やる気に溢れて気合充実していると、君噛むから」
 口を開けさせて、歯が尖っていないことを確認する。
「理性が飛んでいるときは噛んでも引っかいてもなんとかしろと襲い掛かってくるから
見ろ、歯型がいくつついたか」
 食いちぎりはしなかったのはほめてやる、と、見せ付けられた腕や肩の歯形を
ヴィンセントは指で辿る。
「…悪い」
「元はといえば私の実験結果だ、気にしなくていいが、この辺でお開きでいいな」
 ボイラーに火を入れてくるから、と、ベッドから抜けようとした宝条を、ヴィンセントが
また抱きすくめる。

73不可解なのは(3):2004/11/28(日) 00:18
「いい加減にしろ」
「…牙が尖って言葉を伝えられない時なら、なんでもしてくれるのに、喋って、理性が
残っている私は嫌なのか」
「なに言ってんだ君は」
「血が滾って寝られないのは同じなのに、論理的に喋れと人に要求しながら、言葉を
使う相手の腹の内をなぜわかろうとしない、身振りで喋る獣の時の方が余程通じるではないか」
 全くわからないわけでもないがしかし、と、宝条は顔をしかめる。
「私は君が起きていようと寝ぼけていようと同じく全面的に譲って、好きなように
していいと許可を出したじゃないか、なのに、君が勝手に飽きてじれているだけだ、
責められる筋合いはないぞ」
「飽きているんじゃない、このままではお前が先に終わってしまうから、」
 ヴィンセントが歯軋りしている。
 指が宝条の体をまさぐるが、戸惑っているだけ、止めを刺そうとはしない。
 ああ、と、やっと宝条は気がつき、寝返りを打ってヴィンセントの鼻先でニヤニヤ笑う。
「わかったよ」
「…わかったか」
「私に何かしたいのではなくて、君がして欲しいのだな」
 鼻先で囁くとヴィンセントが見る間に赤面する。
「甘ったれるな、言わなきゃわからん」
 のどをくすぐると、ヴィンセントが顔をしかめて、くぅと鳴く。
「で、どこに何をして欲しい、具体的に要求したまえ」
「…意地悪言うな」
 首筋に唇を這わせると声が上ずり、肩が震える。
「私が何で君に優しくしてやらなきゃいかん、いらないなら寝るぞ」
「せ、せなか、」
 背筋を指でなぞると、ひくひくヴィンセントが震え、宝条の肩に顔を伏せる。
「隙だらけだ、タークス」
「…る、さい」
 首から背中まで、鬣のある部分はガリアンビーストの時も掻かせてうっとりしていたっけ。
「僧帽筋、広背筋、背中起立筋ときて、外腹斜筋とくるとどうだ」
 脇腹まで辿るとヴィンセントはひっ、と、息を呑んで宝条にしがみつく。
「声出して、要所要所で反応しないとわからん、くすぐったいのかいいのかちゃんと言え」
 背中を叩いてなだめるだけで、ヴィンセントの脈が激しくなる。
「やる気出すの、遅い」
「的確な発注しないからだ、今度は見積書出して商談からはじめろ」
 背中をなでられ、首筋をくすぐられ、ヴィンセントはうなずきもできない。
「首、いいのか?」
「のどが、いい」
「…ドラゴンはこの辺に逆鱗ががあってね、触るとバーサクかかって皆殺しなんだと」
 胸からなで上げ、口付けるとヴィンセントは声を漏らす。
「まだ何にもしてないだろ、感じすぎじゃないか」
「わるい、か」
「いや、そんなに敏感だと、今まで大変だったろうと思ってね」
 ヴィンセントは大きく首を振る。
「感じるのと、気持ちよくなるのとは、違う、知らない奴相手のときなど、気をそらして、
それこそ、寝た振り」
 熱いと息にあわせて体をまさぐると、ヴィンセントの体が跳ね上がる。
 唇を、舌を這わせると、泣き出しそうな声で鳴き、しがみつこうと手を伸ばす。

74不可解なのは(4):2004/11/28(日) 00:19
 最初はいちいちどこがいいのか聞いていた宝条だが、次第に無言で没頭し始める。
 ああ、もう、感覚神経の固まりのようなヴィンセントは、どこにどんな刺激をしようが
快楽にしか感じないのだ。
 宝条はむきになり、筋肉の境目を辿る。
「誰でもいいとは、なめた事を言ってくれるじゃないか、なら外に行って誘えば誰でも
引っかかるのだろうが、私をどなた様と心得ておねだりしているのだ」
 背中も、腰も、股も、膝の裏も、足の裏まで急所なことくらい知っている、生物全般、
筋肉の裏側は守りが浅いので鋭敏なのだ。
 這わせて背中から抱きすくめると膝が震え、腰がすぐに落ちてしまう。
「骨格も筋肉も内臓も肌の具合も心拍数も血圧も血液成分も何でも知っているんだよ、
生命維持の上の急所だって、君が悶絶する急所だって、君が知らない部分まで全部
心得ているんだ、わからないのは君の頭の中だけだ、何考えてるんだか、さっぱりわからん」
 体を支えられず突っ伏してしまうので引き起こし、膝の間に座らせ、男根には
触れてやらずに内股をなでる。
 ぜいぜいあえいで、じれて、自分で自分を掴もうとする手を跳ね除けて触らせない。
「もう、いい、」
「駄目だ、君がけしかけたんだから責任を取れ、私がまだだ」
 ヴィンセントは後ろ手に宝条を掴む。
「…いれる、か」
「やだよ」
 先端をなぞるとヴィンセントの全身から汗が噴出し、のどが鳴る。
 だが、後ろ手にぎこちなく握られる宝条も、もう余裕がない。
「言え」
「…何を」
「誰としたかった」
 指を止め、背中に唇を這わせるとヴィンセントが苦しげにあえぐ。
「卑怯、者」
「卑怯で結構」
「お前なんか、大嫌い、だ」
 にじんだ涙を舐め取ると、宝条の背中もぞくぞくしてくる。
「私の、何も、わかろうとしないのに、何でも、知っているお前が、大嫌いだ、お前の、
説教を聞くだけで、指が、触れるだけで、私は、気持ちよくなるのに、大嫌いな、
お前が、来るのを、毎日、待ってるのに、何で、わからない」
「言えったら」
 呼吸も動悸も、くっつきすぎて自分のと相手のと区別がつかない。
 熱くなった肌も汗で溶けて境目もどこかへ消えた。
「宝条と、お前と、したいと、最初から、言っているだろうが!」
「ああ、やっとわかった!」
 はちきれそうだったのをしごいてやるのとねじ切られるように搾り出されたのが、一緒。
 がくがく震えながら、もつれながら二人して突っ伏し、しばらく、声も出せず、ぜいぜい
あえいでいた。

75不可解なのは(5):2004/11/28(日) 00:20
 朝日はとっくに昇っているが、宝条はまだベッドの中でうだっている。
 ヴィンセントが眼鏡を取ってきても布団の中に逃げ込み、そっぽを向く。
「眼鏡をかけると現実を直視しないとならんから嫌だ」
「そのままでいても毒液だらけだが」
「ああ、もう、女性相手でもあんなむちゃくちゃしないんだ、私は!」
 何で眼鏡にまでついてるんだ、と、宝条は吠え、ヴィンセントが笑う。
「余計なこと考えないで、即その気になって燃えてくれれば、手っ取り早いのだが」
「…いや、余計なこと考える前に君が余計なことするから」
 起き上がり、シーツの惨状を見て宝条はがっくり肩を落とす。
「君のお触りっぷりは副交感神経を刺激し、内臓が活性化するが皮膚温も血圧も下がり、
筋肉は弛緩し要は腰砕けになり眠くなるのだ。人を起こして奮い立たせたいなら
交感神経を刺激するように…」
 手振り付で解説しようとした宝条は、はっと、気づいて首を振る。
「いや、教えない、じゃなくて、そんなのは知らない、残念だったな」
「伝授してくれても身につかないだろう、実演してみてくれればそれでいい」
「いや、今日はもう駄目だ、打ち止め」
 ヴィンセントは、いたずらっぽく笑い、大きく伸びをした。
「すっきりした」
「私は欝だよ。風呂入ってくる」
「一緒に」
「い、や、だ」
 大げさに舌を出し、シーツごと、宝条は這うように風呂場へ向かう。

 おしまい。

 …いやもう長い間ありがとうございました。

76名無しの勇者:2004/12/01(水) 22:59
 なんとなくまだ書きたいけど共用のスレッドに長く居座るのも
申し訳ないので、独立してみました。
 機会があったら覗いてやってください。

http://blog.livedoor.jp/laboratory1/

 ここで、書かせてくださって、管理人さん、それから板住人の皆さん、
感想つけてくれた皆さん、本当にありがとうございました。

77名無しの勇者:2004/12/30(木) 01:15
素晴らしい小説の後で恐縮だが、投下させて頂きます。
?×タークス時代ヴィンセント(殆どエロく無い)小説・・

78名無しの勇者:2004/12/30(木) 01:15
ハァハァという息遣いが五月蝿い、この上なく耳障りだ。
グチャグチャと耳を舐める舌に背中が粟立って仕方が無い。
「気持ち良いだろう」
「・・と、ても・・っ」
実際の答えはNo。
気持ち良いよりも、背中に当たる板が痛い事に気が取られてしまう。せめて、向こうに見えるベッドに寝かせてくれれば良いのに、そんな価値も無いのか私は。心の中で少し悪態をついてみるが自分を組み敷いている人物に伝わる訳もなく、髪の毛が床でサラサラと音を起てていた。
「・・そろそろ・・」
「は・・い」
相手はもう限界に、近いらしく動きを速めてくる。

79無様(2):2004/12/30(木) 01:17
相手が限界でも、私はまだイける所まで感じていないのだが・・。相手と共に限界を迎えられねば、満足では無いのかと咎められるのだろう。そんな面倒な事は御免被りたい。強制的に急激な快感を感じるため的外れな場所を乱暴に衝いてくるソレを自分で良いトコロに誘導した。
「・・ん・・・っぁぁぁ」
「う・・・っ」
ベチャベチャと吐き出された欲が腹の上に白い花を咲かせた。

しばらく、射精感で重い体を生温い床に横たわって息を整えていると。
「・・何をしている。早く出て行きたまえ」
容赦無い言葉。その声の主はもう乱れた身なりを整え、汚いものを見るような目でこちらを見遣る

80無様(3):2004/12/30(木) 01:19
「はい」
シャツの釦を急いで止め、上着を雑に羽織り情事の後を簡単に処理して一礼をする。
「今度は、明後日だ。わかったね」
「・・はい、社長」
もう一度頭を下げ、足早に扉を開ければ外に居た護衛と目が合った。目が合うと、少し頬を赤らめて下を俯いた護衛に、皮肉げに微笑んでその場所を後にした。




咥内に広がり、肺を満たす紫煙に妙な安心感を覚えた。煙草など本来なら好まない。ただ、“任務”の後は別だ。体に染み付く男臭い臭いを煙草の臭いにすり替えて。薄暗く長い階段にうずくまる。
「・・こんなハズじゃ・・・なかったのに・・な」

81無様(4):2004/12/30(木) 01:21
ぽつり、と呟いた言葉はパチパチと点滅する蛍光灯の音に消されてしまう。何故か心もとなく、小さな子供のように泣いてしまいたかった。


・・神羅に入りたての頃は、それなりに夢も希望も持っていた。しかし、仕事で人を殺し、逆に人の夢や希望を摘み取った。先程のような性欲処理の仕事までもを総務の内だと請けさせられ、自分の中で何かが消えた。優しさ等という言葉はどういう意味だっただろう。ただただ、人の殺め方や性行為だけが自分の中で容量を増していって。


そんな自分に無性に腹が立ってギリリとフィルターが切れそうな程に歯を起てる。

82無様(5):2004/12/30(木) 01:23
『ガガッ・・・総務課ヴィンセント・ヴァレンタイン・・至急総務課迄来るように・・繰り返す・・総務課・・』

感情の篭らない声がスピーカーから流れて自分の名を呼ぶ。それにつられるようにふらりと立ち上がって、煙草を冷たい石の床に落とした。それを靴でなじって揉み消す。

「なんて、無様」

その言葉は、何に向けたのか自分でもわからなかった。自分に対してか、消えゆく煙草にか。それが解らないなんて、滑稽だ、とくつくつ笑って総務課へと階段を登り始めた。
その立ち去る背中に向かい未練がましく最期の煙をあげて、残り火が小さく消えた。


End.

83名無しの勇者:2004/12/30(木) 01:27
はい、山場もエロも無く終了です・・。何故か、ヴィンセントに「なんて・・」って言わせたくて勢いで作りました。次の神が来るまでの腹持たせにでもなれば幸いです。
スペース、有難うございました。m(__)m

84名無しの勇者:2004/12/30(木) 20:32
 おぉお、ヴィンセントキターー!!
 つらい仕事でうんざりしていて夢も希望もない状態のヴィンセントが、
切なくて綺麗で良かったです。
 …煙草が、煙草が…

 いつか、本当に気持ちよくなれる相手と幸せな夜を過ごせることを願って止みません。
 いいものをありがとうございました!!

85名無しの勇者:2006/05/07(日) 09:56:40
ACとかBCとかDCネタも出てきたらいいな

86名無しの勇者:2006/05/16(火) 23:09:27
BCならネタがないわけでもないが

ただヴィンタソじゃなくタクス新人君(BC主人公達ね)をいじりたいの

87名無しの勇者:2006/05/28(日) 01:05:25
別にここヴィンセントスレじゃないから大丈夫ー

88名無しの勇者:2006/06/02(金) 17:58:05
英雄受職人さんマダー?
CCは色々と美味しすぎるwktk


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