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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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449今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/28(木) 17:41:49

夕暮れの湖畔にいた。ピクニックの帰りだった。
友達は塾で先に帰って、レジャーシートや食べ残しを片付けていた。
人気の動画配信者がゴミ拾いをしていて、それに少し影響されて、
自分が出したごみ以外でも触って平気そうなものは拾ったりしていた。

        『イイ心ガケ デス。先生ハ感心シテイマスヨ』

「先生も片付け手伝ってくれればよかったのに」

        『先生ハ 食ベタリ 飲ンダリ シテマセンノデ』
        『自分ノゴミハ 自分デ 処理シマショウ』

「まあ、わかってますけど。試しに言ってみただけです」
「猫の手も借りたいというやつでして」「先生は猫じゃないけど」

「それじゃ、帰りましょうか。でも、まだ明るいですね。もう夏ですねえ」

           『明ルクテモ 夜ハ 夜デスカラ』『不審者ガ出マスヨ』

最後にシートを包んでカバンに詰めて、水筒の残りを飲み干した。
その時ふと顔を上げて、本当に不審者がいたら嫌だなと思って周りを見渡した。

450美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/28(木) 19:26:36
>>449

向けた視線の先に、一つの人影があった。
キャップにスタジャン、ジーンズにスニーカーでコーディネートした、
メンズライクな『アメカジファッション』の女だ。
何かを探しているらしく、森の方に双眼鏡を向けている。

「――しまった。見失っちゃったなぁ……」

やがて双眼鏡を下ろし、辺りを見渡す。
移動する目線が、少女の傍らに佇む人型スタンドに向けられた。
その様子から、『コール・イット・ラヴ』が見えていることが分かるだろう。

「……ん」

バードウォッチングの途中、先程まで見ていたメジロを探していた。
メジロを見失った代わりに、思いがけずスタンドを見つけてしまった。
一応、自分以外のスタンドを見たことはある。
ただ、いきなりスタンドに出会うという経験をしたことはない。
さて、どうするべきだろうか。

(とりあえず――挨拶するのが良さそうね)

「こんにちは。それとも、この時間だと『こんばんは』かしら?」

「この辺は『ちょっとしたアウトドア』をやるには良い場所よね」

明るい口調で気さくに声を掛ける。
そして、少女のいる方向へ歩いていこう。
警戒されるってことも考えられなくはないから、少しずつ近付いていく。

451今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/28(木) 20:23:55
>>450

「え? あ、私ですか」「えーと」
「こんにちは、で良いと思います。夜って気がしませんし」

いきなり話しかけてきたのは驚いたけど、なんだかカッコいい人だ。
こういうの『アメカジ』って言うんだよね。私じゃ似合わないかも。

              『…………』

「そうですね、湖もありますし」「場所も広いですし」
「ちょっと虫が多いのが困りますけど」「アウトドアならフツーかも」

先生は私の少し前に出ている。警戒してるのかな。
見えてないと思うから良いけど、不審者扱いしてると思われるかも。 

「お姉さんもアウトドアですか? 双眼鏡持ってますし」
「当ててみます」「……フツーに考えたら、『バードウォッチング』とか?」   

なんで話しかけて来たのかは分からないけど、ちょっと会話を広げてみる。
無視して帰るほど疲れてないし、もう少しこの湖畔にいたい気持ちもあった。

452美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/28(木) 21:15:49
>>451

少女とスタンドの少し手前で立ち止まる。
スタンドが前に出ているということは警戒されているのかもしれない。
声を掛けてはいるが、こちらとしても不安を与えたくはなかった。

「当たり。『メジロ』を見てたんだけど、見失っちゃってね」

「目の周りに白い輪がある小鳥よ。綺麗な声で囀るの」

『チャンネル7』に自我はない。
そして、自分が見たスタンドも自我は持っていなかった。
だから、少女のスタンドに自我があるという考えは頭になかった。

「『あなた達』は――『ピクニック』ってところかしら?」

ちらりと横目で『コール・イット・ラヴ』に視線を向ける。
それから『プラン9・チャンネル7』を発現した。
マイクとスピーカーを備えた『機械仕掛けの駒鳥』が、肩に止まっている。

「――あら?こんな所にも『小鳥』がいたわ。なぁんてね」

少女にクスリと笑いかける。
これで警戒が緩んでくれたらいいんだけど。
さて、どうかしらね。

453今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/28(木) 22:22:20
>>452

「へえ、私鳥って詳しくないですけど、メジロは聞いた事あります」
「『ピチュチュチュチュ』みたいに鳴くんですよね」「違ったかな」

本物を見たとか、そういう記憶はないけどテレビで聞いた気がする。
それにしても、バードウォッチングなんて文化的な趣味だと思う。

「達? まあさっきまでは4人いましたけど」
「そうでしたよ。良い天気で、ピクニック日和でした」
「サンドイッチとか交換したりして……」

          『今泉サン コノ人ニハ 見エテマスヨ』

「……ああっ。そういう『貴方達』だったんですか」
「ほんとだ、『鳥』――――そういう『スタンド』もあるんですね!」
  
          『〝人型〟ダケデハナイ トハ 思ッテマシタガ』
          『〝動物〟モ イルンデスネ』『新発見デス』

先生から指摘されて、気づいた。肩の上の鳥を見てもっとはっきりわかった。
スタンド使い。フツーじゃないけど、フツーに町中にいる。ちょっと変わった存在。

「それにしても、かなり好きなんですか? 鳥」

見た目がどういう意味なのかは分からないけど、趣味が鳥でスタンドも鳥だとそんな気はする。

454美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/28(木) 23:20:55
>>453

「アハハハ。驚かせちゃったみたいで、なんだかごめんね。
 その――『あなたの』が出てるから、それが気になって」

そこまで言ったところで、
少女とスタンドが別々に喋っていることに気付いた。
まるで、そこに二人の人物がいるかのようだ。
その様子から、『コール・イット・ラヴ』が自我を持っているらしいと察した。

「そう聞くと、『人型』が多いのかしら?
 私は、こういう人の形をしているスタンドは初めて見たわね」

「最初に見たのは『妖精』で、その次に見たのは『ピストル』だったわ」

喋っている途中で思い出したことがある。
そういえば、この場所で最初に見かけた妖精のスタンドも、
自我を持っているようだった。
多分、この少女のスタンドも同じようなタイプなんだろう。

「一緒にお話ができるっていうのは、私が見た『妖精』と似てるわね。
 私の『小鳥』は囀ってくれないから、ちょっと羨ましいな」

「鳥は好きなんだけど、バードウォッチングを始めたのは割と最近なの。
 この子は、こんな形してるけどね」

肩に乗る小鳥に目をやる。
『機械仕掛けの駒鳥』は動くことも鳴くこともない。
まるで小さなオブジェのように佇んでいる。

「『趣味』でもあるし『仕事』でもあるって感じかな。
 なにせ私自身が鳥みたいなものだから。
 鳥は囀る。そして、私も囀ってる。『電波の止まり木の上』でね」

『プラン9・チャンネル7』のマイクとスピーカー。
それらが、私の仕事場であるラジオ局を思い起こさせる。
私にとっては、とても馴染み深いものだ。

455今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/28(木) 23:55:25
>>454

「いえいえ、私の方こそ驚かせちゃったみたいで」
「私の方というか」「先生が勝手に出たんですけども」

        『モウソロソロ 帰ル時間デスノデ』

「なんだか、目覚ましのアラームみたいですねえ」

        『アラームトハ 違イマスヨ』
        『鳴ルマデニ 帰ルノガ一番デスカラ』

            『……トモカク 驚カセタヨウデ』
               『ドウモ スミマセン デシタ』

               ペコリ

先生が頭を下げる。やっぱり、礼儀正しいと思う。
それがフツーなのかな? そうでもないような気もする。

「それにしても、妖精にピストルですか……」
「そうなると、私やユメミンみたいに人型が珍しいのかな」
「私以外で、勝手にしゃべるって人も見たことないですし」

        『…………』

「フツーじゃないのかもしれませんねえ」

        『コレダケ 不思議ナ 存在ナンデスカラ』
        『コレ トイウ 〝基準〟ハ 無イト思イマスヨ』
        『〝先生〟ガ言ウノモ ナンデスガ』

「そうかな、それならいいんですけど」

肩の鳥を見る。機械みたいで、生きている鳥とは全然印象が違う。
部屋に飾ってたらお洒落な感じだ。こういうのどこかに売ってないかな。

「貴女自身が? えーと、声がキレイって話でしょうか?」
「電波の止まり木……ってことは、実は『ユーチューバー』だったり?」
「あっ。それとも、どこかの地方局のアナウンサーさんとか?」

よくわからないけど良い声だと思うし、そういうお仕事をしてる人なのかな。
フツーの人とはちょっと違う感じがする。そう思ってるからそう感じるだけかも。

456美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/29(金) 00:48:17
>>455

「あら、これはご丁寧に。
 私の方こそ、いきなり話しかけちゃってごめんなさい。
 警戒させちゃったでしょ?」

『先生』と呼ばれるスタンドにつられて、お辞儀を返す。
実際に警戒していたかは分からないが、そんな雰囲気も感じた。
もしかしたら、私の勘違いかもしれないけど。

「あ、ひょっとして私のこと怪しい人だと思ったんじゃないの〜?
 なぁんてね。アハハハ」

「突然知らない相手に声を掛けられたら何かと思うわよねぇ。
 相手が男の人だったら『ナンパかな?』って思っちゃうわ。
 内心ちょっとされてみたいなぁ――っていうのは冗談だけど」

サバサバした調子の明るい声で話し、そして笑う。
よく通る澄んだ声だった。
『ボイストレーニング』とか、
そういった専門的な訓練を積んでいることを思わせる声色だ。

「そうね、『人の数だけ個性がある』って言うし。
 『スタンド使いの数だけスタンドがある』っていうのも、
 あながち間違いじゃないかもね」

自分のスタンドと少女のスタンドを見比べてみて思う。
外見も中身も全く違う。
それは、私と彼女との違いでもあるのだろう。

「惜しいんだけど、ちょっと違うわね。
 かなりイイ線いってるんだけど」

ポケットから名刺入れを取り出す。
そこから一枚の名刺を取り出して、少女に差し出す。

「これが私の『正体』よ。大したもんじゃないけどね」

『放送局名』や『放送時間』、『連絡先』といった情報と一緒に、
以下のように記されている。

『――あなたの傍に電気カナリアの囀りを――

    【 Electric Canary Garden 】

          パーソナリティー:美作くるみ』

番組名の下には、
『電源コードの付いた丸みのある小鳥』のイラストが添えられていた。
『電気カナリア』という名前も小さく書かれている。
それが番組のイメージキャラクターだった。

「よければ、あなたのお名前も教えてくれる?
 『先生』を連れたお嬢さん。
 それと、『先生』の名前もね」

457今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/29(金) 01:45:58
>>456

「先生は心配性なんですよ」

           『〝先生〟デスノデ』
           『少シ 警戒シマシマイマシタ』
           『杞憂ダッタヨウデ スミマセン』

「私からもごめんなさい、こういう先生でして」

        ヘヘ

「私は怪しいとか思ってなかったですから」
「フツーに、オシャレな人だな〜ってくらいで」

なんて調子のいいことを言ったりもする。
実際、知らない人がみんな怪しいなんてことない。
いきなり話しかけてくる知らない人は……
驚きはするけど、怪しいとはちょっと違うかも。

「うーん、そういうものかもしれませんねえ」
「っと、名刺ですか」「私持ってなくて」「名刺入れも」
「あとで財布にでも入れときますね、どれどれ……」

名刺を眺める。放送局、ってことはアナウンサー?
でも聞いたことのないチャンネル。もしかしてこれって。

「えーと、ラジオのパーソナリティーさん!」
「って呼び方でいいんでしたっけ」「『DJさん』?」
「わーっ、有名人に会っちゃった……」

           イマイズミ ミライ
「あっ、私ですか。『今泉 未来』です!」
「一応、清月学園に通ってまして」「高1です」
 
                コール・イット・ラヴ
           『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』
           『呼ビ方ハ オ任セシマスガ』
           『〝先生〟デモ 名前デモ アダ名デモ』

自己紹介を返す。ラジオの人って、フツーじゃない。
私は、フツーでいいんだけど、ちょっとだけ憧れる気もする。

458美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/29(金) 20:36:49
>>457

「アハハ、そこまで有名って程でもないわ。
 まぁ、なんというか、そこそこね」

番組の公式サイトに顔は載っている。
だから、それを見た人は知ってるし、見ていない人は知らない。
大体そんな程度だ。

「私はパーソナリティーって名乗ってるけど、どっちでもいいわよ。
 ただし、私はターンテーブルは扱わないけどね」

「『クラブのDJ』じゃないから」

冗談交じりに言って、軽く笑う。
そして、考えるように顎に手を添える。
思考の糸に触れたのは清月学園という部分だ。

「清月――この前、ラジオで話した子も清月生だったわ。
 その子は高二だったかしら。
 やっぱり、この辺は清月生が多いのね」

「未来さんね。
 それから、そちらが『コール・イット・ラヴ』――素敵な名前ね」

「私の名前は――そこに書いてある通りね。
 代わりに、この子の名前を教えてあげるわ」

「『プラン9・チャンネル7』――それが、この『小鳥』の名前よ」

相変わらず小鳥は鳴き声を上げず、身動ぎ一つしていない。
流暢に言葉を話す『コール・イット・ラヴ』とは対照的だ。

459今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/29(金) 23:10:07
>>458

「そうなんですか? じゃあパーソナリティさんで」
「DJってもうちょっとワルそうなイメージですし」
「ちょっと偏見かな……」

           『偏見デスヨ』

「偏見ですか、それはごめんなさいですね」
「悪いというか、パリピって感じ?」

悪口とかじゃなくてイメージの話だ。
悪いのがダメだとは思わないし。私は悪くなる気はないけど。

「このあたりはまあ、清月小中の校区ですから」
「公立に行ってる子もいますけど」「ま〜少ないです」
「高2って事はセンパイですね、もしかしたら知り合いかも」

ラジオ好きな知り合いもいたような気はする。誰だったかな。
今までそんなに興味のあるジャンルじゃなかったから聞き流してたかも。

           『オ褒メノ 言葉 感謝シマス』
           『貴女モ 綺麗ナ名前ヲ シテイラッシャル』

「へえ、『プラン9・チャンネル7』さんですか!」
「なんだか賢そうな名前ですねえ」「宇宙っぽいというか」
「それにしても静かですね。って、喋らせてないならフツーなのか」

動かず、喋る事もない鳥のヴィジョンを少し眺める。
人のスタンドをゆっくり見るのはドクター以外だと初めてかも。

「ちなみに、くるみさんは『和国』さんのところで貰ったんですか?」
「あ、スタンドの話です」「私はそうなんですけど」「他にもあるみたいで」

460美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/30(土) 00:23:23
>>459

「宇宙、ねえ。そんな風に思ったことはなかったけど、
 言われてみると、そんな気がしてきたわ」

「新しい発見ね。ありがとう」

そして、聞き覚えのない単語が耳に飛び込んだ。

「――『和国』?いえ、違うわ。
 そんな場所もあるのね。私は『音仙』という所だったわ」

「他にも同じような場所があるなんて考えたこともなかったわ。
 『コール・イット・ラヴ』は、そこで生まれたというわけね」

「私としては、この手の話がラジオで使えないのが惜しいわねぇ。
 内容は、すっごく面白い話なんだけど。
 残念ながらトークのネタにはできないわね、アッハハハ」

「実を言うとね、今は静かだけど、この子もお喋りできるのよ。
 見せましょうか?」

そう言って、不意にスマホを取り出す。

「あ、ごめんね。ちょっといいかしら?」

「もしもし?ちょっと聞きたいことがあるんだけど、教えてくれる?」

少女に断ってから、スマホを口元に持っていき、
まるで電話の向こうの誰かと通話しているかのように声を発する。
だけど、実際は違う。
『小鳥』の背中にあるマイクが、私の声をキャッチして、スマホに送る。

「ええとね――今、『何が見える』?」

ごく何気ない口調で、簡単な質問を投げ掛ける。
それに対応して、『小鳥』の口にあるスピーカーから、
『読み上げソフト』のような機械的な音声で、質問の答えが返ってくる。

『シゼンコウエン ガ ミエマス。
 チカク ニハ ショウジョ ガ ヒトリ タッテイマス。
 ショウジョ ノ トナリ ニハ スタンド ガ イルヨウデス』

その姿は、まるで『小鳥』が喋っているように見えた。
しかし、本当に喋っているのは、手に持っているスマホだった。
擬似的な『自立意思』と『視聴覚』を与えられたスマホの声が、
『小鳥』のスピーカーから出力されているという仕組みだ。

461今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/30(土) 01:32:36
>>460

「いえいえ、どういたしまして」
「うーん、くるみさんも『音仙』ですか」
「私も『和国』しかないと思ってたんですけどね」
「前に友達に聞いて、『音仙』って人もいるって聞きました」

一度探してみたが、それらしい店は見つからなかった。
二人も同じ名前を挙げるって事はこの町にあるんだろうけど。

「確かに、フツーの人に話しても『作り話』だと思われそうですもんねえ」
「え、喋れるんですか」「あーでも、友達のスタンドも少し喋ってましたね」

などと言いつつ様子を見守っていると、小鳥がしゃべりだした。
スマホを使って自分のスタンドと話す、そういうのもあるんだ。

「へーっ」

               『先生ト今泉サンノ コトデスネ』

「なんだか『音声案内』みたいですね」
「見た目が機械ですし、意外とかではないですけど」
「スマホで連絡できるスタンドって、ちょっと新しいですね」

遠くにあるものを見て来てもらったりも出来るのかな。
見た目が鳥だし、もしかしたら飛んだりもできるのかな。

スタンドはフツーじゃないから、いくらでも想像出来る。
フツーなことのほうが想像するのって難しいのかも。

「そうだ、私も『プラン9』さんと話したりとかって出来ます?」

462美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/30(土) 21:38:38
>>461

「『音声案内』ねえ。それは的確な表現ね」

「ほら、口の中にスピーカーが見えるでしょ?
 ここから声が出てるってわけなの」

「背中にあるのはマイクよ。
 これが私の声を拾ってるの」

「実を言うと、このスマホを通して喋ってるわけじゃないのよ。
 『今、何が聞こえる?』」

スマホを下ろして、再び質問する。
それに対して、また答えが返ってきた。

『カゼ デ クサバナ ガ ユレル オト ガ キコエマス。
 トオク デハ トリ ガ ナイテイマス』

その場にしゃがんで、揺れる草葉を軽く撫でる。
そして、すぐに立ち上がった。

「――こんな風に、ね。
 でも、このスマホが全然関係ないわけじゃないのよ。
 これがあるから、今『プラン9』はお喋りできてるの」

                        フ ァ ン
『プラン・チャンネル7』は音響機器を『支持者』に変える能力。
音響機器がなければ、それこそオブジェと変わらない。

「お話できれば楽しかったんだけど、
 『プラン9』は私の声にしか反応しないのよ」

「未来さんの『コール・イット・ラヴ』みたいに自分から喋ることもないしね。
 質問に答えるのが専門だから」

「『コール・イット・ラヴ』は何か……あら?」

言葉を途中で止めて、指先に視線を向ける。
さっき葉に触れた時に切れたらしく、指の腹に小さな傷ができていた。

463今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/06/30(土) 22:51:08
>>462

「へー、流石ラジオのパーソナリティさんですねえ」
「質問に答える専門っていうのも、なんとなくラジオ番組みたいです」

ラジオ番組に詳しいわけじゃないけど、イメージとして。
聞いてる人……リスナーがハガキを送ってそれに答えるイメージがある。

「その点、先生はそんなに――」

      シュルルルル

         『"補修"ヲ 開始シマス』

「あっ、始まっちゃった」「指、切ってたんです? 大丈夫ですか?」
「えーっと、先生はですね、『傷』とか『壊れたもの』を直して回るんです」
「直そうとする基準はよく分からないところもあったりするんですけど」

先生の手で、有無を言わせずマスキングテープが巻かれていく。
剥がせば元どおり。フツーじゃない。けれど、もう驚きはしない力。

「そういうちょっとした傷なら、すぐに直してくれちゃいます」

            『……治スカラトイッテ、怪我ヲシテイイワケデハ ナイデスガ』
            『モシ 怪我ヲセザルヲ 得ナイナラ 先生ガ治シマス』

「頼もしいです、先生」「私も怪我する気は無いですよ」
「……っと、そろそろ流石に行かなきゃですかね」

            『ツイ 話シ込ンデ シマイマシタネ』

「楽しかったので、仕方ないですよ」
「くるみさん、今日はありがとうございました!」
「偶然だったけど……話せて楽しかったです」

荷物をまとめて、そろそろここを離れる準備をしておく。
話すのは楽しいけど、そろそろ暗くなり始めてる気もするし。

464美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/30(土) 23:45:06
>>463

「へえ!すごい!」

一瞬で元通りになった指を見つめて、感嘆の声を上げた。
やはりというか、自分とは全く違ったタイプのスタンドのようだ。

「うっかり怪我をしたり物が壊れることって、
 普段の生活でも結構あるものね。
 随分と実用的で羨ましいな」

「それについて、もう少しお話を伺いたいところだけど――
 今日はそろそろお開きの時間みたいね」

キャップのつばを持ち上げて、沈む夕日に視線を向ける。
暗くなってきたし、私も帰ることにしよう。

「こちらこそ、ありがとう。未来さんと話せて楽しかったわ」

「『音仙』で聞いたんだけど、スタンドを持っている人同士は、
 引き合う性質があるそうよ。
 もしかすると、またどこかで会うこともあるかもね」

「それじゃ、未来さん――」 「それから『コール・イット・ラヴ』にも――」

      「――『See You Again!!』」

笑顔で片手を軽く振り、別れの言葉を送る。
そして『プラン9・チャンネル7』を肩に乗せて駐車場の方に歩いていこう。
そこに愛車のスクーターを停めてあるのだ。

他のスタンド使いと出会うことは、自分のプラスにしていきたい。
ただ、トークのネタに使えないのが残念だけど――。
だけど、自分と同じような人と出会えたことで、
明日も頑張ろうって思えるのは良いことよね、きっと。

465今泉『コール・イット・ラヴ』:2018/07/01(日) 01:10:55
>>464

「便利遣いするなって、先生は言うんですけどね」

          『必要ノナイ時ニ 乱用スベキデハ ナイデス』

「減るものじゃないんだし、とは思うんだけど」
「先生がそう言うなら、まあ」
「確かに、自由に使えたら物を壊しやすくなっちゃいそうですし」

先生の直す力はどこまでできるのか分からない。
だから、自由に使えたらどこまででもやってしまう気がする。

・・・そんなに欲が深いってつもりじゃないけど。フツーだけど。

「引き合う、ですか? 磁石みたいに」
「何だかロマンチックな話ですねえ」
「でも、信じてみたいです。また会いたいですし」

            『エエ ゼヒ マタ』

「くるみさん、さようなら〜」
「今度はラジオのお話とか聞かせてくださいね!」

             ブン  ブン

「………………」

大きめに手を振って、学校から帰る道のりに戻る。

ここから歩き出す前にスマホを取り出して、『美作』って調べて、
ようやくそれが『ミマサカ』と読むと知って、少し安心したのは内緒。


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