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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
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                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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436斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/19(火) 23:18:08
――夏の陽気、じっとりとした湿気が汗ばんだ肌にシャツを貼りつかせ
温い風が通るのを頬に感じられる、雨の匂いは土から乾燥して別れを告げ
蝉の鳴き声はいよいよ持って唸る自販機とタッグを組んで静寂にジャブをかましている。

そして木々の木漏れ日がちらちらと、緑の塗装が剥げかけたベンチに座る首に赤いスカーフを巻いた少年と
隣で丸くなっている赤い首輪を付けた黒猫一匹の顔に降り注いでいた。

「解ってるよクロ『善意』なのはさ、だからこうして散歩にも付き合ってるじゃないか。」

少年の方が渋い顔をしながら何処か尖った口調で喋りながら、公園内を見回している
手首に付けた古めかしい腕時計のゼンマイを巻きながら
――猫の方は……何故か得意げに目を細めているように見える、気がする。

「でも仕方ないだろ?朝起きて顔の傍に『鯉』が有ったら誰だって驚くよ
……魚の『鯉』だぜ?君の頑張りはまさしく『スタ……跡』みたいだけど
むしろマーライオンにならなかったのを褒められたい所だぜ、僕。」

必至に喉から上がる酸っぱさは塞いだが、その後僕が騒いだので勿論お世話になっている叔母に見つかる
結果は僕の不機嫌な様で察してほしいが、この『同居人』は理由なくこういう事はしない奴だ。

「そりゃあ……落ち込んでたさ、父の日に白い薔薇を
母の日にカーネーションを渡すのに、何故か『病室』に行かなくちゃ行けないんだからな。」

病院は嫌いだ、むしろ好きな奴がいるのか疑わしい所だ
健康な筈の自分まで病気の気分になってしまうのが本当に僕は嫌だ
叶うなら僕も全部投げ出してすぐさまお世話になりたい所だ、病名:ファザマザコン。

「――でもさ。」

すっかり温くなった瓶コーラを飲み、一息つく
残念ながら、現実問題困っていても『誰か』はやってくれない
一緒に怒られた猫の散歩一つも、僕がやらなくてはいけない、だから。

「『再確認』だよクロ、解る?『目標の再確認』どんなに辛くても、『人生の目標』があるならそれに進む為に。」

(その為なら過去をほじくり返して、悪戯に傷つくのにも意味が有る。 ……と僕は思ってる
じゃなきゃやってるのはただのマゾヒスト君だ、ゲップを一つ。)

「『きっと明日は、今日よりいい日』さ、だからこうして君の散歩ついでに……探しているんだ
『父と母を治せるスタンド使い』をね。」

僕は元気をプラスチックボトルの切れかけマヨネーズみたいに振り絞り、顔をくしゃくしゃに歪めて笑い猫を撫でる
猫は解っているのかいないのか、目を細めて欠伸を一つ――信じられなくても、信じなくてはいけない。

(……でも 人がいる箇所を探すべきだった気がするな、彼の散歩ついでだから仕方ないけれど。)

ゼンマイを巻きなおした腕に巻き付く『膨大かつ半透明の鎖』が、常人に聞こえない音を立てて揺れた。

437小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/19(火) 23:52:35
>>436

空から降り注ぐ日の光は、すっかり初夏の色味を帯びている。
それが、不意に生じた影によって遮られた。
ベンチに座る少年の頭上から、何かが降ってきたのだ。
つばの広い黒い帽子が、綺麗に少年の頭に覆い被さっている。
その直後、足音と共に、少年の背後から穏やかな声が聞こえた。

  「――そこの方……すみません」

  「急に帽子が飛ばされてしまったもので……」

振り返れば、そこに喪服を着た女が立っていた。
ややあって、申し訳なさそうな表情で、丁寧に頭を下げる。
被っていた帽子が飛ばされ、それが少年の頭上に降りてきたらしかった。

  「――……」

腕に巻き付いた鎖――無意識の内に、そこに目がいってしまう。
しかし、それについて言い及ぶことはしなかった。
ただ、その様子を見れば、同じ力を持つ者であることが少年には分かるだろう。

438斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/20(水) 01:15:34
>>437

「――?あっ……と」

背後からかけられた優しげな声に、僕は驚きを隠せない
急いで立ち上がって一礼する、だいぶ間抜けな姿。

しかたない、頭が二つあっても目が後ろを向いているわけじゃないんだから。
それよりは笑顔で対応する事と、帽子を返す事だ。

「いえ、風のせいですから仕方ありませんよ な、クロ。」

――猫はそっぽを向いて欠伸を一つ、そうだな君はあの家で僕の先輩かつ空気を読まずに吸う奴だ。
彼女に視線を戻し、肩を竦めて苦笑いをしてみせる、そして頭から取って相手の眼を見ながら彼女の黒い帽子を両手で差し出す
……同時に『鎖』が揺れて音を鳴らす。

「はいどうぞ、お返しします。葬式帰りでこの時期の日差しは辛いでしょうから。」

完璧だ、2つの疑問以外は
探偵でもあるまいし放置すればいいのに。

(そうだ、喪服なんだから葬式の帰り……で、あれ?公園に寄り道をするんだろうか?
お祖母ちゃんは葬式時にしてはいけないと言う人だけど……それに。)

帽子の影が無い穏やかで憂いを帯びた顔、僅かにそよぐ風で揺れる、長い髪をうなじの部分でまとめたアップヘア
初夏の木漏れ日の下で見える……『眼の動き』

(視線が帽子から腕に来て一瞬止まった、この人は『鎖』が『見えている』
 ――『新手のスタンド使い』だ!やった!)

心の中で手を叩いて喜ぶ、目的に近づけるのだから表情にも隠しようがない
クロの奴が招いたと言われても今なら僕は信じ込むだろう。

「あの、聞いていいのならお尋ねしたいのです…が…」

笑顔のままに
すぐに聞こうとして僕は言葉に詰まって目線を泳がせた、『罪悪感』で

――もっと言うと、自分の事しか考えてなかった僕は
口に出した後にようやく『喪服を着た相手の事』に脳が回った。

(……いや、でも遠慮しないと、だって相手は親しい人が無くなって辛い時かもしれないのに。
それに何を聞くって言うんだ?スタンド?経緯?聞きたい事は山ほどある
でも、そんなに人にずけずけと聞くのはいい事か?違う、悪い事だ、やめよう。)

「――貴方は、貴方の『力』を知っていますか?僕と『同じ人』。」

……『同じ人』がスタンド使いだと解るだろうか?
それともしらばっくれるだろうか、何方でも構わな……くはない、必要がある
でも『僕』はどっちつかずだ、迷っている。

(けれど声を優しく感じた理由は解った、顔の憂いと影がまるで西洋人形のようで、この人まるで死んでるみたいなんだ。)

439小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/20(水) 18:27:53
>>438

思わず腕の鎖に向いてしまった視線を、再び帽子に戻す。
それから、改めて少年の顔と向き合った。
少年を見つめる表情には、陰を帯びたような微笑みがある。

  「……ありがとうございます」

そっと両手を伸ばして帽子を受け取り、元通りに被り直した。
左手の薬指には、飾り気のないシンプルな銀の指輪が光っている。
それと全く同じデザインの指輪が、右手の薬指にも嵌っていた。

  「はい……なんでしょうか?」

投げかけられた質問が途中で途切れるのを聞いて、
生じた間を埋めるように言葉を発する。
それは、質問をされることに対する肯定の意思表示。
そうすることで少年の背中を押し、彼が質問しやすくするために。

  「――私は……特別に優れた人間ではありません」

  「私にできることは、決して多くありませんから……」

静かに言葉を紡ぎながら、穏やかに微笑する。
柔らかく、人当たりの良い微笑み。
しかし、それは太陽のような笑顔とは違っていた。
どこか月の光にも似た憂いを含んだ微笑。
日差しを遮る黒い帽子の下に、それが存在している。

  「ですが――私は、私の力を知っています」

その声と同時に、左手の中に一振りのナイフが現れる。
質問の答えとしては、こうすることが一番だと考えたからだった。
ただ、これを見せることには抵抗もあった。

自身のスタンドを見られることに対してではなく、この凶器を思わせるヴィジョンが、
少年に不快感を与えてしまうのではないかという不安だった。
少し前、ここで自傷の最中に出会った見ず知らずの男性の姿が頭に浮かぶ。
あの時も、自分の不用意な発言のせいで、
彼に不愉快な思いをさせてしまっていた。

自分の行動が原因で、人の心を傷付けてしまうかもしれない。
内心では、そのような結果になってしまうことが怖いとも思っていた。
しかし、何か理由がありそうな少年の助けになりたいという気持ちの方が、
今は強かった。

440斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/20(水) 23:21:43
女性の左手に一振りのナイフ、本来なら警察物だろう……ただしそれが『器物型スタンド』なら話は別だ
『スタンド』は僕が纏う『鎖』のように周囲の一般人には見えない。

それに、自慢ではないけど僕にとっては驚く光景じゃない、奇妙だが少し見慣れた光景だ。

「――まずは質問に答えてくださって、有難う御座います。」

彼女の『スタンド』を見て『何でも無いよ』と言う風に受け流し、微笑む
返答へのお礼を言う、左手を首元に、安心するために無意識に『短くなった母のマフラー』を触る。

(嫌いだ、つまらない、押し殺す、もどかしい、でも必要だ。)

――左手を戻す、楽な姿勢に。
今すぐにでも質問攻めにしたい、でもそれはいけない事だ
頭の中が蝉の鳴き声と思考で酷く騒がしい、汗が頬を伝っている気もする。

「自己紹介が遅れました
 僕の名前は斑鳩、『斑鳩 翔』貴方は『短剣』なんですね……えっと。」

言外に後押しはしてくれているのかもしれない
それでもやっぱり言葉に詰まるのは『鎖』のせいだろうか。
――スタンドは使う人間の『精神』だと言う、その姿形も似るだろう。

「……あ、座りませんか?僕とお話を続けてくれるなら、ですけど。」

名前を聞きながらベンチに座る事を促してその間に考えよう
夏の暑さと歓喜に茹だったこの時の僕の考えだ。

隣の猫(クロ)は退く気が無いので、僕は立ったままだが仕方ない
それに、あまり良くない質問をこれからしなきゃいけない。

(落ち着いて……する事は1.僕の両親を治せる能力かを聞く。2.他のスタンド使いを聞く。
 ――ぼかして聞かないといけないかな、何て言おうか。)

……夏の日差しが差し込む中、木漏れ日が差すベンチの上で猫が貴方の事を見つめる
目の前の少年は一つ深呼吸をした。

441小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/21(木) 00:31:17
>>440

この少年には、どこか思いつめたところがあるような気がした。
もちろん、それは単に自分がそう思っているだけかもしれない。
ただ、少年の真剣な態度からは、思い過ごすだと言い切れない何かを感じていた。

  「私は……小石川文子です」

  「――はじめまして……」

少年の内面にある葛藤を察して、自身の名前を告げた。
そして、また軽く頭を下げる。
その間も、表情は穏やかなままだった。

  「ご一緒にお話ができるなら……私は嬉しく思います」

  「一人で歩いていて、少し寂しさを感じていたところだったので……」

そう言って、口元に柔和な微笑を浮かべる。
それは、偽りのない本心からの言葉だった。
普段、自分は静かな場所を好んでいる。
でも、時々どうしようもなく物寂しくなることがあり、
そんな時は無性に誰かと話をしたくなる。
今も、ちょうどそんな気持ちだったのだ。

  「――お気遣い、ありがとうございます」

  「よろしければ……私は、こちらに座らせていただけませんか?」

お礼を言ってから、ベンチが設置された歩道から少し外れた芝生に立つ。
新緑の上に白いハンカチを敷いて、そこに腰を下ろした。
今の少年の様子を見ていると、立ったまま話し続けるのは辛そうに思えた。
自分は、どちらかというと暑さには強い方なので、熱気をそれほど厳しく感じない。
だから、一人しかベンチに座れないのなら、彼が座る方がいいと考えたのだ。

  「どうぞ、ご遠慮なく――」

  「私にできることは多くありませんが……できる範囲で、お答えします」

木漏れ日の下で、少年に向けて微笑む。
左手には、まだ『ナイフ』が握られている。
それを消さないのは、そうした方が少年の希望に沿えると思ったからだ。

442斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/21(木) 02:41:10
>>441

「有難う、小石川さん。」

笑顔のままに感謝を言う斑鳩の眼には、小石川の両指の結婚指輪が嫌でも視界にちらついた
力を持てばそれを狙う人間は少なからずいるのだ、平穏を望むならば持たないほうが良い
――故に斑鳩には『ナプキンを取った理由』が何処か想像がついた気までしてきた。

(喪服、結婚指輪、前に会ったスタンド使いは両目のせいなのか感覚に関するスタンドだった。
彼女がスタンドのナイフを持っていて、僕に親身に話を聞く理由……)

「――スタンドには固有の『能力』が有ります、貴方もご存知の通り
僕が知りたいのは、貴方の『能力』が誰かを治せる類かという事なのです。」

真っすぐと相手の眼を見て答える、小石川文子の憂いを湛える瞳を見て
その奥に死を垣間見ている気すらしてくる、彼女が共感したのは僕と同じような目に合っているからだ
――『呪われている』過去か、人か、頭の片隅にそんな言葉がよぎる。

(何を馬鹿な……僕の想像のし過ぎだ、それとも僕の『スタンド』のせいなのか。
 こんな事を表情にだけは出したくない、笑顔のままでいないと。)

指を折り、拳を作り、また開く

合間に夏の喧騒と、遠くで子供の元気な声が聞こえる数人で遊んでいるのだろう
それらが耳に入らず、彼女が芝生に座っても気に出来ない程には焦っている

数度繰り返して続けて、やっと口を開く。

「代わりに僕の『スタンド』を知りたいと言うなら教えます
 ……それでも聞きたいのです。」

(……そして可能なら、僕の両親を治して貰いたい
我ながら砂漠で砂金粒を探すような賭けだが、これ以上に確率の高いギャンブルが無いから仕方ない。)

443小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/21(木) 20:17:33
>>442

人知れず悩む少年の姿を見つめる瞳に、気遣いの色が浮かぶ。
しかし、今は気軽に声を掛けるべきではないと判断した。
黙って少年の言葉に耳を傾け、やがて小さく頷いた。

  「……よく分かりました」

短く答えてから、おもむろに左手を軽く持ち上げる。
そして、何気ない動作で右手の親指を切り落とした。
普通なら指は地面に落下し、切り口から滴る鮮血が芝生を赤く染めているだろう。

  「『スーサイド・ライフ』――」

しかし、実際には、そのどちらも起きてはいなかった。
血は一滴も流れておらず、切断された指は重力に逆らうように宙に浮かんでいる。
自身の表情にも、痛みを感じている様子は全く見られない。

  「私は、そう呼んでいます」

不意に、手中からナイフが消える。
それと同時に、浮遊していた指が灰のように崩れ去った。
欠けていた親指が、徐々に元通り再生していく。

  「……私にできることは、これだけです」

  「――ごめんなさい……」

謝罪の言葉と共に、静かに目を伏せる。
『スーサイド・ライフ』に、誰かを癒す力はない。
考えてみれば、それは当然のことかもしれない。

自らの命を絶つことを望む衝動と、それに抗い生きようとする意思。
その相反する葛藤の狭間から、『スーサイド・ライフ』は生まれた。
人を治すことのできる力など、持てるはずがない。

少年のスタンドのことを聞き出そうという意思はなかった。
質問されたとはいえ、こちらの能力を教えたのは、あくまで自分の意思だ。
だから、引き換えに少年の能力を教えて欲しいという気持ちは持っていなかった。

444斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/21(木) 23:28:46
僕は正直な所、自分で頼んでおいて予想外に動揺していた
何せ目の前の優しそうな女性がいきなり自傷行為をするのだ。

……素直に見せて貰えるとも思っていなかったし
何よりギャップのせいで悲惨かつショッキング&ヘビーだ。

「……ええっ!?」

それでも目は釘付けになる、なにせ斬られた指が『宙に浮いている』のだ
そして一滴の血も流れず、『スーサイド・ライフ』を消すと共に灰の如く崩れ消え去る

「『スーサイド・ライフ』……。」

(器物型のスタンド、能力は切断部位の空中浮遊と操作かな、分離して動かしたりできそうだ
でも、残念ながら治す能力では無かった……。)

一瞬眼前に眩暈を覚え、視界が暗転しかけるが、すぐに失望を振り払うかのように顔を振る

(……大丈夫、僕は大丈夫 勝手に期待して勝手に失望してるだけさ
もう10回は繰り返しているんだ、人間慣れる生き物だからね!)

「――あ、いえ 謝らないでください
もう何回も繰り返した事ですし、貴方に非が有る事では有りませんから。」

事実、この人に非があるわけでは無いのだ
もし有る等と言えば、僕は生まれつきの肌色等で差別する連中と同じになってしまう
両親にも顔向け出来ない、どれも嫌だ、故に頭を下げさせてはいけない。

「そんなに深く頭を下げられたら、なんだか僕は申し訳なくなってしまいます。
僕は大丈夫ですよ、教えて頂いて有難う御座いました。」

そう言いながら朗らかに笑顔で返す
この人に暗い顔を向けてはいけない気さえするのだ。

「自分の都合なのに親切に答えて頂いて、それで暗い顔をさせては
 僕の両親にも、祖父母にも顔向けできませんから。」

445小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/22(金) 00:21:44
>>444

謝らないで欲しいという言葉を聞いて、また頭を下げそうになるが、
途中で思い止まった。
これは自分の悪い癖なのかもしれない。
良かれと思ったことでも、相手を不快にしてしまう時もあるのだから。

  「――はい……」

頭を下げる代わりに微笑を送る。
自分が笑うことで、この少年が笑ってくれるのなら、
それが一番いいと思った。
思いつめた様子の彼に、気を遣わせては申し訳ない。

  「お差し支えなければ……連絡先を教えていただけませんか?」

自分には人を治せる力はない。
それでも、できることがある。
ほんのわずかな助けかもしれないけれど。

  「もし……治せる方を見つけたら――」

彼が治せるスタンド使いを捜し求める理由は知らない。
だけど、きっと大切な誰かを治したいのだろう。
その気持ちには、大きな共感を覚えた。

  「その時は、お知らせします」

もし自分と少年の立場が同じだとしたら、私も同じ行動を選ぶだろう。
私にも、大切な人がいた。
『生きて欲しい』という彼の最後の言葉を守るために、
私は今を生きている。

  「私にできるのは、それくらいですから……」

だからこそ、この少年の助けになりたいと思った。
自分と少年に似ている部分があると感じられるから。
心の中で思いを重ねながら、穏やかな微笑みと共に言葉を告げた。

446斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/22(金) 03:17:14
小石川文子は笑顔を見せた
そして協力を言い出している。

(……いいのだろうか。)

やめておくべきではないだろうか
『溺れる者は藁をもつかむ』という言葉が有る。

僕は今溺れている、掴んでいる『スタンド』すら不確かな物だ。
……それに巻き込む?

この人を傷つけてでも手を払うべきだ
既に傷ついている筈なのに、あまりに『献身的』過ぎる。

僕はあまりに必死に見えたかもしれない
それでも理由すら聞かずに小石川文子は言うのだ。
「助けてあげたい」と。

僕の求めは、この人を潰す事になる可能性が無いと言えるのか
そして潰した時に僕がその責任を取れるかと言われれば、否だ。

(僕は責任を取れない、受けるべきではない。)


頭を下げて、申し訳なさそうに断りを……

「――有難う御座います小石川さん、何から何まで。」

「『これが僕の連絡先です』……何故だかやっと笑顔が見れた気がしますね。」

そう言いながらにこやかにスマートフォンを取り出して、番号を相手に見せる。

――いいや、もう決めた事だ、もう一度息がしたいだけだ
弱い僕はその為なら何でもする、でなければ僕は死んでいる
携帯を差し出す時に斑鳩の『鎖』が、消えた瞬間にまた少し音を鳴らす。

「…でもこれでは助けて貰うばかりで、…そう、何か僕に手伝えることは有りませんか?
『帽子を拾う以外』で。」

それを後から付け足すように口から絞り出すのが
僕の『りょうしん』の精一杯だった。

447小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/22(金) 18:53:26
>>446

何事もないように言葉を返す少年の瞳を、ただ静かに見つめる。
鎖の少年――斑鳩翔が、何を考えているかは分からない。
人の考えていることが分からないのは当然だ。

  「――……」

しかし、その様子から心の機微を感じ取ることはできる。
おそらくは彼も、こちらの機微を感じ取れるのと同じように。
それは、どこか共通点のようなものがあるせいかもしれない。

  「……ありがとうございました」

見せてもらった番号を自分の携帯電話に打ち込み、謝辞を述べる。
それ以外、少年の心に踏み込むような言葉は口にしない。
その後で、今度は自分の番号を少年に見せた。

  「――私の連絡先です」

  「何かお聞きになりたいことがあれば……」

判断する権利は、この少年にある。
もし拒否されたとしたら、素直に引っ込めるつもりでいた。
やり取りを済ませてから少年の申し出を聞き、俯いて少し考える。

  「……では、何かお話をしていただけないでしょうか?」

  「斑鳩さんのことや、この町のこと……何でも構いません」

  「今は、一人でいることが寂しい気分なので……」

顔を上げて、少年の問い掛けに応じる。
嘘ではなかった。
最初に彼の話を聞こうと決めたのも、それが理由だったのだから。

空の上には、抜けるような初夏の晴天が広がる。
その下に生じた木陰の中に、二人の輪郭が浮かび上がっている。
子供達が遊ぶ声と虫の音が、遠くに聞こえた――。

448斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/23(土) 05:17:52
蝉が騒ぎ、遠間で子供が屈託なく笑う
ある夏の一日に出会った人は影のある女性だった

「――はい。」

その表情は何処か寂しそうに憂いを湛えていたけれど
同時に優しさに溢れていたのだと

「喜んで、それなら最近のこの町で出会った――……」

この奇妙な出会いと関係に
僕は感謝し、何時かの希望を手放さないように祈るのだ。

この冒険の無事を。


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