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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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426小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/02(土) 22:00:46

ふとした瞬間、胸の奥がざわめき出すことがある。
そんな時は、庭で育てているラベンダーの香りが気持ちを落ち着けてくれる。
それでも治まらない時は、こうして森を散歩することにしている。

自然の中を歩いている内に、少しずつ心に穏やかさが戻ってきてくれる。
でも、時にはそれでも足りないこともある。
心に芽生えた思いは次第に強くなり、いずれは私の心を完全に埋め尽くす程に大きくなってしまう。

  「――……」

そんな時、私は自分の身体に傷をつける。
そうすれば、この気持ちを抑えられるから。
喪服の袖を捲り上げて露になった腕に、いつも持ち歩いている果物ナイフの刃を押し当てる。

  「……ッ……!」

おもむろに刃を引くと、裂けた肌から一筋の血が流れる。
肌を伝って滴り落ちる赤い雫が、この乱れた心を静めてくれる。
ゆっくりと深呼吸すると、徐々に気持ちが落ち着いてくる。

  「――あっ……」

ぼんやりしていたせいで指先が滑り、思わずナイフを取り落としてしまった。
血は、まだ流れ続けている。
いつもより、少し深く切りすぎてしまったのかもしれない。

   ――止血……しないと……。

半ば夢見るような曖昧な意識の中で、どうにかそのことを思い出す。
木の根元には、バッグが置いてあった。
その中に入れてある包帯を取り出そうと、緩慢な動作で身体の向きを変え、ゆるゆると腕を伸ばす。

427杉夜 京氏『DED』:2018/06/03(日) 19:28:16
>>426

 ――だりぃ

日勤 日勤 日勤 日勤 夜勤 夜勤 

……そのローテーションの繰り返しだ。好きでもねぇ仕事を
繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して、んでもって
気のきかねぇ年下の上司が鬼の首をとったように、人のミスを
延々と言い続ける毎日。

 ガリガリガリ……。

頭を掻きむしりつつ歩く。休む暇なく動いてる所為か、熱っぽい脳と
痛む目頭、万力をゆっくり押し付けられたかのような米神。

 (……苛々するなぁ、全部ぶっ壊せれば良いんだがなぁ)

目に付く木々をぶっ倒す事が出来る力は手に入れた。だが、へし折った
ところで俺の中に何か残るのだろう?
 気に食わないバイトの上を殴り殺す事はできる。だが、それをした
所で俺の人生の先がクソである事実は変わらないし、変えれない。

 「……んぁ?」

ふと、緩慢に地面を見つめながら歩き。何気なく顔を上げる。
 目に見えるのは……果物ナイフを持つ女、肌から流れた血……。

「何やってんだ、あんた……」

 思わず声をかけたが、直ぐに後悔も湧いてきた。
どうみたって、正気の行動とは思えねぇ。見た瞬間に背を向けて別の
道へと何事もなく向かったほうが良かったとも思えて来た。

428小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/03(日) 20:46:30
>>427

――木々の中に立っていたのは、黒い女だった。
洋装の喪服を身につけ、つばの広い黒の帽子を被っている。
声を掛けられたことに気付いていないのか、自傷を行った直後の状態のまま佇んでいる。


不意に、遠くの方で誰かの声が聞こえたような気がした。
しかし、少しの間、声を掛けられたことには気付かなかった。
やがて、意識が少しずつ明確になる。
緩やかに、視線が声の方を向いた。
先程の声が自分に対して向けられたものであることを理解し、軽く目を伏せる。

  「――いえ……」

投げ掛けられた言葉が、自分の行為に対するものであることは分かった
ただ、突然のことで、何を言えばいいのかが分からなかった。
その結果、口をついて出たのは、これといった意味のない言葉だった。

  「何でも……ありません……」

何かを言うべきなのだろうか。
そう思っていても、相応しい言葉が見つからず、か細い声で呟くように言う。
そして、地面に腕を伸ばして、今しがた落とした果物ナイフを拾い上げた。

自傷の止血をするよりも、まず刃物をしまってしまわなくてはいけない。
自分にとって必要なものでも、人前で見せておくようなものではない。
片手に握っていた鞘の中に、果物ナイフの刃を収める。

まだ止血はしていない。
血は流れ続けている。
細く赤い筋が、色の白い腕を伝って滴り落ちている。

429杉夜 京氏『DED』:2018/06/03(日) 22:52:00
>>428

「何でもねぇって、いや……」

あるだろう、と言いかけるが。表立って、そう告げて余計に
話をややこしくするのもどうかと思えた。
 何より、この様子を第三者が見たら。最悪、自分が女性に
何か襲い掛かるような、そんな場面に見えない事もない。
 華奢な女性と、徹夜明けで目の下に隈のある大柄な男なら
どう考えても後者の犯罪者度合いに軍配があがる。

「あぁ……うん、何でもないんならな」

 「…………」

それ以上、どう言葉を紡ぐべきか皆目見当もつかなかった。

「……あんた、何しに此処に来てんの?」

 重苦しい空気に耐えかねて、また結局いらぬ言葉が口から飛び出て来た。

430小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/04(月) 19:58:47
>>429

森の中で向かい合う見ず知らずの男女。
お互いの間に、長いようで短い沈黙が流れる。
木々の間を風が通り抜け、枝葉が微かに揺れる音がする。

  「すみません……少し失礼します」

一言言ってからバッグの中に果物ナイフをしまい、代わりに包帯を取り出す。
ついさっき自分で裂いた腕の傷に、慣れた手つきで包帯を巻いていく。
手早く止血を終えて捲っていた袖を下ろし、目の前の男性に向き直る。

  「――私は……『散歩』です……」

  「この場所を歩いていると、気持ちが落ち着くので……」

それは本当だった。
事実、ここに来たのは乱れた心を落ち着かせるためだった。
しかし、今日はそれだけでは足りなかった。
普段と比べて、胸の奥に感じるざわめきが大きかった。
だから、この果物ナイフに――『鎮静剤』に頼らなくてはいけなかった。

  「……あなたは?」

ややあって、自分がされたのと同じ質問を返した。
同時に、男性の纏う雰囲気に意識が向けられる。
何かとても疲れているように見え、自然と表情が心配を含んだものに変わる。

431杉夜 京氏『DED』:2018/06/04(月) 20:19:46
>>430

 「散歩 ……ねぇ。まぁ、この時節は散歩日和、だよな……」

女性が、いやに包帯を巻くのが上手な事など特に気に掛けない事にした。
 所詮、他人だ。俺にとっても、彼女にとって余計な深入りは何も有益にならない。

そして、返された言葉に数秒程、頭に空白が出来た。
 ゆっくりと、何を尋ねられたのか脳に染みこむ。何をしに此処に来たか。

「……あぁ、家に、変える所だな。早く帰らないと」

「お袋が、待ってるんだ。ヘルパーも、俺が帰らないと別の場所に
行けないだろうし、早く帰らないと延滞料金が発生するし
……そうだ、早く帰らないと」

そうだ、俺は家に帰るために歩いているんだ。
 俺の事なんて、もう分からない人のために。
そして、明日も早く仕事に出ないと。稼がないと。
 多分、朝も お袋の奇声染みた声に起こされて、飯を作って。
オムツを、取り換えて。そうだ、その為に……。

「…………」

 俯いた顔をあげる時。目は無意識に果物ナイフに注がれた。

真っ赤な血  それを見ると、狂ったように喚きながら爪を突き立てて
肌が裂かれ、それを抑え込みつつ着替えをする自分の姿が思い起こされる。

 「…………何でだろうなぁ」

「…………はぁ」

 理不尽だと思い続けて来た。最初は怒りだって湧きあがってた筈だ。
下火はあり、何時だって遣る瀬無い苛立ちはある。
 けど、それを誰かや何かにぶつけるのは筋違いであるのも知ってる。

 「…………なぁ」

「腕って切り裂くと、あんたにとって幸せなのか?」

432小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/04(月) 21:52:28
>>431

淡々と紡がれる言葉に黙って耳を傾ける。
その内容から、おぼろげに彼の辛さが察せられた。
しかし、何も言わなかった。
安易に慰めを掛けることは失礼に当たると考えたからだ。
その代わり、瞳に映る気遣いの色が、やや濃くなった。

  「――……」

それは、自分にとって非常に難しい質問だった。
すぐに答えることはできず、顔を俯かせて深く考える。
やがて面を上げ、静かに口を開く。

  「いいえ……」

幸せかと言われると、そうではないと思う。
なぜなら、自分が本当にしたいのは、自分の身体を傷つけることではないのだから。
私が心から望んでいるのは、この命を断ち切ってしまうこと。

だけど、私には、それが許されていない。
だから、私は自分の身体に傷をつけている。
甘美な死の誘惑に負けてしまいそうな心を抑えるために。

  「あの……」

  「この近くに……お住まいですか?」

433杉夜 京氏『DED』:2018/06/04(月) 22:26:06
>>432

 「…………あぁ?」

「近く? ん…………あぁ、こっから森を抜けて十五分ほど
歩いて行けば、な。……けど、なんで そんな事聞くんだ?」

「それを聞いて、あんた俺になにかしてくれんのか?
それとも、これ以上 俺になにかしようって事か?」

 ガリガリガリガリ

 苛つきが収まらない。痒む後頭部の辺りを鬱血しそうに
なるほどに爪をたてつつ掻きながら、声色は刺々しくなっていく。

「疲れてんだよ……本当に、疲れてんだ。寝る暇もないぐらい
倉庫の整理やら、書類の抜けの訂正とかしたり。運搬やったりとさ。
 頑張ってんだよ、頑張ってんのに何かミスして。それに延々と無能だの
根性が足りないだの、お前何年この仕事つとめてるんだの……人が下手に
出てりゃ言いたい放題に言いやがって。
 なのに、何だって見ず知らずの奴に俺の事詮索されなくちゃいけないんだ?
俺、そんなに不審人物か? 俺は責められるような奴か?? なぁ???」

 ガリガリガリガリ……ッ  スゥ― ハァ……ッ

 「いや……うん、あんたの事を責めてるわけじゃないんだ。
お、俺は……落ち着いてるんだ、うん」

 瞼が痙攣する。目の裏が赤く点滅する。

434小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/04(月) 23:05:08
>>433

叩きつけるような勢いで矢継ぎ早に発せられる言葉の数々。
それを聞いて、ひどく胸が痛んだ。
非難されたことに対してではなく、彼にそんな言葉を言わせてしまったことに対して、
後悔の念が込み上げてくる。

  「……お気を悪くさせてしまったことを謝ります」

  「あなたを不愉快な気持ちにさせてしまい、申し訳ありませんでした……」

  「どうか――お許し下さい」

謝罪の言葉と共に、その場で深々と頭を下げる。

  「――私も……あまり遠くないところに住んでいるのです」

  「先程、帰るところだとおっしゃられていたので……」

  「近くまで……ご一緒できればと……」

  「……ご迷惑でしたでしょうか?」

自分が助けになってあげられるなどと大きなことは言えない。
でも、ほんの少しでも彼の痛みを和らげたいと思っていた。
自分が彼の言葉を聞くことで、僅かでも彼の気が楽になればと考えていた。

それに、彼の体調も気掛かりだった。
彼の疲れようを見ていると、途中で倒れてしまうということも絶対にないとは言えない。
かといって、あまり踏み込みすぎるのは却って気を遣わせてしまう。
だから、家まででなくてもいい。
その近くまででいいから、彼が無事に帰り着くのを見届けたかった。

435杉夜 京氏『DED』:2018/06/04(月) 23:19:22
>>434(切りが良いので、ここら辺で〆たいと思います。
お付き合い有難う御座いました)

 俺は膿みたいだと、喋りながら思う。
圧し潰しても、薄汚れた汚らしいものばかりしか出ない。残るのは
鼻水みたいな色合いと、血が混ざりあった残骸だけだ。

 「いや、いや……気持ちは、有難いけど 結構だ。
あんた、見ず知らずの奴にさ。女だろ? お節介をやくと
絶対に痛い目にあうって。関わらないべきなんだからな」

 軽く手を上げて、どの口が吐くんだと思える言葉を告げる。

 善意だけの発言だとわかるからこそ、自分の存在がいやに
薄汚く、それでいて惨めである事が再三と自覚出来ていた。

 そんな相手を見続けると、否応なしに自分自身が愚図だと言う事が
わかってしまうが為に、遮二無二この場から去りたいと言う感情のみが襲う。

 「あんた……あんたも、自分を傷つけるような真似は止めたほうがいい」

 「じゃ じゃあ……」

 そこまでが限界だった。背を向けて一気に走る
早く帰るんだ。あの、もはや自分自身も、俺もわからない母親の元へ。
 そう言えば、もう二日は便が出てない。浣腸液は買い置きしてただろうか?
支払いも滞っている。暴れた所為で壊れた窓も早く修理しないと

 それから、後は 後は 後は 後は。

……俺は、これから何度 やり残した事と処理を考え続けるんだろう。

振り返って、あの女性が見えなくなった事に安堵しつつ。果物ナイフと
 腕に走る赤い雫が脳裏にこびり付いた。

 「……楽になりたいなぁ」

「何時になったら……楽になれるんだろうなぁ」


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